おつ!
はじめおつ!
15 :
前スレ837:2009/12/01(火) 12:28:04 ID:4McOERBt
かじゅモモSS投下します。前スレ843からの続きとなります。
* * *
それから少しの時間が流れた。季節は冬に差しかかり、段々と気温も下がっていく。
「こら、モモ……ここでは止めろと言ってるだろ……」
「大丈夫っす。誰にも見えてないっす」
今日も桃子がスキンシップをせがんでくる。二人きりの時は幾らして貰っても構わない、などと密かに考えているゆみだったが、流石に昼休みの生徒が往来する廊下でされるのは、問題だろうと思った。
「馬鹿を言うな……いくらモモが目立たないからって、無理があるだろう」
「……先輩、私の事キライっすか」
「話を逸らさないでくれ。第一、私がモモの事を嫌いだなんて」
「じゃあ問題無いっす」
ゆみの言葉を遮るように、桃子はゆみの身体にしな垂れかかる。頬をすり寄せ、猫のようにじゃれ付いてくる。
「……モモ」
ゆみは、いつの日か智美に言われた言葉を思い出していた。
『モモは最近、ユミちんに依存し過ぎてるな』
頻繁に一緒に居たので気付きにくかったが、確かに桃子はゆみに甘えてくる。まるで、ゆみしか見えていないかのように。そこまで想われている事は悪い気分ではないが――
「……先輩?」
抱きつく桃子の体を、両手でそっと抑える。
「モモ。お前がいつも私を見てくれる事はとても嬉しい。けれど、それだけじゃ駄目だ。お前は、もっと――」
もっと、周りの世界を見てほしい。ゆみはそう言いたかった。
コミュニケーションの為の時間が楽しい。以前桃子はそう言っていた。今まで影の薄さから他とのコミュケーションを避けていた桃子にとっては、そう思える事はとても素晴らしい事なのだと、ゆみは考えている。
だから、自分だけでなく、もっと周りの人達と楽しい時間を作って欲しい――ゆみは桃子にそうであって欲しいと思ったのだ。
「――私には――」
「……モモ?」
ゆみから離れた桃子が、目を伏せる。
「私には、先輩しか要らないっっっす!!」
廊下中に響かんばかりの声で、桃子が叫んだ。そうすると、モモの存在は他の生徒達もはっきりと認識出来るようになる。再びゆみを見た桃子の顔を、今にも泣きそうだった。
「っ……!」
「あ、モモ……!」
叫んだ直後、桃子は駆け出した。ゆみは桃子の行動に面食らい、動く事が出来ずにいた。
* * *
その日、桃子は部活に姿を見せなかった。部活が終わった後、ゆみは屋上に向かう。
「モモ」
呼び慣れた名前。そこに立っている少女は、今にも消えそうな佇まいで、その場所に居た。
「……よくこの場所が分かったっすね」
「まだ下駄箱に靴が残っていたからな」
二人のお気に入りの場所だから、などと歯の浮くような台詞は恥ずかしくて言えなかったので、そう答えた。
「…………」
「――――」
ゆみは、その後の言葉が出てこなかった。昼休みの事を問い質そうとしても、上手い言葉が見つからない。そう考えあぐねていると、桃子が先に口を開いた。
「ごめんなさいっす。先輩」
そう言って、ぺこりと頭を下げる。
「先輩に、迷惑かけちゃいました。……本当は、私もやり過ぎたって、思ってるっす」
「……モモ」
顔を上げた桃子の目は、少し赤くなっていた。
「……いや、私も少し言い過ぎたと思っているよ。だからもう、謝らなくていい」
それに気付いたゆみは、動揺を抑えながら言った。
「ただ、一つ教えてくれないか。どうして最近……その、そんなにくっつきたがるのか……」
聞きながら、ゆみ自身も気恥ずかしくなる質問だった。
「――――」
しかし、その質問に桃子は押し黙る。答えたくない、といったその態度に、ゆみもそれ以上聞く事を躊躇う。
「……あ、いや、いいんだ。変な事を聞いてすまない」
言いたくない事を無理に聞く事もないだろうと、話を打ち切る。何か別の話題でも出して、また後にしようと――
「――先輩は」
ゆみがそう考えた矢先、桃子が意を決したように口を開いた。
「先輩は、もし――私が消えちゃったら、どうするっすか?」
「え?」
その言葉の意味が一瞬分からなかった。
「お前が消えたら……? どうするって、それは、探すに決まっているだろう?」
しかしゆみは、桃子の言葉の意味を反芻し、当然の答えを出す。けれども、桃子はその答えに頭を振った。
「――そうじゃないっす。もしも、もしも私がこの世界に最初から居なかった事になったら、先輩はどうするのかなぁ、って……」
桃子の顔に、翳りが見える。ゆみは、その言葉にますます混乱した。
「何を言ってるんだモモ、『居なかった事』だなんて。幾ら影が薄いからって、お前はちゃんとここに居るじゃないか。変な事は言わないでくれ」
「……そうっすよね。変な事聞いて、ごめんなさい」
照れ臭そうに笑う桃子だったが、ゆみにはその笑顔がひどく寂しいものに見えた。
「帰りましょう、先輩」
桃子はゆみの手を握ると、駆け出した。
「あ、おい、モモ」
桃子に引っ張られるように、ゆみは屋上を後にした。
そして、ゆみはその後――桃子の言葉の真意を思い知る事となる。
* * *
ある日の放課後。部活中に、ゆみはその異変に気付いた。
「蒲原、モモの牌譜が見つからないんだが」
それは、部員達の牌譜を整理していた時の事。ゆみにとって、その台詞は至って普通のものだった。しかし、ゆみの言葉を聞いた智美の表情は、固まっていた。
「……蒲原?」
「…………モモ? ――――あ、ああ、うん、あれ? どこにいったのかな? すまんすまん、後で探しておくよ、ワハ、ワハハ……」
智美は頭を掻きながら笑った。しかし、ゆみには見えていた。
桃子の名前を最初に出した時、智美はまるでその名前を初めて聞いたかのような表情をしていた。
もちろんそれは一瞬の事だったが、ゆみは何故智美がそんな反応をしたのかが分からなかった。
探し回った結果、桃子の牌譜は、棚の奥にひっそりと置かれていた。
そしてその日、桃子が部活に来る事は無かった。
部活が終わってすぐに、ゆみは屋上へと向かう。しかし、そこに期待していた者の姿は見当たらなかった。
「モモ……」
名前を何度か呼んでみるが、反応は無い。ゆみの脳裏に、以前言われた桃子の言葉がよぎる。
『先輩は、もし――私が消えちゃったら、どうするっすか?』
馬鹿な、とすぐさま否定するが、にわかに心はざわついた。下駄箱に足を進め、桃子の靴が無い事を確認すると、急いで校舎を後にした。
「モモ……!」
自分でも、何をそんなに焦っているのか不思議だった。しかし、今日会えなければもう二度と会えないのではないか――などと、幾ら何でも考えすぎとは思いながらも、拭い去る事が出来ない奇妙な不安感がゆみを襲う。
街中を探し回る。見つからない。今まで、桃子を見つけるのにここまで苦労した事は無かったのに――と、そこでふと思い至った。
普段、あれだけ影の薄い桃子を見つけられていたのは、何故か。
「そこに、居てくれたからじゃないか……」
二人で買い物をする時は、いつでも待ち合わせ場所にゆみより先に来ていた。放課後は、部室に居た。屋上に居た。いつだって、傍に居てくれた。
いつだって、向こうから『気付かせてくれていた』。
「私は……愚か者だ」
自分が、自分だけが桃子を見つけられると思っていた。実際はどうだ。姿が見えない時、桃子が自分を見つけて、それから自分が気付くだけだ。自分から桃子を見つけた事なんて、殆ど無かったのだ。
体中の力が抜けてゆくようだった。実際、街中を走り回って疲れきっている。ふらふらと近くにあった公園のベンチに座り込み、空を見上げる。日は既に暮れ、星の光が瞬き始めている。
ぼんやりとした意識のまま、視線は宙を彷徨う。桃子が居なくなった理由が分からない以上、探すのを止める事は出来ない。かと言って、何か当てが有る訳でもない。どうにも出来ない状況の中、ゆみの意識は、疲れの所為か徐々に遠ざかっていった。
* * *
――暖かい感覚に、ゆっくりと目を開ける。まず視界に入ってきたのは、夜の暗さと――探し続けた、人。
「こんな所で寝てたら、風邪引くっすよ? 先輩」
「……モ……モ……」
のろのろと手を伸ばす。その手を握った桃子の手は、冷たい。
「どこに……行ってたんだ……探したぞ……」
思わず泣きそうになるのをぐっと堪え、声を絞り出す。握った手を引き寄せて抱き締めたかったが、あまり力が入らなかった。
「――ごめんなさい」
ゆっくりと、桃子がゆみの身体に覆い被さる。抱き付いてきた桃子の感触に、ゆみの体中を安堵感が巡った。
「捕まえた」
桃子の身体を、今度はしっかりと抱き締め返す。確かに桃子がここに居るという感触が、堪らなく嬉しかった。
「ごめん……なさい……」
耳元で、今にも泣きそうな声で謝る桃子の声がする。しかし、ゆみはそんな桃子の言葉など、聞きたくは無かった。辛そうな桃子を見たくなかった。だから。
「モモ」
「せんぱ――」
唇を塞ぐ事にした。驚きで固まった桃子に構わず、ゆみは桃子の柔らかい唇の感触を味わう。
「モモ……会いたかった」
「私も……です」
頬を赤く染める桃子の身体を、今度はしっかりと抱き締める。もう二度と、離さない様に――
* * *
「私、前に先輩に聞いたっすよね? 『もしも私がこの世界に最初から居なかった事になったら』……って」
「……ああ」
それから二人でベンチに座っていると、桃子がぽつりぽつりと話を始めた。それは以前、桃子が屋上でゆみに問いかけた言葉の事だった。
「……一体、どういうつもりでそんな事を言ったんだ?」
そう聞いたゆみだったが、自分でも何となく分かりかけている気がした。
部活での智美の反応。既知の存在である桃子が、未知に変わっていたあの瞬間。
東横桃子という存在が、消えていた感覚――
「――私、本当に『消えちゃう』みたいっす」
だからだろうか。桃子の、その酷く突拍子も無い言葉に、半分は納得してしまっているゆみ自身が居たのは。
「モモ……それは」
何の冗談だ、と言いたかった。しかし、言えなかった。
「もう、クラスの誰も私の事を『知らない』っす」
「……! なっ……!」
「出席を取る時も、私の名前はもう呼ばれないっす。前は、ちゃんと声を出せば気付いてくれたのに」
その告白に驚きを隠せなかった。一体どういう事なのだ。
クラスの皆から認識されていない?
いくら桃子の影が薄いからといって、そんな事が有り得るのか。
一体どこのオカルト話だ、それは。
「……何だ……それは……」
いくつもの疑問がゆみの頭に浮かんでは消え、結局それしか言葉が出なかった。
「私にも分からないっす。気付いたら、もう誰も私の事を見てませんでしたから」
自嘲気味な笑みが桃子の顔に浮かぶ。
「あ、でもちゃんと授業は受けてたっすよ? 私は真面目っすからね」
小さく胸を反らしながら、桃子は笑った。しかし、ゆみにはその笑顔が痛々しく見えていた。
――そこで、ゆみは思い出す。以前、桃子が必要以上にゆみに甘えてきた時の事を。先輩しか要らない、と言われた時の事を。
「まさか」
あの時から、既に桃子はクラスで一人になっていたのか。クラスの中で、誰からも見つけられる事も無く、一人だけで。
そんな桃子を忘れていない人物は――他でもない、ゆみ自身だった。
だから桃子は、求めていたのか。自分の事を見てくれる人を。自分の事を、忘れずに居てくれた人の事を――
「……私は」
知らなかったとは言え、桃子をあの時避けようとしていた事を、ゆみは後悔した。桃子を傷付けてしまった。
「モモ、すまない。私が愚かだった」
桃子の肩を引き寄せ、頭を下げる。どうしても謝らなくてはいけないと、そう思った。
「……いいっすよ、先輩。普通、こんな話誰も信じられませんから」
そう言って、桃子は寂しげに微笑んだ。その笑顔を見る度に、ゆみの心は痛んだ。確かに、桃子の話だけでは冗談にしか思えない現象だった。しかし、ゆみはそれを否定する事は止めていた。
何故なら、ゆみ自身がそれを経験していたから。部活中の智美との会話で生じた異変。それが、桃子の言った異変と重なる。証明する術は無かったが、状況がその答えを導いていた。
「しかし、どうしてこんな事に……」
それでも、疑問は残る。それは聞いて分かるものではないのだろうが、聞かずにはいれなかった。
「…………」
ゆみの質問に、桃子は口を閉ざす。それから少しの間、言葉を探すように目を泳がせ、やがて意を決したように口を開いた。
「夢を、見たっす」
「……夢?」
今回は以上となります。
SOAェ…
SS投下
四校合宿で、カマ×かお、むき×南浦
少し長め
豊かなる一日
四校合宿の初日。鶴賀学園のメンバーたちが、合宿所に到着した。
しかし、他の強豪三校のオーラに少し呑まれていた。
「うむ・・・。加治木先輩と桃子はともかく私たちは少し場違いな気がするな・・・」
「そうですね・・・。とりあえず大人しくしてましょうね」
「ワハハ。主役は他にいくらでもいるからな。私たちはあくまで脇役ということで・・・」
そんな彼女たちを主役にして合宿のある一日を追ってみた。
1.朝陽がサン (朝)
朝陽輝くこの日の朝。私と睦月は主催者である清澄の竹井に直談判していた。
「部屋変えてくれよ!あの部屋じゃ寝れないんだよ私たち!」
「一睡も出来ないんですよ!何とかしてくださいよ!」
私たちが寝れない理由は、私たちの仲間であるユミちんと桃子にあった。
あの二人、私たちが同じ部屋にいることなどお構いなしに一晩中愛し合っている。
声がうるさいのもあるが、何より暗闇の中であんなことをしているなんて考えたら
興奮してしまって眠れるわけがない。これは部屋を変えてもらうしかない。
「わ、わかったから・・・。顔近いって。怖いわよ。とりあえず落ちついて・・・」
「わかってねーだろ!頼むから何とかしろよ!誠意ある対応を・・・」
「うむ!そうですよ!一度やってみなって!絶対寝れないから!」
その後もボヤキと部屋の変更を叫び続ける私たち。
あの竹井が困っている。よし、もう一押し・・・そう思っていた矢先だった。
「・・・黙ってください。どうしようもないお二方。どこのわがままな幼児ですか」
竹井の隣にいた福路がいきなりこんなことを言い出した。口調は穏やかだが内容は過激だ。
「そもそも今回の合宿、一校につき部屋は一つ、そんな最低限のルールすら守れないのですか。
それに、部員の管理は部長の役目。前部長である蒲原さん、現部長である津山さん、
つまりあなた方が悪いのです。それなのに竹井さんに文句を言って困らせる始末。
いい加減にしたらどうですか?いつまで甘えて生きるつもりなんですか?」
「「・・・・・・・・・すみませんでした」」
朝陽がサン、おはようサン。私たちは散々。今日は悲惨な一日になりそうだ。
2.私たちはそうやって生きてきた (昼)
麻雀をしていて、相手からリーチが来てすぐに安全牌落として逃げて・・・。
そんなときいつも思う。私の人生はベタオリだけだ。
頭のよさ、才能、スタイル、カリスマ、金・・・。私は何も持っていない。
麻雀だって配牌がカス、ツモも最低だったら降りるしかないだろう。つまり不戦だ。
私も自分の窮状をワハハと笑い飛ばして、試練と戦わない日々を送っていた。
「いや〜・・・部長との付き合いは高校一年のときからじゃったのう」
「甘いじぇ染谷先輩!私とのどちゃんは中学時代から仲が良かったんだじょ!」
「ふふふ・・・。僕と透華は小学生の時に運命的な出会いを果たしたんだ。一歩上だね!」
今対局している連中がそれぞれ自分の好きな相手について語っていた。
私なんか、佳織とまだガキの頃から十年以上いっしょに遊んでたんだ。お前らより上だ。
佳織か。佳織との関係も、私はベタオリとはいかないまでも回し打ちを続けていた。
私は佳織が好きだ。でも、もし拒絶されて今の関係が崩れたら・・・と考えると
とてもじゃないが勝負になんか行けない。それに、告白なんかいつだって出来る。
いや、佳織と恋人になんてなれたら最高だが、何も今やることはない。
今は友達のままでもいい・・・。そう思っていた。
「いや〜。でもいつでも告白できるチャンスがあると思ったのがまずかったのう。
気がついたら風越のキャプテンに取られてしもうたわ」
「そうだじょ。のどちゃんも今では咲ちゃんに完全にイカレちまってるじょ。
まあ咲ちゃんがお姉ちゃんしか見てないからそれが唯一の望みだじぇ・・・」
「僕も透華と結ばれるのは決定事項だと思ってたのになあ・・・。
この合宿で透華、原村のことばかり見ているんだ・・・。ハァハァしながら。
こんなことなら早くこの想いを言葉にするべきだったよ・・・」
すっかり暗くなっちまった。チャンスを逸した敗者たちの悲しい姿だ。
いつまでも機会がある、そう思って保留を続けているうちに出し抜けを食らった。
私だって他人事じゃないのかもな、そう思って佳織のほうをちらりと見た。
「妹尾さんってかわいいよね。俺の周りにはなかなかいないよ、こんな美人。
好きなやつとかいないの?もし恋人がいないんだったら俺が立候補しちゃおうかな・・・」
マジか。こんなちょうどいいタイミングであるのかよ、こんなこと。
龍門渕の井上に迫られている佳織。ここで私が取る行動パターンは3つ。
「ワッハッハ〜!イケメンに誘われてよかったじゃないか、佳織!」 ベタオリ。
「おいおい、私の大事な幼馴染にちょっかい出すなよ〜?」 これまでどおり、回し打ち。
「この私が佳織の恋人だ!手を出すんじゃあない!」 まさかの暴牌。ありえない。
そうだよなあ。今この部屋には皆いるし、ここは二番目の案で、無難に・・・・・・。
こう考えた。しかし、この瞬間、私の中で何かがはじけた。
私は今までベタオリばかりの人生を送ってきた。まあ頑張って回し打ちだ。
真剣に何かを頑張ったこと、戦ったことがあったのか?いや、ない。
たとえ失敗しようがここは勝負だ。私の中の何かが、私自身を押していた。
ここで強く行けなかったら、私は一生後悔する。
そして私は対局中であるのにも関わらず、佳織と井上のいるところに向かった。
「あ・・・。さ、智美ちゃん・・・」
「ん〜?何だアンタ。いきなり何の用・・・・・・」
生涯初めての大勝負、超危険牌通し。私は緊張が極限に達していた。
「いいか、よく聞け!この私は佳織の・・・・・・」
3.流星 (夜)
夕ご飯の時間のあと、私と智美ちゃんは二人で旅館の外を散歩していた。
今日は天気がよくて、夜空の星も最高にきれいだった。
「きれいな夜空だね、智美ちゃん」
私がそう言うと、それまで黙っていた智美ちゃんは小さい声で答えた。
「・・・ああ。ところで、きれいといえば、やっぱりこの合宿に来てよかったよ。
他校の本当に綺麗で美人なカワイコちゃんがいっぱい見れるからな、最高だ」
「・・・・・・・・・・・・」
「げっ・・・。お、怒ったか?佳織。軽い冗談だってば・・・。」
私は怒ってなんかいない。むしろ、少しおかしくて、笑いをこらえるために黙っていた。
「うん。わかってるよ、冗談だって。照れ隠しなんだよね?」
「・・・・・・やっぱりばれてたか・・・」
今日のお昼。智美ちゃんがみんなのいる中で叫んだ言葉はこうだった。
『いいか!よく聞け!この私は佳織の婚約者だ!・・・・・・あ、あれ・・・』
何て言うつもりだったのかはわからないけど、いきなり登場してこれだからね。
しかも今まで恋人同士でもなかったのにね。色々段階を飛び越えてる。
「ワハハ・・・。あれは緊張してたんだよ。恥ずかしいから言うなって」
「でも私はうれしかったよ?十年以上待ってたんだから」
私はずっと智美ちゃんのことが好きだった。小学校に入る前からだからね。
「・・・佳織が変なこと言うからせっかく星の数数えてたのに飛んじまったよ。
また一から数え直しだよ。え〜と・・・。いいや、やめにしよう」
きっと智美ちゃんも同じだったんだね。私といっしょで、言いたくても言えなかったんだね。
傷つくのが怖かったんだね。私も怖かったんだよ。でも、もうそんな心配はしなくていいね。
「あ、流れ星だ!見たか佳織!?」 智美ちゃんの願いはなんだろう。
「え?見れなかったよ。残念だなあ」 私は何を願おうか。私の欲しいものは・・・
「何だよ〜。見てないのかよ。・・・よし、もう少し二人で散歩しようか。
旅館に戻るのはもっと後でいい。それより二人きりで・・・・・・」
そう言って私の手を引っ張って早足になる智美ちゃん。私たちは、流れていく。
小さい時私が流星に願ったものは、いま、確かにここにあった。
4.むつきチャン (深夜)
私は実はどこか遠い国からやってきたお姫様だ。とっても強くて金持ちの国だ。
パーティーだってパレードだって毎週のようにやってるおとぎ話のようなところさ。
でも縛られるのが嫌でこのちっぽけな島国に逃げてきたのさ。豪華なお城から抜け出してね。
やっぱり自由は悪くないな。うるさいメイドも教育係も許婚もいないからな。
かっこいいだろう?そんな私の名前はむつきチャン。
・・・妄想である。妄想でもしなけりゃやってられない。今日も寝れない。
朝、共に抗議した蒲原先輩はすっかり向こう側の人間になってしまった。
しかも新婚初日じゃないか。くそっ!人の迷惑を考えないで欲望に身を任せる人達だ。
でも、少しうらやましいな。私にもいつかあんなことをする相手が出来るのだろうか。
『睦月さんへ お元気ですか。合同強化合宿はどうですか?
美味しい料理を食べて、綺麗な景色を見て、きっと楽しいんでしょうね。
今度睦月さんともそんなところに遊びに行きたいと思っています。
ではでは、合宿、頑張ってください。 数絵』
これは私があの県大会で知り合った南浦数絵が私に送ってくれたメールのうちの一つだ。
数絵とはなぜかトントン拍子に仲良くなり、すっかり友達になっていた。
そうだな。今度機会を作って数絵とどこかへ旅行に行きたいな。
「最高の景色ですね〜。ご飯もおいしいですし・・・。来てよかったですね、睦月さん」
「ああ。・・・しかし、どんな景色よりも美しくて、どんな料理よりも美味なのは・・・、
数絵、お前だよ。さあ、長い夜を楽しもう」
かっこいいだろう?どこかのイケメンみたいなむつきチャン。
・・・いやいやいや。そもそもまだ友達ではないか。落ちつけ私。
寝れないこと等による疲労、ストレスが限界に近づいている。数絵〜、私は元気じゃないよ。
助けてくれ〜。・・・来るはずのない助けに期待しながら、私は妄想の世界にまた浸る。
お姫様である私だ。当然麻雀も最強だ。スポーツだって何でも出来る。
周りにはモテモテ、誰からも愛される人気者、十年に一人の大物さ。
でもそんなある日国から迎えが来て、お姫様帰りましょうっていうんだ。
私は抵抗するんだけど結局連れ戻されてしまうんだ。楽しかった時間も終わりだ。
最後に感謝の気持ちだ。私は世話になった連中にダイヤモンドの一つでも投げてやろう。
しみったれたお別れの言葉なんかいらないさ。颯爽と消えてやるさ。
かっこいいだろう?どこかのヒーローヒロインみたいなむつきチャン。
ダイヤモンドなどとんでもない。麻雀牌、いや、雀卓ごと、こいつらに投げつけてやりたい。
そして延々と罵声のような説教を浴びせてやりたい。私の理想のヒーロー像とは大違いだが。
しかし気弱な私は結局それすらできない。情けないやつだ。でも、私は私でいい。
かっこ悪いだろう?それでも精一杯生きている自分が好きなむつきチャン。
5.祭りのあと (合宿終了後)
私たちは蒲原先輩の運転する車で合宿所を後にした。相変わらず荒い運転だ。
「それにしても先輩がEカードで悪待ちさんを倒して策士対決を制した時は興奮したっす!」
「・・・勝たなければゴミだからな。モモだってかくれんぼ対決で勝ったじゃあないか」
この二人は相変わらず車が揺れるとかを言い訳にベタベタしている。もう慣れた。
「智美盛関、大相撲大会で優勝したのはすごかったっすね!あの優勝候補、純代丸を倒した
華菜大海を決勝で破った時は感動したっす!」
「ワッハッハ、でも華菜大海は突っ張りはいいんだが、組んだら序二段、クンジョニだったな。
それに、佳織の前でいいところを見せたかったんだよ。今までの人生で全然そんなところを
見せてやれなかったからな。そう思ったら気合が入っちまって、優勝までしちゃったよ」
ちなみにこの大相撲大会、私、睦月山も準決勝に進んだのだが、蒲原先輩から
ジュース二本で買収され、あっさり負けた。早い話が八百長だ。
その先輩がいいところを見せた相手の佳織は、こんな車内で寝てやがった。
そういえば初日の桃子と加治木先輩の情事のときも一人熟睡していた。
それはともかく、私たちはこの合宿で意外と目立つ場面が多かった。
私だって、カラオケ大会で結構上位だった。歌はうまいんだぞむつきチャン。
本業の麻雀はどうなんだって?・・・それは聞かない約束だ。私たちは惨敗だった。
やはり実力差は大きい。秋の大会に向けてしっかり鍛えないとまずいことを思い知った。
ただ、佳織が大三元四暗刻字一色をツモって宮永と天江の二人に勝ったことはあったが。
そんなことより、私は結局この合宿期間中、一睡も出来なかった。しかも風邪になった。
体調は最悪のところにこの運転だ。私は酔い止めのツボを必死で抑えていた。
生あくびが出てくる。かなり危険な状態だ。今までの私なら間違いなく発射だ。
しかし、そんな苦しいときにも、救いがあれば乗り切れるものなのだ。
「睦月さん、頑張りましょう。あそこのコンビニで休みましょうね、一回休憩しましょう」
「ワッハッハ、せっかく気分が乗ってきたのに休憩なんかするか!爆走だ!」
「・・・いいから休むんだよ。わかったな、蒲原さん」
「はい・・・。本当に私にはキツイなあ、数絵ちゃんは・・・」
そう。この数絵が合宿の途中で、サプライズゲストとして登場したのだ。
私にも何も言わず現れたので本当にビックリした。
そして細かい説明は省くが、私たちも蒲原先輩たち同様、段階をすっ飛ばして長い夜を
過ごした。私の寝不足は私に責任があるのだ。温泉の中でも数絵とイチャついたため、
風邪をひくのも当然だった。まああれほどの祭りのあとだ。これくらいは甘んじて受けよう。
「まったく。よくこんな運転で免許取れましたね。最近の教習所は甘いですね・・・」
「おい数絵・・・。そのへんにしとけ・・・。あんまり蒲原先輩怒らせるな・・・。
ハンドル持ってるのはあの人なんだから下手なこと言うと何されるか・・・。
確かにあの人の運転は最低中の最低だけどさ、乗せてもらってるんだし言わない約束・・・」
数絵はあまり同世代の友達と接してこなかったせいか、人付き合いは基本的にヘタだった。
しかしこの場面、それを気にするあまり私まで失言をしてしまった。
「ワッハッハ〜・・・。聞いちゃったぞお前ら・・・。そうかそうか・・・。
そういうこと考えながら乗ってたのか。なるほどな〜・・・よ〜くわかった」
次の瞬間、車のスピードが急に速くなった。しかも赤信号だったような気がする。
ふざけあっていた加治木先輩と桃子にも戦慄が走っていた。
「ワハハ!このスピード!カーブ!スリル!E!E!E!最高に気持ちE〜!」
「バカかあんた!いや、バカだろ!死ぬ気か!?・・・睦月さん、大丈夫ですか!?」
・・・ああ・・・これはもう吐く以前に飛ぶ・・・!意識が遠のく・・・!
加治木先輩たちも気を失っていた。数絵は怒鳴り散らしていたが。
「・・・zzz・・・さとみちゃん・・・・・・zzz・・・」
それでもすやすや眠る佳織を横に、私は静かに昇天した。
だが、再び意識が舞い戻った時には、ちゃんと自宅の前だった。
とりあえず生きていたことに感謝し、私はこの日、久しぶりに熟睡するのだった。
終わり。
合宿編でおそらく陽の当たらないであろう三人を主役にしてみた。
期待せずにはいられないな・・・。GJ!
GJ!!
ですが、もうちょっとキャラの通りの口調にしたほうが良いと思う…
みんなキャラ崩壊しすぎ…
GJでした!
南×むきもっと増えないかなぁ
確かに…
まあむっきーのは妄想らしいから良いけど
>>21 続きキター!なんかちょっと心臓が痛くなる展開になってきましたね
あと何話ぐらい続くんだろうか?最後はハッピーエンドだと信じてるけど
気になるところで終わるし、続き期待せずには居られないっす!
>>21 GJっすね
自分的にはダークだろうが鬱だろうがバッチコイなので救いのないまま終わっても…
まぁハッピーエンドで終わるに越した事はないですが…
>>28 GJ
面白かった
睦月さんが妄想少女に…
キャラ口調云々はあまり気にならなかったです
ベースは押さえてたとおもうけど?
皆さんは何処で引っ掛かったんだろ…
前スレ1000ありがとう。俺の願いが現実に・・・
オリジナルドラマCD2局目
今更ながら聞いた
1局目は正直百合要素のかけらも無く
今回の2局目も清澄パートがこれまた百合が全く無かったんだが…(タコスと京太郎がいるせいか?百合分が全く無いのは)
龍門プチパートから一変
トーカが変態ぶりを発揮したのにはワロタ
風越パートでも池田(猫)が
みはるん(ピクチャードラマでの池田大好きぶりは異常)とコーチ(原作公認で可愛がっているとか言われてムキになるし)に追いかけまわされるわ
池田が少年誌によくあるモテモテへタレ主人公的存在であることを今回改めて痛感
しかし最後の最後でキャプテンに抱かれて池田が大勝利とは…
調子にのんなぁ!
池田ぁ!
とかいう外野の声が聞こえそうな百合満載のCDだった
みんなネコが好きなんだよ
妄想するしかないほど百合の気配がないところに百合妄想を仕掛ける
それこそが道なのではないかね…
誰か文堂さん×深堀さんで妄想できる人いる?
俺は相変わらず照菫、照咲、照淡、だな
最近照和の可能性について考えている
姉妹なんだから好みも似るはずなんだよきっと
むしろ姉妹で取り合ったりしたら悶え苦しむ(喜びで
>>40 もしや…仲違いの原因が過去に同じように恋人を取り合ったからとかどうとか
42 :
15:2009/12/03(木) 10:47:02 ID:6jFUks1o
かじゅモモSS投下します。
>>20からの続きとなります。
43 :
15:2009/12/03(木) 10:48:16 ID:6jFUks1o
* * *
一面の青が広がっていた。前を見ても後ろを見ても、右を見ても左を見ても、上を見ても下を見ても、清々とした青い空間がそこには在った。例えるなら、雲一つ無い空。その真っ只中に居るような感覚だった。
周りを見渡すが、自分以外の誰も何も見つける事は出来なかった。此処には自分一人しか存在していないのだろうか。にも関わらず、何の不安も感じなかった。むしろ、非常に心地良い――満たされた気分になっていた。
そういえば、自分はこの空間に立っているのだろうか? 見渡す限りの同じ風景で、平衡感覚を忘れている。ふわふわとたゆたって、何にも逆らう事無く導かれる事無く、ただどこまでも在るがままに行く。
果ては見えない。終わりは知らない。しかし、得体の知れない安らぎを感じる。ずっとここに留まっていたいという思いが湧き上がる。
意識は霧散していき、自分自身すら曖昧に感じる中、ただ漠然と思った事がある。
――ああ、これが、永遠というものなのか――
「――気が付いたら、ベッドから落ちてました」
締まらないオチが付いた所で、桃子の話は終わった。
「その夢が、原因なのか……?」
ゆみには、その夢が桃子の異変とどう関係するのかよく分からなかった。
「……どうなんでしょう。でも、私が周りから見えなくなっていったのはその日からだったから……」
「――――」
「でも、どうしてあんな夢を見たのか……分かる気がするっす」
「え……」
奇妙な夢を見た、更にそれには原因があると桃子は言う。
「夏の大会の個人戦……私、負けたくないって思ってたっす。――特に、清澄のリンシャンさんには、絶対に」
先輩の敵討ちっす、と桃子は付け加えた。
「……結局、駄目だったっすけど。でもあの後、先輩が慰めてくれたりして、それはそれで嬉しかったっす」
ちらりとゆみの横顔を見て、桃子は頬を染める。それに気付いたゆみもまた、顔を赤くした。
「でも、それでも私、怖かったっす。私も先輩も負けちゃって、そうしたら……もう先輩と一緒に居られなくなっちゃうって思って」
「そ、そんな事は無い! 私は、モモと……!」
「……きっと、その時の私はそこまで考えてる余裕が無かったっす。だから、その夜はずっと、怖くて布団の中で震えてました」
「モモ……」
「それで――最後にはこう考えてました。『先輩と居られなくなるなら、いっそこのまま消えてしまいたい』って――」
子供の頃から存在感が無かった。今だって、それはあまり変わらない。それならば、例えこのまま自分が消えても、誰も困る事は無い。
「人間、参ってる時って変な事ばかり考えるもんすね。……それで、その日の夜にさっきの夢を見たんす」
事の顛末を話し終えると、桃子は夜空を見上げた。
「――本当は」
そしてまた、呟くように言った。
「もう、先輩とは会わないつもりでした。先輩も、もう私の事を忘れてると思ったから」
「…………」
「でも、やっぱり会いたかったっす。忘れられてても構わない。見えなくても、私は先輩の傍に居たかった。……だから、先輩が私の事を憶えててくれて、本当に嬉しかったっす」
ここで、ゆみの頭に疑問が浮かんだ。何故自分は桃子の事を忘れずにいられたのか。同じ麻雀部の智美が忘れかけていたというのに、自分だけは、いつもの様に桃子の事を考えて――
「……ふふ」
そこまで思考して、ゆみはある結論に至った。いや、結論というよりは妄言に近かったのだが。
「先輩?」
急に微笑んだゆみを見て、桃子が首を傾げる。
「ああ、すまないモモ。少し考えていたんだよ。私がモモの事を忘れなかった理由を」
「……それは、どんな理由すか?」
ゆみの言葉に、桃子が身を乗り出す。ゆみは立ち上がり、胸に手を当てた。大きく息を吸い、吐き出すように答える。
「――愛、かな」
……言った途端に恥ずかしくなってきた。慣れない物言いはするものではない、とゆみは痛感した。別に場を和ませる為のジョークを言ったつもりではないが、改めて考えると、かなり意味不明だった。
「…………」
ゆみは恐る恐る桃子の方を見る。と、言われた方の桃子自身も、どう反応していいのか考えあぐねているといった様子だった。
「あー……、いや、これは」
今更取り繕えるものでは無かったが、言い訳くらいはさせて欲しかった。
「……先輩」
が、それもすぐ桃子の言葉に遮られる。
「その言葉、信じていいっすか?」
ゆみはそのまま桃子に抱きしめられた。
「――不思議っす。私が消えちゃう理由とか、変な夢とか、何もかも信じられなかったのに……先輩の言葉だけは、信じられるっす……」
桃子はゆみの胸に顔を埋め、消えそうな声で言った。
「……モモ」
ゆみの心が少し痛んだ。決して軽薄なつもりで言った台詞では無かったが、覚悟を持って言った訳でもない。悪く言えば無責任だった言葉に、桃子は縋るように信じてくれた。
「私は、モモに消えて欲しくなんか無い」
だから、次は嘘偽りの無い、自分の心からの言葉を言う。
「――だからもう、キミを離したくない。ずっと一緒に、居て欲しい」
桃子の耳元で囁く。上手く言えただろうか。変に思われたりはしなかったか。そんなゆみの不安を消すように、桃子のゆみを抱く力が強まった。
「私も……先輩とずっと一緒に居たいっす。離れたくないっす……!」
そう言ってゆみを見上げた桃子の瞳は、涙に濡れていて。ゆみはそれを指でそっと拭うと、目尻に唇を落とす。
「……先輩」
「モモ……」
一度溢れた気持ちを抑える事は難しい――が、今ここで抑える必要など無いのかもしれない。
夜の気温が二人を包む中、触れた唇はとても温かかった。
* * *
「それで、先輩?」
「ん、何だい?」
「どうして私は林の奥に連れ込まれて、服をはだけさせられているんでしょうか」
「……それは勿論、モモが欲しくなったからだ」
「でもまさか、この場で始めるとは思わなかったっす。先輩はケダモノっす」
「何とでも言ってくれ。今更止めたくない」
「……しょうがない人っす」
人気の無い公園の林の奥。ゆみは桃子の身体を木に預けると、ゆっくりとその服を脱がし始めた。桃子も軽く抗議の声を上げるが、抵抗はしていない。互いの告白の後、気持ちが昂ぶり火照ってしまった身体を鎮めるのに、場所を選んではいられなかった。
「んっ……」
桃子の白い肌が、ひんやりとした外気に触れる。形の良い乳房が露わになり、ゆみの手がそれにそっと触れる。
「あっ……先、輩……」
ゆっくりと手を動かし、乳房を揉みしだく。その度に、桃子の唇から甘い吐息が漏れてゆく。
「モモの身体は柔らかいな……羨ましい」
「変な事言わないで下さい……恥ずかしいっす……」
ゆみの言葉に、桃子は頬を赤く染めて俯く。その仕草が堪らなく可愛く見えて、ゆみは思わず手に力を込める。
「んぁっ……!」
びく、と身体を反らして桃子が喘ぐ。伸びた首筋に舌を這わせ、そのまま吸い付く。
「ちゅっ……ん、ちゅぷ……」
「ひぁっ、んっ、ふぁあっ」
ゆみが桃子に触れる度、嬌声が奏でられる。その声をもっと聞きたくて、ゆみはもう片方の手を、桃子の下着の中へと滑り込ませる。
「っ、ひゃぅんっ!」
「もうこんなに濡れてるじゃないか、モモ……」
ぬるりとした感触を見つけ、ゆみは微笑んだ。柔肉を優しくほぐすように、指先をクレバスに沈めてゆく。
「んああぁっ!!」
くちゅり、と音を立てて、ゆみの指が桃子の中に呑み込まれる。熱を持ってゆみの指を迎え入れた桃子の秘部は、蕩けるような感触で指を包み込む。
「先輩……せんぱいが、私の中に……」
「すごいな……モモの中、私の指を咥えて離そうとしない……」
「ふぇ……そ、そんな事、無いっす……」
「何言ってるんだ。こんなに締め付けてきて、痛いくらいだ」
「やぁあっ……!」
桃子の中をかき混ぜるように、ゆみは指を動かす。ぬちゅ、ぐちゅ、と次第に音が大きく重くなる。雫が数滴地面に零れ落ち、桃子は一層声を上げる。
「んあっ、ふっ、んっ、くぅぅっ……!」
立っていられない、とばかりに桃子は膝を震わせ、ゆみに抱きついてくる。桃子の唇がゆみの耳の近くに来て、嬌声がはっきりと聞き取れる。
「可愛いよ、モモ」
囁いて、首筋に口付ける。片手で胸を、もう片方で秘部を責め、桃子を頂へと導いてゆく。
「せ、せんぱ、ぁ、ぃっっ……! わたし、もおっ……!」
声を震わせ、桃子が懇願するように叫ぶ。息を荒げ、ゆみをしっかりと抱き締め、離そうとしない。
「――いくぞ、モモ」
それを合図に、ゆみは桃子の陰核を捏ねるように擦り上げた。
「――……っっ!! あっ、んあぁあぁぁぁぁ…………!!」
瞬間、桃子の身体が跳ねる。ぷちゅん、と噴き出した雫の勢いを、ゆみは手の平で感じた。
「あぁっ……んっ……せん……ぱぁ、ぃ……」
崩れるように脱力した桃子は、ゆっくりとゆみに持たれかかる。ゆみは桃子の身体を優しく抱き留めると、子供をあやすようにその頭を撫でる。
「ふぁ……せんぱい……」
「……疲れただろう? ゆっくり休むんだ」
「ふぁ……い……」
ゆみの言葉に従い、桃子は目を閉じる。そうして暫くすると、小さな寝息が聞こえてきた。
「……お疲れ様、モモ……」
ゆみは、桃子の身に降りかかった不可解な現象を少しでも忘れさせたいと思っていた。
だから今は、自分の腕の中でひとときの安らぎを感じて欲しい――そう願っていた。
* * *
すっかりと夜も遅くなり、ゆみは眠ったままの桃子をおぶさりながら、彼女の家へと向かっていた。桃子の家には一度だけ行ったことがあった。とは言っても、その時は玄関の前までだったが。
こんな時間になってしまって、両親が心配しているかもしれない。そう思うと、ゆみの足は自然と速くなっていた。
「……ごめん下さい」
しばらくして、東横と書かれた表札が見える。家の前に着き、控え目にインターフォンを押す。ややあって、女性の声が応答した。
『はい、どちら様でしょうか』
「夜分に失礼致します。私、鶴賀学園の加治木と申します」
『……はい』
インターフォンの向こうから、怪訝そうな声が聞こえる。そういえば、桃子の親御さんとは会った事がなかったな、とゆみは思った。
「あの、急で申し訳ありませんが、お宅の桃子さんをお送りしに来たのですが」
『――――』
流石にナニをしていたとは言えずに、簡潔に用を伝える。が、向こうの声が急に止まってしまった。
「……もしもし?」
ゆみは不思議に思い、もう一度用件を伝えようとする、と――
『……申し訳ありません。お宅違いではないでしょうか?』
「え……?」
全く想定外の答えが返ってきた。ゆみは一瞬、頭が真っ白になった。
『私共に子供は居りませんもので……申し訳ありません』
ゆみが反応出来ずに立ち尽くしている間に、プツリとインターフォンが切れた。ゆみは目眩を起こしそうになるのを必死に堪えた。
「何……で……」
家を間違えた訳では無い。東横という苗字は、この辺りでは桃子の家しかなかった筈だ。だというのに、今の母親の態度は――
「……とうとう、実の両親にまで、完全に忘れられたっすね……」
背中からの声に、ゆみは驚いて振り返る。そこには、目を開けた桃子が居た。
「な、モモ……!」
まさか、今のやり取りを聞かれたというのか。一番聞いて欲しくなかった人物に――
「……いつかはこうなるって、思ってました。前から、時々忘れられてたっすからね」
事も無げに言う桃子だったが、ゆみにはそれがいたたまれなかった。
「これからどうしましょう? 私、帰る家が無くなっちゃったっす」
まるで冗談を言うかのように、桃子は笑う。ゆみはそんな桃子の顔を見るのが辛くて、こう言っていた。
「――ウチに来るんだ」
「……へ?」
ゆみの言葉に、桃子が目を丸くする。と、急にゆみが駆け出した。
「わ!? ちょ、先輩っ?」
「いいから来るんだっ! 大丈夫、見つからないんだろうっ!?」
「え、あ、いや、そうかもしれません、けどっ」
「だったらつべこべ言うな! ちゃんと掴まってろよっ!」
「うわっ、は、はいっ!」
ゆみは桃子を背負ったまま走った。
もうこれ以上余計な事を考えたくなくて。無性に叫びたくなる心を抑えつけるように。
――溢れそうな涙を堪えるように。ゆみは走り続けた。
* * *
「……あの、先輩。大丈夫っすか?」
「……ああ……」
ゆみは自室に戻るなり、ばたりとベッドに倒れ込んだ。幾ら何でも人一人を背負って全力疾走するものではない、と今更ながら痛感した。
「ええと、お邪魔します、先輩」
「……ああ……楽にしてくれ……」
思えば桃子を自分の家まで連れて来た事は無かったな、とぼんやり考える。しかし、いつまでも胡乱な頭のままではいられない。疲れきった体を何とか起こし、ベッドに座る。
「モモ……私は」
衝動に任せて桃子を連れてきたものの、その後の事をほとんど考えていなかった。今後の事も含め、一体どうすれば良いかと思案に耽る。と――
「せんぱい」
身体に感じる重み。気が付けば、ゆみは桃子に押し倒されていた。桃子はゆみにしっかりと抱きついて、胸に顔を埋めている。
「ありがとうございます」
ぽつりと、そう言った声が震えていた。
「私、あの場所に後少しでも居たら、きっと我慢出来ずに泣いてたかもしれないっす」
「……モモ」
「先輩の家に連れてきて貰えて、少し落ち着きました。先輩が」
「モモ」
桃子の言葉を遮り、細い体を抱き締め返す。
「もう無理しなくて、いいんだ。何も、我慢する事なんて無い」
「…………」
「私にはこれくらいしか出来ないけれど、それでも良ければ……モモ、私は」
「はい……」
それから少しの沈黙の後、桃子が呟いた。
「先輩……少しだけ、泣いても、いいっすか」
「……ああ」
桃子のくぐもった声。そして嗚咽。それらが号泣に変わるまで、少しの時間もかからなかった。
ぎゅう、と桃子がゆみを抱き締める力を強くする。胸に桃子の涙の熱さを感じながら、ゆみはそっと桃子の背中を撫でる。
「せん……ぱいっ……! っ、ぅぐ、ふあっ、うあぁぁぁあぁぁぁん――……!!」
桃子の身に降りかかる苦難に、自分は何も抵抗出来ない。ならばせめて、今この時――いや、これからも、桃子の全てを受け止める事が出来たなら――ゆみはそう思いながら、泣きじゃくる桃子を離さないように、しっかりと腕に力を入れた。
今回は以上となります。
かじゅ「愛かな、と思っている」(キリッ
じゃねーよwwwwwwwww
ここら辺の理由を上手く書けたら良かったんですが…
>>49 GJ!
泣いてるモモにキュンキュンきちゃったんで、かじゅに殴られてくる
>>49 GJ!!!
モモのステルス能力は、最初アニメで見た時、なんぞこれw
と思ったけど、この能力のおかげでこのSSのように何も違和感なくかじゅと同棲できる。素晴らしい…
ピクドラは鶴賀回でしたねw
個人的にむっきーとかおりの絡みが新鮮で良かったb
52 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/04(金) 01:21:21 ID:yumzPLe8
幸せの続きを投稿させていただきます。
これで完結となります。
53 :
歩:2009/12/04(金) 01:22:15 ID:yumzPLe8
気がつけば、彼女は気を失っていた。
それでも、私の体は止まらない。
何度も何度も、腕を振り上げては下ろしていく作業を繰り返す。
痛いと腕は悲鳴を上げるが、そんなのは構わない。
早くしないと早くしないと。
心がそう急かす。
ねぇ、お願い。
お願いだから。
私を……
私に……
私から……
心の中で懇願しても彼女に届く訳もなく。
体力の続かぎり殴り続けた結果、彼女にもたれるように意識を手放した。
目が覚めるとベッドの上にいる。
手首には包帯が巻いてある。
彼女がしてくれたのだろう。
私よりも酷い怪我をしているのに、どうしてここまでしてくれるのか。
ベッドを出てリビング行くと、ソファーで彼女は眠っている。
私を避けているはずなのに。
どうして彼女はこの部屋に帰ってくるのか。
分からない。
私が彼女なら、きっと耐えられない。
逃げ出してしまっているだろう。
違う。
もうすでに逃げ出している。
だけど、彼女が私を逃がしてくれなくて。
だから私は、彼女に暴力を振るう。振るい続ける
それでも彼女から逃げ出す事は出来ない。
ねぇ、これ以上何をすればいい?
どうしたら貴方は私を逃がしてくれるの?
眠る彼女に心の中で問いかけても、答えは返ってこない。
静かに眠るその顔は真っ白で、私の付けた傷が醜く存在する。
新スレに移行していたことにやっと気づいた…
前スレは何故か携帯から入れなかったので投下できずにいた
モモ咲という本当に誰得なSSを投下しようと思います
では次レスから
55 :
歩:2009/12/04(金) 01:23:11 ID:yumzPLe8
その傷をそっと指でなぞる。
一生消えないのかな?
ずっとこのまま残るのかしら?
それなればいいと思う。
そうなって欲しくないと思う。
涙が自然と零れてくる。
本当に泣きたいのは私じゃない。
彼女の方が泣きたいはずだ。
理不尽な暴力に毎日の様に傷つけられて。文字通り体は傷だらけ。
それでも私のそばに居る彼女。
ねぇ、どうしてなの。
どうしてそんなに私に優しいの?
一言。一言でいいのに。
貴方のたった一言で、これ以上お互いに辛い思いをしなくていいのに。
なのにどうして貴方の紡ぐ一言は『愛してる』なの?
私が貴方を好きで居ると今も思っているの?違うとは思わないの?
分かってよ。気づいているんでしょう?
私の言って欲しい言葉を。
どうして意地悪するの?
私は貴方から言われる一言を待ち続けているのに。
付き合い始めて半年が経った頃、久を抱いた。
それは私にとって、とても勇気のいる事だった。
キスすら未だに自分から出来ない私に、久が言い出したのだ。
『美穂子が私を抱いたら、私も美穂子を抱くわ』
挑戦的な目で、有無を言わせず決定されてしまった。
それは久の優しさ。
久は気付いていた。
私が恥ずかしさのあまり、一歩を踏み出せない事を。
恥ずかしいだけではなかった。
怖かった気持ちの方が大きいかもしれない。
久とする事によって、明確なラインが引かれそうで。
久とは恋人だけれど、今なら冗談だったと引き返せると。
そんな逃げ腰の私の心情を察してくれて。
だから私は覚悟を決めて、久を抱いた。
私のする事で乱れる久は、とても淫らで綺麗だった。
一線を越えて今度は私の番になるはずだった。
その日久に『美穂子を抱く』と宣言され、覚悟を決める為に当てもなく歩いていた。
そうして辿り着いたのは路地裏に少し入った所にある喫茶店。
店内には女性しかおらず、落ち着いた雰囲気。
中に入りカフェ・オレを注文して待っていると、後ろの人の話声が耳に入ってくる。
56 :
歩:2009/12/04(金) 01:26:30 ID:yumzPLe8
「どうして別れるなんて言うのよ!?」
「だから貴方に飽きたんだって」
「そんなの酷いじゃない」
「あーもー!マジ泣き止めてくれない?そう言うの本気でウザい」
女性の一人が席を立ちそのまま店外に出てしまった。
「お待たせしました。カフェ・オレですね」
店員さんが湯気の立つカフェ・オレを目の前に置いて耳元にそっと囁く。
「騒がしくてごめんなさいね」
「あ、いえ」
「今日が初めてよね?」
「はい。近くを通ったら目に入って雰囲気のいい店だなって思って」
「って事は、やっぱり知らずに入ってきた口か」
「はい?」
店員さんが少し逡巡してからチラリと私を見る。
「ここは男子禁制の女の園。って言うと大袈裟だけど、女の子が女の子との出会いを求めて来たり、女の子同士のカップルが来る店なのよね」
今度は店全体を見渡して更に声を潜める。
「何も知らなそうだったから、念の為テーブル席に通したけど、カウンターに座ったら恋人募集中って意味になるのよ」
テーブルは待ち合わせや相手がいるという意味になると教えてくれる。
「ごめんなさい。何も知らなくて」
「いいのよ。お客さんの中にはコーヒーを気に入ってくれたり、お店の雰囲気が気に入ったって言う常連さんもいるから。ただ、貴方が常連さんになるようだったらと思って一応ね」
「ありがとうございます」
「後、さっきみたいなのも結構あるから」
「さっき?」
と言うと、後ろの席の出来事だろうか。
「うん。最近よく居るのよね。体目当てだったり、セックスしちゃうと急に色々覚めてしまったりとか。若い子には多いわね。あの二人もここで出会ったんだけど、セックスしたら相手の女の子が覚めちゃったみたいね。って、貴方には無関係な話だったわね」
「いえ」
「じゃあ、ゆっくりして言ってね」
店員さんはそう言ってカウンターの中に戻ってしまった。
私は店員のその言葉が、頭から離れなかった。
『セックスしちゃうと急に色々覚めてしまったりとか。セックスしたら相手の女の子が覚めちゃったみたいね』
57 :
歩:2009/12/04(金) 01:27:42 ID:yumzPLe8
頭の中でずっと反響する。
私は久を抱いたけど、そんな事はない。
むしろ久の可愛い所や、知らない一面を知れた気がした。
だけど久はどうだろう?
私は久みたいに面白い話も出来ないし、器用でもない。正直つまらない女だ。
だから友人も殆どいない。
大学に入学してから出来た友達もサークルが一緒で、久と一緒に居たから出来たようなもの。そもそも、友達と言っていいのかも怪しい。
皆久と一緒に居たくて、私は常に久の隣に居るオマケにすぎない存在。
久がいなかったら、その友人たちとも今もただの他人だろう。
今はまだ、久が私の知らない所があるから興味を失っていないだけ。
そう思える。
セックスをしたら急に覚めた。
怖い。
久が私から離れて行くのが怖い。
何時か久に飽きられて捨てられるのが怖い。
私のただの想像のはずなのに、まるで現実に起きた事の様に脳裏に浮かぶ。
だからだろう。
キスをされ服を脱がされそうになった時、私は無意識に久の頬を叩いていた。
私はもちろん、久自身もその事を理解するのに時間が掛った。
それからは、そんなことの繰り返し。
そして、私の意志に反してそれはどんどんエスカレートしていき、気がつけば久はボロボロだった。
久を傷つけたいわけじゃない。
ただ、触れて欲しくなかっただけなのに。
ただ嫌われたくなかったのに。
最初はそれだけだったのに。
なのに今は……。
目が覚めると、久はいなかった。
時計はお昼を少し回った所。
何処に行ったのだろうか?
昨日は久を縛り付けて殴ったから、顔にも酷い怪我をしているはずなのに。
それとも、病院にでも行っているのかな?
それなら安心だ。
病院の人が傷を見て、久を保護してくれるかもしれない。
でも、もしかしたら何処かで倒れているかも。
酷い怪我をしているから。
気がつけば受話器を取り、久の携帯の番号を押していた。
一回のコールがとても長く感じる。
『もしもし』
四回目のコールで久の声が聞こえてくる。
58 :
歩:2009/12/04(金) 01:29:59 ID:yumzPLe8
「久?」
だけど、その声が信じられなく名前を呼んだ。
『どうしたの?』
何時もと変わらない私を気遣ってくれている声。
だけど、電話をした理由は特になくて。
「どこに居るの?」
適当に誤魔化すつもりが、まるで尋問みたいな言葉が出てくる。
こんな事を言って久に嫌われてしまうかもしれないのに。
『……』
やっぱり嫌われたかもしれない。
あたり前だ。
何をしていようと久の自由なのに、束縛するような事。
不安な心が求めて名前を口にする。
「久」
「ゆみとご飯食べてる」
ゆみさんと?
私よりゆみさんと久は一緒に居たいのかな?
当然なことなのに。
私のそばに居ても、怪我をするだけ。
それとも私の事をゆみさんに相談してるの?
私の事が気持ち悪いって。どうすればいいかって。
それとも久はゆみさんを好きになったの?
ゆみさんは大人で知的でさり気無い気遣いができる素敵な人。
久が好きになっても当然で。
今までだって、私の事を相談しているみたいだったし。
それだけの絆が二人にはある訳で。
そうなっても、全然おかしくはない。
けど
「嫌」
それは嫌。久が私から離れて行くなんて嫌。
久がそばに居てくれないと私は生きていけないのに。
でも、その為に久を私は傷つけるの?
そばに居てずっと?
そんなのダメ。
「…………何でもないわ。楽しんできて」
59 :
歩:2009/12/04(金) 01:31:06 ID:yumzPLe8
電話を一方的に切った。
そうしないと、また久に負担を掛けそうだったから。
最近は自分が怖い。
だけどどうする事も出来ない。
鈍くなる思考が、久のご飯を食べていると言う言葉を思い出させる。
ああそうだ。
最後にキッチンに立ったのは何時だったろう。
思い出せない。
最初の頃は割っても久が買って来てくれていたけど、今はお皿は一枚もない。
久々に作るのもいいかもしれない。
久の怪我の様子では、外出だって辛いに決まっている。
食事の為だけに外に出るのは大変だ。
この辺はコンビニも十分以上歩かなくていけないし。
今日は御馳走を作って久を迎えるのもいい。
食器を買って、スーパーで食材を買い込み家に帰る。
丁度下準備が終わり、本格的に取りかかろうとした頃玄関が開く音がする。
「お帰りなさい。久」
背後に気配を感じ振り向くことなく
「ただいま。美穂子」
私がキッチンに居る事に驚いているのが声で分かった。
「こんなに早く帰ってくるとは思わなかったから、残念」
「え?」
「御馳走作って驚かせようと思ったのに」
「そうなの?それはごめん」
別に謝らなくてもいいのに。
「何か手伝おうか?」
「ううん。一人で大丈夫。最近ちゃんとしたもの久食べてないでしょう?」
久には悪いけど、経験があまりない所為で時々指を切ったりするのが心配で、正直料理はあまりして欲しくない。
「煮込んだりとかしないといけないから。出来るのは早くても夕方ね」
手伝ってもらえれば色々早くすむけれど、久をキッチンから遠ざけた。
久々の料理で腕が落ちたかもと心配していたが、久が美味しいと殆どの料理を褒めてくれた。
本当に久々だった。
こんなふうに久と過ごすのは。一緒に暮らし始めたころの様で。
懐かしい。そう思うほど、今の関係が長く続いているのを改めて実感させられた。
久を先にお風呂に入らせて、その間に片づけをする。
久が出てきたら私の番。
何も言わずに入れ替わるようにお風呂に入った。
そしてお風呂から出ると久はソファーで眠っていた。
体を抱きこむようにして眠っているのは、寒さのせいだろう。
少し戸惑ったが久に話しかける。
60 :
歩:2009/12/04(金) 01:31:52 ID:yumzPLe8
「眠るならベッドの方がいいわ」
その言葉に反応して、久が目を開ける。
言われた言葉を理解して瞳が戸惑っているのが分かる。
でも、風邪でも引いた大変だから。
「今日は一緒に寝ましょう」
手を引いてベッドに潜り込んだ。
「こうして眠るのはなんだか久しぶりね」
「そうかな?」
久は軽い口調で誤魔化す。
そんな久の手を握ると冷たかった。
「久の手冷たい」
「美穂子の手は暖かいね」
「お風呂から出たばかりだから」
久の冷たい手と違い、私の体は熱いぐらい。
その熱さは、私の理性を失わせる。
「ん」
久の唇に何度も唇を押しつける。
触れ合うだけのキスだけでは物足りなくて、久の中に侵入する。
抵抗どころか受け入れられた舌で、久の口内の中を暴れまわる。
小説や物語のような甘さなど感じない。
ただこの人を自分の支配下に置いていることに、どうしようもない征服間に満たされる。
「久」
キスをやめると久は息苦しそうに呼吸をする。
名前を呼んでも返事がない事に苛立ちを覚え、パジャマの中に手を差し入れた。
久の体は冷たいが所々熱を持っており、それが怪我のせいだと言うのは私自身がよく知っている。
熱を帯びている部分を重点的に触りながら、久の弱い部分を責めていく。
「あ」
久の感じている声を聞けたと思ったら、手で口を塞いでしまった。
私は久の声が聞きたいのに。
近くにあったタオルで腕を縛り、耳元にそっと囁いた。
61 :
歩:2009/12/04(金) 01:32:32 ID:yumzPLe8
「声、聞かせて」
久の顔が赤くなる。
その反応に満足して傷口に舌を這わせていく。
傷を一つ一つ確かめながら、自分のしている事を考える。
「久の体、傷だらけね」
「そう?あっ!」
また軽い口調で誤魔化そうした久の傷に爪を立てる。
「私がつけたのよね」
痛々しい。
「私が美穂子のモノだって、証しみたいなものよ」
こんなモノは証なんかじゃない。
私のただの自己満足の結果。
「どうして逃げ出さないの?」
こんな関係許されるはずないのに。
これだけ酷い扱いを受けているのに。
「今日だってゆみさんに助けを求められたはずよ。それだけじゃないわ。貴方の両親や私の両親が来たと時にだって助けを求めれば良かったのに」
幾らだって機会はあった。
なのにどうして?
