ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart22

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1名無しさん@ローカルルール変更議論中
守りたいから私は飛ぶ!!パンツじゃないから恥ずかしくないもん!

●スタッフ
監督・アニメキャラデザイン:高村和宏     キャラクターデザイン原案:島田フミカネ
シリーズ構成:ストライカーユニット        助監督:八谷賢一
世界観設定・軍事考証:鈴木貴昭        メカデザイン・メカ総作監:寺尾洋之
キャラクター総作監:山川宏治・平田雄三   美術監督:小倉宏昌(小倉工房)
美術設定:松本浩樹(スタジオイースター)    カラーデザイン:甲斐けいこ・池田ひとみ
3D監督:下山博嗣                  撮影監督:江間常高
編集:三嶋章紀                   音響監督:吉田知弘
音響制作:楽音舎                  音楽:長岡成貢
音楽制作:コロムビアミュージックエンタテインメント
アニメーション制作:GONZO
原作:島田フミカネ&Projekt Kagonish(プロイエクト カーゴニッシュ)

●キャスト
宮藤芳佳(みやふじ よしか):福圓美里     坂本美緒(さかもと みお):千葉紗子
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ:田中理恵   リネット・ビショップ:名塚佳織
ペリーヌ・クロステルマン:沢城みゆき      エーリカ・ハルトマン:野川さくら
ゲルトルート・バルクホルン:園崎未恵     フランチェスカ・ルッキーニ:斎藤千和
シャーロット・E・イェーガー:小清水亜美    エイラ・イルマタル・ユーティライネン:仲井絵里香
サーニャ・V・リトヴャク:門脇舞以

●放送局
※放送は終了しました

●関連サイト
公式サイト:http://s-witch.cute.or.jp/
まとめwiki:http://www37.atwiki.jp/strike_witches/
人物呼称表:http://www37.atwiki.jp/strike_witches/pages/50.html
百合SSまとめサイト:http://lilystrikewitches.web.fc2.com/

●次スレ
次スレは>>970or480KB超を目安に、臨機応変に立てて下さい。
必要な事前準備等があれば、>>920or450KB超を目安にして下さい。

●前スレ
ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart21
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1234400870/
2名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 00:12:06 ID:jJWT+Q3Z
Q.○○書いたんですけど投下してもいいですか?

A.どうぞ、ぜひ投下してください。
条件は「ストライクウィッチーズ」関連であること、
「百合」であることの二つのみです。
ジャンル、エロの有無、本編にないカップリングなどに関係なく、このスレの住人はおいしく頂いております。
妄想だとか落書きだとか気にせずとにかく投下してみましょう。

ただし、SS専用スレではないので20レスを超えるような長編は事前に断りがあると吉です。
sage推奨です。メール欄に半角でsageと入力して下さい。

規制について
★改行規制
1レスにつき61行以上が規制対象です。

★連投規制
30分以内に10レス目を書き込むと規制対象になります。
10レス以上の投下には9レス毎に30分のインターバルが必要です。支援は無効です。

★スレの容量
500kbに達すると書き込めなくなります。
3名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 00:12:58 ID:jJWT+Q3Z
──リレーSSの手引き──

★基本ルール
○始める時は、リレーSSであることを宣言する。
○続ける人は宣言は不要だが、一行目に継承元の安価をつける。
○ただし、結末を書く場合は「次で終わっていいですか?」と訊いておく。
○継承先は指定できない。誰かが早い者勝ちで続きを書く。
○ただし自分自身の続きは書かない。最低2人は挟んでから。
○2レス以上にまたがらない。1レスでクールに。
○重複したら先に書いた方を優先する。
○作者名は名前欄に入れる。名無し希望は未入力でも可。
○リレー進行中は他のリレーは開始しない。
○もちろん普通のSSは、リレーの状況に関わらずどんどん投下してください。

★本文と書式
○語り手や文調はできるだけ継承する。唐突な視点変更は避ける。
○誤解を招きやすいため、科白にはキャラの名前をつける。(例:芳佳「おっぱい」)
○後に文が続く事を意識して、できるだけ色々な取り方ができる終わり方にする。
○「駄文失礼〜」「お目汚し〜」等の前書きやあとがきはナンセンスなので付けない。

★心構えと方針
○無理して面白くしようとしない。ナチュラルに妄想を爆発させるべし。
○不本意なカプの流れになっても泣かない。むしろ目覚めるべし。
○展開を強要したり口を挟まない。流れに身を委ねるべし。
○なかなか続きが来なくても焦らない。気長に有志を待つべし。
○多少の誤字脱字、設定違反、日本語おかしい文章には目を瞑る。スルーすべし。
○参加者はみな平等。新兵もエースもリレー主も一切特権はない。仲良くすべし。
○男はいらねえんだよ!ふたなりネタも自重すべし。
4名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 00:20:45 ID:FuHsksGM
>>1乙ダナ
5名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 01:37:31 ID:2FNexx7E
もう22とか
6名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 01:41:12 ID:qV0wIsgD
>>1乙ダナ
7名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 04:13:39 ID:5bWZ74gd
     __  -、       __
      |ヾ>┴‐<二フ   |ヾ>―‐<二フ
     〉': : : : : : : :`〈    〉': : : : : : : :`〈
      |: : |/ソヽハ:i: :', ∠: ::/ハハノヽ: : :',
     !'∨┃ ┃ }ノリ  'ト、|┃ ┃ |从_;ゝ     >>1
      ヾ‐-Y-‐ツく    ヾ,-R-<´       乙です
      /ヘソ\t;;;:'ーyr‐'" ,{介〈 ヾ}. lヽ
      /::/  |::':;::\ゞ' `ー'"/  ̄ .', ',ノ: :)
    rゝ;:/:  .:|::::ヾ;:/ァ   .〈__ ,:ゝ_>イ
     ヾ;ミ==キ;;:ィ       T ー', |´ '゛
        ',-| ',-トヽ、_,、   ', l ',|
         ';:|  ';:| ` ー-‐'   ',| ',|
        '!  '!          ',!  '!
8名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 05:19:10 ID:OOuD1tS3
空気を読まず芳佳とペリーヌで一話行かせてもらいますね。
埋めようにと思ったのですが、ちょっとオーバーしてしまいそうなので。
いざ友達になって、今までの分を取り戻そうとイチャイチャしまくる二人が
最近脳内に溢れてて困りますw
そんな妄想を垂れ流すべく…
9名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 05:21:06 ID:OOuD1tS3
 日課を終え、ふと目を上げると絶好の空模様とはまさにこのことをさすのでしょうねと思えるほどに、澄んだ
青空が広がっていました。今日はいいことありそうな気がしますわ。そう呟きつつ、双眼鏡を片付けます。

 大体の予測どおりに、パタパタと足音が聞こえてきました。廊下は走るものではありませんわよ、とその行儀
の悪さを咎めるべきかと考えている間に、それは扉のすぐ傍まで近付いてきてまして、結局はほころぶ頬に屈
することになりました。仕方がありませんので、そのままの表情でくるりと扉に向き直り、コンコンと響くノックの
音を待つことにしました。

「おはようございます、ペリーヌさん!」

 けれども予想していたその音は響いてくることなく、わたくしが迎えることになったのは勢いよく開いた扉の音
と、元気一杯な響きを湛えた声と、目映いばかりに見事な満面の笑みでした。予想外の、それでもある種予想
内の出来事にわたくしの口からは思わずため息がこぼれます。それでも、わたくしの顔から微笑が消えること
はないようです。以前のわたくしなら間違いなく即座に説教を繰り広げていたに違いありませんのに。

 たいした心境の変化ですこと、自嘲とは程遠い小さな苦笑を浮かべ、それでもやはりこれは窘めなければい
けませんわねと、彼女へと歩み寄ります。

「おはよう、宮藤さん。ですが、ノック位はしてくださいな」
「あ…ごめんなさいっ…!」

 そこで初めてそれに気が付いたのか、彼女はぺこりっと音が鳴りそうな仕草のお辞儀を見せてくれました。
その額にはまだ汗が浮いたままで―訓練を終えるや否やこの部屋にかけてきたのだからそれは当然と言え
るのですが―それこそノックすら忘れる程の一分一秒も惜しいといえる様相で、わたくしのところに向かってき
てくれたことにはやはり喜びを覚えてしまうようです。どれほどかといえば、そのあまりの愛らしさに抱きしめて
しまいそうになるほどに。

 さて、気付いたからにはそのままというわけには行きませんわね。

「ほら、汗くらい拭いてからにしなさいな。風邪を引きますわよ」

 ハンカチを取り出して、その額を拭おうと手を伸ばすと、彼女は慌てて身を引きました。

「わ、いいですよペリーヌさん。ハンカチ、汚れちゃいます」
「いいから、じっとしてなさいな」

 逃れようとするその動作を遮るように左手を肩に乗せると、彼女はぴたりと動きを止めました。その隙を見て
額にぽんぽんとハンカチを当てると、最初はぴくりと震えていましたが、やがて委ねるように―もしくは甘えるよ
うな様子でふっとその体から力が抜けていきます。何と言うのでしょう、まるで小さな子犬をあやしているような
気持ちにさせられますわね。それは、まるで鼻を鳴らして擦り寄ってくる子犬のようですから。

 それはまるでいがみ合っていたあの頃の分を取り戻すかのよう。ああ、そうかもしれませんわね。おそらくは
わたくしの方にもそれはあるのでしょう。

 少し前の自分ならありえませんわと憤慨して見せるはずの光景が、まさかこうもあっけなく眼前にあるなんて、
ときどき夢を見ていますような気分にもさせられます。けれどもその笑顔を向けられるたびに、胸の奥に現れる
熱のようなもの―心全てを隈なく暖めてくれるようなこの感覚は、やはり夢などではないと強く確信できるもので
はありますし、また同時に夢でなどあってはならないと強く願うものでもあるようです。

 端的に言いますと、わたくしはいま幸せを感じてるのでしょう。まだまだ未熟といわざるを得ませんが、それで
もその力の限りに自分を受け止めようとしてくれるこの得がたい友人を得られたことと、そして、その傍にいら
れることに。

 そう考えると最初のころの自分はなんて滑稽だったのでしょうね。いがみ合ってばかりで、妬んだりもしたりし
て。少し心を開けば良かっただけでしたのに。いいえ、きっとこれは、頑丈な錠前と鎖でがんじがらめにしてしま
っていたわたくしの心の扉を開けてくれた、彼女への感謝へするべきなのでしょう。

 こうして素直にそう思える自分がここにいるのは、間違いなく彼女のおかげなのですから。
10名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 05:22:52 ID:OOuD1tS3
 ふと、気持ちよさそうに閉じていた彼女の目が、じっと開かれていることに気が付きました。それはわたくしを
真っ直ぐと、本当に真っ直ぐに見つめて来ていました。額を拭おうと少々前傾になっていたものですから、わた
くしたちの距離はかなり短いものになってしまっていて、その近さをもってこうも見つめられると、まるである種の
妄想じみた想いへと思考が傾いてしまいそうに―何を考えているのですか、わたくしは。

「な、なんですの?」

 尋ねれば、まるでその時点で初めてそれに気が付いたかのように、彼女はぱちくりと目を瞬かせます。それで
も、じっとこちらを見つめている視線は変わりません。

「ペリーヌさん、ちょっといいですか?」

 さてどうしたものかと、軽く頭を悩ませていますと、そんな声と共に彼女の両手がすっとわたくしの頬のほうへ
と伸びてくるではありませんか。その動作はまるでいつか本で目にしたような、先程妄想したばかりの行為へと
至るもののようにわたくしの目には映ってしまいます。

 いけませんと思いはするものの、焦るばかりでわたくしの体はちっとも動いてはくれません。止めなければいけ
ないのに、けれどもと、このままそれを遮らなければ、そうなってしまうのではと何処かで期待している自分すら
感じていました。

 ああ、なんてわたくしは―そう思いつつも、結局は動けないままに、彼女の手はついにわたくしの頬にそっと触
れました。

 ぴくりと体が震え、反射的にとしか言いようのない動作で目を閉じたわたしの耳に聞こえてきたのは軽く金属が
擦れ合う音で、感じたのは少しだけ重さを失った目元でした。

 何ごとですのと目を開ければ、そこにあったのはわたくしのメガネを取り上げて微笑を浮かべてる彼女の姿で
した。先程の動作は、このためでしたのね。その期待は勝手なものではありましたけれど、それでもやはり悪戯
でその結論を締められてしまうと、やはり憤慨してしまう気持ちがあるのは否めないようです。少し心を許せばこ
れですからと言いそうになるものの、ふと、ここで怒ってしまえば、その理由の説明には先程の自分の心情描写
を含めねばなりません。さすがにそれは口にするのはどうかと。しかし無作法への注意は結局は彼女の為にな
ることであり、このまま看過してしまうのも問題があるようにも思えるもの確かであり。

 そんなわたくしの葛藤など気にも留めない様相で、彼女は相変わらずニコニコとこちらに目を向けていました。
尤も、そんなものすぐに必要なくなってしまうのですけど。

「やっぱり、ペリーヌさんメガネがないほうが可愛いです」

 彼女のそんなとんでもない言葉で、わたくしの思考は根こそぎ吹き飛ばされてしまったのですから。

「な、なにを…っ」
「勿論メガネがあっても可愛いとは思うんですけど…本当にお人形さんみたい…」

 そ、そんなうっとりとした目で見ないで下さいまし。いえ、それは可愛いといわれて悪い気はしませんし、むしろ
喜ばしく思えることなのですけど。そうも連呼されますと、ああもう、また頬が熱くなってきましたわ。何処までわた
くしの頬を染めれば気が済むんですの。
11名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 05:25:08 ID:OOuD1tS3

 けれども、それはまだ序の口でした。それに気が付くのは、ほんの一瞬先のこと。本当に不意打ち以外の何者
でもない唐突さの、ちょんと触れるか触れないか位の口付け。十分なほどに近すぎたその距離を、あっさりとゼロ
に変えた彼女の行動。

 一瞬、何が起こったか把握できませんでしたわ。勿論それがなんなのかは理解できています。そもそも、先程
何度も脳裏に浮かんだ光景なのですから。だけれどもそれは現実とは乖離されていたはずで、わたくしの妄想の
中だけの出来事だったはずです。ですが、まだ唇に残る感触の残滓。じわりと熱を帯びたような感覚が、それが
現実だとわたくしに告げてきました。

「えへへ、ペリーヌさんが可愛いのがいけないんですよ」

 そして、わたくしの唇を盗んだ犯人は、全く悪びれることなくあっけらかんとした様子で、わたくしに笑いかけてい
ましたの。こちらはあまりの衝撃で身動きが取れないというのに。ああでも、その頬が赤く染まっている様はやは
りどうしようもなく可愛らしくて、彼女が悪戯心からそんな行動を取ったのではないことが伝わってきまして、おそら
くはそれよりも更に赤く染まっているだろう自分の頬が微笑の形に変わっていくのを確かに感じていました。

「全く、あなたという人は…可愛ければそうしていいと言うものではないですわよ」

 お返しのように、その頬に手を当てますと、彼女はぴくりと体を震わせました。触れた頬はその色に負けないほ
どの熱を帯びていまして、その瞳も同様の熱をもってわたくしを映し出しています。

 そう、これはお返しなのですわ。ですから、精一杯の想いを篭めて、それに臨むことにしましょう。

「ふふ、でも今はそれに倣うことにします」

 それならば、わたくしなんかよりも貴方の方が、ずっとずっと可愛いのですから。ええ、少なくともわたくしにとっ
ては。

 ですから、触れ合うようなものではなくて、とびっきりフレンチなキスをプレゼントして差し上げますわ。わたくしの
想いと、それに唇を奪ってくれた代償に相応しいほどの、ね。
12名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 05:27:19 ID:OOuD1tS3
以上となります。
ペリーヌ一人称にしようとすると、なんだか難しかったです。
違和感ありましたら、すみません…

そして>>1乙です!
13名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 05:48:25 ID:an0T0NB3
>>1
スレ立て乙!

>>12
GJ!最近この二人が無性に好きだ
太宰の少女小説のような、そんな文章もいい
14名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 07:48:57 ID:t/i4JLq3
pixivのエイラ率が異常

キス寸前のヘタレエイラの表情がツボにハマった
15名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 08:50:57 ID:YrwJymtd
>>1さんお疲れ様

2/22に22スレ目とか、粋なことしますねこのスレ
16名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 09:22:05 ID:SozQDdIY
>>1乙なんだナ

>>15
貴方が言わなきゃ気付かなかったw
17名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 10:13:00 ID:HX4Uif5s
>>1乙達成

>>15
今日は2/22は222(ニャンニャンニャン)で猫の日
さしずめこのスレは猫まみれだな
18名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 10:21:14 ID:YrwJymtd
>>17
その発想はなかったwwww
猫使い魔はリーネ、サーニャ、ペリーヌ、ルッキーニだっけ
19名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 11:56:40 ID:85esNvJ5
>>11
これは珍しいらぶな芳ペリ!GJ!!

>>17
前スレで2の多い人が
> 今日は猫の日だから使い魔と中身入れ替わりとかサーニャが猫化とかそう言うネタをみんな
> 温めてるんだろうなあ さすがです
とかおっしゃってるんですが…なるほどその発想があったかw
20名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 12:23:50 ID:an0T0NB3
>>18
ルッキーニは黒豹。まあネコ科だけど
つか使い魔猫のキャラはやっぱりネコなのか今ちょっと保管庫調べてみた
SSの受けの側の率(%)

リーネ   56%
ペリーヌ  88%
サーニャ  83%
ルッキーニ 93%

やっぱりネコだったようです
因みにネコ以外の使い魔でリーネ以上なキャラはゲルトだけ(68%)
あと芳佳が54%でほぼ同じ、他のキャラは50%以下だった
21名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 12:43:10 ID:YrwJymtd
>>20
そっちの意味のネコかwwwその発想はマジで全くなかったwww

てことは、今日は猫の日でありネコの日だったわけでありますか…
今日を受けキャラ記念日として、受けキャラオールスターの作品とか書きたいなと思ったけど何分準備が…また来年に頑張ろうかな…
22名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 12:59:23 ID:4uGvTyBc
>>20
これは興味深い数値だな…

>>21
今からでもまったく遅くない!是非書いてください!!
ちなみにレンちゃんやパスタ准尉、ウィルマさん、あとは疾風も猫科のようですね
23名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 13:11:36 ID:YrwJymtd
>ルッキーニ 93%
ここが一番の驚き
ロマーニャ娘で、無邪気で、相手は包容力があってやさしいシャーリーと
これほど攻めキャラとしての要素があるルッキーニがこんなににちゃられているだなんて
やっぱり百合スレでのシャーリーはロリコ……ゲホッゲホッ


>>22
ヘルマやウィルマも猫か、やっぱり使い魔猫キャラはネコっぽいですね!
パスタ?疾風?聞こえない聞こえない
24名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 13:17:59 ID:an0T0NB3
それとネコ率(受けの側の割合)が一番低いのはシャーリーで18%
ウサギが性欲が強いというのはどうやら本当なようです
25名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 13:31:36 ID:MJXEWUW0
そして一見関係なさそうな、こんな記事を見つけた。
ttp://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090221-OYT1T01157.htm

そんな目やあんな目で妄想を膨らませると(ry
26名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 15:23:40 ID:ZffM9eDA
な、なんていかがわしい記事だ……
そのけしからん店はどこにあるのかね!
27名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:11:04 ID:BAvS65ay
やっと書き終わった。ていうか、我ながら長い・・。
しかも、ゴメンよ。エイラ。誕生日間に合わなかった。
さらに、ちょっとペリーヌが可愛そうですが、ペリーヌ好きさんごめんなさい。
たぶん、14レス。規制がかかるので、後半は後から流します。
28名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:11:34 ID:BAvS65ay
小エイラ(ちっちゃい+エイラ ちっちぇイラ)

『……オムスじゃ………どこだヨ?』

声が聞こえる。
エイラの声だ。サーニャにすれば聞き間違えることのないエイラの声。
だけれど、いつになく切迫した口調で紡がれるその言葉は、スオムス語。

―――5年後のブリタニア。1日で戻る。
『お、おい、待てって!!』

半分眠りに落ちているサーニャの脳裏に言葉がはじけた。
何かが通り抜けていく気配とともに、とさっ、と何かが覆い被さってくる気配を感じる。
(……エイラだ)
根拠の無い確信と共にそばにある温もりをそっと掴まえて抱き枕にする。
そっと、胸のあたりに抱き寄せる。ふんわりとした髪の感触をほっぺで楽しんで、控えめなエイラの匂いを胸いっぱいに吸い込む。
「……ん。……エイラ。」
『う、うわ。ちょ、ちょっと…。』
すっぽりと自分の腕の中に収まるエイラが愛しくて、もっともっとエイラを感じたくて、ぴたっ、と体をくっつける。
細くてしなやかなエイラの体はどこもすべすべで、触っているだけで幸せな気分になれる。
小柄な自分よりも更に小さな体を包み込むようにして、うとうとしているところで気付いた。
(……小さい?)
重いまぶたを押し上げると、澄んだ湖みたいな瞳に困ったような恥ずかしがっているような表情を乗せたエイラの姿。
サーニャの腕にすっぽりと収まる体に対して、シーツいっぱいに広がったプラチナブロンドの髪が、天使の羽みたいですごく綺麗。
居心地悪そうにもぞもぞと体を動かす姿は小動物そのものだった。
「……エイラ。ちっちゃい。」

……つまるところ、エイラはちっちゃくなっていた。


10歳になってしまったエイラに今の状況を説明してあげた。
「まぁ、明日には元に戻るらしいから、いっカ。」
しかし、小さくなってもエイラはエイラだった。エイラはいつだって、明るくて前向きでまっすぐだ。
5年も先の未来、しかも全く知らない人の中に入り込むなんてサーニャには考えられなかった。
「大体分かったけど、その……なんで、一緒に寝てるんダ?」
エイラが疑問に思うのは無理もない。いきなり見知らぬ他人に抱きしめられていたら誰だってびっくりする。
でもでも、これは仕方がないのだ。今のエイラを見たら、我慢なんか出来ない。
小さなエイラの髪はとても長くて、端正な顔とあわさってよく似合っていて、お姫様みたいだ。
けれど、そんな綺麗な顔に浮かぶふてぶてしい表情が不思議な愛嬌をにじませていて、自然と頬がゆるんでしまう。
「……エイラと一緒に寝たかったから。」
「んなっ。 は・恥ずかしい事言うナ!」
こぼした言葉に過剰に反応し、両手をぱたぱたと振り回して暴れるエイラ。
子供、そのままの仕草があんまりにも可愛かったので、髪をさわさわと撫でてあげる。
むー、と不満そうな顔をしながらも、逃げようとはしないエイラ。
なんだか、すごく楽しくなってきた。もうちょっと大丈夫だろうか?
エイラの前髪をそっと持ち上げてみた。
エイラは、不思議そうな顔で首をかしげている。
「かわいい。」
そっと呟いておでこに唇を落としてみた。
「ナ・ナニスンダーー!!!」

怒られてしまった。

むすっ、とした顔のエイラは私の腕をほどいて離れてしまう。離れてしまった温もりが恋しくて、むーっ、とした顔でエイラを見やる。
「ちょっト、そこに座れ。ネーちゃん。」
「サーニャ。」
「んア?」
「サーニャって呼んで。」
「ああ、もういいから、そこに正座!!」
29名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:12:05 ID:BAvS65ay
正座させられてしまった。
「いいカ、サーニャ。」
あぐらをかいて腕を組み、眉をつり上げて、エイラは言う。
けれど、いくら声を低くしてみても、平坦なエイラの口調は迫力よりも可愛らしさを強調し、
真ん丸な目はいくらつり上げたって奥に潜んだ無邪気さを隠せていないし、
それに、今のエイラは15歳の時の寝間着のままだから、綺麗な桜色が見え隠れしていてちょっとエッチだったりする。
「こら、何笑ってんダ! 真面目な話なんだから、ちゃんと聞ケ!」

真面目な話らしい。怒られてしまった。
しかし、なんだか、エイラに叱られるのは凄く久しぶりな気がする。妙な感慨を抱きながら、サーニャは素直にうなずいた。
「いいカ、サーニャ。 キスっていうのはな、神聖なものなんダ。むやみやたらにするものじゃないシ、誰にでもするもんじゃなイ。」
「・・・。」
「分かるカ? キスは大事なんだゾ? 本っ当ぅに大事な大事なものなんダ。 サーニャがホントに好きな人以外にしちゃダメだ。特にサーニャは綺麗なんだから、変な勘違いでもされたら大変だゾ?」
とくん、と鼓動が高鳴る。
――サーニャは綺麗。
エイラが褒めてくれた。 エイラが私の容姿を褒めてくれるなんて滅多にない。嬉しい。すごく嬉しい。 油断をすれば頬がゆるんでしまう。
しかし、今は叱られている最中だ。怒られているのにへらへらしてはいけない。緩んだ口元を誤魔化すようにサーニャは言葉を返した。
「でも、父様や母様とはするよ?」
「そりゃ、家族だからだロ。 家族は何年経ったって一緒に居られる特別な存在だからナ」
「じゃあ、エイラにキスしても大丈夫だね。」
「な・ナンデだよ!」
「だって……エイラ、言ってくれた。」
ほどかれたエイラの手をそっと握って、胸の辺りに抱き寄せる。
思い出すのは、エイラと出会った頃。父様や母様と離ればなれになって無為に日々を過ごしていた私に言ってくれた言葉。
あの時のエイラの笑顔は、今だって私の瞳に焼き付いている。
そのとき私がどれだけ嬉しかったかをエイラにも分かって欲しくて、綺麗な空色の瞳を見つめてあのときのエイラの笑顔を浮かべて言う。
「一緒にいてくれるって。 私が寂しくないようにずっとずっと一緒にいてくれるって。」
「……へ。」

エイラは、頭の中が真っ白になっていた。
さっきまで、銀髪の少女を叱っている最中だったはずだ。
一見、優しそうに見えるこの女の子が軽率な真似をしないようにと、使命感を感じ、「きす」について熱く語っていたはずなのだ。
だというのに、いつの間にか説教タイムのかたいムードがさっぱり消えてしまい、目の前の少女が作り出す柔らかな空気に取って代わっていた。
今や、エイラは抱き寄せられた手をほどけなかったし、続いて、伸びてきた腕によってそっと横に倒され、再び抱き枕にされても反応できなかった。
サーニャの浮かべる柔らかな笑顔に見惚れてしまったのもある。
嬉しそうに幸せそうに話すサーニャの声が心地よかったのも事実だ。
問題は、そこではない。
――ずっと一緒にいる。
エイラがそう言ったらしい。
どう考えてもプロポーズの言葉だった。
加えて、目の前の少女。慣れた仕草で体を寄せる仕草は、一緒に寝るのが当たり前であるということを如実に表している。同衾という頭が言葉をよぎる。
エイラの直感が告げる。
すなわち、自分と自分を抱き寄せる少女「サーニャ」が恋人同士である、と。
(…待て。待て待て。落ち着け、私。女の子同士なのに恋人同士とかありえないッテ)
言い聞かせるように直感を否定するが、サーニャの幸せそうな寝顔が自分の直感を後押しして仕方がない。
(ウー……)
かなり長い間、頭を悩ませた末、直接、聞いてみることにした。
「……なぁ、サーニャ。」
「…………ん。」
「私たちって、こ、こい………その、えーと……こ、恋人同士だったノカ?」
30名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:13:16 ID:BAvS65ay
――恋人同士。
何て甘い言葉なのだろうか。
サーニャは発作的に頷こうとしていた首を理性で押しとどめた。
だが、だがしかし、これはある意味チャンスなのだ。奥手などというレベルを遙かに超越したエイラとの関係を詰めるチャンスである。
小悪魔サーニャ「へっへっへ、何を迷ってんだ。素直にうなずけばいいじゃないか。」
天使なサーニャ「なりません。何を馬鹿なことを言っているのですか。」
悪魔のささやきがサーニャの脳裏をよぎり、天使の訴えがサーニャの心に響いてくる。
小悪魔サーニャ「ほら、知ってるだろ、エイラは優しいんだぜ。嘘をついても許してくれるって。」
(……でも、エイラはこんなに純真無垢なのに、嘘をつくなんて)
小悪魔サーニャ「思い出してみろよ、エイラは楽しいことを優先していいって、言ってたじゃないか。想像してみろよ。エイラと恋人同士。楽しいぜー」
天使なサーニャ「悪魔のささやきに耳を貸してはなりませんよ。サーニャ。エイラはこんなにも純粋じゃないですか。」
(……エイラと恋人同士。でも嘘つくなんて……私、やっぱり……)
サーニャの心の中の天秤は、揺れに揺れていたが自らの良心に傾こうとしていた。
天使なサーニャ「ですから、今から恋人同士になればいいのです。」
『えっ!?』
天使なサーニャ「手始めに恋人同士でするあんなことやこんなことを全て実践し、恋人になりましょう。しかし、まだ、エイラは小さいですから、サーニャがちゃんとリードして理想の恋人としてちょうky……教育するのです。」
小悪魔サーニャ「お、おい。いくらなんでもでも、そこまで……」
天使なサーニャ「黙りなさい、悪魔。サーニャ。聞いては行けませんよ。悪魔は人の良心につけこみ、そそのかすのです。」
小悪魔サーニャ「……いや、良心につけ込んでそそのかしてるのは、そっち・・うわ、なにをすr」
天使なサーニャ「下等な悪魔などこうです。この、このっ。」
(……そっか、今から恋人同士になれば良いんだ。)
サーニャは自らのよこしまな気持ちがすっと溶けて消えていくのを感じた。
天使を使わしてくれた神様に感謝を捧げながら、そっとエイラに頷いた。

「うん。」
「そ、そそそそそそうなのカ!?」
「エイラはね………おはようとおやすみのキスをしてくれて、
 眠くてうとうとしてたら膝まくらでちゅーしてくれて、
 帰ってきたら優しく抱きしめてお帰りのキスしてくれて、
 髪の毛、洗いっこしてたら、不意打ちでちゅーしてきたり、、
 お姫様だっこごしにキスしてくれたりとか、
 もちらん、夜だっていっぱいいっぱいキスしてくれて・・・。」
「わ・私は、そんなに、ちゅー魔神だったのカ!!?」
こくこくと無邪気に頷いたサーニャは、自分の腕の中で器用に頭を抱えているエイラにそっと囁いた。
「……エイラ。おやすみのキス。」
「き・キスぅ!!?」
「してくれないの?」
「いや、そ・その、わ・私、キス始めただし、ま、まだサーニャの事よく知らないし」
「教えてあげるから。」
「え?」
「……私のこと、いっぱい。」
だからね、と言わんばかりに顔を寄せて目を閉じるサーニャ。
エイラの直感は大当たりしていた。
やはり、エイラとサーニャは恋人同士だったのだ。
エイラは自分のしでかした事態におののいていた。
そう、自分たちは恋人同士だったのだ。
それなのに、エイラは恋人であるサーニャにきつくあたってしまった。
しかし、サーニャは嫌な顔一つせずに聞いてくれていた。
恋人としての自分のふがいなさに打ちひしがれるエイラは、せめて今からでもサーニャの恋人らしく振る舞おうと、顔を上げるが、
「………う」
目の前にあるサーニャの顔が近い。近づいてみると、端正な顔付きをしているのがよく分かる。
サーニャの吐息が顔をくすぐり、思わず息を吸ったら甘い香りを感じ、それがサーニャの匂いだと分かると、ますます顔に血が上った。
これから触れることになる唇が目に入った。白い肌と対照的な桃色で、たぶん触ったらぷにぷにの感触がするであろうそれがやけに艶めかしい。
恥ずかしさで頭の中がいっぱいになる。とはいえ、サーニャの恋人としてキスをしなくちゃ、優しいサーニャに申し訳がない。
サーニャの肩に手をかける。
31名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:15:32 ID:BAvS65ay
そっと顔を近づける。
家族以外で交わす初めてのキス。サーニャの唇に自分のそれを近づけて・・・ほっぺにキスをした。
無理だった。予想を遙かに超えた恥ずかしさだった。自分のあまりのヘタレさに泣きそうだった。
気恥ずかしさとちゃんとキスできなかった気まずさでそっとサーニャを見上げる。
そこには、花開くような満面の笑顔があった、と同時にぎゅーっと強く抱きしめられてしまう。
「おやすみ、エイラ。」
どくんどくん、と自分の鼓動がやけに大きく感じる。
サーニャが本当に喜んでくれている、それが分かると、胸の奥がやけに熱くなった。
自分はこんなに格好悪い恋人だというのに、心の底から喜んでくれている。
嬉しかった。と、同時に15歳の自分に腹が立つ。こんなに素晴らしい恋人が居るということは、きっと未来の自分は甘い蜜月を送っていたのに違いないのだ。
さっきのサーニャの話では未来の自分は相当なちゅー魔神だったようだ。ということは、あんなほっぺにちゅーどころじゃないキスを交わしているはずなのだ。
なんてずるいやつだ。しかも、敵は強大だ。控えめに言ってサーニャは未来の自分にぞっこんのようだ。そして、ぞっこんにしたのは15歳の自分に違いないのだ。
しかし、今のサーニャの恋人は私なのだ。負けてなるものか。
そんな決意を胸に秘め、エイラも眠りにつくことにした。
「おやすみ、サーニャ。」

「それで、10歳になってしまった、と。」
あらまぁ、と言った感じで首をかしげるミーナ中佐。
朝、ミーティングルームに行く前にエイラを連れて隊長室にやってきていた。
流石に報告しないわけには行かなかったからだ。
「1日で戻るとエイラの使い魔は言っていました。」
「まぁ、1日くらいなら様子を見ましょうか。 今日1日エイラさんはローテから外します。明日になってもこのままなら対処を考えましょう。」
相変わらず、ミーナ中佐は大らかだ。こんな異常事態にも落ち着いて指示を下している。
「しかし、わざわざ、軍服を着ることはなかったんじゃないか? ぶかぶかじゃないか。」
「別にいいだロ。これ、私のナンダし」
不思議そうに首をかしげる坂本少佐。
そうなのだ。隣で直立しているエイラは実に満足げな顔をしてスオムスの軍服を着ている。

朝、起きてエイラがきちんと畳まれた自分の服を見て大はしゃぎしていた姿を思い出す。
――こ、これ、スオムスの軍服! 私のナンダよな!!
全然サイズが合ってないからぶかぶかで手も足も見えない有様なのに誇らしげに胸をはるエイラ。
――へへ、どうだ似合うか、サーニャ。
服を肩のところで折り返して安全ピンで留めてあげると嬉しそうにくるくると回って、はしゃぎ回っていた。
――お、おはようのキス。
それからそれから、真剣な表情で近づいてきて、おでこにキスしてくれたりした。私、こんなに幸せでいいのだろうか?
「サーニャ、どうした?」
「……あ、いえ。なんでもないです。エイラが着たがっていましたから。1日だけですし。」
「まぁ、構わんか。それより、エイラ。おまえはまだ訓練生か?」
「ン、そうだけド?」
「ならば、昼からの訓練にお前も参加だ。」
「ゲー。なんでダヨー。」
「そりゃ、訓練生なんだからな。新米なら訓練有るのみだ。」
「1日で15歳になるって言ってるジャンかー」
「戻らなかったら、どうするつもりだ」
うっ、と言葉に詰まるエイラ。
「……そのときは、私が育てます。 ちゃんと、ちゃんと良い子に育てますから!」
「………」「………」
なんだか、不自然な沈黙が降りてしまった。それに、ミーナ中佐の頬が赤い気がする。
次いで、ぶーたれていたエイラの頭を撫でながらそっと語りかける。
「……エイラ。私も訓練に参加するから」 「サーニャモ?」
「おい、サーニャ、お前は夜間哨戒の後で疲れているだろうが。」
「はい。でも、今のエイラには付いていてあげたくて。」
「……そ、そうね。今のエイラさんを一人にするのはよくないわね。美緒、今日の夜間哨戒、サーニャさんと変わってもらえるかしら?」
「……ふむ。そうだな。今日は私が飛ぶか。」
「それで、サーニャさんとエイラさんは昼からの訓練に参加すること。いいわね?」
『はい』
32名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:16:56 ID:BAvS65ay
「うっわ、エイラ。ちっちぇ。」
「エイラさん、かわいー」
「わー、髪、随分長いんですねー」
「にゃははは、私よりちっちゃーい。」
「うっせー、お前だってチビじゃないカー」
「こ、これは、なんという妹属性・・・」
「・・トゥルーデ。」
ちっちゃいエイラは大人気だった。
朝の食堂でみんなに囲まれて楽しそうに笑っている。
なんとなく、自慢の我が子を褒められているような気分になってくる。もしかして、私、親バカなのだろうか?
「あ、エイラ。口元、汚れてる。」
ハンカチを取り出し、エイラの口元をぬぐう。
「へへ。ありがト。サーニャ。」
嬉しそうに微笑んで胸に飛び込んでくるエイラを受け止めて髪を撫でてあげる。
「サーニャ。」
「ん?」
「サーニャ。ごちそうさまのキス。」
ちゅっ、と。鼻に柔らかい感触を感じる。お父様、サーニャは今日、死んでしまってもイイです。
「・・・そんな。あのエイラさんが・・!?」
「エ、エイラさん、す・すごい!?」
「らぶらぶだなー」
「シャーリー、シャーリー、私も、私もするー」
「そ・そんな、へたれオフへたれの名を欲しいままにするエイラが!?」
「エイラがへたれじゃなくなったら、その称号、トゥルーデのになっちゃうねー。ほらほら、私にもー」
『なにを朝から、浮かれておりますの!!』
一人、輪から離れて黙々と食事を取っていたペリーヌがキレた。
「あなた達は、ここが最前線であることを認識していますの!? それを黙って聞いていればきゃいきゃいと浮かれ騒いで・・・」
「サーニャぁ。金髪メガネがいじめるぅー。」
「え、エイラ。」
「人の話を聞きなさい!!!」

かくして、サーニャの恋人として甘えたり世話を焼いたりいちゃいちゃする気満々のエイラは至る所でそのバカっぷるぶりを発揮した。
ことある毎に抱きついて胸にすりついたり、どこに行くにもサーニャの服や手をぎゅっと握ってはなそうとしないし、
よく見ると手をつないでいるときは恋人つなぎだし、時々、わざと指だけ動かして絡ませあっている。
サーニャはサーニャでエイラの一挙一動に、とろけるような顔を浮かべて頬ずりしたり髪を撫でたり、可愛いからといってリボンとヘアピンで
長いエイラの髪型をポニーテールや三つ編み、ツインテール、編み上げてボーイッシュにしてみたりしていた。
そんなことをしていたら、リーネとミーナもやってきて、どこから持ってきたのかドレスやら和服やらふわふわレースのワンピースだの男装用の軍服だのを着せたりする。
どの衣装でもサーニャはエイラに綺麗だの可愛いだの格好いいだのと実に嬉しそうに語りかけ、それを聞いて調子に乗ったエイラが自称「格好いいポーズ」を取り、
そのほほえましさにやられてしまったサーニャがエイラを抱きしめたり、と実に甘ったるい空気を所構わず振りまいている。
そのあまりの甘さにやられたリーネとミーナはお互いのパートナーである芳香と美緒を連れ込み、面白そうなことをやっていることを嗅ぎつけたシャーリーとエーリカが顔を出し、
次いで、その着せ替え対象であるバルクホルンとルッキーニを確保。ルッキーニは危険を察知し、逃げようとするがそばにいたペリーヌを捕獲され、
ペリーヌ所持のドレス群に着せ替えられてうんざりした顔を見せているが、逃げようにも同じく巻き添えを食らったバルクホルンやら坂本少佐やらの「逃がしてなるものか」なる恨めしい視線により逃亡出来ずにいた。
「……も、もういいだろう。ミーナ。」
「えー、……もうちょっと、ね♪」
ツインテールのルッキーニヘアスタイルとなって、ピンクのふりふりレースに身を包んだ美緒がうんざりしたような口調で訴えるが、ノリノリのミーナは止まらない。
「もう、昼時だぞ!?」
「そ、そうだ、ミーナ。もう食事の準備もあるだろうから、そろそろ、お開きと・・うわ。」
「トゥルーデ。口紅塗ってるんだから、しゃべっちゃだめー」
「リーネちゃん、そろそろ、食事が」
「もうちょっと、もうちょっとね。」
「ウジュー、勘弁してー」
「まだ、いっぱい残ってましてよ。ふふ。たーぷっりと綺麗にしてあげますわ」
「おおお! いいな、このルッキーニも良いな。おい、ペリーヌ、次、これだこれ。」
着せ替え大会はしばらく終わりそうになかった。
33名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:17:38 ID:BAvS65ay
**************

昼過ぎ、滑走路にて。
「はぁ、はぁ、な、なんで・・・」
「ぜぇぜぇ、エイラさん、10歳なんですよね!?」
「サ、サーニャちゃんもあんなに走れたんだ・・。」
「無駄口を叩くな! 走れ走れ!!」
『はいぃ。』
へろへろになりながら走る新人2人とは対照的に北欧コンビは黙々と肩を並べて走っている。
訓練中なので無言である。
無言ではあるのだが、時折、目が合うとそっと微笑んだり、走る足音でモールス信号を打ったり、ワルツでも踊るかのように踵を鳴らせたりして、相も変わらぬバカっぷるぶりを発揮していた。

「次、腕たて100!」
「サ、サーニャちゃん、か、片手?」
「……す、すごい」
「……私の武器、フリーガーハマーだから。……エイラ?」
「ン。私も片手でやる。」
「無理しなくてもいいのに」
「……サーニャより弱くちゃ、サーニャを守れないじゃないカ」
「……エイラ。」
「うわぁ、素敵だね。リーネちゃん。」
「いいなぁ。」
「無駄口を叩くな! もう100追加だ!!」
『えー』

「よーし、10分休憩!」
「はぁ、はぁ。」
「ぜぇぜぇ」
「サーニャ。大丈夫カ? 疲れてないカ?」
「ん。大丈夫。エイラは?」
「ふふん、スオムスの軍人をなめるナ。この程度、訳無いって」
「……エイラ。まだ、訓練生。」
「い、イイジャナイか。15歳の私は軍人だロ」
訓練によって火照っていた頬をさらに染めてエイラは言い訳になっていない言い訳をしている。
そこへ、大らかな少佐の声がかかった。
「はっはっは。いや、だが大したものだな。エイラ。さすがはスオムス人。基本は出来ているといったところか。」
「へへへへ。少佐。もっと褒めてくれてもいいゾ?」
「はっはっは。その年で大した奴だ。よし、腕立て100、3セット追加するか?」
「ウエー、いらねーヨ……それより、少佐ぁ、それ、扶桑刀だロ。ちょっと見せてくれヨー」
「ん? 刀に興味があるのか、ほれ。」
すっ、と刀身が太陽の光をはじき、その輝きを青空の元に晒す。
「うわー、すっげぇ!!! なぁなぁ、少佐、ちょっと、私にも貸してくれヨ〜」
刀を眼にした途端、きらきらと目を輝かせ少佐におねだりをするエイラ。
そういえば、スオムスでは扶桑のウィッチが活躍していて、英雄扱いされていることをサーニャは思い出す。
「バカを言うな。刀は扶桑軍人の誇りだぞ。おいそれと貸せるものか。」
「そうですわ! 何を馬鹿なことを言っているのですか!!!」
「うオ、なんだヨ、金髪メガネ」
「金髪メガネじゃありません、私にはペリーヌという名があるのですわ!!」
「モー、うるさいぞー、つるぺたメガネ」
「つるぺた・・・メガネ」
プッ。と吹き出す音。振り返ると必死に笑いをこらえる芳香ちゃんとリーネさん。そんなに面白かったのだろうか、と自分の胸を触りながら首をかしげるサーニャ。
「だれが、つるぺたでっすってぇえ!!!?」
「おまエ」
ぴしっ、という音が鳴り響きそうな仕草でまっすぐにペリーヌさんを指差すエイラ。
「エ、エイラさん。つ、つるぺたはひどいですよ。」
「リーネさん!? 笑いながら、しかも持てるものがそんな台詞を言わないでくださる!?」
「ご、ごめんなさい」
「お前ら。喧嘩をするな!」
喝、と言った形で仲裁に入る少佐。叱られた子犬のようにしゅんと縮こまるペリーヌさん。
34名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:18:08 ID:BAvS65ay
「す、すみません。少佐」
「ちぇっ、悪かったよ。ごめんナ。つるぺた」
にかっ、と悪戯っ子そのものの顔で微笑むエイラ。
ぷちっ、と何かが切れる音がした。
「くぉのぉ、悪ガキがぁ!!! け、決闘ですわ!!! エイラ・イルマタル・ユーティライネン! 貴方に決闘を申し込みますわ!」
「やだ」
ぷいっ、と、首を曲げて言下に切ってのけるエイラ。
あまりに見事な切り返しに笑うのを必死にこらえる新人2人。
「こら、お前達。」
静かな声が聞こえた。ただし、静かなのは口調だけであり、声はどう聞いたって怒っている。
「喧嘩をするな、と言ったのが聞こえなかったか?」
「す、す、すみません。少佐。私としたことが。」
「ご、ごめんなさイ」
「大体、ペリーヌ。決闘とは、何をしようとしていたんだ。」
「え、ええ。1対1の空戦で指導をしようと考えておりまして」
「空!! 飛んでいいノ!!?」
がばっ、と身を乗り出して尋ねるエイラ。
「ヤル。ヤルヤルヤル。私、ヤルゾ!!」
空を飛ぶのがよほど好きなのだろうか。目の輝きが全然違う。耳としっぽがついていたら、さぞかし暴れ回っているに違いないくらいやる気になっていた。
「……ふむ。まぁ、飛行訓練もやろうと思っていたしな。 ペリーヌ、やってみるか」
「え、ええ。少佐がおっしゃるなら、私はそれで。」
「いやっほぅーい!!!」
両手を振り回して喜びを表すエイラ。ここにいるみんなは大なり小なり、空を飛ぶのが好きな人たちばかりだ。
エイラの喜びなんとなく分かる。どことなく、微笑ましい空気が流れた。
「なぁ、なぁなぁなぁ。サーニャ。 私、このチームの一員って事は、私のストライカー有るんだよナ?」
「う、うん。」
目をキラキラさせたエイラがささっと、私の前に詰め寄って勢い込んで尋ねる。というか、エイラ近い。
「私のストライカーって、機種はなんだ? バッファローかカーチスか?」
「ううん、メッサーシュミット」
「メルス!!」
わーい、という擬音が聞こえてきそうな顔で笑うエイラは、ひょい、と私の手を取って踊り出す。
メロディーもステップも何もあったものじゃないのに、楽しそうに、実に楽しそうに踊るエイラを見ているとサーニャまで嬉しくなってきて、
くるくる、くるくると回って、手をつないだりはなしたりする。やがて、満足したのか、エイラは背中からサーニャにもたれかかり、サーニャの腕を自分の前に持ってくる。
意図を察したサーニャが抱きすくめるとくすぐったそうに見上げるエイラ。
それから、おっと、と言った感じでペリーヌさんに声をかける。
「ありがとナ、つるぺた。」
「あ、な、た、という人はー!!!」

**************

「いいですこと!? 私が勝ったらあなた達、いちゃいちゃ禁止ですからね!?」
「ナンダヨー。私が人前でいちゃいちゃなんかするわけないじゃないカー」
「あれだけ、いちゃついて置きながら何を言っていますの!!?」
「あ、サーニャ。どうだどうだ? ストライカー似合ってるカー?」
「そこ! 早速いちゃつかない!!」
似合っていると、ほほえみで返すサーニャ。しかし、なんだか、エイラとペリーヌさんが仲良く見えるのが気になる。
「いいか、ペイント弾の球数は50。予備弾倉はなしだ。相手のストライカー、もしくは体に5発以上当てた方が勝ちだ。
しかし、勝敗にこだわらず、空中機動の何たるかをペリーヌから、教わるといい。出来るな、ペリーヌ。」
「は、はい。おまかせください。少佐。華麗に撃墜して見せますわ!」
「簡単に落とされるわけ無いだロー」
「はっはっは。2人ともやる気は十分だな。ようし、行ってこい。」
「ペリーヌ・クロステルマン、出ます。」
「エイラ・イルマタル・ユーティライネン、飛ぶゾ。」
少佐の声を背に滑走路に滑り出すペリーヌさん。続いてエイラ。
真っ青な空に白い軌跡を描いて2人は空の人となった。
35名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:30:22 ID:grrHjlNS
製品情報更新来たな
予想通りシャッキーニ
あれリーネとエーリカは・・・・
36名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:53:33 ID:BAvS65ay
>>34 の後半です。
「いいですこと!? 高度2000ですれ違ってから始めますわ!! ……って、何処に行ってますの!?」
「ひゃっほー!! すっげぇ。コレ、スッゲェ。上昇力も旋回力も段違いダ! ははっ、太陽がこんなにチカイ!!」
エイラは、離陸直後からまっすぐに太陽を目指し、ぐんぐんと高度を上げて、豆粒よりも小さな姿になったところで、くるくると回転して嬉しそうに声を上げる。
「はっはっは。メルスは優秀な機体だからな。舵に癖があるから気を付けろよ。」
「ははっ、どうって事無いッテ。 イーヤッホゥ!!!」
今度は高度を生かして急降下。小刻みに角度を変え、稲妻のような軌跡を描きながら海面に近づく。
海面に近づいたところで機首を上げ、水面を蹴り上げるように反転、十分に速度の乗った突っ込みにより生じた揚力とメルスの上昇力により、鮮やかなVの字が描かれる。
「うわー、エイラさん、楽しそうですねー」
「なんか、私たちも飛びたくなってきますね。」
「ほぅ。わずか10歳でメルスであれだけ操れるとはな。 うーむ、スオムスで一体どんな訓練を……。」
エイラの声は弾んでいた。空を飛ぶのが楽しい、と全身で表している。空に上がれば良かった、そうすれば、今頃サーニャはエイラの隣に居て、一緒にはしゃぐことが出来たのに。
空中のペリーヌさんを羨ましく思いながら、空を見上げる。
「いつまで、遊んでいますの!? 始めますわよ!!」
「モー、堅いゾ。つんつんメガネ。 せっかくの空なんだから、もうちょっと楽しくしろよナー」
「私たちは、戦争していますのよ!? 楽しくしてどうするんですか!!」
「アー、ハイハイ。始めるカー」
「なんですの!? そのやる気のない返事は!!? 即座に落としてさしあげますわ!!」
高度を取り直したエイラがペリーヌさんの元に向かい、速度を上げる。同じように速度を上げ、今、すれ違う。

空戦が開始された。
「リーネちゃん、リーネちゃん。どっちが勝つと思う?」
「うーん、エイラさんってまだ訓練生なんですよね。 そうでしたら、ペリーヌさんの勝ちだと思います。」
「え、でもエイラさん、凄いよ。さっきだって、上手に急降下してたよ?」
「うん。でも、ペリーヌさんって、凄く近接戦が得意なの。私なんか、避けたと思った瞬間にいつも回り込まれて落とされちゃうんです」
「へー。あっ、見てみて。 あれ。」
すれ違った2機は即座に機首を上げ高度を取る。先行したのはエイラだ。
機体性能で見たときMF109GとVG.39では傑作機と呼ばれるMF109Gに軍配が上がる。
ペリーヌが諦めて水平飛行に戻した瞬間を見計らい、急降下攻撃を開始するエイラ。
急降下の軌跡から逃れるように進路を取ったペリーヌを追うように上手に舵を取り、迫るエイラ。
そこで、ペリーヌがくるりと体を反転させた。流れるような仕草でペイント銃を構え、気負うそぶりも見せずに1掃射。
「甘すぎますわ。」
狙い違わず急降下するエイラの目の前に射線が描かれる。慌てて、機首を下に向け射線をかいくぐる。
その結果、ペリーヌに攻撃できぬまま通り過ぎることとなり、尚かつ、高度と後ろを取られることとなる。
ペリーヌの猛攻が始まった。
37名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:54:12 ID:BAvS65ay
ペリーヌは即座に背面飛行から下方向への宙返り、俗に言うスプリットSをかまし、エイラに接近。1掃射。
横滑りで何とかかわすエイラを牽制射撃で更に下に追いやり、下方ですれ違ったところで再びスプリットSをしかける。
下に下に追いやられるエイラとは対照的に、S字を描くような軌跡を描きながら迫るペリーヌ。
完璧な背後への急降下攻撃となった。機体の差がいくらあろうが、高度はそのまま速度に換算され、みるみるうちにエイラが大きくなる。
ぴたりとエイラの後ろに貼り付いたペリーヌはゆっくりとペイント銃を構え、先ほどまでの威嚇射撃ではない本物の狙撃を加える。
が、それを予期していたかのように、すっと横滑りでかわされた。
「……予知能力。 ずるいですわね。 ……ならば、避けられない攻撃というものを見せてあげますわ!」
背後を取られた場合、速度を落とし相手に追い抜きをさせるのが一般的だが、エイラは旋回体勢に入った。
確かに射撃可能範囲から離脱されたが、後ろを取られていることには変わりない。
その小生意気な態度に鉄槌を下すべく、瞬く間にエイラに接近、横合いから、進行方向を遮る形で射線を生成。
完璧なタイミング。しかし、これもかわされた。
急降下で逃れたエイラを同じく急降下で追う。
エイラが機首を上げる瞬間、すなわち失速するタイミングを捕らえ、掃射。
「な・なんなんですの!!?」
これもかわされた。ペリーヌがねらった瞬間、微妙に高度を下げて機速を取り、絶妙のタイミングの横滑りでかわされた。
いいだろう、回避機動が得意なのはとうの昔に知っている。だが、戦闘機動で勝てると思ってもらっては困る。
弾を使いすぎた。後1、2掃射くらいしか出来ないが、それで十分だ。ぎりぎりまで接近し、被撃墜1を刻んでやるとしよう。

「うわっー。私、あれでやられたのに。」
「エイラさん、あれで良く墜ちませんね。」
最初の猛攻で危ういどころではなく、落とされかけていたエイラだったが、いつの間にか降着状態に陥っていた。
随所でペリーヌがエイラに接近しようとするのだが、有る程度の距離までがどうしても詰められない。
ループ、バレルロールによるフェイントからのロール、スプリットS、どんな機動を使って追いつめても、
一定距離(おそらくエイラがかわせる距離)になるまでにするりと逃げられてしまう。
「はっはっは。何故、ここまでエイラがかわせているか分かるか? 宮藤、リーネ?」
「え? えっと、エイラさんが未来予知できるから?」
「まぁ、それもあるかも知れんが、違う」
「えっと、MF109Gの性能がVG.39よりも良いからじゃないでしょうか?」
「機体の差は確かにある、だがそれだけでは不正解だ」
「……機速と高度を高く維持し続けているから。」
「正解だ。サーニャ。 いいか、宮藤、リーネ。機速と高度の維持は空戦の基本だ。降下すれば速度が得られる。失速すれば落とされる。
高速状態で有ればあるほど、弾は当たりにくいし、背後を取られにくい。
簡単な理屈だが、頭では分かっていてもなかなか実現できるものではない。 特に宮藤。狙われたからといってすぐに急降下で逃げる癖は直せ。」
「す、すみません。」
しかし、逃げているだけでは勝てない。エイラはどうするつもりなのだろうか?


ペリーヌはいらついていた。
明らかに空中機動では自分の方が上である。
しかし、追いつけない。
しかも、最初の時以来、急降下での回避を行っていない。
すなわち、余裕で逃げられていると言うことだ。
これまで一度もエイラに後ろを取られてはいない。当たり前だ。ペリーヌが戦闘の主導権を握っているのだから。
にもかかわらず、追いつけない。機体の差をはっきりと感じていた。
同じ旋回を行った場合、明らかにエイラの方が抜け出す速度が速い。
しかし、これ以上、時間をかけるわけにはいかなかった。ガリアのトップエースが訓練生ごときに手こずるなどあってはならない。
エイラの隙は、もう見付けてある。フェンシングと狙撃で鍛え上げたペリーヌの目は、エイラが旋回に入る際の予備動作をはっきりと捕らえていた。
まだ、MF109Gの操作になれていないからだろうが、それでは、どちらに曲がるか教えているようなものだ。
残り2掃射。完璧に追いつめるための威嚇射撃を入れるなら1掃射。
ペリーヌは勝負を仕掛けた。

38名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:54:47 ID:BAvS65ay
一気に距離を詰め、旋回体勢に入ろうとしたエイラの前を完全に予測し、威嚇射撃。
慌てて、急降下によって逃れるエイラ。
(……かかった。)
同じように急降下で追うペリーヌ。先ほど、エイラが使ったフェイントはもう通用しない。
今度は、ぎりぎりまで追いつめてから打ち落とす。
機首を上げれば失速する。降下している以上、どこかで絶対に機首を上げなければ海に激突する。
いくら失速するとはいえ、急降下中の不規則機動のなかでの狙撃は難しいが、ペリーヌには確実に当てる自信があった。
(……さぁ、チェックメイトですわ!)
海面がぐんぐんと迫る。
急降下によって発生する揚力がGを生み、体を押しつぶす。
エイラはまだ降下している。
海面ぎりぎりでのV字ターンでかわすつもりだろうが、甘い。
と、エイラがくるりと体を反転させた。
(……急降下中に反転ですって!?)
エイラはそのまま、ペイント銃を構えもせずに連射。
ペリーヌの目の前にペイント弾が広がる。狙いが適当なので当たりはしない。
だが、このまま突っ込んでいけばいずれ当たる。
「……くっ。」
機首を無理矢理上げ、離脱を試みる。
タタタッ。ペイント弾が進行方向に広がり、ペリーヌに無理な機動を要求する。
その結果、がくん、と。大きく失速することとなった。
生じていた揚力により、体が持ち上がり体勢が崩れる。
敵だけは見失わないようにとエイラを睨むと、同じように失速し、浮き上がってくる。
当たり前だ。あんな無茶な機動で失速しないわけがない。
この速度ならエイラは避けられない。ペイント銃で狙おうとする。
が、エイラの浮き上がってくる機動はペリーヌに対して真横だった。
横方向では狙えない。いくら魔法によって腕力を強化されているとはいえ、片手で銃撃の反動を押さえることなど出来ないからだ。
そんな化け物じみたことができるのは、腕力強化の固有魔法を持ったバルクホルン大尉だけだ。
するするとエイラは上に浮き上がってきてペリーヌの横から後ろへと流れていく。
ぞくり、と。肌が総毛立つ。このままでは後ろを取られる。失速下のこの状況ではろくな機動が行えない。
しかも低空。急降下により逃げることもかなわない。
慌てて、高度を上げようとする。……が、失速下での高度を取ろうとする行為はそのまま失速へとつながる。
特に逆Gがかかったこの状況ではエンジンが咳き込み、失速することは目に見えている。
そう、通常の戦闘機ならそうだ。しかし、MF109Gは違う。
『燃料直接噴射式ポンプ』
エンジンに直接、燃料をたたき込むことにより、どんな状況下でもエンジンパワーを引き出せるまさに魔法じみた機構。
カースランドの技術力の結晶とも言えるこの機構により、失速下でも柔軟な操作を可能としていた。
(……なんてこと。)
感心していた。そう、ペリーヌはここにきて、この小生意気なスオムスのガキんちょを見直していた。
確かに、機体の能力差によって勝敗が決しようしている。
だが、この状況下に持っていったのはエイラだ。
双方の機体の特性を理解し、一撃必殺の機会を待つ。
しかも、常に後ろを取られ射撃の危険を察知しながら、だ。
エース。まさに、その言葉がふさわしい。
やけに晴れ晴れとした気分で自分に勝ったエイラの顔を見やる。
真剣な顔だ。額に汗の球を大量に浮かべながら、じっと歯を食いしばり真っ直ぐに前を見るまなざし。
と、エイラがペリーヌの視線に気付く。
勝者に対する祝福として、そっとペリーヌは微笑んだ。それに対して、エイラはにまーっ、とした悪い笑みを浮かべた。
ぷち。
「トネール!!!!」
前言撤回。この性悪キツネのことをちょっとでも認めるなどありえない。
39名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:55:17 ID:BAvS65ay
**************

つんつんメガネは、とんでもない技量の持ち主だった。
信じられないような角度からの急降下、行く手を遮るかのようなショートカット、目もくらむような宙返り。
どれも、今のちっちゃいエイラには真似できない機動ばかりだ。
スオムスの貧乏空軍では、ストライカーは貴重だ。
そのため、新兵はまず落とされないことを学ぶため、複数の教官から避け続けるだけの訓練をやらされる。
通常は3人。エイラは未来予知があるからといった理不尽な理由で5人。
その時よりもきつい。
連続した編隊飛行による切れ目のない攻撃も辛いが、一瞬の隙をついて襲いかかるペリーヌの攻撃も予測しにくい分、きつかった。
だが、これで終わる。
メルスの事は随分前から知っていた。極寒の地のため整備性の良い機体こそが求められるスオムスに置いてさえ、採用が決定されたメルス。
まさしくエースが乗るための機体だ。いつか乗る日が来る時のために、その特性はずっと前から、この目で確かめている。
射線に入ったペリーヌがこちらを振向き、笑った。
どうやら、敗北を認めたようだ。
にまーっ、と笑ってペイント銃を構え……ようとして、脳裏に使い魔からの未来予知が一瞬のうちに閃く。
「トネール!!!!」

閃光が弾けた。
白昼の空においてさえ、圧倒的な輝きを示し、全ての敵を焼き付くさんと広がる。
稲妻の速さとは、光の速さ。標的は視認することも叶わずただ討ち滅ぼされるのみ。
生み出された雷はペリーヌを中心に広がり、黄金の蛇としてエイラに迫り、そして、内に秘めた破壊力をそのまま解放した。
『ばちぃ!』
雷独特の甲高いような音を立てて弾けるペイント銃。エイラが放り投げたものだ。
そのまま、ペイント銃は何度か空中をはねて、海へと落下していった。
シールドを解除したエイラが感心したように言う。
「……スゲーナ。かみなりメガネ」
「だれが、かみなりメガネですか!!?」
『ペリーヌ!!!!』
とんでもない大声がインカムから流れた。

「は、はい」
『すぐに帰投しろ。 自分が何をしたか、分かっているのか!!』

40名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:55:48 ID:BAvS65ay
**************

滑走路には少佐の怒声を聞きつけた隊の面々も集まっていた。
「ペリーヌ・クロステルマン中尉。お前は何をした。」
「……トネールを使いました。」
「味方に、攻撃魔法を使うなどと一体何を考えている!!」
ペリーヌさんは、あこがれの少佐の凄い剣幕にすでに泣きそうになっている。
サーニャの隣にたたずむエイラも決まり悪そうに頬をかいている。
「まぁ、落ち着きなさい、美緒。ペリーヌさんも手加減して魔法を使ったのでしょうし」
「手加減できなかったらどうなっていた! もし、エイラでなかったら? 仲間を殺していたのかも知れないんだぞ!!」
ミーナ中佐のフォローにも、凄い剣幕でかみつく坂本少佐。
ますます縮こまって、消えて無くなりたくなりそうな雰囲気を出すペリーヌさん。
「……エイラ?」
横にいたはずのエイラがいつの間にか居なくなっていた。
どこに行ったのかと辺りを見回すとハンガーから、てててて、と駆けてくるエイラ。その手にはペイント銃。
嫌な予感を感じたサーニャが声をかける前に、すちゃっ、と銃を構え、掃射。
タタタタッ、と。軽快な音を立てて、ペイント弾は発射され、ペリーヌさんは真っ赤に染め上げられた。
「ニヒヒッ。これで、私の勝ちだナ」
にまっと笑って、誇らしげに笑うエイラ。
「エイラ!!!! お前も何をしているかっ!!」
「イヤ、ホラ。さっき決着付かなかったジャン。気持ち悪くってサー」
「エイラ・イルマタル・ユーティライネン!! そこに直れ!!!」
「ヤダ」
「この、待て、待たんか。この、ええい、正国の錆にしてくれるわ!!」
少佐の腕を器用にかわし、ちょこまかと逃げ回るエイラに業を煮やし、腰の刀を抜き払い、追いかけ回す少佐。
「にゃははは。」
「このええい、おとなしく切られんか!!」
「ちょっと、美緒。落ち着きなさい。部下を切ってどうするのよ。」
「ええい。離せ。ミーナ。あのバカたれの根性を据えなおしてくれる!」
「いいから、落ち着きなさい。美緒。」
ミーナ中佐達に取り押さえられ、じたばたと暴れる少佐。
エイラはといえば、何処吹く風といった感じでべーっ、と舌を出している。
「……エイラ。」
びくん、と。エイラの体が硬直した。ぎぎぎ、と擬音が付きそうな仕草でサーニャの方を振り返る。
「……謝って。」
「ゴ、ゴメンナサイ。」
ぎこちなくペリーヌさんと少佐に謝るエイラ。
「ほら、美緒。エイラも一応謝っていることだし、あなたも頭を冷やしなさい。」
「……ああ、すまない。頭に血が上りすぎてしまった。」
「では、処分を言い渡します。クロステルマン中尉。ユーティライネン少尉。あなた達に第3倉庫の整理を命じます。」
「はい。」
「エー、私もカヨー」
「当たり前だ。それとも上官侮辱罪でしょっぴかれたいか?」
「ウゲー、分かったヨー」
「全く。なんて奴だ。……おい、ミーナ。何を笑っている。不謹慎だぞ。」
「ごめんなさい。仕方のない子だな、って思って」
「全くだ」
(……そう言う意味ではないのだけれど、ね。)
41名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:56:21 ID:BAvS65ay
**************

「その、悪かったわ。」
「ンー?」
「トネールで打ったこと」
「アア。だよナー。もうちょっとで私の勝ち決定だったのに、あんな裏技で避けてナー」
「んなっ! 貴方の方こそ、未来予知でかわしまくっていたじゃないの!」
「ンー、知らないナー」
「嘘おっしゃい!! 普通、あんな風に背面の急降下攻撃をかわせるわけないじゃないの!!」
「ま、貸し1ダナ」
「……うぐっ」
言葉に詰まるペリーヌ。空戦でのやりとりなど、貸しには思えないが、確かに貸しはある。
滑走路でのやりとりは、言葉にも態度にもまるで出さないが助け船を出してくれた、ということくらいペリーヌにも分かっていた。
「な、何をさせるというんですの?」
「それがサー、サーニャ、怒ってるみたいなんだヨー。もー、ペリーヌのせいだゾー」
「それ、わたくしには関係ないと思うのですけれど。」
「細かい奴ダナー、いいから手伝えヨー」
「まぁ、構いませんわ。というか、今、ペリーヌってちゃんと名前、呼びました?」
「ン? 呼んだ呼んだ。ちゃんと呼んだゾ。つんつんメガネ。」
「……はぁ。なんでもありませんわ。もぅ。」


