ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart10

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1名無しさん@秘密の花園
守りたいから私は飛ぶ!!パンツじゃないから恥ずかしくないもん!

●スタッフ
監督・アニメキャラデザイン:高村和宏     キャラクターデザイン原案:島田フミカネ
シリーズ構成:ストライカーユニット        助監督:八谷賢一
世界観設定・軍事考証:鈴木貴昭        メカデザイン・メカ総作監:寺尾洋之
キャラクター総作監:山川宏治・平田雄三   美術監督:小倉宏昌(小倉工房)
美術設定:松本浩樹(スタジオイースター)    カラーデザイン:甲斐けいこ・池田ひとみ
3D監督:下山博嗣                  撮影監督:江間常高
編集:三嶋章紀                   音響監督:吉田知弘
音響制作:楽音舎                  音楽:長岡成貢
音楽制作:コロムビアミュージックエンタテインメント
アニメーション制作:GONZO
原作:島田フミカネ&Projekt Kagonish(プロイエクト カーゴニッシュ)

●キャスト
宮藤芳佳(みやふじ よしか):福圓美里     坂本美緒(さかもと みお):千葉紗子
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ:田中理恵   リネット・ビショップ:名塚佳織
ペリーヌ・クロステルマン:沢城みゆき      エーリカ・ハルトマン:野川さくら
ゲルトルート・バルクホルン:園崎未恵     フランチェスカ・ルッキーニ:斎藤千和
シャーロット・E・イェーガー:小清水亜美    エイラ・イルマタル・ユーティライネン:仲井絵里香
サーニャ・V・リトヴャク:門脇舞以

●放送局
※放送は終了しました

●関連サイト
公式サイト:http://s-witch.cute.or.jp/
まとめwiki:http://www37.atwiki.jp/strike_witches/
人物呼称表:http://www37.atwiki.jp/strike_witches/pages/50.html
百合SSまとめサイト:http://lilystrikewitches.web.fc2.com/

●次スレ
次スレは>>970or480KB超を目安に、臨機応変に立てて下さい。
必要な事前準備等があれば、>>920or450KB超を目安にして下さい。

●前スレ
ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart9
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1225720167/
2名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 04:16:20 ID:dAs1aKLz
Q.○○書いたんですけど投下してもいいですか?

A.どうぞ、ぜひ投下してください。
条件は「ストライクウィッチーズ」関連であること、
「百合」であることの二つのみです。
ジャンル、エロの有無、本編にないカップリングなどに関係なく、
このスレの住人はおいしく頂いております。
妄想だとか落書きだとか気にせずとにかく投下してみましょう。

ただし、SS専用スレではないので20レスを超えるような長編は事前に断りがあると吉です。
3名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 04:17:12 ID:dAs1aKLz
──リレーSSの手引き──

★基本ルール
○始める時は、リレーSSであることを宣言する。
○続ける人は宣言は不要だが、一行目に継承元の安価をつける。
○ただし、結末を書く場合は「次で終わっていいですか?」と訊いておく。
○継承先は指定できない。誰かが早い者勝ちで続きを書く。
○ただし自分自身の続きは書かない。最低2人は挟んでから。
○2レス以上にまたがらない。1レスでクールに。
○重複したら先に書いた方を優先する。
○作者名は名前欄に入れる。名無し希望は未入力でも可。
○リレー進行中は他のリレーは開始しない。
○もちろん普通のSSは、リレーの状況に関わらずどんどん投下してください。

★本文と書式
○語り手や文調はできるだけ継承する。唐突な視点変更は避ける。
○誤解を招きやすいため、科白にはキャラの名前をつける。(例:芳佳「おっぱい」)
○後に文が続く事を意識して、できるだけ色々な取り方ができる終わり方にする。
○「駄文失礼〜」「お目汚し〜」等の前書きやあとがきはナンセンスなので付けない。

★心構えと方針
○無理して面白くしようとしない。ナチュラルに妄想を爆発させるべし。
○不本意なカプの流れになっても泣かない。むしろ目覚めるべし。
○展開を強要したり口を挟まない。流れに身を委ねるべし。
○なかなか続きが来なくても焦らない。気長に有志を待つべし。
○多少の誤字脱字、設定違反、日本語おかしい文章には目を瞑る。スルーすべし。
○参加者はみな平等。新兵もエースもリレー主も一切特権はない。仲良くすべし。
○男はいらねえんだよ!ふたなりネタも自重すべし。
4名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 06:06:44 ID:zpucLG5o
>>1
おっぱい。
誰も指摘しなかったけど、490越えてたんダナ。ナイスな機転だ。

それはそうと、リレーSSはもうしないのかな?テンプレはあるのに。
5名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 07:26:56 ID:qBwa4NM8
スレ番二桁おめ
6名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 07:43:45 ID:c9p/uK9U
>>1
そして10スレ目オメデトー
7名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 08:45:00 ID:VCWAjQvv
>>1乙!
そして管理人様本当にGJ!
8名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 10:28:18 ID:MeH9xQz0
目測誤って埋め話が途中になってしまった…
9名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 10:33:30 ID:MeH9xQz0
言い忘れていた >>1乙!10スレおめ!
10名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 10:51:45 ID:2v/1IdRI
リーネイラの続き
11名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 11:31:08 ID:BsWtK+YL
>>1乙です
>>8
リーネイラの続きぜひお願いします!
128:2008/11/17(月) 11:36:10 ID:wzA17iB3
>>10,11
出掛けに投下したんで今はできないんだ申し訳ない
アップローダーにはあげたんでうpはできるけど夜にあらためて投下した方がいいだろうか
13名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 16:09:20 ID:h1ygp9Jp
>>12
生殺しは辛いんだぜ
同い年ってイイネ!
14名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 16:56:51 ID:oiDqsvHC
前スレシャーゲルの人GJ!シャーリーもゲルトも可愛いすぎるw
15名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 17:28:15 ID:NNX1x/H0
>>1乙!

保管庫管理人氏乙!
シリーズ物と同一カップリングは被ることも多いと思うからこの二つをまとめて同一テーマを極めた者に対する勲章にして、
ガリアか扶桑のどちらかを複数種のカップリングに対する勲章にあてたほうがよくないですか。
マイナーなカップリングを推進していらん子中隊とかトゥルーデ総受けとかもっと書いてもらえるようにして欲しいんだ。
168:2008/11/17(月) 18:11:38 ID:MeH9xQz0
※前スレ>>415-416のつづき リーネイラで絡み有


愛なんてない、ここにあるのはきっと情だけだ。そうだと分かっているのに狂おしく想って仕方がない。求め
てしまう、やめることなんてできない。大きく声を上げたくて、でもそれはいけないと言われたから仕方なく
言われたとおり彼女の肩を噛むことにした。先ほどつけた赤い跡がまるで華のようにぽつりとある。ごめん
なさい、ごめんなさいエイラさん。ここにも跡、残っちゃうね。残しちゃうね。
だいすきです、ずっとまえから。言いたいけれど、もう、言うことなんて出来ない。

「〜〜〜〜〜〜ッ!!」

彼女の指が私の一番敏感な核を掴むと、かつてないほどの快楽がそこからどっとあふれ出てきて私の
頭の中を白い何かで一杯にしていった。それでもまだ足りないとばかりに与えられる刺激に、休むことなく
私は何回も、何回も連続でイかされる。薄れていく意識の中で、私は必死の思いで彼女の肩から口を
はずして、再びその唇に口付けた。深く深く、舌を差し入れるその行為を受け入れてはくれるのに、応じては
くれない。それをとてもとても悲しいと思ったけれど、いつもどおりの秘めた温かさで私を見やる彼女の瞳の
ほうがよっぽど泣きそうな色をしていて、何も言うことが出来なかった。



そうして、私たちの行為は終わる。少し仮眠をとった後、空が白み始める前に彼女が部屋を出て行くことを
私はちゃんと知っていた。だからいつも私は眠った振りをしてそれに気付いていないかのように振舞う。
ほら、今日も。まだ昇らない太陽を待たずに衣擦れの音が部屋に響く。だって早くしないと彼女の大切な
大切な、お姫様が夜の舞踏会から帰ってきてしまう。何も知らないあの子は可愛そうに、何も知らずに
今日もまた彼女の部屋に潜り込むのだろう、きっと。彼女の首筋に、肩に、残ってしまった跡を見るだろう
か。それを見て何を思うだろうか。

「今日だけだから」は、エイラさんの気持ちの扉を開く鍵だと、私は知っている。
けれどエイラさんはきっと、サーニャちゃんに求められても扉を開かないだろう。そんな気がする。たぶん、
本当に大好きなものはとことん大切にする人なのだ、エイラ・イルマタル・ユーティライネンと言う人は。それ
こそ傷つけるのが自分であったとしても彼女は許しはしないだろう。自分だからこそ、許すことが出来ないだろう。

これから風呂に入って身を清めて、眠りに就きながら彼女は私のことを想うだろうか。きっと何も想わない
だろう。彼女は私を仲間として大切には想うけれど、きっと好きにはなってくれない。私が欲しいと思った
ときには彼女はもうあの子のことばかりを見ていた。その彼女が今朝も来るのだろうかと思いながら、
眠りに就くのだろう。
本当におばかさんだ、あの人は。想いと行動が全くの裏腹だ。人は好きだから愛を営むのに、あの人は
好きだからこそその気持ちを必死で封印する。そのくせなんとも思っていない人にはこんなにも容易く扉を
開いて。馬鹿だ、本当に、馬鹿だ。…そうと分かっていて鍵を使ってしまう、私も。

それでもあなたの体に私の跡が残るのなら、こんなちっぽけな私でもこの世に存在している気になれるのです。
胸をよぎる言い訳じみた気持ちを、伝えたら彼女はいったいどんな顔をするのだろうかと、情も無く扉の
閉まる音を聞きながら私は思った。



上手く埋められるはずだったんだけど失敗した、申し訳ない
誤字がたくさんあったのでちょっと加筆してついでに全体版をうp
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2145.txt
17名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 18:20:38 ID:h1ygp9Jp

D
J
18名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 18:43:10 ID:yd2EBuS5
リーネイラ最高でした・・・
新しい扉が開けた感じ
19名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 19:21:55 ID:tD21B7QN
SSを書いてみようと思うんだが、みんな何に書いてる?パソコンのメモ帳なのかなやっぱり
20名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 19:39:14 ID:9O5XfPeI
もう10スレか
21名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 20:06:46 ID:2HwIvX0q
>>1
リーネちゃんこわーい
22名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 20:09:55 ID:fbeCbIue
>>16
エイラーニャ好きだけど・・・

GJ!!
良かった。
23名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 20:23:04 ID:c9p/uK9U
最近リーネが可愛くてしょうがない
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2280.jpg
24名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 20:28:46 ID:Ly/fapUl
リーネは服のセンスがいいよね
25名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 20:38:41 ID:2HwIvX0q
だが最近芳リネやペリーネSSは少ない事実
哀しいよ〜
26保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2008/11/17(月) 20:53:56 ID:OHdvQ6Lg
なんだなんだ、気付いたら埋まってるじゃないか。2桁スレ到達おめ!!

>>16
前スレの11から密かに待ち続けてた!!これは何とも……ぬうふぁ!!
斬新だけど自然に読めました。リーネはひたすら悩んでるとこが似合いますね。

ところで>>15の件ですが、勲章の内容は個数を見ながら思いつきで決めたのでいまいち冴えなくてすいません。
自分でも早くも「長編は1本1個でよかったかも」とか思い始める始末。やってる本人だとなかなか気付きにくくて……。
何かもっと目標にしやすいような代案があったら提案していただければ採用したいです。
27名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 21:07:36 ID:Ly/fapUl
なんだなんだ、よく見てみたら良作が投下されてるな。

迫力、と言う言葉で表せそうな文章のスピード感があるな。
すらすら読めるというよりは、素早く読まなくては作品全体の魅力が損なわれるというか。
平易な単語を選んで使っているからだろうなあ。
あっという間に、二人の夢うつつの瞬間が過ぎ去るのがが伝わってくる感じ…って言えばいいのだろうか。
真似したい文体だなあ。すごく魅力的だ。

しかし、エイリーネをこれほど違和感無く書けるとは恐ろしい……乙
28名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 21:28:19 ID:h1ygp9Jp
>>26ヲモットホメロー
29名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 21:33:11 ID:YYvJCWiF
本スレに、シャーリーってこれといって弱点ないよな→既製品のかわいい乳バンドが買えない(サイズがなくて)。ってのがあった。内心密かにかわいいブラ着けてみたいと思っているシャーリーカワユス。
リーネと一緒にクィーンサイズ専門のランジェリーショップにこっそり行くといいよ。エーリカ芳佳ルッキーニの尾行に気を付けろ。
30名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 21:53:47 ID:wobVt+k9
あーなんかスランプ気味だ
文がかけねえ
31名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 21:55:44 ID:Ar/bs1Gg
文が描けないなら絵を描いてリフレッシュ
32名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 22:12:59 ID:c9p/uK9U
管理人さんが頑張りすぎて倒れないか心配だw
33名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 22:16:58 ID:RN3hCQ7x
前スレのシャーゲル「ドロップ」完結乙でした!!!
終わってしまうのが非常に残念だ…またシャーゲルも書いてほしいんダナ。

Mなゲルトと尽くす女シャーリーに萌えた。
ゲルトからやっと好きと言ってもらえてシャーリー良かったね。
ほんといい終わり方でした。終わってほしくないけどw
34名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 22:17:13 ID:2HwIvX0q
>>32
知らないの?管理人さんは既に五人目


おっと来客か、珍しいな
35名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 23:28:19 ID:wobVt+k9
>>34
っちょww

いや、とにかくGJすぎですよ管理人さん。
それでいてイイssも書きなさるという…
36名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 23:35:43 ID:MeH9xQz0
>>27
いや、朝起きて容量ギリギリなのに気がついて2時間で書いたからそこまでのことは考えてないw
簡単な言葉ばかりなのは語彙が足りないだけだと

よし、次の埋めネタでも考えるか
37名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 23:50:28 ID:QCoblTRc
今さらながら埋め乙

リーネイラがここまでとは…
エイラは「女の子にモテモテになりてー」って言ってるけど
実は既に本人が気付かないだけでモテモテなんじゃないかと思えてきた
38名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 00:04:57 ID:Y9+Wd8aw
それに嫉妬するサーニャ×エイラならなお良い

シャッキーニと芳リーネが不足してきた
保管庫何回見直しても飽きないけど
39名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 00:15:10 ID:Prq4POWD
ざっと思いつくだけで
エルマ、ニッカ、サーニャ、ゲルト、
エーリカ、ヨシカ、ペリーヌ、リーネ

ダイヤのエースは伊達じゃナイナ
40zet4j65z:2008/11/18(火) 00:22:10 ID:vTdXnwOd
新スレ乙&二桁突入オメ!

管理人さん超乙! じっちゃんの勲章の量に笑いましたww

ドロップ完結乙!
誰かの妄想に刺激されて悪ノリで書いたスピンアウトが本編に還元されてオチになるとはwww
ドロップ大好きだったんで感激です。

他のSSもGJ!
41名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 00:23:07 ID:5vVp4lp/
エイラーニャ前提のエイラ×誰かは他にはない背徳感とかそんな感じのものがやばい
42名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 00:34:44 ID:9/JAo4aN
トゥルーデが全員から被撃墜達成の日を心待ちにしているんだ…
あとSSきてないのはリーゲルとペリゲルくらいかな?
誰かやってくれないかなぁ…

最近、シャッキーニや美緒ミーナやエイラーニャ読んでても、
ゲルト混ぜてやってくんないかな〜とか思ってしまう自分ガイル…
もう病気かもしれない……orz
43名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 00:39:53 ID:yr+g1gdx
エイラーニャ前提でエイラが他のキャラと絡むとサーニャがかわいそうでかわいそうで…
サーニャをむしろ他のキャラと絡ませて欲しいところ
ミーニャとか、シャーニャ、ルッキーニャとかいいと思うんだ
44名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 00:40:57 ID:gKVy7YE0
ルッキーニャはよさそう
45名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 00:44:10 ID:KrDkIWnY
夜になると活発になります
46名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 00:46:28 ID:i/Zj1zKC
朝になったらSSがいっぱい投下されているのを信じておやすみなさい
47名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 00:48:38 ID:q8H0zN4o
たいてい異色カプ書くときは前提は考えないようにしませんかね?
以前自分がシャーリーネ書いた時は芳リネもペリーネも一切なかったことにしましたわ
前提しちゃうと元の相手がかわいそうでかわいそうで仕方がないし・・・

まあその辺から生まれる背徳感が堪らないというのもあるのでしょうが
その背徳感を書き切れる力が自分には無いからたいてい逃げてしまいますね

その点>>16様の作品は素晴らしい作品だと心底思います
48名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 00:58:40 ID:6r6aGbKv
>>42
エイラとルッキーニの記憶が俺にはない
ネタはあったけどssもあったか?
49名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 01:05:32 ID:KrDkIWnY
エイラさん大人気
50名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 01:14:56 ID:q8H0zN4o
本スレだと変態お姉ちゃんとして名を馳せ、スキンシップの名の下に妹達を凌辱しているというのに
こちらでは誰しもから撃墜される、ツンツンで無骨だけどヘタレで可愛い受けキャラなトゥルーデお姉ちゃんの不思議


・・・全くどっちも最高だぜ・・・
51名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 01:14:55 ID:mPNJpxzX
>>1乙!どうもご無沙汰です、21X2w2Ibです。
ご無沙汰じゃねえよと言われるかもしれませんがそう言うことにしといてください
ペリエイラの続き(番外編)投下します。
52「mix-turegret」-5' 21X2w2Ib 1/5:2008/11/18(火) 01:17:08 ID:mPNJpxzX

幕間2―雨のち嵐、ただしところにより快晴


あのう。
恐る恐るその、私にとっては上官に当たる、各国のエースの皆さんに語りかけたらハルトマン中尉が振り向いて、
にっこりと笑ってサムズアップした。ごめんなさい、全く意味が分かりません。

「よしかちゃぁん…」
困り果てた私は、私が顎を頭に乗せるようにしてすぐ下にいる芳佳ちゃんに語りかける。芳佳ちゃんなら、
たぶん、この気持ちを分かってくれると思ったから。…だって大切なお友達だし、階級も一緒だし、あと、あと…
ああ、ても、共通点をいくら並べたって仕方がない。だって、私と芳佳ちゃんは、全然別の性格をしているんだ
もの。同じ性格をしていたらきっとつまらない。だから芳佳ちゃんと一緒にいると発見がたくさんあって、楽しい
んだから。

「リーネちゃん、これはこの部隊の一大事なんだよ!すっごく大切なことなの!」
…たぶん!
どこから溢れてくるのかわからないその自信でもって、やっぱり私に親指を立ててサムズアップしてくる芳佳
ちゃん。ねえ、変に毒されていたりしないよね。心配になるけれど、尋ねてもきっと「そんなことないよ」と笑う
んだと思った。…もしかして、むしろこの調子について行けない私がおかしいんだろうか。…そう尋ねたら、
「もちろん、」とハルトマン中尉辺りに「やっと気付いたのか」なんて言われそうで止めておくことにする。

「でもお、だからってこんなデバガメみたいなこと…」
「わかっていないなあビショップ軍曹!これは名誉ある任務だぞ!大いなる正義の前では小さな過ちなんて
シャーリーの前のペリーヌに同じなんだ!」
呟いたら、即座に返ってくるささやき声の答え。…任務とか言っている割に妙に目が輝いてませんか、ハルト
マン中尉。あとやっぱりおっしゃっている意味がわからないです。もしかして胸ですか、胸なんですか。「リーネ
の下の宮藤でもいいけど!」なんて笑うと、恐らく意味がよくわかっていない芳佳ちゃんが「それってそのまま
じゃないですか〜」と笑う。…芳佳ちゃん、たぶん馬鹿にされてるんだよ。けどそう言うハルトマン中尉だって…
いいや、あえて口にしないでおこう。

「ね、これは正義なんだよ。トゥルーデもそう思うよねえ?」
「…しるか」
自分の押しつぶしているバルクホルン大尉に尋ねるハルトマン中尉。当の大尉は中尉に体重を掛けられて
いるせいか、それとも他に理由があるのか、不機嫌そうに答える。うう、怖い。その横には「あたしの前の
ペリーヌ??」なんて首を傾げてるシャーリーさんと、それにおんぶされるようにして半分眠っているルッキーニ
ちゃんがいて…ああ、もう、何だかまず人がたくさんいて説明するのも大変。
助けてお姉ちゃん、なんて今はどこの戦場にいるのか分からない姉に呼びかけた。もう長いこと会えていない
けれど、私の自慢のお姉さんです。…え?なあに芳佳ちゃん?遠い目をしてどうしたの、って。だってこんな状況、
現実逃避もしたくなっちゃうよ。

場所は、ハルトマン中尉の部屋の前。閉ざされた扉に私と芳佳ちゃん、シャーリーさんとルッキーニちゃん、
ハルトマン中尉とバルクホルン大尉の6人で、耳をそばだてて中の様子を探っている。
中にいるのは、同じ部隊に所属していて、実は私と同い年さんだったりもするエイラさんとペリーヌさん。…もっとも
、私の方があちらよりも半年ほど誕生日が遅くて、しかもまだウィッチとしても駆け出しの私に比べてあっちの
二人はその歳でもうそれぞれの原隊のトップエースだったりして…私はいつも、彼女たちよりも一歩引いて
しまうのだけど。
がたがたと、物を動かす音が聞こえる。聞いた話ではエイラさんが自分のストライカーを壊した罰としてハルト
マン中尉の掃除を言いつけられていて、ペリーヌさんがその手伝いをしているのだとか。…そっか、さっき
話したときエイラさんが勘違いしてたのはこっちのことだったんだ。心配そうに格納庫を見ていたのも、その
格納庫の中がちょっと騒がしかったのも。

53「mix-turegret」-5' 21X2w2Ib 2/5:2008/11/18(火) 01:19:21 ID:mPNJpxzX

さっきのことを思い出して、はあ、とため息をついた。なんであんなことしたんだろう、と胸の中は後悔で一杯だ。
今思い出しても恥ずかしい。
その表情を、シャーリーさんは容易く読んでしまったらしい。

「にしても、リーネのあの怒りようは見物だったなあ」

からかうようにけらけらと笑うのは、私がエイラさんに一方的に話をしている最中にミーナ中佐と一緒にやって
きたのがシャーリーさんとルッキーニちゃんだったから。…ルッキーニちゃんが起きていなくて良かったかも
しれない。シャーリーさんだけならともかく、ルッキーニちゃんと二人でからかわれたら私はもう、恥ずかしくて
恥ずかしくて部屋にこもってしまいそうだ。

「あああ、あれはっ!言わないでくださいシャーリーさんっ」
「え、なになに?」

目を輝かせて尋ねてくる芳佳ちゃん。ハルトマン中尉とバルクホルン大尉も「どうしたんだ?」と言わんばかりに
私を見る。私は恥ずかしさにただ縮こまるだけ。…もちろん真下には芳佳ちゃんがいるから、その背中に胸を
強く押し付けることぐらいでしかないけれど。

「エイラ相手とは言え、あんなにすごんでるところ初めて見たなー」
「あ!もしかして、ご飯食べたあと…」
「ううう…聞かないで芳佳ちゃん…」
「えー、聞かせてよー」

「エイラの様子がおかしい」。言い始めたのはハルトマン中尉だった。そう言えばこないだの朝から…とそれを
次いだのが芳佳ちゃんとバルクホルン大尉。はじめは小さな小さな種だったそれは、みんなで情報を交換
しあうにつれて確信へと変わって行った。
昨日隣り合って空を駆りながら、どこかぼんやりと考えごとをしていたエイラさん。よく思い出すとペリーヌさんも
そうだった。いつも怒っていたりいたずらをしたりをしては場を沸かしている二人がそろって黙りこくっていると
基地はひどく静かで、すこし不安に思えるほどで。大きな怪我こそ無かったものの、普段は悠々とどんな
攻撃も避けるエイラさんがひどく危なっかしい動きをしていたり、ペリーヌさんもペリーヌさんで納豆をおとなしく
完食したりと、不審な行動ばかりだった。

これは何とかせねばならない。今こそ我らが立ち上がる時だ!そう豪語するハルトマン中尉を中心として
『ブルーダイヤ緊急対策委員会』が発足したのが、昨日の晩。…とは言ってもその本人が直後に早速任務
放棄をして居眠りを始めてしまったから、実質的にはバルクホルン大尉とシャーリーさんが話を進めていた
ようなものだったけれど。
そこで決まったのはまず「ミーナ中佐と坂本少佐が気付く前に解決しよう」と言うこと。別に除け者にしよう、
って言うことじゃなくて、余計な心配を掛けたくないから。できれば大事にはしたくないから。
ここのところひどく疲れた顔をしている二人は、どうやら夜も仕事におわれているらしい。…できることなら私も
手伝えたらいいのだけれど、まだまだ駆け出しの私にそんなことができるはずもなく。
だから私たちで何とかできるようなことはそうしたい。役に立てないのならせめて迷惑はかけたくない。そんな
一心だった。少なくとも私は。

何がどうなってこんなことになったのか、全然わからないからまずは情報を集めなければ。話の途中で眠って
しまったルッキーニちゃんを除いた(ハルトマン中尉はバルクホルン大尉に叩き起こされた)話し合いは結局
そこに落ち着いて、6人を3組に分けて、エイラさん、ペリーヌさん、そして重要参考人としてエイラさんの動向
には詳しいであろうサーニャちゃんにそれぞれ話を聞くことになった。決行は明日。つまり、今日。

「…だって、サーニャちゃんが可哀相で、私…」

思い出せばすぐに浮かぶ、サーニャちゃんの悲しそうな顔。ノックをして入り込んだ薄暗い部屋のなかで、
当然のごとく一人きりでベッドの上にいたサーニャちゃんはその瞬間ひどく明るい声で「エイラ!」と叫んだ。
けれどその直後、ぱあっと暗がりの中で輝いた顔が、途端に曇るのを見た。それだけで私も芳佳ちゃんも、
何も言えなくなってしまったのだ。だって、大切な大切な人がいつまでも帰って来ない寂しさを、私たちはよく
知っているから。遠くファラウェイランドの飛行学校に行った姉を、軍に招聘されてブリタニアに行ってしまった
お父さんを、待ちわびていた日々のことを。

54「mix-turegret」-5' 21X2w2Ib 3/5:2008/11/18(火) 01:21:50 ID:mPNJpxzX

ねえ、何があったのか知ってる?
そんなこと尋ねられるわけがなかった。だから、ふたりでただサーニャちゃんの傍らに座って、何も言わずに
彼女をなだめることにした。
エイラが変なの。いつもと違うの。きっと私のことを嫌いになったの。
誰かにこの不安を打ち明けたかったのかもしれない。しばらくするとそう、絞り出すようにサーニャちゃんは
言った。言葉をつむぐと同時にぽろぽろと流れ落ちる涙をハンカチを差し出して拭ってあげても足りないくらい、
サーニャちゃんの悲しみは深くて、どこまでも深くて。その流した涙で悲しみの海が出来てしまいそうだ、
なんてことを思った。
なら、溺れてしまう前に助けてあげなくちゃ。今それが出来るのは、私たちしかいない。

「私のことを嫌いになったの」、なんて。

そんなはずない。サーニャちゃんが悪いわけない。「ひとりになりたい」と言うサーニャちゃんの部屋を後にして
芳佳ちゃんとふたりで少し昼食を食べながらそんなことばかり考えていた。エイラさんに話を聞かなくちゃ。それ
で頭がいっぱいだったから、目の前にあった山盛りのふかし芋がいつの間にかごっそり無くなっていても気付か
なかった。あれ?いつのまに私こんなに食べたんだっけ?そう首を傾げたら芳佳ちゃんは苦笑いをしていたけれど。

「そ、そんなことより、さっきハルトマン中尉、サーニャちゃんに通信機渡してましたけど…一体何に使うんですか?」

…ともかく、あの時の私は相当頭に血が上っていた。エイラさんの担当はシャーリーさんたちだってちゃんと
聞いていたはずなのに失念していた。そんな自分が恥ずかしくて仕方なくて、話題を変えるように別の話を振る。
私たちがここにやってくる前の話だ。エイラさんに言われたとおり、サーニャちゃんに付き添っていた私の
ところに、嵐のようにやってきて、私を掻っ攫って嵐のように立ち去った。サーニャちゃんは訳がわからない、
といった様子で目をぱちくりさせていたっけ。…もともと普段から私たちとの接点も少ない子だもの、しかたない。

「ん?ああ、あれか。トゥルーデがくれたんだ。まだきっとたくさん持ってるよ。」

トゥルーデ機械オンチなのに物好きだよねー。と人事のように笑う中尉。直後、その真下から懸命に声を殺した
怒鳴り声がこぼれた。

「バカを言うなっ!!お前の部屋からみつかったんだぞハルトマン!!通信機は貴重な備品なんだから、
 使い終わったらちゃんと元の場所に返却しろといつもいつも言っているだろ!」
「まー、いいじゃん一回くらいー」
「一回ぐらい、じゃないっ!いくつ見つかったと思ってるんだ、5個だぞ、5個!!」
「おかしいな、その倍はあると思うんだけど…」
「なっ!!お、お前…!!」
「まーエイラたちが見つけたとしてもせいぜい3つだよね。2個はきっとスイッチ入ったままベッドの下にでも
転がってると思われる!」

わっはっは!坂本少佐を真似るようにして誇らしげに笑う中尉に、がっくりうなだれるバルクホルン大尉。
私たちは苦笑いするばかりだ。この人には敵わない。その場にいるルッキーニちゃん以外の誰もがそう
思ったのは確実だった。なぜって、ルッキーニちゃんは今もやっぱりおやすみ中だから。

「ま、きっと面白いものが聞けると思ってね」

バルクホルン大尉の背中に頬杖をついて、締め切られた扉をみる中尉。いたずらっぽそうな輝きが途端に
柔らかくなる。いつもは中尉の一言一句すべてに言い返さないと気が済まないと言ったようなバルクホルン
大尉も、この言葉には何も言わなかった。
窓の外を見やるともうすっかり暗くなっていて、冷たい風が吹き込んでいた。扉の向こうから物音はもうしない。
言いつけられた作業は日が落ちる前に終えたようだった。耳を当てればくぐもったような話し声が聞こえる
けれど、よく聞こえない。
シャーリーさんの話では、ペリーヌさんとエイラさんの間で一悶着あって、それを気に病んでいたエイラさんが
サーニャちゃん構ってあげられたかったのがこうなった原因じゃないか、と言うことだった。その『一悶着』と
言うのが気になって尋ねても「さあなあ、」と笑うばかりだったけれど。
55「mix-turegret」-5' 21X2w2Ib 4/5:2008/11/18(火) 01:24:32 ID:mPNJpxzX

だからこれはショック療法だよ、とペリーヌさんをこの部屋に差し向けたシャーリーさんは言っていた。あから
さまにお互いを避け合ってる二人を無理矢理一緒の部屋に押し込むわけ。とにかく話をさせたら何か変わるさ、
と曖昧に笑いながら。

そうかなあ、と、今だに状況のよく掴めていない私は頭をひねるばかりだ。私の下にいる芳佳ちゃんに「大丈夫
かなあ」と尋ねても「ああ、うん」なんて生返事が返って来るだけ。私よりも小柄なはずなのに「私リーネちゃん
の下ね!!」と言い張った芳佳ちゃん。疲れてないだろうかと思って声を掛けたら「気持ちいいから大丈夫!」
なんてわけのわからない返事。
床が気持ちいいなんて変わってるなあ。でも扶桑では座敷が一般的で、床に座るのが普通って言うから
そういうものなのかも。一人勝手に納得して、扉のほうに注意を戻した。

(本当に大丈夫かなあ。)

もとからそんなに仲がいいとは言えない、むしろ言い合いばかりをしているような二人だけに心配になる。もっと
険悪になったりしないだろうか…

そう思った矢先に、それは起こった。

「それを言うならあなたより少佐のほうがずううううううっと素敵ですわよっ!」

薄っぺらい一枚の木の扉なんてものともせずに、突然部屋の中からその声は響いてきた。扉に耳を引っ付けて、
何とかして直前までの囁くような会話を拾いあげようとしていた私たちは一斉に扉から耳を引きはがす。その
拍子にルッキーニちゃんがシャーリーさんの背から転げ落ちてしまった。寝ぼけ眼をこすりながらきょろきょろと
辺りを見回すルッキーニちゃん。

「ごめん、ルッキーニ!」
慌ててシャーリーさんが駆け寄るけれど、寝ぼけているようで目の焦点が定まっていない。

「何だとコノヤロー!!」

さっきのペリーヌさんの言葉に応酬するように今度はエイラさんの声が聞こえた。一体何が始まったんだろうと
扉を見つめてただただ驚くばかりの私たちをよそに、どんどんと部屋の中のやり取りはヒートアップしていくよう
だった。もう耳をそばだてる必要なんて無い。何だか懐かしいとさえ思えるくらいの二人の大声はこちらまで
すっかり丸聞こえだ。

「…何か起こるとは思ってたけど、これは、予想斜め上、だね」
「…まったくだ。心配して損した…!!」
「ま、まあまあバルクホルン大尉…」
「なんか、聞いてるこっちが恥ずかしくなってくるよね…」

顔を見合わせて、私たちはそのやり取りの感想を述べた。…なんか、もう、「ごちそうさま」としかいいようが
無いのはその内容がお互いの好きな人自慢だったからだ。サーニャちゃんは歌がうまいとか、坂本少佐は
汗が輝いているとか、お互いの話なんて全く聞かないで自分の主張ばかりを延々と繰り返している。

「うにゃ?…エイラとペリーヌ…喧嘩してるの?」
怪我は無いか?どこか打ってないか?そうおろおろしているシャーリーさんの背中に再び飛び乗った
ルッキーニちゃんが、大きくあくびをしながらそう呟く。会話の内容を加味しなければ、確かに喧嘩にしか
聞こえないそのやりとり。
いつもどおりのルッキーニちゃんの様子に一安心したらしいシャーリーさんが「まあ、そうだな」と肩をすくめる。

「えー、二人は仲良しなのに?」
「いや、だからそれは多分違うって…」
「だってこの間ふたりチュ」
「わああああああ!!いうなルッキーニ!!!せっかく丸く収まりそうなんだからっ!!」
56「mix-turegret」-5' 21X2w2Ib 5/5:2008/11/18(火) 01:31:06 ID:mPNJpxzX

何かを言いかけたルッキーニちゃんを急いでその背中からおろして、焦ったようにその口を手でふさぐ
シャーリーさん。もがもがと不満そうに暴れているのもお構いなしに強く口に手を押さえつけて、作り笑いを
浮かべて頭をかく。
「いやー、ルッキーニはまだ子供だからそろそろ寝なくちゃなー。じゃあ、あたしはここで失礼…」
そしてそのままルッキーニちゃんを抱き上げて、立ち去ろうとした、けれど。

「ねえ、シャーロット・E・イェーガー大尉。私、いいこと考えたんだけど」
「な、なにかな、エーリカ・ハルトマン中尉?」
「今晩の夜間哨戒、宮藤とリーネに行ってもらったらどうかな。噂によると、サーニャは今日明日明後日と
お休みなんだ。どうせネウロイは昨日出たばかりだし、明日は私とトゥルーデがやるから」
「あ、ああ、いいんじゃないか。うん」
「うん、だからさ」

じりじりと後ろに下がるシャーリーさんに笑顔で詰め寄って、ハルトマン中尉がその肩に手を伸ばしてぽん、
と叩くと笑顔を浮かべる。…いつの間にか私と芳佳ちゃんが夜間哨戒当番に決まっちゃってるのは…あえて、
ここでは突っ込まないほうがよさそうだ。

「その話、ゆっくりききたいなあ、大尉。それに私の心はまだ傷ついてるんだ、昼間のことで」
「なっ!あたしの部屋で散々ジュース飲んだくせに!!」
「カールスラントのビールじゃなきゃやだー」
「おい、助けてくれよバルクホルンッ!!」
「…すまないリベリアン、せめて同行して骨は拾ってやる。」
「あはははは、みんなみんな喧嘩してる〜。そんなときはチューして仲直りすればいいんだよ〜」

昼間のこと?ジュース?チュー?
ドアの内と外で繰り広げられる言い争いについていけず、私はただただ目をぱちくりさせるばかり。助けてお
姉ちゃん。空を仰いで姉に語りかけても、もちろん答えが降ってくるわけがない。

「二人で夜間哨戒だって!頑張ろうね、リーネちゃん!」
「う、うん…」
「あ、でも、私、まだ慣れてないから…手、つないでくれる?」
「……うん!!」

よくわからないけど、たぶん。
明日の朝になれば全部丸く収まってるだろう。何だかそんな気がするのはたぶん、少し気の早い芳佳ちゃんが
ぎゅっと手を握っていてくれるからだ。なんだかやっぱり現実逃避じみてるけど、手の届かない姉と違って
芳佳ちゃんはすぐ傍にいるもの。この温もりは、今の私にとって確かだ。

「なんとかなるよね、きっと」
「大丈夫だよ!」

窓の外はもう暗い。今日は良く晴れていたから、夜でも外は明るいだろう。多分ネウロイの心配も少ない。
楽しいフライトになるといいなあ。手をつないで歩き出したその瞬間に、頭の中はそれだけで一杯になってしまった。


(つづく)
―――
以上です。とりあえず芳リーネで締めりゃいいと思ってんだろと言われそうだ
あと、前スレで貼られてたエイラーニャとカールスラントリオの絵にコメントを下さった方々もどうもでした。
自分は文書きと思って今までやってきたので絵を褒められるとこそばゆい気持ちになったりします、ありがとうございます。
絵も文もですが、拙くてもつくってくことが大切だ!その作業を好きになれたらこっちのものだ!

エイラーニャはセットで好きだから、無理に他の人とカップリングを作るよりも仲良く絡めたいな、と思う
百合スレ的にはよくない発言なのかもしれないけど、そう言う係わり合いを描くのがすごく好きだ

書き忘れてた、前スレ>>379-383、保管庫0284&0318の続きです。
57名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 01:32:58 ID:GMsVhx1+
GJGJ!

あとこの一文に
>こそばゆい気持ちになったりします、ありがとうございます。
股監督分を感じて吹いたw
58名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 01:39:46 ID:s8EkZieT
GJGJ
続きを期待して待っております
59名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 03:44:54 ID:8XWe4uHw
>>56
私はあなたの文章がすごい好きだな〜、何かこう…キャラが輝いてると言うか…
話の構成がうまいと言うか…エイラーニャがすばらしいと言うか…
うまくいえないが、とりあえずこれからもがんばってください
続き期待して待ってます。
60名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 07:08:20 ID:8ScQXL9f
クロウカシスの虜の続きはまだかー
61名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 07:26:57 ID:TDnyp7gM
>>60
一緒にwktkして全裸待機だ
62名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 07:47:44 ID:KrDkIWnY
朝起きたら 21X2w2Ibさんが投下してる
今日は朝から頑張れそうだ
63名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 07:59:01 ID:i/Zj1zKC
起きたらSSが投下されていた
今日はいい日だ
64名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 08:22:21 ID:jwF6S+1b
全裸待機。
それは変態紳士の正装。
65名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 08:29:31 ID:5vVp4lp/
最近ストパン関連はこのスレしか見てないな
66名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 08:42:36 ID:6r6aGbKv
>>60
知らないのか?作者はあれで実のところ6代目だった
つまり一話投下するごとに引退してるって寸法だな、きっとまだ後任が決まってないのさ
67名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 08:45:51 ID:ACODwo19
本スレの画像を見て髪が伸びた美少女エーリカにドキッとしちゃうゲルトというのを思いついたが
すぐお姉ちゃんパワーを発揮して「風呂上りはきちんと乾かさんか!」とかなりそうだな
68名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 10:15:22 ID:mxTTnzhm
勢いで書いたSS有るんですが投下OKでしょうか?
あまり百合ではないかもしれませんが・・・。
69名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 10:25:05 ID:QwKqqjeE
板違いじゃなければおkおk、ばっちこい!
70名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 10:45:56 ID:mxTTnzhm
ではいきます。初なんで緊張しとります。だいぶ長くなるかもしれないです。
わりと珍しいと思えるエイラ×シャーリー、サーニャ×ルッキーニの組合せで。
タイトルは「shattered skies」で。
71shattered skies 01:2008/11/18(火) 10:51:41 ID:mxTTnzhm
その日は珍しく、501統合戦闘航空団は開店休業状態だった。
ごく数名を除いて、隊員のほぼ全員が酷い風邪にかかってしまったのだ。
だがそんな時に限って、ネウロイの行動は活発化する。
「最近、夜間におけるネウロイの動きに変化が見られるわ」
マップを示しながらミーナが言った。言葉の所々に咳が混じる。
「と言う事は、また暫く夜間戦闘を想定したシフトを組む方が良いか」
扶桑から持ち込んだどてらをがっつり着込んだ美緒がミーナに問う。
「と言いたいところだけど……」
ぐだぐだの一同を見回して、指揮官ふたりは溜め息をついた。
そして咳き込み、ぶるっと震えた。

「でさー、あのぺたんこったら酷いんだよ。シャーリーのストライカーの
チューンがイマイチだとかなってないとか文句たれてさー」
「……」
ブリタニア近海の上空を飛行する、ルッキーニとサーニャ。
現在体調万全でまともに動けるのはこの二人だけ……と言う事で、
ミーナは仕方なく臨時のシフトを組んだ。
他の者はあらかたベッドの上で風邪と格闘中。
寝ている訳にもいかないミーナと美緒も無理矢理厚着し
身体を震わせながら司令所で指示を出していた。
そんな惨状にお構いなしのルッキーニはせわしなくサーニャの周りをくるくると
回りながら話し掛けていたが、サーニャの反応の無さを見て、一言。
「ねえサーニャ聞いてる?」
「……うん」
72shattered skies 02:2008/11/18(火) 10:52:42 ID:mxTTnzhm
つまんな〜い。ルッキーニは大きなあくびをしながら心の中でそう呟いた。
いつもそう。サーニャは無口で、無愛想で。構ってるのは変わり者のエイラ位じゃん。
あー、シャーリー居ればなあ。思わず声に出しかけたが、サーニャの何処か寝惚けた
様な、それでいて真剣に何かを探す顔つきを見て、思わず言葉を変えた。
「ねえ、ネウロイ何処? あたしには見えないけど」
「今は雲の中。動いてる」
「どっちの方角?」
「ここから北北西……いま、北に進路を変えた」
ミーナからの無線で追跡する様指示を受ける。ネウロイに合わせて進路を変更する。
夜戦に慣れない、そもそもあまり夜更かしをしないルッキーニには、直接戦闘の無い
夜間哨戒は酷い眠気と退屈の塊でしかない。
「う〜ん……あたしも一緒に飛ぶ意味あったのかな〜」
思わず口にする。サーニャの返事は無い。
「ねえ、聞いてる?」
「待って」
「?」
突然フリーガーハマーの安全装置を外し、構えるサーニャ。ルッキーニの真横で
吹かされるバックブラスト。一発、二発と立て続けに撃ち込んだ。
雲を裂き、弾頭ははるか先で爆発した。
「ネウロイ? やった?」
「ダメージは与えた。でも様子がヘン」
「ヘンって?」
「ちょっと待って」
サーニャは無線を呼び出すとミーナに報告をした。
「ミーナ中佐。敵にダメージを与えました。でも動きが……」
『サーニャさん、こちらでも動きをある程度把握しているわ。今からそちらに
増援を出すから、それまで持ち堪えて。増援が付近に到着したら、
改めて指示を出すから』
「はい」
『深追いは禁物だぞ、いいな。くれぐれも注意しろよ』
ミーナと美緒から指示が飛んでくる。
「了解しました」
「ねえねえサーニャ。様子がヘンってどう言う事?」
「それは……」
とっさにうまく説明出来ないサーニャに、ルッキーニは苛立った。
「もう、わかんな〜い! もうちょい近付いて、とどめさそうよ」
「え、でも」
「大丈夫、あたし射撃うまいんだよ? ちょっと先行くだけだから平気」
ルッキーニは躊躇うサーニャの腕を取り、ネウロイの後を追った。
突然、二人の周囲を濃い霧が包んだ。
「?」
「なにこれ? 辺りが全然見えない」
「私も……レーダーの反応が……」
「え? どう言う事? 戻る?」
「位置が……」
「ウニャ? ……あれ? さっきまで見えてた星が……」
73shattered skies 03:2008/11/18(火) 10:53:45 ID:mxTTnzhm

「連絡が取れないだと?」
叫んだ直後に豪快なくしゃみをかます美緒。
「今度のネウロイもやっぱりおかしいわ。この動き、絶対何か有る」
ごほごほ、と咳混じりに答えるミーナ。
「呼び戻せるか?」
「無理よ」
「なら、増援組に警告を……まさか、既にこっちも?」

74shattered skies 04:2008/11/18(火) 10:54:29 ID:mxTTnzhm
「う〜、寒いナ」
「当たり前だろう? 雨の中を飛んでるんだから。スオムスじゃこの程度の寒さ
なんて普通じゃないの?」
「そう言う寒さじゃナイ。……て言うか大尉こそ顔赤いけど大丈夫カ?」
「見ての通り、熱くて仕方ないよ。そう言うエイラは顔真っ青だけど」
後発の増援組、エイラ、シャーリーの二人は隊員の中では
比較的症状が軽い(と無理矢理に自己申告した)ので、
ミーナから指示を受け、迷走するネウロイを追撃する段取りで飛行を開始した。
だが激しい雨中、そして二人共風邪っぴきと言う事で、飛行状態は普段に比べて
かなりルーズだった。
「もうすぐネウロイの居るエリアだナ」
「さっさと終わらせて、早く帰って寝たいよ。身体だるいったら」
「……ン? 今指揮所から何か通信が無かったカ?」
「いや? 何にも? エイラには何か聞こえたのか?」
「……おかしいナ。空耳かナ」
通信機の状態を確認する。通信機自体は正常に動いている様だが、肝心の通信……
司令所や遠方の味方との連絡が通じない。
「ただの雨ならここまで通信状況が悪くなる筈無いんダケド」
考えを巡らせるエイラ。思わずぞくぞくと身体を震わせる。
「やっぱ寒い?」
つつと手を握るシャーリー。エイラの手はぞっとする程冷たかった。
「冷たっ!」
「大尉の手が熱いんダ!」
「じゃあ、二人合わせればちょうどよくならないか? どうよ」
「どうよって言われてもナー」
「ほら、おでこもこんなに温度違う」
飛行しながらおでこを合わせる。
確かにエイラの額は冷たく、シャーリーのおでこは真逆だった。
ちょっとキモチいいかも、と錯覚するふたり。
「だあっ! 何やってんダ私達? 早くサーニャと連絡取って」
あたふたと頭を振って慌てふためくエイラ。
「連絡……つうか、隊長から指示が出るから、先行してる二人と合流して
追撃するんじゃないの?」
素に戻って肝心の事を思い出すシャーリー。
「そうソレ! その後!」
「その後? サーニャがやっぱり気になる?」
ふふーん、とハナで笑うシャーリー。
「な、なんだヨ。ルッキーニも一緒だろ? 大尉も心配とかしなくていいのカヨ」
「あ、そうだった! あいつ夜戦あんまし得意じゃなかった気がするんだよなー」
「尚更じゃないカ」
「でも、心配はしてないよ。あいつはあいつで、やるときゃやるからさ」
「ほう。まるでルッキーニの全部を知ってるみたいな言い方ダナ」
ニヤリとするエイラ。
「あんたら程じゃないよ」
気丈に会話しつつも、シャーリーは若干目のかすみを感じていた。雨のせいか、
霧のせいか、風邪のせいか。
ふと見ると、エイラも目をごしごしとこすっては、辺りをしきりと気にしていた。
「エイラどうした」
「いや、何か、いつもの雨と違わないカ?」
「確かに、あたしも妙な感じがする」
「このままでは方位が分からないナ。一旦雲の上に出ヨウ」
「了ぉ解」
二人は勢い良く上昇を始めた。
75shattered skies 05:2008/11/18(火) 10:56:31 ID:mxTTnzhm
サーニャはじりじりとノイズばかり拾うレーダーから、“動き”を捉えた。
「居た」
「どこ? どっちの方角?」
「ええっと……」
星も見えない。いつの間にか方位も見失っている。言葉で指し示す手段が無くなった
サーニャは、ルッキーニに近付くと、指さした。
「ここからまっすぐ、こっちの方角。距離、4500。加速した。上昇してる」
「全然見えないよ〜」
「もう少し上を狙って。私も一緒に撃つから」
「分かった」
「そう、その辺り……あと3秒」
「当たれ〜!」
二人は射撃を開始した。

エイラは激しい悪寒を感じた。横を飛んでいたシャーリーの腕を強引にひっつかむと、
急下降した。
「ちょ、ちょっと、エイラどうした?」
慌てるシャーリー。しかし直後、二人が居たであろう場所に、数発のビームと実弾が
飛来し、通り過ぎ、やがて爆発した。
「な、なんだ?」
「ネウロイ?」
“的”にされぬ様、そのまま腕を組んだ状態でジグザグに飛行する二人。
「とりあえず、礼を言っとくよ」
熱のせいか顔が紅いシャーリーはにやっと笑った。
「ひとつ貸しだからナ」
エイラも青白いながら、いつもの戦闘の時に見せる、精悍な顔つきに変わっていた。

「外した」
「え? マジで?」
驚きを隠せない二人。夜戦で腕を鳴らしたサーニャ、元々遠距離射撃には
絶対の自信を持っていたルッキーニの二人がかりでも、弾はかすめもしない。
「警戒して、不規則な動きに変わった。距離ほぼ変わらず、4400」
「サーニャ、どうする? もう一回撃ってみる?」
「動きをよく見てから……待って、また上昇しようとしてる。そこを狙う」
「もしかしてさ」
「?」
「さっき、指示のタイミングがずれたから外したとか?」
「そ、それは無いと思う」
「わかんないよ?」
ルッキーニは悪戯っぽく笑うと、サーニャと肩を組んだ。ぴくりと肩を
一瞬震わせるサーニャ。
「こうすれば、タイミングもバッチシ。いけるっしょ」
「う、うん……」
「サーニャは」
「?」
「エイラとこう言う事したりしないの?」
「え?」
「肩組んだり、おんぶしたり、だっこしたり、肩車したり」
「……しない」
「まあ、普通に戦う時はフツーに飛んでればいいけど、そうじゃない時もあるし」
無邪気に笑うルッキーニをぽけっとした眼差しで見るサーニャ。
(そう……だから、ルッキーニちゃんはイェーガー大尉と)
少しだけ謎が解けた気がする。
「じゃあ、もう一度行くよ。……方角はあっち、距離4300、次に上昇に転じた所を
狙う……今!」
フリーガーハマーとM1919A6が同時に火を噴いた。
76shattered skies 06:2008/11/18(火) 10:59:01 ID:mxTTnzhm
エイラはシャーリーの手を取り、上昇から突然のロール、そして急降下に移った。
「エイラって案外過激な機動するねえ……うわっ」
念押しのループ。またしても、数発の散発的なビーム、そして数発の実弾が
すぐ脇をかすめる。背後で爆風を撒き散らす実弾があった。
「またかよ?」
「上昇しようとすると狙われる。しかも正確ニ」
「ずっと雲の中に押し留めとくつもりかよ?」
とりあえず回避運動を続けながら周囲を旋回する。
「ありゃなんだ?」
「ネウロイなのカ?」
「でも、実弾も有ったよな?」
「さっきのあれ……、サーニャのフリーガーハマーなのカ?」
「一緒に飛んで来た曳航弾も、なんかどっかで……まさか」
青ざめるシャーリー。
「もしかしてあたし達、ネウロイと、先行してる二人の戦闘に巻き込まれてる?」
「うーん」
「なら離脱した方が良いんじゃない? このままだと誰にやられるか分からないよ」
「それが、妙なんダ」
「何が?」
「私達の方向にばかり来る。ビームもそうだけど、何故か必ず実弾が飛んでくる。
おかしいとは思わないカ?」
「どう言う事だ?」
「この霧と雨……」
エイラに言われて辺りを見回すシャーリー。
「敵も味方も見えない。方角も分からない。おまけに通信もダメ。
そして攻撃だけやってくる。さて、どうするか」
う〜ん、と首を回して少し考えた後、シャーリーは唐突に提案した。
「試しに撃ってみるか?」
M1911A1の銃口を諸々の弾が来た方向に向ける。
「ま、待っタ!」
エイラが腕を引っ張る。
「? なんで?」
「同士討ちの危険が」
「そんな、まさか……」
「私達は、私の先読みの能力があるから、今まで無傷で済んでるんダ。
でもあの二人にはそんな能力は無い。もし当たったら」
「ま、まさか……」
固まる二人。
はっとするエイラ。咄嗟にシャーリーの腰に腕を回して精一杯右に逸れる。
またしても、ビームと実弾が襲い来る。
「大胆な事するね」
感心するシャーリー。なにせエイラが腰に腕を回してひしと抱きしめた状態に
なっている。誰かが見たら明らかに勘違いするであろう格好だ。
「うう……仕方ないダロ。何回貸しが出来たと思ってるんダ?」
「はいはい。感謝してますよっと。今度エイラのストライカー、チューンしてやる
からさ」
「洗濯当番の交代でいいゾ」
「なんかやけに現実的な要求だな……基地に帰ってから決めない?」
77shattered skies 07:2008/11/18(火) 11:00:01 ID:mxTTnzhm
「当たらない」
焦りの色を隠せないサーニャ。その顔色を見て心なしかうろたえるルッキーニ。
「どうしよう。何も見えないんじゃサーニャだけが頼りなのにぃ〜」
「どうして? 反撃してこない……」
思わず呟く。
まさか前と同じ手を? サーニャは、以前芳佳とエイラとの三人で経験した
夜間戦闘を思い出す。同じネウロイだとしたら……。
「ねえねえ、どうしたの? なんか分かった?」
「前に交戦したネウロイも、最初はやっぱり何もしてこなかった」
「じゃあ今度のネウロイもそいつと同じって事?」
サーニャは、分からないとばかりに首を振った。
「もう、どうすんの? その時はどうしたの?」
「色々有って、最後には倒したけど……」
「それじゃ答えになってない!」
「とにかく、私達も、頑張って当てないと。じゃないと……」
「分かった。もう一度撃ってみる? 残り弾数大丈夫?」
「あと四発」
「あたしも残り少ないよ。よく狙おう」
こくりとサーニャは頷いた。
息を整える。サーニャの呼吸が、ルッキーニにも伝わる。
ふと、ルッキーニはサーニャの顔をまじまじと見つめ、声を掛けた。
「サーニャ、何か少し変わった?」
えっと言う顔をするサーニャ。
「昔よりも、少し力強く見えるって言うか……」
よくわかんないけど〜、と最後を締めくくるルッキーニ。
「私達、チームでしょ? ……負けられないから。絶対に」
少し前の出来事を思い返しながら、サーニャは言葉を選んだ。
78shattered skies 08:2008/11/18(火) 11:00:52 ID:mxTTnzhm
いつ攻撃を受けるか分からない状況の中、エイラとシャーリーは
お互いに抱き合った格好で回避運動を続けながら、考えを巡らせていた。
「で、どうすれば良い?」
「私は、反撃には反対ダ。さっきの見たダロ? あの弾、どう見てもサーニャと
ルッキーニのじゃないカ」
「もしかして、ネウロイに操られてるのかもよ? だとしたらどうするんだ」
「ビームも撃って来るのカヨ? そもそも、ネウロイに操られるなんて事……」
ここではっと思い出すエイラ。
数年前、スオムスのカウハバ基地で起きたとされる、ネウロイ絡みの“噂”。
あくまでも噂だが、もしも同じ様な事がサーニャ(とルッキーニ)の身に
起きているとしたら……。もし噂通りの事が起きているなら、サーニャを……
「だ、ダメだ、私は……」
「情けないヤツだなあ」
「じゃあ、大尉は撃てるのかヨ? 仲間を」
エイラの、困惑を超えてある意味懇願の顔で見つめられるシャーリー。
「そりゃあ……その……」
尻すぼみな返事になってしまうシャーリー。ルッキーニの弾ける様な笑顔を
思い出すと、トリガーを引く気にはなれない。気が進まない。微妙、かも。
押し黙ってしまう二人。うつむき、どうするか困惑する。
ちらりとエイラはシャーリーを見た。シャーリーもつられてエイラを見た。
二人は、お互いの表情を見ると、なんだかおかしくなって小さな笑みをこぼした。
同じ顔をしてる。
「あたし達、意外と似たモノ同士かもね〜」
「な、なんダいきなり?」
紅潮したシャーリーの顔には、いつしか、ひとつの決意がみなぎっていた。
「よし、分かった」
「?」
「この雨と霧に包まれててもラチが開かない。一気に距離を詰めよう」
「ネウロイに向かって突進するのカ?」
「エイラは攻撃を先読み出来るから、あたし達は大丈夫だろ?」
「まあネ」
「それにこっちが撃たなければ、少なくともあいつらはあたし達の銃弾では
傷付かないだろう。多分」
「楽観的だナア」
「それに、もしかしたらこっちが急激に動く事でネウロイの動きを逆に攪乱させる
事だって出来るんじゃない?」
「ナルホド。そうしたら、……そうか、サーニャ達の弾もネウロイに当たるかも
しれないって事カ?」
「いや、そこまでは考えてなかった」
苦笑いするシャーリー。
「考えて無かったのカヨ。ネウロイの遠隔操作だったらどうすんだヨ」
「その時はその時で、ネウロイとは別に二人に会えるだろうから良いじゃない」
「まあ……確かにそうだけド」
「あたしは音速を超えたんだ。どんなネウロイでも追いついて突っ切ってみせるよ」
「でも、サーニャ達と正面衝突だけは勘弁するんダナ」
「それはエイラが先読みしてくれよ」
「それは多分無理ダナ……」
「じゃあ決まりだな。良いよな?」
「どうせ返事は聞いてないんダロ?」
「ご名答! そのまま掴まって! いっくよ!」
シャーリーとエイラは抱き合ったまま、ビームと銃弾が飛んで来た方向へ
一直線に加速した。
「回避は任せたよエイラ! 一気にひとっ飛びだ!」
今までに無いスピードで、シャーリーとエイラは霧の中、突っ込んで行った。
79shattered skies 09:2008/11/18(火) 11:01:45 ID:mxTTnzhm
「!」
「どうかした?」
「こっちに向かって来る。この速度……やっぱり通常の航空機じゃない」
「じゃあ、ネウロイ?」
「この前のと、同じ……」
フリーガーハマーを構えるサーニャ。
しかし、レーダーは奇妙な違和感を捉えていた。
焦点が、かすんで、ダブる。
「違う」
「なにもう、どっちよ?」
「ルッキーニちゃん、こっち。構えて」
「え? こう?」
「距離3500……3200……速い……2800……」
サーニャは“胸騒ぎ”を覚えていた。嫌な予感と言うか、ある種の直感が頭に響く。
違う。
この前のネウロイじゃない。
もしかして……仲間?
考えていたつもりが思わず声にでてしまう。
「仲間ってどう言う事よ?」
「音速に近い速度で飛べる飛行物体って、ネウロイの他に……」
「いるよ! シャーリー、この前音速を超えたんだよ?」
はっとする。そして、思い出す。
いつも、そばにいるあのひとの顔。
突然、目の前が赤く染まる。
反射的に回避するも、禍々しい赤色の光線に撃たれ、サーニャのストライカーが
一部破損する。
「サーニャ! 大丈夫!?」
「これくらい平気」
「やっぱりネウロイじゃん!」
サーニャは攻撃される瞬間、今までレーダーで捉えていたものとは“別”の何かが
同軸線上にある事を感知していた。今はまた反応が消えているが、間違いない。
サーニャは慌てるルッキーニに言った。
「目の前に居るのは、ネウロイだけじゃない」
「え?」
「私達を狙ってるのは、確かにネウロイ」
「ジャジャジャ、どうすればいいの?」
「距離2000……1800……構えて、もう少し下を狙って」
「え? こう?」
サーニャはルッキーニに片腕を沿え、直接照準を指示した。
「今よ、撃って」
訳が分からないまま、ルッキーニは弾丸を連続発射した。
「良いの? もし……」
「大丈夫」
コンマ数秒遅れてフリーガーハマーを全弾発射したサーニャには、ある確信があった。
「エイラなら」
80shattered skies 10:2008/11/18(火) 11:11:22 ID:mxTTnzhm
エイラはシャーリーに的確な指示を出していた。
「チョイ右、下、次左」
紙一重で、ビームと曳航弾が脇をかすめ通って行く。
前方で、激しい爆発音が聞こえた。唐突に霧が晴れる。
「おお!」
「出タ!」
円形の、サラダボウルを重ねた様な不思議な物体。明らかにネウロイだった。
それが目の前で突然裏側から激しいフリーガーハマーの攻撃に晒され、
コアが露出し、砕け、爆発した。
「うわッ!」
慌てて防御シールドを張るシャーリーとエイラ。二重になった強固なシールドは
ネウロイの破片を弾き飛ばす。
「た大尉、止まレ! ぶつかる!」
「え? ……うひゃああああ」
「ウワアアアアアアアアアア」
二人とも声にならない声を出した。ネウロイの破片を突き抜けた先に、
サーニャとルッキーニが居る。
シャーリーは止まろうと急制動を試みたが速度に負けてしまい急に止まれない。
それを見越していたエイラは何とか衝突を避けようと目一杯急反転を試みた。
二人の無理な機動が功を奏したのか、ぎりぎりの速度で……体当たりに近いかたちで
……スピンしながら、二組は交錯した。

エイラはルッキーニの腹に頭から突っ込んでいた。シャーリーは肩をサーニャの胸に
押しつけるかたちで停止していた。
「エイラ、いきなり酷い! 痛いよ!」
「私のせいじゃないんだナ……」
怒りを爆発させるルッキーニ。霧の中、いきなり爆発したネウロイの真っ直中から
猛スピードで直進し(しかも直前に機動が乱れて)ぶつかった衝撃は
かなりのものだ。元居た場所から数メートル以上も後退していた。
「大尉……それ私の武器」
「え? あ、ああ」
一方のシャーリーは、何とかしようともがいた挙げ句、身体をサーニャに預け、
何故かサーニャのフリーガーハマーをがしっと握りしめていた。
それぞれが抱きかかえられ、何とか体勢を元に戻す。
ここではじめて、四人がそれぞれの顔を、落ち着いた状況で見る事が出来た。
はあ、と安堵の溜め息を付く暇もなく、ルッキーニがシャーリーに詰め寄る。
「シャーリー! 何で連絡くれなかったの!? 何でこんな無茶したのよ?」
「いや、仕方なかったって言うか……お前らも通信途絶えてただろ?」
「だからって……」
「ごめんよルッキーニ。この通り」
「心配したんだからぁ」
すねるルッキーニを優しく包み込むシャーリー。
端で二人のやり取りをみていたエイラとサーニャ。
サーニャがそっとエイラの袖を引っ張る。
「うん? どうしたサーニャ? どっか悪いのカ?
……て言うか被弾してるじゃないカ! 大丈夫カ!?
さっきのネウロイにやられたのカ?」
「私は平気。エイラ」
そっと腕を回し、エイラを抱きしめる。エイラの胸に顔を埋め、
大きく息を吸い、吐いた。吐息がエイラの服を通して、暖かく伝わる。
「エイラならきっと……って信じてたから」
「そっか。良かっタ」
エイラは少し震える手で、サーニャの頭を撫でて、呟いた。
「私達の方が撃たなくて、ホント良かっタ」
『……ぇるか? シャーリー、エイラ、サーニャ、ルッキーニ、応答せよ!
繰り返す、シャーリー、エイラ、サーニャ、ルッキーニ、返事しろ!』
所々にくしゃみが混じる怒号が四人の通信機に響く。
「少佐……今頃かよ」
ルッキーニをハグしていたシャーリーは苦笑いした。
つられて、エイラとサーニャも笑顔を見せた。
81shattered skies 11:2008/11/18(火) 11:22:54 ID:mxTTnzhm
「今回のネウロイは、明らかに同士討ちを狙ったものだった」
「そうね。外部との通信、位置情報を遮断した上で別方向からの攻撃を
同士討ちへと持ち込むとは……」
「相当に高度かつ変則的なネウロイ、と言わざるを得ないな。
……上の連中には、この事を何処まで報告する?」
「そうね……今回は本当に偶然で倒せたから良かった様なものの」
「偶然、か?」
「必然と言いたいの?」
「私はそう信じたい。ミーナは?」
「同感だわ」
「ともかく、うかうかしてはいられない、か」
「早く治さないとね」
 ミーナは同じベッドで隣に寝転がる美緒に声を掛けた。
「八度四分か……少しは下がった」
「私は八度三分……」
「私こそ、うかうかしてはいられないな」
 美緒はミーナに苦笑いした。ミーナは美緒に向かい、微笑みかけた。

end

----

以上です。長くなって申し訳ないです。
それぞれの呼称については分からないものがあったので適当に・・・。
基本的にストウィまとめwikiを参考にしております。

以上、スレ汚し失礼致しました。
82名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 13:20:57 ID:kJIXUe2Z
>>81
すげえ…
面白かったよ、GJGJ!!
83名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 14:02:35 ID:lgCEwzwH
面白かった!緊迫感のある戦闘シーンはやっぱ心が躍るわー
エイラの未来予知は余り出番がなかったから新鮮でよかったよ。シャーリーも出番多いしw
また書いてくれー
84名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 14:08:33 ID:lgCEwzwH
あ、未来予知出番無いってのは本編での話ね
この戦闘の後のお話も見たいですね。看病とかですね
85名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 14:27:59 ID:0S32mNjL
ルッキーニがシャーリー、サーニャがエイラの看病とはまた新鮮でいいな
普通に考えると看病される側の2人だし
86名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 16:38:39 ID:6r6aGbKv
突然ですがこのたびの管理人氏の受勲に対し501の面々からお祝いのコメントが届いています。

■トラック1
「じゃっじゃじゃーん! ウィッチーズからのお祝いだよー! まずはあたしから、おめでとう管理人!」
「だいぶ成長したなあ、保管庫。おめでとう。しかし勲章ねえ、あたしはあんまり興味ないけど、いつか更新が音速を超えたら……」
「うにゃ!」
「え? それはさすがに無理だって? ふうん、でも、夢を追わなくなったらおしまいさ」
「シャーリーかっこいい! ぱふぱふ!」
「あっはっはっは!」

■トラック2
「良くやったな、見事だ管理人。おまえは扶桑の英雄だな! 私も上官として誇らしいぞ! わっはっは!」
「あら、なにも扶桑だけに限ったことではないわ、世界の百合はあなたたちが守っていかなければならないのだもの。
おめでとう、保管庫の管理人として、また、ss職人としても、貴官のますますの活躍を期待しています。みんなも祝福してくれているわ」

■トラック3
「すごいっ…すごいよ管理人さん…っ!」
「すごーい! やりましたね、管理人さん! 私もまだまだだから見習わないと…それに、私とリーネちゃんのお話、とっても素敵でした!」
「本当にすごいね、芳佳ちゃん。でも芳佳ちゃんだってすごいよ、この前入隊したばかりなのに(ry」
「私はリーネちゃんのこと、すごいと思うけどな…」
「ええー、どこが?」
「どこがって…(凝視)」

■トラック4
「(宮藤かわいい…)
ん? なんだ、もう私の番か。そうだな、私からは、良くやった、とだけ言っておこう。死にたくなければこれに満足せず常に精進することだ。
そのためには一に訓練、二に訓練……なんだ、不満か? よし、ならば貴様に一つだけ為になる話しをしてやろう、
そう、貴様には妹はいるか? 他でもない、難しい年頃の妹の攻略について教示を……なに、いない? ふん、話にならんな」
「ああ…もう私の知ってるトゥルーデじゃない…。そんなことより、やるなあ管理人ー」

■トラック5
「少佐に褒められたからと言って、あまり調子にお乗りにならないことね。
それにあなた、わたくしと少佐について書かれたssの作者にはもっとも栄誉な勲章を与えるとか、
そういった配慮はございませんのかしら……え? わたくしと少佐の相思相愛のssを目下執筆中、ですって…? 
まったく、一体全体、あなたと言う人は、その……おめでと」

■トラック6
「管理人さん、耳をすまして」
「ラジオの音…二人だけの秘密じゃなかったのカヨー」
「ごめんね、でも、今日は特別だから。おめでとう、管理人さん」
「おめでとナ」

音声をすべて聞き終えると自動的に録音がはじまり上書きされてしまった。保管できなかった。
87名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 20:22:18 ID:j5zOkfVp
ペリーヌとフラグたてまくりな管理人にふいたwww
88名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 21:14:53 ID:VgGmAtGv
缶にロット記号とかいてあるだけでシャーリーを想像する俺末期orz
シャーロットにしか見えないんだよ!

