ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart14

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさん@秘密の花園
守りたいから私は飛ぶ!!パンツじゃないから恥ずかしくないもん!

●スタッフ
監督・アニメキャラデザイン:高村和宏     キャラクターデザイン原案:島田フミカネ
シリーズ構成:ストライカーユニット        助監督:八谷賢一
世界観設定・軍事考証:鈴木貴昭        メカデザイン・メカ総作監:寺尾洋之
キャラクター総作監:山川宏治・平田雄三   美術監督:小倉宏昌(小倉工房)
美術設定:松本浩樹(スタジオイースター)    カラーデザイン:甲斐けいこ・池田ひとみ
3D監督:下山博嗣                  撮影監督:江間常高
編集:三嶋章紀                   音響監督:吉田知弘
音響制作:楽音舎                  音楽:長岡成貢
音楽制作:コロムビアミュージックエンタテインメント
アニメーション制作:GONZO
原作:島田フミカネ&Projekt Kagonish(プロイエクト カーゴニッシュ)

●キャスト
宮藤芳佳(みやふじ よしか):福圓美里     坂本美緒(さかもと みお):千葉紗子
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ:田中理恵   リネット・ビショップ:名塚佳織
ペリーヌ・クロステルマン:沢城みゆき      エーリカ・ハルトマン:野川さくら
ゲルトルート・バルクホルン:園崎未恵     フランチェスカ・ルッキーニ:斎藤千和
シャーロット・E・イェーガー:小清水亜美    エイラ・イルマタル・ユーティライネン:仲井絵里香
サーニャ・V・リトヴャク:門脇舞以

●放送局
※放送は終了しました

●関連サイト
公式サイト:http://s-witch.cute.or.jp/
まとめwiki:http://www37.atwiki.jp/strike_witches/
人物呼称表:http://www37.atwiki.jp/strike_witches/pages/50.html
百合SSまとめサイト:http://lilystrikewitches.web.fc2.com/

●次スレ
次スレは>>970or480KB超を目安に、臨機応変に立てて下さい。
必要な事前準備等があれば、>>920or450KB超を目安にして下さい。

●前スレ
ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart13
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1228761837/
2名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:01:39 ID:/qk77Xqp
Q.○○書いたんですけど投下してもいいですか?

A.どうぞ、ぜひ投下してください。
条件は「ストライクウィッチーズ」関連であること、
「百合」であることの二つのみです。
ジャンル、エロの有無、本編にないカップリングなどに関係なく、
このスレの住人はおいしく頂いております。
妄想だとか落書きだとか気にせずとにかく投下してみましょう。

ただし、SS専用スレではないので20レスを超えるような長編は事前に断りがあると吉です。
3名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:03:11 ID:/qk77Xqp
──リレーSSの手引き──

★基本ルール
○始める時は、リレーSSであることを宣言する。
○続ける人は宣言は不要だが、一行目に継承元の安価をつける。
○ただし、結末を書く場合は「次で終わっていいですか?」と訊いておく。
○継承先は指定できない。誰かが早い者勝ちで続きを書く。
○ただし自分自身の続きは書かない。最低2人は挟んでから。
○2レス以上にまたがらない。1レスでクールに。
○重複したら先に書いた方を優先する。
○作者名は名前欄に入れる。名無し希望は未入力でも可。
○リレー進行中は他のリレーは開始しない。
○もちろん普通のSSは、リレーの状況に関わらずどんどん投下してください。

★本文と書式
○語り手や文調はできるだけ継承する。唐突な視点変更は避ける。
○誤解を招きやすいため、科白にはキャラの名前をつける。(例:芳佳「おっぱい」)
○後に文が続く事を意識して、できるだけ色々な取り方ができる終わり方にする。
○「駄文失礼〜」「お目汚し〜」等の前書きやあとがきはナンセンスなので付けない。

★心構えと方針
○無理して面白くしようとしない。ナチュラルに妄想を爆発させるべし。
○不本意なカプの流れになっても泣かない。むしろ目覚めるべし。
○展開を強要したり口を挟まない。流れに身を委ねるべし。
○なかなか続きが来なくても焦らない。気長に有志を待つべし。
○多少の誤字脱字、設定違反、日本語おかしい文章には目を瞑る。スルーすべし。
○参加者はみな平等。新兵もエースもリレー主も一切特権はない。仲良くすべし。
○男はいらねえんだよ!ふたなりネタも自重すべし。
4名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:04:22 ID:/qk77Xqp
テンプレお終い。
追加があったら頼む。

最近、流れが速いけど、職人さんに感謝のGJを忘れずに行こうぜ。
5名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:08:23 ID:OkCSBx9E
スレ立て乙
6名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:11:35 ID:tNbS3hGl
>>1
7名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:12:30 ID:Mo8/WBz6
>>1
乙でございます
8名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:16:22 ID:vkTpiFMe
>>1乙!
そして埋め完了
9名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:17:28 ID:tnNfCD2v
>>1
そして綺麗に埋め立てしたした前スレの人乙
10名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:19:22 ID:OkCSBx9E
埋め乙

スオムス人はほんとにふしだらランキング1位だなオイ!ww
11名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:22:04 ID:0jXTsHAv
>>1さん乙!
前スレで埋めた方もGJ!

さて早速こんばんは。mxTTnzhmでございます。

今回は誠に勝手ながら前スレ>>369-371のgf1xJeg9様のSS内容も取り入れさせて頂きました。
御礼とお詫びを。

と言う訳で前スレ>>349-357「interval」同じく前スレ>>406-407「smile」の続編出来ました。
保管庫No.450「ring」シリーズとも一応連動してます。ややこしいですね。すいません。
「ooparts」どうぞ。
12名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:22:35 ID:h9oPgTls
13ooparts 01/09:2008/12/15(月) 20:22:57 ID:0jXTsHAv
シャーリー達四人が基地の屋根から救出(?)された数日後の事。
ブリーフィングルームでは、一風変わった計画が実行に移されようとしていた。
「さて。今回は、先日宮藤とリーネが発見した謎の地下空間について、調査を行う」
美緒が一同に声を掛ける。
「地下空間?」
「ええ。この基地は元々修道院だったものを改装したのだけど……一時期監獄になってた時期があって」
ミーナが言葉を繋ぐ。
「監獄?」
「やっぱり……」
ざわつく一同。ひとつ咳払いをして鎮めると、美緒は言葉を続けた。
「それはさておき。この建物の歴史を調べたところ、数世紀にも渡って幾層もの建築物が複合的、重層的に
建造されている事が分かった。……それも相当複雑に」
基地の書庫から引っ張り出してきた古文書を幾つかテーブルの上に置き、開いて見せる。
「この基地を運用する我々ウィッチーズとしても、地下に何が有るか把握しておかねばならん。万一の為だ」
「万一って?」
「万が一の事だ。他に理由が有るか?」
答えになってない答えを言われ、何も言い返せない一同。
「よし。今回は、宮藤達が目撃したと言う、謎の玄室とその先を調査する」
そう言って、美緒は手書きの基地断面図を黒板に張り出した。
「我々が普段使用している部屋や各種施設の地下には、基地の外周に添った円周通路……いわば回廊が有る。問題はこの先だ」
地図を指す。以前エーリカが書いたものとは比較にならない程精密だが、ところどころ線が歪んでいたり曲がったりしていて、
ああ手書きなんだな、と皆は心の内に思う。
「この地下だ。ここから更に、別の遺構へと抜ける道が有る。それは先日シャーリー達が確認済みだ」
先日の事を思い出して苦笑いする当該者達。
「そこで、今回は調査隊を編成し、送り込む」
「調査隊?」
「バルクホルン、ハルトマン。お前達は地下構造についてある程度知っているな?」
「え? 私も?」
いきなり指名され、素で驚くトゥルーデ。そして心の中で呟く。
(エーリカは色々知っている筈だが、何故私まで……。詳しい事は何も知らないのに……
そりゃ確かに二人でこっそり見に行って、骨っぽいものは見たけれど……また?)
「調査の為には、まず、冷静な判断力と体力が必要だからな。お前達が行け」
「私達二人だけ?」
エーリカが問う。美緒は頷くと、答えた。
「お前達はいわば『前衛』だ。後衛にはシャーリーとエイラを付ける」
「あたし達も?」
「そして残りの人員は、調査チームのサポートに当たる」
「サポート、ですの?」
「案ずるな。準備は万全だ」
美緒はまず無線機に電源ケーブル、ライト、小さな机と椅子などを皆の前に用意した。
大空を飛ぶウィッチが何故地下に……。一同は内心疑問に思ったが、やる気満々の美緒を見て、答える気を無くした。
「ねえ、少佐」
ルッキーニが口を開く。
「一番最初の目撃者の、芳佳とリーネはどうしたの?」
「あー……。今回は不参加だ。そっとしておいてやれ」

名を言われた芳佳は、小さくくしゃみをした。
「芳佳ちゃん……風邪?」
「ううん、そんな事無いよ。リーネちゃんこそ、大丈夫?」
「芳佳ちゃんが居てくれれば、大丈夫、だから」
リーネは地下の調査をすると聞いてまた先日の恐怖がフラッシュバックし、自分の部屋からも出られずに、
芳佳にずっと付いていて貰っていた。暫く部屋から出たくないのか、お菓子にお茶としっかり用意してある。
「リーネちゃん、少し震えてるよ。……大丈夫、私がついてるよ。心配しないで」
「ありがとう」
ベッドの上で芳佳に抱きつき、リーネは目を閉じた。
14ooparts 02/09:2008/12/15(月) 20:23:55 ID:0jXTsHAv
美緒は一同を目の前に、概要を黒板にチョークで書いて説明していく。
「作戦はこうだ。バルクホルンとハルトマンが先陣を切り、調査と探索を行う。身体には細いロープを繋いで『命綱』とし、
万一迷っても即座に帰還出来る様にする。その中間点で、シャーリーとエイラは命綱の確認、援護と連絡を行え。
後は入口付近でミーナとサーニャが地下の位置把握を行い、ペリーヌとルッキーニがその情報を元にマッピングを行う」
“調査”の説明をする美緒は心なしか、楽しそうだ。
「そうそう、忘れていた。バルクホルン、お前はこの隊の記録係だったな?」
「はい」
「これを用意した。使え」
目の前に置かれたのはカールスラント製のライカIII。コンパクトなので携帯には便利だが……。
「少佐。フラッシュ無しで、暗闇で満足に撮影出来るかどうか」
「……それもそうだな」
「あたしの国で、この前フラッシュ付きのカメラが作られたけどね」
リベリオン出身のシャーリーがライカを見て呟く。
「あれはバッテリーとフラッシュランプが大きくて、今回の探索ではちょっと不向きだな」
フラッシュはこの際良いとして、一体何を撮影すれば、と頭に疑問符が付くトゥルーデ。
「とにかく、何か気になる物が有ったら撮影しろ。フィルムは二本用意した」
「了解」
「さあ次だ。前衛の二人はこれを身に付けろ」
「……この品々は?」
「地下へ潜る際に必要なものだ。ヘルメット、電灯、登山靴、探険服、ピッケル、アイゼン、ロープ、ザイル、手袋……」
まるでジャングルの奥地か登山へと旅立つ様な、ごつい装備がずらりと並ぶ。何処で仕入れてきたのだろう?
「何故、拳銃とシースナイフまで?」
「地下に何が居るか分からんからな。主武装ではないが、無いよりは良いだろう」
流石にMG42を持ち込む訳には行かないが……地下に一体何が潜んでいるというのか。
「バルクホルン、お前もよく言うじゃないか、『備えよ常に』と」
「た、確かに」
「そうそう。何事も『備えあればうれしいな』と言うではないか」
豪快に笑う美緒。皆は何処か微妙に間違っている、と突っ込みたかったが、笑い声に圧倒されてしまう。
「さあ、二人とも早く着替えろ。すぐに出発だ!」

十分後。上から下まで探険用のアイテムで“完全装備”したトゥルーデとエーリカがやって来た。
「おお、流石はバルクホルン。似合ってるな」
美緒がうんうん、と頷いてみせる。
ヘルメット姿が妙におかしいのか、シャーリーとルッキーニ、そしてミーナまでもが、くすくすっと笑った。
「なっ!? 今私を見て笑ったな?」
「いえいえ。トゥルーデ、似合ってるわよ」
ミーナもトゥルーデの姿を見て素に戻ってしまったのか、思わずファーストネームで呼び、笑いをこらえた。
「なんか、鉱山で働く人みたいだね、私達」
エーリカは少しだぼだぼの服を身につけ、まんざらでもないと言った感じだ。
(ヘルメットの隙間から覗く髪と目がお茶目だな……)
トゥルーデがエーリカを見て内心そう思っていると、唐突にトゥルーデの方を向いて弾ける様な笑みを見せた。
(どきりとしてしまう自分が情けない……)
トゥルーデは赤面しながらそっぽを向いた。
「さて。では行くか。電灯やケーブルの準備は良いか?」
「了解ぃ」
道具や機械を持ったシャーリーとルッキーニが呑気に答えた。
「わたくしも記録係として用意は万全ですわ」
ノートと地図作製用の大きな紙、鉛筆、万年筆を準備したペリーヌも答える。
「よし、いざ出陣!」
一同は仮装行列宜しく、ぞろぞろと地下の円周通路へと降り立った。
15ooparts 03/09:2008/12/15(月) 20:24:51 ID:0jXTsHAv
回廊を歩き、当該の地下空間の前にやって来たウィッチーズ一行は、小さなテーブルと椅子を用意し、そこを仮の本部とした。
辺りには基地から引っ張ってきた電源ケーブル、ランプや無線装置などが並び、さながら野戦基地と言った感じだ。
縄梯子を慎重に下ろし両端を固定し、芳佳達が落ちたと言う空間への準備は整った。
シャーリーとエイラは細めに縒られた固い命綱をトゥルーデとエーリカに装着し、ぴんぴんと引っ張ってみた。
「よし、問題なし」
「本当に探検家みたいダナ」
エイラの言葉は誉め言葉なのか迷うトゥルーデ。先に待ち構える何か……特に最初の骨? について、やはり怖さが残る。
一方のエーリカは、気丈にも皆に笑顔を振りまいている。
横ではミーナとサーニャが呼吸を整えていた。
「二人とも、行けるか? 試してくれ」
「大丈夫よ。いきましょう」
「はい」
ミーナはサーニャと手を繋ぎ、同時に魔力を発動させ、地下の様子を探る。
サーニャの魔導レーダーが輝きを増し、ミーナの全身の輪郭が淡く発光する。
「かすかに、ぼんやりと」
「見えない事は無いけど……空と違って、地下の構造はあんまりよく分からないわね」
「そうか。結構うまく行くかと思ったんだが……バルクホルン達が内部に入ってから、もう一度試してみよう」
「了解、坂本少佐。とりあえず無線も有るし、行けるとこまでやってみましょう」
トゥルーデとエーリカを見た。準備は万全と言った感じだ。
「よし、早速降りてくれ。行動開始だ」
縄梯子を伝って、トゥルーデからそろりそろりと降りていく。エーリカも後に続く。
「あ」
二人が降りたところで、何かに気付いたエイラがぽんと手を叩く。
「どうした?」
「そう言えば、今降りたとこっテ、殆ど酸素が無いのを思い出しタ」
「もっと早く言え! いきなり殺す気か!?」
降りた先で聞いていたトゥルーデが怒鳴る。
「二人共、すぐに次の空間に移動しろ」
美緒はすぐさま指示を出す。がさごそと音がした後、静かになった。二人は無事に空間を抜けた様だ。
「ねえ、坂本少佐」
「どうしたミーナ?」
「今二人が居たそこの空間を、丹念に調べるんじゃなかったかしら? その、骨とか」
「酸素が無いんじゃ、しょうがないな」
「……そうね」
「次行ってみよう」

シャーリー達が通った小さな扉を抜け、階段を上がり、小道へ。ここまでは至って順調だ。
一番最初の、骨が有ると騒がれていた肝心の部屋以外は……。正直ほっとしながらも、トゥルーデはエーリカに言った。
「なあエーリカ。私達、確かあそこを調べる筈だったよな?」
「この前二人で行ったじゃん」
「いや、まあ。……て言うかそうじゃなくて。こんな大がかりな調査までするんだから、……あの、骨らしきもの、
この際、資料として少し持って来た方が良かったんじゃないかって」
「墓に埋葬された骨を勝手に持ち出すと、呪われるかもよ〜?」
「なっ何を非科学的な事を!」
「アフリカの墳墓もそう。確か古代王朝の墓からミイラを発見した人が相次いで謎の死を……」
「ああもう、分かった分かった」
エーリカの怪談話にはうんざりだ。しかし、たまに何処まで本当なのか分からなくなる。
トゥルーデは気分転換とばかりに、壁に目を向ける。
「この壁か。確かに磨り減っているな。リベリアンの言う通りだ」
壁を見ながら、手元のメモに鉛筆で書き込む。後は撮影も試してみるかと、トゥルーデは電灯の灯りを頼りにライカを取り出した。
早速構え、電灯で照らしてみる。絞りを開き、シャッタースピードを限度まで遅くして、多少暗くても写りを良くしようと試みる。
シャッターを切る瞬間、エーリカが眼前に立ちはだかってポーズを取った。
かしゃり。
「……おい」
「なぁに、トゥルーデ?」
トゥルーデはわなわなと震えると、怒鳴った。
「貴重な一枚がっ!」
「ホント、貴重な一枚だよね。そのカメラで撮った記念第一号〜、そして私〜」
ふふ〜ん、と鼻歌交じりのエーリカ。トゥルーデはいささか幻滅したが、確かにエーリカを撮影(?)した一枚目だな、
と考えているうちに怒りも自然と失せた。もう一枚、壁だけを撮ると、先を行くエーリカの後を追った。
16ooparts 04/09:2008/12/15(月) 20:25:45 ID:0jXTsHAv
やがて十字路に行き当たった。左右がメインストリートらしく、幅が広い。ここも話で聞いた通りだ。二人は地面を照らす。
「確か、この辺りにリベリアン達が付けたマークが有ると聞いたが」
「これじゃない?」
ロウで固まった、小さな×印を見つけるエーリカ。
「確かにこれだな。もっと目立つ様に、私達も印をつけていこう。確か装備品の中にチョークが有った筈だ」
トゥルーデはバッグの中からチョークを一本取り出した。それをエーリカがさっと奪い、床にハートマークを書き、
中にトゥルーデとエーリカの名前を書き込んだ。
「何してる」
「目立つ様に」
「意味が違う。誤解されるだろ」
「良いんじゃないの? ほら」
言うなり、ぶかぶかの手袋を取って、懐から大事そうに指輪を取り出し、見せつけるエーリカ。
つられて、同じく手袋を取り、懐に大事にしまっていた指輪を取り出し、合わせてみるトゥルーデ。
暗闇の中、電灯に照らされ、きらりと輝くふたりのエンゲージリング。
ふっと微笑み合う。
微笑みが笑いに変わる。
「違う。違うよ。違うんだエーリカ」
「何が? トゥルーデ楽しそうだし、いいじゃん」
「いや、もう、そうじゃなくて……」
二人はくすくすと笑い合った。
『バルクホルン、ハルトマン、どうした? 何が有った?』
耳に付けた無線から美緒の問い掛けがあった。二人の笑い声が聞こえたらしい。
「あっしまった。……いや、何でもない。何も問題は無い」
「だよね〜トゥルーデ」
床の落書きを指さし、にやりと笑うエーリカ。
「こっこれはその……」
『何? よく聞こえんぞ? どうした?』
「何でも無い。今、十字路に出た。リベリアン達が印を付けた所だ。確かあいつらは右へ行ったんだったな」
『ああ。お前達はどうする』
指輪を懐にしまい、手袋をはめ直したエーリカにつられて、トゥルーデも同じ動作をする。指輪の事は後にするとして。
「エーリカ、どうする?」
「そうだね。みんなは右行ったんだったら私達は左に行こうか」
「よし。……少佐、我々は左へ向かう。サポートを」
『了解した。先に何が有るか分からん、気を付けろよ』
「了解」
ふたりは左へ向かった。

トゥルーデ達が進むメインストリート的な道は、やがて緩やかに左にカーブしていた。所々に、扉が見える。
「この扉、何だろう」
「開けてみる?」
「ああ」
金属と木で出来た扉は古く、何百年か前の物に見える。幾つか並ぶ扉の中から、比較的原型を保っている扉を選び、手を掛ける。
扉は鍵が掛かっておらず、ぎぎぎぎぎ……と軋んだ音を立てながらゆっくりと開く。
電灯で内部を照らす。ネズミらしき小動物が突然の来訪者に驚いたのか、光を避けて暗闇に走り去る。
そこは住居跡の様で、数世紀前は誰かがこの空間で寝起きし、食事をし、団欒をしていた雰囲気が幽かに漂う。
竈にこびりついた煤は随分と風化していたが、それでも、埃を払い除けるとすぐにでも火を起こせるかと錯覚する。
トゥルーデは電灯を向けライカを構えると、一枚撮影した。
「住居跡みたいだね」
エーリカが辺りを見回して言った。
「私もそう思う」
トゥルーデも同意する。
「私達が今居る基地も……祖国も、いずれ何百年も経つと……みんなこうなっちゃうのかな」
エーリカが少し寂しそうに呟いた。トゥルーデはエーリカの肩を優しく抱き、言った。
「さあな。でもその頃には、私達はもう居ないだろう?」
「ま〜ね。何百年も生きるなんて、それこそお化けだよ」
「全くだ」
「次の扉、行く?」
「いや、見たところ同じ様な構造だし、先を行った方が良さそうだ」
「そうだね」
二人は扉をゆっくり閉めると、歩みを進めた。
17ooparts 05/09:2008/12/15(月) 20:26:36 ID:0jXTsHAv
後を続いていたシャーリーとエイラは、先行するトゥルーデ達の声を無線で拾っていた。
「なんかあいつら楽しそうだぞ?」
「そうダナ」
「あたしらこの前えらい怒られたのにな」
「あんまり思い出したくナイナ」
二人は例の「空気の薄い」空間を素早く抜け、階段の辺りまで来ていた。
先行するトゥルーデとエーリカの「命綱」のロープを手で触り、張力を確かめる。
「しかし、またもや地下とはねえ。なんかあたしに似合わないって言うか」
「でもこの前は随分楽しそうだったじゃないカ」
「そりゃ、一回位なら楽しいけどさ」
突然、命綱の張力が無くなる。だらりとロープが垂れ下がる。何処かで切れた証拠だ。
「まずい! 切れたぞ!」
「少佐! 命綱が切れタ!」
「おい堅物、返事しろ! 戻れ!」
「バルクホルン大尉、ハルトマン中尉、応答してクレ。繰り返ス、応答ヲ」
しかし、聞こえて来るのはノイズばかり。
「どうする、少佐?」
『ロープが何処で切れたか、切れた先まで辿ってみてくれ。こちらはもう一度レーダーで内部の観察を試みる』
「了解」
『途中で危険だと思ったらすぐに戻れ。今回は縄梯子も有る。大丈夫だ、すぐに上がれるぞ』
「了解。さて、行くかエイラ」
「急ごウ。大尉達が気にナル」
二人は地面に落ちたロープを電灯で照らし、慎重に進んだ。
十字路に到達した。先日シャーリー達がロウで印を付けた場所だ。
道のど真ん中に大きく描かれたハートマークと二人のサインを見つけて、幻滅する二人。
緊張している時に見てもちっとも面白くない。むしろ不吉の印にも見えてしまう。
『何か手掛かりは有ったか?』
「十字路まで来た。二人が残したと思しきサインを見つけた。ロープは……この十字路で切れてる」
「この壁の、角の部分で擦れたのカモ」
エイラが電灯を照らして観察する。壁のレンガの一部分が、ちょうど鋭くなっている。
「この先は、左に行った事までしか分からない。少佐、指示を」

「どうだ?」
ミーナとサーニャは手を繋ぎ、再び魔力を解放させた。
「……ダメね。シャーリーさん達が居る範囲が辛うじて判る程度で、後は」
「そうか。二次遭難の恐れも有るな。……シャーリー、エイラ、戻ってくれ。後は二人が気付くかどうかだ」
美緒はペリーヌが細かくメモしていたマップ……一部ルッキーニの落書き込み……を睨み、己の準備不足を悔やんだ。
「もっと強靱な命綱を用意すべきだった」

同じ様な扉が幾つも続いた先に、上り階段に当たった。ゆっくり歩みを進めると、階段の上に当たった。
そこは広い踊り場にも見え、両横に扉が有る。目の前は緩やかな下り階段になっている。
「右の装飾の付いた扉、開いてみるか」
閂が掛かっているが錆び付いている。トゥルーデはゆっくりと力を掛けていく。徐々に閂が抜け、がりがりと嫌な音を立て、外れた。
扉をゆっくりと開き、中を照らす。埃ひとつ無い、空間。
正面には所々が欠けた十字架が構え、手前には崩れかけた長椅子が並んでいる。小さな礼拝堂らしい。
「これは、礼拝堂だな。地下に設けてあるとは」
「そんな感じだね」
当時は華やかであったろう燭台は空で灯火は何一つ無く、トゥルーデとエーリカが照らす電灯だけが、当時の面影を照らし出す。
トゥルーデはメモを取り、扉を閉めた。
「中入らないの? 写真は?」
「そっとしておこう。このままの方が良い」
「そうだね」
「反対側の地味な扉はどうだろう」
こちらは案外するりと開いた。内部を照らす。倉庫か何かの空間だったのか、がらんとしている。
天井も、これまでの遺構と違い、かなり高い。天井の梁を照らす。また小さな何かが蠢いて、闇の中へと消える。
その天井に気を取られ、二人は足元を見ていなかった。
べきべきと音を立て、突然足元が崩れる。
咄嗟にエーリカをかばうトゥルーデ。
ふたりは重力に呑まれ、落下した。
18ooparts 06/09:2008/12/15(月) 20:27:32 ID:0jXTsHAv
トゥルーデは暗闇の中、上体を起こすと頭を二度振った。
私は大丈夫。したたかに尻を打っただけだと頷く。完全に不注意だったが、運が良い、と呟く。
床は石畳かレンガの様で、固く冷たい。
所々に木片や木屑、何かの織物の痕らしき感触が有る。これらが落下の際クッション代わりになったらしい。
まさに不幸中の幸いだ。
エーリカは……大丈夫だろうか。トゥルーデはエーリカの身体を抱き起こした。
(私がかばって下になったから大丈夫の筈……)
「エーリカ?」
返事がない。
身体を揺する。糸の切れた人形みたいに完全に脱力し、ぐらりぐらりと首が動く。
「エーリカ!?」
顔を見る。
電灯で照らし……電灯が無い!? 落ちた時に思わず手を離してしまったらしい。
(これじゃ分からない!)
手袋を外し、素手でエーリカの頬を触る。
無反応。何処か打ち所でも悪かったのだろうか?
「エーリカ!」
呼ぶ声が、だんだん悲鳴に近くなる。
(そんな馬鹿な!)
トゥルーデは心の中で叫んだ。
(気を失ったのか? まさかこの高さで? そんなに貧弱な筈が……いや、もしかしたら……。そうだ、脈を……)
顔を覗き込み、首に指を当てたところで、いきなりエーリカがぐい、とトゥルーデを引っ張った。
そのまま、触れ合う唇。
トゥルーデは一瞬何が起きたのか分からなかったが、ゆっくりと唇が離れると、はあ、と息を付いた。
突然のキスで呼吸が乱れたのもそう。それ以上に……
「エーリカ! 驚かすな!」
「トゥルーデ何処まで心配してくれるか、試したくなっちゃって」
「こんな所で試すな、エーリカ……やめてくれよ」
へなへなと力が抜ける。
「ごめん、トゥルーデ。ちょっと悪戯心」
耳元から数ミリの至近距離でエーリカの声がする。
「ちょっとで済むか。心配したぞ」
「どれくらい?」
「物凄く、だ」
「ありがとう。かばってくれたんだよね」
「当たり前だ」
「嬉しいよ、トゥルーデ」
エーリカは暗闇の中トゥルーデを抱きしめた。
「何処まで振り回せば気が済むんだ……」
「ごめんね」
「心配、だったんだからな」
ぎゅっとエーリカの服を握るトゥルーデ。
その力を感じ、エーリカもちょっと反省したのか、ごめんね、ともう一度口にする。
そしてトゥルーデのすぐそばで呟く。
「ありがとう」
二人はもう一度、仲直りの口吻を交わした。二人の吐息が混じり合う。互いの息が二人の頬を撫で、
冷静に、そして頭をクリアにしてくれる。
19ooparts 07/09:2008/12/15(月) 20:28:24 ID:0jXTsHAv
「さて、どうしようか。明かりが無い」
「私、予備をひとつ持ってるよ」
エーリカはバッグから予備の電灯を出した。落下の衝撃で少しひびが入っていたが、問題なく使えた。
周囲は木の柱や梁、その残骸が並び……上は今まで歩いて来たと思しき床板が完全に崩れてしまっている。
どうやら、倉庫だった上の部分から下に落ちたらしい。
周囲を探すと、程なくして懐中電灯が見つかった。しかし、落とした衝撃で壊れたのか、ひとつのスイッチは入らなかった。
「予備を合わせて、ふたつか」
とりあえず明かりは確保出来た。
そこで、突然にぐぅ〜、とトゥルーデのお腹が鳴った。
くくく、とエーリカは笑った。
「な、何がおかしい」
「こんな非常事態なのに、お腹鳴ってるって」
「う、うるさい! 少しは腹も減る事だってある!」
「トゥルーデ、言葉少しヘンだよ」
エーリカはバッグから何か小袋を取りだした。
「こんな事もあろうかと、ちょっとおやつ持ってきたんだけど、どう? シャーリーから貰ったポップコーン」
「何でポップコーン?」
「軽いから良いかな〜とか思って」
大丈夫か? と呟きながらも、エーリカの差し出したポップコーンを噛みしめる。妙な香ばしさが口の中に広がる。
「ポップコーンに似てるな」
「て言うかポップコーンだよ?」
「ああ、そうだった」
「私も食べてみよう。実はこれ、だいぶ前に貰ったやつなんだよね。支度してたら、たまたま部屋の隅から出てきたんだけど……」
「……それじゃあ分からないな」
怒りを通り越して既に諦観の境地に達しているトゥルーデ。ぼりぼり、とポップコーンらしからぬ音を立て幾つか含む。
バッグに入れていた水筒の水をちびりと飲み、ふう、と息を付く。
「なんだかピクニックに来たみたいだね」
「暗くなければ、そんな感じだけどな」
トゥルーデの言う通り、一応呑気に構えてはいるが、電灯で照らされた部分以外は一寸先が闇。
ウィッチ本来の“生命力”が試される場所なのかも知れなかった。
美緒が二人を指名したのは、あながち間違いでもなかったか。これが他の隊員だったらどうだろうか。
「しかし、気を抜いてばかりも居られないな」
トゥルーデは自戒を込めて呟いた。
「空戦と同じく、自衛の本能がないとこの先生きのこれないかもな」
エーリカは、急に真面目になったトゥルーデの言葉をぼやっと聞いていた。
その時、トゥルーデの目が光った。
「エーリカ、肩ッ!」
トゥルーデがエーリカの肩をびしっと指さす。エーリカは自分の左肩を見る。
数センチ程のクモが這っていた。
「うあ」
「動くな! 動くなよ?」
トゥルーデは近くに転がっていた木切れを掴むと、慎重にクモを払い除けた。
「トゥルーデ、大袈裟だよ」
「万一毒蜘蛛だったらどうする」
「心配性だね、トゥルーデ」
「エーリカを心配しての事だ」
はあ、と一息付く。
「この先どうするの?」
「辺りを調べよう。上れるなら戻る方が良い」
ぐるりと周囲を見る。二人が座っているフロアの奥、崩れた柱や梁の先に、扉が見える。
「あの扉は?」
「この空間は二層になっていたのか。この下にまだ有るとは」
軋みを立てながら、ゆっくりと扉を開ける。
先の通路は、空気が妙に湿っている。所々、水滴も落ちている。
「この道も回廊なのか?」
「どうだろうね。私も全然分からないよ。基地だとどの辺だろう。裏庭とかそっちの真下かな」
「私も分からない」
「行くだけ行ってみよう?」
20ooparts 08/09:2008/12/15(月) 20:29:22 ID:0jXTsHAv
二人は落下に懲りたのか、用心深く歩き始めた。今度は床は固く、落ちる心配は無さそうだった。
通路の天井のあちこちから、水滴がしたたり落ちる。トゥルーデは呟いた。
「しかし、困ったな。戻るとなると、かなり面倒な道のりになる」
更に道を進みながら、エーリカはぼそっと呟いた。
「困ったと言えば、もうひとつ困った事が有るんだよね。後ろとか」
「? 何も無いじゃないか」
「それ、問題だと思わない? ……ほら」
エーリカに言われて初めて気付く。
命綱として身に付けていたロープが、いつの間にか十メートル程先から先でぷつりと切れていた。
「うわ!? エーリカ、いつ気付いた? さっき落ちた時か?」
「もっと前。サインした十字路曲がって暫くしてから、かなぁ?」
「聞いてるのは私の方だ。どうする。これじゃ戻れないぞ」
「トゥルーデ、メモしてるじゃん。それ頼りにして戻ろうよ」
「飛べたらな」
「ああ……そう言う事ね」
二人して落ちた事を思い出す。
「そう言えば、少佐から何も言って来ないな」
「トゥルーデ、気付くの遅っ。もうだいぶ前から無線通じないよ」
「な、何?」
無線を耳にはめ直すも、全く同じ。ざーと言う砂嵐にも似たノイズを拾うのが精一杯だった。
「一体、ここは何処なんだ」
「基地の地下だよ。トゥルーデまでぼけてきたの?」
「基地の地下って事位は分かる! その何処なのかって事を私は聞いてるんだ」
「いやー、無線って地下じゃ殆ど役に立たないんだね」
「そう言えば、あの十字路越えた辺りから、全然声が掛かって来なかったな」
「今頃みんなどうしてるだろうね」

“野戦基地”のテーブルの上に並べられたタロットカード。緊張の面持ちで見守る一同。
エイラは中央の一枚をぺっとめくってみた。
「……結果、言った方が良いカ?」
エイラはすぐにカードを隠すと、皆の方を向いて聞いた。皆はエイラの表情を見てとり、首を横に振った。
シャーリーとエイラが帰還した後、万策尽きた一行は呆然と机の前に居た。
頼みの綱、いや、藁にもすがる思いでエイラにタロット占いをさせてはみたが……エイラが占うと大抵ろくな結果にならない、
もしくは外れると言う事に今更ながらに気付いて、誰ともなしに溜め息が漏れた。

通路はやがてぐるりと周り、階段を前にして途切れた。
「また階段か」
「どうせここまで来たんだし、行ってみようよ」
階段は踊り場を含めて幾層にも渡っており、上に行くに従って次第に幅が狭くなる。
かなり昇ったところで一枚の鋼鉄製の扉に突き当たった。
「これは……結構新しいな」
こんこんと扉を叩き、トゥルーデが呟いた。
「この扉……これ、基地のどっかの扉じゃないかな」
「本当か? だとしたら、これを開ければ良いのか?」
「多分。間違いないよ」
早速扉に取り付くトゥルーデ。しかし相当がっちりと固定されているらしく、微塵も動く気配がない。
トゥルーデは覚悟を決め、ふう、と大きく息を付いた。己の魔力を解放し、耳と尻尾を出す。
「まさか私の力が、こんな所で役に立とうとはな」
「大丈夫。トゥルーデなら行けるよ」
背後で励ますエーリカ。トゥルーデは頷くと、階段を数歩下がった後、猛然とダッシュする。
「うぉおおおおりゃああ!」
勢いを付けて駆け上がり、ドアに体当たりした。
扉はトゥルーデの力をまともに受け粉々に砕け、道が開けた。
しかしトゥルーデはそのままの勢いでふらつき、昇った先にあった突起物? にぶつかる。
「いたた……なんだ、これは」
ふらつき、思わず近くに有った何かに手を付く。それはぐい、と下に動いた。
「?」
21ooparts 09/09:2008/12/15(月) 20:30:35 ID:0jXTsHAv
基地全体に鳴り響く警報。野戦基地に待機する一同が色めき立つ。
「て、敵襲?」
「そんな! 今日はネウロイの来襲は無いって……」
「中佐、出撃準備を!」
「みんな待って。確認したい事が有ります」
ミーナは冷静に立ち上がると、ひとり基地に戻った。

「エーリカ、何か警報が聞こえないか? ネウロイか? 出撃準備……」
「トゥルーデ、それ」
「? ……おわ! これは!?」
「トゥルーデ?」
背後が突然明るくなる。扉が開かれ、ミーナが悠然と立っていた。
「ミーナ、これは一体」
ぽこん、と軽くヘルメットを叩かれる。
「全く。何をやっているの一体」
ミーナは溜め息混じりに呟いた。
「いや、こんな筈では。なあ、エーリカ」
エーリカはそっぽを向いて口笛を吹いている。
「え、エーリカ!? 謀ったなエーリカ!」
「とりあえず無事地上に戻ったと言う事で……いらっしゃい、二人とも?」
笑顔だが目が微妙に笑っていないミーナに腕を掴まれ、二人は警報発令室の暗闇から連れ出された。

その日の晩。
執務室でふたりきりになった美緒とミーナは何とも言えぬ表情で、報告書を書いていた。
「結局、何だったんだ……」
腕組みして今回の“探険”を振り返る美緒。
「さあねえ。この地下には、私達もよく分からない世界が広がっているって事なのかもね」
ミーナがコーヒーを煎れて美緒に渡す。ありがとう、と答え、カップを受け取った。一口含むと、美緒は唸った。
「うーむ。これでは殆ど未解決に近いじゃないか」
「今度、考古学の専門家に頼んで、調べて貰いましょう。ここまで来ると、もう私達ウィッチーズの出る幕じゃないわね」
「そうだな。やっぱり私達は地面の下でモグラの真似事をするより、ウィッチらしく、大空を高く舞った方が良い」
「全く同感だわ」
くすりと笑うミーナ。コーヒーを少し飲んで一息つくと、美緒に尋ねた。
「でも、今日は何であんなにやる気だったの美緒?」
「ミーナだから言うけど、……笑うなよ?」
「何かしら」
「探求心だ。未知なる謎の答えを求め、己を求めて突き進む……まあ、ちょっと子供じみてたかも知れないが」
「本当、そう言うとこって、貴方は扶桑の『サムライ』なのね。美緒」
ミーナは微笑むと、言葉を続けた。
「でも、今日はちょっと張り切り過ぎじゃなくて?」
「すまん」
苦笑いし、謝るしかない美緒だった。

end

----

カメラやヘルメット等のガジェットについては、WWU時代のもの
(もしくは存在するかどうか等)をグーグル先生に聞いて回りました。
間違ってたらごめんなさい。雰囲気だけでも楽しんで貰えれば……。

今回はちょっとした“探険”と言う事で、書いてみました。
色々と趣味がばれるかも知れませんが、ひとつ、よしなに。

最後に、重ねてgf1xJeg9様に御礼申し上げます。

ではまた〜。
22名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 21:16:51 ID:2L6uJDUK
>>21
GJ!探検シリーズおもしろかった。てかもっさんの魔眼も連動させればもっと視えた気がしないでもないw

>>1乙&前スレ埋めの人も乙。何を謝る必要があるんだ期待以上でしたGJ!エイラーニャもリーネイラもおいしいです。
23名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 21:39:31 ID:aJOQyRcI
>>21
ちょ!むしろこちらがお礼を言いたいです。
私のあんなssを取り入れてくださるとは…何というか、ほんとにありがとうございました。

そして今回もGJ!!
たっぷり含まれたエーゲル分にニヤニヤ
&少し含まれた美緒ミーナ分にもニヤニヤw

いやあ本当申し訳ない。ありがとうございました
24名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 21:40:33 ID:aJOQyRcI
名乗りわすれるとは何事か!
gf1xJeg9でした
25滝川浜田:2008/12/15(月) 21:59:46 ID:Mo8/WBz6
みなさんこんばんは。
このスレの速さに恐怖している奴が通りますよ。

さてさて、今日は何回中断してるか分からないエーゲル長編の続きです。

では、どうぞ。
26滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.6』:2008/12/15(月) 22:02:44 ID:Mo8/WBz6

――出撃前

「エーリカ」
「なにシャーリー」
「堅物の寝顔は拝めたかい?」
「……おかげ様で」
「あたしの勘だと、堅物はもうすぐ目を覚ますね」
「…なんでそんな事言えるのさ」
「アハハ、ま、ただの女の勘だよ。話半分で聞いといてよ」
「もう…」

私は医務室を離れてハンガーにいた。
シャーリーの“あて”の無い自信を聞かされたあと、ふと目をやるとトゥルーデのストライカーユニット。

「…トゥルーデ…。私は私のやり方で罪を償うから」

私はトゥルーデのストライカーユニットに誓いを込める。

そして、私は空へ出る。


――何回君を愛したら chapter.6――


そして今。

「宮藤さんとルッキーニさんは、美緒を援護射撃して!」

今日のネウロイは防御力がやけに高くて。
普通に攻撃を加えただけでは、微々たるダメージにしかならない。

「っ…!アイツの固さは異常だろっ…!」
「このままじゃ攻撃なんて…!」
「美緒、コアは見えた?」
「ああ、見えた。…しかし…」
「何かあるの?」
「コアの周りに膜が張られていて、それを破らないとコアを破壊出来ないようになっている」
「そう…」
「……ミーナ」
「何かしら、フラウ」
「私にやらせて」
「フラウ、貴女…また無茶な特攻をするつもりなの?」
「……それは分からないよ。
…でも、私は私に出来る事がしたいんだ。トゥルーデもきっと“逃げるな”って思ってる」
「…そう。シャーリーさん」
「なんですか、ミーナ中佐」
「一緒に行ってやって頂戴」
「ミーナ」

ミーナは私の肩に両手をポンと置いて。

27滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.6』:2008/12/15(月) 22:04:11 ID:Mo8/WBz6
「いい?フラウ。
くれぐれも無茶は禁物よ。今度、そのような事があれば自室待機処分よ」
「アハハ、そりゃ厳しい処罰だなあ」
「…気をつけてね」
「うん!」

私は銃をしっかりと握り直す。

「行こう、シャーリー!」

シャーリーはクスリと笑って。

「へいへい、特攻隊長様」

私とシャーリーは、坂本少佐に指示された箇所へと向かう。

「なあ、エーリカ」
「なに」
「…お前本当に堅物の事が好きなんだな」
「当たり前でしょ。私はトゥルーデの恋人なんだもん。
愛してない訳無いよ。それはシャーリーだって同じのくせに」
「アハハ、そりゃ違いないなあ。あたしはルッキーニ一筋だからねえ!」
「はあ…」
「…エーリカ。この戦いはさ、お前にとって償いのつもりなんだろうけどさ」
「……」
「本当に無茶して怪我なんかすんなよ。それこそ堅物を泣かせちまうからな」
「…うん、分かってる」

私は頼りの無い返事をして、ネウロイの元へ近寄る。

「……分かってるならいいよ」
「行こう、シャーリー」
「ああ」

そう、これは償い。

トゥルーデ、私、トゥルーデの為に頑張るから。

見ててね、きっとだよ…?


To be Next chapter…

28名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 22:06:52 ID:dQe1xYe3
もう次スレに以降しとったんかい
29滝川浜田:2008/12/15(月) 22:08:02 ID:Mo8/WBz6
第6話以上です。
残り話数も少なくなって参りました。
最後までお付き合いくだされば嬉しいです。

そして前スレ含めてみんなGJ!
埋め作業は自分には出来ない!

…というわけで、爺はここら辺で…
30名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 22:16:53 ID:H3h1KIt7
前スレの埋めのあまりのクオリティに鳥肌が立った。
>自然な動きでリーネが私の胸を包み込んでいく。その手をつかんで押しとどめると、「じゃあまたこんど」
>などと言う言葉が返ってきた。今度なんてあってたまるか。今日だけだ、今日だけなんだ。
この一連の流れに何というか、格の違いを感じた。勝てる気がしねえ…。
クロウカシスとか勝手にリーネイラルートとか、明らかにレベルがおかしい作品がたまにあるからこのスレはやめられんね。

もちろん>>21>>29もGJ!
ていうかこれはもしかして3人目の30機撃墜達成じゃないのか…
31名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 23:00:41 ID:tnNfCD2v
最初っから二人ともGJ
一週間かからず消化とかどんだけw
32名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 23:21:23 ID:XoO/qZeO
>>21
探検ものはいいですね〜
エーゲルには心底ニヤニヤしたw

前スレ梅も乙です!
情が見事にすれ違ったり絡み合ったりでやりきれない気分になれていい
リーネいい子だけど、ほんとは切ないんだろうなぁ
33カレワラ 1/5:2008/12/16(火) 00:16:34 ID:QB1eHhb+
みんな乙。そして百合スレ初投下初書き込み。



太陽が燦々と陽光を降注ぐ昼過ぎに、私は目を覚ました。
ゆるりと上体を起こすと自然と欠伸が一つ。眠気覚ましに伸びをする。
眩しい光に目を細めながら窓外を覗いてみると、すでに太陽は抜けるような青空の中央に陣取っていた。
吉瑞を思わせる良い天気だ。
(ぐ〜)
お腹が鳴った。身体が食欲を訴えている。
「昼か……」
――なんでこんな遅くに起きているのか?
それはきっとネウロイのせいだ。
あの満月の夜に現れたネウロイは、今迄に無く強力で三人掛りでやっと倒したのだ。
だから、危険な夜間哨戒が原則二人組になったのは当然で、その役、詰まりは、サーニャの僚機を私が買って出たのも当然なのだ。
さしずめ、サーニャのナイトウィッチならぬ騎士(ナイト)ウィッチである。
こんなジョークが頭を過るほど、今日は頗る調子が良い様だ。
「食堂に行くか」
欲の赴くままそう呟くと、すぐ隣りに寝てるはずの、可憐で可愛く、天使と見紛う程の神々しい秀麗な、愛しのサーニャを、食事に誘うべく起こしに掛かる。
「おいサーニャ、起きろ」
振り向きながら言葉を発する。
――居ない
見ると、ベッドの半分は綺麗に修繕されており、その上に、これまた綺麗に畳まれた私の衣服がちょこんと置かれていた。
私はガクンと肩を落とし、溜め息を付きながら酷く落胆する。
そしてそのままベッドに潜り込み不貞寝を始めた。

暫くするとまた
(ぐ〜)
と、腹の虫が鳴いた。
「腹減ったな……」
勘弁した私はのそりと起き上がると、綺麗に畳まれた衣服を手に取り、サッと着替えた。

暗雲たる気持ちで食堂へ足を運ぶ。
食堂に差し掛かった所で突然、パッと腕を捕まれ、後ろ向きのまま、あれよあれよと言う間に、何処かの空部屋に連れ込まれてしまった。
「誰だよもう、人が憂鬱な時にこんなこと…」
背後の人物に向かって、心底恨めしそうに文句を言うと
「ごっめーん、エイラ。 お願い、許して」
なんて、てんで悪びれた素振も無い飄々しい詫びが返って来た。
振り返ると、金髪のカールスラント人が満面の笑みを放っていた。
「なんだよ、ハルトマン。用がないならもう行くぞ」
「ちょ、ちょっと待って。用ならちゃんとあるから」
34カレワラ 2/5:2008/12/16(火) 00:18:32 ID:QB1eHhb+
少し慌てながらそう言うと、ハルトマンは徐にポケットに手を突っ込み、中をまさぐり始めた。
はい、と手渡されたのは四つ折りにされた紙。
はぁ、まったく。カールスラント人ならそれらしく、どっかの大尉みたいに、規律に厳しく愚直でこんな面倒な事をせずに、ジャガイモ相手に電撃戦でも仕掛けていろよな…。「こら、そこ、そんな面倒臭そうな顔をするな」
「お腹が減って死にそうなんだ。他の奴に相手してくれよ」
「そんな事言わないでさ。それにね、これはエイラにとっても凄く重要なことなんだよ」
「私に?」
「多分エイラの憂鬱の遠因が載ってる筈だよ」
この憂鬱の原因といえば……
訝りながらも、誘惑に負けて紙を開ける。
えー何々……ウィッチ隊相関図?
紙面には501の皆の名前と、関係を表すのであろう矢印が書かれていた。
―――――ん?
「なーハルトマン。この高村って奴は誰なんだ?」
「おいおい、注目する処が違うだろ」
呆れられながらも、此処だよと、指で指された場所に目をやると、私とサーニャの名前が書いてあった。
見ると、見事に″エイラ″から″サーニャ″へ矢印が引かれている。
瞬時に頭に血が上る。
顔はきっと茹蛸みたいに赤く火照っているのだろう、すごく熱い。
なんだよ。これかよ。私をからかいに来たって言うのかよ。
きっと何処かで笑いを噛み殺しているだろう、シャーリーやルッキーニが待ってましたとばかりに飛び出してきて、私の頭をぱんぱんと叩きながら
「大丈夫だって! この事は内緒にしといてやるからさ!」と笑い転げながらやってくる筈だ。
だけど、何時になっても奴等がやってくる気配は無かった。
それどころか、何分も紙に顔を吸い付く用にしてこの醜態を隠しているのに、それをハルトマンは一向に追究しようとしない。
不信に思って、紙を少し離して盗み見てみると、ハルトマンは腕を胸の前で組みながら目を瞑ってうんうんと言わんばかりに頭を上下させていた。
益々わけがわからない。
頬の上気が治まると共に、ハルトマンに尋ねてみた。
「なあ、ハルトマン。此が一体何だってんだよ?」
するとハルトマンは首の上下運動を止めて、ぷるぷると肩を震わせ始めた。
げっ、何か不味い事でも言ったか。
「馬鹿! サーニャの事なんかどうでもいいっての! それでも女か!」
突然の咆哮に私はたじろぐしかない。
35カレワラ 3/5:2008/12/16(火) 00:20:02 ID:QB1eHhb+
大体なんで奴が怒っているのかも分からないのだから、対処しようがないってものだ。
「な、なんで怒るんだよ。何か気に障る様な事でもしたか?」
「貸して!」
ハルトマンはそう言うと、私の手から紙を取り上げた。
「此を見ても何も感じないわけ?」
そう言ってハルトマンが指差した処を目をやると矢印の線があった。
誰のかな、と目を動かすと…………サーニャのだ!
素早く紙を奪い返して、まじまじと張り付く様に何度も何度も見返した。
だけど、やっぱり、その矢印は″エイラ″ではなく何度見たって″宮藤″の方へ指していた。
「やっと理解できたか」
そう言いながら、奴はぽんぽんと私の肩を叩いてきた。
……やっぱりそうか……やっぱり最初から私を馬鹿にするつもりだったんだ!
ふつふつと怒りがたぎりだす。
私が怒りをぶちまけようとしたその時
「そこでエイラ、私とさ、同盟を組まない?」
へっ? 何を言ってるんだ?
あっけらかんとその場で固まっていると、本日三回目の指差し。
視線を移すと、なんとまぁ、あの御堅い大尉殿から宮藤に矢印が伸びているじゃないか。
やっと状況を理解できた。
「ねー、どう?」
冷静になった頭をフル回転させる。
そもそも、まだ会って数週間足らず。そんな短時間で人を好きになれる筈がない。
それに、バルクホルン大尉に色恋沙汰は似合わないし、サーニャだって何時も一緒の私なら兎も角、宮藤を好きになるなんて、そんな兆候も見た事ないし、そう、有り得ないさ。
「落ち着いて考えてみろよ。全然信憑性無いし、大体、大尉が人を好きになるなんてありっこ無いって。何処から持って来たのか知らないけど、きっと誰かのイタズラだろ」
「でも、これ持ってたのマロニーだよ」
「そ、そんなわけ無いだろ」
「この前あいつが来た時さ、落としていったんだよ、この紙を」
「な、何を根拠に…」
「信じる信じないは自由。だけど、私が言ってる事は全部本当だよ」
うぅ、この顔はどうにも冗談では無さそうだ。一体私はどうすれば…
(ぐ〜)
しまった! もぉ、何もこんな時に鳴らなくてもいいだろ、この腹は!
「まぁいきなりだと混乱しちゃうよね。いいよ。返事は後でいいから。先にご飯食べてきて」
にこっとした笑顔で言い放ったハルトマンの言葉に甘えて、私は部屋を後にした。
36カレワラ 4/5:2008/12/16(火) 00:21:22 ID:QB1eHhb+
食堂へ続く廊下を歩きながら、私はどうしたものかと思案する。
サーニャが宮藤の事を好き?
断じて有り得ない!
サーニャと宮藤が喋ってる所なんて見た事無いし、仮に、仮にそうだとしてもおっぱいマイスターの宮藤がサーニャに興味を示す筈が無い。
そうだそうだ。これは唯のハルトマンの杞憂だよ。
ははっ、全くまだまだ乙女だなハルトマンも。
はぁ、こんな事で悩んでたなんて馬鹿らしいや。
それより、サーニャと午後から何をしようか?
タロットかな? ははは、なんて考えている内に、もう食堂まで十mを切っていた。
取り敢えずは腹拵えだ。
お腹を擦りながら、ハルトマンになんと説得しようかと考える。
あと、五m。
三mといったとこで、中から談笑の音が漏れてきた。
誰だろう、と中を覗くと……サーニャと宮藤だ!
咄嗟に壁に身を隠す。
な、何でサーニャと宮藤が一緒に居るんだ!
そんな、まさか、もしかして本当に…
ぶるぶると頭を振って馬鹿な考えを振り払う。
仲間なんだから、会話するぐらい普通だろ。
自分に言い聞かせる様にそう呟いた。
そうさ、だからさっさと中に入って仲間に会おうじゃないか、なぁ、エイラ。
なのになのに、どうして私の身体は中に入るの拒むのか。
サーニャに早く会いたいのに、どうして。
どうしようもないので、しゃがみ込み顔だけ出して、二人を覗く。
嗚呼、サーニャがあんなに楽しそうに笑ってる…
「どう見ても恋する乙女だね」
「わっ!」
突然の上方からの声にびっくりして、情けない声を上げてしまった。
又も壁に身を隠す。

……良かった。会話はまだ続いてる。気付かれてはないようだ。
「いきなり叫ばないでよ。びっくりするじゃん」
にひひ、と笑いながらそう言うのは勿論
「それはこっちのセリフだぞ! ハルトマン!」
精一杯の弱音での怒鳴り声。
だけど、私の怒りなど気にも止めず、「あははごめんね」なんて返してくるハルトマン。予想通りだ。
相手をしても無駄なので、監視行動を続行する。
暫く観ると、会話と言うものの、喋っているのは宮藤だけで、サーニャはこくこくと頷いて、時たま二三、言葉を返しているだけである。
だけど、それでもサーニャは何だか楽しそうで、一生懸命耳を澄して、宮藤の言葉にこくこくと反応している。
37カレワラ 5/5:2008/12/16(火) 00:23:28 ID:QB1eHhb+
「頬が少し赤いね」
さすがにもう驚かない。
そして、サーニャの頬に目を移す。
うわ、本当に赤いよ。
「これはもう決まりだね」
「頬が赤いのは、サーニャが照れ屋さんだからだろ」
この答えは私の願望に近い。
数分の沈黙の後、今度はバルクホルン大尉が二人に近付いてきた。
視認後「トゥルーデ」と消え入りそうな弱々しい声が頭上から耳に響いた。
目線を上げると、ハルトマンは身体をわなわなと震わせていた。目尻に涙まで浮かべて。
嗚呼、こいつだって辛いんだ。
さっきまでは、心底むかついたけど、今では同情心がそれに勝る。
しかし、食堂に大尉が居たなんて全く気付かなかった。
他にも誰か居るのかも知れない。
視線を巡らすと、厨房にリーネが居た。
うわっ、めちゃくちゃ睨んでるよ。超怖い。
しかもなんか手に包丁持ってるし、危な―――わっ! 目が遭った! やばい殺される!
危険を察知した私は、ハルトマンの手を取ると、一目散に先の空部屋に駆け込んだ。
全力で走ったものだから息が荒げる。
しかし、リーネのあの目は狩人の目だった。野兎を狩る狐の目だ。
このままだと、サーニャが危ない。危険だ。
もうつべこべ言ってる暇はない。サーニャを守るためなら何だってしよう。何故なら私はサーニャのナイトウィッチなんだから。

「はぁはぁ、突然走り出して何なのさ」
その問いは無視。
「ハルトマン」
「何さ?」
「同盟を結ぼうか」

今日この日、此処に、宮藤の魔の手からサーニャと序のバルクホルンの純潔と貞操と主に胸を守るため
(そしてリーネからサーニャを守るため)に反宮藤同盟がエイラとハルトマンの間で締結されたのであった。





携帯からですので、改行とか色々見にくかったと思いますが、ご容赦下さい。
さて、当初は真面目に書いていたんですが、執筆中にネタが被り捲り、尚且つ私なんかよりも大変巧い文を書いてる人が現れまして
そこで開き直って、文体を弄って投下しようかなと思った所存でございます。
元ネタはエイラスレで見たウィッチ隊相関図で、そこに妄想を書き込んだものをSSに直したものです。
もしかしたら、続くかもしれませんので、もしそうなったら又、御邪魔させて頂きます。
ちなみに題名は適当ですので特に意味はありません。

では失礼しました。
38名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 00:51:14 ID:mYZ+w0Ud
>>37
GJ! リーネ怖いよリーネw
同盟の行方が続き気になります。
39名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 00:55:52 ID:dGWo9rrI
>>37
しゃがみ込んで覗くエイラいいな
リネ子さんは包丁似合いすぎてて怖いがww
よければ続き書いてくれ!GJ!
40名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 01:04:17 ID:0zL9ah3f
相変わらずの投下数
乙乙
41ハッピー・テイル 1/4:2008/12/16(火) 01:08:27 ID:CwjPDwMm
今晩は、21X2w2Ibです。ID変わったと思うので改めて>.1乙!
そして>>21 >>27 >>37 しょっぱなからグッジョブ!
てか携帯からとかすごいなあ。自分もこないだやりましたが色々無茶でした
前に書いた鬱々した話を無かったことにするがごとくエイラニャ投下
―――

同じ部屋、一つのベッド、けれどその、端と端。
伸ばせば届く距離、伸ばさないから届かない隔たり。
背中合わせ、顔腹そむけ、ごめんと言えないもどかしさ。


もういいよ、と、諦めた声が聞こえたから慌てて振り向いたら、エイラは壁側に向かっていて、拒絶の意を呈して
いた。しまった、と思ったけれどもやっぱり自分の非も認められなくて、私も口を尖らせて先ほどまでと同じように
向こう側を向いてしまう。

それなのにやっぱりすぐ耐え切れなくなって、悲しくて足に顔をうずめた。こぼれそうになる涙を必死にこらえる。
ねえ、どうして分かってくれないの。そんな気持ちばかりが先走って、言葉に出る前に見えない吐息になって零れ
落ちてしまうのだ。いつもいつもそうやってタイミングを逸して、結局何ひとつ言い出せないままでいる。

きっかけはすごく、些細なことだった。エイラにとっては普段と何も変わらないことで、たまたまいつもはそこには
いないはずの私がそこにいただけで。
だからきっとエイラはひどくうろたえたろう。気の合う仲間と談笑していたその最中に、その一人が突然怒り出して
席を立ったのだ。ずるがしこいそのひとりはそうしたら優しいエイラが絶対に追いかけてきてくれるだろうことを
知っていた。知っていたから黙っていなくなることにした。かくしてその目論見は成功して、彼女はエイラと二人きり
でゆっくり過ごす時間を手に入れたのだった。

…そこまでは、よかった。いいはずだった。
だっていつものエイラだったらそこで彼女を──私を深く追求することはせず、仕方ないなあと肩をすくめて、
「いつものことだ」と許したろう。眠かったんだろう、とか、夜間哨戒で疲れてたのかな、とか、勝手に決め付けて
自己完結して、そうして私のすべてを許してしまうような人だから。

けれど今日ばかりは、彼女もどこか虫の居所が悪かったらしい。
「どうして勝手に出て行ったんだ」と、彼女は私に納得のいく説明を求めた。入り込んだいつものエイラの部屋で、
ベッドの上で二人座り込んでくつろぎながら、それでもエイラは追及を緩めなかった。私がだんまりを決め込ん
でも、今日ばかりは聞かないぞとバルクホルン大尉のような強情さを持って私に迫ったのだ。

どうして、なんて、そんなのいえるわけが無い。『ペリーヌさんやリネットさんたちとあなたが親しげに話しているの
が嫌だったから、あなたを独り占めしたくて席を立ちました』なんて、口が裂けても私は言えない。そもそもそんな
ことを言ったってエイラは首をかしげるだけかもしれないのだ。「それなら一緒に話せばいいじゃないか」と、兼ねて
から私が部隊の仲間たちとすれ違いの多いことを気にしている節のある彼女なら平然とした顔でそんなことを
のたまうのかもしれなかった。

でもね、違うよ。違うんだよエイラ。
あのときの私は『あなた』と一緒が良かったの。『あなたとわたし』で、二人きりがよかったの。
ねえ、どうして分かってくれないの?それに気付いてくれないの?

エイラはいつも、どこまでも私には優しいくせに、そうして私の本心の奥底はどうしても汲み取ってくれないところ
があった。彼女としては一生懸命引き上げようとしているつもりなのかもしれないけれど、けれどどうしても届いて
いないのだ。
それがもどかしくて苛立たしくて、だから拗ねるようにそっぽを向いて、背を向けて無言を貫いた。私は悪くないわ。
気付いてくれないあなたが悪いの。全部全部、あなたが悪い。
だから早く気付いてよ。私の気持ちを分かってよ。そうしたら全部許してあげるから。

そのぐらいの傲慢な気持ちで私はいたから、エイラの顔がいつもとは違って最初から不機嫌そのものだったと
いうことに全く気付けていなかったのだった。
42ハッピー・テイル 2/4:2008/12/16(火) 01:08:59 ID:CwjPDwMm





もういいよ。半ば諦めるようにして言い放って背を向けた。するり、とシーツの上を体が滑る音がして、サーニャが
振り返ったのかもしれないと思ったけれど私はあえて振り向かないことにした。
謝るもんか、今日という今日は。あちらから折れるまで耐えてやる。

それなのにやっぱりすぐ悲しくなって、右手で目をこすって頭をかく。何だかすごく悲しくて涙が出そうになった
けれど一生懸命押しとどめて、あちらに勘付かれないようにと唇をかみ締めた。ねえ、君はひどいよ。いつも
ひどいよ。本当はいつだってそう文句の一つも言ってみたいのだけれど、私は臆病だから出来なくていつも口を
つぐむのだ。

彼女が怒り出したきっかけなんて分からなかった。たまたま非番だった同い年の仲間たちとミーティングルーム
でバカ話かなんかをしていて、そして珍しくそこにサーニャもいた。眠そうな顔をしていたから「だいじょうぶ?」と
聞いたけれど平気だと答えたから、遠慮なく気に留めないことにしたのだ。

取り留めない噂話、ツンツンメガネの自慢と、それに対するリーネの天然な癖に的確な突っ込み、ミヤフジの
今週の失敗エトセトラ。女が三人集まると姦しいのだと坂本少佐が前に言っていたけれど、それなら4人、サーニャ
も含めて5人もいたらそんなのやかましいのに決まってる。そうしてみんなで少佐のごとくわっはっは、なんて
笑って楽しく過ごしてた、その矢先のことだった。
突然サーニャが立ち上がって、ふらふらとどこかに言ってしまったのだ。もちろん私を含めて、残された4人は
ぽかん、とするだけ。あのツンツンメガネだってばつの悪そうな顔をしてた。

(追いかけて上げなよ、待ってるよ)
みんなのその言葉に押されて、私は一人サーニャを追いかけることにしたのだった。行き先はなんとなく分かって
いた。私の部屋だ。多分そうだ。

その時点でなんだかもう、私はなんとなく苛立っていて。
それは私一人の問題じゃなくて、ミヤフジたちにも関わることだったからだ。私一人が我慢したり振り回されたり
するのは別に構わない。でもあんなに楽しくしゃべってるその最中で、その腰を折るようにいなくなることなんて
無いじゃないか。
自分はサーニャの、色んな意味で保護者であると内心自負してやまない私は、そんな妙な責任感から今日の
ことはちゃんとだめなんだぞと分からせてやらないと、と思ったのだった。

でも、結局それは上手くいかなかった。サーニャと来たら意外と強情で、私が何を聞いても答えようとしなかった
のだ。ハルトマン中尉を前にしたときのバルクホルン大尉を思い出して少し強気に出てみても、ノレンに腕押し、
ヌカに釘。ちなみに坂本少佐談だから意味は分からない。
つまらなかったなら一言言えば上手いこと抜け出す方法だってあったのに、会話に入れなくて寂しかったなら
話を振ってやったのに。サーニャはいつだって何も言わないから分からない。どうしたらいいのかわからない。

それで思い悩んでも、どうせみんなは悪いのは私だって、そう言うんだろう?サーニャちゃんの気持ちも考えて
あげて、なんて私に説教をするんだろう?
そんなのわからないよ。言ってくれなくちゃ気付けない。
はいはい、どうせ私が悪いんだろ、私が謝らなくちゃいけないんだろ?そう考えると悲しくなって、もう謝る気
なんてなくなってしまう。ねえたまには私の気持ちだって分かってよ。分かろうとしてくれよ。

私はいつだってちゃんと、サーニャのことを考えてるんだよ。

43ハッピー・テイル 3/4:2008/12/16(火) 01:09:59 ID:CwjPDwMm





ぐず、ぐず、と。部屋に微かな嗚咽が響く。私のものではない。…としたら、エイラのものだ。きゅ、と唇をかみ
締めた。もう、本当にどうしようもないひと。拗ねているのは私で、怒っているのはあちらなのに、あなたはそう
してすぐ誰よりも悲しそうな顔をする。顔なんてここからじゃ見えないけれど見なくたって分かる。泣きそうな顔を
してるに決まってるんだから。

ほら、こうやって。
ひとひとり満足に怒れずにえぐえぐと泣くその音を見ていると、いつもよりずっと距離を開けて遠く隔ててるのに、
なぜか背中合わせのくらいに近くにいる気がするから不思議だ。

「…わたしはいつだってちゃんと、さーにゃのことをかんがえてるんだよ」

嗚咽に混じってこぼれ出た、うめきのようなつぶやきを聞いて目を見開く。もう一度、音を立てないように気を
つけて振り向いても、そこにあるのは見慣れない背中だけ。たぶんきっとエイラは言葉にしたつもりがなかった
のだろう。
普段はすらりと伸ばしている背筋が、情けないぐらいにぐんにゃりと曲がっている。きゅ、と小さくなってたぶん
ぽろぽろ涙を流しているのだ。子供みたい、私よりも1年半も年上なのに。

エイラが無意識に口にしたその台詞が、何の含みも無い彼女の本心だということくらい私は痛いくらいに分かって
いた。エイラは不器用なだけで、いつだって私を大切にしてくれている。だから今日だって追いかけてきてくれた。
たぶん今エイラが怒っているのもただ単に私の態度に腹が立ったからだけじゃなくて、多分の心配も含まれて
いるのだろう。部隊で2番目に幼い私を気遣ってか、彼女は私に対してよく保護者風を吹かせて接してくる。
甘やかすだけじゃなくて、だめなことはだめだと言って、正しいことを教えて。

それだのに私はいつもエイラに甘えてばかりだ。それを加えてもやはり私にはめっぽう甘いエイラに漬け込んで、
浸るくらいの優しさに包まれてぬくぬくとしている。だからこうしてたまに厳しくされると、苛立って拗ねてしまう
のだ。それはたぶん、私がまだまだ子供である証拠。

(ごめんなさい)

…今すぐ飛びついてそう伝えたくなったけれど、今日のエイラは本当に不機嫌で、泣きながらもやっぱり怒って
いる感じがして。怖くてついためらってしまう。手を伸ばせば届くのに、伸ばさなければ届かないこの距離がもどか
しい。ごめんなさい。そんな短い一言も口に出来ない私自身が、もっともっともどかしい。

ちょろり、と耳と尻尾を出してみた。もしかしたらこうしたら届くかもしれないと思って、ゆっくりとお尻から伸びた
黒い尻尾を伸ばしていく。
ちょんちょん、と肩を叩く。予想だにしない刺激に驚いたのだろう、エイラがびくっと震えた。

ねえ、まだ怒ってる?
もう許してくれない?