準備を整えたエイラは、サーニャの部屋の前に向かう前に自分の部屋に戻ってきた。
「おかえり。エイラ。」
「うわ、ごめん。間違えた!!」
間違えて、サーニャの部屋に入ってしまったようだ。
慌てて扉を閉める。
落ち着いて部屋の番号を確認する。
(……あれ? ここ、私の部屋。)
「エイラ? どうしたの?」
かちゃっと、ドアが開いてサーニャが出てくる。
「う、うん。え? いや、ナンデもないヨ?」
怒っているはずのサーニャは、不思議そうな顔で首をかしげている。
「ほら。入ろ。」
疑問符をたくさん浮かべたエイラは、促されるままベッドの上にうつり、今朝と同じように後ろから抱きしめられてしまった。
しかも、何故かしきりに頭を撫でてくる。
「な、何で撫でるんだヨー」
「……エイラが良い子だから。」
「そんなこと無いっテ」
「本当?」
「本当」
「じゃあ、今日、ペリーヌさんをペイント弾で打ったのは?」
「あれは、ぺり・・つんつんメガネが卑怯にも負けを認めようとしないから、懲らしめたやったんだゾ!」
「うそつき☆」
楽しそうなサーニャの声と共に強く抱きしめられる。嬉しいけど、今は恥ずかしくて仕方がない。
「う、嘘なんかじゃないッテ。ホントニ私は……」
「あのままじゃ、ペリーヌさんが可愛そうだから、助けてあげたんでしょ」
「違ウッテ! 別にあんなメガネ、どうだっていいんだゾ。私は。」
「うん。分かってる。エイラは優しいものね。」
「……分かって無いじゃないカー」
弱ったような口調で誤魔化してみたものの、エイラは顔がにやけてくるのを押さえるのに必死だった。
別に褒めて欲しくてやったわけではないし、自分が嫌だったから勝手にやっただけの事だ。
それでも誰かに褒めてもらえるのは、とりわけ、サーニャが褒めてくれるのは嬉しかった。
顔の火照りが収まる頃になって、エイラはようやく、有ることを思い出した。
「あ、サーニャ。 窓の外見テ」
「外?」
カーテンを開けた先にはきらきらと光を受けて反射するいくつもの欠片。
「雪?」
雪ではない。この季節に雪は降らない。それに時折、上の方から光が発生して、ぱちぱちと光の欠片が反射する。
42名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:56:52 ID:BAvS65ay
「へっへっへ。ダイアモンドダスト。」
「氷? ……綺麗。」
細かく細かく砕かれた氷の欠片が次々と上方から放たれる光に従って、弾けて瞬く。
幻想的な景色に見とれながら、サーニャは尋ねる。
「これ、私に?」
「……うん。その、サーニャ、怒ってたみたいだったかラ」
「怒ってなんか無いのに。 ……あ、でもちょっと怒ってるかな。」
「うぇ。やっぱり? ごめんナ、サーニャ。」
「エイラ。 ペリーヌさんとばっかり遊んでた。エイラ……ずるい」
「え。」
「エイラは私の恋人なんだから、ちゃんと私を見て」
ね?、と言った風に顔をのぞき込んでくるサーニャ。
「う、ウン。」
どうにか、返事を返すものの胸の鼓動が速くて速くて仕方がない。
こんな風に抱きしめられていたら、サーニャに自分の鼓動が伝わってしまう。
サーニャは優しげな顔で私を見ている。背景には季節はずれのダイヤモンドダスト。
知らず知らずのうちに言葉が出ていた。
「ねぇ。サーニャ。」
「なぁに?」
「15歳の私って、格好良かった?」
「うん、とっても、格好良かった」
「優しかった?」
「うん、すごく優しかった。」
「……そっか。」
「うん。エイラは、いつだって私のヒーローだったんだよ」
サーニャの声は、本当にエイラの事が好きなんだって事が伝わってくる。
でも、それは、私じゃなくて。
「サーニャ。……私も、サーニャのこと、好きになってもイイ?」
「……エイラ。 私のこと好きじゃなかったの?」
「そうじゃくて、今の私じゃダメかな? そりゃ15歳の私には勝てないかも知れないケド……」
「デモ!! 幸せにするヨ!! 絶対、絶対絶対、サーニャのこと幸せにするから!」
「だから、……その、す、好きになってもいいでスカ?」
「……エイラ。」
サーニャは答えない。しかし、エイラにとっては初めての告白だ。しかも、かなわない相手がいると知っていながらの。
時間が経つにつれ、どんどん恥ずかしくなってきて、顔が赤くなる。
「じゃあ、キスして。」
「へ?」
「エイラが私のこと、好きになってくれた記念に。」
「わ、分かっタ」
今日一日、隙あらばキスしてきたのだ。それくらい訳無いと思って顔を近づける。

突然だが、エイラの能力は未来予知だ。
未来予知とは、今から起こるもっとも可能性の高い現象を事前に知ることが出来るということだ。
しかも、集中力が高ければ高いほど、その精度は上がり、実感を伴って未来を知ることになる。
すなわち、エイラの頭の中でキスの感触が無限にリピートされ、しかも近づけば近づくほど、それは強くなっていった。
43名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 16:57:22 ID:BAvS65ay
(……は、恥ずかしい)
「……エイラ。早く。」
「わ、ワカッタ」
脳裏に蘇るキスの感覚から必死に頭を振り払い、そっとサーニャにキスをする。
「……ほっぺ?」
「う、うん。」
「……こっちがいい。」
「エエ!!?」
やっとの思いでキスをしたのに、サーニャときたら、物欲しそうにじーっと私の唇を見つめる。
む、無理だ。ほっぺだけであんなに恥ずかしいのに、唇なんて、とても………。
「おっきいエイラはしてくれたのに……」 ※してません。
「わ、ワカッタ。スル!」
未来の自分に負けるわけにはいかない。今、サーニャは私のなのだ。サーニャのことで誰にも負ける訳にはいかなかった。
とはいえ、目を閉じたサーニャの顔はすごく綺麗で、さっきのキスのせいか、心なしか顔が紅潮しているし、
こんなに近いとサーニャの胸が私に当たってて、胸のどきどきが間違いなくサーニャに伝わっていて、とても恥ずかしい。
サーニャの肩を抱きしめて、首を曲げる。
指で触ったときの唇のぷにっとした触感を思い出した。脳裏で繰り広げられていたキスの未来予知に触感が付いてしまい、いっそう、エイラの頭の中を沸騰させる。
髪の毛が鼻をくすぐり、シャンプーの甘い香りと一緒にサーニャの匂いが伝わって来ては、体を硬直させる。
そんなことを数cm単位でしながら、徐々にキスをしようとしているものだから、すっかりサーニャの方にも緊張が伝染してしまい、
2人ともがちがちになりながら、ようやく触れるだけのキスを交わした。
「こ、コレデドウだ? サーニャ」
近づくときとは、反対に凄い勢いで離れたエイラが尋ねる。
サーニャは、指で唇、自分が今し方、唇で触った部分をなぞっている。
「……すごくドキドキした。……もっと。」
「エエ!!!?」
「ダメ?」
「は、恥ずかしいよ。サーニャ。」
「……エイラが欲しいの。」
「さ・サーニャ……」


エイラが目を覚ましたときには、元の大きさに戻っていた。
が、ちっちゃくなっていたときの記憶はそのままだ。
だから、昨夜、サーニャに請われるまま、数え切れなくなるくらいキスをすることになったことも覚えているし、
昨日、みんなの目の前でキスしてしまったこととか、サーニャに恥じらいもなく甘えてしまったこともみんな覚えていた。
「うう。サーニャ。」
うらめしそうにサーニャをみやるが、サーニャは幸せそうに眠ったまま。
何しろ小さい自分は告白までしているのに私と来たら、まだ、思いの丈をサーニャに伝えていない。
一体、どうやって伝えようかと、煩悶としながらエイラはサーニャが起きるまでを過ごすと事となった。
                                Fin
44名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 17:09:24 ID:GjIF0K2g
>>43
うおおおおおおおおおおおGJ!!GJ極まりない!
サーニャ欲望に正直すぎるだろ!舞太もびっくりだよ!w
何より戦闘描写が面白かったなあ!機体の性能を生かした展開とか空戦機動についても細かくて
話の説得力が凄かった。ハラショー!
あと※してません。 に盛大に吹いたw どっかで見かけたラインバレルコラ思い出した
また書いてくれるのを楽しみにしてるよー
45名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 18:25:21 ID:52Sqb1E2
>>43
GJすぎるだろ・・・
ニヤニヤがとまらねー
46名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 19:33:05 ID:VhkWwhAc
>>43
素晴らしい!すげえ!甘いのもかっこいいのも見所ありすぎだろGJ!
特に小エイラとサーニャさんにはニヤニヤさせられっぱなしだったw
ていうかw天使www

規制くらって早々に戦線離脱したけど、この週末は萌え分摂取しまくれて幸せだww皆様ほんとGJっす!
47名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 20:02:21 ID:YjH0P95o
>>43
すごい…
これが誕生日に間に合ってたらエライことになってたな
48名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 20:34:24 ID:FqeNi3oh
エイラだけにえらいことってか
49名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 20:49:49 ID:tka2llqj
思ってたほど投下ラッシュじゃなかったな
この調子だとペリーヌは0本だったりして
50名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 20:50:17 ID:HdOHeFMk
>>48
えっと……
いや……何も言うまい……
51名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 21:06:08 ID:Mj1DwKJy
>>49
大丈夫だ俺が書いてる
52名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 21:08:56 ID:oGSN6syn
芳佳の変換ミスが惜しいナ。
53名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 21:09:36 ID:85esNvJ5
>>51
さて、久しぶりに全裸で待機でもしてみるとするか
54名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 21:15:20 ID:tka2llqj
あとはいらん子に出てきたああっ女神さまのウルドみたいなのが誕生日なんだっけ?
名前がごちゃごちゃしてて覚えられないあの子
55名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 21:51:27 ID:ChPYICtH
ジュゼッピーナのことかー!
56名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 21:54:08 ID:qoLdUedI
>>43
読んでる間ずっとニヤニヤしっぱなしだったぜ、GJだw
天使と小悪魔のサーニャのやりとりにコーラ吹いたww
57名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 22:22:20 ID:mbwCGREm
こんばんは。LWqeWTRGです。
エイラさんとサーニャさんに蜂の巣にされたあと、フリーガーハマーで殴られてもおかしくないぐらいやりすぎた気がするSSができました。

いまいち勇気が出ませんが投下します。
観察日記、6レスです。

58名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 22:23:22 ID:mbwCGREm
―――観察4日目―――
もとい、4ページ目。

今日は休みになったので久しぶりに日記を書こうと思う。
急遽入った休みだけど、カップルなのだからデートをするしかない。いやする。したい。

ベッドでゴロゴロしているエイラを引っ張ってまずは執務室へ。

トントン
「ミーナ隊長ー。エイラーニャです」
「どうぞ」
「あれ?ツッコミがない…」
「もうあきらめたんじゃないのカ?」
「よくわかってるわね、エイラさん…」

「それで、どうしたの?…いやなんとなくわかるんだけど…。おおかた外出許可でしょう」
「よくわかってますね、ミーナ隊長」
「デートしてくるゾ!」
「はいはい…、わかったから行ってらっしゃい。あまり遠くへ行っては駄目よ、いいわね?」

はーい。と大きな声で返事をして基地の外へ。

「どこ行くんダ?」
「エイラ決めて」
「エー。じゃあサーニャの行きたいトコ」
「私の行きたいとこはエイラの行きたいとこなの」
「ナンダヨー。私はサーニャがいればどこだっていいんダヨー」
「私だってそうだし、エイラがいないとこはやだ」

結局、このままじゃ埒があかないからとりあえず街にでよう、ということになったのでした。

59名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 22:24:22 ID:mbwCGREm
ロンドン。
様々なお店が並ぶブリタニアの首都。


じゃなくて普通の街にきました。

「じゃあ適当に歩コウ」
「うん」
「人が多いナー」
「エイラ。手、つなご?」
「お、オウ!恋人繋ぎナ!恋人繋ぎダゾ!」
「ふふ、もちろん!」

それからブティックに入ってお洋服を仕立てあってみたり、本屋さんで新しい本を買ったり、おしゃれな喫茶店で食事をしたり…。
ウィッチであることを忘れて思う存分デートを堪能しちゃいました。

「ふー、ツカレタナー」
「久しぶりだったから少しはしゃぎすぎたかな…」
「ソウダナー…。あ、おねーさんコーヒーな」
「私は…。…私もコーヒーください」
「サーニャは紅茶じゃなくていいのカ?コーヒーあんま飲まないダロ」
「うん…エイラが 好 き だから……。飲めるようになる」
「サーニャ…。今コーヒーの話題だったけどドキッとしたゾ…」

うふ、わ・ざ・と(はぁと)
ということで再び入った喫茶店のテラスで少し休憩。
普段任務ばっかりだから疲れるね…。

「サーニャ、眠くないカー?」
「うん、大丈夫」
「これ飲んだらそろそろ帰ろうカ」
「そうね…。でもまだデートしてたいな…」
「そりゃ私だっテ…」

60名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 22:25:22 ID:mbwCGREm
でも時間がきてるのも確かだからなぁ…。

「また、来ようね…?」
「モチロン!なんなら明日も休みぶんどってくるカ?」
「ミーナ隊長のお仕置きはいやよ?」
「……あー」

そんな他愛もない会話をしているとどこからか現れた1匹の黒い子猫が私にすり寄ってきた。

「ナ、おい、サーニャになにしてんダ!」
「エイラったら…かわいいじゃない」
「かわいいかもしれないケド…。なんかサーニャとられたみたいデ…」
「ふふ、大丈夫よ。私はエイラのもの」
「ならいいんダ。ほら、お前もサーニャばっかりじゃなくて私のとこにもコイ?」

その子猫は、私から離れるとエイラとは反対の方向へと歩いていく。

「なんだよモー!」
「うふふっ、残念だったね、エイラ」
「ちぇ、せっかくサーニャと一緒の黒猫ダッタのに…」
「なぁにエイラ、浮気?」
「ちっ違うぞ!私はサーニャ一筋ダ!」

なんてエイラをからかっているとまたさっきの子猫。

「なんだヨーまた来たのカヨー」
「ネコちゃん、どうしたの?」
「サーニャとのデートの邪魔すんなよナー」
「エイラはちょっと待ってて」
「うえぇ…」
「どうしたの?」

すると子猫はまたさっきと同じ方へ歩いていく。

61名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 22:26:23 ID:mbwCGREm
「ついてきてほしいのかな?」
「モウいいじゃん。ほっとコー」
「行ってみよう」
「うえぇー…、行くのカヨ…」

子猫の後をついて行き裏路地に入る。
時々こっちを振り返るのがかわいらしい。
……今度エイラをこうやって誘ってみようかな…。

「ナー、サーニャー。帰ろうゼー?なんか嫌な予感もするしサー…」
「そうなの?ならやめといた方がいいかな…」

エイラの予知は絶対だ。外れたことなんてない。
しかし、そう言うと同時にピタと立ち止まる子猫。
みゃぁ、とかわいく鳴いた。

「なんだヨ。コレだけカ?」

ぴょこり。
2匹目の子猫が現れた。
ぴょこり。
また現れた。
ぴょこ、ぴょこ、ぴょこり…。

「オイオイ…、こんなにいたのかヨ…」
「わぁ…、いっぱいいるね…」

そこには総勢11匹もの黒い子猫が私たちを見上げていた。

「親はどこ行ったんだろうナ」
「そうね…」
「真っ黒ダナ」
「そうね…」
「これはアレか?サーニャがいっぱいってことカ?」
「そう……、え?」
「サーニャが12人…」
「あの…エイラ?」
「うへへへへへ…」

ダメだ。

これは壊れたな。

「サーニャが…いっぱい…!」

くるぞぉ…。暴走が…!


62名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 22:27:22 ID:mbwCGREm
「サーニャ!サーニャ!サーニャ!サーニャァァアアアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

……うわぁー。今日はいつもよりヤバいよー。
いきなりネコちゃんにほおずりしだした…。
黒猫見て私を思い出すのはわかるけどこれはどうなの?

どうしようか…ネコちゃんたち怖がってるし…。
そりゃ怖いよね。ここまですごいのは正直初めて見た…。
一応止めなきゃ…。
これは全部言わせちゃだめな気がする…。

「えっと…エイラさーん…?」
「あぁああああ…ああ…あっあー!」

会話はダメみたいね…。
というか下手に手を打ったら更にレベルが上がりそう…。
ここは久しぶりに…!

「モフモフ!モフモぐほぅっ!!」

どうだ。奥義サーニャブロー。
名前そのまんまだけど気にしない。

「ゲホッ!ゲホッゴホッ!…サーニャアアア!」

ダメ…なの…?
今日のエイラはなにが違うの…?
こんな激しいエイラ…ほんとに初めて…。


じゃなくてどうやって止めよう……。
もうなにも手はな……いや、あった。
この前習得した、あの技が……!

63名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 22:28:24 ID:mbwCGREm
「エイラ」
「にゃあああああああああん!」
「どう?せくしー?」


必殺・せくしーぽーず。

先日の会議で議論され実際に検証もした結果、大変有効であることがわかった超必殺技。
その時は医者を呼ぶほどのダメージを与えた。

今日は上着のボタンを2、3個外してあまりあるとは言えない胸を寄せてみた。


こうかは ばつぐんだ !

よし、壁が赤い物で染まった。
ん?けっこうスプラッタな感じになっちゃったから言い直そう。

わぁ、噴水みたい♪

……まあいいや。
とりあえずエイラを連れてここを出よう。
ばいばい、ネコちゃんたち。
それとごめんね。うちの旦那時々変なのよ。


――――――

疲れた……。
主にエイラを引きずることが。
途中でビクン!ビクン!と跳ねるのがちょっと怖かったです。

今は医務室で眠っているエイラですが、今日のことは起きたらたぶん忘れていると思います。忘れさせます。

そういえばエイラの予知ですが、当たってましたね。言うのが遅いんですけどね。

うん、ちょっとお仕置きがいるな。
悦んじゃうかもしれないけど許してあげないんだから…!


そして、終わったらまたデートだからね!エイラ!


END

64名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 22:29:21 ID:mbwCGREm
以上です。
「エイラ観察日記〜黒猫Fever!〜」でした。
ネコの日、ネコスレということで投下しました本当にすいませんw

壊れたエイラさんはあのコピペ以上は無理だったため引用させてもらいましたw
…改変コピペの一部をSSに組み込んでも大丈夫ですよね?
だめでしたら修正を…。

サーニャさんの「せくしーぽーず」は以前投下させてもらった「501会議室」から持ってきたんですが、そろそろひっぱりすぎか…?

最初は格闘技をさせようかと思ってたんですが、自分あまり詳しくなくて…。
寝技でべったりくっつくとかもよかったかなー。

でもなんだかんだで暴走した2人は書きやすいね。

よし、MG42とフリーガーハマーの的になってくる。
長々と失礼しましたー。
では。

65名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 22:59:53 ID:BAvS65ay
>>64
エイラさん、興奮しすぎですw
セクシーポーズw
いえいえ。もっともっと増やしてださいw
66名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/22(日) 23:45:53 ID:mtGeh67z
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org25321.jpg

エイラさんは我慢出来なかったようです。
でもサーニャのだから仕方ない。
67保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2009/02/22(日) 23:58:54 ID:ELICkdEH
やあどうも。保管庫管理人です。
前書きはともかく、日付が変わる前にエイラ誕生日SS投下しようと思います。言い訳は後で。
シャーロット×エイラで、「Building Block」です。



2月21日。
イッツ・ア・ドゥームズ・デイ。

────────

あれからかれこれウンヶ月。現実から散々逃げ回ってきたあたしだけど、
今日ばっかりは逃げるわけにはいかない。
クルミみたいに固い殻に閉じこもってしわくちゃになっていたあたしにグッドバイを告げる人生最後のチャンスだ。

「エイラさん、誕生日おめでとうございます。」
「おめでとう、エイラさん。」
「ああ、ありがとな。」

今目の前で執り行われているのは、他でもないエイラのバースデイパーティ。
笑顔のみんなに囲まれて、幸せそうに飲んだり食べたり。
まったくもって平和な風景だけど、それを眺めるあたしの胸の中はさながら鉄雨飛び交う大戦争の真っ最中だ。
何しろこれからあたしは、あのエイラに、こ、こ、こ

「こんなところでどうしたんですか?」
「うひゃああああ!?」
「ひっ!ごめんなさい!」

……なんだリーネか。脅かさないでくれよ。

「あ、いや、悪かった。あたしに何か用かい?」
「いえ、ただ、シャーリーさんが隅っこにいるのは珍しいと思って……。」
「そりゃあたしにも心の準備っていうか───」
「?」
「───じゃなかった、まあ独りになりたい時もあるのさ。」
「そうですか。すいません、私……」
「いやだからいいって。それよりほら、ミヤフジんとこ行ってやれよ。
 さっきからお前のことちら見しながらソワソワしてるぞ。」
「えっ?あっ、芳佳ちゃん───」

ええ、ええ、いいですね。夫婦よろしく手に手を取って、一挙一動日進月歩。
それに比べてあたしときたら、デートはおろか手を繋いだことだってない。
でもそんな悶々とした生活も今日でオシマイ。
あたしはやる。今日やる。

今夜、エイラに告白する!!
68「Building Block」 ◆YFbTwHJXPs :2009/02/22(日) 23:59:40 ID:ELICkdEH

────────

片付けも終わってほっと一息。サーニャの飢えた視線を見なかったことにしながら、
あたしはソファでぼやっとしているエイラにさりげなく声をかけることにした。

「エイラ、ちょっといいか?」
「んあ?ああ、いいけど。」

廊下に出て、適当な方に歩く。ああマズい、心臓が早くも悲鳴を上げている。
頼むからまだ止まってくれるなよ。交代はいないんだから。

「オマエが私を呼ぶなんて、なんからしくないな。」

角を曲がったところでエイラの方から話しかけてきた。どうやらそろそろ覚悟を決めた方が良さそうだ。
シナリオを復習しよう。まずは何気ない風にポケットのプレゼントを渡すとこからスタート。
中身は街で買った銀の指輪、こいつを目の前で開けてもらう。
するとエイラはあたしに訊くだろう。何故こんなものを?と。
そこであたしはエイラの手を取って言ってやるのさ。好きだ、ずっと好きだったんだ、と。
堅物に何と言われようとあたしも軍人の端くれ、正々堂々と挑んでやる。
もしサーニャを引き合いに出されても、あたしには誰にも負けないこのボディがある。
押して押して押しまくって、絶対エイラにイエスと言わせてやるんだ!!

笑顔、よし。
プレゼント、よし。
気合い、よし。


振り返ったら、作戦開始!!


「──別に大したことじゃないんだけどさ。ほらこれ、さっき渡しそびれたから。」
「ん?ああ、プレゼント。わざわざありがとな。」
「いいってこと。仲間だろ。」
「ふふん、ホントにらしくないな。いいことでもあったのか?」
「さあね。」

よし、いいぞいいぞ。序盤は圧勝、このまま慎重に、着実にだ。

「見たことない箱だな。なんだこれ?」
「開けてみなよ。」
「……うわ、高そうなケース。宝石かなんかか?」
「いいから。ほら。」

見事なまでにあたしのペースだ。
だがここからが正念場、行け、行くんだシャーロット・イェーガー!!

「これは……指輪?」
「見ての通りさ。ロンドンで買ってきたんだ。言っとくけど安くはないぞ?」
「フーン、意外だな。オマエこんな趣味だったっけ?」
「違う。今日は特別なんだ。」
「ん?」
「聞いてくれエイラ、今までずっと隠してたんだけど───」

空いている左手を取ってそっと持ち上げる。
さあ言うぞ。言え。今だ!!!!
69Building Block ◆YFbTwHJXPs :2009/02/23(月) 00:00:11 ID:ELICkdEH

「───あたしは、……。」

「……?」



───声にならない。

「あたしは、

 ……あたしはー……」
「───っ!
 タンマタンマ!!ちょっと待て!!それ以上は言うな!」

だあーー!!何やってんだあたし!!

「オマエ何言おうとしてんだよ!?つーか指輪ってまさか───!?」
「あああエイラ聞いてくれ!!だからあたしはその、ずっと前から───」
「言うな!ダメだ!!ナシ、ナシ!!」
「いーや言うね!あたしは」
「アーアー聞こえないー聞こえないー♪」
「両手を耳からどけろおおお!」
「ムリだなあああ!」

作戦は失敗!こうなりゃもう勢いでなんとかするっきゃあない。でもどうやって?

「ダメだダメだ、私にはサーニャがいるんだ、言うな、言わないでくれ……」
「なあエイラ、いいから手をどけてくれよ。」
「サーニャ、サーニャ、サーニャだ。サーニャのためだ……」
「……。」

ピン、ときた。閃いた。
いやしかしこれは……でももう手がない。

「ごめん、エイラ。」

エイラは耳を塞いだまま目を瞑って首を横に振っている。
その両手をそっと壁に押さえつけて、あたしはその時一番無防備だった場所に、あたし自身のそれを重ねた。

「んぅっ……!?」

早い話が、無理矢理キスした。
70Building Block ◆YFbTwHJXPs :2009/02/23(月) 00:01:11 ID:ELICkdEH

────────

「んふ……ん……っく……」
「ん゛ん゛〜〜〜っ!!」

じたばたと腕を振り解こうとするエイラ。ふと目を見開けば視界いっぱいのエイラの顔に、
うっすらと汗が滲んでいるのがわかる。

やばい、燃えてきた。

「──っぷは、エイラ、好きだ、愛してる。」
「シャーリー、ヤメロ。」
「お断りだっ。」
「だから私は───っく、んむ、ふ……」

言葉にした途端、火がついたように興奮してきた。
あたしは今エイラとキスしている。口の中に甘い唾液が流れ込んできてぞくぞくする。
エイラも同じように思っているんだろうか。想像しただけで頭がいかれそうだ。

「ぶはぁっ!!シャーリー、私はオマエなんかと……。」
「大丈夫大丈夫。」
「いいか、私はこれからサーニャの───」
「あたしは本気なんだ。ちゃんと聞いてくれよ。」
「オマエが変なコトするからだろー!?」

バカなことを考えてる場合じゃない。ここで言わなきゃあたしは、ずっとこのままなんだ。
好きだの一言じゃない、伝えたかったあたしの気持ちを、今ここで言わなきゃ。
あたしは。そう、あたしは──────

「───らしくないことをしてるのは言われなくてもわかってる。でもあたしは今、本気なんだ。
 あたしはお前が好きだ、エイラ。もうずっと前からそうだったんだ。
 そりゃお前があたしなんかに大した興味は抱いちゃいないってわかってる。
 サーニャが来てからはあいつに付きっきりだし、きっとそういうことなんだろ?
 だからはあたしはさ、本当は諦めるつもりだったんだ。何もなかったことにすればいつか終わるって思ってた。
 でもあたし、聞いちゃったんだ。聞くつもりはなかったのに、聞こえちまったんだ。
 サーニャが今夜お前に告白する、その相談をだよ。

 ああそうだよ。良かったなエイラ、これで晴れて両想いってわけだ。ミヤフジのお墨付きだぜ。
 だがあたしはどうなる?このままお前たちが幸せになっていくのを指を銜えて見てるのか?
 話を聞いたとき、考えないようにしてたことが頭ん中いっぱいに広がって、
 もうその瞬間からどうにかなりそうなんだ。
 これからあのオラーシャ人がお前と付き合って、好きだとか愛してるとか言い合って。
 あたしの知らないお前を、あいつが全部独り占めしちまうんだ。
 ……許せない。そんなのは、ダメだ。そんなの耐えられない。
 だってあたしもおまえがすきなんだ。
 おまえのことしかかんがえられないんだ。
 こんなにすきで、ずっと、だったのに、
 いちばんすきなおまえが、だれかのものになるなんて、やだよ。
 いかないで、おねがいだから、あたしのそばにいてよ。
 あたしをみて、あたしのものになってくれよ。
 もうおまえじゃなきゃだめなんだよ───。」
71Building Block ◆YFbTwHJXPs :2009/02/23(月) 00:03:00 ID:ELICkdEH
砂浜の上で積み木の城を作っているような気分だった。
わかってしまったんだ。あたしとエイラの間に、どうしようもない空隙があることを。
あたしの言葉は届かない。どんな形の欠片を積み重ねても、
立てたそばからざらざらと崩れてちっともてっぺんに辿り着かないんだ。
言い聞かせるようにしかと見据えていたはずのエイラの顔はいつしかあたしの頭の上にあって。
そのかりそめの温かさと引き換えに、あたしの積み木は波にさらわれてどこかへ消えてしまった。

「ごめんな、シャーリー。」
「……。」
「気付いてやれなくてごめんな。それと、こんなコトしかできなくてごめんな。」
「……。」
「それから、……好きになってやれなくて、ごめん。」

ひとの誕生日に、突然メチャクチャなこと言って、勝手に泣き出したりして。
こめんを言わなきゃいけないのはあたしのほうだ。

でもさ、わかってくれよエイラ。ほんとはさ。
あたしはお前をしあわせにしたかったんだよ。

────────

次の日の朝、手を繋いでダイニングに出てきたエイラとサーニャに
ミヤフジたちがにやにやしながら何やかやと冷やかしている様子を、
あたしはどこか冷めた目でぼーっと見つめていた。

「まったく、やつらときたら……節操も何もあったもんじゃない。
 おいリベリアン。お前もぼさっとしてないで朝食の支度を手伝え。
 聞いているのか、おい。リベリアン。……イェーガー大尉!」
「あん?あたしかい?」
「我々の部隊にイェーガーは一人しかいない。いいから手伝え。どうせ暇なんだろう。」
「はいはい、やればいいんだろ、やれば。」

適当に返事をして、よっこらせと腰に力を入れる。
何も知らないってのは羨ましいね。鈍感ならとこが尚更さ。

あたしが何をしていようと、エイラは勝手に幸せになっていくんだろう。
サーニャはいいヤツだし、別段不満があるわけじゃない。
でも、これからエイラの姿を見るたびに、きっとあたしは昨日の夜のことを思い出す。
抱き締められた体温も、重ねた唇の味も、
そして今頃あいつの部屋のどこかに埋もれている、銀の指輪の鈍い煌きを。


endif;
72保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2009/02/23(月) 00:11:13 ID:sHL98kLD
以上です。よし、ID変わってないからセーフ。日付変更線のすぐ横ではまだ21日だった……はず。
ホントのとこ言うとエイラで誕生日ネタを書くつもりはなかったのですが、
みなさんのアレやソレを読んでいるうちに突如としてシャーイラが光臨してしまったのでついやってしまった。
遅筆な私が1日半で仕上げると言うまさに天啓な一本でした。多少の設定のずれは勘弁してください。

この前のシャー美緒と言い、最近シャーリーが頭の隅でうろちょろしまくってるから困る。いや困らないけど。
実はお姉ちゃんに負けないくらい総受け体質なんじゃないかと思ったり。でも書いてみると攻めに落ち着くという。

そんなわけで、全SSにGJ!!そして>>1乙、あと読んでくれた人ありがとう。あー疲れた……。
73名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 00:19:12 ID:+dKTFO88
>>44
GJ! 最高です! 小さいエイラがすごく可愛いです。これはサーニャが暴走するのもわかりますね。

>>71
GJ! 切ないのにどこか優しい、いいSSですね。さすがです。

いいSSが多すぎて全部にコメントできませんけど、すべてのSSに最大級のGJを!
74保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2009/02/23(月) 00:26:51 ID:sHL98kLD
冷静になって考えたら誕生日はおとといだった。何言ってんだろうな私は。吊ってくる。
75名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 00:27:42 ID:Wcyt1TEp
>>72
切ないけどこういうシャーリーも珍しくていいですね GJです!
このシャーリーには一刻も早くルッキーニちゃんを処方して心を癒してあげたいです。ロリコンに目覚めるという副作用がありますが…
76名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 00:37:09 ID:uY5ccGTI
>>72
これはSS書きとして嫉妬せざるを得ない
そして読者としてGJせざるを得ない!

GJ!
77名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 03:37:23 ID:Hndsk+DW
みんな良くいろいろなマイナーカプ思いつくなー
78影の人:2009/02/23(月) 05:24:53 ID:9+7MXS/G
>>67の素敵な物語にティンときたので投下します。
ルッキーニ視点のずっといっしょなお話。

短めです。
79Cheering Cushion:2009/02/23(月) 05:26:07 ID:9+7MXS/G
 シャーリーの部屋で本を読んでいると廊下から聞き慣れた足音が聞こえてきた。
 この部屋の主、あたしの大好きなシャーリーのものにまちがいない。
 けれどどことなく元気がなさそうな音だった。たぶん、気のせいじゃない。
 あたしはシャーリーのことについてはいわゆるオーソリティなのだから。
 扉が開いて現れた顔はやっぱりシャーリーのものだった。
「おかえり、シャーリー」
「んー……ただいま」
 覇気のない声、下がった眉、丸まった背中、きわめつけに目は赤く充血している。
 扶桑人の宮藤に言わせればまさに“ウサギさん”状態だった。
 あたしの思ったとおり、シャーリーは油のきれた心のエンジンをフルスロットルで稼動させて突撃してきたみたいだった。
 勝てない勝負とわかっていて、もしかしたらわからないフリをして、エイラに思いの丈をぶつけてきたのだと思う。
「はい、ホットチョコレートだよ」
「……うん、ありがと」
 しおしおにしぼんだシャーリーはマグカップを受け取ってひと口、あったかいチョコレートを流し込んだというのに表情は明るくならなかった。
 甘い味や香りもいまのシャーリーの心を溶かしてメロメロにすることはできないようだ。
 じゃあ、どうしよう。
 答えはすぐに出た。
80Cheering Cushion:2009/02/23(月) 05:28:00 ID:9+7MXS/G
「シャーリー、ちょっとはやいけどもう寝ない?」
「うーん、そうするかなぁ……」
 シャーリーの手からマグカップを奪い取り、身につけている洋服を次々に脱がしていく。
 ぼーっと突っ立っているシャーリーには抵抗する気なんて欠片もないようで、下着だけになった次の瞬間にはベッドに倒れこんでしまった。
 まるで木が切り倒されたみたいにうつ伏せになったままぴくりとも動かない。
 これは重傷、とっても大きなキズができたんだ。
 あたしは灯りを消してシャーリーの横に寝転がった。
 シャーリーが風邪をひかないように毛布をちゃんとかけてあげる。
 いつもならシャーリーの役目なのに、今日だけはあたしがお姉さんになった気分だ。
 年上の妹は悲しみに胸を痛めていて、その痛みをやわらげてあげられるのは時間だけ。
 お姉さんのあたしはほんのすこし背中を支えてあげるのだ。
 痛くてつらくてさびしいときは誰かがそばにいてくれると元気が出るものだから、今夜はあたしがいっしょにいてあげなければいけない。
 仰向けのあたしは投げ出されたシャーリーの手のひらに自分の手を重ねた。
 なるべくいっぱい触れるように指と指をからませて、隙間をうめるようにさわろうとした。
 そうしたらシャーリーはあたしに背を向けるように寝返りをうってしまった。
 自然、つなごうとしていたあたしの手は行き場を失う。
 洗いたてのシーツが冷たかった。
81Cheering Cushion:2009/02/23(月) 05:29:09 ID:9+7MXS/G
 シャーリーはずっと前からエイラのことが気になっていたみたいだった。
 ほかのみんなはわからないけれど、いつもいっしょにいるあたしには会話のさりげない空白のたびにシャーリーの目がエイラを追っているのに気付いていた。
 それはもしかしたらささいな興味に過ぎなかったのかもしれないし、あっつあつのお風呂より情熱的な想いだったのかもしれない。
 それでもシャーリーは好きという気持ちをあたためつづけていたんだ。
 サーニャがきて、エイラの視線とハートをぜんぶ持っていってしまってからもずっと、ずっと。
 リベリオンの人なのだからもっとはやく、ばぁーっと気持ちを伝えてしまえばいいとあたしは思った。
 でも惚れっぽいシャーリーにとって、惚れっぽいからこそそういう気持ちはそれだけ大事にしたいものなのかもしれなかった。
 隣からぐす、ぐすとハナをすする音が聞こえた。
 見ればシャーリーの背は丸まっていて、いつもより小さく思えた。
 ううん、小さかった。
 かすかに震える背中は年上とか大人とかそういうものじゃなくて、傷を負った痛みを必死にこらえようとしている、ただの女の子の背中だった。
 こんなシャーリーを見たのは初めてだ。
 だけどきっとあたしと出会う前だってかわいい女の子やきれいな女の人を見かけてはひっそりと恋心を芽生えさせ、破れてはいまのように涙で枕を濡らしていたのだろう。
82Cheering Cushion:2009/02/23(月) 05:30:47 ID:9+7MXS/G
 あたしはシャーリーと逆向きに寝返りをうって、そのまま背中あわせになるように体をよせた。
 触れるか触れないか、ぎりぎりで触れていない。
 あとすこし踏み込んだらシャーリーにとどく位置、そのあたりであたしは眠ることにした。
 さわらないよ、シャーリーのキズあと。
 でもあたためさせて、あたしにはそれしかできないから。
 あたしとシャーリーのあいだを二人の体温がたしかに行き来している感覚、それがわかるだけでいい。
 離れていても、体が触れあっていなくてもあたしはここにいるよ、そう伝えられたらオールオッケー。
 いつもいつもあたしのそばにいてくれて、なぐさめてくれて、抱きしめてくれて。
 いっぱいいっぱいあたためてくれたシャーリーに、いまだけでもぬくもりを返してあげたかった。

 ぐすぐす言っていた音はいつの間にか消えて、かわりにすーすーおだやかな寝息が聞こえてきた。
 あたしの気持ちは伝わったかな。わからない。
 シャーリーはやさしくてあったかくて、いつもにこにこ笑っている姿が一番だ。
 雲が晴れて雨が止んで、ぴっかぴかの太陽が顔を出すまで、あたしは傘をさして待っている。
 横にならんで歩いているということはいつでも肩を貸してあげられるということなんだ。
 はやく気付いて、シャーリー。あたしだって支えてあげられるってこと。
 さびしくないよ、ひとりじゃないよ。
 ふわふわで受け止めてくれるシャーリーみたいに上手くはいかないけど、どんなに悲しいときでもあたしがいること、忘れないでね。
 大大大好きなあたしのパートナー。
 元気になるまでずっと、元気になってからもずっとずっと、あたしがそばにいるよ。



 おしまい
83名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 05:33:32 ID:9+7MXS/G
以上です。読んでくれた人に感謝。
楽しんでもらえたら幸い。

それと>>72の管理人さんに謝罪と感謝を。
かってにインスピいただいてしまって
ごめんなさい&ありがとう。
84名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 06:22:44 ID:nv36LdnH
>>72の読んで切なくなったけど、>>83のでその気持ちも救われた。でもやっぱり切ない……。

>さわらないよ、シャーリーのキズあと。
>でもあたためさせて、あたしにはそれしかできないから。

ここのとことかもうね。読んでてぎゅっと胸が締めつけられた。
片思い百合は大好きです。でもやっぱり、みんなに幸せになってほしいんだ……。
とにかくどちらにも心からのGJを!
85名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 12:50:57 ID:Wcyt1TEp
>>83
ルッキーニがすごく可愛い! GJです!
86zet4j65z:2009/02/23(月) 13:24:08 ID:Si8Y/5V1
>>1乙&22スレおめ〜^^
一部の方から投下を期待されていたにもかかわらずエイラの誕生日にケーキ買ってデスクトップ壁紙のエイラの前で食べることくらいしか出来なかったヘタレなzet4j65zです。
1月の早いころから「2月はラッシュだからみんな書き溜めて置けよな」とか言ってた自分がこの始末orz
前スレ>>551
時間軸が46年の夏だから、次書こうと思ってる話がサーニャの誕生日周辺なんです〜。
日常の中でやってくる知り合い達との接触を書いていこうと思ってるんで、あんまり時間飛ばすともったいなくて……。
前スレ>>554
クロエは……クロエになるのか!?
っていうか本場リベリオンの牛のたたきが食べたいですw

それと、SSをほとんど読めてないんでこれからゆっくりとエイラバースディを楽しませて貰おうと思います。

っていうか投下しようと思ったら規制中……そんなわけでupろだに上げました。パスはswです。
http://www1.axfc.net/uploader/He/so/198701
87名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 13:36:52 ID:Si8Y/5V1
肝心なことを書いてなかった……。
保管庫0822の続きとなります。一週間遅れの綾香さんとハイディの誕生日SSとなります。
それと、誰も書いてないみたいなんで今回のを【第41手 二人で夜間哨戒】ってことでよろしくお願いします。

せっかくだから簡単に解説。
・ベルギー
国の名前がわかんなかったんで地名だけ使ってます。 本来はドイツに占領されてた土地なんで、世界設定的にはここもネウロイに占領されてるかもです。
「サン・トロンの幽霊」ってニックネームがかっこいいんでそこにはまだ人類の基地が残っているという設定で行きました。
・シュナウファー
この人って43年の春くらいから一気に撃墜スコアを伸ばしていくんでこの後エースとしての頭角を現していくようなイメージです。
あと、45年の誕生日にはイギリスのラジオから誕生日おめでとうって言われてるんで、そういうネタだったりします。
・電探とか複座
超適当です。
88名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 14:34:22 ID:bG5Bypyp
>>83
ルッキーニが可愛すぎ&いい子すぎて震えた
このスレの住人って本当連携力高すぎてリレーっぽいSSも全然イケるな
某SRPG風に言うなら皆して連携攻撃、援護攻撃lv4持ってる感じ

このままずっとシャーリーの慰め役、心の拠り所のままなのはかわいそうだから
この後ルッキーニとシャーリーが結ばれる続編とかも期待するのは我が儘でしょうか

>>86
この人のSSのやたらめったら緻密なところに憧れる
この溢れる程の情報量には感服せざるを得ない
地名だの空戦機動の云々だの本当にすごい
89名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 15:10:09 ID:ab5+UwUF
>>87
続ききた!GJ!!
ハイディとクロエいいなぁ。結ばれるところも見たい。
これはこれで完結してていいですけども。
90名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 18:47:30 ID:tHdbDwyg
>>72>>83
切なくて、でもやさしく、そしてあったかくて、涙が出ました
なにこれGJすぎるよお二方…!
シャーリーせつねえ…。あーくそ、いいなあ百合!
すげえ連携プレー魅せてもらったよ。やっぱ最高だここ

>>87
相変わらずすごすぎるぜ
携帯なんでまだ読めてないけど、あなたのは読む前からわかるさ、GJ!
91名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 19:03:08 ID:MzENsIAU
>>zet4〜
なんかクロエの喋りに波があってうまく想像できないのは俺の力不足なんだけど
もし脳内で声まで設定してたら参考までに教えてくれない?
92名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 19:42:55 ID:MzENsIAU
>>91とか言ってる間に読んだ

「参る!」とか超かっこよかったよサムライ!!
しかも空中でストライカー脱ぐとか恐ろしい度胸だな、これじゃ底無しに惚れるだろハイディ…
93名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 20:52:21 ID:4+1hJgaB
公式は、サーニャ単品か。珍しい・・・。
94名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 20:55:03 ID:Fnof4Ai4
公式のサーニャ可愛すぎて鼻血でた
95名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 21:34:51 ID:3xCgM3Hp
クロエというと真下の百合三部作のひとつのノワールを思い出す
96保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2009/02/23(月) 22:47:46 ID:sHL98kLD
>>83
ここにいたって私は、ありがとう、と言わざるを得ないと確信したのである!
せっかくなので打ち明けると、実は当初はシャーリーがエイラとくっつく話を書くつもりだったんですよ。
それがどういうわけか手が勝手に悲劇にしてしまい、どうしてこんなことに……とか思ってたところに、
颯爽と現れるエース!フランカのあったかい話!!もう何とお礼を言ったらいいのやら。GJGJまたGJ。
謝罪なんてとんでもない。いつかの芳ーニャといい、なんだかこっちがくすぐったい気持ちでいっぱいだ。なんかこう、ドキドキ以下略

>>87
あなたのSSを褒めるのに一番相応しいのは、痺れる、という言葉だと勝手に思ってます。
大人の責任とか、過去との葛藤とか、そういう厄介なテーマに正面から挑んだ上で、
ウィッチ達のカッコイイところを余すことなく書き切る、見せ場を用意する、そしてその上で、ちょっとだけ百合る。
そこに痺れる憧れる。これ読んだら私も黒江大尉書きたくなってきた。GJっした!!
97名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 22:54:36 ID:uaUO/Ig9
皆様GJ!

黒江さんを書こうとすると釣りバカエイラさんを書いてしまうことになるぜ…
間違いなくリアルの釣り趣味が爆発するから他人には一般人にはみせられねー!!
98名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 22:58:41 ID:uaUO/Ig9
なぜかageてしまったすまん。
99名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 23:04:51 ID:H/3mfKpJ
>>97
エイラが浜ちゃんばりのカッコいいプロポーズをしつつ、夜は合体作業に勤しむんですねw。
ちなみに、俺も釣り好きだから大丈夫だ。川とシバスだけだけど。
100名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 23:13:53 ID:Iq6GsvBC
クロエが釣り好きなのは元ネタの人の趣味とかなの?
エイラも?
101名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 23:34:21 ID:jhnmhPAr
>>93
サーニャは何しにでてきたんだろう・・・?
102名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/23(月) 23:46:32 ID:Yi2/EeOk
>>101
これはきっと予告だ
明日こそ本番でエイラさんが出てくるんだよ


だったらいいのに
103名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 00:09:39 ID:csXw1FyO
本スレで話題になっているが秘め歌すごいな
黒い瞳とか
104名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 00:12:35 ID:yTbKW3LA
>>103
ガチすぎwwww
105名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 00:13:54 ID:Pu0eOMKX
ロシア民謡かよwサーニャがウラーーーーーーーー!とかいったら笑ってたけどw
本スレで北欧メタルの話とか出てたけどエイラがメタリカ歌ったら惚れるなー
アポカリプティカも好きだー
106名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 00:24:11 ID:csXw1FyO
>>105
エイラがマスパペとか歌うの想像したらほれるというより吹いたわw
107名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 00:33:59 ID:JVpoNcbJ
>>102
エイラかと思いきやカールスラントのエースコンビキターー!!
108名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 00:35:50 ID:Ds79eNCC
歌の話題になると何故かやたらと沸いて出てくる
全然作風や雰囲気に合ってない曲をやたらと推すメタル厨ははっきり言って大嫌いです
オタにメタラーが多いってのをつくづく実感します
109名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 00:42:41 ID:KkgQm12i
略してオタラーだな
110名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 00:42:58 ID:Y9EYgmkc
渋い選曲には賛同だが、でもどうせ扶桑語訳歌詞で歌うんだろうな……と思うと素直に喜べないこの稀代な性をどうしてくれようか。
サーニャはПрекрасно でХорошо でКоммунизмаなオラーシャ語をもっと喋るべき。
111名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 00:52:21 ID:jzSpzFn3
このスレしか見てない俺にkwsk
112名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 00:58:49 ID:Ds79eNCC
エイラソロ曲の伴奏は仲居さんのバンドがやるとかやればいいのに
仲居さんだけでなくバンドにも仕事が入るし宣伝になるし


>>110
扶桑語でおk
113名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 01:02:05 ID:Y9EYgmkc
>>111
秘め歌コレクションのトラック内容が公開されたのさ
ttp://www.ota-suke.jp/news/25895

もっさんのは「同期の桜」が聴きたかったが流石に無理か……。
114zet4j65z:2009/02/24(火) 01:58:11 ID:sQnNHdWP
お褒めのコメントありがとうございます〜。
ベルギー地図やwikiと照らし合わせながら話を構築し、時間がかかってしまったのも無駄じゃなかったと思えます。
っていうかSint TruidenseをMAPでググると航空写真で滑走路が見れたりしてちょっと感動したりw
>>91
具体的な声優名は出てこないんだけど、ちょっと低めの少年声系で考えてます。
立場とか接する相手への態度とかで本人が口調を作ってる面もあるだろうと思いながら台詞を考えたのでちょっとわかりにくくなっちゃってるかもです。ごめんなさい。
>>96
前作のタイトル、ちゃんとヴァイセルをカールスラント語表記にしてくれてありがとうございました^^
正直途中の葛藤部分とか書いてて辛くて時間かかってうまく飛ばしてラストに繋げようかとも一時期思ったんですがそう言って頂くとちゃんと書いた甲斐がありました。
黒江さんが加藤隼戦闘隊の歌を歌って武子が恥ずかしがるシチュとか、もっさんに剣の稽古をつけながらエクスウィッチになる事の覚悟を問うとか、妄想は尽きないですw
>>97
むしろ自分釣りわかんないんで、黒江さんの釣り好きであろう部分をうまく表現できてないと思うんですよ。
釣りに狂ってなんか解説が無いとわかんないようなマニアックなことしてる黒江さんも見たいかも〜。
>>100
Wiki見ると黒江さんの元ネタの人は相当の釣り好きで、釣りに行くと決めたら他の意見をまったく聞かなくなるとか。
しかもその最期は悪天候の中奥さんが止めるのも聞かず磯釣りに出かけて波に飲まれて亡くなったいうんですから本物の釣りキチだとおもいます。


なんか、闇文見るにカウントダウンってタイトル発表とは別みたいだね。
やっぱ2期決定かな〜
115ねこぺん:2009/02/24(火) 01:58:33 ID:YUVeEmSG
>>72
管理人さんいつも乙です。というか1日半!? 素晴らしいスピードスターじゃないですか!
シャーリーは姉御肌だけど、抱かれたい願望あると思いますw
>>87
このクロエさんには惚れざるをえない! ああ、なんてかっこいいんだ
*ベルギーはオランダとあわせてネーデルラントかなと思います
ガリアとカールスラントが張り出してるので、ベネルクスは狭くなっちゃってますね

私も負けずに7レスほど。3分くらい後から
116Winning Colors 1/7 @ねこぺん:2009/02/24(火) 02:01:15 ID:YUVeEmSG

なにもかもが上手く行かなくて。悔しくて仕方なくて。
そんな時にいつも思うこと。
――――虹になりたい。見上げる空にかかるあの輝く七色の虹に。



           『Winning Colors』


少女は自分の名前が嫌いだった。いや、嫌いというのは正確ではないかもしれない。
むしろ、正しいとか正しくないとかいう視点で言えば、それはあまりに正しかった。悔しいことに。
自分の物心つくまえにもういなかった両親は的確にそのことを見抜いていたのだ、と彼女は思う。
だって、五色だ。中途半端にもほどがある。二人の姉と比べればなおのこと。
なにより、彼女はウィッチだった。いくら新米だと言っても。焦がれ、憧れ、見上げる空の虹が七色なら、
二色足りない自分はどうあってもそこに行けないと考えてしまうのだ。その位、彼女は真剣だった。
――――諏訪五色。それが少女の名前だ。

虹になりたい。
つまりそれが、五色の願いだった。その願いを叶えたくて必死に頑張ってきたけれど。
そんなささやかな努力も結局は無意味なのかもしれない。自分はやっぱり虹にはなれないんだ。
そう思ってしまうのは、多分本物の虹を見てしまったから。あの子は――芳佳は、本物の虹だ。
ウィッチを目指した時から一歩ずつ上ってきた段の数をあの子は一足飛びに追い越してしまった。
そう気づいたときは本当に悔しくて仕方なかったけれど、でも何故か嫌な気分にはならなかった。
それは、きっとそれが芳佳だったからなのだと五色は思う。
そして、自分がそう思う理由も彼女はもうなんとなく分かり始めていた。

会いたいなあ。ただ、そう思った。
やっと決まったロマーニャ行き。これでブリタニアで頑張っている芳佳と同じラインに立てる。
でも……そうだ。きっとロマーニャに行ったら、もう芳佳と会う機会なんてないんだろう。
あったとしても、それはずっと先のことだ。分かっていても、なんだか心が締め付けられるみたいに痛かった。
いや、だからって密航はなかった。あれは疾風が悪い。
けれど、一体どこまで疾風は自分の心の中を見抜いていたのだろうか。もしかして、全部? 
それだってありえない話じゃないと五色は思う。彼女はなにかと聡いから。
暗く湿った船底で、疾風はそれ以上のことを五色に聞こうとはしなかった。
彼女が知ってること、知らないこと。あえて聞こうとしなかったこと。きっとその全てが、今ここにいる理由だ。

117Winning Colors 2/7 @ねこぺん:2009/02/24(火) 02:02:38 ID:YUVeEmSG

「どうしたの、五色ちゃん?」

ほんの三ヶ月ぶりなのにひどく懐かしいように思えるその声。
そのくらいで大きく変わるなんてそうそう有り得ないし、
実際容姿は五色の知る彼女そのものだというのに、感じる雰囲気はまるで違うような気がする。

「え? あ、なんでもないって」
「なんか悩んでるみたいだったよ? ……ロマーニャ行くの、不安?」
「まさか! やっと私の実力が認められたのよ。そういう芳佳だってちゃんとやってるの?」

芳佳と呼ばれた少女は、あはは、と苦笑いをこぼして頭を掻いた。
いや、お恥ずかしい限りで、というなんとも情けない答え。
大丈夫なのだろうかと思うと同時に、五色の脳裏に今日見た光景がよみがえる。
数日行方不明だった疾風を助けに行った帰りに遭遇したネウロイとの一戦。
引き締まった表情で、まだ不慣れだろうストライカーユニットを乗りこなし戦っていたその姿。
凛々しくて、自分の知っている芳佳とはまるで別人のようで、五色はわずかも目を離すことが出来なかった。
同じラインにだなんてとんでもなかった。自分が立ち止まってもがいているその間に、
芳佳はもう次へ次へと進んで、彼女を置き去りにしようとしているように思える。
喜びたいのに喜べない大好きな親友の成長。
芳佳……私も、本当にちゃんとやれるのかな? 思わずそう問い掛けたくなった。

「ここのみんなは凄いから。私みたいにウィッチなりたてのヒヨコは迷惑かけるばっかりで」
「……うん。なんだか、私も圧倒されちゃった」
「同じ新米軍曹の子もいるけどね。一緒にいたリーネちゃんがそうだよ」

ブリタニアに渡った五色達が密航者として見つかった時、芳佳と一緒にいた少女。
おっとりして優しそうで、五色や疾風と同じく優秀なウィッチの姉をもつ女の子だった。
控えめな言動と裏腹の正確な射撃技術。実戦で結果が出てないからと本人は言うけれど。
かなわないなあ、何から何まで。そんな気持ちが五色の心を通り抜けた。ウィッチとしても女の子としても。
大体、あれは反則だ。自分の胸をぺたぺたと触りながら五色はうなだれる。戦力の差は圧倒的だった。

「芳佳は頑張ってるね。こんなエースの人たちと一緒に戦えるなんて」
「そんなことないよ。ここへ来たのもたまたま竹井大尉に推薦されただけで。
 私が『宮藤』じゃなかったら、別の誰かだったかもしれないって思うもん」

部屋の時計がカチコチと音を立てる。背中に感じる空気がピンと張りつめるのを五色は感じた。
芳佳が言いたいことは分かる。――ウィッチを名乗る者で宮藤の名を知らないものなんていないから――
でも竹井大尉はそんな選び方をしたりはしないし、その別の“誰か”が誰であるかなんて考えたくもない。
そう。聞きたいのはそんなことじゃなかった。
間借りした芳佳の部屋に差し込む月の光が、蒼白く二人を照らす。

「それは違うよ。ここに芳佳が来れたのは芳佳だから。芳佳だから選ばれたんだ」
118Winning Colors 3/7 @ねこぺん:2009/02/24(火) 02:04:07 ID:YUVeEmSG

月がまぶしかった。言いながら、しかし五色は芳佳を見ることが出来なかった。
今振り向いて見る芳佳の顔はきっと綺麗で。窓の外にぼうっと視線をやりながら五色は膝を抱えた。
わずかな荷重の変化に反応してベッドがきしりと鳴る。それと重なるように頬に当たる熱い吐息。
背中から差し込まれるように前に廻された腕が五色の胸元でクロスする。薄布越しに触れる身体の感触。
芳佳、なにを。そう聞こうとして声が声にならなかった。二つの呼吸音だけが浅く共鳴してゆく。

「今日の五色ちゃん、なんか……らしくないね」
「そう? 芳佳の思う私らしいって、どんななの?」

五色の問いに、芳佳は廻した腕の力をぎゅうっと強めながら、うーんと思案する。
その声があまり真に迫っているように聞こえず、五色はこっそり苦笑を漏らした。
こんなところは、いかにも芳佳だ。努めて見ないようにしていたその姿がわずかにガラス窓に映って、
思わずどきっとするほど愛おしい。こんな感情、芳佳にはほんの少しでも伝わっていて欲しくなかった。
自分より高い体温が背中に首にあって、五色は自分のそれも上がってゆくのを感じずにはいられない。

「いつもキレイで凛としてて、一生懸命なカンジ……かな?」
「なにそれ……冗談ばっかり」
「……冗談なんかじゃないよ。私がウィッチになろうって思ったのは、だって、五色ちゃんがいたから」

言葉と同時にするっと抜き取られた二本の腕が五色の顔を捕え、無理矢理に振り向かせる。
驚きに身を硬直させてなされるがまま、五色はただ芳佳の瞳に釘付けになっていた。
分かっていながら身動きだってとれない。身体ごと拘束され、ふわりと重ねられる口唇。
信じられないほど熱くて、甘くて。思考も不安も、形さえ残らないみたいに。

「芳佳、今なに……」
「五色ちゃん。私、五色ちゃんをもっとそばで感じたい。誰よりも近くにいたいよ。ダメ、かな?」
「ダメ、じゃない。けど」

五色の答えに合わせるように、芳佳は右腕を五色の胸元へとすっと伸ばす。五色の答えを遮るように。
その続きがなんなのか。そんなこと目の前の少女が考えてくれたりしないことも彼女はよく知っていた。
そう、ダメじゃない。ダメじゃないから困るんだ。もし許してしまえば。
やっと抑え込んでた戦線が一瞬で崩壊してしまうのは確実で、でも今の五色に抗う術なんてあるはずもない。
触れた手から胸へと伝わる熱がちっぽけな理性の壁を突き崩していく。

「……やわらかい。なんだかくらくらするよ」
「そんっ……なこと、言って。私の胸じゃ触りがいだってないでしょ?」
「どうして、そう思うの?」

わざとだ。芳佳はわざとこんなことを言っているのだ。どうしてなんて、聞くまでもないことなのだから。
押し付けられる芳佳の指が服と薄い膨らみのむこうから、直接心臓を捕まえようとしているような気さえする。
そんな魔法にかかったように力が抜けて自分では支えてもいられない五色の身体を、芳佳は左腕で抱え込んだ。
胸にぐいぐいと食い込ませた指に、五色がぎゅっと瞳を閉じて肩で息をしているのを見て取ると、
今度はその肩を押さえつけて、押し倒すように五色の身体ごとベッドに沈める。

「芳佳……っ!?」
「だめ、やっぱりこれじゃ足りない!」
119Winning Colors 4/7 @ねこぺん:2009/02/24(火) 02:05:10 ID:YUVeEmSG

もう我慢出来ないというように、芳佳は五色の服の隙間から手を無理矢理差し込んだ。
その腕をなんとかつかんで止めようとする五色を無視するように、
はじめはブラウス越しに、やがて膨らみとも呼べない膨らみを覆うそれをずらし、直に触れる。
いや、触れるなんていう優しいものなんかじゃなかった。指の跡がはっきり残りそうな、そんなイメージ。
月の光に五色のそのなめらかな肌を照らし出させ、映るその先に芳佳が口唇をよせた。

「あ……んっ!」
「五色ちゃんっ」
「や、あっ」

手脚に力を込めて、ぎゅっと身を縮こませて。それでも波のように来る感覚は耐えられない。
芳佳の舌が、手が、五色の両の膨らみの上で踊り、その影を落としてゆく。五色は頭を何度も振って、
自分を狂わせようとするものを追い払おうとしたけれど、それは五色の必死の抵抗さえ器用に交わしてゆく。
たまらなくなって、五色はそばの枕をひっつかんでしがみついた。顔も埋めて、何も見えないように。
真っ暗な頭の中で再構成される芳佳の行為が、ひどくリアルに感じられる。

「……どうして顔、隠そうとするの?」
「だって、きっと今私恥ずかしい顔してる、そんなの」
「見せて? 五色ちゃんの顔、見ていたい」

芳佳の声がほんの耳元で響く。いつの間に! それだけで飽き足らないのか、
芳佳は五色の耳の形まで舌で確認しながら、魔力に反応して現れたキツネ耳の付け根も指でなぞる。
二つの身体の触れ合った部分が熱くて、喉が灼けついたみたいで息も出来ない。
五色はやっと芳佳の瞳を見ながら、なにかを求めるように高い声で喘いだ。
まるで自分のものじゃないみたいな気がする、そんな声。

「そこ……は」
「五色ちゃん、かわいい」
「……っ、ばか!」

嬉しくて楽しくて仕方ないみたいな芳佳の顔が憎らしい。
自分は今にも吹き飛んでしまいそうな意識を保つだけで精一杯なのに。
きっとそんなこと芳佳はお構いなしなのだ。もう思い通りには動いてくれない身体がかたかたと震えた。

「五色ちゃん?」
「……お願い。するのはいいから、だからもう少しやさしくして……」
「あ……ごめん。大丈夫だから、ね?」

そう言いながら、芳佳はあやすように背中を撫でる。ゆっくり、力を抜いて、と。
浅い呼吸を繰り返しながら、その腕から伝うようにおそるおそる五色は芳佳の背に両手を廻した。
向かい合う瞳と瞳。透き通ったその表面に乗る薄い紅。引き寄せられるように二人は口唇を重ねた。
時を刻む甘い旋律。五色の口唇をはむ芳佳のそれが転調を繰り返して、抱きしめる両腕にパルスを送る。
その動きに引きずられるように五色の手が芳佳の身体をさまよい、奥から手前へと位置を移していく。
120Winning Colors 5/7 @ねこぺん:2009/02/24(火) 02:06:24 ID:YUVeEmSG

「……いいなあ。芳佳、ちゃんとあるんだ?」
「な、ないよ? 私は、だってちんちくりんの豆狸だし」

気にしてるのか、してないのか。にわかには判断のつかない口調。
そっと添わすように手を当てながら、でも、と五色は思う。もしこれが芳佳のものでなかったら。
大きさなんてまるで関係なく、きっと自分はこんな気分にはならないだろう。心まで麻痺するような、
そんな感覚にぼーっと沈んでゆく五色を見て、芳佳は自分の方に意識を引き戻すように耳たぶを軽く噛んだ。
ぴくんという微かな反応。嬉しそうに腕の力を少しだけ強めて、今度は五色の首筋に口唇を押しつける。
すぐそこにある彼女の頬は赤く染まっているだろうか。汗ばんだ肌から沸き立つ熱っぽい少女の匂い。
いつも気丈な五色の口からもれる甘い声音が、芳佳の感情の水面を泡立ててゆく。
それもなんとか抑えようと五色が懸命になってるのが分かるから、なおさらだった。
これは本当に現実なの? その答えを探るように芳佳は五色の身体に手を這わせていく。
その乱れた吐息と一緒になって上下する二つの膨らみに、そして下腹部に。
いや、息が整わないのは芳佳だってもう同じだけど。でもそんなこと、気にしてなんていられない。
心を落ち着けるように、ゆっくりロールを描いて下へ、下へ。少しずつ、指の先に感じるものが色を変える。

「もうだめ……っ」
「五色ちゃん、ここ、いい?」

ついついとズボンの縁をなぞりながら。芳佳のその問いが許可を求めているのでなく、
単なる確認に過ぎないのだとは、五色にも分かってはいたけれど。でも。

「ま……って」
「待たない」

当然のような答えに、重なる直線的な指の行方。その動作にとまどいもためらいも、ありはしない。
五色の身体が反射的にこわばる。ぎゅっと瞑ったまぶたの裏に感じるエーテルの炎。熱が、衝撃が

「は、あっ、ん――――っ!」

世界を、真っ白に塗り替える。
身体の感覚を繋ぐ糸がぱつんと切られたようで、意識だけが遥か遠くに置き去りにされたみたいだった。


121Winning Colors 6/7 @ねこぺん:2009/02/24(火) 02:07:34 ID:YUVeEmSG

「気がついた……?」

それは一瞬のようにも永遠のようにも思える時間の後。ぱっと開いた五色の目に飛び込んできた芳佳の表情。
不安そうな申し訳なさそうなその顔を見て、はじめて五色は自分がそれまで呼吸もしていなかったことに気づく。
本当はなにが起きたのかさえ、よく分からなかったけど。
痺れたように動かない身体の、髪を首筋を、ゆっくりと撫でてくれている芳佳の手がなんだか気持ちいい。
ふんわりとその心地よさに身を委ねながら、五色は指の先まで力が戻るのを確かめる。
そしてぎゅっと、その手で自分を撫でる芳佳の腕をつかみ取った。ねえ、聞いて? そんな意思表示。

「……芳佳ばっかり、ずるい」

びっくりしたように芳佳がこっちを向いた。でも、それは五色の言葉に驚いたのではなくて。
その表情のまま芳佳は五色の瞳に指を添えて、そこに結んだ雫を静かに掬いとる。

「五色ちゃん、ほんと、大丈夫だった……?」

どうしてそんなことを言うのだろう。
そんな言い方をされたら、いくら口唇を噛み締めても、いくら胸を押さえつけても。

「……大丈夫じゃない」
「え……」
「大丈夫なわけない。芳佳と一緒にいられるの、今日が最後かもしれないんだから。
 それなのに、平気でいられるわけないじゃない……」

五色の潤んだ瞳に、芳佳の心が吸い込まれていく。
自分の腕を握るその手の力がほんの少し強くなったのを感じて、芳佳は五色の身体をぎゅっと抱きしめた。
はっきりと、強く、強く。

「ね。一緒にしよう、いっぱいしよう。夜が明けるまで。
 でも、きっとこれが最後じゃないから」
「……うん」
「大丈夫。きっと大丈夫だよ」

五色ちゃんならきっと大丈夫だよ。きっとどんな願いだって叶えられる。
そう胸の奥で言いながら、芳佳は五色の口唇をそっとふさいだ。

122Winning Colors 7/7 @ねこぺん:2009/02/24(火) 02:08:40 ID:YUVeEmSG

短い雨の音で目が覚めた。
冷静になるとついさっきまでのことが急に恥ずかしくなって、二人は慌てて背中を向けた。
痕、残ってるね。そう口にしたら、芳佳のばか! と本気で怒った声。
そんな反応も愛おしいんだ。そう考えていると、肩にとん、という感覚が降ってきた。
振り向こうとしたすぐそばに顔をうずめる彼女の姿が映る。

「芳佳……。私は本当に、大丈夫かな?」

震えるような声だと思った。その問いに、返せる言葉はなかったけれど。
代わりに彼女の身体に腕を廻して抱きしめる。こつんとおでこをぶつけると、彼女が小さく頷くのが見えた。

本当に、大丈夫だよ。だって、君が行く空も海もこんなにあおいんだ。
雨上がりの空には七色の虹。でも、この目に映る君はそれ以上に輝いているんだから。
きっと望む場所に行けるよ。あの虹のむこうまでも――――。
そんなことを思いながら、芳佳は五色を乗せた船の行く先をいつまでも見つめていた。       fin.