あと「水兵リーベ〜」のやつはリーネとしか覚えられん。どうすればいいw
89名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 21:27:06 ID:WO8mmKWj
>>86
これが俺の所にも来たら就職活動する
90名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 22:23:43 ID:tx6czjMc
アローニャ果汁がサーニャ果汁に見えた事はあったなぁ
91名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 22:40:42 ID:KrDkIWnY
>>90
どうしてこうなるまでほうっておいたんだ!

 三           三三
      /;:"ゝ  三三  f;:二iュ  三三三
三   _ゞ::.ニ!    ,..'´ ̄`ヽノン
    /.;: .:}^(     <;:::::i:::::::.::: :}:}  三三
  〈::::.´ .:;.へに)二/.::i :::::::,.イ ト ヽ__
  ,へ;:ヾ-、ll__/.:::::、:::::f=ー'==、`ー-="⌒ヽ 
. 〈::ミ/;;;iー゙ii====|:::::::.` Y ̄ ̄ ̄,.シ'=llー一'";;;ド'
  };;;};;;;;! ̄ll ̄ ̄|:::::::::.ヽ\-‐'"´ ̄ ̄ll
9221X2w2Ib:2008/11/18(火) 23:37:09 ID:mPNJpxzX
>>88
そう言えば昨日そんな絵描いたなあと思って塗りなおしてみたりした
ttp://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d488982.jpg
ttp://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d488985.jpg
10スレ記念や管理人さんの感謝を込めて何か文章書けたらよかったんだけど
そう言う方向への回路が足りなくて申し訳ない、というわけでせめて絵を投下。
いつもお疲れ様です、感謝です!

…さてと、これのせいですっかり放置してしまったペリエイラの続き書いてきます
93名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 23:40:48 ID:/JXuRzNS
>>92
まぁ、今度もステキです。
94名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 23:47:37 ID:ODq2Z52I
叙勲素敵ですねぇw 水兵リーネワロタ
95名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 23:50:43 ID:q8H0zN4o
>>92
1枚目は芳佳の制服を着たリーネちゃんですよね素晴らしいです

書ける&描ける
自分は貴方のような人になりたかった
96名無しさん@秘密の花園:2008/11/18(火) 23:53:39 ID:KrDkIWnY
( ゚∀゚)o彡゚ リーネ!リーネ!
しかし相変わらずリーネのニーソは独特の色だ
97名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 00:09:01 ID:swG5NYm9
かわゆすなあ
癒される…
98名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 00:35:58 ID:Nz6mf17f
さて、この冬から春にかけて、クリスマス、忘年会、大晦日、正月(姫始め的な意味で)、新年会、成人式(18禁的な意味で。あともっさn)、バレンタイン、ひな祭り、ホワイトデー、エイプリルフールと、イベント盛りだくさんな訳ですが。
あ、SSのネタの話です。
職人さん方の投下ラッシュの予感に今からwktkしてます。
99保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2008/11/19(水) 00:40:07 ID:x4hEDrvT
      ___
   ▽    `▽
   i i ッィテナィlル
   ヘィメ ゚ -゚ノィ! やあどうも。
 p(,_U_U
図図図図図図図図

そんなメチャア!クチャア!褒められたらもっとやりたくなっちゃうジャマイカホントにもう
ニヤニヤしすぎて私生活に支障が出てきたから褒めちぎり自重してくださいw
馴れ合いがどこまで許されるのかわからんからあんまり言わないけど、ここんとこ毎日が楽しいのはこのスレのお陰なんだ。
本当に感謝せねばならんのはこんな場を作ってくれた住人のみんなだよ。「私は私にできることをしたいんです!」が全てと言えます。501万歳!!

>>56 シリアスとギャグの両極面をこれほどうまくミックスできるのには毎度感服させられます。GJ!!芳佳の真意に気付かないリーネかわゆすぎる。
>>81 ねっとりした緊張感と戦闘のスピード感が素晴らしい!!そしてあまり百合ではないなんてとんでもない。「エイラなら」の一言で萌え尽きました。
>>86 やwwwめwwwwれwwwwww でも美緒ペリはそのうち……
>>92 65536回保存した。ていうかなんか目から汗が……。
100名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 01:13:02 ID:BA8ngqUr
なんだ管理人さんはついてないカタヤイネンさんだったのか
101zet4j65z:2008/11/19(水) 02:20:27 ID:xhe8ciA4
物語が長くなるとスレでかわされる妄想のキャッチボールに乗り遅れるのが悲しい今日この頃。

>>81 戦闘モノ、好きです。タイトルはソラノカケラですね。
>>92 相変わらずほわっとした色合いが素敵です。

と、いうわけで書き上げたんで投下しますが内容がいろいろ危険です。
『エロ』『おしっこ』『お尻』『リーネがガチで変態』
以上のキーワードに拒否感を覚える方は読まないことをお勧めします。

●ブリタニア1944 format by LYNETTE CHECK SIX
102zet4j65z:2008/11/19(水) 02:21:54 ID:xhe8ciA4
●ブリタニア1944 format by LYNETTE CHECK SIX

 ぴちゃぴちゃ、と響く液体の感触で目を覚ます。
 わたしはびしょびしょのエプロン一枚をつけたまま、倒錯的な水溜りの中で目を覚ました。
 視線をめぐらせると、大きく開かれた芳佳ちゃんの脚とその付け根が目に入った。
 お薬がまだ効いているのか、緩みっぱなしになっているらしい小さい穴から、時折勢いの無いおしっこが吹き出ていた。
 媚薬の効果と相まって未だ湿り気を帯びてわたしを誘惑し続けるそこを見ていると、自然に頬が緩む。
 二人で、同時に逝ったんだね。
 そんな事実に胸が幸せでいっぱいになる。
「ぐ……うう……」
 でもそんな気持ちも、苦しそうな芳佳ちゃんの呻きで吹き飛んでしまう。
 見ると、包帯が赤く染まっていた。
 無理な体勢で傷の塞がり切っていない身体に力を込めたから、治りかけの傷が開いちゃったんだ。
 自分のしたことの浅はかさに目の前が真っ暗になる。
 だからといって自分を責めているだけじゃ何も始まらない。
 芳佳ちゃんを苦しめてしまった自分を責めながら、新しい包帯と傷薬を用意してしっかりと処置をする。
 傷薬はこの部屋で見つけた物を使った。
 はじめは怪しいかなと思って傷薬の方を使うのは怖かったけど、食事に混ぜた媚薬と利尿剤の効き目を見て信用する事にした。
 薬を塗って包帯を巻いて、その上からこの部屋で見つけた皮製のベルトのたくさん着いた肘上まであるグローブと太ももの上の方まであるブーツを履かせる。
 これは手首や足首に枷のような部分がついていて、他に見つけた同じ様な服の幾つかの部分と組み合わせれば色んな姿勢で拘束が出来そうだった。
 ベルト部分はしっかりと、それでいてうっ血しない程度に締めて固定。
 そうしている間にも薬が効いてきたのか、芳佳ちゃんの表情が安らいでくる。
 その表情を見て少しだけ安心できたわたしは、折角だからもうちょっとちゃんと『お洋服』を着せてあげようと思った。
 この地下室にあった衣装ケースには色々なサイズの、女の子をえっちに彩る服が残されていた。
 着せてあげた手足のグローブとブーツに合わせてコーディネートできそうな服も何種類か見つけることが出来た。
 いつも芳佳ちゃんが着ている扶桑の服と同じ様に身体を覆うタイプもあったけど、芳佳ちゃんの可愛くてえっちな場所をいつでも見たり触ったりしていたいわたしはお腹の辺りだけを覆う服を着せてあげた。
 表面は革で出来ていたけど、裏地には気を使っていて肌触りは悪くなさそうな感じ。
 首には、魔法を使った時に出てくる頭のかわいい犬耳にとっても似合いそうな大き目の赤いチョーカー。
 全部つけ終わった後の芳佳ちゃんを見て、またもや胸がキュンとなる。
 革の服のシックな黒い色が、芳佳ちゃんの白い肌を引き立てて、何もきていないときよりもその身体をえっちに見せてくれる。
 今日何度目かの深呼吸で自制心を働かせて芳佳ちゃんから視線を外し、衣装箱を確認すると、幾つかアクセサリ類も目に入った。
 乳首とかほかのえっちな所につけるらしいピアスとかリングだった。
 芳佳ちゃんの身体がそういったもので飾り立てられている所を想像しかけて、危うい所で踏みとどまる。
 自分から、自分の身体に穴を開けたりする勇気は、わたしには無い。だから、無抵抗の芳佳ちゃんの身体を傷つける事なんてできないよ。
 ぶんぶん、と頭を振って想像の中のえっちな芳佳ちゃんの姿を追い払う。
 でも、勇気が出て一緒に付け合いっことか出来たら楽しいんだろうな、とも思った。
 その後は、さっきまで発熱して流した汗と、盛大に撒き散らしたおしっこの水分を補給する為に意識の無い芳佳ちゃんに口移しで水を飲ませてあげる事にした。
 もう何度も繰り返したからすっかり要領は得ているけど、唇の感触には酔わされてしまう。

「はぁ…はぁ…はぁ……、芳佳ちゃん、素敵だよ……」

 わたしのおっぱいの先端が芳佳ちゃんの素肌をつつく、擦れる。
 そんなちょっとした刺激にも、私の体は激しく反応してしまう。

「はあっ……んっ……」
103zet4j65z:2008/11/19(水) 02:22:32 ID:xhe8ciA4

 わたしも、ちょっと気持ちよくなりすぎてる。口移しとかしてるうちに、お薬の影響受けちゃったかな?
 どんどん頭がぼうっとして、気持ちのいい事以外が解らなくなってくる。
 芳佳ちゃんと同じ感覚を味わえてるんなら嬉しいんだけど、ここで流されちゃったら芳佳ちゃんの面倒を見られないから、ちゃんと我慢しないと。 
 
 目的を忘れないように気をいっぱいに張って誘惑を撥ね退け、水を飲ませた後は芳佳ちゃんをしっかりとベッドに寝かせた。
 アソコや乳首だけじゃなくて、体中がジンジンして熱い。頭の中も芳佳ちゃんとの色々な事しか考えられなくなってきてクラクラする。
 これからしなければいけない幾つかの事を思って服を着ようと思っていたんだけど、今シャツやズボンを身に着けたら布とエッチなところが擦れる感触だけで動けなくなってしまいそう。
 ああそうか……、そういうアクシデントを防ぐ為にも芳佳ちゃんと同じ格好をしよう。
 いつか町に出た時にお揃いの服を買って、その服でいろんな事したいなって思っていたけれど、こんな所で夢が叶っちゃうなんて嬉しいな。
 着る、というよりは装着するような感じでその服を身に着け終わり、鏡を見る。
 芳佳ちゃんに着せた時も思ったんだけど、本当にこの服ってえっちな造りだと思う。
 未発達な芳佳ちゃんの凹凸でさえ際立たせるデザインと色のコントラストは、ただでさえ分不相応におっきなおっぱいをぶら下げてるわたしの身体には強烈過ぎる衣装だった。
 鏡の中の私は、おっぱいの大きさを強調するような服を着て乳首を立たせ、股間は十分すぎるほど潤ってこぼれ、ブーツの内股をぬらしている。
 膚は上気してほんのりと赤く、呼吸は荒げっぱなしだった。
 その向こうの視線が、いやらしく私の身体を見ているようで恥ずかしくなり、胸と股間を庇って鏡の前から逃げ出してしまった。
 自分の体のことなのに意識しすぎかなって、思えなくも無いけれど、それほど鏡の中の私はえっちでいやらしく見えた。
 だから、芳佳ちゃんがそういう眼でよく私を見ていた事をなんとなく納得できた。
 同時に、見られる方だけじゃなくて、見る方も本当は恥ずかしい気持ちになっちゃうんだな、って思った。
 服を着終わった後、芳佳ちゃんがしっかりとベッドで寝入っている事を確認してから、食事の準備や洗濯を済ましに行く。
 相変わらず身体はウズウズ、心はほわほわ、全体的にはもんもんと……。
 結局そのせいで、幸いにもここに来てから鳴りを潜めていた私のちょっとドジな所が顔を出したりしてヒヤッとしたり……でも大事には至らずになんとかなってよかった。

 そういった細々とした事を終えてからは机に向かう。
 身体の火照りを何とか押さえ込みながらノートの内容を熟読する。
 …………。
 はう……。
 ノートの内容で椅子の上でもじもじして、お尻がぬるぬるして来ちゃっていたんだけど、とある部分を読んだ時に自己嫌悪で興奮もちょっと吹き飛んだ。
 良く見たら、注意書きとして媚薬と利尿剤の組み合わせはあまりよくないと書いてあったよ……。
 利尿剤の効果で媚薬が効果を表す前に排出してしまう事があるんだって……。
 だから、媚薬をたっぷり含んだおしっこを浴びたわたしも、思い切り効果を受けちゃってるんだ……はぁ、反省。
 でもでも、だとすると芳佳ちゃんにあの時効果が出てる様に見えたのは、私が目いっぱい我慢させたからかな?
 それとも、もともと感じやすいのかな? それともそれとも、わたしがしてあげてたから、かな……?
 最後の理由だと嬉しいな……。

104zet4j65z:2008/11/19(水) 02:23:06 ID:xhe8ciA4
 暫くノートを読みふける。
 読み進めるほどに想像が広がって、興奮も進んできて耐えられなくなる。
 誓いを破りそうになってしまった私は、そうなってしまう前に次の段階へ進んでしまおうと、まだ目覚める気配の無い芳佳ちゃんへと向かった。
 本当は全ての事を芳佳ちゃんの意識があるときにしたかったけど、もしかしたらこれからやろうと思っている事の下準備に関しては、眠っている間にする方がいいのかもしれない。
 そう考えたわたしは、芳佳ちゃんをベッドから椅子に移動して、お尻を突き出すような姿勢で固定した。
 すっかり興奮から冷めてぴったりと閉じた芳佳ちゃんのエッチな場所がむき出しになる。
 その前に恭しく跪いて至近距離で見つめる。舌で触れる粘膜の柔らかさを思い出し、ぽーっとなってしばらくそこに見とれてしまう。
 思わず頬擦りしてから我に返って、名残惜しいそこの素肌に触れるだけのキスをしてから部屋の隅に移動した。
 道具箱の中のシリンダー状のもの――浣腸器を取り出して念入りに拭き、人肌程度のぬるま湯をいっぱい用意する。
 ぬるま湯の中にノートで説明のあった薬品をちゃんと量を確認しながら溶かし込む。
 その他いろいろ必要なものを用意して、改めて芳佳ちゃんのハズカシイ場所の前と言う神聖な場所に跪き、完成した薬液を吸い上げ、潤滑剤を兼ねたお薬をシリンダーの先端にたっぷりと塗って、それを芳佳ちゃんのお尻の窄まりにあてがおうとして……一旦手

を止めた。

「芳佳ちゃんの身体には、どこも汚いところなんてないんだよ」

 多分まだ、心のどこかに抵抗があったんだと思う。
 抵抗があったから、自分に言い聞かせるようにそういって、芳佳ちゃんのえっちな場所の下、周りの肌より少しだけ色の濃い、皺のよった窄まりに向かって、唾液をたっぷりと絡ませたキスをした。
 そうして暫くの間、唇と舌でそこの感触を確かめてたっぷり涎をまぶしてから、窄まりの中心に向けて器具の先端を差し込んだ。


 …………。
 …………。
 …………。
 …………。
 何度も何度も繰り返すうちに、流れ出るぬるま湯はきれいな透明のままになる。
 途中から、芳佳ちゃんが声を上げるようになってきていた。もうすぐ目を覚ますかもしれない。
 私は芳佳ちゃんのお尻を弄りながらその目覚めを待つことにした。
 右手の小指を立てて、舐める。
 芳佳ちゃんに直接触れてるときみたいに情熱的に、たっぷりと唾液を絡ませていく。
 程よくべとべとぬるぬるになったところで口から離す。口から指まで5インチくらい、透明なよだれの糸が伸びる。すごくいやらしい。
 さっきまで何度も挿入していたシリンダーの先端よりも僅かに太くて、はるかに柔らかい指先でお尻の穴に触れたところでその糸がきれた。
 ぬるぬるの指先でつんつんとやさしくつついてみると、その刺激に反応してちょっとだけ緩む。
 緩んだところで押してみると、簡単に爪の先くらいまで飲み込まれる。
 準備第一段階を終わる前までは固い蕾のようだったそこが、たったこれだけの刺激でほころんだ事に喜びを感じながら、ちょっとづつ、ほんのちょっとづつ指を進めていく。

「……ふ……ん…………」

 指の進みにあわせて伝わっていく敏感な粘膜からの感覚が芳佳ちゃんの寝息に不規則な甘い吐息を混ぜる。
 ほんとは、見たり触ったり、ましてや気持ちよくなんかなっちゃいけない場所に触れて気持ち良くなる背徳感に炙られて、わたしのいやらしいところも疼きっ放しになって収まらない。
 媚薬の効果に苛まれたまま、えっちな事ばかりを考えながら行動してる私の跪いた膝の下の石畳は、おしっこを漏らしたみたいに濡れてしみになっていた。
 根元まで挿し込んだ小指をつつむ、暖かくてぬるぬるしてキュッとした感触がそんな状態に加速をかける。

 このまま一気に……。

 そんな危ない考えが頭をよぎるけど、わたしは芳佳ちゃんを傷つけたいわけじゃないんだよ、って思い直してはやる心を振り払う。
 ゆっくりと小指を引き始める。
 抜けるにしたがって指先を包む体温が失われていく。そんな当たり前の事がなんだか寂しくなって、もう少しだけ、という気持ちで小指を進める。
105zet4j65z:2008/11/19(水) 02:28:12 ID:xhe8ciA4

「ぁ……んぅ……ふぅ……はぁ……」

 芳佳ちゃんの反応が、また少し強くなる。
 指に馴染んだ粘膜の感触が心地いい。
 もっとこうしていたかったけど、小指の太さが大丈夫なのを確かめられたから、今度はもう一回り大きい指の番。
 太ももをもじもじとこすり合わせながら姿勢を維持して、右手を引く。
 小指と芳佳ちゃんのお尻がサヨナラして、別れを惜しむように窄まりが動く。
 寂しくなんてさせないよ。芳佳ちゃん。
 芳佳ちゃんはお尻の穴まで素直でカワイんだなっていう発見がうれしくて、早くそこが寂しさを紛らわせられるように人差し指を立て、またよだれを絡ませようとしてからもっといいことを思いつく。
 自分の太ももの内側を皮のブーツの上から人差し指でなぞる。
 体温を失ってひんやりした粘液が指先に絡み付く。何度か繰り返すうちに、右手の人差し指はわたしのえっちなお汁でさっきの小指よりもぬるっとした淫具になっていた。
 そんないやらしい指で、芳佳ちゃんのそこに触れる。触れてそのまま入り口をくにくにとくすぐる様に弄る。

「……んんっ…………」

 素直な芳佳ちゃんは、すぐにその入り口を緩めて、開いてくれた。
 小指の時と同じように力をこめていくと、小指の時よりもほんの少しだけ抵抗は強かったけど難なく根元まで入れることができた。
 根元まで入れたまま、感触と抵抗を確かめるようにしなあら曲げたり、まわしたりする。
 動かすたびに粘膜が指に馴染んで、芳佳ちゃんの声もカワイさを増していく。
 まだ目覚めていない芳佳ちゃんは、とっても素直な声で気持ちがいいって事を教えてくれていて、わたしはもうどうにかなってしまいそうだった。
 でも、わたしはもう少しお尻の穴をほぐすことに集中しなければいけないって思ってたから、自分の世界と行動を制限することにした。

 名残惜しそうに蠢く柔らかい蕾の誘惑を断ち切るように目を閉じると、ふらふらと立ち上がって、予め見つけてあった目隠しと耳栓と鎖を用意する。
 薬と気持ちのせいで敏感になりすぎた体は、道具箱までのほんの短い距離の往復の為の動作がすべて快感になって、わたしと芳佳ちゃんの為の大切な儀式を再開する為の定位置に再び跪いたとき、逝く寸前まで追い詰められてしまった。
 果ててしまわずに済んだのは、私が触れるのをやめたおかげで芳佳ちゃんの声が普通の寝息に戻っていたからだと思う。
 さっきまでの声を聞かされたままなら、きっとわたしはここで果てていた。
 でも、ここまできて芳佳ちゃんと一緒に逝けないだなんて、今のわたしには考えられなかった。
 そんな今のわたしは、芳佳ちゃんの存在で、高い高い空の、空気の薄い世界よりも何も考えられなくなっていたのかもしれない。
 だから、自分がやろうとしてることの矛盾にも気づかずに、いやらしい粘膜の動きを見るだけで逝ってしまいそうになる事に耐えられるよう目隠しをして、
わたしの指先一ミリの動きにかいがいしく反応を返してくれるかわいすぎるその声の誘惑を断ち切るために耳栓をつけ、何か言い訳を見つけては自分で自分の
えっちな部分に触れてしまいそうになる手を戒めるために首輪と手枷を繋いで下まで手が届かないようにした。
 そしてわたしは、お尻で行為を行うという事にまだ少しだけ後ろめたさを感じていたさっきまでの自分に決別するために、見えなくても今も刺激を求めて寂しそうにしているはずの芳佳ちゃんの柔らかい入り口に向かって、キスをした。

 今度のキスは、ただ触れるだけのやさしいキスじゃなくて、ちょっと大人の味の、ねっとりとしたディープキス。

 舌に触れる皺の感触。その一本一本まで伸ばして広げる様にして丹念に、じっくりと、舐める。
 ひくひくとした動きが舌先に伝わる。その中心に粘膜の感触を感じて、舌を尖らせ、突き出す。
 ちょっとだけ奥まった所に舌先が届くと、そこを包み込むように入り口が柔らかく締まる。
 そんな反応を楽しみたくて、唇全体でそこに吸い付き、唾液をその中心へと送り込むように舌を突き出し、回し、捻りこむ。
 何も見えなくて、口の中から響く舌と芳佳ちゃんの立てる水音以外何も聞こえなくて、鼻腔をくすぐる芳佳ちゃんのいい匂いと、わたしの胎内から全身をあぶり続ける淫らな感触、
衝動と、舌先に感じる暖かい芳佳ちゃんの粘膜の感触だけがわたしの世界になる。
 不自由な手ですべすべの太ももからお尻の柔らかい場所に触れて、外側に向かって引っ張ると、その中心からは、軽い抵抗感と共に粘膜の感触が広がっていく。
106zet4j65z:2008/11/19(水) 02:29:16 ID:xhe8ciA4
 入り口の広がったそこに、更に舌を伸ばす。
 指なんかよりも太い舌先が、入ってはいけない禁忌の場所に侵入して、その浅い場所の粘膜を犯して、戻る。
 力を込めた事で少しだけ重くなった舌の疲れを、口いっぱいに唾液を溜める間に癒しては、再度侵入する。
 そうしているうちに、口の中に別の味が広がってくる。
 ああ、前の女の子の部分もちゃんと反応してるんだなって思った。
 手で押さえているお尻全体にも緊張と弛緩が伝わってくる。
 身体全体で気持ちいいって事を表現してくれてるんだね、芳佳ちゃん。
 うれしくてうれしくて、今まで以上に舌先に力が篭る。
 今この瞬間、世界はきっと私のものだった。

 芳佳ちゃん、大好きだよ。愛してるよ。世界で一番だよ。

 心でありったけの愛の言葉を囁く中、わたしにとって一番大きな音は舌と芳佳ちゃんの奏でる粘膜と粘液の水音で、次に大きいのはわたしの胸のドキドキだった。
 深く深く、私の伸ばせる精一杯に舌を突き込んだその時に、そんなシンプルな世界をかき乱すようにかん高い音が遠くから聞こえる。

 あれ……、芳佳ちゃん?

 あわてて目隠しと耳栓だけ外す。
 椅子の上の芳佳ちゃんの身体に半ば縋るようにしながら立ち上がると、顔を汗と涙と涎でぐしゃぐしゃにした芳佳ちゃんが荒い息をつきながら放心していた。

「あぁぁ……はぁ……はぁ……はぁ……あぁ……」

 明らかに最後まで達した後の様子だった。
 凄い、お尻の刺激だけで、逝ってくれたんだ……。
 私の舌が、良すぎたんだね。素敵だよ、芳佳ちゃん。
 一瞬だけはじめてみる表情の芳佳ちゃんにときめいて見とれちゃったけど、自分がまたミスをした事を責めながら謝罪する

「ご、ごめんね芳佳ちゃん! わたし、起きるまでって思ってたのに熱中しすぎちゃったの」

 タオルで顔を拭いてあげようと思ったけど、首輪と手枷を繋ぐ鎖がその動きの邪魔をする。
 フックで引っ掛けてあるだけだから簡単に外れる筈なんだけど、焦っているせいかかちゃかちゃと音を立てるだけで全然うまくいかない。
 ああもう! わたしってばなんてドジなの……。 
 一緒に最後まで、って思ってずっと我慢してたのにな……。
 きっと、芳佳ちゃんの身体が魅力的過ぎるのがいけないんだ。
 うん、きっとそう! そういう事にする! 何て罪作りでかわいいのっ、芳佳ちゃん。

「ふぅ……んぁ……り……ね……ちゃん?」

 少しづつ絶頂後の放心状態から回復してきたみたい。
 そんな芳佳ちゃんに、わたしはとっておきの笑顔で微笑みながら返事を返す。

「うん、わたしだよ」

107zet4j65z:2008/11/19(水) 02:32:40 ID:xhe8ciA4
 意識がはっきりし始めた芳佳ちゃんは、わたしが拘束されたからだの上にのしかかるような姿勢で居る事に気付いて、怯えた表情になる。
 真っ赤なまま、気弱そうに目じりを下げ、あごを引いて一旦上目遣いになってから目線をそらす芳佳ちゃん。
 普段の芳佳ちゃんだったら、私が気付いてない振りをしてるだけでわたしのおっぱいを情熱的に視姦してくれるのに本当に余裕が無いんだね。
 どんな顔をしてても、芳佳ちゃんは素敵だよ。
 そんな芳佳ちゃんを微笑ましく見つめながら、想う。今は怯えられても、嫌われてしまっても仕方ないのかもしれない。
 でも、それは芳佳ちゃんが心に余分なものを抱えていて、本当の私を見ていてくれないからそうなってしまうんだってわかるから。
 神様がくれたこの機会に、二人が一つになれたなら、きっと二人の間にあるどんな悲しみも苦しみもつらい事も、喜びと慶びと悦びに変わるから。

「……リーネちゃん……お願いだから……ここから……降ろして」

 私の事をまっすぐ見られないまま、ぽつりと呟くように言う芳佳ちゃん。
 きっとまだ、自分の身体に何が起こったのかを理解しきれていない気がする。
 なんとなくそれが恥ずかしい事だという事を本能的に理解しながら、時分が体験した事の内容が唐突すぎてわからない。
 わからなくて、混乱して、焦って、恥ずかしさがそんな心に加速をかけて、もっとなんだかわからなくなって、未知の世界への恐怖心だけを感じてる。そんな状態なんだと思う。
 お尻……本来ただ出すだけの為に存在する場所を弄られて、えっちな気持ちになって、最後まで上り詰めるなんて、普通の人はきっと想像できないし、それどころかはじめから考えたりもしない。
 でも、わたしは普通じゃないんだ。
 芳佳ちゃんへの友情があっという間に限界を超えて、愛情に変わって、そんな感情さえも突き抜けてどこかへ逝ってしまいそうになったときから、ずっとずっと、自分を『この場所』に繋ぎとめるにはどうしたらいいかを考えてた。
 一線を越えてしまったら、きっとそれまでのいい関係を壊してしまう。
 想いを心の中に押し込んでしまう為にわたしの出した答は、肉欲への変換だった。
 昼は友人として、列機としての仮面を被って、夜になると素顔のままで心に描いた恋人を想い火照らせた身体を指で口で慰める日々。
 例えば、好きな人におっぱいを揉まれると大きくなるって言うけれど、真夜中のベッドでのわたしは、この腕もこの唇も、私の物ではなくなって大好きな人のものになるのだから、
その大きさがどんなに恥ずかしくてもサイズアップしてしまうのは仕方の無い出来事だった。
 例えば、外側の刺激だけでは満たされなくなった身体を慰め続ける為に、処女でなくなって魔法を失ったりしない様に行為を続けるには、お尻を弄る事にたどり着く事もとても自然な流れだった。

「いいよ」
「え?」

 意外そうな顔の芳佳ちゃん。
 まだ怯えの残る顔で私を見つめて、小さく「本当に?」と聞いてくる。

「うん。でもね、その前にお願いがあるの」
「お……お願い?」

 少しづつ身体をずらして、互いの顔を近付ける。触れる肌に芳佳ちゃんの緊張が伝わる。
 ここまで芳佳ちゃんにとっては未知の事態の連続だったから、きっとわたしのお願いも想像がつかなくて困ってるんだね。

「うん……、お願い」

 わたしのおっぱいの先が、芳佳ちゃんのなだらかなそこに触れて、甘い痺れが快感を加速する。
 あれ?おかしいな。
 いざ面と向かって5インチの距離で視線を交わすうちに、お願いを伝える事がとっても恥ずかしくなってきた。
 ここまで来ておいて、間近でじっと芳佳ちゃんを見つめながら、固まってしまう。

「あの、あのね……」

 言いかけて、詰まる。おかしいな……ここまでえっちでいやらしい事いっぱいしたのに、面と向かって一言伝えるだけの事が、恥ずかしくてうまくいかないなんて。

「ええとね……」

 頬が熱い。わたし、多分今耳まで真っ赤になってるよ。
108zet4j65z:2008/11/19(水) 02:33:17 ID:xhe8ciA4
「リーネちゃん……ね、落ち着いて」

 そんな私の様子が気になったのか、わたしの身体の下の芳佳ちゃんが心配そうに声をかけてくれた。
 やっぱり、芳佳ちゃんは優しいな。
 怪我をして、拘束されて、私にえっちな事されてるのに、わたしが言い淀んで、困った顔をして、荒い息をしていれば心配してくれる。
 そんなわが身も省みないところも、私が芳佳ちゃんのことを大好きな理由の一つなんだなって思ったら、勇気が出てきた。
 だからわたしは、深呼吸してから思い切ってお願いを告白する。

「あのね芳佳ちゃん!」

 ずいっと乗り出す。間合いが5インチから3インチへと詰まる。

「は、はいっ!」
「わたしをっ! 芳佳ちゃんのこのお口で逝かせて欲しいのっ!」
「はいっ!? んむぅっ!」

 思い切って叫んでから、返事を待たずにキス。すっかり馴染んだ唇の感触。
 その中までたっぷりと舌で味わってからゆっくりと口を離す。

「ふわぁ……また、キス…………って……だ、だだだだめだよそんなことっ! わたし、そんな事出来ないよぉ……それに、そのぉ……」
「うん」

 そうやって拒否されてしまうのも半分くらいは予想済みだったから、後はこれからしようと思ってることを芳佳ちゃんに伝えるだけ。
 さっきまではあんなに言うのが恥ずかしかったのに、一度壁を越えてしまえばあとはすらすらと喋れそうな気がする。
 きっと芳佳ちゃんもそうやって素直になってくれるよね。

「いきなりそこまでしてくれるとは思ってなかったし、わたしだけじゃなくて、本当は二人で最後まで逝きたいの。だから、最後まで終わったら降ろしてあげるね」
「え? どういう……事?」
「わからないふりしなくていいよ、芳佳ちゃん。ここまでにわたしの目の前でおしっこしながら一回、お尻の穴で一回逝ってるから、どういうことだかわかってるでしょ」
「えええっ! そ、それは、その……そんな恥ずかしいこと、言わないでよぉ……」

 さっきまでよりも真っ赤になって、また目線を逸らす。

「でも、芳佳ちゃんがお尻で気持ちよくなれるエッチな娘でよかったな。これで安心して最後まで出来るから」
「やだ、やだよ……やっぱりへんだよリーネちゃん……お願いだからもうこれ以上変なことしないでよ……」
「ふふ、大丈夫だよ」

 動揺する芳佳ちゃんの反応を楽しみながら、不自由な身体を動かしてその身体をもぞもぞと這い登る。
 お尻の穴が突き出されるように少し脚を閉じ気味に固定したのが災いして、お互いの身体が過剰に触れあい、すれる。
 素肌とレザーの感触が絡み合って、敏感すぎる身体はあっという間に苛まれてく。

「う、うわぁ……」

 おっぱいに芳佳ちゃんの顔を抱くようにして身体をずらすと、さっきまでの怯えや警戒感とは縁のなさそうな緊張感の無い声が上がる。
 そんな声を楽しむ余裕はいやらしすぎる身体の私にはもう残っていなくて、やっとの事で左足を床に、右足を芳佳ちゃんの身体の左横に置く目的の姿勢まで辿り着く。
 そのまま腰を落とすと、にちゃりとした感触と共にわたしのえっちな場所が包帯に包まれた芳佳ちゃんの太ももに触れる。
109zet4j65z:2008/11/19(水) 02:34:06 ID:xhe8ciA4
「はぁんっ」
「ひっ」

 自分のあげた声の大きさに自分で驚いてしまう。
 薬のせいなのか気持ちのせいなのか、昨日の夜ベッドの上で擦りつけたときとは比べ物にならないほど気持ちよかった。
 でも、我慢する。ギリギリまで耐えた方が気持ちいいことを知っているから。
 そのまま腰をもっと下ろして、二人の粘膜が触れあい、お汁が混ざり合う。
 少しでも強くそこを感じたくて、芳佳ちゃんの上半身の固定をはずして、少しだけ自由になった姿勢から出来るだけの動きをした。

「はぁ、はぁ、はぁ……芳佳ちゃん、ほら、わたしのおっぱい、だよ。えっちな芳佳ちゃんがずっと見てて、何回も触ってくれたおっぱいだよ」

 エッチなところを擦り合わせながら、芳佳ちゃんの顔を胸の谷間に挟んで、優しくなでる。
 おっぱいに顔を埋めて上目遣いの芳佳ちゃんに、堪らないほどの愛おしさを感じながら、もっともっと気持ちよくなりたいと思う。

「ふふふ、芳佳ちゃん、いいんだよ。好きにして」
「はぁっ、ぁん……ぁ……わたし……」
「はぁんっ……えんりょ、しちゃ、やだっ!」
「んぶぅっ」

 いつまでも喘ぐだけの芳佳ちゃんに痺れを切らした私は、ちょっと乱暴に芳佳ちゃんの頭をつかんで、その口の中に右の乳首を押し込むようにした。
 同時に腰も叩きつけるような激しい動きに変える。椅子が軋み、鎖が高い音を立てる。

「んむっ!」
 コリッ。

 私の動きが唐突だったせいで、驚いた芳佳ちゃんが私の乳首を噛んだ。
 同じタイミングで、激しい動きで開ききったお互いの女の子の入り口で、一番感じるところが触れ合ってお互いを押しつぶした。
 その衝撃で、私は果てる。

「ひあああああああああああああああああんっ! はぁ……はぁ……はぁ……」
「んふっ……ふああああああああああああっ!!!」

 声が重なった。
 よかった……また芳佳ちゃんといっしょに逝けたみたい……でも、もっと、まだ……。
 足りないな、ってそう思った私は呼吸も整わないうちに、逝ったばかりの敏感な体を動かし始めた。

「はぁはぁはぁ……あんっ、はぁっ、リーネっ……ちゃん、わたしっ……」
「あんっ、あんっ、あんっ、ねぇ、もっとっ、もっとなのっ、ねっ、よしか、ちゃん……」

 ふふ……ふふふ……あはははは……きもちいいよぉ、芳佳ちゃん。
 腰が止まんないよぉ。
 あは……芳佳ちゃんも動かしてる。
 きもちいいな……。
 女の子は何度でも逝けるんだよ。何度でも、何度でも……。
 果てなんかないから、つながってるところから、もっとひとつになれたらいいのに……。
 ああ……ほんと、きもちいいなぁ。

 心のどこか冷静な部分で『擦り切れたりしないうちに気絶できたらいいよね』なんてことを思いながら、わたしの意識は何度も襲う絶頂の波間へと沈んだ。
110zet4j65z:2008/11/19(水) 02:39:02 ID:xhe8ciA4
以上となります。

ネタ的に苦手な方ごめんなさい。
こんな時間に投下して朝通勤中に形態で読む人ごめんなさい。
長すぎて短く出来なくてごめんなさいしかもまだ続きます。

しばらく忙しそうなんで、続きは一週間後くらいに投下できたらいいなぁ。
111名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 02:46:51 ID:o13yBnXL
>>110
GJ!
こんな時間まで起きてて良かった。

芳リネ分に餓えてるので、楽しみにしてます。
112優しい風 21X2w2Ib 1/4:2008/11/19(水) 03:54:24 ID:e4i7nwdc
今晩は誰も投下してないなー、と思って書いてたらお先に投下してくださった方がいた!乙ですー
でもせっかく書いたので投下。4話後ゲルトルート×エーリカ。

―――

こんこん、と。
ノックの音が室内に響いて、ベッドに入っても眠れずにいた私は眼を開いた。サイドテーブルの明かりを灯して
答える。

「だれだ?」

私、と答える声は聞きなれた同僚のもの。なんだ、突然。思いながらひとつ伸びをして立ち上がろうとしたその
矢先、それを待たずに扉は開いた。
「ハルトマン、」
静かに入り込んでくるその名前を呼びかけても、返事はなかった。代わりに「起こした?」と語りかけられたので
私は正直に首を振る。

「こんな時間に眠れるわけがない。今日明日と絶対安静だなんて、ミーナも過保護すぎると思わないか」

窓の外の空はもうすっかり夕闇を過ぎていたけれど、どう考えても眠るには早い時間だと言うのは明白だった。
だって基地に帰り着いたのが夕方。半ば引きずられるようにして医務室に運ばれて、傷はふさがっているから
大丈夫だと言う医師の言葉なんて聞いていなかったかのように「寝なさい」と言われた。
たぶん私を一身に心配してなのだと思うけれど、ミーナは有無も言わさない顔をしていたし、また顔をはたかれる
のはまっぴらゴメンだったから内心しぶしぶで了承したのだ。それまで恐らく1時間経っていなかった。

珍しく身につけた寝巻き代わりの衣服の下の、傷口はすっかりふさがってしまっている。今日の昼間、出撃の
最終に受けた傷だ。宮藤が、治してくれたからだ。私はあまり記憶がなくて、ただただしんしんと体が冷えていく
感覚と頭が真っ白になっていく景色だけを覚えていて。…今考えると、それは、『死ぬ』ということだったのだろう。
らしくない、些細なミスだった。妹によく似た宮藤の出現にひとりうろたえて、いつも見えているものを見失って
普段は絶対に起こさないような『うっかり』をやらかしてしまったのだ。

戦っていれば、大抵のことは忘れていられた。見るべきものがあれば、他のものに目を移さなくても生きて
いける。…私にとって妹のことはいつのまにか目を背けたいものになっていたのだ。直視したら心が折れて
しまいそうだったから見ないように視点を定めた。言葉に出すと弱音ばかりになってしまいそうだったから、
話題にも出さないことにした。
そうして耳をふさいで目を瞑って口を閉ざして、いつ目覚めるかも分からない妹の存在を、なかったことに
していた。妹のことを忘れていたくて戦いに身を投じていたのに、いつのまにか戦いに身を投じることが目的に
なっていた。手段が目的になってしまえば、かつて目的だったことはかすれて消えてしまう。私にとって妹の
存在はもう、そんな手の届かない幻のようなものになりかけていたのだ。

…けれど、宮藤芳佳という新兵の存在で容易くそれは崩された。はじめはミーナと坂本少佐の意地の悪い冗談
かと思ったほどだ。ミーナはともかく坂本少佐はクリスの顔を見たことがないはずだから、それは全くの濡れ衣
だってことぐらい分かっていたのだけれど。それでも宮藤はクリスに似ていた。とてもとても、よく似ていた。彼女が
現れたことは私がふさいでいたありとあらゆる器官の機能をいやがおうにも呼び覚ますことになったのだ。
長い間使うことを忘れていたその器官たちはもともとの動きも忘れてがむしゃらに動いて、普段は支配する側
のはずの思考を犯した。自由になったことを良いことに好き勝手に暴れて、私が必死に封印していたいろいろな
感情を呼び起こした。それは私を混乱させるのに十分な絶対量を以って襲い掛かってきたのだ。

113優しい風 21X2w2Ib 2/4:2008/11/19(水) 03:56:15 ID:e4i7nwdc

そしてその結果が、あの様だ。
どうなるんだろ、わたし。思った瞬間に不意に、青い光が目の前を包み込んだのを良く覚えている。温かな力が
流れ込んできて、じんじんと痛む箇所を包み込んで溶かして流し去っていった。…力としてエネルギーを放出
するばかりの私の、体験したことのない感覚だった、それは。

「…エーリカ?」

私のベッドの傍らに立ちつくしたままでいる小柄な同僚の名前を、もう一度。
てっきり「どじだなー」と笑うのだと思い込んでいたから拍子抜けしてしまう。いつもひょうひょうと笑っている
このエーリカ・ハルトマンらしからぬ態度だった。

「フラウ」

今度はごく限られた場所でしか口にしない彼女の愛称で呼びかけた。なんだよ、うろたえちゃって。そう言って
お腹を抱えて笑い出すいつものフラウを私は期待していた。…笑い飛ばされたい気分だったからだ。妹を守れ
なかった私に生きている価値などない。どうせ死んだら死んだで多額の、今までの功績に応じた補償金が出る
のだろうから、いつ死んでもいい。そう思い込んでいた過去の私ごと笑って、どこかへ飛ばして欲しかった。私は
馬鹿だ。命が無ければ出来ないことが、つくりだせないものが、守れない人が、たくさんたくさんあったのに。

「笑ってくれよ、フラウ、なあ」

つい、情けない声が出てしまう。ああ、だめだ。困り果てて、涙が出てきてしまいそうだ。
沈黙は、恐ろしい。自分が寡黙であることを棚に上げて思う。だってフラウにそんなものは似合わないからだ。
頼む。重ねて呟いた瞬間、鼻の頭をそよ風が掠める感覚がした。窓は開いていないはずだし、フラウは先ほど
ちゃんと扉を閉めていた。どこから入り込んだのか分からないその風を、気のせいだと思うことにする。

けれどそうではないことを、私は直後に思い知ったのだった。

とぅるーで。
木のざわめきほどに、小鳥のさえずりほどに。
小さい小さいフラウの呟きを聞いた。なんだ?ようやっと求めていた声を手に入れた私は安堵して尋ねる。瞬間、
前髪を揺らした確かな風は、体を締め付ける温かくて柔らかいものの感覚ですっかり思考から外れてしまった。

ぎゅうと、私よりも小さなフラウが私を抱きしめていた。それは昼にミーナが私を抱きしめたのと同じように、強く、強く。
「ど、どうしたんだ?なにがあったんだよ、フラウ」
慌てて尋ねる私に、フラウはたった一言。

ごめん。

そうくぐもった声で言った。熱いもので私の肌が濡れていく。ああ、泣いてるんだな。そんな結論に行き着くのに
そう時間はかからなかった。けれど理由が分からない。泣く理由は分かる。だってずっとずっと一緒に戦ってきた
仲間だ。一時は生死の境をさまよったくらいだというのに無事に生還できたのだから、泣いて喜んでもらえる分
にはありがたくて仕方ないくらいだ。
けどフラウのそれは違う。だってフラウは「ごめん」と言うのだ。悪かったのはすべて私なのに、そう言って
ぼろぼろと涙を流している。わからない。ぜんぜんわからない。フラウの考えてることなんていつもわからない
けれど、今日はいちだん、理解出来ない。

114優しい風 21X2w2Ib 3/4:2008/11/19(水) 04:00:09 ID:e4i7nwdc

「トゥルーデを守ってあげたかった。ごめんね、守ってあげられなかった」
「……何言ってるんだ、そんなの」

仕方ないだろ、任務だったんだから。お前は待機、私は訓練。今日はそう決まっていたんだから。
諭しても、フラウは首を振るばかり。でも怖かった。怖かったんだよ。普段は決しておくびにも出さない不安の
よどみをぶつけてくる。
基地で留守を守りながら、こいつはじっと、届く通信を聞いていたのだろうか。私やミーナを心配して、その無事を
祈っていたりしたんだろうか。…私がフラウを置いて出かけるときは当然私はフラウの傍にいないから、どんな
顔で、どんなことを考えているのかなんて全然分からない。いや、いつも絶やさない人懐っこい笑顔の下で涙を
流していたとしても、きっと気付くことが出来ていないのかもしれない。

ひゅうと風が渦巻いて明らかに私の後ろ髪を揺らす。カーテンがなびいて、毛布の端がぱたぱたと音を鳴らした。
フラウの横髪の一部がほんのりと色づいているのを見た。その尾てい骨辺りから同じ色をした尻尾が生えて
きている。…今なら確信できる。この風は、フラウが起こしているのだと。そよ風から嵐まで、大気に自分の
魔力を乗せてそれを操る。こいつだけが持っている、特別な力。確かにその存在を感じさせるのに部屋のものを
壊したりはしない、その微妙なコントロールさえもフラウは平然とやってのける。

「…私がいても何の役にもたたなかったよ。宮藤がいてよかった。こんな能力しかない私じゃ、助けてあげられ
 なかった。…役立たずで、ごめん。ごめんなさい、トゥルーデ」
「なにばかなこと、言ってるんだっ!お前に守ってもらうなんて私は、そんなことっ」

肩を掴んでフラウを引き剥がす。その顔を見やるとああ、やっぱり。涙でぐしゃぐしゃになってるんだ。それでも
まだぽろぽろととめどなく涙を流している。…こんなの、私の知ってるフラウじゃない。
馬鹿を言うなよ。『守ってあげたかった』、だなんて一丁前に大人ぶって。お前はまだ小さいじゃないか。子供
じゃないか。それなのに私を守るだなんて考えてたのか。それは私が情けないからか。死にたがりだからか。

いつの間にか忘れていた。私は、戦うためにウィッチになったんじゃない。戦うことばかりを考えて、今まで軍に
在籍してたんじゃない。
一度は引き剥がしたはずのその小さな体を今度は自分で抱きしめた。
守りたかったのはクリスだけじゃなかった。大切なものひとつだけで私は今まで生きてこれたんじゃなかったのに。

(お前を守ってやらなくちゃいけないのは、私のほうなんだ)

ずっとずっと思っていた。一緒にロッテを組んで空を駆りながら、まっすぐな瞳で「先行くね!」なんて飛び出して
いく背中を見ながら、そうして彼女のの創り出す風を感じながら。
守ってやらなきゃって思ってたんだ、ずっと。だってフラウは小さいから。クリスのいない空の上ではそれが私の
存在理由だった。だからいつだって正気でいられたし、フラウと競えばネウロイの撃墜スコアだって重ねていけた。
それを忘れた私はフラウにどんな風に見えていただろう。きっとひどく危なっかしく見えていたんだろう。まだ子供の
フラウに「守らなきゃ」と思わせるほどに。

ごめん、って。謝らなくちゃいけないのは私のほうだ。ごめん。心配かけてごめん。

「…もう、あんな無茶はしない。約束する。誓うから。」

私の胸の中でまだぐずっているフラウを諭すように囁いた。なあ、だから笑ってくれよ。お願いだよ。もう泣き
止んでくれないか。切実な気持ちが胸に渦巻いていく。ああ、私も宮藤のように治癒魔法を使えたらいいのに。
けれど、治してやりたいのは傷とか怪我じゃない、心の治療をすることが出来る魔法がいい。そんなものないって
知ってるけれど願わずにはいられない。けれどせめて、胸に溢れるこの気持ちを上手く伝えられるものであったなら。

…今優しく私の頬を撫でる、フラウの魔法の風のように。

115優しい風 21X2w2Ib 4/4:2008/11/19(水) 04:04:36 ID:e4i7nwdc

「…なあ、フラウ、あさってから一緒に休暇、とらないか。クリスの見舞いに行くんだが」
いろいろと考えあぐねて、ようやく至ったひとつの妙案をようやっと口に出来たのは、フラウの泣き声がひと段落
ついた頃だった。それでも私はぎゅうと抱きしめる手を解くことが出来なかったし、フラウもまた先ほど自分が
していたよりもずっと強く私にしがみついていたのだけれど。

「…」

帰ってきたのは沈黙で、それでも風の動きが微妙に変わったのを感じて私は彼女が話しは聞いていることを
知る。だから構わず続けた。

「ついでに美味しいものが食べたいんだ。ひとりで探すよりもふたりのほうがいいと思わないか」

「ミーナまで一緒にとるわけにはいかないだろうけど、お土産を買って帰ろう。ふたりで探すんだ、ミーナの喜びそうなものを」

力を込めていた腕を緩めると、フラウが顔を上げた。いいの?首をかしげて尋ねてくるから「当たり前だろ」と
言ってやる。

「お前は目を離してたら何をやらかすかわからないからな。私がちゃんと見張ってないと」

無理に口の端を吊り上げるとひくひくと痙攣する。こんなところの筋肉、久しぶりに使った気がする。…でも
きっとお前はいつも鍛えてるだろ?だから、私と違って苦労なんかしないだろ?
だから、ほら、笑ってくれないか、いつもと同じように。

「…じゃあ、そうする。」

ようやく浮かべてくれた笑顔にほっと安堵したと同時にひどく気恥ずかしくなって、手を伸ばしてその頭をかき
混ぜる。ああ、フラウにはやっぱり笑顔が似合う。この笑顔を守りたいって、私は思ったんだ。
だから守らなくちゃ、今度こそ。守りたいんだ、絶対に。

フラウの髪はもう元の色に戻っていて、尻尾も消えてなくなっていたけれど、フラウの創り出す優しい風はまだ、
部屋中を穏やかに回っているような気がしてならなかった。



―――
以上です。よし、寝る。
116名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 08:56:20 ID:Phd3tK1A
おはズボン

>>115
ゲルトマンきてれぅ!フラウかわいいよフラウ
エーリカの座右の銘を考えると4話は妄想が止まらなくなるので困る
117名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 09:24:19 ID:pMbwpyBj
>>115
ありがとう。面白かった。
これで今日も頑張れそうだ。
4話までのゲルトは確かに妹のことを思ってはいるけど向きあってないんだよな。
118名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 11:29:10 ID:0uggNvXE
エーリカが素直すぎるw
ところでいつも子供扱いしかされないエーリカがミーナさんあたりにアドバイス受けて髪伸ばして、トゥルーデがドキってするSSまだですか?
119名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 19:23:56 ID:UMZxlH8o
>>115
トゥルーデのために一生懸命なフラウが! フラウが可愛い!
ありがとうございました!
120名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 21:39:15 ID:pjWAoCgZ
>>115ゲルトマンに留まらず、きっちりカールスラントリオの絆も見え隠れするところのいい意味で唸らされた
個人的な好みもあるかも知れんけどw
121名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 22:07:05 ID:kWkdmjEN
さて来週にはついに第6話収録のDVD3巻が出るわけで
いまからwktkが止まらない
あぁ止まらないだろう
122名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 22:21:02 ID:c7kEtM7Q
誰か絵師さん、大人になったルッキーニ(16〜17歳)希望。
123名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 22:53:13 ID:RcC9Qohk
早速参考画像をうpしようと思ったんだが、以前バカしてしまって100MB相当の画像、
それもメジャーどころばかりのを削除してしまってたのを思い出した。
なんとか復活させようと試みてはいるが、ゴミ箱から削除したファイル数が膨大すぎて諦めてしまいそうだ……
124名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 23:26:16 ID:kWkdmjEN
ルッキーニが16才なら
シャーリーは20才か
有りダナ
125名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 23:28:43 ID:c7kEtM7Q
大人っぽくなったシャーリーというのも想像がつかない。
16歳時よりもっとパワーアップするの?
126名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 23:35:22 ID:ziR3sEAq
シャーリーは色気とか哀愁とかそこらへんの魅力アップ

ルッキーニ…うーん、想像できん
127名無しさん@秘密の花園:2008/11/19(水) 23:37:19 ID:MhiHvPm0
個人的にはいつまでも元気娘でいてほしい
子供っぽさは無くなるけどいつでもポジティブで
12821X2w2Ib:2008/11/19(水) 23:51:40 ID:e4i7nwdc
こんばんは。ペリエイラ話の続きを二つまとめて投下します。
本編はこれで完結です。
129「mix-turegret」-5'' 21X2w2Ib 1/4:2008/11/19(水) 23:53:23 ID:e4i7nwdc
幕間3─ 台風の目にて



急なことで申し訳ない、と青白い顔で彼女は頭を下げた。「いいわよ」と言う私の返答に心底安心したように
もう一度頭を下げると、ふらついた足取りで執務室を出て行く。
ふう、とひとつ息をついたのは別に重たい気持ちを吐き出したくてそうしたわけではなくて、むしろ、安堵のそれ
に近いもので。

(まさか、サーニャさんのほうから言ってくるとは思わなかったけれど)

異変に気がついたのは、確か一昨日のことだったか。美緒の部屋からあくびをかみ殺しながら自室に戻る
最中でばったりと、ちょうど自室を出てきたばかりのエイラさんに出くわしたのだ。それはちょうどサーニャさんが
帰って来るくらいの頃合いで、普段のエイラさんだったならこんなにも早くに自室をあとにすることなんてない
はずだった。寝ぼけて部屋を間違えたサーニャさんを一人残しておくのが忍びなくて、どうせいつものごとく
二度寝を決め込んでしまうのだろうから。…エイラさんは普段はひどく落ち着きのあるしっかりした子なのに
(多少いたずら好きの気はあるけれど)、どうにもサーニャさんが関わると普段の調子ではいられなくなる
節がある。

そのエイラさんが、こんなにも早くに自室を後にする、なんて。
どう考えてもおかしい。そう思ったのが一番最初。そしてそれはすぐに確信に変わることになった。

「…入るときはちゃんと手でノブを持って、ノックをして入ってきてください、坂本少佐。」

サーニャさんが出て行ったそのままで扉を眺めていた私は、サーニャさんが気を利かせたのだろうか、
ほんの少し開いていたそこをよっと足で開いて入ってきた彼女を見て少し顔をしかめる。…実のところ、
私よりも2歳ほど年上のこの人が今の私にとって一番の懸案事項であることを、果たしてこの人は知って
いるのだろうか。

「すまん。両手がふさがっていてな」
「なら呼んでいただければ開きに行きますから」

わっはっは。いつもどおりの豪快な笑いをする彼女の反応をもって、この人がここ最近の自分の行動を
何ひとつ反省していないことを理解する。はあ、と大きなため息をひとつ。今度は重い気を吐き出すための
それだった。今問題はひとつ片付いて、もしかしたらこのままいろいろなことが快方に向かうかもしれないの
だけれど私にとって一番の大嵐はいつだってこんな状態だ。

扉を開けないほど大荷物を持っているらしい坂本美緒少佐その人は、こぼさないように細心の注意を
払っているのだろうか、そろそろと私の方へと歩み寄ってくる。そして手に持っていた湯飲みとマグカップを
私の机の上にコトリと置いた。
そのすぐ下、私の手元にあるのは隊員のシフト表だ。今日の夜からあさっての夜にかけて、エイラさんと
サーニャさんとペリーヌさん、3人の待機もしくは出撃を書き込む空欄に斜めに線を引いてある。

「サーニャは何を言っていた?」
机に手をついて尋ねてくる。線が引かれていることにはもう驚かない。驚くはずがない。だってこれはもう、
一昨日の夜から二人で話し合って決めていたことだったからだ。

「休暇をくれないか、って言われたの。今日の夜からね。言いにいく手間が省けたわね、良かった」
「エイラと二人、とちゃんと言ったか?まあ、ペリーヌもだが。」
「そこまでドンピシャよ。…話をしたい、って言っていたの。エイラさんはともかく、サーニャさんからそんな
 話が出るとは思わなかったわ。」
「…まあ、サーニャもサーニャなりに考えることがあったんだろうさ。」

130「mix-turegret」-5'' 21X2w2Ib 2/4:2008/11/19(水) 23:55:11 ID:e4i7nwdc

何があったのか、までは分からなかったけれど。明らかに不審なエイラさんの様子から彼女に何か悩みが
あるのだということはすぐにわかった。まるで何かを振り払うかのように訓練や出撃にも積極的に参加して、
最初はただやる気が溢れているだけと思ったけれど、その危なっかしい動きを見ていれば何か、基地に
留まっていたくない理由があるのではという結論に行き着くのはそう難しいことではなくて。

「そうね…ねえ、ペリーヌさんの様子はどうだった?」
「それが、いまだに顔も合わせてくれない状態でなあ…あれも抱え込む性格だし、困ったものだ」
「…美緒でもどうしようもないなんて重症ね」
「それは買いかぶりすぎだよ、ミーナ。私にだってどうしようもないことぐらいあるさ」

ふう、と物憂げにため息をつく美緒。彼女がこんな表情をするのは珍しい。…まあ、そう嘆きたくもなる気持ちは
分からなくも無いけれど。私だってため息をつきたいのは山々だ。…色んな意味で。

エイラの様子がおかしいのはペリーヌと関わりがあるんじゃないか?あいつもここのところ様子がおかしいんだ。

美緒がそう口にしたのは、その日の晩、美緒の部屋で書類を片付けながら。その日はなぜかペリーヌさんと
出会うことがなかったから私がそれに気付くことはなかった。…今にしてみればたぶん、ペリーヌさんは私が
何気なくを装って観察していたエイラさんを避けていたのだろう。逆に美緒はエイラに出会わなかったという
から、その二人がお互いを避けあっていたというのなら話はつながる。

「…これで、何とかなるかしらね?どう思う?美緒。」
「願うしかないだろう。…魔力は精神状態に強く関わるからな。見たところ、ペリーヌは良く眠れていないようだ。
…たぶんエイラとサーニャも、そうなんだろう?」
「ええ。サーニャさんの調子はエイラさんの行動に強く影響を受けているみたいだから。…あの子は少し、
エイラさんに依存している気質があるから。」
「エイラはもともととても落ち着いているだろ。普段は取り乱したりなんかしない」
「そうね…」

思い出すのは基地内まで響いた大きな音と、盛大に壊れたしたエイラさんのストライカーユニット。一緒に
いたルッキーニさんをとりあえず捕まえて、話を聞いていたところでシャーリーさんがやってきたのだっけ。

(あんまり、エイラを責めないでやってくれないかな。…いろいろあったみたいなんだ。休ませたほうがいい。)

そう苦笑いをしていたシャーリーさんは訳知り顔で、そこで私はこのことを気に病んでいるのは私や美緒
だけではないということを知った。シャーリーさんも…いや、むしろ他のみんなも、仲間のことを心配している
のだろうということを。
だから私はあえて言及しないことにしたのだ。そう言えば執務室に向かう途中で食堂を覗き込んだら、
大好物のふかしジャガイモを食べながらフラウが宮藤さんと何か相談をしていた。その宮藤さんの隣で
深刻そうに考え事をしているリーネさんも見た。最初は不思議な取り合わせだと思ったけれど、当事者3人と、
私と美緒以外の全員がもしも同じ目的を持って行動しているのだと仮定したらすべてのつじつまは合う。
…そして、それをあえて私たちに打ち明けないのにも理由があるのだと。

「悩んでも仕方ないだろう。打つべき手は全部打ったんだ。その後のことは起こった後で考えよう」
「…楽観的ね、あなたは」
「前向きと言ってくれないか。今するべきことをひたすらやっていくことでしか、前に進めないときもあるさ」
「ええ、本当に」

答える言葉に多少の皮肉を混ぜたのに美緒は気付いただろうか。…きっと全く気付いていないのだろう。
まあ、落ち着いてこれでも飲め!笑いながら勧めてくるマグカップには白い液体が入っている。手に持つ
とほわんと温かく、微かに甘い香りがした。

131優しい風 21X2w2Ib 3/4:2008/11/19(水) 23:59:54 ID:e4i7nwdc

「昨日の晩でやっと書類も片付いたんだ。今夜はゆっくり休めるだろう?」
「…何日も徹夜する羽目になったのはどこかの飛行隊長さんが報告書をなかなか提出しないまま放置して
 いたせいですけれどね」
「…う…いや、それはだなあ」

仕方ないじゃないか、そう言うのは苦手なんだ、私は。
湯飲みを持ったまま、困ったように頭をかく。ようやっと打ち負かすことが出来たような気持ちになって、私は
カップの中のそれにようやっと一口つけた。

「…ホットミルク?」
「ああ。体を休めたいときはこれが一番だって、教えてもらったんだ」
「…そう…」
飲み下すと、胸の辺りを程よくぬるくなった液体が流れ落ちてゆく感覚。思わずホッと息をつく。
美味しいわ。呟くと「そうだろう?」と美緒が子供のように笑う。…さっきまでの反省の表情はどこへやら。これ
ではいつかまた、徹夜での書類作成に付き合わせる羽目になりそうだ。まっすぐ、と言う言葉がとてもよく
似合うこの人は、猛スピードで駆け抜けてゆくからそのときこぼしてしまったものは拾い上げてくれない。
困ったものだ。

それにしても、ホットミルクに湯飲みはちょっと不恰好じゃない?
美緒お気に入りの湯のみを見やってそう言うと「気に入ってるんだからいいだろ」との答え。私よりも年上の
はずのこの人は、二人きりの時はこうしてずいぶんと子供のような顔をする。それを口にすると、美緒は
「ミーナも子供になればいいんだ」とまた笑う。…子供、というのは例えばルッキーニさんのような態度を言う
のだろうか。私自身がかつてああいった子供であった記憶なんてないからそれは難しい。けれどこの人と
二人でいるときは、私はいつもよりも少し、自分にわがままになることにしている。それにあちらが気付いて
いるかどうかは知らないけれど。

ほう、と二人同時に安堵のような息をついて、それがおかしくて顔を見合わせて笑った、そのとき。


…!!
……っ!!
…!


