ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart15

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1名無しさん@秘密の花園
守りたいから私は飛ぶ!!パンツじゃないから恥ずかしくないもん!

●スタッフ
監督・アニメキャラデザイン:高村和宏     キャラクターデザイン原案:島田フミカネ
シリーズ構成:ストライカーユニット        助監督:八谷賢一
世界観設定・軍事考証:鈴木貴昭        メカデザイン・メカ総作監:寺尾洋之
キャラクター総作監:山川宏治・平田雄三   美術監督:小倉宏昌(小倉工房)
美術設定:松本浩樹(スタジオイースター)    カラーデザイン:甲斐けいこ・池田ひとみ
3D監督:下山博嗣                  撮影監督:江間常高
編集:三嶋章紀                   音響監督:吉田知弘
音響制作:楽音舎                  音楽:長岡成貢
音楽制作:コロムビアミュージックエンタテインメント
アニメーション制作:GONZO
原作:島田フミカネ&Projekt Kagonish(プロイエクト カーゴニッシュ)

●キャスト
宮藤芳佳(みやふじ よしか):福圓美里     坂本美緒(さかもと みお):千葉紗子
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ:田中理恵   リネット・ビショップ:名塚佳織
ペリーヌ・クロステルマン:沢城みゆき      エーリカ・ハルトマン:野川さくら
ゲルトルート・バルクホルン:園崎未恵     フランチェスカ・ルッキーニ:斎藤千和
シャーロット・E・イェーガー:小清水亜美    エイラ・イルマタル・ユーティライネン:仲井絵里香
サーニャ・V・リトヴャク:門脇舞以

●放送局
※放送は終了しました

●関連サイト
公式サイト:http://s-witch.cute.or.jp/
まとめwiki:http://www37.atwiki.jp/strike_witches/
人物呼称表:http://www37.atwiki.jp/strike_witches/pages/50.html
百合SSまとめサイト:http://lilystrikewitches.web.fc2.com/

●次スレ
次スレは>>970or480KB超を目安に、臨機応変に立てて下さい。
必要な事前準備等があれば、>>920or450KB超を目安にして下さい。

●前スレ
ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart14
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1229338863/
2名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:41:29 ID:nMBTlccy
Q.○○書いたんですけど投下してもいいですか?

A.どうぞ、ぜひ投下してください。
条件は「ストライクウィッチーズ」関連であること、
「百合」であることの二つのみです。
ジャンル、エロの有無、本編にないカップリングなどに関係なく、
このスレの住人はおいしく頂いております。
妄想だとか落書きだとか気にせずとにかく投下してみましょう。

ただし、SS専用スレではないので20レスを超えるような長編は事前に断りがあると吉です。
3名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:41:48 ID:oXMh/1Bg
4名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:41:51 ID:zi74O5Qz
5名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:42:25 ID:nMBTlccy
──リレーSSの手引き──

★基本ルール
○始める時は、リレーSSであることを宣言する。
○続ける人は宣言は不要だが、一行目に継承元の安価をつける。
○ただし、結末を書く場合は「次で終わっていいですか?」と訊いておく。
○継承先は指定できない。誰かが早い者勝ちで続きを書く。
○ただし自分自身の続きは書かない。最低2人は挟んでから。
○2レス以上にまたがらない。1レスでクールに。
○重複したら先に書いた方を優先する。
○作者名は名前欄に入れる。名無し希望は未入力でも可。
○リレー進行中は他のリレーは開始しない。
○もちろん普通のSSは、リレーの状況に関わらずどんどん投下してください。

★本文と書式
○語り手や文調はできるだけ継承する。唐突な視点変更は避ける。
○誤解を招きやすいため、科白にはキャラの名前をつける。(例:芳佳「おっぱい」)
○後に文が続く事を意識して、できるだけ色々な取り方ができる終わり方にする。
○「駄文失礼〜」「お目汚し〜」等の前書きやあとがきはナンセンスなので付けない。

★心構えと方針
○無理して面白くしようとしない。ナチュラルに妄想を爆発させるべし。
○不本意なカプの流れになっても泣かない。むしろ目覚めるべし。
○展開を強要したり口を挟まない。流れに身を委ねるべし。
○なかなか続きが来なくても焦らない。気長に有志を待つべし。
○多少の誤字脱字、設定違反、日本語おかしい文章には目を瞑る。スルーすべし。
○参加者はみな平等。新兵もエースもリレー主も一切特権はない。仲良くすべし。
○男はいらねえんだよ!ふたなりネタも自重すべし。
6名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:43:23 ID:vlCSxjlh
7名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:43:45 ID:nMBTlccy
おしまい。
スピード速すぎてお姉さんビックリだ。

遅くなったが、今日投下した職人みんなまとめて愛してる。
8oshiro:2008/12/21(日) 23:44:04 ID:+wOUD/QD


10秒以内に下記の赤い文字を
認証ページに貼り付け、
書き込みを済ませると、 続けて閲覧できます。
(10秒を超えた場合、もう一度やり直してください)

Please copy&paste the red characters (between " ") below into the login page,

and push the "書き込み" button to continue( if failed, please try again).

10秒内将以下?色文字(引号内的部分)?入???,并按下"書き込み",方可????。(如超??重新??)

"追加
http://2chnews.sagasi.info/upfile-id1221221.jpg
http://2chnews.sagasi.info/upfile-id1221222.jpg
http://2chnews.sagasi.info/upfile-id1221223.jpg"
9名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:46:42 ID:pdM74U24
>>1乙!
10名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:51:01 ID:Do5Sor1k
>>1ヲモットホメロー
11名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:57:28 ID:JCzvn3XY
>>1
12名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 00:00:32 ID:fNg/EP2G
私、乙したいんです! スレを立ててくれた>>1を、褒めたいんです!
13名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 00:13:19 ID:OGdS9JuY
>>1
もう新スレ・・これ始めたの水曜日なのに早すぎる・・
さて
書く→読み直す→修正→保存し忘れて消去→挫折→復活
となったので最終話投下します
あれ?なんか最初書いたと話が微妙に違う気が・・・
14名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 00:13:57 ID:OGdS9JuY
Plural-episode-7-


芳佳ちゃんを部屋に招き入れる
なんだか二人とも同じタイミングで会おうと思うなんて少し可笑しくて嬉しかった。

「さっ座って」
「うん」

そう言って二人でベットに座る
芳佳ちゃんとちゃんと話そうと思う
これからのことと私の事を
・・・でもなにから話そう
うーん
そう考えて先に芳佳ちゃんが口を開いた。

「・・・あのね・・・私リーネちゃんの事がすごく大好きで大切だったの。だからリーネちゃんが私をかばって怪我をした時すごくショックだったし
怪我をさせてしまった自分が許せなかった。だから今度は私がリーネちゃんを守るんだ!って思ったんだ。
だから今まで以上に訓練もしてネウロイとも戦った。・・・・・・・それがリーネちゃんのためだと思い込んでね。ひとりで空回りしてたんだ」

力なく笑う芳佳ちゃん
全部私のための行動・・・
でも私はその姿を見て早く記憶を取り戻そうと思ってしまった。
・・思った以上に心配を掛けてしまった。
こんなに大切に思われていたのに

うん、今度は私が話さないと

「ねぇ芳佳ちゃん・・・・私まだ気がついてからほんの少ししかたってないけど、その間でも芳佳ちゃんに迷惑かけっぱなしだったよね。
初めてあった時からお世話になりっぱなし、記憶が無くて周りは知らない人ばっかりで、それでいて自分のことさえ分からなかった。
でもね芳佳ちゃんが居たからがんばれたんだよ?一生懸命世話してくれて嬉しかった。
でも・・・・・私は・・・・・私が記憶を失ったことで芳佳ちゃんに罪悪感を持たせたくなくて・・・・・それで私も焦ったんだと思う。
ストライカーや銃を撃てばなにか思い出せる気がして・・・芳佳ちゃんの気も知らずに・・・勝手なことして・・・」

大切だから
相手の事を思ったから
だから私たちはすれ違ったんだ

「ごめんね・・・私は芳佳ちゃんを私で縛りたくなかったの。
芳佳ちゃんは優しいから記憶が戻るまでずっと私の事を気にしそうで・・・それでが怖くて・・・」
「・・・・」

私は芳佳ちゃんが好き
だから芳佳ちゃんが私の隣に居てくれるのは嬉しい
でもそれは私が記憶が無いからでは?そう考えてしまう
私は芳佳ちゃんと二人で居たい
昔を取り戻すより今を二人で生きたい
だから・・・

「ねぇ芳佳ちゃん・・・・今の私じゃだめかな?今の私は芳佳ちゃんの隣に居てもいいのかな?」


私の言葉を聞いた芳佳ちゃんはちょっと驚いてそれから優しい笑顔を向けてくれた

「今も昔も私は‘リーネちゃん‘が好きだよ」
15名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 00:14:27 ID:OGdS9JuY

これから二人でゆっくり歩めばいい
ゆっくりでいい
私達は焦る必要などもう無いんだから


「私も芳佳ちゃんが大好きだよ」

想いは口にしなきゃ伝わらない

「だから二人でゆっくり進もう?」
「うん」

私達は私達のスピードで歩めばいい
急ぐ必要なんかない

「えへへ、なんか照れるね」
「だね」

嬉しくてふわふわする
こんな気持ちは初めてだ

「・・・・・ねぇリーネちゃん私が今なにしたいか分かる?」

芳佳ちゃんが赤い顔をして尋ねてくる。
彼女がしたいことは多分きっと、私がしたいこと。
でも・・・

「んーなんだろ?」
「・・・・リーネちゃん分かってるのに言ってるよね?」
「うん。でも言葉にしなきゃ伝わらないよ?」
「むー・・・・ねぇ・・・・リーネちゃんキスしていい?」

その要望に私は迷うことなく応じ
唇を重ねた


 ◇ 


最近宮藤さんが前と同じようによく笑うようになってきた。
リーネさんも一緒だ。記憶を失う前となんら変わりがない
この数日前とは別人のようだ
どうやら私の不安は思い過ごしのようだ
今も二人で仲良く料理してる
16名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 00:14:58 ID:OGdS9JuY

「リーネさん宮藤さん」
「ミーナ隊長」
「ふふっ、二人ともなにか良いことでもあった?」
「えっ・・・・あっはい」
「なら良かったはここ数日のあなたたちは少し不安だったから」
「もう大丈夫です」
「そう。でも無理は駄目よ」
「はい」


「みんなにお礼言わないとね」
「うん」
「・・・・・リーネちゃん記憶はどう?」
「うーん今のところ変わりなしかぁ、訓練で身についてた事はなんとなく出来るんだけど」
「そっか・・・」
「・・・芳佳ちゃんあのね、記憶はねいつか戻ればいいよ。それよりも私はこれからの芳佳ちゃんとの未来のほうが大切なんだ」

だから私達はもう一度始めればいい
過去は確かに大切だと思う
でももっと大切な未来を二人で見ようと思う。
だから―――

「ねぇ今日はどうするの?」
「うーん、リーネちゃんはどうしたい?」
「えっーと、とりあえずその事を二人で話そうか」
「うん」

まずはその一歩を踏み出そうと思う。



end
17名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 00:15:31 ID:OGdS9JuY

あーすみません。
なんかすごい最後急速に終わっちゃって
途中で記憶を戻そうと思ったんですけど、やっぱ当初の予定通り記憶はそのままにしようことで急変更しました。
でもあんまりにも暗いBADENDになったので一応明るめなENDに。
やっぱり最初からある程度話し考えてないと無理ですね連載は思いつきで書くと最後に困った。
たぶん最初から読んだら話がフラフラしてると思います。
書いてないですけどこの後リーネは軍止めます、んで二人で仲良くブリタニアでブルーベリー園でもしてる予定です。

記憶喪失ネタはちょうど入れ替わるように二人も連載を始めたのでその方達へバトンタッチ
私はおとなしく短編に戻ってルッキーニの誕生日ネタでも書いときます。
それでは◆eIqG1vxHTMでした
18名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 01:02:37 ID:cslwxZmn
>>17
待ってました! 連載お疲れ様でした
記憶が戻らなかったけど最後は二人とも幸せそうでよかったです


後日談を勝手に妄想

「リーネちゃん、おっぱい揉んでいいかな?」
「え? でも恥ずかしいよ…」
「昔のリーネちゃんは揉ませてくれたんだよ?(嘘)」
「そ、そうなんだ… じゃあ、いいよ…」
19名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 02:20:26 ID:ZaK2SrSU
埋め、切れてしまった不甲斐ない
申し訳ない、眠いのであとで改めて
20名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 02:27:52 ID:bKHm9Sc7
>>1乙。相も変わらず1週間1スレペースか…恐ろしい

>>17
記憶が戻らないのは少し悲しいけどこれもありだよね
この二人ならそのくらいの障害は軽く超えていけそうだ

>>19
埋め乙です
楽しみに待ってる!待ってます!

んじゃその前に、日付変わってたけど自分もフリーズの絶望からなんとか書き直せたので投下
今更3巻ブックレットの表紙を元にエイラーニャで
211/5:2008/12/22(月) 02:28:24 ID:bKHm9Sc7
さて、どうしたものか…
なぜサーニャは私の服を…。

―――

今日は私よりサーニャが先に起きた。
珍しいこともあるんだな、とか思いながら私はサーニャが着替えるところを気付かれないように見守っていた。

…その結果

いくら寝惚けてるからって自分の制服と他人の制服間違えるかー?ほんとしょうがない子だな。
そんなことを考えてる間にもサーニャは私の服を着込んでいく。
ああ、これどうしよう…どうしようって注意するしかないよな…。
いや、でももう少しだけ見ていたい気もするぞ…。

スオムスの制服を着たサーニャ、ちょっと想像してみる
…アリ!見たい、是非見たい!

よし、気付くまでちょっと見ていよう…できれば全部着るまで気付かないでくれよー。
エイラの思惑通り、サーニャは着々とエイラの制服に身を纏っていく。
制服をしっかりボタンまで止め、ちゃっかり重ね履き用のズボンまでエイラのを手に取る。

お、おお…私がいつも履いているズボンが、サ、サーニャを、サーニャの下半身を!
そしてきっちり履き終わり、サーニャは完全にスオムスの制服を着込んでしまった。
こ、これは想像してたのより遥かに…ああもう、サーニャは何を着ても似合うナ!
が、さすがにここまできたらサーニャもいつもと何かが違う感じに気付いたようで。
「あれ、ズボン…白い。制服…青い。これって…?」
やっと気付いたカ。しかし全部着ないと気付かないってのもある意味凄いよな…。
さて、お楽しみもここで終わりカナ。早く制服返してもらうか。
そして柔らかい声でエイラはサーニャを呼び掛ける。

「おーいサーニャ、それ私の制服ダゾ。いくら寝惚けてるからって他人の服と間違えちゃダメじゃないかー」
「あっ、ほんとだ。…あれ、エイラ起きてたの?」
起きてたなら途中で教えてくれればよかったのに」
「い、イヤ、今!今起きたところだったんだヨ!そしたらサーニャが私の制服着てるもんだからびっくりしたんダゾ?」
「あ、そうなんだ。ごめんね、私寝惚けてたみたいでエイラの着ちゃって…」
「いいんダ、気にスンナって。
それにスオムスの制服も似合うしなサーニャは…」
「似合う…かな?自分じゃよくわからないけど」

しまった、心の中で言ったつもりが口にも出ていたようだ…
小さい声だったがサーニャは聞き逃さなかった

「あ、アア、凄い似合うゾ。サイズは私のだから少しブカブカだけどナ。
それに黒い服が多めだからナ、サーニャは。たまには明るめな色の服もいいと思うゾ?」
「でも私表情が暗いってよく言われるから…明るい色は似合わないと思う」
サーニャはそう言うと少し俯いてしまう。

「ツンツンメガネの言う事なんか気にスンナって。
それに明るい色の服を着ると表情も明るくなったりするんだゾ?明るい色ってのは気分も明るくしてくれるもんなんダ」
「そうなのかな?でも私明るい色の服って持ってないから…」
そう言ってサーニャはまた俯く。

「うーん、そっカァ…」
確かにサーニャが黒以外の服を着ているのはほとんど見たことがない。
黒が好き、というのは前に聞いていたがどうにも極端な感じがするよな…。
それに年頃の女の子なら絶対心のどこかでかわいい服を着てみたいと思っているものだ。
でもサーニャは非常におとなしいし、少し遠慮がちなところもある。
そういう服を着るのが恥ずかしいという気持ちもあるのだろう。
よし、それなら私がここで少し勇気を出して…
222/5:2008/12/22(月) 02:28:54 ID:bKHm9Sc7
「あ、あのさサーニャ、それなら今度の休みに一緒に街へ服を買いにでもいかないか?
私がサーニャに似合いそうなかわいいのを選んでやるヨ」
「えっ…でも、私かわいい服なんて似合わないって…」
「そんなことない、サーニャは絶対そういうの似合うサ!
サーニャに関してオーソリティな私が言うんだから信じていいゾ!」
自信満々の表情でそうエイラが言う。
そして自分の言った事に恥ずかしくなったのかエイラの顔が少し赤くなった。

「そっ、それに最近あまり出掛けたりする暇なかったダロ?
基地にばっかりいたってつまらないしナ」
「そうだね…エイラがそう言うなら
じゃあエイラ、お願いします」
サーニャは少し微笑みながらペコリと頭を下げた
「なんてことないって
それに笑顔があればきっとどんな服だって着こなせるゾ」
そう言って満足な顔をしたエイラ。
そして少ししてサーニャがまだ自分の制服を着たままだった事に気付く。

「…でさ、話変わるけどサーニャ、そろそろ私の制服をダナ…」
サーニャもエイラの制服を着ていたことをすっかり忘れていたようで、少し慌てて返事を返す。
「あっ、ごめんねエイラ。ちょっと待ってね、すぐ返すから」
そう言ってサーニャはエイラがきちんと畳んで布団に置いてあった自分の制服を手に取る。
…手に取ったところで、何故か少しの間サーニャの動きが止まる。

「サーニャどうしたんダ。制服に何か付いてたのカ?」

そうエイラに問い掛けられ、少ししてからサーニャが口を開く。

「ねえ、エイラ」
「ん、なんダ?」
「……私の服、着てみる?」

…え?今なんと?
私の福、きてる?ああなるほど、タロットか、タロットで占ってほしいのか。
そのくらいならお安い御用だ、何度でも占ってやるさ。
その一言にまともな思考ができなくなった私がそんなことを頭で展開してところでサーニャがもう一度語り掛けてくる。

「エイラ、私の制服…着てみる?」
「な、なななな、なんでそうなるんだヨ!
私は着たいなんて一言も言ってないゾ!?」
「うん・・・だって、せっかくだから。
それに、エイラ前に私のズボンを勝手に履いたことあったでしょ?だから着てみたいんじゃないかと思って」
前というのはハルトマン騒動のことだ。
ルッキーニが私のズボンを持っていってしまい、その際ルッキーニを追いかけるため私は苦渋の決断でサーニャのズボンを勝手に借りていってしまったのである。

「だ、だからあれは違うって言ったダロー!?
あの時は仕方なくダナ…」
「でも、それなら一言断ってくれればよかったのに…」
確かに勝手に履いていったのは悪かったと思ってる。
けど、夜間哨戒で疲れてるサーニャをそんなことで無理やり起こすなんてとても私にはとてもできなかった。
まあ、それでも勝手に借りた言い訳にはならないんだけど…。
「うん、だからそれは悪かったって…でもほんと仕方なかったんだよ、許してくれヨ…」
私はそう必死に謝る
けど、サーニャは怒ってるというよりなんか…それに、気のせいか頬も少し赤くなってるような
233/5:2008/12/22(月) 02:29:45 ID:bKHm9Sc7
「ううん、別に怒ってはいないの。私が寝てたのを起こしたくなかったってわかってるから…。
でも、エイラ黒いズボン似合ってたよね。だから、その…オラーシャの制服着たエイラを私が見てみたいかな…なんて」
「うっ…」
サーニャが見たい?
ということはスオムスの制服を着たサーニャを見たかった私と同じ気持ち…いやいや、私の気持ちと一緒にしちゃダメだろ。
サーニャがそんな疚しい気持ちがあるわけない。ただ純粋に興味があるだけだ。

「でもサイズとか合わないと思うゾ。サーニャより私のほうが背も少し高いしナ」
「うん、でも大丈夫、少しだけでいいから…ダメ…かな?」
おいおい、その上目遣いは反則だよ…かわいすぎるじゃないか。
サーニャにこんな風にお願いされたら私だけじゃなく人類でも拒否できる人間はまずいないと思う。。
拒否できるのなら恐らくそいつは人の子ではないだろう。
でも私は特にサーニャには弱い。
サーニャに頼まれたら何でも受け入れてしまうしサーニャに謝られたら何でも許してしまう。
仮にこんな風に死んでと言われたら正直断れるかどうか…そんなのありえないだろうけど。

「うぅ…わかったよ、でも今日だけだかんな!
ホ、ホントに今日だけだかんナ!」
「ありがとう、エイラ!」
そう言いながらサーニャが満面の笑みを見せる。
ああ、やっぱりサーニャは最高だ…私だけの天使だ。
この笑顔さえあればもう私は何もいらないよ…。
「じゃあはい、これ…」
「ん…あ、ああ」
そんなことを考えてる間に、サーニャは自分の制服を差し出した。
その顔はやっぱり少し赤くてどこか恥ずかしそうだ。
「じゃ、じゃあ少し恥ずかしいからちょっと後ろを向いててくれ
いいよって言うまで絶対振り向いちゃダメだからナ!」
「うん、わかった」
少し微笑むと、サーニャは言われた通り後ろを向いた。

こ、これがサーニャがいつも身に纏っている・・・そう思うと凄くドキドキしてきた。
そしてつい反射的に匂いを嗅いでしまう。
サーニャの匂いがする…クラクラしてしまいそうなほどにいい匂いだ。
って私は何やってるんだ!これじゃまるで変態じゃないか…。
エイラは頭をブンブン振って気を取り直す。
し、しかし本当に着ていいのか…?私色々大丈夫だろうか
下手すると理性が…いやしかしサーニャが見たいと言ってるんだからそれを抑えて着るしかない。
私にできることなら出来るだけサーニャの希望は叶えてあげたいからな。しかし自分で言うのもなんだが、甘いよなぁ…私。
覚悟を決めていよいよサーニャの服に袖を…心拍数がさらに上がる。

そしてまず上着を着る。
やっぱり少し小さいな。そしてその…胸がきつい。
だ、大丈夫だサーニャ、お前はまだまだこれからなんだから安心してていいんだぞ。
何故か心の中でサーニャを励ますエイラ。

そして重ね履き用のズボン、ベルトも付け終え。この瞬間エイラに衝撃が走った。
こっ…これは、服はすっかり冷えてしまってるのにサーニャの温もりを感じる。
そう、まるでサーニャに全身を包まれてるかのよう…。
それは凄く心地がよく、何故だか安心する。
244/5:2008/12/22(月) 02:30:48 ID:bKHm9Sc7
「…ハッ!」
「…?エイラどうかしたの?」
「あっ、い、いや何でもナイ何でもないゾ」
しまった、つい声が出てしまった…。
エイラは自分の呼吸が酷く乱れてる事に気付いた。
だ、大丈夫だよな?サーニャにバレてないよな…
とりあえず落ち着いて呼吸を整える。
よし…じゃあサーニャに…

「き、着替え終わったから振り向いていいゾ…サーニャ」
「うん…」
エイラが声を掛けると、サーニャは小さな声で返事を返し、ゆっくりと振り向いた。

「ど、どうだ?やっぱり私じゃ似合わないだろ?
それにサイズも合ってないし…」
「…」
エイラが自虐的な言葉を発したがサーニャは表情をピクリとも変えず何も反応しない。
ああ、やっぱり全然似合ってないから…。
そりゃそうだ、このオラーシャ軍の制服をあそこまで見事に着こなせる人間なんてサーニャくらいのものだ。
ああ、ガッカリさせちゃったかなあ…やっぱり着ない方がよかったかもしれない。
「……」

そんな事をエイラが考えてる間も、サーニャは全く動じぬまま。

…あれ、なんかサーニャの様子がおかしくないか?
なんというかその、まるで気絶してるかのような…。

「サ、サーニャ?どうかしたのか?」
「………」
「サーニャおい、どうしたんだよ。おいサーニャってば」
「…あっ」
声を掛け肩を揺すると、ようやくサーニャの意識が戻ってきたようだ。

「大丈夫かサーニャ、気を失ってたような感じになってたけど…」
「うん、大丈夫…
その、見とれちゃって…」
見とれる?何に。
何のことかわからず少し首を傾げてるともう一度サーニャが口を開く。

「私の服を着たエイラが凄く似合ってて…か、可愛くて…つい見とれちゃったの」
「あ…う…」

み、見とれるって私にかよ!?
サーニャが私に見とれるなんて…。
それに似合うはともかく可愛いだって?

「な、な、バカ!何言ってんダ!私が可愛いわけあるか!仮にそうだとしても100%服のおかげダ!」

顔がどんどん熱くなってくるのがわかる。
そりゃサーニャにこんなこと言われたら…ああ、今多分凄い変な顔してるんだろうなあ。

「ううん、服のおかげだけじゃないよ
そのエイラの長くて綺麗な髪と、透き通るほど白い肌が…
多分私より絶対似合ってるし、かわいい…」
サーニャの顔も凄く赤くなっている
そりゃそうだ、言われた方がこれだけ恥ずかしいんだ、言う方も恥ずかしいだろう
しかし髪とか肌とかサーニャは私の事そんな風に見てたのか…嬉しいような、恥ずかしいような…
255/6:2008/12/22(月) 02:31:28 ID:bKHm9Sc7
「そんなわけあるカ!そ、それならサーニャだって私よりスオムスの制服が似合ってるし私より全然かわいいゾ!」

あ、しまった
今勢いに任せてとんでもない返しをしてしまった気がする。
瞬間、少し赤みが引いてたサーニャの顔がまた茹でダコみたいに赤くなる。
しばしの沈黙に、気まずい空気が流れる。
「エイラ」
少ししてその沈黙をサーニャが破った。


「な、なんだ、サーニャ?」
「私の事をかわいいなんて言ってくれたの初めてだったよね」

確かにサーニャにこんなことを言ったことは今まで一度も無かった。
心の中ではいくらでも言えるのに、いざ本人と面を向かってとなると急に気恥ずかしくなり、言葉が出てこなくなるから、言えなかった。

「ずっと言ってほしかった…だから私、凄く嬉しくて、凄く幸せで…」

そう言うサーニャは胸に手を当てていて、本当に幸せそうで、その目には涙が浮かんでいるようにも見えて…

「エ、エイラ…?」

気が付くと私はサーニャを抱き締めていた。

「ゴメン、サーニャ」
「え?」
「私が臆病で勇気が無いから、サーニャを悲しませてしまってタ…
多分この性格は一生直らないと思う…でも今日からは、言うよ。頑張って、勇気を出してちゃんと口から」
今言ってることだってしていることだって本当は凄く恥ずかしい。
でも彼女が喜ぶなら、彼女の喜ぶ顔が見れるなら。

「…もう少しこうしててもいいカ?」
「うん…」

でも今の私にはまだ胸に秘めたこの想いを伝える勇気は無い。
それはまた、私にもっと大きな勇気と力がついたその時に…
だから今はこうしているだけでいいや。
今の私もサーニャと同じで凄く幸せだ。

そしてふとサーニャの顔を見てみると、驚いた表情をしながら何故か視線はドアの方へと向いていた。
私もサーニャが見ている方を向いてみ…
266/6:2008/12/22(月) 02:33:11 ID:bKHm9Sc7
「あちゃー、バレちゃったかしかしお前らこんな朝っぱらから何やってんだー?」
「なっ、なっ、シャ、シャーリー!?なんでそこにいるんだヨ!!」

そこにはドアの間からこっそりと私達を覗いてニヤニヤしているシャーリーがいた

「いやー飯の時間だっていうから2人を呼んでこいって言われたんだよ。そしたらまあ、面白いもんが見れちゃったよー」
「ウー…覗きなんて趣味が良いなんて言えないゾ!」
「いやー、ごめんごめん。でも2人の仲を邪魔しちゃ悪いと思ってさ」

私もサーニャも見られていたことを知り、顔が真っ赤になっている。

「というか一体いつから見ていたんダヨ!?」
「さあねぇ、まあいつからだっていいじゃん」
「ヨクネエヨ!」

いたずらっ子みたいな笑みを浮かべるシャーリー。
ああ、この笑顔がここまで憎らしいと思ったことはない…。

「しっかし…2人とも似合ってるねえ、それ」
「…エ?」

その瞬間、私はハッとした。
そして額から一滴の汗が垂れる。

「お互いの制服を着せ替えるなんてどんだけ仲いいんだよお前らー。ほんとにバカップルだな」
そうだ、私達お互いの制服を着たままだった。
しかしこれを見られたというのは非常に…

「まあ面白いから他の奴らにも聞かせてやるかー」
「わっ、バカ!それだけはやめてクレ!」
「にっひっひ、どうしようかなー?」
とか言いつつ既にに食堂に行く気満々なのが丸わかりだ


…結局、食堂へ行こうとするシャーリーを興奮状態だったため着替えるのをオラーシャ軍服のまま追い掛けてしまった姿をペリーヌに見られ、結局全員にバレた。
その後数日はみんなからからかわれ、その度に「私達をそんな目でミンナー!」等と叫び、追い払っていた
…サーニャもその度に顔を赤くしていたが、何故かまんざらでもなさそうだった。

―――――

以上です。レス数を間違えてしまった…申し訳ない
3巻手にした頃に書こうと思っていたはずが気がつけば4巻発売目前になってるなんて…
ブックレットは本当にネタの宝庫で妄想する身としてはありがたいばかりです
しかし書いてると職人の方々の凄さを改めて実感する…皆様GJです
27名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 05:40:47 ID:qOlUN3Ng
おはようございます。mxTTnzhmでございます。

>>17 ◆eIqG1vxHTM様
GJ! 色々なルートや終わり方が有って良いと思いますよ。

>>19
梅乙。続き楽しみにしてます。

>>26
GJ! これはいいエイラーニャですね。ニヤニヤさせていただきました。


さて、今回は前スレ>>482-483「luminescence」の続きになります。
前スレで感想を頂いた皆様のご希望にお応え出来るかどうかは分かりませんが……
「cycloid」どうぞ。
28cycloid 01/04:2008/12/22(月) 05:41:45 ID:qOlUN3Ng
基地に警報が鳴り響く。ネウロイの襲来、ウィッチーズ出撃を告げる「鬨の声」だ。
ブリーフィングもそこそこに、出撃を指示された人員は素早くストライカーを装備し、武器を握る。
「出撃だ!」
美緒の掛け声で、六機のウィッチが一斉に大空へと飛翔する。
前衛バルクホルン、ハルトマン。後衛はペリーヌとリーネ。
美緒は芳佳とロッテ(二機編隊)を組み、ネウロイを目指した。
『間もなくネウロイとの交戦に入るわ。十分注意して』
ミーナから無線で指示が飛ぶ。
「敵発見!」
司令所への応答の前に美緒が叫んだ。身構える一同。
「少佐、コアの発見を」
「分かった。バルクホルン、ハルトマン、あと二十秒したら突入……ま、待て!」
「少佐、何か?」
突入姿勢に入り掛かったトゥルーデが美緒を見る。美緒が珍しく戸惑いの表情を見せている。
「今回のネウロイ……相当厄介かも知れんな」
一同は、迫るネウロイを見る。
以前に遭遇したものと形は似て、円形の太い翼で楕円の本体を覆っている。
ゆっくり回転する円形の翼と、その翼を支える二本の支柱が交差する部分にコアの反応があった。
ネウロイの中央部構造体にコアの反応は無い。
しかし。
コアは二箇所有る、と美緒の魔眼が告げている。
その事を正直に告げると、一同は驚いた。
「コアが二箇所?」
「じゃあ二箇所同時に叩けばいいんじゃない?」
「出来るか?」
「無理なら片方ずつ潰せば良いんじゃないか?」
相談しているうちに、ネウロイが迫り、ビームを撃ち出してきた。
「迷ってる暇は無いな。よし、バルクホルン、ハルトマン、今東側を向いている方のコアから叩く。突入開始!」
「了解」
「行きますか」
トゥルーデとエーリカは共に急降下し、コア目指した。
「ペリーヌとリーネは掩護だ。二人とも、狙えるなら迷わず撃て」
「了解!」
「宮藤は私の直掩だ。ガードは任せたぞ」
「はい!」
見事なコンビネーション。訓練と幾度もの実戦の賜物と言うべきか。
あっと言う間にひとつコアが露出する。
「コアだ!」
急降下を終え、そのまま急上昇に移りながらコアを狙うエースふたり。その動きを見極め、援護射撃を繰り出すペリーヌ。
リーネはボーイズを構え、コアを一撃で粉砕すべく照準を合わせる。
時折飛んでくるビームを強力なシールドで全て防ぐ芳佳。
全員の攻撃が集中し、間もなくコアは破壊される。
だが、美緒の右目に映るコアは、奇妙な輝きを見せた。
「?」
コアは本来、宝石の様にほのかに赤く、僅かに白いものだ。それが攻撃を受けて砕けるまでの一瞬、不気味に青く光ったのだ。
「コア破壊!」
ネウロイは平然と空を飛んでいる。
「あれ、やっぱり倒せないよ」
「もうひとつ壊さないとダメか。面倒な」
「全員、待て!」
29cycloid 02/04:2008/12/22(月) 05:42:41 ID:qOlUN3Ng
美緒は全員を制した。魔眼が、美緒の直感が告げている。このままではまずい、と。
「全員、緊急回避行動だ! 急げ!」
美緒が叫び終わらぬうちに、ネウロイはそれまで溜めていた鬱憤を晴らすかの如く、猛烈なビームを幾筋にも渡って
繰り出してきた。全員のシールドが強固に弾くも、その衝撃か、またビームの独特のものか、猛烈な煙に覆われた。
「くっ、視界が!」
顔にまとわりつく煙を手で払うトゥルーデ。
「全機急上昇! ビームには十分注意しろ!」
美緒の指示で全機上空を目指す。
今まで居た空域はまるで煙幕が張られた様にどす黒く濁り、ネウロイの姿は何処にも見えなかった。
「少佐、ネウロイは?」
「それが……見えない。居なくなったのか」
「こんな短時間で撤退ですの?」
「全員油断するな。まだあの煙幕の中に居るかも知れん。隊列を組み直して警戒しろ」
「了解!」
しかし、数分経ち、海風で煙幕が流された時、ネウロイは居なかった。
「逃げたか……」
「ミーナ、付近にネウロイの反応は?」
『こちらでも反応をロストしたわ。深追いは禁物よ。とりあえず一旦帰還して』
「了解した。……いつ反撃されるか分からん、慎重に行くぞ」
「了解」
追撃を諦めた一同は隊列を崩さず、周囲を警戒しながら基地に戻った。

「コアがふたつ?」
ルッキーニを抱えたシャーリーが驚いた顔をしてみせる。
「ああ。確かにコアは二つあった。そして片方を破壊した途端、ヤツは慌てて逃げ出した」
美緒が説明する。
「やっぱり同時攻撃が良かったんじゃない?」
「しかし、我々六機だけでは心許ないぞ」
「そうだね。じゃあ、次出たら全員で行くってのは?」
「基地の守りは誰がするんだ」
「あ、そうか」
エーリカとトゥルーデの会話。大胆な思い付きと冷静な判断を言い合う二人。
「もしや、それが狙いで?」
ペリーヌがはっとした表情を作る。
「ネウロイがそんな回りくどい事するノカ?」
眠そうなサーニャを抱えたエイラが答える。
「……でも、現にコアが二つ有った、と」
ミーナは報告書を読み、首を傾げた。
「坂本少佐。コアの反応って、これは?」
「ああ。私の見間違いかも知れんが……コアが破壊される直前、青白く光った。今までコアが破壊される瞬間は
嫌と言う程見てきたが、こんな反応は今までに見た事がない」
「コアねえ……」
「青色だから、安全、とか」
リーネが思い付きで言うも一同の微妙な無言を受けて、ごめんなさい、としょげた。必死に慰める芳佳。
「うーむ。確かに、その光り方には何か理由が有るかもな」
「恐らくまた同じネウロイが来る筈。皆、十分に気を引き締めて」
ミーナは報告書をファイルにしまうと、全員に注意を促し、デブリーフィングを解散とした。
30cycloid 03/04:2008/12/22(月) 05:44:36 ID:qOlUN3Ng
その夜。美緒は部屋のベランダに立ち、海から緩く流れてくる夜風に当たっていた。
下弦の月が夜空に映える。
斜め後ろに佇むミーナの名を呼ぶ。
ほのかな月光に照らされた彼女の顔は、何処か憂いを帯びていた。
「どうしたの、美緒?」
静かに語りかけるミーナに背を向けたまま、美緒は月を見たまま、呟く様に口にした。
「私の魔眼だが……これも衰えてきたのかもな」
ミーナは驚きと、やっぱりと言う不安的中が混じった目をした。思わず気持ちがそのまま言葉になる。
「いきなり、なにを言うのかと思えば」
「ミーナも知ってるだろう。私はもう、ウィッチとしての限界は超えている。シールドも満足に張れず、
それでもコアを探す事ならと頑張って来たが……流石に今回ばかりは、私も訳が分からなくなりそうだ」
ひとつ溜め息をついたっきり黙ってしまう。ミーナの言葉を待っているのだろうか。
ミーナはそっと美緒の腕に手を触れ、言った。
「美緒らしくもないわね。弱気になったの?」
そっと手を重ねる美緒。
「いや。私自身の冷静な、客観的な判断だ」
「なら私の判断を言います、“坂本少佐”」
振り向いた美緒の顔は、心なしか迷いと翳(かげ)りが混じっていた。らしくもない、微かに潤む戸惑いの瞳。
ミーナはそんな美緒を諭し、優しく包み込む様に、言った。
「貴方の魔力は、確かに一部では衰えているけど……魔眼の輝きは昔と何一つ変わらないわ。貴方の瞳の輝きも」
美緒はミーナの言葉を聞くと、軽く瞼を閉じ下を向き、暫くしてから、再び月に目を向けた。
「そうか。まだやれる、と言う解釈で良いのか?」
「貴方がそうしたいなら、私は止めません」
ミーナはきっぱりと言い切った。
以前は拳銃を突きつけてでも止めろと言ったのに。ミーナも変わったな……、と内心呟くと、美緒は微笑した。
「感謝するよミーナ。お陰で少し、吹っ切れた」
美緒の顔色に、いつもの凛とした色が戻りつつあった。彼女は言葉を続けた。
「あの疑問も解けそうな気がするんだ」
「疑問?」
「例のネウロイ、ヤツのコアの光り方さ。それには、ひとつの賭けが必要になる」
「賭け、とは何かしら」
「同時にふたつのコアを露出させて、見極めたい。その為に、基地防衛の人員を少し回して欲しいんだ」
ミーナは思わず吹き出した。
「少しも何も……私達、たったの十一人よ?」
「そうか……。そうだったな」
「あと、以前やったでしょう? 私達二人で同時に魔力を発動させる事。これも試す価値、有ると思うわ」
「ああ。やってみよう。頼む、ミーナ」
らしくもない、とミーナは内心思った。“あの”美緒が私を頼り切っているなんて。
(頼ってくれるのは嬉しいけど……できれば貴方はいつもの貴方で居て欲しい)
これが私の本心、と完結させると、美緒の肩をそっと抱いた。
「美緒、もう部屋に戻りましょう。夜風に当たり過ぎると身体に悪いわ」
頷く美緒をそっと部屋の中へと誘うミーナ。
「少しミルクティーでも飲んで、温まりましょう。ブランデーを少し入れると、落ち着くわよ」
「ありがとう」
二人はベランダを後にした。
31cycloid 04/04:2008/12/22(月) 05:46:11 ID:qOlUN3Ng
果たして、昨日と同じ時間に、ネウロイは現れた。
今度は高度を大胆に低く取り、レーダーや監視網をかいくぐって基地に迫りつつあった。
「監視所から連絡です! ネウロイ、基地の至近距離まで到達!」
しかし、お世辞にも上出来とは言えぬ監視報告を受けたミーナは冷静だった。
「今回は運が良いわね」
意味が分からず絶句する係員を後目に、命令を出した。
「基地防衛に宛てる人員を、全員空に揚がらせます。急ぎ警報を!」
間もなく、ストライクウィッチーズ全員が大空へと飛翔した。基地までの距離、残り六マイル。
「今回は全部隊をシュバルム(小隊)に分割します。バルクホルン小隊は右方を、ハルトマン小隊は左方をそれぞれ同時に攻撃。
同タイミングでコアを露出させたら、一時攻撃を中断して。私と坂本少佐がコアを判定します。宮藤さんは私と坂本少佐の掩護を」
「了解!」
「ストライクウィッチーズ、攻撃開始」
ミーナの采配が吉と出るか凶と出るか。
バルクホルン小隊とハルトマン小隊はそれぞれ別方向から攻撃を仕掛け、見事にコアをあぶり出す。
ミーナと手を繋ぎ、魔力を同調させた美緒の魔眼の輝きが、増す。
左のコアが、一瞬青白く光った。
「左か……と言う事は右、右だ! バルクホルン小隊、直ちにコアを破壊しろ! ハルトマン小隊も右方に回り込んで攻撃を!」
「了解!」
「攻撃、来ます」
サーニャの魔導アンテナが輝きを増す。
「逃がすな! 何としてもコアを!」
トゥルーデはエースとしての貫禄か意地か、見事にコアを破壊してのけた。コアにヒビが入る瞬間、いつもと同じ輝きを発した。
コアが砕ける。左側のコアも同時に誘爆し、“心臓部”を壊されたネウロイは緩やかに下降し、爆発し、塵と消えた。
基地までの距離、残り三マイル。ミーナは大きく息を付いた。

美緒を見る。自分の務めを果たしてほっとしたのか、安堵の表情が窺える。同時にストライカーが咳き込む。
魔眼に魔力を集中し過ぎたのか、飛行脚の制動がいまひとつだ。ミーナはそっと寄り添い、肩を貸した。
「すまん、ミーナ」
「言ったでしょう。貴方の魔眼、その力は衰えていないって」
「ああ。少し、自信を取り戻せた気がする。ミーナ、お前のお陰だ。ありがとう」
「貴方の力になれて嬉しいわ」
「さあ、帰ろう。祝いに、あとで一杯……付き合ってくれるか?」
「あら、また?」
「嫌か?」
「喜んで」
役割を終えたウィッチ達がホバリングで近付いてきた。ミーナは美緒に肩を貸したまま言った。
「皆お疲れ様。任務完了です。ストライクウィッチーズ、帰還します」
「了解!」
美緒は帰還の途中、考えを巡らせていた。
(まだこの身体、この目……持つのなら……いけるところまで……もってくれよ……)
不思議と、ミーナを支える肩に力が入る。
「美緒?」
ミーナが美緒の顔を見た。
「いや。楽しみだと思ってな。そうは思わないか?」
「?」
美緒はミーナに微笑んでみせた。
ミーナも美緒の心を察したのか、微笑み返した。

end

----

以上です。
ちょっと短めですが普段「らしくない」美緒とミーナを書いてみました。

ではまた〜。
32名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 08:52:35 ID:oEJ/08ee
朝起きたら次スレに以降してる上既に何本も投下されてるとか、ここは桃源郷か
33名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 09:20:37 ID:N2ELPmVz
朝起きたら記憶喪失が完結してる
記憶が戻らないパターンは珍しいな
個人的には誰でもいいから書かれてない後日談を書いてほしい
34名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 11:01:50 ID:lxwPOn1z
投下のペースやっぱこのスレはやいなーみんなgj!




さあ某雑誌で芳佳がついにお姉ちゃんのおっぱいにまで魔の手をのばしたわけだが
35名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 12:07:51 ID:HNAAm66y
ハルトマンはもっと宮藤に揉まれるべき
36名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 13:48:17 ID:lxwPOn1z
>>35
ハルトマンは揉むときは強気なのに揉まれる側になると急に弱々しくなりそう
37名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 14:51:34 ID:V3gB2hqu
>>36
芳佳に揉まれて腰砕けになった所へ、影から様子を伺っていたお姉ちゃんが我慢しきれずに襲来。
38名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 14:55:51 ID:4ish3Tav
>>31
美緒ミーナ最高だわ〜〜!GJ!!!
やっぱかっこいいなもっさんは!!
39名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 16:28:35 ID:GUjkFEyG
>>31
あなたの美緒×ミーナには脱帽せざるを得ない。GJでした!
40名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 16:39:33 ID:K09/nrxf
>>31
美緒×ミーナもさることながら、戦闘の描写が上手いです。
思わず引き込まれました。
キャラも大人数で出ているのにかき分けができていてGJです!
41滝川浜田:2008/12/22(月) 16:53:28 ID:UulfBRLl
皆さんこんにちは。
そして>>1乙!もう最早この速度が普通になりましたなあ。

というわけで、相変わらずのシャッキーニ投下と参ります。
42滝川浜田 『戀情ロマネスク』:2008/12/22(月) 16:55:41 ID:UulfBRLl


――女の子は言いました。
貴方の事が大好きです。愛してます。

男の子は言いました。
僕も貴女の事が大好きです。

こうして二人は恋人になりました。

「…なんだこりゃ」


――戀情ロマネスク――


あたしは街の本屋でふと目に入った本を手に取った。

本の作者には申し訳ないけど、文もストーリーも稚拙過ぎてあたしの肌には合わない。

「ま、実際はこんな上手い事行かないわな…」

そうぼやきながら、あたしは本を棚に戻す。

…そう、こんな簡単に想いが伝わるなら、こんな苦労はしない。

ルッキーニへの片想いは、もう結構長い。
でも、あたしは自称ポーカーフェイス。
ルッキーニにはあたしの気持ちはバレてない、ハズ。

「シャーリー!」
「お、ルッキーニ。なんだ、なんかいい本あったか」
「ンニャ」
「そうか。じゃあ帰ろうか」
「うん。あ、シャーリー」
「ん?」
「手、繋ご」
「あ、ああ…///」

ルッキーニはやけに手を繋ぎたがる。
ルッキーニにしてみれば、友達と手を繋ぐのと同じ感覚なんだろうけど、あたしからしてみれば意味合いは大きく変わる。

(いつか、この手繋ぎが恋人繋ぎになるといいんだけどなあ…)

などと、我ながら柄じゃないと思いつつ、心の中でぼんやり思ったりする。

43滝川浜田 『戀情ロマネスク』:2008/12/22(月) 16:58:42 ID:UulfBRLl
「ねえ、シャーリーってさ」
「ん?」
「好きな人とかいる?」
「な、なんだよいきなり。お前には関係ないじゃん」
「ミーナ中佐が言ってたんだ。女の子は恋をすればするほど綺麗になるって」
「するとなんだ、あたしは綺麗って事か」
「うん!シャーリーはもとから美人だけど、最近はもっと、もーっと綺麗になってる気がするよ!」
「ハハハ、嬉しいな。お前にそんな事言われるなんて」
「で、どうなの?恋、してるの?」
「…………」

ルッキーニの瞳は綺麗だ。
でもその瞳は残酷だ。
お前はあたしの想いになんか気付いてない。
そんな瞳であたしを見ないでくれ…

…そうだよ、やっぱり実際はあの本みたいに上手くなんかいかない。
創作は創作、現実は現実、だ。

「……してるよ」
「やっぱり!」
「でもさ、そいつは多分あたしの気持ちには気付いてないね」
「なんで分かるの?」
「…なんで、かな。
…分かんない。分かんないけど、なんとなくそんな感じがする。
…多分、今のところあたしに勝ち目は無い」
「そうなんだ」
「そういうお前はどうなんだよ、ルッキーニ」
「ん〜〜〜…あたし今は恋とか分かんにゃい」
「…そっか」
「でもいつかシャーリーみたいに分かる日が来るのかな」

そうあっけらかんと話すルッキーニが少しだけ遠くに見える、そんな気がする。

…あたしは声を絞り出して答える。

「…来るよ。人を好きにならない人なんていない」
「…そう、なんだ」
「ま、お前はまだお子ちゃまだしな!まだまだ大人の世界に踏み込むのは早いって事だよ」
「ウニャ〜、また子供扱いした〜」
「ハハハ、そうやってむくれる所がお子ちゃまなんだよ」

あたしは繋いだ手の力を少しだけ強める。

44滝川浜田 『戀情ロマネスク』:2008/12/22(月) 17:00:27 ID:UulfBRLl



夕陽に暮れる街並み。
あたしとルッキーニの影が伸びる。

「なあ、ルッキーニ」
「ん、なに?」
「お前が今より少しだけ大きくなったらさ」
「うん」
「お前に伝えたい事があるんだ」
「なんだろ〜」
「アハハ、それまでにいろんな事を経験しとくと良いよ」
「ウニャ」

そう言うと、ルッキーニは手を離して、勝手に走り出す。

「シャーリーー!早く早くー!」
「ああ、分かってるって!そんなに急ぐと転ぶぞー!」

夕陽にルッキーニが照らされる。

――ああ、そうか。
そうなんだよな。

ルッキーニとは今はまだ“友達”でいい。

あの本みたいに、想いを伝える事は簡単なんかじゃないけど。
そんなに焦る必要も無いよな。

これから二人でいる時間の中で、あたしはどれだけルッキーニの事を知る事が出来るか。
ルッキーニはあたしの想いに気付いてくれるか。

それはまだ、未知数だけど。

それは多分、先の事だけど。


「ルッキーニ…いつかお前を撃ち落とすよ」

それまでは、片想いも悪くない。

「バーン」


そう言って、あたしは指で形作った“銃”を、ルッキーニに向けて撃った。


END

45滝川浜田:2008/12/22(月) 17:04:43 ID:UulfBRLl
以上です。
今更気付いた。自分は片想い話が好きだと。
今あるストックもこんなのばっかだ。
参ったぜ…

で、ルッキーニ誕生日用のSSにいろいろ付け足してたらビックリするくらい長くなってた。
削ろうと努力してあの長さ。
はい、自重は…しませんw

そしてみんなGJ!
いきなりこの勢いはやはり恐ろしい!

…というわけで爺はここら辺で…
46名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 17:50:34 ID:pDjPigGl
>>45
GJ 今回もおもしろかっよ。

最後は「バーン」て言ってから、指鉄砲のことに触れるより、個人的には
指を向けたことを書いて、最後に「バーン」の一行だけで締める感じが好みかな。
でも、とってもよかったよ。


47名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 20:47:11 ID:OGdS9JuY
毎日投下乙であります
じっちゃんの誕生日SSはかなり期待してる
48名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 21:22:26 ID:wI+E/1Cb
朝見なかっただけで次スレ+何本ものss…
なんだここ。なんだこの速さ。
みなさんまとめてGJ!!
49名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 21:31:11 ID:64augMIW
もうすぐ4巻発売だが百合的には別に期待もないか・・・表紙が神なくらいか
フミカネは神
50名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 21:39:39 ID:wI+E/1Cb
>>45
今更ながらじっちゃんのssタイトルが好きだ。センスが好きだ。文が好きだ。じっちゃんが好きだ。
…なんなんだ俺w
51名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 21:48:04 ID:agicg2pS
最終話投下します。タイトルは幸せの方程式と導かれる解答。


答えを見つけたいんだ。

私は答えを探している。

定数は私。

未知数は誰?

誰が未知数なら幸せになれるの?

誰となら一番幸せになれるの?

それが私の方程式。

幸せの方程式。

ーーーーーーーー

唇が重なり合う。

一体なにが起こっているんだ?
頭が全く働かない。
時も止まったみたいにゆっくりと流れている。
これは現実なのか?

でも、唇に伝わる感触だけはやけにリアルで、‘それ’が現実であることを強く主張していた。
私の唇に触れるニパの‘それ’は柔らかくて、そしてやたらと熱くて、私の胸を激しく焦がしていく。
私とニパとの決して短くはない相棒としての生活で、私の胸に育まれたのは友情なのか、それとも恋慕の情なのかは今の私には分からない。
しかし、私の心を激しく揺さぶったことは、ニパから与えられた‘それ’を決して不快とは思っていない、それどころか高鳴りさえ見せる私の心自身であった。

ニパの示した行為の意味は分かる。
私だってそこまでは鈍くはない。
それが意味するのは、ニパが並々ならぬ思いを秘めているということであろう。
しかも、ほかでもない私に対してそのベクトルは向いているということだ。

「ニッカさん!抜け駆けはよくありませんよ!それにエイラさんの初めてが…初めてが…。」
「ごめんな、エル姉。でも、私はあれ以上我慢できなかった…バカなイッルに現実を突きつけてやりたかったんだ!」

ニパとエル姉がやりとりを交わす。
あぁ、やはりそういうことなのか?
これがサーニャとエル姉、そしてニパの共通項なのか?
なら、3人とも私を…私を…。
52名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 21:48:56 ID:agicg2pS

「…エイラ?」

サーニャが私の腕を引っ張りながら呼びかけてくる。
サーニャ…つまりサーニャも私のこと…?

「なっ、なんだよサ…」

私の返答は途中で遮られた。
声を発することができない。
私の目には真っ赤なサーニャの顔しか映らない。
頭は沸騰しそうだし、胸だってガンガンと高鳴る。
なのに伝わる感触だけは決して鈍らない。
おとなしくて引っ込み思案…そんなサーニャが強く押し付けるように私の唇を貪る。
その与えられる衝撃だけが私に残された全てで、サーニャの‘それ’が私から離れると私の頭はすっかり混濁しきっていた。

「私も…。」

聞き取れなかったのか、それとも初めからなにも言っていないのか、それ以上は私の頭には入ってこず、朱に染まったサーニャの頬だけがやたらと目についた。

「エイラさん?」

呼びかける声は間違いなくエル姉のもので、これからなにをされるかだってもちろん理解はしていた。
けれども、それに抗うことなど私には出来はしない。
もしも自らの意志を潜り込ませたならば、それが意味するのは選択であり、弱くて脆い私の心ではそんなことには耐えきれそうもなかった。
エル姉から与えられた‘それ’は軽く、そして柔らかく、私の意識をどこまでも堕としていく。
時折歯茎をなぞるエル姉の舌の感触だけが私を引き起こし、エル姉がなんだか大人っぽく見える。
お互いに息が続かなくなり、エル姉の‘それ’が離された。

「頑張ってくださいね。」

エル姉から与えられた言葉が意味するのは私の返答であろうか。
当事者でありながら一歩引いたその姿勢はなんだかとてもエル姉らしく思えた。

あぁ、もうそろそろ私も限界だ。
すっかり頭にのぼった血と、肺の酸素を使い果たした苦しみを、多分しばらく逃げたかったのであろう私の心が後押しして私は意識を手放した。
53名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 21:49:29 ID:agicg2pS
ーーーーーーーー

重い瞼を無理やり持ち上げると、エル姉と目があった。

「おはようございます。寝坊ですよ?」

どうやら私が今枕にしているものはエル姉のももであるらしく、俗に言う膝枕という状態であった。

「エイラ…。」
「イッル!」

声が重なる。
2人はそれぞれ私の腕に抱きついていた。
目覚めたら全部夢でしたなんていう都合の良いことは起こりなどしてくれず、私を見つめる3人の頬はやはり赤い。

「のぼせたらしいですよ?」

エル姉がそう伝える。
あぁ、私が倒れたことか。

「なにがあったか覚えてますか?」

覚えてなかったならばどんなに幸せだったであろうか。
しかし私の記憶にはしっかりと伝わったものが刻まれている。

「私はエイラさんのことが好きですよ。それはもちろん家族としてもですが、
やはり一人の人間としてのアナタが好きです。私はノーマルだったはずなんですが、なんだかすっかりエイラさんに変えられてしまって…。」

エル姉から伝えられる。
分かってはいたものの、しっかりとした言葉をとられるとやはり胸に響く。

「私だってイッルが好きだ!いつだって私たちは一緒にやってきたじゃないか。
私はお前とこれからも歩いていきたいし、お前の背中も私が守りたい。誰にもお前のことを渡したくないんだ!」

ニパの言葉は真っ直ぐで、どうしようもないほど真っ直ぐで、深く心に突き刺さる。
私は…、私は…

「私はエイラのことが好き。いつだって私のことを一番に考えて自分のことなんてすっかり忘れてしまうエイラが好き。
どんなときだって私を受け止めてくれるエイラが好き。エイラにずっと見ていてほしいの。
エイラのこともずっと見ていたいの。いつだってそばにいてほしいの。私だってエイラの力になりたい。」

サーニャ…。
口数の少ないサーニャがこんなに思いを伝えてくれる。
真剣に真剣に思ってくれているんだろう。

「エイラさん!」
「イッル!」
「エイラ!」

私だって真剣にならなければいけないだろう。
真剣に答えを出さなければいけないんだ。


私は一体誰が好きなんだ?
エル姉?ニパ?サーニャ?
54名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 21:50:45 ID:agicg2pS
私はエル姉が好きだ。
それこそ隊に入ってからずっと好きだった。
寂しいときだって、悲しいときだって、辛いときだって、嬉しいときだって、幸せなときだって、いつだってエル姉がそばにいてくれた。
普段は全然頼りないのに、私が本当に困っているときには必死になって私を助けてくれた。
エル姉の意外と大きな背中がとても頼もしくて、そして大好きだった。
エル姉への思いは少しずつ、少しずつ積もっていって、私の胸にかけがえのないものを築いていったんだ。


私はニパが好きだ。
いつだって喧嘩ばかりしていたし、ニパにエル姉がとられてしまうんじゃないかと不安になったことだってある。
でも、私たちはかけがえのないパートナーだった。
ニパはすぐにトラブルや被弾で墜ちてしまうくせに、なんだかすごく頼もしくて、ニパを背中越しに感じるだけでどんなに絶望的な状況だってなんとかなるように思えた。
私たちが2人揃ったらできないことなんてなんにもない。
私たちは最高の関係だって信じていた。
いつからか、そんなニパはしっかりと私の心に居座って、決して捨てられないほど大きな存在になっていたんだ。


私はサーニャが好きだ。
初めて会ったとき、私は世の中にこんな可愛い人間がいるものなのかとびっくりしたものだった。
それにサーニャに惹かれたのは見た目だけじゃない。
毎日、眠たい目をこすりながら大変な夜間哨戒をこなしながら文句の一つも言わずに、みんなを守れることが嬉しいとサーニャは微笑む。
本当は戦争なんてしたくない。
でも、大好きな音楽だって我慢して、自分が戦わなくては他の人が苦しむことに
なるから戦うサーニャの優しさに、私は惹かれていったんだ。
いつだって私はサーニャを守りたい。
サーニャの守りたい世界を守りたかったんだ。
いつかサーニャがなんの心配もなくピアノを弾ける世界を私は作りたい。
そして、ずっとその隣にいたいんだ。

「エイラ?」
「エイラさん?」
「イッル?」

私に答えを求める3人の声。

「誰を選ぶの?」
「誰を選ぶんですか?」
「誰を選ぶんだ?」

何回も何回も考えて、私は答えにたどり着いたんだ。

「答えなんてだせるわけないじゃないカー!!!!!!」

3人から視線が刺さる。

「私は皆好きなんダ!!嫌いだったら悩むもんカ!!私は誰かを選ぶなんて出来ナイ!!
だってサーニャもニパもエル姉も過ぎなんダ!大好きなんダ!!私は誰かを選ぶぐらいなら全員に嫌われる方を選ぶヨ!!」
55名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 21:52:20 ID:agicg2pS
誰かを選ぶってことは誰かを捨てるってことだ。
それなら私は迷わず自分を捨てる。
サーニャにもニパにもエル姉にも嫌われたって仕方ない。
だって自分が言っていることは全員選ぶのとおんなじことだ。
そんなに汚い私のことを好きにさせてしまった…騙した私が悪いんだ。
ぶん殴られる覚悟だってできている。
さぁ、私を思い切り罵ればいい!!

「イッルのバカ!」
「エイラのバカ!」
「エイラさんの大バカ!」

大好きな3人に罵られるのは胸に堪えるけど、弱い私が悪いんだ…。

「嫌いになれるならとっくに嫌いになってるよ!!」
「最初から私はそんなダメな人だとしって好きになったんだよ?」
「エイラさんのこと嫌いになれる分けないじゃないですかー!」

あれ…なんだか涙が零れてきたよ。

「私はずっと誰かを選べないかもしれないゾ?それでもいいのカ!?」

言葉を絞り出す。

「「「それなら今から延長戦ってことで!!!」」」

えっ…!?

「もう許してくれヨー!!」

そういって叫ぶ私の頬は、なんだか緩んでいた。

ーーーーーーーー

幸せの方程式。

定数は私。

未知数は誰?

私の当てはめた未知数はサーニャ+ニパ+エル姉。

出てきた答えが正しいのかはきっとずっと分からない。

でも、今、私は幸せだってことは確かだ。

幸せの方程式。

あなたならなにを当てはめる?

Fin.
56名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 21:59:35 ID:agicg2pS
皆様本日もGJでございます!
なんだか割かし長い連載になってしまって申し訳ない。
結構長い続きを待っていてくださった方がもし居たら本当に感謝です。
とりあえず本当は4人デートが書きたかったので後日的なのは書きたいと思うんだが…
というか幸せ幸せしたのが書きたい。

とりあえず最近はエイラとニッカのカプならエイッカだからもれなくエルマさんも付いてくるじゃん!とか思っているバカです。
あぁでもこんな妄想はssにはならんのよね。
とりあえずエイラーニャのみを書くと微エロのレッテルを貼られるジンクスを解消したいと思っているRU1ZZ/dhでした。
57名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 22:03:46 ID:RDctvI/v
>>56
タイトルだけで鳥肌が立った、何という神作
GJ!!今までの連載で一番面白かった!!ギャグの狭間で見え隠れしていた感情のアレやソレがここに来てふううおおおああああ!!って感じです
だが結論は出ねえのかよちくしょおおおおおん(AAry と思ったら後日談とな!?わっふるわっふる

ところでスレが変わるたびに誰かが提案しては数レスだけついて流されていくリレーSSの話だけど
せっかく501本到達したんだしそろそろ何かやらないか?と当時振りそこなった話題を振ってみるテスト
人もそこそこ入れ替わってるみたいだし、part15ってキリもいいし、今の勢いならあのカオスの権化をもう一度できるはず……!!
58名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 22:15:05 ID:mgcTVyG1
>>56
何ともエイラさんらしい、良い答えだ
全員のことを考えられて、全員に優しいそんなエイラさんが俺も大好きです
しかしこの三人何だかんだで仲良いから一夫多妻でも別に問題無いなw
長編乙でした。GJです!
59名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 22:15:47 ID:ls8ElZIr
>>56
まさしく「ハーレムED」
あなたが神か?
60名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 22:23:12 ID:cj7HK+Sj
>>56
携帯の待ち受けを機能重視なものから、エル姉に膝枕されて腕にはサーニャとニパが抱きついてるあの絵に変えたとたん最終回来てしまった…。
エイラさんマジハーレム
アニメが終わってしまった時の気分だ…。もっと読みたい!もっと困っているエイラさんが見たい!
なので番外編wktkして待ってる!
最後になりましたが本編完結乙&GJ!!
61名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 22:26:27 ID:/0h2vml/
>>56
お疲れ様です。そしてGJです。毎度楽しませてもらいました。
大いに笑わせてもらいました。しかし
>「最初から私はそんなダメな人だとしって好きになったんだよ?」
何気にひどいw
62名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 22:37:41 ID:wbQ6OKaG
>>56
三人のことをちゃんと考えてるのがエイラさんらしいw
良い終わり方でした。このシリーズ楽しみでしたよ。GJ!
微エロは突き進んでみるというのはどうでしょうw

遅ればせながら>>17乙でした
芳リネがお互いを思って支えあう描写がとてもよかったですよ。GJ!
ブルーベリー園読んでみたいですw 芳リネに似合いそう。

>>26もGJです!
エイラニャの気恥ずかしいほどのいちゃいちゃは大好きだw
気持ちを確認しあってるエイラさんが幸せそうで素敵ですが、
サーニャ服着てるときのエイラは別の意味で幸せな顔してるんだろうなぁw
63名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 22:42:57 ID:yIftZE1H
新スレ早々すごい投下ペースですね
皆さんGJです!