首筋に触れて、背中をなぞって。吐息になってこぼれるばかりで、言葉にならない思いを必死に伝える。ねえ
振り向いて。構って欲しいの。わがままなんてもう言わないから。

ふ、っと、尻尾に触れる感触が無くなった。どうしたことかしら、とうろたえると、上手く尻尾を避けるようにして
横からギュ、と腕が伸びてきて、そして耳元で聞こえる、優しい声。

44ハッピー・テイル 4/4:2008/12/16(火) 01:13:06 ID:CwjPDwMm

「…サーニャ、くすぐったいよ」

さっきまで背中合わせだったのに、今はすぐそばにエイラの顔がある。エイラの体がある。嬉しさに、つい尻尾が
踊りだす。自由自在に動かすことが出来るのに、感情が高まると好き勝手に動くのもこの尻尾のおかしなところだ。

「…怒ってるんじゃ」
「もういいや、そんなこと」

そうやってすぐ、私を甘やかす言葉をくれる。ごめんね、を私が言う前に、エイラがすべてを許してくれてしまう。
そんなことをなんの含みもなしに自然に出来てしまうエイラの精神が愛しいけれども恨めしい。
うん、でも、やっぱり大好き。

「ねえエイラ、耳と尻尾、出して」
「え?…うん、いいけど。」

まるで娘を抱き上げる父親のように私を膝の上に乗せて、エイラは笑って私を見上げた。怒ってる?怒って
ないよ。そんな掛け合いを先ほどから何度も何度も繰り返している。
私に言われるがままに魔力を解放して、耳と尻尾を出したエイラが自分のふさふさの尻尾をつまみあげながら
呟いた。猫の尻尾って、器用だよなあ。私は振るくらいしか出来ないや。そう言いながらふさふさと振ってみせる
様がなんとも言えず愛らしいなんて、本人には決して言えないけれど。

ねえエイラ、こういう使い方もあるのよ。
くるり、と尻尾をくゆらせて、彼女のその尻尾に自分の尻尾を絡めた。きゅ、と強く結ぶとその感覚がエイラにも
伝わるようで、なぜか顔を赤らめる。手をつないでいるような、ぎゅっと抱きしめあってるかのような、けれど
それらのどれとも違う、不思議な感覚が体の中を走っていく。
えへへ、と子供みたいに笑いかけると、エイラの顔がぼっと真っ赤に染まっていた。

「は、お、はなせ、おろそ、離そう、おろはなすぞサーニャ!」

なんだかよくわからない混乱した言葉でそんなことを口走って私を膝から下ろして、そうしてまたそっぽを向いて
しまうエイラ。何か気に障ったろうか。ベッドの上にちょこんと乗せなおされた私はおろおろと彼女を見やって…
そして、まだ私の尻尾と繋がれたままの、エイラの尻尾を見た。ぱたぱたと忙しなく揺れている。…キツネは
確か、イヌ科の動物で、犬は確か嬉しいと尻尾を振るはずで──

ねえ、もしかして照れているの?本当は嬉しいけれど、恥ずかしがっているだけなの?
たぶん真実だろうと思ったから、あえてそれは言葉にしない。代わりに尻尾と尻尾をつなぐ力をきゅ、と強くして、
離さないよ、との意を伝える。

「…さっきはごめんなさい、エイラ」

混乱に乗じて思い切って口にしてみたけれど、やっぱりエイラは聞く余裕が無いみたいだった。
けれどでも、まあいいわ、となんだかすがすがしい気持ちで。私はまだぱたぱたと触れているエイラの尻尾を
見やることが出来た。

―――
以上です。で、前スレ368(No.0524・キャサリン×ウルスラ話)と前スレ埋めネタ(No.0534)はどちらも自分でした。
まだ保管されないだろうと高を括ってこっちかいてたら更新されてましたごめんなさい
キャサリンウルスラ話はあまりにも短いから今度ちゃんと書き直して管理人さんに送るかここにうpるかします
前スレ埋めはエイラ→エルマも混ざってましたが分かりにくかったら申し訳なかったです。

そして、前スレ>>392、というか本音と建前GJでした…!!
最初(続じゃないほう)読んだとき自分のプロットと内容ほぼ同じなのにこれだけすごい文章書けるなんて!と感動しました。
と言うわけで続きお願いします。息抜きに別のシャーゲルとか書いても…よし、自分も今度かいてみよう
リーネイラのときも思ったけど支援の癖に長すぎだろとか本当に申し訳なかったです
それもコレもすんばらしい元話あってこそです。続き待ってます。待ってます。
45名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 02:15:23 ID:dGWo9rrI
>>44
GJ!
埋めの切ない話もとてもいいけれど、この二人は喧嘩も可愛いな
二つの章が対になってたり芸細かくて読み入ってしまう文章で
……というか、しっぽっていいもんですね!!と叫びたくなる。萌え殺されるかと思ったw
46名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 02:44:13 ID:8lSFz+X1
>>19
先生きのこる!
47名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 03:01:57 ID:52+iWmHX
これは良いニヤニヤ
48名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 09:04:18 ID:Z0RhOEQP
ほんまサーニャは子猫ちゃんやで・・・
ていうか喧嘩して一つ所に戻ってる時点で喧嘩じゃねえw
49名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 17:01:02 ID:1ana78YP
でもそんなサーニャとエイラが大好きです
50名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 18:45:41 ID:kBArkGxy
私もそんなえいらにゃが大好きです。
GJ!
あと、いまさらだけど埋めGJ!!Quality高すぎるよ
リーネイラのえろ切ない続きを希望してもいいですかw
51名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 19:12:47 ID:O28sf2AQ
エイラは勿論のこと、サーニャもヤキモチさんに違いない。
エイラが他の人とだべってたら、きっと不機嫌になるんだろうな。

だけど、怒ってるサーニャにあたふたとペコペコした態度をとるエイラを見て
「やっぱり、エイラには私がついていてあげなきゃ・・・」と内心で思うという。
52名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 19:18:49 ID:1ana78YP
でもさーにゃんはそんなに心が狭くないというか
不機嫌になってる自分に気がついて自己嫌悪になりそう
そんなさーにゃんにヘコヘコしてるエイラを見て
ああやっぱり私にはエイラがいないとだめなんだなぁ…と内心で思ってほしい
53名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 19:24:47 ID:9akLC9an
でも依存度で言うと好き嫌いを別にすればエイラはサーニャいなくても一人でも平気だよね
支えあい方で言うとエイラは手を伸ばしててサーニャはそこに体ごと寄りかかってるというか
エイラは手を離しても倒れないけどサーニャはズダーンといっちゃう危うさがある
サーニャもうちょいしっかりしてると思ってたが基地探見てると不安になってくる。エイラニャ好きとしては美味しいけど

そしていらん子やっと三巻手に入れたが智子さんアンタ本当にどうしようもないですね。どうしようもないですね
54名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 19:30:58 ID:odmUdoTY
埋めのクオリティは異常。
あの後エイラが寝過ごしちゃって慌ててリーネの部屋でたら哨戒から帰ってきてエイラを探してたサーニャと鉢合わせで修羅場に、
なんて妄想が離れません。らぶらぶえいらにゃになって欲しいけどそうなるとリーネが可哀想だーって今の関係でも可哀想か…。
エルマさんまで出てきてもうほんと乱れすぎだろ何やってんだもっとやれ!いや、やってください。
55名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 19:46:43 ID:1ana78YP
エイラちゃんが死んじゃったらさーにゃんはどうなるんだろうか…
親と離れ離れで…心を許せるほとんど唯一の友人のエイラちゃんまでいなくなったら…
56名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 19:51:13 ID:9akLC9an
冗談で死んだ振りしたら本気で怒ったサーニャに本当に殺されかけるんですね、分かります
57名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 19:55:03 ID:O28sf2AQ
>>56
ARIAでアテナさんがそんなヤツやってたなw。
あっちは記憶喪失だったけど。
58名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 20:01:01 ID:CwjPDwMm
記憶喪失ネタいいなあ
エイラーニャだけじゃなくてエーゲルやシャッキーニでも妄想膨らむね
59名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 20:02:57 ID:VzDEKFd1
>>57
ミーナ隊長はすぐ見抜くんですね
60名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 20:12:28 ID:odmUdoTY
そういえば記憶喪失ネタはまだないかな?やばい読みたい。記憶失ってるのにふとした瞬間に以前の癖が出たりとかいいよね。
61名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 20:16:04 ID:8lSFz+X1
エルマ分が足りないよー
62名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 20:16:53 ID:ybBCKT50
エーリカは記憶失っても、何の問題もなく同じ生活続けそうだ
63名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 20:18:15 ID:0zL9ah3f
記憶喪失ネタかー
やはりネウロイに撃墜される

記憶喪失

あわわ
が主流か
キャラは誰でもいけそうだな
64名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 20:25:49 ID:4vUpYpYx
エイラの記憶喪失は面白そうだ
65名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 20:29:54 ID:SVUMAlE3
まさかの記憶喪失シリーズが始まるのか
66名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 20:45:36 ID:jJp941XA
ネタとしてはありきたりだし大体結末も似てくるからなーw相当力量が求められそうだよね
記憶を失った芳佳に「芳佳ちゃん思い出して!恋人のリーネだよ!」「アイアムユアシスター」みたいな
展開しか思い浮かばない俺には妄想力が足りない
67名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 20:46:57 ID:8lSFz+X1
酔った勢いでエイラがサーニャに告白
次の日からサーニャ顔真っ赤
エイラ記憶がない
エイラ「何かあったのか?」
サーニャ「エイラのバカ!」

こんなのが浮かんだ
68名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 20:56:38 ID:CwjPDwMm
自分がやるとどう考えても長ったらしい鬱展開にしかならない予感>記憶喪失

ところで正月のウィッチたち想像したら二人羽織が浮かんだんだ
【前・後】として
【サーニャ・エイラ】→エイラ呼吸困難
【シャーリー・ルッキーニ】→届かない
【All・ミヤフジ】→おっぱ(ry
あとはどうなるだろ
69名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 20:59:48 ID:mgHVKeHq
芳佳は記憶喪失になってもリーネちゃんのおっぱい揉んだら記憶が戻りそう
70名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:00:05 ID:24gHjvrc
うおー、なんだか盛り上がってるとこに水を差しまくりですまないが前々スレの続き投下します。
といっても覚えてる人が皆無すぎる予感。タイトルは幸せの方程式と終戦日の朝

朝起きると、3人の可愛らしい女の子が私に抱きついて眠っていた。
これは思春期の女の子なら誰でも抱く妄想かもしれないが、問題であったのはそれが紛れもない現実であったことだろう。
あぁ、でも問題だなんて言っては失礼だ。
なぜなら3人の体はとても暖かく、そして柔らかく、心地がよかったのだから。
どうして女の子はこんなにもいい香りがするのだろうか?
支給されるものは皆同じ石鹸だというのにそれぞれの香りは確実に異なっており、それでいてどれも快いものであった。

サーニャやエル姉ならともかくニパまでこんなにいいにおいがするなんてどういうことだ。
ニパなんてちょっと男の子みたいなくせに甘酸っぱいオレンジのようなにおいがして…なんだか女の子みたいじゃないか…。

エル姉のにおいをかいでいると、ぽかぽかしたお布団に寝転がっているみたいでとても落ち着く。
まるでエル姉の暖かい心に包まれたようで、エル姉は本当に太陽みたいだった。

サーニャのにおいはとても甘い。
それこそハチミツを口いっぱいに広がらせたみたいな甘いにおいだ。
サーニャのにおいを感じていると、なんだか頭がクラクラしてしまうようで…私、もうダメだよ…。

そして本当にダメだった。
いいにおいを堪能している間にどうやら3人とも目を覚ましていたらしい。
なんだか視線がとても痛い。

「エイラ…なにしてるの?」
「エ、エイラさん?一体なにをなさっているんでしょうか?」
「イッルの変態!」

やはりというかなんというか、私の行為はしっかりと見られていたらしい。
これじゃあ、まるで私が変態みたいじゃないか!
私をソンナメデミンナー!!

う〜、朝からヒドい目にあった。
いや、今回はいくらいいにおいだからって女の子のにおいをくんくんしていた私が悪いのだけど…

「あぁエイラさん。そういえば今日は4人ともお休みなので私たちと過ごしてもらいますよ。」

突然かけられるエル姉の言葉。
えっ4人とも休み?それって…

「エースと指揮官が一斉に休みって問題じゃないカ?」

いくら一時期よりはネウロイの攻勢がやわらいだからってここはスオムス、対ネ
ウロイの最前線だというのに…

「エイラさんが悪いんですよ。4人同時に休みを取るのに私がどれだけ頑張ったか…
アホネンさんにはからかわれるし、ハッキネンさんには冷たい目で見られるし…。」

なんだかエル姉がネガティブモードに入ってしまった…
そんなに大変だったなら無理に全員同じ日に休みを取る必要なかったのに…今からでも私が出ようか?
71名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:01:21 ID:24gHjvrc
そう考えていると私の腕にかかる力が少し強まるのを感じる。

「どうかしたカ、サーニャ?」
「お腹…減った。」

普段あまり自己主張をしないサーニャが空腹を訴えた。
そういえばサーニャもニパもエル姉も昨日は食堂にきていない。
もしかしたら私の部屋の分割について話し合っていてごはんを食べていないのかもしれない。

ニパのお腹も‘くぅ〜’と音をたて、ニパは顔を真っ赤にして俯いた。

そうじゃないだろニパ!
お前は‘ぐぅぐぅ’とお腹をならして、腹減った腹減った、っていうタイプだろ!!
それじゃなんだか…なんだか女の子みたいじゃないか…。

「私もお腹すきましたしみんなで食堂に行きましょうか。」

いつの間にかネガティブモードから脱却したらしいエル姉がそう提案する。
そうだな。腹が減っては戦ができない…あれ?今日は非番だったか。

どうやらその意見には皆賛成のようでいそいそと着替えを開始した。

「ほらサーニャ、手をアゲテ。」
「ん…。」

朝に弱く、まだウトウトしているサーニャの着替えを手伝ってあげる。
うん、オラーシャの軍服も可愛かったけどスオムスの軍服も似合うじゃないか。
でも…これは…お、お揃いってことなんじゃないだろうか。
サーニャとお揃い。これだけでなんだか頬がどうしようもなく緩んでしまう。
あぁ…サーニャはやっぱり可愛いなぁ。

さて、サーニャの着替えも終わったし私も着替えなくちゃな。
なんだかニパとエル姉から冷たい視線を感じるけど気のせいだろう。

どうやら着替えるのが一番遅かったのは私のようで、着替え終わるなり直ぐに食堂へと向かうことになった。
だがこの布陣、いや、この状態がおかしいと思うのは私だけなのだろうか。

私の腕にはそれぞれエル姉とニパが抱きつき、サーニャはなぜか私の腰から離れない。
よくよく考えるとこれは今朝起きたときの状態と非常によく似ている。
しかし寝ているときなら問題にならなかったこの体勢だが、このまま歩くとなるととても辛い。
というかなにやらとても恥ずかしい気がするのは私だけなのだろうか。

食堂に行くまでの間にすれ違う人にはことごとく笑われ、なんだかニヤニヤされるという恥ずかしい目にあいながら私たちは食堂についた。
私たちをソンナメデミンナー!!

サーニャもニパもエル姉も顔が真っ赤だ。
皆恥ずかしいならやめてくれればよかったのに…。
一体全体どうしてこんな事態に陥っているのか分からない。
これ以上トラブルがおこりませんように願うことだけが私にできることであった。
72名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:02:34 ID:24gHjvrc
しかしそんな私の願いを裏切ってやはりトラブルは巻き起こる。


問題…それは席順なんてものはどんなに頑張ったとしても限られた組み合わせ分
しか存在しないということだ。

つまり簡潔にいうと私の隣、厳密な意味で遮るもののない隣という位置は左と右、それこそ2ヶ所しか存在しえないということである。

そして私の隣での食事を望むものが3人。
すなわち物理的な制約により不可能な事象が望まれているのが現状だ。

正直どうしてこんなことで対立がおこるのか分からない。

でも分かったかもしれないことが一つ。
私の隣を取り合うなんて…もしかしたら私は嫌われた訳ではないのかもしれない

いや、それどころかもしかしたら…

「なぁ皆、そんなに気にすることないじゃナイカ。」
「エイラは黙ってて…。」
「イッルには関係ないだろ!」
「これは私たちの問題なので…。」

うん、やっぱり人生そんなに甘くないよな。夢見るとすぐにこれだ。
私の心にまた癒えない傷が刻まれたような気がするのは気のせいだ。

3人はまだなにやら交渉をしている。
ごはん冷めちゃうよ…ただでさえ大して美味しくないのに。
あぁ、リーネの美味しいごはんが食べたいなぁ。

「エイラ…少し椅子を引いて。」

現実逃避をしていた私にサーニャが呼びかける。
話し合いは終わったのだろうか?
まぁ特に問題もないのでおとなしく椅子を引いた。

「ありがとう。」

サーニャはそう言いながら私の足の間にちょこんと座った。

え?なんだこれ?

ニパとエル姉も目を見開いてこちらを見ている。
「サ、サーニャ!?いい、い、一体どうしたんダヨ?」

情けないことに動揺してうまくしゃべることができない。

「エルマさんとニッカさんがどうしてもエイラの隣で食事をとりたいらしいから私が諦めることにしたの。だから私はエイラの前…だめ?」

少し行儀が悪いんじゃないかとかそんなにくっつかれたらドキドキして食事どころじゃないとか色々言いたいことはあるのだけれど…
そんな風に言われたら断れるわけないじゃないか。
73名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:03:41 ID:24gHjvrc
「きょ、今日だけダカンナー!!」

多分、今、鏡を見たら私の顔は真っ赤になっているだろう。

「ありがとう、エイラ!」

サーニャがとても嬉しそうな弾んだ声で返事をしてくれるのがすごく嬉しい。

「じゃあはやく食べようヨ。」

私がそう言うと、ニパとエル姉はなにやらバツの悪そうな顔をしていたが、諦めたように私の両隣に座った。


しかしそのとき既に戦いは始まっていたのかもしれない。

私はサーニャの口にミートボールを運んでいた。
普段ならこの時間帯はウトウトしているサーニャがニコニコと私の運ぶごはんを食べているのをみると私まで嬉しくなってくる。
あぁ幸せだなぁ。
でも平和は永くは続かなかった。

「エイラさん!」

平穏を打ち破るエル姉の声。

「なんだヨ?」

あんまり大きな声をだしたらサーニャがびっくりしちゃうだろ。

「はい、あ〜ん。」

エル姉から私の口にミートボールが運ばれる。
確かに私はサーニャに食べさせているだけだからまだなにも食べてはいないけど…これはすごく恥ずかしい。

「イッル!これも…これも食べろ!」

ニパからはサーモンのマリネが私の口へ運ばれる。
ニパまで!?なんだかまた変なことが始まっている。

「エ、エイラ?」

サ、サーニャ…その位置から私に食べさせるのは無茶がある。

「ムリすんナ、サーニャ。サーニャには私が食べさせてやるから我慢してクレ。」

そう言ってサーニャの輝く頭をなでる。
サーニャは喉を撫でたときの子猫みたいに目をつぶり、気持ちよさそうだ。
やっぱりサーニャはすごく可愛い…

「ありがとう…。」
「気にすんなっテ。」

私が好きでやってるんだからな。
74名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:04:51 ID:24gHjvrc
「なぁイッル、二人の世界に入らないでくれるか?」
「そうですよ。私たちも混ぜてください!」

ニパとエル姉からなんだか冷たい視線と言葉がふりかかる。

「「あ〜ん。」」

二人の声が重なり、私の口にはミートボールとサーモンが同時にねじ込まれた…
魚肉と獣肉の食べ合わせの悪さは最悪であり、じわりと涙がでてくる。
あれ…もしかしなくても二人とも怒ってる?

口いっぱいにミートボールとサーモンが詰め込まれてようやく二人の手が止まった。
あぁ、やっとやめてくれたのか…と安心していたが、どうやら手が止まった原因は怒りが静まったからではなく残弾が切れたためであるらしい。
普段は自分の階級なんてさっぱり忘れてニコニコしているエル姉が、少佐命令を駆使してありったけのミートボールを集めるように指示している。

おい、ニパ!お前もファンからありったけのサーモンをわけてもらうのはやめろ!

二人がすこぶる怒っているのは間違いないようだ。
とりあえず口内に残るミートボールとサーモンの混合物を水で流し込む。
なんだかとても生臭い。

「もう許してクダサイ。」

私にできることは謝ることだけだ。
でもこれはすごく理不尽な気がする。

「今日は‘4人’のお休みなんですからね!勝手な行動はしないように。」

エル姉に叱られる。
でも、確かに伝わるサーニャの暖かさは、私の理性をとろとろに溶かすには十分すぎるものだった。
ただそこにサーニャがいる。それだけの事実が私の頬をひたすらに緩ませるんだ。
だから仕方がないじゃないか。

「そうだぞ、イッル!」

なんだかニパまで便乗してきた。
エル姉ならともかくニパに言われると心穏やかではないのはなぜだろうか。
一応私の方が上官なんだぞ…

「じゃあ、ご飯も食べ終わりましたし、行きましょうかエイラさん。」
「エイラ、行こ?」
「行くぞイッル!」

一体どこに行くんだという私の疑問は無視して3人は私を引っ張っていく。
平和な1日を過ごしたいという私の希望はきっと叶わないのだろうな。
あぁ、今日も大変な1日になりそうだ。
私はそう思い流れに身を委ねることとした。

Fin.
75名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:17:35 ID:24gHjvrc
実家からの敵襲と戦っている間に1スレ終わっていた…
職人達GJすぎとかこのスレやっぱ変だよとかもっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。

あまりにも遅すぎるけど前々スレの埋めが耽美すぎて鼻血でた。
あとは最近いらん子分が増えて嬉しい。もっとエルマさんを!

そういえばやっとフミカネ画集購入に踏み切ったけどエルマさんが普通の顔なのが慣れなくてビビッた。
エルマさんといえばあのはわわって感じの顔の印象が強すぎて…でもエルマさん可愛いよエルマさん。

あと言ってないことは…爺様500&501本目おめでとうございます。
個人的には爺様か管理人さんか21X2w2Ib様にとって欲しかったのでナイスです。
加えてmxTTnzhm様30本到達おめ。自分と1週間ぐらいしか始めた時期に差がないのに末恐ろしいです。
ではRU1ZZ/dhでした。てか後でもう1本投下するかも。
76名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:21:16 ID:odmUdoTY
>>75
待ってたよGJ!サーニャが積極的過ぎるwしかしやはり正妻ポジはサーニャみたいで安心した。
てかついこの間読んだばかりだと思ってたのにスレ1つ空いてたのな…ほんとこのスレ恐ろしい。

>>68
鬱展開でも最後幸せになれば無問題。むしろその幸せが引き立っていいと思うんだ!
二人羽織ならまずは扶桑の二人で実演しないといけませんね。そしてやたらピリピリと痛いものに変わる空気。
77名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:27:49 ID:0zL9ah3f
おー続き来た−!
GJ

記憶喪失はとりあえずリーネと芳佳で書いてみたけど
俺も鬱になった。難しい
78名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:31:39 ID:8lSFz+X1
>>74
GJ
ニパもエイラもエルマさんもさーにゃんもかわいい
79名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:36:47 ID:24gHjvrc
懲りないうちにもう一本!エイラーニャだと思う。
タイトルはわたしcolorアナタに。

一般的な傾向として女の子っていうのは衣服に興味があるものだ。

まぁ私はそこまで女の子らしい方とは言えないし、そう思っている訳でもない。
しかしそれでも私だって女の子の端くれだ。
服飾への興味だって持っている。

その対象は例えば自らのファッションであったり、他者の衣装であったりする。

他者。それが街中ですれ違っただけの相手であろうが目をひかれることがあるのだから、
ましてやそれが自らが並々ならぬ思いを寄せる相手であったならば言うまでもないであろう。

つまり私が言いたいことは、スオムスのお父様お母様、産んでくれてありがとうございます。
エイラは今、幸せです。
なんだか鼻血がでそうですけど…

ーーーーーーーー

「エイラさん!」

ミーティングが終わったので、さっさと部屋に帰ろうとしていた私は、ミーナ中佐に呼び止められた。

「なんダ中佐、私に何か用カ?」

中佐が私に用なんて珍しい。
いつもは少佐ぐらいしか引き止めたりしないのに。

「スオムスから荷物が届いていますよ。」

ミーナ中佐から手渡されたのは何かが入っているであろう箱。
エル姉からかなぁ?
なんだろう、大きさの割には軽いな…

「アリガトナ、中佐。サーニャ、部屋にもどロウ?」

お礼を言って私は部屋へとむかう。

「エイラ、その箱なに?」

私の持つ箱にサーニャは興味を示したらしい。

「なんかスオムスからの荷物ダッテ。私も中身は知らないンダ。」

エル姉からなら嬉しいなぁ…私もなにか送ろうかな?
そういえばニパに送るために集めた、私だったら絶対にいらないものの詰め合わせも送らなくちゃ。
ニパのやつ、毎回ぬか喜びしてるらしくて…私もやりがいがあるってものだ。

早く中身を確認したくて、私はサーニャの手を引いて部屋まで急いだ。
80名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:37:23 ID:24gHjvrc
ーーーーーーーー

私とサーニャはベッドに腰掛け、スオムスからの荷物を開封中だ。
なにが入っているのかな〜?

「ん、スオムスの軍服カヨ〜。」

箱の中から姿を現したのは私のよく知っている、というか今現在も身に付けているスオムスの青い空色の軍服であった。
そういえば古い軍服は少し手首がでちゃうくらい小さくなったから新しいの受注したんだった。
すっかり忘れてたよ。

「新しい服…?」
「そうだよサーニャ。古いのはサイズが合わなくなっちゃっテ。」

なんだかサーニャが羨ましそうに私を見ている。
しきりに胸や腰に手をあてていることから、どうやらサイズが合わない場所を誤解しているようだ。
大丈夫、サーニャの胸もちゃんと成長してるよ。
なんたってサーニャの胸にかけてはオーソリティの私が言うんだ、間違いない。

「古いやつを着ると手首がはみ出しちゃってナ。」
「古い服は…どこ?」

ん、古い服か。
私はサイズの合わなくなったものを引きずりだしてサーニャに手渡した。

「ほら、これダヨ。新しいやつより一回り小さいダロ?」

サーニャが熱心に私の渡した服を眺めている。

「捨てちゃうの?」

う〜ん、どうしようか…

「しまっておこうカナ。」
「もう着ないの?」
「多分ナ。」

サーニャが考え込んでいる。
どうかしたのかな?

「なら…わ、私が着てみてもいい?」

え?サーニャは今なんて言った?
サーニャが私の服を着る?

よし、よく考えよう。
サーニャが私の服を着る→元々私はスオムスの軍服を身に付けている→二人はお揃い→冷やかされる→結婚
間違いなくこうなる!
理論の飛躍が見られるとか関係ない!!

「ん…」

サーニャがオラーシャの軍服を脱ぎさる。
そして露わになるのは初雪のように儚げできめ細かいサーニャの未成熟な肢体だ


私はサーニャをソンナ目で見てないぞ!絶対に見てないぞ!
でも、あぁ、サーニャはやっぱり可愛くて、綺麗で、私は目をそらせなくて、私
の心はすっかり捕らわれてしまう。
81名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:38:22 ID:24gHjvrc
「エイラ…?」

私を呼ぶサーニャの声。
私がボーっと考えごとをしている間に着替え終わったのか?

「どう?似合う?」

顔をあげるとそこには天使、いや女神…あぁサーニャにはどんな形容も相応しくない。
私の前にはサーニャ、そう、サーニャがいた。
私はこれから美しいもの、素晴らしいもの、可愛いものを見たらサーニャと形容することにしよう。
それぐらい私の目の前にいるサーニャは衝撃的であった。
言うなればサーニャなサーニャである。
前者の品詞はもちろん形容詞だ!
しかしそうなるとサーニャという形容詞を修飾する副詞もほしい。
やはりその副詞もサーニャとなるだろう。
つまり目の前にいるのはサーニャなサーニャなサーニャなサーニャな…サーニャなサーニャなサーニャな…サーニャなサーニャである。
うん、素晴らしい。

「エイラ、大丈夫?」

あまりに高尚な世界に浸っていたため、サーニャのことをほっておいてしまった。
ごめんな、サーニャ。

「大丈夫ダ。サーニャは本当にサーニャだナァ。」
「エイラ…本当に大丈夫なの?」

なんだか心配されてしまった。
少し不安になった顔をしたサーニャも実にサーニャだ。

スオムスの軍服に身を包んだサーニャはやはり何度見てもサーニャだなぁ。
軍服の空色にサーニャの真っ白な肌が栄える。
それに加えて、いくら小さくなってしまったといっても私の軍服はサーニャには大きすぎるから、
袖に手がすっぽり引っ込んでしまっているところもとてもサーニャだ。
さらに決め手は白い重ね穿き用のズボンだ。
あぁサーニャの太ももが白い布につつまれて…白い!?
そう、サーニャが穿いているズボンはどう見ても白かった。

「サーニャ、そのズボン!!」
「うん、エイラのだよ。いつかのし・か・え・し!」

そう言ってふわりと微笑む様はさながら13才のオラーシャ美少女、つまりサーニャのようだった。
いや、本当にサーニャなのだけれども。

あぁ、サーニャが私のズボンを穿いている。
私の、私のだぞ!ならばあのズボンはこれから私が穿くんだ!
なんという究極!なんという至高!
至高と究極だったらどっちがより素晴らしいかだって?
そんなの決まっている。もちろんサーニャだ!
1回コールド、いや、1回表で至高だろうが究極だろうがサーニャの前では棄権してしまうだろうよ。
82名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:40:13 ID:PWmPBweL
もうエイラは、ギャルゲーのハーレムED決定!
サーニャもニパもエル姉も全員幸せになると良いよ
83名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:42:25 ID:24gHjvrc
そんなサーニャを見ていたらすっかり自分のコントロールがきかなくなって、私はすっぽりとサーニャの身体を包み込んでいた。

「エイラ…いきなりどうしたの?」

サーニャが尋ねてくる。
サーニャの身体は暖かくて柔らかくて小さくて…あぁ抑えがきかなくなってしま
う。
サーニャの柔らかな銀髪をふわりと撫でる。

「エイラ…?」

サーニャのか細い声が伝わる。
なんだい?、とサーニャに顔を向けると、唇につたわるのは暖かく柔らかなサーニャの感触だった。

「いきなりどうしたんだサーニャ?」
「エイラの服着てたらなんだかぽわっとして、したくなったの。だめ?」

もちろん答えはNOだ。ダメな訳がない。
私もなんだかボーっとしてきた…

「サーニャ…。」

私はそう囁き、ベッドにサーニャを転がすと、共に溶け合った。

ーーーーーーーー

この日から時々、隊の洗濯籠には1日で2着のスオムス軍服が入れられていることがある。
サーニャはサーニャで寝ぼけたままスオムス軍服で訓練に出たり朝食に行ってしまったりするので隊の皆のニヤニヤとした視線が痛い。
あぁ、でも、とても恥ずかしいことなのに、こんなにも頬が緩んでしまうのはなんでだろうかなぁ?

Fin.

そういえば感想ありがとうを言うのを忘れてた。
あまりにも影が薄い書き手なので覚えていてくれる人がいると嬉しい。
タイトルはわたしからあなたにと読みます。サーニャ視点のも書いてるんだけどそっちが基点のタイトルなんでこれだと意味がわからない。
てか自分はエイラーニャが好きなんだけどエイラーニャが書けないぜ。
>>76本妻が誰かはまだ秘密ですよ。というか本妻自体存在するのか…
というわけで再びRU1ZZ/dhでした。
84名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:48:00 ID:6UEmRfzS
>>75 >>83
影が薄いなんてとんでもない、毎回たまらねえニヤニヤをありがとうだぜ今回もGJ!!
実にサーニャな文章じゃないか。そして冷やかされる→結婚に吹いたwww

あとどうでもいいことに気付いたんだけど、宮藤×竹井少尉って略して芳醇ですね。なんて香ばしいカプなんだ。
85名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:49:48 ID:egFNKvoT
>>75
続き待ってたw
相変わらず困り果てるエイラ可愛いよ可愛いヨ。GJ!
むくれるニパも可愛くて仕方ない。最近ニパに目覚めてきた

>>83
なんて素敵なシチュエーションだ!! ニヤニヤがとまらねぇw
いきなり結婚まで夢見てるエイラさんかわいいw
86名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:50:17 ID:qWqQh3h0
>>75
やはりサーニャが1枚上手だw
年下だからこそできる見事な甘え方だ

>>83
(まずい、エイラーニャの軍服ネタ被った…いや、まだ未完だしいいか)
スオムス軍服は絶対似合うよね。某氏が描いてくれた絵で鼻血が出そうになったもんだ
2本ともGJです!
87名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 21:52:50 ID:8lSFz+X1
>>82
かーなしみの
88名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 22:18:25 ID:kBArkGxy
>>83
GJ!エイラさんがいろいろヤバいwおもしろかった
影が薄いなんてそんな…私なんて私なんてわたry

>>84
芳醇かよ!なんか腹が減るwじゃあここらで誰か芳醇な芳醇を…
89滝川浜田:2008/12/16(火) 22:21:42 ID:XYjitJyq
みなさんこんばんは。
最近ミーナ×リーネが好き過ぎて死にそうな者です。
今日は例の続きを投下します。
90滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.7』:2008/12/16(火) 22:24:18 ID:XYjitJyq

ネウロイの近くに来た。

「坂本少佐の魔眼によると、あそこだな」
「じゃあ、シャーリーは後ろから援護射撃してて」
「ああ、分かった」

私はコアがあるだろう場所へ狙いを定めて、引き金を引く。


…トゥルーデへの、誓いと想いを込めて…。


――何回君を愛したら chapter.7――


私が放った弾丸は真っ直ぐ狙った場所へと、飛んでいく。
そして大きな音が鳴り響く。
すると。

「あれ、意外と簡単に装甲が割れた…」
「…なるほど、そういう事か」
「え、つまり…どういう事、シャーリー」
「つまりだな、あのネウロイの本質はこの装甲じゃなくて、コアの周りに張ってある膜なんだよ」
「という事は」
「そう、装甲はオマケ。
自分の存在を誇示するためにわざとコア周りの装甲だけ強度を低くしてあったんだ」
「…なんか高飛車なネウロイだね」
「ああ、なんか嫌な感じだな」
「で、こんな事もあろうかと」
「ナイフ?
なんでそんなもん持ってんだよ」
「こういう事を備えあれば憂いなし、って扶桑では言うらしいんだよ」
「ふーん」
「要するにあの膜を破ればいいんだよね?」
「まあそういう事だよな」
「だからこのナイフで膜を突き破るんだ」
「えらく原始的な手段だなおい…」
「引き続き援護よろしく!」
「お、おい無茶するなよ…!」

シャーリーの言葉を背に、私は膜に包まれたコアの方へ向かう。

91滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.7』:2008/12/16(火) 22:25:53 ID:XYjitJyq

「…よし…!」

私は膜に魔力を少し込めたナイフを突き立てる。

「いっ…意外と固いなっ…!」

…でも、破れない固さじゃない!
必死にナイフで膜を破ってると、ネウロイが反撃を開始した。

ネウロイはいきなり大きく向きを変えだしたのだ。
あまりに急すぎる方向転換に振り落とされそうになる。

「うわわわわわっ!」
「エーリカ!大丈夫かぁっ!」
「なっ、なんとか!」
「あんまり無理すんなよ!」
「わ、分かってる…!」

とは言え…これはかなりの根気がいりそうだな…

「くっ…そっ…」

私は懸命に膜を破る。
膜自体は慣れたらなんて事ない固さなんだけど、膜が何層にもなっていて思ったより手間がかかる。

必死にネウロイにしがみついて、膜を破っていると。
またネウロイが動いた。

「まっ、また方向転換かっ…!」

するとネウロイは勢いを付けて向いた方向とは逆に体を振った。

そして私は、その衝撃で振り飛ばされた。
一気に視界が変わった。

私は物凄いスピードで、海の方へ落ちて行く。

「ヤッ、ヤバいっ…!!
エーリカァァァァ!!!!」


――私はその間中、いろんな事を巡らせていた。

結局、トゥルーデが目覚める事無く死んでいくのかな、とか。
ああ、トゥルーデに謝る事さえ出来なかったな、とか。



――――ごめん、トゥルーデ。――――



To be Next chapter…


92滝川浜田:2008/12/16(火) 22:31:26 ID:XYjitJyq
第7話以上です。
ああ、ついに次回で最終回です。
長かった、ああ、長かった。
で、このシリーズをちょっと見直して見たんだけど…
このシリーズ全体的に百合要素が薄めだと言う事に気付いた…。
でも、もうしょうがない。
こればかりはしょうがないですなぁ…
最後までお付き合い下さい。

…では爺はここら辺で…
93名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 22:56:25 ID:VaMIh3cB
ちょっと目を離してるうちに何本投下されるんだ
94名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 23:09:26 ID:HzK7hbO8
この前スレ立ったと思ったらもう100近くってどういうことwww
ふざけんなと言いたくなる速さwwww
95名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 23:10:35 ID:0zL9ah3f
次で最終回
乙!
96名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 23:10:59 ID:mYZ+w0Ud
こんばんは。mxTTnzhmでございます。

>>44 21X2w2Ib様
GJ! 相変わらずのクオリティには脱帽です。

>>75 >>83 RU1ZZ/dh様
GJ! ニヤニヤしながら読んでました。
あとありがとうございます。気付いたら30超えてましたね……。

>>92御大
Gj! 続き気になりますよ〜。

さて、今回は
>>58-69さん辺りで記憶喪失ネタが有ったので、速攻で書いてみました。
激しく思い付き&尻切れ&行き当たりばったりなので、オチも捻りも何も有りません。
とりあえず乱文ですけどどうぞ。
97memory 01/06:2008/12/16(火) 23:11:49 ID:mYZ+w0Ud
唐突に“私”は目覚めた。
ここ、どこだろう。辺りを見回す。誰も居ない。
身体を起こす。どうやらベッドの上みたい。横に薬と、水の入ったコップが置かれている。
「誰か? 誰かいませんか?」
声を掛けてみるけど、何の返事も無い。
ベッドから降りてみる。横に揃えて靴が置かれている。試しに履いてみる。
サイズがぴったり。私のものみたい。

ふと、言い知れぬ悪寒に襲われた。毛布を掴むと、身体に巻き付ける。
私、何やってるんだろう。と言うか、ここ、何処? 誰か居ないの?
誰か……誰だろう。私はそもそも誰を捜しているのだろう?
そしてもっと大事な事に気付いた。

“私”は誰なんだろう?

毛布を被ったまま、私はその部屋からそーっと抜け出した。
廊下にしては妙に広く、天井も高い。
なんか、お城みたいな感じ。
廊下に響くのは私だけの足音。
窓ガラスに、私の陰が写る。辛うじて、毛布を被っている姿しか分からない。
鏡を見たい。私は、どう言う顔をしているんだろう。

やがて大広間に出た。見知らぬ人が何人か居た。慌てて陰に身を隠す。
何か、ここに来てはいけない様な気がしたから。
指を指された。
私は慌てて逃げ出した。遠くに居た筈なのに、何で気付かれるんだろう。
階段を昇り、誰も居ない所で一息付いた。息が荒い。止まらない。
「何してるんだろう」
冷静に考えてみる。そもそも何でこんな所に居るのか。
身体を見る。寝間着姿みたいだけど、何か囚人が着せられる服にも見える。
私、捕まってたのかも。
だとしたら、ここに居たら……逃げ出した事がばれたら……。
私は様子を窺い、外へ出る道を探した。
ここは何処? どうして私はここに? あの人達は誰? 私は誰?
でも、聞こうにも聞けない。聞いたらいけない様な気もして。
廊下を進んだところで、前の方から人が前からやって来るのに気付いた。
手近なところを見つけて隠れる。辺りを見る。台所みたいだ。
身を縮めて隠れていると、その人は運悪く私の居る台所にずかずかと踏み込んで来て、鉢合わせした。
「lwh! tyghsh!?」
驚いている。私も驚いてしまった。
「kmjhbgvfcd!!!!」
何かわめいているけど、何処の言葉だろう? さっぱり分からない。
「ごめんなさい!」
私は強行突破に出た。その人を突き飛ばして、全力で逃げた。
その人はまだ怒っていたけど、追っては来なかった。暫く走って、息を整える。
見た事ない人だった。何処の国の人だろう? ここは何処?
「tygh? yhbgvf?」
突然後ろから声を掛けられる。
大柄な女の人だ。私は逃げ出した。
「tygh!? drftgyh!?」
毛布を掴まれる。毛布を離して逃げようとした。でもその人は素早く私の腕を掴む。
「tygh!? dmkjhrftgyh!?」
「離して! お願い離して!」
相手も何か言ってるけど、本当に何を喋っているか意味が全く分からない。
振り解こうと頑張ったけど、物凄い力で腕を握られる。
……この人、ここの看守なのかな。私、このまままた捕まって閉じこめられるのかな。
「dfrtgy! cvgbtyghgwhjs! plkjhbcdbn!?」
大声で怒鳴ってる。ああ、やっぱり捕まるんだ。
98memory 02/06:2008/12/16(火) 23:12:41 ID:mYZ+w0Ud
涙が出てきた。私、もうおしまいだ。
「tygh? mkmywq? mlptrvbf?」
大柄な人は私の顔を覗き込んで、心配そうな顔をした。どうしてそんな顔をするの?
ぞろぞろと集まってきた。……若い女の子ばっかり。どうして?
「tygh?」「tygh?」「pnkhsth?」
皆、私の顔を見て同じ様な単語を言ったり、何か心配そうな顔をしたり、不思議そうな顔をしてる。
私は涙がこらえられなかった。大声で泣いてしまった。もう私、おしまいだ。
自分が何者かも分からないまま。
「tygh?」「myhtgfvsdcgsdv?」「rjdc! fvbn!?」
周りに集まった人達は何か言っている。でも何を言っているか全然分からなくて。
余計に自分が惨めになった。
大柄な人は他の人に何か言われて、首を横に振って、手を離した。
あ、今なら。
私はもう一度逃げられるか賭けに出た。けどやっぱり無駄だった。周りのみんなが私を掴み、組み伏せた。
「tyghjdyt!」「plmrtyhbvsdcgtygh?」「pnkhsth!?」
今度はもうだめ。終わった。何もかも。涙が止まらない。
「mkbr、cdfghj?」
また誰かがやって来た。みんなに何か言ってる。みんなはそれに答えてなにか口々に言ってる。
上を見た。
見た事無い人。白い服を着てる。その人は私の顔をじっとみると、なにか言ったけど、
私が分からないと言った顔をしていたのに気付いたのか、ちょっと考えた後、顔を近付けて、言葉を発した。
「おい宮藤。お前、何をしてるんだ?」
その人ははっきりと私に分かる言葉で言った。あ、分かる。その言葉なら。この人なら、何か聞いても大丈夫かも?
「すいません! 私、私……一体誰なんですか?」
その人はひどくびっくりした。周りにいる人は私が何を言ってるのか分からない顔をしている。
「私、なんでここに居るんですか? この人達、誰なんですか? ここは何処なんですか?」
私の言葉が通じたのか通じないのか、白い服の人は首を傾げると、周りの人に何か言った。
今度は周りの人達がびっくりしている。口々に私に向かって何か言っている。さっきからのその分からない言葉の端に、
頻繁に「ミヤフジ」もしくは「ヨシカ」と言う単語が聞こえてくる。
白い服を着た人……よく見ると、眼帯をしてる……は、大きな人に私を立たせて、何か言った。
大きな人は私をぐいと引っ張る。
ああ、やっぱりどっかに連れて行かれるんだ。ひっ! と悲鳴を上げると、眼帯の人は言った。
「慌てるな。お前をどうこうしようと言う訳じゃない。落ち着け」
「なら、どうして私をこんな目に!?」
「訳も分からず逃げられたら困るからな。自分の事も分からないのに何処へ行くつもりだ?」
「あ……」
「ともかく、一度戻るぞ」
ああ、やっぱり戻されるんだ、あの部屋に……。
と思ったら、別の部屋に連れ込まれた。他の人もぞろぞろついてくる。
部屋の扉を閉めて、私をベッドの上に座らせて、眼帯の人は言った。
「まあ落ち着け。水でも飲んで、深呼吸しろ。誰もお前を傷付けようとか思ってない。安心しろ。私が保証する」
水の入ったコップを渡される。そう言えば喉が渇いていた。一気に飲み干す。
少し、落ち着いた。息を整える。
周りに居る人達も、なんか私を心配してくれてるみたい。
「自分の名前も覚えてないのか」
「はい。私、誰なんですか?」
「冗談ではないよな?」
「はい。私、何も覚えてないんです!」
「困ったな」
その人は首をひねった。
周りからは、さっきから頻繁に「ミヤフジ」と単語が飛んでくる。たまに「ヨシカ」と言う単語も。
「みやふじ? ……よしか?」
「それがお前の名だ」
「みやふじ……よしか」
「そう。お前は扶桑からここブリタニアに来た、ウィッチだ」
「扶桑って何ですか? ブリタニアって? ウィッチって何ですか?」
「扶桑は、お前と私が今喋っている言葉を使う国だ。お前と私の生まれ故郷でもある」
「ブリタニアは?」
「今居る場所だ」
99memory 03/06:2008/12/16(火) 23:13:37 ID:mYZ+w0Ud
「どうして私がここに? この人達、一体誰で、何なんです?」
「お前と同じ、ウィッチだ。そしてお前の大切な仲間達だ。私もそう」
「仲間……」
私は呆然と、辺りを見回した。周りの人は、いつしかみんな心配そうな顔をしていた。
「宮藤、お前は扶桑語しか喋れなくなっているのか。それで皆の言葉が分からないんだな。
ここへ来る道中で、ブリタニア語もしっかりマスターした筈なのにな」
「わかりません」
「そうか。まあ、無理しなくていい。お前はここでウィッチとして、人のためになる事をしてきた」
「ウィッチって、何ですか」
「全然覚えてないのか。まあ仕方ないか」
「あの」
「なんだ?」
「貴方の名前は?」
「私か? 今更自己紹介もヘンだが……坂本美緒だ。坂本、で構わない」
「さ、坂本……さん」
「そう。それでいい」
「坂本さん。私、どうしたら良いんですか?」
坂本さんは、溜め息をつくと、言った。
「どうしようもないな」
「そんなあ」
「但しひとつだけ言っておく。ここはお前の第二の我が家でもあるんだ。逃げる必要なんてないし、
逃げたところでもっと訳が分からなくなるぞ? だから逃げるな。怯えるな。安心しろ。誰も危害は加えない」
「本当ですか?」
「大丈夫だ。私が保証する」
「ありがとうございます」
「何をどう勘違いしたかは知らんが……周りに居るみんなはお前の事を心配しているんだぞ。そしてあとひとつ。ここはお前の部屋だ」
「はあ」
「ともかく、暫くすれば記憶も戻るだろう」
坂本さんは席を立った。
「ま、待って下さい」
思わず腕を取ってしまった。
「どうした?」
「私、自分が誰なのかも分からなくて……みんなが話してる言葉も分からなくて……これからどうしたらいいのか。
私の言葉、他に分かる人居ないんですか?」
「この基地には、私以外居ないな」
「ええ? そんなあ」
「今更扶桑海軍に送る訳にもいかんし……どうしたものか」
坂本さんも困っている。でも私はもっと困ってる。言葉も通じなければ、コミュニケーションが取れない。
そもそも、私は宮藤芳佳と言われても……それって誰なの? 本当に私なの?
「仕方ない。暫くお前の横に居てやるか」
100memory 04/06:2008/12/16(火) 23:14:39 ID:mYZ+w0Ud
坂本さんは、私の横にいてくれた。食事の時も、風呂の時も。
そしてタイミングを見計らって、周りの人の紹介もしてくれた。
みんな聞いた事の無い名前だけど、にこにこしたり、心配そうな顔をしたりで、確かに私に何か悪さをしようとか
そう言う感じは無かった。
ミーナ中佐、と言う人は、私の事を心配してくれて、言葉はわからないけど、ちょくちょく顔を出しては、
坂本さんと私に声を掛けてくれた。なんか落ち着いた感じのお姉さんだ。
最初に台所で会った人は……ペリーヌさんとか言った……食事の時とか、何故か私を睨んでいる。
やっぱり突き飛ばしたのがまずかったかな。
「聞いていて分かると思うが……いや、分からないかも知れんが、ここは軍隊だ。一応な」
坂本さんは不意に言った。
「ぐ、軍隊……ですか。鉄砲を持って、人を殺すんですか」
「人は殺さない。我々が戦っているのはネウロイと呼ばれる謎の存在だ」
「ネウロイ……」
「お前はつい数日前まで、ネウロイと戦っていたのだぞ? それも忘れたのか?」
「はい」
「何か思い出せる事は無いか? 何でも良い」
「何か……」
私は頭を抱えた。何もない。辛うじて扶桑と呼ばれる国の言葉が話せるだけで、何も。
自分の事すら分からないのに。
「私は、誰?」
「お前は宮藤芳佳だ。それ以上でもそれ以下でも無い。扶桑の誇る、ウィッチだ」
「坂本さん。ウィッチって、何ですか?」
「窓の外を見てみろ」
言われた通り外を見る。何人かが、宙を飛んでいる。足に何か付けている。
「あれがウィッチだ」
「足に何か付けてますね?」
「あれはストライカーと言って……いわば魔法の箒みたいなもんさ。簡単に言うと、私達の魔力を強くする。
そしてその力で空を飛び、ネウロイを倒す」
「ネウロイって何ですか」
「それは……、明確に答えられる者は居ないだろう。簡単に言うと、人間ではない、我々の敵だ。そうとしか言えないな」
「敵……」
「今のお前は戦う以前のレベルだ。まずは日常生活から再スタートしないとな」
「はい」
坂本さんは不意に笑った。
「なんだか、初めてお前に会った時を思い出したよ。こうして扶桑の言葉をたくさん使うのも久し振りだ」
「そうなんですか」
「ここは色々な国の者が集まっている。ブリタニア語を共通語としているが……せめてそれくらいは覚えないとな」
「はい」
「以前はすらすら話せて冗談も言えたんだ。すぐにまた覚えるさ」
扉がノックされ、大きな人が入ってきた。私を掴まえた人だ。確か、バルクホルンさんと言った。
おじぎをすると、私をちらっと見た後、坂本さんと何か話している。
バルクホルンさんは、ちょっと怖そうな人だけど、背中を見てると何かたくましい。戦う人って感じがする。
坂本さんと話して、バルクホルンさんは笑った。何か冗談を言っているみたい。
その姿は、何故だか少し懐かしい感じがして
「お姉ちゃん?」
と呟いていた。
「お姉ちゃん、だと?」
坂本さんが聞き返してきた。
「いえ、何となく思っただけで」
「そうか。本人に聞いてみるか」
坂本さんはバルクホルンさんに私の言葉を伝えると、急に顔を真っ赤にしてうろたえた。
おかしな人だ。
「からかうな、と奴は言ってるぞ」
「そんなあ。私、ちょっと思い出しそうな気がしたんです」
「まあ、たまに錯覚する事もあるからな。気にするな」
坂本さんも笑った。
101memory 05/06:2008/12/16(火) 23:15:34 ID:mYZ+w0Ud
数日経って、坂本さんの代わりに大人しそうな子がやって来る様になった。
確か、リーネちゃんと言う子だ。みんなの中で私と一番仲が良かったらしい。
何かあるたびに、私に構ってくれる。
同い年くらいなのに、すごい面倒見が良くて、しっかりしてる。
そして、私を心配してくれるのか、時折すごい寂しそうな顔をしてる。
私は何も記憶に無いのに、リーネちゃんには有るんだ。羨ましい。
でも、私とリーネちゃんは言葉の壁に遮られて、コミュニケーションすらままならない。
一生懸命ブリタニア語を覚えようと頑張っているけど、「はい」「いいえ」位しかまだ分からない。

ある日ぼんやりと外を眺めていると、突然大きな音が聞こえた。長く、不気味な音だ。
外を慌ただしく走っていく音が聞こえる。それも大勢。何か有ったのかな。
暫くすると、基地の滑走路から、坂本さんの言っていた魔法の箒をつけた人達が空に飛んでいった。
何処へ、何をしに行くのだろう。いつ帰ってくるのかな。心配になった。
部屋の外に出て、辺りをきょろきょろとしていると、ミーナ中佐が来た。
不安そうな私の顔を見たのか、にっこり笑うと、私の肩を掴んで、部屋に戻した。
そして指でバツのマークを付け、下を指さし、にこっと笑うと、そっと扉を閉めた。
外に出ちゃダメ、と言う事なのかな。
そう言えば坂本さんは言ってた。私は少し前まで戦っていた、と。
私はどうすれば良いんだろう。でも、何も出来ない自分が情けなくなって、涙が出た。

その時、扉が開かれた。リーネちゃんだ。
私が泣いている事に気付いたリーネちゃんは、慌てて飛んでくると私の涙を拭った。
何かを言っている。言葉の中に「ヨシカ」と幾つも入っている。
多分私を慰めてくれているのだろう。その優しさに私は溺れたのか……
リーネちゃんの胸で泣いた。
リーネちゃんは優しくて、私をそっと抱くと、頭を撫でてくれた。
涙が止まらない。
「ごめんね、リーネちゃん……私、何も出来なくて」
勿論言葉は通じない。でも、分かってくれた様な顔をしてくれた。
暫くそのままで居た。
すると、リーネちゃんは、私を抱く腕の力を緩めた。
「?」
リーネちゃんも、いつしか涙が出ていた。前のリーネちゃんと私は、どれくらい仲が良かったんだろう?
そんなに心配してくれるなんて。
リーネちゃんは、私の名を呼んで……
突然、キスをしてきた。

な、なんでいきなり? 私、そんなつもりじゃ……リーネちゃん、やめて!
でも、何故か拒めない。身体はひきつっているのに、頭の奥で何かが疼く。
リーネちゃん、私とどんな仲だったの? 私……
リーネちゃんは私をベッドに押し倒すと、何か呟いた。謝っているのかな。
次に激しく私の名を呼んで、叫んだ。
何を言いたいの?
リーネちゃんは何を言っているの?
だけど、彼女はそのまま、私に覆い被さって……
私はされるがまま……
唇を奪われ、服を奪われ……私は……
触れ合う身体。リーネちゃんの髪が解ける。私の顔に掛かる。
この匂い……
リーネちゃんの胸が、私に当たる。肌の匂い……
何処か、なつかしい様で、それでいて、とても愛しい様で……

あ。

私の中で、真っ暗闇だった扉が開いた様な。
頭を覆っていたものが“砕けた”音がした。
102memory 06/06:2008/12/16(火) 23:16:30 ID:mYZ+w0Ud
頭の中がクリアになる。
思い出す。
何もかも。
「リーネちゃん?」
「芳佳ちゃん」
「リーネちゃん。私……私……」
「思い出したの? 芳佳ちゃん?」
「ああ、分かる。分かるよ、リーネちゃんの言葉。リーネちゃんなんだね。思い出した……私、自分の事」
「本当に? 良かった。心配したんだよ?」
リーネちゃんは私に抱きつくと、涙を流した。
「リーネちゃん、有り難う。リーネちゃんのお陰で、思い出した」
「本当? きっかけは?」
「リーネちゃんの、涙と……」
「あとは?」
「リーネちゃん」
「何それ? おかしな芳佳ちゃん」
「さっき、何て叫んでたの? よく聞き取れなかったけど」
「それは……恥ずかしいから、言わない」
「そんな。また記憶無くそうかな」
「やめて」

その夜、戦闘から帰還した隊の皆に、改めてお詫びをした。
ご迷惑を掛けてすみませんでした……と。
「良かったじゃん、ミヤフジ。いきなり毛布被って廊下から出てきた時は、お化けごっこでもしてるのかと思ったよ」
「ごめんなさい、驚かして」
「宮藤。何故私の事を……あんな風に言ったんだ?」
「え? いや、全然意味は無いです。何となく」
「からかうなよ。まったく」
バルクホルンさんの顔が赤い。
「まったく、この豆狸は……」
「ああ、ごめんなさい。突き飛ばしたのは決して……」
「突然毛布姿で驚かされて、突き飛ばされたわたくしの身にもなってごらんなさい!」
「ごめんなさい」
「まあそう言うなペリーヌ。良かったじゃないか、記憶が戻って」
「……確かに、少佐にこれ以上迷惑を掛けずに済むならよろしくてよ」
「芳佳、記憶喪失になる方法教えて?」
「え? ルッキーニちゃん何で?」
「あたしもそれやってみたい」
「こら。軽い遊びじゃないんだぞ?」
「えーだってー」
「良かったナ宮藤。扶桑の言葉叫んで錯乱してる時は、私もサーニャもホント驚いたゾ」
「芳佳ちゃん、良かったね……」
「ごめんね、心配かけて」
「宮藤さん、もう大丈夫なのね?」
「はい、ミーナ中佐。この通り」
「そう。良かったわ」
「よし、復帰祝いと行くか。こっちも戦いが終わったばかりだし、景気付けに一杯いくか!」
「坂本さん……色々ご迷惑掛けました」
坂本さんは、いつもの通り豪快に笑うと、私と肩を組んで言った。
「結果良ければそれでよし、だ。気にするな気にするな」

でも、私はひとつだけ、どうしても気になる事が有った。
何故、記憶を失ったのか。
それだけは未だに思い出せない。
リーネちゃんなら、何か知ってるかも知れない。
後でもう一度、リーネちゃんに聞いてみよう。
そうしたら、分かるかも知れない。
その、匂いとかで……。

end
103名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 23:17:45 ID:mYZ+w0Ud
以上です。
……やっぱり記憶喪失ネタは難しい!
勢いだけで、すいませんホントに。無謀な挑戦でしたorz

ではまた〜。
104名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 23:34:48 ID:0zL9ah3f
仕事が早いw
一日ホント何本投下されてるんだろこのスレ?
105名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 23:46:09 ID:mgHVKeHq
>>103
乙です!
誰か芳リーネで書いてくれないかなと思ってたら早速投下されてて驚きました
やはりリーネちゃんの胸が当たったときに記憶が戻ったのかな
106本当に酷いグリム童話 1/8:2008/12/16(火) 23:47:12 ID:tXRtmzNg
昔々ある所にミーデレラという名前の(ぎりぎり)娘がおりました。
ミーデレラは意地悪な継母に娘として扱ってもらえず、事あるごとにいびられる毎日を過ごしておりました。
そんなある日、ミーデレラの家にお城から舞踏会の招待状が届いたのでした。


「誰がぎりぎりですって……?」
「ほーっほっほっほっ! こんな素晴らしい日に何を一人でブツブツおっしゃっているのかしらミーデレラ!
 遂に……遂にこの時が来たのですわ! ご覧あそばせ! 坂本殿下から、舞踏会の招待状を戴いたのよ!!」

いつも通り耳障りな笑い声をあげてペリーヌお義母さまが現れた。
いつも通りムカつきを噛み殺し、100万ドルの営業スマイルで応対しようとしたんだけど。

「み、美緒さまから……!?」
王子、坂本美緒殿下。 清々しい笑顔。 竹を割ったような性格。 誰にでも優しく厳しい、裏表の無い方。
あの方を思うだけで私の胸は……きゃうん(はぁと)。 そんな私をキッと睨みつけてくるお義母さま。

「キモイですわ! ブリッコは実年齢と相談してなさったらいかが!? 坂本殿下もご妙齢。
 この舞踏会、殿下のお相手を探すためと専らの噂。 今こそ殿下をメロメロにするチャンスですわ! ほーっほっほっほっ!」

キモイとか言われた。 喪黒福造みたいな笑い方してるんじゃないわよ!
でも。 美緒さまに会える。 ううん、会えなくても。 一目だけでも、近くで美緒さまが見られる。
たったそれだけで、私の心は少女のようにときめいていた。 ……いえ、現に少女なのだけれど。
なんだかあまりに心労が多くて、自分が老け込んで思える時がありすぎるのよね……。

「ほーっほっほっほっ! 何か勘違いしているんじゃなくってミーデレラ?
 此度の舞踏会は国中から私のような由緒正しい家柄の淑女たちが集まる、超一流のパーティなのよ。
 貴女のような端女なんて連れていったら国中の笑いものですわ! 行くのは私と娘たちだけよ! 残念でしたわね!!」

「がーん! そっ、そんな! 招待状は私のぶんまで有るではありませんか!」
「ほーっほっほっほっ! もちろん殿下はお優しい方ですから、誰にでも招待状は出すでしょうね。
 でも、だからと言って貴女のような下賎の者が王宮に押し掛けるなんて、あまりに厚かましいと思いませんこと?
 場違いさを自覚して遠慮するのがスジですわ! まさか貴女はそんな恥知らずじゃあございませんわよね?」

お義母さまの言葉がグサグサと胸に突き刺さる。 嫌味たっぷりだけど、言っている事は確かに正論だ。
華やかに彩られたご令嬢たちが列席する中、私のような灰かむりが居るだけで場の雰囲気を壊してしまうかもしれない。
107本当に酷いグリム童話 2/8:2008/12/16(火) 23:48:16 ID:tXRtmzNg
「舞踏会か……なぁんか気が乗らないね。 あたしはいいからさ、ミーデレラを連れてってあげたらどうだい?」
「ちょ! 何ふざけたアドリブかましてくれますの!! 四の五の言わずに支度なさい!」
この神様のような発言は、長女のシャーリーお義姉さま。 大らかで細かい事にこだわらない素敵な女性だ。
なぜお義母さまのような方からこんなミスキャストな人が生まれてきたのか、いつも不思議で仕方ない。

「まったくあの子は……。 ほらエイラ! あなたもさっさと用意なさい!」
「ムリダナ。」
「ちょ!!! どうして貴女がたは期待通りの返事をしてくれないんですの!! 寝言はよし……」
「やかましいんダナ!! 毎週金曜21:00はDJサーニャのネトラジカウントダウンの時間なんダナ!
 舞踏会なんていつでも開けるけどサーニャの番組は金曜日にしかネーンダヨ! 分かったらちょっと黙っててほしいんダナ!!」
「ひゃっ! え、いや、そ、そんな本気で怒らなくても……わ、分かりましたわよ……ぶつぶつ。」

あまりの剣幕に腰がひけるお義母さま。 脛かじりの癖に堂々とダメ人間宣言していたのは、次女のエイラお義姉さま。
万事に無頓着な癖に金曜日だけは人が変わる、ちょっと扱いにくい人だ。 ネトラジって何かしら?

「まったくまったくまったく! まぁいいですわ。 ライバルは少ない程いいですからね! シャーリー! 行きますわよ!」
「ごめんねミーデレラ。 ま、あんたのぶんまで楽しんでくる事にするよ。 じゃね!」
まっ、待ってぇー! 願いも空しく、お義母さまたちはさっさと出掛けていってしまった。
お義母さまときたら、足元までレースの伸びた真っ青なドレスを宝石で飾り立てて、まるでどこかの国のお姫さまみたい。
それに引き換え私なんて足元まで野暮ったい木綿の着の身。 ドレスなんて一つも持ってない正真正銘の貧乏人だわ。

こんなのあんまりだわ。 私は美緒さまを一目見たいだけなのに。 魔法でも使わなければ、そんな事すら叶わない。
あぁ神様。 ううん、もうこのさい悪魔でも何でもいい。
どうか私を助けてくれる良い魔女を、私の元へ送り届けてください。 お願いします……。

藁にもすがる気持ちで窓を見上げる私。 ? 何かしら、確かに今、窓のところで何か動いたような。
!? 間違いない、あれは人間の手だ。 小さな手が、窓にガムテープを貼り付けている。
ぽかんと見ている間に二重三重に貼られていくガムテープ。 そして小さな手が取り出したのは……ハンマー。
……。 て、ちょ、待った! ストップストップすとーーっぷ!!
意図を察するも時既に遅し。 窓は大した音も立てずに粉砕され、開いた穴から進入した小さな手が、鍵をかちゃりと開けた。

「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん! スーパーセクシー魔法少女・エーリカちゃんでーーーす!!」
「使い魔のバルクホルンだ。 怪しい者ではない。 安心してくつろいでくれ。」
「くつろげるかーーーー!!!!」
恐るべき手際の良さで不審者2名が侵入してきた。 ちょっとねぇ神様! 私は良い魔女って言ったのよ!!
魔法どころか、鍵を物理的に破壊して不法侵入してくるような賊を頼んだ覚えはこれっぽっちも無いわよ!!!
108本当に酷いグリム童話 3/8:2008/12/16(火) 23:49:07 ID:tXRtmzNg
「ちちち。 おねぇさん、そんな態度を取っちゃっていいのかな。 舞踏会に行きたいんでしょ? 知ってるよー。」
え! なぜその事を知ってるのだろう。 まさか本当に魔女? 言われてみればルックスからしてそれっぽいわ。
とんがり帽子。 黒マント。 ファンシーなステッキ。 丸出しのぱんつ。 魔女以外の何者でも……。

「て、ちょ、ちょっと、あなた! 何やってるのよ!! 下着が丸見えじゃない!!!」
思わず恥ずかしさを感じて、慌てふためく私。 すらりと伸びた少女の足は驚くほど美しくて、こちらの方が照れてしまう。

「ぱんつじゃないよ、ズボンだよ? どこにも問題ありません。 どうでしょう、使い魔のトゥルーデさん。」
「うむ。 空力学的見地から言っても何ら問題ない。」
「問題あるわよ!!! 人として!!!!!」
隣に佇む少女を見ると、こちらは上が軍服、下は勿論ぱんつ一丁。 どういう感性ならそんな服装になるのよ!!!

……でも、物は考えようだわ。 こんなに愛らしい女の子がこんなに陰気な服装。 しかもぱんつ丸出し。
どう考えても一般人では有り得ないじゃないの。 どうせこのままだったら美緒さまと会う事なんて出来ないんだわ。
そうよ。 このままだと私、一生いびられっぱなしよ。 人生なんて伸るか反るか。 この変態たちにフルベットしてやるわよ!!
おーっほっほっほっ!! 何かが吹っ切れてしまった私は、半ばヤケっパチで大笑いしたのだった。 すっきり!

「なんかこの人アブないねー。 やだなー。」
「長い忍従生活で自律神経に損傷を負っているのだ。 酷い事を言ってはいかん。」
「あんたの方が酷いわよ!!」
全然すっきりしなかった。 うぅ、叫びすぎて喉が……。 駄目よミーデレラ。 貴女の一番の売りはその美声じゃないの。
こんな理由でガレてしまったら、死んでも死にきれないわ!

「さて、まずはお城に行かなくちゃ。 とくと魔法をごろうじろ! ここに一つの立派なカボチャ。 トゥルーデ! やっちゃって!」
「任せろ!!」
ぐわし! 使い魔の少女がカボチャをおもむろに掴む。 その体から神秘的な光が立ちのぼり、私は息を呑んだ。 本当に魔女なんだわ。
緊張してカボチャを見守る私。 使い魔の少女の顔に汗が滲む。 空気は張り詰めて、時計の秒針がうるさいくらい。

「ぬぐぐぐぐ……ぉぉおおおおおりゃああああぁぁ!!!!!」
バゴァ!! 瞬間。 カボチャは物凄い音を立てて真っ二つに引き裂かれた。 うわっ! 凄い!! 凄すぎるわ!!!
まさか、あのべらぼうに堅いカボチャを素手で引き裂くなんて!! とても人間業とは思えないわ!!!!

満足そうな使い魔の少女。 魔法少女の方も嬉しそうだ。 二人がニコニコしたまま、柔らかな時間が過ぎていく。 ……約10分。

「…………あの。 ……………………で?」
109本当に酷いグリム童話 4/8:2008/12/16(火) 23:49:57 ID:tXRtmzNg
ぜひゅー。 ぜひゅー。 くおぉぉ……。 死にそうなほど脇腹が痛い。
結局奴らは何の役にも立たず、私は自分の足で舞踏会場までスーパーダッシュする羽目になった。
城まで片道20キロを1時間で走破した自分を真剣に褒めてあげたい。 人間死ぬ気になればなんでもできるのね……。

全身から汗が滝のように噴き出し、肋骨とアキレス腱の苦痛が耐え難いレベルに達している。
でも、休んでる暇なんて無いわ。 舞踏会はもう始まっているんだもの。 自分の境遇を嘆いていただけの弱い私はもういない。
辛い時こそ、苦しい時こそ、勇気を出して進んでみせる。 そう決めたんだから! 待っててね、美緒さま……。

見上げれば、眩いばかりの輝き。 想像の中にしかなかった王宮が、そこにあった。 なんて美しいの。
夜を彩る色とりどりの光はまるで星屑を散りばめたみたい。 ここに美緒さまがいる。 それだけで疲れきった体に力が戻ってくる。
瀕死の体に鞭打って、再び王宮の門を目指し走り出す私。 もぎゅっ!? 突如、みぞおちに炸裂する凄まじい衝撃。

「そ、そこの怪しい方、待ってくださーい! その汚れきった格好で王宮に入る事まかりなりませんー!」
「芳佳ちゃんの言う通りです! こ、こんな強烈なニオイの人を通したら、私たち即日解雇間違いなしです〜!」
くおぉぉ……。 死にそうなほど水月が痛い。 どうやら門番の小娘が、鉄槍の柄を叩き込んでくれたようだ。
死んだらどうするのよ! 私は超合金で出来てるわけじゃないのよ!! 最近みんなそこを忘れがちじゃないかしら!!!

「おねぇさん、おねぇさん。 その格好じゃダンスなんて無理だよー。 ほら、こっちこっち。」
「急げ。 ここから先は電撃戦だ。 一分一秒を惜しむべきだ。」
! 私を呼ぶ声に振り返ってみると。 うそぉー! なんと自称魔女とその使い魔が私を手招きしている。
えっ、えっ。 20キロはあったのよ。 私瀕死になったのよ。 この子たち、息一つ切らしてない! これが魔女の実力なの……?

「そうです魔法です。 こう、スーパーセクシーポーズで、そこのタクシー止まれー!ってね。」
「チャームの魔法だ。 経費で頼む。」
「タクシーかよ!!!」
使い魔の押し付けてきた領収書をはたき落とす。 残り少ない体力をノリツッコミに使わせないで! お願いだから!!

「むにゃむにゃむー……スー・スー・スルノ!!」
「きゃあ!!」
魔法少女が呪文を唱えると、私は突然光に包まれた。 な、何? 何なの!? ひょっとして……私に魔法を?
眩しさに目を閉じていた私は、目を開いた時に自分の装いが全く変わっているのに気がついた。 胸がときめく。 これが私……?

