ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart13

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1名無しさん@秘密の花園
守りたいから私は飛ぶ!!パンツじゃないから恥ずかしくないもん!

●スタッフ
監督・アニメキャラデザイン:高村和宏     キャラクターデザイン原案:島田フミカネ
シリーズ構成:ストライカーユニット        助監督:八谷賢一
世界観設定・軍事考証:鈴木貴昭        メカデザイン・メカ総作監:寺尾洋之
キャラクター総作監:山川宏治・平田雄三   美術監督:小倉宏昌(小倉工房)
美術設定:松本浩樹(スタジオイースター)    カラーデザイン:甲斐けいこ・池田ひとみ
3D監督:下山博嗣                  撮影監督:江間常高
編集:三嶋章紀                   音響監督:吉田知弘
音響制作:楽音舎                  音楽:長岡成貢
音楽制作:コロムビアミュージックエンタテインメント
アニメーション制作:GONZO
原作:島田フミカネ&Projekt Kagonish(プロイエクト カーゴニッシュ)

●キャスト
宮藤芳佳(みやふじ よしか):福圓美里     坂本美緒(さかもと みお):千葉紗子
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ:田中理恵   リネット・ビショップ:名塚佳織
ペリーヌ・クロステルマン:沢城みゆき      エーリカ・ハルトマン:野川さくら
ゲルトルート・バルクホルン:園崎未恵     フランチェスカ・ルッキーニ:斎藤千和
シャーロット・E・イェーガー:小清水亜美    エイラ・イルマタル・ユーティライネン:仲井絵里香
サーニャ・V・リトヴャク:門脇舞以

●放送局
※放送は終了しました

●関連サイト
公式サイト:http://s-witch.cute.or.jp/
まとめwiki:http://www37.atwiki.jp/strike_witches/
人物呼称表:http://www37.atwiki.jp/strike_witches/pages/50.html
百合SSまとめサイト:http://lilystrikewitches.web.fc2.com/

●次スレ
次スレは>>970or480KB超を目安に、臨機応変に立てて下さい。
必要な事前準備等があれば、>>920or450KB超を目安にして下さい。

●前スレ
ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart12
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1228239210/
2名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 03:44:39 ID:b38eNJYD
Q.○○書いたんですけど投下してもいいですか?

A.どうぞ、ぜひ投下してください。
条件は「ストライクウィッチーズ」関連であること、
「百合」であることの二つのみです。
ジャンル、エロの有無、本編にないカップリングなどに関係なく、
このスレの住人はおいしく頂いております。
妄想だとか落書きだとか気にせずとにかく投下してみましょう。

ただし、SS専用スレではないので20レスを超えるような長編は事前に断りがあると吉です。
3名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 03:45:36 ID:b38eNJYD
──リレーSSの手引き──

★基本ルール
○始める時は、リレーSSであることを宣言する。
○続ける人は宣言は不要だが、一行目に継承元の安価をつける。
○ただし、結末を書く場合は「次で終わっていいですか?」と訊いておく。
○継承先は指定できない。誰かが早い者勝ちで続きを書く。
○ただし自分自身の続きは書かない。最低2人は挟んでから。
○2レス以上にまたがらない。1レスでクールに。
○重複したら先に書いた方を優先する。
○作者名は名前欄に入れる。名無し希望は未入力でも可。
○リレー進行中は他のリレーは開始しない。
○もちろん普通のSSは、リレーの状況に関わらずどんどん投下してください。

★本文と書式
○語り手や文調はできるだけ継承する。唐突な視点変更は避ける。
○誤解を招きやすいため、科白にはキャラの名前をつける。(例:芳佳「おっぱい」)
○後に文が続く事を意識して、できるだけ色々な取り方ができる終わり方にする。
○「駄文失礼〜」「お目汚し〜」等の前書きやあとがきはナンセンスなので付けない。

★心構えと方針
○無理して面白くしようとしない。ナチュラルに妄想を爆発させるべし。
○不本意なカプの流れになっても泣かない。むしろ目覚めるべし。
○展開を強要したり口を挟まない。流れに身を委ねるべし。
○なかなか続きが来なくても焦らない。気長に有志を待つべし。
○多少の誤字脱字、設定違反、日本語おかしい文章には目を瞑る。スルーすべし。
○参加者はみな平等。新兵もエースもリレー主も一切特権はない。仲良くすべし。
○男はいらねえんだよ!ふたなりネタも自重すべし。
4名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 04:54:01 ID:FOzfcdb8
 >>1

           , '´   ,  `  、
         //   /   、    \
        ,'/  / /|  ノ )  \  ',
       /ノ / // | ノイ|V  ハ ヽヽ
       ,,イ´ / //__,,/  ハ| V.  ハ i |
     /// / /,/≦,` |  :| |___ V   V. |
      //イ | /〈 |c;;:|` V | !,___`トハ  Vノ     いやぁ姉妹って本当にいいものですね
     / ( :|イ  ゞソ    ',| rテバ | i ハ
        ト.|      ,   ゞソ,! 〉| |ヾ,
     zェュ,,ク!     __       |ト、   .-y=====┐..    イ!
     `フ ヾイヽ   ` -`    /|| >:':.:/      ヽ.:`く ||
    / / |クr-ト 、   ,, イ´/ |レ'.:.:ノ   ̄ ̄ ̄ \:.:ヽ!!
   /_/_,-/ f   ̄ ト,,/ハ |. /_/      ∞    \ ',
  /`\___,,イ  ハ\  ノノ\____[___________]
  ノ   V  |   ハ X ノ //|ヾ l.:/ .:.:.,'.:.:..:l/‐-/  l.:/ -',.:.:.:.:,
  |  ハ V |_    V||V くノ/|  V.:.>‐l .:.:>ちホ:::::::::::/ちホV.:.:.',
  |   V Y ヾ´ヾ´ミ`_,,、,、_ ト ,.:'.:.:.{  |.:./{ ト-j:::::::::::::::ト‐j l∧.:.'、
  |    ハ |/    /イHヽ ,、 ∠イ',八__|/_  `´      `´ ハ.∧.:.\
  |     V    ヾ//|,,!〉.| |       )ハ::\  'ー=-'  ノ 
.  |     〉     |/ \.| |  n  ト     Vl:::〕  r≦
  |    〈      、ー´  Y i  ノ\    r<、ー ´|>ヽ,、___
   |    ハ       ̄   ノ | // ̄ミヾY    ̄ ´ /トヾ丶丶,

5名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 07:38:17 ID:rSDtrVDZ
朝起きたら新スレとか
まだ一週間経ってないのに
>>1
6名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 07:46:07 ID:vYPpiQ5v
乙です
7名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 07:54:43 ID:QWAit3ov
>>1
梅がすばらしすぎて言葉にならない
朝っぱらからなんつーものを読ませて下さいますかGJ!
8名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 08:11:28 ID:PnnI1CXz
>>1
埋めで朝から電車の中で不審者になっちまったぜGJ!!
めっちゃえっちいのにめっちゃ切ねえ!
なんて素晴らしいエイラーニャなんだ……
9名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 08:20:39 ID:PZuLNPTm
>>1

前スレは当たり前だけど、前々スレまで残ってやがる…
なんて速さだ…
10名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 08:56:19 ID:M2RXZVdr
>>1乙!埋め人達も乙!
あとマダオゲルトで誘導やめろw腹筋痛いw

前スレのサーニャSSのおかげで出勤前に俺の股監督がイィ〜〜〜〜!になってしまった
11名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 09:18:07 ID:4D+K+WjF
>>1
やはりこの速度もう俺にはだめぽ…
ロムに徹しなくては良作読みこぼしかねん
さらば文筆、わずかばかりのメモファイル

埋めネタえろすぎて大変だったよ
12名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 09:31:02 ID:+K9/qBd0
>>10
こらこらw 俺もそうだけどw
埋め人達乙!
エイラーニャのインパクトがすごすぎるけど、
大人のにおいがするシャーゲルと
見てないようでしっかりミーナを気づかってるエーリカも良かった
13名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 11:52:14 ID:7nNtATHK
昨日投下した人達乙
一気に加速したな
そろそろ合計500作品に届きそう
まだ半年も経ってないのに
14名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 12:02:59 ID:RK1DJ4zV
>>1&埋め乙
ミーリカがとても新鮮でよかった!
同じカールスラント組なのにこの組み合わせはあんまり見ない気がする。
エイラーニャはあのあと二人が顔合わせたときにどうなるのか気になるw
GJ!
15名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 12:03:57 ID:O8YhViEQ
13!?( ̄□ ̄;)
も、もう!?
4日放置しただけなのに!?
どんだけですか;;

>>1乙、そして職人さん達GJ!
素晴ら過ぎる。
16名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 12:44:40 ID:rSDtrVDZ
勢い1位2位3位独占は嬉しいな
さてせっかくだしなんか書くか・・・・・
17名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 12:49:52 ID:8T3wDXfZ
>>1
乙。
最近は流れが早すぎて正直ついていけないよ・・・。
18名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 13:06:10 ID:UA9xyfvW
>>1もみんなも乙です。


誰かが言った。
流れは付いていくものではなく、
乗るものだと。
19名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 13:13:19 ID:zxZUxyKZ
>>17
そんなあなたにオススメ つ保管庫
更新すごい早いし、感想フォームについてもいろいろ考えててくれてるみたいだ
最近本当にひとつひとつの感想書けないくらい流れ早いから実装されたらありがたいな
20名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 13:18:39 ID:qJDVMgdt
>>16
シャーリーが大喜びしているようです
21名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 13:39:28 ID:6CvVOE/0
さて、ひょっこりこんにちは。mxTTnzhmでございます。
新スレおめでとうございます。早いですね〜。
今回は、前々スレ>>463-469、保管庫No.450「ring」の後日談的なもの、その10になります。
トゥルーデ×エーリカで、「Mobius loop」どうぞ。
22Mobius loop 01/03:2008/12/09(火) 13:40:11 ID:6CvVOE/0
その日の午後、トゥルーデは哨戒任務後の報告書を書いていた。
報告書の作成は随分昔習った学校の勉強にも似て、型にはまった面倒でかったるいものだった。
勿論、戦いの当事者として報告書はとても重要なものだが、こうも多くのネウロイが出てくるとなると、
そして任務が多いと、書類を作る方も大変だ。読む方も大変だろうけど。
九割方出来上がったところで、眠気とだるさがトゥルーデを襲う。
カールスラント製の万年筆を手にしたまま、思わず机に突っ伏す。目を伏せ、ひとつ息を付く。
この戦いはいつまで続くのだろう。この後、私達はどうなってしまうんだろう。
戦いの疲労か、報告書作成のだるさか、トゥルーデは混沌とする意識の中、ぼおっと浮かんでは消える思考を巡らせる。
瞼が重くなる。指輪に目が行く。外の光を反射した輝きはほのかに眩しく、トゥルーデは焼付けて目を閉じた。
ひとつ深呼吸する。
突然、頬に暖かく柔らかな接触を受ける。この感じ……。
目が覚める。
「……エーリカか」
「起きちゃった?」
トゥルーデのすぐ目の前にある、エーリカの顔。悪戯っぽい目で、いつもと変わらない笑みを浮かべている。
「いつ部屋に?」
「トゥルーデ、机で寝てるんだもん。私が入って来たの気付かないなんて、らしくないよ」
「すまん」
「いつもだったら『カールスラント軍人たるもの、規律正しく油断を怠るな〜』ってよく言うじゃん」
エーリカがトゥルーデを真似た口調で茶化しながら指摘する。
「他の誰かが入って来たらどうするのよ、トゥルーデ」
「お前みたいに忍んで来ないから大丈夫だろう」
「なにそれ〜」
トゥルーデはエーリカの顔を見て微笑むと、身を起こし、報告書の紙をとんとんと纏め、机の脇に置いた。
改めてエーリカの方を向く。頬に手をやる。
「どうした?」
「トゥルーデ、私も報告書書くから、ちょっと机貸して」
椅子から退こうとしたら、エーリカにどんと上から座られた。
「退けないじゃないか」
「トゥルーデ椅子〜」
「お前なあ」
「トゥルーデの太腿って、ちょっと筋肉質だよね。さすが鍛えてるって感じ」
「少佐程じゃないさ」
「まあまあ。すぐ終わるからさ」
自分の上に座るエーリカを、真後ろから見る。戦いの時に見せる精悍さ、鬼神の如き迫力は何処にもなく、
年相応の、少しボーイッシュで子供っぽく、それでいて可憐で悪戯好きな少女そのものだ。
身体が少し小さいせいか、体重も軽い。トゥルーデと足して割ると、ちょうど良いかも知れない。
背丈の違いか、ちょうどエーリカの頭が自分の目線とほぼ同じ高さになる。
エーリカはふふ〜んと鼻歌混じりに、さらさらと報告書を書いていく。
いつの間にか、トゥルーデの万年筆を使っている。トゥルーデの手からささっと取られたか。
ふう、と息を付く。私のものは何でもエーリカのものなってしまうな。万年筆もそう。私自身もか。
エーリカがたまに首をひねる。何て書こうか考えているのだろう。そのちょっとした癖が、
エーリカの美しい髪をさらりさらりと揺らし、エーリカの香りを微かに振りまく。
トゥルーデの顔のすぐ前でそれを何度もやられるのだから彼女はたまらない。心掻き乱されるとはこの事。
「トゥルーデ、私の髪に何かついてる?」
「いや? どうして」
「私の髪、触ってるから」
「いや。エーリカの匂いがするなって思った」
「そう。いいよ、好きなだけ触って」
「気が散るだろ」
「トゥルーデだもん。トゥルーデは私のもの、私のものはトゥルーデの……ってね」
「なんだそれは」
苦笑するトゥルーデに、エーリカが振り返って言った。
「二人一緒って事。さ、出来たよ」
「随分早いな。どれ、見せてみろ」
「だーめ。トゥルーデ、絶対『ここは書き直しだ』とか言うに決まってるもん」
「そんな事は無い」
「トゥルーデ、戦いの事となると真面目だから」
「それは当たり前だろう。仮にも軍人だぞ?」
トゥルーデはエーリカの目の前に散らばった報告書を取り上げると、つらつらと目を通す。
23Mobius loop 02/03:2008/12/09(火) 13:41:05 ID:6CvVOE/0
「これは……書き直しだぞ」
「ええ? ほら、やっぱり言った」
「こんなでたらめな報告書が有るか? これじゃミーナも少佐も怒るぞ。流石の私もフォローしきれん」
「せっかく急いで書いたのに。フォローしてよ」
「何故急ぐ必要がある?」
「わかんない? トゥルーデ」
トゥルーデの太腿の上で、エーリカがぐるっと回転した。目の前に向けられた、エーリカの顔。
エーリカはトゥルーデをそっと抱きしめた。トゥルーデの上に跨り、じっと見つめる。
二人の息が自然と絡まる。
エーリカの瞳はいつしか潤んでいた。別に泣いている訳ではない。理由は分かっていた。
「トゥルーデ、目、潤んでるよ」
私もか、と自分を見つめるエーリカに指摘されてようやく自覚する。
こうして間近に……椅子の上でふたり密着して顔を近付けると、
いつもは頭の何処か奥にしまい込んでる筈のスイッチが途端に入ってしまう。
そのスイッチとは……そう、エーリカを愛している、もっと愛したい、証。
「エーリカ」
名を呼ぶ。エーリカもトゥルーデの名を呼ぶ。その口の動き、言葉に合わせて吐き出される息に心惑わされる。
いつもの事なのに、いつまで経っても……、いや、いつもそうだ。
愛おしい、と言う証拠。
ふたりそっと近付き、距離をゼロにし、唇を触れ合わせる。
最初は柔らかく、軽く、挨拶程度に。
息を付く。
二回目は、もっと深く、お互いの気持ちを確かめる為に。
吐息が絡む。灼ける様な熱さが、お互いの頬をかすめ、絡み付く。
三回目は、もっと長く、お互いの気持ちをぶつけて、そして知る。お互いを想う強さ、気持ちの強さを。
呼吸が激しくなる。お互いの鼓動を感じる。服を通して呼吸の荒さ、肌の温かさを感じるが、
本当はこんな上着など脱ぎ捨てて、直接触れ合いたい。
服にさえ、邪魔して欲しくない。
偽らざる、ふたりの気持ち。
椅子の上で繰り広げられる、二人の行為。
「なんか、思い出すよ」
「何を?」
「ネウロイ追い掛けて、超高々度まで、無理して揚がった時の事。……息が薄くて、呼吸がこんなに、なってさ」
「空気、薄いからな」
「今は空気、薄くないよ? でも何でだろ、何か」
「それは私も、一緒だ」
「どうして?」
「息付く暇も、無いからな」
「その僅かの間も、惜しいって?」
「よく。分かってるな、エーリカ」
「トゥルーデの事なら、分かるよ。何でも」
「私も、エーリカの事なら……」
唇を塞がれる。エーリカは何も言わせないとばかりに唇を吸い、舌を絡ませ、お構いなしにトゥルーデを貪った。
短く息を付きながら、エーリカの猛攻を真正面から受けとめるトゥルーデ。
二人の唾液が絡み合い、つつと糸を引く。服に付くのもそのまま、二人は濃く熱い口吻を続けた。
やがて唇が離れ、お互いの頬、首筋、耳と、ゆっくりとだが着実に、舐り、味を確かめる。
同時に、ふたりの気持ちも確かめていく。
きゅっと首筋に吸い口をつけるエーリカ。トゥルーデも同じように、キスマークを付ける。
「ねえ、トゥルーデ……」
「エーリカ……」
二人がこの後何を望んでいるか。以心伝心と言うべきか、全て分かっていた。
トゥルーデはエーリカをそっと抱き、ベッドに移ると、エーリカと共に寝転がった。
服を脱ぎながらキスを何度も交わしていく。ズボンも全て脱ぎ捨て、二人は生まれた姿のまま、
抱き合い、もっともっと激しく、行為に浸った。
何度でも、いつまでも。
愛しの人。
24Mobius loop 03/03:2008/12/09(火) 13:42:27 ID:6CvVOE/0
日も暮れかけ、部屋は茜色に染まっていた。二人はけだるく、ベッドの上でゆるゆると抱き合っていた。
「もう、こんな時間だよ。報告書どうしよう」
「仕方ないな。後で一緒に出しに行こう」
時計を見て、微笑む。
「だって、こんな時間になったの、トゥルーデのせいだよ。続きもっと〜って引っ張ったの」
「エーリカが最初の切欠を作ったからだ」
「理由になってないよ」
「十分立派な理由だ……それだけお前を愛してるって事さ、エーリカ」
「さらっと言うね」
「ダメか?」
「いや、トゥルーデ変わったなと思って。嬉しいけど」
「私を変えたのは、エーリカ、お前だぞ?」
「分かってるよ」
「エーリカ……」
「トゥルーデには変わって欲しかったんだよ。ずっと前からね」
「……」
「でも、今は十分くらい。愛してる、トゥルーデ」
「エーリカ、私もお前を愛してる。但し」
「?」
「もっと変われと言われたら、……私はどうなってしまうか」
「どうなるの?」
「私にも分からない。でも、お前を思う気持ちに変わりはない」
「嬉しいよ、トゥルーデ」
二人はまた、口吻を交わした。
繰り返される、いつもの光景。
でもそれはいつも新鮮で、どきどきして。そしてまた帰って来たと言う安堵も混ざって。
二人の結びつきは、強くなる。心も、身体も。

end

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新スレ記念という事でひとつどうぞ。
甘々のふたりを書いてみました。

ではまた〜。
25名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 16:05:37 ID:rSDtrVDZ
GJ!
相変わらず仕事早いなぁ
26名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 16:12:51 ID:pGpA9nLY
前スレのサーニャがエロ過ぎるw
しかし顔色変えずに寝た振りできるとかただのヘタレじゃなかったな。
27zet4j65z:2008/12/09(火) 16:45:16 ID:gToRtByG
前スレ乙!
>>1乙!
なんか前スレで1本しか投稿出来なかった気がするんだが気のせいだろうか。
で、いろいろ書き直しながらやってたら全然執筆が進まないよ……orz。
何とかこのスレの間に一本は落とせるようにするぜ!

っていうかエーゲル祭りに乗りたいし、クリスマスルッキーニも何か用意したいよなぁ。
ここだけでいっぱいいっぱいで他の関連スレとか見てる余裕無し!
28名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 17:56:46 ID:AwKSNWE/
エイラニャえっちいなぁ…
あのあとエイラさんは一人何をするのだろうか
あれ?もう二人でやればよくね?
29名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 18:46:48 ID:Eh9auCJo
だがそれが出来ないもどかしさと切なさがいい
30名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 18:52:53 ID:rSDtrVDZ
31名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 19:04:38 ID:UWPcPCMr
>>24
エーゲルGj!

トゥルーデは一度デレれば積極的にエーリカを愛してくれると思っている
32滝川浜田:2008/12/09(火) 19:32:22 ID:2pkwTgLZ
みなさんこんばんは。
そして>>1乙!
本当このスレの速度はバケモンや…

というワケで新スレ祝いも兼ねて、前スレ>>491の続きを投下します。

もちろんエーゲルで。
33滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.2』:2008/12/09(火) 19:36:43 ID:2pkwTgLZ

ミーナの口から今回のメンバーが発表される。

今回はどうやら、宮藤、リーネ、シャーリー、ルッキーニ、坂本少佐、ミーナ、私、そしてトゥルーデというメンバーで行くみたい。

よし、私がネウロイを撃墜して、トゥルーデにイイところを見せてやるんだから!

と意気込んでると。

「エーリカ」
「ん、なにトゥルーデ」
「あまり気張るなよ。それで怪我してしまっては元も子もないからな」
「うん、分かってる」

私達は互いに微笑み合う。


――何回君を愛したら chapter.2――


「バルクホルンとリーネは後ろに回れ!」

坂本少佐の指令が飛ぶ。
レベル的には大した事無いネウロイなんだけど、四方八方に拡散するレーザーのせいで意外な苦戦を強いられていた。

あのトゥルーデもこの厄介なレーザーにかなり手を焼いているみたい。

「くそっ、なかなかコアに切り込めんな…!」
「あのレーザーさえどうにか出来ればいいのだけど…」

レーザー…か…。
…よし…!

「…ハルトマン中尉…!何処行くのっ!?」
「おい、ハルトマン!戻ってこい!」

遠くで叫ぶ二人の声にも耳を貸さずに私は真っ直ぐネウロイへと向かう。
ここで私が早くこのネウロイを倒せばきっと、トゥルーデは私を…!

34滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.2』:2008/12/09(火) 19:38:56 ID:2pkwTgLZ

そう思った私の前にはネウロイ。
そしてすぐ目の前には、近付くレーザー。

こんな…レーザーくらい…!

ビシュウウウ…!


……白煙を空を舞う。
そして私の周りがやけに静かになってる。

何が…あったんだろう…。

気付けば、私はトゥルーデに抱き締められていた。

「トゥ…ルーデ…?」

私はトゥルーデの背中に手を回す。

……私の掌は紅に染まっていた。

こ、これは……血………!?

「…エーリカ…」
「トゥ、トゥルーデ……!?」
「…どうした……お前らしくも無い短絡的な行動、だったな……」
「もしかしたら……こっ…これ…トゥルーデのっ…!?」

ま…まさか…私をレーザーから庇ったのっ…!?

「大方、早くネウロイを片付けて…朝の続きをしたいと…思ってたんだろう…?」
「私っ…私っ……!」

私の視界が徐々に歪んで行く。

「美緒っ!早くネウロイをっ…!」
「し、しかし…っ…ミーナ…」
「美緒…!」
「…分かった…」

トゥルーデの瞼が徐々に降りてくる。

「エーリカ…」
「もっ、もう喋らないで!」
「戦闘に於いて…冷静さは欠いちゃ…いけないな…」

そう言うと、トゥルーデは私の体に身を預けるようにぐったりと倒れ込んだ。

35滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.2』:2008/12/09(火) 19:43:20 ID:2pkwTgLZ

トゥルーデの身体は、有り得ない程に冷え切っていた。

「トゥルーデ……?
ねえ、トゥルーデ……冗談でしょ……?
そんな冗談…面白く無いよ……?」

トゥルーデは黙ったまま、うなだれている。

……わ、たしのせいでこんな……

…あぁ、ダメだ…私…なんて……!


「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


私の叫び声は、坂本少佐が倒したネウロイの破片と共に空に消えていった。


それは、空を切る。



To be Next chapter…



以上第2話終わりです。
前投下した「platinum」に展開がちょっと似てるのはワザとですけど、ちょっと似すぎたかも知れない……
…あんまり気にしないでください。

っていうか最近本当鬱モノしか書いてない事に絶望した…!

…では、爺はここら辺で…
36名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 20:08:19 ID:b38eNJYD
遅レスにもほどがあるけど

前スレ>>469
本立て続きまってた!!ゲルトが相変わらずマダオでもどかしい
みんなじわじわ溜まってる鬱憤がそろそろ爆発するんじゃないかとビクビクワクテカしてるw
こういうのの解決法って意外と子供のルッキーニがひょいと差し出してくれそうな気がしなくも無いなあ、と思ったり
お姉ちゃんもっとがんばれお姉ちゃん。とにもかくにもグッジョブ!グッジョブ!続き楽しみにしてます
何気なく書き込んで特に反応も無かったネタを拾ってくださってむしろ本当に感謝してる
出来うる限り自分も支援したいと思います

あと、あの無駄に長いリーネイラに反応くださった方々どうもありがとうございました。
>自分にも非があったことに気付いたサーニャがちょっと後悔
って言う展開も考えてたりしましたが、とにかくリーネイラで幸せにしたかったので書きませんでした
これからがんばって味噌汁作るのでそっちでエイラーニャ分は補給願います

色々つけたいレスとかあったのですがぼけっとしてるうちに流れてタイミングを見失った
感想フォーム実装されたらがっつり書けばいいやとか楽観的に捉えてる自分はもうだめかも知れない

>>24 >>35 GJ!しょっぱなからエーゲル2本とか幸先良いなあ。
エーゲル祭りをみながら、よろしい、ならばミーリカだ!とか思ってしまって申し訳ない。
埋めエイラーニャをいつぞやの埋めリーネイラとつなげたら妄想広がるなあとか考えててごめんなさい

埋めに失敗した21X2w2Ibでした。
3721X2w2Ib:2008/12/09(火) 20:22:19 ID:b38eNJYD
書き添えそこねてた
そんなわけで前スレ>>523-525,>>528-531は自分でした
38名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 20:27:48 ID:bRKSrzWJ
>>37
エロもいけるのか・・・ まじでGJです
39名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 20:48:03 ID:rSDtrVDZ
ほんと凄いな
じっちゃんとかほぼ毎日投下してるし
ここの職人レベル高すぎ
40保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2008/12/09(火) 20:55:00 ID:1XwobT1x
相変わらずとんでもねー速度だ、>>1乙&&ナイス埋めGJ!!
>>24 このお姉ちゃんは甘々カッコいいカワイイGJ!!
>>35 うひゃあ、あのシリーズを完全踏襲ジャマイカ!!wktkして続き待ってます

>>36
>埋めエイラーニャをいつぞやの埋めリーネイラとつなげたら
君、そそそういう事は、ああ謝らなくていいからはは早く書いてくれ!!

で、何でコテ付かって言うと業務連絡です。
とりあえず保管庫の感想フォームの設置は決定事項とします。
ただ仕様に関する意見がいまいち集まりが悪いので、ホントにこのまま進めてしまっていいのか微妙なところであります。
保管庫のシステムを大幅に改定する大仕事になるので、是非利用者の意見をきちんと聞いておきたいです。
どんな些細なことでもいいので、保管庫掲示板にあなたの意見をお聞かせください。
何だか選挙みたいですが、あなたの一言が保管庫を変えます。マジで。自分はあくまでアマチュアなので。
業務連絡以上です。長々すいません。

あとついでですが、現在SS数が>>35をもって498本目となります。
もうすぐ記念すべき 5 0 1 本目です。狙うなら今しかない!!
41名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 20:57:18 ID:UA9xyfvW
もう501なのか……凄いなこりゃ
42名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 20:58:32 ID:8opseM39
ふと妄想したと思ったら、既に同じネタで投下されていたりとか
ふと妄想して文にしはじめたと思ったら、知らず知らずのうちに既存の作品のパクりっぽくなってたり

43The帝ゲーム 1/8:2008/12/09(火) 21:03:22 ID:XyrRdrWn
「大人のミカドゲームやろっぜーーー!」
酒宴のさなか、へべれけに酔っ払ったシャーリーが上機嫌で叫んだ。

「ねぇシャーリーさん、ちょっと羽目を外しすぎではないかしら。」
「まったくですわ! ガリア貴族の私がそんな品の無い遊戯に参加できると思いまして? これだからリベリアンは……。」
「わっはっはっ! 受けて立つぞシャーリー! どこからでもかかってこい!!」
「と思ったけど、たまにはいいわよね。 お酒の席ですもの。」
「ええ、わたくし丁度甘いものが欲しいと思っていた所ですの。 渡りに船ですわ。」
酒の勢いで叫び返す私。 何とも気分が良い。 ミーナとペリーヌもやる気充分のようだな! わっはっはっ!

「? ミカドゲームって何ですか?」
シャーリーの胸を凝視しながら、約一名が問いかける。 うむ。 ノリで叫んだが私もまったく分からん。

「あ、私知ってるよ。 あのね、ミカドゲームっていうのはね……。」
「じゃすたも〜めんっっ!! リーネ、これはあんたの知ってるミカドゲームとは全然違う。 んっふっふっ。 ルッキーニ!」
「あーい!」
含み笑いをしながらシャーリーが取り出したのは、細いスナックにチョコレートをトッピングした菓子だった。
シャーリーがそれを咥えるや否や、それに物凄い勢いで飛びつくルッキーニ。 かじかじかじ。 んちゅ。
我々が呆気に取られる中、ルッキーニが瞬く間にチョコバーをたいらげる。 勢い余ってか、シャーリーの唇に接吻までして。

「う゛ぇぇ゛〜。 シャーリーお酒くさい゛〜!」
「こんな感じ。 二人で両端からチョコバーを食べるだけ。 折れちゃったらそこでゲーム終了! うひゃひゃ!」
「あのー……これって面白いんですか?」
約一名が、誰もが思っていたであろう事を口にする。 皆も合わせてうんうん頷く。 確かによく理解できん代物だ。
得点を競うわけでもなく、優劣が決まるわけでもない。 ただ単に菓子を食う、それだけ。 一体これのどこが面白いというのか。

「なんだよー、つれない事言うなよー。 やってみれば分かるって! んじゃ王様ゲームと合わせてやってみよか。
 ミカドって扶桑語で王様の事だもんね、確か。 王様になった人はミカドゲームをする二人を指名! 失敗したら罰ゲームね!」
「え〜、シャーリーさん強引〜。」
「ほ、本当に私が知ってるミカドゲームと全然違う……。」
みなホロ酔いのせいか、きゃいきゃい言いながらゲームに参加するようだ。 私も当然受けて立つ!!
即席で番号くじを作り、それを皆で一本ずつそれを引いていく。

「王様だれですかー?」
宮藤の問いかけにニンマリ手を挙げたのは、他ならぬ発案者シャーリーだった。
44The帝ゲーム 2/8:2008/12/09(火) 21:04:20 ID:XyrRdrWn
「うひひ、悪いね、王様あたしだ! そんじゃ誰にすっかなー、えーと……じゃ、一人めは3番!」
「わ、私か!?」
一人めはバルクホルンか。 今まで我関せずといった面持ちだったが、内心興味があったのだろう。
むすっとした表情を取り繕いながらも妙にそわそわしており、普段の彼女とのギャップが微笑ましい。

「こら、2人指名する前に名乗るなよ。 えーと、んで、もう一人は……んし、決めた! お前だ! 10番!」
「あー、10番あたしだー。 まいっちゃうなー、えへへ。」
もう一人はハルトマン。 私は当たらなかったか、残念。 できれば一番槍でやってみたかった。
だがまぁ、この両エースなら手本として申し分無いだろう。 ここは一つ後々のためにお手並み拝見といこう。
みんなの前に出てきて、準備を始める二人。

「うーむ……実際見てみるとこのチョコバー、直径2ミリほどしかないじゃないか。
 これではよほど安定しなければ簡単に折れてしまうな。 ……なぁエーリカ。 肩を掴んでもいいか?」
「うん? いいよ?」
チョコバーを咥えたハルトマンの肩を、バルクホルンがガシッと掴む。
バルクホルンの方が背が高い。くいっと形のいいアゴを上げるハルトマン。 ん? む、むむ? な、何だこれは……?
なぜだろう。 手がじっとりと汗ばむ。 見ている私の方が緊張してきた。
気が付けば食堂は静まり返り。 得体の知れない緊張感と期待感が辺りに満ちていた。

「とぅ、トゥルーデ。 そんなに見られたら何だか恥ずかしいよ……。」
「し、仕方ないだろ! 見なかったら食べられないじゃないか!」
「それはそうだけど……。」
な、何だろうこの気持ちは。 何だか妙にドキドキしてきた。 あの、いつも屈託のないハルトマンが固くなっている。
それが何だか、奇妙なくすぐったさを私に与えていた。 こっそりと皆の表情を伺ってみる。
固唾を飲んでいる宮藤。 落ち着かず手をソワソワさせているリーネ。 確信した。 私だけではない。
皆がこの正体不明の緊張感に、居心地の悪さと。 おそらくは……高揚感に近いそれを、感じているのだ。

「い、いくぞ、エーリカ!」
「う、うん。 ……お願いします……。」
しーん……。 ぽり。 ぽり。 二人が少しずつ、少しずつ、チョコバーをかじりはじめた。 二人ともガチガチに緊張している。
そこにいるのは歴戦のエースなどではなく、単なる二人の少女だった。 ゆっくりと、でも確実に縮まる二人の距離。

遂にその距離1センチ。 固唾を飲んで見守る私たち。 二人は嘘みたいに動かなくなって、呼吸の音しか聞こえない。
やがて。 二人がどちらからともなく動き出し、全く同時に最後の距離をゼロにした。
ちゅっ。 小さな。 でも確かに聞こえた、その音。 一瞬後、食堂は黄色い声に満たされた。
45The帝ゲーム 3/8:2008/12/09(火) 21:05:11 ID:XyrRdrWn
「え、えへ。 ど、どうかな、トゥルーデ?」
「あっ、ああ。 う、うまく行ったんじゃないか? ちょ、チョコバーも折れなかったしな。」
「そ、そうだね。 えへ、へ、えへへへへ。 …………わ、わたし。 ちょっと風に当たってくる!」
「あ、お、おい!」
私は信じられない気持ちで二人を眺めていた。 あのハルトマンが、ムードに耐えられず逃げ出した。
どんな時だろうと柳に風といった風情のハルトマンが。 小走りで走り去る横顔を見れば、耳の裏まで真っ赤っ赤。
残されたバルクホルンは暫くその場で所在なさげにしていたが、やがてハルトマンを追ってかバルコニーの方へ歩き去った。

「どうよ! どうよ! 盛り上がるだろー! あいつらの顔見た? みんな、この面白さ、分かってくれた?」
得意気に同意を求めるシャーリー。 思わず頷き返している者も何名かいるようだ。 が。
どっこぉーん! 全力で机に拳を叩きつけると、私は顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。

「面白くない!!! この遊戯は不道徳だ! 不謹慎だ!! ふしだらだ!!! 即刻中止すべきだ!!!!」
唇を重ねるバルクホルンとハルトマンの姿がぐるぐると頭を回り、とても冷静になれない。
そうだ。 ようやく、この胸の動悸の理由が分かった。 それは、他人の接吻を見物しているという背徳感に他ならなかったのだ。
他人の逢瀬を覗き見するような行為に、私は喜びを感じていたのだ。
慎み深きをよしとする扶桑の道徳観が刷り込まれた私にとって、それは耐え難い事だった。

「美緒、落ち着いて。 あなた、ちょっと熱くなりすぎてるわ。 アルコールのせいかしらね。 ふふ。」
ミーナの手が肩に乗り、私は少し冷静さを取り戻した。 佐官が一個人の感情を爆発させるなど、あまり見目よろしい事ではない。
酒のせいにし、笑顔を作る事で場の雰囲気を和らげてくれたミーナに、私は心の中で感謝した。

「ねぇ美緒。 あなたが不道徳と考えたのも分かるわ。 扶桑の人にとってキスは特別な行為だものね。
 でも私たち欧米の人間にとっては、キスというのは気軽な親愛の挨拶なの。 そんなに重く考えないで、続けましょうよ。」
「そ、そうですわ。 少佐ほどの方なら、下々の余興に目を向けるのも決して損にはならないはずですわ。 続けましょう!」
「少佐はいつも背筋が張ってるカラ、お酒の席では少しだらけるくらいがいいですヨ! 続けまショウ!」
「わ、私もこのルールのミカドゲーム知らなかったし、もうちょっと経験しておきたいですっ! 続けませんか!?」

わっと言い募られてひるむ私。 し、親愛の挨拶というのは分かるんだが、なんか、ほら、そんなに軽くていいのかと思わないか?
第一、本当に気軽な行為なのか? なんかこいつら右も左も目が血走っている気がするんだが……。

「わ、分かった。 すまなかったなシャーリー。 私は横で見ているとするよ。」
「じゃすたも〜めんっっ!!」
痛だだだだっ!! 横に引っ込もうとした所を凄まじい腕力で腕を掴まれ、振り返ると笑顔のミーナ。
み、ミーナだったのか。 魔法を使ったバルクホルンにしか思えなかったぞ。

「ね、ねぇ美緒。 私、あなたに欧米の文化を誤解されたままでいるのはとても辛いわ。 お願い。 美緒も一緒にやりましょうよ。」
「わ、分かったから腕を離してくれ!! もげる!!!!!」
ミーナには先ほど取り成してもらった借りがある。 私は渋々ながら再びゲームに参加する事にした。
46The帝ゲーム 4/8:2008/12/09(火) 21:06:11 ID:XyrRdrWn
「いぇーい! 王様あったしー! えっとね、うーとね、そいじゃね〜……ごばんと、はっちばーん!!
 ……って、あ。 自分を指名しないと、チョコバー食べらんないじゃん! ……うーーー!」
今度の王様はルッキーニ。 色気より食い気な彼女を見て、思わず笑いが漏れる。 そうだな。
ちょっと過敏になりすぎていたかもしれん。 もっと単純にゲームとして参加すれば良いのだ。 酒のせいだとしておくか。

「あ……5番、わたし……。」
小さく手を挙げたのはサーニャ。 ぶほっ! ふと横を向くとエイラがこの世の終わりのような表情を浮かべていた。
一体何なんだ! 思わず噴出してしまったじゃないか!! 釈然としない気持ちが蘇る。 これ本当に気軽なゲームなんだろうな?

「? はちばんだれ? シャーリー? 芳佳? エイラ?」
「私じゃないよん。」
「私でもないよー。」
「私でもないんダナ……。」
しーん。 ? なんだ? どうして誰も手を挙げないんだ……?
あとエイラ! 無言で謎のマイナスエネルギーを撒き散らすのはやめてくれ! 気になる!!!

「あ。 そう言えばバルクホルン大尉とハルトマン中尉が抜けたから……。」
「あ、そっかー! 二人いないんだ! んじゃ、選びなおしねー! もう一人は勿論あった……。」
「ちょっとルッキーニさん! 既に1人プレイヤーが判明してるんですのよ! そこからご自分を選ぶなんてアンフェアではなくて?」
「う、むー、分かったよー……ペリーヌのケチ! メガネ! ガリア! そんじゃね、うじゅー……決めた! にばん!」
「オオォォーー! 2番? 今2番って言ったのカ? 2番って言ったんだよナ! 聞き間違いじゃないよナ!!」
「そ、そだよ……。 エイラなの? にばん。」
「ちょ、ちょっと! なんかスルーしそうになりましたけど、私いま馬鹿にされましたわよね? ね?」
エイラの凄まじい剣幕にルッキーニが後ずさる。 無理もない。 普段の彼女とあまりに違いすぎる。 そんなに参加したかったのか?
そしてエイラ! 無言で謎のプラスエネルギーを撒き散らすのはやめてくれ! 鬱陶しい!!!

「サ、サーニャ……私でいい、カ? ……あ、イヤ、ウソ! 今のなし! やっぱり返事しないデ!」
「クスッ……。 エイラ。 ルッキーニちゃんは王様。 王様が決めた事は、絶対なんだよ。 ……ね?」
サーニャがそっとチョコバーを上に向ける。 くっ。 まただ。 自分を恥じるべきなのだろうが、胸の高鳴りが抑えられない。
かじかじかじ。 一定のペースでかじっていくサーニャに対して、エイラは止まったり動いたりせわしない。
残り1センチ。 どきどきどき。 誰もが手を握り締めて見守っている。 ……のだが。
それきり二人はピタリと動かなくなってしまった。 気持ちは分かる。 私でも、躊躇するだろう。

エイラがプルプル震えている。 精神的にもう限界なのがアリアリと見てとれる。 おやおや。 この二人はここまでか。
私がふっと緊張を解いたその時、最後の1センチがゼロになった。 その距離を無くしたのは、意外にもエイラではなくサーニャだった。
47The帝ゲーム 5/8:2008/12/09(火) 21:07:01 ID:XyrRdrWn
「さっ……サーニャ……。」
目を白黒させているエイラの頬に、サーニャが額を押し付ける。 ここから見える耳はやはり真っ赤だ。
ばたーん! エイラ!? どうやらエイラは気絶してしまったようだ。
だがこの死に顔を見てほしい。 こんなに幸せな顔で逝ける者が、この世に何人いるだろうか……。

「やっっっっっぱり駄目だ! 中止! 中止ぃ!! こ、こんな他人の接吻を凝視するなど!
 しかも、我々は女同士ではないか! ますます道徳的とは言えないだろう! は、は。 恥を知れお前たち!!!」
ミーナの顔を立てて残留はしてみたものの、やはり私には刺激が強すぎる。
思えば幼い頃より一軍人として生きてきた私だ。 自分でも気付かなかったが、まさかここまで免疫が無かったとは。

「落ち着いて美緒。 発想を逆転してみて。 女同士だから許されるのよ。」
「お、女同士だから許される? お前何を言って……あだだだだ! こら! だから掴むな!! もげると言ってるだろうが!!」

「これが仮に男女のキスだったら、そうね、品が無いわよね。 私だってどうかと思うわ。 でも、私たち女の子同士じゃない。
 子供がふざけてキスしあうのと一緒よ。 何の罪も無いじゃない。 それが不潔だなんて考える方が汚れてるわよ、美緒!」
「そうですよ! 女の子同士ですよ!」
「女の子同士ですわ!!」
「ウジューごごごごドッカーン! ニヒッ!!!」
だからお前たちなんでそんなに息が荒いんだよ!!! 怖いわ!!! あとなんかよく分かんないの混じってた!!!

「分かった。 分かりましたよ坂本少佐。 じゃあ最後にあと1回だけやって、それでお開きって事にしません? ね!」
「あ、あと1回か……。 そうだな、私も大人げなかった。 これも己を磨く良い機会だ。 最後まで付き合うとしよう。」
「「「 あと1回ですってーーー!!!??? 」」」
シャーリーの心遣いが胸に痛い。 私も最後まで参加できるように心を砕いてくれたのが分かる。
ミーナもリーネもペリーヌもシャーリーの提案に感動しているようだ。 私は素晴らしい同胞を持った……。

「そうですよ、少佐。 私たちは最後まで一緒です。 ご相伴致します。」
「おぉ……バルクホルン! ハルトマン!」
「ン。 私たちだっているんダナ。 な、サーニャ。」
「エイラ! サーニャ!」
((( ただでさえ確率低いのに帰ってくんなー!!! )))
501の面々がここに全員再集結した。 みんな、こんな身勝手ばかり言った私を許してくれるのか……。
熱い気持ちがこみ上げるのをこらえきれない。 ミーナたちは何か言いたげに震えているが、それでも言葉を発する事はしない。

そうだな。 こんな気持ち言葉にできない。 ここまで来たら言葉は要らない。 そういうわけだな、皆!
48The帝ゲーム 6/8:2008/12/09(火) 21:07:54 ID:XyrRdrWn
「あ、私また王様だ。 私に始まり、私に終わる、か。 それじゃあ最後のプレイヤーは……1番と7番! 誰かな!」
シャーリーのコール。 とくん。 心臓が大きく跳ね上がる。 手元の数字を確認する。 ……1。
あぁ。 考えなかったわけじゃない。 でも。 本当に、私の番が来てしまうなんて。

「い、1番は……私だ。」
「えっ! さ、坂本さんが1番なんですか!?」
「あ、あぁ。 ん? あぁ、えぇと、そういう反応を返すという事はつまり……。」
「は、はい。 私が7番です……。」
「「「 そっ。 そんなぁーーー!!! 」」」
おずおずと挙がった細い腕。 宮藤が、7番。 瞳と瞳が交錯する。 恥ずかしそうに俯く宮藤を見て、不思議な感情がこみ上げる。
ミーナたちが叫び声をあげる。 それだけやってみたかったのだろう。 代われるものなら代わってやりたい。
でも、すまない。 宮藤の瞳を覗き込んだ時に、思ったんだ。 私も変わりたいと。

「み、宮藤……すまんな。 お前も扶桑の撫子。 こんな事は恥ずかしいだろうに……。」
「い、いえ……いいんです。 坂本さんなら、わたし……。」
「え?」
潤んだ瞳で私を見上げてくる宮藤。 知らなかったわけじゃない。 でも改めて見てみると。
あぁ、こいつはなんて澄み切った瞳をしているんだろう。 その瞳がゆっくり閉じられる。 駄目だ。 血管が脈打つ。
今になって、私はようやくハルトマンたちの気持ちが分かった。

「わ、私、初めて坂本さんと飛んだ時から、ずっと。 坂本さんにまっすぐ見てもらえる人間になりたいって、思ってました。
 たとえ、こんな形でも。 ……さ、坂本さんはどうですか? 私なんかが相手で、嫌じゃないですか?」
あぁ。 純粋だ。 いつだってお前はまっすぐだ。 思い起こせば、お前の可能性を信じたのも。
そのまっすぐさに惹かれたからだった。

「馬鹿を言うな。 今は、お前しか考えられない。 ……始めるぞ、宮藤。」
少しずつ、少しずつ。 私の唇が宮藤の唇に近付いていく。 平常心など何処かに行ってしまった。 
けれど、私が手を添えた宮藤の小さな肩が、細かく震えているから。 私の臆病さもまた何処かに行ってしまったみたいだ。
私が、宮藤を守らねば。 宮藤には一人の軍人である事を求め続けてきた。 でも今だけは。
何も宮藤に求めようとは思わない。 宮藤はもう、私にくれている。 この暖かい気持ちに応えたい、それだけだ。

「ふぎゃっ!?」
唐突に宮藤が叫びを上げる。 な、なんだ? バランスが崩れる!
49The帝ゲーム 7/8:2008/12/09(火) 21:08:44 ID:XyrRdrWn
「あ〜ら失敬! 緊張して見ていたら、思わず魔法が発動してしまったようですわ!! ごめんあそばせ!!」
どうやらペリーヌが宮藤にトネールを放ったようだ。 ま、まずい。 チョコバーが折れふぐっ!?
恐るべき激痛。 唐突に脇腹に凄まじいミドルキックが叩き込まれた。 は、吐き気が……。

「やだ、ごめんなさい美緒。 私もペリーヌさんみたいに、ドキドキしすぎて魔力が漏れちゃったみたい!」
「いつからお前の魔法はミドルキックになったんだ馬鹿!! 一撃で足が動かなくなったぞ!!! 殺す気か!!!!!」
な、なぜここに来て妨害の連発が? そう思って顔を上げてギョッとする私。 リーネがボーイズを構えているじゃないか!

「す、すみません坂本少佐! 魔力が暴走して、今からボーイズで生卵を超連射しちゃう感じです! てへっ。」
「てへっ。じゃない!!! 普通に死ぬぞ!!! 片付けで!!!」
いかに生卵と言えど、魔力を込めて撃ち出されればその威力は推して知るべし。 私は宮藤を庇うようにかき抱いた。 ぽきゃっ。

「あ。」
……。 チョコバーはアッサリと折れた。 気まずい沈黙が辺りを満たす。 リーネがボーイズを置いて、決まり悪そうに笑う。

「あ、あはは……は。 ……や。 やりすぎちゃいましたよね。 ごめんなさい! うっ……ひっく……。」
リーネの泣き顔を見て、私はいつもの坂本美緒が戻ってくるのを感じた。 そうだ。 私は自分を見失っていた。

「泣くなリーネ。 これは私の未熟さが招いた事態だ。 陽動に引っ掛かるようでは、戦士としてまだまだという事だ。」
 短い時間だったが、私はこのゲームで一つ自分の殻を破れた気がする。
 むしろ感謝しているんだ。 だから涙を拭け、リーネ。 わっはっはっ!」
腹の底から笑う私。 そうだ。 私は一つ殻を破ったのだ。 未知なる物を恐れ、拒絶し、目を背けていた私。
そんな小さな私の器量を、この目の前にいる同胞たちが広げてくれたのだ。 感謝してもし足りないくらいだ。

それに。 正直な所、接吻がうやむやになった事に、私は少なからぬ安堵を感じていた。
やはり、私にはまだ早い。 それが分かっただけでも収穫、という事にしておこう。

「坂本さん……。 私、やっぱり坂本さんが相手でよかった。 でも……ちょっとだけ、残念だったかも。 えへへ。」
「な、何? こっ、こら宮藤! 上官をからかうとは何事だ!!」
宮藤が舌を出し、笑い声が巻き起こる。 ただ、その瞳に移っていた色は……本当に冗談だったのだろうか?
なぜだろう。 少しだけ、本当に少しだけ。 私は、惜しかったかも、という気持ちになった。

「いやいや、さすが少佐、感服です! ……でも、ま。 失敗は失敗ですよね? 少佐! 最初に言ったルール覚えてます?」
「……え? えーと……。」
シャーリーがにやにやと笑いを浮かべる。 そうだ、確か。 チョコバーが折れたら。 罰、ゲーム。
50The帝ゲーム 8/8:2008/12/09(火) 21:09:36 ID:XyrRdrWn
「そ! 皆さんお待ちかね、罰ゲームの時間です! いやー少佐。 ゲーム中は散々ごねてくれましたね!
 私、軽くムカつきました! ささやかながら、その仕返しをさせて頂きたいと思います!」
なっ! 何ぃーーーっ!!! 予想外の展開にパニックになる私。
ま、まさかシャーリーが怒りを押し殺していたとは。 心を砕いてくれたというのは思い込みだったのか!

途方に暮れてシャーリーを見る。 だが。 そこにあったのは予想とは全然違う表情で。
悪戯っぽく、そして分かっていますよとでも言いたげに。 シャーリーは優しく笑っていたのだった。

「そうですねぇ……罰ゲームは……。 ふっふっ。 宮藤と二人で、キスすること!!! よろしく!!!」
「な!?」
「なん!!?」
「「「 何ですってーーー!!! 」」」
シャーリーの言葉を聞いて、沸騰した薬缶のようになった私。
思わず視線を彷徨わせると、宮藤も同じような顔でこちらを見詰めている。

やられた。 このゲーム、どっちに転んでもこうなる代物だったのだ。
宮藤の肩に手を置くのは本日2回目。 違うのは、さっきと違って二人の唇を隔てるものが何も無いということ。

「さ、坂本さん。 わ、わたし、もう、覚悟はできてましたから! ……よろしく、おねがい、します……。」
いつもの元気の良さが嘘のように影を潜め、モニョモニョと呟く宮藤。

わ、私は一皮剥けたはずだ。 こっ、こっ。 この程度のこと……。

全身から汗が噴出す。
配属されたばかりの新兵の如く震えている私を、皆はどういう気持ちで見つめているのだろうか?
ミーナやリーネやペリーヌが親の仇を見るような目でこちらを見ているというのも、私の神経過敏から来る思い込みなのだろうか?

宮藤が驚くほど美しく見える。 ふっ。 不道徳だ。 こんなの本当に不道徳だ。
なんでこんなに美しいんだ? 私はひょっとして……心のどこかで、この状況を期待していたのだろうか。

もう駄目だ。 頭がクラクラしてきた。 酔いが残っている内に、勢いで突貫するしかない!
私は扶桑海軍少佐、坂本美緒。 恋愛無縁暦19年と数ヶ月。

やはり人間そう簡単に変われるものではない……。
                                              おしまい
51名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 21:47:22 ID:SIHlHRY3
もっさんが! もっさんがひと皮むけようとしてはる!!
こういうノリの百合もいいなぁww
魔力漏れフイタw あとガリア! もフイタwww
52名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 21:56:19 ID:rSDtrVDZ
GJ!
次で500か?
なんかみんな遠慮しそうだな
53名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:02:32 ID:pFPR1y2m
ここで自重しない2連続投下とかする職人いたら一生付いていく
54名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:07:49 ID:b38eNJYD
そう言われるとあえてやりたくなる罠
…絶対間に合わないな、諦めよう
55滝川浜田:2008/12/09(火) 22:16:56 ID:2pkwTgLZ
じゃあ500は自分が頂くぜ!
というワケで今日2本目行きますよ。

シャッキーニで参ります。
56滝川浜田 『永遠の時、遠くに廻るのなら』:2008/12/09(火) 22:19:50 ID:2pkwTgLZ

カチ、カチと部屋の時計が鳴く。

それは時の流れを知らせる合図でもある。
普段なら、それは時間を教えてくれるものとして機能している。

でも今のあたし達には、それがやけに鬱陶しくて堪らない。

「シャーリィ…ッ…もっと…して……」
「分かってる、分かってるよルッキーニ…お前をもっと…気持ち良くしてやるから…な…っ」

あたし達は熱くなった身体を重ね合っている。
今のあたし達には、時間という概念は最早不要だった。


――永遠の時、遠くに廻るのなら――


「ルッキーニ、もっとあたしのために鳴いてくれ…あたしはもっと、お前を壊したい…」
「シャーリー、の意地悪…っ…!…そんな事言われたらあたしぃっ…!」
「好きだ…ルッキーニ、お前の事、愛してる…」

あたしはルッキーニに囁く。
そして、ルッキーニの大事な所を苛め抜く。

「シャーリー…!シャー…リー…!」
「ん?気持ちいいのか…?なあ、どうなんだ…?」
「きっ…もちいっ…よっ…!!シャーリーッ…!」
「よく言えました、ご褒美だよ」
「んんっ…!」

あたしはルッキーニに深いキスをする。

ルッキーニの口内に舌を差し込み、舌を絡ませ、あたしの唾液を流し込む。
キスの間もなお、ルッキーニを攻め続ける。
その度にルッキーニの身体は跳ねる。

その身体の跳ね方からあたしは、ルッキーニが限界に近い事を感じ取る。

57滝川浜田 『永遠の時、遠くに廻るのなら』:2008/12/09(火) 22:21:07 ID:2pkwTgLZ
「なあ、ルッキーニ、もうイくのか…?」
「シャ…リー……ッ……!」

息も絶え絶えでルッキーニはあたしの名前を呼ぶ。
もう限界は近い。

「ルッキーニ、ほらイけ…!楽になろうぜ…?」
「シャ…リー…ィッ……!!!!…シャーリーィィィィ!!!!!!」

ルッキーニはあたしの名前を叫びながら果てた。
そしてそのまま眠りに落ちた。

「…ちょっと意地悪し過ぎたかな?」

あたしはルッキーニの頭を撫でながら、毛布をかけた。
でもそれもこれもルッキーニが可愛すぎるから、などと責任転嫁してみる。

ふと時計を見ると、深夜1時過ぎ。
結構長い間してたんだなと思うと同時に、時間が過ぎるのは早いと感じる。

ルッキーニと一緒にいる時間はいくらあっても足りる事は無い。

「…早く寝ないと朝起きれないな」


永遠なんてのは存在しないのかもしれない。
でも、永遠なんて曖昧なものより、あたしには大切なものがある。

隣で眠るルッキーニを眺めて、あたしも眠りに就く事にしよう。


朝起きた時、真っ先にキス出来るように。

永遠より大事な、ルッキーニに、優しく柔らかいキスが、出来るように。


END

58滝川浜田:2008/12/09(火) 22:24:38 ID:2pkwTgLZ
以上です。
調子こいて一日2本というだいぶ久しぶりな事をやらかしました。
しかし、さすがにここは自重いたします。

…誰かっ…501を頼むっ…!

…というわけで爺はここら辺で…
59名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:24:52 ID:PNE7jWxE
爺乙
さあ記念すべき501本目な訳だが、俺はヘタレだからな
他の方に期待
60名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:31:33 ID:rSDtrVDZ
累計500達成おめでとー
俺も501は遠慮する
だれかまかせた
61名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:36:09 ID:2FZJ20eu
もっさん×ミーナ隊長で501本目狙おうって思ったけども
話の導入部の1レス分書くだけで30分とかどう見ても間に合いません本当にありがとうございました


ということで mxTT〜さん辺りが501本目をゲットする に魂を賭けよう
62名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:39:56 ID:rSDtrVDZ
そしてこのまま二年の時が流れた
63名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:43:25 ID:gToRtByG
>>58 じっちゃん500おめ!
さすがに追記とか前半部だけ、とかで501をgetする勇気はないんで自重w
64滝川浜田:2008/12/09(火) 22:43:39 ID:2pkwTgLZ
流れちゃ困るw

…さっき自重するとか言ったけど、やっぱり投下していいかな?
なんか投下欲が沸いてきた
65名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:43:48 ID:YNqYLgaI
同じくもっさミーナで投下しようと思ってたけど
まだ半分くらいしか書けてなくてどう見ても以下同文。

それはそうと>>50GJ!
とまどうもっさんとみんなの嫉妬が良い!もう駄目だこの部隊w
じっちゃんもGJだぜ。シャッキーニ分をありがたく補わせてもらいました。
66zet4j65z:2008/12/09(火) 22:46:41 ID:gToRtByG
>>64
いけいけじっちゃん! 早い者勝ちだ!
67名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:46:53 ID:b38eNJYD
やるんだ、じっちゃん!
自分はのんびりビューリング×エルマを書いている
68名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:47:50 ID:2FZJ20eu
滝川おじいちゃまが501本目ゲットで、いいんじゃあないか・・・
69名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:48:30 ID:d1s34Ltu
おおー!さすがは滝川老師
自分はエーリカ話煮詰めながら待機モード……
70名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:50:18 ID:rSDtrVDZ
なんかみんな投下待ちが多いな
501過ぎたら一気に投下しだしたりして・・・・・
71滝川浜田 『絶対両想い宣言』:2008/12/09(火) 22:51:09 ID:2pkwTgLZ
では、ありがたくやらせて頂く!
今日は自重しない!
2レスしかないけど、封印しとくのもアレなので投下。 シャーリー&リーネ(リネ芳&シャッキーニ)で参ります。



あたしは今、廊下で話している宮藤とルッキーニを遠くから眺めている。

最近、宮藤とルッキーニがやけに仲が良い。
…宮藤がルッキーニの事を好きだとは考えにくいが(おっぱい魔神だし)、ルッキーニは宮藤に少なからずとも好意を持っている様だし。

んーいや、別に嫉妬とかそんなんじゃないけど、危険を感じてはいる。
いつあの二人が間違いを起こすか、それは分からないじゃないか。

そんな事になれば、あたしはどうなるんだ?

と、そんな事を考えていたあたしの近くには同じく宮藤とルッキーニを見つめるもう一つの影。

リーネだ。

そっか、確かリーネも宮藤の事が好きだったっけか。


…そうだ、良い事思いついた。


《翌日

「おーい、リーネ」
「なんですか、シャーリーさん」
「お前宮藤の事好きだろ?」
「なっ…いきなりなにをっ…!!//////」

おーおー、純粋だねえ。

「いやそんなのお前の態度見てりゃ分かるよ」
「あっ、あの…その…………はい…//////」
「で、お前昨日宮藤とルッキーニが話してるの見ただろ?」
「はい」
「…どう思った?」
「え?どう思ったって、仲良いなあって」
「そこだよ、リーネ」
「はい…?」
72名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:51:10 ID:SIHlHRY3
じっちゃま、お任せします
wktkしながら待ってる!
73滝川浜田 『絶対両想い宣言』:2008/12/09(火) 22:54:41 ID:2pkwTgLZ
「あたしは今非常に危機感を募らせているのだよ。もしあの二人が恋人同士になってしまったら…?」
「え……」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
以下リーネの妄想

「ルッキーニちゃん、好きだよ…」
「芳佳、あたしも…」
「キス、しよ?」
「うん……」

リーネの妄想 終了
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「いやあああああああああああああああああ!!!」
「だろ!!イヤだろ!?……そこでだリーネ」
「はあ」
「手、組まないか?」
「手を組む?」
「ああ、お前はルッキーニが宮藤と話そうとしたら、邪魔をするんだ。その逆も同じ」
「…要するに、自分だけに目を向けさせるって事ですか?」
「ん、そういう事。…悪くない話だろ?」
リーネはしばらく黙った末に、口を開いた。

「………そう、ですね。アリだと思います」

…今、リーネに黒い何かが宿った。

「あたしはルッキーニを手に入れる為に。リーネは宮藤を手に入れる為に」
「頑張りましょう!」


あたし達は、手をガッチリと組んだ。


待ってろ、ルッキーニ。
お前はあたしのモノなんだからな…?

END


以上です。
やりました。やっちゃいました。
さっきも言った通り、今夜は自重しない夜です。
今夜は興奮して眠れそうに無いです。
死にそうです。嘘です。

何はともあれ、501達成!!っつー事で!

では今度こそ、ここらで…
74名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:57:12 ID:2FZJ20eu
>>73
501本目の作品に一番最初に乙するのはこの私だァーーッ!!

本当にお疲れ様でした!!
百合スレバンザイ!!作者バンザイ!!住人バンザイ!!
75名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:57:22 ID:rSDtrVDZ
         ..◇・。..☆*。
   ゜゜・*:..。.。★◎@ ○☆。..:*・゜
 ゜゜・*:..。.。◇@☆*・゜★。。.:*・☆*・。..:*・゜
。..:○★◎☆。∂∇。★◎*・゜゜。◎★
   ◎☆◇☆。*・.。..☆◎。.:☆◇*.....。     501達成おめでとう!!
  ゜゜・*:..。.*・☆◎。__☆◎*・。..:*・゜ ゜
        \       /
          \    /
     . ∧_∧\ /
      ( ・∀・) ∞
      / つ つ△
    〜(   ノ
       しし'
76名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:58:06 ID:b38eNJYD
>>73
じっちゃんおめでとう&ありがとう!やっぱりじっちゃんがいるとなんだか安心する自分がいるw
スレの一番最初からこの投下スピード…あなたは本当に百合神様であります

というか>>50GJ!!
うろたえた少佐って何だか新鮮で良いな!
謎のプラスエネルギーやマイナスエネルギーを放出してるエイラかわいすぎる
もちろんサーニャと一緒のときはマイナスイオンを放出してるんですねわかります
「元帥はあたし!」シリーズ好きだったから王様ゲームネタうれしいや
77名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 22:59:47 ID:SIHlHRY3
GJでした!黒リーネ覚醒編お見事です!
邪魔して申し訳なかった!腹切ってくる!
501本達成万歳!
78名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 23:02:48 ID:UA9xyfvW
>>73
501おめでとう!
これまでの、今後の、スレ住人と作者さんたちに幸多からんことを!
79名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 23:10:28 ID:pFPR1y2m
>>73
さすが師匠俺達にできないことを(ry
そこに痺れる憧れる!ずっと付いていくよ!
しかしもうこの二人色々とダメだなw
80名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 23:26:06 ID:mpjYFa+Z
>>50
こりゃ素晴らしい宮本!っていうと分かりにくいな、よしもっさんかw
数少ないよしもっさん好きの俺には天国だ!w

>>73
やりやがったーおめでとう!wこのスレと住人もおめでとう!
81名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 23:30:07 ID:HZf6AZKB
>>80
宮本って誰?と純粋に思ってしまったW

>>73
501おめでとうございます!
もうこのスレのミンナに一生ついていくわ。
82名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 23:40:02 ID:d1s34Ltu
>>73
さすがは老師っ!私、興奮でなんかもう大変なことになってます!
もう今日は飲むぞっ!
ここの素敵なストライクウィッチたちに乾杯!
83名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 23:44:31 ID:ulQygBUX
>>73
GJ! 501おめでとうございます。
今後も期待してますよ。
84名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 23:50:53 ID:7nNtATHK
おめでとー!
勢いも100越え!
85名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 23:58:02 ID:rSDtrVDZ
501達成オメ
今夜はお祭りだぜ!
ということで501が投下されるまでの間に小ネタをネチネチ書いてみた
なんかありがちなネタですみません

---------------------------------------------------------------


それはおだやかな昼下がりの事

夜間哨戒から帰ってきたサーニャは何時ものように私のベットに潜り込み
特に予定の無かった私もサーニャに付き合い昼過ぎまで寝て
その後遅めの食事を取り
ミーティングルームで紅茶でも飲みながら二人でのんびりしていた時のこと


「ふぁ・・・眠い」
「まだ夜間哨戒の疲れが抜けてないんじゃ無いのか?」
「ん・・・大丈夫」

なにが大丈夫なものか、さっきからまぶたが重そうで
頭も眠そうにフラフラしているじゃないか

「大丈夫じゃないって寝た方が良いって」
「エイラがそう言うなら・・・・うんわかった」

よし、ならこの眠り姫を部屋まで運んでやらないと
ほらサーニャ部屋に行くぞっ と言うとした瞬間
私のヒザにぽすりとサーニャが頭を乗せてきた

「さっサーニャ!?」
「・・・・おやすみ」
「えっ!ちょっ」
「・・・スースー」

えーもう寝たのか?早いな
しかしこの体勢
どこからどう見ても世間一般的に言われる膝枕というやつではないか
寝息が太ももをくすぐりなんだかくすぐったい
サーニャの頭がある部分からじんわりと暖かくなっていく
ついつい膝の上のサーニャ頭を撫でてしまう
あぁ柔らかい
ふだん恥ずかしくってこんな事出来ないもんなー
丸くなって私にすり寄ってくる姿はホントに猫みたいだ
86名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 23:58:33 ID:rSDtrVDZ
うーむしかしどうしよう?
任務で疲れているサーニャを起こすのはなんだか可愛そうだ
しかし私としてもこの体勢は恥ずかしい
ここはミーティングルームだから何時だれが来てもおかしくないのだから



「おー膝枕とはラブラブだねー」
「ホントサーニャンになつかれてるねぇエイラ」
「なっ!」

振り返るとそこにはお調子者の二人組
もう見つかったのか!
それにまずい非常にまずい、よりにもよってこの二人に見つかるとは

「しかし見せつけてくれるねーこんな場所で膝枕とは」
「べっ別に見せつけてるわけじゃねえよ!ただサーニャが夜間哨戒で疲れてそれでだな」
「おやおやそんなに騒ぐとお姫様が起きちゃうぜ?」
「ぐっ・・」

クソ良いように遊ばれてる・・・
しかし打つ手がない、逃げることもできないとは・・・
あれ?ルッキーニが居ない?さっきまで居たのに

「なぁルッキーニはどうしたんだ?」
「あぁちょっと用事をたのんだ」

いつのまに・・・・

「なんのだ?」
「ん?なにバルクホルン大尉を呼びに行ってもらっただけだよ」
「大尉を?」

なぜここでバルクホルン大尉が出てくるんだ?

「だってあいつは、この部隊の記録係だからな」
「??」
「鈍いなぁ、つまり可愛い眠り姫とその王子様を記録してもらおうと思ってるんだよ」
「なっ!」
「おいおい、そんなに騒ぐなって起きちゃうだろ?」

クソっなんて手際の良さだ
とにかく逃げなければ、このさいサーニャには悪いが起きてもらうしかない
ちょっと不機嫌になるかもしれないけど、こんな羞恥プレイよりは何倍もましだ

「サーニャ起きろ!このままじゃ大変な事になるぞ!」
「・・・・ん」

そう言ってサーニャはよりいっそう私にすり寄り
服の端を握ってきた
あぁここまでサーニャの寝起きの悪さを呪ったことはない
87名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 23:59:03 ID:rSDtrVDZ
「おやおや可愛いねぇ。さて大尉も到着したことだし記録と行きますか」
「なっ」

しまった間に合わなかった!
ってなんでみんな居るんだよ

「呼ばれて来たがなるほどこういう事か」
「あららサーニャさんったらすっかりエイラさんに懐いて」
「へーサーニャって意外に大胆なことするんだね」
「うわサーニャちゃん可愛い〜」
「よっ芳佳ちゃんそんなに大きな声だしちゃダメだよぉ」
「まったく、なにかと思えばこんな事でわざわざ呼び出したりして」
「ハッハッハ、まるで猫だな可愛いじゃないか」

「なっなんでみんな居るんだよ・・・・」
「えっへへーどうせならみんなで楽しんだ方が良いと思ってねー」
「なにが良いんだよー!」

あぁ顔が火照る
みんな雛を見守る親鳥みたいな目をしやがって
うっう恥ずかしい

「さてサーニャが起きる前に撮ってしまうか。ほらみんなそこをどけ」
「いい撮らなくていいから!」
「エイラさんこれは大切な記録なのよ?動くことは許しません」

隊長ぉそんな笑いながら言われても説得力がありません
この騒動の中でもすやすやと眠り続けているサーニャが恨めしい

「ほらエイラ動くなよ」

そう言って写真を撮っていくバルクホルン大尉
あいかわらずみんなはニヤニヤとした目で私達を見ている
あぁなんでこんな事に・・・

「んっ・・・エイラ・・・」
「あっ!サーニャ起きたのか?」
「ふぁ・・・・エイラの膝柔らかいね」

そういって私の膝を撫でるサーニャ
あの?サーニャさん?もしかしてまだ寝ぼけてませんか?
もっと周囲を見てくれよ・・・・
88名無しさん@秘密の花園:2008/12/09(火) 23:59:35 ID:rSDtrVDZ
「・・・・ねぇ・・・エイラいつもみたいにキスして・・・」



「なっ!なに言ってるんだよサーニャ!
わっ私はそんな事してないぞ」

嘘だ
毎日してる

「へーエイラさんいつもそんな事してるんだ」
「ホントラブラブだねぇ」

あぁまずいすっかりばれてしまった
たぶん今自分の顔は赤を通り越して真っ赤になっているだろ

「おーおーラブラブだねぇ」
「エイラここは一つ眠りからサーニャンに目覚めのキスを!」

うっみんなが期待した目で私を見る

「ほらエイラ早くートゥテーデちゃんと写真にとってね」
「しょうがないな」
「ふふっ良い記録になりそうね」

そう言ってみんながキスコールをしてくる
膝の上のサーニャは相変わらず起きてるのか起きてないのか分からないくらい、うつらうつらしている
あぁもうダメだ!
もう耐えられない!

