行政書士不合格者サロン

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244 ◆QPVoUWc0y6

「雨、のち、ブルー」



Interlude T (偽無職編)

あいつがおかしくなったのは、確か2月に入ってからだったと思う。
あいつの誕生日を一緒に祝ってやろうと、いつも一緒に行く予備校の近くの居酒屋に呼び出したのが確かその頃だったからよく覚えているよ。

あの日の鈴木は目が虚ろで言葉少なめでさ、酒を飲み始めて直ぐに、<あ、こいついつもと違うな>って感じたよ。
だってさ、いつもの鈴木なら、最初の一杯のビールがテーブルに来た途端に目付きが変わってひょうひょうと喋り出すんだぜ?俺なんか、彼女が部屋で待っているっていうのに、鈴木のトークに付き合わされて、帰るのが朝の4時とか5時なんてザラなんだぜ?

それなのに、その日の鈴木ときたらさ、ビール片手に黙りこくっちゃってさ。おいって呼んでも上の空さ。

悲しいことがあったとかそういうんじゃなくて、なんていうかな…、まずいものでも見ちゃったような目をしてたんだ。
まずいものって?そりゃあ、俺に聞かれても分からないよ。だってその日は何話しても盛り上がらないっていうか、あいつの心ここにあらずって感じだったからさ、飲み始めて1時間もしないうちにお開きにしたよ。

そうだな、その日からあいつの姿を予備校で見かけることはなくなったんだよ。あいつ…一体どうしちゃったのかな…。ねぇ、あんた分かるか?

あ い つ に 何 が あ っ た の か 。