【ネギま!】近衛木乃香・桜咲刹那百合専用スレ(11)

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1名無しさん@秘密の花園
     _
   ,.'´  `ヽ    γ'´ ̄ソへ
   i Lllノリリ)」〉 ((l√ノ川リ/       
   | l ^ヮ^ノ|   i| ゚ヮ゚*レノリ     せっちゃんはウチの婿
   ノ⊂||卯リつ?⊂广y/√つ     
   ーく/_|〉┘   ^λ/r \   
     し'ノ    /从_ト ミノ
過疎防止のためにもSS、イラスト、投稿された作品の感想、語り合い大歓迎 むしろエロカモン

原作の早売りネタバレは厳禁です。ネタバレ解禁は水曜日の午前0時から。
基本的にsage進行です。 このせつ情報どんどん下さい。

容量が480Kを越えるか,レス番が980を越えたら新スレを立ててください。

前スレ
【ネギま!】近衛木乃香・桜咲刹那百合専用スレ(10)
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1201616765/
まとめサイト(管理人:虚武僧様)
http://tonkachi.yu-nagi.com/
このせつスレ専用うpロダ
http://www3.uploader.jp/home/konosetu/
2名無しさん@秘密の花園:2008/04/23(水) 01:11:45 ID:1hARB5o+
[各種データ]
麻帆良学園中等部3年A組13番 近衛 木乃香
1989年3月18日生 (巳年・うお座) AB型

好きなもの:占い&オカルト、料理
嫌いなもの:あんまりない
所属:占い研究会、図書館探検部
備考:学園長(関東魔法協会会長)の孫、
 関西呪術協会会長(近衛詠春)の娘(オヤジは元「悠久の風」のパーティ「赤き翼」のメンバー)
声優:野中 藍


麻帆良学園中等部3年A組15番 桜咲 刹那

1989年1月17日生(巳年・山羊座) A型
好きな物: 剣の修行。木乃香お嬢様(?
嫌いな物: 曲がったこと おしゃべり
所属: 剣道部
備考:京都に伝わる神鳴流の使い手にして、陰陽道にも通じる剣士・烏族ハーフ
声優:小林 ゆう
3名無しさん@秘密の花園:2008/04/23(水) 01:12:21 ID:1hARB5o+
関連スレ

【ネギま!】13番 近衛木乃香萌えスレ15【4位】
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1208365161/
【ネギま!】15番 桜咲刹那萌えスレ24【地鶏】
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1197223251/
魔法先生ネギま!エロパロスレ29
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1205935430/
【ネギま!】ちうとザジに萌えればいいんじゃね?28
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1203688692/
魔法先生ネギま!百合総合スレッド
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1178010068/
【ネギま!】龍宮真名・長瀬楓百合専用スレ2
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1182943918/
【ネギま】宮崎のどか・綾瀬夕映スレ【みやあや】
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1174375659/
【ネギま!】高音・D・グッドマン、愛依スレ
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1124628974/
4名無しさん@秘密の花園:2008/04/23(水) 01:13:49 ID:SoUWhT8P
乙です!
5名無しさん@秘密の花園:2008/04/23(水) 01:14:37 ID:1hARB5o+
引き続き超大作支援ブヒ
勿論普通の作品も。

こちらへの投下は前スレが埋まってからの方が良いと思われ
6 ◆AIo1qlmVDI :2008/04/23(水) 08:35:18 ID:KaJJBM6u
新スレ乙なのです、あうあう。
前スレ及び前々スレでは好き勝手やって申し訳ない!新スレでは仄かに自重しつつ長編進行に全力を傾けます><
スレ番号がちさめたんの出席番号になる前には完成させるぞ…!
投下場所はここでいいみたいなので住人様のお言葉に甘えさせて戴きます。

ちょっと質問なのですが、このせつがガチであれば他のキャラが男女カプになっても構わないですかね?百合板なのでそれも避けるべき?
7名無しさん@秘密の花園:2008/04/23(水) 09:26:12 ID:p51ri2Ob
小林ゆうxあいぽんのラブラブ番組
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2185798
8名無しさん@秘密の花園:2008/04/23(水) 11:46:35 ID:SoUWhT8P
濡れ場の描写が直接無けりゃ大丈夫じゃね?
心配なときは投下前に
注意書き入れると良いよ。
9名無しさん@秘密の花園:2008/04/23(水) 19:55:28 ID:RdqCdRwu
今からでも修正が可能ならば百合カプにしてほしいところ
10名無しさん@秘密の花園:2008/04/23(水) 21:34:29 ID:LCODVnkG
男なんていらないんだよ!
11名無しさん@秘密の花園:2008/04/23(水) 22:20:56 ID:fKJuZNHd
>>6
このせつさえまっとうに成就してくれれば、
ネギ辺りが暗躍しても許す。
…………って境地には、いまだ至れず。

えーと、直截な描写をせず、におわせる程度ならいいんじゃないでしょうか。
さておき、続き期待して待ってます。
このスレの住人に、書き手に、このせつに幸あらん事を。
12名無しさん@秘密の花園:2008/04/24(木) 07:53:27 ID:HkRefaQF
おまいら分かりやす杉w
13名無しさん@秘密の花園:2008/04/24(木) 15:10:42 ID:r3AZr/C1
ストーリーに必要なら>>11
カットしても問題ないならカットして欲しいかな。
14 ◆GvbCrZA3mg :2008/04/24(木) 18:52:55 ID:kZBcgFtY
新スレ乙、です。
このスレでも皆さんのSS等が活躍できるよう、心より願っています。
前スレからお世話になっていますが、此方でもよろしくお願い申し上げます。
15名無しさん@秘密の花園:2008/04/24(木) 21:13:29 ID:vNed/L3J
好かれてる男キャラはいないのか…
16名無しさん@秘密の花園:2008/04/24(木) 22:23:49 ID:czlsPhbf
>>15
別にネギやコタローは嫌いじゃない。
が、百合話でのメインの娘達の間に割り込まれるのは困る、当て馬にせよお邪魔虫にせよ。
……って人もいるんじゃないかな、少なくとも自分はそのクチ。
17名無しさん@秘密の花園:2008/04/25(金) 01:43:14 ID:TB6KuM7j
年齢詐称薬があるとはいえネギは小学生高学年、コタもいってて中1てとこしょ?
恋愛からめるのは無理あるわー。
タカミチ、詠春あたりだと今度は中3の娘っこ相手しょ?
これもまた違和感覚えるわ。
こうして考えると適正年齢の男がいないんだよな。柿崎には彼氏いるようだが。

とはいえ百合がそもそも無理あるだろって言われたらぐうの音も出ないので好きに書いてくれていい。
スルーするなりなんなりこちらも好きにするだけだしな〜。

18名無しさん@秘密の花園:2008/04/25(金) 07:26:23 ID:v4I/F5IC
ネギは薬で16歳になってるらしいけどな。アスナより年上なのは確か。

まぁ単に男女ペアスレ違い…つか板違いなネタだからよく考えれと。
よく考えてるからここでわざわざ聞いたんだろうけど
19名無しさん@秘密の花園:2008/04/25(金) 13:03:29 ID:BDQoxp3Z
ネギはダメ、コタは許す
20 ◆AIo1qlmVDI :2008/04/25(金) 14:58:08 ID:AmNEzGgH
百合板で野郎ネタを振って申し訳ない…この板の住人やSS書きになったのが割と最近なので空気読めてなかったですたい><
とりあえずそっち方面で男女を組ませるのはやめておきます。

ちょっとだらしないおっさんと中高生女子の組み合わせが好きでしょうがないんですが恋愛絡みじゃなくて信頼っぽい空気の高畑×ちさめもNG?まあ、だらしないキャラ高畑は捏造設定ですが…


ネギは中の人があの人じゃなかったらコブラツイストなくらいなので(多分)出しません。
コタは中の人があの人なので若干出したいような…。
21名無しさん@秘密の花園:2008/04/25(金) 16:22:48 ID:nYVv8Nfg
流れ切ってスマソ
アニメで1番このせつ分補給出来るの何話?
22名無しさん@秘密の花園:2008/04/26(土) 20:48:32 ID:Igc7Y/RM
1期の21話か22話
ごめんどっちかは忘れた
23名無しさん@秘密の花園:2008/04/26(土) 22:56:44 ID:Q3j2KWXT
修学旅行かつ伝説のあれですね。分かります。
24名無しさん@秘密の花園:2008/04/26(土) 23:44:36 ID:rV+jpJ1I
あと1期の電車の中のこのせつは泣ける
25名無しさん@秘密の花園:2008/04/27(日) 00:18:07 ID:5nPR9rgo
>>21
二期の18〜19話辺りにも何かあった希ガス

作画と展開にアレルギーが無ければの話だけど。
26名無しさん@秘密の花園:2008/04/28(月) 20:45:48 ID:M8qsgD6p
過疎だな……
27名無しさん@秘密の花園:2008/04/28(月) 21:32:26 ID:Qbc2ul44
だってまだ前スレ埋まってないし。
前スレでヤンデレせっちゃんSS投下されてますたwww
28名無しさん@秘密の花園:2008/04/28(月) 21:38:58 ID:5Mg185S0
ヤンデレってどういう意味?
29名無しさん@秘密の花園:2008/04/28(月) 21:43:04 ID:Qbc2ul44
ググってちょ(´・ω・`)

ちょっとメンヘレな感じ?あれっパラノイア?

うまい説明が浮かばないYO!
30 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/01(木) 02:47:10 ID:W16/Ku8p
前スレでギリ投下できなかったので続きを此方に投下します。
梅のつもりが溢れてしまったです…。

此処に謝罪を。
申し訳ございませんでした。
では、続きをどうぞ…。
31 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/01(木) 02:48:22 ID:W16/Ku8p
というかイチャイチャとかって…、やはり、こう、性別も関係も…
「だ、だめですよ、こんな顔しても、ダメな物はダメです」
お嬢様に悪いが全否定して理性をフル回転させてお嬢様を止めなくては…。
「…せっちゃん…ウチのこと嫌いなん…?」
…お嬢様、そういうことじゃなくてですね…。
「此処が危険だからですよ、お嬢様のことは好きですから…」
多分こんなに恥ずかしいことすら今ではこうしてさらりと言ってしまえる…
って待て、さらりと告白して抱きつかれてるし…。とりあえず…。
「此れ着てください…其の侭では流石に…」
す、と自分用のローブを渡して…。
一時的ではあるものの、札で媚薬の効果を薄める。
「………ん」
悲しそうな顔をしながら受け取って羽織る姿を見れば、ため息。
……本能は未だヤバい状態なので気を抜けないが…。
………さて、どうしたものかな。
「せっちゃん…?」
無闇に走ったせいか、街がどの方角かもわからなくなってしまった…。
飛ぶ…しかないか……今居る場所が把握できればいい。
それに此処は魔法世界、翼人など珍しくあるまい。
「せっちゃーん?」
「あ、はい!?」
どうやら考え込んでしまったらしい。
「街についたらでもええ、イチャイチャさせて…な?」

…街の宿が取れ次第、私は食べられる運命のようです…。
32 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/01(木) 02:51:43 ID:W16/Ku8p
これで終了です、本当に申し訳ございません。
前スレと一緒にご賞味ください。
失態を晒すとは不覚でしたが…。

では、引き続き応援してくれる住人に期待しながら…。
乱筆乱文、前スレからの梅失敗、失礼しました。m(_ _)m
33名無しさん@秘密の花園:2008/05/01(木) 12:23:38 ID:ywjB/18u
投下GJ&乙、そして前スレ埋乙でした。
前スレとせっちゃんの貞操に冥福を…………ってもっとまともな言い方は無いのか自分。
さておき、街に着いてからどうなったかを知りたいと思うのは贅沢でしょーか!?
34名無しさん@秘密の花園:2008/05/02(金) 20:57:56 ID:8BX+D1j0
>>32
GJ&埋め乙です。

>>33
狂おしく同意
続きどこかたのむ
35 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/02(金) 23:38:36 ID:KCZUlcIf
少し答えさせてもらいます。

>>33-34
そうですね、気力があり次第街行った後を書かせて頂きます。
暫くかかるかもしれませんが必ず投下致します。

ではまた。
36名無しさん@秘密の花園:2008/05/03(土) 00:07:18 ID:EY3uHf1/
>>35
返答ありがとうございます。
気長に待たせて頂きます^^
37名無しさん@秘密の花園:2008/05/03(土) 14:26:47 ID:RGNiksG4
>>35
SS面白かったです!


えー、・・・スレの常連ではない、ということなのでウザいかもしれんがひとつ。
刹那の独り語りが多いが、すこし地の文などで補ってみるといいと思う。
説明っぽく感じて、少し違和感が残る気がする。
それか、セリフでカバーでもおけ。

発想とか構成とか、すごく面白いからもっと腕を上げて欲しいんだぜ。
保管庫とかでネ申さまのSSから勉強ってゆうのもいいと思う。

エラそうなこと言ってすまない。
続きかなり期待してる。
38 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/03(土) 19:30:28 ID:7wJem7AJ
少しお答えします。(少しではなくなるかもしれませんが…)

>>37
お褒めに預かり光栄に存じます。
そうですね、少し以前から作風が変りましてね…。
セリフでもなんでも少しずつカバーしようと思います。
どうなるかは、また予想できませんが。

そうですね、少しずつですが此処で精進させていただきます。
そういえば保管庫を覗くと過去の私の作品が残っていて驚きました。
こんなのも書いていたなー、なんて思い出しました。

いえいえ、参考になりました。更に精進していきます。

ではでは。
39名無しさん@秘密の花園:2008/05/04(日) 01:42:16 ID:R0z268bk
ここは2chなんだからもう少し砕けた感じでも問題ないと思うぞ
40名無しさん@秘密の花園:2008/05/05(月) 23:24:44 ID:N11L934K
萌えが足りない。最近MAD作品もあがらないし、原作も出番ないし。
皆どこでこのせつ分補給してるの?
41名無しさん@秘密の花園:2008/05/05(月) 23:42:51 ID:T0/kuYXi
>>40
俺も知りたい
42名無しさん@秘密の花園:2008/05/06(火) 00:23:25 ID:UNOk4MBE
脳内妄想www

この間こんなのが浮かんだ。

せっちゃんがなんかの魔物呪い?か何かで犬にされる。

このちゃんに拾われる。kのときせっちゃんは行方不明(T^T)

このか「なんやこのワンちゃん,せっちゃん似とるなぁ。」

せっちゃんは呪いを解く方法が分からず,木乃香の忠犬になることを決意!!

必死に木乃香を守り抜いた忠犬せっちゃん

涙涙のお姫様のキスでせっちゃんの呪いが解ける!!

何とか無事ハッピーエンド






という不思議系のSSを書いてみたいとオモタ。
脳内では物語になってるのに,文字にすると‥‥。
ほんとむずかすぃわ〜。
43名無しさん@秘密の花園:2008/05/06(火) 00:35:36 ID:DJJm8LHw
>>42
それだけでも補給された気分
44名無しさん@秘密の花園:2008/05/06(火) 01:13:52 ID:UNOk4MBE
贅沢言うとそんな奴書いてほしいゾwww
職人さんよろしくっぅぅぅ
45名無しさん@秘密の花園:2008/05/06(火) 03:20:22 ID:yvBtGx/B
>>42
犬の間にこのかのせっちゃんへの思いを聞いちゃったり、抱きかかえられたまま
一緒に眠ったりで、せっちゃんがあわあわするんですね。分かります。
46 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/06(火) 05:33:31 ID:xWuJ14Mx
近況と答えを。
以前の梅の続きを書く傍ら、>>42のネタでSSを書いています。
木乃香が猫になったというネタを以前書いてたのを思い出しながら、ですが。
近況報告終了。

>>39
砕けるとどうも何か忘れてしまいそうで、こんな口調になっています。
以前が砕けすぎた、というのもあるかもしれませんけどね。

>>40-41
私は漫画の読み直し、過去ログ等で補給しています。

>>44
了解しました、なんて言うと職人気取りとか言われてしまうでしょうか?
現在同時進行執筆中なので、暫くお待ちください。

>>45
ネタのイメージが膨らみました、ありがとうございます。

ではでは、乱文失礼しました。m(_ _)m
4742:2008/05/06(火) 16:09:51 ID:UNOk4MBE
wktkして待ってるよ!
気取りなんてとんでもない。職人だよあんたは。
ちなみに前に投下してたって言うけどどの作品の作者なんだい?
記憶リンクしてもらえると,助かる。

ついでに長編作者さまもwktkして待ってるよ!
指先包丁で切ってしまってタイピングがつらい今日この頃。
マジでこのちゃんに癒してほしい。
48 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/06(火) 16:59:00 ID:xWuJ14Mx
お答えを。

>>47
ありがとうございます。
そういっていただけると、助かります。
以前は「零」と名乗っていた、と言えば解るでしょうか。
過去スレの番号3番の後半ぐらいに少しだけ投下させていただいていた者です。
トリップとか違いますけど、間違えなく私の投下した物です。
指先、早く治るといいですね。

ではでは、続き書いて来ますね。乱文失礼しました。m(_ _)m
49名無しさん@秘密の花園:2008/05/06(火) 19:24:50 ID:UNOk4MBE
管理人さん乙です!
50名無しさん@秘密の花園:2008/05/06(火) 23:40:35 ID:K/vE+T8B
まとめサイトいいとこで以下投下待ちって・・・・・・おいって自然とつっこんじゃうんだけどw
最後まで書いてくださいよぅ!
51 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/07(水) 08:35:52 ID:5yeqzr8o
時間掛かりそうなので適当に作ったSS投下します。
…流石にオリキャラとかないと難しい!!(出ないように出ないように省略とかしまくってます)
>>42のネタの方はこのちゃんとせっちゃんの入り乱れ視点だし…!!

まぁ、ちょっとだけこのせつ分を補給してください、な意味で
1中途半端ですがこれが単品です、続き書く気はないので他の職人さんでも一般の方でも妄想して補給できるような仕様です。
2微妙にせつこのです、ガチこのせつでないとダメだ、と言う人はスルー推薦。

では次から投下しますが…短いです。
52 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/07(水) 08:36:21 ID:5yeqzr8o
行きたい場所。
あるなら教えてください。
私もついていきます、お嬢様。
―――最果てまでも。

今日はお嬢様とのお出かけの日。
きっかけは、お嬢様が映画を見に行こう、ということだった。
願っても無い事だった。本当は飛び上がって喜びたいぐらいに。
近くに居れれば幸せなのに、話すだけでも天に昇る気持ちなのに。
それはまるで…まるで…
「デート…じゃないですか…」
呟いてしまって、我に返る。こんな所を見られるわけには行かないな。
昨日から用意してある新しい服を着て。
…いざ、お嬢様の元へ…!!!
53 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/07(水) 08:36:51 ID:5yeqzr8o
外は雲ひとつすら見当たらない晴天。
行楽日和、というのだろうか。
暫く待ち合わせ場所に待っていると、お嬢様が駆け寄ってきた。
…実に女の子らしい初夏とマッチしたワンピースを着ていらっしゃった。
流石お嬢様、何を着ても似合ってらっしゃる…。
「おそくなってもーたぁ…堪忍!!」
「大丈夫ですよ、慌てなくてもよかったのですが…」
…まぁ、一時間前にきてしまった自分がいう言葉でもないが。
「う、うん、そう、やね…え、と…」
何故かお嬢様も戸惑っている…?よく見ればお嬢様の頬が赤いような…?
まぁ、いい。

お嬢様と今日は思いっきり楽しもう…
そう、決意した瞬間だった。
54 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/07(水) 08:39:41 ID:5yeqzr8o
はい、みじかーい。

では乱筆乱文乱作?失礼しました。m(_ _)m
55名無しさん@秘密の花園:2008/05/07(水) 09:49:41 ID:3zYt9ixr
>>54
GJ!しっかり補給させて頂きました。
56名無しさん@秘密の花園:2008/05/07(水) 17:50:22 ID:n3cbudWV
「ぁ、あの、せっちゃん。ちょっと言いにくいんやけど……」
木乃香お嬢様は、黒い艶やかな髪から覗く耳まで赤くして、うつ向いていた。
なんだろうと、木乃香お嬢様へ体ごと向き直る。
「あ、あんな、ちゃ……」
瞬間、春の名残を思わせる強風が私の顔を叩いていった。
「ひゃ!」
木乃香お嬢様のサラサラの髪が、ふわふわのスカートが、木乃香お嬢様自身が、流れるように私に向かってやってくる。
あ、もう少しで見えそうなのに。と純情少年のような思考に捕らわれつつも、木乃香お嬢様の肩をしっかりと抱き寄せた。
今お風呂に入ってきたのだろうか。いつもより強烈なシャンプーの香りが鼻孔をくすぐっていく。
「大丈夫ですか?」
「……」
暫し、沈黙。

本当にどうしたというのだろう。私の心臓の都合により早く離れて頂きたいのだが、支えられた体制のまま動こうとしない。
もう一回呼びかけてみる。
「おじょっ、しゃま?」
見事に噛んだのはいいとして、あまりにも反応の無さに不安が募ってきた。
というより、木乃香お嬢様の肩が……震えている?
「このちゃん、どうしたん?」
そっと体を離し顔を覗き込むと、木乃香お嬢様はいつも倒している鬼のような形相で黒いオーラを放っていた。一気に火照った体に寒気が吹き抜ける。
私の視線に気がついた木乃香お嬢様は、目をいつもより丸め、直ぐ様目を細めた。
いつもの、笑顔だ。
だが、まだ寒気が収まらない。
「せっちゃん、ありがとう。ちょいここで待っててなゴキブリ退治してくる」
「ご、ゴキ?」

満面の笑顔を私に残したお嬢様は、踵を翻し元来た道を歩き出した。小さな鞄から、ハートの杖を取り出しながら……。

今冷静になって気がついたが、よく知っている気配が3つ、車の陰に隠れているようだった。
初心者用杖が見えてますよ、綾瀬さん。
あぁ、お嬢様たちは本当に仲がよろしいのですね。部活で助け合い、お互いを信頼しあっている。
だから木乃香お嬢様も本当の顔を見せられると……。
小さい背中からどこまでも続く青空へ視線を映し、お嬢様をもっと知りたいと心に決めたのが、デートの始まりだった。
57名無しさん@秘密の花園:2008/05/07(水) 20:13:12 ID:DSpivr7Z
ゴキブリワロタww
58名無しさん@秘密の花園:2008/05/07(水) 22:09:41 ID:TpR7g1o2
wktkkkkkkkkk!
59名無しさん@秘密の花園:2008/05/08(木) 03:55:21 ID:GV9VqddA
俺の妄想では、ハルナが木乃香の恋を応援しつつも邪魔な役割に必ずなるんだよな。誰か続き書いて。
60名無しさん@秘密の花園:2008/05/09(金) 00:34:39 ID:4Z99j8CJ
ハルナ「刹那さんに今日何日なのか、しつこく聞いてみな。できれば五月蝿い場所がいいかな」
このか「ウチが?」
アスナ「ハルナ、また何か企んでるんじゃないでしょうね」
ハルナ「違うわよ、普段滅多に拝めないもの見たいと思わない?」
このか、アスナ「……?」



休み時間の購買部。
こ「なぁ、せっちゃん。今日何日だっけ?」
せ「えっと、九日ですね」
こ「……え?周りが五月蝿くてよう聞こえへんかった。何日?」
せ「九日です!」
こ「せっちゃんごめん、もっかい」
せ「こーこーのーか!」
こ「……も、もう一回///」
せ「(耳元で)こーこーのーか!」



パル「見て、木乃香の顔真っ赤。滅多に拝めないわよ」
アスナ「……木乃香を呼び捨てにしてる刹那さんも初めて見た」
パル「これぞ刹この!」
61名無しさん@秘密の花園:2008/05/09(金) 07:35:27 ID:8bEH8Yjg
>>60は神
62名無しさん@秘密の花園:2008/05/09(金) 10:46:17 ID:gTqsCrSQ
>>60
なんてもん投下してくれんだよ!
職場だってのにニヤニヤしちまったじゃねぇか!
GJもっとやれ
63 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/09(金) 13:53:45 ID:p30fija4
前スレ埋めの続きを投下しに来ましたが…ちょっと感想…

>>60
そ、其処まで昇華するとは、感服しました。
なるほど、九日でまさかの呼び捨て。素晴らしいですね。

さて前回のあらすじ。
魔法世界でちりちりになったがせっちゃんとこのちゃんはたまたま近くで…
合流間際、服を溶かすあのモンスターにこのちゃんが襲われてこのちゃんの服消滅。
服溶かしモンスターをせっちゃんが切ったおかげで助かるも、そのモンスターの体液に媚薬成分が…
服(ローブ)をこのちゃんに貸し出してみるも媚薬成分に当てられたこのちゃんが…
札でなんとか抑えて街へと向かった…

注意
1エロに強くないので脳内補完を頼みます。
2微妙にせつこのチックです。
3街だけあってイベント回避しています。でも無理やり感があります。(オリキャラ(ザコ)登場等)
4以上を認めないと言う方はスルー推薦。
次から投下します
64 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/09(金) 13:54:33 ID:p30fija4
お嬢様を助け、4時間が経過した。
やっとの思いで着いた街。
其処では、多くの人、妖精、獣人達がにぎわっていた。
「う、うわぁ…何や沢山人…おるなぁ…」
お嬢様が腕にしがみ付いて来る。
…流石に新しい、というよりも全くの別世界だ。
この反応しても、無理はない。
「なぁなぁ、あれ何やと思う!?」
―――いや、わくわくしてたようだ。
「お嬢様、ほどほどにしてください」
苦笑しながら、ひらりとお嬢様の目の前で手を振ってみて。
「…ん…?」
何か紙が飛んでくる。
其れを難なくキャッチすれば、それは少し古いような紙で…。
だが、ネギ先生やアスナさんの顔写真が乗って…DP…此処の通貨単位?
「………お尋ね者?!」
一気に私の頭は警笛を鳴らす。
「んー?どうしたん?」
「お嬢様、のんびりしている場合ではないです、変装なりしなくては…」
と告げながら先ほどの紙を見せる。お嬢様も気付いたらしい。
「そ、そうやね、どっか、…いや、あかん、此処の通貨もってへんやん!」
…これは…四面楚歌とも言うのだろうか?
65 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/09(金) 13:56:25 ID:p30fija4
仕事を探して、なんとか稼ぐしかない。
小さい頃からしてきて、身についていたものが
此処で発揮されるとは思っても見なかった。
どうやらそういうのを扱っている店があるらしい。
持っていたローブで顔を隠しながら聞き込みをした結果、だが。
「どうやら、ここやねぇ」
「そのようですね」
文字は読めないが、教えてもらった看板から、そうであると確信した。
入ろうと扉に手をかければ、殺気が感じられた。
「…今入るのは危険です、後にしましょう、宿を見つけねばなりませんし」
…どうやら察してくれたらしく、お嬢様は頷き、私の指示に従う。
「宿なぁ…ちゃんとあるんやろーけど…」
…どこかのRPGじゃないんですから、なんて思いながら歩を進める。
数分街を見回れば、一軒の宿屋にたどり着いた。
――こういう時に盛大にツッコミを入れられる人がいたらなぁ…。
ないものねだりしながらも、カランカラン、と鐘の音を鳴らしながら入る。
勿論、お嬢様も私に続く……。
66 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/09(金) 13:57:18 ID:p30fija4
お金が無い事、仕事を請けて返済する気がある事を告げて
条件付ではあるが、泊めてもらえることになった。
「物分りのいい人で助かったなぁ〜」
「そうですね」
部屋は宿の都合上一人部屋だが、其れでも泊めてもらえるだけマシだ。
「…はぅ……せっちゃん…」
…お嬢様が熱っぽい声を上げる……しまった、札の効果が切れたか…!
お嬢様の方へ振り向いて見ると…お嬢様は下着姿で…!!
なるほど、服の上から貼ったからか…って違う、考えるべきは其処では…!
「せっちゃん…しよ…?」
しよ?って言われても何がなんだか…
いや、待て、落ち着け、お嬢様は魔物の体液が原因でこうなっているんだ。
だとしたら指示に従って…その、したほうが…
あーいいやお嬢様に手を出すなど言語道断、近くに居るだけでも……ダメ…。
「うあぁぁぁぁぁぁ!!!」
頭がオーバーヒートを起こしそうだ…。
――誘ってくるのはお嬢様だ、問題ない。
――此処は再度札を貼って納めるべきです。
などど相反する感情が自分の中で争う。
「…?せっちゃんがせんなら…ウチからやってまうよ…?」
いつの間にか迫っていたお嬢様に気付くことなく
私はベッドへと倒されていた…。
67 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/09(金) 13:58:16 ID:p30fija4
「うわ、ちょ、お嬢様…そのっ…」
戸惑う私の首筋に、お嬢様の舌が這う…
その感覚がもどかしいというか、けれど嬉しいような、そんな感じがして。
「ん、せっちゃんはなんもせんで…ウチがしたるから…」
熱に浮かされたような、そんな顔でお嬢様が呟く。
その表情を見ただけで、私の堤防がガリガリと侵食されていって…。
「…っ、い、いけませ…おじょう、さま…!」
不意に顔が近づいたと思えば、唇に柔らかい感触が…。
一拍遅れて、キスされたのだ、と気付いた。
「ウチと、するの…嫌?」
ばき、ばき、とそれだけでも壊れだす、堤防。
「…っ、いえそう言う事ではなく…、緊急時に、こんな…っ」
「嘘や」
きっぱり、とお嬢様が言い放った。
「何時も逃げてるやん、日本では主と従者やからって
 此処では…緊急やからって……なんて逃げるんせっちゃん!!」
「……っ」
本当は、看破されたくなかった。
確かに、私は逃げていたのかも知れない。
…だが、それはお嬢様が特別だったからで…。
68 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/09(金) 13:59:16 ID:p30fija4
「本当に、宜しいんですね…?」
「せっちゃんなら…ウチは何されてもかまへんよ…」
私の堤防が、その一言で完全に壊れた。

その後は、まぁ、いちゃつき放題いちゃついていた訳ですが…。
…何だか…腰が凄く辛い気が…。
……ある意味、スポーツなんでしょうかこれは…。
私を求めすぎですお嬢様。
そのお嬢様本人は…
「……んぅ、せっちゃ…きもち…ええよ…」
…なんて寝言を言っている…って待てお嬢様の夢の中の私、何をしている。
まぁ、殺気を立たせたところで何もならないが…。
とりあえず今日ぐらいは安らかに…不安なく眠っていただこう。
まだまだ、私とお嬢様の旅も、皆さんの旅も、終わっていない。

始まったばかりなのだから…
69 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/09(金) 14:09:40 ID:p30fija4
はい、ヘタレな私にはこれが限界でした。すみません。
せっちゃん犬化の話は10連続投下で2回ほどになりそうです。
視点が交互に変ったりするので読みにくいかもしれませんが、ご了承ください。
せっちゃん視点難しいよせっちゃん視点。犬化故人語喋れない、伝わらない、カモ使用には厳しい。
まぁ、ぼやきながらもやっていきますですよ。
ではでは、乱筆乱文乱ぼやき(?)失礼しましたm(_ _)m
70名無しさん@秘密の花園:2008/05/09(金) 18:39:14 ID:JQlLEv3S
一つ言わせてください。


ぼやく暇があるならはやいとこ続きをプリーズ!