「…なんだ?」
「…さあ…」

不意に部屋の外が騒がしくなった。どうやらどこかの部屋で、誰かが言い争いをしているらしい。…内容
まではわからないけれど、その声の調子は、どこか聞き覚えのある、けれど懐かしいもの。

「…エイラだな」
「…ペリーヌさんね」

エイラさんは今、フラウの部屋の掃除をしているはずだ。…シャーリーさんから提案されたときはさすがに
それは重労働すぎるのではと思ったけれど、話を聞くにトゥルーデが大方片付けていたらしいのでそこまで
大変ではなかったろう。その部屋からなんでペリーヌさんの声もして、更に言い争いまでしているのか。全く
訳がわからなくて私は首をひねるばかりだったけれど。
しかしその疑問は、わっはっは、と言う美緒の笑い声ですべて飛ばされることになってしまった。
美緒の笑い声は不思議だ。見ていると私もなぜか笑いたくなる。何でも出来そうな気がしてくる。

「元気になったみたいじゃないか、よかったよかった!」
「何言ってるの美緒、二人はけんかしているのよ?…でも、ふふふ、なんだか安心しちゃった。…ケンカする
 ほど仲がいいって、言うものね。」

132「mix-turegret」-5'' 21X2w2Ib 4/4:2008/11/20(木) 00:01:48 ID:e4i7nwdc

そうだ、こうして言い争いをしているということは、二人の間に何かがある、ということ。避けあっていることは
止めたということだ。たとえそれが争いの言葉でも、そうして何かを交し合ったならきっと物事は変化を見せる
だろう。たぶん、きっと、絶対。そう思ったらなんだか安心したのだ。…そうやって理論立てて考える私とは違って、
美緒はただ直感的に「良かった」と笑っているのだろうけれど。

机の上の書類たちをすべて端へ追いやって、マグカップにもう一度口をつける。うん、おいしい、本当に。
明日にはまたたくさんの仕事が舞い込んでくるのかもしれないけれど、今日するべきことはすべて終えた。
これで、前に進むことが出来る。私は美緒と違って一つ一つ着実に片付けていくことでしか先へ歩いて
いけないから。

「ねえ、これ、あとでペリーヌさんにも淹れてあげて。…あの子もきっと、疲れているでしょう?」
「……そうだな!…ならあとで、3人で飲もう、そうしよう!」
得意そうに笑うのは、自分の作れるもののレパートリーが増えたことを誇りたいからだろうか。…やっぱり
この人は、どこか子供だ。笑いがこみ上げてくる。

「そうだ、ここに来る途中でハルトマンにあったんだ。これを渡してくれと頼まれた。」
ふと思い出したように美緒が胸ポケットから二つに折りたたまれた紙を取り出した。手を伸ばしてそれを受け
取ると、そこには今日から3日分の、夜間哨戒のシフト割り当てが書かれている。…今日が宮藤さんと
リーネさん、明日がフラウとトゥルーデ、明後日がシャーリーさんとルッキーニさん。私や美緒、ペリーヌさんの
名前は、ない。私の上から美緒が覗き込んで、その表の下に書かれた言葉を読み上げた。私の国の言葉で
書かれた、私の良く知っている、癖のある文字を。

「"わたしにまかせて!"…か。つくづく面白いやつだな、ハルトマンは」
「…すごく気が利くいい子よ。人を振り回すのも得意だけれど、ね」
「まさにシュトルムだな。…で、今回は私たちはその外側に追いやられたわけか。」
「ふふふ、もしかしたら中心なのかもしれないわね」
「はっはっは、平和なのはいいことだ。せっかく気を利かせてもらったんだから、ゆっくり寝かせてもらおう
じゃないか。…一緒にホットミルクでも飲んで、な!」

そうね、そうしましょう。そう言って笑いあっていたら、コンコンと扉を叩く音がした。すみませーん。扉の向こう
からするのは宮藤さんの声。先走りばかりが得意なあのいたずら子犬さんは私の手の中のメモの存在を
他の皆に告げていないらしい。
コップに残ったホットミルクを飲み干して、「どうぞ」と返す。二人が入り込んでくる前に、先ほどの帳簿に丸を
ふたつ、書き込んだ。


(つづく)
―――
幕間3は以上です。実は原因である癖にのほほんとしている二人だったらいいなあとか思ったり
少佐がホットミルク出したのは「0314.ほっとミルクでおやすみなさい」の関連です。
申し訳ない、3つめの名前欄を間違えて一つ前に投下した話のにしてしまいました、うっかりうっかり

続いて本編の最後を投下

133「mix-turegret」-6 21X2w2Ib 1/4:2008/11/20(木) 00:03:35 ID:e4i7nwdc



流石にサウナに行っている時間はなかったから、扶桑のオフロで手早く汗を流して……と、思っていたら、
実際のところ私は相当肉体的にも、精神的にも疲れていたらしい。つい湯船の中でうとうとしてしまって結局
自室への帰路につくまでにかなりの時間が掛かってしまった。
時計は見ていないけれど、体感的に言うともうサーニャは夜間哨戒に出掛けてしまっている時間だ。なんで
分かるのかなんて聞くのはもう無粋だ。第二の固有魔法と誇ってもいい。たぶん、私はサーニャに関すること
だったら普段よりもずっと敏感になれる。
それは、もちろん、私が『いつもどおり』の場合だけれども。

(今日も、見送ってあげられなかったな)

喉の辺りにまだ残っているように思える湯の感覚にむせながら、がっくりとうなだれた。湯船でつい眠って、
挙句の果てに溺れかけただなんて、みんなには絶対に言えない。笑い話にも出来ないほど情けない失敗だ、
恥ずかしい。
…恥ずかしいと言えば、つい、さっきの。
少しだけ喉が痛むのは、大声を張り上げすぎたからだ。だってサーニャのいいところをいくつもいくつも並べ
立てた。いつもいつも心に思っては、言葉に出さずに飲み込んでいる言葉たちを、バケツをひっくり返した
みたいに全部ぶちまけたのだ。…その場の勢いとは言え、他人に対して本音をあんなにもさらけ出したのは
もしかしたら初めてかもしれなかった。

だから、ちょっぴり後悔すると同時に高揚もしてる。だってペリーヌは私と同じように、坂本少佐への気持ちを
ぶちまけたから。ふたりだけのひみつ、なんて可愛らしいものじゃないけど…言うなら、そうだな、共犯者
みたいなもんだろうか。言うな、なんてお互いに言わなかったけれどきっと多分他の誰かに打ち明けること
なんてないだろう。だってそれはお互いにとっての弱みであり強みなんだから。

許したり、許されたり、そんなやり取りはしていないけれど、きっともう仲直りだ。起きてしまったことなんて
どうしようもないけれど、きっと明日朝起きれば都合よく忘れているような気がする。そんでまた、今までと
同じように、けれども少し違ったやりとりを交し合ったりするんだろう。だから、後悔しているけれど満足も
している。

そんなことを考えているうちにたどり着く、サーニャの部屋。
いるはずがないってわかっているけれどノックをする。いちいち未来予知をするまでもなく予想は大当たりで、
返事なんてなかった。分かってはいたけれど、自分の情けなさに嘆息する。

これからどうしようか?
…とりあえずは部屋に戻って、今日はずっと起きていて、サーニャの帰りを待とう。帰ってくるサーニャに
一番に「おかえり」と言って「ごめん」と謝らなくちゃいけないのだ。

なんで謝らなくちゃいけないのか、ちょっと前の私には分からなかったけど今なら分かる。一緒にいて
やらなかったから、寂しがらせてしまったと思うから、謝るんだ。いつもどおりでいられなかった自分で、
不安にさせてしまったのだと思うから。
いつも無意味に口を付いて出る「ごめん」とは違う。目的がちゃんとあるから、私にとっては意味がある。
意味があるなら、何かは変わるだろう。それは目に見えるものじゃなくてもいい。ちっぽけだっていいのだ。

(…とは言うけど、やっぱり今すぐに会いたかったよなあ)

言い聞かせているのはまたぐだぐだと落ち込みたくないからで、本音はやっぱり情けないもの。
会いたかったのは、ずっとだった。でも会っちゃいけないんだって、私にはその資格がないんだって、勝手に
決め付けていた。気持ちを全部内側に内側に溜め込んでいたから、行動まで後ろ向きになってしまった。
でも今は違うんだ。会いたい、会いたい、会いたい。その気持ちが止まらないんだ。ハルトマン中尉の部屋での
やりとりが、言い合った言葉一つ一つが、言って放ったはずの言葉が、全部全部形になって心の中に染み
込んでいるみたいなんだ。

134「mix-turegret」-6 21X2w2Ib 2/4:2008/11/20(木) 00:04:50 ID:/3SQv7VA

ふわふわの髪、若木のような瞳、柔らかな頬、滑らかな肌、控えめな胸、長いまつげ、小さめの手足、
ほのかにする甘い香り、小さな声、美しい歌、サーニャを構成するすべて。

こんなにも見ていたんだなあ、と呆れるくらいに思った。自分でも気付かないくらいに、笑えちゃうくらいに。
それら全部をぎゅうと抱きしめたいくらいに愛しいと思った。出来ることなら私も夜の空へ繰り出したいくらいの
衝動だったけれど、『部屋で休んでいなさい』と隊長に言われた手前それをすることは出来ないし…なにより
ストライカーは漢泣きの整備のにーちゃんたちの手で絶賛修理中だ。破損がどの程度なのか、どのくらいで
直るのか……シャーリーみたいにストライカー自身に明るいわけじゃない私には見当も付かない。どっかの
カタヤイネンはしょっちゅう半壊全壊をやらかしてたけど、あいつならわかるだろうか。てか、この報告もきっと
スオムスに行くんだろうなあ。『イッルの間抜け〜』とニヤニヤ笑うアイツの顔が目に浮かぶようだ。腹立つ。

のろのろと来た道を戻ってすぐ隣にある自分の部屋の扉に手をかけた。ひんやりと感じる、ドアノブの感触。
何だかひどく久しぶりのような気がする。それは今日と言う一日が色んな意味で長すぎたからなのか、ここ
数日の私がそれを考える暇もないほど憔悴しきっていたからなのか、そのどちらもなのかは分からないけれど。
今度はノックなんてしなかった。だって私の部屋だ、紛れもなく。扉を開いたら月の光がきっと差し込んで
いて、サーニャが「変なの」と前に小さく笑った珍奇な石像やら、水晶玉やらが無言で出迎えてくれるんだ。


とばかり、思っていたから。
まさか、それとは別の様子なんて欠片も想像していなかったから。
薄暗い自室の扉を開いた瞬間胸に飛び込んできた「それ」に、私は最初相当うろたえた。

それは、温かくて、柔らかくて、日本の腕を持っていた。
離すまいとお腹から背中に手を回して、ぎゅうと固く抱きしめてくる。
ふわりと掠める花のような甘い甘い香りを、私は良く知っていた。

「……さーにゃ」

たっぷり30秒は固まって、ようやく口にした彼女の名前。私のお姫様は無言で手をきつくして、それに答える。

「タダイマ、サーニャ」

次に口をついて出た言葉はここ数日の私と彼女の様子からしたら妙に平和的で、間抜けな言葉だった。
だってここは私の部屋で、彼女は実際のところ異分子で。

「おかえりなさい」

けど、サーニャがそう答えてくれたからいいんだ、と思った。慣れた手つきで頭を撫でたら、更に強く顔を
押し付けてくる。

「おかえりなさい、エイラ」

顔をあわせたのは、今朝以来。夜間哨戒から帰っても眠らずに私の後を付いてきたサーニャを厄介払い
するように彼女の部屋に押し入れて、冷たくドアを閉じたのが、最後。おやすみ、ぐらいは言ったかもしれない
けれど、まさか「行ってきます」なんていわなかったろう。…けれど、サーニャは答えてくれた。
くぐもる声は顔を押し付けているからなのか、泣いているからなのか、わからない。でもそんなの関係ない。
関係なしに、言ってやらなくちゃいけない言葉がある。

「ゴメンネ」

やっと言えた、心からの「ごめんなさい」。今の私にとってはそれだけで十二分だった。

135名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 00:05:19 ID:6JjLMcsq
いらないかもしれないが連投支援
136「mix-turegret」-6 21X2w2Ib 3/4:2008/11/20(木) 00:05:51 ID:/3SQv7VA



「…ねむたくないか?」

尋ねたら小さく一言、「ねむい」と言う言葉が返ってきた。うん、と頷くと、そのままサーニャを抱き上げて
ベッドに向かう。すとん、と彼女をその上に降ろすと私もベッドに飛び乗った。窓際に程近いベッドは、
入り口よりもよっぽど明るく彼女を映し出してくれる。

「さーにゃ、」

ベッドの上で二人セイザをして、向かい合って。けれど不思議といつも感じてはどうしようもなくなってしまう
照れくささはない。こんなにすぐ近くにサーニャがいる。それがすごくすごく、嬉しかった。ばかだな、自分から
避けてたのに。
口にした彼女の名前は、これが自分の声なのかと思うくらいにふにゃふにゃとしていた。今も頭のどこかが
ほわんとしていて、まるで酔っ払っているかのようにさえ思える。何でも出来そうな気がして、それに高揚して
胸がどきどきするんだ。
サーニャが身じろぎするたびに、あの優しい、甘い香りがする。香水でもつけているのかな、シャンプーの
香りなのかな。私にはわからない。もしかしたら私も同じ香りをしているのかもしれないけど、関係ない。
サーニャがいる。こんなに近くに居る。それだけで幸福で、仕方がなかった。

もっと近くで感じたいなあ。そう、思ったから多分私はこう言ったのだろう。

「ギュって、してもイイ?」

答えなんか聞かないで、ただただ今すぐにそうしたい気持ちばかりが募って、その思いのままにその体を
抱きしめたから、きっとサーニャはむしろ返事をする暇なんてなかったのだと思う。けどサーニャは受け
止めてくれた。そのあとで、もう意味を持たない返事をくれた。うん、いいよ。
お腹から手を回して、背中。パーカーを羽織っているその胸に顔を押し付けて。それはさっきのサーニャ
みたいだ。まるで逆転したようでおかしくて、くっくと笑いが止まらなくなる。ああ、サーニャの匂いがする。
そんなちっぽけなことが今はこんなにも嬉しい。

「エイラ、」

名前を呼びかけられて、顔を上げようと思って、止めた。代わりに抱きつく腕をきつくして答える。今夜はもう、
絶対に離さないことにしよう。普段じゃ絶対に思わないことだけれど、今日の私はなんだかひどくわがままだ。
自分が悪いのは分かっているけれど、それでも我を通したい気分なのだ。

「会いたかった。私ずっと、エイラに会いたかったんだよ」

サーニャの手が伸びて、私の頭を撫でる。まるであやされているかのようだけれど、それとは裏腹に
サーニャの言葉は切実さを帯びていた。うん、うん、ゴメンよ。言いながら私も彼女の背中を撫でる。
会っていなかったかと言われたら、正確には毎朝顔をあわせてはいた。けれどサーニャは夜間哨戒の
あとで寝ぼけていたから知らないのだろう。たぶんいつもどおり気がついた私のベッドにいて、それだのに
私がいなかったのだろうと思う。どんな心地だったろう。きっと理解しきることは出来ないと思うけれど。

「エイラ、眠ろ。」

137「mix-turegret」-6 21X2w2Ib 4/4:2008/11/20(木) 00:06:51 ID:e4i7nwdc

まるで子猫を抱き上げるかのようにわきの下に手を入れて私を起き上がらせると、サーニャは私の両頬を
包んでそういった。いつもとはぜんぜんちがう顔だ。ひとつ年下の彼女が、なんだかひどく大人に見えるのだ。
言われるがままに毛布に潜り込んだら、その頭を抱え込むようにサーニャが抱きしめてくれた。サーニャより
私のほうが背が高いからきっと上から見たら不恰好なんだろうなあ、と思う。でももうそんなのどうでも
よかった。カッコ悪くたっていい。情けなくたって構わない。すごく眠くて、でもサーニャの優しさがすごく
嬉しくて、それが胸をいっぱいにしてる。鼻の頭が痛くなって、目頭が熱くなって、つい、ほろほろと涙を流した。

「アリガトウ」

ごめんね、は今日はもう言わないことにしようと思って、代わりにただそう言う。何がって、すべてにだ。
サーニャを構成しているすべて、サーニャの創りだすすべて。サーニャの存在そのものに。
今夜も夜間哨戒のはずのサーニャがなんでここにいるのか、私の部屋にいたのか。そんな疑問は確かに
頭の片隅にあったけれど、そんなのもう、どうでもいいことだと思った。どうにでもなってしまえと思えた。
とりあえず今は、サーニャが傍にいる、私はそれだけでいい。たぶんきっと、これからもずっと。

あのね、エイラ。
うん、サーニャ。
囁くように呼びかけられて、半分夢の中で私は答えた。
「明日と、あさっては、お休みなの。私も、エイラも。」
そうだっけ、と返したら「そうなの」とだけ返ってきた。こんなときに嘘をついたって仕方ないからきっと本当
なんだろう。疑う余地がないから、そうなんだろう。

「行きたいところがあるの。一緒にいこ?」

もちろんだよ。そう答えようと思ったけれど、上手く言葉にならなくて、なんでかこの一言が口をついて出た。

「大好きだよ、サーニャ」

きゅ、とサーニャの腕がきつくなる。ああ、なんだか変なこと言っちゃったかもしれない。そう思うけれど、
もう上手く言葉が出てこない。何を言ったかもう思い出せないけれど、私はきっとその一言を、ずっと
サーニャに伝えたかったのだ。

…うん、だから。
間違ってはいないから、いいや。



(つづく)
―――
以上です。
エイラ視点でのこの話は最後ですが、エピローグ的にもうひとつ続きます。

138名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 00:15:48 ID:6JjLMcsq
乙?
大胆なエイラにwktkだw
そして隊長は良い感じにもっさんに振り回されてるねw
139名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 00:18:35 ID:LRjjofaq
>>122ー127
本スレでも以前こういう話題になった時があってですね、その時から言ってたんだけど
ルッキーニが成長したら落ち着いた雰囲気キャラになってほしいと思うんですよ

シャーリーが、立派に上官やってるルッキーニの後輩ウィッチ達にニヤニヤしながら言うんですよ
「こいつなあ、今でこそこんなにくそ真面目にやってるけど、昔はやんちゃしてたんだぜえ・・・」
んでシャーリーが昔のルッキーニの淫行愚行の限りを後輩にバラすと
ルッキーニが「もう・・・シャーロット中佐・・・昔馴染みだからって・・・勘弁してください・・」って顔を赤らめるわけですよ

んでせっかくだからシャーリーがルッキーニの基地に泊まっていくことになって
その夜ルッキーニの部屋に行くわけよね

二人きりになればもう昔の二人まんまなわけですよ

「ふああああシャーリー!!会いたかった・・・会いたかった・・・ぐす・・」
「ほらほら昔やってたみたいにおいでおいで」
「ふうう・・・暖かい・・・昔とおんなじだね、シャーリー、とってもあったかいよ〜」ってなるわけね

でも唯一昔と違うとこがあるわけよね、そこはもうルッキーニが『ロマーニャ娘』として覚醒したってとこなわけですよ

「ル、ルッキーニぃ・・・ふ・・・ふあぁ・・ああっ・・・・・」
「まだ3回目だよ?シャーリ〜?んちゅっ・・・ちゅっ・・」
「も、もうやめ・・・ど、どうにかなり・・・そ・・・」
「だ〜め。後輩の前で昔のあんなこと言われちゃって、しゅっごい恥ずかしかったんだよわたし
 だから今夜は、もっともっとシャーリーを恥ずかしくして(ry



誰か私の中の溢れて止まらないものをどうにかしてください
140名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 00:29:07 ID:yI9v0miq
>>137
読み終えたらニヤニヤしながら目から水が出ていた…なんかもう、色々とありがとう
俺はこの幸せな二人を見ているのが大好きなんだなぁと再確認させてもらった
不幸が似合いそうとか結構言われてたりする二人だけど、この二人ほど不幸になってほしくないカップルは初めてなんだよなぁ
14121X2w2Ib:2008/11/20(木) 00:30:49 ID:/3SQv7VA
>>138
あ、今回投下は>>137で終わりです。紛らわしくて申し訳ない
14221X2w2Ib:2008/11/20(木) 00:34:07 ID:/3SQv7VA
連投申し訳ない
>>134の5段落目の1行目、日本→2本 に直して保管願います…
もうだめだめだ、次のSS書きあがるまで寝ない
143名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 00:35:43 ID:6JjLMcsq
ちょっと待て!あんたが寝ないと俺も寝られないから勘弁してw
144名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 00:36:18 ID:YV3Q9m46
>>137
エイラさんがヘタレじゃないなんて!いちゃいちゃしすぎだろこのやろうもっとやれ!にやにやが止まらない。
台風の目は平和だなー。子供っぽいもっさんかわいいです。
145名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 00:39:57 ID:cUkzWXDA
>>139
「溢れて止まらなくなったら、早く作業に戻るんだ!」とおばあさまのおばあさまのそのまたおばあさまが仰っていましてよ?

昔どおり甘えるルッキーニには鼻血が溢れそうです……

>>137
乙です! 
萌えをどう表現したらいいやら。一生懸命な二人がとてもかわいいです。
エイラはほんと幸せになってほしいなぁ。いやこのお話の状態だけでも十分幸せでしょうけれどもw
146名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 00:51:57 ID:WHNVLDy7
あまりの良作で寝れなくなった
147名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 00:56:06 ID:pd3Ph3Z8
>>137
いやはや長編完結乙!!ハッピーエンドになって良かった。一時はどうなることかとホントにもう……。
たっぷり堪能させていただきました。これでまた明日からも元気に働ける。
148名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 01:33:41 ID:sonHcaXn
>>137
なんと素晴らしいエイラーニャ・・・ああもう最高だよ
149名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 04:08:36 ID:P3Fy0mlE
>>137
素晴らしすぎて、何も言えねー
とりあえずエピローグ期待してます。
150「mix-turegret」-6' 21X2w2Ib 1/4:2008/11/20(木) 04:23:32 ID:/3SQv7VA
ペリエイラ話最後の最後、投下です

―――
エピローグ─世界中から、あなただけ


私の腕に収まるようにして、エイラはすっかり眠りについてしまっていた。すうすうと穏やかな寝息を立てて
いる。まるで小さな子供みたいに。
私はぎゅっと、抱え込んでいるその頭ごと彼女を抱きしめた。久しぶりだ、この感覚。胸がどきどきして目が
さえて、眠れない。だってもったいないんだもの。眠っているときのあなたは無防備で、どんなに近づいても
後ずさりしたりしない。だから私はいつもちょっと寝不足で、けれど不思議と幸せだった。

サーニャはさ、控えめすぎるんだよ。もっとわがままいっていいと思うんだ。

私より少し背が高いくらいのハルトマン中尉が、そう言って私の頭を撫でた。あまり接点のないその人に
そんなことをされたのはもちろん初めて、びっくりして目を丸くしたらハルトマン中尉は肩をすくめて、けれども
何もきにならないというように朗らかに笑んだのだっけ。ね、トゥルーデ?尋ねられたバルクホルン大尉は
突然の問い掛けに少し驚いた顔をしていたけれど、すぐにいつものあのしかめ面で頷いた。照れてる
照れてる〜。茶化すようにハルトマン中尉がつついたら今度は「そんなことないっ!」と怒り出して…けれど、
いつもと違って怖くはなかった。だってすごく、優しい目の色をしていたから。

そんなことないよ、サーニャちゃんは全然悪くない!

リネットさんはすごく、怒ってくれた。
ぽろぽろと、涙とともにこぼした不安を一つ一つ丁寧に拾い上げて拭きとって、強い口調で励ましてくれた。
おとなしいばかりだと思っていたその人の頑固なところを初めて見た。けれど背中をさする手が、ぎゅっと握り
締めてくれる手が、やっぱりやっぱり私の知っている通り、とてもとても優しかった。

そうだよ、リーネちゃんの言うとおりだよ。

芳佳ちゃんはリネットさんの言葉をついでそう言ってくれた。何も言えずにただひたすら泣くばかりの私を
気遣ってか、ずっと何も言わずに傍にいてくれた芳佳ちゃんたちが部屋を去る直前に掛けてくれた言葉は
私をとてもとても勇気付けたのだ。だってそれまでの私はただひたすら自分を責めるばかりで、悪いほうに
悪いほうに考えるばかりで、何もしようとしていなかったから。どうしたらいいのかわからないけれど、私は
何かをしなくちゃいけない。そう思わせてくれたのは、芳佳ちゃんとリネットさんだった。

安心しろよ。あたしたちが、何とかするから。

な、ルッキーニ?シャーロットさんはそう言って、ルッキーニさんと眩しいくらいの笑顔をくれた。底抜けに
明るいその眩しさは、普段の私なら眩しすぎてまっすぐに見ることが出来ないのだけれど、今日ばかりは
それがとてもとてもありがたかった。私にそれと同じものを浮かべる元気はなかったけれど、私の心の
暗くなっていた部分が照らされて、温かくなったような気がした。

…大丈夫ですわ。そんな顔していたら、もうすぐ来るエイラさんが落ち込みますわよ。

ペリーヌさんがそう言いに来たのは確か、エイラがやってくる少し前だったと思う。ごめんなさい。まずそう
言って深々と頭を下げたペリーヌさんに私はうろたえることしか出来なかったけれど、
何だかいつもより晴れやかな顔をしたペリーヌさんはそう言って、エイラの帰って来ることを教えてくれた。

今日一日で、私は普段よりもずっとずっとたくさんの人と話をした。…普段ならば、ミーナ中佐と、私の
すぐ目の前にいるこの人としかまともな会話を交わさないというのに。
うう、ん。そのエイラが声を上げて身じろぎをする。普段私の世話を焼いてはいつもついて離れないくせに、
エイラは何かを意識して私に触れるのをひどく嫌がる。…前向きに考えたら、とても恥ずかしがっている。

151「mix-turegret」-6' 21X2w2Ib 2/4:2008/11/20(木) 04:25:04 ID:/3SQv7VA

その、エイラが、いまは。
こうして私にすがりつくようにして私のすぐ傍にいる。それがすごくすごく、嬉しい。ここのところ…正確に
言えば、5日前の夜から、エイラの様子は変だった。いつもは私がどんなに遠慮しても「心配だから」と
言って哨戒に出掛ける私を見送るくせに、あの日は私が呼んでも、探しても、姿を現さなかった。…何か
用事があったんだろう、私の見送りなんて、任務でも義務でもないもの、仕方がない。そんな寂しい気持ちを
抱きながら哨戒から帰って来た、朝。やっぱりエイラの様子はおかしかった。夜に何か用事が入ったん
だったらもしかして疲れてるかな、迷惑かな。そう思ったけれど、やっぱり私は朝一番にエイラに会いたくて、
だからその日も部屋に潜り込むことにした。そうしたらエイラはおかしな場所で寝ていて、私が近づいたら
焦ったように跳ね起きて、私をベッドの上に乗せなおすとまるで風のように部屋から立ち去ってしまったのだ。

(ごめん)

小さく小さく呟いたエイラのその言葉は、長いこと私の耳をついて離れなかった。何で謝るの?なにか
やましいことでもあるの?
…もしかして、私といるのが、イヤになっちゃった?
その場所に思考が行き着いた瞬間、がらがらと私の世界が崩れる音が、耳の奥でした。

それから先の数日を、私は一体どうやって過ごしたのだろう。正直よく、覚えていない。いつの間にか
カレンダーの日付は移り変わっていって、慣らされた生活サイクルをぐるぐるとたどるように私は真っ暗闇を
歩いていた。…けれども微かに残るエイラの優しさの残り香を掴み取りたくて、必死だった。

失ってはじめてわかった。私の世界はいつも、エイラによって支えられていたんだって。私自身がどんなに
ぐらぐら揺れていたって、私の中にすっくと一本、エイラの存在がまっすぐに立っていた。私の行動で多少
うろたえることがあるとはいえ基本的に落ち着き払っている彼女は、大抵どんなことにも動じない。それが、
少し先の未来を先読みできる彼女の特殊能力と何か関連があるのかはわからないけれど…どんなときも
ゆれることのない光を、満たされて溢れてしまうほどの優しさを、与えてくれるエイラの存在はいつだって
私の中で確かだったからだ。
大丈夫。そう言ってエイラはよく私に微笑みかけてくれた。どんな無茶なことだってエイラが笑えば実現
するような気がするのだから不思議だった。実際彼女が大丈夫だと言ったことが、だめだったことはなかった
から。
そんなエイラがいなくなった私の世界ではすべてが虚ろで、幻で。確かなものが何ひとつなくて。私自身
さえなくなってしまったような、心地だった。

「ん…さ……にゃ…」

エイラが突然私を名前を呼んだから、私はびっくりしてしまう。けれどすぐに寝言だとわかって私はほっと
すると同時に少し残念にも思った。…でも、いいのだ。だって明日も、明後日も、ずっとずっと一緒にいるんだ
から。いつもはお互いの任務のために朝しか一緒にいられないけれど、一日中一緒にいられるんだから。

休みが欲しいんです、明日から。
それは本当に突然の申告だったというのに、ミーナ中佐は「ええ、もちろんいいわよ」と二つ返事で了承
してくれた。…まるでそれはあらかじめ決められていたことだ、といわんばかりに。もちろんそんなことは
ないと思うから、もう、何度お礼を言っても、言っても、足りないくらいだ。
…ミーナ中佐の部屋を出たところでぱったりと出くわして、私にホットミルクをくれようとしてくれた坂本少佐
にも、あとでお礼と、ごめんなさいを言わなくちゃいけないと思った。両手に持って執務室に入ろうとして
いたんだから、それは当然自分のミーナ中佐の分だったのだろう。それを思うと同時に、何かを口にする元気の
なかった私は何も言わずに首を振るだけでそれを跳ね除けてしまったから。

ほら、こうして。
…失うことで、ようやく気付けたものもある。それは私が、私たちが、本当はたくさんの人たちに支えられて、
見守られているんだって言うこと。…ううん、きっとエイラはそれをちゃんと知っているのだろう。何も気付いて
いなかったのは、私。エイラの存在を盾にして、壁にして、知らん振りをしてた。エイラがいればそれでいい、
それだけでいい。他の人も気になるけれど向き合うのは怖いから、やっぱり私はあなたさえいれば。

152「mix-turegret」-6' 21X2w2Ib 3/4:2008/11/20(木) 04:26:38 ID:/3SQv7VA

バカだね、私。そんなことないよ、って、私たちは『チーム』なんだよって、エイラはいつも教えてくれて
いたのにね。私とエイラだけでじゃ完結しない、完成されない。私もエイラも、その構成要員のひとり、
なんだよね。世界を作るのに必要な、たった一人、かけがえのない存在。だから、理由もなしに心配して
くれる。肩を叩いて励まして、不条理に怒って、力になってくれるんだよね。見返りなんて求めてない、
ただただ心配だから。大切だから。
ミーナ中佐も、坂本少佐も、バルクホルン大尉も、ハルトマン中尉も、シャーロットさんも、ルッキーニさんも、
芳佳ちゃんも、リネットさんも、ペリーヌさんも。

ねえエイラ、私、やっとそんなことに気が付けたんだよ。話したら、あなたは褒めてくれるかな。きっと
喜んでくれるよね。私の幸福を、いとも簡単に自分の幸福として受け止めてしまえるあなたなら。

(だいすきだよ、サーニャ)

眠りに落ちる寸前にエイラはそういった。脈絡もなく、突然に。エイラの世界は、私のそれと違ってもっと、
ずっと、広い。…その世界の中で、私一人は特別なんだよって、そういってくれた。
パーカーのポケットに手を入れると、中でころころと転がる小さな小さな通信機。ハルトマン中尉が私に
手渡してくれたもの。いったいこれはなんですか?そう尋ねたくて、けれども引っ込み思案が邪魔をして
何も言えずにいた私にハルトマン中尉はやっぱり朗らかに笑んでくれた。それは「大丈夫だよ」と笑う
エイラのそれと、よく似ているような気がした。
きっと役に立つから、電源入れて持っといで。そう言われるがままに耳に取り付けて、ぼんやりと自分の
部屋で過ごしていたら、『それ』は聞こえた。

『だってホラ、サーニャのほうがずっと可愛い』

どこから聞こえてくる音なのか、最初はガタガタとか、ゴトゴトとか、そんな物音ばかりだった。…しばらく
して物音は病んで、誰かがひそひそ声で話しているかのようなものになって。
一体何なのだろう、と魔力を放出してその発信源をようやく探し当てたその瞬間、一番最初に耳に届いた
のはその発言だった。誰の発言かなんて、そんなのすぐにわかった。私がこの人の声を聞き間違える
はずがない。…それは私がずっと聞きたかった声音で、けれどもその発言は私がかつて一度も彼女から
聞いたことがなかったものだったから、もしかして私の作り出した空耳なのではないかと思ったほどだった。

だって、可愛いなんて、エイラは言わない。
エイラは直接に褒めることも、褒められることも苦手なのだ。例えば私の歌だとかピアノだとか、そう言った
ものは千切れるくらいに褒めるのに、私自身に対する言葉はあまりにも少ない。

直後に今度はペリーヌさんが、坂本少佐をほめる言葉を聞いた。あ、ペリーヌさんと一緒なんだ。切ない
気持ちが頭をもたげたのを覚えている。
エイラと同い年で、たまに仲良さそうに言い争いをしているペリーヌさん。私は彼女が少し苦手でつい、
ペリーヌさんを見かけるとその場から後ずさりしてしまうのだった。そんな私を、エイラはいつも「ペリーヌは
ツンツンしてるけどいいやつだぞ」と諭すのだ。そうして私の世界を広げるきっかけを、エイラは作って
くれていた。…今の今まで、私はそれに気付けていなかったのだけど。

その切ない気持ちが一瞬にして消え去ったのは、それに対抗するようにしてエイラが私の『いいところ』を
言い返し始めたからだ。ペリーヌさんが少佐をひとつ褒めれば、エイラもまた私をひとつ褒める。髪とか、
目とか、肌とか、それはもう、この人は私のこんなところまで見ていたのかと聞いているこちらのほうが
恥ずかしくなってきそうなほどに。
…すっかり満たされて、私は途中で耳の中のそれを取り外して電源を切ると、ポケットにしまいこんだ。
エイラの口にした、褒め言葉ひとつひとつが胸いっぱいに広がって温かいものになって、そうして体中を
満たしていくようだったのだ。空耳かもしれない、なんて、疑う気持ちはもう欠片もなかった。…ううん、
信じたかったのだ。これは、エイラの本当の気持ちだって。恥ずかしがり屋のあの人がいつも胸に抱いてる、
私へのまっさらな愛情なんだって。

153「mix-turegret」-6' 21X2w2Ib 4/4:2008/11/20(木) 04:30:15 ID:/3SQv7VA

…確かめなくちゃ。そして、伝えなくちゃ。
そう思ったらもう、気持ちは止まらなくなった。だからエイラの部屋にすぐ行って、エイラの帰りを待つことに
した。だって明日の朝までなんて待っていられない。ねえ、あなたは私のことを好きですか。嫌いになって
いませんか。言ってもいいですか、私はあなたが大好きなんです。
世界は広い。たくさんの人がいる。私が私の世界を閉ざして、ごく限られた範囲で完結させようとしたって、
そのことは揺るがない真実だ。

その広い、広い、世界の中で。あなたが私だけを選び出してくれたというのなら。
私だってそうなんだよって、伝えたかった。世界にただひとり、あなたがいればいいと言うんじゃない。世界は
広いけど、その中であなたが一番だからこそ、あなたに傍にいて欲しいんだって。
この数日の間にエイラに何があったのかなんて知らない。分からない。けれどもうそんなことはどうでもいい。
だって次にエイラの世界が揺らいだときは、私がそれを支えればいいんだもの。

キラキラと銀に光る、さらさらの髪。あけぼのの空のようなやわらかな色をした瞳。照れると赤く染まる頬。
私よりも実はずっと白い肌。抑揚の無い口調、ほっそりとした長い指、私よりもずっと大きな手のひら。
ぶっきらぼうな言葉の奥に見え隠れする優しさ、強く出られるとうろたえる弱さ、空でストライカーを駆る
ときの壮観な顔つき、大丈夫ダヨと微笑むその笑顔。
全部全部、大好きなんだよ。だから一番近くに居たいの。守ってあげたいの。もう二度と、曇ったりしないように。

それを伝えたくて、伝えたくて、エイラの部屋で、エイラが帰るまで、ずっとずっと待っていたのだというのに、
エイラに触れた瞬間その言葉は全部どこかに流れていってしまった。突き放されても絶対に離さないことに
しよう。そのぐらいの覚悟でいたのに、エイラは私を受け止めてくれたからだ。

…まあ、いいや。
けれど私にしてはひどく珍しく、そんな楽観的な気持ちを抱くことが出来た。だって時間はたっぷりとある。
だからゆっくりゆっくり、伝えていけばいい。一緒に歩いていくように。
エイラは気付いていなかったようだけれど、机の上には芳佳ちゃんとリネットさんが考えてくれた明日と
明後日の行動表がある。それによるとエイラはその二日で私に少なくとも10回は『可愛い』と言わなければ
ならないらしい。あと、手をつないで、腕を組んで…その他、もろもろ。「サーニャちゃんを泣かせた罰だよ」って
リネットさんは笑っていたっけ。

(サーニャのナイトは情けないから、ちゃんと捕まえとかないとすぐびびって逃げちゃうぞ)

だからちゃんと手綱引いておけよ。シャーロットさんに、言われた。しっかりしなくちゃな、お姫様。そう頭をかき
回された。エイラのするそれとは違う、少し荒っぽい撫で方だった。
ナイト。きっとブリタニア語で『夜』と『騎士』が同じ読みであることにかけたものなんだろう。エイラはナイト
ウィッチになりたいのか、とバルクホルン大尉に尋ねられたことがある。あいつの能力は昼間戦闘向きな
のにな、とひどく不思議そうな顔をしていた。多分それはきっと、エイラが私に付き添って夜間哨戒に
出掛けることが多いからだ。

ナイト?…ううん、違うよね。私の腕の中にいる、エイラに向かって心の中で語りかける。…守られたい
んじゃないよ。一緒に歩いていきたいんだもの。
だから、そう。きっとエイラは王子様だ。ちょっと優柔不断だけど、私をいつも想ってくれている、強い強い
王子様。ただひどく、心優しすぎるところがあるの。けど、そう言うところも大好きなの。

(明日は早く、起きよう)
少なくともきっと、エイラより早く。だってほら、私の王子様に目覚めのキスをしてあげなくちゃいけないんだから。
そのためにはちょっともったいないけれど、眠らなくちゃ。
だから私は眼を閉じることにした。明日が来るのが待ち遠しいのなんて久しぶりだと思いながら。


終わり

154名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 04:31:57 ID:9IJB9ivt
__
    ̄ ̄ ̄二二ニ=-
'''''""" ̄ ̄
           -=ニニニニ=-


                          /⌒ヽ   _,,-''"
                       _  ,(^ω^ ) ,-''";  ;,
                         / ,_O_,,-''"'; ', :' ;; ;,'
                     (.゙ー'''", ;,; ' ; ;;  ':  ,'
                   _,,-','", ;: ' ; :, ': ,:    :'  ┼ヽ  -|r‐、. レ |
                _,,-','", ;: ' ; :, ': ,:    :'     d⌒) ./| _ノ  __ノ
155名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 04:35:58 ID:/3SQv7VA

以上です。幕間入れて100KB超えるとかもうアホとしか言いようがない
自分の携帯は古めなせいか、容量大きすぎて保管庫の本編を携帯から読み返すことが出来ません、悔しい

一番活躍したのはフラウだと思います。フラウにありがとう
ここまで根気よく読んでくださった方々、スレだけでなくてメールやらコメントやらで応援してくださった方々、
本当にどうもありがとうございました。おかげさまで終わりまで書くことが出来ました。
これからもどうぞ、よろしくお願いいたします。

スレしょっぱなからひとりでどんどん投下してしまい申し訳なかったです。ちょっと自重します
よし、寝る!
156名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 05:14:51 ID:JjNikP1M
すげワンマン…これが二桁マジックか…
にしてもスレ一つ落とすほど筆の止まった俺でさえこの頭の魔女具合なのに、
100も作文したうえ絵も描けるあなたの優秀すぎる脳が生活に障害してないか心配だ

長編おつかれアンドそういや最近見ないけどじっちゃんよどこへ行った…
157名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 06:19:44 ID:ELwHYnhP
>>155
長編お疲れ様です!もうGJでは足りないくらいなんだが、GJ!!
もうここまで来るとエイラーニャのデートのSSまで期待してしまう…!
とにかくGJ!!


エイラは次の日ヘタレながら王子になると予想。
出掛けるとき、いつも通りエイラの服の裾を掴もうとするサーニャに、真っ赤になりながらサーニャの手を握りなおす王子様エイラまで勝手に妄想した。
158名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 06:48:11 ID:ZwH/Za4r
>>155
超GJ!!
>自分の携帯は古めなせいか、容量大きすぎて保管庫の本編を携帯から読み返すことが出来ません、悔しい
ファイルアップロードしたり>>136>>137でID変わってたりと無論PC持ってるよな?PCでいいだろ。
おっと、こんな時間に誰か来たようだ・・・・
159名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 07:03:53 ID:P3Fy0mlE
>>155
長編お疲れ様です!!
やっぱすごいわ、絵も描けて文章がこんなうまいなんて…
あなたほんとに人間ですか?(いい意味で)

これは続編も期待していいですよね?
ほんと頼むので是非続き書いてくださいお願いします。
160名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 07:10:29 ID:rSkMhrhl
なんでこのスレには超人ばっかり現れるんだw
俺みたいな凡人の肩身が狭いぜ…

いやいや、とにかくGJ!!
161名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 07:17:55 ID:LRjjofaq
>>137>>155
あまりに素晴らし過ぎて何も言えねぇ

ただただお疲れ様
162名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 07:42:06 ID:arcB0Hmw
素晴らしすぎる
まさか朝起きたら完結してるとは・・・・
あんたこのスレのNEWエースだよ
163名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 08:03:21 ID:YV3Q9m46
>>155
おつかれさま。ほんとに寝ないで書き上げるとかw
サーニャはペリエイラ以上に悩んで、大きく成長したんだなー。えいらにゃデート、自分も期待してます!
164名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 08:25:57 ID:hFpuqS5c
>>155
ほんとGJ
サーニャかわいすぎる
エイラは幸せだな
みんなもいい人だし
501は最高だ…
もうなんか色々言いたいことはあるけどもうほんとGJ
気のきいたレスができなくてすまない


それと携帯のことなんだけど
http://fileseek.net/proxy.html
これ使ってみたらどうだろうか?
見れるようになるかも>保管庫
165秋の放課後:2008/11/20(木) 08:49:48 ID:dkQG8uwh
「リーネさん、何をしているの?」

ビクリと跳ね上がるブレザーの肩。 下校のベルが流れ、もう校内に人はまばら。
ここは下駄箱。 高等科と中等科の下駄箱は隣り合っている。
けれど、中等科の彼女が高等科のブロックにいるのは、ちょっとおかしい。

「み、ミーナ先輩……。」

顔面蒼白で振り返った彼女。 手に持ったものを後ろ手に隠そうとするけれど、彼女はいつもドン臭い。
私はそれが画鋲を入れた箱だという事を見てとった。

彼女の肩越しに、ちらりと半開きの下駄箱の名札をチェックする。
坂本美緒。 なるほどね。

「リーネさん、あなた……」
「ご、ごめんなさいいぃぃぃぃぃっ!!」

可能な限り優しい声を出したつもりだったけど、開口一番、リーネさんは泣き出してしまった。
私は思わず苦笑する。 そうよね。 本当はこんな事できる子じゃないもの。

「えっくえっく……最近、芳佳ちゃんと坂本先輩が付き合い始めて……坂本先輩さえいなければ、って……。」
「いいのよ、リーネさん。 あなたのしようとした事は、あなたの器を小さいものにしてしまう。 もうこんな事をしては駄目よ?」

無心にうなずく少女。 しゃくりあげる彼女の頭を優しく撫でる。 どれくらいの時間が過ぎただろう。

「すっかり暗くなっちゃった。 それじゃ、一緒に帰りましょ。 ほら、靴を履いて。」

ようやく泣き止んだ彼女は、少し照れくさそうにはにかんで、自分の靴箱へと向かった。

私はそのおぼつかない後姿に、なんだか無性に暖かい気持ちが湧いてくるのを感じながら、
そっと宮藤さんの靴箱にダイナマイトを仕掛けて家路についたのだった。

                                                          Fin
166名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 09:14:17 ID:xMNQrC9h
>>154で壮絶に吹いた
167名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 09:19:51 ID:rMGN2CdY
>>165
ちょwwwミーナさんwwwww
……ダイナマイトは隠喩ですよね?
168名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 10:03:58 ID:DiLck3Ql
>>155
長編お疲れ様でした。大変面白かった
エイラサーニャだけじゃなく全員に見せ場があるのは凄いなあ…
この作品が好きなんだなあという気持ちがよくわかるサーニャはなんとかして今の自分を変えたいって気持ちが強くあるんだろうなー
これをきっかけに皆と徐々に打ち解けられるといいな。そして何故か嫉妬するエイラ

文章の中で何故か俺に突き刺さる部分がいくつもあったw…俺も頑張って生きないとな
169名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 11:07:14 ID:5RHKP3SJ
>>155
あなた様の絵で涙して、長編を読んで、電車の中なのにまた涙しそうになりました・・・。
世界中の人がこれを読んだらきっと戦争は無くなると思います。

ところで・・・。

風邪を引いて熱を出して寝込んでしまったペリーヌ。
隊長としてペリーヌに付き添うミーナさん。
「今日だけはワガママ言ってもいいわよ?」と優しく問いかけるミーナさん。
「・・・傍に居てください」と一言だけ言って恥ずかしそうに俯くペリーヌ。
「あら? 私みたいなおばさんでもいいのかしら?」と微笑むミーナさん。

長編を読み漁っていたら、何故かこんな妄想が沸いてきちゃった・・・。
俺、もっペリ好きなんだけどなぁ・・・。

ぺミーナって需要ある?
170名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 14:44:59 ID:RAO/PYzq
需要はある
ただ>>169の命はない
171名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 15:59:46 ID:bZpWbd+j
>>165
ふいたwww
>>169
もっぺり込みのペミーナならありじゃね?両親みたいな少佐と隊長、みたいな。
172名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 16:18:52 ID:YV3Q9m46
やばい、ペリエイラ読み返してたのにリーネイラがちらついて離れない。
エイラのことが好きで憧れてるんだけど、エイラは自分なんかよりサーニャのことをずっと大切に思ってるってのも分かってて、
それなのにそんなサーニャを泣かしたエイラに対する怒りが爆発したためにあんなに怒ってたんだっていう風に脳内補完されてしまう。
173名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 18:19:15 ID:GrT+oVPL
何かおかしいと思ったら、500KB超えてたのかw
174名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 19:38:01 ID:x/mgkTCT
>>169
牧場
175名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 19:45:12 ID:LRjjofaq
>>165
オチが強烈過ぎて笑いが止まらないwwww
176名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 21:54:16 ID:pd3Ph3Z8
>>155
めっちゃ良かった!!エイラーニャ最高!!501万歳!!
自分がサーニャ書くとどうしても病的になるからこんな爽やかなエイラーニャを書けるのがうらやましい……。
ちょっとその妄想力を分けて欲しいくらいだ。とにかくGJ!!

>>165
この後頭をアフロにして帰ってくる宮藤を想像すると泣けるww
177名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 22:07:23 ID:rSkMhrhl
うああ…アフロよしかはやべえ…涙とまらん

ダイナマイトなオチ、印象的すぎてかなり気に入ったんだがww
178名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 22:10:32 ID:arcB0Hmw
もう出たネタかもしれないけど
芳佳の給料って今の円に換算すると何円くらいだったんだろ?
179名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 22:17:38 ID:keXm6trI
>>155
素晴らしかったです。
祝福されてることに気づいたサーニャさんが幸せそうで本当に良かった。エイラーニャいいですねぇw
501のみんなも爽やかで、あんたらGJだぜ、と言いたくなりました。
本当にお疲れ様でした!

>>165
ちょwwwwww
180ねこだまり rQBwlPEO:2008/11/20(木) 23:37:22 ID:keXm6trI
ルッキーニャ投下します。箸休めにでも。
----

 いつもの夜間哨戒から帰って、静まり返ったハンガーの中で、私は装備を片付け始めていた。
 今日はなんだか、いつもより眠い。飛んでいる間も、温かくなってきた風が、なんだか心地よくて仕方がなかった。
 早く寝よう……そう思いながら、装備の片づけを始める。

 ストライカーユニットは、出撃の時と同じ場所に戻して、フリーガーハマーは、その隣に置いてある台車の上に置いておく。そうすれ、整備士さん達が点検と整備をしてくれる……はず、だったんだけど。
 私はその台車の上を見て動けなくなった。

「……今日は、ここなんだ……」
 台車の上に毛布を引いて、眠っている子が一人。
 白い毛布の上に黒髪を広げて。その上に褐色の顔を載せて。すやすや寝息を立てながら、ルッキーニちゃんが眠っている。

「……どうしよう……」
 ……起きてくれないかな。
 ルッキーニちゃんは毛布の上で丸くなって眠っている。白い服の下から伸びる褐色の足がたたんで、小さな手を軽く握って。うじゅじゅじゅ、にゅにゃー、という声を寝息と共に漏らしながら、彼女は眠っている。
 ルッキーニちゃんは、いつも基地のどこかで眠っている。木の上とか、ハンガーの中とか、寝る所はいろいろで、どこにいるのか、誰もはっきり分かっている人はいない。朝見当たらなくてみんなが大騒ぎして、結局台所の戸棚の中にいた事もあった。

 それでも大体は見晴らしのいい木の上か、ハンガーで寝ていると聞いた事があるけど、私がハンガーでルッキーニちゃんを見つけたのは、今日が初めてだ。珍しい事なのかもしれないけど……。
 置き場所、どうしよう。私は困って、片手に持ったフリーガーハマーを見る。

 私は考えて、結局、フリーガーハマーを床に置いておくことにした。あとで整備士さんが台車に載せるのに困るかもしれないから、ルッキーニちゃんが起きてくれればそれが一番良かったんだけど。

 ストライカーユニットを脱いでから、もう一度ルッキーニちゃんの側に戻る。毛布を広げたまま、すやすや眠っているルッキーニちゃん。
(……毛布、かけてあげた方がいいのかな……)
 私は平気だけど、朝晩はまだ寒い。エイラがいつもそうしてくれるのを思い出して、私はルッキーニちゃんの毛布をの端に手を伸ばす。かがんで毛布の端を掴んだところで、ルッキーニちゃんが目を開けた。

「ん……」
 ルッキーニちゃんはもそもそと起き上がり、私の方を見る。毛布の上にぺたんと座ったまま片手で顔をこすって、私の方を見た。半分だ開いた目をまばたかせながら、私を見ている。
「……んー?」

「え……?」
「……でうー……」
 ごめんなさい、起こしちゃった?、と言おうとしたら、ルッキーニちゃんの身体が、まっすぐにこちらに倒れて来た。胸でルッキーニちゃんの頭を受け止めて、私も一緒に座りこむ。
「……むじゅじゅじゅじゅ……」
 ルッキーニちゃんは私の腰に抱きついたまま、頭を私の胸に預けて、また寝息を立て始める。

 ルッキーニちゃんの細くて長い腕が、力強く私の腰に回されている。そのままごにょごにょと何かを言いながら、頭をすりすりとすり付けてくる。
「にゃー……」
 気持ちよさそうに微笑むルッキーニちゃん。
181ねこだまり(2) rQBwlPEO:2008/11/20(木) 23:38:41 ID:keXm6trI
 ……どうしよう。
 頭を私に押し付けて、ルッキーニちゃんが眠っている。私の膝にあたっているルッキーニちゃんのおなかが、寝息にあわせてゆっくりと動く。抱きつかれたまま動けない私。
「……ルッキーニ、ちゃん……」
 頭に手を当てて、ごめん、起きて……? と言おうとしたら、
「……ン?」
 ルッキーニちゃんの頭が私の胸の中でもぞりと動いた。
「…………あれ……?」
 そして聞こえるルッキーニちゃんの声。身体を起こして、ぺたり、と、何かを確かめるように私の胸に手を当てる。そして慌てて、私の胸の上を平手でぺたぺたとはたき始める。
「……ナイ」
「……え?」
 私は聞き返す。
 いきなり言われたから、ルッキーニちゃんが唐突に言い出すから、何が「ない」と言われているのかが分からなかった。
「……ルッキーニ……ちゃん?」
 ないぞ、ない、としきりに言いながら私の胸を探っているルッキーニちゃん。
「……やめて……」
 私はルッキーニちゃんの手を掴む。
「…………ナイ……」
 ルッキーニちゃんは片手で私に抱きついたまま、私の顔を見上げる。
「……」
 そりゃ、シャーリーさんやリーネさんほどは、ないだろうけど エイラの事だって、本当はうらやましいんだけど。
 そんなに何度もいう事ないじゃない。私はルッキーニちゃんの顔を見返す。
「むぅー……」
 ルッキーニちゃんは悲しそうに私の顔を見ている。悲しいのはこっちなのに、と、私も口を尖らせてルッキーニちゃんを見る。
 そうやって、彼女の深い緑の瞳を見ていると、ルッキーニちゃんのまぶたが、また急にとろんと落ちた。
「……うじゅ……」
 ルッキーニちゃんの体が、また私にもたれかかってくる。私は据わったままで、その体を受け止める。じゅじゅわー、と気持ちよさそうな声。ルッキーニちゃんは、また眠り始めてしまった。

 ……困った。
 私に抱きついたまま、眠ってしまったルッキーニちゃん。そしてそれを振りほどけずに、座ったままの私。
 ごめん、起きて、と何度か揺さぶってみたけれど、彼女はふにゃふにゃ呟くばかり。体と足を私の方にひきつけて、本格的に眠り始めてしまった。頬に手を当てると、ぎゅっと私の体を抱きしめてくる。

 抱きつかれたまま、ルッキーニちゃんの横顔を見る。

 誰かが落ち込んでるときも、構わず隊内の雰囲気を盛り上げてくれる、ムードメーカーで。それだけじゃなくて、この子もこの部隊の中で、トップクラスのセンスを持っている子。私とは全然違う人。そう思っていたけれど。

 でもすらりと伸びた足をまげて、私の胸の中で眠る褐色の顔は、とてもあどけなくて。ルッキーニちゃんの体は、とても温かくて。
 天才的なセンスを持つエースで、その明るさで部隊を盛り上げる、部隊のムードメーカーで。
 でもこんなに小さい、いたずら好きで、甘えん坊な女の子。

 私とまるで違う何かが、突然胸元に飛び込んできたような不思議な気持ち。うれしい何かが私の胸元を訪れたような、とても暖かな気持ち。
「……シャーリー……」
 ルッキーニちゃんはそう呟いて、私の体を抱きしめる。頭を擦り付けて甘えてくる。
 そう言えば、シャーリーさんの事大好きだもんね。ルッキーニちゃん。私は微笑む。ルッキーニちゃんの頭の上にそっと手を載せる。

 さっきは、寝ぼけて私の事をシャーリーさんと間違えたのかもしれない。なぜ間違えたのか全然わからないし、言われたことは、正直悲しかったけど。
 でもシャーリーさんのこと大好きだもんね、しょうがないかな、と思って。その言葉がエイラの口癖の一つに似てることを思い出して、私はなんだか恥ずかしくなった。
182ねこだまり(3) rQBwlPEO:2008/11/20(木) 23:39:13 ID:keXm6trI
 ゆっくり体を起こし、優しくルッキーニちゃんの頭を膝に載せる。
「んゅー……」
 もごもごといいながら、身じろぎをするルッキーニちゃん。

 その寝顔を見つめながら、私の口から歌がこぼれ出る。
 眠りが安らかでありますように。元気な目覚めでありますように。
 ルッキーニちゃんの髪に手を置き、思いを乗せて私は歌う。
 昔お母様が歌ってくれた、オラーシャの子守唄を、私は小さな声で歌う。

「んー? ……サーニャ……?」
 固目を薄く開けて私を見ながら、ルッキーニちゃんが呟く。
 私がよしよしと頭をなでると、彼女はぎゅうっと抱き返してきた。

 規則正しい寝息と、膝の上の心地よい重み。ルッキーニちゃんの暖かさ。
 溜まっていた眠気が、とろとろと解きほぐされていくのを感じる。
 子守唄を歌いながら、私は眠りに包まれる。暖かさに包まれて、私のまぶたが落ちていく。
183ねこだまり(4) rQBwlPEO:2008/11/20(木) 23:40:20 ID:keXm6trI
<その後> おまけです

「……もう来ちゃったのかー。早かったねー」
 サーニャを探しながらハンガーまでやってきたら、シャーリーに出くわした。
「サーニャ、見なかったカ? 帰ってるはずなんだケド、どこにもいないんダ」
「……いやー」
 シャーリーは気まずそうに目をそらして笑う。
「……見た事は見たんだけどなー……」
「なんダヨ、どうしたんダヨ」
 突っかかるように私が言うと、シャーリーは「来なよ。多分面白いから」と手招きをした。その後に続いて、ハンガーの隅の方に向かう。

 自分のベッドの上で今日は来ないのかな、としばらくの間迷っていて。こっそりサーニャの部屋を覗いて、でも誰もいなくて。
 夜中に招集はかからなかったから何もなかったはずだしと思いながら、帰ってるはずよってミーナ中佐に聞いて。それで基地じゅう探し回って。シャーリーに会って。
「ウ……」
 そこで見たものに、私の足が止まる。

「オイ……オマエナニシテンダヨ……」

 サーニャ、の、膝、に、頭を、載せて、ルッキーニ、が、眠って、いた。

 サーニャの膝に頭を載せて、なにやらもごもご言いながら、ルッキーニが眠っている。そして、サーニャもルッキーニに寄りかかるようにして眠っている。その手がルッキーニの頭に優しく撫でるように添えられている。
 サーニャの寝顔はあどけなくて、ルッキーニもなんか幸せそうで、寝顔に笑みが浮かんでいて。客観的に見れば、とてもいい絵なのかもしれないけど。

 でも、すごく面白くないのは、うらやましいのは、
 (うー。なに抱き付いてんだオマエー……)

 ……叩き起こしたいのは山々だけど、それじゃサーニャも起こしてしまうわけで。
 せめてルッキーニの髪になんか結びつけてやろうか──スパナでも。
 そう思ってルッキーニのほうに手を伸ばす。そんな私の後ろから、シャーリーが言った。
「……まだまだ、甘えん坊だからさ……」
 工具を持った手を腰に当てて、しょーがないなー、という目でルッキーニを見ているシャーリー。
「……たまには許してやってくれよ」
「うー……」
 確かに、サーニャはとても安らかに眠っている。寄りかかるルッキーニとバランスを取って。ルッキーニの頭に当てられた手はとても優しげで。
 こうなるまでに何があったのか知らないけど、多分それは楽しい事じゃないかと思えて。それはサーニャにとって、とてもいいことなのかも、って思えて。
 ……でもあれだ、こら、くっつくな。

「でもさー……」
 悶々としている私に構わず、シャーリーはルッキーニの側に屈み込み、今にもとろけてそうな、甘ったるい顔で言う。
「こうして見るとかわいいだろー?」
「……ちぇ」
 その言葉に私は舌打ちを一つ。
 確かにこうやってサーニャとより添って眠るこいつは、ニヤニヤしてないこいつの寝顔はかわいい。
 いやそのルッキーニの横にいるサーニャはもっとかわいいけど。というか美しいけど。

 サーニャの寝顔に免じて、許してやる事にする。
 サーニャの膝を占領して、眠り続けるルッキーニ。その耳元に向かって、今日だけだかんな、と念を押すように言った。

---
終わりです。ルッキーニしゃべってないじゃないですか。ひどいな。
>>43-44から電波受け取りました。こんなのにしてしまいましたが、ありがとうございます。
エイラがルッキーニが何をしたのか知ったら屋上ですね。

前スレでエイラとエーリカ書いたものですが、暖かいコメントくださった方有難うございました。
遅筆で申し訳ないんですが、やる気ました。
184名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 23:42:14 ID:y0nUZ6Ub
猫科娘ども可愛すぎる
185名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 23:47:05 ID:pd3Ph3Z8
>>183
リアタイキター!!そして何だこの組み合わせは……なんというか、すごいな。
ここんとこルッキーニ分が足りなかったから実に良かったよ。ウジュルーたまらん。GJ!!
最後のおまけのエイラの科白が見事に脳内再生されたわ。
186名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 23:48:47 ID:arcB0Hmw
今日だけだかんナー
187名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 23:51:24 ID:GjNJ1G5L
>>172
そう言われたらリーネイラな後日談が浮かんでしまったじゃないかどうしてくれるw
188名無しさん@秘密の花園:2008/11/20(木) 23:57:54 ID:hFpuqS5c
>>183
うわーGJ!
サーニャとルッキーニって意外といい組み合わせなんだなー
ぐいぐい引っ張っていくルッキーニをほどよく抑えるサーニャでちょうど良くなりそうだ
よく考えたら一番年も近いしね
二人とも寝るの好きそうだし

ああ寝るまえにこんなSS見れて良かった
いい夢みれそうだ
もう一回言わせてくれ、GJ!
189名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 00:07:39 ID:N/tvr5th
気持ち良さそうに寝ているサーニャとルッキーニを見ながら幸せな気分で眠りにつく…
多分人生でもっとも幸せな時間になると思う
ああかわいい
190名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 00:07:55 ID:DiYuB5EW
>>183
これはすげぇ・・素晴らし過ぎるぜ・・・・・
和みまくりだ・・・
191名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 00:24:57 ID:FKTlr2sk
>>187
わっふるわっふる
192名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 10:35:53 ID:svHYH5NL
おはようございます。先日投稿した>>70-81のmxTTnzhmでございます。
コメント頂いた方々、誠に有難う御座いました。
お陰様で緊張(と吐き気)も少し取れました・・・。
>>84>>85氏のリクに答えた(つもり)のSS出来ましたので、いきます。
また長いです、すいません。
193after dark 01/07:2008/11/21(金) 10:36:54 ID:svHYH5NL
夕日が射し込むミーナの執務室。だいぶ体調を持ち直してきた四人が、先日の件で集まっていた。
「結局、例のネウロイはシャーリーとエイラ以外見ていないのか」
うーむ、と唸るトゥルーデ。
「ずっと雲と怪しげな霧に隠れていたからな」
当事者達から事情を聞いた美緒が簡単に説明する。
「けど、そんなやり口のネウロイなんて聞いた事ないよ。……私達だったらちょっとやばかったかもね?」
エーリカは悪戯っぽく笑うとトゥルーデの小脇をつついた。
「なっ! 私はあんな無謀な事はしない! ぞ?」
妙にムキになって反論するトゥルーデを、ミーナがたしなめた。
「とにかく、今後また同種のネウロイが出現した時の為に、対抗策を考える必要が有りそうね。
一度全員で話をしたいところだけど……」
「暫く先だな」
美緒がぽつりと答えた。
「あいつら……何をやってるんだ一体」
軽いいらつきを覚えるトゥルーデ。

その“大尉殿”から名指しされた“あいつら”は、何も出来ていなかった。
そもそも魔力の限界ぎりぎりまで戦闘と飛行をしていた上、エイラとシャーリーは風邪をおしての強行軍。
この二人は風邪をこじらせてしまい、自室ではなく、医務室のベッドにしっかりと寝かしつけられていた。
「……だるいナ」
「あたしも」
氷枕で頭を冷やしつつ、ぐったりとベッドに沈むエイラとシャーリー。
シャーリーは氷嚢の位置をずらしながら愚痴をこぼした。
「なんであたしらだけ医務室に隔離されてんだよ?」
「具合が特に悪いからダロ? だから医務室で寝かしてくれてるんじゃナイカ?」
「そういうもんかね? あたしは自分の部屋でゆっくり寝てたいよ」
「氷枕とか氷嚢の替えはすぐ来ないゾ?」
「……それは困る」
「薬も飲んだし、今日は休めヨ」
しばしの沈黙。
「暇だなー。誰か遊びに来てくれないかな〜」
誰に聞こえるとでもなく、シャーリーは口にした。
「みんなまだ風邪治ってないんダ。それに任務も有るし、無理に決まってんダロ」
「あー、暇過ぎる」
「じゃあ、タロットでもやろウ?」
「遠慮しとく」
「なんで即答なんだヨ」
「誰か来ないかなあ〜」
シャーリーからは、エイラのタロットから出来るだけ話を遠ざけたい感じが伝わってくる。
「そんなに言うならルッキーニでも呼んだらどうダ」
「それがさ。何処にも居ないんだって」
「大尉のとこにならすぐにでも飛んで来そうなモンだけどナ」
「風邪ひいたから避けられてるのかな〜。まあ、来てうつしちゃったりしたらそれこそ可哀想だけどさ」
寂しそうに呟くシャーリー。ぼけっと天井を見つめ、ふとエイラに質問する。
「そう言えばサーニャは来ないのか?」
「魔力を使い果たして寝てると思う。来ないナ」
「あーぁ。お互いはぐれモノ同士かー」
「そんなんじゃネエヨ。で、洗濯当番の交代はどうなったンダ? だいぶ貸しが有るゾ?」
「治ったらね……」
適当にだらだらと会話しているうちに、薬が効いてきたのか、ゆるゆると眠気がやって来る。
やがて二人とも口を閉ざし、瞼を下ろし、静かになった。
194after dark 02/07:2008/11/21(金) 10:37:34 ID:svHYH5NL
「エイラ、ねえ、エイラ。エイラったら」
うん? と目を覚ます。いつの間にか眠っていたらしい。
部屋の中は、ほのかにランプが点いている以外は暗く、窓の外も闇に覆われている。
思わず寝惚けて「キョウダケダカンナー」と言いかけ、ぎくりとする。
目の前に居るのはルッキーニ。湯気たちのぼる鍋を脇のテーブルに置き、手にはスープ皿を持っている。
「なんだ、ルッキーニかヨ。何の用ダ?」
「シャーリーに食べて貰おうと思ってがんばって作ったのに、起きてくんないんだもん」
シャーリーに目を向ける。熱でうなされていた。ルッキーニに無理矢理揺さぶられたのか、妙な寝言も呟いている。
「ば、バカ。あの状態で起こす奴があるカ? ちょうど薬も効いてきて、ようやく眠って……」
「一緒に起こそう?」
「やめろっテ。死ぬほど疲れてるんダ。そっとしといてやれヨ」
「えーっ。せっかくがんばって作ったのにィ。特製のスープ……」
指をくわえていじけるルッキーニ。
「後で起きたら、食べさせてやれよ。喜ぶゾ」
「ダメなの!」
「何がダヨ。大声出すなっテ」
「いっぱいいっぱい、おいしくなーれ、風邪なおれーっておまじない込めたんだよ?
今すぐ食べなきゃダメなのぉ!」
「だから人の話聞けヨ。病人はそっとしておかないと治りも……」
「じゃあエイラ。これエイラが食べてよ」
「何でそうなるんダ……私も病人なんだゾ一応」
うう、と呟いてベッドに倒れ込むエイラ。
数秒の沈黙。
戦闘の先読みではないが、何となく次にルッキーニがやりそうな事が分かる。
「つぅまぁんなぁ〜い!」と医務室中で騒ぎ出すんだきっと。
ルッキーニの顔を見る。確かにつまらなそうな顔をしてはいたが、どこか悲しげで、
寂しさが漂っていた。
「んもう、しょうがないナァ」
エイラは重い身体を起こすと、ルッキーニと向き合った。

