ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart20

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1股のリハク
守りたいから私は飛ぶ!!パンツじゃないから恥ずかしくないもん!

●スタッフ
監督・アニメキャラデザイン:高村和宏     キャラクターデザイン原案:島田フミカネ
シリーズ構成:ストライカーユニット        助監督:八谷賢一
世界観設定・軍事考証:鈴木貴昭        メカデザイン・メカ総作監:寺尾洋之
キャラクター総作監:山川宏治・平田雄三   美術監督:小倉宏昌(小倉工房)
美術設定:松本浩樹(スタジオイースター)    カラーデザイン:甲斐けいこ・池田ひとみ
3D監督:下山博嗣                  撮影監督:江間常高
編集:三嶋章紀                   音響監督:吉田知弘
音響制作:楽音舎                  音楽:長岡成貢
音楽制作:コロムビアミュージックエンタテインメント
アニメーション制作:GONZO
原作:島田フミカネ&Projekt Kagonish(プロイエクト カーゴニッシュ)

●キャスト
宮藤芳佳(みやふじ よしか):福圓美里     坂本美緒(さかもと みお):千葉紗子
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ:田中理恵   リネット・ビショップ:名塚佳織
ペリーヌ・クロステルマン:沢城みゆき      エーリカ・ハルトマン:野川さくら
ゲルトルート・バルクホルン:園崎未恵     フランチェスカ・ルッキーニ:斎藤千和
シャーロット・E・イェーガー:小清水亜美    エイラ・イルマタル・ユーティライネン:仲井絵里香
サーニャ・V・リトヴャク:門脇舞以

●放送局
※放送は終了しました

●関連サイト
公式サイト:http://s-witch.cute.or.jp/
まとめwiki:http://www37.atwiki.jp/strike_witches/
人物呼称表:http://www37.atwiki.jp/strike_witches/pages/50.html
百合SSまとめサイト:http://lilystrikewitches.web.fc2.com/

●次スレ
次スレは>>970or480KB超を目安に、臨機応変に立てて下さい。
必要な事前準備等があれば、>>920or450KB超を目安にして下さい。

●前スレ
ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart19
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1233220209
2股のリハク:2009/02/04(水) 17:27:07 ID:cJXVugk+
Q.○○書いたんですけど投下してもいいですか?

A.どうぞ、ぜひ投下してください。
条件は「ストライクウィッチーズ」関連であること、
「百合」であることの二つのみです。
ジャンル、エロの有無、本編にないカップリングなどに関係なく、
このスレの住人はおいしく頂いております。
妄想だとか落書きだとか気にせずとにかく投下してみましょう。

ただし、SS専用スレではないので20レスを超えるような長編は事前に断りがあると吉です。
3股のリハク:2009/02/04(水) 17:27:31 ID:cJXVugk+
──リレーSSの手引き──

★基本ルール
○始める時は、リレーSSであることを宣言する。
○続ける人は宣言は不要だが、一行目に継承元の安価をつける。
○ただし、結末を書く場合は「次で終わっていいですか?」と訊いておく。
○継承先は指定できない。誰かが早い者勝ちで続きを書く。
○ただし自分自身の続きは書かない。最低2人は挟んでから。
○2レス以上にまたがらない。1レスでクールに。
○重複したら先に書いた方を優先する。
○作者名は名前欄に入れる。名無し希望は未入力でも可。
○リレー進行中は他のリレーは開始しない。
○もちろん普通のSSは、リレーの状況に関わらずどんどん投下してください。

★本文と書式
○語り手や文調はできるだけ継承する。唐突な視点変更は避ける。
○誤解を招きやすいため、科白にはキャラの名前をつける。(例:芳佳「おっぱい」)
○後に文が続く事を意識して、できるだけ色々な取り方ができる終わり方にする。
○「駄文失礼〜」「お目汚し〜」等の前書きやあとがきはナンセンスなので付けない。

★心構えと方針
○無理して面白くしようとしない。ナチュラルに妄想を爆発させるべし。
○不本意なカプの流れになっても泣かない。むしろ目覚めるべし。
○展開を強要したり口を挟まない。流れに身を委ねるべし。
○なかなか続きが来なくても焦らない。気長に有志を待つべし。
○多少の誤字脱字、設定違反、日本語おかしい文章には目を瞑る。スルーすべし。
○参加者はみな平等。新兵もエースもリレー主も一切特権はない。仲良くすべし。
○男はいらねえんだよ!ふたなりネタも自重すべし。
4名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 17:29:37 ID:cJXVugk+
第1手 手をつなぐ
第2手 夜が怖くて飛べないから手を繋ぐ
第3手 運命線重ねる
第4手 指をからめる
第5手 腕を組む
第6手 膝枕
第7手 膝枕・顔の向きが逆
第8手 耳かき
第9手 乳を揉む
第10手 ハグ・通常
第11手 ハグ・後ろから抱きしめる
第12手 ハグ・胸の中に頭を抱え込む
第13手 お姫様抱っこ
第14手 おんぶ
第15手 おんぶ・背中へ一方的にのしかかる
第16手 目隠しだーれだ?
第17手 熱いまなざし・じっと見つめる
第18手 熱いまなざし・お互いに見つめあう
第19手 ほおずり
第20手 耳はむはむ
第21手 キス・唇に
第22手 キス・おでこに
第23手 キス・頬に
第24手 キス・ふとももに
第25手 キス・首に
第26手 キス・手に
第27手 くっつく・背中に寄り添う
第28手 くっつく・二人用ストライカーで
第29手 肩にもたれる
第30手 睦言・近距離で
第31手 睦言・遠距離で
第32手 頭をなでる
第33手 髪をいじる
第34手 手料理
第35手 「はい、あーん」年上から年下へ
第36手 「はい、あーん」 上官から部下へ
第37手 両端から食べる
第38手 ラブレター
第39手 プレゼント
第40手 ネクタイを結ぶ
第41手 二人で夜間哨戒
第42手 お買い物
第43手 浜辺でおいかけっこ
第44手 いっしょにお風呂
第45手 添い寝
第46手 くすぐる
第47手 のろける
第48手 やきもち
5名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 17:53:21 ID:HFqHMEKk
「頭を動かさないで下さいな」

サーニャはサウナの熱気と湯気に心地よく汗を流しながら、彼女らしい丁寧さでエーリカの髪を梳っていた。
エーリカの金髪に香気のする油を垂らすと異様にめの細かい櫛で頭皮まで浸透させ、何度か繰り返した後にゆっくりとそれを洗い流し、
今度は髪形を整えるために改めて梳るのだ。
エーリカは覇気の無い感じで、しかし気持ちよさそうな表情ではーい、と答えると姿勢を正した。

「やっぱりサーニャに梳かしてもらうのがいいなー。頭がすっきりする気がするよ」
「貴女のお姉さまは、相変わらずこういうこと、なさらないのですか」
「うん、清潔になれば良いとしか考えてないから。専用の油を使って、なんて言ったら贅沢だ!とか言いそうだよ」
「贅沢ではなく蚤を追い払うためなのですが」
「だめだめ、私達日常的に蚤に対応しなければならないような暮らし、少なくとも軍に入ってからしたこと無いもん」
「でしたら、サーニャの方からお願いいたしましょうか」
「それはいや」

自分が頼んでもゲルトルートが効きいれてくれなかったことを、サーニャが頼んで聞きいれられたら嫌だからだ。

「何故嫌なのですか」
「ひみつー」
「そう、秘密・・・」
「そういえばさ、なんか居るんじゃない?ここ」
「そうでしょうか」
「アンテナ出してみてよ、アンテナ」
「魔法の私用はなるべく避けています」
「うへー、トゥルーデみたいなこと言うんだ」
「そんなことおっしゃって、お姉さまのこと、好きなのでしょう」
「トゥルーデは大好き。でも小言は、小言もトゥルーデのなら良いや」

サーニャはおかしそうにくすくすと笑った。エーリカも座ったまま脚をなんとなくぱたぱたと動かし、照れ笑いした。

「動かないでくださいな、もうすぐ終わりますから」
「はいはーい」

エーリカの頭に石鹸をつけ、泡立てたサーニャは小さい手の細い指でごしごしと洗い始めた。
エーリカはサーニャが懸命に頭を洗っている様子を思い浮かべて、少しでも良いから見てみたいと思った。
暫くしてサーニャはたっぷりとぬるま湯を桶に汲んできた。
エーリカは戻ってきたサーニャにそっくり返ってもたれ掛かった。一瞬痛いほどの視線を感じたが、気のせいだろう。
サーニャの方は何事も無いように丹念に石鹸を洗い流し、再度エーリカの髪を梳った。

「はい、終わりましたよ」
「ソ、ソウカじゃあ入ってもいいんダナ?」
「!」

エーリカの予感は正しかった。吃驚するくらい狭い物陰からエイラが現れたのだった。
6名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 17:53:55 ID:HFqHMEKk
「どうした、うん?覗きかな」
「違うゾ、サーニャの裸なら毎ば、毎日見てるんダナ」
「私のはどうなのさ。スーパーセクシー魔法少女を無視するなー」

「どうして隠れていたのエイラ」
「気が散るといけないから、ダナ」
「そう、優しいのね」
「サーニャもナ」
「嬉しい」

サーニャは笑顔で手招きして彼女の隣へエイラに来てもらった。
エーリカは何かを企んで、ふっふっふーと笑った。

「サーニャ、ご褒美のちゅーして」
「なっ、オマエ」
「今日は大人しかったから特別ですよ」

サーニャはどうということない感じでエーリカの頬に軽く唇で触れただけだった。エイラは少し恥ずかしかった。
サーニャが浮気する筈が無かったし、自分が普段リーネ達の胸等を触っていることの方がいやらしい目的を含んでいる分だけ、恥ずべ
きことに思えたからだ。

「あれ、ほっぺただけなの」
「これでも額にするのよりは、サーニャもどっきどきでしたのよ」
「サーニャのけち」
「けちでは・・・」
「けち」
「サーニャヲイジメンナー!!!」
「苛めてませんよーだ。いいなーサーニャもエイラにならこんなことするんだ」

“そんな眼”でエーリカに“女性の証”を見られたサーニャとエイラは大急ぎで脚を閉じた。
いつもはサウナにはエイラとサーニャしかいないのでどうしてもここでは無防備になりがちだ。
その様子を見てエーリカも自分の“女性の証”を見られるのが恥ずかしくなったのか、こっそり、といった感じで脚を閉じごめんなさ
ーいと小声で呟いた。

「ナンダヨモー私だってやるときはやるんダカンナー。それとサーニャをソンナ眼でミンナ」
「エイラかっこいい」
「サーニャもナ」
7名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 19:23:09 ID:1JsjzXI+
続きは?
8名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 19:24:12 ID:b6tDy016
9名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 19:44:09 ID:aClvW8Pj
基地探訪はいつ頃だろ
10名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 21:24:21 ID:w+KPXXW4
新スレおめ! &>1乙!

さて、お久しぶり、そして約一ヶ月ぶりにこんばんは。mxTTnzhmでございます。
約一ヶ月ぶりに来てみたら、何かもう浦島太郎状態で訳わかんなくてワロタw
ともかく、新しいエースな方や職人様方が増えて行くのは素晴らしきことかなと。

さて、完全復帰と言う訳ではないですが、とりあえず新スレ記念に投下。
今回も保管庫No.450「ring」シリーズの続編となります。
トゥルーデ×エーリカです。宜しく。
11rhythm red 01/03:2009/02/04(水) 21:25:39 ID:w+KPXXW4
トゥルーデは、風邪をひいた。
「カールスラント軍人たるもの、戦いの中で風邪など悠長にひいていられない」のだが……
身体が動かないのでは仕方がない。
今日も身体の中から巻き起こる灼熱に翻弄されながら、部屋のベッドでひとり、唸る。

水枕がぬるくなってきた。
発熱が多いと言う事は、それだけ身体が衰弱し水分やら栄養やら色々なものが消耗している証拠だ。
何とかしないととは思うが……出来て寝返りをうつくらい。これは正直しんどい。
はあ、と諦めの境地に近い溜め息がもれる。
トゥルーデが抜けた「穴」は大きく、隊のシフト編成にも大きく影を落とし、ミーナもいささか困惑していた。
いつぞやの時みたいに全員が一度に風邪をひく異常事態でないだけマシだが……
どうしたものかと、気を巡らせるトゥルーデ。
薬を多めに飲んでも仕方ない。逆に体調が悪くなる。
運動でもするか? 身体がろくに動かないのにどうやって。
何か食事でも取るか? ……周りに誰も居ないのに?
自らの境遇を、病院で過ごすクリスと重ね合わせてみる。
彼女もずっと、こんな感じでひとり、病室でたたかって来たのだろうか。
すまない。トゥルーデは誰も居ない部屋で呟いた。
私がしっかりしていないばかりに……。
とりとめのない考えや思いが頭を巡り、過ぎり……
トゥルーデは混沌の中へと堕ちていく。

「お。起きたねトゥルーデ」
聞き覚えの有る声。何故か安心する己を感じ、この声の主と会いたかったのだと遠回りに思考を巡らせる。
「ああ大丈夫、身体起こさなくて良いから」
手が伸び、トゥルーデを寝かしつける。
「なあ」
「ん? 何かして欲しい事有る?」
「顔を見せてくれないか」
「どうしたの」
声の主……エーリカが視界にひょこっと現れる。顔を巡らせ、いつもと変わらない彼女の姿を捉える。
心の奥に広がる安堵感。
「お前の顔が見たかった」
「私もだよ、トゥルーデ。哨戒シフトがやっと終わったからね」
「すまない。私がこんなザマで」
「風邪なんて誰でもひくって。前なんか、隊の全員がぐだーっとしてたじゃん」
「まあ、な」
エーリカはトゥルーデの頬に振れ、額に手をやった。
「うん、熱はだいぶ下がった」
「そうか。まだかなりだるいが」
「無理はダメだよ」
「でも、いつまでもこうしている訳にもいかんだろう」
「休む時は休むの。それも仕事のうち」
「うう……」
「って、ミーナと少佐が言ってたよ」
「そ、そうか」
「だから、ゆっくりして。エースだからって、風邪ひいちゃダメなんて規則無いよ」
「規則でなくても……」
「まあまあ、堅い事言わずに、楽にしなよ」
よれた毛布を直し、トゥルーデにそっとかけ直すエーリカ。
「すまない」
「まあ、この御礼は今度じっくり、たっぷりして貰うからね」
「たっぷり……なんか怖いな」
「そういえば、食欲はどう? 何か食べられそう?」
「汁物なら」
「分かった。ちょっと待っててね」
「待て。お前は作らなくて良い」
「……分かってるよ。『お前は料理を作るな』って前にサインさせたの誰よ」
エーリカはトゥルーデの頬に軽くキスをすると、部屋から出ていった。
12rhythm red 02/03:2009/02/04(水) 21:27:01 ID:w+KPXXW4
嗚呼、とエーリカの後を追いたく、だらしなく手を伸ばすトゥルーデ。
指にはめた指輪の輝きも今日ばかりは鈍く見えた。
虚しいあがきだった。彼女の偽らざる気持ち。
(行かないで欲しい、すぐ帰って来てくれ)
その願いが通じたのか、エーリカは戻ってきた。
「ちょうど台所にミヤフジとリーネが居たから、頼んできたよ」
「何を?」
「食事。昼のシチューと蒸かしイモが有るから、それ温めてくれるって」
「そうか。後で二人にも礼を言わないとな」
「あの二人は万年食事当番みたいなもんだから大丈夫だよ」
「なんだかな」
エーリカはトゥルーデの頬をそっと撫でる。トゥルーデは弱々しくも、エーリカの手を取った。
「こんな事言うのも何だが」
首を傾げるエーリカに、トゥルーデは言った。
「さっきお前が出て行っただろ。何とも言えない寂しさだけが残って」
「トゥルーデってば」
「食事なんて良いんだ、エーリカ。お前が横に居てさえくれれば……食事なんて」
「風邪のせいか弱気だね、トゥルーデ」
「そんな事は、無い。ただ、横に居て欲しい。それだけで」
「大丈夫。ずっと居るよ」
トゥルーデの手を取り、自分の頬に当てるエーリカ。
温かい。
トゥルーデ自身の熱にもまれた肌とはまた違う、優しい温もりが伝わってくる。
エーリカの顔を見ていると、何故だか蓄積された疲労がうっすらと消えて行く気がする。
そんな気持ちは微笑みに変わり……いつしか、二人して笑っていた。
やがて、部屋のドアが控えめにノックされる。エーリカがどうぞと声を掛けると、トレーを持った芳佳とリーネが入ってきた。
「バルクホルンさん、具合の方は大丈夫ですか?」
リーネがトレーを横に置いて、顔を見る。
「すまんな、二人とも。心配を掛けて」
「風邪だから仕方ないですよ。いつもバルクホルンさんは頑張ってるんですから、これはきっとあれです、
身体を休めろと言う神様のお告げですよ」
「何だそれは。扶桑では、そう言う慰め方をするのか」
「扶桑には八百万の神様が居ますから。色々な言い伝えとか、話が有るんですよ」
「八百万……随分と多いんだな」
ぽつりと呟くトゥルーデ。
「ともかく、ゆっくりして下さいね。これ、お昼のシチューとおイモです。食べやすいように、
少し牛乳とスープストックで薄めてみました」
「イモは、そのままで食べにくかったら、適当に小さくしてシチューに入れて下さいね」
リーネと芳佳が食事の説明をする。
「ああ。カールスラント軍でもそう言う食べ方をする。その辺は大丈夫だ」
頷くトゥルーデ。
「では、何か有ったらまた言って下さいね」
「すまない」
「では、失礼しました」
二人はそっと部屋から出ていった。
13rhythm red 03/03:2009/02/04(水) 21:28:04 ID:w+KPXXW4
「しかし、あの二人、仲が良いな」
「戦友って感じだよね。まあ、もっとそれ以上って感じもするけどね」
「あのなあ……」
「さ、せっかく二人が作ってくれたんだから、食べよう」
「ああ」
ゆっくりと身体を起こすトゥルーデ。
「イモはどうする?」
「砕き入れる」
「了解」
慣れた手つきで、イモをフォークで適当に潰し、シチューに砕き入れるエーリカ。
この「芋入りシチュー」はカールスラント軍の野戦食としてもお馴染みのもので、ふたりも501に来る以前はよく口にしていた。
スープ皿ひとつで済む手軽さと栄養バランスの配分が合理的で良いのだが、何度も続くと流石に飽きるきらいもあった。
だが、トゥルーデはシチューの塩梅を見、芋の大きさを確かめるエーリカを見て……自然と顔がほころんだ。
「どうしたの?」
「いや。なんかほっとする」
「そう? 私って癒し系?」
「さあ、どうだろう」
「振っといて何よそれ。まあ、とにかくはい、どうぞ」
スプーンを差し出すエーリカ。
「自分で食べられる」
「遠慮しないで。あーん」
「……あーん」
少し顔を赤らめて、エーリカから差し出されたスプーンをくわえる。
「美味しい? ……って、私が作った訳じゃないけどね」
「いや。元気が出てくる気がするよ」
「良かった」
微笑むエーリカは自分も一口食べて言った。
「さっきね。トゥルーデが早く治りますようにってお祈りしたから。気持ちを込めたんだ」
「さっき?」
「シチューに芋入れる時」
「そうか」
「人の気持ちって、何かこう、有るんだよ。よく分からないけど」
「論理的じゃないし非科学的だな」
「トゥルーデ、夢が無いなあ。風邪ひいてる割には随分冷静じゃん」
指摘されて、溜め息を付くトゥルーデ。
「違うんだエーリカ。そうじゃなく……あーん」
口答えできずにエーリカから差し出されたスプーンをくわえ、シチューをもぐもぐと口に含む。
いつもは濃いめに作られるシチューだが、今日は少し薄めで、柔らかい。

「はい、これであともう二回」
エーリカはスープ皿に残った最後の一口をすくって、トゥルーデに食べさせた。
「ありがとう……って、あと一回は?」
「分かってるくせに」
エーリカはスープ皿とスプーンを脇に置くと、トゥルーデの上に馬乗りになった。
「おい、何するんだ? 病人に対する態度か?」
「最後の一口、まだだよ」
「なにっ……」
口を塞がれる。エーリカの唇はいつもと同じで、薄く柔らかく、暖かかった。
なすがままに、トゥルーデはエーリカに抱きしめられ、ベッドに沈む。
特別濃厚な、エーリカの口吻。
熱い舌を絡ませ、灼け付く吐息を頬に流し……長く、じっくりとお互いを味わう。
はあ……っ、と息をついて、エーリカは笑った。
「ね、一口」
弱々しくも、トゥルーデはエーリカの服を引っ張り、抱き寄せた。
「え? 聞こえないよ……もう一口?」
エーリカはふふっと笑みをこぼすと、おかわりをあげる。
「早く元気に……なるといいね」
絶え間ない口吻の間の呟きが聞こえたのか、トゥルーデは抱きしめる腕に力がこもった。

end
14名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 21:30:11 ID:w+KPXXW4
以上です。
久々のトゥルーデ×エーリカはやっぱり楽しいな〜と。
タイトルは有名なあの曲から。と言う事は……お楽しみに(謎

しかし、スレの勢いは止まりませんね〜。
皆様頼もしい限りですホントに。

ではまた〜。
15名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 21:32:39 ID:hmyjXyRO
part19のスレの消化日数が5日って過去最速だ
16名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 21:41:31 ID:5XLd0bC0
>>1おつダナ!

>>14
久々のmx氏きたあああ!
あますぎエーゲルGJ!シチューとかそれ濃厚すぎGJ!
17名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 22:01:03 ID:cJXVugk+
>>14
GJ!曲のネタは誘い乱れるカーニバルなあの歌かな
18名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 22:07:08 ID:uXBEbXfI
エイラーニャの秘め声が終わった以上あとなんか加速要因あるかな
ゲーム?
19名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 22:18:59 ID:wrmQjTpS
ちょ…前スレのエイラーニャの続きを…!!
20名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 22:36:07 ID:Z5NZxAFD
>>14
GJ!!氏の書く甘々はとにかく素晴らしい。受け受けしいお姉ちゃんおいしいです。

>>18
ゲームには期待していいと思う。あとキャラCDドラマパートがつくという噂があるがあくまで噂なのでいかんともしがたい。
まあDVD最終巻が出てからが勝負よ。

>>19
2/2ってなってるからあれで終わりだろう。次はPart21が立ってからのお楽しみということだな……。
21X2w2Ib氏だと思うんですが名乗り忘れかな?違ったらすまない。ともあれGJ!!
21名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 22:39:17 ID:cJXVugk+
俺の2が多い人センサーによると前スレの埋めの人は違う人と出ている
どちらにしろGJだっていうか焦らしプレイじゃないかー
22256kb:2009/02/04(水) 22:40:41 ID:q3SokPd5
>>1
新スレ移行したところで、前々スレ>>419の続きのエーリカ×ハイデマリーネタ後編。
気付いたら前編の倍近いボリュームになってました……9レスあります。
では……

     Sonne und Mond(後編)
23256kb - Sonne und Mond(後編)1/9:2009/02/04(水) 22:41:15 ID:q3SokPd5
 気晴らしに夜の散歩をしていたバルクホルンが偶然見つけたのは、滑走路から星空を見上げ
ているミーナだった。
「ミーナ、まだ起きてたのか」
「トゥルーデ……」
 ミーナは少し驚いたようにバルクホルンを見た。
「あのふたりが気になるのか」
 バルクホルンの問いに頷き、ミーナは再び空に目を向ける。
「なぜ、ハルトマンとシュナウファーを組ませたんだ? あれはミーナ、お前の提案だと聞い
たが」
「どうしてかしらね……」
 遠い目をしたまま数秒、ミーナは愛する我が子を憂う母にも似た表情をしていた。
「シュナウファーさんは確かにナイトウィッチとしての才能は稀有だけど、ここに来るまでに
いろいろとあったようで、基地のみんなとも馴染めずにいるみたいなの」
「確かに他人を寄せ付けない雰囲気はあるな」
「だから、ちょっとしたきっかけになればと思って、かしらね」
 慈愛に満ちた目をするミーナに、バルクホルンは少し不満そうにこぼす。
「……ずいぶんとシュナウファーにかまうんだな」
「あらトゥルーデったら、妬いてるの?」
「なっ……そ、そういうことではなくてだな!」
 やたらと赤くなって慌てるバルクホルンを見て、ミーナは淑やかに笑った。
「私たちは同じチーム――家族だもの。困っていたら助け合うのは当然でしょう? シュナウ
ファーさんも例外ではないわ」
「……まぁな」
「それで、フラウが適任かと思って」
「それがわからん。いきなりハルトマンと組ませるのは、とんだ荒療治だと思うぞ。あいつは
規律に関してもそうだが、遠慮というものが……」
「フラウはトゥルーデによく甘えるものね」
「甘えすぎだ! あいつはいったいいつになったら、カールスラント軍人としての自覚が……」
 いつものように長い愚痴を漏らそうとするバルクホルンをミーナがなだめる。
「あの子は飄々としてて、気楽で素直で、私たちとは少し違うけれど、まっすぐで、むしろ助
けられることも多いわ。大げさにいえば――『太陽』みたいな存在。あなたもそう思わない?」
「……まぁ、あのお気楽さはないならないで、物足りない、かもしれない」
 視線を逸らしつつそんなことを言ったバルクホルンを、素直じゃないんだから、とミーナは
また笑い、三度夜を眺めた。
「だからこれは、ある意味賭け」
 ミーナに倣ってバルクホルンも宵闇を仰いだ。今夜は、月が出ていない。
「あの子は暗闇の『お月さま』を、ちゃんと照らしてあげられるかしら?」

   ◇
24256kb - Sonne und Mond(後編)2/9:2009/02/04(水) 22:41:49 ID:q3SokPd5
 変に気持ちが高ぶってきて、ハイデマリーの指示を聞くのも忘れて私は飛び出していた。
 少し速度を上げすぎたのか、自分の目ではかすかな翼端灯の光でしか後方の彼女を確認でき
なかった。
 インカムで通信を試みているのか、耳のノイズの音量が上下している。ジャミングは近距離
通信でも効果的らしい。
「ハイデマリーもミーナと同じタイプかなぁ……」
 怒ると怖そう。
 何度目になるかわからない自室禁固処分の危機を感じながらも、敵機に接近する。
「――あ」
 薄く赤く発光するものを前方にとらえた。ネウロイのビーム発射機構、それが三つ。
「見つけた!」
 その光が強くなる瞬間を見極める。
 赤い閃光が三本放たれたと同時、くるりとバレルロールで回避。
 すかさず真ん中の発射機構に向かって銃弾を叩き込む。命中を意味する金属音が数度響いた
後、敵のひとつは一際赤い光を放つコアと共にガラスのように砕け散った。
「まずひとつ!」
 これなら、ハイデマリーが追いつく前にひとりでみっつとも堕とせるかもしれない――そん
な驕りが湧いてくる。
 敵はV字型に編隊を組んでいたから、残りも近くに――
「あれ?」
 辺りを見回すが、いない。残り二機のネウロイが忽然と姿を消した。
「……逃げられた?」
 ――違う。嫌な感じがする。なのにとても静かだ。
「まだ、近くに……」
 自分の心臓の音がとても大きくて早い。高揚なのか、恐怖なのか、何が自分の中に渦巻いて
いるのかもわからないままに集中する。
 刹那。
「上っ!」
 ハイデマリーの叫びでとっさに星空を見上げる。
 闇の一部が赤い。そこから光の針が私を穿とうと飛び出す。
 シールドを――いや、間に合わない!
 衝撃が走った。

   ◇
25256kb - Sonne und Mond(後編)3/9:2009/02/04(水) 22:42:19 ID:q3SokPd5
 間一髪彼女を抱き留め、ビームを青白く輝くシールドで防いだ。
 ハルトマンではなく、私が。
 ちりり、と頭の奥で何か違和感を覚えたが、気にせず彼女の顔を見た。
「ハイデマリー!」
「勝手に飛び出さないで……何かあったらどうするの!?」
 ハルトマンへの注意は思ったより声が大きくなり、自分でも少しびっくりしてしまった。
「でも一機堕とした!」
「そういう問題じゃない!」
 エーリカ・ハルトマンはカールスラントが誇るエースであり、自由奔放――聞いていた噂の
通り、バルクホルン大尉が口うるさくなるのも納得だ。彼女の気苦労も相当なものなのだろう。
「……ごめん」
 彼女の謝罪の言葉を聞いて自分を落ち着かせる。今もネウロイに囲まれている状態、無駄な
話をしている余裕はない。
「ちゃんと私の指示を聞いて……さっさと切り抜ける」
「……よっし、オッケー!」
 ハルトマンも深呼吸して落ち着いたのを確認し、並列のままふたりで上昇。バレルロールで
ビームを回避しつつ、思案する。
 そのつかみどころのない性格とはまた別に、ハルトマンはどこか浮き足立っている。経験の
少ない夜間戦闘で緊張しているのだろうか。だが、日中と夜間では環境が違いすぎる。下手に
突っ込まれてもフォローしきれない。
「私が囮になるから、あなたはその隙に攻撃して。小型だから堕とすのにそう時間はかからな
いはず、焦らないで」
「了解!」
 ハルトマンは進行方向を九十度転回。
 ネウロイを引きつけた後、私の夜間視能力を使い敵を捕捉、攻撃。回避されてもハルトマン
が狙いやすいようにアシストする。
 いつものようなひとりでの戦闘とはまた勝手が違うが、これもよい経験になるだろう。
 ネウロイから放たれる数度目のビームをシールドで正面から防ぐ。
 ちりり、ちりり。
「――え?」
 さっき覚えた違和感が、頭の中で強くなっていく。
 嫌な感覚。眼の奥が、頭の中が焦げつくような感覚。
 ネウロイが私にビームを撃つたび――『光が迫ってくる』たびに強くなる。
 これは、まさか――。
 ハルトマンが、二機目のコアを撃った。
 ガラスの砕けるような音が、私の外と中の両方で鳴った。
 思い出した。思い出してしまった。
 あの感覚――地獄の日々。私の世界を削り取る、光束の暴力。
「ハイデマリー、後ろーっ!」
 ハルトマンの叫びに私の身体が反応する。
 振り返ると同時、黒いものが、私に赤い地獄を撃ってきた。
 身体に叩き込まれた無意識がとっさにシールドを展開。ビームが弾かれる轟音と共に、私の
眼を灼こうと、光が迫ってくる。
「いやあああぁぁああっ!」
 自分の声が遠く聞こえて、すべてが途切れた。

   ◇
26256kb - Sonne und Mond(後編)4/9:2009/02/04(水) 22:42:49 ID:q3SokPd5
 だれかが泣いている。
 声をころしきれずに、なみだを流している。
 わたしだった。
 とてもかなしくて、わたしは泣いていた。

 ――ハイディ。

 だれかがわたしを呼んでいる。
 わたしを「ハイディ」って呼ぶのは、おかあさんとおとうさんだけ。
 この声は――おかあさんだ。
 わたしたち以外、みんなもう眠ってしまっている夜。
 わたしの前には、明かりのない家の玄関に立つおかあさんとおとうさん。
 わたしの横には、カールスラントの女の軍人さん。
 そうだ。わたしが「ウィッチようせいきかん」に行くときだ。
 おかあさんはわたしの前にしゃがみこんで目の高さを合わせた後、やさしく言った。

 ――ねぇ、ハイディ。
 怒らないから、正直に答えて。
 その「ちから」は嫌い?

 少しためらった後、うん、とわたしはうなずいた。
 この「ちから」のせいで、わたしは苦しい思いばかり。
 わたしだけじゃなく、おとうさんとおかあさんまで苦しめてる。
 わたしが起きてる間は、夜でもまっくらな家で生活するふたり。
 たくさんつまづいたり、ぶつけたりして、目がわるくなってめがねもかけた。
 ごめんなさい、とわたしは言った。まともに声になったかはわからない。
 わたしは、おとうさんとおかあさんの生活までめちゃくちゃにしてしまった。
 きらいにならないで、と都合のいい言葉をはく。
 わたしに関わらなければ、ふたりはしあわせになれる。でも、わたしはひとりになる。
 わかっていても割りきれなくて、じぶんはどうしようもなくいやな人間だと思った。

 ――ハイディ。

 おかあさんが、いつもと変わらないやさしい顔でだきしめてくれて。

 ――だいじょうぶ。おとうさんもおかあさんも、絶対にあなたを嫌いになったりしない。
 何があってもあなたは、私たちの大切な家族よ。

 おかあさんのからだはとてもあたたかくて、とてもうれしくて、また泣いた。

 ――ハイディ、忘れないで。
 あなたには帰れる場所が、家族がいること。
 そして、もうひとつ。
 あなたが嫌いな、その「ちから」。
 それはあなたをこれからも苦しめるかもしれない。
 それでも、忘れないで。

 その「ちから」は――

   ◇
27256kb - Sonne und Mond(後編)5/9:2009/02/04(水) 22:43:25 ID:q3SokPd5
「ハイデマリー!」
 はきとした声に目を開けると、ハルトマンが私の顔を覗き込んでいた。
「ハルト、マン……」
「怪我はない?」
「……ええ」
 視界には彼女の顔、その後ろに森の木々とその間から覗く明るい夜空が見えた。
 横たわっていた身体を起こす。
「……ネウロイ、は」
「みっつとも撃った。ハイデマリーのおかげだよ」
 安堵したと同時に、己のふがいなさとハルトマンへの申し訳なさが心の中でふくれ上がった。
「ごめんなさい……私が、足を引っ張ってしまった」
「そんなことない! ハイデマリーがいなかったら、私だってどうなってたか……」
 返答に困って目を逸らし、脚部の違和感に気付いた。ストライカーがない。どうやら気を失っ
た際に脱げてしまったらしい。
「ごめんね。ハイデマリーを助けるのに必死で、ストライカーまで気が回らなくて。さっき通
信も直って、何人か来てくれるように頼んだから」
 私は何も言えないまま、空を仰いだ。
「……もうすぐ、日の出だね」
 ハルトマンの言葉に、私の身体が震えた。
「あ……」
 日の出、朝、太陽の目覚め――私の恐怖。意識した瞬間に震えが止まらなくなった。
 私の眼はもう光に耐えられる。それなのに――。
「なんで……」
 震える身体を、両腕で必死に守るように掻き抱いた。
 今更になって気づいた。光を恐れる生活は終わったと思っていた。まやかしだった。終わっ
てなどいなかったのだ。光から目を背けていただけで、何も変わってなどいなかったのだ。
 あのネウロイのビームも、いきなり怖くなったわけではない。今までの繰り返してきた戦闘
では、恐怖を感情ごとすべて押し潰して誤魔化していただけで――ずっと私は光に怯えていた。
 私を包んでいた殻はあまりに脆く崩れ落ちて、そうして曝け出した私の本当の姿は、あの暗
い部屋にいたときと、何も変わってなどいなかったのだ。
 まともに太陽を見据えたら、今度こそすべての景色が無くなってしまうかもしれないと恐れ、逃げて、繰り返す、終わらない地獄。
「……知らなかった」
 絞り出した自分の声は震えていた。
「私が、ここまで弱かったなんて」
 どうして私はこんなに弱いのだろう。何も出来ないのだろう。
 ナイトウィッチの才能だとか、そんなものには何の意味もなくて。
 目の前の壁を越えられずにもがき続けて――いや、もがくことさえしなくなったのが今の私。
 一人の女として、人間として、自分がいかに無力な存在なのかを思い知ってしまった。
「私……っ」
「ハイデマリー」
 そのはっきりと届いた声の方を見た。
 悲痛に染まっていただろう私の顔を、ハルトマンはまっすぐに見つめていた。
「今日の戦いで、改めてわかったんだ。ひとりでできることはそんなに多くないって。私だけ
じゃない。ハイデマリーも、きっと他のみんなもそうなんだよ」
 今日の私はハイデマリーがいたからなんとか勝てたんだ、と彼女は笑った。
「トゥルーデやミーナも、そういうタイプなんだけどさ……ひとりで全部抱え込んじゃうのは
よくないよ。命を預けろとまでは言わないけど、少しずつでいいから、信じてほしいんだ。ハ
イデマリーが一人でだめなら、私も一緒にがんばる。それでもだめなら、トゥルーデやミーナ
も支えてくれる。それでもだめだったら、他のウィッチも、ううん、もっとたくさんの人が支
えてくれる」
 そして、ハルトマンは、とびっきりの笑顔で言った。

「私たちはチームで――『家族』なんだから」
28256kb - Sonne und Mond(後編)6/9:2009/02/04(水) 22:44:15 ID:q3SokPd5
「あ……」
 それは本当に唐突な言葉で。
 私は戸惑うことしか出来なくて、それでもうれしくて。
「あはは、柄でもないこと言っちゃったかなっ! そろそろ帰ろっか!」
 彼女のあまりにわざとらしい照れ隠しに、思わず吹き出した。
「こらー! 笑うなー!」
 ハルトマンの少し赤くなった顔が面白かった。
 こんなに自然に笑えたのは、きっと初めてだ。
「……ハルトマン」
「なに?」
「ひとつ、お願いしてもいい?」

 ストライカーのない私はハルトマンに支えられ、再び空にいる。目の前にはカールスラント
の山々と、まだ顔を出さない太陽の気配。
「……ハイデマリー」
 彼女の呼びかけに顔を向ける。
「無理しなくて、いいんだよ?」
 私は首を振った。
「今なら、がんばれる。今だから、がんばらなきゃいけないと思う」
 そう言うと、ハルトマンはまた笑った。
「そっか! なら、私もがんばる」
 ふたりで東を見つめる。連なる山の稜線が燃えているようにきらめいて――。
「あ……」
「くるよ」
 そこから顔を出した金色が世界を彩っていく。日の出の時だ。
 私の世界が白く溶けていく。光とまともに向き合ったのは、きっとこれが初めて。
 恐ろしくないとはいえない。でも、私に触れているこの温もりがあれば、きっと大丈夫。
 眩しくて何も見えなくて、けれど確かに隣にいてくれる彼女を感じていた。
 そして、わずかな時間を永遠とも思えるほど長く感じた後、徐々に世界が復元していく。
「……すごい……」
 光の奔流に包まれた、私の知らない輝かしい世界がそこにあった。それは私を灼き尽くすど
ころか、ずっと凍てついていた私を溶かしてくれるようで――。
 私の眼から熱いものがこぼれた。けれど、今までのように悲しくも苦しくもなかった。どこ
か懐かしい温もりに満たされたような気持ちが溢れて、頬を伝って、遠い眼下にささやかな雨
になって落ちていった。
29256kb - Sonne und Mond(後編)7/9:2009/02/04(水) 22:44:39 ID:q3SokPd5
 ――何の変哲もない友達が欲しかった。一緒に笑いたかった。知らない世界を見たかった。
 それを叶わぬ夢だと吐き捨て、自分を殺し、世界を閉ざした。
 そんな私を家族だと言ってくれる人がいる。一緒に笑ってくれる人がいる。私の初めての世
界を、一緒に見つめてくれる人がいる。
 こんなにも簡単に、あなたは私を変えてしまった。昨日までの自分が嘘みたい。
 私は涙を拭って、その人の横顔を見た。太陽に照らされた彼女は、女神のように美しかった。
「私はハイデマリーの昔を知らない。どんなに大変だったかも、わかってあげられない。でも、
これだけは言える」
 太陽に照らされたまま、笑顔で私と視線を合わせて、彼女は言った。
「ハイデマリーはその能力で、私を救ってくれた――私たちの町を、多くの人を救ってくれた」
 私ははっと、カールスラントの大地を見下ろした。
 広がる町も光をまぶされて目覚めていく。暮らす人々の日常が今日も廻り始める。
 こんなに近くに、こんなに綺麗な風景があったのに。私は光から眼を逸らして、求めていた
世界までも拒絶していたのだ。
「だから」
 私がハルトマンに向き直ると、まるであの人のように、やさしい声で彼女は――
「ありがとう、ハイデマリー」
 その瞬間、私は思い出した。あの人の、あのときの言葉を。

 ――あなたが嫌いな、その「ちから」。
 それはあなたをこれからも苦しめるかもしれない。
 それでも、忘れないで。

 その「ちから」は――たくさんの人を守れる可能性を秘めていることを……。

「……ハイディって、呼んで」
「え……?」
「ハイディ」
 私は繰り返した。
 私の特別な名前。今までお父さんとお母さんだけが呼んでいたこの名前。
 だから、あなたがさんにんめ。
「私の――『家族』が呼ぶ名前」
「……うん!」
 私の友達で、親友で、家族。きっともっと増やせる。
 それは思っていたよりも、きっとずっと簡単なこと。
「じゃあさ。私のことは、フラウって呼んで」
 ――あなたが、教えてくれたこと。
「ありがとう、フラウ」
 私がそう言うと彼女はまた笑った。
「私こそ……ありがとね、ハイディ」
 とくん、と胸が鳴った。
 その笑顔はとても眩しくて、金色の髪も呆れるほど綺麗で――太陽に、似ていると思った。

   ◇
30256kb - Sonne und Mond(後編)8/9:2009/02/04(水) 22:45:06 ID:q3SokPd5
 あの日から数日が経った朝。
 私とトゥルーデは朝食を摂って、待機のため自室に向かっていた。
「それにしても、驚いたぞ」
「なにが?」
「通信を聞いて駆けつけたら、お前とシュナウファー大尉が朝日に照らされながら抱き合って
いたんだからな……」
「なーにトゥルーデ、もしかして妬いてるの?」
「そ、そういうことではない!」
 トゥルーデはあわてて否定したが、顔が真っ赤だから説得力がまるでない。
「ふふ、本当にそうかしら?」
「うわっ!」
 急に飛んできた背後の声に振り向くと、ミーナがいつものように笑っていた。
「み、ミーナ!」
「おっはよーミーナ」
「ふたりともおはよう。フラウ、先日はお疲れ様」
「おかげで眠いよー……今日休んでもいい?」
「ハルトマン! 相変わらずお前という奴は……」
 またトゥルーデの長台詞が始まると思いきや。
「――ミーナ中佐」
 聞き覚えのある凛とした声が割り込んできた。
 ハイディが敬礼をして立っていた。相変わらず立派な敬礼だ。
「ハイデマリーさん。どうしたの?」
「哨戒で報告したいことがいくつか……」
「わかりました、伺います。ふたりともちょっと待っててね」

 通路の端で話を始める二人を、私とトゥルーデはぼんやりと眺めていた。
 せっかくなので、少しだけ考えていたことを切り出してみた。
「ハイディってさ、ちょっとウーシュに似てたんだ」
「……ウルスラに?」
「眼鏡の奥の目とかがね。だからさ……もしかしたら私、ハイディをウーシュの代わ――」
「フラウ」
 トゥルーデが私の言葉を遮った。めったに呼ばない、『フラウ』の名前で。
「お前にとっては、ふたりとも大切な家族なんだろう?」
「……うん」
「なら、それでいい」
「いい、のかな」
「きっかけはどうあれ、お前がシュナウファー……ハイディと、家族でいたいと思ったなら、
私はそれでいいと思う」
「……うん」
 ああ、またトゥルーデに甘えてしまった。
 彼女の言葉はきついようで、本当に私たちを心配してくれているのがわかる。
 だから私は、そんな『おねえちゃん』みたいなトゥルーデに、とても感謝しているのだ。
 ……口には出さないけどね。
「トゥルーデもミーナも、ハイディの家族でしょ?」
「そうだな」
 そうだ。私だけじゃない。みんな、ハイディの家族なんだ。だから大丈夫!
 ……何が大丈夫なのかは、よくわかんないや。へへっ。
31256kb - Sonne und Mond(後編)9/9:2009/02/04(水) 22:45:33 ID:q3SokPd5
 ふたりの話が終わったタイミングで言葉を滑り込ませる。
「ハイディー!」
「フラウ……」
 彼女はあれ以来、とても明るくなったような気がする。夜間哨戒訓練で、他の人とロッテを
組むときもちゃんと話をしているみたいで、一部では人気急上昇だって。それが私にとっても
嬉しかった。
 ……何故か私と話すときにだけ、少し顔を赤らめるようにもなったけど。
「哨戒おつかれ! これから寝るの?」
「ええ、そうだけど……」
「じゃあ、一緒に寝よ!」
『え!?』
 私の言葉に、ハイディとトゥルーデが同じ発音を返した。
「は、ハルトマン!」
 あたふたするトゥルーデをよそに、ハイディはやっぱり顔を赤らめて、うつむいた後。
「……構わないけど、狭いわよ」
 以前と同じ言葉だけど、少しだけやわらかく、あたたかく聞こえた気がした。
「シュナウファー、お前まで……ミーナ! なんとか言ってくれ!」
「そうねぇ……せっかくだし、今日はお休みにしてあげましょうか」
 ミーナはいつもより少し眉を下げた笑顔で、あっさりと休暇をくれた。さすがだね!
「ミーナっ!」
 よしよし、味方がいなくなったトゥルーデに、私がとどめを刺してあげよう。
「もートゥルーデったらー。私の身体はひとつしかないんだからね?」
「だ・か・ら! そういう意味じゃなーいっ!」

 彼女の部屋は以前と違い、光が満ちている。
 カーテンは開け放たれ、ハイディは窓から青空を見ていた。
「ハイディ、今日は暖かいからこのまま寝ようよ」
 そう言うと彼女は私を見て笑った。
「ふふ、そうね」
 ちょっとどきっとした。
 その笑顔はすごく穏やかで、真っ白な髪もやっぱり綺麗で――月に、似ていると思った。
 射し込む光をそのままに、ベッドで身を寄せ合う。
「おやすみなさい、フラウ」
「おやすみ、ハイディ」
 ハイディの身体はあたたかくて、いい匂いで、あまりにやさしくて。
 まるで私とハイディはふたつでひとつの、対になった存在であるかのような錯覚さえ感じた。

 そう――まるで、太陽と月のように。


 Ende.
32256kb:2009/02/04(水) 22:45:59 ID:q3SokPd5
自分の好み全開で好き勝手書いてたら、すごくクサくなりました。あと長くなりました。
題の「Sonne und Mond」はカールスラント語で「太陽と月」という意味。
いろんな意味でピッタリすぎだと思ったので。
まあとにかく読んで「こいつはくせェーッ!」と思ってくれれば幸いです。
キャラが崩れ気味ですみませんでした。ありがとうございました。失礼します。
あとハイデマリーの愛称はハイディ派です。ハイディマジ幸せになれ。
33名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 22:56:57 ID:g1beGcb1
>>32
こいつはくせェーッ!
だが、いい。久々にリアルタイムでwktkとF5押しながらじっくり浸らせてもらいました
カールスララントリオ、いや、カルテット最高だー
お疲れ様でした!
34名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 23:15:08 ID:zolUy5xc
サーニャが起きてエイラ探してるんだけどペリーヌが来てエイラさんは訓練に行ったと報告
で、お礼行って部屋に戻ろうとするサーニャに昼飯さそって、それから
色々話してエイラさんが戻ってくるまで一緒にいるんだけど

っていう俺のさっき思いついた妄想を書いて満足したからもう寝る
SS明日読ませていただきます
35名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 23:23:07 ID:/9cZHf4t
前スレでのゆりたまご氏のifシリーズ、ほぼ読破しました
SFあり、シリアスあり、ギャグあり、ハーレム(?)ありの超大作ホントお疲れ様&GJ!!
そして√37の続きを楽しみに待ってるんダナ。
36名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 23:25:48 ID:Q6MQ2QgB
どもこんばんわ、ゆりたまごです。そして>>1乙です。
前スレ434-436の続き投下します。エイラーニャ主役回じゃないです。
3レスです。これで本当に最後です。

昨日投下した方々、たぶん私の投下で一昨日控えてたんだよね、ありがとう。
しつこ過ぎると逆に嫌味になっちゃうんでこのへんで手打ちにして下さい。
レス頂いた方々ありがとう。読んでいて涙でできました。半べそかきながら投下していた自分が馬鹿みたい。
保管さん素敵なまとめ作ってくれてありがとう。隠しエンディングまで再現して貰えるなんて、ちっくじゃなくてゲーム気分が味わえました。

元ネタについて
「お姉ちゃんとバンパイア」が意図的に中の人ネタにしてある程度です。
他は題名や台詞を借りてるだけで中身は関係なかったりするので期待を裏切っちゃったかも。
アドベンチャーブック好きの方へ、私は元ネタ知らないんですが√○○へが死亡フラグだってネタ気付いて頂けたでしょうか。
「たったひとつの冴えたやりかた」について、「夏への扉」に続き気付いて貰えて嬉しいです。
原作が悲しい終わり方なので最後の蛇足なオチでのコメディー転換には自分なりの想いが籠もっています。

個人的にOsqVefuYさんへ、一人のファンとして無記名投下の作品を名乗って頂けたらな……なんてダメ?かな。バレバレだからとか言わないで。
37√34「11人目の魔女(後半)」1/3:2009/02/04(水) 23:30:32 ID:Q6MQ2QgB
√34「11人目の魔女(後半)」(前スレ434-436の続き)

〜時間の大河〜
坂本少佐と宮藤は手を繋ぐ、私は後ろから二人の肩に手を置いた。場違いな場所にいる気もするけど仕方がなかった。
そして私達三人は魔法力を発動して時間の流れを探った。

目の前に時間の流れが映し出される。三次元的な映像だ。
本来は四次元的なものなので私もこの様に知覚できないんだけど、これはひとえに魔眼のお陰だった。
それは流れる大河に似ていていくつもに枝分かれしていた。
私達は宮藤の発する波長を頼りに同じ波長の時間の流れを探し求めた。
私達は宮藤のいない501部隊の流れに生きている、つまり宮藤のいた世界とは大きくかけ離れているんだ。
私はかなり源流を遡らなければと覚悟したけど、その目当ての流れはあっけなく探し出す事が出来た。

私達と宮藤、この二つの時間の流れが大きく蛇行し‘捻れの位置’で急接近していた。
この二つの流れが二次元的に見て交わるポイント、ここが宮藤が帰るべき時間の流れの時代だ。
例えばピラミットは見る方向によって▲(三角形)にも■(四角形)にも見える。
これを正確に判断する為に二つ目の魔眼、宮藤の魔眼が必要だった。
私達は波長の屈折率が整合する角度を導き出して、宮藤が飛び立つ時空内の座標を確定した。

〜滑走路〜
測定を終えると私は適当な理由をつけて一人基地へと引き返していた。
この世界で宮藤に残されたあとわずかな時間を、無駄にはさせたくなかったからだった。
今頃他のみんなはシャーリー大尉を中心に、超光速タキオンエンジンのストライカーへの組み込みを大急ぎで取り組んでいる所だろう。

私が基地の滑走路に到着すると人影が見えた。
もしかしてサーニャがお出迎えしてくれてるのかな……な〜んてね、わかってる!わかってるよ!
どうせルッキーニが邪魔になるから追い出されたってオチが関の山なんだから。
違った、滑走路で私を出迎えてくれたのはリーネだった。正確に言えば私を出迎えるわけじゃないんだろうけどな。

「エイラさん、お二人はどうされました?」
「あぁうん、ちょっと調整の再確認してタナ」

私はまた適当な理由を考えてごまかした。
そういえばリーネはやけに宮藤と親しそうに話していたっけ。
きっと自分でも何故だかはわからずに宮藤に引き寄せられているんだろうな。
リーネにとってはさっき会ったばかりだけど、それだけ宮藤は親しくなる可能性のある人物って事なんだ。
その人物がいなくなる直前で、その人物の眼差しは自分に向ってないんだかんな……
死人は無敵だって言うな……その人の心の中で永遠に生き続けるって事、リーネもわかってるんだろうな。
こういう時って何て声かけてあげればいいのかな、そっとしておくのが無難だよな。

「引力ダヨ、引力!」
「えっ?」

あれ?私は声を張り上げていた。リーネの暗く俯いた表情が私にそうさせるだけの力を秘めていたからだった。
しかも何言っているんだろう私。頭が回らないな、とにかく伝えたい事をただ羅列していく。

「ダカンナ、態度とかじゃなくてサ、ントナ、リーネのその痛みはナ、オマエだけのモンじゃなくテ、宮藤からの想いがあるからこそデ、アノナ……」
「はい、わかりましたエイラさん、引力ですよね?」
「そーダヨ、引力ダヨ」
「私、信じてみます、私達の引き合う力を」
「ウンそいじゃナ、ワタシはハンガーに行ってるからサ」
「はいっ」

こんな私の言葉でも少しは役にたてたのかな。私はすれ違い様にリーネの横顔を覗いた。
その心配はなかった。
38√34「11人目の魔女(後半)」2/3:2009/02/04(水) 23:32:13 ID:Q6MQ2QgB
〜旅立ち〜
準備は整い、宮藤が帰る時が訪れた。
宮藤はシャーリー大尉に超光速タキオンエンジン組み込み式ストライカーの説明を受けていた。

「第一に、こいつはあっちに到着したら壊れる使い捨てだ。
第二に、あっちのあたしがこいつを発明しているとは限らない。
第三に、……少佐はあっちにはいない。
つまりここには二度と戻って来れないっつー事だ、わかるな?
最後にもう一度だけ聞く、こいつは片道切符だぜ、それでもおまえは乗車するかい?」
「はい!私もう決めましたから、現実に立ち向かって生きていくんだって!」
「ふぅ〜ん、やるねぇ〜今のおまえ最高にイカしてるよ」
「でも最後に一つだけ、この世界でやり残した事があるので……少しだけお時間下さい!」

宮藤が私達の方へ向ってくる。
そしてリーネの前で足を止めた。

「芳佳ちゃん!?私なんかより少佐の所に行かなくていいの?」
「うん、もう坂本さんとはいっぱい話せたし……じゃないや、いっぱい怒られてきちゃったし。
それにね、坂本さんは一番の恩人で、そしてリーネちゃん……リーネちゃんは私にとって一番の親友なんだもん。
リーネちゃんにとっては迷惑かも知れないけど、最後にこれだけはきちんと伝えておきたくて」
「芳佳ちゃん!私が感じてるこの気持ちは、芳佳ちゃんも感じてくれてたんだね」
「私もだよリーネちゃん、どこの世界にいってもリーネちゃんが私の親友でいてくれるなんて……こんな嬉しい事ないもん!」
「芳佳ちゃん!」
「あっリーネちゃん……苦っ……しい……よ」

リーネは宮藤に抱きついていた。宮藤が酸欠直前になってようやく二人は離れた。
宮藤は天国から御帰還直後の顔つきだ。私はリーネの放つ引力の根源に気付いたがリーネには内緒にしようと心に決めた。
そして今度こそ本当に宮藤が帰るその時が訪れた。

宮藤はシャーリー大尉の胸に抱かれていた。宮藤は昇天一歩手前の顔つきだ。
二人は通常エンジンで旋回飛行を続け勢いを付けると直線飛行へと切り替える。
そしてストライカーが一瞬輝いたかと思ったら二人は瞬く間に視界から消え去った。

坂本少佐が私の肩に手を置き二人の姿が再び映し出される。ここからは屈折した空間内の映像だ。
シャーリー大尉が宮藤を押し出した、亜光速に達した瞬間だ。
このエンジンは一回使い捨てだから試運転をする余裕などはなかった。
それは亜光速初体験の宮藤がここから一人で飛び続けなければならない事を意味していた。
切り離された宮藤は更に加速を続ける。しかしその軌道はぶれ始めついにはバランスを崩した。
思わず坂本少佐は声を上げる。

「行っけぇぇぇ〜宮藤ぃぃぃ〜!」

その声に支えられたの如く宮藤は反転する。その体勢は持直し進路を定め突き進んだ。
そして宮藤の姿が消えた、超光速に達し時空の壁を乗り越えた瞬間だった。

「お〜っす、ただいま〜」『え?何が起きたの……あれシャーリー!』

シャーリー大尉が目の前に現れた。
みんなにとっては一瞬の出来事だったんだから驚くのも当然だよな。

「あの!芳佳ちゃんは……?」
「無事に帰れたのかしら?」
「ああしっかり送り届けたぜ」
「そうだな、何の迷いも見せない飛び方で真直ぐとあいつの世界へと帰っていったよ」
「ダナ」

「芳佳ちゃん……元気でね」
〜数ヵ月後〜
私は一人展望台に登り、あの日の出来事を思い出そうとしていた。
私が覚えていたのは名も知らぬ一人の魔女がやって来た事、ただそれだけだった。
どんな魔女だったのかその顔すらも、もはや思い出す事は出来なかった。
時間の修復作用はかなり進んでいる。時空認識能力のある私でもあと数日で完全に記憶から消えてしまう出来事だ。
他のみんなにとっては既に何気ない日常の記憶に塗り変わっているに違いないんだろうな。

でもそれはたぶん幸せな事なんだって思う。
もしもその魔女が誰かにとって大切な存在だったとして、その人を失った哀しみを抱え続けなきゃいけないんだ。
もしもサーニャが突然いなくなるなんて事が起きて、その哀しみを抱えながら現実を生き続けられるか私には自信がなかった。
時間っていうものは思ってるより私達に優しく出来ているんだなって思ってしまう。

「あっ、ごめんなさいエイラさんもここにいらしたんですね」
「ナンダ、リーネか別に構わないケド、どうかしたノカ」

ずっと海を眺めていた私の背中から、リーネが声をかける。

「ひょっとしてエイラさんも?今日は坂本少佐が扶桑からお帰りになる日だから、もしかしたらって……」
「もしかしタラ?」
「エイラさん、引き合う力って……引力って信じますか?」
「引力?いったい何の話ナンダ?」
「いえ、そうですよねエイラさん……何でもないんです」

それからリーネはただ黙って海を見つめていた。
どうやらリーネは坂本少佐の帰りをいち早く知るためにここにやって来たらしかった。
そんなに少佐の帰りが待ち遠しいなんて……引き合う力?この二人そんな関係だったっけ?
なにこれ!上官との禁断の愛!
私の脳内にお花畑が広がり桃色の花々が咲き乱れる。
やばい!なんか私、気付いちゃいけない事に気付いちやったみたい!
どっ動揺が顔に出ちゃう前に早くこの場から退散しなきゃだな。

「じゃ、じゃあワタシは行くからリーネはゆっくりト……」
「すいませんエイラさん!私もう行くんで失礼します!」
「してい……ん?リーネ?」

私が言い終わる前にリーネは駆けて行ってしまった。耳と尻尾が生えていた。
魔法力使ってたのか、私の目に扶桑の戦艦が確認出来たのはそれから数分後だった。

やがて戦艦から魔女が飛び立って来る、坂本少佐と……もう一人いる!誰なんだろう?
そして基地からはリーネが坂本少佐を出迎えに飛び立って行くのが見えた。
リーネ……誰も見てないと思って坂本少佐に抱き付いたりするんじゃないよな?しちゃダメだかんな!
私は期待しながら見守った。

青く広がる大空の下、
リーネはもう一人の魔女と抱き合っていた。

エンディンクNo.11「11人目の魔女」
〜おしまい〜

以上で全て終了です。
ながらくお付き合いありがとうございました。
>>35さんニアミスしちゃった!と思ったら嬉しいお言葉!私は幸せ者です。ありがとう!
それではこのへんで失礼します、ゆりたまごでした。
40名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/04(水) 23:59:03 ID:atCMVkIt
>>14 濃厚シチューごちそうさまですw 新婚さんは今日も熱いですね。こっちが熱でそう
>>32 ハイデマリーさんいいですねえ。クールっぽい外見の裏側が素敵に描かれていてとても惹かれました
>>36 スーパーエースが帰ってきた!しかも超重量級の爆弾携えて!
    まだ、少ししか読めてないですが、続きもじっくり読みたいと思ってます

……で、part19を埋めたのは私、ねこぺんでした
だいぶ前に書いてそれっきりだったやつを埋め向けに直しただけなので、名乗ろうかどうしようか……と
だから、続きもないのですよ。ごめんね。

>t26gFAxTさん
ウィーリングのいちゃいちゃっぷりにその日一日にやにやが収まりませんでした。というか今も
ウィルマSSまだまだ少ないですけど、これから増えるといいなと思ってます
41名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 01:23:47 ID:ykt8SdLL
レス数より容量が上をいっている(゜- ゜;)
42名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 01:39:49 ID:gl5vF5a2
ねこぺんさん、埋めのSSはあれで終わりなんでしょうか。
なんという寸止め…。焦らしプレイか…。パネェぜ!
43名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 01:40:09 ID:fBR3AYNB
>>40
是非、是非書いてください!続きを!
書きたい時でいいので、是非!
44名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 02:55:54 ID:WVNHJJ6w
>>1 乙です。
しかし、1スレ消化にわずか5日しかかからないとは。
本当におそろしいww

>>14
甘えん坊トゥルーデとはなんというものを……。
GJ!

>>32
最高のハイデマリーSSありがとうございます。
こんなの書かれたら下手なハイディ ネタなんて書けないじゃないですかw

>>39
GJ、最高以上の言葉を差しあげたい気分です。
ミンナ、ゆりたまごをモットホメロー
って、エイラがいってた。

>>40
ナイス、エイラーニャ。  ドキドキしながら読ませていただきました。
いつでもいいので、続きを是非!
45前スレ589:2009/02/05(木) 07:16:07 ID:zMIet66V
ここほど創作意欲を刺激されるスレは初めてだよ。みんなほんとGJ!
5日でスレ消費wこの勢いがもっと続くことを祈ってる
よし、じゃあ改めて
百合スレ、Part50くらいは行こうぜ
46名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 07:42:22 ID:31ROPr80
501までがんばろうぜ
47名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 07:49:40 ID:omrpktqy
二期やグッズCDOVAその他商品展開が行けば501スレも夢では無い・・・という訳にはいかん
逆にこれから公式がやらかして住人の意欲が萎える可能性もある
これまでにもその端は所々に見えているし
48名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 10:04:01 ID:31ROPr80
現実に逃げるなっ
49名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 10:15:03 ID:vSe+Gs4l
なんか>>48が凄い良い事を言った気がする
50名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 10:33:13 ID:epLZZVT8
if読んで不覚にも泣いてしまった俺
51名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 11:49:51 ID:fBR3AYNB
>>48-49
なんだろう。胸がジーンとなった
52名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 13:45:12 ID:nGC3BR0H
俺はずっと公式アンソロに期待してるんだが中々でねえなぁ
53名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 13:45:43 ID:4tGlIhiP
こないだ百合姫でやってた『初恋姉妹』のドラマCDを聞いた。

もっさんが乙女になるとあーいう感じになるのか。
54名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 13:47:45 ID:hXXgtFv/
アンソロが出るとしたら藤枝が執筆陣に入ってそうな気が
あと森永みるくとすどおかおるかな
55名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 13:50:50 ID:WZTLKJFf
昨晩から、携帯で見ようとすると調子がおかしい…
アンカに飛ぼうとすると「スレッドが見つかりません」って出ちゃうんだけど、同じ症状の人いる?
56名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 14:25:48 ID:yBbNwvvH
携帯だけど普通に見れるよ
57名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 16:29:50 ID:/s/dQeE8
自分も出掛け先で見ようとすると、板ないです、って出たなぁ。
58名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 17:26:46 ID:kfoSuoVk
>>57
携帯でtop検索からいくとそうなるよね
普通に板からいけば見れるよ



あー芳ーニャはやらないかなぁ
59名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 17:40:51 ID:1G3I6/Sc
>>58
ならば流行らせる努力をすべきではないかね。
エイラーニャ派でも思わず悶えてしまうようなそんな妄想を、さぁ早く投下する作業に戻るんだ
60名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 17:43:17 ID:gl5vF5a2
断然エイラーニャ派の俺を悶えさせてみろ!!!
61名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 17:57:27 ID:31ROPr80
芳ーヌやペイラみたいな喧嘩するほどうんたらなのが見たい
62名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 18:12:29 ID:KMpwIv4o
>>58
ありがとう!見れた!
63名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 18:17:17 ID:skZ3Azgy
ミイラが見たい
64名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 18:30:51 ID:31ROPr80
エジpいやなんでもない
65名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 19:10:02 ID:yOfIX2ze
>>64
とったな俺の台詞を!
だが>>48の発言に免じて許す
66名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 20:11:24 ID:lFajL4EF
>>32
GJ! ニヤニヤしながら拝見しました。いいですね〜。こいつは(ry

>>39 ゆりたまご様
超大作GJ! ボリューム、質共に半端無いです。また仕掛けがうまい!