偶然にも前スレ>>491さんの作品が>>17さんの作品の後日談に見えなくもないですね
64名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 00:14:04 ID:1/aGb1ef
こんばんは。mxTTnzhmでございます。

>>45御大
GJ! 相変わらずのクオリティに脱帽です。

>>56 RU1ZZ/dh様
GJ! ハーレムEDにニヤニヤさせて頂きました。この続きも気になりますw


さて、季節はクリスマスもイブイブ、と言う事で書いてみました。
ルッキーニ誕生日に1日先駆けて記念? と言う事でひとつ。
ちょっとフライング気味ですが、どうぞ。
65christmas panic 01/07:2008/12/23(火) 00:15:13 ID:1/aGb1ef
ルッキーニのニヤニヤ顔を前に、お堅いカールスラント人は至って平静な顔で言ってのけた。
「クリスマス? 特に何もないぞ」
そんなトゥルーデを前に、げんなりするルッキーニ。
「ヴェー つまんな〜い。それにあたしの誕生日、明日のイブの日なんだから! 祝ってよ!」
「それはたまたまお前の誕生日とクリスマスが近いだけで、いつもと同じく訓練、哨戒、それぞれの……」
「これだから堅物は〜。年に一度の記念日なんだよ?」
シャーリーがいじけるルッキーニの肩を掴んで身を乗り出してきた。ルッキーニも負けじと声を張り上げる。
「そうそう。あたしの国だと、明後日の二十五日から来月まで、ずーっとお祝いなんだよ?」
「随分と長過ぎないか」
「とにかくおめでとうな。せめてルッキーニの祝いはしないとな」
シャーリーがルッキーニを抱いたまま、椅子にもたれて呟く。
「シャーリーなら何でも良いよ?」
「おいおい」
「クリスマス、か……そう言えば、入院中のクリスには何もしてやれなかったな」
「ちょっと。私は?」
トゥルーデの袖を引っ張るエーリカ。
「エーリカ、お前の事は、きちんと考えているぞ?」
「ホント?」
にやけるエーリカ。何かを企んでいる様で微妙に怖い笑みだ。
「堅物さんよ。あんたの国にもクリスマスの行事くらいあるだろ?」
シャーリーがトゥルーデの脇をつつく。
「まあ……カールスラントのある地方では、十二月六日が聖なる日で、子供はお祝いを貰う事になっているが」
「ゲゲゲ! もうとっくに過ぎちゃったじゃん!」
「別に何もやらんぞ?」
「えええ? そんなのヤダー!」
「お姉ちゃん、何かちょうだ〜い」
「お姉ちゃ〜ん」
「お姉ちゃん!」
「お前ら揃いも揃ってやめんか!」
冷やかし半分のシャーリーとルッキーニ、そしてエーリカを前に、顔を真っ赤にして否定する“お姉ちゃん”。
「じゃあシャーリー、何かちょうだい!」
「あたしの国だとちょうど二十五日がお祝い。その辺はブリタニアと一緒かな」
シャーリーがルッキーニをあやしながら言う。
「じゃあルッキーニちゃん、ケーキ作ろうか」
芳佳が提案する。
「ケーキ?」
「欧州では、クリスマスにケーキ作って祝う習慣があるって、リーネちゃんから聞いたけど」
「確かに、欧州も地方によっては色々有るよね」
エーリカがのほほんと言い、トゥルーデが思いだしたかの様に呟く。
「言われてみれば……カールスラントにも、確かに、三トンもの巨大なケーキをクリスマスの為に三週間掛けて焼き上げ
街の皆に振る舞うと言う行事が有ってだな……」
「スケール大きいですね」
苦笑いする芳佳。
「流石にここでそんなでかいのは作れないから……まあ、小さいのだったら」
「トゥルーデ、ケーキ作れるの?」
「な、何を言う? 作れるぞ。簡単なものなら幾つか……」
「ケーキだったら、私に任せてください。ブリタニアのお菓子は世界一ですから」
リーネが微笑む。
「お待ちなさい! わたくしの国ガリアの誇る繊細かつ優雅な菓子に、ブリタニアの野暮った〜いケーキが勝てるのかしら?」
「じゃあペリーヌさん、ひとつ作って貰えませんか?」
芳佳が普通に頼んださりげない一言が、料理下手のペリーヌにブーメランの如く襲い掛かる。
「わ、わたくし……、急用を思い付きましてよ」
「ちょっとペリーヌさん、何処行くんですか!」
「芳佳ちゃん、みんなで作ろう? その方が楽しいよ」
「そうだね。みんなで作ろう」
66christmas panic 02/07:2008/12/23(火) 00:16:19 ID:1/aGb1ef
「私が教えてあげる」
珍しく乗り気と言うかノリノリのリーネ。いつもはどちらかと言うと引っ込み思案気味な彼女とは思えないセリフ。
やはり自分の得意分野となると士気も上がるのか。もしくは芳佳を前にして目の色が変わっているのかは分からない。
「ありがとうリーネちゃん! 皆さんもどうです?」
「私達は全然オッケーだよ。ねえトゥルーデ?」
「まあ……少し手伝う位なら」
カールスラント組も加わる。
「手伝い位なら、わたくしもやってあげてもよろしくてよ?」
「ペリーヌさん、いつの間に戻ってきたんですか?」
「あたしらも入れてくれよ。楽しそうじゃん」
「ウニャー あたしもやるやる!」
シャーリーとルッキーニが挙手する。
そしていつの間に紛れ込んで居たのか、北欧カップルも話を聞きつけてロビーにやって来た。
「サーニャ、どうする?」
「私も……」
「ヨシ! じゃあ私達もヤル!」
サーニャの手を取り、一緒に挙げてアピールするエイラ。
「いいですね! 皆さんでやりましょう!」
「いいねー」

物陰で、そんな隊員達の様子を眺めている者が一人。
美緒だった。
料理……考えただけで寒気がする。
「美緒?」
背後で名を呼ばれ、ぎくりとして振り返る。ミーナだった。
「今から用事があってロンドンに行くんだけれど、何か欲しいものとか有る? ……どうしたの、顔青いわよ?」
「いや何でもない、大丈夫だ。行ってきてくれ。隊の事は私が引き受ける」
「そう。じゃあよろしくね。すぐに戻るわ」
「分かった」
美緒はふうと溜め息をつくと、ミーナの執務室へと向かった。とりあえず口実は出来た。……口実は。

材料をてきぱきと準備しながら、リーネは皆に教える。
「ブリタニアでは、サンタさんが二十五日にプレゼントを持ってくるんですよ?」
「あたしの国もそうだ」
「ロマーニャは一月六日。最終日だよ」
「それじゃお正月過ぎちゃうね……」
「あたしは今ブリタニアに居るから、まずこっちでプレゼント貰って、後でロマーニャ行ってもう一度プレゼントを……」
「二度も貰うつもりかよ? だめだめ、どっちかひとつで十分だ」
「ヤダー! ふたつ!」
「欲張り過ぎると、悪いサンタにこらしめられるよ?」
エーリカがにやける。
「何それ?」
「カールスラントのサンタは双子でね、赤白の服を着た良いサンタと、黒と茶色の服を着た悪いサンタが居て……
悪い子にはお仕置きするんだよ?」
「仕置人がやって来るんですか!? ……カールスラントって恐ろしい国なんですね」
「ミヤフジ、何か勘違いしてない?」
「いえ、別にっ」
「双子のサンタか。まさにエーリカとウルスラだな。但し二人はどっちも“悪魔的”な事が相違点だが」
「トゥルーデ、何よそれ?」
「ホメてるんだぞ?」
「ホントに?」
67christmas panic 03/07:2008/12/23(火) 00:17:56 ID:1/aGb1ef
「さて、今回のケーキのレシピです。クリスマスと言う事で、見た目も華やかなフルーツデコレーションケーキを
作ります。意外と簡単ですけど、これがまた奥深くて良いんですよ?」
「なんか美味しそうだね、リーネちゃん」
「うん。とっても美味しいよ?」
リーネは早速ケーキのスポンジから作り始めた。卵に牛乳、小麦粉、砂糖を用意し、順にかき混ぜ、足していく。
かき混ぜる様子はとてもリズミカルで、音楽を奏でるか、子供をあやしている様にも見える。
リーネは手際よく作業をしながら、工程を説明していく。
「で、ここでよ〜くかき混ぜて……」
「そこにこの秘密の目薬を一滴」
リーネはぼけっと見ている一同を見ると、手伝いの指示を出す。
「あ、皆さんは、ホイップとシロップ、フルーツの準備をお願いします」
「どれ、貸してみろ。私がホイップを」
「だめだめ、トゥルーデは力入り過ぎてホイップへたれちゃうよ。貸して貸して。こうしてかき混ぜて……謎の液体をひとすくい」
「ん?」
「気にしない気にしない」
「フルーツのカットなら、このわたくしが……」
「手震えてるゾ。大丈夫カ?」
「邪魔しないでくださいまし」
「まあそう言うなヨ。ほらサーニャ、適当にカットしていこウ」
「うん」
「そうそう気楽にね〜。こうして切ったフルーツに、酸化防止にこのレモンと未知の秘薬を小さじ一混ぜてオッケー」
「シロップは……こんなもんでいいかなリーネちゃん?」
「この舶来の軟膏をほんの少し溶かせば……」
「うん、大丈夫」

やがてスポンジが焼けた。
甘〜い匂いが台所中に漂い、皆はまず香りを楽しんだ。冷めたところで適当な大きさに切り分け、形をつくり、
スポンジ表面にシロップを塗り、上にホイップを塗りつけ、フルーツをはさみ、上をまた綺麗にデコレートしていく。
「デコレートこそ、わたくしの腕の見せ所でしてよ?」
「並べるだけじゃん」
「お黙りなさい! このわたくしのお祖母様から受け継いだ伝統のガリア的美麗なセンスが……」
「ハイハイその何ちゃらセンスとやらでぱぱっとやってくれヨ」
「全く……」
「ブルーベリーが実家から届いてますから、存分に加えて下さいね」
「すごいね。色も鮮やかで、お店で売ってるのと同じだよ」
芳佳の言葉に、横でホイップを美しく絞り形にしながら、リーネは微笑んだ。
「これくらいは、出来ないと」
三段の高さになったケーキ。ちょっとしたクリスマス気分だ。手作りの緑と赤の飾りを付けて、気分もそれらしくなる。
「出来た!」
「オオー。凄いな、サーニャ」
「うん……」
「へえ、立派だねえ」
「ルッキーニちゃんのお祝いと、クリスマスのお祝いを兼ねてですけど」
「やったー。早速味見しよう?」
「おい待て。クリスマスは明日だぞ?」
「今日あたしの誕生日だもん! いいじゃん」
「どうする?」
うーんと考える一同。
「まあ、良いんじゃない? ちょうど休憩で午後のお茶の時間だし?」
「あれ、ミーナ中佐と坂本さんは?」
「中佐はロンドンまで用事。少佐は中佐の代理で執務室か司令所に詰めてる筈」
「じゃあ、とりあえずおやつって事で食べましょうか。二人の分は残しておいて」
「よし、いいね」
「しかし……」
トゥルーデが呟いた。
「作業工程の端々でお前の奇行を見たが……エーリカ、何だあれは?」
「ん? 何が〜?」
ふふ〜ん、と謎の笑みを漏らすエーリカ。
こういう顔をする時が危ないんだ、とトゥルーデは内心思ったが、口には出さなかった。
68christmas panic 04/07:2008/12/23(火) 00:19:00 ID:1/aGb1ef
皆はまずケーキを背景に全員で記念写真を撮る……勿論お祝いと言う事でルッキーニを真ん中に持ってきて……
ルッキーニ本人のリクエストでシャーリーがお姫様だっこをして……それを見て薄くにやけるトゥルーデがカメラに収めた。
ケーキをめいめいに取り分け、かしましいお喋りと共に会食スタート。紅茶の用意も完璧、ちょっとした豪華なイブ前のおやつだ。
「いっただき〜」
ルッキーニとエーリカが先陣を切って食べ始める。
そんな中ひとり、先程のエーリカの謎の行動を危惧し、ケーキを恐る恐る口にするトゥルーデ。
「ん? 割と普通……と言うか上出来だぞ。これはうまいな」
素直に感想を述べる。リーネは笑顔で
「ありがとうございます。みんなで頑張って作ったかいがありましたね」
と答えた。
ルッキーニは勢い良くぱくぱくとケーキを食べている。
「おいしー! リーネありがとー」
「いえいえ」
「ほら口、クリーム付いてるぞ?」
シャーリーがハンカチでルッキーニの口の周りを拭う。
「サーニャ、これうまいな」
「うん」
「好きなフルーツ有ったら私のをあげるゾ?」
「ブルーベリー……」
「ヨシ。どんどん食べろヨ」
「ありがとう、エイラ」
「エイラさん優しいですね」
「そ、そんなんじゃネエヨ」
「リーネ、将来ケーキ屋でも開いたらどうよ? ブリタニア料理はアレだけど、ケーキと菓子は美味いからさ。あと紅茶」
シャーリーの言葉に、曖昧な笑みで応えるリーネ。
「そうだよリーネちゃん。リーネちゃんの作るケーキなら、私毎日食べたいな」
芳佳が目を輝かせて言った。
「毎日は……ちょっと太るよ?」

突然、それまで黙々と食べていたペリーヌが顔を真っ赤にして立ち上がった。
そして尻にロケットが付いたかの様に、猛烈な勢いで何処かへ走り去ってしまった。
「どうしたんだあいつ?」
「さあ……」
「まあいいや、とにかく食べよう」
一同は首を捻ったが、とりあえず目前のケーキに集中した。かなり大きく作ったケーキもあれよあれよと言う間に無くなり、
最初に取り分けてしまっておいたミーナと美緒の分以外、殆ど無くなってしまった。
「うえ〜ん、もっとたべた〜いよぉ」
「無理言わない。基地の中でこんなにうまいケーキ食えただけでいいじゃんか」
「シャーリー、プレゼントぉ」
「明日になったらな」
「今ぁ、欲しいぃ〜」
「あのなぁ〜」
次第にシャーリーとルッキーニの声が間延びしてくる。
二人して最後の一口を食べ終わる。
「じゃあいいも〜ん。シャーリー、食べるからぁ〜」
言ったルッキーニに、ぴょこっと耳と、尻尾が生える。
「あたしも……なんか、お前見てて、なんだ、その、食べ……」
シャーリーの身体にも異変が起きた。同じ様に耳と尻尾が生える。そして何処か挙動不審。
「うが〜」
ルッキーニは小さく吠えると、シャーリーを押し倒した。勢いでそのまま床をごろごろと転がり、食堂の端に着くと、
二人揃ってお互いに唇を這わせ、唇を重ね、服をむしり取り……ケーキに負けぬ甘い声を遠慮なく出し……
ふたりだけの幸せの中へ。
69christmas panic 05/07:2008/12/23(火) 00:19:55 ID:1/aGb1ef
だがそんな事にはお構いなく、皆は変わらぬ様子でケーキを食べている。
「美味しいね、リーネちゃん」
芳佳がリーネを見て言った。目がとろんとしている。薄く濁り、潤んだ目は、何処か輝きが失せ、瞳孔が開ききっている。
リーネも芳佳を見た。同じ目をしている。
「芳佳ちゃん、美味しそう」
「リーネちゃんも、美味しそう」
二人揃って使い魔の耳と尻尾が出る。同時にゆるゆると抱き合い、椅子ごと床に倒れ……テーブルの下で、もぞもぞと服を脱がし、
キスを交わし、首を舐め、耳の裏を舐め、胸を揉み、また舐める。お互いの甘い声が周囲に漏れるも、お構いなし。
段々と行為はエスカレートし、弾む息と声が高くなる。

勿論、他の連中も我関せずと言った具合だ。
サーニャはケーキの最後の一口をぱくりと食べると耳と尻尾を出し、寝惚け眼に近い目でエイラを見る。
ちろっと、エイラの頬を舐めた。
エイラは電撃が走ったかの様にびくりとし、勢いで尻尾と耳が出る。
そのままサーニャを見ると、ガッと彼女をひっつかみ……まるで子供を口にくわえて巣に戻る親狐の如く……
サーニャを抱えたまま、ダッシュで自室へと籠もってしまった。そこでその後二人に何が起きたかは分からない。

トゥルーデはそんな中、一人だけ辛うじて正気を保っていた。身体が動かない。いや、動いてはいる。
周囲の状況にも動じず平然とケーキを口にし、紅茶を一口飲んでいる。
だがそれはトゥルーデの“理性”としての第三者的な視点で、“野性”の彼女はとうに耳と尻尾を生やし、
同じ状態にあるエーリカの事を、虎視眈々と狙っている。
そして同時に、エーリカにも狙われている。
(何でこんな事に……やっぱり、あのエーリカが仕込んだ謎の薬のせいだな)
視界内を見る。方々でえらいムチャクチャな事になっているが、誰も他人の目など気にしない。
(お前ら揃いも揃って……。てかリベリアンお前、それは年齢的に犯罪的行為だろっ!)
突っ込むも、言葉に出ないのが悔しい。
(エイラはサーニャをくわえてどっか行ってしまうし……しかし、何故皆、使い魔の耳と尻尾が? 何故だ? エーリカ?)
「ケーキうまいな、エーリカ」
(そうじゃない! 私が言いたいのはそう言う事じゃない!)
思考と実際の発言が相当にズレ、また、理性の欠片も段々と野性の本能に押され、消えかかる。
(くそっ、これじゃあこの隊は戦わずして全滅だ……ミーナと少佐に見られたらどんな目に遭うか)
「楽しいな、エーリカ」
「だね。トゥルーデ」
エーリカが微笑む。完全に目に光が無く、どろっと濁った目をしている。瞳の奥の深淵が、語りかける。
まずい、まずすぎる。エーリカまで毒されている。
しかしエーリカの瞳に写る自分の姿を見て驚愕した。
(なんて事だ。私まで同じ目、同じ顔をしている!)
トゥルーデの理性はもう僅かだった。
(どうにかしないと……どうにか……)
「エーリカ……」
「トゥルーデ……お姉ちゃん……愛してるから。だから」
エーリカの発したその言葉で、僅かに残った理性は消し飛んだ。
トゥルーデはエーリカを押し倒すと、服を乱暴に脱がせ、唇を奪う。エーリカも同じ事をしてくる。
本能の赴くまま、他なんて関係ない。とにかく目の前のエーリカが欲しい。
唇が離れる。荒くついた息もそこそこに、キスを繰り返す。首筋を舐め、胸に舌を這わせ、
二人は快楽の坩堝へと堕ちていった。
70christmas panic 06/07:2008/12/23(火) 00:21:08 ID:1/aGb1ef
美緒がやって来た。と言うか荒々しい足取りで食堂へ乗り込んで来た。腰にはペリーヌがくっついている。
「お前ら、何をやってるんだぁ!」
怒鳴り声。しかし誰の耳にも届いていない。
美緒の腰にくっつくペリーヌは、剥がそうとしても離れる気配がない。
使い魔の尻尾と耳が出て、相当な力で抱きしめられているので無理もない。
「ペリーヌ、離れろ! 離れろと言うに」
離れるどころか、どんどん迫ってくる。性的な意味で。美緒はペリーヌを振り払う努力をしながら、芳佳達に近付いた。
「おい! 宮藤! リーネ!」
呼ばれた芳佳達は、それぞれの使い魔の動物宜しく、言葉も発せずきょとんとした……そして濁った目を向けた後、
再び目の前に居るお互いの全身をぺろぺろと舐める行為に戻った。
「宮藤!」
肩を掴むと、ぐるるる、と宮藤が唸って威嚇する。思わずびっくりして手を放すと、リーネにぴたりとくっつき、行為の再開。
他も見回してみたが、同じ状況。皆、使い魔の魔力が解放され、同時に……口には出来ぬ程えらい事になっている。
「どう言う事だ……まさか」
美緒は青ざめた。
「全員、記憶を失ってしまったと言うのか……?」
呆然とした。
ペリーヌは盛んに美緒の唇を舐めようとしてくる。
いい加減面倒になった美緒は素早く当て身を喰らわし、とりあえずペリーヌを昏倒させた。
「許せ、ペリーヌ」
「坂本少佐?」
ぎくりとして振り返る。
「み、ミーナ。いつ戻った?」
「貴方がペリーヌさんを引き回している辺り、かしら」
「だいぶ見ていたんだな……な、なら話は早い。全員記憶が無くなったみたいなんだが、……止めるに止められん」
「困った子達ね……」
ミーナは方々で痴態にはしる隊員達を眺めて、少し恥ずかしげに目を背け、大きく溜め息を付いた。

全員が我に返ったのは、夕食前。
「……あたしら、何やってたんだ? なんで服脱いでんだ?」
「シャーリー、あたし達の身体、キスマークだらけなんだけど」
「うわ? なんだこりゃ?」
斜向かいのテーブルの下では、芳佳とリーネが抱き合い、状況を確認し合っていた。
「芳佳ちゃん……大丈夫?」
「私は平気。リーネちゃんも大丈夫?」
「うん。でも、なんか、私達……その」
かあっと真っ赤な顔をするリーネ。
「私、何にもしてないよ? て言うか全然覚えてないんだけど……あれ?」
芳佳は自分の身体に付けられた幾つもの痕跡を見て驚いた。リーネにもついている。
「どうして、こんな事に……何が有った」
頭を振り、起き上がるトゥルーデ。ケーキを作ろうと、用意を始めた所までしか記憶がない。
後は食堂に散らばる食器やカップ、僅かに残るケーキ、そして一様に自分達の状態に首を捻る隊員を見て、溜め息をついた。
勿論、何が起きたのか、トゥルーデも全然記憶がない。しかし、目の前僅か数ミリの所でトゥルーデを離さない
エーリカの顔、身体、寝息を見て……、微妙に何か思い出すも、すぐに忘れてしまった。

結局、誰も何も覚えていなかった。
ケーキの準備段階までしか記憶が辿れず、皆一様に首を捻る。
皆の服はぼろぼろにくしゃくしゃ、よれよれと言った感じで、髪の毛もぼさぼさ。
身体についた痕を見て何をしたのか想像は付くが、……誰も何も言えなかった。
皆、ほぼ同じ状態だったから。

その晩。ミーナは僅かに残ったケーキを没収すると、ロビーの壁に大きく
「クリスマス禁止」
の張り紙を張った。
「ええーっ!」「何で禁止なんですか?」「あんまりだよ中佐!」
声を上げて反抗する隊員に向かって、ぴしゃりと言い放つミーナ。
「この様な失態を、外に知られたらどうするの!? もっと自覚を持ちなさい」
ケーキを作る辺りからの記憶が無い一同は、ただしょげかえるしか無かった。
71christmas panic 07/07:2008/12/23(火) 00:23:08 ID:1/aGb1ef
その日の晩。ミーナの部屋に呼ばれた美緒は、ベッドの脇に座らされた。お皿と紅茶が出される。
「ミーナ、このケーキは?」
「二人で試してみようかと思って。どうかしら」
「これは……いや、何でもない。気のせいだろう」
「そうそう。ちょっとした夜食だと思って」
ミーナは美緒に声を掛けつつ、部屋の鍵を全て掛け、美緒の前に座る。
ケーキを見、ごくり、と唾を飲み込んだ。

end

----

クリスマスと言えば、毎年お馴染みのあのネタを。
あとは、記憶喪失ネタもちょこっとだけ入れてみました。
フライング気味ですが「ルッキーニ誕生日おめでとう」と言う事でひとつ。
かなり暴走気味ですけど。

あと>>67で一部日付間違えました。「明日」「明後日」等、その辺がちとズレてますが
何卒ご容赦を。投下した後で気付く始末orz

ではまた〜。
72名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 00:34:59 ID:eGSL7X2S
最近中佐がオチ担当になってるなぁwGJ!
73名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 00:47:39 ID:8Y7ktDMR
前半みんな楽しそうだなぁと和んでたら後半まさかの展開! すばらしい。
「クリスマス禁止」とケーキ独占する隊長フイタww GJ!
74名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 01:46:28 ID:hTb768S3
クリスマス禁止と言いつつ、しっかりとケーキ没収→おおかみーなな展開に噴いたwww
75名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 01:55:55 ID:vjDBsw3C
76名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 02:06:58 ID:dOiPkRKG
最近色んなSSに出てくるちょっとしたミーナ→美緒の表現に密かに萌えまくってる。
隊長ちゃっかりしてんなぁww
77名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 02:17:33 ID:v2ybBdjM
ほら、ミーナさんはもっさんに嫁入りしたがってるし。
ミーナ・ディートリンデ・坂本
みたいな。
78名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 02:32:46 ID:6fwib9zE
>>57
リレーやりたいな。でもスレのスピードが速すぎるんだよ!
どうだろう。やってみないとわからんが…

>>71
GJ!理性と野性が格闘するトゥルーデ、よかった
しかしエーリカwなにを入れたんだw
んでオチ担当ミーナさん。崩壊シリーズの名残がいろんなssにある気がするw
79名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 03:23:18 ID:dOiPkRKG
そういえば最近隊長崩壊シリーズないな。じっちゃんのシャッキーニも大好きだがあのシリーズも好きだw
最近のSSの隊長は色んな意味でペリーヌよりやばい気がするw
80名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 03:56:19 ID:EGcg6cr/
シリーズといえば味噌汁はどうなったんだろう
ずっと気になってる
81名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 04:25:54 ID:BNqUrh0C
あのサーニャかわいかったな。気長に待とうぜ

ミーナさんは前スレのグリム童話がものすごかった。大好きだあれ
82pinkman ◆IQ64WVvgjQ :2008/12/23(火) 04:32:20 ID:zo6LvpFY
 SS書くために二日放置してたらもう新スレとかどんだけww
 ということで>>1
 投下職人の皆様方も乙であります(*^-^)ゞ

 さて、ルッキーニ生誕祭記念で数ヶ月ぶり@2本目の投下です。タイトルは『わんぱくガッティーノ軍隊デビュー』です。


 。゚.o。*:.。.:*。゚.o。*:.。.:*。゚.o。*:.。.:*。゚.o。*:.。.:*。゚.o。*:.。.:*

 1943年4月 ─ ロマーニャ空軍にて11歳の少女にひとつの辞令が下った ─

 【フランチェスカ・ルッキーニ少尉、1943年4月10日付で連合軍第501統合戦闘航空団への転属を命ずる】

 「…あのわんぱくだった子猫がブリタニア、ねぇ…」

 執務室で命令書類を作成しながらジュゼッピーナ・チュインニ特務中尉はふと少女がこの軍に入隊した日のことを回想する…

 ─ 約1年前、ロマーニャ空軍第四航空軍第二大隊基地の中庭 ─

 「待ちなさい!まちなさいったら!」「やだよー、あっかんべー!なんであたしがこんなとこに連れて来られなきゃいけないのよー!」

 少女は追いかけてくる女性兵士を尻目にすばしっこく逃げ回って翻弄する。

 少女の名はフランチェスカ・ルッキーニ10歳、まだまだ子供盛りの彼女がなぜロマーニャ軍施設で追いかけっこをしているかと言うと…

 数日前、ロマーニャ空軍のスカウトが自宅にやって来て、『魔力があるからウィッチとして軍に入隊して欲しい』と告げられたからである。

 それを聞いた当初は「わたしもネウロイとせんそうするの?」とピクニックにでも行くような面持ちではしゃいでいたが、
いざ家族との別れ際にはさすがに10歳の少女らしく「やっぱりいくのやめるー!」泣き叫んで駄々をこねていた。

 そして基地で追いかけっこ…「ほら、つかまえたわよ、おとなしくしなさい!」「やだーおうちにかえるーーー!」

 「もう帰れないわよ」「やーだー!」

 …こんなやりとりがしばらく続いた後、ルッキーニは観念したのか抵抗するのを止める。

83pinkman ◆IQ64WVvgjQ :2008/12/23(火) 04:33:54 ID:zo6LvpFY
 「ウジュー…」「あーもう、唸ったってしょうがないの!ほら、司令部に行くわよ」
 ルッキーニは兵士に手を引かれながらしぶしぶ歩く。

 「…ジュゼッピーナ・チュインニ准尉、フランチェスカ・ルッキーニ少尉を連れて参りました」

 女性兵士はため息がちに報告して執務室から退室した。
 ルッキーニはソファに座って足をぶらぶらさせながらキョロキョロ周囲を見渡している。

 「ようこそロマーニャ空軍へ、私はジュゼッピーナ・チュインニ准尉。階級はあなたのほうが上だけど軍人としては私のほうが先輩だからそのつもりでね」

 「…フランチェスカ・ルッキーニ…です、よろしく。ところで少尉ってエライの?」

 「飛行訓練と士官のお勉強は私が担当するから明日からビシバシしごくわよ!でも今日は初日だから訓練はナシよ。
後で基地の中を案内させるからそれまではゆっくりしてていいわ」

 翌日から始まった訓練は言葉通り厳しいものであったが、水を得た魚のように
戦闘知識と技術を吸収してルッキーニはその才能を開花させていった。
 …ブリタニア語と士官教育のほうはそれほどでもなかったが(笑)

 ─ それから一年の月日が過ぎた ─

 いくつかのネウロイを撃墜して隊のエースへと成長したルッキーニはその成果を認められて、
近くブリタニアで結成されるというガリアのネウロイ攻略の最前線部隊へと配属されることになった。

 「…この基地も騒がしいのが居なくなって寂しくなるわね…それでも、私の最期の仕事としてはまぁまぁかな」

 ジュゼッピーナ・チュインニ特務中尉20歳、そろそろ空から降りる時期にしては上出来だと独り言をつぶやいているとドアをノックする音が…

 「どうぞ」「フランチェスカ・ルッキーニ少尉、入ります」

 end

 (続くかもしれないし続かないかもしれない)


 。゚.o。*:.。.:*。゚.o。*:.。.:*。゚.o。*:.。.:*。゚.o。*:.。.:*。゚.o。*:.。.:*

 ジュゼッピーナがロマーニャっぽくなくてスマンwとりあえずミーナ中佐のようなキャラにしてみた。

 >保管庫様

 作者名はクリス×ゲルト「おねえちゃん(そしてミヤフジさん?) ありがとう」のpinkman ◆IQ64WVvgjQです。(新兵のところです)
 ちなみに某pixivにて誰かの絵に妄想を振りまくピンクマンでもあったりするw

84pinkman ◆IQ64WVvgjQ :2008/12/23(火) 04:41:22 ID:zo6LvpFY
 昨日一昨日となぜか昼間の投下がプロバイダ規制によってできなくなっているので
夜中の投下に踏み切ってみましたw

 ところでジュゼッピーナってなんて呼ばれてるんでしょうかね。。。
ルッキーニからジュゼッピーナの手紙ネタとかいらん子シリーズとかに使ってみたいがどうしようか。
85名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 05:04:37 ID:RMZxVXyX
>>84
ルッキーニの過去話は新しいな
ぜひ続きを、書いてください。

>>71
これはwww
隊長ちゃっかりしすぎだろwww

あと、獲物を巣に持ち帰ったエイラさんが目が覚めた後、
必死に謝っていると、
サーニャ「ううん…私…嬉しかった…だから…」
サーニャ「続き…しよ?」
エイラ 「さーにゃぁぁぁぁぁ」
で、二回戦突入な、姿が容易に想像がつく…
というか、誰か書いて…
86名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 05:09:59 ID:X4pNR/u3
>>84
元の人の通称は「ワルツを踊る小人」だった。

87名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 10:31:22 ID:gNYPmezF
>>71
GJ!前半のほのぼのと後半のカオスのギャップに吹いたww
>思考と実際の発言が相当にズレ
この一文が「相当にレズ」に見えた俺は今すぐ吊るべき

>>84
ジュゼッピーナ分が足りないと思ってたんだGJ!
これはわっふるわっふるせざるを得ない。

でもってリレーだけど、ここは流れに乗ってクリスマスネタでやるべきじゃね?
みんながそれぞれのプレゼントを持ち寄って交換会とか。
当時からあったのかわからんがこのメンバーでやったら楽しそうだ。
88名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 11:05:40 ID:6DzkaVWe
交換会を占ってたらいい結果が出てこれはサーニャのプレゼントが当たるなとwktkしてたんだけど
いざ交換会になってみると外れちゃって凹むエイラの元に実は交換会とは別にエイラにプレゼントを用意してたサーニャが(ry
って電波を受信した。
89名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 12:01:18 ID:bh2l1j5P
おはようございます。mxTTnzhmでございます。

>>84 pinkman ◆IQ64WVvgjQ様
GJ! 過去話いいですね。ジュゼッピーナとルッキーニのいきさつ気になります。

>>63
確かに後日談で良いかもw なんかほのぼのしてるしw


さて、今回は>>85氏のリクにお答えしてちょこっと書いてみました。
おまけありですがどうぞ。
90nest 01/02:2008/12/23(火) 12:02:29 ID:bh2l1j5P
エイラはぼんやりと目覚めた。
「……ここは何処ダ?」
考えが巡らず、思った事がそのまま口に出てしまう。
まだ瞼が重い。寝ていたのか。
「ああ、良い匂いダナ……まるでケーキか、サーニャみたいに甘くテ……」
ふと横を見る。
サーニャが一糸纏わぬ姿で横になっていた。
「おワ? サーニャ?」
名を呼ばれたサーニャはエイラに擦り寄ってきた。眠たそうな目をしている。
エイラを抱くと、ぺろっとエイラの唇を舐め、そのまま互いの唇を重ねた。
突然の事にエイラは何が何だか分からず……何故サーニャがこんな事をしてくるのかまるで理解出来ず、
けど、お互いの舌が絡み、サーニャを味わっているうちに瞼が重くなり……
エイラは本能の赴くまま、目の前にいる愛しの人を貪った。

エイラは目覚めた。
上のシャツを一枚だけ羽織ったサーニャが、エイラを介抱している。要するに膝枕だ。
「あ、エイラ。起きた?」
サーニャの甘い声。エイラはサーニャの太腿に手をやり、また寝ようと……
……違ウ!
がばっと跳ね起きた。
「さ、サーニャ、一体これハ?」
「分からない。二人して抱き合って寝てたから……」
「ここ、何処ダ?」
「エイラの部屋」
見回した。確かにここはエイラの自室。
「どうしてサーニャと私ガ?」
いきさつを思い出そうと思い出す。確か……夜間哨戒で疲れたサーニャを……
それは昨日の晩の話だ。時計を見る。まだ夕食前。
そうだ! ロビーに行ったら皆でケーキの話をしてた。皆でケーキを作ろうと言う事になって
私達も参加しようと……アレ? その辺りからの記憶が全く無い。
サーニャを見る。ぼんやりと眠そうな顔をしている。頬に、首筋に、鎖骨に、耳の後ろに、
胸に、腕に……後はもう分からない位にキスマークが付いている。
「サーニャ、どうしたンダこれハ?」
「エイラ」
言われて自分も見る。サーニャと同じ事になっている。
「な、なんダコレ?」
「その……」
サーニャはそれ以上言えず、うつむいてしまった。
もしや……自分の記憶が無い所で、サーニャにこんな事やあんな事を……
エイラの頭を激しい勢いで想像(一部妄想)が駆け巡る。青ざめた。
「ご、ゴメンサーニャ! 私、そんなツモリジャ……」
慌ててサーニャに謝った。
サーニャは少し恥ずかしそうに、顔をそむけた。
「ごめんナ、サーニャ。私のせいデ、その……何でこうなったか、分からないケド……」
「エイラ」
「頼む、私の事、嫌いにならないでクレ!」
「違うの、エイラ」
サーニャがエイラの顔を見た。エイラの顔を両手ですくい上げる格好になる。
「私……嬉しかった。エイラとするの……とっても、気持ち良くて」
「さ、サーニャ?」
「だから……その」
「?」
「エイラ、好き」
サーニャは言うと、エイラの唇を塞いだ。パニック寸前になるエイラ。
「続き……しよ?」
サーニャの懇願か、誘いか。断る理由もなく、嘆く必要も無い。目の前に居る、愛しのひと。
エイラは心の底からそのひとの名を叫び……、再び、お互いを味わい尽くす行為に没頭した。
91nest 02/02:2008/12/23(火) 12:04:04 ID:bh2l1j5P
明け方。
目を覚ました美緒は、何故自分がミーナの部屋に居るのか分からなかった。
ベッドとその周囲が、らしくもなく荒れている。
そして何故ミーナが幸せそうな顔をして、自分に抱きついたまま寝ているのかも、分からなかった。
「はて……何故こうなったんだ?」
美緒は寝たまま、自分の頬をぽりぽりと掻いた。そこで気付く。結んだ髪が解けている事も。
ミーナは眠たげにうぅん、と擦り寄ると、美緒に熱いキスをしてきた。
絡まる二人の髪。
既にお互いの身体には、幾つもの痕が残っていた。何を意味するか、今更考える必要もない。
「美緒……」
ミーナは美緒をぎゅっと抱き直すと、もう一度、唇を合わせた。
「ミーナ」
お互いの吐息が絡まる中……
まあ、良いか。
美緒はそう完結し、ミーナの誘いに乗った。

end

----

以上です。
ついでに美緒×ミーナの「その後」も。

ではまた〜。
92名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 14:34:40 ID:RMZxVXyX
>>91
このスレ、やっぱおかしい……
自分で書いてくれって言っておいてなんだけど、
一仕事終えて、スレは進んだかな〜って見てみれば朝、垂れ流した妄想が文になってるなんてっ……
しかも少佐×隊長の後日談付き!!!どんな筆速だよ!!いや、もうほんとありがとうございます。
93名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 15:30:23 ID:8AcODqt+
>>82
最初から少尉じゃなくて軍曹から始めた方がよくないですか?
そのほうが下士官→士官教育→士官としたほうが
ルッキーニが強く思えるかなと思って。
で士官教育を受けるように進めたのがチュインニとか。

でもエロだけじゃないジュゼッピーナは珍しいのでGJ!
94名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 15:44:05 ID:SSpSBkoJ
>>56
平凡な日々に青天の霹靂!
 「エイラのいた国に行ってみたいな……」
来たよ暗黙の求婚サイン!
そしたら現れたかつての親友
 「もう一度私と一緒に飛ばないか?」
切り出したのは相棒を越えた愛情!!
とはいえこの前自室で
 「女の子の心というものを教えてあげます!!」
上司からも大チャーンス!!!

  |::::/\::::::|:::::::::::/:イ   |:::::
  |/ __、ヾ |i:::::/:::::/  ,,イ|:::::  考えロ……
  /イf´::::::トミXハ:::ノ/_,,≦、、.|::/   大事だゾここは……
 ヾ弋C:::ノ   ヾ|/! ´,f´:::ハY´    キテるぞこれは……
   ` ̄...:::::::::::::::.. 弋C::::ノ |!      人生最大のチャンスの予感───!!
 /|//    ,   /|/丶´ ''       どうすんだよ私……ッ!?

「どうするの……?」「どうすんだよ、イッル」「どうするつもりなんですか!?」
どうすればイインダ────────────!!!!????
┏━┓┏━┓┏━┓
┃サ┃┃  ┃┃エ┃
┃|┃┃ニ┃┃ル┃
┃ニ┃┃パ┃┃姉┃
┃ャ┃┃  ┃┃  ┃
┗━┛┗━┛┗━┛        ですね、わかります(長っ)GJっした!!

>>71
前半で和んでたら後半のアホさに笑いすぎて涙出てきたwwwと思ったら>>91で補完とか
あなたって人はどんだけ私を悶えさせれば気が済むんだGJ!!ミーナさんやべえ

>>84
貴重なジュゼ分をありがとう、わっふるわっふる
95名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 17:17:23 ID:Sg8Ywtw0
>>ワラタw
96名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 17:17:36 ID:KFUtIimE
粉雪の降るクリスマスの夜。
孫娘にピアノで童謡を弾いてあげるサーニャおばあちゃん。

演奏が終わり、寝るように促すサーニャに孫娘がこう言う。
「ねぇ、サーニャおばあちゃん。エイラおばあちゃんってどんな人だったの?」

好奇心に目を輝かせるエイラによく似たその瞳。
サーニャはにっこりと笑って答える。
「それじゃあ、特別に教えてあげるわね・・・」

布団に入った孫娘にエイラとの思い出を沢山、話してあげるサーニャ。

始めて話した時、ぶっきらぼうに、だけど優しく接してくれたこと。
自分の歌を聞いて、凄く褒めてくれたこと。
一緒に空を飛んで闘った時、身を挺して自分を守ってくれたこと。
戦争が終わってから、両親を探す自分についてくれてきたこと。
水浴びをしている時に、お風呂を覗かれたこと。

懐かしそうに目を細めながら、サーニャは孫娘に言う。
「エイラおばあちゃんは不器用だったけど、ホントに優しい人だった・・・。あなたもエイラおばあちゃんみたいに優しい人になってね、エイニャ。」

その夜、サーニャはエイラの夢を見る。

夢の中でサーニャはエイラと一緒に楽しく過ごす。

ブルーべリー畑で一緒にブルーベリーを摘んだり。
そのブルーベリーで美味しいジャムを作って、二人で食べたり。
サーニャの演奏で、エイラが歌を歌ったり。
そして、透き通る蒼い空をどこまでも一緒に飛んだり。

本当に楽しい夢をサーニャは見る。

一面が白銀世界になった翌朝、エイニャがサーニャを起こしにくる。
「サーニャおばあちゃん、朝だよ、起きて」

ところが、いつもは起きてくるサーニャはなかなか起きて来ない。
不思議に思って、エイニャはサーニャの部屋に入る。

枕元にはサーニャとエイラが"魔女"と呼ばれていた頃に撮ってもらった、二人で一緒に写っている写真が沢山置いてあって。
その写真に囲まれながら、サーニャは微笑んだまま静かに、そしていつまでも眠っていた・・・。

97名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 17:21:05 ID:KFUtIimE
またヘンな妄想をしてしまった・・・。

>>91
なんだこのマジパンみたいに甘い作品は・・・。

>>94
続きはwebですかw。
98名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 18:23:42 ID:6fwib9zE
>>91
GJ!中佐かわいいな。お相手しちゃう少佐も素敵

>>96
これは……なんとまあ…深いな…
新境地というか。なんか長編で読みたい作品だ
99滝川浜田:2008/12/23(火) 19:54:20 ID:ZWZENYZm
みなさんこんばんは。
ミーナさん崩壊シリーズの作業中に>>79の書き込み見てビックリしましたw
というわけで聖夜直前にミーナさん崩壊シリーズ投下します。

「ジングルベール、ジングルベール、鈴が鳴る〜♪」
「なんだ、やけにご機嫌だな、ミーナ」
「だって美緒!明日はハッピークリスマスよ!
恋人同士のクリスマス!貴女と私の燃え上がる性夜よ!!」
「浮かれてるところ申し訳ないが、聖夜の漢字が違う、と突っ込んでみる。
それに12月24日はルッキーニの誕生日でもある。忘れたとは言わせない」
「もちろんよ、美緒。
さすがにみんなの誕生日は忘れないわ。私は501部隊の隊長よ」
「良かった。少し安心したよ。
最近のお前は隊長らしさが微塵も無かったからな」
「でも、ルッキーニさんはシャーリーさんとよろしくヤるんでしょうね」
「……前言撤回……感心して損したよ…
そんなゲスい事を堂々と口走るな。しかしよろしくやるって古いなおい」
「そこで今日はクリスマスについて考えましょう」
「いつにも増して強引だな…
そうだな、やはりクリスマスというのは、ロマンチックな印象があるな」
「そうなのよね。雪なんか降ってたらホワイトクリスマスってね」
「さっきの話じゃないが、こんな日に誕生日のルッキーニは幸せだな」
「そうね。みんなに祝って貰ったあとに、シャーリーさんと二人きりのクリスマスパーティー……!!
あああ、いろんなモノが漲るわねえ!!」
「…なんかお前の今日のテンション、本当にいつにも増してとても気持ち悪いな。
……何か悪いもんでも食ったのか?」
「酷い!酷いわ美緒!
でも貴女のその辛辣過ぎるツッコミでさえ快感になってる私が怖いわ!ああ怖い!」
「しかしクリスマスというのは何故か、クリスマスよりイヴの方が盛り上がるよな」
「やっぱり無視なのね。
でもその無視の仕方嫌いじゃないわ!!」
「…いいから話を進めろ。
お前からクリスマスの話を振った以上は自分で片付けろ」
「そうなのよね。やっぱりイヴの方が恋人同士の盛り上がり方が尋常じゃないのね!萌えるわ!
白い恋ね!二人だけの白い恋!聖夜に結ばれる二人!ああっ最高ねぇ!アツいわね!アツ過ぎるわね!ねぇ美緒!」
「……そうだな(ああもう鬱陶しいな…)……」
「あら、今鬱陶しいって思ったわね」
「お前はESP《エスパー》か!
お前とうとうそんな領域に達したのか!ある意味尊敬に値するよ」
「鬱陶しくて結構!ESPでも結構!
私は貴女の心を透視したいわ!
絶対可憐!だから負けないわ!」
「そうか。まあ頑張れ。
なら能力開発の組織にでも行って2〜3年は戻って来ないでくれ」
「…さて、美緒。私達はどうロマンティックに過ごそうかしら」
「どうって、どういう事だ」
「イヤね、クリスマス・イヴ及びクリスマスの過ごし方に決まってるじゃない!
だって恋人同士の夜なのよ?」
「ハハハ、面白いギャグだなあ。
私はお前とは恋人同士じゃないから一人で過ごすよ」
「もう、美緒のいけず!
美緒のアンポンタン!」
「しかし、プレゼントくらいは用意してある。まあ折角のクリスマスだからな」
「プレゼントって何かしら?
……ハッ!まさか美緒!あな「言っとくが私じゃないぞ」
「あらまあ的確で素早いツッコミ!!」
「まあ、明日まで待っておけ」
「もう、美緒ったら焦らすのね!
この鬼畜!焦らし上手!!変態!!!」
「…まさかプレゼントごときで鬼畜呼ばわりされるとは思わなかったよ…
…それにお前に変態呼ばわりだけはされたくないな…」

―――――――――――――――――――

美緒の部屋

「…こんな指輪なんか渡したら、勘違いされてしまうか…?
ミーナの事だからきっと…」

『美緒…!これってまさか…!
結婚っ!?結婚なの!?そうなのね!?
美緒からのプロポーズ、喜んで受けるわ!
まさに美緒は私の婿って感じ?私は美緒の嫁って感じ?私は勝ち組って感じ?
やったわ!みんなやったわ!私幸せになります!ミーナさん大・勝・利・よ!!
さあ美緒、今すぐ挙式を挙げてハネムーンよ!行き先はそう!貴女の遥かな故郷・扶桑よ!!
決定!!決定はもう覆らないの!!愛し合う二人は無敵なの!!!!
さあ、二人の夢の世界はこの白銀の夜から始まるのよ!!
行きましょう美緒!私達の楽園へ!!』

「………ハハハ、まあこうなる事覚悟の上だな……
……さて、今年はどんなクリスマスイヴになる事やら……」


103滝川浜田:2008/12/23(火) 20:04:12 ID:ZWZENYZm
以上です。
久しぶりの崩壊シリーズ、ちょっと緊張しましたなあ。
違うんだ、本当のもっさんとミーナは聖夜を大人っぽく過ごすハズなんだ!
あと、やっとルッキーニ誕生日用のSSの作業終わった…


…では、爺はここら辺で…
104名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 20:10:49 ID:SSpSBkoJ
>>103
まってたぜじっちゃん、GJ!!
ミーナさんハイテンション過ぎワロタwwやっぱこのテンションはじっちゃんじゃなきゃ出せねえよ
誕生日ネタもwktkしてまってるぜ。
105名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 20:33:15 ID:tSsG20fw
クリスマスイブの夜にサンタさんの話題になって
それを聞いたペリーヌがみんなに「そんなもの信じるなんて皆さん幼稚ですわ!!全く、くだらない・・」
って言って自分の部屋に戻った後、ひそかに自分の部屋に靴下ぶら下げてから寝てたら
その夜ハルトマンサンタが入ってきて
「ふふ〜んあんなこと言ってたくせにこんなことやっちゃって・・・か〜わいい〜」
なんて言いながらペリーヌの頬をつんつんしてたらペリーヌが起きる
ハルトマンに靴下のことについて突っ込まれてペリーヌが赤面しながら「こっ!こここここれは!これは・・・」なんて言ってると
そんなおろおろしながら言い訳するペリーヌが可愛過ぎてついペリーヌの唇を唇で塞ぐハルトマン

ようするにペリーヌ×エーリカがいいそんな電波を八木アンテナで受信しましたです
106名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 20:36:39 ID:75QrT8IC
ペリーカとは新しい組み合わせだな。
107名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 20:38:50 ID:8AcODqt+
xQl8TeR8です。
あれだけ面白い崩壊シリーズのあとでのまともなミーナ中佐はさすがに
書きづらいものですが、投下させて貰います。

「もしサーニャがミーナの部屋に間違って入ったら」

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの朝は早い。
隊長として夜間哨戒に出ていた隊員を出迎えて
報告も聞かなければいけないし、朝のミーティングの
準備もしなければならない。
だから必然的に彼女の朝はほかの隊員よりも早く、
起床ラッパがなるころにはすでに起きている。
彼女以上に早いのは自主的に朝の訓練をする坂本美緒少佐くらいだろう。

(……そろそろ時間ね)
ミーナは滑走路に立ち、夜間哨戒から戻ってきたサーニャ・V・リトヴャク中尉を迎える。
程なくサーニャの姿が見え、だんだん近づいてくると空から滑走路に着陸し、ミーナの目の前で止まった。
「……報告します。ネウロイの出現はなし。哨戒中に特に異常はありませんでした」
小声で報告すると軽く会釈をしてサーニャは去っていった。
よほど眠いのか、少しふらついてる。
これから自室に戻って眠るのだろう。
108名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 20:40:21 ID:8AcODqt+
基地へと戻っていくサーニャの頭の上に一瞬、輝くアンテナが見えた気がした。
ネウロイがいるのかとミーナは空を仰いだ。
もちろんネウロイは影も形も見えない。
目を戻すとサーニャの頭の上にもアンテナはない。
当たり前だ。
先ほど異常はないと報告を受けたばかりなのだから。
ミーナの見間違えだろう。

(疲れてるのかしら? このところ立て続けに出撃や上層部からの呼び出しがあったし)

一つため息をつくとミーナも朝のミーティングに出るべく基地へ戻っていった。

朝のミーティングにサーニャの姿はなかった。
いつもサーニャといるエイラ・イルマタル・ユーティライネンが心ここにあらずといった表情で参加していた。
サーニャと喧嘩でもしているのか。
あまり仲違いが続くようだったらフォローを入れておいた方がいいかもしれない。

皆を解散させてから、自分は執務をするべく隊長室へ行く。
しかし隊長室の椅子に座ったところで資料を自室に置き忘れていたことにミーナは気づいた。
(ほんとに疲れてるのかも……)
ミーナは深く深くため息をついた。
109名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 20:41:32 ID:8AcODqt+

忘れ物を取りに戻ろうとして自室の前まで来ると、ドアが開いている。
(ドアが開いている? ……誰かが入ったの?)
一瞬いやな想像がミーナの頭をめぐる。
ミーナはドアの横の壁に身をつけ、ゆっくりと自室をのぞいてみた。
見えたのはベッドの上に倒れているサーニャの姿だった。
「サーニャさん!?」
急いで、彼女のそばに寄る。
サーニャはうつぶせで顔を横に向けたままミーナのベッドの上で健やかな寝息を立てていた。
「……部屋を間違えたのかしら?」

サーニャは服を着たままだった。
よほど眠たかったのかもしれない。
「しわになっちゃうわね」
ミーナはサーニャの上着とベルトを脱がして傍らにたたんでおいてやった。
冷えないように毛布をサーニャに掛けてやって、ミーナはベッドの傍らに腰掛けた。

サーニャの疲れた寝顔を見て、ミーナはふと顔を曇らせた。
「ごめんなさい。もう少し夜間哨戒の配置を考えてあげられればいいのだけど……」
110名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 20:42:28 ID:8AcODqt+
ウィッチは元々絶対数が少ない。
さらに夜間哨戒が満足に出来るナイトウィッチなんてそうそういない。
故に夜間哨戒の出来るサーニャばかり負担がかかってしまう。
ミーナもその点は危惧をしていて、自分も含め昼間勤務のウィッチたちにも練習を兼ねて月に何日間かのロッテでの夜間勤務を課してはいる。
しかし自分の目と耳、そして地上からの指令だよりの彼女たちは、レーダー能力を持つサーニャほどには上手く哨戒できてないような状況だった。

顔を曇らせたミーナを慰めるかのようなハミングが聞こえてきた。
夢でも見ているのか、サーニャが眠りながら歌っていた。
「この歌は……」
ミーナにも覚えがあった。
この歌はピアノを習い始めて最初の時に習う子守歌だ。
簡単でそれでいて優しい曲だ、と弾いたことのあるミーナは思っていた。
(ピアノの練習をしている夢でも見ているの?)
111名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 20:43:13 ID:8AcODqt+
ミーナもサーニャにあわせてハミングで唱和してみる。
ハミングで歌いきるとサーニャは幸せそうに微笑んだ。
(……この子もこんな顔で笑うのね)
ミーナは、遠慮がちに、あるいは少し寂しげに笑うサーニャしか見たことがなかった。
この笑顔が向けた先は自分が知らない夢の中のサーニャの家族なのかもしれない。
ともかく彼女のこんな幸せそうな笑顔は滅多に見られないだろう。
少しきまりが悪いような、うれしいような気分になってついミーナは苦笑した。
(いつか、その笑顔をみんなに見せられるときが来れば良いのだけれど)

ポンポンと時計が鳴った。
そろそろ執務室に行かなくては。
「おやすみなさい、いい夢が見られると良いわね」
ミーナは立ち上がり、机の上の資料を取ると部屋から出て行った。
112名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 20:44:33 ID:8AcODqt+
以上5レスです。

>>103
ルッキーニの誕生日SS楽しみにしています!
113名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 20:52:57 ID:UrpBqMvl
>>96
シザーハンズだったかな
114名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 20:59:46 ID:6DzkaVWe
靴下をさげていい子にしていたら、ひょっとしたら昔のようにお父様がサンタになってプレゼントを届けてくれるのではなかろうかと
ありえないと分かっているのにそれでも靴下を枕元に下げておかずにはいられないペリーヌ。夜中に気配を感じふと目を覚ますと
そこには眼帯をしたサンタさんが……そんな電波なら受信した。

>>112
GJ!久しぶりにまともなミーナさんを見た気がするw
最近よく落ちに使われる崩壊ミーナさんもおいしいがやっぱりミーナさんはやさしいお母さんであってほしいんだぜ!
115名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 21:07:35 ID:eYO5u2VS
>>111
やはりミーナさんは、みんなのお姉さんですな!!
素晴らしい!
116名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 22:46:40 ID:J9FCjs52
相談
いまさらだけど前スレ埋め文章が全部書きあがったんだ
割と長い上に前スレのアレと比べてだいぶ書きましがされてるんだけど
このまま投下するのと、テキストうpどっちがいいですか
117名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 22:47:41 ID:Wjzh/Adg
テキストォー!
118名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 22:49:23 ID:6fwib9zE
>>105
ちょ、それいいw素晴らしい妄想力…わけて下さい

>>111
暖かい愛でみんなを包んでくれる隊長が大好きだGJ!
しかしサーニャ寝ながらハミングとか天才だろw
119名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 22:50:26 ID:J9FCjs52
>>117
了解 用意してくる
120116:2008/12/23(火) 23:08:25 ID:J9FCjs52
前スレ埋め完全版
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org12471.txt
part13の埋めネタもそうですが、自分に感想下さった方のご意見なんかをちょっと参考に
させていただいたりしました。この場を借りてお礼申し上げます

遅くなって本当に申し訳ない。SS読んでる暇なくてもうどこから読んでないのかわかんないくらいだ
取り急ぎ、みなさんGJGJ!なんかもうこの勢いだと本当にしばらく休んでも平気そうな気がしてくるw
あと味噌汁はプロット書いて放置してます。本当に申し訳ないです。
24日までになにか描けそうな気がしないんで出来たら絵とかで支援させていただこうと

とりあえず味噌汁作ってくる。21X2w2Ibでした
121名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 23:14:06 ID:JTk2+gR4
坂本少佐をミーナさんとペリーヌで取り合いしているうちに宮藤が坂本少佐を自分の部屋に連れて行くSSが見たいんだぜ
122名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 23:19:00 ID:Wjzh/Adg
>>120
GJ!ちょw泥沼エンドw
個人的にはどんどん書いてほすいです

俺も独りで過ごすイブに向けてフォンドヴォーを作ってこよう・・・美味しいよビーフシチュー・・・
123名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 23:36:18 ID:n6uYTfo3
>>120面白いなあ。こう、読んでて渦に取り込まれそうになる感触が、ね。
124名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 23:44:41 ID:RV/tsm+1
>>120
芳佳もリーネも必死で遣る瀬無いお話ですね。遣る瀬無くて美しい。GJです
「残さないよ」とそれを聞いてるリーネの心情と、引き込まれる文章がすばらしい
エイラも部屋で落ち込んでるんだろうなぁ。そうでなきゃ許さん

お忙しいのでしたらゆっくりされるのもよいと思います
どんどん書いて欲しいのが正直なところですけどw平気じゃなくなりながら待ってます
125名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 00:00:22 ID:SSpSBkoJ
>>120
くああっ、こんなところで切られたら生殺しジャマイカ……でもGJ!!
この痛々しいまでの描写力と鋭い展開にはうまく褒める言葉も思いつかないよ。
埋めで連載なんていつ終わるんだと思ったけど、このペースだと週刊化してるから恐ろしい。忙しいだろうけど続き待ってる!!

ついでに転、何やってんですか少佐。
ttp://up2.viploader.net/pic3/src/vl2_086548.jpg
126名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 00:08:33 ID:jUkJ2XDF
そうだ、>>120補足
最初リーネイラ投下したとき、「最近芳リーネが足りない」というレスがあったのであれを
そのまま芳リーネに持っていくつもりだったんですがうっかり前スレで泥沼やらかしちゃって
今回のでもっと泥沼になってしまったごめんなさい

梅の続きなんて基本考えてないので、いつも投下後の反応を見て考えてるとか言えない
127名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 00:26:35 ID:fTYgUKQ4
>>103
隊長崩壊シリーズキター!!!!
今回はもっさんのツンデレっぷりがいいなぁwwww
指輪渡された後のミーナ隊長の壊れっぷりが見たいww
128名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 00:53:22 ID:1cmbHZYI
>>103
デレちゃうんですか!?
ついにもっさんデレちゃうんですか!?
このシリーズ大好きですん
129名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 01:05:27 ID:qz+xGzMH
>>120
埋めネタ完全版お疲れさまでした。
引き込まれて、世界の中にいるように情景が浮かんで…。もうほんとになんと言えばいいか…。
自分の少ないボキャブラリーではこれだけしか言えないのが悔しい。
本当にGJ!


あと自分は>>80なんですがなんか味噌汁を催促するような感じになってすいません。でも正座して待ってる!
130名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 02:20:16 ID:AwTeUYzd
>>120
ぬおおおおおおGJ!!!エイラといいリーネといい視点変わるたびにすんなりと感情移入できる丁寧な心理描写に脱帽。
しかし芳佳が何も知らないように見えてその実なんというポーカーフェイス…。エイラが何を言おうとしてたのかも気になります。
エイラ何やってんだよ、どうするんだよって思ってたけどもうリーネの方が心配です。この泥沼のハラハラ感がたまらない。

お忙しいなら余り無理なさらぬよう…。自分も>>124同様平気じゃなくなりながら待ってます。
131名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 03:07:32 ID:E+hHG4LX
こんばんは。mxTTnzhmでございます。

>>103御大
GJ! 流石ですねこのハイテンション。てかめちゃワロタw
このノリでもっとお願いします。

>>112 xQl8TeR8様
GJ! ミーナ中佐がまともな人に……いや、これが本来の隊長なんだなあと。
優しい文章、お見事です。

>>120 21X2w2Ib様
GJ! 貴方の文章は描写がステキです。読んでて心にしみると言うか。
うまく言い表せないけど、とにかくお見事です。


さて、今回は>>65-71「christmas panic」、そして>>90-91「nest」の続編です。
季節柄、なんとか作ってみましたがどうでしょうか。
あんまりヒネリは無いですが、「christmas resistance」どうぞ。
132christmas resistance 01/07:2008/12/24(水) 03:08:55 ID:E+hHG4LX
「あたし達はぁ〜この圧政と暴政に断固反対するぅ〜」
「するぅ〜」
シャーリーとルッキーニが怪気炎を上げた。
「どうしたんですか、二人とも」
芳佳が朝食後の食器を片付けながら二人に聞いた。
既にミーナと美緒はさっさと食事を済ませ、執務室に行ってしまった後。
食後のひとときを過ごす隊員達で食堂はまだ賑わっていた。
「だってそう思わないか? 今日はせっかくのイブ、しかもルッキーニの誕生日だぞ?
なのにクリスマス中止だか禁止だかって、冗談じゃないよ」
「ホントだよ! あたしまだ祝って貰ってない!」
昨日の事はすっかり忘れた上で、憤懣やるかたないシャーリーとルッキーニ。
「仕方ない。ミーナの決めた事だからな。我々は多国籍連合だが、軍人は軍人だ。部隊長の命令とならば仕方ない」
トゥルーデが真面目に答える。
「何処までもおカタいんだから、この堅物はぁ。アンタの首筋についてるの、それ何よ?」
「なっ!?」
狼狽えるトゥルーデ。
「あたしらは何でこうなったんだか良く分かんないけど、いきなり年に一度の楽し〜い行事を禁止だなんて
幾ら相手が中佐でも流石に許せないよ。だろう、ルッキーニ?」
「うんうん」
「私の、責任です」
リーネが思い詰めた顔をしている。
「リーネちゃん?」
芳佳が心配して肩を支える。
「私がしっかりケーキを作らなかったばっかりに、皆さんにご迷惑を……」
「そんな事ぁ無いよ。ケーキのせいじゃ……いや、よく分からないけど、とにかくリーネのせいじゃない」
「そーそー。リーネは全然悪くないよ」
エーリカがそっと口添えする。
「エーリカ。そう言えばお前……」
「いやん、もう旦那様ったら♪」
エーリカは自分のうなじを見せつける。くっきりついたキスマーク。
トゥルーデは顔を真っ赤にして、軽やかに逃げ回るエーリカを追っかけ回した。
「何だあいつらは」
呆れるシャーリー。
「楽しそうですね、あの二人」
「ともかく、私は地下に潜ってでも抵抗するぞ。この501にてクリスマスの自由と解放を求める政治的抵抗運動を行う〜」
「行う〜」
イケイケのシャーリーとルッキーニ。
「私も参加させて下さい。今度こそ、ちゃんとしたケーキを作って、ご馳走します!」
「よぉ〜し、一名参加決定! 歓迎するぞリネット軍曹ぉ」
わははと笑うシャーリー。そしてリーネの手を取り、泣きそうな顔で言った。
「てか頼むよリーネ。この501でまともに綺麗でうまいケーキ作れるのリーネだけなんだ」
「は、はい。ありがとうございます。今度こそ私、がんばります!」
「私もリーネちゃん手伝うよ」
「よおし、宮藤も参加決定!」
「芳佳、扶桑のお祝いのお菓子も作って!」
「お祝い……扶桑でお祝いのお菓子となると、専門の職人さんが作るの多いから……
そうだ、きなこ餅とあんころ餅なら出来るよ? あと甘酒」
「何でもいい〜作って〜」
「分かった。リーネちゃんの手伝った後、私も作るよ」
「やった〜」
「お、どうしたエイラとサーニャ。幸せの跡がたくさん付いてるぞ?」
「こっこれハ……違うンダ、その、え〜っト。サーニャとゲームやってて……」
くいと袖を引っ張り、はにかんだ笑みを見せるサーニャ。
「おぉい、サーニャぁ」
「あははーここに居る皆がそうだからな〜。じゃあ二人も参加決定!」
「何の事ダ?」
「まあまあちょっとしたお祭りだと思ってさ〜」
133christmas resistance 02/07:2008/12/24(水) 03:10:37 ID:E+hHG4LX
エーリカをつかまえてヘッドロックをかましながら、ずりずりとトゥルーデがやって来た。
「お前ら、ミーナに刃向かう気か」
「ぐ、ぐるじいよトゥルーデ〜」
「別に銃器持って暴れる訳じゃないし。ちょっとしたお祭り気分ってヤツさ」
笑顔のルッキーニを胸に置き、あっけらかんと言うシャーリー。
「リベリアンっぽい思考だな」
「そう言うアンタは堅過ぎるんだよ。で、あんたらはどうする? 乗る? 降りる?」
「乗るも降りるも、軍人たるもの……」
「トゥルーデ、面白そうだからやろうよ」
「エーリカ!? ミーナを裏切るつもりか?」
「いや〜別にそこまで重いんじゃなくてさ。あとはちょっとした罪滅ぼしって言うか」
「やっぱりお前と言う奴は……っ!」
「私はみんなに幸せを運ぶ愛のサンタ〜」
「悪魔だ! もしくは黒と茶のサンタだ!」
「黒と茶のサンタ……ハルトマンさんは仕置人なんですか……」
がくがくとひとり震える芳佳。
「ひっどいなあ。まあ、私達も出来る事有ったらやるよ? ウチのヨメもやるから」
「おい! 誰がやると言った!? てかヨメって……」
「じゃあ旦那様〜♪」
「待て〜!」
「ホント、楽しそうだなあの二人」
「ですねえ」
リーネが微笑む。
「よぉ〜し、そうと決まれば即実行だ! まずはあたしのプランを皆に伝える!」

「全員が反抗ですって?」
息せききって執務室に飛び込んで来たペリーヌから話を聞いたミーナと美緒は驚いた。
「少佐、中佐! これは部隊の反乱ですわ! 一刻も早い処置を!」
「まさか……あれ程の痴態に及んだ末、反省どころか開き直って反抗だとは……良い根性だ」
美緒が扶桑刀を握ってアップを始める。
「待ちなさい二人とも。確かに昨日は……色々有ったけど」
こほんと顔を赤らめて咳をするミーナ。
「何も皆そこまで思い詰めて、過激な行動に走る事は無いと思うわ。静観しましょう」
「そんな! でも皆集まって……。わたくしは、あくまで、少佐と中佐の身を案じて……」
「まあ、奴等がストライカーを奪取しと武器庫を占拠するとか、そう言う話なら別だが」
「そうね。とりあえず私が様子を見てきます。二人は此処に残っていて頂戴」
ミーナは机の引き出しから耳に装着する無線器を取り出し、自分の耳に付け、護身用の拳銃を見えぬ様にそっと腰にたくし込んだ。
「何か有ったら知らせます。もし万一の場合は、貴方達に任せます」
そう言うと、ミーナはつかつかと歩き、執務室を出ていった。

ミーナは基地の中を巡りながら、何か異変や異常は無いか見て回った。
特に何もない。普通と変わらぬいつもの基地だ。別に怪しい気配は微塵も無く……
台所に来ると、リーネと芳佳が居た。何かを必死に作っている。
「あらリーネさんに宮藤さん。何をしているの?」
「ク……じゃなくて、ルッキーニちゃんのお誕生日祝いの為に、ケーキを作っているんです」
「あら、頑張るわね。宮藤さんもお手伝い?」
「はい! ルッキーニちゃんのお誕生日、みんなでお祝いしたいじゃないですか」
「頑張ってね」
「この後扶桑のお餅料理と甘酒も作るんですよ? ミーナ中佐も一緒にどうですか?」
「……後でね」
苦笑すると、ミーナは手を振って現場を後にした。
134christmas resistance 03/07:2008/12/24(水) 03:11:57 ID:E+hHG4LX
ロビーに出た。至る所、緑と赤、たまに金色の鈴や星など色とりどりの飾りが取り付けられている。
「あら? この飾りは? なんだかクリスマスっぽいけど」
「こ、コレハルッキーニの故郷のロマーニャの国旗をモチーフにあしらった飾りナンダナ。ルッキーニの為ダカンナ」
「あら、そう。サーニャさんもお手伝い?」
「はい」
「二人とも気合が入るのは良いけど……ここまでやらなくても」
ミーナが前に貼った「クリスマス禁止」の張り紙が、実に見事に隠れてしまっている。
「ルッキーニは寂しがりやダカラナ。寂しがり過ぎると死んじゃうンダ、ウサギみたいに」
「ほ〜い、これ〜」
「飾りの追加持ってきたぞ」
大きな箱を持って来たエーリカとトゥルーデ。
「あら二人も手伝い?」
「ああ」
「……まあ良いわ。終わったら、後で片付けてね?」
「了解」

ベランダでは、シャーリーがドラム缶で自作したバーベキューグリルで何かを焼いている。
筒の煙抜きから、もくもくと煙が立ち上っている。横ではルッキーニが眠っている。
「シャーリーさん、何を焼いてるの?」
「ルッキーニの為に七面鳥を焼いてるんですよ」
「ずいぶんと豪勢ね」
「あたしの国のバーベキューは奥が深くてね。網で豪快に焼くグリルがあたしは好きなんだけど、
こう言うお祭り……いや、お祝いの時は、好きな肉を半日以上掛けて弱火でじ〜っくり焼くんだ。
そうすると身がホロホロに柔らかくなって、歯で噛まなくても良い位に肉がジューシーで軟らかくなって……」
「こ、こだわるのね、シャーリーさん」
「まあ見てて下さいよ」
にんまりと笑うシャーリー。
ミーナは苦笑すると、その場を離れた。