鼻腔をくすぐる花の香り。 ふんわりした草色のドレスはライトを受けて虹のようにその彩りを変え、それ自体が宝石のよう。
髪はアップにまとめられ、瀟洒な髪飾りで結われている。 少し思い切って開いた胸元には、私の瞳の色と同じ大きなレッドベリル。
下半身はさらに思い切って完全露出しており、フリルの沢山付いた純白のぱんつからはスラリとした両足が……。
110本当に酷いグリム童話 5/8:2008/12/16(火) 23:50:47 ID:tXRtmzNg
「きゃあああ!? だからなんで下着が丸見えなの!!!?
 あなたたちのセンスおかしいわよ! こんなんじゃ美緒さまに会う前に捕まっちゃうでしょ!!」
思わず真っ赤になってしゃがみこむ。 これじゃただの変態じゃないの!

「そのズボンが魔力の源なんだよー。 魔法で誰もおかしいとは思わないから大丈夫だって。」
「急いだ方がいい。 そのズボンには時間制限がある。 今、既に夜の22:00を回っている。 一刻の猶予もならん。」
「だからなんでズボンって言い張るのよ!! どう見てもぱんつでしょ!!!!」
なんとかこの羞恥心を理解してほしくって叫びながら、はたと気付く。 え? 時間制限?

「じ、時間制限があるの? それって……00:00を回ったら魔法が切れるとかそういうの?」
「うん。 正確には22:13に切れます。」
「短 か す ぎ る で し ょ !!! ぶっとばすわよ!!!」
「つべこべ言わずに走れ! 言っておくが魔法が切れたら、お前は牛乳を拭いた雑巾のような姿に逆戻りだ。 忘れるな!」
誰が雑巾よ!! 今日は走ってばかりじゃないの! それでも走らずにはいられない。
さっき私を押しとどめた門番の前を全力で駆け抜けて、遂に私は舞踏会場へと辿り着いた。
今何分だろう。 美緒さまはどこだろう。 一目見られればいいって思ってたけど。 それは嘘じゃないけれど。
やっぱり、逢いたい。 逢ってお話したい。

「きゃあ! この人スカート履いてない! 痴女よ!」
「そ、そこの変態さーん! 勝手に門を通り過ぎないでくださーい! 私がクビになったらどうするんですかぁ!」
…………。 美緒さまを探していると、私を中心に不愉快な騒ぎが広がった。
みんな腫れ物でも見るような目で私を見ているわ。 うふ。 うふふ。 …………。
くぉら魔女! どこが大丈夫なのよ! 痴女とか言われてるわよ!! もう明日から生きていけないじゃないの!!!

「どうした。 何があった?」
えっ。 私の心にストンと響く声。 涙目になった私の前につかつかと現れたのは、紛れもなく。

「マロニー卿!」
「誰 よ あ ん た !!!!!!!!!!!!」
思わずおっさんの顔に右ストレートを叩き込んでしまった。 吹っ飛ぶおっさん。
なんて気に入らない顔をしているんだろう。 まるで以前にも迷惑をかけられた事があるかのような……。
そもそもこのタイミングなら美緒さまでしょ普通! 私にはフェイントかけられてる時間なんて無いのよ!

「わっはっはっ! マロニーをはたき倒したか! なかなか痛快な奴だな! 変態くん!」
そう言って私の手を取った人は。 あぁ。 今度こそ心臓がどきんと高鳴る。 美緒、さま。
111本当に酷いグリム童話 6/8:2008/12/16(火) 23:51:36 ID:tXRtmzNg
「どういった理由かは知らないが。 そんなに薄着では心許なかろう。 これでも羽織ってくれ。」
「あ……。 美緒さま……。 ありがとう、ございます……。」
美緒さまが上着を脱いで私にかけてくださった。 それだけで、周りの雑音は気にならなくなった。

「わ、私、どうしても美緒さまにお目にかかりたくて……それで。」
「ふふ。 すました良家のご令嬢ばかりかと思っていたが。 中々どうして、マロニーをやっつけた鉄拳は見物だった!
 たおやかにして剛毅。 いや見事! やはり女は強くなくてはいかん! わっはっはっ!」
あぁ、なんて素敵な笑顔なのかしら。 そんなに見つめられたら、私……。

「このような格好でお騒がせして申し訳ございません。 ……軽蔑、なさいますよね。」
「ふふ。 変質者ならこの手で叩き出そうと思っていた。 だが、その目を見てしまってはな。
 日頃から己を削って他人に優しくしている。 そういう人間の目だ。 何かやむにやまれぬ事情があるのだろう?」
なんて優しい言葉なんだろう。 この方こそ、そういう目をしている。 優しく、そして強い光。
私の人生で初めて見る輝き。 もう美緒さま以外目に入らない。 そう、あと60秒なんてカンニングボードも…………。

「あと60秒ですってーーー!!!?」
「うわ! な、何がだ!?」
美緒さまの後方に例の魔法少女。 彼女が掲げたボードには、魔法の効力が残り60秒である事がはっきりと書かれていた。
それが解けたら私は、みじめな女中に逆戻り。 耐えられない。 その姿を見られるのだけは耐えられない。
こうして美緒さまに会って、私ははっきり分かってしまった。
私と美緒さまは決して釣り合わない。 こんな素晴らしい方だからこそ。 私のエゴや苦痛を押し付けてはいけないんだ。

「美緒さま。 私はもう行かなくてはなりません。 お目にかかれて……幸せでした。」
「あっ! 待ってくれ! せめて名前だけでも……!」
むりやり美緒さまの腕から離れた私に、体勢を崩しながらも美緒さまが追いすがる。
ぎゅっ。 はらり。 ……えっ。 この感覚。 走る足を止めないでもはっきり分かる。 これ……。

「言うまでもなく分かっていると思うが。 ズボンが奪られた。 今お前は下に何も履いていない状態だ。」
「サイド紐だったからねー。 まー上着でぎりぎり見えないから大丈夫だよ。 どう? スースーする?」
「えぇ、スースーするわよ! 紐なんて生まれて初めて履いたんだから!! アグレッシブな娘だって誤解されたらどうするのよ!!」

すっかり馴染んだ二人と並走しながら、もう泣き笑いしかできない私。
一生覚えていたい夜に、なんで一刻も早く忘れたい出来事ばかり起こるのだろう。
でも。 幸せだったわ。 あの方は思った通りの。 いえ、思った以上の方だった。 それだけで。
その思い出だけで、これからの人生も、強く生きていける。 涙を飲み込むように、美緒さまの上着をぎゅっと握り締める。
さよなら。 さよなら美緒さま……。
112本当に酷いグリム童話 7/8:2008/12/16(火) 23:52:36 ID:tXRtmzNg
あれから一週間が経った。 強く生きていけるだなんて、まるっきりの思い込みで。 私は空虚な抜け殻として生きていた。
目が醒めればまだ日も昇らない時間。 だからどうしたって言うの? 美緒さまがいない。 もう昼も夜も同じようなものだわ。

溜息をついて居間に行くと、エイラお義姉さまが朝刊を読んでいた。 相変わらず何の悩みも無さそうな顔をしている。
人が目覚める時に眠り、人が寝る時間に起きるのがこの人のスタイルだ。

「おはようミーデレラ。 聞いたカ? 坂本殿下が舞踏会で出会った貴婦人を探してるらしいんダナ。 なんでも名前さえ不明。
 舞踏会場に残していった下着から、紐の下着を好むという事だけ分かってるらしいゾ。 相当アグレッシブな娘なんダナ。」
えっ。 突然の知らせに、眠っていた頭が動き始める。 やっぱりアグレッシブだと思われてるじゃないの!!
……いえいえ。 そんな事は今は重要じゃないわ。 殿下が。 探している。 私を!

「かれこれ一週間も夜通し探してるけど、一向に下着の持ち主が見つからないらしいんダナ。 そろそろこの辺りにも探しに来るかもナ。」
「よ、夜通し? こんな事言うのはなんですけれど。 下着なんて誰でも履けるんじゃ……。 その、紐なら特に。」
「履くだけなら誰でも出来るだろうケド。 誰も他人が残していった下着なんて履きたくないんダナ。」
「…………それもそうですね。」
つまり。 よほどプライドの無い人でも現れない限り、それを履けるのは本人のみ。 これって。 これって!

「もっしもーし! 朝早くにごめーん! お城からの使いだよー! ぱんつ履いてもらえませんかー? うじゅ!」
「騒がしいですわ! 何時だと思ってますの! まったく……こんな朝早くになんですの?」
来た! 来た来た来た! 人生大逆転チャンス来ちゃったーー!! 心の底から喜びがこみ上げる。
夜通しという言葉に偽りなく。 こんな時間に奇跡はやってきたのだ。

「え? 何? この下着を履けですって? 今履いているものを脱いで!? 意味が分かりませんわ! 警察を呼びますわよ!!」
玄関でお義母さまが押し問答しているのが聞こえる。 それを聞いている間も、私はもうヤキモキして仕方がない。
あぁもう! じれったい! お義母さまに分からなくても私には分かるんです! さっさとその人をこちらに通してください!

「え? 何? 坂本殿下たってのお達し? うーん……そういう事なら仕方ないですけど。 ……あら。 ぴったりですわね。」
しーん。 唐突に静まり返る玄関。 …………え? え? …………ぴったり? …………。 …………何が???
猛烈な不安に襲われて窓から外を窺う。 そこには、今まさに褐色の少女に手を引かれて馬車に乗せられるお義母さまが見えた。

!!! ちょ!!!!!!!!!!!!!!

「ちょっと、違う! 違うわ!! その人じゃないの! 私なのよ! 待って! 待てったら待ちなさいよ!! ストォォーーッップ!!!」
大絶叫するも時遅し。 馬車はまたたく間に砂埃を上げて走り去った。
ひゅううう……。 朝の暗がりは静寂を取り戻し。 後には呆然とする私だけが残された。
113本当に酷いグリム童話 8/8:2008/12/16(火) 23:53:33 ID:tXRtmzNg
「あーあ、行っちゃった。 おねぇさん、本当にツいてない人だねー。」
どれくらいその場に佇んでいたのだろう。 気が付けば地平線に太陽が顔を出し始めている。
私の背中側から、一週間ぶりに聞くその声は、なぜだかとても懐かしかった。

「で。 どうする? また魔法を使ってやろうか? ミーデレラ。」
もちろん彼女たちは二人で一セット。 顔は見えないけれど。 もう一人の少女も揃っていた事に、不思議な安心感を覚える。
そして。 こうしてまた、彼女たちに出会って。 私も思い出した事があった。

「いいえ。 もう魔法は結構よ。 思い出したくもないわ。」
くるりと向き直って、二人に向かって不敵に笑う。 相変わらずぱんつが丸見えだ。 でも、今はそれすら好ましい。
そうだ。 忘れていた。 あの時の私を。 自分の手で運命を切り開くと決めていた私を。 何者にも屈しないと決めた私を。

「城まで片道20キロ。 つまり。 たった60分程度の時間さえあれば。 いつでも美緒さまに会いに行けるって事よね。」
そう言って屈伸を始める私。 あぁ、なんという高揚だろう。 くすぶっていた心の中に火が点いた。
そうだ。 どうしてこの感じを忘れていたりしたんだろう。
私の人生で、間違いなく最高に酷かったあの日。 けれども。 私の人生で、間違いなく最高に燃えていたあの日。

「20キロか……ウォーミングアップには丁度いいな。 貴様ら。 私の足についてこれなくても泣くなよ?」
使い魔の少女がふんと鼻を鳴らし、肩をねじ込みながら股割りを開始する。
あら。 この私を相手にやる気なのかしら? ふふ。 舐められたものね。

「あれあれ? ひょっとして私に勝てるとか思っちゃってる? やだねー。 勘違いを分からせてあげないといけないなー。」
アキレス腱を伸ばしながらニヤリと笑う魔法少女。 泰然と笑い返す私。
アドレナリンが止まらない。 上等だわ。 私の前を走ろうとする者は、何びとだろうと地べたに這うのみ。

コケコッコー。 何も知らないニワトリが一日の始まりを告げる。
その声を皮切りに、私たちは朝日の差し込む中、三人横並びに全速力で走り出した。

                             めでたしめでたし
114名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 23:59:48 ID:egFNKvoT
>>92
爺様乙!
バルさんがいいとこ見せてくれると信じて最後待ってるっす。

>>103
仕事早すぎだ!! 宮藤天然妹ワロタw

>>113
本当に酷いなwwwww
ミーデレラだけで噴くのにどこまで笑わせれば気がすむんだw 隙がないw
ラストのミーナがかっこよすぎると思っちゃったよマジGJ!!

記憶喪失、エーゲルなら何とかできるかも……試してようかな
115名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 00:02:11 ID:0zL9ah3f
ホント投下数がw
皆さんGJ!

mxTTnzhm氏がもうやったけど12時過ぎたら
私も芳佳×リーネの記憶喪失ネタ投下します
被ってたらごめんなさい
116名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 00:23:51 ID:+4O4YgqG
12時過ぎたらと言った時にすでに12時過ぎてた
ということで記憶喪失ネタです
芳佳とリーネ
とりあえず長くなりそうなので前半投下

---------------------------------------------------------------

慣れはじめが一番怖い
たしかバルクホルン大尉に言われた気がする
それは私が501部隊に配属されて少し立った頃だった
その時にはもう初戦果も上げられたし、リーネちゃんとのコンビネーションもばっちりだった。

自信
そうその頃には多少の自信は付いていた
いつまでも半人前じゃない
もう私だって立派に戦える。
そんな気持ちをその当時の私は持っていたんだと思う。

117名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 00:24:23 ID:+4O4YgqG

episode-1-



警報
最近はネウロイの襲撃頻度が不規則だと坂本さんが言っていた。
実は昨日の夜にもネウロイの襲撃が有ったのだ。
さいわい夜間哨戒中のサーニャちゃんとエイラさんが発見し迎撃
その間にバルクホルン大尉とハルトマン中尉にペリーヌさんが増援に行き戦闘は終了した。
問題は思った以上に戦闘が長引き出撃した隊員の魔力がかなり消費してしまったことだった。

「敵は小型、速度は早いけど攻撃力は低いはずよ、坂本少佐、リーネさん、宮藤さん、気をつけて」
「「「了解」」」

シャーリーさんルッキーニさんミーナ隊長は基地に残った。
確かに連日での襲撃は不安だったが、この3人なら負けるはずは無いと思っていた。
ハンガーに行き、ストライカーを装着する手になじんだ銃の感触が頼もしい。

「宮藤とリーネお前達が敵を引きつけて置いてくれ、その間に私は敵のコアを探す」
「「了解」」

報告の通り敵はそこまで大きくは無かった、若干速度が速いがついて行けないほどじゃない。

「私が先行するかリーネちゃん援護頼むね」
「うん」

とりあえず坂本さんがコアを発見するまでの間敵の攻撃を引きつけていればいい
ネウロイの攻撃を避けたりシールドを使って防ぎつつ攻撃し敵の装甲を削っていく。
思ったと通り敵の装甲は薄いし脆い。
コア発見後リーネちゃんの一発でコアを撃ち抜く予定だったけど、この程度なら私でも大丈夫かな?
そんな事を考えていると坂本少佐から通信が入った

「コア発見、敵の一番後ろだ、宮藤はそのまま敵の後ろに張り付き装甲を削れ。コアが露出したら離脱してリーネが決めろ」

コアが露出したのはタイミング的には通信が入った瞬間だった。
もうこのまま私がコア破壊しちゃっても良いかな?
幸い敵の装甲は脆い、ボーイズじゃなくても大丈夫はずだ
そう考え照準を合わせる
118名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 00:25:21 ID:+4O4YgqG
やれる!
そう確信して引き金を引いた。
弾はコアを撃ち抜きネウロイは撃墜
戦闘は終了――のはずだった


「――――っ」

消えた!
ほんの一瞬前まで前にいたネウロイが一瞬のうちに消えた。

「えっ?」

思わず呆然とした。こんな事が有るのか?
確かにさっきまで居た、後はコアを撃ち抜くだけだったのに・・・
戦闘中だというのに完全に油断をしてしまった

「後ろだ−!宮藤ー!」

通信機から坂本少佐の声が聞こえる
えっ?後ろ?
そんなさっきまで前にいたのに・・・・
振り返ると確かにネウロイが居た
えっ?透けてる・・・
状況について行けずそんな間抜けな事しか頭になかった。

油断
紛れもなく油断だった
だから敵からビームが発射されそうなのを見ても
あっステルスかといまさら気づくことしかできなかった

目の前が赤く染まる
シールド!――無理――間に合わない
直撃!――やられる!
そう考えた時だった

ドン!
誰かが私を突き飛ばした

「芳佳ちゃん!」

さっきまで私が居た場所にリーネちゃんが居た

目が合う
ほんの一瞬だった
リーネちゃんは安堵したような優しい笑みを私に向けた
私が大好きなリーネちゃんの顔

リーネちゃんそこは危ない!

そう言おうとしたが声が出なかった
119名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 00:25:51 ID:+4O4YgqG

まるでコマ送りのようだった
リーネちゃんが一瞬でシールドを展開し
敵がリーネちゃんに向かって一斉にビームを撃った
ほんの一瞬持ちこたえたが破られ
リーネちゃんをビームが包んだ

私はただその成り行きを動くことも出来ずぼーぜんとしていた
リーネちゃんの銃が、ストライカーが破壊される
煙の中からふらりと海に落ちていく‘なにか‘


「あっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

ようやく頭が動き出した
リーネちゃん!リーネちゃん!
私を庇った?
そんな!

なんとか海面に叩きつけられるまでにはリーネちゃんを確保できた
私の・・・私のせいだ!
急いで怪我の状況を確認する
とになく治療を・・・

「――え?」

手を見ると何かが付着していた。
私の手についた、べっとりとこびりついた、赤い何か。
それに隠されてリーネちゃんの顔がよく見えない

「・・ゴッホ」

咳き込み、その口から溢れだす、真っ赤な赤。

赤?赤赤――――血?

リーネちゃんが真っ赤だ・・・

「―――ッ!!!」

真っ赤だったリーネちゃん自身の血で
-死-
その言葉が頭をかすめた

「リーネちゃん!リーネちゃん!」

必死に呼びかけるがピクリとも反応しない
相変わらず流を血し続けるリーネちゃんを抱きしめ
すっかりパニックに陥ってしまった私はただただ叫ぶしか出来なかった。
120名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 00:26:22 ID:+4O4YgqG
連投規制にかかる事は無いと思いますけど
一端ここまで
続きは朝に投下します
ステルスとかうんぬんはネウロイの技術ならなんとかしてくれると思う。
戦闘描写は苦手です・・・・
思った以上に長くなりそうです。
あんまりにも暗くて駄目そうだったらtxtでupします
大抵記憶が戻るので、たまにはそのままでもいいかな?

ということでeIqG1vxHTMでした
121名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 00:49:37 ID:ayKW1FMj
>>120
乙です!
こっちはリーネちゃんの方が記憶喪失になるっぽいですね
続き期待しております
122名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 01:01:44 ID:MEE1vN6u
>>120
乙です〜
自分の身の危険より、芳佳を守れたことに
安堵するリーネちゃんの優しさに惚れて泣いた…
123名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 01:02:51 ID:nWlsmXAY
>>120
乙。
朝を楽しみにしてます。
124名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 01:07:27 ID:cRsWzubO
>>113
ちょ、すげぇおもしろかった!!!まじでGJ!!
こうゆうノリ大好きだー!!個性的すぎるww!!!
おもしろおかしく台詞回し出来る人は凄いと思うよマジで!!
125名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 02:12:17 ID:+LoT8qmg
なんか投下すごすぎてぼんやり話かいてる場合じゃなくなってきた

>>75>>83
幸せの方程式続きキタ!影が薄いなんてとんでもない、スオムス同志を忘れるわけがない
3人の配置がすごくうまいなあw三人とも可愛い可愛い
えいらにゃもにやにや読ませていただいた。いいなあ、可愛いなあ
>>113
ミーデレラでもっミーナか!?と思ったら裏切られた!もちろんいい意味でw
こういう勢い任せのギャグ話って大好きだ、GJ!

あと、埋めネタとかにレス下さった方々どうもありがとうございました
読み返したらスオムス人ほんとふしだらでした。
あれについてはもう、いろいろとごめんなさいとしかいいようがない
自分で整理してみた相関図ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1731.png
1261/3:2008/12/17(水) 02:15:29 ID:+LoT8qmg
21X2w2Ibですこんばんは。エルマとウルスラ的ないらん子話投下
―――

「こうしてみてるとあなたたち、姉妹みたいよね」

宿舎でぼんやりと自分のベッドに座りながらこちらのほうを見ていたトモコの唐突なつぶやきに、エルマは
え?と声を上げた。そして思わず尋ね返す。
「誰と、誰がです?」
「そんなの決まってるじゃない、あなた──エルマと、そこのウルスラよ」

さしてたいしたことでもない、と言った様相でトモコは答えた。いつも周りを付いて回っているハルカとジュゼッ
ピーナは珍しくそこにおらず、扶桑からわざわざ取り寄せたのだという扶桑茶を自前の湯のみですすって
いる。もう寝る前だからどこかに括りつけてきたのだろうか、肩の荷がなくてせいせいするわ、と言った口ぶり
の割にはどこか寂しそうなのだからエルマには少しおかしい。──自分の所属する部隊の隊長が、自分の
最も恐れる『女の子ずきーの変態』であろうとも、そしてその部隊の半数近くが『ガチ』にそうであろうとも、
仲良いことは美しい。みんな仲良し、がキャッチフレーズである彼女にとってそれはある意味幸福でも
あった。なにしろ、初期のこの『いらん子中隊』といえば各国のはみ出し者─もちろんエルマ自身もそう
なのであると自覚している─の寄せ集めで、団結する気配など欠片もなかったのだから。

ところで、『そこの』と指されたウルスラはというと、エルマの下で黙々と、今日とて本を呼んでいる。エルマに
は全く理解出来ないカールスラント語の連なりには所々赤く線が弾いてあり、付箋がびっしりと挟まって
いた。図表を見やるに何かの実験書であるらしいがそんな知識などからきしのエルマには何が描いてある
のだかさっぱり分からない。
そんなウルスラの読書を邪魔しないように、エルマは彼女の濡れた頭をタオルで拭いてやっていた。当初は
子供じゃないんだから自分でやると言って(正確には「いい」の一言であったけれども)聞かなかったウル
スラだったが、それんなことを気にするはずのないキャサリンが「そんなこといわずに、やってあげるねー」
とぐしゃぐしゃにかき回して、それを嫌がったウルスラが「エルマのほうがいい」と進言し、いつのまにかエルマ
がその役目を担うようになっていた。ちなみにそのキャサリンはというと、本を読むウルスラの隣で羨ましそう
にエルマを見上げている。

「同じ金髪だし、歳もいくつか離れてるし…こうみてると本当の姉妹みたいよね」
「それはミーもよく思うね」
「…金髪って、ウルスラさんのほうが私のより濃いですよ?」
「そんなの私から見たらどっちも同じよ、同じ。ビューリングとジュゼッピーナもおんなじグレーに見えるわ」
「…それは大きな違いだと思うねー」

今この場にはいない二人を引き合いに出しながら、トモコは言う。けれど実物を見なくても、彼女ら二人の
髪の色が全く違うことくらい一目瞭然であって。
恐らくスオムスやリベリオンと比べて髪の色や肌の色が多岐にわたっていないのが原因なのだろう。エルマ
とキャサリンは肩をすくめて笑いあう。

「それなら、私とハルカだって同じ黒でも違う色をしてるんだからね。…わからないでしょ?」
「はあ、たしかに…」
「だから、同じよ、同じ!細かいところは四捨五入しなさい。エルマはいちいち気にしすぎなところがあるから」
「そうねー、ミーを見習うねー!」
「キャサリン、あんたはそもそも切り捨てする桁がおかしすぎるのよ」
「トモコー、細かいこと気にするのはよくないねー」

1272/3:2008/12/17(水) 02:15:59 ID:+LoT8qmg
気にしない気にしない、と繰り返すキャサリンに、気にするわよ!と反するトモコ。一見言い争いのように
思えるこんな掛け合いにも、エルマはもうびくついたりしない。楽観的なキャサリンと責任感の強いトモコと
の会話は、関係は、こうして成立するのが一番いいのだ、と知っているからだった。
ふふふ、と満足げな笑みを浮かべて、エルマは再びウルスラの髪の毛を拭いてやる作業に戻ることにする。
タオルの端から覗く、もう乾いた金色の毛先がストーブの熱風に揺れている。その風にページがめくれるの
を少しうっとおしそうにしながらも、ウルスラは微動だにせずにそこにいた。

(姉妹みたいよね)

先ほどの、トモコの何気ない発言を心の中で繰り返す。胸の中で反芻する。視界の端に映る、自分の色素
の薄い金。それと、似ているけれども違うものを、すぐ下にいる年下の少女も持っている。
髪の毛の色が似通っているからといって『姉妹』だなんて言うのは多少強引かもしれないけれど、エルマは
自分の胸の中に何だか温かなものが流れ込んできているのを感じていた。姉妹、と言うことはたぶん、自分
が姉で、ウルスラが妹だということだ。姉、というのは頼られる立場だ。妹を守るのが役目だ。──かつて、
自分の所属していた中隊の隊長が語っていた言葉を思い出す。彼女はやっていることはいわゆる『変態』で
はあるが、もともと心根はとてもとても優しくて、立派な人だということを、エルマはちゃんと知っていた。
…『いもうとになりなさい』といわれてされた行為が恐ろしくて、それから彼女にまともに近づくことさえ出来なく
なってしまったけれど。

ウルスラは自分とロッテを組むことがよくある。としたら、彼女を守ってやらなければいけないのは自分だ。
自分の後ろをついて飛ぶウルスラを、自分が守るのだ。
そこに、エルマは自分の存在意義を見た。役立たずだ、落ちこぼれだと言われ続けてきた自分。何をやって
も臆病さが先に立って上手くこなせなかった自分。そんな自分にも、しなければいけないことがある。トモコの
言葉は全くの無意味で、含むところなど何もなかったのかもしれない。けれどエルマは嬉しかった。『ウルスラ
を守る』という、役目を与えられた気がしたから。

「…エルマ、中尉」
「は、はいっ」

唐突に離しかけられて飛び上がる。傍らではまだキャサリンとトモコが言い合いをしていて、いつの間にか
部屋に戻ってきていたビューリングが微かにうんざりした顔を見せている。にこ、と笑いかけたら微かに
笑みを返してくれた気がしたので、エルマはそれで満足した。

「なんでしょうか、ウルスラさん」
「…もういい」
「へ?」
「乾いた」
「え、あ、ああ…そうですね…」

タオルを持ち上げて頭に触れると、湿り気を帯びたタオルの代わりにウルスラの髪はすっかり乾いていた。
これ以上かき回しても髪が痛むだけだ。少し寂しい思いになりながら、エルマは「おしまいです」といつもの
ように囁く。ウルスラもいつものように微かに頷いて、そして本に目を戻す──はずだった。
1283/3:2008/12/17(水) 02:16:30 ID:+LoT8qmg
違ったのは、直後にぱたん、と何かを閉じる音がしたところからだった。どうしたことか、と確かめるまでも
ない。ウルスラが分厚い実験書を、まだ途中だというのに閉じた音だ。そして本を傍らにおいて、ベッドの
端に座り込んだウルスラの、そのすぐ後ろで膝立ちになっているエルマに突然向き直る。自分とは少し違う
金色が、自分とは全く違う青色が、エルマのすぐ下にあってエルマはつい飛びのきそうになったけれど、
すぐに、頭に両手を伸ばされて押しとどめられてしまった。

「え、え、え?」
「…まだ、髪、濡れてるから」

気が付けばエルマの手の中にあったはずのタオルはその頭の上にあり、ウルスラが下から背の高いエルマ
に抱きつくようにして手を伸ばして、懸命に動かしているのだった。

「あの、」
「座って。届かない。」
「は、はい…」

ぺたり、とベッドの上に座り込むと、今度はウルスラが膝立ちになってエルマの頭を拭き始めた。なぜか
とても慣れた手つきで、優しくエルマの淡い金色の水分を拭い去っていく。

あー!と、声を上げたのはキャサリンだった。ずるい、ずるいと叫んで、「うるさい」とウルスラにたしなめ
られてしゅんとしている。「わ、わ、きゃああああ」と言う悲鳴が響いたと思ったら、トモコのベッドで3つの山が
もぞもぞと動いていた。ビューリングは付き合っていられないとばかりにもうベッドの中。寒いのだろうか、
丸まっているのはきっと使い魔を抱え込んでいるのだろう。彼女はあれで存外に可愛らしいところがある。

うん、今日もみんな仲良し。
どこか場違いな感想を素直に抱いてエルマは思わず笑みをこぼした。いつもと違うのは、自分の頭を懸命に
拭くウルスラが目の前にいること。慣れないはずのその動作がどうしてか妙に懐かしい。そう言えば昔、
自分もアホネンにこんなことをしてもらったことがあった。あの頃まだ第一中隊はあんな雰囲気ではなかった
けれど。

「もー!こうなったら実力行使ね!」

キャサリンが叫んだと思ったら、次の瞬間エルマはウルスラごとベッドに押し倒されていた。狭いベッドの
中に三人、ウルスラを挟んで収まる。温かいねー、などとのんきなことを言っているキャサリンに「びっくり
したじゃないですか」と文句を言おうと思ったけれど、ばさりと毛布を掛けられてそのまま寝るていになって
しまったのでタイミングを逸してしまった。けらけらと明るい彼女の笑い声を聞いているとすべてどうでも
良くなってきてしまうのだから不思議だ。だって同じ金色なのだ。色合いの微妙な違いなんて、そんなの
瑣末な問題だ。だから自分は、もっともっとウルスラを可愛がってみてもいいのだ。

作業を中断させられて不満だったのか、微かに口を尖らせているウルスラの頭を撫でたら、キャサリンも
負けじとその頭を撫でる。
何だかおかしくてふふふと笑いながら、自分の体よりもずっと温かいような気がする同じ毛の色をした
「いもうと」に身を寄せて、エルマは眠ることにした。

―――
以上です。おかしいな、キャサリンとウルスラの話の書き直しをしていたんだけれど
仲良しわいわいないらん子話が書きたかった、エルマさんとウルスラを書きたかった それだけ
12921X2w2Ib:2008/12/17(水) 02:18:59 ID:+LoT8qmg
あ、念のために書きますと、上はキャサリンウルスラの話とは全く別個のものです
あちらも近いうちにちゃんと書き直します、申し訳ない
130名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 02:43:56 ID:OEfi7dJd
>>129
GJ!ロリコンを軽くあしらうウルスラとそれにめげないオヘアさんが好きだw
てかエルマさん既にアホネンさんに食われてたんですか…そりゃトラウマになって必死にノーマルを主張するのも仕方ない
でもきっと性別なんて関係ないよってビューリングさんが気づかせてくれるはずだ…!

平日なのに今日は投下多いなみんなGJ!そして>>113酷すぎるwwwww久々に吹いたw
131名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 02:47:18 ID:LpjAtKFn
エルマさん状態!
132名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 03:04:08 ID:7PBkp0MQ
>>129
GJ!!!すごい和んだよ、いらん子はいいキャラ多いなぁ
もう一つのも楽しみにまってる!!!



なんか昨日各キャラが記憶喪失になったらどうなるだろ? みたいなの考えてこのスレきたらちょうどはやってた…どうやら百合スレ脳になってきたみたいだ

記憶喪失はギャグでいくならハルトマンあたりがすごい掻き乱しそうな気がするw記憶失った宮藤に 宮藤とゲルトが姉妹とか吹き込んだりとかさw
133名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 03:13:48 ID:Wx80CiF8
そろそろビューリング×智子が出てきてもいいはずだ
134名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 05:17:12 ID:p0oIvJji
その辺は本編でやりかねんからなあ
しかもここより濃いのを
135名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 07:16:00 ID:1i6Lopf7
朝だー!
起きたらまた投下されてる乙
136名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 07:58:59 ID:+4O4YgqG
>>129

あなたの作品は良い物ばかりだ

ほんとノンストップで投下されてるなこのスレ

といわけで朝になったので>>119の続き
これで前半終了です。
なんだかぐたぐた長くなってしまった。
タイトルはまだ未定
そのうち考えます
137名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 07:59:50 ID:+4O4YgqG
episode-2-


あの後すぐに増援に駆けつけたミーナ隊長シャーリーさんルッキーニさんによって敵は撃墜されたらしい。
らしいと言うのはイマイチその時の記憶が私に無いからだ。
聞いた話によると私はただリーネちゃんを抱いて泣き叫んでいたらしい。
いっこうに言うことを聞かずリーネちゃんを離そうとしない私を坂本さんが気絶させたらしい。
その後すぐに隊に帰還
リーネちゃんはすぐに手術室へ運ばれたらしい。



その頃私はと言うと部屋に寝かされていた。

「―――ッ!」

目が覚めた
ここは?――私の部屋だ

ぼんやりとした頭で考える
なにが有ったんだっけ?
確かネウロイが出て・・・
出撃して・・・
私が撃とうとした敵が消えて
それで――撃たれそうになって

リーネちゃん!

ベットから飛び起きた
そうだリーネちゃんだ!
私を庇って撃たれたリーネちゃん
真っ赤に染まってピクリとも動かなくて
それで!それで?
それからどうなったんだろう?
記憶に無い
ただあの手に付いた血の感触と匂いが消えない事が夢では無いと言うことを私に教えてくれる。

全力で医務室まで駆けつけると
そこには坂本さんが居た
「さっ坂本さん!」
「あぁ宮藤か気がついたのか」
「リーネちゃんは!?」
「リネット軍曹なら今は医務室で・・っコラ!」
138名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 08:00:20 ID:+4O4YgqG

坂本さんの制止を振り切り
医務室に入る
そこにはリーネちゃんが居た
真っ白なシーツに真っ白な包帯
所々血が滲んでいるのが痛々しい

「コラ勝手に入るなと・・」
「坂本さん!リーネちゃんは!?リーネちゃんは大丈夫なんですか?」
「あぁとりあえずな・・・ただ出血が酷く怪我も酷いらしい、まだ油断できない状態だ」

私の私のせいだ・・・
あの時素直に引いていれば・・・

「とにかくお前も休め。まだ魔力の回復も」
「大丈夫です!」

そう言ってリーネちゃんに治癒魔法をかける
こんな・・・こんな酷い状態のリーネちゃんをほっといて休む?
冗談じゃないそんな事出来るわけがない
必死に魔法をかける
確かにまだ魔力は回復してないけど、なにもしないよりはマシだ
私が・・・私がリーネちゃんを――

暗転

そこでまた意識が途切れた

 ◇
139名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 08:00:59 ID:+4O4YgqG

「―ッ!」

気がつくとリーネちゃんのベットに突っ伏していた
肩には毛布が掛けてある
ふと手をみるとシーツを握りしめていた
どうやら引き離すのは無理だと考えた坂本さんが掛けてくれたらしい
ありがたい

時間はあれから6時間
すっかり寝てしまった
そのおかげで魔力はだいぶ回復した

「リーネちゃん・・・」

相変わらず意識のないリーネちゃん
どんなに治癒魔法をかけても一生このままでは?
そんな考えが頭をよぎる

駄目だ!そんなこと考えては!
必死にそんな考えを振り払うように魔法をかけた。


この後3日間私はずっと医務室に居た
治癒魔法を意識を失うまでかけ
目が覚めたらまた限界まで魔法を使う。
隊のみんなは止めさせようとしたが、私は無理にでも残った。
さすがに体が限界だと感じるが止めるわけにはいかない。
私がリーネちゃんを・・・
助けて貰ったんだ、今度は私が助けなくては

あの柔らかな笑顔をもう一度みたい
芳佳ちゃんと呼んで貰いたい
もう一度リーネちゃんと話したい・・・

そこでまた私は意識を手放した

 ◇
140名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 08:03:13 ID:+4O4YgqG

「・・ん」

目が覚めると朝だった
今日こそはリーネちゃん目を・・・

「あっ」

目がったリーネちゃんと
意識が!

「リーネちゃん!」

私は飛び起きた
やった!ついにやったんだ
リーネちゃんが目を覚ましたんだ!
抱きしめる
あぁ暖かい
リーネちゃんの匂いがする
涙がこぼれそうになる

「あっあの!」

いきなりリーネちゃんが叫んだ

「どっどうしたの?どこか痛い?」

しまった嬉しくてついつい抱きしめてしまった。
リーネちゃんはまだ重傷なのだ、私の馬鹿

「あの・・・?あなただれですか?」
「へっ?」
「そっそれにここは何処ですか?」
「こっここは501部隊の医務室で、私は芳佳・・・だよ?」

声が震える
何かの冗談でしょ?

「ごめんなさい、私何も分からなくって・・・」
「・・・・・・分からない?」
「なにも思い出せなくて・・・私誰ですか?」

記憶が―無い?
もうあの頃のリーネちゃんは居ない?
記憶が――思い出が――
ふらりと一歩下がってしまった。
真っ白なシーツと真っ白な包帯で包まれたリーネちゃんは記憶までも真っ白で
すべてが白い世界で私は意識を失った。

続く
141名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 08:03:45 ID:+4O4YgqG
ということでパート2です。
暗くてごめんなさい
続きは夜にでも投下できるかな?
オチどうしよう・・・・
こういうのは記憶が戻る方がやっぱりいいんだろうか?
悩み中です
142名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 08:42:02 ID:ayKW1FMj
>>141
おお、続き来てますね! GJです!
記憶が戻るのもいいけど、戻らないまま恋人同士まで進展するってのもありですかね
143名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 09:08:28 ID:nwtWEfp0
>>113
男坂EDのグリム童話とは斬新すぎるww

>>129
ウルスラやっぱかわいいなあーw智子さんは相変わらずだなあ・・・

記憶喪失ネタ凄いな。よく皆ネタを発展させる
144名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 09:56:29 ID:1i6Lopf7
相変わらずここの住人の妄想力は凄いな
145名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 16:36:57 ID:jevnRAcE
そのうちディソードで召喚するんだぜ
146名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 16:40:14 ID:kfJX7hyC
某有名百合漫画を読んだ。
内藤ちゃん=ミーナ隊長、思信さま=もっさん、まーや=ペリーヌに見えてきた・・・。

誰か『ストライクセクト』というネタを書いてはくれないものだろうか。
147名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 16:58:23 ID:hW+7hShj
ちょ、ストライクセクトてw
それはいらん子以上にアレな作品になっちまうw
148名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 17:59:35 ID:+4O4YgqG
皆さんこんにちは
夜の投下ラッシュの前に記憶喪失ネタの続きを投下
無題は不便なのでタイトルをつけました。
タイトルはPluralです。

>>116->>119
Plural-episode-1-
>>137->>140
Plural-episode-2-です


それで今から投下が
Plural-episode-3-です
149Plural-episode-3-:2008/12/17(水) 18:00:09 ID:+4O4YgqG
Plural-episode-3-

ミーナは悔いていた
坂本少佐からリーネさんが目を覚ましたことは聴いて正直安心した。
もちろんリーネさんが目覚めたのもあるが宮藤さんのことだ
自分の責任だと感じ毎日限界までリーネさんに治癒魔法を使っていた。
その姿は痛々しくて見るに堪えなかった。
やっとこれで二人とも元気になる・・・そう思ったのに。

記憶喪失
リーネさんは記憶が欠落した
日常会話や日々の生活で必要な知識は有るらしいが
自分がウィッチだということや、宮藤さんを含め私達のことも家族のことも覚えていないらしい。
医者によると脳震盪と出血多量で脳にダメージが行ったらしい。
幸い記憶喪失以外に後遺症が無かったのが不幸中の幸いだった。

あの時の自分の判断が間違っていたとは思わない
しかし現にこのような悲劇が起きてしまったのだ後悔せずにはいられない。
・・・・問題は山積みだが、とにかく今は隊員達のケアが大切だ。
とくに宮藤さんが心配だ

 ◇

リーネちゃんが記憶を無くした。
間違いなく私のせいだ。
私は一人ベットの上でぼーぜんとしていた

あの後また意識を失って今度目が覚めると自分の部屋だった。
目を覚ますと坂本さんがいて状況を説明してくれた。
リーネちゃんは記憶が欠落した事
私の事を覚えていない。
それどころか家族の事も覚えていたいないらしい。

私がリーネちゃんの家族からリーネちゃんを奪ったのだろうか?
みんなの記憶の中のリーネちゃんはもう居ない
奪ったのは私
後悔で胸が潰れそうだった
いっそのこと潰れてしまえばいい
そんなことばかり考えてた。
150Plural-episode-3-:2008/12/17(水) 18:00:39 ID:+4O4YgqG

ふと気がつくと夕方だった
最近の生活のせいで時間の感覚がだいぶ変になっている。
とにかくここにいては始まらない
逃げては駄目だ
立ち向かわなければ、私が犯した罪と。


 ◇


ミーティングルームにはリーネちゃんを除く全員が居た。

「宮藤さん・・・もういいの?」

ミーナ隊長が心配そうに聞いてくる
ミーナ隊長だけじゃない全員が心配そうな目で私を見てくる
そんなに私は酷い顔をしているんだろうか?

「はい・・・あのリーネちゃんは?」
「とりあえずは安定してるわ。宮藤さんの魔法のおかげだと医者は言っていたわ」

よかった。
私の魔法は無駄ではなかったんだ。

「ただ、やはり記憶は戻ってないそうよ・・・」
「・・・そうですか」

たぶん全員にその事を話をするためにここに集めたのだろう。

「あの・・・リーネちゃんに会えますか?」
「えっ・・・・意識は戻ってるけど・・・・」
「お願いです!合わせてください!」
「・・・・」

たとえどんな状態でもリーネちゃんに会いたい

「今のリネットさんは宮藤さんの事を覚えていないけどいいの?」
「はい!お願いします」
「そう・・無理しないでね」

たぶん駄目と言っても私が言うことを聞かないのが分かっていたのだろう
ミーナ隊長は許可をくれた。

「宮藤さん!」

出て行こうとした時声を掛けられた

「私達501部隊は家族よ。一人で抱え込まないでね?」

そう言うミーナ隊長の顔は真剣だった

「ありがとうございます」

本当にいい人達に囲まれている
今更ながら感謝の気持ちで一杯だった。


 ◇
151Plural-episode-3-:2008/12/17(水) 18:01:10 ID:+4O4YgqG
医務室に向かったはいいが私は医務室の前に来たが立ち止まっていた。
怖いのだ
記憶の中のリーネちゃんと今のリーネちゃん
同じだけど違う。
それに記憶を失ったのは私のせいで――

「ふぅー」

一度大きく息を吐く
よし
コンコン

「はい、どうぞ」

リーネちゃんの声だ・・・・
あの柔らかな声

「おっおじゃますます」

部屋に入るとリーネちゃんは体を起こしていた
まだ包帯を巻いているけどだいぶ顔色も良くなっている

「宮藤さん・・・ですよね?」
「あっはい」

宮藤さん
最初会った時と同じ他人行儀の呼びかた
本当に私達の関係は振り出しに戻ってしまったんだ・・・・

「ごめんなさい私気を失っなっちゃって・・・」
「いえ、もう大丈夫なんですか?」
「はい」

おかしな話だ見舞いに来た私が心配されてどうする
どうしよう何から話せばいいだろうか?
とにかくまず謝らないと思い謝罪しようとし瞬間先にリーネちゃんが口を開いた

「えっと・・その・・・ありがとう御座いました。」
「えっ?」
「ミーナさんから聞いたんです宮藤さんが私に毎日治癒魔法を使ってくれたって」
「そっそれは・・・私のせいだから・・・私が・・・ミスしなかったら・・・こんなことにはならなったのに。私はあなたに恨まれてもしかたがない・・・」
「恨むなんてとんでもない!毎日毎日限界もで魔法を使ってくださってとても感謝してるんですよ?」

感謝?
記憶を奪った私に?

「でっでも私のせいで・・・」
「記憶を失う前の私はあなたを庇って本望だったと思いますよ。だって命を懸けて守りたいほどあなたの事が大切だったんですから。
それに私は恨んでもいません。だから今はこうして二人とも生きてた事を喜びましょう?」

そう言って私の手を取って微笑むリーネちゃんの顔は昔のままで
あの時の冷たく真っ赤な手でなくて私の大好きな温かい手が包んでくれる。
私はようやくリーネちゃんが生きてた事を実感してしらずしらずのうちに泣いてしまった。
152Plural-episode-3-:2008/12/17(水) 18:01:40 ID:+4O4YgqG

 


泣き疲れたのか宮藤さんは寝てしまった
この子を守って私は記憶を失ったらしい
確かに記憶を失ったのは不安だ
でも今はこの子を守れたことを良かったと思う。
自分でも変だとは思うよく知りもしない人の事をこんなに大切に思うなんて。
きっと自分の中に彼女への想いが残っているんだろう、それも消えないくらい強い
記憶は無くても想いは残る
そんなこともあるんだな・・・


「ん・・リーネちゃん・・・」

リーネ
私の愛称らしい
夢の中の彼女が会っているのは昔の私だろう
不安そうな手を握ってあげる
もちろん彼女が求めているのは‘今の‘私では無いくらい分かっている
でもせめて夢の中だけでも彼女に幸せを――


to be continued next episode
153Plural-episode-3-:2008/12/17(水) 18:02:14 ID:+4O4YgqG
まだ続きます
ついでに誤字報告
episode1と2どちらもルッキーニさんになってた
ルッキーニちゃんです。
関係ないけど大きくなったルッキーニはいつか書いてみたい
ということでeIqG1vxHTMでした
154名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 21:18:19 ID:1i6Lopf7
おー続きキタ
というか速いなw
155名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 21:31:16 ID:ayKW1FMj
>>153
すごい投下速度ですね、GJ!
二人の仲がどのように進展するか楽しみですなぁ
156名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 22:17:35 ID:owuYzXvS
はやいなー、GJ!!

ところでいらん子の呼称表どっかにないかなあ
話書きたくても結構変動してて書くに書けない…
157滝川浜田:2008/12/17(水) 22:23:49 ID:5OC+L5pT
皆さんこんばんは。
今日は『何回君を愛したら』の最終話投下します。
余計な前置きはここまでにして、投下します。
158滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.8』:2008/12/17(水) 22:27:39 ID:5OC+L5pT
………あれ、生きてる…?
いやいや、有り得ない。
あんな速度で落ちたら、いくらどんな肉体自慢でも確実にアウトでしょ。

「……お前は…やはり無茶し過ぎるな…」
この声は………
……トゥルーデ……なの……?


――何回君を愛したら chapter.8――


「……堅…物…なのか……?」

目を開けたら、シャーリーのビックリしている顔が目に入った。

「私以外に誰がいる…?」
「トゥ…ルーデ……目が覚めたんだ…」

私の目からは自然と涙が溢れた。

「何を…泣いてる…?」
「うえぇぇぇっ…トゥルー…ヒック…トゥルーデェッ…!!!」
「…泣くな…お前にはまだ仕事が残っているはずだ…」
「トゥルーデッ…」
「それまで、感動の再会はお預けだ」
「…ヒック…トゥルーデ…!」
「行け…ヤツを倒せ!…大丈夫だ、私がついている。だからほら涙を拭け」
「……うん……」

するとトゥルーデは私の手を取って、手の甲にキスをする。

「…お前なら、出来る」
「…うん、ありがとう!」

私はトゥルーデから離れて、再び空を舞う。

「…よく目覚めたな、本当に」
「…暗闇からエーリカが呼び掛けてくれたんだ」
「エーリカが…?」
「アイツが私を…闇から救い出してくれたんだ…
…エーリカには後でしっかりと礼を言わないとな」
「…エーリカ、カッコいいじゃん」
「フフ、エーリカをなめるな。アイツは誰よりも…」

「くっ…まだっ…だっ…!!」

よし、膜が破れたっ…!
もう少しだ!!

…あと、あと一刺し…っ!!

――誰よりも、強いんだ――

「砕け散れぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

私はコアを突いた。
その瞬間、光に包まれたかと思うと、大きな爆発と共に私は空に投げ出された。

159滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.8』:2008/12/17(水) 22:29:49 ID:5OC+L5pT

私の周りを舞うのはネウロイの欠片。
そしてそんな私の体を、抱かれ覚えのある胸が抱き留めてくれた。

「トゥ…ルーデ…」
「よく…やったな…エーリカ…」
「…エヘヘ、どう、ますます惚れ直したカナ?」
「…ああ、心の底から惚れ直した…ますますお前が好きになったよ」
「……トゥルーデ…本当にごめん…私のせいで大怪我までして…意識も…」
「…何故お前が謝る?
私はお前を守りたかっただけだ。あれは私の意志でやった事であって、お前に非は無い筈だ。
…だが、まあしかし、すぐに無茶する性格は直した方が良いな」
「ぜ…善処します…」

トゥルーデは私の体をさっきよりも、強く抱き締める。

「それより、エーリカ」
「ん…?」
「私はお前に言って貰いたい言葉があるんだが」
「へぇ〜、なになに?」
「分かってるくせに。ニヤニヤするな」

私は真っ直ぐ、トゥルーデを見据えて言い放つ。

「……トゥルーデ……おかえり」
「……ただいま、エーリカ…」

私達はネウロイの欠片の中、強く抱き合い、キスをする。

今までの分、深く、激しく。
ここが空の上という事も忘れて。


「ハルトマン、シャーリーー!」
「しーっ!イイムードを壊さないでよ、みんな」
「トゥルーデ…!意識取り戻したのっ…!?」
「ミーナ、お前まで泣くな…」
「だって…だって……良かった…本当に…良かったっ…!」
「……ミーナ」
「…こちらもナイス夫婦だこと」

キスは、長く長く、私達はしばらく離れる事は無かった。

160滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.8』:2008/12/17(水) 22:32:07 ID:5OC+L5pT
―――――――――――――――――――

医務室

「……よく考えたら、トゥルーデまだ怪我治って無かったんだね」

あのキスのあと、トゥルーデは私の体に身を預けて眠ってしまった。

「…もう無理しちゃダメなのは、トゥルーデの方じゃん」
「ハハ、すまんな」
「…でも、意識が戻って良かった。……本当に…」
「…迷惑をかけてすまなかったな、エーリカ」
「ううん、いいよ。トゥルーデの目が覚めただけで私、嬉しいよ」
「あ、ありがとう…///」

すると、ドアの向こうから声がした。

「おーい、堅物ー」
「ん、なんだ…って、おっ!」

シャーリーがトゥルーデに投げつけたのはリンゴ一個。

「リンゴ一個か。もうちょっと無かったのか」
「バカ言うな。あの時だってお前、あたしにリンゴ一個しかくれなかっただろうが」
「さあ、どうだったかな」

トゥルーデはそう言いながら、リンゴを齧る。

「…さてと、どうやらあたしはお邪魔みたいだな。
邪魔者はここいらでお暇させていただくよ」

そう言うとシャーリーは部屋から出て行く。

「…一体なんだったんだ、アイツは」
「ハハ、シャーリーなりの優しさだよ」
「そういえば、エーリカ」
「なに、トゥルーデ」
「約束があったな」
「約束?」
「あの朝の続きをする、という約束だよ」
「ああ、それはさ、トゥルーデの怪我が治ってからでいいよ」
「そうか」
「ねえ、トゥルーデ」
「…なんだ」
「好き」
「…分かってるよ、そんな事」
「エヘヘ…///」

トゥルーデの言葉に嬉しくなった私は、トゥルーデに触れるだけのキスをした。

――あと何回トゥルーデを愛したら、私達は本当に繋がる事が出来るのかな。

…それとも、私達はもう繋がってるのかな。
161滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.8』:2008/12/17(水) 22:34:00 ID:5OC+L5pT

それは、これからトゥルーデと付き合っていかなきゃ分かんないけど、これだけは胸を張って言えるよ。


……私は、トゥルーデの為に生きる。
だから、トゥルーデも私の為に生きてくれないかな。

トゥルーデの怪我が治ったら、この言葉を貴女に伝える。

この言葉を聞いたら、トゥルーデは、どう言ってくれるだろう。

きっと、きっと、喜んでくれる。
だって私達の間には、私達を阻む物なんて無いもん。

きっとこの先何があっても私達は越えて行ける。

だって、私達もう離れないから。

そう思いながら、私はトゥルーデを抱き締めた。


――大好き、トゥルーデ。――


FIN

162滝川浜田:2008/12/17(水) 22:35:22 ID:5OC+L5pT
以上でこのシリーズ終了です。
終わったー!何故かやたら苦労しました。何回も言ってるけど、長編を続けるのは軽く死ねる!

で、ここで裏話的な話をひとつ。
実は最初の予定では、ネウロイにとどめを刺すのはエーリカとトゥルーデ二人でやる予定でした。
が、今回の「エーリカの償い」というテーマを考えると、トゥルーデがとどめを差すのはちょっと違うな、と思いこのような展開になりました。
カッコいいトゥルーデを期待してた人、すいません。

そしてそして最後まで読んで下さった方々にひたすら感謝です!本当にありがたい!
次回からはミーナさん崩壊シリーズとか、そんな感じの短編中心の自分に戻ります。

そしてあとがきだけでこんな長文すいません。

…では爺はここら辺で…

163名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 23:46:51 ID:1i6Lopf7
完結乙
よく長編なんて大変な物書くなー
ほぼ毎日投下は凄い
164名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 23:53:24 ID:M6Xr3oML
>>152
記憶喪失っても想いが残ってるっていいですね。続き楽しみにしてます!

>>162
乙でした!いやいや、トゥルーデ十分かっこよかったですよ
相変わらず甘々はいいですねー。GJでした!
165名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 00:23:25 ID:2rhw9uX/
おい ちょっといいか。お前だ宮藤。別室にある私のズボンを取ってきて欲しい。
簡単だ。1分もかからない。取ってきたら私の前で履いてみるんだ。
つべこべ言わずにやったほうがいい。やらなかった時には
私と宮藤の関係にヒビが入る。まぁそういうことだ。
166名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 00:54:46 ID:eRA5WID7
早朝訓練の後ふたりで仲良く大浴場で汗を流していた坂本少佐と宮藤。
長い渡英中にすっかりねんごろな仲(しかし隊には内緒)になっていた
ふたりは誰も居ない事をいいことに個別シャワー室の物陰で大人のくすぐり合いをしていた。

そんなところにバルクホルンとシャーリーの大尉コンビがこれまた珍しい事に
二人同時に大浴場に入って来た。察するに坂本と宮藤の存在には気付いていないらしい。
思わず絡み合うのを止めバルクホルンとシャーリーの動向に注目する坂本と宮藤だが...

167名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 00:57:13 ID:eRA5WID7
(↑前回までのあらすじ)
168名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 01:08:22 ID:jsuelGHo
で、本編はどこだい?
169名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 01:09:45 ID:4yX+2xZG
わっふるわっふる
170名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 01:14:06 ID:bKAAblAv
>>166
早くシャーゲルな本編を!!
171名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 01:29:31 ID:MVA1USaM
寒い季節になってきたな
こう寒いと中華まん食べたくなるよね
そんなぼくが食べたいのは芳佳マン!!!!
いやっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぅあ!!!
172名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 02:04:41 ID:ngm+QAsa
1日24時間じゃ足りないt26gFAxTです。
前回分にレスをいただきありがとうございました。
ウルスラとビューリングは……確かに小説では「ない」ですねw
個人的にはいいコンビだと思うのですが、小説的には難しいのか。
二人とも基本無口だし…

気を取り直しつつ、学園ウィッチーズ19話投下します。
173名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 02:04:52 ID:Tt4FTRYd
>>166
何その超続きが見たい展開w
174学園ウィッチーズシリーズ 第19話 来訪者:2008/12/18(木) 02:06:50 ID:ngm+QAsa
 夕食時に遅れて帰ってきたミーナは、食堂へと向かう。
 ふと洗い場に目を向けると、芳佳とリーネが戸惑いの表情を見せた。
「おかえりなさい」
「どうか、したの?」
 芳佳とリーネは顔を見あわせ、リーネが、皿を拭く手を止めた。
「それが、シャーリーさんとハルトマンさんがまだ帰ってこなくて」
 ミーナはシャーリーの名前にぴくりと反応を示しながら、口元に手を置いた。
「シャーリーさんなら、私よりだいぶ前に病院を出たはずだけど。フラウは……、どうだったかしら」
「今、坂本さんとペリーヌさんが学園に探しに行ってます」と、芳佳が付け加えた。
「そう。他のみんなは自室にいるのかしら?」
「はい」
 食堂を出ようとするミーナに、すかさず芳佳が声をかけたが、ミーナは、少しだけ余裕なさげに振り向いた。
「ごめんなさい。あとでいただくわ」

「まったく、就任早々問題を起こされるとは…」
 坂本は、珍しく不機嫌そうに言いながら、真っ暗な校舎内を懐中電灯で照らしながら、部屋のドアを開け、探索しては、また廊下へと戻り、奥へと突き進む。
 その背後を、三歩ほど離れたところで、ペリーヌが恐る恐ると追う。その様子にペリーヌの心中を察したのか、坂本が苦笑いをしながら、振り返った。
「無理に付き合わなくても良かったんだぞ、ペリーヌ」
「い、いいんです。今夜は特に用事もございませんし……、同じ寮の生徒として見過ごせま」
 と、言いかけたところ、窓の向こうにある大木から鳥が飛び立った。
 その羽音とともにペリーヌの尋常ではない悲鳴があたり一面に響いて、坂本は、危うく鼓膜を損ないかける。
 腰でも抜けてしまったのか、ペリーヌは大きく息を吐きながら、その場にへたり込んでいた。
 そのあまりの怖がりように、呆れるでもなく、むしろ悪い事をしてしまったと思いながら、坂本は空いたほうの手を差し伸べた。
「……立てるか?」
「なんとか…」
 真っ暗い廊下で、互いの手と手で存在を感じあう。引き上げられ、すぐ目の前に、坂本の顔があることを察知して、ペリーヌは咄嗟にうつむく。
 ふわりと、石鹸の香りが、坂本の鼻をくすぐり、彼女の腹の中で感情が渦巻き始め、喉仏を押し上げたが、「あの…」というペリーヌの声に、我に返り、手に力がこもりすぎていることに気がついて、ゆるめ、離す。
 ぺリーヌはしゃがみこんで、坂本の懐中電灯の光線を頼りに、さきほど放ってしまった自分の懐中電灯を探し当てると、立ち上がり、微笑んだ。
「さあ、先へ進みましょう」
 かすかに震える声。しかし、それは、恐怖からではなく、想いを寄せている人に触れ合えた事、近づけた事へのごく自然な高揚からくるものであった。
 坂本は、初々しいその様子に、心から安堵をすると共に、わずかに眉毛を吊り上げ、いつもの凛々しい笑顔で応える。
175学園ウィッチーズシリーズ 第19話 来訪者:2008/12/18(木) 02:07:24 ID:ngm+QAsa
 エイラは、ベッドに寝転がり、タロットカードを広げ、サーニャは、ベッドの端に座り、首だけを振り向け、エイラの様子を眺めている。
「エイラ」
「んー?」
「いつから、タロットやってるの?」
「いつから…」エイラは、体を起こし、胡坐をかいて、考え込むように、眉間に眉を寄せた。「はっきりと覚えてないけど、物心ついた頃にはこうやってカードをかき混ぜてたかな」
 そう言いながら、タロットカードをつまみ上げ、にっかと歯を見せた。
「良かった。ハルトマンもシャーリーも無事帰ってきそうだな」
 サーニャは、呼応するように、微笑んで、ぼふっと、広げたタロットカードの上に体を落とし、胡坐をかいているエイラの一方の太ももに頭を預けた。吹き飛んだカードが、ベッドに、床に飛び落ち、サーニャの髪がエイラのももをくすぐる。
「おい、サーニャ。なにすんだよ」
 怒るでもなく、仕方ないなあと言いながら、エイラは目元を緩め、髪を撫でた。
「エイラは、どういう子だったの?」
 おとぎ話をせがむ子供のような、サーニャの生き生きとした瞳に見上げられ、エイラは、枕を背に敷いて、天井を仰いだ。
「父さんや母さんはよく外に働きに行ってたから、あまり家にいなくてさ。どっちかていうと、じいちゃんとばあちゃんと過ごすほうが多かったかな。ばあちゃんは、タロットとか編み物とか教えてくれて、じいちゃんにはよく狩りとかスキーに連れてってもらってた」
「編み物…」
「な、なんだよ、その目は。私だって一応家事できるんだぞ」と、膨れ面のエイラ。
「そうじゃないの。嬉しいの」
「……なにが?」
「エイラのこと、少しずつわかっていくことが。ねえ、続き…」
 サーニャが、エイラの上着の裾を引く。エイラは、サーニャの頭をもうひと撫でして、また、自分の過去を手繰り寄せるように、ぽつぽつと話し込んだ。
「で……、初めて銃を持ったのは、9歳ぐらいかな? いや、10歳に近かったかも。あまり覚えていないけど。ちょうどそのころ、こいつに出くわしたんだ」
 エイラの隣に使い魔の黒狐が現れ、じっと、サーニャを見つめた。サーニャは、寝転がりながら、黒狐の背中を撫で、エイラも黒狐の頭に指を滑らせた。
「魔力のおかげで多少の腕力がついてたから、調子に乗っちゃって、一人で狩りに出て、自分の大きさの何倍もあるヘラジカを狙ったこともあったな。最初の頃は、なかなかうまくいかなくて、猛突進してくるヘラジカから必死で逃げ回ってたけど」
 エイラは過去の情景を目の前に浮かべているかのように、笑った。
「銃の使い方もナイフの使い方も、狩りの方法も、全部じいちゃんに叩き込まれた。てっきり、じいちゃんは私を戦士にでもしたいのかと思ってたけど。私が魔女である事を聞きつけたスオムス空軍から、訓練の誘いがきたときはあまりいい顔してなかったな…」
 黒狐が、サーニャの頭のそばで、丸まる。サーニャは、頭を傾けて、わずかに姿勢を変えた。
「そっからは目まぐるしかった。軍に入って、初日早々一人でストライカーはいて飛ばされて」
「墜落したの?」
「いや、ぎりぎり飛べてた。けど、同期のやつで初日早々墜落したやつもいてさ……。まあ、そいつはもともと"ついてない"のがしみついてるって言うか……。能力は決して低くないんだぞ」
「その人は、学園には来なかったの?」
「うん。軍に残ってる。誘ったんだけどな。けど、あいつにはあいつの道があるし…」
「道」
 私の道にあなたが――
 サーニャは、つぶやいて、潤んだ唇をすり合わせた。
 エイラは、聞こえなかったのか、首をかしげた。
 サーニャは、体を起こし、りんご1つ分の距離まで、エイラに顔を近づける。
 どこか、覚悟をしたような、引き締まった表情。
「私も、昔の事、話していい?」
 いつもならこの状態で冷静でいられるはずがないのに、とエイラは冷静に自分の状況を把握して、そして、自分でも驚くほど、落ち着き払った声を出して、首を横に振った。
「……よそう」
 サーニャの瞳が、輪郭を失ったように、ぼやけ、揺れた。
176学園ウィッチーズシリーズ 第19話 来訪者:2008/12/18(木) 02:07:53 ID:ngm+QAsa
 廊下を歩くミーナの少し手前で、ドアが静かに開き、ルッキーニが、珍しく自室から出始めかけていた。
 だが、ルッキーニは、ミーナに気づくと、目を見張って、また部屋に引っ込もうとする。
 ミーナは反射的に、進み出ると、ドアの間に足を入れた。
 ルッキーニが、引きつった笑みで見上げ、ミーナもつられたように、笑顔を作ってみせると、強引に部屋に押し入って、後ろ手にドアを閉めた。
「ちょっといいかしら?」
 ルッキーニは、やりにくそうな顔で指と指をもじもじとあわせ、自分のつま先に視線を落とした。
 ミーナは、表情に残る険しさをそぎ落として、そっとルッキーニの手を握ると、そのまま揃ってベッドに腰掛けた。
「あまり、使ってないのね」と、ミーナは、視線でベッドを指した。
「基本的に隠れ家で寝てるし、最近は…」
「シャーリーさんと?」
 こっくりと、うなづくルッキーニ。ミーナは、くすりと笑い、目を細めたが、一瞬だけ、考え込んで、ささやいた。
「……今日、シャーリーさんとなにかあったの?」
 ルッキーニの手にかすかに力が入って、ミーナの手を握り返した。ミーナは、じっとルッキーニの横顔を見つめる。

 ――ねえ、バルクホルンとミーナ先輩がどうかしたの? シャーリーは……、あの二人が仲良いのが面白くないの?
 ――違う!