「そっソンナコトデキルカー!」

そう言ってサーニャを抱えると私は一目散に走り出した
向かうは私の部屋
とにかくあの場所に居ては自分はいつか恥ずかしくて死んでしまう
抱えているサーニャは
「・・・ねぇエイラキスは?」
などと聞いてくるが今はそれどころじゃない
あぁもう!明日からみんなにどんな顔して合えば良いんだよー!


実はこの時無意識のうちにサーニャをお姫様だっこしていて
それを写真にとられて後日さらにからかわれることを
今のエイラは知るよしもなかった


終わり
89 ◆eIqG1vxHTM :2008/12/10(水) 00:00:14 ID:rSDtrVDZ
お祝いと言うことで明るめ?のを
タイトルは『記念写真』
急いで書いたから誤字があるかも・・・
しかし二人以上キャラを出すと誰が誰か解らなくなるな
うーむ
とになく501達成おめでとー
このままの勢いでこのスレは頑張って欲しい
ということでeIqG1vxHTMでした
90名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 00:07:38 ID:t7FLCVaf
こんばんは。mxTTnzhmでございます。

>>73御大
おめでとう&GJ!!! 501の栄誉は貴方にこそ相応しい( ゚Д゚)ゞ 敬礼ッ!!

>>89 ◆eIqG1vxHTM様
GJ! ニヤニヤしながら読んでました。いいですね。


さて、501祝いと言う事で私もひとつ。美緒視点で書いてみました。
「slaughter hour」どうぞ。
91slaughter hour 01/02:2008/12/10(水) 00:08:27 ID:t7FLCVaf
今日のミーナはおかしかった。私が客観的に見ても、どうにも疑念が拭えなかった。
まだ“あの日”の事が心に残っているのだろうか。決して誰にも抜けない棘の如く。

監視所連絡部からの通達が大幅に遅れ、我々は大慌てで出撃を余儀なくされた。
我々501でも監視レーダーこそあれ、範囲も限定され、他との連携が必須だ。
そんな時に限って監視網の故障だの、連絡の遅れと来ている。
ミーナが怒るのも無理はない。これで一体何度目だ? 私でさえ呆れ返るさ。
奴等は扶桑の「見ざる言わざる聞かざる」と言うやつなのか?
ブリーフィングで必死に怒りを抑えているのが私にも伝わって来たよ。

本土防衛を担う筈のブリタニア空軍も連絡部に足を引っ張られて迎撃が遅れ、結局私達が先陣を切って出る事になった。
既にネウロイは本土に達し、海岸沿いのちいさな村を爆撃射程に捉えていた。
「バルクホルン隊突入! ハルトマン隊は第二波を! 少佐はコアを!」
ネウロイが来るのもいつもの事。こちらもいつもの手順だ。まるでルーチンワーク。
だが、村がネウロイの攻撃に晒されているのを上空から黙って見ている訳にはいかない。
そして、村の様子も妙だった。
私はコアの探索もそこそこに、ミーナを連れてその村へと向かった。

村は迫るネウロイの陰にすっかり怯え、避難する気力さえ失せていた。
海岸沿いは既にネウロイの爆撃で水飛沫が上がっている。
子供達はおろか、大のおとなでさえ、すっかり怖じ気づいてしまっている。
「ウィッチか。何の用だ。この村はもうおしまいだ……」
「何を言っている!? 早く村人を連れて逃げるんだ!」
私は怒鳴った。だが、ミーナの異変は既に始まっていた。ここで気付くべきだった。
「早く避難なさい」
冷徹に、ミーナは村人を前に言った。
「この空、この村は私達が守ります。だから貴方達は逃げなさい。早く!」
尚も動こうとしない村人達。
「あ、あんたらが何と言おうが何をしようが……無駄なんだよ!」
「あんたらは飛べるから良いよな。どうせあたしらなんて……」
何と。この村人達は逃げる前から諦観しているというのか。私は驚きといくばくかの失望、嘲り、そして怒りを覚えた。
だが、横にいるミーナは一言ずつ静かに、だが恐ろしく殺気のこもった声で言った。
「私を……敵にしないほうがいい」
ぽかんとしたのは村人達だけではない。私もだ。と言うか、驚いた。何を言い出すんだ。
「おい、ミーナ?」
「少佐は早くコアを」
「あ、ああ。ミーナは村人の避難を。ペリーヌ、宮藤! 村人の避難を誘導しろ!」
空に舞う二人を地上の援護に回し、私はひとり大空へ戻り、コアを探した。

コアはネウロイの尾部に存在した。私の魔眼がそう告げる。
「コア発見! 尾部から先端に延びる三本の突起が有る。その真ん中の付け根奥だ! 村が危ない、急げ!」
「了解! 行くぞエイラ」
「リーネ、狙えたらガンガン撃っちゃってね!」
バルクホルンとハルトマンが揃って突入し、エイラとリーネがやや後方から援護する。ネウロイが塵と消えるのは時間の問題だ。
だが、私の中でひとつ気になる事があった。再び、地上の村を目指した。

村人達はすっかり戦意を失い、ミーナや宮藤、ペリーヌ達の指示にも従うことなく、呆然と空を眺めていた。
我々501が生命を掛けて戦う、その様をただ黙って、見ていた。
まるで、いつもと同じ、沈み行く太陽を眺める、穏やかな夕暮れの如く。
恐怖の余り動けないのか? それとも本当に何もかも諦めてしまったのか?
私にはいまいち、この村人の気質と言うものが理解しかねた。

やがて上空で大きな爆発音が聞こえた。ネウロイが破壊されたのだ。
バルクホルンとハルトマンが共同で戦果を挙げたらしい。無線で状況が刻々と伝わってくる。

私はミーナを探した。胸騒ぎの原因は彼女にあった。
ネウロイが散り、美しい粉を散らした後も、村人達は立ち尽くしていた。
ミーナが居た。村の人々を前に、何か怒っているのだろうか?
らしくもない。一体どうして?
92slaughter hour 02/02:2008/12/10(水) 00:10:33 ID:t7FLCVaf
「私らはもう長くないんだ。どうせ、カールスラントやガリアみたいに、ネウロイにやられちまうんだよ」
一人の老婆が悲観的な言葉を発した。村人は皆同意するとばかりに黙っていた。
沈黙を破ったのはミーナだった。
「あの空を見て下さい。ネウロイは破壊しました。例えネウロイが近くに飛んで来ようと、私達が必ず、一体残らず倒します」
だが、村人達は動かなかった。
そしてまだ何か言いたそうな村人達に向かって、彼女は言った。
「私達ストライクウィッチーズは決して……そう、決して諦めない」
村人達は、ミーナを見た。私も思わず横にいたミーナを見た。
虚勢を張る訳でもなく、ただ堂々と。村人に対する慈悲と、義務と、怒りと、悲しみが全て混じった目で。
「それだけは忘れないで下さい」
それだけ言うと私の横をすり抜け、ミーナは部隊の指揮に戻っていった。
「……ペリーヌ、宮藤、もういい。我々も帰投する」
宮藤達に声を掛ける。彼女らも少し動揺していた様だ。但し村人とミーナのどちらに動揺していたか、は分からない。

短いデブリーフィングが終わり、夕食も済み、それぞれが部屋に戻る。
私はミーナの部屋を訪れ、胸の内にこもる疑問を晴らすべく、ストレートに聞いた。
「どうした。村人を恫喝する様なマネをして。お前らしくもない」
「……」
ミーナは珍しく、大切にしているカールスラント産の貴腐ワインを一本空けていた。
グラスで波打つ琥珀の輝きを見つめるミーナの瞳はどこか濁って、泳いでいた。
「ミーナ、どうした。私にも言えない事か?」
無言のミーナ。
「なら、いいさ。ただ、私はお前の事が心配だ。余り思い詰めたりしないで、私に……」
グラスがテーブルに転がる。飛び散る中身はそのまま重力に従い、テーブルと床に飛散した。
ミーナはグラスを捨て、私の胸に飛び込んで来た。
泣いている。
この数日、彼女に何が有ったのだろう? 共に過ごして来て、特に思い当たる事は無かった。
日付的に、何か大切な日でも無く。彼女達の慣習の“忌みの日”でもなく。
ただ言えること。それは彼女が私にすがり、涙を流している事。
村人も救えたし、いいじゃないか、ミーナ。
私の言葉も聞こえていないらしい。いや、聞こえてはいるのだろうが、心には届いていない、か。
私に出来る事。宮藤の言葉じゃないが……今の私に出来る事と言えば。
彼女を優しく抱きしめ、そっと支える事。

私の右目がお前の心の内も見えればどんなに良いか、とこの日ばかりは思った。
でも、そんなのは野暮の骨頂。私と彼女は、こう言う関係の方が良いのだろう。
「刺さった矢は無理に抜くと余計に痛み、弱る」と言うしな。
暫く泣け。
好きなだけ。
私はここに居る。お前が嫌と言うまで。
それが私の“こころ”だ。

end

----

とある有名な決めゼリフを幾つか入れてみたくて、ただそれだけの為に書いてみました。
「オトコマエ」なミーナを書いてみたかった、と言う事もあります。

今後もこのスレの住人の皆様、多くの職人様方達に幸あらんことを。

ではまた〜。
93保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2008/12/10(水) 00:13:23 ID:6FVzpWat
ちょっと目を離したスキにこれだよ……!!
>>73 501達成おめ!!言おうとしていたコピペを>>79に取られたけど気にしない!!
このスレの節目には必ずといっていいほどじっちゃんがいますよね。まさに百合神様。
とりあえず自分もこの勢いに負けないように頑張っていくよ!!

でもって>>89 >>92GJ!!なんという通過ラッシュ。
94名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 00:16:07 ID:/ti8AbPA
フィーバーしすぎだろw
95名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 00:30:32 ID:WgxYn6oq
めでたいからな!
わっはっはっはっはっ!
96名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 00:33:58 ID:QzKXIoAY
ちょ、早ぇ!嬉しい!すげぇ〜〜!!!みんなGJ!!
>>50
めっちゃ笑った、こうゆうノリいいなぁ!!GJ!

>>61,>>65
もっさんミーナすげー楽しみにしてる!!!頑張って仕上げてくれ!!!!
97ねこぺん:2008/12/10(水) 00:34:10 ID:+3fMWIgK
凄いことになってますね。私もフィーバーフィーバー
というわけでエーリカ話持ってきました
11レス分なので連投にかかるでしょうか?
とりあえず前半6レス分を爆撃します。
98ねこぺん:2008/12/10(水) 00:35:05 ID:+3fMWIgK
ずっと一緒だった。
ずっと一緒で、これからも一緒で、そんなのは当たり前だと思ってた。
いつからその歯車は狂ってしまったの?



       『遠い記憶のあるここから』


ずっと一緒だった。生まれた時から一緒で、そんなのは当たり前だと思ってた。
そう、二人は思ってた。
でも、実はそう思っていたのは、信じていたのは自分だけなのかもしれないと彼女は思う。
シュバルツヴァルトの深い森に抱かれた双子の姉妹。
住人全てが顔見知りのような田舎町のこと。彼女らを人は『黒き森の妖精』と呼んだ。
快活な姉と物静かな妹。
しっかりしているのは常に妹の方で、から回っては失敗する自分をなにかにつけて助けてくれた。
意外に思われるかもしれないけど、幼い時分に人前で器用に立ち回れないのは自分の方で
すぐそばに妹がいなかったら、誰かと話すことさえほとんどなかったかもしれない。
そんな自分でも出来ることがあるのなら。そう考えるのは自然なことだった。
だから、守りたいと思ったのだ。大切な妹を。
それが彼女、エーリカ・ハルトマンの望みだった。


何年ぶりだろう。4年……5年……。離れている日の数を指折り数えていた頃もあったけど、
結局それは出来なくなった。折って数える指の数なんてあっという間に尽きてしまったし、
部屋の小さな机に彫り込んだそれが増えるのになんて、じきに耐えられなくなったから。
でも、会えるなら。どんなに時が経っていても会えるなら関係ない。
その簡潔すぎる返信が届いた時、エーリカは飛び上がらんばかりに喜んだ。
そこにはたった一文だけが記してあった。「家に、帰る」と。
99ねこぺん:2008/12/10(水) 00:36:00 ID:+3fMWIgK

ずっと一緒だった。生まれた時から一緒で、そんなのは当たり前だと思ってた。
そう二人は思ってた。
でも、実はそう思っていたのは、信じていたのは自分だけなのかもしれないと彼女は思う。
信じられないかもしれないけど細やかな気遣いが出来るのは姉の方で、自分の気づく先にはいつも姉がいた。
なにかを思ったときに、それを感情に乗せることなんて出来なくて、
ほんのささやかな思いも、姉がいなければ満足に伝えることさえなかったと思う。
そんな自分でも出来ることがあるのなら。そう考えるのは自然なことだった。
だから、守りたいと思ったのだ。大切な姉を。
それが彼女、ウルスラ・ハルトマンの望みだった。


カールスラントの大地を踏みしめるのが何年ぶりかなんて、とうに忘れてしまった。
そんなことに意味なんてない。帰ってくる事だってないと思っていたのだから。
でも……と彼女は思う。いや、これはほんの気まぐれだ。
遥かオラーシャにまで天性のずぼらさを誇るあの姉がまめに送ってよこす手紙に、
そんな気まぐれを起こしてみたい気になったのだ。
ただ、それだけ。何度も読み返した手の中の手紙を握り締めて、ウルスラはそうつぶやいた。


二人が生まれた当時、家には一本の大きなフユナラの木があった。
暖かな日の昼下がりには、よくその木陰でウルスラは本を読み、エーリカはその隣に寄り添った。
それは、二人にとって最も幸せな時間だったに違いない。
大切な妹がこの幸せの場所にいつまでもいられるように。いつしか抱いたその想い。
だから、自分にウィッチの適性があると知った時、エーリカは迷わず軍に志願した。
ウィッチなら、この幸せを自分の力で守ることが出来るから。


カールスラントの大地を覆ったネウロイの襲撃は豊かだった国のあちこちに爪跡を残した。
それはこのヴュルテンベルクの田舎町においても例外ではなかった。人はまるで住めなくなったし、
両親――町のみんなに慕われた医者の父も、ドナウの泉のように優しかった母も、もういない。
だから、この町に帰ってくるのはためらわれた。だけど、今、もう一度妹に会えるのなら。
その場所はこのフユナラの下以外に考えられなかった。見上げる彼女の視界の隅に、映る一人の少女。
自分と同じその姿。彼女はごちゃまぜになった感情に跳ねる心臓を抑えつけながら、ゆっくりと口を開いた。

「……おかえり、ウーシュ」
100ねこぺん:2008/12/10(水) 00:36:31 ID:+3fMWIgK

「ただいま」

その少女、ウルスラはさっぱりとそう答えた。手には重そうな学術書。
重そうなトランクの中も、もしかしたら本でぎっしりなのではないかとさえ思える。
慌ててエーリカはトランクを持つのを手伝いながら、少し拗ねたような調子になる。

「ウーシュ。一応5年ぶりの姉妹の再会なんだよ?
 もう少し感動してくれてもバチは当たらないと思うんだけど」
「……してる」
「え?」
「感動」

まるで、平静とした口調でウルスラは答える。エーリカは妹の性格を記憶の中からやっと取り戻したが、
しかしそれでもこの答えがどこまで真に迫っているのかは測りかねた。

「そ、そっか。でも本当に会えて嬉しいよ。
 もう、二度と会えないんじゃないかって思い始めてたから」
「居場所は分かってたはず」
「それはそうだけど、でも、オラーシャは遠いし。なにより……」
「なにより?」
「えっと……その、さ。ウーシュが会ってくれないんじゃないか、って」

不意に吹いた風にフユナラの葉がザワザワと音を立てた。
エーリカの視線が落ち着かなげに彷徨う。ウルスラが瞬きもしないようにじっと見ていた。

「会わない理由はない。けど、会う理由もない」
「ウーシュは冷たいなあ。でも、そうかもしれないね。
 ……それでも私は、理由がなくても会いたかったんだけどな。
 ここじゃ寒いし、家の中、はいろっか」

ウルスラは小さく頷いた。


その時、彼女はひどく動揺していた。自分には珍しいことだったと今でも思う。
エーリカが軍に志願すると言い出した時のことだ。ウィッチの素質があるのは二人とも。
でも、自分は軍に入るだなんて考えもしなかった。エーリカはなんで、どうして。
二人の考えることも、想いも、それまですれ違うことなんてなかったのに。
ウルスラはエーリカだけにそれと分かる焦りを含んだ声でエーリカに問いただした。
エーリカは何も答えなかった。
101ねこぺん:2008/12/10(水) 00:37:30 ID:+3fMWIgK

「ぼろぼろ」

ウルスラの的確な評価が下る。住む人がいなくなって大分長い家はあちこちが傷んでいる。
それでも丁寧に作られたとおぼしき調度品の数々は、まだそれが綺麗だった頃の面影を失ってはいなかった。

「ごめんね。時々手入れしてたんだけど、私じゃ上手くいかなくて」
「どうせもう使わない」
「でも今日一晩はここになるよ。まあ、一晩くらいなら大丈夫だよね?」
「気にしなければ」
「一部屋だけはちゃんときれいにしたから」

エーリカが案内したのは、その昔二人が使っていた子供部屋。二人の間になつかしい匂いがよみがえる。
ベッドが一つしかないのは一つ壊れたから……ではなく、両親が何故か一つしか置いてくれなかったからだ。
二人でいた時は、何度片付けてもエーリカが散らかすので狭く感じて仕方がなかった。
エーリカが家を出た後は、今まで狭かった部屋がバカみたいに広く感じてたまらなかった。

「二人でくっついて寝たよね。
 今私の寝相が悪いのは、ウーシュが抱いてくれないからなんだろうなー」
「寝相が悪いのは元から」
「え、やっぱり? そうなの? いや、私もそうだとは思ってたけどさ。
 ……そうだ! 久しぶりに一緒に寝ない?」
「本気?」

くるくるとステップを踏みながら言うエーリカに、そう言ってウルスラは複雑な表情を浮かべた。


配属されて1年経つ頃から、エーリカは部隊の中でメキメキと頭角を現していった。
わずか10歳の少女はその高い素質と、それ以上の努力でそれを可能にしていた。
天才。しかし、その言葉は適切でないと彼女は感じていた。それはいつも妹のためにある言葉だったから。
そして自分のウィッチとしての全てはそれを守るためにあるのだから。
だからウルスラが軍に志願すると聞いたとき、エーリカは強硬に反対した。
ウーシュがそんなことする必要なんてない。そう突っぱねた。ウルスラはただ黙ったままだった。

102ねこぺん:2008/12/10(水) 00:38:01 ID:+3fMWIgK

簡単な食事を済ませる頃には、あたりはすっかり暗くなっていた。
慣れない片付けに一日を費やしたエーリカも重い荷物を引き摺ってきたウルスラも疲れているのは同じで。
不毛な言い争いをする気力もなく、結局一つしかない小さなベッドに揃って潜り込んだ。
壁に顔を向けて努めて距離をとろうとするウルスラの背に擦り寄って、エーリカは嬉しそうに笑った。

「あったかいなー。やっぱりウーシュが一番だね」
「意味が分からない」
「ほんとー? だって毎日こうしてたんだよ。
 その頃はウーシュがぎゅってしてくれたんだけどな。今日はしてくれないの?」
「嫌」

エーリカのおねだりにウルスラの答えは簡潔だった。
それでも諦めきれないのかエーリカはまだ甘えるようにひっついていく。

「寂しいこと言わないでよ。二人きりの姉妹なんだよ」
「大体、そんな昔のこと憶えてない」
「うそ? だって、私は忘れたことなんてない」
「そう? だって、私は忘れたかった」

冷たい声でウルスラはそう言った。その言葉に今までふわふわと舞っていたエーリカの心はしぼみ、
エーリカ自身もただ押し黙るしかなかった。きっと、そうさせたのは自分だったから。
本当なら昔のようにぺたぺたとじゃれあったり、もっと他愛もないことを話したり
――年頃の乙女なら、例えば恋の話の一つくらいあるでしょう?――
そうやって、離れていた年月を埋めたかったのに。
エーリカはウルスラの身体に腕を回し、ぎゅっと抱き込んで息をついた。

「……ウーシュは、やっぱりまだ私のこと嫌いなんだ」
「そんなこと言ったことないけど」
「じゃあ、どうしてスオムスやオラーシャに行ったの? スオムスの時も命令じゃなかったのに」
「エーリカもブリタニアに行った」
「それはカールスラントがもう持ち切れなかったからで、ウーシュのとは、違う」
「……なら、どうしてあの時反対しなかったの?」

エーリカの腕の中でウルスラがくるっとロールし、エーリカに向き直る。
普段、感情をほとんど見せないウルスラの瞳が紅く光っている気がした。


オストマルクがネウロイに蹂躙され、カールスラントもその渦に飲み込まれていった頃。
エーリカの部隊とウルスラの部隊は共に国境に近いシュトゥットガルトへの異動が決まった。
攻勢の激しい最前線に不安はたくさんあったけど、ウルスラと一緒に故郷の街を守れるなら。
それだけでエーリカは感じる不安を拭い去ってまだお釣りが来る、そう思ってた。その時まで。
異動の前日、エーリカの部屋に来たウルスラが一方的に告げた。スオムスに行くから、と。
呆然と立ち尽くしたまま、エーリカは立ち去る妹を呼び止めることさえ出来なかった。

103ねこぺん:2008/12/10(水) 00:38:59 ID:+3fMWIgK

「……ウーシュが決めたことだから。私が、反対なんて、できないよ……」
「私がウィッチになるって言った時は? 最後まで反対した」
「だって、ウーシュがウィッチになるんじゃ、私はウーシュを守れない。だから」
「……私だってエーリカを守りたいって思ってた」


一緒にいたかった。ただそれだけでよかったのに。あなたは違ったの?
一番悲しかったのは一緒にいられないことじゃなくて、あなたがそう望んでいないと思うことだった。
当たり前のように、二人ともがずっと二人一緒にいたいと望んでると思っていたのに。
一人きりのベッドでそれを想ううち、自分の感情がただ双子の姉に対してのものでないと気づいた。
そんなこと、一体誰に言える? だからスオムスへの話が出た時、一も二もなく頷いた。
もう、一緒になんていられなかった。一緒にいたら、


「ウーシュが、私を……んっ!?」

だって、こうなるって分かっていたから。ウルスラは心のなかでそっと言った。
エーリカはきっとこんなこと想像だってしてなかったに違いない。
触れ合った口唇に感じる柔らかな感触と甘さに芯まで溶けそうになる。
ほんの数秒。まだ十分にそれを味わってはいなかったけど、ウルスラはそっと口唇を外した。

「エーリカはいつも、そう」

ウルスラは吐き出すようにそう言った。
エーリカはウルスラの彼女らしからぬ糾弾と突然の口付けに混乱して返答に窮する。
ただ、ウルスラの言葉の意味をなんとか読み取ろうとだけ努力した。

「いつもって、どういう」
「一人で軍に志願した時も、私が軍に入るって言った時も、
 スオムスへ行くと決めた時も、エーリカは自分の気持ちを何一つ言わなかった」
「私は、ウーシュのことが大事で、だから」
「私はエーリカの気持ちが知りたかった。
 ずっと一緒だったからいつでもわかると思ってたそれが、いつの間にか分からなくなって、
 分からないままエーリカは私からどんどん離れていって」

ウルスラはその顔をエーリカの胸元にうずめて、静かな声で話し続けた。
それは確かに静かな声だったけど、そこにこの上ないほどの感情が押し込まれていることに
エーリカは気づいていた。そしてそれは、エーリカでなければ気づけないことだった。

「ウーシュ、私、ウーシュのこと。
 きっと、同じ気持ちだったよ。だってどこにいても私はウーシュのことばかり考えてた」

ウルスラは黙って頷いた。そうして顔を上げたウルスラとエーリカの互いの瞳が映し込む。
時間がスローモーションのように流れて、二人はどちらからともなくまた口唇を重ねていった。


104名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 00:44:03 ID:9iRIF8jg
支援
105名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 00:45:45 ID:tVSM3Reg
規制って何レス目からだっか?
106ねこぺん:2008/12/10(水) 00:46:17 ID:+3fMWIgK


絡み合う舌の熱さとぬるぬるとした感覚に頭が沸騰しそうになる。
左手でそっとエーリカの耳を取って、右腕を肩の下あたりに廻す。
優しく、優しく。そう意識したけれど、実行することのなんと難しいことだろうか。
だって、自分のなかにはエーリカを許せない気持ちがわだかまっているのだ。
気を抜けば、この少女を目茶苦茶にしてしまいたいという想いにいつ流されたって不思議ではない。
それでも自分はまだ、と思う。腕の中の少女、エーリカはきっともうなにも考えられてないに違いないから。
自分の背に廻された両腕の込める力の入れ方に全く余裕が感じられないのだ。
それがおかしかったのか、いたずら心半分にウルスラはエーリカの耳たぶをきゅっとつまんだ。

「んぷはっ、ひゃっ……!」

突然の刺激にエーリカは反射的に顔を離した。
エーリカの、勿論ウルスラのもそうに違いないが、その中性的な色合いの声に甘い響きが乗るのを聞いて
ウルスラの心臓の動悸はもう抑え切れないくらい速くなっていた。
右手を自分の心臓の位置に手をやり、それから思いついたようにエーリカのそこに手をやる。

「いい?」

短くそう訊ねた。エーリカもウルスラのそれに手をやって小さく頷く。
二人は服の上からゆっくりと互いの胸の、ささやかな膨らみに手を這わしていった。

「ウーシュ……ねえ?」
「エーリカもそんな、変わらないと思う」
「あはは、そうだよね」
「……エーリカ」
「なに?」
「直接、触りたい」

さすがに驚いて、エーリカの動きが止まった。それを見てとってウルスラはエーリカの服を捲り上げる。
エーリカの細い腹部が露わにされると、ウルスラは右手をそのお腹のあたりからするすると上へ伝わせ、
エーリカの胸の膨らみを覆い隠す下着をずらし上げた。その感触にエーリカはきゅっと身を震わせる。
外の空気と直接触れ合うようになったエーリカの胸を見つめ、そっと触れる。
それだけで、エーリカの声のトーンが半段跳ねた。ゆっくりと小さくとも柔らかなそれを撫でていく。

「ウーシュ、なんか、ダメ……っ」

エーリカの喉からもれる切ない訴えにもう我慢が出来なくなって、
ウルスラは乱暴とも言える勢いでエーリカの胸を揉みしだきはじめた。
はじめは左胸から、止まらない欲求の連鎖はまだ半分覆ったままだった右胸の下着も押しやり、
なめらかな双丘にその指を沈めていく。エーリカは胸の上で動き回る冷たい指の描くラインのせいで
思わず上げそうになる嬌声をなんとか抑えようと、シーツを握り締めぎゅっと身体を強張らせた。
でも。
そんなエーリカの考えなんて、この妹に見透かされないわけがなかった。
だって、その身体を持っているのはウルスラも同じなのだから。
ウルスラはエーリカの耳に口を近づけると悪魔のようにそっとささやいた。

「声、もっと聞きたい」
107ねこぺん:2008/12/10(水) 00:47:00 ID:+3fMWIgK

オラーシャへ行く。自分がそう言った時の同僚の顔がひどく険しかったのを今でも憶えている。
スオムスでともに戦った仲間。自分より6つも年上の少女。長い銀の髪に隠れた素顔はいつも寂しげだった。
カールスラントに帰らなくていいのか? そう彼女は訊いてきた。姉が待っているんだろう? とも。
関係ない。ウルスラは短くそうとだけ答えた。少女はそれを聞きながらゆっくり煙草をくゆらせ、
そして悲しそうな声でこう言った。失ってから、その声を聞けなくなってから後悔したって遅いんだ、と。
ウルスラはもう何も言わずに少女に背を向けた。


その時にだって、もう後悔なんてし尽くしていた。
後悔ばかりが積み重なって、その重みがカールスラントへ帰る足を鈍らせるくらいに。
帰って、姉の声を聞いて。それに自分がどんな反応をしてしまうのか、考えただけで怖かった。
多分、その不安は杞憂なんかじゃなかった。実際今それを聞いて、まるで冷静でなんていられないのだから。

「ウーシュがそんなこと言う、なんて、思わなかったな」

触れたそばから駆け巡っているはずの甘くぴりぴりとした感覚にもてあそばれながら、
エーリカはまだそんなことを言う。
お願いだからもう、黙って! ちがう。そうだ。もっと、啼いて……っ。
心の中で叫びながらウルスラはエーリカの首筋に口唇を押し付けた。
痕が残るようにわざと強く吸い込んで、今度こそ聞こえる悲鳴のような鳴き声。
飛びそうな意識の中でエーリカはなんとかウルスラの胸にぴたと手をあて、押しつぶすように力を込めた。
その圧力にウルスラの身体がびくりと反応する。それでもウルスラは口唇を離さなかった。
むしろもっと強く押し付ける。そうしなければ、必死に押し殺している自分の声が洩れてしまうから。
その時、ウルスラは気づいていなかった。本当はもう、その声はとっくにエーリカの耳に届いていることを。
ただ二人の上げる声が自分たちでも区別が付かないくらい同じで、
だから、まともな感覚をすでに手放した二人にはそれが自分の声と確かめることが出来なかっただけだった。

「ん……んっ、エーリカ……」
「ウーシュ、もう、や、あ……っ」

首筋から鎖骨へ、そして胸元へ。ウルスラは少しずつ口唇を伝わせながらエーリカのその肌に
赤い一筋の痕を書き込んでいく。そこまで来てふとウルスラは顔を上げて、震える姉の顔を覗き見た。
眼鏡を外した自分と、姉の顔。水鏡で映したように揺れる同じ輪郭、同じ瞳。
分かっていても、狂いそうになる。まるで自分で自分をどうにかしてるみたいな気がした。
だけどそれも間違いじゃない。だってエーリカは、目の前の少女は、きっともうひとりの自分だ。
そんなことを考えながらウルスラは片手でエーリカの膨らみを包み込み、その頂に触れる。
エーリカの微かな反応を感じて、見つめ合う瞳のままにウルスラは訊く。

「エーリカ、」

こくり。ウルスラが全てを言い終わる前に、もうエーリカは頷いていた。
ウルスラはエーリカのまだ空いている方の胸の膨らみに顔をよせ、そっと頂の蕾を含んだ。
若い花の匂い。くらくらする頭。ウルスラはもうすっかり硬くなったそれを強く強く吸い上げる。

「ふああああああああああっ!」

瞬間、エーリカのその爆ぜるような甘い声が狭い部屋を埋め尽くしていた。

108ねこぺん:2008/12/10(水) 00:47:59 ID:+3fMWIgK

妹が死んだら、自分の前から消え去ったら、私はどうなるんだろう? そんなことを言った同僚がいた。
彼女は同僚で親友で、妹のことをなによりも大事に想い、優先する人だった。
……自分と同じように。捨てるように自分の前から去った妹。
ねえ、トゥルーデ。どうなるかなんて、わかるでしょ? 私を見れば。
それを聞いた彼女は目を見開いて、それからエーリカに何度も謝り続けた。
エーリカは寂しそうに言った。――一緒にいられるなら、きっとどんなことも平気だよ――


「ねえ、ウーシュ」
「……エーリカ?」
「一緒にいて」
「えっ?」
「お願いだから、一緒にいて。私を置いてどこかへ行くなんて、もう言わないで。
 一緒にいられればそれだけでいいんだから。他に望むことなんてなにもないんだから」
「エー……リカ……」

エーリカはぎゅっとウルスラの身体を抱きしめた。精一杯の力を込めて。

「私を離さないで、ウーシュ。私も離さないから」
「……私は、エーリカが離れたがってるんだと」
「そんなわけ、ないよ。だってウーシュとずっと一緒にいたくて、そのための力がほしくて、
 ……ゴメン。ちゃんと言えばよかったんだ。言わなくても、伝わってるのが当たり前だったから。
 だから……言えなかったんだ」


何十通も書いた手紙。迷惑がられるかもしれない、読んでももらえないかもしれない。
でも、少しでも繋がっていられる可能性はそれしかなかった。
半年経ってようやく届いた短い返信。バカみたいに嬉しくて涙が止まらなかった。
それからも、とりとめのないことを書き続けた。季節の移る頃に決まったように届く返事が楽しみだった。
でも、出来ることなら。その矢先に届いた『帰る』の言葉。信じられなくて、何度も何度も読み返した。
読み返すたびに身体が熱くてたまらなかった。


でもきっと、それも今の熱さにはかなわない。

「あっ……」
「はっ……ふあっ、ウーシュ、ウーシュっ、ウーシュ……っ」
「エーリカ?」
「んっ、だって、名前呼んでないと、わけがわかんなくなって」
「大丈夫。エーリカ」

抱き合う身体と身体の感覚も、熱も意識も、その境界線が消えていく。どっちが自分? どっちがあなた?
きっともうどっちでもいい。だって最初から私たちは一つだった。そこに戻るだけ。

 ねえ、そうでしょう?

真っ白になる意識の中で、二人は感じていた。
響き渡る二つの高い高い声が、重なるようにただ一つに溶けていったことを。

109名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 00:58:24 ID:/ti8AbPA
支援
110名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 01:08:26 ID:dph4SFQl
10レスで規制だっけ
でもどうやったら解けるのか分からないな、でも支援
あなたの作品全部好きだ
111名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 01:09:50 ID:I8cALUQH
超良作なのに、
な、なんという生殺し……w
ひどいひどいよorz
112名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 01:14:58 ID:9iRIF8jg
ウルスラ×エーリカなる素敵作品をよくもよくも

ちょっと連投規制ネウロイ撃墜してきますね
113名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 01:18:21 ID:oS8IIMVo
わたし まーつーわっ
いつまでも まーつーわっ
114名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 01:18:43 ID:/ti8AbPA
勢い120越えとか
このスレは化け物か?
115名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 01:23:18 ID:HN308yXe
SSの投下量がそのまま勢いに反映されてる
ここまで継続的にSSが大量投下されてるスレは見たことないぞw
116ねこぺん:2008/12/10(水) 03:05:09 ID:+3fMWIgK


「……んうん?」
「朝」

寝ぼけまなこで振り向いたエーリカに、ウルスラは素っ気無くそう告げた。
あれ? 昨夜の情熱的なあれやこれやは全部、夢? エーリカの頭を一瞬、そんな考えが過ぎり、
すぐにそれが夢じゃないと分かる。だって、二人ともズボンの一つだって身に着けてなくて、
なにより身体の芯には、そのうんぬんかんぬんの余韻がはっきりと残っていたのだから。
よくよく見れば、ウルスラの頬には今まで自分だって見たことのないような赤みが差している。
もしかして、

「照れてる? それとも、したりない?」
「……エーリカ」

恐ろしいほどの声が返ってきた。でもね、ウーシュ。

「私は、たりないよ。だって、5年も離れてたんだもん。
 ……でも、これからいつだってできるよね。一緒にいられるよね」

その言葉にしばらく考え込んでからウルスラはエーリカに向き直ると、そっと口づけた。
その行動に今度、顔が赤くなるのはエーリカの番だった。熱くなる頬を両手で抑える。

「そう、だったらいいと思う」
「だね! ……そろそろ着替えて、出よっか」

ウルスラは小さく頷いた。

117ねこぺん:2008/12/10(水) 03:07:00 ID:+3fMWIgK

「……これ?」

ウルスラが指差した先。昨日は気づかなかったあのフユナラの根元、小さなシルバーのクルス。

「うん。本当はちゃんとお墓作らないと、って思ってるんだけどなかなか……ね。時間もなくて。
 ……でも、姉妹二人でこんな……なんて母さん泣いちゃうかな?」
「あの人たちはそんなこと気にしない」
「ええ!? そ、そっかな……」
「そう」

きっぱりと答えて、ウルスラはさっさと歩き出す。まだ納得しきれないエーリカの上で
そうだよ、とでも言いたげにフユナラがさらさらと風に揺れた。見上げた空にはあの日と同じスカイブルー。
ああ、そうか。遠い日の記憶も、守りたかった大切な全ても。ちゃんとここにあったんだ。

「待ってよ、ウーシュ!」

エーリカの声にウルスラがくるりと振り返った。綺麗な綺麗な笑顔で。
そんな綺麗な笑顔、初めて見たとエーリカは思った。勿論、今まで見た全ての人の笑顔の中で、だ。
つられるようにエーリカも笑う。そしてあわてて走って妹の横に並んでいった。


ずっと一緒は、当たり前のことなんかじゃなかったけれど。
だからこそ、私はそうでありたいと望むんだ。

だからこれからは、いつまでも一緒にいよう。もうひとりの、私と――――。          fin.
118ねこぺん:2008/12/10(水) 03:17:02 ID:+3fMWIgK
ごめんなさいいい! そもそも、私にうんぬんかんぬんなんてはじめから無理だったんです……
ていうか、残り2レス分で規制に……規制対策考えないとナー

というわけでハルトマン姉妹です。あるいはウルリカ。
前回後書きで、エーリカかヨシカと書いた辺りで構想は出来てたのですが、まあ、あれやこれやで苦戦しまして……////
双子姉妹百合。ということで、その部分がテーマだったでしょうか
もっとシンクロ度を上げたかったんですが……なかなか上手くはいきませんね
その間にもスーパーエースのウルリカ投下やエーゲル祭りなど、いやすごかった。さらには501達成という瞬間もあったりで……
しかし、ニッチ専門の自分がメジャー化しつつあるペアを……なんて無謀!
あと、タイトルはすでに発表されたウルリカ作品のタイトルに「遠」が共通して入っていたので意識しました。

なにはともあれ楽しんでいただけたら幸いです
次はヨシカ……かな? ビューリングさんの3本目も考えてます。いや、今日はさすがに疲れましたw でわでわ。
119名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 03:34:19 ID:oS8IIMVo
>>118
GJでした!乙!
この姉妹は深いところで通じ合ってる感じがいいね。
120名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 03:54:03 ID:9iRIF8jg
( ;∀;) イイハナシダナー
121名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 03:57:06 ID:9iRIF8jg
結局連投規制ネウロイは墜とせなかった


この二人が幸せなら・・・は・・
122名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 07:08:15 ID:/ti8AbPA
おっ完結してる
123名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 07:44:39 ID:tVSM3Reg
夜遅くまでGJ
124名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 08:34:41 ID:HeIjrmso
>>118
エロくてびっくりしたけどそれもこれもいい雰囲気だった

ところでtxt.であげる場合はうpろだを採用してる、みんなは?
それってどの程度ファイルの情報が漏れるのかな
125名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 09:17:45 ID:LF3HjfWg
>>119
なんというグッドハルトマンズ。良く調べて書いてあるなー面白かった
バルクホルン姉妹が致してると凄い犯罪臭いのにこの双子だと違和感無いのが不思議だw
126zet4j65z:2008/12/10(水) 13:45:55 ID:kSOL9+4H
501ですら通過点でしかないようなこの勢いw 毎日が投下祭りなのはイイコトデス。
>>118 すごく丁寧で好きです。ビューリングも期待してまっす。
>>92 タイトルはもしかして某STGのBGMかな?

と、いうわけでまだ書きあがってないけど、いっぺんにやったら絶対規制かかりそうな気がしたんで前半部投下します。


●ガリア1944 RISING BLUE LIGHTNING

 ――プロローグ――

 ガリア辺境、カールスラントとの国境近く、上空、高度1000ft。
 マーリンエンジンの出力はマキシマム。
 その力の全てを魔力打撃へと変換し、構えたライフルへと注ぎ込む。
 プロペラも停止。
 今この瞬間、わたしは狙撃するためだけの機械になる。
 32.67ft/sで大地へ向かって加速する世界の中、見据える先には青い雷を纏う私の一番機ブループルミエ。
 さらにその先には禍々しい赤い光を湛えて上空に浮かぶネウロイと、空全体に広がって高度を落としつつある雲。
 いつかミーナ隊長や坂本少佐が言っていた、わたしの固有魔法の事を思い出す。
 弾丸に限界以上の魔力を込めることと、もうひとつ……魔力を利用した弾道の制御。
 試したことなんて無い。
 でも、出来る気がした。
 今なら出来る気がした。
 私を導いてくれた上官の言葉を信じることが出来るから。
 迷いがあった時、いつも笑顔で『リーネちゃんなら出来るよ』って言ってくれる親友の言葉を信じる事が出来るから。
 全力を尽くして戦って傷ついた地上のみんなを守りたいから。
 わたしを信じてくれるペリーヌさんの期待に応えたいから。
 みんなの信じたペリーヌさんの道を拓けるのは、わたししかいないから。

 意志力が魔法の扉を開く。
 心が熱く滾るほど、狙撃手の自分が水鏡の様に静かになっていく。
 そして、最終的に到達する世界は『私』と『的』しか存在しないシンプルな認識。
 『的』がただ、当然の様に『私』に撃ち抜かれるためにある世界。
 だからその世界の当たり前の事をこなす為に必要な動作を……引き鉄を引くという動作を、確実に行った。

 わたしの放った鋼鉄のやじりは緩やかなアーチ描きながら、天へ向かって加速するペリーヌさんを追い抜いて行く。
 その一撃でペリーヌさんへと迫る誘導兵器である超小型のネウロイは連鎖爆発を起こし、近接火力も飽和した魔力によってかき消される。

『トネール……ラピエル!』 

 通信機越しに響く、ペリーヌさんの声。
 収束雷撃の発動。
 魔力が切れて掠れはじめた視界の中、ネウロイの赤い光にめがけて、蒼い雷光が昇るのを感じた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
127zet4j65z:2008/12/10(水) 13:47:12 ID:kSOL9+4H
「どういうことですのっ!」

 故郷への帰還の後、ガリア領内残存するネウロイ勢力駆逐の為に前線に赴いた私は、開口一番で怒号を上げる羽目になった。
 だって別便で輸送されているはずの私用にセッティングされたガリア・アーセナルVG.39が無いというのですもの。

「ストライカーは先にこちらに到着している手筈ではありませんでしたのっ!?」

 兵站担当の女性兵はぺこぺこ謝りながら状況を説明している。
 なんでもカールスラント側からのネウロイの反抗が厳しく、物資の輸送が滞って私たちだけが先に到着してしまった模様。
 だからといって、折角故郷へ帰還してからの初戦に愛用してきたVG.39が間に合いそうに無いなんて……看過出来ないお話ですわっ!
 2,3日後には到着するといっていますが、それでは全くお話になりません!
 明日には着任して早速任務に吐くという手筈でしたのにっ!

「まぁまぁ、ペリーヌさん。わたしが予備機運び込んでますから……ブリタニアのガリア自由空軍でスピットのMkXは使ってましたよね。
 Mk\は性能も向上してますからきっと……」

 兵站の担当者に半ば罵倒に近い説教を開始した私に、一緒にガリアまで付いてきてくれたリーネさんが控え目な笑顔で割ってはいる。
 でも勢いのついていた私は、そんなありがたい行動をとってくれたリーネさんに対しても思わず叫んでしまう。

「そういう問題ではありませんわっ!!」

 言ってからしまったと思っても後の祭り。
 咄嗟にうまい謝罪の言葉が出てこない。持って生まれた性格とはいえ、こういったときは恨めしい。

「あ、いえ……その」
「うん、折角故郷帰還後の初陣になるのに、ブリタニア製のストライカーじゃ嫌だよね。ごめんなさい」

 笑顔でこちらの心情を慮るフォロー。
 はぁ……、この娘には毎度迷惑をかけてしまいますわね。
 いえ、本当は私がもっと自制しなければいけないんですけれど……。
 ブリタニアからここまで、ちょっとしたことですぐ他人に当たってしまう私を何度リーネさんがフォローしてくれたことか……。

「い、いぇ……でもまぁ、リーネさんの言うとおり、これはガリア軍人としての私のプライドに関わる問題ですわ。
 ですから、至急対処して頂ける事を希望いたします……よろしいですね」

 その言葉で兵站担当者を解放する。
 そしてリーネさんを振り返ってから、半歩近づき、小声で話しかける。

「リーネさん、その……アリガト……」
「はい」

 リーネさんは強くなりましたわね。
 初めの頃の引っ込み思案で自信のなさげな部分は大分払拭され、変わりに穏やかでいて真の強い、強いて言えば坂本少佐の評価通りミーナ中佐に近い雰囲気を纏い始めている様に見受けられますわ。
 こうして気の強い私の押さえにも回ってくれますし、出会った頃と違って安心して物事を任せられるウィッチになりつつありますわね。
 私も士官として中尉の階級を頂く身、ガリア派遣に伴って昇進したとはいえ、先日まで新兵だった新任少尉に指揮官としての実力で負けませんわよ。

128zet4j65z:2008/12/10(水) 13:48:41 ID:kSOL9+4H
 現在リーネさんはブリタニアのガリア派遣部隊先遣隊の一人としてここガリアにて活動をしている。
 といっても、半分無理矢理私が引っ張ってきたような物で、事実上私の副官として、列機として私が好きに使っているに等しい状態。
 今や私の背中を任せられる掛け替えのない戦友といえますわね。
 まぁ、本来は同じくガリアのウィッチと翼を並べたいという思いはありましたが……。
 ブリタニアとガリア亡命政府の政治的な綱引きで殆ど実戦経験を積む事のできなかったブリタニア駐留のガリア自由空軍は実は未熟者揃い。
 ガリア撤退戦以来のベテランは北アフリカ他の別の戦地にて奮戦中でいまさら引き抜くことも出来ないという状況ですし。
 でも、そんな状態にもかかわらず功を焦ったガリアはネウロイに対する駆逐戦闘に部隊を投入し惨敗……全く情けない話です。
 結局現状ではブリタニア、カールスラント、扶桑、リベリオンの連合軍が再編中のガリア軍に代わってガリア領内に残存するネウロイの掃討を行っていますわ。
 実戦経験自体はガリアよりもリベリオンの方が少ないはずなのに活躍できるのは、やはり兵器の差と戦術の研究、そして各ウィッチの心構えの問題ですかしら。
 今まで祖国が蹂躙していたというのに活躍できずに居て功を焦り、私のような貴族の血筋を受け継ぐものが比較的多く気位の高いものばかりで連携がうまく取れなかった、といった所でしょうか……。
 人のことは言えませんが、これでは勝てる戦いでも落としてしまいますわ……。
 そういった意味でも、いいブレーキ役となってくれるリーネさんと共にある事は私にとって幸いでしたわね。
 本当は、坂本少佐がここにいれば一番なんですけれど……、少佐も立場のあるお方、今頃は遠く扶桑の空の下で後進の指導に精を出していることでしょう。
 ああっ、でもっ! お会いしとう御座いますわっ! 坂本少佐ぁ。

「ペリーヌさん、何をくねくねしてるんです?」

 はっ!? 私としたことがついっ!

「ななな、何でもありませんわっ。そ、それよりも、リーネさん。一応予備のスピットファイアを使えるように手配してくださるかしら?」
「はいっ。じゃ、整備の方にお願いしておきますね」
「それと……、」
「ティータイムもバッチリですよ。今日はレンドリースのビスケットじゃなくて、知り合った炊事担当の人から分けてもらったガリアのお菓子がありますから」
「あら、それは楽しみですわね」
「こちらでの着任の挨拶は明朝の0800でいいんでしたよね」
「ええ、それまでは私たちは事実上の休暇中ですわ」
「じゃ、手配とか準備と架しておきますね」
「宜しくお願いいたしますわ」

 本当によくできた娘ですわよね……。
 優しくて気立てが良くて、スタイルも抜群なんて、なんだか出来すぎですわ。
 でも、坂本少佐と比べるとその、なんというか……そうですわ、凛々しさとか、質実剛健さとか、そういった物が足りませんわねっ、ふふ。
 ええ、足りないですわ。足りないから大丈夫。
 っと、私ったら一体何が大丈夫なのですかしら……ま、とりあえずもうちょっと戦況の方でも確認しておきますかしらね。

 本来私はブリタニアからの移動後に旧領地の確認と復興の為の時間が与えられていた。
 そして、実際にそれを行っていたにもかかわらず他の再編中のガリア部隊との合流もせずにこうして急ぎ足で前線に来る事になったのは、前線での損失の穴を埋める為。
 ここにくるまでに聞いた話だと、カールスラント方面から侵入したと思われる新型のネウロイが暴れまわっているらしい。
 コードネームA3と名付けられたそのネウロイは、陸戦型の頑強さと火力を持って陸戦装甲歩兵を圧倒し、強大な対空火力で航空歩兵を寄せ付けないという中々反則的な強さを持っているとの事。
 その上未確認のうわさでは、ある程度の損害を受けると形態を変化させて空を飛ぶとまでいわれている。
 話だけ聞く限りでは眉唾という感じだったのですが……この根拠地の雰囲気の悪さをみると、噂はかなり真実に近いのではないのですかしら。
 無人になっていた小さな町の一部をまるまる基地として運用している根拠地。
 その通りにはには怪我人や破損した兵器の姿が目立ち、全体的に士気が落ち込んでいる様に見受けられた。

129zet4j65z:2008/12/10(水) 13:50:20 ID:kSOL9+4H
 私が整備施設の様子を見に行ってみると、カールスラント主力歩行脚であるタイプカトルやパンテール、そしてかの陸軍大国が誇る最強の重戦闘装甲歩行脚ティーグレもいくつもそこに並べられていた。
 問題はそれがどうみても通常整備ではなく、明らかに損害を受けて修理中と思われることですわね……。
 さらに幾つかの野戦整備施設を確認すると、ブリタニア製やリベリオン製の歩行脚はそれ以上に多く修理を受けていた。
 事前に聞いていた戦力の展開状況から考えるとこの周辺の陸戦ウィッチの戦力は事実上喪失しているのではないのですかしら。
 そして、手近な整備兵に事を確認すると、残念な事にこの私の予想は正鵠を射ていると言えた。
 A3に関するお話はにわかには信じられないような内容でしたが……この様子では少し考えを改めざるを得ませんですわね。

 次に野戦病院に足を向ける。
 案の定そこには何人ものウィッチが負傷で動けない状態にあった。
 ストライカーの損害が多いことからある程度予想はしていても、まるで敗軍の陣地としかいえない光景には絶句せざるを得なかった。
 とんでもない状況になっていますのね。
 でも、考えてみれば当たり前なのかもしれない。
 ガリア開放は快挙であり、きっと歴史的な転機でもあったはず。
 ですからその事実は連日明るい面だけを報道し、人類の大きな勝利だけが一般の民衆たちへと伝えられる。
 それは後方で復興活動をしていた私たちとて同じで、『掃討戦』と言われ、『ネウロイを駆逐する』という勝利者たちの戦場がこのような悲惨な状況に陥っているなどとは想像していなかった。
 真実は前線に赴いた者のみが知り得る。
 その真実から目を背けたところで逃げ場は無く、ただ私たちはその齟齬を埋め、民衆の知る景気のいいニュースを真実に変える為戦う。
 それが『高貴な義務――noblesse oblige――』であり、ウィッチの力を天から与えられた者の使命であると私は確信しますわ。

 気を強く持ち、情報収集を再開した。
 比較的軽症で話の出来そうなウィッチに聞いてみると、どうやらA3の噂はかなり真実に近い様子。
 ただし、飛ぶのではなく高速形態になるということで、そうなってしまうと陸戦ウィッチでは追随できない速度を発揮できるらしい。
 かといって空戦ウィッチでは持てる武装の都合で決定打を与えられない……そういった意味では私のトネールやリーネさんのボーイズでの狙撃はかなり決め手になるかもしれませんわね。
 うんざりするような強さに関する話だけでなく攻略に役立ちそうな情報も手に入った。
 高速形態は地面の上をすべるように移動するので、広い平地で無いとその実力を発揮しきれないとの事。
 それからもう一つ。A3はその強大な戦闘力と引き換えに活動時間が短そうだというお話。
 実際こちらの部隊を追い込みながらも不可解な撤退をした事が何度かあったようですし。
 つまりは、勝てずとも時間を稼げばなんとかなるということですわね。
 まぁ、その様な消極策は本来の私のような貴族には認められない行為ですが、状況にもよりますわ。
 現状味方部隊の建て直しが終わら無い間は戦場で遭遇してもそうせざるを得ませんわね。
 でも、例えばもしも今この駐屯地を襲撃されたら……?
 多くの怪我人や非戦闘員を抱えた状態で、攻め手をいくつも持つ強力無比な敵から後方を守りつつ戦う……第501統合戦闘航空団全員集合なら可能な事かもしれませんが、今の私達では難しい、と言うよりは無理のある話ですわね。
 だいたい、あの部隊は異常すぎましたわ。中隊規模での部隊の撃墜数が四桁に届きそうだったなんて……。
 ともあれ幸いな事に、最前線からある程度距離をとったこの辺りはその行動範囲から外れる為今のところは安全と言った所でしょうか。
 そこまで情報を収集した後、私はリーネさんの元へと向かった。
 待ち合わせ場所はもともとは喫茶店だったらしき建物のオープンテラス。
 空は雲は大目といえども晴れ。
 使用できる建物も限られている現在では一番冴えた場所選定ですわね。準備でもいい仕事をなさいますわ。

130zet4j65z:2008/12/10(水) 13:50:56 ID:kSOL9+4H
「相変わらずいいお茶ですわね」
「うん、こういう場所でこそ、ティータイムに手を抜きたくは無いからね」
「でも、ブリタニアのティータイムは度が過ぎているとも言われてるようですから、この先戦闘が再開しましたら自重しなければなりませんわよ」
「うーん……戦場にいるからこそ、潤いが欲しいと思うんだけどなぁ」
「私としてもその意見には賛成ですわ。しかしですね……」

 そんな優雅なひと時に発せられる、私の含蓄あるブリタニア人への意見を妨害するように大きくサイレンの音が鳴り響いた。
 空襲警報!?

「ペリーヌさん! 私たちも早くっ」
「そうですわね……って、わたくしまだストライカーが……」
「もしかしたらセッティング終わってるかもしれませんし、飛行場へいけば他にすぐ使える飛行脚があるかもしれません!」
「そうですわね。急ぎましょう」

 野戦飛行場に向かう途中、既に緊急待機の部隊が飛行機雲を引きながら上昇をかけるのが見えていた。その数は8.
 目を凝らしていると、リーネさんが「リベリオンのP-51ですね。サブタイプまではわかりませんけど」と教えてくれた。
 全くよくできた娘ですこと。
 町外れの飛行場に到着するとカールスラント隊のBf-109G6も準備を完了した機体から次々に離陸し、上空で編隊を組み始めていた。
 更に扶桑隊の実機は初めて見るタイプカトル……ガリア語ではラファールと言うペットネームの部隊もタキシングに入っていた。
 出撃している数からするとかなり大規模な爆撃らしい。

「リーネさん、私たちの機材は?」
「あっちの倉庫です」

 倉庫まで走ると、案の定まだスピットファイアの準備は整っていなかった。
 もともとリーネさん様にエンジンのマッピングを変更していたのが裏目に出たのだ。

「ごめんなさい、ペリーヌさん。わたしの予備機だったばかりに調整に時間がかかってしまって……」
「仕方ないですわ、あなたが悪いわけではありません……それに、航空部隊は地上部隊ほどの損害は受けていないようですし、ひとまず現地部隊に任せましょう」
「そう、ですね……ところで地上部隊の損害と言うのは?」
「ええ、それが……」

 私は先程まで調べた状況をリーネさんに伝えた。
 A3の事はリーネさんの方でもある程度把握していたらしく、すぐに状況を理解してくれた。

「なんとなく感じてはいましたけれど、そんな状態だったんですね……」

 話が終わってもまだストライカーの調整は終わらず、回線を開いたままの無線機から聞こえる緊張感に満ちた声は、空戦がまだ続いている事を示していた。
 そして無線から状況を把握した私は焦りを覚える。
 当初、今回のネウロイの攻撃は中規模戦爆連合部隊による根拠地攻撃と考えられていた。
 でも、地上攻撃用と思われていた爆撃型のネウロイの多くは爆弾ではなく対空攻撃用の機銃が増設され、爆撃機の護衛の小型のネウロイもかなり多めに展開していた。
 この第一陣の部隊はある先鋒のリベリオン隊と程度交戦した所で早々に撤退を開始、しかしその直後に第二波が襲来。
 戦力に余裕を残しているリベリオン隊はカールスラント隊と共に撃退し、そこに第三波。
 扶桑隊も参戦し、現在は第五波の迎撃戦を行っているようですが……これは明らかに航空撃滅戦ですわね。
 既に何人かが被弾し、不時着又は帰還している。つまり、敵の戦術が成功しつつあるという事。
 未だ空にいる部隊も滞空時間には限りがありますし、私の予想が正しければ、迎撃に限界が来た時点で敵が本格的な爆撃が来るのではないですかしら……。
 そう、この地を失えば、このあたりがカールスラント側からのネウロイの突破口ともなる可能性が……。

「ペリーヌさん、あれを」

131zet4j65z:2008/12/10(水) 13:51:48 ID:kSOL9+4H
 無線に集中しながら悲観的が観測が顔に出ていたのかもしれない。
 そんな時に明るい声でリーネさんが私を呼び、滑走路の方を見るように促す。
 するとそこには各国の後詰の部隊が暖機をしている姿があった。
 P-38にP-47にFW-190にタイプドゥ。
 その全てが腕に機銃を抱えるだけでなく、背に筒のようなもの=フリーガーファウストを背負っていた。

「あれって、対大型ネウロイ専門の迎撃部隊ですよね。なんだかサーニャちゃんがいっぱいいるようで頼もしいです」
「そう、ですわね……。私ごときの心配など、まともな指揮官でしたら当にお見通しですわよね」
「どうか、したんですか?」
「いえ、いらぬ気をまわしてしまっただけですわ。忘れてくださいませ」

 そして無線は、本格的な爆撃部隊の到来を告げた。
 暖機を行っていた後詰の部隊も次々と出撃していく。
 心が逸る。
 私の為のストライカーの調整の方はと言えば、施されていたチューンが余りにも正規手順から逸脱していたとの事で難航していた。
 すい先ほどに何とか目処が立ったらしい。
 まったく、あの無責任なリベリオン娘は余計な事しかしませんわね……。
 憤慨を押さえ込みながら、すぐ近くでストライカーを装着し、魔道エンジンの起動を行っていたリーネさんに命令を下す。

「リーネさん、私はもう暫くかかりますわ。先に出撃して迎撃の支援を行いなさい」
「ごめんなさい……拒否します」
「ええ……ってぇ! なんですってぇ!?」
「私たちまだ正式に命令系統に組み込まれてないですし……それに、それにあの……私はペリーヌさんの、ブルプルミエの2番機で、ブルーセカンドなんです。だから、一緒に出撃したいんです」
「まったく……あなたと言う方は、本当に気が小さいのですわね。やはりそんな方を一人であげるわけには行きませんわ。私の準備が終わるまで待機なさい」
「あ……はい!」
「ほら、しっかりと復唱なさいな」
「リネット・ビショップ、待機します!」

 ふふ、しっかりしているように見えてまだまだヒヨッコ少尉。私が指揮官として導かねばならないようですわね。
 それにしても、正しい上に嬉しいことを言って頂けるではありませんか。
 あなたの様な方が私の2番機でいてくださる事に、改めて感謝いたしますわ。
 そんな事を思っている間にも爆撃機狩りの部隊が次々と離陸していく。
 晴れていた空はいつの間にか雲が増え、今では雲の切れ間に青空が覗く程度になっていた。
 そんな空模様を眺めながら、私は楽観すると同時にわずかに落胆もしていた。
 現在の状況は、指揮官がネウロイの攻め手を読みきってチェックメイトを掛けに行っていると言っても良かった。
 初期段階での迎撃部隊が消耗するに任せて航空撃滅戦に引きずり出されたと見せかけ、敵本命に対しては温存していた部隊をぶつける。
 いささか冷酷すぎる嫌いはあるが、それは的確な作戦指揮と言えた。
 だからこそ、ストライカーの調整の遅れた今、私たちに出番が回ってくるとは思えない。
 そしてそんな思いに追い討ちを掛けるように、無線機からは大型機撃墜の報がぽつりぽつりと入り始めていた。

「ふぅ、どうやら出番はまわってきそうにありませんわね……」
「そうですね、それに、幾らネウロイでもこれだけの手の込んだ事をしたら暫くは活動も低調になるでしょうし」
「明日の着任以降は、哨戒任務の日々が続きそうですわねぇ……こんなことでしたら、着任前を理由にティータイムを楽しみ続ければよかったですわ」
「ああは、でもそれは余りにも不謹慎すぎたんじゃないですか?」
「ふふ、そうですわね」

 終わりを確信し、肩の力が抜けて二人笑顔で冗談を言い合う。
 出撃していった者達に怪我をしたものもいただろうし、二度と飛べない身体になったものもいたかもしれない。
 それでも、私たちにはその後を埋める覚悟は出来ていたから、今はお互いに今日無事である事を祝う事のできる権利と、義務があった。
 そこに、そんな安堵の空気を吹き飛ばすような通信が入った。

『敵爆撃隊第二波接近! 大型ネウロイ4。緊密な編隊を組んで……違う! 今目視した! なんてことだ……4機でA3を懸架してる!!!』
132zet4j65z:2008/12/10(水) 13:55:33 ID:kSOL9+4H
とりあえずは以上です。
タイトルと敵はとあるSTGからだったりします。

途中まで書いてから語尾をもっとペリーヌの口調っぽくして、
破綻をきたしたんで戻して、と何度も書き換えてるうちに時間がかかってしまって参りました。
後半ひたすら戦闘の予定です。
133名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 16:48:24 ID:pHZ+f0Yw
GJ!あなたのSSは半ミリオタの俺にとっちゃ最高に面白いよ
成長したリーネちゃんが凄く好みだ
ペリーヌ一人称を良く使いこなしてるし文章力もあるねえ
134名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 19:40:54 ID:GzSJM4MU
もう一つのリーネイラはもう書かないのかな?
待ってるんだが
135ユアリア・ウィアニア 1/8:2008/12/10(水) 20:37:24 ID:dph4SFQl
>>118
エリスラまってた!ウルリカまってた!ウーシュ大好きなエーリカが可愛すぎる。
と言うかもう姉妹二人とも可愛すぎる。姉妹百合強烈過ぎる。ウーシュ積極的過ぎる
全体的に言うとGJすぎる、グッジョブすぎる!

>>132
GJ!!ミリ的なことは全く分からない自分でも氏の話は読んでいてわくわくしてきます
そしてペリーネ!ペリーネ!好きだけど自分じゃうまくかけないからすごく楽しめた
続きも期待してますー

以下ビューリングとエルマな話どうぞ

―――


意外にも彼女の背中の大きいことを知ったのは、同じ部隊に配属されてから3ヶ月は裕に経った頃だった。


彼女たっての推薦で新たに任命された中隊長の気まぐれか、それとも何か含みがあったのか、その日は
珍しくロッテの相手が普段とは違っていて、ビューリングは彼女の2番機についていた。青く晴れた空に、
小鳥のように舞い上がる彼女の衣服は「スオムスの空の色なんですよ」と彼女がキャサリンにかつて得意
そうに語っていた通り淡い水色をしていて、ビューリングは眼を細めて彼女を、正確にはその向こうにいる
黒ずんだ敵機を眺めていたのだ。不思議な心地だ、と思った。こんなにも真正面から彼女の背中を見詰める
ことなど初めてだったから。少し前まで彼女はこの中隊の隊長だったと言うのに、彼女と来たらもたもたと
後ろから、おろおろと頼りなく、しんがり辺りをうろついているばかりであったから。

(──スオムス一番、行きますっ。)

耳元の通信機から、彼女の声が届く。──震えている。大丈夫だろうか。普段同じ編隊にいるキャサリンの
声とは全く逆のベクトルを持った声。吹いたらそのまま飛んでいって見えないところまでいってしまうのでは
ないだろうかと思い、ビューリングは焦点をその、エルマ・レイヴォネン中尉へと合わせた。…僚機の心配を
しながら戦闘を行うなど、かつての自分では考えられなかった。けれど今は驚くほど自然に、そのプログラム
が行動にインストールされている。

「守ってやる。おびえるな」

コールサインもなく、彼女にだけそう呼びかけた。眼前のエルマ中尉の体がびくり、と跳ねる。

「おびえるな。守ってやる」

同じ言葉を、もう一度。大丈夫、なんて約束はしない。そんなこと出来るはずもない。けれど誓う。約束は
出来なくても、何があっても、全力で守ってやると。…それが僚機としての勤めだから、と言ってしまったら
そっけなくなってしまうけれど、それでも自分にとってはとてつもない進歩だ、とビューリングは思う。要は
もう、あんな思いはしたくないから。自らの過失で仲間を失ったり、仲間を失って自分までも見失うなんて
ことは、もう。
…そんなこといちいち口にしている暇があるわけが無いから、要点だけをただ述べる。守ってやる。だから
そんなに怯えるな。大丈夫、お前ならできるさ。…守りたいんだろう?スオムスを。それだけの想いが込め
られていることに、果たして彼女は気付くだろうか。伝わらなくてもいい。でも、伝わるといい。心のどこかで
そんなことを願って。


(──はいっ)

136ユアリア・ウィアニア 2/8:2008/12/10(水) 20:37:58 ID:dph4SFQl

震えた声を無理やりに矯正したかのような、裏返った返事。けれどその響きに彼女の強い意志を聞き取って、
ふ、と口許を緩ませた。そして自らも獲物を構えて、彼女を援護する姿勢をとる。見つめる先には蒼い空と、
僚機である金髪の少女と、倒すべき敵。…あの空の向こうにいる、唯一無二の親友が今の自分を見たら笑う
のかもしれない。あなたらしくないわ、と高らかに笑って──それでも、祝福してくれる気がした。頑張ってね、
と、激励してくれるような気がしてならなかった。
なぜだろう、一緒に戦っていた頃はお互いに憎まれ口ばかりで、口げんかばかりで、そんな穏やかな会話
なんて交わしたことなどなかったのに。放っておくと、思い出はどんどんと美しくなっていってしまうから困る。
あの頃ただのライバルでしかなかった彼女も、いつのまにか心の拠り所になり、そして今では都合よく自分を
励ましてくれる相手へと成り果ててしまった。
弱くなったものだ、私も。ビューリングがそんなことを思った、そのとき。

(前向き前向き、ポジティブシンキング!)