>>40 ねこぺん様
GJ&乙! 続きが気になるんですけど……w


改めてこんばんは。mxTTnzhmでございます。
>>17氏ご名答。かの名曲でございます。

と言う訳で、>>11-13「rhythm red」の続編をいきます。
タイトルはもうお察しの通りと言う事で。
今回はリーネ×芳佳です。どうぞ。
67beat black 01/03:2009/02/05(木) 20:12:59 ID:lFajL4EF
リーネと芳佳は、昼食の後片付けをしていた。
先程トゥルーデの為に作ったシチューとふかしイモを少し取り置きし、脇に簡単なメモを置いた。
「これでよし、と。バルクホルンさん、いつでも大丈夫だね」
頷く芳佳。
「バルクホルンさん、元気になると良いね」
リーネが頷く。
「そうだね。あの人やっぱり凄いよ。バルクホルンさん一人抜けただけで、ネウロイとの戦いが急に辛く感じるよ」
「本当だね」
くすっと笑い、少し寂しい顔をするリーネ。
「リーネちゃん、バルクホルンさんの事、心配?」
「ううん。それもあるんだけど……私、皆の役に立ててるのかなって」
「リーネちゃん、今まで凄い撃墜スコア伸ばして来たじゃない。大丈夫だよ」
「うん。でもね……」
「私が保証するよ。リーネちゃんは大丈夫」
「ありがとう、芳佳ちゃん」
微笑むリーネ。ふと、芳佳の顔をじーっと見る。
「? どうかした、リーネちゃん?」
「何か顔が赤いよ? 熱無い?」
「え? そうかな?」
額に手をやる。芳佳は気付かなかったが、かなりの高熱だ。
「芳佳ちゃん大変! 熱有るよ!」
「え? 私、全然そんな感じしないよ。むしろ暑いくらい」
「それ、熱がある証拠だってば!」
「でも全然平気。ほら、よろけたり……あれ?」
「もう、芳佳ちゃんたら! しっかりして!」
リーネは急速に症状が悪化しつつある芳佳を背負うと、医務室目掛けて走った。

診察の結果「風邪」と診断された芳佳は、医務室から自室に移され、投薬と休養の処置を取る事が決まった。
医務室の担当医から報告を受けた後、執務室でミーナと美緒が腕組みして考え込んだ。
「バルクホルンに続いて宮藤もか。また隊に風邪が蔓延するのか?」
「そうでなければ良いのだけど。ともかく、ネウロイとの戦闘や哨戒シフトを変更する必要があるわね」
「ああ、緊急時だからな。仕方ない……しかし宮藤、たるんどるな」
「たるんでるって?」
「気合が足りないから、風邪などひくんだ」
「あら、美緒らしくもないわね」
「何?」
「私達だって、前に酷い風邪ひいたじゃない。あれも、私達たるんでた証拠?」
「いや、それは……」
答えに困る美緒を見てくすっと小さく笑うと、ミーナは即席でシフト変更の予定表を作り上げた。
「これを、夕食後のミーティングで皆に伝えないとね。そうそう、美緒」
「どうした、ミーナ?」
「貴方も風邪、ひいちゃだめよ?」
人差し指で、美緒の唇を軽く触れるミーナ。美緒の直前にはミーナ自身の唇の上をなぞっていた人差し指。
何故だか、どきっとしてしまう美緒だった。
68beat black 02/03:2009/02/05(木) 20:14:16 ID:lFajL4EF
解熱剤が効いてきたのか、芳佳はベッドの上で朦朧としながら天井を見つめていた。
「うう……急に身体がだるくなってきたよぉ」
「頑張って、芳佳ちゃん」
夕食とミーティングを終えたリーネが横について、手を握っている。
「ありがと、リーネちゃん。でも、あんまり私に近付いちゃ、ダメ」
「どうして?」
「もしうつったりしたら……」
「芳佳ちゃん、前に話してくれたよね? 扶桑の言い伝えで『風邪をうつすとうつした人は早く治る』って」
「確かに言ったけど……リーネちゃんには、うつしたくないよ」
「でも、私は芳佳ちゃんに早く治って欲しいの」
芳佳の手をひくと、自分の胸に当てるリーネ。
あたたかく、やわらかい。そしておっきい。
ほわわ、と言い知れぬ幸福感……単に熱で頭がぼおっとしているだけかも知れなかったが……に酔いしれる芳佳。
そんな芳佳を見てるうちに、リーネは、無意識のうちに芳佳のベッドに潜り込んでいた。
芳佳を抱きしめる。
いつもよりも温かい。熱のせい。
芳佳はリーネが横に来た事に一瞬気付いて、名を呼んだ。
「大丈夫、私はここにいるよ」
リーネの言葉に、芳佳が顔を向けた。反射的に、リーネは唇を重ねていた。いつもの癖だ。
ぼおっとした芳佳も、反射的にリーネの胸を触り、弾力を確かめる。いつもより力無いが、反復的に、……藁にでもすがるかの様に、
ひたすらにリーネを求めてきた。
リーネは耐えきれず、遂に、ふらつく芳佳を襲った。

翌朝。
ひとり台所で食事の準備をするリーネ。芳佳が来る前は一人でやる事が多かったので、慣れている。
でも今は、芳佳がいないと寂しい。けれど彼女は今ベッドの上で風邪と激しい戦いの最中。
リーネは今私に出来る事……食事当番……を頑張る、と心に決めた。
突然背後から手が伸び、胸をぐにゅりと揉まれる。ひゃっと悲鳴を上げるリーネ。
「ウニャー リーネ、胸おっきくなった?」
思わぬ反応。“人間バスト測定器”ともいうべきルッキーニの言葉だ。
「え……そんな事は」
「ウジャー 言わなくても分かるよ。芳佳にもまれてるんだ」
「えっ!?」
顔を真っ赤にするリーネを見てにやけるルッキーニ。
「リーネ正直〜」
「わ、私、そんなに大きくありません!」
「ホホウ? ドレドレ」
「きゃあっ!」
今度はエイラの襲来だ。嫌がるリーネを背後からふにふにと揉んだあと、エイラは自分の両手を見て愕然とした。
「ど、どうか、しましたか?」
逆に不安になってエイラに聞いてしまうリーネ。
「確かに、前よりも確実に大きくなってルゾ。私には分かル」
「えええ」
「リーネ、何食べたらそんなに大きくなるんダ?」
「食事はみんなと一緒じゃないですか!」
「そういやそうダナ……そうか、ルッキーニの言う通りって訳カ」
ニヤニヤ顔のエイラ。
「エイラもやっぱりそう思う?」
エイラと視線を合わせて口の端を歪めるルッキーニ。
「他に理由ないダロ」
「せ、成長期ですっ!」
「まあ、いいけどサ。宮藤の顔が思い浮かぶヨ」
「芳佳ちゃんは関係……」
「あれぇ? 芳佳がやっぱり?」
「まあ、宮藤はなあ……仕方ないと言えば仕方ないサ」
揃って溜め息をつくエイラとルッキーニに、リーネは苛立った。
「芳佳ちゃんの変な想像しないで!」
69beat black 03/03:2009/02/05(木) 20:16:12 ID:lFajL4EF
朝食後。
すぐに芳佳の部屋に飛んで行き、かいがいしく世話を焼くリーネの様子を見て、シャーリーが声を掛けた。
「なあ、リーネ」
「はい? どうかしました?」
「いや。最近、宮藤の事甘やかし過ぎてないかと思ってさ」
「そうですか? 今は芳佳ちゃん風邪だし、私はただ……」
少し困惑の表情を浮かべたリーネを見て、ペリーヌが乱入してきた。いつものきつい口調でリーネをなじる。
「リーネさん? 自覚が無いのが一番困ります。新人同士傷を舐め合うのは結構ですけど、余りに……その……、
べたべたされると、周りに居る人の身にもなって下さいまし」
「友人として、仲間として、支えてあげるのもダメと言う事ですか」
強い調子でリーネに反論され、カっとなるペリーヌをシャーリーが抑えた。
「まあまあ。ともかく、あんまり宮藤にかまい過ぎるのも控えろよ。あんまり過保護にすると、
宮藤一人で何も出来なくなっちゃうぞ」
リーネはそれを聞くと、うつむき、ふっと息を付いた。
床に視線を落とし、小さく呟いた。
「何も出来なくなったら……私が面倒を見てあげます。全部」
「え」
「ですから! それでは独り立ち出来なくなると……」
「出来なければ、私と一緒に居れば良いんです。私と一緒に居るしかなくなるでしょ? そう、ずっと一緒に」
そう言い切ると、ペリーヌとシャーリーを見た。
リーネの瞳はまっすぐだったが、奥には言い様の無い闇にも似た深淵が広がり……ペリーヌとシャーリーは思わず息を呑んだ。
「そう、ずっと一緒に。私達、仲間で、友達、ですから。いつまでも一緒」
リーネは嬉しそうに言うと、ふふっと笑い、その場を後にした。
「シャーリー大尉……」
絶句しかけたペリーヌがシャーリーに問いかける。
「ま、まあ……ありゃ冗談だよ、な。ほら、ブリタニアのジョークってやつだろ。多分。多分な」
あははと誤魔化し笑いするシャーリーの頬を一筋、汗が伝った。

ベッドで横になる芳佳の頬をそっと撫でるリーネ。
「私だけの、芳佳ちゃん」
芳佳はぐったりとベッドに沈んでいた。風邪のせいではなく、単純にリーネから執拗な“アタック”を繰り返し受けて
力尽きただけなのだが。
そんな、気を失ったに等しい芳佳の顔も、愛しい。
完全に力の抜けている芳佳の手を取ると、リーネは自分の胸に重ねた。
「芳佳ちゃん、聞こえる? 私の胸の鼓動。……感じる? 私の気持ち」
芳佳は、ううん、と唸った。意識が混濁している様だ。少し手に神経が通ったのか、ぴくり、と動く。
「もう、芳佳ちゃんたら」
リーネは今日何度目になるか忘れた接吻を、芳佳にした。
芳佳も無意識のうちに、リーネを求め、身体が動いた。リーネはそれを見逃さず、ふうと深く息をつくと、芳佳に覆いかぶさった。

end

----

以上です。
まあ、タイトルの「Black」にかけてみただけなんですけどね。
ちょっと、黒過ぎましたかね。正直匙加減が分かりません(><;
……いや、リーネはいい子ですよ。ホント。多分。

ではまた〜。
70名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 20:39:10 ID:kbOT89kU
かなめも思い出した。芳佳逃げ…!(なくてもいいのだろうかこの場合)
71名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 20:44:27 ID:7CNvRXQ0
>>69
これくらいならまだまだ余裕だぜ!
72無題 1/2 @ 6Qn3fxtl:2009/02/05(木) 20:46:00 ID:WVNHJJ6w
>ミイラが見たい
こうですか、わかりません ><

#########################
「エイラさん、お願い。これは貴方にしか頼めない、重要な任務なの」
「ミーナ隊長……」

--------------------

「今度の親睦会で仮装をしてほしいの」
「それはペリーヌの仕事なんじゃナイのカ?」
わざわざ執務室に呼び出してまで言うことカヨ、ソレ〜。
それとも断われないようにわざと大げさにしてんノカ?
「今回、ペリーヌさんはシフトの関係で基地を離れられないの。
  だから、誰か他の人がやってくれないと……」
「それが何で私なんダヨ!?」
「エイラさん、前回の親睦会でスキーを持っていったわよね?」
確かに持っていったゾ。わざわざ、ウェアまで着ていったんダカラナ。
「そのときのエイラさんの格好と動きが面白かったって、
  村で評判になってるらしいの。だから……」
うっ……。ルッキーニをからかおうと思ってやったことが裏目に出たナ……。
占いじゃ、大成功って出てたはずなんだけド。
「ミーナ隊長、それは命令ナノカ?」
「大切な仲間にこんな命令はしたくないわ」
「それジャ、断わ……」
「でも、やってくれない人にはトイレ掃除1週間をお願いするかもしれないわね」
「ハイハイハイハイ!! 私がヤル! やりたいなぁ!!」
ナンダヨ、それ。もう、今回ダケダカンナ!

「ところで、今回もあの着ぐるみで行くノカ?」
「いいえ。今回は別なものにしようと思っているの。
  それを何にするか未だ迷っていて……」
頼むから、普通のにしてくれヨナ。変なのはやめてくれヨナ。
外に出られなくなるカラナ。
73無題 2/2 @6Qn3fxtl:2009/02/05(木) 20:47:53 ID:WVNHJJ6w

「中佐、すまん」
突然、執務室のドアが開いたと思ったら、シャーリーとルッキーニか。
シャーリーは手にナンカ白い布みたいなのを持ってるナ。
でも、どっかに落としたみたいで泥だらけになってるケド……。
「ルッキーニが包帯の束を泥水ん中に落としちゃったんだ。
  こいつも反省してるみたいだし、私の顔に免じて許してやってくれないかな」
「ウジュ〜。ミーナ中佐、ごめんなさい〜」
あ〜、ルッキーニがまたやらかしたのカ。本当、こいつも少しは反省したほうがイイゾ。
あれ、ミーナ隊長、その嬉しそうな顔はナンダ……?
「やってしまったことは仕方ないわ。ルッキーニさん、以後よく注意するように」
「ところで、これどうする?もう使えないだろ?」
「いいえ、シャーリーさん。今ならいい使い道があるの」
ね、エイラさんって、隊長、それはどういう意味……。

--------------------
そして、親睦会当日。

「よう、エイラなかなか似合ってんじゃん」
「ニシシ〜。エイラ、面白いよ〜」
オ前ラ!! 他人事だと思って楽しんでんじゃネーヨ!!
私は会が終わるまでズットこのままナンダゾ!!
「エイラ。そういうエイラもすごくかわいいよ」
ナンダヨ、サーニャまで……。

「ミイラ男の私をソンナ目デミンナーーーー!!!!!」

fin.
######################################
ついカッとなってやった。 苦情は一切、受け付けないカラナ!!
74名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 20:59:13 ID:4IzIbJg3
>>73
本当にミイラになってるよw
GJ!
75名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 21:13:38 ID:RUbyKyCT
第14手 おんぶ えいらにゃと回想部分はえるまいら。気付いたら埋まってるとこだった。

疲れてしまったのだろうか、木陰でお姫さまがすやすやと眠りこむ。

毎夜毎夜、孤独で危険な哨戒を担当してくれるのだから、本当はそっとしておいてあげたいけれど、このままでは風邪をひいてしまう。
仕方なしに私は、彼女の身体をそっと抱き起こして、起こさないように背負った。
すると、ふわりと、あまりにも軽い彼女の体重が背中越しに感じられて、少しの切なさを覚え、頬を雫が伝った。。

本当なら彼女に戦争など似合わないのだ。
できることなら幸せに、幸せに、ピアノを奏でる人生をおくってほしかった。
私たちの出会いが、例え、戦争がなければ生まれなかったものであったとしても、この気持ちは変わりはしない。
この娘には、こんな優しい娘には、辛い未来など用意してはならないのだ。
暖かい優しさに囲まれて、理不尽な悲しみなど知らずに生きてほしいのだ。

あぁそうか。あの時、あの人も同じ気持ちであったのだろうか…。
まぁ、私は決していい娘だという訳ではなかったが、優しいあの人のことだからそう思って涙したのかもしれない。

ーーーーーーーー

微かな震えが伝わってきて、私は重い瞼を持ち上げた。
あぁ私は眠ってしまったのか、と胸の中で呟くと、彼女に分からないくらい少しだけ、肩にまわした腕に力をこめる。
視界はまだぼやけていて、寝起き特有の気怠さが身体を襲っていたが、耳に入る悲しい音が私の意識を覚醒させた。
背負われている私からは見えはしないけれども、
確かにその身体は歩行によるものとは別種の震えを帯びていて、アナタが涙しているのだな、と得心に至る。
ごめんなさい、ごめんなさい、とアナタは決して悪いことなどできる人ではないのに、謝る声と嗚咽だけが周囲には響いていた。
どうして泣いているのですか、どうしてアナタが謝るのですか、
と問いたかったけれども、声をだすことができなくて、その代わりにギュッと腕に力をこめた。
彼女もそれに気付いたようで、鼻をずずっとすすると、みっともない姿を見せてしまいましたね、と気恥ずかしそうに微笑んだ。
アナタがそんな顔をするのだもの、私がこれ以上踏み込むことができるはずがなくて、
せめて思いを伝えたいと、振り返った彼女の頬をペロリと舐めて涙を拭い去った。
こんなに優しくて暖かい人だもの、泣かせていいはずがないのだ。
だから私は、アナタが悲しまないように頑張るよ、と心に誓った。

ーーーーーーーー

あぁ、今思えばなんと理解に乏しかったことか…。
あの人もきっと、今の私と同じで、小さな娘を戦争に駆り出さなくてはならない現実と、
それを止めることのできない自らを責めて泣いていたのだろう。
背中越しに感じるその身体が、あまりにも儚くて、そしてあまりにも大切であったから、己のちっぽけさが耐えられなかったのだ。

だからせめて、私はすごくカッコイい訳ではないけれど、
キミを守るために頑張るよ、と胸に誓うと、私の背中で眠る大切な彼女を支える腕の力を少しだけ強める。

身勝手な誓いだけれども決して私は破りはしない。
だからいつか、キミがいつも笑顔でいられる世界のくる日を願う。

もうすぐキミの部屋につくよ。
私はさっきよりもギュッと力のこもったキミの腕を感じながら残りの歩みを進めた。

Fin.
76名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 21:48:44 ID:RUbyKyCT
よし、もう1本書き終ったというか見直しおわった〜。第46手 くすぐる でニパエイラ。


スオムスの冬は長い。
そして、それは同時に退屈な時期でもある。
冬の訪れからさほど時を経ないうちか、もしくは春の息吹を感じ始めるころならばともかくとして、
冬も深まると吹雪くのが当然であるから部屋にこもりがちとなるからだ。
その暇が危険の温床となっているのが、私の最近の悩みの種である。

そう、アイツは退屈という空間をヒドく嫌うためか、この時期になると私へのイタズラに花を咲かせるのだ。
この前など、私を水浸しにしようと考えたのか、扉を開くと頭上からバケツの中身が降ってきたのだ。
あぁ、しかもそれは放置されたためであろうか既に氷と化し、イタズラと言うよりはもはや対人兵器と言ってもはばかられないモノであった。
あのときばかりは私も昏倒したし、目覚めると日付が2つ変わっていたときは驚愕したさ。
まぁ、イッルもすっかりと絞られていたし、
両の瞳に大粒の涙を溜めて反省してるようだったので、もう危険なイタズラはしないという約束をして許してやった。

だがしかし、私はなぜイタズラ自体を止めなかったのか…それ以来イッルときたらイタズラがなんだかやらしいのだ。
いや、確かに危険ではないし、正直に言うと決して嫌には思っていないのだが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしくて、困ってしまう。

今だって…

「ニパ〜?」

耳元でそう囁いて、湯湯婆かなにかと考えているのか、私の身体で暖をとっているのだ。
耳に吐息がかかり、びくりと身体の芯を震わせてしまう。

「な、なんで私のベッドに潜り込むんだ!!」

そう文句を絞り出すが、あからさまに声は震えを帯びていて、迫力といったものは存在していなかった。
どうも心から怒ることのできないらしい、自らが恥ずかしい。

「嫌カ?」

寂しそうなお前の声が鼓膜を揺らすだけで、私ときたらもう強くは言えないのだ。
そんなことだから私は、恥ずかしいけれども、決して嫌には思ってないのだと強く思い知らされてしまって、頬を朱に染めた。

「嫌じゃないけど…。」

どうしてもイッルの目で見つめられると嘘などつけなくて、全て暴かれてしまう。
それでも恥ずかしくないはずがなくて、文句を言う代わりに太ももをえいやっとつねってやった。

「痛いナ〜、もう。ごめんごめん。」

イッルはそう言葉をこぼすけれど、反省などしているはずがなくて、仕返しのつもりか私の首筋へと舌を這わせた。

「ひっ!!」

間の抜けた声をあげてしまうと同時に顔が熱くなる。
気持ち悪いのか、気持ち良いのかさえも私には分からなくて、ただ身体を震わせていた。

「ニパ、力抜いテ。」

その言葉のままに力を抜くと、イッルの手が服をめくりあげて、私の身体を…
77名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 21:49:44 ID:RUbyKyCT
くすぐり始めた。



「ひゃっ!!やっ、やめ!!あはははは!!!!」

もうそれは、くすぐったいやら、なにやらどうしても恥ずかしい気持ちやら入り混じって、頭を溶かす。
脇腹に背中、太ももにお尻、脇にオマケとばかりに胸まで手を這わせ、くすぐったいのか…なのか私には分かりはしない。

「バカ!ダメっ、ふぁ。やめろ〜!!」

叫ぶけれども、イッルときたらニヤニヤと笑みを湛えるだけで、その手を止めやしない。
そんな恥ずかしいとこを触るなバカ!!イッルのスケベ、変態!!
言いたいことはたくさん、それこそ山のようにあったけれども、私は何一つ口からだせなかった。
私ときたら顔どころか、身体中真っ赤になっているのではないかというぐらいに熱くなっていて、もうなされるがままだったのだ。

「ん、ニパどうした、顔真っ赤ダゾ。なんかあったカ?」

すっかりとくすぐることを楽しんだのか。イッルは、グッタリとした私の耳元で囁いた。
あぁ、お前ときたら意地悪で意地悪でヒドいヤツだ。
こんな風にしたのはお前だというのに、全部分かっているくせに。
どうしてか腹が立ったので、ギュッとイッルの背を抱きしめると爪を立てた。

「ばか!ばかっ!イッルのばかぁ!!」

たまりにたまった不平を詰め込んでそうこぼすと、イッルの手が私の髪を撫でる。
ふん、本当にイッルはバカなのだから。
言葉にはださないけれど、こめられた気持ちを受け取る。
たまには、たまには声にだしてくれないと伝わりやしないのだ。
それでも、髪と頬を撫でるイッルが一所懸命に何かを伝えようとしているのが分かったから、許してやろう。
あぁ、もう本当に、くすぐられたのは身体なのか心なのか分からないではないか、とくだらないことを思いながらアイツへと身体を寄せた。

Fin.
78名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 21:58:24 ID:RUbyKyCT

どうも皆様GJです。埋めニヤニヤ埋めニヤニヤ。いつかやってみたいです埋めで耽美なの。
前スレ>>521に声を大にして叫びたい!!ニパもサーニャも好きだと…エルマさんもまとめてエイラさんがいただきますすればいいのだ!!
自分の中ではエイラさんはやれば出来る子だからきっとみんな面倒見られるさ!!
う〜ん、毎回一応目標とか書きたいことを決めてるんだけどなんだかできてるか不安になるな〜。

皆様早くてついていくのが大変だなぁと思っているRU1ZZ/dhでした。
79名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 22:04:54 ID:MN1v8AUF
>>75
泣いた
ほんとに感動した
80名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 22:19:37 ID:p8cKlruy
ラッシュすぎてとてもGJが追いつかないw流れに乗って自分もいきます。
OsqVefuYです。48手の第44手「いっしょにお風呂」いきます。
ペリ支援込めてサーニャ×ペリーヌです。
長いです。6レスの予定。


 正直言って、彼女のことが苦手だった。
 もっとも、わたくしには得意とする人間の方がずっと少ないのだけれど。まあそれは別にどうだっていい。
 なぜだかわたくしは、彼女のことが苦手だった。
 それがなぜかはよくわからないけれど。

 サーニャさんはわたくしに危害を加えないだけマシという、その程度の印象しかない。
 ただ無害という、それだけの子。
 いるのかいないのかわからない子。
 夜の闇にそのまま溶けてしまいそうな、なんだかそういう子。
 別に、特に気にかけるなどということはない。馴れ合いたいなんて思っているわけではない。
 わたくしにとってなんの関係もない、どうだっていい子。
 そのはずなのに、それでも彼女のことが気になった。
 気になって、それでやっぱり苦手だった。
 わたくしの心を、彼女はなぜだか落ち着かなくさせてしまう。
 いつもなにかに怯えでもしているようで、おどおどとして、はっきりせず、
 視線をうつむけていることが多くて、見ているとイライラしてしまう。
 わたくしにとってサーニャさんはそういう子だった。

 たまらず一度、言ってやったことがある。
 震えるような声で話しかけてきて、もごもごと口のなかでなにかを言う彼女に向けて、
 そんなんじゃなにを言ってるのかわからないわ、と。
 彼女はまるで、わたくしにおびえでもしているようだったから。
 なにをそんなにびくびくする必要があるの。それじゃあ、こっちがなにか悪いみたいじゃないの。
 だからついイラだって、さらにこうも言ってしまった。
 あなた、まるで幽霊みたいね、と。
 その言葉は自分でもぞっとするような冷たい響きをして、
 けれど、もう口に出してしまったあとではどうしようもなかった。
 それはけして口にしてはいけない言葉だったのに。
 サーニャさんはごめんなさいとだけ力なく言って、顔をうつむけてしまう。
 泣き出すんじゃないかと心配になった。
 そんなことはなかったけれど、サーニャさんはぎゅっと口元を結んで、それ以上なにも言うことはなかった。
 わたくしからもなにも言わなかった。いや、言うことができなかった。
 押し潰されてしまいそうな、静かな時間だった。まるで世界から音が消えてしまったようで。
 いたたまれない気持ちになって、わたくしは逃げるようにその場を立ち去った。

 サーニャさんとはそれきりだった。
 ろくに会話もなく、わたくしが皮肉を口にするくらい。彼女からはなにも言い返してはこない。
 わたくしは彼女にすっかり嫌われてしまっていた。
 まあ、どうだっていいこと。わたくしにとって些末な問題だ。
 別にわたくしは彼女に好かれたいとか、そんな気持ちがあるわけでないし。
 エイラさんはなぜだか彼女にひどくご執心で、そのことがあったあとに、
 わたくしは手痛いいたずらをされることになるのだけれど。

 そんな、わたくしにとっては腫れ物のような彼女から話しかけてきたのだから、
 いったいどういう風のふきまわしだろうと、わたくしは驚きを隠せなかった。
 そこは脱衣場だった。
 ぐっしょりと寝汗をかいたため、日課である朝の哨戒任務をそこそこに切り上げ、
 わたくしは風呂場へとおもむくことにしたのだ。
 するとそこには先客がいた。
 サーニャさんだ。他には誰もいなかった。
81名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 22:24:34 ID:p8cKlruy
「……お、おはよう」
 とサーニャさんはわたくしに言った。精一杯声を絞り出すといった感じで、どこかぎこちない。
 彼女は今、バスタオルを巻いただけの格好をしている。
「あら、おはよう」
 一応、挨拶だけ返してわたくしは彼女の前を通りすぎる。
 奥の脱衣棚で立ち止まり、服を脱ごうと手をかけた。
 彼女はまだなにか言いたげで、でもその場に立ちつくしたままだ。
 たしか早朝まで夜間哨戒があったはず。いつもなら部屋で寝ている時間じゃなかったかしら。
 なのに、どうしてこんなところに? ちゃんと寝たのだろうか。気になりはしたけれど、訊きはしなかった。
 こんなところにいるからには、お風呂に入るのだろう。湯あがりというわけではないようだから。
 ――まあ、別にいい。

「あの…………」
 と、ともすればそのまま耳を通り抜けて聞き逃してしまいそうな、か細い声。
 わたくしにだろうか。ここには彼女の他にはわたくししかいないのだから、わたくしになのだろう。
 バスタオルだけ巻き終えて、わたくしは声の方に顔を向けた。
「なにか?」
 そう訊き返すわたくしの声がつい尖ってしまった。うっかりしていた。
 サーニャさんが臆してしまうのが空気の変化で伝わる。
 しまったと思った。
 でも別にこれは、わたくしが悪いわけではないはず。
「どうかしたの?」
 もう一度、今度はなるべくやわらかく訊ねかけた。
「眼鏡……」
 眼鏡? 眼鏡がどうしたというのだろう。
 服を脱ぐのに今はいったん外しているけれど。
「眼鏡をしたままお風呂に入るんですか?」
「そうだけど? それがなにか?」
 あいにく、わたくしは眼鏡なしではほとんどなにも見えない。眠るとき以外は常につけるようにしている。
 わたくしは置いていた眼鏡に手を伸ばそうとする。
「転びそうになったって聞いて。湯気で曇ってやっぱり見えないんじゃないかって……」
 ああ、あの時のこと――
 わたくしはそれを思い出して、それだけでなんだか顔に血がのぼっていく。
 あ、いや、今はそのことはどうだっていい。
 たしかに困りもすることはあるけど、別にいつものことで慣れている。
 わたくしのことを気づかってくれて、それはけして悪い気はしない。
 でもそんなこと、わざわざこの子が気にかけることではない。
 別に、あなたには関係が――そう言おうとして、でもその言葉は遮られた。
 ぎゅうと、サーニャさんがわたくしの手を握ってきたのだ。
 そして彼女はこう口にした。

「だから、わたしがいっしょに入る」

 なにを言い出すのだろう、この子は?
 つまりそれは、彼女がわたくしの目にでもなるということだろうか?
 わたくしは思わずその手を振りほどいてしまいそうになって、でもなぜだかそれはできなかった。
 わたくしはただ戸惑って、なにもできず、なにも言えなかった。
 彼女にはすっかり嫌われたと思っていただけに(どうでもいいことだけれど)、
 その申し出の意図がわたくしには汲み取れなかった。
「いきましょう」
 とサーニャさんは短く言って、わたくしの手を引いた。
 拒否しなかったから了解と受け取られてしまったのだろうか。
 不覚にも眼鏡を外したままだ。
 そのことも言い出せず、わたくしも彼女につられて歩き出してしまう。拒むこともできたのに。
 こんなことを言うような子だったろうか。わたくしはいぶかしげる。
 なにかたくらんでいるのかしら?
 いくら思案をめぐらせても、一向に答えはでない――もういい。
 別にこれっぽっちも気にかけてやる必要はない。ただの徒労だ。
 うだうだ考えこむのも面倒くさくなって、もうそこで考えるのはやめにした。
 急かす彼女に手を引かれるまま、わたくしたちは風呂場へと歩いていった。
82名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 22:26:23 ID:p8cKlruy
「段差がある。6段」
 サーニャさんは短く告げた。その指示は的確だった。
 いち、に……と半歩前を行く彼女に手を引かれ、わたくしも降りていく。
 素足に石畳のひんやりと固い感触。
「もうすぐシャワー」
 サーニャさんがそう言ってしばらくして、立ち止まった。
「着いた」
 そう言うものの、ちゃんと着いたのだろうか。わたくしにはぼやけた輪郭しかわからない。
 わたくしの手を引っぱり、そうしてなにか固いものに当たった。
「ここ」
 と彼女は言った。
 手で確かめてみると、どうやらそれは蛇口なようだ。
 ひねればお湯が降ってきた。
 最初は肌に冷たく感じ、それもすぐに慣れた。かいた汗を持っていってしまう。
 サーニャさんはそれを見届けると、隣のシャワーへと移っていった。

「ペリーヌさん、すみません」
 と、しばらくしてから彼女がそう言ってきた。それはなんだか弱々しい声で。
 シャワーの水音はわたくしの方のものしか聞こえない。
「どうかしたの?」
「シャンプーしてください」
「は?」
「自分で頑張ってみたけど、やっぱりダメで……」
「なにを言っているの?」
 訊き返すわたくしは思わず棒読みのような口調になってしまった。
 甘えてでもいるつもりなのだろうか。
 ……わからない。真偽を確かめるすべはない。
 そういえばエイラさんがよく彼女の髪を洗ってあげているのを見たことがある。
 にわかには信じがたいが、本当なのかもしれない。
 わたくしはもう用はすませた。いっそこのまま彼女を放って、わたくしだけあがってしまおうかとも思った。
 けれど、目の見えぬわたくしが、ちゃんと脱衣場までたどり着けるだろうか――それはどうにも心もとない。
 もし転んでしまおうものなら、頭を石畳に打ってしまうなんてことにもなりかねない。
 わたくしは、はあ、と深くため息をついた。
 まったく、手のかかる子なんだから。わたくしの目になるんじゃなかったの。
 頭のなかで悪態をついた。もちろん口にはしなかったけれど。
 壁をつたい、手探りでようやく彼女いるシャワースペースまでたどり着く。
 さらに進む――すると、やわらかいなにかに触れた。
 きゃっ、とふたり分の声。
 わたくしは距離感がつかめず、サーニャさんとぶつかってしまったのだ。
 こけそうになるのを踏みとどまると、わたくしの鼻先がサーニャさんのうなじのあたりにひっつく。
 なんだかシャボンのいい匂いがする。
 一級の陶器のような、白くてきれいな肌。わたくしも思わず息を呑むほど。
 そういう趣味なんかじゃないけれど、なんだかドキドキしてくる。
 しばらくのあいだ、わたくしはそのままでいた。

「ペリーヌさん?」
 そのすっかりその場で固まってしまっていたわたくしは、その言葉で我に帰った。
 あー、もう。こんなところをエイラさんに見られでもしたら、あとでどんないたずらをされるか。
 彼女の髪を洗ってあげながら、そんなことを思った。
 わたくしは手探りでようやく蛇口を探しあてる。
「ほら、いくわよ」
 そう言って、蛇口をひねった。
 シャワーからお湯が降ってくる。やわらかい雨のようだった。
「ありがとう」
 とサーニャさんは言ってくる。
 ……別にそんなこと言われても、嬉しくなんてない。
83名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 22:28:15 ID:p8cKlruy
 わたくしは再びサーニャさんに手を引かれ、歩いた。
 ようやく終わりね、やっとゆっくりできるわ。そう思った。
 彼女に振り回されて、わたくしはすっかり疲れてしまっていた。
 ――けれど、わたくしたちの着いた先は、脱衣場でなく、湯船だった。

「どうかしたんですか?」
 と湯船に浸かったサーニャさんは訊ねてくる。
 わたくしはその場につっ立っていた。
 どうもこの子とは意志の疎通がうまくできない。流されてばっかりだ。
「別に……」
 そう言ってわたくしもサーニャさんから少し離れて湯船に浸かる。
 いつまでもこうしてわけにもいかず、かと言ってひとりで脱衣場まで戻れるはずもない。
 まあ、ゆっくりしよう。
 そうしてあとはのんびりとした時間だった。

 静かだった。息苦しさはなかったけれど、ともに無言だった。
 相手がサーニャさんなのだから当然なのかもしれない。
 そういえば、なぜか彼女はハルトマン中尉と話があうらしい。
 いったいあの人とどんな話をしているのだろう? まったく、よくわからない子だ。
 わたくしとておしゃべりというわけではない。なにか話すこともないし。
 その時間を終わらせたのは、サーニャさんの方だった。

「ずっと言えなかったけど、ありがとう」
 と、気恥ずかしげに彼女は言った。
 わたくしはそちらに顔を向けるも、裸眼なため、彼女がどんな表情をしているのかはわからない。
 ありがとう……?
 わたくしに言っているのよね?
 何に対する感謝かしら?
 ずっと言えなかったらしい彼女の言葉に、わたくしは考えあぐねてしまう。
「お誕生日を祝ってくれたから」
 しばらくして、サーニャさんはそう付け加えた。
 それはつい先日のことだ。
 一日遅れではあったけれど、サーニャさんと宮藤さんの誕生日会を開き、みんなで祝ったのだった。
 ただわたくしはそれに参加しただけで、なにかされはしても、特になにかをしたということはない。
 別にそんなことで、感謝されるいわれはないはずだ。
「とってもうれしかったから……」
 けれど、彼女は言葉を続ける。
 その時間をいとおしく懐かしむよう、彼女は繰り返す。
「とっても、とっても……」

「そう」
 と、つぶやくようにわたくしは言った。
 どういたしまして、なんてことは言えるわけがない。
「ペリーヌさんにはずっと嫌われたと思ってたから」
 サーニャさんはそう言って、
 わたくしはなにも答えなかった。肯定も否定も馬鹿らしい。
 すると――彼女はさらに、こう口にした。

「だってわたし、幽霊みたいだから」
84名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 22:30:23 ID:p8cKlruy
 その言葉に、息が止まる。ぎゅうと胸を締めつけられた。
 忘れていてくれればよかったなんて、そんな考えは都合が良すぎる。
「ペリーヌさんが言った言葉」
 彼女はさらに付け加えてくる。
 それはわたくしの心臓を素手で握られでもしたかのようにしてしまう。
「覚えてないわ」
 と、愛想なく突っ返す。なんとかそれだけ。
 なにを言っているのだろう、わたくしは。言うべきことは、こんな言葉なんかじゃないのに。
 わたくしは目を細め、彼女をうかがった。でも、やはり見えない。

「よかった」
 なにがよいと言うのか、サーニャさんはつぶやくように言った。
 泣きそうだったくせに、とわたくしは思う。こっちは気が気じゃなかったのに。
 じゃあなんで、そんなこと言ってくるの。どうしてよかったなんて言えるの。
「ペリーヌさんが気にしてたらって……」
 心のうちを見透かしでもしてくるように、サーニャさんは言ってくる。
 わたくしはたまらず、彼女から顔をそむけてしまう。
「本当に気にしてないから」
 サーニャさんは自分に言い聞かせでもするよう、言った。
「だって本当のことだから」
 その声はやはりどこか悲しげで、気にしてないなんてそんなふうに、聞こえはしない。

「わたし、ほんとはもっと、みんなと仲良くなりたい……そう思ってるのに、うまくできなくて……」
 声を振り絞るよう、サーニャさんは言った。
 彼女はこんなにおしゃべりだったかしら。なにかたがが外れてしまったのかもしれない。
「ペリーヌさんとも、そう」
 彼女はわたくしに視線を向けてくる。
「別にわたくしは、馴れ合いたいとかそんなこと――」
「そんなことない」
 つい口から出たわたくしの言葉を、やすやすと彼女は遮ってしまう。
 なぜ否定するの。どうして断言できるの。
 サーニャさんは口は止まらない。

「だって、ひとりは寂しい」

 その言葉が、わたくしの胸にズシンと響いてきた。
 ヒトリハサビシイ。
 その言葉がぐるぐるわたくしの胸のなかをうずまいて、ちっとも落ち着かない。
 強引に抑えつけようとしても、それはのたうち、暴れまわる。
「それは、あなたはそうでしょうけど――」
 それを振りはらい殺すよう、わたくしは声を出す。
「ううん、違う」
 けれど、彼女は耳を貸さない。ふるふると首を横に振る。
 そしてとうとう、それをわたくしに向けて言ってしまう。

「ペリーヌさんだって、きっとわたしと変わらない」

 もうそこで、なにも言うことはできなくなった。
 どうしてこんな子に、そんなこと言われなきゃならないの――
 情けなさと、それとはまた別の気持ちが胸のなかから涌き出てきて、わたくしを落ち着かなくさせる。
 けれど、それはけしてイヤなものではなかった。

 なんだか全部わかってしまった。
 なぜ彼女が苦手なのか――
 それは、この子が自分のことが嫌いな子だから。
 なぜ彼女が気になるのか――
 それは、ひとりぼっちの寂しさを、この子だって知っているから。

 そのことに気づくとなんだか急に目頭が熱くなってきて、それをぬぐい去るように、
 わたくしは手のひらで湯をすくって、ばしゃ、と顔にかけた。
85名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 22:32:18 ID:p8cKlruy
「いきますわよ」
 そう言ってわたくしは彼女の前に手のひらを差し出す。
 すっかり長湯になってしまった。これ以上口論を続けていたら、のぼせてしまう。
 なにを言ったって、今の彼女は聞きはしないのだから。
「帰りもつないでくれるんでしょ?」
 その問いかけにサーニャさんは弾んだ声でうんとうなずいて、
 わたくしの差し出した手をそっと握ってくる。
 そうしてふたり湯船からあがり、わたくしと手をつないで、半歩前をサーニャさんは歩く。

 わたくしは考えていた。
 ごめんなさいが素直に言えなくて、でも言ってあげなくちゃいけない。
 なにか別の言葉でいい。わたくしが言わなければいけない。
 思いあがりではない。これはわたくしにしか言えないことだ。
「さっきのこと――」
 いざ口に出すと、それは尖った声になってしまった。
「バカね。幽霊なはずないでしょう」
 言ってあげなきゃわからないのかしら。
「だって――」
 だってもし幽霊なら、触れたりしない。こうしてわたくしの手を引いてくれることはない。
 サーニャさんが幽霊なはずがない。
 つないでくれた手の感触が、そのぬくもりが、そのことをちゃんとわたくしに教えてくれる。
 ちゃんと彼女は生きている。
 今こうやって、彼女はわたくしとたしかにつながっている。

「だって――?」
 なかなか切り出せず、言いよどんでいたわたくしに、サーニャさんは振り返って訊ねかけてくる。
 驚いているような、そんな表情をしている気がする。
 それでさっきまで思ってたことは、どこか遠くに飛んでいった。
 だから、別の言葉になってしまった。
 だって――とわたくしはそう言ってやった。

「だって、そもそも幽霊なんているわけないんだから」



以上。
ペリーヌがツンデレすぎる。
たまには真面目に書くこともあるんです。

あと>>36へ。
管理人様の手をわずらわせるのも悪いなぁと今までしなかったんですが、
さっき保管庫の掲示板に申告しときました。
まあ自分の場合、投下した時点で著作権とかそういうの放棄してるんですけどね。気分的には。
なので改変なり続編のたぐいは全然おkです。むしろ望むところなくらい。
つか数えてみたら10本もあって吹いたw
86名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 22:53:16 ID:CISbj16y
>>85
ふう、いい作品だったぜ……
こういう乙女たちの心の語らい、ふれあい系は好きだ
87名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 23:24:02 ID:KMpwIv4o
>>77
GJ!ニパかわいすぎる!
88名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 23:42:30 ID:gl5vF5a2
>>78
RU1ZZ/dhさんGJ!スオムス組かわいいなぁ、もう!
ちなみに自分は前スレ521なんですが、エイラがニパもサーニャもエルマもまとめていただきます、という豪快な理論にフイタwww
幸せの方程式シリーズ大好きでしたよ!今書いてるエイラーニャSSが終わったら、次はハーレムエイラに挑戦してみたいなぁ。
89名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 23:47:08 ID:W9yQw/rY
>>78
今一番早い人がなにを言うw
今日もGJです。

ニパいいなぁ。書いてみたいけどネタが…orz
エイラさん×3人もいつか書いてみたいなぁ…
90名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 23:47:58 ID:CXRo7Kxi
なんか最近というか年明けて以降・・・・・・・いやなんでも無い
91名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 23:52:07 ID:QowTERI9
>>85
よかったぜ……。こういうペリは大好きだ。
ペリーニャの結び付け方もぐっときた。

>>77
ニパさんたらw イッルさんたらw
ニパもニパと絡むイッルも可愛すぎる
92名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 23:54:47 ID:IrxhCEKF
>>90
年明けから憂慮があるなんて一体何
93名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/05(木) 23:59:46 ID:4NmOBrrC
今日は芳佳ちゃんと一緒に節分を過ごしたの
扶桑ではこの日、豆を撒いたりお寿司を食べたりして、一年無事に過ごせるようにお祈りするんだって
豆まきも終わり、次はいよいよ恵方巻
これを食べている間は一言も口を聞いちゃいけないんだって!結構大きいし、何だか大変そう・・・

2人で同じ方角を向いて、もくもくとお寿司を食べる私と芳佳ちゃん
「・・・・・・ぷはっ!もうダメ!これ以上黙っていられないよ〜」先に口を開いたのは芳佳ちゃん
「芳佳ちゃん、食べ終わるまで喋っちゃいけないんだよ?」
「折角リーネちゃんと一緒に居るのに、ずっと黙ってるなんて私には無理だよ!」
ぷぅ、と頬を膨らませ、不満を顔に出す芳佳ちゃん
「でもそれじゃあ福が逃げちゃうんじゃ・・・」
「いいんだよ、私はリーネちゃんが傍に居てくれれば、それだけでいいんだもん!」
芳佳ちゃん…うん、そうだね…私も、芳佳ちゃんが傍に居てくれるのなら、それ以上望むものなんて、何も・・・

その後は2人でお喋りしながら、楽しいお食事になりました

そしてその夜は、ベッドの上で芳佳ちゃんに私の豆も福は内〜
歳の数だけ、ビショップビショップにされちゃった
94名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 00:04:38 ID:lc7gGmgH
>>93
最後から2行目www
95名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 00:06:54 ID:Zm5CVjIH
>>93これはひどいw
96名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 00:07:47 ID:vqGtoUsF
教えてくれ五飛
改行制限て何行で引っかかる?
97名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 00:08:44 ID:ybljTCJh
>>93
ひどすぎワロタ

>>96
百合板では60行だよ
98名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 00:09:29 ID:ICC3+vyL
>>93
パクりは流石にやめようぜ…
99名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 00:24:00 ID:L+nEGzmI
ダークリーネ素敵だ
クールペリは惚れる
そして、ミイラ
100名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 00:26:35 ID:t6xb2Lqa
ちょっとお聞きしたいんですが、SSのタイトルはあまり被らない方がいいですよね?
101名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 00:59:59 ID:vqGtoUsF
ありがとう九十七飛
102名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 01:51:20 ID:Zm5CVjIH
t26gFAxTです。
なんか、性格上空いた穴は埋めたくなる性質というか、
48手の一覧表見てたら「はよ埋めてええ!」衝動に襲われたのでもうひと投下。
描写能力の低さに定評があるので、そう刺激するもんじゃあないと思いますが、一応、エロありです。
103第9手 乳を揉む:2009/02/06(金) 01:53:05 ID:Zm5CVjIH
 戦争が終わり、いくばくかの季節を重ねた、夏が近いある日の午後。
 戦時に蓄えた二人の俸給で建てた、大き過ぎずかといって小さいともいえない家の一角にある書斎で、名前を呼ばれたウルスラは本棚を整理していた手を止めて、振り返った。
 白藍色の涼しげなシャツ一枚を羽織ったエーリカが、頭の後ろで手を組んで、あと数年で二十を迎えるというのに幼さが抜け切ってくれない頬をかすかに赤らめて微笑み返した。
 ウルスラは反射的に背を向けるような角度を保って、目の端になんとかエーリカをとどめながらつぶやいた。
「今日の課題は終わったの?」
「一応ね」
「一応じゃダメ。父様みたいな医者になるんでしょ?」
「ウーシュは厳しいなぁ……」
「エーリカを医療事故を起こすような医者にしたくないだけ」
「信頼ないなあ……」
 頭をかくエーリカに、ウルスラは少し息を吸い込んで、吐いてからエーリカに向き直った。
「してる」
「え?」
「信頼……してる。けど、やるからには徹底的に。一緒、に……」
 ウルスラはうつむきながら、エーリカに近づくと、手を握り締め、共に書斎を出る。

 そう。
 エーリカはやればできる。
 ただやらない――というかこと勉強に関しては落第さえしなければいいという考えだったのだから伸びなくて当然だ。
 ストライカーを装着して、「黒い悪魔」と呼ばれ恐れられた過去があるように、やる時はやる。

 ウルスラが机にどんと置いた本の束を見て、エーリカはうへえと漏らす。
「そんな顔しないで」
「無茶言わないでよ……。それにほら、そもそもさっき呼んだのはお茶とお菓子でも一緒に……ってさぁ」
 ウルスラは眼鏡の下でじいと、怪訝そうに姉を見つめる。
 エーリカはしばらくの間はごまかすような笑い顔を見せていたが、鉄壁の妹の前に適うはずもなく、頭をかいて、机に向き直った。
 そして分厚い本を一冊とってぱらぱらっとめくったかと思うと、また戻す。
「エーリカ……」怒気を含んだウルスラの声。
「本は午前中にめいっぱい読んだから今日はもうやだ。それに知識ばっか詰め込んでも実践しないと話になんないよ。患者に講釈垂れるだけが医者じゃないんだし」
 ウルスラはエーリカの言葉に珍しく納得させられるが、表情は硬いままだ。
 エーリカはしばしそれを眺めた後、何かを思いついたかのようにぱっと表情を切り替えて、微笑んだかと思うとウルスラの手首を取った。
104第9手 乳を揉む:2009/02/06(金) 01:54:36 ID:Zm5CVjIH
「たとえば、こーやって脈はかるのも重要でしょ?」
 ウルスラは、ぐっと顔を近づけてくるエーリカについ頬を染め、椅子を小さく後ろに引いた。
 が、エーリカはすかさず空いた手でウルスラの首元を探る。
「リンパの腫れ具合を見たりとか……」
 ウルスラがちらりとエーリカを見ると、エーリカはウルスラよりもうんと強い熱い視線で見つめ返してきた。
 ほんの一瞬だけエーリカの視線が首から下に向いて、口元がかすかに緩んだのをすかさず発見したウルスラは、自分の手首から離れたエーリカの手をぐっと握って制した。
「協力してくれないの?」
 どれぐらいぶりだろう。
 意地悪そうな目顔を差し向けるエーリカは。
 ウルスラが思い出す前にエーリカは隙をついて、逃れた手でウルスラのシャツのボタンを下から数個開けると、手を滑り込ませた。
 ずりあがったシャツからウルスラの白いお腹が覗く。
 突然の刺激に椅子から落ちそうになるウルスラを、首元に這わせていた手をスライドさせ、背中に回し受け止める。
「ウーシュ……」
 ウルスラは答えない。答えられない。ただ、熱い息を吐き出す。
 エーリカはその表情を切なそうに、大切に眺め、ほんの一瞬だけ唇を重ねる。
「ごめん、やっぱ勉強は後にしよう。先に……」
 エーリカは魔力を解放し、身体能力を上げると、ひょいとウルスラを抱えあげて片方の腿の上に座らせる。
 ウルスラの胸の上に置いたエーリカの手の平を硬くなった先端が圧し返す。
 エーリカは顔を前に出して、ウルスラの耳たぶを食んだ。
 短く、高いウルスラの声が部屋いっぱいに響く。
 父も母もいない、二人だけの家。
 決して両親を遠ざけたわけではない。
 一緒に暮らしたかったけど、彼らは新たな地での生活をすっかり愛していたのだ。
 エーリカもウルスラもそれを咎める気はまったく起きなかった。
 ただ、連絡はまめにしてね、とだけ――それだけはきっちりと伝えた。
 家族全員で暮らせない寂しさがないといえば嘘になる。
 けれども、それとはまったく別の次元で、ウルスラはエーリカと、エーリカはウルスラと、共に暮らしていくこと――いけることが何よりの幸せだった。
 どんなにつらくたって、寂しくたって、二人一緒であれば――
「エー……リカ」
 息も絶え絶えにしがみついてくるウルスラを、エーリカは抱き寄せ、ウルスラを座らせた腿を、ウルスラを落とさないように、しかし扇情的に動かして彼女から嬌声を引き出す。
 ウルスラの心臓が今にも彼女の薄い胸板を破って出てくるのではというほど、顔を近づけなくてもわかるほどに大きく拍動する。
 エーリカは立ち上がり、汗ばんだウルスラの太ももに手を滑らせ、ズボンの端を掴んで下へとずらし、わずらわしくなったのか、爪を立て、綻びを作ると破る。
 ウルスラは目を見張るが、エーリカは口の端に笑みを浮べた。
「ごめんね。お気に入りだった?」
「……別に」
「そう……」
 エーリカはウルスラにより深く口づけようと眼鏡を外そうとするが、ウルスラは首を振る。
「顔が見えなくなる……」
「こんなに近いのに?」
 エーリカはあっさりとウルスラの拒否を流して眼鏡を外すと机に置いて、軽く歯がぶつかり合うほど、乱暴に唇を重ねた。
 あふれた唾液が口の周りを濡らす。
 エーリカはウルスラを抱き上げると、部屋の隅に添えた二人がけソファに横たわらせ、自分は床に膝をついた。
 そして、ウルスラの片方の太ももにぶら下がって破れたズボンを脚から引き抜いて、靴も取り、ウルスラの後ろ頭に手を回し、起こすとまた口づける。
 空いた手がウルスラの太ももを下へ向かって這って、膝の辺りにたどり着くと、持ち上げる。
 太ももの付け根の部分が大きく晒されて、ウルスラは短く拒否の言葉を漏らす。
「恥ずかしがらなくていいじゃん」
「……悪魔」
「言うねえ……」
105第9手 乳を揉む:2009/02/06(金) 01:54:57 ID:Zm5CVjIH
 エーリカはウルスラの頭をクッションに戻して、膝で移動をすると、持ち上げていたウルスラの白い太ももをゆっくりと執拗に舌でなぞる。
 そのたびに痙攣したように震えるウルスラのお腹を優しくなでる。
 先ほどよりも大きく長いウルスラのあえぎ。
 エーリカはその声に鼓膜を震わせながら、すっかり濡れそぼったウルスラの秘裂とその中心の蕾を舌で唇で鼻先で丹念に愛撫する。
 ウルスラは、必死にクッションとソファを握り締めて、手放せばどこまでも飛んで行きそうな意識をなんとかつなぎとめる。
 シャツがめくりあげられ、汗ばんだ背中が直接ソファに触れて、身をよじるたびに、摩擦音を立て、ウルスラの泣き声に近い悲鳴と重なり合った。
 しかし、その声にはもう拒否は含まれておらず、ただ、エーリカエーリカと繰り返し求めるようにささやいていた。
 すっかり熱中していたエーリカは、シャツのボタンをすべて開け、ズボンを脱ぎ捨てると自分もソファに上がり、今にも流れ出そうになっているウルスラの涙を唇で丁寧に掬った。
 エーリカはウルスラの手を取ると、自分の脚の間の中心へと触れさせる。
 ぬるりとした感触が汗ばんだウルスラの指にまとわりつく。
「ね、ウーシュ。……一緒だよ」
 視界いっぱいに広がるエーリカの顔に、ウルスラはただ小さくうなづいて、エーリカの首の後ろに手を回し最初は恐る恐る最後には乱暴に口づけた。
 エーリカとウルスラは互いの熱い吐息を交わらせたまま、下半身を交差させ、どちらともなく律動し、うねり始める感情と意識に浸りながら、絶頂を迎えるその頃には、確かめ合うように湿った手のひらを重ね合わせ握り締めた。

 ウルスラは汗で額に貼り付いたエーリカの前髪を指先で整える。
「今、何時?」
 エーリカは先ほどまでの表情は嘘のように恐ろしく無邪気な口調でウルスラの頬に頭を押し付ける。
「わからない、けど、眠るまでにまだまだ勉強する時間はある」
「えー……」
「し足りない?」
 あっさりとそれでいて明確に性的な意を込めた言葉を返すウルスラにエーリカはぱっちりと目を開いた。
 ウルスラは今日ようやく優位に立てたことに満足したのか、体を起こし、エーリカに覆いかぶさるようになると両の口の端を引き上げた。
 エーリカは指で頬をかいて、ウルスラの背中に手を回した。
「……じゃ、もっかい」


終わり
106名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 04:58:22 ID:liMLlBid
む、第9手先を越されてしまいましたか。でもそんなの関係ねえ、GJ!
この二人がやってる診療所とか行きたい。けどどっちに診察されるのも何故か怖い。
107名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 05:44:11 ID:pdwskbiz
mxTTnzhm様の芳リネいいですねえ
濃すぎてもういいよといいたくなるくらい濃いリネ→芳の全身全霊ラブっぷりがたまりません
リーネちゃん病人相手に鬼畜ですねww


t26gFAxT様のガチハルトマン姉妹、文句なしに最高過ぎるんですが
乳揉みがメインからずいぶん逸脱しちゃってるんじゃないかってツッコミ入れるのは無粋でしょうかww
108名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 06:36:33 ID:MPBXyLhd
>>85
36ではありませんが、感謝感謝です
つーか、「狐の嫁入り」とかOsqVefuYさんだったんだ、やっぱよいなあ
古参兵の活躍これからも楽しみにしてます!

109名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 08:12:54 ID:4Htb4TC7
芳リネは俺すごいむつかしいと思うんだよね、どっちも可愛いばっかりだからさ
だからこそ百合的にこれ以上ない最高の素材だと思うんだけど、調理がすごい微妙なんだよな

でもmTT氏の芳リネは非の打ち所がない、なぜか……なぜだろうか
口調とかをすごい丁寧に扱ってるからかな、わからないけど、すごく萌えますよ
110名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 08:49:50 ID:EdNrhJoe
乙女ノ巻って百合的にどうなの?
111名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 09:31:06 ID:Hu2toxcm
しばらく出掛けるので空気を読まずに
ひとまとめにして申し訳ないのですが、前スレでは感想ありがとうございました
このssから興味をもって小説購入されたとか言っていただけると作者冥利につきます
本編ではかすりもしないカプを布教する自己満足に近いシロモノですけど
それでは いらん子、ビューリングxウルスラで4レス
112アキストゼネコU−2 @:2009/02/06(金) 09:31:52 ID:Hu2toxcm
 空っぽのガソリンタンクを開けて、ビューリングは運んできた燃料を注ぎ込む。スオムスへきてからバイクに乗る回数はぐんと減り、雪深い時期などは完全にお蔵入りとなっていた。正常に動くか些か不安だったので、格納庫で簡易の点検を行っている。
「古い機種だからな…かかってくれよっ」
 キック一発、スカッとした空振りの感触。何度か繰り返すが結果は同じ。やはり各部の点検をしなくては駄目かと溜め息をつき、スタンドを立ててバイクを降りた。
「…なにか用か?」
 工具箱を開いてかがみ込むビューリングは、誰にともなく問いかける。急かすことなくバイクをいじりながら待っていると、入り口付近の暗がりから軽い足音が近づいてきた。
「どこか行くの?」
「ああ、明後日だがな。久しぶりに動かすからエンジンがかからん」
 斜め後ろに止まった気配に、上げた手をひらひら。なんとなく顔を合わせづらくて、二人ともそのままの体勢で会話を続ける。
「新しいの買えばいいのに」
「悪かったな捻くれてて。私は慣れたものがいいんだ」
 便利で手間のかからない優等生より、気難しくてメンテナンスをかかせないじゃじゃ馬を。変わり者扱いされる所以である。どれだけ部隊を異動になろうと、この思い入れあるバイクだけはずっと所持し続ていた。
 しばし工具を動かす音だけが格納庫に響く。一向に切り出してくる気配がないので、ビューリングは手を止めて肩越しに振り返った。
「それでウルスラ、お前の用件は? バイクメンテを見学しにきたわけじゃないだろ」
 ウルスラを見上げると、珍しく言いあぐねるように視線を彷徨わせている。膝をついた姿勢から無理に上体を捻っているので中々に辛い。意地を張らずに向かい合えば良かったと内心後悔するが、今さらそれも格好悪い気がしてじっと我慢した。
「……部屋を出る。そう言いにきた」
「―――っ?! 自分の部屋に戻るのか?」
 やっと語られたウルスラの本題にビューリングは驚く。「考えておく」という言葉を聞いてからまだ数時間とたっていない。早すぎる展開に呆気にとられたとして、それを誰が責められようか。
「それは」
「っと、また余計な事だったな…了解した。もう部屋は吹き飛ばすなよ」
 何か言いかけたウルスラを、苦笑いしたビューリングが遮る。話はこれで終わりと示すように、体を正面に戻して工具をカチャカチャ。ウルスラは小さく唇を噛んで伸ばしかけた手を下ろし、結局何も言えずに格納庫を後にした。
「元に戻るだけだ…今までがおかしかったんだから」
 日が沈んで冷え冷えとした格納庫に呟きが落ちる。言い聞かせるようなその声は空々しく響き、白い息が消えるみたいに大気へ拡散した。

 久しぶりのバイクいじりに精を出しすぎてしまい、気がつけば時刻はもう深夜。
「……くいっぱぐれたな」
 ビューリングは腹をさする。空腹だと意識すると余計に腹が減るのは何故なのか。これはもう酒でも飲んで寝るしかないなと溜め息をついて部屋に向かう。
 こんなに気温が下がるなら部屋に使い魔を置いてくれば良かったと思って額をぴしゃり。出かけた溜め息を押し込めようとタバコに火を点け、くわえたまま廊下を歩く。自室の前で火を消してしまった己に気づき、なんだかなぁと肩を落とした。
「ん? これは……」
 ドアを開けたビューリングが見つけた物は、サイドボードにぽつんと置かれた紙袋。ウルスラが忘れていったのかと首を傾げ、袋の口を開けて覗き込む。すると中には具を挟んだパンが2つに缶コーヒー。
「案外義理堅い奴だな、あいつ」
 これを作る様子を想像しておかしくなる。おかしくて、おかしくて、自然と顔が綻んだ。きっと小難しい顔をして火薬を調合するみたく具を詰めたに違いない。
 開けた窓から星を眺めて煙を吐き出す。
「…今夜は冷えそうだな」
 苦みばしった響きは口に含んだブラックのためか、呟いた本人にも定かでなかった。
113アキストゼネコU−2 A:2009/02/06(金) 09:32:40 ID:Hu2toxcm
 トントントンと小さなノック音。
 几帳面に三回叩く来訪者に、オヘアは抱えたスナック袋を放して立ち上がった。カウチのスプリングがぼよんと唸り、見事に袋の中身をぶちまける。常人ならギャーとなるところだが、陽気なテキサスっ子はその程度のみみっちい事なんて気にしない。
「ウェルカム、ウルスラっ! 枕持参とはユーも手馴れた宿無しねー」
「…………」
 リベリアンジョークなのだろうかとウルスラは首を捻る。キャサリンの性格からして貶しているわけではなさそうだが。
「そんなところに立ってないでこっちこっち。ほら、そこに座るねー」
 ぱちんとオヘアは大きな胸の前で手を鳴らし、騒々しい足音をたてながらウルスラの手を引いた。そして部屋に一つあるカウチにどっすん。
 
バリバリッ!

「…キャサリン」
「オー、ソーリィ。スナックの上にビンゴねー」
 壊し屋の実力をいかんなく発揮し、当の本人はあっけらかんとカラカラ笑う。ウルスラは破片を払い落とすが、夜着から香ばしいにおいが消えない。
「……くさい」
「そー? ミーはとっても好きよー」
 伸びてきた香ばしい腕からウルスラは身をかわす。髪まで香ばしくされてはかなわない。
 うっかりしたオヘアの手からコーラ瓶がごろん、バシャ、ドボドボドボ。
「……冷たい」
「オー、ソーリィ! ウルスラ、びしょびしょよー。ミーの服を貸すねー」
「いい。どっちにしろ結果は同じだから」
 達観したふうに言い放ち、ウルスラは持ってきた本を開く。読んでも読んでも内容が頭に入らなくて溜め息。変な深夜番組に馬鹿笑いするオヘアを尻目に、立ち上がったウルスラはベッドに向かった。
「ぐっない? 早すぎるねー、夜はこれからなのに」
「夜更かし禁止。エルマ中尉が言ってた」
 エルマのメッを口実に用い、ウルスラはサイドボードに本を置いてベッドの壁際に枕をポイッ。ブランケットの隙間から足を入れて、後からくるだろうキャサリンのために端による。するとどうしたことか、突然えも言われぬグチャっとした感触。
「…キャサリン」
「フゥン? どうしたねー…あっそれ昨日食べかけてたパイ、どこにいったかと思ってたのよー!」
 背中に張りつくモノの説明をせまられると、オヘアは手を叩いて大喜び。剥がされたそれを一緒に食べないかと問われ、寝る前に食べるのは良くないと極めて冷静に答えるウルスラだった。
114アキストゼネコU−2 B:2009/02/06(金) 09:33:19 ID:Hu2toxcm
「ぐっもーにンっ! みんな良く眠れたねー?」
 詰め所へ集っていた仲間たちに元気よく挨拶して空いた椅子にかけるオヘア。鼻歌を歌う彼女とは対照的に、後ろに続くウルスラは完全に閉口している。しかし常から寡黙であるため、それはイコールいつもどおりと受け取られてしまった。
「おはようございます、キャサリン少尉にウルスラ曹長。ハァ〜寒い寒い、昨夜から冷えますよね」
 温かい紅茶をすすりながらエルマがにっこり。彼女は自ら率先して席を立つと、二人のために新しいカップを用意した。階級は智子と並ぶ中尉なのに、驕ったところが全くないというか軍人っぽさが皆無である。
「もう雪だって溶けたのに堪りませんよね、智子中尉ぃ〜」
「堪らないのはこっちだから! 毎度毎度忍び込んできてやりたい放題、世が世ならあんた晒し首よっ!!」
 ぺとっと引っつくハルカに青筋たてる智子。ライオンのようだと称された声は現在ひどい嗄れ声になっていた。
「む〜ふふ、トモコ中尉は昼夜のギャップがす・て・き♪」
「ひゃあっ?! こっこらどこを触ってるのよ、ジュゼっ…」
 ぞくぞくっとするポイントを撫で上げられた智子は声を引っくり返す。赤くなった顔を向けて叱責を加えようとすると、妖しく揺らめく灰色の瞳に捕まって息をのんだ。
「あっまた反応してる! まったくこの悩ましい体はすぐに熱くなるんですからっ!」
「こうしてると温かぁ〜い。寒い国では同衾を義務づけるべきですよねぇ」
「ちょっと聞いて…あんっ…確かにスオムスは寒いわ…っん…だけど生活乱れは心の乱れ…ひゃっ」
 また心と体が違うことをいっている。精神衛生上良くないので、残りの三人は視界からそれを締め出した。
「確かに外から来た人には厳しいかもしれませんね。でもそんなに人肌って温かいんでしょうか」
 スオムス生まれのエルマは寒さに慣れているというか、これが当たり前という感じである。だから別段大騒ぎするほどの話でもないと思うが、良いと聞けば気になるものだ。
「エルマ中尉も興味がでてきたねー。今晩ウルスラと試してみますかー?」
「えっ、あっあの私が言っているのはそういったいかがわしい行為のことではなく」
 なにやら必死に弁解するエルマ。色々と想像をめぐらせてしまったようで、赤くなった頬に手をやっている。
「心配無用よー。ウルスラに全てお任せすればいいねー」
 いっぱいいっぱいなエルマに擦り寄り、オヘアは無責任にナイスアイディアを吹き込む。地獄に落ちますっ地獄に落ちますっ地獄に落ちるんですよっと、呪文がもれだした。あれは己への戒めにも使えるらしい。
 手馴れ扱いされているウルスラは本に目を落としたままぼんやり。昨日からどうも集中力を欠いている。冷え込みに体調でも崩したかと首を捻り、今夜は何事もなく眠れるよう願った。
115アキストゼネコU−2 C:2009/02/06(金) 09:33:54 ID:Hu2toxcm
「まずいな…これは駄目かもしれん」
 らしくない弱気をもらしたビューリングは、組み直した愛車にむかって溜め息。経年と寒さによるダメージがひどすぎる。エンジンはかかるようになったが明らかに作動音がおかしく、これでどこまで行けるのやらわからない。
 朝からずっと格納庫に篭ってバイクをいじりまわしているが、日が落ちた今やタイムリミットは刻一刻と迫っていた。
「おーほほほっ、垂れ耳のワンちゃんはこんなところで一人遊びかしら」
 たてつけの悪いドアを叩き開けて高笑う騒々しい女性。人をワンちゃん呼ばわりするのは第一中隊のアホネン大尉である。
「……今は忙しい。遊び相手なら他をあたれ」
 無駄に存在感を発揮する縦ロールを一瞬だけ振り返り、ビューリングはつれなく答えた。今は本当に忙しいのだが、たとえそうでなくても相手をしてやるつもりはない。関わると碌な事がないと身に沁みてわかっている。
「まあ可愛げのないこと! そんなだから、いもうとに愛想を尽かされるのね」
 取り付くシマもない背中を見下ろし、アホネンはわざとらしく両手を広げて嘆く。
 聞き捨てならない台詞に、かがみ込むビューリングのこめかみがピクリ。
「いもうとなんて持った憶えはない。何度同じ事を言わせる気だ」
「ふふっ、どうかしら。一度憶えた蜜の味はそう簡単に忘れられなくてよ?」
「…………」
 平行線な会話にどっと疲れ、ビューリングは口を噤む。同類扱いされるのは甚だ遺憾だが、迷惑をかえりみず何かと介入してくるアホネンの強引さは折り紙つきである。ここは流してしまう方が得策と思われた。
「ああ、そうそう。忘れるところだったわ―――はいどうぞ」
「…キー? このマークはブラフシューベリアだな」
 顔の真横に突き出された鍵を受け取ったビューリングは、それを手のひらにのせて繁々と眺める。刻印からブラフシューベリア製だとわかるが、見るからに真新しい金属の光沢を放っている。
「ご名答。カウハバ基地が所有する最新式よ。あなたの名前で貸し出し申請しておいたわ」
「お節介がすぎるぞ、大尉。私は慣れたものがいい」
 たとえ同じブラフシューベリアであったとしても。
 意固地に古びたバイクへ向かうビューリングに、いつになく真摯な顔つきのアホネンが語りかける。
「古いものを大切にするのは結構だけど、それにこだわりすぎて新しいものを認めないのは大馬鹿ね」
 肩越しに睨みつけられてもアホネンは微動だにしない。その視線はここではないどこか遠くを見ている。
「いつだってね、大切なものは失ってから気づくのよ」
「…それは大尉の経験談か?」
「――――――っ?! 面白い冗談ね。忠告はしたわ。後はあなた次第」
 そう締め括ると、アホネンは肩にかかる縦ロールを払う。来たときと同じく騒々しい足音をたてて格納庫を後にした。
「大切なもの、か……」
 ビューリングは手のひらのキーを目の前にかざして弄ぶ。そうやってみても答えなど得られるはずもなく、上着の内ポケットにしまって大きく溜め息をついた。
116名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 09:34:23 ID:Hu2toxcm
以上です
ウィルマはもうちょっと後になります
基本嫌いなキャラがいないので、まんべんなく出番を用意しようとして散漫になるという...
あと智子の人気に驚きました  いえ、好きなんですけど
117名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 11:08:32 ID:2kp2/+KW
アキストゼネコきたー!
相変わらず読みやすいのに言葉足らずな所が無くさらに笑いも萌えもあるという…凄いっす
オヘアさんのクラッシャーぶりもエルマさんの戦闘以外ではとても気の利くお姉さんな所も
キャラの個性が出ていて面白い
そして毎度ライオンチームにワロスw 智子中尉は流されやすいけど良いキャラだよね
118名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 12:44:36 ID:Rt1IQC3a
またカップリングだいぶかたよってきたなぁ
119名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 13:23:23 ID:/FVJqCq7
逆に増えてきた気がするんだが
120名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 13:50:06 ID:gqwLTIkv
ビューウィルは不倫で略奪愛だよね
それがいいんだけど
121名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 13:50:59 ID:Gr/PvUwe
ペイラとかどうですか
2の多い人の長編読んでから、ずっと気になってる二人なんだが
122名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 14:16:43 ID:yFW6DmGx
たまにはエイラさん以外の新カプがいいな
ルッキーニャとかシャーミーナとか
123名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 14:53:03 ID:yuqpZpaH
複数人カプとかもいいんじゃない
うぃっちだもの

シャッキーラーニャとか
シャイラッキーニャとか
サーシャッキーラとか

テラカオス
124名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 15:05:22 ID:d4q2MA4c
最近は凝ったストーリー仕立てのSSが多いので、ただ単にイチャイチャしてるだけのSSが読みたいね。
ひたすら、ベッドの中でお互いにちゅっちゅしたり、耳をはみはみし合ったりするようなヤツ。
シャッキーニや芳リーネはそういうイメージがあるんダナ。

>>122
最近、ペリーヌ×みっちゃんに目覚めてきたw。
125名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 15:14:23 ID:zlV4YT3p
ペリーヌ×みっちゃんとか凄いな、どこに接点見出してんだw
126名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 15:24:47 ID:4Vh2RzW8
>>124
お前は俺かwしかも48手まで書いてるという>みっペリ
127名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 15:33:12 ID:ybljTCJh
>>116
続きキター!!オヘアさん汚ねぇwww
エルマさんが道徳じゃなくて自分の欲望と戦ってるようにしか見えないのは病気ですかそうですか。

いつだか開拓度合い表を作った人がいたけど、あれも今作り直したら大分変わってるだろうな。
資料でも二次創作でも思えば随分進んだものだ。エーリカ&サーニャが×から◎に変わるくらい公式の影響大きいし。
128名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 16:34:33 ID:yuqpZpaH
小さくても、なんらかの形で接点やきっかけを公式が作ってくれれば
新規カプが出来る材料になる
129名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 18:04:37 ID:icvzt56E
>>73 @6Qn3fxtl様
GJ! そしてワロタw 文字通りとはw