夕食時。
「ルッキーニ、誕生日おめでと〜!」
「おめでとう!」
「ニャハー ありがと!」
何処からどう見てもクリスマス一色のロビーで、「ルッキーニの誕生日を祝う会」が盛大に執り行われた。
「はいこれ、あたしからのプレゼント」
「何これ?」
「開けてごらん」
「わあ、指輪! シャーリーとお揃い? お揃い?」
「堅物達には先越されたけどな〜。一応どうよ?」
「ぴったり! ありがとシャーリー!」
抱きつかれ、笑顔のシャーリー、そしてルッキーニ。
「あの指輪……」
「どうかした、エイラ?」
首を捻るエイラと、その仕草に気付いたサーニャ。
「あれハ……この前ロンドンの骨董品市で売ってたハンバーガー四個分位ノ……」
「わあ言うなエイラ! 黙っとけ!」
シャーリーが必死にエイラの口を塞ごうと迫る。
「分かったヨ。ショウガナイナー」
ルッキーニの耳には全然届いてない。
「……あれ。あと、これ鍵? 何処の?」
「分かったら入れてあげるよ」
にんまりとするシャーリー。
「やるな、シャーリー」
「何だか恋人さん同士みたいですね」
ぶつくさと何かを言うエーリカ。
「え?」
「いや何でもないよ〜。さて、私達からのプレゼントぉ」
135christmas resistance 04/07:2008/12/24(水) 03:13:45 ID:E+hHG4LX
エーリカとトゥルーデから封筒を渡された。中から出て来たのは、石の粒にも似た何かの欠片。
「わ〜い……って何このカケラ?」
「ルッキーニにふさわしく、まさにダイヤの原石! 推定二カラットだよ〜ん。どう? 結構するんだよ?」
「ダイヤ……。原石……。指輪とかじゃないの?」
指をくわえて原石を見るルッキーニ。
「私の荷物の中から出て来たんだけど、要らないからあげる〜」
「そう言う事言うなって」
「荷物整理? ひど〜い!」
「まあまあルッキーニちゃん、その原石、磨いて貰えばちゃんと綺麗な石になるから」
芳佳がフォローする。
「ホント?」
「加工費が高いだろうけどね」
にやりと笑うエーリカ。
「いじわる〜!」
「まったく、探すのにかこつけて部屋の掃除させられた私の身にもなってくれよ」
トゥルーデも思わず本音が出る。
「やる気無いなああんたらは」
「ルッキーニ、私からは、コレヤルヨ。私の国では有名な飴ナンダゾ?」
「ありがと〜!」
早速袋を開け、ひとつ口に放り込む。
「ヴェーダディコデー!!」
うええ、と苦悶の表情で飴を吐き出すルッキーニ。
「サルミアッキ。世界一と評判の飴ダゾ?」
「こんな不味いのいらな〜い!」
「何が世界一なんだよ」
「まあ、私も持て余してたんだけどナ」
「エイラ、お前ってヤツは」
「あと、これ……」
サーニャが包みを差し出した。
「あれ、これ今流行りのやつだ! でも、これサーニャが大事にしてたぬいぐるみじゃないの?」
「私は……同じの持ってるし、もうこれ以上は、要らないから」
と言って、ぎゅっとエイラの裾を握るサーニャ。かあっと顔が赤くなるエイラ。
「……なんかビミョーだけど、ありがと。リーネは?」
「ブリタニア料理の……」
「芳佳は?」
「スルーしないでルッキーニちゃん! ロンドンまで買いに行く機会がなかったから、フィッシュ&チップス作ったんだけど」
「わあ、それ好き! ついついおやつで食べちゃうよね! わあ、今日のはフィッシュが大きいな〜」
「あっはっは、ルッキーニ、食べないと大きくなれないぞ?」
シャーリーが言いながら、からりと揚がったポテトをつまむ。
「うん。ビールが合うね」
「シャーリー先にずる〜い!」
「じゃあ、私からはこれ。どうかな?」
芳佳から箱が渡される。ルッキーニは丁寧に包んだ紙をびりびりとはがす。
「……扶桑人形?」
「扶桑海軍の連絡所に頼んで、ひとつ贈って貰ったの。私が持ってるのよりもサイズ小さいけど」
「よく出来てるねえ……細かいところとか」
「ルッキーニ、ベルトめくったりしないの」
「えーだってー」
「さて、全員プレゼントは贈ったな? じゃあ例のものを」
「了解〜」
運ばれて来たのは、リーネ特製の四段重ねのデコレーションケーキ。丁寧にチョコレートで
《ルッキーニちゃんお誕生日おめでとう!》
と書かれている。
136christmas resistance 05/07:2008/12/24(水) 03:16:04 ID:E+hHG4LX
「あたしはメインディッシュだ」
ほかほかの焼きたてターキーを皿に取り分ける。
「半日バーベキューグリルと向き合って、煙ず〜っと見てたら悟りが開けるかと思ったよ。柔らかくてうまいぞ?」
「わあい!」
「なんだかホントにクリス……」
「私の妹のクリスにも何かしてやりたいのか。分かるぞ宮藤」
芳佳の言葉をうまく遮るトゥルーデ。ナイスフォローとばかりに指を立てるシャーリーに、
少し顔を赤くして同じ仕草で返すトゥルーデ。
今度も同じ様にケーキを前に記念撮影をし……料理とケーキが渡り、ジュースやコーラ等の飲み物も全員に行き渡った。
「さて、料理も全員に渡ったな? じゃあ改めて」
「おめでと〜!」
「ありがと〜!」
「全員、待ちなさい!」
突然鋭い声が飛ぶ。ミーナと美緒、ペリーヌだった。
全員の動きが止まる。
場の空気が張り詰める。
「ちゅ、中佐……」「ミーナ中佐」「ミーナ」
厳しい表情のミーナを前に、戸惑う一同。
「これは一体どう言う事かしら? バルクホルン大尉、イェーガー大尉、説明しなさい」
「これは、ルッキーニの誕生日祝いで」
「そうそう。決してその……」
「坂本少佐、ペリーヌさん。あれを今すぐに外しなさい」
指差す先は、エイラとサーニャが丁寧に仕上げた飾り付け。
「ちょ、ちょっと!」
声を荒げるシャーリー。
「ミーナ、幾ら何でも……」
トゥルーデが動きかけた。
だが、ささっと外されたのは、飾り付けに埋もれた「クリスマス禁止」の張り紙。
ミーナは受け取ると、クシャクシャと丸めてごみ箱に投げ入れた。
唖然とする一同を後目に、口をぽかんとして突っ立っているルッキーニに近付くミーナ。何かを差し出す。
「ルッキーニさん、お誕生日おめでとう」
ルッキーニは少し震えながらその何かを開けた。
「これ……ハロッズのチョコレート」
「口に合うかどうかは分からないけど……み、いえ、坂本少佐とペリーヌさん、私の三人からよ」
「あ、ありがとう、ございます」
「ほらどうした皆? 私達の料理と飲み物は無いのか?」
美緒が催促する。
ミーナに引っ掛けられた、と全員が気付くのに時間は掛からなかった。
「中佐ぁ!」「酷いよ中佐!」「どうなるかと思った……」
安堵する一同を前にうふふ、と笑うとミーナは言った。
「みんなの頑張ってる姿見て……悪い事しちゃったと思って。私達家族なのにね。みんな、ごめんなさいね」
「そんな事は……」
「やったぞルッキーニ! あたしたちの勝利だ!」
「やったー」
ミーナ達にも料理とケーキ、飲み物が渡された。
「じゃあ改めて」
グラスを手にする501の面々。
「ルッキーニ誕生日おめでとう! そして……」
「メリークリスマス!」
「……まだイブだけどナ」
137christmas resistance 06/07:2008/12/24(水) 03:17:45 ID:E+hHG4LX
「このケーキ美味しいわね。リーネさん、流石ね」
「ありがとうございます。今回は頑張りました」
ケーキの乗った皿を手に、微笑むミーナとリーネ。
「これがリーネさんの作った、本当のケーキなのね」
「はい?」
「いいえ何でもないわ」
横ではペリーヌがきなこ餅で窒息しかかっていた。
「このパウダー掛かった扶桑の菓子……粉がむせる……中がネバネバして喉にっ詰まるっ!」
「食べ過ぎです! お水飲んで飲んで」
「わっはっは! ペリーヌがっつき過ぎだぞ? もっとこう細かくして食べるんだ」
トゥルーデはターキーのローストをかじり、呟いた。
「なるほど。確かに身が非常に柔らかくて食べやすい。リベリアンが作った料理にしてはよく考えてるな」
「素直に美味いって言えないかね〜この堅物はぁ」
横で同じくターキーを頬張る北欧コンビ。
「サーニャ、美味いナ、コレ」
「うん」
「まだイブだけど……その、後で」
「?」
「イヤ、何でもナイ」
「おかしなエイラ」
くすっとしたその笑顔にきゅんと来たのか、顔を赤くしてうつむくエイラ。
そんな皆に囲まれ、幸せ一杯のルッキーニにすすっと近付く影。耳元でヒソヒソと囁く。
「ルッキーニ、実はもうひとつ秘密のプレゼント有るんだけど、欲しい?」
「欲しい欲しい! 石ころじゃなくて、もっとすぐに楽しめるやつがいい!」
「じゃあ、これなんかどう?」
エーリカはそっとルッキーニの手に何かの粉薬? を渡す。
「なにこの粉?」
「これをジュースに溶かして、寝る間際にシャーリーと一緒に飲むと良いよ。ちょっとしたおまじない♪」
「へえ〜。じゃあ今夜二人で試してみる!」
「お楽しみに」
小悪魔的な笑みを浮かべるエーリカ。めざとく見つけるトゥルーデ。
「エーリカ。今の粉は何だ?」
「とってもハッピーになれる魔法の……」
「お前というヤツは……。何度やったら気が……」
「違うのよ旦那様! あれは魔法少女の私が〜」
「待てぇ!」
「あいつら最近いつも楽しそうだな」
「シャーリー、後で、二人で少し飲まない?」
「お? ルッキーニ、もうオトナ気分か?」
「いいじゃん! あたしももう……」
「ここで年齢の話はやめよう」
すすっとミーナの傍から離脱するシャーリーとルッキーニ。
「芳佳ちゃん、この甘酒、美味しいね。妙にどろっとしてるけど」
「ホントは別の季節とかに作るんだけど、これなら良いかなと思って」
「芳佳ちゃんの作るのなら、何でも美味しいよ?」
「ありがとう」
138christmas resistance 07/07:2008/12/24(水) 03:19:24 ID:E+hHG4LX
夜も更け、酒が入り始めてから騒ぎは一層かしましくなり……。
疲れ切った面々が二人抜け四人抜け……やがてロビーには散らかったクリスマスパーティーの跡だけが残った。
「ふむ」
一人残った美緒は、明かりが落ち、まだ片付けられていないその空間を見回して、言った。
「諸行無常、盛者必衰だな」
「何の事かしら、美緒?」
いつの間にか、ミーナが傍に来ていた。
「いや。たまには息抜きも必要じゃないかと思った。それだけさ」
なるほど、と受け答えるミーナに、美緒は礼を言った。
「そう言えば、さっきのルッキーニのプレゼントの件、助かったよ。全く準備していなかった」
「この前のロンドン行きの用事ついでに寄っただけよ。皆で出した事にすれば喜ぶでしょ?」
「すまん、ミーナ」
「いえいえ。……そう言えば、さっき貴方は何故ここを見て、寂しそうな顔をしたの?」
「そう見えたか?」
「ええ。どうして?」
美緒の顔を見るミーナ。美緒は会場をぐるりと見回して、呟いた。
「皆が居なくなったパーティ会場の静寂。それが、少しそう思った原因かもな」
「やだ、美緒ったら」
くすっと笑うミーナ。えっと言う顔をする美緒に近付くと、耳元で、囁いた。
「皆、何で二人ずつ居なくなったか分かる?」
「?」
「さあ、もうちょっと余韻を楽しみましょう。私達も、二人で」
美緒には何も言わせず、腕を絡め、恋人繋ぎをして……、ミーナの部屋に向かった。

end

----

以上です。
最近ラストはミーナ×美緒で〆と言うのがパターン化してしまってますね。
癖かな〜直さないといかんのかな〜とか思ったり。

ではまた〜。
139名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 04:54:30 ID:1cmbHZYI

なにこのパラダイスなスレ……俺の脳内がお祭り騒ぎで寝られなくなってしまったんですが……

>>138
何だかんだ言ってもやっぱりミーナさん思いやりのある隊長ですよね!
あとシャーリー@BBQがなんか想像してたら和みました。


本当にGJでした!
次回作も期待してますっ!!
140名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 05:11:55 ID:Ql1UHHHt
>>138
GJです
所々のエイラとサーニャのやり取りとか
ハルトマンとトゥルーデの掛け合いとか、とてもよかった
ところでミーナ隊長、皆二人ずつ居なくなったとして
芳リーネ ゲルトマン エイラーニャ シャッキーニ そして、美緒ミーナ……
あれ?ペリーヌは?
141名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 05:22:03 ID:mD7dOyHa
>>140
きなこ餅を喉に詰まらせて医務室に直行or夜間哨戒と妄想…
ペリーヌに幸あれ
142名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 06:06:15 ID:Ql1UHHHt
>>141
やっぱ餅で退場が有力かな……
あとは、隊長がもっさんと性…聖夜を過ごすために
騒ぎに乗じて……うわっ何すくぁwせrftgyふじこlp
143続カレワラ 1/7:2008/12/24(水) 06:09:23 ID:5M21PqWy
>>138
GJ! ペリーヌが凄く可愛いです。次の作品も期待してます。
他の皆もGJ! 本当に凄いのばかりです。
凄いとしか言えない自分が疎ましい程です。

そして前スレ37 IDはQB1eHhb+です。
前スレでGJって言われたのと保管庫に私の作品(と呼べるのか?)があった事に
存外に感動してしまい調子にのって続きを書いてみました。
文に整合性が無く、また携帯からですので見にくいと思いますがご容赦下さい。




月が地平の彼方に沈みはじめ、太陽が姿を曝け出す、そんな払暁の折りにエイラは自室で目を開いていた。

エイラは真っ白なベッドの上に仰向けで寝転んでいた。
両手は頭の後ろに組んで、片足は膝を曲げ、もう一方の足に台を提供している。
周囲には脱ぎ散らかしたスオムス空軍の制服があり、その身体には胸部を覆う淡い水色のタンクトップとズボンだけしか纏っておらず、酷く寛いだ格好だ。
空色の瞳はただ、虚ろに天井を見据えていた。
窓のカーテンは全開で、照明も付いて無いのに、窓から溢れ出す太陽とも月とも知れぬ光だけで部屋はとても明るかった。
エイラの頭はサーニャの事で一杯だった。
「あ〜〜」
口から漏れた唸り声は、静かな部屋を縦横無尽に駆け巡った。
「サーニャ〜〜」
いよいよ駄目だ。早くサーニャに会わなければおかしくなりそう。早く朝になってくれ。早くサーニャに合わせてくれ。


私が同盟を切り出した当初は間の抜けた表情をしていたハルトマンも
すぐにパッと笑顔になり「二人揃えば向かう所敵無しだよ」なんて述べて、これからよろしくねと、手を差し出してきた。
敵って誰だよって、差し出してきた手も無視して口に出すと
然も当然の様に“宮藤”なんて真顔で返してくるものだから心底驚いた。
いや、まあ、心の奥底ではそうなのだろうと感じていたが
口に出して言われると、改めて驚いてしまう。
私がびっくりして身体を強張らしている間も、彼女はずっと手を差し出していた。
少しばかり躊躇っていると、彼女の瞳がお前は逃さないという風に、がっちりと私を捉えて離さなかった。
逃げ道が無くなった私に残す術は無く、ビクビクした手付きでハルトマンの手を握った。
彼女は満面の笑みでそれを迎え「一緒にトゥルーデとサーニャを宮藤から取り戻そう!」と言ってきたのだ。
144続カレワラ 2/7:2008/12/24(水) 06:11:33 ID:5M21PqWy
「取り戻すって何をするんだよ」
「う〜んと、それはねぇ〜……」
おいおいまだ考えてないのか? まったくもう、先が思いやられるよ。

私が深い溜め息を吐いていたら
ガチャ と、突然にドアノブが回る音がした。
二人して其方へ注意を向けると、扉がきぃと音を立てて開いていく。

そこに居たのはミーナ中佐だった。
始めはしかめっ面だったその顔も、辺りをきょろきょろ見渡して私を認めると
満足したのか、直ぐに何時もの様な優しい表情に戻っていった。
「あら、エイラさんおはよう。今日もぐっすり眠れたかしら。」
「おはようございます。ミーナ中佐」
「ごめんなさいね。貴女達に負担を押し付けてしまって… それはそうとエイラさん。こんな所で何をしているのかしら? サーニャさんも居ないみたいだし」
「あっ、いや、その………ちゅ、中佐の方こそどうしてこんな所に?」
「ああ、それはね。エーリカを探しているのよ。午後から訓練だっていうのにあの娘ったら、何処をほつき歩いてるのかしら」
「え? ハルト―――っ痛!」
あれ? 今お尻を抓られたような感触が。
(喋らないで)
背後から微かな、それでいてどすの利いた声が聞こえてきた。
情けない事に私は今、お尻を人質に脅迫されているのだ。
(ミーナを追い出して)
そう言うと、奴は私のお尻に手を掛けた。これはつまり、私の意思など存じないということだ。
私に選択の余地など残されてはいなかった。痛いのは嫌だ。
「どうかしたのエイラさん?」
「な、何でも無いです! はい! 大丈夫、ハルトマンは居ないです !」
「何か変よ貴女? 顔が真っ青。汗だってこんなに出てる」
近付いて来て頬を撫でられた。 お尻も撫でられた。
「隠し事はいけないわよ?」
「そ、そんな事するわけ―――痛て!」
劇痛が走る。また抓られた!
それと同時に背中を押され、ミーナ中佐に抱き着く様な格好になってって、あれ? 中佐が居ないよ?
ドスン! 床に顔面からぶつかる音。
「ごめんエイラ! 話はまた今度ね!」
「ちょ、待ちなさいフラウ!」

この声が何処か遠くの世界のやり取りの様に感じられる。
二、三分床に臥せていたら、やっと意識が戻って来たようで、私は直ぐに起き上がった。
145続カレワラ 3/7:2008/12/24(水) 06:13:17 ID:5M21PqWy
部屋に一人取り残されてしまったみたいだな。お尻とお鼻がじんじん痛む。
「くそ、ハルトマンの奴思いっきり抓りやがって、今に見てろよ… 」
私は小さく毒づきながらお尻をなでた。

しかしこれからどうしようか?
食事なんて、食欲などとうに雲散してしまっている。それに今、食堂に戻るのはとても気が引けてしまうだろう。
なので、基地を散策してみることにした。
今更、目新しい物なんて何もない。頭に靄をかけて流れる侭にそこら中を歩き回った。
途中、シャーリーとルッキーニが廊下の隅で抱き合ってた様に見えたが、それはきっと見間違いだろう。
ハンガーを訪れると、一面に整備中のストライカーと各種整備機器や工具が散らばっていた。
十三組分、二十六機ものストライカーが分解され魔導エンジンを曝け出している姿は大層不思議で空想的な光景だった。
決して綺麗とは言えない、埃が舞う油塗れのこの場所は、まるで童話のドワーフの工場みたいだ。
初めて見る世界に私は胸をふくらませ、そしてドワーフの工場に入っていった。
圧縮機から空気が漏れる音だけが支配するこの世界。
どうやら“ドワーフ”達は私が来た事で慌てて地中に潜ってしまったのだろう。
まだ湯気が立っている飲みかけのコーヒー、スパナを刺しっぱなしのストライカーや電源を付けた侭の圧縮機。
きっとさっきまで、大勢の人達が此所で、雑踏の中を忙しく動いていたんだろうな。
私は不意にコーヒーに手を付けた。
すると何処からか、ばたん! と、何かが倒れる音がした。
周りをみても何も倒れていない。きっと空耳だな。
私は観察を続行する。殆どの機が予備機まで整備されているみたい。無いのと言ったら、ミグ機ぐらいだ。
お! あんな所に私のメルスが
工場の端辺りに私のメルスがあった。急いでそっちへ向かう。
――人が倒れてた。
しかも私の愛機の前で。なんと迷惑な事だろう。
「こんな所で寝てたら風邪引くぞ」
俯けに横たわる“ドワーフ”に向かって注意を促す。
………
無視か…ちょっとむっと来るね。これは。
近付いてしゃがみ込んで、身体をつんつん突き回す。特に脇腹を重点的に。
“ドワーフ”がはぁはぁ言い出した。苦しいのだ…でも止めてあげないよ。私を無視した罰だ。
146続カレワラ 4/7:2008/12/24(水) 06:14:26 ID:5M21PqWy
さすがに慣れてきたのか、未だにはぁはぁ言ってるが、体の震えは止まった。
そこで次の罰。くすぐり攻撃! 然しもの奴もこれには堪らないはずだ。
しかしながら、相当訓練された“ドワーフ”だったようで、ちっとも笑いやしない。
さすがにかちんと来る。そこまで無視する事ないだろって。
そしてそろそろ、はぁはぁという声が煩く感じはじめた。
「お前が無視するから悪いんだぞ」
私は近くにあった煤けた布を取ると、それで奴の鼻と口を塞いでやった。
苦しかったら反応してみろ。
だけど、待てど暮らせど奴は動かない。煩しい声は既に聞こえず、空気が漏れる音しか聞こえて来ない嫌な感じ。
もしかして死んでたりして?
怖くなった私は急いで奴の布をはぎ取り、その身体を翻した。
頬を叩いても反応無し。だけど息はしてるし、心臓も動いてる。うん、気絶だな。
このままではなんか駄目なので身体を起こして壁まで運んでやる。
女の力じゃかなりの重労働だ。凄く疲れた。
ふうっと、振り返るとまた一人倒れていた。

同じ事を後三回繰り返し、五体目の“ドワーフ”が現れた処で私はキレた。
わざと五体目を踏み付けて滑走路へ出る。
「ちゃんと整備しとけよ。ドワーフ共」
こう捨て台詞を吐いてな。

外に出ると太陽は真鍮色に染まっていて、水平に身を浸かりはじめてた。
滑走路の端まで歩いて行く。空は雲一つ無い赤い空。
もうすぐ待ちに待った夜だ。サーニャだ。そう思うと心が踊る。
今は一人で寂しくて不安だけど、サーニャと言葉を交わすだけでそんなものは吹き飛んでしまうはずだ。
空に二本の雲が走る。
あれは……坂本少佐とペリーヌだ。
。そう、あの二人みたいにもうすぐ私もサーニャと飛ぶんだ。
ああ早く夜にならないかな。早くサーニャに会いたいな。


私は今、大広間に居る。もうすぐ夜間哨戒だっていうのに。
まあ隊長命令だから仕方無いし、それにサーニャも居るから文句は無い。
因みに今この場所には、私とサーニャの他、宮藤とリーネが居る。全員が命令を受けてな。
ちょうどペアが二組。これが本来の姿だよ。
宮藤とリーネは楽しく喋ってるし、私達も楽しくお喋り…はして無いけど、仲良くソファの上に並んで、のほほんとこの時間を楽しんでる。
私が何気にサーニャの頭を撫でてやると嬉しそうに微笑んで擦り添ってくるんだ。
147続カレワラ 5/7:2008/12/24(水) 06:16:48 ID:5M21PqWy
これだね。これだよ。うん、完璧だ。
しかし束の間の幸せも長くは続かなかった。
ミーナ中佐のお出ましだ。横に坂本少佐、後ろには半べそのハルトマンをたずさえて中佐はやってきた。
「もう皆揃ってるわね」
中佐と少佐が部屋の中央に陣取った。ハルトマンは私の隣り。
「何故集められたか不思議だろうから簡単に説明しよう。詰まりだな、エイラのストライカーがいまだ整備中だからこの中から代わりの者を選ぼうという訳だ」
わっはっはって、どういう事だ。
私のストライカーが整備中って、飛べないってこと? 何で? どうして?
「坂本少佐! 私のストライカーがまだ整備中って何ででですか!」
「ああ、それはだな。どうやらユドウフのせいらしい。大方、鍋でも突いてたんだろう」
「ドワーフよ美緒。ボケないで頂戴」
「私から説明するわ。私にも意味が分からないのだけれどね。整備兵が口々に“俺はドワーフだ”とか“俺も踏んで”とか叫んでるのよ
そして皆が皆“あいつらが悪い”って5人を指差すのよ」
おい、それって…私のせいなのか?
「ねえリーネちゃん。ドワーフって何なの?」
「えっとね、確か北欧神話の生き物だったような…」
全員分の視線が痛々しい。宮藤とリーネに中佐と少佐、ハルトマン…ああ、サーニャまで!
皆酷いよ。確かに私が原因かも知れないけど、それは無視したあいつらが悪いのであって私に罪はない。
「言っとくけど、私じゃ無いからな!」
「ふむ。まあ、そんな事はどうでも良い。問題は誰が飛ぶかだ。立候補する奴はいないか?」
「はい!」
私は勢い良く手を挙げた。少佐は元気がいい娘が好きな筈。私を選んで!
「おーい、誰か居らんのかー」
あれ? おかしいな? もしかして見えて無かったのかな? ならもう一度だ。
「はい! はい!」
元気良く挙手。皆の視線がさっきより痛々しいのは私の気のせいだ。
「エイラ。お前は話を聞いとらんのか?」
何が言いたいのか解ってる。未来予知は伊達じゃないのさ。
「ストライカーなら他のを使えば良いだろ」
「駄目よ! そんな事。貴女、メッサーシュミット以外乗った事無いでしょ。危険だわ」「え〜、でもメルスだっていきなりで乗れたんだし、他のだって」「我儘は許しません! 解ったら返事!」
「…はい」
「よろしい」
何て事だ。未来予知なんて役に立たないじゃないか。
148続カレワラ 6/7:2008/12/24(水) 06:17:56 ID:5M21PqWy
「あの、私がやります」
そう言って手を挙げたのは宮藤だ。
サーニャの事を狙ってかどうかは知らないが唯、挙げた手が震えていた事だけは確かだった。
「芳佳ちゃん」
「大丈夫だよリーネちゃん…ブリタニアの夜は私が守ってみせるよ」
心配そうに声を上げたリーネを、宥めた声はやっぱり微かに震えている。
恐いのか。そりゃそうだ。誰だって夜の空は恐い。それもつい最近に空を飛ぶ事を覚えた宮藤には一入だろう。
前飛べたじゃないかって、そんなのは関係ないのさ。それにあれは随分と前の話だ。
「私も…私も飛びます!」
リーネだってやっぱり声が震えてる。精一杯勇気を出したんだろうな。今にも泣きそうだ。
なんと言っても夜の空を飛んだ事無いんだ。至極当たり前だ。
もどかしい。新人達があんなにも勇気を出して頑張ろうとしてるのに、私は何で何も出来ない。
「あーもう、私が行くよ。新米にはちと荷が重いからね」
ハルトマンの声だ。前の二人とは違う余裕のある声。私と同じ思いだったんだろうな。リーネと宮藤にとっては天の声と見間違える筈の声だろう。
ハルトマンは言い終わると私にウインクを投げてきた。その意味を知ったのはもう少し後の事である。

「よし。それでは今夜の哨戒はハルトマンとサーニャに飛んで貰う。では他の者は解散」そうして私達以外皆出ていった。
「ごめんなサーニャ」サーニャの頭を優しく撫でた。
「ううん、平気…」
「あのー。お寛ぎ中すまないんだけど、早く行かないとミーナにまた怒られちゃうよ」
「だってさ。それじゃ行こうかサーニャ?」「うん」
サーニャの肩を抱いてハンガーへ足を運ぶ。後ろからぶつくさ聞こえるが、そんなの気にしない。
だって何十時間ぶりのサーニャだもの。それに今夜は一緒に行けないからとても寂しい。だから、今ぐらいは別に良いだろ?
ハンガーに着くと私はサーニャの装備を手伝った。
ストライカーを履かせて、武器を持たせて、それから色々と注意する。
「危なくなったら逃げるんだぞ」「安全装置はちゃんと確認しろよ」「ハルトマンはあれで結構良い奴だから心配しなくて大丈夫だ」
149続カレワラ 7/7:2008/12/24(水) 06:19:52 ID:5M21PqWy
他にも沢山注意した。
少しでも一緒に居たかったからかもしれない。何時もより少し多めの注意。
だけど、やっぱり別れの時間はやってきた。
「サーニャ。気をつけてな。頑張るんだぞ」
「うん…行ってきます」
サーニャが離陸する。
「ハルトマン。サーニャを頼んだぞ」
「はいはい、わかってますって。私に任せときなって」
ハルトマンのスピットファイアが唸りを上げ、続けて離陸。何故だか乗れるらしい。
わたしは二人の姿が消えるまで、そして水平の後に消えてからも、何時までも何時までも手を振り続けた。


つづく‥‥‥?







設定が崩壊してますが気にしないでください。
そして適当に題名を付けた事をちょっぴり後悔していたり。
多分続けますのでまた宜しくお願いします。
では失礼しました。
150pinkman ◆IQ64WVvgjQ :2008/12/24(水) 09:06:49 ID:r3tOUFmG
 ルッキーニ誕生日ネタが行き詰っているので現在進行中のネタを投下。

 ○o。◎o。*。o○。o◎*○o。*。o◎*○o。*。o◎*○o。*。o◎*○o。*。o◎

 『みんなで…』

 ガリア方面にあったネウロイの巣が消滅した日から数日後、昼食を終えてみんなが解散して自室に戻ろうとしたその時、坂本少佐は宮藤とリーネとハルトマンを呼び止めた。

  坂「宮藤とリーネ、午後から私とロンドンまで買い物に付き合ってほしい」
  芳・リ「はい、わかりました、すぐに仕度します」

 そう言って二人は手を繋いだままそれぞれの自室へ向かっていった。

  坂「あーそれからハルトマン中尉、ドライバーとして一緒に来てくれないか」
  ハ「えぇーーー何で私…別にいいですけど私が運転して事故っても知りませんよー(苦笑)」
  坂「はっはっは!そんな冗談を言えるぐらいだったら大丈夫だろう、では30分後に駐車場に集合だ」

 笑いながらそう言って坂本少佐は食堂から去っていった

  ハ(ホントやばいのに…ボソボソ)「りょーかーい」

 ぼやきながらも気のない返事をしてハルトマンも食堂から姿を消す。
 一方、一部始終を見ていたペリーヌはと言うと…

  ペ「さ、少佐があの豆狸とロンドンまでお買い物ですってぇ?ムムム…なんでいつもいつもあの子ばかり少佐のお側に…
   少佐はなぜ私にお声を掛けてくださらないのかしら?ま、まぁリーネさんもいることですし、間違いなんか起こるわけないわよね!」
  (でも…やっぱり夜まで少佐が基地に居ないとなると…ですわねぇ)ハァー

 深いため息をつきつつ、トボトボと部屋へ戻るのだった。

      ◇…◇…◇…◇…◇…◇…◇… 一方こちらは隊長室 …◇…◇…◇…◇…◇…◇…◇…◇

  ミ「買い物って、3人も連れてロンドンまで何を買いにいくの?ハルトマンはドライバーみたいだけど大丈夫なの?
  この前もトゥルーデと病院に行ったときにこすったから始末書を書いたばかりだし…まぁあの時は罰として一人だけ晩ごはん抜きだったけどねウフフ」
 坂「運転は…まぁ一応あいつを信じてやろう(汗)、それより明日の解散パーティーにみんなが見たこともないものを作ろうと思ってな、
その材料なんだが一人じゃ持ちきれないから宮藤達にも手伝ってもらうために連れて行く。
結構たくさんあるから体力の訓練になるかもな…はっはっは」
  ミ「なんだか知らないけど楽しみねぇ、扶桑の料理かしら?」
  坂「では行ってくる」
  ミ「気をつけてね」
151pinkman ◆IQ64WVvgjQ :2008/12/24(水) 09:23:45 ID:r3tOUFmG
 宮藤は自室で準備をしながら独り言をブツブツ…

  芳「ロンドンまで何を買いに行くのかな…坂本さんのことだからなんか変なもの買いそうでこわいなぁ…でもリーネちゃんも一緒だから楽しくなるかな」

 …などと文句を言いながらもどこか楽しそうだ
 その頃リーネは着替えを済ませ、駐車場へ向かいながらぼんやりと歩いていた

  リ「ロンドンまでお買い物かぁ…今日は坂本少佐とハルトマン中尉も一緒だけど、芳佳ちゃんと二人きりだったらどんなふうになるのかな。。。」ポワワワ〜ン
 ─妄想中─ 色んなところを見てまわって、カフェでお茶して、それから…キャッ♪恥ずかしい ─妄想中─

 その時誰かにぶつかった

  リ「あっ!ご、ごめんなさい!バルクホルン大尉…」
  ゲ「いや、私は大丈夫だ。それより歩くときはちゃんと前を見て歩け、ボーっとしているようでは軍人として自覚が足らんな」
  リ「は、はい、すみません」
  ゲ「ところでこれからどこへ行くんだ?何やら急いでいるようだったが」
  リ「あ、あの…坂本少佐とハルトマン中尉と芳佳ちゃんと私とでロンドンまでお買い物です」
  ゲ「そうか、気をつけて…な、ナニ!?クリ…い、いや宮藤も一緒なのか?」
  リ「そうですけどどうしたんですか?」
  ゲ「い、いや何でもない気にするな。それより事故の無いように気をつけて行ってくるんだぞ」
  リ「はい、それでは失礼します」

 そう言ってリーネは駐車場へ向かって歩いていった

  ゲ「宮藤と買い物か…」ポワワワ〜ン
 ─妄想中─ 私だったらクリスも連れてあそこへ行ってあそこへ行って…ウフフ… ─妄想中─
  ゲ「ハッ!何を考えているんだ私は、たかだか買い物に行くだけじゃないか!今日の私はどうかしているようだ…昼寝でもして気分を落ち着けよう」

 バルクホルンはブツブツ独り言を言いながら自室へ向かって歩いていると角の向こうから走ってくる誰かにぶつかった。

  芳「うわぁ〜早くしないと遅れちゃう〜!」
  ゲ「誰だ!歩くときはちゃんと前を…ん?み、宮藤!?」
  芳「あっ!ご、ごめんなさい!バルクホルン大尉…」
  ゲ(リネット軍曹と同じことを…)「い、いや何でもない、それより坂本少佐とロンドンまで買い物に行くそうだが?」
  芳「はい、坂本さんが今日の訓練を休みにする代わりにリーネちゃんと私についてこいって」
  ゲ「そ、そうなのか?それじゃ事故の無いように気をつけるんだぞ」
  芳「はい。あっそうだ!バルクホルンさんは今度妹さんのところにお見舞いに行くんですよね?私も一緒に行ってもいいですか?」
  ゲ「エッ?そ、それは別にかまわんが…なぜ急にそんなことを?」
  芳「ガリアのネウロイの巣が消えたのが確認されてこの部隊が解散したら私も坂本さんも扶桑へ帰国するだろうから、その前に会っておきたいなぁって思って」
  ゲ「そ、そうか?クリスもきっと喜ぶだろうな」
  芳「それじゃ私は急ぎますので…約束ですよー必ず連れて行ってねおねえちゃん」

 そう言って宮藤も駐車場へ向かって急いで走っていった

  ゲ「!!」ポワワワ〜ン
 ─妄想中─ おねえちゃん…おねえちゃん…おねえちゃん…ハァハァ…宮藤ーーーっ! ─妄想中─
  ゲ「ハァ、やっぱり今日はなんだか変だ、すぐに寝て忘れよう、それにしても…おねえちゃん、か…フフフ」

 バルクホルンは鼻血を垂れ流しながら部屋へと戻っていった
152pinkman ◆IQ64WVvgjQ :2008/12/24(水) 09:31:38 ID:r3tOUFmG
 宮藤とリーネが準備でバタバタしていたその頃…エーリカ・ハルトマンは駐車場で乗車前点検をしながら独り言をこぼしていた。

  ハ「これでよしっと!…ハァー、車の運転かぁ、この前みたいに途中でウトウトして事故らないように…」

 キリキリッ!ゴロロロロ・・・

  ハ(アレ?なんかおなか痛い…こりゃいつものよりヤバイかも)「……トゥルー…デ…たす…け…」バターン!

 ゴロゴロ…最近どうも腹の具合がおかしいと感じていたハルトマンであったが、いきなりの急な腹痛のためその場に倒れてしまった。
 数分後、坂本少佐とミーナ隊長が談笑しながらたどり着いた駐車場で見たものは…
 車両の前で下腹部を押さえて肩で息をしながら苦しそうにうめいている本日の運転手の姿であった。

  ミ「フラウ!どうしたの?」
  坂「中尉!しっかりしろ!」
  ハ「うぅ…」

 ハルトマンは二人に抱えられて急いで医務室へ連れて行かれ…

 ── 10分後 ──

  医者「…ただの食べすぎ飲みすぎです、とりあえず薬は飲ませましたが当分の間暴飲暴食は控えさせてください、でないと…」
  ミ「わかりました、本人にもよく言っておきます」

 ハルトマンはベッドの上で時折うなり声を上げつつすやすやと眠っている。

  坂「ハッハッハ!食べすぎとは軍人としてはたるんでいるな!
   それにしても困ったな…他に運転できるのはミーナとバルクホルン大尉とシャーリーぐらいか…別に私が運転してもいいんだが」
  ミ「そうね、運転は誰かに代わってもらうとしても、フラウは今日は安静にしておかなくちゃ…私は看病のためにここに残ります。
    あ、それからシャーリーさんとルッキーニさんは明日の準備がどうとかって二人でどこかへ行ってしまって、夕方には戻るって言ってたけど…」
  坂「はっはっは!相変わらずあの二人はいっしょだな」
  ミ(ふぅ…私も美緒と二人きりでどこかに出かけたいわ…でもこの人はきっと…)
   「…ゴホン!それじゃ運転はトゥルーデにお願いしようかしら…私が行ってくるわ」
  坂「ああ、それでは私は車に乗って待っていよう、そろそろ宮藤とリーネも駐車場に居るだろうからな」

 そう言ってミーナはバルクホルンの部屋へ、少佐は駐車場へと向かっていった。
 その頃、運転代行たる本人は部屋の中で鼻血を垂れ流しながらお姉ちゃんモード全開で妄想にふけっていることを二人は知らない

 ── その頃ゲルトルード・バルクホルンは眠っていた ──

  ゲ「おねえちゃん…芳佳があんなことを言うなんて…ハァハァ…今日はクリスと三人で買い物だ…何でも好きなものを買ってあげるぞ…」

 ブツブツと寝言をつぶやきながらゲルトルードは妹?(宮藤)とデートしている夢を見ていた。
 ノックしてみる…返事がない。

  ミ「トゥルーデ、居るの?入るわよ…あら?眠っていたの?
   あらあら、トゥルーデの寝顔ってかわいいわね…ちょっといたずらしちゃおうかな…」
  ゲ「うぅーん…宮藤…クリス…おねえちゃんは…」
  ミ(…どうやらいたずらじゃなくてお仕置きが必要みたいね…)

 (おまけ)
 ── そのころ医務室 ──

  ハ「…もういいですか?」
  医者「もう歩いても大丈夫ですよ中尉(汗)単なる生理痛なんですから」
  ハ「ありがとうございまーす。でも、さっきおなかが痛かったのは本当だから…ちょっとだけだけど…」
  医者「でも…いくら運転がイヤだからってこんな大袈裟にしなくても良かったのでは?」
  ハ「いーのいーの、たまにはトゥルーデも宮藤といっしょにしてあげなきゃね♪」

 やはりこの黒い小悪魔は一枚上手である。
153pinkman ◆IQ64WVvgjQ :2008/12/24(水) 09:38:38 ID:r3tOUFmG
 部屋の主はそういった事情を知ってか知らずか夢の中…
夢の中では妹のクリスと自称私の妹(?)の宮藤芳佳と3人で仲が良さそうだ
  ミーナが何度かノックして入室してきても気づかないぐらい深い眠りについているようだった。

  ミ「…大尉!バルクホルン大尉!緊急事態です。起床しなさい!」
  ゲ「むにゃむにゃ…宮藤…遠くへ行かないでくれ!クリスはまだそんなに動けないんだ!まだ扶桑に帰らないでもっと私のそばに…ん?緊急事態…緊急事態だと!!」

 バルクホルンは緊急事態という言葉に反応して飛び起き、ベッドの傍らで怒気を含んだ表情で立っている隊長に気づいた。

  ゲ「夢か…それにしてもいやな夢だったな…ん?ミーナ、私の部屋で何を?」
  ミ「トゥルーデ、もうそのことは考えないはずじゃなかったの?それより急で悪いんだけど…」
  ゲ「いや…別れのときが近づいていることはわかっているんだがどうもな…それより緊急事態とは何だ?」
  ミ「さっきハルトマン中尉が急激な腹痛を起こして…いま医務室に居るけど運転は無理みたいだから今日は私が看病します。
代わりにあなたが運転手としてロンドンまで同行してちょうだい」
 ゲ「エーリカが…(…腹痛?あの小悪魔もたまには調子が悪くなるんだな…)
   そうか…了解した。少佐と…それから宮藤もリーネも駐車場にいるのか?」
  ミ「そうね…そろそろ集合しているはずよ、ところで今日は宮藤さんも一緒だからついでにクリスのお見舞いにでも行ったらどう?」

 ニヤリ、ミーナ隊長は意味深な笑みを浮かべながらバルクホルンをからかってみた。

  ゲ「な!何を…言っているのかな隊長殿は…あいつがいるからって何も関係ない…じゃないか」ヒクヒク…
  ミ「さあどうだか…まぁいいわ、すぐに支度して駐車場に向かってね」
  ゲ「わかった、私は準備が出来次第駐車場へ向かうからミーナはハルトマンを頼む」
  ミ「はいはい、それじゃお願いね」

 それだけ言うとミーナは退室し、医務室へ向かっていった。

  ゲ「運転手か…エーリカじゃないが私もあまり地理には自信がないんだよな…でも、任せられたからにはその任を十分に果たすのがカールスラント軍人たる私の役目だ!
   坂本少佐が(宮藤も)いることだし無事故には気をつけよう…ミーナに後でどやされてはかなわんからな」

 バルクホルンはズボンを穿き替え、(鼻血に気づいたので念入りに顔を洗って)軍服に身を包むと駐車場へ向かって歩き出した。

 『みんなで…』1話おわり

 おまけ:
 ─── ここは医務室 ───

  ミ「フラウ、腹痛はもうそんなにひどくないんでしょ?」
  ハ「へへへーバレたか、でもトゥルーデもたまには宮藤と一緒にさせてやるのも悪くないんじゃない?」
  ミ(やれやれ…)「あなたもとんでもない策士ね…"あの日”だったんならトゥルーデも食堂にいたんだから代わってもらえばよかったのに」
  ハ「たしかにアレはヤバかったけど今日は大丈夫だと思ったのになぁ…それに、いくら宮藤と今日一日いっしょに行動できるからって
あのトゥルーデが素直に代わってくれると思う?」
  ミ「そうね…ほんとに手がかかる副官だこと」

 同僚には苦労させられる二人であった。
154pinkman ◆IQ64WVvgjQ :2008/12/24(水) 10:00:17 ID:r3tOUFmG
 ※保管用にブログで上げてあるやつとは内容を少し改変しています。

 それにしても…改行多すぎ(段落組みしにくくなる)規制には参ったw
 『わんぱくガッティーノ』の時も1レスでは無理だったのでやむをえず分割してなんとか。
 ルッキーニネタあと2本は今日中に何とか完成させて投下できるように頑張ろう。
155zet4j65z:2008/12/24(水) 11:18:54 ID:gsYrLV7o
とりあえず>>1乙からはじめてみる夜勤明けの昼。
皆様いかがお過ごしでしょうか?
なんか「ふにふに大作戦」投下してからこっちルッキーニとクリスマス&それ以外も連発でネタがないんでマイペースでいきます。
ふと思ったんだけど小説版の方が1943からスタートしてるのって、年中行事をこなすための布石なのかな。
って言うかまとめてGJって言うにはもったいなすぎるんだけど個別に書いてたらそれこそスレが埋まるんでムリダナ。
一応>>138 サルミアッキとダディコデ-ははずせませんなw
ついでに>>120続きが気になって早く見たいんで続きを見るためのいいアイデアをおもいついたぞ。
超速攻で投下しまくって明日ぐらいにはスレ梅が必要な状況にもっていけばいいんだよ! ……無茶な上にムリダナ。

ともあれ12/24です。皆様が素敵な聖夜を迎えんことを……メリークリスマス。

WARNING 閲覧注意 WARNING 閲覧注意 WARNING 閲覧注意 WARNING 閲覧注意 WARNING

以下の作品には「変態」「エロス」「SM」「スカトロ」などの成分が含まれています。
耐性の無い方は読み飛ばすことをお勧めします。
保管庫472 【ブリタニア1944 format by LYNETTE CHECK SIX AGAIN】の続編となります。

WARNING 閲覧注意 WARNING 閲覧注意 WARNING 閲覧注意 WARNING 閲覧注意 WARNING
156zet4j65z:2008/12/24(水) 11:19:54 ID:gsYrLV7o
●ブリタニア1944 format by LYNETTE CRITICAL POINT

 今回はわたしが先に目を覚ました。
 正確には私が気付いた時、既に芳佳ちゃんは覚醒していたけれど会話を出来るような状態じゃなかったという所。

「んんっ……ふぅ、はぁ、はぁ、はぁ、んんんっ……」

 芳佳ちゃんの口からは、可愛い喘ぎ声。頭にはマメシバの耳、お尻には尻尾。
 例の魔法のアイテムのせいで一度発現させた魔力を完全に切れない状態になっていて、使い魔の耳と尻尾が引っ込まなくなっている。
 ちょっと跳ねた黒髪と茶色の犬耳、健康的な色をした肌と赤い首輪のコントラストが、わたしだけの可愛い牝犬であることを主張してえっちなところを熱くさせる。

「芳佳ちゃん、カワイイよ」

 魔力が供給されている間は、芳佳ちゃんのお尻の中に入っているあのアイテムはずっと動き続ける。
 うつ伏せの姿勢で、その体の悦びを現してパタパタと振られる犬尻尾。
 もともともってる魔力が桁違いに大きな芳佳ちゃんのことだから、無意識に引き出される本来小さいはずの魔力放出でも、わたしの想像よりも激しく動いているのかもしれない。
 本当はもっとそんな悶える芳佳ちゃんを見ていたいけど、二人の色んなお汁で汚してしまったベッドを綺麗にしないとこれから待っているステキなひと時が台無しになってしまう。

「ちょっとゴメンね、芳佳ちゃん」
「ふぇ……? リ……ネ、ちゃん? はぁん……」
「暫くこっちに座っててね」
「ん……ぅん」

 喘ぎ声の延長上にあるような、多分肯定していると思われる曖昧な返事。
 わたしの脳髄から股間までを甘く痺れさせる快楽によどんだ声に心を躍らせながらその身を抱き上げる。
 接触する素肌の体温とレザーの冷たさのコントラストが心地よく響いて、劣情が加速する。
 ここに来てから、わたし凄く我慢のできる子になったかもしれないな。
 なんてことを考えながら、芳佳ちゃんの細い身体を何度もお世話になっている椅子に座らせる。
 勿論椅子は腰を落ち着ける場所で、その座面とお尻が接触する事で人の身体を支える家具である事をわたしはちゃんとわかってる。
 わかってるから、その時の芳佳ちゃんの反応も容易に予想できた。

「ひぃんっ!!!」

 うふふ……予想通りの声が聞けたよ。可愛すぎてウットリしちゃうね。
 このまま、食べちゃいたいくらいだよ、芳佳ちゃん……。
 芳佳ちゃんのお尻に挿さっているソレは外側に1インチ分程先端の球が飛び出た先から尻尾が生えている。
 だから、うつ伏せで寝ていたさっきまでは大丈夫でも、座ればソコが押し込まれて発生する刺激が大きくなるなんて当たり前のこと。

「はあああんっ! おしっ、おひりがへんらよう……わらし、へんになるぅ」

 腰を浮かして叫ぶけど、それ以上の動きをとれずにぴんと張った足、腰が弛緩して椅子にお尻を着けるとまた叫ぶ事を繰り返す。
 呂律が回らなくなるほど追い詰められてきてるのを見てちょっと可哀想になったわたしは、芳佳ちゃんにアドバイスしてみる。

「芳佳ちゃん、深呼吸して、魔力を押さえ込んでみて」
「ふ、ふぅ……はぁっ……はぁぁぁぁんっ!」

 わたしが自分で少し試してみた時にはそれで軽くなったんだけど、今の芳佳ちゃんには難しいみたい。
 仕方なく肘掛部分を高くして芳佳ちゃんが椅子から落ちないようにし、喘ぎ声に後ろ髪を引かれながらもその場を離れた。
 色々と支度を終えて、再び芳佳ちゃんと向かい合う。
 シーツの交換のときなんて芳佳ちゃんの声が気になって気になって仕方がなかったけど、わたしちゃんと最後までやれたよ。
 だから、ここからはまた二人の時間。
 芳佳ちゃんはさっきよりは落ち着いていて、時折腰をもじもじとさせながらも上がる喘ぎ声は小さく、少なくなっていた。
157zet4j65z:2008/12/24(水) 11:20:57 ID:gsYrLV7o
「芳佳ちゃん」

 小さく名前を呼ぶ。

「ん……ふぁ?」
「椅子だとお尻が辛かったよね。ベッドを綺麗にしたから、そっちに寝ましょ」

 椅子から抱き上げる。
 再びの体温と、密着する事で濃厚になる芳佳ちゃんの匂いにくらくらする。
 芳佳ちゃんに私と同じ『場所』まで来て貰って同じ視点からわたしの事を理解してもらおうと思ってこんな事をしてるのに、わたしばかりがどんどん深みに進んでしまっているような気がする。
 だって、今までは匂いで興奮してしまう事なんて……無くは無かったけど、ここまでも感じてしまうなんていうことは無かったから。
 芳佳ちゃんから漂う甘い甘い牝の匂いは鼻腔から程近い脳髄を直撃して、その中のえっちになる事をつかさどっている部分を無茶苦茶にゆすぶって、はやく逝ってしまえとわたしの全身に命令を下す。
 そんなにまで追い詰められたわたしが自慰に耽らなかったの理由は凄く簡単だった。
 芳佳ちゃんのその身を両腕に抱えているからだ。
 その視線が芳佳ちゃんの大好きなわたしのおっぱい越しに私を見つめているから、大事な大事な、私をこんなえっちで幸せな気分にさせてくれる牝犬の芳佳ちゃんを取り落とす事なんてできるはずがなかった。
 ギリギリの状態で何とかベッドまでたどり着いて、ゆっくりとベッドに倒れこむ。

「ひゃんぅ」
「あんっ……」

 二人の体重を柔らかく受け止めるベッドの感触と、重なる二人の声。
 重なる身体、重なる呼吸、重なる体温、重なる快感。
 終わりたい……果ててしまいたい。
 でも、まだダメ。
 まだしなきゃいけない事があるし、やろうと決めた事もある。 
 それに、ずっとずっと前からわかってる事もある。
 キモチイコトは限界までじらした方がイイって。
 戦闘の時よりも意識を集中して、あのノートによると痛みよりも耐えにくいらしい快感の誘惑に耐える。
 芳佳ちゃんがこんなにステキだから、こんなにカワイイから、今のわたしがこんなにも辛くて切ない思いをしなければいけないんだね。
 それって、今のこの感じって全部芳佳ちゃんが与えてくれてるって事だよね。
 芳佳ちゃんと肌を合わせてるだけで、限界だと思っていた場所がぐんぐん遠ざかる。
 すごいよ、凄くイイ。
 強く想う事が、こんなにまで気持ちのいい世界を開いてくれるなんて、本当にステキだよ。
 早く、早く芳佳ちゃんにも同じ世界に、私のところまで来て欲しいな。

「すぅ、はぁ、すぅ、はぁ……」

 深呼吸してから少し身体を起こす。
 座りなおしてから芳佳ちゃんを引き寄せて上半身を起こす姿勢にし、ベッドサイドに用意しておいた私の食事と仔犬の芳佳ちゃんへのエサに手を伸ばす。
 姿勢が変わった時にお尻への刺激が強くなったのか芳佳ちゃんがちょっと強い声を上げるけど、気付かなかった振りで笑顔を向けて食事を口に含む。
 軽く咀嚼してから、芳佳ちゃんへと口付ける。

「んっ……」
「んむっ……あむぅ」

 口移しでの食事は二人にとってもう自然な行為の様になっていた。
 わたしの唾液交じりの干し肉入りの野菜サラダを、芳佳ちゃんの口腔に流し込み、芳佳ちゃんはそれを喜んで受け入れる。
 逆に、芳佳ちゃんの口に、直接サラダを与えた後に私が口付けて見る。
 わたしの思いを理解してくれた芳佳ちゃんはそれをわたしの口へとゆるゆると押し込んでくれた。
 ああっ……やっぱり、ちゃんと近づいてるね。私たち二人の心と心。
 もっと食べさせてあげるから、私にもいっぱい食べさせて、芳佳ちゃん……わたしのカワイイ芳佳ちゃん。
 そして夢のような食事の時間は食器が空になることで終わってしまった。
 名残惜しいけど、しなければいけないことが終わった今、今度はやろうと決めていた事の番。
158zet4j65z:2008/12/24(水) 11:22:09 ID:gsYrLV7o
「芳佳ちゃん。聞かせて欲しいんだ」
「ぇ……? なぁに、リーネちゃん」
「お尻、気持ちいい?」
「っ!!」
「ね、気持ちいいんだよね。ずっとずっと芳佳ちゃんがお尻のことでえっちな声を上げてたから、私ももう限界なんだよ」
「ちっ……ちがうの……」
「いいんだよ。ありのままで。恥ずかしかったら恥ずかしいままでいいの。それでも気持ちがイイならそう教えて欲しいな」
「う……わたし……、あの……き、もち……ううっ……」

 言いかけてから首を振っていやいやする芳佳ちゃん。
 もうずっと、そこの快楽に流されてきたのに認められないんだね。
 でも、その気持ちはわかるよ。
 そんな所で気持ちよくなる変態だなんて自分から認められるのは、きっと自分がいやらしくてエッチな存在だった事を、芳佳ちゃんのことを言い訳にして正当化しようとしてるわたしくらいなんだよ。
 でもね、好きって言う気持ちは変わらないの。変わらないから、わたしと同じになって欲しいから、言葉にして欲しいんだよ。

「うん。解るよ芳佳ちゃん」
「リーネちゃん……」
「本当はそんなところでよくなるはずがないから、何か間違ってる、絶対に変だ……って、そう思ってるんだよね。だから、認められないんだ」
「そ、それは……」
「わたしはね、自分で気付けたんだ。お尻の穴を弄ると気持ちよくなれるって言う事に」
「リーネちゃん!?」
「でもね、そこにたどり着く前にステップがあったんだ」

 いいながら、右手を芳佳ちゃんの股間に這わせる。

「あっ! いっ、今はダメっ! 今はダメだよぉ……」
「まず初めはね、ここを弄ってたの」

 芳佳ちゃんの柔らかい粘膜の一番上の辺り、柔らかい肉と皮で厚く護られたそこに軽く触れる。

「ひっ! やだよっ! そこっ、感じすぎちゃうよぉ!」
「だから、順番が逆になっちゃったけど……ここで気持ちよくなる事をいっぱい覚えてもらおうと思うんだ」

 指に力を入れて、包皮の上から弱めに押し、少しだけ潰す。

「ひゃぁぁんっ!!!」
「ね、気持ちいいでしょ」

 そのまま少しづつ力を込めて、指先に動きを加えていく。

「あぁっ……らめぇ! そんなぁ……ひゃうっ!!」
「いいんだよ。いっぱい感じてね」

 この先どうするかはもう決めてある。
 3回逝ったら包皮を剥いて、その後10回逝ったら、今度は芳佳ちゃんの手を使って自分のものを弄りながら続けるんだ。
 その頃にはわたしもとっくに限界で、あっという間に果ててしまうと思うけど、本当に意識がなくなるまで徹底的に、ずっと続けたいな。

「やっ、やっやぁっ!!! ら……めぇっ!」
「気持ちいでしょ、芳佳ちゃん」

 包皮ごと摘まんでゆるゆるとすり合わせるように動かす。
 腰が踊り、芳佳ちゃんが叫ぶ。
 喉を傷めないように、水差しから水を含んでキス。
 そうして潤いを与えながらも、敏感な一点を弄る指先を休めない。
159zet4j65z:2008/12/24(水) 11:23:01 ID:gsYrLV7o
「あんっ! ああんっ!! あっ、あっ、ひあああああああああんっ!」
「あは、まず一回目だね。すごくカワイイよ、芳佳ちゃん」

 指は止まらない。
 くにくにぬるぬると、絶頂に達したばかりの芳佳ちゃんの一番敏感な場所、包皮に包まれたままの小さな突起を弄り続ける。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……い、いったのっ! 終わったのっ……だ、からっ……やめ……やめてぇっ!」
「あ、ちゃんと教えてなかったけど、逝ったことを自己申告できたんだね。芳佳ちゃんは偉いよ」

 言いながら左手でその頭を抱いて、芳佳ちゃんが愛して病まないわたしのおっぱいへと優しく包む。
 勿論その間も右手は止めず、優しく包皮の上からそこを擦りつづける。

「はぁん、あぅ、あぁ、あぅ、はぁ、はぁ、ん……んんぅ」
「芳佳ちゃん傷の治り早いから、明日には腕も動かせるようになると思うんだ。そうしたら、ね……」

 意識してるのかしてないのか、わたしの胸に顔を埋めその頬を擦り付けるようにしながらで幸せそうな表情になる芳佳ちゃん。
 私は言葉を続けつつ、また指の動きを早く、力を強くしていく。

「あはぁん! またっくるのっ! くりゅのぉっ! らめ! あぁんっ! いくのぉっ!!!!!」
「わたしの身体、芳佳ちゃんの好きにしていいんだよ……って、また逝ったんだね。うん、芳佳ちゃんは賢いね。またちゃんと言えたよ」

 火照りきって真っ赤な顔を見下ろしながら、左手は優しくその頭を撫でる。
 火照りきって真っ赤になっているだろうそこの様子を想像しながら、右手は優しく包皮ごと擦る。

「やっ……ほんっ……とにっ……も、もぅ……に、かいっ……り……ね、ぁんっ……め……」
「芳佳ちゃん、辛い? 辛かったらもっと叫んでいいんだよ。甘えたかったら……ほら、硬くなったここを、しゃぶってもいいんだよ」

 次で決めていた3回目になる。これが終われば、慣らしが終わりになる。
 手は休めない。休めるつもりなんてないはない。次で気絶してしまうかもしれないけど、気付け薬だって用意してある。
 だって、続けるほどに芳佳ちゃんの声も、表情も蕩けて可愛くなる。
 とろとろになって、鏡の向こうの私とそっくりになる。
 今この瞬間の全てが二人が近付いてるって実感になって、わたしの胸はピンク色をした幸せでいっぱいになる。
 そんな幸福感を加速するかのように、身体の角度を変えて誘導した左乳首に芳佳ちゃんが口をつける。

「ぁむぅ……んっ……んんぅ……んむ……んくっ……んんっ……」
「ああんっ! 芳佳ちゃん! いいよぉっ! 強く! もっと強くぅ」

 ああっ、芳佳ちゃんがわたしのをっ、赤ちゃんみたいにちゅうちゅうすってるよぉ。
 何てステキなのっ! 明日になって、傷が治ったら、もっと色んな事してくれるよねっ! そうだよね、芳佳ちゃん!
 一気にボルテージが上がってしまった私は、指をただ摺ったり摘まんだりするだけ行為使う事に耐えられなくなって、包皮ごと抓り上げてしまった。

「んぶぅっ!!!」
「いぎっ!!!」

 芳佳ちゃんが3回目の最後を迎えると同時に、思いっきり乳首を噛まれた。
 でもね、芳佳ちゃん……わたし芳佳ちゃんがくれるモノなら、痛いことだって、嬉しいんだよ。
 乳首から広がる衝撃はあっという間に甘い痺れに変わって全身に響き渡り、全身を震わせる。
 その蕩けるようなパルスがおなかの下に届いてそこが緩んでしまうのを全力で押さえ込もうとするけど、絶頂感の第二第三の波に翻弄される芳佳ちゃんに、乱暴に乳首弄ばれる私は、それを止められなかった。
 じわり、と異質な湿り気が折角綺麗にしたシーツに広がっていく。
 放出した体温がシーツからお尻を包み込んで惨めな気持ちが広がっていく。
 でも、そんな気持ちも芳佳ちゃんの様子を見て喜びに変わる。
 右手の指先が摘まむその敏感な場所の下では、やっぱり芳佳ちゃんもわたしと同じ様に金色のしずくを迸らせていた。
160zet4j65z:2008/12/24(水) 11:24:39 ID:gsYrLV7o
「リー……ネ、ちゃん……あぁ……あああ……み、ないでぇ……みちゃ、やだよぉ……」
「んっ……ふふふ……芳佳ちゃん。わたしたち、ホントに仲良しさんだね。すごく嬉しいよ……ふぅ」

 全部、出し終わっちゃった。
 きっと明日の芳佳ちゃんは、こんなだらしない私にはお仕置きをくれるはず。
 折角芳佳ちゃんの事を放ってまで綺麗にしたシーツなのに、こんなにあっという間に汚したんじゃ本当に悪い子だもの。
 でも、まだ動けない芳佳ちゃんはわたしのペットでお人形さんだから、私は決めたとおりの事をまだまだ続けるよ。

「芳佳ちゃん……ほら、続きだよ……」
「あっ……あああっ!!! 本当にダメだよっ! ほんとうにっ! ほんろにっ! ほんとにらめぇっ!!!」
「うんうん……ふふふっ。そうやってだめになっちゃう芳佳ちゃんがあんまりにもカワイイから、やめられないんだよ」

 包皮を剥いて、直接触れる。
 充血してはちきれんばかりにピンピンになっているそこを、中指の腹で転がし始める。

「ひぁっ!!!! いっ! ひぎいっ! うあああんっ! や! や! はぁぁぁぁんっ!!!」

 まだ出し切ってなかったらしいおしっこが、びっと吹き出してはシーツを汚す。
 涙と快感でぐしゃぐしゃになった芳佳ちゃんの表情に、きゅんとした胸のトキメキを加速させながら包皮と本体の間に爪の先を滑り込ませて、根元をつつく。

「本番はここからだから……ここからはもっともっと良くなるよ、芳佳ちゃん」
「やぁ……もぉ……やらよぉ……はぁっ……ああっ、ああん、ああっ、あああっ……あああああああああああああんっ!!!!!」

 逝って、気絶。
 うふふ、ダメだよ芳佳ちゃん。オヤスミするにはまだまだはやいんだから、ね。
 気付け薬を鼻先に持っていくと、一瞬顔をしかめてから目を覚ます。
 どんな行動をとるときだって、私の指は硬くしこった粘膜の頂点に添えられて、お尻の器具と同様に芳佳ちゃんに快感を与え続けている。  
 そこから3回の間にもう一度気付け薬を使って、5回目にはお漏らししたものが冷えたベッドの上から場所をずれて体勢を変える。
 包皮ごと唇で甘噛みしてから舌を使ってその内側へと丹念に唾液を送り込み、馴染ませていく。
 唇を尖らせてからその小さな突起の本体だけに吸い付いて吸いあげる。
 歯を当てて押し込む。
 動作と行為の期待通りに一際高い声が上がった事に満足しながら、徹底的にそこだけを撫でる、舐める、吸い付く、噛む……繰り返す。
 もちろん声と匂い、そして味も大いに楽しむ。
 だから声が途絶えたらすぐに顔を上げて、気付け薬を用意する。
 そこから口を離したって、手でそこを刺激し続けることを忘れない。
 ずっとずっとずうっと気持ちよくし続けてあげる。
 芳佳ちゃんの見たことの無い世界まで連れて行ってあげる。
 わたしもね、こんなに何回も連続で絶頂を迎えたことなんてまだないんだよ。
 だって、収まらなくて続けて一人でえっちな事に耽っても、一人では達せる回数に限りがあるから。
 でもね、二人なら限界はもっとずっと遠くなるよ。
 だからもっともっと気持ちよくなろうよ、芳佳ちゃん。
 次で十回かな? どうかな?
 もう、わかんなくなってきちゃったけど、もういいよね。
 わたしも交ざりたいの。
 芳佳ちゃんの快感の渦の中に、わたしも巻き込まれたい。
 のろのろと、口を支点にして体勢を入れ替えて、芳佳ちゃんの顔をまたぐ。
 ホラ、わたしの方も口でしてよ芳佳ちゃん。
 いっぱい、いっぱい、い〜っぱい気持ちよくしてよ芳佳ちゃん。
 ここが気持ちいいって事を絶対に忘れないくらいに。
 どうしたら気持ちいいかを身体で覚えられるように。
161zet4j65z:2008/12/24(水) 11:27:01 ID:gsYrLV7o
 ね、いっぱいして。
 いっぱいきもちよくして。
 いっぱいめちゃくちゃにして。
 いっぱいとけあっちゃおうよ。
 よしかちゃんがそのきになったら、あしたになったらもっといろんなことができるよ。
 だからいっぱいどろどろになろうよ。
 あはは……そうだよじょうずだよよしかちゃん。
 すごいよ。
 くりとりすすごくきもちいい。
 すぐにいっちゃいよ。
 ふふ、よしかちゃんもまたいっちゃうね。
 あは、あはは……ほんとうにいいよ、よしかちゃん。
 こんなにいいのはじめてだよ。
 うれしいよ、わたし。
 すごくうれしいよ。
 ほんとうによしかちゃんをすきになれてよかった。
 こんなにきもちいいなんてすてきすぎるよ。
 よしかちゃんもうれしいんだね。
 しっぽがぱたぱたしてる。
 もっとよろこばせてあげるよ。
 ほら、ほら……どうかな?
 ああんっ……よしかちゃんもいいよぉ。
 あは、またいく。
 んふふ……いっしょにいけそうだね。
 ほら、ね……もっとしよ。
 くりとりす、くりとりす……ね、いいでしょ……あはは。
 あ……は……。


 そして、意識は臨界点を超えて、途切れた。 




以上となります。
このままBADENDにしてもよさそうな終わり方してますがまだ続きます。
毎回投下した後にレス貰ってから、ああ、やっぱり投下しても大丈夫なんだなと思いつつ、
次が書き上がる頃にはこれ本当にいいんだろうか?と弱気になることを繰り返してます。

まぁそんなわけで改めて、皆様が素敵な性夜を迎えんことを……メリークリ○○ス。
162名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 14:32:25 ID:Ql1UHHHt
>>161
ボルテージをボンデージとありえない読み間違いをした
俺は死んだ方がいいかも知れない……
と、それはおいといて、いや〜文で見ると生々しく感じますね〜
GJです、それと最後のメリークリ○○スの○○これにはナニが入るんですか?
純粋無垢な私に教えてくださいwwwww
163名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 15:04:11 ID:jUkJ2XDF
一晩目を離した隙に投下されすぎだろ…みなさんほんとGJ
遅レスですが幸せの方程式完結おめでとうございます。にやにや続き待ってました

埋めネタ続きなんて考えてないどうしよう
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org13165.jpg
164名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 15:31:56 ID:cK6ySrBA
>>163
こいつはきゃわいいのうきゃわいいのう
でもこれじゃあサンタがトナカイへのプレゼントだよ!w
165名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 15:41:08 ID:jgThWTlM
>>138 >>149 >>154 >>161
午前だけでこのラッシュ、今夜は一体どうなるのか考えるだけでwktkが止まらない
どれもこれもGJ!!

