【咲-Saki-】 竹井久×福路美穂子 【隔離スレ】
1 :
名無しさん@秘密の花園 :
2009/08/24(月) 23:43:27 ID:em2KarEa このカプの話題はこのスレだけでお願いします。
2 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/08/24(月) 23:43:53 ID:em2KarEa
アニメだとなんであんなに強調されてるんだろうね。
なにここアンチスレ?
4 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/08/24(月) 23:52:24 ID:em2KarEa
専用スレですよ 思いっきりここだけで語ってください
アンチの人が立てたスレだってー てかここだけで礼賛しろって言ってる割に2にアンチ書くとか頭沸いてるとしか思えんなー
6 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/08/24(月) 23:59:03 ID:em2KarEa
隔離スレなんで以降部キャプの話題は本スレには書き込んではダメです。
>>2 スタッフが好きだから。それ以上でもそれ以下でもない
ここは部キャプスレではなく、部キャプアンチのスレだろ アンチって書いておいた方がよかったんじゃない?
9 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/08/25(火) 00:03:45 ID:rN3iDdkh
中学時代のエピソードが少し弱いんだよなあ。 もう少し劇的なエピソードがあれば説得力が増すんだが。
俺がアンテナはってるから かもしれないが 結構百合サイトの管理人は 部キャプ好きが多い気がする ある程度の百合妄想力がないと 萌えにくいのかもな
専用スレが立ったらいいのになー、と思っていたところだったから丁度良い
>>1 を除いてここは全員部キャプ好きってことでおk?
おkです
ここは百合スレで散々暴れてた馬鹿が 勝手に立てたスレだから廃棄だな
>>11 大好きだ!
だからこそ最初からケチついたみたいでやだな。
部長×キャプテンが好きな人がたててくれたスレなら、もっと素直に楽しめるのに。
そうでなくても、嫌味なこと書かずに普通に部長×キャプテンスレとしてたてるのならまだいい。
そこらへん他の人はどう思うよ?
このスレ活用するの?
アンチがうはwwwww俺大勝利wwwwwwって調子に乗りそうだけど
本スレへの影響考えると活用するしかなさそうかな?
とりあえず
>>300 辺りまで試験的にやってみて、もう一回考え直すのが一番じゃね
削除依頼出そうと思ったらすでに出されてるじゃん
まさにアンチ大勝利って感じ。他カプ好きだけど同情するわ
個人的に戻って来いよーと思うけど、とりあえず
>>16 の結果を待って
>>15 でやれば?
>>14 アンチが立てたのはしょうがないんじゃない?
一応宣言もしてたし、誰も反対しなかったしね
愚痴を書くより妄想やSSを書いた方が良い、どうせ向こうに書いたら荒れるし
>>15 に賛成かな
いっそ1000まで綺麗に埋めて、次スレ立てたほうがいいと思う
個人的には
>>5 に同意。ID:em2KarEaの暴走っぷりがとても不愉快。
仮に個別スレにするとしても、これは消して立て直すべきかと。
>>18 IDNGにしてたら何時の間にか立ってたし
誰も反対しなかったって無視してただけだろありゃ 荒らしの立てたスレを使ったらますます荒らしが調子にのるだけ 百合スレで言われてたが隔離スレを立ててもまた他のカプに難癖つけて荒らすだけだから CP批判してる馬鹿はすべてスルーってのが唯一の対処方法だよ
そりゃ本気でやる気ならまだしもスレ立てた本人が
部キャプはアニメ改悪、百合の敵と言ってるのにここでSS書きたいなんて人が出るのかと。
そもそも
>>1 が暴れてなければ隔離する必要も無い。
向こうを荒らしてる本人が立てたスレを使おうとかアンチ大勝利させたいの?
こいつは部長アンチどころか咲の百合スレ過疎化進ませたい咲アンチなだけだよ。
原作尊重したいならそもそも百合スレにくるわけ無いだろ。
俺も個別スレでやるにしてもここは落して別の立てた方がいいと思う
>>20 その『不愉快な書き込みがあるから立て直す』って考えだと
本スレも不愉快な書き込みがある度に一旦消して立て直すことになる
もう立てちゃったんだし落ちるまで有効に使った方が良い
これで本スレの粘着も消えるんなら問題ないだろ
ID:5gQz8zq6 もアンチだから注意
始まりはどうあれ、結局は楽しんだものが勝者だろう 残り少ない放送話数で、最後の山場がこれからというとき、かえって邪魔の入らない環境の方がいいかも (調子にのったアンチが沸いてくるだろうけどね…) 建て直しの件は、皆で盛り上がってさっさと次スレに移るという展開をひそかに希望
>>27 アンチか?
俺はアンチに過剰反応している潔癖な奴らよりまともなことを言ってると思うが
文句より妄想で埋めてさっさと次スレ行こうぜ
30 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/08/25(火) 00:49:35 ID:O9JW1QMx
スレを過疎らせる為の荒らしの分断工作だろ ストパン、舞HiME、どれも工作にあって今の惨状 アンチ百合の常套手段である
阿呆が暴れてる状況では一時的に避難所として使ったらいいかも アニメが終わると落ち着いてくると思うし
>>23 言いたいのはアニメCPを批判しまくって原作以外ありえないって人は
なんでも百合CP化する百合スレにはそもそも向いてないと言いたかった。
確かに書き方がわるかった。
あと粘着はこのスレ立てても消えないでしょ?
本百合スレで部キャプ書けばこっちに書けと叩く。
でこの隔離スレと書かれたところに投下する人がいる人もいない。
結局部キャプ自体廃れるだけだしアンチもそれが目的。
一番進んでる百合スレでもCPごとに分けるようなことはしない。
部キャプがアニメ後に沸き始めたみたいな言い方からしても最近出た荒らしでしょ。
アニメが始まる前の初代咲-saki-百合スレでも部キャプはすでにあった。
このスレをまず埋めればいいと言うけどそれなら百合本スレを使えばいい。
同じ作品で本スレがあるのにCP隔離して立ててそれを進める理由なんて無いよ
>>16 の結果出るまで妄想してていいのか?
俺、最新話の「また会えるじゃない」って台詞でまさかのナンパフラグかと思った
今回で部長→キャプも確立したしもうルームシェアまで秒読みですね
「部屋は別々だけど、寝室は一緒が良かったかしら?」ってからかわれる
キャプテンが見られるのは何話ですか
あの削除依頼だと削除されないと思う……
>.25 単に不愉快な書き込みがあるのと悪意を持って立てられたスレじゃまったく違うだろ 百合スレで大暴れした馬鹿が勝手に立てたスレに部キャプファンが来るわけないだろう 大体こんなことを認めたらまた他カプに難癖つけて煽って隔離スレを立てられてくだけだぞ とにかくCP攻撃はすべて無視するしか対処方法はないんだよ 大抵百合スレで勢いのある所は荒らしが粘着してるし
既に本スレが風越以外の話を出し難い雰囲気w なんとかしてけれ
皆の前では、コーチから池田をかばうなど凛々しいキャプテンが 他校生なのに、つい部長の前では涙を見せて甘えてしまうというキャプテンは来週ですか?
まぁ折角立ててくれたんだし削除されるまでこっち使ってみよか まず部長と一緒がいいから部長勝たせたいとか思ってる時点でやベーくらいにやつくってもんだ さらに部長も思い出してくれたしさ、何で忘れてたんだろう…とかやべーって。白亜紀に戻るくらいやべーって。
>>36 荒らしのスレ立てより『ここに書き込む人なんて来るはずがない』
と言う発言の方が書き手を遠ざけることに気付けよ
自分らで空気濁らせてたら誰も来ないよ、どっちが荒らしだか解らん
このままじゃ共倒れだから上手く住み分けて活用した方が良い
本スレのありえない煽り耐性の低さを見ると、隔離スレでやっても別にいいかなとも思う ただその場合は削除して作り直そうよちゃんと
アンチ以外の書き込みがあればスレが機能していると判断されて削除はされないぞ
>>41 そんな事認めたらまた他CPで荒らして隔離スレを立てられてスレが過疎化するだけ
いい加減他カプに対する攻撃は一切スルーしろよ
どの百合スレも荒らしに対するスルースキルがあまりにも低すぎ
クレイモアスレとかも他カプに対する攻撃ばっかで過疎ったし
ただの荒らしを本物の部キャプアンチだと勘違いしてるヤツ何なの?
アホなんだろ
>>44 本スレを荒れた儘にしても過疎る
頼むからこのスレを荒らすな
誰が立てようとお前みたいなのが居なけりゃスレは機能するんだよ
(荒らし本人が)部キャプとかありえね、アニメ改悪原作無視 ↓ よし、荒れてきたしここじゃ書けないだろうから隔離スレ立てるわ ↓ 荒らしほら、立てたから本スレじゃなくてこっちで書けよ 全部同一人物とかね 893かと
>>29 とりあえず、単独カプスレが1000まで行くには早くても数か月かかると思う
お前の「さっさと埋める」の基準が分からないが俺にとって数か月はそんな短い時間じゃないし、
そんな長い間荒らしが立てた悪意まんまんのスレタイのスレにいるのは本スレで荒らしをスルーすることよりよっぽど苦痛
よってさっさとこのスレは落とすべき
個別スレ立てたければ立てれば良いとは思うけどね
ちゃんとしたスレタイにしてくれればここまで文句も出ないだろうさ
>>49 じゃあもう一つスレ立てて重複スレとしてこっちを削除するよう依頼すればいいんだ
スレ立てを面倒くさがるから荒らしが先に立てたんだろ
ここで愚痴るより先ず適切な対処をとれば良かったんだよ
そもそもスレを立てる必要自体ないんだが 荒らしが暴れてるから隔離スレを立てるって方がありえない 荒らしはスルーするのが当たり前だろ お前はまさか荒らしが暴れるたびに隔離スレを立てろとでも言うつもりなのか?
>>51 スレを立てたのは問題がある
だがそれとこのスレを荒らすのは別だ
立てられた以上落ちるまで活用しないとどちらも荒れるだけ
この議論自体、他の書き込みの邪魔なんだよ
アンチが立てたがここは部キャプスレだ。アンチ叩きは要らない
>>50 じゃあって…俺は別に荒らしはNGに突っ込んで、部キャプ話も本スレでやれば良いと思ってるんだけど
あと愚痴るというか、貴方様の仰るような適切な対処法を提案しているだけなのですが
>>51 の言うように、いちいち個別スレなんて立ててられないよ。
どうせまた違うカプが貶められるに決まってる
アニキャラ個別に立てるべき あっちは過疎った場合はすぐに落ちるし 百合スレにいちいちCP個別スレなんてありません。 ある場合は百合本スレが無い場合くらい
>>52 アンチが立てたスレなんて削除依頼を出して放置すればいいだけだろ
無理に使わないといけない理由がどこにあるんだ?
荒らしてる奴が立てた隔離スレを使用しろとか問題外だ
荒らしのやることに付き合ってたら荒れるだけなんだからスルーし続けるのが適切な対処だ
>アンチが立てたがここは部キャプスレだ。 いや、この立て方で個別CPスレとして認められるわけないでしょw 百合スレをなんだと思ってるんだ? 消化も下手したら一年以上かかるんだぞ
やっぱりもうちょっと中三時代のエピソードが欲しいよねえ。
アニメ化前から部キャプで同人誌出してるサークルの 個人サイトにまで行って文句言ってるあたり本物の池沼だな
┏━━━━━┓┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃福路美穂子┃┃竹井 池田 分堂 京太郎 ┃ ┃ ┃┠──────────────────┨ ┗━━━━━┛┃ H 650 H 325 H 144 H 0 ┃ ┃ M 450 M 280 M 100 M 0 ┃ ┃ Lv:70 Lv:40 Lv:20 Lv:しに ┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ / .′′ ! i i ! | ! | ! i i||! | i ′ ,′i |i |i ! | | l ! | i | ! | ! | li | | | i i | || !| _,|_jl | |! |f|丁lT¬ー-| i| | | | | | | lj.イ「{|l ト、 { li、 l|リハノ}从 ,}| | || | | | | ヘハ八从| ヽリ ヽ|、{,.ィテ示云ミ、| | |.! . 、l |\| ト、,ィf云示ヽ うハ::::ri:} | | i l ! . ヽ{ヽ{ヽハ {{ ゙ぅi.,_ハ ヾ=‐' ! | | |.| |i ∧ ヽ-‐' l ! || | l | || j ∧ 、 | ! !| | | | || |′ ', | | l l | | | || | 人 ` ̄ / || ! ! ! ! | || | / !>: ...__ _.. イ ! | ! | ! || || l / |.: : : : : :丁:T ´ || ! | ! || ┏━━━━━━━━━━━━┓┏━━━━━━━━━━━━┓ ┃ 竹井 久 ┃┃ 福路美穂子 1匹 ┃ ┠────────────┨┃ ┃ ┃ ⇒あなたの右目綺麗ね ┃┗━━━━━━━━━━━━┛ ┃ けっこん ┃ ┃ 空中ツモ ┃ ┃ 3年前の大会で・・・ ┃ ┗━━━━━━━━━━━━┛
アニキャラに部キャプスレ建てたやつ誰だよ?
こっちの
>>1 と同一人物か?
いや、多分立てたのはこっちの
>>1 ではない
立ったならこっち落としてアニキャラに移動し方がいいと思う
なんで最初の対戦でキャプテンは部長に惹かれたんだろう?
「唯一私を苦しめた相手」というほどの初めて会った強い相手で しかも自分のコンプレックスをさも褒めるかのような言葉を掛けられれば 惹かれるんじゃないの?
キャプテンも影薄いけどチートキャラだから 実力で自分と競り合える部長が新鮮すぎたんだろ しかも打ちスジが悪待ちだのなんだのとアウトローっぽい これは惚れるね 池田ァ!がザマァ!で飯がうまい
だからキャプテンは魔物じゃないと(ry
悪待ちで上がりまくるとかカッコイイもんな でも他カプ、他キャラを貶めるのは関心しない これだけ荒らされてるんだからそろそろ自重しよう
いや、適当に思いつき書いただけなんだが・・・そもそも咲の百合スレなんて今日が初めて開いたし 普段はフレプリスレしか見に来ない
>>67 向こうがコピペかな
あっちではとにかくスルーするしかないからこっちで失礼
後々無自覚で同じ事する人が出ないとも限らないから一応書いておこうかと
以降スルーするよ、ありがとう
あら、なんか変な話題振ってしまったみたいですまぬ。 他家を貶すのはちょっとね。 代わりに男前な部長に惚れたのなら部キャプ夫妻に娘池田の家族もいいじゃないという電波を受信しておきます。
つか誰が好きとかに関わらず他を叩く奴は論外だし そういうやつがいたからといってそのグループを全部叩くのも論外だろう フリをして暴れてるやつもいるかもしれんしな
スレタイからしてどんなのが立てたかわかるだろ
マターリ使っていけばいいと思うよ。うん。
早いトコ削除依頼出してね。 共倒れはゴメンだ。
とっくにでてるんじゃなかったろーか んでも嵐がそれなりにいないせいで落ちないとか何とか…
んー、このスレ自体は特に削除要件は満たしてないから削除は難しいと思うけど。 普通に使っていけば良いんじゃないですかね。
だからぁ! 荒らしの立てたとこを使いたくないの!
別に強制をしてるわけではないので、使いたい人が使えば良いだけの話ですよ。
使いたい人が使うのはいいけど百合本スレとは関係ないスレとしてやっていってね。
81 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/08/25(火) 20:05:10 ID:rCI/xrwc
部長×キャプテンは夫婦という言葉が似合うと思うのですよ。
OL部長&エプロンキャプテンが同棲してる妄想。
むしろ部キャプ若夫婦に子供がタコ池くらいまで余裕ですよ。
いっそのことここまで妄想。 部長:夫 キャプテン:妻 池田:長女 みはるん:長女の夫 深堀さん:長女の息子 たこす:長男 咲:次女 カツ丼:隣に住んでいる作家 京の字:三河屋
長女から下がおかしくなっていってる
県大会個人戦を勝ち抜くのが、咲、和、キャプテンの3人なら 同県人のよしみで東京にも清澄の面々と一緒に行くんだろうか? キャプテン一人で東京にいくのは寂しすぎる w
咲は個人戦は勝ち抜かないような気がする。
>>87 キャプテンは清澄と一緒に行ってくれればいいのにねw
タコスとかめちゃくちゃなつきそうだし咲・和・まこもそれなりになつきそう
京太郎なんかは「美人がまた一人増えたー」ってな感じでウハウハ状態だしw
そして部長とはキャッキャウフフ状態になry
俺もキャプテンは行くとしても和と咲どっちか通らない気がするんだよな
>>89 それで、ホテルはツインの2人部屋で、当然部長とキャプテンが同室と…
3年生で、部長同士ということで無理のない部屋割りですよね w
個人的には個人戦全国行きはキャプテン、オリキャラorかじゅ、和になりそうな予感。 23話の部キャプ成就話(仮)が楽しみwwあくまで(仮)ですが。
>>72 >フリをして暴れてるやつもいるかもしれんしな
いや、だから何回言えば分かるんだ
そもそも特定カプのアンチなんて存在しないっつーの
全部池キャプ好きでも部キャプ嫌いでもなんでもないただの荒らしの自演だって
それを見抜けずにまともに相手してるアホが多すぎる罠
>>93 俺もそう思っていたが
VWrUDU8Sを現本スレと前スレで見てくると良い
笑えて来るぞw
スルーは賛成
新しくたったほうのスレはひどいことになってたけどこっちは静かだね。 誰かSSか絵投下してくんないかな。 部長×キャプテン萌え。
>>94 なんか怖いわそいつ…
ああも悪意振り撒いておいて平然と雑談できるんだもん
この流れを断ち切る部キャプssまってるわ でないと22話まで耐えられんww
髪留めした部長と最初っから目を開いたキャプテンの対戦があると思いたいが
書きたいネタがあって、全体の流れもそれなりに決まっていて、 でも肝心のクライマックスの部分だけが孤立していてたどり着けない……。 どうしても自分の中の部長って、自分の感情に疎いイメージがあるんだよなぁ。 かっこよすぎてデレるイメージがないせいか……?
>>99 なかなか自分の底を見せないトリックスターだから。
「また会えるじゃない」の後でアドレス交換する話を書いていたが キャプテンは家電以上携帯未満だと言う重大な事実を見落としていた 携帯持ってないなら家電にかけるしかないのか・・・・・・
文通してはどうか
たどたどしく頑張って使ってても別に問題ないとは思うけどねw 某同人とかそんな感じだったし
連絡先聞いておけばよかったとかキャプテンが後悔 ↓ 校内放送で職員室呼び出し ↓ 教師「清澄高校の竹井さんという方からお電話が……」 聞くの忘れてたわとか言って部長ならこれぐらいやってくれる
そこは大好きなキャプテンのために池田ァ!が涙を呑んで、部長の電話番号とメルアドをゲットしてくる展開だろ 「ありがとう・・・華菜!」と涙ぐんでお礼を言うキャプテンに背を向けて、レイプ目をした池田ァ!は去っていく 「さよなら・・・キャプテン。キャプテンと一緒になろうなんて・・・私、三流に相応しいおめでたい脳みそだったんですね」
物思いにふけるキャプテンを見かねて、何故か仲良くなっていた優希に相談を持ち掛ける池田 「お弁当のお礼だじぇ」 と連絡先ゲット ……ないっぽいな
>>105 池田は恋人枠とは別枠で絆ゲットしてるから大丈夫だよ
家族的な枠で
なんていうかペット感覚
ペットって恋人とうまくいかない時に「私にはあなただけだよ〜」と抱きつかれる役回りだよな
結局よりを戻されてほったらかしにされる役回りでもある
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! おれは 咲-Saki-の原作を買いに行ったと 思ったら いつのまにか部キャプ本を買っていた な… 何を言っているのか わからねーと思うが おれも 何をされたのか わからなかった… 頭がどうにかなりそうだった… 咲和だとかかじゅももだとか そんな王道じゃあ 断じてねえ もっと萌えの片鱗を 味わったぜ…
部キャプ本俺も欲しいんだが出してるサークルを知らない
通販で買えるおすすめを教えてくれ 教えて下さい
涼☆彩☆マテリ☆アルさんとか ダラ☆リジ☆ェッ☆トシ☆ティさんとか
VISTAのと涼彩マテリアルの
涼マテは9月末のオンリーに出るのかね ぜひとも出ていただきたいのだが あれはもっと売れるべき
>>118 後者は部キャプだが前者はかじゅももだったような・・・・・・
>>120 あ、ごめんなさい、いくつもスレ開いてていろいろ勘違いした
部キャプだとサークル名忘れたけど闘牌本があったなぁ
自分がこれまでに認識している部キャプ同人誌は、 薄荷屋の2008冬コミだか2009comic1の既刊と夏の新刊 ダラリジェットシティの7月咲オンリー新刊(表紙は池キャプ+裏表紙に部長) 涼彩マテリアルの夏新刊 Imcompleteの夏新刊(↑で言ってる闘牌本) の5冊かな。 ダラリは4Pほどの漫画が載ってるだけなんで部キャプ本とは言わんかもだけど。
薄荷屋の一冊目ってどんなの?
薄荷屋のはプラスマイナス総集編しか持ってないけどあれには収録されてないんだよな?
Imcompleteの夏新刊も持ってる人居たら 百合要素があるか教えていただけないでしょうか
>>125 部室で1人で寝てる部長→過去回想で三年前のVSキャプテン戦
→そして部長勝利→部長『貴方の右目──』、キャプテンドキッ
→その瞬間目が覚める→起きて部室から出て気合入れて終了
って感じだから実質百合はないかな
薄荷屋の1冊目発掘してきた。発行日は――ごめん、2008年8月だって。 タイトルは「恋をするひとされるひと」 アニメ前だし、書店委託することの少ないサークルだから常連以外は知らないかな。 プラマイ総集編は持ってないので収録されてるかどうかはわからない。 24Pがっつり部キャプだから収録されてればわかると思うけど。
≫24Pがっつり部キャプだから収録されてればわかると思うけど。 あー…じゃあ収録されてないな もう入手できないことがマジで悔やまれる…ちくしょう とりあえず詳細ありがと
129 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/09/07(月) 02:00:27 ID:SbdR8ewd
こんなとこまで荒らしイベントの宣伝にくるなよ 勘弁してくれ
こいつ部長とキャプテンのスレ全部に貼ってるな
スルーしる
向こうのスレでは全スルーされてて吹いた
>>127 気になってオクを見たらアホみたいな値で出してるのがいるんだよな
週末あちこち駆けずり回って探してみよう
良い勝負だった
しかし相当に薄かった 卓が多すぎてねぇ 部キャプ的には23話はなくてもよかったのではと思ってしまう
薄かったかなぁ… ふたりとも本当に楽しそうに勝負を楽しんでたようだし キャプテンは、コンプレックスを忘れ両目で部長をみつめたり、部長の九萬切りに未練を見せたり 部長は興味のなかった個人戦を福路さんのおかげで楽しかったと言ってたし 特に↑重要かと。まことでは団体戦にしか興味がわかなかったけど、キャプテンとでは個人戦が楽しかったと言い切った部長 中学から時間はかかったけど、相手を特別な人としての認識した出会いが今回で描かれたかと 来週からはラブコメパートがスタートか? w
138 :
137 :2009/09/15(火) 21:35:41 ID:Ij6/7pWh
:D ワハハ 九萬単騎待ちだ、まちがえた
完全にフラグ立ちました どうもありがとうございました
25話の予定で合同合宿って見た時はキャプテンがどう反応するかと思ったが まさか他校に一人で乗り込んでくるとは、この行動力は本気だッ…
141 :
誤爆してたw :2009/09/23(水) 10:50:54 ID:a89FThMe
とくに何もなく終わったなぁ
各自脳内補完&妄想でなんとかするしかないな。
いつのまに住み分けがされてたんだ さて帰りに部キャプ本を探すとするか…
部キャプのお初のエロが読みたい。 誰かウプしてくれ
部キャプのSS書いたんですが、投下先はこっちでいいんでしょうか。 アニメのこと全然わかんない漫画派な上に、漫画に出てない設定は完全に妄想に頼った アレなSSですが……。 かなり若干ですがエロ的な描写もあるので(1%くらい?)、どうにもこっちが正しそうだ とは思うのですが、どうでしょうか。 お願いします。
エロ描写が少しでもあればこっちじゃないとだめなんじゃなかったかな?線引きがいまいち分からないが… だがとにかく頼む!
こっちでいいと思う。 全力で待ってるぞ!
了解。こちらで行きます。 2ちゃんにSS投下することはあまりないので、改行とか諸々微妙になると思いますが、 よろしくお願いします。 しかし漫画だけ読んでたので、個人戦が存在することをそもそも知りませんでした……。 団体戦のみの設定で、団体戦終了後からのSSです。では、よろしく!!
あれは嵐のような数週間だった。そう、数週間。18年間生きていて、 もっとも密度の濃い時間であったはずなのに。それがわずか数週間の出来事だったとわかって、 私はあっけにとられたものだ。それほどに短い期間だったとは、まるで思わなかった。 確かに大部分は麻雀関連に追われていたが、それでも、私からすれば美穂子との愛は、 もっと時間をかけて育んだものだと思い込んでいたのだ。 そんな私を、美穂子は笑った。私は貴女みたいに、貴女を忘れたりしなかったわ。だから3年よ。 いつもの笑顔でそう言われると、私は何も言えなくなる。いくつか言葉の候補を考えて、結局苦笑いでごめんねと言った。 気にしてないわ。彼女は澄まして応える。今、その分愛してもらってる最中だから。まあ、ねえ。 私ははいはいと頷く。 結局のところ、私がいくら美穂子とのことを思い出そうとしても、一番最初に福路美穂子という 存在を知覚したのは、あの電話越しの声を聞いたときのことにしかならない。彼女と中学のときに、 つまりは三年前に勝負したということは、私の記憶のどのポケットを探っても出てきてはくれなかった。 その直後の身内間のごたごたやらで肉体的精神的に疲弊したせいで、その前後の記憶はある程度飛んでしまったのだろう。 それは私のせいじゃない。と思うが、思っても仕方ないし、美穂子だって納得はしないだろう。 ともかく、私が美穂子の声を最初に覚えたのは、あの電話のときなのである。 それは大会の余韻も覚めやらぬ、それでも気分は滅入る梅雨頃だった。生徒議会の仕事を片付け、 さあ練習、と部室へ向かう途中の私を、幽霊顧問を引き受けてもらってる先生が呼び止めたのは。 その時の先生の、戸惑い半分喜び半分という奇妙な瞳は、何かしらの予感を私に抱かせた。 風越学園麻雀部の部長からの電話。練習試合の申し込み。それらの内容を早口で喋り、 幽霊顧問はこれでうちにも予算が降りるだろう、と興奮気味に言った。このご時世で麻雀のことは何も知らないのに、 なぜか部の予算をいたく気にする教師だった。勿論、だからこそ顧問を引き受けてもらっている。 そういう人の方が、なにかと好都合だ。 とはいえ今回のことは、私を興奮させるのにも十分すぎるものだった。願ってもないチャンスというのだろうか。 麻雀部には未だ6人しかいない上に、部員間の実力差もかなりある。それこそ雀荘にでも出向かなければ、 個々の底上げは出来ないくらいだ。どうしたものかと頭を悩ませていたときに、このお誘いはまさに果報。 私も勢い込んで職員室に駆け込み、失礼にも数分間保留中だったその電話をとった。 「もしもし」 電話口の向こうから、柔らかいとしか形容の仕様のない声が、私の耳に入り込んでくる。 もしもし、と私も、誰が決めたのか知らない、つくづく間の抜けた挨拶を返す。すると電話口から、 相手がふわりと微笑む気配が聞こえた。 「……竹井さん?」 その声には柔らかさとともに、何やらこちらを気遣おうという微粒子が混じっていた。 竹井、のタを妙に言いよどむ感じで、声が伝わってきたのだ。はて、と首をひねる。 しかし首をひねって前に進む問題でもない。タイミングをはかり、そのような仕草をおくびにもださず、電話口に語りかける。 「ええ、清澄の竹井です。こんにちは」 「はい、こんにちは。風越学園麻雀部、部長の福路です。先日の大会ではお世話になりました」 「いやー貴女には派手にやられたねえ」 2、3軽口を叩いた後、ふと風越女子の現状が気になる。 「貴女って2年だっけ。引退はどうしたの?」 かすかな苦笑いが伝わる。初対面で失礼だったか、と後悔がちらりと走る。 「風越は8月いっぱいまでは現役よ。名門だった頃の伝統が、そのまま続いているの。試合の後の反省や、部員同志の引継ぎもあるし」 なるほどね。呟くように言った。ええ。彼女も呟くように応えた。あちらにはあちらのルールがあるようだ。 そのまま言葉を捜していると、「それよりも、お願いがあるのだけれど」と彼女は本題を切り出した。
「今度の土曜日にでも、清澄高校麻雀部と、風越の麻雀部で練習試合を組んでほしいのだけれど」 「顧問から聞いたわ。勿論、受けさせていただきます」 「そうですか。ありがとう」 「いえいえ、こちらからお願いしたいくらいよ。感謝します」 実に温かみを感じさせる声だった。はきはきとはしていないが、穏やかで、それでも芯が通っている感じがする。 良妻賢母タイプかな。それともただの猫っかぶり。ちらりちらりと頭の隅に、電話の主のイメージを描く。 福路美穂子。どのような女性なのだろうか。とりあえず、少なくとも優秀な女性ではあるらしい。 なにせ私がぼんやりとそんなことを考えている間に、ほとんど彼女が練習試合の段取りを 整えてしまっていたのだから。試合の場所。時間。人数。そしてその後の交流会などのことまで、 彼女は理路整然と話した。途中から私はほとんどはい、という単純な返事しかしなくなっていたほどだ。 そもそも私はそのような事務作業は苦手だったので、それは大変助かることだった。 議会でもそういうことは、書記やら副議会長やらに丸投げしてある。 予定が決まったあと、また数語程度の雑談を交わした。 「ありがとう、色々決めてくれて。じゃあ土曜日に清澄の校門で」 「ええ。色々と面倒でしょうけど、よろしくお願いします」 そして別れの挨拶を交わす。あとは受話器を置くタイミングを計るだけ、というところで、 電話口の声の調子が少し変わったように感じられた。 「竹井さん」 「ん、何?」 「私のこと。福路美穂子という名前のこと。竹井さん、何か、覚えてない?」 虚を疲れて、一瞬言葉を失った。その言葉の意図がつかめないほどに、彼女の印象は私の中では薄かったからだ。 たっぷり五秒ほど脳の皺を捲ったが、芳しい情報は出てこなかった。 「……大会で何かしたっけ、私」 その私の言葉は彼女を失望させるには十分すぎるものだったはずだが、驚いたことに彼女はため息も、 そのような態度すらも、電話には反映させなかった。ただくすくす、と密やかな笑声が、私の耳を擽った。 「いいえ、そうだと思ったわ」 「ごめんなさい。どうにも私、人の顔覚えるの苦手でねー」 「いえ。こちらこそごめんなさい。困らせてしまって」 「やーそんなそんな。悪いのはこっちだからさ。でもそうだね、それだったらお互い様ってことで気にしないでいようか」 そうしましょうか。忍び笑いのように彼女が言った。うん、と私も答えた。じゃあ、土曜日に。 ええ、お願いします。そしてその言葉で、私と彼女は受話器を置いた。 準備が必要なあれこれを考えながらも、私は今まで電話していた、福路美穂子という存在が気になっていた。 どんな人だろう。私の何を知っているのだろう。はてさて。とはいえ、考えるに足る情報は少なすぎる。 まあ、土曜日に会ったときに聞いてみようか。結局、彼女についての思考には数秒で決着をつけ、 顧問と校長に許可を取り付けるための活動をすることにした。そういうことを細かく考えることは苦手だったし、 意味があるとも思えなかった。
「部長の福路です」 こんにちは、と差し出された手を、私はぎゅっと握った。可愛らしい顔のつくりとは裏腹に、 その手は驚くほどに肉厚でがさがさとしていた。まるで母親だねえ。手を振りながらそんなことを思った。 「竹井です。よろしくね」 実際、きょろきょろと物珍しそうに周囲を眺めている猫のような奴や、何か気弱そうに俯いている 長身の細目ちゃんを見ると、彼女が母親役をするのも必然という気はした。いや逆か。 彼女がそうだから部員がそうなったのか。などと、つまらない思考を働かせる時間は私にはない。 早急に彼女らを部室に招きいれ、こちらの部員と引き合わせお互い挨拶をし、試合のルールや組み合わせを発表し、 美味しいお茶を淹れなくてはならない。なにしろ麻雀部として練習試合など初のことだ。無事にやり遂げなくてはならない。 と私は緊張していたが、特に問題もなくことは進んだ。もしかしたら京太郎の存在が、 女子高の女の子を大人しくさせる要因になったのかもしれない。ものの十分ほどの内に、 全員が用意した座席に座ることが出来た。それに風越の1軍の面々はこういう行事に慣れているのか、 こちらが目を見張るほどに手際が良かった。羨ましいものだ。 「悪いわね、手積み卓で」 何せ人数六人の部だ。自動卓はなんとかひとつ工面できたが、12人が打つには1つ卓が足りなかった。 ついでに言うなら部費もない。私たちは急ぎ机を並べ、京太郎の家からテーブルの頭だけを持って こさせて固定しただけの、即席雀卓を作り上げたのだ。和などは信じられない、という顔をして、 物珍しそうにその緑色の布を弄っていた。さすがは金持ちデジタル娘。 しかし福路美穂子は、貧しいとか古臭いとか思っていたとしてもそんなことはおくびにも出さず、 にこにこと微笑んでいた。 「私は手積みも好きよ。沢山牌に触れていられるじゃない」 華菜は初めてだったわね。隣の猫娘ににこりと笑いかける。こくりと彼女は頷く。私は自分の 見立てに訂正の必要性を認めた。あの子、見かけは猫だけど、中身は犬だな。ご主人様には甘えて、 それ以外にはぶっきらぼう。まさに忠犬だ。ひとりでこっそりと笑う。勿論、そんなことは誰にも言わない。 初めの卓には、私と彼女、犬猫娘と和が座った。部長同士と大将、副将との組み合わせだったせいか、 やけに白熱した半荘になった。序盤は猫娘が連続で和了り、リードを広げる。そして緊張が解けてきた 和の大物手が入り、中盤は二人の叩きあいに。最終的にオーラスで4人の差が数千点という状況になり、 最後は和が押し切った。デジタル速攻の面目躍如。最後に運悪く最下位に落ちた猫娘は瞼に涙をため、 同じく3着目の福路さんに頭を撫でられていた。 あまりに彼女がしょんぼりとしていたので、いたずら心がわいてきた。 「うちの和は強いでしょう」 にやりと笑い、犬猫娘にからかい混じりに言ってみる。途端にきっ、と犬猫娘が顔を上げた。 そして何か言おうと口を開きかけるが、間髪いれず、頬を上気させたままの和が割って入った。 「池田さんは強いですよ。牌の見切りがいいですね」 「そ、そうかな」 「ええ。最後まで思い通りにさせてくれませんでした」 「そりゃあ、これでも風越の大将なんだし!」 「でも宮永さんには及びませんよ」 あらあら。ちらりと福路さんを見る。彼女もくすくすと笑いながら、微笑ましそうに二人の応酬を眺めていた。 そして私の視線に気づくと、駄目よ、とたしなめるようにな笑顔を、ちらりと閃かせた。
十数回の半荘を繰り返し、夕焼け空が見えてきたところで、練習試合は交流会に移行することになった。 場所はまこの家。女子高生は常に金欠なので、ファミレスに行くお金も節約すべきなのだ。交流会に必要な物、 つまりお菓子やジュース類などは、事前にそろえてある。すべてを有能な風越の部長に任せるわけにもいかない。 皆をまこに先に案内させることにして、私と福路さんは部室に残った。 「悪いわね。片付け手伝わせちゃって」 「悪くなんかないわ。本当なら私たちがやるべきなんだけど……」 「そんなことないない。明日にでも片付ければいいんだけどね」 手積み卓の机を明日の生徒会活動で使用するから、というのは真っ赤ではないが、私の嘘だったりする。 使うことは使うのだ。それは嘘ではないが、それならば私と彼女が残る必要はない。 部長同士が残ったのは、ただの建前だ。実際のところ、私が彼女と二人きりで話してみたかったのだ。 だから不自然な用事を作って、不自然に彼女に残ってもらった。そんな風に策を弄するのは、 私も初めてのことだった。 なぜだろうと思っても、答えは出てくれない。そもそも細かく考えるのは苦手だ。だから自分の気持ちに任せることにする。 「ねえ」 真剣な顔で牌をしまう彼女に、私は声をかけた。まだ高くにある、赤になりたての太陽が、窓からのそりと見えていた。 よ、っといつもの自動卓の上に座る。そして無作法に足を組んだ。 「私の昔のこと知ってたりするの?」 振り返った彼女は目を細めた。 「それを知りたい?」 「うん」 「なら」 彼女はたしなめるような微笑を作った。今日だけで幾度も見た微笑だった。 「ちゃんと座りなさい。卓が泣いてるわ」 それはふわりとした優しげな言葉で、別に無視してもかまわなさそうだったのだが、 彼女を前にしてそれを行うにはかなりの精神力が必要のようだった。目じりに涙も浮かんでいる。んー、 としばらく考えるふりをしようとしたが、涙が零れ落ちてしまっては私の良心がもたない。 結局叱られた小僧のような素直さで、私は椅子を引っ張り出し、しかしせめてもの反抗として、 それに逆向きに座り込んだ。 彼女はおかしそうに笑った。 「ひねくれ屋さんなのね」 「これはこれは。お許しを」 「上埜さん」 すっかり錆付いた脳の回路が、急に呼び覚まされた。驚いて彼女の目に向き直る。彼女は一転寂しそうに、 また目じりに涙をためて、私をじっと見つめていた。そして今度は私を安心させようとしたのか、無理に笑顔を作った。 「一度だけ対戦したことがあるのよ。3年前の中学3年生のとき。貴女に負けたの、私」 「……ごめん」 「覚えてない、でしょ?」 うふふと彼女は笑った。私は気まずく目を逸らす。本当に何も覚えていない。これほど特徴的な人なら、 覚えていてもいいはずなのに。 「……本当に、ごめん」 あまりに沈んだ声だったのか、彼女はあわてて首を振った。そしてぱたぱたと私に近寄ると、右手で軽く肩に触れる。 「ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったの。ただ、確かめたくて」 「私を?」 「そう。だって、あんなに強い人が2人もいるなんて、信じたくないわ」 おどけるのは下手なんだなと感じたが、それよりもなによりも、夕日の赤に照らされて、彼女の瞳が黒く 輝いていたのに目を惹かれた。僅かな涙に濡れて艶がかるそれを、私は黒曜石のようだと思った。 これで射すくめられたらさぞかし痛いだろうと思った。犬猫娘が懐く理由を理解できた気がした。 「……もう忘れないよ」 「え?」 「それ」 腕を伸ばして、肩に乗った手を握った。そしてその黒曜石を見つめる。 「綺麗な目。忘れない」 また彼女の目じりに涙が滲んだ。頬が赤く染まり、まるで鼻血を出す寸前のような顔になった。 それは夕日のせいだけじゃないだろう。 「……なんかカッコつけすぎかな」 「ちょっとくすぐったかった、かも」 そして私もそうなっているだろうことを、妙に間抜けに思った。数秒ほどまじまじと目を合わせて、 タイミングを計ったようにくすくすと私たちは笑った。
「男の子も部員なのね」 「まあね」 片づけが終わる頃には、夕日もかなり沈んでいた。がちゃりと部室に鍵をかけると、 その音が大きく響いた。 「今頃質問攻めにあってるんじゃないかしら。うちは女子高だから」 「女の園、か」 空には薄暗さが侵食している。先ほどまでは目立たなかった月が、急に存在感を増していた。 いくつか星も出始めている。 「うちは男って言っても、あれだよ。あんまり男扱いされてないよ。和なんて、咲の方がよっぽど気になるみたいだしね」 「そうね、あの子は特別ね」 ちらりと彼女を盗み見ると、やはり妙に表情のない顔をしている。それは当然の顔だ。本気の宮永咲の麻雀を見ると、 何か自分が信じていたものが、足元から崩れてしまいそうな感覚に陥る。天江衣との決勝戦は、未だに私の頭にも 焼き付いていた。あの闘牌。まるで麻雀を司る何かにでもなったかのような目つき。幾千幾万の牌譜を見ても、 類似点すら見つからない。部長の私でも、時々薄ら寒い気分になるくらいだ。咲に対して、優希は特に変わらないが、 和などはたまに熱いものにでも触れたときのような、妙な表情をすることがある。 首を振って、私はわざと明るめに言った。 「今は咲が強くても、宮永照の妹だからってことになるでしょう。でも半年後には、さすが宮永咲の姉だけあって宮永照は強い、 なんて言われてるかもしれないわよ」 私の強気の言葉に、彼女はゆたりと微笑む。 「全国でも屈指のダークホースになれそうね」 「ふふ。だといいんだけど」 ふたり並んで歩き始める。道は広く、彼女は細い。周囲も静かだ。生暖かい空気がぬらりと周囲を漂い、 そのせいで心なしか制服が重く感じる。 「でも、今日はいい練習になったと思う。同じ歳で、力もある人と沢山打てるのは、本当にいい勉強になるからね」 ありがとう。私はにこりと笑った。まだ相手の顔が見えなくなる頃合ではない。彼女も微笑み、こちらこそ、とふわりと言った。 「お礼を言いたいのはこっちよ。うちは人数は多くても、絶対的なエースがいないの。 だから宮永さんや原村さんのような人と打つことで、何かを見つけて欲しいわ」 「ほほう。後進の育成のため、か」 「そうね。でも竹井さん、貴女と打つのも、大事なポイントだったのよ」 いたずらっ子のような瞳で、彼女はこちらを見つめた。僅かに頬を膨らませて、たしなめるような声を出す。 「この前の試合で貴女に負けた子が、なんだかとても落ち込んじゃっててね。それに私も忘れられていたし。 だから仕返しをしようと思っていたのに」 思わず立ち止まる。どうも知らないところで恨みを買っていたようだ。一歩進んで、福路さんも止まった。 まるで抗議をするような口調で、彼女は言った。 「付け入る隙がなさすぎて、まるで心を見透かされてるような気分になったわ」 「そんなことないよ。実際今日だって、だいたい順位も同じくらいだったじゃない」 「それでも、きっと貴女が強いわ。時々思うもの。貴女が本当に勝ちたいときには、宮永さんにも勝っちゃいそうだって」 真面目な顔で彼女は言った。彼女の真面目な顔を見るのは初めてかもしれないな、とぼんやりと思った。 きらりと輝く瞳はもう見えない。微笑んでばかりの人だから、まるで別人のように見える。薄闇でその福路美 穂子と見合うということが、とても不思議な感じがした。 真面目な顔で、多分責められているはずなのに、居心地は悪くなかった。彼女の言葉には嫌味というものが全くない。 きっとだからだろう。彼女の言葉は、スポンジにしみる水のように、私の体内に自然に入っていく。 少し目線を外して、私は言った。 「咲に勝てる人がいるとすれば、私は貴女だと思うけれど」 実際、彼女の強さは、あの名門である風越の中でも際立っている。きっと相手3人全員がツモ切りか否か、 そして手出しならどこから切っているか、またツモや思考時間のクセなどを、かなり高い確率で見切っているのだろう。 シャンテン数の読みや手の高低などの把握率は、牌が透けて見えるのかと思うほどに正確だ。 大会でも、3人の手の遅いときにするりと大物手を上がっていたし、今日もそれで部員のサポートに徹し、 自信をつけさせていたようだ。自分のイメージを増大させて相手を「降ろす」麻雀の私とは、タイプが正反対だ。 それでのあの強さは、正直に凄いと思う。一度対戦していて忘れたというのが信じられない。
いくら咲でも、その麻雀で3人囲まれればどうか分からない。私だってそう簡単に負ける気はないが、 それでも彼女の方がやはり可能性はあると思う。 それでも。まさか、と彼女は笑って首を振った。そしてまた私に水を向ける。 「地獄待ちにしろフリテンリーチにしろ、タイミングが本当に凄いわね。みんなを貴女のペースに巻き込 んでたわ」 「詐欺師に向いてるって言われるよ」 「まあ」 にやりと笑って見せると、彼女はおかしそうに声を出した。右手を口元に持っていき、実に上品にくす くすと声を出す。くくく、と私も笑った。 いい雰囲気だと思った。自然に自分を出せている。会長という身分だからか、それとも私の自尊心か らか、他の人間の前でこれほどリラックスしているのははじめてだった。彼女以上に包容力のある人物 は清澄にはいない。だから清澄が嫌というわけではない。のらりくらりと喋り、他人を引き立てるのも嫌い ではないし向いてると思う。それでも、疲れないわけではない。自分が甘えたくならないわけではない。 だから、目の前の同い年の少女の、この母親のような、いや母親以上の包容力には、飛び込んでしま いたくなる何かがあった。 ああ、だから彼女といたかったのか。不意にすとんと気持ちが落ちた。 彼女はそんな私に気付いているのかいないのか、また少し意地悪な笑みを浮かべた。 「何を考えているのか教えて欲しいわ。あんな妙な待ちにしたら、負ける確率の方が高くなるに決まって いるのに。それでも貴女は楽しそうに、当然のように打ってる。何故かしら?」 「別に楽しいことはないよ」 誰にも言ったことのない気持ちが、胸の奥から素直に出てくる。黒い視線が、薄闇の中でも、温かみ を皮膚に送ってくれる。 「でも、そうだね。覚悟するかな。これで負けならいい、って覚悟する」 彼女は真面目な顔に戻る。私は少し視線を外して、彼女の右肩あたりに光る、黒い画用紙に針で穴 を開けたような星を見つめた。 「自分を信じるのと、負けを覚悟するのは同じだと思うんだ。これで勝てる、って勝負するときは、これ で負けるかもしれない、って時なんだよ。だから、覚悟する。これで負けても笑っててやる。次を信じて やる。そうだね、そんな気持ちで打ってるかな」 なんか恥ずかしいねえ。私は照れ笑いで頭をかいた。彼女はしかし真面目な顔で、私を見ている。 全然恥ずかしくないわ、と呟くように言った。そして一歩、私に近づいた。 「やっぱり、貴女は強いわ」 「だから、そんなことないって」 「覚悟しても、普通はぶれてしまうもの。そんなに強い覚悟なんてできない。負けてもいいなんて思え ない。でも、それでも、貴女は」 彼女は俯いた。まるで自分に言い聞かせるような響きだった。薄暗さが増し、彼女の表情の細かい 部分までは、今では良く見えなくなっていた。 もう二歩、彼女が近づいてきた。正面とは少しずれている。左手と左手が触れそうになる。彼女の顔が、 近い。ごくり、と音が聞こえてから、自分がつばを飲み込んだことを理解した。心臓の鼓動が跳ね上がった。 彼女は両目を開いていた。色の違いが、しかし薄闇では分からない。それでも近づいたおかげで、 その瞳がしっとりと濡れているのはわかった。月明かりを浴びて溶けそうになっている夜のようだった。 彼女はふわりと笑った。人を惑わす魔女のようにも、自信なさげな迷子のようにも、善悪を知らない 童女のようにも見えた。そして、す、と私の領域に近づいた。 「そんな覚悟、私もほしいわ」 囁くように言った。 同時に私の頬が、何か生暖かいものを感じた。唇だった。頬に、彼女の唇が当たっていた。ぞくりと背 筋が泡立つ。妙な声の成分が胃からせり上がってくる。右手が握り締められる。その、全身がびくりと 反応した瞬間。それこそ狙ったようなタイミングで、その唇が今度は耳に触れた。 「貴女が好きなの」 呪文か呪いのような言葉が、動揺する私の身体に滑り込んできた。ぶわっと汗が、全身の毛穴から 溢れた。なぜか、じくりと胃が痛んだ。
今回は以上で。多分同じ長さのをあと5回くらい投下すると思います。 アニメだけの方には特に色々とアレだと思いますけども……。 それでも、部キャプが大好きだ!!