……失礼。次回も楽しみに待ってます。
追伸、
強気攻めでも! 鬼畜攻めでも!
ヘタレ攻めでも! ギャグ・ヤンデレ問わぬ壊れ攻めでも!
最後までこのちゃんを組み敷いて啼かせ通せたせっちゃんの艶姿に
萎えなどは 何一つない!
…………もとい、せつこの上等むしろ大歓迎ですからガンガンやっちゃってくださいお願いします。
71名無しさん@秘密の花園:2008/05/09(金) 20:33:48 ID:iVRqdYvN
同意!!自分もせつこの派です。
72名無しさん@秘密の花園:2008/05/09(金) 21:35:00 ID:W9HxzkIG
自分も刹那が攻めの方が好き
73名無しさん@秘密の花園:2008/05/09(金) 22:12:39 ID:8bEH8Yjg
ノせつこの
74名無しさん@秘密の花園:2008/05/09(金) 22:22:13 ID:ZVjhsNV2
せつこの好き案外多いんだなww


まぁ、俺もそうだが。
75名無しさん@秘密の花園:2008/05/10(土) 00:08:58 ID:4eQOz9Xr
ジャンルは不明。萌ではなさそう。地の分ばかりのため長い。
慣れてないので投下間隔長いかもしれませんがご容赦を。
投下開始します。

あと>>69さん大好きです。
76名無しさん@秘密の花園:2008/05/10(土) 00:10:09 ID:4eQOz9Xr
桜咲刹那は現在困っている。
その原因は麻帆良祭において開催された「まほら武道会」に出場したことだ。
この武道会に参加した主たる目的は裏で手を引いてあるであろう超鈴音の企みを探ることにあった。その目的は果たせなかったが、明日菜、エヴァンジェリン、ネギと闘うことで得られたものは刹那にとって大きなものであり、刹那個人としては有意義なものであったといえる。
その後知名度の向上によりしばらくの間時の人となったが、日が経つにつれ周囲は沈静化していき、半月が経った現在では麻帆良祭以前と変わらぬ日々を送れるようになった。ある一点を除いて。
その一点とは部活動であり、現在進行形で刹那を困らせている全てがそこにある。
77名無しさん@秘密の花園:2008/05/10(土) 00:13:34 ID:4eQOz9Xr
剣道部に所属する際、刹那は部員や顧問にある説明をしている。
―京都の個人道場で剣道を習っていた。
―他流試合が一切禁じられている。
―その為試合には出られないし練習での手合わせもできない。
要約するとこの三点になる。実際には京都神鳴流にそのような制限はない。
むしろ活発に他流を学ぶ傾向にある。武器を選ばずとはよく言ったものだ。
生真面目な刹那には、手合わせで手加減など出来ようはずもなく、それを自覚した上で考えた苦肉の策であった。
変わり者の多い麻帆良学園だからであろうか、この条件はすんなり受け入れられ、無事剣道部に所属できた。
部活動で得られた仲間との触れ合いは刹那の宝物といっても良い。
修学旅行前までの刹那にも、部活動の仲間とは笑顔で話す場面がよく見られた。
そんな中で行われた、まほら武道会。その舞台でどれほど高度な戦闘が行われていたのか、一般人の目には理解できなかったであろう。
だが、その舞台に立ち闘った者たちの持つ図抜けた力量は伝わった。当然剣道部員にも、である。
そして現在。刹那はとても困っている。
78名無しさん@秘密の花園:2008/05/10(土) 00:15:02 ID:4eQOz9Xr
「この通り!お願いだからぁ。ね?」
「そう言われましても…」
放課後、校舎の廊下を歩いていた木乃香は目的地の近くから聞こえてきた声を耳にして立ち止まった。
剣道部部室がもうすぐ見えようか、という所である。
前者の声に、なぜかイラつく。誰だったろう?少なくともクラスメイトではないように思えた。
立ち止まったのは、聞き間違えるはずのない後者の声にひきつけられたからだ。
木乃香の心を常にざわめかせるその声は、何だかとても困っているように聞こえた。
79名無しさん@秘密の花園:2008/05/10(土) 00:17:29 ID:4eQOz9Xr
「どしたん?せっちゃん」
「あ、お、お嬢様!」
わたわたと慌てる刹那。白い頬に朱が差す。いい加減慣れてもいいだろうに、未だ木乃香に対する過剰反応は治まらないようだ。
普段の木乃香ならその姿に、抑えきれない、抑える気もない満面の笑みを向けたであろう。
その笑みは刹那と共にいた女生徒を見て急速に引っ込んだ。イラつく声の正体。
過去二年間、正確には修学旅行前まで、刹那と共に笑い共に汗を流し、クラスメイトの龍宮真名を除けば刹那の一番近くにいた女。
剣道部部長がそこにいた。過去に自己紹介されたが名前は覚えていない。覚える気も無い。
「あ、木乃香さん!こんにちは!」
「こんにちは、ブチョーさん。ちょうせ」
っちゃんに用があるから、つれてってもええ?
と続くはずの言葉は突然肩をつかまれ揺さぶられて中断された。
「木乃香さんからもお願いしてもらえないかな!刹那さんに。
大会までの間だけでいいから、稽古つけて欲しいんだよね!みんなに!」
「ちょ、部長っ」
刹那は一瞬浮かんだ殺意を仕舞い込みつつ、やんわりと、だが有無を言わさずブチョーの手を木乃香から引き剥がした。
ブチョーは気にする風もなく手を握られたまま続ける。
「いーじゃん、他流試合禁止令解かれたんでしょ?」
「それはまぁ、そうなんですが…」
部に所属する際、他流試合は禁じられていると宣言したにも関わらず、
武道会で堂々と他流試合をしていた刹那が、苦しい嘘を取り繕うためについたこれまた苦しい言い訳である。
言質を取られた刹那は大会出場こそ辞退したものの、
それならばせめて稽古をつけて欲しいと請われ続けていたのだった。
刹那は困っていたのだ。
80名無しさん@秘密の花園:2008/05/10(土) 00:20:58 ID:4eQOz9Xr
「…まで…」
「え?」
不意にもれてきた声に、ブチョーがたじろぐ。
「いつまで、」
「お嬢様?」
これまで感じたことの無い圧迫感を覚えた刹那は危険を感じ、その発生源から部長をかばう位置に無意識に動いた。
護衛のサガであろうか。しかしそれは圧迫感を増強する結果になった。
「いつまで手ぇ握っとるの…?」
声はあくまで静かだった。その表情も決して怒りに満ちたものではない。
むしろ悟りを開いた菩薩のような静かな笑み。
そう、悟りを開き、情けも容赦も捨て去った者の笑みがそこにあった。

―刹那さん固まってた…。結局、木乃香さんが私たちの手を丁寧にほどいて、
刹那さんと腕組んでね。ほなな、ブチョーさん。て言って、刹那さん連れて行ったの。
わたし、何もできなくて。見送ることしかできなかった。
木乃香さんがね、刹那さんの耳元で、だけどわたしにも聞こえる声でね。
覚悟できとるよね?って。
そこまで言うとブチョーは震え、それ以降は口を閉ざした。
三日ほど姿を見せない木乃香と刹那を心配した3-Aクラスメイトの明日菜、担任のネギが
聞き込みを重ね見つけた、恐らく最後に二人に会った人物、剣道部部長の証言である。

その二日後、二人は何事も無かったかのように登校を再開した。
二人は何をしていたのか。尋ねられない空気は普段空気を読めない明日菜でさえ感じ取れたが、
あえて空気を読まず、尋ねた。五日もどこでなにしてたの!と。
木乃香は曖昧に笑い、刹那は―――結局、困っていた。
81名無しさん@秘密の花園:2008/05/10(土) 00:21:52 ID:4eQOz9Xr
何を思って書いたのやら自分でもよく分かりませんがとりあえず終了。
ブチョーの名前は不明。
他流試合禁止って剣術なら「剣術の」他流派限定だったりするのでしょうかね。
その場合の刹那の言い訳の流れ↓
まほら武道会は異種格闘技戦であるため、他流派剣術が出場していても不思議はなく、
他流派と闘う可能性があるのだからそもそも出場してはならない、
出場するなら他流試合禁止が解かれていなければならない。
他流試合禁止が「武術全般の他流派との対外試合禁止」なら上のようなややこしい段階踏む必要はないのですが。
駄文と蛇足でお目汚し失礼しました。
読んでいただけていたら幸い、スルーしていたならば賢明です。では。
82名無しさん@秘密の花園:2008/05/10(土) 00:27:17 ID:wDL21FOB
>悟りを開き、情けも容赦も捨て去った者の笑み
それ菩薩じゃねーよ、どっちかっつーと修羅や羅刹だよ、百歩譲っても明王だよ(((;゚Д゚)))
ってどーでもいいし失礼ですね、申し訳ない。
しかし一体空白の五日間に何があったのやらw
83 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/10(土) 02:53:39 ID:n6E+yFE1
とりあえずできた所まで犬化せっちゃんの投下にきましたよ…と。
の前に、答えと感想をば。

>>71-74
意外とせつこの派多いですね。
勿論私もそのタイプなので、せっちゃんが攻めっぽくなります(ぉ)

>>81
楽しく読ませて頂きました、ブラックこのちゃんいいよブラックこのちゃん。
そして大好きとは…!ありがとうございます、本当、励みになります。

では、次、注意点。
1視点が交互に変ります。
2まだ前半です。(続きます)
3学園長とかわかりにくいキャラがいます
(スルーしちゃっても基本的に大丈夫です)
以上2個以上ダメならスルー推薦。では次からどうぞ
84 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/10(土) 02:54:29 ID:n6E+yFE1
ある日に魔物が学区内に現れた。

「その魔物を退治すればいいのですね?」
「ふぉふぉ、そうじゃ…よろしくな刹那ちゃんや」

…解り難いだろうが後者は学園長の台詞だ。
そう学園長から依頼を受けその魔物を森の中で退治したものの…
…そういえば龍宮が「中途半端な魔物の呪いは怖い」と言っていたが…
正にその呪いに掛かってしまったらしい…。
切った時に返り血を浴びたのが原因のようだ…。
小さくなってしまったのか…にしても小さくなりすぎてないか…
そんなことを考えながらも濡れ切った制服から這出る。
…こんなに大きかったかな…私の制服は…。
立ち上がろうとするがバランスが取れなくて転んでしまう。
転んだ先で…雨に打たれながらも水溜りに映る姿は…柴犬だった。
85 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/10(土) 02:55:02 ID:n6E+yFE1
「せっちゃーーーん!!!」
おじいちゃんが言うには…
「刹那ちゃんなら仕事へいった…ふぉ!?」
…最後の驚きの部分はウチがトンカチでごんっといったとき…
せっちゃんの退治する魔物ゆーんがちょっと危険らしい。
とネギ君から教わって探しにきた。
「せっちゃーーーん!!!」
叫びは雨音でかき消されていく。
……この辺のはずなのに…。
何で…みんなことになったのだろう…。
其ればかりが頭に廻る様な…そんな光景。

赤い血と雨に濡れた制服と…せっちゃんの剣「夕凪」が、其処にあった。
86 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/10(土) 02:56:36 ID:n6E+yFE1
――こんな姿、見せられないな。
犬でいう「お座り」の状態で、草むらからお嬢様を見つめる。
…だが、お嬢様は既に“元の姿の私”を探すだろう。
……それが解るからこそ、余計にこの姿を晒したくない。
大体…お嬢様は犬の言葉を判別することも出来ない。
それどころか、気持ちは…?
――元々近くに居てはならないのだから此の侭身を隠すのも良いかもしれない。
そんなネガティブな考えが回る。
……そんな中。
「せっちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!…ふっぐ…えっく…」
お嬢様の悲痛な声が…泣き声が、聞こえた。
――…居た堪れない。
今すぐにでも駆け寄りたい。
今すぐにでも抱きしめて「此処にいる」と伝えたい。
…犬の姿でできるわけがない…。
だが犬でも出来ることをしよう…。
私の制服を抱えて喉を痛めそうなぐらい叫ぶお嬢様の元へ、駆け寄ることにした。
87 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/10(土) 02:57:14 ID:n6E+yFE1
「っ…せっちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!…えっく…」
…雨の中叫んで叫んで、ついに涙が零れてきて。
其れでも尚、叫んでいた…何だか不思議な自信があった。
――これだけ叫べば、せっちゃんは必ず来てくれる。
そんな、自信が何故かウチにはあった。
シタッシタッ…と足音がした…。
雨の中そうそう歩いてこない森の中。
誰だろうと振り向けば、其処に柴犬がいた。
だけど、首輪はしていない…ノラにしては…なんや綺麗やし…。
…鞘に収まった夕凪を銜えて、ウチに駆け寄る。
「…ワンちゃん、せっちゃん、何処行ったかしっとる…?」
なんて聞いてみても、わかるわけないって、解ってる。
その柴犬も、困ったような曖昧な、そんな感じの顔をしていた、気がする。
…そういえば、せっちゃんも時々そんな顔したっけ。
ウチの寮はペット可やし、つれて帰ろう。
――なんや、このワンちゃん、せっちゃんに似とるしな…。
もしかしたら、既にせっちゃんも帰ってるかもやし。
そんな期待をしながら、ウチはせっちゃんの制服一式と夕凪を持って
「行くえ、犬さん」
「ワン」
返事とも取れる声に、少しだけ元気になりながら寮に戻った。
88 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/10(土) 03:00:03 ID:n6E+yFE1
やれやれ、この姿で寮に帰ることになるとはな…。
思わずお嬢様の呼びかけに「はい」と返事はしたものの…
解って頂けたのだろうか…?
ブルブルとお嬢様のいない所で自分についた水滴を振り払う。
流石に、この時期の雨は堪える…。
「へくちっ…うー、あかん、此の侭やと風邪ひいてまうなー…」
寮の中に一足先に入っていたお嬢様が呟いていた。
犬らしい行動を心がけて…
…なに、幼い頃に一緒に遊んだあの犬のようにすればいいだけ…。
……この姿でも、お嬢様のことは守れるしな。
お嬢様の近くに寄りながら大丈夫ですか?と告げる…
…実際に聞こえるのは「クゥーン…」とかそんなんだろうが…。
「…ん?どうしたん?お腹でもすいた?」
…うん、思いっきり伝わってない。まぁ、仕方ないが…。
「よし、部屋に帰ろか、な」
私の頭を撫でると階段を上がっていった…。
…でもそっち側、私の部屋の近くなんですが…。
お嬢様が私と龍宮の部屋のドアの前に行けばノックしていて。
…あぁ、もしかして先に帰っていると思ってか…。
お嬢様の考えを読みながらも、龍宮がドアを開いて…。

…お嬢様が聞けば、きついだろう言葉を告げていた。
89 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/10(土) 03:00:45 ID:n6E+yFE1
「アイツなら、未だ帰ってきてないが…どうした?」
淡い期待もなくなって、無理やり笑顔作りながら
「そう、なんや、ありがとう、龍宮さん」
ん、と呟くと龍宮さんは再びドアを閉めて中に入っていく音が聞こえた。
…あ、はは、せっちゃん何処へいったんやろ…。
崩れ落ちそうな感じを必死でこらえながら、自分の部屋に戻る。
扉を開いて、部屋の中に入れば、ネギくんとアスナがお帰り、と言ってくれる。
少しだけ、救われたような、不思議な感覚がした。
「あれ、その犬…拾ってきたんですか?」
ネギくんの質問に、せっちゃん似の柴犬が扉の前にいて。
「うん、なんやせっちゃんに似とるきがしてな、入ってきてええよー」
なんや凄く律儀やな…やっぱどっかに飼われてたんやろか?
軽く頷くとタタタッと上がって足拭きマットで足を拭いてから上がってる。
「ほんと、なんとなく似てる気がするわねぇ…あ、あたしもー寝るから」
「う、うん、おやすみやアスナ」
「おやすみなさい、明日菜さん」
「おやすみだぜ姉さん!」
「ワン」
あれ?何でこのワンちゃん…アスナの事知っとるように…気のせいやろか?
90 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/10(土) 03:01:22 ID:n6E+yFE1
そうか、もう明日菜さんの眠られる時間か…。
おやすみなさい、といってみたものの、伝わってないのは明白、と…。
カモさんなら…何とか会話できるかもしれない。
…できたとしてどうしようもない。
何にしろ私は今犬で、誰がなんと言おうと桜咲刹那だが…。
変わっていると言った所で、信じてくれないかもしれない。
そんな感情がぐるぐると回って、結局何も出来なくなっていて…。
人の話す言葉がこんなにも大切なものだと、思っても見なかった。
お嬢様に話そうにもこれじゃ無理だ…自分なりに解決出来ないかやってみよう

……と考えたのが間違えだった。
せめてあれだ、人語を話せればよかったんだ。そうすれば札とかも使え…
…いや、もういい、やめておこう…。
八方塞なのは解った、時間がたてば…もしかしたらお嬢様が気付いてくれる。
そう、期待というやつだ、せめて期待して待とう。
…なんだ、果報は寝て待て、というやつだな、うん。
お嬢様はといえばカラ元気を出して
犬用のトイレとかご飯を買わなくてはだとか
名前なんにしよう、とかカモさんとネギ先生とお話なされていた。
…私は、もう寝よう…何にせよ明日は多分、連まわされることになる。
91 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/10(土) 03:03:25 ID:n6E+yFE1
部屋の端っこで伏せて眠っているワンちゃん…。
やっぱり雰囲気がせっちゃんに似てる気がする。
もしかして本当にせっちゃんやったりして…、そんなんあるわけないか。
「なぁ、カモくん」
「なんすか?木乃香姉さん」
「さっきアスナに返事するよーに其処のワンちゃんがワンって言うた気がするけど…
なんて言うてたかわかる?」
なんとなく、気になる。…気がする。
「んー?すまねぇ木乃香姉さん、まともに聞いてなかったっすよー」
…そっか…気のせいやよね…。
「ん、ありがとな」
半ば虚ろなまま呟く、どちらにしてもせっちゃんは居らんのやから
…こんなに不安な夜も、久しぶりな気がする。
久しぶり、という表現はおかしいやろうけど…。
あっはは…姿すら見れんのは厳しいな…。

今日を越えれば…戻ってくるかな…。
92 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/10(土) 03:15:00 ID:n6E+yFE1
さて、前半終了です。
このあと犬用のものとかどすどす買う事とか思いっきり飛ばしてこのせつな世界になればいいなと思っています。
というかそうしないと枠内に収まらなくなるということになって…。
まぁ、なんとか頑張って、続きを書きたいと思います。
では乱筆乱文失礼しましたm(_ _)m
93名無しさん@秘密の花園:2008/05/10(土) 04:22:45 ID:oI5vulwF
GJだが……「…」が多くて……読みにくいな……。地の文ではあまり使用しないほうが……
94名無しさん@秘密の花園:2008/05/10(土) 17:40:14 ID:rmxqEttx
>>92
行間空けて欲しいっす
95名無しさん@秘密の花園:2008/05/10(土) 17:45:55 ID:9YrXeG/q
そうだな……たしかに「…」が多いな…
でも…GJ…だったぞ…
96名無しさん@秘密の花園:2008/05/10(土) 23:56:55 ID:aPpQoBoY
俺的には全然平気。とにかくGJ!
97名無しさん@秘密の花園:2008/05/11(日) 02:09:16 ID:Mkqbl8Uq
続きが早く読みたい!
正座して待つとします。
98名無しさん@秘密の花園:2008/05/11(日) 06:20:08 ID:MFVjf0PU
教室にて。
朝倉「お二人さん。こいつら(3つの小瓶)を嗅いでくれ。どう思う?」
木乃香「ほぇ?」
刹那「これなんですか?」
朝倉「試供品の香水だよ。今皆にアンケート取ってんの。どの香りが好き?」
木乃香「せやなぁ……」
刹那「あ、私から先に」
朝倉「お?刹那っちが興味示すとは意外だねぇ。もしかして恋をしてオシャレに目覚め――」
刹那「魔力の気配無し。安全です」
朝倉「普通の香水だってば!」
木乃香「朝倉信用されてないんやね♪」
朝倉「……刹那っちひどい」
刹那「えっと、、、(汗)わ、私はこの香りが好きです」
朝倉「理由は?」
刹那「なんだか落ち着くんです。ずっと嗅いでいたいような……」
朝倉「落ち着く香り?」
刹那「はい。癒しというんでしょうか。あの、この試供品頂いても?」
朝倉「アンケートのお礼にひとつあげることになってるからどうぞ」
刹那「ありがとうございます♪」
朝倉「こちらこそいいデータをありがとう♪木乃香は?」
木乃香「んー…あ、ウチもせっちゃんが選んだやつかな」
刹那「いい匂いですよね」
朝倉「さすが気が合うね。理由は?」
木乃香「あんな、これ昔っから使ってるシャンプーと同じ香りがするんよ。ウチの匂いが落ち着くやなんて、なんや照れるわぁ///」
刹那「……え?///」
99名無しさん@秘密の花園:2008/05/11(日) 06:47:37 ID:Mkqbl8Uq
ちょ///GJ
100名無しさん@秘密の花園:2008/05/11(日) 10:02:21 ID:xObRu3/3
GJ///
101名無しさん@秘密の花園:2008/05/11(日) 10:28:20 ID:oofX3lME
そう来たか!GJだわ///
102名無しさん@秘密の花園:2008/05/11(日) 23:08:57 ID:Rr/umFqc
ここみてる人に質問だけど、いいかな?

クラスメイトからモテモテのせっちゃんに
独占欲バリバリな気持ちをぶつけてしまう感じの黒木乃香と
お嬢様を慕いすぎて気持ちのブレーキがきかなくなってしまってるような黒刹那
・・・どっちのほうが需要あるのかな?
103名無しさん@秘密の花園:2008/05/11(日) 23:13:30 ID:MFVjf0PU
両方に決まってるだろ
104名無しさん@秘密の花園:2008/05/11(日) 23:24:13 ID:XygFN1sJ
黒木乃香に一票(・∀・)ノシ
105名無しさん@秘密の花園:2008/05/11(日) 23:28:10 ID:oofX3lME
>>102
俺は黒刹那派
106名無しさん@秘密の花園:2008/05/12(月) 00:05:52 ID:erHdH8h2
ブラックこのちゃんに1票!
107名無しさん@秘密の花園:2008/05/12(月) 01:21:33 ID:FN7st7BG
黒木乃香ノ
でも黒刹那も捨て難いぞいwww
108風邪?:2008/05/12(月) 02:42:42 ID:e082x65G

「うぅ・・・・」

全校生徒が登校している最中、桜咲刹那は一人で寮に残っていた。
季節外れの風邪・・・・というのには、ずいぶんと長引いている。
インフルエンザかもしれないということで、一緒に暮らしている寮友もこの部屋にはいなかった。

「昨日と同じ、38度越えか・・・・さすがに辛い、な・・・・」

頭痛と気だるさも重なり、刹那は辛そうに身を起こした。
水分はしっかりとっている。
しかし食欲は沸かなかった。
薬も飲む気になれない。
いや、飲めない。

(よくこんな得体の知れないもの飲めるよな・・・・)

生理的に受け付けないというよりも、トラウマだ。
刹那を半妖と知らなかった道場の使用人は、熱を出した刹那に道場秘伝の漢方薬を飲ませた。
しかしその漢方薬には、妖怪にとって猛毒だった薬草が使われていたのだ。
人には"癒"、妖怪には"毒"。
そういった秘伝の薬だった。
半妖の刹那には"毒"の部分が作用してしまったのである。

(この薬にだって何が入ってるかわからない・・・・飲めるものか)

そういって刹那は薬の箱をゴミ箱に捨てる。
龍宮が用意してくれたものだが、刹那は受け付けなかった。
薬を飲まない主義だと知っているくせに、勝手に用意するほうが悪い。

「・・・・寝よう」

とにかく今は寝るしかない。
そう判断した刹那は水分だけを取り、また布団に倒れこんだ。
109風邪?:2008/05/12(月) 02:43:15 ID:e082x65G

*

「・・・・せっちゃーん?」

刹那が寝静まった後、龍宮から刹那の様子を聞いた木乃香が部屋に訪れた。
寝ていたら起こしてはいけないと思い、静かに部屋に踏み入る。
案の定、刹那は眠りについていた。

「・・・・あー、薬捨ててあんな・・・・」

どうやら木乃香は、龍宮に刹那の様子を色々聞いてきたようだ。
そしてその龍宮の忠告通り、ゴミ箱には薬が捨てられていた。
木乃香はそれを拾い上げ、中身を確認する。

「封も開けとらんやんか・・・・ほんまに薬嫌いなんやなぁ」

魔法医療関係の所からもらってきた薬なので、毒はもちろん入っていない。
龍宮もそう伝えてはいたようだが、刹那は聞き入れなかったようだ。

「ご飯もまともに食べとらんようやね・・・・しゃーないなぁ」

素直かと思えば、妙な所で頑固な幼馴染。
台所などを見回し、刹那の現状を把握した木乃香はため息をつく。

「ほな、はじめよか」

木乃香は誰に言うでもなく呟くと、腕まくりをして台所へと向かっていった。

*
110風邪?:2008/05/12(月) 02:43:56 ID:e082x65G

――トントン

「・・・・ん・・・・?」

台所から聞こえる包丁の音で刹那は目覚めた。
一人だったはずなのに人の気配・・・・・いつもなら不審に思って飛び起きる。
だが熱で倒れている状態の刹那には、その気力さえなかった。

(・・・・誰だろう・・・・)

うっすらと目を開けて、まず最初に窓の外を見る。
もうすっかり陽は高い。
ずいぶんと寝ていたのだろう。

(・・・・で、誰だ・・・・龍宮・・・・?)