ごしきちゃああああん! いや、この二人はジャスティスだと思うんですがどうでしょうか
天空の一年後くらいには、宮藤五色になっていると断言出来ます。芳佳の嫁は五色ちゃんだっ。天空の花嫁♪

というわけで、自分以外に需要がなさそうなよしかごしきです
本当に需要がなさそうなのがあれですが。天空はアニメとパラレルですしね……仕方ありません
それでもこの二人のSSが増えてくれないかな、と密かに期待してたりはします
しかし、ゲームのPS2版は芳佳主人公だというのに五色ちゃんが出てこないだなんて……
あと、タイトルはもしかして?と思われた方、多分正解です。お友達になりましょう

なにはともあれ楽しんで頂けたら。五色ちゃんの話を書けて個人的には満足です。でわでわ
123名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 10:08:19 ID:uimzkhUU
>>122
需要がない?冗談言っちゃあいけないなあ先生。
GJ!!待ちに待った漫画キャラきたー!!しかも同志ねこぺん先生ですが!嬉しさに涙が出そうです。
名前の意味という一見安直なテーマなのに、安易な根性論を展開せず、見事な科白でケリをつけさせるこの潔さ、惚れました。
天空の花嫁wあっちでは芳佳五色が正義だと信じてる。そんで疾風が五色に片想いしてたら尚よし。
いやまあもちろん疾風五色でもいいんだけど、五色が芳佳に劣等感を感じてる……ってシチュは最高だと思う。
124名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 10:27:28 ID:sp4Bjhat
125名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 11:03:03 ID:yTbKW3LA
126名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 11:44:20 ID:sp4Bjhat
127名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 11:55:37 ID:jL74bccg
>>125
エイラーニャの歌、ガチすぎる
128名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 12:06:58 ID:jzSpzFn3
エイラーニャのトークが楽しみ
129名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 13:46:25 ID:xY2K1c4H
>>122
GJです!このカプ大好きです
漫画版読んだときから芳佳×五色いいなと思ってたので、二人の話読めて嬉しい
二人のやりとりにドキドキしました
130名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 18:23:51 ID:K1pW0FZ9
書いては消してを繰り返してます、こんにちは
世間さまから丸っきり取り残されつつ
いらん子、ビューリングxウルスラで6レス
131アキストゼネコU−4 @:2009/02/24(火) 18:24:58 ID:K1pW0FZ9
「へぇ〜双子でお姉さんがいるんだ。二人して軍に志願するなんて偉いね」
「偉くない。母が勝手に志願した―――ストライカーはあのあたり」
 年上ぶった口調が普通らしい。うんざりとして軋むドアを押し開け、ウルスラは広い格納庫の真ん中付近を指差した。
 ウィルマは空を飛ぶウィッチらしく瞳を輝かせて駆けていき、端から順にユニット内のストライカーを眺めていく。
「ねえ、なんだかバラバラじゃない? それに見たことない型ばかり。スオムスはメルス配備かと思ってたけど」
「それぞれ母国からの支給品。試行脚のテストパイロットも兼ねている、そう…ビューリングが、言ってた」

 初めて、いま初めて、出てきた名前。
 話題にならない方がおかしな、二人の共通の知人の名前。
 発したウルスラは木箱に腰掛けて本を開き、聞いたウィルマは最新鋭のストライカーに見入っている。
 しばし、無言の時が流れた。

「あいつが、ハリケーンから降りるなんてね」
 ぽつりとした呟きの向かう先は真新しいストライカー、機体には蛇の目の国籍マーク。
「…良い機体があれば乗り換えるのは当たり前」
 より良く、より速く、より強く。ウィッチ兼研究者のウルスラは言葉の意味を捉えかねる。
「ええ。でも私は最後までビューリングの意思を変えられなかった」
 ウィルマは遠い場所を見るように目を細めた。彼女の瞳の奥には一言で言い表せぬ感情が渦巻いている。懺悔するかのような語らいはウィルマ自身に向けてのものだ。
 ウルスラはハリケーンにまつわる諸々の事情を知らず、ウィルマやビューリングの心情を把握できない。何と言っていいかわからずにいると、歩み寄ってきたウィルマが木箱の空いた場所へ腰を下ろす。
「あの頃は…色々あってね。感情に翻弄されるまま、あいつにひどいこと言っちゃった」
 人に向けた悪い言葉は何らかの形で自分に返ってくる、幼い頃に母から聞いた戒めは本当だったとウィルマは思う。だって今でも、それを浴びせた瞬間の青白い顔と途方もない後悔を鮮明に憶えている。
「謝ろうと訪ねたときはもう最悪」
「…最悪?」
「昇進か転属かの二者択一で、転属にサインしたと聞いて顎が落ちたわ。謝るつもりだったのに逆切れして殴っちゃった」
 その時の再現とでもいうようにスナップのきいた右手を一閃、手のひらが大きく風を切る。お嬢様ふうの外見に似合わずウィルマは結構手が早いらしい。軍曹が少尉を張り飛ばすというシュールな光景にウルスラは沈黙する。
「意地張ってるうちにあいつはハリケーン担いでスオムスへ。だからスピットファイアに乗り換えてくれて、生きる気になってくれて、本当に本当に嬉しいの。気を揉んでないで私も早く行動を起こせばよかったのよ…あ〜あ、失敗したわ」
 失敗したと言いながらも、ウィルマはどこか救われたように微笑む。高窓から空を見上げるのをやめ、茶目っ気たっぷりに片目をつむった。
 ころりと豹変した雰囲気はつまり、この話はこれで終わりということ。相変わらず意味がわからなくて、ウルスラは眼鏡を押し上げると小さな溜め息をついた。
132アキストゼネコU−4 A:2009/02/24(火) 18:25:57 ID:K1pW0FZ9
 なんとなく黙り込んだ二人の耳に、遠くから響いてくる重厚なエンジン音。きょろきょろしたウィルマが立ち上がって滑走路の方へ歩を進める。
「なんの音?」
「ブラフシューベリアのエンジン音。ビューリングが帰ってきた」
 そうこう言っているうちに、一台の大型バイクが格納庫正面のアスファルトに飛び出してきた。滑らせた両輪を削りながら猛スピードのコーナリング、そのままの勢いで格納庫に突っ込み派手に車体をまわす。

ギュンギャギャギャーーーっ!

「きゃあああーっ?! あっ、危ないじゃないビューリング! あなた私に恨みでもあるのっ?!」
「無駄足踏ませたくせによく言う…久しぶりだな、ウィルマ」
 危うく撥ねられかけて尻餅ついたウィルマの顔は真っ赤。停車させたバイクから降りてゴーグルを外したビューリングは、鼻で笑いつつも片手を差し出す。
「結構よ! 一人で立てるわ」
「それは失礼。ところでお前、こんなところで何やってるんだ?」
「ストライカーの見学! ここまで案内してもらってね」
 外から入ってきたビューリングは明暗差に瞬き、示された暗がりを見つめる。するとそこに意外な人物を確認し大股に近づいた。
「ウルスラ、お前が案内役を買ってでたのか? 珍しいこともあるものだな」
「ハッキネン司令に頼まれただけ。本を読みたいからもう戻る」
「ああ、ちょっと待て―――ほら」
 木箱から立ち上がったウルスラを押しとどめ、踵を返したビューリングはバイクの後ろに括りつけていた荷物を紐解く。麻で出来た丈夫な袋をあさり、手にした大きな包みをウルスラに差し出した。
「これは?」
「スモークチーズだ。前にエルマ中尉が買ってきたろう? 町に寄ったついでにな」
「…どうして?」
「パンの礼だ。あとこっちは詰め所にでも放り込んでくれ。他の奴らの分だ」
 大小の塊を次々と渡されたウルスラは口ごもる。両手が塞がった状態で、ぽんっと頭に手を置かれ髪をくしゃくしゃ。
 ビューリングは薄い色の髪をかき回すのをふと止め、屈みこんで正面にある顔をじっと見つめた。露骨に逸らされかけても顎を捕まえて逃がさない。
「顔色悪くないか? ちゃんと眠っているんだろうな?」
「眠ってる。問題ない」
 真っ直ぐな視線を振り切り、チーズと本を抱え直したウルスラは足早に進む。部屋に置いていったパンのこと等釈明しておきたい点は多々あったが、結局何も言えず格納庫を後にした。
「やれやれ、また余計なことだな……頼んだぞ」
 主人の命に従い、尾を振るダックスフントが駆け出す。
 ウルスラを追いかけてどこまでも。読書を邪魔して眠らせるという特殊スキルを持つ使い魔は、数日ぶりの出番に張り切りまくっていた。
133アキストゼネコU−4 B:2009/02/24(火) 18:26:43 ID:K1pW0FZ9
 後ろから二人のやりとりを見ていたウィルマはわかってしまう。ウィッチの命綱ともいえる使い魔を誰かに使役することの意味を。
 傍らには存在を主張する真新しいバイク。偏屈な僚友に訪れた変化を認めて受け入れなければならない。素直になれなかったツケは随分高くついたと、げんこつで軽く自分の頭をコツン。
「あなたがお土産を買ってくるなんて明日は雪かしら」
「もののついでだ。というか、お前に嵌められたせいなんだが」
 茶化してくるウィルマに振り返って顔をしかめ、ビューリングは懐からタバコを取り出してくわえた。使い込んだジッポーで火をつけると、申し開きはあるかというふうにジト目で煙をぷかぷか。
「人聞きが悪いわね。文句ならあなたの原隊トップに言いなさいよ」
「やはりあいつの仕業か…まあ散々パイプを駄目にさせたからしょうがないな」
 ビューリングは大きく煙を吐き出してしみじみ呟く。403飛行隊でも抗命しまくったので、この程度の嫌がらせはあって然るべきだろう。
 そんな様子を覗き込んだウィルマは軽く俯き、ほんの僅かの間だけ口元にほろ苦い笑みを浮かべた。
「本当に変わったわ…今日は驚くことばかり」
「ん? 何か言ったか?」
 運転中吸えなかった分まで堪能していたビューリングは眉を上げて首を傾げる。はっとしたウィルマは勝気な顔で鼻を鳴らすと、これ見よがしに肩を竦めた。
「いいえ別に。それより軍部からの手紙だけどハッキネン司令に何か聞いた?」
「いや、お前から直接と言われ―――っ?!」

ドオオォーーーンッ!

 答えかけた途中で、たてつけの悪いドアが爆発するように開く。蝶番が外れて鉄製の重いドアが吹っ飛んできた。ビューリングは咄嗟にウィルマを押し倒し、覆い被さった頭上すれすれを通過させて事なきを得る。
「危ないだろう?! 当たってたら死んでたぞ!」
 間髪入れず上体を起こして怒鳴りつけ、戸口にぎゅうぎゅう詰めになった集団へ凄む。身の竦むような怒気は雁首を並べる面々の開ききった瞳孔に跳ね返された。
 とてつもなく気まずい空気、背筋に走りまくる悪寒にビューリングの頬が引き攣っていく。改めて己の体勢を確認すると、ウィルマの胸に手をかけて深く膝を割っている。これではまるで襲い掛かったみたいではないか。
「ほらみなさいな。久しぶりの逢瀬に愛の業火が燃え盛っているわ」
「あっどうぞどうぞ気にせず先を続けてくださ〜い。わくわく、どきどき♪」
「ビュ、ビュビュビューリング……あんたこの神聖な格納庫で何をしようと」
「何って今から一発やるに決まってるじゃありませんか。カマトトぶるのもいい加減にぎゃあああ」
 石化の解けた者から順に口を開き、どやどやと倒れこむ二人を囲みだした。失言したハルカは智子の目潰しをくらって床をのた打ち回っている。
 これらの発言から現状を悟り、ビューリングの頭が真っ白になった。
「ビューリング少尉、あんまりですっ。 ウルスラ曹長を捨てて昔の女に走るなんて」
「責めたら可哀相よー。ビューリングも人の子だもの、倦怠期に優しくされたらイチコロねー」
 ウィルマはそれを聞き、ああやっぱりと納得する。女の勘は伊達じゃない。それはさて置きこの晒し者状態から抜け出したいのだが、圧し掛かっているビューリングは石のように固まったまま。
「頼むウィルマ……助けてくれ」
 やっと口を開けば、ほとほと弱りきった情けない声。公でも私でもこんなふうに支援を要請してきたことはない。いつだって自分の力のみを頼りにしていた偏屈なジョンブル、その彼女の最初の頼み事にウィルマは我慢できず噴き出した。
134アキストゼネコU−4 C:2009/02/24(火) 18:27:29 ID:K1pW0FZ9
 ウルスラは自室のドアをくぐり生活感のない室内を見回す。それもそのはず、ここはもっぱら火薬実験室となっている。吹き飛ぶ前と全く同じ内装なのは基地職員の尽力によるものだ。
「…面倒くさい」
 マットレス剥き出しのベッドに抱えていた寝具一式を投げ、メイキングは後回しにして椅子を引く。実験テーブルにある器材を重ねて本を広げるスペースを確保した。ここ二日ばかり同じページからちっとも進まずにいる。
 視界の端にはヒョコヒョコと出たり消えたりする黒い鼻先、しぶとくも後ろ足で立ち上がったりジャンプしたり。あのバランスの悪い体躯で机上を窺うのは大変だろうと、ついに根負けしたウルスラは気づかないふりをやめた。
「おいで」
 呼ばれたダックスフントは尻尾をパタパタ、運ばれた柔らかい膝の上に落ち着く。しばらくはそこで大人しくしていたが、何か気になるのか髭をピクピクさせて鼻をフンフン。そしてテーブルに置いてある包みを見つめて動かなくなった。
 袋の中身はビューリングにもらった大きなスモークチーズ。犬の嗅覚なら勘付いて当たり前であり、これ以上ないくらいの御馳走である。
「おなか空いてるの?」
 ウルスラをせつなく見上げる口元から涎がたらたら。
 溜め息ついてタオルを手繰り寄せ、ウルスラはそれをダックスフントの首にぐるぐる巻きつける。軍服を汚されてはかなわない。ついで実験器具から鉱物を削るナイフを取りあげ、そのへんにある紙で適当に刃を拭った。
「チーズはカロリーが高い。だから少しだけ」
 ウルスラはきらきらした瞳に前置きしてチーズに入刀する。顔くらいのサイズを小さなナイフで切り分けるのに四苦八苦、なんとか4等分にした頃にはすっかり腕が疲れてしまった。塊を一つだけ除けて後は全て袋へ戻す。
「これを、はんぶんこ」
 指で大雑把に等分割し、そのうちの一方を自分でぱくん。
 もう一方のチーズをのせた手のひらを口元へ持っていくと、小型犬は鼻をピックンピックンさせてせつなすぎる目をする。そしてまた大量の涎をタオルへぼとぼと。
「……オーケー」
 食べていいのにと思いつつ、待っているようなのでブリタニア語で言ってみた。辛抱強くステイしていたダックスフントは喜色を浮かべてチーズをがつがつ。手のひらごと食べてしまいそうというか、手が涎でベトベトというか。
 首に巻いた白いタオルが誰かを思い出させておかしくなる。おかしくて、おかしくて、自然と顔が綻んだ。こんな想像をしていると知ればきっと、煙をもくもく吐き出して怒り出すに違いない。
 顔を上げて壁際のベッドを見やる。
「…少し眠い」
 素直な響きは膝上の温もりのせいなのか、呟いた本人にも定かでなかった。
135アキストゼネコU−4 D:2009/02/24(火) 18:28:08 ID:K1pW0FZ9
「なぁーんだもう、びっくりした。寿命が縮まったじゃない」
「……それはこっちの台詞だ。一歩間違えれば頭がなくなってたぞ」
 ぱたぱたと手を振る智子に、片頬を赤く腫らしたビューリングが抗議する。周りにいるその他の面々は取り繕った愛想笑い。
 ウィルマの事情説明によりようやく誤解は晴れ、なし崩しに隊員交流の場へと突入した。常の勝気さを隠して自己紹介するウィルマに「猫被りも大概にしろよ」と言って頬を張られ、ビューリングは踏んだり蹴ったりである。
「ウィルマさん、だったわね。あなた可愛いわ。私の中隊に」
「残念だな大尉。こいつはカウハバ基地に配属されてきたわけじゃない。そうだろウィルマ?」
 油断も隙もないアホネンの魔手を断ち切り、ビューリングは肩を竦めて浮かない顔のウィルマを覗き込む。ウィルマはあちこち視線を彷徨わせた末、結局諦めたふうに大きく息を吐いた。
「ええ、違うわ。今日来たのはね―――ビューリング、あなた自身の転属同意を得るため」
 思いもかけなかった訪問理由に一同みな唖然とする。寝耳に水だったビューリングもくわえタバコをぽろり。
「…ブリタニアの上層部にしては面白い冗談だな。一応聞いておくが、今度はどこに行けと?」
「ファラウェイランドよ、正確には欧州派遣組。連邦国だから移籍といっても形だけね。私の部隊の隊長にあなたを据えたいみたい」
「隊長だと? 現任者はどうしたんだ?」
「近々あがられるわ…」
 その言葉に胸を衝かれ、みな言葉を失う。それはウィッチ隊にいれば何度となく目にしてきた光景だった。
 ウィッチには逃れられない宿命がある。こればかりは根性論でどうなるものでもない。稀に20歳をこえても十分な魔力を保持する者もいるが、ネウロイと戦うために必須の強固なシールドを張れないのだ。
「上層部の連中はマゾか? どう考えても私にそれが勤まるわけないだろう」
 ビューリングは身も蓋もない事を言ってのけ、明らかな人選ミスと嘲笑う。
「スオムスでの戦果に余程歯軋りしたんでしょうね。他所へやってから活躍するとは何事だって」
「なんだ当てつけか。暇な奴らだ」
「そうでもないわ。優秀なウィッチはどの国でも不足しているもの」
 イライラと煙を吐き出すビューリングに、ウィルマは視線を下げて苦笑する。実際空戦技術だけをとってみれば文句つけようのない腕なのだ。強すぎる反骨心さえなければ今頃もっと高い階級に上がっていただろう。
「でもそれだと各国からウィッチを出すっていう大前提が崩れてしまいます」
「そうよねぇ〜って遅れてきた私が言っても説得力がないんですけど」
 ハルカとジュゼッピーナが珍しく正論を説いた。
 義勇独立飛行中隊の成り立ちは各国が協力してネウロイに立ち向かおうというもの。ブリタニアだけ内部事情で一抜けたとあっては足並み乱れて矛先すら定まらない。
「ビューリングが転属命令書にサインした場合、ブリタニア軍部は責任持って補充兵を送る…だそうです」
 ウィルマがブリタニアのメッセージを伝えると、場がしんと静まり返った。
 このスオムスへ送られてくるのは何かしらの問題ある隊員ばかり。きっとその補充兵とやらも素敵な経歴の持ち主なのだろう。
「承諾するしないは別にして1つだけ。私は今のあなたに隊長が勤まらないとは思わない」
「ウィルマ…」
 強い断言にビューリングは戸惑う。いつものように斜に構えて鼻で笑おうとしたが、ひたと見据えてくる瞳の真っ直ぐさに縫い止められた。
「駄目よそんなこと! スオムス義勇独立飛行中隊には『いらん子』なんていないんだからっ!!」
「トモコ…」
 割り込んできた大声にビューリングの心が震える。嫌味のない深い瞳で見つめれ、智子は「きゃっ?!」という叫びを上げて固まった。
136アキストゼネコU−4 E:2009/02/24(火) 18:28:46 ID:K1pW0FZ9
 タタタッと足元に駆けてきた小型犬にビューリングは気づく。使い魔は誇らしげに尻尾をふりふり、褒めてくれと言わんばかり。そして主人の意向を察し実体化を解いた。
「…タイムリミットはいつだ、ウィルマ?」
「今日の夕方よ。あまり休んでもいられなくて」
 明朝にはブリタニアに戻り、通常シフトに入るのだという。隊長があがり間近なら強行軍になるのは致し方ない。
「そうか、なら」
 そう言って差し出したのは予備のゴーグル。受け取ったウィルマは唐突な行為に目をぱちぱち。
 わけがわからないという顔をしている周囲の皆を置き去りに、ビューリングはバイクに跨ってエンジンをかける。そして立てた親指で後部座席をクイッ。
「はやく乗れ。お前スオムスは初めてだろう? せっかく来たんだから町くらい見ていけ」
「なっなにを悠長なことを言っているんですかビューリング少尉! のんびり観光案内している暇なんてありませんよ?!」
「私は今日一日オフをもらっている。何の問題もないな」
「問題ありすぎねー。すぐ一人の世界に入るのはユーの悪いクセよー」
「わかっている。夕方までには戻る」
 おろおろするエルマと諦め口調のオヘアにあっさり答え、ビューリングはゴーグルをつけて片手を上げた。こうなると譲らない偏屈さを熟知しているウィルマは溜め息つき、バイク後部に跨って黒い革ジャケットに腕を回す。
「スピードは出さないでよ、あなたと心中するなんて真っ平だから約束しああああぁ〜〜〜っ?!」
 ものすごい弾丸スタート、魂切る悲鳴が尾を引いて遠ざかっていった。
「トモコ中尉ぃ〜いいんですか? 行かせちゃって」
「……は? 誰がイキそうって?」
 上の空だった智子は、ジュゼッピーナの問いかけにきょとん。「あらあの二人は?」と今頃になって広い格納庫を見回している。
「あ〜あ、やっちゃいましたね。町案内は口実で御休憩かもしれないのに」
「ごっ御休憩?! あっあああんた、適当なこと言うとぶっとばずわよっ」
 いかがわしい想像を巡らせてしまった智子は、生意気にも鼻でフッと笑ったハルカの襟をつかみ上げる。そして頭から怒気を噴き出し、どうして誰も身を挺して止めなかったのかと責任転嫁した。
「そうは言っても、オフをどう過ごそうとビューリングの自由ねー」
「ビューリングの休みを許可したのは誰っ?!」
「はあ…それは当然トモコ中尉かと」
 いきりたつ智子を呆れた目で見やり、淡々と質問に答えていくオヘアとエルマ。怒りのやり場を失った智子はついにガックリと膝を折った。
「馬鹿っ私の馬鹿っ! なんて早まった真似をぉ…………ぶって。お願い、馬鹿な私をぶって! ぶってよぉあはんっ?!」
 格納庫に響く、パシンッという乾いた音。遠慮なく愛のムチをみまった人物は喜悦を浮かべて高笑う。
「ほほほ、いいわいいわっ。私こういうのも大好きよ。ほうら思う存分お鳴きなさいっ!」
「あはっあひん、うあっああん、ひぅっ」
「さすがはエース、素晴らしいわ。これからは扶桑海のぶってぶって御前と名乗りなさい」
 立て続けにあがる乾いた音と色っぽい悲鳴。それもそのはず、ぶたれているのは突き出された尻である。
 カウハバ基地中隊長によるSMショーに色々悩むのが馬鹿らしくなり、隊員たちはランチをとりに食堂へ向かった。
137アキストゼネコU−4 E:2009/02/24(火) 18:29:27 ID:K1pW0FZ9
以上です
馬鹿馬鹿しい描写挟みすぎですが、楽しみにしてくれている方もおられるようなので...
主カプ+ウィルマで成り立つ話ですけど、真面目すぎると書くのがしんどい
それじゃ失礼しましたー
138名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 19:26:06 ID:tbIKP54U
>>137
ええ、そうとも
楽しみに待ってました!
最近物語系に飢えているからついわくわくしながら読み込んでしまった
個人的には、おバカ描写とそうでない描写はちょうどいいと思われます
はてさてビューリングのいろいろなものの行方はいかに?というところですかねw
139名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 20:05:44 ID:v3oL9t0e
このまま勢い落ちないならそろそろSS投下と雑談スレわけたほうがいいと思う
140名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 20:32:14 ID:hXU5XeKp
そしてどっちも勢い無くなって廃れていくんですねわかります
141名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 20:39:42 ID:jzSpzFn3
某イカロみたいにSSはまとめサイトに投稿、スレはカプやらシチュ語りみたいなのが一番無難だけどな
142名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 20:58:56 ID:DIKb+qlq
トラブルあったわけでもないのに、
独善的に分割を主張する奴ってなんなの??
143名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 21:00:41 ID:ZZSb3dVb
前もこんな話でたなあ
俺は今の形が一番好きだ…

それはそうとアキストゼネコの人GJ!
わかりやすくおもしろい物語の構成に脱帽です
あといいかんじに壊れた智子最高w
さて、続きが楽しみだ
144名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 21:13:14 ID:vaFRifLb
俺も好きだな
よくも悪くも水増し感と敷居の低さがここの味だとおもう
145名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 21:18:41 ID:LJgwIrcq
レス数=バイト数で、常に500前後で次スレにいってしまうこのスレのままでいいと思うよ、俺は
それが持ち味
146名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 21:21:06 ID:v3oL9t0e
まあもっと雑談したいなーと思っただけだなんだよ

すまない荒らしてしまったようになってしまって
147名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 21:40:46 ID:Yi3P+/KC
アンチにしか見えないからやめようぜ
148名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 21:41:07 ID:hXU5XeKp
SSと共存してるからこその雑談なんだぜ
雑談だけにしたらネタも減るし本スレでもできるような雑談ばっかになる
149名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 21:48:41 ID:LJgwIrcq
本スレの空気が合わないからこっちで雑談はしたいんだが、いかんせん人の量が違いすぎる
150名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 21:52:38 ID:DRSocpzX
雑談したい人は「雑談したい」と書いてる手でまま話題をふればいいじゃないか
151名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 21:59:45 ID:qtifvL3r
ドラマCDが誌上限定発売だってな。
どう言う話を持ってくるか、ちょっと楽しみなんだぜ。
152名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 22:09:26 ID:ORQX4YQw
>>151
ぜひ本編であまり見られなかったキャラの組み合わせを見たいな
エー芳とか!芳リカとか!! 芳佳マンとか!!!ハルマフジとか!!!
153名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 22:20:13 ID:ZZSb3dVb
>>152
おまwいや、言いたいことはわかるし、いいと思うし好きだけどね芳リカ
だが“芳佳マン”はないwwどこのスーパーマンだ!あるいはどんなまんじゅうだ!

>>151
あえてミーナやペリーヌメインとか…いや違うな、みっちゃんに愛を!!
154名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 22:31:12 ID:ORQX4YQw
>>153
まあ多分前鈴木さんの書いてた日常のやつか、ペリーヌのマリーゴールド話とかがきそうな気がする

でも俺はハルマフジを信じ続けるよ!!!!!
155名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 22:31:55 ID:sp4Bjhat
みっちゃんに一票
156名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 22:44:35 ID:L2lcMxui
>>137
俺の心のオアシスキター!
ビューリングの すごい ラッキースケベ。ビンタに吹いたw
>失言したハルカは智子の目潰しをくらって床をのた打ち回っている。
>「さすがはエース、素晴らしいわ。これからは扶桑海のぶってぶって御前と名乗りなさい」
ここのくだり最高すぎるw智子どうしようもないww
ウルスラとの繋がりはちょっと切なくもシリアスなのに智子&ハルカが出てきた途端腹筋が痛くなるw
緩急のつけ方が見事だなー。ウィルマお姉ちゃんも良いキャラだ。しかし良く手が出るなw
次回も楽しみにしてます!
157名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 22:52:27 ID:LJgwIrcq
>>151
誌上ってどこの?
商売があくどくなってきたな
158名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 23:11:17 ID:2yStFbcH
>>153
芳佳とエーリカがフュージョンして正義のヒロインになるところを想像した。
159名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 23:19:57 ID:ORQX4YQw
>>158
誰かのおっぱいがもまれそうな時、めんどくさがらなかった時だけやってきて
助けた謝礼におっぱいを揉むニューヒロイン誕生ですね
160名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/24(火) 23:20:20 ID:qtifvL3r
>>157
公式でこっそりアナウンスされてるので今すぐGO。

カウントダウンとか言いつつこっちの方もとんでもない発表だぜw
161名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 00:14:08 ID:HAiLR3b8
エイラの誕生日絵は色々あったがやっぱこれが秀逸だな
http://ranobe.com/up/src/up340888.jpg
162名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 00:16:19 ID:16rtJbSN
>>137
GJ! 続き待ってました!
ウルスラとダックスフントとのやりとりが可愛らしい。
壊れた智子の描写もさすがです。

>>152
>芳佳マン
「私、(みんなの胸を)守りたいんです! もう見ているだけなんて嫌なんです!」
が決めゼリフの新ヒロイン。
頭に被ったズボンがチャームポイント。 実はすごく強いよ!

こうですか、わかりません > <
163名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 00:17:35 ID:UlywJ1Xs
>>162
うまいこと言ってるんじゃありませんw
164名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 00:32:15 ID:mxFiRo0d
>>158
>>159
リーネ「きゃーーー!!! 誰か助けてーーー!!」

エイラ「でへへー、揉んでやるー、揉んでやるゾーー」
ルッキ「ウジュジュアー!」


キュピーン!!
芳「はっ!! リーネちゃんのピンチ!! ハルトマンさん起きてください! 合体しますよ!」

エー「うーん、めんどくさーい、また今度ーー」

芳「このままじゃリーネちゃんが怪人キョウダケダカンナーとウジュアー星人に食べられてしまいますよ!?」

エー「うーん…じゃあさ、一つお願い聞いてくれる? そしたら合体したあげるよ!」

芳「えっ…? まあ私にできることなら何でもしますけど、あまり時間がかかることは…」

エー「大丈夫、大丈夫!! すぐ終わるから!!! ちょっと宮藤が私の口にキスすればすむからさ!!」

芳「ああっ!!その程度なら…って、ええっ!!!??? そっそんなこと無理ですよーーー!!」

エー「ほらほらー、躊躇している余裕はないよー! こうしている間にもリーネはもう服脱がされかかってるし」

芳「りっリーネちゃんを助けるだもんっ!!仕方がないっ!! 覚悟を決めろ!! 宮藤芳佳!!! いっいきますよ! ハルトマンさん!!!」

チュッ!!

芳「さっさあ!!これでいいですよね!? リーネちゃんを助けにいきましょう!!!」

エー「…ごめん、気が変わっちゃった…」

クルッ(エーリカが芳佳に馬乗りになる)

芳「えっ!?」

エー「宮藤が、悪いんだよ? そんなに顔真っ赤にしてさ、まるで誘ってるようじゃん? だから今日の私は怪人になる!!
さあっ!芳佳、『合体』しようねー」

「はっハルトマンさん!! はやまらないで!! むぐっ!!」  
…………こうして三人はめでたく標的を撃墜することに成功したのでした!!
            第一話完!!
165名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 00:32:23 ID:LkIGkNiE
>>151
ああ・・・SWは我等からどれだけ金を吸い取るつもりなんだろうか・・・(笑泣)
166名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 00:52:44 ID:o7TqB+ij
やべ…>>164とネタ被った


エイラ「なかなか良い胸ダナ」
ルッキーニ「ニシシシ、揉み応えありそう」
リーネ「いやっ!助けて、誰か!!」

芳佳「大変だ!リーネちゃんが危ない」
芳佳「ハルトマンさん、合体しましょう」
エーリカ「えー、嫌だよメンドクサイ」
芳佳「お願いします!」
エーリカ「うわ!耳元で叫ぶな」
芳佳「私守りたいんです!!(リーネちゃんのおっぱいを)」
エーリカ「分かったから、耳元で叫ぶのはやめて」
芳佳「では…」
芳佳・エーリカ「フュー…ジョン!ハッ!!」

エイラ「覚悟するんダナ」
ルッキーニ「もう逃げられないよ」
リーネ「いやぁっ…!」
芳佳マン「待ちなさい!」
エイラ「誰ダ!?」
芳佳マン「嫌がる女の子を襲うとする不貞な輩、この芳佳マンが成敗してあげる」
エイラ「ナンダ?この貧乳女は」
ルッキーニ「ダッサ〜イ」
芳佳マン「そういう失礼な事を言う人はおしおきしちゃいます。たぁっ!」
エイラ「なっ…!!」
ルッキーニ「フギャ!」
もみもみもみ…
エイラ「ふぁ…、サーニャ…いい…」
バタン
ルッキーニ「ウニャーーー!」
バタン
芳佳マン「ふっ、その程度で人の胸を揉むなんて100年早かったようね」
リーネ「あ、あの…ありがとうございます。助かりました」
芳佳マン「じゃあ、お礼にその胸揉ませて」
リーネ「え?」
芳佳マン「この二人じゃ満足できなかったから。でも、その胸なら…(ジュルリ…)」
リーネ「えっえっ、ちょと…!!」
芳佳マン「いっただきまーーーす!!」
リーネ「きゃああああああっっ!!!」

―完…―
167名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 00:56:49 ID:HAiLR3b8
キスでフュージョンか
王道だな
168名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 00:59:05 ID:G68YCQbZ
せっかくのドラマCDが誌上限定販売で俺の怒りは頂点に達した
この怒りは天を穿ち大地を震わせ海を貫き宇宙を切り裂く
169名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 01:10:56 ID:sars87Aw
>>168
そしてこのスレに百合百合なSSを大量投下するんですね。わかります。
170名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 01:12:48 ID:UlywJ1Xs
その怒りを百合パワーに昇華してSSを投下してくれたまえ!
171トゥルーデ撃墜部隊:2009/02/25(水) 02:04:05 ID:gxeTpXMv
こんばんは、真夜中に投下です。
急にみなみおを書いてみたいと思って、その繋ぎでエーリカ・ミーナ×トゥルーデです
172名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 02:05:11 ID:gxeTpXMv
「トゥルーデぇ〜っ、聞いてっ!ひどいの!美緒ったらひどいのよぉ〜!」

そう叫びながら突然部屋に飛び込んできたのはミーナだ。

普段の彼女らしからぬ言動・行動から察するに、彼女は今かなり酔っている。
長い付き合いの中酔ったミーナに絡まれる事は幾度かあった。延々と愚痴を溢したり笑いの沸点が低くなって笑い上戸になったり。
だがミーナが満足するまで喋らせてやれば、大体は喋り疲れて眠ったり晴れやかな顔で部屋へ戻ったりで、特に問題はなかった。

今も、ベッドに座らせ「まずは落ち着け、ゆっくり何があったのか話してみろ」とでも言えばいいのだろうが、こっちに大いに問題があった。
…私はちょうど、エーリカによってベッドに押し倒された所だったのだ。

「み、ミーナ、これはその」
「ミーナぁ、入る時はノックくらいしてよ」
「お前が言うなっ!早くどかんかエーリカ!」

私達の体勢を見てきょとんとするミーナ。それでも私の上からどこうとしないエーリカ。
ああ、私はどっちのフォローをしたらいいんだ!

「お楽しみ中だったかしら」
「正確にはこれから。だから後でにしてくれるー?」
「ああひどいわフラウ、私を除け者にするのね」
173名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 02:06:18 ID:gxeTpXMv
しくしくと泣き真似をするミーナは、やはり相当出来上がっているようだ。

「恋人の夜を邪魔するなんて野暮だよ」

エーリカも安全と踏んで普段は(怖くて)言わないようなセリフを吐いている。
馬鹿な事言ってないで早くミーナを落ち着かせないと…

「いいじゃない、私も混ぜてよ」
「えー。…仕方ないなぁ、今回だけだよ」
「ふふ、ありがとうフラウ」

…ちょっと待て。
混ぜる?それはどういう事だ。この体勢が現す行為に、ミーナが入ってくるという訳か?
…つまりそれは……私の身が危険だ!

「というわけで、よろしくねトゥルーデ」
「よっ、よろしくねじゃな…んんっ!」

反論する間もなく、私の唇はエーリカのそれによって塞がれた。

「可愛がってあげるわね、トゥルーデ♪」

ミーナはにこやかに笑いながら私の服を脱がせていく。
あああ!助けてくれクリス!

「ふ…はっ、やめ…っ」
「またまたー、されるの期待してたくせに」
「そ、そんな事っ…」

いつの間にかエーリカは私の左側に、ミーナは右側についていて、完全に両脇を固められていた。

…逃げられない。

174名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 02:07:25 ID:gxeTpXMv
「さてと、まずは私からね」
「ふふ、スーパーエースのお手並み拝見ね」

エーリカの手が私の胸に伸びてきた。

「っ…」
「大丈夫だよトゥルーデ、いつもみたいに声出していいんだから」

いつもとか言うな!大体そんなに声なんか出してない!
…と反論したい所だったのに。

「うぁっ…」
「ん、そうそう」
「ぁん…ぅ…」

エーリカの少し強めの手の動きに、意識とは別に勝手に声が漏れてしまう。

「あ、や…ふっ、く…」

うぅ、駄目だ…抑えられない…
エーリカ、気持ちい…もっと……

―くちゅっ

「ふぁっ!」

突然響いた水音と下腹部の刺激に体が跳ねる。

「あー、私の番なのに」
「ふふっ、だってトゥルーデ、物欲しそうに腰揺らしてたんだもの」

見ると、ミーナが私のズボンの脇から指を入れていた。

「もうこんなにして…フラウのがよっぽど気持ちいいのねぇ」

普段よりぽやんとした声でミーナが微笑んだ。

「や、あぁっ、ミーナだめっ…」
「トゥルーデったら可愛い〜、うふふっ」

体もふらふらしてるくせに、なんで指の動きだけはしっかりしているんだ。
エーリカは横で膨れているし、このままでは非常に危険だ。
175名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 02:08:25 ID:gxeTpXMv
「随分いい声出すね、トゥルーデ」

ああ…エーリカの声に黒い色が見える。こいつの中の悪魔が目覚めている証拠だ。

「そんないやらしいトゥルーデにはお仕置きだな」
「ちょ、何を…」

目を細めて笑ったエーリカは、下に手を伸ばすとミーナの手をかいくぐり、思いっきり肉芽を摘んだ。

「っああぁぁんッ!」

突然の痛い程の刺激に、喉から声がほとばしり体が震えた。
びくっ、びくっ、と余韻で体が痙攣する。力が入らない…

「まだまだ。休み無しだよ」
「あ、待っ…はう、あぁ!」
「フラウったらいじめっこねぇ」
「ひゃっ…や、おかしくなるっ、んうぅっ…」

続け様に刺激を与えてくるエーリカ。ミーナの指が中に入ってきたような気がした時にはもう遅かった。

「も…むり、だ…あ、ぁっ、ひゃああぁっ…!」

何回気をやったかわからないくらい、二人の攻めは続いた…



―――

「ぅ…」

動きにくさを感じて目が覚めた。
当然だろう、一人用のベッドに三人寝ているのだから。
散々私を攻め倒した二人は、私に両側から抱きつくようにして眠っている。

「…トゥルーデ」
「ミーナ?起きていたのか」

右脇にいたミーナがこっちを向いた。
176名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 02:09:42 ID:gxeTpXMv
その表情はまだ少しトロンとしていたが、先程よりは酔いは醒めているようだ。

「何があったんだ、ミーナ」
「…なんでもないの。美緒が宮藤さんと二人でいるのを見て、ちょっと妬いただけ」

ミーナは苦笑して、抱きつく腕の力を強めた。

「一人で飲んでたら一緒に飲みたくなって、誘いに行ったら…だったから。ついヤケになって潰れちゃった」
「珍しいな、ミーナがそんな事でカッとなるとは」
「ん…」

ミーナはちらりと私を見上げた。いつもとは違う可愛らしい表情だ。

「最近、その…ご無沙汰で。私ってそんなに魅力ないのかしら」

また彼女らしくない発言。やはりアルコールは抜けてないようだ。

「ミーナは綺麗だよ。充分すぎるくらい魅力的だ」
「本当?抱きたくなるくらい?」
「…さっき散々したくせに」
「…そうだったわね」

くすくすと笑いが零れた。

「私、戻るわね」
「ああ。具合は大丈夫か?」
「平気よ、ありがとう。おやすみなさい」

まだ暗い廊下に、ミーナは静かに出ていった。
まぁ、なんとか大丈夫そうで良かっ…

「トゥルーデ」
「わっ!エーリカ起きたのか」
「恋人が寝てる間に他の人を口説くなんていけないなぁ」
「く、口説いてなんか…!」
「お仕置き続行」

…明日寝坊しても怒らないでくれ、ミーナ。

177トゥルーデ撃墜部隊:2009/02/25(水) 02:10:38 ID:gxeTpXMv
おしまいです。
リネゲルもトゥルーデ誕生日前までには投下したいと思ってます

お目汚し失礼しました
178名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 07:36:32 ID:ik8aNHd3
ドラマCD誌上限定発売とか試されてるとしか思えない
DVDは限定版だしキャラソンも揃えるけどもうそろそろ脱落しそう
179名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 07:59:27 ID:+ED8S0gR
ドラマCDが抽選で当たるとかだったら死ねるよな

まさかあの二人がペアだとは思わなかったぞ公式
180名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 09:54:20 ID:XczUR8Ax
誌上限定ドラマCDとか舐めてるな
さすがにそこまでついていけねえ
181名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 10:12:12 ID:hUJs5FAt
>>167
キスでリマージョンに見えた。
ストパンもキスしないと空が飛べないって設定になればいいのに・・・。
182名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 10:51:44 ID:ik8aNHd3
>>181
大変な…、大変なコトになるぞ!!
183名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 10:59:10 ID:G68YCQbZ
>>169-170
無茶を言うなwww

>>180
わざわざ頑張って誌上限定でも購入したのに、クソみたいなもん掴まされたらたまったもんじゃないしな
内容がわかんないからことさら手を出しにくい
184名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 11:00:32 ID:2n6b5/Ai
芳佳マンのネタの広がりに吹いたw
個人的にはハルマフジの響きも好きです。
両国国技館が浮かぶと言うか、土俵入りするウィッチーズの面々という妄想がw

なんだかんだでドラマCDの為に雑誌買いそう…
@〜Bってあって、一巻はということは二巻以降は一般流通なんだろうか。
後で一巻買いたくなった人はバックナンバー取り寄せるしかないのかな。
このご時世仕方ないとは言え、普通に売って欲しかったですね。

>>177
あらゆる意味で酔っ払いは無敵ですねw

というわけで一本投下させていただきます。
二本目以降は名乗った方がいいのでしょうか。
前々スレで「マメシバと灰色猫」を書いたXRp1SOaoです。
芳佳視点でのエイラーニャ、9レスほどになると思います。
185名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 11:02:27 ID:2n6b5/Ai

 連合軍第501統合戦闘航空団―通称ストライクウィッチーズが解散して、もう随分経つ。
 どれくらいかというと、あのときのメンバーのほとんどがもう現役を引退して、それぞれの道を選び歩み始め
たくらいに。
 当然のことだけど、あの頃のように皆で集まる、なんてことはほとんどできなかった。
 住んでいる場所も遠いし、みんなそれぞれの生活がある。とても寂しいけれど、仕方がないことでもあった。
 そう、とてもサビシイけれど、シカタガナイこと。

 だからわたしは―今こうして空を飛んでいる。


「しかし、なんだ。集まれないなら、会いに行きましょう!というのは、全くお前らしいな」
「うう、名案だと思ったんですが…」

 目の前で笑っているのは坂本さん。思いついたのはいいけど、どうやって移動しようかと困っていたわたし
の相談に乗ってくれて、移動手段を工面してくれた上に一緒について着てくれることになった。
 出会ってから、本当に坂本さんにはお世話になりっぱなしだ。

「細かいことは気にするな」

坂本さんは、いつもそう言って笑ってくれてるけど。

「それに、わたしも名案だと思ったぞ。いや、実際に名案だったな。皆の元気そうな姿を見ることができたの
は喜ばしいことだったし、何より向こうも喜んでくれていたしな」

 その言葉に、久しぶりに出会ったみんなの顔を思い出す。みんなそれぞれの大人の姿へと変わっていて、
それでもあの頃と変わらない笑顔でわたしたちを出迎えてくれた。

 最初に向かったのはリベリオン。
 ルッキーニちゃんもリベリオンに引っ越していたので、ここではシャーリーさんと彼女の二人に会うことが
できた。
 ルッキーニちゃんは相変わらず気まぐれで、そしてそれを気にすることなく受け止めてるシャーリーさんも
相変わらずだった。もう結婚しちゃっただろうですかと冗談で口にしたら、それもいいかもなとシャーリーさん
は笑っていた。

 そのあとに向かったのはカールスラント。
 バルクホルンさんとハルトマンさんとミーナ中佐が揃って出迎えてくれた。呼称に関しては、すぐ訂正させ
られたけど。わたしってやっぱりそういうキャラなのかしらと少し落ち込んだ彼女に、ミーナさんと呼びかけた
ら、少し嬉しそうにしていた。ハルトマンさんも、エーリカでいいよと言ってくれた。でもバルクホルンさんのお
姉ちゃんでいい、というのはどういう意味だったんだろう。
 クリスちゃんもすっかり元気になったと聞いて、嬉しかった。会えなかったのは残念だけど、また会いに来
ればいいもんね。

 ガリアではペリーヌさんとリーネちゃんに会うことができた。
 復興も大分進んでいて、精力的にそれに協力している二人はとても忙しそうだったけど、それでもわたし
たちの為に時間をとってくれたみたい。リーネちゃんもペリーヌさんは相変わらずで、なんだかそれがとても
嬉しかった。今度はこちらから会いに行くと別れ際に言ってくれたのも嬉しかった。
186名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 11:03:31 ID:2n6b5/Ai

 ―そして今はスオムスへ向かっている。

 話には聞いていたけど、スオムスは本当に寒い。
 エーリカさんに言われて、防寒着を用意していったのは正解だった。妹さんがこっちにいるらしくて、エーリ
カさんはスオムスには詳しいらしい。

 そういえば、サーニャちゃんも今はスオムスに住んでいる。両親とは再会できたみたいなんだけど、それで
もこっちにいることに決めたみたい。
 その理由は―うん、考えるまでも無いよね。

 ということで、スオムスにはエイラさんとサーニャちゃんの二人がいることになるんだけど、どっちから会い
に行こうかな。
 そう口にしたら、坂本さんが首をかしげた。なんだろう。
 とりあえずエイラさんのところに行きましょうと提案したら、少し考え込む素振りを見せて、そのあと何か意
味ありげな笑みを見せてくれた。
 とても気になったけど、わっはっはで誤魔化される。こうなったらもう話してくれないことはわかっていたの
で、とりあえず向かうことにした。

 地図と住所を頼りに目指して行くと、やがて湖畔の木作りの家にたどり着いた。
 ここで間違いないらしい。こんこんとドアをノックして、呼びかけてみる。すると中から「今開けるから」と返
事があった。
 あれ?と首を傾げる。今のはどう聞いてもエイラさんの声じゃない。というより、わたしはその声の持ち主
をよく知ってる。それも、エイラさんと同じレベルで。
 そう疑問をめぐらせている間に、ガチャリと扉が開いた。

「芳佳ちゃん、久しぶり。坂本少佐もお久しぶりです」

 そして現れたのは、ふわりと揺れる銀色の髪と、小さな微笑。少しだけ大人びてはいるけれど、見間違え
るまでもなくサーニャ・V・リトヴャクその人だった。

「あ、あれ?わたし確かエイラさんの家に…」

 戸惑っているわたしに、サーニャちゃんも戸惑ったけど、すぐに腑に落ちた顔でにこりと笑ってくれた。

「ふふ、ここはわたしの家でもあるんだよ」

 ええと、それはつまり、ここはサーニャちゃんの家でもあり、同時にエイラさんの家でもあるということで。

「え、ええええ〜!?」

 大声を上げるわたしにサーニャちゃんは小さく驚く。ふと振り返ると、坂本さんがくっくっと笑っていた。

「さ、坂本さん知ってたんですか?」
「注意力が足りんな。資料を良く見ろ、二人の住所は同じになってるだろう」

 慌てて鞄から資料を取り出し、二人の住所を見比べてみると、確かにその通りだった。
 サーニャちゃん、教えてくれても良かったのに…というより、何回か手紙書いてたのに全く気付かなかった
よ。

「今エイラ呼んで来るね。狭いところだけど、寒いから中に入ってて」

 そう言ってサーニャちゃんはわたしたちを部屋へと招き入れてくれた。お邪魔します、と一声かけて中に入
る。サーニャちゃんはわたしたちにソファーを勧めると、パタパタ遠くへ向かっていった。言葉どおり、エイラさ
んを呼びに言ったのだろう。薦められたまま腰を下ろして、くるりと部屋を見回した。
187名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 11:04:43 ID:2n6b5/Ai

 エイラさんとサーニャちゃんの家は、確かにああそうなんだなと思えるような内観になっていた。
 二つ並んだ椅子に、二つ並んだカップに、二つ並んだ外套に、二つ並んだ歯ブラシ。いろんなものが二つ
並んで存在してて、それは容易にエイラさんとサーニャちゃんのモノなんだなってわかった。一個だけ置いて
あるんじゃなくて、二つ並べておいてあるのが本当に微笑ましい。あえて言うなら、新婚生活の中にお邪魔
したような気持ちさえする。

「なるほど、ついに甲斐性を発揮したということか」

 エイラさんのヘタレの称号は、坂本さんにとっても常識だったみたいだ。ひょっとしたら航空団全てのメンバ
ーにとってもそうだったのかもしれない。
 実際そうだったのだろう。あの二人に関しては、全員が全員どことなく応援する空気を持って見守っている
ようなところがあったから。
 そしてやきもきしていたのも、全員同じだったんだろう。そして、それがようやく報われたということなのだろ
う。

「…サーニャちゃん、良かったね」

 まだここにいないサーニャちゃんに、フライング気味だけどお祝いの言葉を口にする。もうすぐ来るだろうか
ら、そうしたら一杯お祝いの言葉をかけてあげよう。
 そう考えてると、バーンと扉が開いてエイラさんが現れた

「二人とも、もう来てたのか!」

 揺れる薄めの淡い金髪と、あの頃と何も変わらない笑顔。他のみんなもそうだったけど、ホントにこの人は
変わらないなと思う。つかみ所が無いくせに、変に人を惹きつける笑顔を浮かべて、飄々とどんなことでも簡
単に片付けてしまいそうだと妄信してしまいそうな空気を纏わせて。それでいて甲斐性無しと来たものだか
ら、いろんな意味で性質が悪かったよね。
 坂本さんと握手を交わしてたので、わたしもと思って手を差し出すと、何故かぎゅっとハグされた。

「うん、変わってないな」

 うん、やっぱり変わってない。それがわたしの特定の部分を指しての台詞だってとこも。後ろからサーニャ
ちゃんに睨まれてるのに気がついて無いあたりも。
というか、よけいなお世話なんですが。

「エイラさん、お久しぶりです」
「おー、ひさしぶり…っと」

 さすがにサーニャちゃんの視線に気がついたのか、エイラさんは冷や汗を流しつつ、わたしから離れた。
つつつ、とサーニャちゃんの隣に移動して「さーにゃあ」とこそこそ情けない声を出しているところも相変わら
ずだ。
 それでいて、二人を包む空気はあの頃よりも更に柔らかさをましているように見えた。それはわたしの知ら
ない二人だけの時間が培ってきたものなんだろう。
 ちょっとすねた表情を見せていたサーニャちゃんがもういいよってくすりと笑って、それを見たエイラさんが安
堵の笑みを浮かべている。ごめんなとサーニャちゃんの頭を撫でるエイラさんと、それに身を任せるサーニャ
ちゃん。

 うん、微笑まし過ぎて思わず見入っちゃってた。

「そういえば、エイラさん、サーニャちゃん、おめでとうございます」
「うむ、めでたい。そういえば挙式はまだなのか?確かスオムスでは同性婚も認められているのだろう」

 わたし達の言葉に二人の動きがぴたっと止まった。まるでピシリと効果音でも立っていそうな固まり具合。
 あれ、と坂本さんと顔を見合わせる。その二人の反応は、わたしたちが予想していたものと違っていたから。
188名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 11:05:53 ID:2n6b5/Ai

 暫くするとサーニャちゃんははあと深い溜息をついて俯き、エイラさんは顔を真っ赤にしてあたふたし始めた。
 えっと、これはまさか―ううん、さすがのエイラさんでもそれは無いよね。と首をもたげた疑問をぺしっと押さ
えつけた辺りで、
「ば、ばか、わたしとサーニャは別にそんなんじゃねーよ!!」
 なんてエイラさんの声が響き渡った。

 ―は?

 自分の口がぽかーんと空く感覚を感じたのは初めてだった。
 ううん、きっと今までも何回かあったとは思うんだけど、こんなにそれが鮮明なのはきっと初めてだと思う。
 視界の端に入った坂本さんも全くその描写がぴったりの表情をしてて、違うのはどんよりと暗いオーラを頼
って溜息をついているサーニャちゃんと、それも目に入らないくらいに顔を真っ赤にしておたおたしているエイ
ラさんくらいだった。

 というかですね、何を言ってるんですか、この人は?

 あまりにあんまりすぎて、全く予想外の言動に―ある意味彼女らしいといえなくは無いけど―わたしは逆
に冷静になっていく自分を感じていた。

「ええと、エイラさん?」
「な、なんだよ、宮藤」
「サーニャちゃんと一緒に住んでるんですよね?」
「あ、ああ」

 その返事を聞いたあと、わたしはとんとんと今エイラさんが出てきた扉へと向かう。少し空いたそこから見
えるのは予想通り寝室で、おいてあるのはやはり予想通りにダブルベッド。

「ベッドもひとつなんですね」
「こ、コラ、勝手に見るな。そうだよ、サーニャは一人じゃ寝られないから、わたしがいつも添い寝してるんだ」

 じっとエイラさんを見る。この方向はダメだ。ヘタレルート一直線だ。
 方向を変えることにする。

「サーニャちゃんの両親は見つかったって聞きました。サーニャちゃんは帰ろうとは思わなかったんですか?」

 わたしの質問にサーニャちゃんがぴくんと反応するのが見えた。でも、これはエイラさんへの質問だから、
答えちゃだめだよ。

「そ、それは…サーニャはここにいたいって言ったし、わたしもサーニャと離れたくなかった。でも『行くな』なん
て言えないダロ?ずっと離れ離れになってた肉親なんだ…だから、わたしは笑顔で送り出してやった。
…そのあと散々泣いてたんだけどナ…ずっとないて過ごしてたんだけど、そこにサーニャが戻ってきたんだよ。
やっぱりこっちに住むからって。
両親はいいのか?って聞いたけど、わたしの傍の方がいいって。勿論、わたしにそれを断る理由なんて無かっ
たよ」
「嬉しかったですか?サーニャちゃんが戻ってきて」
「そりゃそうだろ。わたしもずっとサーニャと一緒にいたかったんだ。これでずっと一緒にいられるんだからな」

 ふん、と胸を張って答えるエイラさん。いい調子―これでどうだろう。

 余計なお世話と思わなくもないし、二人の問題だとも思うけど、このまま放っておいたらずーっとこのまま一
緒にいそうな気がする。それもひょっとしたら悪くないかもしれないけど、二人の気持ちがわかってる身として
はなんとももどかしい。もし二人がそのままでいいと思ってるならよかったんだけど、そうじゃない。お互いその
一歩先に進もうと、進めてほしいと思ってて、でも未だに動けずにいる状態だから。…うん、まさか数年たった
今でも同じだとは思わなかったけど。

 ふとこちらをじっと見ているサーニャちゃんに気が付く。ぐっと拳を持ち上げて、期待の眼差しをわたしとエイラ
さんに向けている。サーニャちゃんはわたしの意図を感づいてくれたみたいだ。任せて、後一押しだから。もちょ
っと待っててね。
189名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 11:07:04 ID:2n6b5/Ai

「サーニャちゃんのこと、好きですか?」
「当たり前だろ。そりゃ、好…す、すす…っ!な、何言わせようとしてんだよ!宮藤っ」

 いや、それはこっちの台詞です。というか、何で言わないんですか。

 ちらりとサーニャちゃんに目を向ける。サーニャちゃんは私の視線に気が付くと、苦笑混じりの溜息を見せて
くれた。まだこんな調子なの、と語ってるようにも見える眼差しで。
 わたしも溜息をついて、おたおたしたままのエイラさんは無視してサーニャちゃんのほうに歩み寄った。エイラ
さんがこの調子なら、きっともうそれこそとんでもない量の愚痴が溜まってるに違いない。傍から見れば惚気話
にしか聞こえないそれも、当人にとっては立派な愚痴だ。それを溜め込んだままじゃ、あまりにサーニャちゃん
がかわいそう過ぎる。安心して、たっぷり聞いてあげるから。

 視界の隅っこで、ぽんとエイラの肩に手を乗せる坂本さんの姿が映る。

「エイラ…わたしが言うのもなんだが…貴様は少々性根を叩き直す必要があるようだ」
「わ、ど、どうしたんだよ少佐。顔が怖いぞ」
「いいから来い!こういうときは訓練に限る。そのなまった身体と精神を鍛えなおしてやる!」
「な、なんだってんだよ〜…サーニャ、宮藤、助けてくれよ〜」

 情けない声を出して、坂本さんに引きずられていくエイラさん。勿論わたしにもサーニャちゃんにも、差し伸べ
てあげる手なんてない。いい機会だからバシバシしごいてやってくださいと、生暖かい目で見送ってあげた。
 丸一日くらい坂本さんの訓練を受ければあのボケた頭もはっきりしてくれるんじゃないか、と思いかけたけど、
エイラさんがその程度で変わるはずないかという諦めのようなものもあったりする。

「サーニャちゃんも大変だね」
「…うん」

 サーニャちゃんは、わたしの問いかけにしゅんとして俯いた。見た目でわかるほど落ち込んでる。そうだよね、
サーニャちゃんがエイラさんを好きなのはよく知ってる。エイラさんもそうだとわかるけど、でもあの人は態度では
散々好きだゾって空気を発してるくせに、いざそれを告げるべきタイミングになるとガチッと固まって、そして逃げ
てしまう。だからサーニャちゃんはきっと、エイラさんが本当に自分を好きなのか凄く不安になるんだと思う。近付
いて来たと思ったらふいっと離れて、そしてまたすぐに傍に寄ってきて触れていいのかなと思ったら、またさっと
離れる。傍にいること自体ががサーニャちゃんにとって幸せなのは確かだろうけど、きっと凄く負担になってると
も思う。その証拠に、今サーニャちゃんはこんなに辛そうな顔をしているから。

 こんな可愛い子に、こんな顔をさせるなんて最低だよエイラさん。あんまりヘタレてるようだと、わたしがサーニャ
ちゃん攫って持って行っちゃうよ。

 …ん、それもいいかも。そうすれば如何にエイラさんでもさすがに慌てて取り戻しに来るんじゃないかな。そして
その勢いで自分の想いを―
 …無理そう。どちらかといえば、サーニャが幸せならそれでいいんダ…なんて言って引きこもって泣いてそうな
気がする。他のことにはさぱっと、わたしが憧れるくらいにあっさり片付けてしまうのに、サーニャちゃんのことに
関してはあの人は本当にアレな人だから。

 本当にアンバランス。未来予知なんて稀有な能力を持ち、黒狐という上位精霊を使い魔にして、押しも押されぬ
スオムスのトップエースの彼女なのに、サーニャちゃんの前だと年相応の、ううんそれよりちょっと情けない一個
の人間になっちゃうんだから。
 でもきっとそれがエイラさんの魅力なんだよね。
190名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 11:08:42 ID:2n6b5/Ai

「芳佳ちゃん?」

 いけない、ぼーっとしちゃってた。
 ごめんねって謝るわたしを、サーニャちゃんはじっと見つめてくる。なんだろうと首を傾げて見せたけど、じっとし
た視線は止まない。

「エイラはわたしのだから、取っちゃダメ…」

 思わず噴出しそうになる。
 それは確かに、戦闘時の颯爽とした背中や鮮やかという表現すら色褪せてしまいそうな戦闘スタイルとかに憧
れていなかったわけではないけど。さすがにそんな気はなかったよ。それにもし仮にそう思いかけたとしても、エ
イラさんが隣にいるのはやはりサーニャちゃんだったし、サーニャちゃんにしか見せない顔を沢山見てきたから、
きっとそうなる前に踏みとどまってたと思う。それが未然なのか既往なのかまでは、わからないけど。

 それより、サーニャちゃんも目ざといんだなあ。わたしがちょっと昔のエイラさんについて考えたの、感づいたんだ
ろう。それに結構なやきもち屋さんなんだ。エイラさんは良くわたしがサーニャちゃんと一緒にいるだけで「ソンナメ
デ〜」と割り込んできたからわかりやすかったけど、サーニャちゃんも負けてなかったのかも。ふふ、見た目は結構
違うように見えるけど、似てる部分あるんだね。

 と、そんなサーニャちゃんを微笑ましく眺めていたら、背後にゴゴゴと何か黒いものが渦巻き始めた。そういえば、
さっきの言葉に返答してなかった気がする。
 ひょっとして本気と思っちゃったのかな…ちょっと頬を紅潮させて、可愛らしく整った眉をきゅっと締めて、宝石の
ような瞳で一生懸命わたしを睨もうと見つめてくる。

 …脳裏に、あのときのエイラさんの台詞が蘇ってきた。「何かこう、ドキドキしてこないか?」ってあれ。うん、ドキ
ドキしてきてます。サーニャちゃん、それ可愛すぎだよ。

「サーニャちゃん、可愛すぎ…ホントにお持ち帰りしちゃおうかな」
「…え?」

 わたしの言葉に、サーニャちゃんの背後で渦巻いていたどす黒いオーラがあっさりと掻き消えた。ふぅ、どうした
らいいか困ってたけど、どうやら落ち着いてくれたみたい。でも、なんでだろ。
 …って、わたし今なんて言った…?ま、まずいよ、思ったこと口に出しちゃってたよ!勿論そう思っちゃったのは
確かだから、嘘とかそんなのじゃないんだけど。

「ふぅん」

 どうフォローしようか一生懸命頭を働かせているわたしに、サーニャちゃんがにこっと微笑んで見せた。いつもの
透き通るような透明で、純粋な微笑―のはずなんだけど。

「芳佳ちゃんは、わたしをつれて帰りたいんだ?」
「え、えっと、それは、その」

 言いよどんでいるその隙に、ついっと顔を寄せられる。本当に不意に、こちらに何の防御策も講じさせないような
さりげなさを持って。だからわたしが気が付いたときには、サーニャちゃんの微笑んだ顔は視界半分を覆うくらいに
大きくなっていた。

 至近距離であわせた瞳は、いつかエイラさんがそう言っていたかのように例えて言うならば雪の結晶のように綺
麗で。そして何か熱のようなものをそっと奥に秘めているように見えた。それはとても妖艶で、淫靡なものに見えて、
そんなものを瞳越しに伝えられるものだから、わたしは魅入られてしまったかのように身動きが取れなくなる。その
熱にまるでとかされてしまったかのように、視界が、思考が、ふらふらと芯を失ってしまう。

 そんなわたしの様子を確信しているかのように、サーニャちゃんは更に目を細めて見せた。

「芳佳ちゃんは、気が付いてないよね。わたしがずっと憧れてたこと」
「え?」
191名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 11:09:50 ID:2n6b5/Ai

 頬に柔らかな感触。いつの間にか、サーニャちゃんの右手がわたしの頬に当てられていた。もう、どういうことなの
か理解しようとしても、全然頭が動いてくれない。まるで激流に翻弄される木片のように、ただただ流されていくしか
ない。

「芳佳ちゃんは、わたしの背中を押してくれたよね。エイラはわたしの傍で支えてくれていたけど、踏み出させてくれ
たのは芳佳ちゃんだった。その真っ直ぐさでわたしを導いてくれて、その眩しさでわたしを照らしてくれた」

 そう告げるサーニャちゃんのほうが真っ直ぐで、眩しくて、もう本当にどうしていいのかわからなくなる。

「だからね、芳佳ちゃんがそう望むのなら、わたしを連れて行ってもいいよ」

 少しずつ、本当に少しずつだけど、サーニャちゃんの唇は台詞を象りながらわたしの方へと近付いてきていた。それ
に気付いたけど、わたしはやはり動くことが出来ない。何も分からないから、動かしようがない。でもひとつだけ分か
ることがあって、それはこのままわたしがじっとしていたら、確実にそうなってしまうと言うことで。

 ああ、それでもなんでわたしは動けないんだろう。でも、仕方がない。だって、こんな表情のサーニャちゃんがいて、
わたしに触れようと近付いてきていて、そこから逃げるなんて跳ね除けるなんてあらゆる回避行動はあっさりとその
選択肢としての意味をなくしてしまう。
 わたしからは動けない。だけど、これはきっとダメなんだと思う。

 だから、お願い―きっとこれを止められるのは、あなただけだから。


「宮藤、オマエ何やってんだ!」

 バーンと開かれる扉に安堵したのは、きっと気のせいではないのだろう。同時に少しだけ残念に思ったことは、気の
せいということにしておこうと思う。
 だって、わたしは何処かで気がついていたから。それはもうどうしようもなく身動き出来ないくらいに魅せられはしてい
たけど―サーニャちゃんがあの表情を見せるべきなのはわたしじゃないんだって。

「何、エイラ?邪魔しないで」

 だからあっさりとわたしから身を離したサーニャちゃんが、そんな辛らつな台詞をエイラさんにぶつけていても、わたし
は平然と―強いて言うなら笑いを懸命に堪えながら眺めていられた。

「じゃ、じゃま…」

 背後で鐘を突かれた様な、そんな様相のエイラさん。

「私はエイラのなんでもないんでしょ?だったら放って置いて」

 サーニャちゃんはそんなエイラさんに、つんとそっぽを向いて見せた。ああ、これは効くよ。私がエイラさんの立場だっ
たら、きっと再起不能だと思う。

「芳佳ちゃん、続きしよ」

 そう言ってサーニャちゃんは再びこちらに視線を向けた。けれどもさっきとは打って変わって、その瞳には謝罪の色が
一杯だった。
 大丈夫、分かってるから。それに、わたしも考えた案だったからね。
 サーニャちゃんの挙動に合わせて違和感無いように振舞いながら、わたしはちらりとエイラさんの様子を伺う。
 エイラさんはいまだショックから立ち直れない様子で、呆然と立ちすくんでいた。大丈夫かな、と少しだけ不安に思う。
先程の自分のシミュレーション通りにいったりしないだろうかと。そうなればもうアウトとしか言いようが無い。
192名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 11:11:18 ID:2n6b5/Ai

 だけど、不思議とわたしは確信できていた。あの予想は外れるだろうと。勿論、わたしが知っているころのエイラさん
ならそうなっていたかもしれない。だけどサーニャちゃんがそうだったように、エイラさんもあの頃のままじゃないはずだ。
あの頃よりもずっと沢山のモノを、二人は積み重ねてきたはずだから。もしそれを裏切るようならば、わたしはエイラさん
を一生許すことはないだろう。けれど、きっとそれは杞憂だとも思う。
 だってエイラさんは、なんだかんだで言いつつも、やはりわたしの憧れた、ストライクウィッチーズを代表するエースの
一人なんだから。

「好きなんだっ!」

 本当に唐突に、そんなエイラさんの声が響く。唐突ではあったけど、予想していた台詞だったから、わたしは驚きはし
なかった。

「宮藤なんかよりもずっと、わたしはサーニャのことが好きだ!だ、だから、宮藤とそんなことしちゃ、駄目なんだ!」

 顔を真っ赤にして、目を閉じたままでそう一気にまくし立てたエイラさんは、それはスマートと言う言葉からは程遠く、
みっともない様相と言えたかも知れないけど、それでもとても凛々しくて、立派に見えた。
 うん、感動してる。ついに、ついに言ってくれたんだ。わたしだってこんなに感動してるんだから、隣のサーニャちゃん
はもうそれどころじゃないだろう。
 そう思って隣を見ると、そこにサーニャちゃんはいなかった。

「わっ、さ、サーニャ!?」

 悲鳴に視線を戻すと、そこにはエイラさんに抱きつくサーニャちゃん。シャーリーさんも真っ青の素早さだよ。

「やっと、やっと言ってくれたね」

 サーニャちゃん、泣いちゃってる。うん、気持ちは分かるよ。エイラさんはというと、突然抱きついて泣き出したサーニャ
ちゃんに戸惑って、それでも一生懸命泣き止まそうとあやしたりしていて、そしてハッと何かに気が付いた顔でこちらを
睨んできた。

「み、宮藤、おまえ…!!」
「まあ、いいじゃないですか。結果オーライということで」
「こ、この!」
「ほら、サーニャちゃんはいいんですか?」
「く…この、憶えてろよー」

 エイラさんの中ではすっかりわたしが主犯と言うことになっているみたい。それはエイラさんにとってはサーニャちゃんが
という考えにはなかなか至らないのも無理はないよね。ふふ、とするとちょっと見たくもあるかも。サーニャちゃんの、あの
顔を見せられたときのエイラさんの反応とか。

 なんて、そんな野暮なことはしないけどね。

「うまくいったようだな」

 そうこうしている内に、坂本さんが戻ってきた。

「まさかお前があんなからめ手を使うとはな」

 事情は察しているようだけど、やはりここでもわたしが主犯扱いみたい。これはサーニャちゃんの人徳なのかな、わたし
の信用が足りないせいなのかな…いいんですけどね。

「それじゃ、坂本さん」
「ああ、これ以上邪魔をするのはなんだし、キューピッド役は退散することにしよう」

 こっそりとサーニャちゃんとサムズアップしあったのを最後に、わたしたちは愛の巣へとクラスチェンジした二人の家を後
にした。
 ゆっくり話せなかったのは残念だけど、きっとまたすぐに会えると思うから。その日を楽しみにしてればいい。
 だから、早く送ってきてね。二人の、結婚式の招待状。
193名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 11:15:08 ID:2n6b5/Ai

 そして飛行機のところまで戻ってきたんだけど、ふと隣に来たときは無かった機体が寄せられているのに気が付いた。
なんだろう、見たような機体だと思うんだけど。
 目を凝らしたわたしの目に映ったのは、その隣でこちらに向かって手を振る人影。一瞬目を疑ってしまう。だって、こちらか
ら会いに行きます、とはいってくれたけど、まさかこんなに早く来てくれるなんて。
 嬉しさがジーンとにじんでくる。それに促されるように、わたしは駆け出した。

 つい先日顔を合わせたばかりだったのに、こんなにも会いたい気持ちに溢れていたんだから。そんな気持ちを一杯ぶつけ
てあげたい。なんでかな、変にテンションが上がってる。さっきまでのエイラさんとサーニャちゃんの姿に、影響受けちゃった
のかも。

 そんなわたしを、坂本さんは苦笑にも似た微笑を浮かべて見送っていた。

「やれやれ、此方もようやく、ということか」

 そんな呟きが聞こえた気もしたけれど、確認は後にしよう。今は、とわたしは向こうからも駆け出してきた彼女の元に駆け
寄ることを最優先にと、更に脚に力を篭めていた。

(おわり)

以上となります。
小ネタ的に考えたはずが、意外に長くなってしまいました。
あと、すみません、名乗り忘れていたのですが、このスレの最初の無題の芳ペリも「XRp1SOao」作になります。
ペリーヌ支援が基本姿勢だったはずなのに、エイラーニャ…ごめんなさい orz
次回はペリーヌで頑張ろうと思います。

>>181
組み合わせでいろいろ面白いことになりそうですねw
すぐに飛ばないといけないのに、近くに芳佳しかいなくて混乱するペリーヌとかうかびました。
何この芳ペリ脳…
194名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 12:38:10 ID:XczUR8Ax
>>193
これは素晴らしいヘタレと小悪魔
195名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 12:53:31 ID:yR61dddP
>>193
GJです
次の日の早朝、湖からエイラさんが……
みたいな、展開になるんじゃないかとハラハラしました。
196名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 12:58:13 ID:kNly+5Lt
>>193
次回作のぺりーヌにはwktkしていいんだな?いいんだよな?
197名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 15:31:10 ID:kGddWyEX
【ストライクウィッチーズ】ゲルトルートは鉄骨投げ可愛い8
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1234973190/1-100
【ストライクウィッチーズ】ゲルトルートは鉄骨投げ可愛い8
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198影の人:2009/02/25(水) 16:19:04 ID:DDxoRI2H
>>96
管理人さん(の懐の広さ)は伊達じゃない!