私は私を抑える事が出来ないのに。
貴方を傷つけるのを止められないのに。
泣きたかった。
だけど泣くのは卑怯だ。
泣けば久をますます私に縛り付けるだけ。
身勝手な私。
久に思われる資格はとうの昔に失っているに。
それなのにどうして貴方は
「愛してる」
そんな事を言うの?
その言葉が私を貴方に縛り付けるのに。
貴方に執着させるのに。
「久、久、久、ひさ、ひさ、ひさ」
久の名前を呼び続ける事でしか、答えられなかった
62 :
歩:2009/12/04(金) 01:33:14 ID:yumzPLe8
意思に反して今日も体が勝手に動く。
自分の腕も痛い。
部屋は悲惨だ。
人が暮らす環境じゃない。
何日目だっけ?
久を完全に家の中に閉じ込めた。
だって、久が私以外の人と話すから。
久が私以外の人に笑いかけるから。
狂ってる。
自分で自分が分からない。
好きなのに。こんなにも好きでどうしようもないのに。
まるで自分の中にもう一人いるみたい。
久はほとんど動かない。
それが私のイライラに拍車を掛ける。
「久」
返事がない。
「久」
横たわっている久のお腹を蹴りつける。
呻き声が少しだけ聞こえた。
「久」
名前を呼んで欲しい。
「久」
ねぇ、私を呼んで。
笑ってよ。
私は貴方の声が聞きたいの。
テーブルの上にあったお皿を投げつける。
久に当たってどんどん割れていく。
そのうちの一つが誤って食器棚のガラスを割ってしまう。
新しいのを買わなきゃ。
今度はどんなのにしよう。
この食器棚を選ぶときは私の好みだけで選んでしまったから。
今度は久に選んでもらおう。
>>62GJです
美穂子は情緒不安定な設定でもありですね
割り込んでしまってすいませんでした
では改めて
私は負けた…
清澄のリンシャンさんに。
先輩の仇をとろうと思ったけれど
ステルスを簡単に破られ負けてしまった
一瞬だけ見えたなんてありえない。
そんなことで負けたなんて納得できない…
そんな気持ちが心を支配する。
そんな時に限ってに私に声をかける人がいた。
「あの〜すいません。
お水…対局室に置きっぱなしでしたよ?」
「清澄のリンシャンさん!?」
そこに立っていたのは寄りによって清澄のリンシャンさん。
わざわざ私のところに忘れ物を届けにきたみたいっす。
でも、今の私にとってはその親切心すらも腹立たしさを更に増長させるもの以外の何物でもなかった。
「…どうもありがとうっす。」
私は自分らしくもなく無愛想に抑揚低く返すと、私は歩き出す
「はい。
さっきの対局凄かったですね!!
私びっくりしました!」
リンシャンさんは私の横について、話しかけてくる。
もう私には何も言わないで欲しい。
今の私にはあなたの言葉はただの嫌みにしか聞こえないから
「運良く勝つことができましたけど、本当に危なかったです。
みんな強い…
鶴賀の他のみなさんとも打ってみたいなぁ…って思いました」
無邪気な顔で、リンシャンさんは目を輝かせながら言う。
「……………」
私は黙りを決め込んでステルスモードに入ろうとする
が、リンシャンさんは私の前にひょいっと躍り出ると続けて言う
「加治木さんもとっても強くて…この大会でいっぱいの強い人と打てて私とても嬉しいです!」
その瞬間、私の脳裏には団体戦決勝終了後の先輩の悲しそうな顔がリフレインし、何かが切れる音がした
「嬉しい?
私は嬉しくないっす!
だって先輩と一緒に全国に行けないんすから!!
私にとって先輩は私の全てだった…
だから、絶対に一緒に全国に行きたかったっす!!
でもあなたは見事に団体戦で先輩に、個人戦では私の前に立ちふさがって私たちの夢を妨害してくれたっすよね。
何故っすか!?
なんでそんなに今年に拘るっすか!?
あなたには来年も、再来年だってあるっす!!
私と先輩には今年しかないのになんで…なんで…私たちは負けなければならなかったんすか!」
私ははっとして口をふさぐ。
私は最低だ。
負けたのは他ならぬ自分の実力不足のせいなのに
私は勝ったリンシャンさんに当たり散らしてる…
自己嫌悪に陥る
わたしこんな嫌なやつだったっすか?…
「ごめんなさい…」
謝らないで欲しい
私がますます惨めになるだけだから
リンシャンさんは最初こそ辛そうな表情をしていたけれど、
「でも、私は今年絶対勝たなければいけない理由があったから。
お姉ちゃんに会って仲直りしないといけないんです!」
「お姉さん?
初めて聞いたっす」
私はいつの間にかリンシャンさんに尋ねていた。
私に先輩がいるように
あの人にも大事な人がいるのだろうか
それが気になった
「うん。照って言うんだ」
宮永照…!
先輩から聞いたことがある
全国大会二連覇中の全国区の化け物…
「知ってるっす…
全国区の人っすよね」
「うん。
両親が別居することになってから、私とお姉ちゃんは別々に暮らすようになる前に私、お姉ちゃんを怒らせちゃって…
それから一度も口を利いてもらえなくなっちゃったんだ」
「そうなんすか…」
リンシャンさんは少し悲しそうにしながら言う
しかし、思い立ったように顔を上げると
「でも、麻雀通してならお姉ちゃんと話せるような気がする!
だから、私も今年絶対全国に行きたいんです!
だから、許して欲しいとは思いません
けど、これだけは知っていてほしくて!
やる気がないように見えたかもしれません
でも、絶対に私も全国に行きたいんです!
だから…わかってもらえたら嬉しいです」
リンシャンさんは一所懸命に私に向かって訴えかけるように言う
私の中にあった怒りとも悲しみとも違う嫌な感情はいつの間にか雲散霧消して、心の中は晴れ晴れとしていた。
納得できた
リンシャンさんにもどうしても勝ちたい理由があったことに。
それを知ることができて良かった…
知らなかったらきっと私はずっと勘違いして、この人を逆恨みし続けていたかもしれない…
そう考えるとゾッとする
「私…リンシャンさんのこと勘違いしてたっす
ごめんなさい!
八つ当たりするとか子供みたいなことをしてしまって…」
私はリンシャンさんに謝った。
深く頭を下げて、感謝の気持ちを込めながら
「わかってもらえて良かった…
あ、あの!良かったら…良かったらなんですけどお友達になってくれませんか!?」
「はい。もちろんっす!今日から私たちはお友達っす」
嬉しかった
影の薄い私でも友達になって欲しいと言ってくれたことが
実を言うとリンシャンさんとは気が合うような気がしていて、もっと話したいとも思っていた
「わたし…リンシャンさんともっとお話ししたいっす!
麻雀のこととか…いっぱいいーっぱい!」
我ながらバカみたいだ
先輩に見つけてもらえたときみたいにテンションが上がっている
「せっかく友達になれたし、まずはリンシャンさんって呼ぶのやめて欲しいな…
私にはちゃんと咲って名前があるから」
リンシャンさんは少し照れくさそうにしながら言う
おっぱいさんが惚れるのも無理ないっすね!
リンシャンさん凄くかわいいっすから
リンシャンさんは一所懸命に私に向かって訴えかけてくる
いつの間にか私の中にあった怒りとも悲しみとも違う嫌な感情はいつの間にか雲散霧消し、心の中は晴れ晴れとしていた。
納得できた
リンシャンさんにもどうしても勝ちたい理由があったことに。
それを知ることができて良かった…
知らなかったらきっと私はずっと勘違いして、この人を逆恨みし続けていたかもしれない…
そう考えるとゾッとする
「私…リンシャンさんのこと勘違いしてたっす
ごめんなさい!
八つ当たりするとか子供みたいなことをしてしまって…」
私はリンシャンさんに謝った。
深く頭を下げて、感謝の気持ちを込めながら
「わかってもらえて良かった…
あ、あの!良かったら…良かったらなんですけどお友達になってくれませんか!?」
「はい。もちろんっす!今日から私たちはお友達っす」
嬉しかった
影の薄い私でも友達になって欲しいと言ってくれたことが
実を言うとリンシャンさんとは気が合うような気がしていて、もっと話したいとも思っていた
「わたし…リンシャンさんともっとお話ししたいっす!
麻雀のこととか…いっぱいいーっぱい!」
我ながらバカみたいだ
先輩に見つけてもらえたときみたいにテンションが上がっている
「せっかく友達になれたし、まずはリンシャンさんって呼ぶのやめて欲しいな…
私にはちゃんと咲って名前があるから」
リンシャンさんは少し照れくさそうにしながら言う
おっぱいさんが惚れるのも無理ないっすね!
リンシャンさん凄くかわいいっすから
「いいっすよ!それじゃあ私もモモって呼んで欲しいっす…」
少し照れくさくなる
リアルで友達ができることが少ない私にとってはなかなか恥ずかしく思える
「じゃあ…私、東横さんのことモモちゃんって呼ぶことにするね!」
「私はリンシャンさんのこと…咲さんって呼ぶっす!」
互いに笑いあう
さっきまでの険悪だった雰囲気はどこへやら
私も咲さんも笑っている
「そろそろ最終戦がはじまるっすね。お互いに頑張るっすよ!」
そろそろ互いに移動しなければ厳しいだろう
私はトーナメント表に駆け寄って対戦相手をチェックする
清澄の人が2人もいるっすね
これは楽しみっす
「染谷先輩と優希ちゃんか…2人とも強い人だから頑張って!」
咲さんは胸の前で手をぎゅっと握りながら言う
「はいっ!咲さんも3位の南浦さんと直接対決頑張って下さいっす!」
私もそれに応えて励まし返す
「ありがとうモモちゃん!また、一緒に麻雀打てるかな?」
「もちろんっす!
加治木先輩がいなくなっても鶴賀で頑張るっすよ〜!
そのうち清澄にも遊びに行くっす!」
加治木先輩がいなくなったら余計に私ががんばんなきゃっすからね!
良いライバルができるのはむしろ好都合っす
「また、麻雀打とうね!
約束だよ?」
今の咲さんの笑顔は今日一番に輝いていたから
ちょっとドキッとしてしまう
「約束っす!また、一緒に麻雀打つっす!」
私たちはお互いの対局室に走る
気合いは満点!!
さあ!頑張るっすよ〜!
ステルスモモは今日も絶好調っす!
end
連投してしまってすいませんでした
まあ、やっぱり誰得ですよね?
機会があれば、また作りたいですけど…
ではまた
咲にはモモがステルスでも見えるんだよな
これって意外においしい設定だ
69 :
歩:2009/12/04(金) 02:47:49 ID:yumzPLe8
投稿しすぎて規制が
70 :
歩:2009/12/04(金) 02:52:01 ID:yumzPLe8
「久」
今度はどんなのにする?
ねぇ……。
「久、起きて」
何時まで眠っているの?
私の事をちゃんと見てよ。
「あっ」
やっと見てくれた。
久の目が開いて私をやっと映してくれた。
ピンポーン
チャイムだ。
でもいいの。
今は久の瞳映っていたいの。
ピンポーン
邪魔しないで。
久と二人でいたいのに。
ドンドンドン!
うるさい。
「ねぇ、久もうるさいよね?」
あれ?久?
「竹井!?」
「ゆみさん?」
おかしいな。鍵をちゃんと掛けていたはずなのに。
「福路?お前何をしているんだ!?」
ゆみさん凄い顔。
何をそんなに驚いているのかしら?
ああ当然ね。
こんなに散らかっていたら誰でも驚くわね。
「ごめんなさい。散らかってて」
「竹井!」
「きゃっ」
ゆみさんに突き飛ばされた。
「竹井!竹井!おい!しっかりしろ!おい!!」
なんであんなに必死なの?
久も何時まで眠っているの?
あれ?違う。
久から流れている赤いものは何?
どうして久はあんな事になっているの?
71 :
歩:2009/12/04(金) 02:55:05 ID:yumzPLe8
ああ、そうだ。あれは私がしたんだ。
久が目を開けてくれないから。
だから私を見て欲しくて、割れたガラスを久に。
久に?私は何をしているの?
久に何をしたの?
私は……私は……。
「いやあああああああああああああああああああ!」
「福路!?落ち着け!福路!」
気がつけば見慣れない天井が目に入ってくる。
「気がついたか?」
「ゆみさん?」
「ああ。お前達は一体何をしているんだ!?」
ものすごく怒っている。
「私……」
私久を……。
「久は!?」
「竹井なら命に別条はないそうだ。しばらく安静だがな」
ゆみさんの言葉に安堵する。
「すまなかった」
「え?」
ゆみさんに謝られる事は何もされてないのに。
「私がもっと早く訪ねていれば、こんな事にはならなかったのに」
「いいえ。ゆみさんが来てくれて良かったです」
ゆみさんが来てくれなかったら、私は久を。
「なあ、余計なお世話かもしれないが……竹井と距離を置いた方がよくないか?」
「……」
「このままじゃ、竹井も福路も取り返しのつかない事になる」
「はい」
ゆみさんの言葉はもう遅い気がする。
もっと早くにそうすべきだったのだ。
「もし良かったら、しばらく私の家で暮らさないか?せめて竹井が退院するまでだけでも」
ゆみさんの申し出はありがたい。でも、
「ありがとうございます。だけど、一人で私は大丈夫ですから。退院したら久と暮らしてあげてください」
私にはそんな資格ない。
ゆみさんのような人の温もりは、私よりも久に必要だから。
「久には会えますか?」
72 :
歩:2009/12/04(金) 02:56:58 ID:yumzPLe8
お別れをしなくちゃ。
「まだ意識が戻っていないが、少しの間なら大丈夫だそうだ」
眠っている久の顔は死んでいるように見えた。
だけど触れたら温かい。生きている証拠。
包帯が久の肌を殆ど隠している。
私の罪の跡を隠すように。
だけどその下には確かに私の罪がある。
「久」
頬を何かが伝った。
それが涙だと気がつくのに時間が掛った。
ごめんなさい。ごめんなさい。
謝ったって許される事じゃない。
私は久の命まで奪おうとした。
こんなにも愛している久を。
「っ……ぅ、っ」
このままじゃ私は久を殺してしまう。
そんなのは、耐えられない。
「――み、ほこ」
名前を呼ばれたが、久を見るとまだ眠っている。
「久、久。ごめんね、ごめんね」
私なんかが好きになってごめんね。
私が居てごめんね。
もう、貴方には近づかないから。
もう、会わないから。
「福路」
「家に帰ります。このままじゃ、また私久に酷い事してしまうかもしれないから」
「送ろう」
「大丈夫です。少し一人になりたいんです」
「分かった。竹井の意識が戻ったら連絡する」
「はい」
ゆみさんが一万円札を渡してくれた。
おそらく救急車で運ばれたから、お財布も何も持っていないので助かった。
外は少し明るくなり始めていた。
もう明け方なのだろう。
人の通りはない。
タクシーが近くを通ったが、それを見送る。
ただひたすら歩く。
明け方の空気は冷たくて、頭を冷やすには丁度いい。
冷静になった頭でコンビニに入った。
普段はほとんど利用する事がないが、久の言うとおり何でもある。
目的のモノを買って、家に向かって再び歩く。
家に向かう一歩一歩がカウントダウン。
もう少し。もう少しだから。
誰に向かって言っているのか分からない。
ただ歩く。歩き続けた。
家は私の最後にみた通りの惨状だった。本当にひどい有様。
そして久が横たわっていた場所は、まだ少し乾ききっていない水溜りの跡があった。
73 :
歩:2009/12/04(金) 02:57:57 ID:yumzPLe8
それにそっと指を這わせ、自分のした事を改めて認識する。
「本当に私は最低ね」
自己嫌悪をして久がよくなるなら幾らでもするのに。
現実にはそんな事はなくて。
このままじゃ久の迷惑になる。
今までは暴れた後は、私が眠っている間に久が片づけてくれていた。
自分で片付けて初めて分かる。
あれだけの怪我をしながら片づけていた久は、どれだけ大変だっただろう。
疲れていたはずなのに、痛かったはずなのに。
何時も私の前ではそんな素振りを見せなった。
部屋を片付けると、使えるものは殆どない。
ソファーも所々破れてしまっているし、床も傷だらけ。
プロじゃなければ修繕は不可能だろう。
唯一ベッドが無事なのは救いか。
もう使う事もないけれど。
アルバムから一枚の写真を取り出す。
久と私が付き合い始めた時に撮った写真。
きっと何もかもが新鮮一番幸せだった頃。
涙がまた流れてくる。
止まらない。
でも、それももうおしまい。
コンビニの袋を持って浴室へ向かう。
湯船にシャワーで水を溜める。
溜まるのには案外時間が掛る。
その間ずっと写真を眺めていた。
大好きな久の笑顔を見ていたくて。
まだ少し幼い顔の久は、私に笑いかけてくれる。
久、大好きよ。本当に貴方を愛していたわ。
だから、お別れをしないといけないの。
袋から筆箱より少し小さな箱を取り出し、中身を一本取り出す。
久の言うとおりに何でも売っていたコンビニで、剃刀を購入した。
それを手首に当て、ユックリ引く。
血が流れて、痛みが走る。
だけどこの痛みは久が負った傷の百分の一にも満たない。
もう一度同じ傷に刃物を走らせる。
さっきより深く切れた。
これだけ切れば大丈夫かな?
半分近くたまった水に腕を入れた。
自分の中から血が流れていくのが分かる。
でも、それも最初だけだった。
痛みも徐々になくなり、意識が朦朧としてきた。
これで久を私から解放できる。
私も久から解放される。
幾ら久でも殺されそうになったのだ。
74 :
歩:2009/12/04(金) 02:58:37 ID:yumzPLe8
もう私に愛想を尽かしただろう。
ごめんね久。
私は弱いから。
貴方のように強くないから。
貴方から言われる一言を待っていたけど。
たった一言。
嫌いと言ってくれるのを待っていたけど。
だけどそれは叶わないから。
「愛してるわ。久」
意識はそこで途切れた。
温かい感触を手のひらに感じた。
目を開ければ見慣れた天井。
「どうして?」
確かに手首を切った。
決して助からないように深く切ったのに。
「美穂子」
聞きたかった声。
だけど一番聞きたくなかった声。
「ひさ?」
「そうよ」
怒っている。
でも、なんで怒ってるの?
そっか。殺されそうになったんだから怒るのは当然ね。
「なんであんな事したの?」
「……気がついたら、久を刺してたの」
あの時の事は殆ど記憶にない。
久を自分が刺した事だけは覚えている。
「違うわよ!なんで手首を切ったのか聞いているのよ!」
「久?」
どうして?私が死ねば全て終わるのに。
もう痛い事もなくなる。
自由になれるんだよ?
「痛い」
久の手が私の肩を押さえつける。
75 :
歩:2009/12/04(金) 02:59:15 ID:yumzPLe8
「美穂子が死ねば、私がどんな思いをするかとか考えなかったの?」
「だって、私がいなくなれば久は自由になれるのよ?」
「自由?私は何時だって好きに生きてるわ!私が望んで美穂子のそばに居るのよ!?」
それは確かにそうだけど。だけど、それは久が優しいから。
「でも、私久を」
「私は美穂子になら殺されたって構わない。美穂子になら何をされたっていいわ。でも、美穂子の居ない世界で生きる事を強制される気はないわ!」
「久?だって、私が生きてると久が」
「どうしても死にたいの?」
「だって、そうしないと私……私」
「いいわ。美穂子が死にたいって言うなら止めない」
はいと言われて剃刀を渡される。
「久!?」
渡された剃刀とは別に久の手にもう一つ。
その剃刀の刃を久は躊躇いもなく、自分の腕に押し当てた。
久の手首からは血が流れていく。
「何をしてるの!?久!」
久の腕にシーツを押し当て、必死に血を止めようとする。
「美穂子は死にたいんでしょう?だったら一緒に死にましょう。私は美穂子の居ない世界では生きている意味がないもの」
「どうして止まってくれないの!?」
血は止まらない。
どんどん流れていく。
「いや、いや!久が死ぬなんて嫌!」
どうしよう、どうしよう。
76 :
歩:2009/12/04(金) 02:59:46 ID:yumzPLe8
「私だって美穂子が死ぬなんて嫌よ!」
「久」
これで久が私に怒鳴ったのは何度目だろう。
今まで久は私に怒鳴った事なんて一度もない。
そして泣いているのを見たのも初めてだった。
「どうして死のうとなんてするの?私は美穂子と生きていたいのに」
久の目からは涙がどんどん流れていく。
「私だって怖かったわ。美穂子が私から離れて行くんじゃないかって。こうなる事だってあるんじゃないかって、ずっと怖かった!」
私の前に居るのは誰もが知る竹井久ではなかった。私も知らない久。
全部知った気がして、私は何をしていたのだろう。
久が離れていくのを恐れて、優しさに甘えて。
あげく自分勝手に終わろうとして。
こんなにも自分の事を思ってくれていたのに、私は自分の事だけで。
久だって同じだったのに。
私と同じように傷ついて、怖かったはずなのに。
私は何を思い違いをしていたのだろう。
久だって私と同じなのに。
「ごめんなさい」
「美穂子?」
「ごめんなさい。ごめんなさい。私が弱かったから、貴方を信じられなかったから」
「それは私も同じよ。貴方をもっとちゃんと支えられていたら」
「久、久」
私は泣いた。大声で。子供みたいだ。
だけど、こんなに泣いたのは何時以来だろう。
泣き虫だったはずなのに。
久の前で初めて本当に泣いた気がした。
77 :
歩:2009/12/04(金) 03:00:18 ID:yumzPLe8
お互いさんざん泣いた後、ゆみさんが家に来て私たち二人を病院へ連行した。
久は目を覚ましてすぐに病院を抜け出したらしい。
二週間は安静にしないといけないのにとゆみさんがぼやいていた。
私も久が応急処置はしてくれていたが、そのままではまた傷から血が出ると言われ手当てを受けた。
私は三日間の入院ののち、ゆみさんの家でお世話になった。
本当は家に帰りたかったが、ゆみさんと久から言われたのでおとなしく従った。
そして、久の退院の日。
「お世話になりました〜」
久が看護師さん達に挨拶を済ませて、タクシーへと乗り込む。
「久しぶりに我が家ね」
久の言葉に胸がずきりと痛む。
私が壊してしまった家。
「何暗い顔してるの?」
「久」
久が私の手を握り笑いかける。
「いいじゃない。壊れたら、また新しくすればいいのよ。それに丁度いいじゃない。私と美穂子は、これから始まるんだから」
「え?」
「今までは私も美穂子もお互い相手に歩く速さを合わせていたから駄目なのよ。お互い合わせていたつもりが、結局はどっちも合わせていられなかった。だって、二人とも勝手な相手に合わせていたんだもの。存在しない相手に歩行を合わせるなんて出来る訳ないのよ」
「そうね」
「だからこれからはこうやって、お互い手を握り合って一緒に歩きましょう。大丈夫よ。時間はこれからたくさんあるんだから」
「ええ、久。私ももう無理はしないわ。貴方と一緒に歩いていきたいから」
二人でこれからを歩いていきましょう。
78 :
歩:2009/12/04(金) 03:02:12 ID:yumzPLe8
途中で切れて申し訳ないです。
投稿しすぎるとああなるということを理解しました。
まだまだ知らないといけないことが山ほどあるようです。
これで完結となります。
長くなって申し訳ないです。
それではまた機会ありましたお会いしましょう。
>>78 GJ!
いわゆるサムズアップ級の仕事ってやつです!
あぁ最高だわ狂気の美穂子
部長も底なしの愛だわ
誰にも付け入る隙がない
>>78 なんて一途な二人なんだ。愛にも想い方は様々だな
GJ!
ついに部キャプオタが荒らしを始めたか。
酷いねきちんと隔離スレがあるのにこのスレを乗っ取るつもりだ。
ほんと死ねばいい。
本日のNGID:dgUz1lhc
ID:dgUz1lhc
お前初めてじゃないなここは?四つん這いになれよ
反応速っwww必死すぎるwww
悪いな、俺は別に部キャプオタって訳じゃないんだ
90 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/04(金) 11:39:49 ID:dgUz1lhc
92 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/04(金) 13:18:13 ID:MkPVj2qc
ここの基準が良く分からん。
続きものみたいだし、別にいいんじゃない?
続きを検索するのめんどいし。
部キャプだけ隔離したそもそもの理由って何?
隔離スレみたけど編集されてるのめっちゃ読みにくいんだけど。
部キャプは原作レイプとか言うけど、咲和とかじゅモモ以外は全部レイプだよ。
俺からすればね。
>>78 ハッピーエンドでほっとしたw
ガチで部長死んだかと思ったよ〜
ありゃ、IDかぶっとる
珍しい
>>92 ここの基準だとどんなカプでも大歓迎
ID:dgUz1lhc←こいつが1人粘着しまくって荒らしてるだけ
>>28 GJ
ワハハかおりんも睦月南浦も結構好きです
睦月一応報われて良かったな
睦月南浦の書いた人はこれで3人目なのかな
>>49 2話3話ともにGJです
できればハッピーエンドになって欲しいところだけど
どうなるのかめちゃくちゃ気になります
>>67 GJ
誰得とかとんでもない
友情物としては続きとか見たくなるくらい良いと思いましたよ
>>78 2人ともどうにか立ち直れそうで良かったです
にしてもかじゅナイスって言いたくなる
かじゅが卒業
照が卒業
そしてお互いの麻雀を打つ理由が曖昧で宙ぶらりんになった咲とモモが
という話があってもいい
>>78 うおおお待ってました!
ハッピーエンドでよかった……
99 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/04(金) 21:02:54 ID:dgUz1lhc
部キャプ関連のssは隔離スレへって決まってるのに
こっちのスレにまで出張ってくる部キャプ厨うざすぎてワロタw
>>101 どういう人が何のために決めたんでしょうか
103 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/04(金) 23:30:12 ID:dgUz1lhc
それらしい理由つけるかと思ったらこれか
訊いて損したかな
俺は色んなカプ見たいけど、個別にスレがあるカプのSSはここでは禁止なのか?
108 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/04(金) 23:46:30 ID:dgUz1lhc
まーたやってるよ
110 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/04(金) 23:49:09 ID:dgUz1lhc
ID変えてスレを荒らすのが部キャプ派の手口
なんで俺はいつもいつもスルーされるんだw
今週のガンガンで
むっきー×深掘さん
タコス×池田
が浮上してきたぞ
部照とか自分もう駄目だ
部咲な俺と良い勝負だな
で、部タコスな俺は
部長すげぇなぁ
そのカプがというより部長が愛されてるとこが見たいんじゃないかとw
いや、お姉ちゃんの事を考えて一人たまに沈み込んだりしてる咲を
ぎゅっとしてやったりしてるのを想像してハァハァしてるだけだぜ
従ってどちらかというと部長攻め
うーん
やっぱ菫照がいい。
菫さんが「お前、不感症だろ」と照に言うところとか妄想すると悶えるww!!!
次に照淡・照咲
はじめ×部長とか言ってみる
合宿で今後他校との絡みが増えるかもだしな
巨乳軍VS貧乳軍で対決展開とか
咲がみんなを手ゴメにすればいいよ
主人公なんだから
照淡は見た目凄いお似合いカップルだね
>>116 君は少々知りすぎてしまったようだね・・・。
菫照に一票!いつかちゅーすると信じてる。するんだ!ちゅーっ!!
今号の原作が神回でした。
衣が咲和と…うぅ良かった、良かったねぇころも 前回に引き続きありがとう立たんありがとう
ともきーみはるんかおりん みんなかわええたまらん!! ももかじゅは鉄板だなー
そして、そして透華様!気になる引き!大活躍の予感!!
スーパーとーかさま覚醒かっ覚醒なのかっ!?
うおうったまらん次号まで待ちきれ…え?休載?次回1月?
…我慢する!wktkで待つ!
だからがんばれ透華様!おっぱいさんを倒すのだ!
照咲が案外少ないな…
これからの展開にかけるか
やっぱ咲照だな
次点が咲衣
南浦むっきーとか歩純とかかおりんワハハも結構好きだな
はじめ部長とかタコス池田とかも見てみたかったりする
上の咲モモなんかも良いね
>>117 いや受け攻めは関係ないんだがまあ俺も部咲は好きよw
とりあえず照は大人気ということで…照GJ!!!
>>105 見ての通りこのスレはどんなカプでもウェルカム
騒いでるのは極一部の馬鹿か荒らしのでスルーしてどんどん語ってくれ
130 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/05(土) 09:46:58 ID:QhikvZWA
>>129は荒らしなのでゴミはゴミ箱へ
お願いしますm
>>130 今日も自治気取りで荒らすのw?
いいかげんにしろ
しかしここに沸いたのも久しぶりな気がするな
別の所を荒らしてたんじゃないの
ワンパターンすぎて特定しやすいのはいいのかわるいのか
134 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/05(土) 10:12:05 ID:QhikvZWA
部長オタが諸悪の根源なんだな
部長関係のカプも禁止にした法が良さそうだ
お前が諸悪の根源だから出てけばおk
スレ私物化するなよ、キチガイ
136 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/05(土) 10:25:10 ID:QhikvZWA
スレを私物化しているのは部キャプオタと部長オタ
部長絡みは厳禁でOKね
以下部キャプオタと部長オタという荒らしは放置して正常に
ageんな屑
以下ID:QhikvZWAという荒らしは放置して正常に
一人でやっててむなしくならないのかねぇ
>>136 じゃあ、お前が気に食わんから池田もキャプテンも禁止なw
スレ立てたら追い出しておkなんだろ?w
141 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/05(土) 10:47:59 ID:QhikvZWA
142 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/05(土) 10:49:57 ID:QhikvZWA
>>141 んじゃ、投下後、荒らしたら追い出せるのかw?
いいかげんにしろ
ところで最近、透一分が足りないわけだが…
>>139 やってる最中は楽しいんじゃないの
××は隔離スレでやれ→自治気取りで荒らすな→お前が荒らしorなら××も禁止だろ
の荒らしパターンはもう飽きたので違う芸風を期待したい
相手しちゃ駄目
そうするw
じゃあ話題を変えて質問
ここってふたなり物の需要あるの?
ネタはあるんだけど嫌いな人が多いんだったら書いてもしょうがないしな…
ちなみに透一
148 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/05(土) 11:07:46 ID:QhikvZWA
ふたなりと百合の区別も付かないゴミw
あるよ!
>>147 どっちかっていうとエロパロ板向きな気もするけど別にいいんじゃないの
>>147 俺はおっけーだがふたなりと百合は別ジャンルという認識だなあ
まあスレのテンプレの4に従えば問題ないんじゃない
俺は読むぜ
>>147 投下少ないからエロパロのがよろこばれる気がせんでもない
>>147 ふたなりはテキストであげたりとかしてほしい
はじめちゃんのモーニングミルクをとーかがごきゅごきゅ飲むって内容かい?
バッチこいだぜ
>>144 透一ならちょい前あたりにwikiにエロありの長編があがってたよ
ここで見た覚えがないからたぶん直接投下したんだと思う
なんと!!ちょっと保管庫見てくる
原作のかじゅモモが鉄板すぎてやばい
ていうかモモかわいすぎ・・・
部キャプは個別スレがあるけど、ここで部長絡みが禁止なら部キャプ以外の部長SSはどこへ投下すればいいんだろ?
蒸し返してすまん
160 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/05(土) 18:50:02 ID:QhikvZWA
スレ立てろ
とりあえず照咲は仲良し姉妹百合に期待!!
照「咲、しばらく見ないうちに凄く強くなったんだね」頭ナデナデ
咲「えへへ♪お姉ちゃん、私がんばったんだよ///」テレテレ
照菫は大人でディープな百合に期待!!
菫「調子はどうだ、照…」やたらと肩に手を添えたりボディタッチを連発
照「………いちいちくっついてくるな。暑苦しい」パシッ
菫「冷たいなぁー。私はいつでも大歓迎だというのに」
照「…あ?なにがだよ」
菫「こうゆうことだ…ちゅっ」
照「……………」バシッ思いっきりビンタ
菫「今日も乱暴だな………」
照「二度と近寄るな」タッタッタ
菫「あーあ。振られちゃった。」ヤレヤレ
あれ、百合…?
つか咲で百合ならなんでもいいだろ
需要が無かろうが荒らしが出ようが関係ない
そいうことな
どうせ一人が自演してるだけだしw
暴れてるの一人だけだしな
NGIDにしてみんなでスルーすれば投下しても大丈夫な気がする
166 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/05(土) 19:03:02 ID:QhikvZWA
>>162-163 荒らし乙
部キャプオタが荒らす以上このスレから出て行ってもらわないとね
167 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/05(土) 19:04:53 ID:QhikvZWA
ID:QhikvZWAが発狂して憤死するまで部キャプを貼り続けるというのはどうだろう
>>168 いいね
気になる人はNGにすればいいわけだし
>>168 荒らし相手には立ち向かうより全力で無視する方がいいと思う
>>168 ちょっと面白そうと思ってしまった……
しかしそんなに部キャプネタ出せるかな?
172 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/05(土) 19:18:34 ID:QhikvZWA
ここから、久祭り
↓↓↓
上埜さんのSS書く作業に入ります
>>165 そうか。ありがと。
部キャプ以外の部長SS書いたら投下するよ。
176 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/05(土) 19:26:17 ID:QhikvZWA
>>175 荒らし行為は止めてくださいねー
部長オタってほんとこのスレが嫌いなんだね
むしろ部長嫌いな人っているの?
>>178 なにおぅ!
アニメより原作派だが部長は好きだ!!寧ろ大好きだ!!
原作から入ったけど部キャプ大好きです^p^
部長×タコス
タコス×和に萌えるのは俺くらいだろうが萌えるものは萌える
182 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/05(土) 20:20:22 ID:QhikvZWA
183 :
147:2009/12/05(土) 20:47:05 ID:5i8b1rS1
皆意見ありがとう
>>153の方法が一番無難かもしれんな…どこかあげるいい場所は無いかい?
>>154 すまない…生えてるのはとーかの方なんだ…
>>183 保管所に直接あげて報告するのはどうか
そうしてる人いるみたいだしあそこにはふたなりモノも保存されてるし
あと保管所の方にも報告にもふたなり注意を書いとくとベター
部キャプの話題やssは隔離スレへというのは前に決定されたみたいだから納得としても
部キャプ以外の部長関連のssはここに投下してもいいでしょ
竹井久絡みが駄目な理由がまったくわからん…
百歩ゆずって部キャプがダメってのは理解しよう
で、他の組み合わせが駄目な理由は?
荒らしが暴れてるだけから相手すんな
なんでスルーもできないんだよ
お前らが構うから調子のって居座るんだろうが
要するに部キャプも普通にウェルカム!
噛み付く奴はシカトかNGで解決
>>189 ヒント:荒らしの自演
そうとでも思わないと理解不能だし、違う場合も荒らしに構う奴は
荒らしとして処理しないとスレが機能不全に陥る
そんなことより新キャラの妄想して楽しめよ
新キャラなら新実況と新解説の麻雀プロかな
原作が進まないとなんともだが期待してる
194 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/05(土) 23:10:52 ID:QhikvZWA
こいつ…流れを変えようとしても、そんなのおかまいなしかよ…!
部咲が読みたいです先生
久を姉のように慕う咲のSSが読みたいです先生
咲を妹のように可愛がる久のSSが読みたいです先生
久々に咲照・照咲見たいけど誰もいないな
咲照菫書いてた人戻ってきてくれないものかな
単に忙しいだけなら良いんだが…
咲が照さんに可愛がられてるSSがよみたいです先生(もちろん性的な意味で)
鬱系でいいなら書くぜ
>>203 なんでもいいぜ!俺はお前を待っててやる
アンチはあの手この手で百合スレ荒らしにくるな
かじゅモモSSを投下します。48からの続きとなります。
* * *
その後、帰る家を失った桃子は、ゆみの家で暮らし始めた。
しかし、ゆみの両親にも桃子は見えていない。そんな訳で、桃子は家の中ではなるべくゆみと一緒に居る事にしていた。
『同棲ってこんな感じっすかねぇ』などとどこか嬉しそうに言った桃子にゆみは、こんな状況で、と呆れながらも、自分も少し浮かれているのは自覚していた。
他の誰からも見えなくなっても、桃子は学校に通った。すっかり変わってしまった日常の中で、少しでも以前と変わらない事をしていたいという願いが、そこにはあった。
「それに、もし私が元通り見れるようになった時、何もしてなかったら周りに取り残されるっす」
昼休みは、屋上で過ごした。とりとめの無い話をしながらつつく昼食は、とても楽しかった。
「先輩、あーん」
「う、待てモモ。それは……」
「誰も見てないっすよ?」
「しかし……」
「はい、あーん♪」
「……うう」
目の前に差し出されたパンに狼狽するゆみだったが、最後は恥ずかしそうにそれを頬張るのだった。
放課後になると、ゆみは麻雀部に足を向ける。しかし、桃子は顔を出す事はしなかった。気心の知れた仲間達から全く気付いて貰えない事は、やはり辛いようだった。
「……すまない皆。私はもう行かなくては」
「最近ユミちん用事多いねぇ。忙しいんだったら無理に出なくてもいいのに」
「いや、そういう訳にもいかないだろう。卒業するまでに、出来る限り教えておきたいからな」
「ありがたいねぇ。むっきー新部長、ユミちんの優しさをよーく噛み締めておくんだぞ?」
「は、はいっ」
夜。この時間が、ゆみにとって最も不安な時間だった。眠ってから朝になり、目を覚ますともう桃子が居ない。そんな日が来てしまうのではないかという恐怖が、ゆみの寝付きを悪くする。
「モモ。私はこんなにも臆病だったかな。君が居なくなる事が、耐えられなくなっている」
「大丈夫っすよ先輩。先輩が私の事忘れないでいてくれたら、きっと私は消えません」
「……ありがとう。それならモモが消える事は無い。私はいつだって、モモの事を想っているからな」
「先輩……恥ずかしい台詞っす」
「……うるさい」
それはかけがえの無い時間。これから先、忘れてはいけない大切な日常――
* * *
「メリークリスマスっす、先輩」
年の瀬の25日。放課後の屋上で桃子が差し出したのは、一つの紙袋だった。受け取ったゆみが袋を開けると、マフラーが入っていた。
「先輩の為に編んだっす。……初めてだったんで、ちょっと失敗しちゃいましたけど、どうしても今日に合わせたくて……」
良く見れば、確かに所々編み損ねたような箇所が見られたが、それは巻いてみれば気になるようなものではなかった。
「ありがとう、モモ。大事に使わせて貰うよ」
首に巻いたマフラーは、とても暖かかった。それはきっと毛糸のお陰だけではないのだろうと、ゆみは思った。
「何かお返しをしないといけないな」
ゆみもこの日の事を忘れていた訳ではなかったが、何をしたらいいのか良い案が思いつかず、結局当日を迎えてしまっていた。
「――と言っても、良い考えが浮かばなかったんだ。モモの好きな様に決めてくれないか?」
ゆみがそう言うと、桃子は少しの間考える素振りを見せた。そして、笑顔で言った。
「デートがいいっす!」
「ん……それだけでいいのか? それくらいだったら、いつだってしてもいいのに」
「何言ってるんすか、今日、この日だからこそのデートっすよ、先輩!」
声を上げて熱弁する桃子がとても微笑ましく見えて、ゆみはその提案に乗る事にした。早速出番の来た手編みのマフラーを身に付け、二人はクリスマスで賑わう街へと足を進めた。
* * *
「おや、そこに居るのはユミちんじゃないか」
「ん、蒲原……と、何だ、皆どうしてこんな所に?」
二人が街を歩いている途中、ゆみは声を掛けられた。見れば、麻雀部の面々が揃って歩いている姿が見えた。
「何って、みなまで言うなよユミちん。今日が何の日がユミちんは知らない訳じゃないだろ?」
「……まあ、そうだな」
「そこで今日は部活をお休みにして、皆でデェトに洒落込んだという訳だなーワハハー」
そう言ってお馴染みの笑い声を上げる智美の隣には、恥ずかしそうに腕を組んでいる佳織の姿があった。その後ろには、睦月と手を繋いでいる――ゆみの見知らぬ少女が立っていた。
「君は……ああ、蒲原から聞いた事があるな。確か睦月の――」
「はい。南浦数絵と申します」
「そうだったね。南浦さん、睦月の事をよろしくお願いします」
「い、いえ、そんな恐縮です」
顔を赤くして頭を下げる数絵を見て、ゆみは微笑ましい気持ちになる。
「あー、ユミちん。人の事より自分の事を心配したらどうだい?」
「?」
「いやあ、今日という日に一人賑わう街中を歩くのは些か寂しいんじゃないかと思ってね。余計なお世話かもしれないけど、誰かイイ人でも探したらどうかなと思ってさー」
智美の言葉に、ゆみは何とも言えない気持ちになった。ゆみの隣には、手を繋ぐ桃子が居る。しかし、智美達には見えていないのだ。
「ああ……余計なお世話だな、蒲原」
「お、やっぱりそうかい?」
「さ、智美ちゃん! 加治木先輩に失礼ですっ!」
ワハハと笑う智美を佳織が止めに入る。その光景は、会話は違えど、自分と桃子を見ている様で、自然と笑みが零れるのだった。
「妹尾」
「は、はいっ?」
「……蒲原を幸せにしてやってくれよ。あいつを何だかんだで妹尾を事を大切に想っているからな」
「ふぇっ……えっ……!?」
「のわっ……!? ユ、ユミちん、いきなり何を言い出すんだい!?」
顔を真っ赤にして、二人はゆみの言葉に驚く。
「睦月も……部長は大変だろうが、南浦さんと仲良くな」
「え、は、はいっ!」
「……それじゃあ、私はこれで。皆、元気でな」
四人に手を振り、笑顔と共に桃子とその場を後にする。後に残された四人は、ゆみの後姿を呆然と見送った。
「……すごい方でしたね。加治木さん」
ゆみの後ろ姿を見つめながら、数絵が口を開いた。
「いやー……まるで悟りを開いた聖母の様な笑顔だったね、ありゃあ……」
信じられない、といった様子で智美はその言葉を漏らした。
「……でも、あの方が部長さんで何となく分かりました。皆さんが仲が良い理由が……」
「え……」
「……あ」
「……ワハハ」
数絵の言葉に、他の三人が沈黙する。
「え、私、何か変な事言いました……?」
「あ……ごめん、まだ数絵には言ってなかったね……ウチの前部長は、加治木先輩じゃなくて蒲原先輩なの……」
「え、あ、そ……そうだったんですか……すみません……」
睦月の言葉に、数絵は慌てて頭を下げる。
「いやー……気にしてないよー……前からよく言われるし、ワハハ……」
「さ、智美ちゃん、しっかりして〜」
「う〜かおりん〜今夜は優しく慰めてよ〜」
「ふわぁっ……! へ、変な事言わないでよ……!」
智美に抱きつかれて慌てる佳織。それを睦月と数絵がなだめている間に、ゆみの姿は街の雑踏の中へと消えていった。
* * *
「本当にいいのか?」
「はい、お願いするっすよ」
その後の街でのデート中、突然桃子が学校に戻りたいと言い出した。今の時間であればまだ学校は開いているが、少し急がなくてはならないだろう。
「明日でも良かったんじゃ」
「すみません、どうしても今日が良かったんす」
そう言った桃子の顔には、どこか焦りのようなものが見えていた。ゆみの手を握る力が強くなり、歩く速度が速くなっている。
「分かったよ。今日はデートだからな、最後まで一緒に居るさ」
「ありがとう……ございます」
ゆみの言葉に、桃子は頬を染める。その顔が何故かとても儚げに見えて、ゆみは桃子と繋いだ手を優しく握り返した。
二人が着いたその場所は、馴染みの部屋。二人にとって、学校生活の中で一番多くの思い出が詰まっている場所――麻雀部の部室。
「誰も居ないっすね」
「ああ、
「座りませんか、先輩」
「ああ」
桃子に促され、二人並んで椅子に座る。マフラーを外して、鞄にしまう。
射している西日が、二人の顔を茜色に染めていた。
「……モモ。どうしてここに?」
ゆみが疑問を口にする。
「ここが、私と先輩が初めて出会った場所だったから」
桃子はゆみの目を見て答えた。
「いや……私達が出会ったのは、モモの教室じゃなかったっけ」
1−A組乱入事件。あの時の出会いは、恐らく一生忘れる事は無いだろう。
「それよりも前に、ネット上で会ったっす。先輩は、私の事を必死で勧誘してました」
「……ああ、そうだったな」
「まさか教室まで乗り込んでくるとは思わなかったっす」
「ああ……うん、我ながら、何と言うか……」
「でも、お陰で先輩と出会う事が出来たっすよ?」
「……そうだな」
そっと桃子の肩を抱き寄せる。夕焼けに染まる静かな校内で、二人だけの時間が流れてゆく。
「ん……」
不意に、ゆみは瞼が重くなるのを感じた。少し、疲れているのかもしれない。
「先輩?」
「ん、すまない……少し、疲れてしまったみたいだ」
「無理しないで下さい。何なら私の膝を貸すっすよ。いえ、むしろ借りて下さい」
「お、おい、モモ……」
ゆみは半ば強引に体を横にされ、頭を桃子の膝の上に乗せる格好となった。
「えへへ、先輩に膝枕っす」
見上げれば、そこには桃子の笑顔。見ていると、こちらまで笑顔になる。
「それじゃあ、お言葉に甘えさせて貰うよ」
桃子の好意に甘え、身体の力を抜く。目を閉じると、何故だか急に疲労感が湧き上がり、ゆみを眠りへと誘おうとする。
「……先輩?」
「……ん……」
「もう、寝ちゃったっすか?」
「…………」
答えようとするが、上手く答えられない。桃子の声が酷く遠くに聞こえて、意識が急速に朦朧としてゆく。
「先輩」
「…………」
「私、本当に幸せでした」
「…………」
「先輩が居なかったら、私はとっくに消えてたと思います」
何を言っているのか、上手く聞き取れない。
「私はもうすぐ――――でも、先輩には――――」
何も見えない。何も聞こえない。何も感じられない……
『大好きっす』
全てが落ちる瞬間、その言葉だけがはっきりと届いていた――
* * *
「――――――――」
いつの間にか眠ってしまったらしい。起きたばかりの頭で、ゆみはそう考えた。
「……私は……」
未だに意識が朦朧としているのか、自分が何故部室に居るのか思い出せないでいた。
「……まあ……いいか……」
思い出せないという事は、きっと大した用事ではなかったのだろう。ゆっくりと体を起こし、欠伸を一つする。体を伸ばし、深呼吸をすると、強張っていた体が徐々に目覚めてきた。
「……帰ろう」
もうこれ以上、この場所に用は無かった。ゆみは立ち上がり、出口へと足を進める。
灯りを消して部屋を出る。そして部室には、誰も居なくなった。
今回は以上となります。
友情出演:南浦さん
このSSを書くにあたって色々と調べていたら
長野の冬休みがクリスマス以降に始まる事を知りました(学校による?)
それにしてもワハハェ…
モモ…(;ω;)ブワッ
続き楽しみにしてる!
長野出身者だが、クリスマスに学校なのはデフォ
ちなみに夏休みも8月20日前には終わるのがデフォ
216 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/06(日) 22:21:12 ID:velzQBLx
GJ……!
モモ……
続き楽しみに待ってます!
立先生一番のお気に入りはモモなんかね
最近ずっとモモかじゅのターンだし
これから全国編が始まるし出番がなくなる鶴賀の最後のフォローなんだと思う
原作はこれからしばらくは長野勢のフォロー話が中心なのかね?
次は透華みたいだし…
風越はコーチがデレてフォロー終了?
全国編にはいつ入るんだか…
>>219 単行本8巻分からは全国だと思うんだけどな
ところで衣とーかのSSって無いんだな
書きにくいんだろうか
>>213 GJ
まさか南浦出るとは思わなかった
南浦むっきー好きなものとしてはうれしい限りだ
かじゅはともかく他がモモを思い出す方法は見当もつかないな
思い出さないとかだったら…
>>220 一本書いてるけどあからさまに商業マンガの盗用な上にエロ無しだから困る
こんな事言うと身も蓋も無いが、うp?しようかどうしようか悩んでるんじゃなかろうか?
誰かに背中を押して欲しいんだよきっと。
なんであれ創作ってのは基本「自分のため」でしょ
脳内活動の記録とか日記みたいなもんじゃね?
226 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/07(月) 17:32:37 ID:OXlqu6fl
まってます
そんなつもりは無いのかもしれないけど、正直言って誘い受けを匂わす発言はイラッとくる。
言っちゃえば書き手さんってのは自己満足でSSを投下してるようなもんでしょ?
それならいちいち読み手に〜はどうかな?〜は良いかな、みたいことを質問しないでとりあえず投下してみれば良い。
それで反応が悪ければ自粛する、良ければ続きを書くなり投下するなりすれば良いんだ。
誘い受けでも何でもいいから投下されたら嬉しいのはきっと俺だけ
>>227 つまりとりあえず全部落とせってことだな
南浦さんとむっきーの続編書いたので投下します。
エロ無しで何日かに分けての投下になります。タイトルは「オフ会」
次レスからスタート。3レス使用予定
このスレって本当に書き手を大事にしないよな
アニメも終わったし、あっという間に職人いなくなるよ
233 :
1:2009/12/07(月) 23:01:20 ID:VvCKbpch
冬のある日
「最近、ハマっていることがあるんです」
先日数絵にそう言われ、そのハマっているものとやらを見せてもらうために、今日は彼女の家へと遊びにやってきた。
「ちょっと座って待っててください」
「うん。分かった」
部屋にお邪魔すると、さっそく彼女はパソコンの前に座り、カチカチとマウスを鳴らし始めた。
なんだろう…。パソコンを使ってやるものなのかな。ネットゲームとか?
「はい、もう良いですよ。見て下さい」
立ちあがり、私もパソコンの前へと移動する。画面を覗くと、そこにはなにやらたくさんの文字が並んでいた。
そしてピロン♪と音とともにまた文字が現れ、先に書かれていた文字の下にそれが並んでいく。
「数絵、これって……」
「チャットです。」
「へぇー…。ハマってるものって、これだったんだ」
「そうです。睦月さんはやったことありますか?」
「いや、私は無いかな」
「そうですか。チャットだと、いつでも好きな時間に、ここで出来た友達と会話ができるんです。すごく楽しいですよ」
そう言いながら画面を見つめている彼女の顔は、頬がほんのり緩んでいてとても可愛らしいものだった。
チャットをしている時は、いつもこんな顔をしているのだろうか。そう考えると少しだけ悔しい。
できれば、その笑顔は顔も分からない相手なんかよりも、私にもっとたくさん見せてほしい。そう思った。
「ん…あれ…?数絵、こんなの読めるの?」
画面に並んでいる文字を眺めていると、見たこともないような言葉がいくつかあった。
『wktk』『www』『ry』など。私には全く理解できないものばかりだ。
「ああ、これですか?何度も話してれば、だんだん意味が分かるようになってきました」
「へえ…なんだかすごいね…」
「そうでもないですよ。あっ睦月さんも、何か書いてみませんか?」
「えっ私が…?」
「はい。今は3人ログインしてますから、すぐに返事が返ってきますよ。私はお茶でもとってきますね」
数絵がイスを離れ、部屋から出て行く。
正直言って、少し驚いた。
私が彼女にネット麻雀を教えるまでは、パソコンの使い方なんて全然分かっていなかったのに、今では手なれたように
タイピングをこなしている。しかも、なかなか早い。まぁ、これもチャットのおかげなのかな。
うーん…それにしても…。急に何か書いてみてって言われても、何も思いつかないな…。
「あ、そうだ」
カタカタカタ…。キーボードに手を添えて、文字を打ちこむ。
『突然の書き込み失礼します。私は――の恋人です。』
『みなさんにお願いです。あまり彼女には変なことを吹き込まないでくださいね。』
『ではこれにて失礼します。』
これでよし…。数絵は、私の大切な彼女だ。
ネット上とは言え、私が知らない人と彼女が会話している、というのはあまり面白くない。
この気持ちは嫉妬なのか不安なのか、自分でもよく分からなかったけれど、胸がチクチクするのは確かだ。
そうこうしている間にも、ピロンピロンッ♪とすごい勢いで書き込みが増えてゆく。
それを無視して、私は『部屋を出る』と書かれたボタンをクリックし、パソコンを離れてベッドに腰掛けた。
234 :
2:2009/12/07(月) 23:03:25 ID:VvCKbpch
「お待たせしました。…あれ、チャットはもう良いんですか?」
数絵が部屋に戻り、パソコンを見ながら私に尋ねる。
「あ、ああ!うん…。なんか適当にボタン押してたら、画面が変わっちゃったんだよね。だからもう止めとく。」
「そうですか…。もし睦月さんもチャットをやる気になったら、教えて下さいね。」
「う、うん…考えてみるね。」
「はい、ぜひ。その時は私の友達も交えて一緒にお話しましょう」
お茶を飲みながらほほ笑む彼女の顔を見て、悪いことしちゃったかな…と少しだけ反省する。
だけど、数絵には私だけを見てほしい。絶対に誰にも渡したくない。
「ねえ…数絵」
「はい、なんですか?」
「私のこと好き?」
「えっ…なっなんですか、突然」
私がそう言うと、数絵はすぐに顔を赤くして俯いてしまった。その姿はいつ見ても可愛い。
数絵の隣に体を近づけて、そっと抱きしめる。
「うっうわ…睦月さんっ?」
「ね、ちゃんと教えて?」
「すす、すき…ですよっ。だいすきです…っ!」
「くすっ。ありがとう…私も大好きだよ」
顔に両手をあてて、そのまま唇を重ね合わせる。
「…んっ……ぷはっ…はぁはぁ…急に、どう…したんですかっ?」
「だーめ。逃げないでよ」
「んんっ…」
「数絵、大好き…」
それから何度も何度もキスを繰り返した。
235 :
3:2009/12/07(月) 23:07:09 ID:VvCKbpch
*
翌日
「……え?オフかい?何それ」
彼女と電話をしていると、またもや私の知らない言葉が耳に入ってきた。
「ええと、チャットで出来た友達と実際に会って、遊ぶんです。昨日誘われて…」
「えぇ!?実際に会うって……い、行くの?」
「それを確認しようと電話したんです。…行っても、良いですか?」
「……人数は?場所は?日時は?何するの?その友達って男?女?年は?職業は?」
「お、落ち着いて下さいよ!睦月さん…そんなにいっぺんに質問されても覚えきれませんよ?」
「あっ…ごめん、一瞬頭が混乱してた…」
「ええとですね、人数は私を含めて4人です。場所はそのうちの1人のお宅で、お鍋をするんです」
「うん…」
「あと、全員女性ですよ。そして、全員私と同じで高校生です。」
「そうなんだ…」
「はい。どうしましょう…?」
「うーん………」
全員女性だと聞いて少しホッとした。せっかくのお誘いなんだし、お鍋をするくらいなら行っても大丈夫かな?
けれど、もしも数絵になにかあったら…なんてことを考えると、やっぱり不安になる。
数絵は美人で可愛いから、私のように一目ぼれしてしまう人も居るかもしれない。
「あの、やっぱり断ったほうが良いでしょうか…?」
「…数絵は、いきなり知らない人と会うのって怖くないの?」
「まあ、少しだけ不安ではありますが、みんな良い人なんですよ。だから、怖いとは思いません」
「そっかぁ…でも、私は心配だな…」
「じゃあ、やっぱり止めておきますね…」
「いや、ちょっと待って」
ネットとは言え、せっかく数絵にできた友達なんだ。実際に会ってみれば、更に仲良くなれるかもしれない。
こないだは、その人たちに対して少しだけ面白くないと感じたけれど、かと言って数絵の楽しみまで奪ってしまうのは
可哀想でとても出来ない。
「あのさ…私もそこに行っても良いかな?」
「えっ睦月さんも来てくれるんですか?」
「うん…迷惑でなければ…」
「迷惑だなんて、とんでも無いです。では、みんなに聞いてみますね。後でメールします」
「うん、ごめんね。よろしく…」
数分後、彼女から『みんな、良いよと言ってくれました』とメールが届いた。
日時は明後日の土曜だ。どんな人なのか全く分からない人と会うのは緊張するけれど、行くしかない。
もしかしたら、それがきっかけで私にも友達が増えるかもしれないし…。
それに、麻雀ができる人なら、今度数絵と一緒に卓を囲うこともできる。何事も前向きに考えよう。
*
そして当日
「…数絵の恋人って、あなただったんですか?」
「あ、え…?」
なんで、この人がここに居るんだろう…。しかも今、数絵って呼び捨てにした…?
私は思いもしなかった事実を目の当たりにし、頭の中が真っ白になってしまった。
今日は以上です。
それと、一応照菫咲の続編も書いたのですが、前作からかなり時間が経ってしまったので
保管庫に直接置いておきました…。
原作ではついに全国メンバーが顔を見せてくれましたね。
それに南浦さんまで出てきてくれてwktkが止まりません。
では失礼します。
>>236 GJ!なんぽさんもむっきーも可愛いなぁ
GJ!!あなたの投下をずっと待っていました!
さて、誰が居たんだ?tomoki-かな…?wktk
>>232 創作発表専用スレじゃないんだしあたりまえだろ
本当にこのスレは職人を大切にできない人が多いのね…まぁ、ごく一部の人たちだとは思うけどさ。
>>236GJです!!続き待ってます
>>239 現状は創作発表専用スレみたいなものだろ?
なんで、お前このスレにいるの?それとも創作専用スレ立てろと?
242 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/08(火) 02:14:11 ID:5zDsje+K
東方スレみたいに立てろよ
>>236 もしかして、チャットスレとクロスしてる?
ともあれ、GJ!