ゆっくりと身体を起こし、同じ空間にいる人物を確認する。
熱のせいか気で探る事は不可能だった。
しかし不思議と不安感はない。
そのまましばらく台所の方を見ていると、その視線に気付いたのか使用者がひょこりと顔を出した。

「あ、起こしてもうた?」
「いえ、大丈夫です・・・・それよりなぜここに? 学校の方はどうなされたのですか?」
「ネギ君に頼んで、抜け出してきた」
「・・・・そう、ですか・・・・」

叱る力もなく、刹那はまた布団に転がる。
木乃香が心配して近づいてきてる事に気付いていた。

「・・・・つらいん?」
「ただの熱です」
「薬飲まんから・・・・ほら、飲も?」
「・・・・いや、です・・・・」

刹那は木乃香が持ってきた薬と水を拒み、投薬の拒否の意を見せる。
木乃香はため息をついて、刹那の顔を覗き込んだ。
111風邪?:2008/05/12(月) 02:44:42 ID:e082x65G

「そないに酷うなってるんに・・・・飲まな早く治らんよ?」
「明日には治します・・・・これぐらい、大丈夫です」

(こら梃子でも動かへんなぁ・・・・)

そっぽを向いてしまった幼馴染に、また溜息。
木乃香の手には、どうしても飲ませたい薬。
目の前にはそれを完全に拒絶する幼馴染。

(ん〜、そやな・・・・)

木乃香はガサガサと薬を出して細工をする。
刹那もその行動に気付き、背中越しに警戒していた。

「これでええな。せっちゃん、こっち見〜?」
「何で、ですか・・・・?」
「ええからええから。ほら・・・・」
「・・・・?」

急に木乃香の言葉が途切れ、それに疑問を持った刹那が木乃香の方を見た。
その瞬間、頭を両手で押さえ付けられ動けなくなる。
そして刹那の唇には何かが押し当てられた。

「〜〜〜っ!?」

目の前には木乃香の瞳。
優しげなその瞳に飲まれ、刹那は息を呑んだ。
・・・・実際には口移しで送り込まれた水を飲んだのだが。
それを確認すると、木乃香は身を引いた。

「――よく出来ました」
「え、あ・・・・まさか・・・・」
「戻したらあかんよ?」
112風邪?:2008/05/12(月) 02:45:58 ID:e082x65G

ニコッと笑い返され、刹那は言葉を詰まらせた。
水と一緒に流し込まれたのは、間違いなく薬。
刹那は咄嗟に吐き戻そうとしたが、それは木乃香に止められた。

「・・・・あ、ウチもう学校もどらなあかん」
「ごめんなさい、私のために・・・・」
「んーちゃんと薬飲んでくれからな、後は元気になってくれたらええよ」

木乃香は台所に戻ると、小さな鍋を持ってくる。
それをテーブルに置くと、ソファーに置いてあった学校カバンを持った。

「元気あったら食べてな? 放課後また来るえ」
「はい・・・・ありがとうございます・・・・」
「ほんまはずっとおりたいんやけどな・・・・我慢して大人しくまっとってなー?」

忙しそうに走り去る木乃香の背中。
おっとりとした木乃香だが、こういった家事等はテキパキとこなす。
将来はきっと、できる女になるだろう。

(あ、口移し・・・・風邪、移るかもしれないのに・・・・)

そう思いながらも、用意されたお粥に手をつける。
病人のご飯らしくいたってシンプル。
しかし口をつけると、丁寧に味付けられた上品な味が口内に広がった。

「・・・・おいしい」

完食こそは出来ないものの、満たされる分だけ食べて刹那は布団へ戻った。
木乃香が来る前と比べ、ずいぶんと楽になってきた気がする。
薬のおかげだろうか。
113風邪?:2008/05/12(月) 02:48:10 ID:e082x65G

「このちゃんには・・・・かなわないや・・・・・」

結局薬を飲まされた自分を恥じる刹那。
しかしゆっくりと木乃香に染められていく自分も、どこか心地よかった。

(お嬢様がきたら、また薬をねだろうかな・・・・)

恥ずかしがりやな彼女の事、そんなことは絶対に出来ないだろうが。
これを期に刹那は、木乃香が出した薬だけは飲めるようになったようだ。


FIN              KEYWORD PUZZLE( ttp://id41.fm-p.jp/35/sieg74/ )

キーワード:『栄養不足』『化け物』『薬』

俺は風邪かと思ったら腎盂腎炎でした。
現在闘病中。
無理せず病院行くようにしような、同胞たちよ(´・ω・|布団|
114名無しさん@秘密の花園:2008/05/12(月) 05:05:13 ID:IwRUti4S
GJ!甘甘ですね(*´∀`*)
115 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/12(月) 05:46:35 ID:mMFPJhuY
息抜きに来ましたが…なんだか色々GJなものが投下されて、補充完了です。
投下作者の方々、時間により個々に感想言えずすみません、でもGJでした。

お答えと意見をば
>>93,>>94,>>95
次回犬化せっちゃん後編はそんな事無いように調整中です。
只それ故になんとなく視点変更に誤差が生じますが(一レス交互→二レス後一レスで戻る等)それは勘弁してください。

>>97
正座してだと痺れませんか?軽く崩してお待ちになっていただけると…なんて思ったりしましたよ。

>>102
せつこの派では黒せっちゃん
このせつ派なら黒このちゃんではないでしょうか。
どちらも需要あると思いますよ。…多分。

>>113
お体を大事になさってください、ね?

犬化せっちゃんは…敵を一応その辺のボス犬にしてみたいかと。
その他候補があればいくらでも変えますので少しだけ皆さんの意見をください。
では、乱筆乱文乱コメ返し失礼しましたm(_ _)m
116名無しさん@秘密の花園:2008/05/12(月) 05:50:15 ID:GetCwTWz
GJ!とだけ言いたいとこですが、余計な事まで言わせていただきます。
身体壊してるなら夜更かしはよしといた方がいいっすよ。
お大事に。
117名無しさん@秘密の花園:2008/05/12(月) 10:43:17 ID:GetCwTWz
蛇足ながら、>>116>>113宛てに
>>115
やはり攻めが黒化するのはデフォですなw
しっかし、黒木乃香×黒刹那や黒刹那×黒木乃香ならどんな風になるんだろ
118名無しさん@秘密の花園:2008/05/12(月) 10:46:55 ID:a/pljfWy
昼はこのせつ、夜はせつこのが好きだな。

黒木乃香は常に黒い方がいいけど、
黒刹那は木乃香にだけ黒いのが好き。
119名無しさん@秘密の花園:2008/05/12(月) 20:47:12 ID:kKcJfTTV
>>113
ク氏ktkr!!!!!!
GJ…なんだけどその時間に書き込むのはかなり体に負担かかるのでは?
120名無しさん@秘密の花園:2008/05/12(月) 21:08:46 ID:0cy9Oeh1
>>113
久々の白木乃香に萌えたw GJ! つか腎盂腎炎てなにorzマジ気を付けてくれよ!
121102:2008/05/12(月) 22:42:59 ID:A1Mcg4Oz
>>103 >>104 >>105 >>106 >>107
>>115 >>117 >>118 
みんなありがとう。一晩でたくさんの人が反応してくれて嬉しかった。
黒木乃香のほうが人気?と思いつつ迷うなら両方かいてしまえという結論になったw
貴重な意見ほんとありがとう。近いうちに投下できればいいな、と思う。
122 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/13(火) 06:48:27 ID:B63s48yx
犬化せっちゃんが思うとおり進まないです。
なので再び息抜きで黒せつ黒このの短編(三レス分ぐらい)を作ってみた。
1黒く思えなかったらごめんなさい。
2詰め込み版っぽいので、此れを用いて長編にしてもOKです。
>>117、ネタ感謝です。
では次からどぞ
123 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/13(火) 06:49:54 ID:B63s48yx
黒×黒

朝の目覚めから、既に私の仕事が始まっている。
身支度を整え、お嬢様を起こしてキスを奪うことから、だ。
音を立てず忍び込んでは、お嬢様のベッドへ潜り込む。
そして潜入成功を確信しながらお嬢様を起こす。

「お嬢様、朝ですよ」

普段は此れで起きるのだが…たぶんもう起きているのだろう。
腕が、私を包んで放さない所を見れば。

「せっちゃん捕まえた」

にこにこ、と笑っているが此れが普段と同じではないと解らないなら節穴だ。
思い切り抱きしめて放さない。とりあえず目的のキスを手早く済ませると

「おはようございます」

と呟いてあげる。そうすると放すのを知っているからだ
124 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/13(火) 06:50:58 ID:B63s48yx
「ん、おはようや、せっちゃん」

お嬢様がぱっと放すと朝ごはんを作られに行く。
此処最近ずっとこうだ。
お嬢様の黒さは日に日に強くなっている。
…勿論、それは私も同じだが。
龍宮と話している際

「あかんよー、せっちゃんはウチの物なんやから」

と言って困らせるほどだ。
最近、ネギ先生は別荘に篭りきりで帰ってこないらしい。
明日菜さんも其れに同行している、だからこういう大胆なことが出来るのだ。
…私も同じく黒くなるといったがそれはお嬢様の前だけだ。
お嬢様は周りのことを気にせず黒くなる、困ったものだ。

「朝ごはんできたえー」
「はい、いただきます」

口移しで。とは言わずに。
私はこのちゃんのベッドを後にして、朝食を食べに行った…
125 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/13(火) 06:51:42 ID:B63s48yx
一見すればラブラブに見えなくもない光景。
ただし其れは一見だけだ。
いつ繰り出されるか解らない不意打ちなども警戒しながら、どう相手に寄り添うか
そんな戦闘みたいなことを常にやっているような物だ。

「せっちゃん、あーんは?」
「其れを言うお嬢様こそ、あーんしなくていいのですか?」

傍から聞けばラブラブだとしか言いようのない言葉。
それはある意味、どっちが攻めを勝ち取るかぐらいの戦争。

さて、今夜の攻めはどちらか…?
126 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/13(火) 06:56:30 ID:B63s48yx
終わりです、短いのなんのって。
犬化せっちゃんのSS弄りに逝って来ます…。
乱筆乱文乱ネタ奪い失礼しましたm(_ _)m
127名無しさん@秘密の花園:2008/05/13(火) 09:31:06 ID:IO8ht5+l
自分にとっては新しくて新鮮なこのせつだった。
面白かったぜGJ!
128名無しさん@秘密の花園:2008/05/13(火) 16:19:40 ID:EqpJM2MF
あれ?鼻血が…
129名無しさん@秘密の花園:2008/05/13(火) 17:50:53 ID:SCbn7h3s
二人がキスするのって何話?
130 ◆AIo1qlmVDI :2008/05/13(火) 18:58:27 ID:Ixs3zxBT
勿論その名は知っていた。
その名を持つ者の個人情報に疎くとも、千雨は彼女を知っている。
――桜咲刹那。
千雨が知るのは切れ長の厳しい瞳と氷のような意思を纏わせた姿しかなかったが、それでも動揺を隠す事は出来なかった。
「……え?ってことはつまり……、え?桜咲サンの中には今……ソイツが入ってる……って……ことですか」
ありえないことだ、と千雨の内心が言う。
しかし、何故ありえないなどと言い切れるのだろう。その不自然な思考に千雨自身は気が付かない。
「いや、彼女は彼女だ。彼の転生先として刹那君程の適格者もいなかったけれどね」
「……じゃあ、誰が転生先に……?」
「知らない方がいいことも世の中には溢れているよ。そしてこれは正しくその例に入る事項だね」
「……それは私の知っている人間だから、と解釈しろってことですね」
「……はは、あんまり大人をいじめないでくれよ……。君は本当に子供かい」
高畑が普段見せていた笑いは主に年下である千雨が一枚上手であるがために漏れる苦笑が多かったのだが、今の笑みは決してそれではなかった。
敢えて言葉にすると言うのであれば……冷笑。
その冷たい笑みに千雨は少し背筋が寒くなるのを感じた。
……高畑が、高畑で無い気がしたのだ。
「まあ……、それは聞かないことにしておきますよ」
「うん、そうしてくれると僕も嬉しいね」
僕がその転生先だから言いたくないんだよ、と言ったらどんな顔をするだろう。高畑はその好奇心を満たす為に言ってしまおうかと一瞬迷ったが、極めて無益なことだと思い返し口を噤んだ。
この長谷川千雨という生徒に何故ここまで執着を見せるのか、高畑は理解していない。いや、出来るはずがないのだ。深い意思の底は既に高畑という個人の手では届かぬ場所に在るのだから。
131 ◆AIo1qlmVDI :2008/05/13(火) 18:59:25 ID:Ixs3zxBT
白いズボンのポケットの中、拳が固められていることを千雨は知らない。固めている本人もまた、同じだ。
その意思がどんな意味を感じ役に立つとは言い難い存在を京都まで引っ張り出してきたのか、高畑も千雨も知ることはないだろう。ただひとつ明確だったのは、高畑に潜む彼ではない個体がそうさせているということだった。
契約は、完了したのだ。
彼を殺した者を殺し返す為に。
……それだけの為に。
「長谷川君」
千雨が高畑の冷笑に少なからず違和感を覚えたかどうかは定かではないが、その声が知っているものだったので千雨が若干緊張を緩ませたのは確かだった。
「君は……、何を思う?」
「……は?」
「僕はね、自分の無力さを、……思わずにはいられない。
もし自分に力があったなら。ほんの少しでも……、たった一人でも戦える程の力を持っていたのなら、とね。
過去を振り返っても仕方のないことではあるし過ぎた時を悔やむ暇があるのなら鍛錬に励んだ方がよっぽど有益さ。けれど人は振り向かずにはいられないんだ。自分の進んだ道がどんなものなのか確認せずにはいられないんだよ」
「……何を言いたいのか1ミリもわかりませんけど」
「……はは。そうだね、いきなりこんな話をされて戸惑わない方がおかしいことだ」
「戸惑ってはいないです。意味が分からないだけで」
その答えに高畑は口元だけで笑って見せた。
「僕はね、……弱かった。弱かったからこそ……生き延びた。生き延びたということは、死んでいった者達を見てきた……とも言い換えられる。
弱さを否定はしない。強さが善ではないからね。だけどね、時としてそれは詭弁だ」
高畑は胸ポケットから煙草を取り出し、その箱を無表情で握りつぶした。
……残っていた煙草数本がひしゃげるのが見えた。
「何も出来なければ、何もしなかったのと……同じさ。いや、それ以前に僕には戦う意思なんかないに決まっている。僕はあの時彼女を救えた。詠春以上に彼女を救えた、だが僕はそれをしなかった!!
羽根にこもった記憶がどんなものか僕には知る由がない、だが彼にとって間違いなくそれは何物にも替え難いカタチだ、そうだ、可哀相だったんだ……………………。
顔も覚えていない、いや、もう彼は『知らない』可能性だってある、それなのにあんなにもひたむきな背中を……どう………………、……斬り付けろと………………………………」

独白とも取れる高畑の言葉に、千雨は挟む声を持たなかった…………・。




132 ◆AIo1qlmVDI :2008/05/13(火) 19:00:26 ID:Ixs3zxBT
せっちゃん、昔あの桜の木の前でよう遊んだやろ?
なんでかわかる?
桜が綺麗やったから、じゃないって知っとった?
あんな?桜がせっちゃんみたいやったから。
びっくりするくらいきれいで、春そのもので、優しくてあったかくて。
な?似てるやろ?
……え、似てへん?
おかしいなあ、ウチはそっくりや思うけどなあ。

じゃあ、これ知っとる?
ウチな、あはは、……せっちゃんだいすき。
優しいところも照れ屋なところも全部、全部、……だいすき。
そういえばせっちゃんから手ぇつないでくれたこと、あったっけ?
あ〜、……ないような気、するわ。でもこれって未来に楽しみを先送りしたみたいやと思わへん?
ずっと先の未来になったってせっちゃんはせっちゃんで居てくれるような感じ、するしな?

だから、ずっと一緒居たい。
もうお別れはしたくない。

せっちゃんが死ぬところはもう、見たくない。



133 ◆AIo1qlmVDI :2008/05/13(火) 19:01:08 ID:Ixs3zxBT
ぽたりとこぼれたそれが涙であると気が付いたのは、膝に落ちたそれに風が流れて筋を作ったから。
膝で涙が一筋、透明な道を造っていた。春風がかすむ様にそこに触れていく。
……泣いている。
どうして泣いているんだろう。
せっちゃんて、だれ。
わたしのだいじなひとの名前じゃない。
それなのにこんなにも優しく響くのは、どうして。
せっちゃんて人、死んだの?
それなら、わたしは……悲しい。そのひとのこと知らないけれど、きっと悲しい。
どうして悲しいの。
どうして、どうして、どうして。
……どうして。
わたしはだれだからそのひとが死んだとしたなら悲しいの。





134名無しさん@秘密の花園:2008/05/13(火) 19:02:14 ID:z3QKhTbL
>>129
一期の21話
135 ◆AIo1qlmVDI :2008/05/13(火) 19:02:48 ID:Ixs3zxBT
「忘れるということは消え去ること。消え去るとはその存在が死んでいくこと。言い換えれば忘れることがなければその存在は死なないんだ。
けれど保持しようとした者もいつかは死んでいく。だから結局は偉人でもない限り人は死ぬんだ」
「……極論だ」
「極論?事実さ」
不自然に折れ曲がった腕自分の腕をまるで人事のように見つめながら詠春は思う。
……人とは、なんと弱い生き物なのだろう。
「事実を認めそれと向き合い、抱え、そして初めて前に進むことが出来るのだと君は感じないか」
「一意見として肯定はするが君への積極的賛同というカタチでは残念ながらしかねるね」
「へえ?どうして?」
「……事実を事実と認められないような者の言う言葉じゃない」
く、という小さな声の後に詠春が聴いたのはどこか狂気染みた笑いだった。
「待ってよ、それは僕が現実を見ていないみたいな口振りだ」
「口振りもなにもそう言っているよ」
「あははは、君に言われたくないなあ」
暗く湿った地下牢でその声がいやに響く。反響するそれは詠春の耳に塞ごうとも届いただろう。
「君はあのお嬢様の中では死んでいるんだよ。存在が消されているんだからね。会えば思い出してくれる……なんて甘い希望も通らない。
君が僕に手を貸してくれさえすればこんなことしなくても済んだのに」
「どう転ぼうと君は木乃香の記憶を消すだろう……、同じ事だ」
「……嫌な言い方だな、それ」
しゃがみ込む男の顔は部屋が暗いせいもありほとんど見ることが出来ない。だが、そこに在る紅い瞳は見えるような気がした。
「……ふ、記憶を消すだけならまだいいかもしれない」
詠春は項垂れながらそう呟く。記憶を抹消された個体が何に使われるのか、知っているのだ。
「…………僕が嫌い?」
「君にとって朗報だ、嫌いにはなれそうもない」
「……そう」
136 ◆AIo1qlmVDI :2008/05/13(火) 19:03:32 ID:Ixs3zxBT
「君は……憶えているのか」
「何を?」
「彼女の事を」
詠春と同じ姓を名乗る小柄な青年は少しだけ声を詰まらせたが、それは一瞬だった。
「憶えているよ」
「日記に頼った記憶で、か?」
「……そうだよ」
「刹那君と記憶の共有はしているのかい」
「多少ね。でもあまり使うこともない」
「刹那君は知っているのか?」
「僕のこと?」
「ああ」
「……知っている、というよりは……思い出した、と言った方が語弊ないね、僕を見て一度は怯えたから。でもこれって獅子が鏡に映る自身に向かって吼えるのと差異ないよね」
「刹那君は……、自分が化け物だと思い込んだままか」
「……そうみたいだね。化け物は……僕だけで十分だ」
不意にひとつの顔が浮かんだ。
それは、甘いものに目が無かった可愛い弟の顔だ。いつか作ってやった菓子に随分喜んでいた、ふたつ下の弟。
口が悪く突っ掛かるような話し方をする彼を嫌う者も多かったが、根は優しいことを兄は知っていた。
化け物である自分をいつも不器用ながら気に掛けてくれていたことを、憶えている。そしてその弟が殺されたことを、「憶えている」。
憶えているから、……………………。
「……救いたいかい」
急に黙り込んだのを怪訝に思ったか、詠春が小さく声に出した。
「化け物が何を救うっていうの」
「化け物だから、何も救えないのか?」
ほとんど単語を変えずに返されたその質問に答える者はいなかった。だから、そのまま言葉を繋げる。
「僕はね、……兼くん。
そんな馬鹿な話はないと思うよ」
「馬鹿は君だ、詠春」
「……救えるさ。君の弟を、大切な人を、そして過去を」
「……自分さえろくに面倒見られない人間が言うことじゃないよ」

詠春は少しだけ笑った。
そして誰にも聴こえない声で呟いた。

君のその名を、履き違えてはいけない。
……その名が付いたことは、奇跡なのだから。

予てよりの、定め。
兼ねた、定め。
137 ◆AIo1qlmVDI :2008/05/13(火) 19:08:02 ID:Ixs3zxBT
ちょっとここで無期限の一時中断します。読んでくださっていた方、ありがとうございました。
進路というか、一段落そたら再度執筆に戻ろうかと。

では、お粗末さまでした。
138名無しさん@秘密の花園:2008/05/13(火) 19:28:32 ID:SCbn7h3s
>>134
ありがとうございますm(__)m


よかったら他に二人がいちゃこらしてる話あったら教えてください。
139名無しさん@秘密の花園:2008/05/14(水) 00:07:02 ID:3q4U6nu4
>>138
修学旅行(20、21話)はネ申。
何話か忘れたが、電車のシーンが良い。
二期の6話と17か18話辺りが良かった。
他にもあったような……
不明確で申し訳ないOTL
140名無しさん@秘密の花園:2008/05/14(水) 17:08:51 ID:/Ftk1lf8
おお、GJですぃた。
141名無しさん@秘密の花園:2008/05/14(水) 18:00:01 ID:k3jRMLIV
>>139
ありがとうございますm(__)m

さて、すぐに例の動画サイトへ見に行かなくては(゚∀゚)
142名無しさん@秘密の花園:2008/05/14(水) 18:57:17 ID:7ojKRVAh
sageろ粕
143名無しさん@秘密の花園:2008/05/16(金) 16:32:06 ID:M3rbpIqI
保守
144名無しさん@秘密の花園:2008/05/17(土) 06:45:02 ID:K6hFzW/O
一期はもちろん、二期のちょっとおバカな感じのこのせつも大好きだ。
145 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/17(土) 16:44:48 ID:kvixxI8G
どうも、ちょっとだけお久しぶりです。
犬化せっちゃん続き投下します。
ですが8では間に合わず10になってしまったので5に分けて投下します。
今からの投下と、夜からの投下とあわせてご賞味ください。
色々やったのですが今の私ではこれが限界でした…。
注意。
1前半の犬化せっちゃんを見ていない方は其方からどうぞ。
2連続10以上投下不可問題につき二回に分けて投下します。
3後半の後半は今日の夜9時頃投下予定です。
大丈夫、という人はどうぞ。
146 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/17(土) 16:45:30 ID:kvixxI8G
ふと目が覚める。
お嬢様が不安がっているのは痛いほど解るから、目が冴えたのだろう。
難儀なものでこの姿でも感情が働いてしまうらしい。――仕方の無い事だが。
ひょい、とお嬢様のベッドへと上がる。

「…うぅ…せっちゃ…」

夢でも見ているのだろうか、だけどうなされていて…涙が出ていた。
その涙を舐め取るが…目を覚めさせてしまった。

「ぁ…ワンちゃんか……なんや伝わったんかな…あはは…」

最後の笑いも、乾ききったものだった…心的疲労が見られる。

「クゥーン…(お嬢様…)」
「なぁんや、心配してくれとるん?…そうやな…ワンちゃんなら…」

お嬢様は起き上がって座り、語り始めた…
147 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/17(土) 16:46:32 ID:kvixxI8G
「ウチな、こんなんになってまうぐらい好きなのに…
 せっちゃんが解っとらんのかな…、今日の仕事もそうやけど…
 心配する身にもなって欲しい…なんて、な…
 どちらにしてもせっちゃんに言えんのやから、内弁慶もいいとこやな…」

苦笑しながらも私の頭をなでる、だが確かに涙が流れたのが見えて…
こんな想いを、私はさせていたのか…。
申し訳ないと思う気持ちと只々嬉しい気持ちもあって、内心複雑だが…。

「せっちゃんやったら…」

モヤモヤと考えていることを一時的に止め、言いかけるお嬢様を見る。

「せっちゃんやったら…こういう時、どうするんやろう…?
 ウチが急に消えてもうたら、探してくれるんやろか…?」

寂しそうな目の中に確信も見えた。―――気がした。
148 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/17(土) 16:47:29 ID:kvixxI8G
せっちゃん、もし見てくれとるのなら。――聞いてくれとるのなら。
ウチの気持ち届いてるといいんやけど…。
そんな事を考えたってせっちゃんは居らん。
それは再確認することないくらい事実が示している。
でもどこかには居る、なんて妙な確信があった。
なんとなく、せっちゃんみたいなワンちゃんもおることやしな。

「せっちゃん困らせすぎたんかな…」

だから、天罰が下ったのかな。
なんて、天罰にしては痛すぎるし、人を不幸にするだけなら疫病神や。
ぐい、と何か引っ張られる、と思ったらワンちゃんがパジャマを引っ張ってて

「どうしたんやろ…?」

ウチが気づくと扉に駆け寄って…、出たいというような素振り。

――ウチ、ワンちゃんにも嫌われてもーたかな…

開けてあげると、体半分だけ出て、ウチが出るのを待っているかのようにお座りする
外に連れ出すつもりなんかな、とか思いながらも上着を羽織って
そういえば散歩行ってなかったやった、なんて思い出してワンちゃんについていった
149 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/17(土) 16:48:27 ID:kvixxI8G
朝方の街。
この時間にこの場所を廻るのが日課だ。
勿論お嬢様を連れ出すなど初めての行為。
――まぁ、当の本人は「どこいくんー?」とか言ってますが。

本当なら、人であった時に、見せたかった場所。
まばらな光と、日の出を。

見晴らしの良いこの場所で、日の出を見ることが日課だった。
今日は見せたくて引っ張ってきてしまったが…無理させてるのは解っている。
本来ならお嬢様が眠っておられる時だ。

「わぁぁ…」

感動されている、だろうか。
でも此処を回るのは最後だな。
犬となってしまったならば、仕える意味ではなくペットとしてだ。
このルートをこの時間通る事はなくなる。
やはりお嬢様を無理させるわけには行かない。
たとえこの身がどうなろうと、だ。
150 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/17(土) 16:49:10 ID:kvixxI8G
ワンちゃんに、こないな綺麗な光景見せてもらえるなんて。
せっちゃんもこの光景、見とるやろか?
――一緒に、見たかったなぁ…

「なぁ、ワンちゃん」
「クゥ〜ン…?」
「せっちゃん、何処行ったんやろうね」

そういうと、少しワンちゃんはウチから離れると…

「ワォォォォォォーーーーーーーーーーン…」

遠吠えやった。
仲間との連絡に用いるっていう…。
―――仲間がおったんやな。

ウチはこの時知らんかった、この遠吠えがウチへのメッセージやってことに。
151 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/17(土) 16:52:23 ID:kvixxI8G
ここから先が駆け足になっているので、其処を注意してくれると…。
では後半の前半投下完了しましたので、また夜に。
152名無しさん@秘密の花園:2008/05/17(土) 17:03:45 ID:Z04T8h7Y
>>151
続き待ってました!
GJっす!!
153名無しさん@秘密の花園:2008/05/17(土) 17:22:36 ID:rFEAwwGk
つづきまってますwktk!!
154前書き  ◆yuri0euJXw :2008/05/17(土) 17:52:16 ID:rFEAwwGk
連投スマソ。

いぬ待ち応援投下。(邪魔?)
1551/3  ◆yuri0euJXw :2008/05/17(土) 17:52:48 ID:rFEAwwGk
咳込むたびに頭が割れるように痛む。
私は、だるい体を天井へ向けた。
こんなに酷く風邪を拗らすなんていつ以来だろう。
思考力の落ちた頭で記憶の糸をたぐり寄せるがその動きは緩慢だった。
キッチンから小気味良い軽快な音が聞こえてくる。
誰かがいることがこんなに安心できるなんて‥‥。
お嬢様の楽しそうな鼻歌を聞きながら、私は一つの記憶にたどり着いた。

◇◆◇

「まぁ、ヒドい熱どすなぁ。」

濡れた手拭いを搾りながら幼子の額にのせ、木乃香の世話人が呆れたように言った。
それは決して悪意のものではなく子供に向けた優しい愛情が込められていた。

「ほな、ゆっくり休みなはれ。旦那様にはウチから言うときますよって。」

静かに障子戸を閉めると人の気配が遠退いていった。

「せっちゃん。堪忍な。」

木乃香は刹那の小さな手を握り締め心配そうに顔を覗き込んでいた。
熱でクラクラするなか刹那はその手を握り返した。

「このちゃん。堪忍な。迷惑かけてもうて‥‥。」

ケホケホと咳込みながら幼い刹那は木乃香に言った。

刹那は少し熱っぽさを感じていたが、木乃香が心配するので、一緒に遊びに出たのだった。
案の定、木乃香の屋敷内で目眩に襲われ倒れてしまい、慌てた木乃香が泣きながら世話人を連れてきて、木乃香の屋敷の一間に休むこととなったのだった。
刹那にとって幸か不幸か熱が落ち着くまで木乃香の元に留まることとなったのだった。
1562/3  ◆yuri0euJXw :2008/05/17(土) 17:53:10 ID:rFEAwwGk
◇◆◇

あの頃‥‥以来かな?こうして熱に浮かされるなんてことは‥‥。

私はキッチンにいるお嬢様の姿を目だけで追った。
なぜか嬉しそうなお嬢様は、満足げに味見をしていた。

軽く咳込みながら私は自分のことを思った。
強くなりたいと思ってきた。でもお嬢様と情を交わした自分は弱くなってしまったのだろうか。
心細さが身に染みていたときのお嬢様の来訪。
取り乱してしまいそうだった自分。

甘えているのかな?