48手のやつを投下します。
ミーナ視点で芳佳を叱るお話。エロいので苦手な方はスルーしてください。

そんなには長くないです。
199第25手 キス・首に:2009/02/25(水) 16:20:54 ID:DDxoRI2H
 執務室に静寂が満ちる。
 張りつめた緊張感が見えない糸となってわたしと宮藤さんとを繋いでいる。
 たわませてはいけない、そう思わせる厳かな空気を宮藤さんは感じているはずだ。
 彼女の引き結ばれた唇は言葉を発する機能を失い、彼女の見開かれた瞳は一直線にわたしを見つめ、外すことができないのだろう。
 わたしはいま、彼女を睨みつけている。
「前にも言いました。喧嘩をしてはいけません、と」
 語尾を強めて威嚇する。目にいっそうの力を込め、彼女の瞳を捕らえて離さない。
 それでも宮藤さんの目にはかすかな怯えが見えるだけで自身の信念を曲げるような気弱な意思は欠片も見られなかった。
 さすがは扶桑の撫子、美緒が見込んで連れてきただけのことはある。
 しかし、わたしの階級は中佐であり、わたしはこの部隊の隊長であった。
「多少、ふざける程度なら構いません。ですが我々はネウロイを撃滅する任務を背負っています。隊の秩序を乱すような真似が許されないことぐらい、思慮分別のあるウィッチなら分かるはずです」
 論理的に言葉を積み上げることで逃げ場を潰していく。
 言い逃れを封じた上で真意を問いただす。彼女の性格から推し測って、すでに分かりきっていることを。
「答えなさい。なぜ再三にわたって注意したにも関わらずクロステルマン中尉と口論をくり広げ、あやうく取っ組み合いに発展する寸前までやめようとしなかったのですか?」
「…………リーネちゃんを、リネット軍曹のことを侮辱しました」
 睨みを利かせるわたしをじっと見据えながら宮藤さんは絞り出すように言葉を続けた。
「ひっこみ思案で弱虫で、料理のまずいブリティッシュのセンスはどうかしている、とそう貶しました」
 ブリタニアの料理がおいしくないことについては同意したいところではあるものの、いまのわたしは部下の過ちに手厳しい上官でなければならなかった。
 鋭い眼光を向けて宮藤さんの言葉を容赦なく突き崩した。
200第25手 キス・首に:2009/02/25(水) 16:21:51 ID:DDxoRI2H
「いさかいを起こしてまであなたが介入する問題ではありません」
「でもわたしは――――」
「不服があるのならリネット軍曹本人がわたしに上申すればいいだけの話です」
「そんなこと――――」
「立場をわきまえなさい、宮藤軍曹」
 執務机を叩いて大きな音を立てた。
 ビクッと体を震わせた宮藤さんの瞳には言葉に乗せることのできない悔しさが揺れていた。
 目の端に溜まった涙をこぼさないよう、必死に堪えているのが手に取るように分かる。
 わたしは椅子から立ち上がり、悠然とした態度を保ちながら机を迂回して宮藤さんのそばに歩み寄っていった。
「義憤に駆られることが悪だとは言いません。しかし方法を間違えれば暴走した善意が思わぬ結果を招くこともあります。あなたの直情径行な言動によって、あなたの大切な誰かを傷つけることに繋がるかもしれません。もっと自分の言葉と行いに責任を持ちなさい」
 宮藤さんは変わらず休めの姿勢のままわたしの言葉に耳を傾けている。
 果たして、美緒と同じく頑固な気質である彼女にいかほどの効果があるだろうか。
 たとえ言葉で叱りつけても、頬をはたいたとしても、彼女の心を曲げさせることは難しいに違いない。
 銃の受け取りを頑なに拒んだように、自分が間違っていると思ったことはけっして許さず、また許せない性質なのだ。
 不屈の精神をもつ相手に対していくら頭ごなしに仕掛けたところで折れることはまずないだろう。
 わたしの説教は確実に彼女の意地を太らせているはずだった。

 宮藤さんの横を通りすぎ、背後にたどり着いた。
 この場におけるわたしは彼女にとって意見をたがえる異種、外敵に等しい。
 敵手にうしろを取られていながら振り返ることを許されないもどかしさ。宮藤さんはこの状況にストレスをおぼえていることだろう。
 無防備に背中をさらし、相手がいつ何をしてくるか分からないのだ。言葉による叱責か、それとも直接的な力による矯正か。
 宮藤さんの体が刻一刻と強張っていくように感じられた。
201第25手 キス・首に:2009/02/25(水) 16:24:39 ID:DDxoRI2H
 部屋に沈黙のカーテンを引いてから三つ数える。
 わたしは彼女に近づき、その両肩にそっと手を置いた。ビクンと跳ねる肩が内心の驚きを物語っている。
 体の接触はなによりも強烈な圧力になる。それも一見して好意的とも取れるくらい優しい触れ合い。
 意図の見えない行為に宮藤さんのなかで不安な気持ちが芽生えているはずだ。そうして座りの悪い心地にすることがわたしの狙いだった。
 叩いたりはしない。ただ優しく、頑なに突っぱねる心に溶け込んで解きほぐすだけ。
 わたしは肩に置いた手をそのまま前に滑らせ、宮藤さんの体を抱きしめた。
「えっ、ミーナ、中佐……?」
 戸惑いの混じった声音に目尻がやわらいでしまう。
 いけない、心を鬼にしなければならない場面なのだ。
 あまりに少女らしい宮藤さんの反応に笑みを浮かべてしまいそうになって自分を戒める。
「宮藤さん、わたしたちはね、家族なのよ。家族は仲良くしなければいけないの」
 少しずつ腕に力を入れていく。
 逃げられないように、宮藤さんに気持ちが伝わるように、わたしの体を密着させて耳元でささやきつづける。
 うっすらと赤くなっている耳に息を吹きかけた。
 かわいらしくぶるりと震えて首筋に鳥肌が立っていた。じつに初々しく、愛らしい。
「宮藤さんだって仲良くしたいわよね?」
「わ、わたしは……」
 首の付け根にそっと口づけた。宮藤さんの体が一段と大きく震えた。予期しない行動に動揺しているようだ。
 わたしは薄く開いた唇の隙間から血液を吸い上げるように柔肌を吸引する。
 ちぅ、と吸って取り除くのは強情な宮藤さん。力んでいる彼女をやわらかくさせるための教育的指導。彼女の良心に訴えかけるための作戦だ。
 付け根のキスを皮切りに、首筋を這い上がるように舌を走らせていく。
 唾液をわざと滴らせ、それを塗りたくりつつも舐め取るように舌を這わせる。
「んぁ、ぅ……」
 身動きの取れない状態で必死に抵抗しようとする宮藤さんを力と権力で押さえつける。
 これは説得であると同時に罰でもあるのだ。わたしの忠告を破ったふしだらな子に与えられる、わたしなりの罰。この程度の報いで済ませて、もう二度と過ちを犯さないと約束させるためのささやかな罰。
 おそらく美緒の部屋ではペリーヌさんが言葉にするのも憚られるような激しい責めを受けていることだろう。
 わたしには想像もできないほど厳しく、肉体的にも手痛い罰を受けているはずだ。
 喧嘩は両成敗、わたしは美緒と違うやり方で宮藤さんに改心してもらおうとしているに過ぎないのだ。
「答えなさい、宮藤さん。あなたは他のみんなとちゃんと仲良くできるわよね?」
 髪の生え際に口づけ、耳たぶを甘噛みする。
 首筋を何遍もちろちろと舌で舐めまわすにつれて宮藤さんの息が乱れていく。
 こころなしか前屈みになり、わたしの責め苦から逃れようとしているけれどそうはいかない。
 わたしは宮藤さんの腕を取ろうとして、気がついた。
202第25手 キス・首に:2009/02/25(水) 16:25:31 ID:DDxoRI2H
「宮藤さん、あなた……」
「だ、だって、わたし……」
 彼女の腕は両脚のあいだを隠すように束ねられていた。
 恥ずかしいものを見られたくないとでも言いたげに、そこを手で覆っている。
 よく見れば彼女の太ももの片方を透明な水滴が伝い落ちているようだ。
 なんていやらしい子なのだろう。
 わたしが真剣に思ってしてあげているというのに、肝心の宮藤さんは触れればはっきりと分かるほどにズボンを湿らせていた。
 わたしの厚意は宮藤さんには届いていなかったのだ。
「あなたという人は……」
「ちがいます、ちがうんです!」
「……すこし厳しくしないと、分からないみたいね」
 美緒ほど激しく責めたりはしない。とはいえ上官の面前で平然と痴態をさらすような宮藤さんにとって、わたしのやり方はいささか甘すぎたのかもしれない。
 わたしの叱り方は生ぬるかったというのだろうか。もうすこし強く、深く反省をさせないと分かってくれないのだろうか。
 わたしが良かれと思っていた方法はより強力なものに改善する必要があるようだ。
 自分がいかにいけないことをしたのか、もっと彼女の良心が責め苛まれるように工夫して自身で過ちに気付けるようになる方法を取らなければいけない。
 わたしは決意を固めた。
「あなたはもっと物分かりのよい子だと思っていたけれど、わたしの見当違いだったのかしらね」
 あえて口に出して宮藤さんに問いかける。
 違います、と言わせて自分の過ちを認めさせられたらそれでいい。でも宮藤芳佳という娘は、
「わたしも仲良くしたい、ですけど、でも、んんっ……!」
 簡単に首を縦には振らないのだ。
 どうしても分かってもらえないので言葉よりも直接的な方法で話しかける。
 彼女のあごを横に向けさせ、唇を塞いだ。
 言葉では届かないというならボディコンタクトでわたしの言いたいことを伝えてあげるしかない。
 わたしの気持ちを正しく理解できれば彼女も分かってくれるはずだ。
 唇を割って舌を差し入れる。
 見れば宮藤さんの薄く開かれた目は潤みきっており、わたしのお仕置きに怯えているようだった。
 それは彼女の舌が縮こまっていることからも窺えた。萎縮した舌をつんつんと突付いて起き上がらせ、その先端から根元にかけてわたしを絡ませていく。
 唾液を潤滑油に見立て、宮藤さんを先導するようにワルツを踊る。
 ぬめっとした感触が生々しく、宮藤さんの頬に赤みが差していった。
203第25手 キス・首に:2009/02/25(水) 16:26:57 ID:DDxoRI2H
「んぁ、むぅ、ん……」
 声にならない音をあげて身をよじったところで彼女の体は逃げられない。
 わたしは宮藤さんを抱きしめる手の片方を下におろしていき、必死に隠そうとする両手を払い除け、いまやみだらな液体ですっかり濡れてしまったズボンに指を添えた。
 わたしは教えてあげなければならないのだ。
 仲間といざこざを起こしてはならないこと、自分の気持ちを抑えることも必要であるということ。
 まだ幼い少女の良心に呵責をおぼえさせることで自らを省みるように導いてあげる、それは上官として、年長者として当然の義務なのだ。
 すこしだけ厳しいお仕置きを施すことで自分がいけないことをしたのだと気付いてもらう、そのための必要悪。
 びしょびしょのズボンの上から優しく撫でてあげる。
 子犬の頭を撫でるのと似た要領で、ゆっくりと宮藤さんのやわらかい部分をさすっていく。
 染み出してくる透明な液体が糸を引き、わたしの指は粘っこいヴェールにすっかり覆われてしまった。
「宮藤さん、歳のわりにませているのは構わないけれど自制心と状況判断能力に欠けているようね。上官であるわたしの目の前でこんなにして、まともな子のすることではないわ」
「あぅ、わたしは――――」
「お黙りなさい」
 離していた唇を再び押しつけて反駁を封印する。
 言葉では更生できないのだから体に教えて気付かせてあげます。
 あなたがウィッチとして一人前になれるように、わたしが最善を尽くしてまっすぐに伸ばしてあげますからね。
 ズボンをさすっている指が頑固に自己主張する宮藤さんにぶつかった。
 布地の上からでもはっきり分かるほどに大きく、身を硬くしている。
 わたしは基本的な方針は変えず、頑なに抵抗する彼女を解きほぐすことにした。
 凝り固まった彼女自身をズボン越しにひっかいた。
「んぁあっ……!」
 口付けで繋がったわたしの口腔にくぐもった音が響いた。
 くりくりと削るように意固地な宮藤さんをたしなめる。
 何度も往復して爪で弾き、意地を張るのが馬鹿らしく思えるようになるまで徹底的にいじり倒す。
 小さな彼女にこびりついた強情をこそぎ落としてあげるのだ。
 気は進まなくてもやらなければならない。いけない子には実力を行使して教えてあげないとその子のためにならないから。
 わたしの指と舌で優しく、けれど厳しく接することで彼女がきちんと成長できるなら、わたしには何も厭う理由がない。
 ズボンとは別に宮藤さんを抱きしめていた手をセーラー服の首元から侵入させた。
 まだ発育しきっていない、なだらかな丘のてっぺんが紺色の生地を控えめに押し上げてツンとそびえていた。
 その威勢を殺さないようにそっと、指の腹で円を描くように優しく叱ってあげる。
 小さな宮藤さんは先っぽを尖らせて抵抗していたけれど、指が触れるか触れないかのむずがゆいさわり方に対して為すがまま、どれだけ弄ばれてもひたすら我慢するしかなかった。
204第25手 キス・首に:2009/02/25(水) 16:27:49 ID:DDxoRI2H
「ぁ、はぁ……ん、ぅ……」
 宮藤さんの上気した頬をひと筋の涙が滑り落ちた。
 額には大粒の汗をかき、下がりきった眉に抵抗の意思はほとんど残っていないように思える。
 潤んで揺れる瞳が切なそうにわたしを見つめていた。
 ときおり漏れる呼吸は乱れに乱れ、前屈みになった体がいままで以上にびくびくと跳ねてわたしに擦り寄ってくる。
 わたしはそろそろ頃合いかと見計らい、宮藤さんのなかで疼いている従順な気持ちを呼び起こすことにした。
「宮藤さん、もう一度だけ訊きます。あなたは他のみんなと仲良くやっていけるわよね?」
 子犬は優しくしてくれる者のあとをついてくる。しかしそれだけでは友好な関係を築くには至らない。
 間違ったことをしたときに厳しく叱ることで子犬は初めて守らなければならない規範を意識することができる。
 ペットと同列に見るわけではないけれど、それは部下の教育にも同じことが言えるのだ。
 優しく、厳しく教えられた子はちゃんと目上の者の言うことを尊ぶようになる。
 熱心に教育を施してあげた宮藤さんもご多分に漏れず、
「はぁ、はひ……なかよく、できます、ぅ……」
 ちゃんとわたしの気持ちが伝わっていた。
 わたしは最後の仕上げとしてズボン上の突起を叱っていた指をその内側に潜り込ませた。
 教育は優しく接し、厳しく叱り、そしてよくできたときには褒めてあげることが大切だ。
 褒められて嬉しくない子はいない。
 どうすれば褒められるのか、何をしたら怒られるのかを明確に示してあげることで相手は学び、成長していくのだ。
 水が漏れて大変なことになっているズボンのなか、ひときわ熱く火照っている切れ目のさらに深奥、宮藤さんの中心部に指をうずめていく。
 くちゅ、といやらしい音が聞こえた。まるで熱された水飴の壷に指を入れているような感触。すこし指を曲げただけでどろっとした粘液が指にまとわりついてきた。
 宮藤さんのお尻が主人に懐く子犬みたいに、わたしの下腹部に擦り付いてくる。
205第25手 キス・首に:2009/02/25(水) 16:30:36 ID:DDxoRI2H
「ぁは、みーな、ちゅうさ……」
 宮藤さんはそれこそ犬のように舌を垂らし、虚ろな目でわたしを求めていた。
 かわいい部下の要求にわたしは差し出された彼女の舌を吸い上げ、かるく歯を立てて噛んであげた。
 血が滲まない程度に優しく、狼と犬がじゃれあうような戯れごと。
 宮藤さんのなかに埋もれた指をゆっくり出し入れする。
 絡みつく体液が立てる水音をBGMにして窮屈な内壁を押し広げていく。
 やわらかい肉の空間をくすぐるように指先でこすってあげた。途端に宮藤さんの全身が大きく震え、完全に体をくの字に折り曲げてしまった。
「あっ……ん、ぁは……ひぅ、んっ……」
 汗で髪の毛が張り付いたうなじを舐め上げ、首筋にキスをする。
 指の動きに合わせて返ってくる反応が過敏すぎる。どうやら限界が近いようだ。
 息をするのも苦しそうな上に狭苦しい小径がわたしの指をきゅうきゅう締め付けてくる。
 わたしは指の動きを加速させ、彼女の内部のあらゆる箇所をいっきに刺激した。
「あっ、ぃ、ぁくぅ、ぁああっ――――」
 ガクガクと体を震わし、自分の脚で立っていることもままならず、宮藤さんは膝から崩れ落ちてしまった。
 小刻みに全身を震わせながらペタンと床に座り込む。
 一拍おいてから宮藤さんを中心に黒い染みが広がっていった。
 かすかなアンモニア臭からわたしはその液体の正体を把握した。
 ご褒美を与えた矢先にさらなる醜態。けれど今回は大目に見てあげることにしよう。
 宮藤さんの肩に手を置き、最初のときのようにうしろから包むように抱きしめる。
 耳元に口を近づけ、ゆっくり、言い聞かせるようにささやいた。
「もう二度と喧嘩なんてしてはダメよ。わたしたちは家族なのだから、みんなと仲良くしましょうね」
「…………ぃ」
「大きな声でお返事しましょうね、宮藤芳佳さん?」
「……は……ぃ」
 わたしのお仕置きは功を奏したようだ。
 あんなに頑固だった宮藤さんがわたしの言葉にかすかな頷きを返してくれている。これでもう仲間同士のあいだで喧嘩が起こることはないだろう。
 わたしは嬉しさのあまり宮藤さんの首筋に口づけし、優しく犬歯を突き立てた。



 おしまい
206名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 16:32:13 ID:DDxoRI2H
以上です。読んでくれた人に感謝。
楽しんでもらえたら幸い。
207名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 16:45:13 ID:a0Cu5XaB
>>206
ここここれは……なんという……GJ……!!
危うくミー芳に目覚めてしまうところだったぞ。ミーナさんえろ過ぎるwww

ところで美緒ペリパートはありますか?ありませんかそうですか
208名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 17:43:04 ID:4ZrXiXHf
>>206
なんというエロス・・・これは隊長×少佐にも期待せざるをえない
209第2話 絶滅戦争:2009/02/25(水) 17:52:19 ID:PjQZiwfX
続き 一話完結と発表してしまった作品(保管庫652)を読まないと訳判らないかも。済みませぬ

いつになく険しい表情をしてエイラはサーニャと共に夜間哨戒を行なっていた。
相変わらずサーニャのアンテナは異変を訴えてはいなかったし、妨害を示す無線からの雑音もない。これまでの経験からすれば敵の居
ないことを示す状態が続いていたが、エイラはそれでもミーナの否定的な態度をすら無視してサーニャに最大限度の解析度での策敵を
命じていた。彼女は、最も早くネウロイが最近まで、つまりリーネが初撃墜を遂げた一連の戦闘の前までとは違う意図、違う覚悟を持
って闘っていることに気付いた者の一人であった。
エイラたちには十分程前、ガリア北西部沖の外洋を航行していた、哨戒任務をも帯びている漁船から超低空飛行でのネウロイ接近が通
報されていた。
信じがたい内容ではあった。何しろ今夜はドーバー海峡すらもが荒れる有様であり、ましてや北大西洋の外洋など、浪高く、水の苦手
なネウロイが超低空飛行を行なうことは、確かに考え難く、仮に侵攻があるとすれば高空からになるだろうと多くの人が考えていた。
そして、高空からの侵入ならばかなり遠くから察知できるため今の状況は敵襲の無いことを示しているのだとも多くの人が考えていた。
しかし、エイラ達は違った。

彼女等は、前回の戦闘に対する考えもまた、他とは異なるものだった。多くの人があの戦闘は普段とは変わらぬものと考えていたが、
彼女等からすればその考えはネウロイを過小評価しているように思われた。
彼女等は、あの戦闘はネウロイによる実験だと考えていた。
それまでネウロイの攻撃の対象は纏まった量の金属や、それを含む物に集中していた。その目的、摂食と増殖はいかなる場面において
も変わることはなく、一貫してそれらは近くの物のうち、金属の多い物を攻撃していた。
しかし、あの戦闘でネウロイが攻撃したのは基地であり、今までの行動からは推測できない標的であった。
また、戦法も少なからぬ数の偽者と人型を囮にして魔法少女を誘き寄せ、その殲滅と、発見されにくい小型で、つまり増殖能力の低く
しかし発見されにくい攻撃隊主力の突入を図るというもので、複雑であると同時に増殖を目的とせず、魔法少女の殲滅を明確な目標と
している点が何よりも特徴的だった。
故に、実際に攻撃隊主力と交戦した四人の魔法少女は、敵攻撃隊主力の編成と戦法から、早くも自分達が単なる増殖の障壁ではなく、
真っ先に殺害すべき対象として見られていることに気付いた。そして今までネウロイが単に鉄が欲しかっただけであることも。
正直に言うと、敵が進歩したことよりも寧ろ自分達がネウロイを侵略者と決め付け、ろくに戦い方以外の重要な情報、例えば、彼らの
戦略を知ろうとすらしていなかったことの方が不気味で仕方が無かった。今まで、ネウロイが知性を持っているということすら疑問視
されていたというのに、それらは人間が何故攻撃してくるのかを突き止め、その社会の様子を知って最も効率の良い方法で抹殺しよう
としているのだ。あの空襲は魔法少女の予備戦力を調べるための実験だったと考えると、第二波を敵が送らなかったことをも説明可能
だ。
それらが闘う目的には、単に増殖するためではなく、自分達が存在しているという理由だけで攻撃してくる交渉の余地の、少なくとも
僅少な人間を抹消するということが加わったのであろう、と彼女等は考えた。これまでは先制攻撃にネウロイが応酬したということす
ら忘れていたが今では違った。
そのことによって導き出された結論はいろいろ。四人のうち比較的経験の浅い三人はネウロイが賢く人間のことを熟知しているのなら
もしかしたら講和の機会が在り得るのではないかと希望を持ち、大陸からの撤退戦以前から戦い抜いた一人は無残に焼かれたネウロイ
の骸の様子を思い出し、それらが決して自分達を赦すことが無いことを確信し、そして、それらが本格的に人類撲滅へ動き出した事実
及びそれらが想像以上に知性が高く戦上手であるという事実に対して少なからぬ不安を抱いた。

エイラが通常は無駄な厳戒態勢を強いているのにはそのような事情が背景としてあった。彼女は、敵がまた実験的な戦術を採用してく
ると思っていた。
では、それはどのようなものなのか。彼女は今までに知り得た、全種類のネウロイを思い浮かべた。サーニャに探知できないほど小さ
くて、なおかつコアを安全に保ちつつ荒れた海面近くを進撃しうる型・・・取敢えずエイラは海面の状況を確認しようと考えた。

210第2話 絶滅戦争:2009/02/25(水) 17:55:45 ID:PjQZiwfX
続き 一話完結と発表してしまった作品(保管庫652)を読まないと訳判らないかも。済みませぬ

いつになく険しい表情をしてエイラはサーニャと共に夜間哨戒を行なっていた。
相変わらずサーニャのアンテナは異変を訴えてはいなかったし、妨害を示す無線からの雑音もない。これまでの経験からすれば敵の居
ないことを示す状態が続いていたが、エイラはそれでもミーナの否定的な態度をすら無視してサーニャに最大限度の解析度での策敵を
命じていた。彼女は、最も早くネウロイが最近まで、つまりリーネが初撃墜を遂げた一連の戦闘の前までとは違う意図、違う覚悟を持
って闘っていることに気付いた者の一人であった。
エイラたちには十分程前、ガリア北西部沖の外洋を航行していた、哨戒任務をも帯びている漁船から超低空飛行でのネウロイ接近が通
報されていた。
信じがたい内容ではあった。何しろ今夜はドーバー海峡すらもが荒れる有様であり、ましてや北大西洋の外洋など、浪高く、水の苦手
なネウロイが超低空飛行を行なうことは、確かに考え難く、仮に侵攻があるとすれば高空からになるだろうと多くの人が考えていた。
そして、高空からの侵入ならばかなり遠くから察知できるため今の状況は敵襲の無いことを示しているのだとも多くの人が考えていた。
しかし、エイラ達は違った。

彼女等は、前回の戦闘に対する考えもまた、他とは異なるものだった。多くの人があの戦闘は普段とは変わらぬものと考えていたが、
彼女等からすればその考えはネウロイを過小評価しているように思われた。
彼女等は、あの戦闘はネウロイによる実験だと考えていた。
それまでネウロイの攻撃の対象は纏まった量の金属や、それを含む物に集中していた。その目的、摂食と増殖はいかなる場面において
も変わることはなく、一貫してそれらは近くの物のうち、金属の多い物を攻撃していた。
しかし、あの戦闘でネウロイが攻撃したのは基地であり、今までの行動からは推測できない標的であった。
また、戦法も少なからぬ数の偽者と人型を囮にして魔法少女を誘き寄せ、その殲滅と、発見されにくい小型で、つまり増殖能力の低く
しかし発見されにくい攻撃隊主力の突入を図るというもので、複雑であると同時に増殖を目的とせず、魔法少女の殲滅を明確な目標と
している点が何よりも特徴的だった。
故に、実際に攻撃隊主力と交戦した四人の魔法少女は、敵攻撃隊主力の編成と戦法から、早くも自分達が単なる増殖の障壁ではなく、
真っ先に殺害すべき対象として見られていることに気付いた。そして今までネウロイが単に鉄が欲しかっただけであることも。
正直に言うと、敵が進歩したことよりも寧ろ自分達がネウロイを侵略者と決め付け、ろくに戦い方以外の重要な情報、例えば、彼らの
戦略を知ろうとすらしていなかったことの方が不気味で仕方が無かった。今まで、ネウロイが知性を持っているということすら疑問視
されていたというのに、それらは人間が何故攻撃してくるのかを突き止め、その社会の様子を知って最も効率の良い方法で抹殺しよう
としているのだ。あの空襲は魔法少女の予備戦力を調べるための実験だったと考えると、第二波を敵が送らなかったことをも説明可能
だ。
それらが闘う目的には、単に増殖するためではなく、自分達が存在しているという理由だけで攻撃してくる交渉の余地の、少なくとも
僅少な人間を抹消するということが加わったのであろう、と彼女等は考えた。これまでは先制攻撃にネウロイが応酬したということす
ら忘れていたが今では違った。
そのことによって導き出された結論はいろいろ。四人のうち比較的経験の浅い三人はネウロイが賢く人間のことを熟知しているのなら
もしかしたら講和の機会が在り得るのではないかと希望を持ち、大陸からの撤退戦以前から戦い抜いた一人は無残に焼かれたネウロイ
の骸の様子を思い出し、それらが決して自分達を赦すことが無いことを確信し、そして、それらが本格的に人類撲滅へ動き出した事実
及びそれらが想像以上に知性が高く戦上手であるという事実に対して少なからぬ不安を抱いた。

エイラが通常は無駄な厳戒態勢を強いているのにはそのような事情が背景としてあった。彼女は、敵がまた実験的な戦術を採用してく
ると思っていた。
では、それはどのようなものなのか。彼女は今までに知り得た、全種類のネウロイを思い浮かべた。サーニャに探知できないほど小さ
くて、なおかつコアを安全に保ちつつ荒れた海面近くを進撃しうる型・・・取敢えずエイラは海面の状況を確認しようと考えた。

211第2話 絶滅戦争:2009/02/25(水) 17:57:05 ID:PjQZiwfX
「高度を下げよう、雲海の下に出る」

サーニャは振り向いて吃驚するほど不安そうな表情を見せた。
エイラとサーニャが初めて共に出撃した時の出来事を考えれば当然といえたが、その経験があったからこそサーニャはエイラを信じた
ようだった。彼女は頷いて緊張した表情のまま高度を下げ、エイラはそれに続いた。
眼が月明かりに慣れているが、真っ暗な雲海の下でも、しっかりと物を見ることが出来ることに疑いはない。夜間視力には絶大な自信
がある。

ドーバー海峡の荒れ様は尋常ではなかった。浪はそれぞれ、沿岸域だというのに2mを超え、人型でもその影に隠れることが出来るこ
とであろう。明らかな天然の浪ではなかった。ネウロイの巣を取り巻く雲と関係が在るかも知れなかった。
そうすればサーニャにも発見され難くなるが、その場合人型のコアは常に危険に晒され続けることになる。
敵は霧立ち昇り雨降るスカパ・フローに突入するなど、傑出した勇気と叡智を良く見せ付けた。仮に突入したのが人型だとすると、そ
れは勇気ある行為でも、スカパ・フロー突入と違って成功の公算があまりに小さすぎる。
エイラは小型という条件を取っ払って他の型について考察した。中型以上で、しかし浪に隠れられるのは・・・・・・。

「立方体型だ!敵は立方体型で、散会し、コアを含む一部のみに高空を進撃させ、他の比較的どうにでもなる部分に低空を浪に隠れつ
つ進撃させている、可能性がある。高度を上げ、雲海を突き抜けたら私が下方以外を索敵する。サーニャは海面だけに意識を集中して
欲しい」
「判ったわ、高度6000まで上昇」

サーニャは指揮所にいるミーナと美緒に反論を許さず命令した。ここまで状況が複雑だと、もはや現場にいるエイラの判断だけが頼り
だった。
エイラとサーニャは上昇を開始、雲海を突破した。光が一気に視界にあふれた様な気がした。とはいえ、夜戦に慣れた彼女等の眼が眩
んだわけでは無かった。彼女等とて、夜間に光が得られることは、眼の慣れが早まっているからこそありがたかった。先程の感覚は主
に心理的なものだ。尤も、強い安堵感は得られなかったが。
雲海を見渡しても巣は見えなかったし、近くにあればサーニャによる発見を免れ得ないはずだ。暴風雨の件は解決できなかったが、そ
れ以外にも解決すべきことが山ほどある。
サーニャはエイラに下方以外の索敵を任せた。雲海上空の月明かりが注ぐ星空は敵味方両方に、隠れ家を提供しなかった。雪原の様な
雲海上空にサーニャの歌が響き、秒単位で首を動かし索敵するエイラの心を幾分落ち着かせた。

エイラの判断は完璧に正しかった。サーニャは波の間を時折砕けつつ進撃する1000個以上の立方体を目撃した。
「エイラの、言うとおり」

サーニャの報告は最も状況を正確に表していた。

「そうか。でも何とかなる。陸地に達するまでに、ペリーヌとエーリカを呼び寄せ、その独特の魔法で低空を征く一群を殲滅、美緒が
いれば高空のコアを持つものを見つけ出して撃破できる。その場合コアを持たないダミーがいて美緒を攻撃しても私が彼女を援護して、
それを撃破出来る自信がある」

エイラは緊急時なのと、敵に階級が露見するのを恐れたため、他の隊員を階級や姓ではなく、名で呼んだ。

「判った、今すぐそちらへ向かわせるわ。それと、あなた達に拠れば敵の第一目標は私達、増援以外は基地防空に従事させます。これ
は仮に今確認された一群が基地以外を攻撃したとしても変更はなし」

ミーナは美緒に幾つか命令した。命令系統は敵の薄暮攻撃の際に破綻、交信や命令のルールも全く無視された。ミーナ達とエイラ達と
の間でしか通信が出来ていないため、確認されている行動中の部隊がサーニャ達しかいないのでそれすら問題にならなかった。最近で
は501空単独での防空戦も珍しくない。
そのやり取りを聞いて、命令の的確なことにエイラは安心した。同時に、もどかしさをも覚える。今ここで自分達が攻撃すれば眼下を
進撃中であろう敵は散開してしまい、それは魔法少女の敗北を招くことであろう。
212第2話 絶滅戦争:2009/02/25(水) 18:01:22 ID:PjQZiwfX
そうした事態を避けつつ眼下の集団を監視し、新手の出現を警戒するサーニャと、彼女を導き、護るエイラの両方にとっての長い夜が
始まった。
エイラは普段どおり秒単位で首を動かし索敵した。
眼下には分厚い雲海、この雲海が晴れる頃基地は、ブリタニアは世界は一体どんな風になっているのであろうか。
エイラがサーニャと始めて一緒身に出撃した夜もこんな様な天候だった。
あの夜と同じように自分の目論見どおりに事態が進展するか否かは正真正銘の未来を見通す眼を持つエイラにも判らなかった。

翌朝、立方体型とその襲撃に前後して現れた人型によって周囲はかなり荒らされていた。
やはり基地が集中的に攻撃され、格納庫を護り通せたが整備員用の通称隔離宿舎に意図的にネウロイが自殺攻撃を加え、その結果瘴気
に汚染され数時間使用不可になったため、隔離宿舎の中のみで喫煙が許されている(魔法少女は完全禁煙で基地内では隔離宿舎以外も
完全禁煙)煙草、例えばラッキーストライクやエリート整備員の特権たる本来士官用の高級煙草、譽を融通して貰うため整備員は鞄を
引っ提げ本土へ向かっていた。
さらにひどくやられたのは対空火器陣で、ミーナですら普段気付かないような巧みさで偽装された対空火器は戦果をあげたが友軍相撃
という最悪の事態を避けるために思うように人型を撃てず、逆に破壊光線を浴びてそれを操る者や偽装共々破壊され、今では混沌その
ものの得体の知れぬ塊として朝の陽光を浴び、早くも鴉やシデムシを呼び寄せていた。
また、一部のネウロイは基地以外を攻撃し、攻撃を受け、重油すら燃焼している燃料集積所の燃える様子は基地上空からもよく判った。
そこから発生した黒煙は凪ぎのブリタニアから北欧神話のニーズホッグの如き姿でひたすらに天上を目指し、その太さから周囲の市街
にも被害が及んでいることは容易に想像できた。
作戦の期間中増殖したネウロイは皆無、ネウロイに金属を自前で調達できる能力があること、知性のあること、そして絶滅戦争を闘う
意志のあることは明白であった。

エイラはすっかり落胆して、元気のなくなった表情を見せていた。その原因は、昨晩の戦闘による疲労とその後の反省会に在った。
反省会は、ミーティングルームではなくブリーフィングルームで行なわれた。
ミーナからはリベリオンから第58任務部隊が到着し、またハルゼー靡下の第3艦隊つまりサラトガ及びインディペンデンスを含む艦
隊の魔法少女部隊が船団護衛任務を引き継ぐこと等が知らされたが、皆あまり明るい顔をしなかった。いまさら自分達が闇雲にしか戦
っていないことに気付いた者が結構居たからだ。
その中でエイラは、皆が新しい考えを持てるようにと、人とネウロイで金属を折半するネウロイとの講和の可能性について発言した。
即座にゲルトルートに否定された。彼女は反論のしようのない意見を述べた。
 
「エイラは講和について提案したが、先ずこの部隊に限らず、魔法少女は無条件にネウロイに対して果敢かつ攻撃的であるべしとされ
ているからそんなことを提案しても無視されるか苦しい思いをすることになることを察しろ。そして、国民はネウロイと交渉する可能
性すら否定しているし政府がそれを望んでいる。皆が無知であることを知れ。そして何よりネウロイが我々を赦さない。今の酷い戦況
ではこちらが頭を下げる方になることを知れ。何より、真っ先に平和な世界を作ろうという目的で連中が戦争をしている訳ではなく、
よって夢を棄てて、もしくはその実現を我慢し、あと5から6年戦うか夢を忘れずに戦闘員を辞めるしかないことを知れ。尉官という
身分では政治を動かせない。諦めるしかないことを知れ。反論は在るか。」
「在り得ません」

と即答せざるを得なかった。悲しかったし、仕事中の彼女が厳しいことを知っていてもかなり衝撃的だった。勿論、ありがたい意見で
はあった。何しろ、ゲルトルートの言うとおりにすればよいのだから考える必要もない。しかし、だからといってそのとおりに出来る
訳ではなく、無駄だと判っていても、悩むし考えてしまう。
213第2話 絶滅戦争:2009/02/25(水) 18:03:45 ID:PjQZiwfX
ではどうすればよいか、というと今はゲルトルートが職務から解放されている時間帯なので相談すれば優しくしてくれるだろう。しか
し問題が無い訳ではなく、つまり芳佳が近くにいるか、彼女が入隊して以来ゲルトルートを取り巻くようになった甘えやすい雰囲気に
惹かれて若手が結構寄り付いているわけで、そういう状況で今までどおりのイメージを保ったまま相談するとなると先程の問答が繰り
返されるばかりに決まっているし、部屋に連れ込んで他者を排除するのはやりすぎている感じがする。なぜならば実際にはエイラは、
誰かに甘え、ひたすら可愛がって欲しいだけなのだから。
エーリカがとても羨ましかった。彼女は、空中では文句なしの模範だが、地上では必ずしもそうでないという彼女のイメージのおかげ
で気楽に振舞えるし、実際サーニャが入隊したてで新人同然の時から彼女には、地上では髪をかまったり切ったり、話し相手になって
もらったりとまるで上官らしさを見せずにそれどころか、対抗心が働かないからか、あるいは髪の質や乳房の発育具合等の悩みを共通
して抱えているからかゲルトルートに対する態度よりもさらに甘えた態度で接し、サーニャは、そのエーリカに対する口調から判るよ
うにごっこ遊びをしているような愉しみをエーリカの世話に見出しているようだった。最近ではエーリカをなだめすかして笑わせる手
際も超一流になっているが。
同じことを自分がやったらサーニャはどう思うだろうか、吃驚するだろう。サーニャにとって自分が拠り所になっていることをエイラ
は認識していたし、だからこそサーニャには、自分に甘え切らせてやりたいと彼女は思っていた。
それ以上にへたれていて急にサーニャへの態度を変えられないから、エーリカのようにサーニャに甘えるためには、大きなきっかけが
必要だ。
可愛がってもらうのにはミーナもかなり魅力的だが、何といえばよいのか、感情に流されやすいのか彼女はエイラに時々明らかに恋し
ている、うるうるっとした視線を送ることもあって、これまでのイメージを崩したくないし相変わらず女の子にもてたい気持ちが強く
てなかなか甘えかかれなかった。
と、いうところまで考えてエイラは苦笑した。自分の未熟ゆえ意見が通らなくて悲しくて、甘えたいけれどへたれで見栄っ張りだから
出来ないということを納得するために、ここまで多くの時間を費やす必要があるような自分の頭脳は、明晰とはいえないような気がし
たからだ。

「エイラ、元気になってよかった」
「ああ、暫くサーニャの近くにいたからナ」

エイラは愕然とした。自分の苦笑を嬉しさからの微笑みと勘違いして話しかけてきたサーニャに対して、咄嗟にこんなことを自分が言
うなんて信じ難かった。どこかおかしくなっているのだろう。
サーニャは笑っていた。隊内には暗い空気が充満しているというにも拘らず、サーニャは普段と変わらなかった。もしかして悩んでい
るのは自分だけなのだろうか、とエイラはふと思った。サーニャはその思いを強めるようなことを何とはなしに言ってきた。

「ねえエイラ、ばいんばいんって何のことかしら」
「それは宮藤によると扶桑語でおっぱいの揺れる様子や、おっぱいに大きく揺れるほどの質量、やわらかさ、張り、弾力等があること
を示す言葉だよ」
「わざわざ訊いたのね、エイラ」
「べ、別にソンナンジャネーヨ、語学の勉強にきまってんダロ。それにいろんな言葉でサーニャを褒めたい」

エイラは他にも被撃墜・未帰還・冥府・誉れの墓場等の扶桑語での言い方も教えて貰っていたが、女の子の体及び容姿に関する単語や
表現以外はすぐに忘れてしまっていた。

「エイラ、嬉しい、ありがとう。でも、そんなに苦労しなくても、エイラが褒めてくれればそれで充分嬉しいわ」
「そうか、サーニャのことならいくらでも褒めてあげるんダナ。それと、誰ダヨサーニャの前でそんな事言ったのは」
「えっとね、さっきミーナ中佐の部屋から少佐が、堅物と雖もばいんばいんだなって言う声が聞こえたの。あと、なきごえというか、
その、可愛くて、私もエイラとよく出す、声というかさけび、かな」

サーニャが次第に言いにくそうに喋ったのでエイラはサーニャを困らせんナー、と叫びかけた。同時にそれ以外の理由でも坂本少佐に自重して欲しいな、と思った。
214第2話 絶滅戦争:2009/02/25(水) 18:07:12 ID:PjQZiwfX
美緒やミーナも皆の面倒を見る役割なのにその役目を果たさずに反省会の直後からゲルトルートを連れ込んでにちゃ、するのは不適切
な気がした。不謹慎である、そして私も混ぜてとエイラは思った。尤も、美緒達はそうすることによって自分自身の平常心を保たせて
いる、という可能性は、ないとは言い切れない、かも知れない。なにより、エイラたちが自分の面倒を自分で見切れると判断したのか
も知れず、そうなればエイラは彼女らの期待を裏切ったことになるがそれは、エイラの責任ではなく部下の能力を過大評価した美緒達
の責任、ともいえるが―すぐにそんなことは、そのことはどうでも良くなった。
何故どうでも良くなったのかというとサーニャが近寄ってきたからであった。
ここでサーニャといちゃつけば暫く先程の件に関して忘れてしまい、それでは結論が出難くなるし、ダメ人間的一面のある自分を律す
る機会だからサーニャに少しばかり我慢していただこうとエイラは思ったが、そう思っただけだった。いいじゃないかだってサーニャ
が可愛いんだもん、とエイラは自分に言い聞かせて、つまりは開き直って考え込むのを止めた。苦しさは軽減されは、した。そしてま
た少し、変わった方がいいんじゃないの、自分つまりはエイラと思ったが、すぐに忘れた。
サーニャはエイラの乳房を服越しに揺らしながらばいんばいん、と囁き、じっとエイラの両目を見上げてにっこりと微笑んだ。
予想外の行動だったが、エイラはサーニャのこういう所も大好きなので、先程の決意は跡形もなく消え去った。しかし、そうならなか
ったとしても結果は変わらなかった。
サーニャはエイラの眼を見つめていると、敏感に彼女の感じている苦しみを読み取った。エイラは、よく何を考えているのか判らない
といわれたが、サーニャは他人よりも表情を読み取る能力に優れていたので、彼女が周囲を慮って演技をしていても、他人には判らな
い様な綻びがあれば必ず見抜いた。サーニャには今のエイラの笑いが本物だとわかったが、同時に普段の輝きが失われていることにも
また気付いていた。
もともとサーニャは少なからぬ衝撃を受けていた。
エイラはサーニャの前ではこれまで、決して苦悩を表情に反映することはなく常に笑顔でサーニャを暖かく迎え入れるような態度をと
り続けてはいたし、サーニャのことを愛しているが故に最も演技の割合が高い時でさえサーニャがそれに応じて彼女に気を許し、甘え
れば本当に喜んでくれた。よって、エイラが明らかに苦悩に満ちた表情をして、今も苦悩を引きずっていることは、これまで考えられ
ないことだった。エイラが何かを解決できないことすらサーニャには信じがたかった。
サーニャにははっきりとエイラの苦悩の原因が判った。そしてその苦悩こそが最も多くの者を押しつぶして滅ぼしてしまうこともまた
判っていた。
サーニャはどんなに努力を重ねてもそれを、性格ゆえに克服出来ない者も実際に見たことが何度もあったが、エイラの性格からすれば
それはなさそうだった。だからという訳ではなかったが彼女はある決断を下した。

「エイラ、エイラは平和な世界を出現させる理想を諦めきれてはいない。軍の命令に阿諛追従することに反感があって、その愚かしい
判断によって身を滅ぼしたり、人生を無駄にしたくはないと思っていて、だからそんなに苦しんでいる。そうでしょう」

サーニャがそう語りかけてもエイラは、意外にも驚いたりしなかった。サーニャとばっちりあわせている視線を逸らすこともなくただ、
少しだけ涙目になって頷いただけだった。

215第2話 絶滅戦争:2009/02/25(水) 18:09:21 ID:PjQZiwfX
「エイラの考えていることは正しいわ。それが可能ならば、共生を目指すのは絶対に正しいし、自分達の欲望がいかなる場合でも優先
して満たされるべきと言う考え方は間違っている。でも、だからといって世間一般がそれを求める訳が無いわ。故郷が動向といった問
題じゃないわ。判るでしょう、エイラは他の子供らに虫を潰せなくて嘲られるような女の子だからこそきっと。私もそうだし、そうで
あり続けるように努力してきた。そうでない者は、暮らしが過酷になるにつれてどんどん残虐になっていったから。
わたしは、中央アジアで反乱を起こして南部カザフスタン以南からオラーシャ帝国勢力をたたき出した反乱軍や、包囲下で食料の供給
を拒みサイロを自ら焼いてわたしたちを餓えさせた農民を恨むことなど考えもしなかった。反乱が起きたのは帝国が、中央アジア人に
とっての神聖な、あるいはイスラム教で食用が禁じられている生物の加工工場の建造を画策したから。そして彼等がどんな生活をここ
数十年強いられてきたか、身をもって知ったのなら、その原因ははっきりと判った。今までの生活の代償として相応しいとすら思った
わ。オラーシャ帝国が当時健在だったのなら彼らのささやかな抵抗すら実現していなかったと思う。
わたしたちは彼等の掃討をしなければならなかった。その影響では決して無いけれど、多くの者が餓えるにつれだんだん彼らに憐みを
感じなくなっていった。嫌悪か、憎悪かといったことはわたしには判らない。わたしは、練成途上で、しかも他とは思想が根本から違
っていた。彼らに本当の憐みを感じていることは判らされた。そういった言動は粛清の対象で、隊の空気からしてネウロイがは鉄を欲
しがっているだけではないかとか、農民軍にも言い分があるとか言えばどうなるかは明らかだった。実際に消された者も在った。農民
軍のためにはとうとう死ぬ気になれず怖くてだんまりを決め込んだら当時の上官に感心されたわ。掃討任務の際に顔色を変えなかった
から。わたしと他の違いは、大して大きくなかったと思う。手遅れにならぬよう努力したつもりだけれど、結局そうした。
やがて呪詛を吐き散らしながら任務に臨む者も現れた。この頃からはっきりと争いが絶えない訳が判ったわ。そしてネウロイがいなく
なっても今度は人間同士で殺しあう羽目になることも。だから、ねえエイラ、大義名分に縋っては、やがて失望するわ」

サーニャは自分の発言を省みて、大分嫌な感じの話し方になってしまったかもしれないと思った。取敢えず身の上話は控えたつもりだ
ったがこれまでそのようなことをエイラにあまり話さなかったこともあって余計なことも喋ってしまった。はっきり言って、良くて鬱
陶しい、悪ければ厚かましい印象を与えかねなかった。尤もそれは親しいものに対してではないが。
一人で恥ずかしがっているサーニャに対してエイラは特に気分を害さず、話を続けるよう促した。彼女にとってサーニャの過去は興味
はあったが未知の領域だった。
サーニャは安心した。しかし本心ではこんな話は止めて無かったことにしたかった。
彼女は自分がこの記憶に初めて嫌悪感を感じていることに気付いた。エーリカに対して語った時はオラーシャ民話に詳しくない代わり
に語り聞かせる程度の感慨しかなかったが、今は違う。やはり、目の前の人物がどういう反応を示すかでそういったことは変わって来
るのかもしれなかったし、何よりサーニャはエイラと一緒にいるときは常に無防備になった。その代わり、意図せずとも嫌なことは忘
れられた。
サーニャは少し当初の予定よりも考え込んだ。自分が完全に全てを諦められた訳ではないことは、想定していなかった。

「エイラ、夢を諦めるのは無理、そして現実から逃げたりそれを歪曲するのも駄目よ。ただ、命令には従う程度の妥協は仕方が無いわ。
でも、それ以上のことは、自分からそうしなくてもそう、せざるを得なくなるわ。もしそれが出来ないのなら、互いに何とかしましょ
う」

216第2話 絶滅戦争:2009/02/25(水) 18:11:09 ID:PjQZiwfX
サーニャはそういって一旦沈黙した。わたしがエイラを支えます、とはとうとう言える気がしなかった。
エイラはサーニャの言わんとしていることを理解したようで、小首をかしげるのを止めて頷いた。サーニャとしては何か言って欲しか
ったが、我慢して続けた。

「大義名分に縋る必要はないわ。実際のところわたしたちは、ひとりひとりが、それぞれ魔力を持たないもの数千から数万以上の歩兵、
といっても魔力を持たない、収束爆雷で自爆したりさせられている者達のことですが、の代わりに戦っていることを考えれば、待遇が
良いのであれば尚更、彼らの出番を作らぬよう努力すべきで、高い報酬は崇高な精神に対するものと考え、そのために戦意を喪失して
は、そちらの方が悪いことよ。勿論、大衆の前では、高い給与を貰っているから「崇高な」精神の持ち主として振舞う位のパフォーマ
ンスはすべきだけれど。
それで、楽しいことを考えましょうよ。嫌なことばかり見るのは良くありませんよ。大尉はとても熱心に勉強して、他の隊員にも勧め
るでしょう。引退生活の到来に希望を見出しているからです。逆に、目先のことばかりではそれが絶たれる事があります」

サーニャはそういって寂しい気分になった。絶たれることがありますって、もっとましな言い方があるじゃないのか、と思った。自分
はもっと色々言えると信じていたけれど、大したことは言えないようだ。唯、エイラに少しでも伝わっていて欲しくて、彼女の眼を見
つめ返した。
彼女の眼には、サーニャの顔が映っていた。涙で普段以上に潤んだ透明感のある菫色の輝きを背景にしてサーニャは、哀しげで救いを
求めるような、目つきをしていた。やっぱりエイラにはかなわないとサーニャは思った。
エイラはサーニャに近づき彼女を優しく抱いた。優しくて美しい、微笑みを浮かべた笑顔がサーニャの頬にふわりとくっつき、エイラ
の感触が五感を通じてサーニャに流れ込み、彼女の緊張と我慢を流し去った。
エイラは涙をこぼすサーニャに囁きかけながら彼女を撫でた。

「ありがとうサーニャ、愛しのサーニャ。サーニャはちゃんと、私の役に立てているよ。だから今度は私の番だナ。もう、不安を隠し
たりしなくてもいい。私は、現実を直視することに逡巡しない。サーニャがいれば、それが出来るよ。離れ離れになっても、そう信じ
られれば、それが出来るよ」

エイラは、自分の言葉が単にありきたりな訳ではないと確信した。それは、紛れもない真実だ。
サーニャを撫でながらエイラは、しかし自分がそこに架けられた縄を歩いている奈落の底を覗き込んだような感じがした。
戦場の恐怖、理不尽は、完全に克服し得ないものとしてそこに眼に見える形で現れたのだ。しかし、絶望はしなかった。
エイラには、何故ゲルトルートが芳佳を甘やかすのか判った気がした。自分もまた、サーニャを甘やかすことができる立場であり続け
たいと思った。
恐怖に仮に屈服したならば、サーニャの手を借りよう、しかし、彼女とていつそうなるか判らない以上、先ずは自分がしっかりしよう
とエイラは決意した。これからの、引退するまでの毎日が決戦日になることだろう。エイラは決意を込めてカレンダーに視線を送った。

(第二話絶滅戦争 完)
217第2話 絶滅戦争:2009/02/25(水) 18:24:38 ID:PjQZiwfX
毎回のような投稿ミス申し訳ないです
それと、この機会に訊きますが次回からは鬱要素ありの注意書きも付けたほうがよろしいですか
218名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 19:31:14 ID:dkCB6TIr
おまえらおめディートリンデ!
219名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 19:40:57 ID:G68YCQbZ
二期やっちゃうか
あーあ
220名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 19:41:46 ID:y+9zjRjO
ストパン2期・・・略してパン2か
221名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 19:51:31 ID:KV+K9XMl
ドラマCDのことだが、「まずは誌上限定の通販でリリース予定」ってことは先行発売が誌上限定の通販ってだけなんじゃね?
222名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 19:59:48 ID:4ZrXiXHf
>>221
その可能性もあり、なのかな
誌上限定で売る意味がわからんし
223名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 20:11:06 ID:KV+K9XMl
>>222
メガミ対抗して作った雑誌だし、創刊号でスタートダッシュかけて、シェアぶんどりたいんじゃないかな
継続して売れるようならレコード会社も宣伝なってウマーかもしらんし

224名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 20:15:05 ID:yR61dddP
何かこのスレでは、あまり喜ばれないかもしれませんが、
このスレしか見てない人用に、
2期決定情報です。
http://ranobe.com/up/src/up341081.jpg
225名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 20:20:13 ID:+TNx8KRP
>>224
正直、それは素直に喜んでいいのかどうか……。
1期と同じクオリティで行けるのかとか
百合的に大丈夫なのかとか
男出たらどうしようとか
新キャラはとか

考えがとめどなく流れるが、とりあえずめでたいですね。
記念にヘルマ絡みのSSでも書いてみるかな(無関係
226名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 20:20:57 ID:q9QtwTFb
一期が売れた以上、路線継続だろうから
まあ歓迎していいんじゃないの
男なんてイラネーンダヨってスタッフがそのままなら
227名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 20:24:53 ID:JtOXfi78
男出没はまずないと思う
問題はQualityだよな

まあ
正式に発表されたときに喜びを叫ぶぜ!
228名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 20:27:16 ID:7j0947Gg
GONZOってかなりゴタゴタしてんじゃなかったっけ?
つってもまぁ、何が人気あって何が不評だったかみたいな反応は把握してるみたいだから、大丈夫だとは思うけどね

ただ人気作品の二期が一期より上になることはごにょごにょ
229名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 20:33:51 ID:dkCB6TIr
男……宮藤博士は結構出ると予想。ママンと立場が逆だったらロマンがあったかも。
とにかく!まずゲーム!それから!
230名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 20:34:30 ID:s7lZOPJu
みんなもっと素直に喜ぼうぜ。
いろんな懸念事項もあるけど、それはまた詳細が判明してから考えれば良いじゃない。
231名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 20:34:32 ID:yR61dddP
やっぱりGONZOがもう少し安定してれば、
こんな風に言われる事も無かったんでしょうかね。

自分としては、やっぱり楽しみですが
232名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 20:35:15 ID:QgazMecg
2期はやるだろうと思ってたから、今は2期よりゲームの方が楽しみ
233名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 20:42:05 ID:7j0947Gg
二期よりまずいらん子じゃね?
今までは好き勝手に書けてただろうけど、こんだけ有名になった上で変わらずガチにやれるかどうかが心配
公式でのスオムスのとこみる限り変わってなさそうだけど
234名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 20:51:29 ID:PY3h90AC
とりあえず二期決定? おめでとう

>>206すごいおもしろかった

>>217こういうのはどうなんだろうなあ
おもしろく読めてる人がいればいいんだろうけど、僕的にはアニメーションの話だぜ? って感じで

僕は戦争についてもこの時代のこの年頃の女の子が、兵士と言っても、現実的に言って、君が喋らせたいような考えを持っていたとは考えにくいし
仮に考えているにしても、キャラクターへの配慮が欠けているセリフ回しにはうなずけるところがあまりないね
また仮に考えているにしても、それはそういう物語の登場人物に振られる役回りなので、妄想作文の手に余る気がするよ
君のもってきた状況自体、アニメのネタには重すぎるところへ冒険したいようだしなあ
まあそれについては、別に個人の趣味を発揮していい部分だけどね

立派な講釈は、それに相応しい開陳手段があると思うだけで、おもしろく読める人がいるならいいんだろうけどね
235名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 21:00:19 ID:qELRsp9M
まあ、読めと強制されているわけでもなし、
それこそ絶滅戦争を>>234がNGワードにすればいいんじゃね?
236名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 21:25:08 ID:UlywJ1Xs
二期決定とかひゃっほい!

でも百合度落とすのだけは勘弁な!
237名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 21:27:21 ID:G68YCQbZ
紙媒体に特大情報全部先取りされて、涙目ってレベルじゃねーな公式サイトは
それとも公式でこれ以上の特大情報を持ってくるフラグなのか?映画化とかならもう勘弁してくれよ切実に
238名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 21:37:42 ID:7j0947Gg
そういや基地探訪更新しねえな
239名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 21:43:57 ID:G68YCQbZ
<('A`<ウワアアア
昔大暴れしたツケが回ってきたなあ
今となっちゃあ本スレにも随分男出してくれって意見が増えたもんだ

二期スタッフはどっちの意見を汲んでくれるんだ
百合派スタッフと男スタッフどちらの勢力が強いんだ

二期は贖罪の時になるのかもしれないな
諦めて、あらゆる展開であろうと全てを受け入れる決意をしてこよう
240名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 22:03:55 ID:KV+K9XMl
>>239
さすがにネガりすぎw
241名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 22:08:13 ID:7TAT+Gtg
ウィッチがいちゃにちゃしてるのを、男が望遠鏡で眺めているのが一番平和的
242名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 22:11:49 ID:MVHKCS/p
2期にはニパがでるといいなー!!
てか最近ニパ分が不足しすぎだろ…一時期コラムでダントツだったのにいきなり見なくなったな。
243名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 22:21:52 ID:y+9zjRjO
ストパニは2クール目からタガが外れだしたんだ。
だからストパン2もきっと・・・。
244名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 22:28:43 ID:KftkhHpe
ニパは出るだろ。出ないなら世界のほうが間違って(ry
245名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 22:33:41 ID:SXCeFaKy
ワタシとサーニャのオラーシャ巡りが二期だからナ
ニパの出る幕なんてネーヨ
246名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 22:33:43 ID:NECyuWgH
ニパ出るといいなw
ハイディとあわせてエイラニャと絡んでくれたら俺ズボンはいて仕事いっちゃうかもしれん
でも切ない目にあいそうで今から心配だよニパ
247名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 22:40:51 ID:dkCB6TIr
片思い軍団ペリーヌ組結成である
248名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 22:42:48 ID:9g1sQbU5
501の面々の…特にペリーヌの出番がなくなることのほうが恐ろしいよ、俺にとっては。
いらん子やアフリカの星とクロスオーバーしてくれるのが個人的に一番うれしい。
249名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 22:45:34 ID:7j0947Gg
百合度がどうなるかはともかく男は出ないだろうよ
250名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 23:04:20 ID:KftkhHpe
出なくはないだろうけど、妙な絡み方する輩は出ないんじゃないか>男
251名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 23:08:04 ID:kPmc0lc0
ハルトマン姉妹共演しないかなぁ……
いらん子の面子だとウルスラが一番出る可能性高い気がするんだ。
252名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 23:16:00 ID:+ED8S0gR
ニパって男に人気があるっていう設定をどっかで見た気がするけど

勘違いだよなwwww
253名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 23:17:40 ID:UlywJ1Xs
男に人気があっても別に関係無いんじゃね
254名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 23:23:02 ID:FlBihpi5
公式の重大発表は二期の決定のことだったのか・・・・・
255名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 23:26:21 ID:7j0947Gg
>>254
それ以外何があるのよ
256名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 23:27:11 ID:dkCB6TIr
入籍、とか
257名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 23:27:43 ID:KftkhHpe
>>251お姉ちゃんエーリカ見たいな ウルスラはやっぱ野さくさんで
258名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 23:28:54 ID:+TNx8KRP
>>251
そこでまさかのアホネン登場。
259名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 23:33:50 ID:16rtJbSN
>>258
テレビ放送できなくさせる気かww

扶桑メンバーで五色や疾風出てこないかな。出てきてもあんまり不思議はないんだけど。
260名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/25(水) 23:37:07 ID:wjgQUbKp
>>251
すごい姉妹の憎悪が見れそうだwかなり確執があるらしいからな。
261ヘルマげ。 1/6:2009/02/25(水) 23:52:02 ID:ziDnwPTK
「朝だ朝だ! ほらほら! さっさと起きろエーリカ!」
いつものように怒鳴り散らす私。 いつものように全く起きる気配の無いエーリカ。 まったくもっていつも通りの風景。
しかし、シーツを引っぺがしたその姿は、いつもと少し違っていた。

「わ……私か?」
エーリカはぬいぐるみをぎゅうと抱きしめて眠っていた。 二頭身のデフォルメされた姿ではあるが、見紛いようもない。
ブラウンの髪をおさげにまとめ、緑の軍服に身を包んだその人形。 それは、どこかしら私がモデルのように思われて。
くっ! 苛立ちが抜かれていき、暖かな気持ちが芽生えるのを止められない。

ぬぬぬ……卑怯だぞエーリカ! そのぬいぐるみを抱きながらそんな顔されたら、思いっきり怒鳴れないだろう!
いつもは私を苛立たせるその寝顔も、今はたまらなく愛らしく見える。
くー。 すか。 くー。 平和そうな寝息を立てるエーリカ。 ぬいぐるみはエーリカに抱きしめられてくにゅっと潰れている。
くっ。 何だ何だ。 そんなに抱きしめて。 そんなに幸せそうな顔して! 奇妙な衝動に駆られて、思わず口走る。

「そんな物を抱きしめて幸せそうに寝てるんじゃない! そんな物! ほ、本物の私が。 ここにいるじゃないか……。」
口にした後で。 自分の口から滑りでた言葉が何であったかに気付いた私は、完璧に真っ赤に茹で上がっていた。
な、何を言ったんだ私は? こんな馬鹿な事を!? ええい。 これもお前が起きないせいだ! 起きろ! 起きろーーー!!!
勢いに任せてぺちぺち頬を弾くと、ようやくエーリカが目を開けた。

「うー……トゥルーデ? おはよー。 ……おやすみー。」
「こらこらこら! 寝るな! 寝るんじゃない! もうとっくに起床時間を過ぎてるんだぞ! 起きろ! 今すぐ!!!」
開いたそばから目を閉じる。 そうだ。 情にほだされている場合ではない。 一に規律! 二に規律! 今は起床こそ至上命題だ!

「……。 ねぇトゥルーデ。 あと30分だけ寝てもいい? 『ウン、イイヨ。』 ほらー。 トゥルーデもこう言ってるよー。」
「私がそんな事言うか!!! 有り得ん事を言わせるな!!!!」
ぬいぐるみに勝手な問いかけをして勝手な答えを導き出すエーリカ。 それにしても。
やはり私のぬいぐるみだったのか。 まったく、いつの間にこんな物を購入したんだ。 わっ、私の知らない内にっ。

「……分かったよー。 じゃあ起きるから、そのかわり。 んー。」
「へ、へっ? んー、て。 一体なんだ? わけの分からない事を言って。 ちっとも起きようとしてるように見えないぞ。」
「だから、んー。 トゥルーデがちゃんとしてくれたら起きるよ。 んー。」
??? 目を閉じたままアゴを突き出して動かないエーリカ。 私が判断に迷っていると、不服そうに目を開けてこう言った。

「もー、んー、って言ったらんー、だよー。 ちゅう。 おはようのチュウに決まってるでしょー。」
「ちゅ、チュウ!? きっ。 キスか!? なな何を言ってるんだお前は! なぜお前を起こすのに私がキスする必要があるんだ!」
262ヘルマげ。 2/6:2009/02/25(水) 23:52:41 ID:ziDnwPTK
「えー。 トゥルーデはしてくれたのに、トゥルーデはケチだねー。 『ネー。』」
「だからそいつをトゥルーデと呼ぶんじゃない!!! しない! キスなど絶対にせんぞ!!!!」
「じゃあ寝ます。 ぐー。」
「寝るなあぁぁああ!!!」
ころりと寝返りをうって、またもや寝始めるエーリカ。 どうしたものかと途方に暮れていると、もう一度エーリカがむくりと起きた。

「……。 んー。」
くいっとエーリカがアゴを上げる。 うっ。 ううっ。 顔が湯だったように赤熱する。 ほのかに染まった頬。 薄桃色の唇。
胸にぬいぐるみを抱いて、じっと私を待つエーリカ。 こっ。 このっ。 何なんだ。 この愛くるしさは何なんだ。
……分かった。 分かったよ!!! エーリカの鼓動を嫌というほど意識しながら。 私はその瑞々しい唇に、自分の唇を……。

「……完。」
「それからどうなったのでありますかあああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!」
ハルトマン中尉の肩を掴んでガクガクと揺らす。 ぜっ、全世界の憧れ、バルクホルン大尉が! 私の英雄が!!!
このグータラ・オブ・グータラ、使い魔はナマケモノと噂されるハルトマン中尉に! せせ。 接吻をしたのでありますか!!??
聞きたいであります!!! でも聞きたくないでありますぅーーー!!!

「ハルトマン!!! レンナルツに余計な事を聞かせるんじゃない!!!!!」
真っ赤になってバルクホルン大尉が怒鳴る。 ななな何故そんなに真っ赤なのでありますか! 何故否定しないのでありますか!
実話でありますか!? ドキュメンタリでありますか!? 中尉の話はノンフィクションなのでありますかあぁぁーー!!??

「まったく! レンナルツ。 ハルトマンの調子に流されるな! カールスラント軍人は一に規律、二に規律!」
「三・四も規律、五・六・七・八・九すべて規律であります!!」
「その通り! 分かったらそろそろ就寝! 談笑の時間は終わりだ。 明日もきちんと定時に起床すること。 いいな?」
「了解!!!」
「りょーかーい。」
「特にお前に言ってるんだぞ! ハールートーマーン!!!」
はぁ……。 自室へと歩み去りながら、お二人の姿を振り返る。 あぁ、あんなに大尉に目をかけられて。 羨ましいであります……。
聞く話によると人前ではハルトマンと呼んでいても、私生活ではエーリカとかフラウとか、とても親しげに呼んでいるとか。
中尉は史上最強と名高い、我が国の誇るウルトラエース。 確かに、確かに大人物なのは間違いないですけれども。
なぜあんなにだらしがないのでありますか!! 認められないであります! お二人は例えるなら水と油! 月と太陽! 天使と悪魔!
あまりに釣り合いが取れないではないですかぁぁぁ!!!