 昼間のやり取りを思い出し、胸の奥がぐらつき、引き締めた口の中で、八重歯の裏に舌を押し付けた。
「あの……ね。整備中に邪魔しちゃって、言い合ってるうちに、ヒートアップして……大喧嘩になっちゃったの」
 と、ルッキーニは、少し大げさに後頭部をかいた。ミーナは、彼女を訝しげに眺めながらも、小さく息を吐いた。
「そう。だから、病院に来たときも、いつもと様子が違ったのかしら」
「シャーリー、病院行ったんだ」
「ええ、昼間に。けど、すぐに帰ってしまったの」
 ルッキーニは、ゲルトルートの顔を思い浮かべ、しょげかえるが、しばらくして、近づくバイクのエンジン音に気づいて、顔を跳ね上げた。

 寮に戻ってきたシャーリーのバイクはそのまま寮にある簡易ガレージに直行する。
 シャーリーが、裸電球のスイッチを入れ、ガレージ内に暖色系の光が満ちる。
 エーリカは、サイドカーからひょいと飛び降りると、夜の冷気に身を縮ませた。
「やっぱシールドなしじゃ寒いなぁ」
「う〜、凍えちまう……。早く風呂入ろうぜ」
 シャーリーは乗っていたバイクを軽くチェックして、スイッチに手を伸ばした。その手をエーリカが握る。
「シャーリー、私とウーシュの事…」
「言うわけないだろ。余計な心配すんなって」
 と、シャーリーは、やれやれと言い出しそうな顔でふっと笑って、エーリカの頭をぽふっと叩き、照明を切った。

 ミーナは、庭で並んで歩くシャーリーとエーリカの影を見つけると、ドアのほうへ向かうが、動き出さないルッキーニに、まばたきをする。
「行かないの?」
「え? あ……、うん。まだ、喧嘩してるから…」

 こっそりと、寮の正面玄関を小さく開け、エーリカとシャーリーは、わずかな隙間から、薄暗い廊下を見渡した。
「みんな、眠ったかな」
「いや、まだ9時ぐらいだから部屋にいるんだろ」
「正解。みんな自室でそれぞれの時間を過ごしてるわ」
 エーリカとシャーリーが、ドアから首を伸ばし、横を見ると、ドアに背をつけていたミーナが、横目で彼女たちをきつく見据え、ドアから離れると、彼女たちの正面に立った。
 圧倒された二人は、しゃんと背筋を伸ばし、直立する。
 普段の二人では決して見ることが出来ないであろうその様子に、ミーナは、呆れたように肩を落とした。
「心配したのよ」
「えっと……、ハルトマンは悪くないんだ。私がどっか行こうって誘って、バイクで遠出してたら、つい、さ……。雨も降って足止め食っちまったし」
「シャーリーは悪くないって。ついてったのは私なんだから…」
 そういいかけたエーリカの頬に、ミーナの手が触れる。心配そうな視線にエーリカは思わず顔を背けた。
「心配かけてごめんね、ミーナ」
 ミーナはエーリカの頬から手を離し、シャーリーにも目をやった。シャーリーは、何か言いたげなミーナに、つい、鼓動を早くするが、なんとか平静を装う。
「もういいわ。二人とも、お風呂に入ってきなさい」
177学園ウィッチーズシリーズ 第19話 来訪者:2008/12/18(木) 02:08:23 ID:ngm+QAsa
 教官宿舎の談話室で、教官たちは、ソファに体を沈め、その日の学園での出来事を披露しあったり、軽い打ち合わせをしていた。
 三人がけのソファの端っこで、エルマは、書類を整理する。
「それでは、訓練用のストライカーが追加され次第、今まで以上に授業に取り入れましょうか」
「楽しみねー」とオヘアが豪快に笑うが、向かい側に座ったアホネンが足を組みなおして、ソファにふんぞり返った。
「軍ほど予算があるわけじゃないんだから、気をつけてね。"壊し屋さん"」
「この学園来てからは昔の10分の1しか壊してないから大丈夫ねー」
「6台壊せばもう十分でしょう…」
 アホネンと、すぐ隣のオへアのやり取りを右から左に流しながら、ウルスラは、広げていた本のページをめくった。眉をゆがめながらも、エルマは微笑みを絶やさず、話を続けた。
「と、とにかくよろしくお願いします。ビューリングさんには私が伝えておきますね」
「そういえば、ビューリングおりてこないねー」
「一食抜いたぐらいで死ぬわけないんだから放っておきなさいよ」
 ウルスラは、本を閉じて、ソファの前のテーブルに置くと、立ち上がった。
「用事、思い出した。ちょっと出かける」
「ええ? こんな時間に危ないですよ〜」
「そうねー。ミーもついてく?」
 ウルスラは強く拒絶するでもなく、静かに首を振った。

 エーリカは、うっすらと曇った鏡に映る自分の顔を見て、鏡に映る自分の目元を丸で囲うように、指をこすりつけた。
 風呂から上がったシャーリーは、鏡の前でぼんやりするエーリカを見つける。
 エーリカの頭の上にタオルが降る。
「うあ!」
「素っ裸でなにやってんだよ。風呂入った意味ないだろ」
 シャーリーは、エーリカの頭を少し乱暴に拭いて、鏡の中に、ぼやけたウルスラの姿を見る。正確には、エーリカの目元が、丸で囲われているだけではあるが、シャーリーは、手を止め、鏡の曇りを手で掠め取った。
「お前は私みたいになるなよ。好きなら、好きで、きっちり向かい合えって。他人に恋するとはワケが違うけど」
「うん……」
 エーリカは、足の指同士をこすり合わせながら、張りのない声で、相槌を打った。

「湯加減はどうだった?」
 大浴場から出てきたエーリカとシャーリーを、坂本が、竹刀片手に出迎えた。
 寮内に、二人の短い悲鳴と、竹刀が繰り出す音が響く。

「くっそ、シールド張る暇もなかった…」
 エーリカとシャーリーは、頭頂部をおさえながら、廊下を進む。
 エーリカが、何かに気づいて、顔を上げた。
「ハルトマン、どうした?」
「玄関のほうからなんか聞こえた」
「もう全員いるから、来客かな」
「こんな時間に?」
「うちらが言えた義理かよ」と、シャーリーがはははと笑いながら、拳を振り上げた。
「なに?」
「じゃんけんだよ。こないだ宮藤が教えてくれたろ? 負けたほうが出る」

「今日は、ノってなさすぎ……」
 エーリカは、自分の拳を恨めしそうに見つめながら、玄関のドアノブに手をかけた。
「どなたですか〜?」
 かなりの間があって、ようやく、ドア越しに聞こえるか聞こえないかの声が届く。
「……私」

学園ウィッチーズシリーズ 第19話 終
178名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 04:14:05 ID:OGHt5XbP
こんばんは。mxTTnzhmでございます。

>>129 21X2w2Ib様
GJ! いらんこ中隊ネタ好きです。
見事にかたちに出来るのは素晴らしいですね。

>>153 eIqG1vxHTM様
GJ! 続き楽しみにしてます。読んでてドキドキしますね。

>>162御大
GJ! 長編お疲れ様です。

>>177 t26gFAxT様
GJ! 学園シリーズも次で20回! 凄いです。次回楽しみです。


さて、今回は錯乱気味にひとつ書いてみました。
>>13-21「ooparts」の番外編(?)みたいな感じでひとつ。
どうぞ。
179dream fever 01/09:2008/12/18(木) 04:15:16 ID:OGHt5XbP
「おい、見てくれミーナ」
弾んだ声で美緒が執務室にやってきた。書庫に行くと言って出ていっていたのに突然戻って来た。
「あら、どうしたのかしら」
また古びた本を何冊か持ってきた。埃が凄いが、お構いなしに机上にどんと積み上げる。
埃が舞い、思わず咳き込むミーナ。
「ああ、すまん」
「今度はどうしたの?」
「これを見てくれ」
古文書をめくる。古いラテン語やブリタニア語で何かがびっしりと書かれている。
「何かしら?」
「結論から言おう。この基地の中に、修道院時代の宝物が眠っている」
「……」
一呼吸置いて、ミーナは聞き返した。
「はい?」
「宝だよ宝。どうだ、凄いと思わないか? ここに書かれている収蔵品リストだけで、宝石に金の延べ棒、
古代より伝わりし伝説の剣……」
「美緒、ちょっと落ち着いて」
ミーナは興奮する美緒を椅子に座らせると、溜め息をついた。
「貴方、この前の地下探検ごっこで懲りたんじゃなかったの?」
「え? いや、まあ」
「これまでも色々有ったでしょ? 宮藤さん達はお風呂場を壊す、シャーリーさん達は屋根から降りれなくなる、
挙句にトゥルーデ達は基地の警報装置を誤作動させる。地下に潜った子達はみんな散々よ」
ミーナがこれまでに叱りつけた基地の隊員達……ミーナと美緒以外全員……の名を挙げる。
「これ以上、地下への立ち入りは許しません。これは隊長としての命令です。もう懲り懲りよ」
最後に本音が出るミーナ。
「おい、待ってくれ。地下とは言ってないぞ」
「?」
「確かに、地下は私もどうかとは思うが、今回は基地の中なんだ。何も問題は無いだろう」
「基地の中って、何処? 謎の空間なんて有ったかしら」
「とりあえず、行ってみよう。見当はついてる」
「私も?」
「少し休憩がてらに、どうだ?」
美緒の笑みに押されたのかどうかは分からないが……二人は手を取り、執務室を出た。

トゥルーデはいつもの訓練メニューを終えシャワーを浴びた後、何か飲み物は無いかと台所にやってきた。
そこへやってきたのはミーナと美緒。何故か二人とも酷く埃にまみれ、妙に挙動不審だ。
身をぴったりと寄せ合って、どこか落ち着きが無く、……不思議の国に迷い込んだ姉妹に見えなくもない。
「ミーナ、少佐。どうかしたか?」
「!」
揃ってぎょっとした顔をする。そして二人は顔を見合わせると、何かひそひそと囁き始めた。
「な、なんだ?」
「あの……すいませんけど……」
少佐らしからぬ、おどおどした声。
「ボク達、誰なの? ここ何処!?」
ミーナの口から想像も出来ない一人称と口調で、質問が発せられた。
「ミーナ? 少佐? 二人ともどうした?」
「少佐って誰ですか? 元帥の次くらいにエライ人?」
「相当違う。と言うか少佐、何を錯乱しておられるんだ」
「やっぱりこの人ヘンだよ」
「ミーナ、お前にまで言われたくない……ちょっと待てよ」
トゥルーデは顔色を変えた。
まさか。
一息置いてこほんと咳をすると、二人をロビーまで連れて行き、椅子に座らせた。
気まずそうに、手を繋いだままちょこんと腰掛ける二人。まるで子供だ。
「ちょっと待っててね、二人とも。このお姉ちゃんが、教えてあげよう」
「ありがとう、お姉ちゃん」
「そう、それでいい。この“お姉ちゃん”に任せるんだ」
トゥルーデは満足そうに頷くと、急ぎ501メンバー全員に集合を掛けた。
180dream fever 02/09:2008/12/18(木) 04:16:41 ID:OGHt5XbP
「中佐と少佐が記憶喪失だって?」
シャーリーが驚いた。
「間違いない」
頷くトゥルーデ。
「でも、どうしてすぐに分かったんだ?」
「二人とも、この私を何のためらいも無く『お姉ちゃん』と呼ぶからだ」
「それは間違いないな」
「何も覚えてないと言う事は……坂本少佐? わたくし、貴方のお姉ちゃん……いや、母……でもなくて、
そう、結婚相手なのよ? 覚えてなくて?」
「ペリーヌ、勝手に吹き込むな」
「いきなり節操ないナー」
「眼鏡のおばさんが、私の結婚相手?」
美緒から返って来た言葉に、ペリーヌは絶句した。そしてひきつった笑みを浮かべて美緒と同じ目線にしゃがんだ。
「おばさんって……わたくしまだ十五なのに……幾ら少佐でも、あんまりですわっ」
「ごめんね、おばさん」
「おっ……い、いやねえ、この子ったら。あなたよりも年下でしてよ? さあ、いきましょう」
「何処へ行くペリーヌ」
「おい待て! 自室へ連れ込むのは止めろって」
「お願いですから離してください! これは神が与え賜うた千載一遇のチャンスなのです!」
「ふしだらな行為はやめろ」
「やーい、ぺたんこおばさーん」
「そこ、お黙りなさい!」
「……この人、なんか怖いね」
「うん」
ミーナと美緒はペリーヌを見ると、そっと抱き合った。
「中佐、何故少佐と抱き合っているんですか!? その恋人つなぎはやめてください!」
「ムキになるな。この二人、記憶が無いんだから、もうちょっといたわらないと」
「だからこれをチャンスと……」
「何がチャンスダヨ? ペリーヌ必死ダナ」
いつの間に割り込んだのか、二人の後ろでヒソヒソと呟く人物が。
「……エーリカ? お前、二人に何を吹き込んだ?」
「な〜んにも?」
悪魔的な笑みを浮かべるエーリカ。
「みんなは、夫婦なんだ?」
ミーナがにこやかに言ってのけた。
「はあ?」
唐突過ぎてそれ以上の答えが出ない一同。
「今、金髪のお姉ちゃんが言ってた」
「待て。違うぞ。『お姉ちゃん』はこの私だけだ」
「突っ込みどころが違うぞ堅物」
「そうそう。トゥルーデと私は夫婦なのよ〜」
横で丁寧に説明を始めるエーリカ。
「なっ!? 待て待て!」
「そしてこのミヤフジがトゥルーデの妹。で、ミヤフジの嫁がリーネ」
「芳佳ちゃん。私、芳佳ちゃんのお嫁さんなんだって!」
「へえ、すごいねリーネちゃん!」
微妙に会話が噛み合わないが、納得している芳佳とリーネ。
「そこの親子は、見れば分かるよね?」
「あたしら、親子なのか」
「ウジャー シャーリーとあたし親子だって親子〜」
「で、そこに居る影の薄い二人は今倦怠期の熟年夫婦」
「誰が倦怠期ダ!? 熟年でもナイ!」
「ね、お姉ちゃんの言った通りでしょ?」
「うん」
頷くふたり。美緒に至っては“癖”なのか、わざわざ魔眼で皆を見回してから頷く始末。
「納得するな! てか要らんことを吹き込むなエーリカ! 余計に混乱するだろう? ……少佐も魔眼で確認しなくていいから」
「私もお姉ちゃんだってさ〜」
「貴様ぁ〜」
181dream fever 03/09:2008/12/18(木) 04:17:48 ID:OGHt5XbP
「お姉ちゃん達、仲悪いの?」
「え? 仲はいいぞ、とっても。なあエーリカ? あとお姉ちゃんは私だけでいい」
「ええもちろん、旦那様」
「じゃあなんで取っ組み合いしてるの?」
「これは親愛のしるしで……ここではみんなそうしてるの」
にやけるエーリカ。
「じゃあボク達もやってみよう」
「うん」
「止めろ! 色々な意味でまずい!」
慌てて二人を止めるエイラとシャーリー。
「ボク達、ちょっとおとなしくしててね?」
二人を座らせると、トゥルーデとシャーリーは顔を近づけてひそひそと相談した。
「どうするよ? 仮にも隊の指揮官ふたりがあんなザマじゃ……」
「全くだ。隊の指揮どころか、全体の士気にも関わる……っておい! エーリカ、今度は何を話した?」
「なんにも〜?」
「そっか。ここは魔法の国のお城なんだね」
「だからボク達ここに居るんだ」
「魔法の国……またいい加減な事を」
「じゃあボク達も魔法使えるの?」
「勿論」
「エーリカ。いい加減にしないと……」
「いや〜旦那様こわーい、暴力亭主よ〜♪」
「貴様……」
「楽しそうダナ、二人共」
「エイラもにやけてないで何か考えろ」
「何かって言われてもナー」
「お母さん?」
ミーナはリーネの手を取り、言った。
「え? 私? なんで?」
「やっぱりお母さんなんだね? 間違いない! ボク会いたかったんだ!」
リーネの胸に顔を埋めてすりすりするミーナ。
「ちょ、ちょっと中佐!」
「じゃあこっちがお父さん! お父さん!」
「坂本さん、やめてください! 何か立場が違います!」
「ミヤフジがお父さんと言う事は、私達お祖父ちゃんとお祖母ちゃんだ」
「どうしてそうなる? てか続柄的にもおかしいだろ?」
「お祖父ちゃん!」
「だから違う! 私はお姉ちゃんだ!」
「これはこれでアリかも。なあルッキーニ」
「ウニャ なんか新鮮だね〜」
「リベリアン。貴様いつからそう言う趣味を持った?」
「趣味って言われても」
「隣の奥さんですね?」
「え? あたしってそうなの? いや参ったな少佐」
「未亡人だって聞いたけど」
「こら〜エーリカ、勝手に設定付けるなぁ〜」
「ふたりは、どうして仲良くないの?」
「良くない事はナイゾ? なあサーニャ」
「……」
「何故黙るンダサーニャ!?」
「お前らもいい加減にしろ」
「全員呼んだらこうなるって気しなかったか?」
「……それもそうだった」
「とりあえず、二人に聞こウ。中佐と少佐……じゃなくテ、二人とモ、名前は覚えてル?」
「うん。思い出した。ボク、リーナ!」
「あたしはミコ!」
「微妙に違うゾ。……どうしてその名前を?」
「ボク達、そんな気がしたから。この名前でお互い呼び合ってるんだ」
「ほほウ」
182dream fever 04/09:2008/12/18(木) 04:19:04 ID:OGHt5XbP
「ずっと一緒に居たから、きっとあたし達、その……」
「その……なんダ?」
「きっと、許婚なんだって」
「許婚ですって!? aqwsedrftgyl!!!!」
「リベリアン、とりあえずペリーヌを押さえておけ」
「興味深いナ。続きヲ」
にんまりとして話を促すエイラ。
「ほら、ボク達、二人一緒の腕輪もしてる! 婚約の腕輪!」
「腕輪?」
「何だコレ?」
「触らないで! 二人の大切な宝物なんだから!」
「ああゴメンナ。ちょっと気になったかラ」
「ボク達、お城に来たって事は、ここで結婚式を挙げるんだ」
「嬉しい!」
「お待ちなさい! このわたくしをさしおwsdrftgy!!!」
「まあまあ、話しだけでも聞こうよ」
「でも、このお城にお父さんとお母さんが住んでるって知らなかったよ」
「お父さん……」
「お母さん……」
「二人とも真剣に考えるな」

突然、基地に警報が鳴り響く。
「こんな時に敵襲?」
「ルッキーニ、レバー間違って押してないよな?」
「ムキー さっきからずっと一緒にいるじゃん」
「どうする堅物? 指揮官二人がこれじゃあ……」
すっかり和んでじゃれあっている二人を見て、シャーリーがトゥルーデに聞いた。
「……仕方ない。二人は行動不能状態に有るとみなし、私が代理として隊の指揮を執る」
「さすが堅物。任せた」
「よしお前ら聞け! 前衛は私とハルトマン、後衛はシャーリーとルッキーニ、バックアップにペリーヌとエイラの六機編成で行く」
「一体何が始まるんです?」
美緒がおどおどしながらエーリカに聞いた。
「大惨事……」
「エーリカ、いい加減にしないか。残りの三人は基地で待機……じゃなくて、この二人の面倒を見てくれ。お前達なら出来る筈だ」
「は、はい」
「了解」
「よし、急げ!」
監視所から届いた報告メモをひったくると、全員がハンガーに向かって駆け出した。
「……なあ」
「なんだ?」
「何で“全員”来るんだ?」
「……私に聞かないでくれ」
「みんなどこいくの?」
「競争?」
ミーナと美緒が口々に疑問をぶつける。
「これからちょっと戦いに」
「何と戦うの?」
「どんな悪いヤツなの?」
「宮藤、リーネ。後は任せた」
ハンガーに到着し、めいめいがストライカーを装着する。
「すごい、なんか履いてる!」
「面白そう! 耳生えた!」
目を輝かせるミーナと美緒。
「……いい加減、なんか殴りたくなってきた」
「まあまあ、抑えて抑えて」
「この状況で……どうしろと言うんだ」
183dream fever 05/09:2008/12/18(木) 04:20:05 ID:OGHt5XbP
「……あれ?」
「どうしたリベリアン」
「あたしのストライカー、こんな時に限って調子が……」
トゥルーデはストライカーをタキシングさせながらシャーリーの元に近付いた。シャーリー自慢のストライカーが妙に咳込んでいる。
「整備は終わった筈じゃないのか?」
「昨日まで万全だったんだけどな……」
「……なんであたし見るの? そんないじってないよ?」
「『そんな』? ルッキーニ、まさか……」
「そんなの、叩けばすぐに直りますよ」
美緒があっけらかんと言う。
「直るか!? ストライカーは精密な機械だ」
「精密……。じゃあ違うなぁ」
ミーナが指をくわえながら、ストライカーをじっと見て言う。
「今、あたしの国をさりげなく馬鹿にしたな?」
「とりあえず、えい!」
美緒は容赦なくシャーリーのストライカーに蹴りを入れた。幾ら精神的に幼くとも、身体と力は普段と全く変わらない。
当然、横方向からの激しい衝撃を受け、弾みでストライカーごと地面にごろごろと転がるシャーリー。
「リベリアン、大丈夫か?」
「いたたた……なんて事するんだ少佐。考えられないよ。……あーあー、ボディへこんじゃったよ」
「ほら、直った」
確かに、咳き込んでいたストライカーは快調に回りだした。
「この手に限るんです」
自慢げに言う美緒。
「なんだかなあ」
トゥルーデに腕を引っ張って貰い、ふらふらと立ち上がるシャーリー。
「えらいね。よくやったね美緒ちゃん」
「あたしミカ!」
「ああ、そうだった。なんかややこしいな」
「お父さんもあの筒みたいなの履くの?」
「今は履かないよ?」
「あたしも履きたい!」
「無理言わないの」
「なんか魔女みたいだね……」
「ウィッチだからその通りだけどナ」
「魔女の、バアさん……」
ミーナと美緒はペリーヌを指して呟いた。
「……釜の中で殺される!」
抱き合って震える二人。
「誰がバアさんですか!? もう我慢なりませんわ!」
「銃を向けるなペリーヌ!」
「シャレにならん、もう誰か止めろよ」
「離してください! 少なくとも中佐にバアさんと言われるだなんて屈辱ですわ!」
「こわいよ、お父さん」
「ああ、大丈夫だから。ほら」
美緒を抱きしめてあやしてあげる芳佳。芳佳の胸ですりすりして喜ぶ美緒。しかしふとリーネに気付いて言った。
「お母さん、なんで鉄砲持ってるの?」
「うわ、リーネちゃん、何してるの」
「ちょっと構えてみただけ。あとはトリガーを引くだけ……」
「坂本さん撃っちゃダメだよ! リーネちゃん、私達夫婦だよ?」
「ああ、そうだったっけ」
「何をやってるんだお前ら……。出撃だ! 全機続けぇ!」
「了ぉ解〜ぃ」
だらだらと六機はハンガーを抜け、ネウロイ目指して飛び立った。
「すごい。お空とんでったね」
「そうだね」
「二人とも、とりあえず、戻ろ? お父さんとお母さんが、美味しいおやつご馳走してあげる」
「ホント? ありがと!」
「芳佳ちゃん……馴染んでるけど、どこか不自然」
「いや、細かい事気にしたら負けかなって思って」
芳佳は照れ笑いをして、頭を掻いた。
184dream fever 06/09:2008/12/18(木) 04:20:58 ID:OGHt5XbP
やがて日も暮れる頃、ネウロイを何とか仕留めた六機が帰還した。
「こんな時に限っててこずるとは」
「今日は厄日だよ、ホント」
「とにかく、基地に残したあいつらが気になる。急ぐぞ」
ストライカーをぞんざいに整備士に預けると、デブリーフィングも放り投げ、ミーナ達を探した。
ロビーからピアノの音がする。
サーニャだ。とても楽しそうに、ピアノを弾いている。
目線の先には、ケーキやお菓子で口のまわりをべたべたにしながら、楽しそうに聞いているミーナと美緒の姿があった。
その横では芳佳とリーネも穏やかな表情で二人をあやしている。ケーキとお菓子を用意したのも二人だ。
「和むけど……奇妙な光景ダナ」
「……少し慣れてきた」
「順応速度が速過ぎだリベリアン。おい宮藤。どうだ、二人の様子は」
「あ、皆さんおかえりなさい。この通りです」
「大体見れば分かる」
「少佐、何というお姿で……」
「泣きたい気持ちも分かるよ、少しは」
「あー、あたしもケーキたべたーい」
「ルッキーニ、お前は我慢しろ」
「ちょっと良いカ、大尉?」
「ん?」「なんだ?」
二人の大尉が同時に振り向いた。エイラは少しぎくりとしながら、声を潜めて言った。
「さっき目にしたんだけド、あの腕輪、怪しいと思わないカ?」
「腕輪?」
「そう言えば、二人は腕輪をしてるな」
「あの腕輪を触ろうとするト、妙に嫌がル。何か有るかも知れなイ」
「腕輪を調べれば良いのか」
「問題は何と言って二人に渡して貰うかだナ」
「力ずくでいいんじゃない?」
「待て。精神年齢はアレでも、身体はいつもと一緒だ。さっきのストライカーみたいにぶっ飛ばされるのがオチだぞ」
「やってみなきゃ分からないんじゃないの?」
「じゃあお前がやれ」
「なんだよ。堅物の方が力強いだろ? あんたやりなよ?」
「い、や、だ」
「じゃあエイラ、お前が試しに」
「嫌ダネ」
「……分かったよ」
シャーリーはずかずかと近付き、強引に腕を取って腕輪を握り、何故かびりびりとしびれた挙げ句
二人から同時に強烈な平手打ちとげんこつを喰らい、床にのびた。
「言っただろう。こうなるって」
「私が悪ぅございましたよ、と」
「お姉ちゃん、怖い……」
「待て。お姉ちゃんは私だけだぞ?」
「堅物は何でそこに拘るのかね〜?」
そんな中、エイラはサーニャに近付いた。ミーナと美緒に微笑みかけながら、軽やかな音色を出していく。
「……楽しそうダナ」
「なんか、久し振りに弾いて、喜んで貰えたから」
「私と一緒の時は、あんまり弾いてくれないナ」
「だって……」
「……ホントだ。二人って微妙なんだね」
ミーナが興味津々とばかりに二人を見ている。
「私達をソンナ目でミンナー!」
「で。どうするよ堅物。このまま夕食で就寝とか、絶対に有り得ないだろ」
「そうだなリベリアン。さっきエイラが言ってた事が少し気になる。調べてみるか」
「どうやって」
「とりあえず話を聞いてみれば良いんじゃないか?」
しかし二人はいつの間にか、リーネと芳佳をそれぞれ抱き枕代わりに、眠りに付いていた。
「ふたりとも、甘えん坊さんなんですね」
「少佐! わたくしというものがありながら……」
「お。今がチャンス」
そーっと近付き、腕輪をぐいと掴んだ瞬間、先程と全く同じ目に遭い、床に這いつくばるシャーリー。
185dream fever 07/09:2008/12/18(木) 04:21:55 ID:OGHt5XbP
「懲りないな、リベリアン」
「いけると思ったんだけどねー」
「この二人、わざとやってないか?」
「それにしては演技に気合入りすぎだよ」
「起こすと厄介な事になるから今のうちニ、手掛かりを探すのはどうダ?」
「ほほう。と言うと?」
「中佐と少佐がこうなる前ニ、何処で何をしてたカ、調べル」
「なるほど。良いアイデアだ」
「では、まず二人が居たであろう、執務室へ行こう。……皆、そっとしておけよ。二人に触れるなよ。絶対だぞ?」
トゥルーデは念を押すと、顔にアザの出来たシャーリー、そしてエイラを連れて執務室に向かった。

机の上には、埃まみれの本が数冊置かれていた。
「なんだコレ?」
「ラテン語とブリタニア語で何か書かれてるな」
「ラテン語は読めないが……ブリタニア語は一応読めるな」
「……基地の収蔵庫に宝が有るって書いてル」
「宝、ねえ。また怪しいものを」
「それがあの腕輪なのカ?」
「収蔵庫って何処よ?」
「私は知らなイ」
「私も知らん」
「あたしもわかんない」
「……調べようがないな。とりあえず、手掛かりはあの腕輪だ。戻るぞ」

戻った先では、早くも争奪戦が繰り広げられていた。
「おどきなさい豆狸! 少佐はわたくしが!」
「だめです! ペリーヌさんは乱れきってます!」
「芳佳ちゃんそこどいて!」
「リーネちゃんまでどうして? 私達夫婦だよ? てかそのボーイズしまって!」
ミーナの耳元では呪文の様にエーリカが囁いている。
「トゥルーデとエーリカは夫婦で、トゥルーデとエーリカは夫婦で、トゥルーデとエーリカは夫婦で……」
「う、うん……」
頷き、顔をしかめながら眠るミーナ。
興味本位でそ〜っと腕輪に触れたルッキーニは、触れた瞬間に電流でも喰らったのか、びりびりとしびれた様子で、ぱたと倒れた。
「お前ら……何をやってるんだ!」
「ルッキーニ大丈夫か! 起きろ」
「バルクホルンさん、大声出しすぎです。起きちゃいますよ」
二人はうっすらと目を開けた。
もしや記憶が? と期待した一同だが、すぐに淡い希望はうち砕かれた。
「お父さん」
「……はいはい?」
「お母さん」
「……な、なぁに?」
「お祖父ちゃん」
「だから私はお姉ちゃんだ!」
「お、お姉ちゃん」
「そう、それでいい」
「頑固だね、堅物は」
「なあ、ちょっと良いカ、二人トモ?」
エイラは喧噪の中、目を覚ました二人に近付いた。
「私はこう見えてもホンモノの占い師なんだゾ。二人の事も全て解るんだナ」
「ホント?」
「私の占いは当たル」
「嘘だっ」
周囲のツッコミには屈せず、エイラは続けた。
「今からやる占いにハ、その腕輪が必要なんダ。大丈夫、ちょっと見るだけだからナ。絶対に触ったり取ったりしなイ」
「本当?」
「嘘は言わないゾ」
「見るだけなら……いいよね?」
「そう、見るダケ。私に見せてごらン」
186dream fever 08/09:2008/12/18(木) 04:23:21 ID:OGHt5XbP
「はい」
二人は素直に、腕輪を見せた。じっくりと観察するエイラ。ひとしきり色々な角度から見たあと、大尉ふたりに振り返って言った。
「ルーン文字ダ」
「ルーン文字?」
「うんと昔に使われていた文字ダヨ。主にカールスラントやバルトランド、ここブリタニア等で使われてた筈ダゾ」
「ふむふむ、それで?」
「この文字は占いや呪術にも使われてイタ。だから、この腕輪には何らかの魔術か呪いが掛けられている……カモ」
「『かも』って、アバウトだな」
「見ただけじゃこれがせいぜいダナ」
「お姉ちゃん、何か分かった?」
ミーナが身を乗り出して聞いてきた。
「だからお姉ちゃんはこの私だけだと……」
「はいはいお姉ちゃんお姉ちゃん」
「離せリベリアン!」
「……そうダナ。見えたゾ。二人は結婚シテ、これからも幸せに暮らせるナ」
「本当? やったよミコ! ボク達結ばれる運命にあったんだ!」
「嬉しいわリーナ! 早速結婚式をしましょう!」
「……見ていて何か寒気がするゾ」
「お待ちなさい! ふたりが結婚など、このわたくしが絶対に許しません!」
「だからその物騒なレイピアをしまえって!」
「この泥棒猫!」
「待て、早まるな!」
遂に色々な意味でキレたペリーヌがミーナを狙い、鋭い突きを繰り出す。
しかし、いつの間に持っていたのか美緒の扶桑刀が素早く一閃し、レイピアを真っ二つに折った。
そのまま切っ先をペリーヌの喉元に突きつける。
「ひっ!」
腰の力が抜け、へなへなと崩れ落ちるペリーヌ。ゆっくりと刀を鞘に収めると、ミーナを心配して抱きしめた。
「こわい人はもうやっつけたから大丈夫よ」
「ありがとう、ミコ」
「少佐、記憶が無くても剣さばきだけは冴えてるな」
「しかも手加減容赦なしだナ」
「ペリーヌ、立てるか?」
「なんか、もうわたくし……どうでもよくなりましたわ」
風が吹いたら飛びそうな位の軽さで、ペリーヌは呟き、床に寝転んだ。
「なんか可哀想だぞ」
「……そっとしておこう」
「さて、良いカ? 二人とも聞くんダ。ここは魔法のお城。結婚するにハ、この腕輪を外さないと結婚出来ない決まりなんダナ」
「ええ!?」
「そんなあ!」
「そして、この指輪を代わりに付けると、めでたくも結婚の証になるンダゾ?」
二人に銀色の指輪を見せる。食い入る様にみつめるミーナと美緒。
「それ、何処で仕入れた?」
シャーリーが横からヒソヒソ声で聞く。
「ロンドンの骨董品市。ふたつセットを特売で売ってタ」
「幾らで?」
「ハンバーガー四個分位かナ?」
「安いな」
エイラはミーナと美緒に向き直ると、決断を迫った。
「さあ、どうすル二人共? その腕輪を外して結婚するカ、腕輪をつけたままこのお城で死ぬカ」
「いや、怖いよお母さん!」
「お父さん、助けて!」
「中佐……私の胸で遊ばないでください!」
「坂本さん、私胸揉まれても困ります!」
「エイラ、何もそんなに驚かさなくても」
「さあ、どうすル、王子様とお姫様?」
「よし、ミコ、決めた! この腕輪を取って、二人で結婚しよう!」
「わかったわリーナ!」
二人は抱き合うと、そのまま腕輪をするっと外し、揃って気を失い、床に倒れた。
187dream fever 09/09:2008/12/18(木) 04:24:27 ID:OGHt5XbP
「中佐! 少佐!」
突然の昏倒に一同が慌てふためく中、ささっと素早く腕輪を回収するエーリカ。
「やっぱり。二人が外すと思わない限り外れない仕掛けなんだナ。さっきのシャーリー大尉とルッキーニ見て直感しタ」
「中佐と少佐どうするよ? 起こしてみるか?」
「多分、元に戻ってるハズ」
「あのままだったら、この部隊は間違いなく崩壊するぞ……。ミーナ、起きてくれミーナ!」
トゥルーデの声に反応したのか、ミーナはゆっくりと目を開けた。そしてがばと起き上がると、周囲を見回した。
「ミーナ?」「中佐」「ミーナ中佐」
一同から声を掛けられたミーナは、しばし呆然としていたが、ふっと息をつくと、皆を見て言った。
「どうしたの貴方達? 何してるの?」
「ミーナ、私が分かるか? お前の名は何だ?」
「どうしたのトゥルーデ、おかしな子ね。あら、美緒も寝てるし」
「おお!」
どよめきが起こる。
「やっぱりあの腕輪が原因だったのか」
「まさに呪いの腕輪ですね」
「ミーナ、さっきの事は覚えてるか?」
「さっきって?」
にっこり笑い、普通に首を傾げる。
「そうそう、美緒に言われたんだったわ。美緒、起きて」
美緒も気怠そうに頭を起こした。そしてミーナと全く同じ反応をして、呟いた。
「お前らどうした?」
「少佐も戻った!」
「何が、どうしたんだ」
「ああ良かった……のか悪かったのか」
「意味深ダナ」
「美緒、宝物は?」
「そうだった。……どうしたんだろう?」
「やだ、忘れたの? ……実は私も忘れたんだけど」
「そもそも、どうして私達は埃まみれなんだ?」
「ホント。……やだ、美緒も私も口のまわりべたべた。何これ?」
「全然覚えてないみたいダナ」
「どうする、二人にさっきの事言うか?」
「言ってどうにかなるのかヨ?」
一同は黙り込み、しばし沈思し、誰ともなしに言った。
「そっとしておこう」
美緒とミーナ以外、うんうんと頷く501のメンバー。
「そう言えば、あの腕輪どうした?」
「あれ? 誰か持ってたよな?」
「おい、堅物。それ……」
トゥルーデはちくちくとした違和感を覚えて腕を見た。例の腕輪がついていた。
「おわ? 何で?」
「はい、これ。私達お揃い〜」
エーリカが満面の笑みを浮かべる。腕には、先程の腕輪がしてあった。
「馬鹿! それを付けたら…ッ!」
トゥルーデがエーリカに触った瞬間、二人は雷に打たれたかの如く、突然びくりと身体を震わせ、昏倒した。
「ちょっ! 今度はこの二人かよ?」
「もう面倒ダナー」
「外せ! とにかく外せ!」
腕輪に触った瞬間、しびれて次々と倒れていく一同。美緒とミーナはその様子をじっと見ていたが、
「何やってるんだあいつらは?」
「楽しそうね」
とだけ言って、部屋に戻っていった。

end

----
以上です。「記憶喪失」ネタで他のパターン無いかな〜と考えた末、
ベタですが呪いのアイテムを使うのはどうかと。相変わらず尻切れですがご容赦を。
ではまた〜。
188名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 10:03:58 ID:kqeNekAb
>>187
何だコレwwツッコミ処が多すぎて何を言えばいいのか……とにかくGJ!
これだけ笑ったのは腹筋サーニャ以来だ。そしてハンバーガー自重www
そこだけエイラの脳内声がドナっちまったじゃねーかwww
189名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 14:12:13 ID:aMX6+TSi
サーニャ エイラ 夜間哨戒
「ボクの名前はサーニャ♪」
「ボクの名前はエイラ♪」
「「二人合わせてエイラーニャ〜、キーミとボクとでエイラーニャ♪」」
「「大きなネウロイ小さなネウロイ、力を合わせて撃墜し〜ます♪」」
190名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 14:35:39 ID:TIQ1xdK6
>>187
笑いどころも突っ込みどころもやたらと多すぎwかなり楽しませてもらったGJ!!

>>189
あまりにも自然に脳内再生されちまったじゃないかww
1911/3:2008/12/18(木) 15:46:26 ID:CTuJimuf
>>187
面白かったGJ!いつも思うのですが、一つの話からこんなにも話を広げられる才能に脱帽です。
というかお姉ちゃん変な方向に頑張りすぎだw

アホネン→エルマで、でもビューリングとアホネンしか出てこないいらん子話投下
―――

ああ、ひばりが飛んでいる。

基地の窓からその姿を見とめたミカ・アホネンは、人に見つからないように一人飛行場に出た。空は曇天
だけれども、その一部だけ雲が切れたように淡い青がある。訓練中なのだろうか、ひゅんひゅんとひとり
きりで、それでも悠々と基地の上を飛び回っている。彼女がたどった航跡が、きらきらとした虹色の線を
帯びていた。調子のいいときの彼女が本当に幸せそうに空を飛ぶことを、ミカは良く知っていた。…今は
『義勇独立飛行中隊』に所属している彼女もかつては一応自分の部隊でともに戦っていた『仲間』だ、
知らないはずがない。

「一人とは珍しいな」

背中から声をかけられたが、ミカは振り返らなかった。滑らかなブリタニッシュが耳について、ふん、と鼻を
立てて顔をしかめる。
話しかけてきたその相手はミカの反応などどうでもいい、といった風情で言葉を続ける。

「とりまきの『いもうと』たちはどうした」

いつもの彼女と変わらない、つまらなさそうな口調であるのにその声音に明らかな揶揄の意を聞いてとる。
何かを言い返してやりたい気持ちだったが、初対面のあの反応を思い出すに背後にいるブリタニアの
反抗児は自分の言葉など意に帰すこともなくこちらに冷やかしの言葉を重ねてくるのだろう。

ミカとて、いつも中隊の部下たちとともに行動しているわけではない。もちろん、一人になりたい時だって
ある。何より今日のミカは一応非番の身であり、よって外套にの下に身につけている衣服も普段よりは
ずっとラフなものなのであった。上着のせいでおそらくそれは相手方に見えていないのだろう。もっとも、
見えていたところで気にするような人間にも思えないけれど。

彼女の言葉など気にせず、ミカは目を凝らして空高く舞うその小鳥を見やることにした。鮮やかなロール
バレル、軽やかな上昇。まるで繋がっていた鎖から放たれたように、ひばりはのびのびと空に踊っている。
綺麗な飛行だ、と思う。けれどきっとあのヒバリは、自分がそんな気持ちでよく彼女の飛ぶ空を見つめて
いることなど知らないのだろう。

「逃がした小鳥が惜しくなったか、アホネン大尉?」
「うるさいわよ、ビューリング少尉」

普段はむっつりとしているくせに、どうして今はこんなに饒舌なのだろう。追及の手を緩めず、更に奥まで
伸ばしてくるビューリングにたまりかねて、ミカはようやく言葉を返した。ふ、という微かな笑い声が聞こえて、
つい挑発に乗ってしまった自分を恥じた。思わず握った手に力を込める。

「…別に、惜しくなったわけじゃなくってよ。ただ、元飼い主としては多少心配である、というだけ。」
「あんなにぼろくそに言っておいてか」
「すぐへこむ割には立ち直りも早いのよ。少しぐらいきつめに言わないとのほほんと笑っているだけなんだから」
「なるほど、さすが『いつも』見ているだけのことはある」
192名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 15:47:25 ID:vTF8h4DO
           、、 、            |``ヽ
           r'' 、>.、..-‐…‐―-....|i   ハ
              ヽ  >''. : :xi ト、: : : : : `ヽ__i|
             /.∨. .:.:.:,' !!  ∨ :-=ニ二ハ     
.            /ニ/= .://  i|   ヽ__: : : : :!::.     この指輪ハンバーガー四個分位なんだよ?
         ,'.:.:/ .:.:.::/´  {    リ: `: : :.:!:.i       
          i.::/! .::::/!   ヽ    ∨ハ.:.:!i:|      
           |:/ ! .:.イ '⌒ ,   ⌒ヽ ヽハノリ!
           {′! :::i〉,,,   ___ ,,,  从ノノ
           ハ:八    ∨:::Yノ   .イ爪リ
                  `}:ト... `   .. ィ:{:i:!ハ,′
                ノハr‐rト、 ..ィト.、:!:ノ ,′
              . .::´:::::i::::∨ハ∨:::ー‐ト、
.        iVVr‐::´::::::::Y。コ::::〈∧〉r‐‐、::::::\__ノVV!
.        J   |::::::::ノ´ 乂」::::::〃::::|T゚TY、::::::ヽ::ヽ し
       ` ー‐` ̄     }::::::::||:::::::¬:7 ` <.::::ノー ′
                  |::::::=リニ=:::彡、
                  /7ハ:::7キ:::::<゚<::\_   ) )
               ヽ.:/:::,'__i:::::::::ヽ'/ヽミメ、__..ィ
                 /\/\!::::::::/   }乂___彡′
                   /   /⌒ヽ     ,' ノ ノ
               /   ./    }   /
             /ト、./      ト、__/
               ヒン       ヒソ



                      、、 、            |``ヽ
                      r'' 、>.、..-‐…‐―-....|i   ハ
       |              |    ヽ  >''. : :xi ト、: : : : : `ヽ__i||
      │   ヽ/ ``    !    /.∨. .:.:.:,' !!  ∨ :-=ニ二ハ   
      │    !_     ',   /ニ/= .://  i|   ヽ__: : : : :!::.    
       |            〉  ,'.:.:/ .:.:.::/´  {    リ: `: : :.:!:.i 
       |   ‐┼┐ヽ   / _N、i.::/! .::::/!   ヽ    ∨ハ.:.:!i:|  
        |.    │亅     |  〉 |:/ ! .:.イ '⌒ ,   ⌒ヽ ヽハノリ!:!i7  
       /           |  ヽ {′! :::i〉,,,   ___ ,,,  从ノノ::::::i!:|
      '⌒ヽ    |      |  /ヾノハ:八    ∨:::Yノ   .イ爪リ:!    
        |     |      |   !/ヽ:.:.:.:.゙`}:ト... `   .. ィ:{:i:!ハ,′    
          |           |       ヽ:.:.:.:.:ノハr‐rト、 ..ィト.、:!:ノ ,′
        │    /     |      丶. .::´:::::i::::∨ハ∨:::ー‐ト、       
          |   /ヘノ    !      丶:.:|:.:.:\「:.7/.:.:.:/   ,ィ   
       |            ',          ヽ!:.:.:.:.:.ヽ':.:.:.:.:.:/ ,ィ´│
         | ,ヘ /⌒ヽ  /⌒丶          |:.:.:.:.:.:.トi:.:.:.:.://:.:i  | /⌒ヽ
         |/  !/     V               |:.:.:.:.:.:.|:l:.:.:.:.'´:.:.:.:.|  |/     \
           ′                   |:.:.:.:.:.:.|:.!:.:.:.:.:.:.:.:,イ  ′
                          `┬-、;,;,:. ri¬Tヽヽ
1932/3:2008/12/18(木) 15:47:36 ID:CTuJimuf

掛けられた言葉と煙る煙草の匂いに、顔をしかめてミカは振り返る。まったくもってつまらない、といった
風情の表情で、煙草をふかしている少女─ビューリング─がそこにいた。しかしその目線はミカのほうには
ない。彼女もまた空を見上げて、恐らくはミカと同じもの、つまり今基地の上を飛んでいる青空の切れ端、
ひばりの家名を持ったストライクウィッチの少女を眺めているのであった。

「放り出したのは魔法が効かなかったからか?」
「…だったらどうなの」
「気になっただけさ。」

いけない、完全にあちらのペースだ。悔しさに唇をかむ。あちらはこちらを見てさえいないのに、彼女の言葉
一つ一つにこんなにもうろたえている自分がいるのだ。…どうしてわかるのだろう。今まで誰も気付かな
かったのに、指摘もされなかったのに。

『いもうと』。それは、魔法の言葉だった。
ウィッチとて、魔力を持つだけの少女に過ぎない。そんな少女が武器を持って、ストライカーを履いて、異形
の者たちとの戦いに繰り出すのだ。死ぬ危険性だってある。それは戦いによってのみではなく、例えば
ストライカーの故障だとか、天候の良し悪しででも。『空を飛ぶ』と言うことは、それだけの危険が伴っている
のだ。
そんな空の上で、一体誰を頼ることが出来るだろう?それはやはり、同じストライカーを身につけた『仲間』
だけでしかない。逆を言えば、仲間を信じられないならそれはストライクウィッチとして致命的な欠陥となる。

だからミカは魔法をかけることにした。「いもうとになりなさい」と囁いて、その体を抱いて。自分こそがあなた
を守る存在であると、そして隊の仲間たちもまた、同じ気持ち、同じ立場であると。
そうしてきっかけを与えれば仲間意識を植え付けるのは容易い。一つの同じ気持ちを抱いた集団は、一人
一人の能力に劣るものがあろうとも一人のエースに勝ることが出来る。
そう、最初は、そんな気持ちからだった。

「ひとりでも足並みがそろわない人間がいれば、そこで隊全体の歩みが止まるわ。
 そんな『いらん子』は部隊にいらない。落ちこぼれでしかないの。」

最初で最後に、彼女の頬に触れたそのときの、潤んだ瞳を思い出す。お決まりの言葉を囁いて口付けを
しようとしたら、恐ろしいほどの機敏な動きで避けられてしまった。──それ以来、自分の半径3m以内に
彼女が近づいてきたことはない。

これはいけないと、ミカにも分かっていた。ウィッチとしての能力はメンタルな面が大きく関わる。このままで
は隊の統率に関わるし、なにより、彼女にとってもよくない。
それでも自分の隊に置いておいたのは、そして同じカワハバ基地に配属されるという『スオムス義勇独立
飛行中隊』の中隊長に推したのは。

「…知っていて?私が本気で落とそうとして落ちなかった娘は、世界中でまだ、一人だけなのよ。」

薄幸そうな趣を持って、淡くはにかむその小鳥にまだ未練があるからだ、など、目の前で煙草をふかして
いるビューリングには口が裂けても言えない。言いたくもない。泣きながら空を飛ぶ、小さな小さなあの
ひばり一匹落とせずに、今もひそかに懸想しているなど。
1943/3:2008/12/18(木) 15:48:42 ID:CTuJimuf

近づいてくることは決してないくせに、今でも彼女はミカをかつての隊長として慕っているように思える。悪く
言えば傷ついた顔をするし、彼女がネウロイを撃墜した報を聞いて「よくやったじゃない」と隊全体に声を
掛けたら本当に嬉しそうな笑顔を浮かべていた。そうして彼女はいまでも優しいから、ミカは微かに期待を
寄せてしまうのだ。

ふと、ビューリングがふかしていた煙草を下ろしたので、どうしたのかと空を見たら彼女が降下を始めた
ところだった。ふい、と何も言わずにきびすを返す灰色の頭に、思わずミカは声をかける。

「どこに行くのよ」
「貴官には関係のないことだ」

どうせ訓練から戻ってきた彼女を迎えにいくのだろうに。最初から答えが与えられるとは思っていなかった
が、こうもはっきりぼかされると腹立たしい。…かと言ってミカが同じことをしたとしたら、あのひばりは文字
通り裸足で逃げ出すであろうことは目に見えていた。近づくことさえ許されないなんて、なんと言う拷問
だろう。それだのにいま、このブリタニアの不良反抗少尉ときたらそれを容易く出来るのだ。それなのに
たぶん、そういったことを気まぐれにしかしてやらないのだろう。たぶん今している、今からするそれだって、
きっと気分的なものでしかない。

「エルマは煙草の煙が嫌いよ」

やっかみ半分に叫んだら、ぴたり、とその歩みが止まった。そして歩きながらふかしたままだった煙草を
ぽい、と地面に捨てて足で握りつぶす。そしてまた遠ざかっていこうとする背中。

「あら、いいの?ヘビースモーカーさん」

重ねて言ってやると、歩きながら振り返ってビューリングが言葉を返してくる。曇天の空から、白い雪が
舞い降りてきた。通りで冷えてきたはずだ。おかげでビューリングの表情が見えない。けれど、微かに
笑っているように思える。

「今はコーヒーが飲みたい気分なんでな」

そのコーヒーを入れてくれるのが誰なのか、そんなのはもう愚問なのだろう。わざわざ尋ねる気にもなれ
なくてミカは基地に入り込んでいく背中を見つめ、はあ、と白いため息をついた。


―――
以上です。
いらん子4巻が出たらいろいろ困ることになりそうですが、まだ出てないのをいいことに勝手に補完
あ、21X2w2Ibでした。さむいといらん子が書きたくなりますね。
そろそろタイトルつけられない病をなんとかしたい
195名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 16:08:33 ID:WxgUiI/v
女の子すきーは地獄行きと言う割りにもてもてのエルマさんだ

相変わらずいい文章を書くなあ・・・世界で2人ぐらいしかいないといわれるアホネンスキーの俺にはたまらんばい
196名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 16:12:52 ID:KEDjeCla
あれ? さっきまで電車の中で一人妄想してニヤニヤしてた話が爆撃されてるw
相手はやっぱりビューリングさんだし! 一体どうなってるんだ!?
それにしてもいい話だ……。アホネンさん、実はすごくいい人ですよネ
197名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 16:31:39 ID:NMjDeBaX
GJ!アホネンさん頑張れアホネンさん。無害をアピールしつつ誠実さを前面に出していけばまだ可能性はあるはずだ!

最近なんかいらん子多いなー。しかしメインキャラなのにハルカの出番の無さは異常。
まぁ本編であれだけやってりゃ妄想の余地が無くなるのも当然といえば当然か。
198名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 16:49:22 ID:WxgUiI/v
関係ないがカールスラントから戻ってきた武子さんに顔向けできない智子さん
しかし武子さんも坂本少尉に心を奪われておりやはり親友類は友を呼ぶんですね、どっとはらい
という電波を受信したのでゴミ箱に放り込んだ
199名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 17:32:28 ID:IkMuxMMO
手を繋ぐことで魔力が増幅されるらしいから粘膜と粘膜を(ry
200名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 18:00:56 ID:ORIawxsS
そして増幅した魔力がそこらへんを超えちゃって、愛の結晶が産まれるんですね。わかります。


子育てネタっていうのもいいな。
201名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 18:39:07 ID:KjxsoZDp
基地の正門で捨て子を朝錬帰りの少佐が拾って、皆が右往左往する。


坂本「ははは!すまないがだれかミルクを用意してくれないか?」
芳佳「どうしたんですか・・・その子?」

ミーナ「まさか・・・美緒・・・隠し子・・・」
ペリーヌ「そんな・・・少佐に・・・お子さんが・・・」

リーネ「キャ!そんなところしゃぶってもお乳出ません!!」
シャーリー「はは・・・わたしはママじゃないぞ・・・」

エーリカ「ついてないな・・・なーんだ・・・女の子か」
トゥルーデ「女の子・・・妹」

サーニャ「かわいい・・・」
エイラ「サーニャの次にかわいいんダナ」

ルッキーニ「ねぇ!赤ちゃんってどこから来るの?」
一同「・・・」
202名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 18:52:44 ID:NMjDeBaX
エイラ「かわいいナ」
サーニャ「うん…(私には言ってくれないのに…)」
203名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 19:29:13 ID:vTF8h4DO
シャーリー「どうしたんだよふて腐れて?」
ルッキーニ「だってシャーリー最近あの子供の世話ばっかりしてるから・・・」
204名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 19:31:22 ID:ORIawxsS
>>201
「あたしが手取り足取り教えてやるよ」
「いやいや、いい加減なリベリアンじゃ信用出来ないから私が個別講義をしてやろう」
と言い合いを始めるスピード狂とお姉ちゃん。

>>202
「・・・エイラの方がカワイイよ?」
「ナッ?! ・・・さ、サーニャの方がカワイイに決まってるダロ!」

自分が言われて嬉しいことは人にも言って上げなさいって、ばっちゃが言ってた。
205名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 19:52:03 ID:3fmBycSA
ここってちょっとした小ネタでも書いてくれる職人が多過ぎだろw
というかほんとここの住人は妄想力が凄い
206名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 19:59:33 ID:vTF8h4DO
今の記憶喪失ネタもそうだが前のリーネイラネタもイベントでの関係図からの派生だよな?
エイラ→サーニャ→芳佳←リーネでまさかあそこまで良作が生まれるとは・・・・恐ろしいスレだぜ
207名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 20:13:47 ID:WxgUiI/v
>>204
>「・・・エイラの方がカワイイよ?」
>「ナッ?! ・・・さ、サーニャの方がカワイイに決まってるダロ!」
>自分が言われて嬉しいことは人にも言って上げなさいって、ばっちゃが言ってた。
俺は今天才を見た
208滝川浜田:2008/12/18(木) 20:17:57 ID:DByBmyTA
皆さんこんばんは。
今、空前の記憶喪失ブームみたいなので、流れに乗って記憶喪失話投下します。

もちろんシャッキーニで参ります。
209名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 20:20:28 ID:NMjDeBaX
「リ、リーネちゃん!お、おっぱい触ってもいいよ!」

「ふむ、つまりみんなにもお姉ちゃんと言ってあげるべきだということか。いや待てよ、しかしそうすると私が妹になってしまうのでは(ry
210滝川浜田 『階段と記憶喪失』:2008/12/18(木) 20:20:44 ID:DByBmyTA


「うわあぁぁぁぁぁ!!」

シャーリーが、足を滑らせて階段から落ちた。
そして、ドシーンという大きな音とともに、シャーリーは頭を激しく打った。

「だっ、大丈夫っ!?シャーリー!」
「………」
「ど、どこか痛いのっ!?」

次の瞬間シャーリーから出た言葉は、あたしの時間を凍らせた。

「……貴女、誰ですか……?」
「……………………………………へ?」


――階段と記憶喪失――


…そう、シャーリーは今までの記憶を失っていた。
階段から落ちて頭を打った…だなんて、ちょっとマヌケな気もするけど、今はそんな事言ってる場合じゃない。

「これ…覚えてる?」
「…いや…何も……」
「そっか…」
「…あの…すいません…私の為にルッキーニさんがいろいろしてくれてるのに…」
「ああ、それはいいよ。あたしも好きでやってる事だし。うん」

ストライカーユニットを見ても思い出さないなんて…相当酷いみたいだ…
それにしても、あたしに敬語を使うシャーリーは新鮮だけど、ちょっと変な感じ…

「ルッキーニさん、シャーリーさんの様子はどうかしら」
「…ストライカーユニット見ても思い出さないみたいで…」
「そう…」
「でも、焦らずじっくりやります」
「そう、でもあまり無理はしないでね。逆効果になる事もあるようだから」
「はい」

そしてあれからあたしはシャーリーにいろんな物を見せたりしたけど、シャーリーは一向に記憶を取り戻さない。


211滝川浜田 『階段と記憶喪失』:2008/12/18(木) 20:23:30 ID:DByBmyTA
「しかしリベリアンの記憶は元に戻らないな」
「……シャーリー…」
「心配するな。きっとヤツは記憶を取り戻すさ」

そう言うと、大尉はあたしの頭を優しく撫でてくれる。

「…うん、ありがと…」


いくら何を見せても記憶が戻らないシャーリー。

と、あたしの頭の中に悪魔が降りてきた。

…そうだ、記憶を失っている今だけでも、シャーリーをあたしのモノにしちゃおう…

「いっ、いやダメダメ!シャーリーは記憶を失ってるんだよ!?
そんなシャーリーにそんな事っ…!!」

―いいじゃん、こんな機会でも無いと、想いを告げるなんて一緒不可能だよ?―

―ダメだよ!シャーリーは記憶をなくしているんだから!
そこにつけ込むなんて最低だよ!―

あたしの中の天使と悪魔が頭の中でせめぎ合う。

―――――――――――――――――――

「ねえ、シャーリー」
「はい?なんですかルッキーニさん」
「一つ教えてあげるよ」
「はい」
「実はね、あたしとシャーリーは恋人同士だったんだ」
「…私とルッキーニさんが…?」
「そう!もうそれはそれはラブラブだったんだから!」
「そうなんですか…すいません、その時の記憶も無くて…」
「いいよいいよ、徐々に思い出してくれたら」
「はい、ありがとうございます、ルッキーニさん」

そう言って、シャーリーはニコッと笑う。

…負けた。
ああ、あたしはあたしの中の悪魔に負けた。
っていうか、記憶をなくしているシャーリーに想いを告げるってどんだけ卑怯なんだあたし!

徐々にあたしの中で罪悪感が沸き起こってくる。

「ああ………」

…ゴメン、シャーリー…

212滝川浜田 『階段と記憶喪失』:2008/12/18(木) 20:24:43 ID:DByBmyTA



―――――――――――――――――――


「ムニャァ…」

あたしはぐっすり眠っているルッキーニの元へと近付く。

「…さっすがシャーリー…」

寝言を呟きながら、眠っている。
頬をつねるも、起きる様子もまったく無い。

「…お前、嘘なんかついちゃダメだぞ…?」

あたしはぼそりと呟く。

「ま、でもあたしも人の事は言えない…か」

…そう、あたしは記憶を失ってなんかいない。全部嘘。全部演技。
我ながら巧い演技だと自画自賛してみる。

確かに頭を打った時、一瞬意識が飛びかけたけど、記憶までは飛ばしてない。

じゃあ、なんで記憶喪失のフリをしたか。

決まってる。ルッキーニの気を引く為だ。いつまで経ってもあたしに想いを伝えてくれないから、あたしは一計を打った、というワケだ。

ちなみに階段で足を滑らせたのは、本当に事故で、滑り落ちている途中で咄嗟に記憶喪失(のフリ)を思い付いたのだ。

「ルッキーニ、ゴメンな、記憶喪失のフリなんかして。
…でもお前だってあたしと恋人同士だったなんて嘘ついたからお互い様、だよな?」

あたしはルッキーニの唇にキスをする。


―――――――――――――――――――
翌朝

「おはよう、シャーリー!」
「おはようございます、ルッキーニさん」
「今日も頑張ろうね、シャーリー!」
「はい!」

…まだ、シャーリーの記憶は戻ってないみたい。
もう少し、シャーリーと“恋人同士”でいられる。
複雑だけど、ちょっと嬉しいな。

そして、あたし達はニコニコ笑い合う。


((もうちょっと、このままで…))


END

213滝川浜田:2008/12/18(木) 20:27:59 ID:DByBmyTA
以上です。

あれ、記憶喪失ってなんだっけ?

あんまり話を複雑化するとまた長編化しそうだったので、こんな話になりました。
ああもう、よく分からん!
自分には記憶喪失話は書けない。
そう悟った冬の夜。

…では爺はここら辺で…
214名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 21:08:52 ID:vTF8h4DO
うおーじっちゃんGJ
シャーリー策士w
というかほんと記憶喪失ネタ流行ってるな
芳ーネは長編書いてくれてる人が居るし
エーゲルトかシャッキーニ、ミー緒は短編だけど有る
あれ?まさかのエイラーニャが無い?
215zet4j65z:2008/12/18(木) 22:10:48 ID:YkrWx2v+
相変わらず流行においていかれてマイペースでごめんなさい。
シチュエーションが季節外れなのもごめんなさい。
仕事中にガリガリSSかいてて同僚のみんなごめんなさい。
これは吹きだす!と思ってちょっとトイレいって、個室に篭って>>113読んでたりしてほんとごめんなさい。

っと、まぁ懺悔も終わったんで投下しまつ。

●スオムス1946 ピアノのある喫茶店の風景 チャオ!エイラーニャ!

 お昼のお客さんもひと段落して、気だるい午後。
 今日は夏の日差しがまぶしすぎて、暑い。
 開けられる窓は全開で扇風機も回しっぱなしだというのに、ちょっと動くと汗ばんでしまう。
 なんというか、イギリス南部での生活が長くて暑さに比較的慣れてるわたしがこれだけきついんだから、地元のおっちゃんたちは大変だよなぁ。
 喫茶ハカリスティ、ただ今午後の休憩中ダ。
 まぁ、休憩といっても、この時間はお客さんが途切れる事が多いんで事実上の休憩になってはいるんだけど、実際は一応営業中だったりする。
 たまに街道を通る旅行者やなんかの理由で中途半端な時間に食事を取りたくなった人とかがこういうタイミングで来ることもある。
 でもそういうのは本当にたまだから、サーニャと雑談したりピアノに耳を傾けたり、疲れてるときは寝てたりと、結構適当に過ごしてる。
 そんな自由時間に行う事の一つに庭の手入れとかもあったりするんだけど、これだけ暑いと動く気がしなくてここ数日ほったらかしになっている。
 ん〜、でも雨も降ってないし水くらいやるカナー、とか思っていると先にサーニャが声をかけてきた。

「ねぇ、エイラ。外の花壇にお水あげてくるね」
「あ、サーニャ! わたしがやるよ。日差し強くて暑いからさ、外の事は任せて」
「ん……でも、エイラ暑いの苦手でしょ。だからわたしがしようと思って……」

 う、これは譲らないモードだ。
 どうやらサーニャにも先読みの魔法が備わっているらしく、わたしが『サーニャにやらせたら悪いナー』って思ったことに限って先回りして、わたしよりも先にそれをやるって言い出すんだ。
 で、わたしがわたしが……の応酬で埒が明かなくなった事があって以来、こういうときは素直に折れて二人でやろうという事にしてる。
 お互いそんな空気が読めてるんから、一瞬だけ視線を交わしてからふっと力を抜いて微笑んで言うんだ。

「じゃあ……」
「ふたりでしましょ」
「ウン」

 花壇には季節の花が植えられていて、サーニャの愛称でもあるユリ科の花も幾つか咲いている。
 二人でじょうろを用意して、たっぷり水を入れる。
 魔法を使わなければ普通の十代の女の子なわたしたちにとって、その数kgの重さを運ぶっていうちょっとした動作だけで今の暑さでは汗ばんでしまう。

216zet4j65z:2008/12/18(木) 22:12:00 ID:YkrWx2v+
「ほんとに今日はアツイナー」
「うん、でもいい天気で気持ちいいよ」

 サーニャに言われてから空を見上げてみる。
 確かにいい天気だ。
 抜けるような青空っていうのはこんな空のことを言うんだろうと思う。
 地上に居るからこそ実感できる空の高さ。
 ウィッチとして空を駆けていたときには近すぎて気付けなかった綺麗な世界。
 暑さにうだって文句ばっかり言ってちゃ気付けなかった空の青さを教えてくれるサーニャは誰よりもステキで、こうして一緒に花壇にお水をやれるなんて、わたしってきっと世界一の幸せ者ダナ。

「ね、綺麗な空でしょ」
「ウ、ウン」

 想いが空からサーニャへと切り替わった絶妙のタイミングでその本人から声をかけられて、元々うだっていた頭が更に加熱してしまう。
 一気に頬が赤くなるのを感じたわたしのとった行動は、じょうろを自分の頭に向ける事だった。
 少し上を向いて、じょうろから優しく吹き出す水を、頭の天辺で受ける。

「あ! ちょっとエイラ何やってるの!?」
「ウン、暑いから花壇だけじゃなくてわたしも水が必要だと思ったんダ」
「エイラはいつも突拍子が無いね」

 そう言いながらサーニャも恐る恐る自分の頭にじょうろを向けて、傾ける。

「ひゃっ、冷たい……あはは」
「ははは、サーニャまで何ヤッテンダヨー」

 わたしの奇行に付き合って可愛らしいリアクションでこちらに微笑を返すサーニャを見て、ドキリとした。
 サーニャ、シャツが濡れて、服……ていうか、下着透けてるっ!
 そ、そりゃ普段からサウナも水浴びもお風呂も一緒だしいつも見てるものではあるんだけど、真昼間からこんなお日様の下はヤバイ!
 こ、これは頭の温度が下がんナイッテ!!
 目を閉じてもっと上を向き、顔から水をかけてみる。
 冷えろ〜冷えろ〜、わたしの頭。

「あ……エイラ。シャツ透けちゃってるよ。人通り少ないけど、早く着替えてきた方がいいよ」

 う……だからどうしてそこでそうやって指摘してくれちゃうかなぁ……。
 っていうかサーニャさん。
 あなたも透けてるんです気付いてください。
 あ〜どうしよう……なんか指摘するのも恥ずかしいし、でもサーニャのそんな姿を偶然通りかかった誰かに見せたくもないし……。
 と、悩んでいる間に爆音が響いてきた。
 ん〜……これって大型バイクかな? もしかしてまたビューリング?
 よく聞いてみると二つ分聞こえるカナ? 聞こえる方向はヴィープリ方面か。
 おっと、サーニャを隠さないと。別にわたしのは少しくらい見られても構わないからナ。
 さりげなく道路側に対してサーニャの遮蔽になるように移動しながら街道の向こうを見やる。

217zet4j65z:2008/12/18(木) 22:12:37 ID:YkrWx2v+
「また、ビューリングさんかな?」
「でも二台分ダナ」
「誰か、友達でも連れてきてくれたとか、かな?」

 そうこう話す間に爆音は近づき、視界に入ってきた。
 片方はなんとなく見覚えのあるブリタニアのブラウシューペリア。
 もう片方はリベリオンバイク、か?
 そして2台がスピードを緩める気配は無く、むしろストレートに入って加速し、乾いた未舗装道路からもうもうとした砂埃を巻き上げながら一気にわたしたちの目の前を駆け抜けた。

「ウワッ……ぷ、ごほごほっ、ダイジョウブカ? サーニャ」
「ケホッケホッ……うん、なんとか……でも、今のって……」
「ウン、ビューリングと……、」
「もう片方はシャーリーさんに見えた」
「ソウダナ」

 なんか、変な組み合わせだな。
 っていうか、レース中なのか? うん、キットソウダナ。そう考えるといろいろ納得がいく気がする。
 いや、むしろ見間違えダナ。シャーリーがこんな所に居るはずないしナ。
 それはそうと水被った上から砂埃を被ったんで、二人ともすっかり泥んこ状態。
 お客さん来てもこんなんじゃ対応はムリダナ。

「ま、とりあえずさ。ちょっと店を閉めて水浴びしよう」
「うん、その方がいいね」

 看板をCLOSEにひっくり返して、手早く済ませる為にサウナは無しでひとまず水だけ浴びる。
 暑かったからホントに気持ちイイナー。
 ってなんか聞こえる。

「サーニャ、何か言ったカ?」
「ううん、何も……表の方から、声がしてる?」

 声を気にしながらも、振り返って視界に入ったサーニャの姿に見とれる。
 青空の下の裸身に心奪われて、一気に顔が赤くなるのを感じる。
 夜空の藍も、夕暮れの橙も、こんな青空の蒼も、どんな背景をバックにだってキラキラできるなんて反則だよサーニャ。
 あああ……シマッタ! 折角頭から水被って冷やした分の体温がチャラじゃナイカー!

「お客さんかも。すぐに行きましょ」
「あ、ウン」

218zet4j65z:2008/12/18(木) 22:13:10 ID:YkrWx2v+
 表を気にしていたのか、そんなわたしの様子には気付かずに露天の水浴び場を後にするサーニャ。
 まぁ、気付かれない方がイインダケドナ。
 急いで服装を整えて店をOPENしにいく。
 建物の外から回り込んで表側へでると、小さめのバイクが止まっていて、オープンヘルメットとゴーグルをつけた小柄な少女が立っていた。
 少女はわたしたちの姿を見つけると、底抜けに明るい第一声と共にメットトとゴーグルを外しながら走りこんできて抱きついてくる。

「チャ〜オ〜、エイラ〜ニャ〜」
「わわっ、お、オマエー」
「ルッキーニちゃん!?」
「っていうかナンダヨーソノ略称」
「にゃふ〜、気にしない気にしない。二人セットで呼ぶのに便利でしょ〜。もー、折角遠路はるばる来たってのにお店閉まってるから焦っちゃったよ〜」

 わたしたちの首に抱きついて順繰りに頬ずりしながら、健康的に日焼けした肌の少女が笑顔で挨拶じゃれる。
 見た感じ髪形が変わって身長は伸びて体つきも顔つきもちょっと女らしくなったけど、ここまでの反応を見るにもしかして中身はあんまりかわってないのカモ。

「ちょっと暑くて水浴びしてたんダヨ」
「エ〜、暑いかなぁ? むしろ涼しいでしょ〜スゴク過ごしやすいよ」
「オイオイ、この陽気のどこが涼しいんダヨ」

 ロマーニャは暖かいっていうし、そういえばコイツ北アフリカにも言ってたはずだからナー。
 暑いの基準が違うんだろうな。

「でもルッキーニちゃん、来てくれるなら先に言っておいてくれればちゃんと歓迎できたのに」
「にゅは? あるぇ〜……連絡して無かったかな? ま、結果オーライっ! 今から歓迎してくれればイイと思うよっ」
「アバウトだなぁ……ま、いいや。ホラ、中入れよ」

 店の扉を開けて、迎え入れる。

「おっじゃまっしま〜っしゅ」
「はい、いらっしゃいませ。ルッキーニちゃん」
「よく来たナ」

 店に入りながら、ヘルメットを被る都合かバレッタでアップにしていた髪をとくルッキーニ。
 ツインテじゃないのも新鮮だよな。そんな風に思いながらルッキーニを見てると目が合った。 

「にゃは、でもさ〜。エイラカッコイイね」
「エ?」
「男物の服が似合ってる〜。モテモテでしょ〜」

 出し抜けにほめられて照れる。
 まぁでも、もしもわたしの姿がかっこよく見えるなら、それはサーニャが合わせてウェイトレス姿をしてくれてるから、相対的によく見えるんだぞ、キット。 

「ソ、ソンナコトナイッテ……」「ウン」

 ん? いまわたしが喋るのにあわせてサーニャが何か言ったかな?
219zet4j65z:2008/12/18(木) 22:14:23 ID:YkrWx2v+
「そ・れ・と〜……エイッ」
「ひゃっ!?」

 おもむろにサーニャの、その……おっぱいを正面から両手で鷲掴みにするルッキーニ。

「オイッ、何やってるんだヨッ!」
「ああっ……ゃ……めっ……」
「ニュオオオオ〜! おっきくなってるよっ! これは〜……うにゅっ! 努力賞!!」
「ヤメロッてぇのっ!」

 間に入って引き剥がす。解放されてから波目でうずくまるサーニャ。
 これはちょっと許せないぞルッキーニ! と、叱ってやろうとしたら、先にルッキーニが口を開く。

「あ……ちょっとやりすぎちゃった……ゴメンね、サーニャ」
「あ、うん。驚いただけだから……でも、親しき仲にも礼儀有り、だよ。ルッキーニちゃん」
「うん、ほんとにゴメンね。久しぶりだからちょっと調子に乗っちゃった」

 お〜、コイツも何時までも子供じゃ無いんだな。自分から謝って、サーニャも許してくれてるんならわたしがもう何も言う事あ無いな。
 でも、少しくらいは仕返しが必要ダナ。
 コイツの場合は喜ぶかもしれないけど……。

「ふふ〜ん、おまえはどうなんダッ!」

 背後に回りこんで、ルッキーニのおっぱいを鷲掴み。そのままちょっと卑猥な感じに手を動かしてみる。
 モミモミ。
 お、おおっ! 意外といいサイズになってるじゃないカー。あの頃『これからっ!』って言ってたのは伊達じゃなかったわけダナ。ウンウン。

「ニャッハッフー。どうだー? エイラ?」
「うん、おっきいおっきい! 成長してるゾッ! 努力賞進呈ダッ!」
「エ〜? 銅賞くらいまで行ってるよ〜」
「いいかルッキーニ! 金がシャーリーで銀がリーネだから銅はミーナ中佐級ダロ。だからまだ入賞はしたけどメダルは貰えないヨッ!」
「にゅにゅっ、イキナリのりろんてきてんかいだよっ! そういわれちゃうと仕方ないから納得かな〜」

 納得しながらわたしの方に体重を預けるルッキーニ。

「あ、そうだシャーリーといえば……」
「そうだ! シャーリーってばひどいんだよっ!」

 言葉が被るけど、そんな事には頓着しないルッキーニはするりと体勢を入れ替えてわたしの胸に顔を埋めるようにしながら続ける。

220名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 22:15:09 ID:TIQ1xdK6
じっちゃんはやっぱりシャッキーニの神様だw

ま…まさかエイラーニャで記憶喪失ネタ、くる!?
このスレなら三人くらいの職人が妄想していてもおかしくないぞ…
221zet4j65z:2008/12/18(木) 22:15:23 ID:YkrWx2v+
「折角一緒に休暇合わせてスオムスまでバイク旅行に着たのにさ〜、途中で変なブリタニアのバイク乗りに抜かれてから熱くなっちゃってデッドヒート!」
「あ〜……やっぱりさっきのあれってシャーリーだったんだ」
「加速し始めた瞬間とかはかっこよかったんだけど、あっという間においていかれちゃったんだよ。つまんな〜い!」
「シャーリーって基本的には常識人だけど、スピード絡みになると周りが見えなくなるからなぁ……」
「でしょでしょ〜。道順は一応わかってたからここまで来れたけど、置いてくなんてひどすぎ〜」
「あっはっは。シャーリーらしいナー」
「ウジュー! 笑うなんてエイラもひどーい!」
「まぁまぁ、ホラ。これやるから機嫌直せよ」

 ひょいっと、カウンターに手を伸ばしてカラフルな小さい包みを手に取る。
 更にそこから一包み取り出して、それをルッキーニの目の前に持っていく。

「サルミアッキって言うんだ。スオムスじゃみんな大好きなお菓子ダゾ」
「にゃっは〜。ひどくな〜い! エイラ大好き〜」

 わたしの胸から離れつつ、器用にもシングルアクションでその銀紙包みを開いて親指で飛ばし、舌で受け止めてパクッ。
 ニヒヒ、さぁドウダ?