>>236 GJ
何かすごい久しぶりな感じがしますね
しばらく投下なかったんでどうしたものかと思いましたが
今回も続きが楽しみです
照菫咲の続編も後で読ませていただきます
にしても最後に出た人は誰なんだろうか…
かじゅモモSSを投下します。212からの続きとなります。
* * *
年が明け、三学期が始まった。この時期、三年生は大学受験の為に授業の殆どが自主学習となり、言い換えれば進路が決まっていれば長期休みと変わらない状態になっていた。
ゆみは既に東京の大学への進学が決まっていて、この期間は引退した麻雀部に、後進の育成の為に放課後顔を出すのが日課となっていた。
「妹尾も大分打てるようになってきたんじゃないか? もう初心者卒業だな」
「あ、ありがとうございます。でも、この時期が一番危ないって智美ちゃんが言ってました……」
「うん、慣れてくると油断もしやすくなるからな。気を引き締めるんだぞ」
「はいっ」
後輩の成長を嬉しく思う一方で、ゆみは得体の知れない――何か満たされない気持ちを常に感じていた。そして、その言葉に出来ない違和感に操られる様に、時折ゆみは無意識の行動をしていた。
「――……」
こんな寒い時期に、どうして自分は屋上に居るのだろう。曇り空の下、吹き付ける寒風がゆみを嘲笑うかの様にヒュウゥと耳元で音を立てた。
「おー居た居た」
声に振り返ると、智美が立っていた。
「ユミちんったら急に居なくなるから驚いたよ。でも何だってこんな所に?」
「……私にも良く分からない。気が付いたらここに居たんだ」
「おいおい、大丈夫かい? ただでさえ、ユミちんは最近元気が無いように見えるのに」
「……そうなのか?」
智美の指摘に、胸がざわついた。
「うーん……何て言うかなー……その、探し物が見つからなくて困ってる、って感じに見えるんだよね、今のユミちんは」
「探し物……?」
「例えば、の話だよ。本気にしないでくれよ」
「あ、ああ……」
校舎へと戻っていく智美を追い、ゆみは屋上を後にした。それから部活に戻った後も、ゆみの心に掛かった雲は、晴れる事は無かった。
* * *
それから月日は流れ、三月。晴れて鶴賀学園を卒業したゆみは、新しい生活へ向けての準備に追われていた。特に一人暮らしの為の新居を選ぶ事には腐心して、それに並行して引越しの準備もする。
「これは……まあ、いいか」
新生活に向けて、必要な物は持っていき、そうでもない物は実家に置いておく。その仕分けだけでも、思い出のある物、好きだった物などが出てくると、それをどうするかで悩んだりして、意外と時間が掛かるものだとゆみは思った。
「しかし、多いな……」
ゆみは、自分で思ったよりも選別に躊躇している事に気が付いた。自分ならば普通は置いていくであろう品物も、何故か手が止まる。色々なアクセサリや小物、特に服類が多い。
「こんな物まで持っていたのか」
それらは、確かに買った記憶がある物ばかり。しかし、何故買ったのかをよく憶えていない。いつもの自分ならば、ここまで買う事も無いと思っていたのだが――まるで、誰かと買い物を楽しんで買った物かの様に、それらはこの場所にあった。
「…………」
これ以上考えても、更に時間を消費するだけだ。そう考えて、ゆみは仕分けを再開させた。
「後は、ここか」
あらかた選別を終わらせた所で、ゆみは最後に洋服箪笥に取り掛かった。中身を取り出し、他の物と同じ様に選んでいく。
「……ん?」
と、そこでゆみはとある物に気付いた。箪笥の奥にひっそりと眠っていたそれは、手編みと思しきマフラーだった。所々に解れが見えて、綺麗とは言えなかったが、それでも使う事は出来そうな物だった。
取り出して見たものの、ゆみには何故こんなものがここにあるのか分からなかった。自分で編んだ覚えは無いし、誰かに貰った記憶も無――
「ッ――」
軽い眩暈がした。同時に、頭の奥に鈍い痛みが走る様な感覚。
「何、だ……?」
デジャヴ、と言うにはやけに鮮明で、思い出と言うには嫌に薄い。気のせいかとも思ったが、どうにも妙に引っかかる。一体これは何なのかと、もう一度そのマフラーを見ても、特に変わった所は無い。
「――ああ、もう」
立ち上がって、裁縫道具を持ってくる。何だか良くは分からないが、無性にそのマフラーの解れが気になる。――それなら、思い切って直してしまおう。そうすれば、このモヤモヤとした気分も少しは晴れるかもしれない――
「…………」
無言でマフラーを直す。この行為に一体何の意味があるのかと思いつつも、不思議と手を止める事は無かった。段々とマフラーが綺麗な形になってゆく。それだけで、ゆみの心がざわざわと波を立てた。
「全く、仕方の無い奴だ――」
不意に口を付いて出てきた言葉。それは、明らかに誰かに向けて言った言葉であり、しかし全く意識していない言葉だった。
一体さっきから自分はどうかしたのか、まるで分からない。それでもその手は、休む事無くマフラーを編んでいった。
「……出来た」
ゆみの手により、マフラーは新品の様に生まれ変わった。さて、このマフラーをどうするべきか。折角綺麗に編み直せたのだから、向こうに持っていってもいいかもしれない。そう考えながら、ゆみは何の気無しにそのマフラーを巻いてみた。
「うん、これなら――」
ぽとり、と何かが落ちた。
「え」
ぽとり。ぽとり。次々と落ちてゆく。
「何だ、これ、何、で――」
それが涙だと気付くまで、少しの時間を要した。その間にも、涙は溢れて止まらない。
「えっ、え……」
混乱したゆみは、思わず触っていたマフラーで顔を覆った。
「――――――――あ」
瞬間。暗くなった視界に、フラッシュバックする光景。そして、防虫剤の匂いに混じって、ある筈のない、懐かしい匂い――
「……………………モ……………………モ…………――――――」
その名を呼んだ途端、堰を切った様に記憶が溢れた。
忘れたくないのに忘れてしまった――忘れようにも忘れられない彼女との日々。
「モモ……モモ……モモ……!」
彼女の名を呼ぶ。今はもう何処にも居ない彼女の名前を。もしかしたら、呼んだらひょっこりと出て来てくれるんじゃないと言う淡い希望を乗せて。
しかし、ゆみの叫びは虚空に消える。呼びかけに応じるものは無く、部屋には一人きり。
「どうして……どうして私は……!」
悲しみと後悔の念がゆみを襲う。『君を忘れない』などと言っておきながら、結果はどうだ。彼女の事など、すっかり忘れ、思い出す事も無く生活していた。
「何て……馬鹿なんだっ……! 私は……! モモぉっ……!」
ゆみは声を上げて泣いた。後悔の余り、いっそ自分も消えたかった。消えた先には、桃子も居るかもしれないと思いながら――
* * *
どれくらい時間が経ったかは覚えていない。しかし、今まで生きてきてこんなに泣いた事は無かったかもしれない。涙を拭いながら、少し落ち着いた頭でゆみは考えた。
「まだだ、まだ……」
都合の良い希望かもしれない。しかし、ゆみにはまだ桃子を完全に失ったとは思えなかった。
桃子は言っていた。『先輩が私の事忘れないでいてくれたら、きっと私は消えません』と。
桃子が消えたのは、自分が桃子の事を忘れてしまったからではないか。それならば、その逆で、もし自分が桃子の事を思い出せたのならば、桃子は戻って来られるのではないか……?
それは何の根拠も無い推論だったが、ゆみにとってはそれが唯一の希望だった。
「こんな所で、君を諦めたくない……!」
涙を拭き、立ち上がる。居ても立ってもいられない。見当は無いが、探さずにはいられない。例え世界中を回ってでも、桃子を見つけたい。その想いがゆみを突き動かす。
「待ってろよ……!」
ゆみは桃子の編んでくれたマフラーを巻いて、まだ寒い街へと足を進めた――
* * *
「モモっ!」
二人で過ごした事のある場所を、一つ一つ思い出しながら、ゆみは街中を探し回った。桃子を呼ぶ声に、通行人が何事かとゆみの方に振り向く。しかし、ゆみはそんな視線など気に掛ける余裕も無く、ひたすら彼女の名を叫んだ。
結局街中を探すも、桃子の姿は見つからず、気配すら感じられない。そうなると、考えられる場所はもう一つしか無かった。
「学校……」
腕時計を見る。校門が閉まるまでは、まだ余裕があった。街中走り回ったお陰で息が荒い。が、それは些細な事だった。ゆみは一旦呼吸を整えると、学校へと急いだ。
西日に照らされた放課後の校舎。残っているのは部活動に励む生徒が多く、他の生徒の姿はほとんど見かけない。許可を取り校内へと入ると、ゆみはまず屋上へと向かった。
「モモっ……!」
扉を開けて叫ぶが、それに答える声は無く、ただ冷たい風がゆみの体を通ってゆくだけだった。塔屋にも登ってみたが、当然の如く何も無い。暫く屋上に居てみたが、何の変化も無い。このままでは埒が明かないと考えたユミは、苦い思いで屋上を後にした。
「モモ……やはり、君は……?」
麻雀部の部室に向かいながら、ゆみは思った。そもそも桃子が戻ってくる事すら、ゆみの希望でしかない。傍から見れば、滑稽な行動でしかないのかもしれない。それでも諦めきれずにここまで来た。それだけは忘れたくない。
東横桃子は確かに存在していた、と言える人間が一人でも居なければ、桃子は本当に消えてしまう。
そんな、自分でもよく分からない様な考えを巡らせながら、ゆみは部室の扉を勢い良く開けた。
「ふえっ!?」
「なっ……あ、先輩!?」
そこには、驚いた顔でこちらを見る佳織と睦月が居た。
「何だ、二人共居たんだな。驚かせてすまない」
「いっ、いえ……でも、こんな時間にどうしたんですか? 先輩はもう卒業されたのに……」
「……探し物だよ。大事な、探し物だ」
「探し、物……?」
「そうだ。ここも一通り見たら出て行くよ。邪魔してすまないな」
「そんな事は……」
二人に軽く事情を説明したゆみは、そこで二人がパソコンを開いている事に気付いた。
「それは……」
「え、あ、これですか? ちょっと勧誘活動をしていたんです。加治木先輩と蒲原先輩が卒業されたので、また部員が足りなくなってしまいましたから」
睦月はそう言うと、ゆみにパソコンの画面を見せる。――それは、数ヶ月前。自分達が行っていた勧誘方法と同じものだった。
「そうか。それで、首尾はどうだった?」
「ええ……以前、夏の大会前にやった時よりは人が来るようにはなりましたけど……中々選ぶのが難しくて……私達がもう少し打ち筋を見る目があれば良かったんですけど」
睦月が申し訳無さそうに俯く。
「いや、いいんだ。君達なりに頑張ってくれればそれで……私は何も言わないよ」
「はい……すみません」
その時、パソコンのチャット画面から音がした。佳織がそれに気付き、声を上げる。
「あ、この人……」
続けて画面を見た睦月も、驚いた様な表情になっていた。
「ん、どうかしたのか?」
「あ、いえ……多分、いつもの人です」
「いつもの?」
「はい。ここ最近来て頂いてる方なんですが、強いので勧誘しているのですが……断り続けられているんです」
「……へえ」
ゆみは二人の視線を追うようにチャット画面を見る。そこには、『Default Player』と表示されていた。
「――睦月」
そのありふれた名前に、見覚えがあった。
「私が打とう」
「えっ……?」
睦月は驚いてゆみの顔を見るが、その力強い表情に押される様に、慌てて席を立った。
「…………」
パソコンの画面を睨み、マウスを手にする。
対局が始まる。局が進む。
「――妹尾」
その打ち筋に、見覚えがあった。
「後を頼む」
「えっ……?」
佳織は驚いてゆみを見るが、その視線を意に介さず、ゆみは立ち上がると部室を後にした。
目指す場所は、決まっていた。
今回は以上となります。多分次で終わりです。
創作について相談、リクエスト、長編などに使って下さい
以下、何事も無かったように従来通り進行
菫咲、とかいいとおもうんだがどうだね
照じゃなくて咲?
難しいけど想像できないこともないなw
>>252 GJ!続きまってたぜ!
どうやって思い出してくれるのかとドキドキしていた!
こっからかじゅのイケメンモードかな?
かじゅモモが幸せになりますように。
260 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/09(水) 01:21:47 ID:Z/LQmwLc
流れ切り失礼。菫と咲※少しエロい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふぅうっ…んぅっ…」
甲高くて、か細い声が部屋に響く。ギュッと目を瞑りながら体を震わせているその姿はいつ見ても、とても可愛らしい。
「はぁっ…気持ち良いか?咲…」
「あぁ…っ…はい、すごく…気持ち良いで…す…」
「ひゃうっ…!…っ菫さん…もう……あぁあっ…」
やがて、ピシャッと音とともに生温かい液体がシーツの上に広がった。
はぁはぁと肩で大きく息をしている咲の手を引き、そっと自分のほうへと抱き寄せる。
「咲、愛してるよ」
「わたしもです…菫さんっ」
「んっ…」
「ぷはっ…はぁはぁ…菫さんのキスって…なんだか力強くて、とても熱いです…」
「…それは、褒めているのか?」
「も、もちろんですよっ。ごめんなさい、うまく言えなくて…」
「そうか、褒め言葉だったのか。それなら嬉しい限りだ。」
いったい、この子は私のキスを誰のキスと比べてそう言ったのだろうか。
ふと頭の端でそんなことを考えてしまった。原村和か?それとも照…?だが、今はそんな事どうでも良い。
この子は、今こうして私のそばに居てくれるのだ。それだけで私の心はじゅうぶん満たされる。
「お前は、私と一緒に居て幸せか?」
「はい。とっても幸せです」
咲が、顔を赤らめてにっこりと笑顔を見せてくれた。それを見て私も口元が自然に緩む。
「そうか。良かった。私も幸せだよ…」
そう言いながら頭を撫でてやるとエヘヘと笑い、私に寄りかかりながら気持ち良さそうに目を閉じた。
「すぅー…すぅー……すぅー……むにゃむにゃ…」
「寝たか…」
この子はいつも、行為の後すぐに眠りについてしまう。持久力に欠けているのだろうか。
起こさないよう慎重に体をベッドの端に置き、私もその隣へと体を潜らせ布団をかぶる。
「おやすみ、咲」
「すぅー…すぅー…おやしゅみなしゃい………」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここまで思いつくままに書いてみました。
初投稿なのでお手柔らかに…続き書いたらまた投稿します
菫は照に妹が居ることを知ってるみたいだからなあ
咲に興味を持つことはありえるかもしれん
ともあれGJだ
>>261 うおおおおおお!!いいぞ、もっとやれ!!!全力で続きを待っている!!
>>252 GJ!!
うう胸がギュンギュンして苦しいぜ、なんて事してくれるんだ
ああ次で最後か…終わって欲しくないけど、二人には幸せになって欲しいし…
とにかく正座して待ってます!
>>261 意外な組み合わせだな、照が二人の関係をどう思ってるのかが気になるぜ
照は無言で交ざってくる
どこに投下しようか迷ったが結局ここに落とす。
四レス。部キャプ。微エロかどうか判断に迷う。欝ありかも。
「福路さんはキスが長い」と言う言葉に反応して脊髄反射で書いた。
後悔は今はしてないが多分あとでする。故に後悔。
タイトルは「ロングキスグッドナイト」
久と合うのは本当に久しぶりだ。
わたし福路美穂子は風越OBとして、卒業後二度目のインターハイ見学に着た。
そこで偶然にも久と巡り会えた。
大学生になって大人っぽく口紅をさし耳にピアスを入れた久は、
まだ子供っぽさの残るわたしからしてみたら、本当に大人の女で、羨ましくもある。
そしてその飄々とした変わらない風貌と受け答えは、わたしの青春を思い出させるのに十分だった。
無論、当時意識もしてなかった恋心も。
大会後、わたしは久を食事に誘った。
極力控えめにしていたつもりだったが、「強引ね」と言われてしまったのには苦笑した。
食事と言っても、お互い財布も軽い大学生。
どうしようと頭を突き合わせて、選んだ先は居酒屋だった。
ゴタゴタした店内は喧騒に包まれ、顔を近づけないと互いの声が聞き取れないほどだ
いつもの、で通じるあたりどうやら久の行きつけらしい。
相変わらず悪いことしてるのね、と言ったら
少しの悪いことをしておかないと、すごく悪いことをしちゃうと思わない?ですって。
じゃあわたしはすごく悪いことをするのかしら。
そう言ったら久は大笑いした。失礼しちゃう。
でもわたしはお酒を呑むのが初めてで、というと
久は大層ビックリした様子で、生真面目なのねぇと返した。
別に真面目だからお酒を飲んでいなかったわけでなくて、
お酒を飲む機会も暇もお金もなかったんだから。
それにお酒を飲んで、自分が変わってしまうのが怖くて…。
「それを生真面目って言うのよ?」
せめて久の前では感じのいい人間と思われていたい、と言う下心もあった。
それも含めて生真面目、と言う言葉でくくられると、
それは多少齟齬があるなぁなどと思いつつも、久の勧めだもの。
飲みました。
■
失敗したかなぁ…
風越の元キャプテンさんに会ったものだから、懐かしくって話し込んで。
食事に誘われたものだから、行きつけの居酒屋を紹介したまでは良かった。
まさか一杯でここまで正体をなくすとは思わないでしょ?
暑いと言って胸元をはだけた時点で気づけばよかったのに、
放っておいたものだから、私の服にまで手をかけて胸元にキス。
猫のようにしなやかに、私の身体を蹂躙していくと、
もう体中がキスマークだらけになってしまった。
彼女が付けているのが口紅でなく、リップクリームだったのは不幸中の幸いか。
今も私の身体にしなだれかかって、ビール瓶をふらふらと弄んでいる。
非常に危なっかしい。
周りの客にぶつけないようにするため、身体を抑えているけど、
これって傍から見たら、抱きしめているって言うわよね。
なんとも艶っぽくないハグだこと。
でも二年前も思ったけど豊満で羨ましい限りだ。
一方の私といえば、二年前から変わらずのささやかな膨らみ。
ちょっと分けてもらいたくもなるわよね。
でまぁ、ちょっと揉ませてもらったりなんかして。
そしたら強烈に喘ぎ始めちゃって、もうなんというか。
本当にしちゃっていいわけ?
「是非!」
あらら…こりゃ本格的に運ばなくちゃダメみたい。
■
連絡先も分からないし、どうしたものか思案して、結局ホテルに泊まることにした。
本当にする気はないけど、ラブホテルに。
だって安いんだからしょうがないじゃない。
おんぶして運んでいる最中、ずっと耳元で大好き、大好きって囁かれたけど、
こんな可愛い美人さんに言われるのなら、まぁ悪い気はしないわよね。
それでまぁ部屋について風越の、えーっと福路さんだっけ、をベッドに寝かせて、
はぁこれで一安心、とベッドに腰を下ろしてふと横を見てみると、もうそこに居ない。
で、どこだどこだって探したら。
居ました、冷蔵庫の前。
あ〜ぁ駄目だって、それは高いお酒なんだから…
え、私も飲め?しょうがないわね、じゃあ一杯。
あ、美味しい。もう一杯。
ちょっと福路さん、それ貸して。もう一杯。
もう一本。
あれ〜なんか世界がぐんにゃりしてきた〜。
ねー、福路さん、私もう寝ちゃった方がいいわよねー。
寝かせないって、そんな事言わないで。
顔近いって。
いや、近いってレベルじゃないし。
いや、可愛いわよ。
嫌いじゃないわよ、だからなんでそんな話になるの。
あぁ、もう好きよ!第一印象で決めていました!
好きでも無い人間と、一緒にお酒飲みに行くと思うの?!
だからそんな潤んだ瞳で見ないでよ、色々と本気になっちゃうでしょ。
だから顔近いって…
ん…
福路さんの唇柔らかい…
初めてだからしょうがないけど、唇重ねるだけなのね…
というかちょっと長い。
アレ、鼻で呼吸って、どうやるんだっけ。
ちょっと福路さん…抱きついた腕を緩めて…
あ、駄目だ…景色が暗く…
網膜に綺麗な顔を焼き付けておくのもいいかもね。
あぁでも、福路さんは私が死んだら泣いちゃうかなぁ…
ごめんね、もう限界
■
気がつくと、わたしはぐったりとした久を抱きしめていた。
一気に頭の中のもやが晴れる。
幸せだった気持ちが急転して、胃の部分にずしりと重くのしかかってくる。
駄目だ、早くなんとか誌ないと。
急いで唇を離して呼吸を確認。反応なし。
心音を確認。反応なし。
わたしは何事かを叫びながら、急いで気道を確保すると、再び久の唇に自分の唇を重ねた。
呼吸を送り込むと、心臓マッサージに移る。
服の前を開き、久の胸を露出させ、両手を胸の上に置き、力を込める。
一回、二回、三回、四回。
気が狂いそうだけど、狂っていたら久が死んじゃう。
呼吸を確認。駄目!
お願い、久。死なないで。だってまだ告白もしてないんだから!
こんな色気の無いキスじゃなくて、もっと大人のキスをしたいの!
一回、二回、三回、四回!
「大好きだから死なないで!」
ゲホッゴホッ!
久が激しく咳き込んだ。
わたしはもう、そこで脱力して、正座した自分の膝に手を置いて、涙をぽろぽろ。
嗚咽も混じって呼吸が苦しい。あぁわたしもこのまま呼吸が止まっちゃうんじゃないかな。
◇
咳き込みすぎて苦しい。苦しいってことは生きてるのかしら。
いや、天国かも。だって傍にこんな綺麗な天使が居るんだもの。
こんな可愛い人と一緒にいられるのなら、死ぬのもいいかもね。
あぁ違う。こんなに綺麗な人は一人しか居ないじゃない。
そうだ、福路美穂子だ。
駄目駄目。綺麗な子があんな、顔をくしゃくしゃにして泣いてちゃ。
美人さんは笑ってるか、頬を赤く染めてるかの方がいいわよ。
それが私のために、だったら最高よね。
だから私は力が入りにくい上体を強引に起こして、泣いてる福路さんの頬に手をやる。
「もう、福路さんったら、キス長すぎ。」
脂汗がにじんじゃってるかな。でも笑ってみせる。
福路さんはもう嗚咽混じりで、なにか喋ってるんだろうけど、なにを言ってるのか分からなくなってる。
多分、死んじゃったんじゃないか、とか生きてて良かったとか言ってるのかな。
それじゃこう言うしかないわよね。
「馬鹿ね、貴女を置いて私が死ぬはず無いじゃない。」
そうそう。笑わなくちゃ。とっても綺麗よ、貴女。
私は福路さんをそっと抱きしめた。
夜は、まだ長い。
以上で投下終了します。
272 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/09(水) 12:23:43 ID:wM+ccjYB
ヤンガン最新刊やばいねモモが
273 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/09(水) 14:51:09 ID:9KKvKbb1
>>271 キャプテン→部長 久
部長→キャプテン 福路さん
この熱の差が激しいな
ともあれGJ
>>271 キャラが原作と全く違う
日本語の使い方が在日レベル
三流ラノベ以外の駄文乙
×三流ラノベ以外の駄文
○三流ラノベ以下の駄文
三流ラノベ云々すら書けない奴が偉そうに批評するこんな世の中じゃ
ポイズン
良作なのにネタにしかされてなくてカワイソス
>>271 乙。キス長い美穂子可愛いよ美穂子
衣ネタ投下してみる。↓
長野県予選決勝で宮永咲に敗れた天江衣が、今度は宮永照率いるチーム虎姫に対してコメントを発表した。
天江衣のコメントは以下のとおり。
「凄まじかったですね。清澄、風越、鶴賀という“恥知らずな組織”による、外敵に対する団結力と排除力は。
ボクに数え役満をかましてくれた風越。正直、アンタの一発がいちばん効きました。肉体的ではなく精神的に。
『試合に関係ない人間が平然と手をくだす。それをレフェリーが見て見ぬフリ。なんて卑怯な組織なんだ』と。
宮永クンは風越の一発があったからこそ、辛うじてボクに勝利することができたワケですが……。
ま、そんなことはすでに過去の話。ボクと肌を合わせるという実力不相応な経験により、
宮永クンも多少なり成長できたのではないかなあ、と。
ところで……、久々に帯同した西東京で、ボクは実に珍妙な生き物たちを発見してしまいました。
あの白いシャツを着た人たち、チーム虎姫と呼ばれる変人達です。かなりイカレてますよね?
笑いが止まりませんでした。なにしろ、アホ毛と、おかっぱと、たかみんと、短髪と、金髪が、
連日仲間内で不細工なツラを張り合ってはワンワン泣き叫んでいるのですから。
からかわずにはいられません。いじらずにはいられません。
というワケで、チーム虎姫とやらの皆さん。ボクが本当の麻雀というものを、再教育してあげましょうか?
まずは才能のカケラすら感じられない、麻雀偏差値の低そうな教え子たちから。
彼らには”補修”が必要と見ました。もっとも、落第する可能性のほうが高そうな顔つきですが……。
そして、教え子の次はアホ毛の敬礼先生。あなたも再実習が必要なのでは?
白を緑に染め直してあげましょうか?
そうしてアナタはボクの足元に膝まづき、昔のTVドラマさながらに絶叫することとなるのです。『くやしいーです!!』と」
>>235 むっきー・なんぽの続き投下します。
次レスからスタート
>>280様、GJです。
一応続きが投下されるのを待っていたのですが、無かったみたいなので失礼します…。
もしこれが割り込みになってしまったら申し訳ありません。。
数絵と一緒に――さんという女性のお宅にお邪魔して部屋に案内してもらい、すでに到着しているチャット仲間さん達に
自己紹介をしようとしたその時、なにやら鋭い視線と寒気を感じた。
「……数絵の恋人って、あなただったんですか?」
声を発した人物の顔を見て、一瞬頭の中が真っ白になってしまった。見間違いなんかじゃない、この人は…。
「龍門渕高校の…沢村さん、ですよね…。お久しぶりです、合同合宿以来ですね」
本当に驚いた。まさかこんなところで彼女と再び顔を会わせることになるとは思ってもいなかったのだから。
「こんなところであなたと再会するとは思いませんでした」
「そ、そうですね…」
どうしよう。すっかり体が固まってしまった。彼女の真っすぐな目が私をしっかりと捕えて、離してくれないのだ。
静かではいるけど、どこか威圧感がある。なんだろう、この感じは…?それに、どうしてこの人は数絵のことを下の名前で
呼び捨てにしているのだろうか?いくらなんでも、初対面でこれは馴れ馴れし過ぎる。
なんだったかは忘れてしまったけれど、数絵がチャットで使用しているハンドルネームは簡単に本名が分かってしまうよう
なものではなかったはずだ。
「あれっ…睦月さんと、沢村さんは知り合いだったんですか?」
「ああ、うん…。夏の大会で戦った相手なんだ。直接対決はしてないけど…。」
「私は次鋒だった」
「へえーっそうだったんですか」
数絵が私と沢村さんを見比べて、こんなこともあるんですね、と驚いている。その間も沢村さんは私のことを睨むように
ジッと見続けている。なんだか息苦しい。私に対して何か言いたいことでもあるのだろうか…。
「へぇ…沢村さんと津山さんは知り合いだったんですかぁ〜面白いこともあるもんですねぇ…ぎっひ♪」
「あっ、あたしと葉子はリア友なんだよー。よく二人でカラオケ行くんだぁー。めぐとは前のオフ会で仲良くなったんだ」
「そうなんだよねぇ〜!まぁ、今日は初参加組が多いけどさ、気遣いとか一切無しねー」
「そうそう。みんなで仲良く楽しもうね。んじゃー、そろそろ鍋パー始めますかー!」
「はーい」
――さん達がわいわいと騒ぎだし、みんなで席に着く。いよいよ本日のメインイベントが始まった。
そして何故か私は、なりゆきで沢村さんの隣に座ることになってしまった。数絵は私の斜め向かい側の席だ。
「………………」
私と沢村さんの間に沈黙が生まれる。はぁ…やりにくいな…。話しかけたくても、何を話せば良いのか分からない。
ふと数絵のほうを見ると、他のみんなと楽しそうにお喋りをしながらお鍋をつついている。
緊張しているのか、少しぎこちない笑顔だったけれど、そこがまた可愛い。
私は、人見知りの彼女がこんなに早くみんなと打ち解けられたことを嬉しく思った。
*
「ふぅ…おいしかったですねぇ…♪」
食事が終わり、今はみんなでお菓子を食べながら、雑談をしている。
――さん達は、元から仲が良かったこともあるのか、三人でかたまってお喋りに華を咲かせていた。
「はぁ……」
そんな彼女たちを遠目で見つめながら、溜息がこぼれる。
正直言って、お鍋の味はあまり覚えていない。ずっと隣から沢村さんの視線を感じていて、それどころじゃなかったのだ。
なんでこの人はさっきから、私のことを見ているのだろう…。
「睦月さん、どうかしたんですか…?もしかして、あんまり楽しくないですか…?」
数絵に耳元で声をかけられ、ハッとする。
「ああ…っごめんごめん、ちょっと考え事してただけだから、気にしないで」
「そうですか…?」
「うん…」
「………………」
こうして数絵とヒソヒソと話をしている今も、沢村さんはこちらのほうに視線を向けている。やはり、私に何か言いたい
ことでもあるのだろうか…。
「あの…さっきから私のことを見ているようですが…どうかしましたか?」
「あなたが、数絵の恋人…彼女」
思い切って私から話を切り出してみたら、またそんなことを言われてしまった。
「沢村さん…?さっきもそんなことを言ってましたが、このこと知ってたんですか?」
「……知ってた。こないだチャットで、私は数絵の恋人だ、と書き込みをしていた」
沢村さんが私を指さしながら淡々と言葉を放つ。
「えっ、そんなことしてたんですか?、睦月さん」
「ああ…それはっ…。ごめん…。こないだ数絵の家に遊びに行ったときに勝手に書いちゃったんだ…」
「そうだったんですか。もう…教えてくれれば良かったのに…。恥ずかしいじゃないですかっ…」
「うん、ごめんね」
「………………」
また、沢村さんの視線が突き刺さり、じわりと冷や汗が出てくる。
「ぎっひ…ねぇ、津山さん。せっかくのオフ会なんですから私たちともお話しましょうよ?」
「え?あっああ、それもそうですよねっ。あはは…」
――さんに話しかけられ、私は数絵と離れて三人の輪に混ざり、学校や麻雀のことなどを語り合った。
そうこうしている間に数絵は沢村さんと二人きりで、なにやら楽しそうにお喋りをしている。何の話をしてるのかな…。
すごく気になる。できることなら、私も数絵の隣に座っていたい…そう思った。
だけど、それではせっかく私に話しかけてくれた――さん達に悪いので、あとで直接数絵に聞いてみることにする。
「それじゃあ、今日はこのへんでお開きにしましょうかぁ…♪ぎひ」
――さんが、そう声を上げ、みんなで部屋の後片付けにとりかかる。そして、ようやく解散することに。
ああ…助かった。これでやっと、あの鋭い視線から解放されるのかと思うとホッとする。
*
「………………」
まいった。数絵とは家に帰る方向が真逆なため――さんの家を出てからすぐに別れてしまった。
せっかく数絵に会えたというのに、結局あまり話が出来なかったのが悔しい。聞きたいことがたくさんあったのに。
そして、どうやら沢村さんとは帰る方向が同じらしい。けれど、数絵と別れてから私達はずっと口をきいていない。
「私も、数絵のことが好き…」
「えっ?」
ようやく沈黙が破られたかと思ったら突然、沢村さんはこんなことを言い出した。
「いや、ちょっと待って下さいよ!数絵が好きって…。数絵は、私の彼女なんですよ?分かってて言ってるんですか?」
「それは分かってる…。」
「一体何がしたいんですか…?まさか、私から数絵を無理やり奪おうとか考えてるんじゃ…」
「そんなことはしない。」
「数絵はそのことを知ってるんですか…?」
「いや、まだ何も伝えてない。でも…」
「でも?」
「…なんでもない。それじゃ、私はこっちだから…」
「あっ…」
最後に、私が数絵のことを想うのはあなたには関係ない、私の自由。と冷たい声で言い放ち、沢村さんは去って行ってしまった。
二人は今日初めて会ったはずなのに、どうしてこれだけの短い期間で沢村さんは数絵のことを好きになってしまったのだろう…。
いや、もしかしたら個人戦で対局したことがあるのかな?でも、そのようなことは何も言ってなかったしなぁ…。
駄目だ、考えても全く分からない。余計に頭が混乱するばかりだ。私と数絵が恋人同士にになってから今月で約5カ月になる。
今まで大きな喧嘩なども無く、順調にやってきた言うのに、まさかここに来てライバルが現れるとは思ってもいなかった。
頭がグニャリと曲がりそうになる。
*
1週間後・11月中旬
「ねえ…最近何か変わったことはない?」
「またその話ですか?昨日も聞きましたよ?」
「ああ…ごめん。」
「ふふっ。まあ良いんですけどね。昨日と同じで、何もありませんよ」
「そう…良かった…。数絵…大好きー」
「うわぁ…っ」
あれから、私は毎日のように数絵に何か変わったことはないか、としつこく聞いている。
そして、何もないと言われてホッとする。その繰り返しだ。そうでもしないととても心配で心配で、心が落ち着かない。
「そういえば私、アルバイトを始めようと思ってるんです」
「へぇー、バイト?何か欲しいものでもあるの?」
「ええ、おじい様の誕生日プレゼントを買おうと思って…。書店で短期の募集があったので、そこが良いかなと…」
顔を赤らめながら数絵が答える。その姿を見ると、相変わらずおじいさんの事が大好きなんだな、と微笑ましくなる。
「そっか…。偉いね。頑張って!」
「はい、頑張ります」
「採用が決まったら、遊びにいくね」
「ええっ?だめです、恥ずかしいですよ…」
「大丈夫。仕事の邪魔はしないからさ」
「もう…」
「あ…」
そう言えばもうすぐクリスマスか…。
彼女が手に持っている雑誌に載っている、ツリーの写真を見てそんなことを思い出した。
あぶないあぶない。まだ11月とは言え、一年に一度しかない大きなイベントの存在を軽く忘れかけていた。
「ねえ、数絵…クリスマスなんだけどさ、二人きりで過ごせるかな?」
「…私も、同じことを考えていました。睦月さんと一緒に過ごしたいです」
「本当?良かった…。じゃあ24日は予定空けといてねっ」
「はい。分かりました」
今年は彼女と過ごす初めてのクリスマスだ。何年経っても心に残り続けるような、素敵な1日にしたい。
でもそのためには、やっぱり色々とお金が必要になってくるな…。
よし…。私も何かバイトを始めよう。そして、内緒でプレゼントを用意して数絵を驚かせよう。
「なにニヤニヤしてるんですか?睦月さん」
「んー?なんでもないよ」
この日、私に大きな目標が一つ出来た。クリスマスが楽しみだ。
今回は以上です。では失礼します
288 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/10(木) 01:04:49 ID:55NBmgUp
>>286 GJ!!やっぱりともきーだったのか…
何げにめぐめぐと今宮女子の人も居てワロタ
>>286 GJですよ
ともきーが絡んできたのは予想がついたんですが、まさかの舞さん&葉子さんwith恵さん
こういう展開は大好物です
あぁ鍋食いてぇ…
ともきーとあとの二人が
のどっちとモモだと予想してた自分は
長野女子部屋の住人
毎度好例(?)10日、透華、投下の日にSS投下します。
前スレのカプセルの続きです。PCがぶっ壊れて書き直しましたが
だからとて何かがどうなったわけではありません。
長いので更にもう一段分割します・・・。全部で10スレ前後いただきます。
出演は透華とはじめと智紀でエロは・・・な、い・・・??
「ぅ、ん・・・・・・・?」微かに頭痛を感じて私は目が覚めた。
『ここは…?』ぼんやりしていた視界がだんだん晴れていき、見慣れた天井が目に映る。
自分の部屋らしい。窓から差し込む光は薄く橙を帯びて、間も無く夕暮れ時だと告げている。
今の今まで寝ていた??今日は確か休日だけれど、なんともだらしがないですわね・・・
私はだるい体を起こし、まだ朦朧としている意識の回復を待って―――ッ!!?
「な、なんですのコレは?!!」起きたら私は素っ裸だった・・・
∧∧∧
【 ツイン=カプセル :B 】
∧∧∧
とりあえず服を着て一先ず落ち着く。
・・・何故か起きたら丸裸だったり(ベッドの脇に視線を落とす)
これは・・・『私の子供の頃の服?』丁寧に畳んで置いてありますけど何故こんな物が?
「さっぱり訳が分かりませんわね・・・。」
子供服を元の場所にしまって身を返した時、床に落ちている物を見つけた。
「・・・リボン付きのカチューシャ?はじめのですわね。」
こんな物がここに落ちているという事は・・・はじめがここに来ていたという事??
「帰ってもよろしいと申し上げたのに・・・
いえ、そもそも“私の部屋で私が寝ている時”に、何をしてたんですの??!」
リボンを握り締め、少し顔を引きつかせながら“笑顔”で私は落し物をとどけに行くことにした。
∧∧∧
夕日に廊下が真っ赤に染まる中、私は淡々と歩いていく。
シャンデリアに光が反射して眩しい・・・。
『・・・流石に人っ子一人居ませんわね・・・。』私は誰もいない廊下で足を止めて夕日に向き直る。
巨大な窓から光が一直線に差し込み、外では日に染まる庭で光を帯び輝く花々と
山の谷間に沈もうとする太陽が映った。
変わらない光景、変わらない状況。いつでもこの時は寂しさが滲んでいた。
誰も居なかったわけじゃない、家に使ってくれていた使用人や家庭教師、
むしろ周りは常に人でいっぱいだった。私は人に囲まれるのが何より好き
だからいつも楽しかった。楽しいと思っていた。でも、夕日は嫌でも思い出させられる。
本当に傍に居てほしい人はいつも傍に居ないという事に―――。
夕暮れ時の美しさなどほんの一瞬のまやかしで、直ぐの黄昏に周りの誰も彼も
只の黒い影でしかない事を思い知らされて、瞬く間に冷たい独りの静寂が訪れる。
夕日に対する印象はそんなものだった。
だからこの絶景も全く興もそそらないもので・・・っと。いけませんわ
こんなところで感慨に耽っていては・・・リボンを届けに行きましょう。
遠くの太陽が誰もいなくなった空間を照らしていた。
∧∧∧
さて、着きましたわ。ドーンと扉の正面に立ってドアノブに手をかける。
「はじめ?」呼びかけても(・・・・)返事はない。
「・・・はじめ?いらして?」(・・・・)「・・・?」
中でガサゴソと音がした気がして<ガチャリ>とドアを開ける。
「はじめ。居るのなら返事を―――。」
扉の向こうにはベッドの上で毛布に繰るまって、こちらをキョトンと見つめる二人の目があった。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
住人達としばらく見つめ合って、そのまま<パタン>とドアを閉める。
部屋を間違えた?踵を返そうとして、
『いえ、ここは間違いなくはじめの部屋ですわ!』それに、さっきの、
どこから見ても子供でしたわ、今この家に子供なんて居る筈が・・・!
「ちょっと?!あなた達誰ですの??!」再びドアを<バン!>と開けて。
そこにはさっきの子供達が変わらずこちらを見つめていた。
一人が口を開く。
「・・・おばさんこそだれ??」
「な、お、おば・・・??!わ、私のどこがおばさんに見えるって言うんですの?!!」
「ボクたちからしたらおばさんだもん。ね?」「えっ!う、ぅん・・・?」
突然話題をふられてよく分からないまま賛同するもう一人の子。
「ボク??あなた達はじめの親戚か何かですの?」部屋に入って二人をまじまじと見る。
「あら、ホントそっくりですわね。おまけに髪型もいっしょ・・・。」
見れば見るほどそっくりだった、そのままはじめを小さくしたような・・・。
こ、これはまさか・・・!はじめのお子様??!
『そ、そ、そんな馬鹿な筈無いですわ!』
わ、私達まだ17歳ですのよ?!こ、子供だな、んんんて!!?
で、でも・・・確か14で母になるという話も聞きますし・・・
この子達・・・ちょうどさ、さ3才くらいですわ!!?は、はじめぇ〜・・・?う、う、うぅぅ。
どこからくるとも知らぬ大量の涙を流しながら私は床に手をついた。ショック・・・!
何ですの?この気持ち???『・・・ガーン。』という音が頭の中で鳴り響いていた。
手に握っているリボンを見る。そ、そうですわ、私はただ之を届けに来ただけなんですわ・・・。
さっさとお返しして、砂糖とミルクたっぷりのコーヒーが飲みたいですわ・・・。
私はフラフラでベッドの下まで這って行き、カチューシャを差し出す。
「あ、あなた達のお母さんの物をお届けに参りましたわ。そ、それでは私はこれで・・・。」
「はぁ?おばさんなにいってるの?」「ふぇ?」
「ぼくたちはしんせきだよ。」
「へ?そ、そうなんですの??!」<ピキーン。>そんな効果音がした気がした。
今恐らく周りの者は私の髪がピンと伸びているように見えているのだろう。
はじめが教えてくれた。
「と。メガネのおねーさんがいってたよ。」「え?」
「ぼくたちは“はじめのしんせき”だって。」
「メガネのおねーさん??」
「メガネかけててかみがながくて、すらりとしてておっぱいのおおきい。」
ともきの事?にしても最後の項目は必要なんですの??!こっちを向いてニヤついてますし!
「一つ、よろしいかしら?」「なにおばさん。」
「ど・う・し・てともきがお姉さんで私がおばさんなんですの?!!!」
とってかかろうとする私をもう一人の子が必死に制する。
その子はフッと笑って「うるさいから。」と言った。
『な、な、生意気な子ですわーーーーー!!!!』
ハァハァ。まぁ良いですわ。ここは大人として冷静にいかなくては。
私はしがみ付いている子を引き離し、再び尋ねる。
「ともきに聞いたって、じゃああなた達は分からないんですの?」
「う、ん。きがついたらここにいたんだ、ぼくたち。」「自分のお名前は?」
「おねーさんがおしえてくれなかったからわからないよ。」
「そんな、分からないって・・・記憶喪失ですの?」
「さぁね。」
「やけに落ち着いてますのね。」「ボクはおとなだからね。どこのだれかとちがって。」エッヘン。
「どういう意味ですの!?」「ストーップ!ちょっとまって!」
取っ組み合おうとする二人をまたもや大人しい子が懸命に体をはって制した。
あぁこの子は良い子ですわ・・・。
「あのね、おねえちゃん。ふくをとってきてくれないかな、うごけなくて・・・。」
あら?良く見ると二人は裸だった。
「あなた達も起きたらそうなっていたんですの??」まだ手にあるカチューシャを見る。これは、
「きっとはじめが何か知っているんですわ!」
「なんで?」
「私も起きたら何故か裸でしたのよ!そして部屋にはじめのリボンが落ちていましたの。
これは何かありますわ!はじめに事情を聞き質してハッキリさせましてよ!」
∧∧∧
∧∧∧
それから私は自分の部屋に行って、子供の頃の服を引っ手繰ってはじめの部屋に戻った。
何故はじめの服を取らないのかって?
そ、そ、そんな本人の居ない間に部屋を漁るなんて・・・恥ずかしいですわ!
子供二人が着替え終わって(私の服なのですから当然といえば当然なんですけれど
よく似合っていて可愛かったですわ)私の言い出しで手分けしてはじめを探す事にした。
そういうわけで屋敷の中を隈なく駆け回っているんですけれど、一向に見つかる気配は無いですわ。
既に日は落ちて、屋敷の中は自動式のシャンデリアの白い光に照らされていた。
困りましたわね・・・。その時、前方の十字路にあの子達を見つけて呼び止める。
「どう?見つかりました?」
「みつからなかったよ。」
「ボクたちそとにつまみだされそうになったんだよ、おばさんがさがすとかいうから。」
「・・・はいはい。ごめんなさいですわ。」
全く親戚だというのにどうしたらはじめの血筋からこんな憎たらしい子が出来上がるのか・・・。
「そういえば、ともきは?」「おねえさんもどこにもいなかったよ。」
あと探していない場所は・・・別館ですわね。
もしかしたらはじめもともきもころもの世話に行っているのかも知れませんわね。
そこで別館に行こうとしたところ、大人しい子にスカートの裾を掴まれた。
「?」
「おねえちゃん、あの・・・。」上目遣いで上を見上げて何か恥ずかしそうに頬を染めていた。
「どうしたんですの??」私は膝を曲げて目線を合わせる。大きな瞳が可愛らしい。
「えと、その・・・おなかすいた・・・。」「あ。」言われてみれば、今にも腹の虫がなき出しそうだった。
『はじめを探すのに必死で気が付かなかったんですわ。』
そばに掛けてあった黒い時計を見ると、もう夕食の時間はとっくに過ぎていた・・・。
∧∧∧
「た・し・か・に!腹が減っては戦は出来ぬと先人達の言う通り
食事は元気の源ですけれどあなた達・・・元気が良すぎでしてよーーー!!!?」
目の前には、それはもう酷いという具合に元気なお子様達の食べ跡が散らかっていた。
ここは厨房イン・ザ・龍門渕屋敷。その広さはおよそ畳み50枚分である。
「全く、何故休みの日に私が子供の後片付けをしなくてはならないんですの。」
雑巾を片手に不満をもらす。フキフキ。当の本人達はというと、
「「おなかいっぱい〜。もうたべられない〜。」」ご満足の様子。
「ちょっとあなた達!自分で汚したものぐらい自分で片付けなさい!」
「かたづけって?」
「この汚いのを綺麗にするんですのよ。」
「もとにもどせばいいの?」「ええそうですわ。」
「ならかんたんだよ。」
そう言って子供達は手を繋いで回りはじめた。
「?・・・何を遊んでいるんですの?」呆れて私が尋ねると<パッ>と手を離して
「「おわったよ。」」と言った。
「ハ?」振り返ってみると「!」なんと最初来た時と同じ光景がそこに広がっていた。
「一体これは???」「てじなだよ。」生意気な方が相変わらず偉そうに胸を張って言った。
「流石はじめの親戚ですわね・・・こんなに小さくても立派ですのね。ふんふん。」
感心の念を抱き、
「さて、ここが片付いたのは良しとして。」二人に目線を落とす。
「今度はお二人を綺麗にしないといけませんわね!」袖を巻き上げて二人を摘み出す。
向かう先は・・・マイシャワールーム!
∧∧∧
「いやだ!いやだ!おふろいやだー!」
暴れる子を二人で何とか押さえ付け、服を脱がす事に成功。
「お風呂が嫌とかどこの犬ですのあなたは!」もう一人の子は既に湯船で気持ち良さそうに泳いでいる。
「ボクはいぬじゃない!!それに、ボクはおふろがいやなんじゃないよ??」
人を挑発する調子で言う。
「?」
「おばさんといっしょにはいるのが、い・や。・・・わ!(ぶくぶく)」
頭を湯船の中へ突っ込んでやった。
『危ないので良い子はマネしないようお願い申し上げますわ!』
「なにするんだ!この!!」その辺に転がっている盥を掴んでお湯の中に沈める。
「!ちょ、ちょっとまってくださいまし!」
「え〜い!!!」力の限り振りかざす!
<バシャーン!>
「・・・う〜びしょびしょですわ・・・。」私も頭から湯を被せられてしまった。
「はぁ。本当に一緒に入ることになってしまいましたわ・・・。」
濡れた服をかごに入れて中に入る。(ここは常にバスタオルと浴衣が幾つか備え付けてある。)
中に入るとしばらく悪戯っ子が放心したように私をじっと見つめていた。
「・・・何ですの??」
「べ、べ、べつに!」そのままそっぽを向いて顔まで湯に浸かってしまった。
「?」
この時悪戯っ子はこう思っていた。
『な、なんだ以外と綺麗じゃん・・・////』
つまり見とれて惚けていたのである。
「わ!」また摘み出される。
「さーて・・・しっかり洗って差し上げますわぁ!!」
もう一人の子は自分からとっくにスタンバイしていた。
髪をとかれてシャンプーをぶっかけられて力の限りゴシゴシ洗われる。
「いたいよおばさん!」
「おだまり。」
あの子はきゃははと喜んでいた。向こうはすっかり気に入られているみたいだ。
そんな・・・これは、「さべつだ!」「どっちがですの!?」
うっ・・・呼び方の事?確かに調子に乗って言い過ぎたのかもしれない。
『でもボク達がお姉さんの歳になったらおばさんはやっぱりはおばさんじゃん。』
と言おうと思ったけど止めた。あぁ痛い。いだいいだい。
このまま一方的にやられるのは腑に落ちない・・・。え〜い。お返しだ!!!
<ぷにゅ>
「ぁん!・・・ちょっと!どこ触っているんですの??!」
「あ!ずるいぼくもー!」
「来なくて良いですわ・・・!はんッ(涙)」いい子の方が私の胸に頬ゆすりしてきた。
『な、何なんですの?!その天使の様な微笑みは??!』
気が付くとあの子は私の後ろにまわっていた。
「こ、これ以上何をする、(ぁん)、つ、つもりッ、(はぁん)、ですの・・・?!!」
頬ゆすりしていた子がさらにどさくさに紛れて胸に吸い付いてくる。あぁんもう!
おまけに捕まれて上手く身動きがとれない。
「ず〜っときになってたんだけどこれなに??」
その子が私の頭の上でピリピリしているものを指差す。まままま、さ、か!!?
「そ、それは駄目ぇー!!!!ですわ!!!」
私の必死の叫びも虚しいままにその子は勢いよく、それはもう憎たらしいほどに潔く、
<はむっ>
「ひゃぁぁああああぁぁんんッッ?!!!・・・あ、あ、ぁぁぁ・・・」
力が、抜けていく・・・そのまま<ふしゅ〜〜〜〜ぅ>へなへなと湯気がたち篭る中気を失った。
「あぁ!おねえちゃんがたおれちゃった!」
「な、なに??これ?」
自分の唾液がべっちょりついた“それ”から口を離すと、しおしおになっていた。
まったく不気味である。
「おーい、お・・・おねえさん?」突っついてみてもピクリとも反応が無い。
これしきのことで倒れるなんて情けないお姉ちゃんだ。
これはしっかり者のボクがついててあげなくちゃ。『うんうん。』
腕を組んで自分で頷いていると、あの子はお姉ちゃんにしがみついて
「わ〜ん」と泣いていた。・・・そんな大袈裟な。
・・・。・・・え?嘘、本当に??そ、そんな・・・もしかしてボクのせい??!
「ご、ごめんよおねえちゃん!わるぎは・・・あったけど、こんなつもりじゃないんだ!」
揺さぶってもへなへなしてて動かない。
「お、おきてよおねえちゃん。おねえちゃん!うわぁあああん!」
二人で一緒に泣いてしまった。
「えっぐ、えっぐ・・・お、おねえちゃんうるさくておこりっぽくて、なんかへんだけど
きれいでおもしろくて、ちょっとおかあさんみたいでけっこうすきだったよ!
うぇっぐ、おっぱいもちいさいけどきもちよかったよ!!!(叫)・・・ぃでッ!」
ゴン!とげんこつで殴られた。
「な・にを言ってるんですの?!こ・のエロガキは!」
・・・どうやらおっぱいという単語に反応して起きたらしい。
『何なんだこのおばさん!』
「さぁて・・・あなた達?」ボク達は二人ともガッと頭を捕まれた・・・。
「悪い子にはしっかり“しつけ”をしなくてはいけませんわ・・・覚悟は、よろしいですわね?」
その目は、まるで悪魔の様に輝いていた・・・。
∧∧∧
「全くえらい目に会いましたわ、お陰で時間も大分ロストしてしまいましたし。」
私がそう言うのをベッドの上の小さな二人が何か言いたそうにキッと睨みつけてきたが、気にしない。
「私はこれからもう一度はじめを探しに行きますわ、
お子様はもう寝る時間ですのでさっさと寝るように、いいですわね?」
コクコクと二人が頷く。“しつけ”の成果あってか二人は犬のように忠実になった。よしよしですわ。
「それではお休みなさいまし。」私は自分の部屋を後にした。
∧∧∧
廊下に出ると冷たい空気に体が少々冷える。消灯時間になったので月の明かりしか頼れるものがいない。
『先ずは別館ですわね。』コートを羽織って中庭を突っ切る。外は青色の世界だった。
するとちょうど庭を抜けた所でともきがこちらに向かって来るのが見えた。
「ともき!探しましたのよ!」
「透華・・・。」
「今までどこにいらしてたんですの?ころもの所?」
ともきは頷いてから「衣の相手。」と答える。
「私の役目なのに申し訳ありませんわね・・・。厄介な子供達の世話をしていたんですの。」
「子供達?」「ええ、はじめの親戚だとかいう。そうですわともき。はじめは一緒じゃありませんの?」
フルフルと首を横に振る。
「そうですの・・・はじめったら子供達を置いてどこに行ってしまったのかしら?」
「・・・どこにも行っていない。」「え?」
智紀は考えあぐねていた。もう打ち明けるべきだろうか。
正直とりだてて隠し通さなければいけない事ではない。
むしろ自覚してもらう為に話さなければ意味が無いかもしれない。
しかしタイミングというものが非常に大切だ。
この二人も幾万というチャンスをタイミングが掴めずに
(主にこっちのせいで)逃してきて今日に至るわけである。
だから私が無理矢理でもタイミングを掴ませようと今回の出来事を起こした訳だけれど・・・。
しかしここまで攻めて今更引いても仕方がないか・・・と智紀は考えをまとめ、攻めに出た。
「一はどこにも行っていない。」
「私達屋敷中を探し回ったんですのよ?はじめはどこにも見当たりませんでしたわ。」
「・・・あの子達が一。」
「ハ?」頭の上のアレもぴょこんとなった。「何をおっしゃるんですの?」
「“あの子供達が国広一”。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・?」
これは・・・どう説明したものか・・・。ありのまま言うしかない・・・。
ガサゴソとポケットを弄ってからになった青いカプセルを取り出す。
「これを一に飲ませたら、“縮んで分かれた”。」
・・・しばらくしてから、透華はともきの言いたい事を理解した。
「ハ、はァいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃィィィーーーーーーー???!!???
な、なんですってぇぇえ??!!」
そ・ん・な・馬・鹿・な!!?ですわ!あ、ありえない。
しかしともきの真剣な眼差しから笑い飛ばせずにいた。
「ま、まさか・・・本当なんですの???」コクリとともきが頷く。あわ、あわわわわ。
「こ、こんな事って・・・!は、はじめは、はじめは大丈夫なんですの??!」
「直に戻るはず、後遺症は・・・無い。」『多分。』
「そう、ですの。よかったですわ。」透華は安心してホッと胸を撫で下ろす。
『それにしても人を縮ませるなんてそんな薬・・・。』!
「ともき!!!」
「?!」突然名前を呼ばれて反応する。
「その薬・・・どこで手に入れたんですの?!!」
私はともきに詰め寄る。
こんな効能のもの、聞いた事が無い!普通では絶対手に入れられないはず、
どうやってともきがこのような物を手に入れたのか。場合によっては・・・!
「・・・答えられない。」
「ともき!?」
「・・・答えられない約束・・・。」ともきは頑なに口を閉じた。
そこで私は情けない事に最後の手段に出る。
「ともき・・・。私の“命令”でも答えられないんですの?!!」
しかし
「今日は一切の休日。私と貴女はただの同級生。よって命令に従う理由は無い。」
「なッ!!?」
思いもしなかった反撃に思わずたじろぐ。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
そして二人の間に重たい沈黙が続く。先に折れたのは透華の方だった。
「・・・分かりましたわ。この際それは置いておくとして・・・
何故このような物を使ったんですの?悪戯にしてはやり過ぎでしてよ??」
「じれったいから。」
「え?」
「あなた達はこうでもしないと一向に進まない。」
「何の話ですの???」
「透華と一の話。」
「私とはじめがどうかしたんですの?」
「お互い好きなのにもたもたし過ぎ。」
「は、ははは、す、す、す、!私がはじめを好きですってぇぇえ??!??」
コクッとともきが頷く。
「な、何を根拠にそ、そんな事を?!?」
透華は自分でも分からないけれど何故かともきの言葉に酷く狼狽した。
それを見てともきが一歩前に進む。
その気迫に押され、透華は一歩後ずさる。『お、おかしいですわ・・・攻めていたのは私の筈でしたのに・・・』
ともきに鋭く目を捉えられ、冷汗が浮かんでくるのを透華は感じた。
「透華・・・一が来てから明るくなった。人前で騒いで目立とうとするようになった・・・。」
いつの間にかともきは透華のすぐ間直まで来ていた。
「な、何を言っているんですの、、わ、わたくしは元からそういう性分でして、よ?、、、。」
月光に照らされた眼鏡の奥からの透き通るような目にじっと見られて
自分の中の一切のものが見透かされたような思いになって
身動き出来ないまま透華は震える声でそれだけ搾り出す。
「確かに、そうかもしれない。」
先程と変わらない調子で言ってともきは少し肩を竦める。
「でも、一が来てから露骨になった。
それは安心感から来る気の緩み??目立とうとするのは一の気を引くため??」
こちらの面を喰らわんばかりに近付いて智紀が質問を投げかける。
私はついに耐え切れなくなってともきから身を反らす。
「な、なんでそうなるんですの??
そ、そ、それは別にはじめじゃなくてそ、そう!は、原村!原村和ですわ!
人生最大のライバルを見つけて、その喜びが思わず溢れ出してしまっただけなんですわ!!」
必要以上に明るい声で叫んで私はともきの言ったことを否定した。
ここまで頑なに拒否する程のことでも無いかもしれないのに何故か私は躍起になっていた。
「そう・・・。」ともきが身を引いた。
私はやっと解放された気分になってホッと安堵の音を漏らした。
「透華は一より原村をとるのね・・・。」
「は、は?と、とるとかとらないとか、そういう話をしているんじゃありませんわよ?」
ともきが一体何をしたいのか理解できない・・・。
一方智紀はこうまで言っても臆病なままの透華に半分諦めかけていた。
透華が原村の事を気にしているのは知っている。そんなの誰でも知っている。
もしかしたら本当に自分の思い違いかもしれない。
「なら、それでもいい。ただ・・・」
それでも言える事は言っておきたいと、透華に向かって歩み出す。
・・・その時になって遅いこともある、好きな人の後悔の顔なんて見たくない。
だから告げる。
「(このまま進めば一は貴女の前から“いなくなってしまう”。)」
一も中に溜め込んでしまうから見えないけれど
もう限界に近い・・・。
その瞬間透華が弾かれたように私を見た気がしたけれど
これ以上話す事は何も無いから私はそのまま庭に足を踏み入れた。
∧∧∧
『な、今、ともきは何て・・・???』
擦れ違いざまに耳元で囁かれた言葉。その真意を確かめようと
振り向いた時にはもう、ともきは行ってしまった。
・・・はじめが・・・いなくなる?ですって??
そう言った。確かにそう言った。
「はじめ、が・・・?」
その瞬間頭の中の一切合切のものが忽然消されたかの様な
虚無感を覚えて透華はその場に立ち尽くした。
雲一つ無い空には白い丸が辺りを冷たく照らしいた。
『はじめが・・・いなくなる?』
はじめがいなくなる。はじめがいなくなる。はじめがいなくなる。
はじめがいなくなる。はじめがいなくなる。はじめがいなくなる。
はじめがいなくなる。はじめがいなくなる。はじめがいなくなる。
はじめが・・・いなくなる。
(ただそれだけが空白を行き交い、意識無く歩き出していた足が力無く草を踏んでいた・・・。)
はじめが・・・いない。・・・そんな事考えたことも無かった。まったく認識の外だった。
・・・。・・・。でも、言われてみれば当たり前の事で・・・。
はじめは何も家に正式に雇われたのではない・・・衣の遊び相手にする為に
自分が無理矢理連れて来ただけで、ずっと一緒にいられる訳じゃない・・・。
むしろそんな保障はどこにも無い。
安心しきっていた。はじめが自分の傍を離れる筈が無いとどこか有頂天になっていた。
だから終わりがあるという事に、思い当たることが出来なかった・・・。
このままただダラダラと時間を食いつぶしていったら間違いなくその時が来る。
その時、はじめがいなくなった時・・・私はどうするのか・・・。
『やっぱり想像つきませんわね・・・。隣にはじめがいないというのは・・・。』
(いつの間にか壁にもたれ掛かり、どこかへ進んでいた。屋敷の廊下のようだった。
窓からは相変わらず光が差し込み、暗闇の中、自身を曝しだしていた。)
・・・もしはじめがいなくなってしまったら、
きっと心の中にとてつもなく大きな黒い穴がポカンと空いて、
それは他のどんなものでも埋める事が出来なくて・・・自分は絶望にふさぎ込むか、
自分自身を騙して無理に明るく振る舞わって空回りしている姿が・・・心の中に浮かんだ。
はじめの存在は既に透華の中で変えられない大きなものとなっていた。
『隣からはじめがいなくなったら・・・嫌ですわね。』
不意にポケットに入れた手にある物が当たる。
・・・?『これは・・・?』それははじめのリボンだった。
どうせなら本人に直接渡してあげた方が良いだろうと思ってずっと持っていた。
リボンのふわふわがたまらなく心地好い。
そう、結局今日もずっとはじめと一緒だった。
気が付くと目の前に白い扉が映る。顔を上げると自分の部屋だった。
自然にここへ戻って来てしまった。
『私はやっぱり・・・無意識に安心を求めるタイプですのね。』
ふふっと自嘲して扉を押す。(ここの家は全て内側開きである。)
―――運に任せた駆け引きは本来性に合わないのかもしれない―――。
∧∧∧
『色々あって疲れましたわ。早いとこ寝ましょ。』
ベッドに入りもぞもぞと身を沈める。ふぁ〜あ・・・明日も天気になぁれーですわ〜。
その勢いでまぶたも閉じる。お休みなさい〜いざ夢の国へ出発・・・とはならなかった・・・。
<ふにゅ>
「ひゃん!!?!(涙)・・・だ、誰ですの??!」
布団をめくるとちっちゃいはじめが胸にしがみついている。
「こ、こらやめなさいと言いましたでしょ??!この、」
「ボクじゃないよ。」
「ふぇ?!」
いきなり右で声がして驚く。
見るともう一人のちっちゃいはじめが体操座りの上にジト目でこちらを見ていた。
「お、起きていたんですの?」『二人がいることを危うく忘れるところでしたわ・・・。』
というか笑顔で抱き着いてきているこの子は・・・。
「ん〜・・・おかあさん・・・。」むにゃむにゃ。
私を母と勘違いしている?!!?
「おねえさんをまっていたんだよ。さがしていたひとはみつかったの?」
「!・・・え、ええ。」
「そっか。よかった。」
『探していたのはあなた達でしたわ・・・。』
「ん。」その子が手を差し出してきた。
「??」
「て、にぎっててあげる。」
「何でですの?」
「おねえちゃんがさみしくないように。」その子は少し照れた様子で目線をそらす。
「あなた・・・自分が淋しいんでしょ?」
「ち、ちがう!!おねえちゃんはおっかないからボクがついててあげなきゃだめなんだ!!!」
「え・・・?はじめ?」何故だが顔が火照ってきた。
差し出された手を見る。小さいけれどしっかりとした手。私を引っ張ってあげようとしている手。
それに自分の手を合わせて、握る。
「ふにゃ・・・おねえちゃん?」もう一人の子も目を覚ましてしまった。
私達が手を繋いでいるのを見て、私の左手をとり、小さな両手で包んで、笑った。
そのまま私達は手を繋いだまま仲良く眠りの底についた―――。
∧∧∧
『ところであなた・・・本音は??』
『・・・おっぱいが駄目ならせめて手はと。』
・・・はじめ・・・あなたって・・・
つづく・・orz
解説というより屁理屈は最後に書こうと思っているのですが最後までが長い・・・
それではこれで・・・
>>301 一言だけ言わしてくれ
カオス過ぎてわけわからん
うんまあTAJIRIなんてマイナーだよね。
>>301 GJです。
こ、これは、
一×透×一だとっ……!?