>>78 RU1ZZ/dh様
GJ! 2連続投下乙です。そして見事なクオリティに脱帽。

>>85 OsqVefuY様
GJ! ふたりの微妙な距離感と言うか、ふれ合いに和みました。

>>105 t26gFAxT様
GJ! 妙な艶めかしさがお見事です。

>>116
GJ! いらんこ中隊キター! 毎回楽しく拝読させて頂いております。素晴らしいの一言ですええ。


さて、またこんばんは。mxTTnzhmでございます。
>>124氏がご希望されてたので、それっぽいものを書いてみました。
氏のご希望に添えるかどうかは分かりませんが……。

と言う訳で、>>67-69「beat black」の続編をいきます。
今回もリーネ×芳佳です。どうぞ。
130reasonless 01/03:2009/02/06(金) 18:06:03 ID:icvzt56E
芳佳が高熱を発してから二日が過ぎた。
幸いにも芳佳の容体は安定し、解熱剤の効果も有り症状は改善されつつあった。
だが不思議な事に……芳佳の体力が戻る気配は感じられない。
きちんと普通に寝ている筈なのに、妙に消耗している。芳佳を診察した女医はミーナと美緒に報告した。
「もしかして、謎の病気とかか?」
「大丈夫かしら。皆にうつらなければいいんだけど」
美緒とミーナはそれぞれ心配を口にする。
「いえ、新種の病気や伝染など、そう言う問題ではありません。その点はご心配なく」
女医はかぶりを振り、溜め息混じりに言葉を続けた。
「くれぐれも、安静に。それだけを心掛ける様、宜しくお願いします」
「はあ」
「分かりました」
半分諦めの態度の女医を見て、美緒とミーナはどうすべきか困り果てた。

「はい、あーんして、芳佳ちゃん」
「あーん……」
芳佳は身体を半分起こし、リーネ特製「オートミールとリーキのミルクスープ」を食べていた。
食べていると言うより、リーネに食べさせて貰っていると言う表現が正しい。
「どう? 美味しい?」
「うん。美味しい。なんか、ちょっと濃くて、でも懐かしい、みたいな」
「ホント? 良かった。もっと食べて。元気になってね」
濃いめに仕上がったスープはミルクの芳醇な風味にオートミールの食感、柔らかに煮込まれたリーキの風味が合わさり、
芳佳にとっては刻んだ長ネギ入りのミルク粥を食べている感覚だ。もぐもぐと口を動かし飲み込むと、芳佳は笑った。
「ありがとう、リーネちゃん。私頑張って、もっと元気になるよ」
「うん。頑張って。……あ、でも、芳佳ちゃん風邪ひいてるんだから、あんまり頑張らなくてもいいんだよ?」
「え、そうかな? でもみんなに迷惑掛けてるから、私、頑張る!」
「芳佳ちゃん凄いね。もう風邪治ったみたいだよ? はい、あーん」
「あーん……そんな事無いよ。正直、まだ何か力が出ない気がして」
「気のせいじゃない?」
「そっか。そうかもね。『病は気から』って言うもんね」
「?」
「あ、今の、扶桑の言い伝え。気持ちとか気分が良くないと、病気とか風邪ひいたりする、みたいな」
「そうなんだ。ブリタニアでは、くしゃみした人には悪いものが入らない様に『神のご加護を』って言うんだよ」
「へえ。色々面白いね」
ふふっと笑い合う二人。リーネは残りのスープを芳佳に食べさせた。何の躊躇いもなく受け入れる芳佳。
「ふう、もうお腹一杯。ありがとう、リーネちゃん。なんか元気出て来た……気がする」
「本当? 良かった。まだ有るから、食べたい時はいつでも言ってね」
「ありがとう」
「ちょっと、片付けてくるね。あと、これ薬。飲んでね」
「うん」
芳佳は渡された粉薬を口に含み……少しむせかけて……傍らのコップに手を伸ばし、水で流し込む。
それを見届けたリーネは、空になったスープ皿とスプーン、コップを持って、部屋から出ていった。
しんと静まりかえった、芳佳の自室。
ふと窓の外を見ると、……訓練だろうか、ペリーヌとルッキーニがストライカーを履いて空を舞っている。
でもその様子はまるで鬼ごっこをしている様で、いつも基地に居るときと変わらないなあと考えを巡らせ、ふっと笑ってしまう。
「芳佳ちゃん、どうかした?」
いつの間に戻って来たのか、リーネが部屋の扉を閉めて芳佳に問い掛ける。
「見て、リーネちゃん。あれ」
「? あ、ペリーヌさんとルッキーニちゃんだね」
「うん。あの二人、訓練かな。なんか二人の機動、面白いよね」
「本当。基地で追いかけっこしてるみたい」
「リーネちゃんもそう思った? 私もだよ」
「本当? 同じ事考えたんだね」
リーネは笑顔を作ると、芳佳の横に座った。
131reasonless 02/03:2009/02/06(金) 18:07:47 ID:icvzt56E
「芳佳ちゃん、ところで具合はどう?」
「うん、良くなったよ。お腹も一杯になったし、少し、眠くなってきた……」
「ゆっくりしてね」
ベッドに横たわる芳佳を、そっと寝かしつけるリーネ。毛布をそっと掛けてあげる。
「ありがとう。なんかリーネちゃんに迷惑かけてばっかりだね。ゴメンね」
「謝る必要なんてないよ。私、芳佳ちゃんの為なら」
「ありがとう」
芳佳は目をつぶり、息を整えた。ふと、手を握られた事に気付く。リーネが毛布の中に手を入れてきたのだ。
「リーネちゃん、優しいね」
「芳佳ちゃん」
うっすらと眠気が頭を過ぎる。リーネの手の温かさが心地良い。元気を分けてくれる気もする。
規則正しい呼吸に導かれる様に、芳佳は微睡んだ。
だが突然、呼吸は乱される。リーネに唇を塞がれた。思わず目を開く。
目を閉じ芳佳を抱きしめ、唇を重ねるリーネの姿を認める。
そっと唇が離れる。芳佳は思わず名を呼ぶ。
「リーネちゃん」
リーネは芳佳の名を呼び、するりとベッドに潜り込んだ。芳佳の身体に優しく腕を回し、耳元で囁く。
「温めてあげる」
「ありがとう」
「私の芳佳ちゃん」
ぎゅっと抱きしめる。そのまま、ぼんやりとする芳佳の唇を再び奪う。
「んんっ……」
期せずして“おやすみ”から“おはよう”のキスへ。どんどん深く濃くなり、吐息が漏れる。
規則正しかった呼吸もいつしか乱れ、芳佳は朦朧としながら、リーネを求めた。胸に手が行き、温もりを感じる。
リーネは芳佳の首筋から耳に掛けて舌をつーっと這わせ、頬をなぞり、唇へと回帰する。
彼女の艶めかしさに、芳佳は身体が疼き、リーネとの口吻を繰り返す。身体も密着し、お互いじんわりと染み出た汗が
二人の肌を湿らせる。
温まり過ぎた二人は、のぼせるのも厭わず、いつもと変わらぬ様に……お互いを求めた。
「リーネちゃん、はああっ、……好き。愛してる。リーネちゃん……」
「芳佳ちゃん、私も。愛してる。だから。もっと、もっと……」
もぞもぞと寝間着、服、ズボンがベッドから落ちる。毛布の中で二人がどんな状態であるかは既に明白。
リーネは芳佳に覆い被さると、素肌を合わせ、本格的に、芳佳を愛し始めた。
全身全霊、全力でリーネに応える芳佳。
風邪の事も忘れ、時間も忘れ、二人だけのときを身体とこころに刻みつける。
繰り返される接吻。じっくり、ねっとりと味わい尽くす。吐息は既に灼け付き、時折漏れては頬と顎を撫でる。
キスの合間、芳佳はリーネのおさげを解いた。緩やかなウェーブの髪が芳佳の頬にはらはらと降りてくる。
「リーネちゃんの髪、綺麗……」
「ありがとう、芳佳ちゃん。芳佳ちゃんだけのものだよ」
「ホント?」
「私以外で髪解くの、芳佳ちゃんだけだもの」
「リーネちゃん……」
髪をさわさわと触って感触を確かめ、匂いを嗅ぐ。いつもと変わらない、柔らかな感触。
そんな芳佳を見て、リーネは芳佳の頬をなぞり、もう一度キスをする。
「この髪も、この瞳も、この胸も……みんな、芳佳ちゃんのもの。そして、芳佳ちゃんは私だけのもの」
芳佳の乱れる息は、やがて、失速……疲労時のものに変わりつつあった。でもそんな事お構いなし。
リーネは芳佳を更に求め……芳佳も拒めず……二人の甘い声が部屋に響いた。
132reasonless 03/03:2009/02/06(金) 18:09:48 ID:icvzt56E
夕暮れ時。
リーネは失神しぐったりと頭を垂れる芳佳を優しく抱きしめ、唇を重ねた。
「私だけの、芳佳ちゃん」
微笑み、芳佳の髪をそっと撫でる。
こんな毎日では芳佳の体力が戻る筈も無いのだが……気付いているのか気付いてないのか、
二人は幸せなときを、共に過ごし、果てる。
「リーネちゃん……」
芳佳がふと目を開ける。リーネの身体の温もりを求め、身体を寄せる。
「芳佳ちゃん」
リーネは優しく抱き寄せ、唇を合わせる。
甘えているのはどちらか分からない。
でも、この気持ち、抑えられる筈もない。
何故なら、そこに愛しの人が居るから。

end

----

以上です。
トゥルーデ×エーリカも好きですが、リーネ×芳佳も良いなあと。
気付けば結構書いてる気がするし。
但し……私の場合リーネがw
直した方がいいかな〜とか色々書くたびに考えます。

ではまた〜。
133名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 19:48:33 ID:F4Z1QJPL
>>132
芳リーネの続きキマシタワー!
こういう独占欲の強いリーネちゃんは大好物です。 GJでした!
134名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 21:03:07 ID:u+xE97s2
おばんです。
t26gFAxTです。
皆様レスありがとうございます&作者の皆様の投下を2828して拝見しております。
なんでわざわざ名前出してレスしたかってーと
>>107さんのおっしゃられるとおり、
よくよく読んだらおっぱい盛大に揉み揉み!しているわけでもないので、
「第9手 乳を揉む」からは外して単なる短編SSとしていつもどおり保管しておいていただければと思いまして。
タイトルはひとまず無題で……。
保管庫管理人様、お手数ですがご検討のほどお願い申し上げます

>>106さんのも読んでみたいとか、そ……そんなんじゃないんだからね!(ツンツン
135名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 21:57:52 ID:X0r1/T4N
芳リーネはネチョいのが似合うな
136名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 23:12:00 ID:+2WxwRU6
apsV9PCZですこんにちはこんばんは。
前スレ最後の投稿以来タイトルは自分で、スリムになるように考えました。
前のはやはり長い気がしたので『T⇔E』というタイトルにして、自分の智子&ビューリングの世界を書きたいと思います。

>保管庫管理人さん
お手数掛けて申し訳ありませんが、今まで自分が投稿してきた作品タイトルの変更をお願いします。
初投稿のものを『T⇔E Ep.1』としてあとは連番でお願いします。

そして今晩も持ってきました。この機を境に二人がいちゃいちゃバカップルに? という話。
ビューリングも智子もキャラが崩壊気味ですので好き嫌いがあるかと思います。
前回は『扶桑刀』と書くべき所を『日本刀』と書いていたり誤字が目立ち、ごめんなさいorz
以降4レスです。
137apsV9PCZ:2009/02/06(金) 23:13:26 ID:+2WxwRU6
先日二人が行った模擬戦はビューリングの勝利だった。
それからは煙草がより一層美味く感じられた彼女だったが、一方智子は納得が行かないようだった。
「どうして? 扶桑の巴御前よ? いくらチームワーク重視になったからって一対一で負けるなんて…考えられないわ、由々しき事態だわ…」
智子は掛け布団の中で丸くなって頭を抱えていた。
「確かにビューリングはいい好敵手よ? だけど、あんなにもあっさり負けるなんてだめよ…。まるで私が弱くなってるみたいじゃない?」
ぐるぐるもんどり打つ智子のベッドは若干軋んで音を鳴らす。
それがいらぬ誤解を招いている気がしなくもないが、本人は独り言を絶やさない。
「そういえば最近ビューリングにしてやられるばかりね…。この前の模擬戦がきっと最終勧告なのよ。このまま彼女に好き放題させたらきっと私はおもちゃにされてしまうわ…」
そして思い出した。智子とビューリングが関係を持つきっかけとなった智子の決意。
"攻めてみたい"
これはどうしてだったろうか。どうしてそう思ってそれを実行に移したのだろうか。
「……びゅーりんぐが……かわいい、から……?」
んぁぁ…、と自分の言葉にときめいてしまった胸を押えて智子の口から声が漏れた。
既に顔は熱くて今すぐ布団から顔を出したかったが、それだと独り言を大にして公開するようなものだ。だから嫌だ。
「うん…、確かにかわいい。…でも、それでもよ? 私を攻めてるときの彼女はどうなの? 完全に楽しんでる顔よ? あれは…」
元来より流されやすい性格と体質である智子のことだ。ビューリングにしてやられるのも悪くはないと思っている。しかし、だ。
「待って。最初の目的を思い出すのよ穴拭智子…! ビューリングを攻めたいって思ったのは私よ。ビューリングを手玉にとって私の…私の、美貌で…メロメロにしてあげるんだから…!」
両手を握って胸元でえい、と張り切る智子の布団が、ふいに持ち上げられた。
138apsV9PCZ:2009/02/06(金) 23:14:23 ID:+2WxwRU6
「何をぶつぶつ言っているんだ…?」

「ひっ!?」
暗がりに背の高いシルエット。ビューリングだ。腕を組んで仁王立ちをしている。
智子は驚愕のあまり動けずにいた。考えなくても、ビューリングが冷めた視線を向けているのが分かる。
「いつもの二人が居ないから静かに眠れると思ったらこれだ。何か有ったのか、智子」
そういえば今夜はあの二人を縛ってきたのだった。遠慮無くぎちぎちに締めてきたが、まああの二人なら問題無く、むしろ喜んでいることだろう…。
音量を抑えたビューリングの声が届く。心配の色。智子は急に恥ずかしくなって枕に顔を埋めてしまった。
「悔しくなんか…ないもんっ!」
「もん、じゃないだろ」
腕を組んでいたビューリングが足の重心を左足へずらした。
様になっている。一見偉そうな姿勢だが、これでも彼女なりの心配は心にある。
「何が悔しいんだ? もしかして模擬戦のことか?」
「…」
「……そうなんだな?」
「…うん」
ふぅ、と溜息を吐いてビューリングは智子のベッドに腰を掛けた。
ベッドが揺れたのを感知して智子が枕から顔を上げた。
「あれは私の負けだよ、智子」
「な、何言ってるのよ。そんなのなんの慰めにだってなりはしないわ!」
「ルール上は負けた。だが、あれがもし仮に、お互い生死を賭けた尋常なる勝負だったとしたら?」
「…え」
「雲に気を取られた私の背後を取ったのは智子だ。
 降下した先に既に居たのは智子だ。
 私は咄嗟のことで銃が使えず、接近して胸に飛び込むという不意打ちをしてみせた。
 だが、智子が銃を持っていて正面から私に弾幕を浴びせていたとしたらどうだ?
 私は頭から弾丸を受けて死んでいた。そうだろう?」
ビューリングはそのような辛辣な表現はオブラートに包まない。はっきりと伝えるのが彼女だ。
「それは…驕りっていうのよ…」
「いや違う。模擬戦とはつまり、実戦であることを前提としているものだ。
 被弾しても死なないだけの実戦だ。着弾しても殺せないだけの実戦だ。
 私たちには魔法防御もあるから近接武器であっても傷は付かないだろうが…。
 しかしネウロイたちの攻撃は、私たちを殺すものだ。違うか?
 模擬戦の結果は、表向きの勝負の結果ではなく、試合全体を見て、実戦であるとしたらという仮定をして見るものだ。
 だから、あの試合が実戦であると仮定すると、完全に私は負けだったということになる」
「ビューリング…」
ビューリングは落ち着きを取り戻したのか一息吐いて言う。
「少し、熱くなりすぎたな。智子がらしくないことを言うからだ…。全く…」
語尾を濁してそっぽを向くビューリング。智子のためにここまで必死になれるものなのか、と自分で顧みたからだ。
「……とにかく、智子が何か落ち込んでいるなら直ぐに話して欲しいし、気になることがあるなら聞けばいい。
 私だって、何だ…ほら、智子の沈んだ顔は、見たく、ないんだ…」
顔がかなり熱くなっているのをビューリングはしっかりと感じ取っている。
智子が上体を起こしてビューリングと同じくベッドに座った。

――
139apsV9PCZ:2009/02/06(金) 23:15:03 ID:+2WxwRU6
――

智子は起き上がって正面のビューリングの背中を見つめた。
彼女は恥ずかしそうに頬なんかを掻いている。
そんな仕草に智子は心打たれ、やっぱりビューリングはこうでなくては…! と確信した。
がばっ、と行動に移しビューリングの肩から両手を首に回す。
「なっ、こら、智子! やめ、」
智子はそのまま勢いでビューリングの肩を抱き寄せ、ベッドに押し倒す。
「いっ?! わっぷ!」
ビューリングの慌て振りが面白くなった智子は周囲の迷惑すら考えず堂々と言い放った。
「私、可愛いビューリングが好きよ、すごく!」
「ぃ、いきなり何を言い出すんだ智子…っ?!」
「こんなにも可愛いのに、こんなにも愛くるしいのに。どうして今までもっと素直になれなかったのかしら穴拭智子! あぁ!」
ビューリングはみるみるうちに衣服が剥ぎ取られていくことに気が付かないほど動揺していた。
「と、智子大丈夫か! 悔しさの余り頭のネジが外れてないか…!」
智子の余りの豹変ぷりにビューリングは彼女を押し返そうとする。
しかし暴走した智子は止まらない。扶桑は変態大国である、とビューリングは確信した。
「んんぃ! 智子、やめるんだやめてくれ頼む!」
体中を舐められたり揉まれたり撫でられたり、訳が分からないうちにビューリングの身体も熱を持ち始めていた。
「やめないわよ。こんなかわいいビューリングを手放したら絶対後悔するわ! だから私は容赦なくかわいいビューリングを頂くの!」
「ぅあ…く、…はぁ……。ともこ…」
智子の放つ熱気に当てられたのか、ビューリングもすっかりその気になってしまったようだ。
「ねぇ、呼び方があるじゃないの。ほら、かわいいビューリングちゃんなら言えるでしょ?」
「ぇ? …どういう」
急に全ての手を止めた智子が、言ってから焦らすようにビューリングの首筋を舐め始める。
「んんん――!」
智子は舌を首筋から離すと、催促するようにまた全ての動作を止めた。
「はぁ…はぁ、は…はぁ。…とも、ちゃん……」
「そうよ。"こういうとき"はそう呼んで? ふふふ」
智子は、そう呼ばれると年上であるはずのビューリングが何故か年上に見えなくなることが分かった。
同年代の、かわいい女の子に感じられるのだ。
いや、もしかしたらそれは単に、年上であるビューリングに対しての遠慮からだったかもしれないが。
そして智子は逆に、ビューリング、と普段通り呼ぶことで自分の優位を保とうとしている。
「ともちゃん……わたし」
「何? どうかした?」
智子は完全にスイッチが入りエンジンが別方向にフルスロットルしているらしく、妖艶な雰囲気を漂わせ、己の人差し指を舐めていた。
「……はやくぅ…」
「え? 何か言った? もっと大きな声で言って頂戴?」
智子は自分で舐めていた人差し指をビューリングの口元に持っていき、半開きとなっていた口内へと侵入させた。
「はん…む……」
ビューリングはその指を無意識で咥えた。瞳は虚ろで、こちらも様々な回路が焼き切れている様子である。
「んふふ…、ビューリング…かわいいわよ」
淫靡な音と二人の過激なやり取りは、明け方まで続いた。
かくして二人のわだかまりは収束した。

――
140apsV9PCZ:2009/02/06(金) 23:17:45 ID:+2WxwRU6
―おまけ―

翌朝、智子のベッドを見下げてオヘアは言った。
「…また、徹夜ね……」
目の下のくまも相まってかなり不機嫌そうである。
「智子さん、まさかあんな本性をお持ちだなんて……」
いけないですよ、ダメですよ、とエルマはもじもじしている。
「エルマ、あんたもそろそろやばかったりするね?」
「え? 何がですか?」
「……イヤー、何でも無いネー」
わざと片言具合を強めてオヘアは両手を広げた。
その時、ベッドの中で、智子の胸に抱きつく形で眠っていたビューリングが寝言を放った。
「…ともちゃん……」
「ぁー、すごいカップルねー」
「そういえば、ビューリングさんはどうして扶桑の愛称では"ちゃん"を付けるなんて知っていたんでしょうか?」
「んー。トモコがいろいろ嗅ぎ回ってたのは知ってるけどビューリングはどうしてたんだろうねー」
そして、眼鏡を掛けてようやく起床した様子のウルスラが言った。
「私のおかげ」
「AHAHA…。ウルスラは物知りねー」
「別に…。本にあった」
「カールスラントの教本には各国の愛称まで書いてあるのですか?」
「…教本だけじゃない。淫猥な本や下賤な本も…」
「Wait!! それ以上言わせたらダメねー! ウルスラ、いつの間にか色々よごれてるねー!」
オヘアは慌ててウルスラの口を押えるのだった。

――

以上です。
"寝室は未だに一緒なのか?"、"オヘアの語尾はカタカナだったのか?"など、自分の記憶力を殺したくなります。
疑問を解消するためにいらん子を読み直そうかと思っています…orz
それではまた。
141名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/06(金) 23:28:10 ID:d7mSnTlW
>>140
おほほほーい智ビューきたああ!!GJ!
ビューリングやべえ。かわいすぎ。
んでウルスラ!Inワイな本とか…読んじゃう?読んじゃうの?…真顔で?
エーリカ呼んでこいw
142名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 00:27:08 ID:3bLbubbX
秘め声五巻芳ーニャが少ないと思っといたがよく考えるとサーニャはいつから芳佳ちゃんと呼んでいることに気付いてない→つまり無意識のうちの行動→サーニャは芳佳を気になっているということではないか!?
よかった!!!芳ーニャはあった!これであと5分闘える!!!!!!
143名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 00:28:26 ID:y0cfqYvC
>>142
5分と言わずに、どんどん妄想するんだ!
144名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 00:32:03 ID:9muQ650X
>>142
神があらわれた
145名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 00:39:49 ID:m2vqWzR7
146名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 00:42:17 ID:MRPH63K1
>>145
ペリーヌマジで逃げてー!!!
147名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 00:45:53 ID:3bLbubbX
>>143
芳佳「そういえばサーニャちゃんっていつからか私のこと名前で呼んでいるよね?」

サーニャ「そういえば……でも、なんだかこっちのほうが呼びやすかったから…その、迷惑、だった?」

芳佳「ううん! そんな事ないよ!!! それどころかサーニャちゃんともっと仲良くなれたみたいでとっても嬉しいよ!」

サーニャ「芳佳ちゃん……」


的なのを文章にしたかったが才能がなかった
148名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 00:54:27 ID:Jp1tgrRv
>>145
メイクアップ!





ザ ヒーロー!隊長よ!
私にクーリスーをー 与えてくれー
149名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 05:51:45 ID:NyryT79B
>>148
ウェイクアップじゃんwww

どうでもいいけどルッキーニって太陽な上に黒いからブラックサンだよな。

でもって銀色の髪に翠の瞳なサーニャはシャドウムーン……。
150名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 08:16:33 ID:3WVPGXsH
>>140
待ってたぜ同志よ、GJ!!智ビューまじたまらん。そして変態大国ワロタ
chan付けはやっぱりウルスラの入れ知恵か……一瞬ウルスラ×智子を垣間見たがそんなことはなかったぜ。
151名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 10:12:27 ID:0iaSaRYq
48手の2と41はどこに違いを見出せばいいのかと小一時間
152名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 10:38:23 ID:3nHHUEN2
俺は11手と23手がわからん
23手は背中合わせって解釈でおk?
153名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 10:40:28 ID:3nHHUEN2
23手→27手ですorz
154名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 10:46:47 ID:pE6j6sPG
11は埋まってるからいいとして、15と27では?
155名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 14:31:35 ID:+hW8Ew0A
156しかないかなしい2 21X2w2Ib 1/5:2009/02/07(土) 14:59:37 ID:U/feSTHv
白亜をしたその部屋の壁は、光をとてもとてもよく反射するのだった。
昇った朝日が窓から部屋に差し込んで、壁に反射して、部屋全体を明るく照らしていく。
その光に揺らされるようにして私はとろとろと目を覚ました。腕が痛い。どうしてだろう、と思って視線をめぐら
せるとそこは見慣れたエイラの部屋でも、私の部屋でもなくて。くゆる消毒液の香りにここが医務室であること
を知る。そして痛む手のその向こうには。

「エイラ…」

私はかけられた毛布から伸びた、真っ白い手の一本を握り締めていた。伝わる温もりにほ、と息を吐く。その
温かさだけが彼女がまだこの世に在るという証で、私にとっては確かなよすがだったから。けれど同時に悲しく
もなる。存在しているだけなんて、なんて虚しいことだろう。彼女の笑顔が恋しかった。ねえエイラ、ほら、
せっかくこうして私から手を握り締めてるんだよ?いつもみたいに真っ赤な顔をして、でも嬉しそうにそっと
握り返してよ。じゃないと、わたし。

(ごめんなさい)

けれども本当に、一番に、欲しいのは彼女の許しの言葉なのだった。私のせいでエイラはこんなことになった。
みんなはそんな私を懸命に慰めてくれたけれど…足りない。満ちるわけがない。ううん、問題はそこじゃなくて
…とにかく私は、エイラに許されたかったのだった。彼女に許してもらわないと、私の罪は消えてなくならないの
だから。もしこのまま目を覚まさなかったなら?そう、思ったら怖くて怖くて仕方がなかった。それなら私も消え
てしまいたい。彼女がいなくなったら生きて行けない、なんてほどのことを考えているわけではなかったけれど、
少なくとも彼女を喪った責任を背負って生きて行けるほど、私は強くなかったのだ。

そんな身勝手なことばかりを考えていたから、実際私はとても、とても嬉しかったのだった。
そう、それは私が呼び掛けたその瞬間にエイラが微かにみじろいだから。うう、とうなって一度目を固くつむって。
だから私はがばりと起き上がってその手を強く強く握り締めた。エイラ、大切なエイラ。理屈なんて後回しで、
どうしようもなく嬉しくて。涙が込み上げた。よかった、よかった。

そして、たぶん。
そんな風に泣く私を見たらエイラは笑って、慣れたいつもの素振りで頭を撫でてくれるのだろうと思っていた。
そう信じて疑う理由なんて、私の中にはなかったのだもの。

ぱちりと目が開かれる。以外に長いまつげが揺れて、あけぼのの空のような瞳が真っ直ぐに私をとらえて。
今は少し薄い色をしている形のいい唇から、私の待ち望んだ音が漏れる――はず、だった。

(さーにゃ)

って、そう。けれども彼女の口から紡がれたのは、それとは全く別の言葉で。

「…おまえ――だれ?」

私はエイラに抱き付く寸前だった。エイラの特徴的な調子の声が私の名を呼んだなら、私はまた、いくらでも
彼女に甘えていいのだと思っていたから。すがりついて頬を寄せて泣きじゃくって、困ったようにおろおろするの
であろう彼女に伝えようと思っていた。ごめんなさい。ごめんなさい。ありがとう。ごめんなさい、って、そう。
けれども予想だにしなかった彼女の言葉に私はひどくうろたえて、二の句を無くしてしまう。怪訝そうな視線が
固く握り締められた手に移ると、どうしたらいいのかわからなくなってぱたりと手を離してしまった。

「…見ない顔だな。…新入り?」

かしげた顔は、幾分険しかった。まるで品定めをするかのように上から下まで私を見やる。そして、もう一度
同じ言葉を口にするのだ。おまえ、だれ?
「エイラ…?」
思わず呼びかけた。だって、呼んで欲しかったから。いつもと同じように、私のことを「サーニャ」って、目一杯
の親しみと愛情のこもった、どこか舌足らずなこの声で。じょうだんだよ、ごめんね。そう言って笑っていって
欲しかった。
157しかないかなしい2 21X2w2Ib 2/5:2009/02/07(土) 15:00:08 ID:U/feSTHv

「隊長から聞かなかったか?…隊長も"エイラ"で紛らわしいから、私のことは"イッル"って呼べって」
「…いっる?」
「私はエイラ・イルマタル・ユーティライネン、だからイッル。隊長はエイラ・ルーッカネンだろ?」
「…隊長は、ミーナ中佐じゃあ…」
「はあ?なに言ってんだおまえ?」

どこかつっけんどんなその物言いに私は覚えがあった。そうだ、それは私が彼女とまだそれほど親しくなくて、
一緒に過ごすこともまだなかった頃の。
ごめんな、と後で何度も何度も謝られたっけ。言い訳なんてしても仕方がないけど、どうしたらいいのかわから
なかった、って。
ぺこぺことしているエイラを傍目で見て、シャーリーさんが笑って言っていたっけ。"スオムス人は人見知りで
有名だからな"と。あたしに謝罪の言葉はないのか、と絡むシャーリーさんに「お前に言う言葉なんてないね」と
朗らかに笑っていたエイラ。最初人見知りな分、親しくなると本当に気の置けない仲になれるのだと、あとで
またシャーリーさんが耳打ちしてくれたっけ。

(つまり、それはさ──)

そこまで言ったところで、「何話してんだ!」とエイラが口を尖らせたのでその話は頓挫してしまったけれど、
けれども彼女が一体何を言いたかったのか、私にはなんとなく、希望のような憶測として分かる気がしていた。
ようするにそれは、エイラが私に対して心を開いてくれたということなのだと。
人見知りをするスオムス人のエイラが、にっこりと笑いかけて話しかけてくれて、部屋に招き入れたり一緒に
紹介に出かけたりしてくれると言うことは、要するにエイラが私を自分の線の内側へと入れてくれたということだ。
長い腕で私を抱いて、その深い懐に抱きしめてくれたということ。

友達ですか、私たちは。
口にしたことはないけれど、彼女なら「当たり前だろ?」とまっすぐ答えてくれるのだろうと思った。
お父様と、お母様と、音楽と。月と、星と、暗闇と。
そればかりだった私の隣に、そうして平然と立ってくれた。

「えい、ら…」
「お、おい!?」
「えいら、えいら、えいら、えいら…」
「な、なんだよ、どうしたんだよ、お前!」

それから私たちはたくさんの時間を一緒に過ごして、笑って、時には泣いて、ちょっぴりけんかもしたりして。
それでもどんなときにも一緒にいて、望めば望むだけ、エイラは傍にいてくれて。いつしかそれは当たり前に
さえなっていて。
それなのに、それなのに。この人は今、それらすべての思い出がなかったかのような顔をしているのだ。
なんで?どうして?

(頭を打ったかもしれないから)

私が目を覚ましたときの、ミーナ中佐の言葉が蘇る。あの時中佐は私の名前と、階級と、所属とを聞いた。それ
は階段から転げ落ちて頭を強く打った私たちに起こりうる、ある事態を想定してのものだと分かっている。
そう、それはつまり。

「──私は、オラーシャ陸軍中尉、アレクサンドラ・ウラジミーナ・リトヴャクです。」
「オラーシャの、中尉…?」
「貴官の名前と階級と──所属を、教えなさい」

ともすれば緩んで、熱いものがこみ上げて来そうになる涙腺を必死で押しとどめた。そして直立の姿勢をとって
彼女を見下ろす。中尉なんて形ばかりの階級だった。仕官訓練を終えたばかりの私はここに来る前までは
彼女と同じ少尉で、ブリタニアのウィッチの中では一番優秀だとかいう理由でこの部隊に送り出されたのだ。
年齢と実力にそぐわないものだとわかっていた。だから今までそれを傘にしたことも盾にしたこともなかった。
158しかないかなしい2 21X2w2Ib 3/5:2009/02/07(土) 15:00:41 ID:U/feSTHv
──それなのに今、私はその立場を利用して彼女に上官として『命令』を下している。私よりも長身で、年上の
この人に。

「…エイラ・イルマタル・ユーティライネンであります。階級は飛行長です」
「ひこうちょう?」
「ええと、通称だと、准尉」
「…少尉じゃ、ないんですか?」

ふるふると首を振る。どうしてだ、と言わんばかりの顔をしている。ううん、きっとエイラの顔に浮かんでいる
のはそれに対する疑問だけじゃないんだろう。もしかしたら目に映るすべてが、聞こえるすべてが、彼女に
とっては摩訶不思議なものなのだ。

「いえ、気にしないで下さい。…所属を」
「スオムス空軍飛行第24戦隊、第三中隊のルーッカネン分遣隊所属です、マム」

彼女の言葉を聞けば聞くほどに、胸の奥でくすぶっていた不安が明るみに出てくるのだった。しかも、それは
彼女もまた同じようで私が質問を重ねるたびに不安げに瞳を揺らしている。
唇をかみ締めた。だめよ、サーニャ。私はこの人よりも上官なんだから。しっかりしないといけないんだから。
准尉だといっていた。つまりそれは、彼女が兼ねてから言われていたとおり腕っこきのエースであることを意味
している。"下士官の総帥"なんてそうそうなれるものではない。実力では確かに彼女のほうがずっと私を
上回っているのだろう。けれどとにもかくにも私はこの人よりも階級が上なのだ。私がちゃんとしていないと、
不安に思うのはこの人なのだ。

「エイラ・イルマタル・ユーティライネン准尉」
「はい」
「……っ」

けど、でも。

「エイラ…っ」

だめだ。
涙がぼたぼた、情けないくらいに溢れて流れて落ちる。エイラがぎょっとした顔をした。焦ったように手を動かす。
ええと、だから、あの、その。人差し指をくっつけて動かして、何かを説明しようとするけれどなんの意味も成さない。
結論なんて一つしかなかった。もう分かりきっていた。

「私のこと、忘れちゃったの…?」

…私は医者じゃない。治療のエキスパートでもない。けれど、こういったことがどういう名前をしているかは
知っている。
この人は私と、私との思い出を失ってしまった。

それは、記憶喪失というのだって。
顔を覆う。しゃがみこむ。もう何も見たくない、聞きたくない、目の当たりにしたくない。だってこれは私のせい
なんだもの。目を覚ましてくれればそれでいい、と思っていた。本当にそれだけでいいと思っていたのに。私は
愚かにも、その事態を全く想定していなかったのだ。

…しばらくして、ふわり。私の頭に何かが触れた。顔を上げると体を起こしたエイラが私の頭をぎこちなく撫でて
いるのだった。もうすっかり手馴れたものではなくて、まるで初めて扱うかのように。
「…ここは、どこなんだ?」
平坦で、けれども穏やかな口調が耳に届く。何かを諦めたようなその口調にまた、何かがこみ上げる。

「ブリタニア…」
「スオムスじゃ、ないんだな」
「…うん」
159しかないかなしい2 21X2w2Ib 4/5:2009/02/07(土) 15:01:20 ID:U/feSTHv

そっか、と小さく呟かれた。通りで明るいはずだよ、と茶化すように続けるのがあまりにも切ない、悲しい。
気を使われているのがありありと伝わって悲しかった。かなしいしか、なかった。

「お願いがあるんだ、中尉。」
「…なんですか?」
「──私の"今の"隊長を呼んできてもらえないかな。話をしたい」

あやしつけられるように優しく囁かれて、申し訳なさでいっぱいになる。歪んだ顔で彼女を見つめたら「大丈夫」
と言わんばかりにぎこちなく、けれども確かに微笑を与えられて私は無意識に頷いた。
出会ったばかりの頃のことを思い出す。お互い言葉すくなで、私の代わりにストライカーの整備をするエイラの
横で、私はぼんやりとずっと、その横顔を眺めていたのだっけ。あの頃はいつだってビクビクとしていた。いま
ではそれが、当たり前になった。

ねえ、かみさま、かみさま。
これは私への制裁ですか。傲慢になりすぎた私への。…でも、なんでエイラがこんな目にあわなければいけ
ないの?この人は何ひとつ悪くないのに。





「名前は」
「エイラ・イルマタル・ユーティライネン」

「階級は」
「准尉」

「所属は」
「スオムス空軍飛行第24戦隊、ルーッカネン分遣隊」

「…今は何年?」
「1941年」

「…年齢は?」
「じゅうさん」

質問を重ねていくほどに、ミーナ中佐の顔が沈んでいく。助けを求めるように坂本少佐を見やるけれども、
その坂本少佐も表情を曇らせているばかり。
医務室の外はてんやわんやだ。「キオクソーシツってほんと!?」とか「あかちゃんになっちゃったんだって?」
とか、事実と虚実が入り混じった噂はすぐに基地中を駆け巡ったらしい。そんな扉の外を見てエイラがちょいと
顔をしかめる。「なんなんだよ、もー」。呟くのは本音なのか冗談なのか。いつもならなんとなく分かるはず
なのに、今はもう分からない。

「申し遅れてしまったけど…私はカールスラント空軍のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ。階級は中佐よ。今は
 この、連合軍第501統合戦闘航空団の隊長の任についているの。」
「だい、ごーまるいち…あの、ブリタニアに新設されたっていう?」
「そう。通称ストライクウィッチーズ、よ。今は1944年。エイラさん、あなたはここに配属されてからの記憶を
 失っているのよ」
「…ははは、まじかよ…なんで…」
「階段から転げ落ちたのよ。きっと頭を強く打ったんだわ」
「そうじゃなくて!!」

突然声を荒げたエイラにびくりとする。私がそうして見やっていることに気付くと、慌てて首を振って笑顔を
作ってくれた。けれどもそれも、一瞬だけ。
160しかないかなしい2 21X2w2Ib 5/5:2009/02/07(土) 15:01:55 ID:U/feSTHv

「…その話、私は蹴ったんだ。スオムスに残るからイヤだっていったんだ。…だって、私はスオムスを守りた
 かったから」
「エイラさん…」
「今日も、隊長とそのことでケンカして…いや、私が一人で駄々こねてただけだけど、それで、ニパになんか
 言われて、不貞寝して…」

それで、なんで。
手を握り締めて、開いて。そうしてはあ、とエイラはため息をつく。彼女の手はこの2年で大きくなったのだろうか。
自分の手なのに見慣れない。そう思っていたりするのだろうか。
握り締めたい、と思った。私は彼女のほっそりとして、長い指が大好きだったから。握ったらエイラはいつも顔を
真っ赤にしていたけれど、それでもそれを許してくれたから。

「…とりあえず、あなたの原隊と連絡を取ります。それまでしばらくは、絶対安静にしましょう」
「…はい」

ミーナ中佐とエイラのそんなやり取りをぼんやりと見つめる。緊張しているのだろうか、少し固まった表情が
とてもとても切ない。だってエイラはどんなときだって、自由自在に笑みを浮かべることが出来る人なのに。
そうして私にいつも元気と勇気をくれる人なのに。

「出ようか」
「お願いします」
「…まあ、あまり気にするな。ゆっくりするといいさ、たまには休むのも必要だからな、はっはっは!」
「はい…」

少佐のいつもの豪快な笑い声も、上手く病室には響かなかった。固い笑顔を浮かべ続けるエイラを心配そうに、
坂本少佐が切なげに見つめる。黙ってミーナ中佐がそのすそを引くと、はっとしたようにきびすを返した。
サーニャ、いくぞ。そして私に呼びかける。

「私は──」

答える前に、もう一度エイラを見やった。金色のような、銀色のような、不思議な色をしたその髪。さらさらと
背中の後ろに伸びている。白い肌も、曙の空のような瞳も、長いまつげも、全部、全部、私の知っているエイラ
そのままなのに。

「ここに残っては駄目ですか」
「…そっとしておくのが一番よ。今はいろいろと混乱しているでしょうし」
「でも」
「サーニャ、心配するのは分かるが──」

私を知っているエイラは、中身だけごっそりと消えてなくなってしまっているのだった。無邪気だったり、恥ずかし
そうだったり、嬉しそうだったり、幸せそうだったり。そんないろいろな顔で私の名前を呼ぶエイラは、今は私の
名前さえ分からない。
…けど、でも、それでも。

「エイラ…准尉。駄目ですか?」
「わ、私は…べつに…」

理由なんて分からない。単なる罪滅ぼしなのか、それともわがままなだけか。
とにかく私は今、目の前で不安に瞳を揺らすこの人を、一人にしておきたくないと思ったのだ。

>>つづく
16121X2w2Ib:2009/02/07(土) 15:06:39 ID:U/feSTHv
ちょっと立て込んでいるので遅くなって申し訳なく
味噌汁や埋めネタ合わせて続きがんばってきます
全然読めてないのですが、前スレと今スレで今まで投下されたSSすべてにGJGJ!
162名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 15:21:06 ID:MRPH63K1
>>151
自分、あの48手を改変して今の形にした者ですが
ここだけの話、まさかあれが正式採用されるとは思わず
ネタのつもりで(特に最初のほう)ストウィチっぽく改変して投下したら
まとめサイトの募集お題になってしまったので正直今申し訳なさでいっぱいで、あんまりスレも見れません

35手と36手が一方通行なのもその場で考えたネタの名残なんです
採用されるんなら他の重複っぽい手を潰してでも、その逆をちゃんと書いとけばよかった
採用されるんならもっとちゃんと考えて投下すればよかった

申し訳なさで死ねそうです
163名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 15:24:30 ID:d2DTdZNO
きたー!
続きすっごく楽しみにしてます。

あとちみーなさんの話も期待しています。wktk
ミーナさんが小さくなるのは自分も書いてみたような気もするんですが、
自分が書いたら面白くなくなりそうなんで
やっぱり21X2w2Ib氏に期待しています。
164名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 15:28:26 ID:d2DTdZNO
>>163
※レス番抜け
>>161
※誤字
書いてみた→書いてみたい

うれしくて急いで書いたらこんなに間違いが。
16521X2w2Ib:2009/02/07(土) 15:34:21 ID:U/feSTHv
忘れてた、>>156-160の話は、保管庫No.563の続きです。
補完の際は追加していただけると嬉しいです

ちみーなさんも…時間があれば…
48手も絵ででもいいから参加出来たらいいです
166名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 15:39:28 ID:DGBm5gW8
>>161
やっぱり凄いですね、何かこう……文に深みがあるというか……
続き待ってます。

ところで初めてSS……というか文章と呼べる物を書きました。
エイラーニャ秘め声の後日談みたいな話なんですけど、
投下していいですか?
167名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 15:40:23 ID:U/feSTHv
どんとこい!
168名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 15:41:41 ID:lFYDjBzg
>>166
エイラーニャは大好物です
169続きを言って:2009/02/07(土) 15:43:29 ID:DGBm5gW8
ではいきます。
エイラーニャで、続きを言って です


「ちょっといいかしら? 」

ある朝、サーニャと一緒に少し遅めの朝食をとり、
眠そうなサーニャを部屋に連れて行こうとしていたところで、
ミーナ中佐に呼び止められた、何か小包のような物をもっている、

「どうしたんだ〜? ミーナ中佐」

私は今にも眠ってしまいそう……というより、すでに意識は無いだろうサーニャを、
倒れないようにしっかり支えながら、用件を聞く

「この間あなた達に録音してもらった、音声記録のサンプルが届いたの、後でサーニャさんと一緒に確認しておいてね」

そういえばそんな事もやったよな〜と思いながら、小包を受け取る。

「でも、あれへんなインタビューだったよな〜、というかまず名前からして怪しいよな〜、秘め声って何だよ〜」
「ごめんなさいね、記者の方からどうしてもって言われて、断りきれなかったの……」
「まぁ私は意外と楽しかったからいいんだけどな」

実際私は、好き勝手やってただけだ、
無理言ってサーニャの録音に同室させてもらって、サーニャが宮藤の事をどう思っているのか聞けたし、
それに、私のことをとっても大切な人だって言ってくれたしな

まぁ、その後、胸を揉むのはよくないって、サーニャに怒られたりしたけど、そんなことどーでもよくなるくらい嬉しかった
それにあれからは、隠れて揉んでるから問題ないぞ

そんなことを話してるとサーニャの頭がガクッとゆれた、
横にならずに寝ると大抵これで起きちゃうんだよな〜
「う…んん……エイラ? 」
「起きたか? サーニャ」

まだ、寝たり無いのか眠そうに目をこすっている、

「うん……あれ……ミーナ中佐……? 」
「あらあら、ごめんなさいね疲れてるのに……長く引き止めちゃったわ、それじゃあエイラさんよろしくね? 」

そう言って中佐はさっさと行ってしまう、相変わらず忙しのかな……というか何をよろしくすればいいんだ?
そんなことを考えていると、まだどこか眠そうにしているサーニャが聞いてきた、

「ミーナ中佐と……何の話してたの? 」

「ん〜? ああ、こないだ、インタビューみたいなのやっただろ? それのサンプルが届いたから確認しろってさ」
「そっか……じゃあエイラ……今から一緒に聴こう? 」
「いいけど……眠くないか? 」

夜間哨戒であまり寝てないせいか、眠そうだ、
今もどこか視点が定まっていないような気がする、

「大丈夫、それに……今日の夜はお休みだから……」

そうだった、連日の哨戒任務でサーニャが疲れている気がしたから
一週間ぐらい前に、ミーナ中佐にゴネ……もとい交渉をして、宮藤とバルクホルン大尉に代わってもらったのだった。

それにしても、宮藤はいいとして、よくあのカタブツ大尉が了承したよなぁ……
何でも、新人の面倒を見るのも任務のうちだ、とか何とか行ってたらしいけど……
170名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 15:43:44 ID:m2vqWzR7
>>155
うはあ!
171続きを言って:2009/02/07(土) 15:44:36 ID:DGBm5gW8

まぁそんな訳で、サーニャと二人、私の部屋で鑑賞会となったのだ。


プレイヤーにディスクをはめ込み、再生する、
前置きも何もなく、スピーカーが私の名前を私の声で喋りだす。

「とっ…突然始まるんだな!! 」
「うん……」

私とサーニャは、ベッドの上で布団を被りながら聴いている、
眠いのか、それとも寒いからなのか、サーニャは私のすぐ隣、3センチもない所で転がっている
少しでも動いたら触れてしまうため、私は動くに動けずガチガチに固まってしまう、

そんな私の状況を、知ってるのか知らないのか、サーニャが私のほうを向いて訊いてきた

「ねぇ、エイラ? 」
「なっ…なんだ? どうしたサーニャ? 」

思わず大きな声を出してしまった、驚かせちゃったかな……

「えっと……エイラは……イッルって呼ばれたほうが嬉しいの? 」
「えっ? 」

一瞬、何の事だか解らなかったが、
そういえばインタビューでそんなようなことを、喋ったのを思い出す
今の状況でいっぱいいっぱいで、スピーカーに耳を傾けるどころではなかったから聴いてなかった、

「えっと……別に、サーニャの呼びたいように呼べばいいよ」

実際、私はサーニャに名前を呼んでもらえるだけで幸せになれるような女だ、

「じゃあ逆に訊くけど、サーニャは…えっと…アレクサンドラ・ウラジ……えっと、ウラジ……」

ウソだろ? 収録が終わったあと何度も言って覚えたはずなのに……


「ウラジミーロヴナ・リトヴャク……だよ」
「ご……ごめん……」

あぁサーニャが答えを言ってしまった……
私は、この忌々しいほど、記憶力の悪い頭を切って捨てたくなる、

「ううん……長くて覚えにくい名前だから……それで、私の名前がどうしたの? 」
「えっと……サーニャって呼ばれるのと、どっちが嬉しいかなって……」

サーニャはキョトンとしたような顔の後、天使のように美しく微笑んだ

「私は……エイラが必要としてくれてるだけで嬉しいの……エイラは……大切な人だから……だから……エイラの好きなように呼んで?」

「サーニャ……」

ああ…なんていい子なんだ…もう…幸せすぎて死にそうだ……
172続きを言って:2009/02/07(土) 15:45:08 ID:DGBm5gW8


その後も、スピーカーから流れる私の声を二人で聞きながら、
サーニャの……二人の目標であるサーニャの両親を探すという将来について話しあい、

とても幸せな時間が過ぎていった、幸せな……幸せな………幸せな…………




………………………おかしいな、何か空気が凍ってるんだけど……さっきまでお花畑を二人で走ってウフフフフだったのに……

というかサーニャが怖い、凄く怖い、


二人の周りを囲んでいたたくさんの花々は凍り付いて砕け散る、
原因はなんだ? 思い当たる節は……


私は、スピーカーの音に耳を傾けた、どうやら隊員について話してるようだ、というか……胸の事しか話してない気がする………

「えっと……サーニャ…これは……」
「エイラは………女の子の胸しか………見てないの? 」



サーニャにそういわれて、首を横にブンブンふりながら思う、
もしかしたら私には、昔の相棒の亡霊でも憑いてるんじゃないか? と疑ってしまう、
いや、あいつはツイてなかったっけ……





とにかく、私は逃げ道を探すべくスピーカーを聴く、
今ハルトマン中尉が終わったから、次は確かサーニャだ……これでっ起死回生を!! 逃げ道を!!





………………………私何もしゃべってねぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!


何か喋れよ!! 頼むから誰か!! 、逃げ道を創ってくれよ〜!!

私は、顔面蒼白、心も凍った……もう落ちるところまで落ちた気がする……



「………切なくなるような………話せないような………そんな胸………」



だけども極寒の中を、マイナス思考で驀進中のサーニャには、まだまだ凍らせたりない様で、
今、私の部屋はスオムスさえ凍るであろう、絶対零度に達しようとしていた。
スピーカーの私は、スオムスは寒いとか抜かしている……
スオムス? そんなもの!! この部屋に比べれば、暑いくらいだよ!!
173名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 15:46:00 ID:DGBm5gW8


あれから、どれほどたったのだろう………
いや……スピーカーから私の声が聞こえるから、まだ数分しか経ってないのだろう

だが、私には永遠ともいえる時間が経ったように感じる。
サーニャに嫌われた……その事実が、私を思考の迷宮に誘い込む


今、私はベッドに腰掛けている、こんな状況の中一緒の布団に入っていられるほど、私は強くない……
サーニャは私の後ろ……ベッドの上に座っている、ここからじゃ表情は見えない……


スピーカーの私は、大きいとか小さいとか言ってる、
記者に言わされたやつだ、何でも、買ってくれた人への特典とか言ってたな


さっきから無音だったサーニャの方から、すすり泣くような音が聞こえる……


つららが胸に突き刺さったような……そんな衝撃を受ける


私……最低だ、何が胸だ、そんなに揉みたいなら自分のでも揉んでればいいんだ!!
そんなくだらない事でサーニャを傷付けて……泣かせて……

なのに…まだ、どうやって許してもらおうか考えてる……

謝らなきゃ、そして伝えるんだ私の思いを!!
私は、すくっと立ち上がり、振り返って言う


「サーニャ……あの……ホントにごめん……私は……胸を揉んで喜ぶようなバカだけど……サーニャを傷つけるつもりなんてなかったんだ……」

サーニャは私に背を向けたままだ……
でもそんなこと関係ない、言うんだ!!

「ホントは……私は……サーニャに、ずっと……ずっと……笑っていてほしいだけなんだ……だって……私はサーニャのことが……」


言うんだ!! 私の思いを!!
174続きを言って:2009/02/07(土) 15:48:33 ID:DGBm5gW8


「サーニャ!!!! 大好きだ〜」 サーニャ!!!! 大好きだ〜



あれ……? 何か声が被った気がする……


私はスピーカーの方を見る、
スピーカーは、 好き〜好き〜好き〜 と音を吐き出し続けている……
これは……記者にサーニャの事が好きなら告白の練習しよう、とか何とか言われてやらされたやつだ……
取られてたんだ……何か、せっかく覚悟きめて告白したのに、台無しな気がする……


するとサーニャは、ベッドからスッと立ち上がると、私の方へと真っ直ぐ歩いてくる、うつむいていて表情が読めない
ぶたれるのか? それで丸く収まるのなら……だけど……許してくれなかったら……


「あっ……」


サーニャは、そのまま、私の真横を通り過ぎていった、表情が見えない……いや、見れない……


そりゃそうだ、丸く収まるわけない……私は、サーニャを傷つけたんだ……泣かせたんだ……
せれを許してもらおうなんて……虫が良すぎるじゃないか……


声がでない……たぶん今、私は真顔のまま泣いているのだろう、鏡で見なくたって分かる……



ちょっとだけっ じゃなく、もう…これは!!

スピーカーの私が叫んでる……やめてくれ……むなしくなるだけだ……

すると、プチッという音と共に、プレーヤーの作動音が消えた、
175続きを言って:2009/02/07(土) 15:50:47 ID:DGBm5gW8
無音の部屋……



近づく足音……



突然だった、サーニャが突然、私の背中に抱きついてきたのだ


「続きを……言ってよ……」

私は、お腹に回されたサーニャの細く美しい腕を見ながら言葉の意味を考える……



「ごめんねエイラ……私ね……高慢なの」



「エイラは……いつも、私のわがままを許してくれるのに……私は……」



「でも……いやなの……エイラには……私だけを見ててほしいの……」



「おっきくないけど……物足りないかもしれないけど……でもがんばるから……だからっ!! 」



「ちょっとだけじゃなくて……何なの? ねぇエイラ……」




私は、お腹に回された腕をゆっくり解き、ふり返る、
ずっと泣いていたのだろう……サーニャの目が腫れている、
改めて、私は何をやってたんだろうと思う……

私は、サーニャの両肩に手を乗せ覚悟を決める……


「サーニャ」


ゆっくりと……一言一言に、気持ちを込めて……


「ちょっとだけじゃなくて、ずっと一緒に……側にいてください。」


「はい……」



私は、サーニャの………
176名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 15:59:58 ID:DGBm5gW8
以上です。
まずは読んでくれた人すべてに感謝です。

こんなグダグダな…作品もどきを
投下して本当によかったのか……

後、改行と…が多くてすみません
最後は、

唇に、キスをした

胸を揉んだ

どちらか好きな方で妄想してください。
それでは本当にありがとうございました。
177名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 16:00:00 ID:9muQ650X
どんと来い!!
178名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 16:02:13 ID:dcHxRXQ2
>>176
初投稿でこれとはやりおるわ
せっかくだから俺はキスをして胸を揉んだ を選ぶぜ!
179名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 16:09:00 ID:U/feSTHv
>>176
おおおおおお、GJGJ!
秘め声はよかった、色んな意味で…

見てたら自分のSSの粗に気付いてしまったので訂正させてください
>>157の「アレクサンドラ・ウラジミーナ・リトヴャク」を
「アレクサンドラ・ウラジミーロヴナ・リトヴャク」に変えて補完お願いします
失礼いたしました
180>>176:2009/02/07(土) 16:11:31 ID:DGBm5gW8
>>176ですが

いやぁ、ホントに文章って書くの難しいですね。

小、中、高と面倒だからという理由で、
論文とか作文をサボっていた付けがここで来た感じです。

国語の、何喋ってるかよく分からなかった先生!!
まじめにやらなくてすみませんでした
1816Qn3fxtl:2009/02/07(土) 16:12:16 ID:Ivlei8Ar
>>162
それを言うなら、その48手を見て脊髄反射でSS投下してしまった私のほうこそ
反省すべきなわけでw
>>162 さんが48手投下してくださったお陰で私のような新人も増えて、
スレが一層盛りあがってきたわけですから、むしろ感謝したい気持ちで一杯ですよ。

重複のようなお題や、違いがわかりにくいお題については
むしろ書き手が自由に解釈する余地が残されていると思えばいいんじゃないでしょうか?
同じシチュエーションで2本書けると考えるのもよし、
似ているけれどちょっと違うシチュと考えるもよし。
悩む部分があるのも、楽しみの一つじゃないですかね?


>>176
GJ! 見事なエイラーニャです。 余韻を残す終わらせ方もいいですね。
182名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 16:13:02 ID:9muQ650X
リロード忘れとったorz

>>176
初投稿とは思えない2828なエイラーニャGJ!!
胸を揉む→怒ったサーニャから何故かキス、でお願いしますw

>>2の多い人
いつもながらGJ!!
今後スオムス組の登場はあるのかな…?
ニパとかニパとかニパとか(ry
味噌汁の続きも待ってます!
183名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 17:02:20 ID:tCHczliU
イッル、今度は何を企んでいるんだ?
いい加減重いんだが…。

「なぁイッル」
「んあー?」
「いつまで私に乗るつもりだ?」
「さあー?」
「頼むから降りてくれ…」
「やだ。眠いシ…」
「ならベッド行けよー」
「それもやだ。ニパあったかいんだモン」ギュ

おいおいおい!押し付けるな!首、首しまる!

ふぅ…。にしてもイッルのやつ…いつのまにこんな柔らかくなったんだ?
それにいい匂いが…。くん…。

―――っ!なにしてんだ私!変態みたいじゃないか!

「ニパァ…じっとしててくれヨー…」
「え、あ、あぁ…すまん」
「んー……」

うー、イッルの顔が近くに…。息が…当たってる…。
くそ…このままじゃ理性が保たん…。
イッル頼む…そろそろ離れてくれ…。

「イヤ。だってニパのくせにいい匂いするんだモン」
「いぃ!?」
「くんくん……。それになんかおちつくんだよナ…」
「ちょま、イッル!――ひゃんっ」
「胸…結構あるんダナ…。驚いたゾ…」
「今までっ!何度もさわ、ぁん…さわってきただろ!―んぁっ」
「あーやっぱいいナ…。…ところでニパ」
「んっ、な、なんだよ」
「ここ…私の特等席にスル」
「…ちぇ、わかったよ」

END
184名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 17:03:30 ID:tCHczliU
以上です。いきなり投下すみません。

21X2w2Ib様
続き待ってました!
味噌汁も48手も楽しみにしてます!

>>176
初めてなのに上手いなぁ…。
少し才能を分けてほしい。

第15手 おんぶ・背中へ一方的にのしかかる
ってこんなかんじでしょうかね?
胸揉んじゃいましたけど…。

最後オチつかなかったけどまぁいいか。
LWqeWTRGでした。
185保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2009/02/07(土) 18:18:11 ID:3WVPGXsH
GJGJ、北欧組は誰が書いてもたまらんですなあ
記憶喪失の続き待ってた!!しかし終わらなかった!!もう気になって仕方ないじゃないかー!!