>>163
(*´Д`)

さて、この勢いで行くと零時頃には絶対誰か投下被るぞー
タイムリー投下したいとか考えてる職人さんがいたら今のうちに宣言しとかないとやばい予感
何しろ潜伏してる人数が半端じゃない、私もだけど
166名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 17:29:56 ID:iBYt+1+6
ひさしぶりにSS書いたんで投下します。
クリスマスイブのしかもこんな時間に(ry
とかいう発言は禁止!禁止!あたしに禁止!!(ルッキーニの中の人声で)
あととんでもなく長いです。えーと、3万くらいです。
でも問題なければ、あいだをおいて、今日中に全部投下します。

タイトル「12月24日」


 1944年の12月24日。
 その朝、その寝覚めの瞬間から、たしかにあたしはイラついていた。
 それは今日が12月24日だというのもあるし、他にもまあ、理由はある。
 そう、今日は12月24日なのだ。
 あたしにとってちょっと特別で、そんでちょっとフクザツな日。
 嫌いというのとは違う。
 そうじゃなくて、むしろ好きなのだ。
 好きなんだけれど、それを素直に認めたくならない気持ち。
 “好き”と、ほんのちょっとの“嫌い”を混ぜた、そんな気持ち。
 えっと、なんて言うんだっけ、こういうの。
 愛情?
 いや、違う。似ている気がするけど、これとは違う。
 ま、いーや。考えたってわかりそうにないし。
 ――とにかく、12月24日はあたしにとってそういう日だってわけ。

 そもそもあたしは、冬からしてそういう気持ちなのかもしれない。
 冬は寒いし、日は短いし、それに寒いし、好きじゃない。外で寝ることもできないし。
 それでも今日が、クリスマスイブという、年に一度のお祭りの日であれば、
 なんでもないいつものあたしなら、大手を振って喜んでいたはずだ。
 そんな気がちっとも起きてこないのは、やっぱりあたしがイラついていたからなんだろう。

 予報によれば、今日は一日、晴れ。暖かい日になるという。さむがりのあたしには有難いことだ。
 残念がる人もいるけど。雪が降ったらホワイトクリスマスなのに、って。
 ん? 雪が降ったら――
 このフレーズが、あたしのなかにひっかかってくる。なんだろう。このもやもやした気分は。
 えっと、雪が降ったらどうなるんだっけ?
 寝ぼけた頭でうーんと考え込んでいると、ふいに、流れてくるメロディ。
 どこかで聞いたメロディ。どこでだろう?
 頭のなかで再生しようとすると、懐かしい声をいっしょに連れてきて、ようやく本来のかたちになる。

『いーぬはよろこび 庭かけまわり』

 そうだ、これは歌だ。前に芳佳が歌っているのを、耳にしたことがある。
 リーネと並んで料理をしているときに、上機嫌だったのかな、芳佳はこんな歌を口ずさんでいた。
 芳佳ちゃん、その歌なあに? リーネは訊ねる。
 ああ、これ? 扶桑の歌なの。雪が降ったときの歌。芳佳は答える。
 ふふ、おかしな歌。リーネは笑う。
 気になったあたしは、あとで芳佳に訊いてみた。芳佳は親切に教えてくれた。
 そうそう、この歌はこう終わるんだった。

「ねーこはコタツで丸くなる〜♪」

 あたしは口に出して歌ってみる。もう記憶も鮮明だ。記憶のなかの芳佳とハモる。
 ヘンテコな歌詞だ。でも、なんだか気に入ってたりする。
「コタツ」というのがどんなものなのか、あたしにはわかんない。
 芳佳によれば、ぬくぬくのぽかぽかなんだという。そんな説明でイメージできるわけない。

 ………………なんであたしは、こんなことを考えてしまうんだろ?
 ああ、ぜんぜん関係ない。
 もういいや。寝よう。そうして忘れよう。今日は一日、寝て過ごそう。
 今日のあたしはネコに過ごすとしよう。
167名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 17:33:51 ID:iBYt+1+6
 そう思ってあたしは、二度寝を決め込むことにした。
 今が何時かは知んない。朝にはもう遅いのはわかるけど。
 こんなに寝ていても一向に誰も起こしにこないのは、今日がお休みの日だからだ。
 これもすべて今日が12月24日なせい、いや、おかげだ。
 けど、もうすっかり目は冴えていて、寝ようと思っても眠れそうにない。
 ねぼすけのハルトマンなら、まだまだ眠れちゃうんだろうけど。
 それでバルクホルンが叩き起こすんだよね。
 ねぼすけといえばサーニャもだ。こっちは夜間哨戒のせいだけど。
 サーニャがいっつも部屋間違えてサー、私の部屋で寝るんダ。エイラがよく、嬉しそうに愚痴ってた。
 逆に坂本少佐は朝が早い(らしい)。無理矢理、朝の鍛錬に付き合わされたのは苦い思い出だ。
 怒ると怖かったなぁ。まあ、怒らせて一番怖いのはミーナ中佐なんだけどね。

 ……あー、なんでこんなことを考えてるんだ、あたしは。
 もういいや、寝よ。
 ブリタニアほどではないにせよ、やっぱりロマーニャだって冬の朝は寒い。
 掛け布団を手に取りぎゅっと引き寄せると、あたしは頭まですっぽりと覆いかぶさる。
 と、気づく。
 寝る前に布団を二枚重ねにしていたはずだ。なのに、今あるのは一枚だけ。
 毛布がない。お気に入りの、ロマーニャの国旗の入った毛布だ。
 寒い。それに、あれがないと眠ろうにも眠れない。ぶるっと体が身震いする。
 どこにいったんだろう? そういえばなんだか、シーツも乱れている。
 まったく、誰がやったんだ。あー、あたしか。あたししかいないよね。
 自慢じゃないが、あたしの寝相はよろしくないのだ。 
 布団をはねのけ、よたよたした手つきでベッドの上を探してみるけど、見つからない。
 もしかして落っこちたのかな?
 そう思ってぐるりとまわりを見回すと、あった。ようやく見つけた。
 けど、ちょっと遠くにあった。落っことしたというより、飛ばされたって感じ。
 寝ている間に、蹴飛ばすか投げ飛ばすかしてしまったのだろう。まったく、どんな寝相だ。
 わざわざ立つのも億劫だった。ベッドの淵ぎりぎりに膝をついて、思いっきり右手を伸ばす。
 ちょいちょいと、人差し指の先が毛布にひっかかって、でも掴めず空振り。
 思わず、うーん、とうなってしまう。
 もうちょっと、でもそのもうちょっとが、なかなか届かない。
 ベッドの淵を掴む左手に力を入れ、膝をもっと前に――
 あたしはさらに身を乗りだすと、ようやく指先にひっかかった。毛布のふわふわした感触。
 それと、ずるり、とすべる音。
 膝の皿の下、それを撫でるようにシーツが動く。
 いや、動いているのはシーツじゃなくて、あたしの方だ。
 スキーのジャンプを連想した。でも、そんな優雅なものじゃない。
 いっぱいいっぱいに伸ばしていた体は、緊張をとかれて、急に身軽になってゆく。
 結果はわかる。そのまま床にまっさかさま。抗おうにも重力には逆らえない。
 手をつく暇さえなかった。
 ごつん、という鈍い音がえらく近くで頭のなかに響きわたる。
168名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 17:36:16 ID:iBYt+1+6
 最初は、鼻の頭。
 それに唇が、床に軽くキスしてしまった。
 次は、顎。そして最後に、両膝も床に打ちつけられた。
 数秒固まって、ごろんと反転して仰向けになった。ひんやりした床の上で悶絶する。
 右手の指先は未だ、毛布をとらえていた。
 じんじん痛みが響いてくる鼻に、左手をやった。幸い、血は出ていないらしい。
 ようやくあたしが床から起き上がると、鏡が目に入った。壁に掛けられた、全身が映る大きな鏡だ。
 鼻のところが真っ赤になっていた。
 あたしは鏡をしばしの間、じぃーっと見つめた。
 映っているのは、髪の乱れた冴えないあたしの顔だ(当たり前だ)。
 鼻のところが赤くなっている以外は、昨日となんら変わらない。
 そりゃそう。一日二日で変わるわけがない。
 背は相変わらずだし、胸だってちっとも大きくはならない。
 これじゃ、あのぺったんこの言うことも、もっともだと認めたくなる。
 あなたにだけは言われたくありませんわ、って。
 ホント、ヤになる。
 なにもかもこれは、今日が12月24日なせいだ。そう思った。
 もう寝るのもこりごりだ。そんな気分でもなくなった。
 気分転換に外に出て、散歩でもしてこよう。
 あたしは右手に掴んだままの毛布を、ベッドの方に投げた。
 
 やっぱり寒いじゃんか。
 クリスマスの賑わいにあふれかえる故郷ロマーニャの街を、あたしは肩で風を切るように歩く。
 みんな楽しそう。すれ違う人たちの顔は、みんな笑顔だった。
 今日は12月24日。お祭り好きのロマーニャ人の血がうずくというものだ。
 うらはらに、あたしの気分は最悪だった。
 みんなは今、どんな時間を過ごしているだろう?
 楽しくしてるといいな。そう思う。
 でもそれだと、あたしだけおいてきぼりされた感じでちょっとヤだな。そんな風にも思ってしまう。
 隊が解散してからもう3ヶ月になる。あたしはロマーニャに帰ってきた。
 みんなとは、もう3ヶ月も会っていない。これは“もう”じゃなくて、“まだ”なのかもしれない。
 ロマーニャでの暮らしも楽しいけれど、みんなのことを忘れた日はない。
 ごはんを食べてるとき、歯を磨いてるとき、お風呂に入ってるとき、ごろごろしているとき、
 みんなの面影はふらりとあたしの頭のなかにやってくる。さっきだってそうだ。
 そして、ふと気づく。
 みんなは、もういない。
 そう気づかされると、ふらりとやってきた面影は、ふっと頭のなかから消えてゆく。
 生きている。きっとみんな、ちゃんとやっている。
 手紙でやりとりもしているし、風の噂を聞くことだってある。
 ――でも、思う。
 寂しい。みんながいなくて、寂しい。

 ホント、ヤになる。あたしはあの頃からちっとも変っちゃいない。
 乳離れのできてない、赤ん坊じゃないんだから。
 この気持ちを抑えつけようとしても、できない。どんどんどんどん、あふれ出して止まらなくなる。
 それがあたしが少尉であることとも、天才であることとも関係ない。
 みんなのなかで一番年下の、一番ちびっこ。それがあたし。
 これは埋められない、どうしようもない差だ。
 サンタクロースなんて信じちゃいない。もうそんな、子供じゃない。
 自分では、たしかにそう思っている。
 でもあたしが一向にこんな風なのは、やっぱりあたしが、まだぜんぜん子供だからなんだろうか。
 みんなと同じくらいの年齢になれば、こういう気持ちもどこかに消えてしまうのだろうか。
 そんなことを思って雑踏のなかを歩いていると、人通りの多い通りに出た。
 予報は半分はずれだ。ちっとも暖かくなんてない。冷たい風がびゅうびゅう吹いている。
 まわりの賑わいから、あたし一人だけぽつんと取り残されたような、そんな気持ちにさせられる。
 泣きたくなった。でも、涙は出なかった。
169名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 17:39:04 ID:iBYt+1+6
「ルッキーニ!」
 通りを少し歩いていると後ろから、よく知った声に呼び止められた。
 振り返らずともわかった。その声を聞き間違うはずがない。
「どうかしたの? シャーリー」
 泣いてなくてよかった。そんなことを思いつつ、あたしは振り返った。
「どうかしたの!? シャーリー!」
 あたしはシャーリーをじろり一瞥。
 そこにいたのは、たしかにシャーリーだった。
 トレードカラーである、真っ赤な服に身を包んでいる。あったかそうだ。
 それだけなら別に、びっくりしたりしない。
 でもその格好は、誰がどう見てもサンタクロースだった。

 隊を解散してからの3ヶ月、あたしとシャーリーはいっしょに暮らしていた。
 ロマーニャでの暮らしが楽しいものであったのも、シャーリーがいてくれたおかげだ。
 もしシャーリーまでいなかったら、あたしはグレるかしていたと思う。
 シャーリーは優しい。あたしがしょげたり、すさんだりしていたら、
 いつもあたしを楽しい気持ちにしようとしてくれる。あたしを嬉しくさせてくれる。
 でもあたしは、あたしが抱えていたもやもやのことを、シャーリーには秘密にしていた。
 こんなこと言えるはずがない。
 言ってしまえば、それはシャーリーを否定することになる。
 あたしにはシャーリーがいるから寂しくないよ。
 そう言い切ってしまえれば楽だった。でも、そんなことを嘘でも口には出せなかった。
 そんなシャーリーが、ここのところあたしに冷たい。冷たいというか、そっけない。
 おはようを言う間もなくどこかに出かけていって、夜遅くに帰ってくる。
 なにをしてるのかは知らない。わかるのはとにかく忙しそうってだけ。
 気になりはしたけど、訊けずにいた。というか、訊く暇がなかった。
 邪魔しちゃ悪いよね。がらにもなく、こんなことを思った。
 あたしなりに気を使ったつもりなのだった。
 でも心のなかでは、すねていた。
 朝からのどうしようもないイラつきも、その一つはシャーリーのせいなのだった。

 それはそうと、シャーリーのことだ。
 あたしは頭からつま先まで、シャーリーをじっと見据えた。
 やっぱりサンタクロースだ。
 帽子だってかぶってるし、白いふさふさのつけヒゲまでつけている。
「どうしたの!? シャーリー!」
 もう一度、あたしは訊いた。
 でも、返ってきたのは言葉ではなく、ぎゅっとあたしの手を握る手。
 ここまで走ってきたのか、はあはあと息があがっている。
 口から吐きだす息が見える。冷たい空気にふれるとたんに、白くなるから。
「あとで話す。急ぐぞ!」
 そう言うとシャーリーは、あたしの手を引き、走り出した。
170名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 17:41:25 ID:iBYt+1+6
 そうしてあたしたちが着いた先は、基地にある滑走路だった。
 目の前にはシルフィー・ソードフィッシュ雷撃機。
 背にはGLAMOROUS SHIRLEYのペイント。シャーリーの愛機だ。
「さ、乗って」
 サンタクロースに扮したシャーリーはそう言うと、そそくさと乗り込んでしまう。
 ゴーグルをするシャーリー。エンジンをかけると、プロペラがまわりはじめる。
 わけがわからない。あたしは茫然と、その場に立ち尽くしていた。
「はやく!」
 シャーリーが急かすので、言われるままにあたしは後部座席に乗りこもうとする。
 が、そこには白い布の袋(サンタクロースが背にかついでいるアレだ)で埋まっている。
 はじっこにどかして、ようやくあたしも座席に腰を下ろした。
 それを確認すると、シャーリーは操縦桿をぐいと動かす。
「ねえ、どこに行くの?」
 当然の質問をあたしはする。けど、返ってくるのは答えじゃなくて、
「今日はなんの日?」
 質問に質問。今日? 今日は、12月24日だから――
「……クリスマスイブ?」
「そう、そのとおり」
 しかも答えになっていない。
 そうしたやりとりをしている間にも、あたしたちを乗せた飛行機はぐんぐん速度を増してゆく。
 そうして、離陸。地面がどんどん遠くになる。
 いったいあたしは、どこに連れていかれるのだろう?

「時間がないからここで着替えて」
 そこに衣装があるから、そう言ったあと、シャーリーはそう続けた。
 あたしはあたりを探してみて、それらしいものを見つけた。顔の前で広げてみる。
 目があう。けど、それの目の焦点があっていないので、やっぱりあわない。
 トナカイだ。
 ようやくあたしも、事態が呑みこめてきた。
 シャーリーがサンタで、あたしがトナカイ。そして今日は12月24日――
 となれば、することは一つしかない。
 気持ちの整理はまだつかないけど、しょうがなくあたしはそれに着替えることにした。
 真っ赤なお鼻のトナカイさん。そういえば、今朝打った鼻はまだじんじん痛む。
 そのことにはたと気づいたのは、ようやく着替え終わったあとだった。
 あたしがトナカイなら、あたしの方が前じゃないの?
 後ろに乗せられたトナカイというのも、なんだかちょっと間抜けだ。
 けど今さら、座席や服をとっかえっこというわけにもいかない。
 飛び立ってからもう、結構な時間が経つ。日は暮れようとしているけれど、なかなか暮れない。
 ずいぶん長い夕焼けだった。
 あたしたちが夕日を追っかけているためだ。
 
 そうしてあたしたちはガリアまで来た。
 もうほとんど、日は暮れかけている。
 街は薄暗くって、でもほんのり、赤や黄色やオレンジや、そういう光で満ちていた。
 灯っているのは戦火ではなく、街灯だったり、家々の電気だったり、ケーキに指したロウソクだったり、
 きっとそういう光を少しずつ集めたものだ。
 ここがペリーヌの故郷――ロマーニャのお隣のガリア。あたしは来るのははじめてだった。
 現在、ペリーヌとそれにリーネは、この街の復興に従事しているという。
 ペリーヌはたまにあたしに、自分の故郷の話をしてくれた。
 えらく自慢げな話しぶりだった。誇らしそうに。それで、ちょっぴり寂しそうに。
 話半分に聞き流していたけど、ペリーヌがああいう風に話すのも、今ならなんとなくわかる。
 復興にはまだ時間はかかるようだけど、街が以前のようによみがえるのは、きっとそう遠くない。
171名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 17:44:07 ID:iBYt+1+6
 シャーリーは街のすぐはずれに飛行機を着陸させた。
 降り立つと、かして、とシャーリー。あたしの脇にある、袋のことだろう。
 あたしは袋を手渡すと、シャーリーはそれを肩にかついでみせた。
 あたしも降りた。地面が恋しかったのか、ちょっと足もとがふらつく。何時間ぶりの地面だろ。
 頭が重いせいでもある。トナカイの頭が長いのだ。
「じゃあ、いこ。ここからは歩きだけど」
 あたしはシャーリーのあとをついていった。
 こんな格好で目立たないかな、なんてことを思ったけど、
 街を歩く人の少なからずが仮装をしていたので、そんな心配はなさそうだった。
「ここ?」
 あたしは指さして訊く。あたしたちはある一軒家の前にやってきていた。
 表札にはペリーヌ・クロステルマン、リネット・ビショップとある。
「そう、ここ」
 と言うもののチャイムを鳴らすでもなく、シャーリーはあたりをじろじろと見て回る。
 これじゃどう見ても不審者だ。
「開いてるぞ! 窓ガラスを割らなくても済みそうだ」
 なんてことを言うんだと思いつつも、あたしもそれを見た。不用心にも窓は開きっぱなしになっていた。
 シャーリーは窓枠に手をかけると、よっ、と身を持ち上げ、中に入ってしまう。
「さ、ルッキーニも」
「入るの?」
「当たり前だろ」
 シャーリーは窓から手を出し、あたしの前に差し伸ばす。
 いいのかな? ま、いっか。
 あたしは差し伸ばされた手をとって、中に入った。
172名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 17:46:21 ID:iBYt+1+6
 部屋にはベッドが一つ。部屋の感じからして、リーネの部屋かな?
 机の上には料理や編み物の本が置いてあった。
 ベッドの枕もとには、赤い毛糸の靴下が吊るしてあった。
 シャーリーはかついでいた袋を下ろすと、もぞもぞとなかをさぐって、
 きれいに包装されたプレゼントらしき箱を取り出した。
「まずひとり、っと」
 そうしてそれを、靴下のなかにすっぽり入れた。
「あともうひとり――」
 そう言うとシャーリーは、薄い氷の上でも歩くようなつま先歩きでドアの方に近づいていく。
 ドアをちょっと開けて、向こう側の様子をうかがうシャーリー。あたしはごくり、と唾を呑みこむ。
「しめた。誰もいないみたいだ」
 シャーリーはドアを全開にする。
 開け放たれたドアの向こうは、どうやらリビングであるらしい。
 その向こう側にもドア。右側は廊下が伸びていて、その先が玄関であるらしい。
 幸いなことに、出かけているのか誰もいない。
「ん?」
 リビングに置いてあるそのあるものに、あたしは目をひいた。
 シャーリーはおかまいなしに、向こうの部屋に行ってしまうものの、
 あたしはその場に立ったまま、それを観察した。
 どうやらそれは、テーブルなようだ。真四角だった。
 でも、テーブルにしてはえらく足が短いし、テーブルクロスのかわりにお布団がかけてある。
 なんだこりゃ? あたしは布団をめくってみると、中は赤く光っていた。
 ぼわん、という熱気がする。
 どうやらこれは、暖房なようだ。
 冷えた体をあっためるのにもちょうどいい。
 そう思ってあたしは、頭から滑りこんだ。トナカイの頭が途中でちょっとひっかかる。
 中はぬくぬくのぽかぽかだった。
「ルッキーニ、なにやってるんだよ?」
 戻ってきたシャーリーは言った。
「だってぇ――」
 布団のすそをあげてあたしは甘えた声で答えようとしたけど、シャーリーはそれを遮った。
 人差し指を鼻の前にやって、しっ、と短く言う。
 あたしは思わず息を呑みこんだ。
 周囲は静まり、だから音はよりはっきり聞こえてくる。
 人の声。それが近づいてくる。玄関の方からだ。
 玄関のドアノブを回す音がした。

 帰ってきたんだと、あたしは察知した。
 シャーリーはこっち、と手招きする。
 はやく行かなきゃ、そう思ってこの中から出ようとするけど、頭のところが完全に引っ掛かっている。
 あれこれ体を動かして見るものの、うんともすんとも言わない。
 そうこうしている間にも、人の声はこっちの方へと近づいてくる。
 ひとり、ふたり……さんにん、よにん……? そしてそのどれも、懐かしい声だった。
 いや、今はこんなことを考えている場合じゃない。
 もう、逃げられない。
 そう悟った瞬間、あたしのなかにあるひらめきが走った。
 体をねじって外に出ていた足を布団のなかにいれ、あたしはすっぽり、その中に隠れてしまった。
 このままこの中に忍び込んで、やり過ごすことにしたのだ。
173名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 17:47:59 ID:iBYt+1+6
「すみません。まさかお風呂が壊れているなんて……」
 よく知った声。ペリーヌだ。
「気にするな、すぐ近くに風呂屋があったのだし」
 これもよく知った声。でもなんで? これは坂本少佐の声だ。
「うん、そうだよ。私もみんなといっしょに入れて楽しかったし」
 それにこれも、よく知った声。芳佳の声だ。
「なんだか基地にいた頃を思い出すね」
 それでこれが、リーネの声だ。
 どうして4人がいっしょにいるんだろう?
 ペリーヌとリーネはわかる。いっしょに暮らしてるんだし、表札にも出ていた。
 でも、芳佳と坂本少佐は、扶桑に帰ったんじゃなかったっけ?
 足音は止まり、声はあたしのすぐそばから聞こえる。
「寒かったでしょ。今からお茶淹れるから待ってて」とリーネの声。
「ううん。リーネちゃんから貰った手袋、あったかかったし」と芳佳の声。
「ペリーヌがくれたマフラーもあたたかかったぞ」と坂本少佐の声。
「そ、そんな言葉をいただけるなんて」と、嬉しそうなペリーヌの声。
「じゃあ、私、お湯沸かしてくるね」とリーネの声。
「あ、私も手伝う」と芳佳の声。
「いいよ、わざわざ扶桑から来てもらったお客さんなんだし」と、はにかむようなリーネの声。
 そういうと、足音がして遠ざかっていく。リーネのものだろう。
 どうやら、芳佳と坂本少佐は、ガリアに遊びに来ていたらしい。

「ところで――」とペリーヌの声。「これはなんですの?」
「ああ、これですか」と芳佳の声。「これはこたつです」
 コタツ? ああ、これがコタツなのか。猫も丸くなる例のコタツか。
 だからこんなに、ぬくぬくでぽかぽかなのか。
「だからその“コタツ”というのは――」とペリーヌの声。
「こうやって、足から入るんです。ぽかぽかのぬくぬくなんです」と芳佳の声。
 次の瞬間、あたしの腹にどすんと、なにかが当たった。
 うなり声をあげそうになったけど、なんとかそれを押し殺した。
 話の流れから察するに、芳佳がコタツに足を入れたんだろう。
 そして、中に隠れていたあたしを結果、蹴ってしまうことになったのだ。
「ん?」と芳佳の声。
「どうかしたのか?」と坂本少佐の声。
「足になにかぶつかったような……」と、いぶかしげる芳佳の声。
 あたしは息を殺して、状況を見守った。
 こんなところを見つかってしまっては、言い逃れできるはずない。
 芳佳が布団をあげたんだろう、布団がちょっと開いて、あたしにもうっすらと外の様子が見えた。
 このままだとまずい。そう思ってあたしは、芳佳の掴んだ布団を裏側から抑えつけた。
「あれ?」と、間の抜けた芳佳の声。
 芳佳はさらに、布団をめくろうとする手に力を加えてくる。負けるもんかと、あたしも力をこめた。
 うーんっ、と芳佳はうなる。あたしも声には出さなくとも、心のなかではうなっていた。
 そうしてしばしの格闘の末、ふいに芳佳は力を緩めた。
「ま、いいや」と芳佳の声。どうやら難は逃れたようだ。
174名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 17:49:38 ID:iBYt+1+6
「それでその“コタツ”というのは――」とペリーヌの声。
「ぽかぽかのぬくぬくなんです」と芳佳の声。
「だから、なんでこんなものが、こんなところにあるんですの?」とペリーヌの声。
「私たちからのクリスマスプレゼントにと思って、扶桑から持ってきました」と芳佳の声。
「わあ、芳佳ちゃん、ありがとう」と、いつの間にか戻っていたらしいリーネの声。
「ガリアの冬は冷え込むって聞いて、電気こたつにしたの」と芳佳の声。
「芳佳ちゃん……!」と、感激したリーネの声。きっと目をうるうるさせてるんだろうな。
「さ、入って入って」と芳佳の声。
「うんっ」とリーネの声。
 次の瞬間、あたしのお尻にどすんとした衝撃がきた。これはリーネの足なんだろう。
「ん?」とリーネの声。
「どうかしたの?」と芳佳の声。
「ううん、なんでも……」と言いつつも、なんだか不思議がるリーネの声。
「じゃあ私も入るとするか」と坂本少佐の声。
 次の瞬間、あたしの背中にどすんとした衝撃がきた。これは坂本少佐の足だ。
 芳佳の足と板挟みになって、あたしはもはや身動きがとれない。
 それでも、声を殺すことだけは守りとおした。
「ん?」と坂本少佐の声。
「どうかしましたの?」とペリーヌの声。
「いや、別に……」と言いつつも、いかにも不審がっている坂本少佐の声。
「扶桑の冬はこたつでみかんって決まってるの」と芳佳の声。
「へえ」とリーネの声。
「ここはガリアですわ」とペリーヌの声。
「ペリーヌさんは入らないんですか?」と芳佳の声。
 ちょ、ちょっと待って! これ以上入られると、あたしもうムリ!
 ――でももちろん、そんなこと言えるわけがない。
「入るわけないでしょ。そんな得体のしれないもの」とペリーヌの声。
 よかったぁ。とりあえず最悪の状況は脱したようだ。
「そんな……」と、落ちこんだ芳佳の声。
「さっきから見ていればなんなんですの? 中になにかいるんじゃありませんの?」とペリーヌの声。
 ぎくり。
「そんなことは……」と芳佳の声。
「ない……」と坂本少佐の声。
「ですよね……?」とリーネの声。
「なんなんですの? その歯切れの悪い返事は?」とペリーヌの声。
「とにかく中にはなんにもありません。ぬくぬくのぽかぽかなんです」と芳佳の声。
「だいたいなんで、せっかくのクリスマスに、その“コタツ”とやらですの?」とペリーヌの声。
「それは、リーネちゃんやペリーヌさんが喜ぶと思って……」と、悲しそうな芳佳の声。
「いや、悪いのは宮藤じゃなくて私の方だ」と坂本少佐の声。
「えっ?」と、困惑するペリーヌの声。
「そもそも私が提案したんだ。冬は寒いと聞かされて、だったらこたつにしようと」と坂本少佐の声。
「そ、それは、存じませんで……わたくしも是非入らせてください」とペリーヌの声。
 あ、いやちょっと待って! ムリだから! もう絶対、ムリなんだから!
 けれど次の瞬間、あたしの頭にどすんとした衝撃がきた。
 リーネの足と板挟みになって、四方を完全に抑え込まれた。もはやどうしようもない。
 あたしは体を丸めて丸めて、これじゃ、お腹のなかのあかちゃんだよ。
 あたしはだらだらと汗をかいていた。
 それは緊張のためだけでなく、入ったときはぬくぬくだったコタツも、ずっと身をひそめていたせいで、
 もはやそんなの通り越して、ぎんぎんに太陽が照りつける夏のように熱かったのだ。
 息苦しさが増していく。このままなら、酸欠を起してしまってもおかしくない。
 ああ、だんだん意識が遠くなる――
 四方から押し寄せる8本の足の圧迫感には、どうしたところで抗えなんてしない。
「たすけて……」
 とうとうあたしの口から、弱々しい悲鳴が漏れた。
「ん?」と、すっとんきょうなペリーヌの声。「やっぱりなにかいるんじゃありませんの?」
175名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 17:51:19 ID:iBYt+1+6
 ああ、終わった。あたしは思った。でもこれで、解放される……
 ペリーヌは中をのぞこうと、布団をめくろうとしている。
 外の光が隙間からちょっと見えて、まぶしかった。
 もういいや――あたしがそう完全に諦めきったところで、チャイムが鳴った。
「誰かしら?」と、布団をめくる手をとめたペリーヌの声。
 玄関に行ったのかな? ああ、あたしを置いていかないで。
 他の誰か――そう声を出しそうになったところで、遠くでぴーっという音がした。
「あ、お湯沸いたみたい」とリーネの声。
 台所に行ったんだろうな。
 でも、一時は8本あった足が半分まで減ったおかげで、あたしは少し楽になってきていた。
 どうすればいいんだろ――あたしがそう悩んでいたところで、ガシャンとガラスの割れる音がした。
「なんだ今のは?」と坂本少佐の声。
 音がしたのは、あたしたちが最初に入ってきた部屋の方からだった。そっちに見に行ったんだろう。
 そうしてあたしを抑えつける足は現在、2本だけ。
 芳佳の足だ。最初に入って、今までいる。抜け出さないのは、コタツというやつの引力なのか。
 ……ま、あたしの方がそれよりさらに長いんだけど。
 とにかく、もうずいぶんと楽にはなった。でも、安心している場合なんかじゃない。
 もう少ししたら、みんな帰ってきてしまうのだ。そしてまた、足をコタツに入れるのだ。
 今しかない……!
 あたしは思いたつと、芳佳の足をぐいと掴み、ひっぱってやった。
「はふぇ?」という、間の抜けた芳佳の声。
 あとに、ごつん、という鈍い音がして、そうしてそれもすぐ静まった。
 あたしがようやくコタツから抜け出すと、そこには床に寝そべって気絶した芳佳がいた。
 後頭部を床に打ちつけてしまったらしい。
 ごめんね、とあたしは心のなかで謝った。そもそもこれは、不可抗力ってやつだ。
 それに、さっきのおかえしでもあるし(あたしは感覚がどんどん麻痺してきていた)。

 向こうの部屋のドアが少し開いていて、シャーリーがいるのが見えた。
「まさか芳佳と坂本少佐がなあ――ついでだからいっしょに入れておこう」
 そう言ってシャーリーは、2人の荷物をごそごそと探り出した。
 2人の持ち物らしい赤い靴下を取り出して、それにプレゼントの箱を詰めこんだ。
「さて、次に行くか」
 シャーリーはそう言うと、わざとらしく袋を肩に担いでみせた。
「次?」 
「そう、次」

 あたしたちは再び飛行機に乗りこんだ。
 飛行機は飛び立つとすぐに、ガリアの街がどんどん小さくなっていった。
 また来たいな、ろくなことがなかったはずなのに、なぜかあたしはそんなことを思った。
 それまでにはガリアもきっと、もっとすてきな国に復興しているだろう。
 今度こそちゃんと、芳佳たちに会いたいなと思った(でも今日の一件は絶対秘密にしておく)。



以上、とりあえず、ここまで。
続きは問題なければ、1時間か2時間後くらいに。
176名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 19:09:17 ID:COI6vd5o
>>175
GJ
こうゆうのいいよね
ルッキーニかわいそうだったけど
まさかほかの国にも行くのか  期待期待
177名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 19:28:52 ID:iBYt+1+6
>>175の続き投下します。


 日はもうすでにすっかり暮れていて、空は星空だった。
 星がとってもきれいに見える。冬は空気が澄んでいるからだとシャーリーは教えてくれた。
 冬もなかなか捨てたもんじゃないな、あたしは思った。
 シャーリーは星座のことも教えてくれた。
 あたしはそれに耳を傾け、目で実際に点と点に線につないでみる。
 自分だけの星座もつくってみたりした。おっぱい座やおしり座やめがね座などだ。

 あたしたちが降り立ったのはカールスラントだった。
 ミーナ中佐とバルクホルンとハルトマンの故郷だ。ここも、あたしははじめて来る。
 行くぞ。シャーリーは言われるままついていくと、とあるアパートらしき建物の前についた。
 家の前には雪だるまが三つ並んでいた。……あ、いや、一つはちがうか。
 一つは、とにかく大きいの。シャーリーの背くらいある。
 一つは、ごく普通の。でもなんだか、顔がちょっと怒っているようにも見える。
 一つは、瓜を立てたような、なんかヘンなの。雪玉も一つだけ。でも、顔もちゃんとある。
 なんだこりゃ? あたしが首をかしげて、少しの間、それを見入った。
 ――と、その瓜の陰に隠れている、もう一つの雪だるまを見つけた。
 あたしの腰くらいまでしかない、小さいの。大きいの並べれば親子なんかに見えるだろう。

 あたしたちは階段を上っていって、そのアパートらしきところの屋上に着いた。
 シャーリーは袋からロープを取り出すと、柵にくくりつけた。
 よしっ、という声。そうしてロープをもう一方を、地面に垂らした。
「なにするの?」
 うすうすわかってはいながらも、あたしは訊ねた。
「ついてきて」
 シャーリーはそう言うとロープを掴み、よっ、よっ、てな調子で壁を蹴りながら降りていった。
 あたしはもう、なにがあっても驚かないまでになっていた。
 言われるままシャーリーの真似をして、あたしもついていった。
「ここだな」
 シャーリーは途中までいったところで止まると、そう言った。
 上からうかがうに、窓の向こう側を確認しているらしい。
 オーケー、誰もいない。シャーリーがそう言って袋から取り出したのは、ガムテープだった。
 口で器用にガムテープをちぎってゆき、右手でそれを窓ガラスにぺたぺたと張って、
 そうして次に袋から取り出したのは――ハンマー!
「ちょ、シャーリー!」
 あたしは制止しようと声を出した。嘘じゃない。あたしはなにも悪くない。
 でも振りかぶられたハンマーは、躊躇なく窓ガラスに叩きつけた。
 あたしは思わず耳をふさごうかと思ったけど、あいにく両手はロープでふさがっていた。
 ……音は、あんまりしなかった。
 だからと言って、割れたガラスがどうなるということでもないんだけど。
 なにがあったも驚かない。ほんのついさっきだったはずの前言は、早くも撤回された。

「いいの?」
 いいというのは、もちろん割った窓ガラスのことだ。
「いいのいいの。はじめてじゃないし」
 悪びれるでもなく、シャーリーはさらっと言ってしまう。
 というか、初めてじゃないって、それむしろタチが悪いじゃん。
 さすが自室禁固5回のワルだな――なんて、呑気に感心している場合じゃない。
 あたしはふいに、ある既視感に襲われた。
 それは、まだ数時間前。ガリアでのことだ。
 コタツに隠れていたあたしが、2人の、4本の足に足蹴にされるとき。
 あのとき坂本少佐は、ガラスの割れる音がしたのを聞いてコタツから出ていったんだった。
 まさか……?
 もちろんあたしは、シャーリーの味方だ。もうこの際だ、共犯者だと思っている。
 でも、心のどこかでは、シャーリーのことを信じていた。良心とかそういうものを。
 だから、一度浮かんだ疑心を拭おうとする。でもそれはそうそう拭えない。
 そういえばチャイムを鳴らしたのは誰だったんだろう?
 疑問が湧き出しては絶えない。でも、聞くのはやめにしておいた。
178名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 19:31:11 ID:iBYt+1+6
 ここは誰の部屋だろう? とりあえず、ハルトマンの部屋でないことだけはわかる。
 シャーリーはベッドの枕もとにぶらさがった、赤い靴下にプレゼントをつめこんでいた。
 その間あたしは、部屋を見まわしてなにかヒントがないか探した。
 ベッドの他には、机と椅子、あと小さな棚があるくらいなものだ。
 棚の上には、ぬいぐるみがいくつも並べられていた。
 ライオンやクマやオオカミや こんなにたくさん、なにに使うんだろう? 戦わせて遊ぶのかな?
 なんとなく、サーニャなんかが好きそうだなと思った。
 でもここはカールスラントだ。
 お客さんとして来ているならまだしも、まさかサーニャが住んでるはずはない。
 あっ、それだけじゃない。それに気づくと、ああやっぱり、サーニャの部屋じゃないな、と考えなおした。
 サーニャは黒とかブルーとか、そういう色が好きだったみたいだから。
 でもこの部屋は、たとえば布団や枕のカバー、シーツなんかはピンクだし、カーテンだって花柄だ。
 いわゆる少女趣味ってやつ。なんというか、乙女の部屋だ。
 バルクホルンの部屋ならなんとなくヤだな、なんてことを思った。

 棚のはしっこのぬいぐるみが倒れていた。
 開けっぱなしの窓からびゅうびゅう風が吹いてるから(閉めたところで、一部分が割れている)、
 きっとそのせいだな。入ってきたときに、一度強い風が吹いた。
 あたしはぬいぐるみを、たぶん元あったとおりに戻す。
 ――と、その横に写真立てらしきものが、ぱたんと、閉じでもするように倒れているのを見つけた。
 これも元に戻さなきゃ、あたしはそう思って、写真立てを掴む。
 その手が、ぴたっと止まる。
 でもこれは、もしかしてもともと倒してたのかもしれない。そんな考えがよぎった。
 でもでも、気になるし……。
 あー、これだと本当に共犯者みたいじゃん。
 今日のあたしは考えすぎだ。いーや、戻しちゃえ。
 そうして、そこに収められていた写真が目に入る。
 もう夜で、部屋に電気はついていない。窓から入る弱い光だけが頼りだ。
 写真には寄り添うように二人が写っていた。一人はバルクホルンだった。
 写真のなかのバルクホルンは笑っていた。
 こんな風に笑うんだな、なんてことをあたしは思った。
 バルクホルンが笑うところなんて、あたしは見たことがあったかな?
 えーと、もう一人は……
 考え込もうと、じっと写真に目を凝らす。暗がりで、顔をよく確認できない。
 あたしが写真立てをぐっと目の前に近づける、ちょうどそのとき―― 
 ドアのノブを回す音がした。
 それに反応してあたしの心臓が、ばっくん、と強い音をたてた。
 ぎぃ、と鈍い音をさせて、ゆっくりドアが開いていった。
 今度は隠れる暇さえなかった。
「誰ですか?」
 声の主は目を丸くしている。当然だ。どう見ても不審者なんだから。
 ――でも、とも思う。
 むしろそう訊きたいのは、あたしの方だった。
179名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 19:33:13 ID:iBYt+1+6
「あのう、誰ですか?」
 あたしたちが答えあぐねていると、静かな声でもう一度訊ねてくる。
 聞いたことのない声だ。
 誰かだって? そんなの、こっちのセリフだって思う。
 だってそれを言う当人は、あたしの知らぬ人だったんだから。
 扉の向こうは明るかった。暗いところに慣れていたあたしの目が、次第に中和されていく。
 その声の主は女の子だった。あたしより年上かもしれない。
 髪はブラウンがかった黒。それをショートカットにしている。
 全体的に、きゃしゃな印象がある。
 この子のことを、あたしは見たことがない。
 ――いや、違う。あたしは見たことがある。しかもついさっきだ。
 あたしは手にした写真立てへと視線を移した。
 バルクホルンの隣にいる女の子。それがこの子だ。
 あたしの眼球は写真と女の子のあいだを数往復させ、しっかり見比べてみた。
 間違いない、写真の人だ。バルクホルンの隣にいる人。肩に手をのせられている人。
 写真のなかの方がちょっと幼く見えるけど、それは成長した分だろう。いいな、成長。
 あたしはなにか言い訳を探した。でも、そんなの見つかりっこない。
 あたふたするばかりのあたしは、シャーリーへと目をやった。
 するとシャーリーは女の子の方へと歩いていって、そしてその子の手首をぎゅっと掴んだ。
 袖からあらわになった手首は細かった。そんなに強く握っちゃ、折れてしまいそう。
 女の子は声をあげるでも、抵抗するでもなかった。
 シャーリーはそのまま、ぐいっ、と引っ張って、部屋のなかに引きずりこんでしまった。
「あんたのことは知っている」
 シャーリーはそう、その子の口を手で覆って言った。
 その言葉からは、歴戦の凄みみたいなものがにじみ出ていた。
「クリス・バルクホルン。ここはあんたの部屋。どぉ?」
 その子はこくりとうなずく。
 クリス、バルクホルン……バルクホルン!?
 ふと、あたしは思い出した。そういえば聞いたことがある。
 バルクホルンには妹がひとりいて、長いこと入院してたということ。
 今はもう退院していて、バルクホルンとふたりでいっしょに暮らしているということ。
 そうかここは、バルクホルンはバルクホルンでも、妹の方の部屋だったんだ。
180名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 19:35:22 ID:iBYt+1+6
 姉妹というだけあってやっぱり、バルクホルンの面影が重なった。
 それになんだか、ちょっと芳佳にも似ている。
「あたしたちは別に、あやしいもんじゃない」
 そんなこと言っても、信じられるわけがない。そう言う人にかぎってあやしいものだ。
 シャーリーの手は已然、クリスの口を覆ったままだ。
「あたしたちが誰だかわかる?」
 シャーリーが問いかけると、クリスは答えるかわりにあたしを指さした。
 え、あたし?
 あ、いや、あたしじゃない。これは机の方を指さしてるんだ。
 机の上にはペンとメモ帳が置かれてある。これのことなんだろう。
 持ってきて。シャーリーは小声であたしに告げた。
 あたしがクリスの右手にペンを握らせると、クリスは差し出した紙に文字を書いた。
『信じます』
 そこにはこう書かれた。
「いいの!?」
 思わずあたしは、声をあげてしまった。
 思いのほか大きな声だったので、言い終わると口に手をやってしまった。もう遅いけど。
「そうか、ありがと」
 そうは言いつつもシャーリーは、口をふさぐ手も、ぎゅっと手首を掴む手も離さなかった。
「あたしたちが、誰だかわかる?」
 シャーリーは続けてそう訊ねると、クリスは紙にペンを走らせた。
『シャーロット・イエーガーさんと、フランチェスカ・ルッキーニさん』
 シャーリーの額にたまった汗が満ちて、だらりと伝った。
 歴戦のつわものといっても、やっぱりこんな場面は緊張するんだ。そんなことをあたしは思った。
 でもどうして、あたしたちのことを知ってるんだろう?
 バルクホルンからあたしたちの話でも聞いていたのかな。
「違う。いや、あってるんだけど、違う」
 シャーリーのその言葉にクリスは小首をかしげて、しばらくして再びペンを走らせた。
『サンタさんと、トナカイさん』
 シャーリーは書かれた言葉を見ると、満足そうにうなずいた。
「よし、正解」

「あたしたちはみんなにプレゼントを届けに来た。んで、ここにいるわけ。オーケー?」
 シャーリーの問いかけに、クリスはこくりとうなずいた。
「でも、そこをあんたに見られちゃった。今、すごくまずい状況。特にここでは」
 汗がもう一筋、シャーリーの頬を伝った。
 特に……? そうだ、ここはカールスラント。ミーナ中佐がいるんだった。
 なんだかあたしまで、身震いしてきた。
181名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 19:38:31 ID:iBYt+1+6
「どうかしたのか、クリス」
 と、突然に、扉の向こうから聞きなれた声。バルクホルンだ。姉の方の。
 どくん、という心臓の音が三つ、重なった。
 不思議なことにあたしたち3人のあいだに、なんだか連帯感みたいなものが芽生えていた。
「おーい、クリス」
 もう一度、心臓がどくん、とする。
 シャーリーはようやく、クリスの手を覆っていた手を離した。
 そして、キューと合図を出す。3、2、1、キューのキュー。
「ううん、なんでもない」
 それをくみ取ったクリスはそう言った。頭の回転がいいんだろう。
 とにかく、咄嗟の連係プレーが功を奏した――
「遅いじゃないか、クリス。なにかあったのか?」
 かに、思った。
 なのに、安心するのは早かった。
 靴が床を鳴らす音が、どんどん大きくなってくる。部屋まで来るつもりなんだ。
 なんでもないって言ったじゃん。こっちくんな、バカ。
「ううん、なんでもない。ちょっと探し物」
 ナイス、クリス! バルクホルン、さっさと返って!
「なかなか見つからないのか? じゃあ、私も手伝おう」
 なんでくんの、バカー! じゃあってなんだ、じゃあって。
 クリスは渋い顔を浮かべつつも、ふっと手をあげ、指さした。
 その先にあるのはクローゼット。そこに隠れて、ってことだろう。
 あたしとシャーリーは足音を立てないようにこっそり、でも素早く、そっちへと移動していく。
 そうしているあいだにも、刻々とバルクホルンの足音が近づいてくる。
 あたしはクローゼットを開け放った。
 幸いにも、ふたりくらいなら入れそうなスペースが空いていた。
 シャーリーは先に体を滑りこませる。
 あたしもそれに続こうとした、そのとき――
 背中の方から、ガチャリとドアノブを回す音。
 早いよ! まだあたし、隠れてないって!
 一刻を争うときだというのに、あたしは反射的に振り返ってしまった。
 でも、ドアが開けられることはなかった。
 クリスが中の側のドアノブを掴んで、開けないように抗おうとしてくれていた。
 あのか細い腕なら、とてもバルクホルンとの力勝負に勝てそうにない。数秒の時間稼ぎがせいぜい。
 でも、それを無駄にするわけにはいかない!
 さあ! 口の動きだけで、シャーリーはそう言った。
 あたしはシャーリーのいるクローゼットに向かって、ジャンプ!
 ストライカーなしの、一秒にも満たない飛行。
 怖くなんてなかった。あたしの背はクリスが守ってくれている。迎えられる場所もある。
 あたしの体は、広げられたシャーリーの腕のなかへと、吸い込まれていった。
 ふかふかとした感触が、あたしを包み込んだ。
 シャーリーは片腕で、あたしの首筋に手をまわし、ぎゅっとあたしを抱きしめる。
 そうしてもう一方の手で、クローゼットの扉をばたんと閉じた。
182名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 19:39:49 ID:iBYt+1+6
「どうしたんだ?」
 ぎい、とまた鈍い音をたてて部屋の扉は開き、バルクホルンは顔をのぞかせた。
「ううん、なんでもない。ドアの調子が悪かったのかな」
 あたしたちはもう隠れたというのに、クリスはバルクホルンからあたしたちが見えないように、
 体で壁まで作ってくれている。
「それで、探し物は?」
 ずけずけとその壁を押しのけ、バルクホルンは部屋に入ってくる。そして、部屋の明かりをつけた。
 ぶっ、とシャーリーは噴き出した。
 どうかしたの? 訊きたかったけど、声に出すわけにもいかない。
 あたしは身をよじらせて、くるっと半回転。隙間から様子をうかがうことにした。
 ぶっ、とあたしも噴き出した。
 不意打ちだった。まんまとやられてしまった。
 牛乳でも口に含んでいたら、盛大に噴き出していたところだ。
 バルクホルンは、サンタクロースの格好をしていた。
 もちろん帽子もかぶってるし、ひげだってつけてる。白いふさふさなやつだ。
「なにやってんだ、カールスラントの堅物が……」
 声を押し殺してシャーリーはそう言うけど、人のこと言えたもんじゃないなと思う。
 え、あたし? いや、あたしはトナカイだし。

「もう見つかったからいい。戻ろ、お姉ちゃん」
 クリスはそう言うと、バルクホルンの手を引いた。
「そうか……」
 残念そうにバルクホルンはつぶやく。そうして、引かれるまま、とぼとぼと歩き出した。
 笑いをずっとこらえていたあたしのお腹が、ひくひくする。あとでめいいっぱい笑ってやろっと。
 そうして2人がいなくなって、そこからじっくり30数えて、誰もいないと確認してから、
 あたしはクローゼットから外に出ようと、扉に手をかけた。
 そのとき、
「うっかり電気を消すのを忘れていた」
 バルクホルンが戻ってきた。
 さっさといけよ、バカー! あたしは口には出せずとも、心のなかでは泣き叫んでいた。
 クリスは已然として、バルクホルンの手を引こうとしてくれている。
 でも、力が違いすぎるんだろう。逆にバルクホルンに引きづられる格好だ。
 バルクホルンは、部屋の電気を消した。
「さ、もういこ」
「ああ」
 ふう。あたしはため息をついた。
「……いや、待て」
 バルクホルンは、再び部屋の電気をつけた。
 もうなんなのよ、バカー!
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「どうしたんだ!? 窓が割れてるじゃないか!」
 ごん、とハンマーで頭を殴られた気がした。
 あたしは見咎めるような視線をシャーリーに送った。シャーリーは苦虫を噛み潰した表情をしていた。
「こ、これはね……」
「とにかく片づけないと」
 バルクホルンはきびすを返すと、さっさと部屋を出ていってしまう。
 とにかく、部屋からバルクホルンはいなくなった。
 チャンスだ。出るなら今しかない。ああ、でも、またすぐ戻ってきそうだしな。
 迷ったときには…………やっぱりやめておこう。
 片付けおわったら、どうせいなくなるんだし。出るのはそのときでいいや。
183名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 19:42:43 ID:iBYt+1+6
 案の定すぐに、バルクホルンは帰ってきた。ほうきとちりとりを持ってくる。
 ついでに今度は、ミーナ中佐とハルトマンもいる。幸か不幸か、普通の格好をしてくれていた。
 ふたりがあんまり遅いから。ミーナ中佐は言った。
 そうそう、料理が冷めちゃうし。ハルトマンは言った。
 バルクホルンはほうきでてきぱきと、床に散らばるガラスの破片を集めていった。
 ミーナ中佐もそれを手伝う。ハルトマンは、なんにもしない。
 ふと、ミーナ中佐の手が止まる。
「待って――」
 そして、バルクホルンに制止をうながす。今度はなんだよ、もう。
「これは事件よ」
 事件……事件って……まあ事件なんだけど。
「事件だと? どういうことだ?」
 突飛な言葉に、バルクホルンは思わず訊き返した。
「ここは3階よ。ベランダもない」
「ああ、それがどうした?」
「じゃあどうして、割れたガラスの破片が部屋のなかにあるのかしら?」
「なんだと!?」
 バルクホルンの表情が、途端に険しいものに変わる。
 けど格好は、已然としてサンタのまま。ひげだってつけたまんま。
 緊張感とか、そういうのとはぜんぜん無縁だ。
 緊張してるのは、むしろあたしたちだっての。手に汗かきっぱなしなの。
「つまりこれは証拠品というわけか。片づけるわけにもいかないな……」
 床に散乱したガラス片に視線をやり、バルクホルンはつぶやく。
「しかも、これを見て」
 ミーナ中佐はガムテープの切れはしを指差し、さらに推理を披露しだす。結構ノリノリだ。
「これがどうかしたのか?」
「犯人は気づかれないように部屋に入ろうとしたってことよ。おそらく物盗りでしょうね」
 場の緊張感があたしたちを取り残して、どんどん高まっていく。
 あ、ハルトマンは別だ。今、大きなあくびをした。
「とにかく、なにか盗まれたものがないか確認しましょう。通帳とか印鑑とか」
「そうだな――クリス、そういえばさっきの探し物っていうのは……」
「もう見つかったって言ったでしょ。お姉ちゃん、早く行かなくていいの?」
 ミーナ中佐はもう、部屋からいなくなっていた。
「ああ。でも、物騒だし、お前もいっしょに――」
「私はいい」
 バルクホルンは、がつん、とハンマーで殴られたような反応をする。
「でも、お前を一人にしておくわけには……」
「じゃあ私がついてるよ」
 と、ずっと黙ったままだった見ていたハルトマンが、手をあげる。
「しかし……」
 バルクホルンはまだなにか言おうとする。どこまで未練がましいんだっての。
「はやく行かなくていいの」
 語調を強めて、クリスは言った。しぶしぶながら、バルクホルンはああ、とそれにうなずく。
「エーリカ、妹を頼んだぞ」
 そうしてようやく、バルクホルンも部屋から消えてくれた。

 さて、あとはハルトマンだけか――
 ああいつまでここにいるんだろう? あたしが息をひそめて見守っていると、
「私、もう戻るから。料理が冷めるし」
 くるっと扉の方に向き直って、そうしてさっさと行ってしまう。
 あれ?
 その足が、扉の前で止まる。
「用事すんだらきてね。ひとりじゃ退屈だから」
 ハルトマンは振り返って、クリスに言った。
 そのとき、ほんの一瞬だけど、なんだかあたしと目があった気がした。
 まさかね……。
184名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 19:43:51 ID:iBYt+1+6
 そして3人がいなくなり、ようやくあたしたちはクローゼットから出ることができた。
 狭い場所でシャーリーと身を寄せ合い、ぎゅっと密着しあった時間。
 それはとっても幸せな時間だったけど、あまりに心臓に悪いことも多かった。
 心臓はまだ、ばくばくと激しい音をたてている。
 このドキドキが、その幸せな時間によるものか、緊張感によるものか、どっちなのかわからない。
 ううん、きっと、どっちもだったんだろう。

「あんまり長居はしてられない。これを――」
 シャーリーはクリスに、袋から取り出したプレゼントを手渡していった。
 ひとつ、ふたつ、みっつ……
「これをどうするんですか?」
「みんなの荷物に赤い靴下があるはずだから、それに入れといて。名前も書いてる」
「わかりました」
 クリスはこくんとうなずいた。
 ついさっきはじめてあったばかりなのに、もう友情が芽生えていた。
 少なくとも、あたしだけはそんなことを感じていた。
 クリスもそんな風に思っててくれたらいいな。そんなことを思った。
 とにかくあたしたちは、予期せぬ協力者のおかげで、なんとか難を逃れることができた。
「それに、これも」
 クリスの手のひらの上に、よっつめのプレゼントがのせられた。
「これは……?」
「クリスにクリスマスプレゼント。メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」
 シャーリーの言葉に、あたしも続けた。
「ありがとう。サンタさん、トナカイさん」
「ううん、部屋のガラス割っちゃってごめんな」
「ごめんね」
 あたしはなにもしてないのに、とりあえず謝った。そういうノリだった。
 クリスはふるふると、かぶりを振った。 
「いいんです。どうせ片づけるのはお姉ちゃんだし」

 クリスに別れを告げると、あたしたちは再びロープを手に取った。
 あたしたちは、今度は地面へと降りていく。
「じゃあ、次いこっか」
 そうしている最中に、シャーリーは言った。
「うん、次いこ、次!」
 あたしはその言葉に、しっかりとうなずいた。

 あたしたちは再び飛行機に乗りこんだ。
 飛行機は飛び立つとすぐに、カールスラントの街がどんどん小さくなっていった。
 また来たいな、ここでもあたしはそんなことを思った。
 ミーナ中佐に、バルクホルンに、ハルトマンに、それにクリスに、
 また会いたいな、そういうことを思った。



以上、とりあえず、ここまで。
予定では次でおしまいです。2時間くらいあとに。
間違ってageてしまいました、すいません。
185名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 19:44:46 ID:IVMYnu0T
長編大作乙
186名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 20:15:58 ID:qz+xGzMH
>>184
ひとまず乙でした。長文書ける人すげぇ。

というわけでこんばんは。LWqeWTRGです。
せっかくのルッキーニ誕生日なんだからと思って書いていたら、第7話の当番回なのに出番少なかったハルトマンみたいになっちまったorz
よってほぼエイラニャです。ルッキーニは最初と最後に少し出ただけに…。

でも書き上げちゃったので今のうちに投下
「いたずらは弱点を的確に」です。
187名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 20:17:29 ID:qz+xGzMH
「きゃああああああ!!!」

基地中に響く叫び声。
しかしこの世の終わりを見たような叫びを聞いても501の隊員たちは皆またか、といった様子でそれぞれの日常に戻る。

叫び声をあげたのはリネット・ビショップ。
叫び声の原因を作ったのはエイラ・イルマタル・ユーティライネンと、フランチェスカ・ルッキーニ。
この2人が関わってくるとすればいたずらしかなく、それはこの基地にとって日常茶飯事なのだった。

「ニシシシ!やっぱりリーネは良いねぇ〜!」
「ダナ。あんなリアクションとれるのはリーネだけだもンナ」

目の端に涙を滲ませながら笑いが収まるのを待つ2人。

「エイラさん?ルッキーニさん?ちょっといらっしゃい?」

まだ笑いが収まっていなかったはずなのに、その声を聞いたとたん顔が青ざめ、冷や汗までかき始める。
今度は2人の悲鳴が響く番だった。
この世が終わった方がマシだと言わんばかりの悲鳴を聞いても501の隊員たちはやはり気にも留めない。


――――――

「ちぇー。トイレ掃除カヨー」
「ウジュ〜」

ミーナの部屋から頭を押さえながら出てきた2人の目には先程とは別の涙が光っていた。
188名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 20:18:17 ID:qz+xGzMH
そんな日々が続いていたある日のこと。

「ン?なんだ?写真?」

エイラが廊下を歩いていると、角に1枚の写真が落ちていた。
誰のか知らないけど届けてやんないとナー、と思い拾って何が写ってるかを見る。

そこにはエイラの愛しのアイドル、サーニャの姿があった。

「……コ、コレハ…!サーニャの写真!なんでこんな物ガ…!」

興奮しきった様子で周りをキョロキョロと見回し、誰もいないのを確認すると舐めるように写真を見始めた。
アア、カワイイ…。サーニャぁ…。
数分後トリップしていた頭がやっと戻ってきて、思考を写真の中身からなぜこんな写真が、に振り分けることができるようになったエイラは、再度周りを見回す。

「!なるほど…。これは罠ダナ」

1枚目が落ちていた場所から、5mほど離れた床に、もう1枚の写真が落ちている。もっと奥に目をやるとさらにもう1枚写真が落ちていた。

「フフン。ルッキーニの仕業ダナ。私がこんな罠に引っかかるとでも思ってるのカ」
「いくらサーニャの写真だからといって考えが甘すぎル」
「もうちょっと凝った罠を仕掛けてもいいんじゃナイカ?」
189名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 20:19:17 ID:qz+xGzMH
しかし口ではそう言いながら1枚、また1枚と写真を拾っていく。
気づけば隊長室の前まで誘導されていた。

「フウ。バレバレな罠を仕掛けるなんてまだまだダナ」

一息ついて、今まで拾ってきた戦利品を物色すべく部屋に戻ろうとする。
すると扉が開きミーナが出てきた。

「あら、エイラさん丁度いいところに。坂本少佐にお使いを頼みたいのだけど」
「ウエッ、い、今ちょっと急いでるんだケド」
「じゃあこれを届けて頂戴。お願いね」

と書類を押し付けて再び部屋に戻ってしまった。
坂本少佐にお使い。それはすなわち要件終了後の訓練も含んでのことを言う。

「ちょ、中佐?私忙しいんだってバ!」

しかしミーナは部屋から出てくる気配がない。

「なんでこうなるんだヨー…」

かくして、エイラが部屋に戻れたのは日が沈みかけた時間になってからだった。

190名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 20:20:17 ID:qz+xGzMH
―――――――

「くそー。ルッキーニの奴…。覚えてろヨー…」
「今日はエイラがやられたの?」
「アア、写真にやられタ」
「写真?」
「そう、サーny…。じゃない!今のナシ」
「サー…、って私の写真?」
「ち、ちが…。サ…、サー、バルクホルン大尉の撮った写真でもミニイコー」
「エイラ、見せて」
「ダメダダメダ!コレばかりはムリダナ!」




「ニヒヒヒ、やってるやってる〜」
「ルッキーニ、エイラの部屋の前で何してんだ?」
「あっ!シャーリー!えっとね、今日の成果を確認してたの!」
「ふうん、今日のターゲットはエイラだったのか。なかなか面白そうだな。あたしに聞かせてくれるか?」
「うん!あのね―――」

END
191名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 20:21:43 ID:qz+xGzMH
以上です。
ルッキーニにいたずら仕掛けても良かったんですが、引っかかるより引っかけるほうが彼女らしいと思った結果です。
けしてどうやったら引っかかるか思いつかなかったわけではなくってよ!
では失礼します。

この後どんなラッシュになるのか…w
192滝川浜田:2008/12/24(水) 20:26:08 ID:LPAvrLwS
みんなGJ!
さて自分も投下…とも思いましたが、ここはとりあえず長編が終わってから投下しようかなと。
とりあえずGJが言いたかっただけです、はいw
193名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 21:06:17 ID:HR5KPz2Y
みんなGJ!!!!クリスマスイブの聖夜+ルッキーニの誕生日に良作が見れて嬉しい
194滝川浜田:2008/12/24(水) 22:34:53 ID:LPAvrLwS
>>192でああ言っといてアレですが、ひとまず先に投下します。
ちょっと長いですが。
195滝川浜田 『Cinderella Christmas』:2008/12/24(水) 22:37:21 ID:LPAvrLwS


――12月24日。
クリスマス・イヴにして、あたしの愛しいルッキーニの誕生日。

隊のみんなで、ルッキーニの誕生日パーティーをしたりしてルッキーニはとても嬉しそう。
うんうん、ルッキーニの嬉しそうな顔を見ると、あたしまで顔がにやついちゃうよ。

だって、ルッキーニの笑顔ったら本当に明るくて、何の裏も無い、本当に可愛い笑顔。

思えば、あたしがルッキーニに惚れたのはそこもあるかも知れない。
もちろんそこだけじゃ無いけどね。

そして、今のこのパーティーが終われば、ある意味あたしにとってはメインのイベントが始まる。


あたしとルッキーニだけの、二人きりのパーティーが。


――Cinderella Christmas――


ガチャ

「シャーリー、来たよ」
「お、待ってたよ」
「用ってなに?」
「なにってお前。
あたしが直接お前の誕生日を祝ってあげるんだよ」
「あ、そーいえばあたし、シャーリーからプレゼント貰ってない」
「ま、それも含めての二人きりのパーティーって事だよ」

あたしはルッキーニをイスに座らせて。

「っつーわけで、ルッキーニ、誕生日おめでとー!」
「ありがとう!シャーリー!」
「いやいや、お前も一つ大人になったんだなあ。お姉ちゃんちょっと感慨深いよ」
「アハハ、シャーリーちょっとおばさんみたい」
「バカ、15の乙女を捕まえて言うに事欠いておばさんかよ」
「ごめんごめん、ニャハハ」

ああ、ルッキーニの笑顔はやっぱり可愛い。
って惚けてる場合じゃないんだよ。
今夜はルッキーニを精一杯祝ってあげなくちゃな、うん!

「それでさ、あたしルッキーニの為に腕によりをかけて、スパゲティ作ったんだ!」
「うわぁ、美味しそう!」
「だろ?ほら、食べてみろよ」
「うん、いただきまーす!」

196滝川浜田 『Cinderella Christmas』:2008/12/24(水) 22:39:05 ID:LPAvrLwS
ルッキーニがスパゲティを口に運ぶ。
ちょっとドキドキだ。

「どう…だ?…ルッキーニ…」
「……」

…やっぱダメだったか…?

「…美味しいよ、シャーリー!」
「ほっ、本当か!?ルッキーニ!」
「うん、これならいくらでも食べられるよ!」
「そ…そっか!おかわりならいくらでもあるから遠慮なく食えよ!」

良かった…!ルッキーニが美味いって言ってくれて。
作った甲斐があったよ!

「…ってほら、ルッキーニ、口の周りにソースついてるぞ」
「ウニャ」

あたしはルッキーニの口の周りについたソースを拭き取る。

と、あたしの目に飛び込んで来たのは、ルッキーニの柔らかそうな唇。
12歳のクセにルッキーニの唇はなんだか肉感的で、見るだけでドキドキする。

「……どうしたの?シャーリー」
「…へ?」
「なんかボーっとしてたみたいだけど」
「あっ、いや、なんでも無いっ!///」

あっ、危ない危ない。妄想が口に出るとこだった。

「そうだ、ルッキーニ、プレゼントがあんだよ」
「待ってましたー!」

あたしはタンスから箱を一つ取り出す。
それはいかにもクリスマスらしい包みにくるまれた小さな箱。

「はい、ルッキーニ。誕生日おめでとう」

ルッキーニは箱を開ける。

そこには、鈴がついたリボンが入っている。

「シャーリー…これ…」
「ほら、この前街に出た時お前言ってただろ?可愛いって」

197滝川浜田 『Cinderella Christmas』:2008/12/24(水) 22:40:53 ID:LPAvrLwS
―――――――――――――――――――

「あっ、ねえ見て見て、シャーリー!」
「ん?なんだルッキーニ」
「このリボン、可愛くない!?」
「おー、キレイだなあ」
「いいなあ、こういうリボンってどういう人がするんだろう」
「……」

(これくらいの値段なら……よし!)

―――――――――――――――――――
「シャーリー…覚えてたの…?」
「お前の言ってた事なら、覚えてるって。お前の喜ぶ顔が見たくって、さ」
「シャーリー…」

と、ルッキーニの目から涙が。

「ちょっ、ルッキーニお前なんで泣いてるんだよ!?」
「…嬉しいんだよ…あたし、シャーリーがあたしの言った事いちいち覚えてた事が…」

あたしはルッキーニの目にたまった涙を指で掬う。

「…バカ、そんなのいちいち泣く事じゃないだろ?それに…」
「シャーリー…」
「あたし達、“友達以上恋人未満”だろ?」
「シャーリー…//////」

ルッキーニはあたしの服をギュッと掴む。

「ルッキーニ…?」
「…シャーリー、あたしもう一つプレゼント、欲しい」
「なに?」
「……//////」

ルッキーニは顔を真っ赤にして、あたしを見ている。
ルッキーニが何を言いたいかは分かる。

でも、顔を真っ赤にしたルッキーニが可愛くて、つい意地悪を言ってしまう。

「…あたし達“友達以上恋人未満”なんじゃなかったっけか?」
「…それはあたしの誕生日をもって終わり。…今からは…」
「ルッキーニ」
「“恋人”でどうかな…//////」

ルッキーニがさっきより更に顔を真っ赤にして呟く。

「いいよ、ルッキーニがそれでいいなら」

ルッキーニが、あたしにすり寄ってきた。
198滝川浜田 『Cinderella Christmas』:2008/12/24(水) 22:42:50 ID:LPAvrLwS


「…大好き…!シャーリー…!」
「あたしも、ルッキーニ」
「ね、シャーリー」
「なんだ?」
「リボン、つけて」
「…あたしなんかで良いのか?」
「あたしの髪とリボンは、シャーリーにしか触らせないもん」
「おっ、嬉しい事言ってくれるなあ」

あたしは鈴がついているリボンを手に取る。
そして、ルッキーニが今つけているリボンを解く。

「うお…//////」

髪を解いたルッキーニは見慣れているけど、雰囲気のせいなのか、いつもより大人っぽく見えた。

(…ヤバい…キレイ過ぎるって…//////)

「…?どうしたの、シャーリー」
「へっ…?あっ、ごめんごめん…///」

見とれてる場合じゃなかったな…。
しっかりしろ、あたしっ…///

ルッキーニの黒髪は本当にキレイで、別に髪フェチじゃないけれど、ルッキーニの髪ってだけで無条件でドキドキするあたしがいる。

「じゃあ、つけるぞ」
「うん」

あたしはルッキーニを髪を結ぶ。
ほつれが無いように、丁寧に丁寧に。
あたしの想いを込めて…。


「よし、できた!ほら、鏡見てみろよ」
「うん!」

ルッキーニは鏡の前に向かっていった。

「うわぁ…///」

そして、あたしは後ろからルッキーニの肩に手を置く。

「おおっ、よく似合うじゃん、ルッキーニ!」
「そっ、そうかな…//////」
「うんうん、よく似合ってる!マジで可愛いって!」
「エヘヘ…!//////」

そのリボンはあたしが思ってた以上に似合っていて。
それだけの事なのに、胸の鼓動が早まる。

199滝川浜田 『Cinderella Christmas』:2008/12/24(水) 22:45:14 ID:LPAvrLwS
そして、ルッキーニは機嫌良さそうに部屋中をくるくる回る。
その度に、鈴がチリンチリン鳴る。
あたしはそんなルッキーニがたまらなく愛おしくなって、後ろからギュッと抱き締めた。

「シャーリー…//////」
「そんなに喜んでくれて嬉しいよ、ルッキーニ」
「そんなの当たり前だよ。だってシャーリーからのプレゼントなんだもん」

ルッキーニをあたしの方に向ける。

「…お前にもうひとつ、プレゼントをあげるよ」
「シャーリー」
「目を、瞑って」
「うん…」

…あたしは唇を寄せる。
そして、優しく、甘く、囁く。

「ハッピーバースデー、ルッキーニ」

――愛してる。――

キスを、した。
さっきの囁きよりも、甘く、優しく。

外では、あたし達を祝福するように、雪が降り始めた。

なんとなく、ベルの音色が鳴り響いた気がした。

「…シャーリー…」
「ルッキーニ…」
「キス、しちゃった、ね」
「あ、ああ、そうだな」

そう言うと、あたし達はしばらく黙ってしまう。
そして沈黙の後、ルッキーニが口を開く。

「シャーリー」
「ん、ルッキーニ、なんだ?」
「やっぱり、あたしシャーリーの事、好き」
「フフ、知ってる」

そしてあたしはもう一度、ルッキーニを抱き締める。
ルッキーニの体温が心地良い。

「シャーリー…」
「…なあ、ルッキーニ」

チリン…ッ…

鈴が鳴る。

それは、あたし達の始まりの合図。

聖夜の小さな、小さな恋の話は、まだ終わらない。

END
200滝川浜田:2008/12/24(水) 22:49:34 ID:LPAvrLwS
以上です。
あ、この作品は誰も覚えてないであろう保管庫No.0404の続きです。
この二人はこんな感じで甘い夜を過ごしてると良いなあ。

というわけでちょっと遅いけど、メリークリスマス&ルッキーニ誕生日おめでとう!!って事で。
いつまでもシャーリーとラブラブしてればいいよ!!www

…というわけで爺はここら辺で…
201名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 23:05:12 ID:cBFSJyje
>>200
どひゃーー!爺様GJGJGJ!これはいい
いいとしか言えないw最高だよシャッキーニっ
202名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 23:30:33 ID:r86JbZe1
>>200
じっちゃんGJ!
甘いぜ甘いぜ甘くて死ぬぜ! すばらしいシャッキーニをありがとう!
毎年こういうことやるんでしょうねw ラブラブだなw

みんなもGJ!気合入ったものが読めてうれしいよ。
203名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 23:30:58 ID:iBYt+1+6
>>184の続き投下します。ちょっと遅れましたすいません。


 時計がなかったので時間はわからなかったけれど、もうずいぶん時間が経っているのがわかった。
 カールスラントではついつい長居をしてしまった。
 もしかしたらもう、日付は25日に変わっているのかもしれない。
 あたしの視界の片隅に入る月は、すっと下唇をなぞったかたちをしている。
 月が笑っている。なんだかそんな風に見えた。
 そうだこれは、笑顔のマーク。

 あたしたちが降り立ったのはスオムスだった。
 エイラの故郷。ヨーロッパの北のはじっこ。ここも、あたしは来るのははじめてだった。
 例のごとく、飛行機から降りたあとは歩きだ。
 ぬくぬくだったトナカイの衣装も、さすがにここまでくるともう寒い。
 雪は降っていなかったけど、地面にはびっしり、足がすっぽりつかるように雪がつもっていた。
 あたしはシャーリーの横に並ぶと、寄り添うように体をくっつけ、もたれかかった。
 シャーリーもあたしの方に体をあずけてくる。
 そうしてふたり並んだあたしたちが着いたのは、レンガ造りの一軒家だった。
 シャーリーは袋から再びロープを取り出すと、輪っかをつくった。
 カウボーイが投げるみたいな、あれだ。
「どうするの?」
「あそこに煙突があるだろ。あそこから入るんだ」
 えっ、と思わずあたしは訊き返した。
「だって、煙突がある」
 シャーリーは、素朴な響きの言葉をついだ。
 ……意味がわからない。
 窓から入ればいいじゃん、窓から。窓ガラス割って入ってさ。
 喉元まででかかったその言葉を、あたしはすんでのところでごくんとなんとか呑みこんだ。
 あたしまで完全におかしくなっていた。
「サンタといえば、煙突から登場って決まってるじゃないか」
 シャーリーはまだ言う。
 でもあたしは、それに賛同なんてできない。
 だって煙突なんて通ったら、絶対にすすだらけになる。
 それだけならまだいいけど、あんなところを通って、もし万が一引っかかったりしたら――
 コタツの件と、クローゼットの件。もう閉じ込められるのにはこりごりだった。
 しかも煙突だから、その下にあるのは暖炉なんだろう。
 そんなところに長時間ひっかかったままは辛いし、下に落ちでもしたら大やけどをしてしまう。
 煙突を通るなんてそんなことは、よいこは絶対真似しちゃいけないのだ。
 あたしがそんな想像をしているあいだにも、シャーリーはロープを完成させ、
 ぐるんぐるんとカウボーイのような手つきでそれを回転させ、そうして投げた。
 きれいに一回で、ロープの輪っかは煙突にすっぽり納まった。
 ぐいぐい、とひっかかっていることをたしかめると、シャーリーは言った。よしっ。
 ……ああ、本当にやる気なんだ。
「待って。これじゃ、サンタじゃなくて怪盗だよ」
 あたしは今にもさあ上ろうかというシャーリーを抱きついて、制止させようとした。
「怪盗?」
「そう。ファニートータスとか」
「懐かしいな、おい」
 怪盗、怪盗……シャーリーは口のなかでその言葉を何度もつぶやく。怪盗、怪盗……
「怪盗黒バラとかか?」
 シャーリーがなにを言ってるのか、残念ながらあたしにはわからなかった。

 なんとかシャーリーを止めることができ、あたしたちは家のまわりをぐるりと見て回った。
 けど、開いている窓はなかった。
 窓を割るのは忍びないと思いつつも、だからといって煙突もなぁ……
 あたしがその二択に迫られていると、シャーリーがこっちこっち、とあたしを呼んだ。
「開いてたの?」
 あたしは期待をこめて、シャーリーの元へとかけていった。
204名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 23:33:08 ID:iBYt+1+6
 ちょいちょい、とシャーリーは親指で窓の方を指していた。
 あたしはそれがなにを示しているのか理解した。
 カーテンがちゃんと閉まりきってなくて、少し開いているのだ。
 とりあえずここから、なかを確認してみようってことなんだろう。
 けど、窓のあるところは高くにあって、あたしどころかシャーリーの背でものぞけそうにはない。
「シャーリー」
 あたしはシャーリー名前を呼んだ。それだけで通じ合える、そんな気がした。
「オーケー、ルッキーニ」
 そうしてそれは、そのとおりになった。
 シャーリーは屈みこんであたしの股の間に頭を入れてくる。
 あたしはバランスをとるために、シャーリーの頭を掴んだ。
 シャーリーはゆっくりと膝を伸ばしていき、立ち上がった。
 あたしは隙間に目をやり、なかの様子をうかがうことにした。
 そこにはサーニャとエイラがいた。トランプをしている。ババ抜きなようだ。
 なにか会話している。
 窓ガラスが分厚いのか、どんなことを話しているのかは聞き取れなかった。
「サーニャとエイラはまだ起きてる。トランプしてる」
「まだ起きてるのか?」
「なに話してるのかは、聞こえない」
「わかった。いいものがある」
 シャーリーはあたしを一度地面に下ろすと、袋のなかをさぐってコップを取り出した。
 あたしはコップを手に取った。
 そしてシャーリーはもう一度、あたしを肩車する。
 あたしは窓にコップをぴたんとひっつけ、その底に耳をくっつけた。
 かすかだけど、耳をすませばたしかに聞き取れる。懐かしいふたりの声だった。
「なぁ、サーニャ」
「どうしたの、エイラ?」
「ふたりでババ抜きして、楽しいカ?」
「わたしはたのしい」
「そうカ。私もなんだか楽しい気がしてきたナ……」
 しみじみとそう言うと、エイラはサーニャの手札から一枚とった。
 それでエイラは、ウげぇ、って顔。
 反対にサーニャの口からは、笑みがこぼれる。
 あ、今、エイラ、ババひいた。

 ふはぁ。サーニャがあくびをした。
 ふはぁ。それにつられて、エイラもあくびをした。
 眠いなら寝ちゃえばいいのに、そう思ったけど、言えるわけがない。
 サーニャはとろんとまぶたが落ち込んだ目をこすっている。
 ――と、その定まらない焦点が、こちら側に向いた。
 その焦点は、あたしをむすんでいた。
 まずい。あたしは咄嗟に、死角であるだろう場所に身を隠そうとする。
 よたよたと、シャーリーが数歩歩きまわって、バランスをとってくれる。
 今、安易に、窓から顔をのぞかせるのはまずい。
 だからあたしはもう一度、今度は耳だけでさぐってみる。
 コップをまた窓にひっつけて、じっと耳に神経をそそいだ。
「トナカイがいた」
「トナカイ? どこにダヨ?」
「あっち」
「あの窓? 外からなら高いゾ。いないいない。飛んでたならまだしも」
「じゃあ飛んでたの」
「そんなわけないダロ」
 ふわぁ、とエイラは大きなあくびをした。
「トナカイなんていないって」
「なんで、わかるの」
「知ってるカ? スオムスではトナカイ食べるんダゾ。この辺の、全部食べタ」
 あたしの全身に、ぶるって寒気が走った。
 外の寒さのせいだけじゃない。あたしはそのまま、ぶるぶるがたがたと震え出した。
 そして結局バランスをくずして、シャーリーとふたり背中から、雪の上に寝そべった。
205名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 23:35:14 ID:iBYt+1+6
 あたしはシャーリーにまたまた肩車をしてもらい、なかの様子をうかがった。
 といっても、やっぱりコップで聞き耳をたてるだけだけど。
「トナカイを食べるなんて信じられない!」
「そ、そんなはずないダロ……さっきのは嘘ダって……」
「エイラ、わたしに嘘ついたの?」
「じゃなくて、冗談……」
「言っていい冗談と悪い冗談があるでしょ」
 どうやら千和ゲンカ……じゃない、痴話ゲンカをはじめてしまったようだ。
 といっても、一方的にエイラが圧されてるばっかりだけど。
 これはこれで微笑ましいけれど、そうも呑気なことをされている場合でもない。
 ああもう。寝てくれないんじゃ、プレゼント渡せないじゃんか。
 と、ふはぁとあくびをする声。つられるように、あくびをする声がもうひとつ。
「なぁ、サーニャ。そろそろ寝ないカ」
「でも、まだサンタさん来てないし……」
 ん、サンタさん? どういうことだろう?