「ヴェー、ダディコデー! ぺぺぺっ」
「お〜、やっぱり舌に合わなかったか〜。どうもスオムスの人間以外お気に召さないんだよなー、コレ」
「やっぱりエイラもひど〜い! キライッ! 助けてサニャにゃ〜ん」

 なんか変な呼び方でサーニャに泣き付くルッキーニ。ロマーニャ語は難しいナ……。
 サーニャはいつの間にかカウンターの向こうへ移動して料理の用意をしている。
 流石に手早いなー……って何か様子が変な気がする。
 もしかしてサーニャ、何か怒ってないか?

「うん、エイラはひどいね。ルッキーニちゃん、お食事要るでしょ。スオムス料理とオラーシャ料理、どちらにする?」
「前に食べたシチューみたいなのが欲し〜。でも美味しければ何でもいいよっ」

 ルッキーニとの会話は普通だけど、やっぱりわたしに対して怒ってる気がする。いや、確実に怒ってる。
 うー……さっきのルッキーニの蛮行を止められなかったからか?
 でもサーニャも許してるみたいだったし……なんだなんだ!? 何がサーニャを怒らせたんダ……全然わかんないぞ!?
 そこから先は憂鬱な時間だった。
 ルッキーニの土産話とか色々あったんだけど、ルッキーニとわたし、ルッキーニとサーニャの間に破壊我が成立しても、わたしのサーニャの間にはなんだか必要最低限の事務的な話しか出てこなかった。
 大して忙しくも無かったのに、サーニャのピアノは無し。折角ルッキーニが来てるって言うのに歓迎の演奏しないなんて絶対におかしい。
 そのうち夕方になって夕飯のお客さんも入り始めて、シャーリーが引き返してくるのを待つっていうルッキーニには奥で休んでいてもらった。
 忙しくしてる間も、なんだかギクシャク。
 だいぶ慣れてはきてるんで失敗こそしなかったけど、この仕事をこんなにも辛いなんて思ったのは今日が初めてだ。
 気疲れでクタクタになった頃にお客もはけて、夜。
 夜といっても夏場のスオムスはまだまだ明るい。
 なんとなくそこに居にくかったわたしは、シャーリーたちを探してくるって言って外にでた。
 倉庫を開けてシュトルヒを見上げる。簡単にチェックを済ませてからなんとなくピンと来て、ガソリンを余分に積んでみた。
 ふわりと離陸。
 飛び始めてから思った。前にもこんな様な事あった気がするナ。サーニャがなんかよそよそしくなって会話がなくなった事。
 あれはお店が開店して、エル姉が来たときだったっけか……う〜ん。
 悩んでるうちに、視界に煙が目に入った。
 ナンダロ?
 機首を向けて接近してみる。するとそこには焚き火をしている二人の女性の姿があって、その傍らには二台のバイク。
 あ〜、おっぱいで解るナ。あれはシャーリーだ。間違いない。
 高度を落として近付けて窓を開け、旋回しながら大声で叫ぶ。

222zet4j65z:2008/12/18(木) 22:16:04 ID:YkrWx2v+
「オーイ、お前らそんな所で何やってんだぁ?」
「お〜、エイラ久しぶり〜!」

 叫び返しながら手を振るシャーリー。なんか心配して様子見に来たのがあほらしいほどにのん気だ。
 で、もう一人の女性――まぁ案の定ビューリングだったんだけど――がシャーリーに何事かを話しかける。
 内容に頷いてからまたこっちを見て叫ぶ。

「お〜い、エイラぁ。ガソリン分けてくれ〜」
「降りるからちょっと待ってろー」

 やっぱりガス欠かよ。まぁそりゃあれだけアクセル全開でここまで走ってくればガスも足りなくなるよな。
 むしろ誰でもいいからサーニャの機嫌を直してわたしに欠乏したサーニャ分を補充させて欲しいよ……。
 落ち込みながらも冷静に、街道に向けてタッチダウン。白夜なのと焚き火の明かりがあったお陰で意外とすんなり降りられた。
 二人が寄ってくるまでに後席に積んでおいたタンクを降ろす。

「ホラヨ」
「フム、ガソリンを余分に持ってきていたのか」
「へー。随分と準備がいいな」
「わたしの魔法忘れたのかよー」
「いやーほんと助かったよ。流石エイラ様! スオムスのトップエースは頼りになるな〜……って、どうした? なんか雰囲気暗いぞ」
「なんでもない」
「なんでもないはずがあるかよ。ルッキーニに元気分けてもらえてないのか〜? お前がここに来たって事は、ルッキーニはそっちにいるんだろ」
「いるよ。ホラ、さっさと口だけじゃなくて手も動かせよ」
「はは〜ん、解ったぞ。サーニャ絡みだな」
「べ、べつにソンナンジャネーヨ」
「エイラはほんとサーニャが絡むとわかりやすいよな」
「だから違うって! さっさと入れろよ。タンクは回収するんだから」

 否定してるのに絡んでくるシャーリー。
 そんなしつこいリベリオン娘とは対照的にビューリングは黙々とタンクにガソリンを注ぎ込んでいる……と思いきやおもむろにこちらも見ずに口を開いた。

「倦怠期か?」
「ぷっ、あははははっ。ナイス突っ込みだぜ、ブリタニアン」
「もーお前らガソリン返せぇ!!」

 結局白状する羽目になり、シャーリー様のありがたいアドバイスを頂くことになったんだが、その内容はというと『平謝り』だそうだ。
 はぁ……何が悪いかわからないで謝るなんて誠意がなくて嫌なんだよナ……とか思ったところで他に手も思いつかないし、まず謝ってから何で起こっているかを聞いて、その後改めてできるだけのお詫びをするか。
 一応行動の整理がついたんで、相談したのは無駄じゃなかったと思いたい。
 少しだけ前向きになって帰路。
 私はシュトルヒを離陸させてサーニャの待つ我が家へ。
 二人はそのままバイクで引き返してくるらしい。って、そういえば詳しい事情を聞くの忘れたけど、寄ってくんだからそのとき聞けばイイカ。
 下方を振り返ってみるとだいぶ暗くなった街道をなかなかいいスピードで飛ばしてるヘッドライトが二つ。
 あのスピードならそんなに遅くなる前に着きそうダナ。

223zet4j65z:2008/12/18(木) 22:16:49 ID:YkrWx2v+
 果たして帰還した私を待ち受けていたのは、怖い顔をしたサーニャだった。
 その後ろでなんかニヤニヤしてるルッキーニもいたけど、サーニャの表情を見た瞬間にもう認識の外へと吹っ飛んでいた。
 え?え?え?え?え?何でそんなに怖い顔してるんだいサーニャ……わたしは、ソノ、ネウロイジャナイゾ。

「エイラ!」
「は、はひっ」

 強く名前を呼ばれる。
 のどは一気にカラカラになるのにごきゅりとつばを飲み込む。
 私は動けないし、何もしゃべれない。目線も動かせない。
 サーニャが肩を怒らせツカツカと寄ってくる。
 やっぱり私は動けない。
 サーニャは両手を胸の高さくらいまで上げた。
 ぶたれるのかな?
 諦めの境地にも似た状態。
 何があったかわからないけれど、きっと悪いのはわたしなんだから。
 サーニャがそうしたいのならすべて受け入れよう。
 静かに目を閉じる。
 彼女の思いを、受け止めるために。

「えいっ!」

 ふにゃ。
 もにゅもにゅ。

 え!?
 なんでおっぱい?
 目を開けると、ぎゅっと目を閉じたサーニャが正面から両手でわたしのおっぱいを揉んでいた。
 ちょ、ちょっと待ってくれこの世界。
 わたし、展開についていけてないぞ。
 っていうか、サーニャの手がわたしのおっぱい……。
 しなやかな指、控えめな力加減、目を閉じて、頬を赤く染めたその顔。
 うわわわわっ! ヤバイ、ヤバイッテコレ!!!

「エイラッ!!」
「ははは、はひっ!」
「エイラのはっ! わたしにとっては金賞ですっ!」
「はいっ!」

 叫ぶサーニャとその勢いに押されて頷くわたし。

「だからっ、わたしのも確かめて……残念賞でもいいから下さいっ!」 
「はいっ!!」

 って、確かめる?
 確かめるって……えええええっ!?

 その事実を認識したわたしが鼻血を吹いて倒れるまでの所要時間が極めて短かったって事は後で聞いて知った。
224zet4j65z:2008/12/18(木) 22:23:44 ID:YkrWx2v+
以上となります。
さすがに記憶喪失の話題が始まる前から書いてたせいでそっちは絡められませんでした。
もうちょっとシャッキーニカップルもうまく絡めるはずだったんですが、
【平和そうな感じ>>何故かサーニャ不機嫌>>エイラおろおろする>>結局バカップル】
という流れを重視して脇役に徹してもらっちゃいました。
といってもまだ訪問が終わってないんでネタができたら状況の続き書きます。

前スレでの戦闘話の方にいろいろレスありがとうございました。
書き忘れててレスいただいて思い出したんですが、ペリーヌのレイピアを活躍させるっていうのも話書いた理由のひとつだったな〜とかw
ネタしまわずにかっこいいペリーヌとかもっとあってもいいと思います〜。
225名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 22:34:26 ID:TIQ1xdK6
>>224
割り込んでしまって申し訳ない…

GJでした。成長したルッキーニ&サーニャとかニヤニヤの極み!とか思ってたら
エイラの金賞おっぱいを……!!これこそニヤニヤの極みだw
226名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 22:36:50 ID:c6YqK1RX
すばらしいぜサーニャ!
さかもっさんも「もうお前に教えることは何もない!」って言いそうな成長ぶりだ! GJ! 
227名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 22:43:46 ID:3fmBycSA
これはこの後の展開が気になるナ
エイラーニャで記憶喪失ネタは誰かがやってくれるはず
228名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 22:49:56 ID:cfJVi+Ax
記憶喪失ネタはやろうと思えばかなりのネタになるはず
今なぜかルッキーニを親分として慕う芳佳とかいうネタを受信したし
229名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 23:27:16 ID:DiPRhzqz
いつかの管理人さんの呟いてたやつを完全版にしてみた。反省はしていない。
萌え死にたい人にお薦めの危険なスレ ストライクウィッチーズでレズ百合萌え

・始スレからいるエースなら大丈夫だろうと思っていたら放送終了後に来たエースに20本投下された
>>1乙から3レス後のレスで次スレ記念のSSが始まっていた
・ふと思いついたので妄想を呟いてみるとリレーが始まっていた
・本スレに投下した妄想がインスパイアされ、百合スレを覗いたらSSが投下されていた
・初レスで思い切ってSS投下した、というか投下した後から初ですとかを宣言する
・レスが職人に火をつけ、ナースも「ネウロイも」全員SSにされた
・SS投下からあとがきまでの10分の間に次の投下が始まった
・埋め直前なら大丈夫だろうと思っていたら、埋めネタでSSにされた
・書き込みの1/3がSS。しかも妄想できないカプはないと言う都市伝説から「マイナーカプほど危ない」
・「そんなハイクオリティなわけがない」といって読みにいった新人が5分後エイラーニャまみれで戻ってきた
・「SSを読まなければ大したことはない」と保管庫を見に行った新人がないしょの基地探訪を見てハイテンションで戻ってきた
・最近流行っている投下は「燕返し」 妄想を書いたと思ったら瞬時にSSになって戻ってくるから
・妄想から以降100レスはSSに遭う確率が150% 一度投下されてまた投下される確率が50%の意味
・ストライク百合スレにおけるSS投下による萌え死に被害者は1日平均120人、うち約20人がエイラーニャ病。

>>224
何だこのエイラーニャめちゃくちゃたまらんじゃないかGJ!
エイラが目が覚めた後二人は微妙に気まずいながら確実に一歩進んだと実感するんだろうなあ。
230zet4j65z:2008/12/18(木) 23:30:26 ID:YkrWx2v+
っていうか重要なことを書き忘れてた。
>>1乙、前スレ乙、そしてココまでのみんなGJ

>>225 割り込みはお気になさらずに〜。
電車の中で金賞な展開を思いついて盛大ににやついてしまった身としては、
読んでくれてニヤニヤ感が伝わってくれたのなら非常に嬉しいですw
231名無しさん@秘密の花園:2008/12/18(木) 23:40:27 ID:6YGkQvTh
さーにゃんかわいいな
これは鼻血噴出するのもやむを得ない
後日ドキドキしながら目つぶってエイラにもまれるのを待つサーニャと
ぷるぷる震える手で揉もうとするけどなかなかもめないエイラが見える
232名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 00:37:56 ID:PN4Bbr30
>>230
さっき電車の中で読んでにやにやしてたw喫茶店続き待ってたよ、GJ!!
>「エイラのはっ! わたしにとっては金賞ですっ!」
>「だからっ、わたしのも確かめて……残念賞でもいいから下さいっ!」 
名言だ、名言すぎる
近くに居すぎて(大きくなったことに)気付かなかったんですね、分かります

ところで記憶喪失エイラーニャ、記憶全消しか部分消し(501配属されてからの記憶無し)かで
迷って足踏みしてるんだけど、どちらか希望があったら言ってくれると嬉しい
233名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 00:49:47 ID:hI4b9LQd
難しくなりそうなんだけど部分消しが面白そうだからいいかなぁとか言ってみる
234名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 01:09:11 ID:MnD+4kM6
どっちがどうなるか分からないから書きやすいほうでいい
235名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 01:38:03 ID:clwDBzY9
エイラーニャ、シリアスだったら過去だけ覚えてる部分消しが読みたいかな、とは思うけど…
お好きなほうでおねがいします
236232:2008/12/19(金) 01:54:53 ID:PN4Bbr30
好みも書きやすさもたぶんどっちも変わらないんだ
とりあえず部分消しで書いてみる、どうもありがとうございました

ちなみに多分、今まで書いた話を省みるにドシリアス以外の選択肢がない
237名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 03:24:57 ID:wleoEzbg
ここ最近のSSを全て読めてる奴いるのだろうか
238名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 07:16:40 ID:vT+dEBWC
保管庫殿のおかげで問題ないであります
どす黒い飴ちゃんをやろう

>>230
喫茶店きてたーw
成長したルッキーニはさぞ美少女なのだろうと考えると俺の股監督がわくわくしてくるよ
239 ◆eIqG1vxHTM :2008/12/19(金) 09:09:39 ID:ORCNZTRU
おはようございます
>>236エイラーニャで記憶喪失ネタ期待してます
さて昨日は寝てしまったので投下できなかったのを朝投下します
ちょっと話の進行が遅いけどちゃんと完結させるように頑張ります。
それでは-episode-4-です。
240Plural-episode-4-:2008/12/19(金) 09:10:10 ID:ORCNZTRU
Plural-episode-4-

その日から私は毎日宮藤さんと話をした。
宮藤さんは私の世話をよくしてくれて、基地の案内もしてくれた。
私達は敵と戦うために各国から集められたらしい。
敵――ネウロイ
まだこの目で見たことは無いが資料では読んだ。
あんな物と自分は戦っていたんだと思うと、記憶は無いけど怖くなる
今の自分には魔力の使い方もストライカーでの飛び方もまるで覚えていない
なんでも私と宮藤さんは新人で私の方がほんの少しだけ先輩らしい。
宮藤さんが基地に来た時は私が案内したらしい。

「わたしとリネットさんの部屋は隣同士なんだよ。部屋に戻れるようになったらいつでも来てね」

リネットさん
彼女は私の事をそう呼ぶ。リーネという愛称ではなく。
それは‘今の‘私と‘昔の‘私を別けているようで少し寂しくなる。
宮藤さんと私は親友だったらしい。私は芳佳ちゃんと名前で呼んでいたらしい
呼びたいな名前・・・・

「あの・・宮藤さん」
「んなに?」
「あっあのね・・昔呼んでたみたいに私達名前と愛称で呼んじゃ駄目かな?」
「えっ・・」
「ほっほら昔と少しでも同じようにすれば、記憶も戻るかもしれないから・・・・駄目かな・・・」
「そんな事無いよ!よろしくねリーネちゃん」
「うん芳佳ちゃん」

よかった。芳佳ちゃんの笑顔は不安な私の心を晴らしてくれる。
きっと芳佳ちゃんが居なかったら私は病室に篭もりっきりだっただろうに・・・

「さっ次はハンガーだよ。ここはストライカーが置いてあったり武器を保管してるんだよ」

ストライカー
これで私は空を飛んだんだろうか?
全然想像できない

「あれ?坂本さん?」

ふと見ると坂本少佐が居た
芳佳ちゃんと同じ国の人、気がついた私に今の状況を説明してくれた人だ。
241Plural-episode-4-:2008/12/19(金) 09:10:55 ID:ORCNZTRU
「あぁ宮藤にリーネかもう歩いても大丈夫なのか?」
「はい」
「そうか大分良くなったんだな」
「ところで坂本さんは訓練ですか?」
「いや違うリーネのストライカーと銃が届いたんでなそれの受け取りだ」
「私の?・・・でも私は」
「なに記憶の無いお前に戦いに出ろとは言わんさ、ただいつ記憶が戻っても大丈夫なように準備だけはしとかないとな」

本当に私の記憶は戻るんだろうか?
みんなはいつかきっと戻ると言ってくれる。私個人としてももちろん記憶は取り戻したい。
ただホントに戻るのか?
どうしても不安が絶えない

「そうだリーネ撃ってみるか?」
「えっ!」
「坂本さん!」

いかなり宮藤さんが怒鳴った
坂本少佐もかなり驚いたようだった

「リーネちゃんはまだ病み上がりなんですよ?そんな無茶させないでください!」
「あっあぁすまなかった、銃でも撃ってみたら記憶でも戻るかと思ったんだが、すまない軽率だったな」
「あっいえ・・・私も怒鳴ってすみませんでした」

驚いた
こんなに感情をあらわにする所なんて初めて見たからだ。
・・・・銃かぁ
確かに昔の私は銃を撃って戦っていたらしい
なら戦闘の時に無くした記憶なら、少しでもそれに近いことをすれば・・・

「私やります」
「リーネちゃん!」

芳佳ちゃんが悲痛な声で私を呼んだ

「ごめんね心配してくれたのに・・でも私は記憶を取り戻したいの」
「・・・・・」
「大丈夫なのかリーネ?なにも今日無理にしなくても・・・」
「大丈夫ですやらせてください」
「・・・・そうか」

そう言って坂本少佐は銃を持ってきてくれた
242Plural-episode-4-:2008/12/19(金) 09:11:26 ID:ORCNZTRU

「・・・・大きい」

思わず声に出してしまうほどの大きさだった
ホントにこんな大きな銃を私は持っていたんだろうか?

「持てるか?」

とてもじゃないが無理だ
どうやってこんな鉄の塊を持っていたんだろう?

「魔力は使えるか?そうすれば持てるんだが・・・」

そう言われて自然と魔力の解放が出来た。特に意識もせず普通に

「あっあれ?尻尾?」
「ほぅ記憶は無くとも体は覚えてるもんだな」

なんとなくこうかな?という風に力を入れただけだ
力が溢れてくる
あれだけ重そうだった銃が今では普通に持てている

「よしなら付いてこい」

そう言われ射撃場へと付いてって。



連れて行かれた先は海だった。

「向こうに的がある撃ってみろ」
「えっ!?」

マトって何処に?目の前には海しか見えない

「お前は視力を強化する魔法が使える。だから戦闘ではいつも長距離からの狙撃をしていたんだ」

だからこんなに大きな銃なのか

「今回は500m先に目標がある。本調子なら余裕だろうが病み上がりだしな」
「はい」

とりあえず銃を構えてみる
あれ?なんで構え方知ってるんだろ?
そう思いながらも自然と安全装置を外す
銃の扱い方なんて、記憶を失ってからもちろん学んでもないし撃ったこともない。
けれどなぜか自然と手に馴染む銃

「いいか集中しろ。目で見ようとするな頭で見ろ。遠くを見えるようにイメージするんだ」

難しい
イメージ??
とにかくどれだけ目で見ようとしてもまったく見えないので、言われた通りイメージしてみることにした。
向こうには的がある――距離500m
遠くを見る―目で見るんじゃない―想像するんだ―もっと――もっと遠くを――

243Plural-episode-4-:2008/12/19(金) 09:12:07 ID:ORCNZTRU
「ッ!」


パン!
耳元で大きな音が鳴った
耳がキーンとして耳鳴りがする

「ほうさすがだなど真ん中に命中だ」
「えっ?あれ?」

当たった?
確かに遠くのマトが見えた気がする・・・
見えた瞬間とっさに引き金を引いたてしまった。
まさかできるとは思ってもみなかった。

「よし、今日はこれくらいにしておけ。ゆっくり休むんだぞ」
「あっ・・・はい」

なんだか頭がフワフワする
ホントに自分はウィッチであんな大きな銃で敵と戦ってたんだなぁと改めて実感した。
これだけ銃の扱い方を覚えていたんだ、きっと記憶だっていつか戻るかもしれない。
そう考えると少し希望が見てきた。





芳佳ちゃんは訓練の時からずっと黙ったままだった。
どうしよう・・・なにか話を・・・けど目覚めたばかりの私には話のネタなんてなくて無い。
どうしようと?と考えていた時

「・・・・リーネちゃん」
「なっなに?」
「リーネちゃんはまた飛ぶの?」
「えっ・・・」
「またリーネちゃんは飛んでネウロイと戦うの?」
244Plural-episode-4-:2008/12/19(金) 09:14:42 ID:ORCNZTRU

ネウロイ―私達の敵
確かに私はネウロイと戦うためにここに居るらしい
今日は記憶を取り戻す足がけだと思い銃を撃ってみた。
なら次はたぶんストライカーで飛ぶ。
不思議と空を飛ぶのは怖くなかったたぶん私は知っている。
そらの飛び方を――

「私はリーネちゃんには飛んで欲しくない、銃だって撃って欲しくない」

自然と足が止まっていた

「もし・・・もしまた落とされたら・・・そう考えると怖くてリーネちゃんを飛ばすことなんか出来ない」

泣きそうな顔で語る彼女
本当に大切にされてたんだなと思う。
ホントは私だって怖い
未知の敵と戦うんだ怖いに決まってる
でも――

「ごめんね芳佳ちゃん・・・それでも私は飛ぶよ」

分かって欲しい私が飛ぶのは別にネウロイが倒したい訳では無いことを、私はあなたのために飛ぶんだと

「リーネちゃん!」

そんな悲しそうな顔をしないで欲しい
私だって悲しくなる。
芳佳ちゃんの気持ちももちろん分かるつもりだ
あれだけ懇親的に世話を焼いてくれたんだそれぐらい判る
ただこれ以上彼女を私で縛りたくはない。
いつまでも私への罪悪感に縛られたままになんかしておけない。
だから私は記憶を取り戻す。



to be continued next episode


245Plural-episode-4-:2008/12/19(金) 09:15:43 ID:ORCNZTRU

記憶戻らないだとあんまりにも暗く成りそうだったので、記憶は戻る方へ
なんだか思った以上に長くなってしまった。
ホントは次で最終回の予定がまだ中編のbパートくらい・・・
続きは今日か明日にでも
◆eIqG1vxHTMでした
246名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 10:01:45 ID:KQ2t28T6
>>245
リーネちゃん大好きな芳佳はほんとにかわいいと芳リネリアンの俺は叫びたい
戦い嫌いな芳佳にとってはもう戦場に出て欲しくないだろうなあ
次回も楽しみにしてます
247名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 13:15:39 ID:MnD+4kM6
空前の記憶喪失ブーム
248名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 15:13:56 ID:qRuP/Cqn
>>237


>>247
そろそろエーゲルがくるんじゃないかとウズウズしてる
絶対誰か書いてるだろw
249名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 15:21:25 ID:HyHTsoqm
本スレで出てる手記のような感じで書かれたSSとか無いだろうか?
後年、歴史学者が発見したという設定で

歴史学者の一人称→手記(メイン) というような構成で
250名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 15:35:13 ID:1ynAmdZ0
日記を残すような筆マメな連中かというと……。

お姉ちゃんとかシャーリーはそれなりに付けてるかも。
妹観察記録とかメンテとチューニング覚え書きになってそうだが。
251名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 15:41:40 ID:GoR5W6SN
エーリカはかなり詳細な飛行記録つけてると思う
戦術の研究家だろうし
25221X2w2Ib:2008/12/19(金) 15:59:03 ID:PN4Bbr30
どうもこんにちは。前スレ368(保管庫No.0524)のキャサリン×ウルスラの書き直しが完了したので投下
2531/2:2008/12/19(金) 16:00:38 ID:PN4Bbr30

姉のようだ。
彼女の朗らかな、暖かな太陽のような、そんな笑顔を見るたびに私はいつもそう思う。けれどそう、思っている
ことをきっと彼女は知らない。

「ウルスラ、どうしたね?」

どうやらいつのまにか、目で追っていたらしかった。
妙なイントネーションのブリタニア語とともに、彼女が私を覗き込んできたのだ。そしてニカッと笑う。驚きに私が
目を見開くと、彼女はその朗らかな笑みそのままに私の頭をわしゃわしゃと撫でるのだった。髪が乱れる、
といつも主張するのに彼女が聞いてくれたためしはない。どうやら私の頭は彼女にとって非常に『丁度いい』
位置にあるらしく、ふと思いつくと彼女は私の頭をそうやって撫でるのが常だった。

けれど私は知っている。
最初はぐちゃぐちゃにかき回すような乱暴なものだったそれが、いつの間にか手ぐしで梳くような優しいものに
変わっていることを。明るいのみだった笑顔がだんだんと柔らかな温かさを帯びて、慈しむような温もりを
持ったものに変わっていることを。それだから私は何も言わない。何も言わずにされるがままにすることに
している。だってそこで「いやだ」といったなら、彼女はとてもとても悲しそうな顔をするのだ。太陽のような笑
みを曇らせて、寂しそうに曇った笑顔を浮かべるから。

なんでもない、と私は首を振る。それでも彼女は私をまっすぐに見つめてくる。どうしたの?何かしてほしい
ことでもあるの?なんでもいいから、いってごらん?そう伝えようとするように。

姉のようだ、と、思うのは。
決して彼女と、自分の姉とを重ねているからではなかった。
だってずぼらでやる気無しで、私がついていないと何もしてくれなくて、そのくせ一度やる気を起こしたら何でも
さらりとこなしてしまう器用なあの姉と、やる気ばかりが先立って、なりふり構わずまさにバッファローのように
突っ込んでは結局失敗して色んなものを壊して回るこの人とでは似ていようはずがない。
私の姉と、姉というひと。私の中でそれとこれとは、同じ名前を持つくせに全く別の意味を持っていた。

ウーシュ、ウーシュ。私の愛称を何度も何度も繰り返して、なぜか楽しそうによく姉も私の頭を撫でたけれど
そのときに去来していた気持ちは今目の前の人に同じことをされて感じたそれとは全く違う。おんなじ顔、
おんなじ瞳、おんなじ体、おんなじ手足。そっくりな双子の姉にそれをされるのは何だか鏡に映した自分に
それをしているようで少し滑稽で、複雑な気分だったことをきっと姉は知らない。ウーシュ。あちらが私を
そう呼ぶことで、あちらと自分は別の存在などだとかろうじて実感できていた。

でも、今は違う。だって目の前の人と来たら私とすべてが違うのだ。金色の髪と青い瞳は同じだけれど、
少しくすんだ私のものと違って彼女のブロンドはまるで陽の光の化身であるように明るく、眩しいくらいだ。
目の色もたぶん、あちらのほうがいつもキラキラと輝いているのだろう。
そもそも彼女の体つきは、まだ私が成長途上であるということを差し引いても恐ろしく豊満で、どこもかしこも
はちきれんばかりに豊かで。隣に並ぶともしかしたら親子ほど差があるのではないかとさえ思う。特にそれに
憧れる気持ちはないけれども、ただひたすらに、眩しく思えるのだった。
2542/3:2008/12/19(金) 16:03:06 ID:PN4Bbr30

そう、私が彼女に思う『姉』というのは、『私の姉』といったような個人的なものではなくて、もっと形骸的な
ものだった。つまり世間一般でよく言うところの、姉のイメージ──私の中でそれが、この人のような存在で。
要は、どこまでもひたすらに明るくて、小さいことなど気にしなくて、何より背が高くて大きくて、包み込むような
柔らかさと温かさを持った、けれど母とは別の人。
私は彼女にそんな『姉』像をみる。

じい、と彼女の瞳を見つめた。何を伝えたいのかなんて自分でも分からない。けれど胸の中に生まれている
このなんと言い表せばいいのか分からない感情の揺らぎが、どうか伝わればいいのにと心のどこかで願い
ながら。
彼女もまた、何も言わない。ニコニコと笑ったまましゃがみこんで、私に視線を合わせてくれている。自分
よりもずっと背の低い私を慈しむように微かに目を細めて、そして私の髪をゆっくりと撫で続けている。私の
寡黙さを知ってなお、彼女は私の言葉をこうしてじっと待つことがたまにあった。普段はというと一人で好き勝手
にまくし立てて、私も巻き込んで、そうして満足げに笑うばかりだというのに。

柔らかな笑顔を浮かべながらも、これは神聖な儀式なのだといわんばかりに真剣な瞳を持って私を見つめる。
ああ、何かを言わなければ。思うのに何も言葉に出来ない自分が恨めしい。困ったことに私の頭は、こういった
ことに関する語彙は非常なほどお粗末だ。


「──キャサリン。」


ようやく口にしたのは、ぽつり、と木の葉から零れ落ちた雫のような声での彼女の名前。もしかしたらかすれて
聞こえなかったかもしれない。そもそも質問の答えにさえなっていない。それでも私はそれ以上、何も言う
ことができない。
それなのになんでだろう、キャサリンの顔は、どうしてかぱぁっと瞬時に輝くのだった。先ほどまで浮かべて
いた笑みとは明らかに違う、きらきらとした笑顔になる。そしてなぜかちょっとはにかんで、照れ隠しだと言わん
ばかりに私の頭の横辺りを緩やかに撫でていたその大きな手をてっぺんにやって、またわしゃわしゃと大きく
動かしてくる。
ねえ、どうして?どうしたの?首を傾げるばかりの私の心に、キャサリンはやっぱり、どこまでもまっすぐ、
なりふりも構わず、猪突猛進で単機突撃をかましてくるのだった。ねえ、いつもそう言う風にしていたら危ない
よって、トモコ隊長も、エルマ中尉も、みんなみんな、いっているのに。

「やっとしゃべってくれた。
 ──ウルスラの声、綺麗で好きね。だからもっともっと聞きたいって、いつも思うね」

へへへ、と鼻の下をかいて頬を少し赤く染めて。照れくさそうにそんなことを言う。頭は冷静にそうやって状況
を報告してくるけれど、実際のところ私はそれどころではない。脈拍数、体温ともに上昇、異常な発汗を確認。
被害は甚大です、との脳からの報告。
それだのにほら、この人と来たら僚機がそんな状態だって言うのに全く意に介すことなく、いつものように
朗らかに笑うのだ。
コアを打ち抜かれたネウロイはこんな気分なのだろうか。混乱に霧散していく意識の片隅で、がらにも無く
そんな感傷的なことを思う。次の実験の火薬量はどのくらいにしようかとか、考えている場合ではない。腕の
中にあった実験書がずるりとおちて、どさりと床に落ちた。大事な大事な実験書なのに。拾わなくちゃ。けれど
それどころじゃない。きらきらした青い瞳に見つめられて、身動きをとることが出来ないのだ。
255名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 16:04:00 ID:PN4Bbr30

姉みたい、とか、そんなものじゃない。
私にとってこのひとは、もっともっと別の意味を持った存在だ。だって、姉である以前にこの人は私の仲間で、
僚機で、赤の他人で。血だって繋がっていなくて。
けれどそれをなんと呼べばいいのか、私にはまだ皆目見当も付かないのだった。それを言い表す適当な単語
が、私の頭の中に無いのだ。

ぼんやりとした頭で、仕返しとばかりにキャサリンの頭に手を伸ばしたら、手の中できらきらと金色が踊った。
存外にもふわふわと柔らかく、なんともいい心地だ。

「どうしたね、ウルスラ?」

くすぐったいね、と笑いながら、先ほどと同じことを尋ねてくるキャサリン。先ほど私の声が好きだといった、
それを全く同じ調子で、同じ声音で。
今度こそ何か意味のある言葉を返そう。そしてたまには『会話』というものをしてみよう。だってこの人はそう
したら、きっときっとすごく喜んで、あの太陽のような笑顔で私を照らしてくれるのだ。
懸命に頭の中から候補を引っ張り出す。なかなかみつからない。どうしよう。

見つかるかな。もしかしたら見つからないかもしれない。
でもそれならキャサリンに相談すればいい。だって、そうしたらきっとこの人が、「ミーに任せるね!」なんて
無邪気に笑っていくらでも模範解答をくれるはず。

そう、これからずっと、いつまでもきっと。

―――
以上です。保管する時は0524のものと差し替える形で保管して頂けると嬉しいです。
本文長いって怒られたので2レスの予定が3レスに変わってしまいました、凡ミス申し訳ない
256名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 16:20:44 ID:Sf0uJ82E
>>249
こういう感じでいいか?手記というか日記だな・・・
────────────────────────────────────────

キャサリン・オヘア少尉(当時)
リベリオン海軍航空母艦レキシントン所属第3戦闘中隊所属

「第507統合戦闘航空団」の前身であった「スオムス義勇独立飛行中隊」
通称「いらん子中隊」創設期メンバーの一人である。

リベリオン製ストライカーの特性を生かし、主に防御を受け持つことが多かった。

発見された彼女の手記は主に壊したストライカーユニットのことが書かれていたが、
ある日を境に、その記述が大きく変わっていた。

スオムス転属の日からの手記は・・・


○月×日
スオムスは寒いネ。新しい隊長はとてもキュート。
それよりも、もっとキュートなリトルガールがいたネ。
名前はウルスラ。こんな小さい娘が・・・戦争はいやネ。

○月×日
扶桑人、厳しいネ。ついていけない。
隊長もオロオロしてるネ。

○月×日
ネウロイが攻めて来た。
そのとき、ブリタニアの少尉さんと飲んでたね。ウルスラもいたネ。

○月×日
ウルスラは相変わらず本ばっか読んでるね。
カードに誘ったら「うるさい」といわれたネ。

○月×日
ウルスラの本を読んでみたネ。読めなかったネ。

○月×日
ウルスラが「手伝って」と誘われたネ。

○月×日
ウルスラのロケットでネウロイの爆撃機を落としたネ
私は見てたネ・・・成功したときのウルスラの顔を・・・
笑顔だったネ・・・とてもキュートだったネ。

○月×日
わたし、あの笑顔を守るネ。
だからもう壊さない。


これらの手記はごく一部を抜粋したものである。
手記の中の「ウルスラ」とは、同じく創設期メンバーの一人である
ウルスラ・ハルトマン曹長(当時)であると思われる。
257名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 16:36:24 ID:9aLNEY7t
>>215
 エイラーニャ喫茶店キター
「エイラのはっ! わたしにとっては金賞ですっ!」
「だからっ、わたしのも確かめて……残念賞でもいいから下さいっ!」
 がニヤニヤでやばかったw
ここで僭越ながら揚げ足取りという名の補完です
イギリス南部→ブリタニア南部

>>244
 記憶は戻らないけど体が覚えている系はきっかけとしては良いかもしれないですな。
 記憶が戻って欲しいけど空へ戻すのが不安な芳佳の杞憂と早く戻りたいリーネの決意が
交差して…というところですな。

 ところで今ハルカで1本書いているのだが誰か良い電波を下さいませ。
 ・いらん子1巻のディオミディア撃墜後
 ・やっぱり”あの人”(智子)の前では自分の眼鏡姿を晒したくない(厚底メガネはぶっさいくになるから)
 ・ウルスラやハッキネンのように見れる眼鏡姿(薄いレンズ)になりたい

 今のところこんな設定で進んでいるがうまくいかないです…
258名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 16:42:03 ID:Sf0uJ82E
>>257
カールスラント工学機器メーカーの「カール・ツァイス社」のレンズを手に入れるため奮闘するという話は? 
259名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 16:56:22 ID:aHj/85j2
ウルスラに会いにスオムスへ行ったエーリカ。偶然会ったハルカにウルスラだと思われてメガネどうしたの?とか聞かれる。
なんとなく面白そうだと思いウルスラの振りをして嘘八百な目がよくなる方法を教えてからかうって電波にならきた
260名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 17:30:29 ID:3+ypfQWQ
記憶喪失になって性格が間逆になってしおらしくなってしまうペリーヌとか見たら隊の皆
(特にペリーヌをからかってた人達)がキュンキュンしそう。
261名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 17:36:18 ID:V564JB7V
>>259
でも、ウルスラがエーリカに間違えられて、
ゲルトさんに可愛がられてるのを見て、嫉妬するワケですね。

>>260
玉青ちゃんや萩野さまみたいなペリーヌかw。

でも、風呂場でズボン盗もうとしてた所は玉青ちゃんのまんまだったな。
262名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 17:42:09 ID:uxY0XW6M
相変わらずの500レスに届かせないSSラッシュに脱帽
そしてこの後ルッキーニ生誕99時間前でまたラッシュが来ると予想

どうも。以前「狐の嫁入り」を投下させてもらいました LWqeWTRG です。
このスレのクオリティの高さは嬉しいけど、その中に自分の下手な文章を投下してよいものか…と逃げてましたがもう逃げない!
書いてて方向性を見失いかけ、オチも見つからないなど、四苦八苦しながら完成させました。
内容グダグダ、展開もベタなうえ、会話文ばかりですので読みにくいですが、投下します。
タイトルは「みんなのなまえ」です。
263名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 17:44:02 ID:uxY0XW6M
――よし。これでこの部屋はおしまいっと。
あとは食堂とミーティングルームと…。あ。お風呂場もお掃除しなくちゃ。
うわぁ…まだまだ終わんないよ…。

わたしは朝の訓練の後、4日目の基地内の年末大掃除をしている。
外では久しぶりの暖かい日差しの元、模擬戦をしているカールスラントのダブルエースがいた。

やっぱりウィッチはすごいなぁ。隊のみんなはいろんな国のエースだし、同じ軍曹のリーネちゃんだってあんなに遠くの的に鉄砲を当てられるんだもん。
わたしも治癒魔法がもっと上手に使えるようになって、たくさんの人を護れるように頑張らなくっちゃ。

よし!と気合いを入れて次の戦場に決めたミーティングルームへと向かう。
すると

「おーい!宮藤ー!」
「あ、シャーリーさん。どうしたんですか?」
「なあ、ここらへんでガッティーノ見なかったか?」
「ガッティーノ…ですか?」
「ルッキーニのことさ。それで、見てない?」
「ああ、ガッティーノってルッキーニちゃんのことだったんですね。ええと、この辺では見てないですね」
「うーん…そっか。ありがとな」

と手を振り走り去っていった。


―――――――――

「っていうことがあってね」
264名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 17:45:36 ID:uxY0XW6M
「っていうことがあってね」
「そうだったの。ちなみにね、ガッティーノって子猫って意味なんだって」
「へぇー。なんかルッキーニちゃんにピッタリだね」
「そうだね」

昼になり、掃除を中断して今度は食事の準備をしながら、リーネちゃんにさっきのことを話していた。

「でも、呼び名もいろいろあるけど、この隊にはすごい名前で呼ばれてる人もいるよね」
「すごい名前?」
「うん。例えばハルトマン中尉の黒い悪魔ーとか、ミーナ中佐のヒュ、フユル…」
「フュルスティン?」
「そうそう。なんかかっこいいよねー」
「そんなに私かっこいい?」
「わわっ!ハルトマン中尉!訓練は終わったんですか?」
「うん。いまねー。うりゃ」
「こら、ハルトマン。堂々とつまみ食いをするな」

呆れた顔でバルクホルンさんも入ってきた。
そういえばバルクホルンさんには何か名前はあるのかな?

「私に?いや、そういった通称は聞いたことはないな」
「じゃあ私がつけてあげるよ。そうだねー…。カールスラントのお姉ちゃん…。違う、怪力お姉ちゃん…。ないな。天空のお姉ちゃん…」
「お姉ちゃんが外れるという選択肢は無いのかっ!」
「だってトゥルーデといったらこれじゃん」
265名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 17:47:03 ID:uxY0XW6M
「そんなことはない!お姉ちゃん気分はしっかり抑えて…!はっ!違う違う!そんなものは断じてない!」
「あー。もう私の知ってるトゥルーデじゃない…」

また始まっちゃった。いつも言い合いして本当に仲が良いなぁ。

「わたくしの通称はブループルミエ、青の一番、という意味ですわ」
「ペ、ペリーヌさん!いきなり現れないでください!」
「あら、たまにはこういう登場もよいかと思いましたのに」
「さっきのハルトマン中尉とかぶってます!」

くっ、不覚…。流石黒い悪魔の名は伊達じゃないようですわね…。ってそれじゃ悪の幹部みたいですよ。と心の中でつっこんでおく。すると

「ハラヘッタナー」
「(眠い…。おなかすいた…。けど隣はあったかい…)」
「ごっはんーごっはんー」
「今日の飯はなんだろうな」

エイラさん達、シャーリーさん達が来て、食堂が一気に騒がしくなる。

「ン?どうしたツンツンメガネ。そんなとこに座って」
「何でもなくってよエイラさん。それとツンツンメガネはおやめなさい」

266名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 17:48:20 ID:uxY0XW6M
「えーっと、エイラさんはダイヤのエース。サーニャちゃんはリーリヤ。ルッキーニちゃんがガッティーノで、シャーリーさんはグラマラスシャーリー…」

「おっ。あたしらの名前覚えてんの?」
「いえ、ふと気になって…」
「気になって…ねぇ。ようするに、自分もなにかほしいんじゃないの?」
「そっ、そんなことはっ」
「芳佳ちゃんなんか嬉しそう。やっぱり欲しかったんだね」

リ、リーネちゃんってば…。

「なんだヨ。リーネもほしかったノカ?」
「わ、私は別に…」
「リーネちゃん嬉しそうだね」
「もうっ。芳佳ちゃんなに言ってるの〜」
「いいじゃんか。あたしらでつけてやるよ」

と言ってシャーリーさん達は輪になって相談を始めた。
私の名前…。どんなのになるんだろ…。おっと、相談してる間にお料理運んで…。

「うん!これにけってーい!」
「やっぱりこれだよナ」

ルッキーニちゃんが声を上げ、わたしは期待して顔を上げた。

「芳佳ちゃんとリネットさんの名前は」 「桃色おっぱいマイスターと」
「ドジっこスナイパー、ダナ」

267名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 17:49:41 ID:uxY0XW6M
聞いたとたんにリーネちゃんがずっこけ、わたしにぶつかった。
あれ?なんか柔らかい…。

「ほらー!やっぱぴったりー!」
「あっははははは!」
「ウワ、潰されながらも…。本望ダロウナ」
「エイラ、うらやましいの…?」
「み、宮藤…」
「ほら、トゥルーデもお姉ちゃんの胸に飛び込んで来いーぐらい言えば?」
「まったく、豆狸はいつもお盛んなんですのね」
「よ、芳佳ちゃんだめ、そんなに強く…あっ…」

そうして突然降ってきたマシュマロに悦に入っていると左官コンビが入ってきた。

「あらあら。昼間から仲良しね」
「お前たちは食事の用意を投げてまでそんな行為を…。たるんどる!」

たるんどる!の声で我に返ったわたしは慌てて立とうとしたけど、リーネちゃんが上に乗っていて動けない。
じたばたしていると刀の鞘でゴツン、と打たれた。
268名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 17:51:05 ID:uxY0XW6M
「いたた…」
「皆の前でそのようなことをするからだ。まったく」
「…そうね。リーネさん、あとで私の部屋にいらっしゃい?」
「え?私だけですかぁ?」
「来てくれる?」
「は、はいぃ。わかりました…」

ミーナ中佐…。目が笑ってない…。
リーネちゃん…ごめんね。でも気持ちよかったよ。


―――――――――――
その後 ミーナの部屋

コンコン
「どうぞ」
「し、失礼します」
「そこに座って」
「は、はい」
「リーネさんそんなに緊張しないで。少しコツを聞きたいだけだから」
「コツ、ですか?」
「ええ。自然に人の上に転んで、顔に胸を当てれるようになるために、ね」

END
269名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 17:53:46 ID:qRuP/Cqn
ハルトマン姉妹入れ替わりネタはおもしろそうだよな
自分も書いてみたいが、それ以上に誰かに書いて欲しい

>>260
思わずキュンとしてしまうエイラ
サーニャがいるのに、なんだこの気持ち!嘘だあああ!ツンツンメガネなんかに…いや今はツンツンしてないケド!
みたいにパニくるのを受信w
270名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 17:55:15 ID:uxY0XW6M
すいませんすいませんすい(ry
最初からミスりましたorz
最初の投下の最後の行「っていうことが〜」は消しといて下さいお願いします。
携帯だと詰めこんだら消えるんですね。

投下内容としてはいまさらな通称ネタです。
ギャグにもなりきれず、よくある感じになってしまった…orz
でも501全員登場できた(させた)のでよかったと思ってます。
長々と言い訳まで書いてすいませんでした。
この辺で失礼します。
最後にみんないつもGJ!
271名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 20:00:51 ID:ORCNZTRU
GJ
携帯から投下するひとは凄いな
俺は打つのが遅すぎて無理だった
272名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 20:33:23 ID:MnD+4kM6
そういえば感想フォームは結局実装されるのか?
273名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 21:02:57 ID:mk4RUY1u
>>268
隊長自重しろよw
ていうかこけるようなキャラじゃねえだろw
274名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 21:40:10 ID:DEjuOwAt
>>272今頑張って組み込んでるんじゃないかな。作る方向では進んでいたはず。
275名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 21:50:56 ID:RW36tUVy
こんばんは。mxTTnzhmでございます。

>>194 21X2w2Ib様
GJ! 珍しい組み合わせですね。
そして繊細で軽やかな文章。いつもながら、お見事です。

>>213御大
GJ! 記憶喪失ネタでそう来ましたか!
策士シャーリーと葛藤するルッキーニがいいです。

>>224 zet4j65z様
GJ! エイラーニャ読んでてニヤニヤしました。
シリーズ通してニヤニヤさせて頂いております。

>>245 ◆eIqG1vxHTM
GJ! 続き期待してます。
芳リーネのお互いのもどかしさとか、いいですね。

>>268 LWqeWTRG様
GJ! 携帯から投下とは凄過ぎ!
ほのぼのしてて好きです。


さて、>>179-187「dream fever」の続編が出来ました。
当然、前回よりもえらい暴走しております。
ムチャクチャですけどお許し下さい。
「sisterly」どうぞ。
276sisterly 01/05:2008/12/19(金) 21:51:49 ID:RW36tUVy
突然に、彼女は目覚めた。身体の自由が利かない。足と手を縛られている。
すぐ横に、見知らぬ人が立っている。東洋人っぽい出で立ちで、手には僅かに湾曲した剣を持っている。
「目覚めたか。……お前の名は? 階級は?」
これは尋問? おぼろげに足元を見る。ここは……何処? 全く分からぬ頭を巡らせる。
「ここは何処だか分かる?」
目の前には、きりりとした面持ちの人が立っている。二人とも衣装が違う。これは一体どう言う事? と思考する。
「分からない……ボクは、誰?」
東洋人は溜め息をつき、言った。
「いきなり暴れたりしないだろうな」
「そんな事は、しない」
「なら良いか?」
「ええ」
すんなりと拘束を解かれる。彼女は背伸びして立ち上がった。
「名前も分からないのか」
「名前、名前……」
手を見る。指に指輪、腕に腕輪がしてある。服を探っているうちに、一通の手紙が出て来た。
……そうだ。宛名だ。これで分かった。彼女は頷き、言った。
「ボクの名は……ゲルトルート・バルクホルン。トゥルーデで良い。トゥルーデと呼んでくれ」
「何故そう思ったの?」
「この手紙。宛名にそう書いてあるから。ボク宛の手紙だ」
「なるほど」
「私達は、誰だか分かる?」
「ええっと。……リーナ、とミコ?」
聞いた瞬間にボッと火が点いた様に顔を赤くするふたり。
「その名は止めて頂戴!」
「お前わざとやってるのか!?」
「とんでもない。ただ……ううっ」
立ちくらみを起こし、よろける。
「おい、大丈夫か」
「大丈夫。ちょっとふらっとしただけ。……さて、行かなくちゃ」
「何処へ行く?」
「ボクには、やらなければならない事が有る。だからそれをやりに」
「何を?」
「みんなを守るため。だからボクはお姉ちゃんにならないといけないんだ」
「はあ?」「お姉ちゃん?」
びっくりする二人。
「まずは……」
いきなり東洋の人を掴むと、反撃の隙を全く与えず、首筋にキスマークを付けた。
「お、おい!」
「ボクの事、お姉ちゃん、で良いよね?」
「お、お前まで!」
「ちょ、ちょっ……」
慌てて立ち上がった欧州系の人にも組み付き、吸い口を付ける。
「お姉ちゃんで良いからね」
「こ、この子達……どうしちゃったの?」
外で激しい物音がする。数人の足音が聞こえ、遠ざかる。
突然扉が開く。やや大柄で豊満な体つきをしている人が息を切らして飛び込んできた。
「大変だ! ヤツが武器庫の方へ!」
「何!? お前達揃いも揃って何をやっていた!?」
「そんな事言われても……、お? やっと起き……うわっ何すんだ!」
「お姉ちゃん、で良いよね?」
「何やってんだお前まで!?」
「ボクはゲルトルート。トゥルーデで良いよ」
「はあ? お前は何を言ってるんだ?」
ふと見る。既に首に付けられた跡を見て、呟く。
「この感じ……まさか」
「おい、ちょっと?」
ぎゅっと首を吸う。うひゃあと悲鳴を上げた大柄な人を放すと、扉の向こうを見た。
「止めないと!」
真剣な表情を作ると、突然走り出し、部屋から出ていった。
277sisterly 02/05:2008/12/19(金) 21:52:49 ID:RW36tUVy
「シャーリー、エーリカを止めろ! あいつもおかしい!」
美緒は首をさすりながらシャーリーに檄を飛ばす。
「見りゃ分かりますよ! ……おい待て! 話を聞けぇ!」
シャーリーは回れ右して走り出し、エーリカを追った。
「とりあえず作業員・関係者の全員は、基地からの退避を。これは命令です。直ちに退避しなさい」
ミーナは基地全体に警報を出し、退避勧告を出した。訳も分からずわらわらと細い道を逃げていく関係者達。
「これは私達ウィッチーズだけで何とかしないと」
「全く、どうしてこんな目に……」
美緒の呟きを逃さず、ミーナが痛い視線を向けた。冷や汗をかきながら、美緒は軽く、苦笑いしてみせた。

自称“トゥルーデ”は、指おり数えて呟いた。
「あと、残りは七人……」
「あ! 居た!」
「少佐、発見しました。ハルトマン中尉ですわ」
「……見つけた」
「?」
「ちょ、ちょっと? ハルトマン中尉?」
大きな捕獲網や杖、縄を持ってうろうろしていた二人組を目にすると、ぐっと顎を引き、構えの姿勢を取った。
そのまま素早く飛びつき、まずは眼鏡の娘を羽交い締めにする。
「ひっ! な、何を……」
「お姉ちゃん、で良いよね?」
「な、何を言ってるのですか? 気を確かに!」
首筋を見る。既に付けられていた。
「……この痕、お姉ちゃんか」
「ちょ、ちょっとお止めください? いやあ」
負けずにキスマークをひとつ、つける。
「ああ、ぺたんこがまたやられ…ギニャー! 離して!」
瞬間移動したかの如き速さで、小柄な娘を掴まえる。
「ボクの事、お姉ちゃんで良いよね」
「いやああ! シャーリー助けてぇ!」
「答えは聞いてない!」
同じくキスマークを付けると、へなへなと崩れ落ちる二人を後目に、走り出した。
「あと五人……しかし、先にお姉ちゃんがいるとは……何処?」

「ペリーヌとルッキーニもやられた?」
無線で半泣きの二人から連絡を受け、美緒が慌てる。
「どうしましょう」
ミーナがこめかみに指をやる。
「あいつまで武器庫に行かれると厄介だ。何が何でも武器庫を封鎖しなければ」
「私達も行きましょう」
「ああ」
ミーナと美緒は急ぎ、執務室から出ると武器庫を目指した。
突然、無線で連絡が入る。
珍しく、怯えて悲鳴に近いサーニャの声が聞こえる。
『いやああ!』
『サーニャにソンナコトスンナー! うわ、わああアァァァ……』
「おい、サーニャ? エイラ? 返事しろ! 二人とも!?」
返事が無い。美緒は舌打ちをした。
「何てこった」
「あの二人まで……」
「なんて節操の無いヤツラだ。急ぐぞ」
「ええ」
「全員聞こえるか? 武器庫を何としてでも封鎖しろ! そしてあの二人を止めろ!」
『武器庫封鎖出来ません!』
278sisterly 03/05:2008/12/19(金) 21:54:12 ID:RW36tUVy
“トゥルーデ”は全員が何処かに集まっていくのを肌で感じた。
「成る程。みんなを守るには好都合だ」
その場所目指して全力で走る。
途中、やはり同じ場所を目指しているであろう、二人組を見つけた。
「あ! エーリカさん!」
「ハルトマン中尉!」
「この匂い……いっただき〜っ」
近い距離に居た、お下げの少女を組み伏せる。
「いやあ! 離して!」
「ボクの事、お姉ちゃんでいいよね?」
答えも聞かず首に吸い口を付ける。まだ自分以外、マークはついてない。ぺろりと舌なめずりをする「トゥルーデ」。
「これは良い」
しくしくと泣くおさげの少女をそのままに、もう一人の少女に近付く。
「お姉ちゃん、って呼んでよ」
「ハルトマンさん、やめてください……お願いですから」
「ボクはトゥルーデだ!」
「ええ!? どうして?」
「芳佳、ちゃん……もしかして、二人、入れ替わっちゃったのかな」
「そうかも……ひっ!」
「今日からボクがお姉ちゃんだよ」
東洋人の少女を掴むと、身体を壁に押しつける。
「やめ……ハルトマンさん……目を覚まして」
唇が迫る。
「待てぇ!」
突然の銃撃。反射的に身をかわすと、東洋の少女を後ろに下がらせて守り、腰を低くして構える。
「その妹は俺のものだぁ〜!」
両手に機関銃を持ち、乱射しながら突っ込んでくる、やや大柄な少女。
「妹は渡さん!」
構えの姿勢から飛び出すと、銃撃をシールドで弾きながら交錯した。
「待て! 相手はこのボクだ!」
「この感じ……お姉ちゃんか!」
「貴様もかっ!?」
片手の機関銃をもぎ取り、腰溜めに構える“トゥルーデ”。
「お姉ちゃんは俺一人でいい」
ゆらりと立ち上がる、もう一人の“お姉ちゃん”。
「バルクホルンさん、何言ってるんですか!?」
「バルクホルンはボクだ! ボクがトゥルーデだ!」
「ええ!?」
「ハルトマンさん、何を……」
「ハルトマンはこの俺だ! 俺がエーリカだ!」
「ベルクホルンさん、間違ってます!」
279sisterly 04/05:2008/12/19(金) 21:55:09 ID:RW36tUVy
「そいつが、最後のひとりか」
芳佳を見て、“トゥルーデ”と“ハルトマン”は向き合った。
「芳佳ちゃん……どうしよう」
「ハルトマンさん、バルクホルンさん、止めて下さい!」
「止めないでくれ。これは、みんなを守る為の戦いなんだ!」
「違う! お姉ちゃんはこの俺一人でいい」
「何て不純な!」
“トゥルーデ”は“ハルトマン”を糾弾した。
「二人揃って不純過ぎます!」
芳佳とリーネの叫びも届かず、じりじりと間合いを詰める“トゥルーデ”と“ハルトマン”。
ぴたりと止まると、二人は銃撃を始め、その距離を一気に縮めた。
「きゃっ!」「いやっ!」
伏せる芳佳とリーネ。
恐ろしい事に、“トゥルーデ”と“ハルトマン”は銃弾を互いの銃弾で弾き飛ばし続け、一発も身体に当てる事なく、
そのまま銃口を突き合わせ、暴発させてしまう。シールドが間に合わず銃が暴発し、衝撃で吹き飛ぶ二人。
「ああ、二人とも!」
『宮藤! リーネ! 今何処だ! 何が起きた!?』
「ハンガーです。バルクホルンさんがMG42持って武器庫から出て来て……今、ハルトマンさんと銃撃戦を」
『何!? 全員を向かわせる。とにかく武器庫を』
「もう、遅いです……」
『この無線を聞いている全員、ハンガーに集結せよ! 繰り返す、無線を聞いている者はただちに……』
“トゥルーデ”と“ハルトマン”は、ぐしゃぐしゃに壊れたMG42を捨て去ると、血まみれのまま立ち上がり、ゆっくりと構えた。
「ここまでやるとは。出来るな」
「お姉ちゃんとして、ボクはみんなを守る!」
「抜かせ! お姉ちゃんはこの俺だ! 俺の邪魔をするなら、たとえこのお姉ちゃんでも!」
「お姉ちゃんを駆逐する!」
二人は雄叫びを上げると、一気に飛び掛かった。扶桑の空手演舞宜しく、見事な蹴りと拳が幾つも相手をかすめ、飛ぶ。
そこへ501の全員が集まってきた。皆一様に、首にキスマークを付けられている。ほぼ全員が二箇所。
「誰かあいつら止めろよ」
呆れてシャーリーが呟く。
「無理ダナ」
へとへとになったサーニャを肩に担いでエイラが言った。
「でも、二人揃ってなんであんな事に?」
「腕輪に決まってんダロ。どうすんダヨ、アレ?」
美緒は魔眼を使って取っ組み合いの喧嘩を続ける二人を見ていた。
「坂本さん、何故見てるんです!?」
芳佳が驚いて振り返る。
「何か弱点とか、そう言うものは無いかと思って」
「ネウロイじゃないんだから」
「やっぱり、あの腕輪だな。見え方がおかしい。微妙にブレて見える」
「ええ!?」
「どうするの美緒? 仮にも隊のエース二人が殴り合いは、まずいんじゃない?」
「いや、見ろ。実際には二人ともお互いの攻撃が全く当たってない。怪我もしてないし、大丈夫だろ」
「そう言う問題じゃなくて……」
「しかし見事な演舞だな。二人とも、華麗過ぎるな」
「坂本さん、感心してる場合じゃないです!」
全員の心配をよそに、勝負はあっけなくついた。強烈な突きと、ガードの拳が交差し、腕輪が触れ合った。
途端に、二人は電流が流れたかの如く硬直し、崩れ落ちた。
「お、おい、二人とも!」
「今ダ! 二人を……」
「待て、うかつに触れるな!」
美緒が全員を制止する。
そんな中、薄目を開ける“ハルトマン”。同じく倒れたままの“トゥルーデ”に手を伸ばし、呟いた。
「やっぱり……お前には勝てなかったよ」
意識が朦朧としながら、答える“トゥルーデ”。
「何故……嘘だ、そんな事……」
「俺もなりたかったよ……お姉ちゃんに」
「お姉ちゃん……」
二人は手を取り合い、意識を失った。
腕輪が自然と、抜け落ちた。
280sisterly 05/05:2008/12/19(金) 21:56:25 ID:RW36tUVy
「この腕輪は、私が保管します。いいですね?」
「ああ。すまん」
ことの全てを皆から聞かされ、また“一部”を思い出したミーナと美緒。
ミーナは腕輪の入った小箱を金庫に収め、鍵を掛け、溜め息を付いた。
「それで、あの二人の“お姉ちゃん”は今何処に?」
「医務室だ。まだ起きないらしい」
「それはそれで問題ね……でも、どうして二人とも名前を間違えたのかしら?」
「ハルトマンは、自分が持っていた手紙を見て言ってたが」
「あの手紙……筆跡見る限り、エーリカからのよ?」
「勘違いか。じゃあバルクホルンの方は?」
「今更分かりっこないわね……さて」
ミーナはすまなそうに立つ美緒の後ろに回って、耳元で囁いた。
「どう責任を取るおつもり? 坂本、しょ、う、さ?」
美緒はごくりと唾を飲み込んだ。

end

----

あからさまに趣味がバレますねw
ここ数日妄想と言うか暴走が止まりませんorz
相変わらず尻切れですがご容赦を。

ではまた〜。
281名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 23:55:04 ID:MnD+4kM6
毎日投下乙
よくそんなネタが出てくるなと感心する
282名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 23:55:11 ID:wDW/VxvJ
GJ!!
283名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 00:04:33 ID:muTka8uc
GJ!
もっと暴走してください
284名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 00:12:40 ID:byAzRtDl
>>255
エーリカとは違うって言ってるけど、その感情を表すのに姉という単語を使おうとするあたり
やっぱりエーリカのこと大好きなんじゃないかなぁなんてことを思った
285滝川浜田:2008/12/20(土) 00:32:09 ID:+77VefSL
皆さんこんばんは。
今夜深夜に失礼。
今夜は自分では初書きとなるミーナ×リーネ投下いたします。
286名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 00:32:41 ID:Syl5rT64
もう本当にGJ!

にしてもこのスレの勢いにはシャーリーもビックリだろうさ!
287滝川浜田 『星と願いと狼の牙』:2008/12/20(土) 00:33:57 ID:+77VefSL

――貴女が欲しい――

そんな事、いくら祈ったところで無駄だと分かっているけれど、何もしないよりかはマシだと、私は毎晩夜空を見る。

「…ミーナ中佐…」


――星と願いと狼の牙――


「なにかしら、リーネさん」
「ミミミミミーナ中佐っ…!!なっ、なんでここにっ…!」
「私も時々、ここへ夜空を観に来ているの。ここから見える夜空って綺麗よね」
「…はい…。
この夜空に願いをかけると、その願いがなんだか叶うような気がするんです」
「願いが叶うとしたら、リーネさんはなんて願うのかしら?」
「え、えーっと…」

ミーナ中佐と恋人同士になりたい…なんてとても言えないよね…///

「ひ、秘密です」
「あらあら」
「そういうミーナ中佐はどんな事を願うんですか」

そういうと、ミーナ中佐は人差し指を唇に当てて、ニコリと笑う。

「ヒ・ミ・ツ・よ♪…なんてね」

いっ…今のは…マズいですよ、ミーナ中佐っ…!
かっ…可愛すぎるよぉっ…!

私は出そうになる鼻血を押さえつつ、冷静に振る舞おうとする。

「そ、そうですか…」
「フフ♪」
「…ミーナ中佐、なんだか機嫌がいいですね」
「あら、そう見えるかしら」
「はい、とても」
「そうね、こんな月夜に感謝、と言った辺りかしらね」
「はあ…」

私はワケも分からずミーナ中佐の話を聞く。

288滝川浜田 『星と願いと狼の牙』:2008/12/20(土) 00:35:18 ID:+77VefSL
「この世に運命というものがあるとすれば、きっとそれは今だと思うの」
「今、ですか」
「そう、今。
現在という今はもう二度と来ない。私はその一瞬一瞬を大事にしたいの」

そう言うと、ミーナ中佐は私の手を取る。

「ミ、ミーナ中佐っ…!//////」

私の心臓が跳ねる。

「…ドキドキしてるわね」
「ミーナ中佐っ…!」
「貴女の願いを私が叶えてあげるわ」

そうすると、私はミーナ中佐に抱き寄せられる。
お互いの顔が、ちょっと動いたらキス出来てしまう程の距離となる。

「ミーナ中佐…近すぎ、です…//////」
「“現在”も過ぎれば“過去”となる。
…だったら過去になる前に貴女を奪うわ。リーネさん」
「ミーナ中佐…っ」
「…私の願い、教えてあげるわ。
……それは……」

私はミーナ中佐にキスをされた。
触れ合うような優しいキスではなく、口内を貪るような、荒々しいキス。

「ミー……ナ中佐……」
「リー…ネさん…」

289名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 00:36:47 ID:WcTjUWIC
>>280
あなたの文の、突っ込み所の多さが好きです。
GJ!もっともっと!

>>284
Nice読解力
実はエーリカ→ウルスラよりウルスラ→エーリカの方が想いが強かったりするんだよ!!(主張)
290滝川浜田 『星と願いと狼の牙』:2008/12/20(土) 00:36:55 ID:+77VefSL
私達の間を銀色の糸が繋ぐ。

「…これが私の願い、よ」
「ミーナ中佐…」
「…リーネさん。貴女はどうかしら?
狼の私に食べられたいかしら?」

…ミーナ中佐、貴女は狡い。


貴女のその眼、その声に惑わされた私は狼に食いつかれた弱い子羊。


貴女は私が貴女から逃げられないのを知ってる。

だから、貴女は私を誘う。
だから、私の返事は一つ。


「……はい……」

そう言うと、私はミーナ中佐の胸に顔をうずめる。

「そう…なら、私の部屋で…」

私はミーナ中佐に手を引かれて、ミーナ中佐の部屋に入った。

私は、自ら狼に食べられる事を選んだ。


―――――――――――――――――――

翌朝

「おはよう、リーネちゃん」
「おはよう、芳佳ちゃん」
「…あれ、リーネちゃん。
首筋、なんか赤いよ?」
「あ、ああ…これ…」

私はちょっと赤くなって、言葉を返す。

「狼に食べられた痕だよ」


END

291滝川浜田:2008/12/20(土) 00:40:55 ID:+77VefSL
以上です。
まあ要するにミーナさんは(性的に)狼だと言う事を書きたかっただけです、はい。
そして前置きにマヌケなミス発見。
ダメだこりゃ。

それにしても携帯から投下してる人って結構いるんですねえ。
ちょっと安心しました。

…というわけで爺はここら辺で…
292名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 00:43:52 ID:WcTjUWIC
>>291
投下中に書き込んじまったすいません
ミーナリーネは俺も好きだ。最後のリーネのセリフいいなあwGJ!!
293名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 01:18:11 ID:hjGy3ira
作品投下したのに反応がないのは寂しいネ
>>256は廃棄ネ
294名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 01:26:03 ID:QVNwwWOl
なんかゴメン
295zet4j65z:2008/12/20(土) 01:26:04 ID:oiRaYtbG
>>293 流れが速すぎるんだよ。たまたま反応がないのは仕方ないさ〜。
っていうかどうせならウルスラの手記も読みたいですよ。
……かなり難しそうだけどw

>>257指摘アリガト!
まだ自分への洗脳が足りずストウィ脳になってないな・・・。
がんばって日常生活に支障をきたすレベルまで事故を高めるよ。
そんなわけで管理人様。
保管庫に保存する際には「イギリス南部」を「ブリタニア南部」に変更お願いします〜

っていうか、読みきれてないんだけど明日も早いんで寝ます。みんなGJ!
296名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 01:34:17 ID:muTka8uc
>>291
GJ
というかまさかじっちゃん携帯から投下?
だとしたら恐ろしい

>>293
ごめん

さてさて記憶喪失ネタの続きを投下します。
episode5だけど実際は4,5くらい?
いつのまにかずいぶん長くなってしまった。
297Plural-episode-5-:2008/12/20(土) 01:34:58 ID:muTka8uc
Plural-episode-5-

目覚めてから一週間後
やっと自室に戻れることになった。
といっても自分の部屋だと言われても初めて入る部屋と同じだ。
不思議と埃っぽくない・・・・・誰かが掃除してくれていた?

「芳佳ちゃんこの部屋・・・」
「あっごめんね勝手に入っちゃって。何時戻っててもいいように掃除だけは毎日してたから・・・」
「そうなんだありがとう」

思ってた以上にシンプルな部屋だ。
実はまだ医務室で生活した方が良いとは医者には言われていたけれど無理して自室に戻してもらったのだ。
昔の自分の跡が一番残っている場所だ。ここで生活すればなにか手が係があるかも・・・・

「ねぇ・・・リーネちゃんホントに今日から飛行訓練するの?」
「うん・・・ごめんね」

今日から私は飛行訓練をする。
といってもリハビリみたいな物でただ飛ぶだけの訓練。
それでも今の自分に出来るかどうか不安でもある
芳佳ちゃんが心配する気持ちも判る
ただそれ以上に私は記憶を取り戻したい・・・

「さっ行こう?」
「・・・・うん」

今日の訓練は私がお願いして芳佳ちゃんも一緒に飛んでもらう。
もしなにか有っても大丈夫なように付いていてもらうのだ。



さていざハンガーに到着してストライカーを装着しても私はなかなか飛べなかった。
もちろん私が休んでる間にネウロイが出現してみんなが戦いに行ったり
訓練で模擬戦闘をしてるのを見たのでなんとなく飛び方はイメージできる。
ただ・・・・・頭では分かっていてもいざ実際にやるとなると怖い。
298Plural-episode-5-:2008/12/20(土) 01:35:28 ID:muTka8uc

「リーネちゃん・・・・今日は無理しなくても・・・・」
怖い
でも二人でなら――

「手・・・・繋いでいい?」
「えっ・・・」
「二人でなら飛べると思うから・・・・」
「うん・・いいよ」

手と手を繋ぐ
暖かい
これなら――

「いくよ芳佳ちゃん」

魔力をストライカーに注ぐ
プロペラを回転させ滑走路を駆けていく
――飛べる!