不意に、そんな声が頭によぎった。…少しでも後ろ向きな気持ちになると、最近はいつでもこの言葉が頭の
中に流れてくるから困る。壁に頭を押し付けて、どう考えても下向きに繰り返しているその様が何だかいつも
滑稽で、『それ』が始まると実は自分を含めた隊員が皆、面白半分に眺めていることなど言った本人は気付
いてさえいないだろう。まあ次の瞬間にはその言葉どおりけろりとしているのだから、本人もそこまで深く
考える性格ではないのかもしれないが。
それはこちらに背を向けて、まっすぐ前を見据えているかの少女の口癖であり、記憶が正しければ、自分
より一階級上であるところの彼女はビューリングよりも3歳も年下のはずだった。

視界の端に、もうひとつの機影が見えた。どうやらエルマはまだ気が付いていないらしい。恐らく目の前の
敵に一杯一杯なのだろう。怖がりの彼女にとっては、そうしているだけでも精一杯なのだ、たぶん。

(怯えるな。守ってやる)

三回目に呟くのは、心の中で。自らに課した誓いを確認するためだけに。
いつも逃げているだけの彼女がまっすぐに敵に向かっている。その背中をこうして真後ろから眺めるのは、
事実上初めてだった。

自分の掃射した弾が命中し、落ちていくネウロイ。エルマのほうを見やると彼女もまたようやく相手を撃墜
したようで、ほう、とひとつ息をついていた。ビューリングが斜め後方にいるのを見やって、小さく微笑んで会釈
をする。けれどビューリングはそんな暇ではないだろう、とばかりにふいと顔を逸らして、次の敵がやって
きた方向を見やった。それがごまかしのためだったと、エルマは気付いたろうか。今しがた見たその光景が、
信じられないとばかりにひとり息を呑む。

驚いたのは、ちっぽけだとばかりその背中が意外にも大きいことに気付いたから。





「あ、あの、ビューリング少尉っ!」

不意に彼女が話しかけてきたのは、ビューリングがサウナから上がり一息ついて、ミーティングルームで
コーヒーを飲んでいるところでだった。部屋の隅ではウルスラが、なにやら小難しそうな本を付箋まみれに
している。ゆっくりと落ち着きたいビューリングの頭を悩ませるキャサリンやハルカたちと言った騒がしい
面々は居らず、つまりは今とても、ミーティングルームは居心地良い沈黙に包まれていた。

なんだ、と答える代わりに顔を上げる。そもそも自分からビューリングに話しかけてくることが少ない彼女が
恐ろしく緊張した様子で顔を真っ赤にしながらそこにいた。そこでまた、おや、と思う。

彼女はこんなに背が高かったろうか、と。

137ユアリア・ウィアニア 3/8:2008/12/10(水) 20:39:00 ID:dph4SFQl

ええと、あの、その、だから…。一体何を言いたいのだろう、何か言いにくいことでもあるのだろうか。その
くらいにエルマは言いよどむのだった。彼女はいつも少し遠くから少しうつむいた上目遣いでこちらを見て
来るのが常であったので、なぜか背筋をしゃんと伸ばして、直立不動の姿勢をとっている。見下ろされる
その感覚が、ビューリングには何だかとても新鮮に感じた。

「…エルマ中尉」
「は、はひっ」
「…身長は?」
「え!?し、身長ですか、あの、え、えっと、162センチメートルですっ!!」
「………そうか」

答えを貰ったあとで、らしくない質問だ、と気恥ずかしくなって思わず視線を手元のコーヒーに落とす。エルマが
先ほどいれてくれたものだ。まだ残っていた一口口にするといつの間にかぬるくなっていて。まずい、とつい
呟いた。それもこれも、これがいつまでも待たせるせいだ、と似合わない責任転嫁をする。
「あ、新しいものを淹れますか?」
が、責任を押し付けられた本人は先ほどの緊張なんて忘れたようにのほほんと笑っていて──そこでようやく、
ビューリングはあることに気が付いた。

「…エルマ中尉」
語り口はいつもと同じ。…自分から彼女に話しかけるなんて、しかも二度も。らしくない、本当にらしくない。
思いながらも、彼女に言いたいことがあった。
「はひっ!」
またしまりの無い返事が返って来る。ストーブのほうで新しいコーヒーをつくっていたエルマがぴっ、と体を
伸ばしてこちらに向き直っていた。まるで上官の前でするかのように。

「背筋は伸ばせ。だから小さく見えるんだ。あと敬語も要らない。貴官は上官だろう」

162cmだと、先ほどエルマは自身の身長を述べた。こんなところでサバを読んでも仕方がないから、恐らく
それは一番最近の身体検査ではじき出された正確な数値なのだろう。──対するビューリングの身長は
165cm。驚くことに自分と彼女とは、たった3cm、親指ほどしか変わらないのだ。てっきりもっと小さいと
思っていたから、さきほど身長を聞いた時ビューリングはひどく驚いた。
そう勘違いしていた理由が、エルマがいつも背中を丸めているからである、と気付いたのは、同じ部隊に
配属されて裕に4ヶ月は経った今になって。今まではむしろ小さいほうだと思っていた。それは常に自信
なさ気に肩を落として、高めの身長を隠すように猫背をしていたからだと、たった今ビューリングは気付いた。

もったいない。もっとしゃんとして、すっくと立っていれば少しは威厳もあるだろうに。
そんな風にしているから誰からも彼からもなめられるのではないか、とかつて彼女を明らかに舐めていた
自分を棚に上げて思う。そう、そうして猫背にしているあちらが悪いのだと、再び責任転嫁をして。

「…せ、背筋のことは気をつけます。でも、あの、言葉は」
「前はそこまで敬語を使っていなかったろう?」
「あああのころは、いちおうたいちょうだった、ので…気をつけていたんですが、敬語のほうが、しゃべるの、
楽なんです…」
「それでも貴官は中尉、こちらは少尉だ。上官が部下に怯えているようじゃ、しまりが無い」
「で、でもお」

138ユアリア・ウィアニア 4/8:2008/12/10(水) 20:41:03 ID:dph4SFQl

『気をつける』と言いながらも目は潤み、声は震えて、エルマはどんどんと体を小さくさせるばかり。はあ、
とビューリングがため息をつくとそれだけでも体をびくつかせる。
…そしてそのため息が、彼女の何かのスイッチを入れてしまったようだった。

「…私が中隊長になったのも…ぐず、中尉になったのも…ひっく、えぐ、私が第一中隊にとって『いらん子』
 だったからで、だから…形だけでぇ…ひっく」
「…おい、こら。泣くな」
「だ、だって、わだじ…うう」

こまった。表面上は冷静を装いながら、内心は自分がひどくうろたえているのをビューリングは自覚していた。
最近はめっきりなりを潜めていたからうっかりしていたが、そうだ、このエルマはかなりの泣き虫でもあった。
あの陽気なキャサリン辺りがいれば「エルマ中尉、元気出すねー」と明るく励ましてやることが出来るの
だろうが、残念ながらここにいるのはビューリングと、ウルスラの寡黙コンビのみ。そのウルスラも先ほどから
微動だにせず本を読んでいるばかりで、何の役に立ちそうも無い。…いや、エルマが泣き出した瞬間ぴくり
と顔を上げ、けれどその状況を見て取るやまた本に目を落としたのをビューリングは見たから、『自分が
悪いんだから自分で何とかして』と言う物言わぬ意思表示なのかもしれなかった。

「ぶんふそうおうなんです、中尉なんて、わたしには…
…そんなのわだじが、一番分かってるんです…うう、うわああん」
「わかった、中尉の言いたいことは分かったから」

だから泣きやんでくれないか、お願いだから。何をしてやったらいいかなどわからないが、何かはして
やらねばいけない。そう思ったビューリングは慌てて席を立ってエルマの傍に寄ってやる。けれどエルマは
それに気付くことも無く、うつむいてわんわんぼろぼろと涙を流すだけ。ビューリングとしてはそこまでひどい
ことを言ったつもりは無かったから、ただただ弱りはてるばかりだ。…もちろんのこと、それが相手方に
伝わっているはずは無かったが。
ぱたん、と何かが閉じられる音が響いた。何の音だとみやると、本を閉じたウルスラがちょうど、付き合って
いられないとばかりに立ち上がったところで。ビューリングがすがるような思いで見るのに、ウルスラはそれを
小さく首を振って突っぱねる。
物音を立てず扉を開いて、吹き込んだ冷たい風に顔をしかめるビューリングのことなど知らない、といった
ように彼女はその扉を冷たく閉じるのだった。

さて、本当に困った。ついに孤立無援だ。何も気付かずに、エルマはわんわん泣いている。まるで小さな
子供のようだ。身長は自分とそう変わらないはずなのにほら、背中を丸めているものだからとてもとても小さく
見えるのだ。もしかしたら彼女の体がビューリングに比べると華奢だということもあるのかもしれないが。

(中尉なんて分不相応…か…)

弱り果てたその心の隅で、ビューリングはそんなことを思った。ああ、そうだ。自分もかつて、そんなことを
上官に告げたことがある。あれは──このスオムスに転属になる前のこと。こちらに転属するか、それとも
中尉任官かと迫られて、ビューリングは迷わず前者をとった。唯一無二のあの親友を喪ってこの方、贖罪と
して死ぬために生きてきた。そのためには最前線にいたほうがいい。中隊長任官などとんでもない。そもそも
満足に命令も聞けない自分が誰かの上に立って指示をするなど、面倒極まりない。だから、その命令を拒否
することにした。32本目のマウスピースを噛み潰した上官にわざわざ抗うかのように。

…でも3歳下のこの少女は、エルマは違う。彼女にはたぶん拒否できる権限など、選ぶ余地など無かったのだ、
多分。恐らくはハッキネンに言われるがままわけもわからず任命されて、できるわけがないのにと迷い続けて、
『いらん子』ばかりでまとまらない部隊にくよくよしながらも逃げることなど出来なくて。だからいつも肩を丸めて、
半分泣きながら自分たちの前に立っていたのだ、たぶん。見ていなかったから、その背中が意外と大きい
ことなんて知らなかった。彼女の背中はいつだって、自分達を受け止めるためにそこに頼りなくもちゃんと
あったのに。

139ユアリア・ウィアニア 5/8:2008/12/10(水) 20:41:56 ID:dph4SFQl

コーヒーの芳しい香りがミーティングルームを包んでいく。どうせ安物の豆なのだろうが、普段は落ち着く
その香りなのに、今日ばかりはそれどころではない。エルマが泣いているのはよくあることとして、今部屋に
いるとは彼女と自分だけで。どう考えてもビューリングが泣かせたと分かる状況で。
…こんなところを他の誰かに見られたら、恐らく1週間はからかわれ続けるだろう。そんなことはまっぴら
ごめんだ。ビューリングは思う。…いや、けれど…どうすればいいんだ?

背筋を伸ばせ、とエルマに言った。直接的には違うが、だからエルマは泣いた。けれど本当に猫背になって
いたのは自分のほうではないか。つまらない後悔にとらわれて、買われた能力を軽んじてつっぱねた。そんな
自分が、彼女にどんな言葉をかけてやれるだろう。ビューリングには分からない。そんなこと、今まで一度も
考えたこと無かった。だっていつだって自分のことばかりで、その裏で自分とは全く真逆の悩みを抱いている
人間がこの世界のどこかにいるかもしれないなんて、想像さえ。

すう、と大きく息を吸う。はあ、と大きく息を吐く。…けれど、なんとかしてやりたい。元気付けてやりたい。申し訳
ないとは思っている。…だって、彼女もまた自分の仲間なのだ。階級も年齢も身長も関係ない。ただただひた
すらに大切な、仲間だから。

「…怯えるな。」
ぽん、と両肩に手を置いて、ようやく口に出来たのはそんな言葉だけ。この間の戦闘で、怯えるエルマに
ビューリングが告げた言葉の一つ。
ビューリングも、他の隊員も、本当はちゃんと知っている。エルマの腕は悪くない。ただただ、臆病が過ぎる
だけ。怯えずに敵に向かっていく自信が付けば、彼女の伸びしろは計り知れないと。

怯えるな。怖くない。私たちがいる。お前の後ろでちゃんと、その背中を守っている仲間がいる。
ひとりじゃない。

伝えたい気持ちは溢れているのに、どうにもうまく言葉に出来ない。不器用な自分が憎い、と思う。今まで
ずっと自分勝手に生きてきたから、落ち込んだ誰かを優しく慰める方法なんて分からない。もどかしくて仕方が
無くて、ビューリングはエルマの肩に置いた両手に力を込めた。何もかも面倒になってこの衝動のまま抱きす
くめたい、と思ったけれど、そうしたらエルマの小さな小さな心までも押しつぶしてしまいそうだからすんでの
ところで思いとどまった。
エルマはうつむいたまま何も言わない。嗚咽さえも聞こえなくなってしばらくしたあと、ようやくエルマが口を
開いた。

「…ごめんなさい」
「何で謝る」
「…わたし、弱虫で、すぐ泣いてしまうから…ご迷惑、かけてしまって」
「かけられてなんかない」

目の前の金色の頭がゆっくりと上がって、真正面から潤んだエメラルドの双眸がビューリングを捉えて。
こうして近くで向かい合うと、彼女と自分の視線がさほど変わらないことに改めて気付かされる。小さくなんか
ない。エルマは小さくなんかない。ちっぽけなんかじゃないよ、お前は。じい、と見つめて伝えるけれど、
果たして相手に伝わったかどうかは分からない。不安に揺れたままだから、たぶん伝わってはいないだろう。
…なんて愚かだろう、自分は。大切なことはいつだって、言葉にしないと伝わらないのに。

140ユアリア・ウィアニア 6/8:2008/12/10(水) 20:42:27 ID:dph4SFQl

「…ネウロイの攻撃を先読みできたりしたらいいですよね。…未来を、見ることが出来たりとか。
そうしたらきっと、怖くないのに」
「…そうだな」

話題を摩り替えるかのように、冗談めかしてエルマが言う。そうして彼女が淡く笑ったことで、ビューリングは
ひどくほっとした。正直なところビューリングはネウロイの攻撃を恐ろしいと思ったことはないけれど、エルマが
それで笑うのならいくらでも肯定してやろう、と思う。
安心に思わず顔を緩ませると、突然はっとしたかのようにエルマの顔が引き締まった。

「…あのっ、ビューリング少尉っ!」
「なんだ?」
「その、このあいだは、援護してくださってありがとうございました!
 …もう大分前のことですけれど、少尉が後ろで援護してくださったので、あまり怖くありませんでしたっ」
「援護…ああ、あのときのことか」

それはジュゼッピーナがこちらに来る前の話だから、数週間ほど前のことになる。珍しくビューリングが
エルマとロッテを組んで戦闘に出たときだった。ああ、そういえばあの時初めて、自分はエルマの背中を
見たのだ──今またしばらく見ていなかったあの背中が、どうしてか少し懐かしい。水色の空に溶け込む
軍服と、太陽の光にキラキラと光る薄い金色の髪が、とてもとても綺麗だと思った。自分のそっけない励ましに
返事をして、まっすぐに敵に向かっていくその姿に、彼女の将来性の姿を垣間見た気がした。

「だからあれは、囮に使っただけだと」
「そうかもしれません──でも、前向きに考えてみたらそう思えたので。だから、私は嬉しかったんです。
 色々とあってずっと言いそびれてしまいましたけど…本当にありがとうございましたっ!」
「…いや、だから…──まあ、いいか」

それ以上否定するのを止めたのは、先ほどとは打って変わってエルマがきらきらとした笑顔でいたからだった。
…こうして自分に礼を述べるくらいで笑んでくれるのなら安いものだ。ビューリングは思う。だって自分の中
には、彼女を笑顔にしてやれる言葉など無いのだから。もどかしいくらいに、悔しいくらいに、自分はこう
いったことについて本当に能無しだと。

もしも、このあとスオムスから本国に戻ることがあったら──そのときは、あの昇進辞令に署名をしようか。
頭の片隅でビューリングはそんなことを思った。あの時突っぱねた中隊長の任を、今度は自分から受けるのだ。
…今の自分なら、背筋を伸ばしてそれを拝命することが出来る気がする。後ろ指差されても気にしない。こう
して仲間と過ごすのも悪くないと、思えるようになった今なら。あの司令はどちらにしてもにがにがしい顔を
するだろうが、そんな彼の鼻を明かしてやるのも悪くない。

だって誰がなんと言おうともただ一人、そんな自分を祝福してくれるであろう人間がここにいる。それは辛い
時に縋る亡き友人では無く、人の形をして36度5分の体温を持ってここに確かに存在しているのだ。
『前向き』を口癖にする後ろ向きな彼女は、他人の幸福に対してひどく敏感だ。
相手が自分にどんな暴言を吐いたって、その誉れをにこやかに「おめでとう」と言える人。
「囮に使っただけ」と言い放たれてもなお「守ってくれてありがとう」と微笑むことが出来る人。
――ならばそれが、同じ部隊の大切な『仲間』の、めでたいだったなら?そんなの想像するまでもない。
もしかしたら本人よりもはしゃいで喜ぶかもしれない。

そうしたらもう一度エルマに言おう。
「怯えるな」と言ってやろう。
今は表面ばかりの、空ろでしかないこの言葉でも、彼女と同じ場所に立ったなら少しはが価値が生まれる
はず。
勇気付ける言葉だって、一つくらいは導き出せているはず。…今、それを伝えるにはビューリングは少し
ひねくれすぎていたから。言葉にする代わりにエルマの頬に手を伸ばしてその涙をぬぐってやった。

141ユアリア・ウィアニア 7/8:2008/12/10(水) 20:44:27 ID:dph4SFQl

「ビューリングがエルマ中尉を泣かせたってー?まったくー、ビューリングにもこまったものねー!」

どんどん、ばたん!とやかましく、ウルスラに伴われたキャサリンがミーティングルームに駆け込んで
来たのはちょうどそのときだった。
突然のできごとにビューリングもエルマも身動きができず、その姿勢のまま扉を見つめて固まる。…が、
驚いたのはどうやらこちらの方だけでは無かったようだった。ドアを開け放したまま、キャサリンたちも
固まってしまったからだ。…いや、正確にはウルスラは無反応だったわけだが、それは対した問題では無い。

「…ユーたちがそんな関係だったなんて知らなかったね。ウルスラ、行くね。ミーたちは邪魔者ねー」

いの一番に硬直から解けたキャサリンが、頭をかいてウルスラの頭に手を置く。微かにうなずくウルスラ。
そこでようやく、ビューリングとエルマ頭も動き出す。何をどうみて勘違いをしているのだ、と思いきや、よくよく
考えると二人は至近距離で向き合っていて、ビューリングはというと左手はエルマの肩に手を置き、右手は
あろうことかエルマの頬に添えられているのだった。これではまるで――

「ち、ちがいますごかいですっ!!ええと何を誤解してるのかっていうとそれは………
 …とっとにかく違うんですキャサリン少尉っ!!」
「…大丈夫!!ミーは二人が女の子ずきーの変態さんでもちゃんと仲間として認めるねー」
「…仕事と嗜好は別物。」
「ウルスラ曹長までっ!!そ、それにそれはわたしのセリフですようううぅぅ!!」

北欧育ちのためか、もとは雪のように白い肌をした頬を真っ赤に染めて、エルマが叫ぶ。部屋を出て行こうと
する二人の服の裾を掴んで押しとどめようとしたから、自然とビューリングの手は振りほどかれてしまった。

「あとは二人でごゆっくり、ねー」
「わだしをみずでないでぐだざいいいいぃぃぃ〜〜〜!!」
「大丈夫ねー。ビューリングはあれでいいやつねー」
「そういうもんだいじゃありません〜〜〜〜!!!」

つい先ほど泣きやんだばかりのひばりが、また泣き始める。

(あれほど泣きやますのに苦労したと言うのにどうしてくれるんだ。)

ビューリングはその喧騒を一人はなれたところで眺めながらひとりごちた。相手のキャサリンはというと楽し
そうに笑うばかりでなんの解決にもならない。

ふと、視線を横にやると、コーヒーがすっかり煮詰まってしまっていた。慌てて火から下ろしてカップに一杯注ぐ。
先ほどまで座っていた椅子に座して口にすると……苦い。そして、熱い。ああなぜだろう、頭を通るその苦い
豆汁は一瞬で喉まで降りて行ってしまうのに、なぜだかその熱はいつまでたっても顔の表面から抜けては
くれないのだ。さきほどエルマの涙をぬぐった右手の人差し指までピンポイントで暖めて、なかなか冷めて
いってくれない。熱くなっていくばかりなのだ、顔も、指も、心まで。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜〜〜ひどいいぃぃぃ〜〜〜〜」

結局置いていかれてしまったのだろう、エルマが情けない声を上げた。ふう、とビューリングはひとつ息を
ついてポケットから煙草を取り出す。ライターを探すもみあたらず、どうしようかと思っていたところでエルマが
こちらを見ていることに気が付いて、仕方なしに吸うのを止めた。…どうやらエルマはあまり煙草の煙が好き
でないようなのだ。直接聞いたことは無いが多分、そうなのだろうと踏んでいる。まあ、吸っていないのに
好む人間も珍しいだろうが。

142名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 20:51:06 ID:dph4SFQl

先ほどキャサリンに言われたことを気にしているのだろう。気まずい沈黙が流れた。…エルマと二人きりの
時の沈黙をこれほど重苦しく感じたことはいまだかつて無い。むしろ相手の存在など、そこまで気にしていな
かった。
こういうとき、一体何を話せば良いのか。ビューリングは考えあぐねて顔をしかめる。エルマもまた、何かを
言いたそうにもじもじしているけれど、何も言わない。

と、ふと、ずいぶんと昔のことを思い出した。そう、たしかそれはこの『いらん子中隊』のメンバーと、初めて
顔をあわせたときの。

「…好きな食べ物は、」
「は、はい?」
「ブリタニア料理じゃなければなんでも。あれは料理じゃない」
「は、はあ…」
「恋人はいない。それと…癖と特技、だったか?」
「え、えっと…」
「どうした、聞いてきたのはそちらだろう」

あの顔合わせでエルマが求めた質問だった。あの頃は『みんな仲良く』なんて興味も無くて、つい突っぱねて
しまったけれど。

あ、もしかして…
その微かな呟きとともに、見る見るうちに沈んでいたエルマの顔がぱあ、と明るくなるのを見た。はい、はい
はいっ!あの、好きな動物とかっ!そう矢継ぎ早に口にするところを見ると、どうやら先ほどのキャサリンたち
とのやり取りはすっかりと忘れてしまったように思われる。凹みやすいけれど、割と単純。そう言えば最初から
そうだった。

たまにはこういうのもいいだろう、と思いながら、テーブルの上のコーヒーを口にすると、不思議と先ほどより
もずっと美味い。どうしたことだ、と目を見開いたら、少し得意そうにエルマが笑った。

―――
以上です
最初のやりとりはあれ3巻冒頭でみんながしゃべってるやつ、タイトルは英語で書くと「Your rear, We're near.」
最近この二人好きすぎて某喫茶店話はきっと前後に二人で会ったんだろ?とにまにま妄想してますごめんなさい
21X2w2Ibでした。
143名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 22:12:04 ID:M/0sIwON
>>142
をを…なんて良い話なんだ。この二人、大好きなんですよ!GJ!
ビューリングさん素敵すぎるw

さて、突然ミーナリーネを書き始めたんだが。頭のなかで妄想してるうちはいい感じなんだけど、文にしはじめると途端にわけがわからなくなるんだ…
だれか元気をわけてください
144名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 22:32:18 ID:No1lImOZ
>>142
GJ!質問ちゃんと覚えててくれたビューリングさんにエルマさんが惚れちゃうんですね、わかります。
オヘアさん自分もロリコンのくせに…!って、それを隠すためにあえて率先して周りをからかってるのか。
>>143
自分のでよければいくらでも。ミーナリーネは初かな?期待してる。なんとかがんばってくれ!
145名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 22:37:04 ID:dph4SFQl
>>143
自分のもいくらでも!
ミーナイラwktk
146名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 22:43:20 ID:tVSM3Reg
今日は無駄に忙しく投下も出来なければ感想も書けないぜ・・・・
皆さんGJ
147名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 22:43:50 ID:t7FLCVaf
こんばんは。mxTTnzhmでございます。

>>118 ねこぺん様
イイハナシダナー とてつもなくGJ!

>>132 zet4j65z様
GJ! 後編楽しみにしてます。
ご推察の通り、例のSSタイトル名は某STGのBGMから頂きました。NEU TANZ MIX好きです。

>>142 21X2w2Ib様
GJ! 小説の幕間劇を読んでいる様で、いや、実にお見事!

>>143
─wwヘ√レvv〜ヘ(゚∀゚ヘ)元気が出るビーム


今回は前スレ>>318-321、保管庫No.0479「on and on」の続編になります。
少佐の腕前や、いかに。軽くお笑い的なノリで読んで頂ければ。
「origin」どうぞ。
148origin 01/05:2008/12/10(水) 22:44:49 ID:t7FLCVaf
夕暮れ時。
ネウロイの襲来も無く、訓練、食事、休憩……と全てスケジュール通り、順調に事が運ぶ。
501部隊にとってはごく平凡で、平穏で、そして貴重な一日も終わりに差し掛かっていた。
ミーナも必要な書類に一通り目を通した後、ううん、と背伸びをした。
「ミーナ、少し休んだらどうだ?」
横で腕組みをし様子を見ていたトゥルーデが気遣い、穏やかに諭す。
「またにはテキトーもいいんじゃない?」
トゥルーデの横にあるソファーにだらしなく寝転がるエーリカも同調する。
「まあね。でも、こういう時こそ、しっかり仕事しないと」
「ミーナらしいな」
夕日に染められたトゥルーデの顔が和らぐ。窓の外を見る。まもなく日没だ。
エーリカもソファーの上で穏やかな日常を満喫していると見える。
ミーナは書類をとんとんとまとめると、必要な部分にすらすらとサインをしていく。
カールスラント製万年筆の書き味はとても滑らかで、かりかりと嫌味な音を立てない。
ミーナを含め、カールスラント出身者がこぞって愛用している理由だ。
突然、執務室のドアが開かれた。
扶桑の割烹着の姿をした芳佳だった。
「ん? どうした宮藤?」
振り返るトゥルーデ。
「お、ミヤフジぃ。今日、食事当番?」
「宮藤さん、どうかしたのかしら?」
「大変です、坂本さんが!」
芳佳の言葉に、一同は戦慄した。

「何ですの、この異臭は?」
鼻をハンカチで押さえてペリーヌが台所にやって来た。
「少佐が料理を作ってたんですけど……失敗しちゃったみたいで」
エプロン姿のリーネが、外も中も完全に黒焦げ……煤か灰の塊になった鍋……つい1時間前まで鍋だった物体……を指して言った。
「少佐が? 一体何をなさっていたの?」
「……このお鍋、もう使えませんね」
苦笑するリーネ。
149origin 02/05:2008/12/10(水) 22:45:42 ID:t7FLCVaf
「どうして無茶したの、美緒」
「すまん」
割烹着姿のまま、ベッドに寝かしつけられる美緒。横には仕事そっちのけで美緒を看病するミーナの姿。
美緒はどこか元気がなく……まるで何かの瘴気に当てられた様な顔をし、声にいつもの張りが無い。
「宮藤、お前が横に居ながら何と言う……」
「いいんだ、バルクホルン。今回、宮藤には一切手出し無用と厳命したからな」
「しかし……」
「そうよ美緒。宮藤さんは料理が得意なんだから、彼女に任せれば良いじゃない。ネウロイとの戦いでもないのに何故そこまで」
「これは私の……私自身の“戦い”なんだ」
「た、戦い?」
ぎょっとする一同。
「でも少佐、どうしてそこまで?」
エーリカが興味津々と言った感じで口を挟む。
「私は確かにウィッチだが、その前に、ひとりの扶桑の女だ。二十歳も近いと言うのに、料理のひとつも出来んで、どうする」
「別に料理ができなくたって……」
「そうそう。トゥルーデなんて、か〜な〜り雑な味付けなんだから。別にいいじゃん」
「なっ!? クリスとエーリカの時は別だぞ?」
「私は……煮物ひとつまともに作れぬ不器用な女……」
美緒は諦観の呟きを口にすると、それっきり、毛布をかぶって皆に背を向けた。恥じらいか、情けなさを自認したのか。
「ちょ、ちょっと美緒?」
「少佐、何もそこまで思い詰めなくても」
「そうですよ坂本さん! 何もいきなり煮物からやらなくても良かったんですよ」
「……宮藤さん、貴方美緒に一体何を教えようとしてたの?」
「はい?」
一同から疑惑の視線が向けられる。おどおどしながら答える芳佳。
「煮物です、扶桑の。色んな具を一緒に柔らかく煮込んで味を染み込ませて、おかずにするんですよ。
煮物といっても煮込み、煮付け、含め煮、煮染め、煮浸し……、色々有るんですけど、今回は鶏肉とにんじんと……」
「それは作り方が非常に難しいものなのかしら?」
「いえ。……それほどでも」
「『煮物』か。カールスラントで言うと、家庭料理の……アイスバインやアイントプフみたいなものか?」
トゥルーデが首を傾げながら芳佳に問う。
「あー、ちょっと近いかも知れませんね。て言うかカールスラントの料理はよく分からないけど」
「なら、今度作ってやろう。私の得意……」
「中佐、大変ダ! 台所の方から異臭ガ! サーニャの部屋ニ!」
エイラが医務室に飛び込んできた。
「大丈夫。把握しています」
ミーナはこめかみを押さえて、答えた。

「今晩のご飯、おにぎりだけ?」
ルッキーニがふてくされる。軽いおやつならいいけど、夕食のメインがおにぎりなんて……と表情が語っている。
「まあ、イモだけよりかはマシかな……」
隣に座るシャーリーが呟く。
「ほら、形も色々有るし、味もたくさん作ったから、飽きないとは思うよ」
大至急全員分のおにぎりをこしらえた芳佳が苦笑いする。
「扶桑の家庭料理だ〜って聞いてたから、ちょっと楽しみにしてたのに」
「ごめんねルッキーニちゃん。今度はちゃんと作るから」
「芳佳ちゃんの、おにぎり……」
「サーニャ、ゆっくり食べろヨ? 胸つかえるゾ?」
お隣では北欧コンビがおにぎりをちまちまと食べていた。
「でもお米ばっかりってのも、少し飽きるね」
「一応空腹は満たされる。今回はそれで問題ない」
エーリカとトゥルーデの会話。フォローしているのだかそうでないのか、微妙だ。
「芳佳ちゃん、また今度一緒におにぎり作ろう?」
「あ、うん」
一人満面の笑顔のリーネ。
なんだかんだでわいわいとおにぎりを頬張る一同の中に、美緒の姿はなかった。
150origin 03/05:2008/12/10(水) 22:46:40 ID:t7FLCVaf
翌日の午後。
「坂本さん、今度は簡単な焼き魚です。ブリタニアでは扶桑と同じく、色々な魚がたくさん獲れるんですよ。
今日は活きのいい鯖を近くの市場で買って来ました」
「よし、ご苦労。今度こそ、皆に扶桑の料理を振舞おうじゃないか」
「は、はい」
一抹の不安を覚えながら、笑顔で答える芳佳。汗が一筋、頬ににじむ。横で同じくエプロン姿のリーネが微笑む。

「一体何ですの、この煙は!?」
もうもうたる煙と焦げた臭いにむせかえりながら、ペリーヌが台所に怒鳴り込んで来た。
「もうすぐ夕食だと言うのに……少佐! 一体どうなさいまして?」
「あ、ペリーヌさん。手を貸してください。少佐が」
「!?」
慌てる芳佳を見て驚愕する。横ではおろおろするリーネが居た。

割烹着姿のまま、ベッドに横になる美緒。横にはおろおろしながら看病するペリーヌの姿があった。
「少佐、しっかりして下さい! わたくしがついてますわ!」
「ああ……ペリーヌか、すまんな。心配掛けて」
目を開け、答える美緒。心なしか、やつれている様に見える。
「宮藤さん! 貴方が横にいながら何故……」
「良いんだ、ペリーヌ」
「少佐、でも……」
「今回も私が全て自分でやると言ったんだ。手を出すなと。だからこれは全て、私の責任だ」
「ですけど……」
「心配掛けてすまん。ペリーヌも心配するな、私なら大丈夫だ、ほら」
弱弱しい手つきでペリーヌの頭を撫でる。
ほっとしたのか、ペリーヌは目頭をハンカチで押さえながら、医務室から去った。
「坂本さん……」
横に居る芳佳が美緒を見る。
「すまんな、宮藤」
「美緒! また無茶を!」
ミーナが医務室に飛び込んで来た。
「宮藤さん、美緒にあれだけ無茶をさせてはいけないと……今度は何をさせたの!?」
「焼き魚です。魚に塩を振って、外はこんがり、中はふっくら焼き上げる……」
「……魚のソテーかしら?」
「近いですね。というかほぼそのもの、かも」
「すまない、ミーナ。そっとしておいてくれ」
「美緒」
「私は……焼き魚ひとつ出来ぬ不器用な女……」
美緒はそう言うと、毛布を頭からかぶって沈黙した。
151origin 04/05:2008/12/10(水) 22:47:55 ID:t7FLCVaf
翌日の昼下がり。
「坂本さん、今回は刺身です。近くのドーバー海峡では、色々な魚がたくさん捕れるんですよ。
今日は獲れたてのアジを近くの漁港で買いつけて来ました」
「よし、ご苦労。今度なら……いや、今度こそ、皆に扶桑の料理を振舞ってみせる!」
美緒の目に、異様なぎらつきが見える。包丁を持つ手が震える。
「は、はい」
大いなる不安を覚えながら、笑顔で答える芳佳。汗が頬を伝う。横ではエプロン姿のリーネが微笑んでいた。

「美緒、どうしてこんな無茶をしたの!」
小一時間も経たぬうちに、美緒はストレッチャーに乗せられ医務室に運ばれた。横ではミーナが涙目になっている。
「すまん……今度こそは、と思ったんだが……」
ミーナは芳佳を睨みつけた。
「宮藤さん。今回は何を?」
「さ、刺身です。鮮度の良い魚をおろして、生で食べるんですよ」
「生魚ですって?」
「新鮮な魚ならお腹壊しませんから大丈夫です。扶桑では普通に食べますよ。お祝いの席なんかでもよく振舞われるんです。
日持ちさせたいときは酢でしめたりするんですけど……」
「ニシンの酢漬けに似てるわね……」
ミーナは祖国の料理と比較してみたが、ふと我に返り、美緒の手を取った。
「美緒、指が傷だらけじゃない。どうして……」
「坂本さんに包丁を握らせたの、まずかったですかね。扶桑刀の扱いは凄く巧いから、包丁も同じ様にいくかな〜なんて」
「料理と戦いは違うのよ!」
「いいんだ、ミーナ」
ふらふらと、手を出す美緒。数本の指が包帯で巻かれ、何とも痛々しい。包帯交じりの指で、ミーナの頬を撫でる。
「心配掛けてすまない。私が不器用なばっかりに……」
「美緒」
「私は……刺身ひとつ出来ぬ不器用な……」

「今晩は魚の煮付け?」
「ええ。余った……と言っても殆ど残っちゃったんですけど、アジを醤油、砂糖、酒、みりんで煮てみました。
ショウガも一緒に煮てるから、ご飯にぴったりですよ」
芳佳がアジの煮つけを皆に振舞う。
「へえ。この煮魚のソース、甘辛くて結構いけるね」
一口食べたシャーリーが率直な感想を述べる。
「ありがとうございます。あ、小骨に気をつけて下さいね」
「早く言ってよー。なんか喉がちくちくする」
「ああ、早くご飯をごくん、て飲み込んで。取れるから」
「ウニュゥ……あ、取れた」
「扶桑の料理ねえ。なんか少佐みてると、凄い危険な料理って気がするよ」
シャーリーが少しにやける。
「でも、芳佳はぱぱーっと作っちゃうよ。芳佳みてると扶桑の料理すごく簡単に見えるけど?」
「それは……」
言いかけて口ごもるペリーヌ。
「ナンダヨ、言いたい事あるなら素直に言えヨ?」
にやけるエイラ。
「……おいしい」
ちまちまと煮付けを食べるサーニャ。
「芳佳ちゃん、今度私にも扶桑の料理教えて? 私もブリタニアの料理教えてあげる」
笑顔で芳佳の手を握るリーネ。なんだかとても嬉しそうだ。
152origin 05/05:2008/12/10(水) 22:48:50 ID:t7FLCVaf
「美緒、はい。あーんして」
「……何か、すまんなミーナ。色々と」
「そんな手で何か持つなんて出来ないでしょう?」
「まあ、な」
美緒はミーナにスプーンでお粥を食べさせて貰っていた。
しかもまた医務室だ。美緒は自重気味に笑い、うなじの辺りを掻いた。
「でももう、暫くは料理は駄目よ。私が隊の指揮官として命令します。今後は宮藤さんに任せること」
「ミーナの命令とあっては、仕方ない」
苦笑いする美緒。
「でも、美緒……」
「ん?」
「貴方、そんなに不器用には見えないけど……」
「わ、私にだって、出来ない事くらい、ある」
少し顔を赤らめる美緒。ミーナはくすりと笑った。
「なら、貴方の代わりに作って差し上げましょうか?」
「それは……」
(本当は、ミーナに食べて欲しかったんだ……)
内心そう呟き、真剣に悩む美緒に、ミーナは食事の続きをさせた。

end

----

少佐の料理の腕前を、自分なりに書いてみました。
ホントはこんな壊滅的に不器用じゃないと思いたい……。
あとリーネが常に芳佳の横に居るのは偶然デスヨ多分。

ドイツ料理についてはグーグル先生他に聞いて書いてみました。間違ってたらすいません。

ではまた〜。
153保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2008/12/10(水) 23:40:05 ID:6FVzpWat
キャラスレで規制の巻き添え食らってGJ書けなかったので悔しさ紛れに転載
ここで言ってもしょうがないけど完結乙&&GJ!!これを更新できなくなるのは寂しくなるよ。

535 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/12/10(水) 21:42:31 ID:PklNnW9G
リーネちゃんのないしょの基地探訪の第12話Bパート追加

http://www2.age2.tv/rd2/src/age0330.zip.html
pass:ヨシカ

最近ここのロダの広告が熟女の裸になってるのでご注意を…


でもって、今日も百合スレは絶好調ですね。
>>118 >>132 >>142 >>152GJ!!読んだらperlと戦う気力が湧いてきた。
>>143 そういう時はリーネを想うと夜も眠れないミーナさんの気持ちになって枕を抱えながら部屋中を転げ回るんだ。
154名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 23:42:13 ID:pHZ+f0Yw
>>142
いらん子キター!エルマさん意外と身長高いよね。俺もプロフ見て吹いたw
知らないって言ってるのにオヘア連れてきて上げるウルスラも可愛いなー

>>152
もっさんかわいいよもっさん
練習すれば料理出来るようになると思うんだけど出来ない方がもっさんらしいかなw
155名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 23:44:23 ID:tVSM3Reg
投下GJ!
156名無しさん@秘密の花園:2008/12/10(水) 23:55:15 ID:c8f73svJ
オヘア×ウルスラがない・・・
157滝川浜田:2008/12/10(水) 23:58:13 ID:i91xvhOk
みなさんこんばんは。
昨日はいろいろごめんなさい。
1日に3本投下とかいろいろ暴挙でしたかね。
でも反省はしても後悔はしない!


…というわけでおとなしく続きでも投下します。
158滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.3』:2008/12/11(木) 00:00:31 ID:i91xvhOk


――私にとってそれは、悪夢という言葉では片付けられない程の暗闇。

トゥルーデは一命を取り留めた。

でも、トゥルーデはまだ目覚めない。

私は絶望の淵に立たされた。


………涙が、止まらない。


――何回君を愛したら chapter.3――


ガチャ

「バルクホルンの容体はどうだ?ミーナ」
「ええ、一命は取り留めたわ。だけど、まだ意識は戻らないみたい」
「…そうか」
「フラウはどうしてる?」
「部屋に閉じこもっている。声をかけても反応が無い」
「…そう…」
「今回の出来事は確かに、ハルトマンの軽率な行動が原因だ」
「…ええ、そうね」
「だが、私はある程度の実直さも必要と考える。ミーナ、お前はどうだ」
「…でも…その真っ直ぐさも度を越せば刃となるわ」
「今回は刃になった、と」
「…でもそれは、トゥルーデにもフラウにも向けられた刃。ここからは私達が考える事じゃないわ」
「…ミーナ…」
「ここからは…トゥルーデとフラウが考える事よ」

―――――――――――――――――――


…前が見えない。

…声が出せない。

…周りの音が入って来ない。


私の世界は壊れてしまった。

私のせいでトゥルーデに大怪我を負わせてしまった。
私はもう…

159滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.3』:2008/12/11(木) 00:03:33 ID:i91xvhOk
「エーリカ」
「……」

壁越しに聞こえてくるのは、シャーリーの声。

「一命は取り留めたってさ」
「…そう」
「おいおい、一応助かったんだぞ?
それだけでも良しとしなきゃ」
「…喜べないよ」
「エーリカ」
「トゥルーデは私のせいで…怪我したんだ。…全部…私が悪いよ…」
「…はぁ…まあ、確かに今回のはお前が突っ走り過ぎたのが原因だよな」
「……」
「何があったかは分からないけどさ、今のエーリカ見たらアイツ、どう思うかな」
「…シャーリー…」
「ま、こればっかりはあたしにはどうしようも無いよ。
これは二人の問題だよ」
「……」
「…エーリカも知ってると思うけどさ。あたしがシャーリーを庇ってネウロイの攻撃受けた事あったろ?」
「…うん」
「あの時も今のエーリカとルッキーニが同じような状態でさ。大変だったんだぞ?」
「…」
「あの時はあたしも…どうしようもない感情に陥ったしさ…。でもさ」
「…でも…?」
「そういう事があったから、今のあたし達がいるのも事実なわけで。
…エーリカに教えといてやるよ」
「……」
「堅物がお前を庇ったのは、カッコつけじゃないよ。
ま、これは言われなくたってエーリカが一番分かってるか。ごめんな、なんか説教臭くなって」
「…いや、別にいいよ」
「…今のお前を見たら堅物、どう思うかな」
「シャーリー」
「や、もうこんな時間か。じゃあたしはルッキーニと飯食ってくるよ」
「……」
「…塞ぎ込む暇があったら堅物に何をしてやれるか、考えた方が有意義だぞ、エーリカ」

そう言い残すと、シャーリーはどこかへ行った。

そんなの、私だって分かってるよ…
私だって…

160滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.3』:2008/12/11(木) 00:06:38 ID:q8tHrSGd
―――――――――――――――――――

「どうだった、シャーリーさん」
「いや、やっぱあたしじゃダメですよ。なんか説教臭くなっちゃいます」
「…だが、シャーリー。あの二人の気持ちが誰より分かるのは、お前とルッキーニだけだろ?」
「…まあ、そうですね。特に堅物にはあの時もいろいろと迷惑かけたし…」
「これで少しは動いてくれると良いんだが…」
「あたしは信じてますよ。エーリカはそんな薄情なはずない。…それはミーナ中佐が一番良く知ってるはず」
「…ええ、私はフラウを信じるわ。あの子は…動くわ。必ず」


―――――――――――――――――――

夜になった。

あたしはトゥルーデに何をしてやれる?

そんな事を考えてたら夜になった。

あまりにも頭をいろんな事が駆け巡り過ぎて、ろくに答えが纏まらなかったけど。

…これは、現実から目を背けるなって事なの?トゥルーデ…


トゥルーデ…。私は……私は……


To be Next chapter…



第3話以上です。
ああ…日付が変わってもうた…。
もっと早く投下すりゃ良かった…

最後に…みなさんGJ!です!
みんなイイ!

…では、爺はここら辺で…
161名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 00:25:26 ID:x4Dw2ZaL
うおーじっちゃんマジ化け物
続きまってるよ
162リーネスレの病人:2008/12/11(木) 00:28:51 ID:SSFlwkdG
今日もみなさんGJです!

>>153
こっちのスレも見てますよ
いつも保存ありがとうございます
163名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 00:57:11 ID:AcVgG1Zr
t26gFAxTです。
前作分にレスをいただき誠にありがとうございました!

コテハンで感想というのは、憚られるんだけども…
そんなん気にもんでる場合でなく、書かずにゃいられねえってことで。

>>98
昨夜、リアルタイムで読み入っちまいました。
ただし規制のせいで途中までw
尻切れ分はさきほど。
ハルトマン姉妹のそれぞれの現在と過去が綺麗に積み重ねられていて、
小気味良くて、それでいて巧みな台詞まわしに驚嘆。
非常に読みやすく、そして面白かった。そして読んでて気持ちいいというか。
爽快感?
まさに言うことなし。
enough saidです。
ごちそうさまでした。
と、稚拙ながら、真面目に感想書いてみた。だって面白かったんだもの。

そして>>142にもにやにやさせてもらいました。
やっぱビューリングいいなあ。エルマさんもいいなあ。
もっともっといらん子SSも増えて欲しいぜ。

つーこっていい加減自重して自作投下。
学園ウィッチーズ第18話です。
 拝啓
 先日の申し入れについての返事を本日拝受いたしました。
 当校への入学について、貴殿へのご迷惑は重々ご推察申し上げますが、今一度、ご賢察をいただければ――

 病室での会話の途中、先日、オストマルクから届いたとある手紙の一文を思い浮かべ、ふっと、考え込むように、視線を遠くするミーナに、ゲルトルートは気づき、呼びかけた。
 ミーナは、弾かれたように顔を上げ、困ったように眉を寄せた。
「なんの、話だったかしら…」
 珍しいミーナの様子に、ゲルトルートはわずかに目を丸くする。
 窓を、降り始めた雨が濡らし始めた。
 ゲルトルートは、掛け時計に目をやり、つぶやいた。
「そろそろ、寮に戻ったほうがいいんじゃないか」
「……そうね」
 ミーナは、無意識に、眉尻を下げながら、ベッドに手をかけ、立ち上がる。
 ゲルトルートは、ミーナの表情に気づき、咄嗟に、彼女の手の甲に、指先で触れた。
 中腰になっていたミーナは、バランスを保つため、もう一方の手もベッドにおいて、じっと、ゲルトルートに顔を近づける形となる。
 二人は、互いに、顔を赤らめ、息を止める。
 しかし、さきほど、シャーリーの前で、自分の本音を口にしたせいもあってか、動揺したゲルトルートは、近づいたミーナの顔を、過剰に意識して、慌てて手を引っ込め、視線をそらした。
「さ……、さっさと帰れとか、そういうわけではないからな。お前は、曲がりなりにも寮長なのだから、私にばかりかまってしまうのは問題だろう」
 ゲルトルートは、ちらりと、ミーナへ視線を戻すと、ミーナは、いつものあたたかな表情を向け、うなづいた。
「また来るわね」
「ああ、待ってる」
 部屋を出て行くミーナの背中を見送り、ゲルトルートは溜め込んでいた息を吐き出して、肩を沈め、この病院で目覚め、ミーナがそっと口づけた額に手をやる。
 部屋を出たミーナは、廊下を歩きながら、ふと、ゲルトルートの額に口づけた事を思い出す。
 何気ない行為だったが、今思い返せば、ひどく大胆に思え、二人は、疎通したかのように、頬を染めた。
 そばにいると、言った。
 そばにいると、言われた。
 けれども、お互いをどう思っているかは、伝えていないし、伝えていいのかもわからない――
 ゲルトルートとミーナは、そう考えながら、曇天の空を窓から見上げた。

 雨の中、小高い丘に鎮座する巨大な岩へ向け、エーリカは必死で駆け、シャーリーも、重たいバイクを引きながら、それを追いかける。
 一足先に岩のくぼみに滑り込んだハルトマンは濡れた革ジャケットから水を払った。
 遅れて、シャーリーもたどり着き、バイクのスタンドを立て、肩で息をする。
「あのなあ、ちょっとは手伝えよハルトマン」
「あはは、ごめんごめん」と、言いながら、エーリカは、乱れた髪を手ぐしで整えた。「すぐにはやみそうにないね」
「そうだな」
 低い声でそう言って、シャーリーは、サイドカーに忍ばせていたシートを取り出して地面に広げ、座ると、寒さ避けに、魔力を高め、耳と尻尾を体から伸ばす。
 エーリカも、同じように、魔力を高め、シャーリーの膝と膝の間に体をいれ、彼女に背を預けるように座った。
「おじゃましまーす」
 エーリカの濡れた頭が、シャーリーの首筋に触れる。
「おい、髪びちょびちょなんだからあまりくっつくなって」
「シャーリーだって濡れてるよ。ほら」と、エーリカは顔のすぐ横のシャーリーの髪を軽く握って水気を取る。
 声だけ聞くと、いつもの調子に戻っているエーリカに、シャーリーは安心したように、頭を撫でた。
「あーもう、髪ぐちゃぐちゃなっちゃっうじゃん」
「悪い悪い。なんか癖でな」
「あんまりルッキーニ甘やかすなよな〜」
 その言葉に、ぷつりと糸が切れたように、シャーリーの表情がどこか遠くに飛ばされたような様相を見せたものだから、エーリカは、シャーリーの膝に手を置いて、ぐるりと、体を回し、シャーリーに向かい合う。
 急に、幼い顔から、年相応の表情を見せるエーリカに、シャーリーは、胸を衝かれた。
 エーリカは、疑うような目つきで首を傾げた。
「ルッキーニとなんかあったの?」
 ああともうんとも言えず、シャーリーの頭が徐々に下がり始める。
 エーリカは、手をついて、体を低くして、覗き込む。
 観念したシャーリーは、エーリカの両腕を掴んで持ち上げて、さきほどの姿勢に戻し、彼女の肩に顎を置いた。
「ちょっと言い争って、つきとばしちゃったんだ」
「ルッキーニ相手にそんなことしちゃうなんて、珍しいね。ていうか、ありえない」
 かわいらしい声ながらも、エーリカが辛辣に放つ言葉は、シャーリーをえぐるように、突き刺さる。
 シャーリーは心なしか頭から伸びた使い魔の耳を下げて、苦そうに笑った。
「そうだよな。ありえないよな。嘘ついて、ルッキーニに手を上げて……」
 エーリカは、首だけシャーリーに振り向け、思索でもしているのか、きょろりと青い目を上に向け、また、シャーリーを見つめた。
「なにが、原因なの?」
 シャーリーは、エーリカの視線から逃げ、前髪をかき上げる。
「トゥルーデがらみ?」
 普段は眠たそうな顔してるくせに、よく見てるな……。
 シャーリーは、返事も出来ず、ただ、ほんの一瞬だけ、目元を引きつらせた。
 エーリカの表情が、なぁんだ、とでも言いたげなものに様変わりして、さきほどよりも深く、シャーリーの胸に後頭部を押し付けた。
「……いつから、好きだったの?」
「わ、割と最近…」と、シャーリーは、普段の彼女からは想像も出来ないほど、口をもたつかせながら、答える。
 エーリカは、考え込むように首をひねって、わずかに呆れたような表情を作った。
「その"最近"が、トゥルーデの墜落あたりからと仮定すると、ほんとに最近だなぁ……」
「止められるものなら、止めたさ……。けど、抑えれば抑えるほど、どうしようもなくなって…」
「……分かる気がする」
「え?」
「いや、こっちの話……。で、どうしたいの?」
「どうしたいもこうしたいも、もう終わったよ」
「へ?」
「もう病院行って、あいつの気持ち確認してきた」
 と、少しだけ顔を赤らめて投げやりに言うシャーリーに、エーリカは感心をする。
「そういうところも、速いんだ。なんて告白したの?」
「それが、こっちが何か言う前に……って言うか、言い出せなかったんだけど、無理やり普通の会話に戻して、ミーナ先輩が好きなのってそれとなく質問したら、ああ、だって」と、シャーリーは、ゲルトルートの真似をしながら、畳み掛ける。
 そのシャーリーのモノマネに、エーリカは思わず吹き出してしまい、シャーリーが、両手で髪をぐちゃぐちゃにする。
「うあ〜、髪がぁ〜、やめてよシャーリー」
「うっせぇ〜」
 二人は、さきほどの湿っぽい雰囲気を一転させ、降りしきる雨の中、じゃれあい、そして、笑いあう。
 ひとしきり笑って、すっきりしたのか、シャーリーは、ようやく、いつもの穏やかさと余裕を兼ね備えた面持ちになり、エーリカも笑顔を向けた。
「良かった。いつものシャーリーに戻った」
「まだ完全には戻っちゃいないよ。こう見えて、一応傷心してるんだよ。どっちみち、叶うとも、思ってなかったけどさ…」
「シャーリーの前で言っちゃうのも悪いけど、たぶん両想いだからね、あの二人」
「なに、たぶんって」
「あの二人さ、気持ちは同じなんだろうけど、もう一歩が踏み出せない、みたいな…」
「ふーん。バルクホルンの性格ならわからないでもないけど、ミーナ先輩も?」
「いざとなったら、私がキューピッドになるけどさ」
 そう言いながら、エーリカは立ち上がり、髪を整えて、頭の後ろで手を組み、雨の中の風景を眺めた。
 上着の裾から伸びた使い魔の尻尾が、どことなく迷いがあるようにぶらぶらと揺れる。
 シャーリーは、立ち上がると、両手を腰に置いて、エーリカの隣に並び、爽やかに言い切った。
「絆で結ばれた二人とそいつらをくっつけようとする元ウルトラエースのキューピッド。こりゃあ、完敗だな〜。で、エーリカ・ハルトマン、次はお前の番だぞ」
 と、シャーリーが、わずかに体を折り、エーリカに顔を近づける。
 エーリカは、腕を後ろに組んだまま、ぽかんとした表情をただ差し向けた。
 シャーリーは、ていっ、と言いながら、エーリカの白い鼻先を軽くつまみあげ、エーリカは顔を背けて振り払う。
「私の番って、なにが?」
「とぼけんなよ。私だって、きちんということ言ったんだから、お前も言えよ。聞き逃げする気か?」
「聞き逃げって……。私は…」
 エーリカは、しかられた子供のように頬を膨らせ、斜め下に視線を向ける。
 シャーリーは、逃すまいと、じいっと、見つめる。それこそ、叱った子供をきちんと正すために努力する母親のように。
 エーリカは、根負けしたように、シャーリーに、顔を向けなおした。
「ウルスラは……、ビューリングが好きみたい」
「ああ。結構……というか、あの二人いつも一緒だからなあ。姉として、ヘビースモーカーなジョンブル教官との交際は認めませんってか〜?」
「違う」
「じゃあ、姉より先に恋人見つけやがって〜、ってこと?」
「違う」
 徐々に声が低くなり、目が据わり始めたエーリカに、シャーリーは体を起こして、困ったなあと言わんばかりに腕を組んだ。
 エーリカを見下ろすシャーリーと、シャーリーを見上げるエーリカ。
 エーリカは唇を噛んで、ぐいとシャーリーの肩をつかんで、引き寄せ、耳元でささやいた。
「私、たぶん……いや、きっと、ウルスラが好きなんだ。妹とか、そういうの抜きで」

 雨に全身を濡らされながら、教官宿舎に駆け込んだエルマは、手で水滴を払いながら、かばんの中の書類が濡れていないかを確認する。
 まだ誰も帰っていないのか、廊下の灯りはついておらず、玄関から伸びた赤いカーペットの向こう側は、闇に融けている。
 いつもは見慣れた風景なのに、ひと気がないのと、物静かさで、エルマはつばを飲み込む。
 玄関からすぐのところにある階段も、妙に影が濃く落ちているように思えて。
 自分の心臓の音を意識し始めた途端、すぐそばにある食堂から、鍋やら何やらが落ち、地面に叩きつけられる音が響いて、エルマは、卒倒しそうになりながらも、振り切るように首を左右に降って、一歩ずつ、奥へと進んでいく。
 泥棒?
 それとも、幽霊さん――
 頑張れエルマ、負けるなエルマ。
 私はこの宿舎を預かる身なんだから。
 ということを綺麗な金髪に包まれた小さな頭の中で駆け巡らせながら、えいっと、エルマは、食堂を覗き込む。
 じっと目を凝らすと、薄暗闇の中で、見慣れた背中がしゃがみこんで、落ちたものを拾っている。
 エルマは安堵して、目いっぱい空気を吐き出した。
「もう、帰ってるなら灯りつけておいてくださいよ、ビューリングさん」
 明るく言うエルマとは裏腹に、ビューリングは酷く重たそうに立ち上がって、振り返った。
「エルマ…」
 その眼光は鋭く、エルマは思わず、戦時中のビューリングを重ねかける。
 ビューリングは、エルマに近づき、がっしと、片方の手で彼女の肩を掴んだ。「コーヒー豆は、どこだ?」
 エルマは、目を点にしながら、「え、えっと……、今朝、オヘアさんに買出し頼みましたので、彼女が帰ってくれば飲めますよ!」と、ぱぁっと笑顔を向けた。
 ビューリングは掴んだ手をするりと落とし、ようやく平静を取り戻したかのように、いつもの口調で腕を組んだ。
「そうか、キャサリンに頼んだか…」
 噂をすればなんとやら。
 二人の会話が終わった頃、玄関が開く音と共に、オへアの陽気な声が響いてきた。
 ビューリングは一直線にオへアのもとへと向かい、口を開きかけたが、「いやぁ、助かったね〜」というオへアの陰からひょっこりとウルスラが現れたものだから、廊下に足がくっついてしまったかのように、ぴったりと、静止する。
「おお、ビューリングがお出迎えなんて、明日は雪が降るかもしれないね〜」と、へらへらとするオヘア。
 ウルスラは、オヘアの陰に隠れながらも、メガネの下から、じいっと、ビューリングを見据える。
 ビューリングは、心なしか、胸をぎくりとさせながらも、ふっきるように、前に進み出て、オへア抱えていた大きな紙袋を取ると、中を探る。
「おい、キャサリン……。コーヒー豆は…」
「Oh! I carelessly forgot! So sorry」
 と、額を指で叩いて舌を出すオへアに、怒りよりも、力が抜け出て、ビューリングはひょいと紙袋をオへアの胸に押し付けると、重い足取りで階段を昇り、自室へと向かう。
 ウルスラは、まばたきをしながら、その様子を見上げる。
 部屋に戻るなり、ビューリングは、ベッドに倒れこみ、ブランケットを引っかぶる。
 ドアが開く気配がして、来訪者を見ようと、体を起こしかけた瞬間、ブランケット越しに、腰の辺りに小さな手が置かれた。
 ビューリングは、その手だけで、誰であるかを判別した。
「何か用か?」
「具合、悪いの?」
「知ってるだろう。コーヒーがないと生きていけない人間だと」
「あと、タバコ」
「それは、もうやめる」
「どうして? 私、エーリカとはもう…」
「前言撤回だ。あの時の言葉は忘れろ。私がやめたいから、やめるんだ」
「やめなくていい」
「悪いが、そう言われると余計に抗いたくなる性質でね」
「意地っ張り…」
「お前にだけは言われたくない」
 ウルスラの手が、そっと、ビューリングの体から離れ、ウルスラはドアのほうへ歩み始める。
 ばっと、ブランケットが舞う音がして、ウルスラの体がひょいと持ち上げられ、そのままビューリングに後ろから抱きかかえられる。
 ウルスラは、足を少しだけばたつかせ、抵抗を示すが、あきらめたように、だらりと体から力を抜いた。
 ビューリングは、ウルスラを下ろすと、腰を曲げて、彼女と向き合って、そっと頬に触れる。
 くすぐったそうに、ウルスラは身をよじる。
 その様子に、ビューリングは胸が躍り始めている事に気がついて、その感情に戸惑いながらも、冷静に、受け止めて、口を開いた。
「目をつぶれ」
 少し、脅迫めいた口調で言うビューリングに、ウルスラは首を振った。
 ビューリングは、要求を通すことは諦めたが、一気に顔を近づけ、ひと間おいて、ウルスラの片頬に唇を当てる。
 暗闇で、互いに表情は読み取れないが、ビューリングは、指先で触れたウルスラの頬が発する熱に気づく。
 ウルスラは、顔を下げて、ビューリングの指先から逃れ、廊下へ駆け出した。
 ビューリングは、ウルスラに逃げられたほうの手で上着の胸の辺りを握り締めた。
「こんなはずではなかったのに…」

学園ウィッチーズシリーズ 第18話 終
168名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 01:37:12 ID:kLyL6LWo
早過ぎて読むほうが大変という異常自体になってる
いいぞもっとやれ
 
学園続きキター
あいかわらずGJ
169名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 02:38:52 ID:+TriEgSL
ゲームのアンケで好きなカプも聞いてるってことはそういう期待をしてもよろしいですね?
170名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 03:26:08 ID:AmjceHu+
エー芳!エー芳!
171名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 03:32:44 ID:NRu39VsV
ここまで出てないカップリングはなんだろう?
シャーリーネとかゲルッキーニとか?
172名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 03:52:35 ID:hqCwEjqf
シャーリーネは胸の話とかいけそうだけどゲルッキーニはまったく想像もつかない
173名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 04:02:37 ID:g83yLK0n
>>171
保管庫探せば両方有ったはず。
もう、ほぼ全てのカップリングは開拓済みかと……。

先人達はもう偉大と言うか頭がおかしい(誉め言葉
174名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 06:50:50 ID:rDbTZtk4
学園ウィッチの人
あなたのss読んでいらん子全部揃えてビューリングxウルスラを探して...orz
ナイジャナイカー  ようするに楽しみにしてます
175名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 06:57:47 ID:6xbrkE7A
エッキーニとかミーニャとか、まだまだ開墾の余地はあるはず
ただ本編での絡みが殆ど無いから、よっぽどの妄想力が無いとな
176名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 11:06:33 ID:jcMiB2/1
エイゲル!エイゲル!
177名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 11:16:57 ID:8nMv5xbX
エイラとゲルトの事か?エーゲルとややこしいなww
個人的にはサーニャと少佐とか見てみたい、父親みたいな少佐とか。

178名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 11:34:10 ID:dNnYnmu3
サーニャが何かで褒められて、少佐に頭なでられて赤くなってうつむくのを見たエイラ。
他の人だったら何してんダヨって割って入れるけど少佐相手じゃ言えないし、サーニャも恥ずかしがってるけど何かうれしそうだから
何も出来ずにうぅ…ってなってるエイラが見えた。
179名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 11:54:26 ID:rRAjAATF
後日部屋に転がり込んで寝てるサーニャの頭をなでなでするエイラ
なでなでしながらくはー・・・サーニャかわいすぎるだろ・・・とかなんとか言ってたら
寝てるはずのサーニャの顔が赤くなる、と
180名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 11:58:21 ID:jcMiB2/1
結局エイラーニャになるんじゃないかよw
181名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 12:09:04 ID:hqCwEjqf
エイゲルといえばクロウカシスが続くと聞いて安心した上で物凄い楽しみな俺
182名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 12:10:30 ID:r2QQ2akC
>>178のあと部屋で不貞寝してるエイラにサーニャがなでなでしてあげるのもいいと思うんだ・・・!
なでなでしながら・・・エイラかわいい・・・とかなんとか言ってたら
寝てるはずのエイラの顔が赤くなる、と
183名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 12:24:18 ID:ZGq3XFDa
>>177
じゃあゲイラで
184名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 12:33:10 ID:ma++eXfg
お前らエイラーニャの未来を予知しすぎだろw
185名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 12:41:40 ID:x4Dw2ZaL
なんだか昼からナイスな妄想が・・・・
186名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 12:47:09 ID:qV+39MaB
「エイラ、どうしたの?」
「別に・・・何でもナイ」
「怒ってるの?」
「怒ってなんか無いサ。 それより、良かったナ。少佐に褒めてもらえて」
「うん・・・だけど、私はエイラに褒めてもらいたかったな・・・」
「なっ?!」
「エイラが頭を撫でてくれたら、私、もっと頑張れるのに・・・」
「そ、そうなの・・・カ?」
「うん・・・褒めてくれる?」
「キョ、今日だけダカンナ・・・」

どうみてもサーニャのほうが一枚上手です。ありがと(ry
187名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 13:00:55 ID:x4Dw2ZaL
ナイスな妄想なのでやっつけで文書にしてみる

---------------------------------------------------------------

今日はいつもよりも早く目が覚めてしまった
時計を見るとそろそろサーニャが夜間哨戒から帰ってくる頃だろう

「よしサーニャを迎えに行ってあげよう」

サーニャ驚くかな?
喜んでくれると嬉しいな
おかえりって言ってあげて
ただいまと返してもらおう
サーニャは嬉しいと顔を赤らめもじもじするのからなぁ
あれはいつ見ても可愛い
はっ!いかんいかん想像したら顔がにやけてきた
ビシッとした顔でサーニャを迎えねば

・・・しかし朝早いだけあって静かだなぁ
この時間起きてるのもしかして私だけじゃないだろうか?
なんだかいつもは騒がしい隊舎がこれだけ静かだと
いつもと違う場所のようだ
澄んだ空気が少し肌寒く感じる
なんだか隊舎で一人っきりのような気がしてきて無性にサーニャに会いたくなる

「・・・はやくハンガーに行こ」

早くサーニャに会いたいな
そんな事を考えていると無意識のうちに歩くの速くなっていた

さて到着っと、まだサーニャは帰ってきてないな
おっ?誰か居る
あれは・・・・坂本少佐?
なんでハンガーに居るんだろ?
そういえば少佐は毎朝早くから訓練をしているらしい
しかし飛行訓練をするわけでもないのになぜここに?

どうにも話しかけるタイミングを逃してしまい
少佐の後ろ姿を眺めていると、サーニャのエンジン音が聞こえてきた
188名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 13:01:45 ID:x4Dw2ZaL
「おっ帰ってきたか」

少佐はサーニャを待ってた?
ってなんで私は物陰に隠れてるんだろ
少佐と一緒に待ってばいいのに

「おかえりサーニャ」
「坂本少佐?・・・・ただいま戻りました」
「あぁご苦労だったな」
「・・・・いえ任務ですから・・・」
「ハッハッサーニャは真面目だな。しかしサーニャが居るおかげで私たちは安心して眠ることが出来る
本当にいつも助かっているぞ」

そういって坂本少佐はサーニャの頭をなでる
なっ!なんて事を!
サーニャのあの柔らかな髪を撫でるとはなんて羨ましい!
うっうしかし完全にここから出られなくなってしまった

「・・・いえ」
「そう謙遜するな、いつもありがとうなサーニャ」
「・・・・はい」

そう言って俯き加減に顔を赤らめているサーニャ
坂本少佐は笑いながら優しくサーニャを撫でている
なんだか嬉しそうなサーニャの顔を見てると
とてもじゃないが間には入れない
・・・しょうがない帰るか

なんだか邪魔をしては悪い気がして
気配を殺し、ハンガーから出た
あぁなんだか行きとは逆で帰りは足が重い


続き>>179>>182どっちがいいかな?
189名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 13:13:22 ID:hqCwEjqf
俺は>>182を選ぶぜ!
190名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 13:15:52 ID:rRAjAATF
どっちでもいいぜ!好きにしてくれ!
191名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 13:18:28 ID:dNnYnmu3
選べない…!
192名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 13:24:10 ID:jwsnivc9
>>182に俺の青春を投じるぜ!
193名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 13:26:02 ID:r2QQ2akC
>>186
不貞腐れるエイラいいよエイラw
>>187
どちらでも!
いっそりょうほ(ry
194名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 13:36:41 ID:x4Dw2ZaL
182が多いみたいなので182書いてくる

195名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 14:44:18 ID:x4Dw2ZaL
続き>>182とは少し違うのでごめんね

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別にサーニャが少佐に感謝されて頭を撫でられただけなのに
その事が気になってしょうがない
・・・・思ってた以上に自分は独占欲が強いらしい
もしサーニャが私以外の人と・・・
そんな事を考えるとたまらなく胸が苦しいしくて
情けない自分にちょっと涙が滲んできた
こんな顔をサーニャに見られるのは恥ずかしい
必死にシーツに顔を擦りつけ涙を拭き、顔を見られないように俯せでサーニャを待つことにした



その頃サーニャ――

坂本少佐に頭を撫でられ感謝された
頭を撫でてもらうのなんていつ以来だろうか


そうだ昔家族と暮らしていた頃・・・
一生懸命ピアノの練習をしてお父様に褒めてもらった時だ
あの時は、お父様の大きな手で優しく撫でてもらい嬉しかった
当時はもっと褒めて貰おうと一生懸命練習したものだ


まさかこの年になって頭を撫でてもらうとは思っても見なかったな
やっぱりだれかの役に立てるのは嬉しいし、褒められのも嬉しい
そんな事を考えるとエイラの部屋の前に着ていた
実は着陸するとき見えた人影が坂本少佐では無くて迎えに来てくれたエイラだと勘違いした自分が恥ずかしい
・・・・・エイラに頭撫でてもらったらどんな気持ちだろ?
きっと他のどんな人よりも幸せな気持ちになれるのは間違いない
196名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 14:45:02 ID:x4Dw2ZaL
いつものようにエイラの部屋に入る
ちゃんと服は畳まなくてはと分かってはいるのだけれど、ついついエイラに甘えてしまって
床に脱ぎ散らかしてしまう
ベットを見ると俯せでエイラが寝ていた
・・・・・苦しくないのかな?


そう思ってエイラに近づく
私の大切な人
いつもいつも迷惑を掛けてしまう
エイラが居なければ私はこの部隊ではやっていけられなかっただろう
いくら感謝しても足りないくらいエイラに頼ってばかりの私
でも内気な私は面と向かって彼女にお礼を言えれない

だからせめて彼女が寝ている時くらいは言葉にしよう

「エイラいつもありがとね」


ふと先程の出来事を思い出してエイラの頭を撫でるみる
さらさらの髪が気持ちいい
いつもいつもありがとう
そんな気持ちが通じるにように彼女の頭を撫でる

「大好きだよ」


エイラが寝ているからこそ口に出来る言葉
本人が起きてるときには恥ずかしくてとてもじゃないけど口には出来ない
でも・・・・きっといつか伝えられたらいいな
そんなことを考えているとそろそろ眠くなってきた

倒れ込んだベットは彼女の匂いに包まれていて幸せな気持ちですぐに眠りに落ちた

197名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 14:45:34 ID:x4Dw2ZaL


――数分後

「ぶはっ!」

苦しそうに息をするエイラの顔は息苦しさだけでは無く別の理由で赤く染まっていた
横を向くとすやすやとサーニャが寝ている

――大好きだよ

サーニャの台詞が頭をリフレインする
さっきまで胸につっかえていた出来事など嘘のように吹き飛んでしまった
だがそれほどまでに今の台詞は大きい


大好きだよっか・・・・・
さっきやられたみたいにサーニャの髪を撫でてみる
ふわふわの髪を撫でているととても幸せな気持ちになる
寝ている時にしかこんな事出来ない自分が情けない
それでも今はこの気持ちが彼女に届くように


「私も大好きだぞ」


つい想いが口からこぼれてしまった
サーニャは寝ているのに、なんだかものすごく恥ずかしい
これを起きてるときに面と向けって言うのは、いつになることやら
そんな恥ずかしさを振り払うように
床に散らばったサーニャの服を畳んでいった。



終わり
198名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 14:46:36 ID:x4Dw2ZaL

元は>>182ルートで書いてたけどせっかくだから最後に微妙に>>179も入れてみた
ネタを書いてくれた人ありがとう
勝手に書いちゃってごめんなさい
実はサーニャは起きてます
でもそこまで書く元気が無かったのでカット
後は妄想で・・・・・

ということで今日は昼からお休みだった◆eIqG1vxHTMでした
199名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 15:10:04 ID:rRAjAATF
GJ!
二人とも想いが伝わって良かったな
このあと二人がどうなるのか気になるw
お互い顔をまともに見られなくなりそうだ
200名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 15:29:47 ID:8nMv5xbX
ちょ、ちょっと目を離した隙に本当に書いてくれてるよ、なんだこの幸せ!!!!
結局やっぱエイラニャはガチなんですね、GJです!!!!
201名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 15:39:09 ID:dNnYnmu3
GGGGJ!
待てよ、エイラの方はサーニャが起きてたことにも気づいてないし、エイラが起きてたことをサーニャが気づいたことにも気づいてないわけだ。
一方サーニャは実はエイラが起きてたことにも気づいちゃったし、自分も起きてたこともエイラにばれてないわけだ。
エイラは何も気づいてない振りしていつも通りに振舞うんだけどサーニャはもう恥ずかしくてエイラの顔が見れなくなっちゃうわけだ…。

先生、妄想が止まりません!
202名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 15:39:22 ID:rRAjAATF
よーし、おれもエイラニャを投下するぜ!
いろいろとあれだが気にしない!