「ひどーい。 トゥルーデはあぁ見えても、そんなに悪魔じゃないよ?」
「うぴゃわああぁぁ!!??」
263ヘルマげ。 3/6:2009/02/25(水) 23:53:21 ID:ziDnwPTK
肩越しの声に、心臓が口から飛び出す。 はわわ! 危なかったであります! 心臓には三秒ルールは通じませんからして!!
声の主はもちろんハルトマン中尉。 声に出ていたのでしょうか? 恥ずかしいでありますよ……。
くすくす笑うハルトマン中尉。 くうう。 一片の曇りも感じられないこの笑顔。 確かに、人から好かれるのも分かる気がするのです。

「放っといてほしいであります。 私は今、激しくブルーなのです……。」
なにしろ、ハルトマン中尉は今私が顔を会わせたくない人ランキングぶっちぎりのナンバーワン。
どんなに頑張ったって。 どんなに足掻いたって。 私はハルトマン中尉にはなれないと思わざるを得ないのです……。

「うーん、ヘルマは頑張りすぎてるのかもね。 たまには脱力しよ? うん。 明日は思い切って寝坊しなよ! お寝坊!」
「ねっ、寝坊!? 何て事を言うでありますか! 仮にもカールスラント軍人の頂点に立つ人が!!」
「まーまー。 規律を知るにはまず違反から、だぞ。 これ私の格言。 トゥルーデに起こしてくれるよう頼んどくから。 ね!」
えっ? なお言い募ろうと思ってピタリと止まる。 ばっ。 バルクホルン大尉が。 私を起こしに!!??
先程の談話の内容を思い出す。 つまり。 つまり。 わわ私も、大尉と。 せっ。 接吻を!!!???

「いいかー? ちゃんとぐっすり寝るんだぞー。 そんじゃ、おやすみっ。」
ぽくぽく歩く中尉の後姿を見送りながら、自室のドアをパタリと閉める。 ……。
大尉が私を起こしに来る! どどど。 どうしましょう! どうしましょう! こんなに興奮してたら眠れないでありますよぉ!!!
クローゼットからぬいぐるみを引っ張り出す。 つっ。 遂にこれの出番なのです!

言わずもがな。 それは勿論、こっそり買ったバルクホルン大尉人形。 いいえ! ただの人形ではありません!
これはハルトマン中尉の持っているMサイズでは及びもつかない、超特大LLサイズなのでありますっ!!!
中尉の何倍も大きいこの人形なら! 中尉に注いだ何倍もの愛情でもって私を起こすに間違いありませんのです!!!
むきゅーっとぬいぐるみに顔をうずめながら、パタパタと足をばたつかせる。

浮かれてばかりはいられません。 最高の結果を残せるよう、綿密にシミュレートしておかなくてはなりません!
むむむむむ……。 見えた!

  くーすかぴー。 はっ! 大尉がいらしたであります!

  「朝だ朝だ! 起きろレンナルツ! 起床の時間だ!」
  「はっ! 目覚めはバッチリ、お目々はパッチリ! 今日もスッキリ快眠でありました!」
  「よし! それでは朝の体操に向かうぞ! ついてこい!」
  「了解!!!」

……あれ? お、起きてどうするでありますか私! 今回は起こしてもらうというテーマですからして! 中止! 中止であります!
264ヘルマげ。 4/6:2009/02/25(水) 23:54:01 ID:ziDnwPTK
いきなりシミュレート失敗であります。 そもそもが、朝にパッチリ目が覚めないというのは不可能ではないでしょうか?
ハルトマン中尉はやはり凄いのでありますね。 まぁそこはそれ。 無理に眠り続けるという設定でシミュレート再開です……。

  くーすかぴー。 はっ! 大尉がいらしたであります!

  「朝だ朝だ! 起きろレンナルツ! 起床の時間だ!」
  「くーすかぴー。 くー。 ぴー。」
  「……なるほど、起きるつもりは無いらしいな。 下士官の分際でいい度胸だ。 次の軍法会議を楽しみにしておくがいい。」
  スタスタスタ……。

「なぜでありますかあああぁぁぁっっっ!!!???」
おかしいであります! シミュレートの中でくらい都合の良い展開になってもいいのに、思いっきり恐ろしい展開になってしまいました!
やはり私の中の大尉像は軍人の鑑なのです! 規律違反を見逃すような場面が想像できないのです!
うくく。 このままでは不毛な時間を過ごしたまま朝を迎えかねません! やむなし! 山場だけをシミュレートです!!!

  「バルクホルン大尉。 んー。」
  「へ、へっ? んー、て。 一体なんだ? わけの分からない事を言って。 ちっとも起きようとしてるように見えないぞ。」
  お、おお! なんと順調な! これはいい調子でありますよ! 引き続きゴーであります!

  「だから、んー、であります。 お、おはようの、チュ……チュ……。」

「そんなこと言えないでありますよおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
ギッタンバッタンと辺りを転げ回って悶える。 はわわわわ。 考えてもみませんでした。
たっ。 大尉にキスを要求するなどと! どれだけ図々しいですか私!? ううう。 無理です。 どだい無理だったのです。
これはハルトマン中尉にだけ成せる業です。 自分はハルトマン中尉には永久になれないのです……。

「なんだレンナルツ。 ハルトマンのようになりたかったのか?」
「うぴゃわああぁぁ!!??」
肩越しの声に、心臓が口から飛び出す。 デジャビュであります! なんだかつい最近こんな目にあったような気がするでありますよ!

「ばばばバルクホルン大尉!? な、なぜ自分の部屋にいらっしゃるのでありますか!!?」
「いや……ハルトマンから、明日、お前が起きられそうにないから起こしてくれと頼まれてな。
 お前が定時に起きられないなど、何かあったのかと思ってな。 その……話でもしようかと来てみたわけだ。」
かっ。 感激であります!!! 私を心配してわざわざ訪ねてきてくれたのでありますか?
なんという上官の鑑!! 改めて尊敬の念が強まるばかりであります!!! 感涙する私の手元を見て、やれやれと苦笑する大尉。
265ヘルマげ。 5/6:2009/02/25(水) 23:54:39 ID:ziDnwPTK
「まったく……お前といい、ハルトマンといい。 私のぬいぐるみなどを抱いてよく眠れるのか?」
はわわわ! 人形! あろう事か本人に見られてしまったであります! 穴があったら入りたいでありますよ!
大尉の顔が見られない。 私の顔も見せたくない。 失礼とは知りながらも、ぎゅむーと人形に顔を押し付けるのです。

「……そのままでいいから聞いてくれ。 お前はハルトマンにはなれないと言っていたな。 一人前に壁を感じ始めたわけだ。」
えっ、えぇ? 大尉はどうやら猛烈に勘違いをされているであります。 そんな事、微塵も考えていなかったのです。
そうかと言って。 、まかり間違っても、明日どうやって起こしてもらうかを思い悩んでいたなんて。 絶対言えるわけないであります!

「なぁレンナルツ。 ハルトマンになんてならなくていい。 いや。 他の誰にもならなくていい。
 あいつは、誰かになりたいなんて考えていたわけじゃない。 ただ、一日一日を必死に積み重ねただけなんだ。
 そうしたら、気がつけばそこにエーリカ・ハルトマンがいた。 それだけの事なんだ。 お前もそうさ。」
暖かな手が、私の肩を抱き寄せる。 あぁ。 なんだろう。 とてもほっとするであります。
軍に入る前。 ずっとずっと私が小さかった頃を思い出させるような。 そんな、暖かな抱擁であります……。

「次代を担うお前たちがそんな調子では、私も安心して後を任せる事ができないぞ。
 歴史とは、繋がりだ。 築き上げた毎日を。 育み続けた温もりを。 連綿と繋ぎ、後世に残してゆくのが我々だ。
 ネウロイなんかには、決して壊す事はできない。 それが私たちの誇りなんだ。 私は思う。 この誇りを、お前になら託せると。
 強くなれ、レンナルツ。 ヘルマ・レンナルツになれるように。 お前にならできる。 私は、そう信じている。」

たっ。 大尉っっっ。 胸に小さな太陽が生まれて、考えは熱に溶かされて、瞳は熱く沸き立って。
言葉が何も出てこない。 何の根拠も無く。 大尉は、私を信じていると言ってくれた。 私は私になれると言ってくれた。
あぁ。 勘違いをしていたのは、私でありました。 私の憂鬱の源は、きっと。 まさにこれだったのです。
私は大尉に認めてほしかったのです。 ハルトマン中尉のように。 大尉の前で胸を張れる人間になりたかったのですね。

涙が。 ぽろぽろと涙がこぼれて。 あぁ。 あぁ。 もう、今にも私ははちきれそうで。
自分を繋ぎ止めるために、必死に嗚咽を噛み殺すのです。 んー。 んー。
そうしていたら……本日一番の事件が起こりました。 大尉が。 しゃくりあげる私の頬に、優しくキスしてくれたのです。

たっ、大尉? あまりの驚きに仰ぎ見ると、そこには桜色に頬を上気させ、自分の唇をなぞりながら、照れ臭そうにはにかむ大尉。
うっ。 美しすぎるであります!!! 強い大尉、凛々しい大尉。 よく知っていたはずのスーパーエース。
その彼女が、こんなにも女性らしい、優しげな顔を見せるなどとは。 私は今まで露にも想像しなかったのでありました!

「こら。 ハルトマンにはならなくていいと言っただろう? んーんー言われても、私には分からないんだぞ……甘えん坊ども。」
はわあぁぁ! なんと愛すべき勘違い。 大尉は私がキスをねだっていると勘違いしたのであります! 神様、仏様、ハルトマン様。
大尉の指が私の唇に触れて。 私は間接キスという事実に、今度こそパンクしてしまったのでした。
266ヘルマげ。 6/6:2009/02/25(水) 23:55:16 ID:ziDnwPTK
「ハルトマン中尉! 朝であります! てきぱき起きるでありますよ!」
「んみー……あれー? ヘルマ、もう起きてるの? 寝坊しろって言っ……。」
元気にハルトマン中尉のシーツを取っ払う私。 後ろではバルクホルン大尉が見守ってくれているのであります。
やっぱり私は、お世話してもらうよりお世話する方が性に合っているのです! 私の顔を見上げた中尉が、言葉を切って笑う。

「ん。 ごめんごめん。 そっか。 もう大丈夫なんだね。」
なんて。 中尉は、一目で私の悩みが解消した事が分かってしまったらしいのです。
ちょっぴり気恥ずかしい。 でもいいのです。 私にも分かったのです。 私がなりたかったのは、ハルトマン中尉ではなくて。

「は! 一日も早くバルクホルン大尉のようになるために、これからまたビシバシ頑張る所存であります! よろしくお願いします!」
腹の底から声を出す。 そうであります。 私の憧れは。 中尉の手元の、Mサイズのそれでありますからして!
ニコニコと笑うハルトマン中尉。 中尉はそのままもう一度シーツにくるまって床に寝転がった。 …………。 あれぇーーー???

「ちょ、ちょっとハルトマン中尉! なぜまた寝てしまうでありますか! もう起床時間は過ぎているでありますよ!?」
「だって眠いし……トゥルーデは起きろって言ってないし。」
「今日は私が大尉の代わりであります! 私は大尉のようになりたいのであります! 今は私を大尉と思ってくださいぃぃ!!」
耳元で思いっきり絶叫すると、中尉がむっくり起き上がった。 寝ぼけた感じで言葉を紡ぐ。

「今日はヘルマがトゥルーデなの?」
「そうであります! 寝ようとしても駄目であります! バルクホルン大尉の瞳は朝寝坊を見逃さないのでありますから!」
「そっかー。 今日はヘルマがトゥルーデなんだ。 じゃあトゥルーデ。 ……んー。」
へっ? 目を閉じたままアゴを突き出して動かない中尉。 これは。 これは、まさか。 昨日中尉が言っていた。
おはようのキスでありますか!!?? ふわわ。 こっ、こうして見ると。
物凄く可愛いであります!! どこの誰が黒い悪魔などと言ったのでありますか? どう見たって天使でありますよ!!!
ふら〜りと吸い寄せられるように中尉に近付いた所で、ハッと凄まじい殺気に気付いて振り返る。

たっ。 大尉っっ!!?? 穏やかに笑ってこちらを見ているバルクホルン大尉。 その笑顔はまるで女神か菩薩のよう。
なのに。 なのにっっ。 こんなにも肝が冷えるのは何故なのでしょうかぁぁ!!??

「た、大尉。 ひょっとして怒っておられるでありますか……?」
「ん? なぜ私が怒るんだ? ほら。 ハルトマンはああして待っているぞ。 それで。 お前はどうするつもりなんだ???」
はわわぁああ!! こっ。 怖いであります!! 大尉に狙われるネウロイの気持ちが分かってしまったでありますうぅぅ!!!

「トゥルーデ。 んー。」
「レンナルツ。 どうするんだ?」
はわ、はわわ。 前門の虎、後門の狼。 ハルトマン中尉にもなれず。 バルクホルン大尉にもなれそうになく!
ううっ。 目が湿ってきたであります。 泣きそうであります!! ああぁ。
私も早く。 一日でも早く! ヘルマ・レンナルツになりたいでありますよおおぉぉぉーー!!!

おしまい
267名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 00:05:11 ID:exeetiEJ
>>266
早めに寝ようと思ったけど寝なくて良かったwwwww
テンション高いヘルマの語りにニヤニヤしっぱなしでしたよ!
笑いっぱなしで三人ともめさかわいくて、ほんと面白かったっすw GJ!
268名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 00:19:08 ID:Iyl9IMd/
>>266
いいエーゲルかつヘルマだ
ニヤニヤした
269名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 00:51:38 ID:Uf7T9Bl/
2期決定か…。
正直、色々怖い…。
8話のようなこと(ラブレター、ミーナの過去の男)を実際にやっている以上、何があるかわからんよね。
フミカネ設定のウィルマさんの例もあるし。

エイラーニャに男が絡んでくるような展開があったらリアルに死ぬ。
270名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 01:00:00 ID:RwK8vCyk
無理にネガキャンしなくたってイイんスよ?
271名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 01:07:01 ID:ZkVz3PeX
>>266
ヘルマもエーリカもお姉ちゃんも可愛すぎるwww
素晴らしいものをみせてもらいました、GJ!!

>>269
エイラーニャに男が絡むなんて、その男が涙目になる展開しか見えない。
それで一層絆が強まった二人でしたみたいな。

一応そのあたりは慎重に作ってくるでしょう。
わざわざお客さんが望まない展開にするわけないと思うし。
272名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 01:08:53 ID:rq9S6h4y
君らはそんなにニパを泣かせたいのかね?
恥ずかしながらかくいう私もだ
273名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 01:10:05 ID:YzGBRuIP
昔、『リトルウィッチパルフェ』というのが有ってだな。
神百合ゲーとして人気を博したんだよ。

でも、その続編は・・・。
274名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 01:10:59 ID:pV6tP3XT
>>266
ニヤニヤできて内容がある、あなたのSSような二期がみたいですwGJ!
275名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 01:29:10 ID:xU+CDxaJ
>>273
あれでもレネットの次以降は案の定黒歴史って認識みたいだぜ
スタッフもそうゆうのはわかってるっしょ
276名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 02:10:09 ID:TJrscVE1
まあ俺はゲームに男はださないと断言した鈴木さんを信じてるから
また二期発表のときにも男はださないと言うと信じてるよ










だからそろそろレンちゃん×芳佳について語ってみようぜ!!
277名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 03:15:58 ID:qcdDpfCY
本スレが放送当時の勢いに戻っててワロタ
なんだかんだで皆気になるのねw 勿論私もですが。

さて、深夜にこんばんは。mxTTnzhmでございます。

こんなタイミングで何ですが、SS出来たので投下します。

今回は暗めの話をひとつ。
保管庫No.450「ring」続編になります。
278名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 03:17:00 ID:cmnVA1P1
1期が友情モノだったのに、2期で公式が熱血バトルアクションと銘打った某アニメみたいに
ストパンも1期で培った作品の長所をもっと伸ばす形で展開してほしいな。

それで18禁になったら本末転倒だが。
27901/02:2009/02/26(木) 03:17:48 ID:qcdDpfCY
  エーリカが、死んだ。
  はじめは何を言っているのか分からなかった。しかし、やがてその意味が分かり
  トゥルーデは震え、吐き気を催し、涙が止まらなくなった。

  トゥルーデが持ち場を離れたその時ネウロイの奇襲を受け、基地が突如として半分消し飛んだ。
  エーリカはその直中に居た。
  多分、何が起きたか知る暇も無い程の瞬間的な死だから、本人の苦痛は無かった筈。
  現場を目撃し生存者の救助に向かった者から、そう慰めの言葉が掛けられた。
  唯一回収され、トゥルーデのもとに戻った遺品。それは彼女のそれと同じ、エンゲージリング。
  爆発の影響か、傷が付き、エーリカの血がこびりついていた。
  トゥルーデは胸に押しつけ、咽び泣いた。

  主無き空の棺を前に、うつむき気味の皆。
  いつもの陽気な501ではなく、厳粛、悲壮、怒り……それらが複雑に混じった、喪服姿の乙女達。
  遺体らしきものは遂に発見されず、普段エーリカが身に付けていた衣類を遺体の代わりに棺に入れたが、
  それで空虚な空間も皆の心も満たされる事は無く……
  ブリタニアを覆う冷たく澱んだ雨が、彼女の死を、より重く、現実として突きつけた。
  ミーナが控えめな声で弔辞を読み上げる。トゥルーデはこらえ切れなくなり、人目を気にせず泣いた。
  皆、どうして良いか分からない。失った、大切な仲間。
  しかしネウロイに向かう憎悪よりも喪失の気持ちが大き過ぎて、ひどく緩慢な葬儀となった。
  やがて棺は土に埋められ、墓標が立てられた。

  葬儀を終え、部屋に戻り、喪服を脱ぎ捨てる。実感が湧かない。
  ふと「どうしたの?」と彼女がひょっこり部屋に現れる気がして。
  トゥルーデは何度もドアを見た。
  戻る筈も無い。
  のろのろと服を着替える。いつまでも悲しみに暮れていられない。
  次こそ、憎きネウロイを倒す。エーリカの弔いの為にも。
  だけど、今は……そんな気持ちさえ起きない。
  遺品を棚の上にそっと置く。
  「どうして、どうして……私の大切なひとばかり」
  目覚めぬクリス。この世から文字通り消えてしまったエーリカ。
  トゥルーデは気付くと大粒の涙を目に溜めていた。
  これが現実なのか……夢であって欲しかった。

  その日からトゥルーデは部屋に籠もる様になった。
  訓練どころの話ではなく……ウィッチとしての魔力も精神的なショックの影響か急激に衰え、
  ストライカーを履いて空を飛ぶ事すらままならなくなった。
  ミーナは憐れみ、気持ちの整理が付くまで暫くの間地上勤務扱いとしてくれたが、
  実質的にトゥルーデは部屋に籠もったまま。
  食事もろくに取らず、ただただ、失った最愛のひとの事だけを考え、名を呼び、呆然と、天井を見上げた。
28002/02:2009/02/26(木) 03:18:40 ID:qcdDpfCY
  どんよりと曇り空が広がるある日の夕方。ドアがノック無しに開いた。
  トゥルーデは部屋に入ってきた姿を見て飛び上がった。
  「エーリカ? エーリカなのか? 生きて……」
  ベッドから飛び降り、二歩進んだ所でふと冷静になる。
  「いや、その眼鏡……ウルスラか」
  こくりと頷く、双子の妹。カールスラント軍支給の黒いコートが喪服に見える。
  「姉の墓に、花を」
  「スオムスからわざわざ?」
  「姉が死んで、私も悲しい。だから、休暇を取ってブリタニアに来た」
  ぽつりぽつりと喋る、エーリカの妹。
  「そうか。エーリカも喜ぶだろう」
  トゥルーデはふらふらとベッドに戻ると、腰掛けた。
  目の前に、愛しのひとそっくりの人間が居る。呼吸が乱れる。
  だが、所詮は全くの別人。そう、別人なんだと、トゥルーデは心の中で反芻した。
  「さっき、ヴィルケ中佐から聞いた。バルクホルン大尉が心配だと」
  ミーナの呼び方ひとつとっても、エーリカのそれとは違う、堅い響き。同じなのに、どこか冷たい声。
  「私は、少し、疲れただけだ。直に戻る」
  「戻らない。もう何日もこうしてると聞いた」
  「ミーナ、お喋りだな」
  ウルスラは溜め息を付くと、棚に近寄り、指輪を手にした。
  「おい、それは……」
  「知ってる。唯一の遺品だって。棺に入れなかったって」
  ウルスラは指輪を手に取ると観察した。
  「僅かに歪んでる。爆発の影響?」
  「知るか。早く元に戻せ」
  トゥルーデのぶっきらぼうな言葉にウルスラは反応した。トゥルーデの顔を覗き込む。
  思いがこみ上げて来たのか、今にも泣きそうな顔をしている。
  「どうして私がここに居るか、バルクホルン大尉は分かる?」
  「婚約者を亡くして、ショックで飛べなくなった惨めなウィッチを笑いに来たのか?」
  トゥルーデはぼそりと、自嘲した。ウルスラは複雑な顔をした。
  「姉は、そんな貴方を見たらきっと悲しむと思う」
  ウルスラの言葉に、トゥルーデはぐさりと胸をえぐられた気分になった。立ち上がり、ウルスラを睨み付ける。
  「じゃあどうしろと!? 最愛の人間を失って、お前は冷静で居られるのか?」
  無言で見つめるウルスラを前に、トゥルーデは気持ちをぶつけた。
  「すぐに仇とばかりにネウロイを片っ端から倒せ、とでも言うのか?」
  なおも無言のウルスラ。いとしのひとと同じ顔をしているのに、無表情。死者の国から来たのかと錯覚さえ覚える。
  「双子だからって何だ! 私とエーリカの何が分かる!? エーリカは……私にとって全てだったんだ」
  「その通り。双子だからって、私と姉は全然違う。貴方達の事は分からない。何も」
  ウルスラは、そう言うと、血まみれのままになっている指輪をハンカチで拭いた。
  「でも、大切な家族を失ったのは私も同じ。それだけは忘れないで欲しい」
  綺麗に汚れを拭き取る。指輪は傷だらけながらも、昔日の輝きを少し取り戻した。
  ウルスラは自分の指にはめた。
  「何するんだ、ウルスラ! それはエーリカの」
  トゥルーデの前に立つ。慣れない感じで、トゥルーデをそっと抱く。
  「私は、姉にはなれない」
  思わぬ行動に、怯んで身体が動かないトゥルーデ。
  「でも、今の貴方には、心の安らぎが必要」
  「そ、それは……」
  「だから私が、姉の代わりになる。今だけ。それで少しでも貴方の心が癒されるなら」
  「そんな事をして、エーリカが喜ぶとでも……」
  悔し紛れに顔を背けるトゥルーデ。だが、眼鏡を取り、棚に置いたウルスラを見て、気持ちが揺らいだ。
  いつも一緒に居た、いとしのひと。
  同じ顔。同じ髪の色。指輪も。
  気付くと、トゥルーデはウルスラを抱きしめ、唇を重ねていた。
  でも、すぐにトゥルーデは唇を離した。エーリカの唇はもっと薄く柔らかく、艶がある。
  ウルスラは長く北国で過ごしていたせいか、少し荒くざらついている。
  「姉を失って辛いのは私も同じ。その思いを、私達で少しでも共有出来れば」
  トゥルーデはウルスラの胸に顔を埋めた。
  そして、いとしのひとの名を、叫んだ。何度も。
28103/02:2009/02/26(木) 03:19:35 ID:qcdDpfCY
「なるほどね」
エーリカは、目覚めてまだ呼吸が荒いトゥルーデを優しく抱きしめながら、彼女が見た“夢”の内容を全て聞き、想像した。
「まったく、勘弁してくれ……悪夢にも程が有る。お前が死んだなんて」
「私の名前繰り返し呼んで叫んで泣いてたと思ったら、ウルスラの名前まで出て来て、どんな夢みてるのかな〜って」
「ならニヤニヤ見てないで起こせ! 私を現実に戻せ! 悪夢から解放しろ! 私がどれだけうなされたと思ってるんだ!?」
「ん〜。でもねえ」
エーリカはトゥルーデの胸にそっとすり寄ると、肌の匂いを確かめて、呟いた。
「夢の中でも……、そんな酷い夢を見ても、私をずっと大事に想ってくれるんだなって、安心した」
つかえ気味の溜め息で回答に替えるトゥルーデ。
「あと、ちょっとムカついたかな」
エーリカの言葉に、トゥルーデはどきりとした。
「な、何故」
「だって……」
「ああ、ウルスラだな。名前が出て来たから。さっきも言ったけど、夢だからな。夢だ。あれは夢。
実際彼女が来たからと言って……」
「私が死んだって時のある種シミュレーションでもある訳でしょ? ま、ウルスラがそんな事する筈無いとは思うけどね」
「ああ。私も彼女をお前の代わりにするつもりは無い」
「あんな夢見た後で、よくもまあ言い切れるもんだね、トゥルーデ」
意地悪な笑顔でトゥルーデの頬をすりすりと玩ぶエーリカ。
言葉に詰まり、天井を見るトゥルーデ。まだほんの少しだけ、涙が残っていた。息が少し詰まる。
エーリカはそんなトゥルーデの頭を自分の胸に埋め、優しく撫でた。
「でもトゥルーデ、悪夢よく見るよね。何か生活に不満でも?」
「生活に不満……少なくともエーリカ、お前との間には無いぞ」
撫でる髪がしなやかに指先を伝う。解けた髪をすくって、エーリカはふっと笑って言った。
「何処までも馬鹿真面目なんだね、トゥルーデ」
「ほっといてくれ」
「ほっとけないよ……だからこうしてる。だから、愛してるんだろうね」
「私もだ、エーリカ。愛している」
「ねえ」
エーリカに促されて、唇を重ねる。夢に見たものとは違う、エーリカのリアルな……そして懐かしくもあり、
いつもの柔らかな感触に、トゥルーデは安心し、酔いしれる。エーリカを抱く腕にも力が入る。
「夢で良かった。お前が居なくなるなんて、考えられないし、考えたくもない」
力が抜け、ぽつりと呟くトゥルーデをそっと抱き寄せると、エーリカは自嘲気味に小さく笑った。
「でも人生なんて、ただの夢みたいなもんじゃん?」
「ヤケに達観してるな、エーリカは」
「私とこうやってイチャついてるトゥルーデも、実は夢みてるだけだったりしてね」
「や、やめろ。恐い事言うな」
「だけど夢も色々あって、気に入る夢とかも、あるでしょ?」
「それは、夢によるとしか」
「私は、夢は好きだよ、トゥルーデ。私もトゥルーデの夢に入れてよ」
「どうやって?」
「まあ、トゥルーデ。悪夢を見たんだから、少し寝たら?」
「眠る気が起きない。あんな夢の後じゃ……」
「大丈夫。私が横にいるよ。少しは夢をみなきゃ」
「ヘンな夢を見るくらいなら……」
トゥルーデはエーリカをぎゅっと抱きしめると、もう一度口吻を交わした。お互いの存在を確かめる為に。
「ずっとこうして、いた方が良い。その方が幸せだ」
「言うと思った」
エーリカはふっと息をつくと、トゥルーデにキスし、唇を頬に、首筋に這わせた。
甘い吐息が、トゥルーデから漏れる。
「今夜は寝たくないから寝かさない、って事で良いよね?」
トゥルーデの答えをあえて唇で塞ぐと、エーリカはつつと漏れる雫を舌で絡め、愛おしむ行為に耽った。
全ては、トゥルーデの為に。
指先が絡み、指輪がお互いの存在を確かめ合い、腕が、身体が絡み付く。
夜が、ふたりが、まもなく加速した。

end
282名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 03:21:03 ID:qcdDpfCY
以上です。

番号振りは意図的です。行頭の空白も意図的なものです。
タイトルもあえて書きませんでしたが「dream a dream」です。
最初に書くとオチが分かってしまうのでw
ちなみにタイトルの元ネタは、CAPTAIN JACKの名曲ですね。
DDR某でお馴染みの方もいらっしゃるかと思います。

暗めの雰囲気の話もたまには良いかなと思って書きました。
でも最後はやっぱり幸せじゃないと。
これが私のSSのテーマと言うか。うまく言えないけどそんな感じですね。

ではまた〜。
283名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 05:31:19 ID:SVwsnXif
>>217
自分も234のように「一応アニメ作品(視聴者に大きいお友達が多いけど)なんだからそういう重い内容は…」という感じなんだが、
エイラーニャなのに百合的キャッキャウフフからかけ離れた重量感がのしかかって来て胸が苦しかった。
…とだけ言っておく。
(これはこれで読みものとしては読み応えがあるので悪くはない)

>>266
エーリカのように愛されたいと思っているヘルマかわいいよヘルマw

>>282
GJ!
なんという鬱展開…と思ったらオチはやっぱりそっちだったかww
コレは夢だよな?夢オチであって欲しい…と思わせる構成が秀逸でした。
284名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 10:05:37 ID:kvyyxUpj
>>282
GJ

好きなシリーズなだけにSSの1行目でショック受けた…
夢でよかったよ
285名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 10:34:34 ID:OK3ydgIb
よしDVD来た!!!これでかつる!
286名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 10:37:43 ID:hSbAVqy1
そういや予約してねえや
エイラーニャの秘め声聞いたらなんか力尽きた
287名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 11:03:05 ID:I7/FFeCR
OsqVefuYです。書いたまま投下できなかったSS投下します。
(本当は十日間投下はしないつもりだったんですけど、許してください)
>>283のあととか恐縮なんですが(もう見事にやられました!)エーゲルです。
2レスの予定。
タイトルは「放送日は何月何日?」です。


「起きろ、ハルトマン!」
 その言葉を言い終わるか終わらぬうちに、私はハルトマンの部屋のドアを開け放っていた。
 普段なら入る前にノックは欠かさないのだが、今はそんな悠長なことをしている時でもない。
 案の定、ハルトマンのヤツはまだ寝ている。ベッドのすぐ横の床にごろんと転がって。
 寝相が悪くて落ちたのだろう。落っこちても、そのまま気にせず寝ているのだろう。
 部屋の惨状も案の定、いつものとおりだ。
 私は床に散乱した脱ぎ散らかした衣服や、空いた瓶や、それに勲章(!)を踏まないように、
 ハルトマンの元までなんとか歩いていった。これじゃまるで千鳥足だ。
「おい起きろ、ハルトマン!」
「……………………」
「貴様、いったいいつまで寝ているつもりだ!」
「……………………」
「ほら、さっさと起きろ!」
「……………………」
 私が懸命に呼びかけるも、ハルトマンからの応答はない――いや、気持ちよさそうな寝息だけ。
 いくら体を揺すっても一向に不毛。
 たしか扶桑ではぬかに釘とかのれんに腕押しとか言うんだったか。そういう状況だ。
 私は深く息を吸いこんで――

「おー! きー!! ろー!!!」

 そう叫ぶと同時に、私はハルトマンの全身を覆っていた毛布を剥ぎ取った。
 現れたのは、あらわになったハルトマンそのもの。
 ――つまり、なにも身につけてはいない。下着すらも。
「わっ!」
 私は思わず声をあげてたじろいでしまった。
 その声でか、重く閉じていたハルトマンのまぶたがようやく持ちあがる。
 私のそれと目と目が合う。
「おはよう、トゥルーデ」
 寝ぼけた声でハルトマンが言う。
「おっ、おは――」
 私は挨拶を返そうと言葉を作ったが、どもってしまって、口がそれをうまく発してはくれない。
「――おはようにはもう遅い時間だ」
 なんとかそれだけ言って、私は手にした毛布を再びハルトマンの体にかけた。
 こんな状況じゃ、おちおち会話もできん。
 それに、私ばかりが意識しているようで嫌だったからだ。
「じゃあ、おやすみ」
「寝ろとは言ってないだろう!」
 まったくコイツは、いったいどれだけ眠れば気が済むんだ!?
 私は、今度は毛布を剥ぎ取らず、ハルトマンの耳元まで顔を近づけて叫んだ。
「大変なんだ、ハルトマン!」
「なにがぁ……?」
「実はストライクウィッチーズの――」
「2期が決まったんでしょ?」
「!」
「違うの?」
「いや、あっているが……」
 なんだコイツ、知ってたのか。しかも私よりも先に。
288名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 11:07:19 ID:I7/FFeCR
「じゃあ、おやすみ」
 そう言ってハルトマンは再び寝息をたて出した。
 私はつかの間、それを見惚れた。
 コイツ、黙ってれば結構可愛いくせに……って、そういうことじゃない。
「だから、起きろ!」
「あと7ヶ月……」
「さっさと起きろ!」
「あと4ヶ月……」
「ただちに起きろ!」
「あと1ヶ月……」
「いますぐ起きろ!」
「………………うー、んっ」
 ようやく私の声が届いたのか、ハルトマンは重い身をなんとか持ちあげる。
 というより、なんで何ヵ月単位で寝ようとするんだ、お前は?
 私が起こしにこなかったら、本当に寝てるんだろうから怖い。
「なんで? 別に予定ないのに……」
 心底嫌そうな顔を私に向けてハルトマンは言った。
「だって放送日までずっと先でしょ?」
「お前は放送日まで寝ているつもりか! 現在、誠意制作中だが、私たちにだってやることがあるだろ」
「たとえば?」
「たとえばって、ええとその……」
 あれ? 私たちはなにをすればいいんだろう?
 でも、こう言った出前、引き下がるわけにはいかない。
「お前にだって2期への抱負とかあるだろ」
「ほうふ?」
「そうだ。なにかあるだろう?」
 妹100人できるかな、とかそういうのが。
「抱負ねぇ……」
 と、ハルトマンは寝ぼけまなこで首をかしげて、しばし考えこむ。
 そして、言った。

「じゃあ私、今度こそエンディングはトゥルーデと歌いたい」

 なっ、なにを言い出すんだ、こいつは……!?
「前は私、ペリーヌとだったもんね」
「あ、ああ。そうだな」
「トゥルーデは宮藤とでよかったよね」
「べっ、別にそんな……」
「でも今度こそ私と歌ってくれる?」
 私の瞳をじっと見すえて、ハルトマンはそう問いかけてくる。
 ……なんだお前、もしかして妬いているのか?
「そ、それは……」
「それは、なに?」
 ハルトマンは身を起こし、顔を私に近づけてくる。
「それは、私が決めることじゃないし……」
 なにを言っているんだ、私は?
 言え! ほら、もっと別の言葉があるだろう。
「わ――」
 と、私は言おうとした。
 ――が、それはハルトマンの唇によって遮られた。
 つまり、キスされた。
289名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 11:08:56 ID:I7/FFeCR
「うんって言って」
 ようやく私の唇を離して、ハルトマンは言ってきた。
 けれど、まだ顔と顔が近い。その息が、私の顔にかかってくる。
「いや、その……」
 さっき私、言おうとしただろう。「わかった」って。
「『いや』?」
 そうしてハルトマンはまた私の唇を塞いだ。
 お前の勘違いだ。そう言おうにも、絡めとられた舌に自由はない。
「うんって言ってくれる?」
 ようやく唇を離して、ハルトマンはまた問いかけてくる。
 が、私はぜえぜえと息を乱すばかりで、なかなか声が出てこない。
「…………いやっ、だから……」
「うんって言って。じゃないと――」
 ハルトマンは立ちあがって、私に取っ組んでかかってくる。
 その際、毛布がはだけて床に落ちた。なにも身につけていないハルトマンの肌があらわになった。
 私は思わず、それから顔をそらして固まってしまう。
 その隙にハルトマンは私をすぐ傍らのベッドへと押し倒し、そうして仰向けになった私にハルトマンが馬乗りにのしかかってくる。
「おい、ハルトマン! 朝っぱらからなにをするんだ!」
「おはようにはもう遅いんでしょ?」
 ハルトマンは私の服に手をかけ、そのあと私はメチャア! クチャア! に――
 いや、このあとなにが起こったかは語りたくはない。

 ――とにかく、だ。
 まあそんなわけで、ストライクウィッチーズの2期が決定した。
 現在誠意制作中とのこと。
 放送日などはまだ私にもわからない。
 さらなる詳しい情報は続報を待て!



以上、というわけで2期決定おめ!
まさかこれが本当に投下できることになるとは。感無量です。
そして今度こそエンディングにエーゲルを!それに絡みを!つかそもそもふたりに出番を!
290名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 11:19:27 ID:OK3ydgIb
宮藤の秘め声自体はたいしたことないけど(百合的に、ある部分ではある意味リーネを裏切ってて笑ったけど




ボーナスのほうやばいやばい!エイラーニャもだがミオミーナ聞くだけでもいいよこれ!ミーナさんマジもっさんの妻


そしてカウババ基地の扶桑の魔女は自重
291名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 11:34:02 ID:1dB6xwb7
>>290
ボーナスって?
292名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 11:38:25 ID:OK3ydgIb
>>291
秘め声一人ないかわりに入ってるみんなから宮藤への手紙


やばいよこいつは、秘め声が微妙だった分かなーりくる

つーかリーネもやばい、これはもう……
293名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 11:46:08 ID:blwCa2AL
>そしてカウババ基地の扶桑の魔女は自重

アキストゼネコ氏のターンか
294名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 11:48:18 ID:1dB6xwb7
>>292
ありがとう

てか今dvd届いた!聞いてくる
295名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 11:53:30 ID:hSbAVqy1
>>292
芳佳への手紙なのにエイラーニャや少佐隊長とな?
296名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 11:59:09 ID:OK3ydgIb
>>295
聞けばわかる実際その通り
あとエイラーニャはマジで公式だわインタビュー読むと次は雨降って地固まる的な話やりたいとか言ってるし、二期これはキャラ変わらないな


てかミーナ→もっさんもわりと公式的になってるね
297名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 12:14:00 ID:hSbAVqy1
>>296
それを聞いて買う気がおきてきた
一巻の頃はあれだったがもう今じゃ普通に供給されてんのかな
298名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 12:31:08 ID:OK3ydgIb
ごめん、よく考えたらミオミーナと言うわけではないかも



でもミーナさんは確実に妻だな、浮気調査的なの依頼してるし
299名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 12:34:42 ID:1dB6xwb7
聞いてきた!
エイラーニャでした。サーニャが凄い嬉しそうだった。

てか記録集のは公式からエイラ勝利宣言?
300名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 12:38:24 ID:OK3ydgIb
>>299
いってるね勝利ってたしかにw
301名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 12:39:55 ID:aCoAkrh+
エイラーニャだと?
くそっ!!
去年から予約してるのになぜ明日なんだamazon!!
302名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 12:46:30 ID:vTRonryI
もっミーナもいいけどミー緒もね!
303名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 12:57:59 ID:VxtO5ahA
秘め声聞いたけど芳佳けっこうドライだな
304名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 13:41:14 ID:0485tm6J
キャラソンのトークまでお預けだと思ってたらここに来てそんな爆弾が投下されるとはな
305zet4j65z:2009/02/26(木) 14:49:18 ID:EAOtcnkt
昨日夜にAmazonから発送連絡来てたと言うのに今日朝から仕事で帰宅が24時近いとは……。
ついうっかりスレを覗いたら気になってもうペリーヌSSが進まない……。

早くカエリタイ。
306名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 15:17:10 ID:yR/nqRTH
>>290>>303見てるとなんか芳リネが凄く辛租なことになってそうで怖いんだが
公式はペリーネ推しなのか芳リネ推しなのか本当にわからん
307名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 15:18:53 ID:OK3ydgIb
>>306
芳リネも神だから安心して!
308名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 15:55:17 ID:N+2oai56
ひめごえ・・・うま・・・

職場で聞く物じゃないな…さーにゃんマジえろい
309名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 15:58:37 ID:qVMT+Utu
やはり芳緒はマイナーか
二話見直してSS書いてたけどモチベーション落ちちまったよ…
310名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 16:00:18 ID:N+2oai56
>>309
いいや俺が支持するね!
311名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 16:19:17 ID:s7ySeddU
>>309
俺もいるぜ!
312名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 17:21:42 ID:g4Q2x+kK
ミー緒分プリーズ!
芳緒もいいけど
313名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 17:27:48 ID:Xduquoic
ペリ緒もあるんだぜい。
314名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 18:09:18 ID:pgnHjc/q
CDのボーナストラックのミーナさんニヤニヤ!!!!やばい!!!!
ってかみんなやべぇ!!!ww
315名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 18:12:17 ID:ayubwI/w
秘め声の百合率の高さが異常だったけど戦闘記録集のエイラーニャ記事とかもなかなかだ
316名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 19:03:45 ID:rq9S6h4y
たまには幸せなデレデレもっペリ

「ふむ」
「ど、どうかなさったんですか。そんなにまじまじとごらんになって」
「ペリーヌって天使じゃないのか?」
「ひっ――」
「む……?ペリーヌ?おい、しっかりしろペリーヌ!」

「という夢を見たの」
「今夜は付き合います。ペリーヌさん」
317名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 19:55:22 ID:w2xtAIzv
ゲルトさんが完全に吹っ切れてて噴いた
318名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 20:36:36 ID:ow7VrSpr
エーゲルとかはあるんですかい?
319名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 21:00:47 ID:/2bQm+tE
さてあと3時間か、ペリーヌ。
320名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 21:03:55 ID:mwdY9Chk
ペリーヌの誕生日は28日だぞ。
明日はチュインチュイン。
321名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 21:25:09 ID:/2bQm+tE
勘違い・・・(^_^;)
322名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 22:20:41 ID:FPmvfcvE
>>321
ドンマイwww

でも…
2月誕生日なやつ多いな〜
323名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 23:00:12 ID:ohlMl3vo
ゲルトさんついに妹にしてしまったよな
324名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 23:28:01 ID:g4Q2x+kK
くそ、うらやましい
金さえ…金さえあったらなあ…バイト探してもないし… 
うぐぁああ
325名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/26(木) 23:54:59 ID:A6LSdn+2
お姉ちゃんが遂にお姉ちゃんとして覚醒してしもうたw
あとミーナ中佐必死過ぎワロタ

しかしネタが膨らむなあ。困った困った。
326名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 00:00:56 ID:NnjKOdOT
テリーヌ誕生日おめ!
327名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 00:02:08 ID:rFcYwOIk
リーネは予想ついてたらしいな。
328名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 00:03:52 ID:+wXk259R
ゲルトのシスコンネタがついに公式になったのか?
329名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 00:05:14 ID:Xh9WMgfd
というかシスコン設定は元々公式だったような
330名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 00:11:20 ID:aIm0NmhB
>>329
最終的にあそこまで暴走するとは……って製作の人達(や声優さん)が
資料集で言ってた気がする。

いずれにせよお姉ちゃんとエイラ大勝利。
331名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 00:30:40 ID:+wXk259R
エイラ大勝利ってのを楽しみにしとくか
332名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 00:36:26 ID:Ie6w6uhd
休暇を取ってエイラとオラーシャへ行くっていう時のサーニャが凄い嬉しそうだったw
333DlYSXlr+:2009/02/27(金) 00:44:54 ID:9EucQXgB
DVD、そんなに大満足な出来なのか・・・。
ストパニのBOXを買って金欠な自分はどうすればいいんだ・・・。

ところで、お題が余ってるみたいなんで、もう一つやらせてもらいますた。
芳リーネで二レスほど借ります。
334ラブ・キッチン(第34手 手料理):2009/02/27(金) 00:46:48 ID:9EucQXgB
玄関をくぐると台所の方から、とてもいい匂いがしてきた。
ペコペコのお腹が更にペコペコになって、グゥ〜っていう大きな音がなる。
私は靴を脱いで、台所へと急ぐ。
「ただいま、リーネちゃん♪」
「あっ、おかえりなさい、芳佳ちゃん♪」
台所に駆け込むと、白いエプロンを付けたリーネちゃんが私の事を笑顔で迎えてくれた。
その笑顔に甘えて、私はリーネちゃんの胸に飛び込んで、顔を埋める。
「はぁ〜、疲れたぁ」
「ふふ、いつもお疲れさま♪」
リーネちゃんは私の頭をゆっくりと撫でてくれた。
お母さんみたいな優しい手つきが凄く気持ちいい。
「お腹減ったなぁ・・・リーネちゃん、何作ってるの?」
「今日はね、サワラが安かったから、前に芳佳ちゃんが教えてくれた煮付けにしてるんだよ」
「わぁ〜、美味しそう♪」
魚の煮付けは私の大好物。
難しい扶桑料理をキチンと覚えていてくれるなんて。
リーネちゃんは本当に優しいな。
「もう少しで出来るからちょっと待っててくれる?」
「うん!」
リーネちゃんの言葉に頷いてから、私は居間に腰を下ろした。
お茶を啜りながら、台所をテキパキと動き回るリーネちゃんの後ろ姿を眺める。
ぽんぽんと可愛らしくはずむおさげ。
チラチラと髪の毛の裾から覗く綺麗なうなじ。
ふわふわと揺れる白いエプロンの上からでも分かる小さなお尻。
無防備なリーネちゃんの後ろ姿はとっても可愛くて・・・そして、少しいやらしくて。
ちょっとだけイタズラしたくなってくる。
ムラムラした気持ちが我慢できなくなって、私は忍び足でリーネちゃんの後ろに回った。
335ラブ・キッチン(第34手 手料理):2009/02/27(金) 00:47:25 ID:9EucQXgB
「・・・リーネちゃん♪」
「きゃっ?!」
ぎゅっと抱きつくとリーネちゃんが小さく悲鳴をあげた。
まるで子猫みたいな反応に、もっと意地悪したくなってくる。
私はすっと胸に手を伸ばした。
「ふふふ。リーネちゃんの胸、フカフカだね♪」
「よ、芳佳ちゃん・・・」
恥ずかしそうにリーネちゃんが私の方を向く。
ちょっと潤んだ瞳に何だか胸が一杯になった。
「もぅ・・・今、ご飯作ってるんだからね?」
「うん、分かってるよ・・・でも、ご飯の前にリーネちゃんをつまみ食いしたいな♪」
「ひゃん!」
耳元に軽く息を吹きかけると、リーネちゃんが手に持っていた菜箸が床に落ちてコロコロと転がった。
そのままうなじを優しく舐め上げる。
「ひゃっ・・・やぁん・・・」
「リーネちゃん、カワイイ・・・」
顔が火照るのを感じながら、私はリーネちゃんを静かに押し倒した。
「私、もう我慢できないよ・・・いただきま〜す」
「だ、ダメだよぉ・・・あっ、あぁんっ!・・・」

────────

「この煮付け、とっても味が染みてて美味しいね」
ボロボロに煮崩れたサワラの身を、私はご飯と一緒に口に運んだ。
煮汁が無くなるくらいまで煮込まれた塩辛い煮付けに、ご飯がよくすすむ。
「もぐもぐ・・・うん! ご飯と一緒に食べると本当に美味しいよ!」
明るく話し掛けてみるけど、リーネちゃんはムスっと拗ねたまま。
何も言わずに黙って、お味噌汁を啜っている。
「あはは、ちょっと、食べ過ぎちゃったかな・・・?」
「ふん、だ。お料理の邪魔する芳佳ちゃんなんて知らない!」
「ごめんなさい・・・」
う〜ん、どうやって許してもらおうかな・・・でも、怒ったリーネちゃんもカワイイ。
なんて事を考えながら、私はリーネちゃんの手料理をしっかりと噛み締める。
味はイマイチだけれど、私は凄く幸せだった・・・。
336DlYSXlr+:2009/02/27(金) 00:49:04 ID:9EucQXgB
おしまい。
山なし意味なしオチなしでスマン・・・。

二期は芳リーネとエイラーニャの新婚さんいらっしゃいをテーマで是非、お願いしたい。
337名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 00:55:17 ID:0VkYmHw5
ハルカは完全にアホネンの方向に進化してしまうのか
338名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 00:57:15 ID:aIm0NmhB
>>336
GJ! 甘々ですなあ。
もしかして貴方は既にDVDの秘め声CDを聞いているの? と思ってしまったw
お見事です。
339名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 01:03:37 ID:ZwmkvVen
甘ーいのもいいけどせっかくだから見てみたい
自分がかなわないような新おっぱいに見とれたよしかに嫉妬するリーネ
エイラがサーニャを怒るところ
慕われるペリーヌ
340名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 01:26:44 ID:+1QyJYd3
>>336
GJ!いいねえ平和でウフフで・・・
六巻明日か、待ち遠しいのぉ
341名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 03:07:57 ID:EDUqsu92
秘め声のせいで少佐隊長に今更目覚めてしまったよ

ハルマフジにつながるネタがなかったことの残念さがかなり薄れるほどだ



きっとミーナさん もっさんが扶桑に宮藤を連れてこようと向かっていった時も表面状は普通を装っていたけどもっさんが他の女の子といい関係になっているんじゃないかと内心ハラハラしていたんだろうな
きっとその間ちょっと仕事に手がつかなくなったり、溜息が増えたりしたんだろうね!!!



もっさんが帰ってきた後、宮藤との関係を聞こうとするんだけど、もっさんが
「すまなかったなミーナ、待たせてしまって(兵の補充的な意味で)」
というセリフを聞いて顔真っ赤になって何も言えなくなるだろうね!

で、その様子を見たもっさんが
「どうした?熱でもあるのか…? ああ、すまなかったこんな様子(熱をだす的意味)になるなんて、一人ではつらかっだろう?(仕事的なry)」

みたいなセリフにミーナさんの純情なハートでは耐え切れずに、幸せそうに気絶しちゃうんだろうな!!



ミーナさんマジ乙女!! ピュア!! プラトニック!!!可愛い!!!




あーーー深夜なのにテンション上がってきた!
もっさミーナ最高!!!!!!!!いやっほぅーーーーーーーーー!!!
342名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 06:31:32 ID:AQl4n4KQ
もっさもさミーナ!!!
343名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 06:46:03 ID:XC5rQRC/
ど、どこがもっさもさなんですか?////
344名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 07:12:08 ID:wxJruffr
もっさんへの愛さ!
345名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 08:15:35 ID:gJR9x5I/
>>343
分かってるだろ? もちろんあれだよ……
本編中一人だけ風呂に入ってないのも全部毛が……
えっ? ちょっ!!やmくぁwせrftgyふじこlp;@
346名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 08:16:26 ID:gJR9x5I/
まさかの下げ忘れ……
すまん……
347名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 09:40:28 ID:VNBRGUj9
sageは無くとも下毛は有りと申しましたか
348名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 10:11:22 ID:JwmPlXl4
>>347
上手いコト言ったつもりかコノ野郎

でも本編で風呂シーン無かったせいか
ミーナさんメガミのピンナップ大分優遇されてたような…
349名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 10:47:41 ID:E9aMkKIr
でもなんか坂本さん、ていうか坂本さんに限らず扶桑のウィッチって
どいつもこいつも散々同僚の女を無自覚に惚れさせておきながら最終的には普通に男と結婚して
俺達や、惚れた女を泣かせてるようなイメージがあるのは何故なんだろう
おそらく扶桑のウィッチが本編だの設定だので他国のウィッチに比べて男との絡みが多そうなのがそのイメージの原因だと思うが

マジでガチなイメージなのはハルカとみっちゃんくらいしかいない、芳佳も智子もなんだかんだで男に行きそうだから困る
芳佳のおっぱい魔人は性的な興味では無いって明言されてるし智子はノーマルになりたいって明言してるし

リーネとかペリーヌとかミーナとかハルカとかジュゼッピーナとか、泣かされるんだろうなあ

こんなこと考えてたらせっかくの休みなのに死にたくなってきたから忘れるために二度寝しよう
350名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 10:49:02 ID:0Q/gn5NP
もっミーナの良さに今頃気付くとはな...。
あの二人は良いよ、大人っぽいミーナさんがもっさんの前でだけはアタフタしてる所想像するのも良し、
アダルティーな二人もまた良し。
351名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 11:54:33 ID:V2oPaewF
もっミーナ今更だよなw
第3羽のティータイムの時点でこの二人は『夫婦』と気付いた紳士はこのスレには沢山居ると思ったのに。
ドーベルマンに鳴かされる銀狼サイコーじゃないか
352名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 12:14:09 ID:DrZKRO3M
聞きたいことあるんだけどね
スオムスはアニメの時代でもまだせんそうしてるの?
353名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 12:24:51 ID:/jxVJTEg
>>352
してるよ。ていうか絶賛抗戦中だよ

あとアニメ二期決定
354名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 12:26:46 ID:dIiE2XJW
ミーナとの関係は精神的なものだろう
355名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 12:28:39 ID:/jxVJTEg
>>354
ああ
問題はミーナさんの方は確実に肉体関係オーイェーを持ちたがっているということだ
356名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 12:31:31 ID:EgDnZGwh
>>349
一度男と結婚するがやっぱりミーナの事が・・・

ってとこまで妄想した
357名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 12:34:56 ID:dIiE2XJW
恋愛とはまた違うんじゃないかな
ミーナにとっての少佐は精神的支柱とかそういう感じ
358名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 12:35:56 ID:2g8kvJ/b
その為の二次創作なんだからあんまり気にしなさんな
あとスタッフ(二期はわからんが)は基本的に男イラネだし不必要に男と絡ませたり
後日談で結婚したとか、人気がなくなって売り上げが落ちる要因になりそうなことはしないだろ
誰だって稼ぎが少なくなるのは嫌だしな
今の時代、消費者のニーズを無視するのはいないだろうし
359名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 12:36:59 ID:z6hGe9Hh
イチャイチャしてるだけで満足してます
360名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 12:37:59 ID:/jxVJTEg
>>357
でも若くて可愛い子とイチャイチャしてるんじゃないでしょうねって言ってたぞ
361名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 12:38:36 ID:0Q/gn5NP
精神的に頼りにしてるってのがまた良いんだよ。
しかし今回の秘め声は明らかに恋愛感情持ってるとしか思えない。不安なミーナさんかわいい。
362名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 12:38:46 ID:n2aHNec6
バレのせいであまり盛り上がらない二期発表だな
363名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 12:40:41 ID:0Q/gn5NP
あとあれだな、記録集にも
ペリーヌとミーナがもっさん好きなのに理由はいらないとか書いてたしな。
もっさんが天然モテキャラなのは公式みたいだ。
364トゥルーデ撃墜部隊:2009/02/27(金) 12:44:33 ID:B5q2287O
もっミーナ書いてたら、秘め声のせいで一つ小ネタができました。
お昼の暇潰しにどうぞ





『宮藤さん、ちょっと調べてくれるかしら』

ミーナ中佐からのテープの最後に、こんなメッセージが入っていた。

…ど、どうしよう。
これっていわゆる…浮気調査?だよね?
そんなの私にできるのかな。もし見つかったらきっとすっごく怒られるし…

…でも中佐が私に頼んでくれるなんて滅多にないし……これは私にしかできないことなのかな。なんだよね。
よし!宮藤芳佳、坂本さんの浮気調査に行ってきます!!


―――

着いた、坂本さんがいるウィッチの養成所だ。

「そこ、休むなぁ!ラスト10本ッ!」

坂本さんの声だ。懐かしいなぁ。
みんな苦しそうな顔で校庭を走ってる…わかるなぁ、坂本さんの訓練はキツいもん。
……あ、あの子胸おっきい…リーネちゃんやシャーリーさんには負けるけど。いいなぁ〜…おっきい…えへへ……

…はっ!違う違う私は浮気調査にきたんだよ!おっぱいに見とれてる場合じゃないって!

ん?女の子が一人転んじゃったみたい。
ああ、おでこ擦りむいちゃったんだ。治してあげたいな、でも出てったら見つかるし…

「どうした、大丈夫か?」

あ、坂本さんが見てあげるんだ。
……さ、坂本さん…顔近すぎます!女の子顔真っ赤だよ!

「これくらい、舐めておけば治る」

坂本さんはそう言ってその子のおでこを…ぺろっ、と!

365名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 12:46:09 ID:B5q2287O
相手の子ペリーヌさんみたいに真っ赤になっちゃったよぅ。あわわ、周りの子もぽ〜っとしてるし。

…そういえば私も、あれくらい顔近付けたことあったな。中佐にバレないようにしなきゃ。

あっ、また転んだ。今度の子は足を捻っちゃったみたい。
坂本さんはまた近づいて……
はわわわ!!お、お姫様抱っこ!!
坂本さんそれはダメです!坂本さんがやるとかっこよすぎます!
ああ、あの子すごく幸せそうだよ…目がキラキラしてる…

「ん?誰かそこにいるのか?」

ぎくっ!!ば、バレちゃった!

「お、お久しぶりです坂本さん!」
「宮藤!どうしたんだこんな所で」
「た、たまたま近くまで来て…その子の怪我、私が看ます!」
「そうか、よろしく頼む」

ふう…なんとか誤魔化せたかな。
でもこんな調査書送って、ミーナ中佐大丈夫かな…


―――
inカールスラント

「ミーナ、宮藤から手紙がきてるよ〜」
「ほんと!?ありがとう、貰っていくわ!(バタバタ)」
「…?ミーナ、どうしたんだ?」
「さあ…」

……

「ネウロイだ!出撃準…って、ミーナ!?」
「ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ…出るわ!!美緒の馬鹿ぁぁーーッッ!!」
「ミーナ速っ!!」



その日、ミーナ中佐は音速を超えたそうです。








おしまいです。もっミーナエロ作業に戻ります
お目汚し失礼しました〜
366名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 14:07:49 ID:EDUqsu92
>>365
もっさんジゴロすぎるw
そりゃミーナさんもあせるよな




甘エロいもっミーナに期待していますね!
367名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 14:37:08 ID:DrZKRO3M
>>365
もっミーナっていいな、って今更気づいた
>>352
スオムスが戦争中でしかもサーニャも一緒にいるだと?!
二期の舞台がスオムスの可能性があるってことだなはははははh
368名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 14:48:46 ID:gJR9x5I/
さっきDVD届いて
今、秘め声聞いたがこれは……
言われてたようにエイラーニャがガチだ!!

というか、2期に繋げる気満々だな
こりゃ2期の舞台は、扶桑近海(扶桑海とか、太平洋、オホーツク海も入るかな)
になるのかな?