「おいしい?」
身を乗り出してしきりに質問するルッキーニ。
「おっ、薄味か? これは胃に優しいゾ。ちゃんと病人の事考えてるんダナ」
感心するエイラ。
「えっ? シャーリー濃いめの味付け好きだから、すっごい濃くしたんだけど」
「……舌が鈍ってるのか私ハ」
エイラの皿から一口すくって味見したルッキーニは「ウニュッ」と言って一瞬顔をしかめた。
「お前……どんな味付けしたんダヨ」
「普通の作り方だとね、もうちょっと味薄いんだよ?」
「今の私には分からない……困ったナ。でもとにかくな、ルッキーニ。
病気の時はあんまり濃い味の料理は良くないンダゾ」
「シャーリーなら大丈夫だもん。普段から濃い味好きだもん」
「そう言う問題じゃないし……私はシャーリーじゃないんダナ」
さっきまで何ともなかったみぞおちの部分が急激に重く、焼ける感じになる。
「なんか、胃が痛くなってきたゾ……うう」
青白い顔になったエイラはもぞもぞと毛布にくるまり、ぐったりとベッドの上にのびた。
「ちょっとエイラ! なんで寝ちゃうのよ! ……つまんなーい!」
195after dark 03/07:2008/11/21(金) 10:38:29 ID:svHYH5NL
「……あれ? ルッキーニ? お前何やってるんだこんなとこで?」
「あ! シャーリー起きた!」
ちょっとした騒ぎに気付いて上半身を起こしたシャーリーの胸にすかさず飛び込むルッキーニ。
いつもの様に顔をこすりつけて、満面の笑みを浮かべる。
「さっきね、シャーリー起こそうってエイラに言ったんだけど、エイラがダメだって言うから」
「あたし、寝てたのか……全然気付かなかったよ」
「そんでね。シャーリーのために、がんばってスープ作ったんだよ! 食べて!」
「おお、嬉しいね。ちょうど腹減ってたんだ」
「少し冷めたけど、いい?」
「ルッキーニの作ったものならなんでも」
弾ける笑顔を見せるルッキーニ。
「ジャジャーン! あたし特製、麦と香味野菜のスープ、シャーリー専用スペシャルバージョンだよ!
シャーリー元気にな〜れって、おまじないいっぱい込めたんだよ?」
「楽しみだなあ。どれどれ? お、うまそうな匂い」
「たくさん食べて元気になってね!」
「ありがとう。……うん、うまい。おいしいよルッキーニ」
「ホント? うれしい!」
「わ、飛びつくなって、スープこぼれる」
「だって、エイラったら、濃すぎるとか文句ばっかり言うんだもん」
あはは、と朗らかに笑うシャーリー。
「あいつには少し合わないかもなぁ。あたしに味合わせてくれたんだろ?」
「なんでわかったの?」
「そりゃ、見て分かるし、匂いでも味でも分かるし、ルッキーニの顔見ればすぐに分かるさ」
それにさっき“あたし専用”って言ってたし、と内心呟くシャーリー。
「やったー! さすがシャーリー!」
満面の笑みを見せるルッキーニの横で、シャーリーは食欲を満たすべく、スープを無心でかきこみ、
何杯もおかわりをした。何度かスープ皿がシャーリーと鍋の間を往復した後、ルッキーニが言った。
「シャーリー、もうないよ」
「あれ、全部食べちゃったか」
「もう少し作れば良かった〜。ごめんシャーリー」
「良いって。あんまし食べ過ぎても良くないし。ありがとな、ルッキーニ」
スープ皿を横のテーブルに置く。
ルッキーニはそれを見るやぴょんとベッドに飛び乗り、シャーリーに身体を預けた。
「ねえシャーリー。いつ風邪治る?」
「じきに治るさ。おいしいスープももらったし。あとは一晩も寝れば大丈夫」
「すぐ元気になれるおまじない」
ルッキーニは肩に腕を回し、少し背を伸ばすと、シャーリーのおでこにキスをした。
その後少し恥ずかしそうに顔を赤らめて、シャーリーの懐に顔を埋めた。
「早く元気になって。お願い」
「ありがとう。やっぱりルッキーニは最高だ。もう元気になった」
「ホント?」
「あたしは嘘は言わないよ。ほら」
ルッキーニを両腕で抱えると、改めて自分の身体の上に乗せ、そのままそっと唇を重ねた。
ほんのりとした軽いものだったが、二人の気持ちを確かめるには十分だった。
「シャーリー、大胆〜」
「もうこんだけ出来るって事さ。心配要らないよ」
「うん。シャーリー大好き」
ルッキーニはシャーリーに抱きついた。シャーリーも優しく抱き留める。
二人だけの時間が流れていく。
ずっとこうしていたいけど、このままだとシャーリー治らない。ルッキーニは軽い矛盾に戸惑いながらも、
シャーリーの落ち着いた笑顔を見て、改めて笑顔を見せた。
シャーリーも、同じ事を考えていたのか、きゅっとルッキーニを抱く力を強めた。
しかし壁に掛かる大時計はとても残酷で、刻の鐘でふたりの時の終わりを告げる。
「……あ、もうこんな時間」
「あれ、いつの間に」
「じゃ、そろそろあたし戻るね。また来るからね」
「大丈夫、明日にはあたしの方から行くよ」
ルッキーニは部屋から去る間際、シャーリーの顔を見ようと何度も振り返った。
196after dark 04/07:2008/11/21(金) 10:39:18 ID:svHYH5NL
暫く経って、医務室に現れた影がひとつ。
ぴくりとも動かないエイラのベッドを見つけると、音もなくそばに寄る。様子を伺う。
「あれ、エイラ……」
返事がない。ぐったりと寝込んでいる。
隣のベッドからもそもそと起きたシャーリーがサーニャの姿をみとめ、声を掛けた。
「あー、悪い。ルッキーニが何かしたみたいでさ。エイラ死ぬほど疲れてるんだ」
少し落胆した表情をつくるサーニャに、シャーリーは詫びを入れた。
「ごめんな」
「別に大尉が謝る事でも」
「いや、なんか、ね」
苦笑いをするシャーリー。
「お、その小鍋。もしかしてエイラに?」
うつむくサーニャ。
「優しいな。エイラ起きたらきっと喜ぶよ」
「冷めたら、美味しくなくなる」
「また温め直せば良いじゃないか」
こくりと頷くサーニャ。
「エイラが起きるまで、そばにいてあげたい」
うはー見せつけてくれるねーと内心思ったが、先程のルッキーニとの手前、
そんな事が言える筈もなく、シャーリーはベッドの横にある椅子を指した。
「まあ、立ってるのもなんだから、座りなよ」
サーニャはエイラの横にちょこんと腰掛けた。
黙ったままのサーニャに、シャーリーは問い掛けた。
「今日のスケジュールは?」
「この後、夜間哨戒」
「そっか。昨日の今日でもう夜間シフトか。きついなー。誰か援護は付かないのか?」
「私一人」
「ええっ? そりゃないよ中佐。あんなネウロイが居たって言うのに」
「他の人、まだ皆調子良くないから」
「サーニャだってヘトヘトになってたじゃないか。幾ら風邪引いてないからって酷いな」
「私が言ったの。一人でいいからって」
「なんで? また例の奴が出て来たらどうするんだ」
「この前倒したから、暫くはネウロイも出てこないから大丈夫だろうって、坂本少佐も言ってた」
「それとこれとは話が違うよ。出る出ないの問題じゃなくてさ」
「でも良いの」
そう言ったきりうつむくサーニャを見て、シャーリーは感心と呆れが混ざった表情を作った。
「いつもなら、何があっても一緒に飛ぶって奴が居るんだけどな、そこに」
言われた当の本人は起きる気配もない。
「あたしが飛べたら一緒についてやるんだけどな……さすがにちょっと今はまだきついかな」
「無理しなくて良いから」
「悪いね」
「あの」
唐突にサーニャから話を切り出されて、うん? と首を傾げるシャーリー。
「この前の戦闘……エイラを守ってくれて、ありがとう」
「サーニャは何を言ってるんだ? 守ってもらったのはあたしの方だよ」
きょとんとするサーニャに、シャーリーは言葉を続けた。
「エイラの予知能力が無ければ、あたしは今頃蜂の巣だったろうし」
「でも、大尉の速度が無ければ」
「とにかくさ、いいじゃない。みんな無事に帰ってこれてさ」
笑顔を見せるシャーリー。まだ何か言いたそうなサーニャに向かって、言った。
「エイラには貸しが有るくらいさ。ま、それも洗濯当番の交代で済むらしいけどね」
サーニャの顔が少しほころんだところを見計らって、シャーリーはベッドに潜った。
「悪いけど、少し眠いから寝るわ。エイラはそのうち起きると思う」
「ありがとう」
「じゃ、おやすみ」
シャーリーはそのまま静かになり、安らかな寝息が聞こえてきた。
サーニャはエイラの傍らで、静かに待った。
197after dark 05/07:2008/11/21(金) 10:40:25 ID:svHYH5NL
エイラは背後に何者かの気配を感じ、振り返った。
「ぅわ、サーニャ。どうした? 具合でも悪くなったカ?」
「エイラ、それ貴方」
「う」
自然と身体が跳ね起き、上体を起こしてサーニャと向かい合う。
「顔色良くない。まだ具合悪いの?」
「具合、悪くされたンダナ……いや、何でもナイ。サーニャ、悪いけど水くれないか?」
言われるまま、ベッドの横に置かれたボトルから水をコップに注ぎ、エイラに渡す。
自然と、手と手が触れ合う。
「サーニャ、手、冷たいゾ。どうした?」
「別に……」
「心配してくれるのは……スゴク嬉しいけど、サーニャは戻った方がイイ。私の風邪がうつるゾ」
「それで、いいの」
「な、なんで?」
「芳佳ちゃんが言ってた。扶桑の言い伝えで『風邪をうつすと、うつした方はすぐ治る』って」
「そんな迷惑な治し方が有るカ!? 私は嫌だかンナ。サーニャにうつすだなんて」
「エイラ」
サーニャに真正面から見つめられる。思わずどきりとするエイラ。
「早く、元気になって欲しいの」
そっと手を重ねる。
サーニャのてのひらは小さくて、冷たくて、力もか弱くて。でもエイラには分かる。
エイラの事を、何よりも大切に思ってくれるサーニャ。痛い程に分かる。
だから、エイラはサーニャの事が心配で、守りたくて……、でも言葉はいつも向こう側に跳んでしまう。
「そそそそう言えば、私も、どっかで誰かに聞いた事が、有ル。手が冷たい人は心が暖かい人だっテ」
じっと見つめるサーニャ。エイラはしどろもどろになりながら、言葉を続けた。
「だからサーニャ、その……」
「エイラの手、暖かい」
「風邪ひいてるから当たり前なんダナ」
「じゃあ、エイラは心が冷たいの?」
「そ、そんな訳あるカ! 私は……ええっと、その、ナンダ」
言葉に詰まる。あたふたと周囲に視線を彷徨わせる姿を見て、サーニャは微笑んだ。
「おかしなエイラ」
「と、とにかく、お見舞いアリガトナ。私は寝ル」
恥ずかしくなってベッドに横になろうとしたところを、ぐい、と予想外の力で手を引かれる。
ぎくりとするエイラに向かって、サーニャはぽつりと言った。
「ここに、ボルシチあるから……食べられたら、食べて」
席を立とうとするサーニャを、今度はエイラが押し留めた。
「まま待ってクレ」
「どうしたの?」
「そ、その……」
言葉が出てこない。自分の思いとはてんで違う方向の言葉が口に出る。
「ボルシチ食べたいんダ。……もう行くのカ?」
「もうすぐ、夜間哨戒の時間だから」
「そ、そっカ……」
行かないでクレ!
心の中でエイラは叫んだ。
でもサーニャの手はするりと抜け……
鍋を持ってサーニャは医務室から姿を消した。
198after dark 06/07:2008/11/21(金) 10:41:19 ID:svHYH5NL
嗚呼、と落胆するエイラ。幾ら考えても、心のつかえが取れない。じっと両手を見る。
最悪だ。せっかく来てくれたのに、何だかんだで追い払ってしまった……。
目の前が真っ暗になるエイラの傍らに、そっと湯気立ち上るスープ皿が置かれた。
驚いて振り向くエイラの横には、サーニャが立っていた。
「サーニャ? 何でここに? 夜間哨戒は?」
「お鍋温めて来たんだけど……どうかした?」
「た、頼みが有るンダ」
きょとんとするサーニャの手をそっと掴むと、エイラは、震える声、からからの喉を振り絞って、言った。
「私と、一緒に居てクレ。行かないでクレ」
言葉を聞くなり泣きそうな顔をするサーニャ。ぎくりとするエイラの傍らに腰掛け、優しく抱きしめた。
「何処にも行かないから。安心して」
「ほ、ホントカ? 良いノカ?」
「私も、エイラと一緒に居たい」
エイラは天にも召される気持ちで、サーニャを抱き返した。横でほのかに湯気を立てるスープ皿に目がいく。
「温めたのに、また冷めちゃう」
「サーニャが居てくれれば、それだけで良イ」
「それで良いなら」
「ああ、でも、食べるゾ。サーニャの作ったモノなら何でも食べるゾ」
「じゃあ、はい」
サーニャはスープ皿とスプーンを取ると一口すくってエイラの口元にそっと差し出した。
「じ、自分で食べられるから……その、……あーん」
抗しきれず、サーニャにスプーンで食べさせて貰う。嬉しさと興奮が混じり、心拍数が一気に跳ね上がる。
「お、美味しい」
「本当? 頑張って作って良かった……無理しないでね? はい、あーんして」
「あーん……」
サーニャに言われるがまま、子供みたいに口を開いたり閉じたりするエイラ。
エイラの妙に真剣で必死なさまを見て、サーニャは微笑んだ。
「急がないで。大丈夫」
そっとタオルで口の周りを拭いてあげるサーニャ。
「ありがとナ。なんか急に元気になってきたゾ」
スープ皿の中身が空になる頃、またしても大時計が大きな鐘の音で“とき”を告げる。
「時間じゃないノカ」
「エイラのそばに居る」
「嬉しいけど……ミーナ中佐に怒られるんじゃナイカ?」
「大丈夫。もう断ってきたから」
「うぇえエ!? いつの間に?」
「エイラ、とっても悲しい顔してたから」
表情で伝わってしまってたのか、と内心汗をかく。
「でも、何て言い訳したんダ? ミーナ中佐そんな簡単にシフトの変更許可してくれたのカ?」
「『無理しないで』って言ってくれた。替わりに他の人が飛んでくれる事になったの」
「そっか。替わってくれた人に今度お礼を……」
「ペリーヌさん……」
「なんダ、ツンツンメガネか。勝手に飛ばせとこう」
「エイラ、ひどい」
言いながらも、くすりと笑うサーニャ。食器を片付けると、エイラの横に座った。
エイラが手を伸ばし今度こそ肩を抱こうかと考えあぐねているところに、ぽふっと、サーニャの身体が預けられた。
軽さと柔らかさに、自然と肩を抱き寄せる格好になる。そのまま顔が近付き、胸が合わさる。互いの名を呼ぶ。
「サーニャ」
「エイラ」
お互いの鼓動が聞こえる。吐息が頬をかすめる。瞳の奥の深い部分に、吸い込まれそうになる。
寸前まで近付いて微妙な躊躇いを見せたエイラに、サーニャは迷わず、そっと口吻を交わした。
目を閉じる。
感じるのは、唇を通した、お互いの感覚。ふたりだけの空間。
五感を通じて伝わる、お互いのキモチ。
サーニャを抱くエイラの手は、少し震えていた。風邪のせいか、心の過敏さか。
サーニャはエイラに手を重ね、指を絡ませた。震えが不思議と止まる。
いつしか、ベッドに横たわり、抱きしめ合って、何度も口吻を重ね、心を確かめ合った。
199after dark 07/07:2008/11/21(金) 10:42:41 ID:svHYH5NL
夜明け前。
台所でひとり片付けをするサーニャ。
誰が先にやったのか、鍋がぞんざいにシンクに放り込まれ油まみれになっていた。
ルッキーニちゃんかな、と推測するサーニャ。鍋からほのかに漂う残り香は、ロマーニャの家庭料理を連想させる。
鍋と皿を綺麗に洗って、脇の棚に乾かす。ついでにもうひとつ片付けてしまおう。
きっと大尉も、ルッキーニちゃんの料理を食べて笑顔になったに違いない。
そしてきっと、二人ともすぐ元気になる。またみんなで空を飛ぼう。
そんな事を考えると、鍋洗いも楽しくなる。
「あらサーニャさん、早いのね」
ミーナだった。
美緒の朝は早い事で有名だが、ミーナも起床は早い方だ。たまに一緒のタイミングで姿を現す事もある。
慌てて返事をするつもりが、小さくくしゃみをしてしまう。
「あらあら。気を付けた方がいいわよ。みんな風邪ひいてるから、うつされない様にね?」
優しい笑顔で忠告をくれるミーナに、サーニャははにかんだ笑みを見せた。

end

----

またまた長いのをすいません。
ご期待にこたえられたかどうかは解りませんorz
甘々のカプは難しいですね(滝汗
また勉強してまいります。たびたびのスレ汚し失礼しました。
200名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 10:44:53 ID:yaIy7El2
エイラ「イシャハドコダ」
201名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 12:28:28 ID:EYQnfqia
エイラーニャ&シャッキーニ大勝利キタコレ!
正統派カップルはやっぱりいいもんだな…
202名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 18:34:41 ID:VzlmeWwW
>>84だけど言ってみるもんだなw良い話をありがとう萌え死んだよ

>「なんダ、ツンツンメガネか。勝手に飛ばせとこう」
こういうエイラとペリーヌの関係好きだw
203名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 18:45:28 ID:2CgS29Lu
>>180
和んだ…GJ!ルッキーニャいいなあ、かわいいなあ
>>199
シャッキーニとエイラーニャのやり取りはもちろん
エイラとルッキーニ、サーニャとシャーリーのやり取りがよかった、和んだ!
204名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 19:15:44 ID:XUpj5Kua
>>199
俺は>>84に乗っかってみただけであんま関係無い気もするけど、続きは見たかったので非常に嬉しい

立場が逆になると物凄く張り切るルッキーニ、こういう子は凄く好き
エイラーニャはやばいな…見てるこっちが恥ずかしくなってくるww
しかし風邪引いてる時にキスなんかしたらその通り移ってしまいそうだw
205名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 19:27:00 ID:6qbB/hu3
Newtypeにエイラーニャ写真集来たな
206名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 19:32:53 ID:EqasqobR
>>205
マジで?
207名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 19:44:00 ID:vLlvR2wj
>>205
なぬ!?
208名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 19:47:18 ID:VzlmeWwW
落ち着け既出画像ばかりだ
慌ててみてきたから分かる
209名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 19:51:55 ID:4T1EpSXo
でも画質はそこそこ高いぞ
210名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 19:52:31 ID:3zOXW6xw
保存できないのか?
211名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 19:58:11 ID:4T1EpSXo
 95 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2008/11/21(金) 16:31:02 ID:ZzafvSJS
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212名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 20:30:05 ID:Jl7BrCca
岩の上に三人が居るカットってTVではなかったよね?
213名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 20:31:31 ID:M/OjPK1w
乳首が…見えている…
214名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 20:35:41 ID:xOHuRW91
>>212
ttp://www.uploda.org/uporg1799802.jpg

太陽さんが頑張り過ぎだったんで
そう思ってもしかたがないです…
215名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 20:36:54 ID:Jl7BrCca
てっきり水の中かと…
216名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 21:03:44 ID:DiYuB5EW
仕事が増えたよ!
やったね葉っぱちゃん!!
217名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 21:17:29 ID:MyjJ9t69
>>216
やめいw
218名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 21:40:19 ID:bjJ5VpNU
湯気は晴れども葉っぱは死せず
このくらいの方がみなぎるってものだ
2191/4:2008/11/21(金) 21:44:14 ID:2CgS29Lu
mix-turegret 後日談もどき─北の空はいつも晴れ晴れ リーネイラ


不思議な色。
ふわりといい香りのする彼女の銀髪に触れながら、私は思った。単純な銀色じゃなくて、微かに柔らかな
黄味を帯びている。かといって眩しいほどの金色というわけではなく、やはり少しくすんだ、ぼんやりとした
輝きを放っているのだ。

一見すると硬質な冷たさを感じるのに、よくよく触れると温かさを秘めている。それはまるでこの人のようだ、
と私の目の前で座って足をぶらつかせているこの人を見ながら、私がいつもそんなことを思っているのを、
きっとこの人は知らないだろう。誰かを思いやったり、気遣ったり。その気持ちは人一倍にあるのにそれを
表に出すのをひどく嫌がる。そう言うのは私には似合わないだろ、なんてひょうひょうと笑んだり、そんなん
じゃねーよ、と怒ったように口にしたりして。私もこの部隊に配属された当初は彼女の真意がつかめずに
相当うろたえたものだけれど、そうして混乱するたびにみんなに「エイラは素直じゃないんだ」と励まされて、
ようやっとこの人はそう言う人なんだ、と理解することが出来たのだ。

…そうなんだよ、エイラさん。みんな、みんな、あなたの知らないうちにあなたのことをちゃんと見てたり
するんです。見ていて、心配して、もしも様子がおかしかったらどうにかしてあげたい、って思うんです。

昨日までの落ち込みぶりはどこへやら、今はひどく楽しげに調子はずれの鼻歌を歌いながら、たまに
ゆれたりしているエイラさん。今日はサーニャちゃんとお出掛けするのだと、満面の笑顔で言っていた。
エイラさんはサーニャちゃんが大好きだ。でもあまり一緒にいられなくて、ましてやお出掛けなんて滅多に
出来ることじゃないから嬉しいのだろう。昨日ハルトマン中尉の部屋の中でペリーヌさんとしていたやりとりと
いい、何だか本当にもう、『心配して損した』気分だ。それはあんな世界の終わりみたいな顔をされている
よりもずっと、今浮かべている幸せそうな顔のほうがよっぽどいいけれど。
そんなことより、ねえ、頭を動かさないでくれませんか。梳かせないじゃないですか。

いつもはさらさらとまっすぐなエイラさんの髪は、今日はいつも以上にひどい寝癖がついてしまっている。
少し長引いてしまった夜間哨戒から返ってきた私と芳佳ちゃんはちょうどこれから出かけるところだという
エイラさんとサーニャちゃんに出会って…そして私は即座にエイラさんを「ちょっと来てください」と部屋に
引っ張り込んだのだった。サーニャちゃんのことは、私の考えを読んだらしく苦笑いをしていた芳佳ちゃんに
任せておくことにして。今頃きっと、シャーリーさんやルッキーニちゃん辺りに着せ替え人形にされている
かもしれない。

「…エイラさん昨日、髪乾かさないで寝たでしょ」
「アー……いろいろあってソンナ暇なかったんだヨ」
「もー、ぼさぼさですよお。こんな髪で出掛けようとするなんて、サーニャちゃんが可哀想です!」
「?ナンデ?……いてっ!!ナニすんだよリーネッ!」

椅子に座った自分のすぐ後ろにいる私を見ようとしてエイラさんが顔を上げて、そして心底訳がわからない
といったように首をかしげた。ああ、もう、だから頭を動かさないで下さいってば!そんな気持ちと彼女の
発言になんだかおなかの辺りがむずむずして、思わず手に持っていたブラシのでエイラさんの頭を軽く叩く。

「エイラさんって、デリカシーがないってよく言われませんか?」
本当にもう、この人は。自分だっておんなじ女の子なのに、乙女心が全く分かってないんだから。思いながら
尋ねる。答えはすぐに返ってきた。
「サーニャに言われたことは無イ」
「…それは、おめでとうございます」

サーニャちゃんにまで言わせるようだったらあなたはもう人でなし同然ですよ、わかってるんですか。そう
言ってやりたくなったけどすんでのところでこらえることにした。サーニャちゃんには言われたこと無いん
だったら、他の人はどうなんだろう?例えばスオムスでの仲間とか。尋ねてみようと思って、やっぱりやめて
おく。だって寂しいじゃない。どんなにエイラさんがそのことを話したって「うん、そうですね」って笑い合えない
んだもの。だからかな、そう言えば私たち皆、『今』以外の話はあまりした事がなかった。正確にいうと、この
部隊に配属される前の話は。

…まあ、そんなことは今はいい。それよりも思ったことが私にはあった。

2202/4:2008/11/21(金) 21:45:13 ID:2CgS29Lu

(やっぱり、サーニャちゃん基準なんだ)

今まで誰にそれを言われたかということよりも、今のこの人にとったらサーニャちゃんひとりがそれを言ったか
どうかが問題なのだと。
エイラさんは基本的に誰にでも優しい。たとえば誰かが目の前でぽろりと落とした物を拾ってやるような軽い
感覚で、何気ない優しさを振りまくことの出来るような人だ。そのぐらいのさりげなさで、なんてことないと
いった顔で、ひょいとエイラさんはその手を差し出すのだ。
そしてそれだけで満足して礼も言わせずに去っていくような、そんな人でもある。お礼を言ったら顔を背けて
口を尖らせてしまうような、そんな人だったりする。もちろんそんな態度をしたって内心はとても喜んでいるの
を私は知っているけれど、いかんせんこの人はそれを表に出すのを『カッコわるい』と思う性質らしいのだ。
…私には全然理解出来ないところけれど。

とにもかくにもそんな人だから、必要以上に他人に好かれようとも思っていないらしい。好かれるとも思って
いないらしい。…だから、きっと、エイラさんはサーニャちゃんひとりに好かれていればそれだけでとてもとても
幸福なのだろう。そのほかの人が自分にどんな気持ちを寄せているかなんて興味がないから、気付こうとも
しない。ある意味とてもわがままな人。

「ああ、そうダ」
ふと思い立ったようにエイラさんが呟いた。私の中でもやもやとくすぶり続けるこの妙な気持ちなんてお構い
なしに、彼女の中で先ほどまでの話は完全に完結してしまったらしい。

「アリガト、リーネ」

にこ、と微笑まれて、少し頬が熱くなった。…普段は大抵ぼんやりとした顔をしているくせに、突然こんな
子供みたいな顔をするのはずるい。それでも平静を保っていられたのは夜間哨戒から帰ってきたばかりで
少々頭がぼんやりしているからだ。ほわん、と頭の中でエイラさんの特徴的な声が反響していくだけで、
上手く物事が考えられないからだ。
なんのことですか、と尋ねたら怒ってくれたことだ、と言った。先ほどとは別の意味でまた顔が熱くなる。
あ、あれはその。答える言葉はしどろもどろ。だって、蒸し返されるとは思っていなかったから。出来れば
忘れて欲しいとまで思っていたから。

「サーニャを心配して怒ってくれたんダロ?…ごめんナ」
「…そんなこと、別にいいですよ。だって仲間じゃないですか」
「でも、アリガト」

ここで否定しても彼女は譲らないのだろうから、私はそれ以上何も言わずにブラシを動かす作業に戻る
ことにした。先ほど温かくしたタオルで少し湿らせた髪は、だんだんと普段のまっすぐさを取り戻していく。
癖の掛かった私やサーニャちゃんの髪と違ってエイラさんの髪は惚れ惚れするくらいのストレートだ。それは
いつだって落ち着いていて、大切なものばかりを見ているこの人の性格に良く似ている気がする。

可哀想だと思ったのは、サーニャちゃん。許せなかったのは、あなた。
けどそれはサーニャちゃんのためじゃなくて、ただひたすら私自身のためだったと、この人はいつか気付く
だろうか。…考えるまでもなく、気付くことなんてないだろう。この鈍感な人がそんなことに興味を持つわけが
ない。

些細なミスと、どじばかりの私。いつも落ち着いていて、悠然としているあなた。嫉妬は羨望へ、羨望は
憧れへ。憧れは…恋情へ。ゆっくりと時間をかけて、自分でも気がつかないうちに抱いていたこの気持ち。
届くわけがないって、気付いた瞬間から分かってた。だからせめて幸せでいて欲しいと願った。割り込んだり、
ましては引き裂くなんて考えられないくらいで仲良しでいてくれれば、私は生まれて初めて抱いたその想いを
ゆっくり、またゆっくり、過去のものにしていけるだろうと。
だから、サーニャちゃんを泣かせたエイラさんに怒りが沸いた。私自身の身勝手な押し付けに過ぎないと
分かっていても、二人には、サーニャちゃんとエイラさんには、いつも幸せでいてくれないと困る。困るから。

2213/4:2008/11/21(金) 21:45:50 ID:2CgS29Lu

「あとエイラさん、もしかしてその格好のまま出掛けようとしてたんですか?…ブリタニアまで」
「ん?だめなのカ?」
話題を変えるように、気持ちを切り替えるように、彼女の格好を指摘すると再び首を傾げられた。すっかり
落ち着いた銀髪の下に、見慣れた水色の軍服が見える。

「だってサーニャちゃんとお出掛けですよ。ふつうもっと、おしゃれしようとか思いませんか?」
「どうしテ?…アアアアア、イタイ、痛いってバ!」

「エイラさん、デリカシーがないってよく言われるでしょう?」
「…ついさっきリーネに言われタ」
「サーニャちゃんは私服だったでしょ!それで、エイラさんはなんでいつもと同じ格好なんですか!」
「いーじゃん、別にいつもの格好デモ……アダダダダ、だから、痛いって!ブラシで叩くナ!!」

振り返ってにらみつけてくるけれど、もちろん本気じゃないから全然怖くない。目じりに浮かんだ涙がまるで
子供みたいだ。
「なんかリーネが私に対してひどくなった気がスル…」
「エイラさんがサーニャちゃんに対してひどいからですよ。ほら、私の服を貸してあげますから脱いでください!」
「エー!いいダロ別にー!」
抗議の声を上げるエイラさんのことなんて放っておいて、私は前に回り込んで彼女を立たせるとその服の
ボタンをはずし始めた。そう、実家にいた頃弟や妹にしてあげていたのと同じように。それと変わらない作業
だと、言い聞かせながら。ぶつくさ文句を言っていたエイラさんがおとなしくなる。どうやら昨日で強引なときの
私に逆らうのは面倒だと学習したらしい。

「ところでエイラさん、」
「ンー?」
「…ペリーヌさんと、何があったんですか?」

途中でたどり着いたベルトを先にはずしながら(こんなものもデートに持ってくなんて本当にデリカシーがない)、
何気なくを装って私は尋ねた。訳知り顔のシャーリーさんにいくら聞いても教えてくれなかったことだ。
う、とエイラさんが小さく唸る。いや、それはダナ。そういい淀む辺り、やっぱり単純な喧嘩ではないらしい。いい
じゃないですか、終わったことなんだから。重ねて尋ねてみた。…いつも落ち着き払っているこの人をなにが
あんなにまでうろたえさせたのか、私には興味があったのだ。

「…まあ、リーネにならいいか。シャーリーには言うなヨ。ハルトマン中尉にもだからナ!」
「はーい」
ハルトマン中尉の部屋の前でのあのやり取りを見るに、二人とももう内情を知っているんじゃないかと思った
けれど…私はあえてそれは言わないことにした。何よりも『リーネになら』と言われたのがちょっと嬉しかった、
だなんていうのは絶対に口にはしないけれど。

「ペリーヌにサ、」
「はい」
「…キスされタ。」
「そうですか」
「……………オイ、そこ、鈍器を探すな、ヤメロ」

思わず振り返ってこの人でなしを叩くための何かを探したけれど、残念ながら手の届く範囲には何もなくて。
昨日と同じように、ううん、眠気でぼんやりしているせいか、それとももっと別の理由なのか、とにかくそれ
以上に頭に上ってくる血をそのままもてあます。

「だってなんでそーなるんですか」
「ペリーヌにもイロイロあったんダロ?…だから手を振り上げるなッテ!私がしたのは、」

瞬間、何かひどく温かいものに包まれて、私は体をびくりと強張らせた。ああ、抱きしめられてる、エイラさんに。
そう気づいたのは「こうしてやったダケ。」と耳元でエイラさんが呟く声を聞いたときになって、ようやくで。
とく、とく、と。落ち着いた心臓の音がする。きっとエイラさんのものだ。それに対して私のそれは色んな意味で
ばくばくと、情けないくらい大きな音を鳴らしている。届いていないといいけれど、と思う。けれど届いたとしても
きっと気にしないのかな、とも思う。

2224/4:2008/11/21(金) 21:47:52 ID:2CgS29Lu

「なんで抱きしめたんですか」
「ダッテ泣いてたんだもん、あいつ。ほら、親とかによく、そうやって慰めてもらわなかったカ」
「…そうですね」

夜間哨戒の疲れのせいか、抱きしめられた温もりがひどく心地よくて、とろとろとこのまま寄りかかって眠りたく
なってしまう。泣いてたら誰にでもするんですか。私が泣いてても?尋ねたらきっと淀みなく、当たり前だと
いった顔で「うん」と答えるのだろうと思った。

「私昨日、芳佳ちゃんと夜間哨戒に行ってきたんですけど、」
「ああ、そっか。お疲れサン。ねむくないか?」
「二人で、色んな話をして、すごく、すっごーく、楽しかったんです。私は夜の空、お化けが出そうであんまり
好きじゃないんですけど…芳佳ちゃんと一緒だったからすごく、楽しかった」

空も海も穏やかで、風の心地よい夜だった。二人で手をつないで空を飛んで、いろいろな話をしていたら
いつの間にか朝は来ていた。幸せだった。ほんとうに、すごく、すごく。
それは良かったなあ、とエイラさんが言う。きっと純粋に喜んでくれている。それは嬉しくて、けれどもやっぱり
寂しいことでもある。

「だからこんなこと、サーニャちゃん以外にはしちゃだめですよ。」
「どうしてそうナル」
「なんでも。絶対。…したら怒りますからね、私」
「えー。ペリーヌはともかく、リーネは柔らかくて抱き心地がいいのにナー。胸の辺りが特に、サ」
「…!?そうやってすぐからかう!!」

怒るなよー。笑いながら背中をぽんぽんと叩くその手は私がさっきエイラさんをブラシで叩いたような
それとは違って、とてもとても優しげだ。優しすぎてやっぱりちょっと、腹が立ってしまう。エイラさんにも、
ペリーヌさんにも、私自身にも。
二人きりの部屋。中途半端に脱がされたエイラさんの衣服。抱きしめられている私。この状況をサーニャ
ちゃんが見たら卒倒するんじゃないだろうか。きっとペリーヌさんも同じことを思って、それだのにこの人と
来たら「なんで?」なんて何もわかっていないような反応を返したのに違いない。本当にひどい人。

エイラさんはサーニャちゃんが大好きだ。でもそれと同じくらい、もしかしたらそれ以上に、サーニャちゃん
だってエイラさんのことが大好きなのを私はみんな、よく知っている。浮気なエイラさんと違って、本当に
まっすぐ、誰よりも、エイラさんが好きなんだって知っている。それに気づいていないのは本人ばかりで
あることも。エイラさんはサーニャさんにとって自分が『特別』だなんて、全然思っていないのだ。自分だけが
好きなばかりだと、勝手に思い込んでいる。

「そろそろ離してください、エイラさん」
理性とか、眠気とか、いろいろなものが限界で懇願するように言うと、帰ってきたのは楽しそうな返事。
「どうしよっカナー」
「キスしますよ」
「…」

この数日間のことがよほどこたえたのだろう、エイラさんはぱっと体を離して身構えた。包み込んでいた
温もりがなくなって寂しく思うと同時にほっとする。いいんだもの。これで、いい。
とにかく着替えますよ。選んできますから服脱いで置いてくださいね。そう言って私はクローゼットへと足を
進めた。すらりとして余計な肉の少ない人だ、きっとどんな服でもあっさりと着こなすんだろう。ずるいけれど
仕方ない。だってそう言うひとだもの。

「うーん、キスも抱き心地も、やっぱりサーニャが一番だなあ。……ウワッ!」

しみじみと呟かれたその一言はたぶん独り言で、私に宛てたものではないと思ったのだけれど。
なんだかまた腹が立ったので、私は選んだ衣服をぽんとその後ろ頭に向かって投げつけた。

223名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 21:52:13 ID:2CgS29Lu

以上です。
リーネ→エイラだったらこんなやりとりもあったかもしれないね、程度で受け止めてください。
続きというより関連ぐらいの位置づけで。そして>>172に感謝

携帯での閲覧についてアドバイスくださった方々どうもありがとうございました。
あとそれがきっかけかは分かりませんが携帯版の方を軽くしてくださった管理人さんにも感謝です
移動中に読んだりしているので重宝しているんだ

あ、21X2w2Ibでした
224名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 22:10:39 ID:Au/ClO3k
エイラさんマジ天然wwww
エイラーニャも大好きなんですが、リーネイラはリーネの切ない気持ちが可愛いくて悶え死にしそうになります。GJでした!!
225名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 22:48:34 ID:DIwibaQH
はあリーネちょうかわいい・・・
あ、エイラ野郎はバルクホルンさんにマッシュポテトにされるといいよ(#^ω^)ビキビキ
226名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 22:57:09 ID:EYQnfqia
リーネちゃんかわいいな…
エイラしっかりせい!
ほんとエイラとサーニャはもどかしいなあ…
まあそのもどかしさがいいんだけどね
227名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 23:14:28 ID:DiYuB5EW
たいていリーネちゃんが惚れ役ですよねぇ
リーネちゃんが惚れられるモテモテな話欲しいですねー
228名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 23:15:32 ID:cEYBUORk
>>223
GJ!リーネイラなんて想像すらしたことない組み合わせだ。また俺のスト魔女観が広がった。

ところで俺のエイラ観は、「素でニブチン」説と、
「過去アホネンにさんざん仕込まれたセックスマシーンだが、サーニャに出会って本当の愛を知り、それ故その身に染み付いたテクを彼女に存分に使いたい欲求と彼女に軽蔑されるのを恐れる気持ちが常に葛藤している」説の二つがあるのだが、皆さんはどうか。
229名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 23:17:19 ID:4T1EpSXo
うわぁ…
230名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 23:19:49 ID:DIwibaQH
>>227
101匹股監督

>>229
気持ちは分かる
231名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 23:23:30 ID:EqasqobR
うんまぁその発想はシナカッタヨ
232名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 23:42:27 ID:tD55fuYI
>>228
ないナ。第二の説はないナ、うん。
むしろアホネンの魔の手から逃げ回るか、アホネンの趣味じゃないから
相手にされなかったんじゃないかと思う。
233名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 23:47:27 ID:2CgS29Lu
>>228
エイラはアホネンが虫唾が走るくらいに苦手で(「お姉様って何だゴラァ!」的な)、
彼女の部隊に配属されたくないばかりに昇級を拒んでいたらエースなのに少尉どまりでいることになった
と言うのを今日ふと思いついてた
234名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 00:09:32 ID:tA9zwaoV
>>232
むしろアホネンさんとちゅっちゅしたいのに相手にしてもらえなくて
毎夜毎夜一人泣きじゃくるエイラああああ
235名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 00:27:20 ID:QPCqa9fy
>>223
リーネイラGJ!Part1の頃からこのスレと付き合ってきたが、
これほど俺の心の琴線に触れたSSは初めてだわ…。
なんつーか、リーネの微妙な心の揺れというか、心の在り方がすごく良く伝わってきたよ。
こんな繊細な文が書けて、しかも絵師としても素晴らしいとか、
これはもうじっちゃんと並ぶ最高のエースと言っても過言ではないのではないだろうか。
とにかくいい作品をありがとう!
236名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 00:47:57 ID:IndkNt4P
特別配信見てきた
ハート吹いたw

しかし何度見てもクオリティ高すぎる6話
テンポよし、シナリオよし、エロよしか、作画よし、音楽よし
パーフェクトだ
237名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 00:52:22 ID:yzUN6kMd
何度見ても「サーニャはここにいます、ここにいます…!」で涙腺が緩むんだ俺
しかしこの時のエイラさんはほんと男前だよなぁ。もっとこういうエイラさんも見たかったとか思うのは我侭なのでしょうか
238名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 00:58:46 ID:tA9zwaoV
「奇跡なんかじゃない・・・」だってよ・・・
エイラ素敵過ぎですよ
239名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 01:02:19 ID:cwC7T/Ji
6話見ると、ストパニの20話思い出すんダナ。
それくらい感動したんダナ。
240名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 01:18:50 ID:r7IoEVkY
話の流れをぶった切って申し訳ない。
今、やっとエイラーニャのSSができたから見てほしい。
2チャン、初書き込み、初SSだけど…読んでください。
241名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 01:19:56 ID:r7IoEVkY
サーニャの誕生日会中



「ふぅ、サーニャも宮藤も楽しんでるみたいダナ。ヨカッタ…」
そう言いながらワタシは壁に寄りかかった。


サーニャの誕生日(正確にはその次の日)に現れたネウロイを無事に倒すことができこうして誕生日会もひらけて…なによりサーニャがみんなと笑っている。
これだけのことができて、何を不服に思うことがあるだろう。
今日の主役の2人を囲んで楽しく談笑しあう光景を見て最初はそう思っていた。
「サーニャ…楽しそうダナ」
みんなとああやって話せるようになったならワタシはいらないのカナ?
ふとそんな考えがよぎった。


サーニャが笑っていてくれるのならそれでいい。隣にいるのが自分じゃなくても、それでいい。
大好きな人が幸せなら…。そう思っていた。
ケド
「あなた本当にそれでいいの?大好きな人なら、自分が幸せにしてあげるんじゃないの?」
そうミーナ中佐は言ってくれた。

だからワタシはヘタレな自分を乗り越えてサーニャに告白し、無事付き合えるようになったのに…。
大好きな人を幸せにすることができる立場になったというのに。
大好きな人の成長を喜ぶべきはずなのに。
なのに、なんでワタシは、こんな…。


「どうしたの?みんなと話さないの?」
「ッッ、なんだ中佐カ。いきなり声をかけたらびっくりするじゃナイカー」
「別に驚かすつもりはなかったわよ。少し、暗かったけど、なにか考え事してたの?」
「べっ別に…ソンナンジャネーヨ」
「サーニャさんのこと?」
「ダッ、ダカラ別にサーニャのことなんて考えてナイッテバ…。…タダ、楽しそうダナッテ」
「そうね、本当に楽しそう。よかったわ、みんなと楽に話せてるみたいで」
「アァ。ワタシはそれが嬉しいンダ!サーニャ、みんなと話す機会少なかっタシ、あっても気遣ってタ。
でもあんな楽しそうな顔、初めて見タカラ。この会に協力してくれたみんなにもすごく感謝してるンダ!デモ…」
そう言いながらワタシは言葉を止めてしまった。
ダメダ、さすがにこれ以上は言えナイ。
今後の展開をどう変えようかと悩んでいると、
「サーニャさんがみんなに取られそうで心配?」
ワタシの迷いを察したのか中佐が優しい顔をして声をかけてきた。
「別にソンナンジャ…」
「それとも、みんなと楽しそうに話すサーニャさんを見て、嫉妬してたのかしら?」
「ベッ別に、ソンナンジャ…ネーヨ」
「ふふっ、そうなのね。好きな人がほかの人と楽しそうに笑ってるのを見たら、誰だってそう思うと思うわ。
仕方ないわよ。だって好きなんだもの。エイラさんは、本当にサーニャさんのことが好きなのね。」
そう言われてワタシは、顔をうつむけてしまった。

242名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 01:21:11 ID:r7IoEVkY
あぁナンデこの人ははいつもワタシの考えてることがわかるんダロ。
心読んでんジャナイカ?
「別に読んでないわよ?」
「読んでるジャナイカ!!」
「エイラさんの顔に書いてたのよ」
くすっと笑う中佐。
シレっとした顔でこの人ハは…。
ミーナ中佐には隠し事ができない。改めてワタシはそう思った。
「それよりも、そう思うんだったらサーニャさんを連れ出して2人っきりになっちゃえばいいのよ」
「そんなことできナイヨ。だってあんなに楽しんでるんダシ、サーニャがみんなと楽しんでるの邪魔したくないシ…」
「エイラさんは優しいわね。それなら、もうじき会も終わるでしょうしそれまでみんなと一緒に楽しんできたらいいわ。
せっかく気兼ねなく話せているんだもの。あなたがいたほうがサーニャさんも喜ぶと思うわ」
「ソ、ソウカナ?」
「もちろんよ。それに夜は長いんだし、会が終われば2人でゆっくり楽しめばいいわ」
「ナッ…楽しむって、別にワタシはサーニャとそんなことシたいワケジャ…いやシたいけど…ウッでも最近シてないケド…」
「何言ってるの?別に私はゆっくりお話でもしたらって意味で言っただけで、やましい意味で言ったわけじゃないわよ?」
そう得意気に返す中佐。
シマッタ。やられた…なに墓穴掘ってんだワタシ…
「中佐、あんたそんなキャラだったカ?」
「ふふっ、エイラさんは何を想像してそんなに赤くなってるの?最近シてないって何を」
「ワタシサーニャのところに行ってクル。」
そうさえぎりワタシは中佐の攻撃から逃げ、愛しい人の所へ向かった。
「いってらっしゃい。」
中佐は笑いながらそう言って見送ってくれた。

ダメダ、ミーナ中佐には敵わない。
そう心に刻みつけた瞬間だった。



243名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 01:22:54 ID:r7IoEVkY

「ハァ、中佐はすごいを通り越して怖いダナ。今度から気をつけないと…」
そう言いながらワタシは、先ほどの戦闘(負け戦)で乾いたのどを潤すためにテーブルに置かれたグラスに手を伸ばした。
オレンジジュースカナ?
まぁなんでもいいや。そう思ってグラスに口をつける。



ナッッッッ。


「コレお酒ジャナイカー!」
ワタシたち軍人だけど……ダメダロ。
「誰がこんなの……アイツラカ」
探さなくてもすぐにわかった。
1人は瓶をもって高笑いしながら自分の破壊力抜群の胸に縞ズボンの元気っ娘を抱きしめ、
もう1人も同じく高笑いしながら、同じカールスラント出身のお堅い人に抱きついてからんでいる。

「ハァ」
そう溜息をついて、文句を言うために片方に近づいて行った。

「ナンデこんなの持ち込んでンダヨー」
ワタシはそうシャーリーに抗議した。
「い〜いじゃんかよ〜。せっかくの祝い事なんだし。リベリオンじゃ普通だぜ?」
「ここはリベリオンじゃナイー」
「まぁ固いこと言うなよ〜。サーニャも楽しんでるんだし」
あっそうダ。サーニャは?まさか、酔って具合悪くなったりしてナイカ?
ワタシは近くにサーニャの後姿を見つけ、その肩をつかんだ。
「サーニャ、大丈夫カ?」
244名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 01:23:49 ID:r7IoEVkY
「あっ、エイラ〜。だいじょうぶだよ〜〜」
………
「全然大丈夫じゃナーイ!」
いつもより間延びした声で、頬を赤らめて、そんなうるうるした瞳でしゃべるなんて…
かわいすぎる!!
じゃなくて完全に酔っぱらってる。
「サーニャはそんなの飲んじゃダメダ」
そう言ってサーニャの手からグラスを取り上げた。
「なんでぇ?すっごくおいしいからエイラにも飲ませてあげようと思ってたのに〜。返して」
ウッ。上目づかいでそんなことお願いするなんて…。
「ダッダメだぞ。サーニャにはまだ早イ」
「むぅ。エイラの意地悪」
そう言って頬を膨らますお姫様。
やばい。ワタシ悶え死にそう…。
「ダメなものはダメナンダヨー」
でもこれだけはさすがのワタシでも譲れない。ワタシはサーニャから届かないようにテーブルにグラスを置いた。
とりあえずサーニャの周りにお酒はない。ひとまずこの状態を維持できるな。
そう少し安心していると
「意地悪するエイラにはこーだもん」
という声と、温かい感触が私を包んだ。
「ヘッ?」
一瞬何が起こったか分からなかった。
「へへ〜、エイラ〜〜」
下に目を向けると
サーニャに抱きしめられていた。
「サ、ササ、サーニャ?何してんダヨ?みんな見てるダロ、ほら離レテ」
「やだ〜〜。エイラといっしょにいる〜〜」
「サ、サーニャー」
いつもだったら全然こんなことしてこないのに、ナンデ?酔ってるカラ?ダッタラこのままでも…。
ってダメダ。そんな場合じゃない。今みんないるンダ。
「ひゅ〜お熱いねぇお2人さん」
「うわぁ〜サーニャちゃん大胆」
「らぶらぶ〜」
ホラ、ひやかしが。ッテいうかめちゃくちゃ恥ずかしイ。
「サーニャ、みんなに見られてるシ、いろいろ言われてるジャナイカー。早く離れて」
再度泥酔するお姫様にお願いするも
「エイラのこと大好きなのになんで離れちゃいけないの〜?」
なんて言われちゃ。ワタシどうしたらいいのか…。もう駄目、失神しそう。
ミーナ中佐、なに離れたとこからくすくす笑ってんダヨ。こういう時こそ助けてクレヨ。
ハァ。デモとりあえずこの状況を何とかしないとナァ。
「わかった。わかったカラ、一旦離れて、部屋に戻ろう?ナ?そしたらまた抱きついてイイカラ」
ひとまずこの場をどうにかするために、ワタシは苦肉の策でこの条件を提示した。
「おいおい〜何2人だけの世界に入ってんだよ〜」
「わぁ、エイラさんも大胆。」
「らぶらぶ〜〜」とかまた聞こえてきたけど、別に本当にそうするわけじゃないカラナ!
とりあえずこの場を何とかするために言っただけダカンナ。と心の中で反撃する。
「う〜〜ん、わかったぁ。今はがまんする〜」
納得してくれたようで、ようやくサーニャはワタシから離れてくれた。
「ジ、ジャア、ワタシはサーニャを寝かせてくるカラ…」
そう言ってワタシはサーニャの手を引っ張って逃げるように部屋を出て行った。

部屋を出たところで
「じゃあ主役もいなくなっちゃったし、そろそろお開きにしましょうか」
というミーナ中佐の声が聞こえてきた。
中佐、そういうことはもう少し早く言ってクレヨ…。ハァ。
その他にも「襲うなよ〜」
「がんばれぇ〜」
「らぶらぶ〜〜〜」とか聞こえてきたけど、気のせいということにして足を速めた。

245名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 01:24:40 ID:r7IoEVkY
「サァ、サーニャ着いたぞ。じゃ今日はゆっくり休むんダゾ」
サーニャの部屋の前でそう言って、手を離し自分の部屋に戻ろうとした。が手が離れず戻れなかった。
またお姫様の頬が膨らんでいる。
「なんで〜?わたし、エイラの部屋にいく〜」
あぁ、サーニャ。ナンデそんな顔してそんなこと言うんダヨ…うれしいけど理性が保てないジャナイカ。
「でも、サーニャ酔ってるし、今日は寝たほうがイイッテ」
「わたし酔ってないもん。」
いや、めちゃめちゃ酔ってますよ。キャラ壊れてますよ。
「……エイラはわたしといたくないの?」
ウゥッ。いたいに決まってるじゃナイカァ。でも、今のサーニャと2人きりなんて、ワタシ…
なんて悩んでいると
「わたしはエイラと2人きりになりたいの!」
そう言い切られて、今度は私が手を引っ張られる形になり私の部屋へと連れて行かれた。


誰も来ないと思うけど見られてはまずいので、ワタシは扉を閉めた。
そしてサーニャをとりあえず、ベッドの上に座らせて手を離した。
「何ではなしちゃうの?」
そんな捨てられた子犬のような瞳でワタシを見ないでクレヨ。決心がにぶるジャナイカ…。
「サーニャ。とりあえず、今日は寝よう。そんな状態じゃ早く寝ないと明日が大変ダロ?」
説得を試みる。
「でも明日は2人ともお休みでしょ?」
ウゥッ。なんでこんな所だけ冷静なんダヨ。たしかにワタシタチはミーナ中佐から
『2人にはここ数日無理なシフトをお願いしてしまったし、お礼と休憩を兼ねて2人そろって明日は非番にしといたわ』
って言われたケド。
「デモ、ワタシはサーニャのことが心配ナンダ。そんな状態で無理に起きてたら体壊しちゃうかもしれないシ。
ダカラ今日は1人でゆっくり寝たほうがイイッテ。ワタシはサーニャの部屋で寝るカラ」
そう言って、多少強引だけど部屋を出ていこうとする。
が服の裾を引っ張られた。
「……」
黙ってワタシの裾をひっぱるサーニャ。
まずい。本気で怒らせちゃったか?
「……なっちゃったの?」
「ヘッ?」
「エイラはわたしのこと嫌いになっちゃったの?」
ひどく寂しい声でサーニャは私に尋ねた。
246名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 01:26:35 ID:r7IoEVkY
「別にソンナンジャ」
「だって、エイラ私のこと妙に避けてるもん!」
「ソッソレハ…」
理性が壊れそうなんダヨ…なんて言えないし。
「わたし、エイラに好きって言われてすごく、すごくうれしかった。わたしもエイラのこと好きだったから」
言われて照れてしまいながらも、驚いていた。
普段サーニャはこんなこと言わないから。
「それで、エイラと付き合えるようになって、一緒に街に行ったり、お昼寝したり、…キスとか……エッチなこともしたりして本当に幸せだったんだよ。」
「……」
「なのにエイラ最近妙にわたしを避けるし…だから、エイラはわたしのこと嫌いになっちゃったんじゃないかって思って。
そう思ったら……不安で…」
最後のほ方はほとんど聞こえないぐらいにか細い声だったけどワタシはしっかりと聞いていた。
あぁ、ワタシ何やってんだろ…サーニャにこんな思いをさせてたなんて。ほんとにバカっていうかヘタレっていうか…

「サーニャ」
そう優しく呼びかけながらワタシはうつむくお姫様を抱きしめた。
「エイ、ラ?」
「ゴメン。別にサーニャを不安にさせるつもりじゃなかったンダ」
サーニャは黙ってワタシの胸に顔をうずめている。
「なんていうか、サーニャのことが大事だったカラ、大事にしたかったからその、変に距離を置いちゃッテ。
今日だって本当はサーニャと2人きりになりたかったケド、その、サーニャを傷つけるんじゃないかッテ…不安で。
だからゴメン。」
「……」
沈黙を貫くサーニャ。
ヤバイ、さすがにこれ以上謝り続ければ逆効果な気もするシ、どうしよう…。
そうワタシが途方にくれていると、
「エイラの馬鹿」
とサーニャが口を開いた。
「わたし、エイラに嫌われたと思ってすごく不安だったんだよ?」
ウゥ、だから謝ってるじゃナイカァ。やっぱり謝り足りなかったかノカ?
「わたし、まだエイラに嫌われてると思って、泣きそうなんだよ?」
「……」
本当にワタシは馬鹿野郎だと思った。
この期に及んでまだサーニャを不安にさせてるなんて。なんて愚かなんだろう。
これじゃあサーニャの恋人なんて言えないヨナ。ハァ。
そう自分に失望しながらも
「ゴメン。サーニャ、好き。大好きだよ」
そう愛しいお姫様の耳元にささやいた。

247名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 01:28:22 ID:r7IoEVkY
「わたしもエイラのこと大好きだよ」
そう言ってサーニャは顔をあげ、満面の笑みをワタシに見せてくれた。
ウッこれはヤバイ。かわいすぎる。もう正直我慢の限界なんですケド…どうしヨ。
ここまできてなんでワタシはヘタレなんだろう?本当に自分が嫌になる。と落ち込んでいると、

唇に柔らかい感触が。

と思ったらすぐに離れた。
「サ、サーニャ?」
「エイラの意気地無し」
「ウゥッ、そんなこと言うなんてヒドイじゃナイカァ」
ハァ、ワタシはこのお姫様にも敵わない。そうしょげてしまった。
「ふふっ。冗談だよ」
そう言ってくすくす笑うサーニャ。
よかった。誤解が解けたみたいで。
今日はがんばって自分を抑えて、やっぱり2人でゆっくり話そうかな?
そう考えていると

「…ね。エイラ。」
「どうした、サーニャ?」
また何をからかわれるんだろうと返事をした。



「………しよ?」
とサーニャがつぶやいた。
ン?スル?何を?夜間哨戒?んなバカナ。今日は非番ダロ。
アァ、ピアノか!ッテこんな夜更けにやるわけないダロ。
この状況で『する』なんてことは1つしかない。ワタシの頭は混乱していた。

「エイラと……したいの。」
と続けるサーニャ。
「いっ、いいのか?」
ワタシは整理のつかない頭でも次は反射的に答えた。

「うん…エイラ。して?」
そんなこと言われたらさすがに無理です。ゴメンナサイ。私は狐じゃなくて狼になってしまいます。
ワタシの理性は音を立てて崩れていき、サーニャをベッドに押し倒した。


248名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 01:29:28 ID:r7IoEVkY


「ん、、ふぅ…はぁ」
一旦離れた唇がまた触れ合う。
もう何度目になるだろうか。ワタシタチはお互いに下着姿になって幾度も唾液を交換し合い、舌での愛撫を繰り返していた。
少し離れようとしたワタシのスキをついてはサーニャが攻めてくる。なのでワタシも負けじと反撃する。その繰り返しだった。

「はぁ、はぁ…サーニャ」
もっと、もっと欲しい。唇だけじゃなくて、サーニャがもっと。
そう思ったワタシは口付けはそのままにサーニャの胸に手を伸ばした。

「ふっ、むっ、エイ…ラ、」
下着の上から触れただけなのにサーニャの体はびくっと反応し、表情がさらにトロンとなった気がした。

「んっ、んん、あっ、はぁっ」
舌を絡めるのも、難しくなってきたようだ。
「気持ちいいのか?サーニャ」
緩急つけて攻めながら余裕のなくなってきたサーニャにそう尋ねる。

「うっ、ん、きもち…んんっ」
感じながらもワタシに反応を返そうと、必死にしゃべるサーニャ。

そろそろイイカナ?そう思ったワタシは、サーニャの下着を外した。
控えめだけどきれいなふくらみと、先のほうにちゃんと自己主張しているピンクの蕾があった。

「サーニャ、もう固くなってるジャナイカ」
「やぁ、いわないで……恥ずかしい、の……」

恥ずかしがるサーニャを愛しく思いつつ、ワタシは胸の先端の蕾に吸いついた。

「ひゃん!」
とサーニャがかわいい声をあげる。
「ひっ、やぁ…んん、あ、エイラっだめぇ」
刺激が強かったのか、ワタシを引き離そうと、手で頭を押し返してきた。
その抵抗が本気ではないと知っているので気にせずに、なめたり少し噛んだりと続けた。

「んぁ…やぁ、だめぇ、つよ…いの」

「はぁっ、はぁっ、んん」
サーニャの息が荒くなり、小さな抵抗をしていた手も、いつのまにかワタシの頭を抱きしめていた。
「ひゃぁ…んんっ、」
「イきそうナノカ?いいよ、イって」

そういってワタシは胸への愛撫を強めた。
「あ、あ、もうだっ、め…きちゃう……」

「んんっ、んっ、あっ」

最後にと先端を今までよりも強めに噛んだ。
「っっ………!!」

声を押し殺して、サーニャはワタシの胸の中でガクガクと痙攣した。

249名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 01:52:47 ID:yzUN6kMd
まだ終わりじゃなさそうだし支援したほうがいいのかなこれは
250名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 02:33:52 ID:r7IoEVkY
サーニャ…イッちゃったんダ。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
「気持ちよかったんダナ、胸だけでイッちゃうなんて。」
息を整えているサーニャに、語りかける。

「っ、はぁっ、はぁっ、エイラの、せーだもん」
と、今日何度も見たのと同じように、頬をふくらませる。
「ゴメン、ゴメン。デモ…」
そう言ってワタシはサーニャのズボンの上に指を滑らす。
「んんっ!」
「続き、してほしいダロ?」

「っ……」
目をそらして、恥ずかしそうに、コクンとうなずいた。

それを確認したワタシは役割を果たしていないズボンを脱がし、ベッドの隅に放り投げた。


サーニャのソコはもう大洪水だった。
こんなに濡れてるの初めて見タ。

少し驚きながらも、サーニャの秘裂に指をうずめていった。

「ふぅっ、んんっ、エイラぁ」

ズブズブっと柔らかい肉がワタシの指を受け入れながらも、キュっと締め付けてくるサーニャの中。
「サーニャの中、もうぐちょぐちょダゾ?」
「やぁ、んんっ…いわな……で…」
「だって、1回イッたとはいえ濡れすぎダロ?」

そう言って、ワタシは指を出し入れしたり、かき回したりする。
「なのにワタシの指を離そうとしてナイヨ?」
「ひっ、やぁ……あぁっ」
「サーニャ…エロい」
「エッ…ラの、イジ…ワル」
感じながらも恨めしそうな瞳でワタシを見てきた。



251名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 02:35:03 ID:r7IoEVkY
「やっ、んんんっ、あぁ……ひゃあ」
サーニャの声がまた荒くなってきた。
そろそろイくのかな?そう思って動きを早めようとしたとき、
サーニャの指が私のズボンをなぞった。
「ンンッ、サーニャ?ナニヲ…」

「はぁっ、エイラッ、ばっかり…ずるいもん……わたしも、する」
「サッ、サーニャ……べつにワタシハ」
「エイラも気持ち良くなりたいでしょ?」
少し息を整えたサーニャの指がワタシのズボンをずらしワタシの中へ入ってきた。

「ひゃぁっ」
「エイラだって、ぐちょぐちょじゃない」
指をかき回す。
「ヒャン!」
「こっちだって固くなってるよ?」
なんという手際の速さか。ワタシのブラをずり上げ胸も攻めてきた。
されるがままのワタシ。
「ひん、ンンッ、あぁッ」
「ふふっ、エイラかわいい」
「ッ、はぁっ、はぁっ、サー…ニャ」
「イってもいいんだよ?」

そう言われても、さすがにイくわけにはいかない。
ワタシはまだサーニャの中に入ったままの指を、もう1度動かした。
「きゃっ、ちょっと、エイッ…ラ、わたしが、んんっ、するの…」
「サーニャにも気持ち良くなってほしいンダ」
「でも…エイラも…」
「じゃぁ一緒に気持ちよくナロ?」
「……うん…」

サーニャを説得できたワタシはサーニャの中から指を抜き、
サーニャの濡れそぼった秘裂に自分の秘裂を重ね合わせた。

「動くゾ?」
「…うん。」
恥ずかしいのか、小さい返事だったけど了解をとったので、動き出した。
「ひっ、んんっ、あぁっ」
「気持ち…イイカ?サーニャ?」
「…ッ、うっ、ん、きもちいい…よ。エイラは?」
「ス、ゴク、気持ちイイ」
お互いの秘裂からあふれ出した蜜が絡み合い、ぐちょっぐちょっと卑猥な音を立てる。
その音を聞きつつ、ワタシはサーニャの秘部の小さな蕾に夢中になって擦りつけた。
「はぁっ、はぁっ、ひゃん」
「んんっ、アッ、くぅっ」
2人の嬌声が部屋に響く。
蜜の絡み合う音やベッドのきしむ音と混じり合って、すごく卑猥なハーモニーが部屋を包み込む。
252名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 02:35:34 ID:r7IoEVkY

「エイッ、ラ」
「んんっ、サーニャ」
お互いに見つめ合うと、どちらともなく唇に吸いついた。
「ん、むぅ、んんんっ」
「ふっ、んっ、ひゃぁ」
むさぼりつくように、舌をからめ合う。
「ちゅっ、エイラッ…エイラッ」
「んんっ、サーニャ…くちゅ」
自分の愛する人の名前を呼びながら高まっていく2人。

「エッ…ラ、ダメ…わたし、もう…」
「サーニャ、ワタシ…も…、一緒に…」
「うん、いっしょに…んんっ」
ワタシは速度を速めて腰を動かし続けた。

「あっ、あっ、ダメ、んあっ、エイラ、エイラ…」
「サッ…ニャ、んんっ、あっ、ふぁっ」
「エイラっっっ!!!」
「サーニャ!!!」
最後に一番強く腰を押し付けた。
ギュッと抱きしめ、愛する人の名前を呼びながら同時に果てた。
がくがくっと痙攣して、サーニャに倒れこむ。


意識がぼーっとして、気だるさが襲ってくる。でも、すごく満足した状態だった。
サーニャの上から転がり、隣に寝転がった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
息が上がっていたが、サーニャが気になりサーニャのほうを向きなおした。
すると、サーニャもこっちを向いた。
「はぁっ、はぁっ、エイ、ラ…」
「ン?どうした、サーニャ?」
まさかもう1回?さすがに無理なんですけど…。



「……大好きだよ…」
そう言って、胸に顔をうずめてきた。。
あぁ、もうなんでサーニャはこんなに…。と悦に浸る前に心の底から返事を返した。
「ワタシも…大好きダゾ」
そしてサーニャを抱きしめて、そのまま眠りについた。


253名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 02:36:32 ID:r7IoEVkY
翌朝。
ワタシは毎日なるラッパの音で目が覚めてしまった。

「今日休みなのにナー」
体を起こしてそう呟く。
隣を見ると、昨日大暴走お姫様が幸せそうな顔で眠っていた。
ぐっすりと眠っているようで、起きる気配はない。
「起きたら昨日のことなんか忘れてんるんダロウナー」
ちょっと、落ち込むワタシ。
あっ、そういえば、昨日サーニャは結構な量のお酒を飲んでるみたいだったな。
もう目が覚めちゃったし、食堂に行って水でも持ってきといたほうがいいかも。

そう思ったワタシは眠り姫を起こさないように静かにベッドからでて、軽く格好を整えて食堂に向かった。

食堂に行くと、シャーリーとバルクホルン大尉が朝食をとっていた。
「あれぇ〜今日休みなんじゃないのかぁ?」
昨日の元凶が話しかけてきた。
「目が覚めちゃったんダヨ。それでせっかくだから、
昨日誰かさんのせいで酔っ払っちゃったサーニャのために水を取りに来たんダヨ」
嫌味たらしく返す。
「でも、昨日は楽しかっただろ?」
「ナっ、聞こえてタノカ?」
「おっ、やっぱり激しかったんだな?」
…しまった。やらかした。冷静に考えれば聞こえるわけないじゃナイカ…。
アホダロワタシ。
「スオムスのエースもサーニャのことになると、ダメダメだな。
でも、昨日のあの酔いっぷりだったら、サーニャもさぞや…ムフフ」
「ッッサーニャをソンナ目デミンナー!!」
そう叫んで、ワタシは水をもって急いで食道を出て部屋に戻った。

〜〜〜

「エイラはわかりやすすぎるんだよなぁ。
しかし最近サーニャがいつにも増してエイラの方じっと見てたから気にはなってたんだけど。
だから、酒でも飲んで酔った勢いでしゃべれればと思って飲ませちゃったんだけど…効果ありすぎたようだな。
まっ2人が仲良くなったらよかった!な?」
「なぜ私に話を振る?」
「なぜって、そりゃあ近くにいるからだろ?」
「別に関係ない。というか、軍人たるもの日常の行動や自分の理性も制御できんようでは…」
「あんたには言われたくないと思うぞ、お姉ちゃんw」
「なっ、貴様がそう呼ぶな!!」
「あははは」

というやり取りがあったが、エイラは知らない。
〜〜〜
254名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 02:37:23 ID:r7IoEVkY

「まったく、シャーリーハー…」
ぶつぶつと文句を言いながら部屋のドアを開ける。

よかった、サーニャまだ寝てるみたいだ。
ひとまず安心して、水をテーブルの上に置く。
ベッドのほうに向っていくとカーテンの隙間から陽の光が差し込みサーニャを照らしていた。
なんてきれいなんだ…。
言葉を失うくらいに奇麗だった。神話の女神たちなんか比べ物にならないんじゃないかと思うほどに。

ベッドに腰かけサーニャの寝顔を見ていると、サーニャも目を覚ました。
「んっ、エイラ?」
「起こしちゃっタカ?ゴメン」
「ううん、大丈夫。っっ、それより…頭、痛い」

やっぱり二日酔いカ。サーニャには早かったんダヨ。
そう思いながらも
「ワタシ水持ってきたから、ホラ」
サーニャに水を手渡した。
「ありがと」
コクっと水を飲む。

あぁ、この調子じゃ今日は部屋で休憩カナ?まぁそれもイッカ。
それより、サーニャ昨日のこと覚えてんのカナ?
「エイラ、ありがと」
サーニャが一息ついたようなので、ワタシは思い切って聞いてみることにした。
「なぁ、サーニャ、昨日の」
「わたしもう少し寝るね」
昨日と聞いた途端に毛布をかぶり横になってしまった。

ナンダ?この変な行動…。
アレ?まさか?
もしやと思いサーニャの顔が見えるほうへと移動する。
すると、耳まで赤くして顔を伏せる姿が見えた。
「もしかして、昨日のこと覚えてるノカ?」
「っっ!!!」
びくっと反応を示す。
あ覚えてるンダ。そりゃ恥ずかしいヨナ。
「ナンダ、覚えたタノカー。ソッカ、ソッカ」
と恥ずかしがるサーニャをよそに少し安心する。

「エイラの馬鹿」
とだけ呟いて、サーニャは毛布を頭までかぶりしゃべらなくなってしまった。
「サ、サーニャ?」
「ふん」
ヤバ、怒らせちゃった。
「ゴメン、別にいじめるつもりじゃ…」
「エイラなんか知らない」
あっ、もうダメダ、こうなったら止められナイ。
ハァ、やっぱりワタシはサーニャには敵わないノカ。
ハァ。と心の中で溜息をつきまくった。

その後、なんとかサーニャと会話できるようになったけど、
ワタシの顔を見るたびに顔を赤らめてうつむく状態がしばらく続き、
そのたびにみんなにからかわれてしまったのは、言うまでもない。
255名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 02:38:08 ID:r7IoEVkY
以上終わりです。
もし楽しんでいただけたなら幸いです。
長文失礼しました。
256名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 05:30:54 ID:fNCmiA2t
>>202

―――廊下にて

「ちょっと、サーニャさん、今夜の哨戒任務ですけれど、わたくしが代わりましてよ。ええ、もう中佐
にもそうと報告済みですわ、だからさっさと…なっ、なんですの、わたくしは別に、あなたが浮かない
顔をしていて、その原因に察しがつくから代わってさしあげるだなんて、一言も言っていませんでしょ。
あなたがそんな調子のまま任務に出てもしものことがありましたら、困るのはあなただけじゃ(くどくどくどくど…」

―――数分後

「とっ、とにかくわかりましたらさっさとそれ(鍋)を、届けて差し上げなさいな。まったくあなたがた
は世話が焼けると言うか、揃いも揃って…」

サーニャ「あの…」
ペリーヌ「はん? なによ、まだいらっしゃいましたの?」
サーニャ「あの、ありがとう…ございます…っ! わたし行ってきます!(いつにない大声)」
ペリーヌ「っ!!! …こ、このことは、病人には内緒になさい」
サーニャ「どうしてですか?」
ペリーヌ「どうしても、です!」
サーニャ「??? わかりました、本当にありがとう(にっこり)」

―――すたすたすたすた(サーニャ去る)

ペリーヌ「な、なによ…」

―――こつ(ペリーヌ踵を返す)、こつこつこつ…(歩き出す)

ペリーヌ「な、なによ、あんな顔…するなんて…」

―――こつこつこつこつ…(ペリーヌこつこつ)、…ぴた(停止)

ペリーヌ「案外っ、か、かわいいところも、ありますのね」

―――こつこつこつこつ…(ペリーヌ浮き足立って)


というやりとりがあった、という報告が、「善良なるペリーヌを考える委員会」から今しがた送られてきた内容のすべてです。
257名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 07:55:36 ID:dkRXcqeS
>>255
電車の中ですっごくニヤニヤしてしまった
どうしてくれるのか
お酒飲んでいつもと違うサーニャのかわいさに萌え死にそう


そういえば外国だと何歳ぐらいから飲酒できるんだろうか?
258名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 08:02:07 ID:7nXdeAro
>>219
GJ
あなたの書くSSはいい話ばかりだ
リーネは是非芳佳とイチャイチャして欲しい所

>>240
GJ
これで初SSとか凄いな
照れサーニャカワユス
また書いてね
259名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 08:41:16 ID:xhocc820
>>240
GJ!
最初はミーナイラ?と思ったら、ちゃんと甘々なエイラーニャでしたw

キャラが酔っぱらったらどうなるか、というのは結構定番の妄想だし、サーニャだったらこうなるだろうなっていうのは予想がついたが、翌日思い出し照れするサーニャってのは新鮮かつ激しく萌えた。
とても読みやすく、えっちで面白かったです。これで初SSとは…恐ろしい子!
また書いてください。待ってます。
260名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 08:41:51 ID:wUEyUx/h
まずsageを覚えてから書き込んでくれ
261名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 09:48:42 ID:g0m0lic5
そうだな
sageもできないんじゃ話にならん
262名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 09:52:22 ID:AI0vQz6P
別に、2chに書き込むのが始めてだろうが何だろうが、こちらは頓着しないしね
言わない方がいいと思う
263名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 10:20:01 ID:r7IoEVkY
>>260
>>261
sageが重要なことだとわかりました。
そんな基礎的なことも知らずにすみませんでした。



264名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 10:21:32 ID:7nXdeAro
どってことナイッテ
265名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 10:23:43 ID:r7IoEVkY
>>258
ありがとございます。がんばってみます。

>>259
ありがとうございます。
キャラ壊してる感じがして怖かったんですが…GJもらえてうれしいです。
266名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 10:34:42 ID:xhocc820
エーリカは、どんなに過酷な戦場でも、どんなに絶望的な戦況でも三人といる限り決して笑顔を絶やすことはないんだろうな。
「難しいことはわかんないけどさ、あたしは二人の行くところにどこまでもついていくよ」
(トゥルーデを心配するミーナに向かって)「トゥルーデは死なないよ。あたしが護るから。」
「ずっと三人一緒でいようね…約束だよ…」
みたいな妄想がとまりません。
だから四話の出来事はエーリカは凄いショックだったろうな。
267名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 10:40:38 ID:xhocc820
>>266
訂正。
「三人で」いる限り、ね。カールスラント組の話です。わかりずらい文ですみません。
268名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 10:43:30 ID:K3FZnHnP
最近のマイブームはクリス→エーリカ。
んで、エーリカ→ゲルトで、ゲルト→クリスという、一方通行の三角関係を考えてニヤニヤしている。
269名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 10:48:16 ID:dkRXcqeS
>>265
なーに、みんな初めてのときはあるんだ
これから覚えていけばいいさ
270名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 10:55:36 ID:PA3LEE75
>>256に和んだwペリーヌかわいいよペリーヌ
応援してるぜ委員会、これからも頑張ってくれ!
271名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 12:30:27 ID:vizm46tF
>>255
初SSでエロとはチャレンジャーだな

俺の妄想だと酔っ払いサーニャは静かに暴走する感じだわ
あとトゥルーデが酔うと説教が始まっていつの間にか妹自慢になるw
ペリーヌは泣き上戸笑い上戸
ミーナ隊長は……駄目だ思い付かないけど多分恐ろしいことが起こるに違いない
272名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 12:38:44 ID:jUF9XMCN
私の妄想だと

芳佳はぐで〜と倒れて、おっぱいを揉み
リーネはクスクス笑いながら、頬ずり
エイラは真っ赤になって、「さ〜にゃ〜」と、か弱い声で助けを求め
サーニャは静かに、頬に朱が差してきて、限界を超えるとコテと倒れる
ミーナ隊長は甘い声で「み〜、お」(漢字じゃないのがポイント)とか言って、指で美緒の顎を支えて
美緒は強いからあまり関係ない感じ、普段より少し大胆になる?
273名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 13:18:41 ID:bvx13N6b
酔った勢いでサーニャと一夜を共にするエイラ。
翌朝、自分のした事に猛反省してひたすら頭を下げるエイラを見て、
「やっぱりエイラには私がついて居ないとダメかな?」と思うサーニャ。
そして二人はめでたくゴールイン、と。

お酒の力は偉大だねぇ。
274名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 13:28:01 ID:TKnU45Jd
各キャラに似合いそうな酒ってなんだと思う?
275名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 13:29:44 ID:2OjOeEFU
芳佳は甘酒
276名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 14:07:52 ID:/XZIAjay
リーネはギネス
シャーリーはバドワイザー
サーニャはストリチナヤ
277名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 14:17:42 ID:AI0vQz6P
この前サーニャがシャーリーにスピリタスをあげてるの見たよ
278名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 14:20:23 ID:CTrzYxR0
ミーナは肝油
279名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 14:23:11 ID:Izg9URoD
色々なCPの新境地の開拓をやっているのに 
俺は芳リーにとらわれてるばかりなんだが・・・・大丈夫だろうか
280名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 14:41:33 ID:iHcZu0EY
イメージ的にカールスラント勢は酔ったら肩組んで歌いそう。
とくにお姉ちゃんが。
281名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 14:56:18 ID:+nZWy+xz
こんにちは。mxTTnzhmでございます。
>>256氏の状況の直前として浮かんだ小ネタをひとつ。

----
「どうして突然哨戒任務が変更になったんですの? 中佐、ご説明いただけますか?」
毅然と事情の説明を求めるペリーヌ。
「サーニャさんもまだ疲労が蓄積してるみたいで……それに、昨日の今日でしょ? 流石に無理はさせられないから」
困り顔で答えるミーナ。
「わたくしもまだ完璧な状態では……」
「あーすまんなペリーヌ。無理を言ってるのは承知しているんだが、他に……」
「しょっ少佐たってのご命とあらば、わたくし、すぐに任務にとりかかります!」
「ちょ、ちょっとペリーヌさん?」
慌しく執務室から出て行くペリーヌをそのまま見送る格好になってしまうミーナ。
「ねー言った通りでしょ? 少佐からも一言言ったらって」
小さく笑みを浮かべながらエーリカは一同に言った。
「?」
首をひねる美緒。その横で表情ひとつ変えずに上を見るミーナ。
「エーリカ、お前また何かよからぬ事考えてるんじゃ」
「またってな〜によ、トゥルーデ〜」
言いながらトゥルーデの脇腹を人差し指でつんつんつつくエーリカ。
「うーむ。言った手前、私もペリーヌと共に飛んだ方が安全か?」
美緒は顎に手を当て真剣に考える。
「今夜はペリーヌさん一人で十分よ」
さらっと美緒の出撃を不許可にするミーナ。そんな上官二人をみてひとりにやけるエーリカ。
そのエーリカを見ていたトゥルーデはエーリカを問いただそうとしたが、
「なぁに、トゥルーデ? 私の顔に何かついてる?」
小悪魔的な笑みに先制され、言葉に詰まった。

ハンガーへ急ぐペリーヌは胸に手を当て、ひとつ大きく息をついた。
(落ち着きなさいぺリーヌ・クロステルマン。ガリア貴族たるもの、ここはもっと寛大な心で……あら、あれは?)
途中、医務室へと向かうサーニャを見つけた。目が合った。

(以下>>256氏へ)
----

自宅のISPはアク禁なんで毎回職場からカキコ。ちょっとした冒険です。
なんか激しく蛇足な気がします。>>256氏すいません。
282名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 15:20:50 ID:AI0vQz6P
ふと振り返ると、そこには憤然とした表情で仁王立ちしている上司の姿と、
それを遠目に身ながら、何やらひそひそと話をしている同僚の姿があった。
そして>>256は、自分の運命が、既に己の力ではどうしようもない程全く遠くへ遠ざかってしまった事に気付くのであった。
283名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 15:23:08 ID:AI0vQz6P
違う、>>281ダナ。
ともあれ二人とも乙
284名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 16:40:02 ID:7nXdeAro
上司「そのカップリングは私の趣味では無いな」
285名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 17:07:01 ID:tA9zwaoV
286名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 17:17:20 ID:hTmZUEDt
>>285
ミーナさん忘れるなよ
287名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 17:21:18 ID:3h7w3yMr
>>285
エーリカ超寒そう

フミカネ絵の後に投下するのは気が引けるけど…
構図が降って来たので勢いで描いてしまったやつを投下
アナログ・携帯からですみません

離れてても繋がってるよ的な感じ。
http://e.pic.to/103rr1
288名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 17:51:15 ID:mj/QNURH
>>285
な、なにこの可愛い子達!