==========================

そろそろ夜間哨戒からサーニャが帰ってくる時間だ
サーニャを迎えにいってやろうっと
ただいま、エイラ いつもありがとう
な〜んて言われちゃったりして…フッフッフ

滑走路の隣のハンガーで待っていると、ストライカーの魔道エンジンが発する、重低音がだんだんと近づいてきた
お、きたきた
お目当てのその子は徐々にストライカーの出力を弱めて、滑走路になめらかに着陸した
「サーニャ!おかえり!」
「…」
あれ?聞こえなかったのかな?
「おーい!サーニャ!おかえりっ!」
な、なんだよこの冷たい視線は…
なんでサーニャはこんな冷めきった目で私を見てるんだ!?
「エイラ… 前から言おうと思ってたんだけど、エイラってちょっと馴れ馴れしいよ」
え? 今ちょっとサーニャの口から飛び出したにしてはあまりにもきつい言葉を聞いたような気がするがこれは気のせいだろうか
うん、気のせいだよな
「たいして仲良くないのにいちいち迎えに来て… なんか気持ち悪い…」
「な、なにいってんだよさーにゃ…」
「あ、今日から私、芳佳ちゃんの部屋で寝るから」
「さよなら、エイラ」
そう言って、サーニャは背を向けてすたすたと歩いていってしまう
あ、あ、さーにゃ、まって、いかないで
自分では声を出しているつもりなのに、声は出なかった
なんで?なんで?
うそだろ?うそだろこんな…こんな…
頭がくらくらする…ありえない…こんな…

203名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 15:41:23 ID:rRAjAATF
「うわああああああああああああああ!!!!!」
ベッドから勢いよく起き上がると、椅子に座って本を開いたまま、
眼を丸くしてこちらを見ているサーニャと目があった
あ…夢、だったのか…
「ど…どうしたの?エイラ?」
サーニャは驚いた様子で、本当に心配してくれているようだった
ああ…良かった…いつものやさしいサーニャだよ…
なんだか安心したら、急に涙が出てきてしまった
サーニャは本を机に置いて、こちらに駆け寄ってくる
私の隣に腰を降ろして、心配そうな目をして問いかけてくる
「怖い夢でもみたの?」
「ううん…なんでもない…なんでもないんだ」
「エイラが嫌なら話さなくていいけど、私でいいなら、話、聞かせて?」
うぅ…なんて優しい子なんだよ…余計泣けてくるじゃないか…
「うん、あのな… サーニャが、サーニャが遠くに行っちゃう気がして…それで、私、すごく悲しくて…」
サーニャが、私の背中を優しくさすってくれている
サーニャの手はとてもあったかくて、とっても気持ちがよかった
もっと、サーニャを感じていたい
サーニャが近くにいることを、サーニャが隣にいることを、もっと感じたかった
ズズッっと鼻水をすすりあげて、私はサーニャにひとつ、お願いをした
「あの…あのさ、サーニャ」
「どうしたの?」
「ギュっってしていい?」
突然の私の申し出に、ちょっとびっくりしたのだろうか
サーニャがぴくっと体を緊張させたのが分かった
「い、いやならいいんだ!ごめん変なこといって!」
「ううん…」
「え?」
「いいよ…」
「いいの?」
「うん…」
私のわがままな申し出にOKしてくれて、
耳まで顔を真っ赤にして俯いているサーニャを見てしまったら、もう我慢できるわけはない
ぎゅ〜〜〜っ!

「サーニャ!」
飛びつくようにして、サーニャの小さくて、乱暴に扱ったらすぐに壊れてしまいそうな、そんな儚い体を、
思いっきり、それでいて優しく抱きしめた
すごく幸せな気持ちが体中に広がってくる
とってもやわらかくて…気持ちがいい
「さーにゃ、あったかい…」
「もう…エイラって意外に甘えんぼさんなんだね…」
甘えんぼ、か でも、たまにはこういうのもありだな
よりいっそう、サーニャを抱きしめる手に力を入れて、もっと顔をサーニャの胸に押し付けた
「んん〜さーにゃ…」
「今日だけだからね ふふっ…」
よしよし、と小さな子供をあやすようにして、
サーニャはエイラの長くて、美しい髪たたえた頭を、優しく撫でながら、そう笑いかけたのだった

おわり

DMqulejKでした
204名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 16:08:57 ID:r2QQ2akC
>>198
少佐のなでなでとサーニャのなでなでとエイラのなでなでで三倍ニヤニヤさせられるとは・・・!
なでなで好きには嬉しすぎる!
GJ!
>>203
なでなでも好きだけどギュッも好きだ!
エイラはもっとサーニャに甘えればいいと思うよ!
こっちもGJ!
205名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 16:28:01 ID:rRAjAATF
いま読み返してみたら2レス目の下から16、17行目の
ぎゅ〜〜〜っ!

↑これ消し忘れてました…読み飛ばしてください


たまにはエイラがサーニャに甘えるのもいいよね!
206名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 16:45:43 ID:kLyL6LWo
ちょっと目を話したら完結してるw
仕事速いな
この後のサーニャが読みたいぜ
207名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 17:25:41 ID:Iw5CsBzP
流れとは関係ないけど、今朝芳リネでとてもおかしな夢を見た。
流れとは関係ない上、長いから書かないけど。
208名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 17:36:27 ID:ldf3tZcG
流れは乗るものじゃない、作るものだ!
と言うことでここには手練の分析職人もいることだし、安心して投下したまえ、いやしてください
209名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 17:40:38 ID:jwsnivc9
>>207
その流れはもう流れきった
さあ、話してごらんなさい
210名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 20:09:40 ID:kLyL6LWo
主人公だけど芳佳って組ませにくいよな
ミーナとかエーリカとかシャーリーとかとか
211名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 21:49:19 ID:L8eBn3FF
トン、と肩に何かが当たる感触がした。
横を見てみると、静かに寝息を立てて彼女は寝ていた。

まったく、人の肩を枕代わりにするなんて何と図太い神経をしているのだろう。
無防備な頬っぺたをつねって、起こしてあげようかしら?
そんな思いが脳裏を過ぎる。

だけれど、少し間抜けなその寝顔を見ていると、いつの間にか心が優しくなっていることに気付く。
暖かくて、懐かしくて、不思議な気持ち。

・・・ふん。まぁ、いいでしょう。
疲れた仲間に肩を貸すなんて私にとっては造作も無いこと。
ガリア貴族の慈悲深い心は大西洋の様に広くて深いのだから。

それにしても、本当に気持ち良さそうに彼女は寝ている。
あまりに幸せそうで少し羨ましい。
ふと、思い立って、私も瞼を閉じてみる。

・・・なるほど。確かに気持ちがいい。
食事を取ったばかりだし、天気はポカポカ陽気だし。
それに、ほんのりと暖かい彼女の体温と、微かに漂うシャンプーの香りが心地よい。

ふわぁぁぁ・・・たまにはいいかしら・・・。
心の何処かで、はしたないと言う声が聞こえるけれど・・・。
少しだけと言い訳をしながら、寄りかかる彼女の柔らかい身体に私は身を寄せた。
212名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 21:52:44 ID:L8eBn3FF
今日、ペットショップに寄ったら、シャルトリューとスコティッシュが気持ち良さそうに寄り添って寝てたんだ。
ペリーネスキーとして、思わずお持ち帰りしようと思ってしまったが、二匹合計で30万円ぐらいするから無理だった・・・。
213名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 22:18:01 ID:kLyL6LWo
ペリーネGJ
そこで買ったら真の勇者だな
214gf1xJeg9『あなたの良いところ』:2008/12/11(木) 23:14:06 ID:gRgadu53
>>143です。みなさん元気をありがとう…!
勢いに任せてミーナリーネっぽいの書き上げました。とにかく勢いに任せまくってるので展開おかしいかもしれませんorz

gf1xJeg9『あなたの良いところ』


ある、爽やかに晴れた朝。

本日非番であるリネット・ビショップは、どうも落ち着かない…と、厨房の整頓なんかを始めていた。
彼女は働き者なのだ。たとえ自身が休日であっても、なにか仕事をせずにはいられない。

ごま油の瓶についたべたつきを布巾で拭いとっていると、上官:ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケが食堂へと入ってきた。
ミーナも本日午後から非番なのだ。
「あ、見つけたわ。リーネさん」
「…? なんでしょう、ミーナ中佐」
「今日の午後、なにか用事はあるかしら?」
「とくにありませんけど…」
「よかった、ちょっと付き合ってくれない?」
「私でよければ、喜んで」
「本当? 街に買い出しに行きたいのだけど」
「わかりました。お供します!」
「ふふ、ありがとう」


空の青々とした午後。
身支度を整え、カールスラント製軍用車に乗り込む。
「いい天気ね…」
「風が気持ちいいですねぇ」
なにやら和やかに始まった二人の休日。
きっと楽しいものになる…そんな気がした。

215gf1xJeg9『あなたの良いところ』:2008/12/11(木) 23:15:23 ID:gRgadu53



街に出た。戦争中であるにもかかわらず、人々の活気はおとろえていなかった。
ふたりは必要なものを一通りそろえ、それからは好きなものからなにからたくさん見て楽しんだ。

軍人とはいえ基地を離れれば、年頃の少女なわけで。
いろいろなものに好奇心をくすぐられては、そこかしこを歩きまわった。
そんなわけで4本の足は束の間の休息を求める。リネットが案内して、雰囲気の良い喫茶店へ立ち寄った。

紅茶を一口二口飲んだところで、二人の視線が重なった。
指先を組んでその上に顎をのせるミーナ。ちらりと上目遣いでリネットを見つめ、口を開く。

「リネット・ビショップ軍曹。今から質問をしますので、答えてください」

形式ばった口調で呼びかけられ、リネットは一瞬身体を強ばらせたが、あとに続く言葉を聞いて力を抜いた。

「最近、どうですか。」
丁寧語ではあるものの、ミーナの表情にはよそよそしさなど欠片もなかった。
ミーナは、まっすぐにリネットを見ながら、質問を続ける。

つらくないですか。毎日楽しんでいますか。

「…おかげさまで、毎日楽しく過ごしております」
リネットもミーナの目から目を逸らさずに答える。

「それはよかったわ」

屈託のない笑顔をみせるリネット。ミーナは、喜びのような安堵のような、複雑な感情が全身を包むのがわかった。

そう。ミーナは姉として、あるいは母として、リネットを愛してきたのだ。
ストライクウィッチーズは、一部隊で一つの、家族なのだから。

「宮藤さんとずいぶん仲良くなったわね?」
いつのまにか丁寧語がぬけていた。
「はい。芳佳ちゃんが来てから、私も先輩としてがんばろうって思ったんです。それに芳佳ちゃんは本当にすごくて。天才っていうんですよね、きっと。
だから私だって追いつきたい。芳佳ちゃんとも一緒にがんばろうって約束しました」

「…充実していると思う?」
「はい。とっても」

嬉しいことであるはずなのに、ミーナの胸はちくりと痛んだ。
その気持ちは、子が初めて誰の手も借りずに自らの足で立ったときの、親のそれに似ている。

「リーネさんは、成長したのね」
「そんなこと…」

否定しつつもリネットは、今の自分は以前よりずっと活発になったのだということに気づいているのだ。
216gf1xJeg9『あなたの良いところ』:2008/12/11(木) 23:16:23 ID:gRgadu53

すこし、紅茶を飲む。

リネットがカップを口につけながらミーナを盗み見ると、ミーナもまた、深い愛情をたたえた目をこちらに向けた。

「私ね、初めて会った頃から、あなたに憧れていたの」

上官の口から驚くべき単語がとびだし、リネットは心底驚いた。
「国を、人々を守りたいと言う貴女に心奪われていたの。私はほら、国も家族も、守れなかったから…
きっとうらやましかったんだわ。リーネさんの、純粋な瞳と、強い意志が。」

驚きすぎて、考えるより先に口と身体が動きだす。がたんと立ち上がり、リネットは頬を紅潮させながら声を張り上げた。

「私も…!ミーナ中佐と初めてお会いしたときから、ずっと…憧れてきたんです。
中佐はカールスラントのエースで、みんなのお姉さんで…なんでもできるし、美人だし、字が上手いし、歌が上手いし、……何よりみんなからとっても尊敬されているじゃないですか!」
「ちょ、ちょっとリーネさん!買いかぶりすぎよ!そんなこと言うならあなただって、可愛くて、私なんかよりずっと家庭的で、料理もお裁縫も得意なうえに戦闘だってどんどん成長して!
…それにいい身体してるし!」
「なんですかそれ! そんなの全部中佐のほうがすごいですっ」
「いいえ。全然、リーネさんのほうが! というかまず歳が違うじゃない!」

可能性の差が……とかなんとかミーナが言いはじめたところで、リネットは堪えきれず吹き出した。

二人して、何をやっているんだか。
客の少ないときであったのがせめてもの幸い。
二人は恥ずかしそうに席につき、髪や襟を正す。それでもやはり笑いはこらえられず、しばらくの間涙までながして爆笑した。

「私、ミーナ中佐には何度お礼を言っても足りない気がします」
「私も、あなたには感謝しているわ」

わけがわからないが、なんだかうまくまとまったと、また笑った。


一段落ついたところで、ミーナは手首をひっくり返して時計を見た。
「あら、そろそろ帰らないと。みんなが待ってるわ」
そうですね、とリネットも自らの時計を見てこたえる。

ミーナはすばやく荷物を持って立ち上がるとリネットに近づき、前髪をよけておでこにキスをした。
「…み。ミーナ中佐!?」
そして瞳を見つめなおす。

「ねえ、リーネさん。もし私が空から降りることになったら、そのときは…隊のみんなを頼むわよ」
217gf1xJeg9『あなたの良いところ』:2008/12/11(木) 23:17:13 ID:gRgadu53

微笑みかけてからミーナはリネットに背を向け、歩きだす。
突然、大切なことを何食わぬ顔で言ってのける上官の後ろすがたに向かって、リネットは叫んだ。

「ちゅ、中佐はまだまだ大丈夫です! 私が保障しますから!」

驚きの表情で振り向いてから、ありがとう、と手をあげるミーナ。
リネットはまた顔が熱くなるのを感じながら、ミーナを見送った。

…しかし。
困ったことにリネットもミーナも一つの車に乗ってきたのだ。
なんだか恥ずかしいことを叫んでしまったと思い、でも心はこの上なくすっきりしていて。
それでも今また顔を合わせるのは恥ずかしくて。

うぅ、とうなってごまかしてから、リネットは先をゆくミーナを追いかけるのだった。


Fin.

いいですかねこんなんで。なんかいろいろおかしい気がw

さて、ミーナリーネ。現時点で恋人になるとかは結構考えづらい二人だと思うんだ。しかーーし!数年後。数年後にはどうなるかわからないぜ!?
たとえば三年後。リーネ18歳ミーナ21歳…ふたりとも魅力十分の大人の女性
どこか深くが似ているふたりは強く惹かれあい、やがて愛しあう…とかがあってもいいんじゃないの!毎夜のランデブーとかがあってもいいんじゃないの!
とか考えているのは多分私だけ。

では、いろいろと失礼しました。
218名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 23:33:47 ID:x4Dw2ZaL
GJ
素晴らしすぎる
>リーネ18歳ミーナ21歳
大いに有りダナ
219名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 23:33:48 ID:izPaP6dQ
ちょうど更新するとこだったので過去最速で保管庫に追加してきた。
>>217GJ!!新人の成長をソンナ目で見ちゃう隊長とか発想が素晴らし過ぎる。
前にあったミーナ×リネットは割と切ない系だったのでこういうニヤニヤはたまらんね。
220名無しさん@秘密の花園:2008/12/11(木) 23:47:47 ID:g83yLK0n
>>217 gf1xJeg9様
GJ! 少し姉妹っぽくてそれでいてオトナっぽいと言うか。
ステキです。

さてこんばんは。mxTTnzhmでございます。
今回は>>148-152、保管庫No.0507「origin」の続編? になります。
また軽いノリで読んで頂ければ。美緒の料理編その3とでも言いましょうか。
「juggler」どうぞ。
221juggler 01/03:2008/12/11(木) 23:48:37 ID:g83yLK0n
とある日の気怠い午後。
台所には美緒、芳佳、イーネ、そしてペリーヌの四人が集まっていた。
それぞれ割烹着やエプロンを身に付けている。
今日の主役はペリーヌだ。
「少佐、今回は僭越ながらこのわたくしが、料理を伝授させていただきます」
「ガリア料理か。ガリア料理は見た目にも美しくソースが美味と聞くが」
「その通りですわ少佐! 流石は知識も豊富で、ガリア出身のわたくしとしては……」
「ペリーヌさん、良いから早く作りましょうよ。あんまり時間無いんだし」
「み、宮藤さんにその様な事を言われるすじ……」
「ペリーヌ、すまん。私も早く料理が作りたい。手短に頼む」
「は、はい! 分かりましたわ少佐! 今すぐに! 宮藤さんリーネさん、冷蔵庫から食材の入ったボウルをお出しなさい」
芳佳とリーネはペリーヌの指示に従い、冷蔵庫に予め保管してあった幾つもの具材を調理台の上に並べていった。
誰にも言ってないが、美緒の為にと、手の掛かりそうな食材は全て、ペリーヌが徹夜で下ごしらえしていた。
ペリーヌ自身、実は料理など殆ど作った事が無い(かつては専属の料理人に作らせていた)のだが、
美緒の為にと、全く慣れない手つきで通常の三倍以上の時間を掛け、造り上げた自慢の一品である。
またペリーヌは常に左手を隠していた。指に巻かれた2つの包帯を見せたくない為である。

「今回はサラダを作ります。ガリア風のサラダと申しましても、リヨン風、ニース風、南部風、地中海風……
様々な種類がありまして、また我がガリアに誇る宮廷料理をはじめとして各地方の家庭料理など、様々な……」
「ペリーヌ……すまん、作り方を」
「は、はい! 申し訳ありません、つい説明が長くなってしまいました。宮藤さん、リーネさん。
ここにある具材と、皿を並べてくださる?」
「あ、はい」
「こんな感じですか?」
適当に皿を調理台の上に並べていくリーネと芳佳。
「……センスのカケラも無いですわね。まあ盛りつけですから良いですが」
右手で髪をさっとかきあげると、ペリーヌは幾つかのボウルに作られた食材を見せ、言った。
「今回は火も水も使わない、“安全”な料理でしてよ?」
ちらりと芳佳を見る。先日の扶桑料理の様な悪臭と煙は出さない、と言う皮肉の現れだろうか。
「ガリアでも基本的な、マセドワーヌを作ります。3〜4cm角に切った野菜を盛りつけ、
お好きなソースと混ぜ合わせて出来上がりですわ。このマセドワーヌとは、語源をマケ……」
「賽の目に切ってあるんだね、リーネちゃん」
「細かいね、芳佳ちゃん」
「ちょっとそこ、勝手に触れないでくださいまし!」
説明そっちのけで食材を観察する芳佳とリーネを怒鳴りつけるペリーヌ。
「なるほど。これを盛りつければ良いんだな?」
「その通りです、少佐! ささ、どうぞどうぞ」
美緒の前に一枚、すっと皿が差し出される。
「……うーむ」
何故か浮かない顔の美緒。手を顎にやり、何か納得が行かない様子だ。
「どうかなさいまして?」
「いや、盛りつけるのは良いんだが……私が盛りつけをしたところで、果たしてそれで私が料理を作った、と言えるのかどうか……」
「何を仰います! 盛りつけはその人のセンス、品格が問われる大変重要な部分でしてよ?少佐ならきっと、
その素晴らしいセンスで見る人を唸らせる様なまばゆいばかりのサラダが出来るに決まってますわ!
さあ、どうぞ! わたくしがついていますから!」
ずい、と具材のボウルと皿を寄せられ、苦笑いする美緒。
「まあ、そんな大仰に言われてもな。私なりに、やってみよう」
「私達もやってみようか、リーネちゃん」
「うん」
「ちょっとそこの二人! さっきから少佐を差し置いてなんて事を!」
「良いんだ、皆で楽しくやるのも良いじゃないかペリーヌ」
「は、はい。まあそうですわよね」
なんだかんだ言いながら、実は、美緒は芳佳とリーネの盛りつけを見てみたかったのだ。
222juggler 02/03:2008/12/11(木) 23:49:35 ID:g83yLK0n
美緒は内心思った。
(まさか盛り付けで……いや、そんな事は無い。とりあえず二人の盛り付けを見て、参考に……)
「少佐? 宮藤さんとリーネさんに何か?」
「いや、何でもない。どう盛り付けるか、考えていたんだ」
「それは少佐のお好きな様にして下さい。他人のなんて参考になりませんわ。自分だけの素敵な……」
(私自身が参考にならないから困ってるんだ、ペリーヌ)
美緒は内心冷や汗で震えていた。
そんな緊張状態にある美緒を知ってか知らずか、芳佳とリーネは皿に洗ったレタスをちぎり、
その上に適当に具材を載せ、まぶしていく。
「この緑色の……きゅうりかな?」
「私、トマト多めがいいかな」
お好みの食材を取っては、盛り付けていく。
「……少佐、野菜はお嫌いですか?」
ペリーヌが美緒の横で心配そうに声を掛ける。
「え? いや、そんな事は無いが、どうした急に?」
「少佐、野菜を前に顔色が宜しくなくて……わたくしともあろうものが、最初に少佐のお好みを聞いておくべきでしたわ。
申し訳ございません!」
何もしていないのに平謝りされても困る、と美緒は心の中で悲鳴を上げた。
「ち、違うぞペリーヌ。今色々考えていたんだ。お前の心配は全くの杞憂だ。案ずるな」
美緒はペリーヌを落ち着かせようと、とりあえず手を動かす。
横にあるレタスを株からぶちぶちともぎり取り、皿にどんと投げ入れ……考えれば考える程、どうして良いか分からなくなる。
手近にある具材から順に、どさどさと大雑把に載せていく。
皿の上にまさに具材が山盛りになったところで、右手の近くにあったソースを何種類かぶちまけた。
「こ、これでどうだ?」
「……」
一同は固まった。食材を積層状に積み上げただけで、小山が出来ていた。センスの問題以前に食べにくい。
しかもソースを複数ごちゃ混ぜで掛けてしまったので、混濁してしまって味が謎になってしまう。
皿に致命的な事に、美緒が力任せにもぎり取ったレタスはまだ洗う前、泥がついた状態のものだった。
勿論綺麗に洗ったレタスも用意されていたが、芳佳とリーネが使っていたので、美緒は思わず手近に転がっていた
未洗浄のレタスの玉に手を伸ばしたのだ。
「しょ、少佐……お見事ですわ!」
とりあえず賞賛してみるペリーヌ。
「そ、そうか? 本当にそうか?」
自分が信じられないのか、挙動不審に陥る美緒。
「え、ええ! 勿論ですとも! わたくしが言うのですから間違いありませんわ! ねえ、宮藤さん、リーネさん?」
「あの、坂本さん……」
「少佐……レタス、洗いました?」
「ん?」
「う、上だけ食べれば、問題有りません事よ?」
ペリーヌが必死のフォローを入れる。
「よし、では早速試食と行くか」
美緒はフォークとスプーンを手に、自分が作った“サラダ”に手を伸ばした。

「どうしてサラダでこんな目に!」
ストレッチャーの上で悶え苦しむ美緒はミーナに付き添われ、そのまま医務室に搬入された。
やがて医務室からひとり出てきたミーナは、しゅんとしょげかえるペリーヌを前に、落ち着いた、しかし冷徹な声で問うた。
「ペリーヌさん。坂本少佐に何を?」
「サラダを……ガリアの一般的なサラダを……」
「サラダ……それで坂本少佐が、医務室に?」
「申し訳ありません。……わたくしの責任です」
涙するペリーヌ。
思わず溜め息が出るミーナ。天井を見上げる。
ミーナは、それ以上ペリーヌを責める気にはなれなかった。
美緒には“前科”が有る。
そしてペリーヌは、彼女なりにベストを尽くしたのだ。台所の状態、昨夜ずっと奮闘していた彼女を見れば、理解出来る事だった。
「まあ、仕方ないわ……。残りの具材は、今晩の食事でみんなで食べましょう」
「はい」
ミーナは涙にくれるペリーヌの肩をそっと抱き、台所へと戻った。
223juggler 03/03:2008/12/11(木) 23:50:28 ID:g83yLK0n
「へえ、このサラダ細かいね」
「細かく切る事で食べやすくなり、ソースで好みの味に出来るとはなかなか合理的だな」
エーリカはサラダの細かさに感心し、トゥルーデはその合理性に感心した。
「うえー、あたしもっとトマト多い方がいい〜」
「ちゃんと食べないと大きくなれないぞ? ほら」
だだをこねるルッキーニ、それをあやすシャーリー。まるで親子の会話だ。
「しかし細かいなあ。もっとざっくり豪快に行ってもいいんじゃない?」
豪快な料理を得意とするシャーリーらしい感想だ。
「サーニャの好きなのはどれダ? 取り分けてやるからナ?」
「……ありがとう」
めいめいがボウルから具材を好き勝手に盛り付け、ソースで味付けしていく。
美緒を“医務室送り”にしてしまった罪悪感からか、いつもの元気で仕切り屋的なペリーヌは見られなかった。
テーブルの隅でひとりしょげかえり、どよんとしたオーラを漂わせている。
「リーネちゃん、美味しいね」
「芳佳ちゃんのも美味しいよ。今度、また一緒に作ろう?」
芳佳とリーネは相変わらずだった。リーネの笑顔が、ひときわ明るく映った。

end

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秘め声CDを参考に、書いてみました。頑張れペリーヌ。頑張れ少佐。
各国の料理については、その都度グーグル先生に聞いているんですが……
色々あってなかなか難しいですね。

ではまた〜。
224名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 00:35:14 ID:ka2ntpvT
>>223
美緒さんもペリーヌもかわいいなw
二人揃うと尚更w GJだw
225滝川浜田:2008/12/12(金) 01:15:17 ID:P9+b4lgJ
みなさんこんばんは。
今非常に眠い状況にある奴が通りますよ。

しかし、これを投下するまで寝られません。
というわけで投下行きます。
226滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.4』:2008/12/12(金) 01:17:50 ID:P9+b4lgJ



翌日。

私は医務室の前で佇んでいた。

「…はぁ…」
「勇気いるもんじゃないだろ、ドア開けるのなんて」
「シャ、シャーリー…!」
「ようやく自分の意志貫く気になったか。意外と早かったねえ」
「よ、余計なお世話だよ…。まだドキドキしてるんだから」
「堅物の事を本当に想ってんなら、勇気出して行けって!」
「えっ、ちょっ…うわぁっ!」

私は無理矢理シャーリーに医務室に入れられた。


――何回君を愛したら chapter.4――


「くっそー、覚えてろよ…」

そんな憎まれ口を叩きつつ、トゥルーデが寝ているベッドに向かう。

そこには目を瞑って横たわるトゥルーデの姿があった。

「トゥルーデ…」

あたしはすぐそばの椅子に腰掛ける。

「……まだ起きないんだね……」

私はトゥルーデの姿を見て、改めて自分の犯した行動の愚かさに胸を痛める。

「やっぱあたし…バカな事しちゃったな…」

トゥルーデの頬を撫でる。
当然それでは起きるはずも無い事を知ってるけど。
なんだか、やらずにはいられなかった。

今回の事は、私が焦ったばかりに起きた出来事だ。
だから誰も悪くないし、全部の責任は私にあると思っている。

「はぁ……」

…なんかトゥルーデを見てると罪悪感が沸いてくる。

227滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.4』:2008/12/12(金) 01:19:41 ID:P9+b4lgJ
自分のやった事がいかにバカらしくて、どれだけトゥルーデを傷付けたか。

…あ、ダメだ…。
泣いちゃダメだって思う程に涙が溢れてくる。

アハハ、私情けないや…。
トゥルーデが目を覚ましたとしても、多分トゥルーデは私を許してくれないと思う。

「ううっ…ごめんっ…トゥルーデッ…私っ、バカだったね……私なんかっ……!」

涙が込み上げてくる。

止まらない。止まらない。
拭っても拭っても…止まらない…。

「トゥルーデ……トゥルーデが私の事…嫌いになっても…私はトゥルーデの事……好きで居続けるからっ…!
……本当に……大好きっ…だからっ…!」
私はトゥルーデの手をギュッと握る。

「もう……トゥルーデを危険な目には遭わせない……これからは私が、トゥルーデを守るから…!」

誓う。力強く誓う。

ビーッビーッ

突然基地のサイレンが鳴り響く。


「なっ、なにっ!?」
「おい、エーリカ!ネウロイが出たぞ!」
「ええっ、なんだってこんな時にっ…!」

「ミーナ中佐んとこに行くぞ!」
「う、うん、分かってる!」


228滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.4』:2008/12/12(金) 01:23:02 ID:P9+b4lgJ

……トゥルーデ。
ネウロイが出たってさ。

今、トゥルーデが起きてたら、多分貴女は私を止めるだろうね。

でも、今の私は止めたってダメだよ。
私、トゥルーデの全てを背負って飛ぶから。

だから、だから。


「目覚めたら一番に、唇にキスしてね」


そう言って、私はトゥルーデの頬に優しく、口付けた。

「…行ってくるね、トゥルーデ」


…私、もう、何があっても泣かないから。


To be Next chapter…



第4話以上です。
前々から思ってた事なんですけど、自分がこういう話書くと何故こんなにキャラが女々しくなってしまうんだろう…
誰か教えて!!

…さて投下も終わったので、爺はもう寝ます。おやすみなさい…
229名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 01:49:19 ID:qksse5SB
毎日投下お疲れ様です
230名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 03:45:15 ID:vk6nA3df
スレちがいで申し訳ないが、百合じゃなくて普通のSSは
あるのだろうか?よかったらその板おしえてくれ

いつも投下お疲れ様です
231名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 04:07:10 ID:bFkfdGUl
普通って何だ
ギャグとかか
232名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 05:20:23 ID:183XfPpB
>>228御大
GJ! 続きが気になります。

>>230
まとめwikiに何か情報無いですかね。私もちょっと分かりません。
試しにグーグル先生に聞いてみましたが、個人サイトやブログ上での展開が多いかも。

さて、改めてこんばんは&おはようございます。mxTTnzhmでございます。
ウィッチーズ基地のモデルは確か「モン・サン=ミシェル」だと聞いたので
当該の世界遺産を参考に書いてみました。
芳佳×リーネメインで「metaphar」どうぞ。
233名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 05:21:08 ID:aqniBUkM
百合が普通じゃないと言われるとむっとしてしまう器量の小さい私ですまない
234metaphar 01/05:2008/12/12(金) 05:21:26 ID:183XfPpB
「この基地の事、ですか?」
リーネと食後のお喋りに夢中になっていた芳佳は、エーリカから唐突に聞かれて戸惑った。
「私、一番最後にここに来たから……この基地の事、あんまりよく知らないんです。リーネちゃんに一通り教えて貰ったけど」
「そっか〜。ミヤフジ、あんまりここの事知らないんだ」
にやにやしながら芳佳を見るエーリカ。
「ここはね、元々修道院だったんだってさ」
「へえ、そうなんですか」
「私も知ってます。元々この土地は古代の人々の聖地だったそうで、そこに“神のお告げを聞いた”人が教会を建てて……」
リーネが補足する。
「なるほど〜」
「でね。一時期ここは、監獄として使われてたらしいよ?」
「監獄?」
どきりとする芳佳。
「監獄だよ監獄。罪無き人々を閉じこめ、絶え間なく続く拷問に虐殺……」
おどろおどろしい口調で呟くエーリカ。
「あわわ……」
素直に受け取ってしまう芳佳。
「その跡が、この基地の地下に有るって話だよ? 監獄で死んだ者は秘密の墓所に投げ込まれ……
今でもその時の犠牲者が亡霊になって出てくるって〜」
じわり、と二人に踏み込み顔を近付けるエーリカ。心なしか、顔が青白く見える。
「そ、そんな話聞いた事無いです!」
リーネは即座に否定する。しかし天性の恐がりなのか、芳佳の手をぎゅっと握りしめていた。
「い、痛いよ、リーネちゃん」
「かつての地下室には、その跡や骨が残ったままなんだってさ〜」
「なんか、この基地、怖いですね」
「怖くなんかないですっ! 迷信です!」
「なら、調べて来たら? ここに簡単な地図置いておくから、二人で調べてきなよ」
一枚の、ノートの端切れに書かれた地図……とは言えない代物……を二人の前に置いた。
「迷信なら、別に行っても平気だよね?」
言葉を逆手に取った、強要に近い。
「め、迷信なら、そのまま放っておけばいいんじゃ……別に私は……」
「行きます! 私と芳佳ちゃんで、迷信だって証明してみせます!」
リーネは芳佳の手を握ったまま、ソファーから立ち上がるとエーリカに宣言した。
「よぉ〜し。その言葉に二言は無いね? はい、これ」
エーリカは隠し持っていた懐中電灯をふたりに渡して、背中を押した。
「行ってらっしゃい。報告待ってるよ〜」
ずかずかと芳佳を引きずって進むリーネを、手を振って見送るエーリカ。自然と口の端が歪むのは何故。

「リーネちゃん、ここ、何処?」
「地下……」
二人は速攻で迷い込んでいた。
確かに基地の地下……ちょうど皆がくつろぐロビーか食堂辺りの真下の筈だが……
エーリカの寄越した地図がでたらめ過ぎて、何処をどう行けば良いのかさっぱり分からない。
ふたりは、狭く、じめっとして、時折水滴が垂れる暗く長い通路を、じわじわと進んでいく。
芳佳の手を握りながら、リーネは思わずエーリカの口車に乗ってしまった事を激しく後悔していた。
怖いのが苦手なのに、どうして自ら突っ込んでしまったのかと。
「ねえ、芳佳ちゃん」
芳佳はぐいと手を引っ張られ、その弾みで持っていた懐中電灯を自分の顔の真下から照り付ける格好で、リーネにずいと振り返った。
「なぁに?」
「きゃああああああああああ!!!!!!」
リーネは芳佳の迫力と陰影に満ちた顔を見、飛び上がって驚くと懐中電灯を放り投げて逃げ出した。
「ちょ、ちょっとリーネちゃん!」
一人取り残される芳佳。足元にはリーネが使っていた懐中電灯が転がる。
「リーネちゃん……何処?」
リーネの懐中電灯を拾うと、逃げたと思しき方向を探す。地図はリーネが持っていた。芳佳が持っているのは懐中電灯二本だけ。
当然どう帰るかも分からず……その前に暗闇の中に逃げたリーネを探すべく、芳佳はひとり“迷宮”を彷徨った。
235metaphar 02/05:2008/12/12(金) 05:22:21 ID:183XfPpB
リーネは壁にもたれると、荒い呼吸を繰り返した。心臓が飛び出しそう。息が止まらない。
突然の事に激しく動揺し、そのまま芳佳を置いて遁走してしまった。暗闇で明かりもなく……
懐中電灯は何処かに捨ててしまった……持っている地図すら満足に見えず、リーネは酷い孤独と恐怖に陥った。
「こ、怖い……」
蹲り、がくがくと震える。
「芳佳ちゃん……」
涙が止まらない。
(あの時どうして手を離してしまったの。て言うか芳佳ちゃんがあんな驚かせるから……
芳佳ちゃんの馬鹿! もう顔も見たくない!)
リーネは恐怖に打ちひしがれながら、芳佳を呪った。しかし……
「芳佳ちゃん……」
(早く合流しないと、帰り道すら分からなくなるし……早く会いたい)
恐怖にすっかり負けてしまい、芳佳を捜すべくふらふらと立ち上がり、あてもなく歩き始める。
暗く地面もでこぼこなので、一歩一歩が慎重になる。壁に手をやり、もう片方の手で宙を……
何かが無いか探りながら、リーネは芳佳の名を呼んだ。

一方の芳佳は、一刻も早くリーネと合流すべく、急いだ。
「リーネちゃん……何処だろう」
緩いカーブが続く道の先に向かって、大声でリーネの名を叫ぶ。芳佳の声がこだまするも、返事は無い。
芳佳は両手に懐中電灯を持ち、リーネが何処かに隠れて……しゃがんだり蹲ったりしていないか、懸命に探した。

一人暗闇を行くリーネは、微かに自分を呼ぶ声が聞こえた。
はっと辺りを見回すも、何も見えない。暗闇に慣れたとは言え、全く光が無い状態では夜目も意味が無い。
一瞬、向こうから人影が見えた。光……いや、ぎらりと光るふたつの目。
「ぎゃああああああああ」
リーネは駆け出し、躓き、道の脇に転がり落ちた。

「リーネちゃん?」
芳佳は確かに彼女の悲鳴……それも断末魔に近い……を聞いてすくみ上がった。
「リーネちゃん、居るの? 何処? 私、芳佳だよ!」
芳佳は少しでも見やすくしようと、懐中電灯を両方点け、両手に持って歩いていた。
リーネが“光る目”と錯覚したのはこの為だが、リーネの発見に必死な芳佳はそんな事に気付く筈もなく、辺りを徘徊した。

リーネは泥と埃にまみれて、立ち上がった。石畳の床で擦ってしまったのか、膝に血が滲んでいる。立ち上がると、少し痛む。
「うう……」
手探りで辺りが何なのか調べてみる。壁は、所々が空間の様に空けられている。ちょうど二段ベッドの様な感じだ。
上に微かな光が一瞬見えて、消えた。
道から転がり落ちたらしい事は、リーネ自身にも分かっていた。
だけど、ここから上がる手段が無い。と言うか何も見えない。
試しに魔力を使ってみたが、暗闇を見通せる力がある筈も無く、落胆し、はあ、と溜め息を付き壁のへこみに腰掛ける。
乾いた音が、尻の下から聞こえた。何かを踏んだか潰してしまった様だ。
「?」
その潰れた破片を手に取る。暗闇の中、目の数センチ手前まで近付けてみる。
目を凝らして見るも、不確定名「白っぽい何かの破片」と言う事までしか分からない。
その破片を元あった場所に置いて、どうしよう……と落胆する。
また上を光が通った。
「芳佳ちゃん? 芳佳ちゃん!」
返事は無い。
(芳佳ちゃん、心配してるだろうな……でもここは道から外れた下の場所みたいだし……)
音も無く、光もない状況。
(私、このまま基地の奥底で、誰にも見つからずに一人死んじゃうのかな……)
リーネは絶望し、涙を流した。
236metaphar 03/05:2008/12/12(金) 05:23:13 ID:183XfPpB
芳佳は必死にリーネを探していた。懐中電灯の片方が、電池の持ちが悪くなったのか光が弱くなっている。
何処かから、すすり泣く様な音が響いてくる。反響して聞こえるその音は、亡霊の泣き声かと錯覚してしまう。
「な、なにこの音……」
思わず後ずさる。
背後に全く意識を集中していなかった。いきなり足を踏み外し、
「おおっと」
重力に逆らえず、落下した。

リーネは目の前に突然降ってきた物体を見て悲鳴を上げた。
何かにぶつかってその物体を破壊し、がらがらと激しい物音を立てて立ち上がる“人間型の生き物”。
おまけに一つ目がらんらんと輝いて……あれ?
「よ……芳佳ちゃん?」
「リーネちゃん!」
顔を懐中電灯で照らされる。その光は微かだが、確かに声は芳佳で……
リーネは安堵と、こうなる切欠を作った芳佳に対する怒りと自分の情けなさが全部混じって、芳佳をぐいと引っ張ると、怒鳴った。
「どうしてあんな怖い事したの? 怖かったんだから! 芳佳ちゃんの馬鹿!」
「ごめん、リーネちゃん。驚かすつもりはなかったの……ホントだよ? リーネちゃん探そうと思って一生懸命探して……」
リーネは芳佳を抱きしめた。
「ごめんね、リーネちゃん。もう大丈夫」
涙を見せるリーネをそっと抱きしめ、芳佳は耳元で囁いた。
「もう、大丈夫だから」
リーネの震えが止まるまで、芳佳はずっと抱きしめた。

リーネが落ち着いたところで、芳佳はこの「穴」から脱出すべく、懐中電灯で辺りを照らした。
上に出る木製のハシゴはすぐに見つかった。
しかし、壁のあちこちに空いている穴は何だろう? リーネが座っていたと思しき場所を、電灯で照らしてみる。
埃と蜘蛛の巣だらけで分からなかったが、何かが積まれ、横に他の物体が安置されている様だ。
よく見る。
所々砕けているが……それは……骨。
虚なくぼみの頭蓋骨がひとつ、無言でこちらを見つめている。
「きゃあああああ!」
「いやああああああ!」
懐中電灯を握りしめ、我先にとハシゴを昇り、上に出た。
「芳佳ちゃんの馬鹿!」
リーネは上の道に上がるなり、芳佳の胸をぽかぽかとグーで何度も叩いた。
「ご、ごめん。周りに何があるんだろうって、つい気になって……あれ、人の骨だよね」
「どう見てもそうでしょ!? 何であんなとこに!?」
「ここ、エーリカさんの言う通り、やっぱり地下の墓地だったんだよ」
「そんな……」
「だってあれ……もう一度確認する?」
「しない!」
「だよね。私もなんかもう、怖くて。とにかくここから出よう?」
「うん。もうこんなとこ嫌。早く出たい……」
「大丈夫、今度は私がしっかりついてるから、怖くないよ」
「芳佳ちゃん」
二人は光量の減った懐中電灯を手に、再び歩き始めた。
237metaphar 04/05:2008/12/12(金) 05:24:21 ID:183XfPpB
とある場所に差し掛かったところで、上の隙間からうっすらと水滴と光が漏れている事に気付く。
「あれ、この光……」
芳佳はリーネに肩車して貰うと、光の所在を確かめた。
一ミリ程にも満たない僅かな隙間ではあったが……そこから広がる空間は、確かに見慣れた、基地の風景だった。
「リーネちゃん、この上、基地だよ!」
「芳佳ちゃん、それ、当たり前じゃない?」
「ああ、そうじゃなくて。基地のどこだろう……あ、今誰か通った!」
「え? 何処? 誰?」
「あの脚……ズボン……エイラさん?」
「誰かの部屋?」
「そうかも。リーネちゃん、何か棒みたいなの無いかな?」
「ええっと……」
辺りを照らすと、打ち捨てられたスコップかつるはしの様な金属の破片が見つかる。芳佳はそれを手にすると、
己の魔力を解放した。耳と尻尾がぴょこっと生える。
「芳佳ちゃん?」
「これで少しは力も強くなるから、天井を叩けば……気付いてくれるはず! リーネちゃんも足ふんばって!」
「わかった。芳佳ちゃん、頑張って」
リーネも魔力を解放し、耳と尻尾が生える。
「うん。行くよ」
芳佳はまず天井をこつこつと叩いた。何の応答も無い。当たり前だ、突然床が鳴ったところで気のせいかと思われるだろう。
次に、魔力を存分に発揮し、天井を突き破る勢いで、叩いた。相当な衝撃を与えたみたいで、天井の一部が崩れ、
ぱらぱらと破片が降ってくる。落ちてくる水も少し勢いが増した。
「もうちょっと!」
「芳佳ちゃん、頑張って!」
「えええい!」
全身全霊を込めて、天井を打つ。
手応え、有り。
天井は見事に砕かれ、人ひとり分位出入り出来る穴が穿たれ、上から光が射し込んだ。同時に水もどばーっと流れて来た。
破片まみれ、水まみれになりながら、上を見上げる二人。
「やった、やったよ、リーネちゃん!」
「凄い、芳佳ちゃん! これで私達助かるかも!」
暫くして、上から覗き込む人影が見えた。おどおどしている。芳佳は叫んだ。
「誰!? エイラさん!? 私、芳佳です! リーネちゃんも居るんです、ここから……」
「芳佳……ちゃん?」
人影の頭から、魔導レーダーが見え隠れする。
「サーニャちゃん?」
上からの光に照らされたサーニャは、裸だった。サーニャに続いてエイラも顔を出す。同じく、裸だ。
「お、お前らだったノカ……いきなり何すんだヨ〜」
更にひょっこりと影がふたつ、みっつ見える。全裸のシャーリーとルッキーニ、ペリーヌだ。
「二人して何やってんだ、そこで?」
「芳佳ぁ? 何処から入ろうとしてるの?」
「一体何の騒ぎですの?」
「とにかく、ここから出して下さい!」
「??」
上から見下ろす一同は、首を傾げた。
238metaphar 05/05:2008/12/12(金) 05:25:25 ID:183XfPpB
「お前達は何をやっとるんだ一体!」
美緒の怒号が執務室に響く。ミーナとトゥルーデも同席し、事情聴取……一種の尋問……が行われた。
芳佳達が探り当てたのは、風呂場だった。浴槽でなかったから良いものの、風呂場の端っこ……ちょうど脱衣場との隙間を
部屋と勘違いして突き破ってしまったのだ。お陰で風呂場は穴が塞がるまで使用禁止となった。
「すいません。でも、私達、生き残るのに必死だったんです!」
「生き残るも何も、基地の中だぞ? 寝言は寝て言え!」
美緒が芳佳にきつく当たる。トゥルーデは腕組みしたまま呆れ返りながら二人の話を聞いていた。
「そんなあ!? 信じて下さい! 私達、見たんです! 地下に眠る人の骨!」
「本当なんです! 芳佳ちゃんの言う通り、地下に……謎の部屋と、骨が」
ミーナはこめかみを押さえながら思わず下を向いた。
芳佳がたまに突拍子もない事をしでかすのは、過去に何度も有った。それ自体は分かる。
だが、あろう事か基地の浴場を真下から破壊するなど……。
但し、リーネも一緒と言う点が引っ掛かる。彼女は大人しく突拍子も無い事もしなければ、勿論嘘も付かない。
「とにかく、何が有ったのか、一番はじめから話して頂戴。嘘はダメよ。そして分かり易く、詳しく」
ミーナはふたりに向かってゆっくりと問い掛けた。
「はっ、はい! まず、二人で地下に行く事になったんです。それで基地の……」
「ちょっと待って。どうして基地の地下に行く事になったの? そこをまず話しなさい」
「ええっと……」
程なくしてエーリカも執務室に呼び出され、こんこんとミーナと美緒から説教を喰らった。

「結局、何だったんだろうね」
芳佳はベッドの上で、リーネとぴたりと肌を合わせながら、問い掛けた。
「ミーナ中佐も、少佐も知らないって言ってたし……」
リーネは地下での恐怖が抜けず、芳佳に一緒に添い寝して欲しいと懇願し、今に至る。
「確かに、昔、一時期監獄だったって事は話で聞いてたけど……あんな場所が有ったなんて……」
「そうだよね。なんか、ちょっと謎だよね」
「芳佳ちゃん……私、怖い」
震えてる。あの時の恐怖を思い出したのか、少し涙目になってしまったリーネ。芳佳はそっとリーネを抱きしめた。
「ミーナ中佐が明日にでもあの場所を調べると言ってたから……大丈夫だよ、きっと」
「うん」
「もしかしたら、あれは骨じゃなくて見間違えだったかも知れないし」
「うん」
「だから、大丈夫。怖くなっても、私が一緒だよ? だから安心して」
「ありがとう、芳佳ちゃん……ありがとう」
抱きしめる力を増すリーネ。芳佳は押し寄せる胸に圧倒されつつも、リーネを抱きしめ、頭を撫でた。
「芳佳ちゃんが何度も何度も私を捜してくれてるの、嬉しかった」
「私も、必死だったから。リーネちゃんに何か有ったらと思うと……」
「光がね。見えたの。芳佳ちゃんの持ってる懐中電灯。何度も見えて、私その度に芳佳ちゃんって……どうかしたの?」
「私、あの近く、一度しか通ってないよ?」
「え」
いくばくかの沈黙。リーネはその「光」が何を意味するのか想像し、がたがたと震えはじめた。
「リーネちゃん、大丈夫。大丈夫だから……気のせいだよ。私がついてるから、大丈夫、ね?」

「久々に怒られちゃったよ〜。トゥルーデ、癒して〜」
エーリカはトゥルーデのベッドの上で、はふうと溜め息をついた。呆れるトゥルーデの胸に顔を埋め、ほっと一息つくエーリカ。
「冗談のつもりだったんだけどね〜」
「宮藤もリーネもあの怯え様だぞ。冗談で済むか」
「地下室と環状通路の配電盤を止めて、明かりを全部消しただけなんだけどね〜。まあ、通路の事自体知ってる人少ないけどね」
「……肝試しにしては気合いが入り過ぎだ」
「あと、風呂場の上を道が通ってたってのも意外な発見だよね」
「気楽に言うな。暫く風呂が使えなくなっただろう」
「まあ、二時間経っても戻って来なかったら、電気付けに行こうと思ってたんだけど」
「お前って奴は……。しかし、宮藤とリーネが落ちたと言う空間は何だったんだ? あと、人骨とか……」
「多分昔に作られた物置の筈だよ。色々ながらくたが詰まってた筈だから」
「エーリカ。お前、後でちゃんと二人に謝っておけよ。基地がお化け屋敷みたいに見られるのは嫌だからな」
「あれ、トゥルーデもしかして怖いの? 一緒に見に行く?」
「ばっ、馬鹿言うな」

end
239名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 05:26:58 ID:183XfPpB
以上です。
基地の「お化け屋敷」ネタはいつかやってみたかったんですが……
機会が有ったら別のペアでも書いてみたいですね。

ではまた〜。
240名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 07:22:36 ID:xL4VEtuq
>>239
朝からグッジョブ!お化け屋敷ネタいいな、ぜひ他のペアもみたい
しかしリーネは乙女の巻のあの怖がりようをみるにエーリカの話を否定するよりも
すっかり鵜呑みにして部屋に籠ってぶるぶる震えていそうな気がするw

ところでリレーはもうやらないのかな
まあ誰かが一番最初を書いてくれたら後にみんな続くだろうけど、ネタ振りするなら
季節柄だとクリスマス→正月の年明けパニックとか、
いっそのことパラレルでファンタジーとか、
「もし〇〇が××だったら」の短編連作でもいいかもしれないw
この早さじゃ無理と言われたらそれまでだけどね
241名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 08:44:08 ID:ko91WXkr
相変わらず書くの速いなw
リレーは久しぶりにやったら面白そうだ
242名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 09:13:37 ID:krAe3FLC
>>239
こういうのもほのぼのしてて良いねw
DVD出るたびに書くネタが増えるから嬉しいな。資料集ありがたい
243zet4j65z:2008/12/12(金) 13:05:28 ID:8iirflsN
>>239 相変わらず執筆が早くてうらやましい。
っていうか、ノイタンツが好きって発言の後にoriginってタイトルが来て
脳内BGMが再生されたところにあの内容で仕事中盛大に吹いたwww
jugglerもmetapharも然りw

で、自分の方なんですが、相変わらず思っていたよりも伸びる伸びるw
冒頭部がクライマックスだったんですが、まだそこまで届いてません><
にもかかわらず前回投下分よりも長くなってるんでまた途中まで投下〜
244zet4j65z:2008/12/12(金) 13:06:13 ID:8iirflsN
●ガリア1944 RISING BLUE LIGHTNING 続き

「!」
「!」 
「リーネさん! 出撃準備を!! 私のストライカーはっ?」

 了解です!と短く応えて架台のボーイズを掴むリーネさん。
 私のスピットファイアも丁度仕上がったようで、整備兵が笑顔で親指を立てていた。
 見ればいつの間にか国籍マークがガリアのものに書き換えられていた。
 とてもありがたいことですわ。

「先に上がりなさい! 私でしたらすぐに追いつけます! ……コンタクト!」
「イエスマム!」

 リーネさんは敬礼してから背を向けて表に出、タキシングに入る。
 回れ……回れ、回れ!!
 野戦設備の貧弱なスターターに対して貴族にあるまじき悪態を吐きそうになってすんでで飲み込み、エンジンへと魔力を流し込む。
 その間にも先程帰還したばかりの先発隊がフリーガーファウストを担いで滑走路に入るのが見えた。
 機銃を持っていない。
 魔力を消耗してまともに空戦の出来ない状態でありながら、せめて一撃を与える為に単射のロケット弾のみを装備して上がるつもりなのだ。
 更に、無茶苦茶な内容の命令がスピーカーから響いた。
 
『現在待機中の全ウィッチへ、ストライカーが起動できるものは全て出撃し、A3を撃退せよ』

 随分と弱気ですわね。上げるだけ上げながらも目標が撃破ではなく撃退とは……。
 規定の出力まで到達し、計器とにらめっこをしていた整備兵が発進ヨシの合図を出す。
 ありがとう、よくやってくれましたわ、とお礼とねぎらいの言葉をかけ、格納庫を後にする。
 滑走路では既にリーネさんが離陸しようとしていた。

『ブリタニア空軍610戦闘機中隊のリネット・ビショップ少尉です。現在ガリア自由空軍602飛行隊に転出しブルー小隊2番機を勤めています。
 ええと、フライシュッツェとお呼び下さい。出撃を以って着任の挨拶とさせて頂きます。宜しくお願いします。OTR、オーバー』
『元501統合戦闘航空団ですね。期待しています。発進許可下りました』
『は、はいっ! 了解です。ガリアンブルーセカンド、離陸します』

 重い対戦車ライフルを構えながらもブレの無い綺麗な離陸を見せ、リーネさんは空の人となった。
 私もブレンガンを架台から取り、腰のレイピアの固定を確認して格納庫を出る。
 空は既に先行きを表すが如く雲が立ち込めた曇天模様だった。雲底高度も下がりつつあるらしく、湿った風が雨の到来を予感させる。
 タキシングから滑走路へ入る。近くで見る出撃待ちの義勇軍の方々はみな消耗し、自身もストライカーも傷だらけだった。
 人によってはガリア軍の識別章をつけた私に向けて恨みがましい目で睨んで来る場合もあった。
 あたりまえですわね。
 あなたがたが今ここで苦しんでいるのは、私の同胞が不甲斐ない戦いをしたせいですもの。
 でも、その様な評価などすぐにひっくり返して差し上げますわ。
 この私がガリアのウィッチの真の実力を示し、共に翼を並べガリアの地を守護した事を誇りに思えるようにして差し上げます。
 そして、数人の間を置いて私の番が回ってくる。

「ガリア自由空軍602飛行隊ブルー小隊長ペリーヌ・クロステルマン中尉、ブループルミエです。以後宜しくお願いいたしますわ。OTR、オーバー」
『確認しました。発進を許可します。現在無傷の翼はあなた方ブルー隊だけです。よろしくお願いします』
「ブルプルミエ、出ますわよっ!」

245zet4j65z:2008/12/12(金) 13:06:48 ID:8iirflsN
 離陸、上昇。緩やかな加速で先行していたリーネさんに合流し、進路を調整する。
 地上では陸戦ウィッチと戦車部隊が展開しはじめていた。
 無線通信の情報によると根拠地から約20km地点にA3が降下したらしい。
 対大型ネウロイの重攻撃部隊がA3を懸架していた4機の内1機に致命的な損害を与え、強制的にA3を降下させる事に成功したようだ。
 しかしこの戦闘で部隊はフリーガーファウストを全弾消耗したうえに30%以上の損害を出し、部隊としての機能を喪失しているという。
 それでもこの戦果は大きい。
 A3の主砲のビームの射程は5km以上といわれている。
 つまり後数分撃墜が遅れていれば、根拠地はその直後から砲撃に晒されていた事になる。だからそれは犠牲と損害に見合うだけの戦果と言えた。
 空を飛ぶものにとって20kmの距離などあってないようなもので、雲の隙間からは既に大型ネウロイが目視できていた。
 周囲を飛ぶフリーガーファウストを装備した決死隊の逡巡が伝わってくる。
 フリーガーハマーと違ってファウストは一発使いきりのロケット兵器。今ここで大型ネウロイに使ってしまってはA3への攻め手を失う。
 かといってこれらのネウロイを放置する事もできなかった。
 根拠地は要塞化された軍事施設では無く、無人だった街を接収したものでしかないのだ。
 大型ネウロイの持つ近接防御火力だけでもかなりの損害を受ける事は間違いなかった。

「リーネさん!」
「はいっ!」

 迷っているのは一瞬で、リーネさんには一言だけの呼びかけとアイコンタクトで全てが通じたと確信できた。
 少々乱暴ですが、スピットファイアの慣らしをさせてもらいますわよっ!
 高度を上げながらストライカーのコントロールに集中する。
 加速も舵の効きも魔力の増幅性能も申し分ない。

「お行きなさい! あなた方はA3を討つ為に空に来たのでしょう! でしたら初志を貫徹なさい!」
『しかし3機の大型ネウロイはどうするつもりです? ガリアンブルーリーダー』

 幾らか焦りを含んだ指揮官らしき人物からの通信が返る。

「我々ブルー小隊にお任せして頂ければ万事解決いたしますわ!」
『中尉、無傷とはいえたった2機では危険です。こちらの判断に……』
「時間の無駄ですわっ!」

 一番距離の近いネウロイに対し小刻みにロールを行い、相手に照準の暇を与えずに高速で航過。その刹那に胴体部へとブレンガンの連射を叩き込む。
 案の定先程の重攻撃隊との交戦で損害が癒え切っていないネウロイの体表は普段からは想像できないほどあっさりとはじけ飛んで光を散らす。
 攻撃と同時に回避行動に移った視界の隅――眼鏡のレンズの外――に一瞬だけ露出したコアの赤い光が流れ去る。
 その一瞬の隙を、私の僚機である魔弾の射手は逃さなかった。
 断雲と爆煙の隙間を塗って青白い魔力光を纏った弾丸が飛来し、そのネウロイはただの一撃で無数の光の欠片となって霧消する。

「ブルーセカンドへ、次を狙いますわよ!」
『ブルーセカンド了解です』

 断雲を視界の遮蔽に利用し次の獲物へと切り込む。視界の中で大きさを増す巨体の左側面側のダメージがひどく、弾幕も薄い。
 火線の死角から滑り込むように機動し、トリガーを引きっぱなしにして薙ぎ払う。
 表面構造が弾け、内部が露出する。
 同時にネウロイの巨体が失速覚悟の鋭敏な左ロールを打って傾き、死角を利用して離脱に入った私の背面を無理矢理射界に収めようとする。
 でもそんな動きはすでに計算済みですわ。
 死に物狂いで休み無く大気を引き裂き続ける火力の顎が私を捉えるよりも早く、砕けたまま再生の終わらない装甲の隙間へと蒼白の魔弾が飛び込む気配を感じた。
 振り返る必要などありませんわっ!

246zet4j65z:2008/12/12(金) 13:07:24 ID:8iirflsN
「っで、そこのあなた方、私たちブルー小隊の華麗なる空戦に見惚れている暇がありまして?」
『くっ……全機、ここはブルー小隊に任せA3に向かいなさい!』『イエスマム!』『ヤーヴォール!』『了解!』

 各々の母国語で応え、フリーガーファウストを抱えた決死隊の乙女たちがA3へと向かう。
 ここまでは添え物切り……今の撃墜は事実上重攻撃部隊の戦果ですわね。
 残った一体のネウロイはどうやらリーネさんを最大の脅威と考えたらしく、彼女へとその機首を向けて加速する。
 射程や一発の威力ではリーネさんが圧倒的に有利でも、近づかれてしまえばリーネさんには私のようにネウロイの近接火力を避けるだけの回避技術は無い。
 射撃時に足を止めているリーネさんはあっという間に距離を詰められていく。
 リーネさんはボーイズで応射しているが、この個体が一番受けていた損害が低いらしく、着弾点から光を散らしながらもその突進は止まらない。
 ネウロイにしてはいい判断ですわ。
 ですが、私という存在を疎かにしていた時点であなたの敗北は決定していましてよ。
 その近接火力がリーネさんを射程に捕らえようとする寸前、一旦上昇をかけていた私の高度差運動エネルギーを乗せたレイピアの一撃が、ネウロイの胴体中心を刺し貫く。
 魔力を込められたその刺突は、ネウロイにとっては大口径砲弾よりも剣呑な打撃となってその巨体を崩壊させる。
 坂本少佐の扶桑刀の一閃はあまりにも素晴らしく見事で凛々しさと美しさに溢れ、その威力はどのような敵相手でも一撃必殺。
 だから、普段はその後ろに付かせて頂けても私の出番などまわってくる事はありませんでしたけれど、私のレイピアもこの程度のネウロイを倒すには十分ですのよ。

「いい判断でしたわ、リーネさん」
「ペリーヌさんこそ、ありがとう。絶対に倒してくれるって信じてたよ」

 本当にさすがですわ。
 咄嗟の囮役の交代だけでなく、私の攻撃を信じて殆ど魔力を込めない牽制のみの攻撃を行い、戦力の温存を図るという先を見越した行動にも感嘆する。
 あとはそうした気遣いが無駄になるほど簡単に終わっていただけると嬉しいのですが……そううまくはいきそうにありませんわね。
 A3に到達し攻撃を開始した部隊からの流れてくる無線は、案の定苦境を告げていた。

『防御が硬い! 踏み込んでから撃て!』『扶桑隊、全弾消耗。帰還します』『火力が足りない!』
『撃ったら飛べるうちに帰還しろ。そして出られるならもう一度上がれ』『くっ、被弾した……誰かわたしのファウストを、頼む!』
『陸の連中は展開できないのか?』『メイデイ!メイデイ! きゃああああああ!!!』

「さっきの皆さん、状況あまりよろしくないようですわね……」
「そうですね、急ぎましょう」
「ええ、言われるまでもありませんわ」

 高度を下げながら戦闘領域へと加速をかける
 戦闘爆撃隊が健在ならもう少しやりようもあるんでしょうけれど、制空部隊で地上攻撃では苦戦は免れませんわね。
 私のトネールとリーネさんの狙撃が素直に通じればよいのですが……。
 思考する暇もなく一分程度で雲の切れ間からA3を目視。
 その六本脚の巨体は、まだ数kmの距離があるというのに圧倒的な存在感を持ち、その大きさの割には小さめの砲塔に赤い光を湛えていた。

「あれが、A3……」
「ペリーヌさん、あれ……ビームが……」

 その光の開放の瞬間の光景は、臆病者でなくとも戦慄に身を竦ませるに十分な衝撃を持っていた。
 余りにも強烈な赤の奔流は回避の遅れた航空歩兵を展開したシールドごと吹き飛ばし、薙ぎ払い、大地を大きく穿ち、巨大な破孔を作ってからやっと止まった。
 ビームを撃ち終わったA3は悠々とその脚を交互に動かして前進を再開する。
 くっ、急がなければなりませんわっ!
 加速をかけて距離を詰める。
 しかし、現在の航空隊の総指揮官であるらしいカールスラントの士官――先程の決死隊指揮官とは別の方、どうやら重攻撃部隊の指揮官らしい――が私たちの存在を認めて放った命令は、余りにも意外なものだった。

247zet4j65z:2008/12/12(金) 13:07:55 ID:8iirflsN
『ガリアンブラウ小隊はその場にて待機しろ』
「ど、どういう事ですのっ!? 先程の大型ネウロイは全て撃墜してきましたわっ! 一体なぜ?」

 そのあんまりな内容の命令に困惑してしまう。
 そしてリーネさんの返事が私の混乱に拍車をかける。

「了解しました。ブルーセカンド、待機します」
「ちょっとリーネさん! そんなに簡単に了解して頂いては困りますわっ!」

 ここまできて、あんなに傷ついてまで奮戦している仲間たちがいると言うのに、なぜ待機しなければいけないんですのっ!?
 でもリーネさんは緊張しつつも冷静な様子で私に小声で話しかけてくる。

「ペリーヌさん、あの指揮官の人って、かなり無茶ですよ」
「ええ、本当ですわ。この期に及んで私たちに待機などと……」
「わたし達の戦力を温存してるんです。多分ですけど、高速形態になったA3を私たちだけに対応させるつもりじゃないでしょうか」
「なっ!?」

 まさかそんな無茶な……と一瞬思っては見たものの、確かに間違った選択でもありませんわね。
 A3はある程度のダメージで形態を変化させる。高速形態に変わってしまえば、現在の六本足での歩行とは比べ物にならない速度になるのだろう。
 しかもここから根拠地の町まではその動きを阻む森林や河川、急峻な地形などは無く、なだらかな丘陵と平野、草原が続いているのみ。
 温存した私たちの力で、敵に行動する隙を与えず一気に決着をつける。そういう戦術ですのね。
 先程の短い戦闘で実力を認めてくれていたのでしたらありがたい話ですわ。
 
『ブラウリーダー、復唱は?』
「了解しましたわ、ブルーリーダーも待機いたします」
『逸る必要は無いぞ中尉。道は我々がつけてやる。止めは君たちでやれ』
「ふふっ……ありがとう、ございますわ」

 緊張を隠す為、微笑を混ぜて返事を返す。
 失敗は許されませんわ。
 了解を伝えてから改めて交戦空域を見やると、既に戦闘を継続している航空歩兵は10人を割る程度にまで減っていた。
 驚くべきことにその中には重攻撃部隊のFw-190を装備したウィッチが二人も混ざり、疲れを感じさせない軽快な起動で果敢な攻撃を仕掛けていた。
 多分あのどちらかが総指揮官……まさかまだ戦闘を継続していたなんて。てっきり距離をとって指揮に専念しているものとばかり思っていましたわ。

「ペリーヌさん……」

 すぐ後ろで、リーネさんが心配そうに声を書ける。
 多分、気持ちは同じですわね。
 ひと呼吸で詰められる距離で、友軍たちが視力を尽くして戦い、一人、また一人と力尽きて落ちていく。
 何も出来ずにただ見守るだけなんてこんな拷問はありませんわ……。
 既にA3も味方のウィッチも満身創痍に見えた。
 A3は六本あった脚のうち右中央と後ろの二本を失い、各所も装甲が剥げ落ちていた。
 ウィッチもついにFw-190装備の二人だけになってしまった。
 戦闘時間を考えたら当に限界を迎えてもおかしくないはずなのに、二人はまだ空にいた。
 でも、そんな奮戦にも終焉が訪れようとしていた。
 放たれたビームが、片方のストライカーを直撃し、バランスを崩す。
 敵にとって絶好の好機。
 案の定A3の火力が被弾したウィッチへと集中する。
 その時、もう一人のウィッチ採った行動は私が個人的には到底認められるものではなかった。
 列機に攻撃が集中し自分への圧力が減ったその瞬間を、攻撃の好機と判断したのだ。
 なんという冷酷な人!
 しかしその攻撃はあまりにも見事だった。
 何処にそんな力が残っていたのだと思う程爆発的な加速で懐に飛び込むと、A3が近接迎撃の為に腕の様に振り上げた左中脚を回避して肉厚のグルカナイフで根元から切断。
 主砲がそちらを向くよりも早く俯角限界よりも下へ飛び込んで左後足を切断。
 そして、その動きはまだ止まらず、胴体上面側に向かって飛び出すと、驚くべき事に主砲の射線にその身を晒したのだ。
 先程までの非難の感情など彼方へと消え、その身を案ずる叫びを私が発するよりも早く、あの強烈な主砲が放たれた。

248zet4j65z:2008/12/12(金) 13:08:55 ID:8iirflsN
「指揮官殿っ!」

 驚愕は終わらなかった。
 そのウィッチはストライカーの先に強固なシールドを展開。
 シールドは耐え切れずに崩壊し、片脚のストライカーが犠牲になる。
 しかし、それと同時に主砲の威力を受けて加速し、両足のストライカーを砕かれて墜死の危機にあった列機の救出に入ったのだ。
 思惑は見事に当たり、二人のFw-190ウィッチは抱き合って不時着した。
 逆算してみると、もしかしてですけれど、はじめのウィッチの被弾からの一連の動きまでが全て計算された動きにも思えますわね。
 まさか……ですわよね。

『ブラウリーダー、見とれている暇は無いぞ。待機は終わりだ。奴を倒せ。確実にだ』
「は、はいっ! この私にお任せ下さいませ。行きますわよ、ブルーセカンド」
「イエスマム、ブループルミエ」

 まさかあの距離あの状態から、私の方を見ていましたのかしら……それこそ、まさか、ですわね。
 意識を不時着した二人からA3へと視線を移す。
 一見残骸の山にも見える状態のA3は、一瞬身震いすると余分な外装を吹き飛ばして変形していく。

「一先ず私が接近して様子を見ます。ブルーセカンドは援護を」

 言いながら一気に高度を下げ、未だ変形の途上にあるA3への襲撃コースへと入る。
 戦闘を客観的に観察していたお陰で、その体のどの部位にどのような兵器が存在しているかはある程度理解できていた。
 変形してもと元の形態の面影を残す部分の役割には大きな変化は無いはず。
 先程の戦闘を見ていて、直射型の対空火力よりもあの誘導兵器が多く味方を撃墜しているように思えた。
 だとすれば、狙いは胴体後部の誘導兵器発射口。
 攻撃を警戒するだけでは終わらせません! 発射の瞬間を見切って、全て誘爆させますわっ!
 対空ビームが断続的に放たれる。
 火線を見切ってロールを打ち、回避。
 巨体が迫る。
 トリガーを引く衝動を押さえ込んで踏み込む。
 上空を航過。
 ピッチを下げて前転気味の姿勢で減速し、A3胴体後部を視認。
 今この瞬間にも発射されようとしている誘導兵器を照準に捉える。
 その時。

『ペリーヌさん! 避けてっ!!』

 トリガーを引き絞ろうとした瞬間に鋭いリーネさんの警告。
 戦闘中だというのファーストネームで呼ぶ。焦っている証拠。
 その張り詰めた空気を一瞬で理解し、勘の赴くままに逆宙返りを打ってA3の後方側から前面側に向かって加速。
 支援射撃が駆け抜け、左後方から断続的に炸裂する爆音と衝撃波が鼓膜と脳を全身を揺さぶる。
 展開したシールドで受け切れなかった対空砲火が翼や髪を掠める。
 更なる悪寒を感じて、未だ状況を理解しない頭の混乱を無視して脊髄反射的に最大加速。
 な、なんなんですのっ!?
 やっとそこで目線だけで左右を確認し、改めて戦慄する。
 例の誘導兵器――超小型の自爆型ネウロイらしい――が後方側から私を包囲し、今にもその囲みを閉じようとしていた。
 そんなっ!? まだ発射前だったはずですわっ!!
 驚愕を感想の言葉にする間も、回避行動を継続する。
 限界まで加速。
 トップスピードに乗った所で左へと急旋回。
 魔法による物理保護の限界を超えて、首が、腕が、背骨が、脚が、体の全てが軋みを上げる。
 割れよとばかりに奥歯を噛んで耐える。
 重量が何倍にもなったブレンガンを取り落とさないよう、しっかりと抱える。
 安全係数を超えたストライカーユニットから嫌な破砕音が響き始め、眼球からは血の気が引いて、視界が暗闇に閉ざされる。

249zet4j65z:2008/12/12(金) 13:09:34 ID:8iirflsN
「んっ…………ぐぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…………」

 品の無い獣のような唸り声が響く。
 それが私の口から発せられているのだと気付くまでにかなりの長い時間がかかった気がした。
 でも実際は1秒の何分の一にも満たないような時間だったのかもしれない。
 そんな遠い世界での出来事を見ているような感覚は、再び全身に届いた爆砕の響きによって中断された。
 リーネさんの声が聞こえたような気がしましたけれど、あいにく鼓膜が馬鹿になってますわっ!
 うっすらと回復し始めた視界で周囲を確認すると、超小型自爆ネウロイとの距離は思ったより開いているように見えた。
 危機的状況は変わりませんが……これならばっ!
 失速しないようバランスを保ちつつ、身体を折って後方に射撃。
 加速して迫りつつある自爆ネウロイたちを撃ち抜き、誘爆させる。
 更にその後方には別の誘導兵器群が迫りつつあったが、距離が合って動きが見えているのだったら大した敵ではない。
 余裕を持ってその一群を片付ける。
 だが何か機動に違和感を感じる。もしかして、先程の急旋回の時に舵が破損しているのかもしれない。
 
『……リーヌさんっ! ペリーヌさんっ! 大丈夫ですかっ!』
「戦闘中ですわよ、ブルーセカンド」
『あ、ごっごめんなさいブループルミエ』
「構いませんわ。にしても今のは一体何がありましたの!?」

 体勢を立て直し、呼吸を整えつつ戦場全体を見ていたはずのリーネさんに尋ねる。
 確かに、あの警戒すべき誘導兵器はまだ放たれていなかったはず。
 だというのに射撃位置に付いた時には既に私はその術中に嵌っていた……解せませんわ。

『あのA3の破片です。排除した破片が変化して襲い掛かってきていました』
「そんなまさか……」
『でも、狙撃が間に合ってよかった……一番初めに直撃しそうな一群だけは排除できたんで……』
「本当に、助かりましたわ、リーネさん」

 言いながらA3の姿を求めて視線を巡らせる。
 高速形態と呼ばれたその姿は伊達ではなかった。
 再び上部の砲塔部分に赤い光を湛えながら遮るもののない平原を加速し、根拠地へと迫っている。
 痛恨のミス。
 私は相手が動いていないという絶好の好機を棒に振ってしまった。
 それでも、あきらめるわけにはいきませんわっ!