「きゃっ!」

確かに飛べたが大きくバランスを崩してしまった。
慌てて芳佳ちゃんが支えてくれたが危なかった・・・
やはり見てるのと実際に飛ぶのは全然違う。

「大丈夫?」
「うん。ありがとうね」

支えてもらいながらなんとか飛ぶ
飛ぶだけでも精一杯だから重い銃を持つなんて当分先だなぁ
それに浮いた状態で精密な射撃なんて曲芸にしか思えない。
自分の事だけどよくやってたなぁと思う。

しばらく飛んでいるとだいぶコツがつかめてきた。
ただ手は繋いでもらったままだった。
多分もう離しても大丈夫だとは思うけど、私が離したくないだ。
空が青い
でも私はこの空から一度落ちたのか・・・

「そろそろ戻ろうか初日から無理してなにか有っても大変だし」
「そうだね」
299Plural-episode-5-:2008/12/20(土) 01:35:59 ID:muTka8uc

無事帰還
実は着地の時またバランスを崩して転けそうになったのを支えてもらったがなんとか帰ってこれた。
ホントに世話を掛けっぱなしだ・・・
シャーリーさんが言っていたけど私は割とドジだったらしい
・・・体質なのかな?
そんなことを考えていると芳佳ちゃんが口を開いた

「・・ねぇリーネちゃん飛行訓練はやっぱり止めよう危ないよ・・」
「・・・」

芳佳ちゃんは最初から反対していた
でも私がどうしてもと言うからしぶしぶ付き合ってもらった。

「ごめんね・・・でも私空を飛んでるとなにか思い出せそうだから・・・」
「・・・」

沈黙が痛い
飛んでも欲しくと願う気持ちも分かるけど、私は記憶を取り戻したい
どうすればわかってくれるかな?そんな事を考えている時だった

警報が鳴り響いた

「敵!」
「ネウロイなの?」
「リーネちゃんは早く基地の中へ入って!」
「芳佳ちゃん!」

名前を呼んだ時には芳佳ちゃんは銃を掴み
空へ駆けて行った

「行っちゃった・・・」

何も出来ない自分が情けない
今の自分が空へ上がった所で足手まといになるのは目に見えている
分かっているからこそ悔しい

「お〜い、そんな所にいたら危ないぞ」
「シャーリーさん?」
「そっシャーリーだよ。ちゃんと名前覚えてくれたんだな」
「あっはい」
「とにかく基地の中に入りな、そこにいたら出撃の邪魔にもなるだろうし」

そう言って基地の中に入っていくシャーリーさんに付いていくことにした。

300Plural-episode-5-:2008/12/20(土) 01:36:29 ID:muTka8uc

「まぁ暇人同士話でもしてみんなの帰還をまとうぜ」
「はい」

シャーリーさんは今回は基地待機らしい
・・・・そうだちょうど人も居ないことだし聞いて見よう

「あの・・・・記憶を失う前の私ってどうでした?」
「えっ?うーんそうだなぁ、料理が上手だった。たまにドジして失敗もしてたけど。確か宮藤とよく作ってたよ。
基本的には優しい性格だったと思う。まぁあんまり接点が無かったけどね。
後は宮藤と一緒に初戦果を上げた辺りからだいぶ実践でも使えるようになったかな?」

なんだかこうして聞いて見ると昔の私も芳佳ちゃんにべったりだったのがよく判ってすこし恥ずかしくなる。

「宮藤が来てくれてからはずいぶん明るくなったよ、新人同士だし互いが互いを支えていた感じかな。
傍目から見てももう距離というか心が近くてさ、親友というか恋人みたいな感じだったよ」

一気に顔に血がのっぼった
顔が火照る・・・

「そうそうそんな感じで私がからかうとすぐ赤くなったよ」
「シャーリーさん!」
「はっはっは、そう大きな声出すなって、飲み物取って来てあげるからおとなしくしとくんだぞ」

そう言ってシャーリーさんは厨房に入っていた
ううぅまだ顔が火照る

「ふぅー」

大きく息を吐いてすこしでも熱を逃がす
恋人みたいか・・・
だったらこの想いにも説明が付く
きっと今も昔も私は恋してるんだ。
芳佳ちゃんは私の事をどう思ってたんだろう?
私と同じ気持ちを持っていてくれたら嬉しい。
でもそんな気持ちを持っていてくれるとしたら、一度落とされた私がもう一度飛ぼうとするのはさぞ心配だろう。
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
でも私の記憶が無くした責任を感じている彼女を救うには記憶を取り戻すしか無いと思う。

「難しい顔してるな」
「シャーリーさん・・・」
「まっ思い詰める気持ちも分かるけど、一人で抱え込むなよ?」
「・・・はい」
「どうだ宮藤とは仲良くやれてるか?」
「はいいつも助けてもらってます。ただやっぱり事故の事を気にしてるみたいで・・・・」
「そっか・・・・まぁそんな深く考えず二人で仲良く話をしろよ」
「はい」

本当に優しい人たちに囲まれていると実感する。
さて戦闘で疲れかて帰って来るであろう隊員達に美味しい紅茶を入れて出迎え上げよう。



to be continued next episode
301名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 01:39:06 ID:muTka8uc
ほとんで進展無しのつなぎのような話です
今の所の予定では7か8には完結できそうです。
あっちなみに記憶戻るルートにするとかいってましたけど、やっぱり分からなくなりました。
たぶん書きやすいほうになると思います。
それでは続きは今日の朝か昼にでも
302名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 01:53:07 ID:RKOvGSWZ
>>301
寝ようと思ったら続き来た!!
手を離したくながっているリーネちゃんに萌えました
これはもう完全に恋をしてますね
303ウルスラ・ハルトマンの手記:2008/12/20(土) 02:27:30 ID:hjGy3ira
ウルスラ・ハルトマン曹長(当時)
カールスラント空軍第3防衛飛行中隊所属

「第507統合戦闘航空団」の前身であった「スオムス義勇独立飛行中隊」
通称「いらん子中隊」創設期メンバーの一人である。

カールスラントのエース エーリカ・ハルトマンの双子の妹であり、本人もほぼ独学で
空対空ロケットを製作した「天才」である。

彼女が製作した空対空ロケットはその後の空戦に多大な影響を及ぼし、後に「フーリガーハマー」
が開発されることになる。

しかし、当時はさほど重要視されず周囲に一切意に返さない態度により、スオムスに転属となる。

近年、発見された彼女の手記は今まで彼女が記したものとは一線を画すものである。
人間味あるその内容は戦史研究のなかでも一際注目されている

(一部抜粋・要約)


○月×日
スオムスは寒い。でも、ここなら姉のことは言われないだろう。
それにしてもリベリアンはうるさい。

○月×日
扶桑人は非合理的。よくネウロイに勝てたもんだ。
これなら教練読んでほうがマシ。

○月×日
ネウロイの侵攻がはじまった。
酒場にいたから何もできなかった。

○月×日
オヘア少尉がしつこくカードにさそってくる。
「うるさい」と言ったら悲しい顔をした。

○月×日
オヘア少尉はいつも笑顔だ。
私の研究を説明すると「すごいネェ」という。
とてもいい人だ。大してわかっていないのに。

○月×日
今までの研究の成果を形にすることができた。
キャサリンに手伝ってもらってとりあえず2発。

○月×日
私のロケットでネウロイをやっつけた。
キャサリンのおかげ・・・ありがとう。

○月×日
上官に姉のことで比較された。
ここだったらと思っていた私が馬鹿だった・・・

○月×日
キャサリンに姉のことを聞かれた。「ウルスラはウルスラネ」と言った。
なんとなくうれしかった。


手記の中の「オヘア少尉」「キャサリン」は、同じく創設期メンバーの一人である
キャサリン・オヘア少尉(当時)であると思われる。
304>>293:2008/12/20(土) 02:32:52 ID:hjGy3ira
>>293の発言は本当に愚かでした。申し訳ありません。
お詫びといったらなんですが、ウルスラの手記を書きました。

それと>>256の題名は「キャサリン・オヘアの手記」でお願いします。

反応がないからと愚かな書き込みをしてしまい申し訳ありませんでした。
305名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 02:37:21 ID:/oHa8cqD
>>304
こういう日誌の形式も面白いね。新方式だな。

投下速度が早すぎて、忙しいときはついてけないよw
306名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 02:38:47 ID:+77VefSL
>>304
GJ!
いやいや、反応が無かったら寂しいのは当然の事。
自分もあったし。
やっぱり流れが速いとこういう事もあるから、諦めずに作品でアピールする事が大事だよ。

…と、何故か偉そうな事を言ってしまいましたが、GJでしたよ。
また良い作品投下してくださいな。
307名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 03:11:40 ID:B9Dd7emz
エイラーニャのシーツか・・・公式はとことん百合に関しては冷たいな
308名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 03:22:25 ID:uU1cvCu2
>>307
まあ、一応儲けなきゃいけないわけだし、このくらいは仕方ないだろう。
極端な話、買った人が何に使うかなど考えず、単なるエイラーニャの絵と
解釈してしまえばいい。
309名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 03:44:06 ID:ZOmjrToV
>>307
まあゲームがそのぶんは期待できるからそれでプラマイゼロかなぁ
ぶっちゃけ百合はここでかなり補給できるし、公式で完全にガチカップリング固定されてもマイナーカプ好きな俺涙目だしw
310名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 03:49:25 ID:mkcchAOH
>>307
何を言ってるんだ、まずシーツをベッドに敷いてだな
それを遠目で眺めてニヤニヤしてから布団をかけてあげて、自分は床で……
いや、うん…まぁ楽しみ方は人それぞれだからさ…
311名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 04:13:21 ID:H2AgZjOg
ゲームで男が出なかっただけでも奇跡だな

そう思って割り切るしかないか・・・
312名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 04:28:44 ID:lLTmXfLx
棒がついてない俺でもエイラニャの間に入るには断固たる決意が必要じゃ
313名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 05:26:19 ID:Cwk0KQ71
もうグッズ展開に期待するのはやめた
314名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 08:24:30 ID:yLX5mx2M
バカダナー

基地売店で売ってたから思わず買ってしまった抱き枕とシーツ(各限定一部)
とりあえず飾ってみて満足気な表情のエイラ
しかしどうしたらいいものか、これを使ってるところをサーニャに
見られるわけにはいかないし、隠さないとマズいよなコレ
でも使ってみたいし、どうすればイインダー
と葛藤していたらエイラの部屋にサーニャが来て・・・と妄想するのが楽しいんじゃないか
315名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 08:41:57 ID:2MYwpDtc
>>307
商売ってことも考えてあげろよ
316名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 09:17:17 ID:KzAfdePV
それにしたっていい夫婦の日とかやっときながらエイラーニャを使うとはね
芳佳とリーネとかだったら別にそんなもんかと思えるけど
317名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 09:19:14 ID:qaS0BgO3
ttp://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d503950.jpg
すぐこういうこと考えて一人で笑ってた俺は病院ですか?
318名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 09:33:23 ID:mkcchAOH
>>317
俺には、いまあなたが最高に輝いて居て、天にも昇るように見える……

とりあえず霊安室イコウカ
319名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 09:34:55 ID:KzAfdePV
>>317
その発想は無かったわ
320名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 10:35:06 ID:NvXBv3Wz
>>317
ごめん不覚にも笑った
321名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 10:42:28 ID:QVNwwWOl
バロスw
322名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 10:51:59 ID:yq1iGrkE
>>317
なんというセンスwwこれはワロタwww
323名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 10:57:23 ID:V9B8MGdj
とりあえず貼っておく。

 三           三三
      /;:"ゝ  三三  f;:二iュ  三三三
三   _ゞ::.ニ!    ,..'´ ̄`ヽノン        何故ここまで放置したんだ!!
    /.;: .:}^(     <;:::::i:::::::.::: :}:}  三三
  〈::::.´ .:;.へに)二/.::i :::::::,.イ ト ヽ__
  ,へ;:ヾ-、ll__/.:::::、:::::f=ー'==、`ー-="⌒ヽ>>317 
. 〈::ミ/;;;iー゙ii====|:::::::.` Y ̄ ̄ ̄,.シ'=llー一'";;;ド'
  };;;};;;;;! ̄ll ̄ ̄|:::::::::.ヽ\-‐'"´ ̄ ̄ll

てかワロタ


あと>>304氏、反応が無くてもキニシナイ!
速度速いとレス追いつかないから仕方ないし……。
いつのまにか「オヘア」から「キャサリン」に変わってるのもイイ。
何があったか妄想を(ry
324名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 11:12:32 ID:k508lgWY
山田くん、ちょっと>>317にノーベル賞あげて

まぁ公式でシーツ出してくれるだけいいじゃないか
リネ芳とエーゲルのシーツが欲しい俺の身にもなってみろってんだ
325名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 11:20:41 ID:JqWoxzcy
>>324
あまりシャーリー好きを怒らせないほうがいい
326名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 11:21:13 ID:+77VefSL
まったくだよ
自分だってシャッキーニ(ry
327名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 11:46:25 ID:muTka8uc
お昼です
ということでepisode-6を投下
もう6か・・・
このシリーズもいよいよ佳境かな?
それでは続きをどうぞ
328名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 11:46:55 ID:muTka8uc

今日はネウロイも出た事もあって隊員達は早めに床についた。
しかしミーナはまだ眠れなかった。

「どうしたらいいかかしら」

不安材料は宮藤さんの事だ
前は銃を持つことすら嫌がっていたというのに・・・・
今日出現したネウロイは宮藤さんが一番最初に迎撃した。
もちろん全員が揃うまで出撃は待てと指示を出したが、それを聞くより早く空へ上がり戦闘を開始していた。
・・・・まるで少し前のトゥルーデのようだ無茶な戦いかたばかりする。
それに最近では訓練も躍起になっていると美緒が言っていた。
ホントに問題が山積みだ・・・





最近リーネちゃんは飛行訓練も初めた。
危険だ危険すぎる
このままではリーネちゃんはいつか戦いに参加する
人材不足なんだ・・・ミーナ隊長だってリーネちゃんが使えるレベルまで戻ればきっと使うだろう。
使えるウィッチは使う。
当たり前のことだけど、そんなことはさせない。
だから今までは二人で一人前だったけど、私がもっと強くなれば良い
そうすればリーネちゃんを出さなくても良いかもしれない。
今日も朝から訓練をしよう

「よっ」
「・・・シャーリーさん」
「どうした顔が暗いぜ?」
「そうですか?すみません私これから訓練なんで・・・」
「まぁまぁたまには私と親睦を深めようじゃないか、お茶でもしよう?
あっこれ上官命令だから絶対ね?」
「・・・わかりました少しだけですよ?」
「じゅうぶんだよ」


329名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 11:47:26 ID:muTka8uc

昨日リーネと話した感じだと宮藤はずいぶん抱え込んでる。
このままじゃ無茶してこいつまで落ちてしまう
さすがに仲間が落ちるとこは見たくないなぁ

「まぁ飲めよインスタントだけどな」

そう言ってコーヒーを出す

「ありがとうございます」
「砂糖いる?」
「2つほどください」
「はいよ」


さてさて楽しくおしゃべりしますか


「なぁ宮藤」
「はい?」
「お前は最近どこぞの堅物みたいに訓練ばっかしてるよな?」
「そうですか?」
「そうだよ。そしてお前は無理しすぎだ」
「・・・・大丈夫です。自分の事は自分が一番よく判ってます」
「いいやなにも分かっちゃいないねお前は」

宮藤の目線が鋭くなる
おぉ怖い怖い
というかこういう真面目な話をするのはキャラじゃ無いんだけどなぁ

「最近の無茶な戦い方はや訓練は自分への戒めか?お前はリーネから記憶を奪ったネウロイも憎いし、その原因の自分も憎いみたいなだな。
いやどちらかというと自分自身に腹が立ってる感じだな」
「そんなこと・・・」
「有るんだよ。私はこれでも軍属が長い身だ、仲間の死にだって何度も立ち会ってる」
「・・・・」
「たまにいるんだよ。お前みたいな思い詰めた顔してさ、私がネウロイを殺すって躍起になって無茶する奴が
そしてそいつらがどうなったかも知ってる。」
「・・・・」
「まぁだいたいこうなるけどな」

そう言って真っ白な砂糖を一つ真っ黒なコーヒーの中へ落とす

「今のお前はそいつらにそっくりだ」

かき混ぜコーヒーを啜る
あぁ苦い
330名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 11:47:56 ID:muTka8uc

「リーネが飛ばないようにするために、自分が一人前にでもなるつもりか?
やめとけお前じゃ無理だよ。お前は才能はあるかもしれないけどすぐにすぐエースになれるってものでもない」
「そっそんなことやってみなくちゃ分からないじゃないですか!」
「わかるよ。私はこれでもプロだ、成り立ての新人とは違う」
「・・・・・・・・」
「今お前がすることはネウロイを倒す事でも無茶な訓練をすることでも無い、リーネの側に居て二人で話をすることだ。
お前らは互いに互いを思いやってるが、逆に悪い方向進んでるよ。ホント不器用だねぇまったく」
「話すことですか・・・・・?」
「そっ仲良く本音で語り合うことが一番今の二人には大切さ。
リーネが訓練することでお前が無茶して、お前が気に病むからリーネも無茶して記憶を取り戻そうとしてる」
「そんな・・・」
「まったく相手の事を思いやるばかりで言葉にしないのが、二人の悪い癖だよ」
「・・・」
「さっこれからお前がすることはなんだ?よく考えろよ」
「・・・ごちそうさまでした。」
「おう」

そう言って宮藤は出て行った。
これで多少マシになれば良いんだけどなぁ

「ふうーしかし似合わないなぁこんなキャラは」

私はもっと楽しいことして笑ってるほうが好きなんだけどなぁ

さて

「いつまで隠れてるんだ子猫ちゃん」
「あははやっぱばれてたか」

そう言って厨房の影から出てくる
331名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 11:48:27 ID:muTka8uc

「盗み聴きは感心しないなぁ」
「いやぁいきなり深刻な話してるか出るに出られず・・・」
「まったく・・・」
「えへへーでもさっきにシャーリー格好良かったよ?」

ひょぃとソファーに飛び乗り私の隣に座る

「まぁたまには真面目な話もするさ」
「あっ!これコーヒー?飲んで良い?」
「あっおい」
「んー苦い!」
「まだ早かったかな?」
「うっそんなことないよ」
「ははっルッキーニは元気だなぁ」
「んーシャーリーが暗いからね、私くらいは元気でいないとね」

どうやら気を使われてしまったらしい

「・・・・ホントお前はいい子だよ」
「えっへへーんどう見直した?」
「うん」
「じゃっおまけね」

そう言って私に正面から抱きついてくる

「元気が出るまでこうしててあげる」

いけないなぁ
少し昔の事を思い出してしまって暗く成ってしまった。
この子は人の心に敏感だ。
私も話しながらつい考えてしまった、今の宮藤とリーネの状況を私とルッキーニに置き換えて。
いけないいけない暗くなっては、私が心配をかけてどうする?
今はせっかくサービスしてくれてるんだ、元気が出るまで堪能するとしよう。
そう思い抱きしめる腕に力を込めた



332名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 11:48:58 ID:muTka8uc

シャーリーさんに言われた
二人で話せと
確かに私達は互いに思いやるばかりで、言葉にしていない。
言葉にしなくても伝わるなんて、ただの思い込みだと去り際に言われてしまった。
まったくその通りかもしれない
・・・なんだか一人で空回りしてるなぁ私
リーネちゃんのためと頑張ってきたけど逆効果だったのかな?
そんな事を考えているとリーネちゃんの部屋の前に到着してしまった。
なにから話せばいいだろうか?
ノックもせず扉の前で考える
なかなか言葉がまとまらずうんうん考えていると扉が開いた

ゴン

「・・・・・痛い」
「えっ!芳佳ちゃん!?」
「あっリーネちゃん」
「なんで扉の前に?」
「そっそれはリーネちゃんに話が・・・」
「あっ私も芳佳ちゃんに話があって今会いに行こうと思って・・・」
「なんだ同じ事考えてたんだね」
「ふふっそうみたいだね」

二人で少し笑う
うん少し気が楽になった

「なら私の部屋でお話ししよう?」
「うん」

さぁお話をしよう。


to be continued next episode
333名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 11:51:31 ID:muTka8uc
いよいよ次がラストの予定です。
ホントは芳佳とリーネの姿見て思うことがある隊員の姿も書きたかったけど入れる場所なかった。
続きは明日か頑張れば今日の夜には投下できるかも
それではまた
◆eIqG1vxHTMでした
334Plural-episode-6-:2008/12/20(土) 11:53:00 ID:muTka8uc
あっ!タイトル入れ忘れた
Plural-episode-6-です。
335名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 12:41:31 ID:7Lesdm4/
>>334
GJ!
次がラストとは・・・

>>314
俺も基地でサーニャのシーツが発売されて
買い占めるエイラさんを想像していた
336名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 13:20:14 ID:QVNwwWOl
書くの早過ぎてフイタ
337名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 13:43:34 ID:W5/OBT2m
>>304
好きで書いてるんだろ?
レスがないからといって気にしちゃいけないし
レスをねだっちゃダメだよ。
レスがあろうとなかろうと書き手はただ自分の妄想をこのスレにぶつけるだけだ。
読み手は自分にあったものを読んでレスを書けばいいし。

……とレスをほとんど貰ったことない自分がほざいてみる。

あと>>256
ウルスラの読んでる本はカールスラント語……。
オヘアは読めないでしょw
それでも読もうとしたの?
338名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 13:47:16 ID:W5/OBT2m
>>337は誤解を招きそうなのでちと付け足し。
>>256
ウルスラの読んでる本はカールスラント語……。
オヘアは読めないでしょw
それでも読もうとしたの?
そこまでオヘア、ウルスラに興味持ってるのかw
339名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 14:32:03 ID:E9bzTtpo
>>314
ありそうw
在庫をエーリカが押さえてて、
エイラさんは「買わない?」と持ちかけられて
(欲しいけど……サーニャに見られたら……)とモジモジするんだけど
「そっかー残念。でも宮藤も興味持ってたみたいなんだけどなー」
といわれて即落ちるわけですね。わかります
340名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 15:08:39 ID:6h+YKUpa
>>338
リベリアンは典型的なロリコンという説が・・・
341名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 15:14:22 ID:facIn3O4
リベリアンはロリコン
342名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 15:37:30 ID:C2awbvcH
だがそれがいい
343名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 16:01:45 ID:pFDqK34b
キャサリン・エルマ・ウルスラの金髪三人娘が最近おいしくてたまらない
344名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 16:32:23 ID:SZ5R2Enq
いつの頃からか、少し先の未来が見えるようになった―――
使い魔と契約をして、空を飛んで、敵を倒して―――
気がついたら、英雄と呼ばれるようになっていた―――
だけど私は、彼女を守れる立派な魔女になれたんだろうか―――
なぁ、サーニャ。私達は明日、結婚するんダナ―――

『劇場版ストライクウィッチーズ〜エイラの結婚前夜』


<あらすじ>
サーニャと自分が結婚するという未来が見えたエイラ。
しかし、部隊の仲間に話しても誰もそれを信じようとはしない。
ペリーヌの「サーニャさんはあの豆狸がお好みのようですわよ」という言葉にショックを受けたエイラは、
宮藤博士が開発中だった、時空を越えるというストライカーユニット、『タイムストライカー』を装着して、少し先の未来へと飛ぶ。
果たして、エイラは本当にサーニャと結婚するのだろうか?
345名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 16:32:46 ID:Z0kP7FYZ
シーツの真ん中にサーニャ抱き枕を入れて川の字にすれば完璧じゃね?
346名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 16:37:44 ID:SZ5R2Enq
流れを読まずに頭の悪いネタを書いてしまった・・・。
ちなみにジャイアンのポジションはペリーヌで。

>>342
俺はキャサリンとビューリングの組み合わせが好きなんだぜ。
347名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 17:12:56 ID:byAzRtDl
>>344
エイラには私がついてなきゃダメなんだからってなるんですね分かります。

>>345
右端に置いてエイラさんをハーレムにしてやるべきだろう
348名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 17:48:12 ID:oMdelkE7

ttp://2d.moe.hm/sw/img/sw0065.jpg

誰かこの視線の先が芳佳である事を想定したほのぼの芳リネ書いてくれ
なんだかリーネが扶桑にいく話はあるけど芳佳がブリタニアに留まる話はほとんどなかった気がする

>>339
エイラーニャよりむしろ現場をトゥルーデに見つかって小喧嘩するエーゲルを想像した。
349名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 19:24:52 ID:xFB4aBke
で結局抱き枕みんな買うの?
350遠い近いあなたとわたし 21X2w2Ib 1/2:2008/12/20(土) 19:28:29 ID:wF76j3nO
2本投下、6レス消費します。
ひとつめ、なんだか暗いばかりのウルスラ×エーリカ投下
―――

ふと、私は実はエーリカなのではないかと、そう思うことがある。
容姿のよく似ていた私たちは幼い頃よく入れ替わって、大人を困らせて遊んでいた。その頃私はまだ
メガネをかけていなくて、お互いに魔女の力も目覚めていなくて。

まさに瓜二つだな、と評した父の友人は確かフソウという国の出身で、子煩悩な父は『瓜だなんて
とんでもない』と彼に文句を言っていたっけ。そして私たちを抱き寄せてこういった。可愛い可愛い
フラウたち、君たちはさしずめチェリーだな。あまいあまい、スウィートチェリーだ。私たちはさくらんぼの
ように赤い頬をして、ふたりしっかと手をつないで、それを笑って聞いていたっけ。

さくらんぼだろうが瓜だろうが私たちにとってはどうでもいいことだったけれど、つまりは私たちはとても
とてもよく似ていたのだった。本気を出せば誰だって私たちを見分けることなんて出来なかった。口を
開けばお互いの性格が出て、両親はすぐに見分けて私たちをやさしく叱り付けたけれどそこはエーリカ
が賢かった。ねえ、だったらしゃべらなければいいよ。ほらこうして二人で座って、ずーっとニコニコ
笑っているのさ。かくしてその通りにしていたら、行く人過ぎる人すべてが私たちをどちらとも言えずに
困った顔をして、参ったわと飴玉なんかをくれたりしたのだった。

あの頃はまだ、私とエーリカに境目などなくて、もしかしたら朝一番にそうと呼ばれたほうの演技を
お互いにし続けていただけなのかもしれなかった。それくらい私たちはお互いにお互いをよく知って
いた。実際のところ、やろうと思えばまねなんていくらでもできたし、見破られない自信だってあった。





カワハバ基地の備品は先々月のネウロイ侵攻によりすっかり老朽化し、私の所属する中隊の宿舎に
申し訳ばかりに取り付けられた姿見の鏡も長年倉庫で眠っていたようなひび割れた、かけたものでし
かなかった。それでも取り戻した頃よりはずっと復旧したほうなのだ。

毎朝、まるで儀式のようにその姿見の前に立つ。それがいつの間にか私の日課になっていることを、
きっと隊のほかの面々は知らないだろう。実際のところそれはこのスオムスに派遣される以前からの
もので、もう体に染み付いてしまっている。

まだ外は薄暗く、隊のみんなも安らかな寝息を立てているはずで。寝台に入ってからしばらくはどこか
一部が妙に騒がしかった気もするけれど、耳栓をしていたおかげで何ひとつ気にならなかった。いや、
実際は耳栓なんて気休め程度でしかないのだけれどとにかくそういうことにしておく。前にキャサリンは
「かしこいねー」と笑ってくれたけれど、世の中そんなに上手くいくものではない。だいたいあんな大声を
出されたら聞こえないわけがない。

「ウルスラ」

鏡の向こうに立つ、貧相な体つきをした少女に語りかけた。大きなメガネをかけていて、つまらなさそう
な顔でこちらを見つめている。ウルスラ。それがその少女の名前だ。なぜなら毎朝私がそう名づける
からだ。それだから彼女は毎日、ウルスラとしてこの世に存在することになる。

エーリカ、と。呼びかけたらどうなるのだろうか。
私はエーリカ・ハルトマンに、あのハンナ・ルーデルが言っていたような『優秀なストライクウィッチ』に
なれるのだろうか。今は遠い、祖国カールスラントの最前線でエースとして戦っているという、器用な
双子の姉に。
なれるはずはない。そんなこと分かっているのに、私は恐ろしくてどうしてもそう呼びかけることが
出来ない。

351遠い同じあなたとわたし 21X2w2Ib 2/2:2008/12/20(土) 19:29:52 ID:wF76j3nO

私がエーリカだったなら、今エーリカである彼女はジリ貧続きのカールスラント戦線でつらい戦いを
強いられることはなかったかもしれない。
彼女がウルスラだったなら、私は姉として妹を守らんとストライクウィッチになる道を閉ざすことが
出来たかもしれない。
私がエーリカだったなら、彼女がウルスラだったなら。そう夢想するのは野暮ったい行為なのだと
ちゃんと分かっている。けれど思わずにはいられない。だって私は実はエーリカだったかもしれない
のだ。私がエーリカだったなら、ウルスラである彼女を守れたかもしれない。それなのに。

軽く唇をかみ締めると、姿見の向こうの彼女もまた、同じように顔をしかめる。エーリカ、ねえエーリカ。
笑ってよ、あの頃と同じように。あなたならできるでしょう?いつもにこにこと朗らかに笑っていて、
いつもいつもウルスラのことを元気付けていた。エーリカが何をしてもウルスラは小さく笑うだけだった
けれど、その小さな笑顔一つのためにエーリカはいくらでも笑ってくれたよね。

ひび割れたガラスの向こうに姉の面影を求めても、相手はむっつりと眉をひそめたまま。目には丸い
二つの輪っかが乗っかっていて光の加減で冷たい光を反射する。私は結局ウルスラでしかないと、
思い知らされて悲しくなった。

私が『ウルスラ』に決まった日のことは、今でもよく覚えている。それは今までずっと、どこへ行くにも
何をするにも一緒だった私たちが初めて道をたがえた日だ。
ストライクウィッチになる。そのために士官学校に行くと、『エーリカ』と名乗った私の片割れがそう
言って家を出て行ったから、その日から私は『ウルスラ』になった。もしかしたら双子の姉だったかも
知れない私は妹となり、妹だったかもしれない彼女は姉となり、そして私を最後に抱きしめて笑った。

(ウーシュを守りたいんだ。手紙、書くからね)

なぜ、と問うたら、「そりゃ、私はウーシュのお姉ちゃんだもん」なんてあっけらかんとした答えが返って
きた。姉だから、妹を守りたいから、あなたはあの『異形』と戦うのかと尋ねたら、「当たり前でしょ」と
これまたあっさりと笑い飛ばされて。
かくして私は彼女に守られることになった。彼女は姉だからというだけで、私を守ると決めたのだ。

自分は本当はエーリカなのではないかと、今までなんど思ったか知れない。姉をエーリカ、妹を
ウルスラ。そう名づけられただけてかつては境目などなかったよく似た双子の私たち。あちらが自分を
『エーリカ』と決めたから、私は自動的に『ウルスラ』になった。けれど本当は逆だったのではないか?
彼女を守らなくちゃいけなかったのは、本当は私だったのではないか?ねえ、本当のところはどうなの、
エーリカ。尋ねてみたいけれど、そんなこと。できるはずがない。あの人はいつだって私の前をいって、
私の場所を奪い取る。そうして痛みも苦しみも、あっけらかんと、吸い取ってはまた前に行くのだ。
もたもたと後からその席に付く私は微かに残された彼女の残り香と微々たる痛みに耐えればいいだけ。
気が付けばいつも、そうだった。

「ウルスラ、ウーシュ。」

目を瞑って、語りかける。静かな部屋に響く声は、姉と同じ響きをしている。あの頃姉が何度も呼んだ、
私の愛称。繰り返すだけで姉に呼びかけられている気分になって、本当は救われているだなんて
誰にも言えない。
だけどそうしないと立っていられなくなりそうで、私は何度も何度も繰り返す。ウルスラ、と呼びかける。
ウーシュ、と囁きかける。私がウルスラであるために、私がエーリカであるかのように。

そして祈るのだった。今も同じ空の下にいる、私の妹かもしれない、姉の無事を。
彼女の姉だったかもしれない、愚かな妹から。

―――
以上です。コメントなどは最後に
352しかないかなしい(1) 21X2w2Ib 1/4:2008/12/20(土) 19:30:37 ID:wF76j3nO
続いて記憶喪失ネタ(になる予定)のえいらにゃ
―――


ほら、あなたがそうやって変わらずに優しく微笑んで頭を撫でるから、いつだって支えられてばかりでいた
のは私のほうだったことにいまさら気付かされる。

あなたの優しさに甘えてばかりいた自分の愚かしさに心臓のえぐられたような痛みが走ってつい顔をしか
めたら、『あなた』はだいじょうぶ?と私の顔を覗き込んできて、そしてごめんね、なんて申し訳なさそうに呟く
のだった。サーニャの望む私じゃなくてごめん。私じゃなくなってしまってごめん、って。その言葉がまた
切なくて、私はまた声を詰まらせてしまう。
違う、違うの。大丈夫、大丈夫なのよ。
それなのに私は彼女を安心させてあげられるそんな言葉ひとつさえ言えず、首を振って否定の意を返すこと
しかできないのだ。

どうして、なんで私ばかりがこんなに泣けてくるだろう。本当に泣きたいのはあなたのほうに違いないのに、
あなたは変わらず優しいから私はつい涙を流してしまうのだった。あなたの胸にもとから宿る優しさに漬け
込むようにしてしか、自分を表現できない私に絶望する。

切なくて苦しい、申し訳なくてつらい。…この気持ちを一体どんな言葉で表せばいいのだろう。


悲しい、しか、ない。





いつも私の傍らを歩くのが常であるエイラが、不意に前に出たり後ろに下がったりすることがあった。
私はさして意識していなかったから気付かなかったけれど、今になって思い返してみたらそれはいつも階段を
『昇るとき』と『降りるとき』で。そう言えば彼女は私が階段を昇ろうとするとき一段後ろで私の背を見上げて
いたし、私が降りるときはまるでエスコートをするように一段前に出て、私に片手を差し出していたっけ。
シャーロットさんやルッキーニちゃんといった人たちが『まるでお姫様と従者みたいだ』とよく私たちをから
かって、エイラはそのたびに「そんなんじゃねーよ」とぶっきらぼうに口を尖らせていたけれど、それでも
エイラはそれをやめることはなかった。私には理解しようもなかったけれど、エイラにとってその動作は、
単なる気分的なものではなくて大事な大事な意味を持っていたのだろう。

そう、例えば私の身に降りかかる危険から、私を守る、といったこと。

もしかしたらそれは、彼女の頭の中でずっとアラートを鳴らしていたいつ達成されるか分からない虫の知らせ
のようなものだったのかもしれなかった。それとももしかして、彼女の優しさが自然にそんな行動をさせた
だけなのかもしれなくて。
そんな憶測はもうしたって仕方がないし、今となっては確かめる術も無い。
だってそれはもう理由など関係なく、起こってしまったから。不確定の未来から、確定された過去へと移されて
しまったから。

気をつけろよ。
私の半歩後ろに下がったエイラが、耳元で囁いた。起き抜けて寝ぼけたままの私はうん、と生返事でそれに
答える。昨晩は少し蒸したせいだろうか、普段よりもずっと体力を消費した気がしていた。実際私の体は
相当疲れ果てていて、普段から私の体の自由を奪う低血圧さも相まってエイラに寄りかかってやっと立って
いるような、そんな状態だったのだ。いつもとそう変わらないのではないか、と突っ込まれたらそれは否定は
出来なかったけれど、それでも私は信じたかった。このときの私はいつもよりもずっと、調子が悪かったのだと。
だからあんなことになったのだ、って。

353しかないかなしい(1) 21X2w2Ib 2/4:2008/12/20(土) 19:31:07 ID:wF76j3nO

部屋まで連れてってやるから、もう寝ろよ。
ミーティングルームにいた私はエイラにそういわれて階段を上がり宿舎のほうへ向かうことにした。もしか
したらエイラが別のところへと私をいざなっていたのなら違ったかもしれないけど、エイラがそんなことをする
とは到底思えない。エイラのすることが私にとって本当に悪かったことは、いまだかつてなかったからだ。

いちだん、にだん、さんだん、よんだん…ゆっくりと階段を昇っていく。足元はおぼつかないけれど下から
エイラが支えてくれているから私はいつも何も考えずに前に進むことができた。エイラがそばにいてくれると
いつも、その部分がほわん、と温かい。だから私は安心しきっていた。だいじょうぶ。ほら、背中が温かい。
笑顔さえこみあげて来そうな夢心地。
けど、後ろにいるエイラは一体どんな顔をしていたのだろう。そんなとき、私は彼女を振り返ることなど
なかったから知らなかった。
でも、今なら分かる。エイラはきっと、私よりもずっと、真剣な表情でそれを見やっていたのだと。それは私が
うっかり足を踏み外して、転げ落ちて怪我などしたりしないように。たとえもしそんなことがあったとしても、
自分が手を差し伸べて、助けてやれるように。

(突然襲い掛かる不幸を防ぐことは出来ないけど、備えをすることで被害を和らげることは出来るんだ──)

かつて、エイラはそう真剣な顔で語っていたっけ。彼女の大事に大事にしているタロットの、「X」のカードを
見つめながら。エイラは多分その言葉どおり行動していたんだろう。もしかしたらあの時あの瞬間『それ』が
起こりうることを知っていて、避けられない運命だと分かっていて――それでいて尚、その被害が最小限に
なるように、懸命に立ち回っていたのかもしれない。

そう、結果的に『それ』は、起こった。突然襲い掛かった、事故という名の不幸として。
エイラにとって見たらもしかしたら幾分かはマシな方向で、けれども私にとってはひどく悪い結末で。

がくり、と体が支えを失うのを感じた。
次の段へと踏み出そうとした足を踏み外したのだ。そして私はバランスを崩した。眠気と疲れとでぼんやりと
した頭の中で、ああ、これはいけないとまるで遠くから見ているかのように思った記憶がある。だって今私は
枕を抱いていて、受身をとることなんて出来ないのだ。そもそもそれが出来るような精神状態だったら、私は
きっと、そんなミスはしなかったろう。たぶん、きっと、絶対…そうだと、いい。

サーニャっ!
エイラの焦った声が、耳に届いて。けれど私にはどうすることも出来なかった。

踏み外した場所は踊り場の直前、背後に続いているのは十数段もある階段。
ぐらり、と視界が巡って、天井を映して──このまま落ちるのかしら、まあ死ぬことはないだろうと、高を括った
瞬間体がぐいと引き寄せられて、柔らかく包み込まれた。そしてそのままその柔らかい何か越しに階段から
転げ落ちる感覚。ぐるぐると遠心力がかかるけれども何も見えない。そして痛いところはどこもない。
それが手に抱いた枕と、私を包んだその柔らかい何かとがクッションになってくれていたからだと気付いた
のは、ずっと後になってからだった。つまり、そのときは気付かなかった。

数段飛ばして勢いよく転げ落ちたのだろう。最後にどん、と大きな振動が走って、すべてが停止した。
どうした、何があったんだ、大丈夫か。
遠く、遠くでざわざわと、慌しく近づいてくる音がする。
どうしたの?なにがあったの?
聞きたいのは私も同じだった。それさえもうまく判別できないまま、私をぎゅうと強く抱きしめるエイラの腕の
中で、私の意識は霞みがかったように霧散していった。ああ、エイラにだきしめられてる。柔らかい、温かい、
いい香り。

それが悲劇の始まりだなんて、その幕を開いたのが私だなんて、気付かないままに私は眠りにつく。
だってエイラの体はいつもと同じように温かかったんだもの。寄りかかってばかりの私は彼女が私にしてくれた
ことなんて何も省みずに、彼女の腕の中で温かい夢を見ることにしたのだった。
354しかないかなしい(1) 21X2w2Ib 3/4:2008/12/20(土) 19:31:39 ID:wF76j3nO





ふわり、と漂う消毒液の香りが鼻について、私はうう、と身じろいだ。目が覚めて見渡すと、すぐに芳佳ちゃん
やリネットさんが駆け寄って私の手をとって言う。

「あ、サーニャちゃん!」
「サーニャちゃん、大丈夫!?」

すぐ隣で別のベッドを囲んでいた隊のほかのみんなも、二人の声でこちらをみた。そしてほ、とした表情を
浮かべた後また困ったように目を落とす。どうしたのだろう?首を傾げても何か言いにくいことでもあるのか、
みんな顔を曇らせたまま。

「目、覚めたのね。…一応聞いてもいいかしら?名前と所属、階級を教えて頂戴」

手に帳簿を持ったミーナ中佐がやってきて、しゃがみこんで私に視線をあわせるとそう尋ねてきた。どうして
ですかとばかりに首をかしげると、少し困ったように淡く微笑んで中佐が重ねる。

「気にしなくてもいいわ。ただ、あなたとエイラさん、階段から転げ落ちて──外傷はないけど、頭を打った
かもしれないから」

階段から転げ落ちた――そこでようやっと、話が見えて来た気がした。そうだ、わたしたちは。
けれど考えるよりも前に、ミーナ中佐の目が私を捕らえたから、私はひとまずその質問に答えることにする。
忘れるわけがない。私の名前と階級と、所属は。

「──…サーニャ・V・リトヴャクです。オラーシャ陸軍中尉、現在は第501戦闘統合航空団に所属しています。」
「はい、次。お父さんのご職業は?」
「音楽家。…ピアニストです」
「問題ないわね、良かった…」

目を微かに潤ませた中佐が私の肩に手をポン、と置いて安心したように笑った。そして振り返って上を見上げ
る。良かったな、ミーナ。かかるる声はバルクホルン大尉のものだろう。あとはエイラだな。少佐が視線を
めぐらせた向こうにいた坂本少佐がそれを受けて、もとあった場所に視線を戻す。
…えいら。そうだ、エイラだ。

「…エイラッ!エイラは、エイラは……っ!!!」

いまだ残る体のだるさや眠気なんてもうどうでもよかった。がばりと起き上がって彼女を探す。エイラがいない。
いつも私の隣にいる、いてくれる、優しい優しいエイラがいない。ぽっかりと空いた隣が寒くて、鳥肌が立った。
でも何となく内心感づいてもいた。この悪寒は単なる寒気に起因するものではないと。
エイラはどうなったの?記憶を振り返る、掘り起こす。あの時のわたしは自分でもそうと言い切れるほど
おぼろげな意識をしていたはずなのにどうしてだろう、私は私がそのとき見ていた景色を色鮮やかに思い
起こすことができた。そうだ、私たちは階段を昇っているところで、私が足を踏み外して──そうだ、それを、
エイラが抱きとめてくれたのだった。そしてそのまま。

「エイラッ!!」

驚きに身じろいだみんなの向こう側、隣りのベッドの膨らみに横たわっているその姿を認めて、文字通り
転がり落ちるような勢いで自分の寝ていたベッドから降りて彼女の下へと急いだ。私をかばって緩衝材に
なった、愛しくて大切なたったひとりのひと。
355名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 19:32:57 ID:Syl5rT64
ウィッチはあんな速さで空を飛び回ってるけど、だとしたらジェットコースターとかの絶叫マシーンはへっちゃらなんだろうか?
356しかないかなしい(1) 21X2w2Ib 4/4:2008/12/20(土) 19:32:57 ID:wF76j3nO

「エイラ、エイラ…っ!!!」

淡く黄味がかった銀色の髪と同じ色をしたまつげが、その向こうにある淡い青い瞳を覆い隠すように伏せ
られている。真正面から彼女を見下ろして、何度も何度も名前をよんだ。エイラ、エイラ、エイラ、エイラ!
信じたかった。そうしたらエイラがパチリと目を開いて、どうして泣いているのと困った顔をして慰めるように
頭を撫でてくれると。そして信じたくなかった。頭をよぎった最悪の展開を、どうしても否定して欲しかった。

「…落ち着くんだ、サーニャ。」

それだのに、頭に乗せられた手は望んでいたそれではなくて、私は身動ぎさえしない彼女を目の前にして、
力なく毛布の上に乗せられた彼女の手を握り締めることしかできなくて。

「…エイラは強く、頭を打っていた。サーニャ、お前を守ったんだ」

わかってる。そんなことわかってるんです、坂本少佐。答える代わりに何度も頷く。握り締めた手の温かさが、
確かに血の通っていることが、私にとって唯一のよすがで。
縋るように振り返って芳佳ちゃんを見たら、首を振ってうつむかれてしまった。私にはどうにもできないの。
ごめんね。そんな気持ちを如実に表したその態度に、自分の浅はかさを思い知る。

優しく頭を撫でる手が、ひとつ、ふたつ、みっつ。ぎゅうと横から抱き締められて、ぽつり、とゆっくり囁かれた。
元気出して、さーにゃん。目の端に映る黒くて長い髪。シャーロットさんとハルトマン中尉がベッド越しに私の
顔を覗き込む。

「今夜はわたくしが哨戒を代わって差し上げますから、サーニャさん、あなたはもうしばらく体をお休めに
 なってはいかがかしら…?」

伺うようにペリーヌさんが言うと、うんうん、と芳佳ちゃんとリネットさんが頷いた。でも、と言いよどむと、「隊長
命令よ。そう言うことにしておいて」と頭の上の手が一つ、肩の上に再び乗せられた。
みんなの優しさが温かい、柔らかい。でも、それなのに私は傲慢で、みんなの温かさにこんなにも包まれて
いるのにたった一つの人の温かさが欲しかった。

わたしのせいだ。
目覚めたエイラにそういったら、エイラはなんというだろう。「バカだなあ」と笑い飛ばして、「なんてことないよ」
って、慣れた手つきで柔らかく、私の手を撫でてくれるのかしら。想像するだけで恋しくなる。こんなに近くにいる
のに、ひどく遠く感じるエイラ。早く目を覚まして、私に笑いかけて。ごめんなさいと言わせて。

このときの私もまた、それが悲劇のはじまりの、そのまたはじまりにすぎないのだなんて知らなかった。
エイラが目を覚ましたらそれですべてが解決する、なんて悠長に捉えて、ただそのときの悲しみにくれている
ばかりで。

エイラが目を覚ましたのは、その次の日。
私は自分のベッドを抜け出して、祈るように彼女の手を握って眠りについていた。離すまいとぎゅっと握り締めて、
彼女が目を開いたとき一番に気付くことが出来るように。


(つづく)
―――
以上です。なんていうかどちらもどん底シリアス以外の選択肢が皆無で申し訳ない
>>350-351、二つで題名違っちゃってますが「遠い同じあなたとわたし」で保管よろしくお願いします、ごめんなさい。

そういや手記とはちょっと違うけど、以前手紙ネタ書いたのはエーリカの元ネタの人が奥さんに
今日は何を何機落としただとかそれ系の手紙を送っていたという話を小耳に挟んだからだったことを思い出した

>>333
GJ!本当に早くて恐れ入るばかりだw
大団円を期待してもいいんだよね、続きを心待ちにしてます
357名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 19:39:57 ID:B67FIbAs
>>354
ついにキター!
完結見終わるまでは死ねない・・・次回楽しみにしてます
358名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 20:25:10 ID:byAzRtDl
>>356
GJ!相変わらず上手い文章だなぁ
双子だとどっちが姉だ妹だって悩んだりするんだろうな。日本だと後から出てきた方が姉だなんていう風習もあったくらいだから
ほんとにどっちが姉でもおかしくないんだよね。しかしエーリカがかっけーwウルスラにはエーリカがまぶしくてたまらないんだろうなー。
そしてえいらにゃ記憶喪失キタ!続きが楽しみで仕方ない。シリアス大好きなのでどんどんやっちゃってください!
359名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 21:55:57 ID:Lf7QFuUt
>>356
五十本投下GJです!あなたの作品が一番好きだー!!
自分も日付が変わる前に投下できればいいなぁ。
360滝川浜田:2008/12/20(土) 22:13:44 ID:+77VefSL
皆さんこんばんは。
本日二回目となります。
ルッキーニ生誕祭に向けてフルスピードで参ります。

というわけでシャッキーニ。
361名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 22:15:12 ID:WcTjUWIC
>>355
空を飛ぶのは自分の魔力で制御してるけど、ジェットコースターは自分では操縦できないわけだ
つまり、感覚が違うんじゃないかと勝手に妄想
トゥルーデなんかは絶叫系苦手そうw
362滝川浜田 『NIGHTMARA NIGHT KNIGHT』:2008/12/20(土) 22:16:50 ID:+77VefSL

夢を見ていた。
あたしの好きな人があたしの元から去っていく夢を。

シャーリーはいつもの笑顔で言った。
じゃあな、って。

でも、あたしは追いかけなかった。
追いかける事が出来なかった。

あたしは泣いた。
夢の中なのに、泣いた。
悲しかったんだ。

シャーリーがあたしの手を離して、あたしの元から離れて行くのが。

嫌だよ、嫌だよ、シャーリー。

あたしの声は届かない。
シャーリーは遠くへ行ってしまう。

シャーリーがいなくなってしまったら、あたしの世界は壊れてしまう。

恐いよ。恐いよ。
シャーリー、行かないで。

―じゃあな―


――NIGHTMARA NIGHT KNIGHT――


「ううっ…シャーリー…ッ…!」
「…ルッキーニ…?どうしたんだよ…?」

あたしの泣き声を心配したシャーリーが、隣にいるあたしに話し掛けてくれた。

「…シャー…リー…」
「ル、ルッキーニ…!なんで泣いてるんだよっ…!?」

あたしはシャーリーの胸に飛び込む。

「ううっ…ううっ…シャーリー…あたしから離れないで…っ…!」
「ルッキーニ…」

シャーリーはあたしの頭を優しく撫でてくれる。

「…なんか怖い夢でも見たんだな?
ほら、話してみろよ」
「……うん…実はね…」
「うんうん」
「…シャーリーがあたしから離れて行く夢を見たんだ…
シャーリーは笑顔であたしにじゃあなって…
あたしは止めたんだ…!でも…でも、シャーリーは止まってくれなくてっ…!」
「ルッキーニ…」
「ううっ…うう…!あたしから離れないでっ…シャーリー…!」
「ルッキーニ、お前…」

363滝川浜田 『NIGHTMARA NIGHT KNIGHT』:2008/12/20(土) 22:19:57 ID:+77VefSL
あたしはシャーリーの服をギュッと掴む。

「…あっ、あたしっ…こんなにっ…シャーリーの事、好きなのにっ…!!」

すると、シャーリーはあたしを強く抱き締める。

「…あたしもさ、時々夢見るんだ」
「シャーリー…」
「いきなりお前に、別れを告げられるんだ」
「え…」
「…嫌で、恐くて…とても悲しい夢だよ…それでさ、あたしはひたすら叫んでるんだ」

――じゃあね、シャーリー――

行かないでくれ…!
ルッキーニ…!!

ルッキーニ!!!

「…あたしだって恐くて仕方ないんだ…!だってお前凄い可愛いからさ、いつ誰に奪われるか分かんないから…」
「そっ…んなのあたしだって…!
だってシャーリーったら美人だし、カッコいいし…!あたしとなんか釣り合い取れてるのかなって…!」
「バカだな…取れてるに決まってるだろ…!!
だってあたし、こんなにお前の事好きなんだぞ…!?」
「あたしだって…!あたしは誰にも奪われないよ!
だって、あたしはシャーリーのモノだもん…!」

シャーリーはあの笑顔で、言った。

364滝川浜田 『NIGHTMARA NIGHT KNIGHT』:2008/12/20(土) 22:21:52 ID:+77VefSL
「…じゃあ、大丈夫だ」
「―――え?」
「あたし達、大丈夫だよ。
こんだけ想い合ってるなら、絶対離れない」
「シャーリー…」
「例えるならあたし達は磁石だ。
決して離れる事の無い、お互いがいなきゃ成立しない。そんな存在なんだ」
「シャーリー…!」

あたしはシャーリーにキスした。
軽く触れるだけの幼いキス。

でも、そのキスはお互いの唇に確かな熱を残した。

「珍しいな、お前からキスなんて」
「今日は特別だよ!」
「…あー!」
「どうしたの、シャーリー」

シャーリーはあたしを押し倒した。

「我慢、出来ないんだよ」
「…シャーリーの、ケダモノ」
「お前の前でだけだよ。あたしがケダモノになるのは」

そう言って、シャーリーはあたしの服を脱がして行く。

「なあ、ルッキーニ」
「なに、シャーリー」
「…お前にお前はあたしのモノってシルシ、つけてやるよ」

シャーリーはあたしの首筋を軽く噛む。

「ああっ…」
「…出来た。これでお前はあたしのモノだ。……誰にもお前を奪えない」
「嬉しい…嬉しいよっ…シャーリー…
あたし、シャーリーのモノにされたんだね…?」
「まだまだだよ。
…お前の身体も心も、全部、あたしのモノにしてやるからな…?」
「うん、うん…全部シャーリーの好きにして…あたしの全部、奪って…?」

365滝川浜田 『NIGHTMARA NIGHT KNIGHT』:2008/12/20(土) 22:25:17 ID:+77VefSL

あたし達は、こんな夜遅くに重なる。


――好きであればあるほど、その人の事が心配になる時ってある。

でも、その好きな人から暖かい言葉を貰う事だけで、今在る心配は少しでも和らぐ気がするんだ。

だって、シャーリーもあたしと同じだったから。

ごめんね、シャーリー。
余計な心配させて。

でも、聞いて、シャーリー。

今度はあたしが、シャーリーの心配を癒やしてあげるから。
…だから、あたしの胸にも飛び込んで来てね。

朝目覚めたら、真っ先にこの事をシャーリーに伝えよう。


世界一、大好きなシャーリーに。


END


以上です。
個人的にシャッキーニの関係はこうだったら良いなぁと妄想。
お互いを好きなあまりしなくてもいい心配をするって言うパターンが好きな自分がいたりする。

そして、みんなGJ!
みんな捻った話を投下する中、自分はひたすらベタな方向に突き進みます。

…では、爺はここら辺で…
366名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 22:52:37 ID:wBFz9RLm
恋人はサンタクロース
ヘタレてるサンタクロース


サンタってフィンランドだっけ?
367名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 00:31:39 ID:JL/HPx1V
>>70の続き投下します。タイトルは幸せの方程式と終戦への鐘。

引きずられる。
こう表現する場合、大抵は引っ張って連れていかれることを指すが、今の私は文字通りに引きずられていた。
それこそいくら非力な女の子でも3人集まれば私ぐらい引きずって移動させることができるらしい。
まぁ、なにより私を引っ張っているのは皆魔女であるので下手したら一人でも引きずることが出来るのかもしれないが…

それにしてもこの状況もなんだか恥ずかしいじゃないか。
引きずってなんかいかなくても私は逃げないのに…一体私はなんだと思われているんだ。

廊下をすれ違う女の子たちがクスクスと私を見て笑う。
私は見せ物じゃないんだぞ!
とりあえず可愛い娘がいたので手を振っておこう。
あぁ、顔を真っ赤にしちゃって可愛いなぁ。

そんなことをしていると、3人からなにやら威圧感を感じる。

「ねぇ、エイラ…これ以上増やすつもりなの…?」
「そうですよ、エイラさん。いくら私でもこれ以上は我慢できませんよ?」
「イッルのアホネン!!」

なんだかすごく怒っている…。
一体なにを増やすっていうんだ!!
というかニパの言葉があまりにも胸に痛い。
どうして…一体どうして私がアホネン呼ばわりされなくてはいけないんだ!
15年生きてきて一番傷ついたかもしれない。
なんだか涙がでてきちゃったよ…

「ぐすっ…そんなこと言わなくてもいいじゃないか。一体私がなにをしたっていうんだ!」

こうも理不尽な叱責をもらっては私もたまったものではない。
私だって怒るんだからな!

「本当に…エイラは…ダメ。」
「教育を間違えましたかねぇ…。」
「たらし!」

どうやら、やはりまた私が悪いらしい。
理由の分からない他者の怒りに触れるというのはなかなか恐ろしいものだ。
自らは決して怒らせるつもりなどないのだけれども、理由が分からなければ解決のしようもない。
そんな状態の中にもう何日も放り込まれているんだ。
私はそろそろ限界かもしれない…
368名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 00:33:32 ID:JL/HPx1V

「そんなことより、今から一体どこに行くんダ?」

この話を続けても甚大な害を被るのは自らであることは分かりきっているので、私は話をそらすこととした。

「そんなこと…?」
「少しひどいんじゃないですか?」
「それだからイッルはダメなんだよ。」

なんだか予想に反した所で怒られた…
3人にとっては今の話題は‘そんな’扱いして良いものではなかったらしい。

「ご、ゴメンナ!私が悪かったヨ。だからどこに行くのか教えてくれヨ。」

こんな時は謝るに限る。
だってどう考えても自分が悪いのだから、反抗しても傷口を広げるだけだ。

「エイラさんは本当にしょうがない人ですねぇ。今から皆でお風呂ですよ。昨日は色々あって入れませんでしたから…」

そういえば私も昨日は心的ダメージのせいでお風呂に入らず部屋に帰ったんだった…

あれ?
つまり私はお風呂に入ってない3人のにおいをくんくんしていたのか?
それは怒られる訳だ…なんだか怒られている理由が分かってしまったぞ。
それにしても、本当に3人のにおいはいいにおいだったんだ。
それはつまり私がかいでいたのは彼女たち本来のにおいであって…それで幸せになっていた私はもしかしたら変態なのか…?

いや、そんなことはない。
誰だってあんなにいいにおいをかいでいたら頭がとろけてしまう。
それに比べて私ときたら全くの無臭。
いいにおいなんて欠片もしない…悲しくなってしまうじゃないか。

「ではエイラさん、大浴場に行きますよ〜。」

エル姉が号令をかける。
その姿はなんだか子供みたいで可愛らしい。
向かう先は大浴場。普通スオムスではサウナに入るものだが、このカウハバ基地には湯船が存在する。
なんでも、あの穴吹智子が‘湯船につからないなんて信じられない!’と言い張ったらしい。
それでも最初のうちは無視もできたが、中隊の成果が上がってくるとさすがに無視はできなかったようで、浴場が整備されることになったようだ。
そういう訳でカウハバ基地には意外としっかりした浴場があるんだ。
それ以来、なんだかんだで湯船を伴う入浴はスオムスの乙女たちにも受け入れられ、なかなか盛況している。
まぁ、私も無理言ってサウナを作らせたから似たようなものなんだけど…

「あれ?ちゃんと湯船にお湯は入ってるのカ?」

まだ昼前のこの時間、普段ならば湯は抜かれてしまっているはずだ。

「あぁ、それは大丈夫です。お風呂に入れそうもないって困っていたら、なんだかたくさんの子たちが朝風呂を準備してくれるって言ってくれましたから。」

エル姉には意外とファンの女の子が多いんだ。
少佐という立場にいながら誰にでも優しく礼儀正しいし、なんだかニコニコしていたり困ったりしている姿は年上なのにほっておけない。
そんなエル姉だからファンが多いのも頷ける。
まぁ、本人は全然気づいてないのだから、なんて鈍感なことだろう。
369名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 00:34:30 ID:JL/HPx1V
「なぁニパ?エル姉って鈍いよなぁ。」

ニパに囁く。

「エル姉もイッルには言われたくないだろうさ。」

なんだかニパが不機嫌そうに言いながら頭をバシバシ叩いてくる。
なんで私が私がそんな扱いされなきゃいけないんだ!

「ほらほら、喧嘩してないで行きますよ?」

エル姉が言うんなら仕方ない。私たちは浴場へと向かった。

ーーーーーーーー

それにしてもなんだかドキドキしてこないか?
私の頭の中にはそんなことばかりがこだましている。
でも今はそんなことを伝える宮藤はいない。
あぁ、でもこれは天国かもしれない。

服を脱ぎ終わると、なにやらエル姉とニパから視線を感じる。
きっと私の後ろにいるサーニャを見ているんだ。
いくらエル姉でもサーニャの裸をそんなに見せるわけにはいかない!
ニパになんか絶対見せてやるものか。
そう思い、私はサーニャの前に立ちはだかる。
ふふふ、見たければ私を倒してから見るんダナ!
エル姉とニパの頬が段々朱に染まっていく。
一体どうしたんだ?
そんな私の前に何故かサーニャが身を乗り出す。

「見ちゃダメ…。」

いや、サーニャが私の前に立ちはだかってどうするんだよ。
私が隠した意味がないじゃないか。

「ほら行くゾ、サーニャ!」

サーニャのあられもない姿を見せるわけにはいかない。
そう思い私はサーニャの手を引っ張って浴場へ飛び込んだ。

「待ってくださいよ〜!」
「おい、待てよイッル!」

エル姉とニパが私を呼ぶ。
どんなに言ってもサーニャの裸は見せてやらないよ!

「ほらサーニャ、湯船につかるまえに身体を洗わないとな。」
「うん。」

サーニャの髪と身体を洗うのはずっと前からの私の仕事だ。
サーニャは意外とずぼらな一面を持っていて、私がやってあげないとダメなんだ。
それはお風呂だけでなく寝る前の衣服の整理においても同じことである。
いつかしっかりと言い聞かせてあげなくてはいけないとは思っているのだが、
私の心はどうやらそんな関係をすっかり気に入ってしまったらしく、決して強くなど言えはしないのだ。
それは私にとって、大切な大切な場所だったから。
いつからかサーニャはしっかりと私の心に住んでいて、こんな風に二人でいると、なんだか熱いものが胸を焦がすんだ。
370名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 00:35:24 ID:JL/HPx1V
「エイラさん!」
「イッル!」

そんな私の心境を知ってか知らずか、エル姉とニパの声が私の耳に飛び込んでくる。

エル姉とニパのスケベ!
そんなにサーニャの裸を見たいか!
サーニャを守るために立ち上がろうとした私の肩が押し戻される。

「ほら、エイラさんもしっかり座ってください!」
「ちゃんと背筋を伸ばせ、イッル!上手く洗えないじゃないか!」

………なにが起こっているのだろうか?
状況が上手く飲み込めない。
まぁ抽象して述べるならば、私もサーニャと同じ状況になっていたってことだ。
正確に述べるとするならば、ニパが私の背中を流して、エル姉は私の髪を洗っていた。

エル姉に髪を洗ってもらうのは随分久しぶりだった。
そういえば、まだ入隊したばかりの頃は、なんだかいつも不安で、寂しくて、私は四六時中エル姉のベルトをつかんで離さず、お風呂だっていつも一緒だった。
私の髪を洗うエル姉の手は、いつも優しさに溢れていたけど、実は少しだけ不安だったっけ…。
石鹸が目に入るのを怖がって目を瞑ってしまったら、気づかないうちにエル姉がいなくなってしまうんじゃないかと怖くて、私はいつも目を開けて髪を洗ってもらったんだ。

今、私の髪に触れているエル姉の手は、思い出と変わらず優しくて、だけど昔と違って怖れなんて全く感じなかった。
それは、エル姉が注いでくれた優しさで私の心はすっかり満たされ、溢れた優しさは新しい大切な人をたくさん連れてきてくれたから。
あの頃からたいした時間は経っていないはずなのに、いつからか私のまわりには大切な人が随分増えた。
でもやっぱりそれは全部エル姉のおかげで、私に触れるエル姉を感じると、なんだか暖かいものが私の胸に溢れた。

ニパとこんな風にすることも長い間なかった気がする。
501部隊に参加するまでは私たちはいつだって一緒に戦った。
被弾なんてしたことない私といつも撃墜されるニパ。
凸凹コンビだなんて言われていたけど、実は私は意外とそれが好きだったんだ。
今考えると、もしかしたらニパは私の初めての友達なのかもしれない。
ニパと初めて会ったときの私には、基地の中にエル姉しか大切なものがなかったんだ。
でも気づいたらしっかり私の中にニパがいた。
二人でいたずらしてエル姉に怒られたり、大型のネウロイを二人っきりで落としたりもした。
私たちはかけがえのないパートナーだった。
ニパといるとなんだかいつも胸に熱いなにかを感じた。

もしかしなくても私は幸せなのかもしれない。
守ってあげたいサーニャがいて、共に歩きたいニパがいて、そしてずっと見守ってくれるエル姉がいる。
針のむしろみたいに思えた現状だってなんだか楽しく思えてくる。

「私ばっかりやられている訳にはいかないゾ!ほら、サーニャもニパもエル姉もまとめて洗ってやる!」

そうだよ。みんなで仲良くすればいいんだ。
一緒に洗いっこすればあんな風にギクシャクなんてしなくなる。
私たちは洗ったり洗われたりなんだかよく分からなかったけど、なんだか楽しく過ごしたんだ。
371名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 00:37:17 ID:JL/HPx1V
ーーーーーーーー

「いいお湯ダナー。」

洗いっこも終わって湯船に身体を沈める。
あぁ、なんだか心までぽかぽかしてくる。

「本当にいいお湯ですね〜。お風呂をわかしてくれた娘たちに感謝しなくちゃダメですね。」

エル姉は顔をすっかり緩ませてなんだか眠ってしまいそうだ。

「生き返るな〜。」

いつも死にかけているニパが言うと説得力がある。
すっかりだらけきっちゃって…写真におさめてやりたい。

「気持ちいい…。」

サーニャもなんだか幸せそうで、私までニコニコしてしまう。
あぁやっぱりサーニャは可愛いなぁ。

最近は怒った顔ばかりだったから、皆がニコニコしているだけですごく嬉しくなってくる。

このまま平和ならいいなぁ。そう私は思っていたんだ。
でもやっぱりそんな訳にはいかなかった…


「そういえばエル姉、今日中に決着つけるんだよな?」
「そうですよニッカさん。そうしないと色々とお仕事にも影響がでちゃいますからね。」
「負けない…!」

あぁ、3人が話をしている。
なんだか不吉な予感がするのは私の予知の賜物なのか、それとも気のせいなのか…。

「ねぇ、エイラ…そろそろ分かったでしょ?」
「いくらエイラさんでもさすがに分かってきたでしょう。」
「でもイッルだしなぁ…。」

あぁ、どう考えても答えを迫られている。
3人が怒っている原因…あっ、そうだった!
372名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 00:38:04 ID:JL/HPx1V
「お風呂に入ってなくてにおいを気にしていたのににおいをかいだのは私が悪かっタ!だからもう許してくれヨ!」

精一杯私は謝ったんだ。あぁ、許してくれるだろうか?

「エイラのバカ…!」
「エイラさんは本当にダメな娘です!私達がいつから怒っているか考えればそれが原因じゃないことぐらい分かるでしょうに!」
「イッルがここまで大バカ野郎だとは思わなかったよ!」

なんだか凄く怒っている。
どう考えても凡ミスをしたのは私なのだから当然のことなのだがそれでもこの圧力には耐えられない。
どうして、一体どうして怒っているんだ。
誰か…誰でもいいから答えを教えてくれ!
私は皆で平和にニコニコして暮らしたいだけなのに…これじゃあ正反対じゃないか!

「あぁ、もう私は我慢できない!大バカイッルに教えてやるよ!」

ニパがそう叫ぶ。やっと教えてくれるのか…これで…これで平穏な生活が戻ってくるんだ。

「ニッカさん、一体どうするんですか!?」
「ダメ…!」

エル姉とサーニャがなにか言っている。
私の目の前にはなんだか頬を真っ赤に染めたニパ。

「イッル…本当はお前に気付いてほしかったんだけどな…。」

ニパはそうつつぶやくと、私に向かって近づいてくる。
えっ!?一体どこまで近づくんだ?私たち今裸だぞ!リンゴみたいに赤く染まったニパの顔が私に近づく。

そして、私達の唇は重なった。

Fin.
373名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 00:52:10 ID:JL/HPx1V

というわけでご無沙汰してます。皆様GJです。
特に喫茶店の続きがGJすぎる!!間違いなくエイラにとってもサーニャは金賞だよ!
あとは21X2w2Ib様は相変わらずイイ!エイラニャ記憶喪失wktkしてます。
加えて、僭越ながら爺様、NIGHTMAREじゃないですか?悪夢ですよね?