GJ!! アニメしか見てないけどよかったよ。 続きも楽しみにしてる。
力作わろた ちょっち改行と行間が気になるけど面白い 続き楽しみだべさ荒しが立てたスレも捨てたもんじゃないな
むう…これは続きを楽しみにせざるを得ない 待ってるよー
GJ!続き待ってるヨー
アニメとはまた違った雰囲気があっていいね 続き待ってます
誰にもぼんやりしていると言われないのは、一応の女である私にとっては、少々寂しいことだった。 確かに勉強や仕事を滞らせはしなかったし、部活の成績も極端に下がることはなかったが、 それでもぼんやりしてるね、とか恋わずらいかしら、とかそのようなことは言って欲しかったと思う。 ただ、言われたら言われたで不機嫌になりそうな自分も自覚している。 練習試合から数日経っても、私の耳から彼女の言葉は消えてくれなかった。好きです。愛してます。 付き合ってください。言われたことは何度もある。受け入れたことも、断ったこともある。しかしここまで 耳に残るのは、頭から離れないのは、私としては初めてのことだった。 そもそも、私は恋愛というものが好きではない。私の両親は、私の与り知らぬところで好き 勝手に恋愛をし、好き勝手に別れて行き、好き勝手に私の人生を捻じ曲げた。進学先も変わった。 新一年生が入るまで、麻雀すらも奪われていたようなものだ。そのように人に迷惑をかけることなら、 すべきでないはずだ。そう私は思う。 とはいえ、自分に好意を持つ人間とデートめいたことは幾度もした。若いうちから凝り固まるのはよくはない。 手をつないだし、キスまでならした。それでも、何かしら覚めていた。気分が乗らなかった。たいていの場合で、 はやく牌を触りたいと思っていた。せめて麻雀よりも好きにならなければ、付き合ってみても意味がない。 そう考えていたが、なかなかそんな人は現れなかった。 それが、現れた。同性でしかも母親のような手の少女が、恋愛対象として、まるで流星のように現れた。 呆然と立ちすくむ私に、彼女は薄闇の中で困ったような笑顔を向けた。口を開きかけて、また閉じる。 同時に彼女は片目も閉じた。そして息をひとつつくと、はやく行きましょうか、と言った。私はバネ仕掛 けの人形のように頷いた。うん、と彼女は笑った。いつもの優しげな笑顔だった。 会場であるまこの家に着くと、既に壁が割れそうなほどの大騒ぎになっていた。犬猫娘と優希が顔 を真っ赤にして、何か日本語のような気もする言葉で、噛み合っているのかすらわからないことを言 い合っていた。長身の細目ちゃんが机にすがっておいおいと泣いていて、それを咲が背中を撫でな がら宥めている。少しぽっちゃりな娘はマイペースになんとかチップスを延々と口に運んでいるし、 眼鏡ちゃんは気持ち悪そうに倒れそうになりながら、呪いの言葉を吐いて和の胸を揉みしだいている。 さらにまこが悪乗りして覆いかぶさり、和はなにやら恍惚とした顔で二人を受け入れ、それを京太郎が ちらりちらりと見ている。そしてなにより、とにかくお酒臭かった。中央あたりに一升瓶が2,3本転がって いる。まこが秘蔵のなんたらを出したのだろう。 やれやれ。などと思いながら私はため息混じりにのんびりと輪に入ろうとしたが、福路さんは私より も数段法律やら常識やらそのようなものが頭と心に入っており、またそれを守るべきと考えている人 らしかった。彼女は部屋の惨状を見た途端にさああ、と顔を青くして、何をしてるの、と呟きながら床に 崩れ落ちた。それをちらりと視線に収めたらしい犬猫娘の動きが、油の切れたブリキ人形さながらに 急停止する。犬猫娘は辛うじて長身娘をはたき、それで長身娘も部長の状態に気づく。わずか1分ほどで、 先ほどまでの騒々しさから一転、会場は「しまった」の無言の呟きに支配された。 涙を目に溜めたまま決然と立ち上がった風越の部長は、その勢いで部員全員に、まこが逆に謝り 出すまで頭を下げさせた。さらに床に部員を正座させて、ゆっくりとしかし怒っているのがよくわかる 調子で、目尻の涙をそのままに、こんこんとお説教をした。清澄の部員まで神妙に、情けない顔で 聞いていたので、私は福路さんの隣で笑いをこらえるのに苦労した。うっかりと笑ってしまえば、矛 先がこちらに向きそうだったのだ。笑いをこらえる作業というものは、思っていたよりも重労働だった。
お酒は駄目よ。とりあえず私が場をおさめて、皆で掃除をした後。別れ際に、なによりもこれ を言いたい、という表情で、彼女は搾り出すように言った。お酒は駄目。いいわね。こっそり生 徒会の教師と飲むこともある私は、あははと乾いた苦笑いしか出来なかった。「昔に何かあっ たの」、と軽口を叩くこともできなかった。私は最後まで、きっと引きつった顔のままで、さような ら、また今度、みたいなことを言っていた。なにせ怖かった。おとなしい人ほど、怒ると怖い。 またこの人は自分も泣きそうになりながら言うから、というか涙をためて言うから、尚更始末に 置けない。計算ずくでないのが恐ろしいところだ。ともかく、私たちはかるい頭痛を感じながら、 月明かりの下で手を振って別れたのだった。 ただ、少しの安心があったことは良く覚えている。返事というか、彼女の私への想いに対して、 すぐに結論を出さなくてもいいんだな、ということは、とにかく私をほっとさせたのだ。恋に悩む のは中学生の時以来で、なにやら込み入りそうだった。そういうのは苦手だ。女性同士というの はあまり気にならないが、それでも福路さんはなにやら繊細そうでもある。大会で注目度が増 したのだろう、またいくつかの練習試合の申し込みもあり、しばらくはそっちに没頭しようと思った。 なにせ全国だ。対策もしたいし、相手の情報もほしい。私自身も強くなりたい。恋愛は後回しだ。 福路美穂子との接点の少なさから、私はそれができると信じていた。もしかしたらその思考こそが、 私の心に芽生えていた、彼女への気持ちの表れだったのかもしれない。不自然に彼女のこと を考えないようにする、私自身の防衛本能のような。だとすれば、深く考えるべきでないというこ とが、その時既に私にはわかっていたのだろう。突然投げ込まれた種であっても、土壌があれば 花が開くものである。 とはいえ、その花が開くのは意外に早かったのだ。 「ようこそ、風越へ」 福路さんがにこやかに差し出す手を、私も笑って握り返した。彼女はその笑顔のままで、 私の後ろの5人にも手を伸ばす。緊張気味の咲や和も、おずおずとその握手に応えた。 一度練習試合をしたことが弾みになった。結局のところ、麻雀に強くなるには、何度も何度 も強い人と打ち、学ぶことが一番なのである。1度の真剣勝負は100の練習に勝る、とは誰 の言葉だったのだろうか。ともかく、全国の前に経験をつむ、という名目で、清澄は様々な強 豪校と練習試合をしに行っているのである。 部員6名であのボロ部室では、さすがに、特に強豪校を呼ぶわけにはいかない。それが前回 の一番大きな反省点だ。 数十人の部員に迎えられ、はじめはいささか緊張気味だった部員も、卓に座ればきりりと引 き締まった顔になる。それも練習試合の成果かもしれない。私自身も卓に座り、咲や優希、 和の成長具合をちらりちらりと眺める。実戦経験の少ない彼女らには、この道場破りのような 練習が一番効果的なはずだ。少なくとも、一番伸びしろがあるのはその部分だろう。ならばそ れを強化する。単純な話だった。何せ、私たちは勝たなければならない。それも全国で。だか らこそ、そのためにできることはすべてやっておきたいものだ。
幾半荘かを消化して、私は部室から出た。廊下をふらりと歩く。何人かの女生徒が、脇をきゃっきゃと 笑いながら通り過ぎていく。他校の制服など珍しくもないといった感じだ。 私はある種不思議な気持ちで、廊下を歩いていた。もしも。と頭の隅が鳴る。もしも私の両親が 離婚せず、私がこの学園に通うことになっていたなら、いったい私はどうなっていただろうと。 清澄はまこが率いていたのだろうか。そもそも麻雀部が今もあっただろうか。咲はあの化物じみ た強さを発揮しないまま、いまでも図書室で本を読んでいたのだろうか。それは寂しいな。ちらり と苦笑う。風が頬を揺する。私もこの制服を着ていない。あの制服で、あのメンバーの中に入り、 そして。そして、あの笑顔の似合う、母親のような手をした彼女と、にこにこと微笑み合っていた のだろうか。私が彼女の補佐をしていたのだろうか。そして彼女や犬猫娘たちと、全国を目指し ていたのだろうか。 「竹井さん」 その本人に呼ばれて、私の心臓は30センチほど跳ね上がった。慌てて振り向くと、両手に スーパーの袋を持った福路さんが、想像の通りににこにこと微笑みながら歩いていた。 「休憩?」 「ええ。貴女は?」 「買出し。飲み物が切れてしまって」 私は呆れてため息をついた。 「そんなの1年の誰かに行かせればいいじゃない」 「あら。駄目よ」 強引に袋のひとつをもぎ取る。中には午後のなんたらやソウケンなんとかといったペットボトルが、 いくつか並んでいた。ありがとう、と笑いながら、彼女は説明し慣れた口調で言った。 「だって、宮永さんや原村さん、それに貴女のような強い人と打てる機会なんて、そうそうないわ。だから、できるだけみんなに打ってほしいし、できるだけ麻雀の楽しさや難しさを分かってもらいたいと思って」 「……いい心がけだね」 俯いたままで、私は早足になった。 そういうことを真顔で言う人を私は知らなかったし、そうなりたいともそんな人に会ってみたいと も思ったことはなかった。それなのに実際、彼女の言葉を聞いて、私の心は爆ぜた。というより、 何か火がついた。今までもやもやしていた部分が、なにか急速に収斂していくような感覚だった。 そんな感覚は初めてだった。そんな気持ちは今までなかった。慣れ親しんだ私の心は、既に どこかへ行ってしまったようだった。ただ、何かが激しく、酸素と反応する水素のように、ばちんと 心のどこかが入れ替わった。 「ねえ」 「ん?」 「今日はじゃあ、もう打たないの?」 彼女の半歩前で声をかける。少し戸惑ったような気配のあと、思案する気配が5秒ほど続く。 「どうしようかしら。そうね、京太郎君とは、少し打ってみたいかしら?」 「私と打とうよ」 「え?」 相変わらず下手な冗談だ。私は切り口上でそれをいなす。 「私と打とう」 「竹井さん?」 「久でいいよ。私も美穂子って呼ぶから」 そこで、振り向く。数分前の私が、今の私を見て驚いてているのがわかる。構うものか。 そんなものは知るものか。私は睨みつけるように、美穂子の目に焦点を絞った。今は砂漠の オアシスのように、透明にきらきらと光っている。今、決まった。決めた。後悔しないと、決めた。 「美穂子。貴女が勝ったら、私は貴女のものになってもいいわ」 そのオアシスが、激しく見開かれた。
東1局の配牌で胸が高鳴るのは、あのときの決勝卓以来だった。手の汗が押さえられず、 ひっそりとスカートで拭いていたことを思い出す。今も手に汗が出る。決勝卓とは違い、いく 分かの動揺も混じっているのだろう。自分を賭けた麻雀なんてはじめてだ。 美穂子は何も尋ねなかった。ふたりとも無言のままで部室に戻り、ちょうど開いていた卓に、 また無言のままで滑り込んだ。あの太めの娘とまこが、なにやら雑談していたが、無言のま まで洗牌ボタンを押した私たちを不審な目で見て、それから私たちに倣った。何かを察した のだろう。少なくともまこは、マイペースに見えて様々に気のつく人間だ。 目を伏せて、美穂子は淡々と牌を取る。何を考えているのかは読めない。自分が負けたと きのことを、美穂子は何も聞かなかった。私も考えていなかった。ただ、思った。そこまで人 のことを考えているこの人が、それを捨てて、いや捨てなくても一時忘れて私を求めてくれる のならば、私は応えてもいいと。それだけの価値があるはずだと。だから、そうする。身体で もなんでもあげようと決めた。 そして私は、県代表の部長だ。ここで一度は勝った校の部長に、負けるわけにはいかない。 またそれ以前に、麻雀で負けるのは嫌いだ。私が欲しいのなら、私に勝ってみせろ。そのとき の私は、そのような好戦的な気分になっていた。
勝負は、静かに進んだ。私以外の3人が、守勢に回ったからだ。私はツモがそれほど強く はない。必然、相手の振り込み待ちになる。守勢に回った相手を狙い打てれば良かったのに、 美穂子がそれを妨げた。鳴きタンやら役牌のみの手を鳴かせ、上がらせる手順は見事という 他はない。両目を伏せ気味にして、表情の変化もなく、彼女は淡々とそれを遂行した。小場の 流れは最終局まで続いた。まこの三千点ほどのリードを、3人で追いかける。私は必死だった。 美穂子と付き合うのが嫌なのではない。ただ、負けたくなかった。目の前の、おそらくは面倒見 と人が良すぎるゆえに孤独を背負っている同い年の女の子に、なにか一撃を加えたかった。 涙のような丸い何かが、私の心に存在した。彼女は静かだった。静かに、いや静か過ぎるから こそいつもとは違うであろう闘牌を、淡々と続けていた。 オーラスでようやくいい配牌が来た。タンヤオの軽い手で、ドラも2枚入っている。美穂子の 表情は変わらない。太めの娘も同じだ。まこはひゅーっと口笛を吹いた。彼女も早いのだろう。 スピード勝負は望むところだ。ガードも緩くなる。鳴くのはあまり得意ではないが、それでも早 く逃げるのには得策だ。好調を自覚し、また手に汗が出た。私は静かにスカートでそれを拭った。 喉が、少し痛い。よほど緊張しているのだろう、胃がきりきりと痛む。たん、たんと打つ音が耳に響く。 4順目。美穂子が絶好の牌を切った。ポン。声が少し揺れている。構わず牌を晒し、捨てる。 ポン。のんびりと美穂子が発音する。伏せがちだった目を、ちらりと上げる。それは不思議な 色がした。催眠術にでも使えそうな瞳だった。その目の脇を指が通り、牌を握り、捨てる。また 絶好牌。ポン。牌を倒す。まるで美穂子と私の二人だけしかいないような錯覚に捕われる。それ は卓にだけでなく、この地球上に、二人だけになったような気分だった。これでテンパイ。待ちは 恐らくまこの不要牌。掴めば出るはずだ。何かにせきたてられるように、私は端の牌を握り、河に捨てた。 ロン。先ほどのポンと同じ声だった。瞳はあの不思議な色だ。たん、と音が出て、その7つの牌が倒れる。 タンヤオ、三色、ドラ1。3900点。ありゃーまくられたかー。まこの声が、いやに遠くからしている。 手からは汗が引いている。 覚悟したか。私の頭から、私の声が聞こえてくる。した。私は答える。それで、目の霧が晴れた。 「美穂子」 もしかしたら、と私は不意に思った。もしかしたらこういう冷静で静かな状態が、彼女が怯えると いうことなのかもしれない。その想像に私はおかしくなり、声をかけたのに私はくすくすと笑ってし まった。静かな瞳のままで、彼女は不安気に私を覗き込んだ。 「……竹井さん?」 「だから、久でいいって」 はははは。声が止まらない。まこがやけに不審そうに私を見ている。太目の娘が我関せずと、 ごくごくとお茶を飲んでいる。私は卓に突っ伏すように、けたけたと笑い続けた。まだ胃が痛み続 けていたが、そんなことは関係ない。 「私の負けー」 本当に突っ伏すときっと怒られると思って、私は平泳ぎのようなポーズで笑っていた。美穂子 は嬉しいような、怒ったような、戸惑ったような顔をしていたが、結局何も言わず、キャプテン、 という声に名残惜しそうにその身を翻らせた。
少し短い感じですが、今回は以上です。 皆さんの感想が嬉しいですが、「この先の展開で失望されたらどうしよう」と戦々恐々な気分でもあり、 なかなかに落ち着かないものだなあと思います。 アニメでは部長VSキャプテンもあったということで、気になります。純粋にガチバトルが似合いそうですし。 それでは、部キャプに愛を込めて。
続きキター! どんな展開でも失望なんかしないよ。 残りもwktkしてるぜ!
続きが気になるよ。 書きたい話を書けばいいさ。
己の信じた道を突き進むんだ 俺も己の心のままにGJと言うだけさ 部キャプに乾杯
SS投下しまーす 多少キャラ崩壊注意してください。 宮永さんは私の×× 「あはは、そうなんだ〜」 「ええ、そしたら優希が・・・」 (ああ〜宮永さん可愛い過ぎです。) 「おーい、咲ーっちょっといいかー」 (宮永さんを呼び捨てで・・・何様ですか?) 「どうしたの京ちゃん?」 「ちょっと見てもらいたい牌譜があるんだが」 「うん、わかった。ごめんね原村さんちょっと行ってくるね」ガタッ 「ええ、お気になさらず。私もちょっとトイレに行ってきますね」 ドゴッ ドゴッ ドゴッ ブチッ 「宮永さんは・・・私の・・・嫁です・・・誰にも渡しませんよ」 「お帰りー遅かったねー」 「ええ、少しお腹の調子が優れなくて」 「あれ、エトペンそれどうしたの?」 「ちょっと、落としてしまいまして」ニコッ 「ふ〜ん」 (落としただけで腕?げるかな?)
スイマセン、スレ間違えました スレ汚しすいません
デート当日の朝というものは独特だと思う。妙に舞い上がっていたり、またなにか変なことをした らどうしよう、と落ち込んでみたり。時間が差し迫ってくれば、化粧やら衣装やらを選択することに なるのでそのような気持ちも消えてしまうが、あの感情の上がり下がりは慣れるものでもない。 勿論それは不快なものではなく、むしろそれもデートの一部とも言える心地よさがある。 以前にこんな気持ちになったのは丁度3年前くらいだ。奇しくも私が覚えていない、美穂子と出 会ったという時期。そのときの私には好きな男の子がいて、部活が休みの日にはよく出かけたり、 お互いの家に行ったりしていたものだ。初めて好きになった男の子だった。唇を吸い合ったのも、 裸で身体をくっつけたのも彼が初めてだった。男の子の身体は、華奢な方だったはずなのにひど くがっしりとしていて、なるほど男とはこういうものかと思ったものだ。行為の最中にはそれどころ ではなかったけれど。 美穂子はどんな感触がするのかな。なんとなく思う。後輩の女の子に告白されて、キスまでは したことがあるが、あれは特に男でも女でも変わらないものだった。セックスはどうなのかな。 とそこまで考えて、自分の先走りに真っ赤になった。今日は初めて二人きりで雀荘に行く。 それ以上でも以下でもなく、さらに言えば付き合うことになったのは数日前。そもそも付き合うと 確約したわけでもない。やれやれ。私は首を振って、衣装棚と睨めっこする作業に戻ることにした。 浮かれ気分にも困ったものだ。そういえば中学の頃は、今の倍くらい服を持っていたっけ。頭の隅 でそんなことを考えながら、私は二つほどのハンガーを引っこ抜いた。 どっか行こうか。練習試合が終わり、校門で別れの握手を交わした直後だった。他の部員を 先に行かせて、夕暮れでオレンジ色に輝く校舎に目を細めながら、私は彼女に囁いた。美穂子 はえ、と首を傾げたあと、床にジュースを零したときのような速度で、頬に血を上らせた。私は 笑って、もっと耳の近くで囁いた。二人でさ。美穂子はしっとりと濡れた瞳で、俯き加減に私を見た。 運動場からは運動部の甲高い掛け声が聞こえてきた。どこかでカラスも鳴いていた。 雀荘。消え入りそうな声だった。いかにも恥ずかしい、という風情で彼女は言った。実はまだ、 行ったことがないの。それで行きたかったのだけれど、竹井さんはどうかしら。風でも吹けば飛 んでいってしまいそうだった。しかしその言葉は私の望むところではなかったので、耳元の顔を 正面に移動させる。笑いをこらえながら、宣言する。駄目。え、とまた美穂子は、反射のように 呟いた。目尻に涙がたまらないように、私は急いで言った。久。ひさって呼んでって言ったじゃない。 にやりと笑って見せた。一瞬驚いた顔をした美穂子は、ついで安心したようにふわりと笑った。 ごめんなさい。そして数秒ほどの逡巡の後、彼女は私の耳元で囁くように、なにか小鳥同士の 内緒話のような趣で、ようやくそのひらがな二文字を口にしたのである。 「久」 すまなさそうに立ち上がる美穂子を見て、私は軽く肩を落とした。予想していなかった、 と言えば嘘になる。確かにあの犬猫娘がやりそうなことだ。じろりとこちらを睨みながら立ち上 がる少女を見て、まあ仕方ないかと切り替えることにした。 「ごめんなさい。華奈がどうしてもと言うので」 「だって私も行きたかったし」 「いいよ。3人で行こう。面子のこともあるしね」 私は笑った。美穂子はほっとしたように、安心したように微笑んだ。犬猫娘はぶすりと横を向いた。 デートに雀荘を指定する人はそれほど多くはない、というかこのご時世であってもいないだろう。 とはいえ私たちは麻雀部の、しかも強豪校の部長だ。そういうのもありだと思う。自分たちの麻雀 の好き具合に、呆れてしまう部分はあるにしても。それでも麻雀を通じて知り合った私たちが、麻 雀を通じて喋ったり笑ったりするのは、ある意味自然な気がする。 それにしても、と隣を歩く少女を、私はちらりと横目で見た。池田華菜、ねえ。3人の真ん中に 入り、まるで私に喋る暇を与えない、とばかりに美穂子とぺちゃくちゃと話している。よほど美穂 子を好きなのだろう。今日も、私と美穂子の逢瀬を、そうと気付かないまでも邪魔しに来たに違 いない。そう思うとため息が出た。仕方ない。美穂子の妹だと思おう。首を振って言い聞かせる。 そう思うと微妙に可愛く思えてくるから不思議だ。基本鬱陶しいけども。
まこの店にに案内すると、美穂子も池田猫もきょろきょろと見回していた。二人とも雀荘は初め のようだ。まこは上機嫌で、二人も新人さんてのは珍しいなあ、などとノリノリで説明をしていた。 とはいえ説明することなどコーヒーとカレーと出前の頼み方くらいなのだが。あとローカルルール。 それともメイド雀荘というものの存在だろうか。美穂子も池田猫も、興味深そうにその衣装を眺めて いた。お互いに着せあう想像でもしているのだろうか。そう考えると、少し胸のあたりがちりちりとした。 非番のまこと4人で座る。とたんに池田猫が、ぎらぎらと私に強い視線を向けてきた。ため息混じり に美穂子を見ると、それを窘めるような笑顔をしているものの、やはり彼女も気合が入った表情をして いる。今回は勝ちに来るらしい。思わず微笑みそうになりながら、きっと私も似たような表情なのだろう と感じる。やはり3年前とは違う。教科書通りの、可愛らしい付き合い方ではない。それがいいのか悪 いのかわからないけども。洗牌ボタンに指を伸ばすときに、私も自然に微笑が漏れた。そう、結局は 麻雀が好きなのだ。多分、お互いのことくらいには。 サイコロのボタンを押して、対面を見た。美穂子が真剣な顔でサイコロを見ている。私の視線 に気付き、ちらりと顔を上げる。そして、にこり、と表現するにはやや好戦的な笑顔を浮かべた。 手加減しないわ。そう言っているようにも見えた。かつん。サイコロの回転が止まり、2,3が出る。 いいよ。上等。心の中で宣言して、私は牌を4枚とった。できるだけ美穂子と指を触れ合わせない ようにしよう、などと考えながら。 6半荘を回して1位3回2位3回。美穂子も同じ順位だ。点数は私の方が10ポイントマイナス。 さすがに全力の美穂子は強い。勝ち方よりも負け方を理解しているから崩れにくいし、それでい て勝負どころにはきっちりと前に出る。運に頼らない打ち方はさすがだ。とはいえ今回は私も、 それなりに上手く戦えたと思う。結果、頭に血の上りやすい、打ち手が真っ直ぐすぎる池田猫が 割を食ってしまったようだ。私の当たり牌を実によく切り、3連続でラスを引いたあたりで、じくじく 涙目になってしまった。そしてその連敗が5を数えた今回、彼女は引きつった顔でトイレに駆け込 んだ。なんじゃーなどと呟きのようなため息を残し、5連続3着のまこも卓に突っ伏している。 「心配だね」 美穂子に声をかけると、文字通り迷子の子供を捜す母親のような顔で、ええと頷いた。 「それでも」 また目尻に涙をためながら、美穂子はトイレの扉を見やった。 「負けることでしか、負けることへの強さは得られないわ。だからこういうことも必要なのよ」 なぜかはじめてのおつかいを想像してしまい、私は笑いをこらえるのに苦労した。基本的に笑う ことに頓着しない私を、短期間で2度も制止したのは美穂子が初めてだ。あの涙目を想像すると、 どうしても行動が制限されてしまう。これが惚れた弱みというやつか。いや違ったっけ。言葉遊び で笑いの衝動を止めると、新たなたくらみがむくむくと姿を現してきた。 「何。美穂子。私をあの子の踏み台にしようとかしてるわけ」 機嫌悪そうに言ってみる。美穂子ははっとした顔で私を見た。みるみるうちに瞼に涙が溜まっていく。 「違うわ。竹井さん。そういうことじゃなくて」 「だから久だって」 ため息混じりに立ち上がる。美穂子の顔も見ない。そのまま、私はすたすたとカウンターの方に向かおうとした。 数歩くらいで、なんちゃって、と振り返るつもりだった。そうすれば今にも零れ落ちそうな美穂子 の涙と、泣き顔と、それが笑顔に変わる瞬間が見られると思っていた。何の気なしの、子供の思 い付きだった。だから。何も考えていなかったから、それに驚いた。 がたんと大きな音が響いた。それが耳に入り、私は反射的に振り向こうとする。そこに、白い何 かが飛び込んできた。あまりに勢いよくて、私は倒れるかと思った。その熱くて、白くて、涙交じり の福路美穂子は、壁に押し付けるように私の服をぎゅっと掴んだ。
「ごめんなさい……!!」 涙声の見本のような音が、私の鼓膜を激しく叩いた。まこが珍しくおろおろとしながら、場を収め ようとしている。そんなどうでもいい景色が、妙にクリアに目に入った。栗色の髪が、その左目 をくすぐる。ごめんなさい。2度目の涙声が耳に入る。その刺激が頭を叩いた。それで、変わる。 どくんと鼓動が響く。まこごめん。今度なんか奢るから。そのような雑音で支配されていた脳が、 一気に反転した。いつもの冷静で、人を良く見る自分は、あの美穂子の目に吸い込まれてしまった。 「……美穂子」 「ごめんなさい。久。私、貴女の気持ちも」 「違う美穂子。私が、美穂子の気持ち考えてなかったよ」 美穂子が顔を上げる。笑って見せようと思ったけど、正直自分がどのような表情をしているのか、 どんな顔を作れているのか、全くわからない。ただ胸が、心が痛い。酷い状態だった。咲が天江 衣に追い込まれていた時だって、雨に濡れた子犬のような咲を見ながらも、ここまで酷い状態に はなっていなかったと思う。傷つけてはいけない人を傷つけてしまった。ほかならぬ自分が。その 人が信頼してくれていた、自分が。それが、痛くて痛くてたまらない。何よりも心が、きりきりと痛む。 「久?」 色の違う両目が、同じように濡れている。目の奥から、涙の粒がぼろぼろと落ちている。わずか にきょとんとした顔を、僅かに斜めに傾けている。身体がくっついている場所が、右手首と胸と足 の付け根が、じりじりと焼けるように熱い。 何かが溢れてくるのがわかった。それは私の身体の中で、理性とか常識とかそのようなものに押 さえつけられて、じっと底にいたものだった。それが動揺する私の隙をついて、きりきりと痛む心の 傍から、ぬるりと身を翻した。そして私の口から、さも当然のように流れ出てきた。 「好きだよ、美穂子」 口にすると、一気にざわめきが遠のいた。自分の感覚器官すべてが、身体から十数センチの 距離の、白くて柔らかくて壊れやすい人間のことにしか反応しなくなった。がちゃりと何かが弾け飛んだ。 「少し苛めようと思ったんだ。でも、ううん、違うな。そう、あれだ。ごめん、美穂子。大好きだよ」 するりと美穂子の顔が近づいてくる。これ以上は開けないほど真ん丸な目が、どんどんぼや けていく。おかしいな。頭の隅が考える。でも身体がわかっている。心がわかっている。だからいい。 それに任せてしいまえばいい。何を言ってるんだろう私は。でも仕方がない。こんなときに言葉 が出ないのは、もう仕方がない。自分で顔を近づけたことさえ気付かないくらい今の自分は駄目 なのだ。だから、仕方ない。 後から思い返しても、自分は何をしているんだろうと思う。自分が18年間培ってきたものは、 常識とかそういうものは、このとき一体どこに飛んでいったのだろうと。なにせ自分から顔を近 づけていたことにさえ気づいていなかったのだから。それでも、それくらいには福路美穂子とい う人間の泣き顔は、周囲を動揺させるものなのだ。池田猫ならわかってくれるかもしれない。 別にわかってもらえなくてもいいけども。でもこのとき、自信たっぷりで面倒見のいい清澄の 竹井久はこの世のどこにもいなかった。緊張しやすくて気の弱い竹井久が、福路美穂子と向き 合っていた。 唇が熱かった。火傷するかもしれないと思った。少しくらい火傷した方がいいような気もした。 だから、ぐっと押し付けた。すると美穂子の顔が、そのままがくんと後ろに下がった。いけない、 頭を固定しないと。と腕を前に出そうとした動きで、上手に顔と顔が離れた。 数歩下がった美穂子が見える。涙は相変わらず溢れていて、そろそろ止めないと目が溶け てしいまいそうな気がした。反射的に手を伸ばす。びくり、と美穂子の肩が揺れる。それでも、 ぐっと唇を引き締めながらも、美穂子は今度は下がらなかった。私の指が、彼女の頬に触れる。 熱かった。やっぱり溶けそうだと思った。だから正しいことをしてると感じた。そのまま指を、 横に滑らせる。涙を指に纏わりつかせる。涙の筋を断ち切る。ぼんやりとした表情で、美穂子 がこちらを見ている。そして私はまた反射的に、その指を自分の唇につけた。単純にしょっぱ かった。なにか静謐な、静かな谷を走る小川の水のような味だと思っていたので、拍子抜けした。 「しょっぱいね」 これ以上開くことはないと思っていた美穂子の目は、その言葉でさらに広がってしまった。 しかしそれは一瞬で、すぐに元の大きさに戻る。まだ涙の残るその目は、1秒後にはふわりと したカーブを描いた。涙をぼろぼろ流しながらの、微笑だった。
「馬鹿ね」 ひょいっ、とまた美穂子の顔が近づいた。私は動けなかった。そのままの勢いで、しかし美 穂子の方は、完璧に動きを制御させていたらしい。特に衝撃を感じることもなく、また唇と唇が くっついた。1秒にも満たない間だったが、それは私の頭の隅に残っていた理性までも打ち砕 いた。なに。なんだっけ。どうするんだっけ。ふいに壁を背中に感じる。危ないな。立たないと。 ふらりと揺れた私の頭に、彼女の最後の一撃が届いた。 「当たり前じゃない」 笑いを湛えた美穂子の声が、耳の中でぐわんぐわんと反響した。それは蝸牛を揺らし鼓膜 を突きぬけ、小脳の辺りに突き刺さった。あー。何か口の中でもぞりと動いた気がした。実際 に発音していたら嫌だなと思った。 美穂子の目は、黒くきらきらと輝いていた。その印象だけが、私の中に残っていた。 奇跡的に皆がこちらを向いていなかったので、私が貧血で朦朧となって倒れた、ということで 場が収まってくれた。そもそも雀荘に来る人間など、自分たちの周囲しか興味ない場合が多い。 無茶するのお、とソファーでぐったりとなっている私に、まこがお絞りを額にかけてくれる。さんきゅ、 と呟く。今度本気で何か高いもの奢ろう、と決める。部活でも、会長職で忙しい私をフォローしてく れるのはまこだ。感謝してしすぎることはない。 美穂子と池田猫は他の客と麻雀を打っている。ちらりちらりと送られてくる美穂子の気遣わし げな視線と、心配だなあとそのまま寝てろを足して2で割ったような池田猫の目つきが、なぜか 心地いい。こういうときに、心配されていることを意識できるのは、正直ほっとするものだ。 私も女の子だったんだな、と思った。板張りの天井と、くるくると回る換気扇が見える。私の頭 も回っている気がする。機会があれば、自分も普通の女の子だと言っていたけども。誰も信じ てくれなかったし、最近では私自身も信じなかった。自分の中のそういう部分を、出来るだけ出 さないようにしていた。ロングスカートにストッキング、長袖のシャツで、少女を封じ込めていた。 理性とか、誰にでも愛想を振りまける能力とかを隠れ蓑にして。それが、美穂子の前だと崩れ ていく気がする。女を意識してしまう。胸の何かが溢れてしまう。いいのか悪いのか、するべき かしないべきかは、よくわからない。 そういえば、どうして女を隠すようになったんだっけ。ちらりと美穂子の方を見やると、ちょうど 池田猫が大物手を上がったところだった。それを本人の池田猫よりも、美穂子は嬉しそうに眺 めている。はあ。ため息が自然に漏れて、私は額のお絞りをとると、ぐいと瞼を拭った。
美穂子が池田猫を送ってから、私たちはまた再会することにした。待ち合わせ場所は、お互い の家のちょうど中間地点あたりにある公園だ。美穂子を待つ時間は十数分ほどだったが、買って おいた缶のアイスコーヒーはすっかりと温くなってしまっていた。 美穂子は私の姿を認めると、ぱたぱたと駆けてきた。息を切らしながら、ちょこんと私の正面に 立ち止まる。遅くなったわね。うん、いいよ。3人がけくらいのベンチで、場所には余裕があったが、 私はあえて少し場所を開けた。ありがとう。美穂子は微笑んだ。ベンチの真ん中あたりに、よいしょ と軽く呟き、少し私の方に身体を傾けながら、ゆっくりと美穂子は腰を下ろした。 「今日はごめんね、色々と」 私の言葉に、美穂子はとんでもない、というように大きく首を振った。 「久があやまることなんて、何もないわ。私こそごめんなさい。せっかくデートに誘って貰ったのに、 華菜を連れてきてしまって」 「それはいいよ。気かんぼうの妹みたいで、ちょっと可愛かったし」 本心だった。実際鬱陶しい部分はあったけれど、全体的にはどこか憎めない、可愛らしい子 だったと思う。打ち方も捻くれたところのない、真っ直ぐ過ぎるほどに真っ直ぐなものだ。ただ、 そう感じられるのも咲や和のおかげかもしれない。少なくとも彼女らならば、あの子に遅れをと ることはないだろう。その安心感がある。相手の学校に対する、無用な嫉妬心を抱かずにすむ。 でも、それでも過信はいけない。人間、伸びるときには伸びるものだ。次期部長候補のひとりら しいあの子が、責任感と観察眼を身につけたときに。一気に伸びるということは、十分にありえる ことだった。 美穂子は安心したように、そしてそれ以上に嬉しそうに、にこりと笑った。 「華菜は頑張り屋さんだけど、今の時期は色々と苦労も多いから。ごめんなさい。息抜きもして ほしくて、どうしても断りきれなかったの」 「いいよ。でも私相手だと、リラックスできてたかどうかわからないけど」 「そうねえ、久は強いから」 「美穂子だって手加減しなかったじゃない」 くすくすと笑い合う。お互い名前で呼び合うのも、板についてきた。池田猫には悪いが、言葉でど う言っていても、美穂子を全面的に彼女に譲ろうという気はない。 頭上には星が輝いていた。夏の夜は、広大だ。冬のような華麗さはないが、夏の星空には冬 にはない、確かにあそこから百数億光年が広がっているという確信めいたものがある。それは 自然と人の心をざわつかせるものだ。 「今日は星がよく見えるわね」 美穂子が呟いた。自分と同じことを考えている恋人が隣に座っている人間が、この星空の下 にどのくらいいるのだろう、と思った。 「月はもう沈んだのかな」 「そうかしらねえ」 自然と会話がなくなる。場を繋ぐ言葉の必要さも感じなかった。あの合宿を思い出す。咲や和、 優希に京太郎がわいわいと騒いでる隣で、独りで夜空を眺める時間が長かった。あれはあれで 楽しいものだったし、皆の成長は心が躍るものだったが、それでも。それでも、美穂子と二人で 眺める夜空は、また格別なものだった。私の心のすべてが、なみなみと温水で満たされたプー ルで、仰向けに横たわっているようだった。 隣の美穂子が、くすりと笑った。 「昔ね。ほんとに麻雀を始めたばかりの、子供の頃。私は負けてばかりで、あまり麻雀が好き じゃなかったわ」 風がなく、全身がじわりじわりと汗ばんでくる。美穂子はぽつりぽつり、と言葉を紡ぐ。 「だから、思ってたの。もし見たことのある配牌が来たら、いつか見た、全く同じ配牌が来たら、 もう麻雀なんてやめてやろうって」 笑わないでね。恥ずかしそうに美穂子は言った。私は頷こうとして、しかしくすりと笑ってしまった。 笑わないでって言ったじゃない。美穂子はほんのりと頬を赤くした。それでも、本気で恥ずかしがって いるようには見えなかった。 「来なかったんだ?」 「今でも来たことはないわ。天和は何度かしたし、地和や人和もたまにあった。でも、同じ配牌が来 たことは一度もなかった」 美穂子の前で私が曝け出されるように、美穂子も私の前では曝け出されているのかもしれない。 普段の姿が嘘というわけじゃない。皆を騙しているわけじゃない。それでも、きっと何かが違っている。 幸福な違和感がある。池田猫が見たら驚くかな。優越感まじりにちらりと思う。