ゴロンと寝がえりをうつ。幾分肺が楽になった。
もう止めよう。頭がガンガンしてよく考えがまとまらないや。

「はい。できたえ〜。」
私はフラフラと体を起こして体勢を整えようとしたがまた酷く咳込んでしまった。
見かねてお嬢様が咳止めを下さる。なぜか子供用のシロップ。でも私には懐かしい味だった。
お嬢様との記憶につながる昔懐かしい甘い味。

「済みません。ご迷惑をおかけして‥‥。」

咳込む私の背を撫でていたお嬢様の手が、私の頭を優しく撫でた。

「またそういうこと言う〜。」

そのまま抱き寄せられお嬢様の胸に包み込まれる。

「安心してええよ。今度こそウチが治したげるからな。」
1573/3  ◆yuri0euJXw :2008/05/17(土) 17:53:32 ID:rFEAwwGk
あの頃、泣きながら私を看病してくれたお嬢様は、必死に「ウチが治したげたい。」とそう言っていた。
覚えていて下さるのだ。幼い頃の私との記憶を。
お嬢様は熱いおじやをフウフウと吹き冷まし私の口へ運ぶ。そして私はそれを口にする。
熱のせいで味はわからないはずなのに温もりが体の隅々まで広がる。

「ほな、ゆっくり休んどき。また様子見に来るから。」

お嬢様は私の顔を撫でながらそう言った。
優しい微笑み。でも私の中にこみ上げてくるのはどうしようもない寂しさだった。
いつもなら黙って送り出せるのに、私は差し出されたお嬢様の腕を必死に捕まえた。

「‥‥っ、行かないで、ひ‥‥一人にしないでくださ‥‥。」

言い切る前にまた咳込んでしまった。
どうにもかっこ悪い。
でも,お嬢様に傍にいてほしかった。あの時は風邪がうつるからと途中で引き離されてしまった。
廊下から心配そうに覗くこのちゃんが印象的で,早く治さなきゃって‥‥そう思って。

でも今は‥‥。
お嬢様のために距離を置かないとと思いつつも,自分の欲望に抗えないのは,やはり熱のせいなのだろうか。

「今日のせっちゃんは,甘えんぼやねぇ?大丈夫や。うちがそばにおる。安心しいや。」

私の額を撫でるお嬢様の手が優しくて,心地よくていつしかそのぬくもりに包まれて私は眠りについた。
158後書き  ◆yuri0euJXw :2008/05/17(土) 17:55:41 ID:rFEAwwGk
お邪魔しました。
ク氏と支柱がかぶってるかもしれませんが,インスパイアされたということで。
続きは定番エロで。
またひっそり投下させていだだきます。
159 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/17(土) 20:47:45 ID:kvixxI8G
おや、早めに来て見れば思わずニヤニヤしてしまうものが…GJです。
後半の後半を投下しに参りました。
そういえばトリだけでは何か物足りないような気がします。
ク氏などの呼び名とかなければ作ってみたいなと思う今日この頃。
基本的に注意事項は前半とかわりません、がこれ以上続きません。
後は皆様の妄想等で膨らませて頂ければ幸いです。ではどうぞ
160 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/17(土) 20:49:24 ID:kvixxI8G
くっ、お嬢様は気付いてくれないか。
此処にいますと叫んだのに。この手も、失敗か。
まぁ、いい一生此の侭でもお嬢様の傍にいて、守ることができるわけだしな。
遠くから「誰だ貴様はー」という遠吠えが聞こえる。
答えるわけには行かない。本来犬ではないわけだし。戻った時に通じない。
…色々と矛盾しているが。

お嬢様が移動しだすのを見て、同じく移動していく。
向こうから誰か来たようだが…。
―――今犬連れの人と会うわけには…
なんて思っていれば、思いっきりそういう人で
連れている犬はゴールデンレトリーバー…頭良いとして知られているあの犬だ。
敵意むき出しでこちらに向かってくる。

「貴様、新入りか?俺様に挨拶ナシとはどういうつもりだ?えぇ?」

どうもこの近辺のボスらしい…人間が聞けば只ワンワンと吼えまくっているだけだか

「あなたと喧嘩するつもりは…」
「問答無用、先ずは飼い主を傷つけてやる!!」

お嬢様に襲い掛かろうとするレトリーバーを止められないのか
その飼い主が引っ張っても止まらない。…ちっ。
161 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/17(土) 20:58:11 ID:kvixxI8G
大きなワンちゃんがウチに襲い掛かる。

「待ちなさい、待てってばっ!!」
「ワンッワンワンワンワン!!!」

―――アカン、やられる…!
その時、隣にいたワンちゃんがウチの前に…
ゴッと言う音と共に、大きなワンちゃんが倒れて…
ワンちゃんが守ってくれたらしい。

「ワン」

と一声発すれば逃げるように大きなワンちゃんと飼い主さんが行ってもうて…
恐ろしかった、その一言だった。
わんちゃんが振り向くとせっちゃんが
「大丈夫ですか?」なんて言ってるように見えて。
アカンなぁ、幻まで見えるようになってもーとる。

「帰ろか?」
「ワン」

少しだけせっちゃんを探しながら、寮へ戻った。
162 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/17(土) 20:58:45 ID:kvixxI8G
やっぱり、せっちゃんは見つからなかった。
戦闘が長引いたとして、移動しながらだとしても直ぐに帰ってこれるのに。
でも、さっきのワンちゃん、かっこよかったなぁ…。
部屋に戻れば、もうアスナの姿がなかった。そんな時間かぁ…。

「木乃香さんおかえりなさい」
「うん、ネギくん、ただいま…あ、そやものは相談なんやけど…」

犬と会話できるような魔法ないかな、と相談してみた。
そういうのはあるけど木乃香さんには難しい、と言われた。

「そかぁ、ありがとネギくん」
「いえ…刹那さん、未だ戻ってきていないようですね…」

お休みにしといたって、と呟きながら、朝ごはんを作る。
―――久々に失敗してもーたけど。
ネギくんに言わせれば「木乃香さんもお休みにしておきますよ」なんて言われた。

そんなにウチ、病んでるんかな…?
163 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/17(土) 20:59:37 ID:kvixxI8G
アスナも帰ってくるなりそう言い出して結局ウチは休むことになった。

「暇だったらそのワンちゃんと遊ぶなりしてればいいじゃない?」

とかいう理由もあったからやて。
アスナとネギ君が学校に向かった後、ウチはベッドの上でごろーんとしとった
一応熱だしてるっていう理由やしな。
そうしていると、ワンちゃんがひょいっと上ってきた。
あぁ、そういえばお礼しとらんかったなぁ…。
ちょっと思い出して涙目になりながら

「さっきは助けてくれてありがとうな?」

なんて頭を撫でて、額あたりにキスしてみた。
そうすると、なんや光出して…

何故か光の中からワンちゃんが消えると、裸のせっちゃんが現れていた。
……何故せっちゃん…?
164 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/17(土) 21:02:10 ID:kvixxI8G
何だか視点がを上がっていくの感じれば寒さに気付いた。
―――そういえば私は…!

「……せっちゃん?」
「…はい、何でしょうか」
「何で裸なん」
「犬でしたから」
「………」

とりあえず裸を隠す為にお嬢様の布団をかぶって…

「何時から犬になっとったん…?」
「正確に言うと魔物の呪いに掛かってですから…倒して数分…
 お嬢様が探しにきてくださった時ぐらいでしょうか…」
「じゃっ、じゃぁ、ワンちゃんに話したことは全部…!」
「そういうことです…遠吠えに関しても、お嬢様へ…気づいてなかったですが」

あわー、とか言いながら赤くなるお嬢様。勘違いも相まって恥ずかしかったのだろう。

「何になろうと、お嬢様をお守りいたしますから」
「…けど、無理せんといてな」
「……はい」

その後、制服を着て学校に途中から授業受けようとするが
同伴だとからかわれたのは別の話。
165 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/17(土) 21:16:45 ID:kvixxI8G
犬化せっちゃんの話はこれにて完了です。
もしかしたら皆さんのご期待に沿わなかったかもしれませんが…。
では、また、ネタがあれば投下なとしに来ますね。
166名無しさん@秘密の花園:2008/05/18(日) 10:04:14 ID:uUUmz7DP
>>159
トリップだけで満足出来ないような奴はサイトでも開け
ここはあくまでも匿名掲示板だ
ク氏は周りが勝手に言い始めた自然発生であって、本人がここでそう名乗ったわけではない
167名無しさん@秘密の花園:2008/05/18(日) 11:08:51 ID:ix1uWBJ6
犬化刹那乙!
超長編も休止になって寂しいと思ってた。
職人の皆さまこれからもどうぞよろしく。




最近反応の温度差激しいね。(^o^;)
作品以外の叩きはあんま激しいと………な。
168名無しさん@秘密の花園:2008/05/18(日) 13:45:30 ID:0a8IM5ZY
>>166
なにがあったか知らんが落ち着けとw
169名無しさん@秘密の花園:2008/05/18(日) 14:52:36 ID:rrtFPotA
>>166
まぁ、確かにちょっと冷静になれ;

だが、言いたいことは分かるし、そんなキツく言わなくても・・・とは思うが、意見には賛成。
ク氏は自然発生というか、ネ申とか周りで言いまくった結果、本人が神→紙と名乗っているわけだし、
本人が決めてというわけではないよな。

もし、鳥だけで満足できんのならサイトオープンをお勧めする。
あんたのSSは面白いし、とてもいいと思うが、個人名で褒められたり話題に出たいという意志が軽く見られるというか・・・
ここはこのせつについて語り合う&SSを作って読んでもらってそれについて評価し合うところなわけで。
サイトならそんなの問題ないわけだし、過去にもサイトURLを乗せた方もいたしな。

まぁ、何はともあれ犬SS乙!
そして長レスすまない・・・っ
170名無しさん@秘密の花園:2008/05/18(日) 15:02:20 ID:zs8V1IMB
「なあ、せっちゃん。零距離射程の攻撃ってどんなのかな。せっちゃんも、使えるの?」
 と、小首をかしげながらお嬢様。
「相手に密着した状態から、放つ攻撃ですね……わたしも使えないことはないですが」
 つい最近読んだ剣客漫画を思いながら、わたしは答えた。
「ふーん、つまりはこういうことやな!?」
 ちゅっ
「……!」
 近づいてきたお嬢様に、いきなりキスをされた。
「お、お嬢様!? ちょっと違うような気がしますが……」
「そう? じゃあ、普通の攻撃はこんなんやね!」
 指を可憐な唇にあてて、投げキスをしてくるお嬢様。ウィンクがとても様になっていらっしゃる。
「い、いや、そもそも攻撃では……」

「なにやってんのよ、あんたたちは……」
 楽しげなお嬢様と悶えるわたしを見て、明日菜さんは呆れた顔をしていた。
171名無しさん@秘密の花園:2008/05/18(日) 15:16:27 ID:ix1uWBJ6
和んだ(*´Д`)
172名無しさん@秘密の花園:2008/05/18(日) 16:34:51 ID:+7l2WrLp
(*´Д`)
173名無しさん@秘密の花園:2008/05/18(日) 16:38:46 ID:P40A+Dg9
>>170GJ!!モエタ

モノクロ*チェリーがいい感じにこのせつだった
絵柄は好みが分かれそうだけど
174名無しさん@秘密の花園:2008/05/18(日) 17:38:59 ID:rrtFPotA
ぅわー、晒してやるなよ・・・
カワイソス(>o<)ノシ
175名無しさん@秘密の花園:2008/05/18(日) 17:44:58 ID:szBPNC1T
つかそれだけでわかるあなた方が凄 (*´д`*)ソンケー
176名無しさん@秘密の花園:2008/05/18(日) 18:43:15 ID:/iqO1wlo
リンクフリーだし晒してもいいんじゃない?
177前書き  ◆yuri0euJXw :2008/05/18(日) 19:09:22 ID:szBPNC1T
>>157 の続きです。

このせつエロです。
毎度ずうずうしいお願いですが,
絵師様のインスピレーションを刺激できたらぜひ挿絵をお願いします。

多分レスと行数がぎりぎりなので,今回は後書きと<終わり>をなしにします。
それでは,駄作投下。お目汚し失礼します。
1784/12  ◆yuri0euJXw :2008/05/18(日) 19:10:10 ID:szBPNC1T
ふと眼が醒めた。私はどうしたんだっけ?
ぼんやりした頭のまま,体を起こそうとすると動きがやや制限された。
視線を下へ落とすと,私の隣でお嬢様がうつ伏せ,静かな寝息を立てている。
私はあわてて体を戻し,布団の中へもぐりこんだ。
鼻が隠れるくらいに潜り込む。
しっかりと握られた手が,妙に熱かった。

あの時と同じ。結局私はお嬢様と距離を取ることになったけれど,
お嬢様はそんなのお構いなしで,私の隣でしっかりと私の手を握ってくれていた。
片時も離れず,引き離されてもいつの間にか傍にいた。
結局二人とも熱が出てしまって,布団を並べることになったのだけれど。

幾分穏やかになった病状は,私の記憶を緩やかに思いださせてくれた。
物思いにふけっていると,お嬢さまの寝ぼけ眼と目が合った。

「ぁ‥‥起きたん?‥‥どう調子?」
「はい‥‥まだ熱っぽいですが,咳は落ち着いたようです。」

私は別の意味で顔を赤くしながらお嬢様に答えた。
お嬢さまの手が私の顔に触れる。
握っていた手は熱かったけど,そうでない方はひんやりして気持ちよかった。

「ふふふ‥‥‥せっちゃん可愛ええなぁ。」
「ふぇ?!」

やたら笑顔でお嬢様は私を見つめる。

「うちが‥‥そばにおるからな。」
「‥‥‥はい。」

私はお嬢様に会わす顔もなく,そそくさと布団の中に潜り込んだ。
1795/12  ◆yuri0euJXw :2008/05/18(日) 19:10:39 ID:szBPNC1T
「あっ!そや,熱測らんと。」

お嬢様はぽんと手を鳴らすと,何かを思い出したように体温計を取り出した。
私に手渡してくださるのかと思いきや,お嬢様は布団に手をかける。
私は熱のこもった布団の中から上半身だけ外へ出た。
お嬢さまの行いに戸惑う隙もなく,お嬢様は私の胸元のボタンを外し,そっと手を入れた。
急な行動に驚いたが,お嬢様が私の胸に触れる感触を敏感に感じてしまった。
上擦った声が漏れて,少し恥ずかしい。‥‥これも熱のせいだろうか。

「やっぱ,まだ熱いなぁ。」

そう言うとお嬢さまは私の脇に体温計を挟み,そのまま軽く抑え込んだ。
でも私はそのお嬢様の感触にドキドキしたまま,なんだか別の熱が上がってしまうのではないかと気が気ではなかった。

体温計の音が鳴るまで,ひどく長く感じた。
私はドキドキとしたまま,お嬢様の手をもどかしく思った。
こんな時だからか,いや熱のせいに決まっている。
ただ体温を測るために抑えられたお嬢さまの手がひどく私の欲望を掻き立てる。
もっと触れてほしいと‥‥私を興奮させた。
おかしい‥‥‥やっぱり熱のせいだ。

ピピピピピッ

悶々としていた私の脳裏に電子音が響く。
お嬢さまの手が離れていくのを,名残惜しく思った。

「う〜ん。」

お嬢さまが唸る。ちらっと私の方を見て,またお嬢様は唸った。

「どうか‥‥したんですか?」
1806/12  ◆yuri0euJXw :2008/05/18(日) 19:11:05 ID:szBPNC1T
私はお嬢様を見上げて声をかけた。
何か起きたかと心配したのだけれど,次にお嬢様と視線が合った時に私は,意味深な目元に釘づけになってしまった。

「ん〜〜。いや,せっちゃんには熱の下がるおまじないが必要かな〜と思って。」
「おまじない?」
「せや。でもその前にも一回ちゃんと体温測っとかんとな。」

ちゃんと?ちゃんと測れなかったのか?
私は頭上にいくつもクエスチョンマークを飛ばしながらお嬢様に尋ねた。

「ちゃんと測るにはな〜脇じゃ駄目なんよ。」
「‥‥では,どこで‥‥。」

私はそう言って答えをお嬢様から聞く前に思いついてしまった。

「ほんとに‥‥するんですか?」
「うちしかおらんから我慢しといてや。」

今私は,お尻を高くした状態でうつぶせている。
お嬢さまの手が,腰に添えられるのを感じて一瞬息が止まった。
そっと脱がされるパジャマと下着が太ももあたりに絡まっていた。
お嬢さまに私の恥ずかしい部分を余さず見られている。
お嬢さまの視線を痛いくらい感じた。
でも今の私には,それすらも快楽の一部になりつつあった。

「それじゃ‥‥いくえ?」
「ヒっ?!」

私のお尻にお嬢様の手が添えられ,細い棒が私の菊門を割って入ってくる。
妙な異物感に上擦った声が出る。

「じっとしててな。」
1817/12  ◆yuri0euJXw :2008/05/18(日) 19:11:29 ID:szBPNC1T
お嬢さまはそんなことを言う。
しかし,言葉とは裏腹に小刻みに体温計を動かすので私はそれから逃げるように腰を動かしてしまう。
逃げる私のお尻をお嬢さまは捕まえ,ねっとりと揉みしだくのは気のせいだろうか。
やはり体温計の電子音はなかなか聞こえてこなかった。

ピピピピピッ

気の遠くなるような時間が過ぎ,私を苛んでいた甘い刺激はゆっくりと去っていった。
完全に抜き取られ,お嬢様の手が離れると,力の抜けた私はその場にへたり込んでしまった。

「う〜ん。」
「‥‥今度は‥‥どうですか?」

私は甘い疼きにしばらく耐えていたせいか,知らない間に熱っぽい溜息を吐いていたようだ。

「ん〜〜。」

お嬢さまは,体温計と私を交互に眺めた。
お嬢さまの意味深な視線は私の体を余すところなく見つめていくる。
舐めるような視線を,私は全身で感じた。
熱く疼いている体を見つめられ,それだけでさらに疼きは強さを増す。
お嬢さまは体温計を静かに置くと,にこやかに微笑んで言った。

「やっぱ,せっちゃんには熱の下がるおまじないが必要やな。」

うつぶせた私の顎に指を添え,お嬢様は私の顔をお嬢様の方に向ける。
そっと近づいてきたお嬢さまは,優しく私に囁いた。

「知っとる?熱ってな,いっぱい汗かいてぐっすり寝るんが一番良く効くんやて?」

さらに近づいたお嬢様の唇が,私の耳たぶに触れた。
1828/12  ◆yuri0euJXw :2008/05/18(日) 19:11:52 ID:szBPNC1T
「‥‥試してみいひん?」

ぞくっとした感覚が,全身に伝わる。
お嬢さまの熱っぽい吐息が耳にかかると,私の火照った体は敏感に反応した。

「ぁ‥‥お嬢さ‥‥ま?」
「い〜っぱい,汗かこうな?」

私の戸惑いの声は,そのまま,嬌声に変わる。
それはお嬢様が,私のお尻を高く上げさせたからだ。
しかし先ほどと違うのは,体温計ではなく‥‥。

「ふぁ‥‥ん‥‥ぁ‥‥。」
「ふふ‥‥せっちゃん‥‥もうぐしょぐしょや‥‥。」

お嬢さまの指が私の秘所を押し広げて弄っているのであって‥‥。

「ぁん‥‥ぅっ‥‥ひっ!!」

深く入ってこない指先は秘裂をそっと撫で,秘芯を転がす。
そう思うと,ねっとりとした熱いヌメリが私を襲ってきた。
待ち望んだ行為と,それ以上の快楽が私を溶かしていく。
じゅるじゅると舐めとられる音が鮮明に脳裏に響いた。
ガクガクと力の入らない足腰を何とか持ちこたえさせる。
その刺激は私を昂らせると,そのまま一気に頂点まで追い立てたのだった。

「はぁ‥‥ん‥‥。」

激しく息を吐きながら私はベッドに倒れ込んだ。
イった後だというのに,まだ私の中で何かが燻っているような感じがする。
熱でぼんやりとした頭は,やはり私の思考を鈍らせる。
ただお嬢さまに抱かれているということだけで体が弾むように喜んでいる。
1839/12  ◆yuri0euJXw :2008/05/18(日) 19:12:16 ID:szBPNC1T
こんなの‥‥変だ‥‥‥やっぱり‥‥‥熱のせい‥‥。

お嬢さまに促されて仰向けになると,すかさずお嬢様は私のパジャマのボタンをはずした。
前身ごろを肌蹴させ,色付いた先端をペロッと舐めた。
私はそれだけで嬌声を上げる。
鈍く響く快感が私の体の奥底に伝わっていく。

「凄く感じやすくなってる‥‥なんで?」

くすくすと楽しそうにお嬢様は私に問いかける。
その間も愛おしげに私の胸の突起を可愛がっていた。
舌先で弄られる刺激と指先でなぶられる刺激が,残されたわずかな理性を崩しにかかっていた。

「‥っ‥‥熱の‥‥せいです‥‥ぅっ‥‥。」
「いつでもうちが‥‥治したげる‥‥せっちゃんの‥‥お熱‥‥。」
「‥‥は‥‥い‥‥。」

胸の刺激が心地よくて,優しく揉みし抱かれてこんなに気持ちいいなんて‥‥。
軽くイってしまったかのように体を軽く仰け反らせると,お嬢さまは背筋を指できゅっと擦った。
全身の力が抜け,私は激しく息を吐く。
興奮した肌はじとりと湿り,額には玉の汗が浮く。
お嬢さまの手技に‥‥こんなにも激しく感じている。

あぁ‥‥‥熱い‥‥‥熱くて‥‥蕩けてしまいそうだ‥‥‥。

「っふふ‥‥せっちゃん。気持ちええの?」
「ぁ‥‥お嬢様‥‥っんぅ‥‥。」

呼ばれたときには私の唇はお嬢様に塞がれていた。
風邪がうつるとか思い至ったのは,歯裂を割って入ってきたお嬢さまの舌にたっぷりと冒された後だった。
18410/12  ◆yuri0euJXw :2008/05/18(日) 19:12:54 ID:szBPNC1T
「ぁ‥‥だめです‥‥‥移ります‥‥から。」
「せっちゃんの風邪ならうちが貰ったげる。」
「お嬢さま?」
「うちが熱出したら,せっちゃん看病してな。」

その言葉の意味に反応している間に,またたっぷりと深いキスをされてしまった。
だから,風邪がうつると言っているではありませんか。
などという暇もなく,混ざり合った唾液を嚥下する。

口の中ってこんなにも気持ちいいんだ。

お嬢さまの唾液が媚薬のように働いて,陶然としている自分がいた。
お嬢さまは潤った私の唇に吸いついて,チュッと音を立てて離れる。
するとお嬢様の唇も色っぽく濡れているのが見えた。

やはり熱のせいで,私は思うように動けないでいると,私の前にお嬢様の指が差し出された。
にっこりとした微笑みが私に咥えろと言っている。
そっと口を開いてお嬢様の指を口に含む。
柔らかい指先を丹念に舌先でなぞり,軽く吸いつきながらお嬢様の指を舐めた。
私はそれが気に入ったのか,一心不乱にお嬢様の指を舐めていたらしい。
途中で赤い顔をしたお嬢さまに止められて気がついた。

「いやや,せっちゃんこんなに舐めたら。」
「あ‥‥お嬢様‥‥。」
「めっちゃ,気持ちよかったえ。」

再びお嬢様と唇を重ねる。
私はもう訳がわからなくなっていた。ただこんなにもお嬢様と絡み合っていることが心地良かった。
パジャマを羽織ったまま,私はお嬢さまの促すままに体を起こした。
両足を割ってお嬢さまが入ってくる。
お嬢さまの前で非常に恥ずかしい格好をしているのだけれど,それを理解するのにやっぱり時間がかかった。
18511/12  ◆yuri0euJXw :2008/05/18(日) 19:13:20 ID:szBPNC1T
「あっ‥‥やっ‥‥‥お嬢様っ‥‥。」
「いっぱい汗かいてゆっくり休もうな。」

お嬢さまは大きく開かせた私の脚をだき抱え,密着する。
でもお嬢様は服を着たままだから完全に密着しているわけではない。
でも,自分の汗の匂いと,お嬢様の匂いと,湿った熱っぽい空気がまとわりついて距離は感じなかった。

お嬢さまの指が私の中に侵入する。一本の指でゆっくりと掻きまわすように内部をえぐる。
そこは私の感じるところを探すような仕草で‥‥‥。

「ふぁ‥あぁあぁん‥‥‥ぅあっ‥‥あっはぁ‥‥‥。」
「やっぱり感じやすいなぁ‥‥。」
「ひっ‥‥熱のっ‥‥‥熱のせい‥‥ですっ‥‥。」
「ん‥‥そやな‥‥‥。」

そのままお嬢さまはするっともう一本の指を挿入した。
押し広げられる感覚に違和感を感じるも,鋭敏になったそこはそれをすぐに快感として捉えた。

「ひぐぅ‥‥はぁ‥‥ん‥‥。」
「いっぱい感じて‥‥‥。」
「は‥‥はいっ‥‥‥。気持ち‥‥いいっ!」
「うちが傍にいるから‥‥。ずっと‥‥‥せっちゃんの隣‥‥うちがいるから‥‥。」
「はいっ‥‥は‥いっ‥‥お嬢さま‥‥。」

内部をかきまわされ,奥深く挿入された指先は,私の奥を愛しげに撫で擦る。
そこは,最も快感の深い神秘の場所。
頭の芯まで蕩けそうな快楽に全身を支配されて,私は乱れるがままにお嬢様にしがみついてその時を迎えた。

◇◆◇
18612/12  ◆yuri0euJXw :2008/05/18(日) 19:13:45 ID:szBPNC1T
ふと眼が醒めた。私はどうしたんだっけ?ぼんやりした頭のまま,既視感のある記憶に思いを馳せる。
体を起こそうとすると動きがやや制限された。
視線を下へ落とすと,私の隣でお嬢様が私と並んで静かな寝息を立てていた。
私はあわてて体を戻し,布団の中へもぐりこんだ。鼻が隠れるくらいに潜り込む。
しっかりと握られた手が,妙に熱かった。

お嬢さまのおまじない‥‥‥激しかったな‥‥‥。

私はそれまでの行為を思い出すと一人で赤面していた。あれ?頭が‥‥‥スッキリしてる?