なんだかんだで続きを待ってたと言ってくれる方々が意外と多くてとても嬉しかったです。
まぁ本筋は多分次で最後の予定。番外的なのとか後日的なのはやるきがするけど…
そういえばタイトルの幸せの方程式ってよくよく考えると意味がわからないな…
自分はやりたいこととかラストを決めてから肉付けするタイプなのでタイトルは最終話でしか本質的には関係ないんですよね…

随分長くなりましたがサーニャ・V・リトヴャクの・V・の部分が可愛いと思っていてこの顔文字をサーニャと呼んでいるRU1ZZ/dhでした。
374滝川浜田:2008/12/21(日) 01:02:39 ID:3nyuwEzl
>>373
そうでした。『NIGHTMARE』でした。
なにせ眠気の中書いてたので変なミスが…

というわけで保管庫に保管する時はタイトルを『NIGHTMARE NIGHT KNIGHT』に修正お願いします。
375名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 01:07:37 ID:5FJa6Au8
芳一ネとエイラーニャで連載が有るんだから、誰かがエーゲルでやってくれるはず
376名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 01:32:48 ID:pVoBQzKq
もっミーナかもっぺりも入れてくれ!シャッキーニも!ってかもう全部!!
377名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 01:35:00 ID:trl42P+6
全員で記憶喪失ですねわかりました
378名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 01:42:09 ID:pdM74U24
なんというカオス
379保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2008/12/21(日) 02:03:16 ID:NqKRdbg2
やあどうも、保管庫の中の人です。
記憶喪失ネタで盛り上がってる中、ひとり「お姉ちゃん分が足りない」とか呟いてたら
>>280で色々全開なトゥルーデに脳をやられてしまい気付いたら短編が一本出来上がっていました。
ホントに私はいったい何をやっているのであるか。

そんなわけでせっかくなので投下しておこうと思います。
未開拓なトゥルッキーニに挑戦したはずがいつの間にやらただの変態お姉ちゃんになってたが気にしない。
トゥルーデ視点のトゥルーデ×ルッキーニで、「Probabilmente e mia Sorella」です。
380Probabilmente e mia Sorella ◆YFbTwHJXPs :2008/12/21(日) 02:05:42 ID:NqKRdbg2
 こいつとクリスは似ていない。悪戯好きで欲求に忠実で、しなるような髪質に浅黒い肌、
性格も外見も類似点など数える程しかない。ああ、それなのにどうしてあんなことを言っ
てしまったんだ。これはあれか?宮藤の言うところの"妹不足"というやつなのか?イェー
ガーにはシスコン呼ばわりされるし、ミーナには「クリスに会いに行かなくて大丈夫?」
と毎日のように訊かれるし、もしかしたら私は自分が思っている以上に深刻な状況にある
のかもしれない。

「ルッキーニ少尉。お前はなんだか、私の妹みたいだな。」

 ……イェーガーの冷たい視線が忘れられない。

────────

 例えば、ルッキーニが私の妹だったとしよう。推論は仮説を立てるところから始まる。
まずはルッキーニ少尉という呼称を改めねばなるまい。妹ということは家族ということだ。
ならばファミリーネームが違うのはおかしい。
『フランチェスカ・バルクホルン』
──いや、いまいちだな。
『ゲルトルート・ルッキーニ』
──ダメだ、カールスラント語とロマーニャ語は相性が悪い。困った、早くも行き詰まっ
てしまった。別のアプローチを試みてみよう。例えばそう、何と呼び合うべきか。向こう
では『ガッティーノ』と呼ばれていたらしいが、こいつはどうもしっくり来ない。他を模
索すべきだろう。もっとこう、フワフワと柔らかくて、それでいてあの活発さを持ち合わ
せていなければならない。フランチェスカという名前はブリタニア人なら『ファニー』と
か『フランキー』とか言うのかもしれないが……難しいな……。私はクリス同様『お姉ち
ゃん』と呼ばせれば問題ないんだがな。いや待てよ、クリスの方が年上なんだからクリス
も『お姉ちゃん』になってしまうな。迂闊だった。ここは明確に区別をつけて『トゥルー
デお姉ちゃん』、いや私はそのままでクリスが『ちい姉』くらいでいいかもしれない。長
いのは呼びにくいからな。フフッ、想像しただけでわくわくしてくるじゃないか。それで、
ええと、……何の話だっけ?

 そうだ、何であいつが妹みたいに見えたか、だった。私としたことが、仮説の立て方を
間違えていたようだ。お陰で話が関係ない方に逸れてしまった。もっと状況に即した考察
から始めるべきだな。ルッキーニはいつもイェーガーと一緒にいる。前に「ママみたいだ」
とか言っていたので、イェーガーに母性のようなものを感じているのだろう。だが年齢的
には一桁しか違わないわけだし、関係としてはむしろ姉妹に近いはずだ。事あるごとにべっ
たりくっついて、甘やかされっぱなしだ。ふむ、この辺りに何かありそうだ。考え直して
みれば、クリスはああ見えてしっかり者だから、甘やかしこそしてきたがあまり甘えられ
たことがないような気がする。唯一の姉妹なんだからもっと頼ってくれた方が嬉しいのだ
が、まあきちんと自立できているのはいいことだろう。姉離れできるほど成長したんだ、
寂しいなどと思ってはいけないのだろう。ん?寂しい?私は寂しいのか?そうかわかった
ぞ!私は甘えてくれる相手が欲しかったんだな!実の妹であるクリスに甘えられ足りない
から、甘えん坊なルッキーニを見て思わず自分の理想の妹と重ねてしまったというわけだ。
うむ、なるほどな。それなら全部納得がいく。結局は私の方が妹離れできていなかったの
だ。まだまだ心の鍛錬が足りないぞ、ゲルトルート・バルクホルン。カールスラント軍人
たる者、こんなことで動揺しているようでは、一流のエースとは呼べんぞ!

 それにしても、ルッキーニか……そう言えばあまり2人だけで話したことはなかったか
もしれないな。いつ2人きりでの出撃の機会が来るかもわからん、もっと親睦を深めてお
くべきだろう。あいつには何かと手を焼かされてばかりだが、あいつのことをもっと良く
理解していれば許せることだってあるかもしれない。ふむ、そうと決まれば直ちに準備だ。
久々にトルテなど焼いてみるか。濃厚なショコラーデ・トルテは果たしてロマーニャ人の
舌に合うかな?いや、トルテよりもあっさり目のクーヘン方がとっつきやすいか。ルッキー
ニはフルーツも好きだからな。ああ、でもあのリベリアンのどぎつい菓子をかじったりも
しているようだし、案外味の濃いブツの方が受けはいいかもしれない。なあおい、ミーナ、
トルテとクーヘンだったらどっちがいいと思う?

《バルクホルン大尉、戦闘に集中してください!》
381Probabilmente e mia Sorella ◆YFbTwHJXPs :2008/12/21(日) 02:09:29 ID:NqKRdbg2
────────

 ネウロイは極めて迅速に撃墜できたにも関わらず、基地に戻ったらミーナにこってり絞
られた。仮にも戦闘中に私事の話をするのは確かにまずかった。認めよう。認めるが、何
もあんなに怒鳴らなくたっていいじゃないか。ルッキーニとシャーロットに余計なことを
考えさせてしまったからその罪滅ぼしのつもりだったんだと白状したら、報告書に記入し
ないことと引き換えに全員分のトルテを焼くようにと要求された。ミーナも疲れているよ
うだったし、甘いものが欲しかったのかもしれない。

「というわけで、今日のアフタヌーンティーのお菓子はバルクホルン大尉の焼いたチョコ
 ケーキです。」

 ティータイム担当のリーネが私に代わって紹介する。ブリタニア語だとトルテもクーヘ
ンも同じく"ケーキ"になってしまうので少々寂しいが、まあそんなことはどうでもいい。
見てくれ、あのルッキーニの満面の笑みを!未だかつてルッキーニが私にあんな笑顔を向
けてくれたことがあっただろうか!ふふっ、これで姉としての最初の一歩は確実に踏み出
せたはずだ。じゃなかった。親睦を深める第一歩だった。どうだリベリアン。私だってこ
れくらいのことはできるんだぞ。名誉挽回だろう?ははは、おいルッキーニ、そんなに慌
てて食べたら口の周りに……ほら、言わんこっちゃない。真っ茶じゃないか。可愛いやつ
め。美味しいか?

「これ美味しいよ、お姉ちゃん!」

 うむ、それは良かった──って、お前今何て言った!?お姉ちゃん……だと!?なんだいき
なり、照れるじゃないか。いやもちろん構わないさ。むしろ是非そう呼んでくれ。……何?
イェーガーが?おいリベリアン!ルッキーニに妙なコトを吹き込むな!やめろ!貴様にま
でお姉ちゃんなどと呼ばれたら私はッ……!!


endif;


以上です。アホな話ですまない。
お姉ちゃんはケーキを焼くのが得意と聞いて思わず焼かせてしまった。
前にどシリアスなトゥルミーナ書いといてなんだけど、シスコンお姉ちゃんっていいよね!!
誰か本気で病気なゲル芳書いてくださひ

>>272
亀レスsry、実装は決定しました。詳細は保管庫の掲示板参照。
今度時間が取れたらcgi完成させて何とかしますのでもうしばらくお待ちください。

あと全SSにGJ!!安価略失礼。
最近通勤時間中だけじゃ読みきれなくなってきたから困る。
どれも秀逸な文体だったりハッとするような一文が組み込まれていたりして、読み応えのあるものばかりです。
もうすぐルッキーニの誕生日なわけですが果たして何人が潜伏しているかな……?
382名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 02:42:22 ID:ZCZCSwFF
>>381
保管庫の過去ログが更新してるからもしやと思ったが……
お姉ちゃん戦闘中なのに雑念多すぎだよwwwgjでした!



さて記憶喪失ネタを考えていたらいつのまにか発展して、
もし身体が入れ替わったらになっていたんだが、どうしようか……
383名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 02:53:29 ID:pdM74U24
YOU投下しちゃいなよ
384名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 03:03:04 ID:H/35y01Z
飛べぇー!>>382ぃぃぃ!
385名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 03:07:03 ID:/0YhN2dB
精神入れ替わりネタも王道の一つだ
問題ない
386名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 03:12:03 ID:ZCZCSwFF
いや、期待させる言い方で悪かった
思いついただけで書いてなかったんだ
俺に、力があれば!!
387名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 03:51:18 ID:rncvEgVw
手記シリーズ(勝手に命名)を投下します。とりあえず、いらん子中隊分はしないとな・・・
388エルマ・レイヴォネンの手記:2008/12/21(日) 03:53:51 ID:rncvEgVw
エルマ・レイヴォネン中尉(当時)
スオムス空軍義勇独立飛行中隊所属

「第507統合戦闘航空団」の前身であった「スオムス義勇独立飛行中隊」
通称「いらん子中隊」創設期メンバーであり初代隊長である。

元スオムス空軍「第1中隊」通称「アホネン中隊」所属。
「スオムス義勇独立飛行中隊」設立にあたり隊長に抜擢される。

その期間はごく短いものであり、その苦労が手記に残されている。

(一部抜粋・要約)

○月×日
今度新設される部隊の隊長に抜擢されました。海外からのウィッチをまとめる役です。
こんな重役、務まるか不安です。

○月×日
自己紹介、失敗しました・・・みんな怖いです。
まともなのは迫水さんだけです。いい友達になれそうです。

○月×日
穴吹さんはとても厳しいです。
でも、扶桑がなぜ強いかわかる様な気がします。

○月×日
ついにネウロイが攻めてきました。震えて何もできなかった。
情けないことだけど・・祖国を守りたい。

○月×日
ネウロイの爆撃機を落としました。ウルスラちゃんのロケットのおかげです。
穴吹さん・・・迫水さん・・・そんな人だったなんて・・・
迫水さんとは友達になれません。扶桑人は地獄を恐れぬ人たちです。

○月×日
私は隊長に向かないかもしれない。もっと隊長にふさわしい人がいる。
外国人だからといっていられないかもしれない。

○月×日
スラッセンが占領されました。多くの難民を見ました。
私は何もできなかった・・・

○月×日
爆弾重いです。智子さんの命令不服従で胃が痛いです。

○月×日
隊長を穴吹さんに譲ったけど・・・やっぱり落ち込みます・・・

○月×日
オヘアさんに誘われて飲みました。泣いちゃいました。
オヘアさんに励まされました。

○月×日
隊長(穴吹智子のこと)のおかげでスラッセン奪還できました。

○月×日
迫水さんと穴吹さん・・・こわいです。
ケモノさんです。絶対に地獄に落ちます。
389名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 04:17:40 ID:Lws0bosJ
こう言っちゃなんだがどうも本編まんまだからコメントしづらい…。もっとこう…捏造してみないか?w
390名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 06:43:53 ID:Os5wH9VK
保管庫見てきたけど、ちょっと管理人、仕事丁寧すぎだろ
きっと職場でも優秀な人材であるのに違いない
その仕事に支障の出ない範囲でがんばってくれ

って何言ってんだ俺…
391名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 07:40:14 ID:5FJa6Au8
管理人様乙でございます。
たぶんここまで盛り上がってるのは保管庫のおかげ
392名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 07:50:15 ID:biPFBl70
投下ラッシュが来る前に…
いらん子好きな人、結構多いみたいで嬉しいです
前スレ「アキストゼネコ」の続き書いてみました
注意:こっちから先に読んだら意味わからないと思います
ビューリングとウルスラで7レス
393アキストゼネコ 2@:2008/12/21(日) 07:52:03 ID:biPFBl70
「ビューリングー、こっちでーす」
 恥ずかしげもなく食堂の真ん中で大声を出すオヘア。入り口に突っ立ったビューリングはどのテーブルも満席なのを見て取り、諦めたように肩を落として歩き出した。
「…お前だけか、キャサリン?」
 贅沢に占領されたテーブルの空いた席にかけ、ざっと周囲を確認したビューリングが問いかける。
「イエース、みんなグロッキーですねー」
 タフなオヘアはあっけらかんとした笑顔。機嫌の悪い智子に早朝訓練でしごかれた隊員たちは食事をとるより休息を選んだらしい。
 ビューリングは濃いブラックに口をつけて考える。早朝訓練のせいで釈明する機会を逃したが、同時に噂の拡散をも防げたはず。みんなを集めて真相説明しなくても、口の軽いキャサリンにだけ話せば済むのではないか。
「なあ―――っん?」
 口を開きかけて違和感に押し黙る。四方八方から注がれる視線に苛立ち、ビューリングは懐から取り出したタバコに火をつけた。基地隊員全てが利用する食堂なのだが、周りに遠慮なんかせず公害じみた大量の煙を吐き出す。
「なんだっていうんだ一体!」
「愛しのウルスラがいなくて、ユーは苛立ってるねー」
 オヘアがへらへらと笑いながら見当違いな事を言う。喧嘩なら買うぞと腰を浮かしかけたビューリングは、二人が座っているテーブルに近づく衛兵の姿をみとめて目を細めた。
「エリザベス・F・ビューリング少尉、司令部より命が下ってます。御同行ください」
 今まで何度も経験したやりとり。この雰囲気は即営倉入りだなと、ある意味経験豊富なビューリングは冷静に分析していた。

 背後でガチャンと重い錠のかかる音。衛兵は自分達の役目を果たすと、特に何の説明も与えず立ち去った。
 ビューリングは狭い室内を見回し、唯一の調度品である硬いベッドに腰を下ろす。営倉入りなど慣れたもので、その事自体は何ら彼女を追い込む要因にあたらない。
「まいったな…タバコを取り上げられるのは拷問だ」
 独房の中にぼやきが響く。つい癖で懐を探ってしまっての失望だった。
「今回の罪状は…まあ、あれだろうな」
 大きな溜め息。どこからバレたのか知らないがきっとそうなのだろうと、憂鬱にそう思う。
 反骨心のある彼女は抗命罪で幾度となく拘留され、その都度下される処分を斜に構えて受けてきた。不服を申し立てて騒ぐのは見苦しいという変なポリシーだってある。だが今回はそれを貫けるだろうか。
「私の運命はあいつ次第、か…」
 脳裏にもう一人の当事者を思い浮かべる。どうでもいいの一言で片づけられそうだと一抹の不安がよぎったが、結局のところ加害者として見られている自分に何もできる事はない。
 狭い寝台にごろんと身を横たえ、ビューリングは沙汰が下るのを待つ事にした。
394アキストゼネコ 2A:2008/12/21(日) 07:53:07 ID:biPFBl70
「オー、ジーザスっ! ビューリングが兵隊さんに連行ですよー?! 昨夜の淫行がもう司令部にバレてしまったねー!」
 そう大声で叫びながら、義勇独立飛行中隊の詰め所に駆け込むオヘア。するとそこにいた中隊メンバー2名は顔を見合わせ、揃って大きな溜め息をついた。隊長である智子が眉をぴくつかせて重い口を開く。
「問題山積ね。こっちはウルスラがアホネンに連れてかれたばかりだってのに…」
「アホネン大尉ってなぜですー? 見初められてしまったですかー?」
「いや、ウルスラはアホネンの守備範囲外よ。聞き取り調査って言ってたけど、まあ軍なのだから尋問ね。ところで淫行って? あの二人、何やらかしたわけ?」
 長い黒髪をガシガシとかきあげた智子は事情を知っていそうなオヘアに迫る。壁際まで追い詰めてもオヘアは曖昧な笑顔を浮かべていたが、顔の真横に扶桑刀を突き立てられるとあっさり口を割った。
「今朝ビューリングを起こしに行ったらですねー、ウルスラが一緒に寝てたですよー。諸々の状況とウルスラ本人の言葉から二人は深い関係になった、そういう事でーす」
「…冗談でしょ、キャサリン?」
 唖然として智子は聞き返す。隊で一番そういった色事と無縁そうな二人がよりにもよって。
 キャサリンはプーと頬を膨らませ、最初からずっと部屋にいたくせに息を潜めて遠巻きにしている人物を指差す。
「疑うなんてトモコひどいでーす。その場にはエルマ中尉もいたねー」
「わっ私に振らないでくださいキャサリン少尉っ―――ひいっ?!」
「エルマ中尉にお聞きします……キャサリンが言った事は本当ですか?」
 光速で智子に詰め寄られたエルマはがくがく震えながらなんとか頷いた。片手に持った抜き身の刀の威力は絶大だ。妖しく光るそれを引いて鞘にしまうと、智子は顎に手を当てて考え込む。一般的に12〜13歳くらいまでは子供とされるはずだからこれは不味い。
「でも…どうしてこんなに早くばれたのかしら?」
「オー、シット! あれを聞かれたのだわっ。掘った雪穴に向かってエルマ中尉がぶちまけた二人の秘密を!」
「ひいいぃ〜〜〜〜?! やっぱり私のせいですかあぁーーーっ」
 ミーは見てただけでーすと安全域に逃げるオヘアと、蒼白になった両頬を挟んで震えるエルマ。情けなくて馬鹿らしくて頭痛がして、智子は怒る気さえ失せた。
「ところでトモコ、これからどうしますかー? 今度こそビューリング、銃殺になっちゃうかもしれませんよー」
「ちっ、もう…しょうのない奴ね。つっても助命嘆願にあがるくらいしか…」
 心配そうなキャサリンと部屋をうろうろする智子。なんだかんだと言って通称いらん子中隊の結束は固く、仲間の危機にじっとしてはいられないのだ。
「あっ、トモコ中尉っ! ジュゼッピーナ准尉が戻ってきましたよ」
 ジュゼッピーナは智子が間者として第一中隊に放ったうちの一人である。勿論アホネンによるウルスラの取り調べを探らせるためだ。
 窓から外を見やると、エルマ中尉が言うとおり雪深い小道に人影。スキップしながら帰ってくるという事は何らかの進展があったのだと、智子は今後の対応を考えるのを丸投げした。
395アキストゼネコ 2B:2008/12/21(日) 07:53:59 ID:biPFBl70
 時は少しさかのぼり―――
 抵抗せず粛々と連行されたウルスラは、第一中隊の隊舎最奥にある煌びやかな隊長室を興味なさげに見回した。手に持っていた本は取り上げられてしまったので特にする事もない。
「昨夜あなたの身に起こった出来事について幾つか質問します。イエスかノーで答えなさい。いいわねっ?」
「…イエス」
 居丈高に命令するアホネンに対し、ウルスラは特に何の反応も示さない。この部屋に連れてこられてすぐ座らされた対面式のテーブルで、北欧系特有である色素の薄い金髪を間近にしている。
「あなたは初めてだった?」
「…イエス」
 少し首を傾げてウルスラは従順に頷く。記憶する限り、あのような現象は今までなかったはずだ。顔を険しくしたアホネンがズイッと身を乗り出してきたので、同じ分だけウルスラは後ろに下がった。
「ベッドに誘ったのはビューリング少尉?」
「…………」
 鼻息の荒いアホネンにウルスラは言葉を失う。確かにベッドを使えと勧めたのはビューリングだが、なんとなくイエスと言ってはいけない気がした。
「どっちなの、はっきりなさいっ!」
「…イエス」
 化粧くさいアホネンにギブアップ、それでも表情を変えずにウルスラは真実を答える。
 重要な証言を得たアホネンは満足げに頷き、机の上まで乗り出していた体を椅子に落ち着けた。手つかずのままだった紅茶を優雅に一口。
「あなたの意思とは関係なく無理やりだった?」
「…ノー」
 また少し考えて、きっぱりとウルスラは告げる。ひどい激痛に襲われ冷たい廊下に座り込んだ自分を、通りすがったビューリングが拾ってくれた。もしそれが嫌だったならそう言うし、逃げられないよう拘束されていたわけでもない。
「合意の上って事で、いいのね?」
「………イエス」
 そう答えるまでの表情変化を見て取り、正面から観察するアホネンは心中で微笑む。頬を僅かに赤く染め、落ち着かなげに眼鏡の奥の瞳をきょろきょろ。本ばかり読んでいる頭でっかちで小憎らしい少女とは思えない。
「あなた良く見ると結構可愛いわ。私の第一中隊に入らない?」
「ノー」
 アホネンの誘いをコンマ一秒で断り、元通りの無表情に戻ったウルスラはひっそりと溜め息をついた。
396アキストゼネコ 2C:2008/12/21(日) 07:56:22 ID:biPFBl70
「みなさ〜ん、大ニュースですよーっ! なんとあの二人は相思相愛だったのですっ!」
 バーンと開いたドアから飛び込んできたジュゼッピーナは、陽気なロマーニャ娘らしく「わ〜おっ!」と叫んで部屋中を踊り狂う。当然ながら誰一人そのノリについていけず顎を落とした。最も早く復活した智子がジュゼッピーナを捕まえて問いただす。
「ちょっとジュゼッピーナ、それじゃわからないわ。きちんと報告して。あと、一緒に行かせたハルカはどうしたの?」
「あ〜あの子だったら第一中隊のみなさんに我が身を差し出しましたー、マンマミーア!」
 なんてこったと嘆きながらもジュゼッピーナの唇の端がにやり。それを見て取った智子が溜め息をつき、痛むこめかみに手をそえる。
「ま、まあ、今はハルカの事はどうでもいいわ。それよりウルスラの聴取について仕入れた情報をお願い」
 待ってましたと灰色の瞳に興奮をともし、ジュゼッピーナは先ほど耳にした会話について身振り手振りを交えて語り出した。

「…あのビューリングがベッドに誘って、あのウルスラが行為を承諾―――冗談でしょ?」
「ふふ〜ん、そう思いますよねぇ。だ・け・ど、しかと私はこの両耳で盗み聞いたのですー♪」
「聞いたかね、エルマ中尉っ! やっぱり二人は運命の赤い糸だったのよーっ!」
「まあ素敵っ!変な目で見てしまった事を謝らなくっちゃ。だって二人は愛し合ってるんですもの」
 疑わしげにジュゼッピーナを睨みつける智子、離れた場所ではオヘアとエルマが純愛の成就を我が事のように喜んでいる。当事者の与り知らぬところで事態が進展していく、これはその最たる例だった。
「ビューリングとウルスラが赤い糸であっはんうっふん…りょ、両想いってなんだっけ? いやだわ私なんだか頭がぐるぐる、そうだっこんな時はっ!―――おいっちに、おいっちに、煩悩滅殺、見敵必殺っ」
 すらりと抜いた扶桑刀を素振りしはじめた智子を、隊員たちは生暖かい目で見やる。こんなふうになってしまったら、しばらくは戻ってこない。
 今の自分達にできるのは妄想力を鍛える事だけ、そう結論づけて残された乙女たちは純愛論に花を咲かせた。


 司令部の建物を出たところで早速、ビューリングは返却されたタバコをプカプカ。
「入れと言ったり、出ろと言ったり、まったく付き合っておれん…」
 めでたく釈放されたが納得はしていない。結局なに一つ詳しい経緯説明もされず、もやもやとした腹立たしさだけが残った。こんな時はニコチンで気を紛らわすに限る。
「おーほっほっ! 待っていたわ。待ちかねていたわよ、ビューリング少尉っ!」
 十字路を曲がった直後に高笑いの洗礼を受け、ビューリングは危うく足を滑らせかけた。どうにか体勢を整えると、ふんぞりかえって立つ人物を剣呑な瞳で見やる。
「…アホネン大尉、なんの真似だ?」
「ふ〜ん、どれどれ―――顔は申し分ないし、案外いけるかもしれないわね」
「……スオムス人は他人を不躾に観察するんだな」
 呆気に取られた後、ビューリングは周囲をぐるぐる回る不審者に皮肉を言う。しかし考え事に没頭するアホネンには通じない。
 うんうん頷くアホネンは足を止め、心底迷惑そうなビューリングに人差し指を突きつけた。
「あなた、私とツインスタンダートになりなさい」
「お断りだ」
 にべもない答え。
 ひゅるるる〜と北欧の冷たい風が駆け抜けた。
「―――ふっ、まあいいわ。いもうとを大切にすることねっおーほっほっ!」
 甲高く高笑うと、アホネンは十字路を第一中隊の方向へ。去って行くその背を無言で見送り、ビューリングはすっかり短くなったタバコを捨て新しいのに火をつけた。
「…気でも触れたか」
 やれやれと肩を竦め、ビューリングも自分の隊舎へ足を向ける。
 こんな事でスオムスの空は大丈夫かと考えかけて額をぴしゃり。不真面目の代表格だった自分がこの基地の未来を憂う、そのおかしさに唇の端を持ち上げた。
397アキストゼネコ 2D:2008/12/21(日) 07:57:40 ID:biPFBl70
「智子中尉ぃ〜、パスタ准尉ったらほんとひどいんですよ〜! 帰ったらちゃんと叱ってくださいね」
「あーもうわかったから! つか、あんたは今の今まで何してたのよ?」
 雪深い小道を進む二人連れ。べったりと身を寄せてくるハルカに動きを制限され、智子は刺々しい態度で怒鳴り散らす。
 ビューリングが釈放されたとの報告を得て出迎えに赴いた智子は、隊舎玄関前にてハルカと遭遇。ハルカはジュゼッピーナの裏切りにより第一中隊の手に落ちたらしく、その悪逆非道な振る舞いを声高に喚きたてた。
「何ってそんな、決まってるじゃないですかもうっ。ナニですよ、ナ・ニ」
「こっこらやめなさいっ!」
 服の隙間から手を差し入れてくるハルカに肘鉄を食らわせ、智子は鳥肌に似た感触を脳内から追い出す。
「…ん? あれって……ちょっとハルカ、こっち来て」
 向かう先にぽつんと一人佇む影を発見し、智子は腕にしなだれかかるハルカごと木立へと分け入っていく。一体何を勘違いしたのやら、ポッと赤く頬を染めたハルカは智子の腕に『の』の字。
「智子中尉ったら 私のテクに火がついちゃったんですね」
「馬鹿言ってないで早くっ! ほら見つかっちゃうでしょ」
 いやんいやんと身を捩るハルカを引き摺り、智子は高く積まれた雪の影に身を隠した。

 粉雪舞う空の下で本を立ち読みするウルスラ、燻らせたタバコを足元に落として大股に歩を進めるビューリング。
「こんな所で何をしている? まさか私を心配して…なわけないな」
 自己完結してそう言い放つと、ビューリングは肩を竦めた。ウルスラの頭や肩にのった雪を払ってやり、話しやすいよう一歩下がる。二人の身長差は17cmもあるのであまり近すぎると目線が合わない。
 少しだけ間をおき、ウルスラはその小さな口を開いた。
「…私が心配なのは今夜の寝床」
「おいおい、シーツなら替えがあるだろう?」
 ウルスラが語った心配事にビューリングは唖然。確かに二枚纏めてクリーニングに出したが、予備のシーツくらい誰でも部屋に用意してある。
「一人は寒い。あなたと一緒なら寒くない。それだけ」
 とつとつと言葉を繋げ、ウルスラは眼前の長身を見上げた。じっと見つめてくる視線に困惑し、ビューリングはウルスラの真意を探ろうと眼鏡の奥を覗き込む。
 空気の密度が増したような、サウナで息苦しいような、そんな不思議な居心地の悪さを感じて二人は立ち尽くす。近くから注がれる二対の熱視線にも気づかずに。

「わかる、わかりますともっ。愛する人と夜を共にする素晴らしさ!」
「あ、あのウルスラが…あ、あああ、あんな事をっ」
 ぐっと拳を握り締めて共感するハルカと、赤くなったり蒼くなったりしている智子。二人して積雪の影にへばりつき、出るに出られない出歯亀状態となっている。
398アキストゼネコ 2E:2008/12/21(日) 07:58:32 ID:biPFBl70
「…まあ、仕方ないか。お前に人肌の心地よさを教えたのは私だしな」
 ビューリングは観念したかのように息を吐き、ウルスラの頭にポンッと手を置く。そしてクシャクシャと薄い色の髪をかき回した。ウルスラはいつもの無表情だが特に嫌がっているふうはない。

「きゃ〜〜殺し文句ですよ、殺し文句ぅ!」
「あ、あいつったら……結構やるわね」
 小声で騒ぐハルカの横で、智子は茹だった頭部から湯気を出す。智子の呟きによくない兆候を察知し、ハルカはきゃあきゃあ言うのを止めて振り返った。状況に流されやすいと評判の中隊長は撃墜寸前の腰砕け。
「ごらあぁへっぽこ陸式ぃー、なにを単なる流れ弾に当たっとるかああぁー!」
 ハルカは隠れているのも忘れて一喝。智子はその大声にビクンとなり、おろおろと視線を彷徨わせた。その後どうにも自己処理できなくなったらしく、目の前にそびえる積雪に人差し指をプスプス。
「そ、そんなんじゃないもんっ。な、なんで私がビューリングなんかに」
「『もん』じゃないでしょ、『もん』じゃっ! 智子中尉の言葉は信用できませんから直接体に教え込みます!!」
「きゃあああぁ〜〜っ?! やめてハルカ、こんなところでええぇーーーっ!」
 雪の絨毯へ押し倒した智子のスカートに手を突っ込むハルカ。くんずほぐれつする二人は寒さなどなんのその、パウダースノウを舞い上げながら背徳的な行為に突入した。

「あいつら…あんな所で恥ずかしげもなく何やってるんだ?」
「どうでもいい」
 無関心に言い放ったウルスラはさくさくとした雪を踏んで歩き出す。それもそうかとビューリングは見るに耐えない痴態を繰り広げる一角から視線を外し、大股に歩いて小さな背中と距離をつめた。
 足早に歩むウルスラの頬は紙のように白い。その様子を盗み見たビューリングは心中で盛大な溜め息。
「…冷やすなと言っておいたはずだがな」
 斜め上から降ってきた言葉を、痛みに気を取られたウルスラは聞き逃がす。左右交互に出す足がもつれ、宙に浮いた体は平衡感覚を失い、反射的に目を閉じると鼻先に強いタバコの臭い。
「少し揺れるぞ。我慢しろ」
 そう言い放って先を急ぐビューリングを真下から見上げ、ウルスラは眼鏡ごしに瞳を瞬く。そして、思い出したかのように顔をしかめた。
399アキストゼネコ 2F:2008/12/21(日) 07:59:35 ID:biPFBl70
「オオーゥ、見たかね見たかねっ今の二人を!」
「見ましたとも、しかとこの両目で! 初々しくってこっちが恥ずかしくなっちゃう〜♪」
「あの二人があんなに互いを想いあって…ぐすん。愛は、愛はこんなにも人を変えるんですねっ」
 詰め所の窓に群がった乙女達は双眼鏡を手に口々。ちなみに、警邏兵に引っ立てられる隊長たちには目もくれない。
 純愛を温かく見守るべく発足した応援団は、ふってわいた餌に飛びついてハッスルハッスル。二人が隊舎に大分近くなると見つからないよう頭を引っ込めた。
 帰ってきたらどんな感じで迎えるかと相談して決まったのは、あまり詳しく根掘り葉掘り聞かないこと。そしてなるたけ二人の時間を邪魔しないこと。これが考えた末の純愛協定。
 さっき決めた約束を確認し、三人は満面の笑顔でドアの前に並ぶ。しかし待てども待てども足音は聞こえてこない。
「まだでしょうか。まさかあのままお部屋に…な、何を想像しているのかしら私ったら。真っ昼間からそんな」
「恋は盲目、思春期にはよくあることねー。ミーたちは寂しいけど我慢よー」
「となると今頃あの二人って…ム・フ・フ。あ〜ん、気になるぅ。覗いてこようかなぁ」
 真っ赤になってクネクネするエルマ、その肩を知ったかぶって叩くオヘア、さっそく協定違反しようとするジュゼッピーナ。三者三様の反応をみせ、新しく投下された燃料に大騒ぎした。


「シーツなら替えてある。今日一日そこで大人しく寝とけ」
 腕の荷物をベッドに下ろして有無を言わさずブランケットを被せる。部屋の主であるビューリングはぐるりを見回したが、腰を下ろせる家具は何一つない。己の無頓着さに呆れ、仕方なくベッドの端に腰を落ち着けた。
「眠く、ない」
 もぞもぞと体勢を変えつつ訴えると、ウルスラは壁際を向いた体で手にした本を開く。相変わらずの顔色の悪さを見て取ったビューリングは、押さえた溜め息と同時に己の使い魔を呼び出した。
「…ダックスフント?」
 突如目の前に現れた胴の長い小型犬。姉と同じ使い魔に興味を引かれたウルスラは上体を起こす。しかし主を模倣したかのような使い魔は愛想を振りまくこともなくブランケットへ潜り込む。
「抱いてみろ。結構温かいぞ」
 そうは言われても中々手が出ずにいると、要領を得た使い魔が動き出した。移動する膨らみはウルスラの腕をかいくぐり、腹の辺りに背中を押し付けて丸くなる。
 ビューリングの言葉どおり、体毛に覆われた体から心地よい温もり。ウルスラの使い魔であるアナグマは寒い土地に呼び出すには向かない。このような形で具現化した使い魔の恩恵を受けるなど考えてもみなかった。
 それからしばらく、特に会話もなしに時間がすぎていく。
「…貸すだけだからな。後でちゃんと返せよ」
 ビューリングは腕組みして一人ごちた。後ろを振り返ってみれば二組の寝息の合奏。
 フッと笑いかけた口元を引き締め、開いた本とずれた眼鏡を抜き取りサイドボードへ。懐を探ってふと思いなおし、溜め息をついて立ち上がったビューリングは静かに部屋の外へ出た。
400名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 08:01:04 ID:biPFBl70
以上です
前ので終わってもよかったんですけど、他のキャラも出してみたかったので
書いてみると、いらん子のキャラって結構美味しい
ジュゼッピーナは適当です
また思いついたら続きかくかも
401名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 09:32:24 ID:/rcBp7pH
>>373
エイラさんあなた本当にだめですね。本当にだめですね。
四人のお風呂シーンは天国かここは、と思わされました。キャッキャウフフ大好きだ!
見ちゃダメサーニャもまさかのニパ侵攻にわくわくがが抑えようもありませんよ。GJ!

>>400
ハッスルしてる三人いいですね。智子はほんとだめですね
ビューリングがうわさに気づいた後の反応がいろいろ想像できて楽しみです。GJ!
402名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 10:05:02 ID:6ehW90Dg
相変わらずの投下数で皆さんGJ
もう400kb越えか
明日、明後日には新スレかな
403名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 10:23:26 ID:kaLprvuv
>>400
いらん子スキーの俺の楽しみキター
>「きゃあああぁ〜〜っ?! やめてハルカ、こんなところでええぇーーーっ!」
どう見ても悦んでます本当にありがとうございました。

所々「これはひどいwww」と呟いてしまったあたりいらん子の話らしさが出てて面白かったです
智子の惚れっぽさで死ぬほど笑ったwまた次の話も楽しみにしてます
404続・本音と建前・第六話1/5 j4ntaz3y:2008/12/21(日) 10:41:27 ID:ZBMCO/W7
>>356
ウルスラエーリカいい…この双子は独特の距離感がたいへんおいしいと思います
エイラニャ記憶喪失もwktkしてつづきまってますね、どん底シリアスに超期待
と、ところであなたのシャーゲル正座して超絶期待してますwkwktktk

>>400
全体的にウルスラがかわいすぎる!つづき楽しみにしてます

連載の息抜きがてら流行にのっかってきっとだれもやらないであろうシャーゲル記憶喪失かいてたんだけど
難産すぎて息抜きにならないどころか連載の続きのほうが先にあがってしまったんで投下。前スレ>>392のつづき


 シャーロットはむくりと起きあがり、気だるげに自分の頭をなでた。時刻を確認しようと視線をめぐらし、すると所定
の場所に置時計がないことに気づく。当然のことだ、ここは自室ではない。ふあ、とあくびをしてからベッドをおり、
カーテンのむこうがやっと白みはじめているのを認めた。
 昨夜、やっと我にかえったのは、エーリカの待つ自分の部屋にもどりベッドのうえの様相を確認したころだった。
こどもがふたりひとの寝床を占領しすやすやと寝息をたてていた。確かあのふたりは四つも年がはなれているはず
だったのに、つまり片方はシャーロットと同い年であるはずだったのに、そろってあんまりかわいらしくて邪魔だと
起こすこともできなかった。

(普段からルッキーニの部屋のそうじしといてよかったなあ)

 シャーロットはいまいる部屋を見わたす。大事な大事な少女にあたえられたはずのここは、彼女にはあまり必要の
ないところらしかった。基地のあちらこちらに専用の住処をつくって毎晩それらを転々としてすごしているのだから、
こんな平凡な一室など確かにルッキーニには不釣合いだ、とシャーロットは思う。それでもまったく手入れをしなけれ
ばほこりがたまって万が一のときに困るかもしれないと、暇を見つけては簡単にきれいにしておいてよかった。まあ、
その万が一はルッキーニにではなくシャーロットにふりかかってしまったわけだが。
 自室にもどると、ベッドのうえは半分が空になっていた。ルッキーニがいない、エーリカだけが身をまるめてよだれ
をたらしている。大方ただのベッドに飽きてふしぎな場所で二度寝でもしているのだろう、と見当をつけながら、シャー
ロットはもうひとりの寝床泥棒を見おろす。眠りにおちている間ばかりはいろいろなことから解放されるのか、とても
健やかな寝顔がそこにあった。

(……まずったよなあ、あれは)

 そうしているうちにきのう、ここに彼女をおきざりにしてから自分のしたことが思い起こされた。バルクホルンのあの
顔。積極的な助言はしない、そのかわり、余計な手出しもしない。そう決めていたはずだったのに、あまりにじれったく
なってしまった。エーリカがあれほど弱るなんて思わなかったし、バルクホルンは想像以上に面倒くさい女だった。
だからって、とシャーロットはため息をつく。認めたくないが冷静さをかいていた、とはいえ、うそまでつくなんて一体
どういうつもりなんだ。

「……いやいや、うそはついてないだろ」

 自分を誤魔化すつもりでひとりごちる。ただ、もっとも大切なところを伏せただけだと、己を説得しにかかる。バルク
ホルンを思い悩ませている少女が髪をのばしているのは、あなたにもうこどもじゃないと認めてほしいからなのだ、
こちらはただその方法を示してあげただけなのだと、その部分をすっかりと覆い隠していただけの話だ。しかしその
結果、やつが盛大な勘違いをしたとしたら、そんなのはうそをついたことと大差ないのではなかろうか。シャーロットは
緩慢な手つきで頭をぼりぼりとかき、エーリカのからだからすっかりとずれてしまっているシーツを彼女にかけなおして
やる。そして昨夜と同じく苦い顔をつくってから、シャーロットはまたエーリカをおいて、自分の部屋をあとにした。

----------

 ノックをすれば、あいている、と朝から堅苦しい返事がかえってくる。シャーロットはそれにかすかにひるんでいる自分
を内心で?咤して、ドアノブをひねりおした。

「…はよーごさいます」
405続・本音と建前・第六話2/5 j4ntaz3y:2008/12/21(日) 10:42:27 ID:ZBMCO/W7
 実ははじめてたずねるバルクホルンの部屋にしりごみしながら、気の抜けた朝のあいさつをする。するとあちらも、
シャーロットを一瞥したのちさっさと視線をそらしてからおはようときっぱりとした発音で言った。その態度に、先程
かためた決意をさっそくくじかれる。きょうは冷静に、昨晩の話の誤解をとく。そうしたいのは山々なのに、きのうと
大違いの余裕ぶった顔に腹がたった。実はここにくるまえにエーリカの部屋を覗いたときも、おなじ気持ちになって
いた。まえに見たときとは見違えてきれいに整頓されつくされた、整然とした一室に成り果てていたその場所。おまえ
にそんなことをする余裕がどこにあるのだと、胸倉をつかんで問いただしてやりたい衝動にかられた。シャーロット
には、バルクホルンがなにを考えているのかわからない。

「きのうのことあやまりにきた」
「……」

 とげとげしい言い方になっていても悟られぬよう、極力ちいさな声で宣言する。バルクホルンはもうすっかり朝の準備
をおえていたから、ただたちつくすままにそのことばをきいていた。シャーロットはそれを見て、これは言い逃げすること
になりそうだと思う。

「あれは…、こっちが冷静じゃなかった、へんなことも言った。ごめん」
「へんなことなんて言っていないじゃないか」

 それなのに、返事なんてかえってこないと決めつけていたのに、バルクホルンはあっさりと反論をしてみせる。ぎょっと
して伏せていた視線をかすかにあげるが、やはり目はあわなかった。ただ、その横顔が先程までとは打って変わって
あまりに憔悴しきっているように見えて、シャーロットは唐突な嫌な予感に身震いする。

「……へんなことなんて言っていない、おまえは正しい。おまえは私とちがうから、きっとエーリカを泣かせたりしない」

 そしてそんな戯言を言うものだから、予感が的中したと感動する間もなく、シャーロットの神経はざわりと逆立った。
決意など頭のすみに追いやられる、バルクホルンはそんなことはしるよしもなく身勝手に自嘲した笑みをこぼす。
すこし安心した、私は、あいつをどうしてやればいいのかわからないんだ。まるで本音のようにつぶやかれたそれが
完全な決定打となって、シャーロットから我をうばった。昨夜以上に逆上した状態でずかずかと歩みより、それから
そのなさけなくおちた肩につかみかかる。

「安心しただって? おい、それって、ハルトマンを見捨てるってこと」
「ちがう、私じゃだめなんだ、むかしから、そう」

 あざができるかと思うほどに力をこめられているのに、バルクホルンはその手をはらおうとしない。なんだよそれ、
と、シャーロットの口から震えた声がでる。それでも勝手に疲れきっているやつは、こちらを見ないでうつむくばかり
だった。ざわざわと、みぞおちのあたりが騒がしくなる。

「……そうか、わかった。もういい加減見損なったよ。じゃあもう遠慮なんてしないよ。そうだよね、どう考えたって、
あんたじゃハルトマンに不釣合いだ。あたしはあんたとちがう、ねえ、あたしはあしつのほしがってるやさしいことばを
いっぱいしってるし、あいつの洒落たジョークに気のきいた返事だってできる。だってあたしは、なにもできないあんた
とちがう。あたしのほうが、あんたなんかよりあいつのことがすきだもの」

 もうよせと思考のすみにひっかかっている理性がつぶやくのに、まるでずっと言いたくてしかたがなかったように
ことばはとまらなかった。しかしバルクホルンはなにも言わず耳をかたむけるばかりで、そのうちにエーリカをよろしく
頼むと頭まで下げそうだったから、シャーロットははらうように手を離してきびすをかえした。バルクホルンは面倒くさい
だけじゃない、最低の女だと結論づけて、ぎりと奥歯をならしてしまう。乱暴にドアをあけて、その勢いのままに閉めた。

(……しまった)

 そしてばたんと大きく鳴ったのを背中できいてから、シャーロットはごくりとつばをのんだ。なんてことだ、誤解をとき
にいったはずが、重ねてけんかを売ってしまった。しかも、きのうのものとは比べられないほど真剣にこちらの本音を
ぶつけてしまった。だって、と、シャーロットは自分に言いわけをする。だって、いらいらするのだ。どこまでいっても、
わからず屋の根性なしじゃないか。
406続・本音と建前・第六話3/5 j4ntaz3y:2008/12/21(日) 10:43:23 ID:ZBMCO/W7
(そうだ、あたしは正しいことをした、間違ってるのはあっちに決まってる)

 そう思い至ってしまい、頭をふってふうと息をつく。どうやらいまのこの沸騰しきった脳みそでは、もうなにを考えても
だめらしい。シャーロットは、自分がここまで冷静でいられない人間だったことをしらなかった。とりあえずエーリカを
起こしてくることにして、自室のあるほうへからだをむける。

「なんでシャーリーがトゥルーデの部屋からでてくるんですかー?」

 すると真正面から低い声がしてぎょっとした。反射的に顔をあげると、すぐそばにたっていたのはもちろんエーリカ
だった。どうやらずっとそこにいたようなのに、まったく気づけなかった自分に驚愕する。

「な……」
「朝帰りですか」
「ばっか、なに見当違いなこと言ってんだよ」

 すねた調子で唇をとがらせ、じとりとした目が見あげてくる。それに必死に、そもそもきのうは一度部屋にもどった
だのついでに言うとさっきだってだのと言いわけをならべてしまった。ばかかと思う。エーリカが気にしているのは
シャーロットが昨晩帰ってこなかったことではない、他人が、バルクホルンの部屋からでてきたことだ。

「話があったんだよ、あいつに」
「こんな朝早くにいちばんでしなきゃいけないような大事な話?」

 ふうん、と鼻をならして、エーリカが歩きだす。シャーロットはそれにつき従い、ああそういえばもう食事の時間だと
のんきなことを考える。それから、一歩先にいってしまった背中をじっと見つめ、そうだよ、とことばを投げかけた。
するとつぎには、ん、と、気の抜けたつぶやきとともに少女の顔がふりかえる。

「だから、そうだよって。大事な話だった」

 シャーロットが急に真面目な声をだすものだから、エーリカも瞬きをしてたちどまった。ふしぎそうな顔、なにもしら
ない顔。いましがた、バルクホルンがどんなひどいことを言ったかなんて露ほどもしらない。そっと手をのばして手を
にぎった。実は、シャーロットはここしばらくエーリカにこんなことをしたことがなかった。彼女が気まぐれにすりよって
きたとき以外は、空気を壁にしてふれないようにしていた。だからエーリカはさぞ違和感を覚えただろう。シャーロット
のそんな態度に気づいているかは別にしても、普段とちがうことをされたのだから、密かに警戒心の強い少女はこころ
のどこかで不自然を感じているはずだ。

「言ってきた。あたしも、おまえがすきだって」
「え」
「あたしが、ハルトマンをすきだって言ってきた」

 ききのがしたなんて言わせないように繰り返して、手をとるてのひらに力をこめた。すがるように指をそのやわらかい
皮膚にくいこませ、必死に真剣な表情をつくって見つめる。そうしながらも、なにを言いだしてくれるのかと、シャーロット
は背中にじわりと汗がにじむ感覚に寒気を覚える。あいかわらず思考が煮え立っているのだ。一方エーリカは、しばらく
ぽかんとした顔でその視線を見かえしていたが、おもむろに自分の手をにぎる他人の手に、もう片方のそれを重ねた。

「いやあ、それはまた」

 そしてそんなとぼけた声をあげ、両手でにぎったシャーロットの手をぶんぶんとふった。

「なんか悪いねえ、そこまで気をつかってもらっちゃって」
「は……」
「わざわざ挑発してきてくれたんでしょ、うそまでついて。でもさ、トゥルーデってけっこう打たれ弱いから、そんな過激な
こと言うのって逆効果だと思うんだけど」
「……」
407続・本音と建前・第六話4/5 j4ntaz3y:2008/12/21(日) 10:44:23 ID:ZBMCO/W7
 ねえ?と、かわいらしく小首をかしげ、また敬意を表すようにシェイクハンドをくりかえす。シャーロットは思わず
かたまり、するとその隙をつくようにエーリカはぱっと手をはなして歩きだしてしまう。せっかくやぶった空気の壁に
また立ちはだかれ呆然とし、急に朝の空気が身にしみた。すりぬけて、こちらの隠れた執着など気にもしないで平気
な顔で、彼女は離れていってしまうのだ。そのようすがおどろくほど似合っているものだからよびとめることもできない。
バルクホルンの考えていることなど欠片もわからないはずだったシャーロットは、その瞬間だけはまるでやつになり
かわったかのような気持ちになった。奔放で自由気ままなあの子は、ちょっとまってと声をかけることすらはばかられる
ほどにふわふわとした風のよう。ひとつの場所にとどまるようにとこちらから言いきかせることなど野暮以外のなにもの
でもないのだと、確信のような発想が胸の奥にすとんとおちた。バルクホルンはいままでほうっておいてもすぐそこに
いてくれた風のような少女が急に本領発揮とばかりに流れていくものだから、しりごみしてしまってしかたがないのだ。
ただし、それが先程のやつのひとりよがりな発言が許される口実になるとは思わない。シャーロットは目を細めてから、
彼女にふれた手をぷらぷらとゆらした。

(……まあ、そうくるわな)

 視線をあさっての方向にむけてからぼりぼりと頭をかき、やっとのことでおいかける。いまさらの話だ、はじめのころ
は確かに、冗談の割合が半分以上の調子でそれらしいことをささやいてきた。つまりは、それのつけがしっかりと現在
にまわってきているというわけだ。すこしずつはなれていく背中、まってくれてもいいじゃないか。ぴんとのびた背筋を
ながめて、ああと思った。そういえばきのうはあんなにふさぎこんでいたのに、もう元気だ。

「きのうはよく眠れた? ひとのベッドを占領して」

 おいついたところでたずねると、エーリカはああうんとつぶやき頭のうしろで手を組んだ。

「おかげさまでね。ルッキーニってあったかくて気持ちいいね、抱き枕にほしいなあ」
「却下」
「なんでシャーリーの許可が必要なわけー?」

 あははと愉快そうな声が響いて、それなのにエーリカはふとだまってしまう。シャーロットは瞬きをして訝しみ、
どうした、とでも言いたげにひょいととなりの背の低いひとの顔をのぞきこんだ。すると彼女に一歩ひかれてぎょっと
した。それからやつはめずらしく口ごもり、やりにくそうに唇をとがらせる。なんだよ、と思う。すこしだけ嫌な予感、
きょうはそういうのがさえているようだからこまる。案の定、つぎに彼女が言ったことは、シャーロットを動揺させるのだ。

「あのね、もうね、そういうのいいよ」
「は?」
「トゥルーデのこと。わざわざうそまでついてさ」

 かしこいエーリカちゃんは、悟ったのです。ふざけた口調で言って、そのくせ表情はすこしだけ真面目に見える。

「きのうシャーリーの部屋でいろいろ考えちゃってさ、けっこう迷惑かけてるなあと思ったの。うざったかったでしょ、
ごめんね。でも安心していいよ、もうつきまとわない。わたしのことは、ちゃんとわたしでどうにかすることにしたから」

 エーリカがふいと顔をそらし、それが急にこわくなった。また、彼女はシャーロットのとなりからするりとさってしまおう
とする。迷惑だと、うざったいだと。いつそんなことを言った。なんだよ、ひとの告白流しといて、今度はそばからも
いなくなるってのかよ。シャーロットはまた歩きだそうとしたその肩を、自身も気づかぬうちにつかんでいた。おどろいた
目がふりむく。それにどきんと心臓が鳴って、きっとそのときにはもう我なんてわすれさられていた。

「迷惑なんてかけられた覚えない」
「シャ」

 シャーリー、と、かすかにうろたえたエーリカが彼女の愛称を口にしかけた。だけれどそれはさえぎられる。声の
出口は、シャーロットの唇にそっとふさがれていたのだ。それはたった一瞬のできごとで、エーリカがいったいなにが
起きたのかを理解するまえにそれは離れていく。それからくいと肩をおされ、壁際においつめられる。

「…キスするときは、目をとじるんだよ」
408続・本音と建前・第六話5/5 j4ntaz3y:2008/12/21(日) 10:45:08 ID:ZBMCO/W7
 エーリカの至近距離で、しらないひとのようなシャーロットが瞬きをしている、彼女の熱にうかされた瞳に自分が
うつっている。おどろいた顔をしていて、それはさらにエーリカを混乱させた。ふらふらと手がのびて、ぺちんと
まぬけな音をたてて目のまえのほほにぶつかる。思いきりひっぱたいてやるはずが、全然うまくいかなかった。

「……なに、してんの。なにいってんの」

 どうにかそれだけことばにするけれど、シャーロットは質問に答えるまえにエーリカのほほにふれる。それからまた
顔を近づけて、今度は唇を耳元によせる。

「あたしは、すきって言った」
「だってそれは、うそじゃないか」
「おまえが勝手にそう決めただけだ、あたしはうそだなんて言ってない。すきって言ったよ、ちゃんと」

 まるで真面目にきかなかったそちらが悪いのだとでも言いたげな口調、それのつぎにはまたシャーロットが唇を
とらえようとあごをとる。エーリカは夢中で顔をそらした、そしてそのさきに、見つけてしまった。

「……あ」

 驚愕に瞼が見開かれ、震える。それにつられて、シャーロットもまたその視線をたどると、彼女もまた目を見開いて
しまう。廊下のむこう、すこしはなれたところにいまここには絶対にいてはいけなかったひとが立っていた。バルク
ホルン、と思わずそのひとの名を呼ぶと、つかんでいた肩がびくと震えた。
 しんとした空気のなかに彼女は呆然とふたりをながめ立ちどまっており、だけれど急にふいと顔をそらして歩きだす。
つかつかとエーリカとシャーロットに歩みより、今度はふたりが接近するバルクホルンを呆然とながめていた。もうあと
三歩というところまで彼女が近づいたところで、その右手がぎゅっとにぎられる。あ、なぐられる。シャーロットは冷静に
考え、ふいとエーリカからわずかにからだを離してすぐそこまできているひとのほうにむきなおる。だけれど、事態は
最悪の方向へと流れていってしまうのだ。思わず目をとじた瞬間、つかまれるはずの胸倉はなんの衝撃もうけないで、
かわりに肩のとなりをふっと気配がとおりすぎていく。ぎょっとした。
 
「……っ」

 なにをしているんだ。安心したって、私じゃだめなんだって、あれは全部本気だったっていうのか。反射的にふり
かえり、いましがた横をとおりすぎていった人物の背中を凝視する。おい、バルクホルン。そう呼びかけておいかけ
ようとした、だけれどシャーロットはなにもできないでかたまってしまう。かすかな力が彼女の軍服のそでをつかんで
いたのだ。まるでひきとめるように、ここにいてくれとでも言うように。そんなわけないと思いながら、シャーロットは
もういちどエーリカを見た。表情を隠すように彼女はうつむいており、今度こそ明確にシャーロットをひいた。

「は、ハルトマン」

 おまえまで、なにしてるんだよ。ぎゅっとシャーロットの胸元に額をおしつけ、絶対に離さないように彼女の手首を
つかんでいる。

(……なんだよ、なんだよこれ)

 こんなときでも自分にふれるエーリカのぬくもりに心臓がなってしまうことがとても愚かしいと思う。なにを興奮して
いるんだ、なにをのんきにほほを染めている。こうなったのは、貴様のせいじゃないか。シャーロットはついエーリカ
を抱きしめたいと手をのばすけれど、それは決してできることではなかった。


つづく

たぶんあと二話くらいでおわり。長くなりすぎた
409名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 10:56:06 ID:kaLprvuv
>>408
こっちもキター
むう、これがDORONUMA・・・お姉ちゃんは本当に不器用だなあ・・・
410名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 11:04:11 ID:pJHJyBTj
明日あたりには次スレに行ってそうだな
411401:2008/12/21(日) 11:29:17 ID:/rcBp7pH
>>408
うわぁ。すごいところまで踏み込んでますね!
お、お姉ちゃんもシャーリーもエーリカもしっかりしてくれ!でもどきどきする。GJ!

あと>>401のレスを訂正します。三行目
>見ちゃダメサーニャもまさかのニパ侵攻に「も」わくわくが抑えようもありませんよ。GJ!
です。混乱されてたらすみませんでしたm(_ _)m だめだめだ…
41221X2w2Ib:2008/12/21(日) 12:23:25 ID:YAxvH9LR
>>359
遅レスだけど、数えてくださっていた方がいてとても嬉しかったです どうもありがとう

何だかたくさん書いてしまいましたがその中で一つでもお気に召したものがあったら書き手冥利につきます
これからもどうぞよろしくお願い致します

…とが悠長に書いてたら本立てと方程式の続きが来てた!
出先だからまだ追えてないけど帰った時の楽しみにしてる、GJ!!
413名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 12:30:16 ID:hbJyZIWi
書く→読み直す→修正→時間を置いて読み直す→あんまり面白くない気がして全消し

俺は職人にはなれない…
414名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 12:44:21 ID:6ehW90Dg
書く→読み直す→修正→保存し忘れて消去→挫折(今ここ)
ごらんの有様だよ!!!
415名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 12:58:11 ID:QaN6UyV7
書く→家だと他の事やってしまい全然進まない→職場で携帯から書いてみる→凄い進む!これならすぐ完成するぞ!→もう少しで完成というところでフリーズ→絶望しながら書き直す

今こんな感じ
今日中に間に合うだろうか…
416名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 13:59:44 ID:NqKRdbg2
ここは職人の多いインターネッツですね。
書く→筆が止まる→気分転換に違う話を書く→筆が止まる→気分以下略をループして携帯に未送信メールが60通くらいあるのは私だけでいい。

>>388
>>389の言う通り、捏造分が足りない!!もっとこう、本編の裏ではこんなにハァハァしてましたみたいなやつを頼む。
このシリーズはうまくやればめちゃくちゃ面白くできると思うんだけど……自分もやってみたがこれは相当な妄想力が必要ですな。

>>400
相変わらず誤解を招く言い方しかできないウルスラと何だかんだでウルスラがかわいいビューリングもたまらんが
個人的には初めて智子・ハルカ・ジュゼッピーナにまともな出番のあるSSがきたことが嬉しすぎて死にそう。
そして何だこれは、まさか続くというのか!!wktkして待ってる。

>>408
うぬおおおお!!やっべシャーリカやっべでもお姉ちゃああああん!!
はははっは早く続きを!!
417名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 14:00:30 ID:kaLprvuv
>>413-415はエルマ(ドジッ子的な意味で)
418名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 15:34:50 ID:fwsKUIfI
ウルスラも実際のウルスラ・ハルトマン(1st)と同じく
愛称はウーシュなのかなぁ、と思った。

エーリヒ・ハルトマンとウルスラ・ハルトマンの娘さんの名前も
「ウルスラ・ハルトマン」なんだって。
419名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 16:03:42 ID:Lws0bosJ
>>408
>バルクホルンの考えていることなど欠片もわからないはずだったシャーロットは、〜

4/5のこの辺りの表現が凄い…。なんかもう、語彙が貧困でなんて言っていいかわかんないけど鳥肌立った。
マダオ頑張れ!あとシャーリーは少し落ち着くんだ…!
420名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 16:38:48 ID:Q4bCaI+R
上手い文章書ける人がうらやましい
いつかはここに作品を投下したいと思って書いているが自分の文のあまりの下手さに失望して消してしまう
421Golden slumbers その1(1/10):2008/12/21(日) 17:29:27 ID:9Ce29Qdw
rQBwlPEOです。記憶喪失をカールスラント組(ゲルトマン)で書いてみました。
とりあえず途中までですが、だらだら長くてすみません。
------
1.

 ──トゥルーデが変になりました。何も覚えてないみたいです。


 目を覚ますと、トゥルーデが部屋の隅でぼんやりしていた。
「(……まだ早いのかな……)」
 いつもはドアを開けるなり「起床だ! 起きろハルトマン!」なんだけど、今日はどうしたんだろう。トゥルーデは
何をするでもなく、積み上げられた本の山に座って、ぼんやりと視線を泳がせている。
「(……まだ早いんだ)」
 窓から差し込む光の具合は、カーテンのせいでよくわからない。というか私が寝ている床の上からはベッドが邪魔で
窓が見えない。多分いつもより早いから、トゥルーデも仏心がわいたのかもしれない。部屋に来て、私を起すタイミング
を待っているというのは良くわかんないけど、目の前にある睡眠時間の前では、疑念など些細なことだ。
「(……まだいいんだねー)」
 トゥルーデがああしているなら、あと1時間、いや2時間は寝れるかも。おやすみトゥルーデ。
 心地よい眠りに落ちかけたところで、ばん、と部屋のドアが開いた。

「トゥルーデ、こんなところにいたのね」
「……?」
「どうしたの? 探したわよ。朝食にも出てなかったし部屋にも居ないし」
「……」
「朝食後に執務室に来てって昨日言ったじゃない」
「……ああ」
「……トゥルーデ?」
「……しーっ……」
「……どうしたのトゥルーデ?」
「……まだ寝てる」
「…………トゥルーデ? どうしたの?」
 寝ているすぐそばでしゃべり始めたミーナの声。声量こそ普通だが、良く通る声に、私は眠りから引き戻される。
「……うるっさいなー、もー」
 寝起きの不機嫌さのまま、顔を床から引っぺがして身体を起し、私は二人を半眼でにらんだ。
「二人ともなんだよー。こんな朝早くに人の部屋でさー」
「朝早く……?」
「私、まだ眠い」
「……そう」
 目をこすりながら抗議すると、ミーナはにっこりと微笑んだ。
「……もう11時よ。ハルトマン中尉?」
「……ほんとー?」
 部屋の中にずらりと並んだ時計を見回す。
「おぉー……」
 すべて……11時。
「ほんとだー」
「……ね?」
 笑いながらミーナが念を押す。
「……おそよう。ハルトマン中尉」
「おはよー。トゥルーデが起してくれなかったし、寝ててもいいのかなって思って」
「……いい加減一人で起きる様にしないと駄目よ」
「私が一人で起きても起きなくても、トゥルーデが起こしに来るのは変わんないじゃん」
「そういう問題じゃ……」
 ミーナが言いかけて、言葉をとめる。

 ……今は、11時?
422Golden slumbers その1(2/10):2008/12/21(日) 17:30:28 ID:9Ce29Qdw
「……今日、お休みだっけ?」
「……そうねぇ。そうだったら、私もうれしいんだけど」

 私たち二人は首をめぐらせて、トゥルーデの顔を見た。
「……?」
 私たちの視線を受けて、トゥルーデは困ったような笑みを浮かべる。
「(……おかしいよね)」
「(……おかしいわね)」
 私とミーナは視線で疑念を伝え合う。いつものトゥルーデなら、私をこんな時間まで放っておくわけが無い。
 「起床だ! 起きろハルトマン!」の一言に始まって、どれだけ時間がかかっても私が服を着る気力が出るまで威勢
よく怒鳴り散らしてくれるのに。

「トゥルーデ、あなたなんだかぼんやりしてない?」
「……おかしいよ。何で起こさなかったの?」
 私たちに詰め寄られて、トゥルーデは少しのけぞる。
「んー……いや、ちょっと待ってくれ」
 トゥルーデは額に人差し指を当てて何かを考えている。
「あー、ひょっとしてー、私の寝顔見てたとか……?」
「そんなわけないでしょ」
 いつもの調子でからかうと、トゥルーデの代わりにミーナが突っ込む。
「……どうしたのトゥルーデ。あなた本当に変よ?」
 ミーナが詰め寄ると、トゥルーデは私達の顔を見渡しながら、口を開いた。

「……すまないが、まずお前達が誰か、から説明してくれないか?」
「……何言ってんの? トゥルーデ」

 聞くと、トゥルーデは不思議そうな顔をした。


----


 床の上に散らばるものをかき分けて椅子を置くスペースを作り、トゥルーデを座らせる。
 ミーナがトゥルーデの前に立つ。私はトゥルーデの隣に立ち、トゥルーデの横顔を見る。
 ミーナはトゥルーデの目を覗き込み、ゆっくりと、だが有無を言わさぬ声で尋問が始めた。

「まずは所属と階級を言ってちょうだい」
「ここがどこか分かる?」
「あなたの出身地は?」
「私たちのこと、ほんとに分からない?」
「MG42って知ってる?」
「ストライカーユニット、って分かるかしら?」
「……そ、それじゃ私の婚約者の名前は?」
「……分からない? じゃあヒント。名前の最初の文字は『み』よ?」
「……最後の文字は『お』」
「……(チッ)……自分の名前も忘れてるのね?」

 ミーナの問い全てに対してトゥルーデは「すまない」と言うだけで。

「……ちょっと代わって。ミーナ」

 今度は私がトゥルーデの耳元に顔を寄せてささやきかける。
423Golden slumbers その1(3/10):2008/12/21(日) 17:31:24 ID:9Ce29Qdw
「……かわいい妹」
「……お姉ちゃんだーいすき」
「……大きくなったら、わたしお姉ちゃんとけっこんするのー」
「……大丈夫だよお姉ちゃん、私がついてるから」
「……入隊したての初々しい新人」
「……もー、お姉ちゃんったら、ほんと私がいないとだめなんだからー」
「……ジャガイモいっぱい」
「……お姉ちゃん、さみしいから今日は一緒に寝ていい?」

 ──全て、反応は無い。

「そ、そんな……」
 ……いつもなら微妙に鼻息が荒くなるはずなのに。
 ふらふらと後ずさり、ベッドに座り込む。
 不思議そうに私を見ているトゥルーデ。何も言わないトゥルーデがこんなに怖く見えたのは初めてだ。
「……こりゃ、本物、かもね……」
「困ったわねぇ……」
 顔を見合わせる私とミーナ。

 ありえないことだけど、信じがたいけど。

「記憶喪失……?」
「……フラウ、医務室の先生を呼んできて」

 落ち着いた声で、ミーナが言った。
424Golden slumbers その1(4/10):2008/12/21(日) 17:32:08 ID:9Ce29Qdw
2.