わずかに、美穂子はため息をついた。 「子の配牌の数は、銀河の星の数と同じくらい。大体千億個。本当に星の数ほどの可能性なのよ。 来なくて当然だったわ」 「残念だった?」 「まさか。よかったに決まってるわ。だって」 数秒ほど、美穂子は遠い目をした。それからのことを思い出しているのかもしれない。それは 多分私と同じようなものだろう。いくつかの幸福な出会いと不幸な出会い。試練と練習と克服と、 敗北と勝利。偶然に小躍りすることと、必然に打ちのめされること。麻雀で本気で勝とうとすると、 それがずっとついて回る。 私も遠い目をしていたのだろう。美穂子が微笑んでこちらを見ていることに、1秒ほど気付け なかった。恥ずかしさと別の何かで、ばあっと頬に血が上っていくのがわかる。そんな私を眺め ながら、美穂子は首を傾けた。 「貴女に出会えた」 区切るように、一言告げる。そして美穂子は目を閉じた。 魔術のように、私は顔を近づけた。どこかで蝉が鳴いていた。もう夜で、星空が見えるのに。 美穂子の声が頭の中で反響している。汗で、下着が身体に張り付きそうになっている。鼻の幾 部分かの細胞が、美穂子の鼻息を捕らえた。そこで私の両手が、美穂子の両肩に触れた。 美穂子は一瞬びくりと震えたが、そのまま自然に力を抜いてくれた。だから私の震えも止まった。 胃の中までせりあがっていた何かは、引いてくれなかったけれど。 唇は、やはり柔らかかった。薬用リップのつんとした刺激が、わずかに鼻腔をくすぐった。唇が 合わさり、私も目を閉じた。星が見えなくなった。瞼に、美穂子の笑顔が写っていた。湿気が唇 に溢れる。一度数ミリだけ離し、またくっつける。美穂子は抗わない。雀荘でのものとは違う。 本物の口付けだった。軽い吐息が、互いから漏れた。2度、3度。4度、5度。短時間での口付けを、 連続して行う。蝉の声も聞こえない。汗の感触も消えた。唇のぬめりと、それに伴う幸福感だけを、 私は知覚していた。 数秒か、数分か、もしくは数時間たち、私は唇を離した。途端に蝉の声が戻ってくる。目を開く。 数センチだけ、涎の線が延びていた。目を閉じ、頬を赤くし、涎交じりの唇を突き出している美穂 子が、目の前にいた。それは普段の母親のような姿からは考えられない官能的な表情で、私は ここが夜で誰もいなくて良かった、と今更ながらに思った。 「綺麗。美穂子」 くすぐったそうに、美穂子は目を開いた。そして穏やかに微笑む。 「口はさっき濯いだけど。舌を入れられたらどうしようって、ずっと考えてたわ」 「そんなこと考えてる余裕なかったよ。すごくドキドキした」 軽く俯く。美穂子はくすくすと、笑みを声に変えた。きゅ、と両肩に、今度は美穂子の手が伸びる。 わずかに身を硬くしてから、私は美穂子の意図を理解した。 「えっち」 抗議の目で睨んでみても、美穂子の微笑みは変わらなかった。 「嫌かしら?」 「お願いします」 何はともあれ、ここで目を閉じられるのは幸せなことだと思った。近づく美穂子の顔をじっくりと 観察するのは、次の機会に回す。今は包まれていたい。じっと美穂子の腕にいたい。今度は私 の吐息が、美穂子にかかっているのだろうか。緊張する間もなく、美穂子の唇が私の唇に合わ さった。んん。息が漏れる。んふ。美穂子が笑う気配がする。ぎゅっ、と力強く、美穂子の唇が押 し付けられる。一度頭を引く。ふう。息を吸ってから、目を閉じたままで、私から唇を合わせた。 それはすぐに、待ち構えた美穂子に抱きとめられる。ん。また吐息が漏れる。
そしてちろりと、舌を唇に感じた。そこで、私の脳の線が切れた。愛しい人との本気のキスは、 3年以上前に経験済みだった。だから戸惑いなく先に行けた。僅かに口を開いて、その隙間か ら舌を出す。瞬間、驚いたように後ろにさがった美穂子の舌は、しかしすぐに戻ってきた。れろ りと、淫靡に、それでもそこに愛の存在を確信して、舌と舌を絡ませる。怯えはなかった。多分 美穂子も、以前にどこかで誰かと本気のキスをしていたのだろう。その確信が、私の鍵を外す。 たまらなくなって、私も身体を寄せた。肩ではなく腰に、腕を巻きつかせた。美穂子も肩の手を 解いた。口付け合ったまま、舌を絡ませあったまま、目を閉じたまま。何か本能的な意図に導 かれて、私と美穂子は身体も抱きしめあった。 「……ンぁ……」 「っ……」 互いの吐息が、互いを燃え上がらせる。それは一度火がつくと容易に消えない種類のものだ。 そうなると理性が消える。身体と身体が、求め合う。ここからは既に性行為の一種だ。がちゃりと 頭の中の扉が、大きく開いた感じがする。 女のそれも男のそれも違わなかった。ただ、愛しい人とそれ以外の人との差があるだけだった。 求め合うことは、奪い、奪われること。それでもいい、と思える人との口付けならば、それは心 地いい。たとえ同性であっても。私であっても。満天の星空の下であっても。 美穂子の舌は普段とは別人のような積極さで、私の咥内に入ってきた。しかし前歯の辺りで、 びくりとそれは止まってしまう。それを私は逃さない。ぎしりと舌を絡ませて、押し返すように自分 の口から出す。そのまま美穂子の咥内に押し込み、じゅるりと吸い込んだ。んむ、という美穂子 の苦しそうな声が、私の獣を興奮させる。そのまま吸い込み、歯の辺りをちろりと舐った。そして 美穂子の弱々しい反撃を、今度は受け入れる。私の咥内へ戻す。そこで、全方位から美穂子の 舌に愛撫を施す。歯と舌で激しく吸う。美穂子の舌が、官能にゆれる。 口の機能すべてを用いての口付けだった。数分間続く、それは紛れもなく性行為だった。 顎の疲れと、口元を滑る唾液の量に、私は口を離した。すぐに口を拭う。美穂子の唾液は もったいないが、あまりだらしない顔は見られたくない。ちらりと美穂子の様子を伺うと、しかし 美穂子は口元の涎を拭おうともせず、焦点の合わない瞳でぼんやりとこちらを見ていた。 そのあまりの淫靡さに、私は数秒、ぽかんとなった。しかし、まるで流れ星のような瞳が美穂子 の頬を流れていくことで、私は我に返った。するりするりと、それはあまりに自然に美穂子の顔を 濡らしていく。私はあたふたとしながら、ポケットの中のハンカチを探した。 「ご、ごめん。嫌だったかな、やっぱりこういうのは」 跳ね上がった心臓の音を聞きながら、ハンカチを取り出した。あやうく取り落としそうになる。 あたふたと慌てる私の手を、静かに美穂子の手が包んだ。 「ごめんなさい。違うの、久」 聴いたこともない静かな声だった。普段の穏やかな声とは違う、静かな、静かなだけの声だった。 そこには美穂子がいなかった。美穂子を構成する成分以外の、悲しみとか絶望とかそのようなも のがあった。自分の身体がびくりと震えたことを、私は遠くの世界の出来事のように感じた。さきほ どまでの胸の高鳴りと、興奮はどこにいったのだろう。美穂子は静かに、私を見ている。 美穂子は自嘲の笑みを浮かべた。美穂子にも自嘲という感情があるのだと私はぼんやりと思った。 「……美穂子」 「久。愛してる。だから、ごめんなさい」 本当に静かに美穂子は言うと、笑みの表情を作った。絶望交じりの美穂子の笑顔は、それでも やはり、私にとっては可愛らしく映った。
今日は以上で。これで半分くらいです。この辺からちょっと暗くなるかも。 あと池田ごめん。でも正直、部長とキャプテンが本気でバトってたらと想像したら、 池田が負ける姿しか浮かばなかったんだ……。 皆さん、GJの声ありがとうございます。とても嬉しいです。 そしてさらに、こんなに部キャプ好きがいることが嬉しい! 最高です!!
力作乙&続き楽しみに待ってます 部キャプはアニメで大プッシュされてたからアニメありきのしか見たことないから新鮮でいいですね
>>180 おおおおGJ!!!
描写が繊細で引き込まれてしまった。
wktkして待ってますノシ
こんなに心が揺さぶられて何度も読み返したくなるSSははじめてです・・・ 全力でGJ!!続きが本気で楽しみだ
なかなかに女の子らしい、それでいて機能的な部屋だった。少し私の想像とは外れていた。 和ほどとは思っていなかったが、やはりかわいらしい外見の持ち主は、それにふさわしい部屋 や内面を持っていると私は予想していたのだ。 数分間ほど涙を流した後、美穂子はごしごしと顔を拭った。私の手は空中で停止したまま だった。ごめんね、久。今度の微笑には感情が入っていたが、私は上手く答えられなかった。 どぎまぎとしている私を見て、美穂子はちらりと微苦笑をひらめかせると、僅かに顔を赤らめ て言った。私の部屋に行きましょうか。まるで見えない糸に引っ張られているかのように、私は ぶんぶんと頷いた。そのかなり大きな家の門をくぐり、2階の美穂子の家に入るまで、私の身 体には現実感はまったくなかった。 私は床に座りベットを背にし、興味津々で部屋を見渡した。ぬいぐるみがいくつか机の上に 飾ってあるが、和のようにふりふりとしたファンシーなものはない。きちんと整理された教科書、 参考書、文庫本、そして麻雀の本が、机や本棚に収まっている。テレビはないが、折りたたまれ た雀卓のそばには、旧式のラジオがおいてあった。それを聞いて勉強する様が自然に目に浮かぶ。 机には数枚の写真が飾ってある。部員と撮影したのだろう、あの細目ちゃんや池田猫も写ってあった。 そのうちの一枚には、先の大会での私が写っていた。いつの間に撮ったのだろうか。彼女はい つから、私のことを好きだったのだろうか。その想像が、血液とともに頭を駆け巡った。美穂子は 私の写真をどのような思いで眺めていたのだろう。私を見て、顔を赤らめてくれたりしていたんだ ろうか。そう考えると、逆に私の頭のほうにぶわっと血が巡った。その瞬間にきりりと胃が痛む。 どうにも緊張しているようだ。 軽く音を立てて、美穂子が部屋に入ってきた。手のお盆にはコップと小さなポット、2つほどの 小物、そして幾枚かのクッキーが載っている。私を視線に捉えると、美穂子はいつものふんわり とした微笑を見せた。 「ベットに腰掛けていればよかったのに。窮屈でしょう?」 私は目を伏せて首を振った。驚かれることが多いが、部屋の隅は嫌いではない。そう、と呟き、 美穂子はお盆を机に置いた。 「無作法だけど、床に置いていいかしら」 「いいよ。私なんかに気を使わなくても」 「久だから使いたいの」 綺麗に掃除されたフローリングだ。ここまで綺麗なら、多くの人間の机の上よりも美しい気がする。 それに私たちはまだ若い。そこまで無作法などということは気にならない。 コップを表に返すと、美穂子はポットから紅茶を注いだ。いい香りが心地よい。ぶうん、と少し だけ室外機の音が聞こえる。こぽこぽ。砂糖は、との問いに、反射的にいいよと応えた。意外 そうな顔のままで、美穂子がコップをすべらせる。ありがと。いいえ。そして美穂子は砂糖つぼ から2かけの砂糖を取り出し、さらに紅茶にミルクを注いだ。 笑いをこらえる私を見て、美穂子の顔が赤くなる。 「……おかしいかしら」 「いやおかしくない。おかしくないよ。おかしくなさすぎて……!!」 口の下半分を抑えながら笑う私を、まったくもう、とでもいいたげな、あのたしなめる微笑で美 穂子は眺める。そして綺麗に足を崩し、姿勢よくカップを持つと、一口咥内に含んだ。私も倣い、 口に含む。ストレートの紅茶には、苦味が幾分かあった。 白い壁に、絵皿が幾枚か飾ってあるのが見えた。どれも外国の風景のようだった。
「……写真、見た?」 目を伏せて、美穂子が言う。一瞬目を白黒させて、しかし容易に意図を察した。あの机の上の、 私の写真のことだろう。 軽く頷くと、そう、と美穂子は微笑んだ。美穂子らしくない、あの自嘲が混じる微笑だった。 「貴女が好きなの。色々なもの、抑えられなくなるくらい」 美穂子は目を伏せて、思い出したようにクッキーを摘んだ。美味しそうな、香ばしそうな一枚 だった。それを口元に持っていく。さくり。私と先ほど触れ合った唇が、小麦粉の塊を両断する。 私はじっとそれを見ている。さくり。さくり。ゆっくりと時間をかけて、美穂子はそれを噛み締めた。 クッキーの半分を手に持ったまま、美穂子の喉がごくんと動いた。 「3年ぶりに貴女を見かけてね。私はこれからも麻雀を打つつもりだから、強い貴女のデータを集 めないとって思った。貴女のこともっと知らないとって思った。思って思って、気がついたら貴女 のことしか考えられなくなってたわ」 おかしいわよね。また、自嘲の笑みが口に漏れた。私は急いで首を振った。 「おかしくないよ。恋なんて、気がついたら降ってくるものだし。そういうのは、変とは言わないわ」 それでも、美穂子の自嘲は消えなかった。それどころかますます深くなる。俯き、美穂子は残り のクッキーをまた口に入れた。私も紅茶に口をつける。仄かな苦味が、頭に入る。 「私が美穂子を好きになったのだって、風越に練習試合に行った時だよ。それこそ急だった。貴女 の性別だって関係なかった。だから美穂子は、全然変じゃない」 「男の子と付き合っていたことがあったの」 静かに美穂子は告げた。やはり美穂子は緊張したり自嘲したりすると、ますます静かになるようだった。 「そんなの関係ないじゃない」 キスの怯えのなさや、抱きしめたときの自然さから、前にそのような経験があることなんとなく 思っていた。でもそれは、嫌悪感交じりに思うようなことではない。私だって昔の彼氏くらいはい る。セックスの経験だってある。でも今は美穂子が好きだし、美穂子もそうであるはずだ。軽い憤 り交じりに、私は言った。 「私だって男の人と付き合ってたことくらいあるわ。それでも今は美穂子が好き。美穂子しかいない。 貴女もそうでしょう」 語気が強くなった。美穂子は頷き、数瞬の後、わずかに首を振った。静かな目のままで、 カップに軽く口をつける。私のよりは幾分白っぽいそれが、こくんと喉を通っていった。 崩した足の付け根を、美穂子はぎゅっと握った。 「私の身体が目当てだった」 口から出ようとしていた私の言葉が、その瞬間に胃の中に引っ込む。美穂子の拳が、足の付け根 で力を込めて握られている。ぶうん。ぶうん。就寝直前のヤブ蚊のように、室外機の音が聞こえる。 「中学3年のときにね。色々しんどかった時期だったかな。試合で負けて、成績も下がっちゃって。 それで好きだって言われて、君がいいって言われて。ふふ、ついて行っちゃったわ」 抑揚も何もない静かな声が、紅茶を揺らした。私も握るものが欲しかった。でも何もない。せめて 拳を握り締める。 「とても痛くて、気持ち悪くて、私は抵抗した。そしたら殴られて、押さえつけられた」 「……美穂子、もう」 「私ならしても許してくれそうだって思ってたんだって」 美穂子は笑った。張り付いたような笑顔だった。 私の頭が、麻雀のせいで想像力だけは豊かになった頭が、なぜかそのときの状況を描き出した。 泣き虫の美穂子が、嫌だ嫌だと泣いている。それを男が容赦なく殴る。自分の欲望のために。それ でも美穂子が泣き喚くと、今度は枕に顔を押さえつける。それで大人しくなるまで、男は自分を美穂 子に押し付ける。美穂子の白い身体は、びくびくと痙攣しながら、それを受け入れていく。 見たくもないものを振り切るために、私は激しく首を振った。美穂子は笑ってそれを見ていた。
「ずっと久に言わなきゃって思ってた。私は汚れてるから駄目よって。好きになっちゃ駄目よって。 でも言えなかった。言えなかったわ。本当に好きになっちゃったもの」 「美穂子は汚れてない。そんなのおかしいよ」 喉の辺りが縺れた。焼けるようだった。何もかもが悔しかった。美穂子の過去も、それを語りな がら静かに笑う美穂子も、そしてそれに対して何も出来ない自分も、とにかく悔しかった。 「好きだって言ったときも。好きだって言ってくれたときも。ずっと怖かった。自分が信じられな かった。でも、大好きだから。大好きになっちゃったから。だからね、駄目なの」 「私は美穂子が好きなんだよ!!」 自分の涙声を聞いたのはいつ以来だろうか。美穂子の目も、意外さに見開かれる。こんな子 供っぽい言葉を発したのも、泣きながら喚くのも、もういつのことかわからないくらい昔のことだ。 だから、それで自分も理解できた。自分の中での、福路美穂子の場所が。彼女の痛みは、もう 既に自分の痛みのように感じてしまうということが。そんなに他人に執着するのも、きっとはるか 昔以来だ。 辛うじてお盆をどけることが出来た。それでも、私の理性もそこまでだった。本当に、いつもの 冷静で余裕たっぷりで、人へのアドバイスを探している自分はどこに行ってしまったんだと思う。 でも、だから、わかってる。美穂子は特別なんだ、きっと。だから仕方ない。私は泣きながら、 美穂子にぶつかった。美穂子は驚いた顔のまま、ごろりとフローリングに倒れこんだ。柔らかい 身体が愛しかった。 ぽたぽたと私の涙が、美穂子の顔に落ちた。美穂子の驚いた顔が、信じられないと書いてある 顔が、自分の涙のせいでぐにゃりと歪む。 「そんなこと言わないでよぉ。駄目だよ美穂子」 腕の力を抜いて、横に倒れる。そうして美穂子を横向きに抱きしめる。背丈は同じくらいだから、 顔と、身体が、左右に上手く密着した。密着しなければならないと思った。私の気持ちを伝えなけ ればと思った。そうしなければ死んでしまうと思った。 「昔の美穂子がどうあっても、人殺しでもなんでも、私は美穂子が好きなんだよぅ……」 「……久」 自分が何を言っているのか、頭はよくわかっていなかった。ただ、身体と心そのものが、口から 想いを伝えていた。涙と同じように、それらもぱらぱらと美穂子に降りかかっていくようだった。 「美穂子。好きだよ。美穂子。好きだよ……」 「ごめんね久。ごめんね。久。愛してるよ」 美穂子の身体は、冷たかった。私は火でも出そうなくらいに熱かった。だから、空気の隙間も ないくらいに抱きしめなければ、と思った。美穂子はずっと私の耳元で、ごめんねと愛してるを繰 り返していた。愛してるだけでいいのにと思ったけど、美穂子らしいので何も言わなかった。 声に少しずつ柔らかさが戻ってくるのを、私は身体の奥で感じていた。
「ぃ、やっ……」 くぐもった声が、抑えた手から漏れる。私は乳房を吸いたてた唇を、少しだけ止める。 「嫌?」 美穂子の動きが止まる。身体全体を撫で回す手はそのままに、私は首筋に口付けた。 頤が仰け反る。じゅる、と皮膚を吸う。うん、と美穂子の喉が鳴る。 「やじゃ、ない……」 既に涙声だった。私は思わず微笑み、乳房への愛撫を再開した。美穂子は身をよじらせた。 私が泣き止んだときには、美穂子の笑顔はいつもの暖かいものに変わっていた。美穂子。 呟くように私が言うと、くすぐったそうに美穂子は笑った。なあに、久。包み込むような声だった。 私は鼻を鳴らして、背中に回された腕を取った。その少しがさがさした手を、ゆっくり発熱して いる頬に当てる。柔らかく、温かい。じんわりと優しさと落ち着きが溢れてくる。まるで母親のよ うな手だった。 きっと風越の部員を支えてきたであろう手だと思った。それがたまらなく愛しかった。 「綺麗な手だね」 「そうかしら」 「そうだよ」 私は甘えていた。美穂子もまるでそれが当然というようにそれを受け入れていた。それが嬉し いような、辛いような、よくわからない気分だった。美穂子は幾分落ち着いたようだった。だから、 私の気持ちが通じたのかなと思った。 「ねえ、美穂子」 「なに?」 「抱かせてよ」 私がそう言ってみても、美穂子に変化はなかった。ただちょっと困ったように、眉毛を下げた。 あの静かな調子にはならなくて、安心した。 「私を抱いても、つまらないわよ」 「じゃあねえ。私が美穂子にそう言ったら、美穂子は一生、私に手を出したりしない?」 軽く首をかしげて、美穂子は私の顔を覗き込んだ。いたずらっぽい表情だった。 「やっぱり意地悪ね、久は」 「意地悪なんかじゃないわ。でも、今の美穂子の恋人は私なんだよ。美穂子は私のことだけ考 えてればいいの」 またくすぐったそうに美穂子は笑った。そして目を細める。ゆっくりとゆっくりと、まるで舞い落ち る羽のように顔を下ろして、軽く、緩く、美穂子は私の唇を啄ばんだ。 「わかったわ。じゃあ、きちんと、私を久の恋人にして」 区切るように言う美穂子の頬は、既に赤く揺れていた。 私は女同士の性行為ははじめてだったし、それは多分美穂子も同じだろう。勝手が違うのには 戸惑うが、つまりは自分がされて気持ちよかったことをすればいいはずだ。私は自分の記憶をフ ル回転させて、美穂子の身体に向かった。題材は3年前の彼氏と、没収品のアダルトビデオだけだ。 唇を時間をかけて、ねっとりと奪いながら、手と身体を使ってゆっくりと全身を撫で回す。美穂子 の吐息が熱くなるのが嬉しい。身体をずらして、喉に口付ける。うンっ。美穂子が軽く声を出した。 「可愛いよ」 息を吹きかけながら、耳元で言った。美穂子は身を捩じらせる。目から涙が毀れている。 幾分低くした声で、囁く。 「嫌だったり痛かったりしたら、ちゃんと示すんだよ。蹴ったり引っかいたり殴ったりしたって、 私は絶対に美穂子を嫌いになったりしないから」 涙の雫を溜めたまま、美穂子はそれでも微笑んだ。 「嬉しいの。久に愛してもらえるのが。さっきのキスで、最後にしようって思ったから。セックスだけは 駄目だって、そうなったら終わろうって、そう思ってたから」 「何回でもしてあげるよ」 ゆっくりとした動きで、手で乳房を包み込んだ。微笑んだまま、目を閉じたまま、また美穂子の喉 が上がる。動きが直線的にならないように努める。首筋を撫でるように舐めながら、ゆっくりと顔を 下に降ろした。
明かりを消して、服を脱いで、ベッドに入る。この一連の作業を、私たちはほとんど無言で行った。 緊張と羞恥と行為への不安が、どくどくと私の心臓を掴んでいたし、多分美穂子もそうだっただろう。 どちらも年頃の女の子で、それ以上でも以下でもない。そういうことが上手く出来るという確信など、 もてるわけがなかった。 それでも、私がきっと30分くらいかけて上半身の愛撫を続けていると、徐々に徐々に、美穂子の 身体から硬さが取れてきた。性行為という状態に慣れてきたようだ。手と唇に愛してるという想いを 込めて、私は愛撫を続ける。美穂子は小さく、か細く、甘い声を出している。 私は美穂子の隣に身体を移した。右腕を美穂子の後頭部に差し込む。腕枕の要領で美穂子の 頭部を手に入れると、頬に口付けながら、左腕をゆっくりと下腹部に持っていった。ぴくり、と美穂 子の身体がはねる。おびえたような目が、私の目を捉える。大丈夫、とは伝えない。それは美穂子 が決めることだ。だからそこで、私は動きを止めた。怯え交じりの涙が数瞬、目の端に溜まる。 美穂子は目を閉じ、開いた。涙がつうと耳のあたりに落ちた。顔は破裂寸前のトマトのように赤い。 美穂子は身体をくねらせると、右腕をゆっくりと伸ばし、私の左手をとった。そして軽く足を開き、 私をそこへと導いた。 「……美穂子」 「久」 また、目に涙が溜まる。美穂子の身体がじんわりと熱くなる。それでも、美穂子は微笑んだ。 落ち着いた、穏やかな微笑だった。 「愛してるわ。久」 その言葉で、決める。ごくりと喉が鳴った。美穂子の手に導かれるように、左手を身体の奥へ と忍ばせる。そこは熱く、何か粘性の液体で溢れていた。手触りだけでは全体を想像できない。 腕枕と唇で美穂子を安心させながら、私はその周辺を撫で回した。熱い吐息とか細い嬌声が、 美穂子の唇から漏れている。 自分のものをいじくることは幾度かあったので、それを参考にする。奥には侵入しない。その 周辺部と密やかな突起を、液体を広げるようにゆるゆると弄る。そしてともすれば跳ねそうにな る身体を、優しく抱きとめる。 美穂子は涙の溜まった目をぎゅっと閉じ、時折私の名前を呟いていた。それが私の身体まで 燃え上がらせる。でも、今はそれは必要ない。美穂子を私で包み込む。それであればいい。私 は女だ。ぎゅっと好きな人とくっつけるだけで、それだけで幸福感に包まれる。麻雀以外で、この 時間が永遠に続けばいいと感じることは、本当に久しぶりだった。 横抱きの姿勢から半ば覆いかぶさるようになりながら、私はそこへの愛撫を続けた。徐々に激 しさも加えていく。少しでも美穂子が拒絶のしぐさをすればすぐに中止するつもりだったが、美穂 子はすべてを受け入れてくれた。左手と連動させるように、唇をゆるゆると動かす。耳元。頬。瞼。 そして唇。 なんとなく頃合と判断して、私はゆっくりと唇からも中に侵入した。上下から美穂子の内部を窺 うのは、まるで寄生虫のような気分だった。半開きの唇から、舌も動かす。じゅるじゅると音がする。 合わせて指の動きも強めた。苦しげな音が、美穂子の喉から漏れる。それでも、美穂子は舌を弱 々しく絡ませてきた。それを受け、指をぐいと折り曲げる。そして同時に、咥内をぎゅっと吸いたてた。 うぐ、と吐き出すような声が、私の内部を通過した。まるではじけるように、美穂子の身体が蠕動 した。涎まみれの唇を外し、左右の腕が私の頭を抱え込む。美穂子はぎゅっと両足も閉じた。 ううううっ。口を引き絞り、何かに耐えるような声を上げる。そして背骨ごと、身体が跳ねた。二度。 三度。四度。びくり、びくりと最期の力を振り絞るセミのように、美穂子の身体はその声とともに跳 ねた。私はなすがままで、その動きを眺めていた。 はあ、はあ。息をまともにつけるようになると、美穂子は私の身体から腕を外した。がくり、という 形容がふさわしい動きで、ベッドにどさりと倒れこむ。そして小さくぴくりぴくりと痙攣をはじめた。 その身体を撫でようかと思ったが、自分が同じ状態のときにはしばらくは身体に触れてほしくは なかったので、それはぐっと我慢する。左手がお風呂をかき回したかのように、ぬるぬると熱を 持っている。部屋がもう少し涼しければ、きっと湯気が立っているだろう。私の方も、身体がだるい。 しかし深い満足感の中にあった。 美穂子の痙攣が数分で治まったので、私も美穂子のすぐそばに横になった。 「美穂子」 囁きかける。身体を丸めた美穂子が、またびくんと震えた。こちら側からは美穂子の髪の毛し か見えない。その髪の毛を、私はゆっくりと撫でる。
「怖くなかった? 大丈夫だった?」 まるで幼子をあやすように、聞いた。美穂子は応えない。私もそれを期待していない。ただ、 髪を撫でている。若干の気だるさを含んだ、ゆったりとした時間が心地いい。このままでいたい。 このまま溶けてしまえばいい。そもそも、何故先ほどの行為で、私と美穂子が融けてしまわな かったのかが理解できない。今頃になって、また室外機の音を耳が知覚する。壁の白さが目に痛い。 「……久」 「なに?」 たっぷりと時間をかけて、美穂子は私の名前を呼んだ。そしてゆっくりと仰向けになる。 「凄いね」 「そう?」 私もそれに倣った。電灯が白く、きらきらと光っている。それがとても幸せなことのように思える。 美穂子の顔は、涙と涎と発熱とで、なにかどろどろとしたもので溢れていた。それを気にもせず、 ふわりと美穂子は微笑んだ。 「……好きになったの、久でよかった」 その微笑が、崩れる。みるみるうちに、瞳が涙で溢れてくる。驚く間もなかった。美穂子は私に 覆いかぶさると、きつく私を抱きしめた。 「久でよかったよぅ……」 嗚咽と涙が、激しく私の身体を叩いた。普段なら心を乱されるそれらが、今回はやけに穏やか に私に作用した。ぽんぽんと背中を撫でる。美穂子の体温と体重を感じる。鮮やかな多幸感が、 私を包み込んだ。 美穂子の嗚咽は、十数分ほど続いた。 見知らぬ天井に、一瞬自分のいる場所と、ついでに名前も忘れた。また目を閉じなおしてから、 ようやく竹井久が福路美穂子の部屋に泊まっているのだと理解できた。そして理解と同時に、 今日は学校は休みでも部活があったことを思い出す。慌てて飛び起きると、運よく枕もとの時計 を見つけた。まだ少しの時間があるようだ。ほっとすると同時に、ちゅんちゅんと雀が鳴く声が耳に 響いた。うん、と隣から声が聞こえる。そこには美穂子が眠っている。起こしたのかとも思ったが、 軽く身動ぎをしただけで、そのまま夢の続きを見に行ったようだ。寝つきはいい方らしい。ほう、と私 はため息をついた、 何気なく寝顔を眺めていると、脳裏に昨日の情事がよみがえってくる。嗚咽を終えた後に、何か 当たり障りのない雑談をして、私は部屋着を貸してもらって眠った。色々なことがありすぎて、体 力と、もしかしたら思考力もが既にもたなかったのだ。2回目を行おうという気力も多分発想もなく、 私も美穂子もすとんと眠りの世界に落ちていった。深い、深い眠りだった。 今も美穂子は実に無防備に、落書きでもしてやろうかと思うほどに平和に、眠りを満喫していた。 いい寝顔だと思った。この人が自分の恋人だということに、誇らしさすら覚えた。 そして急に。まったく急に。身体中から激しい吐き気が襲い掛かってきた。 わけも分からず、私は跳ね起きた。急いで昨日教えて貰ったトイレに駆け込む。ご両親が不在 でよかったと頭の隅で思う。扉を開け、便器に顔を突っ込む。ここまで我慢できたことが奇跡的な ほどの、激しいえずきだった。胃液が逆流して喉を焼いた。声をはばからず、私は胃の中のもの を戻し続けた。なんで。なんで。わからないまま、その酸っぱくて痛いものを出し続ける。 やっと発作がおさまり、ふうと息を吐くと、トイレの淵に座り込んだ。殴るように水を流す。何か悪 いものでも食べたっけ、と髪をかき上げながら考える。しかしどう考えても心当たりがない。おかし いな。食中毒だったら怖いな。美穂子に言わないと。 美穂子。その名前と顔を思い出した瞬間。また胃からなにかがせりあがってきた。慌てて深呼吸 をする。芳香剤交じりの空気が肺に入り、ようやく幾分か落ち着いてくれた。しかし、それでも。美穂 子のことを考えると、何か胃がおかしくなった。首を振りながら立ち上がる。不吉な思いが自分を苛 む。なんで。なんで。トイレから逃げるように出て、美穂子の部屋に向かう。部屋のノブに手をかけ るとき、電流のような何かが走った。
美穂子は相変わらず穏やかな寝顔で、それに関してはほっとした。それでも感じるのは先ほどの ような幸福感でなく、なにか別の、ドロドロとした汚いようなものだった。胸がぎりぎりと痛んだ。なぜ だか自分でも分からない。おかしい。意味が分からない。文字通りに、私はその場にへたり込んだ。 私はどうして、美穂子の寝顔を見てこんな気分になるのだろう。どうして、まるで憎んでいるような気 分になるのだろう。わからない。わからない。だって、これではまるで。まるで私が美穂子を愛してい ないみたいじゃないか。そこまで考えて、また吐き気が襲ってきた。半ば意地でそれを押さえ込む。 気味の悪い音が喉から漏れる。今までこんな風にはなったことがなかった。しかし食中毒とかその ような肉体的なものとは、やはり考えられなかった。美穂子。美穂子。貴女、私に、何かしたの。なん でこんなに、吐き気がするの。心の中で呟く。応えてくれるわけもない。得体の知れない不安が私を襲った。 そういえば、と想像が走る。美穂子と出会ったあたりから、妙に胃が痛むことがあった。美穂子を愛し いと思うたびに、何か奇妙な痛みが胸を走っていた。あれはすべて、このことだったのではないか。 美穂子に近づくなと。それは愛じゃないと。その身体からの警告だったのではないか。 私は本当は、美穂子を愛していないのではないか。その確信が、夏の夕暮れの暗雲のように、じくじ くと心に広がっていく。身体が拒絶しているのではないか。そう思うと、もう美穂子の寝顔を見続けるこ とは出来なかった。その変化が唐突だっただけに、余計に恐ろしかった。走り出すことを必死でこらえ、 私は本棚にあったメモ帳を、ぎりぎりの思いで掴んだ。眠った美穂子を置いて帰る理由を書く手は、 ぶるぶると震えていた。
今回は以上で。あと2回ほど続きます。 今のところは暗くてさっぱりしなくて、読みたくない方がほとんどだと思いますが、後2回、 動き出した部長とキャプテンとの運命を、きっちりと書きたいと思っています。 しかし部長とキャプテン、どんな私服着てるんだろう……。 さっぱり思いつかなかったので描写がほぼないのが、今回一番残念な部分かもしれません。 でも部長はオシャレっぽいけど、なんかキャプテンはユニクロ的な気がするんだよなあ……。
一日の楽しみになって来ているくらい面白いですよ、暗い部分も苦い前菜って奴ですわ 私服は俺は二人ともオシャレなイメージですね。部長のがラフなイメージあります。 次楽しみに待ってますよ
>>191 超GJw
小説家になれると思いますw
描写が丁寧で感動です
>>191 深くて丁寧な描写でただただ感慨にふけるばかりです。
続きが楽しみだと思う反面、終わってしまうのが悲しいぜ。期待しています。
部長は安くてもオシャレに着こなしてそう。
キャプテンは質がいいものを着てそうだな。
>>191 読んでてすごくドキドキしました。
続きが超楽しみっす!!