エイラーニャは、スオムス→オラーシャ→扶桑
ルッキーニは船にもぐりこんで、
シャーリーはそれを追いかけてアフリカ→扶桑
カールスラント3人組は……まぁ来る理由は、いくらでもあるし……
(お姉ちゃんとかミーナさんとか……)

これは扶桑集結フラグ立ってるよな……

なんかすごい楽しみになってきた!!
2期いつやるんだろ……
369名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 15:14:42 ID:t/k7kGqn
芳佳が新婚夫婦を尋ねてまわる話がいいな
370名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 17:57:31 ID:ocXmgaGi
今の所エイラーニャ一組しか結婚できてないから1クール話もたない
371名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 18:19:06 ID:zoJU8jQY
DVD話で皆様盛り上がりの中、こんばんは。mxTTnzhmでございます。
秘め声CDはネタの宝庫ですね! 今度何か書きたいですね。

さて、今回は前回の反省(?)を踏まえて、SSを書きました。
保管庫No.450「ring」続編になります。
372idol talk 01/05:2009/02/27(金) 18:19:54 ID:zoJU8jQY
夜間哨戒任務担当のウィッチが飛び立ち、やがて消灯時間を過ぎた。皆それぞれの部屋で眠りに就き、静寂が基地を支配する。
時計の短針が十二の位置を過ぎた頃、ふたつの影が廊下を忍び歩く。こそこそと台所に着き、冷蔵庫を開けたりと何やら始めた。

そこに、たまたま訪れたトゥルーデとエーリカ。怪しく動く人影を見つけ、誰何する。
「あ、バルクホルンさんにハルトマンさん」
台所の奥から出て来たのは芳佳とリーネ。上にパジャマとカーディガンを申し訳程度に羽織っていた。
「なんだ、宮藤にリーネか。こんな暗闇で何をしている。灯火管制も無いんだし、明かりを付けろ」
トゥルーデはそう言うと、ぱちりと台所の電灯をつけた。
「誰か盗み食いでもしてるのかと思ったよ」
エーリカがくすっと笑った。
「ち、違います。その、ちょっとお夜食でもどうかなって、リーネちゃんと話ししてて。ね、リーネちゃん」
「そ、そうなんです。芳佳ちゃんの言う通り、だからちょっと何か無いかと思って……」
慌てる芳佳とリーネ。エーリカは二人をじーっと見た。
首筋や服の隙間から見える痕を見て、直前まで“ある行為”に没頭していた事を見抜く。
「なるほど。お腹減ったんだ。そりゃ減るよね」
にやりと笑うエーリカ。
どきりとした芳佳とリーネは、露骨にあたふたとして、話題を替えようと質問した。
「と、とこで、お二人はどうして台所に?」
「ああ、ええっと」
トゥルーデは答えに詰まった。まさかエーリカと派手に愛し合ってるうちに小腹が減った……などとは口が裂けても言えない。
「私達もミヤフジ達と同じかな〜」
横であっさり言ってしまうエーリカを前に、今度はトゥルーデが慌てた。カールスラント組も着ているものは芳佳達と大差ない。
「いや、その、何だ」
戸惑うトゥルーデを後目に、エーリカはあっけらかんと食事当番の二人に言った。
「そうだ、ついでに私達の分も何か作ってよ」
「え?」
「ブリタニアのサンドイッチでも、扶桑のオニギリでも何でも良いよ」
「は、はあ……」
「食材何か有ったかなあ……ありゃ、残りご飯ちょっとしかない」
ごそごそと冷蔵庫の中を探す芳佳。
「あ。残ってる野菜と、豆腐、魚が有りますね。この魚まだ新鮮だし……簡単な鍋でも作りますか」
「鍋?」
「野菜と魚を一緒に出汁で煮て、食べるんです。ちょうど今夜は少し冷えてるし、身体暖まりますよ」
「何でも良いよ。よろしく〜」
「分かりました。すぐに」

十分程経って、台所に扶桑の醤油の香ばしい匂いが立ちこめる。
「醤油仕立てにしてみました。ブリタニアで獲れた新しいタラが有ったので、タラちりを作りました」
「タラチリ? ガリアのブイヤベースみたいなものか?」
「さっと煮て、みんなで鍋を囲むんです。美味しいし、楽しいですよ」
「へえ。面白そうだね、トゥルーデ」
「面白い食べ物と言われてもな」
「はい、お待たせしました」
テーブルで待つ一同のもとに、芳佳が鍋を持ってきた。
扶桑から持ち込まれた土鍋で、ぐつぐつと煮えるタラちり。
あり合わせの葉物野菜と薄く切った人参、豆腐とぶつ切りにしたタラが入って出汁で煮込まれ、盛大に湯気を立てている。
「食材少ないしお夜食だから、ちょっと見栄え冴えないですけど、おいしいですよ」
「すごいね、芳佳ちゃん。なんだか美味しそう」
「食べてみて。熱いから気を付けてね。あ、皆さんの分、取り分けてさしあげますね」
「すまんな、宮藤」
「ありがと」
小皿に取り分けられたタラちり。沸騰が止まらない鍋を、トゥルーデはまじまじと観察した。
「成る程、鍋の素材は陶器製か。と言う事は保温性が高く、弱火で長時間煮込む料理に適して……」
「トゥルーデ、観察は良いから。ほら、ミヤフジが中身よそってくれたよ」
「ああ。ありがとう」
今度は小皿に取り分けられた食材を見る。
「ふむ。さっと火を通して素材の味を……」
「トゥルーデ。良いから食べようよ」
台所で鍋を囲む四人。深夜の不思議な光景。ちょっとした鍋パーティーの始まりだ。
373idol talk 02/05:2009/02/27(金) 18:20:21 ID:zoJU8jQY
「あつっ」
「リーネちゃん大丈夫?」
「平気。ちょっと焦っちゃった」
ちろっと舌を出して笑うリーネ。
「ふむ。さっぱりしてて美味いな。タラもほくほくしてて良い味だ」
タラの身をつついて、ふっと微笑むトゥルーデ。
「ありがとうございます」
「おいしい。やるね、ミヤフジ」
「ありがとうございます。私、扶桑料理くらいしかできないから……」
「母国の料理が得意なのは良い事だぞ。ここに居るエーリカなんて、そりゃもう……」
「そうそう聞いてよミヤフジ、リーネ。トゥルーデとミーナったら酷いんだよ。私に『料理を作るな』ってサインまでさせてさ」
「そうなんですか?」
「エーリカ、お前が作るのは料理じゃない。別の何かだ」
「いとしのトゥルーデの為に、愛情たくさん込めてるんだけどな〜」
「他に余計なモノを沢山入れてるだろう」
「バレた?」
「あのなあ。そのせいで私達がどれ程……」
「仲良いですね、お二人って」
「さすが婚約されてるだけありますよね」
リーネと芳佳に笑顔で言われ、少し困惑の表情を浮かべるトゥルーデ。
「ま、まあ……その」
「ねえ、トゥルーデ」
エーリカに左手を掴まれ、二人揃って指輪を見せられて、
「うん」
と顔を赤らめて頷くトゥルーデ。改めて見せつけられて、はわわ…と言葉を失う芳佳。
「私、お二人が羨ましくて。戦績も凄いですけど、そういうところ、しっかりしてると言うか、すごいと言うか」
リーネが芳佳からおかわりを取り分けて貰いつつ、目の前のカールスラントのバカップルに語りかける。
「羨ましい? なら、リーネとミヤフジも指輪付ければどう?」
「えっ」「えっ」
全く同じリアクションをする芳佳とリーネを見て苦笑するエーリカ。
「ミヤフジ達二人にはまだ早……くもないと思うんだけどな」
「えええ、そんなあ。私、リーネちゃんと一緒の指輪、つけられません」
「それはどうして?」
不思議そうな顔をするエーリカ。
「芳佳ちゃん、どうして!?」
意外な答えを聞いて芳佳をなじる格好になってしまうリーネ。
「だって。指輪ってとっても大切なものだから。食事当番とか洗濯してるときに無くしたらどうしようかと思ったりして。
だから、もしふたり一緒のものが有ったとしても、普段は身に付けずに、大切にしまっておきます」
「そう言う意味か。ミヤフジらしいね」
「真面目だな、宮藤は」
「芳佳ちゃん……」
「指輪はともかく、リーネちゃん、大事な事には変わりないから。その……ええっと」
「芳佳ちゃん」
真っ赤な顔をしてうつむく芳佳とリーネ。
「ヤケちゃうねえ。鍋よりアツイよ、この二人。ねえ、トゥルーデ」
「エーリカ、ひやかすな。二人とも困ってるじゃないか」
「私は何も言ってないよ」
「二人には二人の事情が有るだろう」
「事情って? どう言う事? 私わかんな〜い。教えて?」
「お、お前と言うやつは……」
「旦那様が怒った〜♪」
いつもの“夫婦漫才”を繰り広げる二人を前に、苦笑してしまう芳佳とリーネ。
「あの、バルクホルンさん。おかわりいかがです?」
「え? ああ。もらおう」
「はいどうぞ。他の方もどうぞ。具を全部食べたら雑炊にしましょう」
「雑炊? 残りの汁でリゾット?」
「具の味がしみて美味しいですよ。お腹一杯になれるし」
「扶桑の料理は無駄が無いんだね〜」
374idol talk 03/05:2009/02/27(金) 18:20:47 ID:zoJU8jQY
芳佳は具の無くなった鍋を台所に持って行くと、余っていた冷やご飯をだし汁に入れ、ことことと弱火で煮込む。
最後にゆるく溶いた卵をふんわりと絡め、やさしい味に仕上げた。
皆の前に出された、ふつふつと煮立つ雑炊は、さっきの鍋とは違って湯気も香りも柔らかだ。
「見た目と違って凄い熱いから気を付けて下さいね。ふーふーして冷まして下さいね」
「確かに、沸騰してるな。舌をやけどしそうだ」
「トゥルーデ、ふーふーしてあげようか?」
「え? い、いい。自分で冷ます」
「照れちゃって」
「エーリカも気を付けろよ。熱そうだ」
「大丈夫大丈夫」
向かいの席では、リーネがスプーンにすくった雑炊を芳佳に食べさせている。
「芳佳ちゃん、はい、あーん」
「お、あふひ……ありがと、リーネちゃん」
エーリカは少し冷ましてぱくっと食べた。
「おいしい」
横で一口食べたトゥルーデは、見た目以上の味の濃さと繊細さに驚いた。
「宮藤、器用だな。将来、いいお嫁さんになれるぞ」
もう一口食べ、素直な感想を述べる。
「お嫁さん、ですか……」
「何考え込んでるんだ宮藤」
「い、いえ、何でも無いです」
「エーリカも、何ニヤニヤしてるんだ。また何かろくでもない事考えてただろ」
「ん〜。何にも。どっちがどっちのヨメなのかな〜って」
「何?」
「えっ」
「わ、私達は、その……」
「リーネはお母さんタイプだけどいざとなると周り見えずに一直線なとこ有るからね。ミヤフジはミヤフジで扶桑の魔女だし」
「出身が関係あるのか」
「ミーナが前に呟いてたじゃん。『これだから扶桑の魔女は』〜ってさ」
「そう言えばそうだな」
「え? 扶桑のウィッチって、何かいけないところでも有るんですか? 他の国のウィッチに比べて何か劣ってるとか」
「そう言うんじゃないよ。なんて言うか、気性? 気質? 性質? なんだろうね」
「はあ……。そう言われても、何だかピンと来ませんね。私、坂本さんみたいに武芸に優れてる訳でもないし」
「勿論少佐とお前は違って当たり前だ。ただ、武芸とかではなく、何というか……分かるだろ、リーネ?」
「はい。何となくですが、わかります」
トゥルーデに賛同するリーネ。
「リーネちゃん、どう言う事? 私分からない。教えて?」
「え? そ、そんなあ」
「ミヤフジも罪なウィッチだね。さすが坂本少佐の愛弟子って感じだよね」
「ああ」
ひとり訳が分からずおろおろする芳佳。
「えええ。私、何かいけない事でもしました?」
トゥルーデは軽く溜め息を付くと、芳佳を諭した。
「リーネが困ってるだろ。もっと彼女を大切にしてやれ」
「え? は、はい!」
そこでエーリカがすかさず提案する。
「じゃあさ。シャーリーに言って、婚姻届貰って来て早速……」
「ちょ、ちょっと待って下さい! いきなりそこまでは」
「芳佳ちゃん、私とじゃ嫌なの?」
「違うよリーネちゃん。そう言う意味じゃなくて。どう言う風に書けば……」
「やっぱりヨメがどっちかーって事なの?」
「うええ。違うんです、そうじゃなくて」
「エーリカ、あんまり宮藤を追い詰めるな。困ってるだろ」
「私達みたいにはっきりさせたら、リーネも喜ぶかな〜なんて」
「お前なあ」
「私は……今のままでも十分幸せですから」
ぽっと顔を赤らめて呟くリーネ。
「リーネちゃん」
「芳佳ちゃん」
375idol talk 04/05:2009/02/27(金) 18:21:19 ID:zoJU8jQY
エーリカはそんな二人を見てにやけている。
「良いねえ、初々しくて」
「エーリカ、二人で遊ぶな」
「トゥルーデだって、真面目な顔してミヤフジ追い込んでたじゃーん」
「何? 私はそんなつもりじゃ。なあ、宮藤?」
「え? は、はい」
「トゥルーデって、見ての通り馬鹿真面目だからさ。私もその辺ちょっと苦労してるんだよ。まあ、そこが可愛くもあるんだけどね」
「エーリカ、二人の前で何て事を……」
「事実だし〜」
頬を紅くしてエーリカに何か言おうとするトゥルーデを見て、芳佳とリーネはくすくすと笑った。
「ん?」
「どうかした?」
「やっぱり、お二人はお似合いと言うか、運命のひとですよ」
「さすが婚約指輪してるだけありますよ。ね、リーネちゃん」
「ホントだね、芳佳ちゃん」
「何だ二人揃って。ヘンに納得するな」
「良いんだってトゥルーデ。二人からもお墨付き貰った事だし」
「ううっ……」
勢いを削がれて、仕方なく雑炊をぱくつくトゥルーデ。ちらりと目をやると、エーリカはトゥルーデを“天使の笑み”で見つめていた。
何とも言えない気分になって、テーブルの下で、そっと手を伸ばし、ふたり、きゅっと握った。
顔が火照る。もう一度エーリカを見ると、意味ありげな顔で笑ってる。何かが吹っ切れそうになるトゥルーデ。
そこに、二人のウィッチがふらりと現れた。
「あレ? 宮藤にリーネ……と、バルクホルン大尉にハルトマン中尉。四人で何やってンダ?」
「なんか、いい匂い……」
「あ、エイラさん、サーニャちゃん」
「おお、お前達。どうした?」
「イヤ。ちょっと腹減ったナ〜ってサーニャと話ししテ……その、何か食べるモノ無いかな〜ッテ」
「お雑炊有るけど食べます? 私達の食べかけですけど」
「ナンダ? 四人して夜中に料理食べてたのカヨ? イイナア。私達も呼べヨ〜」
「だって、みんな寝てたり任務が有ったりしたから」
「今夜はサーニャは夜間シフトじゃないンダゾ?」
「ともかく、二人ともこっちに来い。少し食べるといい」
「そりゃドウモ」
リーネが戸棚からスープ皿とスプーンを追加で持って来て、芳佳が雑炊を注ぐ。ほんわかと湯気がのぼる。
「まだちょっと熱いから気を付けて下さいね」
「ありがとナ。サーニャ、ほらコレ」
「ありがとう」
雑炊を口にする北欧コンビ。
「扶桑風のリゾット……ナノカ?」
「そうかも知れないですね。鍋の残りですけど」
「美味しい……」
「ちょっと変わってるナ。美味いケド」
「まだありますから、宜しければどうぞ」
「ちょうどいい感じダヨ。ありがとナ」
そこに、更に来客が加わった。
「あらみんな、どうしたの? こんな夜中に」
「ミーナ中佐。坂本さんもどうしたんですか?」
「それはこっちのセリフだ。お前ら台所で何をしている」
「お夜食食べようって、軽く作ってみんなで食べてたんですけど……お雑炊ならまだ有りますよ。如何ですか?」
「そうなの。じゃあ、私達も少し頂こうかしら」
「夜中にあんまり食べると……」
「少しなら大丈夫よ美緒。それにこう言うもたまにはいいじゃない……あら、ありがと」
結局、ほとんどいつもと変わらない感じの賑やかな食卓になってしまった。
376idol talk 05/05:2009/02/27(金) 18:22:42 ID:zoJU8jQY
夜食後。
任務の都合で「夜食会」に参加出来なかったシャーリーとルッキーニ、ペリーヌの分の雑炊をスープ皿に取り分けて
メモを書いておくと、芳佳とリーネで食器などを手際よく片付ける。
「楽しかったね、リーネちゃん」
「うん。美味しかった。芳佳ちゃん」
「さて。片付いたし、もう一度寝よう?」
「行こう」
二人手を取り、指を絡ませ……部屋へと戻った。

end

----

以上です。
今回は単純に「ほんわか」を目指しました。
それ以外、特にヤマもオチも有りません……いや、いつも有るのかと聞かれればorz
ただ、夕食で鍋食べてる時に、501だったらどうなるかなーとか
もし、あの4人ならどんな感じになるかな、とか、真夜中だったら……
とか妄想した結果がごらんの有様だよ! と言う事で。

アニメ二期他、色々決まったそうで、これからも続くみたいで楽しみです。

ではまた〜。
377名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 18:23:50 ID:vDsOACEn
mxTTnzhmキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!! 
久しぶりだw
エーゲル待ってました
378名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 18:54:10 ID:l22OedER
袋とじとか不器用な俺に対するいじめですか・・・
思いっきり絵破いちゃってもう一冊買う破目になっちまった
379名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 19:01:27 ID:wxJruffr
>>376
GJ!いいニヤニヤでした!いいよねこんな雰囲気
嬉し恥ずかし真夜中お鍋…最高のシチュだな

>>378
不器用ってつらいよなあ
俺も過去いくつの袋綴じを破ってきたことか…
380名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 19:39:32 ID:vDsOACEn
袋綴じってどうやって切るのがいいかね
381名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 19:40:04 ID:ol9lAmQ+
>>378
フラゲあったのか!
くそー雪ふってたしどうせないだろうから明日でいいと思ったのが甘かった
382名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 19:44:48 ID:/jxVJTEg
カッター使えよ
383名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 20:04:31 ID:OMiP3pJh
やっと届いた!
秘め声やべえwww個人的にはお姉ちゃんやべえwww
まあそんなわけでOsqVefuYです。
48手の第8手「耳かき」いきます。シャッキーニ(いや逆か?)です。
3レスの予定。


「ねー、シャーリー。耳そうじして♪」
 あたしがミーティングルームのソファーに腰かけ、本を読んでいると、
 ルッキーニが現れて唐突にそう言ってきた。
 あたしは本から視線をあげ、ルッキーニに向けた。
 ルッキーニの手には耳かきが握られてて、それをあたしへと差し出してくる。
「耳そうじ、ねぇ……」
 あたしはそれを目にして渋い表情になってしまった。
 別にこれは、読書を邪魔されて嫌だとか、そんなこと面倒くさいとか、そういうんじゃない。
 本当なら毎日だって、日に何回だって、ルッキーニに耳そうじをしてあげたい。
 でも――あたしにはある重大な欠点があるんだ。

「その……あたしが?」
「うん、そうだよ」
「……他の人じゃダメか? ほら、宮藤とかサーニャとか」
 あたしは他の人の名前を出して(でもリーネだけは絶対にダメだ)、悲しくもそれとなく拒否する。
「ううん、シャーリーがいいの」
 が、無意味。ルッキーニにふるふると首を振られた。
「そ、そうか……」
 あたしがいい、ってその言葉は嬉しいんだけど……
 そりゃあたしだって、してあげたいのはやまやまだけど……
 でも……
「ねー、いいでしょ」
「ええっと、その……」
 頼む、ルッキーニ。あんまりそんな目で見つめてこないでくれ!
「ほら、耳かき」
 ルッキーニはそう言うと、あたしの手に強引に耳かきを押しつけてきて、
 そしてあたしの膝を枕に、ソファーにごろんと寝転がってしまった。
 あたしの膝に、ルッキーニの頭のいい感じの重み。
 まだ了解したわけではないのに……。
 有無を言わせぬルッキーニに、どうやらそういうことになってしまった。
 あたしって実は結構、押しに弱いのかも。
 ため息をつきたい気分だけど、そんな露骨なことできるわけない。
 しょうがなくあたしは押しつけられた耳かきを右手に、膝元のルッキーニへと視線を落とした。
 ――が、見えない。
 やっぱり、ルッキーニの耳が見えない。
 ではなにが見えるのかと言えば、あたしの豊満な胸ばかり。
 懸命に首だけ前に伸ばそうと試みるも、背もいっしょに少し丸まってしまうし、やっぱりダメ。
 要するに、あたしは胸がおっきすぎるせいで、人の耳そうじができないんだ。
384名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 20:07:15 ID:OMiP3pJh
 前に聞いたことがある。人間の感覚情報の80%ほどを視覚が占めているらしい。
 つまり、現在のあたしは残りの20%ほどの力でこの行為(耳そうじ)を完遂しないといけないのだ。
 いや、これは正しくない。
 20%もない。もっと少ない。
 聴覚や嗅覚や味覚が特に役に立つとは思えないからだ。
 この場合、頼りになるのは触覚だけ。
 それも、右手の感覚だけ――
 この難業を前に、耳かきを握るあたしの右手に、思わずぎゅっと力がこもった。

 自分の耳ならたとえ見えなくとも、耳のなかの触覚でまあなんとかなる。
 けれど、この場合はそうじゃない。
 だって、あたしとルッキーニは別の人間だから。
 どれほど想像力を働かせようと、いくらあたしがルッキーニを愛していようと、
 そのことは現在、なんの意味もなさない。
 思い知らされてしまった。あたしとルッキーニは別の人間なんだ……。

「ほら、はやく」
 あたしが考えこんでいると、ルッキーニがそう急かしてくる。
「あ、ああ」
 とは言っても、どうすればいいんだ? 見えないのに。
 いくらあたしと言えど、ルッキーニの耳のなかの構造を熟知しているわけではない。
(ああ……こんなことならこないだ耳たぶはむはむしあいっこした時に、ようく観察しておくんだった)
 もし――もし、万が一にも鼓膜を傷つけてしまったら……
 それでもしルッキーニが失聴なんてことになってしまったら……
 もちろんそれは、絶対にあってはならないことだ。
 あたしは持てる力のすべてを尽くしてこれに挑む。当たり前だ。
 でも、この不安をぬぐいさることなんてできっこない。
 やっぱり手が震えてしまって、だから余計に不安になる。
 見えないという恐怖。それがあたしの心を支配している。
「ねー、どうしたの?」
「い、今からやるから」
 うながされて、つい口が滑ってしまった。
 もうあとには引けない。
 そもそもあたしには今、ルッキーニの耳の穴がどこにあるのかさえわからないのに。
 もし、万が一にも耳の穴と間違えて、目玉を突いてしまったりしたら……
 それでもしルッキーニが失明なんてことになってしまったら……
(もちろんそれは、絶対にあってはならないことだ)
 耳かき――日常に潜んで一見なんでもないように見せかけて、実はなんと凶悪な道具なんだろう。
 反対側なんてこんなのついてるのに――
 ん? 反対側?
385名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 20:08:55 ID:OMiP3pJh
 あたしは耳かきを逆さまに持ちかえた。
 そして先になった綿毛の側をルッキーニの顔にそわせ、小刻みに動かしていく。
 頬からあご、首の下のライン(おそらく)。
「ちょ、ちょっと、シャーリー! くすぐったい!」
 膝の上でルッキーニはじたばた暴れだす。
「そうかそうか」
 あたしはさらにこそばしてやった。
 いいぞ、このまま耳そうじのことを忘れてくれれば――
 が、ルッキーニは起きあがって、そしてあたしの顔をキッと睨みつけてきた。
「なにすんの、シャーリー!」
 その声に、あたしは思わずたじろいでしまった。
 ルッキーニは怒ってる。別に怒らせるつもりはなかったのに――
「真面目にしてよ」
 眉をつりあげて、ルッキーニは言ってくる。
「あっ、あたしは真面目に……」
「ウソ。耳そうじしてくれないじゃん」
「そ、それはその……」
「ねぇ、あたしの耳そうじするの嫌なの?」
「そ、そんなはずないだろ!」
「じゃあどうして?」
 ルッキーニはじっとあたしの目を見すえて訊いてくる。
「ええっと、それは……」
 言い訳なんて浮かんでこないし、言い逃れもできそうにない。
 正直に言うしかない。観念して洗いざらいすべてを話そう。
「ゴメンな、ルッキーニ。あたし、耳そうじができないんだ……」
 あたしはすっかり白状した。
 ルッキーニ、ホントにゴメン。
 あたしのちっぽけな虚栄心が邪魔して言い出せなくて、
 それにそのことをごまかしてしまおうとして。

「あたしは無力だ……」
「シャーリー……」
 ああ、ルッキーニ。そんな哀れむような目であたしを見ないでくれ。
 そんな目で見られるとあたしは……。
 そうしてあたしの目から、ぼろぼろ涙がこぼれてきた。
「なっ、泣かないでよ、シャーリー! こんなことで」
「ううん、こんなこともできない女でやっぱりゴメンな」
「そんなことないよ! ごめんね。あたしの方こそシャーリーの気も知らないで」
 そう言うとルッキーニはあたしの手から耳かきを奪った。
「ちょっと甘えたかっただけだから。今度から耳そうじは自分でするよ」
「そう……?」
「だから泣きやんで」
 こんなちっちゃな女の子に慰められるなんて世話ないよなぁ。
 自分が情けない。さらに泣けてきた。
 ――でもこういうシュチュ、ちょっといいかも。

「もう、仕方ないんだから」
 ルッキーニはそう言うと、あたしの隣に座った。
「今からあたしがシャーリーの耳そうじしてあげるから。そしたらもう泣きやんでくれる?」
 あたしは無言でこくんとうなずいた。
 そして倒れるようにルッキーニの膝を枕に寝転がった。
 ありがとう、ルッキーニ。
 でも、やっぱり泣きやめそうにないよ。
 ルッキーニのやさしさに、やっぱり涙が出てきちゃうから。

 そうしてあたたかなあたしの涙が、ルッキーニの膝を濡らした。
386名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 20:09:43 ID:OMiP3pJh
以上。
シャーリーテラバカス。
粘着性のある綿棒ならきっとシャーリーでも大丈夫なはず。
387名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 20:53:11 ID:JtMxyhl8
>>376
GJです! 珍しい組み合わせですね。
あまりの甘々っぷりに見てるこっちが幸せな気分になりました。


>>386
シャーリーさん、膝枕する位置変えてもらえば耳の穴見えますよw
388名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 21:00:42 ID:LHheEHGN
あと3時間か、ペリーヌ。
389名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 21:13:42 ID:EMWupwNG
>>378
買うの悩んでるから百合的においしかったら教えてください
390名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 21:54:30 ID:GsnWU67D
やべえ、全然書きあがってねぇ・・・
担当編集からの電話におびえる新人作家の気持ちが良くわかるな
391名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 22:33:30 ID:VjkIkfIR
>>386
シャーリーさんwww
情けなさすぎるwだがGJ!

>>390
がんば!
392名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 22:42:39 ID:5Bo5tFvx
>>390
別に遅れても誰も怒らないから納得のいくように書いてくれw

それはそうと秘め声聞いたが何だあれは、ボーナスパートおいし過ぎるだろ!
シャッキーニがマルセイユの部隊にいるってことはzet4〜氏のSSがモロ的中じゃまいか。
そしてまさかのハルーニャとか、ミーナさんのやきもきっぷりとか、とにかく大変素晴らしい資料でしたねホントにもう。
ただ扶桑に帰ってからの芳佳と少佐が思ったより疎遠な感じになっててちょっと寂しい……。
あと芳佳→サーニャが取り立てて言うほどのことでもなかったのが残念、エイラーニャの壁固すぎる。
393名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 22:48:12 ID:V+i1TEKm
むしろ俺は担当の編集さんに急かされたいな
そうでもしないと書き始められない…
394トゥルーデ撃墜部隊:2009/02/27(金) 23:07:17 ID:B5q2287O
こんばんは!
ペリーヌ誕生日になる前にもっミーナ投下します!
>>171の続きです
395名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 23:08:28 ID:B5q2287O

「私、戻るわね」
「ああ。具合は大丈夫か?」
「平気よ、ありがとう。おやすみなさい」

私は暗く静かな廊下へと出た。
トゥルーデには迷惑をかけてしまったわ…まぁ、私も少しだけ楽しんでいたけれど。
まだちょっと頭がぼーっとする。もう寝てしまおう。

「ミーナ」

自分の部屋の前まで来たら、突然名前を呼ばれた。
その声、暗い廊下でもわかる白い軍服。

「美緒…」
「部屋にいると思ったらいなかったのでな。どこに行ってたんだ?」
「…ちょっとトゥルーデのところにね」

どうしよう。一番会いたかった人の筈なのに顔が合わせられない。
さっきトゥルーデに弱音を吐いてしまったせいもあるかしら。

「入っても良いか?」
「…ええ、どうぞ」

私はドアを開けて美緒を部屋に入れた。

「飲んでたのか?……って、また凄い量だな」

立ち込めたアルコールの匂いに、美緒は少し眉を上げた。テーブルには何本も空き瓶が転がっているし、驚くのも無理はないかもしれない。

「お前がこんなに飲むなんて、何かあったのか?」
「少し疲れてて。一つ仕事が片付いたから」

私は軍服を脱ぎ、ベッドに倒れ込んだ。
396名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 23:09:38 ID:B5q2287O
駄目だわ、今は美緒とまともに話が出来そうにない。
これで帰ってくれるかと思っていたら、背後で衣擦れの音がした。
続いてベッドが軋み、両肩の横に手が付かれる。

「美緒…?」

体を上へ向けると、軍服を脱いだ美緒が私に覆い被さっていた。

「妬いたのか?」
「!」

黒く澄んだ左の瞳がいきなり核心をつく。

「さっき、私と宮藤のところに来ただろう。何も言わずに帰ってしまったから、もしかしてと思ってな」

何よ、わかってるんじゃない。

私の沈黙を肯定と取ったらしい美緒は、少し悪戯っぽく笑った。

「意外とヤキモチ妬きだな、中佐殿」
「誰かさんの口説き癖のせいです、坂本少佐」
「なんだ、その口説き癖というのは」

美緒はきょとんとする。自覚がない所がまた厄介だ。

「もう…いいわ。いいから、今夜はここにいて」
「元よりそのつもりだ」

腕を伸ばして首に回すと、美緒も合わせて体を低くした。
そして、ゆっくりと唇を重ねる。

「ん…まだ酒の味がするな」
「ちょっと飲み過ぎたわ」
「そうか、では私もミーナに酔わせてもらうとしよう」
「…!だから、そういう台詞が…んんっ…」

言葉を遮るように少し強引に口付けられる。
397名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 23:10:53 ID:B5q2287O
「ん、ちゅ…ふ、ぁ…」

本当に味わうかのように口内を舌が掻き回す。
酔っているせいもあるのか、すぐに頭がぼうっとし始めた。

「色っぽいぞ、ミーナ」

キスの合間に囁かれて、胸の奥がぎゅっとした。
本当に口が巧いんだから。こっちはその度にドキドキさせられているというのに。

「ふぅっ…美緒…」

小さく呼ぶと、意思を汲んでくれたのか美緒が顔を離した。
そして、今正に大きく鼓動を打っている胸に触れた。

「…っ…」
「ん…随分熱いな」
「…あなたのせい、よ…」

そう言うと、それは悪かったと笑いながら美緒の手に力が入った。
片手でぐいぐいと揉みながら、空いた手でシャツを脱がしていく。

「いつ見ても、ミーナの体は綺麗だな」

ズボンだけになった私をまじまじと見て、美緒はそんな事を呟いた。

「もう、バカ…」
「ん、お気に召さなかったか?」
「まさか。あなたに“綺麗だ”なんて言われて、落ちない女なんていないわ」

さっき、トゥルーデにもらしくない自分を見せてしまった。なら今夜は、らしくないままでいよう。

「だから…私以外の人に言っちゃ嫌よ。綺麗だなんて。私だけに、言って。美緒…」

駄々をこねる子供のように、ぎゅっと抱きついた。
398名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 23:12:11 ID:B5q2287O

「ミーナ…」

美緒は少し驚いたようだったけど、すぐに抱き締め返してくれた。

「今夜のミーナは一段と可愛いな。こんなに甘えてくれるなんて初めてじゃないか」
「…そういう日もあるの」
「はっはっは、可愛い奴め」

そのまま抱き起こされ、美緒の膝の上に馬乗りになる形になった。
より近くなった端正な顔が、私に微笑む。

「お前にしか言わないさ。ミーナ、…綺麗だ」
「…!」

顔が赤くなったのが自分でもわかる。
その殺し文句に陶酔していると、急に美緒の手が私の下腹部に伸びた。

「きゃっ、み、美緒…」
「あんな可愛い事を言ったお前が悪い」
「やんっ…あっ…あぁ…」

ズボンの中に侵入した美緒の手が、ぐちぐちといやらしい音を立てる。その度、そこから甘い快楽が背筋をかけのぼっていった。

「いい声だ…さすがミーナだな」

美緒はそう言いながら、ゆっくりと眼帯を外した。
紫に輝く魔眼が、私をじっと見つめる。

「や、だめ、美緒…」
「嘘はいけないな」

楽しげに目を細める美緒。
次の瞬間、私の中の指がくいっと曲げられた。

「ぁんっ!や、そこはだめっ…!」
「ふむ、ここか」
「や、ああぁっ、みおッ…!」

399名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 23:13:16 ID:B5q2287O
美緒の魔眼はさすがだ。私の弱い箇所を的確に探し当てて、刺激してくる。
…こんな事に魔法を使ってもいいのかしら、と思う事はあるけれど。

「み、おっ…はぁっ、ふあぁんっ…」
「気持ちいいか?ミーナ」

こくこくと頷くしかできない。それでも美緒は満足そうに、更に指の動きを激しくしてきた。

「やあぁん!だめ、もぅ…ぁ、みお…」
「いいぞ、ミーナ…」
「はぁっ、ああぁん…!」

目の前で星が弾け、全身の力が抜けた。

くたりと美緒の体に凭れ、息を整える。

「ふふ、久しぶりだからか。早かったな」
「はぁ、はぁ…もう…美緒が、激しくするから…」
「だから言っただろう。ミーナが可愛いのが悪い」

…もう。またそうやって、巧い事言うんだから。

「じゃあ、もっと」
「いいのか、酔っているのに眠らなくて」
「誰かさんのせいで眠るどころじゃないの」
「はは、仕方ないな。朝まで可愛がってやろう」

佐官らしくない会話を交わし、私達はまたベッドへ沈んだ。

「大好きよ、美緒」
「私もだ。愛してる、ミーナ」

あなたにそう言われたら、誰だって夢中になる。
そんなあなたを、私は一人占め。



浮気したら許さないわよ、美緒。
400トゥルーデ撃墜部隊:2009/02/27(金) 23:14:10 ID:B5q2287O
おしまいです。ペリ誕はもっペリラッシュでしょうか。期待してます
401名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 23:37:21 ID:7E1+M1U4
ハルカがサーニャにちょっかい出してると聞いて飛んできますた!!!
402名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 23:52:15 ID:SKavex9h
予約してたのに到着28日orz
今までずっと発売日に届いてたのに
403名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/27(金) 23:59:10 ID:fkrjR43r
>>400
強気なもっさんも
素直に食べられちゃう隊長も
いいですな!
404名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 00:03:47 ID:5Bo5tFvx
はいここまでチュインチュインなしーorz
ペリーヌ誕生日おめ

>>400
GJ、男前なもっさんこそ正義なり
魔眼の使い道ワロタww
405名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 00:04:41 ID:qjoLTmzs
ペリーヌ誕生日おめでとう!!!!!
406名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 00:05:17 ID:y3tUSxUl
ペリーヌさん、お誕生日おめでとうございます!
407名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 00:07:58 ID:Th4xY0fc
またひとつ実年齢よりスレンダーになった私たちのペリーヌおめでとー!
408名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 00:13:46 ID:ieYzY8Sa
ペリーヌ誕生日おめでとうぅぅぅぅぅ

もっペリもいいけどペリーネもね!
でも最近芳ペリも捨てがたい…
409名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 00:25:37 ID:yrbmeURu
ペリーヌおめ!!
最近、もっペリなSS書いてなくてごめんよ・・・。
いつか、"夕日をバックに泣き虫なペリーヌをぎゅっと抱きしめて、それから優しくキスするもっさん・・・"
何てなネタを書いて見たいんだぜ。
410名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 00:36:44 ID:xhFfiRFY
ペリーヌおめでたう!

>>409
お前それ最高じゃないか。夕陽をバックっての、重要だよな
411名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 01:00:03 ID:JpsoeO0C
>>409
全力待機する。

もっぺリもペリーネも大好きだ。
412名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 01:01:59 ID:R9hcRR5T
ペリーヌ
誕生日
おめでとう
413名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 01:12:37 ID:EnP2//ee
はぁ〜〜ぅ
もっさみ〜なテラエロス
414名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 02:00:32 ID:U+YAgH2U
ペリーヌ・イズ・ゴッド
415名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 02:30:42 ID:BxmEE5+7
ありそうでペリミーナってなかったな
416名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 02:38:09 ID:s7Q9SE9N
ペリーヌ誕生日だからここはまさかのペリミーナ書いてやるぜ、と書いてたら直前の>>415のレスに吹いた
と言うわけでペリミーナ投下
417スカーレット 1/3:2009/02/28(土) 02:38:45 ID:s7Q9SE9N

彼女に見つめられるのが嫌だった。
だって、とらわれてしまいそうだと思ったから。


ごめんなさいね、と。申し訳なさそうにその人はいうのだった。私は無言で見返すことでそれに答える。
何かしら答えたほうが良いのだと分かっているのだけれど、どうしても言葉が出てこない。何かをいおうと
顔を上げて、彼女の瞳が私を見返しているのを知るやいなや私の口はまるで自分で自分に魔法を
かけたかのようにしびれてしまうのだ。

二人きりの執務室。本と机と、それだけの部屋。私は彼女に頼まれた書類を本棚から探し出し、不要に
なったものをまた戻しに行くという単調な作業を朝からずっと続けているのだった。本来ならば待機の
時間だけれども、ネウロイの襲撃は一昨日あったばかりであるために恐らくは多少余裕を持っているの
ではないだろうか。

「助かるわ。すっかり報告書が溜まっているんだけど──みんな、あんまりこういったことが好きでは
ないみたいで」
「──…はあ」

気の無い返事を返しながら、私は執務机についている彼女のその向こう、窓の外の景色を見やった。
見えるのは空ばかりで、外の様子など皆目見当もつかない。でもきっとその空のどこかではこの部隊の
誰かが訓練に勤しんでいるのだろうし、彼女の言うところの『あまりこういったことが好きではない』坂本
少佐もまた、同じようにして新人二人の訓練に従じているのだろう。

そしてまた、同じ空の下で。この地球のどこかで。
たぶん誰かしらが戦っている。アフリカ?北欧?どこなのかなんてきっとサーニャさんの能力でもないと
分からないし、そんな彼女だっていつも一緒にいるエイラさん曰くすべてを正確に感じ取れるわけでは
ないらしいから、そんなこと知りようも無い。もっとも知ったところで私がどうこうできることではないの
だから、むしろ知らないほうが幸せなのかもしれない。知っている不幸よりも、知らない幸福のほうが、
愚かではあるけれどきっと価値がある。

けれどもしかしたらそれさえすべてこの人は知っているのかもしれなかった。窓の向こうにやっていた
視線を手前に戻すと、赤い色が目に入る。スカーレット、渋みをうっすらとにじませた、鮮やかな赤毛。
今は伏せられているけれど、その瞳も赤い色をしていることを私は良く知っている。なぜなら彼女に
見つめられたら最後、そこから視線をはずすことなんて出来やしないからだ。
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ、カールスラント空軍中佐。現在はこの、第501統合戦闘航空団、
別称ストライクウィッチーズの隊長を務めているカールスラントきっての才媛。耳をふさいで目をふさいで
目を閉ざしても、この部隊を統括する役目を担っている彼女には世界中から情報が寄せられてきて、
そしてそれらすべてに目を通して頭に入れて、その上で的確な判断を下さなければいけないのかもしれ
なかった。

慣れた手つきで、机の上に山積みになった書類一つ一つを拾い上げ記入し印を押していく。出撃の際に
は先頭に立って部隊を先導する彼女の手が妙に小さく見えるから私はどうにも戸惑ってしまう。

「ペリーヌさん、」
「は、はいっ」
「先月の報告書とってもらえるかしら?…そうそう、それ」

突然彼女が顔を上げたので、ぽかん、と彼女を見つめていた私はひどく戸惑ってしまった。どきりと一つ
大きな鼓動を鳴らした心臓が、そのまま早鐘を打ったように響いていく。慌てて指定されたものを手に
とって彼女の元へと持っていった。片手を伸ばされたからつい、彼女の手を凝視する。思ったよりも小さく
て、ほっそりしたその手。私のそれと重ねて比べたことは無いから分からないけれど、その手はまだ少女
そのもので。

「どうしたの?ペリーヌさん?」

その手から、腕、首へと続いて、その先にあるその顔も、また。

「──……」
418スカーレット 2/3:2009/02/28(土) 02:39:16 ID:s7Q9SE9N
柔らかくて温かい、けれどどこか無機質にも感じるその笑顔をまっすぐ見つめる。とらわれてしまいそうな
ほどに深い、鮮やかな赤をしたその瞳。
私はその瞳にとらわれるのが恐ろしくて、怖くて。だからこの人に関わらないように、近づかないように、
過ごしていることをきっとこの人は知らないだろう。そしてだからこそ、私も見落としていたことがあった。

この人はこんなにも、まだ、少女なのだと。

まっすぐ見ようとしないから、私はこの人の声しか知らない。背中しか分からない。その機動しか見て
いない。だからどうしてか、この人は私なんかよりもずっとずっと大人の女性のような気がしていた。
だって私の見る彼女はいつだって毅然としていたから。ウィッチとしても、指揮官としても優れていて、
完璧で。いつも穏やかに笑んでいて、余裕があって。
だから苦手だった。自分自身の矮小さを見せ付けられているかのようで。何ひとつ敵わない、完成品を
目の前に据え置かれて、お前は未完成なんだと言い当てられているかのようで。

「ペリーヌさん?」
「はははいっ!!!」

呼びかけられて、はっとして。
慌てて胸に抱いていたそれを伸ばしたその手の上に乗せようとする。どうしてか手が震える。
ああ、これはいけない。直後に起こりそうなことなんて、エイラさんのような特殊能力を持っていなくたって
分かった。
「ああっ!」
数センチ届かないで取り落とした報告書を束ねたファイルは床の上に落ちて。そうして机の上に積み
上げられていた書類もろとも床に散らばってしまった。凄惨。一言で言ってしまえばそのぐらいの状態が
目の前に広がる。頭がかーっと熱くなって、直後に冷えていった。

「ご、ごめんなさいっ!!すぐ拾いますわっ!!」

驚きに丸くして私を見ている赤い瞳から逃げるように私はしゃがみこむ。情けなくて泣きたくなる。唇を
かみ締めたら、ぽん。肩に何かが当たった。振り返るとそこには彼女がいて、いつもどおりの笑顔で
笑っているのだった。

「大丈夫?」

人当たりのいい、温かな笑顔。…わかっている。これを『作り物のよう』だと思う私のほうが、きっと間違って
いるのだって。目の前にあるのは完成品。一片の傷も無い玉そのもの。…ほんとうに?
肩の温もりが消え去って、私の傍らから腕が伸びてくる。ゆったりとした袖から覗く手が、少しずつ書類を
取り上げていく。私もつられるように手を伸ばした。そして、また少し泣きたくなった。
(おんなじだわ)
だってそれは私とさほど変わらなかったからだ。彼女の手は情けない私と同じ、ちっぽけなものでしか
なかったから。何が完成なのかはわからない。けれど私が未完成だということはわかっている。そんな
私と、彼女の手は、こんなにも似ている。

「ペリーヌさん、」
4回目、ブリーフィングルームで待機していたところを呼ばれたのを含めれば5回目の、私に対する呼び
かけ。柔らかい、優しい声音。皮肉なことに彼女は全く同じ声で命令をくだすけれど、綺麗な歌も紡ぐのだ。
はい、なんでしょうか。私は答えた。
「…無理をしてはいけないんだからね」
「何を言って…」
「嬉しいときはもっとはしゃいでいいし、悔しかったら泣いていいの。休みたいときは目一杯休んで。」
「それは、どういう」
「あなたの生真面目さは良く知っているけれど、悲しみにくれて喜びを見失っても、光は見えないから」

どういう意味なのかと視線で尋ねても、彼女は答えてはくれない。坂本少佐のように笑い飛ばすことも
しないから、私はまたひどく戸惑ってしまう。だってこの人は私の胸の奥の苦しみにさえも手を伸ばして
胸に抱いて受け止めて、それでも笑うような気がしたから。だから調子が狂うのだ。一緒に泣いてくれ
なくたっていいのに。私は一人でだって生きていけるから、ただ、あの人のようにまぶしい光になって
くれればいい。それなのに。
419スカーレット 3/3:2009/02/28(土) 02:39:50 ID:s7Q9SE9N
「私たちは、家族なんだから」
「…いりませんわ、かりそめの家族なんて」
「かりそめなんかじゃないわ」

彼女が口癖のように繰り返す『家族』と言う言葉が、私は嫌いだった。どんなに絆を強くしようとも、それは
本物の家族の絆には敵わないからだ。そう、私がかつて目の前で失った『家族』はもう二度と帰って
こないから。だからつい語気を荒げて答えてしまう。それでも彼女と来たら、その行き場の無い怒りさえも
穏やかに受け止めて微笑むのだ。だからなにもいえなくなる。落ち着かない気持ちで目を伏せるだけ。

「あなたが生まれてきてよかったって、みんな思ってるわ」

私だってペリーヌさんの怒鳴る声が聞こえてくると、今日も平和だと思うもの。
どこか失礼に思えるような台詞を言われたような気がしたけれど、言い返さない。言い返せない。
どうしたらいいのかわからずに固まると、再び肩を叩かれた。気がつけば散乱していた紙の束はすっかり
と片付いて、立ち上がった彼女が机の上でそれをそろえているのだ。ぼんやりと一番手前にある書類の
文字を見る。ユーティライネン少尉の昇級辞令らしい。はて、ユーティライネンとは誰だったろうか。日付
が大分前のものだというのが気になるけれど、この際気にしてはいけないのかもしれない。

おーい、ミーナ!
ドアの向こうから呼びかける声。心臓がまたびくりと跳ねた。
「さささささ、坂本少佐!?」
「はーい」
叫ぶ私をよそに彼女はドアのほうへ歩み寄って、慣れたように扉を開ける。
「いやすまん、手が空いて無くてな!」
「はいはい、わかっていますから」
そう言って豪快に笑いながら、入ってくる一人のひと。連れ立って私のいる、執務机のところにやって
きた。
準部はどう?万端だ!そんな会話を穏やかに交し合っている。

「差し入れよ。飲んだら出かけましょう?」

そうして差し出されたマグカップには、ほかほかと湯気を立てる白色の飲み物。一口つけると、柔らかな
甘さと温かさ。ホットミルクだ。食堂からの道のりで程よくぬるくなったそれは、苦手な人とずっと二人きり
で同じ部屋にいた心労を柔らかく包み込んでのどの奥へと連れて行ってくれる。

「で、出かけるって、どこですの?」
「そんなの、家族のみんなのところに、よ。みんな待っているわ。」

ごめんね、あなたを足止めするのが目的だったの。
言いながら、にこ、と無邪気に彼女はわらった。いつも浮かべているそれとは少し違う、けれども変わら
ない、その笑顔。私と3つしか変わらない、今日からしばらくはたった2つ違いにしかならない、少女その
もののそれ。赤い髪がさらりと揺れて、赤い瞳が私をまっすぐに捉えている。その向こうには私の敬愛
してやまないひとの、黒い二つの瞳があるのだけれどどうしてからその赤から目が離せない。多分とら
われているのだと思う。

気がつけば背後からは夕陽の赤い光が降り注いでいるのだった。赤い赤に包まれたその人が笑って手を差し出してくる。すっかり空になったマグカップは、即座に坂本少佐に奪われてしまった。それでも私は彼女から目を離すことが出来ないのだ。

たんじょうびおめでとう。

家族以外からは貰いたくは無かった、けれども本当は欲しくてたまらなかったその言葉をそのまま口に
されて、心臓がまた早鐘を打っていく。そわそわして落ち着かなくて、泣きたいのに悲しくは無い。
完璧すぎるほど完璧な、けれども私と何も変わらないあどけないそのひと。
吸い寄せられるように手を伸ばしたら、同じ温もりに包み込まれた。行きましょうか、と微笑まれたから、
つられてはい、と微笑み返してしまった。

きっと顔が赤くなっていると思うのは、こちらからは逆光のはずの、夕陽のせいだと思った。

420名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 02:44:39 ID:s7Q9SE9N
以上です 誕生日おめでとうペリーヌウウウウウウウウウウウウウウウ!!!
DVDまだきていないのでネタバレ回避のためにSS全然読めていなくて申し訳ない
後で必ず読ませていただきます、みなさんGJGJ!

それと、お手数ですが>>419の下から4段落目を

気がつけば背後からは夕陽の赤い光が降り注いでいるのだった。赤い赤に包まれたその人が笑って手を
差し出してくる。すっかり空になったマグカップは、即座に坂本少佐に奪われてしまった。それでも私は彼女
から目を離すことが出来ないのだ。

と改行よろしくお願いします。
ペリーヌのミーナに対する秘め声が十分ペリーヌ→ミーナに聞こえる自分のフィルターにぬかりはありません、
21X2wxIbでした。
421名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 02:59:39 ID:kncUHKuz
>>420
2の多い人キター!!待ってたぜ、そして今回も素晴らしい仕事だGJ!!ペリミーナいいかもしれん。
少佐が入ってくるシーンでふと、二人が少佐を取り合いしてるつもりがいつの間にかお互いを意識するようになっていくという風景を幻視した。
42221X2w2Ib:2009/02/28(土) 03:06:16 ID:s7Q9SE9N
>>420で自分の名前を書き間違えているという大失態に気がつく
21X2wxIb→21X2w2Ib です、ねんのため
423名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 03:11:18 ID:BxmEE5+7
>>420
ああやっぱ2の人かw
しかし、まさか書いた途端に来るとは、これは神がペリミーナの将来の明るさを暗示しているといっても過言ではないかもしれないw

相変わらずいい文章書きますね、読んでいてなんか、こう、引き込まれていくというか、なんというか
まあとにかくとてもおもしろいです!!gj!!!
424名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 03:43:12 ID:vDDY+0sy
へへ・・・夜中にいいもん読んだぜ
ペリミーナっていいな 新しく目覚めそうだ
425名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 11:01:03 ID:UK6yP3UV
なにが肥え太れる、だ!
百合厨の俺がいくらへテロなSSを収集したところで胸糞なだけだっつーの!
レズ物書いてる人がいたからついでのつもりで始めただけだし、誰か代わってくれるなら今すぐにでも投げ出してやる!
426名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 11:11:21 ID:xhFfiRFY
>>420
GJ!ペリミーナっていいよな
相変わらずキャラの魅力をよくわかってらっしゃる…

美緒とミーナはもちろんだがペリミーナもいい。カールスラント絡みももちろん、ミーナとリーネもなかなかだし…ミーナとサーニャもくるものがある
つまりミーナ最高だなw
427名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 11:17:49 ID:9k9LK3ft
>>425
わざわざ荒しに来なくていいからw
以後スルーかNGよろ
428名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 11:48:29 ID:w0rlBaL/
エイラーニャの壁はあついってたまにみるけどエイラ関係のカップリングのはけっこうあるよね

やっぱりサーニャだと他のキャラと絡ませにくいのか・・・
429名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 12:05:59 ID:fQlGi4ys
そこでペリーニャですよ。
泣いちゃったサーニャさんをあたふたしながら慰めるペリーヌさん。
そして、話をしていくうちに自分と似たような境遇のサーニャさんに惹かれていくと。
430名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 12:27:58 ID:Th4xY0fc
ペリーヌさんとさーにゃんが同棲
あまいです
431名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 12:28:32 ID:w0rlBaL/
>>429
サーニャはペリーヌの優しさに気付いているから案外いけるのかもしれない!
432名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 12:34:18 ID:/g5ku5zU
>>428
自分もサーニャさん絡みで考えてるのが一つ……しかし、犯罪くさいにおいがw
433名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 12:37:54 ID:Th4xY0fc
>>432
ゲルトー!
434名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 12:39:07 ID:qYskqEwj
サーニャとシャーリーはどうだ
泣いちゃったサーニャさんを母性と胸で慰めるシャーリーさん

>>432
なんか気になります
435名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 13:53:36 ID:AdhtLzk2
新刊は芳ーニャ派にはいいものだな

あとエーリカ、バルクホルン、シャーリー、ペリーヌも出番多いから参考になるかも
436ウィッチーズの分裂 ◆VQu3lPivsU :2009/02/28(土) 15:40:14 ID:w2cfWsiZ
「このナチ野郎がっ」

 何気なく吐いたシャーリーの一言が切っ掛けだった。
 司令室の空気が張り詰め──やがて、何かが音を立てて弾けた。
 それは目には見えないもの、彼女たちウィッチーズがこれまで築き上げてきた友情と信頼が崩れ落ちる音であった。
 禁じられた言葉を吐いたシャーリーも罵られたトゥルーデも、双方が真っ青になり体を小刻みに震わせている。
 空戦中の諍いからバルクホルンと口論になったシャーリーは、激昂の余りに禁じられた言葉を吐いてしまったのだった。

 帝政カールスラントを標榜しているものの、同国はナチスと呼ばれる政党に牛耳られた侵略国家である。
 ナチスはアーリア人種の優秀さを強調し、人種、社会、文化的清浄を求めて社会のすべての面の政治的支配を行っている。
 それは自由、平等をモットーとする欧州やリベリオンにとって相容れない主張であった。
 日頃の鬱憤がつい口から出てしまったシャーリーだったが、今は素直に謝れる気がしなかった。
 また、謝ったくらいでは決して許してもらえないことくらいは充分承知していた。

「何よ、本当のことじゃない。こいつらのせいで、何人の罪もないユダヤ人が虐殺されたっていうの」
 シャーリーのトゥルーデを睨む目に憎しみが籠もる。
 一方のシャーリーの目にも怒りの炎が青白く渦巻いていた。
「やっぱりか……お前らが我々をそう言う目で見ていたことくらい、とっくに気づいていたさ」
 だからこそ、肩身の狭い思いをしながらも仲間の理解を得ようと頑張ってきたのだ。
 その結果が300に達しようかという彼女やエーリカのスコアではなかったか。
 隊長たるミーナがブリタニア空軍から冷遇されている理由も、おそらく根源を同じにするものなのであろう。
437ウィッチーズの分裂 ◆VQu3lPivsU :2009/02/28(土) 15:40:47 ID:w2cfWsiZ
「もうウンザリだ。とにかくこれ以上お前ら独裁主義者共とは一緒に戦うことはできない」
 シャーリーは吐き捨てるように言うとミーナを睨み付けた。
 ミーナは取り返しの付かない事態になったことを把握し、一言も発せないでいる。
 掛け替えのないものが壊れ去ろうとしているのに何もできない。
 自分の無力さを感じ、ミーナの目にうっすらと涙が滲んできた。

「やめろ、シャーリー。隊長に向かって、その目は何だ」
 たまらず坂本美緒が怒鳴ったが、シャーリーは意に介さない。
「ふん、同じ侵略国家だけあって仲の良いことだな。ところで、なんの権限があって私に命令してるのだ」
 美緒が指揮権を持っているのは戦闘時における現場の行動に限られている。
 たかが3流国家のモンキーウィッチが何を言っているのかと、シャーリーは鼻で笑った。

「よく言うよ。自分たちだってネイティブアメリカンを虐殺したくせに」
 エーリカの反撃がシャーリーの胸を抉る。
 リベリオンの黒歴史とも言うべきタブーを突かれ、今度はシャーリーの顔が強張った。
 それを見たエーリカは満足したように冷笑する。
 世界の警察を気取るリベリオンを、エーリカは大嫌いだったのだ。

「ともかくみんな落ち着いて。バルクホルン、イェーガーの両大尉には謹慎を命じます。しばらく頭を冷やしなさい」
 ミーナは震える声で命じたが、シャーリーはケッとせせら笑う。
「謹慎は解いて貰わなくて結構だよ。もうお前らとはこれっきりだ」

 この日、栄光の501統合戦闘航空団は解散となり、ウィッチーズは二つに分裂した。
438名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 15:44:47 ID:ER/tjKqP
>>435
それを聞いて購入を決意した
439名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 15:48:05 ID:U6FwgcGM
>>435
それを聞いてスルーを決意した
440名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 15:54:54 ID:U+YAgH2U
読み物としては相変わらずつまらん
441名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 15:55:24 ID:XyKX+Lc4
>>435
袋とじのために600円か…
442名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 16:17:46 ID:6Obrnu98
何かねんどろいどの発売順をカップリングで決めるらしいね。
「豆狸が出たから次はもっさんorリーネを出す」みたいな。
443名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 16:20:33 ID:ER/tjKqP
>>442
へー、なかなかおもろい出し方だな
じゃあルッキがでるからシャーリー、サーニャが出たらエイラ〜みたいに続くのか
444名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 16:31:53 ID:w0rlBaL/
乙女の巻このスレ的には買わないほうがいいかも

八話載ってるし、作者のあとがき割と……だし
445名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 16:43:17 ID:KGQdCyUC
>>437 続きは?
446名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 16:58:39 ID:RVlmmdoJ
ラノベあんま読んだこと無かったけどいらん子読んだらなんとなくルイズが売れるの分かる気がした
ふつーに面白いよあの人の話。文章で笑わせるっての難しいもん
小説関係は全部ノボルさんに担当して欲しいけど無理だろうなー
そんな理由でアキストゼネコ氏とかそらゾラの人は凄いなーと思います
447名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 17:00:14 ID:yt/byeKb
新刊はエイラーニャ少ないのか?
袋とじにつられてポチッたんだが……
448名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 17:00:38 ID:U+YAgH2U
それはノボルの文章のレベルの低さからか?
449名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 17:03:34 ID:Th4xY0fc
まさかな
ボカロ好きでもないのにねんどろを絡ませる日がくるとはね
450名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 19:08:19 ID:Mapu2zvp
秘め声の手紙聞いたけどリーネガチだった
とりあえず宿舎泊まった夜にはもちろんナニかあったんだろうな…
451名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 19:55:01 ID:CW0OFvs6
>>444
詳しく聞きたくもないがkwsk
452名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 20:03:24 ID:w0rlBaL/
>>451
まあそこそこ楽しめるけどね

八話の話が普通にノベライズされてたり、つーかいい加減公式は恋人なのか幼なじみなのかはっきりしてほしいわ
少年兵自体は大してでてこないけど

であとがきはなんか芳佳からかいたいとかゲルトにしかられたいとかサーニャにベッドにきてほしいみたいな妄想全開なことがかきなぐってある
453名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 20:03:34 ID:J7AbFB/R
サーニャは公式設定で腹黒認定
454名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 21:05:48 ID:jjp9EW/q
>>452クルトのアニキは家がミーナと隣同士でかつ幼馴染でそして恋人、だろ

ただまあ、DVD6巻記録集いわく監督的には8話は失敗だとは思っていたようだな
無論男が、じゃなくてミーナの真意を描ききれなかったことが、ね
455名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 21:12:32 ID:6Obrnu98
まとめると2巻は百合的にはイマイチ、資料としてどうぞってことか?
456名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 21:35:20 ID:7KUAEJj5
書いてるのはノボルじゃなくて南房 秀久だろ?
なんだかなー
457名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 21:51:14 ID:srfwY0vq
最終感のひめごえ聞いてきた

ペリーヌかわいいよペリーヌ
リーネはなんかヤンデレみたいで恐いw

あとミーナ→坂本はいつのまに公式になったの?
458名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 22:00:57 ID:JR09aOBq
秘め声6でルッキーニがマルセイユのことを「恐い」と言っていたのは、

ルッキーニのことをいたく気に入ってしまったマルセイユが昼夜を問わず言い寄ってくるから

という妄想が止まらない。
459名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 22:15:01 ID:jjp9EW/q
>>457いつの間にって言うか、オクに流れてた資料ではもっさんを一番信頼してるみたいなことはすでに書いてた
460名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 22:25:12 ID:9/Yvxmn3
秘め声の隊長はなんか単身赴任の旦那の浮気を心配する奥さんにしか思えなかったw
461名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 22:33:43 ID:eJxV5m/r
公式基地探訪でも芳佳がもっさんの胸を触った事でミーナの怒りを買ってバケツ持たされてたし
明らかにパワハラw
462名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 22:34:00 ID:O35aMh83
>>460
まさにそれだなwww
463名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 22:39:33 ID:awMoUM+r
>>460
それだ!w

何か、そういうイメージあったなと漠然としていたが、まさにそれw
464名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 22:42:44 ID:FJjQLyLO
罪のない職人さんたちはハラハラしながら見ているだろうな
こういう所じゃやられたことはキッチリ返されるもんだから
465名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 22:52:14 ID:9k9LK3ft
>>464
こっちは関係ないし、向こうの保管やめるだけで済むだろw

466名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 23:22:58 ID:j5pQUNlL
ペリーヌの誕生日がもうすぐ終わる
もうSSは無理カナ?
467名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 23:29:52 ID:jjp9EW/q
焦ってもいいものは書けないからな
だからこうやって頭に降りてくるのを待つ
い、言い訳じゃないぞ!!
468名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 23:46:56 ID:7KUAEJj5
さんざん既出だと思うが秘め声の最大化と最小化は狙ってると思う
469名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 23:54:07 ID:Glxcc71T
OsqVefuYです。SS投下します。
前に自分が芳佳とサーニャの誕生日に書いたやつ(保管庫の0019)のセルフパロです。
オールキャラです。ちょい長いめ。5レスの予定。
タイトルは「ペロペロしますの」です。


「ペリーヌさん、一日遅れだけどお誕生日おめでとう」
 とみんなを代表してミーナが言うと、主役のペリーヌは16本のろうそくを吹き消した。
 まわりからはおめでとうの声とともに、ぱちぱちと拍手がおこる。
「みなさん…………一日遅れだけど、ありがとう」
 部屋に電気がつくと、ペリーヌは珍しく素直な感謝の気持ちを言った。
 こういう場面にあまり慣れていないのか、目頭をうるうるさせている。
「もしかして忘れられてるんじゃないかと心配で……」
 そして、ぽつりつぶやく。
「そ、そんなわけないよ。ねぇ、リーネちゃん?」
「う、うん。そんなわけないよね」
 顔を見合わせる芳佳とリーネ。その顔に、だらり、と脂汗がつたう。
「でも、それじゃあどうして一日遅れなのかしら?」
 ペリーヌはきょとんと不思議がる。
「そ、それは……えっと、その、いろいろと準備に手間取ったからで……」
 芳佳はしどろもどろになって説明した。
 ちなみにまわりの飾りつけは、8日前、エイラの誕生日会に使ったものの再利用である。

「――とにかく、ケーキを食べましょう」

 芳佳の言葉をなかば遮るように、ミーナは言った。
「でも私、こういうの切るの苦手なのよね」
「あ、私やります。そういうの得意なんです」
 と芳佳が手をあげて言う。
「いえ、ここはわたくしが。宮藤さんには任せておけません」
 するとペリーヌもぴしっと手をあげる。
 はいはいはいはい!
 口にこそしないが、手はそう言っている。まるで授業参観の日の子供のようなしぐさだ。
「そう? 誕生日の次の日なのに悪いわね。じゃあお願いできるかしら」
 しばしミーナは熟考したのち、ペリーヌに任せることにした。
 そうしてペリーヌは包丁を受け取ると、ろうそくを抜いたケーキにそれをいれていった。
 たどたどしい手つきながらもなんとか、おおよそ11等分にケーキを切り分ける。
 そうして切られたケーキが皿にのせられ、それぞれの前に配られていく――のだが。

「宮藤さん、どうぞ」
 ペリーヌはケーキののった皿を、ややつっけんどんに芳佳に差し出す。
 受け取ろうと芳佳は手を伸ばすが、差し出されるそれに呼吸がうまく合わずに、
 逆にそれをはじくかっこうになってしまった。

「「あっ!!」」

 支点・力点・作用点。
 あろうことか皿から解き放たれたケーキは、しばし宙を浮遊する。
 あんぐり口を開ける芳佳とペリーヌ。
 そうして飛んでいったケーキは吸い込まれるように、その場所に落ち着いた。
 ――シャーリーの胸の谷間に。
470名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 23:55:45 ID:Glxcc71T
「あー、別に気にしないで」
 服をべっとりケーキで汚しながらも、あっけらかんとそう言うシャーリー。
「そういうわけには! ここは私が――」
 と芳佳はシャーリーに駆けよろうとする。まさに迅速。
「ううん、あたしが!」
 が、そんな芳佳を押しのけ、先にシャーリーに抱きついたのはルッキーニであった。
 ルッキーニは首の動きだけで芳佳に告げた。
 うせろ。
 そのあまりの迫力に芳佳は気おされ、おずおずと元いた席に戻っていった。
 そうしてルッキーニはシャーリーの胸に口をやった。
 満足そうにケーキをほお張り、服についたクリームを舌全体で丹念になめとっていくルッキーニ。
 そのやりとりに場が一瞬静まり返る。
 が、それはのちにくる嵐の予兆だった。

「宮藤、ケーキなら私の分を――」
 とゲルトは芳佳の方にケーキを差しだそうとする。
 ――が、予期せぬ方向からすっと伸びたフォークが、それを持っていってしまう。
 ゲルトが首をひねると、そこにいたのはエーリカだった。
 エーリカはごっくんぺろりと、ケーキを一口で平らげた。
「なっ、なんてことするんだ、ハルトマン!」
「いらないのかと思って」
「わっ、私のケーキを……」
「じゃあ私のをあげる」
 とエーリカは立ち上がってゲルトへと皿を差しだした。
 ――が、あろうことか、ケーキをゲルトの股の間へと落っことしてしまった。
「なッ!」
「ごめん、トゥルーデ。今すぐふき取るから」
 エーリカはしゃがみこむと、ゲルトの膝をつかんで股をこじ開けた。
 そうしてあんな部分をズボンごしに、丁寧な唇と舌の動きで舐めとっていった。

「あらあら、バルクホルン。どうしたの」
 とミーナは一部始終を見ていながらも、わざとらしくも訊ねかけた。
 が、ゲルトは無言。声の一つも漏らさぬように、口をキッと固く結んでいる。
「ケーキがなくなってスネてるのね」
 ミーナはゲルトの隣までやってくると、ケーキの載ったフォークをゲルトの口元まで差しだした。
「……なんだ?」
「あーんして」
「な、なにを……」
「ほら、あーん」
 しぶしぶながら、ゲルトはあーんと口を大きく開く。
 その顔面に向かって、ミーナはパイ投げのごとく、ケーキののった皿を思いきりぶつけた。
 一面真っ白に変じるゲルトの顔。
「ミーナ! お前もかッ!」
「ごめんなさいね、トゥルーデ。うっかり手がすべって」
「そんなわけがあるかッ!」
「ごめんなさいって言ってるでしょう。ほら、今すぐふいてあげるから」
 そうしてミーナはゲルトに寄り添うように体をくっつけると、
 ほおやまぶたや鼻の頭のクリームを、まめまめしい舌の動きで舐めとっていった。
 もちろん最後は口のなかのクリームまでも。
 そうして現れたのは、真っ赤に変わったゲルトの顔。
(なめられてる……。私いま、完全になめられてる……)

 そのころ。
 エイラは横目でちらちらとサーニャを見ていた。
 ケーキを食べるどころか、まだフォークも手に取っていない。
471名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 23:57:42 ID:Glxcc71T
 そのころ。
 リーネは憮然とした表情でケーキをほお張っている。
 なにやら怒っているようにも見えるが、その理由は定かではない。
 その隣には、すでに自分の席へと戻ってきている芳佳。
 彼女のその前には、なにもない。
 自分のものであったはずのケーキは、ルッキーニによってもうすっかりなめ尽くされてしまったあとだ。
(私のケーキ……おっぱい……ケーキ、おっぱい、おっぱい……)
 手持ちぶさたをまぎらわすように、呪詛のように何事かをつぶやく。
「どうかしたのか、宮藤」
 そんな芳佳をいぶかしんで、美緒は訊ねかけた。
「……ケーキが、ないんです」
「じゃあ私のを食べるか? 食べさしで悪いが」
 美緒はそう言うと、芳佳の前にフォークを添えてケーキを差しだした。
「いいんですかっ!?」
「ああ。私は甘いものはあまり好きではないし」
「ありがとうございます!」
 そうして芳佳はそれを受けとると、右から左に、リーネの胸へと向かって投げつけた。
「きゃっ!」
「ごめん、リーネちゃん! でも大丈夫。すぐふいてあげるから!」
 芳佳はリーネに向き合い、抱き合うと、れろれろとした舌の動きで、
 胸のところについたケーキの残骸を懸命に舐めとりだした。
 両手をしっかりとリーネの胸にそえて。
 すると今まで憮然としていたリーネの表情が、みるみる変じていく。
 まるで厚い雲のすき間から光が射しこみでもしたように。
 リーネは食べかけのケーキに手づかみで触れると、その手で芳佳の顔を撫でた。
「芳佳ちゃんごめんね。手が滑っちゃって」
 そうしてリーネは芳佳の口元についたクリームをぺろぺろと舐めはじめた。
 それは、とっても甘い味がした。

 ペリーヌはその一部始終を目撃し、あっけにとられていた。
 なんてことをするんだという目だ。
(まったく、なんてことを……ん?)
 ――と、あることに気がつく。
(いや、そんなことより……)
 ペリーヌは美緒の前にケーキを差しだした。
「さっ、坂本少佐っ! わたくしのケーキでよろしければ……幸い、まだ手はつけておりませぬゆえ」
「だがペリーヌ、今日はお前の誕生日の次の日だろう?」
「いえそんな! めっそうもない。それは坂本少佐が召し上がってください」
「そうか? じゃあいただくとしよう」
 恐縮そうに断るペリーヌにそれだけ言うと、美緒はさっさとケーキを食べ始めた。
 ペリーヌはじっと座ってそれを見ていた。
472名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/28(土) 23:59:03 ID:Glxcc71T
 そのころ。
 已然としてエイラは横目でちらちらとサーニャを見ていた。
(ヨ、ヨシ……!)
 エイラは視線をしっかりとサーニャにすえ置くと、 意を決したようにフォーク――ではなく、ケーキののった皿へと右手を伸ばした。
 すると――ぐにゃ、というやわらかな感触。
「ナッ!?」
 あわてて手元を確認すると、エイラのその指先はケーキのなかにすっぽりと埋まっていた。
「どうかしたの、エイラ」 その声にケーキを食べる手を止め、サーニャは訊ねた。
 ナンデモナイ、と両の手のひらを振って、それに答えるエイラ。
 するとそんな右の手首をサーニャはそっと掴んで、自分の顔の前へと持ってきた。
 そしてサーニャは舌をのぞかせると、それがエイラの指先についたクリームをぺろりと舐めた。
「ナッ、ナニをするんダ、サーニャ!?」
「だってクリームついてる」
 それだけ言うとサーニャは再び作業を再開する。
 指の1本1本を、指の腹を下から上に撫であげるように、じっくりと、じっくりと。
 エイラはみるみるほおを赤らめ、そのくすぐったさに身悶えする。
「じっとしてて」
 そうしてサーニャはエイラの指先を根元まですっかり口のなかに含んだ。
 ちゅぱ、ちゅぱ、と唾液がからむ音がかすかに聞こえる。
473名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 00:00:01 ID:pB0aCYH3
 そのころ。
 美緒の手が一口食べたところで止まっていることに、ペリーヌは気づく。
 どうかしたのかしら?
 ペリーヌは首をかしげてそれを見つめていた。
 すると――
「食べさしですまないが。やはりお前が食べろ」
 と、坂本はペリーヌの前に再びケーキをつき返した。
「で、でも、それは坂本少佐の……」
「かまわん。だって今日は、お前の誕生日の次の日だろう」
 美緒は言うと、白い歯をのぞかせる。
「しょ、少佐のお心づかい、恐悦至極の所存です!」
 ペリーヌは自分の前に差しだされる皿へと、ピシッと両手をそろえて伸ばした。
 勲章の授与でさえ、こうもまごまごしい動作にはならないだろう。
 そうしたわけで、ケーキは再びペリーヌの前へと戻ってきた。
 が――ふいにペリーヌの手が止まる。
(これをわたくしも少佐に……)
(いや、せっかくの少佐のご厚意をそんな……)
(いやでも、もともとはわたくしの分のケーキ……)
(でも譲渡したわけだから、やはりこれは坂本少佐のケーキ……)
 ようやくなにかを心に決めるペリーヌ。
 皿をしっかり手にとると――それをテーブルの上に置いた。
(だって今日は、わたくしの誕生日の次の日ですもの)
 ペリーヌはフォークを口元に運んできて――その直前でその手が止まる。
(これはもしや間接……)
 ペリーヌはすっぽりと、口の奥までフォークを押しこんだ。
 縦横無尽な舌の動きに口のなかのケーキはしっかりと咀嚼され、
 あとは無機質な金属製のフォークを残すばかりだ。
 それでも、ペリーヌはその味を心ゆくまで堪能した。

 ――こうして、一部波乱の誕生会は幕を閉じた。



以上、というわけでペリーヌお誕生日おめ!
あと関係ないけど、小清水さんのワイフもお誕生日おめ!
つか、元のやつの保管庫のナンバーが19て。それでこれが800番台?
このスレ絶対おかしい(褒め言葉)。でも、ペリーヌのSSはもっとあったっていいはず。
474名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 00:03:08 ID:Bz7P2iX8
ペリーヌSSの少なさに泣いたorz
475名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 00:14:04 ID:5NbhWcMJ
それはペリーヌSSの後に言う台詞じゃないなあ。毒されてるぞ、未熟者。

>>473
GJ!2桁台の続きが今来るとかwそして当時と比べても衰えるどころか
ますますエロくやらしく百合百合しくなってますなあもうたまらん!サーニャやべえええ!
それでいて笑いのセンスも一流なんだから恐れ入ります。

ケーキを食べるペリーヌの多少屈折しつつも清々しい笑顔が目に浮かぶようだ。いやあGJ!
476名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 00:47:00 ID:KcGIXOul
>>473
寝る前にスレ開いて良かった…!
つまり超GJ!
477名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 00:59:57 ID:keTTKTvy
>>473
前作より隊員たちの変態度あがっとるwww 芳佳おっぱい魔人すぎるしw
前作もこの作品も大好物です。
続きありがとうございます! 超GJ!!
478名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 01:29:55 ID:dPCGsfnN
8話を見ながらビリー・ジョエルのオネスティを聞くと雰囲気出る
479名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 01:39:34 ID:MX1jn3Ly
小説を読んでハルマフジの可能性がまた一つつぶされた、そんなような気がした
480名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 03:28:59 ID:AmrN/Kgn
ハルマフジ結構いいと思うんだけどね。
理想が先走っていわば無鉄砲とも言える芳佳を、
エーリカが仕方ないなあと笑いながらフォローしているような。
どうして助けてくれるのか聞くと、
自分も芳佳の目指す先をみてみたいからだよ。
でもこのままじゃそうなる前に死んじゃいそうだからね。
まあこのわたしに任せて、ミヤフジはどーんと進んじゃいなよ。
とにこっと笑顔を返してくるみたいな妄想が。
481名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 03:52:25 ID:ogPQsIAd
ペリーヌ祭終わってしまった
482名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 05:31:34 ID:9Ws77Sho
いまがんばって書いてるよ…ペリーヌ、間に合わなくてほんとゴメン。
仕事中書こうと思ったらゴタゴタがあって1行も進まなかった。

みんなは万引きとかしちゃダメだぜ・・・
483名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 06:03:43 ID:pB0aCYH3
そもそも祭り自体(ry

近頃、ペリーヌにはドジっ娘系の妹キャラが合うんじゃないかとか思ったり。
501には残念ながらいないが、たとえば天姫なの。
なぜかペリーヌに妙になついてて、しょっちゅう後ろとかついて歩くの。
そんでなんでもないとこで転んだり。
ペリーヌは最初、ウゼーとか思って露骨に嫌がるんだけど、だんだんまんざらでもなくなってきて、
「まったく、しょうがないんだから」とか言いながら面倒見よく世話やくようになるの。
そんで二人の仲が次第に縮まってきて、その子はペリーヌのことちゃん付けで呼んじゃったりするの。
ペリーヌは赤面して嫌がるんだけど、その子があまりにしつこいから、
「二人きりの時だけですわよ」とか言っちゃって了承するの。
でもある時、みんなのいる前でついうっかり「ペリーヌちゃん」って呼んじゃって、
それで隊のみんなからからかわれちゃったりしゃうの。
そんでペリーヌは怒って「絶交よ」とか言い出しちゃうの。でもそのあとすごく後悔して。
だけどなかなか自分からは謝りづらくて、悶々とした日々を過ごすの。
そんな時、ペリーヌに501への配属が決まって……とかいう妄想。

>>482
超楽しみに気長に待ってる!
484名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 06:47:12 ID:k8gdFR37
>>479
>>444-456らへんを見てた時点で期待してなかったし買うつもりもないがいちおう詳しく
485名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 06:58:52 ID:A0p/VOvz
>>483
「ドジっ娘&妹」でリーネちゃんが出てこないとは一体どういうことだ?
486名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 07:19:35 ID:pB0aCYH3
>>485
いやリーネはタメだし(学年だと1つ違うのか?)。
それのなんて言うんだろ?俺的にはドジっ娘だけど、前向きなタイプがいいと思うんだ。
リーネとかサーニャは後ろ向きじゃん。
487名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 08:00:37 ID:9Ws77Sho
>>486
それ芳佳のことじゃないのか?w
488名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 09:38:53 ID:DqsA6nVq
Candy boyを見て姉妹百合の良さに気づいた
489名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 10:12:16 ID:Uy0J4Yas
>>479
そんなもの自分の妄想力でカバーだ!
「職人さま〜」とか人に頼ってちゃダメだ!
いますぐ自分でSSにしてここにうpしてみるんだ。
さあ早く。皆待ってるぞ。
490名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 11:11:09 ID:CLlhyE6m
そろそろひな祭りの時期
491名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 11:18:57 ID:/+HQTide
サーニャの手紙やべえ
とにかくやべえ
492名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 12:11:03 ID:rleyfIZv
>>478
まさか俺と同じこと考えてる奴がいるとは思わなかった
でもダイヤモンドクレバスの8話MAD、あれのイメージ強いんだよな
493名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 13:15:25 ID:AmrN/Kgn
XRp1SOaoです。
出遅れてしまいましたが、ペリーヌと芳佳で一本投下します。
本当は誕生日に間に合わせたかったのですが…なんでこんな日に風邪を orz
元々書いていたものは時間が更にかかりそうなので、短めなのをひとつ。
3レスほどになると思います。
494名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 13:16:20 ID:AmrN/Kgn

 カーテン越しに差し込んでくる朝日とガラス越しに伝わってくる小鳥の囀りが、少しずつしかし確実に意識を覚醒へと導いて
行く。睡眠時間分の軽さを得た瞼が、それでも睡眠故のむくみにかすかな重みを感じさせたものの、ゆっくりと開かれて行く。
それはほぼ自動的な行為であり、まどろみに値する時間でもあり、何処か優雅ともいえる心地よさを感じさせる一時でもあっ
た。

 開かれた視界はその窓へと向けられており、音により認識されていた光景がほぼそのままの姿を持って網膜へと焼き付け
られる。もう既に朝焼けの範疇を超えた空は、文字通り昼間の青さを湛えており、まさしくそれは睡眠明けの頭には相応しい
すがすがしさを持って映し出されていた。
 それ故に、慌てて身を起こそうとした自分は、しかしまだ血の通いきってない両腕ではそれも叶わず、あえなくへたり込むこ
とになる。それは普段の務めとしてはあってはならない狼狽であり―尤もそんな姿は日常茶飯事ともいえるのだが―つまりそ
れほどに、自分が目にしている光景は取り乱さざるを得ないものだったということだった。
 何故なら、目を覚ますべきは常にまだ日が登りきる前であり。そうでなければ自分はその日課を果たすことが出来ないのだ
から。

 ―なんて醜態ですの。

 へたり込んだその動きに沿って視界を覆うかのごとく降りてきた金色の髪を、ようやく満足に動くようになった左手で払いの
ける。身を起こさないのは、既に取り戻しようがないことを知っているからだ。

 ―この時間では、もう訓練を終えて部屋に戻られていますわね。

 溜息がこぼれる。今日はもう日課を果たすことが出来ない。ああ、つまりは黎明の中まるでその空気を切り裂くかのように
躍動するあの凛々しいお姿をこの目に焼き付けられないということになる。脱力感が体を支配し、今はこのまま横たわってい
たい気分だった。勿論ミーティングの時間までには支度を終えている必要はあるが、日の昇り具合からまだそれなりに間が
あるように思えていた。

 ―それにしても、アラームをセットしていたはずですけど。

 寝過ごしそうになったことが無かったわけではない。その度にいわばその窮地を救ってくれた盟友は、何故か今朝に限って
はその役割を果たしてくれなかった。仮にいつもどおり鳴っていたとしたら、自分は必ず目を覚ましていたという自信がある。
ということは、それは鳴らなかったと言うことだ。
 では壊れてしまったのか。しかし、それは自分の私物であるが故に簡単に壊れてしまうような安物ではない。勿論可能性は
皆無ではないが、それに限りなく近いものだと少なくとも自負はしていた。

 だからそれは違和感となり、何かしこりのようなものを心に現す。そうなって初めて気が付いたことだが、そう言うべきなのは
それだけでは無かった。目を覚ましてから、何かいつもとは違うような、そんな感覚をずっと感じてはいたから。鳴らなかった
アラームに、初めてそれが形として表層に浮かんできただけであり、探してみれば、それは幾つも現れてくる。例えば、自分の
部屋はこんな角度で朝日を見せてくれただろうかと。身を沈めているマットレスは、こんな硬さを持っていたのだろうかと。身を
包むぬくもりと、それに混じる微かな匂いは、普段とは違うものであり、また何処かで感じたことのあるような―

 ―どうにも、まだ目が醒めていないようですわね。

 覚醒したと思っていた頭は、まだ寝惚けという言葉で表せられるようだ。

 ―全く、我ながらたるみきったものですわ。

 自重しつつ、それでも頭を上げる気にはなれず、丁度窓と反対側にあるはずの時計を確認しようと、ぐるりと身をひねった。
495名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 13:17:23 ID:AmrN/Kgn

「…んぅ…」
「…え?」

 それはあまりに意外な光景で、本来ならば真っ先に飛びのくか跳ね除けるかどちらかの回避行動を取るはずなのに、それが
あまりに意外すぎた故に体はぴたりと固まってしまっていた。

 視界をほぼ埋めているのは、寝顔。当然自分には誰かと同衾する趣味などないし、何処かのスオムス空軍少尉ではあるまい
し日常的にそんな状況に陥ることなど無い筈だった。つまりはこれは間違いなく異常である。

 しかもだ。よりによって自分の目の前にあったのは、普段豆狸やらちんちくりんやらの言葉をもって目の仇にしている人物―
つまりは宮藤芳佳の寝顔だった。

 それが文字通り鼻が触れ合うほどの距離にある。いや、実際に触れ合ってしまっており、その感触からだろうか。彼女は寝言
ともうめきともいえぬ何かを口元からこぼし、そしてまたすやすやと寝息を立て始めた。そのすやすやすら、確実に鼓膜が拾い
上げてしまうほどの距離は、普段それを認識してなくはないもののあえて表層からは遠ざけていたもの―いわばあの堅物大尉
をもあっけなく虜にしてしまった愛らしさを確実に意識へと刻み付けつつあった。
 ピンと跳ねた癖のある髪は微妙に寝乱れており、頬を掠めているそれからは彼女特有の甘みの混じった香りを鼻腔に伝えて
くる。小さく開かれた口から漏れてくる呼吸音は否定しがたいほどの心地よさと共に鼓膜を叩いてくる。睡眠時の血圧のせいか
普段薄く朱に染まっている頬は朝日に白く映えており、それでも変わらぬ柔らかげなイメージを網膜に映してくる。普段くりくりと
動く大きな瞳は、今は瞼の向こうにあり、それに自分が映されていないことを何故か寂しく感じてしまっていた。
 それらの全てを慌てて振り払う。こびりついて簡単には離れそうに無かったので、普段よりも念入りに頭を振る。それでも混乱
だけは抜け切ってくれないようだった。

 ―な、なに?これはどういうことですの!?