>>305 TAJIRIってあれか?
ダブルリングアウトを狙ってG1を妙な空気にしてたアイツか?
>>286 GJ!あやしい展開にドキドキだぜ。
学校違ってるとこういうときにすれ違いそうだよなぁ。
そしてなんぽさんは鈍感っぽいw
>>290 いつ俺が書き込んだのかと思ったわw
誰だよ。wikiを中途半端に編集して逃げたバカは。
編集出来ないんなら触るなよ。
>301
「縮んで二つに分かれた」で吹いたwwwwww
その発想は無かったでござる。
続きどうなるか気になってたから、透華されて嬉しかったよ。GJ!
新しいなあw
GJ
10スレとか超大作だな
だな、長ければいいってもんじゃない
(12レス分のSSをそそくさとしまいながら)
12レスなら良いんじゃないか?
ファンブック今日買って読んでいたら、池田の名前が池田春菜になってる!?
ファンブックでキャラの名前を間違えるなんて前代未聞の気が。
しかも完全脇役ならまだしも、そこそこ需要キャラなのに。
>>315 まじかよww初めて知った!早く届かないかな・・・
ちょw荒らし(?)の立てたスレに投下されてるw気が付かなかったw
かじゅモモSSを投下します。251からの続きとなります。Hシーン有り。
* * *
思えば、あの時から惹かれていたのかもしれない。理由はよく分からないが、きっと直感というものだったのかもしれない。……恥ずかしい言い方をすれば、一目惚れとでも言うのか。
顔も名前も知らない人間にここまで入れ込む事があるなんて、思いもしなかった。しかし、その後初めて彼女の会えた時、ゆみは自分の直感を確信に変えた。陳腐な言い方かもしれないが、運命の糸を感じていた――
「…………」
勢い良く、1年A組の教室の扉を開けた。放課後の遅い時間という事もあり、仲には誰も居ない。しかし、ゆみはそう思わなかった。
ゆっくりと、歩を進める。歩きながら、初めてこの教室に来た時の事を思い出す。あの時は、自分でも驚くくらいに大胆だったと思う。――でも、本当に、本当にあの時、彼女が欲しかったから、あんな事が出来た。
「――モモ」
立ち止まり、名を呼ぶ。目の前には、何も無い。
「随分と待たせてしまった。約束も、破ってしまった」
それでもゆみは、その場所に誰かが居るか様に言葉を紡ぐ。
「こんな私だが、君は許してくれるだろうか」
西日が教室内に射し、無数の影を作り出す。
「もし許してくれるなら、私はもう一度、この場所から始めたい。君と過ごした、あの大切な日々を」
虚空に手を差し出す。何も無い空間で、見えない何かに触れた様な気がした。
「君とまた、話がしたい。君とまた、触れ合いたい。君とまた、並んで歩きたい。君とずっと、一緒に居たい」
静かに目を閉じ、深く息を吸う。
伝えたい。あの日と同じ言葉を。ゆみ、全霊の想いを込めて――
「私は――――君が欲しい」
柔らかい風を感じた。
温かな感触に全身が包まれる。
伸ばしていた手をゆっくりと戻し、しっかりと、しっかりとその温もりを抱きしめる。
「――やっと、君を見つけた」
「先、輩」
離さぬように、腕に力を入れる。目を開けると、愛しい彼女の姿。ああ、と溜息を漏らし、もう一度囁く様に言う。
「モモ、君が欲しい」
「せんぱいっ……!」
桃子がゆみに抱きつく。体を震わせ、大粒の涙を零す。
「やっと……やっとまた逢えたっす……! せんぱぁいっ……!」
「すまなかった、モモ。君を一人にして、寂しい思いをさせてしまった……」
「でも、先輩がまた思い出してくれたから、戻って来れたっす……!」
涙を拭って、桃子は微笑んだ。
「……モモのお陰だよ。このマフラーが在ったから、君を思い出す事が出来た」
「それは……私の……」
「きっと、モモの想いがこのマフラーに残っていたんだな……って、はは、何を言ってるんだろうな私は」
どんな現象、理由があったにせよ、結果として桃子と再び逢う事が出来た。それだけで、ゆみは充分だった。
「せんぱい」
「何だい、モモ」
桃子が瞳を潤ませて囁く。
「キス、して欲しいっす」
「ああ」
桃子の言葉に頷くと、ゆみはそっと唇を重ねる。しばらくして唇を離すと、もっと、と目でおねだりをしてくる。
「せんぱい……」
「モモ……」
幾度と無く繰り返されるキス。――それでは足りないと言わんばかりに、桃子が身体をすり寄せてくる。その意図を読んだゆみは、桃子の耳元でそっと囁いた。
「続きは私の家で……たっぷり、な」
「……はい」
ゆみが桃子と手を繋ぐ。
今度こそ、二度と離さぬように。二人はどちらとも無く、しっかりと指を絡めた。
* * *
桃子の身体を、ゆっくりとベッドに横たえる。ゆみを見上げるその瞳は、これから行われる行為への期待から、うっすらと濡れていた。
「せん、ぱい……」
ゆみの手が桃子の頬に触れる。そこから伝わる熱は高く、心を昂ぶらせる。
「モモ……んっ……」
「あっ、んふ……」
我慢など出来よう筈も無く、待ちかねたように、二人は唇を重ねる。触れ合う唇の柔らかさに胸躍らせ、舌先をゆっくりと差し出す。
「んっ、ちゅる、んふっ……んちゅ……」
「んぁっ……ん、ちゅ、くちゅっ…・・・」
ゆっくりと舌を絡め、互いの唾液を口内で絡め、混ぜ合う。ちゅるちゅると音を立ててその甘露を吸い、呼吸を忘れて深い口付けに没頭する。ゆっくりと離した唇は、とろりとした細い糸で繋がれていた。
「モモ……好きだよ……」
「私もっす……先輩……」
息を整えながら想いを交わす。そうしてまた、何度も唇を求め合った。
「あふぅ……せんぱい……もっと、触って下さい……」
「……ああ、今日は沢山、してあげるから……」
生まれたままの姿。火照りきった肌と肌で、抱き合う。しっとりとした素肌の感触、感じる鼓動、甘い香り。
その耐え難い魅惑に誘われるまま、極上の果実を味わうように、ゆみは桃子の乳房にかぶりついた。
「んふぅっ!」
びく、と桃子が僅かに身体を反らす。口いっぱいに広がる桃子の甘い肉体の味を堪能するように、ゆみは舌でこりこりと硬くなった乳首を舐める。
「ひうっ!」
桃子の嬌声が漏れる。その声は心地良く響き、ゆみの劣情を煽っていく。
「モモ……私も……」
ゆみは桃子の手を取り、自分の秘所へと導く。熱を帯びたその場所はしっとりと濡れ、桃子の指を待ちかねていたかのように受け入れた。
「んうっ……!」
くちゅん、と桃子の指がゆみの中に沈む。瞬間、駆け上る様な快楽にゆみは声を上げた。
「あぁ……先輩のココ、すごく濡れてるっす……」
桃子が指を動かすと、水音を立てて秘肉が指を咥えてゆく。とろとろと溢れ出した蜜が桃子の指を伝い、流れ落ちる。
「んあっ、モモぉっ……!」
恐らくは、桃子以外殆ど聞いた事は無いであろう、ゆみの甘い声。自分だけに見せてくれる表情に、桃子は指の動きを速めた。
「ふぁぁあぁぁっ!」
挿入する指を増やし、かき混ぜる様に動かす。ぐちゅぐちゅといやらしい音を立て、ゆみの秘肉から蜜が迸る。
「せんぱいっ……私にも、して下さいっす……!」
桃子もゆみと同じ様に、その手を取って秘所へと宛がった。すぐさまゆみの手も、桃子を求めて動き出した。
「ああんっ! せんぱい、せんぱぁいっ……!」
ゆみの指の動きに合わせて、桃子の腰が妖しくくねる。どろどろ、ぽたぽたと二人分の愛蜜がシーツに大きな染みを作る。
「「ん、ふぁぁあぁぁぁあぁっっ…………!!」」
大きく身体を反らし、達する二人。ぐったりと折り重なるようにベッドに倒れ込み、荒い息を吐く。
「はぁ、はぁ……ぁ……モモぉ……」
「んはっ、ふうっ……せんぱいぃ……」
――足りない。汗と唾液、愛液に濡れながら、それでも二人は離れない。今までの空白の時間を埋める様な激しい交わりを、心が求めている。
「ちゅぱっ、んぐ、ちゅる……」
「くちゅ……ぁん、んくぅ……」
息を整えるとすぐに、深い口付けを交わす。優しくも荒々しく、貪る様なディープキス。手と手を重ね、指を絡めて、胸を擦り付け合う。そして――秘部同士で、口付け。
「ああっ!」
「んくぅっ!」
ぬちゅ、ぷちゅ、くちゅ、と重なる秘部から湧き水の様に溢れる淫液。二人は夢中で腰を動かし、嬌声を上げる。
「モモっ……モモ……モモぉっ……!」
「せんぱいっ……せんぱいぃ……せんぱぁいっ……!」
二人で一緒に上り詰めていく。想う人――かけがえの無い、愛する人と共に。
「せん、ぱ、あ、あぁぁぁぁあぁあぁっっ…………!!」
「くふっ、うっ、んぁぁああああっっ…………!!」
最大級の絶頂が、二人を襲う。ぷしゅ、ぷしゅ、と飛沫の様に愛液が吹く。
どさり、とベッドに倒れ込む。心地良い疲労の中、何とも言えない幸福感に包まれて、二人は抱き合いながらまどろみの中に落ちていった――
* * *
「…………ん…………ぅ…………」
眩しさに、意識が覚醒する。ゆっくりと目を開けると、そこには彼女のあどけない寝顔があった。
「……モモ」
柔らかい頬を突っつくと、むずがる様に反応した。ゆみは苦笑すると、眠っている間に離れてしまった桃子の身体を、もう一度抱きしめた。
「ん……ぁ……せん、ぱい?」
それで桃子も目が覚めたのか、うっすらと目が開いてゆく。それから少しの間、自分とゆみの身体を見て、顔を赤くした後、嬉しそうに微笑んだ。
「えへへ……せんぱい、せんぱいだぁ……」
そう言って身体をゆみにすり寄せてくる桃子の笑顔は、欲しい物を手に入れ無邪気に喜ぶ子供の様だった。
「……モモ。本当に、モモなんだな」
「当たり前っす。私は私っすよ」
ゆみは桃子を抱く腕に力を込める。
「もう、消えたりしないよな? 私の前から居なくなったりしないよな?」
「……はい。もう、大丈夫っす。消える理由が、無くなりましたから」
こんなにも自分の事を想ってくれる人が居るのなら、もう消える事は無い。例え消えても、必ず探し出してくれる。桃子はそう確信していた。
「……そうか、良かった」
ゆみが安堵の息を吐く。
「それなら、安心して言えるよ――モモ」
「?」
ゆみの目が、真剣味を帯びる。桃子の瞳を真っ直ぐ見据え、しかしその視線は柔らかく優しいものだった。
「桃子。愛してるよ」
それは、とてもシンプルな言葉だった。
「ふぇ」
桃子は思わず間の抜けた声を出す。ゆみの言葉が一瞬理解出来なかった。
「あの、せんぱい、今なんて」
「愛してる、と言ったんだ。モモ」
聞き間違いでは無かった。その言葉は、桃子自身がゆみに言おうとして、結局伝えられなかった言葉――
「――私も――」
「うん」
「私も、先輩の事、愛してるっすよ?」
「ありがとう、モモ。私も、愛してるよ」
嬉しさで、涙が止まらない。ゆみは、そんな桃子の頭を撫でながら、優しく微笑んでいた。
* * *
――人々の喧騒の中、ホームに立つ。あと10分もすれば、住み慣れたこの町とも暫くの別れになるだろう。
「向こうでも頑張れよ、ユミちん」
東京に発つゆみを、麻雀部の皆が見送りに来ていた。その中には、彼女が愛する人も居る。
――その後、桃子の存在は皆の記憶にも戻っていた。結局、一体何が原因で、どうしてこんな不思議な事件が起こったのか、それは誰にも分からなかった。
しかし、ゆみにとってそんな事はもうどうでも良かった。桃子というかけがえの無い存在を、確かなものにする事が出来たのだから――
「先輩……」
行かないで、と桃子の瞳が語っていた。しかしそれは、仕方の無い事だと桃子も理解はしている。
「心配するな、モモ。また夏には戻ってくるから」
そう言って桃子の頭を撫でる。うぅ、と小さく呟いて、桃子は俯いた。
「せんぱい」
「何だ」
「お電話、待ってるっす」
「メールも忘れないさ」
「浮気、しないで下さい」
「天地神明に誓って」
「……せんぱい」
「……何だ」
「キス……して欲しいっす」
「……ここではやめろ」
「じゃあ、抱きしめて欲しいっす」
「……こっちにおいで、モモ」 「ワハハハハハハ、ユミちんユミちんそれ以上いけない」
「……すまん、蒲原。つい」
「蒲原先輩の、ケチ」
こんな他愛の無い会話も、暫く出来なくなるかと思うと、少し寂しい。しかし、それでも不安は無い。遠く離れても、また会える。一度は存在すら消えていたのに、再び巡り逢う事が出来たのだから。だから、これくらいは何ともない。
「それじゃあ皆、またな」
ホームに新幹線が到着する。ドアが開き、人々の流れに乗って、ゆみは新幹線に乗り込んだ。最後に一度振り返り、桃子を見る。
その笑顔を、目に焼き付ける。ゆみも負けないくらいの笑顔で、桃子にひと時の別れを告げた。
* * *
「――で、だ。モモ」
「はい?」
「何故君が私の席の隣に座っているんだろうな」
「指定席っすからね」
「何故上手い具合に隣の席を買えたんだろうな」
「先輩が切符を買った後にこっそり買ったっすからね」
「今頃親御さんは心配してるだろうな」
「許可は取ったっす」
「……はぁ、分かったよ」
隣の席に座ってニコニコと笑っている桃子の顔を見ると、ゆみはそれ以上追求する気にはなれなかった。
「春休みの間だけっすよ。新学期が始まったら、ちゃんと帰るっす」
「当たり前だ。そうでなければ、私でも怒るぞ」
「きゃー」
屈託の無い笑顔で、桃子がはしゃぐ。その笑顔を見るだけで、ゆみは幸せな気分になる。
「モモ」
名前を呼んで、頬に口付ける。そこから桃子の顔が真っ赤に染まるのを見て、ゆみは苦笑した。
「……ずるいっす、せんぱい。私もっ」
桃子はゆみに覆い被さる様に抱きつくと、唇を重ねる。
「んっ……」
「ふぅ……」
目を閉じて、息を止める。指を絡ませ、体を重ねる。新幹線の走行音を遠くに感じながら、二人だけの世界に入っていく。
「「愛してる」」
どちらともなく、囁く。
長いトンネルに新幹線が差し掛かり、外の景色が闇へと変わる。
その寸前。
窓から差し込んだ暖かな陽の光が、彼女の右手の薬指に光る指輪に反射して、キラリと輝いた。
了
以上で終わりです。長い話になってしまいましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。
ちなみにモモは一体何処に消えていたかというと、恐らく「えいえんのせかい」です。
7スレ目辺りに少し話題として出ていたのでそこを元にして書き上げました。
326 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/11(金) 17:32:28 ID:XMIP5ssJ
うおおおモモおかえり!
>>325 GJそしてお疲れさまです。楽しませてもらいました。
淡←照→菫。9レス
あんまりエロくない。無念。
オリジナル設定が山ほどあるけど、とりあえず照が部長ってことで
◇は視点変更
■は章替え。視点変更は無し
私にとって宮永照は目標だった。
大星淡の時代と、後の人々に認めさせるために、
まず最初に乗り越えなければならない相手。
そして、最後に引導を渡さなければならない相手。
14のあの夏に、液晶の向こうで初めて見たあの日から、
ずっと目指してきたあの人に、明日会える。
そして宣戦布告をする。
そのために白糸台に入学した。
そのために今私は居る。
写真立ての中の宮永照をちょんと指で弾き、
ふと空を見上げると、月のないただ黒い空間が広がる。
東京の空は低く、暗い。
月がなければ、ただただ暗い。
電気を消したテレビよりも、味気ない。
そこへ、神様の仕業だろう。
この空にインパクトを与えるべく、
闇を切り裂き、流れ星が唐突に落ちた。
思わず指を組んで祈る。
明日はいい日でありますように。
と。
◇
宮永照は気分屋である。
少なくとも私は、そう認識している。
今このように、一軍(つまりチーム虎姫の面々)の前で、
重要な案件について報告しているというのに、
まるで集中力を示さない、興味がない。
中空を見つめ、視線をふらふらとさせるのみだ。
彼女を知らない人間からしてみたら、知能を疑うような有様であろう。
無論私は宮永照の全てを、このまる二年間、
つぶさに把握し続けてきたわけだから、
彼女のこのような様子も、いつものことだと流すこともできる。
部活後、部屋でふたりっきりで説明し直さなくちゃならないだろうな、
と思うと、それはそれでやや気が重いが、
部員たちの手前、溜息もつくこともできず、
私はそのまま説明を終えた。
「以上、"新入生がやってきちゃった☆ドキドキ?大麻雀大会!"の
結果について報告を終える。
なにか質問のあるものは?」
したっ!と銀髪ベリーショートの亦野が片手を上げる。
「その副題、どーにかなんなかったんですか?」
どうやら私のネーミングセンスに文句があるらしい。
愚問はとり合わないことにしている私は、
亦野の疑問を丁重に無視して、ミーティングを終えた。
■
皆が退室したのを確認して、私は照のそばに立つ。
「お前、今のミーティング、まるで聞いてなかっただろ。」
腕組みをしながら、ジト目で見つめる。
「んあ?ごめん、昨日寝てなくてさ。」
部活が終わったあとは、食事以外なにもすることもない。
対局以外何も考えなくてもいい
麻雀進学校としては、まさに理想的な環境と言えるが、
こいつの場合は、単に自堕落の時間を与えられてるに過ぎない。
与えられた自由時間を、勉強するでもなく、牌譜を研究するでもなく、
ネット麻雀で己の理論を実践してみるでもなく、
ただ惰眠と漫画で過ごすだけだ。
…なんでこんなヤツが部長なんだろう。
これみよがしにため息をつき、資料を机に投げる。
「新入生の資料と牌譜だ。確認しておけ。部長なんだから。」
ペラペラと2,3枚適当にめくると、本当に興味がなさそうに私を見上げる。
「めんどい」
予想通りの返答に、私は照の真後ろに立ち、
後頭部を胸と左腕でガッチリと固定した上で、
予め抽出しておいた新入生をピックアップして見せる。
「ほら、こいつとかどうだ。この局面で三萬を捨てないとかなかなかできることじゃないぞ」
「でもその卓で結局三位だろ。ダメダメ」
「じゃあこいつとかどうだ。本格デジタル派だぞ」
「つまらん」
「全中二位の…」
「問題外」
こんな感じで、抽出したほとんどの生徒に関しては、一瞥もされずに不要と判断された。
まぁ私も今年は不作とは思うが。
「大体さ」
胸の中の照が切り出す。
「うちのスカウトって本当に大丈夫なのか?」
私の胸の中に頭をうずめるようにして、椅子を傾ける。
「去年は天江衣と神代小蒔を探せなかった。」
私の左手に指を絡め、手の甲にキスをする。
背筋を暖かいものが流れる。
「今年は全中覇者をとれなかった。」
「原村和に関しては親御さんの許可はとったのだがな…」
そのまま舌を上になぞり上げる。
浸蝕は二の腕にまで到達した。
下腹部を中心に、破裂しそうなほどに不安と恍惚が支配する。
「いい仕事をしたのは二年前、お前をスカウトした時だけだ」
私の顎に手をやり見つめる。
先程までの怠惰な様子が嘘のように、美しい。
「せめて寮に戻ってからにしてくれ…」
ささやかな抵抗を口にしてはみたものの、
もはや照の魔力には逆らえず、彼女の双眸以外を見つめる事はできなくなっていた。
顔がどんどん上気していくのを感じる。
「やだよ、今すぐ寝たいんだ。」
そうだな、それならしょうがない。
■
本当にこいつは、宮永照は最低な人間だ。
肌を触れ合っている最中に、ある牌譜に吸い付かれていった。
残されたのは、机の上で乱暴に制服を脱がされた私だけ。
熱心なのはいいが、火照った身体を持て余している、わたしの身にもなって欲しい。
「こいつの牌譜、これで全部?」
照が聞く。
知るか!と叫ぶ直前になんとか思いとどまり、とりあえず名前を確認する。
大星淡。
ピックアップリストから漏れた、他愛もない奴だ。
えーと、とそそくさと制服を着ながら、情報を頭の引き出しから引っ張り出す。
「あぁ、それで全部だ。そんな運だけで打ってるような奴が、そんなに気に入ったのか」
すぐさま照が返す。
「見慣れたお前の胸よりはな。」
嗚呼、こんな時言う台詞って、たしかあったよな。
そうそう、もうなんていうか、お前と過ごした二年間、何十回言った言葉か分からないよ。
「ふざ…」
「なぁ、こいつ欲しいんだけど」
常套句を途中で遮るかのように、照がモノ欲しげにわたしを見つめる。
おもちゃを買って欲しい子供のように言うんだな、お前は。
呆れて口が利けないって言うのは、こういう事を言うんだろう。
「まだ居るかな?」
そう言って照は会議室から部室を覗く。
本当にお前は最低な女だよ。
「ミーティングの前に一年生は全員帰した。もう部室にはいないだろうよ」
制服を着込み終え、髪をかき上げてわたしが言う。
それどころか、校内にまだ居るのは私たちくらいだろうがな。
「居た。ほら、あいつ」
本当だ。
本当にお前は、引きの強さだけは凄まじいな。
◇
わたしは未だに麻雀卓に取り残されていた。
自分の出来ることは全てやった。
宮永照なら、わたしのこの打ち方を意図も含めて理解するだろう。
いわば今日の10半荘は、白糸台、そして宮永照に対する試しだ。
でも
でも
そんなの関係なしに勝ちまくりたかった!
麻雀卓に突っ伏して、悔し涙に明け暮れて、
気がついたら外は真っ暗だ。
春とはいえ、まだまだ日が長くなるには遠い。
多分目は真っ赤になって、腫れぼったくなってるんだろうなぁ。
あこがれの白糸台入学一日目に、宮永照にも結局会えずに、
一体わたしはなにをやってるんだろう。
馬鹿をやっているんだろうな。
…もうなんかどうでもいい。さっさと帰ろう。
そう思って立ち上がると、部屋の片隅から光が漏れた。
■
「大星淡さん、だね」
ややあって光の向こう側から来たのは
え、嘘。
思わず目をパチパチさせる。腕でゴシゴシ目をこする。
間違いない。夢じゃない。幻じゃない。
アレはわたしの憧れ。わたしの目標。わたしの倒すべき相手。
すなわち、宮永照!
「ふひゃ!ひゃ、ひゃい!」
最悪だ。
お腹に全く力が入らない。そういえば今日はなんにも食べてない。
まかないのおばさん、ごめんなさい。明日からは朝からちゃんと食べます。
でも朝からボリューム満点の、あのモーニングはどうかと思います。
自分の体重やカロリーが気になる乙女心くらいは、分かって欲しい。
そうじゃなくて!今集中すべきは目の前のことで、現実逃避している場合じゃない!
そう!なぜ白糸台に来たのか、宮永照に対してなにをすべきなのか。
わたしは挑戦状を叩きつけるべく、闘志を燃やして宮永照に向き合った。
あぁ隣に誰か立ってる。アレは確か弘世菫。今年三年の…
少し視線をそらしたその瞬間だった。
わたしのライバルは今まで居た場所から姿を消していた。
と言うよりわたしのすぐ側まで来ていた。
しげしげとわたしの顔を見まくる。舐めるようにとはこのことを言うのだろう。
本当に舐め回されている様子を想像して、軽く恍惚となるが、
しかしここは、キッと睨み返すべきではなかろうか。
あぁでもこんな間近で凝視されるのは、ちょっとヤだな。
泣きべそかいて目が真っ赤だし、腫れぼったいし、ファンデーションもつけてないし、
唇カサカサだし、せめてリップクリームを塗ってくればよかった。
コレじゃだらしない女だって思われちゃう。
そんな感じで思考をうろうろとしていたら、宮永照はわたしの制服に頭を預けてきた。
っていうか、わたしの豊満とは口が裂けても言えない胸に、頭をうずめてグリグリしている。
「咲と同じ匂いがする…」
うわ、うわ、うわ、ダメだよ。胸がドキドキしているのがバレちゃう!
「ダメぇ!」
わたしはそう叫ぶと、宮永照をドンッと力の限り振りほどいた。
息を整えて、整えて、整えて。よし!
「私は大星淡!あなたを倒すために白糸台に入学した!」
ビシッと宮永照を指さす。うん、完璧だ。
どうだ、宮永照。私はあなたのライバル…ちょっと…顔が近いよ
私の挑戦を受け流すかのように、一足飛びで再び接近した宮永照は、
宮永照は宮永照
さらに宮永照
そして宮永照
照照照照照照照照照照照照照照照照照照照照照
んちゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アレ、たしか私って今、宮永照に宣戦布告したよね。
なんでキスしてるの?
というかわたしファーストキッスなんだけど。
でも初めてが憧れの宮永照だったら最高だよね。
あ、舌まで入れてる。
やだなぁ初めてなのに。
頭を片手で抑えられてるけど、そんなの必要ないのに。
もっと腰に回した左手の力を入れて。あなたの体温を感じたいよ。
あ、結構胸あるんだ。もっと小さいかと思っていたけど。
小さいといえば、身長結構低いんだ。
わたし背伸びしなくちゃキス出来ないかと思ってたけど、
大体わたしと同じくらいかちょっと高いくらいだよね。
えぇい、もうじれったいから、こっちからも抱きついちゃお。
あぁ幸せぇ〜。
「いい加減にしろ」
誰?すっごい無粋。
照はわたしとキスするのに忙しいんだから放っておいて。
ほら照だってそんな言葉聞いてない。わたしとキスするのに夢中だもの。
ね?腰に回していた手が構わず動いてる。
え?おしり?ちょっとそれはさすが大胆っっ!
「いやぁっ!」
思わずまた突き放してしまう。
「なんだよ」
明らかにムッとした声で宮永照が言う。
あぁやっぱり拒否ったから怒ってるんだ。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
「ご、ごめんなさい!今度は抵抗しませんから続きをして!」
頭を下げて必死に謝る。もう顔から火が出るほど恥ずかしい。
こんな破廉恥な言葉が、わたしの口から出る事自体が驚きだし恥ずかしい!
でも宮永照の怒りの矛先はわたしじゃなかったみたい。
「して欲しいんだったらちょっと待ってろ。済んだらしてやるから」
「お前が欲しいって言ってたのはそいつの身体か?ちがうだろ。」
横に居る弘世菫に対してみたいだ。良かった。嫌われたわけじゃないんだ。
あれ?
「違くない。身体も心も麻雀の腕も欲しい。」
「とりあえず、後付けであるところの身体と心は置いとけ。」
「やだ。」
「ヤダじゃない。だから独り占めするみたいに抱き寄せるのは辞めろ、といってるだろ。」
「あ、分かった。お前もこいつが欲しいんだろ。」
「わたしが欲しいのはお前の心だけだ!」
静寂
すごい勢いで繰り返される応酬に、わたしは翻弄されるばかりだった。
熟成されて完成されたコントでも見ているかのような、現実感の無さ。
その舞台に引き連れられたかのような、不安感と疎外感。
嫌だ。
わたしは宮永照の中で中心に居たい!
「わたしなんて宮永照の全てが欲しいです!」
言ってしまってから羞恥で顔が真っ赤になる。
ともあれ、ふたりだけの世界には割り込むことはできたみたいだ。
こほん、と咳をひとつついて弘世菫が言う。
「とにかく。歓迎しよう、大星淡くん。今日から君はチーム虎姫の一員だ。」
宮永照もわたしからひとまず離れて、握手を求めてくる。
「よろしく」
わたしは憧れの存在に両手で握手して頭を下げた。
「よよよよよよよよよよよよろしくおねがいしますっ!」
こうして、わたしの白糸台での生活が始まった。
以上です。
338 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/11(金) 22:43:31 ID:XMIP5ssJ
GJ
この頃にぎわってていいな
/:::::::/::::::::::::::ル│::/─ラ::::::|.::::::::::::::ハハ:::::::::::::|::::::\
/::::::::|::::::::::::::/レ ∨ リル |::::::::::/ ノ│::::::::::::|:::::::::│
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∠::::::::::ハ:::::::: レ . ==ュ r== ノ│::::::::|::::::::| あー?
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/ ゙゙\ \ /::::::::::::::〉 |\
/ ヽ \ /\::::::::/∨ \
>>337 うぎゃああ!!いいぞ!!もっとやってくれ!!!
まじで続きを求む!!お願いします!!
ずっとニヤニヤしながら読んでましたよw白糸台最高っす。
淡←照→菫もいいなぁwwもうとにかく感動した!
脱がされて放置されて、それでも照にぞっこんな菫様が切なくて可愛い
照は咲以外の人には愛情を注がなさそうだけど、体だけは求める・・・みたいな
GJ!GJ!
>>337 GJです!!寝る前に良いものが読めて幸せだーっ。
別の方の照菫(咲)SSも、エロ有りで大人な百合って感じで好きだけど、こうゆうタラシっぽい照も好きだー!!
あなたのおかげで新たな生き甲斐を見つけました。
続きはエロシーン増量してくれると嬉しいです。ニヤニヤ
いや、ごめんなさい。とにかく続きに期待してます!
半分以上遅レスだけどどれもGJ
それからなんか無駄に長くてすんません
>>261 何がどうなってこういう展開になったのか知りたいですね
>>271 続きあれば期待してます
酔ってキャラ崩壊したキャプテンも悪くない
>>286 まさかともきがライバルになるとは
何か起きそうでちょっと不安だな
>>301 なんかいろいろすごいですね
>>325 元に戻って良かった
ワハハたちの出番ラストは少なかったけどかじゅモモメインだし仕方ないか
新作に期待してます
>>337 照とかいろいろあれだけどこういうのも悪くない
咲が出てくるのが楽しみだけど出るのかな?
前スレで「合宿初日の喧騒」を書いたものです。ちょっと気になってしょうがなくて来ました。
すいません。少し聞いてください。
今日、ここに来る前にまとめwiki覗いてみたら、前作が昨日のカウント凄い数字になってて、
最初うわすげ!何で?って、単純に喜んでたんですが、コメントに不正操作じゃないかって…。
それってもしかして、私が疑われてるんでしょうか。
カウントが多いことのメリットって、作者が嬉しいってだけですよね?
つまり作者が…ってことになるんでしょう?
拙作が人気ページに載るのは、凄く嬉しい。それだけ読んでもらえたってことだから。
でもそんなことで人気ページに載ったとして、何か意味があるんでしょうか。
沢山の人に読んでもらえたっていう嬉しさは、操作したんでは味わえないですよね。
カウント数のうちの多くが自分自身ってことなんだから。
拙作が誰かに読んでもらったのであれば、たとえ1件でも嬉しいです。
それで感想とかもらえたら、きっともの凄く嬉しいです。でも、自演では感想もらうも何もないですよね。
私は何もしてません。昨日は1日仕事だったし帰宅は終電一本前だったし。
隠れおたくなので、このカウント数を誰かに自慢することもしません。っていうかできません。
新作SS書き上げました。奇しくも前作の続きです。おもしろいって言ってくれた人がいて、嬉しかったから。
毎日こつこつ書いて、先程やっと仕上がりました。
今日の夜にでも投下しようと思って、その前にwikiでも見ようかと思って行ったらなんか…。
貧乏暇なしだし、ここんとこ体調不良でしんどいし、次いつ書けるか、ここに来れるかわからない。
それに、時間がたつほど投下するの嫌になったりするので、正直思い切って投下したい。
でもこのタイミングで今回の話を投下するのはまずいのかなとか思って、悩んでいます。
はい、誘い受けです。すんません。でも不安なんだ。投下してもいいですか?
wikiは、単純に沢山読んでもらえた、嬉しいって思ってます。読んでくれた人ありがとう。
でも、今後投下したとき、あのとき不正をしたかもしれない奴だ、とか思われるの嫌なんです、すごく。
余計に疑われるかも、とかも考えたけど、そんなことになったら、もうここには来られないし、
今、唯一の楽しみであるSSも書けなくなる。だから、こんなレスを書きました。
信じてもらえるかどうかわからないけど、誓って私は何もしていない。
そもそもwikiってよくわからないから、どうしていいかもわからない。
鳴動っていう拙作のミスを、おっかなびっくり直したことはあるけど、
編集っぽいことをしたのは過去その1回だけです。
長々と嫌な話してごめんなさい。誰かに聞いて欲しかったんだ。すんません。
うるさい黒人だな
>>347 俺も咲関係じゃないけどWikiの管理人やっててここの保管庫と同じように”人気ページ”なるものを
設置してますが、一番アクセスの多いページが何故か1位にならなかったり、逆にそれほどアクセス数が
多くないページが上位にランクされてたり…こんなことしょっちゅうですよ。
原因はおそらく、そのランキングを表示させるプラグインっていうタグの記述に誤りがあるんだと思うんですが…
だけど自分はそこまでタグに詳しくないので未だに解決できないままでいます。。
それと、一人で何回も同じページにアクセスすればカウンター数は増えますが、その数字自体を編集で操作
するのは無理です。あまり気にしなくて良いと思いますよ。SSの投下期待してます。
ごめんなさいアンカー間違えました。
上レスは
>>345さんへです
>>345 気にせずどんどん投下してください
あのにぎやかな話自分は気に入ってます
どうでもええわ
不正と言われて気持ちいい人はいないだろ。
解決したんだしよかったじゃん
つーかまとめwikiに一日300もカウントがあること自体が驚き
345です。昼間は頭に血が上っちゃってスレ汚し失礼しました。
>>347 さん、ありがとうございます。ほっとしました。
ネットの世界はわからないことだらけで最近ちょっと恐いです。管理って大変なんですね。
>>349 さん、ありがとうございます。投下します。今回も気に入ってもらえると、嬉しいんですけど。
>>351 さん、ありがとうございます。わかってもらえて嬉しいです。
不快に思われた方、すみません。もうこういうレスはしません。
では、気を取り直して、次レスより 6レスほど
355 :
合宿Uの@:2009/12/12(土) 18:19:46 ID:cDdXZJ8x
出演:あゆむと純とキャプテンと…あとみんな また合宿の話
百合分そこはかとなく しんみり分小さじ一杯 ばか度MAX エロひとつまみ
10スレ724 の続き 懲りずにいきます それでは、
↓スタート
*********************
「あした晴れたら」
「大丈夫、慣れっこです。やるべきことは沢山あります」
ここは龍門渕家、杉乃あゆむは朝から忙しく立ち働いていた。
他の面々は、4校合同合宿参加のため、昨日の朝早く出発した。今はあゆむひとりである。
広大な屋敷のなか、他の使用人と接触する機会はほとんど無かった。
昨日5人を送り届けた後、ハギヨシは戻ってきたが、今日は朝から顔を見ていない。
清澄からの招待状には、龍門渕高校の団体戦出場者5名を招待したい旨、記されていた。
透華はあゆむも連れていきたがったが、あゆむは辞退した。
「私が参加しても、お邪魔になるだけですし、先方の準備の都合もあるでしょうし…」
あゆむも同校麻雀部の一員であることに変わりはないが、正直麻雀には全く自信が無い。
そもそも透華が選りすぐって集めた純たちとは、その地力の差は比べるべくも無かった。
「仕方ありませんわね…。いいでしょう、私たちが留守の間、ゆっくり羽を伸ばしなさい」
少しだけ悲しそうな顔をしたあと、優しく微笑んで透華は言った。
休暇の許可が下りた訳だが、いざ休めと言われても、どうにも落ち着かない。損な性分だ。
「洗濯物はリネン室に持ってったし、書斎のお掃除も済んだし、後は東側の廊下掃除と…
あ、もうこんな時間!ころも様と皆さんのおやつを準備しないと……って」
…ああ、そうだった、今日は独りなんだった。
「…大丈夫。独りぼっちは慣れっこです。ええ、大丈夫ですとも」
むんっと一つ気合を入れると、バケツとモップを抱えて東の廊下へと向かった。
* * *
4校合宿も2日目を向かえ、午前中から本格的な特訓がスタートしていた。
まずは小手調べと、各校で固まらないように組み合わせ抽選をして、半荘3回戦を行った。
井上純は、トップ2回、2着1回で午前の対局を終えた。
まずまずのすべり出し、と言いたいところだが、純は不満だった。「…おもしろくねえ」
直後の昼食は、この手の合宿定番のカレーだった。食堂は大変賑わっている。
純は、これでもかと大盛りにしたカレー皿を持って、お目当ての相手に近づいた。
「隣、いいかい?」 「ええ、どうぞ」
福路美穂子がにっこりと笑う。先程の対局者のうちの一人だ。
「…やっぱやるな、あんた。次は負けねえ」
「? おかしなことを言うのね。勝ったのはあなたよ?オーラスのハネ満、素敵だったわ」
「様子見…だろ?勝った気がしねえよ」 「そんな、買いかぶりだわ。私は…」
「あんたまだ一度も右目を開いてねえ」 「えっ…」 美穂子が右目をそっと押さえた。
「別に怒ってるって訳じゃねえんだ。あんたを本気にさせられないのは、俺の力不足さ」
「こ…これは、そんなのじゃ無いの…。井上さんはとても強いわ。力不足なんてこと…」
356 :
合宿UのA:2009/12/12(土) 18:21:27 ID:cDdXZJ8x
「お世辞はいいよ。あんたにそう言われると光栄だけどな。まあいいさ、目標ができた。
この合宿中にあんたの右目を開かせて、…あの綺麗な青い瞳、もう一度拝ませてもらうぜ」
「!………」 みるみる美穂子の顔が朱に染まった。
「どした?」 純は無自覚である。ある意味タチが悪い。
「キャプテーン、お待たせしま…にゃっ!井上純!」 池田華菜がやってきた。
「よお、池田。調子はどうだ?お、そうだ、後で腹ごなしに卓球やろーぜ」
「OK!受けて立つし!…ん?キャプテン…顔赤っ!じゅんっキャプテンに何をした!」
「へ?何って別に、話してただけ…」 「か、華菜!なんでもない、なんでもないのよ」
「ワハハ、いやーやるなあ、純くん」 後ろの席に座っていた蒲原智美が振り向いて言った。
「高嶺の花、皆の憧れ福路美穂子嬢を口説こうとは。さすが噂のイケメンだー」
「にゃっ!く、くどっ!?」 「口説いてねえ!それになんだイケメンって!俺は女だ!」
「聞こえたぞー、キミの心を開いて、その綺麗な瞳で見つめてもらいたい…とかなんとか」
「言ってねーーっ!」 「か、蒲原さん、誤解ですっ聞き間違いです!」
「かおりも聞いたよなー?」 隣の妹尾かおりに蒲原が訊いた。
「え、えと、ちょっとドキドキしちゃいました」 かおりがもじもじしながら答えた。
「おおにょれーいのうえじゅんーー!いい奴だって、ナイスガイだって思ってたのにー!」
「だから口説いてねーっての!ってか、ガイって何だ!ガイって!!」
ここにきて周りの注目を集め始めた。皆、興味津々でこっちを見つめている。
「フゥーーーーッ!!」 突然華菜が厨房へ駆けて行き、カレーを超大盛にして戻ってきた。
「じゅん!勝負だし!」 涙目で吼えた。
「華菜、や、やめなさい!」 「よ、よしなよ華菜ちゃん!(涙目かわいい〜っ)」
「止めないで、キャプテン、みはるん!!女には、引くに引けないときがある!!」
「誤解だってのに!でもまあ、挑まれて逃げるわけにはいかねえなあ!!」
大盛カレー早食い勝負だ!…って、何でそうなるのかはよく分からないが。
「も〜華菜ちゃんやめなよ〜」 「だいじょぶ!カレーは飲み物って誰かが言ってたし!」
いつの間にか集まったギャラリーがやんやと囃し立てる。
合間の水はコップ1杯!福神漬けはひとつまみ! スプーン、構えっ!レディ〜…GO!!
「もががっふがっ!ごくんっもぐもぐ」 「んにゃがががっ!もごもごごっくんもぐもぐ」
(※スレを見てる良い子のみんな!マネしちゃダメだじょ!ご飯はよく噛むんだじぇー!)
「あはは、福路さん、口説かれちゃったの?やっぱり魅力的な人は放っておかれないのね」
「う、上埜さ…、いいえ、イイエッ!誤解ですっ!わ、私、口説かれてなんかいません!」
なぜか必死なキャプテンであった。
「まぁたあの2人かい、ようやるわ。部長、止めんでいいんか?」
「ん〜…、いいんじゃない?なんか盛り上がってるし!」 久はちょっと楽しそうだ。
「いい加減じゃのう。はぁ、しゃーない、胃薬でも用意しとくか」 まこが呆れて言った。
そのとき、ワァッと歓声が上がった。勝負がついたらしい。
「ハァハァ、うぷっ い、いい勝負だったぜ!」 「う、うう〜うっぷ、ま、負けたしー」
「華菜ちゃん!平気?気持ち悪くない?」 みはるんが華菜の肩を抱く。
「何度も言うけどな、誤解だ。池田、これで納得してくれたか?」
「うにゅー…仕方ない、納得するし」 …だから何でそうなるのかは、よく分からない。
357 :
合宿UのB:2009/12/12(土) 18:23:11 ID:cDdXZJ8x
「ブラボー!凄いわ二人とも。健啖ねえ」 久が拍手をしながら近寄り二人の健闘を称えた。
つられて周りから拍手が巻き起こる。ワーパチパチパチパチー
「へ?…にゃははは、照れるしー」「賞品出しちゃおうっかなー」
「なにっ!何を?」 「そうねー、レトルトカレー三日分!とか、どう?」
「「遠慮します…」」 二人同時に答えた。
「さてと、…蒲原の旦那、聞きたいことがある」 純がおもむろに蒲原に声をかけた。
「ん?なんだい?」 蒲原は、いつものようにワハハっと笑っている。
「…わざとだな」 「んー?何が?」
「とぼけんなっ、わざと話膨らましておちょくったろ!何でだ!」
「ワッハッハーばれたか。しかし愚問だよ、純くん。それは何故かと問われるならばだ…
そのほうが面白いから! に決まってるだろーワハハ」
「くわー!このやろっ!」 「えっ?嘘なの?ひどいし!」 驚く華菜。
「嘘じゃないよー。ただちょっと味付けをば。かおりはホントに聞き間違えてたしワハハ」
「…上等だ。確かあんた、胸でかくしたいって言ってたよな。俺がマッサージしてやろう」
ポキポキと指を鳴らす純。
「ワハハ、…優しく?」 「いんや、荒療治」 めきめきと指を握る。
「ワハハせっかくだが…遠慮しとこうかっ!」 言うが早いか、脱兎のごとく駆け出した!
「おわっ、待てこら!池田ァッ!追うぞ!!」 「おうっ!!」
「だめだよ華菜ちゃん!お腹痛くなっちゃうよー!ああ、もうっ!文堂さん、純代ちゃん、
追うわよ!華菜ちゃんを止めなきゃ!!」 「は、はい!」 「…(こっくり頷く)」
風越の面々が華菜の後を追った。
「あわわわわった、大変!智美ちゃんを助けなきゃ!睦月さん!」
「う、うむ!とにかく追いかけよう!」 「…智美ちゃんは、私のなんだからー!」
かおりと睦月がダッシュした。
「おお、鬼ごっこだな!負っけないじょーー!!」
「わーい、かけっこー!さきっ!ののかっ!ころもに続けーーっ!!」
「ええっちょっちょっと、待ってころもちゃん!うわっひゃっ」 ぺちょっと転ぶ咲。
「み、宮永さん!大丈夫ですか?衣さん待って!宮永さんが!」
和が咲を助け起こし、二人で衣を追って行った。
あっという間に、蒲原を先頭にして、マラソン集団ができてしまった。
食堂の窓から、いつの間にか宿舎から出て、外を駆け回る一同が見えた。
「ワハハウフフ♪ つかまえてごらんなさ〜いw」 「ぬわーっ腹立つ!待てーー!!」
「あーあー、みんなして…。止めんでええんかいな」
「ん〜…、別にいいんじゃない?文科系の部活だし、日頃の運動不足の解消ってことで」
「はぁ、ほんまにいい加減じゃのう」
「あはははは、速い速い!みんな、がんばれーー!」 久が子供のようにはしゃぐ。
「あんたら、ほどほどにしときんさいよー!午後は2時から特訓じゃけぇ遅れんようになー」
「ああっ、華菜が転んだわ!大変っ!華菜!」 美穂子があわてて外へと向かった。
「あら、あなたたちは行かないでいいの?」
透華、はじめ、ともき、加治木ゆみ、東横桃子の5人が残っていた。
358 :
合宿UのC:2009/12/12(土) 18:25:00 ID:cDdXZJ8x
「付き合いきれませんわ。まったく純ときたら」 透華が言った。
「…追いつきそう」 ともきがポソッとつぶやく。
「ああ、惜しい!もうちょっとだったのに!純、がんばれー!」 はじめが叫ぶ。すると、
「じゅんー!誇り高き龍門渕の名に懸けて!遅れをとってはなりませんわよー!!」
思わず声援を送る透華であった。
「先輩、蒲原先輩大丈夫っすかね?」 モモが訊いた。
「ふむ。井上の身体能力は相当に高そうだが、あれだけの量のカレーを摂取した直後だ。
蒲原はあれで妙にすばしっこいからな、心配ないだろう」 ゆみが冷静に答えた。
「蒲原先輩、ジョグが趣味だって言ってたっすからねー」
「むしろ、妹尾と睦月のほうが心配だな」 その二人は早々にバテてふらついていた。
「わっホントだ。かおりん先輩!むっちゃん先輩!がんばるっすよー!!」
「ワッハッハー、楽しーなー、純くん!」 「だーっ!ぜってー捕まえるっ!!」
とは言うものの、先程まで怒ってたはずが、いつの間にやら笑顔になっている純であった。
抜けるような青空に、皆の歓声が吸い込まれていった――。
* * *
「ふう…、さて明日はどうしましょうか」
就寝前、あゆむは鏡台の前で髪をときながら、ため息をついた。
ここは龍門渕家、あゆむの私室である。
透華たちが帰ってくるのは、明後日の夜だ。明日も一日独りで過ごさなければならない。
目に付く仕事や仕掛りの仕事は、あらかた片付けてしまった。
学校の宿題も終わらせてしまった。 「あ、そうだ編み物を…」
去年のクリスマス、あゆむは透華に手編みのマフラーをプレゼントした。
透華は大変喜んでくれた。
最上級のカシミアのコートによれよれのマフラーといういでたちで、透華は一冬を過ごした。
その奇異な格好を見て、あゆむは自分のしでかしたことに気付き、透華に謝って、
マフラーをはずしてくれるように懇願した。
(「何故謝りますの?私、このマフラーとても気に入りましたわ。
このままでかまいません。これが一番あたたかいのですから。…ふふっホントよ」)
…あのときの透華の笑顔が忘れられない。
あゆむは申し訳ないやら嬉しいやらで、複雑な心境になったことも覚えている。
「今度はもっときちんとしたものを、透華さまにふさわしいものをおつくりしなくては。
そうだ!今度は手袋も」
「なにせ5人分です。今からはじめなくては間に合いませんね」
これから夏本番であるが、自分の腕前と、メイドの仕事と学業(少し麻雀部の活動も)
の時間のやりくりとを考えると、すぐにでも取り掛かるべきであるように思われた。
「なんだ、明日もやることはあるじゃないですか。うん、だいじょうぶ、大丈夫!」
―…ポタッ
「え…」 ひざに置いた手の上に、何か温かいものが落ちてきた。
鏡を見ると、寝巻きを着た自分が―… 「あれ…」 いつの間にか、涙を流していた。
「や、やだな、私ったら、何で?独りぼっちなんて、慣れっこなのに。
…透華お嬢さまに出会う前は、ずっと、独りだったじゃない。それで普通だったじゃない!
ばかあゆむ!こんなの、お…おかしいよ!こ、これくらい、ひ…ひとりでいることくらい」
鏡の中の自分が、震えて表情を歪めた。
359 :
合宿UのD:2009/12/12(土) 18:26:46 ID:cDdXZJ8x
「う…うぅ、と、とーかお嬢さまぁう、嘘ついてましたあ、ひっく、さ、寂しいですうぅ」
堰を切ったように、涙がぽろぽろとこぼれた。
「嫌ですもう独りは嫌なんですもうもうもうもうっ!ごめんなさいごめんなさい誰か助けて
たすけてっ!…だれかっ…じゅ、じゅんさんっ!」
ブゥーン! 「ひゃっ!」
そのとき突然、携帯電話の着信を知らせる振動が響いた。
「う…ぐすっ、…も、もしもし」 あわてて取り上げ、通話ボタンを押した。
『おーっす!あゆむー、俺だー!』 「じゅ、じゅんさん!」
電話口から純の明るい声が響いた。まだ二日会ってないだけなのに懐かしい。
「…ど、どうしたんですか?こんな時間に」
『んー、なんかあゆむが寂しがってるような気がしてな、電話してみた』
「へ、平気ですよ。へっちゃらです。ひっく」
『ホンとか〜?泣いてたんじゃね〜の?w 』
「なな泣いてません。ぐすっホントです。そ、それより透華さまはご機嫌いかがですか?」
『あー、何か風越のキャプテンとこに張り付いてるよ。初心者用カリキュラムについて、
根掘り葉掘り聴いてるみたいだぜ』
「はー、初心者…」
『覚悟しとけよー、帰ったらあゆむを特訓ですわーっ!とか言ってたぜーw』
「ふぇえっ!お…お手柔らかにお願いしますう」
『あゆむ!あなたも誇り高き龍門渕の一員!この位で音を上げてどうしますの!!』
純が透華の口真似をした。
「ぷっ、あはははは、そっくりです!似てますー。凄い、じゅんさん」
『だろーw。…うわっいてててっ、わかったちょっと待て、待てって』
『あゆむー…』 ころもが電話口に出た。なんだか眠そうな声だ。
「ころもさま!合宿楽しんでおられますか?」
『んー…。でもーころもはもっと遊びたいのに、とーかとはじめがもう寝ろって言うのー』
「まあ、ふふっ。あ、でもころもさま、早く寝て早起きした方が、ずっと長く遊べますよ」
『んー…、あゆむがそう言うなら、もう寝るー…』 「はい、おやすみなさい、良い夢を」
『…あ、もしもし、あゆむ?』 今度ははじめが出た。何か慌てている感じがする。
『あのさ、透華のネグリジェ、あのシルクの手洗いの奴、あれ帰ったら僕が洗うからね!』
「ええっ!あ、あのー…」 『まさか、洗っちゃったの!?』
「…洗っちゃいましたー」 『…まさか、ぎゅーっとか匂いかぐとか、してないよね!?』
「…いいにおいでしたー」
『でしょー、何だろねあれ。あれがフェロモンって奴なのかなー…じゃなくてっ!もー!』
はじめが憤慨しつつ、まくし立てた。
『くんくんとぎゅーは、とーか専属である僕の特権なんだからー!あ、ちょっとまだ話…』
『…よーし、キミたち、変態フェチトークはそこまでだw』 じゅんが笑いながら言った。
『…どうだ、あゆむ、少しは元気でたか?』 「え?は、はい」
『忘れんなよ、どこにいたって離れてたって、俺たちは、”一緒”だ』 「は、…はい!」
『んじゃ、ぼちぼち寝るとするか。よっし、いくぞお前ら!せーの、』 「?」
『『『おやすみーーー!!』』』 「ひゃっ、お、おやすみなさい…」 通話が切れた。
360 :
合宿UのE:2009/12/12(土) 18:29:21 ID:cDdXZJ8x
「ふふっ…あは、ひどい顔…」 さっきまで泣いていた鏡の中の自分。
涙のあとをつけたまま、今は笑っている。…なんだかあったかい。全身がぽかぽかする。
さあ、眠ろう。明日も早い。何せやることは沢山ある。さて、なにから手をつけようか。
そうだ、あした晴れたら、みんなの分のお布団を干そう。
完全滅菌処理済みだけど、やっぱりお日様のパワーをいっぱい浴びせなきゃ。
あした晴れたら、お買い物に行こう。新しい毛糸と、クッキーの材料を買いに。
厨房を借りて、ころもさまに大好評だった、あのクッキーをまた焼こう。
じゅんさんにも、はじめさんにも、沢山たくさん食べてもらわなきゃ。
あした、晴れたら―…。カーテンをめくり、窓の外を見た。満天の星空が見えた。
「あ、」 天の川を渡るように、ひとすじ星が流れた。
**
「透華さま…。お声、お聞きしたかったな…。
そういえば、ともきさんも…寡黙な方だし、仕方ないかな…」
心地よい安堵に包まれて、あゆむが布団の中でまどろみかけたそのとき、
ヴィーン! 「ふぇっ?」 携帯電話が振動した。
手に取ってみると、メールが1件着信している。
「え、だれ? …ともきさん?」 ともきからだった。
本文には、 『さびしくないように。はじめにはないしょ』 とだけあった。
添付ファイルが1件ついていた。
「こ、ここここ、これはっ!!」 透華の写メだ!浴衣姿で座椅子に座っている。
しかも、湯上りの直後のようだ。上気した肌がうっすらと汗ばんでいるように見える。
カメラに気づいている様子はない。一体どうやって撮ったのか。
(※スレを見てる良い子のみんな!マネしちゃダメだじょ!盗撮ダメだじぇー!)
少し暑いのか、浴衣の襟元を広げて手で扇いでいる。のどくびと鎖骨のラインが美しい。
そして控えめなふくらみが、襟の隙間から微かにのぞいている!!
「はぁあああ〜、と、とーかさま〜。お美しいですう〜!
…ともきさん!グッジョブ!グッドなジョブです!!家宝にしますーーー!!」
そして翌日――。
ばっちり晴れたのに、しっかり朝寝坊するあゆむであった…。
***************
以上 読了感謝
>>360 G・J!あんたが神だ
純さんと蒲鉾のキャッキャッwウフフwwじwゅwんwカwマw
歩(つД`)とか思ったら透歩キターーーーーーー!!!歩と一w自嘲しろおまえらw
透華一夫婦のお子さんは将来立派になるなぁシミジミ
GJです。純が天然ジゴロになってゆくw
はたして清澄の天然ジゴロを超えられるのか?
いろいろ災難だったみたいですが、新作待ってます
淡照最高や!!
淡照菫最高!!わっふるわっふる
お前ら白糸台に飢えすぎw
まったくだよ。
そんな俺も最近は毎晩白糸台の3人+咲ちゃんで色々と妄想してます!
照咲・照菫・照淡・淡菫・菫咲・照咲菫・淡咲・照咲淡・照咲淡咲
10とおりあるけど、百合になる可能性が高いのはやっぱり照菫か照淡、照淡菫らへんかね?
原作で淡と菫の視線が照に向かってたから。
尭深ちゃんは全然違う方向向いてたから百合要素はなくて癒し系キャラになるのだろうか。
誠子さんはノンケっていうか恋愛に興味なさそう
ついでに今までは菫攻め照受けがジャスティスだったけど上のSS読んで照攻め菫受けもありかなと思えるようになったぜ!
夢が膨らむばかりだ!まだ相関図やキャラ設定が明確じゃない今だからこそ出来る妄想。
今後の百合成分は全て白糸台にかかっている!
>>368 おい、10こ目が大変なことになってるぞw
新キャラのキャッキャウフフはやっぱ白糸台にかかってるよなw
巫女達は龍門渕みたいに家族っぽい仲のよさだろうし
臨海は国際色が豊かすぎて百合になるとは思えない。。
でも意外と神代ちゃん×ロリ巫女だったりしてな。ロリ巫女が年下の姫様にぞっこんみたいな
なんだよ、お前ら
はっちゃん可愛いじゃねぇかよ
霞たん母性満点じゃねぇかよ
滝ちゃんボリボリ可愛いじゃねぇかよ
姫様、姫様可愛いじゃねぇかよ
おまえら理解かってねぇよ…!
理解かってねぇよ…ッッ!
まぁ正直百合成分が薄そうだなぁとは思う
>>360 GJ
やっぱおもしろいですね
部長とか池田とか井上とかワハハとかみんな良い味出してるし
衣が咲のこと名前で読んでるだけでもすげーうれしくなっちまう
キャプテンはやっぱ青い目がきれいって言葉に反応するんだな
歩はやっぱ井上よりはとーかなんだろうけどはっきりせんかと言いたくなるし
続きとか新作とか期待してます
>>366 咲照、照咲をもっと見たいって奴もいます
>>370 臨海は百合分抜いた鶴賀とモンブチの中間くらいだと思ってる
>>371 さりげなく一人スルーするなw
巫女服着てなくても、しっかり面子に入れてやれ
……姫様とハッちゃんは某スレのおかげで普通に百合だと感じてしまう
個人的に淡咲を見てみたいような気が。
どっちも一年生で、且つ大将を任されている実力者。
いいライバル関係から……という感じで。
もっともそうなると某hrmrさんとか某妹いない人が大暴れしそうな気もするけど
>>325 良かった! ホンにモモ良かったのー!!
前回の話から非常に続きが気になってたぜ!
しかし新幹線にちゃっかり乗ってるとはwwwwww
連載GJ!
>>337 ちょwww照の菫に対して若干の放置プレイwwwwww
GJ!
>>360 続きキタ―――(゚∀゚)―――!
みんなでマラソン鬼ごっこになってるのが凄い微笑ましいwww
歩良かったのー。
GJ!!
どう考えても姫様総受けだろ
分家三人の励ましという名の百合百合に姫様気力十分で
照という怪異に挑むんですよ
なら白糸台は照総受けor照総攻めで・・・
すいません流れと全く関係ないのですがSSが書けたので投稿します
ワハハかおりんでタイトルは「幼なじみと写真」です
7レスほどお借りすると思います
379 :
その1:2009/12/13(日) 14:49:21 ID:T3ku8PcC
ー秋ー
そろそろ衣替えの季節で服の整理をしないといけないのに
私の部屋は服以外にもマンガやいらない教科書で溢れかえっていた。
そんなときは…
「佳織ー!今日帰りに私の家で遊ばないかー?ちょうど昼までに授業終わるし、
ついでになんか食べて行きたいなー」
「えっ!?……う、うんいいよ!」
「じゃあ一緒に帰るか!」
「うん!」
…ワハハ、作戦成功だ。
私達は昼ご飯を近くのファミレスで済まし、そのまま私の家に来た。
「ただいまー!って言っても今は誰も居ないのか」
「お邪魔しまーす…」
今日は父さんも母さんも仕事で私1人だった。
もし佳織に片付けを手伝わせてるのがバレたら
幼なじみをこき使うなって怒られるからなー
佳織を部屋に連れて行くと意外な言葉を口にした。
「……はぁ〜…やっぱりお掃除のお手伝いなんだね…」
私は部屋の汚さに呆れるだけだと思っていたがどうやら佳織は昔よりも鋭くなってたようだ。
「ワハハ、よくわかったなー佳織」
…ん?さっき、佳織は「やっぱり」って言わなかったか?ってことは…
「だ、だって智美ちゃんったらいつもこれくらいの時期になったら私を急に誘うんだもん!