引き込まれるような感じでした。GJ等という言葉では軽すぎる。 私服ですか…部長は古着やB級品をこ洒落た感じで、キャプテンはシンプルなデザインなのを好んでそうですね。
それから1週間ほど、私の心の多くはそのことで占められていた。自分が本当に美穂子を愛 しているのかどうか。それは深刻に強烈に私の心を襲った。もう吐き気はおさまったし、美穂子 のことを考えて気分が悪くなるということはない。それでもあの瞬間の、名状しがたいほどの拒 絶感が、私の心を縛っていた。 あの笑顔の中に抱かれたいと思った。そしてそれと同じくらい、あの不器用な手を握りたいと 思った。それは嘘ではないはずだ。ないはずなのに。あの涙を止めたい。あの身体を支えたい。 その気持ちに、今はぴしりとひびが入っていた。何をするべきかということを、私はすっかり見失っ ていた。愛していないのではないかと疑っているくせに、積極的に美穂子を失うのが怖かった。 あの幸福感の後に襲ってきた、名状しがたい不快感が、たまらなく怖かった。 美穂子からのメールや着信は、すべて無視した。出るわけにはいかなかった。出て、美穂子 の声を聞いた途端に、またあの吐き気に襲われるのには耐えられなかった。問い詰められたら どうしようとびくびくしていたが、メールには当たり障りのない、おはようやおやすみばかりが書い てあるだけで、正直ほっとしたいた。どこかで決着をつけなければいけないのは分かっている。 でも折れてしまったかのように、心が前に進まなかった。こんな中途半端な状態で1週間もいた ことなど、今までなかった。頭の大部分には美穂子の姿がちらついているのに、それが具体的な 像を結ぶ前に、全部消し去っていた。 今は美穂子のことを考えられない。考えすぎると、吐き気がする。だから、麻雀部の活動は心 地よかった。少なくとも好きな麻雀を打つことは、私にそれを忘れさせてくれたのだから。それでも、 これではよくある駄目な恋人そのものじゃないか、と自嘲する気持ちはどうしようもなかったけれど。 「和はのう」 私とまこと咲と和で囲むことが、清澄では最もバランスがよくなる。優希が入るとほぼ必ず場が荒 れてしまうので、いい練習にはならない。今の課題は咲だ。あの化物のような強さは、常時出せるも のではない。怯えや不安をできるだけ消すためには集中するしかないのだが、大会で常にそうでき るわけではない。だからデジタルな和と、トリッキーな私と、読めないまこの3人と打つことは、少しは 咲の練習になるはずだ。というより、清澄にこれ以上のメンバーはいない。 目線を河に注いだままで、和はなんですかと返事をした。 「誰かと付き合ったことはあるんか?」 咲のツモ牌から手が離れた。がしゃん。牌が卓にあたり、床に落ちる。ご、ごめんなさい。慌てて咲 が卓の下にもぐりこんだ。和は顔を真っ赤にして、それを見ている。 「純情なことじゃのう」 達観したようにまこが言った。私もちらりと笑う。女が4人寄ればなんとやらだ。こういう話題が出 ることは避けられない。今の自分の状態を皆に悟られるわけにも行かないので、私はちらりと会話 に加わった。 「まあ和ももう16だしね。何かあってもおかしくないじゃない」 咲が出てきて、もごもごと謝りながら牌を切った。次は私の順番だ。ゆっくりと手を伸ばして、その 黒い硬い物質に触れる。 「……何もないです」 ツモる瞬間に、搾り出すように和は言った。そう。気のないように返事をして、またゆっくりと牌を 捨てる。かつん、と澄んだ音がする。次の和が、急ぎ気味に山に手を伸ばした。 「何もないの?」 咲が呟く。意外そうな、つい言ってしまったというような呟きだった。一瞬動きを止めた和が、気を 取り直すように牌を切る。 「ええ、何もないです」 そしてちらり、と咲を見る。 「そういう宮永さんは、何か経験があるのですか?」 途端に咲の顔に朱が走った。なななな、何もないよそんなの。叫ぶように言う。こうなるともう皆は 麻雀に集中できない。牌を切って捨てながらも、そこには集中は入らない。本来はこういう遊びを止め るのは部長の仕事なのだが、私はこういうときに話題を止めたことなど一度もない。いつもは面白そう という理由からだが、今回は少し違った。ただ、皆のそういう話も聞いてみたい気がした。自分の状態 を、確かめたかった。
「京太郎とはどうなの。仲よさそうだけど」 「きょ、京ちゃんとは何もないです。そりゃクラスは同じですけども」 「でも一緒にいるよね」 「嫁はんとか呼ばれとったな」 「初めて部活に来た日も一緒でした」 咲が真っ赤になってぶんぶんと首を振るから、余計に皆の追及が鋭くなる。私は普通に、 まこはにやにやと、和はしらっと咲を追い詰めた。咲はあわあわと目を白黒させている。 部活が恋愛のもつれでもめることは多いが、清澄ではそういうことは起こらなさそうだ。あると すれば京太郎と優希と咲だが、この様子ではそういうこともないだろう。それに安心する。6人の 部で揉めてしまっては悲惨だ。後に部が大きくなるときにも、気をつけなければならないことだった。 にやにや笑いを維持していたまこが、ふと私に視線を送った。 「そういやあ、久もあれじゃのう。人気はあっても浮いた話は聞かへんのう」 「……え?」 こちらに振られることを予想していなかったので、私はきょとんとしてしまった。咲も和も興味 深そうに、先ほどまでの赤面をすっかり忘れたように、私に視線を送ってくる。 「どう、って、ねえ」 美穂子の顔が思い浮かんだ。吐き気はこなかったが、ぎゅっと胸が痛んだ。美穂子のことを 好きかといわれれば、好きに決まっている。愛しているに決まっている。でもなにか、私の身体 のどこかの部分が、それに拒否を示している。それが吐き気になって現れている。そのように感じる。 「そういえば、部長のそういう話は聞いたことないですね」 どうでもいいことなら聞かなくても話すのに。和が無表情に毒舌を放った。咲もうんうんと頷い ている。皆他人の恋愛は興味津々なものだ。でも。今の自分の状態では、いつものかわす言葉 も、上手く出てはくれそうになかった。 美穂子。美穂子も今頃、池田猫あたりに同じこと聞かれてるのかな。 「……わかんないなあ」 結局、正直に言った。美穂子のことを愛しているのかいないのか、もう自分ではよくわからな かった。 「昔ねえ。好きな人いたんだけど、なんか急にそう見れなくなったことがあってさ。それ以来ちょっとねー」 昔の話ということにして、部員に語ってみる。数秒ほど、牌を引いて打つ音しかしなくなる。 「何かきっかけでもあったんですか」 興味を表に出さないように苦労した、というような声で、和がこちらを見ずに尋ねてきた。同じく興 味がないよ、という顔で、咲も興味深々な雰囲気で私を窺っている。まこは興味を顔に丸出しだ。 「わかんない」 あ、それポン。言って牌をさらす。しかし自分が鳴かれたことにも気付かないように、咲が身を乗 り出してきた。 「わかんないってどういうことですか?」 「理由ないんは辛いわのう」 「……どうって言われても、ねえ」 ツモです。千二千。和が牌を倒した。少し白けた空気で、3人が点棒を差し出す。がらがら、と牌を 押し出し、次親のまこが洗牌ボタンとサイコロボタンを押した。4人ともが無言で、その作業が続く。 けほん、と和が咳払いをした。 「部長がわからないだけで、きっと理由はあったのでしょう。何か決定的なものが」 ごとん、と牌が出てくる。サイコロも止まった。牌を取り分けながら、咲も口を開く。 「そうですよ。部長は簡単に人を嫌いになれる人じゃないです」 「……そうかなあ」 何かの理由。美穂子に嫌なところなんて、今のところはひとつもない。すぐに涙をためてしまうとこ ろも、気を回しすぎるところも、少し荒れ気味の手だって、私の大好きな部分だ。それなのに。今は そのことを考えると、胃がずきずきと痛む。痛みたくなんて、少しもないのに。理由があるなら、私こ そが教えてほしい。きっと、私以外には答えられないけれど。 悪くない配牌だった。端牌を、ゆっくりと切る。 「じゃあさ。和なら、そういうときにどうする?」 ちらりとこちらを見た和の目には、やはり好奇心が混じっていた。それでも、生来真面目な和だ。 牌を切ると、軽く宙を睨んで、自分の思考を探す。
「……同じ状況を作りますね」 「どういうこと?」 咲が反応した。先ほどから耳が良く動いている。少し緊張気味に、和が説明を始めた。 「同じ状況を繰り返して、どうやって嫌いになったか思い出すんですよ。まずは理由を思い出さな いことには、対策が立てられません」 「さすがデジタル娘じゃのう」 同じ状況、ねえ。口の中で呟く。3順も不要牌が続いた。同じ状況。美穂子の寝顔と、白い身体が蘇 る。ため息混じりに、ツモ切りにする。そんなことをするには、今の私には決意と覚悟が足りなかった。 負けてもいいと、覚悟する。誰がどの口で言ったんだろう。麻雀と恋愛とは、確かにかなり違うようだ。 沈黙に沈んだ私を、3人が興味深げに眺めていた。それでも、誰も何も言わなかった。 そういう会話をしたからだろう。部室の掃除を終えて帰路に着こうとしたときに、夕暮れの校門に、 所在無げに立っている美穂子を見たときには、とうとう自分の頭がおかしくなってしまったのかと疑って しまった。今日くらいには連絡を取り、何かしらの結論を出さなければならないと思ってはいた。 別れるにしろ、続けるにしろ。それでも、前者になるのが私はたまらなく嫌だった。これほどまでに 中途半端な自分を自覚するのも、相当に嫌だったけれども。 立ち止まった私を見て、それでも美穂子はいつものように、ふわりと微笑んだ。 「こんにちは、久」 私は不器用に目をそらした。美穂子の前だと、不器用な自分が出てきてしまう。くすり、と美穂子が 笑う音がした。どこかでかあかあとカラスが鳴いていた。自分が部室の掃除当番の日で、皆が先に 帰っていて良かった。ちらりとそう思った。清澄の敷地内でこんな惨めな気分になったのは、はじめ てだった。 美穂子が一歩前に出る。 「また忘れられたら嫌だなって思ったら、ここに来てしまっていたわ」 俯いたままで、私は苦く笑った。努力して、顔を上げる。夕陽の手前に美穂子が立っている。自分 は今どんな顔をしているのだろう。自分に尋ねても誰も応えてくれない。美穂子は微笑んだままで 動かない。 「……忘れないよ、美穂子」 「うん、知ってるわ」 また、美穂子が一歩前に出る。ゆっくりとした動きで、固まったままの私の手をとった。 「一緒に帰りましょう」 頷く以外の選択肢が、自分にあるとも思えなかった。 道すがら、私と美穂子は無言だった。実に数十分の間、何も喋らず、目も合わさず、ただ並んで 道を歩いた。空が赤から朱に変わり、そして闇に染まり一番星が輝くまで、私と美穂子はてくてくと 歩き続けた。それはあの日の、はじめて美穂子の部屋に入った夜の沈黙に似ていた。 なにから説明しようかと考えたが、頭が何も動いてくれなかった。嫌いになったのか。まだ好きなの か。私は美穂子をどうしたいのか。考えようとしても考えようとしても、確固たる像が浮かばなかった。 美穂子について考えることを、身体が拒否しているようだった。私と美穂子は無言で、美穂子の家の 前まで辿り着いた。美穂子は慣れた仕草でがちゃがちゃと家の鍵を外し、扉を開いた。そこで初めて 目が合った。目線で、軽く促される。私はまた俯いて、それに従った。美穂子の顔をまともに見ること が出来なかった。美穂子の家の中に入っても、私には言うべきことが見つからなかった。 部屋に入ると、息を吐きながら美穂子は机の脇に鞄を置いた。 「適当に置いてね」 美穂子は言ったが、私は立ち尽くしていた。そんな私を見て、美穂子はまた、あのたしなめるよう な微笑を浮かべた。 「久はお人形にでもなってしまったのかしら」 その声には、それでも怒りや悲しみや、そのような負の意思はこめられていなかった。ただの、 福路美穂子の微笑みだった。その微笑のままでゆっくりと、美穂子が固まっている私に近づいて くる。吐き気はない。美穂子はゆっくりとゆっくりと、私の腰に腕を回した。 「お人形じゃ、嫌ね」 ただ、瞳にだけ。瞳にだけ何かが封じられていた。その瞳には覚えがあった。でも、それがわか らない。なにもわからない。わからないまま、私は美穂子に唇を奪われていた。いっそ心の奥まで 奪われたいと思った。こんないじけた、自暴自棄な自分は初めてだった。
私の抱きたい、という言葉に対して、美穂子は何も言わずに裸になった。そして微笑して、両腕 を広げた。私はきっとひどい顔をして、そこに入っていった。美穂子の私への想いが伝わってき て、頭の中はぐちゃぐちゃだった。私が前回のような優しい愛撫が出来ないことを知っていて、 美穂子はひょいとそこに身を投げ出したのだ。なぜそれができるのか、今の私には理解できな かった。 「うン……!!」 鎖骨に噛み付くように押し倒す。美穂子は僅かな呻き声をあげたが、それ以上はなかった。 ぎゅっとそこに唇を押し付ける。ふたつ。みっつ。よっつ。痕をつけ続ける。そのたびに美穂子は 喉を上げた。なぜこんなことをしているのかも、私にはわからなかった。ただ、自分の中の獣性 が、ひどく疼いているのは理解できた。1週間の懊悩は、私にとって楽なものではなかった。 好きなのに。好きなのに。こんなに、こんなに好きなのに。 「……美穂子」 焦点のぶれた声が、自分の喉から響いた。美穂子の豊かな胸に、私は愛撫を繰り返した。指で。 唇で。歯で。頬で。愛撫というよりは陵辱のそれで、数分で美穂子の胸は真っ赤に染まった。 「……久」 今は美穂子は、呻きよりは嬌声に近い声をあげていた。それが私の獣性を、ますます育てていた。 まるで美穂子を捕食するように、私の身体は動いていた。自分にペニスがないのが不思議なほど だった。わき腹に被りつき、乳首を抓り、下腹部をひざで擦り付ける。腰を撫で、太ももに噛み付き、 脇を足爪で刺激した。美穂子は一言も拒否の声を出さなかった。ただひさ、ひさと私の名前を呼ん でいた。私もうわ言のように、美穂子の名前を呟いていた。 やがて私は、美穂子の両脚を大きく広げた。じろりと付け根を注視する。そこで初めて、美穂子は 自分の両手で顔を隠した。前はそこまでしていない。酷い羞恥だろう。それでも、それに罪悪感を感 じる余裕は、今の自分にはなかった。むしろその仕草で、ますます昂ぶりが増したようだった。思い 切り脚を抱えあげると、潤みの豊富なその部分ではなく、その後ろの不浄の窄まりを晒す。そしてそ こに、唇を吸いつけた。 そこでさすがに、美穂子が叫び声をあげた。 「久!?」 慌てて伸ばそうとした両腕を、両脚を抱えあげることで停止させる。そのままベッドの縁まで身体 を押し付け、美穂子の身体を固定させた。 「やめて久!! お願い!!」 懇願を完全に無視する。美穂子はなんとか逃げようと身をよじったが、それを私は許さない。声に 涙が混じるのを無視して、私はそこに再度唇をつけた。 「あ、あぁぁぁ……」 音程の外れた叫び声が響く。じゅるじゅると音を立て、私はそこを吸いたてた。仄かな苦味も何もか も、私の獣の餌になる。右腕で足を抱え、左手で性器を愛撫しながら、私は美穂子の尻の穴に刺激 を送り込んだ。 抵抗が出来ないとわかると、美穂子はまた両腕で顔を隠した。 「やめてよ、久。お願いだから……」 涙声が聞こえる。それが頭の中で、ぐわんぐわんと響き渡る。舌で、肛門に侵入する。べろべろと 周囲のひだを舐めまわす。おぞましさに、美穂子の腰はびくびくと震えていた。欠けたオルゴール のような、高くて間の抜けた叫び声が、部屋の中に溢れていた。胸がぎりりと痛かった。でも、やめ られなかった。静止もけしかける声もぐちゃぐちゃになって、私の胎内で溢れていた。 苦味が溶けきった頃に、今度は指をそこに挿れた。 「やぁ、うううぁぁぁ……。ぁぁああああ!!」 再びばたばたと美穂子が暴れた。それを力で押さえつけ、私は機械のような正確さで指の抜き差 しを続ける。一本の指は、容易くそこに飲み込まれた。抜き差ししながら、私は膣に対して行うように、 指を折り曲げ、ぐいぐいと捻りを加えた。そのたびに美穂子の身体が跳ねる。糸の切れたマリオネット に、涙を出す機能だけを追加したかのようだった。 「……ねえ」 静かな声だった。自分の声が、よくわからなかった。ただ、目の奥でちかちかと赤いものが燃えて いた。涙声が体内でぐるぐると反響していた。 「辛いよね。気持ち悪いよね。嫌だよね。こんなの、駄目だよね」 それが誰の声なのか、わからない。驚くほどに感情が欠落している。ぐにぐにと性器を舐めながら、 私はぼそぼそと喋っていた。美穂子の泣き喚く音が、遠くに聞こえていた。まるで呼吸困難の金魚の ようだと頭のどこかで感じていた。
「ひさぁ……。もうやめてぇ……」 少し指がつかえてきたので、涎をたらして滑りを良くした。一層おぞましさが増したのだろう、それ で美穂子の首の振りが激しくなる。涙がそこから溢れていた。きっと向こうの顔はぐしゃぐしゃだろう。 赤に染まった秘穴に、ぐりぐりと指が出入りする。昔見た亀の産卵を思い出し、私は口だけで笑った。 「……じゃあ、嫌いって言って」 ぐりぐりと動きを強める。合わせてびくりと身体が跳ねた。それを力任せに押さえつける。身体の 節々が痛い。それでも、やめない。やめるわけにはいかない。何か得体の知れない饐えた臭いが、 そこかしこに広がっている。 「私のこと嫌いって言ってくれたら、やめてあげるよ」 誰が言っているのだろう。この声は誰のものだろう。感情のない、機械音のような声。一瞬、美 穂子の動きが止まった。それが腹立たしくて、さらに深く指を突き入れた。う。カエルが絞め殺さ れたような音が、どこかから漏れた。美穂子を楽にさせる気はなかった。もっともっと追い込むつ もりだった。2度、3度。突き入れる。う。う。カエルが鳴く。涙の溢れる音がする。すべて無視して、 指を奥へ奥へと突き入れる。そして激しく左右に動かす。 「ほら、嫌でしょ。久なんて嫌いって言えば、一言でも言えれば、やめてあげるからね」 いっそ優しげな声だった。ねえ。ねえ。繰り返して、私は陵辱を続けた。私がそれをするたびに、 苦しげな、おぞましさに溢れた声が、腕で隠れた顔から漏れ出した。はやく。はやく。私は繰り返 した。なぜ自分がそんなことを言っているのかわからなかった。ただ、頭の隅が理解していた。 少なくとも美穂子に嫌われれば、楽になれる。もう会わなくていいなら、また前のようにニュートラル に戻るだけだ。そうだとふいに感じた。残酷な顔だろうと思った。かつて美穂子を犯した男と、きっと 何も違わない。冷静な時なら知覚する自己嫌悪も、今はどこかに行っている。熱の膜が、私の頭 を覆っていた。 だから。その言葉はしらばくの間、私の耳に届かなかった。 「……好き……!!」 美穂子のその声は、涙交じりだった。うわごとのようだった。それでも、意志の力がこもっていた。 思わず、動きが止まる。凍ったように止まる。しかし怒りに近い感情が、私の身体を押し出した。 ぐいぐいと指を孔に押し付ける。嘔吐寸前の呻き声が、美穂子から漏れる。それでも、突き入れる。 陵辱を続ける。 「何言ってるの。終わらないわよ。ほら、さっさと嫌いって言わなきゃ」 「いやぁ。すきぃ。ひさ、愛してる……」 「違うって言ってるでしょう!」 動物的な怒りに支配された。目の前の肉体を、ばらばらに引き裂いてやりたかった。なんで。どう して。こんな自分を愛してくれる。ここまでされて、どうしてまだそんなことが言える。愛してるなんて、 言ってはいけない。愛されたいなんて思ってはいけない。そんな奴は地獄に落ちればいい。 指を強引に2本に増やした。呻き声に痛みの成分が混じる。ぐぅぅぅぅ。細く高く鋭く、美穂子の喉 が引きつる。 「ほら。痛いでしょ。気持ち悪いでしょ!!」 ふざけるなと感じた。ありえない。なぜ嫌いと思わない。ここまでされて、心ごと犯されて。それで 好きなんて思うな。愛していると思うな。そんなものは、違う。認められない。認めるわけにはいか ない。だって。だって私は。私は。 陵辱の手を緩めない私に、それでも美穂子は涙声で叫んだ。 「好き。好き! 何、されても、いい。久が好き。久が好き!!」 何かが美穂子の身体に当たって弾けた。たあん、たあん。それが幾度も続いた。十数回落ちてよ うやく、それが自分の涙であることを理解できた。なぜか陵辱している私の目から、ぼとぼとと涙が 溢れていた。ひっ。しゃくりあげた。それで、自分の中の何かのスイッチが切れた。 指が止まる。全身の力が抜ける。びくりびくりと痙攣して、美穂子の身体が開放された。好き。好き。 涙の向こうで、美穂子がいまだ呟いている。美穂子の脚が、私の足を通ってどすんと落ちた。好き。 好き。まるで呪文のようにも聞こえる。私は座り込んだまま、その呪文の中で呆然と何かを思い出した。 まるで意識の氷が溶けてしまったように、3年前のことが広がっていった。
どうして忘れていたのだろう。3年前の、彼とのことを。両親の離婚が決まる直前だった。私は そのことを、引越しする理由をどう彼に切り出そうかと、そればかりを考えていたときだった。そし て私は、そのときはまだ可愛い中学生だった。心配する内容なんて、遠距離恋愛への不安くら いだっただろう。本当に、可愛い女の子だった。 私は素直に相手の言葉を信じていた。きっと今から考えれば、穴だらけであっただろう言葉の はずだ。それを、白痴のように信じていた。本当に、なんで忘れていたのかと思う。彼が楽しげに 私の知らない女の子と、口付けをかわしていた場面を見てしまった日を。 夕焼け空の中で、それは1枚の絵のようだった。自分が当事者でなければ1枚くらい買っても いいかと思うほどだった。可愛らしい女の子だった。それが目に焼きついた。私に似たような部 分があるようにも、ないようにも思われた。彼は笑っていた。私だけに見せていると思っていた 笑顔だった。 ぱりんと頭の中で音がした。ガラスが粉々に割れたような音だった。私の決定的な何かが、 壊れて崩れた音だった。 猛烈な吐き気に襲われなければ、私はずっとずっと、もしかしたら疲れ果てて足が折れるまで、 立ち続けていたのではないかと思う。それは麻雀の強い高校に行く望みが絶たれ、親がひとりだ けになり、最期に縋っていた愛まで奪われた瞬間だったのだから。背骨が折れて、もう駄目だと 思った。どこをどう走ったのか、気がつくと、私はどこかの畑の隅で吐き散らかしていた。胃の中 のものすべて、もしかしたら身体中の大事なものを全部出してしまったようだった。もう二度と立 てない気がした。おかしくなったと思った。涙も出ずに、私はじっとうずくまっていた。このまま死ね ればいいなと感じていた。 愛なんていうものを信じてはいけない。そう思った。少なくとも自分は、そうしなければならないと 思った。誰も愛しちゃいけないと思った。私から麻雀と幸せを奪ったものなど、絶対に正しくないと 確信した。身体が忘れてしまった方がいいと判断するほどに、強く、激しく思った。 ああ、それでか。ぼんやりと思った。やっぱり竹井久と福路美穂子は似ていたんだと。どちらも 愛することに怯えていたんだ。愛されることが怖かったんだ。もしかしたら、だからこそ惹かれた のかもしれない。お互いが、この相手なら適正な距離を取れると信じて。この相手なら大丈夫そう だと、捕食される虫にも似た油断で。 そう。思い出した。私は愛することも愛されることも、嫌いになってたんだ。自分の、この女の身 体だけが、それをずっと、ずっと覚えていたんだ。愛した女の人を見て、その誓いを思い出してしま うほどに。愛する女の人を、身体ごと拒否するくらいに。 「……美穂子」 酷い声だった。きっと顔も酷いだろう。呆然とした時間は数秒か、それとも数十分か。美穂子は まだ両手で顔を覆って、ぐすぐすと嗚咽を漏らしていた。私の喉も、頭も、胸の奥底まで、火花が 散るように熱かった。 「ごめん。酷いことした」 言ってすぐに、どの口が言うのかと自己嫌悪が襲ってくる。男に犯されたという過去を乗り越え ようとした子に、同じことをしたのだから。 せめて私でなければよかったのかな。じくじくとした胃の痛みとともに思う。きっとあの池田猫な らば、もっともっと、美穂子に優しくできたはずなのに。もともっと、美穂子を癒せたはずなのに。 私じゃなければ、上手くいってたのかな。後悔がぎりりと胸を焼いた。 美穂子が腕を解き、上半身を起こした。まだ涙は止まらない。顔も目も真っ赤だ。ぐずぐずと 鼻をすすり上げて、美穂子は私ににじり寄った。強い瞳で、私を睨みつける。逸らしてはいけな い強さだった。そしてぎゅっと、私の腕を握った。
「駄目」 零れ落ちそうな目だった。色の違う目が、同じ感情を私にぶつけていた。焼けるような目線だった。 その上からぼろぼろと、それでも涙が落ちていた。 「謝らなくて構わないの。だってこんなの、私、全然平気だもの」 「だって……」 「私、久が好きだもの」 焼ける瞳が、今度は涙に覆われる。また嗚咽が混じる。美穂子は必死に涙をこらえようとして、 失敗した。涙は本当に、あとからあとから流れてきた。 逆に私の涙は止まった。驚きのせいだ。美穂子の感情の強さと、その言葉の内容に。 「まだ、私を好きなの?」 「当たり前じゃない!!」 駄々っ子がおねだりするときのように、美穂子は叫んだ。80人以上の名門の部長の姿は、 みんなの母親のように笑顔を絶やさない福路美穂子は、もうそこにはいなかった。手の中の愛 を必死に掴もうとする、ただの18歳の女の子がそこにいた。それはきっと、その前に呆然と座 り込んでいるのが、頼りになる生徒議会長や全国大会に出場する麻雀部の部長でなく、自分 のした行為に怯えるただの18歳の女の子であることと同じだった。私も美穂子も、普段の鎧は 壊れていた。ただの傷つきやすい女の子二人が、そのベッドに座っていた。麻雀も何もかもそこ にはなかった。ただの胸の傷に怯える、目の前の愛に縋る女2人しか、そこにはいなかった。 「貴女が言ったんじゃない。絶対に嫌いになったりしないって。そんなの私だって同じよ。久に何さ れたって、嫌いにならないんだから」 そこで言葉を切って、美穂子はしゃくりあげた。 「ひ、久が。もう私のこと好きじゃなくても。それでも。それでも私は、久のこと、愛してるから」 「私だって!!」 今度は私の目が決壊した。ぼろぼろと大粒の涙が、目の奥から飛び出してくる。掴まれた腕をそ のままに、片方の腕で自由な方の美穂子の腕を握った。 「私だって美穂子のこと好きだよ。嫌いになんて、なれない。でも、ひどいことした。ひどいこと、 した……」 15歳の女の子の絶望も、脳の隅に封じ込めてしまうくらいには重いものだ。でも、それで美穂子を 傷つけていい権利なんてない。涙が、零れる。美穂子に酷いことをして、責任を取れる方法なんて、 私には想像もつかなかった。好きなのに。こんなに好きなのに。封印したはずの昔の記憶に邪魔さ れるくらい、美穂子に愛されたことがうれしかったのに。それなのに。 「そんなのいいのよ」 驚いたことに、美穂子は笑おうとした。涙としゃっくりの発作に妨げられたが、それは笑顔だと思う。 酷い声とぐしゃぐしゃの顔が、何かを必死で伝えようとしている。
「痛かったし、気持ち悪かったし、怖かったわ。だけど、久なら、いい」 「……美穂子」 「愛してるもの」 涙で奇妙に歪んだ笑顔に、今の私は安心した。安心してしまった。うぅぅ。嗚咽が漏れる。叫びた くなった。うずくまりたくなった。美穂子はまるであやすように、私の両手を握った。肉厚の、母親の ような手だった。ずっと包まれていたいと思った。私が包まなくちゃとも思った。でも今は、それはで きそうになかった。 「美穂子」 「うん」 「……ごめんね」 「うん。気にしないで」 美穂子に包まれる安らぎ。美穂子を包み込む充足。それを知ってしまったから。それを身体に感 じたから。もう離れられない。離れることはできない。それを、身体を突き抜けて魂の領域に、刻み 込まれてしまったから。 「大好きだよぅ」 「うん。うん」 「愛してるよぅ」 「うん。私もよ」 たまらなくなって、美穂子に抱きついた。美穂子は当然のように、酷い顔の私を受け入れた。うん、 うん。動物を眠らせるように、美穂子は声を出した。涙交じりでがらがらな声も混じっていたけど、ど んな子守唄よりも静かに、それは私の中へと入り込んだ。美穂子はさらに、ゆっくりと背中をさすって くれた。それが暖かくて、嬉しくて、申し訳なくて、もったいなかった。その感情のごちゃ混ぜの波が、 私を遠くへ押し流した。 誰かの胸の中で激しく泣くのは、もしかしたら赤ん坊の頃以来かもしれなかった。美穂子は当然の ように、私を抱きしめてくれていた。赤ん坊のように。娘のように。そして、恋人のように。
今回は以上。次で最後です。色々とあれな描写が多くてごめんなさい。 ラスト1回、気合を入れたいと思います。 個人的にキャプテンは、部長がレギンスをはいてても「なんでタイツはいてるのかしら……」とか、 池田のクロックス見て「華菜、間違っておトイレのサンダルはいてるわ……!」とか、そういう風に ナチュラルに勘違いをしそうかなと思っていました。そしてそれを見て笑ってる部長。いいと思います。 それでは、この世のすべての人の部キャプ妄想に愛を込めて。
>>205 すげー、圧倒されました
ラスト楽しみにしてます
>>205 めちゃグッジョブです!wまさか2ちゃん内の小説で涙ぐまされるとは思わなかった・・・!