うわーかわいい…
これは販売するのか?なんかの特典?
289名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 17:56:23 ID:dkRXcqeS
>>285
冬場もこんなズボンなのか…
足寒くないのかな

>>287
かわいらしい感じがよくでてていいな
290名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 18:10:52 ID:z7XM+8k2
>>288
DVD限定版5巻のフミカネ絵ジャケットだそうだよ

おねえちゃん凛々しいよおねえちゃん
291名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 18:20:07 ID:tA9zwaoV
>>287
これはいい・・・かわいい・・・大好きだ・・・
292名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 18:23:59 ID:bvx13N6b
何故かグルグルのニケてククリの二人を思い出した。
それくらい微笑ましいぜ。
293名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 18:37:27 ID:xdzZLXc9
>>274
ミーナ隊長はアブサン
294名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 19:08:56 ID:7nXdeAro
芳佳は甘酒
リーネはギネス
シャーリーはバドワイザー
サーニャはストリチナヤ
ミーナ隊長はアブサン

後はエイラ、美緒、ペリーヌ、ルッキーニ、エーリカ、バルクホルン
295名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 19:19:42 ID:xdzZLXc9
少佐は芋焼酎
296名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 19:32:12 ID:ExpHo9hj
いや扶桑酒だろ
これだけは譲れない
297名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 19:35:08 ID:xdzZLXc9
じゃ吟醸酒桜子
298名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 19:42:16 ID:Uth3HErU
リーネはグレンファークラス105(サッチャーが愛飲してた)だろ
299名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 19:47:30 ID:9NoJGMAs
ファークラスは最近値上がりが激しいのがな・・・orz
300名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 19:53:03 ID:FA2IxOJS
エイラはサルミアッキコスケンコルヴァだな
301名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 19:55:30 ID:l5zoM+RL
真っ黒いウォッカかw
302名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 20:04:10 ID:lawKOeQe
ルッキーニはアマレットでゴッドファーザーだな
303名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 20:20:03 ID:PuJ+DvAF
ペリーヌはシャルトリューズ
304名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 20:37:17 ID:1GFGxO5Y
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org7597.gif
隊長・もっさん・ペリーヌはホットミルクで
ハルトマンはカールスラント子供ビール
ルッキーニはオレンジジュース

すまない、力尽きた 色を塗る気になれない
305名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 20:40:08 ID:7nXdeAro
な ん な ん だ こ の ラ ブ ラ ブ な 絵 は !?
最高じゃないか
これって長編の絵ですよね?
306名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 20:40:18 ID:jUF9XMCN
>>304
いつも素晴らしい絵です。
色付いた淡い感じも良いですけど、こういう白黒も良い!
307名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 20:41:15 ID:GWXj54al
>>304
GJ!
308名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 20:50:15 ID:FJUQRkti
>>304こうして見ると11人て少なく感じる。不思議!
309名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 20:55:15 ID:NIeo6xqp
ペリーヌともっさんと隊長が幸せそうで何だかうれし泣きしそうだ・・・。
310名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 20:57:37 ID:g0m0lic5
つまりエーリカ×ルッキーニ、と
311名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 21:02:53 ID:HuXWvqwq
本スレから今日のシャッキーニ支援物資が届いたぞ
ttp://www2.uploda.org/uporg1802218.jpg
312名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 21:07:03 ID:tA9zwaoV
>>304
いやあたまらんねみんな幸せそうでいやほんといいなあ
トゥルーデとシャーリーが保護者みたいだ
313名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 21:11:59 ID:HuXWvqwq
書き忘れた
>>304GJ!!ペリ美緒ミーナのとこがたまらん。なんか幸せでいっぱいになってきたわ
314名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 21:21:02 ID:4zcNkMB6
>>304
みんなかわえええ
本当にいつもいつも和ませていただいております

ところでいま脳内でゲルト×エーリカ←シャーリーっていう誰得としか言い様のないプロットが立ち上がりかけてるんだけど需要あるかな
315名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 21:33:09 ID:7nXdeAro
>>314
需要有りまくりじゃないか
316名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 21:35:18 ID:1GFGxO5Y
この自分が得しまくりじゃないか!
317名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 21:44:21 ID:MWGkAjxP
>エーリカ←シャーリー
ほんとにシャーリーはロリベリアンネー
318名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 21:53:15 ID:tA9zwaoV
>>317
「見た目も年齢も幼い」がアウトならば「見た目は幼いが同い年」

   /)  /)
   i ノ __ i ノ
   . '´  `ヽ
   !ルイ从从リゝ 
   j!(ヌ ゚ ヮ゚ノヌ 完璧じゃあないか・・・
319名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 21:55:59 ID:iHcZu0EY
>>311
違和感なさすぎだな。
今書いてる話がこんなような話だ。

>>314
需要ありまくりにフイタ。
つか自分も読みたい。ぜひともうp。

>>304
GJ!
320名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 22:03:24 ID:7nXdeAro
google先生に他のキーワードでCPを聞いてみた
●芳佳
芳佳 リーネ
バルクホルン 芳佳
●リーネ
芳佳 リーネ
●エイラ
エイラ サーニャ
●サーニャ
エイラ サーニャ
●ミーナ
無し
●美緒
無し
●バルクホルン
無し
●エーリカ
無し
●ルッキーニ
無し
●シャーリー
無し
●ペリーヌ
無し

芳リーネ エイラーニャはさすがに強い
バルクホルン、ルッキーニ辺りが居ないのは意外
321ぐるぐる書かれた赤い丸(1/4) rQBwlPEO:2008/11/22(土) 22:41:52 ID:URsbEOvU
みなさんGJです!
エイラーニャ投下です。
----



「お誕生日おめでとう、サーニャ」
「おめでとね、サーニャちゃん」
 小さな私の前にかがみ込み、お祝いの言葉をいっていく人達。親戚の人やお父様のお友達など、たくさんの大人の人達。
 みんなが声をかけてくれるのが恥ずかしくなって、私はお父様の後ろに隠れる。
「──ちゃんとお礼言いなさい」
 私の頭を撫でながら、お父様はやさしく私を横に立たせた。私はお父様と並んでお辞儀をしながら、小さな声でお礼を言った。

 私がまだオラーシャにいた頃、私の誕生日には、お父様とお母様が、お友達を招いてパーティを開いてくれていた。
 いつも使っているリビングは、色とりどりの紙と電灯で飾られ、戸棚の上に小振りのバラの花束とラッピングされたプレゼント。テーブルの上にはケーキとピロークのお皿。
 お父様のお友達は音楽が好きな人たちばかりだったから、部屋にはずっと、誰かの奏でる音楽が流れていて。部屋の隅には、もちろんピアノが置かれていて。お父様と私が連弾を始めると、みんながわっと声を上げた。

 手拍子と歌声。揺れるろうそくの火。じゃれ合うような二つの旋律。

 平和だった時代。私のとても大事な思い出。


----


「サーニャの誕生日って、いつダ?」
 それは入隊してしばらく経った頃。私のベッドの上でタロットをいじりながら、エイラが聞いた。
「え……?」
「あー。待ってちょっと待っテ」
 同じくベッドに寝転んだ私が答えようとすると、手を前に出して、私を止める。
「占ってみるカラ」
 そう言って、エイラはぶ厚いタロットの一組を取り出し、それをベッドの上に広げ始める。切ったカードを並べて、やがて二枚のカードを取り上げた。
「……4月のはじめ。ソウダロ?」
「違う。8月18日」
「エー?」
 取り上げたカードを見直して、エイラはちょっと残念そうな顔。
「そっかー。まだ先ダナー」
 ベッドの上に転がり、寝ころんだまま首を私の方に向ける。
「お祝いしようナー。一緒に」
「……どうして?」
 私が聞き返すと、エイラは不思議そうな顔をした。
「どうしてって……そういうもんじゃナイカー……?」
「そうかな……」
 私はお気に入りのぬいぐるみを抱きよせる。
322ぐるぐる書かれた赤い丸(2/4):2008/11/22(土) 22:43:08 ID:URsbEOvU

 私の生まれた町がネウロイに占領されてから、もうずいぶん経つ。
 故郷に戻れなくなった私はそれから、養成学校で短い訓練を受けて、オラーシャの陸軍に入った。
 そこにいた人たち。その人達はみんな、故郷を離れてそこに来ていた。
 思い出の残る街を、もう見ることはないかも知れない。そんな思いを抱えて戦っていた。みんななんだか、とても必死だったし、その気持ちは、私にもとてもよく分かった。

 同じ年代のウィッチがいなかったこともある。私の魔法が夜間の偵察にとても向いていて、一人で作戦に出る事が多かったこともある。
 でも、そこにいた人はみんな難しい顔をしていて。難しいことを話していて。

「……みんな、戦っていたもの」

 私が余計な事を言って祝ってもらうわけには行かない。毎年、そう思っていた。

「そっかー……」

 私の言葉を聞いて、エイラはベッドの上に座り直す。口を尖らせて横を向きながら、何かを考えている。
 多分、私の短い言葉から、私の言いたかったことを、一生懸命汲み取ろうとしてくれているんだろう。エイラはいつも、そうする人だ。

 そんなエイラの顔を見るといつも、私の言いたいことがどれだけ伝わったかどうか、不安になる。
 でも同時に、余計な事を言うべきじゃなかったかな、という後悔も一瞬、胸をかすめる。
 エイラがそんな事を気にする人じゃないのは分かっているけれど、もし私が言おうとした事を笑われるんじゃないか、ついそう考えてしまう。
 伝わらないのは悲しいけれど、伝わってしまうのも怖い。そんな私の臆病な癖。
「んー……」
 でもエイラは、そんな私の気持ちに構わず、口を尖らせて何かを考えている。
 そして、手を伸ばして、怒ったようにも泣きそうにも見える顔のまま、乱暴に私の頭を撫でた。

「──バカ。そういう時こそナー、楽しい事を優先した方がいいんダゾ?」
「そうかな……」
「そうだって。お祝い事はたくさんあった方が、祝う方も楽しいんダ」
「……」
 思わず、そうかな、と繰り返しそうになって私はためらう。
 多分、エイラがそう言うのは、彼女が祝ったり祝われたりが、当たり前だったから。一瞬でもそう思ってしまう事がいやになる。
 エイラは何も悪くない。うらやましいと思ってしまう自分が悪い。そして私は何も言えなくなる。いつもそうだ。

 そんな私を見て途端に不安になったのか、エイラはおずおずと私に尋ねた。
「……サーニャは、誕生日祝われるのイヤカ?」
「──」
 私はあわてて首を振る。そんなひと、いる訳がない。
「……だったらいいじゃナイカ。そんな日ぐらいは、わがままになっていいんダ」
「……」
 私はぬいぐるみに顔を埋める。いつもと同じ、柔らかい手触りとにおいを感じ取る。
 私だって、誕生日は好きだった。一年に一度、おめでとうと、みんなが自分のために言ってくれる、その日がとても楽しみだった。そのことを言いたかった。
 でも、それを言い出せなかったのは、多分私のせいで。
 でも、祝って欲しくないなんて事、あるわけがなくて。
「サーニャ……?」
 何も言わなくなった私を見て、エイラが不安そうに聞く。
 あの、と前置きをして、エイラは話し出す。
「……サーニャのことが好きな人なら……お祝いしたいって、みんなそう思うんだよ」
 だからいいダロ……?、とうかがうようなエイラの声。
「…………うん……」
「ヨシ」
 ためらった末に顔を上げて、私が返事をすると、エイラはぱっとうれしそうな顔をした。
323ぐるぐる書かれた赤い丸(3/4):2008/11/22(土) 22:43:57 ID:URsbEOvU

「──そだ。書くもの、アルカ?」
「? なに?」
 私が赤いペンを渡すと、エイラはカレンダーをめくり、何事かを書き込んだ。
「……ヨシ」
 めくり上げられたカレンダーを覗き込むと、8月18日の所に、これでもかと言わんばかりに、ぐるぐると書き込まれた赤い丸。
 その側に、多分スオムスの言葉で、何か書かれている。
「──どういう意味なの?」
「ん? ”サーニャの誕生日”。そのまま」
 これで私も忘れないダロ? と、エイラは、悪戯っぽく笑う。
「……」
 真新しいカレンダーの上、そこだけ乱暴に、ぐるぐる書かれた赤い丸。私の誕生日の上に、付けられた印。

「……なんで……」
「あ……。ひょっとして、嫌ダッタカ?」
「そうじゃない……」
 ……。
 ……私が嫌がってるんじゃないかって、心のどこかでまだ、勝手に怖がってるくせに。
 なんでこの人は、私がためらっている事をあっさり越えてしまうんだろう。私の言いたいことを、すくい取ってしまえるんだろう。

「…………サーニャが、生まれてきた日だカラナ……」
 カレンダーを見つめていると、私のすぐ横でエイラの声がした。
 顔を向けた私と目が合うと、エイラはぷいっとそっぽを向けてしまう。胡座をかいて座り、指先でシーツをいじって、エイラは何かを言おうとしている。
「……この日があったから……」
 その手元を見ていた私の耳に、とても小さな声。エイラはシーツをぎゅっと握りしめた。
「……この日があったから……私はココデ、サーニャと一緒にいられるんダゾ……」
 最後の方はとても小さな声で。それでも私に聞こえるように、エイラが言う言葉。
 優しくて照れ屋で、時々ひどく臆病なエイラの言葉。
「……」
 そんなエイラを見るのが恥ずかしくなって、ぬいぐるみを抱いたまま、エイラと背中合わせになるようにして座る。
「さ、サーニャ?」
 背中をちょんとくっつけると、エイラがぴくりと震えた。逃げたくなりながら、私は口を開く。
「………………。
 ……ありがと」
 蚊の鳴くような小さな声で、それでも、伝わるように。強く思いながら私は言う。
 あなたがそう言ってくれたこと。そのことがとてもうれしい。少しでもその気持ちが伝わるように、私はエイラに背中を寄せる。

 背中だけをくっつけたままで、私達の間に長い沈黙。
 やがてエイラの、……ん、という返事が、私の耳に届いた。

324ぐるぐる書かれた赤い丸(4/4):2008/11/22(土) 22:45:39 ID:URsbEOvU
---


 夜間哨戒を終えて、眠い目をこすりながら、部屋に帰ってきた。今日はちゃんと、自分の部屋に。
 服を脱いで、ベッドの上に上がる。縁のパイプごしに手を伸ばし、「7」と書かれたカレンダーを、一枚めくった。
 その下から現れる8月のカレンダー。その上に、見落とし様の無い赤い丸。添えられた言葉は、エイラがその後、読み方を教えてくれた。

 ぬいぐるみを抱きながらベッドに寝ころび、カレンダーを見あげる。
 真新しいカレンダーの上に、乱暴で不格好な、ぐるぐる書かれた赤い丸。
 ぶっきらぼうでひどく照れ屋で、すごく優しいあの人が、私のために付けてくれた印。

 私の誕生日を、喜んでくれる人がいたこと。それを私が忘れないように。
 伝えたい私の気持ちを、考えてくれる人がいること。それを私が信じられるように。

 眠りに落ちていく中で、私の誕生日を祝ってくれた、優しい人達を思い出す。その意味を教えてくれた、エイラのことを思い出す。


 8月のカレンダー。ぐるぐる書かれた赤い丸。私がこの世に生まれた日。

 エイラが祝ってくれると言った、きっととても大切な日。


----

終わりです。

エイラーニャが501にそろったのは43年の中ごろぐらいかなーという前提で書いてます。もっと長い付き合いという気もしますけど。
前回いただけたレス、うれしかったです。ありがとうございました。

>>314には超期待w
325gf1xJeg9『Oh,my God』:2008/11/22(土) 22:56:27 ID:KYzDJ9Gl
>>324
GJ!なんていい話なんだ…。エイラさん素敵すぎ!
そして私も>>314に期待


…改めまして、お久しぶりgf1xJeg9です。
いい話の後でごめんなさい。アホなシャリ美緒ミーナを投下…需要なんて知りません!
いろいろおかしかったりするかもですがお許しくだせえ
326gf1xJeg9『Oh,my God』:2008/11/22(土) 22:57:55 ID:KYzDJ9Gl

Oh,my God!


目が開いた。
はじめに飛び込んできたのは、見慣れない紅い薔薇。透けた花瓶とやわらかな刺、暗闇の中で静かに主張する真っ赤な花びら。

今は、いつだ。
…どうやら夜らしい。

ここは、どこだ。
…自分のではない、誰かの部屋らしい。

あたしは、誰だ。
…シャーロット・イェーガー。まあそれくらいはわかってる。

ここは、誰の部屋だ。
…軽くあたりを見回す。クローゼットに、見慣れた制服がかかっていた。
マジかよ。
ミーナ中佐の制服じゃないか、あれ。

なんで中佐の部屋なんかに?
…頭が痛い。どうも昨夜の記憶が曖昧だ。

つうか、なんであたし、上半身がはだけてるんだ?それにブラもつけてない。

ふと、なにかが隣で動いた。すこし嫌な予感が……。
枕の方から覗きこむと、赤い髪の毛――、わお。中佐だ。
中佐はゆっくりと布団のなかから顔をだして、さらにゆっくりと瞼を開いた。わ、色っぽすぎんだろこの表情!
そんな顔で、つぶやいた言葉といえば。

「…シャーリーさんたら…アレ、なんだから……」

…え゛。
あ…アレ?アレとは?

問題発言をして、そのまま規則ただしく寝息をたてはじめる中佐。
っていうかこの人裸だよ奥さん!
パニクっていると、今度は中佐の後ろから、あたしのでも中佐のでもない両手が。
その人物はどうやら中佐の背後に密着しているらしく、両手で彼女の肩を抱き、肩口から頭そして顔をだした。

ツヤツヤの黒髪。右目の眼帯は外れて、右瞼を閉じている。
…坂本少佐、だ。

「全く…お前は、私のミーナに何をしてくれたんだ…。私にも、だが…」
ちょ。ちょっと待て。この人も裸ですよ奥さん!!
327gf1xJeg9『Oh,my God』:2008/11/22(土) 22:59:05 ID:KYzDJ9Gl
「ふふ…あとで仕置きをしてやるぞ…」
待てってば!!

これまた問題発言をした少佐は、再び眠りについたようだ。
マジで待ってください。

だめだ、状況が理解できない!

とにかく叫ばしてくれ、
Oh,my God!! なんてこと!





ちょっと落ちついて、昨夜の記憶を掘り起こしてみよう。
たしか…風呂上がり、あたしは晩酌を始めて。そこに珍しくミーナ中佐が「付き合うわよ」とか言ってきたのかな。
んで…かなり呑んで。
しばらくしてから、こちらも風呂上がりらしい坂本少佐登場、
また…かなり呑んで。
よくわかんないけど、なぜかやけに楽しかったことだけは覚えてる。あんまりないメンツなのに…すごく盛り上がってたような…。

…くそ、そこからが重要なのに、記憶がすっかり飛んじまってる。

中佐&少佐の発言から推測するに…

あたしもしかして、やっちゃったのか…?
酔った勢いで、襲っちゃったのか…!?

いやいや。確かに上官のカラダとか興味ないことはないけどさ。こう見えても、あたしそんな軽い人間じゃないぞ。
いやいや。まさか、な。
…しかし現にこんな場所でこんな人たちとこんな状況でこんなことになっている。

……やばくね?





久しぶりにお酒を呑んだ。
シャーリーさんと、美緒と。
おしゃべりをしながらだったから、随分の量呑んでしまったかもしれない。

気だるくなってきて部屋に戻ろうとすると、美緒が千鳥足の私を心配してついてきてくれた。

ベッドまで運ばれ、ぼすんと沈みこむ。
「……」
何も言わずに美緒がドアをしめ、私の方に近づいてくるのがわかった。

酔っている。美緒も、私も。
上から美緒が熱っぽい視線を私に向けるから、私の身体まで熱くなってきてしまった。

やがてゆっくりと唇を重ねる。

「ふ…、みーな、ねるなよみーな。」
美緒ったら、酔いすぎよ。
328gf1xJeg9『Oh,my God』:2008/11/22(土) 23:00:18 ID:KYzDJ9Gl





「お楽しみですかい?」
ひとつ、楽しんだ後だった。酒のせいもあってかもう半分ねているような私達に、能天気な声がかかったのは。

「――!?」
咄嗟に声を出すことができなかった。
驚いた。鍵、しめるのを失念したのか。いやしかし、なぜシャーリー。なぜミーナの部屋に。

ミーナはいまや夢の世界の住人だから、なにか対応できるとしたら私だけだ。

突然のことに慌てていると、シャーリーはまるで自分の部屋かのようにどかどかと入ってきた。
…これは相当酔っている。…やばいぞ。

「…シャーリ」
なんてことだ。シャーリーは、ドサッとベッドに倒れこんできた。そして瞳をこちらに流す。
「少佐…」
「へ?」
「きれーだな…」
つ、と腹の辺りをなぞられた。
すでに体力を失っていたものだから、よけることができなかったんだ。
「ちょっ…シャーリー」

「ん…」
あ、ミーナが起きた。
「中佐…」
つ、と。私にしたのと同じように腹をなぞる。
「ゃあ…ん」

「…さすが中佐。いい声」

329gf1xJeg9『Oh,my God』:2008/11/22(土) 23:02:01 ID:KYzDJ9Gl


なにをやっているんだ。
ミーナも私も、あっさりシャーリーに翻弄されていた。

切羽つまるところまで盛り上げられたと思ったら、シャーリーは突然がくりと崩れ落ちた。
それもミーナと私のちょうど間にだ。

…困る。いろんな意味で。
上気した全身を鎮めるように努めつつ、シャーリーをはさんでミーナの方へ視線をむける。
Oh,my God、彼女は私を視界に入れていないようだ。

仰向けに寝転がり、意外にもおとなしく眠るシャーリー。
呼吸をするたび、ワイシャツのボタンが吹っ飛ぶんじゃないかと心配してしまうほど豊かな胸。
ミーナはほっぺたを紅く燃やしながら、シャーリーのワイシャツ――の胸のあたり――に指先をもっていった。

おい。まさか。
しかし困ったことに、私がまさかと思ったことは大抵実現されてしまうのだ。

ミーナの指の動きにあわせて形を変える胸。
恍惚、というにふさわしい表情のミーナ。

……なんか切ない。とても切ない。

なあ、ミーナ。
おまえはやっぱり…大きいほうが好きなのか?

私の心の声なんか、餓えた狼さんには届かない。

―決めた。拗ねてやる。
我ながら子供じみたことをしたものだ。
ぷいとそっぽを向いて、わざとぐうぐう寝息をたてる。

かさかさ、というような、布の音(ちょうどシャツのボタンをはずすときに鳴る音だ!)が聞こえた。
ふんだ、と瞳をとじて再びぐうぐう言っていたのだが、知らない間にうとうとしていたようだ。

夜中、ふと目が覚めたとき、シャーリーの驚愕&疑問&焦りの表情と出会ったが。
寝呆けたままの私の口でも、仕置きの三文字は忘れずに告げることができた。

もちろん、ミーナへの仕置きはその三倍だが…な。


Fin.
_________
隊長が朝おきたら夜の記憶なんてぜんぶすっぽ抜けていることでしょう。
んで少佐にお仕置きをくらい…
…しかし自分でも何がしたかったのかよくわからぬw
あ、文中の「Oh,my God」にキリスト教だとかそういう意図はありません

んでは、失礼いたしました
330名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 23:30:24 ID:iHcZu0EY
これは……乙が追いつかないぞ。
>>321
これはよいエイラーニャ、GJ。
照れるエイラが可愛いね。

>>325
この酔っぱらいどもが!
ほのかにエロくてGJ!
331名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 23:46:47 ID:7nXdeAro
ぎゃーお二方GJですよ
332名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 23:57:57 ID:tA9zwaoV
今日はSS投下もしてないくせに書き込み過ぎたな

乙が止まない止まらない
333名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 00:04:00 ID:TKnU45Jd
良作連続投下
乙が止まらない
334名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 00:19:34 ID:R8eXJqpp
サーニャが死んじゃうお話を某サイトで読んだが
さっきから頭が痛いんだ
どうして泣くと頭が痛くなるんだろうか
あまあまエイラーニャで頭痛をおさめよう…
335名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 00:42:15 ID:c+XP/VEW
本スレより>>304の色つき版と思しきものが

ttp://sukima.vip2ch.com/up/sukima003961.jpg


pixivかなんかに着色版がうpされたのかな?
336名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 01:11:05 ID:RU1ZZ/dh
エイラーニャ投下します
サーニャさんが崩壊してる気がするので注意。

ほの暗い部屋の中、愛しい人のベッドに佇み私は考える。

「どうして私にはエイラに好かれるような大きな胸がないのかな…」

私は悩んでいる。

「私よりもエイラの胸の方が大きい…。エイラは私の胸を触るより自分の胸を触
った方がきっと楽しめるんだ…」

私は自分の隣に眠る愛らしい寝姿を眺めた。

「やっぱりエイラの胸って大きいなぁ。」

そうだ…この人は普段シャーロットさんやリネットさんに隠れていて気づかない
けれどすごくプロポーションがいいんだ。

「私の胸は部隊の中ではエイラの次に大きいはずなのに…これが格差社会なの?」

私の国でも昔流行ったらしい社会主義に憧れる。
でも胸の大きさの差はそんな妄想に耽っても変わらない。

「はぁ…他の人たちはどうしているのかな。」

芳佳ちゃんは大きな胸を触るのが大好きだ。だからリネットさんとは上手くやれ
てるんだろう。
そういえばルッキーニさんもいつもシャーロットさんの胸に抱かれて嬉しそうに
している。
ペリーヌさんは…友達になれるかもしれない。
337名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 01:12:08 ID:RU1ZZ/dh
そこで私はふと気付いたの…

「芳佳ちゃんもルッキーニさんも好きな相手の胸が大きい…きゅ、吸収されてる
んだ!」

でも、ううん、そんなことない。ミーナ中佐も坂本少佐も両方胸が大きいんだか
ら。
そこで私はまた気づく…

「ペリーヌさんから吸収してるんだ!」

ペリーヌさんが、言っちゃいけないことだけど立体感に乏しいのは坂本少佐に吸
収されてるとしか…。
それをミーナ中佐がさらに吸収してるんだ。

「ペリーヌさん可哀想…」
「…んン…サーニャ…?ペリーヌ…?」

エイラを起こしちゃったかな?

「サーニャ…かわいい…ペ…リーヌ……眼鏡…」
よかった。エイラはまだ眠ってるみたいだ。
それにしても起きているときは何も言ってくれないのに寝ているときには意外と
大胆なんだからこの人は。

「それなら普段から少しは気持ちを露わにしてくれてもいいのにな。それに行動
でだって示してくれれば私がこんなに悩む必要なんてないのに…」

そうだ…エイラに返してもらえばいいんだ。
338名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 01:13:49 ID:RU1ZZ/dh
ムニムニ…ムニムニ…

「柔らかい…」
「…んン……ン…」

エイラ…可愛い。

「んニゃあ…サーニャ…?」
「エイラ、起きたの?」
「サ、ササ…サーニャ!?何シてんだヨ!?」

慌てるエイラも可愛いなぁ。さらにエイラの胸を揉みしだいてみる。

「吸われた分を返してもらってるんだよ。」
「す、吸われた分!?ナニをいってるんダサーニャ!」
「だってエイラが私の胸を全然触ってくれないから。エイラは私の胸が小さいか
ら触らないんだよね?」
「ソ、ソんなコトないゾサーニャ!それになんでソレが、わ、私のむ、胸を触るこ
とに繋がるンダ!?」

じゃあどうして触ってくれないのだろうか…?
やっぱり私にはエイラに好いてもらえる魅力なんてないのかな…。

「だって芳佳ちゃんだってルッキーニさんだって…それに私だって好きな相手の
胸が大きいんだもの!きゅ吸収されてるに違いないんだから!」

急に声を荒げた私に驚いたのかエイラが口をパクパクさせている。

「サ、サーニャ?シャーリーもリーネもルッキーニや宮藤が配属される前からおっ
きかったダロ?」

そうだ。私はなにをしていたんだろう。

「でも、エイラが私の胸を、触ってくれないから…私、悩んでて…。」

エイラが私のことを見つめてる…恥ずかしい。こんなこと考えてたなんて知って
私のこと変だと思ったかな?私は私が嫌になる。
339名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 01:14:56 ID:RU1ZZ/dh
サーニャ?」

エイラが私の名前を呼んでいる。

「ご、ごめんナ!わ、私、サーニャのこと悩ませてるなんて知らなくテ…」

エイラが謝ってる。この人はいつもこうだ。自分が悪くないのに謝ってしまうん
だ。

「ううん、私が悪いの。変なこと言ってごめんね。」

そう言って私はお気に入りのぬいぐるみに顔を突っ伏してしまう。

「サ、サーニャ?」

エイラが私に呼びかけているけどごめんね、こんな私じゃエイラに顔向けできないから。
エイラも諦めたのか静かになる…

「んッ…!」

急に私の胸に刺激が走る。一体どうしたの!?

「サ、サーニャ!私だってズットサーニャの胸が揉みたかったんだーーーーーーー!!!!!!」

エイラが叫ぶ。そうか今私、エイラに胸を触られてるんだ。でも…

「エイラ!こ、声おっきいよ!」

恥ずかしい。これじゃあ基地中に聞こえちゃうよ。

「ご、ゴメンなサーニャ!デモ私、サーニャに気持ちを伝えたくテ。」
「ううん。謝らないでエイラ。私エイラに求められて嬉しいんだよ。」
「ホ、ホントかサーニャ!」

エイラの言葉に私の心が満たされていく。

「うん。だから、私の身体好きにしていいよ。」
340名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 01:17:38 ID:RU1ZZ/dh
ー翌朝ー

「サーニャ、起キロ!ご飯片付けられちゃうゾ!」

私を起こすエイラの声で目を覚ます。でも昨日遅くまで起きてたから眠い…

「ふわぁぁ〜。」
「ホラ着替えテ着替えテ!」

そう言ってエイラが私に服を着せてくれる。

「ありがとう、エイラ。」

そうして私たちは食堂へ向かう。

「今日の朝食の当番はリーネだからキット美味しいゾ〜!」
「そうだね。」

でも朝から他の女の子を褒めるなんて少し妬けちゃうな。話しているうちに食堂に着く。

「ようお二人さん!昨日はお楽しみでしたね!」
「お楽しみだったみたいだねー。エイラだいた〜ん!」

シャーロットさんとハルトマンさんが話しかけてくる。一体何の事だろう?

「ニャッハハ〜!エイラ、きのーの声すごかったね〜!!」

そう言いながらルッキーニさんがシャーロットさんの胸にダイブした。そうか昨日のエイラの声やっぱ聞こえちゃったんだ。恥ずかしくて私は俯いてしまう。きっと今私の顔真っ赤だ。

「べ、別にイイジャナイカー!!!ホットイテクレヨー!!」

エイラが顔を真っ赤にしてこたえる。

「おいハルトマン、あまりちょっかいを掛けるんじゃない!ほらリベリアンもこっち来い!ルッキーニはお前が連れてくるんだ!エイラにサーニャ、こいつらが迷惑をかけてすまない。」

そう言ってバルクホルンさんが3人を連れて言ってくれた。

「ご、ゴメンなサーニャ…恥ずかしい思いさせて」

エイラがすまなそうに謝ってくる。

「ううん。気にしないで。それに私、エイラとなら恥ずかしくないよ!」
「サーニャ!!」

あ、エイラが鼻血出して卒倒した。

「あらあら、うふふ。」
「わっはっは!元気な事はいいことだ!」
「わ〜サーニャちゃん大胆〜!」
「よ、芳佳ちゃん、わ、私も芳佳ちゃんのことが…」

みんなが私たちを見ている。普段目立つ事の無い私だけどたまにならこういうこともいいかな。大好きだよ、エイラ!

Fin.

ちなみにこの後ペリーヌさんに仲良くしましょうねと言ったらものすごくびっくりした顔をしていた。
ペリーヌさんとは友達になれる気がしたんだけどな。
341名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 01:19:03 ID:RU1ZZ/dh

投下終了。

初めてなので色々拙いですが大目に見てください。
342名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 02:07:54 ID:oBCveSZU
>>341
胸の事気にして変な事考えだしちゃうサーニャ(大笑いした)も叫んじゃうエイラも可愛いかった! GJ!
あとどさくさに紛れてるリーネもw

>>335
色塗られたのか…。
ルッキーニとフラウかわいいなあ。この二人も面白そう。
343名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 04:41:56 ID:QTh6n5Fy
GJがおいつかない幸せ!!
放送終わっても皆さんのおかげでやっていける!!!
しかも最近新しい作者さんも増えてきてる気がするし!
みんなGJだ〜〜

そしてそろそろじっちゃんのSSが読みたくなってきた〜〜
344名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 09:45:47 ID:WGGib4OI
GJGJ
今日は朝から頑張れそうだ
345しろいおと 21X2w2Ib 1/5:2008/11/23(日) 15:59:33 ID:0B1dbnFF


ぽろん、ぽろん。

誰が弾いているのかな。綺麗なピアノの音がする。吸い寄せられるように私の足は、ミーティングルームに
向かっていた。
部屋の前に立つと、扉の奥から確かに誰かがピアノを奏でる音。この部隊で音楽をやっている人といったら…
ミーナ隊長かな。でもあの人はピアノも弾けるんだろうか。坂本少佐…うん、絶対無理そうだ。バルクホルン
大尉も。ハルトマン中尉は…うーん、割と何でもやってのけそうな気がするけれど、やっぱり想像つかない。

少なくともシャーリーとルッキーニでないことは確かだった。別に二人の音楽センスを否定するわけじゃない。
だってその二人とはさっき別れてきたばっかりだから。
ルッキーニが来てからというもの、シャーリーはずっとルッキーニに付きっ切りなのだった。そりゃあの子猫と
きたらまだ全然子供だし、危機感とか何にもないみたいだから心配なのは分かるけれども。

(つまんねー)

口がとがるのは別に拗ねてるわけじゃないし、いじけてるわけでもない。ただ、うん。つまらないだけだ。
少し前まで、私とシャーリーは割とよくつるんでいた。偉すぎてあんまり関わりたくない佐官二人に、なんか
ツンツンしてるガリア娘、あと何考えてるかよくわからないカールスラント組。私が配属された当初構成されて
いたこの部隊のメンバーの中で私と一番ウマが合ったのがシャーリーだったからだ。…いや、それはもちろん
みんなの第一印象ってやつで、アレから大分経った今となってはそんなこと思ってないけど。うん、大丈夫だ。

シャーリーなんて知るか、もう。

さっき格納庫で一緒にいたときもガッティーノはずっとシャーリーのまわりをひょこひょこと飛び回っていた。
危なっかしいなあ、なんて思いながら私はその様子を自分のストライカーを調整しながら眺めていたのだ。
なんかシャーリーが面白い話でも振ってくれないかなあ、なんて思いながら。
けれどそれが叶うことはなく、シャーリーはやっぱりルッキーニにばっかり構っていた。こら、危ないぞルッキ
ーニ。もうすぐ終わるからな。ほら、膝貸してやるからゆっくりお休みルッキーニ。…なんかもう、母親なんだか、
姉なんだか。そうこうしているうちにいつのまにかルッキーニはシャーリーの膝の上に収まって、その、まあ
なんだ、ものすっごい大きい胸を枕にしてくーすか眠っていて。ああ寝ちゃったよ、仕方ないなあ。そんな
ことをいいながらシャーリーは、けれどもまんざらじゃなさそうに笑ってた。…何だかよくわからないけれど
むしゃくしゃしたから、私は何も言わずに工具を片付けて、ストライカーもしまって、ちゃっちゃと格納庫をあとに
したのだった。それだのにやっぱりシャーリーは全然気付かないみたいだった。

いいんだもう。ミーティングルームで不貞寝してやる。そう考えて歩いていたらこの、ピアノの音が聞こえたのだ。
やさぐれた心に染み入るような、優しい優しいメロディが。

そろりとノブに手をかけて、音を立てないように扉を開く。吹き抜けになった開放感のある大きな部屋が私を
厳かに出迎える。この時間、部屋を赤で一杯にする西日が目に入って眩しくて、思わず目を細めた。
ぽろん、ぽろん。綺麗なピアノの音が、先ほどよりもずっとはっきりしたものとなって私の耳に飛び込んできた。
どうやら演奏しているその主は私の来訪に気がついていないらしい。

誰が弾いているんだろう?
見やるとそこには、ルッキーニほどではないけれど小柄な後姿があった。

(サーニャだ)
346しろいおと 21X2w2Ib 2/5:2008/11/23(日) 16:00:18 ID:0B1dbnFF

思わず呼びかけそうになって、慌てて口を押さえた。声を出したらびっくりして、きっとサーニャは演奏を止めて
しまう。そんな気がしたから。そんな子だと思ったから。
初めて会話を交わしたのはルッキーニが来るよりも前の話だから──一ヶ月ほど前のことだろうか。ある夜
うなされていた彼女が薄着のまま部屋を出て行くのを見て慌てて上着を引っつかんであとを追いかけた。
不安そうな顔をしていたから一緒に眠ろうと誘った。彼女と自分が次の日休みだと言うことは知っていたから、
次の日一緒に出かけることにした。

そのときにいろいろな話をして、彼女も呼応するようにそれに答えてくれたけれど──そうだ、そう言えば
ウィッチになる前は音楽の勉強をしてた、みたいなことも話していたっけ。
けれど残念ながら彼女はナイトウィッチ、私はそうではない、いわゆるディウィッチだからそのあとシフトが被る
こともなく、よってゆっくり話す時間もとれずに一月経ってしまったのだ。…だから、まだ、私はサーニャの
ことを全然知らないのだった。本当に、全然。
あの日私の部屋で眠ったことで彼女の体が何かを勘違いしてしまったのか、サーニャは時々私の部屋に
寝ぼけてやってくるようになった。だから会っていないわけではないのだけれど、やっぱり、サーニャは私の
起きている時間はいつも眠たそうで、話しかけるのははばかられてしまう。

こちらに背中を向けてその、打楽器だか弦楽器だかを奏でているサーニャ。指が右に左にせわしなく動いて
いく。小さな手、小さな指だ。あんな小さな手であの大きなフリーガーハマーを扱うのだというのだから信じ
られない。そんなものを持つよりもずっと、ずっと、ピアノを弾いているほうが似合っている。そのぐらいに
彼女の手は惚れ惚れするくらいの動きだった。音楽のことなんてからっきしの私がぽかんと眺めているしか
出来ないくらいに。

曲は緩やかにクライマックスへと広がっていき、そして徐々に収束して、きゅう、と余韻を残すように結ばれた。
サーニャの指が止まる。ふう、とひとつ息をつく。私の胸にはまだ、サーニャの奏でていた音が響いてる。
ぱん、ぱん、ぱん。思わず立ちつくしたまま手を叩いてしまうのを誰が止められたろうか。まともな演奏会
なんて行ったことない私にだって、喝采をする気分は分かる。観客は私ひとりだけだったけれど、それでも
この気持ちを届けたかった。だって本当に、本当に、すごいと思ったから。すごい、すごいよサーニャ!なんで
今まで教えてくれなかったんだ?そう詰め寄って褒め称えたいぐらいの衝動が胸の中にはあった。

けれど、サーニャにとってそれはひどく意外なことであったらしい。ぱん、と言う乾いた音がミーティングルームに
響いたその瞬間、彼女の肩がびくりと震えたのを見たからだ。そして恐る恐る振り返って私の姿を捉えた途端
──羞恥だろうか、ボンッと部屋の夕陽の赤に照らされていても分かるくらい、その顔が真っ赤に染まった。

えいら。パクパクと動いた口がそんな動きをする。だから私は答えた。サーニャ。なんだかこんなやり取りを
するのはすごく久しぶりのような気がした。なんだかすごくどきどきする。言いたい言葉はたくさんあった
はずなのに、なぜだか口をついて出たのはたった一言。

「綺麗ダナ」

その言葉を聴くやいなや、サーニャは慌てて譜面台の楽譜をとり、鍵盤の扉を閉めてしまった。そしてばつの
悪そうに私を一瞥したあと、走り去るように私の脇をすり抜けていこうとする…のが、できなかったのは、私が
その腕を反射的に掴んだからだった。ばさりと、使い古された楽譜が足元に落ちる。泣きそうな顔をした
サーニャが私を見上げた。

「ま、待ってくれヨその、邪魔したなら謝るし、あの、私がいるのが嫌なら部屋から出て行くからっ!」

思わず強く掴んでしまったその手首をゆっくりとはずして、私はかがんで彼女の楽譜を取り上げた。幼い、
たどたどしい字で彼女の国の文字が書かれている。…たぶん、サーニャの名前だろうなと思う。
サーニャは逃げなかった。ほ、と胸を撫で下ろして私は楽譜を手渡す。そして言う。

「デモ、すごく綺麗で…なんて言ったらいいのカナ、上手だったからサ、つい…」

347しろいおと 21X2w2Ib 3/5:2008/11/23(日) 16:01:23 ID:0B1dbnFF

ごめん。申し訳なくて、じっと私を見上げてくるサーニャの翠色の瞳をうまく見ることができない。初めて話した
ときはもっと上手く話せた気がするのに、なんで今日は上手くいかないんだろう。上手く言葉をこぼしてくれない
自分の不器用な口が忌々しかった。…ほら、そうやって大切なことをちゃんと言わないから、シャーリーにも
ほっとかれちゃうんだぞ。そう自分で言い聞かせて、自分で凹んで。

すう、とひとつ深呼吸。相手が気付いてくれるのを待つなんてだめなんだ。サーニャみたいな子なんて特別に。
その瞳だってすぐ不安に揺れてしまうんだから、きちんと言葉にしてあげなくちゃ。

「あの、サーニャがいやじゃなければ、もっと聞きたいんダ。サーニャの、ピアノ。今度は邪魔しないし、ほら、
 私あそこで本読んでるから」
いいながら駆けていって、サーニャがピアノの前に座ったら死角になるような場所のソファに座る。その
ついでに戸棚から適当な本を一冊とって、さっき私がいた辺りで立ち尽くしているサーニャに見えるように
ぶんぶんと高く上げて振った。そしてそのまま前に向き直って、ぱらぱらと本をめくる。…ゲ、これガリア語
じゃん。読めないし、興味もないぞ、こんなの。
…けれど言い出したことはしょうがない。サーニャがそのまま部屋を出て行くにせよ、なんにせよ、私は
こうして待つしかない。…結局相手の判断に委ねるなんて、やっぱり情けない選択だった、と後悔したのは
行動してから。

しばらくしてギィ、と。何かを開く音がした。扉か、別のものか。分からなかったけれど振り返らない。サーニャを
びっくりさせたくないから。
けれど、また少しして、ぽろん、ぽろん。あのメロディが流れ出して、私はふう、と息をつく。顔に笑みが溢れて
くる。この部屋に来るまで胸を支配していたもやもやのようないらいらも、何だかどうでもよく思えてくるくらいに。
音楽のことなんて分からない。けど、私なりの基準で良いか、悪いかぐらいは言うことが出来る。これは、私に
とっていいものだ。だから、大好きだ。この音も、それを奏でているサーニャも。

演奏が終わったら一番に「ありがとう」と言おうと思った。それを伝えるくらいは許されると思ったから。


…のだ、けれど。
(…どうしてこうなったんだ?)
そんなの知るか、と自分自身に対してつっけんどんな答え。実際のところそうなのだから仕方ない。
肩の辺りに温かい感触がある。耳を、柔らかな髪が時折くすぐる。どうしよう、動けない。

それは二回目の演奏も終盤に近づいて、言おう、言わなくちゃ、言うんだ、なんて自分で自分に言い聞かせていた
そのときだった。
不意にピアノの音がやんで、再びギィ、パタン、と鍵盤を閉じる音がした。なにがあったんだ?と思って振り
返ろうとした瞬間、彼女はやってきた。擬音をつけるなら、ふらふら、ぱたり、と。要は彼女が歩み寄ってきて、
私に突然寄りかかったのだ。…そして、そのまま眠ってしまった。

すぐ隣で穏やかな寝息を立てているサーニャは、まるで何かを守るように足を抱え込んでいる。…ああ、そうだ、
そう言えばこの間一緒に眠ったときも、朝迷い込んでくるときも、サーニャはそうやって体を抱えていたっけ。
きっと寒いとかじゃなくて、きっと。

(こわいのか、まだ)

何が、なんて尋ねるのは酷だから私は聞かない。けれど知っている。あの日のサーニャを、寝付けなくさせた
それと同じだと。それがあるからきっと、サーニャは笑わないのだろう。…そうだ、私はサーニャの笑顔を見た
ことがまだ、一度もない。どんなときだってこの子は、私を不安そうな目で見上げるのだ。顔色を伺うようにして
いつだっておびえている。

(見たいな、えがお)

348しろいおと 21X2w2Ib 4/5:2008/11/23(日) 16:02:02 ID:0B1dbnFF

目を固く瞑ってすう、すうと息だけを吸って、吐いている。きっと意識なんてないから頼んだって笑顔は浮かべ
てくれない。だけどそれを見て想像してみる。…うん、きっとすごく、可愛いんだろうなあ。
思いをうまく言葉に出来ない、不器用な私。それでいつも伝わらずに拗ねてしまう私。
…でももしかしたら、行動でしか伝えられないから、できることもあるかもしれない。そう前向きに考えてみる。
だってほら、悲しくて辛くて苦しいのに『笑え!』なんて命令したって笑えるわけがないだろう?

楽しいことを考えよう。一緒に出かけたあの日と同じように。あの日のサーニャはまだ緊張していて、悲しそう
な顔はしなかったけれど上手く笑うことも出来ないみたいだった。サーニャの心が無機質な草原でしかなくても、
私がそこに花を咲かせるんだ。出来るかな。努力ぐらいはしなくちゃ。

全く意味の分からないガリア語の羅列を眺めながら、私は目覚めのサーニャに一番に言う言葉を考えることに
した。とっておきに面白くて、最高に楽しい言葉を。



「おーい、エイラぁー」

全くアイツは一体どこ行っちゃったんだ。
一緒に格納庫でストライカーの整備をしているその最中にどこかへ消えてしまったあの不思議キツネ娘の名前を
呼ぶ。…いや、迷子の子猫でもあるまいしこんなことするのはおかしいのかもしれないけれど。

「うう、ん、ウニャ、ウジュ〜」
「…いつ聞いても変な鳴き声だよな、こいつ…」

背中にいるのはルッキーニ。この部隊に配属されたばかりのガッティーノだ。同い年と比べてもずっと長身で、
ガタイのよかったあたしと比べるとこの子は歳相応にチビスケで…そして、これは国民性なのだろうか。こんな
んで、しかもこの歳で、本当にロマーニャのエースなのかと思うくらい能天気だ。放っておくと何をしでかすか
分からないから不安で、あたしはついつい手を出してしまうところがある。
さっき格納庫にいたときもずっと陽気にウジャウジャウジュウジュ言っていて、ようやく静かになったと思ったら
ストライカーをいじくるあたしの腕の中で眠っていた。おいおい、全く。あきれ返ると同時になんだかこそばゆい
気持ちにもなっていたら、今度はエイラがどこかに姿を消してしまっていたのだ。そう言えばなんかぶーたれた顔
してたなあ、なんて思ったのは、それに気付いてからで。

(あいつ言わないんだもんなー)

してほしいことがあればはっきり言わなくちゃ伝わんないのに、どうもあれはそれを面倒くさがるというか、恥ず
かしがる節がある。…気付いてやれないあたしが悪いって言っちゃ、そうなんだけどさ。でも、そうやって待って
ばっかりだと色んなこと損するぞ、ホントに。ああしてほしい、こうしてほしい。ルッキーニみたいに言葉にして
もらえればあたしだって誰だって、限度はあれどたぶんなんだってしてやるのに。

ふと、思い立ってミーティングルームへと足を運ぶ。ギィ、と扉を開いたその向こうの照明は薄暗い。どうやら
まだ明かりをつけていないらしい。珍しいな、ここに誰もいないなんてこと。

「うう〜、シャーリー、ごはん〜」
「あー、はいはい、エイラ見つけてからなー」

背中でまだ眠っているルッキーニが、寝言とも分からない声を上げた。…返事は、ない。本能的なものだろうか。
自分の記憶している子供の頃とルッキーニのそれは全然違っていて、何だか面白いのだ。
暗がりの中で明かりを探して、点けたらぱあ、っと明るくなった。そして見つける、ソファーの上の白い頭。

349しろいおと 21X2w2Ib 5/5:2008/11/23(日) 16:03:28 ID:0B1dbnFF

「お、いたいた。電気ぐらいつけろよ、もー」

入り口側からは背を向けているからどんな顔をしているのか分からない。呼んでいるのに返事をしないとは、
やっぱり拗ねているのかもしれない。そう指摘したら「そんなんじゃネーヨ」とエイラは口を尖らすのかも
しれないけれど。

「…構ってやらなかったのは悪かったって、でもさー……って、あれ?」

おお。思わず声が漏れる。やるじゃないか、エイラ。口許が緩む。
違う輝きを持った二つの銀髪がそこにあった。ひとりはだらしなく口をあけて、ひとりはきゅっと足を抱え込んで…
…でも、身を寄せ合っている。
懐いたもんだなあ、なんて、実はまともな会話なんてほとんどかわしたことのない私が言うのはあまりにも
身勝手なのかもしれないけれど。…でもあたしは良く知っている。シフトが周りと大きく違うせいでなかなかまだ、
みんなに溶け込めていないオラーシャ出身のこの中尉を、どれだけエイラが心配していたか。故郷が陥落した
悲しみか、救わなければという使命感か、休むことも知らずに身を削っていたこの小さな女の子を、ずっとずっと
見ていたことを。でもその性格が災いして、話し掛けるきっかけをつかめずにやっぱりその機会をただただ待って
いるだけだった、ってことも。いや、そうだとばかり思ってだけかな。伝えようとしないから伝わりもしない、エイラの
一方通行の気持ちだと私は思っていたんだ、ずっと。

でも、違うんだな。言葉に出さなくても伝わる気持ちはある。思っているだけだって、それを拾い上げて受け
止めてくれる人がいる。ちゃんといる。

(そうだろ、サーニャ)

だからきっと、そうして身を寄せてるんだろ?言葉にしなくたって溢れてる優しさに、ちゃんと気付いてくれてるから。
もしかしたらそれは、同じ方向に矢印が向いてるからなのかな。わからないけど、そうだといい。言葉にならない
だけで本当はちゃんと一生懸命なエイラの気持ちを拾い上げてくれる優しい子がいてくれればいいって、あたしは
ずっと思っていたから。いつだって気付けなくてかわいそうな思いをさせてしまうあたしの代わりって訳じゃないけれど。

だから笑えよ。もっと明るく笑うといいよ。もっとわがまま言っていいんだ。存分に文句を言ったっていい。だって
仲間じゃないか。少なくともこれからもしばらくは、ここで一緒に戦うことになる。

さてと、年長者は早速憎まれ役になりますか。

背中でまた訳のわからない鳴き声を上げているルッキーニを担ぎなおして、あたしは二人をたたき起こすために
手を振り上げた。



―――
以上です。シャリ←エイラっぽいですが、赤ちゃんに掛かりきりの母親に拗ねる子供、みたいな感じで。
>>335
あのあと塗ってpixivにあげました。同じの二回上げるのもどうかと思って上げなかったんだ
21X2w2Ibでした。

最近じっちゃんと管理人さんの姿が見えなくて心配だ…欠乏症だな、これはもう
色よし張りよしテンポよしなお二人のSSを自分も読みたくてたまらん
350名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 16:06:23 ID:0B1dbnFF
書き忘れてた、保管庫0271の話と割と関わってたりします
上でいろいろ書きましたがカップリング表記は普通にエイラーニャでいいかと
351名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 17:52:48 ID:rivuXHnq
股間トーク行って参りました
ミーナ→坂本
高村=芳佳←→リーね
エーリカ←→バルクホルン
あとはいわずもがな…
です
352名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 17:54:16 ID:P9Rb5HIY
>>350
シャイラとは珍しい。個人的には悪戯コンビで好きな組み合わせだGJ

>>351
>ミーナ→坂本
>エーリカ←→バルクホルン
詳しく頼む
>高村=芳佳←→リーね
こっちは良いw
353名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 17:58:17 ID:BgBDSzCI
高村って誰だっけか
354名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 18:07:54 ID:c+XP/VEW
>>353
おいw


>>351
>ミーナ→坂本
ああ・・・ああ・・・・・

>エーリカ←→バルクホルン
おらっしゃらああああああああああんならああああああああ
355名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 18:08:48 ID:y05EColv
あれ? ペリーヌさんは?
356名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 18:10:01 ID:P9Rb5HIY
>>353
これはひどいw

それにしても隊長・・・カールスランツで唯一の独り身・・・
357名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 18:11:15 ID:BgBDSzCI
あ、そういや監督だっけかw
358名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 18:15:49 ID:GJvPk1SR
監督はリーネ大好きだなwwおっぱ

しかし。
エーゲルきたあああああああああっ!
おらっしゃあああああああ!!
うへへへ
359名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 18:20:32 ID:D/fU+xtO
>>351
kwsk
360名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 18:36:14 ID:QTh6n5Fy
>>355
ペリーヌは説明しなくてもいいくらい少佐が好きなのさ
361名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 18:45:21 ID:P9Rb5HIY
行ってきたのは>>351だけかな
362名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 18:58:16 ID:9cDPOjm6
もう、夫=もっさん・妻=隊長・養女=ぺリ犬でいいよなw
363名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 19:18:55 ID:5ZlVH2b1
そしてもっさんはすぐにほんとの親子のように打ち解けるのに対し
なかなか懐いてくれないとかおかあさんって呼んでくれないとかって連れ子に悩む感じのミーナさん
364名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 19:24:02 ID:c+XP/VEW
>>363
ミーナと話す時は4話の時みたいにプルプルしているペリーヌですね
隊長には申し訳ないけどその光景かわいいです
365名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 19:31:37 ID:7CXOlRfI
エーリカ←→バルクホルン
キターーーー!
366名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 19:34:26 ID:c+XP/VEW
ttp://www2.vipper.org/vip1002280.jpg



エーリカ/(^o^)\エイラ\(^o^)/

(^o^)Now owating...(^o^)
367名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 19:34:54 ID:ema7vIKC
股監督の書いた相関図が、

宮藤←サーニャ←エイラ

になってるんだが。
368名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 19:39:26 ID:P9Rb5HIY
隊長の すごい ハブ
鈴木氏めw
369保管庫 ◆YFbTwHJXPs :2008/11/23(日) 19:39:41 ID:Kj0UKi55
>>350
フフ……心配しなくても影からコッソリ見てますよw
GJ!!やっぱあなたの書くエイラーニャは最高だわ
こういうエピソードが色々重なって二人は仲良くなっていくんだろうなあ……。

自分も今崩壊してないほうのサーニャを書いているところだがなにぶん遅筆なもので
筆休めに書き始めたシャッキーニのほうが進んでだりそうでもなかったり。
ただのテンプレ改変とかならいくらでも書けるんだがさすがにそればかりやるのもなんなので……。

>>351
ミナ美緒が公式宣言されて安心した
本スレで上がってたレポートでは鈴木さんが基地探訪について
誰かの手が入ってるって言ってたらしいのが気になるが一体誰があんな素晴らしい事をww

>>366
シャッキーニ鉄板過ぎワロタ
370名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 19:41:04 ID:BgBDSzCI
ロリコンシャーリーマジ最高!
371名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 19:41:33 ID:AOu1LkxD
エイラ涙目すぎる
372名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 19:44:23 ID:7CXOlRfI
エイラ━━>サーニャ---->よしか
あっあれれ?
373滝川浜田:2008/11/23(日) 19:50:49 ID:gzhZS3kW
>>350
俺もいるぜ!って事でご無沙汰です。
まあいろいろ忙しいのですw
というワケでシャッキーニ投下いたします。

>>366
最高の両想いだな
374滝川浜田 『snow smile』:2008/11/23(日) 19:53:22 ID:gzhZS3kW

――寒い。雪が降りそうなくらいに。

あたしは正直、この寒さってヤツが苦手で苦手でしょうがない。
空を飛ぶ気もなくなるし。

でもだ。好きな人が隣にいるとなれば、それはまた別の話だ。

その人の笑顔を見てるだけで、なんだか幸せになれるんだ。


――snow smile――


非番のあたしとルッキーニは、街に繰り出す事になった。
特別目的があるわけでは無く、ただ街をウロウロするだけだけど。

「ウニャ〜寒ーい、シャーリー」
「もう冬だからなあ…。基地に戻ったら風邪ひかないように、手洗いとうがいだな」
「うん!」

あたしはふと、街の看板に目をやる。

「クリスマスか…」
「一年経つのって早いよねえ」
「っつーかお前もうすぐ誕生日じゃん」
「そういや。忘れてたよ」
「おいおい、自分の誕生日忘れんなって」
「アハハ」
「それでさ、なんか欲しいもんあるか?
そんなに高くなけりゃ、なんかやるけど」
「えー、いざ言われてみると、思い付かないなあ」
「まあ、なんか考えててよ。無理さえしなきゃ大丈夫だからさ」
「うん」

と、あたしの頬に冷たい何かが当たる。

「雨?」
「いや、これは…」

375滝川浜田 『snow smile』:2008/11/23(日) 19:55:41 ID:gzhZS3kW
空から白いものが降ってくる。

「雪だ…!」
「おお、初雪だな、こりゃ」
「スゴいスゴい!ねえ、積もるかな?」
「ん〜どうだろうな、一晩中降ればそれなりには積もるかもな」
「そうか…」

ルッキーニは空に手を合わせて。

「どうか、雪が積もりますように!」
「アハハ、神頼みってヤツか?
…ん?」

あたしはちょっとした違和感を覚える。

「おい、ルッキーニ」
「なに、シャーリー」
「お前、手袋はどうしたんだよ」
「ありゃ、バレちゃった」

ルッキーニは手袋をしていなかった。
バカだな、寒いだろうに…

「探したんだけど、見付からなくて…えへへ…♪」
「よく見りゃマフラーもねえし。
お前本当に風邪ひいちゃうぞ」
「大丈夫だよ。そんなやわな体してないもん」

ルッキーニはそう言いながら跳ね回る。
さすがにこんな寒い中、手袋もマフラーもしてないのではあたしだって、心配になる。
そう思ったあたしはルッキーニを招き寄せる。

「ちょっとルッキーニ、こっち来て」
「なぁに、シャーリー」
「やっぱりさすがにちょっと心配だよ」

あたしはマフラーを半分、ルッキーニにかけた。
要するにあたし達は今、繋がった状態というわけだ。

376滝川浜田 『snow smile』:2008/11/23(日) 19:59:45 ID:gzhZS3kW
「ウニャ〜ちょっと恥ずかしいよ、シャーリー…///」
「バカ、あたしだって恥ずかしいけど、お前が風邪ひいちゃうだろ。それとほら」

あたしは手袋を片方ルッキーニに貸す。

「えっ、でもこれじゃシャーリーも寒いんじゃ…」
「だからさ、こうするんだよ」

あたしは手袋をつけてない方の手同士を繋ぐ。

「シャ、シャーリー…!//////」

ルッキーニの掌の温もりが心地良い。
手袋をしていなかったというのに、あったかい。

「これなら良いだろ?」
「ウニャ〜…//////」

ルッキーニは顔を茹で蛸みたいに真っ赤にして。
照れたルッキーニというのは、あたしにはとても魅力的に見えて。
正直言って可愛すぎる。

「…なんかあたし達、恋人同士みたいだね…//////」
「友達以上恋人未満なあたし達にはちょうど良いじゃん。それにさ」
「それに?」

あたしはルッキーニの唇に指を当てて。

「あたしは、もうお前とは恋人同士だと思ってるけどな」
「シャーリー…//////」
「さ、帰ろうか。あんまり遅くなるとみんな心配するしな」
「…うん…!」


お前を好きで本当に良かった。

いきなり降った初雪は、あたしの気持ちを再確認させてくれた。

いつか、この気持ちを形に出来るまで。

もうちょっとだけ待っててくれよ、ルッキーニ。


以上です。久々に甘々なヤツ書けて満足満足。
で、これ続きます。
続きを投下するのは……


…それでは、爺はここら辺で。
377名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 20:00:39 ID:P9Rb5HIY
久しぶりのシャッキーニありがてえありがてえ
ていうかジジイてめぇ一人勝ちじゃねえか!w ゲルトマン派の俺はどうすれば・・・
378名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 20:03:22 ID:7CXOlRfI
うおじっちゃん久しぶり
続きまってる

というか
シャーリー←→ルッキーニ
もうなんか隔離されてるし良かったね
大勝利じゃん
379名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 20:03:44 ID:Kj0UKi55
>>376
うおっ、噂をすればリアタイキター!!
この甘々がたまらん!!GJ!!
続きwktkして待ってる。
380名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 21:42:04 ID:zXPnxIrf
>>376
さすがじっちゃん!甘いシャッキーニgj!!

ところで>>366の点線と実線の違いってもしかして講演会の中でも言われてないの?
よく違いがわからないんだが……
381名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 21:50:29 ID:7CXOlRfI


・関係図を書いてください

高村=宮藤←(はぁと)→リーネ

(↑は最初に書かれて会場爆笑)

ミーナ←→坂本
エリカ→バルクホルン→宮藤
シャーリー←→ルッキーニ
サーニャ←→エイラ

鈴木「二人ペアが基本。飛行機物ですから」
高村「ペアにしたのは戦術的な意味もあるけど、12話しか無く一人一話は割けないので、ペアにした」
鈴木「リーネとベリーヌではバランスが良くないので、坂本さんが『ちょっと待ってろ、新人発掘してくるから』と。それで坂本さんが宮藤を連れてきた」

という報告もある
赤丸がペア?リーネとペリーヌが赤丸なのは最初のペアだからか?
んで芳佳参入
点線が興味とか友情とかで
実線が好意か?

あれ・・エイラ涙目
382名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 21:51:41 ID:GJvPk1SR
な…なにか深い意味があるのかしら
383名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 22:28:44 ID:DZ2T00iy
この相関図はどの時点のものなのかね?
384名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 22:31:40 ID:EJNDWzKp
製作初期のころだと思う
385名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 22:43:52 ID:CdM/FEqY
>>381
サ…サーニャとエイラの関係は、好意どころかすでに愛の息なんだよ
そうだよ…きっとそうだよ…
386名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 22:57:59 ID:7CXOlRfI
でもさこれで一番悲惨なのペリーヌなんだよね
387名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 23:03:38 ID:oBCveSZU
>>383
俺も初期の話(シナリオ製作開始上の前提)みたいなもんと思った。
いい夫婦とまでぶち上げといて片思いでしたはないだろ。

それはそうと>>349様GJ
エイラの一生懸命さとそれが伝わった事ので暖かい気持ちになれます。
シャーリーもマジ保護者w で和む。
388名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 23:17:33 ID:c+XP/VEW
>>376
シャーリーマジほんわか


>>386
貴族は泣きませんわ!少佐に気付いていただけなくても泣きませんわ!
389名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 23:41:19 ID:FVdQZbTV
まぁでもサーニャ→エイラってそこまではっきりしたもんはあんま描かれてなくね
サーニャが宮藤のことを心配するような発言もちょっとはあるし、そこらへん踏まえての破線矢印じゃないかね
主人公だからいろいろ引っかき回す動き方させるのはしょうがないけど、エイラーニャの関係にもうちょっと確固たるもんを描いた上でやって欲しかったな
ただおいしいシーンはいろいろあったし、最終回ED中の絵では二人きりで過ごしてたし夫婦で良いよね
でもやっぱこういう相関図ってアニメに関わった人が書くもんじゃないと思うな
駄文長文スマソ
390名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 23:48:07 ID:JSwh/8Vb
講演会の話題で盛り上がってる今なら言える
ここ最近の埋めネタは全部自分21X2w2Ibの仕業でしたごめんなさい

別にようやく帰路に着いてスレ見たらエイラ大敗北で自棄になってるわけじゃない、断じて違う
でも何だか悲しいからえいらにゃ一つ書くまで寝ない

じっちゃんと管理人さんもちゃんとして安心したー
391名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 23:49:50 ID:7CXOlRfI
どちらかといえば盛り下がってる
392名無しさん@秘密の花園:2008/11/23(日) 23:49:58 ID:A07lWuGX
>>388
坂本少佐について扶桑に行くところにまでいって何が不満なのかしら?

って誰かさんの声を聞いたような?


……おっと誰かが来た(ry
393名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:03:46 ID:2r+vt0qL
なんかがっかりダナ・・・・
394名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:05:48 ID:S59ob3kK
坂本少佐には部屋の設定が話の都合上?無い。
だからきっとそれぞれのウィッチーの部屋に日替わりで一緒に寝泊まりしてるに違いない!
あと番外編の話で竹井少佐との看病の話も良かった
395名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:05:59 ID:9VYruc0X
エイラ→ミヤフジもありだと思う
最終話的に
396名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:12:17 ID:JfdURILd
シャーゲルとかペリエイラとかリーネイラとかを生み出してきたこのスレ的にはあんな相関図くらいなんの問題もないと思うんだ。
むしろエーリカ→ゲルト公式認定ktkrとか都合のいいところだけ見てればいいと思うんだ。
397名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:13:33 ID:6NEyVcVE
たとえ否定されようとも
僕がッ!死ぬまでッ!シャーゲルをッ!やめないッ!
398名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:14:34 ID:5DJgSrLw
お婆ちゃんが言っていた。
妄想は無限大であると……
399名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:15:14 ID:k1xd/c6W
エイラの部屋にあれだけ何回も入っていって
何度もベッドで寝てフラグも何もないだろ?
わざと部屋に入ってエイラを焦らせてるのなら
相当黒いぞ、サーニャ。

それはあり得ないとは思うので
エイラ←→サーニャだろ。
400名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:19:19 ID:BepM0tVz
バクのように膨らみ続ける妄想を食べて生きるこのスレには
ささやかな問題であると言えよう
401名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:23:46 ID:2r+vt0qL
エイラは残念だが
シャーリーとルッキーニは完全隔離でラブラブなのが受けた
402名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:23:48 ID:olVUK7io
相関図は鈴木さんが一人で書いたもんだってあるし公式とはまた違うんじゃない
遊び場を用意したかった、色々妄想して楽しんでほしいって二人がいってたともあるし
403名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:24:17 ID:GYJpVl4U
エイラとサーニャにはまだスオムス戦線があるじゃないか
人付き合いに乏しくてエイラとの距離感の正体に気が付かなかったサーニャも
年齢を重ねるごとに段々と分かってきたりさあ
そうして意識し始めた頃にサーニャがエイラを避けるようになっちゃってエイラがあたふたして
それを乗り越えて恋人として一皮剥けるなんて事があったら良いななんて
404名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:25:09 ID:lMjS1vEZ
本スレに追いついたと思ったら、ここがションボリしていると聞いて
慌てて来た。
エイラ→サーニャ→豆藤は小説版キャラを含めた公式相関図で慨出。
股間督は、それを踏襲してるんでしょ。

405名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:25:47 ID:7hrJv9Ok
夜になると元気になるなこのスレはw
しかしエイラーニャ分が欲しい所
406名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:28:02 ID:saDFxCpD
正直言って、エーリカ→トゥルーデとか都合のいいとこだけ見とけばなんら問題な(ry


縛られない!!このスレは「無限大」ですよ!!
407名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:30:06 ID:k1xd/c6W
>>404
書いたのは股監督じゃなくて軍事交渉の鈴木さんらしい。
だからえいらーにゃについては
股監督やフミカネ氏がいかに考えているかはわかってなかったりする。
408名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:34:48 ID:2eyktFUx
いいじゃないですか、片想い、言明していないということだけですよ
その内気の奥に潜む恋の秘密を発掘することだけに、われわれは心を砕く、それがこのスレの存在理由では
409名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:35:50 ID:7hrJv9Ok
そういや鈴木氏はブログで
四人で楽しく会話、その時に何気なく「芳佳ちゃん」と呼ぶサーニャに反応するエイ
ラとリーネ。
そんな二人を尻目に、会話が弾む二人。
(弾むのか?)