「ん‥‥‥起きたん?」

お嬢さまが寝ぼけ声で目を覚ました。

「お嬢さまのおまじない‥‥‥効いたみたいです‥‥。」

恥ずかしい顔を見られたくなかったので,私は布団から顔半分だけ出して伝えた。

「ほかほか,元気になってくれて良かったえ‥‥‥‥くしゅん。」

一瞬時が止まる。

「ふぅ‥‥‥だから言ったのに。」
「だ‥‥大丈夫やえ。」
「お嬢さまは‥‥私が看病いたしますからね。」
「‥‥‥よろしく,お願いします。」

ずっとそばにいてくれてありがとうございます,お嬢様。
寂しさを感じるのは弱さかもしれないけど,あなたの優しさを感じるためならそのほうがいい。
その日は大人しく休んで回復した私だったが,案の定,お嬢さまは熱を出された。
お嬢さま以上に,お嬢様を手厚く看病したのは言うまでもない。
あと「熱の下がるおまじない」をしたのかは想像にお任せしようか。
187後書き  ◆yuri0euJXw :2008/05/18(日) 19:15:31 ID:szBPNC1T
勝負だ連投規制!!

エロぱろ過去ログかなんかでネタを仕入れました。
というわけで良作待ち!
188名無しさん@秘密の花園:2008/05/18(日) 19:26:57 ID:/iqO1wlo
'`ァ(*´Д`*)'`ァエロ萌え大好き

最近SSが沢山あって嬉しい
189名無しさん@秘密の花園:2008/05/18(日) 20:15:02 ID:318NxfWV
続き待ってましたー(´∀`)
GJ!!このせつ萌え(*´Д`*)
190名無しさん@秘密の花園:2008/05/19(月) 09:29:27 ID:68vxF0TG
最高でした。
熱でぽわっとしたせっちゃん。。たまらん。。
191名無しさん@秘密の花園:2008/05/19(月) 14:57:12 ID:+wWUrLKP
誰か前スレのログ持ってる人いるかぃ?
192名無しさん@秘密の花園:2008/05/19(月) 14:59:07 ID:ZYKT7Z00
なきにしもあらず、または変換サーバーだのん。
193名無しさん@秘密の花園:2008/05/19(月) 19:09:50 ID:dKlSU0EH
>>191
持ってるよ
194名無しさん@秘密の花園:2008/05/19(月) 20:52:25 ID:AraOMeBe
>>191
Jane Doe Style のdatなら出せるよ。
http://www3.uploader.jp/home/konosetu/
にでも上げようか?
195名無しさん@秘密の花園:2008/05/19(月) 23:39:55 ID:dKlSU0EH
考えてみたら、わざわざうpらなくてもまとめサイトにログあるじゃんw
196名無しさん@秘密の花園:2008/05/21(水) 20:41:44 ID:Pai3XvVP
>>193,>>194
即レスありがとう。
確かにログありました(笑)

まとめサイトがなにやら色々と変わっていたので、気がつきませんでした。
ここでなんだけど、まとめの管理人さんにはいつも感謝してます!
ありがとうございます。


197名無しさん@秘密の花園:2008/05/21(水) 23:18:23 ID:Qabr9jvu
ここって何レス制限だっけ。
1レスの行制限も教えてくれると助かる。
198名無しさん@秘密の花園:2008/05/22(木) 01:19:04 ID:1h3Uwo8A
いちレス32ぎよう
じうレス制限だったはずだが、この間の投稿では越えてた気がした。
設定は10のままだったけど、変わったんかな?
199名無しさん@秘密の花園:2008/05/24(土) 19:31:18 ID:SagM34B4
なんか最近人少ないな・・・。

個人的にはこのせつが感動的再会を果たしたからその日の夜とか次の日、
とか読みたいんだよね。


と、希望を言ってみる。
200名無しさん@秘密の花園:2008/05/24(土) 23:57:29 ID:QKt+0Idq
あっ、それ妄想したことあるある!

二人で宿を脱け出して、星空の下でこっそり会ったりして。
せっちゃんがちょっと照れて、木乃香は何か実感わいて、ジワッと涙浮かべて喜んだり。

うわっ、誰か字にしてくれないかなぁ。
201名無しさん@秘密の花園:2008/05/25(日) 01:56:59 ID:hFS8xeNr
>>199,>>200
よお俺。

個人的には長編の続きにwktk
202名無しさん@秘密の花園:2008/05/25(日) 07:02:02 ID:I0rlmJmR
イメージソングは瞳の中の迷宮→聖なる空の下で

でもサイトとかで妄想SS、漫画見かけるよね。
203名無しさん@秘密の花園:2008/05/25(日) 09:50:06 ID:SClrUkWQ
このスレしか燃料がないんだぜ。ちょっと検索してみるかなぁ
204名無しさん@秘密の花園:2008/05/25(日) 13:04:52 ID:I0rlmJmR
このせつ同盟の名簿がお気に入り。
燃料いっぱいあるよ
205名無しさん@秘密の花園:2008/05/25(日) 21:05:04 ID:5Envino5
>>200
俺も読みたい!!
だれか文字にしてくれる人いないか?

あとランキングで上位なサイト探して、そこの相互を当たると結構イイサイトに行ける。
206 ◆GvbCrZA3mg :2008/05/27(火) 02:40:00 ID:rDRE7x6q
>>200,>>205
その願い引き受けました。
というわけで書いてみていますので待っていてくださると助かります。

其れとお詫び。
妄言を口走ってすみませんでした。
サイトを持つ気はないので、このトリップのみで此処に居ようと思います。
本当に申し訳ありませんでした。
207名無しさん@秘密の花園:2008/05/27(火) 07:51:36 ID:juVUXCEX
楽しみにしてるゼ。

あとチラ裏なんだが、
ここが荒れにくいのは書き手も読み手も絵師さんもロムラーも
皆が謙虚だからだとおもふ。

文字だけなのにそう言うのが伝わるのってスゴくない?

……チラ裏スマソ

あぁ。このせつで萌えたい。せつこのモナー。
208名無しさん@秘密の花園:2008/05/27(火) 19:50:26 ID:1mtyMmJS
それはつまり、紳士淑女が多いスレってことですね
209名無しさん@秘密の花園:2008/05/27(火) 20:22:07 ID:8zui/aVs
平和が一番(´ー`)つ旦
210名無しさん@秘密の花園:2008/05/27(火) 20:30:46 ID:FEfA5p1G
( ・∀・)つ日

ザバー
211名無しさん@秘密の花園:2008/05/27(火) 22:48:19 ID:02RddwdX

「せっちゃん、エイ○アンって見たことある?」
「映画ですよね・・・・たまに再放送をやってるのを見ますけど、いつも途中からで詳しくはわからないです」
「最近他の宇宙人と戦うシリーズが出てな、それ一緒に見ぃひん?」
「構いませんが・・・・前作見てないとダメとかありませんか?」
「せやなぁ・・・・エイ○アンの生態とか知っとった方が楽しいかもしれへんな〜」
「そ、そうですか・・・・」
「・・・・うちが教えてあげよか?(ニヤリ」
「え? な、なんですかその笑顔は・・・・?」
「エイ○アンの繁殖なんやけどな、メスが卵産んで・・・・んで卵から出てきた小さいのが、こうやってな・・・・」
「え、あ、ちょ・・・・」
「人に飛び掛って、頭抱え込んで、口に・・・・管みたいの入れるんや」
「んっ・・・・!? ん、んぅ・・・・!」
「ぷはっ――ほんで・・・・胸に子供みたいの生みつけるん・・・・ここら辺やな」
「や、くすぐった・・・・っふあぁ・・・・あ・・・・」
「――続きは・・・・よい子が寝たら教えるな? 生まれるんには時間がかかるんよ・・・・?」
「・・・・は、はい・・・・(エイ○アンって、こんなにエロかったっけ・・・・?)」


つづ・・・・かないよ。
紳士淑女じゃなくてすまない。
212名無しさん@秘密の花園:2008/05/27(火) 23:29:43 ID:8zui/aVs
>>211
思わず吹いたww
確かに続けるのは大変そうだww
213名無しさん@秘密の花園:2008/05/27(火) 23:51:05 ID:juVUXCEX
ク氏の仕業だったのか。エイリアンてキモくて好きく無かったが
このせつでやると面白いのな(´∀`)

なんて言うか……ジジェェェ?
214名無しさん@秘密の花園:2008/05/29(木) 08:07:07 ID:/NCt8n/I
雨さみ〜。
このせつ相合い傘というベタな奴を思いついた。
ブルっと震える木乃香をせっちゃんのぬくぬくなおててが迎える…なんてね。

あぁさみ〜よ〜。
215名無しさん@秘密の花園:2008/05/29(木) 09:39:51 ID:cBocO6C3
>>214
確かに雨の日ネタは萌える。
雨の日=相合い傘
そんな定番を書いてみたいと思ってしまったOTL
216名無しさん@秘密の花園:2008/05/29(木) 10:51:13 ID:DSF+B2Rp
よし…書こう
217名無しさん@秘密の花園:2008/05/29(木) 11:54:39 ID:DSF+B2Rp

しとしと、ぽちゃん。
雨と言えばそんな音が頭の中に降り注ぐ、たいていはそう。
朝方はどんよりねずみ色の雲が空をゆらゆらと泳いでいた。
サーと静かに滴る雨がこの小さな折り畳み傘を優しく撫でた。
不思議と気分は清々しい。
その理由は分かってる、きっと・・・

予感がした。

「バイバイ、木乃香」

同室の彼女は部活に行くらしい。
珍しい、なんて怒鳴られることを知っていて言うはずがない。
だけど言ってしまう。

「うっさいわねー」
218名無しさん@秘密の花園:2008/05/29(木) 11:55:12 ID:DSF+B2Rp
その後の笑顔が自分にはない綺麗さを帯びているから。
後姿に手を振って階段を降りる。
カバンから傘を取り出して、以前まで少し億劫に感じていた。
今はちょっぴり嬉しい。
あなたからもらったものだから。
あなたが選んだものだから。

自分色、なんやって。

「お嬢様っ」

玄関にあったのは予感だった。
何でという前に笑顔が自然と零れてしまい少し気恥ずかしい。
彼女はそうとも知らず人懐っこい笑みを浮かべて訪れを待った。
すぐ行くから、そんなうずうずせんの。こっちが照れるやん。
下足箱、自分の2つ下に彼女のがある。
いつも、この距離感がたまらなく切なかった。
今も、思い出す。

「せっちゃん、」
「はい・・・?」
「・・・雨、降っとる?」
219名無しさん@秘密の花園:2008/05/29(木) 11:55:44 ID:DSF+B2Rp
彼女は目線を外に向けた。
その間に、これを消すから、ちょっとだけ、ね。

「はい、今朝よりちょっと強いくらいですね」
「そか」

学校指定の靴を履いて彼女の隣りに立つ。

「ほな、行こか」
「はいっ」

くすぐったそうに笑う。
それが子どもっぽくて、可愛くてついもらい笑い。
ほんと、もっと早くこんな雨の日を迎えられていたらな。

なんて。

帰り道、いつも通りのそれなのにどうしてか違う気がした。
さっきまでどっちかと言えば憂鬱に浸っていたのに心は違って。
この雨とは不釣合いなくらい晴れ晴れとしている。
それは彼女の傘も同じで、彼女のは白に近い水色。
それはまるで晴れた空だ。
220名無しさん@秘密の花園:2008/05/29(木) 11:56:15 ID:DSF+B2Rp
「せっちゃん、今日部活やなかったっけ?」
「え・・・あ、はい。でも、なくなったんです」
「へー、そやったん」
「はい」

あれ、と思い彼女の横顔を見つめた。
そこには普段の何気ない会話から生まれる笑顔に過ぎなかったが、
やっぱりどこが大人びたようなそれに思えた。
不意に行かないで、と誰かの声が聞こえた。
雨の、音。

「嘘です」
「え?」
「ほんとは、さぼりです」

せっちゃん?と首を傾げると彼女は申し訳なさそうにこちらを振り向いた。
まるで母親に叱られている子どものように肩を竦めて。
次に紡ぐ言葉が瞬間的に分かってしまった。
だから、先に言うね。

「なー、せっちゃん」
「はい・・・」
「ウチのひまわり、もういっぱいお水飲んだんやて」
「は?」
「せやからな、もうこれ差せへん」
「お、おじょうさっ――」
221名無しさん@秘密の花園:2008/05/29(木) 11:56:46 ID:DSF+B2Rp
パサッと傘を閉じた。
全身にいくつもの小さな滴が降り注ぐ。
制服に点々と濃い染みが広がり、髪もしっとりと濡れていく。
目を閉じた。

「あーさむい」
「あ、あの・・・」
「さむいなー、むっちゃさむい」
「お嬢、さま・・?」

駄々っ子のように突っ立ってその場を動こうともしない自分を
彼女がどうするか、瞼の裏に思い描く。
まずおどおどして、それから一歩踏み出して、それから・・・
傘を打つ雨の音が真上にした。
そして頬に感じるぬくもりは紛れもないあなたの手。

「風邪、引いちゃいますよ」
「平気。せっちゃんがあっためてくれるんやろ?」

へへ、と笑って彼女の華奢な腕にしがみつく。
ぴくんと一瞬震え、すぐにそれがほぐれた。
ギュってしてくれた。

「ありがと、せっちゃん」

おおきに、あったかい。


おわり。
222名無しさん@秘密の花園:2008/05/29(木) 11:58:39 ID:DSF+B2Rp
短時間で書いたのでこんな駄文に…
お目汚し失礼しました。
始終シリアスチックなのは雨だからということで
それにしても寒いな
223名無しさん@秘密の花園:2008/05/29(木) 14:17:35 ID:/NCt8n/I
即席じぃじぇ!!
仕事中なのにしっかりと堪能しました!

うずうずしてるせっちゃんに萌え♪
224名無しさん@秘密の花園:2008/05/29(木) 21:07:20 ID:uJIdlybD
なんという神。寒い雨の日に心があったまったぜ!w GJ!!
225名無しさん@秘密の花園:2008/05/29(木) 21:59:38 ID:2iD3874t
>>223,>>224

GJありがとうございます。
久々の投下でした。また投下したいと思います。
226名無しさん@秘密の花園:2008/05/31(土) 14:31:31 ID:oc07+tji
保守
227 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/02(月) 06:09:34 ID:g1lArzUh
再会とその後のリクですが自分なりに解釈したことを最初に謝っておきます。
すみませんでした、私にはこういう書き方しか出来ないようです…。

再会の部分がやたら長いわ後日がほん短いわ…。orz

もしかしたら沿って無いかもしれませんが…ご了承願いたいと存じます。

注意事項はそのくらいとして、次へどうぞ。

p.s謙虚で優しいスレに投下できることを、心より嬉しく思います。
228 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/02(月) 06:10:04 ID:g1lArzUh
お嬢様と離れて2年―――私達は再会した

貴女と望む未来

大卒の資格を得て其々の歩みを始めていた。
お嬢様は本家の関西呪術協会…次期長としての仕事を始めていた。
私は護衛の任を解かれ、討伐などの仕事で関西と九州を行ったり来たりしていた。
勿論お嬢様にはお会いできない、報告書を提出すると同時に、次の任務が渡される。
元々私は下方の者、半妖のタブーを雇ってくれているだけありがたいと思わねば。

そんな折、長の計らいで今日は近くの旅館で泊めていただく事になった。

どうせお嬢様はもう次期長の仕事に従事しているのだから此処に居ると知っても…

なんて期待せずに黙々と日誌をつける。
日誌は6冊に及んでいる、2年分をしっかりと書き留めたものだ。
お嬢様の傍に居ない間の全てをこの日誌は知っている。

その六冊の内には血で全く読めない部分や、黒く染まっている部分もある。
血に関しては数日に及ぶ仕事をしていて負傷した時。
黒く染まっている部分は―――まぁ、割愛しよう。

「せっちゃん!」

期待していなかった声がその部屋に響く。
229 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/02(月) 06:10:40 ID:g1lArzUh
「…お、嬢様!?」

やはりというか、心の底では期待して居たんだと、気づく。
過去にネギ先生と仮契約していたときのカードに書かれた衣をきていらして…。

「よかったぁ、せっちゃん戻ってくる時は言わんと…報告書だけじゃつまらん…」

ぷくー、と膨れている、この癖は中学のときもやっていらしてた。

「かといったとしても私はお嬢様に仕え、護衛していた時とはもう…」
「そんなこと言わんでもわかっとるつもりや、けどな、やっぱ寂しいんよ?
 ここ二年間、ずーーーっと、何時も話しかけてもうて、居ないと解って…」

ぐす、ひっく、と涙を流すお嬢様を私は慰めることも出来ずオロオロするだけで
―――何時もそうだった気がするな、なんて思い出して。

「ぐす、帰ったら…一番にウチに報告してほしい…んよ…」

でもそれは我侭で、私としてもそれは嬉しいことではあるのに

「日本の魔法界の頂点に立たれようとするお方が、そんなわがまま言っては…」
「ほなら、その権限でせっちゃんをウチの護衛に戻してもらうもん」
230 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/02(月) 06:11:18 ID:g1lArzUh
ほら、また我侭。
私はタブーの存在だと知っても尚、友人で居てくれた、主で居てくれた。

「…頭の固い役職の方を説得するのは大変ですよ?」
「なにが何でも納得してもらうから問題あらへん」

―――大有りでしょう、全く。なんて心で呟いていて

「そしたらずっと一緒や〜」

なんて喜んでおられる。でもそんなお嬢様が好きで…好きで。

「今日はここに泊まるんやな?」
「ええ、そのつもりですが…」

なんでも今日はお祭りの日で、花火が上がるから一緒に見に行こう、とのことだった
お嬢様の要望だから下手に無視するわけにもいかない、困ったものだ。

「久々に浴衣きたわー、な、せっちゃん」

ころころと笑うお嬢様は、あの頃と全く変わっていなくて。
―――可愛くて。
231 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/02(月) 06:11:48 ID:g1lArzUh
ドーン、パァーン…

花火の音、上空を見上げ、お嬢様と肩を並べる。
―――久々に任務の文字を忘れた気がした。

「…………一…に……て…な?」
「…?よく聞こえませんよ」

首を傾げる私に痺れを切らしたように押し倒された。
そして、赤い顔でお嬢様が…

「ずっと一緒に居ってなっていったんよ!!」

と耳元で叫ばれた―――かなり、そうかなり嬉しかった。

「…はい。」

上空の花火の明かりに照らされて。
私達は甘く深いキスをした。

お嬢様の努力のおかげで「新しい考えもいい」という考えが広まったらしい。
その為に、また私はお嬢様の護衛をすることになった。
232 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/02(月) 06:12:52 ID:g1lArzUh
「せやからいったやろ、ずっと傍に居ってて」
「…はい。」

苦笑しながらも頷いて。
そうするとお嬢様は「不満?」とか聞いてくる。

―――全くそんなことはありませんよ、お嬢様。

そうやって一つずつ、一歩ずつお嬢様に…このちゃんに近寄ろうと思う。
ひとつ、お嬢様に祝福してみよう。
私が吉祥なのだから、お嬢様だけでも幸せに出来るはずだ。

「せっちゃん」
「はい、なんでしょう?」
「幸せもちゃーんとせっちゃんと一緒、やよ?」

「…はい。」

やはり、私は貴女に敵いそうにありません…このちゃん。

今日も、私はここに居ます。
お嬢様の横に。

あの時と、同じように―――。
233 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/02(月) 06:19:39 ID:g1lArzUh
再会&後日談…のつもりですが…ちゃんとリクどおりになっているでしょうか…?
では、またリクが落とされたあたりに、来るかもしれません…。

(因みに近況は疑心暗鬼になるせっちゃん書こうとして失敗していました…)
234名無しさん@秘密の花園:2008/06/02(月) 08:36:38 ID:1TqARgGF
いや、GJなんだが、やっと再会した嬉しさのあまりせっちゃん押し倒してキスしてうりんうりん抱きしめた、あの原作の数時間後の話を読みたいなって

単行本派ですか?
235名無しさん@秘密の花園:2008/06/02(月) 08:43:22 ID:uFl2oss1
内容的にはGJ。
でも文脈的には???

……魔法世界編の話ではなかったっけ?
おらは「再会」って、てっきりそうなんだと思ってた(´・ω・`)

勝手に勘違いスマソ
でも中身的にはかなりGJとおもふ。
またどしどし投下してください!
236名無しさん@秘密の花園:2008/06/02(月) 08:51:16 ID:uFl2oss1
>>234
それってもう出てネ?
新刊の目玉シーンやないの?
237名無しさん@秘密の花園:2008/06/02(月) 09:39:52 ID:1TqARgGF
単行本ではまだ捜索中だよ
238名無しさん@秘密の花園:2008/06/02(月) 14:12:12 ID:wclCBzYc
再会後書いたけどネタバレになるから投下できないよね
新刊出たら投下します
239 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/02(月) 19:53:21 ID:g1lArzUh
>魔法編の再会

…はっ!そっちですかっ!?
そっちだったら何度も私だって…っ!
後日書き直します…orz
240名無しさん@秘密の花園:2008/06/02(月) 21:43:53 ID:uFl2oss1
単行本派の人注意!とか書いて落としてほしいのが本音。

いかがなもんか?
賛同者挙手ヨロ!(^-^)ノ

……なんて勝手に書いてみる。
241名無しさん@秘密の花園:2008/06/03(火) 17:10:51 ID:l6yK49lL
ちょっと同意(・∀・)ノ
でも自分(単行本派)は特に気にならない。
書いてくれるだけでありがたやOTL
242名無しさん@秘密の花園:2008/06/03(火) 23:01:30 ID:yH2WLKik
次の発売8月ですよ。それまで投下待ちー……って焦らしプレイですか?
ここに通ってるこのせつ好きなら、このせつサイト巡りしてチュッチュしたこと知ってるだろうし

遠慮なく投下に賛成(*´ω`)ノッ
243名無しさん@秘密の花園:2008/06/03(火) 23:12:01 ID:v8J5u2Xl
私は単行本派ですが、このせつ感動の再会もスーツポニテせっちゃんも知ってますよー。

というわけで賛成。(・∀・)ノ
244名無しさん@秘密の花園:2008/06/03(火) 23:14:38 ID:54gW3ME/
OTL
245名無しさん@秘密の花園:2008/06/04(水) 20:08:52 ID:FemiduSs
情報格差が発生しておりまする。(´・ω・`)プヒ
246名無しさん@秘密の花園:2008/06/05(木) 00:08:59 ID:UijEkJW7
どうみても注意書きしてくれとしか書いてないのに
何故投下するなって話になるのか理解できない
247名無しさん@秘密の花園:2008/06/05(木) 00:23:06 ID:+tLgbafa
ここは一つ再会編投下と言うことで。
正座して待ちまする。ナリ(・ω・)ノ
248名無しさん@秘密の花園:2008/06/05(木) 00:54:12 ID:W7PpXLpL
では、以前書いたものを加筆修正したのを落とします
ということで単行本派の人注意!
249名無しさん@秘密の花園:2008/06/05(木) 00:54:43 ID:W7PpXLpL
「せっちゃんは、ウチがおらんとき寂しかった?」

え、と振り向くとそこには見たこともないような憂いた顔があった。

宿屋の1室には2つほどのベッドがありそこに刹那と木乃香は眠った。
あまり立派とはいえないベッドではあったが今までの野宿生活を考えると
そうも言ってはいられない。むしろちょっとした幸せを感じた。
これはベッドのせいでも、久しぶりに食べた食事らしい食事のせいでも
ないことは分かっていた。

真夜中、なぜかパチッと目が覚めて目を凝らすとベッドのすぐ横に
佇む人影がいた。
刹那は驚いて身を起こしその影に向かって声を掛けた。

「どうしたんです、お嬢様・・・?眠れないのですか」

何も答えようとしない彼女を窓から月の光が照らした。
どうしてだろう。
無表情のそれはひどく寂しげで、今にも泣き出しそうな空に似ていた。
250名無しさん@秘密の花園:2008/06/05(木) 00:55:37 ID:W7PpXLpL
刹那は無言でそっと移動し隣りにもう一人分のスペースを空けた。
布団をずらして彼女を見上げると察したのか、彼女は「お邪魔します」
とちょっぴり照れた風にささやいたのが刹那には聞こえた。
彼女に気付かれないようクスッと笑うと刹那は布団を掛けてやった。
くるっと半回転して木乃香は刹那の方に顔を寄せて目をつむった。
刹那はなんとなく落ち着かなくて天井を見上げた。
そして、彼女が言った。

「せっちゃんは、ウチがおらんとき寂しかった?」
「え・・・」
「ごめんな、こんなこと急に言ってもうて・・・昼間もびっくりしたやろ」
「い、いえっ、そんなことは・・・ちょっと、びっくりはしましたけど」

その続きは飲み込んでしまった。ここで言うべきではないと瞬間思った。
木乃香はちょこん、と刹那の二の腕の上の方に鼻先をくっ付けた。
彼女がこちらに目線をやった気配がして、また目を閉じた。

「ウチ、せっちゃんがおらんでも大丈夫や、一人でも平気、強なったから。
そう思て過ごしてきた。せやけどな、楓に無理して我慢する必要ない、言われて」

みんなそれぞれ頑張ってるんだ、泣くわけにはいかない、明日にはきっと会える。
そう毎日自分に言い聞かせてちくちく痛む心の声を無視してきた。
それはだんだんと大きくなって、ついには無意識に顔に出るようになった。
朝起きると必ず顔に泣いた痕があってごしごしと服の袖でこすってた。
251名無しさん@秘密の花園:2008/06/05(木) 00:55:59 ID:W7PpXLpL
「せっちゃんは一人かもしれへんのにウチが泣いたらアカン。楓がおるのに
弱音吐いたらアカン。ずっと押し殺してたんよ、・・・せっちゃんはどやった?
明日菜とおったから寂しなかった?ウチがおらんでも平気やった?」

布団の中に落としていった言葉はちゃんと彼女の耳に届いただろうか。
そんな疑問は無駄だったと分かったのはそれからすぐだった。

「実は、何回も取り乱してしまったんです。お恥ずかしながら我を忘れて
泣き叫んだり、しょっちゅう明日菜さんのことをお嬢様と呼んだりして。
明日菜さんにはいっぱいご迷惑をお掛けしました」
「ふふ・・・見たかった」

このとき彼女が頬を染めたことを木乃香は見なくともわかっていた。

「でも、もうそんなことしなくていいんだと思うとなんか、」
「・・・変な感じ?」

刹那が木乃香の方に体を向け、二人は対面した。
こんなに顔を近づけたのはいつ以来だろう。
ああ、昼間以来か、と木乃香はひとり笑んで刹那は不思議そうにする。

「なぁ、せっちゃん、寂しかった?」
「はい。寂しかったです・・・たぶん」
「たぶんってなんやのー!むぅ・・・」

せっちゃん?