感動しました
>>205 心理描写の妙ですね。
これ、映画かドラマ化しねぇかな。
最終回も要チェックや
209 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/10/11(日) 09:42:31 ID:OvKGpUi5
あ〜。楽しみだな。 最終回。
なんというGJ… 某みはるんのように眼鏡を外してしまったよ
211 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/10/11(日) 11:04:53 ID:Sx4DSEZG
部長とキャプテンの浴衣姿見たいなぁ〜。
212 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/10/11(日) 14:00:12 ID:RA5fByjO
やっぱりGJは、いいな。
キャプテンの浴衣なら一応ある
214 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/10/11(日) 19:10:30 ID:5mamo8iK
でも、部長とキャプテンの浴衣姿で、 咲の、夏祭りみたくなってほしい。
幾分かの気恥ずかしさを、気持ちよさが覆い隠す。誰かと一緒にお風呂に入るのは久しぶりだ。 これも十年は遡らないとないだろう。パーソナルスペースであろう空間に人がいるというのは、実 に奇妙な気分だった。でも、それが美穂子なら、恥ずかしいけどいいような気もする。 家の大きさにふさわしく、お風呂も大きかった。その湯船は二人が向かい合って足を伸ばせば、 すっぽりと入れる大きさだった。別のときに来たのなら、歓声を上げていたに違いない。 頭が痛くなるほどに泣いた後の熱いお湯は、効きすぎるほどに効いた。泣くことが少なかった私 には、新しい発見だった。それを告げると、美穂子は得意半分羞恥半分といった風情で、私はよく 泣くからいつもよ、と呟くように言った。熱いシャワーも、石鹸の香りも、湯船のお湯も、すべてが 私の肌と肉と内臓を、心地よく包んでくれた。 美穂子に昔のことを告げると、やはり泣き出してしまった。あまりに激しく泣くので、先ほどの涙 と合わせて、既に1年分が出てしまったのではないかと心配してしまうほどだった。でも逆に、それ で私の心は軽くなった。人に喋ること。共感してもらうこと。やはりその二つは、人にとって薬にな るものらしい。 泣いた後で、美穂子は言ってくれた。愛してるよ、と。私は久を、久だけをずっと愛するからねと。 私も言った。私も、美穂子をずっとずっと、愛し続けるからね、と。その言葉で、何かがすっと落ち 着いた。まるでかさぶたがはがれるように、心が治った気がした。 「色々あったのねえ」 薄い湯気の向こうで、美穂子が呟いた。うん、と私も頷く。 「美穂子も。私も。なんか今ここにいるのが不思議な気分」 お湯を両手で掬うと、ばしゃんと顔にかけた。暖かさが首から上へと行き渡る。息を止めずに全身 をお湯につかることが出来れば最高だと思う。でも、そんなことは出来ない。過去を変えることのよ うに。 そう、過去。忘れられなかった、過去。それでも、今は吐き気はない。こうして美穂子と見合ってい ても、あの気持ち悪さが出てくることもなくなった。あのときの絶望以上の愛で、美穂子が包んでくれ たから。 「男運悪いんだねえ、私たち」 その言葉に、くすりと美穂子は笑った。ちゃぷん、と水音が立つ。 「そうね。でも女運はいいかもね」 女運という言葉の響きに、私も噴き出してしまった。自分で言って、美穂子もおかしそうに笑って いる。あはは。声に出して笑ってみると、お風呂場で声が大きく反響した。 こんな風に美穂子と笑えるとは、少し前の私には想像も出来なかっただろう。美穂子のことを考 えると、気分が悪くなっていた。嫌悪感に押しつぶされそうだった。自分で前に進むことすら出来な かった。 「美穂子」 「うん?」 「ありがとう、ほんとに」 目を見て言えた。軽く首をかしげて、美穂子は私を見返す。色の違う瞳が、色ガラスのように輝い ている。しばらく目を見張り、美穂子は軽く目を伏せた。睫についたお湯が、きらりと光を反射した。 「お礼なんて、いいのよ」 ぱしゃり。美穂子はお湯から手を抜いた。すうっとお湯が、皮膚伝いに流れる。橙色の照明が、 肌を滑やかに見せている。 「私はつまらない女だから、久が飽きちゃったのかと思ったわ。だから、それで久を少しでも繋ぎ とめられるなら、身体でもなんでも差し出そうって思ったの」 手を、じっと眺める。私も何か言おうとして、口を開いてまた閉じた。わずかに微笑んで、美穂 子は手を握り締める。 「それで久が少しでも私のそばにいてくれるなら、あんな痛みは痛みじゃない。久がいない痛み のほうが、もっと痛い。でも、身体を差し出して側にいてもらおうなんて、ねえ」 もしかしたら私は、あまり成長してないのかもね。微笑みのままで、美穂子は握った手を解くと、 お湯を手のひらで掬った。それは少しの間だけそこに留まったが、すぐに湯船に戻っていった。 頬が上気している。温めのお湯でも、血液や内臓の温度は上がっていく。 私は美穂子を見つめた。
「麻雀すると、よく思うことがあるんだ」 換気扇の回る音が耳に入る。湯気があとからあとから上に昇っていく。 「ほら、よくあるじゃない。綺麗な染め手なのに、よりによって、って邪魔な牌が来るとき。そういう ときにね、思うんだ」 私も、美穂子のようにお湯を掬ってみた。かすかな音とともに、お湯が手のひらに入る。私は きゅっと手をすぼめた。 「この牌が来た意味はなんだろうって」 その僅かな空間に、お湯はこぼれずに残った。わずか数mlほどのお湯は、しかし確かにそこ にあった。 美穂子は私をじっと見ている。私は色の違う両目に、にこりと笑いかけた。 「意味があるんだよ、私たちにも。3年前じゃなくてね。3年たってから出会った意味が、きっとあ るんだ。3年たってちょっと大人になったから、私たちは出会ったんだよ。それでいいと思うんだ」 美穂子が大きく目を見張った。 そう。それなら納得できる。私が手ひどく振られたことも、両親の都合で清澄に来たことも、 そこから2年も大会に出られなかったことも。美穂子が傷つき、それでも麻雀に打ち込み、風 越で部長になったことも。今の私と美穂子が出合うためと思うのなら、それは忘れる必要のな い過去になる。辛くても、悲しくても、痛くても、構わない。自分の過去に、ネガティブになる必 要はない。美穂子と愛し合うためのものなら、どんな過去でも受け入れられる。 美穂子が今の私を愛せるように。私が今の美穂子を愛せるように。そんな過去の傷のおか げで、きっと二人はこれほどに強く結びつけたのだから。15のときでなく今出会えたのは、そ れだけの過去を背負ったからこそ、愛し合うことができるようになったから。 美穂子の見開かれた目から、大粒の涙が溢れ出した。私は軽く苦笑した。その姿も、最近 は見慣れたものになっている。 「……久は、凄いね。久は、凄い」 「そうかな」 「本当に、よかった。久で、良かった……!!」 苦笑いのままで、私は脚と腕を開いた。涙を流しながら、意図を察した美穂子が飛び込んでくる。 ぬるいお湯が波を立てる。広い湯船の中で、私たちは窮屈に抱き合った。えぐえぐと耳元で、美穂 子が嗚咽を漏らしていた。 「久ぁ」 「なに」 「どこへも行かないでね」 「うん」 美穂子は涙のままで、くすりと笑ったようだった。首筋に唇が降りる。くすぐったさを感じた瞬間、 耳に吐息が入ってくる。 「どうかしら。3年前にも、久は私を覚えてくれていなかったし。さっきの、その言い訳みたいにも 聞こえたわ」 がくんと肩が落ちる。くすくすと美穂子が耳元で笑っている。いやあ、とため息混じりに、私は美 穂子の身体をぎゅっと抱きしめた。お湯よりも美穂子の体温のほうが、はるかに熱かった。 「やっぱり美穂子のが意地悪だ」 美穂子の腕も、私の背中に回ってきた。お湯が、ちゃぷちゃぷと音を立てた。このまま眠れれば 幸せだろうなと思った。眠れなくても幸せだろうとも思った。 美穂子の涙が、私の身体をするりと伝って、ぬるめのお湯に混ざっていった。
ロン。3900。牌を倒すと、瞬間的に軽く空気がゆがんだ。ふう、と息を吐く。和が置いた4千 点を取り、私に100点棒を返した。がらがらと牌を押し入れ、咲が洗牌ボタンを押す。 「いい待ちね」 涼しげに美穂子が言った。私は好戦的に笑みを返す。 「今日は全開だからね」 ちらりと咲を覗き見る。相変わらず、薄笑いのような表情が変わることはない。 まこの雀荘も、平日は空いている。夏休みを利用するにはもってこいの場所だ。今日の私と美 穂子のデートも、結局は雀荘になった。私は全国大会直前だし、美穂子も麻雀を捨てるつもりは ない。それにお互い麻雀が大好きだ。だから、どちらも文句はない。私と美穂子は、恋人同士とい うことと同様に、ライバル同士でもあるからだ。麻雀で相手に勝つことは、場合によっては抱き合う ことくらいには嬉しいことになる。 今日は和と咲を誘ってみた。この二人も、お互いをライバルとしてか恋人としてか、意識し 合っている節がある。部活以外で麻雀を打ってみるのも悪くないだろう。それに、一度本気の 宮永咲と打ってみたい、ということは私と美穂子の共通認識でもある。あの寒気のするような 闘牌。神のごとき手筋。それを避けて通りたいと願うほどには、私たちは老成してはいない。 咲は可愛い後輩であり、普段は守りたくなるような女の子であるが、麻雀に関しては完全に 別だ。この短期間に、私は幾度も彼女に背筋を凍らされている。 この半荘では、まだその兆候は現れない。とはいえまだ東2局だ。和もそろそろ集中してきた。 私が少し頭を抜けたが、そんな差はないも同然だ。気合を入れ直さないといけない。本気の咲 も和も、それに美穂子も、まだまだこんなものじゃない。無論、私自身も。 がらがら、と牌が立つ。サイコロが止まる。無言で、皆が牌を取り分ける。手が汗ばんできた ので、気づかれないように服に吸わせた。悪くない配牌だ。ちらりと周囲を見渡す。美穂子は にこやかに、咲は薄い笑いで、和はやや無表情に、お互いの配牌を見ている。たん。咲が牌を 切った。場の空気が締まる。 3年たったものね。美穂子は笑って言った。3年前なら、私たちはもっともっと、恋愛だけをや れてたのでしょうけれど。もう3年たっちゃったもの。麻雀や勉強や色々なものとは、切り離せ なくなっちゃったわね。そうだね。私も言った。でも、それでいいと思うんだ。恋愛だけだと、ほら、 何かあったときまずいからね。僅かに口を尖らせて、美穂子は私に身体を寄せる。やっぱり、 久は意地悪。ちゅ。頬に口付けられる。でも、それでもいいわ。いろいろなことを、いろいろとや りましょう。2人でね。うん。私も言った。もう、何があっても美穂子のこと忘れないよ。100回 死んで100回生まれ変わっても、絶対に美穂子のことは忘れないよ。まあ。美穂子はにっこり と笑って、ふわりと私を抱きしめてくれた。それは素敵ね。耳元で囁く。素敵でしょう。今度は私 も頬に口付ける。美穂子が身体をくねらせる。美穂子の重みが、私の重みと交じり合う。
福路美穂子を恋人にするということは、県最高レベルの打ち手と懇意にすることに等しい。さら に言えば、部員の量と質が最高レベルの麻雀部の部長と親しくすることでもある。ともあれ美穂 子からしても、私は県最高レベルの打ち手であるらしいし、県代表校の部長であるようだ。だから お互い、引退する前にできることとして、様々に策をめぐらせることにした。今年で引退する身とし ては、後輩達の今後が気になるものだ。週1回か2回の逢瀬の後には、私と美穂子は必ずその ような色気のない話をしている。 それでいい、と思う。なにせ全国大会直前だ。麻雀のことは常に頭にあるし、それと恋愛を切り 離して考えるほどに、私も美穂子も器用な人間ではない。それに美穂子の方も、部長選びに大 わらわだ。その相談は、やはり部長である私には、風越の誰よりもしやすいようだ。よく、眼鏡 ちゃんや池田猫のことを話してくれる。優しいが故になかなか選びきれない美穂子の話も、最近 は少し楽しみになった来た。池田猫のことを話す時の顔には、少し嫉妬してしまいそうになるけども。 先日の私と美穂子との逢瀬では、好調時の咲を倒すにはどうすればいいか、という話になった。 咲が槓狙いならば意図的に対子場を作り、こちらも4槓流れを狙ってみるのはどうか。ポンが出 たならそちらに待ちを寄せていくのがいいか、それとも真っ直ぐ行くべきか。手作り前に小手で 流し、小場を保ちたいところだが、しかし咲には天性の運もあるし。などと裸で抱き合い、愛を確 認した直後の布団の中で、延々と話していたりする。 美穂子。布団の中で、私は呟いた。様々な話をして、もう寝ようとお互いが思っていた時だった。 美穂子はじっと私を見ている。幸せになろうね。私たちの過去とか、いろんなこと全部含めてさ。 全部で、二人全部で、幸せになろうね。美穂子は微笑んだ。両目で、色の違う瞳をきらきらとさせ て、私に向かって微笑んだ。ええ。一緒にね。私の過去も、貴女の過去も一緒に。幸せになりま しょう。ぎゅっと、手を握り合った。それで生きていけると思った。生きていければいいと思った。 「リーチ」 ぬるりと和が千点棒を出した。そしてちらりと咲を盗み見る。少し理牌して、私も牌の並びを 確認する。いい形だ。 澄ました顔で、美穂子が牌を切った。危険牌。和は淡々と見送った。和も精神力が強くなって いる。それが、嬉しい。そして勝ちたい。和にも。咲にも。そして全国の強い者にも。 だって、美穂子がいる。今の私には大事な恋人がいる。身体も心も裸になって抱きしめて貰 える、身体も心も裸の姿も抱きしめられる、そんな大事な恋人がいる。だからこそ、もっと前に 進みたくなる。もっともっと勝ちたくなる。美穂子が誇れるように。美穂子を包み込めるように。 美穂子が、倒したいと思えるように。 「リーチ」 美穂子の捨て牌と同じ牌で、宣言した。咲と目が合う。底知れぬ目だった。楽しくなってきた。 千点棒を出す手が震える。きっと全国にはこんな化物がもっといるのだろう。 いまだに夢に見る。あの時の、2翻70符を上がった時の咲の姿を。本気で全国に行くことを、 本気で全国で勝つことを願ったのは、あのときが最初だ。だから、咲には感謝してもし足りない。 今の私がこんなに充実してるのも、夢だった全国に出られるのも、福路美穂子とという女の子 に出会えたのも、宮永咲のおかげなのだ。彼女がいなければ、地区予選の決勝に行くことすら 危うかったかもしれない。 だからこそ、勝つ。宮永咲に、勝つ。自分のために。そして恋人のために。 「飛び込んできなさい」 高鳴る鼓動と、手の中の汗を黙殺して、私は挑むように言った。そしてたん、と白く光る棒を、 卓の上に放り投げる。こら。嗜めるような声に向かって、悪いねと私は舌を出した。恋人は一瞬 だけ笑みを閃かせると、また真剣な目線を卓上に戻した。
以上です。1週間の間お付き合いくださって、どうもありがとうございました。 漫画だけではありますが、これで自分なりの部キャプがひとまずは形になったかなと感じています。 またいずれ、この続きとか、アニメ風の全然違う部キャプも書いてみたいなと思うので、 それが現実になればよろしくお願いしますね。 沢山の人のGJの念と、部キャプ愛を感じられて嬉しかったです。 それでは、また会う日まで!
220 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/10/11(日) 19:47:50 ID:5mamo8iK
いい話。 次に期待。
GJ、と、お疲れ様 3年間ってキーワードからここまで文章を引き出せるものなのか、圧巻でした 次があるなら俺も期待!
GJ キャプテンに、こらって怒られる部長かわいい
>>219 最初から見てましたが、うまく言葉が出てこない…(キャプテン)状態でした。
つまりはGJと長きに渡る大作をありがとう。
またいつかお願いしたい。
お疲れさまでした。
224 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/10/11(日) 21:32:15 ID:xLv7f/Jp
本当に、いい話でしたよ\(^O^)/ また、書いて下さいね。
素晴らしい大作でした。 お疲れ様でした。そしてありがとうございました
GJ! 1週間楽しませてもらいました。 次も期待してる。
良かったよ 次もまた書いて欲しいなあ
>>219 あなたのような文才ってなかなかいないよねw
GJ!
次回作も期待しつつ気長に待つことにするw
GJ!! 良い話でした。
230 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/10/12(月) 06:46:18 ID:55dN4nlp
リバースって無しだよな?
お疲れ様でした すごくたのしませてもらいました!
232 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/10/12(月) 08:40:37 ID:PU41Kp65
<230 ありの人いる?
233 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/10/12(月) 08:55:48 ID:PU41Kp65
キャプテンの機械オンチを利用して、部長が襲うのをちょっとみてみたい。
自分は百合は基本がリバだろうと思ってるから大アリだな
男女間みたいに「挿入→両者共に肉体的に気持ちイイ」には体の構造上なれないしね
女性同士での攻め手は「自分が」でなく「相手を」気持ちよくさせたいと思う訳だから
気持ち良くさせて貰った→相手にも気持ち良くなってほしい
と相手の事を思ったら自然にリバになるんじゃないかなと思う
ってか、その方が「攻久受美穂子」と「攻美穂子受久」と二倍楽しめるじゃん
>>219 GJ!!凄く楽しかった♪次回作をいつまでも待ってるよ
>>230 全然ありだろ
むしろ俺の妄想の基本は美穂子攻めだぜ
236 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/10/12(月) 10:20:14 ID:Z9ashiWc
≫234、235 そうか! 美穂久でありなのは、俺だけかと思ったww ありがとうございます。
リバースじゃなくてリバーシブルだろ 戻しちゃいかんw
ドSなキャプテンっていいと思うんだがな…… いつもは飄々としてる久がキャプテンの前だけは…………
239 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/10/12(月) 17:06:30 ID:upDGoD/M
≫237 すみません。 以後、気をつけます。 部長が、キャプテンを夜の公園に、呼び出し、デート。 っていうのをみてみたい。
>>238 わかる、わかるぞ
あと部長は攻めてる時は強いけど攻められると弱いみたいなそんな感じがする
>>239 何もわかってないようだから敢えて言うが、メール欄に半角でsageっていれような
>>240 優しく教えてくれてありがとうございます。
えっ、これってキャプテンの片思いじゃないの?
243 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/10/13(火) 01:08:14 ID:CJ1hew9M
そうだよ
SS透華します。
>>240 さんの意見に賛同し、キャプテン×部長で。
微エロありです。
「楽しかった」 合同合宿ニ日目の夜。 私の口をついて出て来たのはそんな感想だった。 全国に向けて強化合宿を四校合同で開くというのは、私の思い付きで、参加してくれるがどうかわからなかったけれど、四校とも参加してくれた。 初日は、ほぼ自由時間。そして本日二日目はほぼ麻雀漬けと、二日とも有意義な時間を過ごす事が出来た。 鶴賀の加治木さんは、全国の猛者達のデータを清澄のためにと渡してくれた。 いざ話してみると同じ三年生だからか、話が良く合った。落ち着いた物腰で話し方にも知性が感じられた。 いつもその側にいた一年生の東横さんは、最初その存在に中々気が付かなかったけど、個人戦の時の話や、三人で話しているととても健気で一途でいい子だと思った。 来年清澄には負けないっすよ。とも言われ、二年連続の全国出場も中々楽ではないなと感じたわ。 二人はいいカップルね。と言ったら二人とも真っ赤な顔をして手を横にぶんぶんと振って否定したけど、どこからどう見てもバカップルね。 同じ鶴賀の蒲原さんは、団体戦で私が不敵な態度を取ったにも関わらず、まるでその時の事など忘れてるかのように、普通に接してきた。 いつもワハハと笑っていて、マイペース。 まるで一家に一台。的な存在だなと思った。 予選の時、部長と初めて知った時は驚いたけどね。
大将戦で恐ろしい闘牌を見せた龍門渕の天江さんも、この合宿では可愛らしい少女にしか、見えなかった。 藤田さんから頭を撫でられるのに弱いと聞いてたのでこっそり撫でてみたりもした。 ……あれは可愛いすぎて色々な意味でまずいわね。 風越の猫みたいな二年生、池田さんには、なぜか卓球勝負を挑まれた。最初は敵意むき出しだったが、終わってみると、なぜか美穂子の良さについて語り合う会が始まり、その後には、久さん。と呼んでくるぐらいになった。 その愛らしい表情に美穂子が可愛いがるのも分かる気がした。 とまあ、他にも本当に沢山の人と会話したり麻雀したりで、とても濃い二日間となった。 明日からも楽しみね。 と窓から星を見ながらお茶を飲んでいると、私の携帯がぶるぶると震えてメールの着信を知らせた。 相手は、私の恋人、美穂子だった。 いまからいっしょにおふろはいりにいきませんか?よぞらがきれいですよ。 ……美穂子が機械音痴だと知らなかったら、震えて夜も眠れないだろう。 最近ようやく携帯の使い方を覚えたらしいけど、変換などはまだまだみたい。 分かったわ。と短い返事を返し、私はお風呂に向かう準備を始めた。 「恋人からか?」 「な、なんで分かるのよ」 「あんたメール見てた時に、ニヤけとったし。なあ、みんな」 「はい」 「そうですね」 「そうだじぇ」 「………………」 皆から生暖かい視線を背中に受けながら自分のだらしなさに一つため息をつき、私は部屋を出ていった。
美穂子とは、県予選で再会して以来、まだそんな時間は経っていない。 でも個人戦での戦い、清澄に来て一緒に花火を見た事、それから何回か遊んだことなど短かったけどすごく濃い時間を過ごして晴れて付き合うことになった。 まあ、この辺りの話は話すと長いんだけどね。 そんなことを考えていると、あっという間にお風呂に到着した。 脱衣所に入ると、椅子に美穂子がちょこんと座っていた。 周りを見渡すと、他には誰もいないみたいだ。 「お待たせ」 「あ…こんばんは」 「やっと二人きりになれたわね」 「そうね…あなた色々な人と楽しそうに話してるんだもの」 「妬いてるの?でもあなたもそうじゃない」 「ふふ…お互い様ね。それじゃ入りましょうか」 「はーい」 浴場に入り、まず頭を洗おうとする。 「私が久さんの頭と体洗うわ」 「え…体も?…いいわよ。そんな自分で」 「私じゃ、駄目ですか…」 「え、えーと…」 「久さん…」 愛する人に上目遣いでそう言われると、流石に拒否できるわけもなく。 「かゆい所はないですかー」 「ええ、上手いわね」 「良かった♪」 今この状況を私を知る人達に見られたら、私のイメージは崩壊するだろう。 美穂子はお母さんみたいで、本当に甘えたくなってしまう。 でも、我慢よ。私。 美穂子の前では、美穂子が好きになってくれた竹井 久でいなければならないのだから。
「よし。次は体洗いますね」 心地よい洗髪を終えて、次は体を洗ってもらう。 美穂子に体を洗われるなんてドキドキするけど、まあすぐ終わるだろうし、大丈夫よね。 ーむにゅっー 「んっ…」 「ち、ちょ美穂子!?なにを…」 背中には美穂子の柔らかく豊かな胸の感触が感じられた。 「ねえ、久さん…」 美穂子の柔らかい胸の感触と甘い声色に鼓動が早くなる。 「私久さんの色々な一面を知りたいんです。いつもの飄々としてて、冷静で、格好いい久さんとは違う一面を…」 「え?何言って…」 「だから…悪いですけど今日は私にさせて下さいね♪」 「あっ…!」 そう言うと美穂子は石鹸のついた手で私の胸を優しく揉み始めた。 「……っ」 私は声を出さないように必死に堪える。 ここで喘いだり、取り乱したりしたら、美穂子の思う壺だ。 「堪えなくてもいいですよ。私、久さんの気持ちいい所、全部わかりますから…♪」 美穂子の目は、いつの間にか両方見開かれていた。 「…っん…あっ」 「久さんは、胸がすごくいいみたいですね」 「っ…そ、そんな、ことな…いんっ…」 美穂子の手は優しく、時には激しく強弱をつけて私の胸を責め立てる。 「美穂子っ…やっ」 「もっと久さんが気持ち良くなる所みたいです…ふふっ…」
美穂子とは、何回か体の関係も持った。 でも、その時はいつも私が美穂子の事を責め立てて、気持ちよくさせて終わっていた。 だから私には、責められる免疫などはなく、これからどうなるのか、という恐怖心も芽生え始めてきた。 「だんだんここ、固くなってます…」 美穂子の指が容赦なく胸の先端を押したり、摘んだり、巧みな手付きで私を快感へと導いていく。 「あっ…みほ、こっ…あっ…ん…」 「気持ち良いですか?」 美穂子が意地悪な質問をしてくる。そんなの見れば分かるでしょうに。 「っ……ゃっ…」 「ちゃんと答えなきゃだめですよ?答えてくれたら、こっちもしますよ」 美穂子が私の前に回って、手で私の潤った秘所をつん、とつつく。 それだけで私の身体は快感に打ち震える。 「あ…っ…ふあっ…」 「どうなんですか?」 「き、きもち…いいっ…のっ…」 その言葉を発した瞬間、私の中の理性は何処かに行ってしまう。 18年間人に見せなかった、私自身も知らないような一面が表に引きずり出されていく。 「よく言えました♪」そう言って美穂子は、私の中へと指を沈めていく。 「んああっ!…す…ごいっ」 美穂子の指が中に侵入すると、それだけで達しそうになる。
「ふ…あっ…ん…」 美穂子の指が動く度にぴちゃぴちゃと水音が響き渡る。これが自分の出している音かと思うと、とても恥ずかしい。 「久さんの中、凄く濡れてます…えっち…です」 「あっ…ゆ、わないでっ…ん…」 普段の美穂子からは想像できないような言葉が次々と出て来て、私の羞恥を煽る。 でも、今の私にはそれさえ心地よくて。 何回でも、これを味わいたいと思うようになってしまっていた。 「そろそろ…かしらね。」 「んああっ…っ、み、ほこぉ…んむっ」 喘ぎ声の漏れる唇を美穂子が強引に塞ぐ。 「ひささんっ、好きですっ…格好いい久さんも久さんも好きですけど、甘えたり、こういう風にいつもと違う久さんも全部大好きです!」 彼女の熱い告白に、私の持っていた「この子の前では強い私でいなければならない」という自尊心は崩れさっていた。そしてー。 「やっ…わたし、も…みほこのこと、…だいすきぃっ!んあああっ!」 ひとしきりの想いを伝えた後、私の意識は白く染まった。 「暖かいですね♪」 「ええ、本当だわ…」 私達は広い温泉に二人寄り添って浸かり、語り合っている。 「すごく可愛いかったですよ♪…また何度でもみたいです」 「もう…美穂子があんなことするなんて思わなかったわ」 「久さんが近くにいるのに話したり出来なかったから、久さんが欲しくてたまらなかったんです…それと」 「それと?」 「恋人の私としては強いあなただけじゃなくて可愛いあなたも見てみたかったの…これからは私にも甘えたり、して下さいね♪」 そう言って美穂子は最高級の笑顔をこっちに向ける。 全くもう…この笑顔がある限り、何でも受け入れてしまいそうだ。取りあえず今はー。 「美穂子」 「なあに?」 「だいすきっ…」 「…私もです♪」 美穂子の胸に顔を埋めて甘えることにした。
以上です。 キャプテン攻めもいいと思うんだ。 では、失礼します。
>>252 とても素晴らしいです。
また、書いてほしい。
>>252 GJ、良かった
俺240だけど妄想ネタでもなんでも言ってみるもんだな…
訂正です
>>251 ×「ひささんっ、好きですっ…格好いい久さんも久さんも好きですけど
〇「ひささんっ、好きですっ…格好いい久さんも好きですけど
申し訳ないです。
漫画もアニメも竹福が一番 この二人って何か似てるよな
竹福って言い方初めて見たw うまそう
竹福って名の肉屋があったな… 肉屋……夕飯の買い出しに行って…
夕食の買い出しに行ってなかなか帰ってこない美保子 心配した久が迎えにいってみると肉やで買ったソーセージを野良猫にやっている美保子を発見 もちろんかえってお仕置きだね
>>259 ×美保子 ○美穂子
お仕置きですねww
>>259 何やってんのキャプテンwwww
和んだ
>>259 ホントにやってそうだから困るw
部長は意図的にキャプテンをハラハラドキドキさせてそうだけど、キャプテンは無自覚に部長をハラハラドキドキさせてそうだ。
>>259 「ますは冷え切った体をあっためないとね」
「じゃあお風呂で綺麗にしてあげるわね」
「首輪もなかなか似合うわね」
「あ、こらっそんなに舐めないで///」
野良猫プレイですね、わかります
>>259 さんの意見を(ry
「美穂子…遅いわね」
美穂子が夕飯の買い出し出て、数時間が経過していた。
今日は腕によりをかけて作るわよと行って出かけて行った美穂子の笑顔が脳裏に浮かぶ。
迎えに行こうかな…いや流石にそこまでするのは美穂子を信頼してないみたいで…でも心配だわ。あの子のことだから誰かに騙されて…いや流石にそ(ry
玄関と部屋を数往復しながら私が導きだした結論は迎えに行く、というものだった。
「見つかるかしら…」外に出ると眩しいくらいの夕日が私の目に飛び込んできた。
暗くなる前に見つけないと…
暫くして私の耳に飛び込んで来たのは、にゃーにゃーという猫の鳴き声。
何故だかその声が気になり、そちらへ向かうと…
「美穂子!」
「ひゃいっ!?」
やっと見つけた。
良かった…
「何してたのよ…遅いから心配したわ」
「ごめんなさい…この子がお腹を空かせてそうだったから…」
む。中々可愛いじゃない。これじゃ怒るに怒れないわね。
「ごめんなさい…迷惑かけて…」
こっちも可愛い過ぎる。これで怒ったら私は鬼だ。
「…お仕置が二つ必要ね」
「……!はい…わかりました…」
しょんぼりした様子で答える美穂子。
「じゃあ一つ目は…」
「あのー…」 「な、なに?」 「本当にこれがお仕置きでいいの?」 「わ、私がお仕置きって言ってるんだからいいのよ」 「はあ…」 一つ目のお仕置き。それは一緒に手を繋いで帰る事。 恥ずかしがる美穂子をからかってやろうと思ってたんだけど…大失敗。 だって私のほうが恥ずかしがってるんだもの。 美穂子はこれがお仕置き?みたいな顔してるし… 真っ赤に染まる顔を美穂子から隠してくれる夕日に私は少しだけ感謝した。 二つ目は、ちゃんとしたお仕置きにしなくちゃね。 すごく心配したんだから…
以上です。
>>253 >>254 ありがとう。
逆に部長がキャプテンにお仕置きされる話もみたいです。
>>267 そこまでいったら書きましょうよ
竹福カワユス
270 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/10/26(月) 09:30:51 ID:k7xKjH09
ほす
単発SS書いたので投下してみます 初めてなのでお見苦しいかもしれませんがご了承下さい。一レスだけ失礼します
「う〜ん…みほこ〜」 ぎゅうーっ。突然、上埜さんに後ろから抱き締められて顔がポーッと火照る。 「わわっ…う、うえのさ…ん」 「んー?なあに?」 「急に抱きつかれたらびっくりしますよ…っ」 「だって、美穂子がぷにぷにしてて気持ち良いんだもの」 私の耳元でくすりと笑う上埜さん。 「美穂子…」 「はい…」 上埜さんの手が、ゆらりと私の胸を服の上から撫でる。 「ひゃっ…!」 「好きよ…」 「わ、わたしもっ……」 首元に吸い付かれてチューッと音を立てられる。 そして次第に私の下腹部は熱を帯びてくる。 「ふう…っ、うえのさん…ひゃうっ」 「ねえ…どうしてほしい?」 あ…また、そんな意地悪な質問を。答えは一つに決まってるじゃないですか。 「…た…い…です」 「え、なんだって?聞き取れなかったわ」 「え、そんな…」 恥ずかしさに拍車をかけられ、私はそのまま黙ってしまった。 「あれー?美穂子、静かになっちゃってどうしたの?」 もう…この人は、本当に意地悪なんだから。 私は上埜さんの腕を解いて振り向き、すぅーっと深呼吸をする。 「上埜さんっ!!!」 「はいっ…」 「私は上埜のさんのことが世界で一番大好きです!あなたのためなら、いつだってこの身を捧げます!!」 私が勢いに任せて自分の気持ちを伝えると、こんどは上埜さんがうつむいて、黙ってしまった。 「……………………」 「あのっ…上埜さん?」 私は上埜さんの顔を覗き込む。 「…!み、みないでっ」 すると、バッと手で顔を隠してしまった。 「え…あの、上埜さん?」 「急に…」 「はい…」 「急に、あんなこと言われたら恥ずかしくなるじゃないっ」 「えっ…」 「やっぱり、あなた…自覚してないでしょ?」 「じかく…?」 「美穂子はたまに突拍子もなく大胆なことを言うんだから…。心臓が飛び出すかと思ったわ…」 「はぁ…」 私は正直に自分が思っていることを伝えただけなのですが… 「もう。私を恥ずかしい目にあわせた罰として、今夜はたっぷり苛めさせてもらうからね?覚悟しなさいっ」 「えっ!罰ってなんなんですかっ?私、何か悪いことしましたか…?」 「もう…良いからベッドに行くわよ」 「はい…」 なにがなんだか分からないまま、私たちはベッドへ行き、その後はとても甘い時間を過ごしたのでした。 終わり
GJっす! キャプテンの自覚なし大胆発言に参っちゃう部長って構図好きだわー
hoshu
俺、規制が解けたら部キャプSS投下するんだ…と思い続けて早幾日 規制が解けないどころか全然書けない自分にガッカリ ちょっと部長に叩きつけられてきます
以前部キャプ(以下竹福。この呼び方はイカしてる)で連載させて貰っていた者です。 キャプテン攻めと「竹福」に萌えたので、また書いてみました。 前回の続きめいた感じで、さらに規制で時期を逸しているのですが、 またよろしくお願いします。
改めて考えてみると、性行為というものは実に面倒なものだ。必ず四方を壁に囲まれた プライベートな場所で、しかも何か柔らかいものの上で行われなければならないし、事後 には必ず井戸の底に突き落とされるような疲労に付きまとわれる。さらに言えば通常のも のだけでなく男同士でも女同士でも、個人差はあるだろうが少なくない量の液体が流れる。 匂いもある。事前にあれこれと頭の中だけで想像すると、なんで人間はこんなことをしたが るんだろう、と奇妙な気分になってしまう。 ということを美穂子に話してみると、いかにもおかしい、という風情を全身に表して、彼女 はころころと笑声を上げた。ハムスターが風車を回す時のような声だった。私も苦笑いで 返した。何せ場所は自室のベッドの上で、姿は2人とも一糸纏わぬ状態だったからだ。 「久は私が何を聞けば笑ってしまうのかを心得ているのね」 ひとしきり笑ったあとで、美穂子はぐるりと首を回した。横になるのが疲れると、私たちは ベッドに座り込む。私は毛布を抱え込み、あぐらをかいてのんびりとしているが、美穂子は 足を崩していても揃えているし、姿勢もだらしなくはない。ぎしり。わずかなベッドの揺れを、 美穂子は器用に身体から逃がした。 「だって本気で思うんだもん。美穂子が目の前にいないときは」 「じゃあ、私が目の前にいるときには?」 「少なくとも抱きしめたくはなってるわ、いつもね」 まあ、と美穂子は笑った。私も幸福感に包まれながら、多分頭の隅の方で、でもなあ、 なんて思っている。人には聞かせられない恥ずかしい話だ。私自身、独りで冷静になって みると、恥ずかしさで転げ回ってしまうかもしれない。そういうことを平気で言えるというの は、やはり性行為というのは、それだけ複雑な手続きを踏むだけのことはあるのだろう。 人間をこんなに素直に、というよりは狂気に足を一歩踏み込んだような状態にさせるのだから。 それは美穂子にもそう作用するのか。顔を赤くし、俯かせながら、彼女はぼそぼそと 本音のようなものを呟いた。 「私もね、少し思ったの」 「ん? なに?」 「一度脱いだ下着ってね、洗濯しないと、もう身に付けたくなくなるのね」 ああ、と私は頷いた。 「わかるわかる。5分穿いただけの靴下とかもさ、一度脱いじゃうとなんか汚くなったみたい に思えるよね」 「そうなの」 美穂子はいかにも真剣そうに、頬に手を当てて頷き返した。 「だからね、久」 そして、顔の赤みを深くして、呟いた。 「私、替えの下着を持ち歩くようになっちゃったわ」 美穂子の身体までが綺麗にピンク色に染まる。話の内容も相まって、私も慌てて目を 逸らした。その、いつでもセックスをする覚悟がある、ということに等しい内容は、美穂子が 口にするにはいささか性的すぎる内容だったからだ。ちらりちらりと美穂子の足の付け根 に視線を送ると、いかにも恥ずかしげに美穂子はそこに手を置いた。私はさらに目を逸らした。
お互いの身体が標準からどのようにずれているのか、それとも実は標準そのものなのか、 そういうことも私たちにはよくはわかっていない。お互いが初めて愛し合った女性だったし、 そういうことに対する知識も少ないからだ。また性交渉に関する知識もそうはなく、私たちは 日々手探りで、それに関することを行っている。と言っても、結局はまだ数回程度しか経験 はない。互いの家に家族がいないと確信できるときでなければ出来ないし、なんとかホテル に行くほどのお金も度胸も持ち合わせはない。性欲なんてなければ幸せかなとも思う。とは いえ、美穂子の白くてやわらかい、しっとりとした肌や、ピンク色にわずかに存在を主張する 胸の突起、くすぐったそうに辛そうに身を捩らす仕草や、目を逸らしつつ小さく声を潜めて喘 ぐさまなどを想像してしまうと、私自身も胸がどきどきとしてしまうのではあるが。やはり人間、 本能からは逃れられないものらしい。 美穂子の痴態は、一度瞼の裏に張り付いてしまうと、容易にはとれなくなる種類のものだ。 それは日々の生活のどこかしらで、するすると表に出てきてしまう。教室でノートをとってい るとき、その紙の白さに目を焼かれて。ぐいと白を盲牌するとき、その手触りを思い出して。 日常生活の様々な部分で、様々な美穂子の姿がぬっと顔を出してくる。それは勿論心地よ いものだが、その心臓を柔らかくしかし急激に包み込まれるような気分は、簡単に慣れるも のではない。たまに過呼吸でも起こしそうになるのではないかと感じてしまうのだ。 ただ、私が最も心を乱されるのは、美穂子が私でそのような症状を起こしているとしたら、 と想像する瞬間だったりする。 美穂子の部屋でしたのは過去に2回だけだ。そのときはどちらも恋の熱情にやられ、頭が パンクでもしそうな状態で行っていたために気付かなかったのだが、実際美穂子の部屋は、 私にとってアウェーである。なにせ四方八方から美穂子の匂いが漂ってくるのだ。机や本か らですら、ふわりと美穂子の存在が主張される。もはやどうしようもない。布団に顔でも押し つけようなら、などと考えると、それだけで顔のあたりの熱量が増すし、腹部が何か、なんと も言えない感じになる。それが生理中の、あの腹の内部を大勢の小人に蹴られてるような不 快感とは全く違うところが、私をとても恥ずかしくさせる。 だから今回、美穂子の部屋で唇を奪われた時に、ああしまったな、うかつだったなと思った。 思ったが、もう仕方ないなとも感じた。なにせ美穂子に会うのは10日ぶり、声を聞くのは3日ぶ りだ。その間、美穂子のフラッシュバックに悩まされ続けた私には、かなりの飢餓感がある。 そんな私が、前後上下左右、美穂子で溢れている部屋に入ればどんな状態になるかは、火を 見るよりも明らかだろう。
「……久」 水音とともに、何かに取り憑かれているような目で、かすれた喉で、美穂子が私に覆い被さってくる。 布団の上で半身になって、私はぼんやりと美穂子を見上げた。 「美穂子」 発音した途端、また唇が呑まれる。途端にお腹が重くなる。あーあ、と頭の隅が唸った。替え の下着が必要というのは、確かなことなんだなと。それをされただけで、多分下着が湿るくらい に何らかの液が分泌された、という感触が登ってきた。 鼻だけで呼吸をしながら、身を絡ませ合った。甘くて熱い鼻息が、身体の隅々に染みていく。 んん。ふぅん。どこが天井かシーツかわからなくなる。息や体温が服ごしに混じり合い、ぐるぐ ると渦を作っている。 「美穂子ぉ」 自分が発声したとは信じられないくらいの、甘ったるい声だった。きっと清澄では誰も私と は信じてくれないだろう。ごくり、と美穂子の喉が動くのが見える。でも仕方ない。こんな八 方を美穂子に囲まれたような状態で、私に抵抗などできるわけがない。 美穂子が私の部屋でそうなるように。その想像が、私の頭にさらなる膜をかけていく。私の 匂いで興奮している美穂子の姿は、私にとって最高の媚薬になる。 上手くできたかどうかわからないが、私は美穂子に微笑んでみた。淫靡な、相手を誘うよ うな表情を狙ってみたのだが、美穂子にどう映ったのかは不明だ。鏡の前でそんな練習を したこともない。でも、その表情のままでぐいと上着を上げたとき、まるでシマウマを捕食す るライオンにも似た風情で、美穂子が覆いかぶさってきた。 「久。久、お願い……」 何かに耐えるように言うと、じっと私の目を覗き込む。その顔はぼわんと真っ赤になり、 性的な、しかしいつも私の下にいる時とはまた別種の、肉食獣のような部分も垣間見せている。 「……私にさせて」 囁くように、耳元で言った。思わず微笑みそうになり、私はまず背筋を伸ばした。そして下 から、美穂子をぐっと抱きしめる。頬と頬を擦り合わせて、私は耳元で囁いた。 「たっぷりお願いね」 わざわざ言わなくてもいいのに、黙って犯してくれる方が心地いいのに。あんなに熱い声 でそんなことを言ってしまう私の恋人が、私は愛おしくてたまらないのだ。 触れ合った頬は、熟した桃のような感触だった。 ブラを外した途端、獣のように美穂子が被さってくる。その熱い吐息のままで、喉の横の 方にかぶりついた。ん、と私の喉が鳴る。美穂子はれろ、と口の中で喉の皮膚をなめ回す と、手で器用に私の乳房をまさぐった。随分と冷静だ。悔しさのようなものを感じながら、 でも私の感覚が熱を帯びていく。 ゆっくりと確実に、美穂子の手は私の乳房を変えていく。ぎゅっと握る。ふるふると揺らす。 指先から脂肪を溢れさせる。ゆるりゆるりと上下させる。それでも、敏感な突起には触れ ない。どんどん身体が愛撫に物足りなくなっていく。たまらなくなって、はあ、と私は息を ついた。 それが合図になったかのように、美穂子の顔が下に降りていく。鎖骨を歯でなぞり、胸骨 に唇で触れた。ぞくり、ぞくり。私の脊椎が期待でりんりんと鳴っている。わずかに、美穂子 が微笑む気配がした。思わず目を開いた瞬間、きりりと私の敏感な部分からの刺激が、 身体と快楽中枢を灼いた。 「あぅぅっ」 思わず声が出る。と同時に、びくりと上半身が折れ曲がった。右の乳首を吸いたてられ、 左の乳首は美穂子の親指と人差し指の中にある。 意識しないうちに、右手がシーツを掴んでいた。開けたと思った瞼は既に閉じられている。 突起をぐりぐりと握られ、やわやわと押さえつけられ、舌の上や下で弄ばれ、歯で細かく 激しくいたぶられる。乳房の柔らかくゆっくりと持ち上げられる感覚とは違い、それは与え られるたびに目の奥に光が走り、頭の奥がちりちりとなるものだった。 数分後、美穂子が乳首から口を離した。安心する間もなく、唾液混じりでさらに敏感に なったそこへ、指と爪が攻撃をしかけてくる。ぅぅ。唸り声のようなものがでる。 「ひさ」 耳元から、美穂子の声が侵入してきた。応える余裕はない。両手で器用に両胸を弄りな がら、美穂子は一度頬に口を付けると、また耳元に顔を移動させた。
「声、聞かせて」 きゅっと乳首が抓られる。うんっ。痛み半分甘さ半分の声が、頭の上から漏れる。目はき つく閉じた。歯も食いしばっている。美穂子は優しげな、しかし情欲に濡れた声で、私の身 体の中に熱を送ってきた。 「いっぱい、聞かせて。久の声、いっぱい、私に刻んで」 美穂子の匂いに囲まれて。美穂子の身体に包まれて。美穂子の声に入られて。私の身 体は既に私のものではないようだった。私は身を捩りながら、美穂子の愛撫に耐えていた。 「ひ、ぃっ……」 その部分を布越しでいじられると、それだけで声が出る。そんな部分が身体にあるというのが 信じられない。胸の突起を吸われながら、下着越しに触られる。その刺激だけで何故砂糖をま ぶしたケーキのような甘ったるい声が出て、陸に上がった魚のように身体がぴくぴくと震えるの か、私にはとうてい理解が出来ない。 美穂子の愛撫は、ゆったりとしていても相当にねちっこかった。同じ部分を長い長い時間を かけて、様々にいじくりまわすのだ。それが身体に染みていく。こちらの状態をまるで観察し ているかのようだ。とても美穂子らしいと思う。しかしそれが私の身体にとって幸福なことな のかどうかは、よくはわからない。 横抱きのような姿勢で、美穂子は指を下腹部に差し入れ、実に器用にくにくにとその部分 を愛撫している。それがあまりに的確なので、私には喋る余裕がなくなっていた。常に感じ ているわけではないが、私が喘ぎ声と涎以外のものを口からはき出そうとすると、枕にして いる片腕を器用に動かし、唇でそれを塞ぎにかかってくる。涙が出るほどに正確なそれに、 私は踊らされ続けていた。まさに好調なときの美穂子の麻雀を、身体で再現されているよう だった。 「下着の替えなんて、持ってないわよね」 熱を帯びても静かな声が、私の肌を撫でている。余裕たっぷりに答えようとしたけれど、 声が出る瞬間にまた敏感な場所を責められた。いぃっ。結局は意味のない喘ぎ声が、喉 の手前から漏れただけだ。 生理のとき以上に分泌されている液体は、下着を容赦なく濡らしている。 「そろそろ脱ぐ? このままがいい?」 子猫に話しかける優雅な貴婦人のように、ゆったりとゆったりと、美穂子は私の耳元に 声を送り続ける。私はびくりびくりと跳ねながら、それを身体に溜め込んでいる。 また答えようよした瞬間に、今度は唇をふさがれた。美穂子は私の身体の状態すべてを 把握しているらしい。しかし今の私にそんなことを考えている余裕はない。与えられた唇 による愛撫を、腹を空かした豚のように貪るだけだ。 指をぐにぐにと動かされたままで、咥内を舐られる。私も自然と行っていたその愛撫が、 これほどまでに身体に効くものだとは思ってもみなかった。思考回路が寸断され、まとも に快楽を受けてしまうのだ。性的な部分の感覚が鋭くなり、それ以外が限りなく鈍くなる。 今や私は、アザラシのように悦楽に蠢くだけの存在になっている。 ぷあ。唇を離すと、美穂子は笑った。両目が緩く開いて、完璧に妖艶な何かが浮かんでいた。 「久の味がしなくなった」 ぎりりと布越しに指を突き立てられた。涎交じりの顎が仰け反らされる。 「私、久を食べちゃった」 今の瞬間、大量に液体が分泌されただろう。その確信と、純粋な羞恥で、私の何かが 壊れた。たまらなくなって、両腕で顔を覆う。そんなことをしたのは初めてで、それがさら に羞恥を煽った。最後に映った美穂子の顔には、やはり妖艶な色が浮かんでいた。