芳ーニャ好き?
小説でもなんかそんな感じだったし・・・

でも負けない妄想は無限大だから
410名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:43:50 ID:2r+vt0qL
これからは芳ーニャの時代ですよエイラさん
411名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:44:41 ID:ehS0GRiy
ムリダナ
412名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:46:21 ID:CFCTq0ci
フミカネはエイラーニャ(4巻ジャケット的に)なので何の問題もない
鈴木の話なんかどうでもいい
413名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:49:18 ID:saDFxCpD
今夜カオスww
414名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:49:35 ID:bhVblDQ9
当然だがこれを機にエイラーニャスキーは鈴木さんを悪し様に言うようになったとかなしだからなw
415名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:50:22 ID:2r+vt0qL
というか公式で関係図は止めたほうがヨカッタナ
416名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:51:08 ID:7hrJv9Ok


227 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2008/11/24(月) 00:48:14 ID:BYkAxWjj
>>211
サーニャはエイラが近すぎて自分の気持ちにまだ気づいてなかったんだよ!
スオムスにいってエイラが旧友と楽しげに話す様子を見て胸に痛みを覚えてこの感情は何的な展開をするための布石だよ!
417名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:51:21 ID:JfdURILd
それでも>>390なら!>>390なら流れをえいらにゃにしてくれるはず!
418名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:52:24 ID:2+NwwJPN
公式がどうであれ俺の中では相思相愛だっ!!

おとなしくブログとかで釈明してくれるのを願いつつ待とう…
419名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:54:56 ID:BJtscutI
この流れに泣けたw
420名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:56:29 ID:lMjS1vEZ
>>407
そうなんだ? 本スレが久々の加速でよく分からなかった。
どちらにしても、そんなにションボリする事じゃないと思うし、
ウィッチーズの11人、それぞれをどう捉えていくかって事は、
公式に左右されなくても良いと思うけどな。
じゃないとシャリトゥル好きな自分は、どうにもこうにも。
421名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 00:56:46 ID:2r+vt0qL
ミーナ→もっさん
エーリカ→ゲルト
エイラ→サーニャ
片思いが多いな
422名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 01:03:37 ID:saDFxCpD
なぜかニヤニヤが止まらなくなったので壁に頭打ち付けてきますね
423名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 01:03:42 ID:c+f5T7Ia
エーリカから宮藤への点線が気になる
424名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 01:09:24 ID:BJtscutI
>>423
ゲルトの矢印を追いかけてるようにも見える
425名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 01:22:49 ID:2r+vt0qL
トゥルーデの好きなあの子またはトゥルーデを助けてくれたから
で興味があるとか
426名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 01:25:18 ID:/mtMfYnY
>334                                    今まで結構サーニャSS見てきたけどサーニャが死んでしまう話は見たことないなぁ、涙出て感動するなら是非見てみたい、そう思ってがんばって探したけど見つからない(涙 
427名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 01:25:52 ID:8Z21yqpn
あまあまエイラーニャものが読みたいよお
スオムス戦線で誰にも邪魔されることなく…
428名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 01:37:57 ID:8Z21yqpn
>>426
感動というより悲しくて泣いちゃったんだけどね
ふたばと2chは仲悪いからほんとはアドレス貼るべきじゃないんだろうけど
http://www4.atpages.jp/stw/b/futaba.php
これの214.txtってやつね
429名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 01:46:02 ID:kzNsvNLU
もっさんと芳佳が実線で両想いなだけで幸せです
430名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 01:57:32 ID:PPUy7uFz
男×ウィッチなんて最悪なSSがあるふたばを貼るなよ
431名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 01:59:25 ID:UbtDaaj+
読まなきゃいいだけだろ
いい百合SSもある
432名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 02:06:56 ID:k1xd/c6W
>>430
またそんなこといって〜。

必要なら男もありと思うけどな。
もちろんウィッチたちの幸せのためならの条件付きだが。
433名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 02:08:36 ID:LPwHVshq
こうなるからふたばは貼らない方がいいんだよ
434名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 02:10:23 ID:8Z21yqpn
正直すまんかった
435名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 02:13:33 ID:45vUYjod
ナンテコトナイッテ、キニスンナーw
436名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 02:19:19 ID:/mtMfYnY
泣けました、ありがとうございます
437ようやく言えた 1/8:2008/11/24(月) 03:03:02 ID:KZ4vBdvf
冬を間近に控えた針葉樹の森。 我が愛するスオムスの空が、赤い赤い戦火に染まる。
「上だナ!」「うん……。」
私の声に従って、正確無比の銃弾が次々とネウロイを貫いていく。
ほんの一瞬先の未来が視える。 それが私のチカラ。 私とサーニャが組めば、怖いものなんてない。
私の脳裏に閃いていく光景に従って身を翻す。

"v―へ/`ー―"
!? なのに。 その力が垣間見せたその映像に、わずか。 ほんの瞬き程の間。 私の体は硬直した。
そして、私が動き出すよりも早く。 今が未来に追いすがって……。

「サーニャァぁぁぁぁっ!!!」

ガバッと上体を起こして飛び起きる。 浅い呼吸が激しく横隔膜を揺さぶる。
心臓があまりに早く打ちすぎて、今にも口から飛び出てしまいそう。
吹き出る汗で張り付いた寝巻が不快で仕方ない。 ……って、あれ? 寝巻?

半狂乱になった私の頭に残った、ほんの1パーセントほどの正気。 それが周りの状況を把握してくれた。
スオムス国産の木材で作られた、ひなびた部屋。
501部隊にいた頃よりもずっと質素なそれは、ようやく見慣れてきた、ワタシとサーニャの仮住まい。
スオムスの対ネウロイ前線基地だった。

「ゆ……夢…………。」
体中から力が抜ける。 底知れない恐怖。 安堵。 腹立ち。 不快感。 自己嫌悪。
分類できないほどに混ざり合ったそれらが、緊張の解けたばかりの心に容赦なく襲い来る。
くん。 ふと、私の手に重なってきた温もり。 生きた心地を忘れていた冷たい体に、血の気を戻してくれるそれは。

「エイラ……どうしたの?」
心配そうな顔で覗き込んでくる瞳。 あぁ。 また鼓動が早くなる。 でも、今度は嫌じゃない。

「オハヨ、サーニャ! ……何でもないヨ!」
サーニャに笑い返したその時、警報が響き渡った。 知らず、顔が引き締まる。
ネウロイだ。
438ようやく言えた 2/8:2008/11/24(月) 03:04:04 ID:KZ4vBdvf
ほんの一瞬先の未来が視える。 それが私のチカラ。 なら、今朝視てしまったアレは。
ただの夢? それとも……。 ぶんぶんと頭を振る。 燃え上がる炎が霧を照らす。 寒々しい大気を人工的な爆音が引き裂く。
ネウロイが襲ってきてから今まで。 一度見終わった映画をもう一度見せられてるのかのような光景。

起きれば夢を忘れてしまうように。 今朝見た映像は既に私の中でぼやけていた。
……でも分かってる。 次は右から3発。 思った通りの場所を光が突き抜け、避けざまに放ったこちらの銃弾が射手を撃墜した。
敵はステルス型のネウロイ。 視界は霧。 こうまで位置を確信できるなんて、普通だったら考えられない。
もしこれが、予知によるものなら、最後は。 赤く染まるサーニャが頭にちらつく。
目を閉じたまま敵の攻撃をかわす。 予感は確信に変わり、私は一つの決心を固めた。 サーニャを必ず守り抜くと。

冬を間近に控えた針葉樹の森。 我が愛するスオムスの空が、赤い赤い戦火に染まる。
私の声に従って、正確無比の銃弾が次々とネウロイを貫いていく。
鼓動がうるさくてたまらない。 もうじき。 もうじき、あの予知のシーンに辿り着く。

「そこだッ!」
運命の刻。 予知夢では動けなかったけれど、実戦では違う。 弾丸はネウロイにヒット! 倒した! サーニャを守ったんダ!!
「エイラ! 危ない!!」
え? 認識するよりも先に、衝撃。 バリアを張る間もなく、鈍痛。 油断していた。
そうだ、夢はさっきのシーンで終わっていたのだ。 そこから先を私は『視て』いなかった。 そして今、『視えた』のは。
なんて締まらない最期だろう。 サーニャ。 守ってあげられなくてゴメン……。

でも、私は墜ちなかった。 墜ちていったのは……サーニャ。 なんで。 どうして? ……私を、庇って。

「サーニャァぁぁぁぁっ!!!」
高速の降下。 地面に墜ちたサーニャを抱き起こす。 喋ろうとしたのか、口を開いたサーニャは、沢山の血を吐いた。
ネウロイの攻撃だけのせいじゃない。 落下の衝撃が、サーニャの人生に確実に幕を下ろそうとしていた。
なんで。 なんで私の能力は治癒じゃないんだ。 なんで。 なんで愛しい人ひとり救えないんだ。

「サーニャ! 大丈夫、すぐ救護班が来るヨ! 帰ったら町に行こうぜ! ネコペンギンを買って、それで、それで……」
とりとめの無い言葉が口をつく。 私にできる事は何ひとつない。 けれど、喋り続けていないと。
そこで全てが終わってしまう気がして。 うろたえるだけの私の頬にサーニャがそっと手を触れた。 彼女は、微笑んでいた。

一体、どうしたら人はここまで優しくなれるのだろう。 今際の時に。
自分を嘆くではなく、他人を憂いていられるのだろう。 サーニャの口が動く。 声は出なかった。
かわりに、赤い液体が流れ出て。 サーニャはゆっくり目を閉じた。
439ようやく言えた 3/8:2008/11/24(月) 03:04:58 ID:KZ4vBdvf
そこから先の事はもう全然覚えていない。 味方もネウロイも、今は誰ひとり残っていない。 サーニャでさえも。
ここにいるのは私ひとりだけ。 その私も下半身の感覚がまるで無い。
脊髄がやられたんだな。 それさえも、もう他人事にしか思えていない私がいた。

傍らに眠るように横たわるサーニャに視線を移す。 あぁ、遠い。 30センチも離れていないのに。
もう動かないんだ、手が。
なんて綺麗な顔。 でも、もう二度とこの目が開く事は無い。 私に微笑みかけてくれる事も無い。
冷えきったままのサーニャに何もしてあげられない。
あぁ。 目の前が歪む。 赤く歪んで、いまにも視神経が焼き切れてしまいそう。
悲しさのせいじゃない。 それは怒り。 頭がどうにかなってしまう程の、行き場の無い怒りのせい。

自分が許せなかった。 予知の力。 この力で、サーニャを守りたかったのに。
気だるさが全身を支配する。 私の体も致死量の失血をしているようだ。 寒い。 眠い。 でも、もう、どうでもいい。
予知すれば、自分の末路も視えるかもしれない。 けど、もうそんなもの興味が無い。

いや。 しなければならない事がある。 やっていない事がある。 このまま目を閉じてしまうわけにはいかなかった。
サーニャに向けて、這いずる。 ……重い。 動かない下半身が、鎖のように私をその場に繋ぎ止める。
でも、上半身だけでいい。 サーニャに寄り添えればそれでいい。

思えばずっと先送りにしていた。 サーニャの笑顔を失いたくなくて。 未来を変えてしまうのが怖くて。
私は言っていない。 ずっと暖めていたその言葉を、まだサーニャに伝えていない。

もう意識を繋ぎ止めるのが精一杯になってきた。 それでも1ミリずつ。 1ミリずつ。 サーニャに近付いていく。
その間もゆっくりと、ゆっくりと私の血は失われていく。
もう。 もう時間が無い。 サーニャの頬と私の頬が触れる程の位置に来た時に、私は自分の最期の時が来た事を悟った。

サーニャの頬がとても冷たい。 ふと。 麻痺していた心が溶け出して。
私の両目から涙がとめどなく溢れ出した。 このまま何もかも流れ出してしまえばいい。
何もかも流れて無くなれば。 こんな私でも、サーニャと同じ場所へいけるかもしれないから。

サーニャ。 私のせいでゴメンナ。 ずっと聞いてほしかった事があるんだ。 ずっと伝えたい事があったんだ。
意を決して口を開く。 あの時のサーニャのように、私の口からはもう声など出てこなかった。
永遠にも思えた、わずかの間。 口を動かし終えた私。

あぁ。 ようやく言えた。
440ようやく言えた 4/8:2008/11/24(月) 03:05:50 ID:KZ4vBdvf
「…というお話だったとさ。 ちゃんちゃん! これで紙芝居『ようやく言えた』は終了です! ご清聴ありがとうございました!!」
…………。 宮藤がカミシバイを置く。 なるほど、これが扶桑の名物、紙芝居ね。
絵もうまいじゃないか。 話もちゃんとできてる。 ……許せないほどにナ。

「うっうっ……二人がかわいそうすぎるよぉ……。」
「何を泣く事がありますの? 彼女たちは最後まで勇敢に戦い抜きましたのよ! 誇り高い方達でしたわ!」
「びぇぇぇっぇぇぇっ! シャぁ〜〜リぃ〜〜〜〜!!」
「ほら、ルッキーニが泣いてたら二人とも安心して眠れないよ? もう、ゆっくり休ませてあげよ。 ね?」
「うぅぅぅ〜……あ、あたしが絶対に二人の仇をと、取ってあげるからねぇ〜……ひぐっ。」
「そうだ! カールスラント軍人の誇りにかけて誓う!! ネウロイ共め、一体たりとも生かしてはおかん!!!」

隊員は皆一様に大粒の涙を流している。 どうやらこのレクリエーションの反響は上々だったようだ。
私を除いて、だけど。 サーニャは今どんな顔をしてるんだろう。 とてもじゃないけれど、怖くて見られない。
あぁ、怒りが全身に行き渡って。 もう爆発せずにはいられない。

「……っっっ宮藤ぃぃぃ!!! ざけんじゃネーーーーーヨ!!!!」
ドカン! 椅子を蹴り飛ばしたその音に、一同がビクリと静まり返る。 やってしまった。
みんなの少ない自由時間を壊してしまった。 それでも、もう止まれなかった。

「お前どういう神経してんだヨ!? よくもこんなストーリーにできたナ!! ちっとも笑えネーンダヨ!!!」
「え、エイラさん!? 違うんです! こ、この話にはテーマがあってですね……!」
スパン! 諍いの空気の中、突然宮藤の後頭部にニューズペーパーが振り下ろされた。

「まったくだ宮藤ッ! 不謹慎にも程がある! 確かに死を冗談にして無常を紛らわす習慣はどこの戦場にもある。
 あるのだ、が! 私はそれを好まない!! ご尊父や散っていった先達の英霊にも礼を失していると思わんのか!!!」
「さ、坂本さん!? 違うんです! こ、この話にはテーマがあってですね……!」
「話は反省室でゆっくり聞こう。 本日の自由時間はここまで! 総員撤収!」

事態はそれで収拾という事になり。
題材はどうあれ、盛り上がっていたはずの自由時間はすっかり冷え切って終了となり。
私の振り上げた拳は行き場を失くしてただ震えるだけなのだった。
441ようやく言えた 5/8:2008/11/24(月) 03:06:43 ID:KZ4vBdvf
「あぁー、思い出すだけでムカツク! 見損なったヨ宮藤!」
枕を軽く放り投げてハイキックでふっとばす。 期待に反して枕は大した威力も出ず、頼りなく布団に落下する。

「エイラ落ち着いて……。」
「ムリダナ!! サーニャは腹立たねーのかヨ!? 扶桑人のジョークセンスを疑うヨ!!!」

枕に左右のパンチを雨あられと叩き込む。 様にならない私のパンチはぽふぽふと音を立てるばかり。
でも続ける。 動いていれば、疲労が怒気を逃がしてくれる。 逃がさなければならない。
そうしなければいけないほど、真剣に腹を立てていた。

宮藤の事が好きだったから。 人を傷付けるなんて絶対できない奴だと信じていたから。 それなのに。
あれでは私たち、ただの晒し者だ。 宮藤はサーニャに対する私の気持ちを知っていたのだ。
それを分かった上であんな筋書きにしやがったのだ。 囃し、冷やかし、見世物にしたのだ。

みんなにはお涙頂戴シナリオのキャスティングとして、たまたま私たちが抜擢されただけと見えるかもしれない。
実際レクリエーションとしては受けてたし、少佐の言う通り、戦場ではよくある冗談なのかもしれない。
イェーガー大尉やハルトマン中尉もそう言って慰めてくれた、けど。

でも、確実に、私にだけは、その本当の意味が伝わると宮藤は分かっていたはずなのだ。
これを恥辱と呼ばずに何と言うのか。 胸の奥から次々に怒りが生まれてきて、とてもこらえきれない。
いや。 こらえてもよかった。 でも、私はともかく。 サーニャまでこんな目に合わせたのは、絶対に許せない。

「……芳佳ちゃんは、冗談でやったわけじゃないと思う。 そんな人じゃ、ないよ。」
その言葉に思わずムッとする。 サーニャはいつも宮藤の味方をする。 それがずっと面白くなかった。 今回で限界。
冗談じゃなかったら、何なんだよ! そんなに宮藤が……。
勢いこんで振り返ったものの、言いたい事がありすぎる。 うまく言葉が出てこない。 こんな時はいつもそう。

「芳佳ちゃんは、言葉にはできなかったんだと思うの。 相手が大切な人であればあるほど。
 面と向かって本音を言ったり、ストレートに感情を伝えたりできなくなってしまう。
 それが、相手に受け入れられるかどうか分からない内容だったら、なおさら。 ……私もそうだから。」

「…………だからあんなマンガにしたってのかヨ。」
我ながらなんとぶすくれた声だろう。 唇がとがっているのが見なくても分かる。
納得いかない気持ち、収まらない気持ち、でも宮藤ならやりかねないという気持ち。 俯いたままのサーニャ。
理性がついてくる前に感情に振り回されて、思考がうまくまとまらない。
442ようやく言えた 6/8:2008/11/24(月) 03:07:32 ID:KZ4vBdvf
「百歩譲ってそうだとしたってさ。 あの話で何が伝わるっていうんだヨ。 私はこの通りムカついただけなんだけどナ!」
またまた枕を投げてハイキック。 空振り。 ズダンとこけた私は諦めたように目をつぶる。

「エイラが怒る気持ち、分かる。 坂本少佐も言ってたけれど、私たちにとって死は絵空事ではないから。
 あした、本当に誰かが欠けてしまうかもしれない。 そんな題材で、実名でお話に出されて。
 私も、さっきまで思ってた。 芳佳ちゃん酷い、って。 芳佳ちゃんがこんなことを、って。
 そう思ったら凄く凄くショックで。 ……でも、それでも。 芳佳ちゃんを信じたかった。
 だからもう、凄く凄く考えて。 それで、気付いたの。」

たどたどしい喋り方。 それが私に、少しずつ頭を冷やしながら考えるだけの時間をくれた。
そっぽを向いたままだけど、早く次の言葉を聞きたいと思っていた。 ……だって、やっぱり。 私も宮藤を嫌えないから。
サーニャが答えをくれる。 全然予知でも何でもないけれど。 その予感にすがっていた。

「芳佳ちゃんって、お父様亡くされてるよね。 会いたくて、会いたくて。 言いたいこと、ずっと溜め込んで。
 でも結局会えなかった。 もうどんなにしたって。 泣いても、怒っても、二度と会えない人になっていた。
 芳佳ちゃんはその悲しみを知っているからこそ、いつも誰かを守ろうとしてる。
 今を全力で生きている。 だから芳佳ちゃんは人を悲しませる悪ふざけなんて絶対にしない。」
サーニャが熱っぽく宮藤を語るのは癪だけれど。 そうだ。 宮藤はそういう奴だった。
やり方はへったくそだけど、目標は好ましい。 そんな奴だった。 頭に上った血が、少しずつ降りていく。

「……私、思ったの。 私たちも同じじゃないかって。 あした、この命がどうなっているか分からない。
 だから大切な人がいるなら。 暖かい気持ち、寂しい気持ち、ありがとうの気持ち。
 言葉にする事を避けていたら駄目なんじゃないかって。 後悔になってしまわないように。
 ……芳佳ちゃんが言いたかったのはそんな事なんじゃないかって。 私はそう思ったの。 だって……。
 エイラの力は、未来を『視る』力じゃなくて、未来を『変える』力だから。 そんなエイラだから、伝えたんだと思うの……。」

振り向けなかった。 いま私はきっとどうしようもなく変な顔をしているだろう。
サーニャの言葉。 それが例え真実じゃなかったとしても。 私はそれを信じたいと思った。 ううん。 信じなければいけない。
だって、サーニャは言った通りの事をしたんだから。 言葉にする事を避けずに、私に教えてくれたんだから。
サーニャの言葉は私の心を揺さぶった。 ありのままの自分で、感傷的な言葉を口にした。
自分の心を見せるのに慣れていないサーニャにとって、それはどれ程大きな勇気が必要だったことだろう。

それでも、言葉にしてくれたのだ。 宮藤のために。 そして。
わたしのために。
胸が詰まって言葉が出てこないから、ウン、って一言だけ答えて。 そのまま気の済むまで寝転んでいる事にした。
443ようやく言えた 7/8:2008/11/24(月) 03:08:23 ID:KZ4vBdvf
何か柔らかくて繊細なものが、髪の隙間を通っていく。 それで私の意識は再び繋がった。
ワワヮ。 私、あのまま寝ちゃったのカ! 慌てて上半身を起こして、ごつん! イタイ!? ……って。

「痛い……。」
「ワ! ワ! ゴ、ゴメン、サーニャ!!」
どうやらアゴとおデコがぶつかったらしい。 サーニャが私を見下ろしてて、私がサーニャを見上げてて。
……という事はつまり。 ひざまくら。 唐突に顔が茹で上がっていくのが自分で分かる。

「ワ! ワ! ゴ、ゴメン、サーニャ!! 重いだロ! すぐどくから!!」
「ううん、平気。 もうちょっとこうしていよう? ……いつものお返し、させて。」
エイラ、さっきから謝ってばっかり。 そう呟いて微笑む姿は、まるで妖精の国のお姫さま。
あまりに綺麗すぎて、身動き一つできなくて。 ひょっとしたら、私はまだ夢の中にいるのかもしれない。

「ね、エイラ。」
「ウン?」
「……あとで、芳佳ちゃんと仲直りしに、行こ。」
「……………………ウン。」
サーニャの指が私の髪を優しくくしけずるたびに。 この世の中の何もかもを信じられる気になっていく。
宮藤もきっと少佐にこってり搾られた事だろう。 なら行こう。 宮藤の気持ちが伝わったって、言葉にしよう。
恐れがないわけじゃない。 丸く収まらない事を考えないわけじゃない。 でも。
サーニャと一緒なら、きっとできる。 優しい時間が過ぎていく。

「ね、エイラ。」
「ウン?」
………………。 長い沈黙。 なんだろう。 瞳を開けて、何かを言い淀んでいるようなサーニャをじっと見つめる。

「芳佳ちゃんのカミシバイ、結構よくできてたよね。」
「あぁ。」
まだちょっとブスッとした声になる。 掘り返されても笑い話にするには、もう少し時間が欲しい。 次の言葉まで、また少し沈黙。

「……カミシバイのエイラは、言いたい事、遅すぎたんだよね。 …………本物のエイラは、どう? そういうの…………ない?」
へっ。 思ってもいなかった事で水を向けられて、思わずサーニャの顔をマジマジと見る。
明かりを背負っていて、よく見えないから、勘違いかもしれないんだけど。 サーニャの顔…………赤い?
あまりに辺りが静かすぎて、サーニャの脈拍がよく聞こえる。 速い。
……コレは。 紛れもなく、自意識過剰でもなく。
444ようやく言えた 8/8:2008/11/24(月) 03:09:19 ID:KZ4vBdvf
「わ…………私は…………あのね。」
「まっ……! まっテまっテまテまテまテまっテまっテまっテ!!! アル! 言いたい事アル!! すごくアル!!!」
慌ててサーニャを制止する。 これは、こればっかりは。 女の子から先に言わせちゃ不甲斐ない。
先に言わなくちゃいけない! …………アレ? 私も女の子だから、別にいいのカ? ま! とにかく!

「さ、サーニャ……!」
「うん……。」
起き上がって、手を握って、サーニャの顔をまっすぐ見る。 サーニャも私をまっすぐ見る。 胸が苦しい。 あぁ。
言いたい事がありすぎる。 うまく言葉が出てこない。 こんな時はいつもそう。
何て言えば表現できる? アレでも足りない。 ソレとも違う。
そもそも勘違いじゃないよナ? 私だけが、勝手に勝負の時と思いこんじゃってるだけじゃないよナ!?

なんだか、緊張で逃げ出したくなってきた。 無理! やっぱり私には無理だヨーーー!!!

「…………待ってるから。 いつまでだって待ってるから……聞かせて。 エイラの言葉。 …………聞きたいの。」
サーニャの指と私の指。 優しく絡まりあったそれに、少しだけ力が入る。
あぁ。 あぁぁ。 私は馬鹿だ。 ほんとに馬鹿だ。 いつもサーニャから貰った後に気付くんだ。
この温もりが、いつだって私に笑顔をくれる。 予知なんかじゃ分からない、ずっとずっと確かな今をくれるんだ。
そうだ。 無理じゃない。 ちっとも無理じゃない。 サーニャが一緒にいるじゃないか。

思えば、出会った時から。 ずっと聞いてほしかった事があるんだ。 ずっと伝えたい事があったんだ。
でも、胸が、胸があまりにもいっぱいで。 恥ずかしいけど、ろくに声が出そうになくて。

だから、今はこれが精いっぱい。 これまで色々考えた中で、一番シンプルで一番短いそれ。
息を吸い込んで、サーニャだけを見つめる。 二人の視線が絡まり合う。 そしてゆっくり口を開いて。
はじまりの一言を口にした。


わたしは……。

                               おしまい
445名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 03:34:54 ID:JXHlw4kR
うおおおおおおおおおお!
GJとしか言えない
エイラーニャはガチでそれ以上はあってもそれ以下はないな
これでゆっくり眠れる
446名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 03:37:04 ID:VEQmfKXZ
書き込んでいいみたいだな…

>>444
リアタイでみてたけど、3/8で心臓とまるかと思ったw
甘々エイラーニャGJ! ありがてえありがてえ……。
エイラには頑張って幸せになって欲しいよな。もどかしい進展も好きなんだけどw
突貫ありがとっした! おかげでねれます。GJ
447名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 04:04:59 ID:2+NwwJPN
>>444
前半の紙芝居のせいで夕食戻しそうになっちまったじゃねーか!!
ホントまったく……まぁ後半のエイラーニャがすごくよかったからいいけど……

とりあえずエイラーニャ万歳!!
448名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 04:09:15 ID:k1xd/c6W
なんだと……この時間に夕食だと?
大丈夫なのか、おまえの身体。

>>444
GJ!
幸せが先に待ってる鬱は歓迎だぞ。
449名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 04:18:23 ID:JfdURILd
言いたい事アル!のところのエイラかわいいよエイラ
450名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 04:53:18 ID:hUR08efr
>>444
よくやった
飴ちゃんをやろう!
451名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 05:09:13 ID:PPUy7uFz
>>444
全俺が泣いた
452名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 05:32:56 ID:IHydfa0+
>>444
GJアルヨ
453名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 05:35:28 ID:koEwR+Ea
少佐が休みの時はミーナが皆を仕切り、ミーナが休みの時は少佐が皆を仕切る。
エイラーニャやシャッキーニが休みの日にデートに行く様子を見て密かに羨ましく思うミーナ。
そんなミーナを見た少佐が「基地内でよければ」とデートに誘う。


そんな夢が見たい
454名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 05:55:55 ID:2r+vt0qL
>>453
夢で終わらせために文章にするンダ
455名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 06:00:48 ID:xVzS1O5X
ペリーヌも仲間に入れてあげてください
456名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 06:04:05 ID:2r+vt0qL
夢で終わらせないためダ
ミッスたすまん
457名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 06:21:42 ID:OTVk/vIe
>>403
それいいなあ、萌えた!

個人的にはエイラが身を引いちゃって、そのときになって初めて自分の気持ちに気付くサーニャもありダナ
公式設定は新たな妄想を広げられる素敵アイテムで、既存の妄想を否定するもんじゃない

…と、公式とはベクトル真逆の話ばっかり書いてる自分は思ってる
458名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 06:56:49 ID:7hrJv9Ok
遅れながら>>444
GJGJ
459名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 07:42:42 ID:4gbTyp4Z
宮藤×リーネ
宮藤×もっさん
ミーナ→もっさん
ペリーヌ→もっさんミーナ→ゲルト
エーリカ→ゲルト
ゲルト→宮藤
シャーリー×ルッキーニ
サーニャ→宮藤
エイラ×サーニャ

好みとか関係なく努めて冷静に本編から読みとったら、
こんなかんじでした、自分の場合。
異論は大いに認めます。

あぁシャーリー×ゲルトって書きたいなぁ。
カールスラント全員ラブラブだって書きたいなあ。
公式がナンダー!!
460名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 07:48:26 ID:NiK9cFP1
ttp://www2.uploda.org/uporg1807330.jpg
んー、これとあんま変わらんもんだと思うんだけどなぁ
まあ別に真面目な場所、会話で考えられた訳でも無いしあんま気にもならない
461名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 07:49:08 ID:CZ/xP7FT
ペリーヌ×リーネもだ。

マイナーCPだけど、俺は支持しつづけるぜ。
462名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 08:11:43 ID:7hrJv9Ok
憧れか・・・・・
解らんでも無いな
463名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 09:19:18 ID:AQgvcW1v
俺もペリーネ好きだ。
SS書いたけど、傷の舐めあいみたいな依存関係にしかならんので放り投げたがorz
464名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 09:59:48 ID:FwcNDc44
EDでの、唐突なペーリヌ×リーネはワケワカメだったけどな。
465名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 10:02:35 ID:48Y2Awa1
俺的にはそこまでワカメでもなかったな(いや一瞬びびったがw)
何気に伏線いくつかあったとおもった
466名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 10:10:16 ID:TJsYYYPt
>>444
最高にGJ!!ホントにもうダメかと思ったよ……!!
なんかもう言葉が出ない。

この後二人で宮藤に謝りに行ったら無意識に手繋いでたことを指摘されてアタフタするエイラと
その隣ですっかり正妻モードでにっこり笑うサーニャとか想像した。
467名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 10:19:40 ID:FwcNDc44
本当はとてもありがたいことなのに、
無条件でずっと与えられていると、ありがたみがなくなる。
そして、大抵は自分のせいでそれを失ってから初めて気がつく。

「またちょーだい」
「いまさらそんなこと言われても…カタヤイネンいるし…」

こうなっちゃうよ、サーニャちゃん?
468名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 10:21:12 ID:oHilsL7+
芳ーニャ派としてはなにも問題ありません
469名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 10:22:17 ID:yJgrgMRC
ここってエイラーニャ好きこんなに多かったのか
相関図には新たなカップリングの開拓になりそうなネタあるのにな
エーリカ→ゲルトが公式ってこともわかったのに
470名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 10:27:14 ID:7hrJv9Ok
>>467
ここはエルマと組ませるのも良いかもしれない
あれ?エイラ×エルマの呼び方って有ったけ?
471名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 10:51:31 ID:JjKfMiPk
おはようございます。mxTTnzhmでございます。
流れを読まずにSS投下行きます。
>>237氏の「男前なエイラさん」に触発されて書きました。
また長いです、すいません。タイトルは「dark knight」で。
472dark knight 01/05:2008/11/24(月) 10:52:26 ID:JjKfMiPk
ペリーヌはその日も夜間哨戒任務に就いていた。もう3日連続になる。
何しろサーニャとシフトを交代したその日から、彼女は本格的に体調を崩し
寝込んでしまっていたのだ。また、他の部隊員も未だ完璧な体調ではない。
比較的治りの早いペリーヌが重用されるのも当然の成り行きと言えた。
「……まっったく、あの二人と来たら」
ペリーヌはあくびを噛み殺しながら呟いた。上弦の月が海面に映える。
エイラを看病すべく食事を運ぶサーニャに出くわしてから、薄々こうなるのではないかと予想は出来た。
しかし、それにしても……方々から話を伝え聞く限りでは……エイラとサーニャに限らず……部隊内では……
「乱れきっているっ!」
と、吐き捨てた。

同時にくしゃみをするシャーリーとルッキーニ。
「あれ? あたしの風邪うつったか?」
「へへ〜ん。たまたまだもんね〜」
「そっか。まあ、皆治ってきてるしな」
「そうそう。あたしは大丈夫だよ」
にかっと笑うルッキーニ。

大きなくしゃみをするエイラ。
「あれ、また具合悪くなった?」
ベッドに横になるサーニャが心配してエイラの顔を見る。ランプの灯が二人を温かく包み込む。
「大丈夫ダ。誰かがきっと悪い噂でもしてるんダナ」
きっとアレだ、と言いかけたエイラの手をサーニャが握った。
「ねえ、エイラ」
「なんだサーニャ? 喉乾いたカ? 少しお腹減ったカ?」
「ううん。……私嬉しいの。エイラが横にいてくれる事が」
「ああ当たり前ジャナイカ。サーニャが嫌だって言うまで、私は横に居るゾ?」
くすっと笑うサーニャ。
「ともかく、ゆっくり休むンダナ。大丈夫、私が横に居ル」
サーニャは微笑むと、手を握ったまま、小さく呟いた。
「寝る前の、おまじない……」
手をくいと引っ張る。エイラがうん? と首を傾げてサーニャに顔を近付ける。
サーニャはエイラの顔にそっと触れると、口吻を交わした。
最初は少しびっくりしたエイラだが、サーニャのしたい様に、自由にさせる。
やがて、互いの唇が離れる。サーニャは満足したのか、静かに、ゆっくりと眠りについた。
眠りが深くなったらしく、サーニャの手がベッドに降りる。エイラはヤレヤレと呟きながら
サーニャの手を暖かいベッドの中にそっと差し入れ、毛布を上にずらし、掛けてあげた。
(寝顔も可愛いんダナ)
不思議とにやけてしまうエイラ。いつ見ても……いつまで見ても見飽きない。不思議な感覚だ。
しかしいつまでも病人の寝顔を見ている訳にもいかず、エイラはひとり横のテーブルを使い
暇潰しにタロットを始めた。
手慣れた指先が、カードをさっと円陣に配し、中の一枚をぴっとめくる。
「……」
少し背伸びし、大きく息を吸い、吐く。
寝ている筈のサーニャの頭には、うっすらと魔導アンテナが見えていた。
急いでカードを仕舞うと、安らかな寝息を立てるサーニャにそっと呟いた。
「ゴメンな、サーニャ。用事が出来た。でも大丈夫、すぐに戻るカラナ」
エイラは椅子から立ち上がり、医務室を出ると、自然と駆け足になった。
473dark knight 02/05:2008/11/24(月) 10:53:02 ID:JjKfMiPk
「ペリーヌ、聞こえるか?」
司令所では美緒がペリーヌに向けて無線通信を試みていた。声に焦りが出る。
『……少佐、ネウロ……き機影を発見……た。距離は……以上』
途切れ途切れにしか聞こえない。と言う事はこちらからの呼び掛けも似た様なものだろう。
「ペリーヌ、繰り返す、帰投せよ。交戦は回避しろ。繰り返す、直ちに帰投せよ、交戦は避けろ!」
「こんなに短いサイクルでネウロイが現れるなんて……正直のところ、想定外だわ」
ペリーヌが現在哨戒中と思しき地点を地図上で示し、監視所との通信も含めて詳細な情報を分析するミーナ。
「奴一人では危険過ぎるな。私達が出よう。現在位置は?」
トゥルーデがミーナに真剣な面持ちで言った。ミーナは地図を示し、答えた。
「位置は……現在恐らくグリッド東116地区、高度9000前後。深追いしていなければ良いのだけど」
「分かった、すぐに出撃する。行くぞ、ハルトマン」
オフの時はエーリカと呼ぶが、そうでない時は呼び方が変わる。トゥルーデならではの分かり易い癖だ。
「よし、行きますか」
エーリカがトゥルーデに呼応してソファーから立ち上がった時、ばたんと司令所のドアが開いた。
「エイラさん」
ミーナは驚きの声を上げた。
474dark knight 03/05:2008/11/24(月) 10:53:40 ID:JjKfMiPk
想定外の事態にペリーヌは内心慌てつつ、胸に手を当て大きく息を吸い、吐いた。声に出す。
「落ち着きなさいペリーヌ・クロステルマン。こういう時こそ冷静に……そう、冷静に」
美緒達の悲観的予測は外れ、辛うじてペリーヌに指示は伝わっていた。
『帰投せよ、交戦は避けろ』と。
勿論深追いなどするつもりは毛頭無かった。だがネウロイの速度が予想よりも速く、
撤退の際に牽制で撃った数発の銃弾がネウロイ本体に当たるや否や、
突然に本体が雲霞の如く散り散りになり、そのまま無数の超小型ネウロイとなり全方位から襲い掛かったのだ。
「こんな形態のネウロイ、前にも居ましたわね」
右側面から突撃してくる超小型ネウロイ……人の丈半分程の筒状形態……を一連射で仕留めると、
ペリーヌは速度を上げた。
前方に月明かりで一瞬光る影が。ネウロイだ。数発小刻みに撃射し、砕けた破片をシールドで防ぐ。
「この数……多過ぎる」
襲い来る、とはまさにこの事かとペリーヌは驚いた。ざっと見回しただけでも数百は下らない。
ヤブ蚊の群に突っ込んでしまったかの様な嫌悪感が身体を走る。夜空に紛れても、その圧倒感は凄まじい。
しかもネウロイはビームによる攻撃もそこそこに、もっぱら体当たりを狙って来るのだ。
「仕方有りませんわね……」
ふっと息を吸い、気を引き締め、急旋回する。つられてネウロイの群れも旋回を始める。
ぐるりと一周程回った所で、ほぼ全てのネウロイが“射程圏内”に入り込んで来た。
「トネール!」
ペリーヌの全身から稲妻がほとばしり、周囲のネウロイを次々と撃滅していく。
電撃は連鎖し、ネウロイからネウロイへと雷光が無数に走り、粉々に砕け散る。
「勲章は幾つ頂けるかしら?」
ぼさぼさになった髪の毛をたしなめながら、ペリーヌは辺りを眺めた。
表情から余裕が消える。
一網打尽にした筈だった。
いつもなら、この程度で済む筈なのだ。
そうでなくては困るのだ。
ただ、余りに数が多かった。それだけの事なのだが……余りに重く厳しい事実。
ぽっかりと空いた空間に、休む暇なくネウロイがひしめき合い、無策に突っ込んでくる。
無策では有ったが余りの物量で押してくる。数の暴力とはまさにこの事。
「せめてもう少し時間を置かないと……トネールが連発出来れば、突破出来たかも知れませんわね」
ペリーヌは回避行動を取りつつ、左旋回し迫るネウロイを立て続けに撃破する。
時間稼ぎの為とは言え、回避の機動が長くなればなるほど高度と速度の優位性は落ちる。
しかしヘタに急上昇や急下降すると、ネウロイの餌食になってしまうのは明らかだ。
ローリングでぎりぎりのところをかわし、すり抜けざまに銃撃、ネウロイを数体屠る。撃墜数など数えていられない。
しかしこんな事をしていてはすぐに弾薬も尽きる。弾薬以上に、もっと大事なものも。
乱れる息を整える。
「もう一度……」
再度の急旋回。無数のネウロイをぎりぎりまで引き寄せる。幸い、敵の群れは誘いに乗った。
魔力は切れかかっていた。本来ならばこの様な機動も戦い方もしない。
残る魔力を魔導エンジンに注ぎ込み、文字通りの総力戦を演じる。
途中で雨あられと飛んでくる超小型ネウロイも可能な限り撃破する。
ガキンと音がし、銃の弾薬が尽きた事を知らせる。銃身も焼け付く寸前だ。
だが、今度こそ。次さえ行ければ……
「トネール!」
再度の稲妻。周囲を閃光が走り、ネウロイは微塵に砕けた。
「流石にもう……」
言いかけて愕然とした。
まだ居る。しかも大量に。
息が上がり、呼吸が乱れる。魔力も底を尽きかけていた。
出口は見えている。もう少し飛べば、あの馴染みの基地が見える筈なのに……。
目の前には無数のネウロイが行く手を阻んでいる。
真上から二機、ネウロイが飛来する。辛うじてかわした先に飛んで来たのは三体のネウロイ。
まともに突撃を受けた防御シールド。立て続けに二回爆発する。
“最後の砦”に穴が開いた。
「!」
それの光景はスローモーションに見えた。
目の前に、ネウロイが迫る。
自爆覚悟で、ペリーヌの身体を破壊する……。
475dark knight 04/05:2008/11/24(月) 10:54:14 ID:JjKfMiPk
筈だった。
ペリーヌは我に返り、やがて心の底から驚いた。
てっきりネウロイに身体を裂かれたと思っていたが、自分はまだ空を飛んでいる。
いや、飛ばされている。
しかもペリーヌの身体は、後ろから誰かに抱きかかえられている。
ペリーヌを抱いた主は、そのまま急反転するなり、捻り込み運動を始め、急降下した。
急制動についていけないネウロイ同士が衝突し、爆発し砕け散る。
「大丈夫カ?」
「わたくし、死んだのじゃなくて?」
「生きてるヨ」
ペリーヌを掴まえている背後の人物……未来予測能力の持ち主、無傷のエースを肌で感じ取る。
「それはともかく……いつもより放電時間が長かったダロ」
「なっ!?」
「お陰でとばっちり喰らったゾ。髪の毛の端が焦げたし、指先がヒリヒリするンダナ」
愚痴を言いながらも、回避行動に真剣な表情が窺える。
何故だか分からないが、ペリーヌははふっと息を吐いた。緊張の糸が切れた。
再度上昇する二人目掛けて突っ込んでくるネウロイを、いとも簡単に避けて回る。
まるで幼子に難解なステップのダンスを教える親の様だ。
その斜め背後から突然二丁のMG42が火を吹いた。次々と破壊されるネウロイ。
「よし、何とか間に合ったな。よくやった」
「ナイスキャッチ」
トゥルーデの安堵とエーリカの言葉に、左の親指を立てて応えるエイラ。
「トゥルーデ、こいつらこんな小さいのにコアが有るよ?」
「その様だな。やはりエイラを同伴させて正解だった」
「スコア稼ぎにもってこいだね」
「だな。ボーナス上乗せだ!」
何も出来ない状態のペリーヌはただ呆気に取られ、エイラの回避機動をなすがまま受け容れ、
トゥルーデとエーリカの流麗な援護射撃を見つめた。

「ペリーヌ、怪我は無いか?」
背後でトゥルーデが声を掛ける。
「ペリーヌ、どうした。気を失っているのか?」
「まさか一撃キツいの貰っちゃってる?」
心配するカールスラントコンビ。ペリーヌを気遣いながらも、周囲のネウロイを片っ端から粉微塵に変えていく。
その様子はまるで片手間の暇潰しと言わんばかり。
エイラは不敵な笑みを浮かべると、緊張の糸をもう一度結べとばかりに、突然インメルマンターンで上昇する。
直後にサイドスリップを掛け、ネウロイの突撃とビームをひらひらとかわす。
その派手な機動で“目を覚ました”のか、ペリーヌは我を取り戻した。そして叫んだ。
「な、なんて事なさいましてエイラさん!」
「何て事ナイッテ」
しかし、普段通りの“我”を取り戻したペリーヌは一方的にがなり立てた。
「貴方一体何ですの! トネールの最中に突っ込んであたくしの身体を掴む!
無闇にぶんぶん振り回す! 『何て事無い』なんて意味不明な事を言い出す!
かと思ったら大尉達も含めて撃ち合いに巻き込んで大量のネウロイを破壊する!
挙句は無茶なインメルマンターン! お次はサイドスリップと来ましたわ!
だいたい、サーニャさんがエイラさんを看病するって言うから夜間シフトを交代しましてよ!
そしたらわたくしがこの有様ですわ! このネウロイは一体何なのか教えなさい!」
「ひとつ貸しダナ」
「貸しィ!? そんなぁ……今日は厄日ですわ!」
休む暇なくバレルロールの後急上昇。危うく舌を噛みそうになるペリーヌ。
エイラの能力と機動は見事なもので、二人には攻撃や突撃が全く当たらない。
その斜め後方から、トゥルーデがMG42を連射し、追いすがるネウロイを易々と撃破していく。
トゥルーデの後方はと言うと、エーリカがしっかりガードしていた。
全くスキがない鉄壁の布陣。
トゥルーデとエーリカはピッチを上げるとエイラ達の前方に躍り出た。
「エイラ、このまま前方を我々が切り開く、行けるか」
「余裕ヨユウ」
「よし。では……行くぞ! 全機突入!」
ネウロイの群れの真っ直中、変則的ケッテ(三機編隊)が突っ込んだ。
476dark knight 05/05:2008/11/24(月) 10:56:12 ID:JjKfMiPk
混戦の最中、MG42を軽々と振り回しながら唐突にトゥルーデは問うた。
「中佐から下った我々の任務は何だ?」
エイラはさらっと答えた。
「全員生きて、基地に帰る事」
驚いた顔をするペリーヌに、トゥルーデは言った。
「心配ない、既に他の動ける者全員が戦闘待機している筈だ。お出迎えなら大勢の方が良いだろう?」
「そう言う事」
にんまりと笑うエーリカ。
「それに、まだ礼を言ってなかったんダナ」
背後でぼそぼそと言うエイラ。照れ隠しか、上の空を向いているが回避にはぬかりない。
「礼? 何の事ですの?」
「ま、今回の貸しでチャラダナ」
「はあ?」
「洗濯当番の交代でイイゾ?」
ニヤリと笑うエイラを、いささか不可解・不機嫌な顔で眺めるペリーヌ。
基地はもう視界に入っていた。滑走路に光る誘導灯がうっすらと海面に伸びる。
追いすがるネウロイもだいぶ数を減らした。
それ以上にペリーヌを安堵させたのは、サーニャ以外のウィッチ全員が、すぐそこまで飛んで来ている事だった。
「よく頑張ったなペリーヌ。あとで風呂でも入って、扶桑の酒で乾杯でもするか」
豪快に笑う美緒の声が、はっきりと通信機を通じて聞こえる。
「しょ、少佐! それはもう喜んで!」
「急に元気になったナ。現金な奴ダ」
「失敬な! わたくしが一体どんな状況下で戦って来たか……」
「分かるさ」
トゥルーデがペリーヌの顔を見て言った。
「私達は、仲間だし、家族だからな」
「トゥルーデ、カッコつけてる〜」
「な、何をいきなり、ハルトマン」
「やっぱりトゥルーデも変わったよね〜」
にやけるエーリカ。

「全機揃いましたね?」
ミーナが声を掛ける。
「ペリーヌさんは基地まで飛行出来る? 無理ならこのままエイラさんのサポートで帰投なさい。
滑走路には救護班も待機してるわ」
頷くペリーヌとエイラ。
ミーナはネウロイの方向を向くと、帰投する二人をカバーする形で布陣を組み、新たな指示を出した。
「ストライクウィッチーズ、全機攻撃態勢に移れ。目標、残存ネウロイ」
「了解!」
弾けるばかりの、元気一杯の隊員達の応答。
ストライクウィッチーズの、全力、本気の戦いが始まった。

end

----

以上です。
どうも短くまとめられないみたいですね。申し訳ない次第。
冷静に見直してみると大して百合でもないような気がorz
某映画ネタも咄嗟に思いついたので入れましたが何か噛み合ってませんね…。
たびたびのスレ汚し失礼しました。
477名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 10:59:25 ID:JjKfMiPk
あ、言い忘れましたが先日の>>256氏のSSとも連動してます。
この場を借りて御礼申し上げます。
478名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 12:29:06 ID:2r+vt0qL
乙ダナ
やっぱエイラいいな
479名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 13:57:45 ID:2Hqm9ozt
>>469
エイラーニャは別に崩れてないと思うけどナ
憧れ=好きではねえし
>エーリカ→ゲルトが公式
小説版加味するとウルスラ→エーリカ→ゲルトなんかねえ
480名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 14:02:29 ID:k0JeFwuA
オヘア→ウルスラ→エーリカ→ゲルト→宮藤→おっぱい
481名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 14:11:00 ID:iwLnFPx1
>>477
うむ戦闘分のあるSSはやっぱいいなあ
もうちょっとペリーヌ優しく起こしてあげてw

>>479
お姉ちゃん童顔ハーレムですね犯罪おいしいです^q^
482名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 14:14:28 ID:7hrJv9Ok
エーリカ→ゲルトの一歩通行はなんとなく分かるな
しかしアニメ本編ではエーゲルよりミーゲル分の方が多かったなぁ
483名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 14:47:29 ID:4gbTyp4Z
4話がミーゲル、7話がエーゲル、なのかもしれんが
7話は別の要素が強すぎるもんなぁ。
484名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 15:17:19 ID:iwLnFPx1
7話はじめて見た時はゲルトのテンパリっぷりに吹いたけどな
ハルトマン相手だとこんな崩れるのねって思った
要するにどう見てもゲルトマンです
485名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 17:04:52 ID:pN9ga7XZ
オヘア←→ウルスラ←エーリカ→トゥルーデ←→シャーリー
リベリアンにしてやられっぱなしのエーリカかわいそうです(T_T)
486名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 17:08:53 ID:JfdURILd
サーニャ→芳佳の憧れは、自分も芳佳みたいに積極的になれたらもっとエイラと・・・って意味ですよね、わかります。
487名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 17:11:16 ID:u+LU7bAs
そうに決まってるダロ〜
488名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 17:19:52 ID:48Y2Awa1
>>485
…アリだな
このスレ的にアリすぎるw
489名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 17:32:17 ID:34+aWrIq
サーニャ→エイラだったら何かの間違いだと一瞬で分かるが

サーニャ←エイラだと有り得なくもないなと思う
490名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 17:46:41 ID:2r+vt0qL
どうも鈴木はヨシカとサーニャが仲良くしてそれを見てモニャモニャしてるエイラが好きそうだからなぁ
今後が微妙に心配
491名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 18:10:37 ID:saDFxCpD
エーリカ→トゥルーデとなると
最終回の「もう私の知ってる〜」ってセリフ、結構深いですよね
492名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 18:12:35 ID:pN9ga7XZ
嫉妬は女性を狂わせるが、同時にかわいらしくもする。
         ゲーテ(多分嘘)
493名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 18:16:31 ID:CFCTq0ci
フミカネは絶対エイラーニャ推進だと思うので(お揃いのパーカー、DVDジャケなど)俺は安心して見ている
494名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 18:19:58 ID:7hrJv9Ok
   ,  ´ ̄ ̄ `  、
 /           ヽ
/      /|',   / ヘ
i i .:i  ,' ./ ! ',.  メ、 ハ
ハ | .i ./    ',イ ハ i | | >>489
|ハ |/ ー--   ナ\|ノリ
:( ヽリ          ハ    ……。
| ヘー、     '     }ノ     涙で見えない
| |  |i>ト   △ _ノ 
 | | /`ー`ヽ{<ヽ
495名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 18:25:03 ID:saDFxCpD
>>494
サーニャに抱きしめてもらえるから安心なさい
496名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 18:30:37 ID:c+f5T7Ia
まあまだサーニャは年齢的には中学生
恋愛感情とかよくわかってないだけかもしれない
それに現段階で一番近くにいるのは確かにエイラ
二番目は芳佳だと思うけど
497名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 18:34:30 ID:45vUYjod
恋は二番目に好きな人と結ばれるもの。
498名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 18:43:40 ID:OjIfA4Qz
ぶっちゃけこのスタッフはあんま百合に関しては積極的じゃないからなあ
エイラーニャの人気を受けて二期ではそっち方面でもプッシュしてくれるといいけど
499名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 18:49:30 ID:JfdURILd
しかしあまり露骨にやられても何かが失われてしまう。
500名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 18:49:56 ID:2+NwwJPN
>>497
う、後ろに無傷のエースと腹黒スナイパーが……


以後彼の姿を見たものは、誰もいない……
501名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 18:51:25 ID:usQdxU0r
>>491
同意
今回の相関図ではエイラーニャが話題になりがちだけど、こっちこそ見逃せないと思うんだ
502名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 18:51:49 ID:7hrJv9Ok
いらん子レベルのガチをアニメでしろとは言わないが
もうすこし臭わせる程度には百合分を入れて欲しいな
後は小説版に期待
503名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 18:57:59 ID:yJgrgMRC
>>479
いや崩れる、ない云々よりもさ、なんかエイラーニャ派は間違ってる気がする。
普段も大勝利大勝利とか言って、エイラ、サーニャ絡みのカップリングの派閥の肩身せまくしているしさ
でやっぱり今回の相関図でも暴れてるからいい加減ちょっと自重してほしい
504名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 19:12:46 ID:JfdURILd
>>503
肩身の狭さなんか感じてないで早くその妄想をここに落とす作業に戻るんだ。
505名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 19:15:37 ID:34+aWrIq
シャッキーニだけだな、絶対に動かないのは
506名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 19:24:57 ID:45vUYjod
>>504
肩幅の狭さなんて言って、リーネの中の人イジるのよくないゾ。

>>500 え、オレ何も悪いこと言ってないのに。
507名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 19:28:35 ID:JlDl41oB
相関図を見て

「…私の恋は絶対に叶いっこないもん!」
「エーリカ…好きな人がいたのか?」
 どんな相手か知らないけど…大丈夫だ!
 エーリカの恋はちゃんと叶う!
 エーリカって本当可愛いからな!
 私が男だったら絶対エーリカに恋してると思う!!
 なーんてありがちだけ…」
ゲルトを押し倒すエーリカ
「…トゥルーデって残酷だよね」
キスをする
「…ね?叶う訳ないでしょ?」

という妄想が
508名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 19:32:52 ID:iwLnFPx1
なづかさん ショルダータックル!
あ〜〜〜っと >>506 ふっとんだ〜〜〜〜!
509名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 19:37:21 ID:7hrJv9Ok
肩身の狭さを今解き放つんだ
芳ーニャ、リーネイラ
大いに結構
というかだれか書いて
510名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 19:39:56 ID:saDFxCpD
シャーリー「ボーイズの銃声が1発・・・2発・・おうおう今夜も派手にやってるねえ」
芳佳「こんな時間に訓練だなんてリーネちゃん凄いですね〜」
シャーリー「いい的が出来たからな」
511名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 19:58:05 ID:2r+vt0qL
しかしシャッキーニが安全牌でうれしい
512名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 20:09:03 ID:ATaTgXtD
>>507
「ささめきこと」もマジオヌヌメ
513名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 20:09:24 ID:34+aWrIq
完全に繋がりが隔離されてたな
514名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 20:09:57 ID:fH181ExQ
>>511
わざわざ二人でアフリカまで行ってるしね。
515名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 20:10:00 ID:ZX+DrxHE
>>507
GIRL FRIENDSかよ
516名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 20:17:48 ID:2r+vt0qL
そういえば、あのパスタ娘と同じ国だよなルッキーニは
つまりお国柄・・・・
517名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 20:31:49 ID:saDFxCpD
シャッキーニがラブラブなのはうれしいんだがよ
最終回であんな劣悪な環境に行ったシャッキーニがかわいそうで仕方ない
扶桑においで
518本音と建前1/6 j4ntaz3y:2008/11/24(月) 20:41:29 ID:MR3x9NFK
相関図のあれこれがあるようですがシャーゲル派の自分としてはこのひとたちがかすりもしないことくらい
わかっていたのでいっそ清々しかったです
あれは参考程度に見ることにして各自好きに妄想するのがベストじゃないかと
つかそうじゃないとシャーゲルとか言ってる自分はしぬしかない

と言いつつきのうくらいに言ってたゲルト×エーリカ←シャーリーを投下してみるテスト
ひとりくらいに反応してもらえればいいかなと思ってたらけっこうレスもらえて胃が痛くなりました。こんなんですみません


「今晩とめてください」

 唐突の訪問者。彼女は、そんな急な頼みごとをしているにも関わらずあまりにぶうたれた顔をしていたのだった。

「それで、なんであたしの部屋にくるんだよ」

 シャーロットは卑屈な顔のエーリカをすっかり部屋のなかに招きいれてから、やっと当然の疑問を口にする。しかし
ながらとうのエーリカはといえば、こちらが宿泊の件をまだ了承していないというのにもうすでに自分のものでない
ベッドのシーツに金髪をうずめていた。

「部屋がちらかりすぎて寝る場所がないの」
「だから、それだったらバルクホルンのとこにいけばいいだろ」
「シャーリーは寝床のないかわいそうなわたしをほうりだすの?」

 そんなのひどい。きこえるのは、顔を枕にうずめているからすこしくぐもった、しかもまるでなきだしそうな声。では
あるが、なんとしらじらしいことか。シャーロットはふんと鼻をならしてシーツのうえにうつぶせるエーリカのとなりに
のる。ぎしとベッドがなり、ふたりでつかうにはちいさな四角のなかでわずかにふたりは接近した。

「けんか?」
「……トゥルーデが見当ちがいなことばっかり言うのが悪いんだ」
「あら……」

 あっさりと口をわられて、シャーロットは拍子ぬける。ごまかされるかきっぱり否定されるかのどちらかだろうと
思ってたずねたのに、ほしかった回答はいとも簡単にえられたのだ。じっと後頭部を見おろして、どうやら本当に
まいっているらしいとシャーロットは結論づける。どうしたものかと頭をかき、思わずため息をつきそうになった
ところで、ねえシャーリー、とかすかに眠そうな声がした。

「うん?」
「わたしって、そんなに魅力がないのかしら」

 それからくるりとからだを回転させて、エーリカはよこであぐらをかいている本来のベッドの持ち主を見あげる。
遠慮がちをよそおったさぐる視線にシャーロットはぱちぱちと瞬きをしてから、ふっと笑ってみせる。そうだなあ。
そしてのんきな声でそう言って、ぐっと顔に顔をよせた。

「なんて言ってほしいわけ?」
「思ったままをありのままに」

 接近した際にエーリカの顔のよこについた手が、みじかい毛先にふれている。見た目どおりにやわらかなそれ
はこの図太い神経をした同僚に似つかわしくないほどに繊細で心地よい。エーリカはおちてくるシャーロットの
長めの髪をわずらわしそうに手ではらいながら瞬きをしている。もう眠いのか、まぶたの動きは重い。かわいい
ものだ、と思いながら、シャーロットは内心驚いていた。この同い年には到底見えようもないおさない顔だちの
我が隊のエース殿が、このように自分に隙を見せるとは思いもしないのだ。

「それを言ったら、おまえ怒っちゃうよ」

 くっと笑い声をあげながらシャーロットが言うと、エーリカはかすかに不服そうに眉をよせる。これもまた意外な
しぐさだ。眠気に負けて警戒心がとかれているのか、普段からのにこにこしたポーカーフェイスがなりをひそめて
素と思しき表情が垣間見えた。
519本音と建前2/6 j4ntaz3y:2008/11/24(月) 20:42:07 ID:MR3x9NFK
「なんだい、あの堅物殿はキスもしてくれない?」
「それどころか抱きしめてもくれない。でも手はつないだことあるよ」
「ふうん?」
「でも……」

 シャーロットがつい驚嘆した頷きをしてみせると、今度はエーリカは言いかけてからぐっと口ごもる。それから
なにごとかに思いを馳せているのか天井の一点を見つめまた眉をよせ、しかもその眉間のしわはみるみるうちに
深くなるのだ。

「わたしからつないであげたんだよ、それなのにトゥルーデ、むずむずするとか歩きにくいとか言ってはなしちゃうの。
そんなのありえると思う? ありえないよ絶対。トゥルーデは鈍感っていうかそういうのとおりこして空気読めない。
まじありえない」

 そのときの屈辱感をすっかり思いだしてしまったエーリカは眉どころか顔の全体をゆがめて悔しさを表現したが、
それをぶつけたい人物はここにはおらず、ただそれを喜んでながめている性質の悪いリベリアンがいるだけだった。

「あはは、バルクホルンおもしれー。なにそれ、てれてんの?」
「いやあれは純粋にわたしのことを邪魔くさがってた……」
「あっはっは!」

 エーリカによる突然の内情についての告白にシャーロットは腹をかかえる勢いで大笑いし、余計なことを思わず
言ってしまったことに気づいた客人は無表情で自分のうえで目じりに涙をうかべる宿主をながめる。そろそろだまれ、
そうしないとなにをしでかすかわからないぞ。視線にそのような情念をこめたのがつたわったのかどうかは別としても、
シャーロットはやっとのことでたちなおり、真面目な顔をつくってエーリカを見おろしなおす。

「それできょうは、あたしんとこに浮気しにきてくれたんだ?」

 前置きもなく、シャーロットがひじをおっておおいかぶせていたからだを沈める。急に密着されたエーリカは、至近
距離からおちてくる不思議な台詞にまばたきをした。そもそもだ、避難所にあえてこの部屋を選んだということは、
多少の意味があったととってもかまわないということではなかろうか。

「なに?」

 近づきすぎているからだをひきはがそうと、エーリカがシャーロットの肩をおす。だけれど同い年にしてはひとまわり
はゆうにおおきなシャーロットはびくともしない。本気は感じない、だからべつにどうということはない。エーリカはそう
思ったけれどこの状況はあまりにおもしろくなく、意地になっておしかえそうと試みるも楽しげに笑われるだけの結果
におわった。

「あたしならちゃんと手をつないであげるし、キスもいっぱいしてあげる」
「……。ん? それは口説いてるの?」
「さあ、どうだろう」

 あくまで無表情のエーリカの額を、シャーロットは親指のはらでなでてかわいがる。まるくてつるつるしてる。すなおな
感想をのべると、エーリカはふうんと鼻をならした。実のところを話してしまえば、エーリカはシャーロットのそういう方面
に関しての態度をあまり信用しているとは言えない。

「シャーリーってだれにでもそういうことするの」
「まさか」
「そういうことすると、女の子は喜ぶの?」
「どうかな。バルクホルンで試してみたら?」
「いや、どうせうざったがられるだけだもん」
「ああ、かわいそうに」
520本音と建前3/6 j4ntaz3y:2008/11/24(月) 20:42:43 ID:MR3x9NFK
 そんなに卑屈になっちゃって。わざとらしい悲痛の声がして、シャーロットが今度は髪をなで、短いそれをすくっては
放すことをくりかえす。バルクホルンは、こういうことしてくれるかい。答えのわかりきった質問をなげかけ、すると
エーリカはやっとおもしろくなさそうにほほをふくらませる。

「シャーリー。ルッキーニは?」
「え、ルッキーニ?」

 ためしに、普段からよくいっしょにいる少女のなまえをだしてみる。しかしシャーロットはうろたえもしないでなにやら
幸せそうに唇のはしをゆるませるだけだった。

「ああ、ルッキーニ。ルッキーニはかわいいね」
「うわ、だめっぽいやつの答え方……」
「おいおい、失礼なやつだな」

 ルッキーニはかわいいからね。そばにおいとくので精一杯。さわるなんてとてもじゃないけどできないね。大げさな
表現で事実をつげると、エーリカはうさんくさそうに唇をとがらせた。それからふわとあくびをして、いつのまにかおおい
かぶさるひととのあいだにわずかなすきまがあいていたのをいいことにころんとからだを横向きにする。シャーロットは
あれと思いつつも、自分もふっとからだを離した。

「もう寝るね」
「ああ、おやすみ」

 それからエーリカのつれないことばにあっさり頷き、彼女にかぶせていたからだを離してベッドにおとす。しかもそれ
は、エーリカが顔をむけているほうにだった。目前にまたシャーロットの鼻持ちならない表情があらわれて、まるで安眠
を妨害された気分になったエーリカはまたからだのむきをかえて彼女に背をむける。そろそろ本気で眠くなってきていた
彼女は、すでにここはシャーロットの部屋で自分はベッドの一部を借りているのだという事実を忘却していた。まあ、もし
仮に覚えていたとしても先のような不遜な態度に変わりはなかったのだろうが。

「バルクホルンもそういう気分なんじゃない?」
「はあ…?」

 ぼんやりと声がする。ハルトマンはかわいいから、それだけで精一杯なのさ、バルクホルンもね。さっきの話の
つづきらしかった、しかしエーリカはもう半分は夢見心地でふわふわと思考を飛散させていたので、自分がかわいい
と言われた部分だけはちゃっかりと聞きもらさないにしても、シャーロットがなにを言わんとしていたのかまでは汲む
気にもなれずにうんと頷くだけにする。もう眠たいから、シャーリーももうおやすみなさい。そんな意志をこめた返事に
答えるように、シャーロットはエーリカの金髪をもう一度だけそっとやさしくすくい、だけれどすでに夢のなかにいた
エーリカにそれが認識されることはなかった。

----------

「おい!」

 最悪の目覚めだった。シャーロットは唐突に響いた怒声にがくと肩をゆらして目を見開く。朝の光が窓からさしこみ、
きらきらと目下にある髪をかがやかせていた。だけれどこれは自分のものではない。色の薄い他人のそれが、腕の
なかにあった。

「ああ……」

 ハルトマンか。そう思いついてつぶやこうとしたけれど、それは二度目の怒鳴り声にさえぎられる。おい、とまるで他
の呼びかけ方をしらないかのような不躾なそれに、シャーロットはやっと顔をあげてそこにいきり立つ人物を認める。

「……。なんだ、バルクホルン」
「なんだ、じゃない」
521本音と建前4/6 j4ntaz3y:2008/11/24(月) 20:43:23 ID:MR3x9NFK
 声の主はバルクホルンそのひとであった。まあ、正直な話わかっていた。ただ、ひとの部屋に無断ではいるほどの
強行手段をとられるとは思いもしなかったわけだが。おそらく早朝から探しまわっていたのだろう、なんとなく確認した
置時計はまだ起床すべき時間よりも大分はやい時間を示していた。シャーロットは大慌てでひと探しをしているで
あろうバルクホルンを観察することができなかったことだけがすこし心残りだったが、いま目のまえでわなわなと
ふるえているようすを見るだけで充分だと思うことにする。彼女はとにかく驚愕をかくそうともしないでふたりが
おさまっているベッドのとなりでなにか言いだそうにもことばが見つからないのか言いあぐねいていたが、すぐに
エーリカの肩に手をのばす。が、それをシャーロットが自然な動きでさえぎった。

「まあいいじゃない。気持ちよさそうに寝てるよ」

 眠りからさめないままのときから抱きしめるようにしていたのを、さらに抱きよせてバルクホルンの視界からさえぎる
ようなポーズをとる。ちなみにうばいあわれているエーリカはといえば、この騒ぎのなかいまだに夢のなかの住人で
あり、すやすやと寝息をたてている。

「おい、なんでハルトマンがここにいるんだ」
「しらないよ、勝手にきたんだ。それでいすわられたの。まあまあ、ちょっとおちついてよ、鼻息あらいよあんた」

 シャーロットに冷静に指摘され、バルクホルンは怒りで一瞬かっと顔を赤くしたが、すぐに平静をとりもどそうとぐっと
にぎっていた右手を数回開閉して深呼吸をする。それからそのようすをにやにやしながら観察していたシャーロットを
にらみつけて、ふうと息をついた。

「……ハルトマンが迷惑をかけた。あとはこちらでどうにかするから」
「ひきわたせって? それは無理だな、あたしだって責任とらないと」
「せ、責任?」

 ああ、ハルトマンがここを避難所にして、それをうけいれちゃった責任をね。大事なその部分はことばにしないで、
かわりににやりと笑ってみせる。するとバルクホルンは、やっとおちつかせた感情をまたがっと顔色にだして、それ
からいまにもシャーロットにつかみかかる勢いでばんとシーツに手をついたが、なんとか思いとどまりベッドのはしに
腰かける。

「……。手をだしたりしてないだろうな」
「……」

 おや、とシャーロットは瞬きをして、つぎにはふうんと鼻をならして身を起こす。眠り姫はまだ目覚めないようにと
そっとベッドに寝かしつけ、冷静さをかいている背中を眺める。

「あんたのそれはさ、保護者としての心配? それとも、もっとちがうのかな」
「言ってる意味がわからない」
「あは、あんたが言うと本気に聞こえる。そんなんじゃ、いつか愛想つかされちゃうと思うな」
「……」

 だまりこくるバルクホルンを見て、シャーロットは意外だなと頷いた。自覚はあるのか。それならば、もうひと押しと
いったところかもしれない。

「ハルトマンは、あたしと同い年とは思えないほどちいさくてかわいいね。あんなところまでつるつるですべすべで」
「な……」

 がばりと、バルクホルンがやっとふりむく。驚愕と怒りがまざったような真っ赤な目が見えて、シャーロットはかすか
にぞくりとふるえたが、すぐにきっとのびてくるであろう腕を先手をとってつかんで阻止する。それからにこりと笑って
から、ひょいとその手をはらってかわりにいまだ眠ったままのエーリカの額に指先をすべらせた。

「あんたもしってるだろ、こいつのおでこ。あんまり気持ちいいからハルトマンが寝てるあいだもずっとなでてたよ」
522本音と建前5/6 j4ntaz3y:2008/11/24(月) 20:43:56 ID:MR3x9NFK
 ははと声をあげ、きのうのように親指のはらでなであげると、バルクホルンはぽかんとしてから一気に赤面する。
たばかられたと気づいて、金魚よろしく口をぱくぱくと動かしていたが、結局なにも言わないでからだをもとの向きに
もどして目元を手でおおう。なんだよ、と思う。やってしまったと思うならさっさと行動にうつせばいいと、シャーロットは
すこしだけおもしろくない自分が意外だった。

「そのうちに、どこかのだれかにとられちゃうかもよ」
「だれにだって?」
「さてね。だれだと思う?」

 挑発的な口調でたずねると、バルクホルンはしばらく黙ったままで動かなかったが、唐突にたちあがって、顔だけを
こちらにむけて肩ごしにシャーロットをにらみつけた。シャーロットはそれを見かえしながら、まだまだ起きそうにない
この子が目覚めているときにそういう顔をしてやればいいのにと思う。

「ハルトマンが迷惑をかけた。あとはこちらでなんとかする」

 先程と同じようなことを言い、バルクホルンはベッドのわきにしゃがみこむ。フラウ。それからきいたこともない
やわらかな声でエーリカの耳元に語りかけ、いい加減あきれるほどに眠りの深い彼女を起こしにかかる。ふうんと
思い、シャーロットは自分もエーリカの肩をぽんぽんとゆすった。それを見てバルクホルンがむっとしていたような気
がしたけれど気にしない。

「ほら、お待ちかねのおむかえがきたぞ」
「……ん」

 ぼんやりと、エーリカがまぶたをもちあげる。しかしそれは開ききるまえにまた閉じてしまう。かわいいな、と思わず
口元をゆるめていると、ふと見えたバルクホルンもあまりにきれいな顔で笑っていたから驚いてしまった。が、それ
よりも驚くべきことが起きてしまう。

「お」
「な」
「あはは、かわいー。ルッキーニみたい」

 肩をゆするシャーロットの手を、エーリカがきゅっとにぎっていた。そのままもたもたと安眠を妨げる手をなでて、
結局ひとさし指が気にいったのかそれをてのひらで包んでおちついた。シャーロットは手をゆするが、エーリカは
まるで放す気がないようだった。やだな、放さない、寝てるときはほんとに天使みたいだね。つい本気でほがらかに
笑いながらバルクホルンを見ると、彼女はわなわなとふるえて、ひょっとしたら涙目だった。

「ハルトマン!」
「……んあ」

 先程までのやわらかさはどこへやら、バルクホルンはエーリカの耳元で本日最大の声で叫んでから、やっと半目
をあけたねぼすけの手をつかんでひきずるようにしながらシャーロットの部屋をとびだしてしまった。置き去りに
された部屋の主は閉められることのなかったゆれるドアをきょとんと眺めて、それから思いだしたようにぶっと
ふきだす。

「眠ったままでも、小悪魔は健在ってか」

 くくくとこらえきれない笑いをもらし、ふとにぎられたひとさし指を見つめる。まあ、役得といったところだな。おかしさ
とはまたべつの原動で唇のはしをゆるめていると、唐突に開放されっぱなしの扉のむこうからひょいと顔があらわれた。

「シャーリーおはよー」
「お、ルッキーニ。おはよ」
523本音と建前6/6 j4ntaz3y:2008/11/24(月) 20:44:31 ID:MR3x9NFK
 朝いちばんでも全開の笑顔で、ルッキーニがぱたぱたとシャーロットに近づきベッドに腰かける彼女のひざのうえ
にとびのる。

「ねえねえ、いまね、バルクホルン大尉とあったよ。おはようって言ったのに無視されたー」
「あらら、きっと急いでたんじゃないかな」
「うん、なんかおっきな荷物わきに抱えて大慌てで走ってった」
「ははは、そりゃいいや」

 必死な形相で自室にエーリカをつれこむバルクホルンを想像してシャーロットは声をあげて笑ったが、胸のはしの
ほうにすこしだけひっかかりが残っていることに驚きをおぼえながらルッキーニの頭をなでる。

「なに?」
「ん、なんでもないよ」

 どうやら、ルッキーニにかまってほしいらしい。シャーロットは自分のそんな思考をごまかすように、ひざにのって
こちらにのしかかっている少女のちいさな鼻を指先でつまむ。するとルッキーニはむっとした顔でその手をぺちんと
はらって、だからなあにー?と無邪気な顔でたずねてくる。

「いやね、ルッキーニは将来どんなふうに成長するのかと思ってね」
「なにそれ」

 きのうルッキーニについて話したときに、エーリカにまるでだめなやつであるかのようなことを言われてしまったが、
実のところは本気でルッキーニのことは大事に大事にしているつもりだった。それこそまるで天使にでもふれるかの
ように、半ば本気でそんな思考でもってこの少女のことをかわいがっている自分が少々気色が悪いと思っているほど
なのだ。

(それで言ったら、あたしのこれとバルクホルンのハルトマンへのやつをいっしょにしちゃったのは無理やりだったかな)

 エーリカが眠りにおちる瞬間に、なかなかいいたとえができたと思ったが、実際のところはバルクホルンはなかなか
に本気の様相だったじゃないか。

「シャーリー?」

 だまりこくっていると、ルッキーニが不思議そうな声をあげる。おっと、そろそろ開放してやらないと。この少女は
無邪気にすりよってくるわりに、自分が他人に束縛されることを好まない、というより思わずにげてしまうことを
シャーロットはしっていた。だからいつも、まるで野生の動物と距離をとるように、慎重に甘やかすのが大変なのだ。

「まあ、うまくいくといいなあ」
「え、なになに?」
「さて、ルッキーニにはまだはやいかな」

 せっかく腰にまわしていた腕をはなしたのに、今度はルッキーニが興味津々に首にからみついてくる。思わず笑み
をこぼしてからその軽いからだを抱えあげて、シャーロットはたちあがる。ほら、ごはんの時間だ。ごまかすつもりで
言ったけれど、それで忘れてくれるほどルッキーニはやさしくない。食堂までの道のりを、かわいい天使がすねない
程度にかわしながら進んで、きっとなかよくならんであらわれるであろう件のふたりを想像しながら、シャーロットは
くっくとたのしげに笑うことにした。


おわり

かっこわるいゲルト×押し倒されたいエーリカが個人的に理想なんですがなかなか少数派っぽいですね
おとなしくシャーゲル書いてますね
524名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 20:52:23 ID:saDFxCpD
>>523
この人の
書く
シャーリーが
大好き
525j4ntaz3y:2008/11/24(月) 20:55:30 ID:QQGgnuhQ
書き忘れた携帯から失礼
上の文は前スレくらいに書かれてたゲルトとけんかしてシャーリーのとこに避難するエーリカのネタをパクらせてもらったものです
いろいろ失礼しました
526名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 21:02:05 ID:iwLnFPx1
>>523
よくやった!GONZOに行って股間をファックしていいぞ!
はあ、シャーリーもエーゲルもたまらなすぎる…また書いてくれ!
527名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 21:03:02 ID:0X1gd6KI
>523
常識人の皮を被った狼さんと化してるなシャーリー。
だがそれがいい。ご馳走様です。
528名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 21:04:39 ID:saDFxCpD
>>527
この人の書くシャーリーならルッキーニ以外の部隊内のウィッチ全員撃墜してもおかしくない
529名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 21:08:34 ID:YNTFb/es
>>523
これはいいエーゲル&シャーリカ
あなたの書くシャーリーは独特の魅力があって大好きだ。
この飄々さがたまらん!