「追撃しますわよ! ブルーセカンドは後部側から誘導ネウロイの発射口を重点的に狙いなさい」
『イエスマム。ブループルミエ』

 A3は地上物とは思えないほどの速度が出ていた。
 こちらがかなり増速していると言うのに、攻撃を回避するたびに打つロールでわずかに減速せざるを得ない為、中々有効射程へと踏み込ませてくれない。
 その上、やはり先程破損したらしく舵の効きが悪い。
 普段よりも丁寧に操作を行わなければ回避どころか失速しかねない為、慎重にならざるを得なくなり、結果的に距離が詰まらない。
 幸いな事に例の誘導兵器は発射される度にリーネさんの狙撃によって殆どが無効化されていた。
 それどころか発射口の一部は狙撃によって破壊に成功し、その存在のプレッシャーはかなり低下していた。
 リーネさんは狙撃手として十分以上の仕事をしている。
 にもかかわらずフォワードである私が仕事を全う出来ないのであれば、末代までの恥ですわっ!
 対空攻撃をかわしながら、少しずつ、少しずつ、確実に距離を詰める。
 恐らくコアはあの砲塔直下の辺りにある。
 コアから直接力を呼び出して放つからこそあれだけ強力なビームを形成できるはず。
 でもその前面側も後面側も分厚い装甲に護られていた。
 実際リーネさんの狙撃がそのあたりに命中した事はあったけれどその装甲を打ち抜くことは出来ず、2発目が着弾する頃には既に回復が進んでいた。
 ならば、ギリギリまで近接した上でトネールで装甲を破壊し、リーネさんの一撃に任せれば万事解決ですわっ!
 長い様でいて短いエアチェイスは終焉を迎えようとしていた。
 勿論それは私たちの勝利による大団円ですわよっ!
 既に誘導兵器発射口はリーネさんの狙撃によって全て沈黙し、私は後面側の地面スレスレに身を置き、A3の対空砲火の死角に入り込んでいた。
 届く! そう実感した瞬間、主砲塔が赤い光を湛えたままぐるりとこちらを振り返り、その凶悪な一撃を開放した。

250zet4j65z:2008/12/12(金) 13:10:15 ID:8iirflsN
「っ!!!」

 咄嗟のバレルロール。
 何とか直撃だけは回避するが、ブレンガンをその光の奔流に飲み込まれて喪失する。
 同時に、ストライカーユニットにも限界が来た。
 バキンと大きく音が響いて先程の対空攻撃を受けた左翼が崩壊する。
 空力のバランスが崩れ、ロール状態から回復できず、地表スレスレを飛んでいた私は無様にも失墜する。
 くっ……何たる失態!
 勝利への油断がこのような……。

「ペリーヌさんっ、無事ですかっ!」
「くっ……大丈夫、ですわっ!!!」

 追いついたリーネさんの肉声に応えながらガバッとその身を起こし、片翼のまま無理矢理離陸に入る。
 私が、皆の期待を背負って、結果を出さねばならない私が、こんな所で負けてなるものですか!
 しかし、視線の先遠ざかるA3との距離は絶望的な程離れているように見え、それを意識してしまった私の心は力なく魔道エンジンを振るわせるだけで離陸できなかった。
 涙が込み上げてくる。
 こんなところで諦める訳にはいけない。根拠地の仲間たちを、ガリアの為に戦う戦友たちを護らなくてはいけない。
 でも、どうしていいのかわからない。
 武器を失い、飛び立つこともできず、ただ憎むべき敵の後背を拝むことしかできない。

「っ……」

 何かを言おうとして、言葉を飲み込んだリーネさんが無言で肩を貸してくれた。
 その力に押され、柔らかに離陸する。
 今の私には、思ったことを素直に口にして頂ける方が嬉しいですわ。
 無様な私を罵りでも、何でも言って頂ける方が……。
 そんなことを考えながら、まだ肩を組んだままの至近距離のリーネさんの横顔を見つめる。
 思いが通じたのか、こちらを向き直って口を開いた。

「無駄じゃないですし、まだ……負けてません」
「リーネさん……」

 真摯な瞳で私の弱い心を射抜きながら、リーネさんが加速する。
 私も豊かな体の感触に護られながら、つられて加速。

「あのネウロイって、やっぱり無理があると思うんです」
「無理、ですの?」
「高速で走行しながらだと、主砲を打つための力を溜めるのに、かなり時間がかかるんだと思います」

 力強く、私を励ます為に言葉を捜し、紡いでくれるリーネさん。

「だから、多分ですけど、根拠地が射程に入ってもすぐには撃てないと思います。だから、その……さっきビームを撃たせたのは無駄じゃないと思うんです」
「リーネさん……」
「あ、あのそのっ、予想と言うかっ……勝手な想像ですっ。根拠なんか無くて……そうだったらいいなって、あの……」

 多分潤んでしまっているであろう目で見つめ返し、その名前を呼ぶとそれだけでいつもの少し自信なさげな雰囲気に戻ってしまうリーネさん。

「ふふ、十分ですわ。そうですわね。私の行動の全ては無駄にはしませんし、負けるつもりもありませんわ」
「ペリーヌさん……」
「行きますわよ。相手が嫌がるのでしたら同じ方法で、何度でも!」
「はいっ!」

251名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 13:19:04 ID:TsbWMn43
連投規制自己支援
252名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 14:09:22 ID:qksse5SB
支援
253名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 14:12:01 ID:wnM9nDVc
私怨
254名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 14:16:05 ID:W6pBuAyT
続き期待!
255名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 14:53:45 ID:ka2ntpvT
わっふるわっふる
256名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 15:23:54 ID:qksse5SB
>>250の続きがくるまでのつなぎに
続きを希望してくれた人がいたので>>197の続き
せっかくなのでタイトルをつけてみる
タイトルは「熱暴走」これがPart2昨日のがPart1です
まさか連載になるとは思わなかった

---------------------------------------------------------------

夢と現実との狭間に居るような不思議な感覚
まさに自分は今半分寝ている状態なのだろう
あぁでもそろそろホントに意識が落ちそう――

「ぶはっ!」


エイラの声だ
どうやら俯せで寝ていたエイラがいい加減息苦しくなって目が覚めたのだろう

エイラはいつも私と入れ替わるように起きて服を畳んでくれる
ダメだと思ってるのだが、朝エイラの畳んでくれた服を着ると
一日頑張れる気がしてついつい脱ぎっぱなしにしてしまうのは自分の悪い癖だ。

今日はいつもより寝ぼけているのかベットの上でぼーっとしている気配がする
たまに「えへへっ」と嬉しそうな声が聞こえるのはいい夢で見れたのだろうか?
そんな事を考えていると
やんわりとエイラが私の髪を触った
いきなりでビックリして声が出そうになったしまったのを我慢する

優しく私の髪の感触を確かめるようにエイラが撫でてくれる
あぁ気持ちいい
予想通りお父様や坂本少佐に撫でられたのとはまったく別だ
なんだか心の底から暖かくなって満たされていく感じ
これが幸せなのかな


「私も大好きだぞ」

えっ・・・
一瞬脳がフリーズした

ひょいっとベットからエイラが降りた気配がする
多分服を畳んでくれるのだろう
257名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 15:24:24 ID:qksse5SB

それよりもさっきのセリフが頭のなかをぐるぐる回る
聞き間違えでなければエイラは私を好きだと言ってくれた
・・・どうしよう嬉しくてたまらない
心臓がすごい早さで脈打ってる
おそらく今私の顔は自分でもわかるくらい真っ赤になっているだろう
この顔をエイラに見られるのはまずい
とりあえず俯せになって顔を隠しみる
少々息苦しいがオーバーヒートしそうな自分にはちょうどいい

――私も大好きだぞ
――大好き
――エイラが私を好き
嬉しい

ふふっ私も大好きだぞっか・・・
・・・・あれ?私も?

ここでようやく重大なことに気がついた
まさかエイラ起きてたの?

・・・・どうしようものすごく恥ずかしい

よりいっそう自分の顔が赤くなるのを感じた
あぁまさかこんな形で自分の気持ちがエイラに知られてしまうとは思いもしなかった。

「〜〜♪」

鼻歌交じりにエイラが服を畳んで足下に置いてくれた
そのままトイレにでも行ったのだろう
エイラは出て行った

エイラの気配が完全に消えるのを完全に確認して顔を上げた

「ぷっは!」
苦しかった

それにしても顔の赤みがまだ引かない。
これは息苦しさだけが原因では無いはずだ。
自分の頬に両手を当ててみると、ビックリするほど熱かった。
どうしようエイラに私の気持ちを知られてしまった

・・・でもエイラも私の事を好きだと言ってくれた。
両思い?
うん、両思いだ
エイラと私は両思い
あぁ嬉しくて眠気など吹き飛んでしまった。
258名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 15:24:55 ID:qksse5SB


あれ?でもエイラは私が起きていた事は知らないのではないだろうか?
どうしよう今更「実はあの時起きての」とは言えない気がする。

つまり私達は両思いではある事は、お互いに知っているけど
その事を相手は知らないと思っているというなんともややこしい状況にあるわけだ。


そんな事を考えているとカチャリと扉が開く音がした。
エイラが戻ってきたのだ
顔の火照りはまだ取れない
しょうがないので先ほどと同じように仰向けの体勢を取ることにした。

「あれ?サーニャ仰向けなんかで寝てる。息苦しそうなのにそんな体勢でよく寝れるなー」

・・・寝てないよ

「えへへっーさて二度寝するかな」

エイラは随分上機嫌だ
まさか私が起きているとは思ってもいないのだろう
ベットに横たわるとすぐに寝息が聞こえてきた。


ふうっと顔を横に向けて一息つく
今後どうしよう?
今の自分はエイラと顔を合わせるだけで、沸騰してしまいそうだ
とにかく早く解決策を見つけないと・・・


続く
259名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 15:27:27 ID:qksse5SB
なんとびっくり続きます
まさかこんなに長くなるとは元ネタ提供所も思わなかったはず
あれ?でももとって坂本少佐×サーニャだったような気がする・・・
まぁ細かいことは気にしないようします
ということで◆eIqG1vxHTMでした
260名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 16:27:02 ID:qksse5SB
miss
仰向けなんかで寝てる→俯せなんかで寝てる
261zet4j65z@250の続き:2008/12/12(金) 16:28:52 ID:8iirflsN
 ストライカーに魔力を込め、更に加速。
 組んだ肩を離し、私が前衛、リーネさんが後衛。
 かなり損害を受けて片翼と機銃を既に喪っているはいえ、相手も誘導兵器という一番剣呑な迎撃方法を喪っている。
 ならばいい条件ですわっ!
 距離を詰めるうちに、根拠地隊からの通信が入る。

『航空兵、そちらの状況を教えろ。敵ネウロイは丘陵の陰になっていて見えない』
『ブルーセカンドよりブループルミエ。根拠地こちら側に地上部隊が展開しています。内訳は装甲歩兵多数が塹壕に待機、88mm砲二門がこちら方向を指向しています!』

 気色ばんだリーネさんの報告。
 出会い頭に火力を集中するつもりですわね。
 考えながら、傷だらけだった陸戦ウィッチたちの姿を思い出す。
 あんな状態の方々が、無理をしてまで動いて防衛網を敷いていますのね……。
 胸に熱いものがこみ上げるのを感じながら指示を飛ばす。

「ブルーセカンド、私では高度が低くて確認できませんわっ! そちらで根拠地隊の誘導を行いなさい」
『イエスマム!』

 直後から無線での情報の応酬が開始。
 私の方は超低空飛行で火線を避けつつA3との距離を詰める。
 そしてエアチェイスの第二幕もクライマックスに差し掛かる。
 根拠地外縁から距離約4kmのなだらかな丘陵。
 A3の砲撃能力ならばここで足を止めて砲撃に移ってもおかしくないはずですわ……でも、ここを超えても前進するようならば……。
 果たして、A3は丘陵を超え、更に前進を続けた。
 やりましたわっ! 奴はまだ主砲の発射準備を終えていません!
 無様に這いつくばった行為が無駄ではなかった。ただそれだけの事実が私の心を、身体を、今以上に奮い立たせる。
 そのままレイピアを構え、いつでも攻撃に移れる距離で追跡を続ける。
 当初の目的通り根拠地を砲撃するか、それとも邪魔な私を確実に始末するか……ネウロイの逡巡が手に取るようですわ。
 そんな困惑を湛えた獲物を、猛獣たちが見逃すはずも無かった。
 根拠地外縁から約2km離れた前進壕に運び込まれた88mm高射砲二門のカモフラージュカバーが取り払われ、既に射撃準備の終わっていた砲はウィッチたちによる若干の方位修正の後に放たれる。
 その間、僅か1秒。
 同時に塹壕を飛び出した装甲戦闘歩行脚部隊が各々の砲を構えて前進し、航空歩兵のそれよりも濃厚な魔力の込められた一斉砲撃が始まった。
 88mm砲も恐ろしいほどの速さで次弾を装填し、速射。
 まさに、十字砲火ですわね。
 私は余りに圧倒的な攻撃に巻き込まれぬ様高度を上げ、その光景を見守った。
 砲身が赤熱化しても構わずに砲撃を継続する者、自らの砲による衝撃で傷口が開いたのか苦悶の表情で膝をつく者、弾が切れたというのに引鉄を引き続ける者。
 誰もが必死で戦っていた。
 熱狂的な10秒余りの宴が過ぎ、砲撃の余韻だけが残される。
 A3の巨体は、舞い上がった濃密は砂埃に覆われて上空からでも視認することができなかった。
 どんなに強力なネウロイであろうとも、あれだけの火力の集中を凌げているとは思えない。
 それでも、もう油断をするつもりはありませんわ。
 緊張状態を保ち、右腕のレイピアに充填した魔力を維持する。
 そこで、胸騒ぎがした。
 既に二度もチェックメイトと思った状況をひっくり返されて疑心暗鬼に陥っているのだと、自分に言い聞かせたかった。
 それでも言葉にできない不安が心中に広がっていく。
 エイラさんならこんな時にもっと明確なことを言えるのでしょうけれど……。

 最悪な事に、いやな予感は的中した。

262zet4j65z:2008/12/12(金) 16:31:38 ID:8iirflsN
以上となります。
後一個というところで引っかかるとは…。
っていうか夜勤明けでへろへろなんで寝ます〜
263名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 16:38:34 ID:W6pBuAyT
乙乙!続きが気になって仕方ないがゆっくり休んでくれ!
手練れの指揮官の元ネタはあるのかなとか考えながら待ってるよ
264名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 17:50:55 ID:y4wjvOwX
初めまして
エイラーニャでSS書いてみました
4レスほど投下します
265名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 17:52:11 ID:y4wjvOwX
 冬が終わる。遠くの山々の頂はまだうっすらと白い雪に覆われているけど、あれが溶ける頃にはすっかり春になっているだろう。ブリタニアの春は、私の故郷であるスオムスのそれよりも早い。ここ、第501基地も、そろそろ春の訪れが感じられるようになった。
 二・三日続いた雨が上がり、久しぶりに太陽が顔を出したそんなある日。私とサーニャは基地の周りを一緒に散歩していた。
 初春の太陽は、地上の万物を優しく照らす。背中がぽかぽかと暖かい。昨日までの雨で濡れた芝生は、太陽の光を反射して明るい緑色に輝く。所々に黄色の花が群生している。あれはスイセンの花だ。ブリタニアに春を告げる花。
 至る所で生命が芽生えようとしていた。
「もうすぐ春ダナ」
「うん」
「サーニャ、寒くナイカ?」
 暖かくなってきたとはいえ、日向と日陰ではそれなりに温度差がある。風邪を引いたら大変だ。
「平気。風、暖かいから」
「そっカ」
 ふわりと風が吹く。風に乗って、微かにスイセンの甘い香りがした。
 私とサーニャ。隣に並んで、ゆっくりと歩く。この穏やかな時間を噛み締めるように。この景色を、空気を体の隅々まで刻み込むように。
 私にとって、サーニャと一緒に居られるという事は、他の何事にも代え難い幸せだ。この幸せがいつまでも続いて欲しい。そして、もしサーニャもそう思ってくれているのなら、とても嬉しい。
「エイラ」
 不意にサーニャが私の袖を引っ張った。
「どうシタ?」
 あそこ、とサーニャが指差した先を見ると、遠くの物干し場に宮藤とリーネがいた。
 おそらく洗濯物を干していたのだろう。ロープに吊された白いシーツが風にぱたぱた揺らめく。ブンブンと大きく手を振る宮藤と、ぺこりと会釈をするリーネ。ここからでは聞こえないけれど、宮藤のヤツ、
「エイラさぁぁん、サーニャちゃぁぁん!」
とか言っているに違いない。私は大きく手を振り返した。
「ホラ、サーニャも振るんだゾ」
 私が促すと、サーニャも恥ずかしそうに小さく手を振る。私たちは、顔を見合って笑った。
266名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 17:53:41 ID:y4wjvOwX
 その時、さあっと一陣の風が私とサーニャの間を吹き抜けた。風はスイセンの花を揺らして、木々の枝をざわめかせ、宮藤たちのシーツを危うく落としかけてから海の方へ吹き抜けていった。私の髪が踊る。もちろんサーニャの髪も。
 風に舞うサーニャの銀髪は、太陽の光を透かしてキラキラと輝いていた。それはどこかに消えてしまいそうな儚さを秘めた、美しい光景だった。それはまるで気高く神々しい芸術品──。
 私はその様子を、何かに取り付かれたかのようにじっと見入っていた。全てはスローモーション映像のようにゆっくりと、そしてはっきりと瞳に焼き付いた。
 髪がふわりと額にかかる。その瞬間、世界が戻って来た。サーニャがぶるぶると頭を左右に振る。
「どうしたンダ、サーニャ?」
 私が尋ねると、サーニャはこっちを見ながら応えた。
「前髪が目に……」
「前髪? ああ、確かにちょっと長いナ」
 気付かなかったけど、サーニャの前髪は目を半分ほど覆う位の長さになっていた。これではストライカーで飛ぶのにも影響が出るかも知れない。
「今度の休暇、一緒に街まで行って切ってもらうカ?」
 でもそれだといつになるか分からないヨナ、などと一人でブツブツ呟いていると、サーニャが私の手を握った。
「エイラ」
「ハ、ハイ?」
 心臓の鼓動が少しだけ早くなる。顔に血が登るのが分かった。
「わたし、エイラに切ってもらいたい」
 ああサーニャの手、冷たいなア。手が冷たい人は心が暖かいんだヨナ……。
「ってちょっと待ッタ!」
 危ない危ない。頭が現実逃避をしていた。私は深呼吸して自分を落ち着かせる。
「私はムリだからナ! 失敗したらどうするんダ?」
「エイラが切ってくれるのなら、どんな髪型でもいいの。……ダメ?」
 ちょっと首を傾げながら、上目遣いで頼み込むサーニャ。
 ソンナ目見ツメンナー! 断れないジャナイカー!
「き、切りすぎても知らないゾ」
「大丈夫。エイラが切ってくれるんだもん」
 結局、折れたのは私だった。
267名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 17:55:23 ID:y4wjvOwX

×××

「ヨシ。やるゾ、サーニャ。心の準備はいいカ?」
「うん。わたしの方はいつでも大丈夫」
「で、でもやっぱり初めては緊張するナア」
「頑張って。エイラなら出来るから」
とまあ、聞いただけならナニやら怪しい会話を繰り広げながら、私たちは現在、サーニャの部屋にいる。もちろん、サーニャの髪を切るためだ。
 サーニャは小さな丸イスにちょこんと座り、首から下は水色のポンチョを纏っている。大きなてるてる坊主みたいだ。
 外は良い天気だけど、さすがに室内はまだ寒い。閉め切った窓ガラスからは、正午を過ぎた柔らかな太陽の光が、ビロードのように差し込む。ストーブに掛けた薬缶からは湯気がもくもくと立ち上り、そして消えていく。
 午後二時過ぎ。それは、時計の針が最も遅く進む時間。ここは今、私とサーニャだけの空間だ。
「取りあえず、ちょっとだけ短くする感じでイイカ?」
「うん、お願い」
 私はサーニャの背後に立って、ブラシでその銀髪を丁寧に梳く。さすがサーニャの髪だ。滑らかでサラサラで、痛み一つない。時折、例えば髪を一房手にすると、シャンプーのいい香りが広がる。私を幸せにする香りだ。
「エイラ……どうしたの?」
 手が止まっていたようだ。サーニャが不思議そうに振り返る。
「イヤ、何でもナイ何でもナイ。だからサーニャ、前を向こうナ」
 私は両手でサーニャの頭を前に向かせる。サーニャは大人しくされるがままになった。
「ヨシ、じゃあ切り始めるゾ。目に入ったらいけないから、ちゃんと閉じているんだゾ」
「うん、分かった」
 私はハサミを手に持つ。サーニャの碧色の瞳が閉じられたのを確認して、その前髪を切り始めた。
 失敗しないように、切り過ぎてしまわないように、私は少しずつ切っていく。ハサミを動かす度に、サーニャの髪がはらりと床に散る。ポンチョから覗く細くて白い首に、私の心臓が高鳴る。
 私とサーニャ。向き合って沈黙したまま、時間だけが過ぎる。聞こえるのは髪を切る音と薬缶のお湯が沸騰する音、そして秒針が時を刻む音。だけど、それは決して居心地悪い沈黙ではない。
268名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 17:57:31 ID:y4wjvOwX
 私の目の前にいるサーニャ。目を閉じて、無防備に、安心仕切ったように、全てを私に委ねている彼女。そこには確かに相互の絆というか、信頼関係がある。
 サーニャは私を頼ってくれている。そう思うと、ちょっと嬉しくなった。
「エイラ……?」
 その声に、サーニャがうっすらと目を開いて、こちらを見ているのに気付いた。
「コラ、サーニャ。目を瞑ってろって言ったジャナイカー。……まあ、もう切り終わったんだけどナ」
「それなら、言ってくれれば良かったのに」
 私はポンチョに付着していた髪の毛を払ってから、それを脱がした。そして、二人で鏡の前に立つ。
「こんな感じでどうダ? 長さはあまり変えていないヨ」
 サーニャはしばらく鏡の中の自分を見て、前髪を摘まんだり撫で付けていたけど、やがて私の方を向き、にっこりと笑った。
「うん。ありがとう、エイラ。こんな感じで良いよ」
「そうカ。なら良かっタ」
 我ながら、なかなか上手に出来たんじゃないかと思う。少し明るくなった感じ。それにしても、やはりサーニャはスッゴく可愛い。
 それから私たちは、床に散らばった髪を掃除した。

×××

 いつの間にか時間は経っていたらしい。太陽はすっかり傾き、赤く色付いていた。
 私とサーニャは、再び基地の外を散歩した。昼間よりも風が冷たい。私たちはどちらともなく手を繋ぎ、一緒に歩く。
 一瞬、風が凪いだ。束の間の静けさ。そしてまた風が吹く。海はオレンジ色にキラキラと輝く。スイセンの花が揺れる。
 風に舞い上がった私の髪を見て、サーニャが言った。
「今度はわたしが切ろうか?」
 ちょっと想像してみる。サーニャが私の髪を切る場面を。──うん、悪くはない。でも、
「イヤ、今はいいヤ」
それはまたの機会にしよう。
 そろそろ暗くなってきた。私とサーニャは、並んで歩き出す。繋いだ手が暖かい。この温もりが私の幸せ。
 春はもう、すぐ近くまで来ていた。
269名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 17:59:31 ID:y4wjvOwX
タイトルは『髪を切る』です
季節外れでスミマセン
270名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 18:04:37 ID:W6pBuAyT
GJ。描写が細かくて文が好みだ
エイラは器用そうだな。サーニャもピアニストだし繊細な作業は向いてそう

一番女の髪切らせたらまずいのはやっぱもっさんかなーwルッキーニも危ういけど
271名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 19:41:20 ID:TskAZW1M
>>268
GJ!!こんな穏やかな感じのエイラーニャがすごく好きだ
描写がすごく綺麗だなあ

ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org32472.jpg
エイラーニャケンカSS書きたくなったけど絵をかきはじめると文が書けなくなる不思議
272名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 19:44:41 ID:PemgAM0g
GJ!!落ち着いた雰囲気がよかった

もっさんは不器用だと萌えるw
…エーリカにハサミを持たせたら、なんかものすごい芸術的センスが光りそうだ
273名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 19:50:44 ID:W6pBuAyT
>>271
そもそもエイラと喧嘩するのが難しそうだw
エイラが珍しくサーニャか芳佳を叱る妄想はしてたけど

>>272
ごめーん前髪なくなっちゃったんだ
274名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 20:59:20 ID:ocrys68z
どうでもいいことでケンカしてすれ違うバカップルはとてもおいしいです
傍からみたら痴話喧嘩
275名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 21:30:57 ID:IqfaJqk5
>>269
繊細な優しい表現に心がなごみました〜。

>>273
ゲルトさんの髪は前衛芸術に仕立てるけど
ウルスラだと丁寧に切ってあげるんだろうなあ、とか考えてしまった
276名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 22:17:49 ID:ko91WXkr
何と言うか一日の投稿数が異常だよな。全部に感想書けないのが申し訳ない
277名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 22:52:42 ID:YHuUs+Gx
喧嘩してもすぐエイラさんが謝る姿しか想像できないんだよなw
エイラもサーニャも譲れないこと、というのを探しているけどなかなか見つけるのは難しい
278名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 23:40:50 ID:7mWz6HyZ
久々のミートゥルの予感にwktk
いや多くは望むまい
ひと画面に二人がおさまっていれば…それでいいです。もう。
まあ、メインはゲルよっしーぽいがなw

ttp://www.ikaros.co.jp/moeseries/
ttp://www.ikaros.co.jp/moeseries/images/image_11_02.jpg
>宮藤に○まれるバルクホルン大尉、
>それをあらあらうふふなミーナ隊長が見てたりと
>編の妄想をそのまま絵にしたようなイラストだ!
279名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 00:15:45 ID:Y6F+f9Ek
>>271
GJです。喧嘩してるけど…すごくなごんみました。
280名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 00:31:38 ID:Ep8ydQ9v
このスレ、もしかしてストパン関係の派生スレでは一番勢いあるのかね
281zet4j65z:2008/12/13(土) 00:39:54 ID:9bTmXALB
>>263 指揮官のヒント:グルカナイフ
もうちょっとでプロローグ部分のリーネ支店のシーンまで到達できる。
お話の方はあと状況が2,3回ひっくり返る展開の予定です〜
連投規制が10回だろうと思ってはいたんだけど、連続で何秒以内に入れた場合の規制ではじかれても回数カウントされてるんですね。
次から気をつけます。

なんか泥臭くて痛々しい話の後に和める話とか絵が投下されていいかんじです〜GJ
282本音と建前・支援 1/5:2008/12/13(土) 00:40:41 ID:dpn6dB/D
なんか今晩は静かだなあ、と思いつつ、どうせ休日だからこれからすごいんだろうな
そんなわけで書くよ書くよといっときながら全然かいてなかった本立て支援をいまさら投下
前スレ>>20-23後のえいらにゃ支援
―――

「へんなの、大尉のやつ」
呟いて、エイラはむうと少し口を尖らせた。いつも仏頂面を決め込んでいるところのカールスラントの堅物大尉は
リベリアンのぐにゃぐにゃとしたもう一人の大尉よりもよっぽど扱いが面倒だ、と思う。何を考えているのか分から
ない、それなのにすぐに怒り出す。最近は割と鳴りを潜めているけれど、きっとそれは彼女の幼い頃からの性質
なのに違いない。

(トゥルーデはトゥルーデだからねえ)

足早に去っていく後姿を見やりながら、エイラはエーリカの台詞を思い出していた。エイラよりもよっぽどバルク
ホルンにしかられている、むしろ彼女の仕事はバルクホルンに怒られることなのではないかと思われるエーリカは、
誰の前でもバルクホルンを『トゥルーデ』と呼ぶ。この部隊に配属されたばかりの頃は連呼されても誰だかわからず、
なんど苦笑いのミーナが「バルクホルン大尉のことよ」と注釈をいれるのをみたかエイラはもう思い出せない。傍ら
でうんざりとした顔をしていたバルクホルンはというと、それだのにいつもエーリカに対して訂正を求めなかったの
だった。まるでさも、それが彼女にとって至極当然であるかのような、それで分からないお前たちのほうがおかしい
のだというような、そんな顔をしていた。同じカールスラント出身のミーナは、エイラたちの前ではきちんと『バルク
ホルン大尉』と呼んでいて、それが部隊内での通称であるはずなのに、だ。

(昔からそうなんだよ。トゥルーデは、トゥルーデなんだ)

今よりも少し髪の短かったエーリカが、どれだけ朗らかな顔でそれを語ったか。エイラはなぜか良く覚えていた。
あれは確かエイラがサーニャと一緒にもう何度目か分からない二度寝をしてしまい、うっかり朝礼に遅刻したときの
ことで。事情を知っているミーナが「今度は気をつけてね」と笑って済ませたのにも関わらず直後にバルクホルンに
とっつかまり、やれたるんどるだの、規律がどうだのと言う説教を浴びせられ、やはり今と同じように勝手にどこかに
行かれてしまったのだった。
確かに自分の悪いことはエイラだって自覚していたが、あんなに怒ること無いじゃんか。まだまだ子供であるエイラは
そんな背反した感情を抱いて、一人残されたブリーフィングルームで口を尖らせていた。そんなときにエーリカが
ひょっこりやってきて「いやあご苦労さん」なんて肩を叩きながら言った台詞が、それらであった。それだけを語って
彼女は身を翻して、彼女のいつもの定位置──バルクホルンの半歩後ろ──へと舞い戻ったのだ。

勘の鋭いエイラはそれで、彼女らの関係をなんとなく悟った。いや、本当はもっと前から分かっていたけれど、その
ときになってやっと頭の中で定義づけることにしたのだった。
エーリカはたぶんそんなバルクホルンのことがとても好きで、バルクホルンもバルクホルンでそんなエーリカのこと
を内心とても大切に思っているのだと。


しかしそんな、絶対普遍に思われた二人の関係性が、どこか危うくなっていることもエイラは実は察していた。だって
最近のエーリカと来たらいつ見てもシャーロットと一緒にいるのだ。確かに同い年で、このあいだまで同じ階級で
あった二人はウマが合う部分もあったのかもしれない。けれどそれまでバルクホルンにべったりで、そのほかの
人と親しげに話すといえばミーナぐらいであったエーリカの突然の変貌は、エイラの中でぼんやりと組み上がって
いた人物相関図に多少、いや相当の変化をきたすこととなった。

そして、その変化はいつのまにか、目に見えるところにも表れはじめていた。

283本音と建前・支援 2/5:2008/12/13(土) 00:41:34 ID:dpn6dB/D

無意識に手を伸ばす。すぐ傍らに感じる温もりを抱え込むように。
柔らかくてふわふわとした感触が手のひら一杯に広がって、エイラは満足に顔を綻ばせた。そこで満足しきって
しまうものだから触れられた隣人の目が微妙に見開かれて、その頬が微かに朱に染まっていることにエイラは
欠片も気付かない。今のエイラにはいわゆる『そんな気』というものが小指の先ほども存在しなかったためである。
彼女の頭を羞恥心で一杯にしては体を強張らせる『ソンナ』がその心に巣食っていないとき、エイラは自分の行動
を省みることをしない。省みることをしないから、彼女は自らの本質であるその自由で少しミステリアスな思考その
ままに行動し、結果としていつも傍にいる少女の心を逆に惑わせているのだった。
それはもちろん、今現在がまさその状態であるのだけれど、エイラはそれに気付いていないのだった。


サーニャはちらり、とエイラを見やり、それからまたうつむいて手元の楽譜に目を戻した。頭の上では楽しそうに、
エイラのサーニャのそれに比べると大きい手が動いている。ぽんぽん、と優しく叩いて、ふわふわ、と感触を楽し
んで。予測の付かないその動きにサーニャの心臓がどれだけ高鳴っているか、エイラは全く気が付いていない。

ふわふわ、さらさら。淡くウェーブの掛かった、猫毛のような柔らかい髪。自分の持つそれとは違うサーニャの髪を
撫でるのが、エイラはとても好きだった。だから手を伸ばして、触れて、暇さえあればこうして撫でることはもうすでに
エイラの無意識の行動に組み込まれていて。だからこそサーニャも今、抵抗せずにされるがままになっているのだ。

(それだけでずいぶんと女の子っぽくなるよな)
(かわいい顔立ちしてんのが際立つっていうか)

五線譜の上で無数のおたまじゃくしが踊る。いつもは見ているだけでそのメロディーが自然に頭に流れ込んで、
気が付いたらふん、ふんと鼻で歌ってしまっているのだけれど今のサーニャにはそんな暇など無かった。
先ほど隣人が何気なく口にした、最近のエーリカに対する評価がぐるぐると、頭を回って離れないのだ。『雰囲気が
変わったよな』と呟いた彼女に対して、サーニャが『髪が長くなったと思う』と答えたのが、エイラのその発言の発端
だった。それはエイラが普段サーニャに対してはほとんど口にしない女性らしさについての言及であり、それは隣で
聞いていたサーニャにとって見たら喉から手が出るほど欲してやまないような高評価であった。

エイラの長い、サーニャのそれとは違う輝きを抱いた銀髪が寄り添ったサーニャの首筋に触れて、くすぐったい。
同僚の髪が少し伸びただけで『かわいい』などとのたまうのに、実際のところエイラのそれがの方がよっぽど長い
ことなど本人にとってはどうでもいいらしい。つまりは、エイラは自分が『女の子っぽい』ことだとか、『かわいい』こと
だとかに全く頓着していないのだ。

「エイラは、」

意を決して口を開いたら、「んー?」という間延びした声が返ってきた。ああ、これはもう本格的に『保護者モード』だ。
自分勝手に名づけてエイラに告げたことの無いその名前で、サーニャはエイラの今の状態を判別する。この状態
の時のエイラは、大抵何をしたってけろりとした顔をすることをサーニャは良く知っていた。とにかくサーニャを猫
かわいがりしたいときの状態であるために、自分の羞恥心など蚊帳の外にやっているのだ。

「…どうして髪を伸ばしているの?」
「髪?うーん…」
「かわいいから?」

肯定されたらそれはそれで面白い、などと内心思いながら尋ねたけれど、返ってきたのは予想通りの「まさか」と
いうけろりとしたもの。サーニャはがっかりすると同時に少し、安心する。だってそれを肯定するということは自分を可愛く見せたいような誰かが、エイラにはいるということだからだ。

284本音と建前・支援 3/5:2008/12/13(土) 00:42:05 ID:dpn6dB/D

「昔は短かったんだけどな。一回伸ばしたら切るな、って猛反対されて、なんとなくそのまま」

邪魔だから切りたいんだけど、それも面倒だよなあ、などとごちる様がなんともエイラらしくてサーニャは少し笑う。
すると、エイラは「笑うなよー」と子供のように口を尖らせるのだった。
猛反対したその相手は恐らく彼女の故郷の友人たちか誰かだろう。おかしなところで律儀である彼女はもしかして、
その友人たちとの約束とも言えないそれを守ってやっているのかもしれなかった。毎朝鏡を見やるとき、エイラは
彼女らのことを想うのだろうか、と考えると少し切ない。だってそれはサーニャの預かり知らないところのエイラだから。

けれどもし今サーニャが短いほうが似合うよ、と口にしたら、エイラはもしかしたらいい機会だとばかりにばっさりと
切ってしまうのかもしれなかった。ふと、そうしてその故郷の友人たちと自分、エイラにとってはどちらが大切である
かを量ってみたい気持ちがよぎったけれども思いとどまる。こっそりと肩に掛かっている長い髪をひとすくいして、
口付けるように口許にやった。綺麗な綺麗な髪。エイラがサーニャの頭を撫でるのを好むのと同じくらいサーニャ
だってエイラの長い髪をいじるのが好きなことに、エイラは恐らく気付いていない。そしてそのあとで、肩に届くくらい
の自分の髪の毛の先に再び触れる。エイラのそれと比べたらずっと短い、自らのそれ。もしも自分が髪を伸ばし
始めたら、エイラは気付いてくれるだろうか。気付いたら、どんなことを言ってくれるのだろうか。

かわいい、と。
言ってくれるだろうか。

ふっと、サーニャはエーリカが髪を伸ばしている理由に気が付けたような気がした。…ふつう、面倒で切らずにいる
のならエイラのように「邪魔だ」とか「切りたい」とかこぼすのではないだろうか。それこそバルクホルンに「切って!」
と進言するのがサーニャの知っているエーリカであった。
けれどエーリカは、むしろそれを楽しんでいるように見受けられる。あるとき「大分伸びたでしょう?」と得意げに
シャーロットに語るエーリカを見た。サーニャが「髪が少し伸びたかも」と先ほどエイラに告げたのも、その会話を
聞いたからだ。…そう、たぶん、エーリカはそうして髪の毛を伸ばすことで伝えたいことがあるのだ。

そしてきっとそれは、いま、自分の胸に去来している気持ちと、恐らく同じ。

健気な人だ、とサーニャは思う。今までほとんど関わりの無かったエーリカ・ハルトマンと言う少女が何だかとても
身近に思えて、年上だというのに可愛らしく感じて、つい心の中で「がんばれ」とエールを送ってしまう。だって
エーリカが「かわいい」といって欲しい相手は、口を尖らせて「めんどうくさがっているだけだ」などとのたまうのだ。
…それに比べたら、同じ鈍感でだって、恐ろしく優しいエイラのほうが傍にいてずっと苦しくない。…もちろん苦しい
とか、苦しくないとかで、好きな気持ちが変わるわけではないと思うけれど。


一方エイラはといえば、バルクホルンの反応に再び関心を寄せていた。自分たちのしていた会話がどんなもので
あったかを思い起こして、改めて自分ならどうするか、とトレースする。
自分たちがミーティングルームにいたらバルクホルンがいて、そこにエーリカとシャーロットがやってきて…彼女
たちが最近仲のいいことを指摘しつつ、更にはエーリカの雰囲気が変わったことを話題にしたところ、ああなった。
…実際のところは多少のタイムラグがあったから他にも思うことがあったのかもしれないが、仮にあの反応がエイラ
たちの会話に起因するなら、そう言うことになる。

285本音と建前・支援 4/5:2008/12/13(土) 00:42:36 ID:dpn6dB/D

バルクホルンが最近苛立っているのは、エイラにだって分かっていた。理由だって知っていた。バルクホルンに
べったりだったエーリカが、最近シャーロットとばかり一緒にいるからだ。いいのかよ、大尉。エイラは直接的には
言わなかったけれど、そうバルクホルンに告げたかったのだ。とられちゃってもしらないぞ、と、部下としていろいろと
謙虚になりつつさりげなく、ちらつかせたつもりだった。
エーリカのことを話題にしたのも、揺さぶりを掛けたかったからだった。髪が伸びたんじゃないか、と、サーニャが
言わなければエイラ自身が口にするつもりだった。理由なんてともかくとして、似合ってるだから褒めてやれば
いいじゃん、なんて気持ちをこれまた謙虚に謙虚に伝えようと思い、エイラは自分なりに立ち回ってみたのだ。
だってシャーロットとエーリカが一緒にいるときのバルクホルンは非常に不機嫌であるし、シャーロットも最近やたら
と疲れているようだし、エーリカもまた、ふとした瞬間に陰の落ちた表情をすることが増えた。これはこじれたら面倒
だぞ、と、持ち前の勘の鋭さで直感したのだ。

考え事をしながらまた、いつのまにかサーニャの頭に触れて撫でている自分にエイラは気が付いた。この柔らかい
髪をひどく気に入っていることを、そう言えばエイラはサーニャに告げたことが無い。
最初は…そうだ。なぜかとてもサーニャが不機嫌で、ご機嫌をとるように頭を撫でたのだ。それはシャーロットが
ルッキーニに対してよくするように。子ども扱いしすぎたかな、と反省したのは行動を起こしてからであったが、
意外にもサーニャの機嫌がそれでとても良くなったのでエイラは味をしめたのだった。以来、ことあるごとにそうして
サーニャの頭を撫でていたら、いつの間にか癖になってしまっていた。

サーニャは楽譜を膝の上において、今は自分の髪の毛先を眺めてなにやら考え事をしているようであった。枝毛
でも探しているのだろう、とエイラは自分の中で勝手に審議して可決する。
…例えば、エーリカと同じようにサーニャが髪を伸ばし始めたらどうなるのだろう、とエイラは考えてみた。その
ふわふわの髪の毛が、例えば自分と同じ背中辺りまで伸びた様を。たぶんエーリカよりもずっと、女性らしく見える
のだろうと思う。こんな風に手を伸ばさなくたって、こうして傍によるだけでその柔らかい髪の感触がすぐ傍にあって、
そして長い髪が視界をさえぎればそれをかきあげて──

(うわ、やば…)

突然、エイラはバルクホルンのあの衝動的な行動の意味を理解した気がした。「危険だ」とぶつぶつと呟いていた
その理由も、間違いなく。
…だって、こうして想像するだけでも胸が高鳴ってどうにかなってしまいそうなのに今のバルクホルンはその相手が
別の相手と親しげにしているのだ。たとえば自分に置き換えてみるなら、宮藤辺りと。間違いない。それは危険だ。
あいつは確かサウナでもサーニャをそんな目で見ていた。これは危険だ。危険すぎる。

けれど、一番危険なのが誰か、痛いほどに知っているのだった。
想像だけでこれだけうろたえている、自分だ。
そしてそれはたぶん、バルクホルンも同じなのだろうというのは明白で。

その瞬間、恐ろしいほどにサーニャと密着していた自分に気が付いてエイラは思わず飛びのいた。少し寂しそうな
目でサーニャがこちらをみやるけれど、どうしようもない。
あいしているから出来ないこともあると、どうしてか理解してくれない人種がいる。そう言うのは好きだからこそ出来る
んじゃないの、と、「すきだ」とか「かわいいね」だとかいうことばをどうしても言ってやれない自分をルッキーニや
シャーロットは心底不思議である、といった風情で首をかしげるのだ。そして多分、サーニャやエーリカもまた、
『そちら側』の人間なのであろう、とエイラは推測するのだった。

286本音と建前・支援 5/5:2008/12/13(土) 00:43:47 ID:dpn6dB/D

がんばってくれ、おねがいだからさ。
サーニャに見つめられて小さくなりながら、唇をかみ締めてエイラは思う。『こちら側』の人間はあまりにも無勢で、
いつだって立場が無くて、責められるばかりで困っている。が、やろうと思えばたぶん、出来ないことは無い、はず、
なのだ。それはエイラにとって未経験の領域であるがために、推測の域を出ないわけだけれど。
間違ってもさっき自分たちに告げたようなことを本人を目の前にして言うなよ、と願う。…でもどうせ言ってしまう
のだろうな、と半分思いながら。あちらは自分持つような意気地なしに加えて、大変な意地っ張りなのだ。


むす、と唇を尖らせたサーニャが立ち上がって、ふい、とエイラの傍から離れていってしまう。「さーにゃぁ、」と情け
ない声を上げたエイラがその後を追いかけると、サーニャは黙ってピアノの前に座って楽譜を広げ始めるのだった。
そして始まる、繊細なメロディ。ミーナに貰ったものなのだろうか、カールスラント語で書かれたその題名を、エイラは
読むことができない。もちろん楽譜だって読めない。エイラにとってそれは、あまりにも意味不明な言語だ。…だから、
それを読み取って『音』という言の葉に乗せることが出来るサーニャがひどく眩しく思える。

ごめんね。
かわいいね。
だいすきだよ。

伝える代わりに手を伸ばして、恐る恐るその、ふわふわな頭に触れてみる。サーニャの体がぴくりと動いて、その
指の動きが目に見えて変わった。柔らかくなったそれを見て、もしかして許してくれたのかもしれない、などと都合の
良いことを思って。

なあバルクホルン大尉、こんな方法もあると思うんだけど、どうだろう。
これなら本音も建前もいらないよ。裏をよむ必要も、表に返す必要も無い。

自分に輪を掛けて不器用で、意地っ張りな上官にそう進言したかったけれど、とてもとても気恥ずかしいので
止めることにした。ただ、バルクホルンが自分で気が付くのを、願うことにした。

―――
以上です。何だか無駄に長い上にあんまりエイラニャエイラニャしてなくて申し訳ない
乙女の巻でエイラがサーニャの頭をなでなでする描写で自分はえいらにゃにおちました
自分のぽろりと落としたネタを拾ってすんばらしい話にしてくださったj4ntaz3y氏に超感謝感謝
続きとかじゃないのでこの話は気にせずに氏の赴くままに続きまってます。待ってます。

じゃ、おとなしく寝ないでがっつりエイラニャケンカ話かいてくる
最近素で名乗り忘れる21X2w2Ibでした
28721X2w2Ib:2008/12/13(土) 00:45:11 ID:dpn6dB/D
申し訳ない、また改行ミスです
>>283の最後の段落を

肯定されたらそれはそれで面白い、などと内心思いながら尋ねたけれど、返ってきたのは予想通りの「まさか」と
いうけろりとしたもの。サーニャはがっかりすると同時に少し、安心する。だってそれを肯定するということは自分を
可愛く見せたいような誰かが、エイラにはいるということだからだ。

と改行お願いします
288名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 01:08:41 ID:aS6hHU7A
GJGJ
最近ますま投下が増えて凄いな
289名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 01:30:30 ID:qKfM3TEb
GJ! エイラーニャはやっぱり可愛いな!
ヘタレを代表してトゥルーデにエールを内心で送るエイラさんも萌える
ケンカ話もわっふるわっふる
290名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 01:52:42 ID:EyqnGNyF
幼児になったサーニャの面倒を見るエイラという構図が浮かんできた。
一緒におもちゃのピアノを弾いたりお絵描きしたりおままごとしたり。
で、転んで泣いちゃったサーニャの涙とか鼻水を拭いたりするんだ。
291保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2008/12/13(土) 01:54:32 ID:cjG8dti/
というわけで保管庫の人ですこんばんは。
ここんとこネタ日続きだったのに遅筆過ぎて全く乗れなかったのが悔しかったので
前々から書こう書こうと思っていたネタを今ここでぶちまけようと思います。
何かって言うと、今日はマルセイユ中尉の誕生日です。
なればやるしかあるまい。扶桑の従軍記者との心の交流を!!
エース諸君にばっかり新ジャンルを先取りされてたまるかあ!!

そんな流れでマルセイユ×記者で「神話との再会」です。
私記書体なので原作に従って多段構成にしたかったけどさすがに面倒だったので普通に40字改行です。
慣れない書き方なので読みにくかったらすいません。
292神話との再会 ◆YFbTwHJXPs :2008/12/13(土) 01:56:55 ID:cjG8dti/
 アフリカの取材旅行から帰国して1年と少し、私は再びあの地に戻る機会を得た。新設
されたブリタニアの多国籍義勇軍を取材に行く途中でネウロイに襲われ、アフリカ大陸の
西端であるジブラルタルへの寄港を余儀なくされたのだ。修復には半月はかかるというこ
とで暇を持て余した私は、代わりの船を出すという関係者の申し出を丁重にお断りし、代
わりにハルファヤ峠へ取材に行きたいと告げた。
「マルセイユ中尉に会いたいんだろ?なに、言わなくてもわかるさ。彼女は今やこのアフ
 リカのどんなトップ・アイドルよりも有名だからね。」
 彼はてらてらに日焼けした肌を光らせながら、二つ返事で許可を出してくれた。前回の
取材で知ったことだが、この辺りの人間は彼女のことになると途端に饒舌になる。心底誇
らしげな笑顔に見送られて、私は輸送トラックの助手席に乗り込んだ。前回は航路だった
が、今回はたまたまトブルクに向かうという商人に乗せてもらえたのだ。陸路ならトブル
クまで片道4日で行ける。もちろん、運悪く砂嵐に巻き込まれなければの話だが。そうで
なくてもこの劣悪な環境ではエンストなど日常茶飯事なので、ついてない場合は倍近くか
かるとか。
 こうして砂煙の中を走っていると、彼女と会ったことがつい昨日のことのように思い出
される。カールスラント空軍所属、ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ中尉。広大な国境
線をほとんど一人で守り抜く、アフリカの星。世界の果てで終わりのない戦いを続ける、
鷲の化身───いや、終わりのないというのは不謹慎かもしれないが、彼女の驚異的な空
戦技術と、彼女自身が持つヘマタイトのような独特な佇まいに触れると、この戦いがまる
で遥か昔から続いていて、それが未来永劫の不変の理であるかのような気さえしてくるの
だ。それはもしかすると、赤道直下の浮かれた暑さと、息が止まるほどの彼女の美しさが
作り出した、この砂漠の見た夢なのかもしれない。

 5日目の夕方、トラックが無事基地に到着すると兵士たちの慌ただしい怒号と緊迫した
無線が聞こえてきた。どうやらマルセイユ中尉がちょうどネウロイの迎撃に出ているよう
だ。
《敵機撃墜、残機4》
 二番機、ライーサ少尉の短い報告が終わりの近いことを知らせてくれる。邪魔になると
いけないので、日陰に引っ込んでフィルムのチェックを済ませることにした。帰ってくる
彼女たちの笑顔を一番に撮れるように。カメラの調節を終え、滑走路で無線に集まる人々
をパシャリと試し撮りすると、同時に《残存部隊撤退》の一言が耳に飛び込んできた。わっ
と湧き上がる兵士たち。アフリカのエースの腕と人気は、今日も健在なようだ。
 少しして、彼女が戻ってきたとの無線が入った。着陸体勢に入ったマルセイユ中尉に片
手を上げて注意を促すと、彼女は構えられたカメラを見た瞬間キラリと笑顔を投げかけて
くれた。すかさずシャッターを切る。あまりの眩しい表情に思わず露光の調節を見誤った
かとも思ったが、結論から言えばその一枚が今回の寄港での最高の一枚になった。愛機で
あるBf109F4/Tropを装備した彼女は普段よりも更に特別に輝いていて、どの瞬間を切り取
ってもまるで映画のポスターのようだ。ましてやこの時間、地平線に太陽が触れる頃合、
美しい砂漠の夕陽を背負ったその姿に見惚れぬ者などいまい。次の一枚に備えてフィルム
をセットしながら、私は彼女の降り立った滑走路の方へと向かった。
293神話との再会 ◆YFbTwHJXPs :2008/12/13(土) 01:59:02 ID:cjG8dti/
「やあ、また会ったな。扶桑の記者さん。」
 マルセイユ中尉は私の顔を覚えていたらしく、気さくに話しかけてきてくれた。話によ
ると、私がくるという報告を出撃の前に港から受けていたらしい。正式な取材申請はされ
ていないから構わなくていいと私が言うと、彼女は笑いながら「せっかくわざわざ来てく
れたんだ、何も出さない方が無礼だろ?」と返してあの懐かしい天幕へ案内してくれた。
入り口にはこちらも相変わらずなマティルダが周囲に目を光らせていて、マルセイユの後
ろに付いてきた私を見るなり鋭い眼光で射抜いてくる。
「覚えてるかい、マティルダ?この前来た扶桑のジャーナリストさ。」
 マティルダはもちろんです、と答え、それから私の名前を付け足した。流石はマルセイ
ユの側近だ。一度しか自己紹介などしていないのに、異邦人には慣れないと発音しにくい
扶桑語の名前を見事に記憶していた。
「まあ、入ってくれ。また君の話を聞かせてくれよ。」
 天幕の中の様子も相変わらずで、あの日から何ら変わっていない。しかし、素晴らしい
品揃えの酒瓶を眺めていて、思わず声が漏れた。前に扶桑から送った扶桑酒の瓶がまだ並
べられている。もちろん中は空だったが。
「なかなか手に入らない珍しい瓶は捨てずに飾っているんだ。どうだい、いいコレクショ
 ンだろう?」
 なるほど、言われてみれば他にも中身のない瓶がたくさん並んでいる。聞いたこともな
いブランドばかりなのでその価値は計りかねるが、各国の言葉が入り混じったラベルを見
る限り、どうやら私と同じことを考えた者が自分の祖国のお気に入りをプレゼントしてい
るのだろう。
「君の送ってくれた酒はなかなかのものだったよ。扶桑の文字は読めないんだが、あれは
 なんていうんだい?」
 私が送ったのは丹沢山という扶桑酒だ。横須賀の地酒屋で買った一級品の本醸造だから
まずいわけがないのだが、果たしてカクテルの材料としてはいかほどだったのだろうか。
「そうだな、ジンでマティーニにするのもまあまあだが、たまたま手に入ったライムで割っ
 てみたらこれがベストマッチでな。他にも色々試したけどこれが一番だったよ。」
 どうやら気に入ってもらえたようで良かった。自分の国のものを誉められて悪い気のす
る人などいない。今度は焼酎でも送ってみようかなどと密かに目論みながら、私たちはあ
の日のように語り合った。前は聞けなかった話もたくさん聞けて、夕食を持ってきてくれ
たマティルダも交えて実に愉快なひとときを堪能することができた。こうしていると、な
んだか自分が特別な存在になったような気がしてくる。誰もが憧れる最高の英雄と酒を交
わして談笑する機会など、そうそう得られるものではない。そしてそんなことを平気でで
きる気さくな存在だからこそ、なお憧れられ続けているのだろう。

 話の中で私は、マルセイユ中尉のおかげでもう一度空を飛ぶ決心がついたことを告げた。
戦闘用の機械化航空歩兵としてではなく、よりウィッチの近くでその姿を捉える戦場カメ
ラマンとして。今回のブリタニア取材はそのデビュー旅行なのだ。私が感謝の辞を述べる
と、彼女は「それはすごい!」と言って自慢げに私の肩を叩いてくれたが、すぐに照れく
さそうな顔をして首を振った。できれば一緒に飛びたかったが、あいにくストライカーユ
ニットは荷物になるので別路でブリタニアに直接送られている。無二の機会を逃してしまっ
たと苦笑いしながら呟くと、マルセイユは「また来ればいいさ」とあっさり言ってのけた。
まったく彼女の言う通りだ。機会がないなら作ればいい。どれだけ先になるかはわからな
いが、私はかつて自分がそうしたように心に誓った。またいつかここに来よう。そしてそ
の時こそ、マルセイユの見た空を一緒に見よう。世界の果ての大空を、共に天翔けよう。
でもそうしたら私はきっと、また泣いてしまうんだろうな。
294神話との再会 ◆YFbTwHJXPs :2008/12/13(土) 02:01:19 ID:cjG8dti/
 さあ寝ようという時になって、マルセイユ中尉は不意に「こっちに来い」と言って私を
自分のベッドへ呼び寄せた。何事かと思っておとなしく従うと、一緒にベッドに入れと言
う。私は前のように毛布にくるまって寝るから構わないと遠慮したら、強引に抱き寄せら
れてそのまま引きずり込まれてしまった。
「前は君にさっさと眠られてしまったからね。今日はリベンジだ。」
 何の話かと思ったら、どうやら私と関係を持ちたいらしい。世界一の英雄の相手などし
がない記者には釣り合わないと短く笑い返すと、「でも拒否はしないんだね、嬉しいよ」
などと躱されてそのまま唇を奪われ服を脱がされ、為す術もなく組み伏せられてしまった。
経験などろくに持たない私はその砂漠の太陽のように熱い蒼色の眼差しに耳から煙を吹い
て撃墜され、その夜の記録は私の頭の中だけに留めざるを得なくなった。一つだけ書き残
すことがあるとすれば、彼女はその最中に「アフリカの星がこんなふしだらなやつで幻滅
したかい?」などと聞いてきた。もちろんそんなことはない。英雄だって一人の人間だ。
少しくらいの我が儘があった方がいい。むしろもっと好きになりそうだと茶化したら意外
なほど嬉しそうにされたので、……おっと、これ以上は書けないな。

 翌日の昼、私は早々に荷物をまとめて帰りのトラックに乗り込んだ。せめて一日は滞在
したかったが、今回はあくまでブリタニア取材の途中なのだから仕方がない。船に乗り遅
れたら一大事だ。マルセイユ中尉に別れの挨拶を告げると、彼女はいつものように鋭い笑
みを浮かべて「また逢おう」と言い、それから不意に耳元に近寄って「ここだけの話、本
気で手を出してしまったのは君が初めてなんだ。君は素敵だよ」などと囁くものだから危
うくトラックの窓から飛び出すところだった。当然うまい切り返しなどできるはずもなく、
扶桑語でそれらしいことを言ったフリをして無理矢理ごまかしておいた。これが自惚れで
ないなら、私は彼女に口説かれてしまったのだ。冷静でいられる道理などあるまい。
 滑走路から勢い良く飛び立つ彼女の背中を見送ってから、私は基地を後にした。割に合
わない短い時間だったが、決して無駄ではなかったようだ。

 また逢いましょう、マルセイユ中尉。いつか必ずまた逢いに来ます。もしその時あなた
がもう一度私を口説いたら、今度は本気にしますから覚悟していてくださいね。


endif;
295保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2008/12/13(土) 02:02:42 ID:cjG8dti/
以上です。
自分は酒には詳しくないのでカクテルのくだりは多少アレかもしれませんが勘弁。
ただ原作の本文中で記者氏が送ったのが「日本酒」になっていてどう判断すべきか迷ったのですが、
結局誤植ということにしてここでは「扶桑酒」と書きました。と一応補足しておく。
あと書いてて気付いたけどマルセイユとルーデルはどちらも「ハンナ」という名前なんですね。
保管庫の名前表記はファーストネームで統一してたけど、この二人は被るので下の名前でもいいですか?

でもって、全SSにGJ!!安価略失礼。レス番を容量kbが上回ってるとか何事ですか。
このままだと400番台で次スレという非常事態になりかねませんね。
それでいてクオリティも常に高水準という……。やっぱこのスレ最高だ!!
296名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 02:08:04 ID:ypOKj9rn
>>295
アフ魔女でここまでやってくれるとはっ!gj!!
マルセイユはマルセイユでいいんじゃないかな?表記
297名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 02:54:59 ID:gVo/t/+X
ついにアフ魔女まで来たかw
298名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 03:29:37 ID:Ep8ydQ9v
とりあえず皆GJ
299滝川浜田:2008/12/13(土) 03:44:44 ID:KPD0YWgs
みなさんこんばんはorおはようございます。

こんなド深夜に失礼いたします。
最近こんな遅くにしか時間が取れないなあ…

というわけで続き投下。
今回はトゥルーデ視点。
300滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.5』:2008/12/13(土) 03:49:00 ID:KPD0YWgs
私は彷徨っていた。
上も下も分からない真っ暗な空間で。

……なんだ、ここは……?

……そうか、思い出した。
私はエーリカをネウロイから庇ったのだったか。

エーリカは無事なのか?
ネウロイは倒したのか?

この空間では知る由も無い。

『トゥルーデ……』

…誰だ、私を呼ぶ声は…?

『ごめんね…トゥルーデ…ッ…!』

その声は…エーリカか…?
エーリカ!どこにいる!?

『私…トゥルーデを傷付けちゃった…。私…もうトゥルーデのそばにはいられないよ…』

…何を言ってる…?
お前の為に傷付くなんて、私にとっては本望だっ…!

『……さようなら、トゥルーデ……』

エーリカ…!おい、エーリカ!
悪い冗談はよせ!!
エーリカァァァァァァァ!!!!


――何回君を愛したら chapter.5――


「……エー……リカ……」


「バルクホルンさん!!
ペリーヌさん、バルクホルンさんが目を覚ましました!!」
「本当ですか!?リーネさん!」
「…リーネ、ペリーヌ……ここは…」
「医務室ですわ」
「バルクホルンさん、3日間も目を覚まさなかったんですよ」
「……そうか…」

3日間も…意識を失っていたのか…

「エーリカは…エーリカは今どうしてる?」
「ハルトマン中尉は今、出撃してますわ」
「ネウロイが…出たのか」
「…はい」
「そうか…」

私はベッドを降りる。
301滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.5』:2008/12/13(土) 03:51:51 ID:KPD0YWgs
「ちょっと、どこ行くんですか、大尉!」
「どこって出撃するに決まってるだろ」
「そんなっ…無茶ですわっ…!そんな大怪我してますのにっ…!」
「止めないでくれ、ペリーヌ。
エーリカ達が必死で戦ってるのに私だけのうのうと寝ている訳には行かない」
「でも、そんな身体ではっ…!」

私はボロボロの身体を引きずり、ドアへ向かう。
しかし、ドアへの道のりは塞がれた。

「リーネ、そこを退け」
「バルクホルンさん、一つ聞いていいですか」
「なんだ」
「…バルクホルンさんは何の為に戦っているんですか?」
「…平和の為だ。ネウロイにこの世界を蹂躙させるわけには行かないからな」
「…嘘、ですね」
「なんだと…?」
「今のバルクホルンさんの瞳に映ってるのは…ハルトマン中尉です」
「……」
「バルクホルンさん、違いますか」
「……いや、違わない。…私は、エーリカの事しか考えてないな」

私は自嘲気味に笑う。

「バルクホルンさん」
「だが、だからこそなんだ。
だからこそ、私はエーリカの側に行きたいんだ。
…私はエーリカを守りたい」
「バルクホルンさん…」
「だからお前らがいくら止めようと、軍法会議にかけられようと…私はエーリカの元へ…空へ行く」
「バルクホルン大尉…そこまで……」

すると、今まで強張っていたリーネの表情はいつもの優しい表情に戻る。

302滝川浜田 『何回君を愛したら chapter.5』:2008/12/13(土) 03:56:25 ID:KPD0YWgs
「…格好良いです。バルクホルンさん」
「リーネ、お前」
「行って下さい、バルクホルンさん」
「…いいのか?」
「誰かを守りたいって言う気持ち、私にも分かります。…私も芳佳ちゃんを支えたい…。
そう、常に思ってます」
「わ、わたくしだって、坂本少佐をお守りしたいですわ!」
「…お前ら」
「早く行って、ハルトマン中尉のそばに行ってあげて下さい。
でも、無理はしないで下さいね」
「……ああ、すまんっ!」


私はドアを開け、ハンガーに向かう。

待ってろ、エーリカ!
お前には、悲しい思いはさせない!!



「リーネさん、意外と強引ですわね」
「そうかな」
「あの人に影響されたのかしらね?」
「エヘヘ、芳佳ちゃんに影響されるのは嬉しいな」
「…おノロケ、ですか…」
「…ペリーヌさん」
「何かしらリーネさん」
「想いって、強いですね」
「そう、ですわね」


空を見つめて、そう呟く。


To be Next chapter…


第5話以上です。
さて、この話もいよいよ終わりに近付いて来ました。
最後までお付き合いくださったらとても嬉しいです。

最後に。みんなGJ!

…さて、爺は寝ます。おやすみなさい…
303名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 04:39:23 ID:wgE8KhbE
>>295
GJ!アフ魔女はアニメとはかなり毛色が違いますがかなり好きな作品なので嬉しいです。
マルセイユさんかっこよすぎる。

>>302
こちらもGJ!最後のあたりにニヤりとさせられました。続きにwktk


それで、自分も美緒ミーナで一本書いたので投下いたします。
二作目となりますので、前回投下時のIDを使ってH/rmW78bと名乗らせていただきます。
とある小道具で一部21X2w2Ib氏のSSとカップリングもろともカブってしまったのですが、
このシチュではある意味鉄板の小道具ですので、大目にみてください(m´・ω・`)m
前作の保管庫No.0446「二人きりの演奏会」の前日の話です。非エロで5レスです。
304眠れぬ夜に (1/5):2008/12/13(土) 04:40:40 ID:wgE8KhbE
今日はどうにも寝つきが悪い。美緒は目を開け、空虚な天井をぼんやりと見つめた。

このまま目をあけていればいつかはまぶたも重たくなるだろうか。そう思ってじっ
としてみるが、やはりそう上手くはいかない。それどころか逆に眠気は遠のいてい
くようだった。

夜の静寂に、小さなため息が混じってとける。そういえば、今日はシーツ一枚では
少し肌寒い。

ブリタニアの夜は夏でも涼しく過ごしやすいが、時に扶桑では信じられないほど冷
え込むことがあった。なるほどこれでは頭も冴えてしまうわけだと、美緒はもう眠
ることをすっかり諦めてしまい、体を起こした。

(仕方ない、何か飲み物でも飲んで気分でも変えよう)

確か戸棚にお茶の葉があったはずだ、とベッドを降り、美緒は重い足取りで食堂へ
と向かった。





「あら美緒、どうしたのこんな時間に」

その先客は落ち着いた、柔らかな笑みで美緒を迎えた。

「ミーナ」

美緒はその名を呼んで、隣の椅子に腰かける。

「それはこっちの台詞だ」

するとさっき寝ていたときよりもずっと気が安らいで、それはきっとミーナのせい
に他ならなかった。

話を聞くとミーナはつい先ほどまで報告書の作成やら予算繰りの修正やらを片付け
ていたらしかった。手伝ってやれなかったことを詫びると「私の仕事だから」とミ
ーナらしい言葉が返ってくる。

「それで、どうしてあなたはここに?」

相応に会話が弾んだ後、そう聞かれ、はっと食堂に来た理由を思い出す。このまま
部屋に戻れば不思議とすぐに寝付けそうな気がしたが、それもおかしな話なので、
美緒はそのままここに来たいきさつを話した。
305眠れぬ夜に (2/5):2008/12/13(土) 04:41:22 ID:wgE8KhbE
「それなら、私が飲み物を用意するわ。ここで待っていて」

それくらいは自分でやるからいいぞ、という美緒の言葉もそのままに、ミーナは台
所へと移った。冷蔵庫を開ける音や焜炉をつける音が聞こえてくる。そういえば、
ミーナが台所に立っているのを見るのは久しぶりだ。前に作ってくれた、カールス
ラントの料理はとても美味かった。また馳走になりたいものだな、と台所の向こう
に語りかけると、

「そうね、でもその前にあなたの手料理が食べてみたいわ」

と返ってくる。ミーナめ、分かって言っているのだから性質が悪い。今度宮藤にで
も頼んで教えてもらうべきだろうか、そんなことを考えて始めていると、ミーナが
向こうからマグカップを持って戻ってきた。「どうぞ」とさし出されたカップの中
は白で満ちていた。ホットミルクのようだ。

「眠れない時はこれを飲むといいって聞いたから……、嫌いじゃなかったわよね?」
「ああ。ありがとう、いただくよ」

ほのかに湯気のたつそれに口をつけると、そのまま飲めるほどよい温度に温められ
ていたようで、冷ますことなく飲むことができた。すうと胃の中にミルクが注がれ
ると、体が芯から温められていくのを感じた。

「熱くない?」
「いや、丁度いい温度だ。とても温まる」

不思議だった。どうしてこうもあたたかいのだろう。体だけではなくて、心まであ
たたかくなる。それに、カップの白を見つめているともっと落ち着く気がした。

「ホットミルクは、ミーナに似ているのかもな」
「あら、どういうことかしら」
「いや、たいしたことじゃないんだが、」

とても温かくて、安らぎをあたえてくれるんだ。こいつもミーナも、そんなところ
が似ている。

「それと、ミーナの肌はミルクのように白くて綺麗だからな」

そんな風にいうとミーナは「ちょっと、美緒」と頬を染め、視線を落ち着きなくき
ょろきょろとさせたものだから、美緒はそこでやっと自分が恥ずかしいことを言っ
てしまったのだと自覚する。

「い、いや、すまない、つい、な」

しかし、素直にそう思ったのだから仕方ないじゃないか。そう付け加えようとした
が、余計に泥沼に入りこみそうな気がして、代わりに頭を掻いて誤魔化した。もし
かすると自分は普段からこういうきざったらしいことを気付かないうちに言ってし
まっているのだろうか。
306眠れぬ夜に (3/5):2008/12/13(土) 04:41:54 ID:wgE8KhbE
「そうだ、ミーナも飲むといい。私だけというのもなんだしな」

気恥ずかしい空気を払拭するように言うと、ミーナは

「あ、私はさっき、」

と手を振った。だから遠慮するかのように思われたのだが、そこで言葉を止めて少
しの間考える素振りを見せると今度は、

「いいえ、なんでもないわ、そうね、いただこうかしら」

と差し出したカップを受け取った。するとミーナはわざわざカップを回して口に運
んだので、美緒は思わずくすりと微笑ってしまった。


おいおい、ミーナ、それじゃ、同じところから飲むことになっているぞ。





「ねぇ、マッサージをしてあげましょうか」

カップの片付けを終わらせ、洗い場から戻ってきて、ミーナは言った。

「筋肉が硬直していると、眠れないっていうわ。美緒、疲れているんじゃない?」

そういえばここ最近ネウロイの襲撃も不定期になってきていて、思うように体を休
ませてやることが出来なかった。肩を回してみると、確かに重い。なのでミーナの
言葉に甘えさせてもらうと、ここでは場所が悪いということで、ミーナの部屋に行
くことになった。

「それじゃ、よろしく頼む」

ベッドにうつ伏せになると、それに続いてミーナのベッドに乗る感触が伝わってく
る。「ちょっと失礼するわね」と今度は私の足あたりに軽く乗っかられる心地がす
ると、今度は指で腰を押され――

「う、あっ!」
「ちょっと美緒、まだ軽く押しただけよ?」

そんな馬鹿な、今ものすごく強い力で押された気が――

「あっ、くっ、ううっ、ま、待て、ミーナ、」

何度も襲いくる強烈な刺激に耐えかねて体を反転させるとミーナはくすくすと笑っ
ていて、きっと自分は押せばおかしな声をあげるおもちゃのようになっていたのだ
ろうと思う。あんまりに楽しそうにしているものだから「こら、真面目にしないか」
と叱ると、ミーナは「ごめんなさい、つい」と返す。美緒にはそれがさっきの自分
の真似ごとのように感じられて、妙な気恥ずかしさに襲われる。ホットミルクを飲
んだときのように熱くなってくる顔を隠したくて、またベッドにうつ伏せた。
307眠れぬ夜に (4/5):2008/12/13(土) 04:42:28 ID:wgE8KhbE
「ふふ、腰のあたりはあとにして、先に他のところをほぐすわね」

そう言ってミーナは背中のあたりを押していく。優しい指づかいだった。触れたと
ころが温かくなって、それがそのまま体に染みていく。やがてそれが全身にまわる
と、心地よさが体中を包んでいて、いつの間にかすっかり力も入らなくなっていた。
きっとその魔法の手が触れたところは、自分の体ではなくなってしまうのだ。そう
して段々と奪われてしまって、今はもうこの体はほとんどミーナのものだった。

「あ、んっ……」

だから、最後に残った腰まわりに触れられたとき、不意にこんな声を出してしまっ
たのも、きっと美緒のせいではないのだ。

「ふふっ、美緒ったら、なぁに今の可愛らしい声は」

そう、ミーナが悪いんだ。だって今、美緒は体の自由が利かないのだし、そもそも
そんな風に魔法をかけたミーナが原因であって、だから決して今のは自分のせいで
は――

「ん、あ、はぁっ、」

あああ、やめないかミーナ! そう言葉にしたくても出てくるのは吐息に混じった
情けない声ばかりで、抵抗したくても力が入らないので、美緒はもうミーナにされ
るがままになるしかなかった。今はもうこの体は完全にミーナのものなのだ。きっ
と、顔を見られるような体勢でないことが唯一の救いだった。美緒が腑抜けただら
しない顔になっていることは間違いなかった。

ああ、なんたることだ。仮にも扶桑の撫子が、こんな声を!