「ううぅぅぅっ!!」 いつ下着を脱がされたのか私は覚えていない。そしていつ自分が自分の足を抱え、美穂 子のされるがままになっていたのか、それも覚えていない。ただ、股の間が、快楽か羞恥か それらの混ざったものによるものか、かつてないほどに熱かった。 「あぁぁ……」 普段は隠し、見られないようしている部分に、美穂子の顔がぐいと突っ込まれ、あまつさ えぺろぺろと舐められている。その事実だけで頭がおかしくなりそうなのに、美穂子はまた 的確に私を責め立てた。口元に垂れた自分の涎が気にならないほどに、私の感覚は一部 分だけに集約されている。 脚を大きく抱えられているので、私の敏感な部分はすべて美穂子にさらけ出されている。 美穂子は目を伏せ、普段の母親のような表情とは完全に違う色のもとで、私への愛撫を 行っている。 「ひ、ぁ……」 太股をれろりと、舌で嘗め回される。普段ならくすぐったさを覚えるであろう感触が、身体の 内側をまるで生卵を捕むときのように、快楽を刺激している。そしてすう、とそこに意識がいった 途端に、指が性器の突起を刺激しにくる。私はまさにまな板の上の魚のように、美穂子の愛 撫のされるがままに、びくりびくりと跳ねているだけだ。 「久は、素敵だね」 呟くような声と共に、膣にふうっと息が吹きかけられた。 「ひゃん!」 頭のてっぺんから出たような声は、いったい誰のものだろう。羞恥で赤い顔がさらに赤く 赤くなり、思考力がどんどん奪われていく。 美穂子がくすりと笑った気配がする。 「らいふき」 突起を口に含みながら、美穂子は声を出したらしい。敏感な部分が歯や舌や粘膜にあた り、ぐるぐると震える。電気が通るというのは本当のことだ。 「いつもかっこいい久の恥ずかしいところ、もっと見せて」 いやぁ。また、自分のものでない声が出る。導線で作られた哀れで愉快なマリオネットの ようだ。 美穂子は左手で乳房を揉みしだきながら、右手で膣を弄くり回している。入り口をくにく にと刺激したと思えば、内側を指のひらで撫で回し、ふいに奥に突き入れたりもする。ど こで覚えたのだろう。私はこんな責めをしているのだろうか。そんなことを考えている余裕 は既にない。ただただ、美穂子に身体ごと弄ばれるだけだ。 「みほこぉ……」 1時間くらい前まで竹井久だったはずの物体が、まるで溶けたバターのように弱々しい声 を上げ、死にかけのカエルのようなひ弱さで身体を蠕動させている。口の中で転がされてい る胡桃になったような気分だ。すべての場所から、美穂子の身体のすべての部分が、私の 身体のすべての部分に愛撫を繰り返している。 「好きよ、久」 「みほこぉ、みほこ、みほ、お、あぁぁ……」 背骨にハッカでも仕込んだのか、と感じるほどに背が一定しない。上に跳んだり、右に捻 られたり、自分の意志から完全に逃れている。 「いぅっ。あっ、はあぁぁっ」 「久。久。久。久」 お腹から高まってくるのがわかった。それは心臓を突き抜け喉元を抉り、唇に予感をたぎ らせ鼻腔を抜ける。 「来る。来るよっ。みほこ。みほこっ」 すべてを了解したように、美穂子は膣口に口を付けた。私が最も求めていた部分への、 最も求めていた愛撫だった。美穂子は両足で抱きかかえるように私の背中を挟み込むと、 それこそ捕食するような勢いで、私の膣を吸い込んだ。 きゅぅぅ、と口の中で何かが鳴った。下腹に杭が打ち込まれた。脳がぐるんと裏返った。
「みほこっ。来るっ。みほこ、みほこっ」 「いいお、いあ」 子宮の中に子どもがいたら吸い込まれてしまうと思った。私のすべてが吸い込まれたら いいと思った。氷混じりのジュースをストローで吸い込むような音が、耳の奥から響いてき た。唇のあたりがぬめぬめとした。喉の奥は焼けそうだった。 「やだ。やだ。みほこ。みほこ。やだあっ。あ、あ、あああ……」 シーツを握っていた両手を、美穂子の手が探り当てた。反射的に私はそれをぎゅっと 握った。美穂子も同じ力で握り返した。 美穂子と、繋がった。美穂子に、繋がれた。その感覚が、瞬間的に身体の中で弾けた。 「うううぅぅぅ……」 まるで爆発するように、背骨が破裂した。美穂子の身体から逃れるように、右に2度蠕動 する。黒目がぐりんと後ろに行った。感覚が何か妙な状態になり、白い遠くのところに押し 出されていく。自分の存在がふにゃふにゃと落ち着かない。はっ、はっ。短い息が遠い。す べてが遠い。これが幸せということなのだろうか。それとも全く別の何かなのだろうか。わか らない。わからなくていい。美穂子がいる。こんなに近くにいる。だからいい。全部いい。ねえ、 美穂子。そうでしょ、美穂子。美穂子。 蠕動を続けていた私の身体がどさりとシーツに包まれるまで、5分ほどの時間がかかった。 意識はわりとすぐに戻ってきた。飛んでいたのも、多分数分くらいだろう。何か形容し難い だるさが、蓑虫のように私を包んでいた。今が私一人だったならば、このままぐっすりと眠り 込んでいたのかもしれない。 しかし私がぼんやりとでも覚醒したのは、ある種の息苦しさを感じたからだ。猫が顔の上 で寝ているような心地、と認識して、ああなるほどと気づいた。先ほどまでの行為の相手が、 私の唇をきゅうきゅうと吸っているのだなと。 電気が通ったあとのような身体の感覚を、苦労して掴みにかかる。唇は口の中の飴を弄ぶ ように、完全になすがままだった。その感覚だけでも、彼女が普通の状態でないことがわかる。 気づかれないように呼吸を整えると、ばきばきと関節が鳴っているのを無視して、思い切り 行動に移した。側でかがみ、私の唇を夢中で吸っている美穂子の身体を、ぎゅっと抱きしめる。 のと同時に身体を反転させて、ベッドの上に美穂子を押さえつけた。ひゃっ。可愛らしい声が 漏れた時には、既に私が美穂子の上に乗っかっていた。とはいえ無理をしすぎたのか、頭は ぼうっとしているし、左腕ががくりと折れた。それでも苦労して、にいっと笑ってみる。 「みーほーこー」 その左手で、眉をぎゅっと寄せている美穂子の頬を掴む。柔らかくてかなり熱を帯びている そこを、ぐにぐにと引っ張った。 「久」 「やってくれたなー」 「……ごめんなさい」 本気で申し訳なさそうにしている美穂子の表情が面白くて、私はにまにまと頬を引っ張り続けた。 「きもちよかったよー」 言って、頬に口付ける。美穂子の目尻には既に涙が浮かんでいた。まったくこういうところは どうしたものか。でも今はあまり深く考えられない。身体も限界だ。頬から指を離すと、またど さりと美穂子の横に倒れ込んでしまった。
白い天井が、まだちかちかとする目に優しく映る。 「凄かったよ、美穂子」 「……久が、いつもとあんまり違うから」 右手が、ぎゅっと握られた。美穂子の身体の方がはるかに熱かった。 「いつもよりずっとずっと可愛くて、なにがなんだかわからなくなったわ」 「美穂子」 手を握り返す。呼吸も収まってきた。地和を振り込んだ時以上の気怠さと、天和を上がった 時くらいの満足感が、私の心に降りていた。 「美穂子に可愛がって貰えて、私は凄く幸せだよ」 「久」 「美穂子は私を抱いて幸せだった?」 首の向きを変える。顔を真っ赤にして、目尻に涙を溜めた美穂子が、幾分恥ずかしそうに こくりと頷いた。 私はにこりと笑うと、身体を無理に動かして、その美穂子の頬に口付けた。 「またしようね」 至近距離で、みるみるうちに美穂子の顔が崩れていく。美穂子の涙の感覚も、付き合いが 長くなれば慣れてくる。私の身体を責めたことで、何か罪悪感のようなものを感じているのだ ろう。いつも自分がされているのに。気にすることなど全然ないのに。そういう自己罰的な部 分は、修正した方がいいかなとも思う。 ぐすぐすと泣いている美穂子を抱きかかえて、私はちらりとそんなことを考えていた。どちら にしろ、美穂子が泣きやむまではしばらくかかりそうだったし、また私と美穂子の付き合いだって、 そう簡単にはなくならないものだ。まあ、今幸せだし、いいかな。と自分を納得させて、私はゆ るやかに目を閉じた。眠り込む時間もまた、ある程度はありそうだった。 この恥ずかしさは何に起因するんだろうと毎回思う。性行為のあと、2人でのそのそと服を 着るのは。1人づつシャワーでも浴びに行けば少しはましになるのだろうが、人の家の廊下 を裸で歩き回るのも気が引ける。身体を拭いて下着と服を身につける間、相手の身体を見 ていいものかどうか、目を逸らすのは失礼なのかどうか、じっと考えてしまうのだ。 身体つきがあまり変わらないからか、美穂子のストックの下着は私の身体に違和感なく当 てはまった。するりと脚をそこに通して、私も換えの下着を持ち歩こうかとちらりと思う。私の 下着は既にぐちゃぐちゃだ。私に喘がされる美穂子がその恥ずかしい思い付きを実行に移し たのも、どうにも当然という気がする。 「……恥ずかしいね」 目を逸らしたままの私の肌が、喋りかけた相手が真面目にこくりと頷いたのを感じた。少し 笑って、制服のスカートを上げる。少し前まで好きやら何やら言っていたのが信じられない。 性行為のときは、本当に自分が自分でなくなっているようだ。あんな恥ずかしいことを、堂々 とできるなんて。
「……久」 美穂子の声が届いた。スカートをはいて、ブラもつけて、そろそろ恥ずかしさもなくなって いる。振り返ってみると、きっちりと服を身に着けた美穂子が、少し恥ずかしげに、そして誇 らしげに微笑んでいた。 「ありがとう」 その笑顔があまりに美しかったので、私の動きは止まってしまった。半歩近づいて、美穂 子は私の目を見つめた。 「美穂子」 「私といてくれて、私を抱いてくれて、私を受け入れてくれて。久、ありがとう」 恋人に面と向かってそんなことを言われて、嬉しくならない女はいないだろう。赤くなって、 泣きそうになって、俯いてしまうのも。ただ、素直にそうするには、私はきっと、竹井久であ りすぎた。いっぱいになった胸を喉のあたりで押し留めて、私はきゅっと唇を結んだ。こう いう場所こういう場面では、どうしても格好をつけたかった。目に涙がたまるのだけは、防 げなかったけれども。 ああ。今こんなに私が格好を付けたいのは、もしかしたら抱かれていたときに、美穂子に 甘えすぎたからかもしれないな。 涙混じりにくすりと笑うと、私も美穂子に一歩近づいた。 「その唇」 「え?」 「さっきまで私の舐めてた唇」 途端に美穂子は真っ赤になり、口を両手で押さえた。その仕草に私は心から笑って、 美穂子の側面に回り込んだ。 「こちらこそ、ありがとう。美穂子」 私の頬も赤くなる。それを隠すように、私は腕を美穂子の背中に回した。一瞬震える ように、美穂子の身体が動く。それでも構わず、私は軽く美穂子の身体を抱きしめると、 そのまま頬に口付けた。 こんなことをするりと出来るようになるなら、セックスも悪くはないかな、と思った。
以上です。再びありがとうございました。 漫画の方も全国に移り、今後竹福的展開はあるのかなーとちょっと心配な日々です。 スラダン風に言えば赤木と魚住みたいになるのかな。 キャプテンが、ボコボコにされてガックリしてる部長のところに実家の仕事服で登場して 「竹井さん。宮永照は松とすれば、あなたは竹よ。泥にまみれなさい」 とか言いながら去っていったら凄く萌える……かもしれません。 その後警備員にもっそい勢いで謝るキャプテンと、何やってんだか、と苦笑いしてる 部長のことを考えると、ええと、その、いい気分になります……。 ではまた、お会いできる日まで!
GJ! でもあなたのせいで大根カツラ剥きしてる美穂子が…w
キャプテン攻めなのにかわいいw この話の部長とキャプテンはやっぱりいいな 次も期待してます
GJ!! すっごい面白かった!続き期待してます! 読みやすいし文体も大好きだー
しかしここのスレタイトルの 【隔離スレ】 は何とかならんのか? アンチが立てたとか言われてもしゃーないセンスだ そりゃそうと原作 個人戦で部キャプ展開は没なんかね? 原作でカットされた個人戦で唯一の見どころのだったのに
経緯を知らない人がいたのか このスレ立てたのはアンチだよマジで 百合本スレで極度の竹福カプ嫌いが暴れてた時期があって、そいつが「お前ら邪魔だからこっち池」って意味でこのスレ立てた
投下に気付くのに大幅に遅れたが、
>>285 GJすぎるだろ…JK
今更だけど前回連載のキャプテンの告白シーンは本気で鳥肌が立ちました
まだ本スレにいるんだろうなぁ部キャプアンチの荒らし…
保守
294 :
クリスマスツリー ◆.lsSk9mKak :2009/12/03(木) 04:04:07 ID:qDyMfBu7
死んでくれませんか? by 福路
295 :
名無しさん@秘密の花園 :2009/12/04(金) 11:00:35 ID:dgUz1lhc
部キャプって最高だよね
保守
保守代わりに。 初めてはたった一度きり。 どこかで聞いたことがある。それはテレビだったか本で知ったのか忘れてしまったけど。 私も美穂子と迎える「初めて」の際には、美しい思い出残るように、とまだ付き合いだした頃に思い描き、夢を馳せていた。 ――そして本日いよいよ「初めて」の日を迎えようとしていた。 まずは軽いキスを交わす。最初はそれだけて恥ずかしがって沸騰しそうだった美穂子も、何度も数をこなしている内に自然に出来るようになっていた。 「…いいの本当に?大丈夫?」 「ええ。あなたを愛しているから…だから…」 もごもごと最後の方は小声で聞き取りにくかったけど確かに「あなたを私のものにして」って聞こえた。ぐはっ!そんな潤んだ目で言われたら理性飛んじゃうじゃない。無自覚ってなんて恐ろしいの。 「あ、あと…」 「ん?」 真っ赤な顔で首を傾げて 「や…優しくして…?」 ズド――――ン!! その時私の中の何かが爆発した。 だめだめ。「初めて」は美しい思い出になるように。美しいものに。美しいものに… 「…ごめん。無理かも」 「え、久?っきゃあ…!!」 美しい思い出にはならないかも。優しく出来る自信が無くなってきた。だって私の下にいる美穂子があまりにも魅力的だから。 以上。
わっふるわっふる!!
保守
ひっそりと300ゲト
保守
ほ
し
ひゅうま
ん
ふむ
ん
ご無沙汰しています。以前竹福でSSを書いていた者です。 本誌の竹福展開でテンションが上がったので、以前「キャプテン攻め」「浴衣」で書いて、 思い切り時期とか色々なものを外していたSSを投下したいと思います。 本当に色々とアレですが(エロもないし)、読んで頂ければ幸いです。
夏と呼ぶには風に氷を感じてしまう、夏祭りというには空気に寂寥感が多すぎる、そのよう な夜だったと思う。勿論冬ほどに寒い日であるわけはなかったし、多くの人が寂しいと感じて しまうような事象はなかった。もしかしたら寒さも寂しさも感じたのは私だけで、他の人は全く そんなことはなかったのかもしれない。 きっと、逆なんだ。福路美穂子という、私にとっての強烈な熱量を感じたせいで、あの夏の 夜が涼しく思えてしまったのだ。それほど、美穂子は熱かった。凄かった。愛しかった。それ 以外のものに、寂しさを覚えてしまう程に。まるで気温が10度も低かったように感じられる程に。 つまりは、私は美穂子が好きなんだな、と多分心底腑に落ちた、そんな夜だったのだと思う。 “夏の終わり” Gパンに目立たない白いカーディガン、5分もかからなかったであろう化粧姿の美穂子が目 に入ったのは、私と彼女の役割が同じだったからだと思う。はしゃぎ回る部員を後方で眺め ながら、気を配りつつも匂いつきの雰囲気を楽しむ。そのようなことをしている人間は、必然、 周囲の異常のようなものには敏感になるのである。普段心の底にいる人が周囲にいると、 自然に目がいってしまうように。 田舎にしては大勢の人間がそこにはいたので、風越の麻雀部のメンバー十数人は私たち に気づかなかったし、清澄の麻雀部のメンバーも彼女らには気づかなかった。グループ間は 最短距離にして5メートルは離れていたし、ざわめきも派手なものだった。もしかしたら親兄弟 でも気づかないくらいだったかもしれない。晩夏の祭りは派手になるものだ。 頬にわずかな熱を感じて、ふ、と目を上げると、美穂子の左目がふわりとそこにあったのだ。 それは売られているお面に沈み込みそうなくらいにひっそりとしていたけれど、決して埋もれ てしまうことはなかった。その瞳はきらきらと輝きながら、私の首筋あたりに焦点を合わせて いた。針で突かれるようなちりちりとした感覚だった。美穂子だ、と私は直感した。目線だけで 私に火傷を負わせられる人間なんて美穂子しかいない。美穂子だ。美穂子だ。しかし私の感 情が喜びへと変化する前に、その熱は拡散する。それは静かな川面のように、するりと皮膚 を流れていった。それでも、刹那にも近いわずかな時間、美穂子の瞳が、私の皮膚を愛撫し たのを感じた。それは喉の渇きにも似た寂しさと、夏の朝に水を貰った植物のような歓びを私 に感じさせた。美穂子も私を見ていた。その直感が、愛しかった。 映画の1シーンのよう、とはこういう瞬間のことを言うのかもしれない。部長、と自分を呼ぶ 声で、私の目がいつものものでないということに、私はようやく気がついたのだ。我に返って、 改めて視線を美穂子へと送る。既に美穂子は人混みに紛れていた。ただ、美穂子を守るよ うに、池田ちゃんが前に立って歩いているのが見えただけだった。彼女が右手に持つ林檎飴が、 火星のようにふらふらと揺れていた。 怪訝そうに目を顰める和に、わたしはああごめんと笑いかけた。その時にはもう、美穂子 の姿は私の耳の後ろあたりに流れてしまっていた。行ってしまった、と思った。瞬間、先ほ どまでの人のざわめき、ソースの辛さと何かの甘さが混じり合った独特の香ばしさ、汗ばむ ほどの下から登ってくる熱気が、一気に私を包み込んだ。包み込まれて初めて、自分が自失 するほどに美穂子に見とれていた、ということに気付かされた。一瞬の間を数分と錯覚するほどに。 いや、ちょっと違うな。歩き出し、かすかに一人ごちる。美穂子にではない、美穂子の瞳にだ な、と。宇宙をそこだけ切り取り、向こうの全く別の何かが透けて見えているようなあの瞳が、 私という存在をきりきりと刺したんだと。美穂子のそのほかの部分は、美穂子を認識した瞬間 に、あるいは私の脳の内部に吸収してしまったのかもしれない。目が、あの目だけが思い出さ れる。そもそも美穂子はそれほど目立つ格好、目立つ体格をしているわけではない。むしろ池 田ちゃんの浴衣姿の方が、よほど人の目を引く気がする。それでも、あの美穂子の瞳は、しば らくは私の身体から消えてくれそうにはなかった。刺すように、唇で吸いたてるように、まさに一 瞬で私のすべてを愛撫していったあの瞳を。 心臓が熱くなっていたので、私はパイナップルを一切れ買った。250円のそれは、甘みと冷た さで過不足なく私の内部を冷やしてくれた。鼓動がじわりじわりと冷静なものに戻っていく。火 照った身体が静まっていく。
ぼんやりしとんかー。まこが綿飴を囓りながら、肘で私を突っついた。京太郎と優希がはしゃぎ ながらヨーヨーを釣っているのを、さながら若い夫婦のように、微笑んで和と咲が眺めている。 皆で浴衣を着てきたせいか、和の胸はいつも以上に人の気を惹いているようだ。私は別にと軽 く応え、パイナップルの棒で肩を叩いた。歯に挟まったパイナップルが、少々気持ち悪かった。 出店は延々と続き、まるで夢の中のように終わりが見えなかった。水が跳ね返り、きゃっと優希 が小さく悲鳴を上げる。とんと人ごみに咲が背中を押される。にぎやかじゃなあ。もしかしたら私 とまこも夫婦のように見えているのかもしれない。そうねえ。まこは軽く首を傾げて、また右手の 綿飴をぱくついた。和はまるで抱きかかえるように、咲の身体を支えている。 もう夏も終わりかしら。私は呟いた。やっぱり久はぼんやりしとるの。達観したような声でまこ は応えた。私は浴衣の前を押さえた。美穂子の視線があったような気がした場所が、ふいに熱 を私を意識させたのだ。首筋が、ちくりと痛んだ。美穂子は視線だけで、私の体温を上げられる、 この世界で唯一の人だ。まこ。私は胸に置いた手を解き、頭の後ろに持って行った。次お好み焼 き食べにいこっか。まこはにいっと笑った。広島風なぁ。私もくすりと笑い、頷く。胸がちりちりと熱を持つ。 美穂子の前だと表れるだらしない私を、彼女たちにはあまり見せたくない。そんな竹井久の プライドが、私の背中を伸ばしていた。 運命という言葉は信じられなくても、幸運という言葉は信じられる。私が5人とはぐれ、仕方ないな と人混みを外れてぼんやりとしているとき。あの白い美穂子が所在なげに佇んでいる姿を発見して、 私の頭にはその熟語が点灯した。山奥の神社というものは、道を外れると人間がふっといなくなる場 所があるものだ。その同じ場所、同じ時間に、ふたりがふらりと合わさってしまう。それは幸運に違いない。 私の視線に、美穂子はすぐに気がついた。私の視線は美穂子の右手のあたりを泳いでいたのに、 わずか1、2秒で美穂子はこちらを向いた。そして私を認識した瞬間、ふわりと両目が開く。色の違う 両目の中に、等しく私の像が写る。わずかに右に首を傾けて、美穂子はにっこりと笑った。晩夏が初 春に戻ったような笑みだった。 「久」 小走りで、美穂子が私に近寄ってくる。木々を少し外れた、井戸を左手にした薄暗い場所だった。 私と美穂子が再び出会うのに、誂えたような場所だった。 「美穂子」 出店の真ん中は叫ばなければ言葉が通じないほどの喧噪なのに、そこから出店を抜け3メートル ほど入ったここでは、心臓の音が聞こえそうなほどに静かになる。私の発した言葉が、うわずってし まったのも聞かれているだろう。 目映い光を背に、美穂子は喜色を溢れさせていた。 「素敵な浴衣ね、久」 私は途端に真っ赤になって俯いた。青の生地に色とりどりの花火をあしらったその浴衣は、確か に私のお気に入りである。でもだからこそ、恋人ににこやかに褒められると、何やら気恥ずかしく なってくる類のものだ。私は顔を一瞬で熟れきったトマトのようにして、両肩を両手で抱いた。 「……美穂子は浴衣じゃないんだね」 我ながら稚拙な言葉だ。美穂子は軽く首を傾げると、また一歩私に近づいた。 「久は私の浴衣を見たかった?」 自分の肩を抱いたままで、私は唇を尖らせた。 「美穂子が私の浴衣を見たいくらいには、きっと私は見たいわよ」 身体も頬のように火照ってくるのを感じた。汗ばむ熱気は、どうやら私の内側から発されている ようだ。今の自分は裸よりも恥ずかしい格好をしているのではないのだろうか。浴衣が、皮膚にご わごわと感じる。美穂子に主導権を握られるというのは、あまり頻繁に起こることではない。 美穂子は背中で両手を組んだ。 「久。可愛い」 顔を私に突き出して、美穂子は小悪魔のように笑った。私の中に弱々しい私が隠れているように、 きっと美穂子の中にも、こういういたずらっ子のような美穂子がいるのだろう。そのまま背を伸ばして、 美穂子は私の頬に、自らの頬をすりよせた。 びくりと身体が震えた。すべすべの白い肌が、私の皮膚と合わさった。 「男の子たちの気持ちが、よくわかる気がするわ。だって、いつもかっこいい久が、こんなに可 愛いもの」 くすぐったげに言うと、美穂子は軽く、鳥の羽音のような音を出して、私の頬に唇をつけた。 背筋がぞくりと蠢き、頬に一気に血が上る。くらりと視界が歪む。国士無双を聴牌したときだって、 こんな気分にはならない。
それでも。それでも、ノックダウンの瞬間に、私はぎりぎりで踏みとどまろうとした。なにせ幸運に 導かれて、ようやく美穂子としかも二人きりで出会えたのである。一方的に翻弄されるのは、竹井 久のされることではない。 満足そうに顔を離した美穂子に、私も笑いかけてみる。 「貴女の前だけだよ」 私から一歩を踏み越える。ぎゅっと身体を合わせると、右手で頭を固定した。涼しい風が、辺り を薙いだ。 「素敵な美穂子の前でだけ、私は可愛くなれるんだ。きっと」 ぐっと唇を、美穂子の唇に押し付けた。押し出すような吐息が、美穂子の鼻から漏れ出した。 カーディガンの縁を左手でなぞると、それだけでびくりびくりと美穂子は身体を震わせた。私は 逆襲の成功を感じ、独りで少し満足した。ソースの香ばしさはなく、何かの飴のような甘さが、 私の咥内を登っていった。 唇を離すと、光を背にして、それでも赤くなった美穂子の顔がよく見えた。きっと恥ずかしさは 私と同じくらいだろう。しかし私も、照れも手伝ってさらに顔を赤くしている。そろそろ心臓がもた ない。理性も本能もぎりぎりだ。視線を地面に落として、私はため息混じりに言った。 「そろそろ破裂しそうだね、私たち」 ぶん、と一度だけ大きなモーションで、美穂子は首を縦に振った。なぜか目に涙が溢れていた。 私は微笑み、座ろっか、と提案した。毀れそうな涙を乗せて、美穂子の瞳の焦点がその言葉で戻ってきた。 「京太郎と優希がどっか行っちゃって、あれれと思ってたら和と咲もどっか消えちゃって。それ でふっと気づいたらまこもいなくてねえ」 5分たたずに一人になっちゃったよ。笑いながら言うと、美穂子は心配ね、と真面目な顔で返 してきた。そんなに深刻なものではなさそうなのは、私にはよくわかっている。苦笑いでそうだ ねと言った。 井戸の縁は暗く、お互いの顔もあまり見えない。夏の夜でも、どこか涼しい空気が漂っている。 喧騒が、まるで夢の中で現実の音を認識するように、何か頼りなく、ぼんやりと聞こえてくる。 しかしそれらを背にして、微笑みながら隣にいてくれる美穂子には、しっかりとした現実感が あった。 美穂子は軽く頬に手を当てた。 「私も。素敵なお面があってね。ぼうっと眺めていたら、いつの間にか一人になっていたわ」 今頃池田ちゃんや細目ちゃんは真っ青になっているのではないだろうか。自らの元キャプ テンを溺愛する彼女らが、私は本気で心配になってしまった。とはいえ私にとっては、私自 身の幸せが最優先である。彼女らのために、ようやく手の中にいる美穂子を、彼女らに渡す ようなことはしない。せっかくのお祭りなのに残念だね。私は控えめに彼女らを気遣った。 美穂子も気むずかしげに頷いた。 「そろそろ携帯電話を持った方がいいのかしらね」 その言葉には、なにやら試練に赴く勇者のような響きがあり、私は吹き出すのを必死で堪えた。 美穂子は機械音痴ではあるが、携帯の通話機能くらいなら問題なく使いこなせるはずだ、と私 は思っている。そもそも美穂子ほどに頭がいい人が、機械を使いこなせないというのはどういう 理屈なんだろう。微笑み混じりに、私はそんなことを考えてしまう。 「でも携帯あると、私たちも待ち合わせがしやすくなるよ」 実際、それは本当のことだ。美穂子の実家の電話番号も、美穂子の両親が家にいない時間 も知っているのだが、何かしら実家に電話するというのは気が引ける行為である。携帯電話が あれば、私たちももっと親密な付き合い方ができるだろうに。まるで昭和のような逢瀬は、確か に女同士の恋愛には必要なのかもしれないけど。 美穂子は深刻な顔で私を見た。 「久。私が上手く、携帯電話を扱えると思う?」 今度は堪えきれず、私は吹き出してしまった。あっははは。私は身体を折り曲げて、口も押 さえずに笑い転げた。静かな山奥に、それは必要以上に大きく響いた。祭りの喧噪が、また 遠のいた。
美穂子はそんな私を、何か複雑な表情で眺めていた。私の笑いは呼吸に不自由を感じ、 咳が出てしまうまで続いていた。 「美穂子。美穂子、そんな理由で悩む高校生なんて、そうはいないよ」 ぽんぽんと肩を叩く。美穂子は俯き加減で私の攻撃を受けていた。ようやく笑いが収まり、 私ももっとまともなことを言おうと、頭をぐるぐると回転させる。さすがに笑いすぎたようだ。 美穂子は私の麻雀同志であると同時に、恋人なのである。もっともっと細やかにしなけれ ばならない。 微笑みながら、私は美穂子の目を見つめた。 「美穂子なら、大丈夫だよ」 私と一緒のときには、美穂子は片目を閉じることはない。両目で、私を見つめてくれる。だか ら私は、美穂子に嘘をつくことはない。格好をつけることは、よくあるけども。 「使えなくてもさ、美穂子は大事にするでしょう。通話だけしか使えなくても、使いこなせている 人よりずっとずっとね。携帯が、ああ、この人に使って貰って良かった、って使い方をするよ。 だから、大丈夫」 今も本心を、少し格好をつけて言った。美穂子はじっと、色の違う両目で、私の目を見つめていた。 深い海の底と、宇宙の遠い果てのような瞳が、夕闇の中でちろちろと輝いている。白いカーディガン の向こうから、灰色のTシャツが覗いていた。少しだけ風が吹いて、美穂子のさらさらの髪をわずか に揺らした。 たった数秒後に、風はやんでしまった。髪の毛がぱたりと落ちて、美穂子はゆっくりと微笑んだ。 「少し、自信がないわ」 でも、と美穂子は続けた。私は無意識に手を組んでいた。 「久が、そう言ってくれるなら。私も、頑張ってみる」 楔を打ち込むように言った。私も頷いて、美穂子に微笑んで見せた。 「美穂子は大げさだよ。携帯電話のことくらいで、そんな顔することないって」 実際美穂子は真面目すぎて、細かいところで悩みすぎるきらいがある。すぐに泣いてしまうし、 そうかと思えば自分の中に溜め込んでしまうところもある。麻雀のときの、あのたくましくて息の 長い姿はなんなのかと思ってしまうくらいだ。とはいえ、それほどに繊細だからこその麻雀では あるのかもしれない。だから、いい。それに、がさつで人を気にしない美穂子なんて、美穂子で はない。私が気付いて、美穂子と一緒に悩んだり、解決すればいい話だ。 「でも。安い買い物ではないし、私は機械が苦手だから」 「大丈夫大丈夫。私がいるし、部活のほら、池田ちゃんとかだって教えてくれるよ」 そうかしら。美穂子は笑った。そうだよ。私も安心させるように笑いかけた。どこかからまた ソースの匂いが、ぷんと風に乗って漂ってきた。 「少し寒いかな」 日が落ちてから少し経つと、少しの肌寒さが忍び寄ってくる。浴衣の前を押さえて、私は呟くように言った。 「使う?」 美穂子がカーディガンを脱ごうとしたので、私は慌てて止めた。 「いいよそんな。そこまで寒いってわけじゃないし。それに」 自分が何を言いたいのかをそこで察して、私はさらに慌てて唇を閉じた。しかし美穂子が聞き 逃すはずもない。ちょこんと首を傾げて、続きを促される。その仕草に、私は弱い。 また顔が赤くなる。目線も下に向いた。ゆうに10秒は逡巡して、私はどもりながら、口の中に 溜まっている言葉を伝えた。 「み、美穂子に、まだ見て貰いたいから」 言いながらさらに照れた。着ているものを褒められて嬉しくならない女はいない。それが浴衣 みたいに、普段着ないものなら尚更だ。しかし私は、可愛いなどとは言われ慣れていない。そん なことをねだったこともない。尋常じゃなく、照れてしまう。まさに清水の舞台から飛び降りる心地だった。 美穂子は軽く目を見張ると、穏やかに微笑んだ。 「綺麗だし、可愛いわ、今日の久」 私の心が見えたような言葉だった。可愛いと言われることが嬉しいことだ、などとは特に思って いなかった私なのに、なぜそれがこんなにも嬉しいのだろうか。胸が、まるでゼリーの制作過程 を逆戻しにでもしているかのように、熱くどろどろとなっていく。その感覚はあまりに甘美で、私は それにあまりに不慣れで、気が遠くなりそうだった。髪に簪でも入れてくればよかったかな。ぼん やりとどこかでそんなことを思った。
美穂子の手が頬にかかった。美穂子の体温は熱くも冷たくもなく、私の体温と混ざり合った。 「その潤んだ瞳も、浴衣の青に映える白い肌も、とても可愛らしい久も。全部全部、好きよ」 区切られたような言葉が、美穂子の口から溢れてきた。美穂子の頬も上気しているし、瞳も潤ん でいる。それでも、それを指摘する余裕は私にはなかった。まるで金縛りにでもあったかのように、 私は動けなかった。美穂子は私の頬を支えると、にっこりと笑った。幸せそうに、欲情したように、 眠る直前のように、笑った。そしてその顔のままで、ゆっくりと顔を傾けた。 唇が、合わさる。瞬間、子どもが火に触れたように、びくんと震えてわずかに離れた。それを寂しい、 と感じる間はない。刹那の時間で、先ほどよりも激しく強く、美穂子の唇が私の唇を捉える。んん。 甘い、砂糖のような吐息が漏れる。鼻息が熱い。皮膚がそれを感じた瞬間、軽く美穂子が舌を絡 めた。そしてゆるりと咥内を吸う。私の0.01%くらいが、美穂子の中に吸い込まれる。その想像 は私に官能の火を燃え上がらせた。たまらなくなり、私は唇を合わせたまま、美穂子の頭をくしゃ くしゃにした。右手はそのままで、左手で腰をぎゅっと抱く。まるで予想しているかのように、美穂子 は腰を押しつけてきた。ふぅん。吐息はどちらのものだろう。興奮はどちらが上だろう。私の舌も、 自然に美穂子の中に入っていく。美穂子は驚きも拒絶もなく、自然と私に合わさっていく。くちゃ。 泥を踏むような音が耳に響く。美穂子。美穂子。美穂子。頭の中が均質になる。久。久。久。美穂 子の思考を感じる。私も美穂子の0.01%くらいを吸収したのだろう。口元が妙に甘い。じゅる。 じゅる。美穂子の柔らかい身体が、どんどん熱を帯びていく。私もそのはずだ。美穂子の腕が、 いつの間にか私の首に回っている。顎のあたりに液体を感じる。 ああ、繋がった。そう感じた。女同士の繋がりは、必ずしも性器への愛撫を必要としない。決定 的な何かが決定的に満たされれば、それは絶頂に近い何かになる。すぐに性行為になる。夕闇 は迫り、周囲には現実感はなく、座った井戸の縁はひんやりと冷たい。そんな場所で、私と美穂 子はまるで蚯蚓がのたくるように、粘膜と粘膜を擦りつけ合った。裸で抱き合うように、唇を押しつ け合っていた。 数分だろうか、それとも数十分か。唇を離した時には、既に涎の跡が顔の下半分を覆っていた。 どちらの涎にもまみれた唇が、赤くちろちろと私のすぐ近くで揺れている。そのままで美穂子は、 淫靡に、可愛らしく、心から私を愛しているという風情で、満月のように笑んだ。 「携帯電話、買うわ」 美穂子の右目から、涙が一粒零れた。それが興奮のせいか全く別のものなのかどうか、私に はよくわからなかった。 「もっともっと、久と愛し合いたいわ。もっともっと、久といたい。もっと、久の可愛いところを見 たい。可愛がって貰いたい」 美穂子の後ろでは屋台の威勢のいい声が響いていたが、それらはまるでガラス越しの演劇 のように、なにかぼんやりと遠くに感じられた。風景を切り取ってそこに天国を出現させたように、 美穂子がきらきらと輝いていた。目も、口も、きっと身体も、私にとっては眩しかった。太陽のよ うでなく、夜空に輝く月のように、夜の海でひっそりと輝く真珠のように、眩しかった。 「好きよ、久」 ああ。私は不意に確信した。今までの私の人生の中で、選択肢がいくつかあった。選ぶ時に 自信があるものも、ないものもあった。でもそれらすべて、私は正しいものを選んだのだなと。 私は正しい道を歩けたのだなと。今、美穂子の近くにいられる自分が、いちばん幸せなのだなと。 だから、それでいい。辛いことも悔しいことも悲しいことも、すべては福路美穂子の傍にいるこ とで、漂白されるのだ。 涙が出るかと思ったが、私は自分のことでは泣けないようだった。ただ、笑顔がひょいと胸か ら出てきた。どんな顔をしているのかはわからない。でも、多分会心の笑みだろうと思う。落ち 着いて、完全で、幸せを感じられる、そんな笑顔ならいいなと思う。 「私も。美穂子が好き。世界でいちばん、美穂子が好き」
この気持ちはなんだろう。神様は何を考えて、人間にこのような感覚を与えたのだろうか。 永遠なんて、そこらのラブソングか安っぽい恋愛小説の中だけの言葉だと思っていたのに。 この瞬間が永遠に続けばいい、なんてろくでもないことを、私は本気で願ったりした。 遠くの方で、祭り囃子が鳴っていた。それは遠すぎず近すぎず、私たちの鼓膜を揺らしていた。 砂糖が焼ける甘い匂いが、どこからともなく漂っていた。 暑さの中にも数週間後の秋を予感させる何かがある、そのような夏の夜だった。 繋いだ手は、汗でじんわりとしている。通常ならばかなりの不快感だろう。それでも、光の 当たる場所に来るまで私と美穂子はそれを外そうとはしなかったし、また私も、多分美穂子 も不快であるとは思わなかった。それが美穂子の肌なのだから、私の肌とくっつくのは当た り前なのである。私は本気でそう考える。 だから。人の波に戻る瞬間、その手を離すのが名残惜しかった。夢から現実へ覚めるよ うな、母親の穏やかな子宮の中から出される時のような気分だ。考えていることは同じだった のだろう。私の足が止まると同時に、美穂子の足も止まった。 ちらり、と片目でお互いを見る。言いたいことも、やりたいことも、お互いよくわかっている。 だから、その目線だけで事足りた。私が右手の力を抜くのと、美穂子の左手から力が抜ける のが、やはりほとんど同時だった。安心のような、切なさのような、もしかしたらまったく意味 がないかもしれない吐息が、美穂子の口から漏れていた。それは人々の明るい声に紛れて、 永遠にこの世界から消滅してしまった。 重力に従って、まるで花びらが散るように、私と美穂子の手は離れた。肉体の手応えのな さ以上に、精神がずきずきと痛んだ。 私と美穂子は、ここまでなのだろう。この線より向こうへは行けない。ここから先はない。 ふたりの話題に上ったことはないが、私も美穂子も、多分よくわかっていることだ。私と美穂子 が一緒にいるときに、女同士だということは、負の意味をもってずっとついて回る。身体から離 れない影のように、ずっと。 「たまに、少し考えるの」 ぽつりと美穂子が呟いた。背丈が同じくらいなので、鼓膜が辛うじてその音を拾った。 「明日世界が終わるなら、どれだけいいだろうって」 私たちに気がつくほどに、人々の列には近寄っていない。賑やかな声と賑やかな姿だけが、 目と耳に映る。 くすりと美穂子の吐息が、ふらふらと揺れる冬の蚊のように聞こえる。 「そしたら私は、好きなだけ久にくっつくわ。いつでも、どこでも。外でも中でも、道路でだって、 私は久から離れない」 目の前を、腕を組んだ男女が通り過ぎていった。赤い浴衣の赤い頬の女性が、背の高い男性 と幸せそうに寄り添い、何かを喋っている。 よくわかるよ。口の中だけで呟いた。よくわかるよ、美穂子。でも私は、竹井久だから。格好つ けで、それでも美穂子が好きになってくれた、竹井久だから。だから意地でも、死んでも、それ こそ明日世界がなくなったって、そんなことは言わないんだよ。
「私は違うよ」 つま先で軽くリズムを踏んだ。軽く視線が上下する。少し、目を閉じる。まるでリーチ後に牌 をツモるときのように、左手に汗が滲んできた。 「麻雀でもさ。地震が来て牌が全部倒れたらとか、そんなこと考えないよ。そんなこと考えない。 変な牌切っちゃったり、嫌なリーチ来ちゃったりしてもね、それでも一番いい手を捜すだけだから」 私の言葉なんて、きっと美穂子は百も承知で言ったのだと思う。ぽろりと、こんな夏の夜だ から、弱音が出てしまっただけだろうと。だから、軽く同意すればよかったのかもしれない。 私もだよ、と言えばよかったのかもしれない。でも、なぜかそのとき、私にそれはできなかった。 それは、散々可愛いと美穂子に言ってもらえた反動なのかもしれない。妙な格好をつけた かったのは。 「明日世界が終わるってわかってても、私はいつも通り、一番いい手を捜すだけだよ。その 日だけ特別にはしない。もう終わるからって気を抜いたりしない」 私もね、あの光の中で、みんなに祝福されて、美穂子とふたりで歩いてみたいよ。でも、 それが駄目なら仕方ないよ。きっと、それにも意味があるんだから。何か、私が美穂子を 好きで、美穂子が私を好きで、それでもみんなに祝福はされない。そんな変な理由がね。 「なんかね。そうしないと、そう考えないと、今まで積み上げてきたものがぐらぐらって壊れ そうな気がするんだ」 ごめん、偉そうに言っちゃったね。言い終わると、なぜだか涙が出そうになった。思わず俯 きそうになる。でも、私はそうはしなかった。きっ、と前を睨んでいた。そうしなければいけない と思った。 背中を汗が流れる。右頬に、美穂子の視線を感じる。その部分が熱い。火でもつきそうだ。 でも、ついたっていい。美穂子に燃やされるなら、構わない。 「……久は、不思議なの。なんだか、物語の中の人みたいで。あんまり、かっこよすぎるから」 美穂子の声は、ぽつりとした小さいものだったけれど、そこには何かの熱があった。小さくても、 火傷しそうな熱が、確かに声にこもっていた。 「でも、よかった。久を好きになった私は、きっと幸せ者なのね」 一度息を吸い、吐いて。どこか楽しそうな、遊ぶような響きで、美穂子はその言葉を私に告げた。 「大好き、久」 猫が気まぐれに鈴を鳴らしたような声だった。火が、消えた。でも熱はまだそこにあった。 熱だけが、私の頬に触れていた。その熱はすぐに言葉になり、私の口をこじ開ける。 「私も大好きだよ、美穂子」 そう言った。その言葉は数秒だけ私と美穂子の間に留まると、出店の光と甘い匂いに溶けて、 痕も残さず消えていった。 世界に私と美穂子のふたりだけになっても、きっと私も美穂子もそれだけでは幸せには なれない。愛以外に、誰か、何か、必要なのだ。パンだけで生きられる人間を、既に人間 とは呼ばないように。私と会うために池田ちゃんとの予定を断る美穂子が、既に美穂子で はないように。きっと確認したのは、そのようなことだ。私と美穂子が似ているからこその、 愛し合っているからこその、それは取り決めなのだろう。皆を不幸にして、進める道ではな いということは。 それでも、くっつきたいな。美穂子はそう言った。そうだね、とは私は言わなかった。くっつ かないよ、好きだから。そう言った。美穂子は楽しそうに、そんな私に好きだと言った。だから 私は幸せだった。
数歩ほど進んだところで、キャプテン、と一際高い声が響いた。数秒後、せっかくの浴衣を、 人と沢山押し合ったのだろう、かなりくしゃくしゃにしてしまった池田ちゃんが、美穂子の胸に 飛び込んでくる。いつも耳がぴょこんと立っているのが見える気がするのに、今はそれもぺ たりと寝ている。美穂子がそんな彼女をぎゅっと抱きしめて、ごめんなさいとありがとうを囁 いていた。やれやれ、と私は天を仰いだ。私と美穂子とのふたりだけの時間はあっけなく終 わったようだ。向こうの方から、別の風越のメンバーも急いでやってくる。頃合か。少し残念 だが、それでも美穂子は、セックスのときなどは正反対の言葉を言ったり言われたりしてい るが、私だけの美穂子ではない。少し涙が浮かんでいるらしい池田ちゃんに、さすがに美穂 子は苦笑い交じりで、今のキャプテンは貴女なんだから、などと囁いて、背中をとんとんと 叩いていた。まあ、ねえ。私も軽く苦笑いが出た。今は彼女らに、美穂子が必要なのだろう。 「じゃあ、私はこれで」 とはいえ私にも、少数だが可愛らしい後輩たちがいる。独りになるのは寂しいが、彼女らも きっと見つかるだろう。そのまま別れのつもりで、軽く手を振った。 美穂子は一瞬はっとした顔を浮かべた。次の瞬間に、それは罪悪感と寂寥感の入り混じっ た顔になる。しかし、それはたった2瞬だけのことだった。その次にはいつもの、美穂子の笑 顔が浮かんでいた。色々な人に見せる、美穂子の顔だった。 「ええ、今日はありがとう」 うん、と私は頷いた。上手い笑顔が出せた。美穂子も池田ちゃんを抱きしめながら、笑顔 を浮かべた。それを瞼の中に入れて、私はくるりと踵を返す。折りしも風越の数人が、人ご みをぬって美穂子の目前に到着したときだった。 祭囃子に、香ばしい匂い。明るさと暗さがはっきりした道に、色とりどりの服の人々。祭りの夜 が、急に私を包んだ。それはある程度の寂しさと寒さを私に意識させた。独りだ、と強く思った。 それでも。私の脚は、前に進んだ。それでも、頬は熱を覚えている。耳は、大好き、という、あの 巫女が人々の願いを神に伝えるような声を覚えている。手は、お互いの汗を覚えている。だから、 大丈夫。それだけあれば、私は前に前に進める。寂しさがあって、寒さがあっても、私は真っ直ぐ 前を向いて、真っ直ぐ前にと進めるはずだ。 好き。口の中だけで呟いた。そうしたら涙が出そうになったので、私は慌てて口をふさいだ。 頭が痛くなるくらいに甘い林檎飴を食べよう。そう考えて、私は今目覚めたばかりの小鳥のように、 きょろきょろと左右を見渡した。
以上です。またお付き合いくださって、どうもありがとうございました。 漫画の方、部長はカッコいいしキャプテンは可愛いしで、久方ぶりにときめきを覚えました。 あの部分、5ページくらいあればいいのに……。 やっぱり竹福は素敵だなあと思いました。 来週くらいに、またひとつ投下できればと考えています。 その際もよろしくお願いします。 ではまた、どこか部キャプのあるところで!!