>>528
全機被撃墜がトゥルーデなら全機撃墜はシャーリーということか……!!
シャーリー×美緒とか想像しただけでゾクゾクする。
530名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 21:17:03 ID:erpj4A30
>>523
お姉ちゃんかっこわるいです^q^
自業自得でやきもきしているゲルトはいいなあw
531名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 21:27:05 ID:ZzIHdd4t
>>523
超GJ!
>かっこわるいゲルト×押し倒されたいエーリカが個人的に理想なんですがなかなか少数派っぽいですね
今夜は俺とお前でダブルライダーだ!
またこんな感じなの書いてくれると嬉しいな
532名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 21:53:20 ID:r9LuUsbN
とてもGJな話の後で恐縮ですが全く需要のなさそうなエルマさん×ちっちゃエイラ投下します。

1939年、スオムス・カウハバ基地において私はハッキネン大尉から中尉への昇進を言い渡されていました。

「エルマ・レイヴォネン、貴女も本日付けで中尉となることですしそろそろ上官としての訓練も必要でしょう。」

はわわ、私が中尉さんだなんて!お給料いっぱいもらえるのでしょうか?
お母さんにもお父さんにも、それにお祖母ちゃんやお祖父ちゃんにもお仕送りいっぱいできるでしょうか?

「それに伴って急なことでは指揮にも慣れていないでしょうからまず新兵を一人貴女の部下として配属することが決定しました。」

部、部下さんもできるのですか!仲良くできますでしょうか?

それに部下さんができるということは、私がお姉様になることだってアホネンさんが言ってました!
今日から私もお姉様にならなければいけないんですから頑張らないと!

「は、はい!私も今日からお、おね…さまとして精一杯頑張ります!」
「はぁ、よく分かりませんが上官としてのやる気があるならなによりです。」

うぅ緊張して上手く喋れなかったです…でもどんな娘が私の部下さんになるのでしょうか…?

「エイラ・イルマタル・ユーティライネン…貴女に面倒をみてもらいたい魔女の名前です。
彼女は士官学校を齢10歳にして主席で卒業した文字通りの天才です。
彼女がスオムスの至宝となれるか否かは貴女の教育の是非にかかっているのですからくれぐれも注意して接してください。分かりましたか?」
「は、はいっ!!」
「しかし天才と言ってもそれはこと戦闘においての話です。実生活においては不慣れなことも多いでしょうからそちらの方面の面倒もよろしくお願いします。」

ど、どうしよう…天才さんですか!?私より絶対有能な娘ですよぉ…どうしてそんな大切な娘を私みたいないらん子のとこに配属しちゃうんですかぁ!?

「は、はいっ!私、エルマ・レイヴォネン、が、頑張ってエイラさんの面倒を見させていただきます!」

はわわ〜、引き受けちゃいました…本当は断りたいのですが。
でも私、こ、断ることもハッキネン大尉が怖くてできませんよ〜!

「エイラさんにはブリーフィングルームに待機してもらっていますのでまずは顔を合わせてきたらどうでしょうか?」
「はい!行ってまいります!」
533名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 21:54:50 ID:r9LuUsbN
仕方がないのでバカにされないよう頑張らなくてはいけません。
エイラちゃん、どんな娘だろうか?
そう考えながら私は司令室を後にしてブリーフィングルームへとむかいます。優しい娘だといいなぁ。

「エイラさん、いますか?」

言いながら私はブリーフィングルームに入る。
あぁ、エイラちゃんって呼ぼうと思ってたのですがやはりなぜかさん付けで呼んでしまいます…相手は天才だっていっても10歳の女の子なのに。

「エイラは私ダ。アンタがエルマ中尉ナノカ?」

そこには白くて小さい綺麗なお人形さんがいたのです。

「あ、貴女がエイラさんですか?なんでしょうかこの娘は、こんなに可愛い娘初めて見ました〜!!」

わぁ、この娘の髪って光の加減で金色にも銀色にも見えてとっても綺麗です〜。
思わず私はエイラちゃんの髪をさわさわしてしまいます。

「すごくサラサラで気持ちいいですね〜。」
「なっ!ナニすんダヨッ!私に触るんじゃナイ!」

あわわ、怒られてしまいました。でも怒ってる姿もお人形さんみたいで可愛いくて私はもっとなでなでしてしまいます。

「ヤメロって言ってるジャナイカー!」
「何を言ってるんですか。今日から私はあなたのお姉様なんですよ〜?」
「ソッチこそ何を言ってるンダー!!」
「アホネンさんが上官は部下のお姉様にならないといけないんだって言ってましたから間違いないんです!」
「…………………。」

エイラちゃんが眉をひそめて諦めた表情で私を見てます。
なにがいけないんでしょうか?

「どうして私ばかりこんなメに合わなくちゃならないンダ…」
「あぁそうでした!エイラさん、今日から私があなたの面倒をみますのでよろしくお願いしますね。」
「私は全部自分で出来るンダ!だからほっておいてクレ!」
「エイラさんっ!」

エイラちゃんは怒ってミーティングルームから飛び出していってしまいました。
私はエイラちゃんのお姉様になってあげなくちゃいけないのに…いくらエイラちゃんが可愛かったからって彼女の気持ちも考えずに接してしまいました。
534名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 21:56:26 ID:r9LuUsbN
「私はお姉様失格です…。」
「あらエルマさん、そんなにへこたれてどうしたのかしら?」
「ア、アホネンさ〜ん!!私エイラさんを怒らせちゃいました…」

私は動転してアホネンさんの平らな胸に泣きつきます。

「エルマさん、エイラさんと言うのは誰のことなんですの?」
「んぐ…エ、エイラさんは、私の、初めての部下さん、なんです。私、は、お姉様失格なんです…」
「エルマさん?姉だからといって間違いを犯さないものではないのですわ。
 そのエイラさんはあなたの初めてのいもうとなんですから共に歩んでいかなくてはならないのですわ。今からでもしっかり姉としての責務をはたしたらいいじゃない。」
「はい〜、私…頑張ってみます!ありがとうございますアホネンさん!」
「うふふ、頑張ってらっしゃい。」


「エルマさんったらすっかりわたくしが言ったことを信じ込んでしまって可愛いったらないですわ。わたくしのいもうとにしてしまいたいですわ。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「はぁはぁ、ここがエイラさんの部屋でしょうか?」

飛び出していってしまったエイラさんを探している途中、私たちがうまくやっているか心配をしてみにきてくれたハッキネン大尉にエイラさんの部屋の場所を教わってここにやってきたのです。

「エイラさん…いるかなぁ?」

様子を窺うと部屋の中からなにやら声が聞こえてきます。
535名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 21:57:26 ID:r9LuUsbN
「うう…お母さん、お父さん…会いたいヨ。どうして私がこんなメに合わなくちゃいけないんだ…こんなことなら魔女の素質なんて欲しくナカッタヨ…」

エイラちゃん…まだ10歳の女の子ですもんね。
いくら戦争だからってこんなに小さな娘を危ない目に遭わせるなんて間違ってます!エイラちゃんは私が守ってあげなくちゃダメです!!

「でも私に何ができるのでしょうか…?」

私はエイラちゃんのお母さんにもお父さんにもなってあげられない…でも私はエイラちゃんのお姉様なんです!
お姉様はお母さんやお父さんよりもいもうの傍にいていもうとを守ってあげなくちゃいけないんです!!
そう考えたらなんだか勇気が湧いてきました。

「エイラさん、入りますよ?」

そう言って部屋に入るとベッドの上でエイラちゃんが大きな黒い狐のぬいぐるみ
にうずまって泣いていました。

「な、なにしに来たんダヨ!!」

エイラちゃんが涙を拭いながらこちらを睨みます。

「泣いてる娘をほっておける訳ないじゃないですか!それに私はあなたのお姉様になるんです。
 泣いているいもうとをほっておける姉なんていないってエラいお姉様も言ってました!」
「アンタは私の姉じゃないダロ!なんでアンタは私に構うンダ!」

エイラちゃんがこちらを窺う様に私を見つめます。
そんなの決まってるじゃないですか…

「あなたは私の大事な大事な部下さんですからね。」

私はエイラちゃんを抱きしめてまだ目尻に残る涙を拭ってあげます。

「私は一人でダイジョウブだって言ってるダロ!」
「まだ子供なんですから寂しいのなら寂しいって言えばいいんですよ?ここでは私があなたの家族なんですから。」
「寂しくなんてネーヨ!でもアンタがどうしてもって言うなら仕方なく一緒にいてやるヨ。」

エイラちゃんがそっぽをむきながらつぶやきます。

「ふふ、私はエイラさんと一緒にいたいなぁ〜。エイラさんみたいな可愛いいもうとがほしいなぁ〜」

そう言いながら微笑みかけるとエイラちゃんは私の胸に顔をうずめて「仕方ネーナ、今日ダケダカンナー!」と頬を赤く染めながら叫びます。
なんだか本当の妹ができたみたいで嬉しいです。
そのときエイラちゃんのお腹が‘くぅ〜’と可愛くなりました。安心したらお腹が減っちゃったのかな?

「ありがとうございますエイラさん。あっ!エイラさんお腹空いていませんか?食堂案内しますよ!」
「ちっ、しょうがネーナー、付いてってやるヨ!」

エイラちゃんが初めてニカッと笑ってくれます。

「ほらっ、行くゾ…エル…エルマおね…、行くゾ、エル姉!」
「はいはい、待ってくださいよ、エイラ‘ちゃん’」

数日後、ハッキネン大尉の、部下をいもうと扱いするのなんてアホネンぐらいだ、という話を聞いてエルマは赤っ恥をかくことになる…

「ど〜して変だって教えてくれなかったんですか〜!」
「最初から言ってたダロ、エ、ル、ね、え!」
「私はお姉様じゃないです〜!謝りますから許してくださ〜い!」

Fin.
536名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 22:01:28 ID:r9LuUsbN
投下終了です。

タイトルは私が今日からお姉さま!です。

最初に書いてしまうとゲルトさんを期待させてしまうのでスイマセン…

ちなみにこの前サーニャがエイラの胸を揉むだけの話を書いたRU1ZZ/dhでした。

反応嬉しかったです。
537名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 22:04:04 ID:/viLqEDz
なにこのツンデレ
すごく萌えるんだけど
538名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 22:28:32 ID:ZzIHdd4t
エイラの子供時代想像つかないなw
それにしてもエルマさんかわいいよエルマさん
539名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 23:10:50 ID:saDFxCpD
>>538
pixivでフミカネさんが描いてたSDエイラそのまんまみたいな感じじゃないですかね>こどもエイラ

やけに甘えん坊さんだったり無口だったりするとそれはそれでかわいいですよね
540名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 23:41:31 ID:AIPBKwTU
エイラーニャが鈴木氏に否定された今、エイラもあたらしい組み合わせを開拓する必要があるな
>533 GJ
541名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 23:47:48 ID:7hrJv9Ok
エイラとシャーリーは意外に良いと思う
でも俺はエルマが好き
542名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 23:49:08 ID:u+LU7bAs
>>540
否定されたならば、妄想の余地を持つ二次創作でこそ頑張るべきだ!
543名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 23:54:39 ID:kMUPybtF
もうどんな組み合わせでもいいさ。
萌えるから。
キャラの数だけ萌えがある。
544名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 23:56:10 ID:/UBZuspB
>>540
ここ最近ここにこれなかった俺にエイラーニャ否定についてkwsk
545名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 23:57:35 ID:ZzIHdd4t
否定ってほど大げさな話じゃないってw
講演会で鈴木が書いた相関図がうんたらかんたらって話。詳しくはアニメwiki見れ
546名無しさん@秘密の花園:2008/11/24(月) 23:58:33 ID:8Z21yqpn
鈴木がなんと言おうが俺にはエイラーニャしか見えない
547名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:01:57 ID:QTUjUB1O
鈴木の書いた相関図のキャラの好意の矢印がエイラからサーニャの方向にはあったけど
サーニャからエイラの方に矢印が出てなかった

代わりにサーニャからは芳掛に矢印が出てた
548名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:03:40 ID:9vsJdrdJ
>>547
>代わりにサーニャからは芳掛に矢印が出てた

これはOVA時代のころの相関図からそうだったからなあ。
まったく珍しいとは思わなかったが。
549名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:06:30 ID:/UBZuspB
>>545
今見て来た
なるほど、確かにサーニャから宮藤に矢印が伸びてるな

まぁ、エイラがサーニャ好き好きならまだまだ望みはあるな
今までの百合史を見れば尚更
550名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:10:09 ID:twTgMrms
>>543
あんたとは気が合いそうだぜ…w
551名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:12:11 ID:SAVKbXzP
なんだかんだでこれだけ勢いが有るのも久しぶりな気がする
これでSSでも投下してくれたら・・・・
552名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:14:53 ID:a0Prvttx
ペリーヌからもっさんの方に矢印が伸びてなかったり鈍いもっさんが隊長と相思相愛になってたりするからあんま深く受け止めないほうがいいね
あくまで即興で考えてたもんだし時間も結構押してたし書き忘れた部分も結構あるんだろう
553名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:14:59 ID:y/XGfBoh
百合板No.1の勢いだからなあこのスレ
過疎板でしかも放送が終わった作品でここまで盛り上がってるんだから驚異的
554名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:16:32 ID:Cf65GXoK
百合板まるごと盛り上がっていくといいなあ
555名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:18:47 ID:SAVKbXzP
今週にはDVDの最新刊が出るしね
秘め事は楽しみ
そして6話はもっと楽しみ
556名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:21:47 ID:zQC43pw+
いや秘め事CDじゃ発禁だからw
557名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:24:11 ID:Cf65GXoK
ワロタwwww
リーネ×トゥルーデ、ペリーヌ×もっさんの秘め事・・・ゴクリ
558名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:26:32 ID:dBX8CkQD
ゲーム特典は是非秘め事CDを!
559名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:27:18 ID:SAVKbXzP
しまった!ついつい無意識のうちに自分に正直なってしまった
560名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:28:44 ID:zQC43pw+
3巻はシャーリーサーニャ、4巻は多分ルッキーニエーリカ、5は隊長エイラかな
エイラさん大変ですね
561名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:30:51 ID:MYB1d2At
せっかく一緒にガリア復興することになったんだからお互い敬語はナシでいきましょう
ってことで挑戦して見るけど恥ずかしくてうまく行かない初々しいペリーネ

なんで同い年なのにお前は自分に敬語なんだと指摘されて、
でもあこがれ強すぎて直せずエイラが拗ねるリーネイラ

そんなネタが浮かんだ。敬語キャラっていいよな。
562名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 01:25:09 ID:BRt/oaCJ
ストライク世界では、フレンチキスは、ガリアンキスと呼ばれるのだろうか。
因みにフレンチキスを「唇が触れ合うだけの軽いキス」と認識しているのは日本人だけらしい。
563名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 02:01:03 ID:uNpaQzr5
>>562
とりあえず鞭みたいに分離する剣を持った赤いロボットを思い出したのは俺だけではないはず
564名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 02:04:20 ID:Jhr02kaW

第19話予告・「次回、白い谷 崩壊。お楽しみに〜」
565zet4j65z:2008/11/25(火) 03:01:52 ID:D6MDzOIm
超遅レスですが、>>111自分が言うのもなんだけど、
飢えている時はどんなものでも美味しいと思うんだ。

>>相関図
どんな図が出てきても妄想の燃料にしてやるぜ!
とかいいつつ単にマイペースにやってるだけだったりw

というわけで変態方向に病んでるリーネ×芳佳の続きです。
相変わらず長くなりそうだったんで一旦切りました。
内容的には二人の服装以外えろくないと思います。
566zet4j65z:2008/11/25(火) 03:03:05 ID:D6MDzOIm
●ブリタニア1944 format by LYNETTE UPDATE MISSION

「……ネ……ん」

 耳元からから声が聞こえる。
 
「リーネちゃん」

 わたしの大好きな優しい声が、すぐ近くで私の事を呼んでる。

「リーネちゃん、ねぇ、起きて」
「ふわ……おはよう……よしかちゃん」

 あれ? わたし……どうしたんだっけ?
 とりあえず挨拶だけ返しながら困惑する。
 芳佳ちゃんの可愛らしい声で目を覚ませたのは幸せなんだけど、状況がつかめない。
 身体を起こそうとして、仄かに香る匂いと、頬をくすぐるちょっと外側に跳ねた髪、皮製の手袋越しの控え目な柔らかさが全てを教えてくれる。
 わたし、芳佳ちゃんの身体の上でうつ伏せになって、肩の上にあごを乗せるような姿勢になってるみたい。
 少し首を動かすと、芳佳ちゃんの耳が目に入る。
 特に理由は無かったんだけどなんとなくそうしたくなったから、柔らかそうなその耳たぶを、あむっ、と唇で噛んだ。

「ひゃっ!? りーねちゃんっ!?」
「よしかちゃん、おはよ」

 もう一度そう言ってから、やわやわと耳を刺激する。

「あっ、んっ、だめっ! リーネちゃんっ……やめ……っ」

 そんな甘い響きの混じった静止の声がかえって私を燃えさせるんだけど……椅子のたてる軋みと、鎖の金属音がまだ半分寝ぼけてるわたしを現実へと引き戻す。
 
「ああっ、ごめんなさい芳佳ちゃんっ! こんな事してる場合じゃなかったよっ!」

 慌てて身体を起こして立ち上がろうとしたわたしは、自分で自分の腕を拘束していた事を完全に忘れていた。
 芳佳ちゃんの胸に手をついたまま、ぐっと引き起こした上半身は、5インチの距離で引っぱられてバランスを崩す。
 横にずり落ちそうになって、焦ったままう自由な手をつこうとしたのが芳佳ちゃんの腕。
 でも、怪我してるそこを刺激しちゃいけないと思ったわたしは別の手がかりを探す。
 逡巡したのは一瞬だけど、崩壊が進むには十分な時間だった。
 前のめりになった身体のバランスを回復するために、訓練で鍛えた腹筋背筋に力を込め、えいっと後ろへ身体を反らせようとする。
 でも、ここでもまた不自由な腕が災いして、今度は後ろに大きく振れる。

567zet4j65z:2008/11/25(火) 03:03:40 ID:D6MDzOIm
「わ、わ、わっ……」
「あああああっ、リーネちゃんっ!」
「ひゃあっ!」

 どっすん。と、背中から落ちた。

「大丈夫っ! リーネちゃんっ!?」
「あいたたたたた……だ、大丈夫……うう、いたた……」

 一瞬痛みに意識が遠のいたけど、何とか耐える。
 おちついてから、一連の元凶である首輪と手枷を繋ぐ細い鎖を外す。焦ってる時と違って簡単に外れる。
 まだ痛む背中をさすりながら芳佳ちゃんを安心させる為に声をかける。

「ふぅ、心配かけちゃってごめんね、芳佳ちゃん」
「ううん、でも、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。あ、ちょっとまってね、すぐにそこから降ろすから」

 返事をしながら芳佳ちゃんの拘束を解いていく。

「あ、ありがと……でも、その……なんで……」
「なあに? 芳佳ちゃん」
「なんで、あんな事したのかな?って、リーネちゃん、なんだか怖かったよ……それに、私たち早く帰らないと」
「怖がらせちゃってゴメンね。でもね、必要な事だったの」
「必要?」
「うん、必要だから。まだ帰りたくない。二人がここに導かれたのは、二人の為のチャンスだから」
「な、何を言ってるの……? 意味が、解らないよ……リーネちゃん。何か変だよ……やっぱり、リーネちゃん怖いよ」
「怖がらせちゃって、ゴメンネ。でもね、芳佳ちゃんも悪いんだよ。私の事ずっと見てて、今だってずっと見てるのに、わたしの事だけを見てくれてるわけじゃないんだもん」
「え!? いや、えっと……それは……」
「男の子よりもえっちな目でわたしのおっぱいを見てたの、わたししってるよ」
「いっ、いえっ、別にっ、そそそそんなことないないないっ! ないよっ!」

 真っ赤になって一生懸命否定する芳佳ちゃんの前で、えっちなデザインの服で強調された胸をもっと見せ付けるように胸の下のほうで腕を組んで、少し前かがみになる。
 明らかに照れて動揺してる芳佳ちゃんの様子を見るのと、心に押しとどめてた感情を面と向かって言葉に出来るのがうれしくて、自然と頬が緩む。

568zet4j65z:2008/11/25(火) 03:04:29 ID:D6MDzOIm
「でも、そうやって見て貰えるの。嬉しかったんだ……。だって、きっとそれはわたしの想いが一方通行じゃないって希望を持てたから」
「リーネちゃん……」

 芳佳ちゃんの目がおっぱいに釘付けのなるのがわかる。わたしの身体を見てくれる芳佳ちゃんの視線が好き。
 でもその後のちょっと目を伏せながらの芳佳ちゃんの言葉は、私の心を冷えさせるのに十分だった。 

「あ、あのね、リーネちゃん。あの……さっきまでの事とか、全部忘れるから、普通しよう。
 リーネちゃんが私の事助けてくれて、看病してくれて凄くうれしいの。でも、きっとリーネちゃん今疲れてるんだよ。
 だから、何か変なんだよ。だから、早く基地に、皆の所に帰る方法を考えようよ」

 笑顔のまま、表情が凍りついたのが自分でも解った。そのまま、なんとか言葉を繋げる。

「忘れちゃうんだ……。そうだね……うん。芳佳ちゃんは、早く坂本少佐のところに帰りたいんだね」
「うん、帰りたいよ。リーネちゃんは帰りたくないの?」

 そっか。そうなんだね。
 あんなことまでしたのに、二人で気持ちよくなったりしたのに、忘れようなんていう芳佳ちゃんの態度がわからなかった。
 少しは心が通じたんじゃないかって思ってたのに、わたし、ただ空回りしてただけだったのかな?
 でも、だからといって芳佳ちゃんが悪いとは思いたくなくて、わたしが焦りすぎたのがいけないんだって考えようとして……ダメだった。
 どうしたらいいんだろう……。

「お話とかもっとしたいけど、その前に身体拭いたりとか、包帯替えたりとか、食事の用意とか、色々しなきゃだよね。すぐ準備するから、待っててね、芳佳ちゃん」
「あっ、リーネちゃん」

 張り付いた笑顔の仮面のまま、そんな言葉がすらすらと出てきて、不安そうな顔の芳佳ちゃんを部屋に残したままいろんなことの準備の為にそこを後にした。
 芳佳ちゃんの前を離れてから少しづつ考えがまとまり始める。
 わたしの事をいっぱいいっぱいわかってもらって、芳佳ちゃんの事をわたしがもっともっと知る為にはわたしの努力が必要なんだ。
 いままでみたいに優しくするんじゃなくて、もっと強く強引な手に出ないと鈍感な芳佳ちゃんはちゃんと解ってくれない。
 忘れようなんて言葉が出てこなくなる程しっかりと、確実にわたしの事を刻み込んであげないといけない。
 わたし以外に何もいらなくなるまで徹底的に調教してあげなくちゃ、二人の未来は拓けない。
 そっか、調教だ。
 ノートにあった言葉。
 そんな表現を芳佳ちゃんに使ってはいけないような気がして避けていた言葉。
 芳佳ちゃんを……。

「芳佳ちゃんを、調教する」

 口に出してみて、その言葉の甘美な響きに酔う。
 ふふ、そうだね……調教だよ。
 ここから先は、ふれあいとか悪戯とかじゃなくて、調教。 
 芳佳ちゃんが、みんなの芳佳ちゃんからわたしのかわいい芳佳ちゃんに変わる為の、素敵な時間。
 わたしは心のどこかで今まで無意識に緩めていたスロットルを、全開にした。
 待っててね、芳佳ちゃん。
 すぐにわたしの物にしてあげるからね……。
569zet4j65z:2008/11/25(火) 03:11:01 ID:D6MDzOIm
以上となります。

次はまた延々と変態えろすな展開の予定です。
処女じゃなくなったら魔法なくなるって事みたいなんで、自分の妄想が勝利しつつある気分。

あと、ペリーヌ&リーネで戦闘メインの話書いてるんだけど、
やっぱペリーヌ一人称で長い文章書くの大変すぎるwww
570名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 03:15:03 ID:yrvPz+ml
GJ
相変わらずエロい
571名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 03:22:10 ID:yrvPz+ml
sage忘れ失敬
572名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 06:58:19 ID:z3+FV46q
>>569
力作乙です。
次回も楽しみにしてます。
573scarface 01/07:2008/11/25(火) 11:03:15 ID:jxO2pWBO
おはようございます。mxTTnzhmでございます。
またまたSS投下行きます。今回は2本連続で。
タイトルは「scarface」と「knights of the round table」。
前者はエーリカ×トゥルーデ、後者はシャーリー×ペリーヌ。
急いで書いたのでかなり乱雑な文章ですがお許しを……。

----

基地に空襲警報が鳴り響いた。独特の長いサイレンと数発の花火が、交戦前の緊張を高める。
「監視所から報告が入ったわ。敵一体、グリッド東117地区に侵入。高度はいつもよりも低いわ」
地図を指し示しながら一同に話をするミーナ。
「前回の襲撃からまだ日が浅いわ。今度はどんなネウロイが来るか分かりません。各自十分に注意して」
「よし、今回はバルクホルン、ハルトマンが前衛。シャーリーとルッキーニは後衛で行く」
美緒が先発隊の名を読み上げる。
「残りの人は、私と基地で待機です。良いですね」
「了解!」
いつも通りのブリーフィング。いつもと違うのは、ネウロイに関する報告と情報だ。
普段なら、大体ある一定の期間を置いて来襲していたのだが、ここ最近は出現サイクルがでたらめで
いつ迎撃に上がるか分からない、嫌な緊迫感が有った。
病み上がりの隊員も容赦なく戦闘に駆り出され、疲労は蓄積していった。
訓練の合間を見計らって椅子に腰掛け居眠りしたり、食事の時間なのに肝心の食事そっちのけで
寝転けてみたりと、誰が見ても「隊」としての疲労は限界に近付いていた。
574scarface 02/07:2008/11/25(火) 11:04:07 ID:jxO2pWBO
この日もエーリカは大きなあくびをしながら、会敵ポイント目指して緊張感の無い飛行をしていた。
「ハルトマン、たるみすぎだ」
「だって眠いんだもん」
「これから戦闘だと言うのに、あくびをしている場合か?」
「まあ、まだ基地から出たばかりだし」
「油断し過ぎだ、リベリアン。基地から一歩でも空に出れば、そこはもう戦場だ」
「これだからカールスラントの堅物は。そんなんだから寝惚けてんだよ」
「何?」
「服のボタン、ずれてるぞ」
トゥルーデの真下に回り込んでつんつんとつつくシャーリー。
「あ、ホントだ」
ルッキーニも気付いて近寄る。
「な! ボタンの掛け違い位たまには有るだろ! 茶化すな!」
「ありゃ、気付いたか」
両腕を頭の後ろに回しぼそっと呟くエーリカ。
「……と言う事はハルトマン、お前はいつから気付いていた?」
「朝食の前に廊下で会ってから〜」
「ならもっと早く言わんか!」
銃を背負ってあたふたとボタンを留め直す。
「かっこわるー」
「たるんでるぞ、大尉殿?」
「貴様ら……」
ルッキーニとシャーリーに相次いでからかわれ、怒り心頭のトゥルーデ。
「さて、そろそろネウロイが見えてくるかもよ?」
エーリカは辺りを気にし始めた。
「よし、頼んだぞ大尉殿」
トゥルーデの肩をぽんぽんと叩いてにやけるシャーリー。
「まったく、これだから……」
トゥルーデとエーリカは先行し、シュバルムを形成してネウロイに備える。
「敵発見!」
いち早く気付くトゥルーデ。
「確かに高度低いね。しかも小さい」
「二機居ないか? 報告では敵は一体の筈だが」
「まあ、でも楽勝だね」
「以前有った様に陽動かも知れん、十分気をつ、……ん?」
「なにあれ?」
全員が目を疑った。
ネウロイが、突然分裂したのだ。
二体が同時に分裂して、つまり四体に増えたのだ。
「ま、待てよ。話が違うぞ」
「中佐、敵が分裂した! 現在四体確認している」
『えっ? 監視所からの報告では一体の筈だけだと……』
「確かに四体いるよ〜」
「中佐、指示を」
『これからすぐに増援を送ります。まずは数を半分に減らす事だけを考えて。決して無理はしないで』
「了解!」
「よし、行くぞハルトマン」
「了解」
「二人も一体は必ず仕留めてくれ。いいな」
「了ぉ解ぃ」
のんびりとした返事を聞いたトゥルーデは、内心苛立ちと焦りを感じつつも攻撃体勢に入った。
575scarface 03/07:2008/11/25(火) 11:04:44 ID:jxO2pWBO
トゥルーデとエーリカは交差しながら急降下し、ネウロイを射程に収める。
「単純に増えるだけで楽勝だね」
言った瞬間、ネウロイから何かが発射された。人の丈程の長さで、それ自体が襲ってくると言う、
ある種の「自律飛行する子爆弾」だった。トゥルーデの付近に近付くと、激しく爆発した。
シールドで辛うじて爆風から守られるも、その威力は単純なビームとは桁違いだった。
「な、なんだこれは!」
慌てて急上昇する。
「直撃しなくても爆発するのか!?」
「まるで、海軍で使ってる機雷が空飛んでるみたいだよ」
口笛を鳴らして余裕を取り繕うエーリカ。
「あいつらは?」
シャーリーとルッキーニの方を見る。向こうも同じ目に遭っているらしく、手をこまねいている。
合図して通信を試みる。
「このままでは敵を倒すどころじゃないな」
「まったくだ。あの空飛ぶ爆弾は何よ? どうする?」
「ヘタに距離を取ればあの爆弾ネウロイに撃たれる。一撃離脱で行け。出来るならルッキーニの魔力を使って一撃でやれ」
「了解」
「よし、我々も同じく一撃離脱で確実に仕留めるぞ」
「了解っ」
いつになく表情が硬くなるエーリカ。急降下に入る。
一発、また一発と飛行する爆弾ネウロイが放出された。かなりの速度で近付く。
トゥルーデとエーリカは爆弾ネウロイ向けて短く銃撃を仕掛けた。やはり大爆発を起こす。まさに爆弾そのものだ。
その爆炎の中から、また飛んでくる。
紙一重のところで避ける。至近距離で爆発が起きる。
鉄壁の防御シールドが二人をガードするも、そう何度も持ち堪えられるものではなさそうだ。
ネウロイ本体に接近する。ビーム攻撃は相変わらずだ。難なくいなすと、手持ちのMG42のトリガーを引いた。
“カールスラントの電動のこぎり”が盛大に火を吹いた。
二人の攻撃は見事にネウロイ本体からコアを露出させ、砕き、屠った。
ネウロイはどん、と激しい爆発を起こし、飛行が乱れ、海中に没する寸前に爆散した。
「まずは一匹」
二人は急降下のスピードを活かして上昇に転じた。ネウロイは、あと三体……。
少し離れたところでネウロイがまた一体爆発し、灰燼に帰した。
シャーリーとルッキーニが魔法を使ってやっつけたらしい。
これであと二体。
しかし、ネウロイは彼女達をあざ笑うかの様に、再び分裂を繰り返した。また四体。
「なんだと!」
「振り出しに戻っちゃったね」
「これじゃあキリがないぞ?」
「素早く倒すしかない。でないと倍々に増えていく」
「たった数分で増えるなんて……一時間もしたら」
「ブリタニアの空がこのネウロイで埋め尽くされる……」
考えただけでもぞっとする。
「急げ! コアの位置は中央やや前よりの、ツノの前辺りだ」
「了解」
「シャーリーは接近してコアを露出させろ。ルッキーニは背後からコアを狙撃」
「了ぅ解!」
シャーリー達に指示を出しながら、エーリカを引き連れて急降下に移るトゥルーデ。
コアの位置は分かっている。敵の攻撃方法も分かった。
いける。
至近距離で爆発する爆弾ネウロイをかわしながら、短い連射を繰り返す。
銃弾は狙い済ました位置に吸い込まれていく。
コアが露出し、砕け散る。
また一体撃墜。
シャーリーとルッキーニも見事に仕事をこなしている。うまくコアを露出させている。
そこに遠距離からの一発が突き刺さる。またも一体撃ち落とした。
576scarface 04/07:2008/11/25(火) 11:05:37 ID:jxO2pWBO
「しまった!」
突然シャーリーの焦り声が飛び込んでくる。
「どうした?」
「あたしのBARがジャムった!」
「何?」
「こんな時に……ルッキーニの銃撃だけでは火力不足だ」
シャーリーの無念さが伝わってくる。
「ごめ〜ん、あたしももう弾無いよ〜」
ルッキーニも泣きついてきた。
「仕方ない、二人は先に帰投して銃の交換と弾薬の補給だ」
「了解」
「それまで私達が何とかする。それに増援ももうすぐ来るだろうからな」
「すまない、あとは頼む」
「任せろ」
悔しそうに基地へ帰還する二人。
トゥルーデは前を見据えた。
「良いの? ミーナに許可取らずに先帰しちゃって」
「現場の判断だ。それに、攻撃手段が無い以上二人を無用な危険に晒す訳にもいかないだろう」
「確かにね」
「何とかするしかない、我々だけで」
自分に言い聞かせる様に、トゥルーデは言った。
想像以上の難敵、あと二体。増えるのも時間の問題だ。
577scarface 05/07:2008/11/25(火) 11:06:26 ID:jxO2pWBO
トゥルーデとエーリカはパターンを掴み、一撃離脱戦法に徹した。
これが今現在ふたりがとれる最良の攻撃方法かつ防御策だった。
上昇し、ネウロイへのアプローチ位置を見定める。
眼下にネウロイが迫る。
トゥルーデはMG42を構えた。
だが、トゥルーデは焦り過ぎていたのか、一発の爆弾ネウロイを見逃していた。
突入して銃撃を始めあと少しと言う時、背中に重い爆風を背負った。
意味が分からず、とりあえずMG42を撃ちっ放しにしてネウロイのコアを仕留める。
あと、一体。
再度上昇に転じようとするが、エーリカは一人ふらふらと海中に突っ込んでいく。
「ハルトマン? どうした?」
トゥルーデは慌てて“相棒”の肩を掴み、上昇した。
エーリカを見て、驚愕した。
エーリカのこめかみが切れ、血が吹き出ている。
先程の爆発は、それが原因か。後方からの斉射も、妙に勢いが無いと感じたのもそれだ。
余りの血飛沫に、トゥルーデは一瞬我を忘れ……いや、戦闘そのものを放棄し、エーリカの身体を抱いた。
「大丈夫か? ハルトマン、しっかりしろ!」
「うう……なんかきっついの貰っちゃったよ」
「怪我は大したことない。大丈夫だ」
残ったネウロイから距離を取りつつ、とりあえずMG42を背負うと、服の端を破ってエーリカの頭にあてがう。
みるみる血に染まり、切れ端から血が滴り落ちる。
自分のハンカチを始めあらゆる布地を総動員して即席の包帯を作り、ぎゅっと縛る。
「痛いよ、トゥルーデ」
「我慢しろ」
何故か分からないが、自分の方が血の気が引いている。
手を見る。エーリカの鮮血が、指の先までべっとりとついていた。
「ああ……なんてことだ」
エーリカの挙動が乱れた。意識が混濁しているらしい。トゥルーデはひとまずMG42二丁を束ね、エーリカを背負う。
ネウロイは旋回し、退路を塞いだ格好で二人を付け狙った。あと一人と言う余裕か、ビーム攻撃も爆弾ネウロイもでたらめだ。
どうする? 強引に基地への帰還を試みるか、それとも……。
息の荒いエーリカ。手にこびりついた真っ赤な血。残るネウロイはあと一体。いけるか。
トゥルーデは決めた。
エーリカの意識を保たせる為に喋り掛ける。
「以前、誰かに聞いた事がある。余興の席での事だが」
前を見据えて言葉を続ける。
「顔に血等で着色(ペイント)する事で、戦意を高める古代からの部族が居ると。また、色とする血はその生き物の闘志を受け継ぐと」
エーリカに振り向いて言った。
「分かるか、この意味?」
「……」
意識が朦朧としている様だ。エーリカからの返事は無い。トゥルーデは一人、口にした。
「お前の分まで戦い抜いて、ネウロイを仕留めてみせる」
エーリカの血に染まった左の親指を、ぐい、と頬から顎にかけて押し当てた。血の痕がそのままトゥルーデの顔にこびりつく。
きざみつけた、決意の、しるし。
「そして生きて、エーリカ、お前と共に戻る!」
“ハルトマン”ではなくエーリカと呼んだトゥルーデ。
激しい雄叫びをあげると、トゥルーデはエーリカを背負ったまま攻撃を開始した。
手負いとは思えぬ、その動き。
二人分の重量を活かした、急転直下の一撃必殺。エーリカのMG42も軽々と操り可能な限り連射し、ありったけの銃弾を浴びせる。
瞬く間にネウロイのコアが露出する。
そのまま海面すれすれまで下降し、そのまま反転し急上昇。僅かなスリップでビームを避けきると、最小限の動き、最高の速度で、
ネウロイを下方から攻撃した。
ネウロイも慌てたのか、爆弾ネウロイを続けて射出する。
ネウロイ本体とすれ違いざま、身体をターンさせてくるりと回転し、上昇しつつコアを目掛けて狙い撃つ。
コアを破壊されたネウロイは大きな爆音を立てて姿勢を乱し、破壊し、塵となった。
「よし! これであとは」
そこで唐突にトゥルーデの記憶が途切れた。
578scarface 06/07:2008/11/25(火) 11:07:06 ID:jxO2pWBO
トゥルーデは目を開いた。身体中が錆び付いた様に、言う事を聞かない。
「ここは……」
「あ、起きた? 医務室だよ。見てわかんない?」
「あ、ああ……」
包帯でぐるぐる巻きにされて、ベッドに寝かしつけられている自分を見、動揺する。
横では肘をついてトゥルーデを見つめるエーリカが居た。
辺りを見る。陽はとうに暮れ、ほのかなランプの明かりだけが二人を照らし出す。
「ハルトマン、これは一体」
「覚えてないの?」
エーリカの額に巻かれた包帯を見て、思い出した。
そうだ! あの時ハルトマンは負傷した。直後にネウロイ本体を仕留めたが、そのあとは、どうなったんだ……。
「大変だったんだから。トゥルーデ、本体に気を取られ過ぎて真っ正面から攻撃受けたって話しよ?」
「な、なに?」
「増援組が出ようとしたら、そこにふらふらの私達が帰って来て、基地中大騒ぎだったって」
「そ、そうか。基地に戻る事は出来たんだな」
何だかよく分からないが、自分が無意識にしたであろう……約束を守った事に安堵し、溜め息を付く。
「ミーナはかんかんになって監視所連絡部に飛んでったよ。もっと監視体制をしっかりしろ、いい加減な報告をするな、
私達を殺す気か、ってね」
「ミーナにも済まない事をしたな」
「でも、なんで」
上目遣いでじっとエーリカに見つめられる。
この表情、どうにかならないか。苦手なんだ、とトゥルーデは内心呟いた。
「あんな無茶したのよ」
「無茶?」
「あたしも確かにちょっとは焦ってたけど……なんで本体ばかり」
「それは……」
「トゥルーデ、気負い過ぎだよ」
「それは……確かに、私の責任だ。すまない」
無言でじっとエーリカに見つめられ、目のやり場に困る。ふと、エーリカの頭に巻かれた包帯に再度目がいく。
「エーリカは大丈夫なのか?」
オフの時の呼び方に変わった。エーリカはそれを聞いて表情を少し和らげた。
「私はちょっと爆発の破片がかすっただけ。それでごく軽〜い脳震盪を起こしただけだってお医者さんに言われたよ」
「そうか、大した事無かったんだな。良かった」
安堵するトゥルーデ。
「こんなの怪我のうちにはいんないよ」
ふっとハナで笑うエーリカ。そして言葉を続ける。
「私よりもトゥルーデの方がダメージ大きいんだから。分かってる?」
「それは……」
「私をかばって真正面から受けたんでしょ?」
その辺りの意識が無い。と言う事は、多分そうなんだろう。
「私が居たら……しっかりしてれば……こんな事にはならなかったんだけど」
僚機を絶対に失わない、エーリカのプライドが見え隠れする。
「すまない」
「どうして無茶したのよ」
繰り返される質問。謝る他無かった。エーリカは少し寂しげな表情で、ふと横を見た。
いたたまれなくなり、うつむくトゥルーデ。
医務室が静寂に包まれる。ランプの灯、時計の動く音だけが微かに聞こえる。
やがて、エーリカはぽつりと呟いた。
「ま、いいけどね」
諦めにも似た科白。何と言葉を掛けて良いか戸惑う。
579scarface 07/07:2008/11/25(火) 11:07:49 ID:jxO2pWBO
「今夜は、罰として私に付き合って貰うから」
急にエーリカの声色が変わった事にトゥルーデは身体がぞわっとした。よくない事の前兆か。それとも……。
「トゥルーデ、自分の身体見てわかんない?」
「? ……ぅわ!? なんだこれは!」
「包帯余ってたから縛ってみました〜」
全く気付かなかった。両腕が交差するかたちできつく縛られている。
「『みました〜』じゃないだろ! 解け! 早く!」
「かた〜く適当に結んだから、解けないかもね〜」
「こ、こんなの、私の力さえあれば」
「忘れた? トゥルーデ魔力使い果たして、まだ回復してないんだけどね〜」
「ううっ……」
「今のトゥルーデは、私のやりたい放題〜」
「うわ、やめろ!」
身動きの取れないトゥルーデに馬乗りになるエーリカ。
「こう言うプレイも何かこう、くるよね?」
「プレイって何だ? エーリカ、頼むからやめっ……んんっ」
無理矢理に唇を塞がれる。長いキスの後、エーリカはトゥルーデにしだれかかり、耳元で囁く。
「包帯姿の私達だよ?」
トゥルーデの顔をそっと両手で触り、歳不相応の妖艶な笑みを浮かべるエーリカ。
何故だか分からないが、どきっとして、同時にぞくっとするトゥルーデ。
「トゥルーデ、早く治ると良いね」
「本当にそう思ってるのか?」
「これはこれで、遊び甲斐が有るからいいかもね」
「かもねじゃないだろう」
「ねえ、トゥルーデ……」
顔を持たれたまま、再びの口吻。目を閉じるエーリカに、トゥルーデも思わず合わせる。
舌を絡ませ、濃く深くなる。
そのままつつ、と雫が垂れる。
エーリカは指先でそれを絡め取ると、トゥルーデの頬、そして自分の頬にぴーっと一直線に塗る仕草をしてみせた。
「な、なにを……」
「トゥルーデ、言ってたよね。フェイスペインティングがどうのって」
「な! 聞いてたのか!」
「トゥルーデの言う事は何でも聞こえるよ」
小悪魔的な笑みを浮かべ、またしてもトゥルーデの唇を奪う。
唇が離れる。お互いの熱い吐息が、頬を撫でる。
思わずはあっとつく息、恍惚の表情を見たエーリカは舌をちろっと舐めると、獲物をいただく獣よろしく、
本格的にトゥルーデを貪り始めた。
気付くと、いつしか腕の縛りも解けていて、エーリカをしっかりと抱き留めていた。
ああ、だから私はこいつに……だから“黒い悪魔”なんだ。
薄れる意識の中、トゥルーデはぼんやりとエーリカの顔を眺めていた。
580knights of the round table 01/03:2008/11/25(火) 11:09:09 ID:jxO2pWBO
澄みきった空。雲一つない快晴のブリタニア。
こんな日は任務なんか関係なしに何処まで行けるか、上昇出来るか飛んでみたくなる。
時折そよそよと吹く風に揺られ、ペリーヌは基地の裏庭で洗濯物を干していた。
「良い日ですこと」
誰に言うでもなく、呟く。
裏庭といえど、基地は広大だからここにも十分な程陽が当たる。
そして余り外からは人目に付かない。洗濯物を干すには絶好の場所だ。
ルッキーニは近くの茂みか木の上にでも、秘密の隠れ家をひとつかふたつ作っている筈だ。
もっとも裏庭なので、ガリアの方角は見えないのだが、今はそれでも良かった。
たまには、綺麗なだけの空も、見てみたい。
581knights of the round table 02/03:2008/11/25(火) 11:09:46 ID:jxO2pWBO
「いやー、よく晴れてるね〜」
呑気な声でやってきたのはシャーリーだった。
「あら大尉。どうしましたの?」
「見ての通り、洗濯当番さ」
かご一杯に詰められた洗濯物を山ほど抱え、よいこらしょと脇に積んだ。
「今日はエイラさんじゃ」
「そのエイラと交代だよ。ペリーヌこそ今日は当番じゃないだろ」
「わたくしも……エイラさんに押しつけられたんですわっ!」
「ほう、そうかい」
にやけるシャーリー。
「もう、これで二回目ですわ! あと一回分残ってるなんて勝手な事を……」
「あたしはあと三回分残ってるぞ」
「まったく、エイラさんと言う人は……」
「ほらほら、シーツの裾噛んじゃだめだって。洗いたてなんだから」
「……わたくしとしたことが」
シーツをはっと放し、慌てて洗濯ばさみでロープに留めた。
「それにしても何なんですのエイラさんは」
「まあ、ああ言う奴だからなぁ」
「それにしても、大尉は何故そんなにエイラさんと交代を?」
「エイラが言うには、『回避してやったのと同じ数だけヤッテモラウゾ〜』だってさ」
「わたくしも全く同じ事を言われましたわ」
「あいつ卑怯だよな〜。絶対当たらないのを良いことに、あたしらをダシに使って……いや、洗濯当番に使ってさ」
「まったくですわ」
「で、空いた時間は……まあいいや」
「何で追及を止めるんですの?」
「いや……なんか“ブーメラン”になりそうな気がして」
「何をおっしゃいます! だいたい、エイラさんはサーニャさんに構い過ぎなんですわ!」
くどくどと説教じみた愚痴がペリーヌの口から呪詛の如く垂れ流される。
「……まったく、不埒にも程がありましてよ。あんなザマでは隊の規律が乱れます。規律と言えば、大尉」
苦笑いして聞いていたシャーリーは、突然その矛先が向けられた事にぎくりとし、
内心ああやっぱりこっちにも来たかと観念した。
「規律違反は大尉もたくさんされてますわよね? 謹慎もそうです。勿論ルッキーニさんとの事も……
その、余り良くない噂も耳にしてましてよ? ねえ聞いてまして?」
「いや聞いてるよ」
「だったら、尚更大尉も……」
「あー、そう言えばこの前の扶桑の風呂での酒盛り、あれ楽しかったよなぁ」
「話を逸らさないでください!」
「あの時、ペリーヌは少佐に……」
「!!! そ、それは……扶桑のお酒は、口当たりとは別に酔いの回り方が……その……」
突然しどろもどろになる。
先日、ペリーヌが孤軍奮闘した夜間戦闘から帰った後、美緒の言葉通り「風呂で酒盛り」と言う、
少し趣向の変わった宴会が開かれた。風呂に入り、熱くした扶桑の酒をちびりちびりとやるのだが、
風呂ならではの血の巡りの良さと相まってペリーヌはへべれけに酔い潰れて記憶を無くし、
目が覚めたらそこは医務室。その後ミーナに「ちょっと」と呼び出され説教を喰らった。
そのいきさつを思い出し……記憶にない部分も多かったが……真っ赤になり、言葉が止まる。
そんなペリーヌをニヤニヤと眺めるシャーリー。
「扶桑の酒は口に合わないって?」
「そんな事ありませんわ! 少佐のお持ちになったものはどれも素晴らしいものばかりです!」
「肝油もか?」
「そ、それは……国によって嗜好も違いますから……」
あの独特な味を思い出し、げんなりするペリーヌ。
「エンジンオイルみたいだったな」
苦笑いするシャーリー。彼女も肝油は苦手らしい。
582knights of the round table 03/03:2008/11/25(火) 11:11:28 ID:jxO2pWBO
一通り洗濯物を干し終わって一息つく。
横に置かれた長椅子に、ひと一人分少し離れて座る。
空を見上げる。ちょうど訓練中なのか、トゥルーデとエーリカがロッテ(二機編隊)を組んで飛んでいる。
この前の怪我から復帰したばかりなのに大丈夫なのかしら、と少し心配になる。
「あいつらよくやるね〜。この前の分裂ネウロイ戦で怪我したばっかなのにな」
同じ事を考えていたらしい。空を見つめ、シャーリーが口にした。
「二人はエースですから、それなりの活躍はして頂かなくては隊として困りますけど、やり過ぎはもっと困りますわ」
「まあ、あの堅物は多分治んないよ」
「まったく……」
二人のすぐそばをエーリカが飛び過ぎる。突き抜ける様な風圧が二人の間を少し遅れて駆け抜ける。
洗濯物がはたはたとゆらめいた。
「でもまあ、ここ数日はネウロイも来ないし……さすがに奴等も連続出勤に疲れたかな?」
シャーリーが空を見たまま口にする。カールスラントコンビのロッテは見事な動きで、流石はうちのエースだと感心する。
シャーリーの言う通り、この数日はネウロイの襲来も無く、穏やかな日々が戻りつつあった。
緊張から解放されたのか、堂々と寝こける者が続出したが、ミーナは特別何も言わなかった。
美緒は相変わらず早朝からの訓練を欠かさなかったが、他の隊員は以前のかなりグダグダなペースに戻りつつあった。
「まあ、平和なのが一番だけどさ……あれ?」
シャーリーはペリーヌの返事が無い事に気付く。
いつの間にか、ペリーヌは眠っていた。こくりこくりと頷く様に頭を垂れる。
「おっと」
横に頭がぶれた。シャーリーはさっと間を詰め、ペリーヌの頭を肩でそっとキャッチした。
「疲れてるのは皆一緒か」
静かなもんだ。シャーリーは内心呟いた。ルッキーニも恐らくどこかの隠れ家で夢を見てる筈。
そして今空を飛んでいる二人、指揮を執る上官二人以外は……きっとそれぞれが何処かで、束の間の休息を楽しんでいるに違いない。
「平和って良いよな」
誰に言うとでもなくシャーリーは口にした。直後、大きなあくびが喉の奥から出てくる。
「あたしも眠くなってきた」
シャーリーに身を預けてぐっすりと眠るペリーヌ。
いつもは気丈に……時には過敏・過激・過剰に振る舞う彼女も、やっぱり何処か頑張っちゃってるところがあるんだろうな。
無理しなくて良いのにさ。あたしら家族みたいなもんなんだから。
シャーリーはそう呟いた。当然ペリーヌの耳には入っていない。でもそれで良かった。
それよりも、今はほのかな風が語りかける方が良い。
爽やかな風は、地上の全てのものを平等に癒してくれる。洗濯物もよく乾く。
「あと三回か」
ふう、と溜め息をつくシャーリー。
明日の天気はどうだろう。また晴れたら、洗濯当番は同じように心地よい空の下で洗濯物に囲まれるんだろうか。
そんなどうでも良い事を考えているうちに、シャーリーも瞼が重くなってきた。
ペリーヌと寄り添う様に、静かに目を閉じる。風の音、鳥の囁き、洗濯物のはためきを感じる。
そこに迫り来る一陣の風。
ぶわっと勢いの良い風圧がシャーリーとペリーヌの髪をかき乱した。
よ〜く聞き覚えのある、あのプロペラ音にエンジン音……Fw190D-6だな。
「まったく、無粋な奴だよ」
これだから……と呟くと、再びシャーリーはゆっくり目を閉じた。

end

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以上です。さすがに2本連続はちょっときつかったですね。
特に2本目はなんかグダグダな感じになってしまいました…。
たびたびのスレ汚し失礼しました。
583名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 12:59:41 ID:ZC3mWe7w
GJが追いつかないのがもどかしくなる勢いだ
これだけの良作を次々と読めるなんて
このスレと全住人に感謝してもしきれない
相関図が発表されてもそれを上手くSS内で消化してたり
前向きなレスが多く見受けられたり、頼もしい限りだ
584名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 13:20:36 ID:r5fr/eZM
前言いそびれたことを言わせてもらう
このAC好きめw
渋い作風がいいね
585あのひのうた 1/8:2008/11/25(火) 15:23:50 ID:Eqf5gf14

みなさんどうもお久しぶりです。21X2w2Ibです。
前に寝ないで書くとか言ってたSS投下。
実際は書きあがってたけど投下する時間がなくてこんな遅くなってしまった。申し訳ない

―――

だいじょうぶ?エイラさん。

医務室で私に付き添っていたミヤフジが、心配そうに話し掛けて来ているような気がする。気がする、としか
認識することが出来ないのは体中全部が上手く働かないからだ。視界はぼやけて、耳は綿を詰めたように
くぐもって、鼻と口ではぜえ、はあ、と荒い息を吐いて。手も足も上手く動かない。頭も上手く働かない。

始まりはただの風邪だと思っていた。3日ほど前から体が少しだるくて、だけどそれだけだったからいつも
どおり過ごすことにした。誰かに言って心配されるのなんて面倒だったから何も言わずに、ただサーニャに
だけは『少し風邪引いたみたいだから近づかないほうがいい』と頼んで。

きっと寝冷えしたんだ。ご飯を食べて、少し体を動かせばいつもの調子に戻るに違いない──そう思い込
んで大事もとらずに訓練に出掛けようとしたのが、災いしたらしい。

それは、ふっとろうそくの灯火を吹き消すような感覚だった。たった一つ、けれど懸命に、灯していたその
光が消えた瞬間、私の視界は闇に包まれた。それは編隊飛行訓練の真っ最中で、その瞬間体中の力が
抜けて、なすすべもなくがくりとうなだれたのを覚えている。そして上へ上へと私を持ち上げていたものが
なくなって、足からストライカーが抜け落ちていくのを感じたのが、最後。
気がついたら、私は医務室のベッドのようなところに寝かされていた。感じる微かな消毒液の匂いと、ぼん
やりと映る白い天井で、私はそこが空でないことを知った。
霞みがかった意識と景色の向こうで、ミヤフジが懸命に私に手を当てて治癒魔法を使っていて、けれども
しばらくして坂本少佐らしき人に止められていたっけ。

(怪我とは違うんだ、ミヤフジ。お前じゃどうしようもない!)
(けど、エイラさんがっ!)

それが恐らく、つい先ほどの話。時間の感覚もよくわからなくて、それから何分たったのか、何時間たった
のか、もしかしたら何日も経ってしまっていたのか、もう分からない。けれども多分もう坂本少佐はいなくて、
私に付き添っているのは一緒にロッテを組んでいたミヤフジだけのようだった。あの青白い光はもう見え
ないから、言いつけどおり治癒魔法を使うのは止めたのだろう。…ごめんな、ミヤフジ。
不意に頭がずん、と痛んでウウウ、と言葉にならないうめき声を上げる。エイラさんっ!ミヤフジが叫ぶけれど
も何も出来ない。手足はしびれていて何の役にも立たない。顔が熱い。体は寒い。ありとあらゆる部分が
てんでばらばらに不平不満を述べて頭が壊れちゃってるみたいだ。こら、お前ら落ち着けよ。

(大丈夫かな、サーニャ、大丈夫かな)

そんなことばかりを頭の中でずっと、呪文のように唱えていた。他の何かを考えようとしても生まれ出たその
瞬間から掻き消えてしまって、まっさらになった頭にその気持ちだけがぽっかりと取り残されて浮かぶのだった。
今朝、やっぱり寝ぼけて私の部屋にやってきたサーニャ。私のベッドで眠ろうとしたけれど、なんだか風邪
気味だから危ないとすぐに部屋に送り返した。けれどそれを差し引いてもサーニャは私とよく過ごしている
んだ。伝染ってしまったかもしれない。サーニャももしかしたら私と同じように苦しんでいるのかもしれない。

…自分が苦しいことよりも私にはよっぽど、そっちのほうが苦しい。自分の苦しんでる姿なんて鏡を見な
けりゃわからないけど、サーニャの苦しいのはすぐわかる。それを隠そうと懸命でいるのさえ分かってしまう。
だから、嫌だ。
どうかどうか無事でいて。君が苦しむのは見たくないんだ。そんなことばかりを、一心に願って、けれど言葉に
して伝えることが出来ないからもどかしくて。

586あのひのうた 2/8:2008/11/25(火) 15:24:24 ID:Eqf5gf14

バタン!
遠くで大きな大きな音がした。「***ちゃん!?」。ミヤフジが誰かの名前を叫ぶ。誰だろう、リーネか
誰かか?朦朧とした頭で、私は思う。…美味い飯でも作ってきてくれたのかな。けど、悪いけど、今は食べ
られそうにないや。でもあとで絶対食ってやるから今は勘弁してくれよ。
けど、何だか違うみたいだった。

「エイラッ!!!」

私の意識の遠く、、けれどもたぶんすぐ近くで、恐らく今しがた慌しく医務室に入ってきた人間が私の名前を
呼んだ。医務室中に響き渡るほどのその大声は、鼓膜の直後でくぐもって反響して、不思議な音の響きに
変わっていく。…そんなに叫ぶなよ。ちゃんと聞こえてるって。
ぼんやりと目の前に映るその子に向かって手を伸ばす。ぼたぼだと、熱い何かが頬を濡らした。だってそれ
と来たら熱が出ているせいでいつもよりよっぽど熱くなっている私の頬よりもよっぽど熱いんだ。やけど
しそうなほどなんだ。誰か、なんてもう判別できない。けれどもわかった。わからないはずがない。無意識で
だってぴたりと当てて見せる。

なかないで、さーにゃ。

笑ってそう言ってやりたかったけど、出来なくて。けれども彼女に触れたその瞬間体の奥から不思議な力が
あふれ出てきた。体中が青白い光で包まれていく。目の前さえも眩しくて、眩しくて、もう何も見えない。
…ミヤフジの魔法か?体中の痛みをかき消すように、私の存在さえかき消すように。さあっと体中を流れて
いったその奔流のような力に押し流されるようにして、私は再び意識を失った。





どこだ、ここは。
ハッと気が付くと、先ほどまでぎゅうぎゅうと私を押しつぶしていた天井はもうなくて、空には高い高い、空が
広がっていた。ひゅう、と柔らかな風が吹き抜ける。医務室じゃないことは確かだな、なんて思いながら肩を
すくめた。──不思議なことに、私はひどい風邪を引いてうなされていたはずなのに今はとてもとても体が
軽いのだった。自分の姿を見やると、私の着ているのはいつもの水色の軍服。スオムスの空と、雪の色を
した服。あれ、私、寝巻きを着せられてなかったっけ?