悔しいやら恥ずかしいやらで、美緒はシーツをつかんで耐えた。今切に願うことは、
早くミーナがこの遊びに飽きてくれることだった。

夜の静寂に、美緒の声がいくつも混じってとけていった。





ようやく体が戻ったあと、美緒はミーナに扶桑の正座を教えた。

「いいか、あのようなことは今後二度と」

そして、ミーナが満足のいくまで美緒を好きにしたように、美緒は満足のいくまで
ミーナに説教をした。まったく、人がどれだけ恥ずかしい思いをしたと思っている
んだ。

それでも、体がずいぶんと軽くなっていたことには気付いていたから、美緒は決し
て強い口調で叱咤することはなかった。ミーナもそれを分かっていたのか、わざと
らしくしょげた真似をして美緒の言葉を聞いていた。きっと、この説教は「ごっこ」
で、さっきの遊びの続きなのだった。
308眠れぬ夜に (5/5):2008/12/13(土) 04:43:39 ID:wgE8KhbE
「それじゃ、私は戻るからな。以後気をつけるように」

そう言って、美緒は部屋に戻ろうとドアのほうに歩いていった。きっとミーナはま
たわざとらしく「はい」と言って、それでこの「ごっこ」は終わりのはずだった。

しかし聞こえてきたのは、

「待ちなさい? まだお礼の言葉を聞かせてもらってないわよ?」

という悪戯っぽい声で。

「っ……!?」

後ろから美緒の体を止めるのは、ミーナの魔法の手。それはさっきうつ伏せになっ
ていたせいで触れられることのなかった、二つのそれだった。

「お、おい、ミーナ、」

ああ、一体どこでこんな真似を覚えたんだ。そう考えて、心当たりが多すぎること
に気付く。特に最近、宮藤がきてからというもの、どうも部隊内でこれがまた流行
りだしたような……、ああ、しっかりしてくれミーナ、お前までそっちにいってし
まったら、私はどうしたらいいんだ。

「それとも、そんなに効かなかったかしら?」

と、揉みながら、ミーナ。

「い、いや、とても気持ち良い……じゃない、良かったぞ。ありがとう、ミーナ」
「よくできました。それじゃあ、解散っ」

そうして解放されたあと、部屋に戻ってベッドに横になると、すぐにでも夢におち
ていけそうな気がした。目を閉じると、ふわふわと体が自分のものではないかのよ
うに軽かった。

(まったく、ミーナのやつ)

そんな中、胸に残るミーナの手の感触だけがやけにリアルで。

美緒は今度、『お返し』でもしてやろうかと小さく微笑うのだった。





----
ホットミルクは良いものです。
この二人ならではの大人な雰囲気を出そうと頑張っていたら、
全然違う方向に行ってしまいました。
きっとこの二人は部隊で一番のバカップルに違いないです。
読んでくださった方、ありがとうございました。
309名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 08:16:09 ID:0oP4YQQ8
>>295
 ついにアフ魔女登場GJです。

  >「そうだな、ジンでマティーニにするのもまあまあだが、たまたま手に入ったライムで割っ
  >てみたらこれがベストマッチでな。他にも色々試したけどこれが一番だったよ。」

 扶桑酒とライムジュース(+1/8レモンを挿す)で『サムライ』というカクテルになります。
 ttp://www.cocktailtype.com/recipe/recipe_0251.html
 ※ちなみに焼酎だとただのライムサワーですがw

 >>302
 GJです
 誰かに影響されて強くなったリーネは良いものですな

 >>308

  >するとミーナはわざわざカップを回して…
 ちょww隊長w
310名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 08:23:28 ID:aS6hHU7A
朝起きたら大量投下
凄すぎ
というかレスが310に対して現在320kb
レス数よりKBの方が大きいとは・・・
311名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 08:25:03 ID:3Io4tQoX
SSだけで何レスくらい使ってるんだろうか
312名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 09:07:11 ID:QkA6IEn9
保管庫今壊れてる?
オールキャラ以外のが無くなってるんだけど
313名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 09:25:05 ID:MLVFoE5V
>>309
ほんのりえろいのがたまりません先生!
ミーナ攻もいいなwごちそうさま。GJ
314名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 09:44:34 ID:MLVFoE5V
すまない。安価ミスだ
>>308
315名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 09:56:11 ID:f3hhJEQN
>>287
GJ!保護者モード吹いた。ヘタレモードとかあるのかなw
あと俺の中でヒエラルキーが、もっさん>>>(越えられないたらしの壁)>>エイラ≧ゲルト
になりつつあるw

>>295
アフ魔女きた!マルセイユさん自重しろよ!w
そういや日本酒になってたねあれ

>>302
爺さんもきたーって絨毯爆撃過ぎる。完結楽しみにしてるよ

>>308
熟年夫婦!熟年夫婦じゃないか!
隊長間接キスとかがっつきすぎだろw
316名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 09:56:51 ID:aS6hHU7A
今日は休みなので早めに投下
>>258の続き熱暴走Part3
今回短め

---------------------------------------------------------------

あの後結局一睡も出来なかった
それでもテンションが上がっているせいかまったく眠くは無かった

特にすることもないのでぼっーとエイラの寝顔を眺めていた
綺麗な顔だな・・・


「・・・・ん」

どうやらお目覚めのようだ

「ふぁ・・・よく寝た・・・ん?サーニャもう起きてたのか?」
「・・・うん・・・ちょっと前にね」
「なら朝ご飯食べに行コ、おなか減っただろ?」
「・・・うん」
「・・・なぁなんでさっきから横向いたまま喋ってるんだ?」

やはり不自然だったかな
起きたエイラと面と向かって話すなんて恥ずかしくて顔を直視できない

「くっ・・・首をちょっとね・・」
「まさか寝違えたのか!」
「うっうん・・そうかも」
「たっ大変だ!どっどっどうしよう!寝違えた時ってどうすれば良いんだっけ?
逆に向ける?冷やす?暖める?どっどうしよう!?」
「えっエイラ落ちついて・・・」
「これが落ち着いてられるかー!あぁどうしようサーニャ痛く無いか?」
317名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 09:57:32 ID:aS6hHU7A

そう言ってエイラはは私の正面に回り込んだきた
医学の知識が無いので特になにも出来ないのが歯がゆいのだろう
ひたりと彼女の手が私の首を触る
心配そうに見つめる瞳
光彩の数まで数えれそうな距離・・・
距離・・・距離が近い!

「エイラダメ!」
「ごっゴメン!痛かったか?」

しまった折角心配してくれたのに・・・・私の馬鹿
エイラは耳が出ていたら垂れてるくらいしゅんとしてしまった。
でもさっきはエイラの息がかかるぐらい近かった
そうあと少し私が首を伸ばせばキス出来るくらい・・・・・
・・・エイラとキスか・・・・してみたいな
って!ダメだこんな事考えてる場合じゃない

「だっ大丈夫だよエイラ?」
「うっごめん私役に立てなくて・・・・・そうだ!宮藤だ宮藤ならなんとか出来るかも!」
「えっ!」
「私ちょっと宮藤呼んでくる!」
「えっエイラ!」

そう言った時にはもうエイラは部屋を飛び出していた
遠くで「ミヤフジー!」という声が聞こえる
なんだかどんどん事が大きくなっていってる気がする・・・・


続く
318名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 09:59:23 ID:aS6hHU7A
もう少し続きます
あと前でさらに誤字が
>誤 しょうがないので先ほどと同じように仰向けの体勢を取ることにした。
正 しょうがないので先ほどと同じように俯せの体勢を取ることにした。

なんだか探せばまだ有りそう・・・・
◆eIqG1vxHTMでした
319名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 10:20:08 ID:x+AwAmwO
>>318
gjです!!やっぱこの二人は何か和むな〜
続き待ってます。

こんなの見つけたので一応貼っときます。
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm4991975
※リンク先ニコ二コ動画です。
320名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 10:37:40 ID:Du6N63oY
>>318

 
>>319
ワラタw上手いな
ストパンMADだと百合では無いがアヌビスのOPネタが好きだ
321名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 13:27:25 ID:VUHC5sEY
角二の百合スレが立ててもらえなくて困っています

このままではうpに多少なりとも支障が出るかもしれないので、
できるだけ早く立ててもらえるようにスレ立て依頼スレの人たちにお願いしていこう。

http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1221093615/

あと奴ら気弱だから、要求に応じない場合は多少強い口調で言ってやったほうがいいかもしれん。
とにかく、百合スレの新スレを立ててもらえるまで居座ることが大事。
322名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 14:01:35 ID:jOf1JUGs
ときたまシャーゲル分やミナリネ分が欲しくなる俺。すっかり最前線(このスレ)なしには満足できない脳になっちまったぜw
323名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 15:39:13 ID:Du6N63oY
欲しいカップリングのネタを書けばだれか書きそうだけどな
今このスレの供給は凄いし
324名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 15:41:27 ID:aj/tN4Zx
確かに、簡単なネタさえくれれば、幾らでも昇華できるからな
325名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 15:47:24 ID:ygc//9Xi
オヘア×ウルスラ
オヘア×ウルスラ
オヘア×ウルスラ
オヘア×ウルスラ

は、まだかい?
いつも仲が良さそうに見えるんだが・・・
326名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 16:13:38 ID:qRrM799Y
アホネン×エルマさんはマダー?
327名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 18:09:20 ID:vEidakGX
七話のアイキャッチをネタにエー芳とペリもっさんの衣装交換を書こうと思ったが
僕には……無理だ……
328ゲシュペンくんとおばけの花嫁 1/8:2008/12/13(土) 18:25:21 ID:UDyAYwua
「なんでそう可愛くない事ばっか言うかな。 どうしていつも私が折れてあげなきゃいけないわけ?」
「折れるとか譲るとかいう問題じゃない。 お前が常識を持ち合わせれば済む話だ。」

私とトゥルーデの間に漂う険悪な空気。 私たちを見比べながら、ミーナが困ったような表情を浮かべている。
元はと言えば些細な事でさ。 いつもみたいにかる〜く流しちゃえば良かったんだけどさ。
たまには本気で言い返してみたら面白いかな、なんて。 そんな風に考えたのがまずかったんだよね。

 「えー、おばけなんていないよー。 プラズマって言うんだよ、知らないの? ハルトマン中尉、こっどもー!」
 「あれあれ? そんな事言っちゃっていいのかな、ルッキーニ。 ガリアに伝わる首無しおばけの話、知らないの?」
 「え! く、首無しおばけ? ふ、ふふーん。 なかなか面白そうだねっ、それ。」
 「またまた無理しちゃって。 丁度ね、こんな霧の深い夜に現れるらしいよ。 首無しおばけの存在を信じない人の前にね……。」
 ガクガク震えるルッキーニ。 そんな感じでルッキーニを怖がらせて遊んでたらさ。 トゥルーデがぽつりとおっしゃいました。

 「お前は本当に馬鹿げた話が好きだな。 お前らしいというか何というか。」
 その言葉にかちんときちゃったんだよね。 私は私なりにルッキーニに夢を見させてあげたかったわけ。
 言ってみればエンターテイメント性だよね。 トゥルーデが欠片も持ち合わせてないものだよ。
 それなのにさ、馬鹿。 なんて一言で切り捨てられちゃったらさ。 何それ? いくらなんでも失礼じゃない?

 大体、私らしさって何。 トゥルーデは、そんなに私の事をご存知なわけ?
 それでちょっぴり噛み付いてみたらさ。 あれよあれよと言い返されて。 気付いたら凄く険悪なムードになっちゃった。

「もうそのくらいにしておきなさい。 腹を立てるような事でもないでしょう。」
「私は別に怒っていない。 普段通りにしているだけだ。」
仏頂面で言い捨てて、トゥルーデが食堂を去った。 へー! へー! 普段通りなんだって! ほんとだね! ふん!

「私ももう寝るね。 おやすみ、ミーナ、みんな。」
「え? ちょっとフラウ、まだ7時よ。 こんな時間から寝たら、リズムが狂ってしまうわよ。」
嘘じゃありません。 本当に寝ます。 別にさ、特に眠いわけじゃないよ。 でもさ。 このムカムカを忘れるためにはさ。
とりあえず寝ちゃうのが手っ取り早いじゃん。 そんなわけですから。 おやすみー。


うん。 やっぱりミーナは正しいね。 うんうん。 時刻は夜の10時半。
変な時間にばっちり目覚めてしまいました。 気だるさを感じながらのっそり起き上がる。
イライラはもう残ってない。 でも中途半端に寝てしまったせいで、眠気も爽快感もない、ちょっと……もとい、かなり嫌な状態。
あーもう、寝れない。 仕方ない。 起きよっか……。
329ゲシュペンくんとおばけの花嫁 2/8:2008/12/13(土) 18:26:15 ID:UDyAYwua
別に何かを思っていたわけではなくって。 鏡を覗き込んだのはまったくの偶然だった。
でも。 そこに立っていた寝起きの自分を見た時。
私は息を飲んで凍りついた。

これまでにも人から可愛いと言われた事は何度もある。
でも私はいつだって、そんなもんかな、としか思ってこなかった。
それが今、生まれて初めて分かった。

鏡に映った自分の事を、心の底から可愛いと思った。

頭のてっぺんから足の先まで、姿見に映ったその肢体。 あまりの完璧さに、思わず溜息が出る。
頭から腰まで、すっぽりと覆う白いシーツ。 唯一そこから露出した、すらりとした両足。
シーツのレースの隙間から、見慣れた瞳がわずかに覗いている。

そう。 これはまさしく。

「おばけのゲシュペンくんだーーー!」
すっかり嬉しくなって笑ってしまう。 だってさ、今の私。 子供のころ大好きだった絵本のキャラクターにそっくりなんだもん!
あぁ、懐かしいな。 お父さんが買ってくれた一冊の絵本を、ウルスラと仲良く二人で覗き込んでたっけ……。

 「みてみてウーシュ! ゲシュペンくんってかわいいね! あたし、おおきくなったらゲシュペンくんになる!」
 「……姉さん。 残念だけどこの世に霊魂なんて存在しないわ。 心霊現象と言われる全ての事象はプラズマで説明がつくの。」
 「え、でも……となりのアンネちゃんは、こないだがっこうでおばけをみたっていってたよ。」
 「……プラズマね。」
 「それにそれに、はすむかいのマルゴちゃんは、しんだおばあちゃんにあったって!」
 「……プラズマだわ。」
 「きょうウーシュのプリンがはんぶんしかなかったのも……。」
 「それは姉さん。」

……。 思い出してみたらそれほど美しい記憶でもなかった。 我が妹ながらなんと可愛げのない……。
それはともかく。 見せたい。 この姿を誰かに見せたくてたまらない。 こんなに可愛いんだもん。 きっとみんな褒めてくれるよ。
スクリーンの中でしなを作るムービースターの心境って言うのかな。 私を見てほしくて。 賞賛してほしくって。

んむ。 夜10時半と少し。 実に中途半端な宵の口。 この時間なら、まだ起きている人もいるかもしれない。
私は、衝動の命じるままに廊下へと駆け出した。
330ゲシュペンくんとおばけの花嫁 3/8:2008/12/13(土) 18:27:09 ID:UDyAYwua
= = = = = = = = = = = = = = = = = = = =
 いつも寂しい思いをしていた女の子。 女の子は、それでも毎日にこにこ笑っていました。
 そうしていれば、お父さんやお母さんに心配をかけないで済むから。 でも。 本当は寂しくてたまらなかったのです。

 ゲシュペンくんはおばけ。 ゲシュペンくんは、その子と友達になりたいと思いました。
 人間にはゲシュペンくんが見えません。 いつもひとりぼっち。 ゲシュペンくんには女の子の気持ちがよく分かりました。
 だからゲシュペンくんは、それを女の子のベッドの横にそっと置いておいたのです。
 おばけのケープを。
= = = = = = = = = = = = = = = = = = = =

「ねぇシャーリー。 おばけっているのかな……。」
「お? なんだ、ルッキーニ? 今になって怖くなってきちゃったか?」
「そ、そんなんじゃないよ! ふんだ! おばけが出てきても助けてあげないかんね!」
ハンガーに来てみたら、いるいる。 シャーリーとルッキーニ。 早速この姿を見せようと思って、ふと思いとどまる。
この格好。 いきなりルッキーニの前に現れたら、間違いなく怖がられちゃうよね。 まずはシャーリーから当たりたい。
うん。 そうしよう。 どうにかしてシャーリーだけにコンタクトを取ろう。

「ん? ……何だアレ。 あそこ……何か白いものが浮いてるような……。」
「え゛っっっ!? …………な、何もいないじゃん! シャーリー、あたしを怖がらせようとしてるでしょ!」
「え? い、いや、本当に何か見えたんだよ! あんたには見えないのか?」
とりあえず遠くの方からふりふり存在をアピールしてみる。 ルッキーニがこっちを見たら隠れればいいわけで。 それを繰り返す。

「しゃ、シャーリーにしか見えないの……? そ、それ、くっ……首はあった……?」
「な、何言ってるんだよルッキーニ! ここはあたしのファクトリー。 そんな非科学的なものの存在は認めません!」
わわわ。 二人がこっちに近付いてくる。 今見つかったら、なんだか酷い目に遭わされる気がするよ! 慌てて物陰に隠れる私。

「……何もいないな。」
「だ、だから言ったじゃん! おばけなんていな………………いな……………………。」
「? なんだ? どした、ルッキーニ? そんな口をパクパクさせ……て……。」
ルッキーニの表情を見て、シャーリーが後ろを振り返る。 実は、そこには私がいたわけで。
目と鼻の先。 シャーリーとの距離50センチ。 あーあ。 見つかっちゃった。
ばたーん。 わ! シャーリーが唐突に倒れる。 え? なに? ひょっとしてシャーリー、気失っちゃったの?

「しゃ、しゃ。 シャーリー!!! おっ、おっ。 おばけーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
ルッキーニが猛スピードで逃げ出した。 ちょ、ちょっと! そんなに騒がれたら困る! 私は大慌てでルッキーニを追いかけた。
331ゲシュペンくんとおばけの花嫁 4/8:2008/12/13(土) 18:28:00 ID:UDyAYwua
= = = = = = = = = = = = = = = = = = = =
 おばけのケープをつけた人間は、おばけが見えるようになるのです。
 まだ小さい女の子にはケープは大きすぎたので、それを花嫁のヴェールのように頭から被る事にしました。
 ケープをつけた女の子はゲシュペンくんを見て最初は怖がりました。
 でも、ゲシュペンくんは優しかったし可愛いかったら、二人はすぐに仲良くなりました。

 二人はお絵描きをしたり、歌を歌ったり、とても楽しい時間を過ごしました。
 でも、女の子はその時まだ気付いていなかったのです。 どうしてゲシュペンくんが見えるようになったのかを。
 おばけのケープとは何なのかを。
= = = = = = = = = = = = = = = = = = = =

「幽霊の正体見たり枯れ尾花という言葉がある。 心を落ち着ければ、案外大した事ではなかったりするものだ。」
げげげ。 ルッキーニが頼ったのは坂本少佐。 えらく手強い人を呼ばれてしまった。
扶桑刀持ち出してきてるし! この人、冗談抜きで幽霊くらいぶった斬りそうだもんね。

「そこか!」
えっ。 私の目の前に少佐が現れた。 凄い。 遮蔽物の位置には気をつけていたのにアッサリ見つかってしまった。
よくよく少佐の顔を見れば眼帯を外している。 魔眼! なるほどね。
ここまでかと観念して後日受けるであろう懲罰に思いを巡らせていると、少佐が緊張した顔で話しかけてきた。

「貴様……一体何者だ? 私の魔眼ですら正体が……見えん。 まさか、本当にこの世ならざる者なのか……?」
えっ。 スラリと抜かれる扶桑刀。 ちょ、ちょっとちょっと! どうしてそうなるんですか!
魔眼で見たらシーツが透けて、その正体は皆さんご存知。 ちょっと小粋なセクシー魔法少女でしたー、ってなるでしょ!
説明しなきゃ……。 そう思った時、私は自分の異変に気が付いた。 えっ。 あれっ。 声が出ない!?

呆然としてる内に少佐が斬り込んできた。 うわっ! 鋭すぎる太刀筋を何とか避ける。 まずい。
空の上ならいざ知らず、地上で手練の刀を受け続けるなんて出来るわけがないよ!
思わず腰が抜けた私の頭上すれすれを白刃が閃く。 わ。 わわっ。 な、何とかしなきゃ! せっ。 セクシーパーンチ!

「ぐふっ!!!???」
物凄い手応え。 恐る恐る顔を上げると、少佐の鳩尾に素晴らしい角度で私のパンチが入っている。
どさり。 あああ。 少佐まで昏倒させてしまった。

「はわわわわ……。 しょ、少佐までやられちゃった……。 よっ。 芳佳ーーーーーー!!!」
ちょっとルッキーニ待ってよ! もうふざけてる場合じゃない。 なのに。 どんなに頑張っても声は出てこなかった。
332ゲシュペンくんとおばけの花嫁 5/8:2008/12/13(土) 18:28:50 ID:UDyAYwua
声だけじゃなかった。 取れない。 シーツまで取れない。 それは、もがけばもがくほど肌に張り付くようで。

「芳佳! こっちだよ! 本当に幽霊がいたんだよ!」
ルッキーニの声にハッと我に返った私は、声から遠ざかるように駆け出していた。 こんなもの早く脱がなきゃ。
もうおふざけは終わり。 分かってるのに。 なんで? なんでなの!? 取れない! このシーツ、どんなにもがいても取れないよ!

こんな事で不安になるなんて馬鹿げてる。 こんな迷信めいた物に振り回されるほど柔な人生は送ってない。
あぁ、なのに、なんだろう。 胸が苦しいよ。 苦しさに耐えかねた私は足を止めて、何気なく窓に目をやった。
そして私はようやく、先刻から感じていた違和感の原因に思い当たった。 窓に、映ってない。 私の姿が映っていないのだ。

「わあああああああ!!!!」
ふいにはっきりと自覚した感情に押し潰されそうになる。 それは、恐怖。

普段どんなに自制のきく人間でも、夢の中では感情が剥き出しになるように。 この悪夢のような現実は私の心を押し潰した。
笑顔も、何もかも、私を守っていたものが消えてなくなって、ぽつんと取り残された私は、あまりにも頼りなかった。
いやだよ。 怖いよ。 違うよ、みんな。 そんな目で見ないで。 おばけじゃない。 私だよ。 エーリカなんだよ。

あぁ。 唐突に絵本の内容を思い出す。 私が大好きだった、あの絵本。 おばけのケープを被った女の子の話。

ひとりぼっちに堪えられなくて、おばけのケープを被った女の子。 おばけのケープは、おばけが結婚する時に使うもの。
彼女はおばけになってしまったんだ。 おばけのケープは、つけた人をおばけの花嫁にしてしまう物だったんだ。

夜になって、女の子の両親は娘がいない事に気付いた。 女の子はゲシュペンくんのように、普通の人間からは見えなくなっていたから。
待てど探せど、娘は一向に戻って来ない。 二人はさめざめと悲しんだ。 それを見て、女の子は自分の間違いに気付いたんだ。
自分は一人じゃないって。 私はいなくなったわけじゃない。 早く二人を安心させてあげなくちゃって。
でも、両親の所に戻ろうとした時、女の子はケープが脱げない事に気付いたんだ。 まるで、今の私のように。

ゲシュペンくんは、最初からケープを取ってあげる気なんて無かったんだ。
ゲシュペンくんは、女の子を両親の所に戻したくなかったんだ。 もうひとりぼっちは嫌だったから。
ゲシュペンくんは、彼女に帰してあげないと言ったんだ。

そうだ。 あの時、私は。 それまで可愛かっただけのゲシュペンくんが、急に怖く見えたんだ。

あぁ。 そんなどうでもいい事は思い出せるのに、肝心な事が思い出せない。 あの女の子。
最後はどうなっちゃったんだっけ。 どうなっちゃったんだっけ……?
333ゲシュペンくんとおばけの花嫁 6/8:2008/12/13(土) 18:29:40 ID:UDyAYwua
「いない。 嘘でしょ? どこにもいないよ……。」
近付いてきたルッキーニの声にビクリとなる。 違う。 いるよ。 私はここにいるんだよ。
反射的に逃げ出しながら、嗚咽がこみ上げてくるのを抑えられない。

まるで夜に理由もなく怖くなって泣く子供のよう。 情けないよ。 格好悪いよ。
私、どうなってるの? 少佐の魔眼でも私が分からないって。 どうして? 取り繕えないよ。 怖い。 怖くてたまらない。

私。 このままだったらどうしよう。 このまま、誰にも分かってもらえなかったらどうしよう。
このままずっと、ひとりぼっちになってしまったらどうしよう。
馬鹿げてる。 馬鹿げてる想像だって、分かってるのに。 うっ。 うえっ。 ひっく。

お父さん。 お母さん。 ウルスラ。 もう、私の傍にいない人たち。 いやだ。 あんな思い、もういやだ。
501のみんな。 いやだ。 いやだよ。 お別れなんてしたくないよ。 みんなと一緒にいたいよ!!!

「うわっ!」
どん。 走り続けていたら、何かに。 ううん、誰かにぶつかった。

夜のバルコニーは月明かりに照らされてとても幻想的な景色を作り出す。
その僅かな明かりが、私にぶつかった人の顔を浮かび上がらせる。

どきんと、心臓がなった。 髪の毛をおろしていて、いつもとは違って見えるけど。
あぁ。 トゥルーデ。

そうだ。 私、トゥルーデとけんかしちゃったんだっけ。 なんて懐かしいんだろう。
たった数時間前の出来事が、今の私にはとてもとても遠い昔のように思えた。

急いできびすを返す私。 聞きたくない。 トゥルーデが、私の姿を見て何て言うか。
それだけは聞きたくない。
今、トゥルーデにおばけと言われてしまったら。 私はひとりぼっちなんだって自覚してしまったら。
私はもう、堪えられない。

ぐずぐずしていたら、また新しく涙がこみ上げてきそうで。
私が走り出そうとした、その矢先。 背中からトゥルーデの声がかかった。

「なんだ、フラウか。 そんな格好で何やってるんだ。 ……何て言うか、犯罪スレスレだぞ。」
334ゲシュペンくんとおばけの花嫁 7/8:2008/12/13(土) 18:30:30 ID:UDyAYwua
えっ。 私は動きかけた足をピタリと止めて、トゥルーデの方へ向き直った。
いま、私のことフラウって。 うそ。 ほんと? えっ。 えっっ。
改めて自分の姿を見てみる。 真っ白いシーツに包まれて、私と分かる部分なんて何一つ無い。 無い、のに。

「が、がおー。 おばけだぞー。」
「……お前の奇行にもいい加減慣れたつもりだが。 それでもたまに真剣に悩むよ。 その格好は何なんだ?」
あれっ。 声が出た。 なんとなくおばけぶってみた。 そしたら、トゥルーデの聞きなれた溜息。
うそ。 うそ。 うそ。 分かって、くれた。 トゥルーデは分かってくれた。 私が、エーリカだって。

「な、なんで。 どうして、私が、エーリカだって、思ったの……。」
「? さあ。 言われてみるとお前だと分かる要素が皆無だな、その格好……。 だが分かったからには無視できん。
 一体何のお祭りをしてるんだ? さぁ寝るかと思った矢先に、こんな珍妙な絵面に出くわした私の身にもなってみろ。」
半目でこっちを見てくるトゥルーデに、私はまだ信じられないような気持ちで、半ば無意識に言葉を紡ぐ。

「あ、あのね。 このシーツね。 どうやったって取れないの。 私、もうどうしたらいいか分からなくなって……。」
「シーツが取れない? どれ。 見せてみろ。」
トゥルーデが背中に回りこむ。

「あぁ、ブラのホックに引っ掛かってるじゃないか。 今取ってやるから、じっとしてろ。 …………ん。 完了だ。
 …………ふふ。 ほら。 思った通り。 やっぱり、エーリカじゃないか。 ……その、なんだ。 さっきは、済まなかったな。」
ごそごそ。 ぱさり。 私の頭からシーツが離れ、暖かな手が前髪をかきわける。 なんて。 なんて暖かい手なんだろう。

あぁ、そうだ。 ようやく思い出した。 あの女の子はゲシュペンくんに、ずっと一緒にいてあげる、って言ったんだ。
とても悲しいけど。 とても帰りたいけど。 自分がいなくなったら、ゲシュペンくんはまたひとりぼっちになっちゃうからって。
それを聞いたゲシュペンくんは、女の子のケープを取ったんだ。 それで女の子はおばけの花嫁ではなくなったんだ。

その時、女の子はようやく分かったんだ。 ゲシュペンくんは意地悪してたわけじゃないって。
ただ、本当に女の子の事が好きだっただけなんだって。

彼女は人間に戻ったけれど、ゲシュペンくんの事が見えなくなってしまって。 泣きそうになって私が本をめくったら、さ。
ひとりぼっちになってしまったのに。 ゲシュペンくんは幸せそうに笑ってたんだ。

今、あの絵本のように、おばけの花嫁のヴェールがそっと上がった。 けれど。 私はひとりぼっちにはならなかった。
そこには、微笑するトゥルーデがいた。 それでね、トゥルーデが言う事には。
思った通り。 やっぱり、私なんだって。
335ゲシュペンくんとおばけの花嫁 8/8:2008/12/13(土) 18:31:20 ID:UDyAYwua
「おはよう。 今朝は少し冷えるわね。 ……あら。」
食堂に入ってきたミーナが、こちらを見てふっと笑う。 私もニコニコと手を振り返す。

「どうしたのかしら。 あなたたち、今日はバカに仲がいいじゃない。 何かフラウにしてあげたの、トゥルーデ?」
「いや……普段以上の事をした記憶はまったく無いんだが……。」
くすくす笑うミーナの質問に、トゥルーデが歯切れの悪い答えを返す。 普段通りだったんだって。 えへへ。
トゥルーデの肩にぴったり張り付いて、私はぷらぷらと足を揺らす。 今日は起きてからずっとこう。

最初はぎゃーつく言ってたトゥルーデも、諦めたのか私がひっつくままにさせている。
ごめんねトゥルーデ。 ほっぺがちょっぴり赤いね。 でも、もうちょっとだけ、こうしてようよ。 ねっ。
向かいの席では、ルッキーニが元気に騒いでいる。

「本当だってば! おばけは実在するんだよ! 芳佳信じてない!」
「や、やだなぁ、信じてるってば。 ね、リーネちゃん。」
「う、うん。 信じてるよね、芳佳ちゃん。」

「本当だもん! 私この目で見たんだもん!! ね! 私たちおばけを見たよね、シャーリー!」
「ははははは。 おかしな事を言うなあルッキーニ。 幽霊なんてこの世にイルワケナイジャナイカ。」
「え゛ーーー! なんでなんで! 一緒に見たじゃん!! 少佐! 少佐も見たもんね! おばけ!!」
「うむ。 私は何も見なかった! この世に幽霊などいない。 だから昨夜の事は夢なのだ。 そうに違いない……。」

「え゛え゛え゛ーーーー!!! なんでなんで!? なんでそうなるの!!? 嘘じゃないもん! 私本当に見たんだもん!!!」
シャーリーと坂本少佐がなんだかそらぞらしい返事を返す。 なんだろう。 言ってみれば、現実から目を背けてる感じ?
うるうるお目々のルッキーニが、助けを求めるようにこちらを向いた。

「ハルトマン中尉! 中尉なら賛成してくれるよね!! おばけは存在するよね!!!」
「うんうん、おばけねー。 ひょっとしてそれは、知的でキュートで、おまけにとびきりセクシーな感じの奴の事かな?」
「え? ……ううん。 私が見たのは、へんてこで、頭も悪そうで、おまけにとびきりデンジャラスな感じの奴だったよ!」
「ふむふむ、なるほど。 残念だけど私が知ってるのとは違うねー。 ルッキーニ。 それは単なるプラズマだよ〜。」
「う゛わあ゛あ゛あ゛ああ゛ああぁぁぁんんん!!!!!!!」

ぽこり。 呆れ顔で笑うトゥルーデ。 軽くげんこされる私。 えへへ。

うん。
おばけはいるよ、ルッキーニ。
ただね。 それは、とびきりキュートでセクシーで。 おまけに隣のコイツには、おばけに見えないらしいんだよね。
336名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 18:49:05 ID:cjG8dti/
終わりかな?
>>335めっちゃGJ!!童話特有のゾッとするような緊張感とエーリカの痛切な想いが伝わってきて、
ディスプレイに張り付いて読み耽ってしまった。爽やかなオチで本当良かった……!!
ところでこれの元になった絵本とかがあったら知りたいです。それとも完全創作ですか?
337名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 18:56:30 ID:OZGfMf/Z
子供っぽいエーリカも可愛いなあ、まさにお嬢ちゃんだw
338名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 18:57:45 ID:UjUznqv4
すごい面白かった!童話の内容もオリジナルか?
どちらにせよGJ!!

>>326
不意にアホネンさんがああなっちゃったのはもとはと言えばエルマが一向に心を開いてくれなかったからで、
「おちこぼれ」と言ったのもそれでも自分に怯えてばかりなのが寂しかったから、というトンデモアホネン→エルマが浮かんだ

3巻になっても使い魔がわからないエルマさんにはたぶんあと2回変身させるアイディアが(ry
339名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 19:01:25 ID:YPJsPU2k
>>335
GJ! エーリカなにやってんだwww
と笑いながら読んでたら後半でぐっと来た
作中話も凝ってるなぁw また楽しませてもらったよ
どうでもいい感想だがウーシュにプラズマは似合いすぎだw
340名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 19:38:20 ID:UDyAYwua
皆さん感想ありがとうございます
SS以外のレスをするのは初めてなので何だか緊張してしまいますが、感想をいただけるってやっぱり嬉しいですね
童話の内容は本筋に合わせて考えただけで元となる絵本はありません(>_<)スミマセン

肉まんがどうとかサーニャの腹筋がどうとかお馬鹿なSSばかり作っていたので、新鮮な気持ちで書けました
最後まで読んでいただいてありがとうございました
341名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 20:35:34 ID:sxI5VG4G
>>340良かったです。しかもゲシュペンのくだりは創作かw 数分かけてググった自分がちょっと恥ずかしいw
342名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 21:09:15 ID:i0XjAUkI
>>340
ゲシュペンスト(PT)「話は全て聞かせてもらい(ry
343名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 21:37:01 ID:ZUao/oGZ
「最近勢いがありすぎてスレが読み切れないww」

とかハハッワロスと思っていた時が俺にもありました
最近スレ進みすぎでマジに読む暇ねえぞ
344名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 22:32:41 ID:WaDQtrm3
俺も実はこのスレ見てはいるけど読みきれてない
どんだけー
345名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 23:31:00 ID:62qG5fKI
「うーん・・・どうすればサーニャに私の気持ちを伝えられるんダロ・・・」
「エイラさん、どうしたんですか?」
「あっ、リーネ。 実は・・・」

―――かくかくしかじか

「なるほど。恋の悩みですね」
「リーネは宮藤とラブラブなんダロ? 何かアドバイスしてくれヨ・・・」
「そうですね・・・私は坂本少佐に借りたビデオを参考にして、芳佳ちゃんに告白したんですけど・・・」
「そ、そうなのカ?! わ、私にも貸してくれヨ!」

―――数日後

「ヨシ。今日こそはサーニャに・・・あっ、サーニャ!?」
「・・・どうしたの、エイラ?」
「ちょ、ちょっと、話したい事があるんダ! 私の部屋まで来てクレ!」
「別にいいけど・・・?」

―――エイラの部屋

「・・・で、何? 私に話したい事って?」
「あっ、えっと・・・ソノ・・・(あ、あれを言うゾ・・・)」
「・・・?」

『た、例えば地球温暖化ダ!!』

「・・・・・・???」

―――リーネの部屋

「あっ!? エイラさんに別の巻を貸しちゃった!」

END?


試験勉強中なのに下らないネタを書いてしまった・・・。
346名無しさん@秘密の花園:2008/12/13(土) 23:43:12 ID:GQ03Dvfm
もともとはどういうビデオを貸すつもりだったのか気になるw
まさかえr
347名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 00:43:40 ID:0Eyw/Nz4
えrだったら、少佐は完璧お父さんみたいだW
そして、eroが見つかってミーナ隊長に…

妄想がひろがring
348名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 00:45:40 ID:izlduxcf
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
最近流れが早くてGJが追いつきません(><;
SS投下した皆々様GJ!

遅レスですが
>>243 zet4j65z様
ノイタンツご存じとは、なかなかの“打ち者”な方とお見受けしましたw
私のSSのタイトルは、主に好きなタイトルやアルバム、曲等から引っ張ってきて、
単語等本来の意味が少しでも通じれば使うって感じですね。見境ないですけどw
zet4j65z様のSSの続きが楽しみです。続き待ってます。


>>340
GJ! 和みました。文章も雰囲気が有って素晴らしい!

>>345
GJ! なんかワロタ


さて。
>>234-238「metaphar」の続きが出来ましたので、投下します。
タイトルは「interval」どうぞ。ちと長いですがご容赦下さい。
ちなみに最初の部分は「metapher」の一部を別視点からです。
349interval 01/09:2008/12/14(日) 00:46:31 ID:izlduxcf
前日のこと。
一連の異変を最初に気付いたのはエイラだった。
風呂に誰か居るかなーと何気なく脱衣場から風呂場を覗いた時、妙な感覚に襲われた。
(誰かに、見られている様な気がスル……)
妙な視線を感じ辺りを見回すも、周囲にはサーニャ以外誰も居ない。
「エイラ、どうしたの?」
「いや、何でもナイ。気のせいダ。早く入ロウ」
エイラはサーニャの着替えを手伝うと、そそくさと風呂場に入った。
大浴場ではのんびり湯につかるシャーリーとルッキーニ、そして同じく湯船で肩を伸ばしくつろぐペリーヌの姿。
いつもの風景だ。
(気のせいカ)
いつもと同じ様にサーニャと二人でシャワーを浴び、髪の先から足の先まで洗いっこする。
泡を一通り落とし終わったところで、ふう、と一息つく。
「さて。サーニャ、風呂ハイロ」
頷くサーニャ。
コツコツ、と何処かから音が聞こえた。エイラは再び辺りを見回す。
「どうかした?」
「何か、聞こえなかったカ? ノックの音みたいな……」
「エイラ、どうかしたか?」
シャーリーがエイラに気付いて声を掛ける。
「イヤ、何か、どっかから音ガ……」
「音? あたしには何も聞こえなかったけど?」
「あたしも〜」
ルッキーニがお湯の中で答える。
「イヤ、聞こえたンダ、確かニ」
「ラップ音とか?」
「なにそれ?」
「心霊現象のひとつでな、どこからともなく音が聞こえて来るんだぞぉ?」
「いやーこわーい」
ルッキーニの恐がりを聞いて、シャーリーは笑った。ペリーヌは眉をひそめた。
「そんな、風呂場で怪奇現象なんて、あるわけ……」
どごっ!! と鈍く激しい音が鳴り響き、一同の顔色が変わる。
「なっ、何だ今の?」
「聞こえたヨナ? 聞こえたヨナ?」
「き、聞こえた……シャーリー、いまの何?」
「まさか、本当に心霊現象?」
「そ、そんな事有る訳無いでしょうに……もしや、ネウロイ?」
「わざわざ風呂場をピンポイントで狙って来るのか? 最初に警報鳴るだろ」
「万が一と言う事も有りますわ。サーニャさん、魔導レーダーで確認しなさいな」
「サーニャのレーダーを勝手に使うナ!」
一応ぴょこっと尻尾と耳を生やし、レーダーで辺りを窺うサーニャ。
「ネウロイは……いません」
「じゃあ一体」
激しい爆発にも似た音が、風呂場と脱衣場の狭間で起きる。ぎくりとする一同。
振り返ると、脱衣場と風呂場の境目付近からもうもうと煙が立ち上っている。
床に穴が空き、風呂場の水も幾らか流れ込んでいる。
「ネウロイの爆撃?」
「そんな訳……」
「誰か、声がする……」
サーニャは魔導レーダーを出したまま、恐る恐る穴の方に近付いた。
「おぉい、サーニャぁ」
エイラも慌てて駆け寄った。
穴の中に居たのは……。
350interval 02/09:2008/12/14(日) 00:47:22 ID:izlduxcf
そして今日。
ミーナは朝のミーティングの最後に「近日中に地下を調査します」と告げた。
「結局まだ何が有るか分からないの?」
シャーリーが興味有りそうに頬杖をつきながら聞く。
「ああ。これから参考程度に、書庫の古文書等を一応見てはみるが……本格的な調査はまだだな」
美緒が答える。
「とにかく、地下へは行かないこと。何が有るか分かりませんから。いいですね」
こうしてミーティングは終わった。

「しかし、相変わらずリーネはああいうの駄目だなあ。それにしてもよく行ったよな」
「何が有るか分からない、ですか」
「骨があったって話だよ。人の」
「骨?」
「昔ここは監獄で、無残な死を遂げた人が地下に埋葬されてて、その霊が徘徊してるって……」
「そんな幽霊話、聞いた事無いぞ?」
「わたくしもそんな話ありませんわ」
「エーリカから聞いた」
「……信用できるノカ?」
「さあ」
隅の方で黙って話を聞いていたリーネは、皆の話を耳にするなり、そそくさと部屋に引っ込んでしまった。
芳佳に付き添われて部屋を出るリーネの顔が青い。
「リーネ大丈夫かな」
「宮藤居るから大丈夫ダロ。魔法で何とかなるんじゃないカ?」
「治癒魔法でも治せますしら?」
「でもさ、話がホントだとしたら気味悪いよな。ちょっと見て来ないか?」
「中佐が立ち入り禁止だとさっき……」
「地下の話だろ? 要はその下には行かなければ良いって話さ」
「その下?」
「なあ、ルッキーニ」
「そうそう。この下はね、基地の壁に沿ってぐるっと通路があるんだよ」
「よく知ってるナ」
「あたしこの基地のことなら何でも知ってるもん」
「幽霊話は?」
「それは知らな〜い」
「まあ、つまりはそこを歩く位なら問題ないだろって事さ」
「様子見、ですの?」
「ああ。気になるだろ? だったら自分の目で確かめればいいのさ」
「随分とやる気ですのね」
「あたしはこういうノリが好きでね。ちょっとした冒険じゃないか?」
「基地の下で冒険も何も……」
「まあ、今日はたまたまここに居る連中はみんな暇だし、いいんじゃない?」
「私達も行くノカ?」
「わたくしもですの?」
「みんなでワイワイ行った方が楽しくていいじゃん」
こっそりタロットを出して行くべきか行かないべきか“占い”をしようとするエイラの手を、サーニャが止めた。
「サーニャ、まさカ」
こくりと頷く。
351interval 03/09:2008/12/14(日) 00:48:13 ID:izlduxcf
ルッキーニの案内で、一行は外周通路の入口にやってきた。
既に配電盤のスイッチが入れられており、通路沿いに所々付けられた小さな電燈が内部をほのかに照らしている。
しかし窓も何も無く、光が無ければ漆黒の闇である事は想像に難くない。
「この通路で、あの二人は迷子になったのか」
「暗闇だったら、誰でも怖いダロウ?」
「あたし、ここはジメジメしててきら〜い」
基地の至る所に自分だけの“秘密基地”を作っているルッキーニも、ここはお気に召さないらしい。
「とりあえず、行くか」
五人は揃って歩き出した。
出発前、基地の倉庫に忍び込み、懐中電灯を三本程調達してきたシャーリー。めいめいに渡し、辺りを見て回る。
シャーリーは興味深げに壁を見た。
「きちんと組んであるよ。ごつごつしてるけど、結構しっかりしてるね。修道院時代のものかな」
「うえ、足元びしょびしょ」
隣でルッキーニが足元を気にする。
「しかし、なんで基地の下にこんな通路が?」
少し納得いかない様子のペリーヌが呟く。
「修道院の時、ここは一時期『砦』として使われてたって、本にアッタゾ。その時の通路じゃナイカ?」
いつの間に知識を得たのか、エイラが答える。サーニャはエイラの隣をそっと歩いている。
「しかし長いなあ」
「円周の通路だから終わりは有って無いようなもんダゾ?」
賑やかに話しながら、道を行く。緩くカーブを描いた通路は、確かに、暗闇なら無限の回廊に見えるだろう。
暫く行くと、通路の脇にぽっかりと開いた穴を見つけた。
「なんだこれ?」
人ひとり分くらいが通れる大きさだ。よく見ると木製の戸枠に見えるが、長年の湿気で腐ったのか、
穴の周囲はぼろぼろになっている。
「なんか……汚い穴だなあ」
懐中電灯を照らす。下に降りるはしごを見つける。
「これか? 二人が落ちた穴っていうのは」
「はしごも有るし、きっとこれだよ!」
「よし、降りてみるか」
「ちょ、ちょっと! この通路を歩くだけの筈でしてよ?」
「少し位良いだろ? 明かり照らしてくれよ」
ルッキーニが穴の中を照らす。シャーリーは慎重に中を降りていく。
「よし、結構深いな」
「次、あたし〜」
ルッキーニも足早に降りてきた。
「わたくしも降りるんですの?」
「みんなで行くんダロ?」
「まったく……」
ぶつくさいいながらも降りるペリーヌ。
「サーニャ、大丈夫ダ。照らしてるから、足元気をつけてナ」
「うん」
はしご伝いにそっと下りる。エイラがしんがりになって、下へと降りた。
その空間は確かにいままでの通路とは違い、妙な構造になっていた。壁を二段にくりぬいて棚にしているらしい。
中には色々な物が雑多に詰め込まれている。端の方には、何かが上から落ちてきた様な、物が壊れた跡が見つかる。
「なんか物置って感じだね」
「こりゃ明かり無いと何だかわかんないナ」
「ねえシャーリー」
呼ばれたシャーリーが振り向いた。そこには髑髏姿のルッキーニが居た。
「おわ!」
「ニヒヒヒヒ これ、そこに有ったの」
「驚かすなよ。あーびっくりした」
「これは?」
ペリーヌがルッキーニが手にする頭蓋骨? をつんつんとつつく。
「知らな〜い。そこに転がってた」
「何でこんなのが転がってるんだよ。……本物か?」
「本物がこんなところに有る訳ないでしょうに」
「だよな」
352interval 04/09:2008/12/14(日) 00:49:06 ID:izlduxcf
頭蓋骨? が有った場所を懐中電灯で照らして慎重に調べていたエイラがぼそっと言った。
「これ……本物カモ」
「何を今更」
笑う一同。
「よく見ろヨ。この段になってる構造ッテ、死体を並べておく為の物じゃないカ?」
「じゃあどうして上に適当な物が積まれて……」
「ホラ」
エイラが見せた。太い骨。脚の骨だろうか。
「よく見ロ。そこにも、あっちにも、同じようナ物が転がってナイカ?」
他の棚らしき場所を見ると……確かに底の部分に、何か白い物が置かれ、潰れている。
「まさか」
「まさか、ねえ」
「エイラさん、この期に及んで冗談は宜しくなくてよ?」
「ペリーヌ。確かガリアのパリには、地下にカタコンベ(地下墓所)が有ったヨナ?」
「それがどうかしまして?」
「……似てないカ?」
言われてもう一度辺りを見回す。確かに壁の雰囲気は似ていた。しかし、墓所にしてはがらくたが多過ぎる。
その事を指摘すると、エイラは言った。
「死者の弔いだったりしてナ」
じわりと、言い知れぬ怖さに身を包まれる一同。エイラの言葉がひとつひとつ、事実の様に思えてくる。
「と、とりあえず、ここから出るか」
空気を変えようとシャーリーがはしごに手を掛けた。
途端、ばきり、と鈍い音を出すと、はしごが折れて崩れて来た。
「おぅわ!」
「きゃあ!」
「!」
「ど、どうなってるんだ一体。はしごが崩れたぞ」
「シャーリー、力入れ過ぎたんじゃないの?」
「そんな訳有るか。ただ触れただけだ」
「はしごが無いんじゃ、上に出られませんわよ? どうするおつもりですの?」
「とりあえず、こんだけ人数居るんだ。落ち着けよ」
シャーリーはおろおろする四人をなだめた。
「エイラもあんまし威かしちゃダメだろ。みんなパニックになったらどうするんだ」
「……ゴメン」
「さて、どうするか、だな」
木製のはしごだった残骸は、もろくも崩れてしまっている。これはもう使えない。
辺りを適当に探してみるも、使えそうな道具は無い。有るのは持参した懐中電灯が三本位。
「ねえねえ」
「どうしたルッキーニ?」
「みんなで肩車するのどう?」
「肩車か。……五人居れば上まで届きそうだな」
「五人も揃って肩車ですって? 曲芸じゃあるまいし」
「やってみようよ。きっと届くって」
「よし。じゃあ、軽い奴を上にしていけば良いな。で、上がったら、そいつが基地の倉庫からロープを持ってきて、
みんなを引っ張り上げると。バッチリじゃないか」
「で、誰が一番下に?」
自然とシャーリーに視線が集まる。
「分かったよ。私が一番下でいいよ。で、次は?」
「じゃあ私がヤル」
「その次」
「はい」
「上は?」
「あたしが行く〜」
「一番上は」
「このわたくしが」
「……おい、待てよ。一番上は身軽なルッキーニの方がいいだろ」
「そんな事ありませんわ! このわたくし、こう見えても……」
「あー、もういいよペリーヌで。とにかく、すぐに行って戻って来いよ。絶対だぞ。絶対だからな」
「分かってます!」
353interval 05/09:2008/12/14(日) 00:49:57 ID:izlduxcf
ぶつくさ言いながら四人は肩車をして、その上に登り……を繰り返し、曲芸か組体操みたいなかたちで上に連なる。
壁に手をやり、バランスを取る。
「いい感じぃ。ペリーヌ、早く登って登って〜」
「お任せなさい。こう見えてもわたくし、ガリア貴族として身のこなし……」
「いいからとっとと登れ! 結構重いんだってば!」
シャーリーが珍しく声を荒げる。既に尻尾と耳を生やしている事から、魔力を使って踏ん張っている事が分かる。
ペリーヌは不満げな顔をして、四人が作った「人間はしご」をささっと登り、元来た道に上がった。
「すぐに戻りますから! 暫くの辛抱ですわ!」
そういい残すと、懐中電灯を手に、とたとたと去っていく。
「よし、肩車終わり。とりあえず上から降りて来いよ。そーっとだぞ」
一番上のルッキーニがささっと身軽に降りる。しかし二番目のサーニャは力尽きたのか、バランスを崩す。
「危なイ!」
三番目のエイラが咄嗟にカバーに入る。結果、肩車は見事に崩壊し、がらくたの中に転落した。
「いたた……大丈夫か、サーニャ、エイラ」
「ああ、ナントカ」
がらくたの山がクッション代わりになったらしい。ちょうど良かった。
サーニャの身体を引き起こす。
「怪我は無いカ?」
こくりと頷く。埃にまみれてはしまったが、幸い何処も怪我はない様子だ。ぽふぽふと埃を払ってやるエイラ。
「とりあえず、ペリーヌの救援を待つか」
骨らしき物から少し身を遠ざけ、シャーリーとルッキーニ、エイラとサーニャがそれぞれ肩を寄せ合い、
向かいに腰を下ろす。
「ねえシャーリー」
「ん?」
「懐中電灯、明かり消えかけてない?」
「おわ、もう切れるのか?」
「こっちも似た様なもんダナ」
「まずいな。明かりが無くなったら……」
「エイラ、これ……」
サーニャが差し出した棒きれに見える一本の棒。それはさっきサーニャが落ちたがらくたの山から偶然見つけた
一本のろうそく。端は欠けていたが十分使える。
シャーリーがポケットからライターを出し、ろうそくに点火。ほのかな明かりが灯った。
がらくたの山からルッキーニが小さなカップを見つけ、燭台代わりにする。
これで懐中電灯の節約も出来る。電灯のスイッチを切ると、ろうそくの炎がゆらめき、四人を照らした。
「早く来いよ。ペリーヌ」
シャーリーは天井に穿たれた穴の方向き、呟いた。

一方ひとり脱出に成功したペリーヌは慌てていた。
元来た道をすぐに戻ると、基地の中を走り、倉庫の中を引っかき回してロープの束を探し、よいしょと持ち上げ、
皆が待つあの暗闇へと走る。
廊下の角に差し掛かったところで、突然斜め四十五度から衝撃を受け、床に転がった。
「いたたた……」
ズレた眼鏡を直す。眼前に広がる光景は、古びた本まみれになった美緒の姿だった。
「しょ、少佐! いかがなさいまして!?」
「ペリーヌか。お前こそどうした、そんな急いで」
「いえ、わたくし、その……」
ロープをささっと背中に隠す。
「? 何か急ぎか?」
「いいいえ、とんでもない!」
「そうか、なら頼みが有るんだが、少し手伝ってくれないか? これからこの本の山を執務室に持って行くんだが……」
「はい! 喜んでお手伝いさせて頂きますわ!」
「その後は、バルクホルンとハルトマンのストライカー機動テストが有るんだが、
いつも通り、私とミーナの補佐と記録係を頼みたい」
「お任せ下さい! わたくし、少佐の為なら何でも致しますわ!」
「それは頼もしい。ではまずこの本を……」
いそいそと本を抱えるペリーヌ。廊下に置き去りにされたロープ。勿論、置き去りにされたのはそれだけはなかった。
354interval 06/09:2008/12/14(日) 00:50:52 ID:izlduxcf
「遅いね〜」
「遅いナ」
シャーリーとエイラが呟いた。
もう三十分以上……いや、一時間以上は待っている。
ろうそくもだいぶ短くなってきた。
しかしペリーヌが助けに来る気配は微塵もなく……ただ暗闇の中、四人は冷たい床に座ったまま、呆然と時を浪費していた。
ルッキーニは余りに暇で眠くなったのか、シャーリーの肩に頭を乗せ、眠っている。
一方のシャーリーも、うとうとして、やがて寝息を立て始めた。
エイラも暇を持て余し、どうして良いか困る。上を見るも闇、下は石畳。横にはサーニャ。正面には寝こける二人。
サーニャも待ちくたびれたのか、うつらうつらとして、今にも眠りそう。
その横顔が、とても愛しく見えて仕方ない。。
エイラも意識が朦朧として来た。サーニャが頭をエイラに預ける。
ごくりと唾を飲み込む。サーニャと触れ合う、絶好のチャンス……。
「なんかこう……頭が……ぼおっとして来た……なあ、サーニャ……」
「エイラ……」
シャーリーとルッキーニは寝ている。
欲情か、本能か。エイラとサーニャは、お互いの顔を近付け……目を閉じ……
エイラははっと気付いた。かっと目を開く。
「酸素ガ! 酸素が薄いゾ!」
ろうそくの炎がゆらぎ、消えかかっている。
「サーニャ起きろ! 寝るナ! シャーリー大尉! ルッキーニ、お前らも起きロ! 死ぬゾ!」
「う〜ん」
「ムニュムニュウシュシュ……」
「酸素が無いんだっテバ! オイ!」
ぱしぱしと頬を叩く。
「寝たら死ヌッテ!」
閉鎖空間でろうそくを燃やし続け、四人が呼吸していれば、酸素も減る。当たり前の事にエイラはひとり、気付いたのだ。
「とにかくここから出ないト危ナイ!」
エイラは朦朧とする意識の中、更に朦朧とする三人を置いて、必死に一人がらくたの転がる所をかき分けた。
がらくたが転がる小山は皆が降りてきた反対側の壁の方に集中している。
小山が出来たと言う事は、そこの先に何かが有るのでは、との推測、いや直感だ。
果たしてその直感は的中し、がらくたの小山の上辺りに、小さな扉を見つけた。
「おい、扉ダゾ! てかみんな寝るナ!」
エイラは扉を押してみた。開かない。ぐいと押す。まだ開かない。ガタガタと力を込める。微塵も気配がない。
耳と尻尾を出し魔力を解放し、力任せに殴ってみた。手が痛くなっただけだった。
エイラが何か楽しそうな事をやっていると嗅ぎ付けたルッキーニは、起きるなりさささと横に来、扉を引いてみた。
あっさりと扉は開いた。
「開いたよ?」
「……アア」
朦朧とする二人を引っ張り出し、何とかその閉鎖空間から脱出する事に成功した。
355interval 07/09:2008/12/14(日) 00:51:42 ID:izlduxcf
「あー、死ぬかと思った」
大きなあくびをひとつすると、シャーリーはルッキーニを連れて狭い地下通路を歩き始めた。
「本当に死にかけたんダナ……」
げっそりとやつれたエイラは、寝惚け眼のサーニャをおんぶして、シャーリー達の後に続く。
ろうそくは火のついてる限り持っていこうと言う事で、シャーリーが手に持っている。
ほのかにゆらめく炎は、先程の閉鎖空間から輝きを少し増している。酸素もばっちりなのだろう。
やがて一行は、目の前に現れた階段を上がり、別の道に辿り着いた。
一番最初に通過した環状通路とはまた違った感じの地下道に、一同は驚いた。
道幅は割とせまく、道路に例えるなら、まるで裏路地だ。しかも、かつてはかなり頻繁に使われていたであろう事が推測される。
床の石畳や壁のレンガ等が、かなり磨り減っている。
「なんか、随分と雰囲気違うねえ」
「でも、壁や床は結構綺麗ダナ」
「……」
ルッキーニは何かきょろきょろしている。
「どうしたルッキーニ? 何か知ってるのか?」
「うーんとね。何か、これと同じ壁見た事有る様な」
「何処で」
「基地の中」
「まあ……」
「そりゃ、なあ」
がっくりくる一同。
「とりあえず、前に進もう。前進あるのみ」
尚も進むと、唐突に十字路に出た。左右の道がやや広く、メインストリート的な感じになっている。
「これ、何ダロウ?」
「昔の修道院で使ってた裏道とか?」
「思った以上に複雑なんダナ」
「で、どっちに行くの?」
ルッキーニがシャーリーの袖を引っ張る。
「じゃあせっかくだから、右いってみよう」
「理由は?」
「ルッキーニが引っ張った方向だから」
「……まあ、いいヤ。行き止まりだったら戻れば良いんダシナ」
「そうだ。ここも、もしかしたら円周の通路かも知れないな」
シャーリーは地面にろうそくの溶けたロウで、小さく×の印を書いた。
「一応、これが目印代わり」
四人は足元の印を確認した。間違えたり忘れない様に、目に焼き付ける。
「よし、じゃ、行こう。地上を目指して〜」
「なんかピクニックみたいだね」
「なんか楽しいよな」
手をつないでうきうき気分で歩き出すシャーリーとルッキーニ。
エイラはサーニャをおんぶしたまま、歩き始めた。サーニャはぴったりと、エイラにくっついている。
356interval 08/09:2008/12/14(日) 00:52:38 ID:izlduxcf
やがて数十メートル程進んだ先で、T字路にぶつかった。その壁面に、とあるものを見つけた。
採光の為の窓だ。とても小さいが、外はまだ明るい事が分かる。
「おお。光だ」
「なんか、ちょっと安心するナ。まだ出口分からないけど」
ルッキーニがきょろきょろしている。そして叫んだ。
「ああここ! あたし知ってる! ここから先に行くと、あたしだけの秘密の場所に行けるんだ」
「何ぃ!? それは本当か?」
「そうそう。こっちこっち」
ルッキーニに導かれるまま、三人は歩いて行く。
「ここをね、こう行って……こっちに昇って……その次はここ上がるの。足元気を付けてね。下見ない方が良いよ、落ちるから」
「おワ!? 先に言エ! 見ちゃったジャナイカ」
「でね、このはしごを昇るの。次はこの斜めの柱を登って……」
「ふむふむ」
一同はルッキーニの進むまま、道無き道を進んでいく。
途中、柱や壁の隙間、梁なども足場代わりにずいずいと進んでいく。
「で、ここを出ると……ジャジャーン!」
ぱかっと小さな扉を開けると、眼前に広がるのは、大海原。
「おお!」
「出タ!」
「やった! やったぞ! あたし達、遂に自力で脱出に成功したんだ!」
「ルッキーニ、流石ダナ。……ああ、風が気持ちイイナ」
得意そうに笑みをこぼすルッキーニを、シャーリーが抱き上げた。
「えらい、ルッキーニ! さすがだよ」
「ニャハー 秘密基地が役に立ったね!」
「お。空、誰か飛んでルゾ。バルクホルン大尉とハルトマン中尉ダナ」
「ところで……ここ、何処?」
サーニャの一言で、一同は暗闇脱出の感動から覚め、辺りを見回した。ここは……
「地面が赤い……目の前に滑走路……?」
「ハンガーの上か?」
「基地の屋上だよ」
さらっと言ってのけるルッキーニ。
「ちょ、ちょっと! どうしてこんなとこに!?」
「屋根の上まで登っちゃってどうするンダヨ……」
「降りよう。さすがにまずい」
「あたししか降りれないよ」
「なんで」
「ここからだと、あたししか通れない場所、幾つもあるもん。みんなじゃ身体大きくて通れないかも」
「オイ……」
「屋根の上って事は……」
振り返ると、真後ろには司令塔がそびえ立っていた。ストライカーを履いていればすぐに届く範囲なのだが。
「司令塔が見える……」
「中佐と少佐が居るンダナ。……中佐、こっち見てるゾ?」
「とりあえず手でも振っとく?」
だらしなく手を振ってみる四人。中佐もにっこり微笑んで手を振り返してくれたが。
「私達、何か馬鹿みたいダゾ?」
「あ! 少佐の横にぺたんこが居る!」
「何ィ!?」
「あいつ……何やってんだ!」
「少佐もこっち見たゾ……どうしヨウ」
「とりあえず、懐中電灯で信号でも送ってみようか」
呑気に懐中電灯を取り出すと、スイッチをぺこぺこと付けたり消したりしてみるシャーリー。
357interval 09/09:2008/12/14(日) 00:54:08 ID:izlduxcf
「ねえ、坂本少佐」
「なんだ、ミーナ」
「あの子達、何してるのかしらね」
「さあな。どうして屋根の上に登ってるんだ?」
ペリーヌも何事かと二人が見る方角を見て、四人の姿をみとめ、仰天した。
そして思い出す。ロープの事、救援の事……。
「ん? 何か光ってるぞ。点滅してるな。発光信号か? ええっと……」
美緒は光で送られてきたメッセージを言葉に出した。
「『S.O.S.』、『タ』『ス』『ケ』『テ』、だそうだ」
妙な沈黙が訪れる。なおもぴかぴかと光り続ける信号を目にして、美緒が言った。
「……どうする、ミーナ?」
「どうもこうも無いわね」
はあ、と溜め息を付くと、美緒は無線で呼び掛けた。
「バルクホルン、ハルトマン、聞こえるか。機動テストは一時中断だ。これから少し、やって貰いたい事がある。
……何かって? 簡単な事だ。お前らにも見えるだろう? あの屋根の上に居る馬鹿タレ共を地上に降ろすだけの作業だ。
……ああ。頼む」
先程からペリーヌの様子がおかしい事に気付いたミーナは、ゆっくり振り向き、笑顔で言った。
「ペリーヌさん、ちょっと良いかしら?」

end

----

以上です。
短くするつもりが、妙に長くなってしまいました。
色々考えた末、ペアでの「お化け屋敷」ネタは断念。
今回、雰囲気的には軽い「冒険もの」を、と言う感じで。

ではまた〜。
358名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 01:09:42 ID:9G3Awefw
>>357
GJ!すげえハラハラした!
そして最後の中佐少佐にふいたw
359名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 02:15:00 ID:cAUpQdZa
>>345 そのアニメはお友達ポジション的に駄目だろw
360名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 02:23:57 ID:+sLA2v74
>>345
「ふっ、どうも私は口下手で困るヨ…」
というエイラさん想像してフイタw超気合入れて練習してそうだなw

>>357
GJ!ドキドキしながら読んだよ。
みんなの掛け合いも良かった。
361名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 02:56:06 ID:pswEoUi5
オヘア×ウルスラは受け入れられぬのか・・・
362名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 03:00:38 ID:5gHayDj4
受け入れられない、なんてことはないと思うが
もしそう思うなら、まず自分で書いてそれを投下してオヘアウルスラの素晴らしさを伝えてみたらいかがかな
363名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 03:01:24 ID:pswEoUi5
>>362
国語1の人間には酷な話・・・
364名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 03:02:56 ID:shgCzOMv
>>361
ミーは好きねー。
365名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 03:28:13 ID:9O/LKeie
>>361
俺も好きだぞ、ウルスラを可愛がるオヘア最高ですがな
366名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 04:34:44 ID:POxXFrhv
智子とハルカ・ジュゼッピーナの爛れた関係を横目にああはなるまいと思いつつも
ウルスラを可愛がりたくて仕方がないオヘアさんですね。

シャーリーもそうだけど、リベリオン人のウィッチって自然と調整役になってしまうんだろうなあ。
他が極端すぎるから。
367名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 04:51:30 ID:9O/LKeie
というかリベリオンのウィッチさんはロリk(ry
368名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 09:34:37 ID:8J5JK+IV
姉のようだと、彼女の笑顔を見る度に私はいつも思うのだった。

「ウルスラ、どうしたね?」
癖の強いブリタニア語とともに、彼女がにか、と笑って私を覗き込む。気付かれていた、
と私が軽く目を見開くと、彼女は朗らかな笑みそのままに、私の頭をわしゃわしゃと
撫でる。私は口をつぐんでされるがままで――でもどうしてか、嫌な気分では決して
ないのだった。

しゃがみこんで、視線を合わせて。それでも彼女はそれ以上何も尋ねてこようとは
しない。自分よりもずっと背の低い私を慈しむように微かに目を細めて、そして私の
髪を撫でるのだ。当初は乱暴であったそれがいつのまにかとてもとても優しいものに
なっていることを、私は経験則からよく知っている。

姉のようだ、と、思うのは。
決して彼女と、自分の姉とを重ねているからではない。姿形は自分とそっくりでも、
ずぼらでやる気なしで私がついていないと何もしてくれなくて、そのくせ一度やる気を
起こしたら妙に器用なあの姉と、やる気ばかりが先立って、なりふり構わず突っ込んでは
結局失敗して色んなものを壊して回るこの人とでは、誰がどう見ても似ついている
はずがない。
私の言う『姉』と言うのはそんな個人的なものではなくて、もっと形式的なものだった。
そう、世間一般で言われているような、姉のイメージ――私の中でそれが、この人
のようなそれだったのだ。

彼女はまだ何も言わない。ニコニコと笑ったまま、私の言葉を待っているかのよう。
私の寡黙さを知ってなお、彼女は私の言葉をこうして待つことがたまにある。普段は
一人で捲し立てて、そうして満足するばかりだと言うのに。

「――キャサリン。」
ぽつ、と雫を落とすように彼女の名前を呟いたら、彼女の顔がなぜかぱあっと輝いた。
先ほどまでも笑みを浮かべていたけれど明らかに違う。違うと分かる、その笑顔。
照れ隠しなのだろうか、私の頭の横辺りに落ち着いていたその大きな手が、また
わしゃわしゃと大きく動いた。どうしたの?とばかりに首をかしげる私の心に、
どこまでもまっすぐ、猪突猛進な彼女はなりふり構わず単機突撃をかましてくる。

「ウルスラの声、綺麗で好きね。だからもっともっと聞きたいって、いつも思うね。」

――そしてほら、被害が甚大でも全く気にすることなく、いつものように朗らかに
笑うのだ。
ああ、コアを打ち抜かれたネウロイはこんな気分なのだろうか。霧散して行く意識の
片隅で、柄にもなくそんな感傷的なことを思う。

姉みたいとかじゃない。私にとってこの人は、もっと別の存在だ。なんと呼べば
いいのかは、私にはまだ、皆目見当もつかないけれど。

ぼんやりとした頭で仕返しとばかりに彼女の頭に手を伸ばしたら、存外にもふわふわと
柔らかく、なんとも良い心地だった。どうしたね、ウルスラ。さきほどと同じことを
尋ねてくる彼女に今度こそ何か意味のある言葉を返そうと、そしてたまには会話に
しようと、懸命に頭の中から候補を引っ張り出すことにした。
見つかるかな?見つからないかもしれない。でもそうしたらきっとこの人が模範回答を
くれるだろう。これからずっと、いつまでもきっと。

――
オヘア×ウルスラに挑戦してみたけど難しいな…
携帯からなので改行おかしかったら申し訳ない
小ネタ程度にどうぞ。
369名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 12:04:31 ID:9G3Awefw
>>368
ついにキャサリンウーシュきたああああああ!!
GJすぎる…!ウーシュかわいいなあ

さて、昨日風呂に入ってたら突然受信したので文にしてみた
>>357のIfストーリー的なエーゲル。


 ◇もしバルクホルンとハルトマンが二人で地下に行っていたら◇

こつこつ――と、地下廊下を歩く二人分の足音だけが響く。
電灯がところどころ点いているが、あまり明るくはない。
「なあ、どこだここ」
「地下。」
私はかなりわくわくしていた。どうやら宮藤とリーネが人骨を見たらしい。
そんな興味深いことをいうものだから、私は墓地云々を言い出した者として、確認することにしたんだ。
…トゥルーデを連れて。

いざとなったらその腕力にすがろうと思っていたのに、どうやらこの人は頼りにならないようで、さっきから同じことばかり言っている。
「エーリカ、どこだよここは」
「だから、地下だってば」

暗めの電灯と、持ってきた懐中電灯ふたつで、どうにか真っ暗闇だけは避けられている。

こつこつ。
歩きながら私はふと、気づいた。
「トゥルーデ」
「うひ」
…なんだいまの返事。まあいいや、続けよう。
「ここさ、見覚えない?」
「…どういう意味だ」
ピタリと足をとめるトゥルーデ。とりあえず私も倣った。

「さっきも同じところ通らなかったっけ、って言ってるの」
「――え゛?」
なんとも間抜けな返事ですこと。
ちょっとペリーヌっぽい口調で思ってから、また歩きだした。
「まぁ、もうちょっと歩いてみよっか」
「…ああ」

こつこつ。
少し足早になる私のあとについてくるトゥルーデ。
やっぱり、さっきも通ったなここ。
道もゆるやかなカーブになってるし。…ん? あ。回廊ってことか。
仕方ない。入ってきた場所あるいは別の場所へつづく道をみつけるまで、このまま進むとしよう。
左右を慎重に見て、扉や道なんかがないか探した。

370名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 12:05:37 ID:9G3Awefw
突然、後ろから軽く引っ張られるような感覚。
後ろにいるのはトゥルーデだけ。足を進めながら、私は無言で振り返った。
見れば私のシャツの裾を、トゥルーデが片手でつかんでいるではないか。
しかもうつむいていて、私が見ていることに気づいていない。
つまりトゥルーデは、足元以外を見ないようにしてるわけだ。

「トゥルーデ、もしかして怖い?」
「…はっ! いや、そんなことはない」
とっさに私のシャツから手をはなし、否定してるけど、ばればれだよ。
まったく。怖がりさんだなあトゥルーデは。

こつこつ。
「あれ、なんか穴っぽいもの発見」
「あな?」
「うん。ほら、壁んとこ」
「本当だ」
穴の近くまでいくと、どうやらもっと下へとつづいているらしかった。
「いってみるか」
「いい。私は行かないぞ」
「…じゃあトゥルーデここで1人で待ってる?」
「…一緒にいこう」

さすがのセクシー魔法少女エーリカちゃんでも1人でこの中へ行くのはちょっといやだ。
トゥルーデは頑として先には行かないつもりのようなのでまた私が先をいくことになった。

はしごを降りきるとそこはなにやら妙な空間で、やたらと物が置いてあった。
「なんだここ」
「…物置か?」
「リーネと宮藤がアレ見たっていうの、ここだったりして」
「アレ…って」
「ヒトの骨」
わざと怖い口調で言ってみると、トゥルーデはシャレにならない表情で黙り込んでしまった。
ていうか。マジでシャレなんないかもしれない。
これだけ物があれば、その中になにがあってもおかしくない。
現に、ここにあるブツたちには、統一性がまったくないのだ。

ガラクタに懐中電灯を照らしながら掘り起こしてみるも、やっぱり出てくるのはガラクタのみ。
なんだ…、とがっかりしていると。
「…う、わああああああっ!!!?」
かなりの音量が耳に入ってきた。

「トゥルーデ?」
「え…エ…エーリカっ」
トゥルーデの慌てようがハンパじゃない。差した指ががたがた震えている。
差した指…?
その先を私が確認するより先に、トゥルーデはもんのすごい速さではしごを登っていった。
「ちょ、ちょっとまってよ! どうしたっていうの」
心臓をばくばくさせながら私は、トゥルーデが差していた方向にゆっくり目を向ける。

目から受けた刺激を脳が処理し、それが何であるかを認識するより先に、私は叫んでいた。
371名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 12:06:28 ID:9G3Awefw

腰がぬけるかと思った。
“そこ”には、あったのだ。あってしまった。
ヒトの頭の骨が…。目玉のところが穴になっていて…
――そこまでしか見ていない。
そんなものをじろじろ観察できるほどの勇気なんて持ち合わせていないんだ、私は!