>>317 超GJ!!!リアルタイムで読みながら泣いてしまった
>>317 GJすぎる・・・これが神か
細やかな心理描写と表現が秀逸だし、全体的な話の流れも本物の小説家ばりだわw
感動したありがとうw
/ ̄\ | | \_/ | /  ̄  ̄ \ / _ノ ヽ、_ \ / o゚⌒ ⌒゚o \ とても繊細で素敵な物語でした | (__人__) / ̄\ 褒美としてこの林檎飴と購入権利書をお受け取り下さい。 \ ` ⌒´ | | /ヽ、--ー、__,-‐´ \_/ / > ヽ▼●▼<\ ||ー、. / ヽ、 \ i |。| |/ ヽ (ニ、`ヽ. .l ヽ l |。| | r-、y `ニ ノ \ l | |ー─ |  ̄ l `~ヽ_ノ_
こんにちは。再度、以前竹福で連載していた者です。 非常に空気の読めていない感じなのですが、オプーナの購入権利書を貰ったのが嬉しかったので、 また、さらに2日にわけて投下させて頂きます。 では、よろしくお願い致します。
夜明けの直前がいちばん暗い。春の直前がいちばん寒い。ええと、これって誰が言った言 葉だっけなあ。想いながらふうと息を吐くと、にわかに身体の感覚が戻ってきた。随分と集中 していたらしい。うん、と休憩のつもりで首を回す。途端にいやに大きな音が鳴った。 英語の文法を書き綴ったノートは、先ほどの休憩から数えても10ページはめくっているは ずだ。2、3の重要とされた構文を頭の中で再生しつつ、私は自らの身体に休憩を命じた。途 端に、まるで体重が三倍にも上昇したように、どっと疲れを感じる。少し無理をしていたようだ。 でもなあ。体重を後ろにかけて、身体を僅かに伸ばした。数年は使用している椅子が、ぎり ぎりと不吉な音を鳴らした。だからもうすぐに楽しい時間が来る、と信じられるほどに、私は 真っ直ぐな人間ではない。そしてだからといって、今の私を楽しませてくれるのは、そのよう な妄想以外にはないことも理解している。耐えるしかない。外の天気と同じような寒々しい現 実は、ここ数週間変化がないし、これから数週間先でも変化はないのだ。そのような、昔か らある誰が言ったかどうかもわからない言葉を、気休めにするしかないだろう。それが本当 に気休めにしかならないことも、よくわかっているのだけれども。 私は溜息まじりに、シャーペンの裏をとんとんと机で叩いた。上げた目線の先で、デジタル の電波時計が淡々と秒を刻んでいる。ちりちりと右手が悲鳴を上げていた。ここ数時間ほど 酷使していたことを、声高に抗議しているようだ。ごめんごめん。と独りで小さく呟いてみる。 返ってくる返事もない。せめて幽霊でも出てくれれば、こちらも張りが出るというのに。人間 以外がいたこともないこの部屋は、電灯の明かりに照らされて、相変わらず白っぽい姿でそ こにあった。 ふと、ポケットに入れていた携帯電話を引き抜く。着信と受信を確認する際に、わずかに甘 い疼きが走った。しかしそれも一瞬だけだ。ずっと身につけていたのだから、それらがないこ とくらいはわかっている。わかっているのに一瞬でも疼かずにはいられない胸は、貪欲なの か単に打たれ弱いのかどちらだろうか。そんな取り止めのない思考をしている中でも、指は 勝手にボタンを弄っていた。ここ数日ほど、何度も刻んだ動きだ。予想通りに出てくるその画 面に、私はまたため息をついた。 「……美穂子」 福路美穂子の自宅の電話番号、住所が記されたその画面を、私はほとんど涙交じりの目で、 ぼんやりと眺めた。白っぽくて暖かい何かが、私の身体をちらりと走った。 “春よ、来い” 「や」 いつも通りの場所にいつも通りの人間を見つけて、私はいつも通りの言葉をかけた。講義の 終了直後の廊下は、講義の途中のしんとした静けさとはうってかわって、何かしらの音で溢れ ている。冬も深まってきた今では、そこには一生が決まるかもしれない数ヶ月を過ごした奇妙 な連帯感とともに、妙な暗さと浮ついた明るさが同居している。 加治木ゆみはそのどちらに呑まれることもなく、淡々とそこに立ち、静かに缶コーヒーを口に 含んでいた。 「それいっつも飲んでるねえ」 「趣味だ」 ぼそり、というにはいささか険のある口調にも、随分と慣れてしまった。私はふうんと言いな がら、ズボンのポケットから硬貨を取り出す。それを彼女の隣に立っている機械にねじ込もう と脚を進めると、それを察した彼女はわずかに身を隅に寄せてくれた。 「ありがと」 その仕草と同じくらいのわずかさで、彼女はこくりと頷いた。私もそのくらいの調子で、かす かに笑ってみる。かつん。硬貨が機械に沈む音が、ざわめきのなかでもしっかりと聞こえた。 ホットカフェオレの缶を手で弄びながら、首をぐるぐると回す。ぐきぐき、と派手な音が、身 体の中を通っていく。身体が固まっているし、頭も渦巻き状になっている。飲料の甘さが、ま た随分と効きそうだ。
幾人かが自販機に向かってきたので、私と彼女は講義室に入ることにした。2,3人の顔見知 りに手を振って、埃の舞う部屋へと歩く。 彼女とはこの時間、同じ講義を受けることになる。初めての講義の時には、知った顔があるこ とに随分と驚いたものだが、今ではもうすっかりと慣れてしまった。そもそもこの地域に予備校 は数えるほどしかない。気づいてみれば、周りにも見たような顔はいくつかあった。清澄の生徒 もいるし、彼女の鶴賀の生徒もいるようだ。世間は狭いものである。 私にとっての幸運をふたつ挙げるとすれば、加治木ゆみがいかにも私に「負けたくない」と思 わせるタイプの人間だったことと、その彼女が私の志望校と同じだったことだ。そのことは私に めらめらと向上心を起こさせ、成績の低空飛行を防ぐとともに、内心の情熱を退屈でしんどい 受験勉強へと駆り立てた。場合によっては、カッコをつけたがる自分の性格と、周辺に国立大 学が少ない立地条件に感謝してもいい。ともかく、学部は違えど、同じ文系で同じ志望校の私 と彼女は、実に健全なライバル同士となっていたのである。 特に会話もせずに、私と彼女は最前列に並んで座った。 「調子はどうだ?」 「ぼちぼちでんなー」 彼女が眉を上げるのを見ると、少しは楽しい気分になる。私がにやにやと笑うのを見て、彼女 はもともと渋い顔をさらに渋くさせた。 「まあ現状維持ってとこだよ。そっちは?」 「同じようなものだ」 ぶすりと言いながら、彼女は鞄から本の束を出した。私もそれに倣う。と同時に、声を出すの が昨日以来であることも思い出した。なんだかねえ。思わずくすりと笑ってしまった私を、彼女 は妙な顔で覗き込んだ。 「どうした?」 「や、なんでもないよ」 顔の下半分を抑えながら、私は片目をつぶって見せた。 「そういえば、模試とセンターの組み合わせ返って来るの今日じゃない。どうだった?」 センター試験の結果に一喜一憂する間もなく、国立組は二次対策を完成させなければなら ない。それ以前に、センター試験の結果如何によっては、そこで志望校をあきらめなければな らなくなる場合もある。少し上目遣いで眺めてみても、しかし加治木ゆみの表情は変わること はなかった。 潮の満ち引きのように、一旦空になった講義室に、また人が入ってくる。同じ年頃の同じよう な服装の人間たちが、同じようで微妙に違う心を弄びながら、開始のベルに怯えている。 ひょいと出された紙を見て、逆に私の眉が寄ってしまった。 「……可愛げないね」 「お前はどうなんだ」 目論見は外れてしまったが、しかし人のものを見てしまった以上、自分のものを出さないわ けにはいかない。のろのろと必要以上に鞄を漁ってみたが、残念ながら講義が始まるまでは 少々時間が残っている。唸りながら、私もその薄い紙を投げ出すように差し出した。 それでも、同じように彼女の眉も寄ってしまった。 「……Aか」 「なによ。あんたもじゃない」 自慢してやろうと思ったのに。そう言うと、多分同じような考えがあったらしい彼女も、不満げ に腕を組んだ。 「竹井は私よりも勉強してないと思っていた」 「ていうかあんたの方が順位は上じゃない」 何か言葉を飲み込む風情で、彼女は溜息をついた。もっと上だと思っていた、とか思ってい るのだろうか。その仕草に腹が立ったが、ともあれ私がダメージを負ったのと同様に、彼女の 方も負ったのは事実らしい。それなら彼女に一撃くれたのに満足すべきなのかもしれない。 2人共に合格圏内なのだから。ふう、と私も溜息をついて、鞄から最後の参考書を出した。 あと1分ほどで講義が始まる。彼女も同じように、鞄を横においた。2人で同時に正面を向く。 殺風景な黒板が、鈍い緑色の光を放っている。 「……あのさ」 あと30秒。私の胸のある部分が、くいっと前に押し出された。
もしかしたらそれは、その薄っぺらい、そのくせちかちかと目につくその紙を、消しゴムのカス ほども愛想のない事務員にずいと突きつけられた時から、ずっと私の胸で悲鳴を上げていた 部分かもしれなかった。 「なんだ?」 少しゆっくりと彼女は言った。私の心の中まで見透かしたような響きだった。だから私は、 彼女の方は見なかった。見ることが出来なかった。 「なんでもないよ」 「そうか」 ベルが鳴る。同時に講師が入ってくる。途端に消える会話と、起こる咳払いの声に、私たち も姿勢を正した。何よりもまず優先されるのは、ここで知識を詰め込むことだ。軽く首を振って、 私も参考書を開く。同じように、彼女も本を開いていた。 もしかして美穂子の事、何か知ってるかな。飲み込んだ言葉は、暫く空中を漂った後、泡に なってどこかに消えた。 予備校の近所にあるそのそば屋は、早くも安くも美味くもない店だったが、それでも私と彼女 がちょくちょく利用する場所になっていた。理由は私たち自身にもよくはわからない。萎びた雰 囲気が案外合っていたのかもしれない。 私はカレーや丼ものにも挑戦するが、彼女はいつも天ぷらうどんを食べている。それも趣味 らしい。麻雀のあの柔軟さと、こういうことは違うようだ。 「最近麻雀打ってる?」 親子丼を口に運びながら聞いてみると、彼女は麺を啜りながら首を振った。 「牌に触れてもいないな。最後に部活に顔を出したのも、そういえば去年だ」 ふうん。卵混じりの白米が、ぐるぐると口の中で回っている。ぱさついていて濃い味だった。 これもはずれかなあ。頭の中でぼんりと考えていると、きつい目で彼女が私を促しているのを感じた。 口の中のものを飲み下して、私も首を振った。 「こっちもだねえ。センター終わってからしようかとも思ったけど、全然余裕なかったよ」 目の前に彼女がいるにも関わらず、言葉と共に郷愁の波が押し寄せてきた。咀嚼をやめて、 私は軽く目を閉じる。夏前からの、いや宮永咲が現れてからの、あの怒涛のような日々。合宿、 地区大会、練習、また合宿、そして全国。血液の温度が10度も上がったかと思うほどの、熱く て充実した日々だった。それに。 それに、美穂子がいた。 まだ温くはなっていないが美味しくもない丼を、無言で口に運ぶ。戻ってきた現実は、このぱ さぱさした舌触りのように、味気ないものだ。ふと正面を見ると、彼女もぼんやりとうどんのつゆ を眺めていた。 似たようなことを考えているんだろうなと思うと、たまに感じる妙な親近感が沸いてくる。美穂 子とは違う意味で、彼女とも似ているのだろうとはよく感じることだ。弱小の部を率い、3年目に ようやく出場できた。その気持ちを共有できるのは、私には彼女くらいしかいないし、おそらく彼 女もそうなのだろう。性格は違えど、腕は認めるところだ。 彼女はわずかに首を振ると、箸で器用に溶けかかった天ぷらを掴んだ。 「懐かしいな。まるで10年も昔のようだ」 「うん」 彼女はそれをつるりと吸い込む。私も鶏肉を噛みしめた。煮すぎて固くなっていた。 「いい大会だったな」 「うん。いくつになっても思い出すよ、きっと」 深く木目が入った机は、年期を感じさせるほどに黒ずんでいる。20人くらいしか入れないだろ う狭い店内には、室外機の音が大きく響いていた。店の奥にある小さなテレビの向こう側では、 髪を振り乱した真っ赤な口紅の女が、大きな包丁を振り回していた。それを暇そうな店主が面白 くなさそうに見ている。店内にはこの3人しかいないようだ。そして立て付けの悪い扉の向こうを、 甲高い笑い声が通り過ぎていった。 おもむろに彼女は器を両手で持つと、ずるずる、とつゆを啜った。 「おかしいな。私たちはまだ18だ。それなのに、なにか老人みたいな話ばかりだな」 ぐいと口元をふくと、彼女は僅かに笑った。自嘲にも郷愁にも見える、微笑みだった。 「もしかして燃え尽きた?」 同意したかったが、私が彼女に是と答えてはいけないような気もして、私はわざとからかい口 調で言った。そしてまずい丼を掻き込む。彼女はぴくりと身体を震わせると、今度は口元だけで ふふと笑った。
「そういえば、竹井とはちゃんと勝負したことがあったかな」 丼を置くと、私も笑った。 「個人戦のことも忘れちゃったの?」 「いいや、覚えてるよ。だがまあ、色々とな」 修羅場が終わったのか、テレビからは今度はにぎやかな声が聞こえてきた。何かリゾート地 の紹介でもしているようだ。ますます興味なさそうに、ねじりはちまき姿の店主は大きくあくびを した。透明な冷蔵庫の向こうで、ビール瓶が所在なく立っていた。 「わかった。じゃあ入試が終わって竹井久がいちばん最初に打つ麻雀は、加治木ゆみとのも のってことにするよ」 「そう願いたいな」 ほとんど同時に、私と彼女はコップを手に取った。濃い味とぱさぱさの具材で酷使したからか、 それはやけに爽やかに喉を通っていった。 冷たい風が容赦なく吹き付けてくるので、店を出た途端、私も彼女も思わずコートの前に手が 伸びた。空を大きく覆った暗闇が、寒さをより激しくしている。首のマフラーを突き抜けるように、 寒気が体中を刺してきた。この風さえなければ、少しは過ごしやすいのだろうに。自然と体勢が 前のめりに、足早になる。日本でこうなら、シベリアはいったいどんなものだろうか。頭の隅で、 ちらりとそんなことを思った。よくはわからないけど、きっと人が住むには厳しすぎるものには違 いなさそうだ。 「竹井」 「なに?」 「福路がな」 思わず私は彼女へと向き直った。彼女は真っ直ぐに前を向いている。 「私は元気だから心配しないでと伝えてくれ、だそうだ」 彼女を通じて、美穂子の姿が浮かんだ。少し小さくなったような背、さらに細くなった腰。そし て僅かに厳しげな顔。あの夜のときの美穂子が、私に寂しげに言う。心配しないで。いかにも 美穂子が私に言いそうな言葉だった。だから、聞いてもいないその声が、私の耳に響いた。 首を振って、俯く。一瞬忘れた寒さが、身体に染み込んできた。 「……どこで?」 不明瞭な私の言葉にも、彼女は正面を向いたままだった。 「偶然だ」 短くて彼女らしい答えだった。そう。私は呟いて、コートの真ん中をぐっと握った。 私と同じ大学を受験することについて、家や学校でどのような反対があったのかを、私は まったく聞いていない。また3年の夏から、エスカレーター式の学校でわざわざ国立大学を 受験しようとする美穂子がどのように見られているのか、それも私は知らない。 私が知っていることは、私のように1年の頃からある程度の準備をしてきたわけでなく、さら に成績も付属校で少し上くらいの人間が、夏も終わりに近い時期にいきなり受験勉強を本気 で始めるということは、とてつもなくしんどいだろうということだけだ。 雨も雪も降りそうになかったが、空は綺麗に雲で覆われているらしかった。夜の闇の向こう に、星の光はひとつも見えない。 「そういや貴女のことも話したっけ。負けたくない奴がいるって」 少し上の方を見ながら、呟くように言った。駅までの道は、人通りはそれほどでもない。そも そも、人混みを外れるために、そば屋で時間を潰したようなものだ。 彼女は何も言わず、しっかりと前を向いて歩いている。 「元気だから心配しないでって、はは、いちばん心配しちゃう言葉だよねえ」 だから、一人で喋った。一人だと、自然に言葉に自嘲が混じる。美穂子の内に秘めた意志 の強さは、よく知っている。だからこそ、私は。 ふ、と隣の彼女が足を止めた。
「私も心配するなと言った」 「え?」 1歩遅く、私もそれに気づいた。振り返る直前に、呟きにも似た彼女の声が、私の耳を叩いた。 あまり表情の変化は見えないが、それははじめて見る顔だと感じた。彼女の、きっと恥ずかしげ にしている顔なんだろう、と思う。彼女はらしくもなく、僅かに俯き加減で言葉を続ける。 「先輩は思い詰めるタイプだから心配だ、と言われたからそう答えた。そしたら、じゃあ心配し ないでいいですね、とえらく笑われた。だからいいかと思っていた」 私もきょとんとした顔をしていたのだろう。彼女は今度は顔をはっきりとわかるくらいに紅潮さ せた。それで、私は思わず微笑んでしまった。その誰かの口調を真似ようとして、少し考えて 真似なかったような仕草が、なんだかひどく可笑しかった。 笑い出した私を見て、彼女は拗ねたようにポケットに手を突っ込んだ。 「ともかく、私もそうなんだ。福路だって、同じ気持ちだろう」 どうやら私を慰めようとしているのだろう、ということに私はここでようやく気づいた。普通なら そういうことはすぐに気づくものなのに。やはり加治木ゆみはこういうところで損をしているよう だ。目線は彼女の太股あたりに寄せたまま、それでも私は別のことを口にする。 「明るい人なんだね、その人」 「……明るくは、ないな」 「じゃあ前向きな人?」 「まあ、極端な言い方をすれば」 なぜだか苦しげに彼女は答えた。あらあら。微笑がさらに大きな笑いに変化しつつあった ので、慌ててかみ殺した。本気で拗ねだしそうな気がしたのだ。それに、彼女の気遣いを感 じていない、と思われるのも少し癪なところだ。 「寒いよ。歩こう」 くるりと向きを変えると、ほっとした気配と共に、彼女の足音も続いてきた。舗装された道 路が、靴をするすると滑っていく。地元とは違って歩きやすいし、光だって多い。人も多いか ら、煩わしくは感じるけど、何か暴力的なものはなさそうだという安心感がある。 駅が近づく。周囲は暗い。それでだろうか。ふと、なんでも喋りたくなる衝動に襲われた。 一瞬迷って、結局私は口を開いた。加治木ゆみになら、何を喋ってもいいような気がしたのだ。 それが錯覚でも後悔しないだろうと、なんとはなしに思った。思ってしまった。 「付き合ってるんだ、私と美穂子。恋人的な意味でね」 後ろに変化はなかった。あっても気にはしなかっただろう。 「今とは正反対の、綺麗で暖かくて素敵な夜だった。星が眩しいくらいだった。それでこうやって 歩いてて、あー、何話したっけな。覚えてないけど、そう。こんな風に、言われたんだ」 振り返る。彼女の真剣な目が、私の目を凝視している。呪いみたいに。祝福みたいに。運命 みたいに。すう、と彼女の顔が、美穂子にだぶった。あのときの美穂子の、聖者のような表情 を感じる。 「貴女が好きなの、って」 ざ、と風が吹いた。彼女のフードが、ばたばたと音を立てて逆立った。私たちの方を見ようと もしない誰かが、すたすたと通り過ぎていった。かばんを右手に持ち、左手をポケットに入れた まま、彼女はじっと私の目を見ていた。 私はまた、向きを変えた。その目が、少し痛かった。自然、いじけたような口調になる。 「……今は寒いし、ここにいるのあなただし、もうまる1月くらい会ってないけど、さ」 また、俯いた。アスファルトが闇夜のように暗かった。今の私の目もそのように見えているだろう。 はあ、とため息が出る。先ほどの暖かさの残滓が、そこから漏れていった。駄目だなあ。 そう思った、瞬間。 私は思い切りたたらを踏んだ。ポケットとかばんに支配された両手が、幸いにも敏感に反応 した。腕を伸ばし、それでなんとかバランスを取り、数歩をよたよたと進む。なんとかこけずに すんだ、というところで、ようやく頭がたたらの理由を突き止めた。 「何すんのよ」 睨み付けると、私を蹴り飛ばした張本人は、いかにも不愉快げに私を見下ろしていた。数秒 ほど見合う。そしてまた今度も予想外に、彼女は軽く頭を下げた。 「今のは悪かった」 「へ?」 「だが、私だってモモとは1月会ってないんだ。自分だけが不幸のような顔をするな」
真剣そのものの顔だった。自分だけが不幸、と言われて、一瞬頭が凍る。しかし次の瞬間、 凍った私の頭のどこか奥の方で、情報が自動的に攪拌された。モモ、と彼女が呼ぶのは、 確か鶴賀のあの副将だったはずだ。そう、あの1年の娘。顔は、あー、思い出せないか。 でもなんで今、彼女の名前なんだろう。とそこで、先ほどの恋人の話で彼女が「先輩」と呼ばれ ていたことに思い至った。そしてこのタイミング。 私の表情が怒りから驚きへと変化していくのと同じ時間で、彼女の表情は不愉快から羞恥 へと変化した。 「……忘れろっ!」 走り出す寸前の速度で横を擦り抜けようとした彼女を、先ほどよりも10倍は本気の反射神経で、 左腕の中に捕らえる。すれ違った人が何事かという目線をこちらに送ってくるが、それらはすべ て黙殺する。 身体のつくりが同じくらいの彼女の耳元が、ちょうど私の口元に来る。まるで美穂子だ。その 発想をとりあえずは横において、微笑みそうになりながら、そこに確認の言葉を送り込んだ。 「東横桃子?」 「……!!」 「付き合ってんの?」 「知らん!!」 「もう寝た?」 思い切り身体が弾かれる。顔を本当に真っ赤にした彼女が、噛みつくような視線を私に送って いた。でも、どれほど睨み付けられても、もしくは本当に噛みつかれていたとしても、今の彼女 の頬の様子では、それは深刻なものにはなりそうになかった。普段の彼女からは信じられない ほどの可愛らしさだ。東横桃子という人間の印象は、その麻雀の実力から考えれば驚くほど低 いが、なるほど、いい目をしているのだろうなということは理解できた。きっとほとんどの人間が 知らない彼女のそういう姿を、一人でこっそりたっぷり堪能しているのだろう。 とはいえ、これほどに分かり易い反応をされると、恋人ではないこちらとしては困ってしまう。 それに私も、下世話と思われるのも気が引ける。 なぜだかコートの首のあたりをきつく抑えている彼女に、私は曖昧に笑いかけた。 「いや、まあ、そういうのはプライベートなことだしね」 「……当たり前だ!」 「でも想像しちゃった。ごめん」 うっすらと涙を溜めた目が、つかつかと近寄ってきた。頬でも張られるかなと思ったが、数回ほど 秒を旅させた後、結局彼女は大げさ目に溜息をついただけで、その話を切り上げてしまった。 「まあいい。さっきの話よりは、18歳らしい」 行こう。寒い。短く言って、彼女はすたすたと歩き始めた。私もどこか安心しながら、無言でそれに続く。 数分ぶりに、隣り合う。駅は間近に迫っている。いつもそのくらいで、寒さに慣れてくるのだ。駅の 明かりが強くなり、比例して人の通りも多くなってくる。それは私たちと同じ年頃の、大きめの鞄を 持った男女が多かった。 私立の受験が終わったらちょっとは人も減るかな。そんなことを先週、彼女と会話したことを ふと思い出した。 彼女の歩く速度は、じわじわと速くなっていくようだった。 「……肌が触れあうと、どうしようもなくなるんだな」 ぽつり、と彼女は呟いた。胃の奥から食べ物を吐き出すような声だった。 「ゆみ?」 「人の温もりは、よくない。あるのが当然という気になる」 横目で彼女を盗み見る。さらに胃から出るものを、堪え忍ぶ顔で彼女は続ける。 「モモがいることが当然ということは、モモがいないことを苦痛に感じるということだ。それが、 消せない。麻雀でも、勉強でも、何をしても、消えない。どうしようもないんだ」
駅に着いた。言葉を切ったまま、私たちは改札を通った。夕方のラッシュを外れた駅構内に、 人はまばらにしかいない。閉じられた売店とシャッターのかかった商店街は、いつも私に物寂 しさを与える。 たっぷり5分。無言のままで私たちは歩いた。その間、色々なことが頭に浮かんだ。一度、 美穂子とこの駅で降りて、買い物に行ったときのことも。特に何を買うでもなく、2人でふらふ らと町を歩いた。適当に入った喫茶店で食べたケーキが美味しかった。いつも行儀のいい 美穂子が、はしゃいでいたのか珍しく口元にクリームを付けていたので、私はそれを指です くって舐め取った。美穂子はカップの紅茶と同じ色に、その白い肌を染めていた。 階段を登る時に見えた空は、やはり真っ暗だった。はあ。吐いた息が白く、まるで魂のよう な痕を空気に作った。階段の一歩ごとに、美穂子の一挙手一投足が思い出された。 「……消えないね」 発車時間が近いホームは、人でごった返している。そこを隙間を縫うように移動する。降り る駅で、改札の近い場所になるように、今から移動しておくのだ。その先回りは、いい大学に 入りいい企業に行く、というような私たちの人生のように私には感じられた。なんだか落ち着 かない気分になるね。私は前に彼女に言った。考えすぎだ。彼女はにべもなく答えた。 「今でもさ。道ですれ違った人を、あ、美穂子だ、って目で追っちゃうんだ。でもいつも全然違う。 美穂子と同じ香水とか、美穂子と同じ髪型とかさ」 「……わかる」 「ちょっとだけ美穂子なんだよ。ちょっとだけ、美穂子を感じちゃうんだ。良くないよね。お腹 へってる時に、ご馳走の写真見るようなものだよね、あれってさ」 考えすぎだと私に言った時よりは険しい表情で、彼女は唸るように言った。 「私は眠るときの枕が嫌だ。モモの匂いがついてる気がする。そういうのは、苦手だ」 言葉の内容と表情のギャップに、私は思わず吹き出してしまった。彼女は先ほどのように 過剰な反応はしないで、ただ顔を赤くしただけだった。酷く低い音量のアナウンスが、ちろち ろと鼓膜を擽った。 大きな音を鳴らして、電車がホームに侵入する。ぐにゃりと、集団がアメーバのような動きで、 横に行ったり縦に行ったりを繰り返す。 人間よりは機械に近い動きで、扉から人がはき出された。そして私たちが詰め込まれ、どこ かのスタートボタンが押される。警笛。アナウンス。閉じる扉。機械的すぎて、逆に人間性を感 じてしまうような、妙な連続性がそこにはある。 狭い空間で、人の熱気に包まれる。一気に頬に熱が籠もった。 「……春になったらさ」 呟いた。窓の外で、光の点が滑るように流れていく。列の後ろの方だったので、私たちは必 然窓際に立つことになる。押さえつけられはしないが狭い車内では、呟くくらいがちょうどいい。 間近で、彼女と視線が合う。相変わらず強めの視線だった。 「今度はのろけ話しなきゃね。こんな話じゃなくて、もっと、こう、溺れるみたいな」 「そうだな」 間近だったからか、それとも付き合いが半年を超えたからか。ほとんど変わらない表情が、 しかし穏やかなものになったことを、私は直感的に悟った。それはきっと、初対面の相手では 確実にわからない変化に違いなかった。 「もっと10代らしい話をするべきだろうな、私たちは」 「そうそう。ダブルデートの予定とかね」 「……そういうのはいいんだが」 そのまま、彼女は窓の外を眺めた。私もそれに倣う。駅までは十数分。それまではこの姿 勢のままだ。 「春が来たらな」 「うん。春が来たらね」 籠もった声で、スピーカーが次の駅が近づいたことを告げた。
今回は以上で……、と言いますか、キャプテン出なくてごめんなさい……。 次回は出るんですが、今回はそこまで行きませんでした。竹福スレなのに……。 竹福って書いてるのに、なぜか加治木さんが目立っちゃって……。本当にごめんなさい。 少し受験には思い入れがあるので、多少設定をいじっても書きたい話でした。 あと1日、お付き合いくだされば幸いです。 では、また。世界中の竹福好きと受験生に、愛を込めて。
久とゆみが友人になるのは面白い展開ですな。
女のような少女のような この二人の雰囲気めっちゃ好きやわ〜 早くキャプテンを出してくれ! このままでは部かじゅに目覚めてしまう!w
規制でGJするのが遅くなり申し訳ないorz
>>317 綺麗な文章に感動した。
>>330 かじゅと部長が友達って展開はかなり好きだ。続きを所望します。
予備校の場所の駅とは比べ物にならない、というほどでもないが、やはりこの駅は小さい。 駅のホームに対して地下道も高架もなく、そのままの高さで改札を道が続く。疲れている時に はありがたいが、なにか身体に力が有り余っている時は、もう少し何とかならないか、と感じて しまったりもする。 予備校にいる間に、こちらでは雪が降ったようだ。地面にうっすらと白いものが積もっている。 今はやんでいるが、いつまた降り出すか分からない。なにせ夜は冷える。雪とか霜とか、そう いう冬の備えは備えすぎてしすぎることはない。 「明日はモモに会おうと思う」 別れ際。不意にとしか言えないタイミングで、彼女はぽつりと呟いた。街とは違い、人は影 も見当たらない。気温も、風が吹くと震えが来るほどに低い。 「3学期に自由登校になってから、一度も行ってなかったんだ。何を話せばいいのか、何を すればいいのか、わからなくなっていた」 多分、私にではない。私の向こうの、自分の中の東横桃子について、彼女はぽつりぽつりと 話している。 「センターが近いから、しばらく会わなかった。連絡もしなかった。それだけで、ただそれだけで 私は、どうしようもなく雁字搦めになっていたようだ。いつでも会えていた、ということも、よくない ことないかもしれん」 だからな。彼女はようやく、焦点に私を捉えた。 「明日会って、喋って、抱きしめる。好きだと言う。好きだと言わせる」 宣言するように言った。決然とした、何か少年が誓いを立てるような表情だった。それが実 によく彼女に似合っていたので、私も微笑み返した。 「しっかりね」 「何言ってる。竹井もだぞ」 「え?」 彼女の表情が、今度はいたずらっぽいものへと変化する。訝しむ私に、彼女は煽るように告げた。 「今度の講義に報告だからな。私はモモに。竹井は福路にだ。事情はわからんが、竹井も福 路も、そんな顔のままじゃ、ちゃんと春は迎えられないぞ」 じゃあな。私の返事を待たず、彼女は身を翻した。あっけにとられたまま、私は後ろ姿を見 送った。別れの返事もできなかった。また彼女もそれを待たず、すたすたと惚れ惚れとするよ うな速度で、ぐんぐん遠ざかっていく。もしかしたら、見えない頬をまたも赤くしているのかもし れない。しばらく、彼女の吐く息の白さだけが、煙突からの煙のように見えていた。 ほう、と私も息を吐いた。自分の中のもやもやも一緒に吐き出そうと思ったが、上手くはいか なかった。それはまだ胎内に、数式やら文法やらと一緒に、ぐるぐると渦巻いていた。 もしかしたら加治木ゆみに心配されるくらいには、私も美穂子も、酷い顔をしていたのかもし れない。それに気づいて、また息を吐いた。寒さが歯茎に染みた。鋭い痛みが頭を刺した。 私、貴女の大学を受けようと思うの。彼女がそう言った時、私の胸に去来した感情は、嬉しさ よりもむしろ別のものが強かった。ある種の戸惑いが心にあった。それは罪悪感に似た氷塊 だった。自分のせいで彼女の人生を狂わせてしまったのではないか。その思いに怖くなった。 私が美穂子に何と言ったのか、私自身は何も覚えていない。ただ、美穂子の意志の強い瞳に、 穏やかさや優しさの中に隠れた何かに、鋭く胸を抉られていた。そのことだけは、はっきりと覚えている。 美穂子に最後に会ったのは、きらびやかなクリスマスの次の夜だった。そのときの美穂子は 少し痩せて、ひどく疲れているように見えた。美穂子の強さを知りながら、しかしそれはあまり にも痛々しく私に映った。だから私は、予定通り神社に合格祈願のお参りをした後、そろそろ帰 ろうかと早急に提案した。美穂子はふわりと笑った。普段通りの笑顔だった。そうしましょうか。 美穂子は言った。そしてす、と私の正面に立った。訝しむ私を窘めるように眉を寄せて、美穂子 はぎゅっ、と私の両手を握りしめた。久。笑顔のままだった。久。好きよ。ずっとずっと、好きよ。 これから1000年会えなくても、これから1000年、ずっと好きよ。こつん。そのまま、美穂子は 額と額を合わせた。唇だと、肌が荒れちゃうかもしれないから。呟くように言うと、鼻先だけでくす りと笑った。そして来た時と同じくらいの唐突さで、美穂子はまた私から離れた。 そしてそれ以来、私と美穂子は同じ空気を吸えていなかった。
滑りそうになる脚を無視して、私は走り続けた。胸の中の情動が、灰の底に埋まっていた 私自身に、ようやく火がついたようだった。あの夏の感覚が、まだ何枚かの膜に包まれては いるが、やっと右手に戻ってきた。今度、加治木ゆみには例の缶コーヒーを奢ろう。そう決 める。彼女の言葉で、火がついた。自分の中の、大事な何か返ってきた。自分がどれだけ 駄目だったかに、今やっと気がついた。 息が荒い。それでもいい。肉体的な痛みなら、むしろ歓迎できる。精神的に停滞している よりも、何倍もいい。そう。春を待つのは、趣味じゃなかった。忘れていたかもしれない。春 を迎え撃つことを。攻めることを。何も考えずに、ただ悪い待ちにしていたわけではない。 すべての可能性を考えて、その待ちにしただけだ。だから、今回もそうするべきだ。 息が上がる。関係ない。地面が滑る。知らない。私が知っていることは、美穂子が今多く のものを犠牲にして努力しているということと、2人で生きようと約束したことだけだ。だから、 走る。伝え切れていない想いを伝えるために。抱き締め切れていないものを抱きしめるために。 ぜえ、ぜえとまことに品のない呼吸をしながら、私は壁に手をついた。一軒家が数十ほど密 集している場所の一角に、私はへとへとになって到着した。ぜえ、ぜえ。痰交じりの息を吐きな がら、私は軽く笑ってみた。いくら彼女との会話で火がついたとはいえ、まだバスもある時間 帯なのに、駅から美穂子の家まで30分も走るなんてどうかしている。本当に、どうかしている。 座り込みたいという欲求が身体全体から出ていたが、私はそれをすべて黙殺した。どうかしな ければ、恋なんて出来ない。女の子にキスしたりしない。壁を這うように進む。美穂子の家は 目の前に見えていた。2階の美穂子の部屋には、まだ明かりがついている。ぜえ、ぜえ。息が 定まらない。このままだとインターホンも押せそうにない。ふう、と大きく息をつく。危うく下半身 がずるりと滑りそうになり、慌てて踏ん張った。 その瞬間。がらり、とどこからか音がした。うるさかったかな。首をすくめて、その音の方へ と目線だけを向かわせた。 「……久?」 私を久と呼ぶのは幾人かいる。しかしこんな声で私を呼ぶのは、世界で一人しかいない。 その声でまた気が抜けた。既にかくかくと笑っている膝が、致命的な打撃を受ける。ずるず ると滑りそうになる身体を、私は両腕で必死に支えた。さすがに雪の上に座り込むのは避け たいところだ。 私が何を言おうか、そもそもこの体勢をどうしようかと回らない頭を回しているその20秒 ほどで、玄関の扉が開いた。上から私を見て、状況を察してくれたのだろう。美穂子はまさ に着の身着のまま、といった風情で、私の右腕をとってくれた。 「久。どうして」 「まって。ちょっとまって」 私はふらふらと美穂子に抱きついた。首にタオル、上半身は鼠色の半纏、下半身は学校指 定であろう赤いジャージの美穂子は、戸惑ったように私を支えた。 「息、切れてて。やっぱり、急に走っちゃ、駄目だね」 ともかく、呼吸を整えなければ話にならない。あー、とわけのわからない音を出しながら、 それでも私の喉はなんとか通常を取り戻しつつあった。美穂子は何も言わずに、私の背中を とんとんと叩いてくれた。 数分ほどで息が戻ってくれたので、ふう、と息を吐き、美穂子から離れた。そのまま塀に凭 れかかる。 「ありがと。助かったよ」 お礼のつもりで軽く右手を挙げる。 「美穂子が出てきてくれなかったら、ずぶ濡れになるところだったよ。ほんと、助かった」 心配げな美穂子の表情が、その言葉でようやく和らいでくれた。 「なんだか久がいるような気がしたの」 「ナイス勘」 息を大きく吐いた。これで、最後だ。このまま汗が冷えるのを待つ時間はないし、そもそも、 私の燃え上がった気持ちが、身体が治った途端にむくむくと姿を表してきている。なにせ美穂 子が目の前にいるのだ。1月あまり会っていなかった美穂子が。匂いもたっぷり吸い込んだ。 これで気分が乗らない方がおかしいだろう。