 ようやく戻ってきた制御権に慌てて上体を起こし、距離をとる。そしてきょろきょろと当りの様子を伺った。そうしてみればすぐわ
かる。ここは自分の部屋ではなく、宮藤芳佳の部屋だと。ああ、それならばと。覚醒時から感じていた違和感の正体はあっけな
く日の目を見ることとなった。むしろそれに今まで感づかなかったことが不思議なくらいでもある。
 尤も、目を覚ましていたら自室ではなく違う誰かのベッドで寝ていたなど、そうそう想定できる事態ではないのだが。しかしそれ
が現実に起こってしまった以上、そんなことも言っていられない。

 ―といいますか、一体どうしてこんな状態に…

 とりあえず、昨夜の記憶を探ってみた。探ろうとしてみたが―そう、夕方までの記憶ならある。だがそれ以降の就寝するまでの
記憶がさっぱり思い出せない。そう、確か昨夜はみんなで集まって、何故か途中でアルコールの類が振舞われ始めて―あれを
持ち込んだのは誰だったのか―止めるべき人物がその場にいなかったため、結局は自分も口にする羽目になって―そう、確か
目の前のこの子も口にしていたはず―それで―。

「…駄目ですわ、その先が思い出せません」

 ―それにしても。

 自分がこんなに頭を悩ませているのに、となりで暢気に寝息を立てている彼女に、少しだけ腹立たしさを憶える。とはいえ、そ
の経緯が明らかでない以上、その非を問うわけには行かないのだが。それに、ここは彼女の部屋であり、ひょっとしたら自分の
方が闖入者かもしれないのだ。
 すやすやと眠る彼女を見下ろす。それにしても、まさかこの子と同衾する日が来るなんて、自分には予想も付かないことだった。
見ると自分はベッドの真ん中を占拠しており、それに寄り添うような形で彼女は眠りについている。すっかり安心した様子でこちら
に体を預け、安らかと言える寝顔で。

 ―こうしている分には、かわいい後輩と呼べるのでしょうけどね。

 苦笑する。まさかこんなに静かな時間を、この子と過ごすことになるとは思わなかったから。またそれによって、こんなに穏やか
な気持ちにさせられるとも。
496名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 13:18:09 ID:AmrN/Kgn

「ありえませんわね」

 もう一度苦笑して、その感覚を振り払う。

 ―全く、どうせならこんな豆ダヌキではなくて、坂本少佐のベッドで目を覚ますとかならどんなに素敵だったことか。

 浮かべたシチュエーションに思わず目眩がする。無理矢理に方向転換するつもりだったが、それはあまりに強烈過ぎた。

 ―例えば先程のように朝の光で目を覚まし、目を開けると既に起床しており身支度をしている坂本少佐が朝日の中でこちらに
振り返り微笑みかけ、お前はまだ寝ていろなんて声をかけていただき、ああ、おはようのキスを忘れていたななんて額に優しく口
付けをしていただき、そのあまりの衝撃にわたくしは再び夢の中に落ちて行くのですわ。
 ―ええ、勿論再び目を覚ましたときは、そのお顔が目のまえにあって、お前はやはり可愛いななんて言いつつ今度は唇へと―

 溜息が口から漏れ、そこで妄想を締めることにした。現実とまるで遜色ないレベルで再生されていた妄想世界は、あっけなく元
の早朝の風景へと指し変わる。

 実際、それはまさしく妄想であり現実では望めるべくもないことを、ペリーヌ自身が一番良く承知していた。坂本少佐の自分への
接し方はあくまで上官が部下に接するものの範疇を超えることはなく、それは親密と言う言葉を付け加えるに相応しいものだった
としても、いわばただそれだけのことだった。
 逆に言えば、きっと自分はそれが叶うことがないと分かりつつもそれを求め続けているということになるんだろう。おそらくは、そ
の想いを抱くことで祖国と親族を失った喪失感を埋めてしまおうとするかのように。多分あの人は、それに気が付いているが故に
自分の行為を受け入れてくれるのだろう。だけど決して踏み込んできてくれることはない。そこに線引きがある。彼女は自分が尊
敬するに相応しい立派な人物であり、立派な軍人であり、立派な上官であり、そしてそれが故に。
 勿論、抱いている尊敬の念は確かに本物であり、たとえ平時に出会っていたとしても、おそらくは今と変わらぬものを抱いていた
に違いない。けれども、今のような妄執じみたモノにはならなかっただろう。ああ、つまりはそれが何よりの証明となる。だから、先
程のような妄想に彼女を登場させることは、それ自体が自分の中の彼女の像を貶めるものであり、侮辱以外の何者でもない。そ
れでも、抗いがたい魅力を感じさせるものではあるのだが。

 ―まったく、浅ましいにも程がありますわね…

 何度も味わってきたその種の憂鬱に沈みそうになる様子を知ってか知らずか、起こした上体の腰周り辺りにぎゅっとした圧力が
生じる。見ると寝惚けたのか、きゅっとこちらに抱きついている宮藤芳佳の姿が見えた。

 抱き枕と勘違いしているんじゃないかと思えるくらいに、がっちりとこちらを掴んでいる両腕は離れる気配もなく、また相変わらず
の寝息を立てるその表情は目覚めの兆候の欠片すらも感じ取ることが出来ない。
497名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 13:19:12 ID:AmrN/Kgn

「んぁ…ペリーヌさ…ん」

 その口が自分の名前を呟くものだから、本当に不意打ちじみた在り様で心臓がどきりと高鳴った。つまりは、夢の中でこの仕草
に相当する行為を向けている相手は自分ということになるのだろうか。まさか、そんなにこの子に懐かれていた覚えはない。むし
ろ、嫌われててもおかしくはないと思っているくらいだ。
 それでも自分の名を呼んだその表情は変わらず安らかなままで、思わずそう勘違いしてしまいそうになる。
 それは確かに自分の心を暖めるものであり、そう、少なくとも今落ち込んでいる心を慰めるものであった。そもそもこうしてまとわ
りつくと言ってもいい彼女の動作を跳ね除けようとしないところで、既にそうだったのだろう。

「この子は、本当にもう」

 全く、何処まで自分をかき回してくれれば気が済むのか。折角築き上げてきた自分の、仮の形と呼べるものをこうも崩してくれる
のか。

 ―ああ、それに、確かにわたくしを乱しはしますけれど。

 まだ眠るその髪をそっと撫でる。ふさっと跳ねたクセ毛をなぞるように指先を動かすと、くすぐったいのか小さく身じろぎをしてみせ
る。それはまさしく愛らしいと言う言葉がぴたりと当てはまる様相で。くすくすと漏れてくる笑いを抑えることが出来なかった。
 もう暫くこのまま、この稀有な状況で惰眠を貪るのも悪くない。どうせがっちりと自分を捕まえたこの手は、彼女が目覚めるまで離
れることはないのだろう。それならばそれでこのぬくもりに身を委ねてしまおう。

 ―おかしなこと。あの方の傍ではないというのに、どうしてこうも落ち着いた気持ちにさせられるのでしょうね。

 それ以上思考を進める気は無く、苦笑とも微笑とも言えぬものでそれを統括し、ベッドへと体を沈める。丁度彼女の頭を胸に抱え
るような仕草で。自分の頭がそこにあることを睡眠下でも感じたのか、彼女は小さく擦り寄るような動きを見せた。なるほど、彼女に
対するある種の疑惑はそれなりに信憑性のあるものかもしれないと思わされる。

 横たわったベッドは、そう意識してしまえば普段の自分とは違う匂いがして、その肌触りもぬくもりも別の種類のように思えてしまう。
それはおそらく自分の胸で変わらぬ寝息を立てている彼女固有のものなのだろう。その場所に自分がいることを、彼女は許容して
くれている。それはやはり、暖かいものなのだろう。事実、こんなにも暖かい。
 それに身を委ねるように、目を閉じた。規定の時間まで、まだもう暫く余裕がある。せめてそれまでは、この珍しい時間を堪能して
みるのも悪くない。

 ―そうですわね、今度少し、優しくしてみるのも悪くないかもしれませんわね。

 そんなことを思い浮かべながら、ゆっくりと再び遠のいていく意識を追いかけることを放棄した。
498名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 13:22:47 ID:AmrN/Kgn
以上となります。
すみません、3ではなくて4でした orz
499名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 13:32:29 ID:pVQMgifp
>>498
待ってたGJ
優しいペリーヌさんとか大好物です
500名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 14:02:48 ID:YzdRZwms
乙女2でエーリカが少なくともウルスラのこと思ってるのがわかってよかったよかった!
501名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 14:05:52 ID:qoH1Kl9u
>>500
kwsk
502名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 14:19:11 ID:YzdRZwms
>>501
まああくまで妄想の範疇はでないけど、ゲルトのエピソードの中にね……フヒヒ!


まあ気になるなら買って確かめてみてね!
503名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 14:25:37 ID:dPCGsfnN
>>492
ミーナと坂本の今の関係にはビートルズのオール・マイ・ラヴィングがぴったり
504名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 14:30:54 ID:scjEH4Ha
>>498
GJGJ!和んでしまうペリーヌ好きだ!
もっさんへの愛情については自分に厳しすぎんのなーと思いつつ妄想にはニヤニヤしまくったよw
505名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 17:27:48 ID:rUYxUzlI
ちょいとSSをと思ったんだけど……、

一部で人気のハルマフジ(力士かよ(;´д`)
もしくはエーリカ×リーネ

どっちが皆さんお好みですかね?
30分経ったらぼちぼち書き始めます。
506名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 17:34:44 ID:jydy8K2/
>>505
多分ハルマフジの方が需要あるだろうけど、
個人的にはエーリカ×リーネが未知数すぎてすごく気になる…
507名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 17:44:20 ID:YzdRZwms
>>505
わがままに両方
508名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 17:46:46 ID:3zh1ZcJh
>>505
ハルマフジを書いてくれたら俺嬉しくて発狂する
509名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 17:55:27 ID:pftYcJIV
リーリカってやつか・・・
510名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 17:57:15 ID:MmZGFxbv
511名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 17:57:43 ID:MmZGFxbv
ごめんなさい誤爆です
512505:2009/03/01(日) 18:01:49 ID:rUYxUzlI
両方って……無茶です先生(;´д`)

とりあえず>>506-508各氏、リクどうも。
これから書きます。
どちらが出来るかはお楽しみに。
513名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 18:33:36 ID:9kSjGUWP
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org0923.png
一日遅れでペリーヌおめ!
誰か幼女時代のかわいいペリーヌの話書いてくれないかな
514名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 18:39:28 ID:MmZGFxbv
絵かわいい
515名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 18:43:54 ID:GJ4LbY7c
>>510
これが誤爆…だと?
516名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 18:47:25 ID:fneJSs+k
>>513
相変わらず可愛い絵だ
でもペリーヌの子供時代を見ると涙が・・・
517名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 18:48:41 ID:LXas8OyT
>>513
幼女ペリーヌ可愛い過ぎだろw
518名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 18:52:18 ID:scjEH4Ha
>>513
幼女ペリーヌかわいいww
おばあちゃんっ子だったり、お父様お母様にも愛され……
……すまん。泣けてきた
519名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 19:05:32 ID:HBDYE45O
ある朝、ペリ犬が目を覚ますと何故かペリーヌちゃん(5歳)になっていましたと。

性格までも幼女化してて、めちゃめちゃ泣き虫の甘えん坊さん。
いつも美緒おねえちゃんやミーナおねえちゃんやゲルトおねえちゃんや
シャーロットおねえちゃんやリーネおねえちゃんにくっついて歩いていますと。
520名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 19:13:47 ID:jydy8K2/
>>519
なるほど、幼女時代なら悲劇だが、
幼女化なら501のメンバーに甘やかされて幸せそうですな

っていうかそのおねえちゃんの人選だとペリーヌちゃん5歳はおっぱい星人ではw
521名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 19:29:56 ID:keTTKTvy
>>520
おっぱい星人というよりも、お母さんっぽい人になついてるだけかも。
ルッキーニとはいい友達になってそうだけど、
芳佳には「なんかよくわかんないけど、この人嫌い」とかいいそうな気がする。
522名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 19:33:29 ID:w0mP3cYt
噛み癖のある幼女ペリーヌですねわかります
523名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 19:42:10 ID:G94LDBk1
エイラ「ほら爪噛むなって、腹壊すゾ」
ペリーヌ「あーん、エイラおねえちゃんがいじめるー」
サーニャ「エイラ、年下の子をいじめちゃだめだよ」
エイラ(涙目)
524名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 19:42:27 ID:rUYxUzlI
>>513
GJ! 相変わらずお見事です。

と言う訳で改めてこんばんは。先程の505改め、mxTTnzhmでございます。
リクエスト頂いたので書いてみました。
恐らく、皆さんの想像とは違うものだと思います。先に謝っておきます。ごめんなさい。
何故なら、いつもの様に保管庫No.450「ring」及び
>>372-376「idol talk」の続編だからです。

では、いきます。
525gravity 01/03:2009/03/01(日) 19:43:12 ID:rUYxUzlI
エーリカは珍しく芳佳に呼ばれ、昼食後ミーティングルームの片隅で待っていた。
窓際のソファーに座り、ふと外の風景を眺める。
滑走路から飛び立つのはトゥルーデとペリーヌ。司令塔ではミーナと美緒が二人の様子を見ている。
芳佳がお茶とお茶請けのお菓子を持ってやって来た。窓から見える空をちらりと見て、エーリカに言った。
「バルクホルンさんとペリーヌさんですね。今日はこれから訓練飛行でしたっけ」
「確かそうだね」
「私ももっとうまく飛べる様になって、もっとうまく射撃が出来る様になりたいな」
最後、言葉の勢いが小さくなる芳佳。自信のなさだろうか。
エーリカはそんな芳佳を見て、くすっと笑いながら言った。
「いきなりうまくなろうったって無理無理。少しずつ上達してくもんだよ」
「そうなのは分かっているんですけど……」
「ミヤフジにはミヤフジのいいとこ、あるじゃん。シールドが一番強力に張れたり、あと治癒魔法とかさ。
特に、501には治癒魔法使えるウィッチ居ないから貴重だよ?」
「はあ」
「お陰でトゥルーデも助けて貰ってるし。何度も」
「それは、私に出来る事ですから」
お茶とお菓子を並べる芳佳。
「ありがと。……で、話しって何?」
「ええっと、ですね」
芳佳は言葉に詰まり、おろおろとした。指先を所在なさげにふわつかせ、結局お茶を注いだカップに触れる。
「なんだか随分深刻そうな悩みに見えたけど? 私で良いの? 相談相手」
「ハルトマンさんだからこそ、お願いしたいんです」
ぐいと身を乗り出され、ちょっと引き気味になるエーリカ。
「そ、そう。で、何?」
「ええっと……その、それです」
芳佳が指さしたのは、カップを握るエーリカの指。そこにきらりと輝く指輪。
「これ? 指輪がどうかした? 値段聞きたいとか?」
ふふっと笑うエーリカ。
「ち、違うんです。あの……ですね」
「もったいぶらずに話しなよ。大丈夫、私はこう見えても口がカタイんだよ?」
「ホントですか?」
「何、その疑いの目は」
「いえ、何でもないです」
二人揃ってお茶を一口含む。同じお茶でも、リーネが煎れる紅茶の方がふんわりと柔らかくて良い香りがする。
芳佳のお茶は、いわゆる扶桑茶の入れ方に近くて、微妙に違う印象を受ける。
「聞いて下さい、ハルトマンさん」
改めて、芳佳が切り出した。
「さっきから聞いてるよ」
「指輪、なんです。この前の夜中、みんなでお鍋食べましたよね?」
「食べたね〜。あれ美味しかったよ。また作って」
「ええ、勿論」
「でもお腹減ったからって鍋って結構重い感じしたけどね。結局、量はそんな無かったけど。
……ミヤフジ達、だいぶお腹減る事してたんだね」
にやりと笑うエーリカ。
「え、いえ、その」
「良いって良いって。私達もミヤフジ達と同じだからさ〜」
首筋の脇に残る痣を見せるエーリカ。それを見るなり、真っ赤な顔をして反射的に首の周りを隠してしまう芳佳。
「気にする事無いよ。皆公然の秘密みたいなもんだし、ミヤフジもリーネももっと堂々としてればいいじゃん」
「えええ、私、お二人みたいな度胸有りません!」
「それ、ホメてる?」
「そのつもりなんですけど」
「ならいいや」
「……それで、夜食の時、ハルトマンさんとバルクホルンさん、指輪してましたよね」
「してたよ?」
「ハルトマンさん、私達にも指輪どうかって言いましたよね?」
「言ったね」
「私達、後で、少し話したんです。指輪どうしようって」
「へえ〜。いいね。最近は物資が高騰してるから良い店選ばないとね。私が知ってるロンドンのお店……」
526gravity 02/03:2009/03/01(日) 19:43:38 ID:rUYxUzlI
「ち、違うんです、ハルトマンさん」
「?」
クッキーをさくっとかじるエーリカはきょとんとして、芳佳の言葉を待った。
「『指輪良いね』って事までは話したんですけど……その、具体的にどうしようかとか、そう言うのは」
「奥手だね、二人とも」
「だって。大切な人に指輪を贈るって、相当な事じゃないですか?」
「う〜ん」
「私には、何というか……、『重い』って言い方は良くないと思うけど、リーネちゃんにそんな風に取られたらどうしようって」
「指輪を贈る事が?」
「はい」
芳佳はうつむいた。エーリカはクッキーをもう一枚口に放り込むと、自分の指で光る指輪を眺めた。
「重い、か」
「なんか、ずしりと、する気がして」
「別に、首輪と鎖でお互い縛り付けるんじゃないんだしさ」
エーリカは笑って言った。
「あ、でもそう言うプレイも面白そうだね。今度トゥルーデで試してみよう」
「ええっ? ハルトマンさん、一体お二人で何を!?」
ぎょっとして身を引く芳佳を見て、苦笑するエーリカ。
「冗談だって」
芳佳にクッキーをひとつ渡した。さくっとかじる芳佳を見て、エーリカは言葉を続けた。
「ミヤフジ、本当にリーネの事が好きで、大切に思ってるんだね。分かるよ。だから腰が引けちゃうのも」
芳佳はクッキーを手に、エーリカの言葉に耳を傾けている。エーリカは言葉を続けた。
「まあ、これは私の考えだけどさ。恋愛には、重いも軽いも無いと思うよ」
「……」
「恋愛のかたちって、人それぞれじゃん? 例えば私とトゥルーデ。例えばミヤフジとリーネ。皆、それぞれの
“かたち”って言い方ヘンだけど、あるっしょ」
「はい」
「でも、お互いを大切だって思いやる気持ちは誰でも同じだと、私は思うな。そこに重い軽いは無いよ」
「はあ」
「その気持ちの表れの延長線の上に有るのが、婚約だったり、指輪だったり、と思う。私はね。そこら辺はみんな違って当然」
「なるほど」
「ここだけの話、私もトゥルーデに指輪贈ろうって決めた時、色々したよ。シャーリーから婚姻届貰ったりさ。
でも、ちょっと照れ隠しの意味も有ったり。あれ位する勢いが無いと、トゥルーデに渡せなかったのかもね」
「それで、ロンドンの高給レストラン貸し切りにして、バルクホルンさんの妹さんまで巻き込んで……」
「ちょっとやり過ぎだったかもね」
苦笑するエーリカ。
「ハルトマンさん、やっぱり凄いんですね。私生活ではずぼらだなって思ってたけど、謎な一面も有ったり、
凄いしっかりしてるんですね」
「……ミヤフジ、さっきから私の事本当にホメてる?」
「そのつもりなんですけど」
「ならいいか」
もう一枚、クッキーを食べ、お茶を飲むエーリカ。
「まあ、よく考えなよ。でも、指輪だけに固執しちゃダメだよ。ミヤフジも自分でこの前言ってたじゃん。
『指輪が無くても大事な事には変わりない』って。それで良いんだよ」
「え」
「あの時、うまいこと言われたなって、ちょっと思ったよ。あと、もう指輪してる私には、ちょっときたかな。
目の前で『指輪なんて要らない』って言われたら、なんかちょっと悲しくなるじゃん?」
「そんな事言ってませんよ! ヘンな意味で取らないで下さい! 誤解です」
ふふ、と意地悪な笑みを漏らすと、エーリカは芳佳の左手を取った。
いつの間に外したのか、自分の指輪を、芳佳の薬指にはめてみた。
勿論、サイズは違う。意外な事に、芳佳には少し緩い。
「はわわわ……」
「それがエンゲージリング。私とトゥルーデのね」
芳佳の手が微妙に震える。自分の指で緩めにはまる輝きを、おずおずと見つめる。
「どう?」
「どうって言われても……」
527gravity 03/03:2009/03/01(日) 19:44:06 ID:rUYxUzlI
「エーリカ! 何をやってるんだお前は!」
突然の怒号にエーリカは首をすくめた。
いつの間に帰って来たのか、トゥルーデがラフなシャツ姿で横にいる。訓練を終え、シャワーを浴びて来たらしい。
「あ、トゥルーデ。お帰り」
「何で宮藤が指輪を……」
ふるふると怒りの表情のトゥルーデ。
トゥルーデを見た芳佳は大いに慌てふためいたが、エーリカが後ろに回ってひそひそと呟いて「GO!」と背を押した。
芳佳はよろけて、トゥルーデにふにゃりと寄り掛かる格好になる。反射的に受けとめたトゥルーデは、怪訝そうな顔をした。
「どうした、宮藤?」
芳佳はトゥルーデの手をそっと取り、おずおずと言った。
「お、お姉、ちゃん」
ぼっと顔から火が噴くトゥルーデ。表情が一変した事から、頭の回路がショートしたか、もしくは……。
「みっみっみっ宮藤!」
何故か身体が前のめりになり、芳佳を抱き寄せるトゥルーデ。
そこにやって来たのは、リーネ。トゥルーデと芳佳の抱擁を見るなり、血相を変えて駆け寄った。
「芳佳ちゃん! バルクホルンさんと何してるの!?」
「あー。ちょっと面倒な事になってきたかな〜」
エーリカは残りのクッキーを頬張ると、芳佳の指にとまる指輪をするりと抜いて自分の指にはめ戻した。
「あ、り、リーネ。違うんだ。私はその、宮藤の、家族として、つまり姉としてだな……」
「そ、そうなのリーネちゃん。あの、お姉ちゃん……」
「えええええ!?」
衝撃の余り仰天するリーネ。
「みっ宮藤! 今、はっきりと『お姉ちゃん』と言ったな!? もう一度言ってくれ、ゆっくりと、耳元で」
「バルクホルンさん、離れて下さい! 何かいつもと雰囲気違います! 芳佳ちゃんから離れて!」
「ミヤフジ、とりあえず指輪返して貰ったよ、と」
「ああっ、ハルトマンさん、何処行くんですか!? 助けて!」
「ちょっと用事、思い付いちゃった〜♪」
「そ、そんなあ!」
「宮藤!」
「芳佳ちゃん!」
「ひえええええ」

end

----

オチてない\(^o^)/
とりあえず速攻で書いたので訳が分からなくなりました。
「お姉ちゃんパワー」炸裂は秘め声CDから着想を得ました。
エーリカの考えや発言は、本日放送の某ラジオのコーナーから拝借しました。

多分日付変わると思いますが、エーリカ×リーネにも挑戦しようかと。

ではまた〜。
528名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 20:04:29 ID:jydy8K2/
>>527
なんと正体はmxTTnzhmさんでしたか!
所々毒舌な芳佳とかエーリカに振り回される3人に噴きました。 GJです!

このエーリカは恋人のトゥルーデがお姉ちゃん状態になっても平気なんすねw
529名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 20:49:44 ID:JVxr04Ob
>>527
GJ、なかなか鋭い一本じゃないか。
自分の妄想はいつも支離滅裂なので、あなたのように確固とした自分の世界を持てる人に憧れます…
エーリネも楽しみに待ってる!
530名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 21:42:19 ID:/+HQTide
ここほど平和でかつ満足できるスレを他に知らない
531名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/01(日) 22:16:18 ID:rleyfIZv
>>527GJ!
お姉ちゃんモードが発動しても一切動じないエーリカ。
これはつまり婚約…指輪という形ある愛で結ばれてるエーゲルの安定感ってやつですね?
複数カップルの暴露トーク的なものは大好物だ!もっと書いてくだちい!
エーリネ待ってます

>>530
俺も
最高だよここ
532名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 00:02:50 ID:FK+jVrHS
>>527
gj!!


なんだけど、エーゲルが前提の話ならやっぱ×とかカップリングって言わないほうがいいと思うよ
533名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 00:12:00 ID:1bANJG55
>>527
GJ! mxTTnzhm様の書くエーリカは本当に魅力的です。
エーリネも楽しみに待ってます!

>>530
自分はこのスレが初めてのSSスレですが、これほどまったりとSSを楽しめる
スレはないんじゃないかと思います。
そして何より職人様方のクオリティが高すぎる。
これだけのものをあたり前のように読めるなんて、本当に贅沢ですよ。
534名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 00:15:55 ID:nY042UJL
公式の司令部入電のとこが更新されたんだが、

>まず第1弾は、いきなりの2枚同時リリース!
>宮藤×坂本、さらにサーニャ×エイラという鉄板カップリングでお届けします!

×ってなんだ!×ってなんだああ!!しかもカップリングって言い切ったってことはもうそれはつまりそういうことなんだろうか!?
あとやっぱりサーニャが攻めなんですね。主張し続けた甲斐があったぜ…。
気になるのは何で扶桑人は苗字でサーニャイラは名前なのかってところだが。
535名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 00:22:36 ID:FK+jVrHS
>>534
見てきた

普通に呼びやすいからじゃね?
芳佳×美緒ってあんま見ないし リトヴャク×ユーティライネンにいたっては…


まあサーニャは攻めというのは同意
536名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 00:38:15 ID:ccv+kWZr
>>534
なんという隊長、リーネ、ペリーヌファンを怒らせる記事だ…
537名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 00:41:43 ID:8IsoPpAG
Amazonで第3弾以降の商品情報見ると、ペリーネのところに芳佳がいるんだよね・・・
ペリーネ押しの一人としては…こう…やるせないものが…
538名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 00:42:00 ID:hH0W7jtF
不器用でヘタレなエイラ攻めこそエイラーニャの真髄だと私は思うのです
539名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 00:54:22 ID:nQrOLTMI
>>534
ストライクウィッチーズ 秘め歌コレクション1
−宮藤芳佳&坂本美緒−
ストライクウィッチーズ 秘め歌コレクション2
−サーニャ・V・リトヴャク&エイラ・イルマタル・ユーティライネン−

&を×に変えた理由について、司令部入電を書いた人と小一時間語り合いたい
540名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 00:57:15 ID:Fjmj7XSg
天空派はマイペースでがんばります
541名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 00:58:17 ID:/av+wUUS
エイラーニャならなんでもこいだぜ
542名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 02:01:25 ID:m1Heecs2
秘め声聞いた。
二期の一話はリーネとペリーヌが扶桑に来るところから始まるのかな。
そういうSS一応考えていたけどそれも書く必要なくなったな。
543名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 02:13:45 ID:ccv+kWZr
>>542
確かに2期の1話はそうなりそうな感じはするけど、
公式ではできないようなガチ百合展開ができるのが2次創作の醍醐味だから、
例えあらすじが被っても書く価値はあるんじゃないかな
544名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 02:30:44 ID:be/Ihzy5
>>542
二期、来るとしても来年だと思うぞ。
545名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 02:39:50 ID:ouQ6TPhr
秘め声と言えば、マルセイユってもしかして現役?
ということはカトーさんより年下なの?

だとしたら年下にいいように撃墜されるような受け受けしい人ということになるのカトーさん!?
546名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 02:54:33 ID:n3HMYMd5
みっちゃんとかいう愛人に嫉妬するリーネ
「ボソボソ…あの女の臭いがする…」
リーネさんを笑顔にする豆狸に嫉妬するペリーヌ
「なにかしら、この気持ちは」
美緒を惑わす若い子たちに嫉妬する隊長――は秘め声まんまダナ
547名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 03:50:05 ID:i8f7FqTw
どうもこんばんは。mxTTnzhmでございます。

>公式司令部より入電 「鉄板カップリング」指名、全機SSを投下しろ 新スレでお出迎えだ
>公式カップリングだ
>公式カプのリクだ! 油断すんな
>公式カプがなんだ 俺が他のを書いてやる!
>SSにルールは無い ただ妄想を書き散らすだけ

そんな今日この頃(AC0風に


さて、保管庫No.450「ring」及び>>525-527「gravity」の続編です。
>>532氏の仰る通り、「カップリング」と言うのもアレかなと思ったんですけど、
一応エーリカとリーネのお話し、と言う事でよしなに。

ではいきます。
548gravity bomb 01/03:2009/03/02(月) 03:51:06 ID:i8f7FqTw
リーネの部屋に呼ばれたエーリカ。
少しひりひりする頬をさすりながら、エーリカはノックしながらドアをかちゃりと開け、するりと中に入った。
「あ、お待ちしてました、ハルトマン中尉」
「お待たせ〜遅れてごめんね」
「いえ。紅茶とケーキ、用意しておきましたから……って、その頬どうしたんですか?」
赤くなった頬を見つけられ、問われる。
「あー、これ。トゥルーデにひっぱたかれた」
答えに困ったエーリカは、少し迷った後、正直に答えた。
「ええっ!?」
「まあ、ある意味自業自得なんだけどね〜」
あははと虚しく笑い、部屋の隅のベッドにどすんと腰掛けた。
「バルクホルンさん、手を上げるなんてひどいです」
「いやー、まあねえ」
エーリカは思い出した。涙を溜めて放たれた、トゥルーデの一発の張り手。
その後ぎゅっと抱擁し口吻を交わし話し合い、お互いの誤解を解いた事も。
ふと思い出にひたるエーリカに、そっと紅茶のカップが渡される。
芳佳のそれとは違い、流石本場ブリタニアの煎れ方だ。優しく広がる香りを楽しみながら、口を付ける。
「さて、リーネの用事って何かな?」
「……」
押し黙ってしまうリーネ。椅子に腰掛け、両手をぎゅっと握り、力が入っている。
うつむいたままのリーネを見て首を傾げる。そして一口紅茶を含むと、言った。
「ミヤフジの事。違う?」
びくりと身体を震わせるリーネ。当たりらしい。
「大丈夫、話して話して。私こう見えても口がカタイんだよ?」
「……本当ですか?」
「なにその目は。しかもミヤフジと同じ訊き方だし」
紅茶を一口飲む。
「いえ……あの」
「信用無いね私って。で、どうするの? そのまま黙り続ける?」
「ハルトマン中尉」
「ん〜?」
「私……芳佳ちゃんに、酷い事しちゃったみたいで……」
「さっきの、トゥルーデとの奪い合い?」
「はい」
アチャ〜こんなとこにも余波が。エーリカは内心苦笑しつつも、つとめて平静を装った。
「あれは事故みたいなもんだって。トゥルーデもさっき言ってたよ?」
「でも、バルクホルンさん……芳佳ちゃんの腰にまで腕回して、ぎゅっ、て。顔も近付けて、二人とも、顔真っ赤で……」
「してたね〜。でも、あの舞い上がり方はスイッチ入っちゃった時だから大丈夫」
「何が大丈夫なんですか!?」
椅子から立ち上がるリーネ。言葉を続ける。
「二人が離れた後……私、芳佳ちゃんに聞いたんです、何故って。そうしたら……」
「そうしたら?」
「その先を言ってくれないんです。何を聞いても『胸が』『おっぱ…』としか言わないし」
アチャ〜ミヤフジもスイッチ入ってたかー。エーリカは内心頭を抱えつつも、つとめて平静を装った。
「で、リーネは何て?」
「分かりません。芳佳ちゃん突き飛ばして……今、ここに居ます」
「ありゃ」
「私も気持ちの整理が付かなくて……でも、芳佳ちゃんに酷い事したって。多分芳佳ちゃん、部屋で。……でも」
芳佳の事を想像して涙をこぼすリーネ。
「可哀想だけど、何処か、許せないって気持ちが有って」
リーネの頬をそっとハンカチで拭くと、優しく抱きしめ、一緒のソファーに座らせる。
ちなみにこのハンカチはトゥルーデの部屋から持ち出したもので、エーリカの私物ではない。
「リーネ、純粋なんだね。私とトゥルーデみたいに、けがれてないんだね」
「そんな事無いです。でも……」
ふうと溜め息をつくと、リーネの顔をそっと肩に寄せた。涙が止まるまで、そっとさせてあげたい。エーリカの偽らざる気持ち。
じんわりと流れる、二人っきりの不思議な時空。迷い込んで、帰り道が分からなくなった童話の主人公達の様に。
エーリカは、そっとリーネの頭を撫でた。
549gravity bomb 02/03:2009/03/02(月) 03:51:40 ID:i8f7FqTw
やがてリーネの息が少し落ち着いてきた。
震え気味の涙声で、リーネは思わぬ言葉を口にした。
「私……、そんなに魅力が無いんでしょうか」
「魅力? どう言う事?」
「言った通りです。私、芳佳ちゃんに好きになって貰う程の魅力が無いんでしょうか?」
「どうしてそう言う結論になるかな? 先走り過ぎてない?」
「バルクホルンさんに夢中だったから……」
「あれは事故だって。大丈夫、トゥルーデの婚約者の私が言うんだよ?」
「そんな事、どうやって信用出来るんですか? バルクホルンさんも、実は芳佳ちゃんが好きかも知れないじゃないですか?」
「それは無いって。有り得ないよ」
「じゃあさっきの二人の様子、あれは?」
「だからちょっとしたアクシデントだって」
リーネの執拗な追及に繰り返し弁明しながらも、エーリカは心の片隅にしまい込んでいたひとつの疑念が膨らみかけるのを感じる。
トゥルーデの、ミヤフジへの接し方。
もしかして。
自分で“事故”の切欠を作っておいて言うのもヘンだが、本当にトゥルーデは……?
まさかね。エーリカは瞬時に答えを導き出した。
でも、リーネはすっかりナーバスになってる。
これは流石に私の責任か、と内心呟くと、リーネをそっと抱き寄せた。
それに。
エーリカの心の中で消した筈の嫉妬の心、悪戯な心の炎がちろっと混ざり、燃え盛り、瞳に宿る。
「リーネの魅力、ミヤフジは分かってないかもね」
「えっ」
「リーネの魅力、具体的に教えてあげる」
「そ、それって……」
リーネは口答え出来なかった。エーリカにいきなり押し倒され、唇を塞がれたから。
「あ、や、やめ、て……」
抗うリーネを押さえつけ、無理矢理シャツを脱がし、胸を見る。
「おっきいなあ。前よりおっきくなってない?」
エーリカは思った事を口にしていた。
「そんな事、ないです」
「ここに痕ついてる。ここにも。首にも。鎖骨にも……そりゃ、なるよね」
「ち、ちがっ……ああっ」
舌を這わせ、耳を舐る。ぴくっと小さく反応するリーネ。
「良い匂い……甘い香水付けてるんだ。ミヤフジのお気に入り?」
「そ、それは……二人で……んんっ」
「この匂い、ミヤフジもしてた事あるよね……仲良いんだ」
首筋を舐め、鎖骨に唇を這わせる。リーネが何か言おうとすると、唇で抑え込む。息が上がる寸前まで、キスを止めない。
自然と舌が絡まり、涎が絡み、つつと流れる。熱い息が二人の頬を艶めかしく撫で回す。
「は、ハルトマン中尉……」
リーネはドアの方を見る。今誰か入って来たら……そんな目をしている。
エーリカは当然織り込み済みと言った感じでお構いなし。
「まだまだ、リーネの魅力、知ってないね」
エーリカはリーネの太腿を絡め、ズボンの中に指を忍ばせる。びくっと強く反応するリーネ。
「私が教えてあげる……リーネの、ステキなところ。いいよね」
「い、いやぁ……」
言葉で反抗するのが精一杯。リーネは大蛇に巻き付かれ絞め殺される小動物の様に、エーリカの身体に埋もれ、小さく震えていた。
「答えは聞いてない」
エーリカは、リーネの身体を本格的に味わい始めた。締め付ける“大蛇”の動きは蠱惑的で、リーネもいつしか溺れ、もがく。
ノッてきたエーリカも服を半分脱ぎ、お互いの腰を絡ませ、脈動させる。本能的に受け入れてしまうリーネ。
どんどん声がうわずる。
「あっ……ああっ……はあっ、もう、だめ……」
「まだ、まだ、終わってないよ。まだ」
「いやぁ……ああ、芳佳、ちゃん……」
びく、びく、と身体を震わせて、リーネはエーリカの胸の中で果てた。
ぐったりと身体を横たえ、エーリカに身体を預ける。
「あ……」
吐息とも喘ぎともつかないリーネの一言を濃厚なキスで封じるエーリカ。リーネの目から涙がこぼれ、つつと頬を伝う。
ぺろりと雫を舐め取り、もう一度キスを交わした。
550gravity bomb 03/03:2009/03/02(月) 03:53:06 ID:i8f7FqTw
ソファーの上でした行為に、弁解の余地は無かった。エーリカがリーネに言う。
「ゴメン。やりすぎた」
二人一緒の毛布にくるまりながら、冷めた紅茶をちびりちびりと飲む。
無言のリーネ。
「ちょっと遊ぶだけのつもりだったんだけどね……リーネが可愛くて、つい」
「ホントですか?」
「え?」
「私が可愛いってだけですか?」
苦笑いして答えを濁すエーリカ。確かに、トゥルーデに対する妙な気持ちもトリガーのひとつだった事は否めない。
「ハルトマン中尉って……」
「ん?」
「そうやって、『つい』ひとを襲うんですか?」
「とんでもない。私は……」
リーネに唇を塞がれる。思いもよらぬ行為を受け止め、ぴくりと身体が硬直する。
驚いた表情を浮かべるエーリカに、リーネは頬を染め、小さく笑い、言った。
「私も、拒むならもっと、頑として拒めば良かったんです。でも、拒めませんでした」
「……」
「なんか、ハルトマン中尉に、……色々されて、頭の中で、芳佳ちゃんの顔浮かべて」
黙って続きを聞くエーリカ。
「私達見たら、芳佳ちゃん、どんな顔するだろうって。……私、最低ですよね」
うつむいて、自嘲の笑いをするリーネ。エーリカはリーネの肩をそっと抱き、言った。
「もっと最低なのがここに居るじゃん。私、今度はグーで殴られるね。何回で許して貰えるかな。それで許して貰えるかどうか」
「その時は、私が止めます」
「え?」
「私も一緒に、横にいます。そして説明します。バルクホルンさんにも、分かって欲しいから」
「度胸有るね、リーネ」
「だって。ハルトマン中尉、可哀想だし。私も、悲しいです」
「それって、リーネ……」
「心配しないで下さい。私、芳佳ちゃんが好きな事、変わりません。むしろ、もっと分かりました。色々と」
微笑むリーネ。何故か痛々しさは感じず、どこか吹っ切れた印象だ。
「でも、今だけ。今だけ、良いですか?」
リーネは、エーリカの肩と腰に腕を回した。潤む瞳。
エーリカは、彼女がこれから何をしたいか分かっていた。
拒むつもりは無かった。
頭の片隅で、トゥルーデに対する罪悪感、背徳感が鈍く疼いたが、リーネの濃い口吻で、瞬間的には消え去った。
「ミヤフジは幸せ者だよ。こんなステキな子に愛されてさ」
エーリカは唇を離し、素直な感想を告げた。リーネの顔がほころんだ。

end

----

なんだかヤバい方向に、ドロドロしてまいりました/(^o^)\
いかん、本当はこんなはずでは……しかし書き始めたら止まらない。
どこに終着点を見出すべきなのか。
何だかイケナイ雰囲気になってきたので、
次で全てを破壊し、全てを繋ぎます(某風に

ではまた〜。
551名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 05:05:21 ID:i8f7FqTw
たびたびこんばんは。と言うかそろそろ明け方ですねおはようございます。
mxTTnzhmでございます。
寝ずに続きを書きましたので構わずうpします。どうぞよしなに。

保管庫No.450「ring」及び>>548-550「gravity bomb」の続編です。
どうなるこの二組? と言う事で、早速どうぞ。
552gravity circulation 01/03:2009/03/02(月) 05:06:24 ID:i8f7FqTw
トゥルーデの部屋。
腕組みし黙して話を聞いていたトゥルーデ。わなわなと震える芳佳。
トゥルーデは芳佳の肩をぽんと叩くと、頷いた。
「二人が揃って事情を全て話して、謝っているんだ。許してやれ。良いな」
「でも、私……」
「これは命令だ! 良いな。宮藤、元はと言えば、私達にも非がある。違うか」
「はい」
納得行かない表情だが、頷く芳佳。
「よし、事情は全て把握した。宮藤、リーネ、お前達もお互い話が有るだろう。下がって良いぞ。
あとこの話、他にはくれぐれも内密にな」
「はい。すみませんでした」
「失礼します」
ふたりは揃って部屋を出た。ドアが閉まる間際、リーネがエーリカに向けた視線を、トゥルーデは見る。

芳佳とリーネが部屋を出て、残されたトゥルーデとエーリカ。しばしの沈黙。
重い空気を何とか打破すべく、エーリカは覚悟を決めて、名を呼んだ。
「トゥル……」
言葉は続かなかった。予想通り、いきなりグーで頬を殴られたのだ。
口の中が少し切れたっぽい。ハンカチで唇を拭うと、微かに血が滲んだ。
エーリカはちらっと上目遣いでトゥルーデを見た。感情を必死に抑えようと、腕が震えているのが分かる。
でも予想とは違い、トゥルーデはそれ以上何もしてこなかった。
「もういいの? もっと、殴られるのかと思ったよ」
「そんな事をして、何になるっ」
抑揚の中に感情の高ぶりを隠せないトゥルーデ。
「私、イヤな女だよね」
挑発するかの如く言葉を発するエーリカ。
「最低だよね。リーネで遊んでさ」
「聞きたくない。そんな御託は聞きたくない」
「それだけの事したって、自覚してるから、言ってる」
「なら何故そんな事を? 私の、私の気持ちを考えたのか!?」
「当然。でも、私の気持ちも有るよ」
「……」
「勿論、分かってとは言わないし言えない。元は私が悪いのは事実だし。私は謝るしか、出来ないよ」
言葉の最後、弱気とも悲しさともとれる雰囲気が出る。目を伏せる。
トゥルーデは一歩踏み出すと、何かする訳でもなく、ただ、エーリカをそっと抱きしめた。耳元で呟く。
「いや。私も宮藤に対して、もっと冷静に対応すべきだった。咄嗟の事とは言え」
「トゥルーデの悪い癖だもんね」
「私で遊ぶな」
何故か涙目になって苦笑するトゥルーデ。笑みの中に、涙が溢れる。
「ごめんね、トゥルーデ」
名を呼び、言葉を繰り返すエーリカも何故か小さく嗚咽している。
「私こそ、すまない、エーリカ。一番大切なひとに二度も手を上げるなんて、最低だ」
「暴力亭主様だから」
「ホントだな」
二人の目から涙が流れる。お互い気付いて、優しく拭き合う。エーリカが呟く。
「何でだろ。何であんな気持ちになったんだろ。私、訳わからないよ」
「さっき自分で言ってたじゃないか、リーネと一緒の時に。『嫉妬』って。違うのか?」
「でも……」
「確かにお互い、いや、皆許される事ではないかもな。でも私はエーリカ、お前を許し、受け容れる。例えお前が私をどう思っていても」
「トゥルーデ」
「理由を知りたいか? それは、エーリカ、お前だからだ」
涙混じりの、トゥルーデの真摯な目に心貫かれるエーリカ。
「何故? どうしてそこまで、私を?」
真っ直ぐな瞳を見、震えるエーリカ。
「何が有ろうと、エーリカ、お前を愛するに値する。私はそう信じる!」
心からの、情念のこもったことば。抱きしめる力が増す。ふと、互いの目に留まった指輪の輝きが増した、そんな錯覚を覚えた。
「トゥルーデ、ありがとう。そして、ごめんね。私も許すから、ごめんね」
「もう良いよ、エーリカ」
エーリカもきつくトゥルーデを抱きしめる。
553gravity circulation 02/03:2009/03/02(月) 05:07:05 ID:i8f7FqTw
「エーリカ……」
トゥルーデがリードし、ゆっくりと口吻を交わす。絡まる舌は、僅かに滲む錆び付いた血の味を感じ取った。
つつと垂れる雫も、少し紅が混じる。
「済まない。さっきので、口の中を……」
「きっと、罰だよ。気にしないで」
「エーリカ……」
「改めて、分かったよトゥルーデ。やっぱり私にはトゥルーデしか居ないって」
「私もだ、エーリカ。さっきリーネの目を見て思った」
「どうしてリーネを見て?」
「お前を見てる姿を見て、私も何故か分からない、ヘンな気持ちになった。だからつい、出さないと決めていた筈の手が……」
「それも嫉妬じゃない?」
「かもな。すまない、本当に」
「ねえ、トゥルーデ。一緒に……」
ふたりはベッドに倒れ込み、絡み合い、お互い全身全霊で、愛し合う行為に耽った。その姿は酷く野性的で、
だけどとてもお互いを想ってのことで、何度となく甘い声で、名を呼び合った。

「芳佳ちゃん」
芳佳の部屋では、リーネが黙ったままの芳佳に何度も声を掛けていた。
しかし、ベッドに腰掛けた芳佳はうつむいたまま、何の返事もない。
「ごめんね、芳佳ちゃん。私……」
何度謝っても、何を言っても、答えが無い。これ以上何と言えば良いか、分からない。
「ごめんね。芳佳ちゃん、聞いて。私……芳佳ちゃんの事、嫉妬してた。だから、ハルトマン中尉の事、拒めなかった」
「……」
「でもね、分かった事も有るんだよ? 芳佳ちゃんが、やっぱり好きだって事。世界で、一番好き」
「リーネちゃん」
ぽつりと、久し振りに聞く芳佳の言葉。
「芳佳ちゃん?」
「私……リーネちゃんを、苦しめてたんだね」
言いながら、じわりと涙が溢れる。慌ててリーネがハンカチで抑えるも、止まらない。
「私の方こそ、謝らないと。リーネちゃん」
顔を上げる。涙がつーっと頬を伝い、床に落ちる。
「ごめんなさい」
芳佳の純粋な一言が、リーネの涙腺を緩めた。
「芳佳ちゃん、良いの。私が」
「私こそ、誤解させて、苦しめて。ごめんなさい、リーネちゃん」
「芳佳ちゃん、泣かないで。私まで……涙が」
「リーネちゃん」
二人は抱き合った。力が緩んで、ベッドに倒れ込んだ。
ゆるゆると抱きしめながら、二人はどちらからとなく唇を重ねる。
「私も、リーネちゃんが好き。この世で一番。リーネちゃんが苦しむなんて、私、イヤだ」
「芳佳ちゃん」
「リーネちゃん、私、リーネちゃんを守りたい。もっと知りたい」
「私も同じ気持ちだよ。芳佳ちゃん」
もう一度、キスを交わす二人。
自然とベッドの上で二人は生まれたままの姿になり、肌を重ねる。
ゆっくりとお互いの身体を確かめ、触れ合い、心を通わせる。お互い心に溜まった負の感情を洗い流し、心を通わせる。
絆は前よりもずっと強く深くなる。吐息が弾み、身体も弾む。
「芳佳ちゃん、聞いて?」
「なぁに?」
「ハルトマン中尉がね、言ってたの。『ミヤフジは幸せ者だ』って」
「そうなんだ。……言われてみれば、その通りだよ」
「ホント?」
「うん。私、嘘は言わない。幸せだよ、リーネちゃん」
「私も」
「リーネちゃん、好き」
「芳佳ちゃん、私も好き」
お互い言葉で、そして触れ合う唇で、返事とする。そんな行為が、次第にエスカレートし、時が流れた。
554gravity circulation 03/03:2009/03/02(月) 05:09:22 ID:i8f7FqTw
夜の自由時間、浴場に現れたトゥルーデとエーリカ。
お風呂一番乗りと思ったが、先客が居た。芳佳とリーネだ。
「おお。お前達か。早いな」
「あ、バルクホルンさん、ハルトマンさん」
二組は湯を浴び身体を清めると、それぞれ石鹸でごしごしと洗いっこして、身についた色々なもの……
それだけでなく、心にこびりついた垢も落とし……いつしか皆、笑顔になった。
泡を綺麗さっぱり流して、湯船に浸かる。心地良い湯が、身体の張りや疲れをほぐしてくれる。
そして、身体についた痣や秘め事の痕も、じわりと浮き立たせる。
「何だ、お前達、随分増えたな」
トゥルーデが二人のそんな姿をを見て、冷やかす。
「お二人だって、そうじゃないですか」
芳佳が言い返す。湯煙の中に見える、トゥルーデ達の姿も確かにその通りだった。
ふっ、とトゥルーデが微笑んだ。
芳佳もリーネと肩をくっつけて、くすくすと笑った。
「トゥルーデ、からかえる程になったんだ」
「悪いか?」
「“堅物”の渾名が泣くよ、トゥルーデ。もうぐにゃぐにゃ」
「そうしたのは誰だ? エーリカ」
「そう、私だよ、トゥルーデ」
「臆面もなくよく言えるな」
「だってこの二人の前だし」
「そう言う問題……」
ふと湯船の中でキスされるトゥルーデ。軽い挨拶程度のものだったが、芳佳とリーネが見ている前でされると、
流石にこのタイミングでは、少し照れる。
「顔、赤いよ」
「風呂のせいだ」
「ホントかな〜」
リーネがトゥルーデ達に向かって微笑んだ。
「本当に素敵ですね、お二人は」
「リーネ達程でも……いや、二人にも負けないよ?」
「勝負するもんじゃないだろう」
「それもそうだね」
そのやり取りを聞いて、微笑む芳佳とリーネ。つられて笑うトゥルーデとエーリカ。
「お、なんだなんだ? 二組揃って入浴とは珍しいね」
「ウジャー 四人ともはやーい」
やって来たのはシャーリーとルッキーニ。適当に湯を浴びるとざばっと飛び込んだ。
「ウニュー」
ルッキーニはシャーリー、トゥルーデ、リーネをじっと見比べてる。
「ルッキーニ、どうかしたか?」
「ウニャ シャーリー、負けちゃうかもよ?」
「は? 何の話だ?」
何故か同時に笑う二組。それを見てシャーリーはますます不思議に思った。
間もなく、他の隊員達もぞろぞろと入ってきて、答えは聞けず終い。
こうして、501の夜は暮れていく。

end

----

〆が強引過ぎ/(^o^)\ 落ち着け自分orz

とりあえず言いたいのは、
皆お互いを思いやることの出来る「やさしい子」と言うこと。
少しでも伝われば幸いです。

紆余曲折を経ましたが、こんなかたちで如何でしょう?
「雨降って」何とやら、と言う事で。
この二組それぞれ、まだまだ書いていきたいですね。

ではまた〜。
555名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 07:10:35 ID:ghhTT0T8
>>554
/(^o^)\←この顔文字で毎回吹くw
いやぁあんた筆早いにも程があんだろ、GJ!
俺は結構ドロドロ展開好きだよ。(そんなにしょっちゅう見たいわけではないけど…)
しかしいいよなこのハッピーエンド!
俺の中でmx〜氏はハッピーエンドに定評のある職人なんだ
らぶらぶな芳リネエーゲル最高でした。改めてGJ!!
556名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 08:26:15 ID:Po2xA0Ej
朝っぱらからいいものを読んだ
557名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 08:48:30 ID:ccv+kWZr
>>554
昨日のSSの話が展開してるw
帰宅後にじっくり読ませてもらいます
558名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 11:42:27 ID:wI/fFZt0
>>554
ドロドロ展開→ハッピーエンド
っていう流れが大好きですGJ

エイラーニャの修羅場を見てみたいけどやっぱ怖いな
559名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 11:59:25 ID:vPaHAlzh
単純にいちゃいちゃハッピーさせてくれて描写も半端なく上手くてラブラブ具合も素晴らしく
なによりキャラに女の子同士の云々に抵抗が無い点がすばらしい
おまけに手も速いからこんだけのクオリティのSSでも量産できる

mxTTnzhmさんが個人的に一番好きな作者さんだ
560名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 12:03:27 ID:DmqIFqKn
>>510
再うp希望。
561名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 12:52:20 ID:ccv+kWZr
>>554
GJでした! 短期間に良作3本連発とかすごすぎます!