流石の私でも分かるよっ」
「でもわかった上で来てくれたんだろ?やっぱ佳織は優しいなー」
そう言って私は佳織の頭を撫でた。
佳織は顔を真っ赤にして黙ってうつむいた。
佳織は私が遊ぼうと誘ったときから掃除させられるのを知ってたんだな。
それなのにあえて何も言わずに来てくれたのか。
…ワハハ、私が強引に部活に誘ったときもそうだが、
佳織のこういうお人よしな所は昔から変わってないなー。
380 :
その2:2009/12/13(日) 14:50:54 ID:T3ku8PcC
「さて、じゃあ片付けるか。佳織は本棚の整理をしてくれ」
「うんっ。…ってこれ私が今使ってる教科書と同じ本だよ?」
「そうだったのかー。どうりで授業内容と合わないと思ってたんだ」
「そ、そんなので受験だいじょうぶ…?」
「ワハハ、ジョークだよジョーク」
「なんだか智美ちゃんが言うとジョークに聞こえないよ…」
私達は楽しく話しながらのんびり片付け始めた。
こうして改めて見るとかなり散らかってたんだなー。
・
・
・
1時間とちょっと程経っただろうか、大体8割くらい片付いた頃、私は面白いものを見つけた。
「あっ、佳織ーちょっと来てくれー」
「ん?どうしたの?」
「ほら、これ。私の秘蔵アルバムだぞー。見てみるか?」
私が見つけたのは4冊のアルバムだった。
アルバムなんて普段じゃめったに見ないから、ちょうどいい機会だと考えたんだ。
…もっとも、掃除に飽きたってのが1番の理由なんだがなー。
「えっ!?でっ、でもまだ終わってないし…」
佳織は私と違って真面目だから掃除を続けようとした。
「あー、もうだいぶ片付いたし後は自分でやるよ。ありがとな佳織」
私がそう言うと、佳織は私が後でちゃんとやるのか不安なのか半分不満そうな、
でも少し嬉しそうな顔をした。
381 :
その3:2009/12/13(日) 14:52:27 ID:T3ku8PcC
「そんじゃあ見てみるかー」
私達はアルバムの1冊を取って開いた。
「…あ、この口開けて笑ってる子って赤ちゃんの智美ちゃんだよね?」
「そうだな。隣で寝てるのは佳織かな?この頃から一緒だったんだなー」
私と佳織は物心がついた時には一緒に居たので初めて出会った時なんて全く覚えていない。
…この頃の私は佳織の事どう思ってたのかなぁ。
私が少しずつページをめくっていくと
「さっ、智美ちゃん…」
佳織が急に顔を赤らめた。
目線の先を見るとそこにはパンツ一丁で仁王立ちしてる小学校低学年くらいの私が居た。
「ワハハ、別に赤くなることないだろー?胸も全然ないじゃな…」
言おうとして私は気付いた。
「やっぱ今のナシで…ハハ…」
もう高3なのにこの頃から2,3周り位しか体系が変わってないのか…
しかも大事なところは全く膨らんでないし…
佳織が恥ずかしがったのは私が今と変わってないからだと考えるといろいろ悲しくなった。
382 :
その4:2009/12/13(日) 14:54:18 ID:T3ku8PcC
それから私達はどんどんアルバムを見ていった。
小学校の運動会の写真や中学の卒業写真、
最近のじゃ麻雀部の引退のときに取った集合写真なんかもあった。
「お、いつの間にか暗くなってきたなー。電気つけるか」
私達は外が暗くなり始めているのにも気がつかないほど夢中になっていた。
部屋の電気をつける。
ワハハ、ピカッと明るくなったのを見ると随分と暗かったみたいだなー。
部屋が明るくなったので、ふと佳織のほうを見ると
「あっ、智美ちゃん、外も暗くなってきたし私そろそろ帰るね」
佳織はそう言って広げたアルバムを片付けようとした。
そのとき、ハラっと一枚の写真が佳織の膝元に落ちた。
「あ、まだアルバムにしまってない写真があったんだね」
そう言って佳織はその写真を拾い上げた。
と、ほぼ同時に佳織の顔が真っ赤になった。
ワハハ、また私の裸の写真だったのだろうか?
「なんだよー佳織、またそんなに顔赤くして………!!!!!!」
・
・
・
私達はそのまま黙り込んだ後、しばらくして佳織は帰っていった。
…まさか、あんな写真があるとは思わなかった。
写真なんて見間違えるはずないのだけれど、見間違えたんだと言い聞かせ再び例の写真を見る。
そこには佳織が私の頬にキスをしている写真がさっきと変わらず写っていた。
383 :
その5:2009/12/13(日) 14:55:52 ID:T3ku8PcC
恥ずかしいのを我慢してよく見ると、日付が2年前の3月と書いてある。
背景が家のリビングってことは、たぶん中学の卒業式が終わった後
家で軽い卒業パーティをしたときのやつだろうけど…
…うーん、確かあの時は父さんが無礼講だとか何とか言って佳織に酒を飲ませたんだっけかな?
今思えばあのスケベ親父は佳織を酔わせてセクハラするつもりだったんだろうなー。
そのあと私もその場のノリで飲んでそれから…
〜プルルルルルル〜
「のわぁっ!?」
携帯が急に鳴り出した。
誰だろうか?と携帯を見ると佳織からのようだ。
さっきの事もあるし、出るのを一瞬ためらったが、
ここで出なかったら余計に気まずくなるんだろうなーと思い、出ることにした。
「…もしもし」
「あ、さっ智美ちゃん、さっきはその…黙って出て行っちゃってごめんね…」
「わっ、ワハハ、そんなことかよー。別に気にしてないぞー」
さっきの写真と比べたら本当に“そんなこと”なんだな、と考えていると佳織の声が聞こえてきた。
「あっ、あとそれと…あの…しゃ、写真のことなんだけど…」
「あ、ああー!写真な!さっき見たやつだよな!そっ、それがどうかしたかー?」
なんだか体が熱くなってきた。
「あの写真見て…やっぱり私の事嫌いになった?」
「へ…?」
「だって、私達幼なじみなのに、ぐすっ、女の子同士なのに、ぐすっ、
わっ、私あんなことしちゃって…ふええええぇぇぇーん!!!!」
佳織が電話越しから思いっきり泣きはじめた。
み、耳がキーンとする。
「おお、おちつけ佳織。女の子同士なんてゆみちんとモモのを散々見てきただろ?
それとわっ、私は佳織にその…キスされてもいいっていうかさ…」
…あれ?
私は何を言ってるんだ?
「…ぐすっ、智美ちゃん?」
「あ、ああいやそういう意味じゃなくて…いや、でもえーっと…」
ダメだ、自分でも何言ってるのか分からなくなってきた。
「わ、ワハハハハハ!まぁその…なんだ!この事は気にするな!
それじゃあ、今日はありがとなー!」
そう言って私は電話を切ってしまった。
384 :
その6:2009/12/13(日) 14:56:57 ID:T3ku8PcC
部屋が急に静かになった。
ふと鏡を見ると、顔が真っ赤に染まっている。
…しかしまぁ、思い返すと私と佳織はずいぶんと長い付き合いだったんだな。
アルバムを見てもほとんどの写真に佳織が写っていた。
はぁ…まさか高3にもなって幼なじみに恋をするなんて考えてもみなかったな。
…ん?恋?
い、いや、まだ恋と決まったわけじゃないだろ!
私は首をぶんぶん振った後、ベッドに倒れこんだ。
…私のこの気持ちが何なのか、自分自身でもわからない。
ただひとつわかることは今、私の頭は佳織のことしか考えられないんだ。
その事実が私の心を悩ませていくのであった。
以上です
SS初投稿なのでおかしい所が多々あると思いますすいません
みなさんのSSがすばらしいので触発されて書いてしまいましたが
いざ書くとなると難しいということが痛いほど分かりました
スレ汚しすいませんでした ありがとうございました
>>385 うおう、リアルタイムで見てしまった。
GJとしか言いようがないですぜ。
ぜひ続きを頼みます。
>>385 GJ!初投稿なのに素晴らしい出来だな!
ファンブックってどうだったの?
>>385 GJ!初投稿とは思えないほどおもしろかったよ。
続き待ってます。
ほとんど描写のない白糸台だが期待値が凄いなw
特に照は照咲、照菫、照淡、照神代と半端ない
>>338 スタッフ座談会とそんなに量は多くないが設定資料が載ってるところは良い
百合的には相関図がなかなか良かった。キャストインタビュー部分は破り捨てていいよ
まあこれで2500円は高い。特に百合目的のためだけに買うのはオススメしない
392 :
391:2009/12/14(月) 01:23:48 ID:aSuKveoz
>>385 GJ
これといって変なところはないと思いますよ
というかかなりうまいと思います
俺なんか書こうとしてても文章がまるでまとまらないって有様ですよ
それにしてもやっぱワハハかおりんは良いな
こういうの読むとなんか癒される
続き楽しみにしてます
>>391 >キャストインタビュー部分は破り捨てていいよ
何があったんだw
>>394 植田アンチかなんかだろ
つか、中の人の発言ぐらい笑って流せばいいw
流れ切って申し訳ありませんが、SS書いたので投稿します。
登場人物→照さん・菫さん・淡ちゃん
脳内設定満載です。。あと、前半少しエロいです。。
照さんはドS&タラシということで。。何レスか使います
部の活動が終わり部室のすぐ隣にある休憩室へと二人で向かい、扉を開けて内側から鍵を閉める。
そして私達は仮眠用のベッドに腰を下ろした。最近は部活が終わった後に二人でここに来るのが日課になりつつある。
もちろん私達以外には誰も居ない。しかし、今日の私はここに来るのに少しだけ抵抗があった。
「菫、今日なんか顔色悪くない?どうかしたの」
隣に座っている照が私に尋ねてくる。その手は私の手の上に重ねられていた。
「いや…実は…今日は、その…二日目なんだ。」
ズキズキとする痛みを腹部に抱えながら私は答える。二日目というのは、つまり
「ああ、生理か…。重いんだっけ?大変だね」
そうなのだ。私はどうやら人よりも重いほうらしく、今朝からずっとこの苦痛と戦っていた。
「薬も飲んだのだが、痛みが全然引いてくれな……んんっ――」
ふいに唇を塞がれてしまった。まったく…お前というヤツは。
と、思いつつも私もしっかりとそれに答える。胸の鼓動がだんだん加速していく。
「…ふっ…ん……ん」
目を閉じ照の唇をたっぷりと堪能し、ふわふわとした心地の良い感触を楽しんだ。
しかし、気がつくとブラウスの中に手を入れられている。そこで思わずキスを中断させてしまった。
「はっ……おい、照っ」
「……ん、なに」
不機嫌そうな顔と目が合う。だが今はそんなことなど気にしていられない。
「今日は二日目だと言っただろう…?」
「うん。聞いたけど」
「なら、これ以上は無しだ。さすがにこんな日にまでするのは……ん――」
もう一度唇を塞がれ、すぐに引き離された。だが相変わらず手の動きは止めてくれない。
ブラウスの中でブラジャーを上にずらされ、胸を揉まれ、先端をつままれる。
「おい…頼む…本当に今日は止めてくれないかっ?来週になればいくらでもできるから…」
「えーやだよ。私がしたいって言ってるんだから、ちゃんと答えて」
「なっ…」
私は別に、こういった行為をするのが嫌いな訳では無い。
ただ、いくらなんでもこんな時にまでするのはどうかと思う。普通はやらないだろう。
「ふっ…なあ、その手を私の血で汚してまでやりたいと思うのかっ…?」
「まさか…。そこまではしないよ。きたないし…」
「…………………そうか」
彼女が正常な思考だと安心したのと同時に、なんともいえない気持ちになる。
自分でも汚いとは分かっているが、面と向かってそう言われるとやはり複雑な気分だ。
「相変わらず菫の胸は大きいよね……」
「…はっ…っ……そ、そうか?」
「うん。…腹立つ」
胸に吸いつかれ先端を歯で軽く噛まれて遊ばれる。
だんだん背中にじわりと汗がにじみ始め、体が火照ってきた。熱い、頭がくらくらする。
「菫…駄目だよ、脱いじゃ。」
「ふっ…ん……そんな…」
体が熱いので上半身に身につけているものを全て脱ぎ取ろうと手をかけた瞬間、それを拒否された。
彼女は本当にサドの気が強い。いや…むしろ鬼だ。背筋が少しゾクッとし、頭にも少し汗が流れ始める。
やがて両肩に手を添えられて、ゆっくりと体を押し倒され、二人でベッドの上に横になった。
そして目と目が合い、三度目の口付けを交わす。それから、すぐにまた胸を攻め立てられる。
「ふぅっ…はぁ…」
「……ねえ、気持ちよくないの?」
ふと、照の手の動きが止まる。
顔を見上げると面白くない、とでも言いたげな目でこちらを見ていた。
「…何でそんなこと言うんだ?」
「だって、いつもより声出て無いじゃん」
「そ、それは仕方ないだろう…無理を言うな」
「生理だから?」
「そうだ…。今も痛いんだ。だが決して感じていないという訳ではない…」
「ふうん。そう――」
「んあっ…!…はぁ…んっ」
納得してくれたのかと思い、油断したのが甘かった。
どうやらコイツは、意地でも私に声を出させたかったみたいで、次は首元に舌を這わせ始めた。
正直に言うと、私は首に弱い。しかしそのことを照に直接教えたことは無かった。
どうやら、今まで何度も体を重ねているうちに気づかれていたようだ。
「ああ…っん……ふっ…んうぅ…っ!」
れろれろと首筋を舐められ、あまりの気持ち良さに体がビクビク震える。
ほどなくして、私は呆気なくイかされてしまった。
◆◆◆
「ずいぶんイクの早かったね?やっぱり首、弱かったんだ」
「はぁ…はっ……お前、本当に、サ…ドだよな…鬼だ」
絶頂を迎えたすぐ後のため、頭がボヤボヤし、口がうまく回らない。
「ふっ…そういう菫は隠れマゾでしょ」
「え?なんだって…ん――」
再び唇を塞がれた。こんどのは舌を絡ませ合う深いキスで、顔を両手で固定されながら
ぐいっと口を押しあてられる。お互いの吐息が混ざり合い、それに興奮してまた体が熱くなる。
そっと照の背中に腕を回し、強く抱きしめた。最高に心地が良い。幸せだ。
「ぷはっ…はぁ…はぁっ…」
やがて息が続かなくなり、どちらともなく口を引き離す。
そこには笑顔とまではいかないが、ほんのりとほほ笑んでいる照の顔があった。
可愛いな…。それを見て私も口元が少し緩む。先ほどコイツがなんて言ってたのかは
よく聞こえなかったが今はもう、そんなことどうでも良くなってしまった。
「好きだ、照」
「うん。私もだよ」
◆◆◆
しばらくの間、手を握り合いながら静かな時間を過ごした。
「………」
ふと照が部屋の時計に目をやり、私もつられて時刻を確認する。
18時半だった。
「悪かったね。無理なことさせちゃって。」
「おまえが謝るなんて、珍しいな」
「そう?まあ良いや。菫、今日はもう帰って良いよ」
「…お前はまだ帰らないのか?」
「うん。これからちょっとやることがあるんだ」
「そうなのか」
できることなら照と一緒に帰りたかったが、用があるのなら仕方ない。
それに、すっかり忘れていたが私は今、生理中だ。早く帰宅したほうが身のためである。
「それじゃ、先に帰らせてもらう。また明日」
「うん。またね」
靴を履き、荷物をまとめ、照一人を残したまま私は休憩室を出た。
そして玄関へと向かい、歩き始める。
「……ん?あれは」
廊下の角を曲がった辺りで、よく見慣れた顔が私と逆方向から歩いてくるのが見えた。
「やぁ、淡じゃないか」
大星淡。この春に入学してきたばかりの一年生で、我が『チーム虎姫』の一員だ。
「あっ弘世先輩…。まだ帰ってなかったんですね」
「ああ…少し一人で牌譜の研究をしていたんだ」
もちろん嘘だが。
「そうなんですか!さすがですねっ。あ、ごめんなさい…急いでるのでお先に失礼します」
「ああ、お疲れ様…」
淡と別れてから、ふと考える。
あの子はこんな時間まで何をしていたのだろう?
今日の部活が終わったのは17時だ。
18時半までの間、ずっと校内に居たのだろうか。
「痛っ…」
しかし、腹痛のせいで思考が鈍り、それどころではなくなってしまった。
まぁ…あの子が何をしようとあの子の勝手だ。私はさっさと帰って寝るとしよう…。
◆◆◆
ぴとっぴとっ。むにゅっ
「ひゃっ!い、痛いですよぉ…宮永先輩」
「あー、ごめんごめん」
何が痛いのかと言うと…私は今、自分の頬っぺで遊ばれている。
最初は指でツンツン突いてくるだけだったけど、最終的にはクイッとつねられてしまった。
頬っぺをすりすり擦りながら、先輩の顔を見上げて尋ねる。
「もう…。どうして急にこんなことするんですかぁ?」
「実はさ、前からちょっと気になってたんだよね」
え。何が気になってたんだろう。あっ、も、もしかして私のことがですか!?
ええと…!どうしよう。それじゃあ私を今日ここに呼び出した理由って、まさか…。
「淡の頬っぺって、すごく柔らかそうだったからさ。思った通りぷにぷにしてた。」
「えっ…?あの、それを確認するためだけに私を呼び出したんですか?」
「うん、そうだよ…って、なに顔赤くしてるの。もしかして何か期待してた?」
「そ、それは…ええと」
言葉に詰まる。はぁ…恥ずかしい。私ったら何を一人で勝手に浮かれていたんだろう。
宮永先輩は、弘世先輩と仲が良い。それも、すっごく親密な関係だ。
聞かなくても二人の様子を見ていれば、それくらいのことはすぐに分かる。
だから、宮永先輩が私のことを見てくれるはずなんか無いのに…。
「え…うそ、図星なの?」
「…図星だったら迷惑ですか?」
「うーん…そっか。淡が私のことを、ね…。知らなかった」
先輩にジッと見つめられる。やっぱり今のは言わなきゃ良かったかなぁ。
なんだか急に緊張してきちゃった。足がプルプル震える。
「あの…先輩。今のは聞かなかったことに…」
「いや、それは出来ない」
「えっ?……んんぅ――!?」
どうして、と思ったも束の間。
私は宮永先輩にキスをされてしまった。
終わりです><続きを書いたらまた投稿します。。
こういった長いSSを書いたのは初めてなので、改行とかセリフとか
変なとことかたくさんあるかもしれませんが、お許し下さい・・・。。
白糸台が大好きなので勢いで書きあげました。ではさようなら
白糸台はやっぱり最高や!
照が淡たんや菫様といちゃついてるだけで幸せや!
>>401 イヤッホゥウウウ!!GJだ!!よくやった!アンタは分かってる!!!
菫は隠れエムだったか。最高じゃねえか!!
続き期待!もっと白糸台たくさん書いてくれ!
>>403 これはインタビュアーがKYだなw
こいつアホか
なんだかアカいゲームのビジュアルガイド思い出したわ
>>403 仮に今後、咲に「彼女ができた!」って言われたら…和は?
エトペンの中に石詰め込んで相手撲○しに行くだろう
>>403 なるほどそういう事かw
右下の回答としての正解は国広君で問題ないがいやはやKYだな。
インタビュアーKY過ぎて吹いたw
作品よく知らない即席で宛がわれただけのインタビュアーなのかな
ギャルゲーみたいな作品だと思ってるんじゃ…
和の中の人→和はホントに心から咲を好きだと思うんです
とーかの中の人→一と恋愛対象になるんだろうな〜と思って演じていたんですよ
かじゅももの中の人のインタビューも見たかった
かじゅの中の人のインタビューとか
スゲェエキセントリックで使えるところスゲェ少なさそうだ
たしかにかじゅモモがなかったのが悔やまれるな
個人的に鶴賀がないのはいただけない
だが糞インタビューのことを考えると無くてもよかったのかも知れない
インタビュー内容考えた奴マジ●ね
かじゅの中の人ならアレな質問に対して「モモしか見てません」くらい言ってくれそうではあるw
>>403 これが噂のヘテロしか認めません教団か
百合作品のゲーム化に男主人公を出すのもこの一派とか
とっても久しぶりにssを投下します。
鶴賀で、かおりん→カマボコです。
妄想が激しいです。
ふわふわと綿毛が飛んでいる。
ふかふかの緑の絨毯の中、智美ちゃんがたんぽぽの綿毛をふうっと吹いたからだ。
それはすぐに風に乗って、ふわりふわりと青い空を背景に漂っていった。
『ワハハ』
それを寝転がりながら見送って、智美ちゃんは絆創膏がぺたぺたと貼り付けられた顔をこちらに向ける。
あちこち擦り傷だらけで、おてんばで、でも、たんぽぽの茎を千切ろうだなんて最初から考えもしない、千切るぐらいに寝転がる、そんな智美ちゃん。
『……ぁう』
きゅっ、と、その笑顔に、胸の奥が甘く疼く。
私は、そんな智美ちゃんに寄り添うように寝転がり、小さな片手に抱かれて、まるでかくれんぼをしているみたいに、二人で密やかに見つめ合った。
『たんぽぽ、たくさん咲くといいな!』
『う、うん』
ワハハって満面に笑って、私に内緒話をするみたいに顔を寄せてくる彼女に、小さな心臓は、今にも爆発しそうだった。
智美ちゃんと一緒で、近くで、触れて、幸せで一杯で、このままずっとこうしていたいと、幼心に強く思って、どうすればそうできるだろうと、無い頭で必死に考えたりもした。
『ん? 佳織、眠いのか?』
『……ぅん』
『そっか、じゃあ寝てていいぞー』
頭を撫でられて、実は眠いなんて嘘だったのに、本当に眠くなってきて、よく分からないけど恥かしくなる。
彼女の傍にいると、いつも自分がよく分からなくて、それが嫌じゃなかったから。
私は、いつも手を伸ばした。
そして、たくさん甘えるのだ。
『おやすみー』
『うん、お、おやすみなさい』
優しく、このまま眠ってもいいと智美ちゃんは言ってくれるから、私は甘えて、智美ちゃんの小さな胸に頭をおいて、智美ちゃんのトクントクンって音を聞きながら、私は智美ちゃんの手を握って、静かに目を閉じた。
胸の奥がくすぐられているみたいに、なんだかずっと、落ち着かないけど楽しかった。
そう、当時は気づかなかったけど。
私はきっと、この頃から、
彼女の事を――――――
トクン、トクンと聞こえる。
それは、鼓膜の奥に優しく沁みこんで、心にまで浸透する、大好きな音。
あ、智美ちゃんの音だぁって、私は心地よく思った。
緩やかに瞳を開くと、ほらやっぱり、私を片腕で抱き寄せて、胸に押し付ける眠り方は、昔から変わらない、智美ちゃんの――――
「――――はいっ!?」
がばっと起きた。
いえ、起きます。
起きるよ!?
このまま眠るとか、どれだけ高度な技術ですかってぐらい難しいです!
「さ、さささ智美ちゃん?!」
小声で叫ぶなんて、難しい事をしてしまいながら、私はそのまま、智美ちゃんの寝顔を、訳が分からないまま、本能に負けて直視してしまう。
「っ」
私がいきなり離れてしまったからか、むずがる様に片手をもぞもぞさせて、口元がひにに? として、わははぁとゆっくりと静かな寝息に戻っていく流れを。
そんな、子供の頃と変わらない、幼い寝顔の柔らかさに。
――ドクン、と。
その愛らしさに、堪らず胸がうずいた。
「……っ!」
慌てて眼をそらして、ようやく、私は周りの状況を見つめる事が出来た。
そこは、見知らぬ部屋でって…………
「……あぁ」
そうでした。……今は、合宿中だったのだ。
とても良い経験をさせて貰った、心から楽しかった合同合宿の最終日。
清澄の部長が、今日が最終日だから「無礼講よー♪」と、アルコールを出してきて、最初は怒ったり呆れたり渋っていたりした面々も、誘惑とその場のノリに負けて、あれよあれよと口にしだして……
暫くして、とっても騒々しい騒ぎになったのだ。
「……って、あれ、私、記憶がない?」
騒ぎの途中から、ぷつりと記憶の糸が途切れていた。
サアァァ、と、一瞬で血液が逆流する不快感を覚えながら、私は眼鏡をしたまま眠っているとか、智美ちゃんの胸を枕にしていたとか、抱き寄せられていたとか、でもそこまでの過程がまったく思い出せない事に不安で一杯になる。
暗い部屋だからよく分からなかったけど、冷静になると、そこは人の気配が濃厚で、私たち以外のほぼ全員も、この部屋で眠っているのではないだろうか?
私は智美ちゃんのはだけた浴衣を直してあげながら、とりあえず、智美ちゃんを起こして部屋に戻ろうと決めた。
「さ、智美ちゃん、起きて、智美ちゃん!」
「……んー」
「ね? ここじゃなくて、ちゃんと部屋で、布団の中で眠ろう? 他の人たちは、何だか丈夫そうな人ばっかりだったし……起こさなくても、だ、大丈夫だよね?」
「……むー?」
揺すりながら、そこらじゅうで寝息とか、寝言とか色々と聞こえて、起こした方が良いのかなって不安になるけど、でも、部屋の中は暖かいし、暖房は付けっぱなしで、所々身を寄せ合っているから大丈夫だと思う。
だから、私は智美ちゃんだけでも起こそうと、彼女を揺らし続ける。
「ん、んんん。………? ……わはは?」
ぴくりと、何度目かでやっと、彼女に反応があった。
智美ちゃんは、目を閉じたまま、ふらふらと手を伸ばして、ぽんっと、私に触れた。
そのまま、その手の平が、頬を撫でて首筋にまで流れていった。
「―――ぁ」
ドクンと、さっきよりも強く、胸と、それから喉が鳴った。
痛くて、
甘い、
押し殺して、久しぶりの感覚だった。
そんな私に気づかずに、智美ちゃんは半分開いた目をこちらに向けてくる。
「…………おはよぉ?」
「お、おはよう、さとみ、ちゃん」
「…………まだ、夜だぞぉ?」
「あの、お、お部屋で寝よう? ね、智美ちゃん、お願い」
「…………ん、んん? んー、分かった」
寝惚け顔で、智美ちゃんがくあっと欠伸をして、私に手を差し出してくる。
私は自然に握り締めて、智美ちゃんを静かに起こした。
小さな背中。
小さな手首。
小さな、その肢体。
順に見つめていきながら、いつの間にか、年上の彼女の背を追い越して、私の方が、彼女を包み込める様に抱きしめられそうな、抑えがたい現実。
喉が、異様に渇いた。
「……じ、じゃあ、行こうか? 智美ちゃん」
「……おー」
目をこしこしと擦る仕草がいちいち可愛くて、心の中で「うー!?」って、人の気をしらない彼女に少しだけやきもきとしてくる。
そんな、無防備な姿を晒したら、知らないからと、今にも大声で叫びたい気持ち。
「さ、智美ちゃんは、もっと警戒心を持たないと駄目だよ」
「……わは?」
智美ちゃんの手を引いて、部屋に戻りながら、私はいまだ寝惚け眼の智美ちゃんから目を逸らして、もごもごと言う。
智美ちゃんは当たり前だけど、よく分からないみたいで、眠そうな顔で首を傾げている。
「だっ、だから、もっと、危機感を持って欲しいんだもの」
「……?」
大きな瞳が、不思議そうに私を映す。
唇も今だけは閉じられて、それは、普段はあまり見られない、彼女の素の、表情。
「さと、みちゃ」
「……必要ないだろー?」
それから、笑顔になる彼女の、花開く瞬間。
きっと私にしか分からない、彼女の魅力。
「っ」
「佳織がいるから、大丈夫だって」
根拠の無い、彼女の「大丈夫」という声の明るさと、深い信頼が、胸を、抉った。
「…………それ、は」
意味なんて、分からない。
多重の意味に解釈できるそれは、寝惚け姿とあいまって、私には判断がつかなくて。
なのに、それを、私は私の都合が良いように受け止めてしまう。
……。
…………抱きしめて、閉じ込めてしまいたくなる。
「そう、だね。私がいるから、大丈夫だよ」
「おぉ、佳織はしっかり者だからな」
「……うん」
いつの間にか部屋の前にいて、智美ちゃんを敷かれた布団の上に招いて、私は、暗闇なのを良い事に、酷く痛みを堪えた表情で、智美ちゃんの背中を見つめた。
今、この部屋は、私と彼女の二人きり。
他の面々は、まだ、あの大部屋にいたのを、私は横目に確認をしていた。
だから、
きっと、
今このまま手を伸ばして、引き寄せてしまえば、
そのまま、押さえ込んで、彼女の全てをもらえるのだろう。
「…………ふふ」
それは、
ありえなかった。
ただの、妄想という名の夢物語。
私は首を振って、微笑んで、早速布団にもぞもぞと潜り込む智美ちゃんを見送る。
私は彼女の幼馴染で、それ以上でもそれ以下でもない、きっと、私が今襲い掛かったりなんてしたら、智美ちゃんは「ワハハ」なんて私の前で笑ってくれなくなる。一生、私を怯えた目で見つめてくるんだ。
抜けない棘は、ただ心と身体をじわりと蝕む。
そんなの、絶対に嫌だから。
ギリッ、と、
私は密かに、舌を強く噛んだ。
「ワハハ、寝るぞー」
「うん、寝ようか」
「明日は、早く起きて、温泉に行こうな」
「そうだね。一緒に入ろう」
「……そうだなぁ、それから、お土産を、買っとかないとなぁ」
「うん、ちゃんと買っておかないと駄目だよ」
すぐに、瞼を重そうに閉じて、会話をしながらも、変わらない寝つきの良さに、私は唇を緩める。
眼鏡を外してしまったからよく見えない、その寝顔を想像して、きっとそう違わないだろう愛らしい寝顔に思いを馳せて、私はそっと目を閉じる。
あの頃の。
たんぽぽを見送った幼い頃の純粋さのない、どろりと汚れた私の欲情を、押し殺して。
血の味が広がる口内に、いやだなぁって薄く笑う。
ごめんね、智美ちゃん。
私は、あの頃とは違った意味で、貴方が好きです。
貴方が欲しいです。
「…………ばかみたい」
今夜は、一睡も出来ないだろうなって、
智美ちゃんの寝息を耳に、私は少しだけ泣いた。
おまけ。
大部屋で起きた私たちは、並んで部屋に戻り、この光景を目撃した訳だけど……
「……仲良いですよね。本当」
「……ああ」
「……なんか、私たちも負けていられないっすよ、先輩!」
そこには、
蒲原先輩の胸に頭を置いて、健やかに眠る佳織と、その佳織を片腕で抱き寄せて、その温もりを享受する蒲原先輩の、なんともラブラブな光景が広がっていた。
「……昨日も、凄かったですけどね」
「……ああ、思い出したくも無いがな」
「……私も、あれほどの敗北感を味わった事はないです!」
前日の私の記憶。
『智美ちゃん、大好きー!』
『ぐはっ!? おあっ!? ちょ、よ、酔っているのか佳織!?』
『うふふ、智美ちゃんすきすきすきすき〜♪』
『ちょっ、い、息が……!?』
『苦しいの? じゃあ人工呼吸だよ! ちゅー』
『よし目を覚ませ!』
『智美ちゃん、ラブー』
『ワッハッハ、ちょっと水もってきてくれ、誰か! 頼むから!』
『うぅ、無視するんだ?! さ、智美ちゃんは私の事、嫌いなんだー!』
『ワッハッハ、佳織はさっきから泣いたり笑ったり怒ったり、私は疲れたぞー。飲まないとやっていられないぞー』
『じゃあ、飲ませたら許すよ?』
『…………。……どうやって?』
『口移し!』
『やっぱりな!』
『……智美ちゃんが大好きです!』
『佳織、今日で三十二回目の告白だな』
『うん。私ね、ずっとずっと、智美ちゃんが好きだよ! 大好き!』
『そっか、ありがとうな。私は、佳織が素面の時に言わせてもらうよ』
『わーい♪』
『よしよし』
『……もっと撫でて?』
『ワハハ』
とまあ、始終こんな感じだった。
最初は囃し立てたりからかったりしていた面々も、最後には塩どころか砂糖を吐いて、避難するぐらいだった。
何より、蒲原先輩が意外に余裕があって、適確に佳織を介抱したり、危ない発言を誤魔化したりしたおかげで、最後まで健全に終わった所は素晴らしいと思う。
他の面々が当てられて、軽い(?)告白大会になったけど、蒲原先輩は「ワハハ」と笑って、
私に「いいかむっきー、ユミちんもモモには近づかないでこっちにいるんだぞ? あと、あっちとそっちと、特に清澄のおっぱいさんの所は特に危険だから行かないよにな!」と、優しく声を掛けてくれた。
「……いざという時は、これ以上ないぐらい頼れます。蒲原先輩」
「………ん、こほんっ!」
「いやぁ、照れるっす」
私が、昨日の二人を遠まわしに皮肉っているのに気づき、わざとらしく咳ばらいする加治木先輩と桃子。
溜息を押し殺し、私はまったく、と、言葉とは裏腹に、くすりと笑う。
色々と言いたい事はあるけれど、とりあえず。
彼女達の寝顔はあまりに幼くて、幸せそうで。
起こすに起こせそうにないのが、とりあえずの目先の問題の様だった。
おわり
以上です。
頑張って隠して時々高確率で暗くなるかおりん。
実は気づいていてワハハなカマボコ。
作者は、蒲原先輩は馬鹿じゃない派です。駄文失礼しました!
GJ!
これで今日も安眠できる!
すごいスレ伸びてると思ったら2つも投下されてたか!!
>>401 GJ!個人的に攻めな照受けな菫は大好物ですww
これから淡はこの2人とどう絡んでいくのか気になりますねー。続き期待してます
そして間にインタビューうんぬんの叩き・・・ww
>>420 GJです!
カマカオ(カオカマ?)とかなんか久しぶりですねw続き楽しみです
ワハハは馬鹿じゃないよ
空気を和らげる人だよ
>>427 GJ!今日一日頑張れるぜ!
皆様GJ!!まとめてで申し訳ないけど感想を・・・。
>>337 初の照菫淡ちゃんキター!菫が放置されてて可愛そう・・・しかし照だから憎めないんだよなぁ。
あと、菫は世話焼きってイメージがある。だから、自分勝手な照に振り回されつつも放っておけない。可愛いなぁ。
新キャラの百合成分は白糸台にかかっていると思うので、期待が膨らむばかりです。
続き待ってます!
>>360 相変わらず賑やかな感じで良いですね。歩ちゃん健気だなぁー。とーかも優しくて本当に良い子だ!
こうゆうノリのものは面白いです!
>>385 微笑ましいなぁ。この二人は本当にこんな関係なんじゃないかと思います。
咲唯一の幼なじみキャラなので、原作でももっと絡んでほしいですね!
初とは思えないくらい面白かったですよ
ただ、1レスあたり4096文字、改行は60できるのでもっと少ないレス数で十分納まると思います!次に投下する時の参考になれば幸いです。
>>401 二つ目の照菫淡キター!!照はきっと白糸台の中でモテモテなんだろうなぁ。
個人的に照菫カプが大好きなので序盤のイチャイチャっぷりがたまりませんでした。
そして、菫は確かに生理が重そう・・・。
さて、淡はこれからどうなるんだ?あ、淡のほっぺ=柔らかいってのはすっかり浸透してそうですね!
ではでは続き期待してます!
>>427 自分もワハハはおとぼけキャラではあるけど馬鹿ではないと思ってます!
しかし幼なじみって良いなぁ。タンポポってのも、なんとなく二人に合ってると思う。イメージ的に。
あと、お昼寝も似合ってる。そしてかおりんのはっちゃけぶりが凄い!ラブラブですな・・・。可愛いです!
長くなりましたが、皆様本当に乙です!
アニメ放送が終わった今、毎日夜はなんだか虚しかったので、これからもSSとかでこうやって盛り上がっていければ嬉しいですね
>>427 ワハハー!
俺もワハハは馬鹿じゃない派だ!
なんだかんだいって鶴賀をまとめてるのはワハハだと思うぜ!
鶴賀メンツが仲良くてニヨニヨw
照先輩に褒めてもらいたくてすごく頑張る淡たん
>>401 GJ
照と菫はもう結構見てるけど淡のはあんまないし
淡と照の絡みは早く見てみたいな
>>427 GJ
早いとこ結ばれて欲しいと思ってしまう
それはそうと他の面子の様子が気になるな
酒飲んだ後の騒ぎの様子とか描く予定ないですか?
カプとしてはマイナーですが投稿させていただきます。
「好きだよ」
そう言われた瞬間、頭が真っ白になった。
だって予想外の人からの告白だったから。
私は自分がモテる自覚はある。
高校三年生まで生きてきた中で、告白された数は二ケタにとうの昔に突入していた。
イヤイヤ、今考える事はそこではなくて。
確かに端正な顔立ちで、性格もクールで落ち着いている。
付き合う相手としては申し分ないだろう。
でも、でもね、私と彼女の何処に接点があっただろうか?
考えてみても思い当たらない。
「別に付き合いたいとかじゃないから、返事はいらない。ただ、誤解されたくなかっただけだ」
真摯な瞳。
「竹井が私の事をなんとも思っていない事は承知だ。私が竹井を好きなる機会が思い当たらないのも無理もない」
一呼吸おいて
「私は竹井の打ち筋が気に入った。そして竹井自身を知る内に好きになっていた」
顔が真っ赤になったのは自分でも自覚できた。
そもそもどうしてこんな話になったのだろう。
そうそう。街角で会って、一緒にお茶しようと言う事になってあの消えるこの話をしていて。
「一方的に私が好きになっただけだ。さっきも言ったように返事はいらない。竹井が誰かと真剣に付き合うタイプにも思えないしな」
図星だ。
確かに私は付き合う事は今まで何度もあったけど、相手が誰であっても半年も持たなかった。
その理由は単純で、私が相手を好きじゃなかったから。
別れる理由は皆同じ。
『好きになってもらえなかった』
そう言って皆去って行った。
「あの」
「せんぱーい」
背後から聞き覚えのある声がして振り向くと、話に出ていた消える子が走ってくる。
「モモ」
「先輩。遅くなって申し訳ないっす。待たせてしまったすか?」
子犬のように加治木さんの腕に纏わりつく。
「いや。竹井に偶然会ってな。話をしていたから時間は気にならなかったよ」
「そうっすか?それなら良かったす。清澄の部長さん、こんにちはっす」
「こんにちは」
先程までの話と異常に高いテンションのせいで、思考が働かない。
「それじゃあ竹井。もう行かせてもらうな」
「清澄の部長さん、失礼するっす」
ついていけない私を残して加治木さんは行ってしまった。
家に帰りついて真っ先にベッドに顔を埋めた。
返事はいらないと言われた。
ただ思いを告げられるだけの告白なんて初めてだ。
今まで告白してきた相手は、断ったら距離を置いていった。
それは断られたのだから、傍には居づらいだろう。
私もその辺は理解できたから、距離を縮めようとはしなかった。
でも、告白だけされた場合はどうすればいいのだろう?
加治木さんとは学校が違うし、今日だって偶々街で会っただけ。
互いに三年生だから合同合宿をして会うなんて事はもうない。
会う機会はもう無い。
それでいいのだろうか?
それから一月私はこの事で悩み続けた。
だけど学校には毎日行かないといけないし、受験勉強だってしないといけない。
なのに、告白してきた時の加治木さんの顔が頭から離れない。
一度も恋愛対象として意識した事がない相手。
別に今まで付き合ってきた相手だって、恋愛対象として考えていない人たちだった。
ただ、自分にそういう感情を持っている事は漠然的でも分かっていたから、頭の中で付き合ったらどうなるかのシミュレートくらいはしていた。
合同合宿の時も、その後の合同練習でも一度もそんな素振りは見られなかった。
むしろそんな態度は私よりも、あの後輩の子に向けられていた気がする。
端から見ても、特別な関係なのだと思うのだから。
二人の姿を思い出すとなんだか腹が立ってきた。
どうして私がこんなに悩まなくちゃいけないのだろう?
返事はいらないと言われたのだ。
加治木さんは私を好きだった。
それで済ませてしまえばいい。
付き合いたい訳じゃないのだから。
「部長」
「何?」
部室に居るのを忘れてたわ。
「鶴賀学園から合同練習の御誘いが来ていますが、部長も良かったら行きませんか?」
和が遠慮がちに誘ってくれる。
「って言うか、私はもう部長無いってば」
「でも、なんか名前で呼ぶのは変な感じがして」
「はぁ〜。まこからも言ってやりなさい。部長はわしじゃ〜って」
「別にわしは構わんよ。部長なんて肩書はあんたの方がにおうとるし」
「だから私は引退した身なんだってば」
全国大会も終わり二学期になったら、何処の部も三年生は引退扱いされている。
引退扱いされないのは、部活で推薦を取った組位。
「だったら何であんたはここにおるんじゃ?」
「ほら私って頭がいいから、受験勉強なんて必要ないのよ」
なんて。半分嘘じゃないけど。成績はいいから、今のままで志望校には十分に受かると太鼓判を貰っている。
ただ、どうせならもうワンランク上の大学を目指せと言われて、受験する事になったので、その受験勉強をしているだけ。
でも、別に無理してまで行きたいとは思わないから、自分の無理のない範囲でやっているけど。
「言ってんさい。それで、どうする気じゃ?参加するンか?」
「そうね〜。参加するわ」
気晴らしにも丁度いいし、何より本人に会って返事をしたい。
幾らいらないと言われても、私の気持ちがもやもやしたままで気持ちが悪い。
「分かりました。では、部長も参加で返事をしておきます」
そうして土曜日。鶴賀学園に行くと、三人の部員が迎えてくれた。
「お待ちしてました。わざわざありがとうございます」
部長の確か津山さんだったかしら?凄くまじめそうで、和と気が合いそう。
「いえ、こちらこそ」
和が挨拶をしている間に部室を見渡すが、一番の目的だった人物はどこにもいない。
「今日は加治木さん達はいないの?」
「あ、すいません。先輩達は受験生なので声は掛けてないんです」
ばつが悪そうに答える。
「あんたと違って、しっかり受験勉強にはげんどるんじゃ」
まこがからかうように言うのを私は苦笑いで受け流す。
居ない者は仕方がない。
そもそも鶴賀は、清澄や風越よりも先に三年生が引退したと聞いている。
二学期が半ば過ぎに顔を出す方がおかしいのか。
私だって志望校がギリギリなら麻雀部には顔を出すなんてことはしないし。
会えないのは残念だが、また機会間もあるだろう。
ん?残念?何が?
会えない事に落胆している?
どうして?
確かに会えないのは残念だが落胆する事の程ではない。
「清澄の部長さん」
「貴方は東横さん」
加治木さんを最も慕う後輩。
なんだろう?
「良かったら一緒に打ちませんか?是非部長さんと打ちたいっす」
「え?ええ」
そうして打った対局はボロ負けだった。
東横さんは私に完全に狙いを定め、点数を稼いでいった。
って言うか、なんだろう?殺気かな?そんなものを感じる。
彼女の背後から黒い何かが見えるようなそんな気が。
「面白かったす。また打ちたいっす」
対局が終わった後は、凄くにこやかな顔で握手までされた。
「清澄部長さん、先輩に話があるんすよね?」
「え?」
なんで気付いたのかしら?
態度には出してないつもりだったのに。
「先輩は今日特別講習を受けてるっすから、お昼御飯を買いに購買部に行くはずっす。今からなら多分そこで待ち伏せれば会えるっす」
そう言って部室から追い出された。
他校の購買部の場所なんて分かるはずもなく、迷いながら何とか人の塊を見つける。
時間からして購買部だろうと予測をつけて近づくと、目当ての人物が菓子パンを加えて塊から出てきた。
「竹井?」
予想通りと言うべきか、加治木さんは驚いた表情をする。
「こんにちは」
「ああ、こんにちは」
とりあえず無難に挨拶をすると、加治木さんも挨拶をしてくれた。
「じゃなくて、なんでここに居るんだ?」
疑問は最もね。彼女は今日も合同練習を聞かされていないらしいし。
「ん〜。とりあえず、場所を変えない?」
正直他校の生徒が校舎の中に居るのが珍しいのか、先程から注目されて落ち着かない。
「ああ、そうだな」
その事にかがついてくれたのか、人の居ない屋上に連れてこられた。
「ここなら誰も来ないから」
天気がいいから少し寒いが問題にはならない。
「それで?どうして竹井がいるんだ?」
「合同練習にお呼ばれしたのよ」
「合同?そうか。残念だな」
「え?」
何が残念なのかしら。
「てっきり私に会いに来てくれたのかと思ったのだが」
「あら?どうしてかしら」
「そうだな。私の返事がいらないと言うのが返って竹井の心をざわつかせているのかと思って」
また図星。
何かしら?私って実は顔に出やすいタイプ?
「それで返事をしに来てくれたのかと思ったのだが」
ん、と僅かな微笑を浮かべて首を少し傾げる。
「ええ、返事をしないとなんだか気持が悪いから」
「そうか。まあ、それもそうだな。返事をしないと今後どう接していいのか分からなくなるしな」
加治木さんが僅かに目を伏せる。
綺麗だと思った。
「それで返事は?」
返事が何であろうと構わないと言うのが、態度でよく分かった。
「付き合わない?」
は?ちょっと待って私。何を言っているの?
「まだ私は貴方のこと好きかどうかわからない。今まで付き合った相手も好きじゃなくても付き合ってきたし。でも、なんだか加治木さんの事が頭から離れないし、このまま断ってさよならなんてしたくないと思ったの」
口から勝手にするすると言葉が放たれていく。
でも、口は止まらない。
「だから、それでもいいなら私と付き合わない?私は貴方の事を好きと言えないけど、もっと話をしていたいし、一緒に居たいって思うから」
漸く口が止まった。
自分では言うつもりのない言葉が次々と出てきた。
違うわね。言うつもりがなかっただけで、私の本音だ。
「……」
加治木さんなんだか考え込んでいる。
それも当然か。こんなこと言われて付き合いたいとか思わないものね。
好きじゃないのに付き合わないとか最低だとか思われたかしら。
「竹井」
「はい」
「一つ確認したい」
「何?」
「それは私が好きになってもらえる可能性があると言う事でいいのか?」
「え?」
言葉の意味が理解できない私に加治木さんはもう一度繰り返した。
「好きになってもらえる可能性はあるのか?」
「……ええ」
確かに今は好きじゃないがこれから可能性がない訳ではない。
「そうか。なら、改めて言わせてもらおう」
加治木さんが私の前に立ち、瞳を見つめてくる。
「私は竹井が好きだよ。だから私の恋人になって欲しい」
初めて告白された時と同じでまっすぐな瞳が私の心射抜く。
「あの時は強がったが、本当は断られるのが怖くて嘘をついた。でも、私の好きな人がモモなんだと言う誤解を、竹井にだけはされたくなかった」
私が本当に好きなのは竹井だけだからと耳元で囁かれた。
「でも、それって間違ってなかったかも。あの時返事を要求されたら、こんなに加治木さんの事意識しなかっただろうし」
「なら、私の読み勝ちだな。竹井ならああ言えば、私の事を多少は意識せずにはいられないだろうと思ってな」
「もしかして狙ってたの?」
「まあな。それで竹井。返事を貰ってないぞ?」
「え?さっきしたじゃない」
「あれはお前が告白したんだ。私の告白に対する返事じゃない。もう一度言うぞ?
私の恋人になってくれ竹井」
加治木さんの瞳に吸い込まれそうになるのを、耐えて返事をする
「はい」
返事と同時にそっと唇を重ねた。
タイトルに対してはツッコミはなしの方向で。
保存するときに他に浮かばなかったんです。
部かじゅって結構あってもよさげなのに全然見ないので書いちゃいました。
正統派のクール大人な態度のかじゅにちょっと意地の悪いクールな大人な部長と言ったところ。
私から見ると二人ってそんな感じに見えます。
どっちも大人なんだけど、タイプが違うのだと思います。
キャプテンは母性あふれる大人です。
それでいくと蒲原は子供がそのまま大人になったみたいな感じな気がします。
楽しんでいただけたら幸いです。
>>441 GJ!!!
地味に部長とかじゅの合宿でのあの絡みが好きだからこういうの良いな。
続きあるなら期待です
>>337 >>401 続きはまだかね?
いつまで俺は全裸待機してれば良いんだ?ハァハァ
>>441 GJ!かじゅは打ち筋で惚れるタイプかw部長可愛い
>>427 ワハハは馬鹿じゃないに同意!ノシ
>>441 なんという俺得。部かじゅの大人な関係が好きだよ。GJ!
GJ
かじゅも部長もかっこいいなあ
大人な感じがする
淡照の2人が可愛いすぎる
>>441 GJ
モモはどうなるんだろうか
というかもう既にモモからやばそうなオーラが出てるし
>>441 GJ!
なんか凄いツボなカップリングだw
部かじゅといえばどっかのスレで見た合同合宿で、部長の雑学を軽く受け流しつつ、牌譜の分析してるかじゅの画像思いだした。
>>400続き投稿します><
前回よりもちょっと長めです。登場人物は照さんと淡ちゃんのみ
エロは無いす。脳内設定多数アリ。。。
◆◆照◆
「……ん……………」
淡の唇は頬っぺと同じくらい、ぷにぷにと柔らかくてとても気持ちが良い。
「………………ふっ…」
あれ?そう言えば今日ここに淡を呼び出した本当の目的ってなんだったっけ。
頬っぺを触りたかった――って言ったのはもちろん、即席で思いついた冗談だけど。
「…………んぅ……」
えーと、確か先週のミーティングで決まったことについて相談するためだったような…?
あーダメだ。ど忘れしてしまった。
「………んふぅっ!」
「っは」
淡が息苦しそうな声を上げたので、仕方なく口を離す。
「せ、せんぱい…?今のって…キ、キスですよねっ…?」
「うん、そうだけど。っていうか――」
――キス以外の何でも無いじゃん。とも言いたくなったけど、やっぱり止めた。
おそらく、今のがファーストキスだったんだろう。
「あ、あの…先輩」
「ん?なに」
「私、すごく嬉しいですっ…。ずっと、ずっと…先輩のことが好きだったから…」
「そっか。私も嬉しいよ」
「でも…先輩には弘世先輩が居るのに、こんなことしても大丈夫なんですかっ?」
「ああ、菫か。…まぁ、なんとかなるでしょ。」
そんなことより、私はもっと淡と楽しみたい。もっと、淡に触れてみたい。
「で、でもぉ…」
「私が良いって言ってるんだから、良いの。ほら、おいで」
「え、おいでって…?どこかに行くんですか?」
「……ベッド」
「ぇええ!?ベッドって…ええ!?」
「…あっ。ドアの鍵閉めてくるからやっぱり先に行ってて。」
「はい…」
◆◆淡◆
夢みたい。まさか、こんなことになるなんて思ってもみなかった。
私の初めてのキスの相手が宮永先輩だなんて…!!はぁ…幸せ。
さっきから心臓がドックンドックンうるさいよぉ。
……でも、この状況はなんだろう?
「ほら、脱いで……」
今、私は宮永先輩と二人でベッドの上に座っている。
そして制服に手をかけられた。これって…やっぱり、あれなのかなぁ。
「あのぅ…先輩、一応確認なんですけど…私達は今から何をするんですか…?」
「ここまで来て何を今さら。セッ…――」
「うわぁああ!!やっぱり言わなくて良いですっ!!」
どうしよう。色々と展開が早すぎて、ついていけないです。
恥ずかしい…。頭がパンクしそう。あ、また足が震えてきちゃった…。
先輩のことは大好きだけど、いきなりこんなことって、アリなのかなぁ?
だって、まだ心の準備も何も出来てないし…。
「……なに、怖いの?」
「怖いって言うか、頭の中が真っ白でそれどころじゃないっていうか…」
「…変なの。」
「うぅ…ごめんなさい」
はぁ。私は何を言ってるんだろう。バカバカ!私の意気地なしっ。
これは先輩と、もっともっと仲良くれる大きなチャンスかもしれないのに。
「…………………」
ダメだ。先輩のほうを見ることができない…。どうしても顔が下を向いてしまう。
そして、気が付いたらスカートの裾をぎゅっと握りしめていた。
「やっぱり止めようか」
「えっ」
怒っちゃったのかな…?そう思い、慌てて顔を上げて先輩の表情を確認する。
けれどそんな様子は全然なくて、むしろ笑っているように見えた。
「先輩、怒ってないんですか…?」
「なんで?別に、これくらいのことじゃ怒らないよ」
「そうですか…良かったぁ。…わわっ――!?」
急に、ふわっと抱きしめられた。先輩って、すごく暖かいんだなぁ。
胸が高鳴る。ええと…こういう時は腰に手を回しちゃっても良いのかな…?
いいや、やっちゃえっ。ぎゅううー…。 あ、先輩ってけっこう細いかも。
「……淡はさ、姉妹とか居るの?」
「きょうだいですか…?」
「うん」
どうして今そんなことを聞いてくるんだろ…?と、不思議に思いつつもそれに答える。
「いないです…。私、一人っ子なんです」
「そっか。」
それからしばらくして、私を抱きしめている腕が解かれた。
じっと先輩に見つめられる。…何を考えてるのかな?
「良いこと思いついた。」
「え、良いこと…?」
「淡は今日から、私のことをお姉さまと呼びなさい」
えっ?…えええ!?
これは何かの冗談なのかなぁ?でも、そう言う先輩の目は真剣そのものだ。
「もちろん、私と二人きりの時だけで良いからさ」
うーん…。何でいきなりそんなことを…?でも、二人きりの時だけっていう事は、
これから先輩と一緒にいられる時間が増えるってことなのかな?
「ねっ?お願い……」
「んっ――」
またキスをされた。ついでに頬っぺも、両手でふにふにと触られている。
あうう…気持ち良い。とろけそうですぅ…。
「……駄目かな?」
「いいえっ駄目だなんてとんでもないです……お、お姉さまっ」
「……うん、ありがとう。淡」
もう、理由なんてなんでも良い。
今日から先輩は私のお姉さまですっ!
◆◆照◆
自分でも、どうして淡にあんなことを言ったのかよく分からない。
なんでなのかな。無意識のうちに淡の姿を咲に重ね合わせてたんだろうか。
…まあ何でも良いや。
「……あっ、もう7時半か。淡、そろそろ帰ろう」
「はいっ。せんぱ……お姉さま!」
お姉さまと呼ばれて、心臓がドキっとする。
うん。この感じだ。なんていうか…すごく心地良い。
「せっかくだから、もう一回くらいしとくか」
「えっ?何をですか…ふぁっ――」
こうして本日3度目のキスを終えてから、私達は休憩室を出た。
「あっそうだった」
淡と二人で帰宅中、ふと先週のミーティングで決まったことを思い出す。
「どうしたんですか?せんぱ…お、お姉さまっ」
「実はさ、先週のミーティングで、新入部員との親睦会も兼ねて映画の観賞会を
することが決まったんだけど、何の映画が良いと思う?」
私は映画などをあまり見たことがないから、このての話には疎い。
それに、一年生がどういったものを見て楽しんでくれるのかなんて、全く見当もつかない。
「映画ですか……。うーん…バイオ○ザードとかどうですか?」
「バイオ…?知らないや。どうゆうジャンルなの?」
正直言って、ホラーだけは勘弁してほしいな。
「ええと…アクション系です。面白いですよっ♪」
「アクションか…分かった。じゃあそれにしようかな。ありがとう。顧問に伝えとくね」
「はいっ楽しみです。いつ観賞会をするんですか?」
「来週の木曜だったかな…」
確か、木曜とかそのへんだった気がするんだけど…。どうだったかな。
明日にでも菫に聞いてみよう。
◆◆淡◆
「ふ〜んふ〜ん ふふ〜ん♪」
家に着き、何をするわけでもなくベッドの上で時間を過ごした。
はぁ…今日は色々なことがあったなぁ。
5時に部活が終わった後、宮永せんぱ…じゃなくてお姉さまに
――今日このあと何か用事ある?
って聞かれて、特に何もないと答えたら
――それじゃ後で連絡するから、それまでどこかで暇つぶししてて。
と言われた。その後は、校内にあるカフェテリアでミルクティーを飲みながら
ケータイを見つめ、今か今かと連絡がくるのを待っていた。
そして6時半になって、ようやくお姉さまからメールが…!
急いでバックを手にとり待ち合わせ場所の休憩室へと向かった。
そう言えば、途中で弘世先輩とすれ違ったんだっけ。
あれっ…部活が終わったのは5時なのに、弘世先輩はあんな時間まで何をしてたのかな?
うーん。まぁ、なんでもいっか♪
ええと、それからお姉さまに頬っぺで遊ばれて、それから…それから…
キスをされて…。
………初めてのキス!
「きゃぁあっ♪恥ずかしいっ!」
思い出しただけで体が熱くなる。心臓がドキドキする。
私、こんなに幸せで良いのかなぁ。
そう言えば来週、映画の観賞会があるって言ってたな。
映画のことについて相談されて、思わずバイ○ハザードと答えてしまった。
あれってゾンビがいっぱい出てきて、ちょっとだけ怖いんだよね…。
だから、怖がるフリをしてお姉さまに抱きついちゃったりしてっ。うふふ♪
あっ、でもそうするにはお姉さまの隣の席を死守しなくちゃいけないなぁ…。
「ふふ〜ん♪頑張るぞぉ〜っ」
以上です><
続きができたらまた投稿します。ではさようなら
>>456 GJ!
たらしっぷりがやばいっすね照
ぜひ続きたのんます
GJ!!
照淡良いなぁ。この二人は姉妹的な百合になるのかね。続き待ってます
寝る前に浮かんだ妄想。
勢いだけでやった。後悔はしてる。
タコス視点の咲和で3〜4レス。
一応タイトル「昼休みの憂鬱」
ビックリするくらいの低クオリティーでお送りします。
460 :
昼休みの憂鬱:2009/12/18(金) 01:56:20 ID:T7/V/wIc
「今日は寒いですね。」
「そうだね。」
誰もいない昼休み。
昼寝をしようと私は旧校舎に来ていた。
やはりと言うべきか、部室には誰もいなくて、私は一人、部室のベッドに潜りこんでいた。
布団はまだ冷たくて、温まるまで待っていた。
そんな時…。
部室に姿を現したのはのどちゃんと咲ちゃんだった。
私には全然気付かない。
ここでちょっとしたイタズラ心が芽生えてしまったんだじぇ。
イタズラ心というよりは好奇心かもしれないけど…。
「…。」
私に気付かないのをいいことに二人を観察することにしたじょ。
窓辺で寄り添いながら冒頭の言葉を交わしてからは、無言。
ちょっと布団から顔を出してみる。
二人は手をつないで空を見ていた。
ん?
そもそもあの二人は何しにここにきたんだじょ?
「…寒い、ですね。」
「…う、うん。」
そんな疑問が浮かんだとき二人の間に会話が起きた。
さっきと内容は同じなのになにか変…。
「み、宮永さんっ!」
「へっ!?」
そして一瞬の静寂のあとのどちゃんは咲ちゃんに顔を向けた。
のどちゃん、真っ赤っかだじぇ。
「い、いや…あの…。」
「何…?」
「あの…、ほんとにするんですか?」
な、な、な、何をー!?
声をあげそうになって慌てて口を塞いだ。
「原村さんは…いや、なの?」
「いい、いやじゃないです。でも…。」
「でも…?」
461 :
昼休みの憂鬱:2009/12/18(金) 01:56:59 ID:T7/V/wIc
好奇心大爆発だじょ!
私はもう二人から目が離せなくなってしまった。
というか、咲ちゃんが意外にイケイケなのに驚いたじょ。
いや、天然なのかな?
「部長たちが来るかもしれませんし…。」
「うーん…。じゃあさっ、鍵かけちゃおうよ。」
とことこって咲ちゃんが扉の鍵をかけた。
…まずい。
非常にまずいじょ!
あの二人は二人きりだと思ってる。
だけど、実際は私がいるじょ…!?
「これで大丈夫だよ!…原村さんはこれでも嫌なの?」
いや、うん、でも、元々私が先客なんだし。
「い、やじゃないです。」
自己解決して二人に目をやって固まった。
「宮永さん…。」
「今は咲って呼んでよ…、和ちゃん。」
「咲、さん…。」
……。
落ち着くんだじょ!
素数を数えるんだ!
タコスの作り方を思い出せ!
「んぁ…。あ。」
「んん…。」
………。
エロい…。エロすぎるじょ。
そ、そんな長くキスしないで欲しいじょ。
見てらんないじぇ。
と思いつつも二人が唇を離すまでちゃっかり見ちゃったじょ。
のどちゃんはさっきよりも、麻雀のときよりも顔を火照らせてる。
咲ちゃんは…意外と余裕そう。
「こういう寒いときはね、人肌がいいんだよ。」
「咲さん…。」
「だから…ね、和ちゃん。」
まずいまずいまずいじょ!!
二人がこっちに来る。
今顔なんか合わせられないじょ!
