>>KATさん
お待たせしました。非常に乱雑な形ですが、今までの主張をまとめてみました。よろしくご査収いただけますと幸いです。
これまでに述べてきた進化の過程について、二つの過程に分けて考えてみました。
<フェーズA>環境から撹乱を受け個体の表現形が変異する。
<フェーズB>表現形が変化した個体がある生態系の階層レベルで環境を改変する。
※以下、「環境」とはオートポイエーシスシステムにおける環境の意味。つまり、あるシステム=生物に対して
外部であるもの、つまり種内の個体、他種の個体、生態系、自然環境などをまとめて環境と定義します。
この両フェーズがA→B→A’→B’・・・となると考えています。しかもこの両フェーズを繰り返すことで、ある種は
高度化、複雑化、秩序化が蓄積されていくことになります。らせん状の進化の蓄積過程だと考えます。
<フェーズA>おいては、環境の撹乱を情報として受け取った個体がオートポイエーシス的な情報処理の
過程で、「撹乱」→「補償」→「構造改変」→「コード書き換え」(遺伝子書き換え)に至ると考えています。
この過程では、環境からの撹乱(この局面では個体は環境に対して客体となる)、撹乱を閉鎖システム内で解釈
(この局面では個体は環境に対して主体となる)という作動があり、個体は環境に対して客体であると同時に主体、
つまり、「半主体/半客体」であることになります。この点がダーウィニズム=客体、ラマルキズム=主体という捉
え方とは異なっている点だと思います。つまり、個体が環境からの撹乱を受ける局面と個体がその撹乱を独自生
命システムの文法でその撹乱を補償する局面があいまって変異が発生するという観点をとります。
また、このような「撹乱/補償」モデルでは、個体の表現形の変異には情報処理能力の個体差が関わってきます。
つまり、例えば同じ捕食者の卓越という環境の撹乱を受け取っても、ある種はより足を早くすることで撹乱を補償
するかもしれませんし、別の種は擬態をすることによって補償を試みるかもしれません。また、同じ種内でもそれ
ぞれの個体差によって撹乱に対する補償の方法が違ってくる可能性も考えられます。これは、オートポイエーテ
ィックな閉鎖システムは種によって文法が大きく異なり、また種内でも個体によって文法が小さく異なるためだと
考えられます。つまり、
補償の観点で見れば、個体は環境の撹乱を自分が解釈できる文法で翻訳しその文法内で見える範囲で撹乱か
ら逃れる対応、つまり補償を試みます。この場合、補償は突然変異説のようにまったくランダムな表現形の変異
が見られるのではなく、「その生物の撹乱に応じた補償がとりうる範囲、つまり、情報処理システムがその生物
の文法内で変異の仮説を立てられる範囲に限られます」(つまり、キリンにいきなり羽は生えない)。ある制限され
た範囲内でのみ個体差による自由な「仮説」が立てられるという言い方もできそうです。
また、補償の個体差によって発現する変異の表現形にばらつきが発生し、それを変異の結果だけから観察すれ
ば、それは偶然による突然変異のように見えます。しかし、別の視点として環境の撹乱に対応するために個体が
情報処理のシステムにおいて新たな適応の表現形をそれぞれ独自に探している、という見方も出来るのではな
いかと考えます
環境の撹乱による表現形の変化は環境の淘汰圧の高まりによって柔構造を持つ個体がその柔構造を維持でき
なくなった際に一気に起きると考えています。ですから、変化はダーウィニズムのように連続的、漸進的ではなく
て、カオス理論の自己組織化臨界のように「ある期間、ある地点に集中的に」つまり、ある種において不連続的に
発生すると考えられます(≒「種は変わるときなれば変わる」)。
これによって、撹乱/補償モデルにおいては、変異は連続的なランダムな変化ではなく、ある時期、ある地点で不
連続に、かつ、変化の範囲もその生物の情報処理システムの能力に応じた範囲内でのみランダムに発生すると
いう観点をとることができます。
例を上げると、ある生態系のある階層において、擬態能力のないカメレオンの個体数が飽和することで、エサとな
る昆虫の個体数のとの関係から種に対する淘汰圧が高まります。この淘汰圧がカメレオン個体の柔構造の耐性
を上回ることで、ある個体において色覚情報を脳で処理し、皮膚組織の色素構造を視覚情報と連動させて変化さ
せるという表現形を発現させた個体が現われます。この個体が自然淘汰によって優位となり、生態系内で卓越し
てゆきます。この補償モデルの変異が突然変異と異なる点は、眼を通じて色覚情報を得て、それを脳で情報処理、
その処理結果を神経組織が皮膚の細胞まで伝達し、脳の情報処理に基づいた色素を選択するという眼、脳、神経
組織、皮膚など各器官が高度に連携した解釈的な表現系が発現していることです。突然変異説では、各器官の個
別の変異をうまく説明できますが、各器官が連携してひとつの表現系をなすような進化をうまく説明できないのでは
ないかと考えます。
<フェーズB>においては、表現系が異なった個体が上記のようにある種において集中的に発生、やがては自然
淘汰によって生態系の階層レベルにおいて卓越してゆきます。もちろん、この淘汰過程によって上記の「仮説」が
有利に働かなかった場合、その種は絶滅することになると思います。
重要なのは生態系のある階層で新たな種が卓越することによって、その生態系における他の生物との関係が
新たに作り出される点です。哺乳類のオーストラリア大陸への進出で他の生態系では哺乳類が占める階層が空白
であった場合、哺乳類は階層内で卓越していきます。これによってより下位の階層を占める爬虫類、鳥類などの環
境は劇的変化することになり、新たな淘汰圧が生じます。一方、大陸の生態系の階層で哺乳類が卓越する
ことで、捕食生物の相対的な数が減り、種間で淘汰圧が高まり、より有利な種でもやがて種内での淘汰圧が高ま
ります。こうしてある種が生態系の階層で卓越していくことによって、逆に自己が原因となった淘汰圧が高まると
いう矛盾を生み出します。これが環境の撹乱となって、<フェーズA>へと連なってゆきます。そして、<フェーズA>
によって種は飽和状態にある階層を抜け出し、新たな表現系を獲得することで新たな階層へと「進化の階段をそっと
登る」ことになります。
※<フェーズB>のイメージは当初からの主張であるカオス理論の「自己組織化」がヒントになっています。
新たな階層への進出→階層内で卓越化・矛盾化<階層内で個体数が飽和する>→環境からの撹乱<淘汰圧が
高まり個体の柔構造を上回る>→さらに新たな階層への進出、というもので、新たな階層の獲得はつまり、自己
組織化の相転移の局面だと考えています。
これまでの議論では<フェーズA>への考察が中心となってきましたが、
<フェーズA>、<フェーズB>が一連の過程となった相互作用による表現系の複雑性の蓄積、つまり、スレ参加
当初に述べた「弁証法的」過程が生物の進化だという視点をとることでより包括的に進化の過程を眺められるので
はないか、と思っています。
以上、大変まとまりがありませんが、よろしくお願いします。