朝の駅のホーム。
そこは通勤通学のラッシュ。
大量の人が電車に吸い込まれ、そしてまた溜まっていく。
誰しもが電車と電光掲示板にのみ注意を払い、周囲には全く気にもとめない。
とはいえ、一画にて行われる、この淫靡な行為を気に止めない者は常ならば存在しないだろう。
二人の女子高生、加治木ゆみと東横桃子は互いの唇を寄せ合い、抱きしめ合っていた。
それだけならば、チラ見するサラリーマンが居るかもしれない。
だが、二人は一糸纏わぬ、つまり全裸であった。
「先輩、大声あげちゃダメっすよ?声出したらみんなに見えちゃうっすから」
「しかしモモ、如何に気づかれないとはいえ、コレはあまりに…」
色白な桃子の身体は羞恥に染まり、ゆみの肢体もまた朱に染まっていた。
桃子の股の付け根から透明な液体が滴り、それをすくいとってゆみの目の前で見せる。
粘つく液体が桃子の指先で、糸を引いて垂れる。
「私、こんなに興奮したの初めてっす。駅のホームでキスしようなんて言うアイディア、私じゃ思いもつかなかったっすよ」
「モモ…。しかし私だっていきなり服を脱がされるだなんて思いもしな…むぐっ」
「静かにしてないとダメっすよ、先輩」
愛液滴る人差し指でゆみの唇を塞ぐ桃子。
桃子の匂いと敏感になっている唇への愛撫。
ゆみの理性はどこかへ飛んでしまった。
そのまま桃子の指を舌を出してぴちゃぴちゃと舐め回す。
目はどこかうつろで、頬はコレ以上無いというくらいに赤く染まった。
対する桃子もまた、目をトロンとさせてゆみの舌を人差し指から手のひらへと移動させる。
ゆみもそれにあわせて手首、下腕、肘、二の腕、脇、肩、乳房、乳首、谷間へと舌を這わせる。
愛撫される右腕とは別に桃子もまた負けじとゆみの秘所へと指を走らせる。
触れた途端に溢れる愛液とびくんと反応するゆみの身体。
ゆみは桃子の豊満な胸、その狭間に顔を埋め、必死に大声を出して喘ぐところを我慢する。
柔らかい感触が両頬に伝わる。左右に顔を振るとふるふるとまるでプリンのように桃子の胸が震える。
顔を上げると桃子のとても幸せそうな、これ以上幸せなことなどないかのような至上の笑顔が広がる。
その唇がとてもいとおしくて、ゆみは胸への執着を振り払って桃子の唇を吸う。
ゆみは桃子のそれと比べると小さくはあるが立派な胸が、桃子の豊満な胸を押しつぶす。
桃子の後頭部を包みこむかのように両腕でしっかりと抱きしめ、息が蕩けそうなほどに桃子の唇が吸いつくされる。
ゆみも桃子も互いしか世界に存在しないかのように、黙々と互いの身体に集中していた。
ぴちゃぴちゃと互いの舌をすり合わせる音だけが、二人の間に響く。
「先輩、いくっすよ」
桃子は宣言とともにゆみの下腹部に這わせていた指を、弄ぶのではなく挿れる。
突然の挿入。無意識下での狼藉にゆみの体が大きく跳ねる。
それまで愛おしくいつまでも重ねていた唇を離し、声にならない叫びを上げる寸前になってゆみははっと周りの状況を想起した。
自分の周りが人の海である、と言うことに。
桃子の頭を支えていた両手を、とっさに自分の口元へ急いで向かわせ、叫びそうになる自分を必死に堪える。
それでも下腹部から来る快感の波は避けようも無い。
桃子は執拗に秘所への攻撃を繰り返す。口元にはいつしか悪魔的な笑みが浮かんでいた。
重ねた手のひらから溢れそうになる喘ぎ声を必死に押さえ込み、ゆみは全身を震わせながら快感の海に溺れていた。
桃子はのけぞるゆみの乳首を歯を立てながらついばむ。
コリコリとした感触が心地いい。触ってもいなかったのにゆみの乳首は痛々しいほどまでに勃起していた。
「先輩、頑張るっすね。でもこっちはどうっすか?」
桃子は奥の手とばかりに、それまでゆみの全身を弄んでいた右手を下に這わせる。
形のいいお尻をさわさわと弄び、ゆみの意識を臀部へと集中させる。
「ま、まさか…やめろ、モモ…ッ!」
制止の言葉も振り切り、桃子は指をもうひとつの穴へと侵入させた。
爪先立ちになり、極限までのけぞる。
強く塞いでいた目が大きく見開かれ、白目をむかんばかりだ。
首から上が可哀想なくらいに真っ赤に染まり、口を塞ぐ両の指から唾液がダラダラとあふれる。
声にならぬ喘ぎ、いや叫びを必死で押し殺し、ちいさくうめき声のような音が溢れる。
どのくらいの時間が経ったのだろうか。
実際には数秒、もしくは一秒にも満たなかったのかもしれない。
だがゆみには永劫とも言えるほどの時間が流れていた。
やがて桃子の両の指は侵入を諦めてゆみの体から離れた。
全身の力が抜ける。膝が悲鳴を上げて直立を拒否する。頭の中が真っ白になり、全ての自律運動を放棄した。
ぐったりとしたゆみの身体を、桃子は全身でもって抱き支えた。
「…なぜこんな事をする…」
ゆみは肩で息をしながら桃子を抱きしめる。
不思議だった。こんなにも羞恥を高める行為を何故するのかと。
自分とて、桃子のいやらしい声を存分に堪能したい。
だが、声をあげることは即ちこの姿を周囲に晒すことになるのだ。
溜まったフラストレーションを発散するかのごとく、桃子の身体を力の限り抱きしめた。
「だって、耐えている先輩がすごく綺麗だったすから…」
囁きながらゆみの耳朶を甘噛みする桃子に後悔の念はない。
背筋に指をツツツとはわせ、弛緩するゆみの身体に緊張を走らせる。
「だからといって、私やモモ、お前の身体を他人に見せつけるようなことをするのか?」
「私の裸を誰にも見せたくないんすか?」
「モモ…ッ!」
ゆみはその桃子の言葉に、さらにきつく桃子の体を抱きしめる。
息が詰まる。叱咤されると思った桃子の体が初めて萎縮する。
「当然だ。モモは私のものだ」
(とんでもない独占欲っすね。)
桃子はそう思いながらも嬉しさで身体を歓喜に震わせていた。
きつく抱きしめられる痛さも、また快感に変わる。
そう、桃子もまた、ゆみを自分のものであると、自分以外の誰にも渡さない宝であると自覚していた。
それをゆみの口からも聞けて、本当に幸せだった。
「ストレートに言われると恥ずかしいっすね…こんな雑踏の中じゃなく、二人っきりで聞きたいっす」
「大声で言ってやるさ。二人だけの部屋でな」
二人はそういうとまた互いの唇を重ねた。
何回目かの警笛が鳴り、電車がホームに突入する。
通勤ラッシュは最後のかきいれどきを迎えていた。