462 :
昼休みの憂鬱:2009/12/18(金) 01:57:45 ID:T7/V/wIc
「ん…、あ…。さ、寒いですよ、咲さん。」
「大丈夫だよ、これから暖かくなるから…。」
とっさにベッドの下に滑りこんだ。
さっきまで私が寝てたベッドで二人は今…。
「や…、んく…。ふぁ。」
「やっぱり和ちゃんの身体気持ちいいよ。」
「あ…は、恥ずかし、いですんぁ。」
…堪えられない。
さすがの私でももう堪えられないじょ。
なんとかこっそり部室を抜け出した私は廊下で京太郎と会った。
「お、ゆーきどうした?元気ねぇな。それに制服が汚れてんぞ。掃除でもしたのか?」
「ちょっと、ほふく前進してきただけだじょ。」
「はぁ!?まぁいいや。部長にこれを部室に運ぶように頼まれてんだけど、一緒に行くか?」
「だめだじょ!!京太郎!行ったら死ぬ、死ぬじぇ!」
言った瞬間、さっきののどちゃんと咲ちゃんの声が脳内再生されて、恥ずかしくなる。
「んあ?んじゃ、まぁ部活んときでいっか。」
京太郎の言葉で部活の存在を思い出して、私は放課後までずっと頭を悩ますことになる。
どんな顔をすればいいんだじょ…。
そして、私は知らなかった。
こっそり出て行ったはいいけど外から鍵はかけられないから、部室の扉の鍵は開けっ放しだったということに…。
そして…
「須賀くんはちゃんとあれ運んどいてくれたかしら。」
部長も…
「あら、誰かいるの?」
二人のあんな姿を見てしまったことを私は知らない。
おしまい。
ほんとやっつけですまん。
反省はしている。
おお咲和どうもです
>>463 GJ!としか言いようがないです
反省する暇があったらもっといっぱい書くんだ!
何故か夢で衣とネリーが百合になってるの見たんだけど・・アリかなと思った。
ロリ×ロリの百合ってあんま無いよね。ってか俺は見たことない
外見幼ければロリと言えるなら俺はかなり見たことがある
今ジャンプでやってるねこわっぱ
>>456 GJ
淡可愛いな
この後なんかえらいことになりそうな気がする
>>463 GJ
咲ずいぶん積極的だな
そして部長…
照咲投下します。
宮永父「咲ッ!!おれが死んだら照の家に行けッ!!
お前は頭がいいッ!!誰にも負けねぇ一番の金持ちになれよ!!」
咲 「………………」
ーービュウウウウウ…。
醜くって、ズル賢くって、最低の父親だったぜ!!
一番の金持ちになれだと!?ああ、なってやるとも!!
お前の「遺産」受けとるぜ!!一人でも生きられるが、利用できるものは
なんでも利用してやる!!
だからこの照とかいう姉を利用して誰にも負けない女になる!!
咲「ーーくずめッ!!」ーーペッ!!
ーーゴォォォーーー…。
ーーバン!!ドザァ!!シャン!!スタッ。グゥゥン。バァァーン!!
照 「…誰だろう…?」
(ハッ!! そうだ…咲!!この子の名は宮永咲だ!!お母さんの知り合いが
亡くなられたので、お母さんがその娘をひきとり、宮永家で生活するようになった…
僕より2歳年下の妹だ!!)
照「君は宮永咲だね?」
咲「そういう君は宮永照」
照「みんな照って呼んでるよ…これからよろしく」
菫(ワンワンワンワン!!)
ーーハッハッハッハッハッ…!!
照「菫ー!!」
菫(ワンワンワン!!)
照「紹介するよ 菫ってんだ!! 僕の愛犬でね 利口なバター犬なんだ
心配ないよ!!決して人は噛まないから
すぐに仲良しになれるさ!!」
咲 「ーーふん!!」
ーーボギャアアア!!!
ーードサーーー!!!
照「菫ーッ!!」
照「なっ!!何をするだァーーッ!!! 許さんッ!!」
咲 (こいつが宮永家の跡継ぎ 長女の照か!!
こいつを精神的にとことん追いつめ、ゆくゆくは かわりに
この咲が宮永家の財産をのっとってやる!!)
菫(ピクピク…。)
貴様は今までにあがった嶺上開花の数を覚えているのか?
>>456GJ!!淡たんも照も可愛いお!白糸台たまらんです。続き期待。
>>463GJ!!咲和は王道だが、それが良い。咲ちゃん可愛いお!そしてタコス…切ねえ。
ジョジョネタだぞ!
淡←照→菫。11レス。無駄にダラダラ長いので注意。
オリ設定多数。とりあえず照が部長、菫が生徒会長ってことで。
エロくはない。欝有りだと思う。咲は出てこない。
◇は視点変更
■は章替え、視点変更なし
お前は最初に会った時、まさに太陽だった。
周囲を照らし、周囲を率いて、周囲の目標となっていた。
私は、お前を求めて蝋の翼で飛ぶイカロスだった。
そして私がお前にたどり着いたとき、
お前は既に黒き太陽に変貌してしまっていた。
何故だ。
イカロスに過ぎない私がお前にたどり着いたのが、悪かったのか。
それとも太陽であるお前ですら、手に入らないものがあったのか。
今となっては、私にはもう分からない。
ただ、ずれてしまったとすれば、やはりあの日だ。
あの日に戻ることが出来るのならば。
誰しも思う平凡な願いを、私も願う。
あの輝かしい日々を。
あの眩しいばかりの太陽を。
希望と未来しか無かったあの頃を。
返してくれ。
私に返してくれ。
ならば私は今度は見上げるだけで我慢しよう。
もう二度と不遜な希望は持たないと誓おう。
だが神はお見通しなのだ。
全国一万人の心と体を支配して、なおも飽きたらぬ飽食の魔王に、
信奉し、熱狂し、服従し、貢納し、恍惚とする浅ましい私の姿を。
手に入れて満足しているのはお前ではないのか。
否定することも出来ず、やはり今日も私は邪神に跪く。
私の血と肉と骨と心を捧げよう。
足りなければ全国一万人の心と体を捧げよう。
だから私を見てくれ。
だから私を捨てないでくれ。
だから私といつまで一緒にいてくれ。
私は跪いて涙を流す。
絶望は、すぐそこまで迫っていた。
■
目が覚めるといつもの天井。
嫌な夢を見たものだ。
もう今更どうしようも無いのに。
私、弘世菫、がそう考えて横を見ると、あいつの顔があった。
「なにをしている」
人の寝顔を眺めるなどと言うロマンチックな趣向が、あいつにあるとは知らなかった。
あいつ、宮永照はしげしげと動物園のパンダでも見るふうに言う。
「寝ながら涙流す奴なんて、初めて見た」
慌てて目に手をやると、あぁろくでもないな。泣いている。
ひどい悪夢をみたものだ。
悪夢を見るだけならまだしも、泣き顔まで見られるとはな。
「朝から悪趣味だな」
私はそう言って涙を残らず拭き取ろうとすると、照に腕を絡め取られた。
体勢としては押し倒されたに等しい。
興味本位というのがありありと分かる顔で、極限まで私に接触して
あろうことか、こう呟く。
「舐めさせろ」
黙 れ 変 態 。
まぁどうせ返事は聞いていないだろう。
私は観念して全身の力を抜く。
ぴちゃぴちゃと、下品な音が部屋を占領する。
どうせすぐに顔を洗うのだ。コレくらいは我慢してやろう。
私の涙をすっかり舐めとると、興味をなくしたように私から離れる。
「しょっぱ」
感想はそれだけか。
私はレロレロになった顔をそのままに、身体を起こす。
夢のせいか頭がぼーっとする。
脚の付根から放たれる熱が体中に伝達して、のぼせたような感じだ。
「顔舐められたくらいで発情するなよ」
は ぁ ? !
誰がいつ発情したと言うのだ。
傍から見たら誰がどう見ようと、お前の方が発情している。
私はただの被害者だ。
その気になればお前なぞ、あっという間に性犯罪者だ。
裁判無しで即ブタ箱入りさせて、一生シャバには出られなくしてやる。
第一、お前に舐められたくらいで発情するか。
うぬぼれるのもいい加減にしろ、バーカバーカ!
などと本心を言ってやるのも癪だから、
「顔を舐めるような変態には、言われたくない台詞だな」
と返すのみにする。
するとあいつは制服に着替えて部屋を出る間際に、こう言い放つ。
「お前も、ニヤけて言う台詞じゃない」
慌てて手鏡で確認する。
なんということだ。
鏡の向こう側の弘世菫とか言う馬鹿者は、大層幸せそうな笑顔で微笑んでいる。
私はシーツにくるまると自己嫌悪に陥った。
◇
桜舞い散る春。
も遠に過ぎ去って4月の下旬。
わたし、大星淡は鳴り物入り、驚異の新人として初日からチーム虎姫入りし、
エコ贔屓だの、枕だの、顔キャスだの弱者どもから散々言われながら
実力で部内三位にまでランキングを伸ばした。
まだ一部の空想主義者が、参照数が少ないからこそ起きる偶然だ、などと言っているが、
そんな現実を受け入れられないオバカさんからは、
大会までにたんまりと星を稼がせてもらおう。
くだらない授業を終えて部室に行くと、
先輩たちがおーい、と手を振った。
チーム虎姫の亦野誠子と渋谷尭深だ。
「アレ?てるてると会長は?」
会長はともかく、てるてるが居ないなんてつまんないな。
今日は結構気合いれて化粧してきたのに。
「お前、呼び捨てはともかく、てるてるはねぇだろ、てるてるは」
うっさいな、せーこちゃん。てるてるがそれでいいって言ったんだからいーでしょ。
「部長は合宿願いのため、部長会議に出席中。弘世さんは生徒会よ」
ちょっと欝っぽくたかみーが言う。
さっすがたかみー!情報収集は完璧だね!
ただ暗いだけのメガネさんじゃないってことだ。
「っていうか、昨日のミーティングで言ってたことだけどな」
うっさい。せーこちゃんは、もうほんとうっさい。
「お前、もうちょっと先輩に対する態度どうにかならねーの?」
乱入してきた二軍の雑魚を早々に飛ばすと、
わたしたちは喧騒渦巻く部室の中で少々手持ち無沙汰だ。
そんな中、せーこちゃんが釘を差してきた。
あーもう、うんざり。
「白糸台麻雀部は実力主義(キリッって言ってたのは誰々〜?」
スパッツ似合ってないとか、銀髪ダセェとか、男が女子麻雀やってんじゃねぇとか、
本音は隠してるんだから、まだいいじゃないの。
「お前、今日の部活でボコるわ」
出来もしないことを放言する人を、バカっていうんですぅ〜。
「せめて勝率と直接対決で私に勝ってからにしてよね、セ・ン・パ・イ」
可愛くウィンクしてみせたけど、気に入ってもらえたかしら。
あ〜、怒っちゃった?怒っちゃった?
プクク!
銀髪逆立ってますよ〜、せーこちゃん。
立ち上がって睨んだって、実力は変わらないんだから。
「正論言われたからって怒らないで。埃が舞うわ」
紙パックのお茶をチューチュー吸いながら、たかみーが言う。
さっすがたかみー!
あとでお茶おごってあげるね!
「買いだめしてあるからいい」
あ、そ。
■
ガラッ
「あ〜だりぃ〜」
部室の扉を開け、わたしのアイドル、てるてるがやってきたのはその瞬間だった。
途端に部室の空気が変わる。
てるてるはその存在だけで、場を支配出来る。そんな打ち手なのだ!えっへん。
「てるてる〜会いたかったよぉ〜」
わたしはいつものように、てるてるに抱きつく為にダッシュする。
慣れた手つきでてるてるは私を抱きしめると、いつものように頭を撫でてくれる。
うに〜しあわせ〜。
「あいつは〜」
本当に極限までダルそうに、てるてるがみんなに尋ねる。
てるてるがあいつだのお前だのと言うときは、大抵が会長・弘世菫のことだ。
悔しいけど、二年間のリードは流石に揺るぎそうにない。
さらに言えば部内成績でも二位で、わたしにもそれなりの勝率で勝っている。
てるてるにはかなわないだろうとは思っていたけど、
まさか会長にすら総合成績で遅れをとるとは思わなかった。
わたしに白糸台の層の厚さを痛感させた、弘世菫とはそんな人物だ。
「まだ生徒会室。今日はぎりぎりまで詰めるそうよ」
そう言ってたかみーは、またもチューチューと5本目のお茶パックを空ける。
何本持ってきてるんだろ、この人。
てるてるはそれを聞くと、大げさに溜息を付いて、わたしをひっぺがすと、
部室にひとつしかないソファーにドサっと寝転がった。
「てるてる〜一緒に打とうよ〜」
どうせ断られるだろうな、とは思うものの一応誘ってみる。
てるてるは会長がいなければ、絶対に卓に立たない。
なんでだかたかみーに聞いたことがあるけど、たかみーも見当がつかないらしい。
「めんどい」
短く一言で断ると、てるてるはそのまますぴ〜と寝てしまった。
なんとも凄まじい早業だ。
うひひ!でも、かーいい寝顔がゲットできるからいいんだけどね!
◇
「それにしても部長、大丈夫かしら」
たかみーが二本目の紙パックを取り出しながら言う。
ほんとに無尽蔵に買いだめてるのね。
でも大丈夫ってどーゆーコト?
「あ、そっか。今日はあの日か」
「あの日ってどの日?!」
まさかてるてるのことで、わたしが知らないことがあるだなんて、そんなの許せない!
生理はまだちょっと先だし、ゴミ出しの日は今日じゃない。
日直当番でもないし、特に便秘だった様子もない。
今日は調子が悪い様子も、要素もない日のはずだよ?
「ストーカーかよ、お前」
せーこちゃんはほんとうっさい。
「好きな人の情報は、意識しなくてもスラスラ入ってくるものなの!」
恋愛経験の一つもないせーこちゃんには、分からないかもしれないけどね!
わたしは胸を張って勝ち誇る。
でもそんなわたしも知らないことがまだまだあるんだ。
それもこんな銀髪ゴリラすら知っていることで。
ちょっと悔しい。
ちょっとどころじゃないけど。
すっごい悔しいから、部活で完璧にボコろう。
「一年に一回、宮永照が大爆発する日なんだよ、今日は」
めんどくさそうに耳をほじりながらせーこちゃんが言う。
情報サンクス。
でも大爆発って何?
「知りたいか?だったら亦野様って言って指を組んで崇め奉れ」
うぅむ。悩む。
自尊心よりてるてるの情報を手に入れたい欲求の方が、遥かに勝る自分が恨めしい。
「私も実際に見たわけじゃないけど」
「おい、渋谷!」
さっすがたかみー!空気ってものを分かってるね!
「二年前は会長と大喧嘩したって話。
一年前は大暴れして教室一つが全壊。会長がやっとの思いで止めたそうよ」
ふえ?
ふえええええええええええええええええええええええええええ?!!!
■
ガラッ
「あ〜だりぃ〜」
部室の扉を開け、わたしのアイドル、てるてるがやってきたのはその瞬間だった。
途端に部室の空気が変わる。
てるてるはその存在だけで、場を支配出来る。そんな打ち手なのだ!えっへん。
「てるてる〜会いたかったよぉ〜」
わたしはいつものように、てるてるに抱きつく為にダッシュする。
慣れた手つきでてるてるは私を抱きしめると、いつものように頭を撫でてくれる。
うに〜しあわせ〜。
「あいつは〜」
本当に極限までダルそうに、てるてるがみんなに尋ねる。
てるてるがあいつだのお前だのと言うときは、大抵が会長・弘世菫のことだ。
悔しいけど、二年間のリードは流石に揺るぎそうにない。
さらに言えば部内成績でも二位で、わたしにもそれなりの勝率で勝っている。
てるてるにはかなわないだろうとは思っていたけど、
まさか会長にすら総合成績で遅れをとるとは思わなかった。
わたしに白糸台の層の厚さを痛感させた、弘世菫とはそんな人物だ。
「まだ生徒会室。今日はぎりぎりまで詰めるそうよ」
そう言ってたかみーは、またもチューチューと5本目のお茶パックを空ける。
何本持ってきてるんだろ、この人。
てるてるはそれを聞くと、大げさに溜息を付いて、わたしをひっぺがすと、
部室にひとつしかないソファーにドサっと寝転がった。
「てるてる〜一緒に打とうよ〜」
どうせ断られるだろうな、とは思うものの一応誘ってみる。
てるてるは会長がいなければ、絶対に卓に立たない。
なんでだかたかみーに聞いたことがあるけど、たかみーも見当がつかないらしい。
「めんどい」
短く一言で断ると、てるてるはそのまますぴ〜と寝てしまった。
なんとも凄まじい早業だ。
うひひ!でも、かーいい寝顔がゲットできるからいいんだけどね!
◇
私が疲労困憊で部室に入ってくると、あいつはソファーでグースカ寝ている最中だった。
本当にこいつは、私の神経を逆なですることに関しては天才だと思う。
「誰かこいつを起こしておけ」
私はそう後輩に告げると、渋谷と亦野が座っている卓につく。
あいつがいつだか言っていたが、二軍の奴らと打っていると確かに下手が移る気もする。
まぁ今日に関してはもう時間が無いから、濃密な対局を楽しみたいだけだが。
しばらくすると淡があいつを連れてきた。
だから部室内でイチャイチャするな、痴れ者が。
「遅いじゃん」
あいつはぬけぬけとそう抜かす。
待ってたと言うなら、すぐ飛び起きろ。と言ってやるのもあいつの思う壺なので、
「で?どっちが卓につくんだ?」
と返すだけにする。答えはもうわかっている。
ドサっと卓に座ると、あいつは本当にいやらしそうな顔で微笑む。
「にやけながら言う台詞じゃないな」
私は結構我慢強い方だと思う。
自分の意思が世界に対して何ら価値が無いことに、
幼い頃から気付かされてきたからだろうか。
だが。
疲労と、朝方のあの痴態と、こいつの天才的な挑発に、
私の堪忍袋は、相当ギリギリまで追い詰められていた。
私は眉間に指を当て、必死に理性を手繰り寄せると、
無言でサイコロボタンに手をかけた。
■
「淡が入るよりはマシな対局になるな」
本当にしんどい半荘を終えて、感想に入る。
少なくとも淡を除くチーム虎姫の四人は、対局中の様子を全て記憶だけで再現出来る。
かちゃかちゃと手牌をたぐり寄せて、理想の打ち方を模索する。
この20日間あまりの間、淡の牌譜を検討してみたが、
やはり淡の卓は確率操作が行われているようで、
デジタル派からしてみれば、アレほど忌避される存在も無いだろう。
手っ取り早く言えば場が荒れる女なのだ、アレは。
正直私も、あいつと淡が揃った卓での勝率は、かなり落ちる。
それでその組み合わせでの淡の勝率が高ければまだ納得もいくが、
結局、私、あいつ、淡が揃った卓では、あいつの勝率がさらに上がるだけだ。
要するにワケが分からん。
最近あいつもそれを知ってか知らずか、自分が卓につくときは淡を小脇に抱えて、
弄びながら
弄びながら
弄びながら
なんでだろう、すこおおおし、腹が立ってきた。
こいつらは、私の見てないところで、肌を触れ合っているのだろうか。
その肌であいつは、私の身体を蹂躙しているのだろうか。
「どったの?」
私の気持ちも知らずに、あいつは淡の尻をこねくり回している。
嗚呼、お前はそういう奴だよ。
人の気持ちなど考えない。
自分のやりたい事をやりたいようにやる。
それでいて誰もお前には勝てないんだ。
本当に神様って奴は理不尽だよな。
あー、なんか我慢出来そうにない。
「なんでも無いと言っているだろう!」
思わず叫んでしまって、周りを見回す。
いつもは喧騒に包まれている部室が、今は耳が痛いほどの静寂に包まれている。
おかしい。
私が叫ぶという事事態、珍しいことではあるが、
いつもだったらコレほどまでに過剰な反応はないだろう。
みんなの顔には、何処とはなしに怯えが含まれているようにも見える。
同卓の渋谷と亦野、淡ですらも引いている。
というか恐れている。
◇
てるてるは最近、なかなか同じ卓に立ってくれない。
会長が同じ卓に座っているときは皆無だ。
そゆ時はこんな風に、ん!、私の身体を触りまくっている。
てるてるに触れられているだけで、幸せなわたしだけど、
何故かこういう時はあまり嬉しくない。
気持ちイイけど。
チーム虎姫の一員になってしばらく経つけど、
てるてるとは未だにキスまでしかいっていない。
胸さえ揉んでくれない。顔を埋めてくれはするけど。
会長と結構な頻度でしている癖に。
やっぱりかなわないのかなぁ、会長には。
そんな会長が、初対面の時のように激昂するのは本当に珍しいことらしく、
その時のエピソードをかいつまんで話すと他の部員は、まさかぁと受け流していた。
品行方正を絵に描いたような優等生。
それがみんなのイメージなんだって。意外。
だから、会長が立ち上がって怒った今の状態はかなり珍しく、
『宮永照一年に一度の大爆発の日』という緊張感から、みんながざわめきたった。
こ、このままじゃ、てるてるまで暴れて部室が崩壊しちゃう!
そんなのダメぇ!
「ごごごごごごごごごごごめんなさい!今日はてるてるを上げますから!
だから菫さん、お願いだから抑えて!」
わたしはてるてるから離れると、「ささ、どうぞ!」とばかりにポーズを取る。
そんなわたしの様子を見て、会長は何故かくすりと笑った。
肝心のてるてるは、というとへらへら笑ってる。
あ、あれ?もしかしてわたし、すんごくズレて恥ずかしいことをした?
会長はわたしの頭にポフ、と手を置くと、私の髪をくしゃくしゃにする。
「それじゃ、もらっていくとするか」
てるてるも立ち上がって、会長と一緒に部室から消えて行った。
あれ?あれ?あれ?
もしかしてわたし、引き立て役のピエロでしかなくない?!
よく場を収めたなと、せーこちゃんは言ってくれるし、
たかみーもお茶を差し出してくれたけど、
わたしはみんなが注目しているのもお構いなしに、
わんわん泣くしか出来なかった。
◇
もう日が落ちて、電灯がついた人っ気の無い廊下をアイツと一緒に歩く。
こいつと肩を並べて歩くのは何度もあるが、
ここまで充実した気持ちになるのも久しぶりだ。
淡はトラブルメーカーではあるが、引っ掻き回したあとに清々しい気持ちにさせてくれる。
台風のような奴と言える。
まるであの時みたいだな、と思い返して、今日がその日であることを思い出した。
「覚えているか、ちょうど二年前だったな」
どうやら今日という日は、あいつに対して素直になれる、珍しい日のようだ。
「ん?お前が私を襲った日だっけ」
まぁ間違ってはいないが、色々と語弊がある言い方だな、おい。
「互いの人生観の相違を改めて確認した日、だ」
その日、ずぶ濡れになりながら寮に戻ってきたあいつは、
明らかに今までとは違う様子だった。
その後なんだかんだあって大喧嘩に発展し、寮内はそれなりに騒然とした。
今でもその時の様子は鮮明に思い出せるが、未だにしこりとして私の心に突き刺さっている。
だが、結果として、あの日の夜、あいつは私だけのものになった
あれ以来、あいつの打ち筋は変わり、社交的だった性格は内に籠るようになってしまった。
大地を照らす太陽のようなアイツが、宮永照が大好きだった私にとっては、
青天の霹靂であり、天罰であったが、
私にしか心を開かなくなったこの状況は、また私にとって僥倖でもあった。
ここにいるのは宮永照の成れの果てであり、
私はその残滓にしがみつく愚か者だ。
だが、今はそれでいいと思っている。思っている。
「また眉根が寄ってるぞ」
あいつが言う。
お前が私を気遣うなんて、珍しいこともあるものだな。
「すまん、考え事をしていた。…またってなんだ、またって」
「またはまただろう。なんだ?股股連呼して、欲求不満なのか?」
「誰も聞いてないと思って下品なネタをふるな」
まぁ確かに欲求不満ではある。
私はあいつの腰をピッタリと抱きよせると、あいつの頭に頬を寄せる。
淡が折角引いてくれたんだ。
今日はたっぷり甘えるとするか。
>>484はミスなので脳内から消して下さい。
以上で投下終了。
>>477 ジョジョですか。自分はよく知らないのでちょっとついていけませんでした…。
>>491乙
でも、銀髪ゴリラとか特定のキャラを貶して中傷するようなことは書かないほうが良いと思うよ。
>>469 見た目ロリ中身ツンお嬢x外見大人教師中身ロリならあるぞ。某有名同人百合ゲーの次の新作で。
ssを投下します。
多分、かおりん×カマボコ、な。
かなり妄想から出来たお話です。
「蒲原、お前は本物の馬鹿だ」
ばっさりと切りつける言の葉に、ぐはっ! と心の柔らかい所を切り裂かれ、想像上の血を吐きながら、私はがっくりと身体を曲げる。
我ながら柔らかい体は、気持ち悪いぐらいぐにゃりと曲がった。
「……ひどいよ、ユミちん」
「そうだな、すまない。蒲原は大馬鹿だ」
「認めた上で更に追い討ち?!」
びっくりするなぁもう。
私は、清潔なシーツに埋もれながら、鼻をすすった。
すると、腕を組んで冷たい眼差しを注いでいたユミちんは、すかさず横に常備されていたティッシュを取って、私の鼻先を拭ってくれる。
「……むぅはわ?」
「どんな鳴き声だそれは? とにかく、だ」
ちょっと強い力で鼻を擦られ、それをゴミ箱に捨てながら、ユミちんは私の額に手を当てて、冷たい眼差しを更に低下させていく。
「……風邪を引いているのに気づかないで、授業中に倒れるなんて、馬鹿だ」
「…………ワハハ」
「……言語を絶する大馬鹿者だ」
ぐりぐりとこめかみを抉られて、彼女は相当に怒っていらっしゃる様なので、素直に「すいません」と謝る。
いやいや、私だってびっくりしているんだよ?
眼が覚めたら見知らぬ天井。
まったく利用していないから、ほぼ知らない保健室。
そして私の真横には、お怒りの親友。
「……えっと。ワハハ」
頬を掻きながら、そういえば、昨日から体の節々が痛かったり眩暈がしたりお風呂に入っただけで急に体中が痛み出したとか、そういう前兆は確かにあった。
素直にそう言うと、頬を伸ばされる。
「……何故、それで気づかないんだお前は。おかげで、授業中居眠りしているだけだと思ったお前が、先生の呼び声にも私の声にも反応せずにぐったりしていて、私が、どれだけ心配したか……!」
「わひゃひゃ? えっひょ、ごめんにぇ?」
「許さん。……しかも、お前はどうしてそんなに普通なんだ? 軽く三十八度を超えていた筈だぞ? お前の体温」
「ワハハ、昔から熱を引いても何でか平気だし元気なんだ!」
「子供か!?」
ぽかりと叩かれ、やれやれとユミちんは私のおでこに張られていた冷えピタを「斜めになってる」と細かく直しだす。
何か、心配かけてしまったみたいだなぁ、と苦笑して。
そうかぁ、風邪なんて何年ぶりかですっかり忘れていたなと、この体が火照るだるい感覚に慣れずに、酔いそうになる。
「むぅ」
「ん?」
「……なんか、気持ち悪い?」
あれー?
自分の事だがあれだ。
どうにも不愉快で、私の身体なのにちっとも言う事を聞いてくれそうにない。
笑おうと思っても、どうだろう?
ちっとも笑えている気がしない。
……うわ、風邪って面倒だな。
「……蒲原?」
「え?」
「……いや、お前のそんな顔、初めて見るなと思ってな」
「…………」
今、私は一体どんな顔をしているんだ?
……うーん?
笑顔を主軸にしている分、自分ですら、笑顔がでなくなるとどんなへんてこな顔をしているのか分からない。
ちょっと興味もあるけど、鏡がどこにあるのかなんて知らないし……
「……不機嫌そうだな」
「そう?」
「ああ、苛立ち紛れで、いつものアホ面と見比べると、一瞬こいつ誰だ? と見失いそうだ」
「…………」
アホ面って……
ユミちん、親友の顔をそんな風に思ってたのか? ちょっと仲違いをしたくなるなをい。
「……ふむ」
くいっ、と、私の顎に指を添えて、そのままくいくいと、人の顔を物珍しそうに、いや、実際めちゃくちゃ興味深そうに覗き込むユミちん。
……一応さ、病人にする態度や行動じゃないよな?
「蒲原」
「なんだいユミちん?」
「お前、実は格好良いのか?」
「…………。……あぁ、もしかして風邪がうつっちゃったのか?」
ユミちんが壊れた。
心中げんなりしつつ、ワハハと笑おうとして、どうにも上手く笑えている気がしない。
頬の筋肉に力が入らず、なんか、どんな顔をしているのか自分で分からないまま、不安と不信感だけが膨らんでいく。
……いや、マジでどんな顔しているんだろう、私。
「……ふむ」
ユミちんは目を丸くして、そろりと目を逸らした。
その頬は、気のせいか僅かに赤い。
「……アレか?普段ふざけたおちゃんぽらんが、急に真面目な顔つきになったり、苦い笑いが似合ったりする為に、ときめくというふざけた現象か?」
「をい? ユミちん?」
「こうして見ると、お前の顔、並みの上だったんだな」
「……よし。馬鹿にしているんだな?」
調子悪い人間にさっきから何なんだまったく……
いくら親友で遠慮がないからって、時と状況は選ぶべきだぞ? 私は選ばないけどさ。
つか、本当に調子悪いから、いつもより心が狭いんだぞ? けっこう、ムッとしていたりするんだよ?
「……ん、ああ、悪いな蒲原」
「もう、まったくだよユミちん」
「写真に撮らせてくれ」
「……今何に対して謝罪した? そして、実は悪いとか思ってないな? そうなんだな?」
パシャンパシャンと、人の怒り顔(多分)を撮るふとどきな親友。
お前もう教室に帰れ。
「……あのさぁ」
「……すまん。だが、珍しいから撮りたい」
「……怒るよ?」
「……いや、それは分かっているんだ。私は」
すっ、とユミちんの瞳が、私の目を見つめる。
「……三年間、一緒にいて、お前の怒った顔なんて、今、初めて見るんだ」
パシャン。
「?」
「お前は、いつも笑っているからな。せっかくの貴重な瞬間を、こうして形に残してもいいだろう?」
パシャン。パシャン。
「……はあ?」
何それ?
私は、よく分からない何かで、風邪のせいなのか、今のユミちんの台詞のせいなのか。
あれ? って、どうにももやもやする。
……笑顔?
そう、でもないだろう。
これまでもたくさん、情けない顔を晒していると思うし、怒った事だってそりゃああるし、泣きそうになった事だってある。
でも、ユミちんがそう言うなら、そうなんだろう。
「…………」
そういえば、私はいつから、ワハハ、なんて笑う様になったんだっけ?
普段、考えもしない事が、頭の中をゆらゆらと漂う。
そう。いつの間にか、私は笑顔という名の、ワハハな仮面を被っていた。
だから、それが少しだけ外れた今、ユミちんは、私にそんな、寂しそうな嬉しそうな、変な顔で、切なげに小首を傾げているのだ。
……なんだそれ。
「ユミちん……」
こんな風に、大切な親友を寂しがせているなんて、想像すらしていなかったから。
疑問を感じもせずに、ワハハって笑ってたから。
分からなくなる。
どうして、私は、違和感すらないぐらい。その仮面に頼りきっていたのだろう?
そんなに、本心を出したくないのか?
「……えと、ごめん」
「ん? ああ、いや、気にしないでくれ。……私が、その表情を引き出せなかっただけだ」
「……ごめん」
ぽんっ、と、ユミちんが私の頭を撫でる。
気にするな、と言葉以外の行為で伝えられて、そうっと目を閉じた。
くすぐったい様な、あったかい感じ。
まったく、ユミちんは優しい。
癖、というかつい、『ワハハ』って笑いそうになって、馬鹿か私は、と苦笑して止める。
どんなアホ面を曝け出しているのかは知らないけど。
ワハハじゃない私の顔は、きっとどうしようもないかもしれないけど、でも。
親友に見せられないぐらいじゃあ、ないんだろう?
「じゃあ、まあ……。ユミちんや、皆の前でくらい、頑張ってワハハを減らすぞ!」
「……え? ん、いや、止めとけ」
真面目な顔で、視線まで逸らされて止められた。
「をい!?」
うわ、びしりと止められた!?
予想以上にショックかつ力が抜けた。
……えー?
さっきまでのいい感じは何? 感動とか色々と消えて、一気に奈落に突き落とされた感じ。
ユミちんは、実は意地悪すぎるのか?
「……なんでだー?」
「いや、モモが惚れたら困る」
いきなりボケられた。
「……何を言ってんだあんたは?」
「それに、妹尾も心配する」
「どういう意味だ? つか何で?」
「……それは、あっち方面での意味だ。そして、睦月が自覚したらどうする?」
「何を?」
「……だから、あっち方面をだ!」
「……だから、あっち方面って何だよ!?」
あ。無理。
普段、ユミちんと言い争うなんてないのに、今は風邪のせいなのか? 全然抑えが聞かない。
理性がぐずぐずと溶けて、バターみたいに液体になっている。
「……」
びっくりした顔をしているユミちんを、ぐいっと引き寄せて、その目をじいっと覗き込む。
とりあえず、今日はユミちんの奇行のせいでストレスが溜まってしまったので、ここらで発散しようと思ったのだ。
「……ワッハッハ。さっきから、ユミちんは訳が分からないぞ?」
「へ!?」
「いい加減に、しないと」
「ま、まま、待て蒲原!? 私にはモモがッ」
「――――くすぐるぞ!」
「いるから――――って、へ?」
「うりゃ」
わっはっは。
ユミちんがくすぐったがりで、特にココとかソコとかが苦手なのは知っているんだ。
怒られるから実践しようなんて思った事はないが、私の観察眼を甘くみすぎだぜユミちん!
「えっ、ちょっ、きゃう、ぁ、ははははっ! やぁ、やめ、やめてかんば、あははははははっ!?」
「うりゃうりゃうりゃ〜」
「くはっ、きゅうんんんん!? む、むり、むりだかっ、ぁ、はははははは!?」
「よしよし、では勘弁してやろう」
手を離してあげると、ぐったりとユミちんが私にのしかかる。
肩で息をして、真っ赤な顔は相当に苦しかったと見える。……ふっ、勝った!
「か、蒲原、お、お前なぁ……!」
普通は逃げるだろうに、私が止めると言えば止める奴だと知っているから、恨みがましい目をしながらも、ユミちんは大人しかった。
「まったく、あんまり病人をからかうものじゃないぞ?」
「…………ぐっ」
「ほら、そろそろ教室に戻ったらどうだ? まだ授業中なんだろ?」
「…………ああ」
納得いかなそうながらも、ユミちんは素直に頷く。よしよし。
「んじゃ、私も後で行くから、先に戻っておいてくれ」
「? え、蒲原、午後も出るつもりなのか?」
「勿論! 一応は受験生だしな。保険室の先生は不在の様だけど、職員室に行って事情を話せば、風邪薬ぐらいくれるさ」
「……そうか」
出るのか……と、ユミちんの複雑げな顔にうん? と引っかかりは覚えたけど、まあいいや。
私はユミちんを解放して、一回ぐっと伸びをして、こきりと首を鳴らす。
結構眠ってしまっていた様で、体が少し固くなっていた。
そのまま布団から出て、脱がされていたスカートを着て、ふと眼に入った壁にかかった鏡の前に立つ。
「……」
後ろで、ユミちんが物問いたげに見つめる中、そこに映る私の顔。
髪がちょっとくしゃくしゃで、眼も、口も、詰まらなそうに、無表情な。
ちっとも笑っていない、何だか不貞腐れている子供みたいな、まるで子供みたいな顔があった。
……いっや、参った。
まさか、微塵も、口元すら笑えないとは、相当に風邪は重症らしい。
教室に戻った私を待っていたのは、教師の驚いた顔と、クラスメイトの驚愕の視線。
まさに「お前は誰だ!?」という失礼な表情。
いやぁ、よく怒らなかったな私。偉いぞ!
そんなに笑ってない私の顔は別人かよ!?
ちょっとムカッときて、それが少し顔に出てしまった様だけど、その際、驚愕を更に濃くする奴と、ポッと赤くなる奴の二つに分かれたのが不思議だった。
若い数学女教師も真っ赤になってしまったけど、私はとりあえず無視した。
……でも、その後やたらと当てられたのは納得いかない。
「蒲原」
「ん?」
ぽんっと肩を叩かれて振り向くと、ユミちんが複雑な面持ちで立っていた。
そして。
「この後は、部活だが……その」
「行くよ?」
「い、いや、私たちはもう引退しているし……」
「? 昨日は、一緒に顔を出そうって決めてたじゃないか」
「そう、なんだが、蒲原は調子が悪いし、顔がおかしいし、モモが心変わりでもしたら、私は泣くし」
「……ユミちんがよく分からないけど正直で嬉しいよ。絶対に行ってやる」
悪かったな! 顔がおかしくて。
こうなったら、佳織やむっきーやモモに見て貰って。
おもいっきり笑われて、それで、少しはすっきりさせて貰おう。
そして、どんな風に顔がおかしいのか、聞かせて貰おう。……ユミちん? 駄目だ。支離滅裂で参考にならない。
「ほら、いくぞユミちん」
「……ああ」
肩に鞄をかけて、頑張って笑ってみると、ユミちんがぎしり、と一時停止した。
その顔が何だか複雑で、変な感じに難しかった。
「?」
そして。
パシャパシャパシャパシャパシャパシャ!!!!
「…………」
各方面から写メの嵐。
……ワッハッハ。そんなに私の顔は阿呆面かちくしょう。ワハハ以外はレアすぎるのかそうですか。
つぅか悪かったな。変な顔で!
荒んでいるみたいで、かなりむかついたので、ユミちんの手を引いてさっさと歩いていく。
ああいけない。
風邪って、本当に心まで病むんだな。
普段はそうでもないのに、むかむかが止まらなくて、顔が歪んでいる。
私は、いつも「ワハハ」で、自分で言うのもアレだがムードメーカーで普通の奴なのに、今はけっこう嫌な奴だ。
不機嫌を顔に書いて、誰かに嫌な気持ちを押し付け、負の感情を与えてしまうのが気にもならない、そんな空気を読まない奴だ。
……誰かの表情を歪ませる奴だ。
「………ちぇ」
ただの風邪で。
私はそんな奴になるんだなぁって、自分の幼稚さに、ちょっと落ち込んだ。
こんなに気持ちが悪いのは、本当、風邪のせいだって思って、そうじゃないと困る。
「……あーあ、佳織に看病してもらう」
「ああ、そうしろ」
ぽんっと、後頭部に優しい感触。
見上げると、ユミちんが淡く微笑んで、私よりレアだろって顔で、私を励ましてくれていた。
……まったく、最高の親友だった。
「……ワハハ」
少しだけふらつく足で、何だかすっきりして。私は今はけっこう、上手く笑えている気がした。
ふと思い出す。
ワハハって、笑う癖。
っていうか、この表情。
最初は、私だって普通の子供らしく、色々な感情で転げまわっていたのだ。
でも、私が怒ったり泣いたりしていたら、同じ様に怒ったり泣いたりする奴がいた。
そう、私の幼馴染。妹尾佳織だ。
私より小さくて弱っちい佳織は、どうしてか、いつも私の後についてきて、私の真似をしたがった。
私が、近所の悪ガキと喧嘩をして怒っていたら、佳織も一緒に怒って喧嘩に割って入って、こけて、怪我して泣いた。
んで私が怒られた。
私が、親に怒られてふてくされて泣いたら、佳織もオロオロしだして、わんわん泣いて、私にくっ付いて泣き疲れて眠って、帰りが遅くなって。
んでやっぱり私が怒られた。
『……うーん』
小さい私は考えた。
他にも感情って色々あるけど、佳織は特に、私が怒ったり泣いたりすると、一緒に怒ったり泣いたりして、それが顕著で、子供ながらに悩ましかった。
だから、笑う事にした。
『ワハハ!』
『うん? えっと、わはは!』
『そうだぞ、ワハハ、私は楽しいぞ』
『うん! 私もね、楽しいよ』
にこにこして、ほわほわした顔をにこにこにこにこ。
本当に楽しそうにするから、私は、私の笑い顔なんかで、そんなに笑うのかって、ちょっと嬉しくて。
だから『ワハハ』は、私にとって、必須になった。
笑っていれば、佳織も笑うから、それで良かった。
そして、いつの間にか、それが私の一部になった。
――――あれ?
記憶が繋がり、ふと違和感。
……そういや、私、ワハハ以外で佳織の前に立つの、滅茶苦茶久しぶりっていうか、かなり無いんじゃないか?
たまにワハハしていない時だって、とにかく目とか口とか、笑ってた、けど。
「……うわ」
部活に向かっていた足が、ぴたりと止まった。
あれ、え、えー?
私は今、笑っていないんだよな? 笑おうにも全然顔に力が入らなくて、仏頂面で。あっれー?
「蒲原?」
「……え、っと」
うわわ、やばい。
何がやばいって、分からないけど、やばいのだ。
ぺたぺたと、顔に触れる。
手の平に触れる頬の感触は引きつり、何だか泣きそうに歪んでいる。
わわっ、ど、どうしよう?
「お、おい? どうしたんだ蒲原? やはり具合が悪いのか? と、とにかく部室に」
「ッい、いや」
足がすくむ。
何か、忘れてはいけない事を、忘れていた様な。
というか、佳織にだけは会っちゃいけない気が、凄くしてくる。
無意識に訴える、本能の理解を飛び越して、ただ鳴り響く警鐘に。
どうして、今まで鳴らなかったんだと心臓が壊れそうになる。背中に嫌な汗を引いて。一歩、引いた。
「……あの、ゆ、ユミちん、私、やっぱり、かえ」
「帰りますね」
――――――ッ!?
ふわりっ、と、体が後ろに引き寄せられて、目の前にいるユミちんの目が微かに見開いていた。
「……ぅ、あ?!」
「智美ちゃん、今日は保健室に行ったんですよね? 噂、二年にまで聞こえてきました。珍しすぎるって」
背中に触れる、見知った感触。香り。声に。
今、彼女はどんな顔をしているのか、不安で押しつぶされそうになる。
――――もし、泣きそうだったら、嫌だ。
「かお」
「大丈夫だよ、智美ちゃん。私、もうそんなに子供じゃないから」
「へ……?」
ひゅっ、と、
呼吸がかすれて、振り返ると、『笑顔』があった。
ほわんってする。
柔らかくて、優しそうで、暖かい、佳織の微笑みが。
「……、ぁ」
不安が消え去って、ドクンと安堵の鼓動が大きく鳴って、私の体から力が抜ける。
何か、私にもよく分からないけど、でも、良かったと思った。
……そう。だって、
笑顔じゃなかったら、私は、笑えないから、泣き顔のまま、大切な彼女を悲しませてしまう。
笑えれば、いくらだって、笑顔に変えられる、から。
「……相変わらずなんだから、智美ちゃんは」
えへへって、何が嬉しいのか、佳織は頬を染めて喜んで、私の腕をそっと抱きしめる。
ユミちんが、よく分からないなりに、ほっとした顔をしていた。
「大丈夫だよ智美ちゃん。私は、もうあんなに子供じゃないから。智美ちゃんを困らせたりしないんだよ?」
「え?」
「……えへへ、私だって馬鹿じゃないんだよ? ちゃんと、知ってるんだから」
「?」
ぎゅっと腕を抱きしめる力が強くて、私は疑問符だらけになりつつも、えっと? まあ、いいか、と頬を掻く。
佳織が何を知っているのかは知らないけど、多分、私も知らない事な気がしつつも、佳織はほわほわと笑っているから構わなかった。
「じゃあ、帰ろう智美ちゃん」
「え? あ、ああ、そうだな。……ワハハ」
なんか、調子が狂う。
どうにもこのままでは勝手が悪い。
「えーっと、いや、でもむっきーやモモに挨拶ぐらいは」
「駄目だ」
「や、ヤダ!」
…………えー?
なにそれ、見事に息ぴったりなノーだった。
「……今日は帰れ蒲原。顔が戻ったらモモに会わせよう!」
「何で?」
「だ、駄目だよ智美ちゃん! …………睦月さんが、ライバルになったら、智美ちゃんが、とられたら、ヤダ」
「え? 最後の方聞き取れなかったぞ?」
「な、なんでもないの!」
むむむっ、と眉間に皺をよせた真剣な顔に、私は困惑しながらも頷くしかできず、そのまま佳織に腕を引かれる。
「それじゃあ、失礼します!」
「ああ、蒲原は任せたぞ」
「はい!」
「………えー?」
とんとんっとん。
私より背が高い佳織に本気で引かれると、歩幅が全然違って、その手の平は、私より大きいと、抱きつく感触で、今更気づいて。
振り向いたら、ユミちんがまるで「そんな顔をするなよ」と言いたげで。
全部、まるで夢を見ているみたいに、私にはぐちゃぐちゃで、勝手に進んでしまう。
……なんか、意地悪だ。
ユミちんも佳織も、私が分からない事に、何一つ正解をくれなくて。
なのに……優しいとか反則だ。
……ワハハ、なんて、笑ってやらないぞ。
「ねえ、智美ちゃん」
「んあ?」
「……そんな顔しないで」
どきり、とした。
でも、何か悔しくてそっぽを向く。
そんな顔って、どんな顔なんだよ。
だから、さ。……私は今、どんな馬鹿面を晒しているんだ?
「……拗ねないで?」
また、
どきりと、
「いつも、いつも笑いが耐えない智美ちゃんが、そんな顔、急にしたら」
ふわりと、片手が、両目に覆われて、何も見えなくなる。
ぐいって引っ張られて、元々人気が無かった廊下から、階段下の小さなスペースに引き寄せられて、とんっ、と押し付けられる。
「? ……っ?」
「もう、ずるいよ智美ちゃん」
「なっ、にが」
なぜか、喉が引きつる。
佳織の声が耳に異様に大きく聞こえてくる。
「……だから、ね? 笑ってないだけで、こんなに、真剣な顔なだけで、苦悩しているだけで、こんなに」
片手が外されて、視界が開かれる。
そしたら、目の前には佳織がいて。
泣きそうに見える、でも泣き顔じゃない、赤い顔をしていて。
ドクンッて、私は吸い付くように見惚れて、目が離せなくなって、心臓を奪われた。
「―――格好良いなんて、ずるい、よ」
両腕が、こんどは腕じゃなくて、全身を抱きしめて、まるで隠すみたいに私を包み込む。
小さい頃から一緒で、守っているつもりで、でも、いつの間にか背も越されて、頭だって佳織のが良くて、運動神経だけしか勝てなくて、麻雀だって、将来性では分からなくて、とにかく。私は。
「……かっ」
「そんな顔、他に見せちゃ、ヤダ」
「……なっ」
「ワハハ、はいいの。だって、それは、智美ちゃんが小さい頃に、私にくれたモノだから……でも」
「……ちょ」
「そんな、素敵な顔、他に見せちゃ、いやだもん」
―――――。
いぅ?
クラリと、そこが、どうやら限界で。
元々熱が酷かったのに、それに、更に負荷がかかって。
顔が、体が、もう全部、熱かった。
「え? あれ? 智美ちゃん?」
「……ふあぁ?」
「え? ふえ? さ、智美ちゃーん!?」
佳織の悲鳴を最後に。
私はぷつんと、意識をしっかり失った。
その短い合間に、私は夢を見た。
懐かしい夢を見た。
真っ白で、声だけの、そんな夢だった。
『あのね、智美ちゃんは、かっこいいって』
『ふーん?』
『クラスの女の子がね、言ってたの』
『そっか。それで、佳織はどうしたんだ?』
『……やだなぁって』
『?』
『あのね、いつものして?』
『ん? ああ、ワハハ!』
『うん、えへへ、ワハハ』
『おう、ワハハ』
『…………』
『ワハハ?』
『……っ。えっとね、そうやって笑ってたら、智美ちゃんがかっこいいの、あんまり分かんない』
『へー?』
『だから、ずっと、それして?』
『? それって、ワハハ』
『うん!』
『ずっとって、どれぐらい?』
『……ずっと!』
『ずっと?』
『ずーっと!』
『……んー、そっか。じゃない、ワハハ?』
『そう、それがいい!』
『……ワハハ』
『えへへ』
『ワハハ』
『うん♪』
小さなあの子は、たったそれだけの約束と笑い方で、本当に嬉しそうに笑うから。
だから、いいのだ。
ずっと、これがいいのだ。
『あのね』
『ワハ?』
『……ありがとう、智美ちゃん』
小さな両手が伸びて、頬を優しく塞がれて。
嬉しそうに、感激に頬を染めて、あの子は静かに近づいてくる。
ちゅっ。
って。
それで、これが、
私のファーストキスだった。
そして、それは多分、昔実際にあった光景の、夢なのだ。
目が覚めたら、知らんけど顔が熱くて仕方なかった。
というか、体がバネみたいに跳ね起きた。
「うっわぁ!?」
「うひゃい!?」
よく分からんが驚いた。
いっやあびっくりした!
そして、目の前に佳織がいて、倍に驚いた。
「びびび、びっくりしたよ智美ちゃん!」
「お、おおおおう! 私もなんかびっくりしたぞ?!」
ど、どうしたんだこの心臓?!
静まれマイハート! つかもうお前止まれ! 今日はちょっとふざけた動きが多すぎる!
「……智美ちゃん、何をしているの?」
「見て分かるだろ、心臓に止まれと命令している!」
「死んじゃうよ!?」
きゃーって悲鳴をあげて、佳織が私を押さえ込んでくる。
むぎゅっとつぶれて、佳織は心配性だなぁって、ワハハと笑う。
「……ん」
あれ?
頬筋が上手く動かない気がして、それで思い出した。
……そういや、私は現在風邪を引いていて、笑えないのだと。
笑えないと、どんな顔をしていいのか分からず、とりあえず不愉快だなと、顔をしかめてみた。
「……ぅわ」
「ん?」
佳織が、何でか頬を染めて、それから、嬉しそうににこにこしだす。
「?」
よく分からないけど、まあ笑ってるしいいかと、見知った天井。つーか、私の部屋のベッドの中。さて、私はどうしてここにいるんだと少し考えた。
「……佳織」
「え? あ、えっとね。智美ちゃん、学校で倒れちゃって、それで一旦保健室に連れて行って、先生に車で送ってもらって、それで家に着いたら智美ちゃんのお母さんに手伝って貰って、智美ちゃんを部屋まで運んだの!」
「……そっか」
しどろもどろな説明に納得して、私は頬をぐにぐにのばしながら、にこにこと嬉しそうな佳織に首を傾げる。
不思議な事に、佳織はずっと機嫌よさそうだった。
「……えへへ」
「?」
「智美ちゃん、こんな時まで、ワハハってしようとしてるんだよね?」
「え? うん」
「だからね、嬉しいなって」
「?」
なんか、今チクンと、記憶とか夢が混ざって、色々と思い出しかけた。
でも、そっと頬に触れてくる佳織にどきりとして、少しだけ、それ所じゃなくなる。
「………えっと? いや、ん、まぁ、いっか」
「え?」
「いや、何でもない」
ただ、風邪を引いた不調のせいで、何か大切な事を思い出しかけて。
でも、別にいいやって、思ったぐらい。
それっぽっちだった。
「? えと、そうだ智美ちゃん。桃缶開けたの、食べるでしょう?」
「おう、食べるぞ!」
笑う佳織に、どきりと。
心臓が変に稼働するけど、でも、それはきっと風邪のせいだから。
頬が熱いなと、風邪を鬱陶しく思いながらも、佳織の看病を、有難く受け取った。
その日はずっと、胸のリズムは狂っていた。
ちなみに、次の日には風邪は治り、私は全快した。
ふっ、私は健康優良児なのさ、ワハハ!
でも、何故か佳織を見てドキドキするのはおさまらず、今日辺り、ユミちんに相談しようと思う。
おわり
以上です。
何を書きたかったって。笑っていない蒲原さん。シリアス顔のキリッとした蒲原さんはきっと素敵だ!
そしてかおりんは、幼馴染権限でそんな表情を独り占め。
あと、蒲原さんと加治木先輩は仲良し。を書きたかった。そして恋人未満幼馴染以上も書きたかった。
病気です。どうも長い駄文を失礼しました。
>>511 GJ!
そうだ、きりっとした蒲原さんはイケメンだ!
誰か描いてきて
風邪で動作が緩慢になったせいで、顔より先に目が動いて
振り向くたびにクールでアンニュイな流し目を送ってるみたいになる
↓
その流し目の先にいる人たちが片っ端から胸キュン
という光景が浮かんだ
アンニュイな感じは伝わるがやっぱり違和感があるな
カマボコは笑ってるのが一番だと言う事かなw
ワハハかわいいよわはは
GJ!
これで明日からも戦えそうだ
>>491 GJだけど先輩に対してあれはちょっときついな
こういうのも悪くはないけど
にしても淡がちょっとかわいそうだったな
照を変えたのは菫か
>>510 GJ
シリアス顔のワハハ最初は想像できなかったけど多少は想像できるようになった
佳織とワハハの過去はなんか良い感じですね
あるなら続き楽しみにしてます
それにしても最近かおりんワハハが妙に多くてうれしいな
風邪は心も病ませる…か
某ドラム担当の部長も風邪で心が病んでる時に幼なじみとケンカしてたな
りっちゃんのことかぁぁあ―――――!!!
スレチになっちゃうけどけいおんで百合萌えできる人って居るのかな・・・
するとしたら、律×澪なのか?俺にはちょっと無理かも・・
ごめんなさい上レスは完全スルーでお願いします。。
そろそろ咲照が欲しくなってきたな
また暖かい話を見たいものだ
インターハイで咲に会えるのが内心嬉しいお姉ちゃんが見たい
風越が好きなんだが…
SSが少ないのは固定カプみたいのがいないからかな
池キャプ、みは池があるから書きにくいってことはないと思う。
まぁ部キャプが永遠すぎるからだろうけど
え?
>>527 キャラ萌え的な意味で文堂とドムが足引っ張ってるからじゃね?
文堂さんなんか、見てるだけで癒されるんだがなぁw
>>530 それは文深文も蟻だと思っているオレに対する挑戦だと思ってよろしいか!?
咲照の人、音沙汰なしだね…
初投稿です。本誌の風呂場のシーン見ていて思い付いた誰得カプ小ネタ。
もっと長い話にしたかったのですが起承転結の承から先が全然書けないので、
大幅にぶった切って投下します。
「よっ。お互い早いの」
合宿二日目の朝、お風呂に入るか散歩にするか決めないまま、
とりあえずロビーに出てきたところで声を掛けられた。この口調は…
「清澄の…染谷さん。おはようございます」
「そっちは吉留さんじゃったな。今時間あるか?」
私と同じ浴衣姿の彼女が手招きした。
「何です?」
「いやぁ、今度こそ敦賀のトーシロにぎゃふんと言わせてやりたくての。作戦会議を」
「やりましょう」
「お、おう…」
なぜか染谷さんが引いている。私、そんな恐い顔したっけ?
「沢村さんは呼ばないんですか?」
“敦賀のトーシロ”…妹尾さんに痛い目に合わされたのは私たちだけじゃない。
やるからには彼女も引き込まないと。
「さっき龍門渕の親玉に会うたがの、まだ寝とるそうじゃ。朝に弱い言うとったけぇ」
「なら仕方ないですね。後で…」
「いいから、それを何とかせぇ」
染谷さんはなぜか不機嫌そうに私を遮った。
「それ?」
「敬語じゃ!あんた二年生じゃろ」
「はい」
「わしもじゃ。同学年(タメ)なんじゃけぇ、遠慮せんでもええ」
「は…うん」
なぜか、ちょっとどきどきした。
合宿が終わる頃には、私たちは「まこちゃん」「未春」と呼び合う仲になっていた。
>>531 そういうことになるな
俺は文堂→みはるん→←池田派だしw
ドラマCD三局一足先に聞いたけどヤバイっす。
もう、モモ→かじゅは確定っす。
でも、カマボコとムッキーが出てこなかったのが残念。
後、ドラマCDだから仕方ないかもしれないけど、かじゅの独り言は多すぎる。
あれを素で何時もしているなら、かじゅのイメージが変わる気がする。
って言うか、かなり危ない人な気が。
何気に龍門渕はトータルでのドラマCDの出番多かったな。
清澄>龍門渕>風越=鶴賀って感じで。
色々ドラマCDでキャラの補足とかを期待していたけど、思ったほどの物は出なかったな。
って言うか、仕込みで朝が早いってことは、純料理ができるのか!?
かなり以外。でも、俺が女だって否定するってことは、家事全般得意とか?
実は龍門渕のお母さんは純なんじゃ!?
>>532 咲照菫の人は南浦むっきーに集中してるし一応完結してるし仕方ないな
連作書いた人もう1人いるけどそっちは10月に前スレで書いて以来音沙汰無しだし
けど続編見たいな
>>533 GJ
こういうマイナーカプも良いね
この場合は正規のカプはないし行き過ぎてもいないし安心して見れる
>>535 昔は自分で作って自分で食ってたんじゃないだろうか
続きができたので投稿します。
付き合うと言う事がどういう事か、正直私は分かっていなかったのかも知れない。
好きだと告白したのは、確かに私だ。
でも、付き合えるとは思っていなかった。
だから今の状況は非常に嬉しい訳だが、恋人と言うにはまだまだほど遠い。
それが悲しくもある。
好きじゃなくても付き合ってきた。
あれほど魅力的な人物。惚れた相手が私だけと言うのがおかしい。
それは分かるが、正直この状況は面白くない。
竹井と付き合う事になってから三週間が過ぎた。
その間一度も竹井とは連絡を取っていない。
その事をモモに言ったら、何がっても今日会いに行くように言われた。
付き合っているのに電話一本しないなどモモ曰く、ありえない事だそうだ。
だが、私も過去に付き合った相手は、その事について特に何も言わなかった。
連絡をするのは用がある時だけ。それも私用の用事というよりは、公用の方が圧倒的に多い。それでも、中学は二年間。高校は一年と中学生の時より短くなったが、付き合っていた。
私は基本的に相手を束縛する気はない。会いたいと言われれば会いに行くし、放っておいて欲しいと言われれば放っておく。
これが友達ならそう言う訳にはいかないが、恋人となるとそうしておくのが私にとっては普通だった。
だから付き合っている相手が浮気をしても、その事を責めた事は一度もない。(態々浮気をしたと告白された)
元を正せば、私が相手にそうさせるだけの事をしたのだと言うのは、何となくは分かったから。
浮気をしても私は別にその事を怒ったりはしない。私の知らない所で何をしようとそれは相手の勝手だからだ。その場に居なかった私が、とやかく言うのは間違っている。
だけど、今日は私が勝手に来たとは言え、何を好き好んで恋人の告白シーンを見せられなくてはいけないのだろう。
告白している子は一年だろうか。宮永や原村と同じ赤いスカーフをしている。
そのまましばらく告白シーンを見ていたが、竹井は笑顔で何かを話していた。そして、あろうことか、その子にキスをした。
私は思考が停止して、その場から動けなかった。
「加治木さん」
竹井に名前を呼ばれて、ようやく思考が働き始める。
「竹井。さっきのは?」
努めて冷静にしているが、内心は今すぐにでも竹井の肩を掴んで怒鳴りたかった。
「ああ、一年生の子でね。好きだって告白されたんだけど、私は今加治木さんと付き合っているから断るじゃない?でも、ただ断るだけじゃあの子が悲しむからせめてものお詫びとして、キスしたのよ」
見られているなんて思わなくてと、悪びれもせずに言われる。
「そうか」
ここで竹井に怒りを露わにしても、恐らく何の意味もないだろう。
竹井を観察していて思った事は、他者と距離を置くタイプだと言う事。それはどんなに親しい相手でも変わらない。
実際に合同合宿の時も、清澄の面々とそれ以外との面々と接しているときに何の違いも感じなかった。相手に踏み込まないし、相手にも踏み込ませない。
だから今私がここで先程の行動について怒る事は、寧ろ竹井にはして欲しくない事。それが分かるから、何も言わない。
「それよりどうしたの?加治木さんが清澄に来るなんて」
竹井の疑問は最もだろう。現に私だって、今なぜここに居るのか分からないのだから。
「竹井に会いに来たんだ。迷惑だったろうか?」
まぁ、嘘ではない。と言うか、他に理由が思い浮かばない。
「私に?」
「ああ」
「……そう」
なんだ?何かまずかっただろうか。
「この後何か予定とかあるだろうか?」
「別にないけど」
私は鞄から紙切れを二枚取り出す。
「良かったら一緒に見に行かないか?貰い物なんだが、行く相手が竹井しか思いつかなくて」
「何?映画のチケット。しかも今日まで」
「ああ。今日までなんだが、やはり急すぎるな。すまない。忘れてくれ」
幾らなんでも急すぎるよな。私も思う。
「なんで?いいわよ。私も見たいと思っていたんだけど、行く機会がなくてまだ観てなかったから」
「そうか。よかった。では、行こう」
竹井の手を取り、映画館へと向かった。
上映最終日だけあって、人は殆どいなかった。と言うか、竹井と私の二人きりだった。
そう言えば、映画のタイトルもろくに見てなかったが、一体何の映画なんだ?