「だってエイラが、サンタさんはいないって言うし」
「なぁ、サーニャ。もう一度訊くけどサ……本当にサンタがいるって信じてるのカ?」
「うん、サンタさんはいるよ」
 その声は、疑いの雲ひとつない、晴れ晴れとした快晴。
 そうか、サーニャはまだ、サンタさんがいるって信じてるのか。
「でも、去年はこなかったんダロ?」
「うん……」
「でも、今年は大丈夫ダ。きっとプレゼント貰えるよ」
「どうして?」
「サーニャのお父さんだって見つかったし、今隣の部屋にいるし」
「どうしてサンタさんとお父さまが関係あるの?」
 エイラは無言。サーニャも無言。あたしも言葉を失った。
 サーニャはホントにいい子だなぁ、そんなことをしみじみ思う。
「それにサンタさんに言わなきゃいけないし……去年の分のプレゼントくださいって」
 うーん、どうしよ……まああとで、シャーリーに相談してみよう。
「…………なぁ、サーニャ。どうして去年は、サンタが来なかったんダろうナ?」
「だって去年は、夜間哨戒で夜中は起きてたから」
「じゃあマズいんじゃないカ?」
「どうして?」
「このまま起きてちゃ、サンタさん来ないんじゃないカ?」
 サーニャは無言。エイラも無言。あたしは言いたいことがあったけど、言わない。
「そうだね。エイラ、寝よ」
 あたしはゆっくり10数えてから、カーテンの隙間に目をやった。
 サーニャはベッドに横たわっている。よほど眠かったのか、もう眠っているようだった。
 おずおずとした動きで、エイラもベッドに身を横たえた。
 サーニャと背中合わせになって、ぴたんと背中と背中をくっつけた。
 あたしは再びコップ越しに、耳をすませてみる。寝息は聞こえてなかった。
 まあでも、たぶん眠っている。とにかく今がチャンスだった。

「シャーリー、寝たよ」
「やっとか。それでどうする?」
 あたしは考えるまでもなかった。答えはきまっている。
「煙突から行くよ」
「どうしたんだ、その急な心変りはじゃないか」
「あのね、サーニャはサンタクロース信じてるって」
「そうか、じゃあ腕が鳴るってもんだ」
「でもね、エイラは信じてないって」
「そうか、じゃあ知らしめてやらなくちゃいけないな」
 腕が鳴る。知らしめてやらなくちゃ――シャーリーの言葉が、あたしを奮い立たせる。
 あたしもそれに同調していた。いや、違う。これはあたし自身の意志でもあった。
 あたしとシャーリーの心は、今ちょうど、ひとつに重なっていた。
 ようやくあたしは、シャーリーの“共犯者”になれたってわけだ。
 目標とするのは、サンタさんらしいサンタさん。エレガントにスマートなサンタさん。
 となれば、窓ガラスを割って入るなんて野暮な真似ができるはずはない。
206名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 23:36:57 ID:iBYt+1+6
 あたしはロープを手に取ると、先陣をきって上っていった。
 後ろから、シャーリーがつづく。
 そうしてあたしは、屋根のまでやってきた。
 傾いた傾斜と雪が積もった足場の悪さで、あたしはあやうくバランスを崩しそうになる。
 そこから先は手をついて上っていって、ようやく煙突にたどりついた。
 シャーリーもすぐに追いついてくる。あたしたちは煙突のなかをのぞきこんだ。
 今が夜なせいもあって、真っ暗でなにも見えない。でも、暖炉の火はついていないらしい。
 ロープをたぐり寄せると、今度はそれを煙突のなかへと投げ入れた。
 数秒のちに、乾いた音が響いて聞こえてきた。どうやらちゃんと床までいけそうだ。
 あたしはロープを手にとって、また先陣をきって、今度は下りていった。
 上るのに比べて、下りるのは楽だ。するするっと滑るように降り、あたしは床に。
 きちんと着地だって決めた。10点満点。
 ――けれど今度はいくら待っても、なかなかシャーリーはやってこなかった。
 あたしは仰ぎ見て、シャーリーの様子をうかがった。
 じたばたもがく、足が見えた。白鳥の、水のなかでの動きみたいだ。
 しかも困ったことに、一番真上のところでだ。
 ようやくあたしは事態に気づく。そもそもあたしとシャーリーとでは、体のサイズが違うのだ。 
 特にシャーリーの場合、胸がつっかえてしまって、通りたくても通れないんだろう。
 体がちっちゃくてよかった。生まれてたぶんはじめてくらいにそう思った。

「ルッキーニ、あたしはムリそうだー」
 上から降ってくるようなシャーリーの声。
「うーん」
 あたしはそれに答えた。うなるときのうーんじゃなくて、うんを伸ばしたのだ。
「だから、代わりにこれを頼むー」
 シャーリーはそう言うと、こちらもひっかかっている抱えた袋から、プレゼントを落としてきた。
 あたしはそれをキャッチ。ひとつ、ふたつ……
「ねー、シャーリー。もうひとついるんだけどー」
「もうひとつー?」
「ないー?」
「あるにはあるけどー、最後のだからなー」
「いいよー」
「ルッキーニーの分なんだー」
「うーん、それでいいよー」
 あたしの分もプレゼントがあったなんて――そのことが素直に嬉しかった。
 最後って言った。これをあげちゃえば、もうプレゼントなし。
 でも、ま、いい。
 今のあたしは、使命感に燃えていた。燃えたぎっていた。
 こんなこと、ネウロイと戦っているいるときだって思ったことはない。
 目標はエレガントにスマートなサンタさん。あ、いや、あたしはトナカイなんだけどね。
207名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 23:39:25 ID:iBYt+1+6
 こっそり忍び足で、あたしはふたりの眠るベッドまでやってきた。
 これじゃ泥棒みたい? いいや、違う。これはふたりの安眠をさまたげないようにするため……
 ふたりはぐっすり眠っていた。あたしの抜き足も差し足も完璧だ。
 あたしはサーニャのものらしい赤い靴下を見つけると、そこにプレゼントをつめこんだ。
 今回は楽な仕事になりそうだな(シャーリーは除いて)、そうあたしが安心しきっていると――
 むくっと、サーニャが起き上った。腹筋でもするような早さだった。
 えっ、うそ? 起きてたの?
 あたしは隠れようもなく、それでも無意味にしゃがみこんだ。これじゃ、頭すら隠せていない。
 あたしはそのままの姿勢でサーニャの様子をうかがった。
 体は起きている。それはたしかだ。でも意識は、起きているか寝ているかは定かではない。
 これが夢遊病ってやつなのかな?
 とろんとしたまぶたから、うっすら半目が見えた。
 とにかくたしかめなくちゃ。あたしはサーニャの目の前で、手を振って見せた。
 サーニャからの反応はなし。よかったぁ、寝ているみたい――
「サンタさんですか?」
 え、あたしなにも喋ってないよ?
 じゃあ誰……? ああ、サーニャか。そうだよね、サーニャの声だもん。
 早とちりした。サーニャは寝てない。夢遊病でもたぶんない。
「ううん、違うよ。あたしはトナカイ」
 間抜けにも、あたしは答えてしまった。
「じゃあトナカイさん、サンタさんに伝えてください」
「え、なにを?」
「去年の分の、プレゼントもくださいって」
 目はつむったり、半目になったりを繰り返している。焦点は已然としてあっていない。
 どうやら、トナカイがあたしだということは気づいていないようだ。
 サーニャは今、起きている。でも、寝ぼけている。あたしは状況を確認した。
 状況は逼迫している。けれど、最悪ってわけじゃない。まだまだ取り返すことはできる。
「あたし、サンタさんに相談してくるね」
 半分嘘ついちゃったけど、半分は本当のことを言った。
 そう言うと、あたしはそそくさとその場を立ち去った。もう忍び足なんてしてられない。

「シャーリー! 大変だよー!」
 あたしは再び、煙突の下まで舞い戻り、シャーリーに相談することにした。
 心なしかシャーリーは、さっきまでより下がって来ていた。
「んー? どうかしたのかー?」
「サーニャが起きてたー」
「なにーっ!?」
「でも、ねぼけてたーっ!」
「じゃーさー、ルッキーニー」
「うーん、なーにー?」
「首筋にしゅとーをこー」
 そう言うと、シャーリーはじたばたと体を動かす。
 しゅとー……? しゅとーって、まさか……?
 いいや、でも、そんなことしちゃさすがにダメだ。
 たしかにあたしは、ガラスも割った。ピンポンダッシュもした。
 あ、いや、これはあたしじゃない。シャーリーだった。
 たしかに今は苦境だけど、“手刀”を加えて眠らせるなんて、そんなことしちゃいけない。
 え、芳佳のこと? あれは不可抗力だったから。あたしはなにも悪くないし。

「シャーリー、他になんかないのー?」
「えー、他にー?」
 ちょっと考え込むとシャーリーは、ごそごそと袋をさぐりだした。
 ずるっ、とシャーリーの体が、ちょっと落ちてきた。でもまだ、ひっかかっている。
「うけとってー」
 シャーリーはなにかを落としたらしかった。金属が床に落ちたときの、そういう音がした。
 ハンマーでも渡されたらどうしようかと、ちょっと焦った。
 でもそれは、もっとずっと軽いものだとわかった。
 それははねるように床をころがると、ダンスを踊るように、ぐるぐる円を描いた。
208名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 23:41:18 ID:iBYt+1+6
 あたしはようやく動きを止めたそれを拾い上げた。
 どうやらそれは、コインのようだ。真ん中に穴があいている。
 どこの国のコインだろう? いったいいくらくらいなんだろう?
 けど、数字は書かれていなかった。かわりにそれには、カクカクした文字が書かれている。
 うすぼんやりとした記憶だけど、あたしはそれを見たことがあった。
 そうこれは、扶桑の文字だ。それで四文字が四方に分かれて書かれている。
 上の文字は宮藤の“宮”の字で、下の文字は坂本の“本”の字だ、たぶん。
 宮本△×? なんだか違う気がする。……ま、いいや。コインのことはどうだっていい。
 そして穴の間から、ひもがくくりつけられていた。
 あたしはそれを指先でつまむと、コインは振り子のように揺れた。
「これでどうするのー?」
「それで眠らせるんだー」
「えーっ、どうやってー?」
「呪文があるんだー」

 あたしは再び、サーニャたちの元へと向かった。
 右手の中にぎゅっと力が入る。握られているのは、宮本△×(?)のコイン。
「サンタさんですか?」
 まだ上半身を起こしたままのサーニャは、あたしに訊ねてくる。
 未だ寝ぼけたままなんだろう。まあそれでいい。
 そんなにサンタに会いたいのか。残念ながら、それはムリ!
 そんなにプレゼント(去年の)がほしいか。そっちなら、オッケー!
 あたしはひもの先っちょを摘むと、コインをだらんと垂らした。
 ふっ、と手を動かし、そのコインを揺らした。早すぎず、遅すぎずに。
「これを見て。揺れてるコイン。それを目で追って」
「うん」
 ゆっくりとだけどたしかに、サーニャはうなずいてくれた。
「いーい? あなたはだんだん眠くなーる、あなたはだんだん眠くなーる……」
 あたしはシャーリーに教えられた呪文を、何十回と唱え続けた。
 でもそんなにする必要もなく、効果はてきめんだった。
 十回くらいでサーニャの起こされた上半身はもう、再びベッドのもとに戻っていった。
 背中がベッドに吸いこまれて、やわらかい音をたてた。
 なんだかあたしまで眠くなってきちゃったよ。
 そういえば、朝遅かったとはいえ、もう夜も遅くだ。
 ずっと寝ていないし、重労働だった。
 あたしは一度、大きくあくびをした。
 いけないいけない。あたしまで眠っちゃえらいことだ。
 このあとシャーリーも助けなきゃいけないんだし。
 あたしは眠気を振り払うように、ぶんぶんと振った。
 重くて長いトナカイの頭もいっしょに、ぶんぶんと振れた。

 あたしはエイラの枕もとの赤い靴下に、プレゼントをつめた。
 これで知らしめてやることができたわけだ。
 そしてあと、もうひとつ。サーニャの去年の分。そうしてこれが、最後のひとつ――
「一年遅れちゃったけど、ごめんね」
 あたしが謝ることでもないんだけど、ついついそんなことを言ってしまう。
 すでにプレゼントがひとつ収められた靴下はぎゅうぎゅうで、入りそうになかったので、
 あたしはサーニャの手のなかに、プレゼントを握らせた。
 これってホントは、あたしのプレゼントなんだよね。そんな考えが頭をよぎった。
 でも、いいんだ。
 今日のあたしはトナカイだから。喜ぶ子供たちがいてくれることが嬉しい。
 それに、だって、ほら――あたし自身も楽しかったのだから。
209名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 23:42:57 ID:iBYt+1+6
 どすん、と重いものが落ちる音がした。
 音がしたのは暖炉の方から。まさかと思って、あたしは走り出した。
 そこにいたのは、いててぇ、とお尻をさすっているシャーリーだった。
 ようやく降りてきた(いや、落っこちてきた)のはいいけど、
 もう仕事は終わってるんだよ。あたしはそう、言ってやりたくなった。
 赤いはずのサンタ服がすすけて、真っ黒になっている。案の定だ。
 シャーリーが顔をあげると、その顔まで真っ黒になっていた。
 シャーリー、変な顔ぉ。あたしは言った。
 ルッキーニだって、変な顔だぞぉ。シャーリーは言い返してくる。
 えっ、そうなの。あたしはびっくりした声を出した。
 そうしてあたしたちは、すすけた顔を見合わせて、声を出して笑った。

「あたし、まだふたりの顔見てないし、見てきていい?」
 シャーリーがそう言うので、あたしもついていくことにした。
 ふたり列をつくって、忍び足でだ。抜き足と差し足も忘れない。
 ――そうしてその道中で、エイラを見つけた。
 出くわした、でなくてよかった。あたしたちが先に気づいて。
「なんの音ダ……?」
 エイラは眠そうな目をさせて、こっちの方へとやってくる。
 そうか、さっきのシャーリーが落っこちた音で目が覚めたのか。
 またさっきのやつで眠らせるか――あたしはその考えをすぐに否定した。
 サーニャのときのように、すんなりうまくいくとも思えない。
 それに、今度あれを使ったら、ホントにあたしまで寝ちゃいそうだったから。
 だからといって、手刀なんてもっての他だ。
 あたしはシャーリーの耳たぶを掴むと、ぐいっと引っぱった。
「逃げよう」
 そのまま、あたしは耳打ちした。
「でも、まだサーニャの顔見てないし……」
「いいじゃん、別に」
「だって……」
「そんなの、今でなくたって会えるよ」
 そう言い切ったとき、あたしのなかで、ぱんっとなにかがはじけた気がした。

 どうやって逃げよう?
 煙突をまた昇るか……いや、あたしはともかく、シャーリーはムリだ。
 じゃあ逃げるとなれば窓しかない。
 シャーリーも同じことを考えていたのか、もう窓の前にいた。
 ああ、でも……手に持っているのはハンマーだ。
「シャーリー!!」
 あたしはこらえきれず、大声で叫んでしまっていた。
 でも、シャーリーのては止まらない。
「内側からなら窓開けれるよ」
「えっ!?」
 あたしがそう言ったときには、もう遅かった。
 振りかぶられたハンマーは打ち下ろされ、ガシャンと派手な音がした。
 あたしたちはうつむいてしまう。床に散らばるガラス片が、イヤでも目に入る。
 割れた窓ガラスは、もうどうしようもない。もう、あとの祭りだった。
210名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 23:45:46 ID:iBYt+1+6
 まあ、最後の最後でやってしまったけど、とにかくあたしたちは一仕事終えたのだった。
 あたしたちは飛行機に乗りこみ、スオムスをあとにした。
 ただいまの空は墨を水で薄めたような、そんな風な色をしている。
 もうすぐ夜が明けようとしている。朝日が昇って、もうじきに朝になる。
 新しい朝、1944年の、12月25日の朝がやってくる。

「どうだった?」
 シャーリーはそう簡単な言葉で、この夜のことを訊ねてくる。
 あたしはこの夜のことをもう一度最初から、思いを巡らせてみる。
「疲れた」
 これが、正直な感想。
「ひどい目にあった」
 これも、正直な感想。
「迷惑かけて、ごめんね、みんな」
 これだって、正直な感想。
「すっごく楽しくて、おもしろかった!」
 そうしてこれが、あたしの今の一番正直な感想。
 最初は振り回されっぱなしだったけど、いつしかあたしは自分から楽しんでいた。
 こんなに長い一日になるなんて、朝起きたときには思いもしなかった。

「ねえ、シャーリー!」
 あたしはずっと秘密にしていた気持ちを、打ち明けることにした。
「あたしはシャーリーといっしょで、すっごく幸せだよ」
 あたしにはシャーリーがいるから寂しくないよ。
「毎日楽しいし、すっごくすっごく楽しい」
 けど、本当は、それだけじゃないの。
「でもね、やっぱり、みんなに会えないのは寂しい」
 けどそれは、シャーリーが嫌いってことじゃないよ。
「寂しくって、いつもみんなのこと考えちゃうの」
 あたしはシャーリーのことが、大好きだよ。
「ごめんね、シャーリー」
 こんなあたしに、いっしょにいてくれてありがとう。

「なんで謝るんだよ」
 あたしが最後まで言い終えると、シャーリーはそう言った。
「そんなの、当たり前だろ?」
「そうなの?」
「あたしだって、ルッキーニとおんなじだよ。みんなと会えないのは、やっぱり寂しい」
 そうなの、あたしは訊き返した。
 そりゃそうさ、シャーリーはそれを認めた。
「でもさ、ルッキーニ――」
 シャーリーは言葉を続ける。あたしはそれに、じっと耳を傾ける。
「会いたくなったら会いにいけばいいんだよ」
 あたしは心の底から、たしかにちゃんと、うん、とうなずいた。
 寂しいなんていうのは子供の感情だ。そう思っていた。
 でも、違うんだ。そうじゃない。
 別に寂しくたっていいんだ。それを消したり乗り越えたりしなくたっていい。
 寂しいって思えるのは、その人のことが好きだから。とっても大切に思ってるから。
 だからもう、寂しくないよなんて思わなくたっていいんだ。
 悩むようなことじゃない。それはすっごく、簡単なことだったんだ。
 寂しくなったら会いにいけばいい。ただそれだけのことなんだ。 
「会いたくなったら、いつでもあたしが連れてってあげる」
211名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 23:47:39 ID:iBYt+1+6
「ねぇ、シャーリー。次はどこに行くの?」
 あたしたちの乗せた飛行機は、どこまでも飛び続けている。
その行く先を、あたしは知らない。
「本当なら扶桑に行く予定だったんだけど、もうプレゼント渡しちゃったしなあ」
「じゃあ今、どこに向かって飛んでるの?」
「ロマーニャだけど……ルッキーニは、どこか行きたいところある?」
「行きたいとこか――」
 あたしはうーん、とうなって考えこんだ。
 浮かばないんじゃなくて、その逆。ありすぎて、なにを挙げていいのかわかんない。
 扶桑に行きたいし、オラーシャにも行きたいし、ブリタニアもまた行きたいな……
 あたしは、まだ行ったことない、いろんなとこ行きたい。
「もっといろんな、世界中!」
「そうか、じゃあさ――」
 シャーリーは間をおくとちょっと照れくさそうに、次の言葉を次いだ。
「あたしの故郷なんてどう?」
 あたしの故郷。その言葉をあたしは反芻する。
 あたしの故郷。シャーリーの故郷。リベリオン――
 なんだかそれは、とってもすてきな、魔法の呪文に思えた。
「うんっ! あたし、シャーリーの故郷行きたい!」

 空からきらきらとしたものが、揺れるように降ってくる。
 雨じゃない。でも雪と言うにはちっぽけな、手のひらに載るとすぐ消えてしまうもの。
 風花と言うんだ、とシャーリーは教えてくれた。
 地平線の向こうから、太陽がもう顔を出そうとしている。
 銀の薄片が昇る朝日の光を浴びて、きらきらきらきら、反射して見えた。
 あたしはなんだか、あの割ったガラスのことを思い浮かべた。

「ルッキーニ!」
 シャーリーがあたしの名前を呼ぶ。それだけで、嬉しくなってくる。
 なあに、シャーリー! 負けずにあたしも名前を呼び返す。
「もう一日遅れになっちゃったけど――」
 あたしはその言葉を、たしかに胸に刻み込む。

「誕生日おめでとう」



以上です。
というわけで、ギリだけど、お誕生日おめでとうルッキーニちゃん。
秘め声の「みんなの故郷にいきたい」というのを、無理矢理一本につめこみました。
距離的時間的その他諸々な無理は、もう話の都合としか言えません。
とんでもなく長くなってしまいました。すいません。
これもすべては、今日が12月24日なせいです(ほぼ1日で書いた)。
では長々と失礼しました。
212名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 00:21:02 ID:PtvCqQsh
流石というか投下数が半端無いな
みんなGJ
「そろそろ12時だね、エイラ」
「ああ、そうだな。」

ぎゅっ

「……メリークリスマス。」
「メリークリスマス、サーニャ。」
「ふふっ、エイラ、顔真っ赤だね。」
「言うなって!サーニャといるんだからしょうがないだろー。」

「…………。」
「……サーニャ?」
「私、やっぱり納得できない……」
「どうしたんだよ、サーニャ」

「ど う し て !
 こ ん な 日 ま で !
 哨 戒 に 出 な き ゃ い け な い の !?」
「そう怒ることないって。しかたないさ。」
「エイラは悔しくないの!?こんな、こんなことのために私は……っ!!
 私達がこうしている間にもきっとみんなは基地の中で……っ!!
 あったかい部屋で好きな人と二人っきりで××××、××××!!××!!」
「わーっ!!ヤメロ!!無線も入ってるんだぞ!?」
「だって───」
「サーニャにだって私がついてるじゃないか。
 それにこうして、一緒に月を眺めているってのも悪くないだろ?」
「エイラ……」
「またラジオを聞かせてくれよ、サーニャ。
 きっとクリスマス・ソングが聴けるぞ」
「うん……」

─・・──・、─♪♪─♪─……

「……"Jouluyo Juhlayo"だな。」
「私の国では"Тихая ночь"。」


「───Тихая ночь──♪ дивная ночь──♪
Глас с небес──♪ возвестил──...」
「……サーニャ、ちょっと待て。何か聞こえないか?」
「……?」
「今確かに、ラジオ以外の音が───」


《(ザザッ、ガガガ……)───美緒…!これってまさか…!結婚っ!?結婚なの!?そうなのね!?》
《おいミーナ、聞け、あのな……》
《美緒からのプロポーズ、喜んで受けるわ!
 まさに美緒は私の婿って感じ?私は美緒の嫁って感じ?私は勝ち組って感じ?》
《違う!!これはあくまでただのプレゼントであって──やめろ!!左手薬指はやめ──!!》


…………。


「……私、やっぱり我慢できないっ!!」
「待て!!待つんだサーニャ!!フリーガハマーのロックを外すなぁ!!」
「私とエイラの間を邪魔するなんて許せない……っ!!」
「私はいいからさ!ほら、こうして手を繋いげば──」
「私は!! エイラと!! あったかい部屋で!! ふたりっきりで!!

 いっぱいえっちなことしたかったの────────────ッッッッ!!!!!!!!」

キュヴァッ!!
ヒュルルルルルル…………


────────────────


「コホン、えー、確かに私もはしゃぎすぎたかもしれません。
 美緒のプロポーズがうれしくてつい……じゃなかった、とにかく仮にも神聖なる戦の場において
 不埒な行動をとった非は認めます。認めますが、しかしだからといって、
 味方の司令室にミサイルを叩き込んでいい理由にはなりません。わかりますか、サーニャ・リトヴャク中尉。」

「……『さあ、二人の夢の世界はこの白銀の夜から始まるのよ!!』……」
「おい、サーニャ。」
「私、ミーナ隊長のこと、見損ないました。つーん」
「つーんって……」
「わかりました。今回の件は上層部にも問題があったということで特別に不問とします」
「切り替わり早いな!」
「私だって上には知られたくないのよ!!これ以上予算を減らされてたまりますか!!」
「うわぁ……」
「とにかく、コトはガス爆発による事故として処理しますから、二人は部屋に戻って待機してください。以上です。」

「はあ……まったく、とんだクリスマスだよ。なあサーニャ?」
「ふふふ……エイラと部屋で二人っきり…ふふふふ……」
「サーニャ?」
「ねえ、エイラ……。」

ぐいっ

「クリスマスは、これから、だよね……?」
「あの、サーニャ──」
「今日は私がいいって言うまで付き合ってもらうから、覚悟してね……?」
「ちょ、待っ、サ、サーニャああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ─────…………」

バタンッ

215保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2008/12/25(木) 00:46:25 ID:tMOLet3/
というわけでフランチェスカ少尉のネタが捻り出せなかったので空気読まずにサーニャイラです。言い訳はありません。
長くて入んなかったけどタイトルの意味は「私を祝って」です。
どうせ甘々分は砂糖吐くほど補給されること間違いナシだと思うので兼ねてからやりたかったミーナさんシリーズとのコラボ。
本当に私はこの聖夜に一体何をやっているのであるか。じっちゃん、すまない。

みんなのSSで今日もケーキがうまい!!GJ状態!!
プレゼントの感想フォームは間に合いませんでした。それではメリークリスマス!!
216名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 00:57:37 ID:6qjcRIce
t26gFAxTです。
流れが速すぎて投下タイミングを掴むだけでもひと苦労だぜ!
つーわけで、学園ウィッチーズ投下します。
 エーリカは壁に寄りかかりながら、食堂の棚の前にしゃがみこんで中を探るウルスラの小さなお尻を眺める。ため息をついて、棚に押し込んだ体を外に出そうとして、ウルスラは、がっつんと頭の後ろをぶつける。
 エーリカは慌てて膝をついて、ウルスラの頭をおさえた。
 ウルスラは、失態により赤面した頬のあたりにずり落ちたメガネを上げながら、エーリカの手からさりげなく逃れる。
 行き場をなくしたエーリカの手が、手持ち無沙汰といわんばかりに、閉まっている棚の戸に押し付けられ、はたから見れば、ウルスラを詰問しているようなそんな姿勢となる。
 互い違いだった二人のまばたきが次第に一致し始めて、エーリカは、少しでも、ウルスラの視線を逃すまいとする。しかし、ウルスラは、エーリカの考えを察したのか、無意識なのか、ぺたんとその場に座り込んだ。
「他に、保管されてそうなところは?」
「……うちらって、あまりコーヒー飲まないから、なくなっちゃたのかも」
「カールスラント人が三人もいるのに」
「そういえばそうだね……」
 ぶっつりと会話が切れ、エーリカは立ち上がり、ウルスラに背を向けながら、
「コーヒー、ビューリングに?」
「……うん」
 いつもは頷くぐらいでしか対応しないウルスラが、割とはっきりとした返事をしたことと、この来訪がビューリングのためということを思い知らされて、エーリカは、誰もいない壁のほうに向かって、めいっぱい驚きの表情を見せた。
 ウルスラは、エーリカの背をしばらく見つめた後、同じように背を向けて、別の棚を開き、探って、袋を取り出した。
「あった」
 エーリカは、ぐにぐにっと己の両頬をつまむと、いつものように余裕を込めた嫌味のない笑顔に戻して、軽やかに振り返り、ウルスラに背後から近づいた。
「やったじゃん」
「今週中には新しいの買って返すから」と言いながら、エーリカに顔を振り向けた。
 いつもの、どんなにかすかな波紋すら許さないような、静かな水面のように張り詰めて、それでいて透き通っているウルスラの表情。
「いいよ、別に」
「だめ」
「いいって」
 エーリカは、面倒くささからか、それとも、悲しみからか、つい、眉尻を下げ、言葉を滑り落とした。
「相変わらず、世話焼きだよね」
「そんなこと、ない」
「そうだよ。ねえ、私には、もう世話焼いてくれないの?」
 半ば、哀訴に近い、姉の言葉に、ウルスラの中で、ごくわずかに揺れが生じるが、抑える様に、袋を両手で握り締め、ほんの少しだけ、眉間に力を入れた。
「……今は、彼女を見ていたいから」
「そっか……」
 まつ毛を伏せ、今までウルスラが見たことがないほど、大人びた表情で答えるエーリカ。
 ウルスラは、小さく口を開くが、言葉をのみこんで、か細い声で、「おやすみなさい」とだけ残し、食堂から抜け出していった。
 遠くで、玄関が閉じる音を聞き、エーリカは食堂の灯りを消し、自室へ向かい、風呂上りのミーナと遭遇する。
 しかしながら、今の自分がどんな表情をしているのか、すっかりわからなくなって、避けるように、うつむいた。
 ミーナは、エーリカの異常を察知して、慌てて、肩に手を置いた。
「フラウ」
「ごめん、ミーナ。今日は本当に疲れてるんだ。お説教とかは明日じっくり……」
 泣き出さまいとしているのか、潤んだエーリカの瞳は、今にも涙と一緒に流れ落ちてきそうに見えて、ミーナは、素直にエーリカに従い、そっと髪を、頬を撫でて、せめてもの慰めにと、微笑みを返した。
「わかったわ。明日、じっくりね」
 エイラは、床に散らばったタロットカードを拾い集めて、整え、先刻までサーニャが座していたベッドの端に手をついた。
 指先で、失せかけている温もりを確かめ、ドアのほうへ首を回す。
 思い出させたくなかったから、傷つけたくなかったから――だから、ああ言ったのに、至近距離で目の当たりにしたサーニャの反応は最も恐れていたもので。
 エイラが気づいた時には、サーニャは、背を向け、部屋を出ようとしていたところだった。
「サ…」
 エイラが口を開きかけたときには、ドアは、とても、穏やかに閉じられた。
 だが、その穏やかさがかえってエイラを慄かせたのは言うまでもなく、彼女は、頭に浮かべていた「サーニャを追いかけろ」という行動を実行に移すことも出来ず、今に至っている。
 エイラは、ひょいっと身を翻してベッドに仰向けに飛び込むと、広がる不安を吹き飛ばすように目をつぶった。
「明日だ。明日…」

 シャーリーは、テラスのベンチにふんぞり返るように腰掛け、雲の隙間から瞬く星を数え、何かに気づいたのか、さらに首を後ろに曲げて、逆さまの視界の中にミーナを収めると、
勢いをつけて体を起こし、足を組んで、隣に掛けようとしているミーナの一挙一動をじっくり眺めた。
 ゲルトルートへの想いにひと段落をつけたせいか、昼間に、病院で感じたような居心地の悪さはまったく感じず、ただ、目の前のミーナの横顔を、
いつもの余裕がにじむ表情で見やりながら、そっと、ささやいた。
「浮かない顔だね」
「そう、かしら…」と、ミーナは、慌てて笑顔を繕ってみるが、緩んだ頬はすぐに、沈殿し、表情が保てない。
 シャーリーは、少しでも、負担を軽く出来ればと判断し、組んでいた足を解いて、揃えた。
「今日は……、悪かったね。色々と心配かけて。ハルトマンも連れ出して……。本当に、ごめん」
 頭を下げるシャーリーの肩に、ミーナが手を置き、
「いいのよ。誘いにのったフラウも同罪なんだから」 
 シャーリーは顔を上げる。
「それに……、処分は、明日坂本特別教官から言い渡すから」
「坂本……特別教官? 先輩、教官になったんだ…」
「そう。今日付けでね。とは言っても、今までと変わらない気もするけど。厳しさは増すかもしれないわ」とミーナはウィンクをする。
 徐々にほぐれてきたと思われるミーナに、シャーリーも、つられて微笑んだ。
「ははは、きついな、そりゃ…」
 と、言いながら、シャーリーは、ミーナから顔を背け、くしゃみをする。
「風邪ね」
 ミーナは、ポケットに忍ばせたティッシュを取り出し、シャーリーの顔に近づけるが、シャーリーは鼻をつまみながら、身をずらした。
「おっと。うつしちゃ悪いよ。明日も病院だろ」
「大丈夫よ。はい、チーンってして」
 ミーナは、シャーリーの鼻を拭おうとするが、シャーリーはさすがに気恥ずかしくなって、彼女の手からティッシュをとると、背を向けて、鼻をかんだ。
 その様子を、母親のように見守るミーナは、シャーリーにとっては不意打ちに近い形で口を開いた。
「今日、ルッキーニさんと喧嘩を?」
「……ああ。原因は…」
「ルッキーニさんが整備の邪魔をしてしまったと言っていたわ」
 シャーリーは、目を点にし、唇を噛んだ。
 あいつにまで、嘘をつかせちまった。
 やっぱ、避けては通れない、か――
 シャーリーは、覚悟をしたような表情で、ティッシュを握り締めた。
「あの、さ……」
「なあに?」
「それ……、嘘」
「え?」
「喧嘩の原因は、別のこと。図星、つかれちゃったんだ。ルッキーニに」
 話が見えていないのか、ミーナは、困った顔で首をかしげる。
 シャーリーは、心の中で、ごめんと言って、言葉を接いだ。
「私、バルクホルンが好きだったんだ」
 シャーリーの言葉に、ミーナの肩がはっきりとびくついたが、シャーリーが、そっと、手を乗せた。
「けど、もう終わったんだ。あいつには、もう……。あいつの心はとうの昔に決まってるんだ。私が入る余地なんて、ないぐらいに…」
 するすると、ミーナの肩からシャーリーの手が離れ、シャーリーはうつむく。
 ミーナは、突然のシャーリーの告白にすっかり頭が真っ白になって、どうしていいかわからなくなるが、シャーリーは、ようやくすっきりしたのか、立ち上がり、夜空を見上げ、朗らかな表情をミーナに向け直した。
「というわけで、あいつを好きになる奴もいるんだから、うかうかしてるとかっさらわれちゃうかもよ」
 その言葉が、ミーナの胸に刺さる。シャーリーの言葉に傷ついたわけではなく、その、ごく当たり前の事実に。
「だから、早いうちあの堅物に言わせちゃえよ。それか、あんたが言うか」
 それができたら苦労はしない、とミーナは考えるにとどめ、困っているような、照れているような、どちらともとれる表情でシャーリーを見上げた。

 ウルスラは、キッチンにて、サーバーにぽたぽたと落ちてはたまるコーヒーの抽出液をじっと見つめる。
 風呂上りのパジャマ姿のエルマが、頭を拭きながら、ウルスラに近づいた。
「あ、おかえりなさい」
 ウルスラは、エルマに顔だけ向けると、また、サーバーに視線を戻した。
 エルマはすっかり慣れたウルスラのそっけなさに傷つくでもなく、彼女同様、サーバーを見つめた。
「もしかして、用事ってコーヒーの事だったんですか? けど、よくお店開いてましたね」
「生徒たちの寮から」
「なるほど、お姉さんからもらったんですね」と、エルマは自分の頭の中に浮かんだ姉妹愛に感動でもしているのか、うんうんとうなづく。ウルスラは、エルマの言葉に、唇を引き締める。
 エルマは、ウルスラのそのささやかな変化に気づくはずもなく、コーヒー豆の入った袋に目を向けた。
「けど、これって期限とか大丈夫ですかね」
 ウルスラは、袋に鼻を近づけて、すんとひと嗅ぎ。
「変なにおいはしない。それに、私のじゃ……ない」
「え?」

 すっかり寝入ってしまったことに気がついて、ビューリングは、自分の体温ですっかり暖かくなったベッドの中でもぞりと寝返りを打ち、空腹を紛らわせる。
 反射的にベッドのそばのチェストに手を伸ばすが、昨日まではいつもそこに切らさずに置いていたタバコの箱はなく、舌打ちする。
 きいとドアが静かに開いて、身構えるが、香るにおいに、身を起こし、チェストに置いたスタンドのスイッチを入れる。
 暖色系の光がウルスラのメガネに反射する。
 ビューリングは、彼女が両手で包んだマグカップに、思わず目を輝かせた。
 
 ビューリングとウルスラは、ベッドの真ん中に座り、ウルスラは、小さな背中をビューリングの背中に押し付け、体重をかける。
 ビューリングは、マグカップを傾け、一口飲む。
「少し、酸味がききすぎているな」
「棚の奥にあったけど、匂いはひどくないから大丈夫。たぶん」
「他人事だと思って……。それにしても、棚の奥は私もあらかた調べつくしたが、なかったぞ。一体どこに」
「ここじゃなくて、生徒たちの寮からもらってきた」
「なにもこんな時間に」と、ビューリングは、ウルスラが後ろに倒れないように、慎重に、体をひねって顔を向けた。
 ウルスラは、ビューリングの背から離れ、彼女の肩に頭を乗せた。
「あなたのため」
 肩に押し付けられるウルスラの髪に、ビューリングは恐る恐る指をしずめ、なで、何かを発見したような顔をした。
「たんこぶ、できていないか?」
「……少し、ぶつけただけ」
 こぶの大きさを確かめるように触れると、ウルスラは、ビューリングの腕にしがみついた。
 ビューリングは、少しずつ、鼓動の間隔が短くなっている自分に気づいて、ウルスラを跳ね除けないよう、慎重に、体を離し、めったに使わない種類の言葉を選び出す。
「コーヒーだが、……感謝する。わざわざ夜に歩かせて悪かった。今日は遅いからもう部屋に戻るといい」
 ウルスラは、ビューリングの変化に気づいたのか、それとも、己の気持ちに素直に従ったのか、ビューリングの腕を握る手の指に力を込めた。
「ここで眠る」
「それは…」と、ビューリングは言いかけるが、ウルスラのまっすぐな瞳に、あっさりと、折れる。「わかった…」
シャーリーは、寮の中を歩き回り、ルッキーニの部屋のドアノブに手をかけ、入るぞ、という言葉と同時に開ける。
 しかし、彼女の予想通り、そこにルッキーニはいなかった。
 寮の中のルッキーニの隠れ家はすべて網羅しているはずなのに。
 シャーリーは、物寂しそうな顔で、めったに主が使うことのないルッキーニの部屋を眺めると、静かにドアを閉めて、自室へと戻った。 真っ先に調べたが、ルッキーニの姿は見当たらずじまいだった。
 シャーリーは勢いよく、ベッドに座ってぼーっとし、何かに気づいたのか、床に頬をくっつけて、ベッドの下を覗き込む。
 すーすーという心地よさげな寝息。
 はだけた上着から覗く、水色のボーダーのズボンに包まれたお尻。
 シャーリーは、ひとまず安心をして、口元を緩ませ、ルッキーニのお尻をつっつく。
「おい、ルッキーニ、起きろ」
 まったく起きないルッキーニにシャーリーは手を緩めず、さらにしつこく攻めた。
「もー、くすぐったぁい。なにさ…」
 ようやく、起きたルッキーニが、すわった目でにらみ返すが、相手がシャーリーと分かった途端、驚いて、身を起こし、ベッドに頭をぶつける。
 悶えるルッキーニに、思わず笑い出しそうになりながら、シャーリーは手を伸ばした。
「とりあえず、出てきてくれよ。な?」
 ルッキーニは、躊躇したが、見つめた先のシャーリーの表情は、曇りひとつないさっぱりしたもので、気がつけば、考えるよりも先に、彼女の手を握っていた。
 シャーリーは、ルッキーニを引っ張り出すと、自分はベッドに座り、目の前に立った彼女の服についた埃を払い、見上げた。片方の手は握り合ったままだ。
「まだ痛むか?」
「なにが?」
「ここ」と、シャーリーはルッキーニのお尻をぺんと叩く。
「……ちょっとだけ」
「そっか。じゃあ、立ったままほうがいいな」
 シャーリーは、ルッキーニを抱き寄せ、彼女の未発達の胸に顔を押し付ける。
「嘘ついたり、怒鳴ったり、突き飛ばしたり……、ひどいことばかりして、悪かった。ごめん。申し訳ない。許して欲しい」
 シャーリーは、胸から顔を離し、ルッキーニの表情を確かめる。
 ルッキーニは頬を膨らませてそっぽを向いた。
「子供扱いしたことも謝って」
「いや、そこは…」
「子供じゃないもん。色んなこと知ってるもん」
 と、ルッキーニは、シャーリーの耳元で何かをささやく。シャーリーは、頬を徐々に染めて、ルッキーニの両腕を掴んで、驚愕の表情を向けた。
「お前、ど、どこでそんないやらっしい事を……」
「教えてあげない」
「……まあ、だいたい察しはつくけどな」と、シャーリーはため息をつきながら、チュインニの顔を思い浮かべた。「とにかく、知識がどうとかそういう問題じゃないんだよ」
「だって」
 急に、真面目な表情になるルッキーニに、シャーリーはつい見とれて、息を呑む。 
「子供のままなら、シャーリーは……相手してくれないじゃん」
「いや、してるだろ。そりゃ、整備中のときはそっちに没頭することもあるけど」
 ルッキー二の手刀がシャーリーのオレンジ色の髪の上にとんと落ちる。
「そーじゃないの、そっちじゃなくて…」
 どっちだよ、とシャーリーは言い出したいのを抑え、しばし、うつむき、考え、ひとまずの答えを導き出し、顎に手を置いたまま、ルッキーニを仰いで、ぐいっと彼女を引っ張ると、ベッドに倒した。
 シャーリーの指がルッキーの前髪、耳、頬と伝っていく。
 ルッキーニは体を震わせて、目をつぶった。
 しかし、彼女が頭の中で想像していた事柄は起きず、ルッキーニは静かに目を開ける。
 部屋の明かりを背にしたシャーリーの、ゆったりとした目つきと微笑み。
「子供とか、そういうの関係ないよ。私が好きと思ったら好き。そんだけさ」
 ルッキーニは、その言葉に、何かしらの悔しさを感じたのか、ぎっと歯を食いしばって、がむしゃらにシャーリーにしがみついた。
「……絶対、絶対、好きにさせるもん」
「のぞむところさ」
 シャーリーは、ルッキーニを抱きとめ、口の端でふっと笑った。

学園ウィッチーズシリーズ 第20話 終
221t26gFAxT:2008/12/25(木) 01:07:16 ID:6qjcRIce
と、20話も投下してて、今思ったんですが…
学園ウィッチーズシリーズ
の「シリーズ」って部分、もし消していただけるなら、お手すきのときにでも消していただければ幸いです……。
今更な申し出で本当にすみません!
>保管庫管理人様
222名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 01:42:53 ID:UFUtgjPk
>>215
帰ってからずっと描こうと思ってた絵を仕上げてみてみたら管理人さんと同じことを考えていて吹いたw
崩壊サーニャはエイラすきすきサーニャが好きな自分にはドントコイで嬉しすぎるGJ!

>>221もGJ!
20話の大台おめでとう、そしてお疲れ様!
たくさんの登場人物をこんなにまで見事に動かせるのがすごい!
223名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 02:02:05 ID:PtvCqQsh
ひとつひとつに感想書く時間が無いほどの投下数凄いなぁ

さてルッキーニの生誕SSとかクリスマスSSはネタは間に合わなかったので
しょうがないのでエイラーニャ投下
若干エッチです
224名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 02:02:36 ID:PtvCqQsh
501解散後サーニャはスオムスに転属となった
その知らせを聞いた時そりゃ私は歓喜乱舞した
いくら心が通じていても物理的な距離は縮められない
解散の日が近づくにつれ二人ともだんだん元気が無くなっていった
そんな時のしらせだ嬉しくもなる
これでずっと一緒に居られる
そう考えると嬉しくてたまらない


 ◇ 


スオムス転属後もサーニャは夜間哨戒の任務に就くことが多い
501部隊より人数も多く前ほどでは無いが3日ペースでシフトが組まれてる
今日はサーニャはそのシフト日だ
私はお昼に出撃があったので残念ながら一緒に行けなかった。
・・・・もう早朝だしそろそろ帰ってくるかなぁ
と考えてくると扉が開いた

「ただいま」
「お帰り。お疲れさん」

サーニャだ
501時代は‘本人曰く’寝ぼけてらしいが今は普通に寝に私の部屋にやってくる
いや寝る時だけじゃなくて普段の生活でもたいていこの部屋に居る。
今のサーニャの部屋はほぼ荷物置きのようになってしまった。
私とサーニャの私物が置いてある部屋
だから‘おじゃまします’じゃなくて‘ただいま’
そう考えると私の部屋じゃなくて二人の部屋だなぁと
思考に耽っていると
サーニャがしなだれるように抱きついてきた

「うわっ」
「・・・・疲れた」
「あぁお疲れさん」

ビックリした
普段というか人前では消極的な癖に二人っきりになると結構大胆な行動を取ってくる
とりあえず背中に手を置いて抱きしめる
・・・冷たい
225名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 02:03:13 ID:PtvCqQsh

「サーニャ冷えてる」
「・・・うん」
「ごめんなぁ今日一緒に行けなくて」
「しかたないよ・・・そういえば今日一緒に夜間哨戒についた人が聞いてきたよ」
「ん?なんて?」
「エイラさんと仲がいいんですねって」
「ふ〜ん」
「それからどんな関係なんですか?って聞かれたよ」
「えっ!」
「ふふっエイラ人気だね」
「そっそんなんじゃネーヨ。でサーニャはなんて言ったんだよ?」
「・・・秘密」
「えーなんだよそれ」
「エイラはなんて応え欲しかった?」

そう言って私の胸にうずめていた顔あげ見上げてくる
見上げるサーニャの顔
赤く染まった顔で・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?
ふと思い立って
ヒタリとサーニャの額に手を当てる
・・・熱い

「・・・・・・サーニャ風邪引いてないか?」
「んー」

私の手に額をこすりつけてくる
なんか猫っぽい
目も閉じたままだし

「んーじゃなくてさぁ」
「・・・・そういえばなんか怠いかも」
「おいおい」

困ったなぁ
確かに環境の変化や初対面の人
それからいきなりの任務といろいろ忙しかったし
疲れもストレスも溜まったのかもしれない

「とにかく水とか果物とか持ってくるから寝とくんだぞ」
「んー」

・・・・・ホントに分かってるのか心配だけど
おとなしくベットに入ったのでまぁ大丈夫だろう


 ◇ 
226名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 02:03:47 ID:PtvCqQsh


さて厨房に来たわけだけど
・・・普通に朝食は食べれないよなぁ
こんな堅いパンとか美味しくないし
といわけで果物だ

「果物果物〜」

ごそごそと漁るがなかなか無い

「ん〜と・・・おっ!なんかあった」

発見したのはリンゴ
まぁ妥当かなぁ
さて食料も確保したことだし帰るかと思った時に

「あれ?エイラさん朝食取らないんですか?」

隊のメンバーに話しかけられた

「あぁサーニャがさぁ風邪引いちゃってさ、とりあえず後で食べるよ」
「・・・そうですか」
「じゃっ」
「まってください!」
「ん?」
「あっあの・・・・・サーニャさんと仲良いんですね」
「あーうんまぁ」

あれ?どっかで聞いた事が有った気が・・・

「ふっ二人はどんな関係なんですか!」

なぜか食堂がシーンとした
何時のまにか食事を取っていた隊員の目線が集まってる
目線が痛い

「えっーと」
「どっどうなんですか?」
「私とサーニャは・・・」

なぜか空気が張り詰めている
なんでいきなりこんな展開になってるんだ?
別に良いじゃないか私とサーニャの関係なんて
確かに基地に戻ってからも隙あらば二人で居たけど・・・

あっ今頃思い出した
さっきサーニャがされたと言う質問だこれは
うーんなんて答えよう
サーニャはなんて言ったんだろう・・・・

「えーと・・・秘密?」

ついサーニャに言われた事を言ってしまった。
227名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 02:04:19 ID:PtvCqQsh

「・・・なんで疑問系なんですか?」
「とっとにかく私サーニャにリンゴ届けなきゃいけないんだ。じゃ!」

そう言って走って逃げた
後ろからなにか言われたが無視
とてもじゃないが恥ずかしくてサーニャとの関係なんて言えない


 ◇ 


「ふうー」

到着
なんか疲れた

「帰ったよ」
「・・・・うん」

やっぱり怠そうだ
こういうのは自覚すると怠くなるからなぁ

「リンゴ持ってきたけど食べれるか?」
「・・・うん」
「よっし」

持ってきた果物ナイフで皮を剥いていく
そう言えば風邪なんて私はずいぶん引いてないなぁ
そんなことを考えていると一個向けた
それを適当に切り分ける

「ほら向けたぞ」
「うん」
「食べないのか?」
「食べさせてくれないの?」

さも当然のように聞いてくる
つまり食べさせろと

「あーん」

そう言って寝たまま口を開けるサーニャ
うっ恥ずかしいけどまぁ他に誰か見てるわけじゃないからいいか
228名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 02:04:49 ID:PtvCqQsh

「あっあーん」
「ん」

そう言って口に運んでやる



リンゴに歯を立てたのは良いが噛めてない
・・・このリンゴ堅かったかなぁ
とりあえず食べるだけで体力をかなり体力を消費しそうだ
うーん

「しょうがないからすり下ろすかなぁ」

食堂に道具あったけ?
と思案していたら

「ねぇ?エイラが食べさせてくれないの?」
「ん?だから今からリンゴをすり下ろしてだな」
「だからエイラが食べさせてくれないの?」
「ん?」
「口で」
「口で?」
「そう口移しで」
「・・・・」

ん?

「えっぇぇぇっぇぇぇぇっぇぇぇっぇぇ!」

叫んでしまった
いやこれは叫ばずにはいられない
なにを言ってるんだ?
たったしかに深いキスする時も有るけど
そんな・・・口写しだなんて・・・・

「してくれないの?」
「・・・・するしない以前の問題だと思うぞ」
「でも固くて食べられないよ?」
「だから卸金で・・・」
「・・・・・また一人にするの?」

卑怯だ
そんな風邪で弱った時にそんな事言うなんて
いつからこんな大胆に・・・・

「・・汚いぞ?」
「エイラは汚くなんてないよ?」
「うー今日だけダカンナー」

ホントに今日だけにして欲しかった

229名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 02:05:27 ID:PtvCqQsh
 ◇ 

とりあえず一つ切ったリンゴ口に含む
確かにちょっと固いなぁ
とりあえずある程度かみ砕いた
・・・ホントにしていいのかなぁ

「ん」

そう言ってサーニャは目をつむる
まるでキスするときみたいじゃないか
まぁいまからそれより凄いことするんだけど・・・・
はぁーいつまでもこのままじゃ駄目だな
よし
覚悟を決め顔を近づけた

「ん」

唇を合わせ砕いたリンゴを渡す
慣れてないせいか隙間からこぼれて頬を汚してしまった。
舌で私の口内からリンゴを取って飲み込んでいく
リンゴ無くなったら今度は私の舌に絡めてくる
まるで催促するように

「ぷっは」

私が限界だった
息する余裕なんてなかったからだ。
かなり深くキスしたせいか二人の間にまだ糸が張ってる
おたがい果汁やら唾液やらでべたべただった
それがなんだが酷く淫靡に見える

「・・・ねぇエイラおかわりは?」
「えっ!」

まだやるのかよ!
私は一回で限界だった
いろんな意味で限界だった

「ねぇエイラ?」

あぁそんな声で言うなよなー
なんだかんでサーニャの言うことは断れない自分
弱いなぁ・・・

また含み重ねる
流し込むようにしてまた舌を絡める
あぁ頭がぼんやりしてきた
ニチャニチャと粘膜がこすれる音が部屋に響く
口内で舌と舌が絡まり合い、混じりあったものが口の端からトロトロと垂れ落ちた
230名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 02:06:01 ID:PtvCqQsh

「んっ」

サーニャが吐く吐息が頬をくすぐる
お互い上気した頬で
息を荒くしていた
柔らかな唇、熱い舌、甘い吐息

もう食べさしてあげると言う感じでは無かった。

「ねぇ・・・」

サーニャが催促する
わかってる
私は切ってあるリンゴ一つ口に含み
またサーニャと重なった

結局リンゴが全部なくなるまで、サーニャにリンゴ食べさせた


 ◇ 


翌日

「ぅ〜〜〜〜〜っのどが痛い」

風邪引いた。
あたりまえだ、あれだけ風邪引きの人間といろいろしたんだから
う〜む結局最後は自分もノリノリで行為に至ってしまった。
誘われると弱いなぁ

「具合どはどうエイラ?」
「・・・怠い」
「ふふっ私と同じだね」

そりゃそうだサーニャの風邪を貰ったんだから
サーニャは今日になると元気になっていた
私に移したからだそうに違いない

「なにか食べる?」
「んーあんまり食欲無い」
「でもなにか食べないと・・・・」
「でもなぁ」
「あっ」

なにかを見つけて手に取ったサーニャ
リンゴ?

「・・・食べる?」

昨日の残りまだあったのか
全部食べたと思ったのに・・・
231名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 02:06:43 ID:PtvCqQsh

「うん」
「まってて今剥くから」
「んー」

うー風邪引いたのなんてホント何時以来だろうか?
こんなに怠いとは・・・

「早く直らないかなぁ」
「早く直したいの?」
「そりゃ怠いし・・・・」

確かに訓練に出ずにずっとサーニャと居られるのは嬉しいがこの状態はきつい

「・・・・じゃ明日までに直す?」
「そうだなー明日までには直したいナァ」

でもさすがに無理かもナー

「大丈夫。私も一日で直ったんだから」
「そりゃまぁあんだけ汗かけばなぁ・・・・」
「だから昨日やった事をもう一回すれば直るよ」
「へっ?」
「大丈夫だよ、私が食べさせてあげるから」
「えっ!まさか・・・・口で?」
「うん」

笑顔で答えるサーニャに私はもちろん抵抗できるわけが無かった。


おわり
232名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 02:07:14 ID:PtvCqQsh
お互いに部隊で人気があるけどそれに気がついてないエイラーニャを書いてたら
今日もののけ姫をなぜか見て口写しシーンを見て良いなぁと思い路線変更したしまった。
うーむ
タイトルは悪魔の実
最近途中で話し変えすぎなきがする◆eIqG1vxHTMでした
233名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 02:18:19 ID:8cARwEI2
ふぅ・・・こんな夜に素晴らしい物を読ませてもらったぜ
GJ
234名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 02:24:17 ID:VgydLGNM
GJ!!
いい夢が見れそうだ・・
235名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 02:27:18 ID:0zz7vANN
ドキドキして眠れなくなりそうダ。
…GJ!
236名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 02:34:02 ID:3tlYnmzF
このバカップルはもう…最高だ

つーか1日見てなかったら凄まじい投下の数がきてやがるw
クリスマス効果凄い…職人さんマジ凄い
237名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 04:11:01 ID:AqtAV9U6
ここをみてクリスマスだと言う事をはじめて知った。
初投稿で、クリスマス小説じゃないけど
もっさん×ミーナ中佐を投下。
238もっさん×ミーナ中佐1:2008/12/25(木) 04:12:39 ID:AqtAV9U6
 珍しく買い物に行ったら、薔薇に侵食された花屋を発見した。

「どうかしたのか?」

 左目の眼帯が目立つ軍服の女性――坂本美緒が驚き混じりに尋ねると、
花屋は半分泣きそうな目で此方を見つめてきた。
顔面の所々にある傷がまた哀れである。

「うちのこの、大馬鹿息子が……全く」
「はあ……」
「ああ、経緯を話すだけでも腹が立つ……ってうああ」

 わっしゃわっしゃと薔薇に埋もれていきそうになる花屋をなんとか引っ張り出すと、もう限界と言わんばかりに、薔薇がどさどさ道に落ちていく。数秒してなだれが収まった頃には、花屋の回りは薔薇まみれになっていた。

「何を思ってこんなに薔薇を持って来たんだか。これじゃ花屋じゃなくて薔薇屋だ」
「くっ」

 思わず吹きそうになる自分を一生懸命抑える美緒。
 しかし花屋は特に気にしていないのか、美緒を見て小さく笑うだけだった。

「そうだ、あんたウィッチだろ。いつも頑張っているお礼に、どうだい? 
ああ、押し付けじゃないんだ。ほんと。いらないならいらないでいいんだ。
ほんと、押し付けじゃない。ほんと」

 薔薇を指差しそういう花屋(薔薇屋)からは、切羽詰るものを感じる。
 しかし美緒自身、花が綺麗だと思ってもそれをどうすべきか、というものが分からないでいた。貰ってもいいが、せっかく貰った花を、部屋のどこかで無残に朽ち果てさせるのは惜しい。かといって、自分が薔薇を――というのもなんだかあれがそれな気がした。
 じーっと見詰めてくる花屋(薔薇屋)の視線が、ちょっと苦しい。
 だがしかし、足元にちらかる薔薇を見ていたとき、ふと思い浮かんだ事があった。

「ふむ、それじゃあ貰っていこうかな――渡そうと思う人が居るんだ」
「そうかそうか! じゃあでーんとすっごいのを作るよ! 
あ、押し付けじゃないんだよ、ほんと」

 何度も念を押す花屋(薔薇屋)からは、何か鬼気迫る押し付けを感じる美緒だった。
239もっさん×ミーナ中佐1:2008/12/25(木) 04:15:06 ID:AqtAV9U6
 朝の訓練から姿を見せない美緒に疑問を持っていたのだが、
美緒の訓練を受けていた宮藤芳香から、買い物に行ったと聞かされ、少し驚いた。
 
――いや、まあ。美緒も買い物くらいするか……なんで驚いたのかしら。

 自分に疑問を持ちたくなる。
 ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケは、自嘲気味に少しだけ笑うと出された紅茶に口をつける。
 しかしジャガイモに紅茶というコンボは、悪くはないかもしれないが、何か奇妙な違和感を感じたくなるというものだ。
 食事の異文化交流も中々だが、些細な異文化交流も、結構面白い。
 他の国では全く気にもしない事――例えばお茶を飲む時、音をたてるかたてないか――
などが、他の国ではとてもマナー違反になったりする。
統一された常識なんて、ないんだなとつくづく思い知らされる毎日だ。
 
――まあ、いちいち驚いたりしていたら、身が持たないんだけどね。

 どこかでジャガイモ争奪戦が起きているのか、がやがやとにぎやかである。
 そんな声をBGMに紅茶を飲んでいると、廊下から規則正しい足音が聞こえてくる。
魔法の力を発動していなくても、耳がずば抜けてよくなくても、みなその足音が分かったらしい。
 ガチャリ、とドアを開けて入ってきたのは、みなの予想通り、朝食の初めにいなかった坂本美緒である。
 だがみなが――ミーナ自身も――全く予想外だったのが、彼女が握り締めている一つの物体だった。
 美緒はみなの視線など全く気にしていないらしい。
 ミーナの事を発見すると「ああ、丁度良かった」と笑顔で、
あのみなが分かる規則正しい足音を立てながら、そっと近づいてきた。

「ミーナにあげようと思ってたんだ」
「え? え?」
「ほら」

 ずいっと、みなの疑問の塊が、目の前に差し出される。

 赤い――それはそれは見事な、赤い薔薇の花束。しかも巨大。

 ミーナは驚きのあまり、完全に金魚になっていた。パクパクと。見事に。

 それと同時に、どこかで「ガン!」と凄い音がした。

240もっさん×ミーナ中佐3:2008/12/25(木) 04:18:16 ID:AqtAV9U6
「しょ、少佐。その、それは……」

 もはや完全に空気をパクパク吐き出すだけと化したミーナの変わりに口を
開いたのは、流石補佐役というべきか、ゲルトルート・バルクホルンであった。彼女の隣に座っていた、この部隊のエースの一人であるエーリカ・ハルトマンも、驚いて美緒を見ている。普段飄飄としている彼女らしくない。

「……花だが?」
「いや、その……あ、ここでは言いにくいのなら、何人か外に出させますが……?」

 一体彼女が何に気を使っているのか、分からない。
 ただ自分がもっているこの花束はどうにもおかしいらしく、
みながみな、どういうわけかそれを見詰めている。
唯一美緒と同じような顔をしているのは、同郷の宮藤ぐらいだった。

「いや、別に出さなくていい。遅れてきたのは私だからな」

 確かに食事の席で、薔薇とはいえこういうものを出すべきではなかったかもしれない。
そこまで潔癖がいるとは思えないが、多少嫌に感じる事もあるだろう。
少し、タイミングが悪かっただろうか。
 目の前で固まっているミーナを見下ろすと、どこからか「ヒュー」という音が聞こえる。
 何かと思えば、部隊最速のウィッチ、シャーロット・E・イェーガーの口笛であった。

「しかし少佐、凄いですね」
「?」
「見ているこっちまで惹きつける情熱さというか。
花束おっきいというか。とにかく、それぐらいの感情がこもっているってことなんですか?」
「……花だが?」

 確かに赤い薔薇は存在感に溢れている。
 ジャガイモと紅茶しか乗ってないテーブルから視線をずらせば、惹きつける何かがあるかもしれない。
 でも、別に美緒はジャガイモと張り合いたかったわけではない。
ましてやそんな情熱も持ち合わせていない。前世でジャガイモと一悶着あったのかもしれないが、それはそれだ。今これとは関係ないと思われる。
 自分でもそこまで鋭い方ではないと思う美緒だが、ここでようやく、
みなと自分との温度差のようなものを感じてきた。
 特にカールスラント出身者との温度差が激しすぎるように思う。目の前のミーナとか。ミーナとか。
 他の隊員も温度差に気づいたのか、また微妙な空気が流れ始める。
 だが微妙な空気の温度が丁度良かったのか、やっと氷解したミーナが、咳払いをしたあと、美緒を見上げた。

「少佐……どうしてそれを私に?」
「どうしてって……中佐の顔が真っ先に浮かんだからでは駄目なのか?」

 言うと、ミーナの顔がぼっと赤くなったのが見える。さらに小さい声で「落ち着け落ち着け」と呪文まで聞こえる。
 一体何がどうしたというのだ。
 オロオロしたくなる気持ちをぐっと堪えて、ミーナの言葉を待った。
241もっさん×ミーナ中佐4:2008/12/25(木) 04:20:44 ID:AqtAV9U6
「あの、どういう経緯でそれを?」

 やっと行動可能になったミーナの一言に、周りの隊員が息を呑むのが分かる。空気を読まずに聞こえてきた紅茶を飲む音は、宮藤のようだった。

「いや、買い物に出かけたら、薔薇に侵食された花屋を見つけてな。
話の流れで、これを貰う事になったんだ」
「つまり……意図して購入したとかではなくって?」
「別に押し付けるつもりじゃないんだ。ただ私が貰っても、部屋で朽ちさせてしまいそうだったから。
それに、私に薔薇というのも、なんだか違う気がするだろ? 
そんな事を考えながら薔薇を見ていたら、ミーナの顔をも思い出したから、じゃあ、あげよう、と」

 今にして思えば、彼女の髪の毛の色と薔薇の色を連想したのではないだろうか。
それだけじゃない、彼女の立ち振る舞いや容姿が、どうにも赤い薔薇を連想させるのだ。
 彼女になら、似合う。
 そういう確信を持って薔薇を貰い受けたのはいいが、これ見よがしに巨大な花束を作ってしまった店主に、少々困ったりもした。
 その事をミーナに伝えると、彼女は――というか宮藤除く隊員が――脱力したように椅子にもたれかかっていた。

「な、なんだ……?」

 ついにオロオロしてしまった美緒に、こめかみを押さえたミーナが、事の次第を説明するのだった。
242もっさん×ミーナ中佐5:2008/12/25(木) 04:23:37 ID:AqtAV9U6
**

 カールスラントで赤い薔薇を渡すという事は、相当深い意味の愛情の表現に繋がる。
そうでなくても赤い薔薇というのは、愛情だのなんだのという意味が付きまとう。
告白などではよく登場するお約束の花なのである。
 しかし宮藤を見る限り、まだ微妙に分かっていないようなので、もしかしたら扶桑では違うのだろうか。
それともこの二人がずば抜けて鈍感なだけなのか。それとも――。
 変な思考の迷路に入る前に、びたっと停止させる。 
 先ほどから変に熱くて仕方がない顔面に、水をかけたくて仕方がなかった。

「なるほど、興味深いな」

 ふむ、と頷く彼女からは、真相を知っても慌てふためく様子はない。
 
――なんだ、本当に軽い意味だったのね。

 深読みして勘違いして、それでも嬉しくて期待してドキドキした自分が、馬鹿みたいである。
 軽く落ち込みたくなったミーナに、相変らず笑顔を浮かべる美緒の声が届いた。

「私には詳しい事情はきっと、すぐには飲み込めん。だが――」

 ずいっと、少し下がっていた花束を、もう一度持ち上げるようにして差し出してくる。

「愛の告白とやらじゃないと、これは受け取れないものなのか?」
「え?」
「親愛の情は持ち合わせているつもりだが」

 何のこともないという美緒に、また顔面が火を噴きそうになる。
 今、何て言ったのか。聴覚が機能していない。聴覚のよさは、一つの売りだというのに。

「親愛の情を籠めて渡すのなら問題ないんじゃないのか?」

 どうも説明の仕方が悪かったのか、美緒は何の疑問も持たずそう言ってくる。
 
――ああ、だから親愛の情って言っても信頼とかそういう類ではなく!