大急ぎではしごを登りきって、少しだけほっとした。
「トゥルーデ…」
「すまない、エーリカ」
「ばか!なんでおいてくの!」
「すまない…」
確かにトゥルーデは怖かったかもだけどさ、だからって私を置いていかないでよ。
今までは二人だったから大丈夫だったけど、一人になったら私だって怖いに決まってるんだから。

そんなことより、今はとにかく地上にでたい。
私もトゥルーデも、気分は最悪なんだ。
「はやく出よ、こんなとこ」
「ああ…もちろんだ」
出口を探し、二人並んで歩きだした。

知らずのうちに、またトゥルーデは私の服の裾をつかんでいた。
「ねぇ」
「あ、悪い…」
さっきと同じように手をはなそうとするから。

「手、つなご?」
トゥルーデは、なにも言わずに私の手を握った。
互いのぬくもりを感じて、とても安心する。

二人の手はいつのまにか恋人つなぎになっていて、光にたどりついたときにはもう、恐怖なんて忘れていた。



mxTTnzhmさん、ほんとすいませんでした。ああもうなんだこれ。
気にしないでください…

ただ怖がるトゥルーデを書きたかっただけなのに無駄に長い!

言いたいことやら反省点やらはいっぱいありますがこのへんで失礼します。
つまりいいたいのは、>>357GJ!

ちなみにgf1xJeg9でした
372名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 12:56:19 ID:l9dnRXir
うおーみんなGJ
最近微妙に勢いが無くなってきたきもしないでもないけど
一日3本以上は投下されるのは相変わらず凄い
373名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 14:09:21 ID:UuhUlzvc
バルミーナっていうか
ドイツ組のss書いてみた

バルクホルン視点
エロなし
友情メイン

もっさんのバリアが機能しなくなった直後の話

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
                

ミーナの様子がおかしい。
ネウロイとの戦闘後、赤城の乗組員に歌を送ったときに気づいたが、
その異変の始まりはネウロイとの戦闘直後だったように思う。

どのようにおかしいかと聞かれれば、うまく言葉にできない。
何か思いつめているようにも感じるし、何かに怒っているようにも感じる、
そんな漠然とした違和感を、真っ赤なドレスに身を包んだミーナに感じていた。


その日の深夜、見回り当番だった私は消灯、戸締りを確認しながら基地内を歩いていた。
すると、一つの明かりのついた部屋を見つける、隊長室だ。
いくら、24時間ネウロイへの警戒を怠らないといっても時刻は深夜、通常明かりのついている部屋ではない。
胸がざわつくのを感じながら、隊長室の扉を開ける。予想通り、そこにいたのはミーナだった。

ドレスから着替え、すでに寝間着のニーナは隊長室の椅子に腰掛けうつむいていた
ミーナの性格からして、仕事が残っているのなら制服を着るだろう。
寝間着を着て、大きな椅子に力なく座るミーナは、いつもよりずっと小さく見えた。

                    1/3
374名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 14:10:00 ID:UuhUlzvc
 「ミーナ?」

意識して、普段通りの声をかける。

 「!!」
どうやら、私の入室に気づいていなかったらしい、
ミーナは一瞬驚いた顔をしたのち、すこし厳しい顔を作る。

 「トゥル・・・バルクホルン大尉、ノックもせずにどういうつもりですか」
取り繕うように、強めの口調でミーナは言う。
普段、仕事中は愛称で呼んだりはしないミーナだが、今夜のこの会話は理由が違う
ごまかし、追求からの逃避、強がり、それらがありありと見て取れる。
私の見たくないミーナだ。

 「失礼、ですがすでに消灯予定時間、そして今日の見回り当番は私です、隊長__」
言葉こそ公的だが、話しかけたのは「隊長」ではなく、「ミーナ」に向けてだった

 「・・・・・・」

そもそも、夜の静かな部屋で人が入ってくることに気づかない、
部下の見回りのシフトが、頭に入っていないミーナではないのだ。
昼間感じた違和感が、確信に変わった瞬間だ。

「ミーナ・・・何があった?
 昼間からどうも様子がおかしいぞ?」

「・・・・・」

ミーナの沈黙は、迷っているのではなく質問を黙殺するために作られたものだ
私は、それが彼女の優しさであることを知っている
そう、いつだって彼女は仲間を守りことを考え、一人でその盾になり、強く振舞う。

だからこそ今、私は引く訳には行かない。
若干18歳の隊長が、時に悩み、苦しみ、一人の少女に戻ってしまいそうになった時
傍らで彼女を支え、守り、「隊長」に戻すのが、私の役目だと、
彼女が私に求めるものだと信じているから。


                    2/3
375名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 14:10:44 ID:UuhUlzvc
私は、彼女に告げる
「部下に話せないことならそれでもいい。
 深夜の隊長室で、寝間着のまま一人作戦会議、それもいいだろう。」

少女は目を伏せたまま

「しかし、忘れないでほしい。
 私は、ゲルトルート・バルクホルン あなたの部下にして
 501ウィッチーズのエースだ。うまく、使ってほしい。」

普段は恥ずかしく、決して口にしない「エース」などという言葉も
彼女のためなら口にしよう、それで少しでも彼女の憂いが晴れるなら。

ミーナは目を閉じ、硬く口を結んでいる。
何事かの決意を胸に刻んでいるように見える。
そして目を開けたミーナは、いつもの隊長の顔だった。

そしてミーナは口を開く
「命令します。
 バルクホルン大尉そして・・・ハルトマン中尉。」

私の後ろ、ドアの外でコツンと音がする。
私の気づかない内に、ドアの向こうで聞き耳を立てていたものがいたようだ。
ドアの向こうの3人目もミーナに感づかれたことに驚いたらしい。

ミーナは「命令」を続ける
「あなた達二人の力を持って、次回そしてこれから訪れるすべての任務を完遂し。
 誰一人欠けることなく、基地に帰還させなさい。それが、エースとしての勤めです。
 失敗は許しません。」

言い終わり、まっすぐに私と、未だドアの向こうに隠れているハルトマンを見つめるミーナの表情は
もはやすっかり隊長に戻っていた。
はきはきとした言葉もつねに、母性と思いやりにあふれ、強く、美しい。
あなたは、そうでなくてはいけない。

「返事は?」
ミーナが確認する。

「了解」
「りょーかい」

深夜の隊長室、私が廊下に出るともうすでにハルトマンは居なかった。
見回りも、もうすぐ終わり。
報告書にチェックを入れて、はやく休むとしよう。
明日からまた、忙しくなる。

終わり

                      3/3
376アキストゼネコ@:2008/12/14(日) 15:16:57 ID:bcZ3Np1x
いらん子のビューリングとウルスラにて5レス。
好きカプなのにあまり見かけないので。
サイテーなネタでごめん。

______________________________


 カツンカツンと、隊舎の廊下に軍靴の音が響く。時刻は日付をまたいだあたり。いつものようにバーで酒をあおったビューリングは、温もった体で冷えた空気の中を突き進む。
 特別なつくりがされた建物は凍てつく冷気を大部分シャットアウトしてくれるが、それも万能とはいえない。北欧スオムスの夜は氷点下など当たり前であり、各ウィッチは何らかの防寒対策をたてねばならなかった。
 規則的な足音がぴたりと止まる。ポケットに手を突っ込んだビューリングはらしくない驚きの表情で固まり、一瞬のち弾かれるように走り出した。
「おいっ―――どうした、ウルスラっ!」
 廊下の角にうずくまっている少女を抱え起こし、ビューリングは耳元で叫ぶ。行き倒れていた少女ウルスラは鼓膜をふるわす大声に顔をしかめ、タバコくさい革ジャケットを引き離そうとして力尽きた。
「…何でもない。ちょっと休んでただけ」
「深夜の廊下でか? それはまた変わったリラックス法だな」
 とつとつと話すウルスラの顔色の悪さを見てとり、ビューリングはあまり刺激しないよう軽く頷く。話すかたわら黒いジャケットを脱ぎ、見るからに寒そうな肩に羽織らせた。ウルスラはまた少し顔をしかめるが、寒かったのは確からしくそれをつき返そうとはしない。
「とりあえず部屋に戻らないか? 風邪でも引くとトモコにどやされるぞ」
 鬼の部隊長を引き合いに出して説得。風邪を引くなど普段の生活がたるんでいるせいだと、自らの乱れた夜の生活を棚に上げて喚き散らすはず。智子のくどくどしさは並じゃないので、隊員の誰しもが自然と体調管理を心がけるようになっていた。
 しかし、ウルスラは無言で首を振る。その頑固な様子から何らかの理由があるのだと察知し、見下ろすビューリングはどうしたものかと溜め息。はぐれものだった彼女はこんな時どうすればいいのかなんて思いつかない。
377アキストゼネコA:2008/12/14(日) 15:19:59 ID:bcZ3Np1x
「…医務室、行こうと思って」
 まさか置き去るわけにもいかず困り果てていると、当のウルスラがぽつり。耳が拾った小さな声にはっとし、ビューリングは上体をかがめて顔を近づけた。
「具合、悪いんだな? いつからだ?」
「…夕食後。でも朝からだるい感じはしてた」
「気づいているなら早く言え! 誰も通りかからなかったらどうするつもりだったんだ!」
 苛立ちを押さえきれずにビューリングは声を荒げる。こんな吹きさらしの廊下に薄い夜着のまま気を失えば命の保障すらかなわない。
「知識では知ってた。だからその時がきたら医務室へ行けばいい…そう思ってた」
「その時? まるで予言者みたいな言い草だな」
 ウルスラが他人事に語るのはいつものことだが、言葉の端々が気にかかったビューリングは眉を上げて茶化した。隠していた持病が悪化したとか、もうすでに手遅れなのではとか、良くない想像ばかり浮かぶ。
「予言じゃない。生物学の本に書いてある。女性は第二次性徴をむかえて思春期になると」
「あーなるほど…全部理解したからちょっと黙ってろ」
 やたらと小難しい言い回しに身構えればなんと目出度い話の暴露、ズキズキする額をかかえてビューリングは壁に手をつく。これはきっと呑みすぎたせいではない。厭世的だった自分がよもやこれほど仲間の言動に揺さぶられるとは。
「医務室には行かなくていい。というか、行くな」
「なぜ? 行かないと装備品をもらえない」
 その時の対処法として記載してあった事と矛盾する。眼鏡の奥の瞳を瞬き、ウルスラは首を捻った。
「なんで予感してたのに準備してないんだと言いたいが…まあいい。私が持ってるからそれを使え」
 ウィッチ隊のメンバーが深夜医務室に駆け込めば基地中大騒ぎになるだろう。その原因もたちどころに噂として流れ、きっと本人以上に隊全体が恥ずかしい思いをするはず。 
 受け答えに脱力しつつ、なんとかビューリングは会話を繋げる。返事を待たずにうずくまった少女の背と膝に両手をそえ、負担にならないようゆっくりと持ち上げた。ウルスラくらいの体格なら使い魔の力を借りずとも抱いて歩ける。
「…あの装備品、汎用がきくの?」
 真面目すぎる問いかけに今度こそ眩暈を感じ、ビューリングは傾いだ体躯のツケを側頭部の強打で支払った。
378アキストゼネコB:2008/12/14(日) 15:21:07 ID:bcZ3Np1x
「どうだ、装着できたか?」
「…たぶん。ごわごわして気持ち悪い」
 ここはビューリングの部屋なのだが、部屋の主は扉の外から声をかけるといったおかしな状況になっている。同性でも微妙にデリケートな問題なので直接どうこうできず、ビューリングはウルスラの言葉を信じるよりなかった。
「まあ、じきに慣れるさ…入るぞ」
 一応声をかけてから自室の扉を押し開けるビューリング。
 部屋の中央付近では、なんだか落ち着かない顔をしたウルスラが立ちつくしていた。その頬は一目でわかるほど蒼ざめている。
「顔色が悪いな。痛むのか?」
「下腹部が、少し」
「吐き気や頭痛は?」
「頭はちょっと痛い、気がする」
 書物で得た知識はあれど我が身に降りかかれば平静ではいられないのだろう。問われるまま素直に己の症状を伝えたウルスラは、頼りなさげな表情でぎゅっと拳を握った。戸惑う心理を理解したビューリングは、胸くらいの位置にある頭に手を置き薄い色の髪をかき回す。
「個人差はあるが、それが普通だ。腰を冷やさないようにして休んでいれば問題ない」
「私のベッド、使えない」
「そうか……なら、ここで休め。タバコくさいのは我慢しろ」
 顔をしかめられる前に言い放つ。大体の事情を汲み取ったビューリングは部屋に一つあるベッドを指し示した。明日起きたらまず汚れたシーツのクリーニングに向かわねばなるまい。
「一緒に、寝るの?」
「勿論そうだ。おまえは嫌なのか?」
 床に寝ろとでも言うのかと後頭部をがりがり。そんな事をすればビューリングこそ医務室送りになるだろう。
 鎮座するベッドと腕組みして立つビューリングを交互に見やり、ウルスラは小さな口を開く。
「私、ノーマル…」
 またもや襲いきた眩暈に抗いきれず、ビューリングは部屋の壁で盛大に後頭部を打ちつけた。
379アキストゼネコC:2008/12/14(日) 15:24:46 ID:bcZ3Np1x
 室内灯を落とした部屋の中。
 沈黙が支配してから15分ほどたったところで、ベッドに並んだ片方がもぞりと動く。月明かりに身を起こした影は小さな寝息の源を覗き込み、フッと僅かな笑いをもらした。
 手を伸ばして華奢なフレームに指をかけ、そっと抜き取る。手近なサイドボードに無造作かつ静かにおいて身を横たえた。
「うっ…ん」
 微かな呻き声。泥のような眠りの中にあっても体が訴える痛みに悩まされているらしい。
 泰然として浮世離れしているウルスラが弱っている姿をさらす事は珍しく、ビューリングは不思議な感情に突き動かされて隣との距離をつめた。
「むぅ…」
 ヘビースモーカー本人とその寝具に囲まれ、顔をしかめたウルスラが唸る。ビューリングは構わずに背中から抱えるようにし、自由になる手で痛みの発生源をゆっくりと撫でさすった。
 腰周りの冷えが解消するにつれ、ブランケットを握り締める両手から段々と力が抜けていく。
 穏やかに吸ってはいてを繰り返すさまにホッと一息。ゆるゆるとさする手はそのままに、ビューリングは己の腕にすっぽり抱えた少女へ思いを馳せた。

 ウィッチ適正があったがため戦場に送られ、次々戦果をあげる双子の姉に複雑な愛憎と対抗意識を持つカールスラントのいらん子。こんな事すらまだ未経験の、世界が平和だったなら家族に祝われているはずの、そんな幼い子供なのだ彼女は。
 憂いのかたまりを口から吐き出すと、巻き起こった風に首をすくめたウルスラがのそのそと温かい懐へ。ビューリングはこの体勢をどうしたものかと思案した。下手に動いてはせっかくの安眠を妨げるし、腰だってまた冷えるかもしれない。
 寒い夜は使い魔であるダックスフントを呼び出し抱いて眠る。これはその代わりなのだと思えばいい。やましい事は何もない、だから別段気にする必要などない、そう自分に言い聞かせて目を閉じた。
380アキストゼネコD:2008/12/14(日) 15:26:13 ID:bcZ3Np1x
 夜が明けた頃、とある部屋からいつも怒号と乱痴気騒ぎ。それはもうカウハバ基地の毎朝の光景と化している。
 しばしの時が過ぎ、廊下をバタバタと移動する複数の足音。そのうちの一つである陽気なステップは、立ち止まったドアに対し軽快なノックを刻む。
「は〜いっ、ぐっもーにん! 早朝訓練するから全員早く起きろってトモコが喚いてますねー」
 躊躇なくドアを押し開けずかずか歩を進めたオヘアは、こんもりと盛り上がったブランケットをあらよっと剥ぎ取る。バッファローを誘うみたいにひらひら掲げる両手が止まり、おしゃべり好きなテキサスっ子は口をあんぐり。
「ねえキャサリン少尉〜…ウルスラ曹長が部屋にいないんですけど」
「ウルスラならここにいるねー」
 開いたドアからおどおどした足取りで近づき、エルマ中尉は驚愕の表情で固まった。
 冷たい朝の空気にさらされベッドで寄り添う二人が身震い。先に目を開けたビューリングは凝視してくる二組の視線に気づき跳ね起きた。
「なっなんだ、お前ら―――ここで何をしているっ?!」
「何があったのか聞きたいのはこっちよー。オー、どこか怪我してるですか?」
 珍しく狼狽したビューリングに対し、常ならぬ観察力でオヘアは白いシーツを指差す。それを辿ったビューリングは頭を抱えた。ウルスラの『たぶん』を信用するんじゃなかったと。
 地獄のような静寂を破ったのは眼鏡を探してあちこちを探るウルスラ。
「怪我じゃない。私が女になった印」
「おっおおお女になったですってええぇっ! ウルスラ曹長が私を追い抜かして一足飛びにぃィーーーっ!」
 隊長・ハルカ・准尉だけと安心していたら、隊の侵略は密かに進んでいた。卒倒しそうな勢いでエルマ中尉は金切り声を上げる。
「「 …………………… 」」
「ちょ、ちょっと待て早とちりするな! これは、その…」
 抗命罪による冷たい視線には慣れっこだが、淫行罪となるとまた話は別だ。いわれなき無言の非難を向けられ、ビューリングは畜生を見るような仲間たちの目に慄く。まごついているうちに事態は取り返しのつかない深みへと。
「ビューリング少尉がウルスラ曹長を女に……乱れてます、いくら何でも乱れすぎですっ。わああぁぁ〜〜〜〜っ!」
「ユーもそっちの人だったねー…まさか10歳の幼女に手を出すとは。あーこらこらエルマ中尉、待つねー」
 追いすがる手も空しくエルマとオヘアは部屋を駆け出していく。脱力したビューリングは重力にまかせてベッドに崩れ落ちた。戦死した友人に顔向けできない罪状で銃殺刑になったらを想像すると頭が痛い。両手を忙しく動かしているウルスラを見上げ、恨めしげに言い放った。
「ウルスラ、お前も誤解を解く努力を、だな…」
「眼鏡、ない」
 こちらに向けて高く上がった尻が丸見え。眼鏡より下着を替えろと言いたくなったが、年上の忍耐を総動員して我慢する。一つ大きな溜め息をつき、起き上がったビューリングはサイドボードに手を伸ばした。
381名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 15:27:25 ID:bcZ3Np1x
慣れないもので時間かかっちゃいました
投下予定の人、ごめんねー
382名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 15:34:37 ID:DyAdoFd6
「ウィッチとは魔女のことだから、男は含まれない」と馬鹿なこと言ってるやつがいる。
本来は男も含まれるよ。アニメのエル・カザドにもいたから間違いないはず。
男も含まれることを証明して黙らせてやろうぜw

http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1226394542/
383名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 15:35:30 ID:DyAdoFd6
>>382
「少年」という言葉にはもともとは女も含まれるからな。
それと同じような例だね。
384名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 15:56:27 ID:HA/hvTiB
>>381

と言っても、まだ読んでないんだよな…
上のほうから読みきらないと
385名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 15:58:58 ID:S/WkNQWZ
>>376
ウルスラの「女になった」にフイタ。
これでビューリングさんもはれて
智子さんの仲間に……じゃなくて
えらい誤解になってしまったな。
それにしてもなんだかんだ言ってビューリングは優しいな。
GJ!面白かったよ。
386名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 16:04:11 ID:hX3TxmGw
ビューリングはほんと苦労人だなあ・・・w
ウルスラの言い回しに吹くw
387名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 16:36:30 ID:gLfXmsyn
>>380
GJ!
面倒見のよさゆえに振り回されるビューリングさんワロタw
オヘアといい、ウルスラがらみのCPは面白い
388続・本音と建前・第五話1/5 j4ntaz3y:2008/12/14(日) 16:49:34 ID:pC1XKNQU
>>287
うは、支援してもらえた!感涙 ところで支援のほうが本編よりクオリティ高いという衝撃の事実
もうこの後のプロット渡すんであとあなたが書いて(ry
当事者以外から見た例の三人のようすがなんともうまいこと書かれていて三人の視点に立っている自分としては
とても新鮮な気持ちになりました。こちらこそまじ感謝
しかしあんな投げっぱなしのエイラニャからここまでひろげてもらえるとは…正直ものっそいやりにくかったろうと
思います。ほんとすげえー
エイラとマダオのゲルトはへたれ同盟組むべき。でサーニャとエーリカは乙女会をひらくべき

ところで最近いらん子話がふえてきてうれしい。オヘアウルスラもビューリングウルスラもだいすきだ

じゃあ前スレ>>474のつづき投下します。エーリカとルッキーニ。まえにそろそろルッキーニの出番ですね的な
レスもらってちょ心読まれてるwと真剣にびびった


 あんまりとあっさりドアがしめられたものだから、エーリカはしばらくそれをじっと見つめてしまった。

(…ほんとにおいてった)

 用があると、まるでとってつけたようなことばでもってシャーロットはどこかへいってしまった。ころりとからだのむき
をかえ、窓のある壁のほうへと視線をうつす。カーテンのかかったそのむこうには、たぶん星が見える。
 エーリカは、自分が根からの甘えたがりであると理解していた。その相手はいつもバルクホルンだったし、稀に
ミーナに過剰なほどにすりよっていくこともあった。ずっとむかしだって、双子の妹のウルスラがまるで興味のない
ような顔をしながらいつも彼女のそばにいた。エーリカには、まわりの人間に世話をやかせる才能があるのだ。それ
が悪いことであるとは思わない、もしそれが本当にひとに迷惑をかけているならエーリカはいまひとりぼっちになって
いるに決まっていた。みんなきっと、わたしの面倒くさい世話をするのがすきなんだ。ベッドのうえで一所懸命カーテン
に手をのばすけれど届かない。すこし身をおこせばいいだけの話なのに、それすらもだれかにやってほしいくらい
だった。

(……シャーリーのばか)

 トゥルーデもばか。でも本当にばかなのはわたし。
 かちゃと、うしろのほうで音がした。扉のあく音。さっきでていったばかりのシャーロットでないことはわかっている。
首だけをまわして登場した人物を認めると、その子は扉から顔だけをはみださせていた。

「あれ、ハルトマン中尉だ」

 ルッキーニがぱちぱちと瞬きをする。シャーリーはー?それからそんな幼い声をあげ、軽い足どりでベッドの脇まで
やってくる。再度あおむけの体勢にもどってベッドに手をついてのぞきこんでくる視線をうけた。エーリカがシャーロット
となかよしごっこをはじめたばかりのころは思いきりの敵意をむけてきていたくせに、いまじゃもうすっかりとなついて
くる。こどもは適応能力が高い。そのうちでもルッキーニは特にだろうとエーリカは思っていた。

「シャーリーはどっかいっちゃったよ。わたしのことほっといて」
「そうなの? ふうん、つまんないね」
「うん、つまんない」

 ぴょんとベッドにとびのり、ルッキーニがエーリカをじっと見おろす。シャーリーのかわりに相手してほしいってか。
だけどごめんね、そんな気分じゃないの。おいだすまではいかなくても、エーリカはやんわりと拒むように寝返りを
うとうとした、しかし先手を打ったのはルッキーニだった。
389続・本音と建前・第五話2/5 j4ntaz3y:2008/12/14(日) 16:50:41 ID:pC1XKNQU
「げんきないね」
「……そう?」
「うん」

 あんまり無垢な問いかけだったから、無視する暇もなかった。思わずたずねかえして、またあっさりと頷かれる。
エーリカは、自分をうえから見つめる瞳をながめた。心配しているよ、と全力で語っている視線に、エーリカはひるんで
しまう。それを見かえす気になれず、すこし目線をずらして天井にピントをあわせる。

「ルッキーニは、きょうも元気だねえ」
「あたし? あたしはげんきだよ、そうじゃないとつまんないもん」

 きらきらとした表情でルッキーニが笑い、視界のはしにうつるそれがあまりにまぶしくて、まるで本当の光をさえぎる
ように目を細めた。こんなくさくさした気分のときにそんなものを見せられては、いまにもからだが砂になってくずれて
しまうのではないかと思われた。ルッキーニはこどもで、とてもすなおないい子だ。そして、とエーリカは思う。わたしは
こどもなのに、すなおじゃなくていやな子。
 シャーリーどこいったのかな。いつまでまってたらもどってくるかな。ねえねえ、きょうはここで寝ていいと思う? 
おちつきなく、少女が次々と問いかけをほうりなげてくる。だけれどエーリカはひとつとして答えをかえさずに、そうねえ
とかどうかなあとかと誤魔化しつづけることしかしない。だってどれもこれも、彼女自身がしりたいことなのだ。

「……ルッキーニはほんとにシャーリーがだいすきだね」

 今度はエーリカが、ふとした問いかけを口にする。するとルッキーニはまたなにか言いかけていた口をはたりと
とめて、それから件のかがやかしい笑顔を浮かべてエーリカの目を再びくらませる。

「うん、シャーリーだいすき!」

 こくりとおおきく頷いて、心底うれしそうににこにこと歯を見せる。かわいい、とエーリカは思った。しかしそのつぎ
にはふと、急な記憶が呼び覚まされる。

(トゥルーデだいすき)

 思わずかたまってしまった。上方のルッキーニは、だってシャーリーはねえ、とさも母親の自慢をするかのように
たのしげに語りはじめていたが、エーリカはそれをきいている場合ではなかった。ああ、言ったことがあるかもしれ
ない、いやある、絶対にある。とおいきえかけた思い出だった、覚えのある台詞。はるかむかしになにかの拍子に、
ぽんと思わず口からでたことば。あのときのエーリカは正真正銘のこどもだった。ふたつ年上のあのひともあのころ
はまだこどもだったはずで、それなのにとてもとても立派なひとに見えていた。

(……うわあ、はずかしいの、うわ、うわあ…)

 徐々にほほが赤くなっていく感覚にげんなりとしてしまう。こどもというのは無敵だ。ルッキーニ然り、過去の自分
然り。いまのエーリカでは絶対に言えそうにないようなことをこんなに、あんなにさらりと。あのころは言うだけで満足
して、そのときのあのひとの反応なんて気にもしていなかった、なんてもったいないことをしてしまったのだろう。だって、
むかしからずっとかわらない生真面目で口うるさいバルクホルンに、自分だってかわっていないはずのエーリカは、
もうすなおになれそうにない。すきだと言われたときの彼女の反応を、エーリカはもうずっと見れる気がしないのだ。
そのくせ彼女には、いろいろなことを言ってほしいと望むなんてなんていやな子なんだろう。

(だって、そんなの)

 だってしょうがないんだ、と、なんどもこころのなかで弁明する。そう、エーリカは自分が根からの甘えたがりである
と理解していた。こんなふうにしたのは甘えさせっぱなしのバルクホルンが悪いのだと、こちらは半分くらいは本気の
気持ちで考えながら、言いわけだということもわかっていた。だって言ってほしいんです。わたしはあのひとから、
いろんなことばがほしいんです。シャーロットにもしそう言ったら、わがままでおまえらしいよと笑われるだろうか。
390続・本音と建前・第五話3/5 j4ntaz3y:2008/12/14(日) 16:51:55 ID:pC1XKNQU
「……笑い話なんかじゃないやい」
「え?」

 つい声にだしてつぶやくと、まだうれしそうにシャーロットの魅力について語っていたルッキーニがきょとんと瞬きを
した。それを見あげ、やっと身を起こす。やさしいだの頭をなでてくれるだの力持ちで肩車が高くてだいすきだの
おっぱいがおっきいのも忘れちゃいけないだのと、無邪気な笑顔がならべたてていた素敵な彼女の側面に、エーリカ
はふうんと鼻をならした。

「こっちだって、たまにならやさしいんだぞ。頭はあんまりなでてくれないけど、力は絶対こっちの勝ち。おっぱいだって
色と張りなら負けないね」

 それからこどもと本気で対抗するように、一所懸命ほめことばをならべてみる。ルッキーニは思ったとおりにきょとん
とした表情をくずさない。エーリカが急になにを言いだしたのかと、だれのことを言っているのかと心底ふしぎそうに
首をかしげている。こっちだって首をかしげたい気持ちだ。なんてばかなことを言っているのかしら。

「それに、ああ見えてけっこうすぐにすねるんだよ、あとすぐおどおどするし。正直いらっとするけど、ちょっとかわいい
よね」
「ねえねえ、だれの話してるの?」
「さあね、それはひみつー」

 ぽすんとシーツに背中をおとしなおしてからふふんと笑うと、ぶうとほほをふくらませたルッキーニもそれを真似て
ベッドに寝そべる。うつぶせてほおづえをたててずるいよとやはり見おろされ、エーリカはすこしだけ複雑な気分に
なる。ねえ、さっき、シャーリーのことだいすきって言ったけど。シャーロットの名をだしなおすと、ルッキーニはぴくり
と反応する。いまは尻尾も耳もはえていないのに、それらがそわそわとかわいくゆれているようすが見えるようだった。

「……そういうのね、いまのうちだけにしといたほうがいいよ。へたにひきずったら、つかれるだけだからさ」

 頭のうしろで腕をくんで枕にして、本気のアドバイスをしてあげる。このわたしがこんなに親身になってあげてるん
だから、ちゃんときいときなよ。過去の自分にも言ってやりたいことばをできるだけ丁寧にちいさなルッキーニに
ささげた。だけれど、やはり少女はよくわからないと言いたげな顔でエーリカを見つめている。わかっていたこと
だったが、すこしだけじれったくなってしまった。それでもこれ以上は言ってやる気になれず、はーあ、とあきれた
ため息をついてみせる。

「しっかも、相手があのろくでもないシャーリーじゃねえ」
「ろくでもない? シャーリーってろくでもないの?」
「うん、かなり。ってか意味わかってるかー?」
「わかんない」
「ちぇ。かわいいなこのやろう」

 ちょい、となんとなく鼻をつまんでちょっかいをかけると、ルッキーニはむっとしたように唇をひきしめてぺちとその
手をはらう。あのね、シャーリーにもいっつも鼻つままれるんだ、そんなにたのしいのかな。それからそんなことを
たずねてくるので、エーリカはのろけでもきいている気分になってうんざりとする。

「そりゃあ、ルッキーニがかわいいからじゃない?」
「えー。でもたまに邪魔だよ」
「あはは。それ言ってやりなよ。どんな反応したかあとで教えてね」

 ルッキーニはかわいいからね、とかの女がすこしまえに語っていたのをそのまま教えてあげた。彼女は、そばに
おいておくので精一杯なのだと、まるでそれだけで満足そうだった。ろくでもないなんてうそだよ、とエーリカは思う。
それからふとからだをくるりとまわして、ルッキーニのようにうつぶせ、シーツに顔をうずめた。シャーロットのにおい
が鼻をかすめる。バルクホルンのそれとも、自分のものともちがう。先程、ここに訪れていちばんにベッドに直行した
のはまちがいだったとエーリカは思っていた。彼女のにおいは、ひとに気をぬけさせる効果があった。言い方を
かえれば、まるで安堵感をあたえてくれるような。そのおかげで思わずおさまっていた涙腺がまたゆるみかけ、
ばかのようになさけない問いかけがこぼれてしまった。
391続・本音と建前・第五話4/5 j4ntaz3y:2008/12/14(日) 16:53:00 ID:pC1XKNQU
(……そうだよ、シャーリーは、なんだかんだでやさしいんだ)

 だから、わたしの絶好の獲物になっちゃうんだよ。いつもいつも自分を甘やかしてくれるひとをさがして、そのひと
に迷惑をかけているとしっていてもやめられない。エーリカは、本当はこころの奥底では、みんなが自分の面倒くさい
世話をするのがすきなのだというわけでなく、ただ単にやさしいひとにばかり近づいていっているだけなのだとしって
いた。バルクホルンだって例外ではない。いつもつれない態度だけれど、先程はたまにはと表現してしまったけれど、
彼女は常にエーリカにやさしかった。ただし彼女のやり方は非常にわかりにくく、つまりは、エーリカから目をはなそう
としないだけなのだ。いつも自分の視界にはいるところにむかしなじみの少女をおきたがっていたし、エーリカだって
うれしかったからそれに反抗なんてしなかった。だから、いつも彼女のあとをついて歩いた。
 エーリカはぎゅっと目をつむる。それを先にやぶったのは自分なのだと、エーリカはかなしい事実を自覚していた。
そうしたら、こんなに簡単にばらばらになった。バルクホルンは、まるでお役御免とばかりにエーリカからはなれて
いってしまうのだ。うぬぼれだったんだなと思う。バルクホルンだけは確実に、自分の世話をきらいじゃないと思って
いると信じこんでいたのに。でも現実は、面倒くさかったエーリカのことはシャーロットにすっかりおしつけてしまい、
それでまったく問題ないのだとバルクホルンは平気な顔をしていた。ばちがあたったのだ。バルクホルンに明確な
やさしさを見せてほしくて、そのためにシャーロットに甘えていた。それはひょっとしなくても、どちらのひとに対しても、
底抜けに失礼な行為だったのだ。

「……」

 ふわり、と、前髪になにかがふれる。はっとしてまぶたをかすかにもちあげれば、ルッキーニの顔がすぐそばに
あってぎくりとした。どうしたの、と、先程といっしょの心配しているようすをかくす気もない瞳がゆれていて、エーリカは、
ルッキーニはシャーロットに似ていると思った。頭をなでてくれるのだと言っていた。シャーロットはきっと、ルッキーニ
を相手にしたときはなんだかんだなんてすっとばして、はなから全身全霊をかけてやさしくしてやるのだ。この子の
さわり方は、そのシャーロットに似ていた。

(ほんとの親子みたい)

 しまったな、不覚にも癒されちゃったじゃないか。エーリカは再度目をつむり、ルッキーニのやさしいふれ方に夢中
になる。こどもは無敵だ。なにをするにもすなおに思ったとおりのことをして、そしてそれは絶対に、悪い風にはころ
がっていかない。むかしは自分も、そんなこどもだったのだろうか。それとも、バルクホルンにこども扱いされている
とおり、いまもまだそんな素敵な存在でいられているのだろうか。

「……ルッキーニ」
「え?」

 急に名を呼べば額にふれていた手がとまる。目をあけてとなりのルッキーニを手招く。すると少女はなんだろうと
いう顔で、ひじをたてて上半身をささえていたのをくずして本格的にエーリカの横に寝そべった。ちいさなベッドに
ちいさな少女がふたりならび、シーツのうえはすっかりと満員になっている。
392続・本音と建前・第五話5/5 j4ntaz3y:2008/12/14(日) 16:53:52 ID:pC1XKNQU
「シャーリーおそいからさ、さきに寝ちゃおうぜ」
「えー、でもそしたらシャーリーの寝るとこなくなっちゃうよ」
「まあね、だってわたしたちを待たせるのが悪いんだよ。ね、寝る場所とられて往生してるシャーリーって、想像した
だけでおもしろいよ」

 いたずらめいた口調でささやくと、ルッキーニの琴線に見事にふれることができた。ほんとだね、おもしろいね。
わくわくしたようすでルッキーニも声をひそめて、いそいそと本格的に眠る準備をはじめる。エーリカはとなりに
すっかりとおさまった、常からバルクホルンに体温が高いと評されている自分よりももっとあたたかい女の子の
頭をシャーロットの真似をしてなでる。ルッキーニはすこしだけふしぎそうに瞬きをしたけれど、すぐに破顔して
おやすみとつぶやいた。それから二秒後にはかわいらしい寝息がきこえてきて、エーリカはらしからぬやわらかい
笑みをうかべてしまった。だけれどすぐにまた、思考が暗くおちていきそうになってあわてて頭をふる。

(……うん、大丈夫)

 だって、こんなちいさな子とふたりで、こんなにささやかないたずらをするのがたのしいのだ。エーリカは、自分が
まだこどもなんだと思いこむことにする。だから、思うようにやりたいようにやればいい、だってこどもは、思ったとおり
のことをすれば、きっと物事はうまくいってしまうにちがいないのだ。

(大丈夫、だいじょうぶ……)

 呪文のように、なんども自分に言いきかせる。だいじょうぶだよ、なんとかなるよ、だってトゥルーデが、わたしを
こどもみたいに見てるんだ、だからまちがいないんだよ。きゅっと目をとじて、エーリカは一所懸命、すぐに眠りに
おちてしまえるように努力した。


つづく

不安のあまりセクシーになるという当初の目的をすっかり失念するエーリカなのであった
393名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 17:16:04 ID:hX3TxmGw
16歳でお化けの真似をしたり12歳と同じ目線になるのを許されるのはハルトマンだけ!
でも前回の修羅場考えると大丈夫・・・ってのが死亡フラグにしか見えないなあw
次回も超楽しみにしてます

関係あるようなないような話だけど精神的に落ち込んだり変調きたすと最悪ストライカー起動しなくなったりとかするのかな
魔女の箒だけに
394名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 18:09:51 ID:t+22kVmC
やだこのエーリカ可愛すぎるwww GJ!
ルッキーニと完全タメっぽくなってるのもいい
続き待ってますね

>>393
ありそう。そういう描写があったかどうかは良く覚えてないけど
原動力は本人の魔力だった気がするし、精神的なものの影響受けてもおかしくはないと思う
あやふやですまんが
395名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 18:57:38 ID:8J5JK+IV
投下多すぎて携帯からじゃおいきれない…早く帰宅したいものだ

基地探訪だな。好きな人と一緒にいると魔力が強くなるとか

と言うことはネウロイの撃墜数半端ないエーゲルは半端なく仲が良いと
そんな自慢をエイラやらペリーヌやらリーネやらにするエーリカをだれかひとつ
396名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 19:06:37 ID:CMq/ql4A
キキ=サーニャ、トンボ=エイラのキャストであの名作映画を是非。
397名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 19:08:57 ID:ULVl95g7
ハル=ミーナ、バロン=もっさんであの映画も是非
398滝川浜田:2008/12/14(日) 20:29:19 ID:7v8Nls7f
みなさんこんばんは。

今日は続き……ではなく、完全にノリで書いた変なSS投下します。
一応シャッキーニ(のつもり)ですが、ルッキーニがほとんど出てこないという悪夢。

あといろいろ壊れてます。
399滝川浜田 『禁欲ウサギ』:2008/12/14(日) 20:32:13 ID:7v8Nls7f

シャーリーさんの様子がおかしい。

「………ぅうぁ〜〜〜〜〜〜〜〜………」
「ど、どうしたんですか、シャーリーさん…!目が死んでますよ…?」
「…お前誰…?」
「私ですよっ…!宮藤芳佳ですっ!」
「ああ、芳佳か…で、なに?」
「いや、尋常無いくらいフラフラしてるんで、どうかしたのかな、と」
「聞いてくれるか、リーネ」
「…私リーネちゃんじゃないです。宮藤芳佳です」
「実はな…」

―――――――――――――――――――

二日前

「ねえ、シャーリー」
「ん、なんだルッキーニ」
「あたし達毎日えっちしてるよね」
「ああ、そうだな」
「で、提案なんだけど…」


―――――――――――――――――――

「で、お互いを見つめ直す為にしばらく禁欲生活、と」
「ああ、そうなんだ、ペリーヌ」
「…私は宮藤芳佳です。あと私はペリーヌさんじゃないです」
「もうアレから二日なんだ…もうあたしいい加減限界だよ…」
「シャーリーさん…二日でその状態はちょっと早過ぎる気がします」
「頭はフラフラするし、腹も減らないし、頭はフラフラするし…なあ、宮藤」
「なんですか、シャーリーさん」
「お前、リーネとラブラブなんだろ?」
「えっ…その…まあ…はい…//////」
「もしもだぞ。
もしも、いきなりリーネからしばらくエッチ禁止だなんて言われたらどうするよ」
400滝川浜田 『禁欲ウサギ』:2008/12/14(日) 20:34:40 ID:7v8Nls7f
「…それはかなり嫌です…」
「だろ?」
「じゃあここはルッキーニちゃんに直談判してみてはどうですか?」
「…アイツ結構頑固なんだよ…一度言った事はなかなか曲げないからさ」
「そうですか……」
「………」
「………」
「…んぁぁああああああああああああああああああああああああ――――――――――――――――――――っ!!!!!
あたしおかしくなりそうだぁぁぁぁ!」
「シャ、シャーリーさん、落ち着いてくださいっ!」
「あああルッキーニの○○○を×××したいぃぃぃ!ルッキーニに♀♀♀されたぁぁぁぁい!!!!!
もう禁欲生活なんかやってられるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「シャーリーさん、本当に落ち着いてください!目がおかしいですっ!」
「宮藤ぃっ!」
「な、なんですか、シャーリーさん」

すると、シャーリーさんは私の肩を力強く掴んできた。

「もうお前でもいい!宮藤ヤらせろ!」
「ええええええええっ!?
それはさすがにマズいですよシャーリーさん!
シャーリーさんにはルッキーニちゃんがいるし、私にはリーネちゃんがいるんですよ!?」
「バレなきゃオールオッケーだ!」
「全然オールオッケーじゃないですよ!
嫌です!私昼ドラの世界に片足突っ込むのだけは嫌ですっ!」
401滝川浜田 『禁欲ウサギ』:2008/12/14(日) 20:36:22 ID:7v8Nls7f
「…意外とクセになるぞ…?」
「なんですかその悪魔の囁き!
っていうかさも経験した様な言い方!」
「堅物…天国(昼ドラの世界)に行こうか…?」
「そんな爛れた天国行きたくありません!あと私は宮藤芳佳です!」
「…………シャーリィィィ………」

すると、私達の前にこれまたフラフラしているルッキーニちゃんが現れた。

「……ルッキーニ…どうしたんだよ、お前目の下にクマが出来てるぞ」
「シャーリーこそどうしたの…芳佳にマウントポジションなんかとっちゃって…」
「これはアレだよ…昼ドラごっこだよ…なあ、宮藤…?」
「……半分本気だったじゃないですか…」
「それよりどうしたんだよ…ルッキーニ」
「シャーリー………あたしもう禁欲生活イヤ……」
「…イヤってお前、お前がエッチしないって言い出したんだろ」
「あの……シャーリー…それは…撤回の方向で…」
「…そうか………」
「…………」

妙な間があったあと。

「……ルッキーニ」
「なに、シャーリー」
「今ここでお前が禁欲宣言を撤回したら、24時間耐久でベッドの上にいる事になるぞ…」
「望むところだよ、シャーリー…」

その時、私はシャーリーさんから“ブチッ”という何かが切れる音を聞いた。

「……ルッキーニィィィィィィ―――――――――――!!!!」
「シャーリィィィィィィ!!!!」
「お姫様だっこであたしの部屋へフルスピードだぁぁぁぁ!」
「きゃああああシャーリーったら大胆だよぉ!!
でもそんな所が好きぃぃぃ!!!」
「もう禁欲なんかするかぁぁぁぁ!!!!!!アハハハハハハ!!!!!」

ダダダダダダダダダダ……

私は疾風のごとく過ぎ去って行くシャーリーさん達を呆然とした顔で見送る。

「………なんだったんだろう……服は半分脱がされるし…………
……リーネちゃんに慰めて貰おうかな…」

それから24時間以上もの間、シャーリーさんとルッキーニちゃんは本当に部屋から出てこなかったとさ。

END

402滝川浜田:2008/12/14(日) 20:40:00 ID:7v8Nls7f

以上です。
書いた後にこんな作品を投下して激しく後悔。
まあでも、シリアスな話の箸休めくらいに思っといてください。
そんなシリアスは次回から再開です。

そしてみんなGJ!!
ここは本当に投下量がハンパないぜ!

…というわけで、爺はここら辺で…
403名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 21:07:45 ID:36ECWdNz
>>399
師匠、最高!!
404名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 21:12:27 ID:Bn3dkNOw
>>402
乙です!
いろいろ振り切れてるシャーリー最高ww
…同じベッドに寝ているのに手を出せないエイラさんの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいw
405名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 21:46:21 ID:izlduxcf
こんばんは。mxTTnzhmでございます。

>>371 gf1xJeg9様
何という僥倖! GJ!
私のSSを元に新たに書いて下さるとは、大変嬉しく、光栄です。
今後もどうか、どんどんやって下さいお願いします。私も楽しみです。ニヤニヤします。

>>402御大
GJ! こう言うイケイケな感じ、好きです。
もっとお願いします。
それにしてもこのシャーリー、ノリノリである(世界まる見え風


さて、今回は……
>>349-357「interval」の続編と言うかこれこそインターバル、
芳佳の独白で短いのをひとつ書いてみました。
考えてみれば今まで芳佳視点は書いてなかったなあ……と思って書いた次第です。
「smile」どうぞ。
406smile 01/02:2008/12/14(日) 21:47:34 ID:izlduxcf
リーネちゃん、大丈夫? 昨日からずっと私にしがみついたままだけど……。
朝のミーティングの時も、私の手を握ったままで。
終わったら「もう帰ろうよ」ってリーネちゃんの部屋に連れ込まれて。
今リーネちゃん、ベッドの中で一応、私も一緒……。
午後から訓練だけど大丈夫? ……大丈夫じゃないよね。あとで坂本さんに言って、今日は休ませてもらおうよ。
……え? 少佐の事だから「訓練すれば直る」とか言い出すって? ……確かにありえるよね。
坂本さん、怖いもの知らずだからね。どうしよう。
そうだ、ミーナ中佐に言おうよ。そうすればきっと分かってくれるよ。多分。

そういえばミーティングのあと、シャーリーさん達が昨日の事、話してたよね。
まさかみんなして地下に行くつもりじゃないよね?
……思い出しちゃったって? ああ、ゴメン、そんなつもりじゃ。
落ち着いて。私がついてるから。安心して。
ほら。
こうやって抱きしめて、お互いの温かさを感じると、落ち着くんだよ。
リーネちゃんが前に教えてくれたんだよ。こうやって、温かさを肌で感じて、呼吸を感じて……
不思議と力が湧いてくるって。
リーネちゃん、あったかい。いい匂い……。
ね? リーネちゃんの言う通り。少し落ち着いて来たでしょ?
大丈夫。私がついてるから。リーネちゃん、絶対に離さないよ。
今までふたりで頑張って来たんだし、どんな事あっても、二人一緒なら頑張れるよ。
ネウロイだってたくさんやっつけたし、訓練もがんばってきたし。
そう。
私達ふたりなら、頑張れるよ。
だから、怖がらないで。大丈夫だから。

リーネちゃん、少し落ち着いた? まだ少し顔色悪いけど、さっきよりは良くなってるよ。
何か欲しいものない? 特に? ……そうだ、ホットミルクなんてどう?
温かいもの飲むと少し落ち着くって、ここに来て聞いたんだ。
私が作ってきてあげるから、ちょっと待ってて。……行かないでって?
台所まで行かないと、持って来れないよ。
じゃあ、一緒に行こう? 台所までなら、大丈夫だよね?

リーネちゃん、そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。こんな姿見られたらみんなに誤解されちゃうよ。
それにほら、まだ午前中だし、お化けの出る時間じゃないから。
……ごめんね。そう言うつもりじゃなかったんだけど。

はい、出来たよ。沸騰させるとおいしくないって言うから、こんな感じかな。
お砂糖少し入れて、甘くしてみたんだけど、どう?
良かった。リーネちゃん、顔色良くなったよ。もう大丈夫だね。
みんなはって? 何処行ったんだろうね。訓練かな。
あ……見て見て。誰か飛んでるよ。あれは……バルクホルンさんとハルトマンさんだ。
凄いよね。さすがエースだよね。あの飛び方見るたびに感心しちゃうよ。
私もあんな風に飛べたらなあって。
……私もすごいって? 何処が? そんなぁ、大したことないよ。
私の取り柄って、治癒魔法くらいしか無いし。
リーネちゃんの方が凄いよ。ものすごく遠くから弾当てられるし、横で見てていつも凄いなって思うよ。
この前だって……。
もう部屋戻るの? うん、良いけど。
407smile 02/02:2008/12/14(日) 21:48:26 ID:izlduxcf
別に謝らなくてもいいよ。誰にだって苦手なもの有るし。
ほら、例えばバルクホルンさんって機械音痴っぽいし、
坂本さんは料理が……ほら、リーネちゃんもずっと横にいたから分かるでしょ?
私? 何だろう。やっぱり怖いの苦手だな。あと、本当は戦いたくない。それも苦手のうちになるのかな。
人を守る、私に出来るから、頑張ってるけど……本当は好きじゃないんだ。
でも、こうしてリーネちゃんと一緒に居ると楽しいし。リーネちゃんと知り合えて、本当に良かったと思うよ。
嘘は言わないよ。リーネちゃんと一緒。リーネちゃんの笑顔で、私もなんか元気になれるんだ。
なんか、二人で一緒に寝てると、幸せだよね。リーネちゃんの匂い……。リーネちゃんの髪……。
べ、別にヘンなキモチになった訳じゃないよ。ただ、リーネちゃんの事……ありがとう。
私もリーネちゃんの事、好きだから。
だから、もう少し、こうしていよう?
私、眠くなってきた……リーネちゃんも? 少し、一緒に寝よう?
二人一緒なら、きっと怖い夢なんて見ないよ。夢でも、一緒だよ。リーネちゃん。

end

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以上です。

スレがもう400KB超えとは、早いですね。
GJがホント追いつかない。
皆様GJです。

ではまた〜。
408名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 21:49:26 ID:O6zQPl4V
KB報告人が426KB超えたことを報告します。

あと74KBでスレが埋まります。
409名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 22:03:45 ID:5gHayDj4
まだ400レスだというのになんということだ!
携帯とも結構張り付いてるのにそれでもGJが追いつかないぜ
410名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 22:16:11 ID:JRyapkvv
>>407
ありがとう。
寒い夜に心が温かくなりました。
411名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 22:17:53 ID:B0nxM3fg
>>405
GJです!
やはりこの二人はベタベタくっ付いてるのが似合いますね
412名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 22:22:30 ID:Bn3dkNOw
>>407
ガクブルするリーネかわいいw GJ!
しっかりフォローしてあげる芳佳も和みます。この二人も可愛らしいですね
413アダージオ, コン・アフェット(1/4):2008/12/14(日) 22:30:11 ID:Bn3dkNOw
rQBwlPEOです。>>175で挙げられていたミーナ&サーニャ投下します。ちょっと湿っぽいかもしれませんが。
------

「サーニャちゃんって、なんか照れ屋さんですよね」
「……とってもいい子よ。歌も上手でしょう?」


────────


 遠慮がちなノックの音が聞こえて、書類から顔を上げた。
 どうぞ、と言いながら、部屋の隅にある時計を見る。
 部屋に持ち込んだ仕事を片付けているうちに、随分時間が経っていたらしい。美緒が扶桑に行ってしまってから、
私とトゥルーデは大忙しだ。薄橙の電球の明かりで満たされた部屋で、私は少し伸びをする。

「…失礼します……」
 小さな声が聞こえて、ゆっくりとドアが開いた。布巾をかけたトレーを持ったサーニャさんが、ドアの影から姿
を見せる。

「……食事を持ってきてくれたの? ありがとう」
「ミーナ中佐が、今日は食事の時に来られなかったので」

 サーニャさんはおずおずと部屋に入ってくる。私のデスクの方から視線を外さずに、一歩一歩歩いてます、
と言うような硬い動き。トレーを持つ肩がこわばっている。
 彼女がここに来るのは確か初めてだし、緊張しているのがありありと分かった。
 部屋の主としては、そんなに硬くならなくてもいいのよ、とは言いたくなるけど、上官の部屋なんてそんな
ものだろう。私だって、気心の知れない人の私室なんて好んで入りたくはない。
 そんな事を考えていると、サーニャさんが、机のそばまで来たところで立ち止まった。ブックエンドで支え
られた本やレコード。それをサーニャさんが、じっと見ている。

「?」
「…あ…ごめんなさい」
 私が見ている事に気付いて、慌てて謝るサーニャさん。
 いいのよ?、と微笑みながら言うと、サーニャさんはばつが悪そうにうつむいたまま、トレーを運んで、
机の上に開いたスペースにトレーを載せてくれた。掛けられた布巾を取ると、ボルシチの甘酸っぱい匂いが漂う。

「……暖め直しましたから」
「そう……ごめんなさい。夜間哨戒の仕事もあるのに」
「いえ…」
「今日はサーニャさんが食事当番だったのね」
「はい…」
「オラーシャ料理はみんな喜んでるのよ? おいしいし、手を掛けてくれてるから」
「いえ…」

 真っ赤になってお辞儀をしながら、また机の上に視線を走らせる。

「ああ…それね」
 私もそこに視線を向ける。私の部屋に入ってきて、彼女が最初に目を留めたそれ。
 ──この子がこれだけ興味を示すなんて珍しい。
 部隊の中で、エイラさんが傍にいるか、寝ているとき以外、どこか緊張している様なサーニャさんの様子が、
私はずっと気になっていた。
 格子の向こうからいつもこちらを眺めているような子。何かが手に入らないとあきらめているように見える彼女。
そんなサーニャさんが示した意志を、汲み取って応えるのは上官の務め。

 笑いながら机の上に立てられた、レコードの束を取り出す。

「──時間があるなら、見ていく?」

 彼女にそれを差し出すと、サーニャさんは小さな声で「…はい」と答えた。
414アダージオ, コン・アフェット(2/4):2008/12/14(日) 22:31:08 ID:Bn3dkNOw
----


「カールスラント語だけど、大丈夫かしら?」
「はい…オストマルクにいましたから」
「……そうだったわね」

 部屋の中央にあるベッドに座り、脇に私のレコードを積んで、サーニャさんはレコードのライナーノーツを読んでいる。
 きちんと膝をそろえて腰掛けたまま、何も言わずに見入っているので、私もサーニャさんをそのままにして、
彼女が運んできてくれた食事を食べた。
 ボルシチの中のよく火を通したキャベツとビーツ。中の肉の旨味を残したままふわりと焼かれたピロシキ。
サーニャさんが丁寧に作ってくれたそれらを口に運びながら、背後でサーニャさんがページをめくる音を聞く。

「…これ、レコードになってたんだ……」

 サーニャさんの小さな独り言が聞こえて、私はふっと微笑んだ。
 サーニャさんがウィーンで音楽を勉強していた事は、入隊の時に受け取った資料で読んだ。それが彼女の
お父さんの勧めだった事も。ご家族が今は、ネウロイに故郷を追われてウラル山脈の向こうにいることも。
 サーニャさんにとっても、音楽は辛い記憶と結びついてる筈だけれど──

 ──それでも、好きなのね。

 気付かれないように振り返る。ライナーを覗き込んで、熱心に読んでいるサーニャさん。

 広間に置かれたピアノを、彼女が時々弾いている事は、私も知っている。
 夕方、基地に人が少ないときを見計らって、サーニャさんはピアノを弾く。
 声をかけると逃げてしまうから、彼女のピアノに気付いたときは、私はいつも気付かれないように、近くの
執務室で耳を傾ける。他のみんなも彼女が照れ屋な事は知っているから、ピアノが聞こえる時は、あまり部屋
から出てこない。隣にいても大丈夫なのはエイラさんぐらいだった。

 ウィッチとして戦争に出ても、最前線に送られても、サーニャさんが弾きたいと思っているピアノ。
 あるときは軽やかに、あるときは哀しげに響く澄んだ音の連なり。
 日暮れ時になると、それが聞こえてこないかと、私は時々耳を澄ましている事がある。

「あ…」
 サーニャさんのつぶやき声が聞こえて、思わず私は振り返る。
 サーニャさんは既に見てしまった何枚かのを横に置いて、一枚のレコードを手に取っていた。

「どうしたの? サーニャさん」
「あの……」
 サーニャさんが手に持ったレコードのジャケットを私に見せる。
 目を驚いて見開いたまま、そこに写る写真と私を交互に見比べている。

「あ、ああ……それね」
 どこかにしまっておいたはずの一枚が、サーニャさんの手に握られている。
 あまり人に見せたくはない一枚。トゥルーデ達ならともかく、サーニャさん達に見せるのは、特に恥ずかしい
一枚。
 羞恥の気持ちがこみ上げて、顔がかぁっと熱くなるのを感じた。

「ええ……私よ」
 ジャケットに写っている歌手、ドレスを着た私の姿を見ながら、私は言った。
415アダージオ, コン・アフェット(3/4):2008/12/14(日) 22:33:01 ID:0SJNtnFq
「……昔、勧められて吹き込んだの」
「そうなんですか……」
 サーニャさんはまじまじとジャケットを見ている。
「……やだ。あんまり見ないで。なんだか恥ずかしいのよ、それ」
「……!」
 私が笑いながら言うと、サーニャさんは慌ててそのレコードを横に置く。
「ごめんなさい……」
 サーニャさんは膝をそろえてうつむいてしまう。
「ごめんね。それあまりうまくいかなかったから、今でも少し恥ずかしいのよ」
「そうですか……中佐は、歌を歌っていたんですね」
「昔ね。最初は手習いのつもりだったんだけど、結局声楽の勉強まですることになっちゃって」
「そうだったんですか……」

 それを初めて聞いた、と言うかのように、サーニャさんは呟いた。
 戦争が始まる前に私が歌手をやっていた事は、別に秘密にしているわけではないけれど、サーニャさんが
知らなかったのも無理はない。私事に関しては、私は美緒のように隊員の中に積極的に混じっていく方では
なかったから。フラウか美緒が談笑の中で誰かに話したかもしれないが、それもきっと、サーニャさんの耳に
入っていなかったのだろう。

 うつむいていたサーニャさんが顔を上げる。小さな口を開く。
「あの……中佐は……」
 小さく、抑揚の少ない声で、でも私に聞こえるようにはっきりと、サーニャさんが聞く。
「ミーナ中佐は……今でも、歌いたいですか……?」
 緑の瞳が悲しみを湛えて私を見ていた。

「ええ……」

 サーニャさんのその視線が、じわりと暖かく私の胸にしみた。

 ……感情を表に出しづらかったり、つい引っ込み思案になってしまったりするけれど、サーニャさんは、とても優しい子だ。
 この部隊には手のかからない人も多いけど、それでも、故郷が恋しかったり、戦いに怯えている子達がいる。
そんな彼女達を、サーニャさんが今と同じ表情で見ていた事も、私は知っている。
 自分もそうだったから、きっとそれを何とかしてあげたくて、それでも、彼女に出来ることは少なくて。
多分そう思った時に、この子はこんなとても悲しそうな顔をするのだと。

 私は微笑みながらデスクを離れ、彼女の隣に座った。身をかがめて同じ目線でサーニャさんの顔を覗き込む。

「……私の事を気にしてくれてるのね。ありがとう」
「……! いえ……」
 驚いて私を見つめ返し、うつむいてまた頬を染める。
 サーニャさんの顔に浮かんでいた悲しみが影を潜めているのを見て、少し安心して微笑む。自分の事を悲しんで
くれる様な、とても優しい子だからこそ、あまり悲しませたくはないから。

「歌は歌いたいけど……私には大事な仕事があるもの。
 ……戦争を終わらせたいから、今はこうして頑張るの」

 心配しなくても大丈夫よ、ありがとう。うつむいたままのサーニャさんに語りかける。
 ……この子を駆り立てた戦争の是非を問う事は、今の私には出来ない。それでも、せめてこの子が、元のように
ピアノを弾く日を楽しみに思って欲しい、そう願いながら、私は彼女に語りかける。

「本当は、あなたの様な人が戦わずに済めばいいんだけど……。
 でもだからこそ、今は私が頑張らないといけないの。
 サーニャさんみたいな子が、またピアノを弾けるように」

 私がそういうと、サーニャさんは、膝の上においたままの小さな手を握り締めた。

「でも、それなら……中佐だって……そうです」
416アダージオ, コン・アフェット(4/4):2008/12/14(日) 22:35:29 ID:0SJNtnFq
「そうね……」

 サーニャさんが言ってくれたことに、私は同意する。
 サーニャさんが言ってくれたこと。美緒もトゥルーデもフラウも、分かってるからこそ言わない事。
 戦争が終われば、私も歌うべきだと、サーニャさんは教えてくれる。
 自分が本当ならばしたかった事。
 部隊長として心の奥底にしまっておくべきだと思っていたものを、私は望んでいいのだと、彼女は伝えてくれる。
 儚げで、引っ込み思案で、そしとても心優しいこの子が。

「……また、歌いたいわね」
 ありがとう。ゆっくりと、感謝の気持ちを込めて、サーニャさんの頭に手を置いた。
 ようやく微笑んでくれるサーニャさん。
「その時は……私、ピアノ…弾きますから」
 一輪の百合のように可憐な笑みが、私に向けられる。
「ありがとう……」
 彼女の気持ちがうれしくて、サーニャさんの柔らかい銀髪を撫でる。サーニャさんくすぐったそうに目を閉じた。

「……それにもし、そういう時になったら、きっとエイラさんが黙っていないわね」
「……え?」
「『サーニャに伴奏させロヨー』って、きっと聞かないわよ?」
 特徴のあるエイラさんの口真似をしながら、片目をつぶってみせる。
「あ……」
 また真っ赤になってうつむいてしまうサーニャさん。

 ──近いうちに、またサーニャさんのピアノが聞ければいいんだけど。
 夕刻の基地に響く澄んだ音を楽しみにしながら、私はもういちど彼女の頭を撫でた。


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すみません途中で回線切れました……IDも変わってますが4レス分の投稿です。

サーニャさんはエイラさんの事で悶々としない限り、いい子だといいなと思います。表現が苦手なだけで。
というわけでミーナさんとさかもっさん夫婦に娘みたいに愛されるのもいいと思うよ!
サーニャ相手ならミーナさんもキュッてしないと思うよ!
もしそうなってもエイラさんが「サーニャをキュッてするぐらいなら私をキュッてするんダー!」って言ってくれるよ!
……でももっミーナに可愛がられてもエイラむくれちゃいそうだな。あとペリーヌがストライカーに画鋲入れようかと悩みそうだ。

ここの口上を書くときはいつもハイになっているので、ついアホなことばかり書きたくなってますが、
いつもレス下さってる方、本当にありがとうございます。
読んでくださった方もありがとうございました! では。
417名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 22:49:31 ID:O6zQPl4V
>>416
温かくも、少し寂しさを感じる話ですね。
黄昏時に聴く、ドヴォルザークの新世界、第二楽章のような。
418名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 22:49:52 ID:SY1U3lwX
>>416あたたかさを感じる作品でした。ゴチです。
419名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 23:26:34 ID:l9dnRXir
相変わらず日曜パワーは凄いな
420名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 23:36:48 ID:McyvAaDz
さーにゃんかわいいよさーにゃん
GJすぎる
421ハルマげ。 1/2:2008/12/14(日) 23:39:00 ID:dUCX6aAR
「はーい、終わりましたよー中尉。 ふー。」
「うひゃひゃひゃ。 そのポンポンくすぐったいよー、宮藤。」
ハルトマン中尉の耳を掃除し終わって、かるく息を吹きかける。 仕上げにポンポンで耳の中をこしょばす。
ちょっと大きめのセーターに包まれて膝の上で転がる中尉は、なんだか年下の妹みたい。

そもそも、このてらいの無い突拍子の無さが凄く年下っぽいんだよね。 いきなり耳かきしてー、だもんね。
そんな事頼まれるなんて思ってもなかったから、びっくりしちゃった。
リーネちゃんやバルクホルンさんがすっごくこっち見てるし、正直ちょっぴり恥ずかしいよ。

でも、屈託無く笑う中尉を見てると、ついつい言う事聞いてあげたくなっちゃうんだよね。
ほにゃ〜、ってなっちゃって。 道端でじゃれてきた子犬を、なんとなく可愛がっちゃうみたいな感じ?