映画のチケットはモモが渡してくれた。
竹井に会いに行けと言われたが、『会いに行く用事がないのにか?』と言ったら、モモに今まで一度も見た事がないくらい冷たい目で見られた。
そして、『先輩は恋愛体質じゃないですね』と言われた。
恋愛体質と言うのはよく分からないが、とりあえず何か責められているのは分かる。
そして、『今日までの映画のチケットっす。これを理由に清澄の部長さんに会いに行けばいいっす。本当は先輩と観に行こうと思ってたんすけど』と言われチケットを渡されたのだ。
今私は後悔している。モモのセンスが分からない。
と言うか、妹尾辺りならこれ絶対に拒否されたと思う。
ホラー映画は大抵見る人を選ぶと言うのに。私は別にこう言ったのは得意ではないが、苦手でもないので問題ではないが。
そう言えば、竹井も見たかったと言っていたが、こう言うのが好きなのだろうか。
チラリと盗み見た竹井の目は、子供のように画面に釘づけにされていた。
楽しんでくれているのならいいかと思い、私も映画に集中した。
映画が終わる頃には、外はすっかり暗くなっていた。
「面白かったわ〜」
竹井が少し興奮気味に言うのを、静かに頷き同意する。
多少グロテスクだったが、概ね面白かった。
「もう遅い。駅まで送ろう」
時計を確認して、駅へと向かう。
「送ってくれてありがとう」
「ああ、それじゃあな」
発車のベルが鳴る中、別れを告げる。
扉が閉まりかける頃、辺りを見渡し誰も見ていない事を確認して竹井の唇を奪う。
一秒にも満たないキスだが、誰かに見られているかもと言うのは心臓に悪い。
扉が閉まり電車が発車した。
「さて、私も帰るか」
ここからなら家の近くまで行くバスがあるので、それに乗る為にバス停へと向かう。
バス停に着いてから、今日の竹井に会ってからの自分を振り返る。
今日竹井に会ってした事は、すべてモモから言われた事だった。
『いいっすか?先輩!一番最初に会ったらます、会いたかったって言うんすよ?そして適当に話をして、映画に誘うんっす。多分今からだと見終わる頃には遅いっすから、駅まで送るって言って送るんすよ。
そしてこれから言う事は絶対に実行してください。移動中は出来る限り手を繋いで歩いてください。そして一番肝心なのが、別れ際のチュウっす』
これらを実行するように言われて私なりに実行した訳だが、どれも全部恥ずかしかった。
顔が赤くならないようにするのが大変だった。
でも、モモ曰く、『これをしなかったら、清澄の部長さんと別れる可能性が出てくるっす』との事。
それは嫌なので頑張ったのだが、果たしてそれらの行動にどういう意味があったのか。
携帯のバイブがなり携帯を開く。
メールらしく差出人は竹井とある。
急いで確認する。
『今日は映画に誘ってくれてありがとう。嬉しかった。三週間も連絡なかったから、あの告白は夢なんじゃないかと思ったわ。
でも、手を繋いで歩いてくれたり、別れ際にキスまでしてくれて実感できました。また今度、どこか行きましょう。今度は私がプランを考えるわね。竹井久』
そのメールを見て、キスの瞬間を思い出し顔が熱くなる。
今までそんなふうにした事なかったから、本当に恥ずかしい。
でも、メールの文面からするに私は、竹井を不安にさせて居たことは否めない。
今日モモに言われた事を実行した事で、竹井の不安がぬぐえたのなら恥ずかしいくらいよしとしよう。
「またモモに聞いておくか」
モモの勝ち誇った顔を思い浮かべながら、私はバスに乗り込んだ。
かじゅは押されたら押し返すタイプな気が。
久は相手とは適度な距離を保とうとするから、情報の少ないかじゅ相手にどうすればいいのか分からず音信不通になったりとか。
かじゅはかじゅで、特別用がない限りは連絡はしない主義のような。(だからこそ恋愛体質じゃない)
お互い大人で行こうとするなら、なんだか初々しい中学生のような付き合いになる気がします。
当分はこの二人キス止まりな気がします。
楽しんでいいただけたら幸いです。
GJ!なんて大人な二人なんだw
部かじゅかと思いきや、まさかのかじゅ部に新しさを感じました。
GJGJGJ!!!続き待ってましたぁあああああああー!!!
モモとデレデレするかじゅも良いけど、こういう終始クールなかじゅもイイネー!
しっかし本当に二人ともクールですなぁ。
この場合だと二人ともかなりSっぽいから喧嘩になったらなんかヤバそうだね…
なんとなくだけど別れ話になったら、先に久がボロボロ泣いて自虐的になって壊れちゃいそうな気が。。。
なんていうか久は自分が気づかないうちにドップリとのめり込みそう。
なにはともあれ続き期待!超期待!!!wktkしながら待ってるますw
そう言えばクール×クールのカプってあんまないな。
まだキャラ設定が詳しく分かってないけど、照×菫とか白糸台あたりはそうなのかな。
>>541 GJ
モモどうするのかと思ったけど普通にかじゅを応援するポジで来たか
まあその方が合ってるもんな
しかしモモがかじゅを冷たい目で見るって本家からは想像もつかないな
かじゅは休みの日に遊びに行くとかそういう発想はないのか
>>544 上にもあるけど、かじゅモモはもう公式なんだからSSくらいはモモを切り離したって良いじゃない。
それにモモだってこのSSの中では、実はかじゅのことを想い続けながら別の子と付き合ってるのかもしれないよ。
かじゅのことが好きだからこそ、頑張ってほしい!応援するっす!みたいな。
>>545 いや分かってるよ
>かじゅのことが好きだからこそ、頑張ってほしい!応援するっす!みたいな
これだと思ってる
>>454 分かる。
好きだからこそ相手の幸せを願い、泣きながら見送るんだよ。
モモは良い子だもの。
今更ながらオフィシャルファンブック買ってきた。
これ、公式で百合とか書かれてるじゃん! 咲はやっぱり最高だ!!
立たんの嗜好的に今更だろ・・・2chだとアンチ百合や百合認定厨が目立つだけさ。
白糸台勢がどんな百合になるのかと思うと夜も寝られない。出来ればカップリングは照と菫。
更に欲を言うと、ガチでちゅーとかベッドシーンとかが見たい。
って言ってもさすがにそれはあるわけ無いよなぁorzあくまでも麻雀漫画だし・・・。
はぁー。同人誌に期待するか
俺もちゅーとか見たいけど、かじゅモモあたりはすでにしてそうな気はする…。
ファンブック見てたら、GONZOスタッフがここの住人とあんま変わらない思考でわろたww
まあ製作者が濃厚な百合脳じゃなきゃあんな演出は出てこないなw公式が百合脳万歳
しかし公式であそこまでやられると感覚がマヒしそうだ
かじゅモモはちゅー位してそうで、意外にしてなかったらそれはそれで萌える気もする
白糸だと渋谷さんが気になる
あと柿好きとしては是非大将と絡ませたいけど、キャラがはっきりしてないからなあ大将…
弱小校だけどもう一回くらい原作で出ないかな…
棟居さんだっけ?(棟据?)
あの人も中々良いよね。
って言っても、俺は某絵師さんが描いてるめぐめぐ×大将の絵を見て好きになったんだけどさ。
あのヘアバンド×長髪が良い!雰囲気的には頼れるお姉さんって感じかな。
原作に一度ちっこく出てるからこれから登場するのかもしれないけど、どうだろ。
南浦さんのコマと比べたらなんか格差があるからなぁ・・・。
あの感じだと、大将よりは南浦さんが出てくる可能性の方が高いかな?
南浦プロがどうの〜とか言ってたし。
まあどっちも好きだから、出来ればどっちも出てきてほしい
照と菫の濃厚でHな同人誌希望
咲と照のエロなしで終始にやにやできるような同人誌希望
んーやっぱページカウントってあてにならなんな
一作目の淡←照→菫が一連の淡SSで一番カウントが少ないとかありえねぇ
和咲、部長眼鏡、キャプ池、ももかじゅ、とーか一、姫様ハーレム、照菫淡
クリスマスはデートできたのだろうか
照菫淡の三人でクリスマスの夜に町を出歩くなんていうシチュはなかなかいい絵になるな。
暫くしたら書いてみよう
年内に書き上がるといいなぁ
菫と照は一応付き合ってるんだけど
誰がどう見ても何となく冷めた関係ってのが前提。
照の本心が掴めずに複雑な心境を抱く菫と
言葉にも行動にも表さないけどその関係を心地よいと思ってる照。
気付かぬ内にすれ違う両者の想い。
そして現れた新入生・淡に、どこか妹の姿を重ねる照。
始まる微妙な関係―――
淡→照←菫。
ってのを妄想して満足した
>>559 まるっきり一本目の淡←照→菫じゃないかw
誰か他にも白糸台勢のSS書いてくれないかなぁw
自分で妄想して書くのも良いんだけど、他の人が書いたの読んで悶えたい
ってゆーか早く原作で白糸台の相関図明らかにしてくれ!!!
照×菫、照淡←菫、照菫←淡、照咲←菫、照咲←淡、咲淡←照←菫、照←咲←淡、咲←照菫←淡
照×尭深、菫×尭深、淡×尭深、淡×菫・・・・俺ならどれでもおkだぜ!!!でもできれば照×菫で。
誠子ちゃんはどんなキャラなんだろうか。
某絵師が書いてる、せーたかみたいな雰囲気なら誠子×尭深もいけるぜ
白糸台大人気だな。
原作の全国キャラお披露目回の見開きで菫の目線が完全に照のほうを向いてたもんな。
表情も、なんだか恋する乙女って感じでめちゃ可愛かった。
あのページを見て照×菫カプファンになった人も多いんじゃないだろうか。
淡の目線も照のほうを向いてたように見えたけど、あれは恋って言うよりライバル視してるって感じだったからなー。
さて、どうなることやら。
はぁー…。麻雀も良いんだけど、もう少し百合要素を増量してくれると嬉しいな>立先生
1話分くらいは麻雀を忘れて百合回を書いてほしい。
特に照と咲の姉妹をたくさん見たい!
照と菫がいつ知り合ったのかは知らないけど
菫が咲の存在を知ってるってのは色々妄想力を掻き立てられる
今でこそ妹なんていないと否定してるけど
一体どういう流れで咲の話題になったのかと
はは・・・これは・・・
一番最初に貼ったのはここだけどw
この4人、良いな
何通りも妄想出来る。ははー幸せだー
照お姉ちゃんは相変わらずモテモテだな
ああ、そっか。分かったお。
さりげなく咲と菫も手を重ねてるんだな
なんという積極的な咲
咲は天然たらし
照はたらし
女たらし姉妹すぎますね
お姉ちゃんがモテモテなのは太陽が東から昇るくらい普遍の真理なのですよ
モテモテテレテレてるてる見たい!百合回さんせー!
ちゅーが見たいよ立たん!咲和もいいけど白糸台なら照菫ちゅーだよやっぱり!
えろイヤいろいろ難しいならほっぺちゅーでもいいよ立たん!!
例えばころも&とーか様でほっぺちゅーとかもう!たまらんっ!
それもダメなら行間でにおわす高度なテクに期待だよ立たん!!
そんな自分は、きっと百合ちゅー厨…、ゆりちゅーちゅーっ!!
乳も好きだー!きょぬーひんぬーばっちこーいっ!うらー!!
みっはるーん!ともきー!もっとだ!もっと風呂へー!!
とーか様ー!ご入浴なさってくださいお願いしますー!!
ハァハァ…心の叫びでした
さて、遅ればせながらドラマ3局聴いたっす 至極まじめに感想を語るならば、
・あゆむ出なかったな原作にあゆむ出ないかな出るといいな
・モモがんばれ
・しりとりまざりたい
・おP飲みたいって言って、とーか様に叱られたい
といったところですかな
そして新グッズ希望!
眠れぬ夜に、「透華様の朗読 読み聞かせCD」とかどーですかお客さん!
そんで最後まで聞いてると、
「まだ起きてますの?まったくもう、しかたありませんわねえ、くすっ」
とかって!とかって言ったりしてーっ!うへへへへ
さすがにそろそろ気持ち悪いぞ
577 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/26(土) 20:34:14 ID:6F4TtaeQ
>>557池田はクリスマス
コーチに無理矢理付き合わされたりとかしてそうじゃない?
>>576うん、同意。自分でもそう思う
リアルが鬱ではっちゃけすぎた
すんません ふぅ
新たな刺激を求めて白糸台には期待してしまう
菫と淡の視線は照に釘付けだったし、照は咲のお姉ちゃんということで立場的に妄想のしがいがある
>>578 俺もお前だ!白糸台の百合には本当に期待です。立先生、まじで頼みます!!
うわああああ!!!
鶴賀の読み切り出るとか聞いたんだけどマジ?
白糸台にたいしてみんな飢えてるなw
咲照も楽しみだな
>>583 マジ出るんだったらかじゅももが補給できる!
つうか今度の増刊でやるってだけだろ
ドラマCD3の感想。※軽くネタばれ?
龍門渕は相変わらずみんな仲が良くて微笑ましい。純は百合否定派っぽい。一ちゃんはやっぱり透華にゾッコン。
んで、鶴賀だけど・・・完璧にかじゅ×モモだった!特にモモの妄想とセリフがやばいです。ガチです。
でも、かじゅの中の人が壊れすぎてたのが残念・・・。あれはかじゅじゃないっすorzにゃん○い!のあの先輩だった。
むっきーとワハハは出番なくて寂しかったです。どうせなら、かまかおも聞きたかったね。
以上。全体的にみると百合度は33%くらいかな?(5%咲和、8%透一、20%かじゅもも)
かじゅももSS投下します
10レス予定
タイトル「ようやく気付いたキミへの気持ち」
時期は県予選前くらい
視点がモモ→かじゅ→モモと変わります
本編と矛盾してる部分があっても、そこら辺は生暖かい目で見つつスルーでお願いします
最近、私にはひとつの悩み事がある。その原因は、同じ麻雀部の加治木先輩だ。
私は今、加治木先輩に恋をしている。
先輩は顔も名前も分からない私を探すため、大勢の人の前で私を求めてくれた。
初めて誰かが自分を必要としてくれたという事が、なによりもうれしかったのだ。
先輩への尊敬の念と憧れが、いつしか恋心に変わっていったのはそれからすぐのことだった。
しかし、私は先輩に自分の思いを伝えられないでいる。
私の思いを先輩に告げ、そして断られてしまったら、私は自分自身の居場所を無くしてしまう。
そうなってしまったら、とてもじゃないが耐えられそうにない。
以前の私なら、一人でいることに何の抵抗もなかった。けれど、今の私では無理だ。
先輩と出会い、人と交流することの楽しさを知ってしまったから……
もし先輩との関係が壊れてしまったら、と思うだけで怖くなる。
それに、先輩が私を求めてくれたのは麻雀ができたからであって、麻雀以外の私自身には、
興味を持ってはくれないだろう。
だから、私は自分の感情を抑えることにした。
今のままで十分なんだ、ただ加治木先輩のそばに居られるだけでいい。
部活動の先輩後輩という関係のままで、それ以上は望んではいけないんだ。
私はそう決意した。
それからしばらくは、私にとって散々な日が続いた。
先輩のそばにいられるだけでいい、なんて決意していても、いざ部室に行くといつものように
先輩の姿を目で追ってしまう。先輩と話す機会があったら迷わず話し、少しでも先輩のことを
知ろうとする。
そのくせ思い出したかのように、目線を慌ててそらし、急に先輩と距離を置く。
一方では先輩とより親しくなりたい自分がいて、もう一方ではそれを否定しようとする。
そのひどく矛盾した自分の心がたまらなく嫌になってしまった。
家に帰り、ベッドの中に入ってもそのモヤモヤした気持ちは無くならず、眠れない日が続いた。
その間も、私の心は揺れ動き、落ち着くことはなかった。
そんなある日、授業が終わって放課後となり、部活動へ行く時間になった。多くの生徒が、急いで
教室を出て行こうとしていた。
しかし私は部室へ向かおうとせず、いすに座ったまま漠然と先輩の事を考えていた。
私は先輩に会いたくなかった。別に先輩が嫌いになったとかではない、今、会ってしまうと、
先輩への思いがあふれ、自分の気持ちが抑えきれそうにないからだ。
私にとって先輩は特別な存在だ。しかし先輩から見た私は、
ただの麻雀部の後輩、そう考えると、泣きたくなるくらい惨めな気分になる。
今の気分のままでは、とてもじゃないが部室にいるであろう先輩と顔を合わせられそうもない。
私は自分の気持ちが落ち着き、普通に顔を合わせられるようになるまで、教室に残る事にした。
しばらくすると、睡眠不足のためか不意に睡魔におそわれ、いつしか私は机に突っ伏し、
眠りこんでしまった。
「モモ、起きろ。モモ」
私はいきなり誰かに肩を揺すられ起こされた。寝ぼけ眼のまま、私はそばにいる人物のほうへ
視線を向けた。目の前には加治木先輩が立っていた。
私の心拍数が急上昇する。
「加治木先輩、どうしてここに?」
私は慌てて立ち上がり、先輩に問いかけた。
すでに他の生徒は誰もおらず、私達二人だけが教室にいた。
「放課後になっても部活に来ていなかったからな。電話もしたのだが、繋がらなかったので
直接探しにきたんだ」
先輩はそう私に伝えた。慌てて携帯電話を確認したが、確かに先輩からの着信が入っている。
どうやらすっかり眠り込んでしまったみたいだ。
「ずいぶんと眠っていたようだが、どこか調子でも悪いのか?
ここ数日、少し顔色が悪そうだったが……」
先輩の質問に、私は心の動揺を悟られないように答える。
「最近、寝不足気味なので……少し疲れているのかもしれないっす」
その原因となる人物を目の前にして、私はできるかぎりなんでもないように答えた。
感情が高ぶり、意図せずに体が熱くなる。今日はいつも以上に気持ちの制御ができないみたいだ。
「そうか。体調管理には気をつけて、早めに寝るよう心がけたほうがいいな」
先輩の言葉に対し、はいとだけ返事をした。私は先輩の顔に引きつけられ、目を離せずにいた。
「どうした、モモ?」
心配そうに私の顔を覗き込んでくる先輩を見ていると、ふと私の心に満たされない感情が
あふれ出てきた。
私はこんなにも先輩に対して思いを寄せているのに、当の本人は何も知らないでいる。
そんな先輩に対して、私の気持ちを伝えたくなった。
麻雀部の後輩としての「私」ではなく、あなたに恋焦がれている「私」を知ってほしい。
私は自分の中からこみ上げてくる思いを抑えきれず、先輩の顔に自分の顔を近づけていく。
いきなり私の顔がすぐそばまで来たため、先輩は戸惑ったような表情を浮かべていた。
「いったい、どうし……」
先輩が何か言おうとしていたその口に、私は唇を重ねた。
ふとわれに返った私に、強烈な後悔が襲いかかってきた。私はなんて事をしてしまったんだ。
いきなりキスするなんて、どう考えても許される事じゃない。先輩に対する申し訳ない気持ちで
いっぱいになった。
私は呆然とその場に立ち尽くす先輩から逃げるように、その場を後にした。
ここ数日、どことなくモモの様子がおかしいとは感じていた。そして、いつもなら遅れずに
部室へと来ていたモモが、今日に限って遅刻していたこと、それと電話をしても通じなかった事に
不安を感じ、直接彼女を探しに教室へと向かった。
そして机で眠っていたモモを起こし、一言二言言葉を交わしたはずだ。
変わったことは何も無かったはずだ。それなのに、モモからの突然のキス、私は何が起こったのか
理解できずに、ただ教室から駆け出していくモモの背中を見つめることしかできなかった。
「なぜ、どうして……」
何かを考えようとしても、まるで思考がまとまらない。
全身が燃えるように熱い。特にモモに触れた唇が熱を持ち、否応なしに意識がそちらへと向かう。
私はしばらくの間何もできず、その場に立ちすくんでいた。
考えがまとまらない私は、ひとまず教室を出て部室へ戻ることにした。
あまり遅くなると、蒲原たちが心配してしまうだろう。
部室へと向かう間も、モモの事が頭から離れなかった。
部室の前に着き、私は一息ついた。できるだけ心の動揺を悟られないよう気を引き締めてから扉を
開け、部室へと入っていった。
「あ、ゆみちんおかえり。モモは見つかった?」
蒲原がいつも通りの顔で聞いてきた。睦月や妹尾も私のほうを向いた。
モモを探しにここを出たのが、ずいぶん前のように感じる。
「……あぁ、教室にいた。だが今日は来ないだろう……」
わたしはできるだけ平静を装いながら、そっけなく言った。
そうか、という返事を聞きながら私は席に着いた。
部活が終わり、妹尾と睦月が帰った後、部室には私と蒲原二人だけになった。
「ワハハ、どうしたんだゆみちん。さっきからずっと心ここにあらずって感じじゃないか。
今日の麻雀もずいぶんひどかったよ」
蒲原が私のほうを向き話しかけてきた。
「いや、なんでもない」
私はできるかぎりいつも通りに答えた。部活中、私はずっとモモの事を考えていたため、
まったくといっていいほど麻雀に集中できず、散々なものだった。
蒲原はしばらく黙っていたが、おもむろに口を開いた。
「モモと何かあった?」
いきなりモモの名前を言われたため、私は狼狽し、驚きの表情のまま蒲原の方へ顔を向けた。
「やっぱり」
蒲原がやれやれといった顔をした。
「モモとなにがあったかは知らないけど、今のゆみちんは、すごく思い悩んだ顔をしてるよ。
それを察して、かおりやむっきーも足早に部室を出て行ったんだって」
どうやら自分では感情を表に出さないようにしていたつもりが、周りにはバレバレだったようだ。
妹尾や睦月にまで気を使わせてしまった事を知り、私はいたたまれない気持ちになった。
「最近はモモもどことなく様子が変だったからなぁ、ゆみちんも何かあったんじゃないかと
心配したよ」
蒲原の口からモモという単語を聞き、そうだ、と私は思った。そもそもの原因であるモモが
なぜ私にあのようなことをしたのか私には検討もつかない。
そこで、とりあえず蒲原にモモの事を尋ねることにした。
「最近のモモに何かあったか知らないか?」
「いや、別に。ただ顔色も悪く、調子が悪そうだったけどね」
そのことなら私も気付いていた。確かに、ここ数日のモモはどことなく様子がおかしかった。
ただ、一応思い当たる節はあるんだけどね……」
「それはいったい何なんだ?」
蒲原の返事を聞き、私はその理由を問いかけた。
蒲原は何かを考えるように少し視線を落とし、そして私の方へ向きなおり言葉を続けた。
「これは本来、私が言うべき事ではないと思うんだ、この考えが違ってるかもしれないし。
だからモモに関することは本人から直接聞けばいいよ」
そういって、蒲原は話をやめようとした。
「なんか考えがあるんだろう?だったらそれを教えてくれ」
私は蒲原に懇願した。今の私には、どんな考えでもそれが知りたかった。
「じゃあ、質問に答えてくれる?この質問に答えられたら教えてあげるよ」
蒲原は真剣なまなざしで、次の問いかけをわたしに投げかけた。
「ゆみちんはモモを、モモはゆみちんを、それぞれどう思ってるのかな?」
私は答える事ができなかった。
私にとってモモは部活動の後輩、いままでそう思ってきたはずだ。
しかし本当にそうなのか?自分に問いかけるが、答えが出てこない。
またモモにとっても、私は部活動の先輩というだけなのだろうか?いやそれは違うだろう。
ただの先輩に、いきなりあんな事をしたりはしないだろう。私はモモからどのように思われている
のかなんて、考えた事もなかった。
いままで考えてもいなかった事に急に答えろと言われても、簡単には結論が出せない。
黙って思案している私に対し、
「これに答えられない限り、私は何も言えないよ」
蒲原は、ワハハと乾いた笑いを浮かべた。
これはゆみちんとモモ、2人の問題だからね。そう言って蒲原は部室を出て行った。
部室に一人残された私は、答えの見つからない問題を抱える事になってしまった。
家に着くなりベッドの上でうつ伏せになったまま、私は何もできずにいた。
先輩と別れてからここまで、どうやって帰ったかほとんど覚えていない。
覚えている事は、私が先輩にしでかしてしまった事だけだった。
どうしてあんな事をしてしまったんだろう。後悔ばかりが押し寄せ、自分自身が本当に嫌になる。
私は、自分が一番大切な人を、私自身で傷つけてしまった。
たった一つの居場所を自分の手で壊してしまったんだ。
そう考えていると、思わず涙が溢れてくる。もう先輩のそばにいることができない、そのことを
考えると、私の胸は張り裂けそうになった。
とにかく、明日の放課後にでも、先輩に会って謝らないといけない。
その結果、先輩から見放されたとしても仕方がない。
それだけのことをしてしまったのだから……
明日のことを思うと不安で体が震え、頭がいっぱいになっていった。
蒲原と別れた私は、部室を後にして自宅へと帰った。自分の部屋へと入ると、すこしは気が楽に
なる。そうしてから私は、蒲原に言われた事を考え始めた。
(私はモモの事をどう思っているのだろうか)
客観的に見れば、私とモモとは部活動の先輩後輩だろう。それ以上でも以下でもないはずだ。
しかしこの答えでは不十分だ、私自身が納得いかない。
第一に、睦月や妹尾たちとモモとでは同じ後輩だが何かが違う。何がどう違うのかは、自分でも
よく分からない。
考えてみれば、私達はかなり変わった出会い方をしている。
最初、モモの顔も名前も、そしてどんな人物なのかもまったくわからなかった。
ただその打ち筋に引かれ、なんとかして麻雀部に勧誘しようと苦心した。
その結果、1年A組乱入事件などというとんでもない事件を起こしてしまった。しかし恥ずかしさ
こそあったが、後悔は一切なかった。
自分が後先考えずにあそこまで大胆になれたのは、まだ見ぬモモを思ってのことだった。
モモが部活に入ってからも、私は何かとモモのことを気にかけていた。
それは自分が勧誘したからという理由以外にも、その存在感の薄さからくるはかなさが、
どことなく気になっていた事も挙げられるだろう。
モモと一緒にいるだけで、心がはずんだ。この感情は他の誰でもない、モモがそばにいるから
湧き上がっていた。
あらためてモモへの気持ちを考えてみると、おのずとその答えは浮かび上がってきた。
私自身、この気持ちに気付かなかった。
いや、違う。
いまの関係を壊したくなかったから、わざと気付こうとしなかったのかもしれない。
自分の気持ちに気付いてしまったら、臆病な私はそこで止まってしまい、動けなくなってしまう
だろう。
そして次に、モモが私をどう思っているのか考えてみる。私にいきなりキスをしてくるくらい
だから、好意を寄せているのは間違いないのだろう。私に対して、好意をあれほどストレートに
ぶつけてきたのはモモが初めてだ。放課後のことが頭をよぎり、思わず頬が熱くなる。
しかしモモの強すぎる好意に対して、素直に応じられない自分がいる。
これも、やはり私自身が恋愛ごとにひどく臆病なためなのだろうか。
はぁ、と私はため息をついた。モモへの気持ちに気付いてしまったため、モモと会うことを
恐れている自分がいる。こんなにも弱気になっている自分が、本当に嫌になってしまった。
翌日、私はあくびをしながら学校へと向かった。
昨日はモモの事を考えていたため、あまり寝れなかった。モモに会いたいという気持ちと
会いたくない気持ち、その両方が私の胸の中をかき乱していた。
授業もほとんど耳に入らず、もちろん自分の気分も晴れなかった。そのうち放課後の時間となり、
私は重い足取りで部室へと向かった。
部室には蒲原一人だけがいた。挨拶を交わし、自分の席へと座った。
他の部員は、また誰も来ていないそうだ。モモがおらず、ほっとしたようなそれでいて残念な、
矛盾した気持ちが私の中に湧き上がった。
「昨日言った質問の答えは出たかな?」
蒲原が何気なく問いかけてきた。
「ある程度はな」
短くそう答えた。蒲原の問によって、自分の中にあるモモへの気持ちがしっかりと認識できた。
しかしそれゆえ、私がこれから何をすればいいのか分からなくなってしまった。
「私はどうすればいいのだろうか?」
ふと蒲原にそう問いかけた。蒲原はすぐに答えを返した。
「ゆみちんが心に思うことをすればいいんだって。頭で考え過ぎなんだよ」
「後悔しないよう、自分の気持ちに素直になりなって」
蒲原の言葉を聞き、私の頭の中のモヤモヤが徐々に晴れていく。
(ああ、確かに蒲原の言うとおりだ)
私は臆病者だ、だからといってこのまま何もしないでいるのは嫌だ。
何も行動しないでいたら、せっかく見つけだした自分の気持ちを裏切る事になってしまう。
私の今一番したい事とは何だ?
決まっている、モモと直接会って話をすることだ。
「ありがとう、蒲原」
すばやく礼を言い、私はすぐに部室を後にした。
はやる気持ちを抑えつつ、モモのいるであろう教室へと向かった。途中、玄関にある靴置き場へ
寄り、モモの靴があることを確認したので、おそらくまだ教室にいるはずだ。
私はモモと初めて会ったときの事を思い出していた。あの時もこうやって、モモのいる教室へと
足早に向かっていたのだった。
今思えば、あの頃からすでに私にとって、モモは特別な存在だったのかもしれない。
そんなことを考えながら歩いていると、ようやく1年A組の扉が視界に入ってきた。
私は教室の扉を開け、教室を見渡した。何人かの生徒の姿が確認できたが、その中にモモの姿は
見あたらなかった。
だが私は目を凝らして、モモの姿を探し続けた。すると教室の隅のほうに、ぼんやりとした影の
ようなものが見えた。
あのときはまったく見えず、気配も感じなかったモモの影が、今は少しだが見ることができる。
モモと一緒に過ごした時間によって、私自身成長したのだろうか。
私は迷わずにその影、モモのいる場所へと歩み寄った。
モモは戸惑いと不安の入り混じった、複雑な表情で私を見ていた。いきなり私が教室に入ってきた
事に驚きを隠せないでいるようだ。ここでは人目もあり、ゆっくりと話すことが出来ないので
場所を移す事にした。
「一緒に来てもらおう」
有無をいわさずにモモの手を取って、私達は教室を後にした。
どこか二人きりで話せる場所はないかと考えた結果、誰もいないであろう屋上へと向かうことに
した。廊下を歩いている間、モモは何も言わず私についてきている。
私の胸は高鳴り、モモとつないだ手がとても熱く感じた。
屋上には人影が無く、ひっそりとしていた。ここなら人目も無いだろう。
太陽を背にして振り返り、私はモモを正面に見据えた。
モモの顔はまぶしい陽光に照らされている。モモはいきなり教室から連れ出されため、
当惑しているだろうか、私から視線をそらしたままだった。
私は意を決し、まずは今回の発端となった事から聞くことにする。
なぜあんなことをしたのか、モモの口からその理由が聞きたかった。
私はモモに対し、その事を問いただした。
ああ、やっぱりそのことか、予想通りの問いかけに私の心が重くなる。昨日は先輩の前からすぐに
逃げてしまったため、何の謝罪や説明もできずにいた。今日だって放課後すぐに謝りに行こうと
思ったが、体が動かなかった。
昨日の理由を今から先輩に話さないといけない。理由を伝えるということは、自分の中にある
先輩へと思いを伝える事だ。そのことを考えるだけで私の身は凍りつく。
一度自分の気持ちを伝えて、そしてそれを否定されたら、私はきっと立ち直れないだろう。
けれど、先輩に謝るなら、今が絶好のチャンスだ。これを逃してしまったら、
次はいつ機会があるか分からない。
それに謝る機会を先延ばしにしてしまったら、もう先輩に会う勇気が出せなくなるだろう。
私は意を決して前を向き、太陽を背にして立つ先輩に対して、謝罪の言葉を口にした。
「ごめんなさい、先輩にあんなことをしてしまって」
私は自分の中にある気持ちを話し始めた。
「私は子供の頃から影の薄い子で、誰からも気付いてもらえませんでした。
だけど先輩は私を見つけてくれました。そんな先輩に、私は強く引かれていきました」
先輩が教室まで来て、私を求めてくれた時の事が頭をよぎる。
あの時からずっと、私の心の中には先輩がいた。
「だけど、思いが強くなるほど不安は大きくなりました。私にとって先輩は、かけがえのない人
ですが、先輩にとって私はただの後輩。先輩に、私の気持ちが拒否されたと思うと怖くて……」
だから自分の気持ちを抑えようともした。しかし、
「先輩への思いを絶とうとしましたが、それもできませんでした」
先輩に恋焦がれる気持ちと、諦めの気持ち。その二つの思いが葛藤し、歯止めが効かなくなって、
そうしてあなたを傷つけてしまった、そう先輩に伝えた。
先輩は何も言わず、静かに話を聞いている。
「先輩を傷つけた私が、こんな事を言う資格なんてないのは分かっています。けれど、私は先輩が
好きです。これが私の正直な気持ちです」
先輩に謝罪し、自分の気持ちを伝えて言うことができて、すこしは気分が楽になった。
私からは逆光となり、先輩の表情をうかがうことはできなかった。けれどそれでよかったのかも
しれない。もしも先輩から嫌悪の表情で見られていたら、私は耐えられなかっただろう。
すべてを伝え終えた私は、先輩の言葉を待った。
しばらくして、先輩が話を始めた。私は先輩の顔を見る事ができず、目線を落としていた。
「昨日の事は私もずいぶんと驚かされたし困惑した。予想だにしていないことが
起こったんだからな。その事で、色々と考えなくてはいけなかった」
先輩を困らせてしまった事が何よりもつらい、先輩の言葉が胸を締め付けた。
しばらく間を置いてから、先輩が口を開いた。
「だが結論がでた」
「モモ、私は君が好きだ」
突然の事に驚き、私は一瞬先輩が何を言ったのか理解できなかった。
あんな事をしたのだから嫌われて当然のはずなのに、先輩はまったく逆の言葉を私に投げかけて
いる。私はあわてて顔を上げ、先輩の方へ顔を向けた。
戸惑っている私に対し、先輩は言葉を続けた。
「私は自分自身がモモの事をどう思っているかなんて、考えたことも無かった。
しかしいざ考え始めるとその答えが分からなくなってしまったんだ」
「そして、真剣に考えた結果、私自身の気持ちに気付いたんだ」
先輩は少し恥ずかしそうにしながら、しゃべり続ける。
「自分でもその気持ちから目を背けていた。私は、自分の気持ちを知る事が怖かったんだ。
自分の気持ちに気付いてしまったら、私自身が抱く感情に整理がつかずに、何もできなくなる
だろう」
私は本当に臆病者だ、そう先輩がつぶやいた。
「今でも頭の中の整理がつかず、考えがまとまらない。しかし、自分の心が何も求めているかは
はっきりと分かる」
「これからも私のそばにいてくれないだろうか?」
先輩が真剣な眼差しで私をみた。少し照れているのだろうか、その頬が赤く色づいていた。
私の答えは一つしかない。
「はい、こんな私でよければ」
私の目から、涙が自然にあふれ出てきた。
先輩は静かに、私に向かって微笑みかけていた。
涙がおさまり私が先輩の瞳を見つめると、先輩も私を見つめ返してくる。
黙っていても、お互いの気持ちが伝わるのを感じた。
自然と私たちの距離が近づいていく。
先輩の顔がすぐそばまで来て、目の前でそのやさしげな瞳が静止する。
そうして、私たちは唇を重ねた。
初めてのキスはほろ苦く、悲しい思いをしてしまったが、二度目のキスはとろける
ように甘く、幸せな気持ちが私達を包みこんでいった。
終わり
GJ ですー
朝からいーもん見させてもらいました。
ここからアニメのあの二人のいちゃいちゃらぶらぶがはじまるんすね。
「ここではやめろー」
↑(いつもの屋上ならおけー ってこと)
600ゲトなら部かじゅの続編が投下される…!!
はず
GJっす!
かじゅの「こ、ここではやめろ」はそういう意味なのか。
>>599 GJ!
なんかドラマCD3聴いたあとのかじゅももはどれも清らかwww
唐突でしかも空気読めてないですが、咲和SSを投下させていただきます。
少しグロかもしれませんが、ご容赦ください。
彼女に身体を噛まれるたびに、甘くて苦い涙が溢れる。
私の。呟くような音が、私の鼓膜を振るわせる。その1秒後、私の皮膚が彼女の歯を感じる。
それは舌のようにするすると肌を滑った後、ゆるゆるとしかし確実に、私の肉に食い込んでくる。
うぅ、と私の喉が漏らすのと、ふふ、と彼女の頬が笑うのがほとんど同時だ。ん、ん、と彼女は
まるで遊ぶように、焦らすように、私の肉を咀嚼し続ける。私の肉に歯を突き立て続ける。ぬら
りと私の皮膚を、彼女の唾液が伝っていく。鈍い痛みの中で、私はおどおどとしながら、彼女
の頭を抱きかかえるべきかどうか迷っている。
やがて満足した彼女は、まるで満腹になった仔犬のように、にこやかに顔を上げる。そこには
邪気のかけらもない。ごく自然に、彼女は私と目を合わせる。そして僅かに首を傾け、瞳にふ
わりと笑いかけながら、彼女はまるでこんにちはを言うように私に伝える。私のだからね。その
響きが私に伝わったのを確認して、微笑みながら彼女はまた噛み場所を探す。
残る鈍痛の中で、私の頭の奥の方から、じんわりと涙が降りてくる。しかしそれが嬉しさなの
か悲しさなのか、私にはよくわからない。それでも甘くて苦い味の涙が、瞼の奥から湧き出してくる。
「原村さん」
宮永さんはいつも、私の後ろから声をかける。彼女が先にいることはまずない。だから私は、
毎朝軽い不安と恐怖に付きまとわれる。この道を歩いていて、このまま後ろから声を掛けら
れなかったらどうしよう、と。
「おはよう、原村さん」
毎回の不安は、今のところは毎回の杞憂に終わっている。活動的でないわりに病弱では
ない彼女は、1日の遅刻もなしに、毎朝私に声をかけてくれる。おはよう。1瞬遅れて応える
頃には、彼女は私の隣に並んでいる。
「ねえ、今日の朝何食べた?」
「昨日と同じです。食パンに蜂蜜」
「そうなんだ。美味しいよね、蜂蜜って。でも使いすぎると太るよ」
私は今でも彼女に敬語を使っている。
文学少女である彼女と麻雀以外の趣味を特に持たない私との間に、何か知的な会話が発
生することはあまりない。今日の寝起きのことや、朝食のことや、共通の知人の噂話などの
特に意味のない会話が、私と彼女の数センチの間を行ったりきたりするだけだ。それでも、
その時間はとても幸せだ。ずっとずっと、このまま道を歩いていたくなる。地球を何周でもし
てみたくなる。
麻雀やセックスのときの、苦味の混じった甘みとは、それは全然違っている。
「宮永さん」
「なに?」
「そろそろ、名前を呼んでくれる気になりましたか?」
私がそのことを口にするたび、彼女の顔は真っ赤になり、半歩ほど私から離れる。私は
毎回くすりと笑って、それを隠すためにつんと前を向く。
「私のことを」
「は、原村さん!」
ほとんど叫ぶように、彼女は私の言葉を遮った。
「だ、だって変じゃない。そんな、名前で、なんて……」
「……そういうものですか?」
「だって、私が原村さんを好きになったとき、原村さん、って呼んでたから。の、の、和、って呼
ぶの、なんかその、ちょっと……」
大げさにため息をつこうと思ったけれど、そこまで彼女を追い詰めるつもりもなかった。どちら
にしろ、名前で呼び合うことにそれほどこだわりはない。ちらりと隣を横目で見ると、彼女は真っ赤
になって、何かを呟きながら歩いている。弁解でも考えているのだろう。
「わかりました。じゃあ気が向いたら、私を名前で呼んでください」
ばっ、と彼女は顔を上げた。私はそれを待ち構えて、しっかりと目を合わせる。そして安心さ
せるように、にこりと微笑む。
「ね。宮永さん」
咲さん、とは言わない私に、彼女は顔を赤くしながらもふわりと微笑んだ。
姿見に映る私の身体は、多分見る人によっては痛々しさを感じさせるほどに、彼女の噛み
痕で溢れている。それは赤く、青く、黒く、まだらの蛇のように私の身体に巻きついている。
黴の生えたパプリカみたいだ。頭の隅でちらりと思う。その想像は、しかしそれほど私を嫌
な気分にさせなかった。宮永さんがくれたものを忌避する思考は、私にはない。逆に私の
身体が、宮永さんの見えない何かで、しっかりと包まれたような気分にもなる。それはとて
も素敵なことだと思う。
腰の辺りの痕を指でなぞる。僅かなでこぼこを指が感じる、と同時に、鈍痛が身体の内
部から湧き上がった。そのぼんやりとしていて存在感のない痛みが、私の脳に電気を送る。
途端に吐息が唇から漏れる。私はそのまま、指を肌伝いに胸の辺りに持ち上げた。ピア
ノに指をすべらせたときのように、種類の違うなだらかな痛みが、私の内部を伝わっていく。
頭の電気が、耳の刺激も呼び起こす。私の。私のだからね。私のだよ。私のものだね。
いくつものいくつもの痕から、いくつものいくつもの囁きが、私の身体を使って再生される。
宮永咲が数十人集まり、私の周囲に群がっている想像が、ふいに浮かんだ。その他愛
ない妄想に、思わず微笑んでしまう。
以前とは形も色も少しづつ違っている乳房に、軽く手を置いた。それだけでどくんと身体
が疼いた。それは宮永さんに噛まれて、その余熱がまだ燻っているあたりよりももっと奥
の方、すなわち内臓や骨盤のあたりから、じくじくと発生していた。身体中の血管内を、
宮永さんの唾液が暴れながら通り過ぎる。私の内部で宮永さんの何かが、壁を突き抜
けようとぐるぐると駆け回る。その妄想を押し殺して、私は右手で左の乳房を僅かに押した。
それだけで、きりりと痛みが走る。それは甘く酸っぱく、私の身体を愛撫のように駆け抜ける。
赤と青と黒と白が斑模様を描いているその乳房は、宮永さんが最も噛んでいる場所だ。
そのただの鬱陶しい巨大な脂肪の塊に、宮永さんは私からすれば異様なほどに執着した。
だから自分の手で触れるだけで、そこへの無数の愛撫が、いや、私が拒めば途端に陵辱
になるそれが、自然と思い出された。頬擦りする。咥内に含む。瞼に挟む。噛む。噛みつく。
乳首に歯を擦り付ける。悲鳴に構わず、噛み締める。噛み締めながら、吸いたてる。乳房を
噛みながら、逆側の乳房を抓る。足の指で乳首を挟んで、足ごとぐりぐりと押し付ける。
私は悲鳴を上げたり、逆に嬌声を上げたり、歯を食いしばったりしながら、ただその愛撫を
受けている。宮永咲が原村和を所有するための作業に、酔いしれている。
腹部が発熱していることに、私はようやく気がついた。そこを弄りそうになる右手を睨みつ
けながら、私はため息をついた。火傷するくらいに熱いシャワーを浴びようと思った。
あれは4度目の口付けの際だった(私は口付けの数を未だに数えている)。私はまるで義
務であるかのように、口付けの、いや口付けから数秒前あたりから、必ず目を閉じていた。
だから、その時。皮膚に熱い何かを感じて、またその行為に対する慣れも手伝って、うっす
らと瞼を上げてみたとき。普段と変わらない目が、急に間近に飛び込んできた。思わず私は
身体ごと顔を離した。あ、と空気が抜けたような呟きが聞こえた。私の頭を支えていた彼女の
右手が、ゆらゆらと宙を掻いていた。
どうしたの、と彼女は困ったように言った。私は右腕を口の辺りに持っていった。頭に酸素
が足りない気がした。どうして。呟き声だった。少し首を傾けた彼女に、私はまたどうして、と
呟いた。呟くたびに触れる上と下の唇が、なぜだか甘さを感じていた。どうして、目を、開いて
いるのですか。単語ごとに区切られた、奇妙な言葉だった。それだけ言うと、私は顔ごと俯いた。
不意にそれが口付けをやめる理由になっていないと気付いたからだ。彼女はああ、と合点が
いったとばかりに、微笑んだ。そこでようやく気付いたのか、右腕を降ろした。だって、勿体無
いから。微笑んだまま、彼女は言った。私は思わず顔を上げた。どんな時でも。うん、寝てる
ときでも、キスしてるときでも、食べてるときでも、私は原村さんの顔、見ていたいから。そうで
すか。私は言った。きっと嬉しくなるべきことだと思った。微笑んで謝罪しなければならないと
思った。それでも、身体はそうは動いてくれなかった。心臓はそのように鼓動を打たなかった。
何か名状しがたい恐怖にも似た不信感が、小さな子どもが暗闇に怯えるような心地が、私を
縛り付けていた。それは初めて彼女が役満を上がったときに感じたものに似ていた。
そんな私に気付かずに、瞼の裏に原村さんの写真を貼ってみたいな、と彼女はにこりと
笑った。可愛らしい、無邪気な笑顔だった。
幼い頃に読んだ漫画や小説では、恋というものははもっと良さそうに描かれていた。何か
その状態になっただけで幸福になれるような、ふかふかの羽毛布団に包まれているような。
自分が好きになった相手が自分を好いてくれる心地というものは、きっと麻雀で勝つくらいに
は素敵な感触なんだろうと、私は自然に思っていた。
幸せなのは幸せなのだ。二人での登校時間や、彼女の読書を眺める時間。それらは確
かに、入学式の桜のような暖かさで、私のことを包んでくれる。これ以上は何もいらない。
時間が止まればいい。そのようなことを感じさせてくれる。でも、そのようなふわふわとした
ものではなく、宮永さんが深く深く、内臓に染み入るような強さで私を愛しているとき。私が
愛されていると感じるとき。その暖かさはまるで刃のような鋭さで、私に襲い掛かってくる。
甘さと苦さが一緒になり、私の心に溢れてくる。
私は毎晩考える。宮永咲とは何者だろうと。物静かでおっとりとした文学少女なのか、そ
れとも文字通りの化物なのか。私が愛している者か、それとも怯えている者か。それさえ分
かれば、私は彼女を愛することも、恐怖することも容易くなるのに。私は毎晩思い出す。
彼女に初めて麻雀で敗れたときの、あの背筋を凍らされるような感触。顔を赤くし、身体を
縮ませながら、私に恋文を差し出した瞬間の空気。天江衣を敗北せしめた瞬間の、彼女の
底の知れない瞳。私の頬をぎゅっと噛んで、これもあたしの、とゆっくり笑ったときの吐息。
甘さと苦さを交互に出して、私の心は凍りつく。宮永さんにだったら、全身が真っ黒になるく
らいに噛まれてもいい。でも麻雀で負けたくはない。化物になら負けてもいい。でも、私の
身体を自由になんてされたくない。
化物の影で笑う彼女と、彼女の隅に佇む化物が、毎晩私を苛んでいる。
「……どうしたの?」
行為の直後だった。彼女の心配そうな顔が、私を覗き込んでいる。喘がされて、または叫
ばされて弾んだ息も、数分前に戻りきったときだった。やけに不安そうな彼女の顔に、私の
ほうが心配になる。なにかついているのだろうか。気だるい身体を起こそうとすると、その直
前、彼女が私の顔に顔を近づけてきた。
ぺろり、と目を見開いたままで、彼女は私の頬に舌を這わせた。ぺろり。ぺろり。3度舌だ
けで頬をなめると、しゅるりと何かを吸い込んだ。その感触と逆側の頬の具合で、私はよう
やく自分が涙を流していたことに気づいた。
彼女は時間をかけて、ゆっくりと頬と眼窩に溜まる涙を吸い取っていった。私は仰向けに
寝たままで身動ぎもせず、それを感じていた。
「どうしたの」
私の涙をすべて舐めとって、先ほどよりもさらに深刻そうに、彼女は私の瞳を覗き込む。
目の縁が赤い。行為のときに私が握り締めていた左腕が、赤く鬱血している。瞳が、小さく
黒く私を射ている。
甘い疼きと苦い痛みが、私の胸を満たしていく。
何も言えない私に、彼女は今度はゆっくりと両手を伸ばした。停滞させず逸りもせず、
私の頬を包み込む。そして同じ速度で、黒い瞳が降りてくる。私を押しつぶすように、ゆっく
りと確実に降りてくる。私も目を見開いて、それを見ている。僅かに被さった彼女の身体が、
さきほどの噛み痕に当たって、じくりと存在を主張した。
ちゅ、と一瞬、唇が唇に触れた。1秒後、もう一度触れる。2度、3度。幼子の口付けの
ように、唇だけで僅かな時間、互いの唇を感じ合う。瞬間、ぎり、と彼女が私の鎖骨の噛
み痕を、指で抓った。ひ、と私の口が痛みに開く。彼女が微笑む。まるで私のその声を
飲み込むように、彼女は微笑んだまま、口を大きく開いた。そしてそのまま、私の口の
辺りに被りつく。ライオンや狼や、もしかしたら伝説の怪獣が獲物を噛み締めるときの
ように、彼女は私の顔の下半分に噛み付いたのだ。舌が口の周辺に唾液を送り込む、
と同時に、頬骨と顎が、歯と歯にぶつかった。ごり、という音が頭に響く。しかしさすがに
いつもよりは強くない。びくん、と自分の背骨が震えるのが分かった。それは快楽か、
それとも恐怖か。考えられない。刺激に慣れかけるたびに、少しだけ彼女は噛み場所
を変えた。頬骨から頬そのものへ。鼻へ。筋肉へ。ぎりぎりと噛み続ける。吐息で顔の
下半分が燃え上がりそうになる。もう彼女の身体のどの部分も、私の身体に触れてい
ない。ただ彼女の口の中で、私の口が捕食される。ぎりりぎりりと噛まれている。
数時間にも思えたきっと数分後に、ゆっくりと彼女は顔を離した。いくつかの涎の筋が、
私と彼女を繋いでる。しかし彼女はそれをいともあっさりと、口を拭うことで断ち切った。
そして彼女は笑った。それは妖艶にも、繊細にも、また稚気のようにも感じられる笑顔だった。
「私の」
言うと、今度は喜色を満面に浮かべた。
「原村さんは、私の。涙も唇も何もかも全部全部、私の」
心が溢れる。甘くて苦い涙で、私の全部が毀れてしまう。宮永さんが愛しくて。彼女が
怖くて。でも、どうしようもない。私は既に囚われている。彼女に囚われている。初めて麻
雀を打ったときに。隣にいる彼女の存在感に気付いたときに。だから、私の心は涙を流す。
それしかできないから。愛しくても、怖くても、もう私に出来ることはそれだけだから。だって、
きっと耐えられない。どれほど引き裂かれそうになったとしても、宮永咲のいない世界に、
もう私は耐えられない。全国に行こう、と言われた日から、私の心は捕まったのだ。蜘蛛
に捉えられた、哀れで醜い蛾のように。
また頭の奥から涙が来そうだったので、今度は私が身体を起こした。笑顔の彼女の頬に、
私から齧り付く。そして擽ったそうにする彼女の肩を、私はぐっと抱きしめた。
私の。耳元で呟いた。甘くて苦い涙が、喉を伝って胃に落ちた。
以上です。お目汚しでした。
カップリングといい内容といい、今現在望まれていないものだな、とわかってはいたのですが、
まあ、今年はこのふたりにかなり楽しませてもらったしな、ということで
投下させていただきました。
このふたりの絡みも、まだまだあってほしいなと思います。
そしてそれ以上に、来年も咲でなにかあればな、と願っています。
では、よいお年を!!
>>608 いやいや、この二人のカプはもっと勢い付いて欲しいくらいですよ
何はともあれ乙でした
GJ
望まれてないなんてことないです
新感覚な内容でよかったです
GJ
望まれてないなんて、とんでもない
もっと多くてもいいくらいですよ
ちょっと意味わかんなかったけどね
咲和をふくらませたというよりは
変な文章を書きたがってる人に咲が目をつけられた、みたいな印象をもった
たぶん、故意にカニバリズムを連想させようとしてるよね
グロと書いてるからには分かってやってるんだろうけど、
ちょっと、ね
白糸台SSの続編マダァー?
SS出来たので投下します。個人的期待の新キャラ、渋谷尭深のお話です。
原作でもまだ性格も喋り方も分からないのでそこら辺の設定は妄想過多気味注意。
大体 尭深→菫×照 みたいな感じで
タイトル「琥珀の想い」
616 :
琥珀の想い:2009/12/28(月) 06:40:34 ID:/PFt8eoN
それは、一年前の出来事――
「…………」
渋谷尭深は、誰も居なくなった対局室に一人佇んでいた。陽は沈み始め、伸びる影が濃さを増す。そうして、尭深は思い出したかの様に歩き出すと、一つの卓の前に立った。
「…………」
その卓は、その日行われた、白糸台高校麻雀部・一軍二軍交流試合にて、彼女が最後の試合で使った卓――初めて、宮永照と対局した卓だった。
「…………」
力の差は知っていた。それでも、何とか付いていきたかった。しかし結局、照の圧倒的な暴力とも言える打ち筋に打ちのめされた。
――麻雀に絶望がある事を、初めて思い知らされた。
「……ッ」
思い出す度に、背筋が寒くなる。視界が滲む。あの恐怖から、少しでも早く逃げ出したい。……では、何故自分はまたここに来ているのか? 何故また、自ら恐怖しに行く様な真似を――
「誰か居るのか?」
突如聞こえた声に、尭深は俯いていた顔を上げた。零れそうになっていた涙を拭い、声のあった方へと目を向ける。
「こんな時間まで何をしているんだ? 今日の活動は終わったのだから、早く帰りなさい」
声の主――弘世菫はそう告げた。
「、あ、あの」
菫の登場に、尭深は声を上擦らせる。チーム虎姫の中でも照に次ぐ実力者と称される菫は、その端麗な容姿も有り、部内でも憧れの対象に挙げられる事が多い。
そんな彼女が急に目の前に現れた所為か、尭深は自分の顔が赤くなるのを感じていた。
「……ん? 君は……」
そんな尭深を見て、菫は何かを思い出す様に首を傾げる。ややあって、解決したとばかりに声を上げた。
「君は――確か、今日の試合で照と打った子だね」
「えっ……あ、は、はい」
思わぬ菫の言葉に、驚きながらも尭深は答えた。何故、菫はそんな事を覚えているのかと疑問に思った。
「――済まない事をしたね。照には私の方から注意しておくが……さて、アイツが聞くかどうか……」
「……?」
意味が分からなくなる。何故今日の試合の事で、菫が謝るのか。
「全く、照のヤツ……幾ら機嫌が悪かったからといって、あんな乱暴な打ち方を……あれでは全国で足元を掬われかねないぞ……」
「……あの、仰る意味が、よく分かりません……」
愚痴る様に呟く菫に、尭深は尋ねた。
「ん? ああ……まあ簡単に言うと、照はその時の気分で打ち筋が変わりやすいんだよ。今日は特に酷かったけどね」
「え……」
「憂さ晴らしというヤツかな。打ったのが一試合だけで良かったよ。……まあ、君からすれば災難だったと思うが……」
617 :
琥珀の想い:2009/12/28(月) 06:41:38 ID:/PFt8eoN
菫の言葉に、尭深は呆然とする。
――少なくとも、自分は全力で打っていた。それでも照にとっては、憂さ晴らしで乱暴に打って何とかなる程度のモノにしか感じられていなかったのか――
「…………っ」
ここで初めて、尭深は悔しいと思った。今まで感じていた照への恐怖が、麻雀で負けた事へと悔しさへと変わっていく。唇を噛み、スカートの裾を握りしめる。
「……弘世、先輩」
「ん?」
「私、宮永先輩に、勝ちたい、です」
決して大きくはない声。しかし、尭深ははっきりと言った。その言葉を聞いた菫は微かに眉を上げる。
「……へぇ」
かつん、と菫の靴底が床を叩く。と、見る間に菫は尭深との距離を詰め、その身を屈ませ、尭深の顔をじっと見つめた。
「、え、」
菫の突然の行動に、尭深は困惑する。が、菫の真っ直ぐな視線に釘付けにされた様に、身体が動かない。
「…………」
どの位見つめられていたのだろう。尭深の顔は、自分でも分かるくらいに真っ赤になっていた。
「あの、あのっ、」
緊張の所為か、声も上手く出せない。金縛りにあったかの様に尭深が固まっていると、不意に菫の目が微笑んだ。
「ああ…済まない。珍しくて、つい見つめてしまった」
尭深の緊張が解ける。同時に、身体の力が抜けた様に、尭深はよろよろと卓にへたり込んでしまった。
「おっと、大丈夫か?」
「は、はい…」
緩慢な身体の動きとは裏腹に、心臓は早鐘の様に脈打つ。差し出された菫の手を取り、ゆっくりと身体を起こす。
「あの、弘世、先輩」
「ん?」
「さっきの言葉、なんですけど」
尭深は、菫のある言葉に疑問を抱いていた。
「『珍しい』、って、何ですか……?」
「……ああ、その事か。――いやなに、君が照に勝ちたい、なんて言うものだからね」
ふ、と菫は微笑む。
「今まで、照に打ちのめされた者達は多い。それが原因で退部する人間だっている。圧倒的な力の差を感じ、上を目指す事を諦める者を、私は何人も見た」
「…………」
「そんな中、君は勝ちたいと言った。その思いが揺ぎ無いものならば――きっと君は、今よりずっと強くなれると私は思う」
菫の言葉に、尭深は再び顔を赤くした。何だか自分には勿体無いような評価に思える。
「そんな事、ない、です…… 私なんて、まだまだ……」
「謙遜はいけないな」
ここでまた、菫の顔が近付く。さっき見つめられた時よりも、更に近い。
「自信を持ちなさい。我々一軍メンバーは、いつでも君達を待っているよ。――それに」
ふわり、と菫の長髪がなびく。
618 :
琥珀の想い:2009/12/28(月) 06:42:39 ID:/PFt8eoN
「――君みたいな可愛い子が虎姫のメンバーになってくれると、私はとても嬉しい」
そう、耳元で囁かれた。
「っっ、っっ……――!?」
尭深の身体を、言い知れぬ衝撃が奔った。菫のハスキーで、それでいて甘みを帯びた声が脳内で乱反射している。きっと今、自分は顔と言わず全身が真っ赤になっているんじゃないだろうか。
「え、あの、あのっ」
混乱する尭深の頭を、菫の手が優しく撫でる。それだけで、尭深は頭が痺れる様な感覚に陥る。
「怖がらなくていい。私はただ、ありのままの感想を述べているだけだよ」
吐息がかかる程に、菫の顔が迫る。反射的に後ずさろうとして、尭深の背中は卓にぶつかり、そのまま上半身が卓の上に寝転がされる。
「あ、ぅ、あ、ぁ……」
さらり、と菫の髪が卓の上に広がる。見上げる菫の顔は、同性から見てもひどく美しく見え、尭深は目を離す事が出来なくなっていた。
「目、閉じて」
菫の言葉に逆らう事が出来ず、尭深は目をきつく閉じる。その時、ふと鼻をくすぐる良い匂いが、菫のものだと理解する。
(あ、あ――)
尭深はこれから自分が何をされるのか、おぼろげながらに想像する。それでも、彼女なら――と、尭深は菫に全てを委ね――
「……………………おい……………………」
地獄の底から湧き上がる、悪魔の呻き声――そう感じた尭深は、全身の血の気が一気に引くのを感じ、目を見開いた。
そこで尭深が見たものは、やれやれといった表情の菫と、その菫の頭をがっしりと掴む手の先にいる――照の姿だった。
「おお、照。こんな所に来て、どうしたんだ?」
全身から怒気――否、殺気を放つ照を見て、菫は事も無げに話しかける。
「…………お前、忘れ物って、『コレ』の事だったのか」
射殺す様な照の視線が尭深に突き刺さる。その迫力に、尭深は思わず「ひっ」と短い悲鳴を漏らした。
「誤解だぞ照。この子とは忘れ物を取りに来た時に偶然会っただけさ」
「…………へぇ、偶然で女一人、卓に押し倒すなんて事があるんだな」
「ああ、全く偶然というのは恐ろしいな――痛いぞ、照」
菫の頭を掴む照の手に、力が入る。それでも菫は飄々とした態度を崩さずに、照の方へと向き直った。
「――済まない、照。待たせてしまった」
「――待ったよ、菫。待ちくたびれた」
その会話の一瞬――照の表情が拗ねた子供の様だと、その時の事を尭深は後に思い返した。
「分かってるな、菫」
「分かってるさ、照」
それだけ言うと、二人はごく自然に――唇を重ねた。
「…………!!」
色々な事が一度に起こりすぎて、尭深にはもう何が何だか分からなくなっていた。声を上げる事も体を動かす事も出来ずに、二人のキスシーンを呆然と見つめる。
「ン――ふぅッ……」
「ちゅぷっ……んんっ」
そんな尭深には目もくれず、二人は深い口付けに没頭してゆく。舌を絡ませ、指を絡ませ、二人だけの空間を作り上げる。
「――ん、っと。ちょっと待った、照」
「……何」
突然キスを中断した菫に、照は不満を露わにする。
「キスをするのは構わないのだがな、生憎と人前でいつまでもするというのは些か問題があると思うんだ」
「どうでもいい……」
「そうは言うがな。私だって花も恥らう乙女なんだ。これでも結構恥ずかしいと感じてるんだぞ」
「菫は冗談が下手だな」
「酷いな」
一転して軽口を叩き合う二人。尭深はそんな二人をただ見る事しか出来なかった。
619 :
琥珀の想い:2009/12/28(月) 06:43:57 ID:/PFt8eoN
「――で、だ。菫、忘れ物って何」
「ああそうだ。忘れていた」
「……おい」
非難する様に菫を睨む照だったが、気にした風も無く、菫は対局室の奥へと歩いていく。そして、部屋の隅にあるテーブルの上に置かれたペットボトルを持ち、颯爽と戻ってきた。
「お待たせ」
「何だよ。そんなモノ、幾らでも買えばいいじゃないか」
「そんなもったいない事出来るか。私は倹約家なんだ」
「ああそうかい」
はぁ、と照は溜息をつく。そんな照を菫は楽しそうに眺めていた。
「邪魔したね」
と、急に菫は尭深に話しかけた。
「えっ、あっ、いえ」
むしろ邪魔をしていたのは自分の方ではないか、と尭深は思った。目の前の二人の存在感が強すぎて、最初から居たはずの自分がとても薄く見える。
「しかし、本当に大丈夫か? さっきからずっと顔が真っ赤だぞ」
「ぇ……」
尭深は慌てて自分の顔を触ると、自分でも信じられないくらい熱くなっていた。その大部分は、恐らく菫と照の所為なのだが……
「そうだ、これでも飲んで落ち着くといい」
と、菫が尭深の前に持ってきたペットボトルを差し出す。容器の中で薄い琥珀色の液体が揺れた。
「えっ」
「緑茶にはリラックス効果があるんだ。私達はもう行くから、落ち着いたら君も早く帰りなさい」
「あ、は、はい……」
菫は尭深にペットボトルを渡すと、照の方へと向き直る。そのまま照の手を握り、二人は出口へ歩いていく。
「……おい、倹約家が何だって?」
「気にするな。それより、今夜は寝かせないからな」
「……言ってろ」
軽口を言いながら、二人は対局室から去っていった。尭深は、最後まで立ち尽くす事しか出来なかった。
「…………」
尭深にとって、嵐の様な一時だった。鼓動は未だに鳴り止まず、体の熱も引きそうに無い。そこで、ふと菫に貰ったペットボトルを思い出す。
(これでも飲んで落ち着くといい)
菫の言葉を反芻する内、尭深は無意識にそのお茶を飲んでいた。
「……っ、ン――」
喉をコクコクと鳴らして、一気に流し込む。お茶と一緒に、今日の出来事も飲み込んでしまいたいと言わんばかりに。
「けほっ……」
何度か咽ながら、お茶を飲み干す。大きく息を吐いて落ち着こうと考えるが、やはり中々冷静になってくれない。
「――ぁ」
そこで、ふと気が付いた。その瞬間、また尭深は鼓動は速くなるのを感じた。今日の自分の心臓は、働き過ぎだと思った。
620 :
琥珀の想い:2009/12/28(月) 06:44:43 ID:/PFt8eoN
「弘世先輩、嘘つき、です」
リラックス効果どころか、体の火照りは増すばかりだった。
「間接、キス……」
自分で言って、恥ずかしさに床を転げまわりたい気分になる。胸が締め付けられる様に苦しく、しかしそれが心地良くも思えてくる。
「……弘世、先輩……」
その名を呼ぶ度に、鼓動が速くなる。きっとこれは、憧れを超えた感情――
「ひろせ、せんぱい……」
しかし、そこでも尭深は大きな壁に当たる。
――宮永照。
麻雀だけでなく、こんな所でまで彼女と当たるなんて。しかも、どちらも酷く分が悪い。しかし――
「――私、頑張ります」
誰でも無く、自分に誓う。麻雀でも何でも、もう最後まで諦めたくない。
「――絶対、負けません」
尭深は開け放たれたままの対局室の扉を見据え、もうとっくにこの場所を去っていった菫に向かって、深々とお辞儀をするのだった。
そして現在。
「…………」
チーム虎姫の部屋に入ると、まだ誰も居なかった。尭深は鞄を置き、一人準備を始める。
「……ふぅ」
熱いお湯で淹れた緑茶が、尭深の喉を潤す。あの日からだろうか、こうしてお茶を飲む習慣が付いたのは――
「おはよう、渋谷」
扉を開けて、菫が部屋に入ってきた。その顔を見るだけで、尭深の頬は少し赤くなってしまう。
「おはよう、ございます」
ぺこりとお辞儀をして、挨拶する。急いでお茶の用意をすると、菫にそれを渡す。
「どうぞ」
「ああ、ありがとう」
菫はそれを受け取ると、ふぅ、と熱を冷ましながら少しずつ飲んでゆく。
「――うん、やっぱり、渋谷の淹れてくれたお茶が一番美味しいな」
「ありがとう、ございます」
部活が始まる前、尭深と菫は他のメンバーよりも部室に来るのが早い事が多く、二人きりになる事が多い。この時間が、尭深が密かに楽しみにしている時間だった。
それは長くは続かない時間だけれど、だからこそ大切にしたい――
「おはようございますー」
「……おはよう」
しばらくすると、チーム虎姫のメンバーが集まり、部活が始まる。
「お願い、します」
宮永照にはまだ届かない。それでもいつか、届いてみせる。
そして、彼女は今日も打つ。その大人しそうな外見とは裏腹に、熱い闘志を内に燃やして――
了
以上になります。
尭深の台詞は意図的に読点を多くしてキャラ付けしてみました。
早く本編で白糸台の面々が会話する所が見たいです……
622 :
621:2009/12/28(月) 06:56:23 ID:/PFt8eoN
後、何故か菫さんが天然タラシキャラになってしまった。
後悔はしていない。
GJですよ
尭深さんのお茶をそう絡めるとは
天然タラシっすなぁ
せーたかも好きだけど、これもありですね
三点リードじゃなくて、句点にしたのはアリだわ
天然タラシな菫さん素敵です。
GJ!