 説明したいのだが、また頭が空回って上手く口が動かない。
緊急時こそ落ち着いて行動しなければいけないのに、なんという体たらく。
情けなくて空を飛びたくなる。
 ついに上手な文章が思い浮かばず俯いたミーナの腕を、誰かが突っついた。
 誰かと思えば、バルクホルンであった。
243もっさん×ミーナ中佐6:2008/12/25(木) 04:24:49 ID:AqtAV9U6
「貰っておけ。拒否する理由がないんだろ?」

 そう言って薄く微笑む彼女に色々言いたくなる。
 でも――本当にその通りで言葉が出てこない。

「でーも、そんなに大きいんじゃ、並みの花瓶じゃ無理だよー。
あ、そうだ。午後二人で買いに行ったらどうかな」
「あ、あなたまで何言って……!」

 ワザとらしい口調で提案してきたのは、ハルトマンである。
ニヤニヤと笑う二人の戦友からは「全部分かってます」のオーラが出ていて、色々と癪である。
 だがよく見ると二人ではなく、周りの隊員全員が生暖かな顔で此方を見ていた。
 全員の視線が、痛い。
 唯一幸いな事は、扶桑の二人組が全く分かっていないことだろう。

「あーでも、ハルトマンの言う通り、すごいからな、これ。いらないなら」
 
 急に自信がなくなったらしい美緒が、苦笑いをしながら手を引っ込めようとする。
 押されたあと急に引かれると、ぐっとくるものが、きっとあるのだ。法則とかで。 
 思わず花束をを掴んだミーナに、一同が「おぉ」と歓声を上げていた。

「も、貰っておきます。一応。せっかくなので」

 今絶対自分の顔は、この薔薇の花に負けないぐらい赤いに違いないのだ。
 俯いてそう言ったミーナに心底安心したのか、美緒が朗らかな笑顔を見せる。

――これだから扶桑の魔女は!

 意外にずっしりくる花束を持ちながら、ミーナはつくづくそう思うのだった。

244もっさん×ミーナ中佐おまけ:2008/12/25(木) 04:26:09 ID:AqtAV9U6
 これまでの流れをニヤニヤみていたエイラ・イルマタル・ユーティライネンだったが、
ふとある疑問に気づいて口を開いた。

「そういやツンツン眼鏡がやたら静かじゃないか? もっと何か言うと思ったけど」

 ツンツン眼鏡とは、美緒の事を崇拝しているペリーヌ・クロステルマンの事である。
 そういえば、と言うシャーロット。
 まだ何かもにょもにょやっている左官二人を残してそちらをみると、なるほど納得な結果が見つかった。

「気絶してるな……」

 優雅に伏して気絶している。
 一体どの場面で気絶したのか、定かではない。
 普通なら気づきそうなものだが、何しろあまりの超展開に、誰しもが判断力を見失っていたのだから仕方がない。
 つんつんとハルトマンが頭を突くが、まるで反応がない。
 こりゃ駄目だ、と一同が笑った瞬間、どこかから素っ頓狂な声が聞こえてきた。

「あ、そっか! 愛の告白になっちゃうから、ミーナ中佐は固まっちゃったんだね!」
「おせーよ宮藤」

 どうも今まで分かっていなかったらしい。
 ツッコミを入れるエイラの隣で、シャーロットが苦笑いをしながら呟いた。

「これだから、扶桑の魔女は」


the end
245名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 04:29:28 ID:AqtAV9U6
1と2と3で場面の切り替わりの「**」が抜けてます、すいません……。
かなり分かりにくい事になっちゃってます。

どっかでドイツ系では赤い薔薇は〜云々のネタを見て
クリーチャーの如く書きました。

それでは失礼いたしました。
246名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 05:01:57 ID:Q5jI/CHw
>>245
GJ!!まじでGJ!!とてつもなくGJ!!!!
もっさんの何気ない行動にふりまわされるミーナ隊長とか...!!!
やばい、超萌えた...!!!ミーナの気持ちを察してあげるカールスラント組も良い。
もっさん、ペリーヌにも薔薇少し分けてあげて...!
247名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 07:06:56 ID:ZRtyOjTh
あれ? 書き込んだ感想が異次元に消えた...
だけど負けない もう一回書く!

>>221
ビューリングxウルスラxエーリカの三角がどこに行き着くのか楽しみですー
あとシャーリーとルッキーニのやりとりも良かったです

>>245
もっさんはこうでないと
わかってる 部屋にもう一束ある薔薇はペリーヌにあげるんだって
248名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 11:05:48 ID:78soNLBT
>>244
GJ!もっミーナはいいなあwほんとにもっさんはしょうがない人だ!w
買い物編とかまたなんか書いて欲しいなーw
249名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 11:17:19 ID:KBu5hYZ6
>>211
面白かった!長編乙です
501が解散したあともみんな仲良くしてくれるといいね
250名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 11:52:43 ID:LSI13BC+
やっと全部読んだ
投下し過ぎw
ここの職人はキャラの出演に偏りが無いのが凄いよな
251名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 12:34:32 ID:bFWPasyy
そうか?結構偏ってると思うけど
252名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 13:56:30 ID:ab5lQ+AU
あー秘め声が気になる!!!
エーゲル分ともっさミーナ分はもちろんとして、ハルマフジやらリーナとかのマイナーカプの発展に繋がるネタはあるのかな?
253名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 14:36:42 ID:liwb2Qjn
さすがにSSの数が飽和気味な気がする…
2つ3つのスレに、ジャンルごとで分離できないのかな
254名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 14:47:07 ID:3tlYnmzF
まあ言うまでもなくそんなことやったら過疎るだろうし、板全体にも迷惑が掛かるし
今のままで大丈夫だよ
255名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 15:52:03 ID:LSI13BC+
飽和状態とか言ってたら皆自重しはじめて過疎るぞ
256名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 16:15:29 ID:+y+4RsSa
ここは数少ないオアシスなんだから今のままでいいです
257名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 16:28:42 ID:pt1speug
オアシスとか聞くと前に聴いてたラジオ番組思い出すw
このままでいいんじゃない?
そんなこと言ってると勢い落ちるだろ
258名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 16:32:53 ID:8o+R12cO
お前ら最高だな・・・くうっ秘め声が気になるぜ!
259名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 16:35:03 ID:JPHbCiEj
まぁ、細かい事はもっさんとペリーヌが幸せになってからということで。

ガリアで一人に復興作業に励むペリーヌにもっさんがクリスマスプレゼントを持って登場。
感激して泣いちゃうペリーヌに、「折角の聖夜に何て顔をしてるんだ。さぁ、笑った笑った、わっはっは」とアニマル父みたいな事をいうもっさん。
260名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 16:36:46 ID:Nql6DMyh
盗まれたスボン 探し続けて
ウジューはさまよう 基地の中を
スクミズ 汗が染み付いて むせる
「ゴメンネ」は言ったはずさ 謝ったはずさ
エーリカ見れば、縞柄 穿いてる
逃げるのは 飽きたのさ
ミーナときたら すぐに懲罰
そおっとしておいてウジュー
明日に ニヒッ 繋がる今日くらい
261名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 17:32:08 ID:VnkFx1kb
秘め声カモン!
楽しみすぎて眠れそうにないんだぜ
262名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 17:34:18 ID:EfniyWmf
SS書きたいがスレが気になる
しかしスレ見てるとSS書き進まない
どうしたらいいんだ…
263名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 18:23:50 ID:tMOLet3/
>>221
GJ!!シャーリー切ない……そして本気になったルッキーニがどう出るかwktk。
ところでちょっと気になったんですけど、最近やけに読点多くないですか?
言えるほど巧い文書けるわけじゃないけど、ちょっと読みにくいかな……なんて思ったり。作風とかだったらすいません。
あとタイトル修正しました。

>>232
やっべ鈍感エイラやっべ、そして口移しキター!!GJ!!
そのうち何かしらの現場を見られて二人揃って後輩たちに迫られるんですね、わかります。

>>245
ミーナさんの動揺ぶりと「中佐の顔が真っ先に浮かんだからでは駄目なのか?」でやられたww
いやー文化の壁って大変ですね!!GJ!!

>>250-251
http://lilystrikewitches.web.fc2.com/graph/ssnum01.gif
更新ついでに10分で作ってみた。お姉ちゃんとエイラーニャ大人気、他は大体150前後。
しかしペリーヌ……
264名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 18:29:57 ID:m7AxRaV+
>>263
エイラーニャとお姉ちゃんが目立つ意外は皆大体均等だね(ペリーヌから目をそらしながら)
でも俺は皆大好きだよ(ペリーヌから目をそらしながら)
265名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 18:34:03 ID:+y+4RsSa
>>263
エイラよりゲルトの方が多いのか
ペリーヌは本編でも百合キャラなんだが、どうも妄想が膨らまないんだよな・・・
266名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 18:35:11 ID:1c48Ps3S
>>263
ルッキーニ分って殆ど自分じゃないのか…?
267名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 18:38:26 ID:JPHbCiEj
>>263
集計するとか凄いなw。

しかし、ペリーヌがとんでもないことになってるね。
キャラ設定も中の人も一番好きなキャラなだけに残念だ。

誰かペリーヌ強化キャンペーンでもやってくれないだろうか・・・。
268名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 18:42:01 ID:m7AxRaV+
言いだしっぺが一人キャンペーン始める!って言って書き始めればフォロワーが出るときもあるって聞いた
要は隗より始めよだな
俺も見てみたいけど文章書けないからなーw
269名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 18:58:51 ID:7Z2u5x8s
集計を見ると意外と格差がないけど、全員登場作品をカウント外にしたら結構な格差になりそう

ペリーヌはみっちゃんとお似合いだと思うんだが本編で接点ないから難しいか…
270名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:07:02 ID:PtvCqQsh
ペリーヌはなぁ書きたいけどネタがなかなか思いつかない
というかそろそろ600か・・
ついこの間500&501達成したのに
271名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:08:53 ID:Pzal5Vva
DVDさっき届いた〜

これは…エイラ×エーリカとエーリカ×サーニャが急増しそうだな

それはそうと毎度ながら設定資料がすごいな…
スオムスの独立とか、どうするんだろと思っていたら
人類同士が戦争しないようにネウロイを絡ませてくるとは…
ちょっと感心した

あとパンツ勲章吹いたwwwwww
272名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:24:37 ID:+y+4RsSa
百合的においしいとこはあったかい?
273名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:25:49 ID:T0M7YvOp
クリスマスラッシュ乙でした。
○○に当て嵌めるボケを全力で考えて挫折してますたw

ブックレットでハンナ・ウィンドの名前があったんでハッセ→ニパが心の中で確定したんだが、名前しかないキャラをどう料理したものか……。
あとルーッカネン分遣隊の名前があってエイッカ=エルマのつもりでいた自分その他数名が涙目。

ペリーヌはガリア1944の後とかネタはあるんだけど、妄想を形にする作業が追いつかないんダナ。
274名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:27:51 ID:KBu5hYZ6
DVDのケースに入っていたいらんこチラシに心があったまった
275名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:29:28 ID:5c1Wgv+u
スオムスとオラーシャのウィッチが少ししか判明しなくて残念
まあエイラーニャ分は補給させていただきましたが

漫画版2巻も読んだけどこっちはミーゲルがなかなか…
276名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:37:39 ID:Pzal5Vva
>>272
エーリカ曰くはじめてあったときにエイラに胸をもまれた…とか、
意外とサーニャとは、話すよ一方的にだけど(エーリカ談)とか

ほかにも直接百合には結び付けれなくても
サーニャが常に持ってるらしい家族の写真が入ったロケットとか、
スオムスとオラーシャの関係とか
話のネタになりそうなのはたくさんあったぞ

何度も言うけどパンツ勲章とかなwwww
277名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:39:24 ID:m7AxRaV+
>>276
エイラさんしんだほうがいいお(#^ω^)ビキビキ

節操ねえw
278名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:43:17 ID:Pzal5Vva
>>277
あと重要なの忘れてたサーニャとエイラの出会いは
ストライカーユニットの補修部品の入手を手伝ったことらしい
279名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:43:49 ID:Rh9o4CQa
重要すぎるw
280名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:46:24 ID:iWdJquz8
>>273
そうなるとエルマさんの元ネタはいったい誰になるって言うんだ…
281名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:46:56 ID:VnkFx1kb
くっそ…
金があったら全巻限定版で買うのに…!
泣きたい
282名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:49:57 ID:KBu5hYZ6
アマゾンなら6000円で買えるぞ限定版
全部で36000円だ!一週間バイトすれば稼げる!がんばれ!
283名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:50:15 ID:m7AxRaV+
オヘアも確か元ネタの人いないよね
284名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:55:15 ID:Pzal5Vva
>>279
あとは…余りミーナさんからは、ネタが出なかったな…
てかミーナさんの元彼氏(没)に名前があることには驚いた…
よく監督が許したな…

>>281
エイラーニャ好きなら今回の巻は買うことを進める、まぁ秘め声はないが…
285名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 19:57:55 ID:5c1Wgv+u
オヘアはエドワード・オヘアじゃないかな

>>284
×元彼氏
○隣人
286名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 20:00:06 ID:m7AxRaV+
え?w隊長勘違い女?ww
287名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 20:00:36 ID:+y+4RsSa
表紙だけでエイラーニャ分は補充できる
フミカネは素晴らしい
288名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 20:02:58 ID:Pzal5Vva
>>285
すまないうっかり間違えた、銃殺刑ものだったな

というか誰もパンツ勲章に食いついてこないな…
見てないけど本スレですでに出てるのか?
289名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 20:04:46 ID:5c1Wgv+u
百合スレ的にはあまり関係ないものだからかな
あとズボンね
290名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 20:04:49 ID:Pzal5Vva
あれ?またageちまった…最近なんだかおかしいなこのパソコン…
291名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 20:07:21 ID:KBu5hYZ6
>>284
監督は男出したい派だよ
少年兵から名前剥奪したりしたのは鈴木
292名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 20:20:51 ID:PtvCqQsh
フラゲした人良いなぁ
俺なんかまだ発送すらしてない
くやしいのう くやしいのう
293名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 20:22:30 ID:iWdJquz8
>>286
隊長だって恋人だったなんて言ってないだろ。兄代わりの優しい兄ちゃんが死んだらそりゃ悲しむさ。
294名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 20:50:56 ID:+y+4RsSa
もう公式に百合展開は期待してないけどね
アンソロとか出たらそういうネタは多そうだけど
295名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 20:52:51 ID:m7AxRaV+
前から言ってるがアンソロ出すなら東静馬と吉田創と結城心一と武梨えりと美川べるのと魔神ぐり子
に描いて欲しいがありえないですよねー
296名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 20:56:33 ID:JPHbCiEj
アニメ版の設定を無視したギャルゲー化→公式アンソロ&小説がそのゲーム版準拠の極上よりはマシさ。

あの件以来、コナミには何の期待もしてないけど、ストパンで信頼が回復しつつあるんだぜ。
297名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 21:10:13 ID:a4w+6KwK
>>260
ルッキーニが飲むコーヒーはニガーイ、ナ゙ニゴレー…
298滝川浜田:2008/12/25(木) 21:13:41 ID:1c48Ps3S
みなさんこんばんは。
クリスマスの夜をどうお過ごしでしょうか。
自分はSS書いてます。

っていうか保管庫管理人さん!
まさかのコラボwww
ビックリしましたw
というわけで少しだけコラボ返し。
よって年内最後の崩壊シリーズ投下いたします。
あ、ミーナさんは出てきません。

《美緒の部屋

只今12月30日 深夜11時48分

「…ふーっ…今年ももう明日で終わりか…全く“疲れた”しか感想の無い一年だったな…本当にミーナに振り回された……
何というか、悪い意味で濃すぎた一年だった」

美緒、お茶を啜る。

「思えば、二人でババ抜きをした時…まあもっと言えばだいぶ前からおかしいとは思っていたが…あの時から徐々に壊れてきたな」

『「知らないわ!知らない!
貴女と一緒にいる時は貴女を求めるだけのただの牝よ!」
「やめろその言い方!!
本当に生々しいから!っていうかもう脱がされてるし!」
「美緒、貴女にペナルティ―――――!!!」
「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」』

「………うん、まああれも多分愛だよな。愛…。愛…か…。愛ってなんだろうな…
あとはDVDのジャケットが云々あったなあ…正直本当にどうでも良かったな…」

『「私達が手を繋いで空を飛んでいるの」
「まあそれなら有りだな。見た目も良いしな」
「続いてこちら。そして熱いキスを交わす二人…」
「ミーナ」
「そして、美緒はミーナを自らのベッドに誘う」
「おい、ミーナ」
「そして、二人は遂に…!!!!」
「ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ!
お前本当にいい加減に人の話を聞け!!」』

「……まあ、ミーナはカールスラント組でジャケットになってるしな。それでいいじゃないか、うん。
あとはエッチがどうたらとかあったか」

『「そう言うと思って今日は特別ゲストを呼んであるわ!
自分より年下(12歳)の幼女に手を出したシャーロット・E・イェーガーさん(16歳)よ!」
「……あの、ミーナ中佐。そんな紹介やめて貰えますか…。なんかそれじゃあたしが犯罪者みたいでちょっと…」
「あら、手を出したのは事実なのよね?」
「だから手を出したって言うと一方的にしたにしか聞こえませんから!
ちゃんと同意の上ですから!」』

「…あの時はシャーリーに迷惑をかけてしまったな…よりにもよってシャーリーを性犯罪者扱いとはな…
あとは私の服をパクった、とかもあったかな」

『「いいから脱げ!!」
「嫌ぁぁぁぁぁ!美緒が獣になったわ!」
「それはどっちかと言えばお前だろ!!
お前のせいで私は過去二回も貞操を奪われそうだったんだぞ!
いいから返せ!」
「いや!」
「返せ!」
「いや!」
「返せ!」』

「……あの後宮藤の誤解を解くのに三日かかったな…おかげで私の服を一着ミーナにやるハメになったし…
それと…」

『「私は何もお前の事が嫌いとは言っていない。だから落ち着け、な」
「…分かったわ。今度からはアタックするのは週7(要するに毎日)から週6にするわ!!」
「(あぁ〜…そういう事を言っているんじゃないのだが…。しかも週7から週6って全く変わってない…)
…ああもうそれで良いよ…。だからミーナ、戻るぞ」
「あら、手を繋いでくれるの?」
「きょっ、今日だけだからな…///」』

「……今思うと強烈に恥ずかしかったな…////
…優しくするんじゃなかったな…あれ以降更につけあがった感じが…ハァ…」

『「行くか!お前本当に斬るぞ!
そして撃つぞ!」
「美緒に殺されるなら、一片の悔いなし!(鼻声)」
「うるさい黙れ!!」
「さあ美緒、とにかくシましょう!いっぱい汗をかけばぁっ…♪(鼻声)」
「ちょっ、お前本当に風邪ひいてるのかっ…!?なんだその腕の力っ!?
や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!」』

「あのせいで確か長い長い風邪を引いたんだったな。今思い出しても怒りが…おっといかんいかん、拳を握り過ぎて手から血が…」

『♪愛してるわ美緒
愛してるわ美緒
貴女と私 Baby I Love you
貴女とならどこまでも
天国《パラダイス》でも
地獄《インフェルノ》でも
貴女と二人の世界で私は貴女の×××を
@@@するわ
そして私達は※※※に☆☆☆で〇〇なの』

「…本っ当に歌手デビューしなくて良かった…しかし、ミーナが歌手デビューしてたら本当にどうなってたんだろうか…
ううっ、物凄い寒気がっ…」

『「だから行かんっつてるだろうが!
お前、いくら私でもいい加減怒るぞ!
お前本当に軍法会議にかけるぞ!」
「美緒!!それよ!!」
「は」
「それさえあれば、逃避行の理由になるわ!!!!
ほら美緒、今すぐ私を軍法会議にかけて!さあ今すぐ!!!!」
「…………ああああああああああああああああああああああああああああ…………」』

「確かシャーリーとルッキーニがリベリオンに向かってたんだな。
全くあの時のシャーリーは凄かったな。
『あたし達は自由になりたいんだ!何者もあたし達を縛る事なんて許されない!』とか言ってたな」

『「美緒…!これってまさか…!結婚っ!?結婚なの!?そうなのね!?」
「おいミーナ、聞け、あのな……」
「美緒からのプロポーズ、喜んで受けるわ!
まさに美緒は私の婿って感じ?私は美緒の嫁って感じ?私は勝ち組って感じ?」
「違う!!これはあくまでただのプレゼントであって──やめろ!!左手薬指はやめ──!!」』

「……あれはまさに地獄の聖夜だったな…しかもエイラとサーニャにこんな会話を聞かれていたとはな……しかも……
……いや、なんかもう思い出したくもないな…物凄いトラウマだよ……
…もう来年からは野菜スティックでいいかな…。プレゼント」


只今12月30日 深夜11時58分

「…もう少しで31日か。
大晦日、だな。
……さて、少し早いが……」

美緒、湯のみを少し高く上げる。

「来年も頑張ろう。坂本美緒、逆境に負けるな」

美緒、深夜に決意を固める。

来年こそは、(ミーナからの)圧力には決して屈しない、と。

303滝川浜田:2008/12/25(木) 21:25:13 ID:1c48Ps3S
以上です。
見ての通り、総集編です。
SSで総集編なんて前代未聞だと思いますがやりたかっただけです。スイマセン。

あと保管庫管理人さん、まさかのコラボありがとうございました。
今回の話でコラボ部分をちょっとだけ使わせて貰いました。
こっちこそごめんなさい。

…では、爺はここら辺で…

304ねこぺん:2008/12/25(木) 23:49:44 ID:2GB9lW0T
>>303
いつも楽しませてもらってます
しかし、どれだけネタのストックが……ホント凄いですね

クリスマスにぎりぎり間に合わせたのを一つ
時間があれなので……さっさといきますね
305名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 23:49:52 ID:EfniyWmf
>>273
エルマ=エイッカじゃないのか…
泣きそうだけど気にせずこの設定でSS書いてもいいかな
そうでないと記憶喪失やらいろんなのがなりたたなくなってまう罠

そして総集編GJwwが、まさか今年はこれ以上ミーナさん崩壊シリーズ書かないってわけじゃないよな!
まだこれからよ!なミーナさんが大晦日に洗われるって信じてる
306ねこぺん:2008/12/25(木) 23:50:24 ID:2GB9lW0T
シュトーレン、シュトーレン。

雪が舞い始める頃、二人で焼いたシュトーレン。
両端から一切れ一切れ。確かめ合うように食べること。それは大事な二人のセレモニイ。



       『クリストシュトーレンと無限遠の君』


雪の影が散らつき始める12月。私は毎年決まってシュトーレンを二本焼く。
二本焼くのにはもちろん理由があって、それは一緒に食べたい大事な人が今はここにいないから。
その子はこういうことに大抵興味無さげに振る舞うのが常で、
毎年私が楽しみにしてやまないこの儀式もだから君は少々面倒くさいことと感じているのかもしれない。
普段は家事一切なんてほとんど手をつけない私がやるものだから、余計そう思うのか。
確かに私は掃除も洗濯も人一倍苦手だけど、料理だけはそうじゃないんだよ?
する時はするわけで。ただ、本当にそれを食べてほしい人が側にいないと思うと急に冷めてしまうのだ。
料理も、気持ちも。
栄養さえ満たされていれば味なんて二の次のトゥルーデじゃ、作るこっちだって味気ない。
501にいるのはカールスラント人の私たち以上に味覚のおぼつかないブリタニア人やスオムス人。
まともそうなオラーシャの女の子は私の作る料理を新手の殺人兵器だと思い込んでた。
それでも、私の焼くシュトーレンはそれを食べた少数派からは評判がいいんだ。
まあそんなこと、はじめからわかってる。
だってそのシュトーレンは、私の一番のお客さんを笑顔にさせた魔法のパンなんだから。

シュトーレン、シュトーレン。

この季節に二本のシュトーレンを焼くようになって何年になるだろう?
それは、私と君が思い立ったその日に顔を合わせられないくらい離れてしまった年月に一致する。
だから、私は二本焼かなきゃいけないシュトーレンに少し悲しくなるのだ。
毎年のように誰かから訊かれる、どうして二本?の問い掛けにも。
ごまかすように曖昧な返事を返しながら、焼きたてのそれが冷めるのをじっと待つ時間。
私は灰色に霞む遠い空の向こうにいる君の姿を想像する。
本当は分かっている、それがどんなものなのかなんて。例えば、覗き込んだ姿見に映る姿だとかで。
生まれた時から私たちは同じ姿で、同じ顔で。
でも、私には分からなかった。
あの時、スオムスへ行くと言った時の君の瞳の中の自分が、本当に君と同じ顔をしていたのか。
そしてその時から、私たちが同じ一つの未来へのトンネルを掘り進むこともなくなっていた。
307ねこぺん:2008/12/25(木) 23:51:04 ID:2GB9lW0T

シュトーレン。

坑道。それがシュトーレンの意味だ。石炭を掘り進んだ掘削跡のような無骨なパン。
そんな意味さえ知らなかった二人の子供は、――いや、なにかにつけて頭のいい君は
あるいは知っていたのかもしれないけど――冷たさが両脚に染み入るようになるこの季節の
特別なこの甘い甘いお菓子に心ときめかせ、その先にまばゆいほどの未来があると信じて疑わなかった。
優しい私たちの母さんが焼いてくれたそれを真似て、二人で粉まみれになりながら焼いた最初の一本。
母さんは気づかれない振りをしながら本当はちゃんと見ていて、悪戦苦闘する私たちを……あれ?
ああ、あの人はくつくつと笑いを噛み殺しながら見てたんだ。まったく私たちの母親らしい意地の悪さだ。
それでもなんとか形になったのは私たちが不出来でも母さんの娘だったということなのかもしれない。
焼きあがった不格好なシュトーレンから立ち上る甘い匂いに、私たちは顔を見合わせた。
嬉しくて、嬉しくて。それは普段、感情なんて欠片ほどにしか表さない君でさえ、頬を緩めていたくらいに。
後から考えれば、それは、家族全員で揃って迎えた最後の聖誕祭だったのだけど。

シュトーレン、シュトーレン。

親愛なるウルスラ・ハルトマン様へ
ウーシュ、元気にしてますか。風邪をひいたりしてませんか?
スオムスの冬はことのほか寒いのでしょう? 同僚のスオムス人がなんの自慢か声高に主張してました。
そういえば、スオムスにはサンタクロースがいるそうですね。私たちは本場のサンタとやらを見てみたくて
そのスオムス人を羽交い締めにしてサンタクロースの格好をさせました。
メンバーの何人かが、今にも襲いかからんばかりに興奮していたのが気になりますが大丈夫でしょう。
エイラ、お願いだから私に助けを求めるのはナシで、ね?
でももう、こんな季節なんですね。本当に一年があっという間。
というわけで毎年のことになりますが、今年もちゃんと二人分焼いたので送ろうと思います。
また? なんて言わないで。これでも一生懸命焼いたんだよ?
あなたからの返事と、……また会える日のことを楽しみに待ってます。        姉より

丁寧に包んだシュトーレンにカードを添えて、スオムスに送る。それはここ毎年の決めごと。
送ったそれがどう食べられているのか、あるいは食べられないままなのかは分からない。
送った量も一人ではさすがに持て余すくらいだから、スオムスのみんなで分けて食べているのかな?
もしそうだったら。そう思うとすごく嬉しくて、ほんの少しだけ寂しい気持ちになる。
つまり君がそのくらい気心の知れた仲間とともにあるということなのだから。
本当は……、と思う。君の中で私の存在はほんの小さなそれに過ぎないのか、
あるいはもっと疎ましいだけのものなのかもしれない。いや、きっと多分そうに違いない。
でも、それを確かめる術はなくて、なにより確かめるのが怖くて、
私は年が明ける頃にようやっと返ってくる、短い『おいしかった』の返事をただ信じるしかなかった。
308ねこぺん:2008/12/25(木) 23:51:45 ID:2GB9lW0T

クリスト、クリスト、シュトーレン。

一度だけ四人で同じシュトーレンを分け合ったことがある。
ゲルトルート・バルクホルン、クリス・バルクホルンにエーリカ・ハルトマン、ウルスラ・ハルトマン。
つまりバルクホルン姉妹とハルトマン姉妹というわけで、私も本来姉側に括られるはずなのだが、
あの重度の姉バカの主張するところにより、トゥルーデと可愛い妹たちという関係が構築されていた。
実はそれはさほど奇妙な主張でもなく、私たちとクリスはほとんど年が同じで
休暇ともなればいつも一緒に過ごすくらいだったから、私たちは本当に姉妹のようだと思っていたのだ。
そんなかけがえのない関係も、君が一人バルト海を超えて行った頃から崩れ始めた。
クリスがいつ醒めるとも知れない眠りについてからはもうそんな関係があったことさえ。
それでもこの季節がやって来ると、同じシュトーレンを焼いているのだ。
「こんなこと、意味なんてあるのかな?」行き場をなくした心の中をそんな言い方でぶつけながら。
その問い掛けにトゥルーデは真剣に悩み込んで、歩きながら基地をぐるりと一周するほど考え込んで。
「上手くは言えないけど、私はみんな大事だと思ってる」それがトゥルーデの答えだった。
それはやっぱり答えになんてなってはいなかったけれど。でも、私にはそれで十分だった。
私たちはみんなお互いが誰よりも大事で、ただそれがいつの間にか見えなくなってただけなんだ。

シュトーレン、シュトーレン。

だから今年、私は一本のシュトーレンを焼いた。そう、いつもの二本じゃなくて。
それは君のことをもう考えなくなったとかじゃない。もしかしたらはじめから出来ていたのかもしれないこと。
何度も目を背けて遠回りしたそのことを、今度こそすると決めたから。
私は、私はただ一本のシュトーレンを、君と一緒に食べるんだ。だから――――私は君に会いに行く。
309ねこぺん:2008/12/25(木) 23:52:29 ID:2GB9lW0T

シュトーレ、シュトレン、シュトーレン。

降り立つそばから凍りそうな空気が私を出迎えた。思ってたよりもずっと冷たい氷の世界。
こんな場所に君がずっといたなんて。戦い続けていたなんて。私には想像も出来なかった。
本当に君はここにいるのだろうか? そんな疑問さえ頭をよぎる。
君と同じ部隊の人が迎えに来てくれると聞いていたけど、そういやそれがどんな人かは確かめなかった。
辺りを見回して途方に暮れる。短い髪の先がパリパリと音を立てた。
「……これは驚いたな」
「ほんとうに、そっくりですね」
背後から掛けられた声に振り向くと、そこには二人の女性が立っていた。私よりだいぶ背の高い二人。
薄い金髪の可愛らしい人がぴっとり寄り沿っているところを見ると、二人は恋人なのかもしれない。
そしてその二人の外見の特徴が、君から届いた手紙にあったそれと一致しているのに気づく。
「えっと、」
「エリザベス・ビューリング、階級は少佐だ」
「ようこそスオムスへ。同じくエルマ・レイヴォネン少佐です。エーリカ・ハルトマン中尉ですね?」
「あ、はい。よろしくお願いします」
私は多分緊張していた。カチコチになったまま挨拶を返す。
よく考えれば、ミーナや坂本少佐よりも年上の人の下で、なんて久しぶりだった。
年明けまでの短い間だといってもついつい肩に力が入ってしまうんだ。……なによりそこには、君がいる。
「性格は随分違うと聞いていたが……なるほどそうかもしれないな」
「そうですか? 私はとってもよく似てると思うんですけど。
 ま、それは置いといて。行きましょうか! エーリカ中尉が会いたい人、ちゃんと待ってますよ」

古びてはいるけど手入れの行き届いた宿舎。その端にある食堂が目的地のようだった。
501のそれよりいくらか大きくて、ぐるっと見渡してやっと全体が把握できるほどの広さ。
その隅に、本当に隅っこに私はやっとその姿をみつけたんだ。
「ウーシュ!」
思わず出た叫び声。君はぴくんと肩だけ反応してから本に落としたままの視線を面倒くさそうに持ち上げる。
嬉しくて、懐かしくて、涙が出そうで、私はもう駆け出していた。ウーシュ、ウーシュ、ウーシュ……っ。
「……くるしい」
やっと聞けた第一声はそれだった。それは私がぎゅうぎゅうと身体ごと抱きしめているからなんだけど。
記憶の中の君と姿はだいぶ大人びて、同じハズの普段覗き見る自分の姿とも少しずつ違う気がするけれど、
でも、抱きしめた身体の体温や匂いや声のトーンはあの頃の君のままだった。
「ウーシュ、ずっと逢いたかった」
今度はそっと呼びかける。腕の中でもぞもぞと身体を動かした君の頭が胸元に押し当てられる。
それじゃ、顔、見えないよ。今どんな表情してるの?
……私がここに来るまで一番不安だったこと。君は本当は逢いたくなかった?
聞きたくて、でも聞くのは怖くて、結局腕の中の君からの回答は後回しになった。
310ねこぺん:2008/12/25(木) 23:53:13 ID:2GB9lW0T

「エーリカじゃナイカ!」
「エイラ、サーニャも!」
この声もなんだか久しぶりだ。スオムスに戻ったダイヤのエース。飄々とした雰囲気は相変わらずだ。
驚いたのは――実はそれほど意外でもなかったんだけど――横に501の頃と同じようにサーニャがいたこと。
着ている服もスオムスのそれだった。
「ハルトマン中尉、お久しぶりです。あ、エーリカ中尉って呼んだ方がいいんでしょうか?」
「エーリカ中尉か。イイナ、ソレ。私も呼んじゃうゾー」
「あはは、どっちでもいいよ。二人とも元気そうだね」
ニッコリ笑ったサーニャが比べるように、私たちを交互に見やる。
その反応ももう何年もなかったものだから、なんだかくすぐったい気分になる。隣の君も照れたみたいで。
でも昔はこの反応をされた時、君がほんの少しだけ不機嫌になったのを思い出す。
私は気にもならなかったそんなことも、君にとっては離れていった大きな理由の一つなのだろうか。
「……でも、ほんとうにそっくり」「ダナ」「ですね!」「見分けがつかないな」
「そんなことない」
ビューリングさんとエルマさんも加わって、頷きあう4人に君が不満そうな声を上げた。
その矛先はおよそビューリングさんだったようで、見上げるように向けられた視線を受け流しながら、
ビューリングさんは笑いを堪えきれないように口元を押さえながらくしゃくしゃと君の髪を、
ああっ、なんてこと! そんな、私だって撫でたことしかないのに!
私が猛然と抗議するとビューリングさんはついでというように私の髪もかき回す。
「なんかうらやましいな。オラーシャでもウルスラ少尉からエーリカ中尉のこと聞いてたんです」
「じゃあ、サーニャはブリタニアに来た時はもうエーリカのこと知ってたンダ?」
「ねえねえ、ウーシュは私のことなんて言ってたの?」
「うん。……エーリカは、わたむぐっ!?」
勢い込んで訊く私の質問に答えようとしたサーニャの口が、疾風のように塞がれた。
それを見たビューリングさんが今度こそ吹き出す。それを睨みつけながら君の頬は赤く染まっていた。
そっか。君はそんな表情もするようになったんだ。
昔のまま、昔のままと思い続けて、ずっと同じ場所にしがみついてた私とはきっともう違うんだ。
年が明けたら、私も、
「もう少しお姉さんに甘えたっていいんですよ、ウルスラ少尉?」
「毎週手紙、楽しみにしてるじゃないか」
311ねこぺん:2008/12/25(木) 23:54:04 ID:2GB9lW0T
――――!
「そうなの、ウーシュ!?」
みんなから隙のない包囲網を敷かれて、ついに君は観念したみたいだった。
ゆっくり向き直って、ふーっと息をつく。眼鏡の向こうの瞳が揺れながら私を見つめる。
不意に伸びた二本の腕が私の肩に廻されて、記憶の中のそれよりずっと強い力で抱きすくめられた。
「ウ、ウーシュ? みんな見てるよ?」
「……無事でいてくれれば、それでいいと思ってた。
 でも、逢いたくなかったって言ったら、きっとそれは嘘だから」
その言葉がなによりも嬉しくて。目の奥が熱くて視界がぼやける。
負けないように、精一杯の力を込めて、私も君を抱き返す。熱いのはもう目だけじゃなかった。
「……なんだか、まるで恋人同士みたい」
「コッチガハズカシクナルジャナイカー」
それを聞いて、急に恥ずかしくなった私を、君はもっと強く抱きしめる。
あれ? もしかして、怒ってる? 慌てて手足をバタつかせてみたけれど、どうにも離してもらえない。
観念しなきゃいけないのは私の方だったのか。目を閉じて、心の中でゆっくり深呼吸をして。
もう一度、私は君の背に廻した腕に力を入れた。
「逢いたかったよ、ウーシュ。いつもそう思ってた」
「……私も」
時間が止まったみたいで、心臓の鼓動とぐっと飲み込む息の音だけが部屋に響く。
ふと気づいてみると4人がじっとこっちを見ていたから、私は頭まで真っ赤になるしかなかった。
エルマさんなんか両手で顔を押さえていて、もうどっちが恥ずかしいのかわからないくらいだ。
「……そろそろ行くか? みんな待っているだろう」
「あ、そうですね。もうきっとパーティーの準備出来てますよ」
「あの、私、シュトーレン焼いて持ってきたんです」
私は鞄からその包みを取り出してみせた。
それを見たビューリングさんが苦笑しながら君の背をポンと叩いた。
「一言、言ってやればいいだろう? 毎年、誰よりも楽しみにしてたと」
背を押された君は私の手から包みを取って、それをぎゅっと押し抱いた。
「一緒に食べよう、エーリカ」
「……うん!」
今年のシュトーレンは、今まで食べたどのシュトーレンよりもおいしいんだ。私はそう確信する。

シュトーレン。シュトーレン。

きっとそうだよ、ね?                              fin.

312ねこぺん:2008/12/25(木) 23:55:16 ID:2GB9lW0T
メリークリスマス♪ 遅いヨ、とか言わないで
前回はたくさんの感想、ありがとうございました。しばらくの間、頬がゆるみっぱなしでした

というわけで、ウルリカクリスマスネタ
時間がなかったので推敲が足りてないと思われます。あと、この二人称はやたら面倒でした
というか、エーリカの性格もわりとめんどくさいです。でもウーシュ大好きなエーリカは可愛いので
題は、ユークリッド幾何学的な意味と光学的な意味の両面から……嘘です、適当です。
そういえば、秘め声でエーリカがエイラに揉まれてたらしいとか
ウルスラさんに間違いなくロケット砲打ち込まれますね。エイラさんは自重するように
あと……ビューリングさんの恋人はウィルマさん、と秘かに思ってますが……どうなんでしょうか

なにはともあれ楽しんでいただければ。私は年内はこれで打ち止めかなあ、遅筆で申し訳ない。でわでわ。
313t26gFAxT:2008/12/26(金) 00:25:34 ID:6DeEovNH
今日は作品ないのに私信+感想レス失礼いたします……。
まず、学園ウィッチーズ20話への感想ありがとうございます。
いっこいっこレス返したいけど、ひどく長くなりそうなので、自重!

>>263保管庫管理人様、さっそく修正承っていただいたようでありがとうございます。
で、読点ですが、癖+わざと、の半々です。わざとというか効果というか。
せめてもの読みづらさ度合いを軽減するために、「癖」のほうを直してみますw
けど、参考になりましたので今後も気がついたところがあればご遠慮なく。
「おみゃあの指摘に貴重なスレの容量割けるか!」という場合はメールでもいいですw
自分の作者名[あっとまーく]yahoo.co.jp で届きます。

>>312
リアルタイム更新キター
風邪と仕事で疲れた心に良い意味で沁みました。
シュトーレンネタは店頭でシュトーレンが目に入ったときにこれSSで使えるかなーとか思ってて。
その矢先の投下だったので一人で勝手にドキドキ。
ハルトマン姉妹ネタは、4巻の記録集と秘め声で膨らませられそうなので自分も頑張りたいところです。

>あと……ビューリングさんの恋人はウィルマさん、と秘かに思ってますが……どうなんでしょうか
101回ぐらい同意。
*ただし初恋は(オストマルクで殉職してしまった)"あいつ"派だけどな!

えー。以上です。
314名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 00:28:34 ID:QaawX9j4
>>312
いい話でした。本当にいい話でした。
読みながらなんだか目頭が熱くなっちゃったよ(´;ω;)イイハナシダナァー
315名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 01:00:33 ID:62zgCnyi
投下多すぎでほんと1個1個感想かけないなw
>>312
GJ!エーリカはウルスラ相手だと素直になるのがなんかいいなw
>>211
誰も突っ込んでないけど中の人ネタ自重w黒薔薇とか吹いたw
>>305
構わないと思います!wktkしながら待ってる。
316名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 01:04:02 ID:QfsUmu/y
>>313
305だけど、微妙に割り込んでしまって申し訳ない…
GJすぎる、GJすぎる…!!手紙の最後に「姉より」と付け足すのがものすごくツボに来た
ウルスラ大好きなエーリカも、エーリカ大好きなウルスラもかわいいかわいい
バルクホルン・ハルトマン姉妹、最後の6人とあまりない組み合わせが新鮮で楽しかった
明るくなったビューリングさんもいいなあ、いいなあ
総合するとかわいい、かわいい、GJ!!
317名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 01:14:13 ID:n2ySCY1P
>>312
あなたはなんかこう…、他の人が書かないところを突いてくるんだ
よく上質なネタがそんなに浮かぶなあ…また、それに相応しいきれいな文。素晴らしい
んで、GJでした!見せつけちゃうハルトマン姉妹おいしかったですw
318名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 02:26:05 ID:whOO6y0X
>>313
ビューリング×ウィルマは某所で微妙な盛り上がりを見せているね
ネタ的なところが多分に多いけれど
319名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 03:38:52 ID:5UKc7dKq
こんばんは。mxTTnzhmでございます。

さすが聖夜クリスマス! SS投下した皆様GJ!
速度が速過ぎてレスが全く追い付けません(><;

……さて。
まだだ、まだクリスマスは(グリニッジ標準時では)終わってない!
と言う事で書きました。
統計によるとペリーヌのSSが少ないそうなので、彼女メインでひとつ。
百合かどうかは疑わしいですが、辛うじてペリーヌ×美緒でいきます。
320saintly knight 01/03:2008/12/26(金) 03:41:13 ID:5UKc7dKq
聖なる夜。
皆が寝静まり、街も野も実に穏やか。上は雲一つ無い、真夜中の空。
半分に割れた月が生える。
そんな凍えた空気を裂いて飛ぶ、一陣の青き風。
501所属の若き中尉、ペリーヌだった。
「まったく……」
ペリーヌはぶつくさと呟いていた。
今日は特別な日。それなのに、隊の皆ときたら飲んだり歌ったり……あの乱痴気騒ぎと来たら!
そしてわたくしは年に一度の記念日と言うのに、よりによって夜間哨戒シフト(の前半)。
はあ、と溜め息のひとつも出る。
今夜は、これまでのネウロイの出現サイクルから推定すれば何もない筈で……、
こう言う特別な日や退屈な時に限って、より一層退屈で何も無い夜を過ごし、明かす事になる。
ふう、とまた溜め息が出る。
微かに見えるブリタニア各地の街の明かり。遠く眼下に眺めながら、思わずふわあとあくびが出る。
「何も有りませんわね」
小さく言葉に出す。
その時、無線に通信が入った。基地当直の女性無線通信士からだ。
『ブループルミエ、応答願います。こちら司令所レーダー観測室』
「こちらブループルミエ。どうぞ」
『貴官の哨戒エリア内に謎の飛行物体を確認。当該時間帯にエリア内を飛行予定の航空機は有りません。
飛行物体は当方からの無線の呼び掛けには応じず、高速で移動中。直ちに貴官による確認を願います』
「了解しましたわ。当該飛行物体の位置と進路を」
『現在の貴官の位置から方位0−3−1、当該機はそのまま方位2−1−1に向けて飛行中。
接近予定時間は推定四十秒後。行動を願います』
「了解。万一に備え、基地の隊員に待機連絡を。以上」
ペリーヌは銃を担ぎ直し、腰に構えたレイピアの鞘をぐいと引き締める。
「ちょっとした、暇潰しになれば良いのですけれど……しかしほぼ真北からとは、珍しいですわね」
思わず呟きが口に出る。
頭を一度軽く振り、気持ちを引き締めた。
(あと四十秒……随分早いですのね)
ペリーヌは軽くロールしながら、腕にはめた方位・高度計を見、謎の物体目掛けて進んだ。

その影は一瞬で現れ、そして見えた瞬間に消えた。
「!」
あっと言う間に脇を抜けられる。
「このスピード……音速を軽く超えている!」
慌てて反転するも、追い付けない。速過ぎて姿もよく分からない。
しかもその飛行物体は、超高速で移動し、あれよあれよと地表に降下して行った。
降下した先は、民家が建ち並ぶ何処かの街。
「なんと言う事! 街に被害が!」
だが言った側からまたその物体は超高速で浮上し、また降下する。
「な、なんですの? 爆撃?」
しかし街が爆発を受けた形跡は微塵も見当たらない。その物体はペリーヌのそばまで上昇し、また降下。
「このわたくしが追い付けないなんて」
超音速を軽く……どんなに少なく見積もっても音速の24倍以上は出しているのに、何の衝撃波も出ない。
「所属不明」どころか「不思議」、と言うより、もはや怪異だ。
「司令所、応答願います。司令所……」
しかも、困った事に無線がまるで通じない。
「まさか、以前サーニャさん達が出会ったネウロイ……」
ペリーヌは高速で移動する物体の動きを見極めようと必死に目を凝らした。
微かにだが、見える。
浮上、降下、加速、減速のタイミングがある程度読めてくる。
確かに超高速だが、タイミングさえ合わせれば、もう一度だけなら……このVG.39でも追い付ける。
ペリーヌはその機を逃すまいと、ストライカーにありったけの魔力を注ぎ込む。
「次こそ、追いついて見せます!」
ブレン軽機関銃を構えると、当たりを付けたポイント目指して一気に加速した。
321saintly knight 02/03:2008/12/26(金) 03:43:09 ID:5UKc7dKq
予想通り、その謎の物体は浮上した。
ブレン軽機関銃を構え、大声で警告する。
「そこの飛行物体、応答なさい! 所属と目的を……」
ペリーヌは目を疑った。音が聞こえる。鈴の音。構えた先に連なるのは、北に生息する茶褐色の生物。
そして、その後ろでひとり手綱を引いているのは、赤と白の服を着た、人物。
「あ、貴方……」
目をぱちくりさせる。
「おや、撃たないでおくれ、お嬢ちゃん」
しわがれ声の老人……いや、老婆か? 性別はよく分からないが、言葉がペリーヌの心に直接響いてくる。
「この街にも、あの街にも、私を待っている可愛い子が沢山居るんだからね」
幼い頃、お祖母様やお母様に、絵本で聞かされた存在。しかし……有り得ない。
ここはブリタニア上空15000フィート。しかも速度目一杯で飛んでいるのに、もう引き離されそう。
人の心理につけこんだ、新手のネウロイ?
トリガーに掛かる指に、力が入る。
不意に、その怪異が速度を緩めた。
「お嬢ちゃんもこの一年、いい子にしていたね。さあ、これをあげよう」
ペリーヌ向かって小さな物体が投げられる。
爆弾? いや、箱だ。リボンで丁寧に結わえてある。
何かの罠かと疑ったが、余りの存在の軽さに、思わず銃を肩に担ぎ、両手でキャッチしてしまう。
「こ、これは……」
「お嬢ちゃんへのプレゼントだよ。受け取っておくれ」
「な、何でこんな事を! 貴方一体……」
その老人は、ペリーヌが箱を受け取った事を確認すると、親指をぐっと立てて見せた。
「えっ?」
その意味が咄嗟に分からず、箱を持ったまま並んで飛行するペリーヌ。
「お嬢ちゃん、このサインの意味、知ってるかい?」
「貴方、わたくしを馬鹿にしているの!? 『了解した』『OK』『良い』を示すサインですわ」
「これはね。古代ローマで、満足の出来る、納得の出来る行動をしたひとにだけ与えられる、栄誉のしぐさなのよ。
貴方も、これに、相応しい娘(こ)になりなさい」
突然の答えに、絶句するペリーヌ。
「貴方も家族と祖国を失い、辛く悲しいでしょう。でもそんな時こそ、皆の為に頑張りなさい。
祖国ももうすぐ、貴方達に戻るわ。そうしたら、貴方が旗手となって、復興を頑張りなさい。
それはとても素敵な事だと、思わないかい?」
飛行物体は、速度を上げた。
「ちょ、ちょっと、お待ちなさい! まだ話は……」
「貴方なら出来る、ペリーヌ」
言葉を残し、もう一度振り向いて、笑顔を見せ、サムズアップして見せた。
その柔らかな笑みは、幼い頃によく見た、あの人達にそっくりで……
「お祖母様! お母様!」
ペリーヌは叫んでいた。
その仕草を見せたまま遠ざかり、消えゆく光と音に向かって、ペリーヌは、親指を立てて、ぎこちなく笑みを作った。
視界が悪い。それが自分の涙のせいだと気付くのに少し時間が掛かった。
ポケットからハンカチを取り出し、眼鏡の隙間から流れ、空に消えて行く雫を、拭った。
322saintly knight 03/03:2008/12/26(金) 03:44:49 ID:5UKc7dKq
「おお、意識が戻ったか」
聞き覚えのある声。はっとして目を覚ます。
医務室だ。傍らには美緒と、芳佳が居る。
「大丈夫か、ペリーヌ」
「し、少佐……わたくし」
夢……だったの? ペリーヌは内心おろおろした。
「お前から連絡を受けてすぐ、可能な限り人員を集めて待機していたんだが……無線とレーダーが通じなくなってな」
「ペリーヌさんが哨戒の交代時間きっかりになってひとりふらふらと戻って来た時、そりゃ大変だったんですから」
美緒と芳佳が状況を説明する。
「わたくし……」
状況が飲み込めない。“あの時”からの記憶がない。何処をどうして基地に戻ったのかも。
時計を見る。朝の七時だ。
「宮藤、ご苦労。お前も治癒魔法を続けて疲れただろう。今日は一日休んで良いぞ」
「はい、ありがとうございます。ペリーヌさん大丈夫ですか? もう少し治癒を……」
「わたくしはもうこの通り、大丈夫ですわ。ご心配なく。少しお手間を掛けさせてしまいましたわね」
芳佳の手前、少し見栄を張ってみる。曖昧な笑みを残して、芳佳はふらふらになりながら医務室から出ていった。
医務室のドアの先にはリーネが待っていて、よろける芳佳に肩を貸した。そのまま自室へと戻った様だ。
美緒とふたりっきりになった医務室。静寂が周囲を支配する。
美緒は尋ねた。
「ペリーヌ。昨晩、何があった?」
聞かれて言葉に詰まる。
まさか、かの人に出会ってプレゼントを貰い、励まされたなどとは口が裂けても言えない。あれは夢だと信じたい。
「ネウロイか?」
「ち、違います」
「司令所では、音速の何十倍もの速度で移動する物体がレーダーに一瞬見えたとの報告が有るが」
やはり昨夜の事は本当だったの……、と内心で愕然とするペリーヌ。
ふと、両手でしっかりと抱えている箱に目が行く。
「それは、お前が帰って来た時、そうしてずっと持っていたものだ。誰が取ろうとしても、絶対に離さなかったんだぞ?」
苦笑混じりに美緒は言う。
「その箱は何だ、ペリーヌ?」
美緒に聞かれ……ペリーヌは誰かに手を差し伸べられ導かれるかの様に、箱のリボンを紐解いた。
「これは……」
箱の中から出て来たのは、一本の手編みのマフラー。
美しいトリコロールの色で柔らかに編まれたそれは、とても温かく……心の中までほかほかにしてくれそうで。
昔、お祖母様やお母様が編んでくれたものにそっくりで。
ペリーヌはマフラーをぐっと握り、抱きしめ、無言で、涙した。
美緒はそんなペリーヌをそっと胸に寄せると、優しく肩を叩いた。

end

----

以上です。
元ネタはNORADが毎年やってる例の追跡と、某特撮の名シーンを拝借しました。
ちょっと元のが出過ぎですね。すいません。

あと、私がペリーヌ主役的なSS書く時は、タイトルに大体「knight」を入れてます。
彼女に相応しいかな〜と思って。ただそれだけですが。

ではまた〜。
323名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 04:10:12 ID:5UKc7dKq
書き忘れました、補足で。
今回の>>320-322「saintly knight」は
>>65-71「christmas panic」、そして>>90-91「nest」、そして
>>132-138「christmas resistance」の続編と言う事でひとつ宜しくお願いします。

ではまた〜。
324名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 11:50:17 ID:n2ySCY1P
>>323
GJ!ペリーヌかわいいよペリーヌ
いい話だった…少佐はやっぱり素敵です
325名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 12:32:24 ID:W5L66TMA
>>312
GJ!相変わらず可愛いハルトマン姉妹を書く!
しかしモテモテだなビューリングw

>>323
GJ!イイハナシダナー
ペリーヌは良い子
326名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 12:37:50 ID:5Myxk0MX
やはり芳リーネは鉄板か・・・。
ttp://ec2.images-amazon.com/images/I/51OMbc0Z%2B4L._.jpg

327名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 13:05:28 ID:es2sC4G7
>>326
これ特典ポスカ?
やはり芳ーネは良いなぁ

尼からメール来た6時が待ち遠しい
328名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 13:18:46 ID:Q/YLyY7t
6巻の表紙だろ?
フミカネはわかりすぎてるな
329名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 14:00:33 ID:XxATOn+m
4ジャケットとかやりすぎだろうとか思ったがむしろもっとやってくれ
330名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 14:15:07 ID:es2sC4G7
あぁ表紙なのか
フミカネは俺たちの気持ちをよく判ってくれている
331名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 14:35:11 ID:Hi2GXqZF
戦闘記録集、他の隊員達の部屋にはある椅子と机が無いサーニャの部屋と
それが当たり前であるかのように二人分の椅子があるエイラの部屋を見比べて
妄想の翼を広げてる俺がいる
332名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 14:41:27 ID:2j+Ri71s
>>326
芳佳のストライカーの位置が絶妙と言わざるをえないw

4巻特典も相変わらずのボリュームだったけど、秘め声CDのエーリカ→バルクホルンの
「ついつい甘えちゃう」発言がツボでそのトラックだけ何度も聞いてしまう…。
最近(このスレのせいで)エーゲルにハマり始めた自分にはたまらん。
333名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 14:45:55 ID:XxATOn+m
俺はもっさんの部屋が無いのを見て、ルッキーニの秘密基地を転々としているとか考えた
334名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 14:50:07 ID:+N3TlM9o
最終巻は全員集合の方が良かったな。
まあこれはこれで嬉しいけどね。
335名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 15:38:19 ID:8SmzYt6o
そうだなーどうせなら全員集合の絵が見たかったが11人はキツいかw
336名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 15:47:14 ID:i2dhxQAZ
実際メインスタッフの中で一番百合に理解ありそうなのはフミカネだ
股間は興味なさそうだし鈴木氏はなんか空回りしてるし
フミカネはフミカネでローレグな飛行少女描ければいいのかもしれんけど
337名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 17:22:37 ID:n2ySCY1P
>>326
ちょwジャストフィットすぎんぞ宮藤!
リーネの心臓はやばいことになっているに違いない…w
338名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 17:24:26 ID:9OkiUy1O
ストライカーの震動でか?
339名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 17:45:28 ID:HUjvj4f2
レシプロエンジンは内部で複数のピストンが往復動してましてね……。
確かリーネのお尻のすぐ下あたりに魔道エンジンがあったはず。
340名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 18:08:41 ID:W5L66TMA
ストライカーを用いたプレイとは・・・
341名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 18:11:29 ID:qI2nON6s
エーリカ&ウルスラ話は複数の職人が書いてるはずなのにちょこちょこっと繋げあってるのがいいなあ
一体感を感じるというか
342名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 18:55:21 ID:W5L66TMA
やっと秘め声聞けた うるせえエーリカwかわいいなー
想像より子供っぽいなあw
343名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 20:24:22 ID:SqegJlFI
鬱っぽくなってしまうけど
きっとエーリカがネウロイにやられてもう助からないって知ったら
ウルスラは感情をあらわににして必死になって姉に会いに行こうとするんだ
ろうなぁ・・・としみじみ思った・・・・
344名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 20:57:47 ID:qI2nON6s
で、いざ駆け付けてみたら「ごめーんトゥルーデが早まっちゃってさー」なんてピンピンしてるんですねわかります
でも「来てくれてありがとう」なんてすごく喜ぶもんだから文句言えずに抱き締められちゃうウルスラだといい

エーリカは家族大好きなんだな、って実感した秘め声だった
ミーナに「家族」って言って貰えて嬉しいミーリカを夢想したよ
345名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 21:00:22 ID:UI5SpoHc
DVD4巻目の秘め声も記録集もネタの宝庫過ぎてフイタ
まだまだ戦えるぜ!
346名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 21:01:40 ID:62zgCnyi
エーリカの部屋汚いけど机の周りはきれいなんだよな。やっぱりウルスラにまめに手紙かいてるに違いない。
347名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 21:16:23 ID:XBiCunuu
エーリカん家は医者なのか
芳佳と接点できたな
348名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 21:41:50 ID:lnkcT6Pb
将来医者になりたいか…。
頼むから腹の中にガーゼ置き忘れとかはやめてくれよ。
349名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 21:52:51 ID:lWdphoqV
>>336
鈴木さんの書いたSS見たことないのかよー
あの人はこのスレに紛れててもおかしくないと思うぜ
350名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 21:52:59 ID:es2sC4G7
今回ジャッケトも記録集もよすぎる
本当によく考えてるな設定
351名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 21:58:44 ID:W5L66TMA
>>348
ヨシカが外科ペリーヌが内科ハルトマンが肛門科でいこう
352名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 22:11:02 ID:D/AaSWBs
エルマさんエイッカじゃないのか…
353名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 22:22:11 ID:D/AaSWBs
クリスマスに規制に巻き込まれたので生ぬるい目で見てください。
タイトルはメリークリスマスを君だけに。エイラーニャですよね多分。

12月25日。
それが示すのはクリスマス。もちろん聖夜って言ったって構わない。
まぁ、ネウロイの侵攻も熾烈を極めるこのご時世だが、それでもやはり、今夜だけはブリタニアも眩くライトアップされている。
クリスマスといえば街中はカップル、カップル、親子連れ、カップル、カップル、カップル、カップル、カップル、
カップル、親子連れ、カップルといった具合で、大量のカップルとエッセンス程度の親子連れが闊歩しており、なんとも独り身には辛い暗黒の日だ。
しかし、ご多分に漏れず私も今日はサーニャと夜間哨戒(デート)だ。

その見苦しいルビをやめろだって?

それは…ム・リ・ダ・ナ!!!!

このルビと隣のサーニャだけが私の荒んだ心を癒やしてくれる。
この心の支えがなくなったならば私はたちまち発狂して街に溢れるカップルを狩りに行きかねない。

あぁ、なんで私たちがデートを諦めて、夜間哨戒なんかに…いや、夜間哨戒(デート)なんかに行かなくてはならないんだ。
まぁ、考えてみればそれは当然のことであった。
なぜなら、私はネウロイにキリストの誕生日を祝う慣習があるなんて聞いたことはないし、
彼女へのクリスマスプレゼントを買いにロンドンまでやってくるネウロイだって見たことない。
なにより、家族と過ごすために有給を取るネウロイだなんて想像したくないよ。
だってそんなネウロイは撃ち落とせないじゃないかー。

つまりネウロイはクリスマスだろうがニューイヤーデーだろうがイースターデーだろうが年中無休。
一体お前はどこの大型チェーン店なんだって有り様だ。

まぁ、もしネウロイにクリスマスのご馳走を食べる慣習なんてあったならば、今日は特別な日だからロンドン塔食べちゃうぞー、
なんて言い出しかねないからどっちにしろ私たちにクリスマスを静かに過ごせる訳なんてないってことだ。

今日は私とサーニャの恋人になってから初めてのクリスマスだっていうのに…
私だって女の子なんだから今日ぐらいは好きな娘とデートがしたかったよ…
もちろん夜間哨戒(デート)じゃない正真正銘のデートの方だ。
今日のためにこっそりロンドンまで行ってきて、シルバーのペアリングなんて買ってきてしまうぐらいに私はこの日を楽しみにしていたんだ。
それが蓋を開けてみればデートはすっかり夜間哨戒(デート)に早変わり。
なんでネウロイの編隊の目撃情報なんてあるんだ。
それにしては空は全くもって穏やかだし、サーニャのアンテナにもなにも引っかかりはしない。
まぁよくある見間違いってやつなんだろうけど、なにも今日という日にそんなこと起こることないじゃないかー!!

サーニャもサーニャで、デートが潰れたっていうのになんだかご機嫌で、歌までとびたしている。
それがまた私の心を抉るんだ。
サーニャは私とのデートなんてどうでもよかったのかな…
サーニャは私のことなんて嫌いになってしまったのかな…
そんなことばかりが考えられて、すっかり私の心は塞ぎこんでしまう。
354名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 22:23:41 ID:D/AaSWBs
「エーイラ!」

がっくりとうなだれながら飛行していた私の腰に抱きついてくる小さくて愛しい影はサーニャだ。
引っ込み思案で、まだ隊のみんなともしっかりと会話するまではいかないサーニャだけれど、
2人で部屋にいるときや、2人っきりの夜間哨戒のときにはなんだかちょっぴり明るめで、抱き癖もあるみたいだ。
私の腰に手を回すサーニャの体はどうしようもなく暖かく、柔らかかった。
けれども、それでも私は少し不機嫌だった。

「なんでそんなに上機嫌なんだヨー!サーニャは私とデートしたくなかったのカヨ…。」

恨みがましく言ってみる。

「ふふっ…エイラったら可愛い。そんなこと気にしてたの?」

くすくすと笑いながらサーニャが答える。
その姿はとても幸せそうで、ますます私の心は締め付けられた。

「サーニャは私のこと嫌いになっちゃったのカヨ…?」

もうすっかり私の声からは元気なんて無くなっていて、絞り出したみたいなへなへなした声しかでない。
でも、あんまりにひどいと思うだろ?

「エイラ…?私はエイラと一緒ならいつだってデートだって思ってるよ?部屋にいるときだって、街にお出かけするときだって、それに夜間哨戒だってね。」

そう言ってサーニャがふわりと微笑む。

「でも、クリスマスに夜間哨戒ダゾ?サーニャはそれでもいいのかヨー?」

やっぱりやっぱり、イルミネーションのキラキラした明かりの下で手をつなぎながら雪をみたりしたいじゃないか…

「私はエイラとの夜間哨戒が世界で一番好き…。だってとっても広い夜の空にいるのは私とエイラの2人きり…。ここならどんなにエイラに甘えたっていいんだもの。」

私の腰に回るサーニャの腕がギュッとしまった。
なんだかサーニャの柔らかい感触が…少しおっきくなったんじゃないか?

「わ、私だってサーニャが一番好きダ!あぁ…サ、サーニャとの夜間哨戒が一番好きダー!」

思わず恥ずかしいことを口走ってしまった。
サーニャがニヤニヤと微笑んでいる。
355名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 22:24:33 ID:D/AaSWBs
「私もエイラが一番好きだよ。」

やっぱり聞かれてるよな…私の顔はすっかり火照っているのだろう。
夜風がひんやりと頬を撫でるのを一際強く感じた。

あっ、そういえば…恥ずかしいついでに済ませてしまえ!

「サ、サーニャ!渡したいものがあるんダ!」

私はベルトのポケットからしまってあった箱を取り出し、ぱかりと開ける。
サーニャに見られないように…

「エイラ、なぁに?」

サーニャがニコニコと私の返事を待っている。
くぅぅ…可愛いなぁ…。

「少し目を瞑っててクレ!」

そう言うとサーニャはすっと目を閉じる。
私はサーニャの目が閉じられているのを確認すると、少し迷ってからサーニャの小指にリングをはめた。

「もう、開けてもいいヨ。」

目を開けたサーニャは、優しく微笑むと、嬉しそうにくるりとロールした。

「でもエイラ…少し違うんじゃないかなぁ?」

サーニャが唇を突き出して不機嫌そうな顔をつくっている。
うっ…やっぱりサーニャには分かっちゃうか。

「な、なにを言ってるのか分からないナー!」

でもあまりにも恥ずかしくて、照れくさくて、私は知らない振りを決め込むこと
にした。

「この指輪、ちょっと大きいよ?ほんとは薬指にはめるんでしょ?」

そうだよ…それはサーニャの薬指に合わせて買ってきたんだ。
でも、薬指にはめたりしたらなんだか…なんだかプロポーズみたいじゃないか!
いや、本当はそのために用意してきたんだけど…

「そうだヨ…確かにそれは薬指用ダヨ…。」

恥ずかしくて、恥ずかしくて私の喉からはか細い声しかでない。

「嬉しいっ!」

サーニャがそう言って私に抱きついてくる。
うぅ…だから柔らかすぎるんだよ…なんだかネジがとびそうだよ…。
356名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 22:25:07 ID:D/AaSWBs
「そうだ、エイラ…私からも。」

サーニャが私に腕輪をはめる。
サーニャも用意してくれてたのか…どうしようもなく頬が緩んでしまう。

「お揃いだよ…?」

サーニャは頬を真っ赤に染めてうつむきながら手首を見せてくる。
確かにサーニャの手首にも私と同じものがついていた。
顔が再び熱を発しているのが分かる。
夜風が驚くほど心地よかった。

「じ、実は私のもペアリングなんダ!!ほ、ほら!」

私も薬指を見せる。
サーニャはもう耳まで真っ赤になってしまっていた。
すごくすごく恥ずかしいのに、なんだか、すごくすごく幸せだった。

そこで私はあることに気づいた。

「サーニャ、雪ダ!」

空からはふわりふわりと降りてくる真っ白な雪。
ブリタニアは暖流の影響でこの時期に雪なんてめったに降らないのに…
それは暖かいロンドンの街には決して降らなかったもの。
もしかしたら寒い夜の海上を夜間哨戒していた私たちに神様がくれたクリスマスプレゼントだったのかもしれない。

なんだか胸にあったかいものが溢れてきて私は我慢ができなくなる。

「サーニャー好きダー!!大好きダー!!実はその指輪はプロポーズなんダー!!」

どうしようもなく恥ずかしくて私は海に向かって叫ぶ。
そして私の手にサーニャの手が絡んだ。

「私もエイラが好き!!エイラのことが大好き!!私をエイラのお嫁さんにしてくださーい!!」

サーニャも海に向かって叫ぶ。
お互いの顔なんて見られはしない。
だって恥ずかしいじゃないか。

「こっちこそお願いダ、サーニャー!!私のお嫁さんになってクレー!!」

また海に向かって叫ぶ。
まるでロンドンの街まで聞こえるぐらい大きな声を絞り出す。
まぁ届くわけないんだけど。

「喜んでお受けしまーす!!私はエイラが大好き!!」

はぁはぁ…叫びすぎて、すっかり息を切らした私たちは長い間笑いあったんだ。
357名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 22:25:58 ID:D/AaSWBs
ーーーーーーーー

あぁ頭が痛い。
幸せだったんだ。
たしかに幸せだったんだ。
いや、今も幸せなんだけれど…それよりも頭の痛いことがあるんだ。

その痛みの原因は今日の朝刊だった。

朝起きて、2人で朝食に向かうとニヤニヤしたシャーリーに話しかけられたんだ。

「ようお二人さん!面白いものが載ってるよ!」

一体なんなんだよ、と朝刊の見出しを見るとそこには決して人事とは思えない記事が載っていたんだ…

‘ロンドンに降る愛の告白’

うん…なんだか身に覚えのある台詞が朝刊には載っていた。

そう、私たちは夜間哨戒の途中で…魔力を開放していて…それはサーニャのアンテナが発動してたってことで…。
つまりサーニャの声はもちろん、手をつないでいた私の声もしっかりとブリタニア中に届いていたんだ…。

しかも新聞にはしっかりと名前入り。
なんだか写真まで貼られている…
そう…私たちの立場は軍人ではあるものの芸能人のそれに近いものを持っている。
しっかりと身元は割れていて…つまり私たちは壮大な結婚会見を開いてしまったってことだ。
あぁ、頭が痛い…
サーニャも顔を真っ赤にしてうつむいてしまっている。
中佐…今日休んでいいかなぁ?