で、48手だけど私も何も考えずにコピペして順番整理しただけなんで不備があるようで申し訳ない。
未投稿の題だけならまだ修正間に合いますけどどうします?
>>181の言う通りということならそれでいいですけど、
厳密さを要求するような流れになったりしたら困るなあとも思ったので一応訊いてみるテスト。
186名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 18:42:55 ID:pE6j6sPG
もし今出てる2つ消すなら朝チュンとプロポーズが入るなあ…イヤ、めふん、……ナンデモナイ

やっぱり順番で並んでるから替えるのはむつかしい、か?
187名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 19:05:04 ID:3nHHUEN2
たしか元のには「ふたりだけの秘密」みたいなのがあったはず。なんで消えたのかな
あと「泣いてるのをあやす」と「間接キス」があってもよいのに
はい、ただの趣味ですがなにか?
188名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 19:17:39 ID:/2DvJO15
>>140 apsV9PCZ様
GJ! 智子×ビューリングいいですね。wktkしながら読みました。もっとお願いします。

>>161 21X2w2Ib様
GJ! 続きが気になります。楽しみにしてますので、どうか続きを……。

>>176
GJ! 初投稿とは思えぬ腕前、お見事です。

>>184 LWqeWTRG様
GJ! イチャイチャっぷりに萌えました。この二人も捨てがたいw


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
何だか「四十八手」とやらが色々盛況なご様子(未だに浦島太郎状態
と言う訳で私も書いてみました。

まだ誰もやってない(筈の)第5手「腕を組む」いきます。
189第5手 腕を組む 01/05:2009/02/07(土) 19:18:42 ID:/2DvJO15
「何でこんな事をしなけりゃいけないんだ」
「仕方ないわよ美緒」
ミーナにたしなめられ、美緒はううむと唸った。
今夜行われる軍と政府の合同会議の後、社交会と称してダンスパーティーが用意されているのだと言う。
そこで少しは社交ダンスも出来ないと……と言う訳で、美緒はミーナの部屋で、ダンスの手ほどきを受けていた。
「私は軍人だぞ。踊りをしに欧州に来ている訳ではない」
「でも、佐官としては、こう言う知識も少しは必要じゃなくて?」
「まあ、な」
美緒はふと、祖国の同僚を思い出した。
「リバウの貴婦人」と呼ばれた彼女なら、きっとこう言う事もうまくこなすに違いない……。
考えを巡らせているうち、くいと顔をミーナの方に向けられる美緒。
「何、考えてたの?」
少し疑いの混ざった眼差し。
「いや、別に」
「余計な事は考えなくて良いの。私が教えるから、貴方は言う通りにしてね」
「分かった」

ミーナは操り人形みたいにぎこちない美緒の腕を取り、ポーズはこう、動きはこう、と教えていく。
「そう。それで私と合わせて。試すわよ。一、二、三……そう、足のステップはそれで良いわ」
「難しいな。肩も凝る」
「ネウロイとの戦いや貴方の剣術みたいにうまくいかないのは仕方ないけど、最低限はマスターしてね」
「さりげなく厳しいな、ミーナ」
「これは貴方の為でも有るし……、上官としての私の立場も分かって頂戴」
「ミーナの為とならば仕方ないな」
ミーナはふっと笑い、美緒の手を取った。
「さあ、続き、行くわよ」

ミーナの部屋の外で、中の様子を窺う人影がふたつ。
「なんか、リズム取ってる感じ……」
「リズム? 何やってるンダ?」
「何か入りづらい。どうしよう」
そう言って傍らに立つエイラに声を掛けるサーニャ。
うーん、と首を捻った後、おもむろにポケットからタロットを取り出し、一枚引き、出たカードを見てぎょっとする。
「な、何だコリャ?」
「んもう、エイラったら」
サーニャは少し呆れた顔をしてドアに手を出す。
「ま、待て」
サーニャの手を抑えるつもりが、思わずバランスを崩し、体重がドアに乗ってしまう。

かちゃり。どさっ。
物音に敏感に反応し、きっと顔を向けるミーナと美緒。
「う、うワ」
部屋の中に倒れ込んだエイラが、見てはいけないものを見てしまったかの様な顔をして、怯えて後ずさった。
「どうした、お前達?」
美緒が固まったまま、不思議そうに問い掛ける。
「すいません、書類を……」
「あら、サーニャさん。せめてノックくらいして欲しかったわね」
ミーナも咄嗟の事でダンスのポーズのまま、美緒とふたりして動きを止めていた。
「ミーナ隊長に少佐、何してんダ?」
「見ての通りさ」
「どうしてダンスなんて?」
「今夜の会議の後の社交会で、必要なんだそうだ。私にはこう言う欧州のマナーとかの心得が無いからな」
「そうなの。ちょっとみ……坂本少佐に、お稽古つけてたのよ」
取り繕うミーナ。
「あの」
サーニャが書類を机に置いた後、意を決したかの様に言った。
「私、お手伝いします」
「お手伝い?」
190第5手 腕を組む 02/05:2009/02/07(土) 19:19:35 ID:/2DvJO15
一行はミーティングルームに移動した。訓練などの時間中とあって、他に誰も居ない。
これ幸いとばかりに、ミーナと美緒はテーブルや椅子を脇に少しどかし、サーニャはピアノを準備した。
改めて準備が整うと、ミーナははじめの姿勢を取った。
すらりと伸びた脚、しなやかにこちらを招く腕、柔らかな指先がとても美しい。
美緒は思わずごくりと唾を飲んだ。
「じゃあサーニャさん、ワルツで、少しテンポを遅めにね。曲は何でもいいわ。リズムがはっきり取れるのをお願い」
「了解しました」
ズンタッタ、ズンタッタ……サーニャが控えめにピアノを奏で始めた。
「さあ、美緒、私の手を取って」
「あ、ああ」
「もう始まっているから、姿勢を正して。そう……で、私と腕を……」
手を繋ぎ、腕を組む。
リズムに合わせて、二人はミーティングルームの空間で、改めてワルツを踊り始めた。
「一、二、三、一、二、三……そう、うまくなったじゃない美緒」
「そうか?」
「ほら、横を見ないの。次でターン、で、またシャッセ」
「おっとっと」
「大丈夫?」
「足の運び方が慣れない。なんだか足首をひねりそうだ」
か弱い撫子らしいと言うべきか、普段の剛毅さは無く、ただ泣き言が漏れる美緒。
「今は普通の靴だけど、社交会場ではヒール履くんだから」
「ひ、ヒール? 私がか? あんな不安定なの履けん」
「頑張って」
にっこり笑うミーナ。
「あんなバランスが不安定な靴で、しかも踊るのか……器用だな」
「踊る事しか出来ない人は、私達がストライカーで空を飛んで戦うのを見て、びっくりする筈よ。それと一緒」
「そう言われてもな」
「はい。じゃあ続き。……サーニャさん、少しだけテンポを早くしてくれる?」
「分かりました」
「助かるわ。声でテンポ取るだけだと、どうしても単調になるのよね」
「私はその単調なのに、未だに慣れんのだが」
「慣れよ、美緒」
「うう……扶桑舞踊ですら苦手なのに、欧州のなど……」
「ほら、文句言わないの。佐官の仕事よ」
説教しつつも、ミーナは嬉しそうだ。
美緒も、ミーナの動きに必死についていく。

「少し、慣れてきた」
「そうね。スローワルツだから、比較的簡単だし、応用も利くわ」
「しかしミーナは何処で習ったんだ?」
「淑女のたしなみよ」
「そうか……と言う事は」
「?」
「いや、何でもない。ミーナは私と違って経験豊富だからな」
不意に足を止めるミーナ。
「それは誉め言葉?」
「勿論そう取って貰いたい」
「そう。なら良いんだけど」
再び動き出す二人。
サーニャはゆったりとしたペースで、ワルツを弾いている。
「凄いなサーニャ。ワルツって言われただけでこんなにたくさん演奏出来るノカ」
「ワルツはリズムが三拍子で簡単なの。リズムをきっちり取れば、後は即興でも」
「流石、音楽家なんだナ、サーニャは。……弾いてる姿、楽しそうダゾ」
「そう?」
ピアノを弾きながら、エイラに微笑みかける。ピアノを自在に操る美しさに、エイラは胸の奥の部分を射抜かれ、
かあっと頬が熱くなった。
191第5手 腕を組む 03/05:2009/02/07(土) 19:20:32 ID:/2DvJO15
「……ワルツだ。ワルツが聞こえる」
「何で?」
「ウニャッ!! ミーナ中佐と坂本少佐が踊ってる」
「ほ、ホントだ……」
訓練やら任務を終えて戻って来た隊員達は、不思議な光景を目にする事になる。
楽しそうにピアノに向かうサーニャ。
時折言葉を交えながら美緒を指導し、舞うミーナ。
真剣な面持ちでミーナについていく美緒。
サーニャの傍らで、ゆったりとした面持ちで曲を反芻するエイラ。
一同は、ミーナと美緒に釘付けになった。その視線を浴びて、美緒の耳元で囁くミーナ。
「ほら、皆見てるわよ?」
「うっ? な、なんで……晒し者じゃないかこれじゃあ」
「私は楽しいけど……ほら、足をもう少し近く」
「あ、ああ」
頬を少し赤らめて、ミーナのなすがままステップを繰り返す美緒。
そんな姿を見て収まりがつかない者がひとり。
「な、何故少佐が中佐とワルツを!? ワルツくらいなら、ガリア貴族の子女たるこのわたくしが……」
「ベ、ペリーヌざん、ぐるじいです、首がら手をっっ……」
「芳佳ちゃんの首しめないで!」
「お前ら少しは落ち着け」
シャーリーが呆れてペリーヌ達をなだめる。
「ミーナ。少佐とどうしてワルツを?」
トゥルーデが全員を代表して質問する。
動きを止めたミーナは、少し乱れた髪をふぁさっと戻し、にこりと笑った。
「今夜の会議の後、社交会が有ってね。そこで」
「なるほど」
「本当は他にも教えたかったんだけど、何せ急だから、比較的簡単なワルツなんてどうかと思って。
サーニャさんにも協力して貰ってたのよ」
「シャーリー、あたし達も踊ろうよ!」
「あたしはどっちかと言うとワルツよりも……」
美緒は笑うと、皆に声を掛けた。
「何なら、皆で練習してみるか? せっかくだ。ちょっと狭いがな」
「じゃあサーニャさん、続きをお願いね」
「はい」
ピアノの演奏に合わせて、数組がペアを組み、円舞を始める。
その光景を見て、トゥルーデはカメラを引っ張り出し、ぱしゃりと一枚収めた。
「トゥルーデ、写真ばっか撮ってないで、私達も。ね?」
「ああ」
エーリカに引っ張られ、輪の中へ入るトゥルーデ。
「シャーリー、足ばらばら」
「トロいの苦手なんだよなあ……ルッキーニだってステップぐちゃぐちゃじゃないか」
「シャーリーと一緒で楽しいから、あたしはこれでいいよ」
「そっか。あたしもだ」
「リーネちゃん、上手だね」
「昔、姉妹でちょっと練習した事あったから……。芳佳ちゃん初めて?」
「うん。全然」
「私が教えてあげるね」
「ありがとう」
192第5手 腕を組む 04/05:2009/02/07(土) 19:21:52 ID:/2DvJO15
一人取り残されたペリーヌはエイラのそばに寄ってきた。
「どうしたんだヨ。誰かと踊らないのか?」
「相手がいないのにどうやって」
「そっカ」
にやけるエイラ。
「てんで不釣り合いですけど、暇そうにしてるから、エイラさんとならご一緒しても宜しくてよ?」
「ん〜。見てるだけでイイヤ」
「なんですの、そのなげやりな態度は! わたくしが気に食わないとでも!?」
「ナンダヨモー。ホントは、私だってサーニャと……」
そんな二人のやり取りを横で聞いて、くすっと笑うサーニャ。
「二人も踊って」
「え? 良いのか、サーニャ」
「私はこうして弾いているだけで楽しいから」
「わ、分かった……今日だけ、今日だけダカンナ!?」
「わたくしもですわ!」
二人がおずおずと輪の中に入る。
全員がゆったりとしたペースでステップを踏み……暫くして、自然とペアが入れ替わる。
「あら、ペリーヌさん」
ミーナはペリーヌの手を取った。
「中佐、これもお勤めとお聞きしましたが」
「そうなのよ。坂本少佐は出たくないみたいだけど、私達佐官だから仕方ないわね」
「でも、ダンスでしたら、わたくし多少心得が有りますから、お教え出来たのに」
「そうね」
ミーナは苦笑し、言葉を続けた。
「ペリーヌさんは本当に上手いわね。いっそ、今夜の社交会、私達と替わってもらおうかしら」
「え!? そ、それはちょっと……」
ふふっと笑うミーナ、困り果てるペリーヌ。
ピアノを操るサーニャは少し悪戯心が出たのか、リズムはそのままに、演奏ががらりと即興曲に変わった。
ピアノを弾く手にも力がこもる。
「ハニャ? 曲変わったよ」
「サーニャやるな」
いつしか輪も一周し、元のペアに戻る。
「さすがね、サーニャさん。……いつかサーニャさんと一緒に、コンサートを開きたいわ」
「ミーナとサーニャなら、さぞかし美しいものになるだろうな。いつか聴いてみたいものだ」
「ありがとう、美緒」
「礼を言うのはこっちさ。何だか全員でワルツと言うのもな」
笑みがこぼれる。
“すてきなワルツ練習会”は、夕食前まで続いた。
193第5手 腕を組む 05/05:2009/02/07(土) 19:24:16 ID:/2DvJO15
基地の前に黒塗りの立派な車が停まった。
礼服姿のミーナと美緒。いつもは付けない飾帯やら勲章やらもごてごてと軍服の上に付け、服に着られている印象だ。
「私は嫌なんだ、こういうのは。何か苦しくてな」
「良いから。今夜限りだから我慢して。ね?」
「……分かった」
周囲では、そんなミーナと美緒を見て隊員達が驚きの声を上げていた。
「やっぱ勲章付けるとカッコイイねえ、二人とも」
「二人とも、我らが501の誇りだな」
「いってらっしゃい。お土産楽しみにしてるよ」
「そう言うとこじゃなくてよ。……さあ」
ミーナがすっと手を差し伸べた。美緒は慣れぬ手つきでミーナの手を取り……
ぎこちなく、そっと腕を組み……車に乗り込む。
そんな二人をにこやかに見送る隊員達。手を振る者も居る。
ミーナと美緒が車のドアに手を掛け、閉めようとしたその時。
あの忌まわしい、いつもの警報音が鳴り響く。
舞踏会に行く前にときが来て鐘が鳴ってしまった……、そんな腑抜けた印象だ。魔法は行く前から“解けて”しまったのだ。
「ネウロイか!」
「こんな時に?」
司令所から連絡を受ける。今回のネウロイは、大型が二体。
間の悪い事に監視網の不意を付かれたらしく、既にブリタニア本土のあと僅かまで迫っていた。
他の基地からは既に邀撃のウィッチが多数離陸しているとの情報も受けた。
「ミーナ……」
「私達が出ないと、示しが付かないわね」
「そうだな」
ミーナと美緒は車から降りると、運転手と従者に邀撃の旨、今回の会議と社交会の欠席の件を伝えた。
「行くか。空へ」
「ええ」
おろおろする一同を目の前に、ミーナが凛とした表情を作った。
「ストライクウィッチーズ、全員出撃準備、急げ!」
「よおし、楽しい楽しい、“魔女(ウィッチ)”の時間の始まりだ!」
美緒は礼服を脱ぐと、皆に向かって怒鳴った。

end

----

以上です。
一応オールキャラ寄りのミーナ×美緒メインになりますかね。

単に「腕を組む」だけなのもな〜とか考えているうちに、
ワルツなんてどうだろう、と思い付いて書いてみました。
社交ダンスについては全く知識無いのでグーグル先生に少し聞きました。
正直、今も全然分かりません。雰囲気だけでも伝われば幸いです……。

ちなみに、最初からふたりを社交会に出すつもりはありませんでしたw
男なんていらねえんだよ!(ry と言う事でw

ではまた〜。
194名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 19:59:19 ID:o92vQT8x
>>193
GJです!
ペアくみ出したときはペリーヌが余るのではと心配になりましたが、余らなくて安心しました。
良かったね、ペリーヌ…


>>185
48手は変更しなくても各々の解釈で違いを出せると思うので進行に支障はないとは思いますが、
修正した方がネタの種類が増えて面白そうですね。
どちらかといえば修正に賛成です。
195名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 20:15:28 ID:7s/NUGYt
>>193
完全に自分にストライクのSSですわ…GJ
読んでて頭にシーンが浮かんでくるまるで映画みたいなSSですな、最高です
テンポも良いしキャラの個性が出た話の作りの丁寧さもさる事ながら心理描写もおざなりになってないし
それにサーニャの動かし方が上手いなあ。サーニャは個人的に難しいので憧れます
そして何気に冒頭のミーナさんが怖いw
196リーネ×ペリーヌ 1/2:2009/02/07(土) 20:18:06 ID:k7pmWPXB
 ペリーヌ・クロステルマンの朝は早い。
 朝の5時前には起床し、身だしなみを整えながら今日の予定をチェックする。目を通さなければ
ならない報告書がそろそろ危険な量になってきたので、朝食を後回しにしてデスクに腰を下ろした。
見上げるような書類の山を三つに分け、視覚的なダメージを気持ち軽減しながら、許可、条件付許可、
要修正、寝言は寝てからお言いなさい、の山に分けていく。それから許可と寝言以外の山をさらに
具体的に切り分けていく。担当者に一任できるもの、専門家の相談が必要なもの、政府や自治体への
打診が必要なもの、自分の権限で裁量できるもの。修正項目をいちいちメモし、担当者に送り返す。

 中佐も501でこんな苦労をなさってたのかしら…

 内に問題児、外にネウロイというトラブルをかかえながら、501を切り回していた才媛を思い出す。
そのうえ政府高官とも互角に渡り合っていたのだから、いまさらながら頭が下がる思いだ。

 それに比べれば、私の相手など精々現場監督ですわ。この程度で音は上げられません。

 条件付許可の山が、処理済の山に姿を変えたとき、執務室のドアが控えめにノックされた。
「どうぞ」
 相手も確認せずに部屋に通す。誰何する時間すら、今のペリーヌには惜しい。
「おはようございます、ペリーヌさん。あさごはん、持ってきました」
 トレイと共に顔を覗かせたのは、同僚であり、部下であり、戦友でもあるリネット・ビショップだった。
ここ半年ほど、一緒にガリアの復興にあたってくれいる。なぜ他国の一下士官にすぎない彼女が
ガリアの戦災復興などやっているのかというと、当のブリタニアから申し込みがあったからだ。
ペリーヌには把握し得ない色々な政治的要素も絡んでいるらしい。隣国カールスラントや、地球の
裏側からの口添えもあったとかなかったとか。ブリタニアには多大な物資や人的資源の援助を
受けているため、微妙に役立たずとはいえ、仮にも戦功ある魔女を派遣してくれるという申し出を
無碍に出来なかったという理由もある。
 その当人は備え付けの丸テーブルをさっと拭き、その上にお手製の朝食を並べたあと、紅茶用の
湯を沸かしに別室のキッチンに消えていった。すでに時刻は7時を回っている。
 ペリーヌはひとつ伸びをした後、革張りのチェアから立ち上がった。2時間近く集中していたせいで、
肩と目が痛い。肩をぐるぐる回しながら眉間を揉めたらどんなに気持ちいいか知らないが、他人の
目がないとはいえ、誇りある貴族がかようなオッサン臭いマネはできない。数回首を傾けるだけで
なんとか我慢する。
 朝食を済ませたら書類の残りをやっつけて、作業の進捗と物資の確認をして、きっとそのころには
また書類が届いているから、時間があったらそれも片づけて、進捗報告書を書いて…やることは
山のようにある。貴族の義務とはいえ、目の前を塞ぐ高い壁にうんざりしそうになるが、気合い一つで
胸の奥に押し込めて、ペリーヌは朝食の並べられたテーブルについた。

 カールスラントでも、ロマーニャでも、リベリアンでも、オラーシャでも、スオムスでも、扶桑でもみんな戦っている。
 これがわたくしの戦いなのだ。せめてみんなと再会したときに恥じることのない戦いをしよう。 
197リーネ×ペリーヌ 2/2:2009/02/07(土) 20:29:20 ID:k7pmWPXB
「ペリーヌさん、肩、凝ってるんですか…?」
 あっという間に見抜かれた。食事がひと段落して、リーネの淹れた紅茶を楽しんで
いるときだった。疲れたところに美味しい食事と紅茶ときて、少し気が緩んだのかもしれない。
肩を気遣うそぶりは最低限に抑えたはずなのに、これがスナイパーの眼力なのだろうか。
「いっ、いいえぇ、わたくしそんなことは決して…」
 あわてて取り繕うが、ちょっと声が裏返った。くすくすと柔らかに微笑みながら、
「半年もいっしょにいれば、ペリーヌさんのクセはだいたいわかりますよ。それに、私も
肩凝りやすいですから…」
「…嫌味かしら後半」
「ふぇっ?」
「いえいえ、何でもないのよ何でも…うふふふふ…」
「は、はぁ…あははは…」
 いけないいけない。善意から心配してくれた友人を嫌味だなどと。そう、相手はお脳の
栄養が目と胸に行ったド天然。悪気なんてないに決まってますわ。
 嫉妬満載の心中を笑顔で隠し、そうですわねえ、とペリーヌは同意してみる。
「そう言われれば確かに肩が重い事がありますけど、たかが肩凝りで弱音を吐いていては
ガリア貴族の名折れ。なにより、屋外で作業されている方たちに申し訳が立ちませんわ」
 そういって外を見やる。ガリアの市街は、半年前とは見違えるような復興を遂げていた。
ブリタニアをはじめとする各国からの物資や金、人などの援助はもとより、隣国やガリア南部に
避難していたガリア国民が徐々に集まり、自らの手で積極的に復興作業にあたっていたからだ。
「そうですね。皆さん毎日一生懸命がんばってらっしゃいます」
 相槌を打ちながら、ペリーヌは別の方向へ思考を切り替えていた。ガリアには町も人も戻ってきた。
が、ネウロイの脅威が根絶されたわけではない。ペリーヌも魔女として再び戦場に赴かなければ
ならないだろうし、リーネもそうだ。だが政情不安定な祖国を措いて征くのも、貴族としての責務を
放棄しているようで気に入らない。最悪の場合、さらに混乱を招く可能性もある。むしろ頭が痛いのはこれからなのだ。
「…私もいろいろお手伝いしたいとは思っているんですが、最近の『ドジと下手糞は戦場に出るな』という
職人さんたちの風潮をみるとですね、手伝いたいけれど手伝わないという二律背反が私を苛むので
ですね…聞いてますか? ペリーヌさん?」
「ええ…そうですわね…」
「そうですよね。私としては最近ご飯とおやつを作るぐらいしかお仕事がないんです。そこでペリーヌさんの
お手伝いをと思いまして。よかったらでいいんですけど、最近ペリーヌさんもお疲れのようですし」
「えぇ…そうですわね…」
「ちょうど肩が凝ってらっしゃるようなので、ぜひわたしに揉ませていただけたらなぁ、と…」
「えぇ…そうですわね…」
 むろん、遠大なるガリア復興への道を脳内でたどり始めたペリーヌはろくに話を聞いていなかった。
しかも途中で色々混ざったらしく、『おっぱい魔人・宮藤芳佳にさらわれたリーネ。僚機と共に救い出す
作戦を立てるが、芳佳によって僚機は次々と落とされていき、残るはペリーヌと、坂本美緒の二人だけに。
二人は、愛のパワーによって宮藤芳佳を打倒するが、姑息な宮藤芳佳は、なんとリーネの手足を触手へと
変化させ、ペリーヌと美緒の体を拘束してしまう。ひんやりとした触手がペリーヌの首筋に絡みつき、
心地良い間隔と強さでもみ、もみ、
「ひゃぁあんっ!?」
「ひゃあっ!」
 いつの間にかリーネが後ろに回り込んで、ペリーヌの肩を揉んでいた。淑女としてあるまじき奇声を発して
しまった羞恥心から、ペリーヌは猛然とかみついた。
「なにをなさいますのッ!?」
「え、だってペリーヌさん揉んでいいって…」
「誰がそんなことッ、………言ったかしら、あら……?」
「言いましたよぉ…もおっ、ちゃんと私の話聞いててくださいよっ」
「ご、ごめんなさい…」
「じゃあ、揉みますからね?」
「え、ええ…え?」
198リーネ×ペリーヌ 3/3:2009/02/07(土) 20:31:45 ID:k7pmWPXB
 リーネはふたたびペリーヌの肩に手をやり、ゆっくりと力を込める。強すぎず、弱すぎず、一定のリズムで
ペリーヌの疲れを癒そうと動く。思わずペリーヌの唇からわずかに吐息が漏れる。布越しにリーネの体温を
感じる。優しい指使いを、力を込めるたびに漏れる吐息を感じる。そして、指が離れていくたびに失われる
温もりを寂しく感じる。ふたたび触れられる暖かさを嬉しく感じる。そういえば、誰かにこうやって触れられるのは
いつぶりだったかしら、とおぼろげな意識で問う。問いは霞に消えて、リーネのやさしさにゆっくりと沈んでいく。
「ん。…ん。…ふ。…んん…」
 きもちいい。
 予想以上にペリーヌは疲れていたらしい。肩の凝りがほぐれていくと同時に、ゆるやかな睡魔が薄く火照った体を包んでいく。
一瞬だけ、残した仕事が頭をかすめ、闇に消えた。

 リーネは静かにカーディガンを脱ぐと、そっとペリーヌの肩にかけた。カーテンを閉ざし、すこしだけペリーヌの寝顔を眺めて、
前髪を指先で整えたあと、頬に触れるか触れないかのキスをした。 最後に一度だけ振り返り、
「…おやすみなさい、ペリーヌさん。良い夢を。願わくば、私の…」
 そっと扉が閉じられる。

199名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 20:35:00 ID:k7pmWPXB
//最後の最後で改行制限にひっかかってしまい全3レスに。
ほんと申し訳ない…
初めてSSというものを書いてみたが、めちゃめちゃ難しかった…
他の作者の方たちの苦労を身をもって知りました。ハイ。
すごく読みづらいかもしれませんが、がんばって書きました。
よかったら読んでください。

ちなみにこのカップリングなんて呼ぶんだろう?
リリーヌ?
200名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 20:50:00 ID:o92vQT8x
>>199
初投稿お疲れ様です。 カップリングの呼び方はペリーネですね。
ペリーネ作品はペリーヌが惚れる側のことが多いので、リーネが惚れる側になってるのが珍しくて面白かったです。
201名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 20:58:28 ID:j2rMmY/G
なんだろう。最近ペリーネにぞっこんだ。なんかこうちょうどいい具合というか。ドキドキしてこないか宮ふ(ry

というわけで>>199さんGJですだ!
ほっぺにちゅってなんかクるんだよなあ
202名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 21:13:50 ID:H0QtS6Nz
このスレSS多いのはいいんだがもうちょっと雑談も増えてほしいぜ
203名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 21:19:02 ID:5tVFIvJ5
実はここ数スレほとんど読めてない
204名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 21:21:40 ID:7s/NUGYt
>>199
これで初書きってどんだけの逸材…初めの頃リーネちゃんが芳佳に抱いた気持ちが分かるわw
ペリーネも良いコンビですな。GJ!面白かった

>>202
遠慮せずにしちゃえばいいんだぜ
205名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 21:31:03 ID:VEe9CBYL
>>202
雑談しながらもssを読めるすばらしいスレですよ?
さあ君の魂の叫びを書くんだ!!!

シャーーーーーーーーッキーーーーーーーニーーーーーー!!!
206名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 21:39:05 ID:HvYbuHPf
みんなGJだ。
このスレがあるから、生きていける。

そして喫茶店の続きまだー??
207名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 21:39:22 ID:9muQ650X
ニパあああぁぁぁぁ-----!!!
208名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 21:46:26 ID:HvYbuHPf
ニパはもうこのスレでの印象が強すぎて、
この先たとえ公式でどんなキャラ付けがされたとしても、
「ニパ、どんまい!」としか思えなくなったw
209名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 21:47:11 ID:7s/NUGYt
このスレでニパを知った人はいらん子買って驚くだろう
出てないじゃん!と
210名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 22:30:38 ID:9muQ650X
ニパって何かの作品に登場してる?
フミカネの所でしか見てないんだが…
211名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 22:40:39 ID:NM3dW4mC
今日はバレンタイン1週間前か
そろそろサーニャあたりがエイラのためにマフラーを編み始めててもおかしくないな
212名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 22:56:54 ID:d2QFn+wl
皆様GJです!!
特に21X2w2Ib様GJ!!やっぱえいらにゃはいいなぁ。
続き期待しております。エイッカさんとかも出るのでしょうか?

とりあえずニパの設定を捏造しすぎて怒られるような気がしている。
まぁもう開き直っているけれども…あれ、やっぱまずいのですかね。
あと今日は投下できないのだけど27手で書いちゃったので変えられると少し困ってしまいます…
213名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 23:01:27 ID:YTwK+HYF
ニパの雄姿(ついていない)が見れるのはコンプエースのバックナンバーと
「ストライクウィッチーズ オフィシャルファンブック コンプリートファイル (P.87)」だけ!

…の筈。

>>211
それもそうだが21日にはエイラの誕生日だから、サーニャは色々考えているはず。
そして明後日はクリスの誕生日だから、実は料理もOKなお姉ちゃんは今から準備に余念がない筈。
おまけに13日にはシャーリー、パスタ准尉は27日、28日はペリーヌと来ると、
大変なのは祝う準備をする側と言うよりSS職人の方々と言わざるを得ないw
214名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 23:05:57 ID:d2QFn+wl
フミカネ画集でも見れますよ。
コラム部分は見れませんが、自分はニパが見たいがためにフミカネ画集を買ったので確かです。
215名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 23:09:16 ID:YTwK+HYF
あとマンガの方で活躍の竹井さんとか(2/13)
ハイデマリー(02/16)黒江さん(02/17)を忘れてた…

つまり何が言いたいかと言うと、二月は誕生日ラッシュです。連投スマソ
216名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 23:14:00 ID:d/+GZWvK
資料がないのに去年の9月初旬でニパ初登場(いらん子も初登場)
その一月後には主役で登場
ここの妄想力と連携はすごいな
217名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 23:17:03 ID:3bLbubbX
マイナーカプ好きでいるのがだんだんつらくなってきてしまった…ああ
218保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2009/02/07(土) 23:47:30 ID:3WVPGXsH
>>193>>199GJ!!手取りナニ取り上官コンビも優しいペリーネも素晴らしい。

個人的には攻め受けの定義が作者の中で決まってるなら、
ペリーヌが受けなのにペリーヌの名前が先にくるのはちょっと違和感が……。
断固"サーニャイラ"推しの私としては、リーネ攻めを主張するなら"リリーネ"の方が相応しいのでは?と思います。
まあどうでもいい人にはどうでもいい話なのですが、保管庫に入る時は呼称通りの表記になるのでご了承ください。

本題の48手ですが、やはり書きかけの方がいる危険と、
代替候補決定が独断にならざるを得ないのを考慮して、現状維持ということにします。
ただのはみ出し企画がスレに妙な抑止力を与えるのも変な話ですし。

素晴らしいSSが雑談の妨げになるなんてあってはならない話のはず。もっとどうでもいい妄想も書こうぜ!!
例えばペリーヌってナニの時噛み癖ありそうですよね、とか。
前に某SSでリーネがエイラに肩を咬ませるっていう描写があったけどあんな感じで、
恥ずかしくて声をこらえるんだけどつい食いしばっちゃって、少佐の肩はいつも傷だらけ……とかね!とかね!!
219名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/07(土) 23:56:10 ID:dJv3agUh
最近ふと思ったんだけど……
例えばダンスミュージックの「Butterfly」(smile.dk)なんて
歌詞がまんま、もっさんを追い掛ける誰かの曲っぽいし……
あみんの「待つわ」なんて、もっさんをひたすらに想うキャラにぴったりな気が

あれ? どっちももっさん(゚∀゚)
220トゥルーデ撃墜部隊:2009/02/08(日) 00:00:09 ID:OabLFFOr
こんばんは!トゥルーデ撃墜部隊に名を改めましたkK2NO0Bqです。

クリス誕生日おめでとう!ということで、クリス×トゥルーデ投下させていただきます
221名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 00:01:13 ID:OabLFFOr

2月8日。
今日は私にとって何よりも大事な日。
そう、私の可愛くて可愛くて可愛く(略)仕方がない妹、クリスの誕生日だ。

ミーナが気を利かせて休みをくれたので、その日は朝から病院へと向かった。


「クリス、誕生日おめでとう」

病室に入り、用意した小さな花束を差し出すと、クリスは可愛らしい顔を更にキュートに綻ばせ笑った。

「ありがとう、お姉ちゃん」

あああ…
なんっって可愛いんだ…!

「…お姉ちゃん?大丈夫?」
「あ…あぁ、すまん。少し考え事を…」

いかんいかん、余りの愛らしさに我を失いそうになってしまった。

私はベッド脇の椅子に腰掛け、荷物からカメラを取り出した。

「クリス、誕生日の記念に写真を撮らないか?」
「わぁ!うん、撮る撮る!」

私が体を寄せると、クリスはぴったりとくっついてきた。
ああ…クリスはちっちゃいなぁ。子猫のようだ…

そのままレンズをこちらに向け、シャッターを押す。

「写真ができたらすぐに持ってくるからな」
「うん!楽しみにしてるね!」

嬉しそうに頷くクリス。
またも意識が飛びそうになるのをこらえ、荷物を再び開けた。

222名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 00:02:31 ID:OabLFFOr
「まだまだプレゼントがたくさんあるぞ」
「え、ほんと!?」

私がクリスの誕生日の事をウィッチーズの皆に話したら、プレゼントを用意してくれたのだ。
持つべき物は友…だな。

リーネはバースデーケーキを焼いてくれ、ペリーヌは小さいが豪華な手鏡。
少佐と宮藤は、扶桑の「オニギリ」という料理を作ってくれた。

エイラからはお守りになるという綺麗な石、サーニャは音符の形をしたブローチ。
ミーナはカールスラントから取り寄せた本。エーリカは…「中身は内緒」とか言っていたが、見た目は薄めの本だ。

ルッキーニはたくさんのキャンディ。
リベリアンは有り物がないから、と先程使ったカメラを整備してくれた。

「これ…みんなプレゼント?もらっていいの?」
「ああ。どうだ、気に入ったか?」
「うんっ…嬉しい!」

クリスは頬を真っ赤にして満面の笑みを浮かべた。
なんて素晴らしい笑顔だ。この笑顔を見れただけで皆に感謝しなければな。

「今日は休みだから、夕方までお姉ちゃんと遊ぼう」
「うん!」

ああっ…!
クリス、お前の笑顔はカールスラント一、いや世界一だ!
223名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 00:03:02 ID:+nOa3y9s
なんかさ…ひたすらに明るいシャッキーニが欲しいときってあるよな……
224名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 00:04:10 ID:OabLFFOr

それから私は、ウィッチーズでの生活を話したり、クリスのお気に入りの絵本を読んであげたりとクリスとの時間をたっぷり楽しんだ。
ケーキをあーんして食べさせてあげると、クリスも「あーん」を返してくれた。それだけでこのケーキは夢のケーキへと化した。
味もさすがリーネだ、とても美味しかった。

「ねぇねぇお姉ちゃん」

使っていたフォークを片付けていると、クリスが可愛らしい上目遣いで見つめてきた。

「わんこやって、わんこ!」
「ああ…久しぶりだな」

クリスは、使い魔の耳と尻尾が好きらしい。
たまに出してやって遊ぶのだが、とても楽しそうに笑うので私にとっても天国だ。

私は魔力を解放し、耳と尻尾を出した。

「わあっ!わんこわんこ!」

クリスはぱっと飛び付いてきて、私の頭を撫でる。

「可愛い〜、ふわふわ〜」
「ふふ…くすぐったいぞクリス」
「だって気持ちいいんだもんっ」

きゅっと抱き締められ、私を取り巻く空間が虹色に染まる。
ああ…いかん、私は姉だ、立派な姉なのだ。でれでれしてどうする…
しかし駄目だ、頬の筋肉は締められても尻尾がぶんぶん動いているのが自分でもわかってしまう…

225名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 00:05:12 ID:OabLFFOr
耳に頬擦りする頬の柔らかさに、思わずぎゅっとしたくなるのを堪えるのも必死だ。
じゃれるクリスは可愛いが、魔法の性質故抱き締めるのを我慢しなければならないのがネックだな…

「お姉ちゃん、すごい尻尾振ってる〜」

う、クリスに気付かれてしまった。

「尻尾も触りたい!見せて見せて!」
「う…わ、わかった」

私はくるっと後ろを向き、ベッドに腰掛けた。

「だめ、わんこみたいに手ついて!」
「ぅえっ!?だ、だがそれは…」
「いや…?」

ううう、そんな泣きそうな顔で見ないでくれクリス!そんな顔も可愛いが。
仕方なく私は、ベッドの端に四つん這いになった。クリスを泣かせる訳にはいかないからな。

「わあ、可愛いっ」

クリスは耳と同じように私の尻尾に触れ……ん!?

「お姉ちゃんのお尻可愛い!」
「!く、くくくクリス!?」

小さな手は、尻尾ではなくそれが生えている臀部へと触れた。

「ぷにぷにだね!さっき食べたケーキみたい」

なな、何ということだ…!
まさかクリスの皮をかぶったエーリカじゃあるまいな。いやエーリカがこんなに癒し系で可愛い筈がない!!
226名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 00:06:26 ID:OabLFFOr
クリスの手は、感触を楽しむかのように臀部から太ももまで行き来する。

「く…っ…」

駄目だ…触っているのはクリスだというのに、変な気分になってしまいそうだ。

「く…クリス、くすぐったいから、もう…」
「えー、お姉ちゃんこんなに尻尾振ってるよ?」
「…!」

首を向けると、自分でも恥ずかしいくらいパタパタと左右に動く尻尾が見えた。

「お姉ちゃん、なんか可愛い」

ああ、いたずらっ子の顔をするクリスも可愛い……
じゃない!い、妹にこんな事をされて喜ぶなんて姉としての威厳が…!

しかし下手に止めさせようとしたら、怪我をさせてしまうかもしれないし…どうしたら…

「わ、尻尾ぴくぴくってする」
「あっ!だ、駄目だ…引っ張るな、クリス…んんっ」

尻尾は弱いんだクリス、そんなにしたら…ああしっかりしろ、ゲルトルート・バルクホルン!
うぅ…でも、だんだん体に力が入らなくなってきた………きもちい……


「トゥルーデ、クリスの調子は………」

その時、病室の扉が開きミーナが入ってきた。同時に私達を見て固まった…

「…何…してるのかしら?」


227名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 00:07:40 ID:pgDii4Jh

――――

「で、どしたの?」
「どうしたも何も…説明はしたが、ミーナは帰り道ずっと笑顔だったよ…」
「こわー」

基地に戻ってきた私は、恥ずかしさやら情けなさやらで精神的にとても疲れていた。

「ま、トゥルーデとしてはクリスが楽しかったならいいんじゃないの」

隣に座ったエーリカはけらけらと笑いながら言った。
くそ、他人事だと思って……間違ってはいないが。

「…そういえば、お前があげたプレゼントは何だったんだ」

ふと思い出して尋ねると、エーリカはにっと目を細めた。

「トゥルーデの写真集」
「……は?」
「いろんなトゥルーデの写真を撮ったの。そんでアルバムにした」

いつの間に。
それは盗撮というんだ…と咎めようとしたが、まぁ…許してやるか。

「さっき撮った写真も…アルバムに貼ってやらねばな」

クリスと二人で撮った写真の出来を思い浮かべ、あたたかい気持ちになった。
きっと、それはそれは可愛い笑顔で写っているのだろう。
私の大事な妹、クリス……



数日後、出来上がった写真の私が、他人には見せられない程だらしない表情で写っていた事は、この時は知るよしもない……




その頃の病室
「わあ、お姉ちゃんの寝顔可愛い〜!あはは、これりんごみたいに真っ赤!あ、お尻のアップ…これは胸かな…」
228トゥルーデ撃墜部隊:2009/02/08(日) 00:08:19 ID:pgDii4Jh
おしまいです。お目汚し失礼しました
229名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 00:10:50 ID:Tu7wp9Z3
>>228
GJ!割り込みすまなかった
クリスやりおるわwお姉ちゃん情けなさすぎ!
…そこがいいんだけど
230名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 00:22:23 ID:vwRdU18p
てっきりエーリカの渡した秘密の本ってのがエーリカの「知識」と「テク」を詰め込んだ本で
それを読んだクリスが次にトゥルーデが来た時に本で学んだことを大好きなお姉ちゃんに実践するのかと
ていうかむしろそれで書いてほし(ry
231名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 00:22:26 ID:0rF6lGAs
>>228
面白かったです!超久々の隊長のお仕置きネタが嬉しいw
そしてクリス鬼攻めすぎるw
232名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 00:24:05 ID:UiRN0rjH
最近ペリーネに押されてしまって芳リネ分が足りない…
233名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 00:34:08 ID:t66htIJP
>>199
GJ! ペリーヌ×リーネ新鮮でいいですね。

>>228
GJ! お姉ちゃんがお姉ちゃんしてますw いいですね〜。


さて、たびたびこんばんは。mxTTnzhmでございます。
クリスの誕生日と言う事で、一本いきます。
クリス×トゥルーデなのかトゥルーデ×エーリカなのか
よく分かりませんが、とりあえずどうぞ。
一応、今回も保管庫No.450「ring」シリーズの続編となります。
どうぞ。
234dear my sister 01/03:2009/02/08(日) 00:35:39 ID:t66htIJP
病院の廊下を大股で早足に歩く。
トゥルーデは浮き足立っていた。妹のクリスとの、久しぶりの面会。
今日はクリスの誕生日。しかもいよいよ本格的なリハビリが始まったとあって、
何としてでもその姿を見届けたかったのだ。
ミーナや美緒に無理を言って休暇を取ると、エーリカが運転するキューベルワーゲンに飛び乗り
一路病院の有るロンドン目掛けて“突っ込んで”来たのだ。

「お姉ちゃん!」
「クリス! 元気になったな」
まずは抱擁し、じっと顔を見つめあい、お互いの無事を確かめる姉妹。
「うん。お姉ちゃんも変わらないね」
「そうか?」
「あれ? エーリカさんは?」
「待合室で待ってるそうだ」
「一緒に来てくれたら良かったのに」
「私もそう言ったんだが……ヤツなりに気を遣ってくれたのかもな」
「そう」
「それよりどうだ? リハビリはうまく行ってるか?」
「うん。ベッドの上で足を動かしたり、色々やってるよ。今日から歩行訓練なんだよ」
「そりゃ凄い。頑張れよ」
「もちろん。頑張るよ」
「ああ、でも無理はダメだぞ。一歩一歩、少しずつ、やるんだぞ。いいな?」
「分かってるって」
クリスは悪戯っぽく笑って見せた。

エーリカは待合室で一人、本に目を通していた。ページをめくるうち、いつ挟んだのか、一通の手紙が
はらりと膝の上に落ちる。エーリカ宛ての手紙。
字面を見てすぐに分かる。生真面目な双子の妹、ウルスラからだった。消印を見ると……数ヶ月は経っている。
「ありゃ。覚えてないなあ」
とりあえず開封してみる。内容は特に緊急のものではなく……スオムスでの生活だの、
そちらはどうですか、とか、バルクホルンさんとはうまくやってますか、などなど
とりとめのない話題がまるで素っ気無いメモ書きの様に記されていた。
「相変わらずだね」
手紙を読み終えると、エーリカは便箋にしまい、本の最初の方に挟み直した。
「いつか返事書かないと……って、前もそんな事言った様な」
うーん、とひとつ背伸びをするエーリカ。要するに暇だった。

医師や看護婦に付き添われ、中庭でリハビリが始まった。
クリスは震える手で歩行訓練用の杖を掴み、ゆっくりと一歩、また一歩と足を進めた。
そのたびに、トゥルーデは興奮し、また感動して、クリスの名を呼んだ。
看護婦にたしなめられるも、トゥルーデとしては感動が止まらない。
何せ数ヶ月前まではベッドから起き上がる事はおろか、意識すら戻らなかったのだ。
それが、今では話も出来るし(たまにだが)車椅子で外出も出来る。こうして歩行リハビリも出来る様になった。
偉大なる進歩だ。
クリスはトゥルーデに向かって笑って見せた。得意げだ。
だが、次の一歩を、踏み外した。
緩やかに地面に落ちていくクリス。
トゥルーデはスローモーションの様に倒れ込むクリスを抱えるべく、猛然と駆け寄り、身を挺した。
あと一歩。あと数センチ。
今度こそ、私が護ってみせる。
どさり。
看護婦の悲鳴が上がった。

エーリカは中庭で何かちょっとした騒ぎが起きた事を聞きつけ、もしやと思い本を傍らに仕舞うと
急ぎ足でトゥルーデを捜した。
235dear my sister 02/03:2009/02/08(日) 00:37:05 ID:t66htIJP
「ごめんね、お姉ちゃん」
「クリスが無事で何よりだ」
微笑んでみせ、クリスの頬を撫でるトゥルーデ。
結局、間一髪のところでクリスを抱きかかえ、トゥルーデ自らクッションとなる事で、クリスへのダメージは無かった。
だが無理な態勢を取ったせいでトゥルーデは足首を軽く捻り、また肩と手首を打撲した。
「私は何とも無いぞ。これ位、全然平気だ。ネウロイとの戦いで鍛えてるからな」
「お姉ちゃんに良いトコ見せようと思ったんだけど、格好悪いね、私」
「そんな事ない。クリスは頑張った。それに今回はお前を守れたし、頑張ってるクリスの姿を見られただけでも、私は幸せだ」
うんうんと頷き、髪の毛をくしゃっと撫でるトゥルーデ。
こくりと頷くと、うつむき、目に涙を溜めるクリス。
「ごめんね、お姉ちゃん」
「泣くな、クリス。誰にだってミスは有る。落ち込むな。私がついてるから大丈夫だ」
「そーそー。トゥルーデったら最近凡ミスが多くてさ。だから気にすること無いよ」
それまで横の椅子で二人の様子を見ていたエーリカが、茶化しとも取れる慰めの言葉を発した。
「なっ! そんな事無いぞ?」
「またまた」
「お姉ちゃん、そうなの?」
「ちちち違う! エーリカ、嘘は言うな。クリスが心配するじゃないか」
涙を拭くと、クリスはふっと笑った。
「な、なんだ、クリス?」
「お姉ちゃん、やっぱりお姉ちゃんだなあって」
「何?」
「ううん、気にしないで。でもエーリカさんで良かったよ、相手」
「な、何の事だ」
「クリスちゃんからもお墨付き貰ったよ」
にこっと笑うエーリカ。微笑むクリス。何と言う顔をして良いか軽く困惑するトゥルーデ。
「そう言えばトゥルーデ、良いの?」
エーリカに小脇をつつかれる。
「ああ、そうだ。初めに言うつもりだったのを思わず忘れてた。クリス、誕生日おめでとう」
「おめでとうね、クリスちゃん」
「ありがとう、二人とも」
「これ、私とトゥルーデから。あんまり堅苦しいのは読んでて退屈するだろうから、
気軽な冒険小説なんかどうかと思って。どうかな」
「ありがとうございます! お姉ちゃんもありがとう!」
「退屈しのぎになればいいんだが」
「何度も読むよ」
「辞書じゃあるまいし」
くすっと笑う。

そんな三人のもとに、看護婦がやってきた。
「そろそろクリスさんの食事の時間ですので」
「そうか」
「もうそんな時間なんだ」
寂しげなクリス。食事と言う事は、楽しい面会のひとときの終わりを意味していた。
「大丈夫。またすぐに来るからな」
「うん。待ってる。今日は本当にありがとう。楽しみにしてる」
「私も」
トゥルーデとクリスはそっと抱擁した。
クリスは首を向けると、トゥルーデの頬に軽くキスをした。
びっくりするトゥルーデ。
「今日のお礼」
「な、な……」
「これ位はいいでしょ? お姉ちゃん」
「ま、まあ……その」
不意に逆側の頬に、柔らかな感触を受ける。エーリカの唇だとすぐに気付く。
「え、エーリカ。どさくさ紛れに何を」
「良いじゃない」
236dear my sister 03/03:2009/02/08(日) 00:38:57 ID:t66htIJP
クリスは二人の様子を見て、笑った。
「お姉ちゃん達、お似合いだよ。前にレストランで指輪渡した時あったでしょ」
「ああ。忘れもしない」
ふたりは揃ってはめている指輪を見せた。クリスは微笑んで言った。
「あの時思ったんだよ。この二人ならって」
「ありがとね、クリスちゃん」
「そ、そうか……」
「早く戦いが終わって、二人一緒になれれば良いね」
「ああ」
「そうだね」
力強く頷くトゥルーデとエーリカ。
「あ、でもクリス、お前もしっかり元気にならないとダメだからな? 約束だぞ?」
「約束ね。わかった」
「姉バカだね、相変わらず」
「じゃあ、そろそろ帰るな。また来る、すぐに」
「お姉ちゃん達も元気で」
「大丈夫、心配要らない」
「じゃあね、また」
クリスは見えなくなるまで、病床から手を振っていた。トゥルーデとエーリカも、同じく手を振り続けた。

基地に帰還した夜の事。
いつもと同じくトゥルーデのベッドの上でごろごろするエーリカ。
「な〜んか、忘れてる様な気がする」
枕を抱えて、天井を見つめ何かを思い出そうとする。
トゥルーデは髪の結びを解き、櫛で手入れしていた。鏡の前に無造作に置かれた一冊の本……エーリカのものだ……
を手に取ると、はらりと一枚の便箋が落ちた。
「あ、トゥルーデ。それそれ」
「? ……これ、ウルスラからじゃないか」
「返事書こうと思ってたんだよね。思い出した」
「思い出したって事は、正確には書く気が無かったと言う事じゃないのか?」
「まあ、そう理屈じみた事言わない」
髪の手入れをするトゥルーデを無理矢理ベッドに引きずり込み、口吻を交わすエーリカ。
「エーリカ、今日は済まなかったな」
「まあね。ちょっと退屈だったよ」
「なら、一緒に居てくれた方が」
「姉妹水入らずな時間、有ってもいいんじゃない?」
「お前は私達の家族も同然だ。今更水臭い事を言うな」
「まあ、そうなんだけどね」
妹からの手紙にちらりと目をやるエーリカ。
「私は、ウルスラとはさ……」
言葉に詰まるエーリカを、トゥルーデは優しく抱きしめた。
お互い肌を重ねる事で、ことばにしなくても、分かり合える事も多い。今もそうだ。
エーリカはふっと小さく笑みを漏らすと、トゥルーデの下ろした髪をそっとなぞり、指先で玩んだ。
「ホント、姉バカだよね。トゥルーデ」
エーリカは、トゥルーデの肩と手首に巻かれた包帯を見、そっとさすった。
「無理しちゃってさ。ホントは結構痛いんでしょ? 分かるよ」
「まあ、少しは、な……」
「でも、だからこそトゥルーデなんだけどね。私はそう言うとこ好きだよ」
頬に唇が当たる。
「エーリカ、まさか、クリスに嫉妬なんて」
「どうだろうね」
にやっと笑うエーリカは、冗談とも本気とも取れて、少し心臓に悪い。
トゥルーデはきゅっと抱き直すと、エーリカの唇を塞いだ。
潤む瞳を閉じ、ゆっくりとお互いを味わい、肌を重ねる。
「私だけのトゥルーデ」
その言葉の実証は、朝まで続く事になる。トゥルーデもエーリカも分かっていた。
でも、止める事もせず……ただただ、その証明のための行為に耽った。

end
237名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 00:39:49 ID:t66htIJP
以上です。
クリスの誕生日と言う事で私も一本。
最後、妙にトゥルーデ×エーリカな気もしますが……。
時系列が(ry と言うのはキニシナイ!

ではまた〜。
238名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 04:04:52 ID:Naph/8Fv
>>219
ソルフェージュのobedienceがペリーヌ→もっさんの歌詞に思える
まり様とペリーヌのキャラが被ってる上に、まり様→つくね様の歌詞だから当たり前だがw
2396Qn3fxtl:2009/02/08(日) 07:18:25 ID:U0ltnUmK
>>228
GJ! お見事です! クリスの無邪気攻めがなんともw

>>237
GJ! トゥルーデがいいお姉ちゃんしてますね。

さて、この2大作の後に投稿するのはちょっと恥ずかしいのですが、
クリス誕生日おめでとうSSを投下させてください。
バースデーものですが、クリスよりもトゥルーデメインの気が。
あと、若干百合分が不足してる気がしないでもありません。

では、3レス借ります。
240Herzlichen Glueckwunsch zum Geburtstag! 1/3:2009/02/08(日) 07:19:06 ID:U0ltnUmK
1年に1度だけの一番大切な日。
その日、私はフラウを叩き起こして、まだ日も昇らぬうちに基地を出た。
目的地はロンドン。クリスのいる病院。
一年にたった一度だけのクリスの誕生日だ。
日頃姉らしいことができないことの、クリスを守りきることのできなかった
ことのせめてもの償いとして、今日一日、クリスとずっと一緒にいてやる。
そのためにミーナを拝み倒して特別に休暇も貰った。
無理を言って病院の面会時間も延ばしてもらった。
クリスにとって特別な日を、ずっと一緒に過ごすための準備は万端に整えた。
当然だ。私がどれだけ、この日を待ち望んできたことか――。

病院についた頃にはもう日は高く昇っていて、クリスと私との距離を感じさせた。
しかしどこかで、その距離になにかほっとするものを感じる自分もいる。
それは、クリスが前線から遠く離れた安全な場所にいることを、
私がまだクリスを守ることができていることを感じさせてくれるからだ。

病室に入ると、クリスはもう目覚めていて、ベッドの上に身を起こして何か
本でも読んでいるようだった。
すぐに私に気がつくと、屈託のない、かわいらしい笑顔を私に向けてくれた。
「おはよう、クリス」
「おはよう、お姉ちゃん」
その笑顔を見、その声を聞いた瞬間、日頃の軍務での疲れも、瑣末な悩みも
すべて吹き飛んでしまうような気がした。
そして、あの日二度と見られぬのではないかとまで思ったクリスの笑顔を
再び見ることができることを本当に幸せに思った。
私はクリスのベッドまで歩みより、そっとクリスの手をとった。

少し遅れて、フラウが病室に入ってきた。
いつものように、医学知識に乏しい私の代わりに医師の説明を聞いてきてくれたのだ。
フラウもまたベッドの横まで来て、クリスに温かな笑顔を投げかけてくれた。
「クリスちゃん、お誕生日おめでとう」
「ありがとう、ハルトマンさん」
クリスが笑う。つられて私とフラウも笑う。
それは私がずっと願っていた光景。私たちは今、柔らかな光の中にいる。

2時間ほど、クリスとフラウと3人で話をしていた頃であろうか。
フラウが私を肘で軽くこづいて、何か合図をしてきた。
そんなことは言われなくてもわかっている。
ただ出すタイミングを図っていただけだ。
私は持ってきた荷物の中から小さな包みを取り出した。
「クリス。今日はお前に誕生日プレゼントを持ってきたんだ」
「本当? うれしい」
「あぁ。開けてごらん」
私がうながすと、クリスは包みのリボンを解いた。
出てきたのは、茶色の表紙の小さな手帳。
「私はこういうものはよく分からなくてな。
  ミーナとフラウが選んでくれたんだ。気にいってくれるか?」
「もちろんだよ。ハルトマンさん、お姉ちゃん、どうもありがとう」
礼を言われたフラウが少し照れくさそうに笑った。

「実は、クリスちゃんに隊のみんなから誕生日プレゼントがあります!」
ベッドから数歩下がって、フラウがいたずらっぽく言う。
プレゼント?私は何も聞かされていないが……。
「これだよ、どうぞ」
そういって、フラウが勢いよく窓のカーテンを開け放つ。
241Herzlichen Glueckwunsch zum Geburtstag! 2/3:2009/02/08(日) 07:19:49 ID:U0ltnUmK
そこに見えたのは、空を行く大きな横断幕だった。
よく見えないが、ひっぱっているのはウィッチのようだ。
あれはリーネと宮藤?それに幕に書かれている文字は……?

    Herzlichen Glueckwunsch zum Geburtstag

カールスラント語で「お誕生日おめでとう」。
それだけでも十分に驚かされるというのに、
その横断幕の上にミーナと少佐の手によってハート型の航跡が描かれ、
ペリーヌがそれを射貫いていく。
さらにはシャーリー、ルッキーニ、サーニャ、エイラの4機が
病院に向かって扇型の航跡を残して飛びさっていく――。

私もクリスも、あまりの驚きに言葉を失なっていた。
ようやく私が我に返ったときには、航跡は空の青に溶け、
横断幕は遠く飛び去っていた。まるで、何かの夢を見ているようだ。
「へへっ。隊のみんなからクリスちゃんへ。『お誕生日おめでとう』」
フラウはまるでいたずらに成功した子供みたいに笑う。
まったく、なんという誕生日プレゼントだ。
ミーナだって、ただでさえ軍の上層部からは面白く思われていないウィッチーズが
郊外とはいえロンドン上空でこんな派手なパフォーマンスをしたら
どうなるかということぐらいわかっているはずなのに。
「どう、クリスちゃん。気にいってくれた?」
「うん! すごいよ! 今までで最高の誕生日プレゼントだよ」
無邪気に喜ぶクリスとは対照的に、私の心は戸惑いに支配されていた。
242Herzlichen Glueckwunsch zum Geburtstag! 3/3:2009/02/08(日) 07:21:27 ID:U0ltnUmK
「……、私からも礼を言うよ。ありがとう、フラウ」
帰りの車中、私は唐突に切り出した。
「ありがとうって、あのプレゼントのこと?」
「あぁ。正直、あれは私も全く知らなかった」
「トゥルーデに内緒でこっそり練習してたんだよ」
私は地上で見てただけだけどね、とフラウは面白そうに笑った。
まったく、皆、任務や訓練で忙しいはずなのにどこにそんな時間があったのだろう。
しかも同じ基地にいる私に気がつかれないように練習するなど
簡単なことではないはずだ。
「どうして、ここまでしてくれるんだ?」
「どうして?」
フラウが不思議そうに尋ねる。
「クリスの誕生日というのは、完全に私個人の問題だ。
  隊の皆にこんなにまでしてもらう理由など……」
「トゥルーデにとって大切な人は、みんなにとっても大切な人だよ」
「しかし、だからといって……」
「それに、私たちにとって『自分の命をかけてでも守りたい誰か』っていうのが
  すごく特別な存在だってこと、トゥルーデならわかるでしょ」
「自分の命をかけてでも守りたい誰か……」
私にとってそれはクリスであり、フラウにとっては妹のウルスラである。
他の皆にも、それぞれ自分の命に代えてでも守りたい大切な人がいる。
私たちはその守りたい人のために、日々ネウロイと戦っている。
「最初はミーナや坂本少佐も反対してたよ。でも、クリスがトゥルーデに
  とって命に代えても守りたい人だってことを話したらわかってくれた。
  みんな、絶対に守りたい誰かのために毎日戦ってるんだから……」
まぁ、そんな話をするまでもなくシャーリーとルッキーニはノリノリだったけどね、
とフラウはまた笑った。
真面目な話をしてても必ず最後に冗談に変えてしまうのはお前の悪い癖だぞ、フラウ。
「……まったく。帰ったら隊の皆にお礼をしなければならないな」
白く息を吐きだして、私は顔を上げた。
よく澄んだ美しい夕焼けの空が、なぜだか少し霞んでみえた。

fin.
2436Qn3fxtl:2009/02/08(日) 07:22:36 ID:U0ltnUmK
以上です。

なお、蛇足ですがウィッチの行なった演技は航空自衛隊ブルーインパルスの演目から取りました。
それぞれバーティカルキューピッド(ハート型)とレベル・オープナー(扇型)です。
筆者の筆力では伝わりきらないところが多々ありますが、適当な動画サイトで
検索してもらえれば、いわんとしていることが理解していただけるかと。
244名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 07:47:37 ID:vwRdU18p
なんでみんなしてクリスとトゥルーデのSS書くんだろ3連続とかシンクロし過ぎだろすげーなとか思ってたら今日クリスの誕生日ですかwww

おめでとうクリス
245名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 12:37:46 ID:/JvtJI4W
>>242
GJ!インパの演技飛行は有名だよね。自分も機会があったら行きたいと思ってました
個人的に空を生かしたシチュエーションは好きなので面白かったです
爽やかで良い話だなー
246名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 18:37:32 ID:vwRdU18p
せっかくの日曜なのに妄想雑談すら無くこの過疎
悲しいです!
247名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 18:51:13 ID:REhd0oT9
ひとかいないなー
248名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 19:01:19 ID:Tu7wp9Z3
なんかシャーゲルがほしくなってきた。シャッキーニでもいいな
…つまりシャーリー分求む!

そういやファンブックまだ買ってない……なぜか図書券持ってるから書店で買いたいんだが
置いてないんだよなどこにも!注文するしかないの?恥ずくね!?
249名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 19:05:48 ID:wkFb8637
某アニメ専門店で買えばいいじゃない
250名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 19:10:55 ID:pK0QbwHc
いつまでも、自分に対して大胆になってくれないエイラに業を煮やしたサーニャがエイラを押し倒しちゃうとか、
いつも芳佳にメチャクチャにされちゃうリーネが「芳佳ちゃんばっかりズルイ」って押し倒しちゃうとか、
ルッキーニがシャーリーとふざけあった流れで押し倒しちゃうとか、そんなアホな妄想しか浮かびませんでした・・・。

ちなみにSSは書きますが、えっちなのは苦手です。
251zet4j65z :2009/02/08(日) 19:19:10 ID:vfofJemt
1スレぶりのご無沙汰です。なんか前スレ早すぎて雑談意外できなかったヨ。
たぶん4レスとなります。

●サン・トロン1943 ExWitch & NightWitch

『調子はどう? 綾香?』

 管制塔に詰めている同僚の加藤武子が共通語であるブリタニア語で話しかけてきた。

「微妙だな」
『あら、Bf-109の最新型を扱ってみたいっていってなかった?』
「こんな夜空じゃ爽快感も何も無いだろう。正確な評価も出来ないさ……それよりも夜釣りがしたい」
『相変わらずなのね……。ま、とにかく一度引退してる事を忘れずに、ね』
「わかっているさ武子。大体今回の目的はデータ収集だ。あんまりはしゃぐつもりは無いよ」

 私も武子も一度は一線のウィッチを引退した存在、エクスウィッチだ。
 武子は魔力の減衰が早く成人して以降は飛んでいないが、運よく魔力の減衰が遅い体質だったらしい私は一旦引退したものの航空審査部へと舞い戻る事ができ、最前線には出ないという制約の下こうしてストライカーを履いている。

 扶桑皇国陸軍航空隊では、来るべき本国でのネウロイとの開戦に備えて日々研究が続けられていた。
 その中のひとつに機載電探の開発があった。
 電探――電波探信儀。
 ごく一部のウィッチの持つレーダー魔道針による警戒能力を科学的に模倣した機械ではあるが、当初扶桑ではこの電探という装備の能力に関しては非常に疑問視されていた。
 ネウロイに関する研究が進んでいなかったため、電波を発射することで敵に自位置を暴露するだけの代物との意見が主流だったのだ。
 だが、レーダー魔道針能力を持つウィッチが視界の効かない夜間や悪天候時に大きな力を発揮したことやブリタニアやカールスラントで電探を使用した早期警戒や防空戦闘指揮が確立され、そのノウハウが扶桑にもたらされ始めるとだいぶその意見の風向きも変

わってきた。
 そして希少な能力であるレーダー魔道針に頼らずともウィッチに全天候能力を与える研究が進められた結果、電波警戒機……いや、電波探信儀の小型化が進められたのだ。
 しかし、機械的な問題点が解消されつつあれど運用や動作に関してはまだ未知数の部分が多かった。
 更に扶桑皇国にとって致命的だったのは自国にその能力を評価できるほどのレーダー魔道針の使い手がいなかったという事だ。
 扶桑はこれらのウィッチたちを集中運用して夜間迎撃作戦の効果を上げていたカールスラントへと助力を求めた。
 かの国はこれを快く受け入れ、その結果今回の審査部隊分遣隊の欧州への渡航へとつながったのだ。
 我々は欧州大陸最後の橋頭堡とも言える最前線、ベルギーのサン・トロンにいる。
 ここには夜間にドーバーを越えてブリタニア本土へと侵入するネウロイ迎撃のためにカールスラントが誇る夜戦のエキスパートたちが集められていた。
 彼女たちと共に飛び、実戦でのデータを収集するのが今回の任務だ。

 滑走路には既に夜戦仕様のBF-110を装備したナイトウィッチとその空中指揮の下で夜戦を行うBf-109のF型を装備したウィッチ二人が既にストライカーユニットの暖気も終えて出撃命令を待っていた。
 そんなウィッチたちから私への視線が集中しているのを感じる。
 やはり扶桑陸軍式の戦闘服は珍しいんだろうか。
 真冬の欧州に出向いて野戦を行うという事で、今回は動きやすい冠頭衣タイプではなく夜戦用の飛行服を纏っている。
 つくりは通常の巫女服タイプと同じものだが、色が剣道の道着のような藍色に染められている。
 片手間ではあるのだがこの服の使用感等も今回の任務の中で評価する事になっていた。
 当初、私の方は戦闘に参加するわけには行かない為武器を非携帯でという話が出ていたらしいが、そこに関してはデスクワークを行う武子がなんとか護身用の武器の携帯許可だけはもぎ取ってくれた。
 ありがたい話だ。持つべきものは前線をわかってくれる兵站担当者だな。
252zet4j65z :2009/02/08(日) 19:19:54 ID:vfofJemt
「扶桑のウィッチさん」

 そんなことを考えていると今回の空中指揮官に声を掛けられた。
 鈴を鳴らすような小さな、それでいて良く通る澄んだ声。
 カールスラントなまりのブリタニア語。
 声の方向に振り返ると、白い髪に眼鏡、そして基地施設の弱い明かりの中でも印象的な赤い瞳を持つ少女が目の前にいた。
 その姿が夜の闇に溶けてしまいそうだな、と感じたのは多分夜戦用にあつらえた服装とか装備の事だけでなく、もっと内面からにじみ出る何かが原因のような気がしてならない。
 私は資料を思い出す。
 ハイデマリー・W・シュナウファー、13歳。
 正に夜空を飛ぶ為とも言える固有魔法能力、レーダー魔道針と光増幅式の夜間視覚を持って生まれたが、幼い頃は魔法を制御できずに暗闇の中での孤独な生活を余儀なくされたという。
 ナイトウィッチとしての素質、将来性共に十分としてカールスラントから推薦された第一夜戦航空隊の士官なのだが……飽くまでもそれはデータ上の話で、現在の所そこそこ戦果は上げているものの期待されていたほどの活躍はしていない。 

「ああ、なんだろうか? 指揮官殿」
「…………あの、飛行中は私の2番機の位置を離れないようお願いします」

 聞き返し、返事が来るまでの微妙な間。
 何てことの無い沈黙が、なぜか心に引っかかる。
 正面から瞳を見返す。
 微妙にずらされる。
 私はその一瞬のやり取りの中で何とはなしに確信を得た。

「了解した。こちらからも一つ良いだろうか?」
「はい、なんでしょうか?」
「ファーストネームはハイデマリーでよかったかな?」
「……はい」

 不安げな表情を浮かべながら頷く年下の少女。

「不躾な願いとは思うんだが、愛称で呼ばせてもらっても良いかな? それに、もし嫌でなければこちらの事もクロエと呼んでほしい。欧州で親しい人間にはそう呼んでもらってるんだ」
「え……あの……」
「ふむ、確かハイデマリーならハイディでいいだろうか? こちらの言葉には精通していないんで間違っていたら申し訳ないのだが……」
「は、はい、それで……大丈夫です……あの、ハウプト……キャプテンクロエ」
「フフ……階級はつけなくて構わないさ。私は今回ゲストとして飛び、君の指揮下に入っているんだ。本国の階級など気にせずに、ね。ここにいるのは単に夜戦に不慣れなデイウィッチ、クロエさ」
「はい、わかりました。その……クロエ」

 多分にこの少女は、人付き合いに相当な苦手意識を持っている。
 それ自体は前に研究報告で聞いたことのあるナイトウィッチ特有の症状といった所だが、ハイディの場合は幼い頃に隔離された暗闇の時代がそれに拍車をかけてしまっているのではないだろうか。
 それに、環境もよくない。
 周りを固めるBf109装備のウィッチたちは皆扶桑で言う所の技量甲、夜戦も行える技量を持ったベテラン揃いだ。
 つまり彼女にとっては指揮下のウィッチが皆年上という、指揮官としては誠にやりにくい状況を強いられている。
 まぁ、エクスウィッチで一番の年上である私が言うのも何ではあるのだが……。
 考えるに、軍上層部から期待されながらもいまいちこの少女が活躍し切れていないのはこのあたりに問題があるのではないだろうか?
 軍務と割り切って考えるのならこれはチャンスだ。
 なにせ実力の保障されたウィッチを優先的に使用してデータ収集が出来るのだ。
 扶桑の航空審査部としては願ったり叶ったりなのだろうが……本当にそれだけでいいのか?黒江綾香。
253zet4j65z :2009/02/08(日) 19:21:55 ID:vfofJemt
 自問自答するうちに出撃の時間となった。
 長機であるハイディのBf110が加速し、離陸を開始する。
 次いで小隊を編成する二人のBf109も離陸。
 最後に私が滑走を開始。
 DB601魔道エンジンは心地よい加速をもたらし、私は空の人となった。
 編隊を組み、進路を哨戒ルートへと向ける。
 程なくして編隊は安定し、翼端灯が消灯された。
 久しぶりの欧州の夜。
 その昔は何度も飛んで慣れ親しんだはずの大気の匂いも、年を経た自分にとっては全く別の表情を見せる。
 空を飛ぶ高揚感と共にある、かすかに胸に引っかかるような感触……これは、恐怖か。
 思えば今回はかなり無理をしている。
 審査の為の予備調査という名目ではあるが事実上最前線での戦闘哨戒で、しかもわざわざネウロイとの遭遇率の高いタイミングを選んでいる。
 持ち込める武器も何とか武子が携帯許可をもぎ取ったものの重量制限つき。迷わず扶桑刀を選んだら武子が納得しつつも苦笑していたな。
 ついでに、軽い気持ちで乗りたいといったら簡単に許可が通ってしまったので使い慣れないBf109での飛行だ。
 そうか……これだけの条件が重なれば単なる夜空を飛ぶという行為がこの私にとってさえ恐怖の対象になるんだな。
 その時、視界正面に捉えていたハイディが身体を傾けて減速し、私の横に並んできた。

「クロエ、何か不安があるんですか?」
「む、ああ……何せ久しぶりの夜空なんでね……でもよく気付いたね。挙動には出てなかったと思うんだが」
「表情が、少し強張ってました」

 どうやらいつの間にか振り返った彼女がこちらの表情を見ていたらしい。彼女の夜間視能力はたいしたものだ。
 しかし、確かに緊張が顔に出ていた気がするな……年下の少女を心配させてしまうとは私もまだだ修行が足りないな。

「すまない、心配させたようだ」
「あの……手を……」
「え?」

 言いながら皮手袋に覆われた左手が、おずおずと差し伸べられる。

「夜空が不慣れな人にはナイトウィッチが率先して手を引いてやれと教わりました。これは実際に隊内で効果が上がっている方策です……どうでしょうか、クロエ?」

 聞いて、目の前が真っ暗になった。
 この少女はただ手を繋いで勇気付けるという単純な行為を、教本の中と実行結果の戦果からしか理解できていないのだ。

「あ、ああ……ありがとう」

 私はそう応えながら差し出された左手を右手で握り返す事だけしかできなかった。
 素肌をむき出しの私の手に皮手袋の冷たい感触が伝わる。
 その感触はまるでハイディの孤独を現しているようだ。
 既に夜の闇に対する恐れなどは吹き飛んでいた。
 傲慢な表現が赦されるならば、ただこのハイディという少女を救いたいと思った。
 ウィッチに人並みの幸せ等と大そねた事は言わない。
 ただ、それでも私や武子の様なデイウィッチ程度の、支え会える仲間たちに囲まれた世界に住んで欲しい。
 その筋道をつけるための手がかりなら、ある。
 明日以降のフライトで本格的な試験を開始する機載電探だ。
 あれがモノになれば希少能力を持たないデイウィッチでも訓練次第で夜を飛べるようになるはずだ。
 それは即ちハイディの様な夜戦の専従員が他人と触れ合う機会を増やす事に他ならない。
254zet4j65z :2009/02/08(日) 19:22:28 ID:vfofJemt
「クロエ、痛い……」
「あ……と、すまない。力を入れすぎたようだ……本当に、自分でも思った以上に夜を恐れていたらしい。ありがとう、ハイディ」
「いえ、お礼を言われるほどの事は……」

 気がつけば互いの翼が重なるほどの至近距離だった。
 流石にこの距離ならば夜目が特別利くわけでもない私でも彼女の表情を窺い知る事ができる。
 ハイディは初対面である私との物理的な急接近に困惑していた。
 彼女の負担を和らげたいと思った私は、まずこちらから微笑んで改めて言った。

「ありがとう。今は感謝の気持ちを言葉でしか伝える事ができない事が申し訳ない限りさ」
「あ、いえ……どういたしまして」
「ふっ、それでいい……さぁ、もう大丈夫だよ。また不安になった時には手を貸してくれ。逆に君が不安な時には私がいつでも力になろう」
「は、はい……クロエ」

 繋がれたままの皮手袋の手には、いつの間にか私の体温が伝播したのか冷たさを感じなくなっていた。

 願わくばハイディ、君自身にも暖かな未来を……。
255zet4j65z :2009/02/08(日) 19:24:53 ID:vfofJemt
以上となります。
っていうかこれから出勤で時間ねぇしw

とりあえず、16,17日あたりにこれの続きを投下できたらなぁ、とか思ってます。
まだ1バイトも書いてないですがw

喫茶店とかほかの続き物は、誕生日ラッシュが終わったあたりで書こうと思います。
256名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 19:41:22 ID:WQqQ0Sw8
スタンドバイミー
257名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 20:03:07 ID:keo0WKA6
>>246
さすがにネタが無いからな
258名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 20:04:26 ID:++5BcOdj
待ちに待った黒江さんキター!!しかもハイディとのコンビって、どんだけ冒険心溢れる一本なんだ。GJ!!
相変わらず鋭い視点からの妄想が光ってますね先生。ニパ以外のイラストキャラももっと活躍して欲しいよな。

あとクリス誕生日おめでとう。SSもGJ!!
雑談が少ないのは休みの不定な社会人が多いからだよ、きっと。
259zet4j65z:2009/02/08(日) 20:06:23 ID:k8EyzzEK
ちょっと補足。
一応四十八手の2を意識したんですが、捻りすぎて離れてしまった気もするんでそこに含めて良いかどうかの判断は任せます〜。
260名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 22:19:47 ID:us++7U9y
何故急に過疎った
261名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 22:25:16 ID:AZcgIsmO
シャッキーニが少ないのはアレだよ
シャーリーは豪快な性格だけど本編見る限りではルッキのお母さん役で
「自分がこの子を守らなくちゃ」的なオーラ出してるからエロに繋げ難いのでは
262名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 22:25:30 ID:uQzzllZI
俺は今まで
「どんなに素晴らしい妄想も公式の前には無力」
と思っていたが、このスレのおかげで考えが変ったよ。
職人さんがたホントGJです
263名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 22:56:21 ID:vwRdU18p
そんなこと言い出したらウィルマさん好きやミーナさん好きなんていないだろう
公式は住人にとって創造のスパイスでしかないぜ
264名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 23:14:35 ID:U0ltnUmK
>>255
GJ!  黒江さんカッコイイです。 ハイディの孤独の描写もすごく綺麗です。

>>248
自分も昨日ようやくゲットしました。市内中のめぼしい本屋全部回ってようやく1冊。
ウィッチーズ人気すぎワロタww
店頭での注文が恥ずかしかったらWeb通販とかで売ってるのでは?

>>260
過疎ってるのは、誕生日ラッシュを控えてSSを書き溜めてるせいだと思う。
きっと、誕生日には良作SSが大量投下されるんだろう。

>>262
自分はスレと公式とどっちか正しいのかわからなくなってきてる。
むしろ、いらん子はこの板のイメージが強すぎて、小説読んでるとときどき?と
思うことがあるほどw
265名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 23:20:20 ID:ewJQ9o65
>>262
所詮、妄想は妄想さ。
でも、妄想にしか出来ない事もある。それもたくさんな!