どこまでも果てしなく広がる青い空と、生い茂る緑の木々とそして、足元を彩るたくさんの花。そんな場所に
私はいた。どこなのかは分からない。けれどここは現実の、どこかの花畑なのだった。だって草の匂いも、
風の音も、太陽の暖かさも、全部全部本物だ。夢なんかじゃない。

(…ワープした?まさか、そんな)

空間瞬間移動能力を持ったウィッチが存在したと言う文献は確かにある。…けどそれ自体がまず伝説的な
話だし、出来ても数十メートル程度の小範囲だったはずだった。こんな景色、基地の周りで見たことなんて
ない。そもそも私にそんな力があるはずがない。

これからどうする?とりあえずは基地に帰還しなくちゃいけないだろうれど、ここがどこだか分からないと
身動きのとりようもない。人を探そうにも、やっぱり当てなんてない。…ストライカーを持たない、ただの15の
子供の足だ、機動力なんて高が知れてる。
せっかく風邪が治ったのになあ。軽くなった体をひねるように動かして調子を探ると思うとおりに動いてくれる。
うん、いい。すこぶる良い感じだ。なんだか今ならなんだって出来そうだ。

587あのひのうた 3/8:2008/11/25(火) 15:25:12 ID:Eqf5gf14

まあ、人家を探すくらいなら一人でだって日が暮れる前に何とかなるだろう──そう思って一度伸びをした
そのときだった。


「おねえちゃん、だあれ?」


下から聞こえた幼い声に、慌てて私は自分の足元に視線を移した。見ると、そこでは5,6歳歳くらいだろうか─
大きな黒いリボンをした銀色の髪の女の子がにっこり笑んでいて。なんで今まで気が付かなかったんだろう?
そもそも気配なんてあったか?思いながらつい、私も愛想笑いを返す。

「ヤ、ヤア」
「!!おねえちゃん、わんちゃんの尻尾と耳がある!!」
「や、ヤメロ、触るなって!それとこれは狐!犬じゃナイ!!」
「キツネさん?…黒いキツネさん?変なの」

しゃがみこんで視線を合わせると、その子は無邪気に笑んで臆することもなく私に触れてくるのだった。
…あれ?耳と尻尾、出てたのか?彼女に触れられて初めて気が付く。…おかしい。こんなにも気を抜いた
状態で魔力が放出されるはずはないのに、どうして?わからないけれど無意識ででも出ている以上意識して
しまいこむのは難しくて、まあまだ疲れているわけでもないし、とそのままにしておくことにする。
むしろ今の私はとてもとても調子が良いのだ。明日の天気ぐらいまで先読みできそうなくらいに。

「おねえちゃん、しゃべり方も変なのー」
「う、ひどいナァ。ちょっとは気にしてるんだぞ、ソレ」

うふふふ、とその女の子はそんなちっぽけなことさえも心底おかしいと言わんばかりにおなかを抱えて、
ころころと笑うのだった。白いシャツに、黒くて長いベルト。モノトーンの服が彼女の白い肌に良く映えている。
…私はこの女の子をとてもよく知っている気がした。けれど、誰に似ているのかうまく思い出せない。私は
エイラ・イルマタル・ユーティライネン。スオムス空軍少尉。…うん、間違いない。今の所属は第501統合
戦闘航空団で…と、額に手を当てて考えていたら、頭の上にぱさりと何かが乗せられた。なんだろう、と
思って見やるとその、誰かによく似た女の子が手を伸ばして、シロツメクサで作った王冠を乗せてくれた
ようなのだった。

「おねえちゃんだいじょうぶ?」
女の子が尋ねてくる。
「お顔がこわい。きゅー、ってなってるよ」

…そう指摘されて始めて、私は自分が顔をしかめていることに
気が付いた。ゆっくりと笑んで、アリガトナ。彼女の頭に手を伸ばしながら礼を言う。

「ナア、お前…イヤ、君の、名前は?私の名前はエイラ。エイラ・イルマタル・ユーティライネン。」
「…エイマ…ライネ…長いよう。覚えられないからキツネさんでいい?」
「…名乗った意味ないじゃんかヨー……ま、いっか。」
呆れたように私が言うと、その子はいたずらっぽく笑って「いいの!」なんて言う。そして私が諦めて肩を
すくめたら、とても嬉しそうに飛び上がった。なんかすごく、活発な子だなあ。…まあ、私の知ってるあの子猫
ほどじゃないけどさ。…ええと、だれだっけ。名前がよく思い出せない。…まあ、いっか。
「わあい!あのね、あのね、私はリーリヤ。みんなリーリヤって呼ぶから。だからお姉ちゃんもリーリヤって
 呼んでいいよ!」
「そっか、わかったヨ、リーリヤ」
「うん、キツネさん!」

588あのひのうた 4/8:2008/11/25(火) 15:25:44 ID:Eqf5gf14

頭を撫でてやったら、ふふふ、と嬉しそうに笑んだ。本当に良く笑う子だ、と思う。特別なことをしてやったわけ
でもないのに私も何だかすごく嬉しくて、口許が緩んだ。
ねえ、お話ようよ。リーリヤがそう言うから花畑の真ん中に二人並んで座り込んだ。太陽がぽかぽかと
温かくて、風は穏やかでとてもとても心地が良い。見知らぬ土地だというのに何だかとても懐かしいような
気持ちにさえなっている。

「ね、キツネさんは魔女さんなの?」
ふわふわと、私の耳に触れながらリーリヤが尋ねてきた。くすぐったくて、普段ならとても嫌な事なんだ
けれど今は別にいやじゃない。
うん、そうだ。私は答えた。

「私はウィッチだヨ。スオムス空軍に所属してル」
「うぃっち…くうぐん……キツネさんは、戦争するの?」
「アア」

頷くと、リーリヤの顔が明らかに曇った。そして口を尖らせて言ってくる。
「キツネさん、だめよ。戦うのは、だめ。」
「エー、そんなこと言ってもナア…」
「…戦争は嫌い。たくさんの人が傷つくもん。お父様がそう言ってたから、だめ」
「…それは、そうだケド…」

リーリヤの幼い言葉が私の心にグサリと付き刺さる。いつのまにか私の中で当たり前になっていた『戦う』と
いうことの恐ろしさを改めて突きつけられた気がした。そっか、普通の人は、子供は、そんな風に思うんだ。
軍に入ってからはずっと戦うことが当たり前の生活をしてきたから、いつの間にか忘れていた。
…長いこと、ウィッチとしてネウロイと戦ってきた。その中で失った仲間はもちろんゼロなんかじゃない。こんな、
リーリヤみたいな子供にとったらその世界はさながら地獄としか言えないような、そんな場所だ。

「…ケド」
「…?」
「私は戦うヨ、守りたいものがあるカラ。大切な人だっている。戦うのを止めたら、守れナイ。そんなのは
 イヤだし…私にその力があるなら、私は戦ウ。だからウィッチになったんダ」

きっとリーリヤは小さいからまだ私の言葉の意味なんてわからないだろうと思った。それでも良いから、伝え
たかった。
世界中でも、魔法を使える女の子は一握りだ。女の子なら誰でも素質があるとはいえウィッチになれるほど
の魔力を持つものとなるとまたごく限られてしまう。…その中でまた、特殊能力を持つほどの力があるのは
その中からまた、ごくごくわずか。私が今いる部隊みたいにみんながみんな特殊能力を持つような場所に
いると忘れてしまうけれど、私たちは皆世界中からガリア解放のために選ばれたその一握りの中の、その
また一握りなのだ。

多分ここでの戦いが終わっても、私はスオムスに戻って戦い続けるだろうと思う。それこそネウロイがこの
世界にいて、私が魔法を使える限り、ずっと。この体に宿っている、敵の攻撃を先読みする未来予知の力を
使って。この力のおかげで私は何度命を救われたことだろう。この力があったから守れたものがたくさんある。
だから私は、今自分がこうしてウィッチになって軍に在籍していることをなんら後悔していない。むしろ感謝
している。この力があって良かった。おかげで大切なものを守ることが出来るんだから。

「わかんないよ、そんなの」
「わかんなくってもいいヨ。わかんなくたって、良いんダ」

悲しそうな顔をするリーリヤを安心させるように、ニコ、と笑いかけてやる。戦いを憎む気持ちは、ないよりは
あったほうが良い。好き好んで戦いに身を投じるよりは、ずっと良い。
ただ、私たちにだって戦う理由がある。そのことを心のどこかにとどめておいて欲しいな、なんて思ったのだ。

589あのひのうた 5/8:2008/11/25(火) 15:26:18 ID:Eqf5gf14

「…この話はもうヤメだ、ヤメ!ナァ、リーリヤには夢とかないのか?好きなこととか、大切なものトカ」

でも、でも。今にも泣きそうな顔をしているリーリヤを見ていることなんて出来なくて、私はわざと声を明るく
して話題を変える。そうしたら途端に顔がぱぁ、っと輝いた。そして何かを言いたげにニコニコ、ソワソワして
こちらをちらちらと見る。私は笑って言う。なんだよ、もったいぶるなよ。聞きたい?ねえ、聞きたい?そう
言いたげなリーリヤの様子を見て、どこかほっとしている自分に気が付く。…うん、この子に悲しい顔なんて
似合わない。笑っていたほうが、ずっと良い。

「あのね、リーリヤはね…おんがく!音楽が好き!」
「…音楽?リーリヤは音楽をするのカ?」
「うん、ピアノを弾くの。将来はお父様みたいなピアニストになって、世界じゅうを回るの。そして、みんなを
 笑顔にしてあげるの!!」
「ピアノかー、すっげー!音楽で、世界中を笑顔にスル…いいナ!そういうの」
「でしょ、でしょう!?」

お父様はすごいのよ。言いながらその、小さな指を動かすリーリヤ。どうやらピアノを弾くジェスチャーらしい。
ふん、ふん、と歌う鼻歌は、彼女の父親が作ったものなのだろうか。…それはどこか聞き覚えのあるメロディで、
けれども、記憶に霞が掛かっているようで、上手く思い出せない。

「…だから、来月からウィーンに行くの。音楽の学校で、ピアノを勉強するの」
「…ウィーン?オストマルクの?」
「うん。お父様やお母様とお別れになるのは寂しいけど、私、頑張るんだ。……ねえ、いつか、キツネさんも
 聴きに来てね。戦争なんて止めて、リーリヤのピアノ、聞いてね」
「……」

…嘘だ。思わずポロリとこぼしそうになって慌てて口を押さえる。だってウィーンは、オストマルクは…もう、
陥落したはず。そこにはもう、リーリヤが行く音楽学校なんてあるはずがない。

けれどそんなこと言うことなんて出来やしないと思った。絶対だよ。そう言って指を差し出してくるリーリヤの
笑顔を曇らせたくなんかなかったんだ。
うん、約束する。聴きに行くよ、絶対。笑顔を浮かべて差し出された小指に私のソレを絡める。小さな小さな
指だ。この指は、一体どんな音楽を紡ぐんだろう。…聴いてみたい。世界の至るところで、思う存分弾かせて
あげたい。彼女が安心して回れるような、そんな世界を作りたい。心の中でそっと誓う。
ああ、ほら。戦う理由がまた一つ増えた。やっぱり私は戦うのを止めるわけにはいかない。ゴメンなリーリヤ、
やっぱり私にはこのやり方しかないからさ。

ぽろん、ぽろん。
遠くから、誰かがピアノを奏でる音がした。その音を聞くや否やリーリヤが飛び上がる。
「お父様が呼んでる。帰らなくちゃ」
話しながら摘んでいた花を抱えなおしながらリーリヤは言った。きっともともと、これが目的だったのだろう。
音楽家のお父さんに花を摘んでやる娘。…うん、良い子だ。優しい子だ。

ぽろん、ぽろん。
じゃあね、またね、キツネのお姉ちゃん。盛んに手を振って、遠ざかっていく背中に手を振りながらあれ、
と思う。…このメロディを、私は良く知っている。

(お父様が私に作ってくれた曲なの)

嬉しそうに、けれども少し寂しそうに、私の大切な、大切なあの子がそう言って奏でてくれたあの曲だ。聞き
違えるはずがない。
それをきっかけにするように、今までなぜか思い出せなかった色々なことが突然頭に流れ込んでくる。
隊のこと、仲間のみんな、今日あったこと。全部、全部。最後に頭に浮かんだのは、リーリヤととてもよく似た
顔立ちをした、女の子の泣き顔だった。
…まさか、彼女は、リーリヤは。

590あのひのうた 6/8:2008/11/25(火) 15:26:58 ID:Eqf5gf14

「まって、リーリヤ!!」
ねえ、リーリヤって、君の本当の名前じゃないだろう?『みんながそう呼ぶから』って、そう言っていた。じゃあ
君の本当の名前は──

力いっぱい叫んで、彼女を追いかける。ふっと立ち止まった彼女の手をぎゅっと掴んだ瞬間、頭の中を何かが
よぎった。目の前の子が少し大人びたような女の子が、どこか広い場所でピアノを弾いている。…ああ、
この場所は、私が今から帰ろうと思っている場所だ。よく知っている、あの場所だ。…私はその傍らにいて、
彼女の奏でる曲の譜めくりをしているのだった。ふと、彼女が顔を上げる。そして淡く笑いかけてくれる。

「どうしたの、キツネさん?」

その瞬間、涙がぽろぽろとこぼれてきた。私が"視た"その景色と、今目の前にいるリーリヤの顔が被った
からだ。満面の笑みを浮かべて、リーリヤが私を見上げている。
だめだ、だめだよリーリヤ。ウィーンなんか行っちゃだめだ。行ったら君は、とてもとても悲しい思いをする
ことになる。
どうにかしてそう伝えたくて、けれどもどんなに声を上げようとしてもなぜかもうそこから音が出てこないの
だった。景色がぼんやりと霞んでいく。霧に包まれたようになって、私以外がなくなっていく。リーリヤが
驚いた顔をして何かを叫んでいた。…ああ、違う。消えているのは私の方なんだ。

最後までぼんやりと残っていたリーリヤの姿が掻き消えた瞬間、ぷつりと意識がなくなった。





「リーリヤッ!!!」
叫んでガバッと起き上がる。翻してしまった毛布の感覚にあれ、と思って見渡すと、そこは見慣れた…訳でも
ない、けれどもよく知っている、基地の医務室だった。
ズキリと頭が痛んで、抑えようと右手を上げようとして、けれども出来なかった。

「エイラ…?」

その右手をぎゅっと握ったまま、驚いたように私を見ている人がいたからだ。もともと機微の少ないその顔
は、今はそれでも明白に分かるくらいに悲しげにゆがめられている。
(ああ、ここに、いた)
リーリヤ。かすれた声で呟いたら、彼女は目を見開いた。どうしてその名前を、とでも言いたげな顔で私を
見ている。…私はとても、とても、悲しい気持ちになってしまった。悲しくて悲しくて、思わずその手を引いて
その子を抱きしめる。目から涙がとめどなく溢れて止まらない。エイラ、どうしたの、エイラ。何度も何度も
尋ねてくるけれど、上手く答えることが出来ないような気がして何も言えなかった。

確証なんてない。どうして私がそれを見たのかも、それを自らで知覚することが出来たのかもわからない。
でももっともっと深い、本能的な何かで私はこのことを理解していた。
──あれは、この子の、過去なんだって。
だから悲しくて、悔しかった。けれども、彼女を励ます言葉なんて何も見つからなかったから口をつぐんだ
のだ。

…だって、あの子はあんなにも無邪気に笑ってたのに。自分のピアノで世界中を笑顔にするんだって、強い
瞳で夢を語っていたのに。
戦争は嫌いだって、誰かが傷つくのを見るのはイヤだって、あんなに悲しそうな顔で言ってたのに。
夢と希望に満ち溢れて向かったウィーンで、この子はどんな地獄を見ただろう。入りたくない軍に入って、
握りたくない武器をその手に抱いて──それもこれもこの子に、戦う力があったから。戦いを嫌うこの子を
戦わせるのために、目には見えない、どこかの誰かが勝手にこの子に力を授けてしまったから。

591あのひのうた 7/8:2008/11/25(火) 15:27:48 ID:Eqf5gf14

笑ってくれよ、お願いだよ。きっとそう懇願したって、この子はもう曖昧にしか笑えない。あの頃浮かべていた
ような無邪気な笑顔を浮かべることなんて出来やしないんだ。戦争は嫌だなんて、わがままを言うことだって
出来ない。音楽で世界を笑顔にするなんて、夢を語ることも出来ない。私はそれを聴いてみたいのに、思う
存分弾かせてあげたいのに、世界はそれとは違った意味で、彼女を必要としている。

「泣かないで、エイラ」

何かの感情を必死に押し殺したような、穏やかな口調で彼女が言う。ふるふると私は首を振る。そんなの
無理だ。だってこんなに悲しいんだ。だけどなんていえばいいのか分からない。慰めてやりたいのは私の
方なのに、何で私のほうが慰められてるんだろう。ダメだ、ダメダメだ、私。

「わかってるよ、ちゃんと、わかってるから」

何が分かってるのか、聞いている私には分からない。もしかしたらその言葉に意味なんてなくてただ、私を
慰めるためだけのものだったのかもしれない。
いつかこの子の夢が叶う日が来るといい。そして、この子が昔と同じようなあの、朗らかな笑顔を浮かべる
ことが出来る日が来たなら。…そのときその傍らに、私がいれたなら、いい。

「…目を覚ましてくれてよかった。もう起きないかと思ったの」

すごく苦しそうで、それなのに魔法を使うときみたいに体が光っていたの。呼んでも起きてくれなくなったの。
ずっと、ずっと、起きてくれなかったの。どうしたら良いのか分からなくて怖かったの。
私の腕の中でサーニャが言う。うん、ごめん、ごめん。うわ言のように呟いて、私はその小さな体をもっと
もっと強く、抱きしめた。
だいじょうぶ、って、言ってやりたかったのだ。君の夢は叶うよ。世界中を音楽で笑顔にする君の姿がちゃんと
見えるよ、サーニャ。…もしもさっきリーリヤの未来を私が見たように、今のサーニャの未来も見ることが
出来たなら。でも、普段の私にはそんな遠くの未来を見ることなんて出来やしなかった。



「…魔力の暴走、か…」
つい先ほどまでてんやわんやだった医務室に再び二人残されて、私はぼんやりと呟く。
意識が途切れたあのときに私の体を包んだあの光は、ミヤフジのものではなかったらしい。私が、無意識で
魔力を放出していたのだ。けれど魔力を使っていることをあらわす使い魔の耳や尻尾は出さずにいたから、
無理やり閉じた蛇口を引っこ抜いて水を出すような状態だったのではないかと、私が意識を取り戻した報せを
聞きつけたミーナ中佐は私に簡単に説明してくれ。驚いたことに、私は三日間もそんな状態で眠り続けて
いたらしい。

行き場を失った力は暴走して、普段とは真逆に、しかも強烈に、働いたのでは──と私の話を聞いた中佐は
言っていた。つまり自分でなく他人の、遠い過去へと干渉するほどの。

(憶測でしかないけれど…文字通り魔法、と言うしかないわね。)
幼いサーニャに会って、話をして、触れるなんて事普通できるはずがない。でも、『魔法』なんだから、何が
起きても仕方がない。そう納得するしかない。中佐はそう曖昧に笑っていた。
まあ、そこまで説明したところで噂を聞きつけた他のみんなまで半分野次馬感覚で医務室に詰め掛けてきた
もんだから結局うやむやになってしまったんだけれど。
ちなみになんだかいつもよりもずっと凄みのあるサーニャの「静かにしてください」の一言で、みんなしぶしぶ
解散した。そんなわけで今はとてもとても平和だ。

「エイラ、」

ぼつりとサーニャが言った。床についている私の手を、先ほどからぎゅっと握って離してくれない。魔力と
一緒に悪いものまで放出したようで、私の体はずいぶんと快復したのにサーニャと来たら「寝なきゃだめ」の
一点張りで私を起き上がらせてもくれないのだった。三日も寝てたならもう十分だろうと思うのに。

592あのひのうた 8/8:2008/11/25(火) 15:29:51 ID:Eqf5gf14

どうした、サーニャ?私は答える。繋がった手が何だか熱い。…こうしていると、さっきサーニャに抱きついて
泣いてしまったことを思い出して何だかすごく情けない気持ちになるんだけどなあ。…もちろんミヤフジと
ミーナ中佐がやってきた瞬間パッと離れたけれど、サーニャは手だけはみんながいる最中も離してくれ
なかった。

「…いつか、戦いが終わったら…私のピアノを聴きにきてくれる?」

唐突に尋ねられたその言葉は、リーリヤの言ったそれとよく似てる。懇願する代わりにサーニャはその手に
力を込めたのがわかった。
…私の目頭がまた、熱くなる。けれどこらえる。でも今度は悲しいんじゃない。嬉しかったんだ。…だって今、
こうしてサーニャは夢を捨てて、ウィッチとして戦ってる。すべては世界を守るために。けど、あの頃のサーニャ
の夢は、リーリヤの夢は。

「世界中を笑顔にしたいの、私のピアノで。…一番に、エイラに聞いて欲しいの」

ちゃんとほら、今もサーニャの中で息づいてる。それが嬉しい。すごく、嬉しい。

「言われなくたって付いてくヨ。当たり前ダロ」

答えたら、サーニャがひどく驚いた顔をして私を見やっていた。なんだ?変なこといったか?だって世界中を
回らなくちゃいけないんだぞ、大変じゃないか。そう思って首をかしげると、サーニャは小さくふふふ、と笑う。
あの頃のような朗らかなものじゃないけれど、笑ってくれる。なんだかそれだけでまあいいか、と思える辺り
私は相当この子に弱いよなあ、と思ったりもする。

エイラ。もう一度名前を呼びかけられて、なんだろうと思ったらサーニャが顔を近づけてきた。額が合わさる
ほど近くに顔があって、私の心臓がばくばくと音を鳴らす体は大分楽になったとはいえまだ本調子じゃない。
少し気だるいところもある。私は慌てて引き離そうとしたけれど、両手はいつの間にやらサーニャによって
拘束されているのだった。

「サーニャ、風邪、うつる。離れロ」
「やだ」
「ヤダ、って…」
「リーリヤって呼んで」
「な、なんでダヨ」
「呼んで欲しいの。」

サーニャが体を少し引いて、私の頭のすぐ脇の枕にボフ、とうつぶせに頭を落ち着かせる。私の口のすぐ
近くに、サーニャの耳が銀色の髪に隠れて見える。
観念した私は、その耳に向かってゆっくりとその、彼女の愛称を呟いた。リーリヤ、百合の花。…うん、なんて
サーニャにぴったりの愛称だろう。

「…リーリヤ。」
「ありがとう、キツネさん」

あのときのウィッチさんはエイラだったのね。キツネのお姉ちゃん。
今度驚きに目を見開いたのは、私のほうだった。

―――
以上です。さすが連休、SSラッシュ過ぎてGJが追いつかなかった…!みんな本当GJGJ!!

>>523を読みながらすげえ自分の考えてた話とそっくりだ!と思ってたらそう言えば自分が書き込んだネタでした。
まさか本当に文章にしてもらえるとは思わなかった。本当にありがとう、GJ!!
よしじゃあ今度は「どうしたらセクシーになれるか」とシャーリーに相談して「髪伸ばせば?」とアドバイスを受けるシャーリカを(ry
593名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 15:56:27 ID:r5fr/eZM
>>592
GJGJ!サーニャはウィーンで勉強していた時襲撃を受けて親と離れちゃったのかな
イッルとかリーリヤって呼ばれてる所も見たいなあ

>よしじゃあ今度は「どうしたらセクシーになれるか」とシャーリーに相談して「髪伸ばせば?」とアドバイスを受けるシャーリカを(ry
たまにこのスレの住人は読心術の魔法を使うから困る
594名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 16:47:38 ID:PaIYnh2Z
>>592
GJすぎます…
電車の中だというのに泣きそうになった
家帰ってから泣きます…
595名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 16:56:10 ID:Pe1gTrEr
みんなGJ!そして>>533さん私はエルマ歓迎ですよ!


さて・・・先手を打たれた以上放置中のエルマ×アホネン×エイラSSを作らねば・・・
596名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 19:18:08 ID:+w+Nj+fn
>>592
ウィーンに行くなって言えなかったと謝るエイラと、でもそうしてたらエイラにあえなかったみたいなこと言うサーニャとか。
タイムリープ物いいなぁGJ!

>>523
シャッキーニとかエーゲルだと、大切にしすぎて手が出せないってのはなるほどって感じで非常に萌えるのに
エイラーニャで考えるとヘタレの言い訳にしか聞こえない不思議!
597名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 19:29:24 ID:zFM1c1tr
>>592
百合とかそういうの忘れて読みふけってしまった、GJ
挿絵つけたら普通に売れそうだ
598名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 19:45:51 ID:D2grqU9L
>>592
これは泣いたわ・・・いつもGJです
599名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 20:37:04 ID:eNVVEoHC
>>592
このハイペースでこのクオリティを量産できるあなたこそまさしくウィッチだ!
GJ!!こんなん読んだら書きかけてた芳ーニャの続きが書けなくなっちゃうジャマイカ……。
ホント堪能させていただきました。これがエースか……!!

ところで450kB超えたわけだが。
そろそろ注意せねばなるまい。
600名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 20:44:27 ID:SOiFvXmC
注意喚起乙
前スレはいつの間にか500KB超えてたからな
601名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 21:05:49 ID:CDCorN2y
>>569
そう、たしかに今まではリーネの一人相撲だった
意識のない芳佳の隣でyったり後ろでyったり(後ろからやったり)と、それは悪戯の域を出なかった…
しかしここからは二人一緒に歩んでいくんですね、>>延々と変態えろすな展開!! わかりますわかりますとも!!

何にしても氏の話は考証が丁寧で毎回面白いよ
602名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 21:13:48 ID:SAVKbXzP
昨日今日投下した職人乙
エイラーニャ良いよエイラーニャ
上の方で投下されてたシャーゲル良いな
今までエーリカ→ゲルトが多かったし
近すぎて〜あたりまえで〜て感じだったけど、離れて・・・
な感じはエイラーニャネタでも使えるな

603名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 21:16:35 ID:bAuYbzMB
今まで隣にいるのが当たり前だったのに、離れて初めてエイラの大切さに気付くサーニャですね
その時にサーニャ→エイラが確固たる物となる
604名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 21:46:28 ID:twTgMrms
>>603
いいよねそういうの
605名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 22:03:39 ID:a0Prvttx
ガリア解放後各自が元の所属部隊に戻る時にそんな事やらがあって一緒にスオムスへ
みたいなのだといいなあとか妄想
606名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 22:09:23 ID:SAVKbXzP
良いなその過程
501解散で離ればなれになりそうで気づくというわけか
607名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 22:10:30 ID:DHy/XgQJ
相関図の話から一転してSSラッシュ!!みんなGJすぎる!!!!

>>518
同じくシャーゲル好きとしては、講演を生で聞いてて思ったのは
鈴木氏は本スレは見てたとしても、ここは見てないんだろうな〜てw

シャーゲルは少数派かもしれないけど、だからこそこれからも期待してるよ〜!
今回のエーゲルに絡むシャーリーももちろん楽しめましたが。

股間督が人気投票で最下位だったシャーリーを「一番常識人なのになぁ…」
と呟いてたのが印象的だったw
608名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 23:13:48 ID:eNVVEoHC
本スレで出たネタで
ウィルマ姉さんがトゥルーデ並みの姉バカだったら説を提唱してみるテスト。
609名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 23:17:01 ID:+w+Nj+fn
ウルスラの元ネタってエーリカの妻なんだよな。ルーデルさんの5歳の夫も5歳の妹になってるとかだったら更にシスコン率あがらね?
610名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 23:20:43 ID:bAuYbzMB
男が女になっても女が男になることはないのがこのアニメの法則だ
611名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 23:21:41 ID:+w+Nj+fn
夫もじゃなくて妻もだな。前に本スレで出たショタ説が尾を引いてるみたいだ吊ってくる
612名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 23:58:52 ID:hcag3kkb
>>607
ここの住人でさらにシャーゲル好きの人が自分以外にもアノ中いておどろいたw
61321X2w2Ib:2008/11/25(火) 23:59:05 ID:JQEhKFkf
今よく確かめてみたら一昨日投下したんだから全然お久しぶりじゃなかった
なんか『寝ないで書く』って言ってたらまる3日ぐらい空けた気分になってたよ

ついでに「あのひのうた」について何の補足もなかったので付け足すと、
サーニャも宮藤と同じ「戦争なんて嫌だ」派だと思っています。
サーニャの場合は嫌でも戦わなくちゃいけなくて、結局自分を殺すことになってしまって、
だからこそ嫌いな戦争の中でも自分を見失わずにいられる宮藤に憧れるのかな、なんて思った
つまりそんな芳ーニャを待っている!

関係ない上に遅レスだけど>>156、「わーい自分も生活を心配されるレベルになれたー」ととても嬉しかった、ありがとう!
614名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 00:11:27 ID:X7mArS9i
>>608
むしろ妹たち全員から常に貞操を狙われる
ウィルマお姉ちゃんを絶賛妄想中です!

ここにエルマ、ウィルマ、トゥルーデ、エーリカのお姉ちゃんクアドラロックが完成した!

>>613
いつも楽しく読ませてもらってますです
サーニャは謎が多いですよね。オラーシャ時代の話とか気になります
615名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 00:16:31 ID:JIUsUjuc
しかしオラーシャは帝国なのか連邦なのか迷うな・・・
616名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 00:24:54 ID:9HWCbFM/
t26gFAxTです。
学園、とまっててすみません。
どーしても書き上げたくて、他のSSに浮気しておりました……。

今日投下するのは前に投下したぺリ本同様本スレで、
ちいちいぱっぱしていたときに浮かんだ奴です。

==========================

ストライクウィッチーズ 第297統合戦闘航空団
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anime2/1226132041/

382 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/11/08(土) 23:57:30 ID:nm06iajf
>>381
くだんのイラストコラムのテキストっぽいのがあったから一応あげとくよ
http://kineko.dyndns.org/~touhou/up/source/up1177.jpg

ウィルマ姉ちゃんはがつがつしたしゃべり方であって欲しい
超個人的リクエストだがw

==========================

と書いたら、

==========================
391 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/11/09(日) 00:04:40 ID:2JXR6K0j
>>382
俺も思う
甘えようとするリーネを突っぱねるような硬派で手厳しいキャラがいい、個人的に
姉妹二人になるとすげえ優しくなったりとか

とか

392 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/11/09(日) 00:04:49 ID:FYO120e4
>>382
サンクス
やっぱりこっちの方がいいや妹に対してコンプレックスを抱いてるみたいな方が好きだ
==========================

とかティンとくるレスをいただいたので、書き上げてみました。
お二方に捧ぐ。
(こんなんばっかや…w)

ウィルマお姉ちゃんとビューリングさんとたまにリーネ、そしてあの人とその人と……、と例のごとくたくさんの人が出ています。
展開上、むりやりオリジナルキャラもひりだしております。
男も出ます。ごめん。無論、絡みはありませんが。

ウィルマ姉ちゃんについてはイラストコラムとそこに載ってるテキスト以外で判断材料なく、年齢も、ビューリングと同じなのか上なのか下なのかで定かではないのですが、そこらへんの齟齬は、ね…

そして相変わらずいらん子からネタひっぱっているので、いらん子持ってたほうが楽しめる内容になっております。持っていなくても、楽しんでいただけるようにはなっているはず。

物語はもっさんがブリタニアでストライカー開発に関わりだした1936年辺りからスタート、という想定で。

スレも終盤ですし、なんかあまりにも長くなったので、txtでupりました。
http://www1.axfc.net/uploader/He/so/163135&key=317311

しかし、すぐ上のほうでウィルマ話があがってるなんて
とうとう彼女の時代が…!
617名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 00:40:59 ID:eGRGEIbV
>>615
帝国主義で連邦制でヒゲ面で猜疑心の強いの「鉄の人」が治めている
618名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 00:51:06 ID:eOu70irk
エーリカのもとに久しぶりにウルスラからの手紙が届いた。
内容はごくありふれた近況報告。それと写真が数枚。
そのなかにウルスラとオヘアのツーショット写真が。
オヘアに抱きしめられ、髪をくしゃくしゃと荒っぽくなでられている。
ウルスラの表情は嫌がっている風もなく、むしろほのかに笑みを浮かべているようにも見える。
ウルスラの、こんなふうに他人に気を許した表情を初めて見たエーリカは、
何だかわからないが、もやもやするのであった。
1941年くらい。
619名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 00:55:54 ID:X7mArS9i
>>616
自分がまさに書こうかしらと思ってた話が「作品」に進化して爆撃されたようw
マイナーカップルほど危険という管理人さんのお言葉をもっとに真摯に聞いておくべきであった……
t26gFAxTさんは間違いなく自分とベクトルがおなじだ
620名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 01:25:34 ID:eGRGEIbV
>>618
エーリカ「こんなウルスラはじめてだ・・・いつもなに考えているのかわからない顔してるのに・・・
     なんか・・・不愉快だ。」
621続・本音と建前1/5 j4ntaz3y:2008/11/26(水) 02:55:13 ID:S6ZLnOOZ
>>523のつづきっぽいものが仕上がってしまったので容量そろそろやばいけど投下
つかこのネタ21X2w2Ibさんの提供だったノカ…!恐れ多いことをしてしまったgkbr
とか言いつつ
>「どうしたらセクシーになれるか」とシャーリーに相談して「髪伸ばせば?」とアドバイスを受けるシャーリカを
こうですかわかりません>< いやまじ調子のってすんません


 とにかく機嫌が悪いようだった。エーリカはぽいと放りなげられてやっとぱちぱちと瞬きをして意識を覚醒させた。
見なれた簡素な景色はどうやらバルクホルンの自室のようで、自分がおとされたのは彼女のベッド。ぼんやりと
しながらもおかしいなと思う。きのうはここにはきていないはずなのに。首をかしげながらきょろきょろとあたりを
うかがってやっと、エーリカはベッドのわきのテーブルについているバルクホルンを見つけたわけだ。が、とうの
彼女はえらく気分をそこねているようすでエーリカに背をむける形でほおづえをつき、足元はといえばとんとんと
せわしく貧乏ゆすりをくりかえしていた。

「……あれ、なんで?」

 確かにきのうは、シャーロットのベッドで眠りにおちたはずだ。先程無理やり起こされたような気のする一瞬だって、
なんとなく彼女の顔を見た覚えがある。トゥルーデなにしてんの。寝起きの舌足らずでたずねても、バルクホルンは
こちらを見ない。
 徐々に状況を把握しはじめて、エーリカの気分は急激に降下していった。そもそも朝からいい気分であることは稀
であるが、それどころでない話である。自分が目を覚ますまえにシャーロットの部屋にいたのを見つけられ、それが
やつは気にくわないのだ。順当すぎる推理はおそらくあたっていて、しかしそれはあまりにも妙な話ではないか。

(なんでおこってるのかわかんない)

 エーリカはベッドに横たわりなおす気にもなれず、ひざをかかえてバルクホルンの背中を眺めた。言いたいことが
あるなら言えばいい。だけれど、バルクホルンがいまきっとなにも言わないであろうことはわかりきっている、伊達に
長いつきあいをしているわけではない。すっかり未来をきめきってしまう自分に、エーリカはすこしだけしらけてしまった。
 機嫌の悪いバルクホルンは苦手だった。正確に言えば、エーリカ自身の意図しない彼女の不機嫌は、エーリカに
とってはできるだけさけたい事柄であった。普段からわざと説教が趣味の大尉殿の機嫌をそこねさせては長たらしい
高説をはいはいとききながして、それこそがエーリカにとっての自然なふたりの間でのコミュニケーションであった。
しかしいまはどうだろう。彼女のこの重苦しい空気は自分が喚起したくてしたものではない。まさに意図しない不機嫌
で、エーリカはこういったときに相手が折れてくれることを待つのはとんだ時間の無駄であるとしっている。

(……めんどくさいな)

 ひざに顔をうずめる。シャーリーはいまなにしてるのかな。ぼんやりと現実逃避をしてみても、ここから逃げだせる
わけではない。そんなことをしてみろ、今度こそこちらがごめんと謝らなくてはならなくなる。きょうばかりは、それは
絶対にいやだった。トゥルーデはずるい、わたしがこんなに気をつかってるのもしらないで、いつもいつもそんなふう
にえらそうにかまえて、わたしがご機嫌とりをしなくちゃいけないんだ。だいすきなはずの彼女の、そうやってこちらを
見ようともしないところが本気で憎らしくてしかたがなかった。

「……トゥルーデ、さっきからこわいよ」

 すねた声をつくってみる。いや実際にいまエーリカはすねているわけだが、だからといって自然に現在の気分が
声にでてしまうようなことはここ数年ありはしなかった。とにかく自分の気持ちをかくすのが得意になった。それは
得意をとおりこして彼女の感情表現の能力に不具合を起こすほどだ。いちいちすねたようすをつたえたいから
すねた声をつくらなくてはならない、予想以上につかれる作業。どれもこれもバルクホルンのせいなのだと、エーリカ
はきめつけていた。

「トゥルーデ」
622続・本音と建前2/5 j4ntaz3y:2008/11/26(水) 02:57:06 ID:S6ZLnOOZ
 ほらね、と思う。きょうも結局こうやってこちらからあゆみよってあげなくてはいけない。なにをおこってるの、ちゃんと
おこられてあげるから言ってよ、つかれちゃうんだよ、機嫌の悪いトゥルーデの相手は。すこしくらいはこちらの機嫌
もそろそろ悪くなっていることが伝わっていればいい。そう思いながらなんども動かない背中になまえを呼びかける。
トゥルーデ、トゥルーデ。プログラムされた作業のような、そんなふうに彼女のなまえを呼ぶのは、本当はいやなのに。
 がたん、と音をたててバルクホルンがたちあがる。あまりに急だったものだからエーリカはびくりと肩をふるえさせた。

「……、あの」

 ひさしぶりに聞いたバルクホルンの声。すこしふるえている。緊張してる、とエーリカは思った。
 
「きのうから、なんか、その……怒ってるじゃないか」
「なに?」
「なにって、だから……」

 しぶしぶといった風情で、やっとのことでバルクホルンがからだのむきをかえてエーリカを見る。こまりきった目元
で唇をへの字にしながら、所在なさげに視線をおよがせている。なさけない顔。

(なんだよ、いつもはあんなにえらそうなくせに)

 そうやってすぐにかわいこぶって。いやちがう、素でやっているから性質が悪いのだ。エーリカは思わず唇をかんだ。
こんなかっこわるいトゥルーデはきらい。わたしがちょっとおこったくらいでそんなふうにあせるなんて、間抜けで間抜け
でしょうがないじゃないか。

「おこってないよ、べつに」
「うそつくな、怒ってるじゃないか。だから、あいつの部屋にいったんじゃないか」
「……」

 思わずかちんときてしまった。結局そちらに話をもっていくわけか。そうやって話をすりかえて、まだエーリカの
きのうの行動の理由には気づけていないくせにバルクホルンは自分がいちばん気にしている事柄へと話題をシフト
させたがっている。ただし本人にはまったくごまかすような気はないのだろう、実際に根からの生真面目人間である
バルクホルンにそんなことができるはずもなく、ただ単に彼女は自分の論理で話を進めているだけなのだ。そして
それが、とてもわがままで自分本位なやり方であると、それに気づけていないだけなのだ。

「……シャーリーはちゃんと手をつないでくれるって言った」
「はあ、なんだよそれ」
「わたしのことかわいいとも言ったよ」
「おい、なんの話だ」
「うるさい」
「な、うるさいだって?」
「だってうるさいじゃないか、トゥルーデには関係ないよ、わたしがどこで寝たって」

 バルクホルンは気づいていないのだ、とエーリカは真剣に腹をたてていた。なにもしないしなにも言わないくせに、
エーリカがどこかにいったら文句をたれる自分がおかしいと、バルクホルンは本気で気づいていないのだ。

「もういいよ、トゥルーデなんてしらない」
「おい、ハルトマン……」

 こんなときまでファミリーネームでよんでくれるわけだ。ベッドからとびおりてバルクホルンのわきをくぐりぬけて、
エーリカは逃げることにした。まったく自分らしくない。動揺も怒りもすっかりと制御不能だ。自身のそれはどれも
これもバルクホルンのせいで胸の奥にねむってしまったはずなのに、結局おなじひとのせいで呼びおこされる。

「おい、……フラウ!」
623続・本音と建前3/5 j4ntaz3y:2008/11/26(水) 02:57:58 ID:S6ZLnOOZ
 唐突に、ドアノブにのばしていた二の腕をつかまれる。そのままひかれて、エーリカはからだを反転させられドア
におしつけられた。ぎくりとしていると目前に必死の形相があらわれ、それがバルクホルンであると認識するのに
数瞬かかる。

「かわいいって、あいつにそう言われてうれしかったのか」
「……だから、トゥルーデには関係ない」
「か、関係ある!」

 あまりの剣幕に、びくりと肩がゆれた。それからぱちぱちと瞬きをする。いまなんて言った、関係あると、そう言った。
それでも、どうしてそんな大事な台詞をどもるのか、しかもすこし声が裏返っていたではないかと、エーリカは意外に
冷静に内心唇をとがらせた。そうしてエーリカがだまっていると、バルクホルンははっとしたように手をはなし、やりにく
そうに視線をそらして口元を手でおおう。

「あの、……だからつまり、あいつにはもう近づくな」
「……、なんで?」
「それは、だから……」

 エーリカは、自分の胸がおどっていることを自覚していた。それをださないように、あくまで不機嫌をよそおって
バルクホルンの顔を見かえす。だけれど、ほほはすこしずつ紅潮している気がした。いやだ、気づかないで、絶対
気づかないで、トゥルーデ。バルクホルンはこどばをさがすのに必死でまったくこちらを見ていないのだからそんな
ことは杞憂以外のなにものでもないのに、エーリカはこころのなかでかくしとおせるようにと一所懸命祈っていた。
 しばらくの沈黙のあと、思いたったようにバルクホルンがエーリカの手をとる。ぎゅっとにぎられて、エーリカの心臓
は急に大きく鳴りだした。どきどきと心地のよい衝撃が胸の真ん中から全身に響き、彼女は思わずこくとつばをのみ、
動きかける想いびとの唇を凝視した。

「わ……」

----------

「私はおまえの保護者なんだから、あいつは認めない。あいつだけは、だめだ!」
「……それだけ?」
「それだけえ」

 エーリカはごろりとシャーロットのベッドに横たわりながら、今朝のバルクホルンの口調を真似してみせた。ふてく
されきった顔で天井を見あげ、シャーロットはベッドわきの椅子に腰かけながら、そんな彼女を見つめて瞬きをする。

(……うわあ、半端ないな、あいつ)

 まさかそこまで根性がないとは思わなかった。シャーロットは今朝の食堂のようすを思いだす。てっきりふたり
そろってあらわれると思ったのに、まずはつんとした表情のエーリカだけがやってきて、おくれてやっと、やたらと
具合の悪そうなバルクホルンが食堂にはいってきたのだ。どういうことだ、と視線でエーリカにたずねてみても、
シャーロットはすっかりと無視されていた。と思ったら晩になって急に、またきょうもベッドを半分かしてくれとたずねて
きたのだ。

「ねえ、そろそろわたしはないてもいいと思うんだけど、どうだろう」
「……ははは。この胸でよければいつでもおかししますよ」

 ひと言、おまえがすきだからとかおまえは私のだからだとか、せめてそれくらい言ってやればいいのに。シャーロット
はげんなりとしながら、きょうの起きぬけにくらったバルクホルンの殺気を思いだす。あれが保護者のそれだって、
なんという寝言を言ってくれるのか、あの堅物は。

(まあ、そう簡単にいけばハルトマンがこんなに悩む必要もないか)
624続・本音と建前4/5 j4ntaz3y:2008/11/26(水) 02:58:47 ID:S6ZLnOOZ
 シャーロットは椅子の背もたれにほおづえをつきふんと鼻をならす。しかしだ、すっかりとここが避難所として定着
しているではないか。

「ところで、あたしには近づくなって言われてここにくるのはまずいんじゃないの」
「もういいよ、しらない、トゥルーデなんて」
「つかさ、あたしだけはって、あいつんなかであたしはどういう評価なわけ……」

 ころんと、エーリカがからだのむきをかえて不貞寝をする。シャーロットはそれを見とめてふうとため息をついた。
それから椅子をおりて床におかれた工具箱のそばにしゃがみこむ。きょうはそっとしておいてやろう、そういうこと
にして、面倒くさいなぐさめは放棄し、工具の手入れでもすることにした。
 かちゃかちゃというかたい音だけが響いていた。存外に夢中になっていたシャーロットは、ふと気づいて顔をあげて
時計を見て、エーリカがだまってしまってからかなりたっていることに気づく。ベッドのはしに腰かけながら、手にもって
いたレンチを工具箱にしまう。ひょいと首をまわして居候を観察すると、ちいさな背中がかすかに規則正しく上下して
いた。寝たか。当然のなりゆきにふっと思わず笑みがこぼれる。

「ねえ」

 それなのに、しずかだった背中のむこうから唐突に声がしておどろく。寝てなかったのか、と思わずたずねると、
ずっとね、とちいさな声がかえってきた。

「わたしは、トゥルーデに保護者になってなんて言った覚えないんだよ」
「ああ、そうなの?」
「つかさ、ひとのこといつまでこどもあつかいしてるのかな」

 ぽろぽろと、エーリカの口からやるせないとしか言い表せないことばがこぼれる。よもやエーリカの愚痴をきかされる
日がこようとは。シャーロットはある種の感慨深さを覚えつつ、かすかに妙な熱を胸の奥に感じた。エーリカは先程
バルクホルンのことなどもうどうでもいいといった旨の発言をしたはずだ、それでも結局、いままで黙っていたあいだ
ずっと、彼女のことばかりを考えていたのだ。

(ふうん……)

 かわいいものではないか、恋に悩む少女はむしろそうでなくてはならない。にやけ顔をつくろうとした、だけれど
うまくいかなくてこまった。そろそろこれ以上深入りするのは危険かもしれないな。シャーロットは、自分が惚れっぽい
という最強に性質の悪いくせをもっていることを自覚していた。

「でさあ、わたしはもうこどもじゃないとわからせればいいと思うんだけど」
「そりゃ難題だ」
「シャーリーうるさい」

 ぴしゃりと言い放ち、エーリカがばっと身を起こす。会議だ。それからひとりでなにやら息巻いてこぶしをにぎり
はじめた。

「わたしはどうやったらセクシーになれるのだろうか」
「そりゃますます難題だ」

 唐突に、先程までの鬱屈した空気をとりはらい、エーリカはいつものような突飛な発言をする。おいおい、と
シャーロットは思った。もうたちなおったというわけか。そもそもこれこそがエーリカの本来の姿であり、先のなさけない
ようすはただのめずらしい風景に過ぎなかった。それだというのに、その姿を自分のまえからけされてしまったこと
にシャーロットはショックをうけ、そんな自分にさらにショックをうけていた。先程からだまって考えをめぐらせていた
のはどうやら充電期間だったらしい。しまったと思う、それならばほうっておかないでちょっかいをかけて、もっと
エーリカが沈みこむようなことを言っておけばよかった。そこまで思いついて、シャーロットは真剣に驚愕した。洒落
にならない事態になっている。
625続・本音と建前5/5 j4ntaz3y:2008/11/26(水) 02:59:30 ID:S6ZLnOOZ
「先生、どうやったらセクシーになれるんですか」
「……、そりゃあおまえ」

 動揺しては負けだ、シャーロットは自分に言いきかせ、すっと両手をのばしてエーリカにふれる。どの部分にか
といえば、もちろんささやかすぎる胸部にである。

「これで、せくしーは無理だろ……」

 ぽんぽんとなんどもふれて、あまりに平坦なそれを再確認してシャーロットはかすかな落胆を感じつつも、そんな
場合ではないと思いたつ。きのうのきょうだ、昨夜あれだけ気のあるようなことを言っておおいかぶさっていたのだ、
ここまですればいくらエーリカでもここにはもうこようとはすまい。シャーロットはなんとかこれ以上の自身の病気の
進行をくいとめたかった。さて、これでエーリカはシャーロットを敬遠するようになるだろうか。

「いいじゃん、これはこれで需要あるよ、きっと」
「……さいですか」

 まったく気にするようすのないエーリカに、シャーロットはうなだれた。どうやらこの小娘は、彼女が自分をそのように
見るなどと思ってもいないらしい。ある意味で、まったく相手にされていないということだ。ああ、バルクホルンをまえ
にしたときのエーリカはこんな気分なのか、それならば前々からの話はもっと真面目に同情しながらきいてやるべき
だった、と、シャーロットは真剣に後悔する。

「……髪」
「え?」
「髪、のばせば?」

 すっと、後頭部に手をのばして指でとく。さらさらとした、きのうとなんらかわらない手触り。あたし、ハルトマンの髪質
すきだよ、のばしたら、きっときれいだよ。目を見て、意図した低めの声でささやく。なんということか、無意識に本気で
口説きにかかっている自分に衝撃を受けるほかない。

「えー、髪? のばすの?」
「うん」
「めんどくさいな……」
「おいおい、セクシーになりたいんだろ? 似合うよきっと」

 はた、とエーリカはだまりこむ。それから自分のみじかい髪の先をつまんでじっとながめ瞬きをして、やっとふうんと
まんざらでもなさそうなつぶやきをこぼす。そのときほほがかすかに赤らんでいたのは、将来バルクホルンをして
やったときのことを夢想していただけにちがいないのに、シャーロットは自分のことばでうかれていると思いたくて
しかたがない。

「シャーリーが言うなら、のばしてみようかなあ」

 さらには、他意のないあまりに見事な殺し文句をかましてくれる。へらりとした笑顔をたもちながらも、シャーロット
は冷や汗をかく。小悪魔は伊達じゃない、ここまで深く実感することがあるなんてと、彼女は思わずこころのなかで
十字をきった。

(やっかいなやつ)

 エーリカはもうすっかり上機嫌で、それでも結局今夜はシャーロットの部屋にとまるときかなかった。確かに、どうせ
自室はちらかりっぱなしなのだろうしバルクホルンともけんかの最中なのだからしかたないかもしれない、いやしかた
ないのだ。シャーロットは自分に言いきかせる。
 あかりをけしてベッドにはいりしばらくして、彼女は先程は根性なしと評してしまったバルクホルンはひょっとしたら
とてもすごいやつなのではなかろうかと思い至る。だって、こんなかわいらしいのがそばにいて一切手をださないで
いたというのだから。


おわり

とか言いつつちょっとつづきます…シャーリーまじがんばれ。ところでこのゲルトはかっこわるいとおりこしてしょぼいですねすみません
626名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 03:14:21 ID:S6ZLnOOZ
次スレ立てれるかいってみますね
627名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 03:24:52 ID:S6ZLnOOZ
628名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 03:30:50 ID:ZWaflAyB
>>627
スレ立てまでどうもお疲れ様です

次回はいよいよシャーリーが辛抱堪らなくなるんですねこのロリコンうさぎめ
629埋めます:2008/11/26(水) 05:13:46 ID:BbS/4UMz
「こつこつ!」

と、真夜中の訪問者はあわただしく二回やった。

「敵襲か!」

飛び起きてものの10秒で軍服を身につける間に、客は勝手にドアを押してとぼけた態度で戸口に立った。

「何してんの?」
「ああ、いや…」

私はしまったと思い、開襟の上着の下できっちり一番上まで止めたボタンをすぐにも一つはずしはじめた。
終わったんじゃないか、もう。

「勘違いしただけだ」
「敵襲か! だって」

やつは私の口真似のつもりだろうか、真夜中だというのに声を張り上げて言うなり、何がそんなにおか
しいというのか、大いに笑って、どさくさで寝台の上にのっかって転げまわる。言語道断なその行動に、
私はただ溜め息をつくばかり。

ガリアが解放されてから三、四日、それぞれ原隊の指示を待って次の戦線へ移るまでのときを、この基
地で過ごしていた、しばしの休息だった。しかし本日、最後の出発があったので、これにて隊長の任は
解かれ、同郷の私たちもそろって明日には引き上げだ。

今、人員がすっかりなくなってみてがらんどうのこの基地は、あまりにも広く感じられた。心細くなっ
たのだろうか、考えながら目をこすり、すでに毛布とじゃれはじめていたやつの隣に腰を降ろす。

「眠れないのか?」

そう声をかけると、じたばたしていたやつの体が急にぴたっと静止した。私はやつを見ない、やつの方
でも私を見ていないに違いない。いつもと変わるところが、これと言ってわかるわけじゃなかった。し
かしどこか気がかりなその態度、

「別に。トゥルーデじゃあるまいし」
「そうか、ところが私はさっきまでとても深い眠りの底にいたんだ、誰かに乱暴に起こされる前の話だ」

沈黙が落ちた。一体何を考えているのだろう。私は立ち上がり、ぼんやりとした頭を振りふり、戸口ま
で行ってやつの開け放したままのドアをしめて戻ってくると、その顔を覗き込む決心がついた。

「おい、この」

寝相のいい私の、一点の乱れも無い寝台はひどい有様だった。その自分で慣らした皺くちゃの中に体を
巻き込んで、なんとも気持ち良さそうに、静かな寝息を立てるエーリカ。私は呆れながらも、できるだ
け静かに動き、額にそっと唇を押し当てていた。

「なにすんだ、勝手に」
「なんだ、起きてたのか。別に。いつもしてるじゃないか、なんだこれくらい」

言って私は、ふくれ面の似合わない間抜けなその顔じゅうに口付けの雨を降らせる。

「わ、わ、ダメだって」

と、やつはなんだか本当にいやそうに逃げるので、もっとしてやりたくなった。私は言う、おかしさが
口からこぼれる、

「敵襲だ」
「敵なもんか!」

いつの間にか覆いかぶさるようになってしまった体勢を、ぐっと押しやられた。
630埋めます:2008/11/26(水) 05:15:13 ID:BbS/4UMz
「何をそんなに怒ることがある、やれやれ」

見下ろすやつの顔は妙だ、くちびるをひくひくさせて顔をそむける始末なのだ。あやすように頭をたた
くと、

「子供扱いするな」

と言うなり、撥ね退けられてしまった。

「そんなつもりはない、挨拶じゃないか」
「だったらなおさら嫌だ」

その言い方が本当にいやそうなので、仕方なく身を引いた。

「明朝1000時に出発だ、もう眠った方がいい」
「…そうだね」

予想外の素直な返答、そうして立ち上がると戸口の方へ歩を進める。どうして自分からここへ来たくせ
に、そんなふうに唐突に背を向けて去っていこうとするのか、私はまだ用件を聞いていない。気分を損
ねたことは謝ってもいい、だから、

「行くな」

やつが振り向く。

「まだ用件を聞いていない」
「そんなのない。宮藤が帰っちゃって、トゥルーデがさみしがって眠れないんじゃないかと思って、
見物だよ。そしたら寝てた。ごめんね、起こしちゃって」

じゃあね、そう言ってまたくるっと背を向け歩き出す。じゃあね、だと。そんな挨拶の仕方があるか、
こちらを振り向きもしないで、じゃあね。そんな去り方が、

「さみしいさ、さみしいから、さっさと眠ることにした。お前は、お前も…」

私が自室へ引き取るとき、ミーナとエーリカは二人でチェッカーをしていた。いやに広々とした談話室
で、それでも二人はいつもの通りだった。ミーナは今日、少佐が発ったあとなのに気丈だな、と思った
が、背を向けたまま声だけを聞いていると、かなしくなるほど細かったことを覚えている。

「ふうん、そっか。いなくなった途端、大切さに気づくなんてこと、よくあるからね」
「私は平気だ、それほどでもないし、カールスラントからは三人できている、他の連中よりはマシだ」
「そうだね」

そっけない調子で言い放ち、ドアノブに手をかける。私は自分でも驚くほどあわてて、その背中に呼び
かける。振り向いたその表情ときたら、泣かんばかりだった。

「ずっと一緒にいられるの、それはそれでうれしいけど、だからこれまでになかったことはこれからもずっとないことで、
ずっとずっと気づいてもらえないなんてこと、も、きっとよくあることだよね」
「言ってる意味がよく…」
「だから、そういうこと、じゃん、まさにそれだよトゥルーデ。じゃあね」
「待て!」

私はかっとなり、やつを追ってその腕を掴む。細い腕は、震えていた。
631埋めます:2008/11/26(水) 05:19:23 ID:BbS/4UMz
「お前は、さみしがっているのかと思った。基地は広いから…だから眠れなくてここにきた、違うのか?」
「私は床の上だって眠れるんだ、環境なんて関係ない、カールスラント軍人たるもの…ねえ、手、痛いよ、はなしてよ」
「いやだ」
「どうしちゃったの?」
「わからない、でも、行ってほしくなくなった」
「何さ、急に」

一瞬、うつむいたかと思うと、ぎゅっと体をしめつける力に私は驚いて目を瞠る。さらさらとした蜂蜜
色の髪が目の前で舞い、ふわっと落ちる。とてもいい匂いがする。

「ずるいんだ」

エーリカは言い、私を責めるつもりなのか、小さな頭をぐいぐいと押し付けてきた。その腕の中にすべ
てがあった。私が隊の解散を素直によろこべる理由のすべてがあった。

「安心、していたんだよ、大切な人とずっと一緒にいられるから。私たちは離れ離れにならないから、
安心しきっていたんだ。だからさみしくなんて、ちっともない。お前がいて、ミーナがいれば、どこで
だろうと、いつだってこんなに暢気に、私はぐっすり眠ることができるんだから」
「私はそうじゃない、私は…」
「私だってそれだけじゃない」

お前に今は、一言も言わせてやらない、私の冷静きわまる心臓が、こんなに打つのが、聞こえているこ
とと思う。

「あんな顔、されるまで気づかなかった、」

本当に安心しきっていたらしい、お前がどこにもいかないばかりか、いつも無遠慮に人の部屋に押し入
っては居座って、うんざりするまでいるもんだから。

「出ていくな、どこにも行くな、これからもずっと一緒にいたい、お前が、」
「好きだよ。ずっと好きだった」

エーリカが言った。悔しいが、私もまた、その通りだ……
632埋められませんでした:2008/11/26(水) 05:38:26 ID:BbS/4UMz
つづきを消してしまったのでこの通り
キリがいいのが幸いだが、にしても残り5kbくらいだと思うから全然足りなかった

ちなみに>>602-606、特に>>離ればなれになりそうで気づくというわけか
をエーリカ的に呑みこんだ感じのネタです、微妙な長さだけどネタなんで保管とかはいい
633名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 07:23:38 ID:hcXhoP+Z
ぬるぽ
634名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 09:41:08 ID:vyyYRkVV
>>625
ウオー続きキテター!シャーリーあぶねえw流石使い魔が兎なだけはあるw

>しばらくの沈黙のあと、思いたったようにバルクホルンがエーリカの手をとる。
ttp://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d493199.jpg
>「私はおまえの保護者なんだから、あいつは認めない。あいつだけは、だめだ!」
ttp://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d493198.jpg

>>632
GJ!隊長がもっさんと別れる時はどんなだったのかな
635名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 09:42:11 ID:vyyYRkVV
>>633
ガッ
636名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 09:43:58 ID:DZw4OanH
埋め
637※梅ゲーリカ:2008/11/26(水) 11:00:15 ID:njuRVFRs

さいあくのきぶんだ。
起き抜けながらゲルトルートは思った。頭ががんがんとする。体は非常に気だるい。どう考えても二日酔いだ。
昨晩はひどく冷え込んだ。冷え込むと人は温もりを求める。暖炉の火を灯したり、温かい食べ物飲み物を所望したりする。酒を
飲んだりするのも良い。そういうのは、ゲルトルートも嫌いではない。
でも、これは。この状態は。
寝台の上、自分の体のすぐ脇に、いつもとは違う不自然なふくらみがひとつ丸まってあった。ううう、と唸って身じろぐと、ゲルト
ルートの頭の傍らにある金色の髪がさらりと動く。

「とぅ、るー…で」
ぎゅう、と彼女の側、左の手が彼女の手で包み込まれる感覚。36度5分のぬるくて熱い熱源が心地よい…のは、つまり、ゲルト
ルートも、その隣にいる少女も、生まれたままの姿であるからだった。なんと言えば適当なのかはわからないが、とにかく互いに
何も身につけておらず、包み隠さず言えば全裸、という状態であったわけで。
どこかで、寒いときは体で温めあうと良い、なんていう話を耳にしたことがあった。なるほど温かい、などとゲルトルートの頭の
冷静な部分がぼそりと主張する。

(さいあくのきぶんだ)

胸に何かが引っかかったようにもたれている。体中をしびれさせるこの気持ちが気恥ずかしさであることぐらい、ゲルトルートは
自覚していた。だからまともに傍らの彼女を見やることが出来ない。彼女の寝顔がとても愛らしいものであることをゲルトルートは
それはもうずいぶんと前から知っていた。知っていて、あえて言わずに黙っていた。なぜって恥ずかしいからだ。…例えば彼女が
何かとても素晴らしいことをした折、これは存分に褒めてやらねばならないと自分も回りも間違いなく感じたときにさりげなく差し
出してなんてことのないように引っ込めれば良い、と思っていた。そうしたら何も不自然じゃないし、この隣にいる少女もなんて
ことのないように聞き流すだろう。自分はいえなかった言葉をようやく言ってやれたという自己満足に一人浸ることができる。

ゲルトルートは誰よりもよく知っていた。エーリカ・ハルトマンはこの世で一番愛らしい、と。

トゥルーデ、起きてる?
囁くように、耳元で。呟かれてびくりとする。
「ねえ、起きてるんでしょう?」
甘ったるい声だ、と思った。だから反応するのは拒みたかった。こんな声を聞いていたら、思い出したくないことを思い出して
しまう。どうにかして気付かれずに逃げ出したかった。けれどこの状況ではどう考えても無理だ。知っている。分かっている。

先ほどまでとなりで穏やかな寝息をこぼしていた人間─エーリカが、もぞもぞと下のほうで手を動かし始めた。もともとゲルト
ルートに触れていた右手に、左手を重ね合わせてぎゅうと握る。柔らかい手に、左手が包み込まれた。更にエーリカは体を寄せて
きて、左側はすべてもうエーリカの体と一体化してしまったかのような具合だ。お互いの間で熱が共有されて、とてもとても、
心地が良い。…この状態だけで、その他のことを加味しないで思考をめぐらせたなら、ゲルトルートの気分はとてもよかった。
世界一可愛いと思っている子と、こうして部屋に二人きりで寝台をともにしている。…これはとりあえず普段からないことではない。
部屋を散らかしすぎるとエーリカはすぐにゲルトルートの部屋に潜り込んでくるのだから。そして体を摺り寄せながら甘えて、
今度一緒に掃除してよ、そうしないと毎日来るよ、なんて訳のわからない脅し文句を言ってくる。
仕方ないな、とか、何をやってるんだお前は、とか、並べ立てて口を尖らせても、内心のゲルトルートは喜びにあふれていることを
エーリカは知らない。必要とされたいんだ、もっと頼って欲しいんだ、なんて言おうものなら彼女が怪訝な顔をして天を仰いで
「今日は一体何が降るの?」なんて快晴の空を指差すのは目に見えていたし、そんなのが彼女のためにならないことを持ち前
の生真面目さと堅実さでなによりも理解していたから。

ねえ、起きてよ、ねえ。握った手を引っ張ってゆすって、エーリカが囁きかけてくる。耳元でしゃべらないで欲しい、とゲルトルートは
思った。だってくすぐったいし、恥ずかしいじゃないか。
「…ハルトマン」
ようやく口にした一言はひどくかすれていた。起き抜けだからに違いない。泣きたいわけじゃない。そう自分に言い聞かせる。
なあに、トゥルーデ。先と同じ、甘えたような囁きがまた、耳元で。
638名無しさん@秘密の花園:2008/11/26(水) 11:01:06 ID:njuRVFRs
「体の調子は、どうだ?……あの、どこか痛かったり、とか」
恐る恐る尋ねる。ねえ、こっち向いてよ。答えよりも前にそう言われたから、しぶしぶ体をひねってエーリカに向き直った。横向きに
なったそのとたん、首に手を回してエーリカが抱きついてくる。薄い胸板がゲルトルートのそれにふれる。それだけじゃない。腹も、
足も、全部、エーリカの吸い付くような柔肌に触れて、そこから熱くなっていくのだ。

「痛いよ、トゥルーデ乱暴なんだもん。腰も足も、もーいろんなところがさ」
イタイヨ。その言葉がエーリカの口からこぼれ出た瞬間ゲルトルートは目の前が真っ暗になった気がした。慌てて感じる彼女の
温もりを抱きしめてその存在を確かめる。彼女の台詞が茶目っ気を帯びていて、言葉の割には色めきだっていたことなんていち
いち感じている暇がなかった。さいあくのきぶんだ。もういちどゲルトルートは思う。

「…ごめん」
本当に最悪だ。大切に大切にしようと、傷つける何者からも守ってやろうと思っていたその相手を、自分でよごした、傷つけた。




行為の最中はひたすら無我夢中で、勝手にしろよとそうそうにさじを投げた思考は上のほうから自分の行動をにやにやと眺めて
いただけだった。だからその最中は何も考えられなかったくせに、今になって記憶が鮮明になっていく。自分がエーリカに何を
したか、頭を抱え込みたくなるくらいに覚えている。
酔った勢いで、なんて言い訳するような小ざかしい考えはゲルトルートにはなく、ただ自分のした事への後悔だけがぐるぐると
頭をエンドレスリピートで巡っているのだった。その度に自分の及んだ『行為』までも再生されて、もう、どうしようもなくなる。

眠るところがないの。今晩止めてくださいな。

まるで子羊のような顔をしたエーリカがゲルトルートの部屋にやってきたのが、昨日の晩の話。
前述の通り昨晩は突然、ひどく冷え込んだ。このままいつもどおり突っぱねたところで風邪を引かれても困るから、などと懸命に
良いわけして、心の中で何度も「これは仕方のないことなんだ」と言い聞かせて、彼女を部屋に導きいれた。本当は嬉しくて、
ともすればにやけてしまう顔をしかめ面に変えることで懸命に押し隠して。

それから何をしただろう。確か酒を少し…いや、かなり飲んだ。なぜって寒かったからだ。寒い寒いとエーリカが駄々をこねた
からだ。もしかしたら何かもっとほかの事を求めていたのかもしれなかったが本人がそれで押し黙ったのでゲルトルートは
それでよしとすることにした。
そう、たぶん、自分はかなり飲んだのだ。だからいまも、こんなにも頭がくらくらしている。あの時はもっともっとくらくらしていた。
だからあんなことになった。

ねえ、トゥルーデ。もう眠い。
そう言いながら目をこするエーリカに、なぜかとてもどきどきした。今にして思えばあれは酒が入っていたからかもしれない。よく
わからないけれど単純にそうであったなら良かった。
ああ、そうか、もう寝るか。寝よう。
すっかり陽気な気分になっていたゲルトルートは、そんなわけで潔く服を脱ぎ捨てることにした。普段エーリカを寝台を共にする
ときはしっかりと寝巻きを着用するのに、うっかり酔いがひどく回っていたらしい。そしてぽかん、とした顔でこちらを見ている
エーリカに呼びかけた。なんだハルトマン、お前そのままの格好で眠るのか?寝苦しいだろう。

い、いいよ私は。トゥルーデ、私寒いからこのままでいい。
ゲルトルートの不自然さを感じたのだろう、そんな彼女を押しとどめるようにエーリカは言った。けれどゲルトルートは止まら
なかった。ゲルトルートが一度これと決めたことを曲げることはほとんどない。そうするべきなのである、間違いなどあろうはずが
ない、と内心で決定を下してから行動に移すからだ。
つまり、ゲルトルートはいつも朝、寝ぼけた彼女にしてやることとは全く逆のことを、今晩は彼女に施してやることにしたのだった。
つまり、まだきっちりと服を着込んでいる彼女のそれを、丁寧に脱がしていく、ということを。
639名無しさん@秘密の花園

ねえ、やめてトゥルーデ。ね?
こんなことをするのはおかしいよ。目を覚まして。エーリカは何度もそう言って、ゲルトルートを制止しようとした。けれどゲルト
ルートはやっぱり聞くことが出来なかった。一つ一つボタンをはずしていって、右腕、左腕、と上着をはずし、シャツもそのように
して、そして上の下着もエーリガが懇願の視線を注いだにもかかわらず取り去ってしまった。
最後に残されたたった一枚の砦さえも平然と崩そうとゲルトルートがしゃがみこんで手を伸ばすと、その頭ごとぐっと、エーリカは
押しとどめた。い、いいよ。これはこのままでいい。エーリカは必死だった。いつもはズボンなんてはいてなくても特に気にしない。
以前それでひと悶着を起こしたこともあったはずだ。
…エーリカにとっての問題は、そのときに一番うろたえて、自分に対して怒っていたそのゲルトルートが、平然とした顔でそれを
とろうとしているということなのだった。いやだ、はずかしい。羞恥に顔が熱くなる。

…そんなエーリカの顔を下から見上げる形で見たのが、間違いだったのだろう。気が付いたら口にしていた。「可愛いな、フラウ」。
自分でも驚くくらいに柔らかい声だと、ゲルトルートは思った。もうやめろと、頭の中の冷静な部分が必死に押しとどめている
のに止まらない。理性はあるのに体は言うことを聞かずに、ゲルトルートは立ち上がってひょい、とエーリカの小さな体を抱き
上げて、そのままベッドの上に連れて行った。

ねえ、トゥルーデ。
そこから先は思い出したくもない。ゲルトルートが思考をさかのぼるのを中断すると、そのタイミングで呼びかけられた。まだ
耳の奥に残っている、昨日のエーリカの鳴き声と同じ調子の、甘い甘い声音だ。再び顔が熱くなってくる。ああ、もう、本当に
最悪な気分だ。

「ごめん、」

もう一度重ねて謝罪の言葉を口にする。自分のしたことを無しにすることなど出来ない。けれど、せめてもう少し優しくすることが
出来たらよかったのに。見やるハルトマンの首筋に、胸の辺りに、いくつもの赤い点。すべて自身がつけたものだということを、
しっかりと覚えていることが恨めしい。けれど同時に安心もしている。これで全く記憶がなかったら、自分は本当の本当に立ち
直れなかったろう。

「…謝るくらいならしなければ良かったのに。そんなに後悔してるの?やっぱ酔った勢いってやつだった?」
「…ちがう、そんなわけじゃ」
「トゥルーデは酔っ払ったら、誰にでもあんなことするの?」
「ちがうっ!」

幾分沈んだ声でそういわれて、慌ててゲルトルートはちがう、と反した。後悔はしているし、酔った勢いだというのも否定はしない。
けれど違う。根本的なことから違う。

「…あれは、フラウが恥ずかしがってるのが可愛かったから、その、歯止めが利かなくなって………すまない」