えぇっと淡←照→菫の作者ですけど
wikiを弄れる方、
11-328「無題」 11-479「無題」を
それぞれ
11-328「私の白糸台一日目」
11-479「宮永照一年に一度の大爆発の日」
に変えていただけないでしょうか
どうもリンクの付け方が分からなくて。。。
トリップ付いてないので無効
>>625 了解、直しとくよ。ただしページ名は変えられないからね
>>627 ありがとうございました
年内になんかSS作れればいいなぁ。。。
>>621おわおおおおおおおおお!!!GJ!!!!
尭深ちゃんが菫に片想いってのも可愛いし、このスレの照×菫は相変わらず大胆な百合で素敵!
ニヤニヤしたお。続編期待してます!!待ってます
てか初の尭深ちゃんSSだなぁwwイイヨイイヨー!白糸台最高だぜえ
ちーっす
有明漫画祭りでなんか収穫あったかい
部キャプ・かじゅもも・透一を収穫
俺もサークル参加してみたいなあ…友達いないし一人だけど
白糸台ものはやっぱ希少なんかね
詳しく探してないからアレなんだが
とりあえず、地方組のために誰か写真をうpしてくれ。。。。
うわあああああんんんん!!!!!行きたおよおお
表紙でいいなら戦利品うpできるけど
表紙だけで全然構わない!
うがぁ見れねぇ
あれ?マジだ
携帯からだと普通に見れたんだけど…
うわ、良さそうなの多いね! ありがとう。
部キャプのもし○○だったらー、ってやつ、オラも買ってみっかな!
うほ!!すげええ!!!素敵なのがたくさんある!!
うpしてくれてありがとう!!!これで安心して眠れるぜ!
>>639 クソ!見れんかった。
たった3時間でリンク切れとか。そんなもんか??
上から3つ目の部キャプが気になる・・・。
ちくしょうどんどん読みたくなってくるぜ・・・
結局唸るしかないなw
>>639乙!部キャプいいなw
>>642 携帯からでも見れない?
俺もPCダメだったが携帯から見れた
>>639 ちょww俺の戦利品と9割かぶっとるww
かじゅモモ本はふいうちで見つけたが神がかっていた…最高すぎる。
>>642 パソコンからでもみれたぞー!
あぁ、このかじゅももの人一日目だったんだ…
初手で薄荷屋いっちまったせいで
かじゅももの人のコピー本のほうを逃した
作戦ミスだったか・・・
>>639 見れなかったし規制で書き込むこともできなかった…
明日はダラリの日か
篤見絵入ってるようだが、わたしいらないですよねって・・・んなこたーないw
デコピン期待していたのにおでこにチュされちゃう美穂子マジ可愛い
652 :
名無しさん@秘密の花園:2009/12/30(水) 14:50:11 ID:JrtcgrSX
智純ってないのかな?
衣×智紀 なんてありかもしれない
ともきーはなんだかんだで面倒見が良さそうだしな!
キャプテンと部長の if シリーズ(?)は面白そうだな
くそ、アプリコットだけしくったぜ・・・
まあ委託してくれることを祈るか・・・
チーム「虎姫」…
つまり寅年の姫はじめは菫照
来年はお姉ちゃんの年ですか
やり納めに続いて、姫はじめに勤しむカップルたちを妄想した。
アプリコットの行列は中々すごい状態だったらしいな
今年は寅年なので照の活躍がたくさん見れる。ということは、照×菫そのたetcがたくさん見られる!!!
うひょおおお立たんまじで頼むよ、照×誰かの百合にはかなり期待してるんだ、待ってるよ!!!
でもやっぱり照×菫が良いかな
俺は照咲希望
仲直りした後は仲良いってところ描いてほしいよマジで
そこに淡や菫が絡むのも結構良い
>>662 もちろんそれも
てかぶっちゃけると照なら誰が相手になっても嬉しい。うはうはできる
またコピペ貼りまくったバカが調子に乗ってんのか
最近は白糸台は燃料補給できてるけど照咲が足りなくて困る
原作は合宿中にアニメで出なかった情報とか出ないものかな
>>664 ?
>>665 564 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2009/12/26(土) 15:04:20 ID:K5pfvDLO
ttp://uproda.2ch-library.com/200016L3B/lib200016.png キマシタワーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!
なにこれ最高!!まじやばい素敵!!!うおおおおおおおおおお!!!!!
この絵師様は本当に神です!!!!是非同人誌も描いてほしいですなぁあ
はぁ・・・すんごいテンション上がってきた。この体の奥からこみ上げてくるものはどう処理すれば良いんだ!!
のことじゃないの?よくわからんが
あ、新年になっちまった
年末大掃除で浮かんだss投下します
誤字脱字、駄文注意
タコス→和で2レス
「あ…。」
年末の大掃除中、私はあるものを見て手が止まった。
それは写真立て。
中学時代の写真が入ってる。
そこには楽しそうに笑う私と、隣で微笑む美少女。
ふと作業を止めて、それを手にとる。
比較的ずぼらな私は部屋も汚いし、写真だって飾らない。
でも…、これは別。特別。
眺めていると涙が出てきた。
なんで涙なんて…?
いや、そんなのわかってる。わかってるじょ…。
ずっとずっと好きだった。
でもこんなの叶わない。叶うはずない。
だって…、のどちゃんは…。
「優希〜?掃除終わったー?」
扉の向こうからお母さんの声がして、私は慌てて涙を拭って、なるべくいつも通りを作って返事をした。
「ま、まだだじょ!でも、あとちょっとで終わるじぇ!」
お母さんはまぁ頑張りなさいと声をかけて、部屋から遠ざかっていった。
ふぅ。
もう吹っ切れたと思ってたのになぁ…。
写真の中には2つの笑顔。
2人だけの世界。
写真を撮ったあの頃に戻れたら、こんな気持ちにならなかったのかな…?
…ううん。
私は首を振った。
意地っ張りで負けず嫌いの私は、あの頃この気持ちを素直に認めただろうか?
素直に伝えることができただろうか?
中学時代を思い起こすとやはり答えはNOなんだ。
高校に入学して、咲ちゃんと会って、のどちゃんが私から離れていく現実が目の前に見えた時、その時やっと、私は自分の気持ちを素直に認めることができたんだ。
涙がぽろぽろ出て写真立てに落ちる。
あぁ…あの日ののどちゃんはもういないんだ。
そんなつまらないことが頭に浮かんだ。
ううん、違うじょ…。
私が、勝手に好きになって、勝手に傷付いてるだけ…。
見ていられなくて、写真立てを伏せた。
もうすぐ、今年が終わる。
来年にはもう、こんなこと考えたくないじょ。
のどちゃんが笑って、咲ちゃんが笑って、私も笑って、みんなも笑う…そんな年にしたいじょ。
引き出しを開けるとそこには写真があった。
私はそれをとって新年の誓いを立てた。
「のどちゃんが笑っていてくれるなら、幸せならそれでいい。だから。だから、私は……」
伏せた写真盾の写真を引き抜き、引き出しに閉まった。
代わりに今持っている写真を入れた。
「優希ー!掃除終わった?」
「ま、まだだじょ!」
ちょっと不機嫌そうなお母さんに心の中で呟いた。
部屋の掃除は終わってないけど、心の整理はできたじょ。
写真盾に新しく入れた写真。
そこには清澄麻雀部の皆が笑ってる。
のどちゃんも、咲ちゃんも…私も、皆も。
おしまい
題名は浮かばなかった。
では、駄文失礼しましたー
670 :
名無しさん@秘密の花園:2010/01/02(土) 00:49:02 ID:dzIMvA5g
みんな姫初めに忙しいようだな
このタコスは俺がいただいていくぞ、GJ
年末年始の切なさ相まってなかなか効いたぜ、GJ
照がもし、清澄のメンバーだったら…
674 :
名無しさん@秘密の花園:2010/01/03(日) 09:34:06 ID:K028wVdj
「ちょ、先輩、なにしてるんすか!?やめてくださいよ本当に!」
「暴れるなよ…君の事が好きだったんだ」
「ワハハ若いなぁ」
「うむ」
>>669 新年初GJ タコスは皆に愛されてるから大丈夫
>>673 「お義姉さんは咲さんにべたべたし過ぎです!」ポヨヨン
「のどかにねえさんと呼ばれる筋合いはない!」ムスッ
「あいたたたっ、二人とも、ひ、引っ張らないで〜」涙目おどおど
「ほほう」メガネキラリ「…しかし咲の腕、抜けそうじゃ。部長、止めんでええんか?」
「ん〜…、面白いからもうちょっと見てましょw」ニヤニヤ
「咲ちゃんモテモテ。今日も3人仲良しさんだじぇ〜」タコスもぐもぐ
「咲さん、今日のお弁当、咲さんの好きな卵焼き作ってきました。お昼一緒に食べましょうね」
「咲はお姉ちゃんと一緒におにぎり食べるんだもんね。一緒に作ったんだもんねー、咲」
「あ、あの、みんなで食べ…」 火花バチバチ照和
「あううう…」あわあわおどおど咲
そんな毎日
皆あけおめ ことよろ
>>673 部長が風越だったらも結構良いけどこれもこれで良さそうだな
>>675 GJ
もっと見てー
淡←照→菫。
7レス。季節外れのクリスマスネタ。
照の口調を大幅に変更。カマっぽいとかいうな。
「ホワイトクリスマスだね、てるてる」
わたし、大星淡は空を見上げて言う。
ヒートアイランド現象とかモンスーンとか夏の間はよく聞いたけど、
聖夜の今日は、息も凍るような寒さが朝から続いていた。
朝の天気予報を見て、興奮しながら校舎について、
今年最後の例会を終えて、さぁ帰ろうといった時にようやく雪は降り出した。
エアコンの効率なんて関係ない、とばかりにカーテンを全開された窓の外は、
もはや陽が落ちて真っ暗な空を、白く彩る雪たちの乱舞だった。
いつものようにてるてるは私のお尻を触りながら、うひゃ!触りながら外を見る。
「さむそーね」
夢のかけらも情緒もない台詞をてるてるは返す。
そんな独創的なところも大好きだけど、
やっぱりもうちょっとロマンのあることを言ってもらいたくもある。
そりゃまぁ確かに雪は横殴りに降ってるから、風がすごい勢いで吹いてるだろうけど。
こういう日のこういう夜に降る雪を見て、寒そうとか、それはちょっと空気が読めてないよ、てるてる。
だからせめてロマンチックなことを、わたしは言う。
「てるてるぅ〜。ミーティング終わったら、一緒に街に出ようよ!」
それを聞くとてるてるはあからさまに嫌そうな顔をする。
確かてるてるの故郷って長野だから、寒いのには慣れてるはずなのに。
「いやよ、さむいし」
そう言うてるてるの頭をボフッと叩く、誰かさんの手。
わたしが唯一勝てないと思う人。弘世菫だ。
「チームメイトの誘いくらいは快く受けろ」
この人がてるてるをすんなり明け渡してくれるなんて、意外だ。
てるてるはチッと、隠しもしないで悪態をつく。
そういう感情に素直なところも素敵だよ、てるてる!
「あ〜。仕方無いか」
やた!やた!やた!
トラトラトラ!我奇襲ニ成功セリ!ニイタカヤマノボレ!
「ありがとうございます、会長!」
思わず声に出して感謝感激雨あられ!
でもそう言ってめったに下げない頭を下げた私を、会長は冷ややかに見下ろして、
「そんなに感謝されても困る。私もお供するからな」
ふえ?
えええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!
◇
淡をダシに使いはしたが、私とてこんなロマンチックな夜は好きな人と一緒に居たい。
去年は誘っても応じてくれなかったこのトーヘンボクも、
どうやら二人がかりでならなんとか攻略出来たようだ。
その意味では淡には感謝の念もある。
だが、ことこいつに関しては譲る気は毛頭ない。二人っきりで夜の街など歩かせてたまるものか。
気の変わりやすい、こいつのことだ。いつまたヤーメタと言い出すか分からないので、
私はすぐさまあいつの分も含めて全ての準備を終え、即座に街に繰り出した。
ミーティングの途中ではあるが、渋谷と亦野に任せておけば問題はなかろう。
もし問題が起こったとしても、応対する気は毛頭ないので携帯の電源も切っておく。
■
街はイルミネーションで覆いつくされていた。
ことクリスマスに関しては環境問題も何処へやら、という勢いだ。
だが淡い光によって包まれた街中は本当に幻想的だ。
どんなリアリストの戯言も、この雰囲気の前には無力に過ぎない。
金や環境問題や飢えた子どもたちや地球の未来などどうでもいい。
私自身の、これから訪れるであろう暗澹とした未来も押し流されていく。
ふと隣を見ればあいつと淡が腕を組んでいた。
やはり癪なので、私もあいつの空いてる腕を取る。
自分の胸が邪魔してなかなか密着は出来ないが、それでなんとか心の平静は保たれた。
あいつは、といえば私の方をニヤニヤと見やっている。
なんだ、それは。
まさか嫉妬させたいのか。
馬鹿な。そんな挑発に私が乗るはずがない。
無論、対抗心など沸くはずもない。
お前の腕をさらに密着させようとなど、するはずもない。
「なに睨んでんの」
あぁ?!なにを言っている。私は嫉妬もなにもしていない。
ましてやお前に対して独占欲など沸いてなどしていない!
自信過剰もいい加減にしろ!
「てるてるぅ〜わたしの方もちゃんと見てよぉ〜」
そうだそうだ。折角一緒に来てるんだから、淡にも構ってやれ。
だからと言って
目 の 前 で キ ス を す る な
◇
会長はこういう時、ほんとに迅速だ。
てるてるが夜の街に繰り出すといった瞬間、全ての業務をあっという間にまとめていった。
せーこちゃんとたかみーから聞いたところによると、去年は誘ってもてるてるが応じなかったらしい。
へー。
じゃあわたしの方が会長より、もしかして上になれたのかなぁウヒヒ。
まぁわたし可愛いからね!てるてるが放っておくハズがない!
会長みたいに綺麗な人には、二年のアドバンテージがある会長には、
麻雀も恋も、何時まで経ってもかなわないかもって思ってた時もあったけど、
乙女最大のイベントであるクリスマスで勝ったと言うことは、これはラス親で役満上がったようなもの。
もはや完全勝利と言っても差し支えないんじゃないかな!
会長の方をニヤニヤしながら見ていると、ふと気が付く。
てるてる、会長の方しか見ていない。
慌ただしく支度をしながらも、本当に嬉しそうに微笑んでる会長の方しか見ていない。
わたしの方なんて見もしていない。
■
夜の街は本当に綺麗で。
様々な光に彩られて、キラキラと光りながら落ちる雪と相まって、まるで万華鏡のようだ。
宝石箱をひっくり返したようだ、と言っても差し支えない。
好きな人と見る景色としては申し分ないというか、これ以上ないロケーションだろう。
実際周りを見ると、腕を組んで楽しそうに微笑みあうカップルの姿ばかりだ。
わたしもホワイトクリスマスの街中で、一番好きな人と腕を組んでいる。
こんな素敵なシチュエーションってないと思うんだ。
でも、わたしには自分の吐いた息で白くなる、てるてるの横顔しか見えない。
ねぇ、なんでこっちを見てくれないの?
さっきから正面か、会長の方しか見てないよ?
わたし、我慢強くは無いんだから構ってくれないと、駄目だから。
本当に、駄目だから。
景色がちょっと滲んじゃってる。寒いからなのか鼻水まで出てきそうだ。
駄目だ、駄目だ、駄目だ。
こんなのわたしじゃない。
例え、てるてるが私のことなんて眼中に無かったとしても、
例え、会長のことしか頭に無かったとしても。
そんなのどうしたって言うの。
だからって、身を引く理由には全くならないんだから!
だったら無理してでも、てるてるをこっちに振り向かせてやるんだから!
「てるてるぅ〜わたしの方もちゃんと見てよぉ〜」
精一杯可愛い、甘えた声で言ってみる。
これで振り向いてくれなかったらどうしようとか、考えない!
そうだ、振り込んでこないなら、ツモるまでじゃない!
決意とは裏腹に、精一杯可愛い顔を、おねだりするような顔をする。
全力を尽くさなければ、あの人に、会長には勝てない。
だったら全力で戦うのみ!
そう考えていると、てるてるはわたしの方に振り返り、組んだ腕を器用にほどいてわたしの腰に回し。
てるてるの顔が。
顔が。
あ ぁ 幸 せ ぇ 〜
■
物凄く長い間、唇と舌を交わしていたと思う。
わたしの喘ぎ声にも似た溜息、聞こえちゃったかな。
わたしはあまりの事に両手がお留守になってしまった。
いざ結ばれるとなると、やっぱり気恥ずかしいな。
目がトロンとなって、周りの風景とか全然見えない。
折角のロケーションなのに、肝心の場面ではあなたの顔しか見えないんだね。
息が苦しくなるほどに唇を重ね、舌と舌が糸を引いて離れた。
はぁはぁと舌をちろっと出しながら、心臓が音もでないほどに動きまくっている。
白い吐息が辺りを支配する。
ふと気がついたように、わたしはてるてるを抱きしめる。
わたしは今、ここでてるてると結ばれた。
キューピッドさんが祝福のラッパを吹き鳴らしている。
てるてるの愛は唇を通して十分伝わった。
二人は相思相愛だ。
そうだ。
悲しむことなんて、切なくなることなんて、嫉妬することなんて、焦ることなんて。
全くなんの必要も無かったんだ。
これだけ愛されているのに、なんで気づかなかったんだろう。
それに気づかなかった悔しさなのか、本当に嬉しいからなのか。
わたしは涙をぼたぼた流していた。
「なに泣いてるのよ」
そうは言ってもね、てるてる。
涙が出ちゃうんだよ、乙女だから、女の子だから。
てるてるは、そんなわたしの涙を人差指でぬぐってくれた。
優しいんだね、てるてる。紳士だね。
真摯な紳士。
思いついちゃったからしょうがない。
でもそれで泣き止んだ私に、てるてるは「あ、そうだ、忘れてた」なんて言いながら、
わたしの腰に回してた手を、自分の懐にやった。
そこから出てきたのは、
紫色の小箱?
催促されるままにそれを開けると、
「綺麗…」
それは本当に、本当に綺麗なペンダント。
あ、駄目だ。また泣いちゃう。
こんなロマンチックな夜に、
こんなロマンチックなキスをして、
こんなロマンチックなことをしてくれるなんて、
本当に、本当に、てるてるってすごい人なんだね。
てるてるはチュって唇の先だけでキスをして、わたしに微笑みかけた。
そんな可愛い笑顔、今までで一番の贈り物だよ、てるてる。
◇
私はそれを傍観するしか無かった。
あいつが淡を貪り食う、様を。
淡が幸せそうな顔でペンダントを身につける、姿を。
私にも見せたことの無い、極上の笑顔を淡にプレゼントしている、あいつを。
先程まで感じた、あいつの挑発的な雰囲気ももはや感じない。
あいつは本当に淡にだけに集中している。
今までこんなことは無かった。
何時だって、そう何時だって、私のことを気にかけてくれていた。
心の底にあの女が居ることは勿論ではあるが。
それでもあいつの中の微成分の、結構な割合は、私で出来ていたはずだ。
その視線を存在を、今、全く感じない。
あいつが見てくれない世界が、これほどまでに味気ないものだったなんて。
白糸台に来るまで、私は独りだったはずなのに。
世界に私は独りだと、そう分かっていたはずなのに。
そうだ、あの頃に戻っただけだ。
寂寥感のみが支配する、あの頃に。
白糸台が、照の居るこの空間が、ティル・ナ・ノーグであった事など分かっていたはずだ。
幻。真秀場。そんなあやふやなものだったことなど、とっくの昔に覚悟していたはずなのに。
なぜ
なぜ
何故、私は涙を流しているのだろう。
■
どのくらいの時間が経っただろう。
淡はもう遅いからと言って、腕をぶんぶん振りながら帰っていった。
好きなオカズは延々と、最後まで残しておくタイプなのだろう。
私だったら、チャンスと見たら食い尽くすのだが。
あとに残ったのは、あいつ。
あぁそれと私、か。
もはやステージの上を見つめるだけの存在と成り果てた私に、
なんの価値が、意味があると言うのか。
勘定に入れる必要など無いよな。
そう思い、私も寮に帰ろうとする。
だが。
何故か離れられない。
精神的な問題ではない。
私の肉体的な問題でも無い。
あいつは未だ、ずっと私と腕を組んだままだったと言う事に気づいたのは、
あいつが私に向き返った段になって、ようやくのことだった。
■
「なにしてんの」
あいつが語りかける。
「離せ」
私は帰りたいんだ。一刻も早く、孤独に慣れなければならないんだ。
「嫌」
あいつが返す。
「黙れ」
私が返す。
お前はもう私のことなど忘れてしまったのだろう?
私もお前のことなど忘れるから。
私に対してもう、なにも与えないでくれ。
「言わなきゃ分からないの?」
あぁ分からんね!
三年間お前のことだけを考えて生きてきたが、
結局、お前の事を理解することなど出来はしなかった!
飽くまであいつの顔を見ようとしない私の顎を、あいつは右手で掴み見据えさせる。
「聞いて。私はお前のことが大好きなんだ」
「バカなことをいうな!心にも無いことをいうな!ふざけるのも大外にしろ!」
「嘘じゃない。三年間ずっと、好き。愛している」
「だったらなんであんなことをする?!もう沢山だ!淡と幸せに暮らせばよかろう!」
「淡もお前も大切だよ?ただ淡は拗ねやすいから」
傷付いたような顔をするな。怒りづらくなるじゃないか。
泣きたくなるじゃないか。私はお前を傷つけたいわけじゃない。
私はお前のことが、やはり好きなんだ。
「だから、最初に渡したの」
そう言って、あいつはポケットの中のものをゴソゴソと取り出す。
「お前がロマンチストなんかじゃないのは、分かってはいたけど」
うるさい。お前に言われたくない。
「ここまでムードもなにも無く、渡す羽目になっちゃうとはね」
なんだ、それは。
紫色の小箱。
先程のものより、やや小さい、それは。
「開けてもらいたいんだけど」
そう言われて、素直に開けてしまう自分が恥ずかしい。
手が震えているのが分かるのが恥ずかしい。
歓喜が心の底から沸き上がってきている事を、実感しているのが恥ずかしい。
中に入っていたのは。
ちいさな、ちいさな
「バイト代三ヶ月分。わかるよね」
指輪だった
■
私はもう、なにも考えられなくて。
ただただ涙を流すしか出来なくて。
そうか、これが聖夜の奇跡なのだと、心の底から感謝することしか出来なくて。
あいつの顔すらまともに見られなくて。
私の嗚咽だけが、雪が舞う私のこの世界に響き渡っていた。
「もうちょっと、こう、なんというか、感想とか言えないの?」
黙れ、アンチロマンチストめ。
私の様子を見て察しろ。
もはや感謝とか感激とか幸福とか
そんなものでは言い表せない状態なんだ、私は。
大体、あの時淡が誘わなければ、
私が諭さなければ、何処でどう、これを渡すつもりだったんだ。
まさか部屋の中でか?それこそロマンも何も無いだろうが。
まぁそれはどうでもいいか。
今、考えるべきはこいつに返す言葉だ。
もはや言葉に出来ないほどの感情を与えてくれたこいつに、
私からプレゼント出来るものなど何もないが、
ただ一言、声に出して表せる言葉といえば
「ありがとう」
そしたらあいつは私を抱きしめながら、こんなことを返してくれたんだ
「メリー・クリスマス」
メリー・クリスマス、"照"。愛してる。
私達は、雪で真っ白になることなどお構いなしに、ずっとずっと、抱き合っていた。
以上投下終了。
駄文失礼しました。
>>685 GJ
淡がちょっと気の毒だな
照の心の底にいるあの女ってのは咲かな
>>686 GJ!
なかなか美しい絵だ
照の口調変更はこれでいいんじゃないかな
前までは男前過ぎたw
689 :
名無しさん@秘密の花園:2010/01/04(月) 17:44:52 ID:/QI3eCMA
サイコーっす!
鶴賀の番外編がのる増刊の発売はまだか…
そろそろ全裸待機が寒くなってきたぜ…
>>685 照なんというジゴロ。。。
指輪一つであっさり機嫌よくする菫さんも菫さんだが
視線が感じられなくなった程度で機嫌悪くする菫さんも、たいがいだなw
照の立ち回りイケメンすぎワロタ、GJ
なんですかそれは?
まったく…モモは年中発情期だな
あれ、君達本スレ見てないの?
7巻ピクドラらしいよ。7巻は抱き枕カバーもあるし、この二人はもうガチ決定ですね。
モモの顔が少し気になるけど…
7巻ピクドラ予告ありましたっけ
ともあれ素晴らしい朗報ですね
699 :
名無しさん@秘密の花園:2010/01/06(水) 00:41:26 ID:cm3UmeJE
>>697 明日DVD届くから楽しみ
勿論、抱き枕カバーは使わず二人を眺めるだけだけど!
ピクドラ堪らんなー早く観たい。浦畑氏に感謝してもしきれないぜ
>>699 俺が居るw
たまに出してニヤニヤする予定、我ながらキモイけどw
お姉ちゃんがクレイジーな方向にいってしまった…
あの8巻パッケージに関わったスタッフは絶対に許さない
絶対に。
咲和を否定する訳じゃないけど、どうしてああなった
死ね
あれじゃ、照姉はラスボスだな。
あれじゃっていうかまあ普通に本放送時からしてラスボスでしたし・・・
特典は照×咲の宮永姉妹抱き枕カバーでお願いします
あそこまでいくと仲直りした時一体どうなるのか見物だ
ハグくらいは勿論あるよね
大穴で結局最後まで仲違いしたままという路線も・・・
照が燃え照 おおーかっけ〜w と思ったのは内緒
なあに、ツンがきついほど、反動で後のデレも強まるというものさ
つまり壮大な前フリじゃよ 心配ナッシング
>>707 俺も発狂する
別に百合じゃなくても良いからせめて姉妹愛としての照咲をくれ
ピクドラのかじゅモモが見てて恥ずかしくなる件
8巻のピクドラは照んトコだったりするのかな。もう四校分やったし
少しくらい、南浦さんに光を当ててあげてもいいと思うんだ
いやぁこれでiPSもついにアニメ公式化か
なんか照が麻雀卓で死にそうで怖いわ…
20話の照でハートを打ち抜かれた自分としては八巻のジャケはアリだわ
大アリすぎてSSを書きたい気分だ
カツ丼さんのSSを唐突に投下
カツ丼さんコーチになる
「えー、ここのコーチになった藤田だ。よろしく」
ぶっきらぼうな挨拶に、龍門渕高校麻雀部一同は言葉を失った。
今は新しいコーチの紹介の時。まさか現役で活躍中のプロが高校の指導者になってくれるとは誰も思っていなかった。
唖然と口を開ける者。いろいろ訊きたくても恐くて声が出ない者。憧れのプロを前に緊張する者。
皆理由はそれぞれでも、言葉を失ったのは同じだった。
大勢が集まる部室がしんと静まり返る中、藤田は煙管を咥えて悠長に煙を吐いた。
そこに猛烈な勢いでツっこんだのは部長の透華だった。
「藤田プロ! 学校内は全面禁煙ですわッ!」
「ツっこむとこはそこなの?!」
一の追いツっこみを気にもせず、藤田は「あぁ、すまん」とポケットに手を突っ込んで出した携帯灰皿に煙管の灰を捨てた。
それでも透華は腕組みをすると、やや険しい顔をした。
「藤田……コーチでしたっけ?」
「ああ」
「あなたがここのコーチになった件、部長の私が初耳なのですけど、何かの間違いではありませんの?」
部だけでなく学校の全てを取り仕切る透華が、不機嫌を隠さずに尋ねた。
「理事長から聞いてないの?」と藤田は煙管の柄で額を掻いた。
「おじい様の悪戯ですわね……」
透華は「またか」と言いたげな顔で溜息を吐いた。
この学校の理事長は透華の祖父であり、その理事長は孫可愛さ故に今回のようなサプライズイベントを事ある毎に用意していた。
透華は顎に親指を当てて考えると、パチンと手を叩いた。
「ハギヨシ」
「はい」
音もなく主人の正面に現れた執事の萩原に、藤田は驚いて仰け反った。
「どっから出た!?」とマジックのタネを聞く藤田を無視して、透華は萩原に命令を与える。
「ハギヨシ、おじい様に確認を」
「かしこまりました」と言うや否や、再びマジックのようにその場で消え去った。
「今度は消えた!」と目を丸くする藤田。その驚きも束の間、数秒もすると同じ場所に萩原が忽然と現れた。
口をあんぐりと開けて呆然とする藤田を気にすることなく、透華は結果を尋ねた。
「どうでした」
「はい、藤田様のおっしゃるとおり、話は通してありました」
「そう、ご苦労」
萩原が一礼して消え去ると、透華は藤田と向かい合った。
「コーチ、失礼しました。どうやらこちらで不手際があったようで」
「ねえねえ! あれって何ッ? 消えたりしてなかった?」
「ハギヨシは家の執事ですわ」
「執事って人間がするものよね?」
「人じゃない執事がいるのなら見てみたいものですわ」
世紀の大マジックを見せられて混乱する藤田が冷静さを取り戻すまでもう少し時間が掛かりそうだった。
そんな藤田を、部員全員が同情の眼差しで見つめていた。
透華の周りにいれば、誰でも一度は通る道だった。
「天江衣はいないのか」
ようやく落ち着いた藤田が最初に口にしたのは衣のことだった。衣は彼女の大のお気に入りだ。
藤田は部員を一通り見やってから、部長の透華を見る。やはり、衣の姿は見当たらない。
「衣なら屋敷にいますわ」と、さも当然という顔をした。
衣もここの学生だが、あまり人が集まる部室には顔を出したがらなかった。なので、今日も授業が終わったら早々に下校していた。
衣の不在を知った藤田は、見るからにがっかりした表情を作って「じゃあ、帰る」と手を上げてさよならしようとした。
当然、部長の透華が声を荒げる。
「帰るって何ですの!?」
「だって、衣いないし」
「そんな理由で!?」
「衣と毎日スキンシップ取れるっていうからコーチ引き受けたんだもん」
くだらない理由を聞いて透華は眩暈を覚えた。「おじい様ね……」と恨みがましく呟いて首謀者の顔を思い浮かべた。
一連の会話を傍で見ていて苦笑いしていた一だったが、困り果てた主人を見て首を突っ込むことにした。
「透華、ボクが衣を迎えに行ってこようか」
その提案に一番瞳を輝かせたのは藤田だった。「衣来る?」と一に顔を必要以上に寄せる。
一はうざいのを我慢して透華の返事を待つ。
透華はどうするべきか考えていた。衣が部室に来ないことにも理由がある。だが、皆が現役プロの指導を受けるチャンスでもある。
透華は「うん」と相槌を打つと答えを決めた。この方が、きっと衣のためになると考えた。
「はじめ、お願いしますわ」
「すぐ呼んでくるよ」
「急いでねー」と喜々としてまとわり付く藤田を押しのけて、一は一旦部室を出て行った。
状況をただ見てずっと笑っていた純が、透華の横に来て言った。
「衣、来るかぁ?」
「衣も少しは変わりましたもの。大丈夫ですわ」
「私もそう思う」と会話に参加する智紀。
皆の意見を聞いた純も「そうだな」と力強く同意した。
皆が衣を心配し、そして同時に信頼していた。
「清澄の大将のおかげか」
そう呟いたのは、やさしく微笑む藤田だった。
コーチになった藤田は、とりあえず全員に麻雀を打たせて各々の実力を見ていた。
するとすぐに、迎えに行った一が早くも戻ってきた。
「ただいまー」とにこやかに部室のドアを開けた一の隣には、しっかりと衣の姿があった。
衣は仕方なく連れてこられたという感じで、少しむっとしていた。
「はじめがどうしてもと言うから来てやったんだからな」と誰にでもなく言い訳をする。
それでも、衣の性格をよく知る一と透華は、それが照れ隠しだと分かっていた。誘われた衣も、悪い気はしてなかったのだ。その証拠に、頭のリボンがぴょこぴょこと揺れていた。
目当ての人物を発見した藤田は、コーチの仕事をそっちのけにして目標に真っ先に突進した。
「衣元気だったか!」と小さい子供に『高い高ーい』をするように担ぎ上げると、がしっと熱い抱擁をかまして頬ずりした。
過剰なスキンシップに衣は「ひっつくなぁっ!」と抵抗するが、非力な彼女では藤田を引き剥がせない。
腕力では敵わないのは明らかだ。そこで衣は言葉で抵抗することにした。
「離れろゴミプロ、タバコ臭いーっ」
それを聞いた途端、藤田の動きがぴたりと止まる。二人を傍で見ていた周りは、ゴミプロ呼ばわりされて切れたのではと息を呑んだ。
頬ずりをやめた藤田は、衣の両脇を支えて腕を伸ばした。衣の足が宙ぶらりんになり、二人の目線が合う。
衣が「どうした、怒ったか」と挑発するも、藤田は表情を変えない。真剣な顔で衣を見る。衣も負けずに不敵な笑みを浮かべた。
周りが肝を冷やす中、藤田が発した言葉は――
「――私、タバコ臭いか?」
「うん」と衣が頷く。
「わかった、もうタバコ止める。だからもうちょっとだけ!」と衣を強く抱きしめた。
「だからひっつくなぁ!」
あっさりと禁煙を宣言してスキンシップを再開した二人。周りはそれを見て安堵し、そしてどっと疲れを感じるのだった。
衣の受難はまだ始まったばかりだ!
終
以上で投下終わりです
ありがとうございました
>>723 GJ
衣はやっぱ可愛いな
続きあれば楽しみです
かじゅはあの合宿を越えて、さらにこんな新婚旅行までしておいてまだ煮え切らないとか
本当にアレだな
>>725 え、見た瞬間吹いたんだけどこれ新婚旅行?
ピクドラですか?
DVD買ってないヤツがこのスレの住民だなんて…え
730 :
名無しさん@秘密の花園:2010/01/07(木) 16:46:28 ID:z2KUScQl
今日体育館寒かったからずっと桃攻めで妄想してた。
731 :
名無しさん@秘密の花園:2010/01/07(木) 18:45:03 ID:pX3j2R5G
照格好良いよ本当に。
なのに8巻の様はどうしたものかと…私も思う。
一歩間違えたらコーチ状態な照w
春に出るらしいPSPにも期待してる
咲大好き和も見れそうだし、オリキャラとか出なさそうだし。QBと違って流石に空気読んだなー
734 :
名無しさん@秘密の花園:2010/01/07(木) 21:31:02 ID:z2KUScQl
>732
わかりました。2〜3スレほど消費します。
よし。まいまいまい
736 :
始業式:2010/01/07(木) 21:47:00 ID:z2KUScQl
一月七日、鶴賀学園では冬休みを明け、始業式がはじまっていた。
「ーーーーー」
前では校長がいつも通り話をしている。
「やっぱり、校長先生の話って長いっすよね。」
確かにモモの言う通りだ。モモ、の?
「加治木先輩、どうかしたっすか?」
「モモ、どうしておまえがここにいる?」
あまりに驚いたので質問をしたら先生に注意された。
「先生、少し、体調が悪いので、外で休んでも、いいだろうか。」
あっさりとOKをもらった。
737 :
始業式:2010/01/07(木) 22:09:09 ID:z2KUScQl
とりあえずモモを一緒に連れ出して改めて質問をした。
「モモ、なぜ私の隣にいた?」
「だってここ、学校っすよ。」
確かにその通りだが、そのようなまじめな答えをされても困る。
「そうではなくて、私は三年モモは一年、列は相当離れているはずだぞ。」
「だって、先輩に会いたくって。ちゃんと学校にきてるかなって。」
私を何だと思っているのだろう。
「先輩、三年生だから進路も決まって、麻雀部にも来れないんじゃないかって思ったらー」
そうか。私は後三ヶ月でここを卒業してしまう。これからの進路のため、私が部室へいかなくなると思ったのか。
「安心しろ、モモ。睦月や佳織のへたっぴ達の育成をしなくてはいけないのだ。だから後三ヶ月は部室にいられる。後三ヶ月、安心していいんだぞ。」
「はい。」
そう言ったモモの顔には涙が流れていた。
738 :
名無しさん@秘密の花園:2010/01/07(木) 22:12:34 ID:z2KUScQl
読んでくださった方、お疲れ様でした
SSって、難しいですね。
かなり、グダグダ担っちゃいました。
原作での照咲はまだかねぇ・・・
>>740 最近照咲のSSが投下されなくなって悲しいよ
480KBこえましたね。
1レスSS
>>675の小ネタの続き
>>676こんなんでどう?
※注意:照と和こわれてます。エロないです。百合分推して知るべし。
**********「if照in清澄 〜妄想姉妹〜」**********
ある日の放課後、清澄高校麻雀部部室。息を切らせて駆け込む照。
「はぁはぁ、あれ?久、咲は?」 「あら、照。今日は進路指導で遅くなるんじゃ…」
「超特急で済ませた。で、咲は?」
少し遅れて今度は和が駆け込んできた。
「はぁはぁ、部長、咲さんは?」 「あら、のどか。今日は委員会で遅くなるんじゃ…」
「超特急で済ませました。で、咲さんは?」
「咲なら天江さんから電話があって、出かけたわよ。2駅先の喫茶店で待ち合わせだとか。
今日は直帰するって」 「なに!天江衣が!」 「衣さんが!何故?」
「あー、何でも咲が読みたがってた本を、天江さんが見つけたとかで。あとついでにケーキ
ご馳走してもらうんですって。いいわねー」
照と和のシンクロ妄想、開始ー。
―……あははうふふ
「わあ、このケーキおいしいね、ころもちゃん」 「ほんとだな、さき。でも…」
「? どしたの?」 「さきが一緒だから、きっと何倍もおいしいんだ」
「えっ…もう、ころもちゃんったら…」 ポッ
「さき、ほっぺにクリームついてるぞ」 ちゅっ
「あん、もうころもちゃん…。あ、ころもちゃんにもついてるよ」 ちゅっ
「うふふっ」「えへへっ」
あははははうふふふふ……― 妄想終了ー。
「だ、駄目よーっ!咲ー!」 「さ、咲さん!いけませーん!」
「うっわ!びっくりしたー。いきなり何?どしたの二人とも?」
「うう、ころもめ。あどけない顔して本とケーキのダブルで釣るとは狡猾な!」
「さささ咲さんの、咲さんのほっぺの貞操の危機で危険があぶない!!」
「いくぞ、のどか!」 「はい、てるお義姉さん!」 照和ダッシュ!
「さきっ、お姉ちゃん今行くよ!待ってて!」
「衣さんは大切なお友達…はっきり言って大好きですけど、咲さんのほっぺは譲れません!」
二人が部室を出た後、久がおもむろに携帯電話を取り出した。
「…あ、もしもし、優希?そっちはどう?…そう、無事に合えたのね。…そっか楽しそうね。
良かった。…うん、予想通り、今二人が向かったわ。引き続き監視よろしくね」
「さあ、面白くなってきた!私たちもいくわよ、まこ!」
「あんた…鬼じゃのう。ほっといてあげんさいよ」
「あら、黙ってたっていずれバレるし、ほっといて二人が暴走したら、結局泣くのは咲だわ。
いざというときは収めるわよ。ついでにちょっと楽しませてもらおっかなーってだけよ」
「はいはい。口じゃあんたにゃ敵わんわ。…でもほんまに大丈夫かのう。
わしゃ、咲や天江のお嬢ちゃんの泣き顔なんて、見とうない」
「だーいじょぶよ!天江さんに下心なんてないし。案外あの4人で麻雀しようってなるかも。
ふふっ、ちょっと見てみたくない?さ、ほら早く行くわよ。優希も待ってるわ」
「へいへい。まあ確かにあの4人の対局となると、興味津々じゃのー」
***
一方その頃、喫茶店では、咲と衣がきゃっきゃうふふの真っ最中。
「わあ、このケーキおいしいね、ころもちゃん…(ゾクッ)ふぇっ?」 「ん?どうした咲」
「う、ううん、なんでもない、なんでもないよ、えへへ…。(?…何だろう、今の感じ…)」
窓の外を眺める咲。やわらかい午後の日差しと、店内に流れる落ち着いたクラシック。
(なんでもない…よね…)…嵐の前の静けさであった。
************
以上… あわわオチてない
続きを待っているぜ
ピクドラってどんな話だったの?
>>746 かじゅモモがひたすらイチャイチャする内容だったよ
本当にそれだけ
なぜむっきーはあんなに可愛いのに百合要素ないの?
なぜピクドラにカマカオを出さなかったの?
かじゅモモも良いけどその他のキャラももっと出番くれお
脚本家がかじゅもものお泊りデートを書きたくて仕方なかったから
月末の鶴賀番外編がむっきーのラストチャンスだな…
何故か衣×智紀投下
「智紀―――」
小さな身体が、するりとドアの隙間をすり抜け、智紀の部屋に入ってくる。
うさぎの耳のように長いカチューシャが目立つので、すぐに衣だとわかった。
「今日は、パソコンで何をしているんだ?」
一人の部屋に置くには少し大きいソファに、智紀がノートパソコンを使っていた。
衣が智紀の横に座り、パソコンの画面を覗く。
ネットゲーム・・・ではなく、牌譜だった。
「・・・次は、負けたくないから」
なんだかんだで、智紀も麻雀には本気だ。
そんなことを思いながら、衣は智紀と一緒に牌譜を見る。
「でも、智紀。昨夜もずっと牌譜を復習していただろう。睡眠は取ったのか?」
「大丈夫、十分」
・・・と言ってはいるものの、明らかに寝不足っぽい智紀の顔。
いつも細いが、明らかに眠たそうな目。
昼食中も何回も欠伸をしていた。
「智紀、無理は良くないぞ。それに、女子にとって寝不足は敵らしい」
「女・・・にとって??」
「透香や一が言ってた。寝不足はお肌に悪いんだと」
「・・・あまり私には関係―――」
「関係大有りだ。だって」
衣の顔が智紀のすぐ前に迫る。
「智紀、綺麗だからこそ尚更、注意しないと駄目なんだ」
衣の言葉を受け、智紀が黙り込み、顔を背けてしまった。
「・・・」
「??・・衣、何か悪い事言った??」
「ううん・・・」
ちょっと嬉しかった。
あまりそんなこと言われたことないし。
ここに来る前は、ほぼ外との関わりを絶っていたけど、それでも自分の事は気になってた。
正確には、周りから見た自分。
外から見た自分。
自分は、皆からどう見えるんだろう??って。
「智紀、こっち向いて」
智紀が衣の方をゆっくり向いた。
その瞬間、軽く唇が触れ合った。
あまりドラマや漫画で見るキスとは違う。
赤ちゃんにしてあげるような―――
一瞬だけど、その一瞬の後、智紀の顔は見る見るうちに火照り、恥ずかしさと焦りを浮かべていた。
「衣・・・何を・・・」
「気にする必要は無い、女同士でもちょっとだけだったら大丈夫だ。一と透華なんか―――」
「あの二人は・・・」
智紀らしからぬ慌てっぷりだ――と、衣は感じた。
「ほら、今の智紀、可愛いぞ」
「・・・」
「どうした??」
「ううん・・・」
智紀もようやく悟った。自分がとても慌ててると。
「にしても、こんな事、衣どこで覚えた?」
「衣がって何だ、衣は子供じゃないぞ!智紀と同い年だ」
「・・ふふっ、そうね。ふぁ・・」
智紀が小さな欠伸をする。
「智紀、眠いのか?」
「ちょっと・・・」
「それじゃぁ、衣の膝枕で寝ればいい。いつも智紀がしてくれてるみたいに」
衣がそう言うと、智紀はこくりと頷き、小さな膝枕に頭を置いた。
「智紀の髪、綺麗」
「衣も、ね」
衣をいつも子供扱いしてた智紀だが、そのときは立場が逆転したのだった。
「ともきー、衣知らないー??」
コンコン
「あれ、ともきーいないの?入るよ?」
一が、智紀の部屋のドアを開ける。
「ともきー寝てたのか・・・って、衣もここにいたんだ」
そこには、衣の膝枕で眠る智紀と、そのままソファにもたれて眠っている衣がいた。
「・・・てか、何でともきーが衣の膝枕で寝てるんだろ」
一瞬起こそうと思ったけど、ちょっと珍しい光景だったので、一はしばらく二人を見ていた。
以上
SS書くの初めてな上に国語力ないんで、色々支離滅裂なところは許してくだしぃ
5巻のピクドラ見て、こんなのもアリかなぁなんて思った次第です
てか衣の喋り方がイマイチ難しい。
>>744 待ってました
そしてGJ
続き楽しみです
もっと照見てえ
>>754 GJ
衣可愛いな
智紀も良い感じだし
>>744 清澄照いいですね
一度本格的な咲の両親が別居しないifが見てみたい
次スレたてます
邂逅は突然だった。
わたし、宮永咲、はお母さんへのプレゼントにカーネーションを贈るため、
友達のお花屋さんで、学校にも家族にも内緒でアルバイトをしていた。
無論中学校でのアルバイトは禁止されているし、
アルバイト自体わたしは始めてだったから、
お花屋さんのおばさんには、多大な迷惑をかけ続けの毎日だった。
それでもおばさんは嫌な顔をせずに喜んでくれた。
娘、つまり私の友達からわたしの家庭事情を聞いていたのだろう。
バイト中も繰り返し、お母さんとお父さんの仲が良くなるといいねぇ、
などと、世間話をしてくれた。
そう、我が家は今、家庭崩壊寸前だった。
寸前というかもう既に崩壊してしまって、後はバラバラになるのを待つだけ。
そういう状況だった。
お姉ちゃんの卒業式まで後一ヶ月となった2月。
わたしはお母さんになにか渡すものはないかと、それだけで頭が一杯だった。
あの優しかったお母さんに戻って欲しくて。
家族みんなで麻雀をしていた、あの楽しかった頃に戻りたくて。
お姉ちゃんと別れたくなくて。
最後の頼みを、母の日のプレゼントなどという、
そんな他愛の無いものにすがるしか無かった。
わたしはそんな自分の無力が悲しくて、悔しくて、苦しくて、
おばさんのそんな気遣いを聞くといつも泣きそうな顔をしてしまい、
かえっておばさんを心配させてしまっていた。
ダメだよね。泣いちゃ駄目だよね。
分かってはいるんだ。
でも、でも、あの幸せだった頃に帰りたいって、やっぱり思っちゃうんだ。
売り子が涙目じゃ売れるものも売れないよ、もうだめだよ。
おばさん、ごめんなさい。
こんなわたしを雇ってしまって、お店が回らなくなってしまって。
そんなおばさんに甘えて、毎日のようにお店に来ているわたしは、一体なんなのだろう。
おばさんに慰めてもらって、お金を貰っているようなものじゃないか。
やっぱり、今日でバイトを辞めよう。迷惑にしかならないよ、やっぱり。
そんな事を思いながら、図々しくも店前で売り子をしているわたしの視界に、
見慣れた、でも有り得ない人が引っかかった。
お姉ちゃん。宮永照、だ。
◇
咲は最近変だ。
目を合わせようとしないし、食事の時もめったに喋らなくなった。
もしかしたら、嫌われちゃったのかな。
やっぱり東京の学校になんて決めるんじゃなかった。
それが別居の決定打になってしまったのだから。
いつかは訪れるであろう破局を、確実に短くしたのは私自身にほかならない。
それを考えると、まだ小さくて可愛くてあったかい咲を、
この寒い長野で、お父さんと二人っきりで置いていくのは、
やはり私の心を傷つけるには十分すぎた。
早めの帰宅がてら、今日はちょっと遠回りして、隣町の商店街に行く。
早く帰ってもお父さんとお母さんのあの、いたたまれない空気の中に入るだけだから。
あと一ヶ月で解放されるとはいえ、私には崩壊の様子を間近で見続ける気にはなれなかった。
咲には見させている癖に。
本当にわたしは駄目な姉だ。
咲に嫌われてもしょうがないじゃないか。
せっかく今日は
と思考をくぐらせていると視界の端に、見慣れた姿が引っかかる。
いや、そんなはずはない。
だってこんな離れた街にいるはずがない。
だって泣き虫で、本が好きで、私に甘えることしか出来ない、
小さくて可愛くてあったかい、優しい子なんだから。
だから正面から顔を確認しても、まだ納得出来なかった。
ずっと立ちすくんでいた。
咲の顔を見つめながら。
◇
「おねえちゃん?!」
もはや居ても立ってもいられずに声をかける。
お姉ちゃんはこちらを睨んでいる。
そうだ。わたしはお姉ちゃんに黙ってバイトをしているんだ。
睨まれても、怒られてもしょうがない。
朝食を食べている時も、お姉ちゃんは私のことをじっと睨んでいた。
もしかしたら気がついていたのかも知れない。
だから、か。
今日は現場をつかむために、ここまで来たのだろう。
そろそろ潮時だと思っていたけど、まさか今日とは思っていなかった。
わたしは他の誰に対するのと同じように、いらっしゃいませ、と作り笑いをする。
傍から見たら、ひきつって情けないくらいの顔だろう。
あー、泣いてるかもなー
なんて思いながらお姉ちゃんを眺めていると、
お姉ちゃんは私なんか気にしてもいない様子で、アレとコレとと華を指定してくる。
随分買うんだなぁとか思いながら、いつしかわたしの腕の中は華で一杯になった。
◇
咲は呆気にとられているみたいで、すぐにはわたしと気がつかなかった様子だ。
もしかしたら全然気づいていないかも知れない。
そっか。お姉ちゃんのこと、忘れちゃったんだ。
食事の時も全然顔合わせてくれないし、滅多に目も合わせて無いから、当然か。
当然なのか。
ごめんね、咲。
お姉ちゃんのこと許して、なんてとてもじゃないけど言えないけど、
せめて私のことを思い出して。
だからいらっしゃいませ、だなんて他人行儀に言わないで。
頭なんて下げなくていいの、私はお前のお姉ちゃんなんだよ?
お願いだから気づいて。
私は咲との思い出の華を次々と選んでいく。
高地限界を遥かに超えた丘に咲く百合の花。
あの日、私と一緒に見に行ったよね?
でも咲は全く気づく様子も無く、次々と腕の中に積んで行く。
あぁ、そんなに積んじゃ、咲の小さい体が埋もれちゃうよ。
大丈夫かなぁ、あんなに積んで、ちゃんと花束に出来るんだろうか。
あぁ奥に居るおばさんまで呼んじゃって。
本当に咲は要領が悪いんだなぁ。
もう手伝ってあげたくて、微笑みたくて仕方が無い。
でもそんな事をしたら、せっかく一人でバイトをしている咲を馬鹿にしたことになる。
第一知らないお姉さんに手伝って貰ったところで、不審の目を向けられるだけじゃないのか。
忘れられるばかりか、不審者扱いされるのは嫌だ。
花屋のおばさんは非常に手際よく、咲がぼろぼろにしかけた華たちを綺麗に包んでくれた。
咲はその花束を受け取って、私に向かって差し出す。
お代を言わないと受け取れないよ、咲ぃ。
「1280円です」
そうだね、千、二百、八十円っと。
花束を受け取る。
我ながら雑多な印象しか受けない、ひどい選択だとおもう。
花屋のおばさんは、良くこれだけ纏めたものだ。
百合の花のむっと、むせ返るようないい匂いが鼻腔を支配する。
あぁそうだ。こんないい匂いは、私なんかにはもったいない。
こんな素晴らしいものは、やはり私なんかより、目の前の小さくて可愛い子に渡すべきだろう。
そうだ、なにか言い訳を考えなければ。
あぁそうだ。
「ハッピーバースディ、咲」
私は受け取った花束を、咲にそのままプレゼントした。
咲は可愛い顔をもっと可愛く紅潮させると、涙をポロポロと流す。
あ、あれ?泣かせちゃった?!
なんだろう、返品クレームとでも思ったのかな。
咲、そんなんじゃないから!これは心からのプレゼントだから!
私が咲からもらった華を、そんな無下にするハズないでしょ?
「ありがとう。おねえちゃん。うん、そうだね。今日、私の誕生日だったんだ」
そうだよ、咲。今日は咲の誕生日なんだ。
家に帰ったら、もっと素敵なプレゼントを用意しているから。
私が咲を抱きしめて頭を撫でていると、おばさんは今日はもうお帰りなさい、って言ってくれた。
泣きじゃくる咲を、私は手を引いて商店街の中を歩く。
こんな事いつかあったな。
そうだ。
泣き虫で小さくて可愛い咲が、もっとずっと小さい頃。
お母さんたちと私達二人がはぐれてしまって、泣きじゃくる咲を手を引きながら歩いたんだっけ。
私も泣きたかったけど、可愛くて小さい咲が脇で泣いているから。
泣かずに済んだ。
強くなれた。
お姉ちゃんでいられた。
ようやくお母さんたちと会えたとき、咲はお母さんに泣きついて行って、
私はお父さんに怒られたっけ。
あの頃はまだ、みんなが仲良くて。
お父さんも、私のことを本気で怒ってくれるほど、私を愛してくれていた。
「お姉ちゃん。わたしたち、いつまでも一緒だよね?」
そうだね、いつか、あの時みたいに家族みんなで、本気で愛しあおう。
まだまだ一ヶ月もある。
可愛い咲がこんなにも私を愛してくれるのだから、
きっとまだお父さんもお母さんも考え直してくれるはずだよ。
「そうだよ、咲ぃ。こんなに咲を好きなのに、離れるなんて出来るハズないでしょ?」
私は咲の可愛くて小さい頭を抱き寄せると、可愛いおでこに軽いキスをした。