突然頬を撫でる優しい感触は紛れもない目の前の彼女からのものだ。
その手を幾度となく思い浮かべては目の前が霞んでいった。
もうそんなことはないはずだったのに、どうしてだろう。またかすむ。

「もう、我慢しなくていいんですよ。わたしはここにいますから・・・
今、わたしはお嬢様の目の前にいますから。だから、」
252名無しさん@秘密の花園:2008/06/05(木) 00:56:26 ID:W7PpXLpL
その手に涙が伝うことはなかった。
代わりにそれは枕を濡らし、そして刹那は手を頬から離し広げた。

「泣いてもいいんですよ。いくらでも、貸しますから」

その胸に木乃香は飛び込んだ。
泣き声が刹那の中に振動として流れ込み涙は今度は胸元を濡らした。
じんわりと濡れた感触を感じ、刹那はゆっくりと彼女の髪、背中を撫でていく。


「このちゃん、ごめんね」


もう離さない・・・
強く、彼女を抱き寄せた。



おわり
253名無しさん@秘密の花園:2008/06/05(木) 00:57:35 ID:W7PpXLpL
短文で駄文で申し訳ないです
お目汚し失礼いたしました

誰か萌えを・・・
254名無しさん@秘密の花園:2008/06/05(木) 01:45:37 ID:KJ+QcxAw
ぐはっ(*´д`*)GJ!!
もうただただありがとうとしか言いようがない!!
255名無しさん@秘密の花園:2008/06/05(木) 06:28:55 ID:+tLgbafa
エロに突入する分岐ルートが俺の脳内を爆走妄想中!

どうしてくれるんだこのGJめ!
256名無しさん@秘密の花園:2008/06/05(木) 18:47:54 ID:ey2UUfek
エロ希望!!
257 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/05(木) 20:04:31 ID:h+dY7lwe
さ、さき越された…。
という事で私なりの再会を書いてみました。
といっても書き直しどころか最初から書いたという感じでかなり短いですが。

注意
1単行本派の方はご注意願います。
2上記GJなSSとはなんの関係もございません。
3楓と明日菜が結構でてます。
それでもよいならどうぞ。
258 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/05(木) 20:05:08 ID:h+dY7lwe
守れない
それだけでも私は死に掛けていた。
―――それだけ、貴女が重要で、大切で。

久々に貴女に会った時。
貴女が生きていてよかったと心底思った。
楓が助けていてくれた、それだけでも感謝の気持ちでいっぱいだった。

―――動けなかった。
感動と嬉しい気持ちと、もう悩まなくていいという開放感に。
その代わり、お嬢様が飛び込んできて、不覚にもお嬢様に押し倒されていて。

「おかえりなさい」
「ただいまや、せっちゃん」

これを言うのが精一杯。
そして自分の腕の中に帰ってきたものを、精一杯抱きしめる。

「あ、ん、なんや、ちょおくるし…」
「お嬢様…お嬢様、おじょうさま!!」

壊れかけた心。
壊れたまま直されなかった心は崩壊していく。

「今日のせっちゃんは甘えんぼさんやなぁ〜」
259 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/05(木) 20:05:45 ID:h+dY7lwe
言われても仕方がないかもしれない。
吹き飛ばされた時、お嬢様を助け出すことが出来なかった。
それどころか行方知れず、何処へ居るのかすら、解らなかった。
―――悔やんでも悔やみきれずに、ずっと叫んでいた。

あぁ、お嬢様が居なくなるだけでこんなに弱いのか。
静かに気付いた弱さ。

宿に移動した後、お嬢様にありのままを話していく。

「……」

お嬢様は何も言わなかった。
多分同じなんだ、私と。

―――あの時、私…ウチが…お嬢様…せっちゃんを掴んでいれば…

後悔は後しか出来ない。
だからこそ―――その前に気づくことが大事で。
涙が、明日菜さんに会ってからの涙が、一気に溢れた気がした。

「っ…うぁぁぁぁーーーーっ…!!」
260 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/05(木) 20:06:27 ID:h+dY7lwe
「…あの刹那さんも形無しね」

部屋に響く明日菜さんの声。
ほっといて下さいとも言えなくて、泣き続けて。

「刹那も女の子、ということでござる、にんにん♪」

「そうやよー、アスナが無神経なだけやー」
「うわ、何気に酷い事いってるわよ木乃香!!」

咳をしながら泣き止もうと努力する、が壊れた涙腺はなかなか止まってくれなくて。

「っ、う…ぐ…っ…」
「…せっちゃん…」

心配しているお嬢様。ただただ泣き続けるばかりの私。

「…拙者達は別の部屋でござる」
「…えっ、ちょっと長瀬さん…?!」

楓に連れられて部屋を出て行く明日菜さん。

―――楓なりの配慮なのだろう。
261 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/05(木) 20:06:59 ID:h+dY7lwe
「せっちゃん、辛かったんやな?」

お嬢様の問いに、素直に頷く。
辛くなかったことはなかった。
明日菜さんに会ってからも、緩和されることはなかった。

「もうウチはここに居るよ?」
「…離れないでください、ずっと…」

お嬢様が居ない、行方も解らない、それどころか死んでいるかも知れない。
その不安が、昏い思いとなり、今、流れ出す。

「…うん、離れんよ」
「…っ…」

止まらない涙を受け止めてくれる、やはりお嬢様は強いお方だ。

―――私よりも、ずっと。

だけど、置いていかないで。
また壊れてしまうから。

―――後生だから傍に置いてください…。
262 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/05(木) 20:09:40 ID:h+dY7lwe
はい、この後はエロに発展しようが其の侭寝ようが知りません。
エロに発展するのならば他の方が続きとして書いて頂いてもかまいません。
但しせっちゃん壊れ気味なのです、優しくして上げてください(ぁ)
ではでは、また投下したい時にもしくは雑談したい時に現れます。
263名無しさん@秘密の花園:2008/06/07(土) 17:05:35 ID:IEIdeM9x
過去のまとめサイト管理人さんのSSの影響で
Candy☆Boyをこのせつビジョン以外で見れなくなった。ヽ(`Д´)ノウワァァン
どうしてくれるんだい!!

と言いつつ,また書いてくれないかな〜。
を期待して待ってたり。
264前編まえがき  ◆yuri0euJXw :2008/06/08(日) 03:31:18 ID:Kl1dhHC9
>>249
の続編を書いてみました。他人様の作品を土台に続編って‥‥。
いつもすみません。駄作で。

前編と書きましたが,続くかどうか住民の反応次第にしようかと思います。
人気がないうちにひっそりと投下。

作者様。作品凌辱すみません。
アウトだったら,まとめサイト掲載を控えますので
今回の投下は見逃してください。

今回はエロなし。249の継続なので単行本は注意(内容とはあんまし関係ないけど。)
265前編1/5  ◆yuri0euJXw :2008/06/08(日) 03:31:55 ID:Kl1dhHC9
静まり返った部屋にわずかに響くのは,木乃香のすすり泣く音。
そして小さな嗚咽。
胸の中にいる木乃香を確かめるように刹那はそっと包み込むように腕を回した。

「このちゃん,ごめん。」

消え入りそうな声で,刹那は木乃香に何度も繰り返す。
お互いの存在を確かめ合うようにじんわりと広がる体温が心地よい。
もう離さないと言葉で言う代わりに,木乃香はしっかりと刹那の胸元をつかみ,
刹那は木乃香の背にまわした腕に力を込めた。

しばらくして落ち着いたのか,木乃香は刹那の胸元に顔を擦りよせ,甘えたような仕草をみせた。
木乃香の顔には,それまで見せていた無表情に近い悲しげな色はなく,
穏やかで優しげな木乃香らしい表情を取り戻していた。

刹那は,愛しさからか安堵のためか,優しく木乃香の髪を撫でている。
その感触が心地よいのか,木乃香はそのままそっと目を閉じた。

「‥‥本当にご無事で何よりでした。」

それまでの会話と一変した空気が木乃香の耳に留まる。
いつの間にか木乃香を優しく撫でていた手は止まっていた。
木乃香は刹那を見るためにそっと顔を上げると,そこには眼尻に滴を溜めた刹那がいた。

「せっちゃん?」

心配そうに木乃香は声をかけるが,刹那はそのまま指先で涙をぬぐい笑顔を見せた。
しかし,再びあふれ出る涙が頬を伝った。
266前編2/5  ◆yuri0euJXw :2008/06/08(日) 03:32:18 ID:Kl1dhHC9
「っあれ?おかしいな。なん‥‥で‥‥。」
「せっちゃんこそ‥‥。さっきは『たぶん』なんて言うとったくせに。」

木乃香は抱きしめられていた刹那の腕から逃れ,今度は自分の胸元に刹那を抱き寄せた。

「泣いてもええんよ。うちの胸つこうて。」
「ふぇ‥‥お嬢さ‥‥ま‥‥。」

刹那は木乃香のぬくもりに包まれ,張り詰めていた緊張の糸が一気に解けたようだった。
堰を切ったように涙だけが流れ,音もなく刹那は木乃香の胸に顔を埋めた。

「‥‥色々と考えていました。アスナさんに会うまでの間。
お嬢様に何かあったら,お嬢さまが人買いにさらわれたらとか‥‥。本当に色々‥‥。」

消えそうな声で刹那は呟く。
刹那が木乃香にしたように今度は木乃香が刹那の髪を優しく撫でた。

「‥‥お嬢さまに何かあったら‥‥私はっ‥‥私は‥‥。」
「うち‥‥ここにおるよ。ちゃんとせっちゃんのとこに‥‥な?」
「は‥‥い‥‥。‥‥はい。」

刹那は流れる涙を袖で拭うために木乃香と少し距離をとった。
ずっとため込んでいたことを告白していくらか落ち着いたのだろう。
でも,木乃香は自分と同じかそれ以上に心配し,責任を感じている刹那に責任を感じていた。
そして,刹那の安心と自信を取り戻させたいと。
木乃香は徐に自分の胸元を緩め,肌を露出させた。
涙をぬぐう刹那からは視覚となっていてその仕草はわからなかった。

「せっちゃん。こっちきて。」

言うが早いか,木乃香は刹那を自分の肌に抱きよせた。
267前編3/5  ◆yuri0euJXw :2008/06/08(日) 03:32:39 ID:Kl1dhHC9
「うぁっ!?このちゃっ!」
「この方がええやろ?」

はじめは驚きの余り抵抗した刹那だったが,木乃香の言葉にあやされ,
次第に木乃香の双丘の間に顔を落ち着かせた。
ひと肌がこんなにも落ち着くものかと刹那は思った。
何よりもこの温もりが木乃香だと知っているからこその安堵感だった。

「楓と会った時な,取り乱したうちにこうしてくれたんや。」
「「一人より二人でござるよ。きっと刹那は無事でござる。」そういってうちのこと抱きしめてくれた。」

楓の胸はおっきかったから気持ちえかったえ,と冗談めいて木乃香は言った。

「うちの胸ちっちゃいけど,うちはこうやってせっちゃん抱きしめられてうれしいわ。」
「お嬢さま‥‥。」

刹那は照れたように,木乃香の胸にすり寄った。

「‥‥ほんとはな,続きがあるんよ。」

木乃香は恥ずかしそうに続けた。
刹那は,不思議そうに木乃香の様子を探っていた。

「あん‥‥な,その‥‥ややこになったつもりで‥‥吸ってみて‥‥。」
「はい?」

刹那は,途切れ途切れ放す木乃香の言葉を聞きながら,紡ぎだされた言葉を反芻する。
そして,自分の理解が間違っていることを信じて木乃香に聞き返した。

「だから,うちのおっぱい吸ってみて。」
「うぇ?!‥‥だって‥‥そんな‥‥。」
268前編4/5  ◆yuri0euJXw :2008/06/08(日) 03:32:59 ID:Kl1dhHC9
この上なく恥ずかしそうに,珍しく木乃香は顔を赤くしている。
そしてそれに負けないくらい,刹那は慌てふためいていた。

「ダメ‥‥せっちゃん。」

拒否を許さない,木乃香の強い声色。
抗うことのできない空気に縛られ,刹那は緊張しながら木乃香の双丘に手を添えた。
触れるまでの時間は一瞬でも,二人にはそれが永遠にも近い時間に感じた。
恥ずかしさと,緊張とが入り混じり,飛び出してしまいそうなくらい激しく鼓動を打ち鳴らす。
しかしそれは,二人がここにいるという安堵があるからこそのものであった。

刹那の唇が木乃香の胸の突起に触れた。
わずかに尖ったそこは,刹那の唇に調度よく,咥えるのには都合がよかった。
刹那は触れるまでの緊張が嘘のように消えていた。
木乃香の突起を咥えた時,抱きしめられた時以上の安心感を得た。
昔懐かしいような感覚。幼い頃だれしもが感じたことのある抱擁感がいま刹那を包んでいた。
大事なものに触れるように木乃香は刹那の頭を撫で擦っていた。
木乃香も触れられたことによって安心感を得たのか,その表情は慈愛に満ちていた。

「お嬢さ‥‥このちゃん。ありがとうな。無事でいてくれて。」
「せっちゃんこそ,うちのこと見つけてくれてありがとうな。」

いつの間にか二人を包む緊張は消えていた。
刹那は木乃香の胸が気に入ったのか,いつまでもそこを口に含んでいた。
刹那が木乃香の胸を左右行き来しながら,赤ん坊のようにむしゃぶりついていると,時折木乃香は身震いをしていた。
一生懸命刹那は甘えていたので,木乃香の様子に気がつくのに随分と時間がかかってしまったようだ。

「この‥‥‥ちゃん?」

刹那が木乃香の異変に気が付いて体を起こした時には,木乃香は艶めいた赤ら顔を見せていた。
269前編5/5  ◆yuri0euJXw :2008/06/08(日) 03:33:23 ID:Kl1dhHC9
「‥‥痛かったですか?」

心配そうに刹那は木乃香に言うが,木乃香はこぼれそうになる熱い溜息を必死に殺していて返事はできなかった。

「このちゃ‥‥?」
「うち‥‥変や。堪忍‥‥。」
「え?それはどういう‥‥?」
「‥‥せっちゃんがうちの胸,吸うたびに体の奥の方がきゅんきゅんして,ドキドキが止まらへん。うち‥‥変や。」

木乃香は,肌蹴た胸元を隠しながら,刹那の視界から逃れようと体を捩った。
しかし刹那と向き合っていたため,思うような体勢がとれず,結局刹那に組み敷かれるような格好になってしまった。

「このちゃん。これ以上のこと楓としたんですか?」
「違うんや。これは楓が教えてくれただけでうちはしてないんよ。だからこんな風になるなんて思わなくて。ほんま堪忍や,せっちゃん。」

木乃香には胸の高鳴りの理由がわかっているのだろう。先ほどとはまた違った羞恥心に頬を染めていた。
居た堪れないような,居心地の悪さを木乃香は感じていた。

「‥‥‥私では‥‥ダメですか?」

木乃香の表情に誘われるように刹那の口からこぼれた言葉に,木乃香は身を強張らす。
刹那は自分の言った言葉に我に返ったが,視線を木乃香から逸らすことはなかった。
いや逸らせられなかった。

「せっちゃん。」

木乃香の潤んだ瞳は,刹那をとらえて離さない。
語る言葉は無くても,その瞳は刹那に告げていた。
引き寄せられるように,刹那はそのまま木乃香に近づき,躊躇いながらも唇は重なった。
触れるだけのキスが繰り返され,次第に絡み合う熱っぽいものへと変化していった。
270前編あとがき  ◆yuri0euJXw :2008/06/08(日) 03:34:50 ID:Kl1dhHC9
一応続く場合はソフトエロを考えてます。
たぶんせつこの。

お目汚し失礼しました。
生意気ですが,米お待ちします。
271名無しさん@秘密の花園:2008/06/08(日) 07:08:39 ID:7oNdVCGi
がはっ……バスで読むんじゃなかった
やっべ(*・∀・)=ャ=ャが止まりませんわっふるわっふる
272名無しさん@秘密の花園:2008/06/08(日) 07:33:10 ID:lKXcE/Av
ブラボー……お二方ともGJです。やっぱりお互いに与えあい支えあう間柄がいい。
273名無しさん@秘密の花園:2008/06/08(日) 12:53:41 ID:jyXKByfR
249です
GJとしかいいようがありません。
こういうソフトエロ素晴らしい・・・
274後編まえがき  ◆yuri0euJXw :2008/06/08(日) 16:51:54 ID:Kl1dhHC9
済みません。
読者の反応を見てとか書いたのに,後編書いちゃいました。
>>271-273の皆さんありがとうございます。お調子者ですみません。

自分的にはソフトエロです。
SS投下いきます!
275後編6/10  ◆yuri0euJXw :2008/06/08(日) 16:52:38 ID:Kl1dhHC9
二人の距離を限りなく0に近づけるように密着する。
僅かな隙間も許さない。しかし魂の距離がもどかしい。
貪るように絡み合った唇は,木乃香の苦しそうな呼気に遮られた。

「ぷはっ‥‥はぁ‥‥。」

唾液に濡れ艶めかしく光る唇に吸い寄せられるように,刹那はそこを舐めた。
柔らかく敏感になった木乃香の唇は,その接触に過敏に反応する。

「もう‥‥離しませんよ。」

刹那の木乃香を強く抱きしめる腕が,木乃香には心地よかった。
耳のそばで紡がれる言葉が体の奥に浸透していく。

「うちかて‥‥放さへんよ。」

木乃香は刹那の顔に手を添え,微笑みながら唇を重ねた。
遠慮がちに絡め合う舌先は,会話をするようにお互いを探り合っていた。
情熱あふれるキスのせいか,二人の緊張した空気はいつしか柔らいでいた。
木乃香は,その隙に刹那の胸元に手を伸ばし,肌蹴させた胸元から布地の中へ手を滑らせる。
熱く火照った肌に触れると,刹那はきゅっと身を強張らせた。
逃げようとする刹那の舌を絡み取り,強く吸い上げると,眉間に寄せた皺は消え,体の緊張も解れていった。

「うちも,してええ?」

ささやかな刹那のふくらみを前に,返答も待たず木乃香は色づいた先端に口付けた。

「んはぁ‥‥。」
276後編7/10  ◆yuri0euJXw :2008/06/08(日) 16:53:08 ID:Kl1dhHC9
刹那は下から加えられる木乃香の愛撫に耐えきれず,体勢が崩れそうになる。
しかし,木乃香をつぶさないようにとぎりぎりのところで体勢を保っていた。
熱心に吸いつく木乃香の雰囲気は年齢以上に幼く,何かに縋りついているようにも見えた。
胸から駆け巡るのは理性を揺るがすほどの刺激だったが,木乃香の仕草は全く素直な一途な行為だった。
愛しさだけが,刹那の胸に籠る。
そっと木乃香の頭部を包み込むように刹那は優しく抱きしめた。
そして刹那は木乃香の髪に口付けた。

「この‥‥‥ちゃん‥‥。」

刹那の手は,木乃香の髪をなでながら,首筋へと向かう。
ほっそりとしたそこは,髪を寄せるとひときわ白く際立って見えた。
指先でそっと伝い,木乃香の感触を確かめるように,ゆっくりと指先を滑らせる。
刹那の指先が木乃香の顎を取ると,それまで熱心に吸いついていた唇を離し,木乃香は刹那を見つめた。

「せっちゃん‥‥うちな‥‥。」

木乃香の言葉を遮るように,刹那は再び唇を重ねた。
それはこれからすることの合図とでも言うかのように,
軽く触れあったかと思うとすぐに離れ,次の目的地へと向かった。
刹那は木乃香のありとあらゆるところを唇で触れた。
時には舌先でそっと触れ,木乃香の存在を確かめる。
木乃香にはそれが,刹那の示す親愛の情であると感じていた。
刹那が触れるたびに,自分のどこかにあるはずの不安が軽くなっていく。
それは魔法世界に来てからのこと,学園にいる時のこと,幼い時からのこと。
刹那の絡むすべての不安が関係していた。
全ての問題の根本には,刹那に対する想いが関わっていた。
幼馴染と言い表すには不自然なほどの親愛がそこに込められていて‥‥。

「せっちゃん。うちな‥‥。」
277後編8/10  ◆yuri0euJXw :2008/06/08(日) 16:53:30 ID:Kl1dhHC9
今度は,刹那に遮られることはなかった。
その代り,体を覆う甘美な感覚が木乃香の言葉を奪いそうだった。
熱く漏れるため息が,木乃香の言葉を邪魔する。

「うちな‥‥。せっちゃんのこと‥‥。」

木乃香は,潤んだ瞳で刹那を見つめる。
その視界に入った刹那は,木乃香に負けないほど潤んだ瞳で,木乃香を見つめ返していた。
その視線は,木乃香の言葉を押しとどめた。
恥ずかしそうに先に視線を反らしたのは刹那だった。
木乃香の身につけているものをすべて脱がせ,生まれたままの姿にした。
すらりと伸びた手足と,バランスの良い体つきに目を奪われる。
その視線を木乃香は全身で感じ取り,恥ずかしそうに身をよじった。

「‥‥きれいです。このちゃん。」
「嫌やわ‥‥恥ずかしい‥‥。」

刹那は足の指先に口付ける。指の一本一本を丹念に舐めるその行動は,
まるで何かの誓いを立てるような高貴な行為にも見えた。
人に触れられることのほとんどない場所を刹那に丹念に愛撫され,
木乃香は自分が何をしようとしていたのかもぼんやりと陰ってしまうほど,
堪らなく甘美な感覚に包まれていた。

「このちゃん。うち‥‥このちゃんのこと好きや。」

愛撫の合間に,囁くように刹那は言う。
脚先から繰り返された愛撫は徐々に上方へと向かってくる。
木乃香は刹那の言葉が聞こえるたびに
自分がどうにかなってしまいそうに熱くなるのを感じた。

「うち‥‥もぉ‥‥うちも‥‥っせっちゃん‥‥はぁ‥‥大好きぃ‥‥。」
278後編9/10  ◆yuri0euJXw :2008/06/08(日) 16:53:52 ID:Kl1dhHC9
愛するが故の苦悩‥‥。お互いに感じていた不安は同じものだった。

「いきますよ‥‥。」

二人の間を隔てていた壁を取り除くように,刹那はそっと木乃香の秘所に触れた。
誰も触れたことのないそこへの侵入を木乃香が許してくれる。
全身にしてきたのと同じ愛撫を,刹那はそこへも行った。
唇で触れ,舌先で確認し,木乃香の存在を確かめる。
木乃香はその刺激に,刹那の名を呼ぶことでしか答えることはできなかった。
刹那は木乃香の中へも侵入していく。
全身,どこにも知らない場所はないというように。
侵入させた指先はきつく締め付けられ,それは木乃香の初めてを証明していた。
優しく秘芯を撫でながら,刹那は木乃香に問いかけた。

「痛くないですか?」
「ん‥‥大丈夫や。」

しかし,答えとは裏腹に,まだ何か言いたいことがあると目が訴えていた。

「うちも‥‥一緒に‥‥。ね‥‥だめ?」

刹那はうなづくと,刹那は木乃香の手をとり,自分のそこへと導いた。

「あ‥‥すごっ‥‥。熱い。」
「あっ‥‥い‥‥言わないで‥‥。」
「ね‥‥一緒に‥‥。」

指がそこになじんだのか,だんだんと甘美な刺激が広がり始めた。
二人の一体感が高まる。
二人の昂りが同時に頂点を迎えると,
その余韻を確かめ合うように強く抱き締め合っていた。
279後編10/10  ◆yuri0euJXw :2008/06/08(日) 16:54:53 ID:Kl1dhHC9
しばらくすると,木乃香は静かに寝息をたてはじめた。
眠れずに刹那のベッドにもぐりこんだ木乃香だったが,
やっと安心できる場所を見つけることができたようだ。
シーツを掛け直し,刹那も隣に並ぶ。
裸のまま,抱き締め合うぬくもりが心地よかった。

悔やんでも悔やみきれない失態。刹那にとってそれは変わらない事実だ。
しかし,こうして腕の中には奇跡的に無事な木乃香がいる。
護衛として,親友として,仲間として,そして何にも変えることができない愛しい人‥‥,
気配はあるのに見つけられない悔しさに堪らない思いを抱えていた矢先の出来事だった。
木乃香との再会に,念願の再開にどう対応していいか分からずにいた。
それがかえって木乃香の不安を煽ってしまったようだ。
成り行きとはいえ,木乃香と想いを酌み交わしたことに後悔はない。
しかし,今度はそれを守り切る刹那の能力が問われていた。

―――フェイト・アーウェルンクス―――

いずれ闘い,勝たねばならぬ強敵。
そして神鳴流剣士の名にかけて討たねばならない相手がいる。
いくらアスナや木乃香が強くなったとしても,まだ不安は拭えない。
安らぎの中で眠りにつく木乃香を見つめ,刹那は言う。

「私が必ず守り抜きます。命に代えても。」

刹那は,木乃香の頭をそっと抱きよせ,夕凪を見つめながら,
胸の奥で強く決意したのだった。
280後編あとがき  ◆yuri0euJXw :2008/06/08(日) 16:58:26 ID:Kl1dhHC9
お目汚し失礼しました。
まぁ,保守ってことでヨロ。
281名無しさん@秘密の花園:2008/06/08(日) 17:11:08 ID:Clug1Ot0
この 課題 好き
282まとめ”管理”人:2008/06/08(日) 18:43:59 ID:KT4VIlXj
>>280
なんという保守・・・
いいぞ、もっとやれー
>>273にGJレスがあるのでまとめ対象として作業したいと思います。

>>263
まさか2スレ前のSSにレスが貰えるとは・・・
よし、責任をとって新シリーズを全話このせつverに!
と宣言したいところなんだが、久しくSS作って無いからどんなのができるやら。
むしろ作る時間があるのか怪しいので期待はしないで下さいorz
283名無しさん@秘密の花園:2008/06/10(火) 22:53:15 ID:1Fe0YmDu
>>280
久しぶりに読んだからか今回はいつにも増してレベルが高いような気がした!
なんかもうね、アレだ。GJ。
284名無しさん@秘密の花園:2008/06/11(水) 07:50:13 ID:RX6nOYyh
とにかく多数のコメントありがとうございます。
またまた調子に乗ってしまいますが今後ともごひいきに。精進しますです。

最近ちょっと飴☆少年に浮気気味ですが、
先日勢いでネギまの限定版を予約してきました!
またこっそりと保守に伺いますのでよろしく!
285名無しさん@秘密の花園:2008/06/12(木) 16:06:15 ID:MTAuxjxc
部屋に2人きり。
今日は大人しくしてくれるだろうか。

「んもぅ、こないに怪我してー。せっちゃん、次怪我したら3分以内に
 うちんとこに来ること!」
「はいー・・・って、無理ですう!」
「くく、冗談やてっ」
「いだあッ・・・うぅ、おじょおさまぁ〜」

木乃香は真っ白な素肌にぺチンと思い切り冷たいシップを貼り付ける。
半泣きで痛がる刹那に対し、自業自得や、と呆れたように微笑を添えた。

普段の仕事では怪我1つしない彼女もどうやら強者相手であるとやはり
怪我の1つや2つ当たり前らしい。
発達途中である明日菜やネギならまだしも、楓や古、エヴァなどと言った
手練ともなると戦いの激しさも増し、怪我の具合も違ってくる。
その度に木乃香はこうして嫌がる彼女の服を無理やり脱がせ、部屋で
せっせと傷の手当てをする。
本当はすぐにでもあちこちにあるその傷を癒してやりたい。
痛みを取り去ってやりたい。
自分も修行をしている身、以前よりもその力は強くなったと思う。
だけど、気持ちは募る一方でそれは胸の中にギュッと押し込む。