と、おばあちゃんが言っていた。
266名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 23:22:11 ID:JIhfNQ6m
>>261
そしてルッキーニは、シャーリーだーい好き!とは言っているが
どういう好きなのか分かりにくい

つか今はシャーリーが優位に立ってるっぽいけど
ルッキーニが成長したら逆転してるだろうな
黒豹とウサギだしw
267名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 23:23:37 ID:xdRQeDv3
逆に考えるんだ
ルッキーニもどういう好きなのか、よく分かっていないんじゃないかと
268名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 23:28:44 ID:HL+EVIzV
もっと逆に考えるんだ。
ルッキーニもどういう好きか良く分かっているが、
本気になっちゃったシャーリーをロリペド犯罪者にしないように、
敢えて無邪気に振舞っているのだと。
269名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 23:29:18 ID:onmFRYqV
>>262
浮かんできた妄想が公式と差異があるものでもスレ住人がそれを受け入れれば何の問題もないからな。
極端な話捏造設定やら死屍累々でも「その作品ではそういうもの」なんだからOKだ。

ってばっちゃが言ってた。
270名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 23:33:41 ID:sI3YgYN1
>>259
48手は新兵の腕試しの場
エースはよそみせず自分の作品に集中して欲しい
271名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 23:34:10 ID:bdweXDvI
>>267-268
その妄想の力に、感動した。
272名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 23:51:04 ID:/cyUj3Oa
>>262
世界というのは「もしも」という分岐点で成り立っている

厨二病チックな事をさらりと言ってみる
273名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 23:54:16 ID:ewJQ9o65
>>243 6Qn3fxtl様
GJ! 演技の表現お見事です。ホント爽やかでステキなSSですね。

>>255 zet4j65z様
GJ! 相変わらず描写がお見事です。あとあんまり無理なさらず(;´Д`)


さて改めてこんばんは。mxTTnzhmでございます。
未開拓の四十八手、ちょいと行ってみようかと思います。
妙に短いですが、>>189-193「第5手 腕を組む」の続きとしていきます。

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第19手「ほおずり」

美緒の寝顔を見、ミーナはふうと溜め息をついた。
ネウロイを撃墜したは良いが、全員疲労の色が濃い。
無理もない。
直前までワルツを踊り、普段は使わない部分の筋肉も使っていたのだ。
そんな状態で出撃し戦闘ともなれば、いつもよりも疲れて当たり前。
ミーナは結局使われなかった礼服を丁寧にしまい、ハンガーに吊した。
粗雑に脱ぎ捨てられた美緒の礼服にも手を伸ばす。
勲章やら襟章やらを取り外し、箱にしまう。
これらいわば「金属の塊」は、彼女の手柄やらの「かたち」のひとつ。
だが、ミーナには、それ以上に、美緒自身が、彼女にとってひとつの勲章であり、
大切な部隊の仲間であり、家族、そして……。
ベッドで眠りこける美緒に顔を寄せ、そっと頬を重ねる。
頬の柔らかな感触を確かめる。
いつもはきりりとした表情、張りつめた頬のちからも、いまは無力で……
色白な、扶桑の撫子のそれであった。
ミーナは味わうかの様に、頬ずりするミーナ。
「う……ん」
美緒が少し呻いた。頬に違和感を感じたからか。それとも単なる疲れか、もしくは……。
「み、お」
耳元でそっと囁く。囁かれた当の本人は、穏やかな顔に戻り、静かに寝息を立てた。
「貴方が安心して眠れるのがここ……っていうのが、嬉しいかな」
ミーナは美緒の肩に毛布をかけると、ベッドの傍らに座り、窓の外を見る。
十六夜の月が空に映える。純白に輝く柔らかな光は、ミーナと美緒を控えめに照らし、
武人、軍人である前に、うら若きふたりの乙女である事を現す。
ミーナは頬杖をつくと、ぼおっと月を眺めた。
「もう一度、円舞を二人で……」
静かに流れるときを噛みしめ、ミーナはそっと目を閉じた。

end

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以上です。短くてすいません……。
今後も折を見て、未開拓な部分をあえてやってみようかなと。

ではまた〜。
274名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/08(日) 23:58:40 ID:6T4nKBXq
>>255続きまってます!
275第47手 のろける:2009/02/09(月) 00:22:59 ID:g+4v6TUc
こんばんは、x6opQjYyです。
懲りずにまた48手で投下させていただきます。第47手『のろける』です。

エーゲル前提でシャーゲルぽい感じでしょうか…。2レスです。




珍しいこともあるもんだ。

くあ、とあくびをかみ殺した目の前の堅物に、シャーロットは物珍しいものでも見たように目をぱちくりさせた。

 今日は霰でも降るんじゃないのか、と待機室の窓ごしの多少雲の多いブリタニアの夏空に目をやる。
 起床時間前に起きて身支度を済ませ、朝っぱらから威勢のいい号令なんて発しながら体操までする習慣のあるこの同僚が、朝のシフトで眠たげに目をしばたかせるのを見るなんて。

「何をにやついている」
 バルクホルンが、あくびで涙のにじんだ目をうろんげにして問うた。

「朝から眠そうなあんたが珍しくてさ」
「お前は私をなんだとおもっているんだ」
 なにって。シャーロットはそうだなあ、とワンクッション置いて、
「ハルトマン中尉の目覚まし時計」
と、言った。

 何かしら、おなじみのジョークまじりの憎まれ口が返ってくるのかと思ったが、
反してバルクホルンは物憂げな目をして、押し黙ってしまった。拍子抜けする。

「…目覚まし時計か…それもそうかもしれない」
「どうしたんだ?」
「眠りに入る前は、確かに隣に寝ていたんだ。だが妙に寝苦しくて目を覚ましたら、
あいつがどんどん私のほうに寄ってきていて、つまりベッドのどまんなかで寝ていて…
まったく、私のベッドなのに、私の寝る場所がないなんて、おかしいじゃないか。
つまりはあいつにとって、横に寝ている私なんてベッドから落ちても差し支えない、
枕元の目覚まし時計程度ということか…」
「つまりその、あんたの寝不足はハルトマン中尉のせいってわけかい」
「そうだ。…私のことなんておかまいなしに、私の腕にひっついて幸せそうな顔をして眠っていて、
まったく、あいつの寝顔がこんなに憎らしいと思ったのは久しぶりだ」
「なんだ、のろけか」
「な…!?」
「一緒に仲良く寝たんだろ」
 そう言うと、堅物は、赤くなった顔をこんどはしまった、というふうに凍りつかせた。
だがもう手遅れである事にすぐさま気づき、こほん、とわざとらしく咳払いをし、形勢を立て直した。
「仲良くかどうかはともかく、確かに昨日はあいつが私のベッドで寝たのは確かだ」
 開き直ったか。
「へえ、寝たの」
 わざと、含みをもたせて下世話なかんじで言う。
「だから、寝たといってるだろう。何度もいわせるな」
276第47手 のろける:2009/02/09(月) 00:23:23 ID:g+4v6TUc
 バルクホルンは文字どおりの意味をとって、はっきりと言い切った。さすが堅物だ。
 そうかい、と言って目をすがめ、へえ、とにやついた顔をしてやると、さっきシャーロットの言った
『寝た』のニュアンスに思い至り、顔をカッと赤くし、ぐ、と奥歯をかんで黙った。
 黙ってしまってはからかいようがない。シャーロットは苦笑して、冗談だよ、と繕うように言った。

「下世話なジョークはよせ、リベリアン」
「これだからカールスラントの堅物は」

 まだ耳が赤いって事を、教えてやるべきかやらないべきか。

 「あんたのそんな初心な感じ、かわいいよ」、なんて言ったら、そのへんの椅子でもぶん投げられそうな気がして、シャーリーはははは、と笑った。

「どーする?コーヒーでも淹れてくるかい」
「待機中だ」
「コーヒーの一杯くらいいいじゃないか」
「だとしても、お前のコーヒーなど薄くて飲めるか」
「じゃああんたのコーヒーをごちそうになろうかな」
 言うと、バルクホルンはため息をついて、なら一杯だけだ、と席を立った。

 ごちそうになるならのろけ話より、こいつの淹れるきっちり蒸らして淹れた、濃いコーヒーのほうがいいに決まっている。



Fin.


以上です。お目汚し失礼しました。
277名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 01:18:48 ID:ZCnoR0Fm
深夜になると急に加速するから困る、いや困らない
過疎過疎言ってるけど書き込み量自体はそんなに変わってないんだぜ、偏ってるだけで

>>276
GJ!!ナイスシャーゲル。最後の一分の切り方が自分好みストライクでした。
異邦人と味覚について言い争いしてるとこって何でこんなに萌えるんだろう……。

ふと、醤油切れを起こして柄にもなく苛々している少佐という図が思い浮かんでしまった。
昔は海外に行くときは必ず梅干の瓶を持って行ったって言うけど、やっぱりもっさんも自分の部屋に梅干を隠し持ってたりするのだろうか。
そしてそれをペリーヌが食べて、大変なことになったりするんだろうか。
278名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 02:29:35 ID:gMRV3nSm
ところで名無しが変わってることには気づいているかい?
279名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 03:23:22 ID:AvZ4NT9H
>>270
任務了解。
幸い仕事が暇なので、これより会社PCからの二次創作活動を再開する。
48は他の隊員に任せたぜ!
280名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 07:09:25 ID:d/Fupi37
ヘルマキター!
トゥルーデに憧れてるとかまた妹ちゃんじゃないかW
281名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 07:11:29 ID:5p/G3Y0p
芳佳とあったらペリーヌみたいに対立しそうだなヘルマw
282名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 07:14:18 ID:+qwCkTic
ヘルマさん、ゲルトルート大尉に確実に補食されます本当にありがとうございました。
283名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 08:13:02 ID:FY+PRQDt
>>281
エーリカの存在も忘れちゃいけないぜ。あんなずぼらな人が何故か憧れの人から一番のおめかけをうけているんだから。
他にもペリーヌとはいろいろ話があいそうだし、シャーリーとの絡みもいけるかな。ルッキーニにはなんていうんだろう。
まずいな、妄想が止まらない……ここにきてなんて伏兵を投入してくれたんだフミカネさんは!!
284名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 08:49:31 ID:6HS6Q9IW
レンナルツって「〜であります」口調でいいのかな?
先輩への口出しのときは「〜ですよ○○さん!」みたいな感じ?
で、ゲルトの前ではデレてどんな手使ってでも気に入られようとしちゃうイメージ
285名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 11:37:25 ID:yPVdXdym
恋のライバルが増えるよ!やったねフラウちゃん!
286名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 12:03:12 ID:+qwCkTic
あからさまに嫉妬するエーリカ見て見たい…。
287名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 12:11:27 ID:SkjprbFM
「む、曹長。タイが曲がっている」
「はっ!失礼しました!すぐに直っ…!?」
「動くな…よし。カールスラント軍人たるもの常に身だしなみには気をつけろ。
 私達が模範にならなければ示しがつかんからな」
「……」
「どうした?返事をしろ、曹長」
「あ、は、はいっ!し、ししし失礼致しました!」
「(なんだか必要以上に恐れられているような…坂本少佐のようにはいかないな)」

はいはい百合ネタのお約束百合ネタのお約束
288名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 12:42:02 ID:AKxmB5b3
>>287
もう少し詳しく
289名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 12:59:03 ID:5p/G3Y0p
>>288
マリア様の庭に集う乙女達が、今日も天使のような無垢な笑顔でうんちゃらかんちゃらで有名なあの作品だと思うよ
290名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 12:59:39 ID:yYotIvS0
いやゲルトさんだったら自分のズボンを代わりに履かせるぐらいやっている筈だ
291トゥルーデ撃墜部隊:2009/02/09(月) 12:59:59 ID:d/Fupi37
ヘルマ話書き終えたのに昼休みが終わってしまった!
夕方投下する!
292名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 13:06:52 ID:04zDK1l6
むしろ
ヘルマ=あむちゃん
ゲルト=唯世
エーリカ=イクト
みたいな感じで、私の憧れはバルクホルン大尉なのに悔しいっ・・・ビクンビクンという展開が見えまする
293名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 13:09:33 ID:6HS6Q9IW
いいなぁ、ヘルマとゲルト。
妄想が止まらない感じ。
智ビューしか書ける自信無い…
悔しいです><

>>291
夕方が待ち遠しいw
どんなゲルトが見られるか楽しみにしてます
294zet4j65z :2009/02/09(月) 14:08:22 ID:J1ENX0Hq
ヘルマの存在に気づいたときには仕事が忙しくなってたよ。
っていうか「『ヘルマ』って誰と誰のカップリングの略だろ」とかナチュラルに思ってしまった俺は疲れてるのか?
とりあえず、映画俳優らしき非ウィッチの姉がいることと所属部隊がハルブの第3飛行中隊なのとナンバーが黄色の7なのとコードがシュヴァルツカッツェ2なのと誕生日が10/10なのまでは確認した。

と、いうわけでトゥルーデの撃墜をwktkして待つ間は暇つぶしにカタヤイネンの不幸ぶりでもどぞ。

保管庫0705の続きで、4レスくらいかな?
295zet4j65z :2009/02/09(月) 14:09:04 ID:J1ENX0Hq
●ブリタニア―北海上空1944 CHASERS02 やっぱりついてないカタヤイネン

 早朝にシェルトランドの田舎空港を出発。
 昨日に引き続いてあいにくの曇天で風も強い。
 雲頂の高度が余り高くなければいいんだが……ま、この位のコンディションなら想定の範囲だな。
 それよりも気になるのはあの大型のネウロイだ。
 一応通報してもらったけどこんな辺鄙な所にいるはず無いとか言って重要視はされないだろうな。
 対策としてこっちで武器を借りようかと思ったんだけどウィッチ用の装備なんてあるはずも無く、駐屯してる歩兵隊の支援火器を分捕るわけにも行かず結局背負っているのはでてくる時に持ってきたスオミM1931短機関銃だけ。
 大きさや性能の割には重いし信頼性も特別高いわけではないんだけど使い慣れて手に馴染んだ武器だし、相手が小型ネウロイなら十分な火力だ。
 上昇し雲の中を逝く。
 5000ftあたりで雲頂を抜け、頭上に青空が拓ける。
 天候にはまぁまぁ恵まれたか……後は昨日のネウロイが幻だったら完璧だな。
 そんなことを考えつつも計器と太陽から方角を確認し、雲海を超える。
 とはいえ変化が無い飛行は退屈だ。
 しかも3日目ともなると疲労も溜まって集中力も切れてくる。
 思えば昨日くらい緊張感のある飛行の方が良かったかもな。
 でも、このフライトを終えれば後はイッルが待ってるんだよな〜。
 突然あたしがきたら驚くよな〜。
 ふっふ〜ん。たまにはあいつが驚く顔も拝ませてもらわないとナッ。
 あ〜、なんか改めてそう考えたら元気が出てきたぜ。
 よしっ! 今日は一気にドーバーまで飛んでやる!
 進路をちょいと傾けて、っと。
 暫く洋上飛行だけど、ブリタニアは長いから方向を極端に間違えなければかならずどっかの海岸にたどり着けるはずだしな。
 そしてあたしは、南よりの進路をとってイッルのいるドーバーへの旅路を急いだ。

「ふぁ〜」

 欠伸が漏れる。
 離陸からかれこれ3時間ほどが過ぎた。
 太陽の高さと雲の形以外は変化の無い世界。
 戦争なんて早い所終わってもらって、こんな静かで気持ちい空をイッルと二人で飛べたら何て素晴らしいんだろうな。
 手とか繋いで見たりしてさ……あ〜でも、あたしからは無理だな。
 そうだな、百歩譲ってイッルから手を差し出してくるならば手を繋いでやらなくも無い感じだ。
 ウン、そんな感じでいいぞ。
 でそのあとは空中でじゃれあってみたりとか……ん〜、あたしとイッルの性格じゃ難しいか……。
 なんか想像すればするほどあいつの悪戯に引っかかったあたしがイッルを追いかける構図にしかなんねえよ……はぅ。

 その時だった。
 突然眼下右手側の雲海が大きく盛り上がり、大きな黒い何かが姿を現した。
 圧倒的な迫力、存在感、威圧感を持つその姿。
 400ft級ネウロイ!
 エイのような姿のそれは間髪いれずに左舷側の胴体を赤く煌めかせ、あたしへのビーム攻撃を開始。

「クソッ、またコイツかよっ!」
296zet4j65z :2009/02/09(月) 14:10:07 ID:J1ENX0Hq

 見覚えのあるシルエット。昨日の奴だ!
 やっぱりあたしは見間違えなんかしてないぞ!
 ブリタニアのレーダー監視網はどうなってやがんだよ!
 座学で507のウルスラって奴からレーダーを使った防空のイロハを散々叩き込まれたんだぞ!
 なんて叫んでみた所で状況が変わるわけじゃない。
 一瞬で頭を切り替えて回避機動。
 シールドの展開が間に合わずに避け切れないビーム身体を掠め、腰のストラップが千切れ、繋がれていたポーチが飛ぶ。
 くるくると回転しながら飛んでいくポーチを追いかける余裕なんてあるはずも無く、回避しきれないビームを展開完了したシールドで受け流しつて雲の中へダイブ。
 畜生! 気分良く青空飛んでたってのにまた雲の底かよ! しかも色々入ったポーチをなくしちまった! ついてねぇっ!!
 ありったけの悪態をつきながら灰色の世界で回避機動と共に加速。
 機動を続けるうちにネウロイのビームは遠くなり、途切れる。
 だがまだ油断は出来ない。
 さっきの動きから見るにあのネウロイは意外と高速だ。
 バッファローじゃ加速しても逃げ切れないかもしれない。
 それに地図やコンパスその他の機材の入ったポーチをなくした上に雲の中に押し込められた今、派手な機動を行って変針する事は即遭難につながるといっていい。
 くっそ〜……イキナリ手詰まりかよ。
 やれる事は一つしかない。つまりは昨日のように雲の中を這いずり回るだけだ。
 こんなコソコソ逃げ回る事しかできないなんて恥ずかしいやら腹立たしいやら……。
 カリカリしてると視界の端で乱流が雲をかき乱しながら何か黒いものが同航し、距離を詰めてくる。
 ネウロイだ。
 しかし、形はは似ているがあのデカブツじゃ無い。大きさは30ft程度か……。
 400ft級ネウロイのミニチュアとでもいえる姿をしたエイのようなシルエットが雲を乱しながらロールを打ち、こちらをオーバーシュートさせようと減速する。
 背後に付かれたら狙い打ちにされるだけだが……あたしは思い切り魔力をストライカーに流し込んで加速をかけた。
 見え見えの動きが臭かった。
 理由はそれだけだったけどあたしの判断は正しかったようで、程なくして背後からの火線が2体分のものになる。
 どういう動きをしていたのかまではわかんないけど同じのがもう一体いたようだ。
 でも雲の中で距離が離れた今、背後をとっていようがそう簡単に当てられるもんじゃない。
 あとはもう半ば盲目飛行で、雲の濃いところをみつけてはそこを縫うように駆ける。
 機位を失うリスクなんてもう頭から吹き飛んでた。
 ただ背後と頭上から迫る脅威から逃れるため、エンジンの回転を上げて小刻みな変針とランダムな機動をくりかえす。
 反撃を考えなかったわけじゃない。
 むしろその欲求を押さえつけるのに必死だった。
 多勢に無勢、初めて見るタイプ、上空には大型ネウロイ、視界の利かない雲の中、長距離巡航による疲労……頭の中で不利な条件を並べる。
 そして無意識に並べた分だけの不利な条件を覆す算段をはじめる。
 多勢に無勢なのは視界の悪さを味方に出来る。
 小回りの聞かない大型ネウロイは雲の中なら簡単に巻ける
 小型の方には活動限界があるはずだ。
 こいつらそ速攻つぶしちまえば疲労の事なんて気にせずに澄む……ああもうっ! ダメだダメだっ!
297zet4j65z :2009/02/09(月) 14:12:15 ID:J1ENX0Hq
 短絡するなあたし!
 考えがどんどん願望に変わってく!
 どうするよニッカ!
 イッルならどうする? ……あいつはダメだ。そもそもこんな状況を作り出さないのがイッルのすごいところなんだ。
 エルマ隊長? そもそも悩まず逃げるか……。
 ハッセ? 勇気ある撤退、だな……って事は反撃にあたしの一票と逃亡に二票、棄権一でキマリだ!
 覚悟をきめたあたしはデッドウェイトでしかないスオミ短機関銃を勢い良く投げ捨て、正面を見据えた。
 何処までだって逃げてやるぜ!
 だから……さっさとどっかいきやがれっ! ネウロイども!!

 周囲に気配がなくなった頃にはもう日が傾き始めていた。
 あたしは出鱈目に雲の中を飛び回ったお陰ですっかり機位を失った上に疲労は極限まで達していた。
 まずいな……ネウロイを振り切ったはいいけど、このままじゃ海に落ちる……。
 気がつけば高度が大分落ちていて、海面までは300ftを切っていた。
 雲は未だ熱く垂れ込めていたけれど、なんとなく感じる事のできた明るさから判断してブリタニアの本土があるはずの西方向を目指して進んでいた。
 視界は霞み、殆ど前を見れていなかった。
 雲海の上を意気揚々と飛んでいられたのが遠い過去のようだ。
 このまま眠りに落ちてしまいそうな精神を、イッルを思うことで何とかつなぎとめてふらふらと暗い北海の上を行く。
 唐突に声が来たのは、その時だった。

『危険ですっ! 高度を上げてっ!!』

 ハッとなって視線を上げると目の前には大型の客船の船腹が迫っていた。
 距離はあと500ftも無い。
 海面までの高度も既に50ftを割り込み、このまま飛べば船上の構造物への激突は必至と思われた。
 最悪の事態を回避する為にストライカーに魔力を込めるが、消耗しきった今のあたしは僅かに高度を上げる事しかできなかった。
 左右への回避も考えられなかった。
 今急激なロールを打てば、ギリギリの状態で飛行しているあたしはあっという間に失速するだろう。
 そしてこの高度での失速は即墜落を意味する。
 本当ならば素直に墜落して船へのダメージを最小限に抑えることがベターな選択肢だったんだろうが、意識も半ば混濁していたあたしはそんな判断すらついていなかった。
 高度を上げきらないまま、船腹が迫る。
298zet4j65z :2009/02/09(月) 14:18:51 ID:J1ENX0Hq

 見据えた視線、正面。船べりには少女がいた。
 ふわっとした銀髪に神秘的な翠玉の瞳。ほっそりとした肢体を包む、清楚な白と黒の制服。
 そして頭部両側には不思議な輝きを放つ魔道針。
 そんな飛び切りの美少女が傾いた陽の輝きを孕んだ低い雲を背負い、逆行に照らし出されてそこにいた。
 イッル一筋って自信のあるあたしでもちょっと心奪われた。
 このまま飛べば、きっと彼女にぶつかってしまう。
 避けてくれと念じれども彼女は動かない。きっと恐怖で竦んで動けないんだろう。
 自分がどんなに派手なクラッシュをしたって、直接他人を巻き込まないのがあたしの自慢なんだ。
 なのにあんなにいたいけな女の子を巻き込めるはず無いだろっ!
 気合を入れる。
 僅かに高度が上がる……でもまだ足りない。
 クソッ! 諦められるかよっ!!
 これでもかと力を込める。
 その時、意外な場所から救世主が現われた。
 まずはじめは肉声による怒号。

「ちょっとあんたっ!もっと引き起こしてっ!!! ……ああもうっ!!!!!」

 その声の後間髪入れず、次に感じたのは腹部から胸部への強烈な打撃だった。

 ドスッ!!

 自分の下から、誰か来た?
 衝撃で一瞬下がった視界にライトブラウンの髪が舞う。
 一体何が起こってるんだかわからなかったけど、身体が一気に押し上げられたのだけは感じ取る事ができた。
 そして衝撃と疲労で暗くなりつつある視界の中で、銀髪の少女と目が合った。
 多分至近距離数十ftだっただろうと思う。
 不思議な事にこんな状況にもその瞳におびえの色は無くて、ただあたしの事を慮ってくれている深い思慮が感じられた。
 なんだか解らないけど本当に彼女が無事でよかった。
 そしてその記憶を最後に、あたしは意識を失った。



以上となります。
次はまた別キャラ視点になるかな? ……いつ書けるかわかんないけどw

あと、シャーリーの誕生日間に合いそうにないんでみんなに任せて自分はクロエとハイディをカバーしまっす。
バレンタインも何か書けたらとは思うんだけど……ムリダナ(・x・)
299名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 14:32:38 ID:6HS6Q9IW
>>298
心理描写が巧みですね、GJ!

自分もあるSS作者ですが、なるほどバレンタインは日本(史実)では1936年に雑誌で紹介されたのが初出みたいですね。
これならいらん子扶桑組から誰かへ、とか501のチョコ合戦とか行われても違和感は無いですね。
まあ当時は売り上げなんてからっきしでチョコ自体高価だったと思いますが。
300名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 14:36:31 ID:6HS6Q9IW
あ、元は欧米文化だからつじつま合わせなんて最初から必要ないか…。
チョコで、としか考えてなかった…
毒されてるなぁ、製菓会社の陰謀に……
301名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 15:22:25 ID:GAjl9+L1
>>299
当時のチョコは1枚50円とwikiにありますね。
余程高価なものだったのでは。

だから尚更本命な人には……とか妄想が膨らんでしまいそうだけど
501の面々は皆お金持ちだからなあw
302名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 15:37:28 ID:6HS6Q9IW
>>301
というよりウィッチは当時としてはかなり高給取りのようですし、給料はたけば購入は容易でしょうね。

ペリーヌなんて少佐に渡そうにも、もじもじしている間に芳佳に先を越されそうですよねw
14日は参加せざるを得ない気がしてきましたよw
303名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 15:46:33 ID:aJVFogn8
>>261
昨今のシャッキーニ成分激減の原因はシャッキーニのキャラが云々というより

・フミカネブログでの紹介による本編未登場キャラの台頭
・滝川さん超消息不明
・2月は他のウィッチの誕生日祭

この3点に尽きると思う
特に一つめと二つめはマジに致命的だと思う
304名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 16:05:58 ID:maNdB6nO
秘め声でシャーリーがそんなベタベタしてなかったのがあかんのだよ!クソッ!
305名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 16:19:34 ID:GAjl9+L1
>>303
こうですね、わかります。


あの人のことか ああ知っている
話せば長い そう 古い話だ
知ってるか? SS職人は3つに分けられる
シリーズ(長文)を書く奴 特定のカプにこだわる奴 スレの流れを読める奴
この3つだ あの人は――

かの人は『じっちゃん』と呼ばれた職人 『SW百合スレの神』なひと
よう管理人 いいSSだ 保管庫を見れば どのSSも見事さは変わらん

私は『かのひと』を追っている
あれは雪の降る寒い日だった

『レズ・百合萌え板』で大規模な勢い上昇スレ発見!
SS投下か? どの職人だ!
全職人へ 住人のリク拒否は許可できない
だろうな SS連投だ
こちら通りすがりの住人 可能な限り連投支援する
読むなら 俺の寝ているうちに頼む

百合スレには謎が多い
誰もが書き手となり 誰もが読み手となる
そして誰が「攻め」で 誰が「受け」か
一体『ストライクウィッチーズ』とは何か

新リク多数 全リクに対応し、SSを投下しろ 新スレでお出迎えだ
新キャラSSだ
レアカプのリクだ! 油断すんな
レアカプがなんだ 俺が書いてやる!
SSにルールは無い ただ妄想を書き散らすだけ
このスレは どちらか萌え尽きても終わらない
受け入れろ 新人 これが百合スレだ
SWの虜が! 書けよ 臆病者!

生き残るぞ! 皆!
306名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 17:16:24 ID:t/HjeQ7V
熱い、熱いよ!!!
307名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 17:21:37 ID:LSMDVDwH
>>298
喫茶店の人GJ!!
私は数多くいる強者達の中でも特に貴官の文章に心酔しています!
続きも楽しみに待っています!!
308名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 17:22:05 ID:9TuZCpz0
音速の魔力に取り付かれ、記録更新の事しか頭になくなって、"音速出す為なら魂売るぜ"的なスピード狂になってしまったシャーリーが、
無邪気なルッキーニののおかげで、少しずつ人間らしいさを取り戻して、最終的にはルッキーニーと結ばれて・・・

なんてなストーリーを妄想した百合ヲタでプラネテス厨な俺。
309名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 17:22:36 ID:SsdTtYBs
ACE WITCHES ZEROですね
310名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 17:24:20 ID:t/HjeQ7V
>>309
しっくり来るなそのタイトルw
空飛ぶしな。
311名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 17:26:40 ID:maNdB6nO
ゲルト1、指示を、指示を・・・
312トゥルーデ撃墜部隊:2009/02/09(月) 18:17:02 ID:d/Fupi37
仕事終わった!
待っていてくださった方ありがとう。ヘルマ×トゥルーデ投下します

撃墜場面は次回に持ち越しの予定…
313名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 18:17:34 ID:d/Fupi37
「お久し振りであります!バルクホルン大尉!」

驚いた。

訓練から帰ったら、金髪にカールスラントの軍服の少女が敬礼で出迎えてくれた。
ヘルマ・レンナルツ曹長。
ジェットストライカー実験部隊“ハルプ”に所属する少女だ。

「久しぶりだな、レンナルツ曹長。…何故この基地に?」

半分戸惑いながらもそう聞くと、レンナルツは背筋を更に伸ばして言った。

「は、はい。実はバルクホルン大尉の妹さんからの手紙が、こちらのブリタニア基地ではなく本国の軍に間違って届いておりまして…大尉がお返事を心待にしているのではと、お持ちしたであります!」

なにっ!?く、クリスからの手紙が…!

「もしかしてストライカーで来たの?さっき格納庫に見慣れないストライカーがあるなーって思ったんだ」
「…はい。公共の交通機関では時間がかかりますから」

私の隣にいたエーリカの問いに、心無しか先程よりトーンの落ちた声でレンナルツは答えた。

私もクリスが目覚めた時、ストライカーで飛び出そうとして止められた事があったが、それをしてしまうとは。
彼女は真面目で優秀なウィッチだが、珍しい事もあるものだ。
314名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 18:18:36 ID:d/Fupi37
「ヘルマはトゥルーデの事になるとアツいよね〜」
「なっ…!ち、違います!私はストライカーの飛翔訓練も兼ねて…」

エーリカの言葉に、突然真っ赤になって慌て出すレンナルツ。少し後ろでミーナがくすくすと笑っていた。
…よくわからないが。

「ぁ…大尉、これが届け物です」
「ああ、ありがとう」

レンナルツはまだ赤い顔のまま、封筒を渡してくれた。
汚れないように小さなファイルに入れてある所は、さすが几帳面な彼女といったところか。

「では、私はこれで失礼致します」
「あらヘルマさん、もう夕方よ。今日はここで過ごして、明日帰ったら?」
「えっ!?で、ですが…」
「いいじゃないか、あんたのストライカー見せてよ!」
「うにゃー!あそぼあそぼー!」

ミーナの提案に戸惑うレンナルツに、うちの騒がしいコンビが飛び付いた。

「私も色々お話聞きたいなぁ」
「これからご飯作りますから、食べていってください」

宮藤とリーネも加わり、彼女は完全に取り囲まれた。

「ゆっくりしていってくれ、レンナルツ。向こうの話でも聞かせてくれ」
「は…はいっ!」

私の言葉に、彼女はまた赤くなり敬礼した。
315名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 18:19:45 ID:d/Fupi37


夕飯を終え風呂から上がると、意気揚々とレンナルツを引っ張っていった筈のリベリアンが食堂でぐったりしていた。

「だらしがないぞリベリアン」
「あー…もう、あんたが二人になったみたいだよ」
「は?」
「ずーっとお説教されちゃったー…」

隣にいたルッキーニも同様だ。

「ちょっと普段の生活について話したらさ、ちゃんと軍務はこなせーとか部屋片付けろーとか散々言われてさ」

なるほど。
レンナルツはとても真面目できちんと規律を守るカールスラント軍人の鑑だ。
少し世話焼きでそれは上官に対しても変わらず、エーリカなんかはよく怠惰っぷりを注意されていた。

「私も怒られちゃいました…うぅ」
「宮藤もか?」
「…だって芳佳ちゃん、レンナルツさんの胸ばっかり見るから…」

…皆自業自得だな。

「トゥルーデ、ヘルマさんの寝床はどうしようかしら」

ミーナが食堂の入り口から声をかけてきた。

「私達カールスラントの誰かの部屋がいいと思うのだけど…」
「うむ…エーリカの部屋に寝かせるのは無理だし、佐官と一緒では気を使うだろうから…私が引き取る」
「ふふっ…わかったわ、お願いね」

ミーナはまたもくすくす笑った。何なんだ?
316名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 18:21:09 ID:d/Fupi37
「しっ、失礼致します!バルクホルン大尉!」
「そんなにかしこまらなくてもいいぞ、レンナルツ」
「は、はいっ…」

就寝時間、私の部屋に入ってくるなりレンナルツは声を上擦らせて固くなった。
ミーナ程ではないとはいえ、やはり上官と就寝するというのは緊張するのだろう。

「少し狭いかもしれんが、我慢してくれ」
「そ、そんな…大尉とご一緒させて頂けるだけで光栄で、その…」

髪留めを解くと、レンナルツは言葉を詰まらせた。…ここまで緊張しいだったとは。意外だ。

「!な、何も着ていらっしゃらないのですか大尉?」
「ああ。お前も楽な格好で寝るといい」
「う…は、はい…」

レンナルツはゆっくりと軍服とシャツを脱ぎ始める。

「トゥルーデ〜」
「わぁ!」

突然ドアが開き、レンナルツは慌てて振り向いた。

「は、ハルトマン中尉!他人の部屋にはノックをして入るものですよ!」

私がいい加減諦めていた事を、レンナルツが注意してくれた。

「いいじゃんねー、トゥルーデ」
「良くない。私は注意するのに疲れただけだ」
「はいはい、じゃおやすみ」

エーリカはお構い無しに入ってくると、私の頬に口付けた。
317名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 18:23:17 ID:d/Fupi37
「なっ!!き、きき貴様人前で…!」
「いつもしてるじゃんか、おやすみのちゅー」
「してるとかしてないとかの問題じゃ…!」
「じゃーおやすみ〜」

私の説教を聞き流し、エーリカは部屋を出ていった。
出る間際、レンナルツの方をちらっと見ていたようだが…表情はよくわからなかった。

「はあ、全く…騒がしくしてすまないなレンナルツ。寝ようか」
「…大尉!」

布団をめくり中に入るよう促すと、レンナルツは俯いたまま言った。

「わ、私、少々寒いです。近くに寄らせて頂いて宜しいでしょうか!」
「ああ、構わないが…」

もぞもぞと私に寄り添うように布団に入るレンナルツは、まさに猫のようだ。
まだ13歳の少女だ、夜は寂しいのだろう。
軽く抱き締めてやると、彼女はおずおずと顔を上げた。

「……あの…」
「ん?」
「い…今だけ、ヘルマと…呼んで頂けませんか…?」

う…可愛い。恥ずかしがっているような表情が、なんとなくクリスを思い出させた。

「わかった、…ヘルマ」

私の言葉を聞いて、彼女は耳まで真っ赤になり黙ってしまった。

気付いてしまった。
…もしかして、ヘルマは…


妹属性なんじゃないか。
318名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 18:24:52 ID:d/Fupi37
クリスよりは真面目すぎるがいい子だし、可愛いし、しっかり言い付けも守る。
なんてこった、我が軍にも私の妹がいたとは。

「…じゃ、じゃあ私の事はお姉ちゃんと呼んでいいぞ」
「えっ!?そ、それは…」
「軍服を脱いでいる私達に階級などない。気にすることはない」

ヘルマはしばらくもじもじとしていたが、やがて私を見つめ口を開いた。

「お…お姉ちゃん…」

……!!
ああ…なんていい響きなんだ!!

「よしよしっ!可愛いなぁヘルマは!」
「ふわっ、大尉…じゃなくてお姉ちゃ…」
「大丈夫、今夜はお姉ちゃんが一緒に寝てあげるからな!怖くなんかないぞ!」
「あ、あの…」
「寒いならもっとぎゅーっとしていいんだぞ、ほらほら!」
「…ご…ごめんなさいー!!」

ガバッ…

…はっ、私は今まで何を…
ん?なんだこれは、何故私の上にヘルマがいる?

「私…私、もう我慢できません!」
「え、ちょ…どうし…」
「バルクホルン大尉…!」
「あっ!だ、だめだ…ヘルマ、あぁっ……」


――――

翌日、レンナルツはカールスラントへ帰っていった。
…しかし昨晩の記憶があまりない。なんだか酷く体が重いような気はするが…

「…トゥルーデ」
「ん…なんだ、エーリカ」
「今夜はお仕置きだからね」
「は…?な、なんの話だ!」


「…私、負けませんよ。ハルトマン中尉」

レンナルツのジェットストライカーは、蒸気線を残しながら青空へ消えていった。
319トゥルーデ撃墜部隊:2009/02/09(月) 18:26:08 ID:d/Fupi37
以上です。需要あれば、ヘルマ視点で撃墜の様子を書こうと思います(笑)

お目汚し失礼しました〜
320名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 18:26:50 ID:ZCnoR0Fm
>誰もが書き手となり 誰もが読み手となる
この一文にこのスレのカオスの根源が隠れている気がする。

今日一日レンナルツ曹長で色々妄想していたんだが、
エーゲルの非成立を仮定すると、エーリカ×ヘルマとかアリなんじゃないかって気がしてきた。
501解散後カールスラントに戻った3人。トゥルーデとお近づきになりたいヘルマはエーリカに頼んで色々といいようにしてもらうんだけど、
その為に多くの時間をヘルマと過ごし、彼女の様々な面を見てきたエーリカはいつしか自分の気持ちがヘルマに傾いていることに気付く。
トゥルーデ一筋のヘルマが自分に振り向くはずはない。でも好き。二人が結ばれたらヘルマはもう自分の部屋には戻ってこない……!!
これって百合になりませんか?(某なんとかの泉風に)

とか何とか書いてたら待ちに待ったSSキター!!
>>319GJ!!私の脳内ヘルマさんまんまじゃねーか!!いつ覗いたんですか!!
これはニパの次に流行る予感
321名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 18:29:07 ID:6HS6Q9IW
>>319
待ってましたGJ!
スレ内で話題となってた三角関係を昼休みという時間でいとも簡単に…恐れ入りますw
322名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 18:41:33 ID:3xY7f3b+
>>319
GJです!良かったなあトゥルーデ、
こんなにも姉にぞっこんな妹が出来てw
323名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 19:49:52 ID:INCh5A+y
第27手 くっつく・背中に寄り添う えいらにゃです。とにかく短い。連続投下します。

北欧スオムスの空の下、確かにキミの背中を自らの背に感じながら、共に星を眺める。
明かりなどそれこそ、降り注ぐ星の光だけで、感じる暖かさもキミの背中だけであった。

二人きりだね。どうして私についてきてくれたの?
問いたいことの代わりに、私は背中にのせる体重をちょっとだけ強める。
キミもそれに応えるように、かける体重を少しだけ強めたのが感じられて、思わず笑みが零れた。
ふふっ、はははっ、と面白いことなどないのに、なぜだか幸せが溢れ出して、二人の笑い声だけが響いた。

キミも同じ気持ちですか?
尋ねることはしないけれども、どうかそうであればいいなと思う。

天を仰ぐと、星の瞬きばかりが目に入りキミを強く感じるのだ。
あぁそうか。私にとってキミは星なのだ。
ふわりふわりと優しく微笑む姿は、なにかと言えば月の様に例えられることが常だけれども私にとっては違う。
キミは目映く輝いて、あまりにも眩しくて、私には直視できやしないお星様なのだ。
遠くから見るだけならば、月であろうが星であろうが目映いことには変わらない。
しかし、もしかしなくとも、隣にいる私が一番強く感じているのだ、キミは自分で輝いているよ。
だからほら、自信のなさそうな顔をしないで笑ってほしいんだ。
私だけの可愛らしいキミでいてほしい気持ちがないわけではないけどさ、やっぱり皆にも、誰にでも、キミを愛してほしいから。

私はそっと彼女の手に自らのそれを重ねる。
ほら、手を重ねればさ、怖いのも平気だってアイツも言っていただろう?
だからさ、いつだって手を重ねることぐらいならしてあげられるから、キミも一緒に勇気をだそうよ。
実は私も勇気をださなくてはいけないから、少しだけ、文字通りキミの手を借りたいんだ。
キミは新しい土地で新しい仲間と触れ合う勇気を、私はキミのその頑張りを見守れる勇気をださなくてはいけないから。

私たちの新しい門出に少し頼むよ…と胸の中で呟けば、使い魔の黒狐がめんどくさそうに翻る。

私は、また少しだけキミへかける体重を強めて、空を仰ぐように促した。

空に虹色の帳が揺らめく。
ほら、オーロラも祝福してくれているよ。
実のところ、その帳は私の使い魔が持っている力なのだけれど、そんな無粋なことは知らせなくてもいいさ。
お前には少し悪いけどごめんな。
私は黒狐の背中を撫でてやりながらキミとの未来を祈った。

Fin.

324名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 19:51:06 ID:INCh5A+y
第15手 おんぶ・背中へ一方的にのしかかる  やはり短い。

目を覚ますとひとりぼっちになっていた。

あの人がいない。

どこにもいない。

あの人はいつもなら、私よりもよほど早く目覚めているにも関わらず、眠る私が起きるまで私を抱きしめていてくれるのだ。

毎日毎日ベッドに忍び込む私を、仕方のない、の一言を持って抱きしめてくれる
あの人がいなければ、私の心はすっかりとしぼんでしまう。

暖かくて、優しくて、それなのに私を子供扱いして…あの人は私が持っている、
幼いけれど、確かに存在する気持ちなど全く気にもとめないで、いや、更に悪いことに気づきすらしない。
いくら自らが年上だからとしたって、保護者ぶるのならば、せめて、せめて私のこの気持ちを汲み取ることぐらいしてくれてもよいのだろうに。
あの人は全くもって鈍いのだ。
いつもふわふわと笑っていて、なにも考えていないのか、
それとも分かっていて私の気持ちを忌避しているのか、どちらにせよ全くもってヒドい人…。

だからといって、私があの人のことを嫌いになれるはずなどなくて、自らの体温のみを残すベッドがどうしようもなく寂しく感じてしまわれる。

「探しにイコ…。」

孤独な自らを奮い立たせるようにポツリとそう呟き、
えいやっ、とばかりにベッドから身を起こすと、確かな質量を携えた冷たい空気の層がのしかかる。

この国の冬は寒い。
ちっぽけな自らの身体でさえ、柔らかい布にくるまれていれば存外に暖かいほど熱を返してくれていたらしく、
ベッドから抜け出した私の身体はひんやりとした空気に熱を奪われる。
胸にたまり、そして頭の中をめぐる冷気が段々と眠たい頭を揺り動かす。
寒い…、と文句でも言うかの様に囁いたのは、もしかしなくても隣にはいないあの人への訴えだった。
寒いと言ってしがみつく私を、本当にしょうがない子だ、と思っているのだろうか、
あの人はいつもいつも私の髪をふわりと撫であげて微笑むのだ。
私が寒い時にはいつも隣にいてくれなくては困るじゃないか、と的外れなことを呟く。
それは、建前をどうにかして自分にも、そしてあの人にも、本音と思わせておかなければ、
こんな関係などすぐに終焉を迎えてしまうのではないか、という怖れを紛らわすためであった。

静かで、冷たい廊下をポツリと歩く。
アナタはどこだろうか…食堂だろうか?それともブリーフィングルームだろうか?
まぁ、どこだろうが私はアナタ行く場所ならどこにでも行くから関係ないか…そう考えて黙々と歩んだ。

…いた。確かにあの人は、食堂で‘友達’と話している。
楽しそうに笑う姿がなんだか無性に寂しくて、私は彼女の背中へと飛びついた。

「置いていくなんてヒドいじゃナイカー。」

私の声にアナタは顔だけ振り向いて、ふわりと微笑んだ。

「あぁ、エイラさん、すみません!もうそんな時間でしたか!つい…」

アナタが申し訳なさそうに謝ったから許してあげよう。
だけど今日はこの背中から離れてはやらない。
そう思い、私は彼女の首にまわした腕にギュッと力を込めた。

Fin.


えるまいらです。途中までサーニャ視点っぽく見えるようにしてみた。
325名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 19:53:55 ID:INCh5A+y
第9手 乳を揉む  ニパエイラ。

少しだけ。少しだけでいいから私だって仕返しがしたかった。
いや、仕返しと言っても、それは決して恨み言とかそういった類のことではなくて、端的に言ってしまえば二人の交わりについてなのだ。
いつもいつもアイツときたら私のベッドへと潜り込んで、
あの、その…耳を食んだりだとか、胸を揉んだりとか…それこそ、決して言えやしないことまで…。
確かに気持ちを伝え合った間柄なのだから、そのような、享楽的なことにふけることは吝かではない。
むしろ、どちらかと言えばできるだけ、あの、えっと…気持ちを注いでほしいぐらいなのだ。
けれども、アイツときたら、すっとベッドへと入ってきたかと思えば、既に私の身体を弄り始めていて、私に主導権など与えてやくれやしない。
だから毎晩毎晩、私ばかりが、その…高められてしまって、気づいた時にはもう朝で、
自らが身に余る快楽により気を失ってしまったことに気づき、情けなさばかりが募るのだ。

つまり、なにが言いたいかというと、是が非でも主導権を奪って、イッルに一泡ふかせたいということである。
あぁ、しかしアイツときたら全くもって隙など見せず、私は主導権を奪うどころか、被撃墜スコアを着実に伸ばすのみであった。

このままではいけない。
そう思い、私はイッルの後をつけて、隙を見つけることに決めた。

ふむ。よくよく考えてみると、長いこと一緒にいたわりには、私はイッルの生活についてあまり知らない。
一緒にいる時間が多いからこそ、私といないときの様子など気にしたことがなかったな。

ーーーーーーーー

という訳で一日中つけまわしてみたのだが、イッルのしたことと言えば…

・廊下で出会ったハッセの胸をすれ違いざまに揉み、なにか耳元で囁く。
 ハッセがなにやら頷くと、ニコニコしながらスキップして去っていった。

・廊下でアホネンと遭遇。なぜか涙目で遁走した。
 逃げながらお前は絶対にくるんじゃねーと意味の分からないことを叫ぶ。

・ハッキネン司令の胸を揉もうとして手をはたかれる。
 なにやら迷っていたようだが、なにか小声で説明していた。

・エイッカ隊長とお茶を飲む。
 なにやらどんよりと沈んだエイッカ隊長を慰めていたかと思えば、なにか耳元で囁いて去った。
 なぜか胸は揉まなかった。

・エルマ大尉に遭遇。
 もちろん胸を揉みしだく。
 やはりなにか耳元で囁くと、食堂へむかった。

うん、少しぐらいなら…死なない程度なら痛めつけたとしても構わないのではないだろうか。
イッルときたら誰彼かまわず胸に手を伸ばして…この浮気者。
そう考えるとなんだかむしゃくしゃしてきて、一人ポツンと食堂の椅子でダラリとしているアイツになにかお仕置きをしてやりたくなった。
あぁなんだ、当初の目的と合致するではないか。
やってやる。私はやってやるぞ!イッルに一泡ふかせてやるんだ!
326名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 19:55:07 ID:INCh5A+y

そろりそろりと、できるだけ静かに、気づかれないように背後につけると…イッルに狙いを定める。

………今だっ!!

私は全くもって無警戒なイッルを椅子から引きずり落とし、馬乗りになった。

「エッ?ナンダナンダ?」

イッルの平坦な声が響く。誰も食堂にいなかったのが不幸だったな!
私は、いつもの仕返しだとばかりにイッルの胸に手を伸ばし、そして揉みしだいた。

「ひゃっ、ヤ、なにすんダヨ!あふっ…。」

イッルの不平が耳に入るが、私はそれを無視してかまわず胸をこねくり回す。
ムニュムニュとそれは形を変え、私の征服欲を満たしていく。

「可愛い声だすじゃないか。たまには私だって攻める側にまわりたいんだ!覚悟しろよ!」

イッルが目をギュッと瞑って震える。
その姿はなんだかいつものカッコイい姿とは違って女の子らしくて、私の胸を燃え上がらせた。

「ずっと私の胸揉みたかったノカ?」

いきなりの奇妙な問いに私の顔に血流が昇る。
あの、そりゃさ…

「そうだよ!揉みたかったよ!!悪いか、私だってやらしい気分にぐらいなる!!」

今まで隠していた思いの丈をぶつけると、妙に胸がすっきりとした。
イッルは顔を朱な染め、何かを堪えるように俯く。

「本当カ?嬉しい…も一回言ってクレ、大きな声デ。」

なんだなんだ、イッルはこんなことを言われると嬉しいのか?
その赤く染まった頬が可愛らしかったから、リクエストに答えてやろう。

「私はイッルの胸がずっと揉みたかったんだよ!!お前を見てるとやらしい気分になるんだ!!」

そう私は声をあげた。
イッルを見つめると、顔はもう真っ赤で、ぷるぷると震えていて、あぁ、どうしようもなく可愛かったよ!!
そうイッルは、ぷるぷると震えて…そして噴き出した。
327名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 19:56:14 ID:INCh5A+y

えっ、噴き出した?

イッルときたらいきなりの大笑いを見せる。
一体どうしたと言うのだ?
イッルが私の後ろに指をむける。ん、後ろがどうかしたと言うのだろうか。
そして私が振り向くと…

そうさ、エルマ大尉にエイッカ隊長、ハッセとオマケにアホネンとハッキネン司令までいる。
そこで私はふと気付いたのだ…あぁ、はめられたのだと。
私ときたら公衆の面前で淫らな行為に及んだ上に、変態的な主張までしてしまった。
可哀想なものを見るような皆の視線が痛い。

「わ、私をソンナメデミンナー!!」

声を振り絞ると、私は自らの部屋へと逃げ出した。

ーーーーーーーー

ぐすっ、ぐすっと情けない音が部屋に響く。
私ときたらなんとカッコ悪くて情けないのだろうか。
またイッルの手の平で踊らされて…いつになったら私は優位に立てるのだろう。

キーッと建て付けの悪いドアが開く音が響く。

「なにしにきたんだよ…。私をバカにしにきたのか?」

そう、ドアの向こうにはやはりイッルが立っていて、部屋の中、そして私の心の中に無遠慮に踏み込んできた。
私は面とむかえるはずなどなくて、ぷいっと顔を身体ごと背ける。

「なぁニパ?あの、からかったのは事実だけどさ、お前の気持ちが嬉しかったのは本当ダヨ。」

そう言ってイッルは私の頬を撫でる。
それだけで、本当にそれだけで私の心は溶けてしまって、もう不機嫌なんて飛んでいってしまうのだ。
うん、許してやろう。その代わり…

「じゃあさっきの続きな!じゃあ、いただきます!!」

私はイッルをベッドへ押し倒すと自らの身体を覆い被せる。

「えっ、ちょっと待テ!本当に?あわ…」

慌てるイッルも可愛らしいな…とあまりにもダメなことを考えながら私は胸へと手を伸ばした。

Fin.
328名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 20:06:48 ID:INCh5A+y
皆様GJです。
特にzet4j65z様GJです。
あれ、少しニパへたれましたか?なんとなくzet4j65z様の書くニパは強気のイメージでしたが。
まぁ自分はスオムスのへたれっ娘が好きなので万々歳でしたけれども。

48手はできるだけ他の題目にかからないように表現やらを探すのが楽しいですね。
髪をなでるとか馬乗りとか…ぎりぎりのトコを組み込みたい。

そういえば筆が早いといわれたのですが基本的に遅筆だと思っているので吃驚しました。
とりあえず半月ほど来れそうにないので色々イベントに乗れそうもないのが寂しいRU1ZZ/dhでした。

でも間に合えばもう1本10時前ぐらいに投下します。
329名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 21:41:55 ID:AKxmB5b3
>>289
遅くなったけどサンクス
330名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 21:52:16 ID:INCh5A+y
いつかの後日談その2投下します。タイトルは幸せの方程式と特別な特別。
エイラの誕生日ネタなのは誕生日にはこれないから。早すぎてスイマセン。

朝目覚めると、3人の可愛らしい女の子に囲まれている。
そんな状況はスオムスの女の子なら誰でもする妄想だが、私の場合、これが現実なのだ。

そう、私のベッドには年上のはずなのに可愛らしくて、どこまでも優しいエル姉がいる。

それに加えて、少し怒りっぽいし、男の子みたいだけれど、本当はすごく可愛いし、ふかふかで女の子らしいニパもいる。

それにもちろん、小さくて、可愛らしくてねぼすけな、大事な大事なサーニャだって私に抱きついて眠るのだ。

それは自慢なのかと問われたとしたら、自信をもって自慢だと答えられる。
あぁ、だってそうだろう?
世界で一番大切な人達が自らのことを愛してくれると言うのだもの、幸せでないなんて言ったらそれこそただの嫌みだ。

だから、私は今日もスオムスの朝の凍えから逃れるため、人肌の温もりを求めて誰かを抱きしめようとしたのだ。
けれど、私の腕は空を切り、胸に抱かれたのは冷たい空気だけであった。
不思議に思って重い瞼を持ち上げると、ベッドの上は蛻の殻で、誰かの体温を返すことはなかった。
おかしいではないか。
私よりも早く目を覚ますことが常であるエル姉や、特に寝起きに難のある訳ではないニパならともかく、サーニャまでいないのだ。
いつも通りであるのならば、サーニャはあと2時間は夢の中の住人のはずで、つまりベッドにいないはずがない。
けれども、そのサーニャすらもがいないということは…もしかして全部妄想だった?
いや、いくらスオムスっ娘にとってはポピュラー…いや、コモンと言った方が正確かもしれないぐらいメジャーな妄想だからっといってそれはない!!
もしも全てが妄想だったのなら、どれだけ私の妄想力は逞しいのだ…。
落ち着いて空気を吸い込めば、冷気は肺を満たし、血管を巡って意識を覚醒させる。
よくよく見れば部屋の中には皆の荷物もしっかりとあり、彼女たちの存在を強く主張していた。
私はホッと安堵の溜息を漏らすが、同時に、決して芳しくない想像が頭をよぎった。

もしかしたら、皆は私に愛想を尽かしたのかもしれない。
私には誰かを選ぶことなど今でもできないけれど、
やはりそんな優柔不断な姿は格好の良いものではなくて、皆がそのような私を軽蔑したとしてもなんら不思議はないのだ。
私ときたらすっかりと、頭まで皆の優しさに浸かることに慣れてしまって、なにもしていなかったのだから。

ん?でも、昨日眠りについた時点では皆、私の隣で寝息をたてていたのだから、いくらなんでもそういきなり変わるものであろうか?
頭を悩ましていると、自らのお腹が‘くぅ〜’と音をたてる。
こんな時でもお腹はすくものなのだな、と自嘲気味に笑うと、私は食堂へと向かうこととした。

ーーーーーーーー
331名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 21:59:36 ID:wnPoSldd
支援
332名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 22:00:24 ID:INCh5A+y
「お〜い、ニパぁ!今朝はなんで部屋にいなかったんダヨ?」

食堂の入り口に、腕を組んでもたれかかっているニパを見つけたので声をかける。
どうやらニパは一人らしいが、食堂からは慌ただしい音と声が聞こえてきて、
その中にはエル姉やサーニャのものも混じっているようだから、二人は中にいるみたいだ。
それならばニパも連れてご飯にしよう…ニパはもう食べ終えたのかな?

「おい、イッル!あいにくお前はしばらく食堂への出入り禁止だ!」

はぁ?ニパがなぜだか訳の分からないことを訴える。
どうして私が食堂から締め出されなくてはならないのだ。

「なんでダヨー!私はお腹が減ったんダ。それにサーニャも中にいるんダロ?」

そう。だから私には止まる理由などないのだ。
だから私は、ニパの言葉を無視して食堂へ入ることとする。

「おい待てよ!だから立ち入り禁止だ!」

ニパが私の腕を掴み、私を止めようとする。
それでも私は止まる気などない。
自由な方の腕で食堂への扉に手をかける。

「エイラ…絶対に入ってこないで!入ったら私…怒るから。」

扉の向こうからサーニャの声が響く。
その声に含まれるのは拒絶の意で、私には逆らうことなどできやしなかった。

あぁ、嫌われてしまったのだろうか…私は胸に痛みを携えてもと来た道を歩んだ。

「イッル、これもってけ!!」

そうニパが叫ぶと、サンドイッチが手渡される。中身はサーモンかな?

「ありがとナ。」

応えたけれどもわたしは食欲なんてなくなってしまっていた。

「あ、それもちゃんと読めよ!!」

それ?あぁ、確かにそこにはなにかメモのようなものが折りたたまれ、存在した。

「あぁ分かっタ。」

私にはそう答えることだけしかできはしなかった。
−−−−−−−−
333名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 22:01:10 ID:INCh5A+y
もらってきたサンドイッチをテーブルの上に置くと、私はベッドへと飛び込んだ。もちろん手には読めといわれたメモを携えている。
あぁ、しかしこれを読んでもよいものであろうか。
もしかしたら、これは私への三行半…いや、絶縁帖なのではないのだろうか。
そうであったなら私は立ち直れるかどうか分かりやしない。
私ならたとえ読まなくても少し魔力を発現するだけで、だいたいのことは分かってしまうが、だからこそできやしない。
全員に嫌われる覚悟を決めて思いを告げたというのに私は随分と弱くなってしまったようだ。
しかし、読まないことにはなにも始まりやしない。
私は大きく深呼吸すると折りたたまれたそれを開いた。

−−−5時になったら食堂に来てください。昼ごはんはカタヤイネンさんが届けてくれるので食堂には来ないでね。さっきは怒るなんて言ってごめんね。−−−

それはニパからのものではなかったらしく、どうやらサーニャからのものだったらしい。
急いで付け足したらしく、最後の文だけ少し字が乱れていた。
しかし、何度見てもそれは私の想像していた類のものではなくて、私の不安は杞憂であったことが窺える。
現金なもので、私のお腹ときたら、さっきは食欲がないと言ったくせに、安心したら再び食べ物を求め始めていた。
せっかくだからサンドイッチをいただこうか…私は椅子に座ると、美味しそうなそれに手を伸ばした。

−−−−−−−−

ん?どうやら眠ってしまっていたようだ。
もしかしたら寝過ごしたか、と嫌な予感が走ったが、時計の針は4時50分を示しており、丁度良い時間に目覚めた事を教えてくれていた。
眠りすぎて固まってしまった背筋を伸びをしてほぐすと、ベットから這い出す。
あぁ、一体なにが始まるのであろうか。
期待と不安に胸を埋め尽くして私は食堂へ向かうこととした。

−−−−−−−−

さして食堂まで行くのに時間がかかるはずもなく、私は丁度時間通りに到着した。
あぁ、一体なにがおこなわれているのであろうか?
胸に存在する不安の比率が瞬く間に増加していく。
もしかしたら最後の晩餐だったり…縁起でもないではないか。
嫌な予感を振り払い、私は食堂へと繋がる扉に手をかけ、そして開けた。



HAPPY BIRTHDAY!!!!!!


耳に飛び込んできたのは、その言葉と、はじけるクラッカーの音。
あぁそうか。私はすっかりと失念していたのだ。
今日は2月21日…私の誕生日ではないか。
皆に嫌われたのではないかとか、悪い方へ悪い方へばかり考えてしまってそんな単純な事さえ忘れていた。
時と運命は私の最も得意とするところだというのに…
それになにより、私の大切な人たちなのだもの…決して誰かを悲しい思いにさせるような人たちではないと自分が一番知っていたではないか。
それは、もちろん私も含めてのことであろうというのに。
私の目尻には知らず知らずのうちに涙が溜まっていて、何もかもがぼんやりとして見えた。

「エル姉!ニパ!サーニャ!」

私は声を張り上げると、大切な人たちの元へと駆け込んだ。
少しぐらい恥ずかしくたっていいさ、思い切り抱きしめてしまおう。頬っぺたにキスぐらいならしてしまってもよいのではないだろうか?
うん、決めたしてやろう。嫌だって言ったってしてやろう。
誕生日だものそれくらいは神様も許してくれるさ。

−−−−−−−−
334名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 22:01:41 ID:INCh5A+y
「あっ、エイラさん!私、プレゼント用意してあるんですよ!!」

あらかたのものも食べつくして、パーティーもそろそろお開きの様相を見せ始めた頃、エル姉がそう叫んだ。
誕生日プレゼントか…パーティー嬉しくて、すかっりそれがプレゼントだと思っていた私は目を丸くする。
誕生日プレゼントまでもらえるだなんて私はなんて幸せなのだろうか。

「私も用意してある…。」
「イッル!私もあるぞ!」

サーニャとニパもそれに反応して声を上げた。
胸に暖かいものが込み上げてくる。
大切な人との特別な日…こういうことが幸せと言うのだろうな。

私の手を3人から渡されたプレゼントの箱が埋める。

「開けてもいいカ?」

皆が頷いたのを確認して、リボンへと手を伸ばす。

「はははっ!!!!」

思わず笑みがこぼれた。
だって、プレゼントの箱にはいっていたのは、3人とも空色のマフラーだったか。

「3人とも狙ってやったのカー?」

茶化すようにそう尋ねるが、3人とも鳩が豆鉄砲くらったような顔をしていた。

「も、もちろん私のをつけてくれるんですよね!!長めですから二人でつけれますよ!!」
「わ、私のだよな!!私のだって二人でつけれるんだ!!」
「エイラ…私に決まってるよね?二人でマフラー巻こう?」

うん、雲行きが怪しくなってきた。こういう時は…

「ぜ、全員でつけようか…?」

恐る恐る様子を窺うと、3人ともニコリと笑った。
あぁ、分かってくれた。うん、皆で幸せになるのが一番幸せだよな!

「エイラさんは早く選んでくださーい!!!」
「イッルの優柔不断!!」
「ねぇエイラ?私だよね…私だよね?」

あぁこれはもう…

「もう許してくれヨー!!!」

そう言って走り出した私の顔はやはり緩んでいた。

Fin.
335名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 22:06:31 ID:INCh5A+y
半月ほどこれないので誕生日ネタ。本番楽しみにしてます。
3人同時の基盤があると書きやすいのでもう何本か後日書きたいなと思っているRU1ZZ/dhでした。
支援ありがとう。文章消してしまったのであせってたのでした。
336名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 22:08:48 ID:juxq/5ww
>>334
にやにやがとまりません!まじGJ!!!
337名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 22:11:07 ID:ZCnoR0Fm
ああああああああ!!!!方程式続ききたあああああ!!!!!
リアタイで読んじまったじゃねーかGJ!!今回も飛ばしてますなあユーティライネン少尉殿、ええ?w
もちろんお題3本もGJ!!君こそスオムス空軍支援部隊の鑑だ!
338名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 22:13:14 ID:AKxmB5b3
>>335
続き?待ってたぞGJ
半月ほど待ってる
339名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 22:26:49 ID:3xY7f3b+
>>335
GJです。お疲れ様です。エイラ達4人への溢れる愛を感じました。
>「エイラ…私に決まってるよね?二人でマフラー巻こう?」
>「ねぇエイラ?私だよね…私だよね?」
サーニャ随分貪欲になってきてるなw
お題の温かエルマイラとやらしく楽しいニパエイラも良かったです。
340名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 22:46:57 ID:0gQPrUT5
>>319
GJ! まだ出て間もない新キャラなのに扱いがお見事です。

>>335 RU1ZZ/dh様
大量投下GJ! 読んでてニヤニヤしっぱなしです。堪能しました。次も楽しみに待ってます。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今回も四十八手をやってみようかと。また短いですがよしなに。
第6手「膝枕」行ってみます。
ちなみに>>11-13「rhythm red」の続編として書いてみました。宜しく。
341zet4j65z:2009/02/09(月) 22:47:12 ID:J1ENX0Hq
貯めてた分読み終わってGJが追いつかない幸せw
っていうか、ゆりたまごさんのifはすごすぎた……あれを携帯からとか信じられねぇす。

あと、コメントくれた方ありがとうです。

>>307
そこまで言われちゃうと恐縮しちゃいます〜。でもマジでうれしい!