「エイラさん!!あなたたちのせいで記者がたくさん基地に来ちゃってるんですよ!!
しっかり弁明してきなさい!!」

あぁ、なんだか私はすっかり疲れてしまったよ…
これからのことを思うと心が重くなったけれども、私は右手に感じるサーニャの手を強く握った。

Fin.
358名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 22:31:51 ID:xD5PnOE4
やばいニヨニヨがとまらん
GJ!
サーニャがエイラのお嫁さん…
なんてすばらしい響きなんだ!
359名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 22:32:35 ID:D/AaSWBs
どうも皆さん本日もGJです。
zet4j65zさんの作品を見てから自分の中でのサーニャのアンテナは思いを伝える用です。

補足なんですがエイラさんとサーニャさんは二人とも夜間哨戒なのに武器を忘れてるし、それには最後まで気づいていません。
中佐はそれに気づいているんだけれども、恋人同士のエイラーニャのことを思って変わりに魔力をつかって警戒をしています。
まぁもっさんも来てくれて2人で手をつないで魔力を開放してるので中佐も不幸ではないという裏設定があったりするんだが自分はエイラさんしか書けないのでそっちはムリダナ。
とりあえず言えることはもっさんにはバリバリいちゃつくエイラーニャが見えています。まぁもっさんはわっはっはというだけなんですが。
あとは自分で書いといてなんだけど幸せの方程式の最終話前半は全員真っ裸なんですよね…そう考えるとお前らなにしてんだって思います。
そう意識して読むと印象がちょっとどころじゃなくアレですね…なんかすまん。

あと思いっきり最終話でミスしてしまいました。
管理人さん、できれば>>54の最後の台詞内の過ぎを好きに修正してください。ほんとすみません。
普段は誤字はあきらめるんですがクライマックスであれはあまりにもアレなんですみません。
携帯で執筆してるから予測変換怖い。
エイラとニパのカプの略を考えていたらエイラヤネンというどう見てもツッコミですなぶつが出来上がったのはエイラさんにも言えない秘密よ…なRU1ZZ/dhでした。

あぁ、あと忙しいからしばらく雲隠れするように書いてたんだけど、もう一本なんだかニパとエイラが性的な意味で撃墜しあう話が出来てしまったんだがこれどうしようか。
これ投下してしばらくROMに徹すると発つ鳥あと濁しまくりなんだが…
360名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 22:33:54 ID:9BQEazR7
くっはwwwww
これは……なんてダメージなんだw
361y4wjv0wX:2008/12/26(金) 22:56:02 ID:oxlRZdFh
GJ!
海に向かって叫び合う二人が可愛いww


季節は関係ないけど6レス投下します
タイトルは「髪を切る〜ゲルトとエーリカの場合」です
362名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 22:57:02 ID:oxlRZdFh
「ねえトゥルーデ、イチゴ狩りに行こうよ」
「イチゴ狩り?」
 それは秋も深まった、ある日の事だった。
 この所、ネウロイが現れない日が続いていた。その日の規定の訓練を終えると、もうやる事がなくなってしまう。だから私は、自室で本を読む事にしていた。読書の秋という事もあり、予想以上にページは進む。
 私は読んでいた『若きウェルテルの悩み』に栞(クリスお手製。犬の絵が可愛い)を挟むと、エーリカに向き直った。
「イチゴなど……この時期にあるのか? 今は秋だぞ」
 すると彼女は、分かってないなぁと言いながら笑う。
「基地の裏の森で、偶然見つけたんだよ。結構たくさん。まだ誰にも見つかってないから、行って採ろうよ」
「しかし……」
 正直、あまり気乗りしない。野イチゴを見つけてしゃぐような年齢は、とうに過ぎた。
「トゥルーデもさ、引きこもりなんかしてないで、外に出ようよ。せっかくの秋なんだから」
「なっ、引きこもりだと?」
「そーじゃん」
 そこまで言われるのは心外だ。私はただ、本を読んでいただけではないか。それを引きこもりなどとは。
「それに何、その本。なんか分厚いし、面白くなさそう」
「これはゲーテだ、エーリカ。まさか彼を知らないのか? 我がカールスラントきっての文豪だぞ」
「ふーん」
 エーリカは興味無さそうに、そして相変わらずニヤニヤと笑みを浮かべている。私は椅子から立ち上がった。
「……よし、いいだろう。付き合ってやる。どことでも案内するがいい」
 その言葉に、彼女は嬉しそうに相好を崩した。
「さっすがトゥルーデ! 愛しているよ、お姉ちゃん! ──じゃあ玄関で待ってるから、かごか何かを忘れずに持って来てね」
「あっオイ待て、エーリカ!」
 彼女は私の制止も聞かずに、手を振りながら出て行ってしまった。まるで騒がしい木枯らしが通り過ぎて行ったみたいだ。そういえばアイツの固有魔法も竜巻だったなどと、何となく考える。
 私は、やれやれと溜め息を吐く。何か、上手く乗せられてしまったような気がする。
「ふう……。そういえばエーリカの奴、かごがどうのこうの言ってたな」
 仕方なしに、私はかごを探し始めた。
363名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 22:58:54 ID:oxlRZdFh
×××

「トゥルーデ、お待たせー」
「随分遅かったじゃないか、エーリカ」
 彼女が私の部屋を出てから約三十分。指定の待ち合わせ場所には、何故か私の方が先に到着していた。
「さて、じゃあ行こっか」
 無邪気に歩き出そうとする金髪の小柄な同僚を、私は腕を組んだまま睨め付ける。
「どうして先に部屋を出たお前より、私の方が二十分も早く着いていたのか。些か疑問が残るのだがな」
「ははは。トゥルーデ、細かい事は気にしちゃダメだよ」
「だいたい、いつも言っているじゃないか。お前は何に対してもダラしなさ過ぎる。カールスラント軍人としての自覚が足りん」
「ハイハイ。そんな事より、先行くよ」
 そう言うと、エーリカはさっさと歩き出してしまう。しょうがない。帰ったらたっぷりと言い聞かせる事にしよう。私は部屋の隅から引っ張り出した金属製のバケツを掴んで、その背中を追い、石畳を走った。
 
「へえ、しばらく見ないうちに、ここも随分と様変わりしていたんだな」
 私はきょろきょろと辺りを見渡す。秋真っ盛りだった。城の外壁に巻き付く蔦は赤く燃えている。カエデやイチョウの葉は黄色く色付き、見上げた雲一つない青空と、見事なコントラストを成している。
 そんな木立の中を、私とエーリカはゆっくり進む。落ち葉を踏む度に、足の裏でサクリと軽い音が鳴る。かき集めて、501のみんなでヤキイモをするのも楽しいかも知れない。ホクホクのジャガイモにバターを溶かして、熱いうちに食べるのだ。きっと美味しいだろう。
「わたし達ウィッチはさ」
「ん?」
「普段は空ばっかり飛んでいるから忘れちゃうんだけどね。たまにはこうやって、地上を見て歩くのも大事なんだよ」
「──そうだな。その通りだ。エーリカのくせに、良い事を言うじゃないか」
「あー。トゥルーデがバカにしたー」
「いや、違うぞ。褒めているんだ、これは」
 軽口を叩き合いながら、私達は歩く。こんな素晴らしい景色を見る事が出来たのだ。エーリカには感謝してもし切れない。──何となく悔しいから、口には出さないが。
364名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 23:00:25 ID:oxlRZdFh
「それにしても、結構遠くまで来たな。まだ着かないのか?」
 振り返ると、基地の尖塔は遥か遠く、木々に隠れて見えなくなろうとしていた。
「あともうちょっとだよ」
「こんなに遠いのなら、先に言え。今ネウロイが現れたらどうするんだ。警報が鳴っても、私達はすぐには出撃出来ないじゃないか」
 私の言葉に、エーリカは誤魔化すように笑う。
「その時はその時だよ。それに大抵のネウロイなら、わたし達がいなくても大丈夫でしょ」
 自然の美しさに心が寛容になったのか。はたまたその無邪気な笑顔に毒気を抜かれたのか。いずれにせよ、彼女を責めようという気は既に失せていた。
「確かにな。しょうがない、その時は私も一緒にミーナに叱られてやるさ」
「あっ、トゥルーデ優しー」
「おいっ、エーリカ! コラっ、離れろくっ付くな──」

×××

「ほら、着いたよ」
 エーリカが指し示したそこは、イチョウの林の間に広がる僅かなスペースだった。
「成る程……これは確かに凄いな」
 そして、たわわに実をつけたブラックベリーの木が一本、二本、三本──沢山。数え切れない程沢山の木が自生している。実はどれも黒ぐろと熟し、見るからに甘そうだ。
「よくこんな場所を見つけたな、エーリカ」
「えへへ、スゴイでしょ?」
 自慢げに笑う彼女。私達は木に近付き、その黒真珠のように輝く実を一つ摘んだ。
「ん、甘い」
「そうだね」
 口に含むと、甘い果汁とそしてほのかな酸味が舌に広がる。とても美味しい。私とエーリカは、一つ、二つと摘んでは口に入れていった。
 クリスにも食べさせてやりたい。私は、今も病院にいる妹に思いを馳せる。
「何か言った、トゥルーデ?」
「いや。──それよりエーリカ。いつまでも食べてないで、隊のみんなにも摘んで帰るぞ」
「りょーかい」
 十五分とかからずに、私が持参したバケツは一杯になった。辺りはブラックベリーの甘い芳香が充満している。
「そろそろ陽も傾いてきたね。帰る?」
 果汁でベトベトになった指を舐めながら、エーリカが言った。
「そうだな」
 私の指もベトベトで気持ち悪いけど、流石に舐めてそのまま、というのには抵抗がある。帰ってから水で洗う事にしよう。
 私達は来た時と同様に、並んで歩き出した。
365名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 23:02:15 ID:oxlRZdFh
 イチョウの木立の中を、二人で進む。降り注ぐ木漏れ日は黄金色。時折、イチョウの葉がはらりと舞い散る。そうして出来た黄色の絨毯の上を、私達は戦利品を手に凱旋する。
 不意に、強い風が吹いた。落ち葉がくるくると螺旋を描いて舞い上がる。小さな突風は様々なものをかき乱して、瞬く間に吹き抜けて行った。
「うわあ。今の、スゴい風だったね」
「全くだ」
 私は手の甲を使って、不器用に乱れた襟元と髪を整える。ブラックベリーの汁を付ける訳にはいかない。作業は難航した。
 しばらくそんな私の様子を見ていたエーリカだったが、ふと口を開く。
「もしかしてさ。トゥルーデ、髪伸びた?」
「髪?」
 言われて気付く。そういえば最近、朝髪を結ぶのにかかる時間が以前より増えた。
「確かに。伸びてきたな」
 前回切ったのはいつだっただろうか。思い出せない。面倒だから自分で切ろうか、などと思案していると、エーリカが瞳を輝かせながら口を開いた。こんな表情の時の彼女は、何かろくでもなく事を考えているに違いない。
「トゥルーデ、わたしが切ってみてもいい?」
「却下だ」
 やはりそう来たか。
「えートゥルーデのケチ。何でダメなの?」
「お前に任せたら、どんな髪型にされるか分かったものじゃないからな」
「切らせてー切らせてー」
「どこの子どもだ!」
 とは言うものの昔からこのような場合、折れるのは大抵が私の方だった。だから基地まで戻った時、いつの間にか自分で部屋を掃除するという約束で、エーリカが髪を切るという事になっていた。

×××

「じゃあ切り始めるよ。トゥルーデはわたしがいいって言うまで目を瞑っていてね」
「……ものすごく不安なんだが」
 基地内の私の部屋。私は椅子に座らされ、頭からポンチョを被っている。そして背後には両手にハサミを装備したエーリカ。先程から切れ味を確かめるように、しきりにぎっちょんぎっちょんしている
……嫌な予感しかしない。
 ちなみにバケツは、キッチンで宮藤とリネットに渡した。今夜のデザートはブラックベリーパイになるそうだ。
 私が瞳を閉じたのを確認して、エーリカは髪にハサミを入れ始めた。
366名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 23:03:53 ID:oxlRZdFh
 その時。
 ぢょっきん。
「あ」
 不吉な、とても不吉な音がした。
「……」
「……」
「……なぜ黙っている」
「……え? 何の事?」
 思わず私は、目を開けて自分の髪を確認したい衝動に駆られた。多分、恐ろしい事になっているのだろう。
「だからお前に任せるのは嫌だったんだ」
 何か、泣きたくなってきた。一カ月位、誰にも会わずに引きこもりたい。
「べ、別に失敗したわけじゃないよ」
「嘘をつくな、嘘を」
「嘘じゃないってば。ここをこうやって──」
 エーリカの指が、私の頭の上を忙しなく動く。
「ここを切って──」
 チョキチョキ、チョキチョキチョキ。
「こうすれば──」
 髪が結ばれて。
「──完成。トゥルーデ、目を開けてもいいよ」
 私はその言葉に、恐る恐る目を開けた。鏡の前まで歩く。目の前を見た。
「な──」
 そこ、つまり鏡の中には、いつもと少しだけ違う私がいた。どこにもおかしな所はない。むしろ、切る前より良くなった気がする。
「ね、失敗なんかしてないでしょ?」
 いつの間にか後ろまで来ていたエーリカが、悪戯の成功した子どものように笑いながら言う。
「あ、ああ。そうだな。疑って悪かった。礼をしなければな」
 するとエーリカは、とんでもない事を言った。
「お礼ならキスでいいよ」
「なっ! き、キスだと!?」
「うん。キス」
「で、出来るかっ!」
 顔が熱い。ちらりと見えた鏡の中の私は、耳まで真っ赤だった。
「キスなんて普通じゃん。何も口にやれっていうんじゃないよ。頬っぺたでいいから」
 エーリカはここ、と言って笑いながら自分の頬を指差す。私は覚悟を決めるしかないようだ。ゴクリと唾を飲み込む。
「い、いくぞ」
「うん。いつでもいいよ」
 余裕の笑みすら浮かべて瞳を閉じる彼女。私の心臓はドクドクと、痛い程に早鐘を打つ。握り締めた手が汗に滲む。無邪気に瞳を閉じている彼女。
 私はふと、エーリカのその余裕に満ちた表情を、壊してみたくなった。
 近付く距離。顔と顔。互いの息遣いさえ感じられそうで。
 だから私は、頬ではなくその唇に──
 そっとキスをした。
367名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 23:05:21 ID:oxlRZdFh
「──!」
 驚きに見開かれる彼女の瞳。その顔を見て、私は達成感にも似た、深い満足を覚えた。
 私は彼女の小柄な躰をそっと抱き寄せる。抵抗はない。彼女は、全てを私に委ねていた。
 私の両腕にすっぽり収まってしまう程小さな躰。こんなに小さくて頼りなさそうな躰で彼女は空を翔け、誰よりも果敢にネウロイと闘うのだ。そして守るのだ。仲間を誰一人失う事のないように。そんな彼女が愛おしい。守りたい。
 私達は、どちらともなく瞳を閉じた。長い長い、キスだった──。

×××

「ズルいよ、トゥルーデ」
 すっかり陽も落ちて、明かりの灯った私の部屋。少しだけご機嫌斜めのエーリカと少しだけ機嫌が良い私は、ベッドの上で向かい合って座る。
「頬っぺたって言ったのに」
 取りあえず私はしらばくれる事にする。
「ん? 何の事だ?」
「もう! だからキスの事!」
 そう言いながらも、彼女の顔は面白い程サッと赤く染まる。終には、あ〜とかう〜等のうめき声を上げて枕に突っ伏してしまった。私はその様子を意地悪くニヤニヤと笑いながら見る。
「まあ、少しは悪かったと思っているさ」
 反省はしないけど。
 エーリカがようやく枕から顔を上げた。まだもう少し機嫌が悪そうだ。これからしばらくは、何も言わずに彼女の言う事を聞くようにしようと思う。説教も無しだ。
「でも──」
「どうした?」
「嫌、じゃなかったよ」
 ようやく見せたエーリカの笑顔。つられて私も笑う。
 私達は顔を見合わせて、いつまでも笑っていた。

おわり


以上です。
普段はエーリカに振り回されているけど、たまに優位に立つお姉ちゃんもいいよね。
今回の「髪を切る」は、エイラーニャの時よりも掛け合いというか、会話のテンポを意識して書いてみました。気が向いたら他のキャラの組み合わせでも書いてみるかも。
それでは、お読み頂いてありがとうございました。
368名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 23:17:25 ID:WvvSdzPw
            /´ ̄ ̄ ̄`ヽ
           /          \
          |`     |\   |  |
          ) /\ /  !/ /)\
          【/V  V  <L/ヽゝ)I
           { $  〓   〓 \|
           v/          |   
          <I\   I ̄ ̄ )   )/| >>367
           〕ч\   ̄ ̄  ノ川 ̄   ゲルトさんがとてもかっこよくてよかったとおもいます
          / ||   ̄| ̄/ ̄ ̄  ミミ
          (  a | ̄く ̄  ̄ ̄ノ ミミ
              \ノl\  У    ミ
            /   ^\/  |
           / ノ|   |   〕\
         / /  |   <    ノ \
        / ノ    /    /    \  \
         ̄    |    |    |\ |
             |    |    |   ̄
              〕    |     〕ヽ
            /|   /\    |ノ
            / /    > - -<   |
           ⌒/   /   \   |
             ̄| ̄|ヾ  |\ノ
              |  /    | |
              | /     | |
              |ノ      \/
GJ!かわいいなあエーリカ・・・秘め声聞くとテンパるとあわーうわーってなっちゃうみたいだねw
369名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 23:51:46 ID:zVEaPXdF
>>359
最初っからお空でデートする気満々じゃないですか! デートで済んでないじゃないですか!
気恥ずかしいぐらいのエイラニャは最高ですぜ……お嫁さんにニヤニヤw
なお性的な意味で撃墜しあうのも詳しくお願いいたします。

>>367
驚いてるエーリカ可愛すぎる!
髪切りながらドッキリ仕掛けといてなんだその体たらくは! もっとやれ!
得意そうなおねえちゃんもいいですねぇw ここぞとばかりにニヤニヤしてそう。
370名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 23:53:08 ID:D/AaSWBs
>>367GJ
一応書き上げたことだしやっぱ投下することにしたよ。
ニパとエイラの行為あり。でも全然耽美じゃない罠。できるだけバカな感じに書いた。

雪の様に白い肌。
色素の薄い淡い金色の髪。
真っ直ぐな瞳。
全てが私の脳髄をとろけさせる。

別にそんなつもりじゃなかった。
私たちはそんな関係なんかじゃ決してなかった。
どうしてこんなことになったのか…

お前が幸せそうに笑うから。
お前がそんなことを言うから。
どうしようもなく寂しかったから。
今日がクリスマスだから。
背伸びしてお酒を飲んでいたから。
私は言い訳だけはたくさん持っていた。

でも、本当の答えは存外に単純で…それはつまり、お前に惹かれていただけってことだ。

ーーーーーーーー

今日は1942年の12月25日。
12月25日がなんの日か知らないやつはいないだろう。
そう、もちろんクリスマスだ。
それはスオムス、カウハバ基地においても例に漏れずにやってきており、戦時中だっていうのに基地はすっかりとクリスマスの様相を見せていた。

「アー!!なんだかイライラすんナ!」

しかし、そんな楽しい雰囲気をぶち壊すかのように私は不機嫌な声を発する。
別にクリスマスが嫌いな訳ではない。
もちろんクリスマスは好きなほうだ。
でも腹に据えかねることもあった。
ただそれだけの話だ。

クリスマスパーティーだって開いたし、エル姉からクリスマスプレゼントだってもらった。
それでも私のイライラは消えはしない。
まぁ、原因なんて些細なことさ。
基地には何人か来客もいて、そこには銀髪のいけ好かない‘アイツ’もいたってだけだ。
‘アイツ’はあの中隊が解散した後だって定期的にスオムスにやってくる。
いや、なにも定期的にやってくるのは‘アイツ’だけではない。
あのメンバーは全員が全員、なにかと理由を見つけてはスオムスにやってくる。
まぁさすがに扶桑のヤツらはそう頻繁に来たりはしないが…
でも、私が苛立つのは‘アイツ’が来たときだけ。
それは‘アイツ’がふらりとやってくる理由を知っているから。
‘アイツ’が来ると大切な人が目を輝かせるから。
そして、大切な人の気持ちを知っているから。
371名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 23:54:12 ID:D/AaSWBs

「そんなに荒れんなよ、イッル。」

ニパが私を諫める。
だがそんなこと言われたからってなんだっていうんだ。
現実は変わりはしない。

「うるさいナー!ニパに私のなにが分かるって言うんダ!」

大切なあの人はやっぱり今も‘アイツ’といて、幸せそうに笑っているのだろう。
そう考えるだけで私の心はキリキリと音をたてる。

「ほらほら、あんまり苛立つな。食堂からくすねてきたから酒でも飲もう?きっと
楽しくなるさ!」

そう言ってニパがボトルを見せる。
私たちはまだ13だ。冬の寒さを耐えるために流し込まれたことはあるけど酒盛りなんてしたことはない。

「ふん、面白そうじゃないカ。ちょっとだけ付き合ってやるヨ。」

ニパからグラスを受け取る。
どこまでも透明な液体だけが今の私を惹きつけた。

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「エル姉のバカー!!!」

すっかり酔いも回ってきたけど、別に機嫌がよくなる訳ではなかった。

「おいおい、エル姉に聞こえるぞ?」

ニパが私を諭す。

「別にいいよ。どうせイチャイチャしてて聞こえねーヨ。はぁ?イチャイチャなんてしてねーヨ!私が許さねーヨ!」
「イッル…お前の言っていることが分からないよ。自分の言ったことに怒るな。」

でも、どうしようもなくイライラするんだ。
‘アイツ’はちょっと背が高いだけで、ちょっと大人なだけで、ちょっとエル姉と早く出会っただけで…全部私は負けているから。
一個だって勝てやしない。自分は負けてばっかりだ。
なんだか熱いものが目から溢れ出してきた…

「まぁ、エル姉も今頃お楽しみかもな。」

そう言ったニパに、どうしようもなく、どうしようもなく腹がたって…私はニパをベッドに押し倒した。

「エル姉はそんなことしナイ!エル姉をそんな目でミンナ!エル姉は私の…私の…」

言葉が続かない。
私にはなにもできない。
私が生まれて初めて守りたいと思った人の中にいるのは‘アイツ’。
それが私の胸を締め付け続けるんだ。
372名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 23:55:18 ID:D/AaSWBs
「泣くなよ、イッル。」

ニパが私を抱きしめる。
とくん…とくん、と確かにリズムを刻むニパの心臓の音だけがやたらと大きく聞こえていた。

「泣いてなんかネーヨ!」

私を包むニパの暖かさがどうしようもなく嬉しいのに、私は素直になんかなれやしなくて、突っぱねてしまう。

「でも、イッル…それならそんなに悲しそうな顔するなよ。」

私には自分がどんな顔をしているかなんて分かりやしない。
だが、ニパがそう言うならそういうことなのだろう。

「私じゃ…ダメか?」

飛び込んでくるニパの言葉。
今、なんて…なんて言った?
聞き間違いだよな…

「私じゃエル姉の代わりにはならないか?」

私の頭を包むニパの腕に力がこもる。
私の耳に入る言葉はどう聞いてもニパの言葉で…そして、決して聞き間違いなど
ではなかった。

「どういう意味だヨ…?」

それが今の私の素直な気持ちであった。
ニパの言葉が何度も頭の中でこだまして、脳を揺らす。
バカな私には、お前の言いたいことが分からないんだ。

「イッルはヒドいやつだな…。わ、私がお前を好きってことだよ。」

女の子にそんなこと言わせんな!とニパが文句を言う。
お前は女の子なんてガラじゃないだろ…なんて決して言えやしなかった。
なぜなら頬を朱に染めあげてうつむくニパの姿はいつもとは全然違っていて…私の胸に響いていたから。
ニパ?私にとってニパってなんなんだ?
敵?ライバル?相棒?それとも…。
ただ分かることは、私の頭はニパのことでいっぱいで…ニパのことしか考えられなくなっていたってことだけだ。

「エル姉の代わりでいいのカヨ…?」
「今はそれでいいさ。すぐに一番になってやるからさ。」

そう言ったニパの言葉は真っ直ぐで…とても真っ直ぐで、私ばかり曲がってはいられはしなかった。

「本当にいいのカ?」
「しつこいな。いいって言ってるだろ!」

ニパから口付けが落とされる。

「これが証明だ。分かったか?」

微笑むニパの顔だけが私の頭を占拠する。
それは私にとって初めての体験で、それでも決して嫌ではなくて、私はすっかり揺さぶられてしまっていた。

「ふん、じゃあ私は断るヨ!」

私はニパへと言い放つ。
しゅんとしたニパの顔だけがやたらと印象的だった。
373名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 23:56:25 ID:D/AaSWBs
「ニパなんてエル姉の代わりになるか!!私は…私だって代わりなんかじゃなくお前が好きダ!!」
「イッル!!お前…私をからかったな!!」

これはちょっとした反撃だ。
随分お前の言葉にドギマギさせられたからな。
ごめんと謝る代わりに今度は自ら口付けを落とす。

「このまま…するのか?」

ニパのいきなりの言葉に私は動揺する。
よくよく考えてみたならば、今の私たちの状態はベッドの上にニパを押し倒した
私がそのまま覆い被さっている。
それはどう見ても情事のそれであった。

「ニパのスケベ。」

そう耳元で呟いてやるとニパの顔はみるみると紅潮していく。
ふぅん、なかなかどうして可愛らしいじゃないか。
そう思い、ニパの胸に顔をうずめてやる。

「ひゃっ!い、いきなりなにするんだ!!」

突然の私の行動に驚いたのか、ニパの身体がビクリと跳ねる。

「エッチなニパの考えてるコト〜。」

ニパの顔がますます紅潮していく。
ふふ、恥ずかしいこと考えてたみたいだな〜。

酒の入った身体は熱く、服なんて邪魔なだけだった。
私はニパの衣服を剥ぎ取る。

「ぺたんこじゃなかったんダナ。」

そう呟いた私にニパが文句を言う。

「失礼だな!エル姉なんかよりよっぽど大きいさ!!」
「それは圧倒的なマジョリティだ!自慢になんてなりやしないゾ!」
「意外とヒドいこと言うじゃないか…。」

私たちは笑いあう。

ニパの身体は、真っ白な肌が上気してほんのり赤く染まり、なんだか…なんだかとても胸がドキドキした。
短く整えられた淡い金髪からは、ふわふわと甘いにおいがして、私の頭をクラクラさせる。

私はニパの髪をさらりと撫でると、ニパの胸に手を這わせた。

胸を、髪を、背中を、尻を、ただ撫でるだけ。
決して強くは触れず、壊れものを扱うように撫であげていく。
ニパの身体は時折ピクリと震えては、私にしがみつき、私の胸に顔を埋める。
それでも私はニパの身体をなぞるだけ。
374名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 23:57:16 ID:D/AaSWBs
「はぅ…イッル?も、もっとさ…?」

私は決して核心には触れず、ニパの反応を楽しむ。
ニパの身体を下着の上からさらりと撫であげる。
外側から内へ内へむかって手を這わせると、ニパからか細い声が漏れていく。

「はぅ…はぁ…。」

声が確かに紡がれ、そして乞う。

「イッル…。」

ニパは熱で浮かされ、私に情念のこもる眼差しをむける。
そこに含まれるのは希望か欲情か、はたまたそのどちらもなのか…

そんな瞳で見入られたら仕方のない。
私はニパの胸を覆う布きれをめくりあげると、ニパの主張するそれへと舌を這わせる。
一際大きく身体を震わせたニパは、私の頭を押さえつけて離さそうとしない。
なんだかその姿が可愛らしくて、私はふふっと笑みを浮かべた。

「な、なに笑ってんだよ…。イッルって意外じゃなくヒドいやつだよな。」

ニパがそう呟く。

「ソウカ?私がなにしたって言うんダ。」

分からないととぼけると、私はニパのズボンへと手を伸ばす。
軽く尻を撫でると、ニパの体はビクリと跳ね上がり、私へとしがみつく。

「ニパはやらしいナ。」

そう耳元で囁くと、ニパは耳まで赤く染めた。

「お前がそうさせたんだろ。」

抗議でもするかのごとくニパは語調を強める。
でもそれは、私の心に火を灯すだけだ。

「ふぅん、じゃあニパは私にやらしいことされるのが好きってことダナ。」
「イ、イッルだけだからな!!」

すっかり顔を真っ赤にして、ニパが叫ぶ。
ヤバい…こいつすごく可愛いかもしれない。
私の胸に頭を預けるニパの顔を引き起こし、口付けを落とす。
嫌がっても知るものか。
そんなに可愛いことを言ったニパが悪い。
そうに決まっている。
深い深い口付けの中、ニパの舌がおずおずと差し出された。
私は再びニパをギュッと抱きしめると、ニパの舌を撫であげる。
それに反応しているのか、腕の中のニパの身体がそわそわと震えだす。
私の方の我慢がきかなくなってきた。

「脱がすゾ?」

ニパからこくりと頷くだけの返事が返ってきたのを確認すると、さっさとめくりあげた上着と、ズボンを取り払う。
…変だ。おかしい。
私たちは女どうしなのだから風呂にだって一緒に入る。
だからニパの身体なんて見慣れている。
なのに、どうしてここまで胸が高鳴るのか…自分が脱がしたから?
それともニパの身体からたちこめるいつもとは違う女の子の匂いのせい?
375名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 23:58:11 ID:7vI15fgm
支援
376名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 23:58:22 ID:D/AaSWBs
「あ、あんまり見るなよ!しかもなんでイッルは一枚も脱いでないんだ!」

ニパから抗議の声があがる。
それでも、私はニパから目を反らせはしなかった。

「わ、私も脱がすからな!」

ニパはそう宣言すると私のベルトへと手をかけた。
スルリと脱がされていき、あっという間に私を覆うものは下着だけとなっていた。
脱がされるという行為が、これからする行為を強く連想させ、私の身体を強ばらせる。
こ、これは恥ずかしいじゃないかー!!
ニパが下着へと手をかける。

「ダ、ダメッ!」

私はニパの手を押さえつけてそれを阻む。

「脱がなきゃ始まんないだろー?」

そんなこと言われたって恥ずかしいものは恥ずかしいんだ。

「わ、私はイイ!」
「そんなこと許す訳ないだろ!!」

ニパの腕にこもる力が強くなる。

「わ、分かっタ!自分で脱グ!自分で脱ぐカラ!!」

ニパに脱がされるのも自分で脱ぐのも結局はさらすことに変わりはないというのに、私の羞恥心はそれを是とはしなかった。
ニパの手が離れる。

恥ずかしいならさっさと済ませてしまえ。
そう思った私は上着を脱ぎにかかった。

「私ばっかり恥ずかしい思いしてたまるか!!」

突然のニパの声。
上着を脱いでいる私に抵抗はできなかった。
ニパの手は私のズボンをつかむと、するりと脱がした。
顔が熱くなっていく。

ぬ、脱がされた…
ニパに、ズボン、脱がされた。
顔から火がでそうになる。

「ヒ、ヒドいじゃないカー!!恥ずかしかったんダゾ!!」
「イッルだって私のズボン脱がしたじゃないか!!私だって恥ずかしかったに決まってるだろ!!」

でも、まさかあんなに恥ずかしいとは思わないじゃないかー!
なんにせよこれで私にもニパにも覆い隠すものなどなにひとつ存在しない。
もう来るところまで来てしまったてことだ。

「じゃ、じゃあするゾ?」
「あ、あぁ。」

私はニパの胸へと手を伸ばす。
ニパのそれはすっかりと主張しており、それを指で転がす度にか細い喘ぎ声が漏
れる。
撫で、摘み、そして舐めあげると、それはますます主張を強くする。
377名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 23:59:30 ID:D/AaSWBs
「気持ちいいカ?」
「はぁ…はぁ…。そん…なこと…聞く…な!」

それを肯定と受け取った私は行為を更にエスカレートさせ、手を秘所へと伸ばす

そこは既にとうとうと蜜を溢れださせ、しとどに濡れていた。

「なぁ、ニパ?すげー濡れてるゾ?やらしいやつだなーお前。」

ニヤリとしてそう言うと、ニパが顔を真っ赤にする。

「イッルはもっとデリカシーを持て!!」

ニパが怒りを露わにした。
これ以上機嫌を損ねられたら堪らない。
私はニパに口付けを落とすと、指を秘所にあてがい、ゆっくりと中へと沈めた。
熱い…。
濡れそぼったそこは、私の指をゆっくりと受け入れていく。

ニパが一際高い喘ぎ声を発する。
その声が私の神経をヒドく刺激し、興奮を高めていった。
ニパも興奮しているのだろうか?
私の動かす指に逐一反応しては喘ぎ声を返す様が強く私を堕としていく。

「ん…はっ!んん…」

溢れだす蜜の量はますます増し、激しく腰をくねらせるその姿はどうしようもなく扇状的であった。

「私…もうっ…。」
「イキそうなのカ?」
「そん…なこ…と、聞くな!」

しかしどう見てもそれはニパに近づいていた。
私はトドメとばかりにニパの核を弄ぶ。

「ダ…メだ、そこは…。」

ニパは腰をくねらせて避けようとするが私は逃がしはしない。

「ふぁ…んん!!」

ニパは一際大きく仰け反るとはぁはぁと荒い息をあげた。
よし、撃墜1…と。
自らの付けた初スコアに頬が緩む。
これはネウロイを初めて撃墜したときより嬉しいかもしれない。

「イ、イッル…?私ダメだって言ったよな?確かに言ったよな?」

あ、ヤバい。
ニパがどう見ても怒っている…興奮してやめられなかったなんて言えないしなぁ。

「せ、戦場で気を抜くとどうなるかを身を持って教えただけダ…。」

ニパがニコリと微笑む。

「そうか、ありがとな…じゃあ私も正しい撃墜のされ方を教えてやろうか…。」
「い、いや…私…撃墜されたことないから…必要…ない。」

ジリジリと距離を詰められる。
ネウロイとの戦いは怖いなんて思ったことなどないのに、ニパの笑顔がどうしようもなく怖かった。
378名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 00:00:04 ID:D/AaSWBs
「恥ずかしながら私は被撃墜のプロフェッショナルだからな…もしものためにイッルにその技を託してやるさ。」

いらない…そんな技いりはしない。
ニパときたらしっかり私を獲物と捉えたらしくて、手をわさわさとしている。
どうも挑発しすぎたみたいだ…引き際を間違えた。
そんなことを今更思っても当に後の祭であって、なんの意味もない。
現にニパは怒っていて、私を標的にしている…

「ゴ、ゴメンネ?」

精一杯可愛らしく謝ったら許してくれるんじゃないかと望みを託してみる…

「なんで疑問のニュアンスが内在してんだよ!!」

どうしよう…更に怒らせてしまった。

「ニ、ニパのスケベ!!」

文句を言ってみる。

「自分を棚にあげるな!!それに私も!イッルに!やらしいことしたい!!」

どうしよう…やらしいことを肯定されてしまった。
これからニパとどう付き合っていけばいいんだ…
いくらお酒がはいっているからってはじけすぎだぞ…絶対朝には後悔するよ?

「やっぱり許してくれナイ?」
「許すとか許さないじゃない!私にも反撃させろ!!」

そう叫ぶニパの声だけが頭に響いていた。

ーーーーーーーー

結局その後、話し合いによる解決はなされず、戦争が勃発した。
両者、撃墜、被撃墜の山を築く総力戦の様を呈した。
撃墜スコアは…きっと負けてないと信じている。
まぁただ一つ言えることは、勝ち星はニパを一生からかうネタを手に入れた私につくということだけさ。

Fin.
379保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2008/12/27(土) 00:07:24 ID:DInj5UPy
やっぱクリスマス明けに投下できる強者はいないか……と思っていたら3本連続でキター!
>>359
積極的なサーニャはたまらん!!GJ!!愛伝わりまくりですね。
でもって>>378!!こここっここれはいいニパじゃまいか。それになんやかやとドキをムネムネさせられるエイラが素晴らしい!!
あと本文修正しました。

>>367
まさかの続き!!「ぢょっきん」で盛大に吹きそうになったが
何とも素敵なオチになっちゃってもう本当エーリカ愛し過ぎる。GJ!!


あと業務連絡。管理人が明後日から年越し出張のため、帰って来れるまで保管庫は更新できません。
再開は1月5日以降になると思います。忙しいときに役に立たなくてすいません。
この勢いだと多分年内には埋まると思うので、次スレに行ったらどなたか保管庫のアドレスにログのdatを添付で送っていただけるとありがたいです。
件名本文ナシでいいので手の空いている方よろしくお願いします。
380名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 00:10:08 ID:mhF5AgZC
そういえば思ったよりも沢山幸せの方程式には感想をもらえて嬉しかったです。
いつもお礼を言おうと思うんだけど忘れてしまって申し訳ない。
しかしそれにしても>>94が面白すぎて自分の作品要らなくね?って感じで涙目。

今回の作品は本当は思いっきりアレな感じにしようかと思ったけど自分の文体と好みでこうなった。
どう見ても自分の文には情緒が足りない。

最後に管理人さんの仕事が速すぎて感動した。有難うございます。いつもご苦労様です。
ではしばらくROMに徹しようと思っているRU1ZZ/dhでした。
381名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 00:15:12 ID:o8c53C5N
誰かサニャリカを
382名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 00:33:51 ID:mhF5AgZC

どうもRU1ZZ/dhですがタイトル忘れてましたすみません。
タイトルはキミが一番に変わるときです。
383名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 00:46:34 ID:GVhnS09U
こんばんは。mxTTnzhmでございます。

>>359 RU1ZZ/dh様
GJ! 性的な意味で(ry も気になります。わっふるわっふる
……と書いてたら>>378で投下とは! こちらも超GJ!

>>367 y4wjv0wX様
GJ! 驚くエーリカ、ちょっとオトコマエなトゥルーデが良いですね。
雰囲気もお見事です!

>>379 保管庫様
毎度毎度乙です。出張お気をつけて行ってらっしゃいませ。
あと風邪とかお身体にもご注意を。最近寒いですから。


さて、今回はクリスマス後日談と言う事で書いてみました。
>>65-71「christmas panic」、>>90-91「nest」、>>132-138「christmas resistance」
>320-322「saintly knight」の続編、と言う事で宜しくお願いします。
トゥルーデ×シャーリーメイン? でいきます。
保管庫No.450「ring」シリーズも一応絡んでますので、よしなに。
384talk to me 01/05:2008/12/27(土) 00:47:37 ID:GVhnS09U
501の“クリスマス戦線”で大活躍したシャーリー自作のバーベキューグリル。
ルッキーニが「もっと食べたい!」とねだるので、
シャーリーはロンドンへの用事ついでに市場で大量の肉、野菜を買い込んで来た。
外は寒いが、流石に部屋の中でやる訳にはいかない。グリルから出る煙で窒息してしまう。
そこでロビー脇の広いバルコニーを貸し切り状態にし、今日もシャーリーは煙と向かい合う。

ぼけっと椅子に座り、バーベキューグリルから出る煙を見ているシャーリー。
そんな彼女の姿に気付いたトゥルーデが声を掛けた。
「何をしているリベリアン。炭焼き職人に転職でもしたのか?」
「あー堅物か。ちょうど良かった。退屈過ぎてあんたの国の哲学者が言う“善悪の彼岸”の彼方へと意識が飛んじまうとこだったよ」
「全く……。そのグリルはこの前のクリスマス用じゃなかったのか」
「一度作れば何度でも使えるのが、このバーベキューグリルのいいところさ」
トゥルーデはシャーリーご自慢のバーベキューグリルを見た。
整備員から分けて貰った空のドラム缶を綺麗に洗浄し……それでもトゥルーデには機械油の臭いが鼻についたが……
縦真っ二つに切り、横にしつらえ蝶番と取っ手を付け、脚と煙抜きの筒を付け、中央には肉や野菜を置く網を敷き、
底に炭を置く頑丈な篭枠をしつらえ、その更に下には火力調整用の簡単な空気弁を付け……
なるほど、機械いじりが得意なシャーリーにすれば、この程度の工作は朝飯前なのだろう。
「リベリアン。お前が好きなのはバーベキューだよな?」
「ああ、好きだよ。得意料理のひとつさ」
「この装置は、蒸し焼きと言うか薫製の装置に近くないか?」
細かい部分を観察しながら、トゥルーデがシャーリーに問い掛ける。
「そうだね。これがあたしの国のリベリオンで言う、ホントのバーベキューなのさ」
「では、たまにお前が派手に火柱を上げながらやっているあれは何だ?」
「あれも、……まあバーベキューなんだけど、『グリル』だね。手軽で豪快なのが良いのさ」
シャーリーは“彼岸の彼方”に片足がついているのか、妙に覇気がない。
「大丈夫かリベリアン。いつもの元気が無いぞ?」
「いやあ。クリスマスの夜さ……」
言いかけて、シャーリーは言葉が止まった。グリルからもくもくと出る煙を見る。
つられてトゥルーデも暫し煙を眺めていたが、面白くも何ともない。
「どうしたリベリアン、言いたい事が有るなら最後まで話せ。私なら他と違って口も堅いぞ」
「何処までも堅いんだね。流石堅物、か」
そうぼやいた後、シャーリーは椅子に腰掛けたまま頬杖をついた。ふと、言葉が出る。
「このバーベキューグリルはさ。炭と薪で温度を調節しながら、じっくり弱火で蒸し焼きにするのさ。
半日からまる二日かけて焼く人も居る。そうやって焼いた肉は、身がメチャクチャ柔らかくなって、
子供からお年寄りまで誰でも食べられるのさ。おまけにジューシーで、最高だね。
またひとくちにバーベキューって言っても地方によって全然違ってさ、例えばテキサス風とか……」
熱心だが半分ぼやきに近い説明を受ける。バーベキュー好きなのだがイマイチ心ここにあらず、
と言う感じがしなくもない。
「ソースにはトマトケチャップやウスターソース、ジンジャー、オニオンとかを混ぜて作る。
それぞれ家庭によって秘伝の調合とか隠し味とか、そう言うのが有るんだ」
「ほう。リベリアンはどう言うソースを作るんだ?」
「あたし? ケチャップベースかな」
「そうか」
煙の出が少し少なくなった。シャーリーは手袋をはめると横に用意してあった炭を掴み、グリルをさっと開け、
適当にごろごろと入れ、棒きれで位置を調整した。空気弁を少しいじって数分すると、また煙の勢いが戻った。
「これをずっと繰り返す訳か。確かに暇過ぎて眠くなるな」
「だけど、じっくり肉の様子をみてなきゃいけないんだよ。焦げてもダメ、生焼けでもダメ。
これが奥が深いって言うかさ。まあ堅物には分からないだろうけど」
「これでも私は、カールスラントの料理は出来るぞ? 多少、だけどな」
「なら今度あたしにも作ってくれよ。話によると、妹さんとハルトマン以外には作らないそうじゃないか」
「ああ、今度な」
シャーリーはトゥルーデの曖昧な答えに突っ込む訳でもなく……ただ呆然と、煙を眺めている。
目の前でアンニュイな仕草を見せるリベリアンからは、いつもの様な楽観的な雰囲気を感じず、
少し気になったトゥルーデは、手前にある椅子に座った。
385talk to me 02/05:2008/12/27(土) 00:48:34 ID:GVhnS09U
「さっきの話の続きはどうした」
「さっき? まだバーベキューの事知りたいのか? 熱心だね」
「違う。言いかけたままの話が有るだろ。クリスマスの夜、どうしたんだ」
「ああ、その事か……」
シャーリーは思いを巡らせ……一人くっくっくと笑い、ふうと溜め息を付き、さめざめと泣いた。
余りの変わり様に、トゥルーデは本気でシャーリーの精神状態について疑念を抱いた。
「煙の吸い過ぎで酸欠にでもなったか? お前らしくもないぞ。大丈夫か」
「いや、さ。大した事じゃないんだけど」
シャーリーは炭を掴む手袋を外し、まだ焼いてないパプリカを生のままぼりぼりとかじり、うえっと呟いた。
トゥルーデはその姿を見てますます不安になった。同じ専任尉官としてやっていけるのか、と。
シャーリーはかじりかけのパプリカを持ったまま、新しいのをひとつトゥルーデに投げて寄越した。
ぱしっと掴む。オレンジの鮮やかな、ふっくらと丸いパプリカ。
「クリスマスの夜さ。ルッキーニとふたりで寝しなにジュース飲んだ……というか飲まされたって事までは覚えてるんだよね。
ただその後、起きてからルッキーニの様子がヘンって言うか、何か避けられてる感じがして」
「なに!?」
またエーリカか!? トゥルーデは直感した。
クリスマスパーティ兼ルッキーニ誕生祝いのあの時、ルッキーニに何か粉末をこっそり渡していたのを覚えている。
「あたし、なんかまずい事でもしたのかなーと思ってさ。ルッキーニが『この前のジューシーなバーベキュー食べたい』って
言うから一生懸命作ってるんだけど……それで許して貰えるのかな〜、なんて思ってさ」
どことなくいつもと違う印象の原因は、“打ちのめされていた”、と言う事だったのか。トゥルーデは頭を掻いた。
しかしどうする? エーリカの首根っこをひっ捕まえて二人に謝らせるか……。
だがそんな事をしても、二人の間にできた「くぼみ」は戻らないだろう。彼女達でなんとかするしかない。
それはトゥルーデ自身も、エーリカとの間で経験済みだ。
「これは、リベリアンとルッキーニの二人で何とかするしかないだろう」
「分かってるよ。あたしも、あんたにどうこうして貰おうなんて気は元から無い」
諦めにも近い言葉に、トゥルーデは内心いらっと来た。ハナから頼りにされても無いという事か?
「でも、こうしてあたしのぼやきをちょこっと聞いてくれてるだけでも、助かるよ」
「そうか」
「仮にも同じ大尉同士だからね。手柄とか撃墜数とかはともかく、さ」
「まあな」
トゥルーデは両手で持て余していたパプリカを見た。手の温度が伝わったのか、ぬるくなっている。
一口、かじってみる。苦い。うぶっとむせると、シャーリーは笑った。
「あんたもいきなり面白い事するなあ」
「お前だってさっきぼりぼりかじってたろ」
「ああ、そうだっけ」
「手に持ってるそれは何だ」
「あー。横にあるリンゴと間違えた」
「おい」
「まあ、ついでにこれも一緒に蒸し焼きにしちまおう。貸しなよ」
シャーリーはかじりかけのパプリカをふたつ、グリルの中に置いた。
「あれも蒸し焼くと結構甘くてうまいんだ」
「なるほどな」
それっきり、言葉が続かなくなるふたり。
両腕を頭の後ろで組んだまま、ぼけっと煙を見続けるシャーリー。
同じく、肘をついたまま煙を眺めるトゥルーデ。
たまにシャーリーは煙の量を調整し、肉や野菜を見て、炭を足し……
二人は再び、煙を眺め続ける。
386talk to me 03/05:2008/12/27(土) 00:49:49 ID:GVhnS09U
やがて夕暮れとなり……訓練や任務などを終え、一息着いた隊員達がぞろぞろとロビーに集まってきた。
「あの二人、何やってンダ?」
サーニャを連れてきたエイラが不思議そうに二人を見る。
結構寒い筈のバルコニーで二人、のんびりとバーベキューグリルに向かっている。
特に何かを話している訳でもなく、何か作業をしている訳でもなく、ただ、煙を見つめている。
「バーベキュー?」
サーニャが呟く。
「まあ、何処からどう見てもバーベキューだけどナ」
夕焼けに照らされた二人の表情は何処か微かに陰りが見え、だけど不思議と穏やかで。
「あれ。バルクホルンさんとシャーリーさん……、何してるんだろうね、リーネちゃん?」
「二人でバーベキュー? 少し変わってるね、芳佳ちゃん」
芳佳とリーネが二人を遠くから見て首を傾げる。
「今晩の食事当番は……シャーリー大尉でしたかしら?」
ペリーヌは食事当番の割り当て表を見る。
今夜は確かにシャーリーの番だが、いつもならパンに加えて適当な味の濃い缶詰等を配って終わり、と言う事が多い。
何故このタイミングでバーベキュー? ペリーヌは不思議に思った。
「あ、シャーリーこんなとこに居た!」
少し遅れてやって来たルッキーニが見つけて声を出す。しかし、トゥルーデと一緒に居る姿、
そして二人が醸し出す静かな雰囲気に気圧されたのか、次の一歩、一声が出ない。
「あれ、トゥルーデ何やってんだろ。……シャーリーも一緒? なんで?」
エーリカもやって来た。やはりルッキーニと同じで、声を掛けるに掛けられない。

そんな外野の疑問を知る由もなく……ふっと不意にトゥルーデが微笑んだ。シャーリーもつられて微笑んだ。
幾多の戦いの中、束の間の休息を共に過ごす戦友同士の笑顔であった。
ルッキーニは二人の笑顔を見て何を勘違いしたのか、それとも我慢出来なくなったのか、バルコニーに駆け出した。
バルコニーのガラス戸を勢い良く開ける。
「ん? ルッキーニ。どうした?」
「こっちが聞きたいよ!? こんなとこでなにしてんのシャーリー!?」
「いや。お前が食べたいって言うから、バーベキューを……」
「違うよ。さっき何でバルクホルン大尉と笑ってたの? なんで?」
「ああ……何でだろうな、堅物」
「わからん」
「なにそれ!? シャーリーはあたしのだもん、絶対に誰にも渡さない!」
シャーリーに飛びつき、ぎゅっと抱きしめてトゥルーデを睨み付けるルッキーニ。
「何を勘違いしている」
トゥルーデは苦笑した。
「そう言えば、今日はリベリアンが夕食の当番だったな。ついでに皆にも出したらどうだ?」
「いや、最初からそのつもりで人数分は用意してたんだけどさ」
ルッキーニを抱き直すと、軽くキスをする。
「なんか色々ゴメンな、ルッキーニ」
まだ少し機嫌が直らない愛しの人相手に、シャーリーは言葉を続けた。
「堅物には、暇だから話し相手になって貰ってた。それだけだよ」
「ホントにホント?」
「ルッキーニに嘘は言わないよ。なあ堅物」
「ああ。私も嘘は言わない」
「まあ、私から見ても、トゥルーデは嘘言ってないよ」
横にひょいと顔を出したのは、エーリカ。少しにやけている。
387talk to me 04/05:2008/12/27(土) 00:51:07 ID:GVhnS09U
いつの間にか、バルコニーの周りに他の隊員もぞろぞろと集まってきた。
一瞬見せた妙な雰囲気と、その後のおかしな和み具合を見物に来たらしい。
「ルッキーニ。今日はお前の為に、特別なのを用意したぞ。子豚のローストだ。うまいぞ?」
「ホント? 食べる食べる!」
「私達の分は?」
「勿論有るぞ。クリスマス程豪華じゃないけど、今夜はバーベキューだ!」
「やったー!」
「サーニャ、あの美味しい肉がまた食べられるらしいゾ?」
「うん。楽しみ」
「なんかここ数日、ご馳走が続くね。嬉しいな」
「私も」
「シャーリー大尉特製のバーベキューは野性的ですけど、味は確かに宜しいですわね」
「さあ、準備だ。大きな皿を用意するんだルッキーニ! 今日のあたしはひと味違うぞ!?」
「了ぉ解ぃ」
ルッキーニは食堂へと駆けていった。
「なんか、いつもと変わらないな」
トゥルーデが呟いた。
「ああ。そうであって欲しいな」
「大丈夫だろう。なるようになるさ」
「へえ。堅物らしくないね。随分と楽観的だよ」
「お前程じゃないさ。……少しうつったのかもな」
二人は言葉を交わしたあと、再びふっと、笑みをこぼした。
「さて、夕食の準備しないとな。あんたも手伝ってくれ。あたしは肉の様子を見る」
「いいだろう」
肉の様子を見ているシャーリーの元に、すすすとエーリカが近付いてきた。
「なんかウチの“ヨメ”がお邪魔したみたいで」
「ん? あはは、悪いね。ちょっと借りてた。暇潰しに」
シャーリーはエーリカに苦笑いして言った。
「暇潰し? トゥルーデがねえ」
「気にすんなって。堅物の“旦那様”なら、その辺すぐ分かるだろ?」
「まあね。……ほいじゃ、お邪魔さま」
トゥルーデの腕を取り、ロビーに連れ戻すエーリカ。
「おい、エーリカ」
「なあに、トゥルーデ」
「元はと言えば、お前が……」
「ミヤフジから聞いたよ。扶桑の諺で『雨が降って地面が固くなる』だったかな」
「なんだそれ?」
「色々あって、一層よくなるって事らしいよ。ちょっと前の私達みたいだね」
絡み合いぎゅっと握り合う二人の指に光る、同じ指輪。
エーリカがやたらとくっついてくる。
「まったく」
トゥルーデはエーリカと一緒に食堂へ向かいながら……他の者がみていない所で、そっと口吻を交わし、
顔を赤くして、歩みを進めた。
「ほらほら、みんなも食堂行ってくれよ。肉はすぐに持っていくからさ」
「はーい」
残りの隊員達も、シャーリーの声に呼応してぞろぞろと食堂へ向かった。
388talk to me 05/05:2008/12/27(土) 00:52:08 ID:GVhnS09U
入れ替わりにルッキーニが大皿を持ってやって来た。
「シャーリー、これでいい?」
「ああ、十分。ほら、まずはこれがお前の分だ」
表面こんがり、中はジューシーに仕上がった子豚のローストを皿に盛る。
食欲をそそる、香ばしい匂いが辺りに広がる。
「おいしそう!」
「さあ、持ってけ。後はあたしが持っていくから」
「うん!」
元気一杯のルッキーニ。いつもと変わらぬ弾ける笑みを見せた。
食堂へ戻る彼女の後ろ姿を見て、シャーリーは自分の髪を撫でた。
「まあ……、なるようになる、か」
残りの皆の分を皿に取り分けつつ、ルッキーニの笑顔を思い出し、自然とにやけるシャーリー。
ちょっとしたディナーの後、もう一度ルッキーニと話そう。
そうすれば……。
必ず。

end

----

以上です。
トゥルーデとシャーリーは互いに良きライバルで、親友であって欲しいなと。
そして微妙な位置関係で互いを支え合う、みたいな。
そんな事を考えながら書きました。
あとバーベキューに関する話は適当に流して下さいw

ではまた〜。
389名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 00:58:06 ID:ezaDsXOd
>>380
お互い気心知れてるはずが二人ともくらくらしてるのには
途中頭抱えながらうきゃーうきゃー叫ばせていただきましたGJです。
いたずらエイラさんもいいな。ニパにだけはこういう攻めが出来そうですね。
エルマさん人気なのもひそかにGJですw
またエイラニャとスオムス組読めるの楽しみにしてる!
390名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 01:03:38 ID:5xYZHB9C
ふと気付いた。
このスレ、もう420KBまで来てるんだぜ・・・。
391名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 01:14:57 ID:4NJsLaf8
今日は投下少ないな、と思いながらのんびり絵描いてたらたくさん投下されてて吹いたw
まだ読めてないのが心苦しいけれどみなさんGJ!自分もこのスレの間に何か一つ投下できたらいいな

ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org17577.jpg
たぶんリクエストくれたのここの住人だろうと思ってここに先にあげようとしてたら
うっかりいつもの癖でpixivに先にあげてしまった、ごめんなさい
392名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 01:19:53 ID:J/j4MYav
393名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 01:30:48 ID:HlPSeq/4
>>390
マジだw
レス数よりバイト数多いのがデフォになってきたなw

>>391
毎度素晴らしい絵をありがとう
394滝川浜田:2008/12/27(土) 02:20:25 ID:456SRIQp
どうもみなさんこんばんは。
何故かあまり体調が良くない者です。
しかし、寝る前に一つ投下しないと寝られない…!

というわけでしつこいくらいにシャッキーニ。
395滝川浜田 『sweet jet tension』:2008/12/27(土) 02:22:56 ID:456SRIQp
――どこまでも続く長い道。

あたし達を挟むのは、緑の木々。
やさしい風があたし達を通り抜ける。

今日はシャーリーとデート。
行き先とかは特に無くて、シャーリーのバイクでひたすらあての無いデートの真っ最中。
シャーリーは鼻歌なんか歌って機嫌良く。あたしはそんなシャーリーの背中を見ながら、腰に手を回している。

「今日はいい天気だなあ。なあルッキーニ」
「うん、風が気持ちいいよ」
「最近は雨ばっかだったからなあ。こういうデートってのは今日みたいな晴れの日にやるのが一番なんだよ」

シャーリーはそう言うと、ニシシと笑う。
顔は見えないけど、多分そんな顔をしている。
あたしには分かる。

「エヘヘ…//////」
「ん?なんだ、いきなり背中に引っ付いて」
「嬉しいんだ。シャーリーを独り占めできるから」
「ナハハ、そんなストレートに言われると照れるなあ///」

そう。シャーリーはみんなに人気があるから、こうやって二人きりで過ごす時間っていうのがなかなか無い。
あたしは正直、それが悔しくって仕方無かった。
それでむくれるあたしを見かねたシャーリーがデートに連れて行ってくれてる、というワケ。

「まったく、寂しいなら寂しいって言えば良いのに」
「…だって、シャーリーには余計な心配かけたくないんだもん」

シャーリーははあとため息をひとつ吐くと。

「今日くらいはさ、あたしに心配かけてくれよ。あたしら恋人同士なんだからさ。
もうちょっと頼ってくれよな」
「うん、ごめんね」
「ハハ、謝られるとはなあ!アハハ」

シャーリーの豪快な笑い声が、真っ直ぐな道に響く。

「でも、本当に誰一人いないね」
「気持ちいいよなあ。ここまで誰もいないと」
「…なんか、この世界にあたし達しかいないような気がしてくるね」
396滝川浜田 『sweet jet tension』:2008/12/27(土) 02:25:15 ID:456SRIQp
「アハハ、そりゃいいや!あたしにとっては最高の世界だよ」
「ウニャ//////」
「よし!あたしテンションが上がってきた!」
「シャーリー?」
「おい、ルッキーニ。スピードアップするから、離れないようにしっかり捕まっとけよ!」
「えっ…うっ、うん!」

すると、シャーリーはバイクのエンジンをふかして。

「よっしゃ、エンジン全開!
行くぞルッキーニ!」
「うんっ!」

バイクはスピードを上げる。
スゴい。風っていうか、突風があたし達を襲う。

でも、不思議な事に心地よい。

「やっほぉぉぉ!」
「シャーリーテンション上がりすぎぃ!」
「アハハ、ごめんごめん!
でもさ、なんかテンションが上がっちゃってさ!」
「もう…でも、シャーリーのそんな所も好き!」
「おおっ、嬉しいね!よし!」

シャーリーは息を思い切り吸い込んで、叫ぶ。

「好きだぁぁ!ルッキーニィィィ―――――――――――!!!!」
「ちょっ…!はっ、恥ずかしいよぉっ、シャーリィ…!//////」
「誰もいないから大丈夫だよ、ほらお前もなんか叫んでみろよ」
「え、でも」
「いいからいいから」

あたしは息を思い切り吸い込む。
そして、声の限り叫ぶ。

「シャーリィィィ―――!あたしを連れ去ってぇぇぇ!!」
「おおっ、大胆だな!」
「は、恥ずかしいよ…!//////」
「よっし、お前のその願い、叶えてやるよ!」

あたし達は、緑の道を走り抜ける。

あたし達が今何処にいるかは分からない。

でも、今のあたし達にはそんな事関係無かった。

今、この瞬間があれば、それは些細な事だから…

397滝川浜田 『sweet jet tension』:2008/12/27(土) 02:26:22 ID:456SRIQp
―――――――――――――――――――

「もう、日も落ちるな」

あたし達はバイクを押して、基地へ戻る。
調子に乗りすぎたせいで、途中でバイクのパワーが尽きた。

「調子、乗り過ぎちゃったね」
「タハハ、ほどほどにしときゃ良かったな」

そう言って、シャーリーは照れ笑いを浮かべる。

「なあ、ルッキーニ」
「なあに、シャーリー」
「いつか、いつか絶対にお前をリベリオンに連れて行ってやるからな」
「な、なにいきなり」

すると、シャーリーは眩しい笑顔であたしに笑いかける。


「お前を連れ去るんだよ、あたしの故郷に」
「シャーリー…」
「リベリオンはいいぞ、なんてったって自由の国だからな。…だからさ」

シャーリーはあたしの手をギュッと握って。

「この戦いが終わったら、一緒に暮らさないか?ルッキーニ」
「シャー…リー…//////」
「…あっ、ごめん、今の無し!無しな!//////」

夕陽が眩しくて、シャーリーの顔は見えなかったけど。

「…帰ろうか」
「…うん!」

きっと、何よりも眩しい笑顔。

そう勝手に思いながら、基地へと急ぐ。

シャーリー、約束だからね…?
絶対に、連れて行ってね…?

あたしは、シャーリーにそう、囁いた。

END
398滝川浜田:2008/12/27(土) 02:29:27 ID:456SRIQp
以上です。
やっぱりアレですな、シャッキーニはこうでないと!うむ!

そしてみなさんも体調には気をつけてください。
では自分はゆっくり寝ます。

…というわけで爺はここら辺で…
399名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 03:05:45 ID:uM0H48wX
皆GJ!もう感想書ききれない!このスレまじで最高っス。
毎晩ここに来るのが楽しみでしょうがねぇー

それはそうと今回の記録集の表紙、密着されただけであんなになってしまうペリーヌが
かわいくてしょうがないw
次のもっぺリSSについつい期待してしまう...!

400名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 03:06:59 ID:jSAL0r5p
もーいーくつ寝ーるーとーもっさんが餅つきをやり始めるんだろう?




>>398
後先を考えるよりも今を真っ直ぐに生きて、向き合って、愛しあって……
シャッキーニらしさが溢れんばかりに感じられるとてもいいお話でした。
401名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 03:09:23 ID:HFtWA1j9
何人が扶桑には姫初めってのがあるんだよネタを書くのだろうか・・・
402名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 03:12:56 ID:lCQZtrlJ
>>401
ネタをありがとうござるました。
すっかり忘れてタ。
403名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 03:24:45 ID:jSAL0r5p
>>388
シャーリーとトゥルーデの2人は戦友という言葉がしっくりときますね。軽口たたきあったり、時にはいがみ合ったりするけれど、エーリカが口にした諺通りそれらが2人の絆を深めてきたのかな…と。戦士の休息というかそんなホッとするいい話でした。


書き抜けてたので失礼しました。
404名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 07:37:26 ID:/oJB7AnE
特に
もっ×ミーナ
シャー×ゲル
な姫初め楽しみにしてます
405◇あいしてる 1/2:2008/12/27(土) 10:38:38 ID:rgVruoBq
>>398
GJ!いいシャッキーニでした
リベリオンへ連れてってやるからな宣言は最高だw

どうもこんにちは。工夫もへったくれもないエーゲルいきます


  ◆あいしてる


キスでもされるのかと思った
首に腕を回し
いつものあの声を
本気なのか嘘なのかわからない声を
かけられるかと思ったんだ

でも今日はちがった
彼女はへんに真面目な顔をして
私の目から目をそらさずに
小さくつぶやいた


 ねえトゥルーデ
 私のこと見てる?


なんでそんな目をするんだ
なんでそんな声で聞くんだ
そんなの 決まってるじゃないか


 ……見てる
 いつだって見てるさ


ばかにしないでくれないか
ただの一度だって
目を離したことはないんだ


 じゃあ
 私のこと好き?


なにを弱気になっている
おまえは黒い悪魔だろう


 好きだ 他の誰より


406◇あいしてる 2/2:2008/12/27(土) 10:40:43 ID:rgVruoBq
それでも安心できない彼女
じゃあもうひとつ


 あいしてる


世界でいちばん
あいしてる


 よかった…


ためいきを一回
そして満面の笑み
腕が離れていくけれど
ちょっと待ってくれお嬢さん

言わせ逃げはゆるさない

がしっとつかんで視線を送る
仕方がないなと頬をかきながら


 私もあいしてるよ トゥルーデ





…携帯をいじっていたら。手が勝手にこんなのを打っていました
素晴らしく高レベルな皆様の作品の合間に読んでいただけたら幸いです
時期的には多分宮藤自室禁固あたりかな?ご想像にお任せしますが…まあトゥルーデが宮藤のことばっか考えてる時期、ていうかんじで。
エーリカは、言ってくれないと不安になっちゃうタイプだといい

最近エーゲルとミーナリーネ(ときどきシャーゲル)ばっかり妄想しているgf1xJeg9でした
秘め声を聞くに、ミーナリーネきたねこれは!(面倒をみてあげた云々…)
もちろんミーリカも
なんかニヨニヨが止まりませんw

…では、失礼いたしました&よいお年を
407zet4j65z:2008/12/27(土) 11:03:26 ID:yghD62u4
>>393瞬間最大でだと1レス=1.267kb位までいってたよ。

昨日で仕事納めしたというのに明日からの某所でのイベントのせいで時間が取れなくてまだ全部SS見れてなくて
秘め声も聞けてないっす。
でも名指しされてたんで嬉しくなってカキコw
>>RU1ZZ/dhさん
ニヤニヤしながら読んだっす〜。サーニャにはぜひラブラブ電波をゆんゆんと飛ばしていただきたいですw
書いてるときは設定の拡大解釈しすぎかな〜とか思ってましたが受け入れていただける人がいると本当にありがたいです〜。
ニパも好きなんでまた書いてほしいな〜とか思ってます。
まぁ、こっちもニパ話かいてますがw


それはそれとしてみなさんGJです。
あとでなんとしても時間作って全部読ませてもらいます〜。
408名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 11:42:31 ID:t5khsgOC
そういやまだ秘め声聞いてないや

まあいいか
409名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 11:50:16 ID:rRAwnSqE
俺はDVDを見てない
410名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 12:17:28 ID:/oJB7AnE
おねえちゃんのツルツル満見れるのに…勿体ない。
あれ宮藤に貸してたらノーズボンおねえちゃんだよね。
ノーズボンになったバルクホルン大尉を舐めるような視線で犯すシャーリー…一方それに気付き堪らなくなったゲルトは
411名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 12:28:01 ID:Zz/mKQ4q
サーニャってなんだかんだでモテまくりだな
ルッキーニからも仲良くしたいと思われてるし
エーリカにもかまってもらえているし
芳佳には口説かれる
エイラはいわずもがな



これは……っ!!!
412名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 12:54:44 ID:cuNRrnUl
争奪戦の始まりですね
413名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 12:54:57 ID:rRAwnSqE
むしろあんな静かな子でも接しようとしてくれる周りが優しい子ばっかすぎて泣ける
現実じゃこうはいかない…
414名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 13:15:29 ID:LXdeTRZ/
501の皆がサーニャの事が大好きで、サーニャとエイラの仲を応援してあげたいと思っている・・・

というのが自分の脳内設定。

出来ればもっさんとペリーヌも応援して欲しいが・・・。
415名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 13:33:21 ID:lCQZtrlJ
(501だけで考えると)11人いるから一人余るけど、どうにかならないかなぁと思った。
そこまではよかったんダ。
このあと、三人カップルを作ればいい→もっさん重婚。
とか考えた私は斬られてくる。
416名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 13:51:07 ID:415ZSMjn
>>391
シャーゲルいいですね。
ピクシブのコメントでちょっと自分もそういうシャーゲルを書きたくなりましたよ。
いっぱいいっぱいのトゥルーデにそれを支えるシャーリーとか。

>>405
エーゲルきたぁぁぁ!
詩みたいですね。
携帯で書くって言うのは大変じゃないっすか?
417名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 17:17:30 ID:3B1WfBjB
少佐の部屋が無いってのが心配だ
418名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 17:18:17 ID:IMEBn2Xe
ミーナさんの部屋があるから問題ない
419名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 17:25:44 ID:lCQZtrlJ
同居カ。
やっぱり夫婦ダナ。
420名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 18:00:02 ID:ngWfMFh/
今までに戦ったあらゆる部隊で無意識に現地妻を作り頼まれてその部屋に泊まっているもっさん
421名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 18:14:03 ID:BS3Cj351
もともと芳佳の部屋がもっさんのものだったとかそんな妄想。どうせほとんど使ってないから宮藤の部屋ここでいっかみたいな。
寝るときはミーナさんの部屋のソファとか借りてたんだけどたまにはちゃんとベッドで寝なきゃダメとかいって自分が
ソファで寝ようとするミーナさんにそんなことさせるわけにはいかない、じゃあ一緒に寝ようかってさらっというもっさんが(ry
んでほとんど使ってなかった自室だけど、やたら疲れちゃった日なんかに宮藤にあげちゃったことうっかり忘れて
たまには部屋で寝ないとなーなんて芳佳が寝てるベッドにそのまま入り込むもっさんとか(ry
422名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 18:17:02 ID:t5khsgOC
もっさんなら仕方ない
423名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 18:19:43 ID:uM0H48wX
もっさんどんだけwwwwそんなもっさん大好きだけれどもw!!
424名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 18:21:45 ID:ngWfMFh/
ああもっさんならしょうがないな
425名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 18:33:49 ID:lCQZtrlJ
もっさんだもんナ。
426名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 18:40:41 ID:fMTJ9Ncr
まぁ、もっさんだからな…
きっと芳佳もミーナも、今日だけ、許してくれるさ
427名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 19:01:07 ID:aWQsHYWm
もっさんマジパネェww
あとこれからもうすぐバスに乗らないといけないので
細かい感想が書けないのが無念なのですが
エーゲル、シャッキーニGJでした! 