「ごめんなさい」

ぽそっと声が聞こえたその時、その白い背中がとても小さく見えた。
顔に出ていただろうか・・・肩を竦めてちらちらと横目でこちらの様子を
伺う仕草に木乃香は一瞬で笑顔を作った。
286名無しさん@秘密の花園:2008/06/12(木) 16:06:47 ID:MTAuxjxc
「何が?」
「・・・わがままを言ってしまって」

らしくない言葉に思わず苦笑を漏らす。
どないしたん、とややおどけたように。
優しくその少し乱れた髪の毛を撫でた。

「それはわがままと違うやろ。ちゃんとした意志。せっちゃんの大切な
 思いや・・・せやからウチも共感した。もう、そないなこと言わへんの」

ぽんぽんと頭をリズムカルに叩くとぷい、と下を向いてしまった。
耳まで真っ赤にさせて。
ついおかしくて首をくすぐると彼女はビクンと頭を上げて笑い出す。
その横顔をじいっと見つめては思い起こす。

――頑張った証ですから。

いつかの彼女は言った。
それはあの少年と同じ行為のようにその時は思えた。
彼は父親から受けた傷を残しておきたいと言って聞かなかった。
彼女も同じような気持ちを抱いているのだろうか。
彼とは違い、いずれは消える傷痕、それを敢えて完治させない。
でも、彼女の言い分は分かる。仲間と戦った証、そして頑張った証。
それを少しでも長く感じていたいから・・・
287名無しさん@秘密の花園:2008/06/12(木) 16:07:11 ID:MTAuxjxc
ごめんなさいといつも謝っておきながら貫き通すあたり、彼女は
意外に頑固なんだと思う。
新たな一面を発見できて嬉しいのだが、少し切ない。
何のために修行をしているのか、本当の所を彼女は知っているだろうか。

「はい、終わり」
「あ、ありがとござ」
「はい次、足」
「え・・・ええ!?」
「ウチの前で怪我隠すなんて10年早いで?」
「うー」

今となっては怪我探しはお手のもの。
どうせ治してはもらえないのだが、この能力もいずれは役立ちそうだが。
やっぱり本当は・・・

「お嬢様」
「ん?」
「いつも、ありがとうございます」

刹那の前に回ってガーゼを切っているときだった。
照れくさそうに、しかしはっきりと彼女はそう言って笑った。

「私、お嬢様にこうやって傷の手当てされるの・・・大好きです」
「ふふ、何言ーとんの」
「ほんとです!」
288名無しさん@秘密の花園:2008/06/12(木) 16:07:48 ID:MTAuxjxc
紛らわそうとしたと思ったのか、慌てて声を張り上げた。
木乃香は思わず手を止めその藍色の瞳を見つめる。

「ほんと、は・・・違うんです。魔法で治してもらうより、こっちの
 方が、その・・・」
「愛を感じる?」
「ちち、ちがっ」
「ありがとな」

ぽかんとした顔を浮かばせる刹那の隣りにそっと寄り添う。
そっか、ちゃんと考えてくれてたんだ。
分かって安心、そしてちょっと自己嫌悪。
それでも今は・・・

「ウチ、頑張る」
「ふぇ?」
「頑張って、頑張って・・・せっちゃんのこと・・・・」
「・・・・はい」

肩に頭を乗せると彼女のぬくもりがそこにさらに乗った。


おわり。
289名無しさん@秘密の花園:2008/06/12(木) 16:08:39 ID:MTAuxjxc
また短文&駄文で申し訳ありません!
お目汚し失礼しました。
290名無しさん@秘密の花園:2008/06/12(木) 16:17:08 ID:ANtKJDfw
GJわっふる
291名無しさん@秘密の花園:2008/06/12(木) 17:21:57 ID:FJnfWi72
さっちゃん?GJ!
292名無しさん@秘密の花園:2008/06/13(金) 18:00:30 ID:k0YKySb7
名前出すのやめろよ
293名無しさん@秘密の花園:2008/06/13(金) 23:23:45 ID:dq9vxce1
この際カムしちゃえよwww
294名無しさん@秘密の花園:2008/06/14(土) 09:34:16 ID:cmTA+aa3
>>292
激しく同意。

名前出すことでしか褒められないなら書き込むな。
295名無しさん@秘密の花園:2008/06/14(土) 15:03:29 ID:1AfGrI9M
【病名】 このせつ分不足症候群
【症状】 以上に萌えたくなる。そのため,ちょっと反応が過剰気味に。
     だからと言って悪気があるわけではないが,ちょっと揉め気味に。
【治療】 このせつ分を補充する以外にありません。
     萌えるこのせつをたくさん補充して下さい。
     新しいものが不足している場合は,古いものでも大丈夫です。
     むしろ,定評のある萌えこの説の方が効果が高いかもしれません。

でも,一番効果的なのは,本誌にもっとこのせつが登場することだと考えられます。

というわけで,仲良くやろうぜ。

>>289 GJ!! 遅れちまったけど。次作も期待。
296名無しさん@秘密の花園:2008/06/14(土) 15:32:43 ID:/xMWNfSy
自分は治療の術なしって診断された
それ不治の病らしいです
297名無しさん@秘密の花園:2008/06/14(土) 15:35:40 ID:pngsDXVc
久しぶりに来ました。みんなGJだぜ!!!

これは不治の病だったのか・・・
298名無しさん@秘密の花園:2008/06/14(土) 18:08:08 ID:ERv4mQwT
お薬は4巻〜6巻あたりですね。分かります。
299名無しさん@秘密の花園:2008/06/14(土) 19:21:38 ID:85ZG7Ze3
19巻もいい薬ですよ。
300名無しさん@秘密の花園:2008/06/14(土) 20:40:34 ID:6ETL84mi
最新としては、OADのBOX絵柄だと思う。
俺はあの絵をみた瞬間、桃源郷をみた。
301名無しさん@秘密の花園:2008/06/16(月) 21:30:10 ID:xwbVAwkg
このせつ分が足らない・・・(´・ω・`)
302名無しさん@秘密の花園:2008/06/16(月) 21:44:18 ID:7tbxHCxN
じゃ、投下するか…でもおらも足らない
303名無しさん@秘密の花園:2008/06/17(火) 00:10:03 ID:yPu0fdv9
>>302
落としてくれよ。このせつ欠乏症だよぅ。
補充用にまとめサイト言ったらめちゃかっこよくリニューアルされてた。
管理人さん乙です!!
304名無しさん@秘密の花園:2008/06/18(水) 07:05:53 ID:/xRwnTn/
アスナ「木乃香どっか旅行行くの?キャリーバック持って……」
木乃香「ちょっとアメリカに行ってくる」
アスナ「は?今から?一人で?」
木乃香「もちろんせっちゃんと!ほななー」
アスナ「え?ちょ、学校どうすんのよー!行っちゃった……なんでいきなりアメリカ?」
テレビ「アメリカカリフォルニア州にて同性婚が合法と認められました」
アスナ「……これか」


こういう妄想したやつ他にも絶対いるはず
305名無しさん@秘密の花園:2008/06/18(水) 20:48:02 ID:ytMDdl1V
通りで今週号に出てないワケですね。
306名無しさん@秘密の花園:2008/06/18(水) 21:20:05 ID:kLFqTw0Q
んで他の百合カップルも便乗してカリフォルニア行ってがらッがらになる3-A……
っとこりゃ総合スレ向きのネタか
307名無しさん@秘密の花園:2008/06/20(金) 00:13:03 ID:igOBcP3c
>>306
ネギ「それじゃ2人組(百合カップル)作ってー」

クラス外からも連れてくれば、たぶん全員渡米できる
308名無しさん@秘密の花園:2008/06/20(金) 20:11:32 ID:6JbQGwpo
美空の嫁の事ですかそーですかw
そういえば月マガにてこのせつがやらかしてなかったか?
1コマだけだけど。
309名無しさん@秘密の花園:2008/06/20(金) 21:55:48 ID:8NhOLfLl
>>308
熱出してる俺に詳しく。
310名無しさん@秘密の花園:2008/06/20(金) 22:14:30 ID:ZYI6XzgO
>>308
欠乏症の我にも詳しく
311名無しさん@秘密の花園:2008/06/20(金) 23:41:52 ID:6JbQGwpo
今月のマガスペにて――すまん、月マガと間違えたorz――、
夏美が演劇部の先輩に
幼稚園で演劇公演をして欲しいと頼まれて
2-Aの愉快な仲間たちと共にシンデレラを演じる事になってどーのこーの……
ってな話が載ってたんよ。

んで配役決める際に

「せっちゃんも王子役似合いそやなー」

「そんな…っ 木乃香姫…っ」
「刹那王子…」
(と呼び合いながら見つめあうこのせつ)

てなシーンがあったと。
312名無しさん@秘密の花園:2008/06/21(土) 18:52:45 ID:l62O8Rsk
>>311
鼻血が出た。
313名無しさん@秘密の花園:2008/06/21(土) 22:38:11 ID:dSUFedIf
>>311
ぐはっ…!
314名無しさん@秘密の花園:2008/06/22(日) 14:27:50 ID:27TgQyKr
来月出るneoの4巻にはこのせつ分はありますか?
どなたか知っている人いたら情報ください。
(でも買うと思うけど藁)
315名無しさん@秘密の花園:2008/06/22(日) 16:42:37 ID:a+dbg2z5
neoって毎回このせつ出てる気が…
316名無しさん@秘密の花園:2008/06/22(日) 20:00:57 ID:DBPsIV4D
明日菜とこのせつは毎回出てるね
317名無しさん@秘密の花園:2008/06/22(日) 21:47:04 ID:y2CJijq+
藤真氏は同人誌出すくらいのこのせつスキーだからな
318名無しさん@秘密の花園:2008/06/22(日) 21:59:06 ID:XD71c8cx
あれ、めちゃめちゃ汁が多い作品だったな。
319名無しさん@秘密の花園:2008/06/22(日) 22:54:46 ID:HeZnXtSa
>>317
んじゃここも見てんのね
320名無しさん@秘密の花園:2008/06/22(日) 23:49:36 ID:ixlCjWy+
>>319
だなww
321名無しさん@秘密の花園:2008/06/22(日) 23:52:22 ID:HeZnXtSa
藤間先生…これからもこのせつ分お願いします。
322名無しさん@秘密の花園:2008/06/23(月) 23:43:38 ID:AJQYA4rO

 一時間目の退屈な授業中、ふと刹那さんのほうへ視線をおくると、小さいその後姿は何やら落ち着きのない様子だった。
不自然なくらい何度も座りなおし、上半身を前後左右ゆらゆらさせている。
それはもう、明らかに何かを我慢しているような──。
暇つぶしにぴったりな標的を見つけ、私神楽坂明日菜はこっそりほくそ笑んだ。

いらなくなったプリントの裏にそのことを書き、先生が黒板に向かっているとき右に押しやった。
刹那さんを誰よりも知る木乃香なら、今刹那さんがどういう状況に陥ってるのか分かると思ったからだ。
だが、手紙を読むそぶりを見せない木乃香。
その瞳は黒板ではなく刹那さんを見つめており、異変にとっくに気づいていたようで、左手を口に当てたままプルプル震えていた。
こちらも何かを我慢……笑いで噴出しそうになるのを我慢しているようだ。

木乃香の左肩をトントンと肩をたたき、目が合ったところで再びプリントを押しやる。

『せつなさん見てると超おもしろいんだけど。トイレかな?』

お互いニンマリ微笑むと、先生の目を盗みながら交互にシャープペンを走らせた。

『あれはおしっこ我慢してる動きちゃうと思うけど』
『えー?ぜったいトイレだって。しかもおっきいほう』

木乃香の噴出し笑いが聞こえた。

『ほな、せっちゃんの顔赤い?青い?』

木乃香の指示により刹那さんの顔色を見ようとしたが、ちょうどノートに視線を落としているところで、横髪が垂れ下がり隠れてしまっていた。
とういことで無理やり振り向かせることにした。消しゴムをちぎって定規で狙いを定めて・・・・・・刹那さんの頭へ一直線!
パシィッと見事にキャッチした刹那さん。
そのまま私へ視線を移し「甘い」と言いたげにフッと笑い、中指で弾くようにケシゴムを打ち返してきた。
直撃した眉間をさすりながらシャープペンを走らせる。
プリントを木乃香へ渡した後もう一度刹那さんを見て、急いでプリントを奪い返した。

『イヤミなくらい美白』
『↑笑 あれ頬ずりしたくな』
『間違えた、首まで真っ赤。このかなんかした?』
『目が合ったから投げキッスしただけや』
『だけって(笑)』

相変わらずのラブラブっぷりに呆れていると、教室の空気が少し変わっていることに気がついた。
可哀想に、せつなさんは顔色が赤いことを先生に指摘され、クラスの注目の的になっていた。
「保険委員、保健室に連れていってやれ」
「はい、うちが行きます」
刹那さんの保健室同伴は木乃香。
これは3Aの常識になりつつあり、保険委員の亜子ちゃんも空気を読んで名乗り出なかった。
結局刹那さんが何を我慢していたのか答えは出なかったんだけれど、たぶん次に会うときはすがすがしい微笑みを見せてくれることだろう。

『なぁ、なんでせっちゃんあんなに可愛いと思う?』

プリントに残された木乃香のメッセージ。
『知るか』
と書き込み、小さくお幸せにと付け足しておいた。



323名無しさん@秘密の花園:2008/06/24(火) 00:11:38 ID:Wz2d/LaN
何これ,超萌えた。
何に苦しんでたのよ刹那さん!!とアスナの心を代弁!!
324名無しさん@秘密の花園:2008/06/24(火) 00:58:45 ID:Wz2d/LaN
横槍すみません。烏pろだのファイル覚えある人いますか?


ちなみにこのかの最後の質問の答えは
せっちゃんがこのちゃんにラブラブだからでしょうか?
325名無しさん@秘密の花園:2008/06/24(火) 01:14:19 ID:lUqZABUq
天使だから。
326名無しさん@秘密の花園:2008/06/24(火) 11:06:59 ID:6ixjwCeC
ごめんなさい
すごく萌えました
327名無しさん@秘密の花園:2008/06/24(火) 22:02:14 ID:p7nKIbbU
せっちゃんかわいいよせっちゃん
328 ◆GvbCrZA3mg :2008/06/26(木) 16:34:09 ID:WwZLxnEY
>>322
素晴らしく萌えました。

うpロダの方に一つ(パスナシで)うpしました…。
ヤンデレが嫌な方ご注意でお願いしますね…。
と規制解除しているか確認する私もどうかと思いますがではでは。
329名無しさん@秘密の花園:2008/06/27(金) 01:39:39 ID:iHbzrFSj
規制解除おめ!!

なかなか読めるヤンデレでした。
ヤンデレってチョと苦手?とか思ってたけど,
このせつだと読めるのが不思議だ。
やっぱり木乃香の包容力が効いてるのかな?
ともあれGJ!
330名無しさん@秘密の花園:2008/06/28(土) 00:11:23 ID:8OcxHM+j
保守がてら…保守?


隣りに居るあなたは笑った。
驚いて、でもゆっくり聞いてみた。

「どうしたん?」
「知りたいですか?」
「もちろん」

そしたら、またあなたは笑った。
でも急に真顔になって…

「こんなにもお嬢様が好きなんだなって思って」

言った後に頬を染めるあなたが可愛くて

「ウチもめっちゃ大好きや、おおきにな」

って言ってやったら、あなたは耳まで赤くなった。
今度は、ウチが笑った。
照れて先を歩き出したあなた。
でも、立ち止まって、でも顔をこっちに向けないで手を伸ばしてくる。
嬉しくて嬉しくて、ウチはその手を掴んだ。

大好きなあなたの手はとても温かった。
331名無しさん@秘密の花園:2008/06/29(日) 20:30:28 ID:Clhss6WE
たまりませんなぁ…GJ
332名無しさん@秘密の花園:2008/06/30(月) 23:08:11 ID:bmn0qrmU
ほんわかしてますぅ。GJ!
333名無しさん@秘密の花園:2008/07/07(月) 01:17:15 ID:y55Z+n+E
あげ


このせつこないかな……。
334名無しさん@秘密の花園:2008/07/08(火) 07:17:54 ID:0GHuZy08
ネギ少年の成長譚や明日菜の過去を捜す話もいいんだ、いいんだけどさ……



ずっと百合話のターン!



をいっぺんやらかしてくれてもバチは当たらんと思うんだ。
335名無しさん@秘密の花園:2008/07/13(日) 20:15:04 ID:6o6vDRXB
途中でこのか亀甲縛りネタになるという展開が
336名無しさん@秘密の花園:2008/07/16(水) 01:34:12 ID:HrahDvAA
あげ
337名無しさん@秘密の花園:2008/07/16(水) 20:10:44 ID:abPC9gYZ
何つーか。
今週号の面子が揃い出した辺りを読んでて、
きっとハルナの立志伝やクーの武者修行中の逸話などに混じって

明日菜がせっちゃんの道中での取り乱しっぷりを面白おかしく語り、
それを受けた楓が
せっちゃん分欠乏症候群を患ったこのちゃんの闘病生活を
ネギパのみんなに熱く語ってくれたに違いないと信じてる。
338名無しさん@秘密の花園:2008/07/16(水) 23:40:21 ID:gQ8/pTGs
うpろだの作品いいけど,ちょっと変なのが混じってるね。
ろだの管理人さん,できる時でいいんで,削除しておいてくださいなっと。
単行本派のおいらにゃ本誌のことはよくわからんけど,
メっきり萌えぶんないんで,楽しみにすることにするぞ。

とりあえずneoでも買っとくか。
339名無しさん@秘密の花園:2008/07/20(日) 23:06:43 ID:62uZXpjU
せつこの読みてぇー。
ああああー。
340名無しさん@秘密の花園:2008/07/23(水) 03:24:31 ID:0YZkj+nA
このせつはあげます。
341名無しさん@秘密の花園:2008/07/23(水) 12:36:07 ID:npnEDB4A
このかの声かわいい
342名無しさん@秘密の花園:2008/07/23(水) 13:17:08 ID:eJOiQebN
木乃香の声は本当に可愛い
343名無しさん@秘密の花園:2008/07/23(水) 13:55:33 ID:0YZkj+nA
刹那カッコいい
344名無しさん@秘密の花園:2008/07/23(水) 16:38:32 ID:iPq71hcy
限定版に期待してるゼ!浴衣このせつ(*´Д`)=з
345名無しさん@秘密の花園:2008/07/23(水) 23:23:42 ID:Tl3lQCoD
OADを見るこのせつファンに告ぐ…死ぬな

いい意味でw
346名無しさん@秘密の花園:2008/07/25(金) 12:16:16 ID:EXUz+4o4
347名無しさん@秘密の花園:2008/07/25(金) 12:25:08 ID:oxCJKBN7
キュンキュンした
348名無しさん@秘密の花園:2008/07/25(金) 18:24:15 ID:C87SsqsY
やっぱいいな……このせつ

猛烈にキュンキュンした
349名無しさん@秘密の花園:2008/07/25(金) 20:55:50 ID:JCVlXANq
この本もってる
ほんと萌えますよね
350名無しさん@秘密の花園:2008/07/25(金) 21:00:18 ID:C87SsqsY
なんて言う奴なの?
教えてください。
351346:2008/07/26(土) 13:12:31 ID:CMjo2fR5
>>350
スマソ拾い物なんで知らない><
352名無しさん@秘密の花園:2008/07/26(土) 17:10:26 ID:TEokJzwe
>>349は知ってるのかな?
353名無しさん@秘密の花園:2008/07/26(土) 22:03:58 ID:XYGral8l
もう3冊出てるしHPもあるよ
かなり有名だと思ってたんだけど
354名無しさん@秘密の花園:2008/07/26(土) 22:23:39 ID:8QrE3xGg
俺も346の本もってるわ。超萌える。
さすがに作者名ここでさらすのはアレだから控えるけど
とらやメロンで委託(通販も在庫あり)されてるし、
地道に検索すればすぐわかると思う。
355名無しさん@秘密の花園:2008/07/26(土) 23:09:01 ID:1YRpX0Lq
>>354
メロンブックスでハケーン(゚∀゚)
356名無しさん@秘密の花園:2008/07/26(土) 23:10:39 ID:XYGral8l
>>349
すみません、2冊ですね
特に新しいやつは泣ける
357352:2008/07/26(土) 23:30:52 ID:TEokJzwe
みれた♪ みんなありがとう〜
このせつ分補充補充♪
358名無しさん@秘密の花園:2008/07/28(月) 14:53:36 ID:5VblO259
こんな同人誌があったのか。定時で帰れたらアキバに寄ってこっとw
359名無しさん@秘密の花園:2008/07/28(月) 15:13:53 ID:pSBgctsb
大阪のとらには昨日の時点であった。
関西のこのせつ好きは今すぐダッシュだ!
360名無しさん@秘密の花園:2008/07/30(水) 18:31:58 ID:sPQaF2xD
保守

なんかこう悶え苦しむようなこのせつが欲しいな。
361名無しさん@秘密の花園:2008/07/31(木) 17:00:51 ID:oOxVjq0i
そりゃどんな意味でだい

>悶え苦しむ
362名無しさん@秘密の花園:2008/07/31(木) 17:47:10 ID:7DTA2riD
そりゃもちろん,‘萌え’悶え苦しむぅ〜www
363名無しさん@秘密の花園:2008/07/31(木) 18:05:25 ID:mp8CMICc
konosetuでHDD検索したら、昔書いたSSが大量に出てきた
過去の俺GJ
364名無しさん@秘密の花園:2008/07/31(木) 18:25:05 ID:7DTA2riD
一人で楽しまないで少し分けてチョ(・ω・)/
365名無しさん@秘密の花園:2008/08/01(金) 01:08:31 ID:n8nOsgxB
>>363
さあ早くそれらをうpする作業に戻るんだ


ところで、ここの住人でOAD予約した人って何人いる?
366名無しさん@秘密の花園:2008/08/01(金) 01:10:43 ID:X+CH1192

試写会もネット試写会も外れたからめっちゃ楽しみ
367名無しさん@秘密の花園:2008/08/01(金) 02:41:27 ID:iXbtQQlQ

3つ予約した。このせつのために
368名無しさん@秘密の花園:2008/08/01(金) 03:06:56 ID:xlXTKDFV

楽しみだ!
ちなみに一つ予約。
金が無くてね…
369名無しさん@秘密の花園:2008/08/01(金) 16:07:13 ID:0QYw0TuI
高いから買うつもりなかったんだが、このスレ向きのネタがあるの??
370名無しさん@秘密の花園:2008/08/01(金) 21:28:51 ID:z2JJP8p8
実際にどうなるかわからないが(作画的に)浴衣このせつは見逃せんだろ?この板的に!

てか俺の未完成SS落としたろうかかと言うくらいこのせつ分がたりん!!
371名無しさん@秘密の花園:2008/08/01(金) 21:33:32 ID:Xf0lGJ7l
浴衣以上にヤバイところがある
372名無しさん@秘密の花園:2008/08/01(金) 22:47:08 ID:X+CH1192
ネタバレやめてくれ!
373名無しさん@秘密の花園:2008/08/01(金) 23:47:47 ID:Xf0lGJ7l
要するに買いなさいってこと
374名無しさん@秘密の花園:2008/08/02(土) 00:01:10 ID:bMbcJdl6
例の同人誌がめろんから届いたが、マジヤバイな。色んな意味でクォリティ高くて良かった!
作者に感想送ってしまったぜw

>>370
未完成でもいいから落としてくれ!!
375名無しさん@秘密の花園:2008/08/02(土) 22:25:55 ID:iUTkyoHr
>>374

430行(ピュアラブラブ)と3300行(悲哀たぶんきっとEDはハッピーエンド,まなせつなどあり)とかあるぞ。
もちっと書き足しして投下できるか考えてみる。
376名無しさん@秘密の花園:2008/08/03(日) 14:58:58 ID:8zA9omHd
俺もクオリティ低いのならSSいくつかあるんだがなぁ・・・・。
375同様、今日辺りにちょっと時間作って考慮してみよう。
377薬嫌い:2008/08/03(日) 23:33:08 ID:8zA9omHd

「うぅ・・・・」

全校生徒が登校している最中、桜咲刹那は一人で寮に残っていた。
季節外れの風邪・・・・というのには、ずいぶんと長引いている。
うつされるかもしれないということで、一緒に暮らしている寮友もこの部屋にはいなかった。
ずいぶんと薄情なものだが、仕事を請け負う身であるならば仕方の無い事だった。

「昨日と同じ、39度越えか・・・・さすがに辛い、な・・・・」

頭痛と気だるさも重なり、刹那は辛そうに身を起こした。
水分はしっかりとっている。
しかし食欲は沸かなかった。
薬も飲む気になれない。
いや、飲めない。

(よくこんな得体の知れないもの飲めるよな・・・・)

生理的に受け付けないというよりも、一種のトラウマだ。
昔、刹那を半妖と知らなかった道場の使用人は熱を出した刹那に道場秘伝の漢方薬を飲ませた。
しかしその漢方薬には、妖怪にとって猛毒だった薬草が使われていたのだ。
人には"癒"、妖怪には"毒"。
そういった秘伝の薬だった。
半妖で不安定な刹那には、後者の"毒"の部分が作用してしまったのである。
そのせいで半日ほど生死の境を彷徨った。

(この薬にだって何が入ってるかわからない・・・・飲めるものか)

そういって刹那は薬の箱をゴミ箱に捨てる。
せっかく龍宮が無償で用意してくれたものだが、刹那は受け付けなかった。
薬を飲まない主義だと知っているくせに、勝手に用意するほうが悪い。
378薬嫌い:2008/08/03(日) 23:33:55 ID:8zA9omHd

「・・・・寝よう」

とにかく今は寝るしかない。
そう判断した刹那は水分だけを取り、また布団に倒れこんだ。

*

「・・・・せっちゃーん?」

刹那が寝静まった後、龍宮から刹那の様子を聞いた木乃香が部屋に訪れた。
寝ていたら起こしてはいけないと思い、静かに部屋に踏み入る。
案の定、刹那は眠りについていた。

「・・・・あー、薬捨ててあんな・・・・」

木乃香は龍宮に刹那の様子を色々聞いてきた。
そしてその龍宮の予想通り、ゴミ箱には薬が捨てられていた。
木乃香はそれを拾い上げ、中身を確認する。

「封も開けとらんやんか・・・・ほんまに薬嫌いなんやなぁ」

魔法医療関係の所からもらってきた薬なので、毒はもちろん入っていない。
龍宮もそう伝えてはいたようだが、刹那は聞き入れなかったようだ。

「ご飯もまともに食べとらんようやね・・・・しゃーないなぁ」

素直かと思えば、妙な所で頑固な幼馴染。
台所などを見回し、刹那の現状を把握した木乃香はため息をつく。

「ほな、はじめよか」

木乃香は誰に言うでもなく呟くと、腕まくりをして台所へと向かっていった。

*
379薬嫌い:2008/08/03(日) 23:34:56 ID:8zA9omHd

――トントン

「・・・・ん・・・・?」

台所から聞こえる包丁の音で刹那は目覚めた。
一人だったはずなのに人の気配・・・・・いつもなら不審に思って飛び起きる。
だが高熱で倒れている状態の刹那には、その気力さえなかった。

(・・・・誰だろう・・・・)

うっすらと目を開けて、まず最初に窓の外を見る。
もうすっかり陽は高い。
ずいぶんと寝ていたのだろう。

(・・・・で、誰だ・・・・龍宮・・・・?)