>>328
ニパは自分の中ではそんなにぶれてないつもりですが、
ニパ一人で進行する都合上なるべく「エイラに逢いたい!」
って気持ちが前面に出るように表現してみたつもりなのでそう見えちゃったのかも。
あと、方程式のニパに無意識のうちに引っ張られた可能性もありw

>>305
熱すぎる! GJ!!
でも何故か浮かぶ台詞は3だったりw
「レンはシュヴァルヴェ乗れてイイよな〜」


どうでもいいけど若かりし頃のゲーリングを描いた事実を基にした小説を読んで、
ゲーリングとレルツァーを美少女変換して萌えてしまった自分は一般的には病気だけど百合スレ的には良くあることで大丈夫?
でも一次戦でのストライクじゃないウィッチたちの活躍とかも見たいよなぁ……母ビショップとか。
342名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 22:47:28 ID:Azs5Uf3S
ここのエイラさんの登場率は異常
343第6手「膝枕」:2009/02/09(月) 22:49:17 ID:0gQPrUT5
「具合はどうだ、エーリカ」
「ん〜、まあまあ?」
トゥルーデの部屋のベッドで気怠そうに横になっているのはエーリカ。
先日トゥルーデが調子を崩したのだが、その悪い部分がうつってしまったのか、
トゥルーデの回復と入れ違いにエーリカの具合が悪化して今に至る。
額と頬に手をやり、熱を見る。
「だいぶ治まったな。あとは体力を回復するだけだ」
「体力ねえ……トゥルーデが毎晩求めてくるからね」
にやりと笑うエーリカ。
「そっそれは! いつもお前が最初に誘って来るからだろうが!」
「だって。一人じゃ寂しいじゃん。せっかく横にトゥルーデが居るのに、生殺しだよ」
「いや、私と一緒に寝たところで、飼い殺しと言うか、真綿で首を絞めると言うかだな……」
たじろいで言葉が泳ぐトゥルーデを見てくすくす笑うエーリカ。
「ねえ、トゥルーデ」
「どうした?」
「横、来てよ」
「ああ」
エーリカの頭の横にそっと腰掛ける。エーリカは手を伸ばすと、くいくいと引っ張った。
「何だ?」
「今はもう少し枕の位置高いと楽なんだよね」
「私を枕替わりに?」
言いながらもトゥルーデは靴を脱ぎ、ベッドに上がっていた。
ちょこんと座ると、エーリカは待ってたとばかりにトゥルーデのふとももに頭を置いた。
「ああ、良いね。これこれ」
「まあ、お前が楽になるなら、好きにしろ」
「ありがと、トゥルーデ」
「お、おいエーリカ、すりすりするな! くすぐったいだろ」
「ついやっちゃった」
「ついって……」
エーリカはトゥルーデの戸惑いなど何処吹く風とばかりに、大きく息を吸い、吐き、体重を預けた。
トゥルーデも慣れたもので、エーリカの身をそっと寄せ、上に毛布を掛けてやる。
よく明け方とかにふたりで過ごす時に、こう言う体勢になる時がある。
この日もそんな普段の仕草と変わらず……お互い肌で呼吸を、鼓動を感じ、リラックスする。
トゥルーデはエーリカの髪をそっとすくい上げ、さらっと流した。
「ここ数日風呂もシャワーもサウナも浴びてないから……」
エーリカがぽつりと言った。
「前の私だってそうだ。でもエーリカ、お前はそんな事気にしてなかっただろ? 私も一緒さ」
「……」
「お前がこうしてゆっくり出来るなら、それで良い」
「そっか」
指の間からこぼれ落ちるエーリカの髪。さらっとした金の直毛が、ひときわ美しい。
「トゥルーデの膝枕って、あったかいよね」
「そうか?」
「うん。落ち着くよ」
「好きにしろ」
「遠慮なく」
それっきり言葉は途絶え、エーリカはいつしか浅い眠りについた。
トゥルーデは傍らの本を手に取って少し眺めたりもしたが、最終的にはエーリカに回帰する。
穏やかな無垢の寝顔を見て、何処か安心している自分が居る、と自覚するトゥルーデ。
もう一度そっと頭を撫でると、トゥルーデはふうとひとつ息をついた。
「幸せなのか……何なのか、分からないな」
そうひとりごちて、エーリカを膝に置いたまま、外を見る。
夕暮れから暫くして現れた立待月が、ゆっくりとふたりの姿を窓から覗き見る。
柔らかな月光は、カールスラントの恋人達を癒す様に、しばしじっくりと、輝いた。

end
344名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 22:49:45 ID:t/HjeQ7V
291 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/02/09(月) 22:34:19 ID:XHTv29kD
サーニャのうた
ttp://ameblo.jp/maitablog/entry-10204806303.html
345名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 22:52:22 ID:0gQPrUT5
以上です。
四十八手、なかなか難しいですね。もっと修行を積まなければ。
あとなんか私が割り込んだみたいになってすいません(;´Д`)人

ではまた〜。
346名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 23:37:35 ID:+sW7S4Yo
>>345
いい仕事されますなあ
347レンすけ大いにがんばる:2009/02/09(月) 23:38:51 ID:G8UyxsZW
ヘ「ハルトマン先輩、いつまで寝てるんですか!カールスラント軍人たるもの、一に規律、二に規律!」
エ「三四がなくて五に毛布〜」
ヘ「そうそう五に毛布。ぽんぽんっと。寒くないですか?」
エ「うむ、ごくろー。丁度いいよ〜」
ヘ「よかったぁ」

てくてくてく。

ヘ「はっ!そうじゃないです!いつの間にかまた黒い悪魔のペースに!」
ゲ「だから私に任せろと・・・」
ヘ「駄目です!バルクホルン先輩はハルトマン先輩に甘すぎます!」
ゲ「あっ甘いか?ちゃんと毎日叱っているんだが・・・」
ヘ「叱るだけじゃ駄目です!駄目人間は口先では何とでも言います!行動させるまでがお世話です!!」
ゲ「いっいや。ああ見えてエーリカもそんなに駄目じゃないというか・・・」
ヘ「・・・やっぱり甘いです。羨ましいですー!」
ゲ「羨ましい??」

ヘ「あっ!もう起きてる!」
エ「もち。一人で起きるのが社会人のたしなみだよー。レンすけはいっつも一所懸命だね。かーいいねー」
ヘ「くっつかないでください!子供扱いしないでくださいー!ハルトマン先輩はだらしなさすぎます!バルクホルン先輩を見習ってください!」
エ「見習うも何も、私がトゥルーデに劣ってるところなんて何一つないしなぁ」
ゲ「なんだと!」
ヘ「なんですって!」
エ「血圧と姉馬鹿度では負けてるね」
ゲ「がーっ!」
ヘ「きーっ!」
エ「落ち着けよレンすけー。こんな所で猛ってもしょーがないって。もっと乗り越えなきゃいけない壁があるだろー。トゥルーデの寵愛を一心に受けてるさー」
ヘ「そっ、それはみや・・・・・・」
エ「そう、みや・・・・・・」
ゲ「こっこの馬鹿!別に寵愛じゃない!私がお前に注いでいるのは更正の情熱だ!調子に乗るなよ!それだけなんだからな!」

たたたたー。

ヘ「・・・・・・え?」
エ「・・・・・・え?」
348名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/09(月) 23:39:45 ID:NkTDD9Vt
>>344
中の人に「本物」とまで言わせるって一体w
エイラーニャ派としては嬉しい限りだけど、二人絡みの他CPはやりずらくなるかもしれんな…
349名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 00:04:28 ID:ym3UGuKN
>>344
キャラソンとか興味なかったがそれほどのものなら期待せざるを得ない
350名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 00:05:40 ID:LaOF2H/J
公式はたしかにガチで固めてくれるのは嬉しいが少しは芳ーニャ方面にも……
351名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 00:22:55 ID:pSqBibVX
俺は全く入り込む余地がないほどガチにやって欲しいよ
俺の嫁とかいうのも減るくらいに
352名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 01:07:27 ID:1hnCSIgF
>>325
びっくりするほどニパエイラ! びっくりするほどニパエイラ!
耳元で囁くって口説いてるのかと思った、尾行に気づいてたのね。

GJが追いつかないとはこの事か、エーリカもレンすけも可愛いです。
SSを去年から寝かせっ放しの私からすれば、皆様は音速越えのエースであります。
353名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 01:07:59 ID:ScmYmrwH
>>351
同意せざるをえない
354名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 01:09:53 ID:b4On8HlS
>>352の一行目が不意打ち過ぎて吹いた
355名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 01:14:46 ID:Gsbzg2xj
ピクサーか何処かが提唱する良い映画の条件って奴で、
「物語の結論は視聴者に導き出させる」ってのがあった。
つまり公式では匂わせる位が良いのさ
356名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 01:36:32 ID:4nQG+dB1
まあ物語だとそれは展開を投げたとか言われることもしばしば…
357名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 02:03:43 ID:4k70ImMC
ガチに越した事はないだろ
ただでさえいつ台無しになるかわからない作品なのに
358名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 02:50:00 ID:IjQHD78o
ガチは正直ちょっと嫌かもしれん。
359名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 03:16:13 ID:ZZA6OJyc
匂わせる程度で良いんです

あとはこちらでやるから…
360名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 04:41:29 ID:FdKmvz5o
二次創作のために公式はそれほど頑張らなくていいってのも本末転倒な気もw
まあ男の入る余地は完全に潰してほしいね
361名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 04:53:55 ID:DBnZiTAF
ガチにしなさすぎると東方みたいに荒れるし、
ガチにしすぎると妄想の広がる余地を削る結果になりそうな…
正直、俺がSSを書くきっかけになったのは、
12話のペリーヌ&リーネのあの数カットだけです。
いわゆる「言葉では言い表せない”ときめき”みたいなもの」です

遅ればせながら>>199です。レスを頂いた方々、ほんとうにありがとうございます。
励みになります。
前回のはいらん描写が多すぎてクドくなりすぎたので、次回がありましたら
もっと淡麗甘口な話を書きたいと想います。

このスレにおわすすべてのSS書きにGJ!を。
362名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 08:24:05 ID:bEaxonSY
おはようございます。
すでに消化されているお題なのですが、できれば投下させてください。
「第31手 睦言・遠距離で」で、エーリカ×ウルスラです
3631/2:2009/02/10(火) 08:24:36 ID:bEaxonSY

ねえそれを睦言と語るにはちょっとおかしいのかもしれないけれど、私の中では多分、それに近いものだと思う
んだ。


フラウ、手紙よ。
朝礼の後、ミーナがそう言って一つの便箋を差し出してきた。寝ぼけ眼だった私の目が瞬時に覚めて。あくびを
するために口許にあてた手を慌てて伸ばす。

「あ、ありがと──っと、わ、わわ!」
「ふふふ、焦らないの」

バランスを失って転びそうになって、すんでのとこでブリーフィングルームの教卓に手をついてとどまった。
そんな私の姿を見てミーナが笑う。ふわりと柔らかく、まるで子供を見るように。
伸ばした手の上に、乗せられる十数グラムしかないそれ。私がいつも握り締めているMG42に比べたらよっぽど
軽い、もうほとんど無いといっても良いくらいのその重みがひどく心地よい。裏返すとほら、連ねられているのは
私とよく似た癖を持った、私とは別の名前。その割には表書きにはこの部隊に宛てている事しか書いてないの
だ。それがなぜかは分からない。何も考えていないのかもしれないし、何かのこだわりがあるのかもしれない。
私なんかは逆にしょっちゅう差出人の名前を書き忘れるのだけれど、まさかこの手紙の送り主に限ってそう言う
訳ではないのだろうと思う。いつだったか手紙でミーナのことを書いたときに「この人なら君の名前だけで私に
宛ててると分かるんじゃない?」と冗談半分で書いたからだろうか、なんてそんなわけはないか。

「ありがとう、ミーナ」

受け取った後にもう一度そう言って頭を下げた。私が話したその通り、この素晴らしい上官はその差出人の名前
だけで間違いなく私に宛てたものだと察して、こうして私に手渡してくれるのだ。
すこし肩をすくめてミーナが柔らかく笑う。妙にかしこまるのね、なんてちょっと不思議そうに。だから私も朗らか
に笑うことにした。いつもいつも胸を一杯にしているこの感謝の気持ちが、少しでも伝わりますようにって。戦果
よりも仲間の命。一人でも多くの、なんて消極的なものじゃなくて"絶対"みんなで生き残る。理解されるはず
なんてないと思っていた私の気持ちを、いとも容易く汲み取って受け止めて受け入れてくれた。そんな人ミーナが
初めてだった。たぶんこの人にとって見たらそんなの当たり前すぎることで、なんてことでもないのだと思うけれ
ど。けれどもだからこそちゃんと気付いて欲しいと思うんだ。伝えたいと思うんだ。

「元気そうね、妹さん」
「うん。──うん。」

封筒を抱きしめて、思わず何度も頷いてしまう。半年に一度しか届かない手紙だ。遠い遠い北の国から届く、
大切な大切な私の半身からの便り。

「ゆっくりと読むといいわ。今日はお休みだもの」
「そうだね──そうする。」
「それに、明日は水曜日だし」
「…うん。」

小さなやり取りなのに、そこに確かなミーナの気遣いを感じられるのがとてもとても嬉しい。あまりにも自然に
振りまくからつい見落としがちになってしまうけれど、私はちゃんと、いつも感じている。感じ取れるように細心の
注意を払っている。だって気付けないのなんて、ミーナが可哀想じゃないか。

「ミーナも、」
「なあに?」
「ゆっくり、休んでね」
「…考えておくわ」

無理しちゃ駄目なんだからね。そういいたくなるのをこらえた。この口ぶりからすると、これから昨日の出撃の
報告書をまとめるつもりなのだろう。あの堅物のトゥルーデだって休むときはちゃんと休むのに、この人は無理
ばかりをするから困るんだ。
あとでサーニャに頼んでなにか美味しいものでも作ってもらおう。そんなことを考えながら、ブリーフィングルーム
をあとにした。

3641/2:2009/02/10(火) 08:25:39 ID:bEaxonSY
"こんにちは。わたしはとてもげんきです。"

一番最初に書かれているのはいつもそれ。毎回毎回どうしてかいつもかしこまったそれについ吹き出してしまう。
だって少し右上がりの癖さえも許さずに、そこだけ妙に丁寧なんだ、いつもいつも。
彼女が話すのと同じようにぽつりぽつりと書かれた短い文面を、ゆっくりと指でなぞりながら読み取っていく。
さっきミーナにしたのと同じように、ひとつひとつ気持ちを汲み取っていく。全然似ていない二人だけれど、少し
だけ似ているところがある。それは自分の気持ちを覆い隠すのが上手なところだ。すぐに本当の気持ちを覆い
隠そうとするところだ。

ねえ、これを睦言と言うには少し自惚れているのかもしれないけれど。
まるで抜き足差し足をするように、恐る恐る書かれている文章の一つ一つを追いながら口の端を吊り上げる。
同じ部隊の仲間のこと、基地のこと、研究のこと。あえて自分自身の事には触れず、外側から内側へと渦を巻く
ように彼女の話は帰結へと向かっていく。私を中心にして広がっていく私のそれとは全く逆で、届くたびに笑い
がこみ上げてしまうのが止められない。私たちはどうしてこんなにもよく似ているのに全く違うんだろう。

"それでは。"

そうしてだんだんと私の望んでやまない話題へと進んでいるくせに、どうしてか最後の最後で彼女はそれに
触れずに手紙を終えてしまうのだった。自分のことなど一番最初の「とてもげんきです」で十分であると言わん
ばかりにぶっつりと、自身の話を打ち切るのだった。あまりにも唐突に途切れるものだから私はいつも拍子抜け
して、そして嘆息してしまう。それから笑う。なんて君らしいんだろうね、と。
確かに寂しいのに妙にほっとしてしまうのは、彼女自身のことが書かれていないことが一番、彼女が相変わらず
彼女であることの証明してるからだ。昔からそうだった。私は、私が私であることを主張したがったけれど、彼女
は多分逆だった。私がエーリカなら自分はウルスラだと、まるでままごとの役割ぎめの余りものを享受するか
のように納得して。私は多分、そうして彼女より先によいところばかりを奪っていったんだろう。それだのに私は
あの子に甘えてばかりで、そして彼女はそんな私にあきれ果てながらも、それでも世話を焼いてくれていた。

私はエーリカでありたかった。だってそうしないと手に入れられないものが、守れないものがたくさんあったから。
ウルスラとしてエーリカの後ろに隠れていることなんてまっぴらごめんだったのだ。その結果として、エーリカに
なれなかった彼女がそれを手に入れられないのだとしても、構わないと思えてしまうくらいに私は傲慢だった。
責められたって構わない。憎まれたって仕方がない。その代わり、私は彼女を愛すると決めた。彼女の姉である
ことを選んだその瞬間から、何があったって彼女を愛し続けると。彼女が私をどう思おうと、私は一生彼女を大切
にするのだと。それは彼女の幸せではないかもしれなかったけれど、私の責任であると思ったから。

ふ、と一つ息をついて、手のひらで一枚きりのその便箋をなで上げる。届かない彼女の頭を撫でるかのように、
優しく、優しく。
一週間に一度に対して、半年に一度。明らかに偏っていると誰かは言うのかもしれない。けれどそれでも十分
なんだ。たとえそこに私の望む、彼女自身のことが全くといっていいほど書かれていなくたって良いんだ。ささ
やかでも気持ちを返してくれる、それだけで私にとっては十分な睦言になる。義理なんだから、と君は言うかも
しれない。それだっていいよ、私は嬉しいよ。嬉しいんだよ、ウーシュ。

寝転がっていたベッドからがばりと起き上がって、部屋の隅のデスクへと向かう。一番上の引き出しが、ウーシュ
専用だと決まっている。今までに届いた手紙とこれから手紙を書くための便箋が入っている。鍵をかけていつも
封印しているから、トゥルーデだってこの中身は知らないんだ。何度も開いては整理するから、トゥルーデが
見たらのけぞるほど綺麗に片付いていることも。
3653/2:2009/02/10(火) 08:26:51 ID:bEaxonSY

便箋を数枚取り出したところで、そうだ、サーニャのところに行こうと考えていたことを思い出した。無理をする
気のあるあの素晴らしい上官に、美味しい料理を食べさせてあげたいから。そして私はそれを隣で見ていて、
いつかそれを妹にも振舞ってあげるんだ。口をあんぐりあけて、恐る恐る口にして、美味しい、と悔しそうに呟く
さまが目に浮かぶ。記憶に残る彼女はまだ幼いから、想像の中では私は大きなお姉さん気分なのだ。2人きりの
時間を邪魔したらどこかのスオムス少尉が怒るかもしれないけれど、だって私は我侭だからそんなことは気に
しない。サーニャの手料理が食べられるならきっとあいつも幸せでしょ?
そうだ、トゥルーデにも声をかけよう。だって放っておいたら拗ねちゃうもの。ミーナのためと聞いたら二つ返事
で了承してくれるだろうさ。きっとそうしたら彼女は私に包丁の一つも握らせてくれないだろうから、私はその横で
ひたすら手紙を書く。

今日はまだ火曜日だけど、だってほら、今回の手紙はきっと長くなるから。
たくさんの睦言を、届くまで送るから。届かなくても、伝えたいから。



──
本文長すぎと怒られたので3レスになってしまいました、申し訳ない
366トゥルーデ撃墜部隊:2009/02/10(火) 09:03:20 ID:OBUwDEsb
>>365
GJ!お姉さんなエーリカはちょっと大人な可愛さでいいですね

続けて投下します
>>313〜のヘルマ視点です
367名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 09:03:54 ID:OBUwDEsb
私はカールスラント空軍131先行実験隊“ハルプ”第3飛行中隊所属、ヘルマ・レンナルツ曹長。

ある日、軍に届いた一通の手紙を持ち、私は空へ飛び立った。
憧れのあの方に、会うために。

目的地であるブリタニアのストライクウィッチーズ基地に着くと、ヴィルケ中佐が出迎えてくれた。

「わざわざストライカーで飛んできてくれたの?トゥルーデ、きっと喜ぶわよ」

中佐の言葉に、胸の奥がきゅんとした。

トゥルーデ…ゲルトルート・バルクホルン大尉。
私が理想としている憧れのウィッチ。

上官の命令に忠実で、自分にも他人にも厳しく、戦闘の指揮も実戦も凄腕だけど決して威張り散らしたりする事はない。
私生活も真面目で、とても優しい。スタイルが良くて、凛々しくて綺麗な顔立ち。
全てが私の憧れ。

そんな大尉の妹さんからの手紙が、軍に間違って届いていたので、渡しに行くと建前を作って会いにきたのだ。
大尉は妹さんをとても大事にしているから、早く読んでもらいたかった。

中佐の言う通り、大尉は微笑んでお礼を言ってくれた…
しかも一晩この基地にいさせてくれる、って…

帰ったら怒られてしまうかもしれないけど…来て良かった…!
368名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 09:05:05 ID:OBUwDEsb
ウィッチーズの皆さんに挨拶をした後、基地の色々な所へ連れ回されたのだけど、余りのだらしない人の多さにびっくりしてしまった。

ハルトマン中尉程ではないといっても部屋の散らかり方がとんでもなかったり、寝坊常習犯にサボり常習犯…
宮藤さんという扶桑のウィッチは、何故か私の胸をじーっと見てきたりして…!どうせ私はないですよっ!

ハルトマン中尉の部屋も少しだけ覗いてみたら、軍にいた頃と変わらない酷い有り様だった。
これじゃあバルクホルン大尉の気苦労も絶えないだろう。

…どうして、大尉は…

「ヘルマさん」
「は、はいっ!なんでしょうヴィルケ中佐!」

突然中佐に呼ばれ、考えを中断して姿勢を正した。

「今夜は、トゥルーデの部屋で寝て頂戴。就寝時間になったら部屋へ行ってね」
「わかりま…へっ?」

思わず変な声を出してしまった。
今、中佐は何て……トゥルーデの部屋?寝る?
それは…それはつまり、バルクホルン大尉と二人で夜を過ごすってこと…?

ど、どうしようどうしよう!一晩一緒だなんてそんなおそれ多い事…!

「じゃあ、ゆっくり休んでね」
「は…はい!」

ああっ、中佐…ありがとうございます!!
369名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 09:06:11 ID:OBUwDEsb
就寝時間。
大尉の部屋へ行った私は緊張しっぱなしだった。

おさげを解いた大尉は、女性らしくていつも以上に綺麗で…
ドキドキに震える手で軍服を脱いでいると、突然ハルトマン中尉が入ってきた。

私や大尉が注意してもどこ吹く風、それどころか…

「じゃおやすみ」

大尉の頬にキスをした。私の目の前で…!

二人が、そういう…恋仲なのは、薄々感付いていた。軍にいた頃からずっと大尉を見ていたから。

でも、どうして。何故大尉は、あんなにだらしないずぼらな人を選んだのだろう。
中尉は撃墜数も凄いし、素行は悪くても優しいし嫌な人じゃない。でも私は、大尉に認められるような立派なウィッチを目指して頑張っているつもりだ。
私は大尉に好かれたい。もっともっと近くにいたい。
でもいくら頑張っても、大尉の隣はあの人なのだ。

中尉は部屋を出る時、私の顔を見て微笑んだ。
“トゥルーデは渡さないよ”
そう瞳が言っていた。



負けるものかと、私は勇気を出して大尉に甘えてみた。
…でも、やはり大尉は私を妹のようにしか思ってくれていないみたいだ。
それでも、家族のように思ってくれていると考えれば…嬉しい。

「お…お姉ちゃん…」

大尉が望んだ呼び方をしてみる。
370名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 09:07:11 ID:OBUwDEsb
そうしたら、大尉はいきなり強く抱き締めてきた!
うわ、わ、やわらかい…!
下着だけになった私の体に、大尉のすべすべした肌が直接押し付けられて…

その柔らかさと甘い香り、中尉への嫉妬とか色んな感情がごちゃ混ぜになって…

「…ご…ごめんなさいー!!」

私は大尉をベッドに組み敷いていた。

「私…私、もう我慢できません!」
「え、ちょ…どうし…」
「バルクホルン大尉…!」

ああ、憧れの方、しかも上官にこんな事。ごめんなさい大尉…
そう思いながらも、私は衝動を抑えきれなかった。

「ふ、ぁっ…」

首筋をつぅっと舐めると、大尉は可愛らしい声を漏らした。普段の凛とした声からは想像もできない。

私は頭の中、いつか見せてもらった本に載っていた「こういう事」の知識を思い出しながら行為に挑んだ。
私には必要ないだろうと思っていたのに。でも何であんな本持っていたんだろう…シュナウファー大尉は。

「や、そこ…んん…」

胸を触ったら、大尉は過敏に反応した。
私にはない大きくて柔らかい胸…思わずそこに集中する。

「あっ、んぁっ…だ、め…ひゃうッ…」

大尉…すっごく可愛い…
371名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 09:08:09 ID:OBUwDEsb
ごくっと息を飲み、大尉の脚の間に触れる。

「あ、…」

すると大尉は無意識なのか自分から少し脚を開いた。

…まさか、大尉は慣れている…?それはつまり、中尉と…

「っ…」

頭をぶんぶん振って考えるのを止める。そして大尉の脚を更に広げた。
初めて見る、憧れの方の秘められた場所。暗くてよく見えないけど、きっととても綺麗なのだろう。

「ぁん…」

触れたら、ぴちゃっと水音が響いた。
濡れてるって事は…私に感じてくれているんだ。
どうしよう、本には書いてあったけど、変に指入れたりしたら痛いかも…

「ん…ぅ…」

大尉がなんだか色っぽい声を漏らす。もしかして待っているのだろうか…

私は考えて、指は入れず入り口の辺りを擦った。上部にある肉芽をきゅっと摘んだら、大尉が大きく震えた。

「ひっ!や、そんな、あぁっ!」

今までで一番激しい反応。
私は夢中になってそこへの愛撫を繰り返した。

「や、あんっだめぇ、はあ…、エー…リカあぁ…!」

大尉はびくんと腰を跳ねさせ、そしてぐったりしてしまった。
これが、絶頂を迎える…っていう事かな。

372名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 09:09:22 ID:OBUwDEsb

「申し訳ありません、大尉…」

そう呟いたが、返事はない。代わりに穏やかな寝息が聞こえてきた。

「…でも、ちょっと酷いです」

いくら顔が見えないとはいえ、最後に中尉の名前を呼ぶなんて。
結局大尉も、中尉の事が大好きなんだ。
思い知らされたような気がするけど、何故かちょっと清々しい気分でもあった。

「…大好きです、バルクホルン大尉…」

私は眠る大尉の肩に寄り添って、少しだけ泣いた。


――――


翌日、カールスラントへ帰る私を皆さんが見送ってくれた。

「軍へは私が連絡しておいたから。気をつけて帰ってね」
「また来いよ〜」
「今度はゆっくりあそぼーね!あ、でもあんまし怒っちゃやだよ」

皆さん本当にいい人達だ。…軍人としては、ちょっとだらしない人は多いけど。

「レンナルツ、手紙本当にありがとう。軍の皆によろしく言っておいてくれ」
「はいっ!」

大尉は、昨晩の事は覚えていないようだ。ちょっとだけ、ラッキーかもしれない。

「では、失礼致します!」

ストライカーを発進させた。あっという間に空が近くなる。

小さくなった基地を振り返り呟いた。

「…私、負けませんよ。ハルトマン中尉」

今はかなわなくても。
いつか、大好きな人の隣に。


373トゥルーデ撃墜部隊:2009/02/10(火) 09:13:01 ID:OBUwDEsb
おしまいです。ヘルゲル、エーゲルの次に好きだ!
そんな私は4月1日発売予定のCDを心待にしていますw
朝からお目汚し失礼しました
374名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 12:42:23 ID:k6NRJ0tM
ヤられるお姉ちゃんいとカワユス。
しかしかっこよくいもうと(除クリス)を攻めるお姉ちゃんも見てみた〜い
375名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 14:27:16 ID:uv49++Ra
>>347
容易に想像出来るのがすごいw GJ!
376保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2009/02/10(火) 17:15:50 ID:bCKCwZvC
>>365>>373GJ!!
ヘルゲルって一瞬ブラスレかと思ってしまった。ヘルマ曹長格好良過ぎる。

格好良過ぎて発作的に書いてしまったので投下させていただきます。
ミートゥル前提のヘルーデ(こっちのがしっくり来る)で、「Bezaubern sie」です。よろしければどうぞ。多分3レス。



 面倒なことになってしまった。

 私の隣にはミーナがいる。中佐として前線で新たな隊を率いる立場となった今、彼女は
抱えきれないほどの仕事と責任、そしてウィッチ達の命を背負って戦っている。そんなミー
ナを陰から支えるのが私の副官としての、また恋人としての義務だ。だから今日もまた、
私とミーナは任務を果たすために司令室という名の戦場に赴くところだったのだ。
 だが困ったことにミーナはこの日、それはもう不機嫌だった。書類は机に投げるわ、ド
アは音を立てて閉めるわ、廊下で誰かとぶつかっても無視するわで普段の温和さなど欠片
も無い酷い有様だ。
 原因は、まさに今、私の右隣でにこにこと爽やかな笑顔を浮かべている。腕にしっかり
としがみつき、これは自分のものだと言わんばかりにぶら下がっているのは、新しい部下
であるヘルマだった。朝食の後さりげなく現れ、私を挟んでミーナの反対側に並んだかと
思うと何食わぬ顔でついてくるのだ。別に仕事の邪魔にはならないからいいのだが、その
せいでミーナが今にも発砲しかねない鬼神のような殺気を放ち続けているのはいただけな
い。かといって適当に追い払おうにも、「敬愛する大尉殿の仕事振りを是非勉強させてい
ただきたいのであります」などと言われてはなかなか断り辛いところである。というか、
こちらこそ有無を言わさずこのまま妹にしてしまいたいという衝動がそれをさせてくれな
い。この私に向かって「敬愛する」とは可愛いやつめ。なんなら私を姉と思ってくれても
構わないんだぞ!……とか考えているとミーナに全力で"小突かれる"のでとても言えないが。

 斯くして私は司令室に入った途端、二人に同時に押し倒されるという危機的状況に突入
してしまったのだった。

────────

「ちょっとごめん」

 部屋に入るなりミーナが扉の鍵を掛けた。何事かと思って振り返ると、思い切り襟首を
掴まれ部屋の隅まで引きずられる。ああ、このパターンにはロクな思い出がないな。前に
やったのは別部隊に行ったフラウに手紙を書いた時で、理由はフラウの妹にも会ってみた
いという一文だった。やましいことなど全然まったくなんにも(本当に)なかったというの
に、説得するのに丸一晩かかってしまったのだ。最悪なことに、今はまだ昼間である。

「どういうことなのか訊いてもいいかしら?」

 ソファに乱暴に投げ出される。骨まで凍り付くような冷酷な視線が痛い。ヘルマはポカ
ンとした様子で静観している。助けてくれたっていいのに。

「あ、あの、これはだな……」
「あなたには訊いてないわ。あなたの身体に訊いてるの。」
「は?」

 言うか言わぬか、ミーナの両腕が私の乳房を捉えた。一瞬遅れて、横からヘルマが腰に
抱き付いてくる。やめろ!目の前で危険な気配を充満させている上官の姿が見えんのか!

「どうしてっ、この子がっ、ついてくるのよっ!!」
「ほっ、本人に訊いてくれ!!」

 服の上から痛いくらいに揉まれる。変なところが擦れてうっかり声が出そうになるが、
そうなると余計に強く揉まれるので必死で堪える。だというのに、ヘルマときたらさりげ
なく耳元に息を吹きかけ───ひああ!!
377「Bezaubern sie」 ◆YFbTwHJXPs :2009/02/10(火) 17:19:03 ID:bCKCwZvC
「ていうかヘルマ!!黙ってないで何とか言え!!」
「は!自分はこのまま大尉殿に一生ついてゆく所存であります!!」
「……。」

 まずい。非常にまずい。ミーナの眼がメチャクチャ怖い。全身のあらゆる器官が警報を
鳴らしまくっている。一言でも間違ったら殺される。

「尊敬してくれるのはありがたいが、軍人としてわきまえる時というのは……」
「ではせめて、"お姉さま"と呼ばせてください。」
「それは一向に構わないぞ。むしろ"お姉ちゃん"でもいい。」
「……。」


 言ってから気付いた。
 条件反射だった。

 死のうと思った。

────────

 夕方、滑走路にほうほうの体で出てきた私を見て、帰還してきた隊員たちは怪訝な顔を
した。仲間が命を張っているというのに、本当に私は何をやっているのであるか。

「よくぞ帰ってきた。急ぎの報告はあるか?」
「いえ、特にはありません。」
「よし。夜の連中からそろそろ出ると連絡があった。お前たちはゆっくり休め。」
「了解しました。」

 外の新鮮な空気で深呼吸すると、頭の余計なモヤモヤがサッと晴れていくようだ。冷た
い酸素が肺を満たして火照った身体をクールダウンしてくれる。爽やかな気分で基地に戻
ろうとすると、ドアのところにヘルマが立っていた。

「どうした、お前も出迎えか?もうすぐ灯火規制の時間だ、早く部屋に戻れ。
「あの、どうしても大尉殿に伝えたいことがありまして……。」
「ん、何だ。」

「私、ずっと前からバルクホルン大尉に憧れていたんです。ブリタニアでのご活躍を聞く
 度に、いつか逢ってお話してみたいと思っていました。お近づきになって、あなたの側で、
 あなたを支えていたいと。
 でも、本当にあなたに出会えた時、私は自分を見失ってしまいました。あなたの隣にい
 たいばかりに、無意味な休暇をいただいてまで付き纏ったりして……私は自分のことば
 かりで、一番大切な筈のあなたの気持ちさえ、蔑ろにしてしまいました。
 全て私の責任です。どんな処罰も覚悟しています。だから、今日一日の上官に対する無
 礼を、どうかお許しください!」

 見事な最敬礼を向けるヘルマ。その真剣な姿勢にはかつての図々しさはもう残っていな
かった。なるほどな。つまりこいつは、そういう奴だったのだ。誰かに甘えることに慣れ
ていなかっただけの、ただ私が好きなだけの一人のウィッチ。真剣であったが為に道を踏
み誤ったというなら、それはこいつの罪じゃあない。
378「Bezaubern sie」 ◆YFbTwHJXPs :2009/02/10(火) 17:24:53 ID:bCKCwZvC
「間違えない人間などいない。」

 ならばせめて私も、上官として恥じることのない態度で臨んでやるのが礼儀だろう。

「失敗とは取り返しのつかないことだ。お前のしたことは間違っていたかもしれないが、
 それはまだ取り返せるものだろう。」
「大尉……。」
「私の側にいたければ、強くなれ。強くなって、その過ちを覆してみせろ。それができる
 というなら、私はお前に処罰を与える理由などない。
 以上だ。わかったか?」
「……はい!!」

 うむ、いい返事だ。これで大人しくなってくれるだろう。ミーナの機嫌も直って、一件
落着というわけだ。

────────

 翌朝、清々しい気分で朝食の席に着くと、先に来ていたヘルマがニコニコしながら近づ
いてきた。

「おはよう、ヘルマ。」
「おはようございます、姉さま!!」

 ミーナの肩がぴくりと動いた。勘弁してくれ。

「ヘルマ、その呼び方はまずい。」
「しかし昨日ご自分で仰ったではありませんか、"お姉ちゃん"と呼んでくれと。」
「あ、あれはその……」
「いきなりそれは恥ずかしいので、やはりお姉さまと呼ばせていただきたいと思いまして。」
「ミーナの前で呼ぶやつがあるか!!昨日あれだけ───」

ダンッ!

「私の前でなくとも、上官に対してそのような呼び方は許しません!」
「落ち着けミーナ!!食事の席だぞ!!」
「私だってっ!!私だって妹になりたいのに!!年下だからって調子に乗らないでよ!」
「ちょっ、何だその衝撃的発言……わー!!やめろ!ナイフは危な───」


 その日以来私は、ミーナとヘルマの間でひたすら痛い視線を浴びることになった。
 やれやれ、面倒なことになってしまった。


endif;


以上です。ところどころ端折ってますがキャラが不明すぎて書くべきディティールがなかったと言い訳。
ミートゥル分不足と相俟って妙な事になってしまったが気にしない。
方程式シリーズのオマージュとしてエーリカも混ぜようかとも考えましたが、ミーナさんが怖いのでやめました。
ヘルーデ増えるといいなあ。

ところで謝罪の時は敬礼でいいんだけ?よく知らないから適当に書いてしまった。まずかったらすまない。
379名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 18:11:56 ID:OBUwDEsb
>>378
GJです!妹になりたいミーナ吹いた
そうかヘルーデかw
380名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 19:08:42 ID:o1Z3QzBY
やっぱりあんたらおかしいよ!(ホメ言葉
フミカネさんが一枚絵描いて少し説明文載せただけで
何で、どうしてこんなにいきなり未知キャラのSSが増えるんだ!

恐ろしい子達……。
3816Qn3fxtl:2009/02/10(火) 19:52:23 ID:UyCuOGcB
>>378
GJ! 条件反射はフイタw
トゥルーデの振りまわされっぷりが最高です。

To 保管庫様
拙作「Herzlichen Glückwunsch zum Geburtstag!」のGlueckwunschを
正しくuウムラウトに直しておいていただき、ありがとうございます。
細かい心配りに感謝します。GJ!
382名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 20:26:36 ID:TP/7+NCV
>>380
流石百合スレイターだなあ
383名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 20:32:27 ID:xMw2S+hF
流れぶった切り覚悟で聞くんだが
ストパン関連で今日発表があるらしいんだけどもう発表あったの?
384名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 20:34:47 ID:TP/7+NCV
ゲーム公式サイトでファンイベントとグッズ情報
あとゲーム登場キャラ情報。まあさして重大ではないね
でも乙女の巻2のエイラーニャは勿論だが表紙のもっさんも超かっこいいと思うんだ
もっさんは超かっこいいと思うんだ
385名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 20:42:19 ID:xMw2S+hF
>>384
dクス!
重大発表なんて言うもんだから発売日決定かアニメ二期だと思ってたが違うのか(´・ω・`)

同意。もっさんは最高です
386名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 20:53:06 ID:PV677ltx
たじたじ美緒も大好きデース!

>>365
「ハルトマンが二人で200万パワー!」
>>373
「ヘルマとゲルトを加えて400万パワー!!」
>>378
「更にミーナを掛け合わせて1200万パワーだー!!!」
ゲェェェーッッッこれが愛と勇気と百合情のカールスラント職人Drei攻撃の破壊力なのか!?
この私のぐっ、ぐっじょぶが追い付かないだなんて事がありえるのかぁぁぁ!うぎゃあ〜。

相対性理論で否定されたエーテルだけど、ニュートリノの質量が観測されてもはや古典物理学の異物じゃなくなったんだよね。
エーテル噴流式ストライカーの専門的な話で盛り上がるヘルマとシャーリー……どなたか書いてくれないかな。
それに疎外感を受けるルッキーニとかも可愛いかったり「あたしと同い年くらいなんになんで!」なんて。

どもこんばんわ、ゆりたまごです。
前回感想頂いた方々ありがとうございます。投下もないのにお礼だけさせて下さい。
最前線で戦っている職人さん方に誉めて貰えるってちょっと照れ臭くも嬉しいです。
これからも素敵なSS楽しみにしています!

>>85
遅れ馳せながらありがとうございます。
でも……誰かが言わなきゃ名乗ってくれなかったですよね?
「ペロペロするの」が私にとってのエポックメイキング的な存在だったので、
多くの方がOsqVefuYさんのSSに出会ってオールキャラ職人が増えてくらたらなって単なる我儘なんです。
乙女塾塾長ならこの程度の申し出、のし付きでお受け頂けると信じていました!
387名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 21:24:15 ID:IjQHD78o
あのもっさんは確かに惚れる。DVD通常版の時もそうだけど刀かまえたもっさんは男前すぎる。
388名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 21:31:45 ID:TP/7+NCV
>>387
もっと本編でも刀使って欲しかったなあ

俺に画力があれば左手に真紅のドレスを着たミーナさん右手に浴衣を肌蹴た竹井さん
足元にネグリジェのペリーヌを侍らせさらに後ろからあの卑猥な寝巻きの芳佳に抱きつかれて
革張りのソファにどんと座っているもっさんを描くのに・・・
389名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 21:38:13 ID:CSoOO5Xp
物語後半でもっさんは、なつき化、ミーナ隊長は静留化すると思ってました。
390名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 21:39:57 ID:IjQHD78o
隊長候補で竹井さんがやってくると言う事はミーナさんと竹井さんによるもっさん争奪バトルを期待していいって事ですよね。
391名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 21:50:22 ID:bEzkZyQ4
皆様GJです。

>>341 zet4j65z様
なんというか最初のスオムス2本でエイラを撃沈していたイメージが強いので…
手ぐらいさっと握って二カッとするタイプかと思ってました。
あぁ、しかしやらしいことはできるのに手をつなげないのもそれはそれで乙な感じがしますね。

昨日は文章は消すしあとがきも消すしあせっていて色々説明してないことがあったので補足です。
黒狐のオーロラはスオミの民間伝承からです。黒狐の火ってやつです。
後日の後日もなんですので書かないと思いますが>>334はあのあと皆でマフラーをつける話と、暑いのにマフラー3つつけて生活するエイラの話があります。
後日って何本ぐらいまでなら許容量なのですかねえ。本編より膨らんだらまずいですかね。
3人とエイラの話だけでプロットが携帯に6本ぐらいあるのですが全部書くと本編より話数食ってしまいます。

あと、エイラ×3人を書きたいといってくれる人がいて嬉しかったです。
少しは影響してると思ってもいいのですかね。とてもニヨニヨします。

宮藤ヴィジョンでエイラとサーニャの間にニパがいたのでコレで一本書きたいなと思ったけれども書く時間がないので誰か書いてくれないかと思っているRU1ZZ/dhでした。
392名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 21:52:46 ID:bkIqZBxN
>>388
凄い…
鮮明に想像できた。
くっ、私に画力があればッ…!
393名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 22:02:05 ID:OCPdtvYf
ゲーム公式サイト見たんだけど竹井さんPS2版の方には出ないのか・・・、残念だ
394名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 22:17:55 ID:caUak8rl
竹井さんはDS
錦と天姫がPS2だね

DSは、説明読む限り、プレーヤーが竹井さんを操ってゲームを進める
PS2はプレーヤーが芳佳を操ってキャッキャウフフ
という具合なのかな

そういえば、本スレ(というかふた○経由?)で記録集の画像がきてたので転載


405 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2009/02/10(火) 21:23:00 ID:R0SVJOv6
>>299
http://www.uploda.org/uporg2006385.jpg
395名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 22:41:03 ID:ISgQb09E
こうして見るとストライカーのデザインってすごい秀逸だよな…
396名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 22:51:43 ID:SGhTGhmp
職人の皆様GJ! ヘルマSSの増加凄いですね。流石ジェットストライカーのウィッチ。
と言うか対「お姉ちゃん」戦特化のキャラはある意味卑怯だと思うんだw
ここは私も参戦せざるを得ないか……。

>>391 RU1ZZ/dh様
改めてGJ&30機撃墜達成おめでとうございます。
いつも楽しく拝見しております。
北欧組に対する愛情とこだわり、文章の緻密さと優しさには脱帽です。
今後のご活躍に期待しております。

以上、mxTTnzhmでした。今回は私信のみにて失敬。そのうち何か書きたいなあと。
397名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 23:31:28 ID:EX3mEPts
PSの方はリーネあたりで芳佳攻略はないのかね
それ以上にエイラ主人公ルートとか欲しいけど
398名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 23:34:28 ID:cxv+SlDb
複数主人公は大変だからおまけシナリオで許してやるかナ
399名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/10(火) 23:49:21 ID:UyCuOGcB
>>380
絵だけ、設定だけでもこの板の住人的にはイナフなんだ。
絵と設定が出てきたら妄想するのは当たり前だろ?

>>384
少なくとも、ここで男を出すという愚行に走らなかったことは評価したいかなと。
いや、とあるアニメだと、ゲーム版になったとたんに男主人公が出てきてて
がっかりした記憶があるので。

>>386
せっかくだから、自分としてはヘルマとウルスラを絡めたい。
開発に関わってないとしても、ウルスラならジェットストライカーの知識&興味はあるはずだし。
「ハルトマン少尉は本当にだらしなくて嫌になります!」
ってヘルマが文句ばっかり言ってたら
「……、あんまり私の姉を悪くいわないで」
みたいな返答をしてる妄想が浮んできた。
しかし、ここでヘルマとは、誰とでも絡めてくださいといわんばかりのキャラ出してきましたな。
400zet4j65z:2009/02/10(火) 23:50:59 ID:hPDpgKE7
>>391
スオムス1942と1943を読み返してみた。
俺、 ブ レ て る じ ゃ ん !
人間の記憶なんて曖昧な物です&フミカネ解説&RU1ZZ/dhのSSを経て今の自分の中でのニパがいるんです、きっとw
あと、30機撃墜おめでとうです!
数えてみたらあと一本なんでこちらもがんばります〜
401名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 00:19:06 ID:6orPRNaM
初めてSS書いてみたんですが、ぜんっぜん上手く纏まらないです。
改めて此処に投下してる人の凄さが分かりますね〜…。
やっぱSSは読む方が気楽でいいですね〜w

個人的にはゲームはそれぞれのキャラ名を入れてゲームを始めたら、
そのキャラのエピソードが見れるとかそういうシステムをおまけで欲しい…。
402名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 00:30:35 ID:9X5IDjSZ
というかシチュ的にはおいしすぎるから、ifルートは欲しいな
403名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 00:34:50 ID:iNwS+5wZ
主人公が男じゃなかっただけで十分
これ以上を望むのは贅沢さ、ストライクウィッチーズの主役は宮藤なんだし
404名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 00:41:35 ID:WvYWsZwf
>>403
その通りだな
世の中には極上生徒会という原作ありきなゲームがあってな・・・
405名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 00:44:44 ID:6orPRNaM
個人的にはDSの主人公が気になるトコロ…
406名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 00:45:41 ID:1Wsbd2h0
極上もだけどARIAもショックだったなぁ…orz
407名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 00:48:34 ID:u0fWY+gO
ヘルマがツボすぎる。公式でも501の連中との絡みを
何らかの媒体で見たいと思ったよ。絵とちょっとした設定でこれだけ
いろいろ妄想をかき立てるなんてフミカネ氏はすごいと思う。

>>399
男主人公というと、苺ましまろ、舞-HiME、極上生徒会あたりかな
どちらにせよ、よくぞ竹井さんや芳香を主人公にしてくれた、と賛辞を
送りたい気分です。
408DlYSXlr+:2009/02/11(水) 00:49:54 ID:H8DNCvOj
>>404
極上は自分を百合に目覚めさせた作品。
そして、トラウマを植えつけられた作品だ・・・。

さて、それはそうと自分もお題に参加させて貰いますよと。
29手の『肩にもたれる』でやらしてもらいます。
1レスだけだけど・・・。

ちょっと暗い話だから、苦手な人は注意で。
409407:2009/02/11(水) 00:51:02 ID:u0fWY+gO
×芳香→○芳佳だった。
410茜さす 帰路照らされど(29手 肩にもたれる):2009/02/11(水) 00:52:46 ID:H8DNCvOj
夕暮れ時だというのに車内には誰も居なかった。
荷物を網棚に乗せて、4人掛けの席に座ると、ゆっくりと列車が走り始めた。

ガタン・・・ゴトン・・・ガタン・・・ゴトン・・・。

規則正しい車輪の音が何とも眠気を誘う。
案の定、窓際に座った彼女は直ぐに寝息を立て始めた。
今日は朝が早かったから仕方ないカナ・・・。
そんな事を考えながら、着ていたコートを脱いで彼女に掛けた。
穏やかな彼女の寝顔を眺めていると、不意に"あの言葉"が脳裏を過ぎる。

ありがとう、エイラ・・・ずっと、友達でいようね。

欲しがっていたぬいぐるみを買って上げた時、彼女は笑顔を浮かべながら私にそう言った。
あんまり感情を露にしない彼女が喜んでくれて、人見知りな彼女が私に心を開いてくれて、私は嬉しかった。
嬉しかったけれど・・・胸の奥が凄く痛くなった・・・。

こつん・・・。

肩に何かが触れた。
顔を向けると、ちょっとクセのついた灰色がかった髪の毛。
無邪気で穏やかで少し幼い可愛らしい寝顔。

「ずっと、友達でいようね、か・・・」
私と彼女は友達の関係・・・あくまでも"友達"の関係・・・。

「チクショウ・・・こんなに・・・こんなに近くにいるのに・・・友達なのカヨ・・・」
肩にもたれる彼女を見るのが辛くなって、思わず目を逸らす。
窓の外は綺麗な夕焼け空のはずなのに・・・。
真っ赤な太陽が涙で滲んで、ぐしゃぐしゃの目玉焼きみたいに見えた・・・。
411名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 00:54:22 ID:H8DNCvOj
おしまい。
お題だから短めでやってみた。

ゲームでエイラニャ話あるのかな・・・。
412名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 01:01:46 ID:Dz0wkI3o
>>411
タイトル見た瞬間脳内BGMがキュヴァッと変わってしまったw
GJ!!極端に短い文章でうまくきゅんと来るところを作れるのって凄いと思う。

ゲームはあれだ、11人全員とは言わないからせめてストパニみたいに主人公複数にして欲しいわ。
性格の違う3人を据え置いて後はフリーにすればそれはもうウマーなコトに……DSじゃ無理か。
413名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 01:05:35 ID:9X5IDjSZ
PS2のは完全にギャルゲ形式だが、どの程度まで”友情”を体感できるんだろうな
414名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 01:10:37 ID:iNwS+5wZ
>>413
贅沢言わないからアオイシロくらいの百合度がいいなぁー
二人で危機を乗り越えてチュッチュッするくらいの友情がいい
415名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 01:18:21 ID:+ldUsINv
↓みたいな感じの主人公選択システムにして欲しかった。シャーリーとルッキーニは逆でもいいかな。

芳佳で攻略できるキャラ: リーネ、少佐、バルクホルン、エーリカ、ルッキーニ、サーニャ、にちゃ被害者
リーネで攻略できるキャラ: 芳佳、隊長、ペリーヌ、シャーリー、エイラ、にちゃ加害者
416名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 01:39:58 ID:EJoKckLV
>>415
もしそんな感じでポケモンみたいに2ver別々で発売されたりしたら
ディスク真っ二つにしてブログに写真をう(ry
417名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 01:44:35 ID:vn+bqB10
各ディスクを乳首に嵌めた写真をUプする!!!!!!!!
418名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 01:57:09 ID:6orPRNaM
>>416
もう許し(ry
419名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 01:57:36 ID:EGT4+1zZ
PSPソルフェージュくらいの百合度がいいなぁー
420名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 02:18:40 ID:1MTq79ll
おまけシナリオでスタッフ暴走レベルのガチルートがあると妄想
エイラーニャあたりで
421もうすこしがんばりましょう1/8 j4ntaz3y:2009/02/11(水) 02:43:36 ID:4VXFiHmP
エーリカ受けのえろのすくなさに絶望したので自分で書いた。とりあえずおねえちゃんにがんばってもらった
絡みありなんで注意


 部屋がちらかって寝るところがないから、とおなじみの前置きをして、あけたドアのすぐそばに立っていたフラウは平気
な顔で私のわきをくぐりぬけ他人の部屋への侵入をまんまとはたした。私がなにかを言うまえにさっさと奥までいって、
ぴんとなったシーツのうえに遠慮なくとびのる。こら、ハルトマン。かたい声をつくってしかってみても、トゥルーデもはやく
はやく、なんていっしょに寝ましょうと手招きするだけなのだ。これがまるで自然なことになっていることに私は危機感を
おぼえずにはいられなかった。

「おまえはな、まったく、そんなことをしていたら私になにされたって文句言えないぞ」

 だから、冗談めかして言ってみた、いや、心の底から疑いようもなくそれは冗談だった。そうだ、私がいちいち甘やかし
て寝床をかしてやるものだからフラウのやつは調子にのって眠るところがなくなるほどに部屋をちらかしてもこまらないん
じゃないか、だから、この部屋にもこれなくなるようなことを言ってやればいい。しかしまあこのフラウのことだから、うわあ
トゥルーデのくせにへんなこと言ってるよ、なんておかしそうに腹をかかえるだけだと思った。そう信じて、そう言った。
 だというのに、いったいこれは、どういう状況なんだ。

「な、なに?」

 きゅ、と、フラウの指先がおしかえすしぐさで私の肩のあたりをつかんでいる。それから、あせった表情が見あげてくる。
私はといえば、予想外としか言いようのないフラウの反応に完全にかたまっている。瞬きすらもわすれて、かすかに赤く
なったほほを凝視していた。それっぽい空気をもたせるために、ベッドにすわるフラウに覆いかぶさるような体勢でもって
先の上品とは言えないジョークを言ってしまったために、まるでいまにもおしたおしてしまいそうに、私はフラウを見おろし
ていた。

「え、と、だからえっと…、え?」

 まのぬけた反応しかできない。だって、私の冗談なんかでフラウがこんな顔になるなんて思ってもみない。そのうちに、
たえきれなくなったようにフラウがうつむき、はずかしげに唇をとがらせた。それでも、あいかわらず指は私の服をつか
んでいるのだ。えええええ、と内心でさけばざるを得ない。私は盛大に動揺していた。どうしよう、どうしたらいい、ただの
冗談だったんだ、なんて言いだせる空気じゃない。いやそもそも、本当に冗談だったのか、危機感なんてものを覚えて
いたのは、本当にフラウのちらかし癖の増長を懸念したものだったのか、本当は、先程冗談を気取っていったことこそ
が、危機感の真の原因にちがいないのではないか。驚くような結論にたっした途端、まるで見計らったかのようにフラウ
が顔をあげる。やっぱりそれは真っ赤になって、きっといまの私もまったく同じ様相をしているにちがいなかった。トゥル
ーデ、となまえをよぶ唇。

「……」

 返事をすることもできずに、私はすいよせられるようにくちづけた。やわらかい感触、したことがないわけではなかった
けど、なんどしてもやっぱりこのふしぎなやわらかさは私をくらくらとさせ、まるで反射的に一瞬だけではなれることになる。
しかしフラウのやつは催促するようにあごをもちあげるものだから、私は逃げられなかった。勝手にまた唇に唇がよって
いって、まんまとくっついてしまう。同じようなことをなんどか繰り返しているうちに、今度はさそうようにフラウの唇がか
すかなすきまをあけてしまう。完全に手玉にとられているとしか言いようがなかった。それとも無意識でこんなことをして
いるのだろうか。私は考える余裕もなく、舌を侵入させることしかできない。

「……ん」

 極度にそばで、フラウの甘い声をきく。寝起きのときの赤ん坊のような甘えたそれと似ていて、だけど全然違った。背筋
がぞくりとして、ものを考えようとしている意識がうすれていく。私は夢中でその声をごまかそうとフラウの口のなかをかき
まぜる。それなのに結局そのたびフラウは苦しそうにのどで声をならして、つまりそのたび私は夢中になるしかなかった。
フラウの舌はちいさかった、ちいさくて、甘い。いつのまにかフラウの両手は私の背中にまわりそれでもさっきまでと同じ
ように指先がかたい布をにぎっていて、私だって無意識のうちにフラウの肩に片腕をまわしたりもう片方のてのひらを
ほほにはわせたりと逃がさないように必死な格好をしていた。
422もうすこしがんばりましょう2/8 j4ntaz3y:2009/02/11(水) 02:44:27 ID:4VXFiHmP
「んっ、ふ……ん」

 ふたりぶんの途切れがちの響きが室内にこぼれて、自分がいったいどんな動きをしているのかもわからなかった。
こんなキスのしかたなんてしらないから、からだが勝手にするままにフラウを舌でかわいがることに真剣になっていた。
フラウだってきっとそうで、まるで夢中にちいさな舌を動かして私のことをもとめている。だけどたぶんそんなことじゃ全然
息なんてあっていないから、私たちはただおたがいにすき勝手なことをしているだけなのだ。それなのに、と思う。それ
なのに、こんなに気持ちいいんだ。

「んうっ…」

 ふと気づいた息苦しさにはっと我にかえって、あわててからだをはなすと、フラウも苦しそうな息をつく。それからけほと
むせるものだからあせった。

「あ、ご、ごめん」

 自分だって息を乱しながらフラウの背中をさすってやると、そんなのはいらないとでも言うように身をよじられてしかた
なしにやめる。フラウがてのこうで口元をぬぐう。そこをぬらしていたのは、いったいどっちのものだったのか。そんな考え
が頭をよぎった途端に体温があがっていやになった。へんなことしてわるかった、もうねよう。さっさとそう言ってごまかして
しまおう。うつむくフラウを呆然と見つめながら思うのに、先に口をひらいたのはフラウだった。

「す、するの?」

 なにを。そこでそうきけなかったのは正解だったのか不正解だったのか。ぼんやりと赤い顔をして、フラウはまた私の
軍服をつかんでいる。ゆっくりと少女の面があがり、くりっとした、だけどなにかにさいなまれるようにゆれるふたつの目が
見あげてきた。その色はなにをにじませているのか、ひょっとして期待なのか、そんなの都合がよすぎやしないか。まて、
まつんだ。ついさっきまではくっつけるだけのキスしかしたことがなかったのに、急にこんなの、おかしいにきまってる。
沸騰しかけている思考で、なんとか冷静と思われる結論をだす。

「あの、えっと」

 いやいや、もうおそいだろう、だから、ねようじゃないか。そう言う予定だった。それなのに、トゥルーデ、と急に名を
よばれた途端。

「す、する」

 しらなかった、私は極度のばかだったみたい。
 一瞬後冷静になってももう遅くて、私はとにかく自分の発言に責任をもたなくてはいけなかった。フラウはまたはずかし
げに唇をとがらせてうつむいているので、おそるおそるのぞきこんでなあと呼びかける。

「あの、するって、どうすればいいのかな」
「しらない」
「えっと、ふ、服とか。ぬがせばいいのか」

 こちらとしては意見を尊重しようと真剣にたずねたわけだけど、フラウにしてみるとうっとうしい質問だったらしい。言った
途端にばちんとふとももをたたかれてしまった。

「い…」
「し、しらないよおそんなの。ちょっとは自分で考えてよ」
「あ、そう、そうか」

 ひょっとしたら赤く手形がついているかもしれないそこをさすりながら、私は必死にうなずいてみせる。そしてとまどう手
つきでフラウの上着に手をかけた。するとびくとフラウの肩がゆれて、ぎょっとして視線をあげると、意地っ張りの顔で
なんでもないと首をふられてしまう。どうしよう、やめると言うならいまのうちだ。いまのうちなのに、ばかな私はフラウの
服をぬがしにかかる作業をやめられない。
423もうすこしがんばりましょう3/8 j4ntaz3y:2009/02/11(水) 02:45:30 ID:4VXFiHmP
「えっと、…あ、あれ」

 しかも緊張のあまり指先がうまいこと動かないものだから手間どる。もたもたとフラウの襟元あたりで動きがわだか
まって、全然作業はすすまなかった。おかしいな、とかもっともらしいことを言いながらそんなことをしているものだから、
しまいにはフラウの手がぺちんと私の両手をはらってしまう。

「も、もういいよ。自分で、ぬぐから…」

 それからそんなことを言ってくるりとからだを反転させて私に背をむける。トゥルーデも自分でぬいでて。フラウのちい
さな背中のむこうからきこえる声になんとかうんと応え、それからあわてて自分もフラウに背をむける。この状況でもぞ
もぞと脱衣している姿を冷静に観察できるほど私はしっかりできた人間ではないみたいなのだ。なさけなさにため息が
でそうになったのをなんとか我慢して、今度は自分の衣服に手をかける。それも結局、全然うまくやれなかったわけだが。

「ねえ」

 唐突に背後から声がしてぎくりと肩がゆれた。あわててふりかえろうと思うけど、うしろのフラウがいまいったいどんな
格好をしているのか予想もできなかったので思いとどまる。なんだ、とかたくなってしまう声でたずねると、フラウは一瞬
だまってしまった。

「……ぬぐって、どこまでぬげばいいの」

 やっとでてきたのは、普段のやつからは想像もできないようなか細くてしおらしいつぶやき。ぬぐ、どこまで。……どこ
までなんだろう。おそらく最終的には全部なんだろうけど、たとえば脱がす楽しみとか脱がされる楽しみとかのことを
考えるとちょっとは残しておいたほうがいいんじゃないか。ふと思いついた一瞬後にはなんとも下品なことを考えている
自身に赤面した。

「あー。あの、フラウの、ぬぎたいところまで、で、いいんじゃないか」

 ごまかすために奇妙に上擦ったおおきな声で言うと、わずかばかりの間をあけたあと、なにそれえ、とフラウがおこった
ようなすねたような実に複雑な声をもらす。ぎょっとして思わずふりかえると、フラウの背中がある。ちぢこまったそれは
ちいさなフラウをもっとちいさく見せていて、無意識にこくとのどがなる。互いのはだかなんて見慣れているのに、全然
そんなふうには感じられない。フラウは上下の下着だけをのこして、あとは無残にベッドのしたへとほうりなげていた。
そこではっとする、おろかな考えごとをしながらぬいでいたものだから、私はたった一枚、ズボンだけがそのままの、やつ
以上にはだかに近い格好になっていた。かあっと身勝手にはずかしくなって、つぎには手がのびて背中にあるホックを
はずしにかかっていた。

「…な」

 ぎょっとしたフラウがふりかえり、その勢いのままブラジャーを両腕からぬいてほうりだされたほかの衣服のうえに
なげた。だって、フラウばっかりずるい。内心で言いわけして、想定外にむかいあうかたちになったむこうからびっくり
した目が見ているのをなんとか見かえした。が、それは数秒ももたない。そよそよと視線はおよぎ、フラウのうしろの壁
あたりにピントをあわせてかたまった。直視できるはずがない、なぜならフラウはいま、あまりにも素肌をさらしすぎて
いる。そうだ、見慣れているはずなのに、いまばっかりは全然そんなふうには感じられないのだ。それだというのに、
あんなに大事なものを考えなしにとっぱらってしまうものだから、私はどうしようもなくなってしまった。

「…んっ」

 途端、急な刺激があった。とはいえそれはとてもゆるやかでかすかなもの。はっとして視線をずらすと、フラウの両手が
私の胸にくっついていた。フラウ、とおどろいた声で呼ぶと、フラウは上目づかいで私を見た。うるんだ目、なんだか熱に
浮かされたような視線が、私の表情をながめている。おそるおそるといったふうな動きが、ゆっくりと私をなでていた。
424もうすこしがんばりましょう4/8 j4ntaz3y:2009/02/11(水) 02:46:27 ID:4VXFiHmP
「あ…フラウ…」

 よわよわしい刺激に情けない声がもれる。そのたびフラウはびくりとするように手の動きをぎこちなくした。そうだ、すき
にさせてやることにしよう、たぶんそのほうがいい、私が下手なことをして傷つけてしまうよりは、そのほうが絶対にいい。
決めこんで、私は目をとじた。ぞくぞくとした、だって、フラウの手はちいさい。このちいさな手が私にふれていると思うと、
きゅうと腹の奥があつくなる。息が荒くなっていくことを自覚した。フラウはちいさい、手だけじゃない。さっき感じた舌
だって、耳だって鼻だってなんだって、フラウはちいさいんだ。かあ、と頭の芯が熱くなっていく。ちいさいフラウ、かわ
いいかわいいフラウ。いまそのフラウが、私にふれている、……。

「うわ、わっ」

 そう思うと我慢の限界だった。すきにさせてやろうと決めたばかりなのに、私はフラウと同じように目のまえのささやか
なふくらみへと手をのばしていた。だ、だめ、トゥルーデ。あせった声がとんできて、その出所をじっと見た。真っ赤な顔、
どうしよう、私もいまこんな顔をしていたんだろうか。思いついてはずかしくなっていると、急に視界が黒になる。えっと
まぬけな悲鳴をあげて、すぐにフラウのてのひらが私の両目を覆っているんだと気づいた。

「な、なんだよ」
「だって、トゥルーデが、わ、あ、やだ」

 抗議のつもりでついフラウにすいつく手に力をこめるとまたあわてた声。

「み、見るのやだ」
「な、おかしいだろ、おまえはさっき私をじろじろ見てた」
「うるさいうるさい、くちごたえすんな、トゥルーデのくせに」
「は、はあ?」

 なんだそれは、くせにって、つまり私は、おまえには口ごたえもしちゃいけない人間なのか。理不尽な言い分に反論が
うかんだが、その一瞬後にはてのひらの感触を思いだして息をのむ。やわらかくあたたかくて、そのなかにぴんとかたく
なっているところがあった。てのひらをおしかえすその感覚にかあっと頭のなかが沸騰する。フラウはちいさいからここも
こんなにちいさくて、だけど、こんなふうに気持ちよくなれるところ。ぎゅっと手の平たいところでおしつぶすと、フラウが息
をのむ。

「んっ、ん」

 くぐもったこらえた声、目は見えないけれど、耳はばかみたいにさえていた。指のさきでこすると、今度こそあっと高い
声がなる。両方をおなじように、ひっかくように刺激した。そのたび、私の視界をさえぎるてのひらがふるえた。

「トゥル、デ、あ、まって、まってよ。…っん、も、やっ」

 いつのまにかフラウのてのひらは私の後ろ頭のほうに移動していて、くしゃと髪をつかんでいた。ふたつに結いっぱなし
だったリボンがぱらととける。もういやだと首をふって、指先を髪のあいだにからませてくる。ひらけた視界で、やっとフラウ
を見た。きゅっと目をとじて、唇をかんでいる。だめだ、そんなことしたら、血がでるじゃないか。自分がいじくっているせい
でフラウは血がでるようなあぶないことをしているのに、まるでそんなことはしらないように心配ごとをこころのなかでつぶ
やいた。だから行為はやめられないまま、それでも唇をかむのをやめさせたくて無意識に唇にくちづける。なめて、力の
こもるそこを解放したかった。するとフラウは腕を首にまわして私をだきよせてきて、その拍子にバランスが崩れてベッド
にふたりしてたおれこむ。フラウがしたになって、おしつぶさないようにあわててシーツに手をついた。キスしていたのが
離れて、だけどすぐにまたひきよせられてかさなる。衝動的に舌をさしいれれば、熱くてしかたがなかった。

「……あっ」

 ふと、胸からはなれた手持ち無沙汰なてのひらを横腹のあたりにはわせると、びくとフラウがふるえ、私自身もぎくりと
した。そうだった、まだふれていないところがしたのほうにあって、そして私は、そこにふれたかった。
425もうすこしがんばりましょう5/8 j4ntaz3y:2009/02/11(水) 02:47:17 ID:4VXFiHmP
「ふ、フラウ」

 名を呼ぶと、フラウがはずかしそうに眉をよせた。フラウ。ふるえるのどでまぬけになんども呼びかけて、ほほにふれる
とそれに手がかさなってくる。どうしよう、いいんだろうか、さわっても。どきどきしながら、おなかのあたりにあった手を
したにすべらせ、ふとももにふれた。途端、あっとフラウが声をあげる。

「や、やだ」

 反射的な拒絶。私は思わずはねるように手をうかせて、いやだと言った顔を見た。するとフラウははっとしたように
口元をおさえ視線をおよがせて、もうなにも言わない。いやか、と必死な声でたずねても、フラウは口をひらかなかった。
どうしよう、ああそうか、いやならやめればいい、簡単なことじゃないか。そう思いつくのに、この口は全然ちがうことを
言いはじめた。

「あの、その。もしいやになったらえっと、途中でやめるから。なんなら、なぐってくれてもかまわない、だから……なあ、
フラウ」

 格好悪いにもほどがある口説き文句で、私は必死にフラウの許しを請うた。私から視線をはずしっぱなしの目下の子
に懇願する目ですがって、フラウがうなずいてくれることを待ちわびた。が、それよりもさきにぐいと肩をおされてぎょっと
した。

「え、あ」
「もういやだ」

 されるがままばっと身をはなすと、拒絶の行動のつぎには拒絶のことば。一瞬呆気にとられた後、血の気がひいた。
もういやだ、いまフラウはそう言った。あまりの衝撃に瞬きひとつできずにかたまっていると、フラウはまるですねた動き
のてのひらで自分の両目を覆った。

「なんで、どれもこれもわたしに決めさせたがるの、服だって、わたしのぬぎたいとこまでって、まるでわたしがぬぎたい
みたいじゃないか、いまだって、し、したいならすればいいのに、なんでわたしがしてって言わなきゃなんないの。なんで、
全部言わないとわかんないんだよ」

 つづくことばに、私はなにも反論できない。ち、ちがう、それは全部、フラウの意見を尊重しようと思って。言いわけは
うかぶのに、口が全然まわらないのだ。そのあいだもフラウはトゥルーデはばかだ変態だと罵声をしたからとばしてきて、
私はそれを甘んじて受けるほかない。

「もういや、トゥルーデってなんでそんなに頭悪いの?」

 そして最後のしめには大層に失礼なことを言われた気がしたが、そんなことはまったくどうでもいいことだった。なぜか
と言えば、顔を覆う指先のあいだからしずくがこぼれてきたから。つまり、フラウがさめざめと泣きはじめてしまったから。

「え、あ、わわ」

 おおあわてで親指でそれをぬぐう。だけどやさしくする余裕なんてあるはずないみたいで、乱暴な手つきでなんどもほほ
をなでた。ごめん、といったいなにに対する謝罪かもわからないまま繰り返し、そのたびフラウはしゃくりあげていた。

「えっと、ごめん。なかないで、たのむから」
「…いてないよ」

 ばればれのうそに、そうだな泣いてないよな、と思わずうなずく。するとそのうちに冷静さをとりもどしてきたのか、フラウ
がぺちんと自分の顔にくっついている私の手をはらって今度はばしばしと私の頭をはたきはじめた。それはいつもどおり
の甘えたがりのこどもの手つきで、ほっとする。

「なんで謝ってるの?」
「……へんなことしたのおこったのかと思って」
「へんなことなんてしてないじゃん、なにもしてないよ」
「で、でも」
「なんだよ、わたしはいやだなんて言ってないじゃないか、……いや、ゆったかもしれないけど、でもそんなの、ほんとじゃ
ないに決まってるのに。……もうやだ、なんでこんなこと言わなきゃなんないの?」
426もうすこしがんばりましょう6/8 j4ntaz3y:2009/02/11(水) 02:48:08 ID:4VXFiHmP
 ばしん、とおおきな音をたててひと際強い衝撃が額にぶつかる。やわらかいフラウのてのひら、ちょっと痛かったけど、
全然痛くなかった。やばいと思う、どうやら私は、本当に頭が悪いみたいだった。だって、ひとのことを遠慮なくはたき
まくるようなやつが、こんなにかわいい。真っ赤な顔をしてすねたようすでごしごしとまだしめっている目を擦るフラウが
驚くほどかわいくて、思わずごくりとつばをのんでしまうほど。目元を覆っている両手のうちの片方の手首をとって、私の
急な行動にぎょっとしているフラウの瞼に唇をおしつける。わ、とフラウは声をあげて、つかまれていないほうの手で私
のほほをおしかえそうとした。

「いやだ、くすぐったい」

 たわむれ程度の力が私をおしやろうとしながらいやだと言うけど、これはほんとのいやではないのだろうか。さっきフラウ
はそう言って、だけど残念ながら私には本当かうそかの判別なんてできそうにない。だから都合のいいようにとることに
した。瞼だけじゃなくてあったかいほほにもキスをして、額にも鼻のてっぺんにも唇をすべらせた。そうしているうちに
いつのまにかフラウの両のてのひらが私のほほにはっていて、ひきよせられて鼻の頭に自分のそれをすりつけてくる。
やわらかいしぐさ、私はまたどきどきして、今度は唇に唇をかさねた。

「…ふ、フラウ、…」

 ぼんやりとした思考で、目下の子に呼びかける。その子はてれくさそうな表情で、そのくせトゥルーデへんな顔してるよ、
なんて軽口をたたく。それはきっとそうにちがいない。私はたぶんいま、とてつもなく情けない表情をしているにちがいない
のだ。フラウ、と必死になまえを呼んで、てのひらをわき腹にはわせた。私のほほにふれるてのひらがびくとふるえて、私
もふっと息をのむ。どうしたらいいのかわからない、やめたほうがいいのだろうか。まったくまとまらない結論を急ぐが、
そうしているうちにもてのひらは勝手にしたのほうへと動いていく。泣きそうな目元がふるえている、どうしよう、どうしよう。
あせる思考とは裏腹に、確実に私の手は目的地を理解していた。へそのとなりをすりぬけて、ついにはフラウを守って
いる唯一の布きれに指先がふれる。

「…あ」

 それだけでフラウはちいさな悲鳴をあげて、ぎゅっと目をとじた。どくどくと心臓がなっていて、のどがかわいてしかたが
ない。もうだめだった、本当はやめたほうがいいのかもしれない、だけど、もうそんなことはどうでもよかった。一気に
てのひらを侵入させて、熱いそこに指先をすべらせた。

「ふあ、あ、あっ」

 高い声、フラウの声。甘ったるい。普段から甘えた声をだすのが得意なはずのフラウ、だけどこれはそんなのとは全然
ちがった。頭の芯がゆられるように、鼓膜からとどくそれは私の意識を朦朧とさせる。もっとききたくて、一所懸命指を
動かした。そのたびフラウは目じりに力をこめて頭をふって、おさない顔とはつりあわない、私の全然しらない声をあげた。