「うーん、宮藤はすごいねー。 耳かきにお料理になんでもできちゃうねー。 いいなー。 一家にひとり宮藤がほしーなー。」
「ふふ。 じゃあ私、ハルトマン中尉にお嫁にもらってもらっちゃおっかなー。」
「よ、芳佳ちゃん! 変な事言って中尉を困らせちゃ駄目だよ!」
あぁ、いい匂い。 お風呂あがりの中尉からはとってもいい匂いがしてる。
よくよく考えてみれば、私たちみんな同じリンス使ってるんだから、みんな同じ匂いのはずなんだけどね。
中尉はそれにミルクみたいな甘い香りが混じってて、なんだか心があったかくなる。

「別に困んないよー。 じゃあ今日から宮藤はミヤフジ・ハルトマンだねー。」
「宮藤は苗字だ! ハルトマン! カールスラント軍人たる者が、いつまでもそんな無防備な姿勢でいるんじゃない!」
「…………。 えーん、宮藤ー。 リーネとトゥルーデがいじめるよー。」
「わ、私は別にいじめてません! わざとらしい演技はやめてください!」

しがみついてくる中尉の物凄く嘘くさいセリフ。 でもそれが嫌味にならないんだよね。 和むの、とても。
技術やセンスじゃなくて、このついつい気を許してしまう愛くるしさこそが中尉の一番の武器なんじゃないだろうか。
母性本能をくすぐられるってこういう事なんだね。
世話を焼くのが楽しくなってきた私は、頭を屈めて中尉に聞いてみた。

「ハルトマン中尉、紅茶でも飲みます? 私、淹れてきますよ。」
「つーん。」
え、あれ? なんで返事してくれないんですか? 私、なんかまずい事言ったかな?

「なんですか、ミヤフジ・ハルトマン? ハルトマンって私ですか? 分からないから返事できませーん。」
え、と、と。 そういう事ですか。 ちょっぴり赤くなる私。
422ハルマげ。 2/2:2008/12/14(日) 23:40:05 ID:dUCX6aAR
「えーと……エーリカ、さん。 お茶でも飲みます?」
「おしい! もうちょい!」
「え? えーと、その、うーん…………あ。 ……あ、あなた?」
「なーにヨシカ? ふふふ。 うん。 お茶、飲みたーい。」
あぁ、もう。 ぱぁーっと花が咲いたような笑顔。 得だよね、ほんっと。 私もニコニコが止まらない。

「あ、お茶淹れにいく必要は無いよ芳佳ちゃん? 私が淹れてきたから。」
あ、そうなんだ。 さすがリーネちゃん。 ありがとう……と言いかけて凍りつく私。
リーネちゃんが渡してくれたのはネウロイばりの瘴気を放つ紫色の液体。
ぐつぐつと見るからに危険な温度で泡立っている。 しかも見た目もやばいけど、匂いも物凄くくっさい。

「り、リーネちゃん。 これ何?」
「え? やだな芳佳ちゃん。 どう見てもお茶でしょ? ささ中尉。 ぐぐっとどうぞ! ぐぐっと!」
「えー。 わたし猫舌だもーん。 なんか眠くなってきちゃった。 お水飲んでもう寝よっ。 おやすみ〜。」
あ、と、と。 中尉は気まぐれな猫みたいに、私の膝からさっさといなくなってしまった。
なんだかちょっと寂しい。 拍子抜けした私の顔がおかしかったのだろうか。 中佐がくすくすと笑っている。

「ごめんなさいね、宮藤さん。 フラウったら周りを振り回すだけ振り回して、いっつもあの調子だから。
 あの子、双子なんだけど。 どうも妹の分まで二人分の愛嬌持って生まれてきちゃったみたいなのよね。 困っちゃうわ。」
中佐の綺麗な声には暖かな愛情が篭っていて、聞いている私の方まで幸せになってくる。
中尉、お姉さんだったんだ。 意外だなー。 二人分の愛嬌って、妹さんの方は無愛想なのかな?

「中尉、妹っぽいけどお姉ちゃんなんですね。 あんな妹いたら可愛がっちゃうなー、私。」
「お前は実質的被害に遭わないから言えるんだ、宮藤。 奴は自分だけ被害をかわし、とばっちりはいつも私に来るんだぞ!」
「ふふ。 きっとバルクホルンさんがお姉ちゃんみたいだから頼っちゃうんですよ。 私もそうだし。 宮藤三姉妹! なんちゃって。」
「!!!??? お、お姉ちゃん!? 私が!? 宮藤の!!!」
プルプル震えたまま停止するバルクホルンさん。 あ、あれ? 怒らせちゃったかな?

「よ、芳佳ちゃん! 私は? 私は姉妹で言えばどんな感じ!?」
「えー、リーネちゃんは姉妹って感じじゃないよー。 強いて言えば……結婚したての奥さん、って感じかな。」
「!!!??? よ、芳佳ちゃん!? ……も、もう、変な事ばかり言って。 な、なんだか喉が渇いちゃったかも……。」
もじもじしながら手に持ったコップをぐぐっと飲み干すリーネちゃんを横目にリビングを出る。 私も寝よっと。

廊下を歩いているとリビングの方でリーネちゃんの大声。 歌でも歌ってるのかな? なんか調子っぱずれというか、凄い歌だね。
さて、ふふふ。 寝る前に、可愛い妹に毛布でもかけてあげに行こっかな。 頼れる芳佳お姉ちゃんとしては、ね。

                                                 おしまい
423名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 00:04:58 ID:9jFCaqJJ
>>421
うわ、何この宮藤。
すっごくジゴロだ。すっごく。しかも天然。
救いようがねぇ。
でもこんな宮藤……いいよな。

GJ!面白かったよ!

>>416
年上らしく穏やかな隊長とサーニャの優しさがいいね。
この二人は音楽という共通項があるんだよね。
それが出来ない今の寂しさと平和な未来への希望が見えてとても良かった。
GJ!
424名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 00:28:55 ID:3o0UoGMe
>>416
こうゆう意外な組み合わせのSS好きだーGJ!

もっミーナ夫婦と子供達みたいな他の隊員ってゆう微笑ましい感じすごい好きー。
425名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 00:33:14 ID:pKSJ+P8a
>>422
くそワロタwwww すごいな
ジゴロ宮藤も小悪魔エーリカも凶悪に可愛いぜw
リーネちゃんも大尉も液体もGJ!
426名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 00:35:40 ID:tnNfCD2v
そろそろ埋めネタの季節ということで
本当は今月24日に投下しようと思ってた馬鹿っぽい話が
途中でいつのまにか方向がずれてしまった
短めです

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コンコン
私の部屋のドアがノックされる

「シャーリー♪」

そう言って私の胸に飛び込んでくる彼女を抱きしめる
私は部隊の中で一番背が大きいが、彼女は一番小さい
今年で13才
ほんの二ヶ月間だが私との年の差は3歳になる

「ん?どうした」

抱きしめつつ考える
彼女は私に何を求めているのだろうか?
自由奔放は彼女が私に懐いてくれるのは嬉しい
けど、それは私を母親の代わりを求めているのでは?
それでも嬉しいのだが、私としては少し寂しくもある
・・・・・ダメだな最近この事ばかり考えている

「んー別に用はないよ。ただシャーリーにくっつきたいだけ」
「ははっ嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
「・・・・ねぇシャーリー、私今年で13歳になるんだよ?」
「知ってるよ、その割にはツルペタだよな」
「むー私はこれからなの!そっちが育ちすぎなだけ!」
「私がお前くらいの時は、もうある程度大きかったけどな」
「うぅ私は後からおっきくなるタイプなんだよ・・・・たぶん」
「まっ胸の大きさなんてたいした問題じゃ無いって」
「そっそうだよね!それに私は今年で13歳だよ?どう?大人っぽい?」

そう言っていろいろポーズを取ってみるが
正直幼児体型だなぁというくらしか感想は無かったが
まぁルッキーニの魅力は容姿だけでは無いので私は構わない
427名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 00:36:26 ID:tnNfCD2v

「うん大人っぽい大人っぽい」
「あーシャーリー馬鹿にしてる?」
「そんな事無いって、それにほら最近少し背も伸びただろ」
「えっ!ホント?」
「あぁ」
「でもシャーリーとはまだまだ遠いなぁ」

身長差約20p
正面に立つと彼女の頭は私の胸のあたり
見下ろす私と見上げる彼女

「早くシャーリーと同じくらい大きくなりたいなぁ」
「私は今のままでも可愛いからいいけどな」
「えへへありがと。でもさ二人で町に行っても姉妹くらいにしか見られないじゃない?
私としてはシャーリーと対等に見て欲しいの。あ〜ぁ早く大人にならないかなぁ」
「いいじゃないか姉妹に見られても」
「んーまぁ町の人にそう見られても別に構わないんだけどね。
私はシャーリーに子供扱いされなければ」
「私に?」
「そう」

いつのまにか彼女の目が細くなっている
まるで狩をする動物のようだ
この目に弱い動けなくなる

「・・・・・ねぇシャーリー私の事好き?」
「もちろん」
「それはどうゆ意味で?」
「どうって・・・・」
「シャーリーは私の事を好きと言ってくれる。私の事を大切にしてくれる」
「・・・・・・あぁ」
「でも、おでこにしかキスしてくれない
体も触ってくれない、それはなんで?」
「・・・」
「私がまだ子供だから?違うよね?」

彼女の私への気持ちは
母親にむける無邪気な愛情では?
絶対的な信頼の現れでは?

心の中でその考えが邪魔する
いつかこの子は私の元を離れるのでは?
自由奔放な彼女が好き
だから彼女を縛ることはしたくない


「ねぇ?何を怖がってるの?」
「っ!」
428名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 00:36:56 ID:tnNfCD2v


まるで心を覗かれたようだ
戦闘の時意外見たことの無い真剣な顔

「シャーリーが何を怖がってるのかは分からないけど
でもね、私はいつまでも待ち続けるのは性分に合わないの」

跳躍
まるで猫のようなしなやかさで、私の首に手を回し
唇を押しつけてきた

「んっ」
「おっおい」
「えへへしちゃったね」

そう言って私の首元に匂いを付けるように頭をすりつけてくる
いきなりの事に頭が付いていかない
ビックリして床にへたり込んでしまった

「ねぇシャーリー?」

ぐっと彼女に肩を押されて

「シャーリーは私の物なんだから、私の側から居なくなっちゃダメだよ?」

ドサリと押し倒され
四つん這いの彼女に押さえられる

ずっと子供だと思っていた
いつもいつも無邪気にたわむれているだけ
でも違った彼女はもう立派に狩ができる年なのだ
今頃気がついたどうやら私は狩られてしまっていたらしい
しなやかな体
かすかに香る草の匂い
彼女は黒豹
私は兎
捕まえられたらもう逃げられない――


終わり
429名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 00:37:49 ID:tnNfCD2v
いつもシャーリーが攻めっぽいので逆を書いてみようと思ったけど
なんだかずいぶんキャラが変わってしまったけど、そこは二次創作だから気にしない
タイトルは豹変
というわけでeIqG1vxHTMでした
430y4wjv0wX:2008/12/15(月) 00:56:28 ID:qy39MP7M
GJ!
さすがロマーニャ娘
成長が楽しみだw

自分も投下します
エイラとニパで4レス
タイトルは「魔法の歌」
431魔法の歌@:2008/12/15(月) 00:58:21 ID:qy39MP7M
 それは私、ニッカ・エドワーディン・カタヤイネンの被撃墜数が、記念すべき(?)二十回目になった日の事だった。

×××

「イッル!」
 スオムス空軍第24戦闘機隊の基地。私は勢い良くバーン! と大きな音を立てながら、部屋のドアを開けた。
「教えてくれ、頼む!」
 部屋の中は明るい。開けっ放しの窓からは気持ち良い風が吹き込み、カーテンがそよぐ。素晴らしいスオムスの夏の午後だ。
 壁際のベッドの上には「無傷の撃墜王」、エイラ・イルマタル・ユーティライネンがいた。その格好は耳にイヤホン、下着姿でだらしなくうつ伏せに寝転がり、足をだらだら揺らしているという有り様。とてもじゃないが、スオムスのトップエースには見えない。
「何だニパか。ドアは壊すなヨ〜」
 エイラは私を一瞥すると、興味無しとでも言うように、手元の雑誌に目を落とす。
「おい、その態度はあんまりじゃないか? その前に、何だその格好は。はしたないぞ」
 彼女は顔をしかめる。
「良いじゃないカ。私が私の部屋でどんな格好で居てモ。──っていうかニパ、何しに来たんだヨ」
 そうだったそうだった。私はエイラに頼み事があって来たのだ。すっかり忘れていた。
「イッル、教えて欲しい事があるんだ」
「……何て言っタ? よく聞こえないゾ」
「ならそのイヤホン取れよ!」
 彼女はハアと溜め息を吐いて、面倒臭そうにイヤホンを外した。手元の雑誌もパタンと閉じて、ベッドに座り直す。
「それで何ダ、ニパ。私は忙しいから、手短にナ」
 嘘だ。本日のエイラは非番。だから一日暇なはず。まあ、それはさておき。
「教えてくれ、イッル。どうしたら撃墜されずに済む?」
 そう、私は「ついていないカタヤイネン」。スオムスきっての撃墜王だ。──もちろん逆の意味で。
 今朝もネウロイのビームで、危うく墜落しかけたばかり。決して私の腕が悪いのではない。運が悪いだけなのだ。でも、このままにしておいていい訳がない。
「やはり未来予知か? 未来予知なのか?」
 私はエイラに詰め寄ってまくし立てた。すると不思議な事に、彼女は呆気に取られたような表情を浮かべた。
「アレ、ニパ。ソレ本気で言ってるのカ?」
「え?」
432魔法の歌A:2008/12/15(月) 01:00:32 ID:qy39MP7M
 今度は私が面食らう番だ。
「イッル、それってどういう……」
 エイラは意地悪くニヤリと笑う。
「まさかニパ、未来予知とかそういうの、本気で信じているのカ?」
「え? 違うのか?」
 沈黙。エイラは手を叩きながら笑う。
「こりゃあ傑作だナ」
 訳が分からない。一人混乱する私を尻目に、エイラは声を出して笑った。
「そんな能力、あるわけないダロ。あれは適当に言っただけダ。まさか信じているヤツがいるとはナー」
 何……だと? エイラに予知能力がない……? 信じられなかった。今までの常識が崩れていく。そういえば、思い当たる節が無いわけではない。彼女のタロット占いが当たらないのは、そういう理由か。
 未だに頭はこんがらがっているけど、取りあえず馬鹿にされているのは分かった。頭にサッと血が上る。
「な、ならイッル! イッルはどうして弾を避けられるんだ?」
「知りたいカ?」
 エイラが悪戯っぽく目を輝かせてこっちを見る。私はゴクリと唾を呑み込んで、恐る恐る頷いた。
「知りたい」
 私の答えに、エイラは満足げに笑う。
「ヨシ、それなら教えよう。私とニパの仲だしナ」
 ニパは特別だ。そう言われたような気がして、ちょっと嬉しい。どんな魔法があるのだろうか。私の胸は期待に高まった。
「実はアレ、回避している訳じゃないんだよナ。どっちかっていうと弾の方が勝手に避けるっていうカ」
「そんな事って有り得るのか?」
 弾が勝手に避けるだなんて。
「それがあるんだヨ。その秘密は魔法の歌にある」
 誰にも言うなヨ、と言ってエイラはイヤホンとミュージックプレーヤーを取り出した。先ほどまで彼女が使っていたものだ。私は促されるままに、イヤホンを耳に装着した。程なくして、不思議なメロディーが流れ出す。
「この歌を聞いている間は、弾は絶対に当たらないし、こっちの攻撃は絶対に命中するんダ」
 エイラの説明によると、これはスオムスより遥か南方の国の、女戦士にまつわる曲らしい。
 私は彼の遠い異国の地に、そっと思いを馳せる。鬱蒼と繁るジャングル。飛び交う銃弾、硝煙の匂い。その中で女神のごとく燦然と輝き、舞うように闘う白き衣の戦乙女。
433魔法の歌B:2008/12/15(月) 01:02:33 ID:qy39MP7M
「良い歌ダロ」
「そうだな」
 私はこの曲を気に入り初めていた。聞いていると、なんだか力が湧いてくる気がする。確かに、これなら撃墜される事はないだろう。
「ニパ。それ、しばらく貸してヤル。一つしかないから、壊すなヨ」
「いいのか? その間、イッルは無防備じゃないか」
 するとエイラは、笑いながら言う。
「私の事は気にすんナ。こっちはこっちで何とかするサ」
 なぜだか私にはその笑顔が、どことなく儚いものに見えた。これって俗に言う死亡フラグ? 出来るヤツがその秘訣を出来ないヤツに伝授し、次の戦闘で散っていく。そして私は叫ぶのだ。
「イッッルゥゥぅウウ! 何で……どうして!」
 有り得る! 私には墜ちていくエイラがありありと想像出来た。そんな事はさせない。だから守ろう、彼女を。それが出来るのは、私しかいない。
 私は決意を胸に、エイラに向き直った。
「済まない、イッル。これはありがたく借りていく。お前、良いやつだったんだな」
「ニパ、今頃気付いたのカ。私は前から良いやつだゾ? まあ、これからも困った事や教えて欲しい事があったら、遠慮なく私の所に来いヨ。私の方が先輩なんだからナ」
「ああ、喜んでそうさせてもらう。今日は本当にありがとうな、イッル。それじゃあ」
 逸る気持ちを抑えきれずに、私は部屋を後にした。とても晴れやかな気分だ。エイラはガンバレヨー、と手を振る。いつ以来だろうか。私は、次の戦闘が待ち遠しかった。

×××

 基地に警報が鳴る。いよいよその時が来たのだ。ネウロイの来襲。その数は一機という事で、エイラと私が迎撃する事になった。
「ニパ、今日は撃墜されんなヨ」
 サイレンが鳴り響く中、エイラと私は格納庫へと急ぐ。
「大丈夫だ。今日の私は一味違う」
 何故ならば! ポケットにはミュージックプレーヤー、耳にはイヤホン。──完璧だ。今日の私は百戦錬磨の戦乙女。墜ちる気がしない。
 格納庫へ着くと、私たちは早速愛機を装着した。
「よいしょ」
 魔力の解放。それと同時に、耳と尻尾が生える。
「準備はいいカ」
 メルスに魔力を注ぎ込む。今日はエンジンの調子も、いつもより良いみたいだ。
「行くゾ、ニパ!」
「いえっさ!」
 私たちは、大空へと舞い上がった。
434魔法の歌C:2008/12/15(月) 01:04:54 ID:qy39MP7M

×××

 私たちは風を切って飛ぶ。眼下には広大な海。遮るものがないこのパノラマを見る事が出来るのは、ウィッチだけの特権。
 前方を飛ぶエイラの長い髪が、風で翻る。その、金色と銀色が混じったような色を私は見る。
 不思議な色だ。綺麗でありながら、それでいて捉え所のない、まるで彼女そのものを表しているかのような色。だからこんなにも惹かれるのだろうか。
「ニパ、ボーっとしてんなヨ」
 エイラに声をかけられて、私は我に返った。
「なっ、そんな事は……」
「そろそろ来るゾ」
 そうだった。私の役目は、エイラを守る事。それをしっかり確認して、気を引き締める。
「済まない。もう大丈夫だ」
「しっかりしろヨナ。──距離三千五百、三千」
──来る。
 空気が緊迫する。私は無意識にポケットを弄り、ミュージックプレーヤーの再生ボタンを押した。二・三秒の空白後、魔法の歌が流れ出す。それを聴く事で心を落ち着かせ、自信をつける。
 ついにネウロイが雲を割り、その姿を現した。
「イッル、下がってろ! ここは私が」
「あっ、オイ! ニパ!」
 エンジンに魔力を注ぎ、私は前に飛び出した。機関銃の狙いをネウロイへ。その間にも敵の赤い光が膨れ上がっていく。
 撃てるものなら撃つがいい。そのビームは、私には当たらない。そして私の攻撃は必ず命中するのだ。今の私には、魔法の歌があるから。
 ところが引き金を引こうとしたその時、私の体を大きな衝撃が襲った。
「え──?」
 赤い閃光が見えたのはほんの一瞬。気付いた時には、右足のストライカーがプスプスと煙を上げ、私は真っ逆さまに落下していた。
 どうやらまた撃墜されたらしい。ビームで撃たれたのだ。ウィッチの本能で、自分でもよく分からない内にシールドを展開していたらしく、幸いにも外傷はないけど。
──あれ、魔法の歌は?
 そして私は見た。エイラが軽やかにビームを避けているのを。そして鮮やかにネウロイを撃墜したのを。
──ああ、何だ。騙されていたのか。ハハハ……。
「イッルの、ウソつきぃぃィィい!」
 落下しながら、にこやかに手を振るエイラに向かって私は叫んだ。衝撃で外れたイヤホンから漏れる魔法の歌(?)が、虚しく響いていた。

──ヤン○〜ニ
──ヤン○〜ニ
──ヤン○〜ニ
──ヤ〜イヤ……

終わり
435名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 01:14:22 ID:ryJh9Cqt
>>434
ニパ可愛すぎるwww
ついてなさすぎだよ!てか無防備すぎだよGJ!
436名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 01:17:57 ID:2L6uJDUK
>>434
無敵ソング吹いたw
エイラいたずらしすぎ。ついてないけどついてるカタヤイネンでなかったら死んでるってw
437名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 01:18:56 ID:1esa/OVg
なんというssラッシュ
感想を書く暇もないぜ!!!
みんなgj!!
438名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 01:31:57 ID:lUES6Shw
そして気が付けば459kB。何という速度だ。
439名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 02:14:11 ID:PgHtsyvs
500行く前に次スレになりそうだな
440名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 07:46:30 ID:8Jgqegth
>>428
ロマーニャ娘すげぇ。前半も可愛いぜ、GJ!
シャーリー、常識人的な立ち居地もあるから気にして受けに回ることありそう
441名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 08:47:06 ID:Ax/ViAsR
>>422
なんというジゴロ宮藤……
貴重なエー芳をありがとう!
442名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 09:05:23 ID:15b0tD51
KB予報士の俺が460KBをお知らせします
本日中の500KB突破が予想されますので埋めネタ投下を虎視眈々と狙っておられる職人の皆様方は
スレ立ての準備をしてご出撃下さい
443名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 09:31:54 ID:xDLuA2Fw
相変わらず一週間で一スレか
444zet4j65z:2008/12/15(月) 13:03:16 ID:1WdFZPFC
1スレの中にどうにか滑り込めたですよ。
続きの投下いきま〜す。

●ガリア1944 RISING BLUE LIGHTNING 更に続き

 立ち昇る爆煙の余韻の向こうに赤い光が煌めいた。

「陸の皆さんっ! シールドをっ!」

 私が叫ぶのと、それが姿を現したのはほぼ同時だった。
 それは破損したパーツを排除して人間の上半身を模したような姿に変わりながら上昇を開始し、数十メートル上空から地上に向かって無数のビームを放つ。
 くっ……なんたるバケモノ! はじめの噂の通りではありませんかっ!!
 地上では魔力の残っているものはシールドを展開し、そうでないものは地に伏せたり塹壕に飛び込んだりしていたが、重症で動けないものもいた。
 大物から狙われたらしく、88mm砲からその攻撃を受け、弾薬が誘爆し、付近にいたウィッチが吹き飛ばされる。
 護らなくてはっ!

「リーネさんっ! 先程のプラン通りで行きますわよっ!」
「はいっ! 任せて下さい!」

 既にボーイズを構えた姿勢で応えるリーネさん。
 私も、今度こそ失敗は致しませんわっ!
 魔力を込め、爆発的な加速で機動。
 破損で低下したスピットファイアの性能を、漲る魔力を以って補い、翔る。
 シールドを展開しつつ今正に地上に倒れる陸戦ウィッチへと放たれたビームの火線に割り込んで弾く。
 この程度の普通のビームならば、なんてことは御座いませんわ!
 その背の名も知らぬ戦友を振り返らずにレイピアを構え、ネウロイに向かって突進をかける。
 私の存在を認めたネウロイが上昇をかけつつ火線をこちらへと集中する。
 それだけで地上への圧力が減らせるのであれば本望っ! この程度の弾幕、全て凌ぎきって見せますわっ!

「はあああああああっっっ!!!」

 裂帛の気合と共に前へ、前へと切り込む。
 シールドは張らない。
 そんなものは一振りの剣と化した私にとっては余計であり無粋。
 ビームの火線を見切り、回避。
 避けられないものは魔力を充填したレイピアの切っ先で弾き、軌道を逸らす。
 剣士たる者、白刃に身を晒し、肉を切らせる覚悟こそが重要。
 坂本少佐の教えが心に蘇る。
 その手に握る剣は違い、戦い方が異なろうとも、根底に流れる思いは一つ!
 魔道エンジンが限界を超える出力を叩き出し、A3との間合いを一気に詰める。
 そこで、ふと、砲火が止む。

『ブループルミエッ!』

 リーネさんの警告の声を認識するよりも早く、私の体が反応する。
 地上、未だ収まらぬ粉塵の底から駆け上がる無数の誘導兵器が一瞬で間合いを詰め、私を包み込むようにして迫る。
 同じ手が……。

「何度も通用すると思っては大間違いですわっ……トネール!!」

 固有魔法、発動。
 私を中心にして雷光が輝き、周囲に向かって無数の稲光が放たれる。
 稲光の直撃を受けた誘導兵器は爆散。
 貫く紫電のその威力は衰えず、止まらない。
 雷の力は次の目標を求め、光の速さで到達して爆裂の花を咲かせ、更に次の目標を打ち抜く。
 一秒の何分の一にも満たない時間の中で、無数に繰り返される雷光と爆散の乱舞。
 そんな破滅の回廊を突き抜け、コアのあると思しき部位の装甲へとレイピアを撃ち込み、魔力を爆発させる。
 A3の強固な胸部装甲が吹き飛び、同時に私は離脱。
 そこにハンドコッキングとは思えない速度と精密さで、リーネさんのボーイズから放たれた濃厚な魔力を含んだ徹鋼弾3発がA3のコアへと飛び込んだ。
445zet4j65z:2008/12/15(月) 13:04:06 ID:1WdFZPFC

「やった! やりましたわっ!!」

 歓喜の声を上げる。
 でもその喜びを打ち消すように、無線機からリーネさんの悲痛な声が響く。

『そんなっ……まだ隠し玉があるなんて……』
「な、なんですのっ!?」

 驚愕しながらA3を見やると、ネウロイとして致命的な打撃を受けたはずのその巨体が未だ空に浮かび、ゆっくりとだが上昇を続けている。
 な……、リーネさんの狙撃を3発もコアに受けて、無事なはずがありませんわ……何かの間違いですわっ!

『物理攻撃を無効化する格子状のコアバリアをもったネウロイです。前に出たときは芳佳ちゃんとルッキーニちゃんが協力して倒しましたけど……』
「く……そんな、またしても……」

 A3の胸部をよく見ると、コアを覆うようにバリアが展開しているのが見えた。
 そして、更にそこを覆うように装甲の再生が開始している。
 地上からの射撃が散発的ながら再開された。
 A3は時折命中する砲撃にその身を揺らせつつも不気味な沈黙を保ち、静かに上昇していく。
 余りの悔しさと絶望感に泣きそうだった。
 それでも……それでも、考えるまでも無く、まだやれる事はありますわ。
 私は近接したリーネさんへと話しかける。

「リーネさん、まだやれる事は残っていますわ」
「はい。でも、ペリーヌさん、トネールを使ってしまって、魔力は大丈夫ですか?」
「まだまだやれますわよ。なんと言うことはありませんわ。それよりリーネさん、戦術を」

 実の所限界が近かった。
 それでも、足りない魔力を気力で支えられる気がした。
 今の私はそれほどまでに闘志に満ちていた。
 そして私はリーネさんの戦場を見る目に賭け、二人でタクティクスを構築する。
 リーネさんの先程の狙撃の3発の内一発は不完全ながらもコアに届いていたらしい。
 コアを損傷したA3はその再生に専念している。
 その為に現在攻撃を中断している可能性が高い。
 今も行われている地上からの狙撃も、ネウロイにとってはかなりの圧力になっているようだ。
 どうやらA3は飛行ではなく浮上程度の航空能力しか持っておらず、回避がままならない。
 装甲で受ける事はできても、ダメージがあっては主砲の発射に集中できない。
 その結果高高度へと逃れ、対空砲火をある程度無効化してから捨て身の一撃を計ってくる。
 それがリーネさんの見立てで、事実状況はその様に流れつつあった。
 私はリーネさんと会話しながら自分の中の魔力の流れを整え、もう一度トネールを放てる所までその密度を高める。

「ペリーヌさん、やっぱり、止めはトネールでしかさせないと思うんです。でも……」
「この場にあのネウロイに止めをさせるのは私しかいない……ふふ、中々やりがいのある状況では御座いません事?」
「ペリーヌさん……そうですよね……ガリアのブループルミエの電撃魔法でしか、あれを止められません」
「もう一度、トネールを放ちます。なんとしても!」
「はいっ!」

 一旦気合を入れて空高く間合いを取るA3を見上げながら決意を口にする。
 そのあと、ちょっとだけ力を抜いてリーネさんに微笑みかけ、呟く。

「リーネさんのお陰ですのよ」
「え?」

 私の読みの甘さや心の弱さを何度も埋め合わせ、支えて頂いて、本当に助かっていますのよ。
 でも、お礼を言うのは全て終わらせてから。
 今は、リーネさんの狙撃でもぎ取った貴重な時間を利用して、最後の一撃の為の魔力を練り上げる事に集中する。
446zet4j65z:2008/12/15(月) 13:05:17 ID:1WdFZPFC
「リーネさん、無茶なお願い、よろしいですかしら?」
「はいっ! あいつを倒す為だったら、どんな事だって!」
「よいお返事ですわ」
「では、A3の誘導兵器の処理と物理装甲の破壊をお願いいたしますわ」
「……はい」
「先程と同じ手で行きます。リーネさん、あなたの腕、可能性、その魔法……。全てを、信じますわ」

 実戦での一秒は1000時間の訓練に勝る。
 戦闘開始からここまで、並のウィッチでは不可能なレベルの狙撃を何度も成功させてきたリーネさん。
 私に弱い所を見せまいと、気丈に振舞ってはいても、乱れた呼吸とうっすらと目の下に描かれたくまはかなり体力魔力共に消耗している様子が見て取れた。
 ま、私も今は同じ様な感じなのでしょうね。
 でも、だからこそ……追い詰められているからこそ、なせる事もありますわ。
 だから、信じますわ、リーネさん。
 敬愛する坂本少佐が前に語った言葉。
 リーネさんの可能性。
 その固有魔法を。

「ペリーヌさん。A3が上昇を止めました」
「その様ですわね」
「真下からの攻撃でお願いします」

 厚みを増した低い雲によってその姿を遮られ、見え隠れしながら町の直上へと水平移動しつつ赤い光を湛え始めるその姿を、私も視認する。
 レイピアを握る右腕に力を込めながらその直下へ移動し、改めて天に座するネウロイを見据えた。
 地上部隊も既に攻め手を失い、攻撃を停止していた。
 私とリーネさん。
 二人だけがこの戦場に立つ人類の代表であり、最後の剣だった。

「目に物見せて……差し上げますわっ!!!」

 根拠地の町並み、上空約100m。
 ブリタニア製最高の魔道エンジンであるマーリンが限界を超えて発動。
 重力に逆らっているとは思えないほどの鋭い加速で上昇。
 視線の先のA3は無数の誘導兵器を展開し、私を待ち構えている。
 対空ビームは無い。
 きっとその力の全てを、町を焼き払う主砲の一撃の為に注ぎ込んでいるから。
 正面から真っ直ぐに疾走。
 迎撃の回避策などありませんわ。
 ただ仲間を信じ、自分を信じ、無心で魔法を練り上げるのみ!

 右腕に、魔力を収束。

 背面から青い光を纏う徹鋼弾が私の加速を追い抜いて弾ける。
 鉄の雨となって私に降り注ごうとした誘導兵器はその衝撃波によって連鎖爆発。

 トネールを発動。

 勢いは止まらず、強烈なライフルの一撃はA3のその頑強な胸部装甲を撃ち抜いて破裂。
 対物理障壁によって頑強に護られたコアがむき出しになる。

 レイピアにその雷を纏わせ、赤城の機関部の扉を打ち抜いた時のイメージを刃へと被せる。

「トネールッ…………ラピエル!!!!!」

 雷光の突剣を構えた私は、青い雷そのものとなってネウロイの胴体を貫き、その背へと抜けた。


447zet4j65z:2008/12/15(月) 13:06:06 ID:1WdFZPFC
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――エピローグ――

 状況は絶望的だった。
 為すべき事はもう何も残っていなかった。
 そんなわたしたちを哀れむように雨も降り出し、灰色の世界が無力感を演出する。
 魔力を使い果たして意識を失い、失墜するその細い身体を何とか受け止めたところで、さっきの射撃で魔力を使い果たしたわたしも、力尽きて不時着するしかなかった。
 ペリーヌさんを背中から抱き、せめてその眠りが妨げられないよう、わたしの身体をクッションにして落ちる。
 見ればそこは、つい何時間か前までティータイムを楽しんでいたオープンテラスの目の前で、食べられることなく残されたスイーツ達がただ雨に打たれるがままになっていた。

 結果的に、ペリーヌさんの攻撃は失敗した。
 命中直前に雷光の切っ先へと命中したなんらかの攻撃によって打点をずらされ、コアを完全に破壊する事ができなかったのだ。
 だから、捨て身の一撃はさっきのわたしの狙撃と同様に、破滅を先延ばしにするだけに終わった。
 どんなに考えても、もう反撃の手は思いつかなかった。
 ストライカーを履いたままの脚を前に投げ出し、お揃いのストライカーのペリーヌさんを体の前に抱いたまま、雨に霞む上空の赤い光を見つめる。
 あの光が堕ちるとき、全部終わっちゃうんだ。
 そう思うと、余計に悲しくなった。
 もう、ペリーヌさんを励ました時のような空元気も出せない。
 
 こんなのって、無いよ……。

「こんなところで……終わっちゃうのかな……」

 ぽつりと呟いた言葉に、胸に頭を預けたままのペリーヌさんが反応して、意識を取り戻す。

「それは……聞き捨てなりません、わね……」
「ペリーヌさん……」
「訂正を、お願いいたしますわ……」
「え?」
「ここは偉大なるガリアの地。私が生まれ育った土地。人類がネウロイから取り戻した栄えある場所。それをさして『こんなところ』とは、侮辱もいいところですわ」

 力なく途切れ途切れではあるけれど、わたしの胸の中でいつもの調子を崩さないペリーヌさんに半ば呆れ、半ば感嘆しながら同意する。

「そう、だね。失礼な事を言ってしまってごめんなさい」
「ふふ、わかればよろしいですわよ」
「うん。ありがとう」
「リーネさん。私を、信じていただけますか?」
「え? それは勿論信じるよ」
「何度も失敗ばかりのこの私を、信じていただけますか?」
「違う! ペリーヌさんは失敗してないよ。だってわたしたちまだ生きてるから……。でも、でももう手が無いのっ! わたし、どうしたらいいかわかんないのっ! わたし死にたくない。 死にたくないし、ここの皆も守りたいっ!」

 話しているうちに、感情が昂ぶってしまう。
 だって、もうここから逃げられる気もしないし、まともにシールドを晴れる魔力だってない。
 もう、あのビームが降り注いだら死ぬしかないんだよ……。

448zet4j65z:2008/12/15(月) 13:06:38 ID:1WdFZPFC
「泣くものではありませんわ……そうですわね、私だけでなく、私のおばあさまのおばあさまのそのまたおばあさまも信じていただけますか?」

 ペリーヌさんが左手でわたしの涙をぬぐってくれる。
 その右手はさっきの攻撃の時から、意識を失っている間もレイピアを握っているまま。

「うん、うんっ……信じる。信じるよっ! わたし、ペリーヌさんの事、全部信じるっ!」
「ふふふ、では、マリーゴールドの一件も謝罪して頂きたいですわ」
「え、いやあのっ、それは……ごめんなさい……」
「構いませんわ。では、私を信じて、魔力を貸してくださいな」
「う、うん」

 ちょっとしたやり取り。
 でも、これだけの事で少しだけ元気が出てきた。
 どうなるかなんて解らない。
 解らないけど、こんな状況だけど、ペリーヌさんを信じられる。
 ペリーヌさんが右手にもつレイピアを掲げようと腕を持ち上げる。
 その腕にわたしも右手を添えて、二人で剣を掲げる。
 魔力を貸すなんて具体的にどうしていいかなんてわからないまま集中する。
 もう残ってなんかいないと思っていた力が僅かに溢れて、青い光となる。

「暖かいですわ、リーネさん」
「うん、そうだね。暖かいね」
「ふふ、それではいきますわよ……トネール」

 剣先から、パシッと小さく紫電が弾けた。
 一回目や二回目のトネールとは比べ物にならないほど小さな、ささやかな雷光だった。
 胸の中で、今度こそ完全に魔力と精神力を使い果たしたペリーヌさんが小さく何かをつぶやいて意識を失うのを感じながら、これでいいと思った。
 落胆がないといえば、嘘だと思う。
 でも、満ち足りた表情と、こうして意識を失いながらも未だレイピアを手放さないペリーヌさんの意思を感じて、ここまでがんばったのが無駄じゃないと思えたからわたしも満足だった。
 最後に見上げる空が雨模様なのが残念だったかな、と空を見上げた瞬間、光が来た。

 更に高度を下げた雲底に飲み込まれ、赤い光だけを不気味に灯していたネウロイ。
 その赤を飲み込んでかき消すほどの強烈な雷光が天で弾け、雲間には無数の稲光が走った。
 まるで夢を見ているような、美しい光の乱舞。
 その幻想的な光景は、2秒ほどの間をおいてこの世の終わりのような大音響と共に現実になる。
 陸戦ウィッチの一斉砲撃など比べ物にならない衝撃。
 目の前で起きていることが余りにも非現実的で、わたしは耳をふさぐ事も忘れ、体の上にペリーヌさんを乗せたまま大の字になって、ただただ呆然と空を見上げる事しかできなかった。
 鼓膜を突き抜け、頭の中を直接シェイクされるほどの暴力的な雷音は何秒も続いて、唐突に終わりを告げる。
 後には韻韻と残響が残り、ぽっかりとそこだけ開いた青空に光が舞い散る様を見上げながら、体力気力の限界によって訪れた睡魔に身を任し、わたしも意識を閉じた。


449zet4j65z:2008/12/15(月) 13:07:38 ID:1WdFZPFC
 ………………。
 2日後、わたしはやっと野戦病院のベッドから開放された。
 ペリーヌさんは本当に魔力が本当に0になるまで頑張ったせいか先程やっと目を覚まし、まだ後数日は休息をとれと命令されていた。

「でもさ〜、ホント凄かったよ〜あの雷。わたし引き返そうかと思ったくらいだもん」
「何てことを言うかハルトマン。口を慎め! しかし、本当にお前たちが無事でよかった」
「アハッ、そうだね。わたしたちも駆けつけた甲斐があったってもんだよ」
「ええ、本当に助かりましたわ、バルクホルン大尉、ハルトマン中尉」
「わたしも、あの時は今度こそ終わりだって思ってましたから……」

 ベッドサイドには別の戦区で戦っていたはずのカールスラントのトップエースコンビが居た。
 あの奇跡のような雷撃のあと、ダメ押しの様に大型ネウロイの爆撃隊が根拠地に接近してきた。
 そこに比較的近所まで進出していたカールスラントのJG52が救援要請を受けて駆けつけたのだ。
 この根拠地はそのお陰で無事に防衛され、現在は静穏を保っている。

「そういえば確認したかったのだが、あの雷はやはりお前が関係していたのか? ペリーヌ」
「あ、私も聞きたいですペリーヌさん」
「ええ……一か八かでしたが、我が家に伝わる真なるトネールを試してみましたの」
「真なる……」
「トネール?」
「ええ、普段のトネールは魔力で電撃を発生させますが、あれは自然現象に魔力を乗せましたの」
「へ〜そんな事ってできるんだ〜」

 ハルトマン中尉が目を輝かせて相槌を打つ。
 でも凄いなぁ、ペリーヌさん。
 わたしの使った魔法なんて、ほんとちっぽけな力でしかないよ。

「当然ですわっ! 私のおばあさまのおばあさまのそのまたおばあさまの代では、晴れ間に雲を呼んで雷を落としたと伝えられておりますわ。天候を利用した私など、まだまだ未熟」

 賞賛されている空気に乗って、あっという間に普段のペリーヌさんのペースを取り戻す。
 これならすぐにベッドから開放されそうで嬉しいな。

「とんでもない力を秘めていたのだな……そしてよくぞ土壇場でそれだけの力を引き出す事ができた。よくやったぞ、クロステルマン中尉」
「お褒めに預かり光栄ですわ、大尉。しかし、私と致しましては当然の事をしたまでと考えておりますわ」
「うむ、そうだな。必要とあらば奇跡さえ起こしてでも皆の力となるのが我々ウィッチの本懐……」
「ねぇねぇそれよりさっ、わたしのシュトルムも自然の風に乗っけたりできるのかな?」

 腕を組んで頷きながら語るバルクホルン大尉の態度になんとなく難しくなりそうな気配を感じ取ったのか、ハルトマン中尉が興味津々で割って入る。

「こ、こらエーリカっ、人の話を遮るなっ」
「あ、ええと……あまり、そういった魔法は使わない方がいいですわ……」

 一瞬前までとは一転して歯切れが悪くなるペリーヌさん。
450zet4j65z:2008/12/15(月) 13:08:17 ID:1WdFZPFC
「え〜なんで〜? 楽そうで便利じゃな〜い」
「何か、使わない方が良いような理由でもあるんですか?」
「あの、実は制御が殆ど効きませんの……」
「でも、うまくいったんでしょ」
「目標が空にあって、一つだけでしたから……」
「では、失敗していたらどうなっていたのだ?」
「そ、それは……たぶん……」
「もしかして、地上に雷が降り注ぐんですか?」
「え、ええ……まぁ……そんな可能性も……無くは無いかと、思いますわ〜……おほほほほ」

 笑ってごまかすペリーヌさんに対して、バルクホルン大尉のお説教が始まった。
 その様子にわたしとハルトマン中尉は顔を見合わせて苦笑するばかり。
 まだ501が解散してからそんなに時間がたっているわけでもないのにやけに目の前の光景を懐かしく感じてしまったわたしは、ティータイムの準備を行う事で感情をごまかす。
 そして思った。

 またいつか、近いうちに全員で同窓会みたいなものをひらけたらいいな、って。




以上となります。
書き上げてみれば60kbに迫る長編になっちゃいました。
頭から読んでみて戦況のシーソーゲームに少しでも手に汗握って頂ければ幸いです。
この話し書いた切欠はいつかのスレのどこかのレスで「リーネって惚れる役ばかりで惚れられる役が少ないね」
っていうのだった気がしますが、気がつくとそういう要素が薄くなってましたゴメンナサイ。
本当はもっと百合展開にしようと思ってたんですが、気がつくと戦闘描写ばかりに力が入ってました。
初めはペリーヌ&リーネの台詞以外を極力排除する予定だったんですが、
結局そこも戦闘描写優先で無線での他キャラ台詞が増えてしまいました。
ちなみに奮戦するFw-190のペアはハンナ・ルーデルとアーデルハイトのつもりだったりします。
本人Fw-190でエースになってたりしますしw
あと、魔法の設定とかは勝手にいろいろ妄想してるんでそういうもんだと思ってください。

それはそうと冬コミで発売予定の【アフリカの虎】にwktkがとまらないっす!
451名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 13:58:34 ID:kS7AOtUO
GJ!といいつつまだ読んでないけど、後書きにものすごく同意したw
否定的な意見が出るとつい反骨精神が働いてしまうよな

てかもう479KBか、はやすぎだろ…
自分が帰るまでに容量残ってますように。こんなん埋めじゃないと投下できない
452名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 14:32:04 ID:hCoRim0i
>埋めじゃないと投下できない

…全裸で待ってる!!
453名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 14:38:00 ID:2L6uJDUK
>>450
自然の雷操るとかもうどこの勇者ですか。こういう戦闘メインの話もいいなぁGJ!

>>451
埋めネタwktk
454名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 15:06:35 ID:K3c1Myh7
>>450
待ってたよー!相変わらず戦闘描写がわくわくするなあ
指揮官ルーデルさんだったのか。年齢が…と思ったけどあの人なら人外だし定年なんてどうってことないなw

しかしこのペリの真トネールはラナリオンからのライデインを思い出すな…w
とにかく面白いもの読ませてくれてありがとう
455名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 17:42:26 ID:dQe1xYe3
埋め支援

まだ早いか
456名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 17:43:19 ID:0jXTsHAv
>>450
激しくGJ! 戦闘描写が素敵過ぎです。
読んでてどきどきしました。
457名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 17:56:24 ID:PfpF5xyJ
レイピア俺も使わせてあげたくて書いていたけど、こんな立派なの読んだからもういいやって気がしてる
かなりの力作だった。やはり戦闘は良いものです。
458名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 17:58:02 ID:z+0m4A4x
エイラが百合娘なのはムーミンの作者をネタにしたからかね?
459名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 18:20:08 ID:zU7YHNko
恥ずかしがり屋のエイラに、「ねぇ、エイラ。 こっち向いて」って歌うサーニャが浮かんだ・・・。

『ムーミン谷の彗星』の原作の薄気味悪さはガチ。
460名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 19:00:30 ID:tnNfCD2v
帰ったらもう次スレの季節か
今晩中には行きそうだな
埋めネタ間に合ったら書いてみるかな
461名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 19:21:15 ID:dQe1xYe3
なんか絵を描こうと思うんだがネタが無い
どんなんがいいだろうか・・・
462名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 19:22:57 ID:cgQ9relh
463名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 19:48:10 ID:vkTpiFMe
とりあえず次スレ立ててくるわ
464名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 19:53:42 ID:vkTpiFMe
ERROR:新このホストでは、しばらくスレッドが立てられません。
またの機会にどうぞ。。。

無理だった、誰か頼む
立ち次第埋める
465名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 19:59:14 ID:/qk77Xqp
じゃあ俺が行って見るぜ?
466名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:02:15 ID:/qk77Xqp
──リレーSSの手引き──

★基本ルール
○始める時は、リレーSSであることを宣言する。
○続ける人は宣言は不要だが、一行目に継承元の安価をつける。
○ただし、結末を書く場合は「次で終わっていいですか?」と訊いておく。
○継承先は指定できない。誰かが早い者勝ちで続きを書く。
○ただし自分自身の続きは書かない。最低2人は挟んでから。
○2レス以上にまたがらない。1レスでクールに。
○重複したら先に書いた方を優先する。
○作者名は名前欄に入れる。名無し希望は未入力でも可。
○リレー進行中は他のリレーは開始しない。
○もちろん普通のSSは、リレーの状況に関わらずどんどん投下してください。

★本文と書式
○語り手や文調はできるだけ継承する。唐突な視点変更は避ける。
○誤解を招きやすいため、科白にはキャラの名前をつける。(例:芳佳「おっぱい」)
○後に文が続く事を意識して、できるだけ色々な取り方ができる終わり方にする。
○「駄文失礼〜」「お目汚し〜」等の前書きやあとがきはナンセンスなので付けない。

★心構えと方針
○無理して面白くしようとしない。ナチュラルに妄想を爆発させるべし。
○不本意なカプの流れになっても泣かない。むしろ目覚めるべし。
○展開を強要したり口を挟まない。流れに身を委ねるべし。
○なかなか続きが来なくても焦らない。気長に有志を待つべし。
○多少の誤字脱字、設定違反、日本語おかしい文章には目を瞑る。スルーすべし。
○参加者はみな平等。新兵もエースもリレー主も一切特権はない。仲良くすべし。
○男はいらねえんだよ!ふたなりネタも自重すべし。
467名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:05:46 ID:/qk77Xqp
すまん。
テンプレ書いてたら誤爆したw。
次スレで許してくれ・・・。

http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1229338863/
468名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:08:57 ID:OkCSBx9E
スレ立て乙乙
飴ちゃんをやろう
469名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:10:04 ID:vkTpiFMe
>>467乙!どうもありがとう
と言うわけで埋めます。多分大丈夫だと思うが6レス続く予定
470名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:11:03 ID:vkTpiFMe
※埋め・絡み有 part9(No.0388)とpart12(No.0496)のネタのエイラ視点的なカオス

今日もまた、夜間哨戒に出掛けるサーニャを貼り付けたような笑顔で見送る。いってらっしゃい、どうか
無事でな。夜の空にその姿がかすんで消えていって、雲の向こうに行ってしまうと、ようやく私は目を
落とすことが出来るのだった。
がらん、とした静かな格納庫を見渡す。私のほかには誰も居らず、頼りない明かりがじりじりと音を立てて
いるだけ。

(今日はいないのか)

心のどこかで「今日はいてはくれないものか」と期待していたのに、こんなときに限って彼女は現れる
気配さえみせないのだった。普段はこっそりと扉の向こうで待っていては、サーニャの見送りを終えるや
否や私が拒絶の意を伝える暇もなく引っ張っていくのに、どうして来て欲しい今に限っていてくれない
のだろう。そんなわがまま染みた気持ちを内心で呟くと、己の愚かさに自嘲的な笑みがこぼれて顔が
ゆがんだ。

頭の中ではまだ、今朝のできごとがぐるぐると回っている。夢幻であったらいい、私の邪な気持ちの
生み出した虚構であったなら。そう願ってやまないのにそれが紛れもない現実だと言うことは私の
からだから肩と腕とてのひらとを通して繋がった指先が、明らかな感覚として知覚していた。

胸の奥深くに閉じ込めた何かが、暴れ出したいとうなり声をあげている。「話があるんです」と私の手を
引く彼女にいつもは嫌々ながら付いて行くのに、今日はむしろ導いて連れて行って欲しい。そうして心の
鍵を開いて欲しかった。でないとどうしようもなくなりそうだったから。

淀んだ気持ちばかりが胸にどんどんと積み重なっていって苦しくなる。
全て吐き出すから、ねえどうか受け止めてくれませんか。君でないとどうしようもないんだ。こんな感情、
他の人だと受け止め切れないほどなんだ。

ふと思い立って、右手の人差し指で舐める。手は洗ったつもりだけれどあの生ぬるい感覚は指をついて
離れないのだった。サーニャの中に入り込んで、サーニャの中をかき回して、サーニャを何度となく
イかせたその指。
けれどそれは私の意志でなく、サーニャの意思によってであって。つまりそこには愛はおろか情もなく、
あるいは、性欲処理と言い切ってしまってよかったのかもしれなかった。

彼女が自慰を覚えたのはどのくらい前だったろう。まだ肌寒い頃であったような気もするけれど、正直な
ところよく覚えていない。けれどもただひとつ確かに言えることは彼女はそれまでは、そんな行為など
知らなかったのだろうということだ。

今朝の彼女は一段と激しかった。私の耳元で荒い息をついて、切ない鳴き声を立てて、私の手で自らの
股間をまさぐって、ついには直接中までかき回して…彼女はきっと、そんな快感が人にあることなど
知らなかったろう。そしてそれが人間が掴み取ろうと躍起になってやまない欲求の一つであることなど、
今まで知らずに育ったのだろう。
だからこんなに純粋無垢に、それを求めようとする。背徳感など湧き出るはずも無い。彼女はそれが
罪であるだなんて、欠片も思っていないのだから。
行為を終えると彼女はいつも部屋を後にするけれど、たぶんそれは果てた後で我に返ってああここは
私の部屋ではないわとようやく認識するからに違いないのだった。

(しょっぺえ)

あれだけ手を洗ったんだ、舐めた指がすこし塩っぽい気がするのは恐らく単なる気のせいだ。むせ返る
ような牝の匂いを感じるような気がするのも、たぶん嘘っぱちでしかない。ましてやそれがサーニャの
ものだなんて、そんなこと。けれどそう想像するだけで高鳴る自分の心臓が、醜くて情けない。
471名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:11:34 ID:vkTpiFMe

最初はただの偶然だと思っていたその行為だった。意識する自分が穢れているのだと、そう信じてやま
なかった。私が仰向けに寝ていて、寝ぼけた彼女が温もりを求めてそれに寄り添うのなら、指が彼女の
ソコに当たっても致し方ない。そう思っていた。

けれどそれは違っていた。もしかしたら寝ぼけているからいつもは抑えている欲求が無意識に出て
しまったのかもしれないけれど──それでも、彼女は明らかな意思を持って私の指をソコにこすり
付けているのだった。そのうち彼女の寝巻き用のショーツが湿り気を帯びるようになり、明らかに何かの
液体で濡れ、こすれるたびにくちゃくちゃと水音を立てるようになって──そして、今朝、ついに直接
触れてしまった。それは紛れも無く、彼女の中からあふれ出た愛という名前をつけられた液体だった。
つまり、それこそサーニャが性的興奮を抱いて、さらなる快楽を求めて、その行為を行っていたという
何よりもの証拠で。

いつの間にか慣れてしまった能面で、混乱を押し隠しながら自室への途につく。けれど頭の中では朝
からずっと、まともなことなど何ひとつ考えられていなくて。ふらふらと夢遊病者のようにあてども無く
基地内をうろついているに過ぎないのだった。誰にも出会わなかったのはある意味幸運だったかもしれ
ない。当たり前か、みんな自室に戻ってそろそろ眠りに就こうという時間だもの。

そうしてたどり着いた一つのドアを、私はおもむろに開いた。

えいらさん?
部屋の住人が驚愕の声を上げる。彼女はというともう眠るところだったようで、彼女の寝巻きである
ネグリジェを身につけて髪を解いているところだった。けれど私は構わない。構わずに何度押し倒された
か分からない寝台に自分から倒れこんで、シーツに顔を押し付けた。清潔なシーツの匂いの向こうから、
彼女の香りがふんわりと漂う。なぜか心が安らいで、どうしてか頭がくらくらしてくる。

「…エイラさん?」

彼女の気配が近づいて、私にもう一度尋ねてきたけれど私はそれにも答えなかった。ただ寝返りを打って
壁側を向いて、彼女に対して背を向けた。右手で口許を覆う。鼻の辺りに人差し指がちょうど当たる。
先ほどからそれほど時間も経っていないはずなのに、今度はこの部屋の主──リーネの中の匂いが
するような気がする。どうしてだろうな、彼女とであってからはまだ高々数ヶ月で、サーニャのあの行為が
始まったころよりもずっとあとだっていうのに。気が付いたら非日常のなかの日常になっていたリーネとの
営みとも言えないこの行為は、思い出す限り弾みのようなものではじまった。

こっちを向いてください。懇願されるようにいわれたから、仕方なしにごろりと転がって仰向けになった。
ベッドの脇に立ったリーネが、手を突いて私を見下ろしている。

「どうしたんですか?」
「…なんでもナイ」
「サーニャちゃんと何かあったんですが」
「…別になんにもナイ」

そう、なんにも。リーネに聞こえないように繰り返す。彼女のサーニャのあれは、なんでもないんだ。
たとえその行為の最中に私の名前を何度呼んでいたって、それはただ単に目の前に私がいるからで。
だから、意味があるはずがない。あっちゃいけない。サーニャは熱に浮かされているだけだ。初めて
知った快感に溺れているだけだ。──誰もが、私さえもが、それを教えてやらなかったから戸惑って、
罪深いことだとさえ知らずに狂ったように求めているだけ。…だってそうでないと、私の心が持たない
もの。暴れて壊してしまいそうだもの。
472名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:12:06 ID:vkTpiFMe

サーニャが自慰を覚えました。週に何度も私の指を使ってそれをします。私の指で自分の中をぐちゃ
ぐちゃに掻き回して何度も何度も果てるんです。
それよりなにより、どうしてそんなことを他人に説明できようか。そんなことをしてみろ、恥ずかしい思い
をするのはサーニャだ。だからこれは私が解決しなくちゃ、してやらなくちゃいけない問題なんだろう。
親元を離れて戦うサーニャにそれを教えてやれるのは、私しかいないから。

私よりも深い蒼をした、リーネの瞳が微かに揺れる。なんだか悪い予感がして体をひねろうとすると、
その前に両手を拘束されて唇を重ねあわされた。まて、なにすんだ。反論しようと開いた口に、しめたと
ばかりに滑り込まれるざらざらとした舌の感触。空気の供給を失って、頭がさらにくらくらと霞を帯びて
ゆく。

「何しやがるっ」
「…何でもないなら、期待してもいいのかなって。」
「…なにを」

答える代わりにまた、重ねあわされる唇。愛を確かめるというよりは貪り食うようなその口付けの強引さ
に私はいつもうろたえてしまう。だってこいつと来たらおとなしそうな外見と普段の行動にに似合わない、
妖艶な顔でそんなことをするのだ。

そしてほら、寝間着代わりのスウェットの上から、心臓に直接口付けるように鍵を差し込んで行く。

「『今日だけ』ですから。」
…ああ、言われてしまった。いや、言って貰えた。安堵か不安か分からない気持ちが胸を包む。
きょうだけ。その言葉に反応して、心がガチャリと音を立てた。何の音?決まってる、扉の鍵の開ける
音だ。

「…だめですか?」

その『今日だけ』が今まで何度あったと思ってんだ、こいつは。ごちるけれどもそんなのお互いきっと
承知の上。きょうだけ、きょうだけ、きょうだけ。その言葉は、私にとってある意味有無を言わせない魔法の
呪文なのだった。

今日だけなんだ。言い聞かせることでようやく私は明日の憂いから解放される。明日もそうなのか、ずっと
こうしていられるのか、永遠はなのか、それとも明日はないのか。そんなことは考えなくてもよくなる。
とりあえず『今日だけ』は、私はそれを受け入れればいいのだと思えるから。明日のことは明日考えれば
いい。とりあえず今日のところは、それで。自分の先読みできない遠い未来に対して実はひどく臆病な
私は、そうして言い訳をすることでようやく今を受け入れることが出来るのだった。

リーネの言葉を受けても、私は何も答えなかった。ただ彼女の頬に手を伸ばして首の後ろに手を回して、
ぎゅうと引き寄せて抱きしめる。わわわ、と驚いた声を上げながら、けれどされるがままにベッドにあがり
こんで私に重なるように身を委ねるリーネ。きょうだけだかんな。小さく呟く。許しているのは私だけれど、
きっと許されているのも私だった。私のこれからの行為を、リーネはそうしていつも許してくれる。だれが
許さなくたって、リーネだけは。それをどれだけ有り難いと、申し訳ないと、思っているか彼女はしらない。

そう言えば、何度ここで彼女と体を重ねたかは知らないけれどこうしてきちんとリーネを自分から抱き
しめてやるのは、初めてだった。

(やわらかい)

ふにゃふにゃと手ごたえが無くてマシュマロみたいで、力を込めたらつぶれてしまいそうだ、と思う。
つぶしてはいけない、と思うのにこのまま押しつぶしてしまいたい衝動にさえ駆られる。相反する衝動が
ぶつかり合って火花を散らして、霧消して結局何も出来ないまま。
473名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:12:36 ID:vkTpiFMe

えいらさん、と。リーネが3回目の私の名前を呟いた。とてもとても優しい声音。まるで慈しむかのような。
私を無理やり誘って押し倒して、「抱いてください」と迫るのはいつもあちらのほうだというのにどうして
こいつの声は、瞳は、唇は、どこまでもどこまでも優しいんだろう。優しいから悲しくなる。もしかしたら
私の本心をすべて見抜かれているのではないかと怖くなる。

ぐるん、と体を起こして回して彼女の上に来ると、リーネはいつも、ひどくまぶしそうな瞳で私を見やるの
だった。そして私の頬に触れて、エイラさん、といとおしげに呟く。

(エイラ)

その度に、そんなリーネの声にかぶさるもう一つの声がある。金色の髪、翠の目。
5歳年上の、私の先輩。私が始めてこの手で抱いた人。
あれは私がこの部隊に配属されるためにスオムスを発つ前の日の晩のことで、嫌だ、ここから離れない、
と最後の最後まで駄々をこねた幼い私を慰めるように、彼女は自らの体を差し出したのだった。記憶
なんてもうおぼろげでしかないけれど、知識としては知っていても実践なんて伴っていなかった私は
ただ無我夢中で彼女を文字通り『食った』のだと思う。まるで獣のように乱れながら、その人は何度も
何度も繰り返した。あなたの帰る場所はここにあるよ。いつもあなたを想っているよ。あなたの帰りを
待っているのよ。だから大丈夫。私はここにいるからね。
優しい優しい声で、そう囁いてくれたその人の柔らかさを、温かさを、熱さを思い出す度に胸が軋んで
どうしようもなくなる。

だって私は知っていたんだ。かつてはからっきしの『ノーマル』だったという彼女の心を変えた人がちゃん
といて、彼女は本当は、今だってその人のことが大好きなんだって。知っててそれでも彼女を欲した。
だってすごく好きだったからだ。何よりその頃の私はそう言ったことを悪友に聞かされて覚えたばかり
だった。だからたぶん、その人に対する気持ちが敬愛なのか恋愛なのか分からないままに手を出した。
だいすきなひとが自分のしたことであんなに乱れてる。そうして私のことを覚えていてくれる。幼い私は
そんなちっぽけな征服感を得て、ようやく満足することができた。

そんな、初恋の人ともいえたその先輩と同じ表情をして、リーネは私を見やるのだった。可哀想な子、
と言わんばかりの私を見て、そして慰めるように抱かれて。臆病に揺れる瞳に、にこやかな笑顔に、
優しく触れる手のひらに、私はいつも故郷の先輩を思い出していることをリーネは知らないだろう。思い
出して、想って、苦しくなって、その代わりのようにリーネを抱くのだと言うことを。
衣服を剥ぎ取って自らも脱いで、互いに生まれたままの姿になって、彼女の望むままに剥き出しの胸に、
腹に、腰に、尻に、体中に触れて、本能的に高まってゆく体を、最後に下の性器に触れることによる
最大の快楽を持って鎮めていく。
衣服を取り去ると柔らかい体の感触が直接に体に伝わる。そこから甘い匂いさえ漂ってくるようで私は
もう狂ったように彼女を貪るしかない。

声を出すなとリーネに言うのは、隣の部屋の宮藤に聞こえないようにするだけではなかった。ただ私は、
リーネを、その先輩の代わりだと思い知らされたくなかったのだ。サーニャに吐き出せない欲望の吐け
口だとも、思い知りたくなかったのだった。ただ今ここに私と彼女とがいて、彼女が私を求めるから私は
仕方なくそれをしてやる。それだけで十分だった。

あの人も、サーニャも、リーネも。私は全部、大切だった。もちろん他の仲間だって大切で、大切で。
形や色は違えども深い情は抱いていて。
けれども誰一人として上手く愛することが出来なかった。恋愛も親愛も友愛もいつの間にかぐちゃぐちゃ
になって境目が無くなって、どくどくと淀んでいくばかりで。
474名無しさん@秘密の花園:2008/12/15(月) 20:14:01 ID:vkTpiFMe

「リーネ、」
彼女の中をかき回しながら、今夜初めてその名前を呼んだ。快楽に虚ろになっていたリーネの目が
見開かれる。鳴き声を上げながらも首の後ろに回された腕で私の顔をひきよせて、リーネは私に
深い深いキスをした。それが私に対する愛情の表れだったのか、深い慈しみの具象だったのか、私には
知りようもなかったけれど。

えいらさんっ。
また、彼女が私の名前を呼ぶ。私は答えない。黙って、どこまでも柔らかい彼女の胸を、体を、濡れ
そぼったその中を、まさぐってこねくり回してぐちゃぐちゃにかき回していくばかり。

あの人としたかったこと、サーニャにしてやりたいこと、リーネにしていること。みんなみんな同じなのに、
致すベクトルはすれ違うばかりだ。想いと行動が全然噛み合わなくて、私はいつも自分が情けなくて
仕方がなくて目を背ける。逃げるようにリーネを抱く。慈しみ深いこの人は、私のすべてを受け止めて
くれるから。──いや、それはただ単にリーネがそんな人であると、あの先輩のような慈悲深い存在
であると、私がただ単に信じたいだけなのかもしれないけれど。

いつものようにリーネが私の肩に歯を立てる。不意にずきり、と痛むその感覚で私は自分がこの世に
いることを知る。ネウロイとの戦闘では傷ついたことのない、私の体。私の体を傷つけることができる
のはたぶん、今となってはリーネ一人だ。

私の腕の中で快楽の海に溺れて、何度も何度も体を震わせている彼女を愛しいと想うのに悲しくて仕方
がない。ごめん、ごめんよ。何度謝っても言い足りないのだけれど、言ったらこの関係が壊れてしまい
そうで怖くて出来ない。
最後の最後で彼女はいつも、私に深いキスをする。私はされるがままでただ、それを受けているだけだ。
抱くのは私なのに愛さない。そうすることでたぶん私は私の中のバランスをようやく保っているのだった。

ごめん、ごめんよ。でもどうしようもないんだ。君の優しさにつけこんでばかりでごめん。





「なにがあったんですか」
「なんでもナイ」
「うそ」
「…なんでもないヨ、本当に」

いつもはそのまま気を失ってしまうはずなのに、今日のリーネはなぜか意識を手離そうとはせず、
ベッドに倒れこんで向かい合ったまま再び質問を浴びせてきた。

「エイラさんはじぶんにうそをついてると、泣きそうな顔をするんですよ」
「そんなこと」
「あります。だって私とこうしてるとき、エイラさんいつも泣きそうな顔してるから」
「ウソなんてついてない」
「じゃあ、そういうことにしておきますね」

リーネがこちらに身を乗り出して、私の額に唇で触れた。彼女の豊満なバストが目の前にあるけれど
今は触れる気になんかなれない。触れられるわけがない。あんなひどいことをしておいて、直後にそれを
茶化せるほど私は器用じゃなかった。
475名無しさん@秘密の花園

「…リーネは、あんなことされて気持ちイイのか?」
「気持ちいいですよ、もちろん」

あんなに乱れていた、今朝のサーニャ。声を抑えながらも結局は漏らして、何度も何度も果てたリーネ。
おぼろげな記憶の中で、獣のように啼いていたあのひと。
与えるばかりでそう言えば自分ではした事がなかったから、どういうものかと尋ねてみたら案外さらりと
答えは与えられた。そういうものか、と納得するけれど、おそらく自分で触れる勇気はないだろう。
サーニャが一人でしているとき、リーネにしているとき、確かにそこはうずくし濡れもするけれども同じことを
されてイイ気持ちになるようにはとてもとても思えない。

「試してみますか?」
「…いやだ」

自然な動きでリーネが私の胸を包み込んでいく。その手をつかんで押しとどめると、「じゃあまたこんど」
などと言う言葉が返ってきた。今度なんてあってたまるか。今日だけだ、今日だけなんだ。

黙って彼女の裸体に顔をうずめると、むき出しの肌と肌とから熱が通いあって一つに解け合っていく。
温かくて良い心地でとろとろと意識も溶けていくよう。
服、畳まなくちゃ。それとあと、シャワーを浴びて部屋に戻って…

サーニャは、私のことを好きだろうか。だからあんなことをするんだろうか。…まさかそんなはずはない。
あの子はまだ幼いから、初めて知った快楽に呑まれているだけだ。だからいつか教えてやらなくちゃ
いけないんだ。放っておいた責任を持って、ちゃんと私が。そうしないと私のように、きっと後悔すること
になる。
だから壊しちゃいけない。汚しちゃいけない。邪な感情を抱くことさえもってのほか。大切に大切にいだいて
いかなければ、細心の注意を払って接していかなければ。決して穢したりしないように。

ごくり、とリーネが唾を飲んだ。サーニャを私から守るためにリーネにそれを吐き出す。性欲処理としか
呼べない行為を繰り返す、こんな私をリーネはどう思うだろうか。軽蔑するだろうな、と分かっていながら
受け止めて欲しいと願っている私はずるい。でもそうしないとどうかしちゃいそうなんだ、だって。
サーニャは明日も部屋に来るだろうか。けれど今は恐ろしくてしかたない。乱れたサーニャが怖いのか、
歯止めを失いそうな自分が怖いのか、それはわからない。もしかしたらどちらもなのかもしれない。

ぎゅうと子供をあやすように抱き寄せて来るリーネにされるがままに彼女の柔肌に顔をうずめると、
どこか甘い、不思議な香りがする。ああきっとおんなのひとのにおいだ、これは。サーニャからする
鼻をくすぐるような、女の子のにおいじゃない。深くて落ち着く優しい香り。

致した後は罪悪感で一杯で泣きそうなくらいの気持ちでいるのに、こいつときたら何も変わらずに私に
優しい。私のことをどうしようもない子供だと思ってるんだろう、きっと。私がサーニャに醜い想いを抱いて
いるのを知っていて、そんな私をひょいと掬い上げるように彼女は私を求めてくれるのではないだろうか。
私にはどうも、そう思えてならないのだ。いや、そうと信じたいだけなのかもしれないけれど。

きょうだけ。きょうだけなんだから、明日のことは明日考えよう。
だから今日はもう、勘弁してくれないか。休ませて欲しいんだ。おねがい、おねがいだよ。
自分の愚かさを確かめるように肩に手をやると、ズキリと痛んで指先を温かいものが濡らす。いて、
とつぶやいた瞬間リーネの頭が動いてざらざらした温かい濡れたもので指ごと包みこまれた。そのまま
猫のように肩の傷を撫ぜる舌になぜかひどく安堵して私は、深い深い眠りに付くことにした。


明日の憂いも、過去の後悔も忘れて、ただただ『今日だけ』の魔法に魅せられて。



期待してた皆さんマジごめんなさい