あと美緒×ミーナを投下します
428美緒×ミーナ1:2008/12/27(土) 19:01:51 ID:aWQsHYWm
**

分かりやすく、噛み砕いて、それとなく。
胸のうちにある愛情を伝えると、彼女――坂本美緒は決まってこう答えた。

「月が、綺麗だな」

窓の外に浮かぶ月を見ながら、いつもそうやって逃げていく。
もっと何か追撃を仕掛けようと思ったのだが、彼女が言うとおり月が綺麗なので、いつもそこで黙ってしまう自分がいた。

月はいつも、大体なんとなく綺麗である。

ミーナ・ディートリンケ・ヴィルケはそんなことを思いながら、月明かりに照られる彼女のことを見つめるのだった。


429美緒×ミーナ2:2008/12/27(土) 19:02:36 ID:aWQsHYWm
**

もしかしたら、彼女のなりの優しさで、仕方なく話を逸らしているのだろうか。
弾の発注だの何だの、いちいち面倒だなと思う書類に目を通しながら、そう思う。
もう何度目だろう。ため息をつくと、紙束の上の紙が、何枚かひらひら飛んでいった。

「そんなに息、荒くなかったと思うんだけど」

はあ、とまたため息をついて立ち上がり、落ちた紙を拾う。
悪気なく飛んでいった紙にまで喧嘩腰になるなんて、どうかしていると思う。そもそも書類の前で盛大にため息なんか吐いてしまった自分が悪いのに。
いや、だが。
ヤキモキする胸を一発ドカンと叩いて、平静を装う。結構痛い。
誰もいないのだから少しは平静じゃなくてもいいと思うが、こういうのは何気ない緩みから大変なことになっていくものなのだ。
同郷の戦友であるゲルトルート・バルクホルンの口調を借りるつもりはないが「一に規律、二に規律」なのだ。狂った歯車を戻すのが容易でない以上、普段からきちんとしておくべきである。
自分に言い聞かせるようにして念じてから、紙を持って立ち上がる。

もう大丈夫。

そう思ってまた作業に入ろうとしたとき、慌てたように慌しいノック音が聞こえてきた。

「入るぞ」
「……言葉と行動が同時だったように思えましたけど、バルクホルン大尉」
「すまん、ちょっと急いでいたから」

最近少し角が取れてきたとはいえ、彼女はもともと真面目で冷静なのだ。特に規律にはうるさく、こちらから返事をする前に特攻を仕掛けてくるなど、本当に珍しいことである。

もしかして、何か緊急事態なのだろうか。

身構えるミーナの雰囲気を察してか、バルクホルンは手を上げて「違う違う」と言った。

「別に何かあったわけじゃないんだ」
「でも急いでいるって」
「いや、急いではいる。慌ててきた。でも、世間はいたって平和だぞ。まあ平和じゃないけど、つかの間の平和というか」

もともと話すのが上手じゃないのに無理をするものだから、何が言いたいのか分からなくなってくる。心なしか話の流れすら変わってきた気がした。

「まあ、平和はいいとして。どうしたの?」
「あ、そうだそうだ」

話がすっ飛んでいく前に手繰り寄せると、バルクホルンも思い出したように手を叩いた。案の定、熱弁に集中してしまって、本題がどっか別次元へ飛んでいったようである。彼女の一生懸命のベクトルは、放っておくとどっかに飛んでいくから困り者である。
そういう訳で、やっと元に戻った話題の前に一呼吸置いてから、バルクホルンは口を開いた。

「前に、月がどうとか言ってただろ?」
「月?」
「そうだ。坂本少佐がいつもそういう、と。月が綺麗だ、と」

目を見開いて驚くと「忘れたのか?」と、バルクホルンのほうも驚いたような顔を見せる。
本当身に覚えがなかった。
もしかしたら、自分でも思いがけずつぶやいていたのかもしれない。そうだとしたら、悩みは意外と深いところまできているのかもしれない。
自分の意外な心理状態に驚いているミーナを他所に、バルクホルンは一つ咳払いをする。
一体なんだ。
キョロキョロと辺りを見渡し、どうにもこうにも居づらそうな表情であった。
430美緒×ミーナ3:2008/12/27(土) 19:03:41 ID:aWQsHYWm
「ここから先は、私の趣味の範疇だ。聞き流してもらっていい。他意はないし、誰かに頼まれたって訳じゃない。私がなんとなくこの驚きと文化の違いに感銘を受け、それを誰かに話したいが為にここにやってきて話している、それだけだ」
「はあ……」

一言も二言も変な付けたしをするバルクホルン。
全く話が読めないミーナは、相槌すら満足に打てないでいた。

「宮藤がどうにも何か引っかかっていたらしい」
「宮藤さんが」

彼女がどうこうというより、いたるところでブツブツ何か言っていた自分に驚いていた。どれだけ無意識に変な事を言っているのか。正直恥ずかしかったりする。

「ミーナ?」
「あ、ああ。何でもないわ。続けて」
「そうか? まあ、とにかく。それからずっと考えていたらしいんだが、この間引っかかっていた原因を思い出したらしい」
「何だったの?」
「ヤクだ」

一瞬『薬』の方かと思い、ぎょっとする。まさか美緒がそれとなく麻薬云々の伝言を伝えていたのか、まさか軍部が――などと秒速で色々な事を思案してしまう。
ミーナの動揺はバルクホルンにも伝わったらしく「語訳のほうだ!」とツッコミを入られた。

「扶桑の学校で習ったらしい。まあ習ったというより、教師側からの雑談というか。そうだから記憶には残っているものの、あまり思い出せなかったとか」

聞いたことはあるが、そこまで深く意識して聞いていないと、中々思い出せないことはある。
大抵そういうときはモゾモゾしたくなるほど、気持ち悪いという衝動に駆られる。思い出すまでの間、宮藤には申し訳ない事をした、とミーナは思った。

「扶桑は変った文化があるというか……島国だからか、ネウロイの侵略がそこまでなかったからなのか。少し妙な価値観があって」

いつの間にか目の前にまで来ていたバルクホルンが、「要らない紙あるか?」といつの間にか手にしていたペンを片手にそういう。
ミーナは慌てて机から白紙の紙を一枚取り出すと、バルクホルンはさらさらと何か書いている。そして書き終わると同時に、ミーナに見やすいよう紙を反転させた。
書かれていた一文に、目を丸くする。

「『月が綺麗ですね』って訳すんだそうだ。扶桑でいうところの『奥ゆかしさ』なんだろうな。私にはよく分からない。これ伝わるのか?って正直思う。宮藤も、今時こんなふうに言う人なんて――ただの変わり者かロマンチストだって言っていたよ」

網膜に焼きついた情報が、脳まで到達するのにこれほど時間が掛かるとは。
431美緒×ミーナ4:2008/12/27(土) 19:04:45 ID:aWQsHYWm
驚いて何もいえない代わりに、ミーナはバルクホルンをみる。
彼女は困ったように、笑っていた。

「変ってると思わないか?」
「ええ、そうね。こんなの、分かるわけないのに」
「昔は分かったらしい。いや、こう訳せと言った人間だけかもしれないが」

ああ、ややこしい。つくづく思う。
本当に、なんてややこしいんだろう。
こんな事を言った美緒も、わざわざ変な言い訳までして教えてくれたバルクホルンも。
みんなみんな、ややこしい。

どうしようもない人たちばかりだった。

「ありがとう、トゥルーデ」

部隊長という肩書きを外して、彼女の愛称を呼ぶ。
彼女はバタバタ慌てた後、咳払いを失敗して本気で咳き込んでいた。

「げっほごほ! いや、大したことじゃない。面白い話だと持ったから、話しただけだ」
「そうね。『豆知識』をありがとう。今後の知識の肥やしにでもするわ」

微笑を返すと、彼女も照れくさそうに笑い返してくれる。
そしてもう用はないと言わんばかりに踵を返すバルクホルンの背中に、もう一度御礼を言った。

「ありがとう」

彼女は振り向かない。
返事の代わりに、バタンとドアが閉まった。

部屋にはミーナと、バルクホルンが説明の為に書いた髪だけが残される。

「今日は曇ってるわね……」

ちらりと見えた窓に向かってそう呟く。
今日も月が綺麗だといってくれるだろうか。

猛烈に会いたくなった人の顔を思い浮かべながら、不安交じりにそう呟いた。

432美緒×ミーナ5:2008/12/27(土) 19:05:37 ID:aWQsHYWm
**

分かりやすく、噛み砕いて、それとなく。
胸のうちにある愛情を伝えると、彼女はまたこう答えた。

でも何がいつもと違うかといえば、彼女は今日、窓の外は見なかった。

「月が綺麗だな」

薄く微笑む彼女を前にすると、思わず泣きたくなる。
鼻の奥がツンと痛いのに、でも不思議と笑ってしまう自分がいた。

「今日は月、出てないわよ」

曇った空に、月は確認できない。
もっと違う事が言いたかった。別の何かが口から飛び出してきても良かった。
それでも舌に乗せた以上言葉は戻ってこない。
いつもと違う切り替えしだったミーナに驚いたようだったが、美緒はすぐに微笑んで、ミーナの頭に手を置いた。

「そうか? 私には、月が綺麗だって思えたんだが」

念を押すように、もう一度言う。
何かよくわからない防波堤が決壊したのを感じた直後、視界がゆっくり歪んでいった。

「私も、そう思っていたの」

机の中にしまった紙の事を思い出す。

昔扶桑で、この一文を「月が綺麗だ」とでも訳しておけ!、と言った人がいるらしい。

I love you.

今まで何度も、噛み砕いて、判りやすく愛情を伝えたつもりだったのに。
今、初めて、やっと伝えられたような気がした。



the end
433名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 19:08:07 ID:aWQsHYWm
もっさんはロマンチストかもしれないとか思って
しかも昔I LOVE YOU を超訳した某人の話を思い出したら
まるでクリーチャーが如く書いてしましました。

でも早くから貿易していた扶桑的にはどうなんでしょう……?
色々至らないです
そしてもっさん出番少なすぎで申し訳ないです。
それでは失礼いたしました。
434名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 19:22:42 ID:Q69KVx3S
ストパニの温暖化コンビですねわかります
435名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 19:25:55 ID:IMEBn2Xe
その台詞なら、谷川史子の「くらしのいずみ」で驚くほど上手く使われてる
436名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 21:14:06 ID:UYNVtk3k
俺も、この間ストパニ見たばかりだからあのコンビが浮かんでしまった…
437名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 21:15:57 ID:QHkLZL30
そういや、ちょっと前にエイラニャで温暖化ネタがあったね。
438名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 21:24:56 ID:QBANjPeD
本スレで誰かが最終話のEDについてそんなこと言ってたな
439名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 22:21:58 ID:tElgwNR7
ミーナに説明するお姉ちゃんにちょっと萌えてしまった
この二人もいいもんだなって
440名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 22:22:10 ID:HFtWA1j9
>>432
大人の二人かっこかわいいなwwいいもっミーナだった!
441名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 22:41:07 ID:bVKGdq4K
既出だったらすまない。七話見てて思ったんだが、
シャーリーが歯を磨いてるシーンでおねえちゃんが体操する号令が聞こえるって事は
この二人の部屋ってやっぱり近いのか?
442名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 22:47:52 ID:UYNVtk3k
>>439付き合い長いからなあ。個人的穴場カプ
いや、初期の頃はよく見た気もするがw 最近は寂しくなったもんだ

>>441
部屋が近いか、
お姉ちゃんの声がパネエぐらいでっかいか
どっちかダナ
443名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 22:52:23 ID:ngWfMFh/
あれやっぱお姉ちゃんの声だったのか
すげーうるせえなw
444名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 23:00:26 ID:UYNVtk3k
>>443
ミーナ「みんなに聞こえちゃうからあまり大声出さないでって言ってるんだけどね(ため息)」
エーリカ「やっぱタガが外れちゃうとねえ」
シャーリー「しがみつかれてあの大声出すから、翌朝は耳がジンジンしちまうんだよなあ」

とかいう、その気になればどうとでも妄想できるコメントが頭に降ってきた
445名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 23:16:54 ID:ngWfMFh/
エーリカ「ぎゃおおおおー!ぎょわああああ!まちがえたあああああ!」
ゲルト「う る さ い ぞ ハ ル ト マ ン!!!」
宮藤「坂本さーん!どうしましょう!?坂本さーん!!」
もっさん「わっはっは!元気があってよろしいっ!」

うるさそうな人々
446名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 23:20:47 ID:cuNRrnUl
あれ?そういえばSS累計600突破したんじゃね?
速いなぁ
447名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 23:52:23 ID:1sXeLBAP
すごいな〜!、本当に職人さん達に感謝感謝だ、本当に
448名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 23:59:18 ID:ngWfMFh/
寝る前にKB予報士の俺が448KBをお知らせします
449名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 23:59:49 ID:SgAGltjy
>>448
見れば分かるわw
450名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 00:07:43 ID:vNUT4jWW
>>448
スナイパーだな
451名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 00:08:57 ID:lZBNlWkE
>>432
ラストのシーンがいいなぁ。ようやく伝わりあったミーナさんの気持ち思ってちょっとうるっときた。文章も端正だし。
でも周りじゅうややこしい人でミーナさん大変そうだなw
趣旨とは違うかもしれないけどトゥルーデとミーナもいいなって俺も思ったよ。
452名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 00:25:54 ID:IRP/cUNT
今日投下少ないのはやっぱり冬のあれがあるから…?

まあ秘め声ってけっこうネタがあるんだね!!
新たな可能性を探しにdvdはやっぱ買うべきなのか?
453名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 00:25:58 ID:c80cETvE
>>432
恋に悩むミーナ隊長が萌える!!!この二人の大人な関係好きすぎる!

保管庫見返して思ったが両思いでイチャイチャなもっペリって本当に少ないな。
書きにくいんだろうか...。いきなりもっさんに抱きしめられて思わず放電しそうになるペリーヌとか
想像しただけでもう.....

454名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 00:42:39 ID:uai8eefP
色恋に疎いもっさん、超奥手なペリーヌ
が自分の中での像だからなかなかむつかしいな
455名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 00:51:42 ID:8VcztW/Z
>>452
スマン単純にPSZに逃避してたわw
秘め声+資料集は第一級の資料だと思いますよ。
妄想広がるしw だから是非とも限定版を……。
456名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 00:52:17 ID:FzgIRbHg
覚悟を決めて、超頑張って告白するペリーヌ。
凄く驚いた後に、「私みたいな無骨な人間でもいいのか?」と恥ずかしそうに答えるもっさん。

上手く文章にしたいんだけど最近、スランプ気味だから言葉が浮かんでこないんだよなぁ・・・。
457名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 00:55:04 ID:IRP/cUNT
>>455
ああ、あのゲームですかwあれも妄想力があれば百合に見えるとかいううわさの
なんかdvdはいつか楽天の全巻が復活するんじゃないかと思うといまいちアマでポチれないというw
458名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 00:59:41 ID:hLInEwZV
そろそろ501でも年末大掃除だろうか?
459名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 01:14:28 ID:OGV/ws5z
大掃除?
エーリカの部屋のことか?
460名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 01:21:41 ID:hLInEwZV
>>459
いやただ年末だから基地の大掃除でもやるのかと。
だが確かにエーリカの部屋こそ大掃除すべきだな。
461名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 01:23:02 ID:c80cETvE
>>456
>覚悟を決めて、超頑張って告白するペリーヌ。
>凄く驚いた後に、「私みたいな無骨な人間でもいいのか?」と恥ずかしそうに答えるもっさん。

この2行だけですごいドキドキしたんですがw
SS書ける人やっぱすげぇわ。
甘いもっぺリが見たい言うか、一個くらいめちゃめちゃ幸せなペリーヌを読んでみたい。
ペリーヌが幸せな所想像しただけで涙腺緩むんだけど年ですか?w
462名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 01:35:31 ID:/MaS4zsA
少ないといえばゲル芳だなぁーというより全くみた覚えがない
12話のお姉ちゃんあんな可愛かったのに
463名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 01:57:27 ID:grohbBpy
自分は初めゲル芳目当てでこのスレのぞき始めたんだけど、
いつのまにかシャーゲルとかリーネイラとか予期していなかったカップリングに染められていたから困る。
芳佳のおっぱ攻め属性(?)って意外とこのスレでは発揮されてないよね。
464名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 02:05:41 ID:3khF7aSh
>>463
ある日シャーリーに宮藤が「おっぱい揉ませてください・・・」って頬を赤らめながら頼むと
つられてシャーリーも恥ずかしくなってしまうが、OK出して部屋に連れ込む
しかし胸を直に揉みだした頃、それまで子猫のような宮藤が一転して狼になり
絶妙なテクでシャーリーを快感の渦へ引き込んでいく
さんざん胸を弄んでから、ぐったりしているシャーリーに「今度、バルクホルンさんを連れてきますね」と耳打ちするおっぱいマイスター


っていうSSのプロットはありましたが上手く書けなくて破棄しました
465名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 02:11:26 ID:IRP/cUNT
>>464
あきらめたらそこで試合終了ですよ

なんだかんだでおっぱいハンターはあとルッキーニとエイラがいるからなぁ






そうか!!この三人で乳くりあうデスマッチをすればいいのか!!!
466名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 03:00:25 ID:2IfUBGJG
SSのプロットは山のようにある。実現できないのが残念だ。
467名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 03:09:35 ID:a7Tbrht2
ゲル芳はギャグ系が多い気がする
4681/8:2008/12/28(日) 04:42:31 ID:qbIqm3Un
どうもお久しぶりです。エルマイラ投下します。
―――

静かだわ、と。エルマはぽつりと思った。
スオムスの空は今日も、今にも雪が降りそうなほどに厚い雲が垂れ込んでいる。

もうすぐ4月だというのに、この北欧スオムスにはいまだ春の気配はない。だってこの雪が解けるのは
まだ1ヶ月以上先なのだ。今はまだその時を待つ我慢の季節。眼下に広がる景色は雲を通して淡く届く
陽光に、鈍い光を放っていた。白、白、白。どこまでも続く、白。晴れた日であれば蒼い空と白い雪のコン
トラストがこの上なく美しいが、このような天気だと風の冷たさもあいまってどこか気も滅入って来てしまい
そう。

(いけない、いけない。)

ぱんぱんと頬を手袋の付いた手ではたく。そしてこんなことで気を滅入らせている場合ではない、と
自身を鼓舞して再び、どこまでもどこまでも白が続くばかりの景色に目を凝らして。
川の向こうにある異形の土地はどこまでも遠く、障気に覆われて黒ずんでいる。かつては緑の美しい
森林がそこに広がっていたのだろうけれど、エルマはその景色を知らないのだった。だってエルマが
ストライクウィッチになるずっとずっとまえから、あそこはそんな土地だったのだから。

この国境線の川をまたいでやってきた2月のネウロイの大規模な侵攻の爪あとは雪の下にすっかり
埋められてもう何も見えない。北の大地をすっかり覆う白い雪は不意に訪れたその脅威さえも吹雪の
たった一晩でかき消してしまうのだ。吹雪の後はどこまでも遠く遠く続くような、蒼い蒼い快晴の空。
そんな景色を見ながら空を飛ぶのが、エルマはとてもとても好きだった。残念ながら今日はこんなにも
雪が降りそうな曇天だけれども。

目を細めて地上を見る。かつて何度も繰り返したプロセスどおり、キツネ一匹見逃さないように。ネウロイ
との戦いが本格化してくる前からずっと変わらない、いつものルート。違うことといえば、以前は陸軍の
スキー兵が自分と同じように偵察にやって来ているのを幾度か見かけたものだが、今となってはからっ
きしである、といったところだろうか。なにしろ、ネウロイとまともに戦うことが出来るのはこの世でたった
一握り、このスオムスでも三個中隊分しかいない機械化航空歩兵──ストライクウィッチの少女たちだけ
なのだから。ストライカーに比べてお世辞にも機動力が高いとは言えないスキーや徒歩で偵察を行って
いては、ネウロイの格好の餌食になる。そこでむざむざ貴重なストライクウィッチを余計に出動させる
わけには行かない、というのが軍の意向なのだろう。

しずかなしずかな、空だった。
(まるでこの後嵐が来ます、とでも言いたげなほどだわ)
そうエルマは思う。もちろんそれはたかが"虫の知らせ"のようなものでしかなくて、恐らくはエルマも
切ないくらいに自覚している自身の臆病さからのものだと思われたのだけれども…なんとなく、いても
たってもいられなくなった。管制室からの情報では、今日はネウロイは現れないだろうという予測が
なされていた。あの、志向があるのかさえ分からないネウロイに休息などという概念があるのかはわから
ないが、どうやらネウロイの出現には一定の周期がある、との判断が固まったらしい。
それでもエルマは自分の目で確かめて見なければ気が済まなくて、気が付いたら智子のもとまで行って
偵察に出かける許可を求めていた。それが確か、三時間ほど前の話。

(行かせてやればいいじゃないか。それで気が済むなら)

だから心配しなくていいのよ、と、兼ねてから心配性の自分に呆れて果てている節のある中隊長の言葉
をきいてしゅんとしていたエルマの脇に突然現れて、そう言ってさっさと立ち去っていったビューリングを
思い出し、心の中でありがとうと礼をする。彼女ときたらそうしてよく助け舟を出してくれるのに本人は
毎度その舟を川岸に放置したままふいとどこかへ消えていってしまう。

4692/8:2008/12/28(日) 04:43:07 ID:qbIqm3Un
だからエルマはいつも申し訳なく思うばかりだ。いつかまとめて礼をせねばならないと毎日日記にした
ためているのだけれど、その数はどんどんと増えていくばかり。出来ればおいしい料理でも振舞ってあ
げたいものだけれど、エルマにはビューリングの好みなど分からない。以前薄味でなければなんでも
いいと言っていたが、その『なんでもいい』というのは一番困る返答だ、とエルマはいつも頭を悩ませる
のだった。何かこの辺りで有名なものを、と思案するもまさか同国の人間でも顔をしかめるような隣国の
ニシンの缶詰だとか、あの不思議な味のする飴だとかを振舞うわけには行くまい。

びゅう、とひときわ強い風が吹いた。魔力で覆われているおかげでそこまで寒さを感じることはないけれど
、やはり強い寒風には体が強張る。…けれどもなんとなく、この震えは寒さのみに起因しているのでは
ないような気がしてならないのだった。時間にして数秒ではあったろうが、物思いにふけってしまった
自分を再び奮い立たせて、胸によぎる不安を打ち消すように白く続くばかりの景色を見やる。川のこちら
側はなだらかな丘が続いていて、その向こうには寒さにも負けず青々と茂る針葉樹林が広がっている。

ふと雲が切れて、押し殺されていた陽光がその小さな小さな切れ間から、エルマの背に降りかかった。
キラキラと雪が光る。青っぽい影を形作り、太陽に向かって目一杯光を反射する──

(…あれ?)

ふと、どきりとしたのは。
自分の進行方向に、雪の返すそれとは明らかに違う輝きを見つけたからだった。不思議な色をした銀色。
雪の鈍い青色とは異なった光。そして、それ以外のものもエルマは見てしまった。ぴしり、と体から音が
したような気がした。もちろんエルマ自身が板になったわけではないからそれは幻覚に過ぎないけれど、
そのくらい、エルマの体はがちりと固まったのだ。

(あれは……ラロスッ!!)

それは見慣れた、黒ずんだ飛行機のような機体だった。すぐに魔道エンジンの出力を上げて、そちらに
近づけば近づくほど状況が見えてくる。先ほど雲の切れ間から覗いた太陽はもうなく、先ほどまでと同じ
ような曇天が空には広がるばかりだったがもうエルマは見間違えるはずがなかった。人が、ネウロイに
襲われている!しかも子供だ!!
いち、に…かぞえるまでもない。淡い黄色味がかった銀色をした少女が、3機のネウロイに追われていた。
幸いにしてまだ攻撃は受けていないようで、器用にスキーを動かして逃げ惑っている。

「…"雪女"、こちら"ひばり"!!緊急事態ですっ!!」
「コールサイン」
ハッキネンの冷静な声が通信機に響く。そのやりとりに、エルマは以前も似たようなやり取りをしたことが
あるのを思い出した。けれどそんなことに構っている場合ではない。自分でも信じられないくらいの大声で、
エルマはマイクに向かって叫んでいた。

「そんな状況じゃありませんっ!人が……子供が、3機のはぐれネウロイに襲われているんですっ!!」

一瞬、あちら側からの言葉がなくなる。その間にも目の前で少女はラロスに襲われ逃げ惑い続けている
のだった。命令を待っている場合ではない。エルマは構わず機関銃を構えた。ラロスも少女も上空に
いるエルマには気付いておらず、丘の上をまるで競争しているかのように滑っている。

(落ち着いて、落ち着くのよエルマ、いつもどおり、訓練どおり、敵を狙って…)

どくどくと、心臓が情けなく音を鳴らす。狙いを定めようとしても手が震えて、上手く定まらない。だって、
だって、自分の狙う先には。
4703/8:2008/12/28(日) 04:43:40 ID:qbIqm3Un

(──ひばり、状況を報告しなさい)
耳に響いた冷静な言葉に、ひとまず息をついて自分の今いる地点を口にした。そして先ほどと同じ、
一般市民がネウロイに襲われている旨を報告する。その間も照準器を見つめ続け、エルマは引き金を
引くタイミングをうかがっていた。照準器に敵が飛び込んでくる。引き金を引こうとする。でも──出来ない。

だって、その先には自分が守らなければいけない対象がいるのだ。機械化航空歩兵であるエルマが
何よりも優先しなければいけない相手。スオムスの国民が。もし間違えて、あの少女に弾を当てて
しまったら?挙句の果てには、そのせいで彼女が命を落としてしまったら?きっともう、自分は立って
いられない。──想像すれば想像するだけ、気持ちは後ろ向きに行ってしまう。あなたには無理よ、
どうせ無理なのよ。心のどこかが諦めたような叫び声を上げる。でも逃げない。逃げちゃいけない。
今にもきびすを返して逃げ出したいほどの衝動に駆られていたけれど、エルマは負けるわけには
行かなかった。

(すぐに増援を向かわせます。──それまで全力で、その少女の保護に努めること。無理な対峙は
控えてください。それが貴官の任務です。分かりましたか?)
「……はいっ!」

──でも、やるしかないのだ。
確か今日、第一中隊や自分の隊の他の面々は機体の整備をするのだと言っていた。となれば、すべて
ではないにしても出撃できる機体はぐっと減ることになる。『すぐに』と、ハッキネンは言っていたがその
声は彼女らしくもない、微かな焦りを怯えていた。もちろんそれは長くカワハバ基地に身を置き、彼女の
言葉をよく聞いていたエルマだからこそ分かる機微であったろうけれども。とにかく、増援には期待しない
ほうがいい。だからハッキネンは『撃破』ではなく『保護』と言ったのに違いない。エルマ一人でラロス3機
を撃破することなど無理だと知っていたから。

(…守らなくちゃ。だって私は、ウィッチなんだもの)

そうだ、戦って、勝つことなんて考えなくていい。撃墜スコアを競うために自分はウィッチになったわけ
ではない。とにもかくにも、まずはあの子を助けなければ。そして、安全な場所に。──そのためには。
ぐい、と再びエンジンの出力を上げ、降下してラロスの脇に躍り出る。そして確実に少女に当たらない
方向、つまりラロスたちの横腹から機関銃の引き金を引いた。バババババ、と体全体に響く振動。射撃の
腕があまり良いとは言えない、更には実戦ともなると情けないほどになる自分では、まともに当てること
さえ難しいと、エルマはちゃんと知っていた。だからその攻撃でラロスが一体も落ちなかったのを見ても、
気を取り直して銃を構えなおす。大丈夫、こうなるのは分かっていた。私はネウロイを撃墜するために
放ったのではない。

「そこの子ーーーーっ!!聞こえてますかあーーーーっ!!」

突然の攻撃に、予想通りラロスたちがひるんだ。その隙にエルマは眼下の少女に叫びかける。そこでは
すでに少女が顔を上げてこちらを見ていた。ちらちらとラロスの様子を見やりながら、エルマは更に
告げる。

「森のほうに向かって!!全力で!逃げて!私もすぐに行きますからっ!!!」
「ウ、ウン!!」
頷いた少女が突然目を見開いた。そして見開いて、叫ぶ。

「あ……!!ねーちゃん、右に避けてえーーーっ!!」
4714/8:2008/12/28(日) 04:44:10 ID:qbIqm3Un

続いた言葉にびくりとして、考える間もなく体をそちらにやった途端、そのエルマの体のすぐ左横をラロス
の放った機銃弾が掠めていった。驚いて振り返るとやはり大したダメージは与えていられなかったようで、
ラロスが3機とも体勢を立て直してこちらに照準を当てるかのように機首を向けていた。これでは少女を
逃がしている暇はない。それはおろか、自分も無事でいられるか分からない。…けれど、まだしばらくは
増援の期待も出来ない。

(戦わなくちゃ…ううん、守らなくちゃ。私が、ちゃんと)

手をぎゅう、と握り締める。手袋越しでも、汗がにじんでいるのが分かる。自分はウィッチだ。シールドが
あるから、多少の攻撃を受けても無事でいられる。けれどあの銀髪をした少女は違う。よく見ると微かに
黒い毛が混ざっているように見える少女は単なる一般市民だ。身を守る術など無い。ならば、いまする
べきことはまず一つ。

「スキーを脱ぎ捨ててくださいっ!!今そっちに向かうから、私に捕まってっ!!」

ラロスに向き直って、もう一度。機関銃を撃ち放つ。先ほどに比べたら当てることが出来たようだけれど、
単機での戦闘経験は皆無に等しいエルマにとって一人の空は恐ろしく大きく、敵は多勢の上強大で。
体の震えが止まらない。懸命に押さえつけようとしても、どうにもならない。けれども自分がやらなくては
いけないのだ。いつものように誰かの影に隠れて、おこぼれに預かるように後ろで震えていることなんて
できない。エルマの背に目はないから視界には入っていなかったけれど、体はしっかりと感じていた。守る
べき相手がそこにいる。自分でなければ誰がやる。

機関銃を撃ち放ち続けながら、エルマは急降下して少女のほうへ向かった。そして手を伸ばす。チャンス
は一度きりだ。これを逃したら、再び体勢を持ち直すのには相当の時間が掛かる。けれど少女のほうを
見やっている暇もない。どうか上手くいきますように──

先ほど少女がいた地点辺りに来て、エルマは内心祈りながら空いた左手を動かして少女の姿を探した。
──しかし、手は空を切るのみ。どうして?なんで?私、もしかして場所を間違えた??どうしよう、私の
せいだ。自分の犯した失敗の情けなさに涙がこぼれそうになった、そのときだった。

「泣かないで。ここにいるよ、ちゃんといるから」

背中にふわり、とした重みを感じた。ぎゅ、と首に手を回されて、おんぶをしているかのような様相になる。
耳元で囁かれてようやっとエルマは少女が自分の背にいることを知った。けれどどうしてか少しも重く
ない。むしろ軽くなったようにさえ感じる。…どうして?不思議に思ったけれどもしかし、それを気にして
いる暇を『敵』が与えてくれるはずがない。ぼんやりとしていたエルマに、鋭く少女が叫んだ。

「ねーちゃん、左ッ!」
「ひだり?」
「いいからそっちに避けてっ」
「は、はいっ!!」

疑問に思っている暇はない。だって少女ときたら次々に指示を飛ばしてくるのだ。エルマはただそれに
従って動くだけ。…けれどそのうちに、あることに気が付く。

「次、うえっ!!」
「はい!!」

4725/8:2008/12/28(日) 04:44:42 ID:qbIqm3Un

少女の言うとおりに避けると、どうしてだろう。先ほどと同じように、避ける前にエルマがいた場所を正確に
ラロスの攻撃が過ぎっていく。だから不思議と被弾することがない。
少女はまるで、敵の攻撃を先読みしているかのようにエルマにそれを伝えて来ているのだった。どうして。
小さく呟く。けれど、それに答えている暇も少女には無いようで。ぎゅう、と少女がエルマの肩を手でつかむ
。情けなく震えている、その肩を申し訳なく思う。けれど直後にはっとした。だって、少女の手もまた同じ
ように震えていたから。当たり前だ。一般市民がこんな間近でウィッチの戦いを見ることなんて無い。怖く
ないはず、無いのに。
それでも少女は臆することなく、エルマに指示を飛ばすのだった。

「次来るよ、下ッ!!」
「う、うん!!」
「右斜め上来るよ、撃って!!」
「…はいっ!」

言われたとおりに機銃を構える。震える指。心臓が大きく音を鳴らす。けれどそこに敵の姿はまだない。

「む、むりよ…当たらないわ。だってそこにはなにも…」
「大丈夫、絶対当たる。ちゃんと全部、"視えてる"」

ぎゅう、と後ろから小さな体がエルマを抱きしめる。耳元でもう一度、少女が呟いた。

「大丈夫。絶対大丈夫。怖がらないで。私を信じて」
「でも、」
「ねーちゃんならできる。信じてるから」
「……しんじ、てる…」

信じてる。その言葉にほわんと胸の奥が熱くなったのを感じた。どうしてだろう、『絶対大丈夫』、そんな
感覚が体中に広がっていく。銃を構える。不思議といつもよりずっと安定している。ストライカーの調子も
すこぶるよく、何でも出来そうな心地。こんなに寒い冬の日なのに、どうしてかひどく背中が温かい。
――そう、少女のいるそこから、魔力が直接流れ込んでエルマに力を与えてくれているかのような。

できる。今の私なら。
確信めいた気持ちで、エルマは目を見開いた。構える先は全くの虚空。3機のラロスはどこにいるの
だろう?──でも、そんなことは今はいい。大丈夫。信じよう、この子を。信じよう、私を。

「いっけええええーーーー!!!」

少女の叫ぶのと同時に機銃の引き金を引くと、すぐ目の前にラロスが躍り出た。





ゆるゆると降下して、ぼふり!柔らかな雪にダイブするようにして着地する。疲れ果ててはいるが、エルマ
も少女も、体には傷一つない。

空からキラキラとした、ネウロイの破片が雪のように降って来た。いつの間にか雲はとぎれて、曇天の
はずだった空から、筋のように太陽の光が差し込んで来ている。まるで昔絵本で見た光景のよう。
天使のはしご。そう、確かその絵本ではこの景色をそんな風に呼んでいたっけ。

「…あの…大丈夫?」
4736/8:2008/12/28(日) 04:45:13 ID:qbIqm3Un

年の頃にして10つくらいだろうか。先ほどまでエルマの背の上で共に飛んでいた少女は今、不時着に
備えるために前から抱き締めた、その格好のままでエルマの胸にしがみついている。スオムスの軍服と
よく似た色をした水色の上着を羽織って、金髪を薄く薄くしたような、銀色の髪をして。そして、髪の一部が
黒く逆立っていて──
そこでようやっと、エルマはあることに気が付いた。いや、むしろ今までどうして気付かなかったのか、
ということにが不安になるくらいに、それは明白だったのだ。

「あなた、ウィッチなの?」

尻の辺りを見やると、犬のそれよりもふさふさとした、先の白い黒いしっぽがある。そして頭にすっくと
立っているのは、やはり犬のそれよりも幾分か長い、黒い二つの獣の耳で。つまりそれは、この少女が
魔女の力を持ったウィッチであることを示していた。
がくん、と少女から力が抜けたのを感じ、エルマは慌ててそれを抱きとめる。同時にしゅるりと頭から耳が
消え、傍らに犬のようでいて犬ではない、黒ずんだ獣が現れた。主人に寄り添う犬のように、獣は少女に
顔をこすり付ける。

「ねえ、どうしてあんなところにいたの?ここは国境近くだから危ないって、お母さんに言われなかった?」

先ほどから自分は質問ばかりだ。それでも少女が何も答えないものだから、エルマは質問に質問を
重ねていくことしか出来ない。困り果てて、ひとまずぎゅう、と少女を抱きしめた。もしかして先ほど敵の
攻撃を先読みしたような発言をしていたのも、もしかして彼女の能力だったのだろうか。

(だとしたら、すごいことだわ)

だって、ウィッチの中でも特殊能力を持つものがそもそも稀なのだ。少なくともエルマはその類のウィッチに
はまだ、一人もあったことが無い。遠く、つらい戦いの続いているカールスラントにはそんな優秀なウィッチ
が数多くいるというが、この北欧の田舎ではウィッチとなるだけの魔力を持つことさえ貴重なのだから。
その特殊能力が、例えば敵の動きを先読みできる類のものなのだとしたら──そうしたら、全然怖くない
わ。確かエルマはかつて、そんなことを思ったことがあった。人一倍臆病な自分でも、そんな能力があれ
ば怖くないのに、と。もちろんそんな力があればそもそも怖がりなどではなかったのかもしれないけれど、
それは大した問題ではない。

この子はきっと将来、このスオムスを背負って立つような、そんなストライクウィッチになる。
そんな確信めいた気持ちが、エルマの胸によぎった。それはただ単に彼女の特殊能力からのみ判断
したのではない。あの背中から感じた、強い強い力。他人にまで影響を及ぼすような強大な魔力の証。

それよりも、なによりも。

手を伸ばして、まっすぐなストレートの長い髪をゆっくりと撫でる。微かにいまだ、震えているその体。
怖かったに違いない。怖くなかったはずが無い。それでも、怯える自分を勇気付けてくれた。「大丈夫」と
囁いて「信じて」と呟いて。そして、「信じてる」といってくれた。『いらん子』などと言われて皆から笑われて
ばかりだった自分を、初対面でこんなにも信頼してくれた。そのことがエルマは嬉しかったのだ。

ぼそぼそと、胸のところで少女が小さく何かを呟いた。じんわりと熱いものがこみ上げるのはきっと、
少女の涙で衣服が濡れているせいだけではない。そのつぶやきは小さな小さなものだったけれど、
しっかりとエルマの耳に、心に、届いていた。
(ありがとう)
もしかしたらウィッチとして初めての、自分に対するまっすぐな感謝の言葉。自分がこの小さな女の子を
救ったという証。この世のどんな勲章よりもずっとずっと意味のある、最高の名誉。
4747/8:2008/12/28(日) 04:45:44 ID:qbIqm3Un

「ありがとう──」
少女が顔を上げて、もう一度感謝の言葉を述べる。何かを言いかけて淀んだのを見て、エルマはにこ、
と笑って恐らく彼女の望んでいる言葉を返した。
「私の名前はエルマ。エルマ・レイヴォネン。スオムス空軍中尉──ストライクウィッチです」
ねえ、いつかもしかして、あなたも私と同じ空を飛んでくれるかしら。そんな未来が、あなたには見えますか?

届くはずは無いけれど、そんな気持ちを込めて語りかける。少女と自分が着ている衣服を見ていると、
まるでスオムスの蒼い空が白い雪の上にちょこんと乗っかったようだ。それはエルマの、とてもとても
大好きな景色で。

「ありがとう、エルマ」
「あの、あなたの名前は──」
「エルマ中尉〜〜〜〜!!!」

少女の名前を尋ねようとした瞬間、元気な声が、空から聞こえた。見やるとそこにはぶんぶんと手を
振っているキャサリンを先頭に、なぜか対のメンバーが全員集まっている。キャサリンに続いてウルスラ、
ビューリング。ちなみに智子はというと後ろのほうでハルカとジュゼッピーナに絡まれてじたばたしていた。

「みなさん!!」
嬉しくなって、エルマもキャサリンに負けないくらい大きく手を振った。腕の中の少女も一緒に揺り動か
されて、いつの間にか笑顔を浮かべていた。

「遅れてもうしわけなかったね。準備に手間取ってしまったねー。」
「…残機ゼロ。エルマ中尉3機撃墜」
「Oh!!さすがエルマ中尉ね!!見事全部撃破してしまったのね!」

ウルスラとキャサリンに手を出され、その手をとるエルマ。少女はというといつの間にかビューリングに
抱きかかえられていて、何が気に食わないのかじたばたと暴れている。なんだかおかしくてくすくすと笑う
と、少女は恥ずかしそうに口を尖らせてうつむいた。後ろではビューリングがなぜかひどく楽しそうな顔を
している。

「ありがとうございます、実は魔力使い果たしちゃって、へとへとで…ぇ」
「エルマ!!」
「エルマ中尉!!?」
「オーゥ!たいへーん!!」

お疲れ様。
今日一日は非番だったはずなのに、どこかげっそりした顔でいる智子のもとにたどり着いてそう言われた
ところで、エルマの意識は途切れた。
エルマ!!自分の名前を呼ぶ、自分の助けた、自分を助けてくれた少女の声だけが、エルマの耳の奥の
奥にまで確かに届いた。
4758/8:2008/12/28(日) 04:46:21 ID:qbIqm3Un





目を覚ましたらそこは見慣れた、基地の宿舎の天井だった。起きたか。その言葉とくゆるコーヒーの香り
で傍にビューリングがいることを知る。

「あのう、ビューリング少尉、」
「あのキツネ娘はエイラ・イルマタル・ユーティライネンというらしい」
「…はあ」
「10歳の誕生日を祝うために、家族で祖母のところに帰省していたんだと。どうも村のまじない師だとか。
 …まあ、先月の侵攻で帰るに帰れなくなって仕方なくまだここにいるのだとか言っていたが」

エルマの反応などお構いなく、どうやら送り届けるついでに尋ねておいてくれたらしいメモを読み上げて
いる。ああまたお礼を言わないといけないことが増えた。話を聞きながら、心のどこかでエルマは思う。

「『ありがとう』と伝えておいてくれと言われた。命の恩人だと。──良かったな」
「…はい」

がたり、とビューリングが席を立った。どうしたのだろう、と見上げると「ウルスラが外で人払いをしている
んだ」と肩をすくめる。寝込んでいる病人がいるにもかかわらず世話を焼きたい騒ぎたい連中が多くて
困る、と。眠っている自分の口に切ったりんごを突っ込まれたり、添い寝と言わんばかりにベッドに
潜り込まれていろいろされることを想像して、エルマの口から乾いた笑いが漏れた。常識で言えば絶対に
やらないであろうことだが、そんなものがこの部隊にないことは当初から周知の事実なのだ。

「おい、中尉が目を覚ましたぞ……と、わ、わ、うわあああ!!」

ビューリングが扉を開いた瞬間、まさに『堰を切った』ように何人もの人間が部屋に雪崩れ込んできた。
キャサリンやウルスラをはじめとした部隊の面々はもちろん、どうしてかアホネンやハッキネンまでいる
ことにエルマは目をぱちくりさせる。駆け寄ってきた彼女らに押しつぶされてビューリングが床で伸びて
いるのが人と人との間から見えて、不憫に思うと同時につい噴出してしまった。そういえばビューリングの
あんなにも慌てた声ははじめて聞いた気がする。みんなはそんなことはどうでもよいようで、一体エルマ
の見舞いに来たのかただそれに乗じて騒ぎたいのか分からないくらいにはしゃいでいた。智子やアホネン
やハッキネンに、りんごやらベリーやらをひっきりなしに差し出される。冷たいタオルと熱いタオルを順繰り
に頭に乗せられてどちらがいいのかウルスラとハルカがどうしてかにらみ合いをしている。キャサリンが
放った空砲がまた、宿舎の壁に穴を開けた。ジュゼッピーナはというと「パスタ作ってきーましたー」と果物
でいっぱいになった口の中にフォークを差し出そうとしてビューリングに後ろから止められていた。もう
何が何だかわからない。先ほどまでの静けさが嘘のようだ。──そう、静かな後には必ず、何か一波乱が
起こる気がするのはこんな光景を毎日目にしているからかもしれない。

どこかもう慣れてしまったその喧騒を穏やかに見やりながら、エルマはあの少女に思いを馳せていた。
いつか一緒に空を飛べるだろうか。一緒にスオムスを守ってはくれないだろうか。そんな淡い希望を、窓の
外の景色に乗せる。外は猛吹雪で、これではネウロイも襲ってはこれないだろう。皆がここに終結して
いるのも恐らくはそれが理由なのではないかと思う。それでも心配してくれていたことが、エルマはこの
上なく嬉しかった。嬉しくて嬉しくて、顔が綻ぶ。

「ありがとうございます。」

口にするのは、ありとあらゆる人への感謝。それはまだ欠片でしかないから、もっともっと形にして、伝えて
いかなければいけないけれど、とりあえず今は、これだけでも。
今も同じ空の下にいるあのダイヤの原石にも、届けばいいと願いながら。

その少女がその後ストライクウィッチとして志願し、スオムス随一のエースとなって世界をまたにかけ
活躍するのはまた、別の話である。
476名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 04:50:04 ID:qbIqm3Un
以上です。
埋めの人は明日も予定があるので、別に埋め立てしてしまって構いません
というか埋めネタの続き誰かがかけばいいんじゃないかな
477名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 05:58:26 ID:8sj3+NFK
>>476
GJ!小さくてもやっぱりエイラさんはかっこいいな。才能は確実にエイラのが上なのに、エイラは本気で
このねーちゃんはすごいんだって心酔してそうだ。エイラに嫌がられたり床で伸びてたりするビューリングさんにワロタw

>エルマだからこそ分かる機微
>どうしてかアホネンやハッキネンまで

エルマさん争奪戦にまさかのハッキネンさん参戦ですね分かります。
478476:2008/12/28(日) 08:20:52 ID:8HAidbAK
あ、ごめんまた書き忘れてた、21X2w2Ibでした
ふと保管庫見たらどうしてかなんか受勲していたんだけどいいのかな
479名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 09:47:53 ID:wzFXpgv2
>>478
勲章は床に投げ捨てろってハルトマンが言ってた!
エルマとエイラにこんな経緯があったら微笑ましいなあ。多分ビューリングが嫌がられたのは
タバコ臭いからだと思うw
480名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 09:58:16 ID:/o1JL7ug
くそう。
エルマさんのネタを見るとはやくいらん子の新刊が読みたくなる。
春までなんて待てないよ・・・。

ところで、480なんで次スレ立てて来たほうがよかですか?
いくなら、立ててきますよ。
481名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 10:05:17 ID:vNUT4jWW
>>478
GJGJ

>>480
ちょうど480で切りがいいし頼む
482名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 10:11:51 ID:/o1JL7ug
規制がかかって無理だった・・・。
誰か頼んます
483名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 10:14:26 ID:vNUT4jWW
じゃあ俺が行ってみる
484名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 10:15:04 ID:wzFXpgv2
よろちくび
駄目なら俺が行くわ
485名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 10:17:56 ID:vNUT4jWW
ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart16
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1230426947/

いよいよ16ダナ
486名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 10:19:02 ID:wzFXpgv2
乙乙
487名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 11:30:31 ID:vNUT4jWW
スレも立てたことだし
埋めネタを投下
>>458の大掃除です
でもあんまり大掃除関係ないかも
エイラニャです
488名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 11:31:20 ID:vNUT4jWW
そろそろ一年も終わりということで隊では大掃除をすることになった
普段まめに宮藤とかが掃除してるから、基本的には自分の部屋の掃除
あとミーティングルームとか共用スペースは分担してやることになった。
私とサーニャは二人ですることにした。
割とどちらかの部屋に入り浸ってることが多いので、自分の部屋のようにお互いの部屋を知っているので効率もいいし
それに二人でいられるからだ。
 
まずサーニャの部屋をしてその後私の部屋。
と言っても元々家具くらいしか無いサーニャの部屋は掃いたり拭いたりする程度ですぐ終わった。
ということで残るは私の部屋はわけだが

「・・・ねぇこれどこにしまえばいいの?」
「えーっとそこの棚に入れといて」

占いの道具が多すぎて整理が大変だったりする
普段使えばしまうようにしてるので部屋自体は散らかってないが、折角大掃除ということでちゃんと整理して
あまり使わない道具とかを綺麗に拭いたりしていたらかなり大がかりな掃除になってしまった。

「うーん予想以上に大変になったな」
「そうだね」
「ごめんなー私の部屋のほうが大変で」
「別にいいよこれくらい」

そう言って微笑んでくれるサーニャを見て癒される
・・やっぱり二人でしてよかった
一人だと挫折してたかもしてない

「よし道具の掃除は終わったから後はしまうだけだな」
「結構時間かかったね」
「少し磨くのに熱がはいっちゃねったからなー。しまうのは私がやるからサーニャは休んでていいぞ」
「えっでも・・・なにかすること無いの?」
「うーん後はしまうだけだからナァ・・・そうだ本の整理をしてくれないか?」
「本の?」
「そっ別にいいとかと思ってたけど、棚の本の順番がさバラバラだったりするからそれを直してくれ」
「わかった」
「よろしくなー」

うーむサーニャに随分手伝わせしまった。
休んでて良いといっても聞かないからなぁ
普段お世話になってる恩返しらしい
 
「・・エイラ随分本読むんだね」
「あーまぁ趣味の本だし自然と増えちゃって」
「へぇ結構古そうな本もあるんだね」
「あぁスオムスから持ってきた本も有るぞ」

全部無理だったからお気に入りの本を厳選して持ってきた
中に結構レアな本も有る

「本当に占いすきだね」

サーニャのほうが好きだぞ!
とか言おうと思ったが恥ずかしくて言えなかった
うん来年はもう少し積極的になろう
489名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 11:31:51 ID:vNUT4jWW

パラパラとページを捲るサーニャ
私なら掃除中に本なんか捲ったら掃除そっちのけで読んでしまう
だからサーニャに本を任したのだ。
サーニャは内容より挿絵の図や魔方陣などを眺めていた
いかんいかんサーニャを眺めて私の手が止まっていた

「ん?」
「どした?」

手を止めずに聞く
なにか知ってる魔方陣が有ったのかな?

「ちょっと挟まってる物が有って・・・・」
「ん?」

サーニャの手には二つに畳まれた紙が握られていた

んーどっかで見たこと有るような・・・・

「手紙?」

そう言って紙を広げる
おいおい勝手に・・・
それにしてもなんだろ手紙?
・・・・・なんだろ思い出せそうで思い出せない

「ふーん」
「どっどうしたんだ?」
「別に」
「なぁなんの手紙だそれ?」
「エイラのでしょ」

はいっと渡される
あれ?サーニャ怒ってる?
とりあえず渡された手紙を読んでみる

「あっ!」
「・・・あっ!てなに?」
「いや・・・」

これはスオムスに居た頃渡された手紙だ
新人の部下にある日渡された手紙
内容はうんまぁ予想通りの事が書いてあった

「・・・昔の手紙だ」
「エイラ昔からモテたんだね」
「そっそんなこと!」
「無いの?」
「・・・ナイヨ?」
「怪しい」
490名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 11:32:30 ID:vNUT4jWW

うー確かにこういう手紙は結構貰った
でも今は関係ないわけで・・・

「ブリタニアまで持ってくるほど大切な手紙だったの?」
「いやこれは・・」

本に挟まってただけで・・・


「その人とどういう関係だったの?」
「えーと」

なんだろ部下?
友人にしては交流が少なかった気がするしやっぱ部下かなぁ

「・・・・私には言えない関係なんだ」
「えっ!」
「もういい」
「サーニャ!」

違う部下かどうかで迷ってただけなんだ
と言うことしたがサーニャはもう部屋に居なかった


 ◇ 


「という事が有ったんだよ」
「へー」

あの後途方に暮れていて
とりあえずミーティングルームに行ったら
ハルトマン中尉が居たので相談することにした

「そういえば中尉掃除は?」
「トゥルーデがしてるよ」

邪魔になるかたここにいるらしい
なんだかんだで面倒見が良いな大尉は

「なぁどうすれば良いと思う?」
「さぁ」
「おい少しは真面目に聞けよ」
「だってさーそれただの惚気じゃん」
「えっ」
491名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 11:33:07 ID:vNUT4jWW
「昔の恋人の事とか自分のしらない過去のこととかが知りたいんでしょサーニャは」
「そうなのかなぁ」
「そうだよ。手紙で見た昔の恋人に嫉妬しちゃって可愛いねぇ」
「なっ!あいつは部下でそんな関係じゃないぞ!」
「そのことサーニャに言ったの?」
「・・・・・・言う前に部屋から出て行った」
「あーあ駄目駄目だねぇ」
「今から言ってくる・・・」
「でもさぁ今から部下だって弁解しても怪しくない?」
「そうかな?」
「まるで浮気がばれた亭主のようだねエイラ」
「なっ!私はサーニャ一筋だぞ!」
「あーはいはいごちそうさま」

しまった随分恥ずかしいことを大声で言ってしまった
うぅ中尉以外に聞かれて無いよな・・・
 
「恋する女の子は自分の好きな人の過去とか知りたいんだよ」
「そうなのか?」
「じゃあエイラはサーニャに昔恋人が居ても気にならないの?」
「・・気になる」
「でしょ?」

確かにサーニャの昔の事は知ってるようであんまり知らない
訓練時代に仲の良い人が居たとか
私の知らない過去
私の知らないサーニャ

「おーい戻ってこーい」
「はっ!」
「暗いよー」
「そうか?」
「まっ!サーニャの気持ちが実感できたところで後は頑張って」
「どうやって頑張ればいいんだよー」
「それは当人どうしの問題でしょ」
「うー」
「だからそろそろ出てきたらサーニャ」
「えっ!」

中尉の言葉と共に
おずおずと扉から入ってくるサーニャ
全然気がつかなかった・・・

「お邪魔虫は消えるねー」

そう言って部屋から中尉は出て行った
492名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 11:33:39 ID:vNUT4jWW

「どこから聞いてた?」
「・・・・・・エイラが事情を説明してた辺りから」
「最初からじゃないかよ」
「・・・うん」
「・・・そっか」

しまった会話が続かない
うーんなに言えばいいんだ

「ねぇあの手紙の人とはホントにそんな関係じゃないの?」
「あっああ、あいつはただの部下だ」
「でも手紙・・・」
「あれはたまたま挟まっただけで深い意味は・・・」
「・・・・ねぇエイラは今まで何人と付き合ったの?」
「えっ!」

矢継ぎ早に質問される
・・・・というか私そんなに軽そうに見えるのかなぁ
自分は結構一途だと思ってたけど周囲の目は違うらしい
まぁ普段の自分の行動を考えれば分からないでもない

「私はサーニャ一人だけだぞ」
「ホントに?」
「ホントだ」
「ホントに?」
「うーどうすれば信じてくれるんだよー」
「ふふっ大丈夫信じてるよ。さっきあんな大きな声で言ったんだから」
「うっ」

そういえばさっき大声で随分恥ずかしい事を言った事を思い出し
その時サーニャはばっちり聞いてたわけだ

「あーうんまぁそう言うことだ」
「どういうこと?」
「だから・・・・その・・・今も昔もサーニャダケダカラ・・・」

恥ずかしく最後小声になってしまったがサーニャにはちゃんと聞こえたらしい
嬉しそうに抱きついてくる

「そっそういえばサーニャはどうなんだよ!」
「私?」
「そうだよ私だけ言ったら不公平だろ?だからサーニャの過去も教えろよー」
「私は――」

そう言って私の首に手を回しぐいっと引き寄せ耳元で

「今も昔もこれからもずっとエイラだけだよ」

と言いって、ぎゅっと抱きついてくる
私もそれに答えるべく腰に手を回し
そっと顔を近づけて――

493名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 11:34:12 ID:vNUT4jWW


「オホンっ!」
「「!!」」


そう、わたし達は肝心なことを忘れていた
ここは‘ミーティングルーム’だと言うことを

見るとそこにはミーナ中佐とハルトマン中尉が居た

「あなたたいここでなにしてるかしら?」

にこやかに尋ねてくる
笑顔が怖いです中佐

「ちょっと色々ありまして・・・」

苦し紛れに答えてみる

「二人で痴話喧嘩してたんだよー。まぁもう元に戻ったみたいだけどね」
「あっ!こら」

あっさりバラされた
やっぱり中尉に言うんじゃなかった・・・

「へぇそうなのエイラさん?」
「えっ・・まぁそのような感じです」

うぅ顔は笑ってるけど怖いですよ中尉

「仲直り出来たのは良いことだけど、さすがにここでそんな事するのはまずいわねぇ」
「・・・はい」
「それととりあえず二人とも離れなさい」
「あっ」

ビックリして抱きしめたままだった

抱きしめてキスすしよとしてた所を見られた
もうどんな言い訳も通用するわけが無い。
494名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 11:34:48 ID:vNUT4jWW

「へーエイラ二人だと結構大胆なんだね」
「そっそんなんじゃねーよ」
「そうなの?」
「おいフラウお前自分の部屋の掃除を――ってミーナ?」
「あっトゥールデ」

バルクホルン大尉が入ってきた
あぁどんどん人が増える・・・

「エイラとサーニャもどうした集まって?」
「いやさぁ実は二人がさ」
「あっこら!」

と言う間に説明されてしまった

「・・・・随分仲良くなった物だな」
「あっトゥールデちょっと照れてる?相変わらず初心だなー」
「なんだと!」
「そんな怒んないでよー」

そう言って笑いながら中尉は走って逃げてしまって、それを大尉が追っていてしまった

「・・・まったくあの子達は・・とにかく貴女たちは自分の部屋の掃除をしなさい」
「「はい・・」」

 ◇ 

実はこの後サーニャとの痴話喧嘩を中尉によって隊全体に広められて
盛大な冷やかしを受けることになるの事を今の私はまだ知らなかった。


終わり

495名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 11:37:28 ID:vNUT4jWW
以上です
タイトルは独占欲
後10kb程度余ったのでだれか埋めネタ投下できるならしてください
とういことで自分の部屋の掃除そっちのけで投下した◆eIqG1vxHTMでした
496名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 11:38:24 ID:wzFXpgv2
GJ
だがメール欄にsageを入れるんだ
497名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 11:41:34 ID:vNUT4jWW
あれJaneのsage欄にはちゃんとチェック入ってるのになんでだろ?
すみません
498名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 13:15:36 ID:pTMzL2BS
>>495GJ!
そうかもう大掃除の季節なんだな…。まったく掃除なんてしてないぜ!!
ていうかトゥルーデひとりでエーリカルームを掃除かよwおねえちゃんは大変だw
エイラはもうすっごいモテまくりなんだろうなあ
サーニャの気持ちわかります
499名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 17:22:00 ID:4dUnlWKp
>>495
この二人は!この二人は!もう!
エイラルームは物多そうだからなぁ。面白そうなものや見られたくないものもありそうw
他のキャラの大掃除も面白そうだな・・・。

「だめだってトゥルーデ・・・そんなとこ無理やり吸っちゃいや・・・」
「・・・おとなしくしてろ・・・」
「・・・だめだって・・・あ・・・
 (ズゴゴゴゴ)あーもう!無理やりやるから書類吸い込んじゃったじゃないか!」
「大事な書類はちゃんと取っておけ!ほら!」
エーリカルームに掃除機かけてるトゥルーデを想像した。すまん
500名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 17:53:33 ID:qbIqm3Un
※埋めエイラーニャ 絡みはないですごめんなさい 4レス


世界中できっと、誰よりもずっと。
幸せな場所が、ここにある。

ほら、君が奏でる音は、世界中で何よりも、私にとって大いなる福音。


年の暮れに行われる冬至祭のパーティは、外の寒さに身動きが出来ないフラストレーションも相まって
いるのだろうか、夏至のそれに負けないくらいに盛大だ。室内は盛大に飾りつけがなされテーブルには
大きなケーキとたくさんのご馳走。煌々ときらめく電灯に、誰の心も沸き立つよう。

年の暮れはとにかく目出度いことをとりあえず沢山詰め込んだようで、私たちの住むヨーロッパでは文化
の違いが大きくあるのにもかかわらずどの国でもやれどこかのお偉いさんの誕生日だとか、やれどこか
の気前の良いおっちゃんがプレゼントをくれる日だとかとごちゃ混ぜになってみんな好き勝手に一年の
締めくくりを盛大に祝う。逆に遠くはなれた扶桑とかだともっと静かにこの時期を過ごすようで、当初は
ひどく驚いた顔をしていたけれど『めでたいものはめでたいんだ』と主張したらそう言うものなのか、と
すぐに納得してくれた。
そうだ、せっかくの年の暮れ、誰が決めたのか、一年の終わり。そこで区切りをつけるんだから、今までの
ことなんてすっかり忘れて楽しく過ごせばいい。今年一年自分がどんな過ちを犯しただとか、どんな悲しい
ことがあっただとか、そんなことを考えていたらつまらない。なんにせよ、楽しいことを優先したほうが生き
るのは楽しいに決まってる。何かにつけて『何を考えているのか分からない』と周りに言われる節のある
私だけれど、行動理念なんて実はそんな単純なものなんだ。面倒で、説明なんてしないからたぶんだれも
しらないけれど。

…けれど、世の中そううまくはいかないことだってある。
それは、私たちの戦う相手はそんな祭りなんて全く知らない、この私にだって何を考えてるのか分から
ない、だから一緒に祝えるはずもない、そんな異形の怪物たちなんだから。


ミーティングルームに集っている仲間たちはもうすっかり出来上がっていて、その隅っこのソファで私は
ぼんやりとその光景を眺めていた。

この冬の祭りは私の国では、一大イベントとも言える重要な祭りだ。世界中の子供たちが楽しみにして
いる冬至祭──クリスマスのプレゼントを配るサトゥルヌス神ことサンタクロースは、私の国が故郷だと
伝えられているからだ。スオムスにいたころもこの日が来ると決まってひげもじゃで赤い服を着たおっちゃん
が基地にやってきて、私たちにおいしいお菓子や本と言ったなかなか面白いものや、新しいストライカー
ユニットや武器といった恐ろしく現実的なものを届けに来たものだった。もちろんその中身がその実空軍の
えらいおっちゃんだったり、どっかで見たことある顔だと思ったらマンネルハイムのじーちゃんだったりとか
したんだけれど。ちなみにマンネルハイムのじーちゃんから貰ったのは確か勲章だったな、うん。

スオムスではそんなクリスマスが普通なのだけれど、やはりここブリタニアまでなんかするとまた実情が
違うらしい。こうしてホームパーティを開いておおはしゃぎし、飲んで食べて騒いで眠り、目が覚めたら
プレゼントが枕元においてあるのだと聞いたときは坂本少佐のまねをして「けしからん!」と叫びたくなった
ものだった。サンタクロースもトントゥも現れないクリスマスなんて、なんて寂しいクリスマスだろう。

「眠くないか?」
501名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 17:54:19 ID:qbIqm3Un

ジュースの入ったグラスを傾けながら、私は隣で私の肩を枕にしてうつらうつらしている子に話しかけた。
少し、と言う小さな呟きが返って来る。

「部屋で少し寝てル?」
「…大丈夫。」
「そっか。…あ、飲むカ?」

グラスを差し出すと、こくりと頷いて彼女がそれを受け取って飲む。喉が渇いていたんだろうか、半分くらい
残っていたジュースはすっかり空になってしまった。お代わりはいるか、と尋ねたら小さく首を振ったので、
私は空のグラスを持ったままそのままでいることにした。壁にかけられた時計を見やる。ああ、そろそろだ。
思った瞬間、きゅ、と手を握られた。どきりとする私。

「…エイラ、いいよ。みんなのところに行ってきて」
「デモ、」
「私、そろそろ哨戒の時間だから。…私の分も、楽しんできて」

ぱ、と離される手。立ち上がるその子。小さく笑顔を作ってそんなことを言うものだから、私はちらりと
みんなのほうに目をやってこちらを見ていないことを確認して、ずっと前から用意していた言葉を言った。
なんだかちょっぴり気取ってるけど、別に変な意味なんてないんだからな。絶対絶対、ないんだからな。
何度も何度も自分で自分にそう言い聞かせて。

「じゃあ行コ?みんなのことなんてほっといて、二人で夜の空を楽しもうヨ、サーニャ」

空のグラスをその辺りにおいて、笑ってサーニャに手を伸ばす。クリスマスイヴの夜に空を飛べるなんて、
サンタクロースと私たち以外に誰も出来ないよ、サーニャ。重ねてそう言ってやったら、驚いた顔で私を
見上げていたサーニャが「うん」と頷いて笑ってくれた。





「…ねえ、エイラ…」
私の傍らを飛ぶサーニャが、もごもごと濁すように呟いた。
「ん、ナンダ?」
私は返す。その拍子に、腕に取り付けた鈴がリン、リンと音を鳴らす。静かな夜の、澄んだ空気に溶けて
いく優しい音。スオムスのクリスマスではいたるところで、この綺麗な音色がハーモニーを作り上げていた
っけ、なんて思い出す。

「あの、なに、この服」
「サンタクロースの服。」
「…うん」

そんなの見れば分かるじゃないか、と言わんばかりに答えたら、ちょっぴり呆れたような言葉が返って
きた。私は至極真面目に答えたつもりだったんだけど、やっぱりスオムス以外では意味不明なことなのか
もしれない。
502名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 17:54:49 ID:qbIqm3Un
そう言うサーニャはいつもの黒い服じゃなくて、私が渡した赤い服に白いファーをあしらった、いわゆる
『サンタクロース』の格好をしていた。頭には同じような帽子が取り付けられていて、その先っちょでは
白い雪のようなポンポンが揺れている。本当は長い長いひげもあったんだけれど、それは流石に飛行の
邪魔になると思って止めておいた。「サンタクロースの服が欲しい」と以前故郷にいたずら半分で打診
してみたら恐らくあの真面目な先輩辺りが本気にして、本当に送りつけられてきたものだ。
もっともあの人ときたら私がこちらに来てから全く成長していないと思い込んでいるらしく、今の私にとって
見たらずいぶんと小さめのサイズだったのだけれど。だから試しにサーニャに着せてみたら、これが
ぴったりで、しかも恐ろしくよく似合っていて。まるで私のためだけに小さなサンタクロースがやって来て
くれたような気持ちになってついつい顔がほろ込んでしまう。

「エイラのも、サンタクロース?」
「違うんダナ、これが。こっちはトントゥって言ってさ、サンタクロースの手伝いをする妖精なんだヨ」
「…サウナの妖精とは違うの?」
「同じだよ。トントゥはスオムスの山やサウナにいるんダ」

ふうん、と一つ息をついたサーニャが、かわいいね、と続けて笑う。何だか得意な気持ちになって私も
笑った。だってペリーヌやハルトマン中尉ときたらサウナの妖精のこと全然信じてくれないんだ。実際に
姿を見たことなんてないけれど、サウナの妖精はちゃんといるんだ。ちゃんと私がスオムスから頼んで
一人連れてきた。もしかしたら寂しがって、もう何人も連れ立ってきちゃってるかもしれない。そう考えると
ほら、なんだかわくわくしてくるじゃないか。

まるで海のように広がる雲は、月明かりを清かに反射してまるで昼間のように明るい。今日の天気は
曇りがちだったけれど、空の上はいつも晴れているんだ。年中無休で綺麗な月と星を見られる。多分
それもきっと、すごくすごく幸せなこと。

見えるか、と尋ねたら、サーニャはふるふると首を振った。ネウロイの気配はないらしい。ネウロイも
こんな日はゆっくり休んで、みんなでおいしいご飯を食べて騒いだりしてるんだろうか。そんなことはまあ、
ありえないけれど。そう言えばスオムスにいた頃一度だけ、クリスマスイヴにネウロイの襲撃がぶつか
ったことがあった。もちろん私たちはパーティの真っ最中で、ちょうどプレゼントを受け取っているところ
だったりして。
鳴り響いた警報に、私たちはそれぞれ口をケーキまみれにしたりチキンを口にくわえたりしながら出撃
したのだ。そのときの格好ももちろん、今と同じ赤い帽子に赤い服。スオムスの子供ならみんなする、
トントゥの姿だったっけ。

「…ラジオ、聞く?」

頭のアンテナを淡い緑色に輝かせながらサーニャが言った。二人で夜間哨戒に出掛けるときはいつも
そうしてラジオを聴いて、聞こえる音楽を二人で歌ったり、笑ったりする。かつては二人だけの秘密だった
けれども今では部隊のみんな、誰でも知っているサーニャの力。それはそれだけ、サーニャが部隊の
みんなに打ち解けたということ。

「今日はやめとこうヨ。それよりも、サ」

腕を頭の後ろに回してくるりと旋回すると、またリン、リンと鈴が鳴る。それが面白いのか、サーニャが
微かに微笑んだ。どうしたの?言葉を促すようにサーニャが言った。

「あのさ、私のために、歌ってくれないかな。──今日はラジオじゃなくて、サーニャの歌が聞きたいんだ」
503名無しさん@ローカルルール変更議論中

形のない、だからこそ無限大にきっと大きい、何よりものプレゼント。普段だったらこんなこと、恥ずかし
いし申し訳ないしでなかなか言えないけれど、今日だけは特別。だってクリスマスイヴだもの。何か
プレゼントをくれてもいいでしょう?サンタクロース。
耳に取り付けられた通信機をはずしてポケットへ。恥ずかしがりのサンタクロースの声がちゃんと聞こえ
るように、小さな口に耳を寄せて。

私の体に映る光から、サーニャのアンテナの光がピンク色に変わったのを見た。恥ずかしかったらそれ
でも良いんだ。でも、今日だけだから、ね、いいでしょう?懇願するように囁きかける。たまには私だって
わがままを言ってみたいんだ。

YES。その返答の代わりに耳に届いたのは、音に乗せたサーニャの吐息。ら、ら、ら。耳元でハミングの
ように囁かれる音楽は、私も良く知っているクリスマスソング。まきびとひつじの。昔々どこかの国で
生まれた神様の、誕生の報せを聞いた羊飼いたちの歌。ねえ、サーニャ、知っている?その報せは
ブリタニアでは良い報せ、グッドニュースとしか言わないけれど、ある扶桑の名もなき人が、かつてこう
訳したらしいよ。

福音。
──しあわせのおと、ってさ。

耳の穴から鼓膜を震わせて、優しい優しいサーニャの声が、私の心にまで響いていく。盛大なパーティー
でもなくて、大掛かりなお祝いでもない、寂しくて静かなクリスマスのこの宵。
でもね、私は思うんだ。幸せだなって、思うんだ。とくん、とくん、と、心臓が緩やかな、けれどもいつも
よりも強い鼓動を鳴らす。ちりん、ちりん、と手首の鈴が、風に吹かれて澄んだ音を響かせる。何よりも
ほら、大好きな大好きな、君の声がすぐ近くにある。

ねえこれを、私は福音って呼びたいんだよ。

この気持ちを伝えたくて、けれども上手く言葉にならなくて、思わず手を伸ばしてサーニャの手を握り
締めた。願うなら繋がったそこから、この幸福な気持ちが伝わりますように。

歌が途切れる。続きを催促したくてサーニャに向かい合ったら、サーニャがどうしてか、真っ赤な顔を
してこちらを見ていた。…いや、どうしてか、なんて本当は分かってるのかもしれない。だってたぶん、
私も同じ顔をしてるんだと思う。

ねえ、エイラ。
少しうつむいて、サーニャが呟く。手は繋がれたままで、ゆれるたびにリン、リンと音を鳴らす。
私にもプレゼント、ちょうだい?

明日一緒に買いに行こうと思ってたんだけど、と答える前にサーニャの顔が近づいてくる未来が見えた
から、私は観念してその未来を待ち構えることにした。