「いや、もうっ、あん、あっ…」

 フラウのつめが、私のほほにくいこんでくる。ああ、こら、またつめを長くして。ちゃんと切れっていつも言ってるだろう。
呆然と説教がうかぶが、一瞬後にはとんでいく。私のしたでフラウは全身をふるえさせて、真っ赤な顔がまたぬれている
のだ。泣いてる、そう思った途端に、名を呼ばれた。トゥルーデ。馴れ親しんだ発音。フラウが私を呼んだ。それは完全
なとどめだった、私はついにはなけなしの理性すらも奪われて、夢中に必死に、フラウを感じることしか考えられなくなる。

「トゥル、デ、あっ、トゥルーデ、ねえ、トゥルーデっ…」
「うん、フラウ、っフラウ……」

 我をわすれた動きで指を動かせば、フラウもそのたびかわいらしい声と表情で私をめちゃくちゃにした。たくさんなまえ
を呼ばれて、だけどそれでも足りなくてもっと呼んでほしくて、私もなんども呼びかけた。情けないへんな顔で、自分こそ
甘えた声がこぼれだす。いつのまにかフラウは首に両腕をまわして私を抱きよせていた。限界が近いのか、すがるしぐさ
が一所懸命でかわいくて、私もまるでおいつめられていく。甘い息と声を耳のすぐそばに感じながら、私は無意識にフラウ
がより高い声をだしたかすかな突起を刺激する。
427もうすこしがんばりましょう7/8 j4ntaz3y:2009/02/11(水) 02:48:52 ID:4VXFiHmP
「あっ、だめ、あっ、……っ」

 最後のほうは、もう声にもなっていなかった。腕も足も全部をこわばらせて、フラウは息をのむ。そのようすを全身で
感じていると、つぎには苦しそうな、そのくせ満足したような息づかいをふるえさせながら、フラウは私をやわらかく抱き
しめた。甘えるようにほほにほほを寄せて、首にまわった両腕が私を拘束して離さない。おかしい、甘えているのはフラウ
なのに、まるで自分こそ甘やかされているような気分になった。密着するからだに心底安心している己がまぬけでしかた
がないと思うのだ。でもそんなのしょうがない、だってフラウの肌はどこもかしこも、こんなに気持ちいいんだ。

----------

 なにか言わなくちゃ、と思うが、まったくことばがうかばないのでおとなしくただフラウを抱きしめていた。
 おわってしばらくしてからズボンのなかが気持ち悪いとぽつりと言ったものだからあわててぬがせてやろうかとしたら、
もう平手ではあきたらなかったらしいフラウにグーで頭をなぐられた。おかしい、こいつはこんなに暴力的だったろうか。
それとも、そうならざるを得ないほど私が無神経なのか。結局もぞもぞと自分でズボンをぬいでいるフラウの横でついで
とばかりに私もそれをぬぎすてていると、ベッドのしたの惨状が目にはいる。ふたりぶんの衣服がめちゃくちゃにちら
ばって、なんともおちつかない情景。気になってしかたのないはずのそのようすが、だけどいまはどうでもよかった。
だって急に、さっきまでおこっていたはずのフラウが私の腕のなかにすりよってきたから。
 そしてまあさっき述べたように、ベッドのなかでフラウをただ抱きしめて、私は必死にことばをさがすこととなったのだ。
謝るのはちがう、たぶん。ちゃんと気持ちよかったか、これはかなり切実に気になったがきいたらたぶんまたなぐられる。
あいしてるよフラウ、……だめだだめだ、唐突すぎる。

「ねえねえ」

 そもそもそんな歯のうくような台詞は正解不正解以前に言えるわけがない。まぬけなほどに真剣に思考をめぐらして
いると腕のなかから唐突な呼びかけ。ぎくりとして、思わずはいと裏返った声で返事をしたら笑われた。はいだって、
トゥルーデばかだ。おかしそうなこどもの笑い声。ばかだと言われたのに、普段どおりのそのようすにほっとした。して
いると、おもむろにあごがつかまれてぎょっとする。

「うわ、なんだよ」
「した」
「した?」
「舌だよ。したー」

 べえ、とフラウは舌をだして、思わずつられて同じしぐさをすると、フラウは奇妙に真面目な顔で私のそれを観察した。
急になんだ。たずねたいのに舌をだしたままじゃしゃべれない。おとなしくしたいようにさせてやっていると、フラウが
ふうんと鼻をならす。

「トゥルーデって舌ながい?」
「は? ……さあ、どうかな。ひととくらべたこともないから。でも、たぶんおまえよりはながいよ」

 もういいらしいから舌をひっこめて返事をすると、だよねえ、とフラウはうなずいた。わたしさあ、きいたことあるんだけど。

「舌ながいひとってキスうまいんだって。あれうそだね」
「……ど、どういう意味だ」

 フラウの言いたいことは残念ながらわかったが、ついたずねかえすと楽しげに笑われるだけの結果におわった。いや、
わかっていたことじゃないか、どうせ私は、う、うまくない。あれもこれも、全然うまくやれないことなんて、わかっていたこと
じゃないか。当然の結論にそれでも傷ついていると、またフラウの声がした。あのね。きょうのこいつは、よくしゃべる。

「さっき、へんな顔って言ったでしょ」
「……ああ」

 それはきっと、最中のことだ。あんまり必死だった私は、さぞひどい顔をしていただろう。なんだよ、わざわざむしかえさ
なくてもいいじゃないか。どんどんと情けなくなる。どうしよう、私はどうやら、いいところなんてひとつもないみたいなのだ。
だから、ごめんねあれうそなんだ、というフラウのらしからぬ控えめな声は、全然ぴんとこなかった。
428もうすこしがんばりましょう8/8 j4ntaz3y:2009/02/11(水) 02:49:20 ID:4VXFiHmP
「あのね、わたしのこと呼ぶトゥルーデが、トゥルーデのくせにすごくかわいかったから、うそついちゃった」

 ごめんね。きゅっと首元に抱きつきながら、フラウが不可解なことを言う。かわいいだって、だれが。そんなの、かわいい
のなんて、おまえにきまってるじゃないか。あんなふうに真っ赤になってふるえて、それだけじゃない、ひとのことをばかに
して大笑いしてるときだって、急におこってすねるときだって、おまえはいつもかわいくてしかたがないじゃないか。ああ
そうだと思う。言ってやらなくちゃいけないことが見つかった。常々思ってるのに、全然つたえられないこと。抱きしめ
かえして、急な私のしぐさにぴくとふるえたフラウの耳元に一所懸命唇をよせる。

「…、か、かわいいのはおまえだ。かわいい、フラウ」

 だめだ、やっぱり私は最後まで決まらない。上擦った声でつっかえて、それなのにフラウはふふと笑って甘えたしぐさで
私の首筋に額をすりつけてくれる。どうしよう、だめだ、一生敵う気がしないんだ。

「そうか、わたしはかわいいのか」
「……うん」
「ねえ、またしたい?」
「……、う、うん」
「へへへ、そっかそっか」

 じゃあね、わたしがしたくなったらまたしようね。上機嫌なつぶやき、それはどうやらおやすみのかわりだったらしい。
うん、と反射的に三度目の同じ返事をしようとしたところで、ぱたんとフラウは私の腕をまくらにした。首にまきついていた
拘束がとかれて、さっさと目をとじてすやすやとはやくも寝息をたてるフラウ。私は呆然と見おろして、ぱちぱちと瞬きを
する。なんだって、フラウはいまなんて言った。またって、そう言った。まさかの次回を示唆されて、私は唐突に先程まで
のあれこれを思いだしてしまう。うわあ、ばかだ。フラウはもう寝ているのに、私はひとりで興奮した、だってかわいい
フラウが腕のなかで寝ているんだ、きのうまでしらなかったフラウをまた見る方法を、私はしってしまったんだ、……。
 ちなみにその日は結局一睡もできず、しかもフラウがしたくなったらということは私がしたくなってもしないのかもしれ
ないということに私が気づけたのは、明け方ごろになってやっとだったそうだ。


おわり
429名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 03:12:16 ID:XRp1SOao
ずっとROMってたのですが、ウズウズしてきたので書いてみました。
というわけで、初投稿となります。
芳佳とペリーヌのお話です。
本当に初なので、上手く書き込めなかったらごめんなさい。
430マメシバと灰色猫:2009/02/11(水) 03:17:13 ID:XRp1SOao
 太陽も間もなく南中に至ろうと言うところ、いわば昼前の連合軍第501統合戦闘航空団、通称ストライクウィッチーズ
基地に怒声が響き渡る。キーンと高く響くその声は、彼女を知っている人なら一度は耳にしたことがあるものであり、
容易くその主を探り当てることができるものでもあった。
 とはいえ、それが風物詩扱いされていることは、当人からはとても許容できないものである。その本人、
ペリーヌ・クロステルマンも別に好きでそんな声を上げているわけではないのだ。ただ、目の前にいる人物
―宮藤芳佳が、自分にそんな声を上げさせる行動を取るが故であり。そう、つまりはこの豆狸が全て悪いのですわ!
で片付けていいものだと、少なくとも彼女はそう思っていた。
 それなのに、彼女は素直に謝らず、いつも何かしらの理由を見つけては口答えをしてくる。それが全く荒唐無稽な
ものであるのなら一笑して済ませるのだが、必ずしもそうでない辺りがまた腹立たしい。
 つまりはそう、完全に穴しかないか、もしくはペリーヌにとってぐうの音も出せないほど完璧なものであるならまだいい
のだ。しかし、返される台詞はそのどちらでもない。だから彼女の方もその付け入る隙を狙って言葉を返さざるを得ない
のだ。
 尤もそれは、彼女自身の言動にもその傾向があるからこそのことでもあるのだが。
「本当にあなたという人は…!もう我慢なりません!」
 場所は食堂。ペリーヌがお茶の準備をしていたところに宮藤が現れ、物のついでとほんの気まぐれで用意したところ、
ものの見事に彼女は扶桑式の―いわゆる香気と共にすすり上げる―欧州式としては無作法極まりない飲み方を披露
して見せたのだ。もしここに傍観者がいたとしたら、わざとやってるんじゃないかと突っ込みたくなるほどの、
所謂スイッチ的行動である。
「す、すみません!でもわたしの故郷ではお茶はこうやって飲むもので…」
 その言い訳は彼女本位のものではあるものの、ここに配属された経緯を考えるに、そこに完璧さを求めるのは酷で
あることはペリーヌも理解していた。理解してはいるものの、それが無作法であることは確かであり―例えば、
もし彼女が平和の中で出会った友人の一人であるならば微笑を浮かべつつそれを嗜めることもできたのであろうが
―またペリーヌにはそう簡単に彼女に優しくできない理由もあった。
 坂本少佐―ペリーヌの上司であり、またその敬愛という言葉では表しきれないほどの想いの対象―にスカウトされて
きた宮藤であるが、言うなれば彼女はその坂本少佐に付きっ切りと言ってもいい待遇で訓練を受けていた。言葉を
変えれば、特別に目をかけられていると言っても良い。つまり、ペリーヌにとって宮藤は、ぽっと出の新人に癖に
坂本少佐にあんなにくっついて、本来ならばそこはわたしの居場所なんですのよ!、という負の方面の感情を
ぶつけるに相応しい対象となっているのである。
431マメシバと灰色猫:2009/02/11(水) 03:19:26 ID:XRp1SOao
「言い訳なんか聞きたくありません!それにここはブリタニア、確かあなたの国の言葉で、郷に入っては郷に従え、
というものがありましたわよね。そっくりそのまま、プレゼントして差し上げますわ!」
「でも、そこまで言うこと無いじゃないですか。わたし、こっちに来たばかりで、まだ馴染みが薄いんです。それは、
悪いことをしたとは思いますけど…」
 だから自然と彼女の口調はきつくなってしまう。そしてそれをぶつけられた彼女も素直に謝りづらくなってしまう。
結果的に、またいつものと頭に付けられる口喧嘩が始まってしまうのだ。
 それはまるで演舞のよう。見るように見ればまるでじゃれ合う子犬と子猫のようにも見えるのだろう。事実、当航空団
構成員の二人に対する認識はその範疇内のものであった。
「言い訳は見苦しいですわよ。だからあなたは豆狸なんです!少しは坂本少佐の…」
「ま、また豆狸って言いましたね!わたし、その呼ばれ方嫌ですって前言ったじゃないですか!」
「そうして自分の非を棚に上げて反論してくるところが豆狸の豆狸たる由縁ですのよ?」
「むーっ、それならペリーヌさんは、意地悪でひねくれものな灰色猫です!」
「なっ…言うに事欠いて…意地悪で、ひ、ひねくれものですって!」
「だってそうじゃないですか、こんなことで騒ぎ立てて、わたしを目の仇にして…
だからツンツンメガネなんて呼ばれるんです!」
「ツンツン…このっ!もう今日と言う今日は…」

「相変わらず仲がいいな、お前たちは」

 不意に割り込んできた声に、ペリーヌはぴたりと動きを止められた。瞬時に体ごと首を反転させて、声のしたほうへと
向き直る。
 そこに立っていたのは彼女が思い浮かべたとおりの人物。即座にピンと背筋を張りその人に相対するに相応しい
姿勢をとった。
「坂本少佐…!」
「坂本さん!」
 同時に響いた声に、思わず横を確認してしまう。見るとおそらく自分がとろうとした姿勢と全く同じ姿勢をもって、自分が
向き直った同じ人物に向き直っている宮藤の姿が映った。
 おそらくは、自分が畏敬を篭めて向き合っている彼女―坂本からは、二人が全く同じ挙動をしたように映っていること
だろう。こんな豆狸と同じ行動をしてしまっただなんて腹立たしいですわ。そう思いつつも、自分の尊敬の対象である
坂本に礼を尽くすのは当然のことであり、それに類する行動を取ったという意味では特に言及する点は見あたらない。
まあ、宮藤さんもそうそうわたくしを怒らせるようなことばかりと言うわけではないですからね、と結論付けることにした。
 結局のところ、二人がその姿勢をとったのは似て非なる理由によるものであったのだったが、その対象にとっては頬を
緩ませるには十分な光景だったらしい。いつもペリーヌにとって凛々しさを伴って視界に映る、はっはっはっと高笑いを
上げる姿を見せてくれた。
432マメシバと灰色猫:2009/02/11(水) 03:21:50 ID:XRp1SOao
 ―でも、いくら少佐のお言葉でも、それには素直に頷くわけには行きませんの。
 勿論口に出したりはせずに、そう思いを巡らせる。それは、もう同じ空気を吸うのすら我慢ならないというほどに嫌悪して
いるわけではないものの、こうも顔を合わせる度に憎まれ口を叩いてしまう相手と一緒に仲がいいとまとめられてしまうのは
すんなりとは納得しがたいものがある。それに相手の方も、そんな扱われ方をされているのだから、きっとこちらに好意を
持っていると言うことはないだろう。嫌われても仕方がないと思えるほどの言動を取っていることを半ば自覚している彼女は
そう思い、そしてまた同時に少し寂しさを覚えたりもした。
 無論、それは即座に彼女の中で無かったことにされたのだが。
「ケンカするほど仲がいい、か。よく言ったものだ」
「確か、扶桑の格言…ですわよね。ですが、わたくしたちは…」
「ええと、そう見えるんですか、坂本さん」
 ほぼ同時に反応を返し、ペリーヌは自分と重なったそれに違和感を感じた。ペリーヌのそれは、やんわりとだが否定の
篭った声色。けれど、彼女の―宮藤のそれは否定ではなく、強いて言うならば僅かなりであれど喜色の篭ったものであった
からだ。
 ―何故、どうしてですの?
 そんな疑問を口にする間もなく―そもそも彼女には坂本の前でそのような態度など取れなかったのであるが
―その泰然たる笑みで二人に相対する少佐は言葉を続けた。
「二人ともわたしの弟子みたいなものだからな。兄弟弟子が仲良くしているところを見ると、師匠としては嬉しいものだ」
「そ、そうなのですか。わたくしたちが仲良くしていると、少佐は嬉しいのですね」
「ああ、勿論だ」
 そういってまたいつもの笑い声を上げる坂本を、ペリーヌは恍惚とした表情で見つめていた。いつもの仕草とはいえ、
ペリーヌにとってはそれは色褪せることの無い、想い人の仕草なのだから。
「ではわたしはもう行くが、二人とも仲良くな」
 はい、と元気よく返事をしたペリーヌに対し、同じく相対している宮藤芳佳はどこか生返事じみた返事を返すだけだった。
ペリーヌにとって、それは少なからず気になる事柄ではあったものの、また今はそれを咎めるときではないのだろうとも理解
していた。何故なら、彼女の敬愛する坂本少佐その人が二人が仲良くしていることを望んだのだ。ならば、彼女がそれを
守らないわけには行かない。いや、何をおいても守るべきだろう。そう思っていたからだ。
「さて…こほん」
 咳払いに、隣で既に去ってしまった背中を見つめ続けていた宮藤は顔を向けた。それを確認して、ペリーヌは言葉を続ける。
「本当はあなた如きと…という気持ちもあるのですが、坂本少佐がおっしゃるのでしたら仕方ありません。これからは仲良く
していきましょう」
 そして、右手を差し出した。利き手を差し出すなんてこの豆狸にはもったいないほどの信頼の証ですわよ、そう思って、
それを手段として突きつけるように。実際、宮藤芳佳は欧州の風習にそこまでまだ詳しくは無かったが、ペリーヌの取った
それが信頼を表すものであると言うことは理解していた。そしてその様子はペリーヌにも容易く見て取ることができた。
 彼女が少佐に一定以上の敬意を払っていることは明らかである。勿論わたくしには及びませんが、と前置きをつけるに
しても、それはペリーヌも認めるところであった。だから、とペリーヌは確信する。きっと彼女は、この申し出を受け入れて
くれるのだろうと。彼女も少佐を悲しませるようなことはしないだろうから。
 だから、彼女の口から発せられた言葉は、ペリーヌにとって意外と言う他に表現のしようのないものであった。
433マメシバと灰色猫:2009/02/11(水) 03:26:25 ID:XRp1SOao

「なん…ですって?」
 差し出した手が固まる。同時に礼儀として貼り付けていた微笑も凍りついた。
「ですから…嫌です、って言ったんです」
 それはそうだろう。まさかだった。まさかこんな返答が帰ってくるとは夢にも思わなかったから、彼女が硬直してしまうのも
仕方がないことだった。だけどそれだけではない。彼女を固まらせたのはもうひとつ。宮藤にとっても坂本は決して軽くない
存在であることは確かであり、つまりは特別な何かが無ければその言い付けを反故にすることは無いはずだ。つまりは、
例えその理由をもってしても、宮藤芳佳にとって自分と仲良くすると言うことはありえないことだと、それを明確に突きつける
ものであったからだ。
 ガンっと何かハンマーのようなもので即頭部を打ち抜かれたような衝撃。そして、自分がこのことによりそこまでの衝撃を
受けたことに対する衝撃。自分がここまで立ち位置を下げてあげたのに、というものもないわけでは無かったが、その二つに
比べると、彼女自身意外に思うほどそれは些細なものだった。
 疑問を浮かべざるを得ない。何故なら、そんなことは彼女にとってとっくにわかっていたことのはずだったから。目を
合わせれば憎まれ口を叩き、まるで目の仇のように振る舞う。そんな自分に彼女が好感を持たないことは当然のことだ。
意識的無意識的に繰り返したその論述には、特に否定する部分は見た当らない。そして好感を持たないということは、
嫌いという言葉に置き換えても違和感はない。つまり、彼女は自分が彼女に嫌われているということは自明の事柄の
はずだったから。
「そう…そうですの。わかりましたわ」
 ありったけの必死を篭めて平静さを装い、そう搾り出す。何故こんなに必死にならないといけないのか、彼女にはその
理由は分からない。わかることは、ただ必死にならないと、今にも泣きそうになっているその状態だけ。そこまで大きな衝撃。
それは彼女にとって理解不能で、それゆえに抱え続けることが困難なもので、だから最もわかりやすいものに転換せざるを
得なかった。ペリーヌ・クロステルマンが宮藤芳佳に向けるもので、最も頻度が高く、習慣とも呼べるレベルまで至っているもの。
つまり、憤慨へと。
「あなたがそこまでわたくしを嫌ってるとは思いませんでしたわ!
いえ、いいんですのよ、わたくしも、あなたに負けないくらいに―」
 勢いで駆け抜けてしまおうとした口が、ぴたりと止まる。何故かその先を、ペリーヌは口にすることができなかった。
たった三文字。それだけのことを、何故か。ああ、そういえば、と彼女は思い出す。例えどんな悪口雑言を彼女にぶつけて
いるときでも、自分はその言葉を口にしたことは無かったと。それはつまり、シンプルなこと。その状態ではないから
その言葉を口にしない。つまりはどんな憤りを覚えても、それを表に現していたとしても、ペリーヌは宮藤を嫌ってなど
いなかったと。つまりは裏返しに、そんな自分を嫌いにならないで欲しいと、何処かでそう願っていたのだろう。
更に進めるとすれば―
 どうして、どうして自分はこんな状況に至ってそんな結論を導き出そうとしているのか。それが教えてくれる。理解不能ではない。
つまり今自分が受けている衝撃は、嫌われたくない相手から嫌いだと、そう突きつけられたからに縁るものだと。
 頭が混乱する。そんなことは認められるはずが無かった。ペリーヌには彼女を嫌う理由があり、だからこそ平静の自分は
そのように振舞ってきたのだ。それを今更、そんな真逆の思いが浮かんでくるなんて、ありえてはならないことだった。
けれども、どんなに材料を並べても、今の自分の状態を否定することができない。あまつさえ、こんなことすら考えてしまう。
今こうして目の前で口篭り、押し黙ってしまった自分は、一体彼女の目にはどのように映っているのだろうと。
434マメシバと灰色猫:2009/02/11(水) 03:33:12 ID:XRp1SOao

「違います。嫌いなはず、ないじゃないですか」

 それは本当にさりげなく、別に何も難しいことはないという様相で投げかけられ、彼女の鼓膜を揺らした。
本当にいつもどおりの、真っ直ぐに澄んだその眼差しとともに。
 ―え?
 ペリーヌの肩からがくりと力が抜けた。嫌いじゃない、その言葉を反芻し、それを何度か繰り返しているうちに
ほっとしていることに気が付き、そうして彼女は、いつもの自分を取り戻していることに気が付いた。
先程まであんなに悩んでいたことが嘘みたいに。たった一言、彼女がそう口にしただけで。
「わたしはペリーヌさんと本当に仲良くしたいって思ってるんです。だから、誰かに言われてとか、そんなの嫌なんです」
 少しずつ、彼女の言葉がしみこんでくる。嫌いだからではなく、そうじゃないからただそれを純粋な目的として仲良くして欲しいと。
宮藤はそう自分に告げているのだ。
 思わず頷いてしまいそうになる。それでもペリーヌは、落ち着いて平静さを取り戻したが故に、
ついつい憎まれ口へとシフトしてしまう。
「何をおっしゃるのかと思えば…本当に子供ですのね」
「ど、どうしてですか!」
「人間関係とはつまり利用し、利用されるものですわ。誰しもが誰かを利用して、そして誰かに利用されている。その中で自分の
利益を確保していくことが、大人の付き合い方というものではありませんこと?」
「それは、確かにそうかもしれませんけど…」
「坂本少佐がそう望まれた、それだけで十分のはずです。あなたにとってもそのはずでは?」
「でも…嫌です」
 その問答を、きっぱりとそう切り捨てた彼女はやはり彼女らしく、まるで感動のようなものがペリーヌの胸に浮かぶ。けれども、
今はそれを表に出すわけには行かなかった。彼女には言いつけを守るという目的があったし、
何よりそれを素直に喜んでしまうことは癪だと言う気持ちがあったから。
 これは、意地っ張りといわれても仕方ありませんわね。内心そう自嘲する。
「またそんな子供みたいな…」
「それなら、わたしは子供でいいです」
 鼻で笑い飛ばしてしまえそうな返答。だけどもその瞳は真っ直ぐで、それでいて引っ込めそびれていた右手をぎゅっと掴まれた
ものだから、ペリーヌは一瞬返す言葉を失っていた。
「例えばです。坂本さんが、わたしにペリーヌさんと仲良くして欲しいと言われたからと言ってそうしてくれたとしたら、
ペリーヌさんは嬉しいですか?」
「な、なんて例えですの…!」
「どうなんですか?」
 抗議を、またもやあっさりと遮る真っ直ぐな声と眼差し。
 そんなもの、思い浮かべるまでもなかった。認められるはずがないのだ。恋慕というものはその想いが強ければ強いほど、
それに応じた正当な報酬として思われることを求めてしまうもの。そう、それは正当なものでなければならない。つまりは純粋に
その想いに応えたものであるべきで、それ以外の理由によって与えられるものであってはならない。それは間違いなく
自己中心的な思考だ。そう思いつつも、そう望んでしまうのもまた仕方がないことである。それほどまでに、その想いが強いと
いうことなのだから。だから、それは間違いなく望まれる状況ではない。
435マメシバと灰色猫:2009/02/11(水) 03:38:06 ID:XRp1SOao
 彼女が何を言いたいのか、考えるまでも無く導かれる。ただそれの、主述をすり替えただけなのだから。
 自分の少佐を慕っていることは彼女は知っている。その程度が尋常ではないことも、感づいているはずだ。その理解をもって
しても、宮藤芳佳は、自分がペリーヌ・クロステルマンのことを、少なくとも主観においてはそれと同等以上に想っていると宣言
しているのである。ペリーヌ自身のの少佐への想い、言葉で説明できないほど、それが野暮に思えてしまうほど高尚で純粋で
情熱に溢れたと自負しているこの想い―彼女もそれを持ち、そしてその対象を自分に向けているということを。
「いやですわ…ね。それは」
 ジーンとこみ上げてくるものを堪えるように、溢れ出させない様にペリーヌは言葉を紡いだ。
「あなたも、そうだと言うんですの?」
 それに、彼女は頷いてみせる。予想を確信に変えるその真っ直ぐな眼差しを持って。
 そう、彼女はずっと真っ直ぐだった。確かに彼女は戦争というものを良く理解していない。彼女がここに連れてこられた経緯と
それまでの境遇を考えるに、それは仕方のないことではあった。それでも、その在り様であるくせに部隊に解け込んで行き、
めきめきと頭角を表していく様は特に苛立たしさを持ってペリーヌの目には映っていた。何故ならそれは親族の仇を討ち祖国を
奪還する為に、必死に胸を張り続けていたペリーヌとはある意味正反対の姿だといえたのだから。
 だけども、彼女はずっと真っ直ぐだった。そして彼女の守りたいと思うその気持ちは、本物だといわざるを得なかった。
ペリーヌ自身、それは何度も痛いくらいに体感させられたものだったから。彼女の行動は全てそれに由来しており、
それ故に真っ直ぐ。
 それはとても純粋で、穢れなく―言うなればとても綺麗だ。彼女の言うことはほぼ全てが奇麗事ではあるのだが、それ故の、
そしてそれに相応しい輝きを確かに彼女は持っている。
 だからこそ、ペリーヌは宮藤と衝突していた。
 坂本のこともその理由としては多分にあったことは確かだ。けれどもそれだけならば、きっとペリーヌはそこまでの振る舞いは
しなかったのだろう。
 宮藤はそんな自分に真っ直ぐにぶつかってくれた。勿論ペリーヌも引くことは無い。正反対が故に真っ直ぐにぶつかり合い、
受け止めあう形になる。そう、考えてみれば、そんな形で接しあえる人物をペリーヌは持ち合わせていなかったのだ。
 故郷を焼かれ家族を失い、それでもペリーヌは毅然とした態度を崩さなかった。そこで今にも崩れ落ちそうな本心をさらけ出す
ことが、彼女にとっては何よりの敗北だったから。だから失われた祖国に恥じない自分を維持することが、何よりもその誇りを
守り続けるための手段となっていた。
 勿論それは常に無理をし続けていることになる。それすらも認めないこともそれには含まれているため、少なくとも表層意識と
しては彼女はそれを自覚から遠ざけていた。それでも、それは少しずつ、確実に彼女を蝕むものであり、言うなれば彼女の
坂本への妄執はその支えとするべく編み出した自衛手段ともいえたのだろう。だからこそ、坂本も彼女の想いを理解し、跳ね
除けることはしなかった。
 だから、彼女は結局本心で、自分のままでぶつかり合える相手がいなかった。常にそれを隠していたのだから、当たり前と
いえばそうなのだろう。
 強いていえば、ことあるごとに自分をからかってくる悪戯好きのスオムス空軍少尉とはそれに近しい関係になれたのかも
しれないが、彼女は既に大事な存在をその胸に抱えていたから、ペリーヌは必要以上に関わることをおそらくは無意識的に
避けていた。
436マメシバと灰色猫:2009/02/11(水) 03:39:05 ID:XRp1SOao
 そこに現れた宮藤は、彼女にとってそういう意味で、まさしく格好の相手だった。坂本を巡るライバルにして、戦場においては
甘いとしか言いようの無い理想―でも決して共感できないわけではない―を抱えて戦う扶桑の魔女。ぶつかってもぶつかっても、
それに負けない強さで返してくれる。
 気が付けば、それは彼女にとって坂本への想いと双璧をなすほどの支えになっていたのだ。こんなにも自分をさらけ出せる、
さらけ出させてくれる相手を、彼女は他に知らないのだから。
 そうだったのですね、とペリーヌは呟いた。勿論彼女はそこまでの自己分析ができているわけではない。彼女にとっては
あくまで坂本への想いは純粋で高尚なものであり、支えにしているという意識はない。けれども、ひとつだけ確実にいえることは、
目の前の彼女に向けてもおそらくは同等以上の想いを抱いているということ。それを自覚できたということだ。
 目の前で、へ?と首を傾げる彼女がいたが、今は置いておく。彼女に向ける眼差しに自動的にかけられてしまう色眼鏡は、
それは仕方のないむしろ正当なことだと胸を張れるけど、けれどもそれは彼女の輝きを打ち消すことなんてできない。
言い換えれば、彼女を眩しく思う自分を打ち消すことができないのだ。
 つまり自分はずっと、―そう思っていたということになる。
 溜息をつく。顔が自然に微笑の形を取っていくことを同時に感じる。
 ああまったく、と再び呟くと、え?と今度は反対側に彼女の首が傾げられる。それはおそらくは無作法と言うべきで、目上の人に
対し向けるべき振る舞いではない。だけれども、今はそれを咎める気にはならなかった。むしろ何処か愛らしいものとして、
それを認識している自分さえ存在していた。
「あなたは本当に未熟ですわね。見ているこちらが、はらはらしてしまいますわ」
 それでも憎まれ口から始めてしまうのは、そう簡単に変えられないみたいだとペリーヌは内心苦笑した。
 案の定、むっとした顔で何か言おうとした彼女に、曰く人生で何度かしか見せたことの無いとびっきりの笑顔を浮かべてみせた。
それを目にし、目の前の対象がかちりと音を立てて固まるのを確認してから、ペリーヌは言葉を続ける。
「だからこのわたくしが、あなたのお友達になって差し上げましょう」
 そして、未だその右手を握り続けていた彼女の右手に、ペリーヌはそっと左手を添えてみせた。精一杯の真摯さをその言葉と
行為に篭めて。目を大きく見開いてぽかーんと口を開いたままの彼女を見つめたまま。
「別にそんなに意外に思うことではありませんわ。ええ、わたくしも今気が付いたことですが」
 身を寄せあるような仕草でペリーヌは宮藤の手を引いた。呆然とした顔が視界をスライドして行き、真横辺りでぴたりと止まる。
丁度耳元に寄せられた形の唇。それはなんの躊躇いもなく、伝えるべき台詞を音にした。
「どうやらわたくしは、あなたのことが好きなようですから」
 そうすればきっと素直な彼女のこと、頬を真っ赤に染めるのだろうと、その一瞬後の未来を頭に浮かべ、ペリーヌはもう声を
殺すことなく、くすくすと笑うのだった。
 その頬こそが真っ赤に染まっていることすら気が付かず、そして一瞬後満面の笑顔で宮藤が返した言葉に、さらに赤く
染められることに気が付かないままに。

                                 -FIN-
437名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 03:47:03 ID:XRp1SOao
以上となります。
このカップリング少ないなと思って書き始めたのですが、書いている内に
意外とはまってしまったような気が。
また頑張れれば、続きを書ければいいなと思います。
438名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 04:13:02 ID:7Td3nsaO
なんなんだこの神作2連撃は!すばらしすぎる。

>>428
読んでいて激しく悶えました。ピロートークが素敵!
まったくホントにお姉ちゃんはだめだめだなあ(といいつつニヤニヤ)

>>437
芳佳って無邪気攻めっていうか、純粋攻め?みたいなとこがありますよね。
二人にはこうやって仲良く喧嘩しなみたいな関係でずっといてほしいなぁとか思います。
439名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 10:43:17 ID:BD8hZFdM
>>421
わたしはいまとてもニヨニヨしているので、近づくのは危険です。
本当にごちそうさまでした。エーゲル万歳!

>>429
二人が兄弟弟子というのは盲点でした。いや姉妹弟子と言うべきか?
ともかく二人の関係が広がっていきそうです。芳佳は芳佳らしく、ペリーヌもペリーヌらしく、
それでいて仲良くなれたのだから素晴らしい。GJ!
440名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 11:17:34 ID:Dz0wkI3o
>>428
うぐおー!!なんというヘタレお姉ちゃん、だがそれがいい!!GJ!!
一文一文読む度にあまりのアレに机ダンダンしちゃってなかなか読み進められないから困った。
やっぱ先生の書くトゥルーデは至高だわ。

>>437
芳ペリたまらん!やばい、こっちまで目覚めそうだ。GJ!!
ふと芳佳と付き合い始めたペリーヌが今更のようにもっさんに迫られて方程式みたいなことになる展開を想像してしまった。
441名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 14:52:25 ID:IKgClcuf
>>411
実はサーニャもエイラが大好きで、それを隠すために・・・みたいなんだったら萌え死ぬw。

>>428
やはりお姉ちゃんは凛々しいよりもヘタレが似合う。
お姉ちゃんは絶対受けキャラだよなw。

>>437
芳ペリって設定的には王道だけど、書く人少ないよなぁ。
ペリーヌスキーとしては貴重なペリーヌ分を補給できたぜ。
もっとペリーヌネタ増えて欲しいよ。
442名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 16:17:34 ID:FWWE9kkL
こんにちは
今月はイベントと誕生日ラッシュみたいなので早めに投下します
いらん子、ビューリングxウルスラで6レス
443アキストゼネコU−3 @:2009/02/11(水) 16:18:28 ID:FWWE9kkL
 トントントンと小さなノック音。
 几帳面に三回叩く来訪者に、そわそわとしていたエルマは飛び上がる。慌てて迎えに出ようとして蹴躓き、こじんまりしたテーブルに体当たりして派手にころんだ。ぶつけた箇所をさすりながらも気丈に立ち上がる。
「おっおまたせしましたウルスラ曹長、どうぞ中へ。寒かったですよね。紅茶でも飲みませんか?」
「…………」
 額を赤く腫らしたエルマを無言で見上げ、ウルスラはひょいと室内を覗き込む。紅茶のポットらしき物体がテーブル土俵際でぐらぐらしていた。
「どうしたんですか―――きゃああぁ初めて美味しく淹れれた奇跡のような一品がああぁ?!」
 ウルスラの視線を追いかけたエルマは、信じられない光景に息をのんで駆け出す。あれを失えば諸々の努力が全て水の泡。

バッシャーン!

「あっつうううっ?! わっ熱っちゃちゃちゃ」
 エルマは引っくり返ったポットの中身を手のひらに受けて大騒ぎ。おまけに振り払った飛沫が体中に飛んでしまい、熱さに床を転げまわる。
「…冷やすからじっとして」
「えっその水差しをどうするつもりですかウルスラ曹長まさかひィああああぁーっ?!」
 今度は真逆の冷たさに声を裏返すエルマ。頭から水を被せられてしまった彼女は無残な濡れ鼠となった。
 着替えて髪を拭いてからもブルブルしているエルマを見て、ウルスラは少し考える。
「……寒いの?」
「あっ当たり前ですよ。ふぁっ、へぇっくちょんっ」
 気の抜けるクシャミが放たれると、ウルスラは椅子から立ち上がってエルマの手を引いた。綺麗に整えられたベッドの前まで歩を進めてピタッと足を止める。
「どうかしま…へぇっくちょっ、したか?」
 ブランケットの中へ押し込まれたエルマは目をぱちくり。次いで隣に潜り込んできたウルスラに気づくと、声にならない叫びをあげて硬直した。
「…力を抜いて、エルマ中尉」
「わたっ私まだ心の準備があっ?! うふあっあっそんなところでモゾモゾされたら困りますっ」
 非協力的な言動に構わず、ころころと体勢を変えて上になったり下になったり。最適なポジショニングを探すウルスラ、それに翻弄されるエルマ。人間の体は凹凸があるので中々上手くフィットしない。
 地獄に落ちそうっ地獄に落ちそうっ地獄に落ちかけてますっと、ひたすら喚く声にウルスラは辟易する。残念ながら耳栓は手元にない。真っ赤な顔をしたエルマが気絶してしまうまで、耳元の騒音に耐え続けた。
444アキストゼネコU−3 A:2009/02/11(水) 16:19:19 ID:FWWE9kkL
 翌朝、詰め所のドアを開けて入ってきた二人連れ。
 ウルスラはいつもの如く気難しそうな顔をして窓際の席へつく。エルマは紅茶の葉が残り少ないと気づき、継ぎ足そうと屈みこんで物入れを探る。にやりと笑ったジュゼッピーナが足音を忍ばせて近寄り、エルマの首筋を覗き込んだ。
「エルマ中尉ぃ〜昨夜はと・て・も、お熱かったようで」
「ふえっ?! どうしてそれを知ってるんです?」
 手鏡を渡されたエルマは首元をうつして愕然。白すぎる肌に映える赤い斑点、熱湯が飛んだ部分にそれは鮮やかな色がついている。
 会話が聞こえたとたん飛んできたハルカは、尻尾をふりふり興味津々の体で問いかけた。
「エルマ中尉、それでそれで辿り着いた先はやっぱり地獄でしたか?」
「? あっあの一体何の話を―――はっ?! ち、違いますこれはそんないかがわしいものではなくて」
 認識のずれに遅まきながら気づき、エルマはこれ以上ないほど赤くなって否定する。しかし今さらそんな事を信じるわけもなく、二人は鼠を見つけた猫のように爛々と瞳を輝かせた。
「またまたぁ〜恥ずかしがっちゃって♪」
「良かったんですよね? ねっ?」
「だから何もなかったんです! それに私、途中で気を失ってしまって」
「「 気絶ぅ?! いやーん、それって天国へ直行〜〜〜っ!! 」」
 きゃあきゃあ騒ぐ二人、半泣きのエルマ。ズブズブと事態は底なし沼へ。
 階級下の者たちに弄ばれるエルマを遠目に眺め、オヘアは隣に座るウルスラに問いかけた。
「で、本当のところはどうねー?」
「……エルマ中尉が一人で騒いでいただけ」
 さっくり切り捨てたウルスラは、うっすらと隈の浮いた目で窓の外を眺めている。オヘアは何を見ているのか興味を抱き、腰を浮かせて視線の先を追った。
 中隊敷地の入り口付近で何やら話し込む二つの影。大型のバイクに跨った方が片手を上げたのを合図に、重厚なエンジンの咆哮があがる。
「ンーフゥ? あれってビューリングとトモコねー」
「出かけるって言ってた」
「町にですかー?」
「知らない。聞いて…ない」
 微妙な間があった。離れていくバイクを見つめるウルスラの目は、どこか沈んでいる。
 オヘアは首を傾げてその様子を見やり、一向に躊躇わず口を開いた。
「ビューリングには関係ない、そう言ってしまったから聞けなかったですかー?」
「…………」
 意外と心の機微に聡いオヘアが核心をつく。何も言えなくて、ウルスラは小さく唇を噛んだ。
「ミーが思うにあの女は結構タフねー。ユーはもっと我がままになればいいよー」
 黙りこむウルスラに手を伸ばし、オヘアは髪をくしゃくしゃ。嫌がって逃げないのは望まれているからだと、そう勝手に解釈して。
 ウルスラは纏まらない思考と髪を諦め、もやもやする何かを抱えて溜め息ついた。
445アキストゼネコU−3 B:2009/02/11(水) 16:20:00 ID:FWWE9kkL
「もうっ、あいつったら捻くれてるんだから! 人がわざわざ見送りに出てあげたのにっ」
 ぷんすかと怒気を発して入室してきた隊長が空いた椅子にどっかり。こういう時は理不尽な事を言い出す可能性が高いので、誰もあまり干渉したがらない。しかし興味が勝ったハルカが地雷原に突入していく。
「わかってますよ智子中尉ぃ。ライオンには守衛が似合いだな、とか言われたんでしょう? ほんと失礼な輩げふぅっ」
「……あんた後で鉄拳制裁だからね。お前も暇なやつだなって言われたの」
 すでに与えた一発は勘定に入っていないらしい。膝をついて屑折れるハルカを放置し、機嫌の悪い智子は頬杖をついて唇を尖らせた。
「い〜ただきっ、チュッ! ねえトモコ中尉、ビューリング少尉はどこに行かれたんですかぁ?」
「へ? ああ、そういえば聞くのを忘れ―――にょわああぁっあんた、さりげに何してくれてんのよぉー?!」
「何ってキスですよ、キス。朝のご・あ・い・さ・つ♪」
 ごく自然に唇を奪うあたりさすがロマーニャ娘である。むっつりしていた智子は一瞬であわあわと動揺し、膝の上にのってきたジュゼッピーナに思わず腕を回した。
「ナニをしとるか貴様…」
「ひィっ?!」
 幽鬼のように背後に立つハルカ、ビクンと振り返って蒼ざめる智子、着衣を脱がし出すジュゼッピーナ。中隊においての日常となった姦し騒ぎがスタートした。
「トモコも行き先知らずですかー。これはもしかして誰かと逢引かねー」
「は? ど、どどどうしてそうなるんですキャサリン少尉。単にバイクに乗って出ていっただけですよ?」
 これ幸いと負の連鎖から抜け出してきたエルマは、オヘアの呟きに待ったをかける。逢引とは穏やかじゃない。ウィッチ隊に従事する以上、シールドを張れなくなる年齢まで色恋沙汰はタブーである。隊内でほにゃららするのはぎりぎりセーフ。
「町のパブだったら勤務後でも十分ねー。ビューリングなら門限破りもお手の物よー」
「まっまあ確かに休暇をとってまで朝から出て行くのは珍しくはありますけど。それにしても」
 話が飛躍しすぎでしょうと。手をパタパタさせるエルマの正面で、窓の外を眺めていた少女がぼそり。
「ブラフシューベリアの最新式。あれはビューリングのバイクじゃない」
「ホホーゥ、さすがウルスラねー。ミーはどれも同じに見えるよー」
「そうすると基地所有のものですよね。それを借りてまで出かけるということは」
 額に汗がたらり、ウルスラを前にしてその先は言えない。エルマはうっかり開きかけたオヘアの口を塞ぎ、曖昧に笑った。
446アキストゼネコU−3 C:2009/02/11(水) 16:20:49 ID:FWWE9kkL
 スオムスは大陸中から物資が集まってくるため貨物機の往来は盛んである。職員に尋ねたところブリタニアの飛行船はまだ着いていないという。待ち合いで一人座っていると商人たちの好奇の目が集まり、鬱陶しさを感じたビューリングは屋外へ出た。
「風がなければマシなんだが…」
 寒さに首をすくめつつもタバコをぷかぷか。誰に気兼ねする必要のない喫煙は久しぶりだと考えかけて、もう気を遣う相手もいないんだったと苦笑う。
「町に寄ってもこの時間か。性能は認めるが待ち時間がつらいな」
 乗ってきたバイクを前に一人ごちる。最新式との太鼓判どおり加速が桁違い、それ故に早く着きすぎてしまった。
 足元の吸殻がどんどん増えていく。ウィルマが来るまでタバコがもつだろうかと心配になった時、革ジャンパーの内ポケットから甲高いコール音。瞬時にインカムを取り出して装着する。
「ビューリングだ」
『あ、あああのエルマですっ。えっと、えっとですね、まままことに申し訳ないのですがああぁ基地に戻っていただけだけ」
「警報か?」
 ビューリングは硬い声で短く問う。相手は気弱で動転しやすく、簡潔にいかないと要領を得ない。
『いっいえ違います。ブリタニアからのお客様がこちらに着かれてまして』
「なんだとっ! どういう事だ、エルマ中尉っ!!」
 ハウリングを起こすほどの勢いでビューリングは怒鳴りつけた。インカムの向こうでは「ひぃっ?!」と息を呑む声。
『そっそれが軍用機で直接基地に送ってもらったらしく。連絡が遅れたとか不運が重なったみたいで』
「何が不運だ、人災だろっ! 飛行場くんだりまで迎えにきた私は阿呆か?! ピエロかっ?!」
『そっそれは私に言われても』
 声を荒げてインカムに吼えまくっても、相手は縮み上がるばかり。
「なら、あいつを…ウィルマを出せ! 今すぐに!!」
『むっ無茶言わないでくださいぃ〜今はハッキネン少佐とお話中なんですぅ』
「そんなの知らん! どうにかしろっ!!」
『きゃああ怒らないでくださあぁい……ひっく…ぐすっ…うえ〜ん』
 とうとうエルマが泣き出す。
 響いてくる嗚咽になんともいえない気まずさを感じ、ビューリングは後ろ頭をがりがり。冷静になってみればエルマに何一つ非はない。
「今から基地に戻る…………怒鳴って悪かった」
 小さく付け加えてすぐさまインカムをオフにする。慣れない言葉を口にすると調子が狂う。
 一つ咳払いを落としてゴーグルを着け、ブラフシューベリアに跨る。勢いよくキックしアクセルターン、来た道の逆走を開始した。
447アキストゼネコU−3 D:2009/02/11(水) 16:21:38 ID:FWWE9kkL
「ものすごい剣幕だったねー。エルマ中尉も災難よー」
「でもでも、あれで正解だったですよ。素晴らしい泣き落としでした」
 エルマの左右に陣取るオヘアとハルカが健闘を称える。ビューリングの怒声はインカムをつけてなくとも洩れ聞こえたほど。
 ハッキネンからのメッセージを誰が伝えるかで一悶着、その場の多数決によって見事エルマに決定した。誰だって避雷針にはなりたくない。
「ねえエルマ中尉、結局どうなったんですかぁ? 最後が聞こえなかったんですけどぉ……もしも〜し?」
「一生分の勇気を使い果たしたんだから無理ないねー」
 顔の前で手をひらひらするジュゼッピーナ。それを目にして、まるっきり無反応なエルマを哀れに思ったオヘアが擁護する。
 そうこうしているうちに正気づいたのか、エルマは意外にもしゃっきりした声を出した。
「あ、あのすみません……大丈夫、です。今から基地に戻ると…言ってらっしゃいました」
「どうされたんですかエルマ中尉、顔が赤いですけど?」
「ふぇ?! そ、そんなことは…私は生誕から15年、いつだって普段どおりのエルマですよ」
「えーあやし〜い。なにか隠してませんかぁ?」
 こういった事には嗅覚の鋭いハルカとジュゼッピーナに群がられ格好の餌食。あたふたするエルマを置き去り、オヘアは窓際で本を開くウルスラの隣へ腰を下ろす。
「ウィルマさんって誰かねー、ウルスラ?」
「知らない」
 そっけなく答えるウルスラ。その眉間がいつもより狭くなっているのを見て取り、オヘアは手に持ったコーラをごくごく。一気に飲みきってしまうと、プハッと豪快に二酸化炭素をはいた。
「ミーはとても気になるよー。ウルスラ、ユーはどうね?」
「…どうでも」
「ああもうっ一体全体何を話してるのかしら! ハッキネン司令と部屋に篭ったまま出てこないわ、あのブリタニアの子」
 微妙な間をおいて発せられたウルスラの言葉が、乱暴にドアを開けて入ってきた人物の大声にかき消される。イライラして歩むその足元で古びた床が悲鳴をあげた。
「あっ、智子中尉お帰りなさい。ビューリング少尉への連絡は滞りなく済ませました」
「トモコ中尉、重要情報ゲットです。あの子、名前はウィルマっていうらしいですよ」
 ポイントを稼いでライバルを出し抜こうとするハルカとジュゼッピーナ。横で聞いてただけのくせに、まるで自分の功績かのように報告するあたり似た者同士である。
 甲斐甲斐しく引かれた椅子に座り、難しい顔をした智子は顎をつまむ。
「ブリタニアのウィルマね。むうぅ…あのビューリングが迎えにいくほどの気安い仲か」
「あれは絶対昔の女よ。面白くなってきたわっ―――おほっほーほっほほほっ!!」

 !!!!!!

 突如割り込んできた声に皆びっくり。
 真後ろで高笑いを上げられた智子は椅子から転げ落ちる。

「ア、アホネン大尉?! また勝手にうちの隊舎に入ってきて」
「あら遠慮は無用よ、トモコさん。あなたたちみたいなヒヨっ子には手にあまる事態でしょう」
「ぬぁ、ぬあんですってえぇーーっ!!」
「さあさあ会議をはじめるわ。二人の過去に興味あるならこっちへお集まりなさ〜い」
 瞬間湯沸かし器のごとく怒り狂う智子を完全に無視し、ずかずかと歩を進めたアホネンはテーブルやソファを勝手に動かす。ついで手近にいたハルカとジュゼッピーナを捕まえ、有無を言わさず自分の両隣に座らせた。
「私が想像するに、二人は幼馴染じゃないかしら。離れてみてその存在の大きさに気づく、そして愛を取り戻すために闘いはじめるの」
 一見して真面目に語るアホネン。しかし水面下でもぞもぞする左右の手は、抱え込んだお気に入りのスカート内で複雑にうごめいている。
「あんっやめてください大尉…智子中尉の目の前でこんな」
「おねえさまってお呼びなさい、ハルカさん。ふふっ、こっちの新入りの子もなかなかね」
「あっ、ああっ、あ〜ん凄おぉい♪ ねえトモコ中尉もはやくきてぇ〜ん」
「あんたたち、今は間違いなく勤務時間だからっ! 私たちみんな軍人だからっ! 会議するんでしょ?! ってこら、何おっぱじめてんのよーーーっ!」
 真っ赤な顔をした智子が怒声を飛ばしてテーブルをばんばん叩く。
「トモコが言っても説得力がないねー」
「それでいったい何の会議なんでしょうか」
 テーブルの向かいに座ったオヘアとエルマは顔を見合わせて溜め息。ぐだぐだになっていく一帯が激しくせつなかった。
448アキストゼネコU−3 E:2009/02/11(水) 16:22:19 ID:FWWE9kkL
 騒々しい詰め所を離れ、ウルスラは一人廊下を歩む。いつでも本が読めると聞いてスオムスへやってきたのに現実はそう甘くない。廊下の突き当たりまできて足を止め、行き先を検討する。とはいっても自室か外かしか選択肢がないのだが。
「…今日は風が強い」
 ガタガタする嵌め込み窓を見て心を決める。どうせ今日から自室に戻るのだから、その予定が少し早まっただけだ。
 分岐を進みかけたウルスラは、近くの階段を上がってくる足音に動きを止めた。
「ウルスラ曹長、トモコ中尉はお手すきでしょうか?」
「アホネン大尉と会議中です」
 温度のない声で尋ねてくるハッキネンに、抑揚のない声で答えるウルスラ。そして、その他にもう一人。
 アッシュブロンドの長髪をなびかせた少女は、お手本のような敬礼をして名乗りをあげる。
「ファラウェイランド空軍所属、ウィルマ・ビショップ軍曹です!」
「…北欧スオムス義勇独立飛行中隊、ウルスラ・ハルトマン曹長です」
 原隊を名乗るべきか一瞬だけ考え、結局ウルスラは今現在の所属部隊を是とした。返礼は勿論カールスラント式である。
「ビショップ軍曹が基地のストライカーを見学したいそうで。トモコ中尉が会議中なら、あなたに案内をお願いします」
「……了解しました」
「頼みましたよ。それでは私はこれで」
 基地司令直々にお願いされては仕方ない。読書願望が後回しになることにウルスラは内心溜め息をついた。
 来客の相手をていよく押し付けたハッキネンが去ると、後には微妙な沈黙が横たわる。ウルスラは口数の多い方ではない。そしてウィルマはウィルマで、階級上の相手に自分から言葉を発するのは不躾だと指示を待っている。
「…案内します。ついてきてください」
「承知しました曹長殿!」
「普通に話して。敬礼もいらない」
 連邦国らしくブリタニア式と似通った敬礼に胸がちくり。ウルスラ自身が認識するまもなく出た言葉は、普段どおりの無愛想なもの。
 ウィルマは唐突な申し出にも狼狽せず、いたって柔軟に対応する。おそらくは大分年下だろうウルスラに故郷の妹たちの姿を重ね、温かみのある笑顔を浮かべた。
「わかったわ。案内よろしくね、小っちゃな曹長さん」
「小さいは余計…ウルスラでいい」
「それじゃあ私もウィルマって呼んでね」
 ウルスラ相手にそつなく会話するウィルマ。大家族に囲まれて育ち、長女として7人もいる妹の面倒をみてきたのだから道理である。特に反応を返さないウルスラの背中について歩き出し、話し好きな側面をいかんなく発揮しだした。
449名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 16:23:13 ID:FWWE9kkL
以上です
やっとウィルマが出せた...そしてどんどん長くなっていく
続きは誕生日ラッシュが終わったくらいをメドに出せたらいいなと
それじゃ空気読まずにすみませんでしたー
450名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 16:27:01 ID:Dz0wkI3o
>>449
長くなってもいいじゃないか、GJ!!アホネン×ジュゼの発想はなかった。
しかし必死なビューリングさんは何と言うか、実にときめきがあるよね。
451名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 16:47:32 ID:9BMeDrCL
バレンタインはきっとすごい勢いで投下が続くよねぇ。
温めてるものがあるけど、いっそ前日とかに投下するほうがいいのかな。
このまま行くと次スレがバレンタインSSで埋め尽くされそうな予感w
452名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 17:18:09 ID:v7fLq8EQ
>>449
お、続ききた!GJ!
細かい描写にもいらん子らしさがでてて素晴らしい。ウィルマさんいいなあ
続き踊りながら待ってる!
453名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 17:44:22 ID:ZjmxcI9s
>>449
キッター
相変わらず読ませてくれますなあ……
ピエロなビューリングフイタ
そしてウーシュとウィルマという珍しい組み合わせにwktkが止まらない
454名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 17:51:28 ID:hRhsmghU
いらん子って2ch住人が勝手に命名したものだと思ってたら公式だった…
455名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 19:59:05 ID:a7RxKK15
フミカネ絵のエイラのとこにあるwin!ってどういう意味だろ
456名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 20:29:15 ID:4/BhRxPU
>>415
まだ詳しい情報はないから主人公選択システムの可能性はある
457名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 20:40:15 ID:GKwiTaP2
501の奥様方による会議風景なるものを書いたのですが、百合はあまり無いです。すみません。
ただ会話してるだけですが投下。4レスです。
458名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 20:41:19 ID:GKwiTaP2
「それでは、第1回ラヴ対策会議を開催します。議長はこの私、サーニャが勤めさせてもらいます。異議はありますか?」

「ないでーす」

「まずそれぞれお名前と目標の人をお聞かせください。ではそちらの方から」

「えっと、リネット・ビショップです。相手は芳佳ちゃんなんですが、なんというか浮気症で…」
「ペリーヌ・クロステルマンですわ。わたくし、実は…坂本少佐をお慕いしていますの…。でもあのお方は訓練ばかりなさっていて…」
「ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケです。私は美緒の妻です。でも最近あまり夜の相手してくれなくて…」

「議長ー。ペリーヌが倒れましたー」
「すぐ戻ると思います。次の方」

「んー。エーリカ・ハルトマンです。トゥルーデはエイラに匹敵するほどのヘタレだからね。ちょっといじめてみたいかな」
「うじゅ?あたしの番?フランチェスカ・ルッキーニ!あたしはー、シャーリーともっと遊びたいの!」
「最後に私、サーニャ・リトヴャクです。言わずと知れたヘタレの中のヘタレ、エイラをどうにかしたいと思っています」

「これで全員ですね。ではこれから対策を議論していきましょう」

459名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 20:42:22 ID:GKwiTaP2
「議題は『愛しのあの娘を振り向かせるにはどうすればよいか』です。意見のある方」

「はーい」
「ハルトマンさん」
「せくしーぽーずをすれば良いと思いまーす」
「理由と予想される効果をお願いします」
「私の場合なんだけど、トゥルーデにしたらあたふたしてかまってくれたよ。とりあえず目線はこっちに釘付けだね」

「意見や質問はありますか?」
「はい」
「ペリーヌさん」
「あの…その、む、胸…とか、体に自信のない人はどうすればよろしいのでしょうか…?」
「あなたの場合ライバルが私ってことを忘れちゃダメ。諦めて頂戴ね、ペリーヌさん?」

「議長ー。ペリーヌが」
「大丈夫でしょう。他になにかありますか?」

「はーい!」
「ルッキーニちゃん」
「えっとー、シャーリーのがおっきいんだけど大丈夫かなー?」
「ハルトマンさん、どう思いますか?」
「大丈夫大丈夫。シャーリーだったらイチコロだね。血が騒ぐんじゃないかな?」
「そーなの?じゃあやってみるー!」

「他にありますか?」
「……」

「では、この『せくしーぽーず』作戦に賛成の方挙手を」

「賛成5、反対1となりました。なので各自作戦を行い、結果をまとめてください」

460名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 20:43:09 ID:GKwiTaP2
「では他の意見のある方」

「は、はい」
「リーネさん」
「え、えっと…、意見じゃなくて質問なんですがいいですか…?」
「いいでしょう」
「相手が他の人の…あの、おっぱいを…触るのはどうすればよいですか?」

「誰か意見はありますか?」

「あなたがどんどん豆狸に胸を押し付けていけばいいんですわ!わたくしなんか…わたくしなんか…。うっうっ…」

「議長ー」
「ほっときましょう。他に」

「はいはーい!」
「ルッキーニちゃん」
「シャーリーのおっぱいを芳佳が近づけないようにあたしが守ればいいんでしょー?」
「……。芳佳ちゃんと一緒にうちのエイラも妨害リストに加えてもらえますか?」
「うんいいよー!まっかせなさーい!」
「ありがとう…。リーネさんもそれでいいですか?」
「は、はい。あと…バルクホルン大尉を…」
「じゃあそれは私がやっとくよ。保証はできないけどね。宮藤相手だと逆にトゥルーデが止まらないかもしれないし」
「あ、ありがとうございます!」

「ではリーネさん、これでいいですか?」
「はい!大丈夫です」

461名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 20:44:16 ID:GKwiTaP2
「そろそろ時間です。最後になにか言っておきたいことはありますか?」

「……」

「無いようなので私から。リーネさん」
「はっはい!」
「あの、芳佳ちゃんと同じでエイラもおっぱい大好きです。なのでどうにかしてあなたの胸をガードできませんか?」
「え?えーっと……、むり…だなぁ…」

「議長ー落ち着いてー」

「だって…だって……ぐすっ」
「サーニャさん…触るなって言ってもだめだったの?」
「はい、その場だけでした…」
「サーニャさんはどうしたいのかしら?」
「私だけを触ってほしいです…」

「うーん……。無理…ねぇ」
「無理だなぁ」
「ムリだにゃ!」
「むりでしょうねぇ」
「できるわけありませんでしょ」

「うぼあー!」


END

462名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 20:45:17 ID:GKwiTaP2
まずはゴメンペリーヌ。
改めましてこんばんは。LWqeWTRGです。
国会見たらいつの間にかこんなのが…。
しかも本当に喋ってるだけっていう…。
毎度変なやつですみませんw

501の旦那様方は揃いも揃ってどっか抜けてたりするのでこういう対策会議もありかなー、と思いました。

タイトルは「501会議室」で。
あと、せくしーぽーずの効果のほどは妄想をお願いしますw
それでは失礼いたします。

463名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 21:36:15 ID:LBmv8WcO
>>428
ペロッ…この味は、マダオ!
相変わらずひらがな使いが巧み過ぎです。文章が柔らかいなあ。あとエーリカが可愛すぎます
そんな可愛いエーリカにおねだりさせるとかお姉ちゃんの変態!ムッツリ!剣柏葉付騎士鉄十字章!

>>437
相変わらずここの百合スレイターは初投稿のレベルを凌駕しすぎやで…
二人らしい会話とそれを繋ぐ心理の流れの描写に感心する事頻りです
芳ペリは自分も好きなのでまた読みたいです

>>449
>>449氏はヤマグチノボル氏本人だったんだよ!な、なんだっ(ry
ってぐらい話と文の上手さに毎度戦慄してるんですけど…なんでそんなにパーフェクトにいらん子を書けるのん…
毎回必ず笑えるシーンを入れてくるのがマジで凄いです。ビューリングの素直じゃないデレにも悶えれるし
今回はさりげにエルマさんが被弾してましたね。ウィルマお姉ちゃんが出てきたので次回もさらに楽しみにしてます

>>462
        ☆ チン  〃  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          ヽ ___\(\・∀・)< 旦那様ラヴ対策会議マダー?
             \_/⊂ ⊂_)_ \_______
           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
        |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:| :|

その面子の中ではエーリカが一番状況がマシな気がする!ふしぎ!