 その日の午後、私達はブリーフィングルームに顔を揃えていた。トゥルーデを除く隊の全員が席につき、前にはミーナと
部隊専属の医師の先生が立っている。
 トゥルーデの事は、あっという間に基地中に広まっていた。
 トゥルーデがいなくてこれからどうなるのか、みんな不安だったのかもしれない。みんなは一様に緊迫した表情を浮かべ
ている。ミーナが、トゥルーデが記憶を失ったと簡単に説明すると、全員が口々に原因や対策について話し始めた。
 騒然とする室内。誰でもいいから有効な手立てを知らないか、と私はみんなの意見に耳を傾ける。

「記憶喪失の時は確か……まず紙袋をかぶって呼吸するんじゃなかったでしたっけ……」
「違うよ芳佳ちゃん。確か重曹とお酢をしみこませた綿棒でこするといいんだよー」
「ちょっと二人とも、大尉になんて事をさせるおつもりですの?
 こう言う時は濡らしたタオルをかぶせるに限りますわ! あとマヨネーズをパックごと投げ付けるのも有効でしてよ?」
「まぁ待て三人とも。記憶喪失といえども神経系の変調に過ぎんだろう。
 ……確か葱を刻んで喉に巻くか、トマトかみかんの皮の黒焼きを飲めばよかったのではないか……?」
「え……?」
「何ですか、それ……」
「あの……少佐? 一体全体どういうお考えですの? それは……」
「……な、なんだ!? ひょっとして知らんのかお前達!?」

 ……お前ら真面目にやれよ。トゥルーデは火のついたフライ油かよ。

 激論が渦巻き収拾がつかなくなる室内。ミーナが眉間にしわを寄せ、ぱんぱん、と手を叩く。

「とにかく! まずはバルクホルン大尉がどうしてこうなったのかを確認しましょう。
 昨日の夜バルクホルン大尉に会った人は、大尉の様子を話してちょうだい」

 張りのあるミーナの声が、ざわついた部屋の空気を引き締める。静まり返る室内。みんなが互いに顔を見合わせる。

「じゃー、あたしから」

 シャーリーが手を挙げて、そして話し始めた。


──シャーリーは語る。

「──あいつ、昨日シャワーブースの柱に頭めり込ませて倒れてたんだよ。
 ……いや、助けたよ? 抱き起こして運ぼうとしたらすぐに気がついてさ。
 気になるからあたしも部屋まで付き添ったんだけど、途中から自分で歩いてたし、普通に話してたし。
 『頭打ったならちゃんと検査受けろよー?』
 『言われなくても受けるっ!』
 って言って別れたんだけど。
 ……なんで倒れてたかって? そこまでは言ってくれなかったなー。なんか恥ずかしかったんだろ。顔真っ赤にしてたし。
 あたしも照れてる堅物を見てニヤニヤ出来たからいいや、で済ませちゃったんだけど……。
 時間は……確か8時ごろじゃなかったか?」
425Golden slumbers その1(5/10):2008/12/21(日) 17:32:52 ID:9Ce29Qdw
──サーニャは語る。

「今朝、哨戒から帰ってくるときに、ハンガーで大尉と会いました。
 ついうとうとして、滑走しながらストライカーの台座に突っ込みそうになったところを、大尉が手で支えてくれたんです。
 『怪我はないか?』
 『あ……すみません』
 『そうか。よかった』
 大尉は優しく笑って私の肩を叩いてくれました。
 『すみません』
 と謝ると、大尉は『……いや、いいんだ』と言いながら去っていきました。
 普段の大尉だったら絶対怒られると思ったので、変だな、とは思ったんですが……。
 ……報告してなくて、すみません」


──ミーナは語る。

「……エイラさん……? どうしたのエイラさん? エイラさん!?」


──ペリーヌは語る。

「私、昨晩大尉とお会いしましたわ?
 『頭が痛む』といって食堂で鎮痛剤を探しておいででした。
 ずいぶん苦しそうで、『お医者様か宮藤さんを呼びますか?』とお勧めしたのですけれど……。
 薬を飲まれてお部屋でお休みになった頃には、大分落ちついてらした様でしたわ。
 ……な、何をおっしゃいますの宮藤さん! 困っている方に付き添ってさしあげるのは、当然の事ですわ!」


──坂本少佐は語る。

「そう言えば明け方に見かけたな。
 ……周りを見回しながら廊下を歩いていて、変だなとは思ったんだが
 声はかけたさ。だが私の顔を見て何も言わずに去っていったんだ。
 ……足取りはしっかりしていたな。異常は見られなかった」


──エイラは語る。

「……大尉がサーニャに……大尉がサーニャに……大尉がサーニャに……」


──ルッキーニは語る。

「エイラ! どしたエイラ! ……シャーリー、エイラの髪、なんか真っ白になってる……」


──501の専属医師は語る。


「精密検査を受けないとなんともいえませんが、身体に異常はないようです。
 ただし、ご存知の通り、記憶はかなり混乱しています。自分の全生活史を覚えていないというケースです。
 ──心因性のものとも考えられますが、大尉には記憶が戻る以前に近い生活をしてもらったほうがいいでしょうね。
 その上で、記憶が戻るのを時間をかけて待つしかありません」


──以上。証言終わり。
426Golden slumbers その1(6/10):2008/12/21(日) 17:33:29 ID:9Ce29Qdw
「……つまり、昨晩風呂場で頭を打ったバルクホルン大尉が、深夜に頭痛を発症。
 その夜のうちに記憶の混乱が進み、ついには記憶を失った、そういうことね」

 ミーナが手短に状況をまとめて、話を続ける。

「バルクホルン大尉は現在、ロンドンまで精密検査を受けに行っています。
 大尉の回復については時間を置いて待つしかありませんが、その間の代行を美緒とシャーリーさんに……」

 ──ミーナの声を聞きながら、トゥルーデのことを考える
 トゥルーデが記憶を失った、ということは、トゥルーデが戦えない、という非常に現実的な問題に結びつく。
 トゥルーデの記憶が戻らない限り、私たちは火力に優れた切り込み隊長と有能な副官なしで戦わなければいけない。

 そして、それはあくまで「現実的」な事に限った話だ。
 トゥルーデは、私達のことを忘れている。私達はおろか、クリスの事も。カールスラントのことも。
 それに。さっきのサーニャの話。
 記憶を失ったトゥルーデは、なんていうか……変だ。なんていうか、妙に優しい。今朝私を起こさなかったのみならず、
その後もやけに物静かで。
 そのくせ私が車まで付き添ったときは「ありがとう。なんていうか、思い出せなくてすまない」と気持ち悪い事を
言っていた。……いや、悪い気はしないんだけど。なんていうか、こんなのトゥルーデらしくない。

 物思いから醒めて、みんなの様子を見る。
 トゥルーデに何があったのかがわかったので、みんなはまた記憶喪失の治療法について、思い思いに話し合っている。
 特に熱心なのは、「私の実家は診療所」の宮藤と「ウィッチドクターの心得あります」のペリーヌだ。双方一歩も譲らぬ
構えで白熱した議論を戦わせ……

「──違います! コップに入れた水を、前かがみになって向こう側から飲めば治るはずなんです!」
「何をおっしゃいますの、この豆狸! 舌を引っ張ってもらう以外の方法、わたくしは認めませんわよ!」

 ……だからなんでしゃっくりの話になってんだよ。

 だめだこいつら。私達で何とかしないと。私は静かに席を立つ。
 やはり頼るべきは、医学・薬学に優れたカールスラント人。というか愛しき我が身内。
 頭を抱えてしまったミーナの傍に向かい、卓上にある電話器に手を伸ばす。

「借りるよー」
「……ちょっとフラウ? 何をするの?」

 受話器を上げて、かけた事はないけれど、いつの間にか覚えていた番号をダイアルする。
 しばらく経って呼び出し音が鳴り始めた。

『……こちら507統合戦闘航空団司令部』
「501統合戦闘航空団よりエーリカ=ハルトマン中尉です。緊急の事で架電申し訳ない。
 カールスラント空軍より派遣されているウルスラ=ハルトマン准尉に連絡が……」
『作戦行動の準備中です』
「本国司令部からの伝達事項です。優先してお願いしたい」
『……お待ちください』
「(……ちょ、ちょっとフラウ! 何やってんの!?)」
「(……こうするのが手っ取り早いでしょ? いつまでも待ってらんないしさー)」

 横から口を出すミーナの抗議を、電話口を塞いでブロックする。
 受話器に耳を押し当てたまま、あの子の声が聞こえてくるのを待った。
427Golden slumbers その1(7/10):2008/12/21(日) 17:34:18 ID:9Ce29Qdw
『はい…』
「もしもーし、私! ひっさしぶりー!!」
『…………。何?』

 5年ぶりに聞く、彼女の声がした。
 無愛想な口調を聞いて、電話口でこっそりと笑う。言葉は短くても、とても懐かしい声。ウーシュの声。
 ……それにしても相変わらず愛想ないなっていうか、いつもにまして不機嫌って言うか。元気ないというか。

「……どうしたの? 元気なくない? スオムス寒いでしょー。隊の人とはうまくやってる?」
『……』
「そういえばこの間表彰されてたね。新聞で見たよー」
『……用件はなに?』
「ん?」
『15分後に作戦が始まるから』
「ごめーん。でもそんな時間かかんないよ」
『……』
「あのね、今、トゥルーデが記憶喪失なんだけど、叩けば治るのかな?」
『記憶喪失?』
「そう。頭打って、何も思い出せないらしくってさー」
『……』
「あ、でも何もって言っても息の仕方は覚えてるし多分身体はちゃんとしてるんじゃないかな。
 あとしゃべってたから言葉も分かるみたい」
『……容態、悪いの?』
「いや、元気」
『……。』
「……ウーシュ、なんか知らない? 薬とか療法とか手術とか」
『知らない』
「……そうかー。ウーシュでも知らないか……」
『……調べてみる。切るね』
「ありがとー。あー、あと写真見たけど、ウーシュ背伸びたねー。私の記事は見てくれてた? 会いたくなったりした?
 私はなったよ? 心配してるんだから、たまには連絡してよね。えーとそれからそれから、愛……」
『(ガチャ)』

 ……切りやがった。私の言葉を遮って。無言で。さすがは我が妹、マイペースだ。
 さてと。音を立てて受話器を置き、ミーナに向って舌を出す。

「……自室禁固。それぐらいかな?」

 私用で緊急時の外線を使ったんだ。それぐらいは覚悟してる。
 でも多分、私とミーナが知ってる人のなかで、今一番頼れそうなのはウーシュだ。それに、自室禁固は何度食らっても
いいけど、記憶が戻らなければあのトゥルーデは二度と戻ってこない。
 ミーナもそれを分かってるみたいで、呆れ気味に笑っている。

「……全く、無茶ばかりするんだから。頼もしいけど、あなたの上官やるって大変なのよ?」
「えへへ」
「そうね。でも処分の執行はトゥルーデが元に戻ってからとします。
 その間、バルクホルン大尉の世話役を命じます。いいですね、ハルトマン中尉」
 ミーナは指を一本立ててウィンクする。

「……先生の話じゃないけど、出来るだけ記憶を失う前の環境にいた方が、きっとトゥルーデのためにはいいと思うの。
 だから、出来るだけトゥルーデについててあげてね。フラウが傍にいたほうが何かといいから」
「うん。任せて」

 私の返事を聴いて、ミーナは微笑んだ。
428Golden slumbers その1 (8/10):2008/12/21(日) 17:35:00 ID:9Ce29Qdw
3.

 ──とは。言ったものの。我ながら我がままなもので。

「……なんか思い出したー?」
「……いや」

 任せて! とミーナに見栄を切ってから五日後。私はすっかりだらけきっていた。


「カールスラントの物事に多く触れたほうが記憶も戻りやすいかも、……というかあなたたまには片付けしなさい」
とミーナに言われて、トゥルーデを連れて来た私の部屋。片付けを始めていたはずの私たちは、ベッドに転がったまま、
見つかった雑誌を読み耽っていた。
 トゥルーデはベッドのヘッドボードに背中を預けて、古いカールスラントの雑誌を、私はトゥルーデの横に寝転がって、
この間手に入ったブリタニアの雑誌を読んでいる。
 私の頭のすぐ隣にはトゥルーデの腰がある。トゥルーデの片手が、私の頭に乗せられている。

「いいの? こんな事してて」
「ああ」

 やけに素直なトゥルーデの返事。
 えへへ。体を寄せて彼女の腰に頭をすり付ける。しなやかな筋肉の感触が気持ちいい。額の上に置かれたトゥルーデの
指が、私をあやすように小さく動いた。
「……くすぐったい」
 口を尖らせると、トゥルーデは黙って手をあげる、でもそのうちまた、私の髪の上にその手を置き、時々私の前髪をいじる。


 かつて私はこう言いました──こんなのトゥルーデらしくない。
 でも今は思うのです──これはこれで、ありです。


 ──我ながら我がままなもので。

 記憶を失ったトゥルーデは、妙に優しくなった。口数が少ないのは相変わらずだけど、私の私生活に対して突っ込み
三昧に繰り出していたダメ出しは鳴りを潜め、今は物静かに、私のする事を見ててくれている。
 それだけじゃない。トゥルーデは私のことを思いやってくれている様で、それを言葉で、あるいは行動で表してくれる。
 そういうのを見ると、トゥルーデらしくないなぁ、と思うと同時に、なんだかうれしくて。
 それに、二人で何にもせずにごろごろして過ごすなんて、トゥルーデはよっぽどのことがない限りさせてくれなかったわけで。
 トゥルーデが記憶失ってるのにそれどころじゃないだろー、と思いつつ、私はそれに甘えてしまうわけで。


 ──あの日、ロンドンから帰ってきたトゥルーデに、ミーナと私はトゥルーデの過去と今について話した。クリスや
部隊の事と同時に、私たちがどんな関係だったのかも。
 私は私が軍に入ってから、ミーナはカールスラントが落ちる頃から一緒だったこと。トゥルーデと私がカールスラントの
二大エースで、ずっと一緒にネウロイを倒してきたことも。
 それをどう思ったのか、あるいは傍に付き添っている私に情がわいたのか、理由は分からないけど。トゥルーデはずっと
私の傍から離れなかったし、気を許している様な様子さえ見せていた。
 そんなトゥルーデに、私は、何か違うよ、とも言えず。今私の髪に触れているトゥルーデの手を払う気にもなれなくて。

 つまりあれだ。私は、すっかりだらけきっていた。
429Golden slumbers その1 (9/10):2008/12/21(日) 17:36:06 ID:9Ce29Qdw
「トゥルーデ、あれとってー」
「……ん?」

 チェストの上にある、リーネと宮藤がお見舞いに持って来てくれたスコーンのバスケットを私は指差す。
 トゥルーデが手を伸ばして私に手渡してくれたスコーンを、寝転がったまま一口かじる。歯ざわりの良い表面とふっくら
とした中身。上品な甘みが口の中に広がる。

「おー。おいしいー」
「……そうか?」

 私の手に残ったスコーンを、トゥルーデが興味深そうに見ている。

「リーネのお茶菓子は絶品なんだよ」
「へぇ……」

 トゥルーデがバスケットに手を伸ばそうとする。そのトゥルーデを私は呼び止めた。
「……トゥルーデ」
「なんだ?」
「口あけて?」
「ん? おい──」

 開いたトゥルーデの口に、スコーンの欠片を指先で押し込む。
 私の指からスコーンを取り、それをもくもくと咀嚼するトゥルーデ。彼女の顎と頬が動くのを、下から覗き込む。
「……」
 ごくん。とトゥルーデの喉が動いた。
「……おいしいでしょ?」
「あ、ああ……」
「ふふ。もぐもぐしてるトゥルーデ、なんかかわいい」
 寝転がったまま目を細めて笑うと、トゥルーデは顔を赤くする。
「……照れた?」
 私が言うと、トゥルーデは何も言わずに雑誌で顔を隠した。
 ……照れ屋な所は変わんないんだねー、とにやにやしながらそれを見上げる。
 トゥルーデがなんだか優しくて、二人だけで何もせずに過ごしていて──今だけはトゥルーデを独り占めできたような、
そんな気分は、あまりに不謹慎だけれど。
 記憶が戻るまでの間、こうやって過ごせるのなら、それはそれでありかな、と、私はそのときかすかに思う。


----


 しばらく雑誌を眺めて、次のにかかろうとしていた所で、トゥルーデが、ぽつんと呟いた。
「……少しだけ、覚えていることがある」
「ん? なに?」
 雑誌をどけてトゥルーデの顔を見上げる。
「私には、妹がいるって言ってたな」
「うん。クリスね」
「……覚えているのは、多分彼女の事だ」
 トゥルーデは雑誌を手元に置いて、ベッドの上に伸ばした自分の足に視線を落とした。
 思いをめぐらせるように黙ってから、彼女は口を開く。
430Golden slumbers その1 (10/10):2008/12/21(日) 17:37:31 ID:9Ce29Qdw
「……小さな、女の子の記憶だ。多分、随分昔なんだろうな。
 その子にせがまれて白夜の中で遊びに出かけたり、その子が掛け違えた服のボタンを留めて、礼を言われたり。
 冬に二人で雪だるまを作っていたり……」
「……」
「……断片的にだけど、そんな光景を覚えている」
「……そっか」

 ──やっぱり、クリスの事かぁ。

 ……敵わないなぁ。笑いながら起き上がり、トゥルーデの肩に手を回す。
 まだ意識が戻らないクリスを、トゥルーデがどれだけ心配していたのかは、忘れていたわけじゃないけれど。
 それだけ強く思っていたから、クリスのことを今も覚えている。その事実は、とても悲しくて、とても寂しい。
 今のトゥルーデにそんな気持ちを持つことは、許されないほどに我侭で醜いことだと思うけれど。

「……良かったじゃん。少しずつ戻ってきてるのかもね、記憶」
 ……こりゃウーシュの出番ないかな、と肩を抱いて頬をつついた。トゥルーデはくすぐったそうに笑う。
「……といっても断片的な記憶だぞ。その他のことは全然……」
「大丈夫だって。ウーシュに知らないことなんてないんだからさ」
「……思い出せるよ。すぐに」
 くすぐったそうに笑うトゥルーデの笑顔を見ながら言う。
「そうか……そうだな」
 微笑みながら視線を落とすトゥルーデ。

 彼女に背を向けて、ベッドの上に寝転がった。
 トゥルーデの隣で手足を丸めたまま、窓の外を見る。いつの間にか暮れ始めた空。

 悲しいけど。そう感じてしまうのがいやだけど。──でも。
 カールスラントを解放して、クリスを祖国に帰してやりたいと必死だった、トゥルーデのことを思い出す。
 あれだけ必死だったんだから、早く記憶を戻してあげないとかわいそうだ。クリスも。トゥルーデも。
 それでいい。そうでなくちゃいけない。
 私がさっきまで浸っていた幸せは、もうちょっとこのままでもという願いは、あまりに罰当たりな想いだから。

「──ん?」

 外を見ていた私の視界を、横切って飛んでいく機体が見えた。
 着陸のコースを探しているように、基地の周りを旋回している、戦闘機にしては大きめの機体。
 跳ね起きてあたりを探し、双眼鏡を引っ張り出して窓の外に向ける。
 フロートを車輪に換装した水上機が、夕陽を浴びながら飛んでいる。鋼管布張りのレトロな機体。黄色く塗られた主翼。
緑とグレーのその胴体に、描かれたマークは青十字(ハカリスティ)。

「──スオムス…空軍機?」

 はるばるそんな所から飛んで来るような人は、一人しか思いつかない。

「……早かったね、ウーシュ」

 ──呟いた自分の言葉は、何かを惜しむように聞こえたのは、多分気のせいだ。

続く


------
続きます。とりあえず折り返し地点ぐらいかと。
ウーシュの階級はいい加減です。もし設定あるようでしたら教えていただきたく。
記憶喪失+性格改変で行こうかと思ったんですが、トゥルーデの性格を思い切っていじった方が、
はっちゃけたものになったかと、続き書きながら後悔しています。前半後半でテンション違いすぎだろ自分。

続きはもうちょっと短く切って投下しようと思います。もし最後までお付き合いいただければ幸いです。
431名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 18:33:07 ID:6Oeyx+AG
>>430
これは…いいな…続き楽しみすぎる。
トゥルーデがなんかしおらしい!雑誌で顔かくすとかw
つうか風呂場で何したんだw
ウーシュに期待!GJでした
432名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 19:47:30 ID:Do5Sor1k
>>430
GJ!なんか新鮮なタイプの記憶喪失だな
エーリカの対応もふにゃっとしてて和む

>「……分からない? じゃあヒント。名前の最初の文字は『み』よ?」
>「……最後の文字は『お』」
だが隊長、テメーは駄目だ
433名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 20:23:17 ID:SntI8AJa
身体の芯まで凍えるくらいに冷たい風の吹く、寒くて静かな冬の夜。
透き通った夜空に降る流星群を見に出掛けるエイラとサーニャ。

水色のファーコートを羽織って、ワンポイントで首にストライプ柄のマフラーを巻いたエイラ。
可愛らしい黒のダッフルコートに白いニットの帽子を被っているサーニャ。
買ったばかりの缶コーヒーをすすりながら、何も喋らずに、仲良く寄り添って星を眺める二人。

くしゅんと可愛らしいくしゃみをするサーニャ。
少し寒そうなサーニャを見て、自分のマフラーを巻いてあげるエイラ。
少し驚いてから、柔らかいマフラーの感触に微笑むサーニャ。
巻いて貰ったマフラーを外して、今度はエイラと二人で一緒にそれを首に掛ける。

「これなら、あったかいね」と微笑むサーニャ。
恥ずかしそうに顔を赤くするエイラ。
そして、静かにキスを交わす二人。

再び、黙って空を見上げるエイラとサーニャ。
「いつまでもサーニャと一緒に居たいナ」と心の中で呟くエイラ。
「ずっと、エイラの傍に居られますように」と流れ星にお願いするサーニャ。

二人を見守る様に夜空に浮かぶまん丸のお月様。
静かで幸せな冬の一夜。


イルミネーションの下でいちゃつくカップルを見て、エイラニャに変換してみたんだ・・・。
434名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 20:25:17 ID:6Oeyx+AG
>>433
俺は今、天才を見た
435名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 20:33:18 ID:Lws0bosJ
>>433
ええい、絵師はまだか!!
436名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 20:42:32 ID:ZwVS8Kca
この時期の流星群といえば双子座流星群だね
まさにエイラーニャにピッタリの情景

関係ないけど缶コーヒーのくだりで歌の人が書いた君が好きを思い浮かべて
芳佳との天体観測デートに備えてウキウキしながら夜食とお茶の支度をするリーネを妄想した
437名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 20:49:58 ID:jWFAKqjQ
>>433
いい…いい…これはいいものだ…
438名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 20:54:54 ID:fNg/EP2G
>>433
いいなこれ……
ちょっとイルミネーション見てくる!
439名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 21:27:15 ID:7JnlQhQj
>>433
クリスマスになったらカップル観察してくる
440名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 21:28:57 ID:lDNWD0F9
>>404
私はお二人のシャーゲルをずっと正座待機してますよw

シャーリー泥沼だなぁ…
441名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 21:42:57 ID:Pd0FWn3s
本スレはとっくの昔にあきらめたのに、このスレも速さについていけない・・・
SS全部読んで更新ボタン押すと、毎回二桁の新レス数が・・・
とにかく全SS職人さんにGJ×100
最近、いらん子SSが増えてきてニヤニヤが止まらない
とくにウルスラ好きな俺は大満足ですよ
442名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 21:43:22 ID:AkLittQu
東京タワーのイルミネーションみながら仕事して……無かったよw
余りにも暇で24日に投下するつもりのルッキーニ話がかきあがっちまった……。
投下するか待つか、悩む。
443名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 21:44:31 ID:TvP8DR9m
そういえば東京タワーの下半身がいつもと違うイルミで感動した
444名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 21:48:59 ID:Do5Sor1k
>>443
>下半身
おいストパン脳
445433:2008/12/21(日) 22:21:03 ID:SntI8AJa
みんな感想ありがとう。
いちゃつくカップルへの醜い嫉妬心を妄想したので温かい言葉を貰うのは何か悪い気がするw。

>>442
実は汐留にあるイルミネーションと東京タワーの灯りを見ていちゃつくカップルが元ネタだったりする・・・。シャッキーニ、期待してますぜ。

>>436
私事で申し訳ないが、それってNo132のSSじゃないよね・・・?
もしそうなら、実はそれを書いた人だったりする・・・。
446名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 22:32:48 ID:H/35y01Z
>>443
東京タワー「やっぱり、なんかいつもと違うな…」
447名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 22:33:41 ID:Do5Sor1k
>>446
テレビ塔「それ、私の・・・」
448名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 22:41:57 ID:H/35y01Z
>>447
東京タワー「ライト取れってひどいじゃないかー」
449名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 22:41:57 ID:LTNTZ8nh
お前らw
450名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 22:44:55 ID:AbS9ZnLf
>>392
解けてねぇぇぇ!
ぜんぜん解けてねぇ!
ビューリングとウルスラの誤解がむしろ増幅しちゃってるよ、オイ!
でも面白かった。
短い話しながらそれぞれのキャラが特徴が上手く出ていたし。
451名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 22:57:14 ID:AbS9ZnLf
>>379
保管庫の管理人さん来たー!
お姉ちゃん全開なゲルト良いなぁ。
宮藤含む年下ーズが甘えたら色々お菓子を作ってくれそう。

>>388
まともなのは迫水あたりでフイタ。
ダメだ!だまされちゃ!とか思ったけど
最初はまともに見えてたんだねぇ、野獣迫水も。

それと日記形式ならもうちょっと色々エルマがどう思っていたかを想像して
入れてみた方が吉。
452名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 22:58:37 ID:pdM74U24
453名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:04:56 ID:1OjVEolT
>>452はとんでもない核弾頭を叩き込んでいきました

仕事速ぇよw
454名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:05:41 ID:6ehW90Dg
仕事早い−!
これはGJとしか言いようがない
455名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:08:43 ID:NqKRdbg2
きたあああああああああああああ!!!!!!!!
2時間ちょっとで完成とか何という音速、>>452は間違いなくシャーリー
やっべ今夜はにやけが止まらない予感!
456名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:08:46 ID:fNg/EP2G
>>452
ああもう! かわいいなくそうっ!
457名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:09:07 ID:Lws0bosJ
>>452
ちょwほんとにきた仕事ハヤスw
かわええのぅかわええのぅ
458名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:10:41 ID:Do5Sor1k
>>452
これはサンタが悶えて墜落するな…
459名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:10:56 ID:SntI8AJa
>>452
感動してマジで涙が出た。
明日からまた生きていく勇気が湧いてきた。
460名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:12:55 ID:pdM74U24
うお、途中送信
>>408
本立てじゃない、本音と建前続ききた!
こうやってくだぐだどこまでも悩んでいる人って大好きだ
この裏でバルクホルンがものすごく凹んでいそうな気がするのは気のせいか
残り二話でどうなるのかがすごく楽しみです。GJ、GJ!!

>>372
修羅場過ぎるGJ!フリーガーハマーが持ち出される前に解決されることを願っています
そしてさりげなくエイラさんが天然に変態でワロタw
続き楽しみにしてる!

最近投下増えすぎて追いつけない…あとで読み返すけど皆さんほんとGJです
この先ルッキーニ生誕、クリスマスイヴ、クリスマス、年越し元旦と更に加速しそうだなあ
早めに筆に冬休み取らせてまったりスレを追っていこうかなあと考えてしまう自分がいるw
461zet4j65z:2008/12/21(日) 23:13:02 ID:4zHGgzaU
>>452
うは、仕事速すぎるしwww
で、自分>>442なんだがやっぱり書きあがったものは投下せんと我慢できんわw
どうせ誕生日にもクリスマスにも絡まないルッキーニ話し出しナ。

●ブリタニア1944 ふにふに大作戦

 それは、ブリーフィングが長引いて食事の時間がずれこんだある日の出来事。
 ネウロイの襲来も無くて、たまたま贈り物とかでお茶菓子が充実していた、そんな幸せなはずのある日。

「ウジュー……もうおなかいっぱいだよぉ」

 今日のお昼はアタシのリクエストでリーネの作ってくれたパスタで、ちょっとおかわりしすぎたみたい。
 食べ盛りだからって3回お代わりしたのはまずかったかなぁ。
 ま、リーネの料理美味しいから仕方ないよねっ。
 でも問題はそんな所じゃなく、その後のリーネのやった事……。

「みなさんティータイムですよ。今日はお菓子もいっぱいありますよ〜」
「やったぜ、でかしたぞリーネ」
「程ほどにして置けよ、リベリアン」
「なんだよ、お前だって食べる気満々だろうに」
「喧嘩はダメよ。数はあるんだから仲良く分けて食べましょう」
「わっはっは、選び放題だな」
「本当にいっぱいあるナ」
「うう、今日は別腹にも入らないかも……」
「なんとなく、見ただけで胸がいっぱいかも」
「……眠い」
「うう……リーネさん、あなたはもう少しタイミングというものを考えた方がよろしいですわ!」

 うにゅぅ、こんなに早くティータイムにされても入んないよぉ。珍しくペリーヌの意見にさんせー。
 時間なんて正確に守る事無いのにぃ。リーネのバカ!
 目の前には色とりどりのケーキにタルトにプリンにパイ、えとせとらえとせとら……。
 あんなに美味しそうなのに食べられそうに無いよ、はぅ。

「お、なんだルッキーニ。食べないのか〜?」
「お腹いっぱいで入んないモン」
「そりゃあランチあれだけ食べてればなぁ」
「でもシャーリーもいっぱいお代わりしてたよ。そんなに食べられるのズルイ!」

 シャーリーのお皿の上には綺麗な色のお菓子たちが3つものっかってる。

「そりゃあホラ。体の大きさも違うからなぁ」
「ズルイものはズルイのっ! シャーリーのバカっ!」
「ははは、バカはひどいなぁ。でも長く持たないのが多いからこれはっていうのは今のうちに食べた方がいいぞ」
「ウン」

 結局ケーキを一つだけ無理矢理詰め込んだけど、お腹が苦しかったせいであんまり美味しく無かったよ。ションボリ。

 …………。
 そんなわけでスイーツをまともに食べそびれてユウウツな待機時間。
 なんかエイラが話しかけてきた。

「おーいルッキーニ、さっきのティータイムは散々だったみたいダナ」
「にゅう、まだ苦しいよ」
「女の子の別腹も役に立たないほどの満腹カ。ま、ルッキーニじゃ仕方ないよな」
「みゅみゅみゅみゅ……次は大丈夫だもん」

 アタシが言い返すと、なんだかエイラが顔を近付けてきてヒソヒソ声になる。
462名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:13:21 ID:6rNe4IOu
>>452
ルッキーニ「シャーリーはや〜い!」
463zet4j65z:2008/12/21(日) 23:13:47 ID:4zHGgzaU
「ドウカナー? それよりさ、気付いたかルッキーニ?」
「何が?」
「さっきのみんなの行動ダヨ」
「うにゅ?」
「いいか、パクパク食べてた連中は誰だった?」
「にゅ〜……シャーリーに、バルクホルン大尉にミーナ中佐、サカモト少佐……あとリーネかな?」
「ま、わたしも一応控え目には頂いたけどナ」
「ウン、それがどしたの?」
「まだ気付かないのかよー。共通点があるダロ」
「きょうつうてん? んふ〜なんだろ」
「決まってるだろ。おっぱいだよ」
「え!? 何でそれがでてくるの?」

 ニヤニヤ笑いから急にまじめな表情になって、エイラが答える。

「実はなルッキーニ。女の子の別腹はおっぱいの大きさでその容量が変わるんダヨ」
「えっ! それホントッ!?」
「ホントさ〜。その証拠にシャーリーが一番食べてたろ」
「うんうん! いっぱい食べてたよっ」
「ルッキーニが別腹発動で食べられなかったのもそこがちっちゃいからなんダ」
「うじゅ〜……すぐ成長するよっ」
「うん、そりゃ分かってるけど、どうせだから大きくするおまじないを教えてやろうと思ったんだ」
「えっ!? ナニナニ〜教えてよっエイラ!」
「にひひ、ソレハナー……ごにょごにょ」

 そっか! 好きな人に揉んでもらえばいいんだっ!
 ってことは、シャーリーは本命だけどこういうのはいっぱいして貰った方がイイよねっ。
 ヨシッ!

「エイラ! エイラはいい事教えてくれたから好きっ! だ・か・ら〜早く揉んで揉んで〜」
「えっ!? わたしがかぁ? 好きな人だぞ好きな人」
「うん、好きだよ〜だから揉んで〜」
「まぁ、そういう考え方もあるのカ……キョウダケダカンナー」

 すかっ……ふに、ふにふに……。

「なんか手の動きがびみょ〜」
「ちょ、ちょっと想定よりズレタだけダヨ」

 ふにふに、ふにふに。

「ど〜かな? オマジナイにはじゅーぶん?」
「ウン、まぁこんなもんだろうナ」
「よーし次っ!」

 ソファーでうとうとしているサーニャがいる!
 サーニャの夜食は美味しいから好き!

「サーニャサーニャサーニャ〜」
「わ、ばか寝てるんだから起こすナヨー」
「ん……」

 ひざの上にぴょん。
464zet4j65z:2008/12/21(日) 23:15:31 ID:4zHGgzaU
「ひゃ」
「ね、サーニャのお料理好き〜あと歌とかピアノも好きだよっ」
「え……」

 至近距離で寝ぼけ眼のまま驚くサーニャ。しかも照れてるのかな?
 で、その両手を取ってアタシの胸に。
 サーニャは大人しいからこれくらいリードしてあげないとネッ。

「だからホラ、揉んで揉んで〜」
「え?え?」

 ふに、ふに。

 にゅお〜真っ赤になってるサーニャカワイイ〜。
 ほっぺにちゅーしちゃうぞ〜。

 ちゅ。

「!」
「あああああー何ヤッテンダヨルッキーニ!」
「にゃは〜おまじないのお返しだよ〜。ア〜リガットねっ」

 ぴょんと飛びのいてするりと抜けて、今度は誰の所にいこっかな〜。
 ん〜、中佐の部屋だ〜。ヨシ、寄ってこう。
 コンコンと軽くノックしてから入る。
 前にノックせずにはいったら怒られたから失敗はしないよ〜。

「はいどうぞ」
「にゃっふ〜ねぇミーナ中佐ぁおまじない手伝って〜」
「ルッキーニ少尉……おまじない?」
「ウン、アタシねぇ、普段の中佐優しいから大好き! あと歌も好き〜」
「あら、ありがとうね」
「だから、おっぱい揉んで〜」
「え?」
「前から〜? 後ろから〜? どっちが揉みやすいかな?」
「ええと、あのねルッキーニ少尉……」
「ホラホラいいから。時間はとらせないから、ハイッ!」

 ミーナ中佐意外と押しが弱いなぁ。
 ささっと両手を取ってくるっと回ってホイッ。
 うしろからわたしの胸に手をふにっと。

「え、あの……ルッキーニ少尉?」
「も〜、サーニャと同じで思い切りが悪いなぁ。遠慮せず揉んで揉んで〜」
「え、ええ……」

 ふに、ふに、ふに、ふにっ。

「こ、こんな感じで……いいのかしら?」

 ふにふにふにふに。

「ふしゅる〜いいかんじかも〜さっすがたいちょー」
「ふふ、お役に立てて光栄だわ」
465zet4j65z:2008/12/21(日) 23:16:47 ID:4zHGgzaU
 ばさっ、と何かが落ちる音。
 んに?

「ミーナ、お前一体何を……」
「ぇ、あ……ああっ、トゥルーデっ! コレは違うのっ!」
「ふ、不潔だっ! 見損なったぞミーナ!」

 大尉だ。シャーリーも大尉だけどシャーリーはシャーリーだからバルクホルン大尉は普段は大尉。
 なんか書類落として走り去っちゃった。
 中佐に用があったんじゃないのかなぁ?
 あ〜コレってもしかして!

「ミーナ中佐ぁ、もしかして今の修羅場?」
「ルッキーニ少尉……」

 うぁ、ミーナ中佐の笑ってない笑顔だよ。コレは危ないよっ!

「にゅっはぁ!! 怖いモードの中佐はキラーイ!!! ごめんにゃしゃ〜い!!」
「あ、こらっ! まちなさ〜い!」

 走るっ走るっ、はっしっるるるるるぅ!
 何とかまいたかぁ、ふぅ。
 怖いモードは参るよね、ホント。普段はあんなに優しいのになぁ。
 外まで来ちゃったけど、誰かいるかな〜?
 あ、サカモト少佐が素振りしてる。

「にゃふ〜少佐ぁ」
「お、ルッキーニか。お前も訓練をするか?」
「あ〜あはは、今は訓練じゃなくてちょっとお願いがあるの」
「お願い?」
「ウン、おまじないのお手伝い」
「ほぅ、呪いか……どういった類のものだ? 内容によっては危険だからな、協力は断らせてもらうぞ」
「う、うん。えとね、おっぱい大きくしたいから、好きな人に揉んで欲しいのっ」
「はぁ?」
「少佐は頼りになるから好きっ! だから揉んで〜」
「わっはっはっは! よし来た、そのくらいならお安い御用だ。気の済むまで揉んでやろう」
「わ〜い、さっすが少佐〜。話わっかる〜」
「わっはっは」

 ふにふにふにふにふに。

「どうだルッキーニ?」
「もっともっとゴー!」
「わっはっは! よ〜し、任せろ」

 ふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふに。

「にひひ〜、くすぐったいよぉ少佐〜」
「あっはっは! コレはやりすぎてしまったか」
「さ、坂本少佐っ……」

 んにゅ。ペリーヌ?
466zet4j65z:2008/12/21(日) 23:17:56 ID:4zHGgzaU
「おお、ペリーヌか」
「にゃ〜ほ〜ぺりぃぬ〜にゅははははっ少佐くすぐったい」
「そ、そそそそそそんなっ……」
「どうしたペリーヌ? ああ、そうだペリーヌ、折角だからお前も手伝ってやるといい」
「ルッキーニさんと少佐がそんな関係でしたなんてっ! しかも白昼堂々と……」
「ん? 何を言ってるんだペリーヌ?」
「どしたのペリーヌ?」
「わっ、私は……わたくしはっ! 私は少佐が幸せならそれで身を引きますわ〜〜〜〜〜〜〜」

 なんか、泣きながら走って行っちゃった。

「行っちゃったね」
「ああ、行ってしまったが、泣いていた様だな……何か悩みがあったのかもしれん。私は少し話しを聞いてやろうと思うので、済まんがここまでだ」
「うん、そだね。少佐アリガトねっ」
「ああ、また呪いが必要になったらいつでも来るがいい。わっはっは」

 ん〜少佐も行っちゃったし、次はどうしよっかな。
 ミーナ中佐にあったら怖いけど……また中に入ってみよっと。
 ん? あそこにいるのは……。

「ヨシカッ、リーネッ」
「あ、ルッキーニちゃん」
「どうしたの?」
「オッパーイ」

 ぐっと右腕を突き出して叫んでみる。
 そしたらヨシカも同じ様に右腕を突き出して、

「オッパーイ」

 おおっ流石はヨシカ〜、のってくれる〜。

「ちょ、ちょっと芳佳ちゃん」
「あ、あはは、つい……」
「ね、ね、二人ともっ、おまじない手伝って〜」
「おまじない?」「おまじない?」

 二人の声がハモる。仲良しだね〜お二人さん。

「ウン、おっぱい大きくするのにっ、好きな人に揉んでもらうのっ。アタシ二人のお料理大好きだから二人も好きっ!」
「え?え?え?」
「うん、いーよ」
「え? あの芳佳ちゃん?」
「よ〜しいくよ〜」

 ふに、ふに、ふに、ふに、ふに。

「……なんか物足りないね」
「あ〜っヨシカひど〜い! 自分だって残念賞のクセに〜」
「わ、折角もんでるのにルッキーニちゃんもひどいよ。そんなこという子にはこうだよっ!」

 ふにふにふにふにふにっ!
 ふにふにふにふにふにっ!
 ふにふにふにふにふにっ!
 ふにふにふにふにふにっ!
467zet4j65z:2008/12/21(日) 23:18:38 ID:4zHGgzaU
「うにゃはははっ! ヨシカぁ激しいってばぁ」
「あははははっ。それそれ〜」
「あ、あの〜……芳佳ちゃん?」
「おっと、ハイ次リーネちゃんの番だね」

 正面から揉んでたヨシカがするりと後ろに回りこんでアタシを羽交い絞めっ。
 結構とろそうなのに変な所だけ素早いよなぁ、ヨシカ。
 それにおっぱいへのこだわりは流石だネッ。
 ……で、リーネの方は……なんか迷ってる?

「ほらほらリーネちゃん。遠慮せず思いっきりやっちゃっていーよ」
「ヨシカの言うとーりだよっ。遠慮せずいっぱい揉んで〜」
「え、いや……でも……」
「普段悪戯されちゃう方なんだから、こういうときくらいはやり返してみないと、ね」
「そうだよ〜。こんなチャンスあんまり回ってこないよ〜」
「う、うん……じゃあ……」

 恐る恐る手を近付けてくるリーネ。

 ふにっ。

「ダメだよリーネちゃん。思い切りが足りないよ〜」

 おお、アタシよりも先にヨシカのダメだしが入ったよ。いつになく気合十分だねっ、ヨシカ。

「ホラ、こんな感じでっ!」

 ヨシカがリーネの手の上に自分の手を重ねてうごかす。

 ふに、ふに、ふに、ふに、ふに。

「にゅ〜……及第点、かなぁ」
「ほらリーネちゃん。もっといい点もらえるように積極的にっ!」
「う、うん! がんばるよっ」

 勢いに押されたのかリーネが自分から手を動かし始める。

 ふにっ、ふにっ、ふにっ、ふにっ。

「うじゅは〜、いい感じだよっリーネっ! アリガト〜〜」
「お、お役に立てれば、うれしいよ」
「こういう事ならお安い御用だから、いつでも来てね〜」
「ウンウン。また何かあったら頼むねっ。じゃっ」

 なんとなく二人が変な雰囲気になってた気がするけどキニシナ〜イッ!
 さ〜てとあとは〜……おっ。
468zet4j65z:2008/12/21(日) 23:19:38 ID:4zHGgzaU
「ハルトマン中尉〜」
「ん? やー、ルッキーニ」

 廊下でハルトマン中尉に遭遇〜。
 よ〜し、おねがいしちゃおう。

「ハルトマン中尉は怖い人から匿ってくれるから好き〜」
「ははは、それほどでもないよ〜」
「だからおまじない手伝って〜」
「おまじない?」
「うにゅ、好きな人におっぱい揉んで貰って、おっきくするのっ」
「お〜でもコレから成長するから余裕だったんじゃないのか〜?」
「すぐにおっきくしないとイロイロ損をすることに気付いたのっ」
「よし、そういう事ならこの黒いチューリップにお任せあれ!」
「ハルトマン中尉も話わっかる〜」
「そうだなぁ、わたしも損をするのはイヤだから、折角だからおっきくしよっかな」
「お〜、じゃぁあ揉みっこっ!」
「うんっ」

 向かい合って、せ〜のっ! で……。

 ふにふにふにふに。
 ふにふにふにふに。
 ふにふにふにふに。
 ふにふにふにふに。

「ふふちょっとくすぐったいね」
「でもなんかいい感じだよっ」
「は、はるとまん……まさかお前も……」

 を? 大尉だ……ってミーナ中佐は〜キョロキョロ、うん、いないねっ。

「トゥルーデっ、ルッキーニを手伝ってあげてよ」
「な……にっ……手伝う、だと?」
「ウンッ、おまじない手伝って〜」
「できれば後でわたしの方もしてほしいかな……」

 なんか状況わかってなさそうな大尉を見ながらハルトマン中尉が耳元でヒソヒソ。

「トゥルーデ相手には、『おねがいお姉ちゃん』って言ってみるとイイよ」
「お〜、そうなんだ〜」
「な、何を密談している?」
「お願いお姉ちゃん。わたしのおっぱい揉んで〜」
「なっ!?」

 わ、なんか怖い顔してからワナワナして頭抱えて考え込んで壁に手をついてブツブツ言って納得して手を打って……ってリピートしてる。
 なんかみててオモシロイよ。

「ね、面白いでしょ」
「うんっ、大尉チョーオモシロイっ!」
「フランチェスカ・ルッキーニ!」
「にゃははいっ!」
469zet4j65z:2008/12/21(日) 23:20:44 ID:4zHGgzaU
 大尉ってばハルトマン中尉とヒソヒソしてたらいきなり向き直ってフルネーム呼ぶんだもん、驚いたよ……。

「いや、フランカと呼ばせてもらおう。どうやら私はお前の事を誤解していたようだな」

 にゅオオオッ! なんかいつになく優しい表情だよっ!
 手を伸ばして私の頭を撫でてくれるし〜。
 えへへ、気持ちいいな。

「さぁ、わたしの事を実の姉と思ってくれて構わない……いや、是非実の姉と思ってくれ。そして甘えてくれフランカ」
「ウンッ、お姉ちゃん、だ〜いすきっ」
「ああ、私も好きだぞ、フランカ」
「でね、お姉ちゃん。おまじないでね、おっぱい揉んで欲しいの」
「ああ、お安い御用だフランカ。私の手が動かなくなるまで揉んでやろう」
「にゃは〜そんなに揉んだらきっとやりすぎになっちゃうよ〜」
「そ、そうか?」

 な〜んて甘えてたらハルトマン中尉が口で「さささささっ」とか言いながら廊下の曲がり角の所に移動するのが見えたけど、何やってんだろ?

「よ、よし……では後ろから、こうして……いいか? フランカ?」
「いつでもドゾー」

 ふにふに、さわさわ、ふにふに、さわさわ。

「ふにゅにゃはっ、ちょとくすぐったいってばぁ、お姉ちゃん」
「す、すまん。これでどうだ?」

 ふにふに、すりすり、ふにふに、すりすり。

「うじゅ〜なんかお姉ちゃん触り方が変かも〜」
「そ、そうか……すまん」
「オイッ!! 堅物ッ!!!」

 あ、廊下の向こうにシャーリーだ。
 この後本命のシャーリー探そうと思ってたからなーいすたいみんぐぅ。
 やっぱりシャーリーとアタシは運命の赤い糸で結ばれてるね〜。
 デモなんか怖い顔してるよ。

「お前ッ! こんなところでアタシのルッキーニになんて事してやがるッ!!!」
「あっ、リ、リベリアンこれはっ……」
「問答無用ッ!!!」

 おおおっ! シャーリーが走りながら魔法発動だよっ! って……。

「待っ……」
「でええええええええええええいっ!!!!!!!!!!」

 ボグシャー!

 すご〜い。アタシの目にも見えなかったよ……。一瞬で20mくらい詰めたよね。
 で、お姉ちゃんな大尉の顔面にグーがクリーンヒットォ!
 シャーリーカッコイイ!! でもお姉ちゃん大尉がちょっと可哀想かなぁ。

「わわわっトゥルーデ!」

 あ、ハルトマン中尉がいるから大丈夫か。
470zet4j65z:2008/12/21(日) 23:25:50 ID:4zHGgzaU
「ルッキーニ。大丈夫だったか?」
「うん、アタシは平気だよ〜」

 シャーリーが私を胸に抱きながら声をかけてくれる。
 やっぱりシャーリーのおっぱいが一番いいなぁ。むにゅむにゅ。

「えっとね、シャーリー。好きな人におっぱい揉んで貰うとおっきくなるって聞いてね、皆から揉んでもらってたの〜」
「え……みんなからって……あたしは……な、何であたしの所に来てくれなかったんだよ」
「シャーリーは一番好きだから、一番最後に揉んで貰おうと思ってたんだ」
「あ、あはは……何だそういう事かぁ。だったらなルッキーニ、今度からそういう時は一番最初と一番最後にあたしんところに来ればいいと思うぞ」
「お〜、それもそだったね、うん。今度からはそうするよっ。ね、じゃあじゃあ早速揉んで〜」
「よしよしまかせとけ……こんな感じでいいか〜?」

 ふに、ふに、ふに、ふに、ふに、ふに、ふに、ふに。

「こんな感じでいいかぁ? ルッキーニ?」
「ウンッ。お姉ちゃんよりも上手だよっ」

 ふに、ふに、ふに、ふに、ふに、ふに、ふに、ふに。

「お姉ちゃん? なんだそりゃ」
「バルクホルン大尉の事だよ〜。そう言うと喜ぶの」

 ふに、ふに、ふに、ふに、ふに、ふに、ふに、ふに。

「ふ〜ん……って、もしかしてっ! バルクホルンの奴にもおまじない頼んでたのか?」

 ふに、ふに、ふに、ふに、ふに、ふに、ふに、ふに。

「ああそうだよリベリアン……」

 あ、お姉ちゃん復活。

「お、おぉ〜うバルクホルン大尉殿。どうしたんだ〜? 顔なんか腫らしちゃって〜。お、まさか浮気でもしてハルトマンにでも叩かれたのかぁ?」

 ふに……、ふに……、ふに……、ふに……、ふに……、ふに……、ふに……、ふに……。
471zet4j65z:2008/12/21(日) 23:26:48 ID:4zHGgzaU
「はっはっはっ……面白い事言うなぁシャーロット・イエーガー大尉。因みにコレはな……」

 ふにゅあああ、なんかビリビリと空気が震えてるよっ!?
 うぁ……ハルトマン中尉のあんなに引いてる顔肝油以来じゃん……これってもしかして、相当ヤヴァーイ?
 ふにっ……プルプル、 ふにっ……プルプル、ふにっ……プルプル、ふにっ……プルプル。

「バーベキュー用に用意したリベリオン産の牛が暴れたんだよ」
「お、おおおっ! ババババーベキューかっ……そそ、そいつは楽しそうじゃないかっ」

 頬をさすりながらお姉ちゃん大尉が近づいてくる。

「ああ、さぞかし楽しいだろうな……特に、牛を解体する辺りなんて最高に盛り上がる」

 プルプル、プルプル、プルプル、プルプル。
 わわわわわわわわっ、なんかほんとやばそうだよっ! 指をばきばき鳴らしてるよっ!

「当然付き合ってくれるよなぁ、牛の解体。お前はリベリオン式バーベキュー大好きだもんなぁ」
「はっはっは……あたしは仕上げとか無けりゃいけないストライカーのセッティングあるんでまた今度な、ルッキーニ……じゃっ」 

 私の背中から離れて脱兎の如く走り出すシャーリー。おお、アタシなんか面白いこと言ってるカモ。

「まてぇいっ!!!!」

 大尉も行っちゃった。

「行っちゃったねぇ」
「うん、行っちゃった」
「まぁ、二人なら大丈夫だよなぁ……タブン」
「ウン、タブン」
「ルッキーニ」
「なぁに? 中尉」
「おっぱい、おっきくなるといいねっ」
「ウンッ!」

 次の身体測定が楽しみ楽しみ〜、にゃは☆
472436:2008/12/21(日) 23:31:37 ID:ZwVS8Kca
>>445
ちよマジで歌の人だったのか
あなたの作品は自然とBGMが脳内再生されて好きなんだ

でリロードしたら投下来てるし
百合スレって奇跡でできているんですね
473名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:33:38 ID:Do5Sor1k
>>471
GJ!ソニックブラストシャーリーのパンチは痛そうだなw
ルッキ誕一番乗りおめ?本番もまた書くよね(ニヤリ)

ところでもう480KBなわけだが
474zet4j65z:2008/12/21(日) 23:35:07 ID:AkLittQu
――エピローグみたいなもの――

 ルッキーニが待機室でうとうとしてたら、なんかペリーヌがきた。
 妙にニコニコしてナ。

「ルッキーニさん」
「うにゅ?」
「少佐から事情は聞きましたわっ」
「にゅにゅ〜」
「おまじないの為に、好きな人に……その、胸部を揉んで貰っているのでしょう」
「にゃ〜」
「不肖この私も、ルッキーニさんのおまじないに協力させて頂きますわぁ」
「うじゅ〜」
「さぁ、お立ちになって」
「もういいよ、ソレ」
「へっ!?」
「ふわぁ……飽きたし、ペリーヌはなんかありがたみが無いし」
「ななななんですってぇ」
「それにさぁ、好きな人だよ」
「え、ええそうですとも、皆様から愛されるこの私ならば適任かと……」
「ふにゅう、ぺたんな胸に手を当ててよく考えろ〜」
「なっ!? ソレはどういう意味ですのっ!?」
「ふにゃ〜おやすに〜zzz……」
「えっ、ちょっ、ルッキーニさん! ルッキーニさんっ!」
「うるさいにょ〜」
「う、ううっひどいですわっ! 折角っ! 折角っ! もう知りませんわ〜〜〜〜〜」

475zet4j65z:2008/12/21(日) 23:38:01 ID:AkLittQu
 あ〜泣きながら去ってったヨ。おこちゃまは残酷ダヨナァ。
 まぁ、順当ではあるけどナ。
 でもあれはいい偶然だった。
 宮藤は準備中に公然とつまみ食いで、ハルトマン中尉はこっそりとつまみ食い。
 そのお陰で普段食べそうな二人が食べなかったし、ペリーヌはよくわかんない貴族の誇りにサーニャは眠かったからナ。
 逆におっきい組の方はリーネとミーナ中佐は予め知ってたし、少佐とシャーリーとバルクホルンは食べるキャラだし。
 われながらうまく填まったヨナ。
 うん、全部楽しませてもらったから、次はどんなネタ吹き込むカナー。

 コレだか悪戯はヤメラレナイナ、ニヒヒ。



以上となります。ルッキーニがちょっと幼すぎたかな?とか思うけど許してください。
ネタ自体は最新の喫茶店よりも先にあって、なんていうかみんなが記憶喪失で盛り上がってる間一人でおっぱいのことばかり考えてましたよw
あと、最後の投稿だけ連投に引っかかりましたorz
クリスマスにはまたなんかがんばって用意します〜
476名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:38:30 ID:nMBTlccy
次スレ立てたほうがいいのかな?
良かったらチャレンジしてくるが。
477名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:39:52 ID:Do5Sor1k
>>475
改めてGJ!割り込みごめん
この悪狐めw

>>476
よろしく
478名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:40:07 ID:dyF5VFJs
>>476いってらっしゃいませ。
479名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:43:08 ID:fNg/EP2G
>>471
ルッキーニ口調いい! オチのシャーゲル対決もいい!
芳リネはなんかえろい! 面白かったGJ!

……リロったらエピローグ来た。エイラにもGJ。

>>476
よろです
480名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:44:42 ID:nMBTlccy
俺に出来るのはせいぜい次スレを立てる事ぐらいです。
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1229870456/
481名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:47:35 ID:JCzvn3XY
>>481 乙!

こんばんは。mxTTnzhmでございます。
このラッシュ……恐ろしいw

>>365御大
GJ! ひたすらシャッキーニ道を往く爺様、流石です。

>>373 RU1ZZ/dh様
GJ! エイラさんダメダメですなw だがそれがいいw

>>380 保管庫様
GJ! お姉ちゃん思考と言うか妄想が過ぎるw ニヤニヤしました。

>>388
GJ! 全員分はちときついと思いますがガンガレ! 面白いです。

>>400
GJ! いらんこ中隊ネタ、いいですねー。こっちはこっちでニヤニヤ。

>>408 j4ntaz3y様
GJ! 素晴らしい描写がいい雰囲気出してます。

>>430 rQBwlPEO様
GJ! ホント、お見事の一言です。続き期待してます。

>>452
GJ! 仕事早い!そしてステキ過ぎ。

>>475 zet4j65z様
GJ! なんか全体的に壊れてる感じがw お姉ちゃんw

その他全レス出来ないのが悔しい! その他の職人様も皆様GJ!


さて、ちとここ最近アレだったので、抑え気味のやつをひとつ投下。
482luminescence 01/02:2008/12/21(日) 23:48:49 ID:JCzvn3XY
最近、ふと想う事がある。
彼女は何を思い、何を考えているのかと。
勿論、指揮官であるからには隊の全てを把握していなければならないし、
なすべき事はたくさん有る。
けれど、その感情は時として棘の様にちくちくと痛み、ささくれ、私を悩ませる。

彼女は幼い頃からストライカーの開発に関わり、また特筆すべき魔力を持ち
欧州やその他で戦ってきた扶桑のベテラン、そしてエース。
それ自体は私も指揮官として高く評価している。
彼女が部下に課す厳しい訓練、自身も常日頃行っている鍛錬を見るに、
心の底では部下思いで、自分に厳しく、優しいひとなのだと言う事も知っている。
でも。
最近の彼女からは、何処か焦りにも似た感情を感じる。無理をしてないか。
もう二十歳で、ウィッチとしてのピークは過ぎている。
満足にシールドも張れないという、ウィッチとして致命的な問題も抱えている。
それでも彼女は飛ぶと言い頑として譲らず、私を悩ませる。
彼女を大空へやるときには、強大な防御シールドを張れる宮藤さんをほぼ必ず二番機につける。
防御もさることながら、もし万一の時、治癒魔法で何とかして欲しいと言う事も有る。
宮藤さんもその辺りは自覚している様で、今のところはうまくいっているけど……。

……あら、今日はどうしたの? またお酒?
ブリタニアのウイスキーでも開けましょうか。
ロックで良いかしら。すぐ用意するわ。

貴方とこうして二人で飲んでいられるのはとっても楽しいけど、いつまでこうしていられるのかしら。
いずれ貴方は扶桑に帰り、私達は祖国奪還の為に本国で戦う事になるでしょうから。
離れるのは辛い事だけど。……扶桑には「一期一会」という諺が?
それはどういう意味かしら? ……そう。まさに私達に相応しい言葉かもね。

珍しいわね、貴方が酔うなんて。
暫く私のベッドで横になっていくと良いわ。遠慮しないで。今更遠慮する仲でもないでしょう?
楽にしていって。私はもう少し起きているから、大丈夫。

私はいつしか寝息を立てる彼女の横顔を見ながら、トパーズにも似た輝きを放つウイスキーを口に含む。
氷から溶け出す僅かな水が原液と混じり、きりりとした冷たさを与えてくれる。

そう。いつもと変わらない日常。
訓練、会議、戦闘、食事、報告、記録。
そして、寝る前にこうしてくつろぐ、僅かなひととき。
多忙だけれど、さほど苦痛に感じないのは、常に彼女が横で補佐してくれているから。
優秀な副官と言うのは本当に頼もしいわ。

だけどね、美緒。
私の本心としては、もうこれ以上、直接ネウロイと戦って欲しくない。
貴方はもう十分につとめを果たしてきた。立派に戦果も挙げたし、ストライカー開発もそう。
貴方の功績は皆が十二分に承知しているし、決して色あせる事は無い。それなのに。
何故、空へ? 何故戦いに? ……痛いほど分かってる。貴方の言いたい事は。
分かっているからこそ、もう危険な一線は退いて、安全な、後進の指導にでもあたって欲しい。
それでも現役に拘る、と言う事も分かる。貴方なりの信念ね。
言葉で伝えても、銃を突きつけても、その信念は揺らぐ事なく。
483luminescence 02/02:2008/12/21(日) 23:50:16 ID:JCzvn3XY
私も既に、少し諦めているフシも有る。
前に一度撃墜されて大怪我をした時。私は止めた、けれど貴方は飛再び飛んだ。
まさに不屈の『サムライ』と言ったところね。
確かに、また空に戻ったと言う嬉しい部分も有るけど。
貴方が自分の限界を感じ、焦るのを見るのはとても辛い。貴方も辛いでしょうけど、私もとても辛い。
もっとも、今の貴方は自分の事で精一杯だから、私の心の内までは分からないかも知れない。
いえ、もしかしたら分かっているのかしら。そうだとしたら、とても嬉しいのだけど。
けど、分かってやっているんだったら尚の事悪質ね。そういうところが、お互いの
ちょっとした“甘え”なのかも知れない。

ウイスキーもだいぶ無くなった。
少し混濁しつつある頭でそんな事を茫洋と思いつつ、ベッドに近付き、貴方を見る。

私のベッドで眠る貴方の横顔はいつもと変わらずとても安らかで、見ていてほっとする。
心のよりどころになっている、と言う点は否定しない。
でも時には、貴方の姿が何故か心に突き刺さり、掻き乱される。
この鈍痛にも似た動揺は何故。
愛しいと言う感情に偽りは無いのだけど、不思議なものね。

これだから、扶桑のウィッチは……。

end

----

以上です。
ミーナ視点でも書いてみたかったのでひとつ。

この続き的なものも用意してますので宜しく。

ではまた〜。
484名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:53:45 ID:LQLoznad
>>412
どうも、投下を数えていたのはRU1ZZ/dhでした。なんというか1本どころか50本あったら50本好きだから困る。
>>452の絵もGJです。見る前から誰か分かった自分はもう追っかけなんじゃないかと…

>>475GJ
485名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 23:56:58 ID:LQLoznad
うお、もう一本!?GJです。
486名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 00:07:15 ID:RDctvI/v
その昔、保管庫の更新がまだ全手動だった頃、更新を終えてからリロードする度に
もう一本追加しなくちゃいけなくなってて嬉しいやら忙しいやらだった時期がありました……。
そして今、コピペしてボタンを数回押すだけで更新ができるようになって、もう二度とあんなことは起きまいと思っていたのに。
この僅かな隙に2本も増えてるってどういうことだ、どうなってんだこのスレはああ!!
>>475
これはいいルッキーニ、隊員毎の反応がいちいち面白すぎる。
サーニャの「ひゃ」もいいが芳佳のナチュラルな星人ぶりに吹いたww
>>483
にゅわー美緒ミーナきたああGJ!!
最後の一文が絶妙な雰囲気過ぎて、寝てる美緒のほっぺにそっとキスするミーナさんを幻視した。

>>480乙にちゃ。
相変わらず音速消化だ、いつもの埋めの人は間に合うかな?
487名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 00:11:55 ID:FN2F7Gu8
>>483
美緒ミーナ、大人っぽいな。さすが夫婦だw GJ!
ミーナの語り口がつやっぽくていいな
488名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 00:15:16 ID:qOlUN3Ng
mxTTnzhmでございます。
かなり寝惚けてますね。すいません。
>>481
自分に乙してどうするorz

改めて
>>480乙!
489名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 00:33:25 ID:4ish3Tav
>>483
ちょっとまじで言わせてくれGJ!
丁度最近同じような妄想してた所なんだw!!
普段弱みを見せないんだけど酔ってしまって一瞬隊長に甘えてしまうとゆうかそんな感じの妄想なんだけど。
やべー今の自分にはツボすぎた!続き死ぬ程楽しみにしてる!!
490名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 01:10:05 ID:LwaEVWos
>>484
あれ?自分がいる。
491名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 01:51:58 ID:qOlUN3Ng
たびたびこんばんは。mxTTnzhmでございます。
今更ですが、>>348氏のご要望にお応えして、超短いものをひとつ。

タイトル:「you and me」

私は501解散後も扶桑には帰らなかった。
理由? 勿論ひとつに決まっている。
扶桑には大切な友達のみっちゃんも居るし、お母さんとお祖母ちゃんも居る。
だけど、私に出来る事。私にしか出来ない事。それを見つけた様な気がして。
それは……、ここブリタニアでしか出来ない事。
(だから、ごめんね、扶桑のみんな。帰るのはもう暫く……)
ふうと息を付き、天を仰ぐ。陽射しが緩やかに顔を照らす。
「芳佳ちゃん?」
微笑みかけるその瞳。リーネちゃんの笑顔。
「どうしたの? 疲れた? 少し休憩する?」
ブルーベリーに囲まれて、私達は摘み取り作業をしていた。
リーネちゃんの実家に広がるブルーベリーの農場。
私とリーネちゃんは、朝食もそこそこに、最盛期となったブルーベリーの摘み取りをしていた。

ちょっと前の事が嘘みたい。
ブルーベリーを皆で食べて……舌を青くして笑い合ったり、そんな事もつい昨日の事みたいに。
それ程今のブリタニアは平和なのだけど、リーネちゃんはブリタニア空軍のウィッチとして、
しなければならない事が山ほど有るはずなのに。
私と一緒に生きる道を選んでくれた。私が扶桑よりもリーネちゃんを選んだのと同じ理由なのかな。
ブリタニアでは慣れない事も多いけど、慣れた事も多い。
全部リーネちゃんのお陰だよ。
私達は木陰で束の間の休憩と、少しばかりの仮眠を取り、そしてお互いの気持ちを確かめ、軽く微睡む。

貴方と私。
まるで昔からの幼馴染み同士みたいに流れていく日々。
だから好き。貴方の事が。
好きだから、いつも会いたい。いつでも一緒に居たい。
「芳佳ちゃん、おかしいの。くすくす笑って」
ううん、嬉しいんだ。こうして、リーネちゃんと一緒に居られる事が。
楽しいよね。平和って良いよね。
リーネちゃんの軍服も好きだったけど、普段着もとっても似合うよ。
私? どうかな。ちょっと微妙かも。リーネちゃんのお下がりだから、サイズが……
怒らないで。そう言う意味じゃないから。本当に。

このブルーベリーはどうするの? ブリタニア空軍に差し入れ?
ジャムにして、扶桑に送ろうかなあ。坂本さん、喜んでくれるかな。
そうだ! カールスラントやスオムス等で頑張ってるみんなに贈るの、どうだろうリーネちゃん?
「それ良いね! きっとみんな喜んでくれるよ!」
ありがとう。じゃあ、もっと沢山摘み取らないとね。
あと、ジャムの作り方も教えてね。
他の事も、まだまだ教わり足りない。もっと色々、リーネちゃんには教えて欲しい。

「芳佳ちゃん、今日はニヤニヤしっぱなしだよ?」
そんな事ないよ。リーネちゃんの笑顔見てたら、つい。
昨日もステキだったし、今日も勿論。
明日のリーネちゃんも、きっと綺麗。

end

----

今回は芳佳視点で。見ているのは勿論>>348氏転載のリーネと言う事で。

ではまた〜。
492名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 02:15:51 ID:ZaK2SrSU
※いつぞやの梅リーネイラの続き芳リーネ的なもの たぶん途中で切れる


ねえ、リーネちゃんはエイラさんと仲が良いの?

どこまでも純粋でまっすぐな私の想い人のその突然の発言は、私を恐ろしくうろたえさせた。よく考えたらうろたえる
ことでもなかったのに、私はうろたえざるを得なかった。えっと、あの、それは。言いよどむ私。どうしたの、具合
悪いの?首をかしげて尋ねる芳佳ちゃん。
私の体が気だるいのは、昨晩もやはり、私はエイラさんとその行為に及んでいたからだ。
そして何の含みもないと思われたその問いに上手く答えることが出来なかったのもまた、その事が原因として
あった。

「…そこまでじゃないよ」

尋ねられたのは、私の部屋の前でのこと。けれどようやくその答えを導き出したらそこはもう食堂の前だった。
まだ食事の時間には早いから、そこには誰もいない。私たちはこれから朝食の準備をしなければいけないのだ。
問いに答えたきり押し黙ってしまった私を芳佳ちゃんが心配そうに覗き込む。大丈夫?休んでていいよ?そんな
優しい言葉をかけてくれるのは、彼女が何も知らないからだ。どんなことでもまっすぐにぶつかっていく、そんな
芳佳ちゃんの力強さを、素直さを、私はとても、とても、愛しいものだと思う。

どうしてそんなことを聞くの?
尋ね返すのは、怖かった。だからできなかった。だって彼女の笑顔ときたら一点の曇りもなく澄んでいて、きっと
言葉を投げたなら彼女の本音そのままの気持ちが返されてくるに違いないと思ったから。それが果たしてどんな
形をしているか、私には見当のつけようもない。

あの夜の営みとも言えない行為以外は、私とエイラさんは特に仲が良い素振りをするわけでもなく、かと言って
必要以上にお互いを避けあうわけでもなく、まるで絵に描いたような『普通の同僚』としてこの基地で共に過ご
している。もっとも、エイラさん自体がもともとサーニャちゃんにつきっきりで、そしてかなり不思議な言動の目立つ
節があるから、彼女にとって一体何が普通であるのか、今日は普通でないのかなんて私にも他の隊員にも知り
ようがないのだけれど。
一番最初、弾みのようにそれをした次の日は流石にうろたえもしたけれど、あまりにもエイラさんがけろりとした
顔をしているものだからもう隠すことに慣れてしまった。エイラさんは嘘つきだ。本当は思い悩んでたって、平気で
笑うことの出来る人。苦しさの中から楽しさをひねり出すことの出来る人。

だって、あの人はいつも平気な振りをしているくせに、夜の格納庫で私の姿を認めた瞬間、突然泣きそうな顔に
なる。いつも被っている能面を剥がしたかのような、感情のタガをはずしたかのような、そんな子供のようなすがる
目で私を見やるのだ。
頭の中で何かがガラガラと崩壊していく音がした後はお決まりのコースだ。その腕を引っつかんで、部屋につれ
こんで、押し倒して唇を奪うだけ。それはもう衝動に近くて、半ば本能のようでさえある。私の前では余裕綽々で
笑っている彼女をあんなに打ちのめすのは、世界中でたぶんあの子一人だけだと私は知っている。けれどあの
子はそれに気付かないから、あの人はそれを一人でもてあますしかないのだと。

憧れる理由なんていくらでもあった。そう歳も変わらないはずなのにあの人は私よりもウィッチとして、人として、
ずっとずっと勝っていて。そのくせそれをひけらかすことなくあっけらかんと笑って私にさも当然のことのように手を
伸べてくれた。
けれど欲したその理由はたぶん、それだのにこの人が本当はこんなにも弱いことを知ったから。大好きな子に
そのことひとつ伝えるのにも戸惑って迷って悩んでふさぎこむ。その姿に私は微かな微かな、愛しささえ感じたの
だった。

私がそれ以上何も言えずに淀んでいると、芳佳ちゃんは「そっかー」と一人納得したように呟いて私の手を握って
引いた。昨日の晩私があの人にしたのとは全然違う、優しい優しい手のひら。触れたそこから勇気が伝わって、
とくとくと力づけてくれるかのような。芳佳ちゃんの手の温もりは、とても不思議な魔力を持っていると私は思う。

493名無しさん@秘密の花園

いこ?おいしいご飯作らなくちゃ。
彼女が浮かべるその笑顔に、エイラさんの笑顔を重ねて見る。全然違う、その笑顔。私に安らぎと勇気をくれる
ものと、私の心をかき乱すもの。そう、全然違うもの。
うん、そうだね、芳佳ちゃん。
私も微笑んでその手を握り返す。私のそれよりも小さな小さなその手のひら。私はこの子にどんな感情を抱いて
いるんだろう?好きだよ、すごく好きだよ。一緒にいると楽しいの。どきどきするの。もっとずっと、一緒にいたいと
思うの。…ねえ、それなら私はエイラさんを、何だと思って抱かれているんだろう?まるでスイッチが切り替わった
ように、感情が入れ違う。私は私なのに、私は私が分からない。





エイラさんとサーニャちゃんが食堂に入ってくるのは、いつも決まって最後のほうだと私たちは良く知っていた。
二人ともどちらかというとどちらかというと小食のほうだから、その頃には大方の片付けも済ませて一緒に
テーブルにつくのが常で。

ほら、今日も耳を澄ませばあのとてとてと言う足音が聞こえてくる。半分眠って頼りなく歩くサーニャちゃんを
支えるようにして、そのすぐ傍らにエイラさんがいる。しょうがないなあ、と繰り返しているくせに、顔は不思議と
にやけている。あの夜の悲しそうな顔は私の幻想なのではないかと思えるような、ああもうなんて幸せそうな
表情。
昨日の今日でそんな笑顔を浮かべることが出来る彼女を恨めしく思う。だっていつもいつもそんな顔をしていて
くれれば、私だってあなたが欲しいなんて思わないんですよ。責任転嫁だって怒りますか?いっそのこと怒って
くれてもいいのに。

「さーにゃぁ、」

少し目を離すとがくりと崩れて、ぽろりと料理を取りこぼしそうになるサーニャちゃんを見て『いつものように』、
エイラさんが情けない声を上げた。食堂にいる他のみんながくすくすと笑う。けれどエイラさんはサーニャちゃんに
一生懸命でそんなことには気付いていない。ほら、私が食べさせてやるから口開けろよ、あーん。

「相変わらず仲良しだねえ」
肩をくすめて芳佳ちゃんが言う。みんなも同じように口許を緩ませている。まるで親鳥と雛のような睦まじい
やり取りは、お皿の上のものがすっかりなくなってしまうまで続くのだ。それまでそこは二人の世界。神聖不可侵
な、絶対領域となる。どうしてこの人と来たら、恐ろしいほどの恥ずかしがり屋さんの癖にどうしてこういったことは
臆面も無く出来てしまうのか、私には全く分からない。そうだね。にこやかな笑顔でそう返すことにももう、慣れて
しまった自分がなんだか悲しい。

ちゃんと30回噛めよ、とか、好き嫌いはだめなんだからな、とか。まるで幼い子供を相手にしているかのように
エイラさんはサーニャさんにいつも言う。サーニャさんも黙ってされるがままになっている。もしかしたら寝ぼけて
本当に聞いていないのかもしれないけれど、それは違う、となんとなく私は勘付いている。サーニャちゃんはきっと
嬉しいのだ。そうやってエイラさんに世話を焼いてもらえることが。エイラさんにべたべたに甘えて、エイラさんに
わがままを言って、エイラさんを独り占めする。年の割には大人びた容貌と言動をしている彼女は時にそうやって
子供っぽいところをさらけ出す。エイラさんだけに、特別に。

そうしてのろのろと食べていくものだから、最終的に食堂に残されるのも結局その二人で。けれども二人は全く
頓着しないのだった。…もっとも、人が残っているところで食べ終えてしまった場合は周りの視線に気がついた
瞬間にエイラさんが顔を真っ赤にして「ソンナ目でみんな!」と騒ぐのだから、そのほうがどちらにとっても良い
のかもしれないけど。
そしてその頃私と芳佳ちゃんはキッチンに戻っていて、みんなの下げた食器を洗ったりしている。