今更気付きましたが、エーリカとリーネって「浮気性の夫に悩まされる妻」という共通点があるんですね。
562名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 12:58:00 ID:vPaHAlzh
>>561
しかも浮気性の妻同士で激しいフラグ立ってるしな>芳佳とバルクホルン
563名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 13:53:29 ID:pk7C/my1
こんにちは
いらん子、ビューリングxウルスラにて6レス投下します
564アキストゼネコUー5 @:2009/03/02(月) 13:54:53 ID:pk7C/my1
 カウハバ基地から一番近い町の入り口に、エンジンの爆音と甲高い擦過音。
 ウィルマは皮のシートから滑り降り、よろよろと舗装路の縁石に座り込む。度重なる恐怖の連続に喉はからから、精も根も尽きるとはこのような状態をさすのだろう。
「…あっ、悪夢だわ……空でストライカーが故障して自由落下するレベル」
「大げさなやつだな、あれくらいで」
 憎まれ口を叩く相手に購入した紅茶を手渡し、ビューリング自身は濃いブラックを啜る。缶から立ちのぼる湯気を見て数歩移動し、くわえたタバコに火をつけた。
「…タバコ吸いすぎ。あなた絶対いつか肺を病むわよ」
 風下に移ったヘビースモーカーを訝しげに見やり、紅茶をちびちび含みながらウィルマはちくり。うるさがられ嫌な顔をされようと今まで何度も繰り返してきた。お節介だと自分でも思うが、持って生まれた性格は変えられない。
「禁煙なんてすれば間違いなく撃墜されるな。まあ、あがりを迎えたら考えてみよう」
 懐かしい忠告に口の端を少しだけ吊り上げ、ビューリングは穏やかに答える。
 ウィルマは耳にした言葉に心底驚いた。常に纏っていた厭世観が消え、その瞳は除隊後の未来さえ見据えている。
「…なんだその顔は」
「だって、あなた今まで『お前には関係ない』の一点張りだったじゃない。私、夢でもみているのかしら」
 喫煙をたしなめてはそう返され、口喧嘩の末にキレて引っぱたく。それが今までのパターンだった。ウィルマとビューリングの間で呆れたように笑い、最後には止めに入ってくれた彼女はもういない。
「だから大げさだと…まあ単にだな、あの言葉は結構こたえると気づいただけだ」
「ふうぅ〜ん、小っちゃな曹長さんに言われて傷ついたんだ」
「ブッ―――! ウィルマ、お前どうしてそれを?!」
 コーヒーを噴き出したビューリングに、ウィルマはやれやれと肩をすくめてハンカチを投げつける。少しくらい意地悪してもいいわよねと、珍しく焦った顔を眺めてほくそえんだ。
「さあね。それはそうと、あなた本当に彼女と付き合ってるの?」
「……答えたくない。絶対に笑われる」
 ビューリングは煙をもくもくさせてだんまり。なにやら面白そうだとウィルマはわくわく。
「笑うなんて真似しないわよ。たとえあなたが8つも年下の少女に手を出した変態でも」
「お前が私をどんな目で見てるか窺い知れるな…」
 猫なで声を出して絡みつくウィルマ、うざったそうに顔をそむけるビューリング。話すまで頑としてここを動かないというウィルマに根負けし、ビューリングは渋々と誤解から始まった一連の騒動について説明しだした。
565アキストゼネコUー5 A:2009/03/02(月) 13:56:14 ID:pk7C/my1
 ぶるっと身震いしたウルスラは手探りで熱源を探す。求めても求めても、得られるのは冷えたマットレスの感触ばかり。
「…寒い」
 寝惚け眼を開いてみれば、ここはどこと周囲をきょろきょろ。ついで現在の状況を思い出し、ブランケットの下で小さな溜め息をつく。
 身を起こして時計を確認すると、ランチを通り越して午後休憩の時間に達している。空腹を感じないのは眠る前に食べたチーズのせいだろうと、ほどよく消化された腹部をさすって立ち上がった。
「…べとべとする」
 手を開いたり閉じりして一言。チーズを直にのせたうえ舐めまわされたのだから、それも当然である。
 部屋にあの食いしん坊な使い魔の姿はない。当然のごとく添い寝をしてきて知らぬ間にドロン、主人同様なんとも型破りなことだ。そしてそんな存在にひどく安心し、あげく求めてしまった自分を否応なく意識する。
「心…」
 ぼつんと落ちた声。寒々とした寂寥感に押されて転がり出てきたもの、これが答えなのだろうか。
 少しすっきりした頭でそう考え、とりあえず手を洗おうと詰め所へ向かう。大扉の前まできたところで、いつも以上に騒がしい室内の様子に足を止めた。ウィルマが中にいるからだろうかと首を捻りドアを開ける機会を逸する。
「ちょっとは落ち着くねー。トモコは隊長なんだから動揺したら駄目よー」
「落ち着いてなんかいられないわ! 私たちの中隊存亡に関わる一大事なのよ!!」
 ウルスラは眼鏡の奥の瞳をぱちぱち。自室に篭っているうちに何があったというのか。
「戦闘経験豊富、長機も僚機もこなせる、楽観主義に陥らず一歩引いて周りを見れる…あら? 考えてみるとあの方、本当に指揮官に向いてますわね」
「ブリタニア空軍もよくわかってますよ。突っぱね防止にハニートラップを用意するとか」
「偉ぶったおじさまが来ても門前払い確定ですもんね〜。あちらにしても苦肉の策なんでしょうけど」
 続けて聞こえてきた声にも事態は一向にわからず、黒々とした不安だけが胸に渦巻く。ブリタニア空軍というキーワードにウィルマの来訪、この二つの重なる先にはただ一人しかいないのだが。
「ミーはウルスラも心配よー。さっき部屋を覗いたらよく眠ってたねー。起きてみればこんなサプライズなんて」
「そう、ですね。もしも、もしもそうなってしまったら、私ならとても悲しいですもの」
 飛び出てきた自分の名前にびくり、反射的にドアから後じさった。とても悲しいサプライズ、そんなものはいらない。
「どうしよう、どうしたらいいの……すごくマズイわ。そしてお尻がすごく痛いわ」
「いい音、響かせてましたから。流されやすい智子中尉には良い薬です」
「アホネン大尉も大変満足そうに帰っていかれましたね〜♪」
「あの変態の名を口にしないで! ああもうっ私たちがこんなに思い悩んでるのにあいつときたら―――もぉー頭きたっ! ファラウェイランドでもどこでも勝手に行けばっ?!」
 ガンッと頭を殴られたような気がして息も忘れる。いまだ固有名詞はでていないが、ファラウェイランドという新たなるヒントがでたらもう確実だろう。『あいつ』とはつまりビューリングのことであり、胸に渦巻いた不安の正体を悟る。
「でも実際ビューリングが抜けたら痛手ねー。今までの戦闘を振り返ってみたら歴然よー」
「ええ、その通りです。ビューリング少尉の冷静な観察眼がなければ私たち何度も全滅していました」
「だけど、どうしようもないじゃない……選ぶのはビューリングなんだから」
 話は延々と続いていたが、ウルスラは静かにその場から離れた。今頃になって駄目押しのように連呼される名を背中で聞きながら。
566アキストゼネコUー5 B:2009/03/02(月) 13:57:59 ID:pk7C/my1
「きゃーはっははは〜〜ビューリングがじゅっ純愛っ、うひゃひゃ〜もう駄目ぇ勘弁してー死ぬぅー」
 往来に構わずヒーヒー笑い泣くウィルマ、もう軽く5分はこの状態である。ニコチン切れしたビューリングは空箱をダストボックスに叩き込んでジロリ。
「今すぐその大口を閉じろ。さもないとここに置き去る…脅しじゃないぞ」
「はいはい、了解しました少尉殿」
 ものすごくやる気のない敬礼をつけ、ウィルマは目元の涙を拭う。これ以上ビューリングの機嫌を損ねれば、その言葉どおり置き去られてしまうだろうと危惧して。
 適当に選んだオープンカフェのテラスに腰掛け、一心地ついたウィルマはムスッとした連れに声をかける。これは駄目だと店員を呼んでオススメは何かと尋ね、サーモンのパイ包みとベリージュースのセットを二つ注文した。
「それはそうと、よかったの? 彼女を部屋から追い出してしまって」
「……追い出してない。だが良いも悪いもないだろ。元々私たちの間には何もないんだから」
 その言葉は空々しく響く。
 ビューリングはジッポーをかちゃかちゃ、後ろ頭をがりがり。そのへんで買った葉巻を吸い込んだ早々、不味いと言って苛立たしげに揉み消した。
「そうかしら。とてもそうは思えないけど」
「ウィルマ…お前まで妙な邪推をするのか?」
「あなた、変わったわ。関係ないと突っぱねられてへこんだり、心配して使い魔を使役したり、タバコを吸うときに気を遣ったり。どれも今までのあなたとは掛け離れてるじゃない」
 的確すぎる指摘にビューリングは返す言葉を失う。
 それはウィルマに言われるまでもなく自分でも気づいていたことだ。だけど認めるわけにはいかなかったことだ。
「ねえビューリング…あの人はね、あなたを苦しめるためにあなたを庇ったわけじゃないわ」
 ウィルマは今まで意識して避けていた話を持ち出す。これはとても勇気を必要とした。なぜならあの時ブリタニアに帰ってきたビューリングに、誰よりも傷ついていただろう彼女に、ひどい言葉を投げつけてしまったから。
「むしろ今のあなたを見て怒り狂うでしょうね。私のライバルのくせに何を腑抜けているんだって」
 ウィルマの姉貴分でありビューリングのライバルだったその人は、瘴気渦巻くオストマルクの空に散った。
 ビューリングはテーブル下の拳をギュッと握る。負けん気ばかり強くて撃墜数だけが生きがいの鬱陶しいやつ、それがあの運命の日にライバルへ放った最後の言葉。どうしてこんな自分を庇ったのか、その答えは見つからずもう尋ねることもできない。
「大切なものができたら今度は失わないよう努力すればいい。今のあなたならそれができる。だから―――恐れないで。自分の変化を認めて受け入れて。だってそれこそが生きるってことなんだから」
 スピットファイアやブラフシューベリアと同じだと、ウィルマは辛抱強く言葉を重ねる。あの時言ってあげられなかった分まで、そしてひどく傷つけてしまった分まで心を砕く。
「…あいつと同じようなことを言うんだな」
「えっ? 今なんて?」
 ぽつりとした呟きを聞き逃したウィルマにビューリングは首を振る。さすがにあのアホネンと一緒にするのはあんまりだ。
「まったく…どっちが年上なんだか」
「ふふっ、だって私は8人姉妹の長女だもの。あなたみたいな捻くれ者だってお手の物よ」
 顔を洗って出直してらっしゃいと、ウィルマは胸を張って笑う。面倒見の良さと大人びた言動に惑わされるが、実はビューリングより2つ年下である。
「しゃくだが今回は私の負けだな。行くか」
「はっ? ちょ、ちょっと私まだパイを食べてないんだけど」
「歩きながら食え。もたもたするな」
 掴みだした高額紙幣をコップの下に敷くと、とっくに完食したビューリングは慌てる連れに構わず歩きだした。
 その背中に思いつくかぎりの悪態をつき、ウィルマは冷めてしまったパイを紙ナプキンで手早く包む。カフェのスタッフに一声かけて、猛然と後を追った。
567アキストゼネコUー5 C:2009/03/02(月) 13:59:50 ID:pk7C/my1
 気がつけば中庭に出ていた。ウルスラは人目につきにくい場所に置かれた木製のベンチに腰を下ろす。
 ここはよく利用する場所だった。黙々と本を読むウルスラの隣で、タバコをふかしたビューリングが使い魔を遊ばせる。雪の積もる季節から始まったそれは、木々たちが青々とした葉をつける頃には毎朝の日課となっていた。
 二人とも口数の多い方ではない。一言も話さない日だってある。互いの存在を閉め出していたわけではなく、自分の世界に没頭する相手を許していた。
「本、ない…」
 ぼうっとしていてふと見下ろせばなんと手ぶら。どうしてだろうと考えて、手がべとべとするから部屋に置いてきたんだったと思い出す。
 ウルスラは自分自身に驚く。そんなことすら記憶を辿らないと出てこないほど自分はショックを受けているのだ。彼女が、ビューリングがいなくなるということに。
「いなく、なる…」
 それを想像するとひどく苦しい。胸がちくちくして、もやもやして、寒々しい。
 変わってしまった自分、変わってしまった世界。ウルスラ・ハルトマンはこんなじゃなかったはずだが、もう自分の元のカタチなど忘れてしまった。
「ウルスラ曹長が本を持っていないとは珍しいですね。明日は雪でしょうか」
「……ハッキネン司令?」
 深い思考に沈んでいたウルスラは虚を衝かれる。失礼しますと断りを入れ、カウハバ基地司令は寂れたベンチに並んで腰を下ろした。
「トモコ中尉なら詰め所…」
「いえ、今回はあなたに」
「…これは?」
 ウルスラは差し出されたものをすぐ受け取らず、理知的に眼鏡を光らせるハッキネンに確認する。雪女というコールサインどおり一欠けらの感情さえ感じさせない彼女、その意図が全く見えない。
「私に宛てられたブリタニア403飛行隊からの手紙です」
「403…ビューリングの」
「はい。極秘とも書いてないので構わないでしょう」
 しれっと言い放ち、ハッキネンは重要だろう手紙を押しつける。ウルスラは困惑を表に出さずにレターを取り出し、文面にさっと目を走らせた。
「昇進辞令、転属命令と―――飛行学校の教官依頼?」
「ビューリング少尉には見せていません。憤慨されるでしょうから」
「そうですね…」
 まだ戦えるウィッチに空から降りた後の話を持ってくるなど。しかも教官受託の見返りとして、比較的戦闘の少ないファラウェイランド空軍に隊長の座を用意したとある。気の毒になるほど空気を読めていない、そんな本末転倒な話だった。
「もっとも私にとって争奪相手の自滅は願ったり叶ったりですが」
「争奪…?」
「単なる独り言です。忘れてください」
 氷の無表情で強引に話を流し、ハッキネンは基地併設の飛行学校構想を伏せる。ブリタニアと同じ轍を踏むわけにはいかない。
「ウィルマは、これを?」
「ええ、勿論。基地に来られて早々私に語りました。知っていて尚、そうした方がビューリング少尉のためなのではないかと」
「ビューリングの、ため…」
 ウルスラは格納庫でのやりとりを思い出す。ウィルマがビューリングの何を危惧していたのかわかる気がした。
「スオムス着任時の彼女なら私も同意したでしょう。ですが彼女は変わった。そして、あなたも」
「…………」
 さすが司令、よく見ている。ウルスラは返す言葉を失くして黙り込む。
 ハッキネンは手紙を回収して立ち上がると、瘴気のない美しい空を眩しそうに見上げた。
「この空を守れるのは、カウハバ基地が誇る第一中隊と義勇独立飛行中隊だけ。私はそう信じています」
 強い自負をにじませて断言すると、ハッキネンはその場から立ち去った。
568アキストゼネコUー5 D:2009/03/02(月) 14:00:46 ID:pk7C/my1
「うっきゃああぁ〜〜〜っ! あっあああなた、後ろに人を乗せてるのわかってるぅ?!」
「叫ぶなとは言わんが曲がるときに逆側に体重をかけるなよ。すっ転ぶぞ」
 ぎゃあぎゃあ悲鳴を上げてしがみつく人物に構わず、先を急ぐビューリングはスロットルを全開にする。町をまわって気づいてみればブリタニアのヘリが発つ時刻がせまっていた。ウィルマは遅刻による厳罰も避けたいが、自分の命だって大事にしたい。
「ひィいいいー! このスピードでこけたら絶対死ぬぅ〜こんなことなら町でもっと食べまくっておけばよかったああぁ」
「行きより確実にバイクが重い。お前があちこちで食いまくったせいだな」
「ビューリングっ、あなた自分が太らない体質だからってええぇー! 降りたら引っぱたくから憶えてなさいよーーーっ!!」
 食べれば食べた分だけ肉になる、それはウィルマにとって永遠の悩みである。何をどれだけ食べても体型の変わらない相手にそれを指摘されるほど腹の立つことはない。
 しまった地雷を踏んだかと悪びれずに考え、ビューリングは無茶な運転を繰り返すことで忘れさせてしまおうと思いつく。結果的にウィルマの悲鳴が途絶えることはなかった。

 カウハバ基地の正門前では、智子以下詰め所にいた仲間たちが横一列に並んでいる。夕方には戻ると出て行ったっきりの二人をやきもき心配し、じっとしてはおれぬとブラフシューベリアの帰還を出迎えにきていた。
 インカムを持って出ているはずなのに、電源をオフにしているのか何度呼びかけても応答しない。
「帰ってこない? 帰ってこないってどういうことよーっ! 誰か答えてっ?!」
「御宿泊になった…いえ、目潰しはとんでもなく痛いので勘弁していただければと」
 血走った瞳でギロリと睨みつけられると、失言しかけたハルカは他の隊員の背に隠れる。
 チッと大きく舌打ちした智子は門扉の前をうろうろし、長い黒髪をぐしゃぐしゃとかき上げた。
「だからハッキネン司令に言ったのよ。ストライカー出しましょうって。あの雪女ったらほんと融通が利かないんだから」
「誰と戦うつもりですかの一言で終わりましたもんね〜♪」
 ジュゼッピーナは睨まれる前に自主的に避難する。そしてまだ発言していない二人を後ろからぐいぐい押し、猛烈に機嫌の悪い智子の前へ。
「ま…まあまあトモコ中尉、ここは一つ穏便に。若い二人には積もる話だって―――――っひい、ごめんなさい!」
 拳を固めた智子を見てエルマは泣き出す。気の弱い彼女が気性の荒いケモノに立ち向かうなど土台無理な話である。
 よしよしと宥めてやるオヘアは鼓膜へ伝わる振動にきょろきょろ。耳に手を当てて周囲を探り出す。
「ンゥ? ドゥルルルゥ……エンジン音が聞こえまーす。どうやら帰ってきたねー」
「なんですって?! どこっ?! どこなにょわあああーっ!」
 
ギャギャギャギューン、チュインッ!

「いやああぁだれか助けてええぇー! 殺されるううぅ〜〜〜!!」
 門扉の端から滑りこんできたバイクが直角に曲がり、そのまま基地内へ全開で突っ込む。
 鉄の塊が通り過ぎていったあとに残されたのは、残像と長く尾を引く叫びだけ。

「とっ、智子中尉ぃ〜?! 大丈夫ですか、傷は浅いですよ。しっかりしてください」
「咄嗟にシールド張って緩和しましたね! さすがは私のトモコ中尉!!」
「派手に吹っ飛んでいかれましたけど…ああ、あれですね! 自分から後ろに飛んで衝撃を和らげるという」
「まともに撥ねられてたら命はなかったねー。トモコ、ユーは運が良いよー」
 隊員たちは頭から植え込みに突き刺さった智子を囲んで口々にもてはやす。綺麗に刈り込まれた植木がブルブル震えだし、直後爆発したような勢いで緑の葉が舞った。
「なんじゃそらぁっ! おのれビューリング、可愛さあまって憎さ百倍! むわあぁてええぇーーーっ!」
 ぶち切れた目をした智子が猛然と走り出す。素晴らしい俊足、まるでケモノのよう。
 このままでは刃傷沙汰は確実である。唖然としていた他の隊員たちも慌てて後を追いかけた。
569アキストゼネコUー5 E:2009/03/02(月) 14:02:14 ID:pk7C/my1
 ヘリポートに直接バイクで乗りつけるという暴挙をなした二人連れ。それを視界に入れたハッキネンは微動だにせずヘリ操縦者に合図する。軍用ヘリの大型プロペラが回りだし、周囲一帯に強い風圧をかけていく。
「随分ごゆっくりでしたね」
 近づいてきた者たちへの言葉。皮肉なんだろうかと、腰の抜けたウィルマを肩に担きあげたビューリングは頬をぽりぽり。
「…遅刻はしてませんよ」
「当たり前です。その場合は二人揃って営倉入りです」
「あのっ、お待たせして申し訳ありません、ハッキネン司令。この失礼な話し方は生まれつきなのでどうか許してやってください」
「しおらしくしても無駄だろ。それに尻を向けて言っても逆効果だぞ―――っ痛、こら暴れるな」
 取り成してあげたのにこの捻くれ者が! そんな感じのことを叫んでバタバタするウィルマ。残念ながらまだ足は立たない。
 ハッキネンは内心で溜め息をつき、常と変わらぬ温度のない声で問いかける。
「あなたの選択を聞かせていただけますか?」
「……ウィルマ・ビショップ軍曹をヘリまでお送りします。我が司令官殿」
 びしっと見事なブリタニア空軍式敬礼をつけて踵を返す偏屈なジョンブル。『我が司令官殿』、それが彼女の答えなのだと、ハッキネンは珍しく微笑を浮かべた。

「それじゃあ元気でな、ウィルマ」
 肩のウィルマをヘリに押し込み、あっさり告げたビューリングは口の端で微笑む。湿っぽい別れは適当でない気がした。自分たちにはこれくらいドライな方が合っている。
「あなたもね。何よ…この大きなものは?」
「土産だ、持って帰れ。お前は家族が多いからな」
「あ、ありがとう……」
 意外すぎて目をぱちぱち。どこに隠し持っていたのやら、ずっしりとした巨大な荷物を手渡されたウィルマは戸惑う。バイクが重くなったと言っていたのはこれのせいではないのかと、そう考えたところでハタと思い出した。
「誤魔化されないわよ。ほら大人しく殴られるっ!」
「なんだ、憶えていたか。執念深いやつめ」
 あわよくばの考えがばれ、ビューリングは苦笑する。フルパワーのウィルマに殴られればかなり痛いが、足も立たない今なら大したことはない。置き土産に一発もらっておいてもいいかと、腰の後ろで腕を組んで目を閉じる。
「いいぞ、さっさとやれ」

 革ジャケットの襟を引っ張られてカウンターの張り手をもらう、そのはずだった。
 ビューリングの脳裏に戸惑いが満ちる。おかしい、いつもと勝手が違う。これではまるで…キス、みたいではないか。
 無限に思える時間がすぎ、胸をどんと突かれて尻餅をつく。ぽかんとした間の抜けた表情の先で浮かび上がる大型ヘリ。

「きつ〜い一発っ! 後は頑張ってねぇ〜〜〜!!」
 ドアを閉める寸前にそう言い放ち、ウィルマはビューリングの後ろを指差した。条件反射で従った体はひどく冷たい目の智子に凍りつく。
「…さっさとヤれ、ファイト一発? あんた、私をあれだけ心配させといて何それ」
「おっ、おいトモコ…心配をかけたことは謝るが、言葉を適当に繋げるな」
 血走った目に狂気を感じ、ビューリングは低姿勢で智子を宥めようとする。しかしながら、智子の耳はいかなる言葉も受け付けようとしない。
「しかもベロチュー? ベロチューですって…うふっうふふっ―――死んで詫びろおおォっ!」
「うをっ?! お前のその刀なら骨も両断だぞって聞いてないな…くそっ、ウィルマ、憶えていろよっ!」
 いわゆる兜割りにされかけたビューリングは必死に転がって身を起こす。腰からグルカナイフを外して次の一撃をしのぎ、付き合ってはいられないと全力疾走した。
「ふふっ、ほんとに頑張りなさいよ。こぉ〜んな好い女を振ったんだからね」
 眼下にはもう豆粒ほどになった姿、抜き身の軍刀を振るう隊長から逃げ回る大切な人。とうとう想いを伝えることはできなかったけど、この結果をちゃんと認めて受け入れられる。
 ふと手に触れたのは、彼女がくれた変化の証し。
「またスモークチーズぅ? 意外性がないし、超ハイカロリーだし」
 初めて買ってくれた物におかしくなる。おかしくて、おかしくて、自然と顔が綻んだ。こんな悪態をついていると知ればきっと、いらないなら返せと怒鳴るに違いない。
 どうしたことか、目の前がぼやけて困る。
「……本当…高く、ついちゃった…な」
 嗚咽まじりの響きは抱きしめた変化の証しのためか、呟いた本人にも定かでなかった。
570名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 14:03:07 ID:pk7C/my1
以上です
思ったよりウィルマが動いてくれたので、主カプが霞んじゃったかも
一応次回で終わりなんですけど、最初のテーマを消化できるよう頑張ります
それでは失礼しましたー
571名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 14:13:47 ID:nY042UJL
>>570
リアタイで読んで唸ってしまった。GJ!!ウィルマさんカワユス!!
しかしこの智子の壊れようときたらww次回最終回とは寂しくなるなあ。
wktkして待ってる。
572名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 14:29:28 ID:JEqF0W11
>>570
ビューリングの すごい モテモテ
今回はウィルマとハッキネンさんがかっこいいな。話ごとに色んなキャラの魅力が発揮されてて凄いっす
それにしてもウルスラかわいいよウルスラ。見てたのがウルスラじゃなくて智子でよかった・・・w
次回最終回とは寂しいけど楽しみだ…待ってます
573名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 14:35:49 ID:vPaHAlzh
アキストゼネコ最終回か

撃墜部隊やring、学園もいずれ完結するのかと思うと死にたくなってくるぜ
574名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 14:40:48 ID:TIRO6UcS
WW2にはまだヘリはなかったかと
オートジャイロでは?
575名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 14:52:29 ID:nY042UJL
本格的に運用されたのはベトナム戦争からだけど、一応原型的なものは1939の時点で存在するはず。
1942にはオラーシャ人の開発者がVS-316Aを軍用でリベリオンに送ったりしてるはずだからその辺りじゃね?

まあいざとなったら魔力以下略でおk。
576名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 15:16:25 ID:vPaHAlzh
この前キャラソンのジャケ絵が一枚絵になる(一枚の風景をバラしてジャケ絵にした?)ってここかどっかで聞いたんだけど
二枚のCDに登場する芳佳はどうなるんだろう

ペリーネのみのジャケになるのかそれとも
芳佳「残像だ」になるのか
577名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 15:35:12 ID:ZNIM/lDv
バルクホルン「ついに1/1宮藤芳佳が完成したぞ!見よこの造形!もちろんキャストオ(ry」
578名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 15:46:10 ID:VXqXTHmy
リーネちゃんが物凄く不服そうな顔で映ってたら面白いんだけどなあw>ペリと二人ジャケ
579名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 16:33:53 ID:i3CpuMOs
一枚絵ならペリーヌもEDみたいになる可能性もw
でも2枚の背景見た限り、どういう風になるのか検討つかないな
他のキャラも楽器持ってたりとかすんのかな?
580名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 16:35:21 ID:JEqF0W11
ボーカルをもっふじ、ピアノをエイラーニャに取られた隊長はどうするのさ・・・
581名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 16:36:51 ID:vPaHAlzh
>>578
ペリーヌはノリノリで嬉しそうなのにリーネが嫌がってたりしてたら
マジで心が痛むっていうかマジで泣くからやめてくださいお願いします
582名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 16:41:12 ID:JEqF0W11
ペリ「本当は坂本少佐とが良かったのですけれどまあ仕方ないから貴女と唄って差し上げてもよろしくてよ!」
リネ「はい私も本当は芳佳ちゃんとが良かったんですけど決められた事なら仕方ないですよね。よろしくお願いしますペリーヌさん」
ペリ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

って事になったらペリーヌの方がダメージ受けちゃうだろ!
583名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 16:49:52 ID:G5E85/hU
ところで戦時中のフランス娘にどんな髪型が流行してたか知らないがペリーヌの直線的なあの前髪
もしも毎回散髪のたびにもっさんを意識して維持を決めてたらって考えちゃうな
あの生誕祭の、二人ツーショットの写真を撮りたい絵をみてるとね、考えちゃうよ
584名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 19:10:59 ID:CAPTQor6
ささめきこと、アニメ化確定でテンションが高い片想い大好きな俺が来ましたよと。

あんまり考えたくないけど、失恋して聖さまばりに髪をバッサリ切って男前になったペリーヌとか見てみたいかも。
585名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 19:12:00 ID:B8IxyC6S
>>570
お疲れ様です。今回も面白かったー!
ウィルマかわいい。心の中で悶えた 
ハッキネンが「争奪相手の自滅」とか言い出したときは「ハッキネンお前もか!」とわけのわからない誤解したのはココだけの秘密…
586名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 19:19:26 ID:GaFbTkYN
>>584
おぃぃ?
百合百合コミックささめきことの情報は、百合好きみんなで共有すべきでしょう?
kwsk
587名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 19:31:25 ID:CAPTQor6
http://d.hatena.ne.jp/moonphase/mobile?date=20090302

ストパン二期と共にwktk過ぎる。
588名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 20:21:05 ID:Po2xA0Ej
近いとこでは同じくGONZOの咲が
百合に定評のあるGONZOになればいいが
589Ti amo! 1/5:2009/03/02(月) 21:27:07 ID:CE7eDO10
こんばんわ。一ヶ月ほどまえにも48手を投稿したesNTV3r0toと申します
シャッキーニを投稿します。5レス程度になるかと。
蛇足ですが、タイトルのTi amo――イタリア語であたしはあなたを愛してる、という意味です。

ひりつくような暑い日差し。
雲ひとつなくどこまでも続く青空。
絶好の日光浴日和――
のんびりと、あたしはルッキーニと滑走路の脇辺りで日を浴びていた。すごく心地よい。
敵は昨日撃退したばかりでしばらくは現れない筈なので、心おきなくのんびり出来るってものだ。ペリーヌがまた怒っていたが気にしない。
この間――宮藤が遣って来た日みたいに、予期せぬ事態は無いと思う。今回こそは。
そんな感じで、ああ……いい日だ――とか思っている時のことだった。
「ねぇねぇシャーリー、あたし達の耳ってさあ……。聞こえるのかな?」
突如として襲来するよくわからない質問。耳? 耳が、聞こえる?
「ん〜ん?  聞こえてるじゃないか、今だって」
これ以外に答えようもない。ルッキーニもおかしなことを聞くなぁ……。
「ウニャァ、そっちの耳じゃないの! こっちこっち!」
そう言って、ルッキーニは黒豹の耳を顕現させた。耳って使い魔の耳のことか、やっと合点が行った。
「これがきこえるか――うん、考えたこともないな」
あたしもウサギの耳を出してみる。けれど特に周りの音が違って聞こえるような感じはしない。
無論、ウサギの耳を引っ込めても変化なし。まだ何とも言えないが。
「でしょ? 試してみない!?」
チェアから身を乗り出してあたしに詰め寄るルッキーニ。キラキラと目を輝かせているのがとても素敵だと思う。
「試すって、どうすんだよ? お前」
「ウジュ〜それは考えてなかった〜。あたしの耳だけ塞いで、シャーリーが何か話してみるのは?」
「耳を塞いでも、少しは聞こえちゃうんじゃないか?」
「やっぱりそうかな……」
あたしの言葉にに期待に満ちた表情から一転、いきなりヘコんだ表情を彼女は見せる。
ああっと、駄目だ駄目だ! そんな表情はルッキーニには似合わない! OK、あたしがなんとかしよう。
「考えてないのか? 少し待ってくれ、あたしが考えてみるよ」
要は使い魔の耳だけが聞き取れたらいいのだ。さぁ考えろ、考えるんだ! シャーロット・E・イェーガー!
むむむ…………。そうだ! これならイケるかもしれない。
「ルッキーニ。あたしの使い魔ウサギだろ? だからさ、もしも聞こえるなら普通は聞き取れない音でも聞こえる筈なんだ」
「うんうん、それで?」
「あたしがあたし自身の耳じゃルッキーニの声が聞こえない距離まで遠ざかって、それからウサギの耳でその声を聞くんだ――どうだ?」
自画自賛だが中々に名案じゃないだろうか? これなら確実に使い魔の耳が聞こえるかどうかハッキリする。
「おお! すごい、すごいよ! シャーリーってば天才なんじゃない!?」
はしゃぐルッキーニ。それを見て、やっぱり無邪気な笑顔が一番だとあたしは再確認する。これが見れただけでも考えた甲斐があった。
「ヘヘッ、だろ? んじゃさっそく試してみるか。丁度、ここは滑走路だから距離をとるのも簡単だし」
「ウニャッ! あたしが離れるね!」
言い終わる前にもう、ルッキーニは滑走路を駆けていた。あんなに走って転びやしないかヒヤヒヤする。
走り始めてから十数秒。幸い転んだりすることなく彼女は滑走路の半ばで立ち止まり、私に手をぶんぶん! と音がしそうなほどに振っている。
大分、あたしと距離が出来た。
これだけ離れたらもう普通の声量では聞こえない。手を振りながらルッキーニは声を張り上げた。
「いっくよ〜! シャーリィ! 耳、だして!」 
「イエスマム!」
体に魔力をみなぎらせ、再びウサギの耳を顕現させる。しかし、たぶん今のままではこのウサギの耳が聞こえることは無い。
あたしは魔力を顕現した耳に集中させることを強く意識した。
「シャ―――だ――き。……どう? 聞こえたーッ!?」
何かを言ったかおぼろげながら分かった。もう少しで完全に聞こえるようになるかもしれない。
頑張ってくれよ――使い魔にそう念じる。
「それらしい感じはした! もう一度頼む!」
「うん! もう一回!」
目を閉じて、意識を研ぎ澄ます。あたしは音速に挑む時の如く真剣になっていた。
第二の耳に全魔力を集中させる。
590Ti amo! 2/5:2009/03/02(月) 21:27:36 ID:CE7eDO10
「シャーリーだいすき!」
聞こえた! 間違いなくルッキーニは言った。あたしのことが、大好きだと!  
別に特別な意味がある訳じゃない、それは分かっている。それが分かっていてもたまらなく心が浮き立つ。何かに目覚めてしまいそうだ……
ああ、あたしが“だいすき”かぁ……。うへへへ。
「今度はどう!?」
――おっと、危うくお花畑に行くところだった。伝えないとな、ばっちり聞こえたって。
「どうって? ああ! 聞こえ――」
いいや、待てよ。もしも聞こえないと言えば……また言ってもらえるのか! だいすき、と。
魅力的な考えだ。ものすごく魅力的だ。
嘘をつくのはいけない――そう叫ぶ良心が自身の欲望に組み伏せられているのを感じる。
「聞こえ?」
はつらつとしたルッキーニの声。さっき組み伏せられたばかりの良心が再び立ち上がろうとする。だが――
「なかった! 悪い、再チャレンジだ! な〜に! 今度はうまくいくさ!」
結局欲望に負けてしまった。情けないぞ、あたし。
「いくよッ!」
「さぁこい!」
数十メートル先から、二度目となるその言葉が発せられた。
「シャーリーだいすき」
うはぁ……たまらない。何かもう叫び返すべきだな、あたしもだいすきだーッ!って。
でも、その前にあと一回だけ聞いておこう。一回で済む自信はないが。
「ううん駄目だ……。ルッキーニ、少し近づいてくれ! 三度目の正直だ!」
「そっか、頑張って! シャーリー!」
ルッキーニはあたしのことを疑いもしない。それどころかあたしに頑張って、とさえ言ってくれた。
やっぱり駄目だ、ここらで止めよう。ルッキーニの無邪気な心に付け入るなんて始めから考えてはいけないことだったんだ。
「シャーリーだいすき」
これで、聞き納め。猛烈に名残惜しいけどしょうがない。
と言うか、まだ十二のルッキーニにさっきから何をときめいてんだよ……一歩間違えたら、いいや間違えなくても犯罪じみてるよなぁ……。
「聞こえた!?」
「おう! やっと――」
「オイ、さっきからな〜にしてるんダ?」
答えようとしたあたしの後ろからエイラが現れ、無遠慮に胸に手を回した。すごく手慣れてやがる……意中のあの娘が泣いてるぞ?
「うわぁ!? いきなりなんだよ、エイラ!?」
胸は許さないことも無い、それよりも、また聞こえたと言い損ねた。あいつめ、一体どこから、いつの間にやってきたんだ? 多分聞き取りに集中してて気がつかなかったんだろうが。
「あッ! エイラ、どしたの?」
「見学に来タ!」
エイラにルッキーニも声をかけた。それにエイラも答える。……あたしの質問に答えろよ!
「こら、質問を無視するな」
「イヤァ何って聞かれてもナ……。私はサーニャが起きるまで退屈しのぎに、格納庫でストライカーの整備をやってたんダヨ。そしたら外で聞こえたとか、聞こえないとかお前らがさわいでたからカラ」
「見物に来たってことか」
まったくこの暇人め。あたしだって人のことは言えないけどな。
「そーゆーコト。――で何してんダヨ?」
「ああ、それは……」
「お〜い、シャーリー! 聞こえたのーッ!?」
いかんいかん。ルッキーニの事を忘れていた。でも、先ずはとりあえず暇人を静かにさせるか、ほっとくとうるさそうだし。
「ちょっとタイム! エイラに今やってることを説明するからさ!」
「早くしてよーッ!」
「わかってる!」
あたしはエイラの方に向き直って、今までのことをざっと説明した。
「かくかくしかじか……と、言うことで実験してた。今、ルッキーニに少し近づいてもらったところさ」
「便利な言葉ダナ、かくかくしかじかッテ」
「は? かくかくしかじか?」
説明の時そんな言葉は使ってないんだけどな?
「……いや忘れてクレ。触れちゃいけない部分ダッタ」
変なの……。あたしは改めてエイラの不思議っ娘ぶりを確認することとなった。
「なんだよ? まぁ、もうこの実験の結論は出たよ。――シャーリーだいすき! そう言ったんだよな!? ルッキーニ?」
ふりかえり、自信を持って答える。三回も聞いたんだ、間違う訳がない。
591Ti amo! 3/5:2009/03/02(月) 21:28:47 ID:CE7eDO10
「大正解! やったね、シャーリー!」
「よっしゃ! 実験成功!」
自分のことかの様に跳ねまわって喜ぶルッキーニ。
いいなぁ、すごくいい。愛らしくって元気一杯で……なんかこうさ、ドキドキするよ。後ろに居るエイラじゃないけどさ。
やっぱりあたしは俗に言うロリコンってやつなのかな? 
そんなあたしに、無邪気とは対極にある笑顔でエイラが目の前へ回り込んで来た。
この顔はロクでもないことを考えている顔だ、それも間違いなく。
「どうしたよ、エイラ? その邪悪な笑顔は?」
「シャーリーだいすき、ネェ――。お前、わざと間違えて何回も言ってもらったりしてナイカ?」
ぎくり! 
おかしいな、エイラの魔法は読心だったっけ? 違う、未来予知だ。おいおい、鋭すぎだろ!? 自分の周りのことには信じられないくらい鈍感なクセして。
「ハハハ……。そ、そんなわけないだろー?」
「その反応、間違いナイナ。素直に白状したらドウダー?」
あたしの動揺を敏感に嗅ぎとったエイラは追及を緩めない。
「デタラメ言うなッ! あたしは潔白だ!」
「ほほぉ〜いいさ、吐かないなら私にも考えがある」
不気味な捨て台詞を残して、エイラはまだ嬉しそうにしているルッキーニのもとへと向かう。危険だ! 止めなければ!
「エイラッ! 何をする気だ!?」
「見てたらわかるヨ」
「くそう……させるか!」
「ムリダナ、私は止められナイ」
あたしは必死にエイラを捕まえようとしたがことごとくよけられてしまう。
結局、予知能力者の彼女を捕まえられるはずも無く、ルッキーニへの接触を許してしまったのだった。
何だ、何をする気だエイラ!? 
「どうやら聞こえたみたいダナ、ルッキーニ」
「うん! エイラも見たでしょ!」
「確かに見た、デモナ……私はシャーリーが結果をごまかしている気がするんダ。本人はみとめてないガナ」
「ごまかし? 何かしたのッ? シャーリー?」
いぶかしむルッキ−ニの視線が痛い。正直エイラの言ってることは間違ってないからな……。かといってここで認めたらお終いだ。
「あ、あたしは無実だよ! 信じてくれルッキーニ」
「うん、そうだよね? ――エイラ! シャーリーが変な事をするはずないよ!」
「もちろん私も信じてるよルッキーニ。でもシャーリーの潔白は追加で簡単な実験をやるだけで証明できると思うんダナ。なぁに簡単な実験だよ、ちょっと耳を貸してクレ」
よせ、よすんだルッキーニ! そいつの戯言に耳を傾けるんじゃない!
おかしな流れになってきた。うう……なんでだ……。
「ゴニョゴニョ……。これだけでいいゾ」
「ウニャ……それいうの?」
「別に心から言うことはナイ、大丈夫大丈夫」
あたしがには聞こえないように細心の注意を払ってエイラはささやいている。一体どんな企みをルッキーニに吹き込んだんだ? 
「やってみるけど、シャーリーがごまかしなんてする訳ないよ! それをハッキリさせるかんね、エイラ」
「そうなるとイイナ。それじゃあシャーリー、もう一度実験ダ」
何を企んでいるにしても、あいつの思い通りにはさせない! みてろよエイラッ!
592Ti amo! 4/5:2009/03/02(月) 21:32:39 ID:CE7eDO10
エイラの実験はとても単純。
あたしが聞こえないと言った、つまりルッキーニが近付く前の距離で、エイラの指定した三つの言葉が聞こえるかどうかを測定すると言うもの。
もしもその距離で聞こえたならあたしはルッキーニにウソをついていたことになる……。
怪しい、単純すぎる。この実験、あたしが聞こえないと言ったら、あっさり潔白が証明されるじゃないか。
それがわからないエイラじゃない、何をしてくるかわからないけど気をつけないとな。
「シャーリー! 準備いい!?」
「大丈夫! 言ってくれ!」
エイラはあたしの後ろでなりゆきを見ている。……何をする気だ?
「せぇのッ! シャーリーなんてだいきらい――聞こえた!?」
ぐっは! だいきらい!? そんな……あんまりだ。聞こえた瞬間殴られたような感覚さえあったよ……これはキツイ。キツイが、聞こえなかったと言えばいい。これであたしの勝ちだ!
「いいや、聞こえなかったよルッキーニ! どうだ聞こえる訳ないだろエイラ! 始めからごまかしてなんか無いんだから!」
あたしの言葉を無視してエイラはおもむろに立ち上がって、ルッキーニに叫んだ。
「ルッキーニ! じゃあ二つ目ダ!」
そうだった。この実験、三回目まであるんじゃないか!? ってことはあと二回はルッキーニになじられる訳だ……。ジーザス! あたしはまんまと罠にかかった!
ルッキーニにきつい言葉を浴びせられるってのはあたしにとってどんな拷問よりも苦しい。とてもじゃないが耐えられない。あたしはなじられて喜ぶとか、そういう結構なシュミは持っていないのだから。
……ああ、わかったよエイラ。あたしの負けだ。
「ストップ! ごめん! 聞こえたよ、聞こえたんだルッキーニ! だからもう――だいきらいなんて止めてくれ!」
「シャーリー、聞こえた? 違うよ!? ほんとはだいきらいじゃないよ!?」
嘘がばれてしまった……。すっとんで来たルッキーニにあたしはどんな顔をすればいい?
「嘘、ついちゃったな。その……ほんとにごめん、ルッキーニ」
「嘘はさ、よくないけど、いいよッ! 別に! だから悲しい顔しないでシャーリー」
どうしてお前が悲しいそうにするんだ? 駄目だ、そんな顔は似合わない。
天使って言葉がルッキーニはぴったりだと思う。嘘つきで、しかもだいすきって言われて舞い上がっちゃうロクデナシのあたしでもゆるしてくれるんだから。
「やっぱり嘘カ、このロリコン」
「ぐうぅ、やってくれたなエイラ……」
「へへへ、嘘つきはこうダ!」
「うああ! 馬鹿! 胸を揉むな!」
ちょっぴり重くなった空気はまたたく間に消え去った。最初からこれが目的だったと思わせる勢いで揉んでくる。
「ちょっとエイラ! これはあたしのー!」
対抗するな! まずは止めろよルッキーニ!
「とりあえず揉むなって!」 
もう訳がわからない。どうしてこんなことに? もちろんあたしも悪いが、もとはと言えばこうなったのはエイラの悪逆無道な罠のせい。おお、神よ! この性悪キツネに天罰をッ!
「エイラ、またそんなことしてる……」
「げぇ! サーニャ!?」
593Ti amo! 5/5:2009/03/02(月) 21:33:34 ID:CE7eDO10
そう祈ったのが功を奏したのか? はたまた運命のいたずらか、ゆらりと現れたのはサーニャだった。
気配を消すことに定評があるサーニャだけど、誰一人気がつかなかったのは、どちらかといえば私たちみんなが胸に集中していたからだろうな。
さぁどうするエイラ。あたしの胸を揉みまくってたのをモロに見られたぞ?
「アノ、エエット、サーニャ? ナンデココニ?」
少し前のエイラにあたしが聞いたことと同じ内容。違っているのは状況、そして相手がかなりご立腹なこと。
「起きた時、エイラが居なかったから、会おうと思ったの」
居なかったから会おうと思った――堂々と言ってくれるね。サ−ニャに会いたいと思われることの価値を、意味をエイラは理解しているのかは疑問だけど。
「私に会いたかった? それもナンデ?」
「エイラになんか、教えない」
やっぱり理解してないよ、このヘタレ!
「それで探してたら格納庫に行ったって芳佳ちゃんに教えてもらったの……それで行ってみたらエイラがシャーリーさんの胸をもんでた。嬉しそうに。前、やめて欲しいっていったのに」
「サーニャ、私ハ――」
「何? 胸の無い私なんかに興味はないでしょ」
骨まで凍ってしまうような冷たい言い方に関係のないあたしもルッキーニも震えあがった。相当怒ってるな、ありゃ。
エイラのヤツ蒼ざめて今にも泣きそう……。助け船は出してやらん。さっきのおかえしだ。
「サ、サーニャァ」
そのまま去っていくサーニャをエイラ、そしてあたしとルッキーニはなす術も無く見送った。
「ウ、ウアァァァ……二人とも……私は、私はどうしたら……」
暗ッ! 目を離したら身投げでもしてしまいそうで怖い。
「ひたすら謝ってこい、それしかないと思うぞ」
「ま、負けるな! ファイトファイト! エイラッ!」
「アア、さよなら……二人トモ……」
ほんの少しの間で一気にボロボロな彼女に、あたし達のかけた言葉は効果があったとは思えなかった。くじけるなよ、エイラ。
「……ひなたぼっこにもどろう? シャーリー?」
「そうするか……」
ただ、さっきみたいに心の奥底からのんびりできそうにもない……。
×
それからは多少その後のエイラが気になったが、また実験前みたいにただあたし達はひなたぼっこをしていた。
あの時、ばれてしまった嘘はうやむやになってしまったみたいで、ルッキーニは何も言わない。不幸中の幸いだ。
「そうだッ! すっかり忘れてた!」
「どうした?」
まさか、な。何を忘れていたのかは予想できる……。頼むから外れろ! あたしの予想!
「なんで嘘ついたのさ! シャーリー!?」
あっちゃぁ……よくあることさ、悪い予感に限って的中するってのは。
「あ、ああ、うん。それはその……」
さあ、どうする? どうすんのよ、あたし。
「ちゃんと答えてよ!」
「わかってる」
よし! あたしの国の初代大統領は桜の枝を折ったことを正直に答えて許された。あたしもそれに習おうじゃないか。
「う――」
「う?」
ルッキーニが私を覗き込んでくる、なんだか近いぞ、ルッキーニ。
「うれしかったんだよッ! だいすき〜なんて言われちゃってさ! だから何回も、聞きたかったってだけだ!」
「なあんだ、そんなこと?」
拍子抜けされた。な、なんだよ? あたしにとっては結構勇気がいる発言だったんだぞ? 社会的にも。
「ヘンなシャーリー! だいすきなんて、わざわざ嘘つかなくても言うよ? シャーリーにならッ!」
「言うのか?」
「シャーリィ、すきすき! だいすき! ティ、アーモ! もっと言ってほしい?」
「言ってほしい!」
最高だ。もう嘘なんてつかない、つく必要もない。あたしもルッキーニのように素直な生き方をしよう!
――そして。あたしが、堅物の称号であるシスコンに続いてロリコンの称号を得たのはその日から間もないことだった。


エイラとサーニャが唐突な登場になってしまった気が……文才がありませんねorz
自分の知る限りでは、使い魔の耳が聞こえるかどうかの情報はありませんが、実際どうなんでしょう? 聞こうと思えば聞こえるという前提で描いてしまいましたが……
しょーもないSSにお付き合いいただきありがとうございます。
594名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 21:37:50 ID:B8IxyC6S
>>593大丈夫か、このリベリアン…と苦笑いしつつ。大変愉しませてもらいました!
今日は個人的には豊作だw

漫画版ではシャーリーは耳がいい、みたいな描写がありました。
サーニャも夜目が効くという描写もあったし。
なので問題ないんじゃないでしょうか。
595名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 21:44:35 ID:JEqF0W11
なんて平和なシャッキーニだ!かわいいなあ!GJ!
エイラは明らかにサーニャを貧乳コンプレックスしたよね…反省しろw
596名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 21:57:09 ID:zw4bCw+d
>>97です。

時間がないのでわりかし連続になってしまってすみません。

皆がいいと言うので釣りバカエイラさんを書いてしまった・・・スカガは関係ありません。
コメディを書こうと始めたのにとくに面白要素がない。
普通に釣りしたり意味のわからないつり用語とかがでるので適当にするーしてください。
タイトルは釣りバカエイラさん〜獲物は魚か唇か?キス釣り!〜。多分えいらにゃ要素あり。
597名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 21:57:56 ID:zw4bCw+d
季節は夏の盛りを少し越えたが、まだまだ太陽は燦々と輝きを放っている。
浜辺特有の湿度を含んだ潮風が頬を撫でる。

時は夏!場所は海!
そのような条件ですることなど決まっているだろう。
それはもちろん………フィッシングだ!!


釣りバカエイラさん〜獲物は魚か唇か?キス釣り!〜

「暑いナぁ…。」

うだるような暑さは、北欧出身であるエイラ・イルマタル・ユーティライネン…いや、釣りバカエイラには厳しいものであった。
ブリタニアの夏も気温はあがるものの、扶桑の夏ほど蒸し暑くはない。
加えて、どんよりとした天気の多いブリタニアでは体験したことのないような日差しがエイラを容赦なく襲った。

「文句を言うなー!」

叫び声をあげたのは、簡素なズボンと胸当てに、これまた輪をかけて面積の乏しい貫頭衣状の衣服を身につけた女性だ。頭には日差しを避けるための麦藁帽をかぶっている。
そう、彼女こそが町で噂の露出きょ…エクスウィッチの黒江綾香。釣りバカクロエである!!
彼女の腕には4.5mにも及ぶ長さを誇る投げ竿がしっかりと握られている。

「扶桑の夏は暑過ぎんダヨー!!干からびちゃったらどうするんダ…」

釣りバカエイラはダラリと四肢を投げ出して木陰に入りんだまま動こうとしない。
砂浜が照り返す熱は気温を益々高め、体力を奪う。
しかし、クロエは愛する海を前にして、すっかりと目を輝かせている。

「情けないぞ釣りバカエイラ!!ほら、釣りバカサーニャも待ってるぞ!!」

クロエが指を指した先には、長竿を片手に持った黒い人影。
それは、漆黒の軍服に身を包んだサーニャ・V・リトヴャク…いや、釣りバカサーニャである。
クロエの言葉にエイラもすっかりと臨戦態勢を整え、目指すは目と鼻の先の大海原だ。

「今日の獲物はキスだ!!わかったか釣りバカエイラ!釣りバカサーニャ!」

クロエが嬉しそうに本日のターゲットを示す。
キスは扶桑においては最もポピュラーな部類に入る釣魚である。

「釣りバカクロエー、キスってなんダ?できることなら私は釣りバカサーニャとそれをしたいナ…。」

しかし、サーニャとエイラは北欧出身である。
釣魚としての対象はもっぱらサケやマスなどの川魚であり、キスなどと言われてもピンとはこない。
むしろ、リベリオンにおける口付けを意味する言葉の印象の方が強く、エイラはサーニャの唇にちらちらと目をやっている。

「キスってのはなぁ…扶桑には主に3種類いるんだ。シロギスとアオギスとホシギス…私たちが狙うのは一番有名なシロギスってやつだ。
残りは九州と沖縄に棲んでいる…あぁ、1944年現在なら東京湾でもアオギスが釣れるな。シロギスはデカくなっても30pぐらいだからあんまデカくはねーなぁ。」

クロエは楽しそうに魚知識を披露していく。
598名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 21:58:36 ID:zw4bCw+d
「この時期ならまだ大物が釣れるかもしれないな。30pを越えたら大物…扶桑では尺越えとか言ったりするが分かりやすく言えばシャーリーサイズだ。
秋も深まると15pサイズのキスが多く釣れる…やっぱり扶桑ではピンギスと言われてるが分かりやすく言うとペリーヌサイズだな。もちろんシャーリーサイズの方が嬉しいのは言うまでもないよな?」

クロエの言葉に、エイラは首を激しく縦に振る。
幸か不幸かサーニャが冷たい目でその姿を見ていることには気づいてはいないようだ。

「1944年だと扶桑はまだテグスと木製リールで釣るんだが便利だからナイロン…いや、PEラインを使うか。」
「あんまりメタ的なこと言うなヨ。」

テグスは釣りにいく前日に水に浸けておかなくてはならないという実にめんどくさい糸である。
現在はナイロンラインかPEラインが使われており、PEラインにいたっては同じ細さでナイロンラインの数倍の強度を誇る化け物だ。ハサミでも切りにくい。
投げ釣りにおいては遠くまでキャストできた方がやはり有利なので、同じ強度でも糸を細くできる分だけ風の影響を受けにくいPEラインの方が好まれている。

「使う餌は…青イソメにするか。1944年時点だとゴカイの方が一般的だけど現在だとゴカイはあまり使われないからな。」
「なんでさっきから一々メタ的なんだヨ!!」

クロエの用意した餌箱の中には、うにょうにょと這い回るミミズのような生き物が数百匹単位で入っていた。

「ウゲー気持ち悪いナ…。」
「気持ち悪い…。」

やはりどう見ても虫餌はグロテスクである。
クロエにとっては普通だが、サーニャとエイラは触ることを躊躇う。

「我慢しろー!!これが美味しい魚に変わるんだ!!釣れたら釣りバカ宮藤が天麩羅にしてくれる!!」

天麩羅は宮藤がブリタニアで何度か振る舞ってくれた料理だ。
エイラとサーニャにとっては振る舞われた天麩羅は十分に美味しいものであったが、宮藤と坂本にはなにやら不満がある様子だったことが思い出される。
扶桑出身の二人にとっては天麩羅には少なくとも1品、淡白な魚のものがつくことが常であった。
しかし、ブリタニアではそれらに当てはまるキスやアナゴなどが手に入らず、皆に最高のものを振る舞うことができなかったことが悔やまれたのだろう。

エイラとサーニャは宮藤の天麩羅の味を思い出す。
宮藤は納豆など奇怪なものを好むこともあったが、基本的には料理に秀でていて、さっぱりとした扶桑の味は隊の皆にも歓迎された。
特に天麩羅は、イカが用いられていたにもかかわらず、皆は美味しくいただき、食後にそれが判明したことで一悶着あったので印象深い。
食に限らず、なにに対しても寛容なシャーリーが目を丸くしていたのだから記憶にも残るというものだ。

「「宮藤(芳佳ちゃん)の天麩羅…」」

宮藤が調理してくれるのなら間違いはない。
今日の美味しい晩ご飯のために、エイラもサーニャも気合を入れてイソメを掴む。

「イテー!!」
「ぐにょぐにょする…。」

どうやらエイラはイソメに噛み付かれたらしい。
イソメなど、釣り餌として使用する虫類は噛み付くので気をつけよう。
そうこうしていると、なんとか餌を針に刺すことができた。

「少し可哀相だね…。」
「確かに痛そーダナ・・・。」

イソメにしてみればいきなり自らの体の中に針が入ってくるのだからたまったものではないだろう。
少しだけ餌が可哀相に思えてきた。
599名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 21:59:13 ID:zw4bCw+d
「まぁ確かに可哀相ではあるな。しかし、これも美味しいご飯のためだ!!彼らの命を無駄にしないためにも美味い魚を釣るんだ!!」

クロエが声をあげる。

「では仕掛けの投げ方を教えるからよーく聞けよ!!一度しか説明してやらないからな!!初心者はオーバースローに限る!!基本的にこれだけで事足りる。
適当に糸をたらして振りかぶってぶん投げろ!!遠くに嫌いなヤツがいると思って投げるとよく飛ぶような気がする・・・あっ、リールのベールをあけとかないと竿が折れる。以上!!」

クロエは自信満々だが、やはりエイラとサーニャは疑問を両手いっぱいに抱えている。
流石にそれにはクロエもまずいと思った。

「仕方ない・・・私が手本を見せるからそれをみて学べ!!」

クロエがリールの糸のたらしとベールを調整して振りかぶる。

「チェストー!!!!!!!!!!!!」

掛け声とともに錘が風を切る音とリールが糸を送り出す音だけが響く。
遥か彼方に仕掛けが着水したのが確認できた。

「分かったか?これで五色ぐらいだな。私が本気を出せば七色ぐらいは投げられる。」

得意気にクロエが語る。

「釣りバカクロエー、五色ってなんダ?そういえば扶桑にそんな名前の魔女がいなかったカー?」
「私も芳佳ちゃんに聞いたことある・・・。」
「あぁ、色ってのは距離を測る単位だな。一色が25mぐらいだから五色で125mぐらいだ。私の勘では諏訪五色の固有魔法は巨大化だな。ヤツはホントは125mの大巨人に違いない!!」

リールを巻きながらクロエが冗談を飛ばす。

「おっ、これは2連かな…。」

クロエが呟きながら回収した仕掛けには推測どおり2匹の綺麗な魚がくっついていた。

「綺麗・・・。」
「魚じゃねーみたいダナ。」

クロエが釣り上げたシロギスを見て二人は目を丸くする。
約20cmのパールピンクに輝く魚体はまるで宝石のようで、今まで市場などでみた魚とはまったく異なっていた。

「魚ってのは本当に綺麗なんだ。死んじまうとこの美しさは失われちまうから普通のやつはそれを知らないけどな。生臭さも生きているうちはしない…魚にもそれぞれ香りがあるんだ。」

嬉しそうにクロエが語る。
クロエは本当に魚が好きだった。海の中にいる間はそれをどう引きずり出そうかと悩ませてくれたし、釣り上げた後は舌を満たしてくれる。
本当ならネウロイと戦わずに毎日釣りをしてすごしたいとまで考えているのだ。

「ほらー、お前らも釣れ!!今日は大漁旗をあげてやる!!」

エイラとサーニャも竿を振りかぶるがクロエのように上手くはとばない。
仕掛けはクロエのような風斬音を鳴らすことはなく、ひゅるるーと情けない音をたててどぼんと音をならして着水した。
しかしキスは初心者にも優しい魚なのだ。30メートルほどしか飛ばなかった二人の仕掛けにもアタリをだしてくれる。
サーニャの仕掛けにはやはり綺麗なキスが1匹だけぽつんと食いついていた。
600名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:00:40 ID:zw4bCw+d
「エイラー、見て!釣れたよ!」

微笑むサーニャを見て、エイラはそれよりも更に顔を緩ませた。

「私もホラ!!」

エイラがニヤリと笑って見せた仕掛けの先にはなんだか黄色と黒の変わった魚…間抜けな顔に髭が生えている。

「ナンダコレー?黄色か…釣りバカクロエー、ペリーヌ釣れター。」

色だけを見てすっかりとペリーヌという渾名をつけたそれをクロエえと見せ付ける。

「おー、触るなよー!そいつは毒もちだ。とげに刺されると痛いぞー!」

ツンツンとした毒のとげを持っていると聞いたエイラはますますペリーヌを思い出して笑い出す。
そんなエイラをサーニャがじとっとした視線で眺めていた。

「おーまたなんか釣れター!!コイツもトゲトゲしてんナー。でも赤い・・・クロエー、赤ペリーヌ釣れター!!」

エイラの仕掛けの先には今度は小さくてトゲトゲした赤い魚。

「釣りバカエイラー、お前は毒魚ばっか釣るなぁ。刺されるとこれも痛いぞー!」

エイラはまたもケラケラと笑う。
それをやはりサーニャはじーっと眺めていた。

「今度のはなんか膨らんでるゾ!うひっ、おっきい!!釣りバカクロエー、シャーリー釣れター!!」

エイラがツンツンとつつくと魚の身体はますますぱんぱんに膨らんでいく。

「今度は河豚かー。変なもんばっか釣るなぁ。つついてないで海に返してやれよー!」
601名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:01:04 ID:zw4bCw+d
エイラは河豚の腹を撫でてやっぱリーネの胸のほうが揉んで楽しいなーと呟いている。
サーニャの瞳からはハイライトが抜けていった。

そうこうしている内に日も傾きだす。
そろそろ帰らなければ晩御飯に天麩羅の計画はおじゃんだ。
しかしそこでふと気付く。クロエは山のようにキスを釣り、サーニャも十分な量を釣ったのだが、エイラときたら実は1匹も釣れてはいなかった。
エイラの仕掛けには変なものばかりが食いつき、エイラはそれに名前をつけてはケラケラと笑っていたのだ。

「うー、さすがに1匹も釣れないと恥ずかしいナー。釣りバカクロエー、何とかならないノカ?」

クロエが頭を抱え込んで唸る。今日はそれなりに魚の機嫌もよく、釣れないはずがないのだ。
しかし現実として釣れていないのだからクロエにもどうしようもない。
けれどもそこは百戦錬磨のクロエである。頭にピコンとアイデアが浮かぶ。

「釣りバカエイラ!!目を瞑れ!!!」

クロエが叫ぶのでエイラも思わず目を瞑った。
ギュッと目を瞑るエイラの唇に何かが触れる。エイラがぱっと目を開けると目に入るのは肌色一色・・・あまりにも近くにサーニャの顔があった。
永遠にも思える時がエイラの頭の中を駆け巡る。
しかし悲しいかなヘタレ…エイラは頭に血が昇って気を失った。

「あぁ、ヘタレだなーこいつ。」
「はい、ヘタレなのにカッコよくて困り者です。」

クロエとサーニャが微笑みを交わす。

「帰って天麩羅パーティーにするか。」
「そうですね。」

二人は笑いながら帰途へとつく。エイラは砂浜で気絶中だ。
この後、エイラは天麩羅を食べ損ねるわ、サーニャに冷たくされるわでヒドイ目にあったとさ。

Fin.
602名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:01:57 ID:zw4bCw+d
皆様GJ!!
意味がわからないものを書いてすみません。
久しぶりがこれってダメだろ・・・趣味を全開にするとあれなことになるなぁ。
戦時知識とかが趣味の人とかまじ羨ましい!!
てかそろそろ容量いっぱいだなぁ。
603名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:04:24 ID:zw4bCw+d
あぁ忘れてた!!RU1ZZ/dhでした。
変なものばっか書いてすみません。
そういえば30本達成の言葉ありがとでした。
604名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:09:32 ID:JEqF0W11
GJ!趣味全開の作品は濃くて好きなんで全然いいかとw
何かしら長じたものがある人がそういう作品書くと説得力が出て面白いよね。オチもよかったw
605名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:18:46 ID:/h+qBMlu
死や殺しがある鬱はありですか?
606名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:19:11 ID:ghhTT0T8
>>603
っちょwあなたでしたか!つ…釣りもできるんですね…?
最高におもしろかったよGJ!ペリーヌ赤ペリーヌとか吹いたw
専門的にいくかと思いきやえいらにゃも忘れない――そんなあなたが大好きだ
607名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:23:06 ID:B8IxyC6S
>>605鬱でも百合があれば、最初に注意書きするか、txtであげておくか、保管庫管理人さんのところに先に上げてそのURL貼っておくとか

そんぐらいでいいんじゃないかな
どれが正しいかは、わからない
608名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:30:02 ID:vPaHAlzh
死亡描写がやたら詳細でグロかったりとにかく救いが無かったり
あと、虐待とかするやつや鬱なやつはtxt上げにしてほしいかも
609名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:34:58 ID:/h+qBMlu
>>608
マロニーに実験道具にされそうなサーニャをエイラが助けるというのが大まかなあらすじです
610名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:36:13 ID:P32Su/Hi
よしこい
もちろんエイラさんがサーニャにかすり傷すらつけさせないだろ?
611名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:37:04 ID:2HyqwFuN
>>609
ここでやらないほうが無難かもしれない
612名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:39:09 ID:vPaHAlzh
>>609
うん、やっぱりtxt上げか、エロパロでやってくれるとありがたいかも
613名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:50:51 ID:I1Cv48AA
ボチボチ次スレな件について
614名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 22:55:20 ID:JEqF0W11
注意書きとtxt上げでいいんじゃないかな。物議を醸しそうなネタは

ていうか490KBでござるよ。次スレ立てにいこか?
615名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 23:02:06 ID:JEqF0W11
いないから立てちゃうんだからね!
616名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 23:03:30 ID:Kamtb6wf
>>603 RU1ZZ/dh様
GJ! 釣りネタとはまた変化球ですね。
私も昔釣りやってたんでわかります。もっとやってください。

>>605
608氏に賛成。出来れば注意書きとtxtうpを希望したいところ。
好まれない方も居るでしょうから……。
617名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 23:04:26 ID:JEqF0W11
立てれなかった・・・
他の人よろしく
618名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 23:07:33 ID:vPaHAlzh
ならば俺が行こう
619名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 23:20:15 ID:vPaHAlzh
新スレが立ったぞ〜おっきろ〜

ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart23
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1236003269/
620名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/02(月) 23:25:15 ID:JEqF0W11
>>619
あと70スレ…

乙字勲章
621名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/03(火) 00:29:22 ID:/MnsX+K6
シャーリーネってアリなんじゃねと
ふと思った
春の日の午後
622名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/03(火) 00:34:01 ID:FnlFmrzO
まさにおっぱい
623名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/03(火) 00:38:16 ID:wpif1HWf
先の尖ったニンジンを突き刺して相手を殺すシャーリー
624名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/03(火) 00:47:03 ID:aUtyRV4T
>>621
秘め声でシャーリーを絶賛するリーネちゃん
秘め声でリーネを妹みたいと称するシャーリー

十分ありですな。5話でも仲よさそうだし。

余った芳ッキーニも仲が良さそうだからこっちはこっちで組めば全く問題なし
625名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/03(火) 01:12:40 ID:/MnsX+K6
>>624
うんうん、可能性を感じるなやはり
おっぱおっぱのことをシャーリーに相談したりしてたらいいのに


芳ッキーニ…ごくりっ
626名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/03(火) 01:43:05 ID:U1aK2uqC
>>624
その二人が組むと相当やばいことになるのではw
芳佳的な意味でw
627名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/03(火) 01:43:11 ID:aAymDkXe
>>584
マジか

かなめももアニメ化されるし、マジ百合パラダイス
628名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/03(火) 15:34:03 ID:0dTMjKDw
>>625
それいいかも
リーネは真剣に相談するんだけど、シャーリーは軽快に笑うんだ
なんで気にするんだよリーネ、おっきいことはいいことだぞ!
でも、シャーリーさん…私…その…
みたいな

んで一緒にいる二人を見て芳佳の手がひとりでに動きだすんだナ
629名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/03(火) 16:09:16 ID:vC4Cjeav
こんにちは。mxTTnzhmでございます。
何やらシャーリーとリーネが……と言う話ですので、
一本書いてみました。お口に合いますかどうか。
630dynamite 01/02:2009/03/03(火) 16:09:45 ID:vC4Cjeav
ハンガーでひとしきりストライカーをいじり倒したシャーリーは、機械油まみれのまま自室に戻り、
部屋のど真ん中に鎮座する試作のエンジンをぽんぽんと撫でると、さあ次とばかりに工具を持ち出した。
ドアが控えめにノックされる。
「開いてるよ〜、どうぞ〜」
そっとドアを開けたのは、リーネだった。
「シャーリーさん」
「おう。どうしたリーネ」
「悩みがあるんです。聞いてもらえませんか?」
「何だ何だ? どうしたよ? ちょっと散らかってるけどここで話すか? それともミーティングルーム行く?
今なら誰も居ないと思うけど」
「ありがとうございます」
シャーリーは油まみれの手をこれまた油が染み付いたタオルでぞんざいに拭いて、一緒に部屋を出た。

ミーティングルームの片隅に腰掛ける二人。
「あの……悩みなんですけど。その」
「うん? 何?」
「胸、なんです。どうしたら小さく出来ますか」
「はあ!? お前は何を言ってるんだ?」
あまりに唐突な質問に、呆気に取られるシャーリー。
「おま……そんな事他の奴らに言ってみろ。呪い殺されるぞ」
「だからなんです! シャーリーさん以外に相談できる人いなくて」
「あー、確かに、そうだよな」
並居る隊員達の顔(と胸)を思い浮かべ、あははと笑うシャーリー。
「どれ」
試しにリーネの胸をもんでみるシャーリー。
「ひゃっ! いきなり何するんですか!」
「ふむ……なんかまた少し大きくなってる気がするな!」
「気がするだけです! ……て言うか、そういう事にしておいて下さい」
「ホントはどうなのよ」
「その……少し」
「大きくなったんだ」
「はい」
「成長期だからいいんじゃない? 中には成長期なのに全っ然大きくならない奴も居るけどな」
あはは〜と笑うシャーリー。

くしゅんと大きくくしゃみをしてしまうペリーヌ。
「どうした? 風邪か?」
「いえ、失礼しました少佐。お気になさらず」
訓練の最中、首を傾げる美緒を前に、何故鼻がむず痒くなったのか自分でもよく分からないペリーヌだった。

「分けてあげたいです」
「まあ、確かに大き過ぎるのもなあ。ブラのサイズが違って来ると買い替えも面倒だしなあ」
「シャーリーさんは、その、まだ大きく?」
「うーん、ぼちぼち?」
「そうですか……」
「でもなんでだ? ここに来てから暫くはそうでもなかったと思うけど、ここ最近急だよな」
「それは……」
「うーん」
シャーリーはリーネの横に来ると、おもむろにリーネの上着を脱がし始めた。
「ちょ、ちょっとシャーリーさん!?」
「調べたい事がある」
「ええ?」
あれよあれよと上半身素肌を晒してしまうリーネ。シャーリーはお医者様宜しく、リーネの胸やら
背骨やら筋肉やらを観察したりつんつんとつついてみた。つつき方が妙に怪しげで、思わず声が出る。
「特に病気って事でもなさそうだなあ」
「あ、あの、服を……」
「あー待った。ちょい試してみるか?」
「はい?」
631dynamite 02/02:2009/03/03(火) 16:10:18 ID:vC4Cjeav
シャーリーはリーネの胸をもんで、乳首をぺろっと舐めると、吸ってみた。
「ひゃん! シャーリーさん、何を……」
「おまじない」
「お、おまじないですか……聞いた事ないです、そんなやり方……ああんっ」
「うん。だって今あたしが思いついた」
「ちょっ!」
がばと身を起こし、脱ぎ散らかされた上着で胸を隠すリーネ。
「まあまあ、あたしに任せてみなって」
「逆効果な気がするんですけど」
「試してみないと分からないって。ほらほら」
迫るシャーリー。やや怯えた表情で後ずさるリーネ。
「リーネちゃん!?」
「リーネに…リベリアン! お前っ!」
そこに現れたのはトゥルーデと芳佳。二人の姿と様子を見て、驚愕の表情を浮かべた。
「よう、二人とも。何驚いてんだ?」
気さくに返事するシャーリー。
「きっ貴様リベリアン! 皆が出入りする公共の場で、よくもそんな破廉恥な真似を!」
「リーネちゃん、シャーリーさんと、そんな関係だったの?」
拳を握ってわなわなと怒りに震えるトゥルーデ、半裸姿のリーネを見て呆然とする芳佳。
「ち、違うの芳佳ちゃん、これは……」
「そうだ、堅物もちょっと話聞いてくれよ。リーネの胸どうやったら小さく出来るかな?」
「なに訳の分からん事を! 白昼堂々と部下を襲ってどうする!?」
いつの間に背後に来たのか、リーネの耳元でひそひそと囁く人影。つんつんと背中を押して「GO!」と言った。
「助けて……、お姉、ちゃん」
その言葉が耳に入るなり猛然とダッシュし、リーネをぎゅっと抱き寄せてシャーリーとの間に入る。
「もう大丈夫だ。お前の姉として、私がお前を守る」
「おいおい堅物、話聞けって」
「リーネ、すまんがもう一度言ってくれないか? さっきはよく聞こえなかった」
「えええ? あの、ちょっと……」
囁いた人影を見る。短いショートの金髪の「悪魔」は、OKサインを出してにやにや笑ってる。
芳佳は芳佳で、ふらふらと三人を見比べて……自然と手が彷徨っている。
「あら、何してるのみんな? ……ちょ、ちょっと?」
通りがかったミーナが異変に気付き、血相を変えた。

結局その場に居た全員がミーナの執務室に連行され、事情を聞かれた。
「……そう。そう言う事だったのね。デリケートな問題だから、もう少し、真面目に考えないと」
「すいません」
「医学的には、脂肪分を減らす様に運動をすると良いって聞くわね。ダイエットかしら」
「扶桑ではサラシを巻いて胸のサイズを隠すが……根本的な解決にはならんな。きついし」
遅れてやってきた美緒が扶桑の習慣を話して聞かせる。
「はあ」
「まあ、とにかくこれは内密に。いいですね」
「了解」
しかし「内密に」と言っても、隊の半分以上が居るとなっては意味が無かった。

「なんか、悪かったな、リーネ」
「いえ」
「あんまり気にしない方が良いぞ? ありのままの自分を受け入れるんだ」
「でも、私」
「それに、お前を受け容れくれる人だって居るはずだぞ? もし居なかったら、あたしが受け容れる」
「シャーリーさん」
「いつでも言ってくれ」
シャーリーはリーネの肩をそっと抱いた。何とも頼り甲斐の有る姉、隊随一の持ち主とだけあって、
とても頼れる「姉貴」に見えた。故郷に居る姉妹達を一瞬思い浮かべる。
二人で見る、夕暮れの空。海に沈むオレンジ色の太陽。
ストライカーの軌跡が、ふたつ空に描かれた。

end
632名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/03(火) 16:12:05 ID:vC4Cjeav
以上です。
あんましまとまってません。勢いだけですので……。

てか、書いてうpしようかというところで
>>628氏に予言されてもうたw

ではまた〜。
633名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/03/03(火) 17:03:32 ID:DrUCOOYc
ume
634iTl0PYxu
>>632
GJ!二人のお医者様ごっこの待合室に並びたいw
この回がアニメ化したら股監督は作画張り切りそうですな

とりあえず埋めに予定ではニャッキーニになるはずのお話の投下をば。埋まらなかったら笑ってやってください


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夢の世界から一段、意識が階段を登ると瞼の扉がある。ゆっくりとそれを開くと、仄暗い空気に沈んだ見慣れたベッドサイドと
傍らで少しだけ乱れたシーツの皺が彼女の視覚の第一歩を迎え入れる。

(寒い)

一切の思索をさておいてまずサーニャの頭に浮かんだのはそれだった。ブリタニアの気候が酷寒極まるオラーシャで生まれた
彼女にとって寒いなどという事はあり得ない話なのだが、普段体温を共有できそうなほどの距離にいる人物の不在は、
体温の一部を持って行かれてしまった錯覚を彼女に呼び起こすのだった。

(エイラ…どこ?)

きっちり肩までかけられたシーツの柔らかさに微睡んだまま、のそりと怠惰に寝返りを打つ。
視界の端にドアを捉えると、ようやく覚醒してきた思考回路が走り、しかし見当違いの結果を弾き出した。

(置いてっちゃったんだ、私を)

思慮慎み深く、謙虚で、ややもすると臆病になりがちな自分が、そんな恐ろしく傲慢な感想を抱く事への異常性にサーニャは
まるで気づいていない。どころか、その感想が傲慢だとは現は勿論夢にも思わず、逆に正当な不満だと主張したいぐらいなの
である。サーニャとしては。
きゅ、とシーツの端を握る。出来れば彼女の体温泥棒の袖の端をそうして抗議してやりたかったが、逃走中の身では仕方ない。
やれ捕まえに行かなければと身を起こしかけた所で、ゆっくりとドアが開く。

「エイラ?」

そう呼びかけた相手は目下捜索中の指名手配犯ではなく、その意外な人物を認めてサーニャはやっと生来の警戒心を取り戻して
軽く身じろいだ。





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