「それより久。今日はどうして」 「好きだ」 へ。美穂子の口から、珍しく吐息のような呟きが漏れた。少し笑って、私はずるずると塀をず り上がった。 「好きだ、って言いたくて。来ちゃった」 ははは。そこまで言って、私はようやく塀から離れた。2本の足で立って、正面から美穂子を 見据える。美穂子の半分くらい開いた口から、白い息がふらふらと漏れている。 首に白いタオルを巻き、ぽかんとした赤い顔の美穂子は、やはり壮絶に可愛らしかった。頭 の中がぼうっとしてくるのを感じた。 「他にも沢山。まだ私の言いたいこと、全然言えてない気がしたんだ」 「……久」 「寒いからすぐに言うよ」 まだまだ身体が熱い。逆に冷えだしたら危ない。本当に後先を考えていなかったと今更なが らに思う。でもいい。なにせ美穂子に会えただけで、昨日の部屋の中での暗い思考は、糸の 切れた風船のようにどこかへ飛んでいってしまったのだから。 「入試終わったら、一緒に敦賀の加治木と徹夜麻雀するから」 「えっ?」 「絶対勝つから。美穂子も負けちゃ駄目だよ」 一気に言った。美穂子はさらに困惑した表情を浮かべる。構わず、一歩近づく。 「次はラブホテル行こ。大きくて広くて綺麗なところ。そこで1日中裸で、抱き合おう」 ぶわっと美穂子の顔に朱が散った。それを視界の端に収め、私は美穂子の手をとった。 冷たかったので、ぎゅっと握った。風邪を引かせるわけにはいかなかった。私の体温を忘れ られるわけにもいかなかった。 「ずっとだから。ずっとだよ。二人でおばあちゃんになって、二人で老人ホーム行って、二人で じいちゃんばあちゃん麻雀のカモにして、二人で死ぬんだよ」 こつん、と額と額をつける。あの夜に美穂子が私にしたように。そして頬と頬をすり合わせた。 冷たいかと思っていたのに、熱かったので、少し安心した。 「それ言わなきゃって思ってたら、走ってた。伝えられてないって思ったら、たまんなくなった。 私が美穂子を、死んでも離さないってことを」 耳の向こうに、力を込めて注ぎ込んだ。 美穂子の入試の話を聞いてから、なぜこの一言を言えなかったのか。私はきっと、怖かった。 美穂子が落ちるのが。美穂子に疑われるのが。私には自信がある。落ちても麻雀で食べていく と覚悟している。そもそも、家にお金がないので大学は国立にしか進学できない。しかし、美穂 子は違う。彼女は私立でもどこでも行ける人だ。だから付属の大学に行くことが自然だったの に。もしかしたらここから、悪い方へと転がってしまうかもしれない。だからといってやめろとい うのは、私の気持ちに対する不信を生むかもしれない。そのふたつに挟まれて、私は怯えてい たのだ。彼女の人生と私の人生、両方に対する怯えが、受験という状況の中で私を雁字搦め にしていた。 美穂子の、決めたことには真っ直ぐ殉じる強さも、その実力も、そして私を愛してくれていると いうことも。私はきっと、知ってはいたけど、信じてはいなかったのだ。美穂子のことを。もしか したら自分のことも。全国大会が終わり、次は大学に受かることを一番に考えないと、と思った 時点で、美穂子という存在のことをきちんと考えられなくなっていたのかもしれない。美穂子と 向き合えていなかった。理由を付けて放っておいた。少なくとも、解凍した時にばらばらになって しまうような凍らせ方は、大学に受かったとしてもそれからぎくしゃくしてしまうような付き合い方は、 何かしら間違っているというのに。 美穂子の入試について、もっと話を聞けば良かった。もっと話し合えば良かった。もっと一緒 に頑張れば良かった。もっと。もっと、一緒に。その後悔にも似た想いが、私をここまで突き動 かしていた。
「……久はかっこいいから」 呟きが、私の耳に届いた。いつの間にか、美穂子の両腕が、しっかりと私の背中に回されていた。 「私は久も悩んだりするんだ、ってことを、時々忘れてしまうの」 「……美穂子」 私も、手を背中に回した。以前よりも弾力の減った感触が、それでも手の中に収まってくれた。 かすかに美穂子は笑ったようだった。 「私、貴女みたいになりたくて」 「私に?」 「きっと久はそんな声になると思ったわ。だから言えなかったのだったかしら」 思わず離れようとした私の身体を、さらに美穂子は抱きしめた。極寒に一人きりでいる旅人 のようだった。離れそうになった手を、だから私は元に戻した。 美穂子はゆっくりと、呟くように言った。 「部長の引き継ぎをして、部活に行かなくなって、そしたら私、何もなくなってた。空っぽに なっちゃってた。麻雀ばかりやっていたものね、時間の潰し方も、なんだかよくわからなくて」 「なにもないことなんてないじゃない」 「そのときはそう思ったの。本気で、そう思えたの」 ちょっとおかしくなってたのかしら。僅かに笑う気配がした。 夜半の住宅地は、誰も通らなかったし、生き物の気配もなかった。空も晴れる気配がなかった。 私の耳に聞こえるのは、美穂子の声と、僅かに早くなった美穂子の鼓動と、どこかを走る車の音 だけだった。 ゆっくりと美穂子は続けた。 「これが本当の私なんだ、って思ったら。怖くなっちゃった。このまま死ぬまでこうなのかなって」 でもね。密やかな声が、よく聞こえた。くっついている場所から、美穂子の成分が私の中に 入ってくるようだった。 「目の前に久がいてくれたの。真っ直ぐ走る久が。かっこいい久が。だから、私も久みたいにな ろうって、久みたいに生きたいなって」 「それで同じ大学に?」 「ええ。色々と、試してみたくて」 私はほとんど溜息混じりに、美穂子の耳にゆっくりと言った。 「そんなよくわからない理由で、こんな辛いことしなくてもよかったと思うけど」 「ええ、甘くなかった。受験勉強って、こんなに辛いものなのね。知らなかったわ」 淡々とした声だった。だから、美穂子の顔が見えないのが不安になった。美穂子は何か普通で なくなると、声も表情も淡々としたものになる。無理矢理にでも離れようかと思ったけど、美穂子の 腕の力は強かった。 「でも、決めたもの。だから、いいの。行けるところまで、行ってみる。走れるところまで、走ってみる。 最後まで、やってみるわ」 「……うん」 「だって、私は知ってるもの。私が転んだり、挫けたり、止まったりしたときは、絶対に久が側に いてくれるって。それでも久は、私を好きでいてくれるって」 「いるよ。美穂子が嫌がっても、いる」 「だからね。だから、だから久……」 淡々とした声が、ぼやけた。何かが、溢れたようだった。感じていた体温が一気に上がる。 同時に腕に力が込められた。顔が見えなくて良かったかもしれない。きっと、罪悪感で心臓 が止まってしまいそうなほどに、美穂子はぼろぼろの顔になっているだろう。 「だからね、久。今は、ちょっとだけ。ちょっとだけ……」 美穂子は泣き虫で傷つきやすいけど、でも普通よりよほどは強い人だ。でなければ名門校 の部長なんて務められない。エースを張ったり出来ない。一人でも、頑張れる。結果が出なく ても、簡単にへこたれたりしない。負けても、挫けたりしない。でも、だからこそ辛い時に、溜め 込んだりしてしまう。その感情を出せなくなってしまう。人に言えなくなってしまう。並のもので ない、受験の辛さを。だから今、強いからこそぴんと張りつめてしまう心の糸が、ぷつりと切れ てしまったのだろう。強いからといって、辛さを感じないわけじゃないのだ。 美穂子の涙は、聞いたこともないほどに静かなもので、また聞いたことのないほどに苦しげ だった。きっと、例えば池田ちゃんや先生や両親には、見せたことのない涙のはずだ。泣き虫 の美穂子が、だからこそ見せられない涙のはずだ。だから、これは私が受け止めなければな らない涙だった。
真冬に降りしきる雨のような涙は、私の肩にじわりじわりと広がっていった。美穂子は私にし がみつきながら、二度と離さないとでも言うように、私の背中に力を込め続けた。 「……もっと一緒にいればよかったね」 呟いた。美穂子越しに、家の明かりが見えた。それはいかにも暖かそうに、いかにも幸福そ うに映るものだった。でも私にとっては、美穂子の小さな肩と、髪の毛の生の匂いと、少し肉の 落ちた背中が、何よりも愛しいものだった。 ぽんぽん、と軽く、私は美穂子の背中を叩いた。 「私、かっこよくなんかないよ。いつだって自信ないし、美穂子の気持ちを聞くのが怖くて、ねえ、 怖いって理由だけで、2ヶ月も聞けないままだったし」 大学に受からなければという想いが、他の視野を狭めていた。そこまでしなければ駄目だと 勝手に思っていた。それは多分事実ではある。事実ではあるが、それと両立させなければなら ないものが、確実にあるはずなのだ。 「だから美穂子。一緒にいてよ。それで、私を助けて。私を叱って。私も美穂子の傍にいるから。 美穂子が泣きたくなったら、そうだね、タオル代わりにくらいならなれるから」 最後は少し冗談めかした。笑ってくれるかなとも思ったけど、美穂子の涙は止まらなかった。 まるで本当にタオルにするように、美穂子は私をきつく抱きしめた。 「……久」 「うん」 「この久は、夢じゃないよね。消えたりしないよね」 「消えたりしない。離れもしないよ。ずっと一緒だよ、美穂子」 美穂子は私の夢を見ていたのだろうか。それで、寂しい想いをしていたのだろうか。そう考え ると私もたまらなくなった。目の裏に熱い何かが登ってくる。まるで幼子が母親にしがみつくよ うに、私も腕にありったけの力をこめた。 「……久ぁ。寂しかったよぅ。しんどかったよぅ。不安だったよぅ……」 「ごめんね。本当に、ごめんね……」 崩れかけの美穂子の声が、私の涙声と混じりながら、寒さで凍りそうな空気に溶けていった。 美穂子が真っ赤な顔を上げるまで、その道には猫一匹も通らなかったし、空からは雨も雪 も降ってこなかった。微笑み合い、唇のかわりに額と頬を擦りつけ合い、そして名残惜しさを 隠そうともしないで別れるまで、私たちふたりだけがそこにいた。誰にも、何にも邪魔はされな かった。美穂子が扉を閉めてから、急に寒さが襲ってきたが、それでも急いで帰宅してお風呂 にゆっくりと浸かったおかげか、風邪を引くこともなかった。 いちばん暗くていちばん寒い時期は終わったのだろうと、寝る前に布団の中でぼんやりと思った。 美穂子と私は似てるということを、ようやく私は思い出していた。弱音にしろ苦痛にしろ、そう いうことは表に出さないことで、生きてきた人間だということを。まわりには既に、心の奥底の 感情を出せる人間がいないということを。だから、互いを求めたのだと。 大学に受かることは大事だ。そして美穂子の心のことだって、私には大事なことだ。どちらか ひとつに偏ってはいけなかった。それを、忘れていた。どうせやるのならば、どちらも手に入れ てみせるという覚悟が必要だということを、失念していた。 加治木ゆみには、コーヒーを10本以上は贈らなければならないかもしれない。ちらりと頭の 隅で思った。私がそれに気付けたのは、雁字搦めになった、と言ったときの彼女の顔なのだ から。彼女ももしかしたら、私や美穂子を見て何かに気づいたのかもしれない。ただ、彼女の ことだ。そうであっても何も言わないだろうし、私や美穂子に感謝はしても、その気持ちを私た ちに示さないに違いない。だから、奢るコーヒーは1本でいいか。久しぶりにすっきりとした眠り に落ちる直前、私は瞼の向こうにいる不機嫌そうな彼女の顔に向けて、軽く舌を出してみた。
学校の教室以上に見慣れてしまった講義室には、先に彼女が座っていた。なんとなく負けた ような気分になりながら、ずかずかとわざと彼女の座っている場所を通って、逆側に出た。彼 女は露骨に嫌そうな顔で、こちらを睨み付ける。切れ長の目が恐ろしさを増している。おお怖い。 とはいえ仕掛けたのは私なので、気にせず隣にどしんと座った。 「やあゆみちん」 無言で睨まれたので、今後はこの呼び名は使わないことに決めた。やれやれ、と首を振って、 私はゆっくりと鞄を開ける。この講義は夕方の中休みの次なので、まだ時間に余裕はある。 溜息混じりに、彼女は握っていたペンを置いた。 「随分と楽しそうだな」 皮肉っぽい口調に、私は笑って返した。 「色々とすっきりしたからね」 そうか。彼女は無表情に言うと、ぐぐっと背を伸ばした。骨の鳴る音がここまで聞こえた。 十数列並んだ木の机は、最終的には半分くらいが埋まるが、今は両手の指で足りるくらい の人間しか講義室にはいない。パートのおばさんが、ごしごしと黒板を拭いている。暖房機 がフル回転しているおかげで、部屋はTシャツ1枚でいられるほどに暖かいが、空気の乾燥度 は屋外の比ではない。 私はどさりと分厚い参考書を置いた。 「美穂子Dだってさ。この時期にそれだと、やっぱ厳しいかも」 参考書を買うお金がもったいなかったので、私は図書室で借りたものを使用している。すっか りとよれよれになってしまったそれには、小さく他所の予備校の名前が印字されていた。 「厳しいだろうが、しかし福路だ。案外、私も竹井も簡単にひっくりかえされてしまうかもしれないな」 自分自身に言い聞かせるような調子もあったので、彼女がある程度は本気でそう言っている のがよくわかった。私はもっと楽観的だったので、少し不満ではある。とはいえ、判定は11月 頃の模試とセンター試験との合計で決まるものであり、美穂子の場合は、前者のDと後者の Bの合計でのDプラスだった。よろしくは全くない。もう1ランク下げるのが常道ではある。しかし。 でも、と美穂子は言った。今は11月に解けなかった問題も、少しはわかるようになってきたから。 まだまだ頑張ってみるわね。その言葉を、私も信じるだけだ。少なくとも、これは麻雀の話で はあるが、私の知っている美穂子のこういうときの「少し」は、決して「少し」ではなかったのだ から。信じる価値は大いにある、勿論、その可能性があるからこそ、人間は苦しまなければ ならないのであるが。希望が残っている方が、辛いこともある。 美穂子の涙を思い浮かべて、私は軽く溜息をついた。 「だから私らも頑張らないとね。本末転倒だけは避けないと」 「まったくだ」 シャーペンを取り出して、私は明るくくるりと回した。 「まあ美穂子は、私立の1つは受かったって言ってたから。その辺は大丈夫だよ」 「そうか。入試会場で出会ったんだが、受かっていたか。良かったな」 「え、あんたたち一緒のところ受けてたの?」 「国立専願でなければ、学力的にも妥当な選択のはずだ」 あそこが受かったのなら、こっちが受かる可能性も高いだろうな。彼女の言葉は、しかし私 の頭上を素通りした。これで私が受かり、彼女と美穂子が落ちたらどうしようか。めちゃくちゃ 切ない結果になるんだけど。と考えて、私は頭を振った。一瞬、彼女と美穂子が微笑み合って いる姿が浮かんだのである。また冷たげな彼女と暖かい美穂子の対比がよく似合っていた。 その雑念は実にリアルで、夢にでも出てきそうだった。頭を振っても消えてくれそうになかった ので、とりあえず私はシャーペンの芯を少し出して、左手の甲に突き立ててみる。 「竹井、何してる」 「やな絵が浮かんだの。こうでもしなきゃ消えない。みっともないけど」 鈍い痛みが身体を貫いて、後悔が私を支配する。しまった、とは思っても言ったりはしない。 彼女はそんな私を冷ややかに眺めると、そうか、と小さく言った。
「その絵はどうせ実現しない。安心しろ」 「当たり前よ。私がさせないわ」 「それにモモがさせないよ」 一度瞬きをした後、彼女は笑った。どことなくシニカルに見える笑みだった。 「えらい自信だね」 「あいつ、高校卒業したら私と結婚する気でいるから。驚いたよ。あんなこと普通に言われるとは、 本当に思わなかった」 嬉しいと怖いが両立している奇妙な表情で、彼女は言った。目は黒板の奥の素粒子あたりを 見ているのであろうか、妙に遠い。私はそののろけ話らしきものをからかおうとして、少しため らってしまった。なにやら面白い、というよりは怖そうな話になりそうだったからだ。 ちらりと時計を見る。あと数分で講義が始まる。そろそろ人も増えてきたようだ。彼女を横目で 見て、私は結局溜息混じりに言った。 「あんた受験やめなよ。卒業したら麻雀プロになって、東横さん養ってあげなさい」 そしたら美穂子の席が空くから。言葉を切って、また横目で彼女を観察する。ゆうに三瞬は動 きを止めて、彼女はふうう、と長い溜息をついた。なにか内蔵に近いものをはき出すような溜息 だった。 「竹井。私もペンを刺したくなってきた」 「実現しそうな絵でも出ちゃった?」 深刻な顔で、彼女は頷いた。彼女もまた、私とは別の領域でせっぱ詰まっているようだ。 彼女にはコーヒー一杯分の恩もあるし、何か慰めようか。そう思ったけれど、適当な言葉は すぐには出てくれそうになかった。それに出てきても、美穂子に使いたくなる類のものだろう。 しばらく首を捻っていると、にわかに講義室に人が増えてきた。時間はすぐそこだ。そして適 当な言葉も浮かびそうにはない。一度首をぐるりと回して、結局私は、数日前のあの言葉を贈 ることにした。 「まあ春の直前がいちばん寒いって言うしさ。頑張ろうよ、お互い」 彼女の肩を叩いて、努めて明るく言ってみる。その手を眺めることもせずに、彼女はもう一度、 今度は顔を覆って溜息をついた。そしてその1秒後、狙ったようなタイミングで、講義の始業ベル が高らかに鳴り響いた。
以上です。再びありがとうございました。 このふたりが大学生になっている話は多いのに、受験期って結構少ないよなー、 などと考えたのがきっかけで、色々と書いてしまいました。 個人的に受験しんどかったので……。 微妙に色々と変わっているかもしれませんが、楽しんでいただけると幸いです。 今までずっと部長視点だったので、今度はキャプテン視点でも書いてみたいなあ、と思っています。 そのときもよろしくお願いします。 では。すべての受験生にエールと、すべての部キャプ好きに感謝を込めて。
>>342 GJでした
キャプテンが勉強で苦労してるのって考えたことなかったから、なんだか新鮮だった
確かに風越はエスカレーターっぽい気がする
>>343 GJでは表現できないほどの名作乙です。
このスレって普段は過疎気味なのに不意に大作が投下されるから困る。
>>343 GJ!
悩みながらも向き合う部長とやっと涙を流せたキャプテンに惚れた
部長とかじゅもよき友人、よきライバルな関係は見ていて気持ちいいね
春になったら二組とも存分にのろけさせてあげてください
こっちにもスレあったんか
ほしゅ
個別キャラスレはまだ復旧せぬか
部キャプの素晴しさは異常
誰かが残していった退屈 あくびが出ちゃう ゴロゴロしちゃう 平和というのは、そんなもんなのか そんなのありですか? 飛びだしゃいいー
>>349 なのだが
このカップリングの同人誌が少ない…
様な気がする…
いや、かなり多いだろ
キャプ受け以外思いつかない・・・キャプ攻めは無理なのか!?
上埜さんがしてくれないのなら、私がするまでです!
>>354 部長が強過ぎるんだ
押されてあたふたしてる姿とか想像できねぇ
咲-saki-7巻発売記念保守
部長VSキャプテンの脱衣麻雀。まぁ提案するのは部長だろうな 問題なのは、この二人が本気出したら確実に勝てそうなのが現時点の咲世界にいない罠。それこそ他家が剥かれて終了も有り得る。 作品は違うが、赤木なら全員剥いてしまいそうだが…この時、赤木女子高生の裸に興味無しっ…!ってかそれじゃ意味無い。あくまで部長VSキャプテンの構図が大事 むしろ、逆手に取って部長にわざと振り込みまくるキャプテン…でも、キャプテンも麻雀で手を抜く事は無さそう 「安いものです。私はこの半荘一回で上埜さんとの結婚生活を買います」ときて欲しいが、この台詞が似合いそうなのは部長
よくわかっていらっしゃる
アニメ24話の妄想SSを投下してみる。原作読んでないから食い違いとかあったら脳内補完&指摘して欲しい。 〜(ある大学の講義後の風景)〜 「教授。この部分の翻訳ですが、このような形は如何でしょうか?」 「これはまた随分と冒険してみたものだねぇ……。でも、ちゃんと流れにも沿ってるし、面白い訳だとも思うよ。理由を聞こうか」 「夏目漱石はI Love Youを『月が綺麗ですね』と、二葉亭四迷は『死んでも良い』と訳したそうなので、このI Love Youに人間関係と話の流れを加味して考えてみました」 「なるほど……。」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ヒュー!ドーン! 「素敵……」 「そうね」 本当に何を考えているんだか。無警戒にも程があると思う。隣にいる女は自分を取って食いはしない、単に友達感覚で誘った……なんて本気で思っているのかも知れない。 今までに三度もチャンスがあった。その全てが水泡と化するのは寂しい気がする。 「あそこでああしていれば」「ここでこうしていれば」 何事に関しても言えることであるが、こういう感情は持ってはいけない。麻雀を打っている以上、人一倍身に沁みているつもりだ。 結局の所…お互いに臆病かも知れない。いや、違うな……自分は恋愛事が少し苦手なだけだ。そう自己完結してみる。 一度目は2/3の確率を「隣」と意識させてみたこと――もっとも、対面であっても「貴女の顔を見ながら…」と言うつもりであったが―― 二度目はその対局の直後。団体戦の中堅戦と終了時のお陰で個人戦で顔を合わせた瞬間に彼女を思い出していたのだが、あえてあの場で言ってみせることで心理的にもう一押ししてみた。 もっともこの二回は対局前と直後だったので、結果は期待していない(それで上手くいく事に越したことは無いが)後の布石と言うやつだ。 重要なのが、そうして迎えた三局目。今日が花火大会であるという、大物手をWリーというくらいのツキを上乗せした先刻の一局。 年頃の娘なら「この後、予定ある?」なんて聞かれた時点で、ナンパの一種と取っても仕方無いのに「いえ、特にありませんけど?」という素直な返事が返ってきた。どうやら、和了れずに流局したらしい。 洞察力の高さからして、布石の時点でも気付いて良さそうなものだが、恋愛事には疎いのか、弄ばれているだけなのか。こんなにも流れを作り出すサイン(I Love you)を送っているのに、欲しい応えも諦めに続く返事も返ってこない。 自分の作り出した流れに他者を巻き込む――時には他者を翻弄し、時には他者を思い通りに動かす――事は得意なつもりだ。 でも、彼女には自分の攻めも何度か華麗にかわされてたしなぁ…と夜空に浮かんでは消えるものを眺めながら、ぼんやり物思いに耽る。恋愛には悪待ちという攻め方より、ストレートな手の方が良い。
ところで、自分は彼女――福路美穂子――のどこを好きになったのだろう、と考えてみる。接点と言えば3年振りの再会とたった3回の対局。たったそれだけに過ぎない。中堅戦で垣間見た部員思いの優しさ?あるいは、綺麗な両目も含めての容姿に?それともその強さに? 分からない。もっともこれは勝負事と同じで理屈ではない、と思うからさしたる問題では無い。 こっちの想いに向こうが気付かないこと。やはり、これが一番の問題だ。こういう時に素直に好きと言えれば、言ってもらえれば楽だとはなのだが……。 女の子は、恋愛には積極的な娘も告白には受け身だったりする……。それで、お互いが勝手に諦めちゃったりして終わるケースも多いんだとか。現場の人間になって初めて、自分に告白してきた女の子の勇気には感心する。 こんな時には、男の方が勇気を出して一歩を踏み込むのだろうが、お互いに女である事が今は少し憎らしい。 それは関係無いか。仮に自分が男であってもストレートな手なんて似合わない事は誰よりも知っている。逆に彼女が彼だったとしても、こんなに惹かれることは……いや、それ以前に出会うこともなかっただろう。だから考える……この娘に振り込ませる悪い一手を。 ……えの……竹井さん? え?あぁー何? いえ、何だか難しい顔してるみたいなので…… あーごめんごめん、ちょーっと考えこと そうですね、これから忙しくなりますし…… ヒュー!ドーン!ドーン!ドーン! ――それもあるんだけどさ……! 「終わっちゃいましたね……」 「でもさ、花火の後の星空って、花火の残した欠片みたいで……ううん、元々、星空の方が綺麗なものなのかもね」 ―よし、決めた!四度目の正直よ!仏の顔も…って言うし、今度こそ聖母の顔じゃなくて女の子の顔を見せて貰おうじゃない! 「ねぇ、知ってる?夏目漱石が……」 〜fin〜 ※夏目漱石が「月が綺麗ですね」と訳したという話。あれ嘘らしいねw
おまけ(何か思いついた小ネタ) 全国大会前日、女子高生二人は最高だった。 沈黙……二人に快楽とも言える緊張……ゆえに沈黙っ……! 手持ち無沙汰な福路は竹井に茶を出そうと準備……対する竹井はいつもの不敵な態度を取り戻そうと待機……… 至福っ……!乙女の夢……法悦…垂涎の至福…! 嬉々として働く福路 至福の雑用…! 竹井……ただ座っているだけ…至福の傍観……! 二人は………至福っ……!桃源郷を彷徨う(さまよう)が如くの圧倒的至福っ…!沈黙っ…!だが内心は…!狂喜乱舞っ…!咆哮…!歓喜…!感涙…!嗚咽…!感動…! そして……僥倖っ……!圧倒的僥倖っ……!否…!全国出場という実力による結果で二人は為し得たのだ……!旅館での……奇跡の相部屋を……! その価値プライスレスっ……!(現在に換算するとプライスレスはプレイスレス………) それでも、何かを言い出したくなるのが人の性……この沈黙を破る突破口……竹井にはみつからない……もちろん福路にも…… しかし……次の瞬間、両者に電流走る――! 「福路さん……あのっ……!」 「上の…竹井さんっ……!」 連鎖っ……!重なる想い……。 駆け巡る二人の脳内物質…! βエンドルフィン…! チロシン…! エンケファリン…! バリン…! リジン…! ロイシン…! イソロイシン…! 「キャプテーーン」 「遊びに来たじぇ!」 「あ……あら。調度良かったわ。お茶も入ったのよ」 「あらら……」 残念ながら、頭ハネ…… 相部屋ってのを見て「ツインか?」と勘違いして、駆け巡る脳内物質がやりたくなってやった。反省してない。 石投げないで…
GJ! 文章上手いっすね 良いもの読ましていただきました
アカギナレGJ
美穂子のことを大事に思ってる久っていう構図は原作じゃ来ないかなぁ。。。
最近は原作も色々凄いね
ほしゅ
隔離ってついてるからあんまり印象が宜しくないんだよ
ほし
キャプテン誕記念ほしゅ
レベル高いな
374 :
名無しさん@秘密の花園 :2010/11/25(木) 23:44:51 ID:zZF4tN7P
hosyu
375 :
sage :2010/12/22(水) 21:16:50 ID:88Mg0qRj
部キャプが愛しすぎて・・・保守
あら、やだ・・・
部キャプのためにホワイトクリスマスになることを祈って保守
378 :
377 :2010/12/24(金) 21:38:07 ID:LCtKnCbg
エロ無しクリスマスネタでよければ明日にでも投下するんだが・・・ 需要ないかな
いや待ってるよ
380 :
377 :2010/12/25(土) 06:34:37 ID:6F6M9BeW
エロなしだけど投下。
381 :
377 :2010/12/25(土) 06:35:49 ID:6F6M9BeW
『今から行く』 久からのメールに気づいたのは、風越麻雀部クリスマスパーティーの帰り道だった。 毎年行われるクリスマスパーティー。 部員の意識向上とOGとの交流が目的ということで、今年卒業した私も招待されていた。 本来ならOGは片付けに参加したりはしないのだけれど、久しぶりに会う部員たちを見るととても懐かしくなって思わず、片付けに参加してしまった。 華奈からは 「うちらの仕事無くなるから帰ってくださいっ」 と怒られてしまったけれど。 恋人達の甘い夜。 私もその例に漏れず久と過ごす初めてのクリスマスイブになる予定だったのだけれど。 「ごめん、美穂子。どうしてもバイト休めない」 二週間前、久は私に深々と頭を下げた。 「12月ってただでさえ客が多いのよ。しかもクリスマスとか半端なく客が増えるみたいで。24日も25日も代わりにバイト入ってくれる人なんていそうもないし。」 「そう……」 久は繁華街でカラオケ店のバイトをしている。忘年会やら何やらかんやらでとにかく12月は忙しいらしい。 「埋め合わせは必ずするから。本当にごめん。」 申し訳なさそうに俯く久を見たら、責めることなんて出来るわけなかった。 華奈と別れた後、時間を確認しようと携帯を開くと、未読メールを示すマークが点灯していた。 受信時刻は19:58。今から二時間近く前だった。 考えるより早く私はタクシーを拾うため手を挙げていた。
382 :
377 :2010/12/25(土) 06:37:30 ID:6F6M9BeW
急いで自宅へ戻ると、マンションの入り口から少し外れた所に人影があった。 「おかえり、美穂子。寒いね」 その人影はゆっくりと私へ近づいてきた。 「久……バイトは?」 「ゆみが代わってくれたんだ。」 そういって久は微笑んだ。 「気合い入れて来てみたら、美穂子留守だしさ。仕方ないから待ってたんだ。」 「電話をくれればよかったのに……」 「それが、美穂子にメール送った後充電切れちゃって。」 久は笑う。 「時間もわかんないし、連絡もつけようがないし、やっぱりちゃんと充電しなきゃだめだね」 不意に久の唇が私の口を塞いだ。 「日付が変わる前に帰って来てくれてよかった」 触れた唇は氷のように冷たく、それは久がいかに長い間この寒空の下にいたかを物語っていた。 「私さ、結構マジで美穂子に惚れてるんだ。」 私の手に固く冷たいものが載せられた。 「だからさ、一緒に暮らそう。」 手のひらに握らされたのは、見覚えのある鍵だった。 「これ・・・」 言葉に詰まる私をみて、久はぼりぼりと頭を掻いた。 「あー、うん、嫌だったらいいんだ。気が向いた時に寄ってくれるだけでもいいし。美穂子が預かってくれるだけでもいい。 なんていうか、ごめんね?急に鍵なんか渡されても困るよね」 裏目ったかぁと小さく呟きながら、久は踵を返そうとした。 「嫌なわけ・・・・・・ないよ」 右手で久の左腕をつかむ。 「毎日久と会えるのに、嫌だなんていうわけないじゃない。」 「そっか。よかった。」 そういって久は優しく私を抱き寄せてくれた。顔は見えなかったけれど、久が優しく微笑んでいるような気がした。
383 :
377 :2010/12/25(土) 06:38:15 ID:6F6M9BeW
以上。 メリークリスマス。
乙とメリークリスマス!
乙。これは良い部キャプ。
駅前でクリスマスデート→雪で電車が止まってラブホで一泊 部キャプのクリスマスイメージはこんな感じ
悶々したまま終わるのもがっつりいたしてしまうのもどちらも捨て難く
乙!いいホワイトクリスマスだった!
こんなスレがあったとは これはなかり良スレだな
8巻の表紙は部キャプ希望!!
今日発売だな 地方だから2日は遅れるがorz
394 :
名無しさん@秘密の花園 :2011/11/11(金) 11:02:22.79 ID:VkiUw9YL
...
今更ながら竹福にハマったし
部キャプのエチ本ってあんまりないのな。
住人ナッシングだよね?
スレタイがどう見てもアンチスレなのがな……。
黒キャプ×部長が物凄く好きだ。
わかるよ、頑張ってみるよ。黒キャプっていってもどんな感じがいいんだろか?
海外のBBSでも主役カプを差し置いて専用スレッドが立つ部キャプ人気
黒キャプ…そうだな〜 俺的には、滅茶苦茶怒った時のキャプテンがそれに当たるんじゃないかと。 でもキャプテンが怒ることなんてそうそう無いからな… 部長がよっぽどの事をしでかしてくんないと。 後は、“いつも受けに回っちゃう人の為の薬”みたいなのを部長が面白がって購入。 勿論信じてない。 んで、キャプテンの食事とか飲み物とかにスキを狙って入れる。 そしたら効き目がみるみる現れて…的な。
酔っぱらうと弱い部長 または 酒乱なキャプテン キャプ部最高!
なっ、まさにそれ書いてる途中‥‥orz 書けたら読んでくれよ。最近支部に上げてるから。
期待!
楽しみにしてるゼ☆
黒キャプ… 久の浮気をオッドアイでお見通しというのはどうでしょう。 嫉妬がピークを超えると 赤い瞳が邪眼になって暗黒オーラを纏うとか
410 :
名無しさん@秘密の花園 :2012/04/17(火) 19:37:11.15 ID:oEld1XPS
部長×黒キャプもいいと思うんだ 黒キャラ受けhshs
書きたいよー 俺に暇をくれ〜 リアル忙しすぎる
412 :
↑ :2012/05/23(水) 20:00:01.29 ID:Lj098omu
馬〜〜〜鹿w
pixiv上げたよー。半分だけー。
ほ
も
一番続々打ちあがれ
ほ
419 :
名無しさん@秘密の花園 :2013/01/18(金) 22:19:43.28 ID:j7mzV3qG
部長大好きだ。でも部長には美穂子さんがいるので一歩引いて見守ってます・・・。
420 :
名無しさん@秘密の花園 :2013/01/22(火) 02:14:18.94 ID:OyTtnPGb
中3時代の上埜さんカッコいい。ありゃキャップでなくても惚れる
咲-saki-関連スレでここまで過疎ってるのって・・・
隔離って名前では無理だよ
荒らしが立てたスレだしな
424 :
名無しさん@秘密の花園 :2013/11/03(日) 06:08:54.15 ID:z3HhZIPH
保守
ほ