ところでSS投下したいんですが連投規制に引っかかりそうなのでどなたかおりましたら
支援して頂けないでしょうか
464名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 21:41:00 ID:g/TPgnaV
わったしーにーでーきることー
ひとーつずーつー支援したーい
465名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 21:43:13 ID:GqJZCV8i
>>462
ワロタw GJ! なんか目に見えるw
ミーナ中佐大人げなさ杉w

>>463
わたくしでよろしければ支援いたしましてよ?
466名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 21:43:39 ID:Dz0wkI3o
ここの規制は時間制だから支援しても意味ないんじゃなかった?
一応やってみるよ

>>462
旦那様ラヴ対策会議マダー?(AAry
こういうの好きだぜ、謝るこたあない。GJ!!
467iTl0PYxu:2009/02/11(水) 21:50:08 ID:LBmv8WcO
>>464-466
ありがとうございます。
お礼にいつぞやのシーツの正しい使い方第二弾として作ったけど途中で飽きたエイラーニャ画像をお楽しみ下さい
エイラさんって優しいんだね!
ttp://hirame.vip2ch.com/up/hirame021837.jpg

そんなわけで好きなネタを詰め込みすぎた感の有るエイロットSS、よろしければ8レスほどお付き合い下さい
468アンダークラス・ヒーローズ 1/8:2009/02/11(水) 21:51:22 ID:LBmv8WcO
夢を追わなくなったらオシマイだ。
誰よりも何よりも速く、速く、速く。それだけが私のシンプルな原動力。
そう、誰よりも速く飛んだら。その夢の先には。
その時私の隣には、きっと誰の姿も無いに違いない。




「アンダークラス・ヒーローズ」




「軍務を放り出してストライカーいじりとは、良いご身分だなリベリアン」

薄暗い格納庫内、普段はシャーリーご自慢のマーリンエンジンの嘶きに震えるその場所に、良く通るが険のある声音を
低く響かせたのはバルクホルンだった。整備長への連絡事項を記した書類を手に、ストライカーの前に屈むシャーリーを
見下ろす眼差しは、敵意こそ見られないものの好意的とはとても言い難い。
彼女を良く知らぬ者が受ければ怯まずにはいられない眼光を向けられている当のシャーリーはといえば、まず首にかかった
タオルで額の汗を一拭い。それからふっと笑ってゆったりと余裕たっぷりに振り返ると、

「今日は非番じゃないか。それにストライカーは軍人の命、だろ?嫌味よりはお褒めの言葉を頂きたいもんだね」
「ああ、その軍人の命を空中爆散させるような馬鹿でなければ頭を撫でてやりたいぐらいだよ
 趣味にかまけてばかりでなくもう少し部隊の中核を担う立場であるという事を考えたらどうだ、イェーガー大尉」
「そうだな、あんたに頭を撫でられるってのも悪い話じゃないかもね。妹扱いは勘弁だけど」
「〜っ!誰がするかっ!」

弾かれたようにがなるバルクホルンの右手のあたりで立ったぐしゃ、と紙が握り潰されたような音は気にも留めず、
シャーリーは再び彼女の相棒P-51Dマスタングへと向き直る。先週儚くもドーバーの藻屑と消えた翼部パーツは新調され、
光の落ちた格納庫内で真新しい輝きを放っていた。エンジンの試運転と出力のテスト、魔力のマッピングを終えたら休日を
返上してすぐにでも試験飛行をするつもりだったのだ。
既に頭の中をスピードテストのプランで塗り替えてしまったシャーリーに向けて、何か言葉をぶつけてやろうとバルクホルンは
口を開きかける。が、シャーリーの瞳にはもうマーリンエンジンの厳つい動力パイプしか映っていない事を見て取ると、
はあとため息を吐いて踵を返した。

「全く、エーリカといい、あいつといい、もう少し軍人らしくしたらどうなんだ」

絞り出すような愚痴をコンクリートの床に吐き捨てて、バルクホルンは通路へ消えていく。

「…軍人らしく、ね」

背中越しに拾い上げた言葉を反芻すると、シャーリーは僅かに自嘲気味に口の端を上げた。
469名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 21:55:39 ID:XhF2veUF
>>463
9レスしたら「支援」って打てばいいのかな
なら了解ー

今日も豊作だなあ…!
>>428
エーゲルGJGJGJ!!
押し倒されたいフラウ可愛いよフラウ!!
ヘタレ好きの自分にとって見たら
あなたのかかれるエーゲルは本当に最高だ もちろんシャーゲルも最高だ!
>>437
百合スレは職人ホイホイとしかいいようがない…
いったいどれだけのROMがいるのか、その中にどれだけの職人が隠れてるのか未知数だぜ…
芳ペリよかったです、GJ!
>>449
ウィルマさん参戦キター!いらん子がすごいいらん子してるぜ…
そしてちゃっかりエルマさん撃墜(未遂)してるウルスラに吹いたwウルスラはホントに天然ジゴロやで…
>>462
旦那様ラヴ対策会議まだー?(AAry
470アンダークラス・ヒーローズ 2/8:2009/02/11(水) 21:57:48 ID:T0/6llCT
ドーバーを臨む位置にあるウィッチーズ基地敷地内ではどこにいても、少し遠くに目をやれば蒼く広がる海原を一望する事が
容易に出来る。シャーリーがふらりとやってきた宿舎から少し外れた崖の上は、その中でも眺めの良い特等席の一つだった。
彼女の澄んだ碧眼に、雲一つ無いブリタニアの空色と深く色濃いドーバーのマリンブルーが水平線で交わっている。
ただほんの少しその豊かな蒼色の彩度が低いのは、彼女の瞳のレンズ自体が僅かな曇りを孕んでいるが故に他ならない。

(軍人らしく、ね)

心中でもう一度呟いた言葉そのものが、いつも夢の先へと向けられている彼女の眼差しを濁らせたわけではない。

(まー立場上は大尉だけどさ。戦闘や補佐だってなんだってミーナ中佐のためならやるけど)

吹き抜けた風は心地よい。顔にかかった少し癖のある髪を払って空を仰ぐと、南に高く昇った陽の光が彼女の網膜を灼いた。
熱を持った黄色の眩しさに、陰った瞳を閉じる。

(あいつみたいに心まで軍人には、なりきれないよ)

光が焼き付いた明るい暗闇の中から沸いてきたのはほんの少し昔、このウィッチーズ基地に配属される前の記憶だった。
否、配属というよりは厄介払いに近い。
ネウロイを倒す事より、祖国を守る事より、世界の平和を望む事よりも。
世界で最も速く、地を、空を駆ける事を夢見て日々ストライカーの改造に傾倒する彼女にリベリオン陸軍上層部は鼻をつまんで
眉をしかめた。最速のレーサーという異色の経緯で入ってきた彼女は魔女としての才にも恵まれていたが、夢追い人の気質は
根っから軍人の将校連中の不興を買い。また生来の社交性とレースで培った整備スタッフへの信頼から、戦闘機のパイロットや
ウィッチからグリースモンキーと蔑まれた整備兵とも分け隔て無く接するその態度も彼女を孤立させる原因の一つとなった。
最も、彼女を信頼し敬愛する人間はそれよりずっと多かったのだけれど。
そんな理由が重なって統合航空団の話が持ち上がった際、軍部はこれ幸いと彼女を追い出したのである。
欧州の列強諸国を滅ぼし海峡を容易く越えるサイズのネウロイが攻勢を仕掛ける、ヨーロッパ最後の砦へと。

(別に構わないけどね。なんと言われようとさ)

幼い頃から奇異の目を向けられるのは慣れている。ウェストバージニアはマイラの貧しい家に生まれた彼女が身を立てるのに
選んだ手段は、ウィッチとして国から手厚い保障を受ける事ではなく、街頭テレビで見た魔道エンジン二輪車のレースだった。
一瞬で彼女の心を捉えたその映像はスピードへの憧れを根付かせるのに十分であり、街の外れのあばら屋のようなモーター
サイクルショップで稼いだ給金を細々と貯めて初めて買ったバイク「レッドマン・スカウト」のアクセルを回した瞬間、彼女の
人生は決定づけられたと言って良い。
そして、かつて世界最速の軌跡を刻んだポンネビル・ソルト・フラッツの純白の大平原は滑走路となり、彼女の夢を空へと
羽ばたかせた。

(ま、結局ベストな判断だったわけだし)

非公式とはいえ一度は夢の扉を開ける事は出来たのだ。後悔などしようはずもない。
ただ、夢だけで出来た自分の翼は、この基地の仲間や他の魔女達よりずっと軽いのだろうと思うだけで。
471アンダークラス・ヒーローズ 4/8:2009/02/11(水) 21:59:08 ID:T0/6llCT
「シャーリー」

気怠げなその声にはっと目を開く。右手に植わった木の陰から端正な顔を覗かせているのはエイラだった。
昼間、陽の光が世界を照らしている間の彼女は随分幼い印象を受ける。隠れんぼをしてる最中の子供か物音に興をそそられて
巣から顔を出した子狐のようなその仕草からは、銀の輝きを闇に振り撒いて夜空を舞っている時のどこか神秘的な雰囲気を
思い出す事も難しい。

「よっ。珍しいなこんな所で。サーニャはどうした?」
「寝てるよ。それに珍しいのはそっちだろ。こんなトコでぼーっとして」

無防備な部分を見られた気恥ずかしさから、エイラの心の大部分を占める少女の話に水を向けてみるも、今はシャーリーに
対する興味が勝っているようだった。
ぼんやりしているようで妙に敏いエイラはこういう時少々、面倒臭い。

「んーちょっと気分転換だよ。良い天気だからな、今日は」
「ふーん。よっぽど嫌な事があったんだな」

何気ないようでやはり的確な洞察に内心舌打ちをする。しかしシャーリーは得意の愛想笑いでそんな事はおくびにも出さず、

「ストライカーをね、海にぶちこんじまったろ。早く飛びたいのに代替部品が届かなくて苛ついてたのさ」

いやあ参ったね、あっははは。腰に手を当てるお馴染みのポーズで上げた笑い声は空に抜けて消える。
エイラはといえば、空々しい脳天気な哄笑を聞いているのかいないのか、木にもたれて深い紫紺の視線をぼんやりと水平線に
向けていた。薄く重ねたアメジストのような瞳を惹きつけているのは、夏の太陽が所々黄金の破片を落としては白く起つ波頭に
散らされていく水平の果てまで変わり映えのない海の営みなのか、それとも未来予知の力を持つ彼女にしか見えない全く別の光景
なのかシャーリーにはまるで見当がつかない。つかない事が、細波のように焦燥を掻き立てる。

「お前こそ何してるんだ?」
「風、見てた」
「風?」

明快だが突拍子も無い答えに片眉をつり上げたシャーリーに、エイラは然りとばかりに頷いた。自分の返した言葉がシャーリーの
顔に疑問の色を浮かべさせている事については微塵も興味がないらしい。

「今日は雨かもしれないからな。サーニャは一人で雨の空を飛ぶの、嫌いなんだ」
「…天気の予知が出来るのか?」
「ムリダナ。でも風と空を見れば、天気が悪くなるかどうかぐらいは分かるんだ。
 スオムスじゃ悪天候で飛べなくなる事が良くあったから」
「ああ…なるほどね」

そこまで補足されてようやくシャーリーは得心した。エイラが常人には分かり難いテンポで会話を進める事は珍しくない。察しの
良いシャーリーですらしばしば戸惑いを覚えるのだ。馴染みの薄い人間がエイラを不思議ちゃんと評するのも仕方がないと言える。
かといってエイラが口下手とかまるで場にそぐわない見当違いの妄言を吐くような人間かと言えばそれは全くの間違いであり、
むしろ彼女の物言いは、例えて言うなら複雑な式をさっぱり省いて正答だけを書き込んだ難解な数学の試験用紙のようなもので、
一見しただけでは何が何だか分からないその答えも彼女の中で理に適っていると判断された上で導き出されているのだった。
まあ彼女の場合、相手の驚いた顔を見んがためにわざと含みのある言い回しをする事も多いのだが。

(結局はサーニャのためなんだよな、コイツは)

そう、エイラの言動は最終的には“サーニャのため”に帰結するのだ。それを考えれば突拍子もない言葉や不可解な行動に悩む
必要はない。偶然と称してシフトをずらすのも、外に出て今夜の天気の確認をするのも。
そして恐らくは、ネウロイと戦う理由そのものも、詰まる所。
472アンダークラス・ヒーローズ 真4/8:2009/02/11(水) 22:00:40 ID:T0/6llCT
「なんだよ、急に黙るなよ」
「ん?あーごめんごめん。…お前ってほんっとサーニャバカだなと思ってさ」
「なっ、ば、そ、そんなんじゃねーよ!いきなりなんだよ!」
「怒るなって。冗談だよ」

どうどうと宥めながらシャーリーが浮かべている笑みは、先刻のバルクホルンと全く同様の反応を得られた事への満足感から
だった。あの堅物の泣き所は妹でエイラのはサーニャ、そこを少し突いてやれば優位に立つのは難しいことでは無い。

(いやしかし…ちょっと意地が悪いな、これは)

心の陰を見透かされた相手に対してしてやったり、と歪めてしまった頬に忸怩たる思いがよぎる。エイラに罪はない。これでは
まるで、八つ当たりだ。

「なんだよーもー。心配して損した」
「え」
「さっき泣いてるかと思ったから。取り越し苦労だったみたいだけどな」

拗ねたように唇を尖らせて、エイラはぷいとそっぽを向いた。不意に見せたその子狐のような幼い素振りに胸の奥が締め付けられる。
彼女が見ていたのは、本当は風でもいつかの未来でもサーニャでもなく、自分だったのに。

(見くびったんだ、私は。エイラを)

自己嫌悪の念が予想だにしなかった威力を以て心臓を揺さぶる。思いも寄らぬ動揺に指先が冷たくなるのを感じながら、
シャーリーはそれでも手を組み合わせて懺悔のポーズを取った。

「悪かったよ、なあ。この通り。許してくれよ」

冗談じみた謝罪の言葉が、その実かなり必死な懇願だという事にエイラは気づくだろうか。
シャーリーとしては無論、気づかないでいて欲しい所なのだが。格好悪いから。

(でも機嫌は直してくれ)

凄まじく都合のよろしい事を考えていると、エイラはようやくむすっとした顔をシャーリーに向けた。

「ちぇ、調子のいいやつだなー」
「だからごめんって。その、さ。そんな大袈裟なもんじゃないんだけど、ちょっと悩んでたっていうか」
「悩む?」

誠実な謝罪をするために、やらしく言えばエイラに機嫌を直してもらうために正直に告白した煩悶は十分な効果を上げた
ようだった。想定外の単語が想定外の人物から出てきた事に目を丸くしたエイラは、シャーリーの狙い通り、もとい願い
通り先ほどまでの不機嫌さをすっかり忘れてしまっている。頬を掻いて罰が悪そうな笑いを浮かべながら、シャーリーは続ける。

「ほら、私って別に国のために戦ってるわけじゃないじゃん。軍に入ったのだって音速飛行に挑戦するためだったし」
「そだな」
「だから、なんていうかな。皆とちょっと違うよなーって思ってさ。…戦う、理由が」
473アンダークラス・ヒーローズ 5/8:2009/02/11(水) 22:03:41 ID:w+cv1Sw5
ぽつりぽつりと、一歩一歩新雪に埋もれた足場を確かめながら歩むように、シャーリーは判然としない自らの胸中を慎重に
拾い上げていく。カールスラントの三人組やペリーヌ、サーニャのように祖国を奪われたわけでもなく、坂本や宮藤のように
誰かを守りたいという気高い志を持っているわけでもなく、かといってルッキーニのようにまるきり子供でもない。
彼女の翼は、彼女自身のためだけに存在する物だった。

(いや、スピードの神様のためだな、うん)

オファリングス・トゥ・ザ・ゴッドオブスピード。
部屋という名のガレージにある棚に刻まれた文字こそ、自分の人生そのものだとシャーリーは確信している。
だからこそ、この胸のわだかまりは拭いきれるものではないのだ。

「…良く分かんないな」

シャーリーの吐露した心情に、エイラが返したのはただのその一言だった。さして思う所も無さそうな乏しい表情に、
シャーリーは些かむっとする。

「そりゃ分かんないだろうさ。生粋のスオムス軍人のお前には」

のらんしゃらんとしているようでエイラは実力戦果共に、屈強と名高いスオムスウィッチの頂点に君臨している。国の誇る
エースという意味では、この基地の中でもとりわけカールスラントの三人に近い立場だと言えた。
連日ブリタニアのメディアが第501統合航空団を謳う時に用いる欧州の救世主だとかブリタニアに集った英雄達とかいう称号は、
守るために戦う彼女達にこそ相応しいのだろう。
対して身勝手な理由で飛ぶ自分は、英雄の中でも最低の部類に入るに違いない。

(ま、分かってもらおうってのが無理な話だ)

自分から最も遠い人種に自分の逡巡が分かるわけがないのだと嘆息して、シャーリーが話を打ち切ろうと口を開きかけると、

「戦うのにちゃんとした理由がいるのか?」

表情は乏しいままエイラが問い返す。予期せぬ問いかけに真意を図りかねて、シャーリーは目の前の白磁の面を見つめ直した。

「いるっていうか、普通は、あるだろう」
「ちゃんとした理由が無かったら戦っちゃいけないのか」

スオムス人特有の抑揚無い口調で重ねられて、ようやく気づく。エイラが理解出来ないのはシャーリーの戦う理由ではなく、
戦いに理由を求める事自体なのだと。

「じゃあ、なんでお前は」

戦ってるんだ、と聞きかけてやめる。
戦場から離れない理由はなんとなく分かっていた。優しいのだ、エイラは。サーニャだけではない、部隊の仲間や自らの近くで
危機に晒されたり傷ついたりしている人間をエイラは守らずにはいられない。

「なんでお前は、ウィッチになったんだ」

だからシャーリーが求めたのはもっと根本的なエイラの原点。自らの芯に触れようと投げかけられた言葉に、しかしエイラは、

「ないよ」

硝子の鈴のような声を想像させる容姿でありながら、その薄い唇から紡がれた彼女の声音にはまるで色が浮かばない。

「ウィッチになった理由なんか、何もない」

迷いも後悔も過去に想いを馳せる様子すら微塵も見せずに、ただただそう告げたエイラにシャーリーはそれ以上何も言う事が
出来なかった。
474アンダークラス・ヒーローズ 6/8:2009/02/11(水) 22:04:40 ID:w+cv1Sw5
(そんなに変な事言ったかなー)

自分としては本当に何気なく言ったつもりの一言が、いつだって鷹揚なシャーリーを呆然とさせてしまった事にエイラは
無責任な疑問を覚えていた。

(だって本当に無いんだからしょうがないだろ)

この思わぬ事態を招いた責任は自分にあるのではないのだと内心で誰にともなく言い訳をしながらも、望んだわけではない
沈黙が横たわるこの空気はエイラにとってはやはり居心地が悪い。
ならば振り払うべきなのだ。そうやって意志が定まると彼女の不可解なようで実は俊敏なエレクトロニクスで出来たような
思考回路が言うべき台詞を検索する。

(それにこのまま黙りっぱなしはフェアじゃないよな)

そもそも始めから今日のシャーリーはなんだからしくなかった。ふらりと現れたと思いきや、すぐ近くの木陰にいたエイラに
気づく様子もなく、何か、スピード以外の何かに心捕らわれたような様子を見せたり、それが露呈しかけるや否や朗らかで
当たりの良い兎の羽毛にも似た笑顔に隠して牙を向けてきたり。
が、エイラが重く見ているのはシャーリーがした“らしくない”事それ自体ではない。“らしくない”事をしてまで守ろうと
した胸の内を差し出してきた、その行為だ。ならば自分も何かを差し出さなければ、フェアではない。少なくともこのまま
尻切れトンボを飛ばしておくのは、真摯に何かしらの答えを求めたシャーリーが余りにも不憫ではないか。
最も自分が今差し出そうとしてるものは別にとっておきの秘め事というわけではないから、差し出したところで公平さを
取り戻せるかどうかは分からなかったのだけれど。

「いや別にウィッチになりたくなかったわけじゃないぞ。
 気がついたら軍にいただけで、自分からウィッチになったわけじゃないって意味なんだ」

少しの間を置いて付け足されたその言葉に、絶句していたシャーリーの思考はようやく力を取り戻す。

「気づいたらって、家族は何も言わなかったのか」
「あー私家族いないから。両親とも私が小さい時に事故で死んだんだってさ。んで孤児院に引き取られて、
 ウィッチの適性があるからって事で軍のスカウトに連れてかれたんじゃなかったかな。あんま覚えてないけど」

まるで他人事のようにすらすらと述べながらも、エイラは心の隅にやはりどうにも引っかかりを覚えている。
差し出したものは確かにこれまで人に教えた事は無かった情報だけれど、それは純粋に言う必要がなかったというのと
自分が言えば相手もそれをしなければならない雰囲気になりかねないと恐れたから、ただそれだけであって、
エイラにとってはあくまで内容以上の価値を持たない事実でしかなかった。
それに軍という場所には、それこそ自分とは違い人生を狂わされ心に深い傷を負った人間が少なからず集まるのだ。そういう
人間の前で迂闊な事は口に出来ない。

「まあ要するに家族のためとか、国のためとか考えてウィッチになったわけじゃないんだよ
 シャーリーみたいに夢も無かったし。私田舎育ちだからウィッチに憧れるってのも良く分かんなかったしな」

いい加減だろ?
それがシャーリーの悩みの対価になるかどうかはさておいて、とりあえずエイラは笑ってしまう事にした。
願わくばこの重みも意味もそもそも存在すら無い自分のルーツが、シャーリーの心を縛り付けている鈍い光の糸をわずかでも
緩めてあげられますように。
475アンダークラス・ヒーローズ 7/8:2009/02/11(水) 22:05:56 ID:w+cv1Sw5
そんな思いで軽い笑みを浮かべたエイラが一番期待したリアクションは大笑いだったが、シャーリーの気を紛らわせるので
あれば怒りでも失望でもなんでもよかった。
だが返ってきたのは予想した反応の中ではワーストの、沈黙。彼女の絹糸のような髪を弄ぶのに飽きたらしい海風のように
凪いでしまった空間に、エイラは失敗したかと斜め上に視線を泳がせる。

「嫌に、なったことは無かったのか?」

ぽつりと、シャーリーが水を一滴垂らすようにその一言を二人の間に落とした。
幾度めかになる質問の中身はエイラの予想のどれにも当てはまらなかったが、とりあえず反応が返ってきた事に満足して
エイラは素早く、だが慎重に答えを探し出す。
シャーリーのその呟くような問いかけが、自らの微笑みにどうしようもないほどの引力を感じて、それでもなんとか踏み
止まろうと必死に絞り出されたものだという事は露知らずに。

「そりゃ面倒だなーと思った事は何度かあったけど…嫌だなって思った事はないな」

そう言った所で頬を掻く。言われてみればウィッチである自分に疑問を持った事もそれを疎んだ事も無かった。ただの一度も。
考えてみれば不思議な話ではないか。流されやすく押しに弱い所はあるが面倒くさがりな自分が、今まで不満を感じた事も
辞めてしまおうと企んだ事も本当にただの一度も無いなんて。

(あー、そうか)

ほんの僅かな時間もかけずに、その理由を突き止める。
未来予知を使うまでもなく次にシャーリーが口にすると分かり切っている疑問への答えは馬鹿みたいにシンプルだった。
数瞬置いてシャーリーが口を開く。内容は思った通り。なんで、理由も無いのにそんな風に戦い続けてこれたんだ。

「好きなんだ」

とっくに用意してあった答えを躊躇いなく舌に滑らせる。
シャーリーが軽く身じろぎをする。気にせずに、続ける。

「空を飛ぶのが」

はっきりと告げて、エイラは穏やかだがどこか満足げに微笑んだ。
訓練用の二人乗りストライカーで初めて空に舞い上がった時の心の昂ぶりは、そういえば今でも鮮明に思い出せる。
眼下に広がる母国は青と白と水色の中にほんの少し森の深緑を落とした、どこか寂しくて、それでも幼い自分の瞳には
雄大な姿に映っていた。酷く硬質なアイスブルーの空も、頬を切る冴え冴えとした寒風も、耳をつんざくオンボロ
エンジンの音も、全てが真新しい衝撃を持ってそれまでエイラが見ていた世界の色を変えていった。
そこで改めて気づく。目的もなくただ本能のままに生きていた幼少の記憶は曖昧だが、生まれて初めて空を飛んだ
あの瞬間からの出来事は全てはっきりとした形を持っている事に。
476アンダークラス・ヒーローズ 8/8:2009/02/11(水) 22:07:54 ID:SGn4lKtC
「あー…そゆ事ね」

はああ、と深いため息をついてシャーリーが項垂れた。エイラからしてみればタイミングはずれているが、これは
想定内の所作だ。目算が当たったと思いこんでいるエイラはにひひと笑って、

「そんながっかりすんなよー。いーだろ?ただ飛ぶのが好きでウィッチやっててもさ」
「いや別にそういう意味じゃ…もういいや」

驚いて損した、と半眼になってシャーリーはもう一つため息を吐いた。
話の流れからすればシャーリーの方こそ勘違いも良い所なのだが、真面目な顔をしていれば芸術のようなと言っても
差し支えないほどに整った顔立ちをしたエイラが、それこそ真面目な顔をして、好きだなどと自分に向かって言い放ったのだ。
先ほどはなんとか必死に踏み止まれたが、その強烈な一言を受けては浮き足立ってしまっても仕方がないと言える。はず。

(こりゃサーニャも苦労するわけだわ)

まるで硝子の紗で編んだような繊細で清麗な心の持ち主のあの少女ですら、なんだよーとまるっきり真剣さが感じ
られない不満をアピールして暢気に笑っているエイラの腑抜けた頭を思い切りしばきたくなった事があるに違いない。
エイラと二人きりで話す機会が余り無い自分でさえ現に今こうして暴力的な衝動に駆られているのだ。四六時中、
文字通り寝食を共にしているサーニャが、この肝心な部分の神経がすっかり欠け落ちてしまっている大馬鹿野郎に
フリーガーハマーを撃ち込んでやろうと思った事は、一度や二度ではあるまい。

「あー。なんか考えてたのが馬鹿らしくなった」

やにわに大声をあげて、シャーリーは伸びをする。うーん、と背を伸ばした後、よしと一つ気合いを入れた彼女の横顔は
もういつもと変わらない。

「私のおかげだな。遠慮無く褒めて良いんだぞ」
「言ってろよ」

相変わらずの悪戯狐を思わせる薄い笑みを浮かべるエイラに、心とは裏腹の投げやりな台詞を吐き捨てる。
無論エイラにも腹の裏が分かっているから、それ以上何も言う事はない。そういう部分においては素晴らしいきめ細やかさを
発揮するエイラの性格をシャーリーはとても気に入っている。
否、性格だけではない。自分勝手でいい加減で子供みたいな動機で身につけた奇跡的な空戦技術も、機械に対する理解の深さも、
何らかの痛みを抱えた者に物怖じせず手を差し伸べる優しさも、全部。

「なあエイラ」
「ん?」

ふと思いついたなんとも素敵なアイディアを提案するべく、声をかける。
空は相変わらず脳天気に明るい。最低の英雄が二人、最低の理由で飛ぶにはちょうど良い清々しさだ。
ついでにコイツにもスピードの神が住まう世界を少しだけ見せてやろう。その思い出があればいつか辿り着くはずの夢の先、
心地良い孤独が支配するその世界でも、きっと独りじゃないと思えるはずだから。

「一緒に飛ばないか」

スカイライティングでもしてあの堅物を驚かせてやろう。
そう晴れやかな笑顔を浮かべたシャーリーに、エイラは勿論こう言って返すのだった。

「今日だけだかんな」


おしまい
477iTl0PYxu:2009/02/11(水) 22:09:52 ID:SGn4lKtC
途中なんか書き込みが反映されなくて何度か繋ぎ直しました…混乱させた事をお詫びいたします
支援すると言ってくださった方もすみませんすみません
478469:2009/02/11(水) 22:13:04 ID:XhF2veUF
申し訳ない、リロ忘れてかぶってしまった…
>>477
…GJ,いや、グッジョブといわせてくれ!!
シャーロットの葛藤もさることながら、エイラがすばらしく好きだ、グッジョブ!
こういった「つながり」の話ってすごくいいよなあ…あなたの文章大好きだ、GJ!

続けざまもなんなので、22:30になったらひとつ投下します
第29手 肩にもたれる でシャーゲル
479名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 22:14:18 ID:voFGGHB/
終わりかな?10レスくらいまでなら支援はいらないぽい
しかし・・・リアタイで見てたけど素晴らしすぎる!!!
早く続きが読みたくて専ブラの更新ボタン押しまくっちゃったよ!GJ!
480名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 22:19:27 ID:J2uX6GrR
>>477
GJ!面白かったよ。
しかしシャーエイとは珍しい。
481名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 22:24:36 ID:v7fLq8EQ
>>477
GJと言わざるを得ない作品きたあ!!
豊かな表現に脱帽です。うまいなあ…
ちょっとした人間関係ってのは小さいようで重要なんだ。素晴らしかったGJ!!

しかし良作ばっかりですごすぎるぜ…このスレは実力派が多すぎて恐ろしいw
しかも潜伏兵の数も計り知れない
…大好きだ。
4821/3:2009/02/11(水) 22:30:55 ID:XhF2veUF
※第29手 肩にもたれる シャーゲル

無様だなあ。
浴場から出たとたんやたらと楽しそうな声が聞こえたから、私は顔をしかめてそちらのほうを見やった。
見やるとやはりそちらには明るい髪の色をした背の高いあいつが、無視など出来ない存在感を以って
壁によりかかっている。これから向かう予定のミーティングルームへと続く通路にいるものだから、避けて
通ることなんて出来ない。

「……」

何をどう、口にしようかと思いながら留まる。子供のようについ口が尖って、それを見たのかまたやつが
ニヤニヤするものだから腹が立った。

「文句でもあるのか、リベリアン」
「いーぇ、文句なんてなぁんにも?大尉殿」
「嫌みったらしいぞ、もうすぐお前も昇進だろう?」
「ははは、だから最後のモラトリアムでも満喫しようかなって思いまして」
「ふん、言ってろ」

言い捨てて通り過ぎようとしたその瞬間、腕をつかまれてとどめられた。ちょっと待ってよ、とさっきまでの
態度が信じられないくらいの情けない声を上げるものだから思わず辟易して留まってしまう。長身の
そいつと並ぶと特に低いわけでもない自分がやたらとちっぽけに見えて腹立たしいだなんて、口が裂けて
も言わない。

ぱ、と手が離れる。ごめん、ごめんなさい。しおらしく謝罪の言葉なんて述べられたら責めることなんて
出来ない。力強く握られたものだから手首がじんじんと痛むのだけど、そんなことを言ったらこいつは
このでかい図体をして泣くのかもしれなくてやめた。豪快なのにどこか覚めていて、落ち着いた性格を
しているこいつは時折忘れそうになるけれど私よりも二つも年下なのだ。そう、いつもにこにこ、ひょう
ひょうとしていて常に私の頭を悩ませているあの部下と、同じ年に生まれている。

「なんなんだよ、言ってみろ。怒らないから」

ふ、と息をついて、仕方なく情けをかけてやる。数日前までの私だったら無理だったかもしれないけれど、
今の私はどうしてか、やたらと晴れやかな気持ちでいるんだ。胸の痞えがとれたような、肩の重荷が
下りたような、そんな穏やかな気持ちでいる。
にこ、と笑顔を作って言ってやったら、まるでこの世の終わりのような顔をされた。

「頭でも打ったのか?」
尋ねてくるから言い返してやる。
「ちょっと死に掛けてな」
「……初めて知った。カールスラントの堅物でも冗談を言ったりするんだな…」
「私をなんだと思ってるんだ、全く」
「いやいや、失礼いたしました」

ははは、といつもの、気の抜けたような笑い声を上げてやつは笑う。やれやれ、と肩をすくめてそれを
見やっていたら突然頬に何かが触れた。ぴりりとしたかすかな痛みが走る。いて、と呟くとびくりと、触れた
それが震えた。

「腫れてる。」
「…盛大にはたかれたからな。ミーナに。」
「…あー、聞いた聞いた。そりゃ怒るだろー」
「怒らせると怖いんだぞ。お前も気をつけるんだ、責任ある立場になるんだから」
「……はーいはい」
「返事ははっきりと、簡潔に」
「はい」
4832/3:2009/02/11(水) 22:31:34 ID:XhF2veUF

はたかれて赤くなって、腫れた頬を包み込んでいるのは目の前にいるリベリアンの、身長に呼応する
ようにやたらと広い手のひらなのだった。少し湿り気を帯びている気がするそれは、湯上りの私の肌と
比べると少しひんやりとしている。もしかしたらこの夕方の、少し冷え始めた廊下でこいつはずっとここで
ひとり、私が浴場から出てくるのを待っていたのかもしれなかった。どうしてかは知らないけれど、想像
さえ出来ないけれど、そうとしか思えない。でも本当にそういいきれるのかも分からなくて口には出来ない
のだった。

元から全く盛り上がりを見せていなかった会話はすっかりと宙に浮いてしまって、ぷかぷかにやにやと
私とやつを見下ろしている。けれども何も言えないから私は自分にも、この状況にも、弱りはてるばかり
だった。好き勝手で気ままなあのハルトマンとの会話に珍しく詰まったときいつもそうするように天を仰ごう
と思っても私の顔はやつの頬ですっかり固定されているし、何よりその方向にはやつの顔があるのだ。
どうしようもない。
ミーティングルームにはみんなが集まっているのだろうか、かすかな喧騒が聞こえて来ているような気が
する。それだからきっとここを誰もとおることが無いのだろう。それが不運なことなのか幸運なことなのか
私には全く分からないけれど。

ええと、その。
その沈黙を破ったのは結局あちらのほうで、一応予想はしていた癖に私は柄にも無く上ずった声で「なな
なんだ?」なんて聞いてしまったのだ。きっといろいろな意味で気が緩みきっていたのだと思う。余りにも
情けないことだけれど、私にとって今日あった出来事は本当に、衝撃的だった。僚機を気に掛けることが
出来ずに自分が被弾したことも、それを宮藤に助けられたことも、ミーナに説教を食らったことも、全部。

そして今この状況も、たぶん。
リベリアンは苦手だった。別にこいつだからと言う意味ではなくて、私にとってああいった国柄はどうしても
受け入れられないものだったのだ。毛嫌いをするつもりは無かったけれどこいつだとか、あのガッティーノ
の姿を見ているとその突き抜けるほどの明るさにひどく辛い気持ちになってしまうから。それはもしかし
たら、こいつのルッキーニにする態度にかつて、妹がまだ元気だった頃の自分を重ねていたからかもしれ
ないけれど。
否定することで懸命に自分を保っていた、なんて情けなくて言えない。宮藤に対してしていたそれと一緒だ。
きっと私はこいつから目を逸らしていたんだ、ずっと。
「そんな顔するなよ、情けないな」
思わずそんな言葉が漏れてしまう。そうだ、だからきっと私はこいつの、こんな顔さえも知らない。もしか
したらミーナ辺りならよっぽど理解していて、「あの子はそう言う子だから」と笑えるくらいなのかもしれ
ないけれど。

懸命に冗談めかして口にしたのだというのに、やつと来たらやっぱり重苦しい顔で口を閉ざしているばかりで。
弱り果ててしまう。困り果ててしまう。けれど私の口からはこれ以上、洒落た言葉が出てくるようには思え
なかった。だからひたすら待つだけだ。情けない顔をしている、今のところはまだ部下である、年下の、
こいつの次の言葉を。

「…た、って」
しばらくして、もごもごと。こいつらしくない歯切れの悪い言葉が漏れる。聞こえない、と正直に言うとは
あああ、と大きなため息をつかれてしまった。ええとその、だから。繰り返される、場を持たせるための言葉。
ごくり、と生唾を飲み込む音。なんとなく私も唾を飲み込む。

「…無事で、よかったって!ここのところあんた、元気なかったから!!あぶなっかしかったし!」

それは、小さいけれどもとても強い言葉だった。なによりもいつも余裕に満ちているはずのその顔が
すっかり陰ってゆがめられているものだから、こちらも笑い飛ばすことなど出来ないのだ。何かを言おう
として、でも何も思いつかなくて、ただ口をパクパクと魚のように開いたり閉じたりした。
ああ、心配されてたのだ。そんな混乱しきった頭の隅で、考えていたのはそういったこと。何も考えていな
さそうな言動の奥で、それをおくびにも出さずにずっと抱え込んでいたのだ、こいつは。こいつだけじゃない。
もしかしたら、みんなも。このリベリアンがそう言ってわざわざ言ってくるぐらいなんだから。ミーナでさえ
も私に平手打ちするくらいに心配していたのだ、だって。
4843/3:2009/02/11(水) 22:33:35 ID:XhF2veUF

「あんまり無理するなよ。あたしだっているんだ。あんたばっかり頑張る必要なんて無いんだ。…少なく
ともあたしは、もうすぐあんたと肩を並べなくちゃいけないんだから。…たまには、その、寄りかかったって
いいんだ!」
「…え…あ……うん…」

剣幕に押されるようにして返事をする。胸の奥から湧いて出る、一つの気持ちがある。
どうしてか胸を一杯にする、この気持ちはなんだろう。そこからこみ上げて鼻の頭に、目頭に、突き上げて
くるこれは一体どういったことだろう。

それだけなんだ、って。
そう言って、ぱ、と手を頬から剥がして行こうとするものだからつい、その手首を引っつかんで押しとどめて
しまう。わわわ、とのけぞると相手も驚いたように立ち止まって、振り返って、どういったことか支えられる
形になってしまった。
「な、なんだよ!」
叫ばれて、けれどもそんなの反射的なものだったから理由なんて無くて。けれどもいわゆる抱きとめ
られている形となっているこれをどうにかしないと私は情けなさでどうかしてしてしまいそうだった。そんな
時ふと、さっきこいつが口にした一言が頭をよぎった。昼にミーナに叩かれた後の感覚が、蘇ってきた。

「…おい、リベリアン。

 …・・・…シャーリー。」

背の高いこいつにそれをするのは少し大変だけれど、まあいい。
体をずらして、額を肩に押し付ける。どくどくと胸を立ていている心臓の音が、心地よい。何より温かくて、
柔らかい。気が抜ける。体の力まで吸い取られていくようだ。

「前借りだ。ちょっと肩貸せ」

するり、と口からこぼれたその言葉と一緒に、なんだか熱いものまで目から流れ出てきたけれど。
もちろん、とシャーリーがいつもの調子で笑いながらそう言ったから、特に気にしないことにした。



4話後と補足しておくのを忘れていた
485名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 22:34:27 ID:W66Y0hzM
大量だな
そろそろ次スレだし
486名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 22:37:31 ID:xeQh6rhx
レス数≒kbだと・・・。
また勢いを盛り返してきたのかw。
487名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 22:39:21 ID:Dz0wkI3o
>>477
やるじゃないかエイラ、シャーリー相手にこの台詞回しは流石としか言えない。
GJ!!心の通じる瞬間がとてもいい描写だったよ。

>>484
ナイッシャーゲル!GJ!!
照れ屋な感じのトゥルーデもいいですなあ。
488名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 22:44:18 ID:SGn4lKtC
>>484
GJ!お姉ちゃんには素直に心配って言えないシャーリー可愛いなあ
年が違うし軍歴も違うのに立場は同じって難しい関係だなあこの二人
>「……初めて知った。カールスラントの堅物でも冗談を言ったりするんだな…」
あとこのやり取りに「死ぬほど痛いぞ」を思い出して吹いたw

遅れましたが投稿時刻気を使わせてしまったようですみませんです
489名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/11(水) 23:52:14 ID:elsD+qp6
>>488
死ぬほど痛いぞってガンダムWかw
確かに普段寡黙だったりマジメだったりするキャラが冗談言うのは
周りに与えるインパクトが大きいよなぁ。
490名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 00:01:37 ID:jJYcB7hW
>>477
心臓が痛いほど清清しいな…
どうしてこんなところで文章に感銘を受けなきゃならないんだかまったく不意打ちだ
それがどんな気分か僕も詳しく知りたいくらいだがそんなことを書いて喜ぶやつもいないので手短に言うと、すごく…GJです…
491名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 00:27:24 ID:PrzSlOEW
>>484
シャーゲルきたー!!それも4話と絡めてくるとは!
あなたの書くシャーリーは毎回すごく魅力的で好きだ。
寝る前にスレ覗いて良かったよ。シャーゲルありがとう。
492484:2009/02/12(木) 01:00:35 ID:kbk3hNMv
滅多にシャーリーメイン話なんて書かないから誰かと勘違いしているのかと…
と思ったらやっぱり名乗り忘れてたもうしわけない

>>363-365>>482-484どちらも21X2w2Ibでした
493名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 01:16:42 ID:C/qlKK+F
突然だが
ウィッチーズのズボンって高級品で枚数買えないらしいから、新米で一張羅しかないヘルマがうっかりズボンをなくしてしまって、トゥルーデが貸してやろうって事になったらどうなるだろう
494名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 01:32:51 ID:00Vjr+uP
リーネの髪の色と目の色って何色と表現すべきなんでしょうかね
495名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 01:45:58 ID:wXvakYBy
長い三つ編みをリボンで留めた明るいオイスターブラウンの髪と、それとは対照的に薄明に照らされた海のような深い瑠璃色の瞳がとても印象的だった。

というフレーズを自分の没稿から拾ってみるテスト
496名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 02:01:41 ID:VS4zsaf5
>>495
早くその没稿とやらを完成させてうpする作業に戻るんだ
497名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 02:20:05 ID:qU7GfU0w
>>494-495
ペリーヌほどではないにしろ、リーネちゃんのSSの少なさはヤバイから全力で頑張って欲しい

リーネちゃんの目の色は自分の脳内では「見つめると吸い込まれそうな深い水色」になってる
498名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 04:34:31 ID:2qZcROsM
>>477
亀ですが、GJ。
なんというか、描写の懐の広さがハンパないですね。
499zet…なんだっけ:2009/02/12(木) 06:28:04 ID:eRePtSXb
仕事場抜け出してファミレスから携帯でカキコ。
一応プレバレンタイン的な話をかいたんだけど、何故かテキストファイルの容量が18kbあるんで誰か安全の為にも次スレ立てておいてくれないでしょうか?
帰宅したあと昼位に投下出来ると思います。

書くのに集中してたせいで昨日辺りに投下されたSSから読めて無いzet…自分の名乗っているIDを忘れた人でした〜。
500名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 07:13:35 ID:i5qfcFUQ
500なら来年もこのスレは安泰
501名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 07:51:49 ID:PrzSlOEW
>>492
盛大に勘違いしました。すいません。隊長にビンタされてくるorz

でもシャーゲル書いてくれる人が増えて嬉しい。
502名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 07:55:39 ID:Q67qEh3M
>>499
俺のが11kbだから、埋めは俺のでやっていいかい?
今から投下しようと思うんだが…
18もある大作だ、新スレしょっぱなでドカンとやってほしいと思うんだけど。
503名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 08:00:58 ID:1HlYxH1z
両方投下してもあまるぜ
504名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 08:09:33 ID:PMFeCgFm
>>502
今から立ててくるからできれば新スレの方に投下してほしかったり
埋め用にネタ書いたら長くなってしまったんで、できれば譲ってくれないだろうか
505ペリーネばっか書いてるk7pmWPXB 1/6:2009/02/12(木) 08:11:11 ID:Q67qEh3M
では>>499には申し訳ないが、先に始めさせてもらいたい。気を悪くしたらすまない。ついさっき書き上げて、えらく眠いんだ・・・


 祖国を侵略によって失い、奪還を夢見て異国の地にて仲間と共に奮闘を続ける一人の少女がおりました。
少女はただひたすらに夢の実現のため研鑽を重ね、年にそぐわぬ戦いに身を浸し、傷つき、疲れ、しかし友
に支えられ、少しずつ成長していきました。
 少女はやがて恋をします。相手は戦女神の顕現のような美しい一人の乙女でした。道に迷い、胸を焦がし、
恋に破れてなお、その乙女の笑顔と己の夢を心の支えに、少女は戦いを続けておりました。
 しばらくして、少女は再び恋をします。先の乙女とは姿においても心においても、似ても似つかぬ相手で
ありましたが、先の乙女と同じくらい、いえそれ以上に、少女は彼女を愛しておりました。
 これは、その少女の、ほんの少し変わった恋のお話です。


「ペリーヌさんの、ばかあぁぁぁぁーーーー!」
 連合軍第501統合戦闘航空団の本拠地である小島に、リーネの叫び声がこだました。直後、基地食堂の扉
が引きちぎれんばかりに開け放たれ、リーネが弾丸のように走り去っていった。芳佳はおろおろし、美緒は
きょとんとし、カールスラント組は一様に「またやったよ」という顔をし、リベリアン・ロマーニャ連合は
聞こえなかった振りをし、スオムス・オラーシャ合同夜間哨戒班は安らかに眠っていた。罵声の矛先となっ
たガリア淑女はやはり何もわかっていない顔で呆然と食堂の椅子に腰を下ろしたまま動けず、基地配属の整
備兵たちは何時間で事が治まるか賭を始めた。
「この場合、引き金は誰かしらね」
 うんざりといった感じでミーナが言う。その隣に腰掛けたバルクホルンが、
「引き金は宮藤、撃鉄は坂本少佐、弾頭はリーネで、」
「引き金を引いたのはペリーヌだね」
 エーリカがだらしなく机の上に伸びながら言った。ミーナがひとつ溜息をつく。
「ええと…どういうことでしょう?」
 なんだかよくわからないが自分が原因の一端らしい、ということだけ把握した芳佳が尋ねる。
「うん、つまりだ。宮藤がこの…オジヤだかオカユだかいう扶桑菓子を」
「オハギだよトゥルーデ。オしか合ってないよ」
「う、そうか…。オハギをひとつ余分に作ったのが、そもそもの発端だな」
「ええぇぇぇっ!?」
 芳佳は素っ頓狂な声をあげたが、美緒はある程度得心がいったようで、ばつの悪そうな表情で頬を掻いた。
「なるほどな、私は少しばかり余計なことをしたようだ」
「誰が悪いって訳じゃないのがまた厄介だよねー。宮藤はおやつ作っただけ、少佐は親切心、強いて言うな
らペリーヌの鈍感っぷりが悪いといえば悪いけど、上官から勧められたら断れないよねえ」
 我関せずを決めこんでいたシャーリーが口を挟む。その膝に乗っておはぎをぱくついていたルッキーニが、
口の周りをあんこでべたべたにしながらにゃははーと笑った。
「む、面目ない…。どうも私はそういう事柄に関してはいまいち気が利かなくてな…」
 美緒がちらりと横目で、自分の想い人を見やる。
「ともあれ! ペリーヌさん、いつまでも呆けてないで早く追いかけなさい。彼女は、…その、あなたの、」
 ミーナが場を仕切り直すように大きな声を出した。やや頬が赤いのは、何故からか。無理矢理スルーされ
た美緒がすこししょんぼりしているのを、エーリカがにやにやしながら愉しんでいた。
「…恋人でしょう?」
506ペリーネばっか書いてるk7pmWPXB 2/6:2009/02/12(木) 08:11:52 ID:Q67qEh3M
 弾かれたようにペリーヌが立ち上がった。シャーリーの口笛を背に受けながら、先ほどのリーネ以上の速
度で食堂を駆け抜け、半ば体当たりしながら扉を跳ね開けて走り去っていく。遠くでなじみの事務官の悲鳴
が聞こえ、跳ね返ったドアが閉まる音にかき消された。ミーナが三度溜息をつく。
「弾丸がリーネなら、嫉妬心が火薬ってところだね。訓練ん時じゃ見たこと無い速さだったよー、あのダッ
シュ」
「なかなか詩的じゃないか、リベリアン。お前にも詩を解する心があったんだな」
「まーぁねー。カールスラントの堅物よりは恋する乙女してるつもりよん」
「トゥルーデも結構恋する乙女だよ?」
「エーリカ! 余計なことを言うな!」
 まあこれでなんとか片づいただろう、という安堵の雰囲気が食堂を漂う。あの二人がつき合いだしてから、
このようなやりとりは日常茶飯事だったのだ。だいたいリーネがやきもちをやいて、ペリーヌがそれをな
だめ、最後は二人仲良く手をつないで帰ってくるところをシャーリーやルッキーニに冷やかされ、ミーナや
美緒が仕切り直すというのが定例であった。整備兵たちの賭の種になるのもむべなるかな。
「炸薬が嫉妬心なら、薬莢は何だろうな? 嫉妬心を包み隠し、しかし弾丸の射出を手助けする重要な部分
だが」
「ほら、そりゃあアレでしょ少佐」
 美緒の問いかけにシャーリーが乗り、
「「愛だね、愛」」
 ルッキーニとエーリカが同時に答え、それぞれの恋人にウィンクした。バルクホルンはあっさりと顔面を
真っ赤にさせ、シャーリーはルッキーニをぎゅっと抱きしめてほおずりした。ついにミーナは頭をかかえて
突っ伏した。
(部隊長としては、この甘々した流れは律するべきなのかしら…)
 傍らに立つ美緒を見上げる。目が合って、困ったように微笑まれる。あわてて熱くなった頬を隠すように
俯く。
 ミーナだって恋しているから、わかる。答えはすでに決まっているということを。
「はっ、はんぶんこ! はんぶんこしましたね!? 坂本少佐と!」
 リーネの自室の扉の前で、ペリーヌは途方に暮れていた。なんとかリーネを探し当てたはいいが、自室に
引き籠もって出てきてくれない。美緒とペリーヌでおはぎを半分こしたことに相当なショックを受けている
らしい。会話をしてくれるだけまだ仲直りの芽はあるが、先ほどからはんぶんこはんぶんこと呪詛のように
繰り返すだけで話が先に進まない。時折差し挟まれる、リーネが嗚咽をかみ殺している静寂がペリーヌの胸
をちくちくと突き刺す。
「リーネさんお願い聞いて。別にあれは貴方が気を病むような事じゃなくて…」
「病みますっ!」
 矢のような返事が返ってくる。昔までのペリーヌなら、とうに癇癪を起こして、見限るなりドアを破壊す
るなりしていたはずだった。それをさせないのは、やはり自分に負い目があるからだと思う。言い訳の出来
ない無意識の奥深くで、自分は喜んでいた。憧れの人に目を掛けてもらえた、優しくしてくれた、自分はこ
の人にとってやはり特別な存在なのではないか…そういう想いが動いたことが、ペリーヌにはどうしても否
定できなかった。
「でも。いま、愛しているのは、貴方だけなの」
 額を扉に押しつけて、ペリーヌはぽつりともらした。この気持ちにも偽りはない。リーネに対する「好き」
と、美緒に対する「好き」が、ようやく分かたれつつあるのを、ペリーヌははっきりと感じ取っていた。
言葉にするとどちらも「好き」になってしまうが、芯はまったく違う。伝えたくても伝えられない想いがわ
だかまり、くやしさに歯がみする。
「ねえ、リーネさん。どうしたらわたくしの気持ちをわかってもらえるかしら。いくつ言葉を重ねればわた
くしの想いは届くかしら。わたくしは貴方さえいれば、」
 しかし、その次の言葉が口から出てこない。ペリーヌの根幹たる、貴族として与えられた教育が、矜持が、
誇りが、上っ面だけの愛の言葉でこの場を煙に巻くことを許さないでいた。
 リーネさえいればいいなんて嘘だ。これは、そんなに簡単に割り切れるような問題ではないのだ。もちろ
んリーネは失いたくない。だが、例えば501のみんなを、自分の悲願を、ひいては世界を、自分の愛した
人と天秤に載せるようなことはできない。これは映画や小説ではないのだ。愛をささやいて全てが収まると
思ったら大間違いだ。ほんの一片の嘘という薬を飲んで誰かにうそを付くのなら、家に火を放ってでも結婚
を認めさせる、強烈な力を持ったジュリエットになろうと決心した。ロミオは耳を塞いで縮こまっている。
ならば。
 ペリーヌは拳を作り、大きく振りかぶって、愛する人に届くように、扉を殴りつけた。
「リーネさんッ、いつまでメソメソしているの! 仮にもわたくしの恋人たるものが、つまらないことで悩
まないで!」
 うわぁぁぁぁぁなんかやっちゃった、とだれもが小声で悲鳴を上げた。なにこれ、逆ギレ? と誰かがさ
さやいた。わからん、様子を見るぞ、と誰かが促した。
「わたくしには夢があります。ガリアを取り戻し、クロステルマン家を復興させ、あまねく領民に幸福を与
える夢です。きっと平坦な道ではないでしょう。しかし、わたくしは必ずやり遂げます。ネウロイを撃退し、
一刻も早くガリアを解放しなければなりません。そのときに隣にいるべき貴方が、いつまでもこんな所で
膝をかかえて丸くなっていないでッ! わたくしを愛し、わたくしに愛されたいなら、その一生全てをかけ
てついてらっしゃい!」
 なんかすごいねペリーヌ、と誰かが言った。返事は誰からもなかった。
「確かにわたくしは坂本少佐が好きでした。否定しません。さきほどの食堂でも嬉しかった。命を預けるに
相応しい方だと思うわ。けれどッ!」
 どん、と再び扉が悲鳴を上げる。
「あの人の隣にいるべきはわたくしではなく、わたくしの隣にいるべきは貴方でしょうッ、まだそれがわか
らないの!?」
 凄烈な愛の告白だった。ギャラリーは既に言葉もなく押し黙り、事の成り行きを見守っていた。
「…あの、」
 扉のすぐ近くから、おずおずとした声が漏れ出てきた。
「一生かけて、ついていって、いいん、でしょうか」
「わたくしがそう言いましたッ!」
 リーネのときおりしゃくり上げる声。
「私、体力、あまりなくて、げんきなときはいいですけど、病気になったりしたら、」
「負ぶってでも連れて行きます!」
「あんまり、お金とかも、もってませんけど、」
「必要ありません!」
「嬉しいときは、分かち合って、」
「当たり前です!」
「悲しいときは、」
「わたくしの胸を貸して差し上げます!」
「いの、ち、」
 ついにリーネの声が止まった。しかし、
「命ある限り、ついてきなさい!」

 ドアが弾けるように開かれ、涙でぐしゃぐしゃになったリーネが飛び出てきた。ペリーヌはそれを支えき
れず廊下に押し倒される。ペリーヌに覆い被さって泣きじゃくるリーネの髪を撫で、背中を優しく叩く。
「ペリっ、ヌ、さっ、ごっ、めんっ、あうっ、ふあぁぁぁっ」
「いいのよ、リーネ。わたくしも悪かったのだから。ごめんなさいね」
「うあああああぁぁぁぁぁ………」
 リーネが泣きやむまで、ペリーヌはその髪に頬を埋め、ずっと抱きしめていた。
 その周りには、いつの間にか、抱き合う二人の外に誰もいなくなっていた。
「大変お騒がせをいたしました」
 まだ目元の赤いリーネと、いつもと変わらぬ様子のペリーヌがぺこりと頭を下げる。見守る7人の目が、
どことなく優しい。
「雨降って地固まる、というやつだな」
「大雨だったねえ」
 バルクホルンとエーリカがまず感想を述べた。リーネは真っ赤になって俯いてしまう。よくよく見ると、
リーネとペリーヌの手はずっとつながれたままだ。それに真っ先に冷やかしを入れるはずの二人は、
「いやー…やるねえ、ペリーヌ」
「びっくりした」
 ペリーヌの行動に感心したように、しかし口元はにやにやしている。
「とりあえずおめでとう、かな、ペリーヌ」
「リーネちゃんおめでとう!」
 美緒と芳佳が口々に祝福の言葉を述べる。向けられた二人は、ありがとうございます、と答えるだけにと
どまった。やっぱりまだ恥ずかしいらしい。
「まあ、収まるべくして収まるべき所に収まったってところかしら…」
 お願いだからこういう騒ぎはこれっきりにしてね、と釘を刺すのは忘れないミーナ。恐縮する二人に美緒
が、
「いや、しかし目出度いじゃないか! 式はどっちで挙げるんだ?」
 もじもじしながら、それはまだ決めてなくて、とはにかむリーネと対照的に、ペリーヌはぽかんとした様
子で、
「はぃ? 式ですか?」
「いや、お前達、結婚するんだろう? そういう意味じゃなかったのか、あの言葉は」
「ふぇぇ!?」
 空気の読めない美緒は、なおも言葉を続ける。
「気づいてなかったのか!? ペリーヌの言葉、健やかなるときも病めるときも、っていう意味だろう? 
ち、違ったのか!?」
「お、おほほほ、もちろんですわ…あ、嫌、リーネ、そんなに強く手を握らないで、いた、いたいいたいい
たたたたたーーーーー!」
 ペリーヌの悲鳴が、場の全員には、地雷の爆音に聞こえたという。


「ぺ、ペリーヌさんの、……ばかああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 そのときの様子を、ゲルトルート・バルクホルン大尉は、後に「周囲の温度が5度下がって、20度上が
った」と表現した。エーリカ・ハルトマン中尉はあろうことかバルクホルン機を盾にするという暴挙に及び、
シャーロット・E・イェーガー大尉並びにフランチェスカ・ルッキーニ少尉はこの時点で戦線を離脱。ミ
ーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐は先任士官の責任感からか戦線離脱こそしなかったものの、真っ先に
食堂のテーブルの下に避難した。坂本美緒少佐は、自ら地雷を踏んだ責を負い、なおも爆心地に吶喊、戦死
した。逃げ遅れた宮藤芳佳軍曹もそれに殉じた。戦死者3名を出した凄惨な戦争は、この事件を発端に約3
日にわたって断続的に続き、整備兵達の懐をある者は暖かく、ある者は冷たくさせたという。


 なお、余談であるが、このころからペリーヌとリーネの左手の薬指に、鈍い光を放つ銀の指輪が飾られる
ことになる。



>>504氏本当にもうしわけない。書き込みボタン押す時は心底ガクブルしてるんでろくにリロードしてないんだ…
氏のを新スレでぶちあげて、良き加速剤にしてほしい。
48手の「プロポーズ」にも通ずるものがあると思う。良かったら読んで欲しい。
511名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 09:00:56 ID:PMFeCgFm
>>510
504ですがペリーネGJ!&あんまキニスンナ
ウィットに富んだ文章を書かれますね。本当なら俺もこんな三人称書きたい

それで次スレ立てるの無理でしたorz
誰か他の方お願いします
512499:2009/02/12(木) 10:02:15 ID:eRePtSXb
とりあえず帰路につきました。
会社で閲覧出来ても書けないのってホント辛い。

>>510
GJです〜。
最近少しづつペリーヌにも活気が出て来ていいかんじっすね。
前に書いたペリーネ戦闘モノの続きをダムバスター作戦絡めて書きたいんだけど、書きたいネタ多すぎて手がまわんないorz
513名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 10:19:15 ID:jJYcB7hW
 _____
    マ´     `マ   >>512ワクテカですことね
     ! ill i! i! i! i! i!))  
     リ .!| (.゚) ヮ ゚ ).|   
    //\ ̄ ̄ ̄\
   // ※.\___\
  \\※ ※ ※ ※ ※ヽ  次スレhttp://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1234400870/
    \`ー──────ヽ
514名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 10:38:01 ID:69yoqD1v
>>513
乙ですわ!乙ですわ!
515名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 10:38:30 ID:EnlI/sBx
ID違いますが504ことOsqVefuYです。
改めて>>510さんにもう一回GJ!&俺の方こそ無理言ってゴメンナ。
そして>>513さんにスレ立てのGJを!

というわけで埋めます。保管庫750の続編です。
男塾パロるならやっぱ頭墨印やっとかねーとなとか思ったので。
エログロは少なめですが、頭の悪さは据え置きです。
せっかくのお言葉なんですが、ネタ的に埋めにしか使えナイんダヨナ、これ。
タイトルは「さかもと!乙女塾 壮絶!乳墨印の巻」です。
長いので半分だけ。5レスの予定。
516名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 10:40:29 ID:EnlI/sBx
「はっはっは! 私が乙女塾塾長・坂本美緒だ」
 そう高らかに笑い声を響かせるのは、乙女塾塾長・坂本美緒だ。階級は少佐である。
「さて、そういうわけで次スレが立った」
 鬼の塾長と恐れられる坂本も、この時ばかりは機嫌がいい。
 その場に並んだ芳佳、ペリーヌ、ルッキーニの三人はじっとそれに耳を傾けている。
 なお今回、リーネの姿はない。

「よって、スレを埋めねばならない。しかも記念すべき20スレ目だ」
「でも、坂本さん。私たちはいったい何をすればいいんですか?」
 と、はいはいと手をあげながら訊ねるのは一号生の芳佳だ。階級は軍曹である。
「あら、豆狸はそんなこともわからないんですの?」
「じゃあペリーヌさんにはわかるんですか?」
「当然ですわ。次スレを立ててくれた人に感謝の乙――ですわよね、坂本少佐?」
「そうだ。よくできたな、ペリーヌ」
 満足そうにうなずきながら、坂本は言い放った。
「よってこれより、乙女塾名物・乳墨印(にゅうぼくいん)を行う!」

 『乳墨印(にゅうぼくいん)』
  昔、中国地方の柔林寺にミンメイなる尼僧がおり。
  ある時、我に少しの隙あれば胸に墨で『乳』と書いてみよと、弟子にのたまう。
  しかし弟子たち、あらゆる時と手段もちいてそれを試みてみるも、
  とうとうミンメイの胸に印をつけることはできず。
  なお余談ながら、乳墨印は墨印と略され、現代ではそれがなまり、
  大きなおっぱいのことを「ボイン」と呼ぶのはこれが由来なり。
                    (民明書房刊『乳なるおっぱい』より)

「わが乙女塾ではその故事をならい、『乳』の代わりに『乙』の字を用いる」
 この乙はスレ立て乙の乙であり、乙女の乙でもある。
「私に『乙』の一字を書いてみろ!」
 そう言い切ると坂本は、制服に手をかけ、それを脱ぎ捨てた。
 身にまとわれているのはボディスーツのみ。その麗しい肢体に、思わずペリーヌは見惚れた。

 ようやく芳佳も理解した。つまり、おっぱいを揉むついでに乙って書けばいいんだなと。
 そうして三人は、いつになくやる気をみなぎらせた。 
 合理的におっぱいを揉める、と笑みがこぼれるルッキーニ。
 合理的におっぱいに顔を埋められる、とついよだれが出る芳佳。
 合理的にそのあと坂本少佐とあんなことやこんなことを……と下半身を濡らすペリーヌ。

 ――と、最初に動いたのはルッキーニであった。先手必勝である。
 次いで芳佳、遅れてペリーヌもそれに続いた。
 坂本の胸をめがけて、三人が、六本の手が殺到する。
 が、坂本はその場に立ったまま、眉ひとつ動かすことはない。
 そして、手にした竹刀を一閃、二閃、三閃――

 バシッ、バシッ、バシイッ!

 あとには、頭を打たれ、地面に倒れこむ三人。
 その頭にはでかでかとしたたんこぶができあがっている。
「なお――」
 と、坂本は苦悶に地面をのたうつ三人へ向け、淡々とつけ加えた。
「もし明日の正午までにできぬようであれば、下の毛をすべて剃り落とす」
517名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 10:41:56 ID:EnlI/sBx

●作戦其ノ壱 アロンアルファ作戦●
 
 庭先にて。
 ルッキーニは木の上でじっと息をひそめていた。
 坂本が通りかかるのを待ち構えているのだ。
 その手にはロープが握られており、その先端にはバケツをくくりつけている。

 そうして今か今かと待っていると、坂本が姿をあらわした。
 しかも好都合にも、こちらへと近づいている。
 そして坂本がちょうどバケツの真下にくると――
(今だッ……!)
 ルッキーニはロープを引っぱった。
 するとバケツにたっぷり満たされていた液体が、地上の坂本にむけて降りそそぐ。
「むッ!」
 と、意表をつかれて声をあげる坂本。
 咄嗟に顔をかばおうと、両の手をそれに向けて差し出した。
「これはッ……!?」
「速乾性の接着剤だよ」
 木の上からルッキーニはほくそ笑んだ。
 坂本は両手、それにふとももから足先にかけて、それを浴びてしまっていた。
 ルッキーニは左手にスリングショットを構える。
 ひとまずおっぱいは二の次。それより今は、下の毛の死守である。
 そして右手には、半分に切ったさつま芋。芋判にして、朱肉をたっぷりつけてある。
 事態を悟った坂本は、その場を引こうとした。
 が、そうするどころか、接着剤は早くも固まりだしており、
 これでは体の向きひとつ変えるのも容易ではない。
 スリングショットのゴムをめいいっぱいに引き絞るルッキーニ。
 若干12歳ながら、狙った獲物は十発十中のプロのスナイパーである。
「いっけェ!!」
 声とともにルッキーニはその手を離した。
 芋判は坂本の胸をめがけ、一直線に飛んでいく。
 坂本は身をよじらせることが精一杯。これでは手も足も出ない。
 ルッキーニはその成功を確信しきっていた。

 ――が、芋判が坂本の胸へとたどり着くことはなかった。
 では芋判はどこかといえば、坂本の口のなかに収まっているのである。

 ルッキーニは己が目を疑った。
 その道程を目撃しつつも、頭がそのことを拒否してしまう。
 しかし、認めてしまうしかないではないか。
 なぜ芋判が坂本の口のなかにあるのか――
 それは坂本が、飛んでくる芋判を上下の歯でがっちりと受け止めたからに他ならない。

「でもでも、芋判ならまだまだあるんだからッ」
 気を取り直したルッキーニは、新しい芋判を手にする。
「ほふか」
 プッ、と坂本は芋判を噴き出した。
 その芋判はスコーンとルッキーニのおでこを直撃し、
 バランスを崩したルッキーニは、そのまま木の上からまっさかさま。

「フッ、この程度で」
 坂本は靴を脱ぎ捨てると、そのまま素足で歩いていってしまった。
518名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 10:43:23 ID:EnlI/sBx

●作戦其ノ弐 妖凄作戦●

 基地のとある一室にて。
 芳佳はあえぎ声を出していた。
 一人二役、ともに女のものである。
 そして部屋の壁には、ちょうど坂本の目の高さに小さく穴があけられている。
 その穴の下の部分にもまた、ちょっとした細工を仕掛けてある。
 ウィッチとしてはもう二十歳、しかしまだまだ血気盛んな年頃のはず……
 坂本が部屋の様子をこっそりのぞこうとしたところを捕まえてやろうという作戦だ。

「やんっ、よこはらめぇ」と芳佳。
「ええやんけ、ええやんけ」とこれも芳佳。

 芳佳が一人熱演を続けていると、遠くからぺたぺたと、足音が聞こえてくる。
 それは次第に大きくなり、どうやらこちらにやってきているらしい。

「だから、らめらってばぁ」と芳佳。
「そんな言うたかて、体は嫌がってへんやないか」とこれも芳佳。

 その演技にもいっそう力がこもる。
(坂本さん、気づいてッ……!)
 そうして――ぴたっと、足音が止まる。
(やったッ!)
 芳佳はぐっと壁を指で押した。やすやすと指先はそれを開通する。
 ちょうど坂本の胸のあたりにくるところの壁をくりぬき、障子紙で偽装しておいたのだ。
 (おっぱいへの)直リンの壁崩壊の瞬間である。

「坂本さんのおっぱい、いただきますッ!!!!」

 叫ぶ芳佳。手にした油性マジックが坂本の胸へ伸びる!
 ――が、芳佳が『乙』しようとする間際、それは遮られる。
 まさにおっぱいによって。
 結構ある坂本の胸の谷間が、マジックを受け止めたのだ。
 坂本は胸筋にさらに力をこめ、芳佳の手からそれを奪ってしまう。

「なにをやっているんだ、お前は?」
 坂本は穴の向こう側から顔をのぞかせ、訊ねかけた。
「あの、えっと、これは……」
 おろおろとうろたえるばかりの芳佳。
「こんなことで本当に『乙』できると思ったのか?」
「はい。途中まではうまくいったんですけど」
 芳佳はコクリとうなずく。それが逆鱗の壁崩壊の瞬間であった。
「うわっ、なにをするんですか坂本さんっ!?」
 坂本は穴に手を突っこむと、芳佳の耳たぶをぎゅっとつまんで顔の前まで引き寄せ、
「私を馬鹿にするなッ!!」
 と大音声で一喝。

「ふむ。とりあえず――」
 坂本は油性マジックを手に持ちかえ、芳佳の額に『肉』と書いておいた。
519名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 10:45:11 ID:EnlI/sBx

●作戦其ノ参 夜ばい作戦●

 坂本の自室にて。
 時刻はもう宵も宵である。
 合鍵でこっそり忍びこんだペリーヌは、忍び足で坂本の眠るベッドに近づいていった。
 ただいま坂本はぐっすりと眠っている。
 それもそのはず。夕食にたっぷりと睡眠薬を盛っておいたのだ。

 坂本のたてる、すぅすぅと寝息が聞こえてくる。
 静かな夜である。それはいっそう際立つ。
 坂本がとてもやすらかな寝顔をしていることに、ペリーヌは驚きを隠せなかった。
 鬼畜な坂本のことがペリーヌは好きだ。そんなところに惚れている。
 けれどペリーヌは、こうしたあどけない坂本の寝顔も、また美しいと思う。
 いったいどんな夢を見ているのかしら?
 ペリーヌはそんなことを考えて、しばしのあいだ見入ってしまっていた。

「……キス、できそうですわね」
 あまりに無防備な坂本の寝顔に、ぽつりペリーヌの口からそんな言葉が漏れた。
 するとペリーヌは、顔をかあっと真っ赤に染まらせる。
「な、なにを言っているの、わたくしったら」
 その考えを打ち消すように、ペリーヌはぶんぶんと首を横に振る。
「で、でも……」
 まだまだ夜は長い。ちょっとくらいなら……
「そうですわ。これは少佐がちゃんと眠っているか確かめるために……」
 誰に言うわけでもないのにペリーヌはそう口にした。
 きっとそういうことなんだ。そういうことにしといてやってください。

 そしてペリーヌはそうっとそうっと、坂本の寝顔に自分の顔を近づけていった。
 ――すると、坂本のすぅという寝息がペリーヌの顔にかかった。
 ただの寝息ではない。蒔殺(じごろ)の寝息である。

「はふん」

 と、身を脱力させてしまうペリーヌ。
 坂本に倒れこみそうになって、寸でのところでなんとかそれは持ちこたえる。
「い、いけませんわ、わたくしったら……」
 そしてペリーヌはもう一度、坂本に顔を近づけていき――

「はふん」

 と、またもや寝息にやられてしまう。
「こんなことをしている暇は……夜は短し乙せよ乙女、ですわ」
 などと言いつつも、やはり顔を坂本へと近づけていき――

「はふん」

 と、やっぱり寝息にやられてしまう。
 もはや本来の目的なぞ、ペリーヌの頭からはすっかりぬけ落ちてしまっていた。

(まだまだ甘いな、ペリーヌ)
 薄目を開ける坂本。こうしたやりとりが朝まで続いた。
520名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 10:46:26 ID:EnlI/sBx

●作戦会議●

「どうしよう。坂本さんに『乙』するなんて絶対ムリだよ」
「しかも、もう時間もないよ」
 リミットである正午まで、もはや幾許もない。このままでは下の毛を剃られてしまう。
「こうなったら、三人で手を組むしかありませんわね」
 ペリーヌの言葉に、芳佳とルッキーニはコクリとうなずいた。
 一本の矢は折れやすい。でも三本の矢が集まれば、きっとあの坂本少佐にだって勝てるはず。

「あっ、そういえばリーネは?」
「誘ってみたけど断られちゃった。『私はしらない』って」
「今は猫の手も借りたい状況だといいますのに……」
「せっかくおっぱいが揉めるチャンスなのに。なんだか怒られちゃった」
「……芳佳、もしかしてそのこと、リーネにも言ったの?」
 芳佳はうなずく。なにか問題でもあったのだろうか?
「まったく、あなたときたら。乙女心のなんたるかがわかっていないんだから」
 ペリーヌの言葉に、ルッキーニもうんうんとうなずいた。
「えっ? どういうことですか、それ?」
 芳佳は疑問を口にするも、二人はやれやれという表情をするだけ。

 まあそんなわけで、最終作戦の火ぶたが切られた。



以上、とりあえずここまで。
続きは次のスレの埋めの時にでも。
なんか>>108とか>>386言われるから、ひねくれてこんなん書きました。
別に百合じゃないですね、すいません。

それと>>500さんにもGJを!新スレも平和でありますように。
521名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 10:47:54 ID:EnlI/sBx
うわっ、ギリで余った。
次スレはhttp://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1233735979/l50

これで埋まるか……?
522名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 10:50:25 ID:EnlI/sBx
ミスったorz
次スレはhttp://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1234400870/です

本当にごめんなさい。
523名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 11:08:47 ID:4sqFa/3T
おおお、もう次スレか、GJGJ!
流れ早くて追いつけてないけど後でじっくり読ませていただくよ!

48手ももうすぐ埋まりそうだな…
浜辺で追いかけっこをゲルトとヘルマで想像したらなんかふいた
524名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 11:18:41 ID:1HlYxH1z
まだ大分あまってるんじゃないの?
525名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 11:26:46 ID:Fzo+FeAj
じゃあ即興で1つ書いてくるね
526名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/12(木) 11:35:42 ID:0PgTr6uj
もったいないから次スレに書いてもいいのでは
527iTl0PYxu もっさんのおはなし 1/1
「にゃあーーーっ!ずるいよ、ハルトマンっ!」
「別にずるくないよー。それにルッキーニだってペリーヌの盗ったのは事実でしょ?
 自分がやられて嫌な事を人にやっちゃいけないなぁ〜」

授賞式の後、当然といえば当然ながらルッキーニが涙を浮かべて世界最高の名誉を手にしたエーリカに食って掛かった。
文字通り癇癪を起こしたルッキーニにエーリカはといえば、そんなのはどこ吹く風と言った様子であしらっている。
どころか、火に油を注ぐようなことを言って仲裁に入ろうとする周りの人間の手をさらに煩わせるのだった。

「あはは、大騒ぎだねー…芳佳ちゃん」
「うん、でもルッキーニちゃんには悪い事しちゃったな」
「そうだね、後で謝らないと」
「はっはっは!とんだ災難だったな!宮藤!」

蚊帳の外にいたリーネと芳佳の後ろから坂本がいつもの豪快な笑いを浮かべて現れる。

「そ、そうですね。…スースーするし、恥ずかしかったし」
「ふふ、でも可愛かったよ。坂本少佐の服着た芳佳ちゃん」
「ああ、中々似合っていたぞ宮藤」
「え?」

予期せぬ人物から賞賛を受けて、芳佳が愛嬌のある茶瞳をさらに丸くした。
言うなればそうだな。更なる賛辞を考えているのだろうか。次の言葉を期待して、無意識に芳佳の頬が熱くなる。

「馬子にも衣装というやつだな!はっはっはっはっは!」

その日の夕食、坂本の膳に盛られた飯の量が平時の半分だった事は言うまでもない。

おしまい