ゆっくりと身体を起こし、同じ空間にいる人物を確認する。
熱のせいか気で探る事は不可能だった。
しかし不思議と不安感はない。
そのまましばらく台所の方を見ていると、その視線に気付いたのか使用者がひょっこりと顔を出した。

「あ、起こしてもうた?」
「いえ、大丈夫です・・・・それよりなぜここに? 学校の方はどうなされたのですか?」
「ネギ君に頼んで、抜け出してきた」
「・・・・そう、ですか・・・・」

叱る力もなく、刹那はまた布団に転がった。
木乃香が心配して近づいてくる。
主を前に寝転がっているのは失礼な事だが、刹那にはこれ以上身を起こしているほど気力がなかった。
380薬嫌い:2008/08/03(日) 23:36:08 ID:8zA9omHd

「・・・・つらいん?」
「ただの熱です」
「薬飲まんから・・・・ほら、飲も?」
「・・・・いや、です・・・・」

刹那は木乃香が持ってきた薬と水を払い退ける。
木乃香はため息をついて、刹那の顔を覗き込んだ。
明らかに熱が上がっていて、息も荒い。

「そないに酷うなってるんに・・・・飲まな早く治らんよ?」
「明日には治します・・・・これぐらい、大丈夫です」

(こらコテでも動かへんなぁ・・・・)

そっぽを向いてしまった幼馴染に木乃香はまた溜息をついた。
目の前には、飲んで欲しい薬を完全に拒絶する幼馴染。
普段素直なだけに、こうなるとなかなか折れてくれないのは木乃香も承知だった。

(ん〜、そやな・・・・)

木乃香はガサガサと薬を出して細工をする。
刹那もその行動に気付き、背中越しに警戒していた。

「――よし、これでええな。せっちゃん、こっち見〜?」
「何で、ですか・・・・?」
「ええからええから。ほら・・・・」
「・・・・?」

急に木乃香の言葉が途切れ、それに疑問を持った刹那が木乃香の方を見た。
その瞬間、頭を両手で押さえ付けられ動けなくなる。
そして刹那の唇には何かが押し当てられた。
381薬嫌い:2008/08/03(日) 23:37:45 ID:8zA9omHd

「〜〜〜・・・・んぐっ!?」

目の前には木乃香の瞳。
優しげなその瞳に飲まれて刹那は息を呑んだ。
・・・・実際には、口移しで送り込まれた水を飲んだのだが。
それを確認すると、木乃香は身を引いた。

「――よく出来ました」
「え、あ・・・・まさか・・・・!」
「戻したらあかんよ?」

咄嗟に吐き戻そうとした刹那を木乃香が止める。
水と一緒に流し込まれたのは、間違いなく木乃香が持っていた薬。
刹那は木乃香に抗議しようとしたが、それも笑顔で返され言葉を詰まらせた。

「・・・・あ、ウチもう学校もどらなあかん」
「ごめんなさい、私のために・・・・」
「んーちゃんと薬飲んでくれからな、後は元気になってくれたらええよ」

木乃香は台所に戻ると、小さな鍋を持ってくる。
それをテーブルに置くと、ソファーに置いてあった学校カバンを持った。

「元気あったら食べてな? 放課後また来るえ」
「はい・・・・ありがとうございます・・・・」
「ほんまはずっとおりたいんやけどな・・・・我慢して大人しくまっとってなー?」

忙しそうに走り去る木乃香の背中。
おっとりとしていてどこか危なっかしい所がある木乃香だが、こういった家事はテキパキとこなす。
将来はきっと、良いお嫁さんになるだろう。

(あ、口移し・・・・風邪、移るかもしれないのに・・・・)
382薬嫌い:2008/08/03(日) 23:38:41 ID:8zA9omHd

そう思いながらも、用意されたお粥に手をつける。
病人のご飯らしくいたってシンプル。
しかし口をつけると、丁寧に味付けられた上品な味が口内に広がった。

「・・・・おいしい」

完食こそは出来ないものの、満たされる分だけ食べて刹那は布団へ戻った。
木乃香が来る前と比べるとずいぶんと楽になってきた気がする。
薬のおかげだろうか。

「このちゃんには・・・・かなわないや・・・・・」

結局薬を飲まされた自分を恥じる刹那。
しかしゆっくりと木乃香に染められていく自分も、どこか心地よかった。

(お嬢様がきたら、また薬をねだろうかな・・・・)

恥ずかしがりやな彼女の事、そんなことは絶対に出来ないだろう。
しかし刹那はこれを期に、木乃香が出した薬だけは飲めるようになったようである。


FIN              KEYWORD PUZZLE( ttp://id41.fm-p.jp/35/sieg74/ )

キーワード:『栄養不足』『化け物』『薬』
383名無しさん@秘密の花園:2008/08/04(月) 00:03:08 ID:u75vHHKv
これ既出じゃね?
何か読んだことあるよ〜。
口移しじゃないと薬飲めないせっちゃんに萌えた!
そんでもって,く氏 お久!
384名無しさん@秘密の花園:2008/08/04(月) 00:08:40 ID:YXpyZ50F
俺も読んだ事ある気がするのは気のせいか…?

例の同人誌ってプラチナなんとかってサークルのだっけ?
385名無しさん@秘密の花園:2008/08/04(月) 00:41:08 ID:1cr7MkIa
既出だったか・・・・?
それは申し訳ない・・・・。
もう一つあるので、それはまた時間があったら落とす。

386名無しさん@秘密の花園:2008/08/04(月) 00:46:21 ID:u75vHHKv
いやいや。過疎だし。
久々に萌えた。

こりゃ駄SSの手直しもちゃんとやらないとあかんくなってきたかな?

もう一本もよろしく。
マターリお待ちしてますwww
387名無しさん@秘密の花園:2008/08/04(月) 04:53:59 ID:lxDq2JIk
読んだ事ある様な気もするが、それでも萌えたのでおk

もう一本の方も期待してる!
388名無しさん@秘密の花園:2008/08/04(月) 10:47:59 ID:vLeBdUJV
ク氏!既出でもGJ!
389名無しさん@秘密の花園:2008/08/07(木) 01:02:15 ID:kwdxxNPM
>>384
そのプラチナなんとかってやつだぜ。
390名無しさん@秘密の花園:2008/08/11(月) 00:31:20 ID:uu1EkPrn
最近のこのせつに足りないものは儚さだと思う
391名無しさん@秘密の花園:2008/08/11(月) 00:34:00 ID:eL0NZHeS
kwsk
392 ◆GvbCrZA3mg :2008/08/11(月) 14:49:54 ID:MSeqsUHf
投下できれば投下します、お久しぶりです。
規制がなかなか外れないもので涙目です。
せつこのです、多分。

注意
随分と短いです。
萌えてくれたら幸いです。
では規制が外れていれば次からどうぞっ
393 ◆GvbCrZA3mg :2008/08/11(月) 14:50:31 ID:MSeqsUHf
その恋は綿菓子
食べてしまうと、直ぐに溶けて消え行く

役目が終われば、居なくなるべき―――存在。

「せっちゃん?」
「………ぁ、はい、なんでしょう?」
「聞いとらんかったん?」
「……すみません」

最近、こんな事ばかりだ。
多分私は恐れているんだろう。
お嬢様に触れていいのか、と
お嬢様を求めすぎて、止まれなくなるのではないか、と―――

「なんや悩み事でもあるん?」

言える訳が無い。
お嬢様との仲を、お嬢様に相談するなんて。

「…大丈夫です」
「…ふぅん?」

近い顔。
近すぎてドキドキする。
394 ◆GvbCrZA3mg :2008/08/11(月) 14:51:02 ID:MSeqsUHf
「お嬢様…?」

お嬢様は答えない、触れない。
意を決したような顔をすれば、ガラスを扱うかのようにそっと、私を抱きしめる。

「……せっちゃん」

今更ながら
お嬢様と同じだったんだって、気付いた。

「ウチな、せっちゃんに触れてええんかなって
 立場とか、そういうので悩んでるかもしれんせっちゃんに軽々しく触れて…
 それで悩ませたら、本末転倒やから、しばらく止めといたんやけど…
 やっぱ、ウチせっちゃんに触れてへんと、あかんかも…」

初めて聞いたお嬢様の弱音。
可愛く思えて、抱きしめ返す。

「…“このちゃん”は甘えん坊ですね」
「そうなんかな?よう解らんけど」

この幸せが何時までも続かないのかもしれない
それでも私達は恐れず歩くだろう
全ての恐れは、私達の敵ではないから―――
395 ◆GvbCrZA3mg :2008/08/11(月) 14:59:31 ID:MSeqsUHf
はい、短いです。
すみません、短くて。

多分うpロダに
新月というテキストと、せつこのHというテキストがありますが、規制中に書いたものです。
上記SSじゃー短すぎるっ、という人は合わせてご賞味してください。

ではでは、また(規制がまた発動しなければ!)近いうちに。
396名無しさん@秘密の花園:2008/08/12(火) 00:05:15 ID:YsRF87ZK
規制辛いね。
なかなかGJでした!!
前に比べると結構読みやすくなったと思います。
ロダのも読みましたwwエロもいいもんですよwww
久々なこのせつ分ありがとうございました!
397名無しさん@秘密の花園:2008/08/12(火) 01:33:17 ID:CaRtvAS+
いつか銀魂とのクロスSSってあったよね保管とかしてないん?
398名無しさん@秘密の花園:2008/08/12(火) 10:32:07 ID:Z/YezQhY
既出の銀魂クロスはりんかさんのところにあるよ。
ある意味スパロボのクロスはスレまとめにあるよ。

いよいよ12日ですな〜。wktk!
399名無しさん@秘密の花園:2008/08/12(火) 22:07:45 ID:YsRF87ZK
かわいいー。かわいいーよー。 (*´Д`)=з




このせつ♪
400名無しさん@秘密の花園:2008/08/13(水) 03:00:20 ID:HBjq1zJ+
400ゲト
OADよかったわー指ぱくがあって(*´д`*)
401名無しさん@秘密の花園:2008/08/13(水) 05:08:42 ID:jAJIS2KF
直前でバレくらうとは……
402名無しさん@秘密の花園:2008/08/13(水) 12:41:32 ID:F+059ReG
この程度の文字バレでうろたえるない
403名無しさん@秘密の花園:2008/08/14(木) 00:27:03 ID:Hb6CcLXK
ふたなりは邪道だと思ってる俺に何かが降臨して書きなぐってった
ストーリーは脳内補完で

※ふたなりエロ注意    DLパス 「tin」
ttp://www3.uploader.jp/dl/konosetu/konosetu_uljp00013.jpg.html
ttp://www3.uploader.jp/dl/konosetu/konosetu_uljp00014.jpg.html
ttp://www3.uploader.jp/dl/konosetu/konosetu_uljp00015.jpg.html
ttp://www3.uploader.jp/dl/konosetu/konosetu_uljp00016.jpg.html
404名無しさん@秘密の花園:2008/08/14(木) 00:49:14 ID:dZdi/doD
やっぱふたなりは邪道だろとか言いつつ
読んでしまった。いきなりで落ちなしでおk!!
405名無しさん@秘密の花園:2008/08/14(木) 03:24:47 ID:hUtBNJQb
>>401
ゴゴゴゴゴメン!!
悪気はなかったんだーマジごめんなさいですm(__)m
406名無しさん@秘密の花園:2008/08/15(金) 02:14:55 ID:UoKdsM1U
ttp://www3.uploader.jp/user/konosetu/images/konosetu_uljp00017.jpg
DVDBOXのちう邪魔だと思うのは俺だけ?
407名無しさん@秘密の花園:2008/08/15(金) 03:03:31 ID:u/w0UHfu
ちう邪魔は同意。
だがしかし,それ以上におまいのデスクトップ絵が超かっこいいwwww
くれ!!
408名無しさん@秘密の花園:2008/08/15(金) 09:32:16 ID:JLuzeTft
>>406
私も欲しいです!!!
409名無しさん@秘密の花園:2008/08/15(金) 11:43:12 ID:UoKdsM1U
ttp://www3.uploader.jp/dl/konosetu/konosetu_uljp00018.jpg.html
パスは夫婦の出席番号4文字
俺のデスクトップに合わせて加工したから、ちょいでかいかも
てか、もっとかっこいい壁紙作ってくだしあ
410名無しさん@秘密の花園:2008/08/15(金) 17:34:13 ID:JLuzeTft
>>409
GJ!!!!!サンクス!
411名無しさん@秘密の花園:2008/08/15(金) 18:25:37 ID:4iHat0GE
すみません。その壁紙とにらめっこで勝てないんです。GJと言わせてください。
412名無しさん@秘密の花園:2008/08/15(金) 22:21:26 ID:BKLjNkc5
>>409
感動した
とりあえずPCのデスクトップにした
PSPの壁紙にもした
後から携帯の待受にもさせてもらう
413名無しさん@秘密の花園:2008/08/16(土) 15:19:01 ID:7UKO7GFr
ttp://r.pic.to/sreqj
パスは上と一緒
414名無しさん@秘密の花園:2008/08/16(土) 15:37:01 ID:rXYPudZT
>>413
早速待ち受けにした。
心からGJ!
バスの中で思わず悶えたのは内緒ww
415名無しさん@秘密の花園:2008/08/16(土) 18:22:00 ID:+FwGLaiq
>>413
あなたは神か
とりあえず、悶えさせていただいた
416名無しさん@秘密の花園:2008/08/16(土) 22:29:54 ID:7UKO7GFr
神……?それは赤松先生に言ってくれ。
これ見ると一気にテンションあがるwこのせつは効能抜群の栄養剤だね。
過剰摂取しすぎてニヤケ顔が止まらない
417名無しさん@秘密の花園:2008/08/17(日) 13:18:17 ID:F18MxdXo
>>409
おい、おまいはただ単にデスクトップ自慢したいだけなんじゃ・・。
アレじゃ明らかDVDBOXよりデスクトップメインじゃん!





なにはともあれGJ!
418名無しさん@秘密の花園:2008/08/17(日) 14:02:56 ID:0ltcqfq3
>>417
禁句w
419名無しさん@秘密の花園:2008/08/17(日) 18:47:57 ID:y4eFgSxV
うはwばれたw
420名無しさん@秘密の花園:2008/08/17(日) 21:21:05 ID:HZPKYyZj
>>419
全員気づいてるわww
421名無しさん@秘密の花園:2008/08/17(日) 22:10:45 ID:DWzr7oXz
>>419
遅ればせながらいただいたぜ。

これって赤松せんせが描いたやつなの?
422名無しさん@秘密の花園:2008/08/18(月) 21:14:04 ID:MBf6A0gP
>>421
23巻限定版の……買ってないの?
423名無しさん@秘密の花園:2008/08/18(月) 21:16:23 ID:7nnPFFwa
まぁ,値段も値段だしなぁ。
一気に予約してしまったおいらにゃなんともいえんけどさ。
424名無しさん@秘密の花園:2008/08/20(水) 08:24:11 ID:MoBYZPEg
俺も買ってないんだが漫画と同じ内容なんだろ?
オチもなさそうだしイマイチ買う気が起きないんだが…
425名無しさん@秘密の花園:2008/08/20(水) 09:20:53 ID:sVNXd+w/
いや人それぞれだが
単行本よりこのせつの場面はカワイイ気がした。
そう言えばアマゾン売り切れなんだってね
後は楽天ブックスだけらしい。
426名無しさん@秘密の花園:2008/08/20(水) 19:09:01 ID:EfuFFJj6
近所の本屋のカウンターに山積みにされているのだが・・・;
(隣には当然のように通常版設置済みだし)

427名無しさん@秘密の花園:2008/08/20(水) 21:18:05 ID:14EJfg7+
声と動きがあることによってあのシーンはさらに萌えた
428名無しさん@秘密の花園:2008/08/21(木) 01:15:52 ID:YR7/Hkqx
んだ
429名無しさん@秘密の花園:2008/08/21(木) 06:16:53 ID:phJ4uQgq
んだんだ
430名無しさん@秘密の花園:2008/08/26(火) 12:52:28 ID:RQ3vAx9O
「んだんだ、ちげえねぇ。一枚絵なんかよりはるかによか!あのあとの初々しいリアクションとか特に!」
「あの……///お嬢様、そろそろ帰りましょうか」
「嫌だ。おいら帰らねえ。ここで思い出を語り合うだ。刹どん恥ずかしいなら先帰ってよかど」
「せつど……そのまがい方言なんとかなりませんか。他人みたいで調子が狂うのですが」
「やっぱせつどんもそう思うか?」
「はい、一瞬誰かと思いました。やはりお嬢様は京弁でないと」
「……フッ。誰かさんは、いつまでたっても他人行儀で京弁使おうとせんよな」
「……っ」
「驚いたときも京弁出なくなったし。゛お嬢様何をー!?゛って、なんやの。゛このちゃん何しはんのー!゛が出てくるのを期待しとったのに。あの後に及んでお嬢様やて?他人行儀はどっちやっちゅーねん!」
「いや、えと、お嬢様は癖で……」
「むー。そんなら、修学旅行の゛うちかてこのちゃんと゛って台詞は聞き間違いだったんや!幻だったんや!うちのせっちゃんはどこやー!!」
「お、お嬢様落ち着いてぇ」
「刹どんは黙っとき!せっちゃんどこー!?」
「こっ、この、こここのっ、このっこここ」
「刹どんニワトリ科だったんやね。だからいっつも早起きなんや。
皆見てみ、うちの着信履歴。わかる?6時ジャストの着信全部せっちゃんの名前やろ?これは俗に言うモーニングコールや」
「お嬢様!誰にも言わない約束っ」
「゛アスナさんを起こした後、二度寝して遅刻しないように゛やて。そんで゛本当に起きたか最終確認゛つって、毎朝寝てるところにのこのこ来るんやで。好きな人に寝起きの顔見られる気持ちわかる?
一緒にゆっくり行きましょうって言えばええのにな。まわりくどいな。もうさ、愛されてるとしか思えへ――」
「こ、このちゃんなんて、もう知らん!先帰らせていただきます!」
「あ♪せっちゃん待ってーあれ言って帰らなあかんよ」
「こんなスレどうなってもいいです!」
「命にかえてでも私たちのスレをお守りいたしますって恥ずかしいこと叫びながら飛び出したの誰だっけ」
「…………刹どん」


ってなわけで保守。
431名無しさん@秘密の花園:2008/08/26(火) 14:31:07 ID:lF78VlZO
>>430
何事かと思ったわい。
432名無しさん@秘密の花園:2008/08/26(火) 16:52:20 ID:8kxV3S5E
お茶フイタわw
433名無しさん@秘密の花園:2008/08/27(水) 10:49:25 ID:w3g4ouK0
クオリティたけぇw
434名無しさん@秘密の花園:2008/08/27(水) 13:31:01 ID:0+6xxdyy
オチが深いww
435名無しさん@秘密の花園:2008/08/28(木) 11:33:18 ID:t9XmD9qQ
夫婦の出席番号って何ですか?
436名無しさん@秘密の花園:2008/08/28(木) 12:02:40 ID:z8hhNuvX
>>435
近衛木乃香 出席番号13番
桜咲刹那 出席番号15番
437名無しさん@秘密の花園:2008/08/28(木) 12:36:07 ID:LWjuL0jE
天麩羅嫁
438名無しさん@秘密の花園:2008/08/28(木) 13:07:50 ID:t9XmD9qQ
スイマセン;
439名無しさん@秘密の花園:2008/08/30(土) 14:03:19 ID:bN18BT25
過疎ってるなぁ、
去年?一昨年?の年末がピークだったのを思い出すと切なくなるぜ。
440名無しさん@秘密の花園:2008/08/30(土) 15:34:10 ID:iVfeK8Sw
SS書くにしてもネタ出尽くした感があるし、原作ではいちゃこらしないし、職人たちはブログサイト作ってそっちにうpしてるし、そこで毎土企画やってるし、ここが寂れるのも当たり前かな

そういえば夏コミの新作同人誌このせつあった?
441名無しさん@秘密の花園:2008/08/30(土) 16:40:24 ID:Fc3RDE2O
俺がまわった中では、このせつメインにだしてるサークルはなかった気がする。
オンではそれこそブログやサイトいっぱいあるのに
オフではあまり人気ないのか・・・?と思ったりした。
442名無しさん@秘密の花園:2008/08/30(土) 16:58:46 ID:COSf7Qvo
職人たちが地方在住だからじゃないの?
443名無しさん@秘密の花園:2008/08/30(土) 18:14:31 ID:iVfeK8Sw
このせつ無いのか。寂しい…
444名無しさん@秘密の花園:2008/08/30(土) 18:55:11 ID:bZTgCPpZ
せめて二人で飛ばされてればな。ホント赤松は斜め上だよ
445名無しさん@秘密の花園:2008/08/31(日) 01:15:26 ID:NNLQs98t
図書館島はどうなんだろう?
ネギまオンリーだし夏コミとかよりはこのせつサークル期待できるんだろうか?
興味あるんだけど行ったことないんだ。
446名無しさん@秘密の花園:2008/08/31(日) 12:18:58 ID:Ab/7anFi
図書館島ならほぼ確実にあるだろな…だが夏コミと違って委託とかされない印象。
行ける所に住んでる人がうらやましいぜ。
447名無しさん@秘密の花園:2008/08/31(日) 15:22:34 ID:ujywOh42
そんじゃ、職人さんがいるかどうかは別としてネタだけでも出してみないか?
SSになんなくっても、過疎ってるしちょっとでも盛り上がればいいじゃん。

ちなみにまだ自分が読んだこと無い個人的に見たいネタは、

・麻帆良祭中、刹那が木乃香をお姫様抱っこして明日菜たちと別れたとき。
 それまででかなり昔のように仲良くなっていた二人がどんな会話をしていたか、とか。
 個人的には木乃香が我が侭を言って(おねだり?)
 ちょっとだけ・・・。といいつつ刹那も一緒になって麻帆良祭をまわってるといいと思う。

・クウネルとナギがキスでぱくておしたかもしれないと考えた三人。
 部屋に帰った後、
 あの有名なネギ先生のお父様が、どっ、同姓と・・・
 朝倉さんやカモさんならともかく、あんなに偉大な方まで同姓とせ、接吻しているなんて、
 やはり私は時代遅れなのか・・?
 こんな考えは古臭いのだろうか?
 と、こんな感じでもんもんしているところに木乃香登場。
 意識していたこともあり、更に焦る刹那と何にも分かっていない木乃香。
 ・・・その後に起こったことは誰にも分からない。


みたいなのとか。
SSにする気力も才能も無いけど、読みたいなってのとこうだったらいいなってゆう妄想。
こんな感じにみんなで妄想を語り合えば自然と職人が帰ってくる!!
・・・・・かもっ!
448名無しさん@秘密の花園:2008/08/31(日) 16:22:10 ID:moIC/Dmt
>>447
そこまであらすじ出来てたらss出来たも同然じゃんw
449名無しさん@秘密の花園:2008/09/03(水) 19:37:56 ID:9f8+Y2sb
>>448
一応↑で書いてみたんだけど無理だった。
あらすじ書くのとSS書くのは違うからね・・・;
このスレ大好きなのに過疎ってるから、ネタになればと思ったんだけど・・。
別にいらないならスルーでヨロ。
450名無しさん@秘密の花園:2008/09/03(水) 20:28:33 ID:gv5uufHi
いやいらなくないしかきたいのも山々だが……。
タイミングとかなんとか色々と(ry

書きかけのヤツでも落としてみようかなぁ。

大好きなスレだからにぎわせたいよね。わかります。
451名無しさん@秘密の花園:2008/09/05(金) 01:53:54 ID:h0sdn2Ps
あげるぜ
452名無しさん@秘密の花園:2008/09/06(土) 00:31:45 ID:LrLTv9es
前、夢にこのせつが出てきた
エロも何もなくてひたすら暗い展開だったけど最後二人が笑ってたからいいや
これで1ヶ月は持つ
453名無しさん@秘密の花園:2008/09/06(土) 01:28:15 ID:4KneNQkZ
「せっちゃんカキ氷、イチゴ味とメロン味どっちがええ?」
「お嬢様はどちらがいいですか?」
「うーん、イチゴかなぁ」
「それでしたら、私はメロン味のほう頂きますね」

シャクシャク
 シャクシャク

「なぁ、せっちゃん。ベロみて?赤なってる?べー」
「ふふっ、赤くなってますよ」
「せっちゃんは?せっちゃんのベロみせてぇなぁ」
「えっと・・・ろうれすか?おじょーさま」
「あは、緑色やぁ〜!」

シャクシャク
 シャクシャク

「せっちゃん・・・赤と緑重ねたらどんな色なるんかなぁ?」
「えっ!?(それはつまり舌と舌ってこと!?)」
「なぁ・・・せっちゃん・・・えぇ?」
「はい・・・って違う、ダメですよ!」
「だって・・・やってみたいやもん・・・なぁ、あかん?」
「お嬢様っ!(ヤってみたい・・・ヤってみたいって・・・!!!)」


「スキありー!せっちゃんのカキ氷ちょっともらうな〜、イチゴ味とメロン味混ぜたらどないなるんやろ」
「へ?」
「わぁ、ちょっと青色なった!ほらせっちゃん青い!どんな味なんやろ〜いっただきまーす!」
「・・・重ねるってそういうことだったんですね」



耳年増で勘違いしちゃうせっちゃんもいいな、と思った小ネタでしたw
454名無しさん@秘密の花園:2008/09/06(土) 03:38:20 ID:+HVHVUdB
オチが読めてしまった



シャクシャク
 シャクシャクシャクシャクシャクシャクシャク 

「せっちゃん、そないあせらんでも……もう取らへんから」
「いえ、暑かったので///」
「おかしいな? かき氷食べたら涼しくなるはずなのに」
「そ、そうですね」

シャク…シャク…
 シャクシャクシャク 

「なぁ……青と緑重ねたらどんな色になるんかな?」
「え? (こ、この潤んだ瞳はまさか……)」
「さっき、そういうことだったんですかって言ってたやん」
「き、聞こえてましたか?///」
「こんな近くにおったら独り言も筒抜けなんよ」
「うぅ……」
「せっちゃんも、、やりたいんやろ?」
「……(コク」
「ふふっ正直でよろしい」
「お、お嬢様……本当によろしいんですか?」
「好きなだけ、ええよ」



──5分後。刹那の舌は見事に青く染まっていた。

「お嬢様、もう……限界です」
「噂のポーションてこんな味かもな」
「なんとも言いがたい味ですね」
「無理に食べなくてええよ。溶けたやつコップに移して夕映に届けにいこう」

455 ◆yuri0euJXw :2008/09/07(日) 22:14:40 ID:99NT2JeF
453,454乙
久々にいい感じだった。

保守に書きかけのSSを投下しようと思ってる。
どうして書き換えかけというと落ちが思いつかなかったから。
そこで,住人の手を借りようかと思ったわけで。

駄作ですまんが,気に入ってもらえたら後半プロットのアイデアに協力してください。
全部で13レスなので途中で途切れると思うけど,過疎ってるので問題ないとみた。
時間を空けて全部投下させてもらう。

麻帆良祭後という随分古い設定です(笑
手直し中途半端ですまん。
全編完成したら改訂しますんでそんな感じでヨロ。
4561/13  ◆yuri0euJXw :2008/09/07(日) 22:15:33 ID:99NT2JeF
まだ人気のない早朝のすがすがしい空気の中で,二人の少女の陰が交差する。
ぶつかり合う物質的な音は広大な空間響き,小さく木魂した。

「それでは,今日はココまでとしましょうか。」
「ありがとうございました。師匠。」

お互いに礼をし,本日の早朝練習を終えた。
恒例となった刹那の剣道の稽古をアスナは着々とこなし,刹那は頼もしい弟子を持って嬉しい限りであった。
二人とも流した汗をタオルでふき取り,水分を補給する。
刹那はスポーツドリンクを勢い良く飲むアスナを眺める。
アスナを見る刹那の視線は,何かを訴えかけていた。
その意味ありげな視線を感じ,アスナは手を止めて刹那に声をかける。

「どうしたのよ,刹那さん?なんか思い詰めた顔しちゃって‥。」

その言葉をきっかけにおずおずと刹那は口を開いた。

「あ‥‥あの,アスナさんに聞きたいことがあるのですが‥‥。」
「ん?なによ。改まって‥。」

しかし,刹那は中々口を動かそうとしない。
話そうと努力している姿は十分に感じられるが,話の内容に至る雰囲気は一向になかった。
しかも徐々に変化していくのは刹那の顔色ばかり。いつの間にか刹那の顔は,耳まで紅潮していた。

「もう!!!はっきりしないわね!!!」

刹那の煮え切らない態度に,アスナはじれったさを隠しきれない。はぁ,と切れの悪い返事をする刹那を横目に,
再びアスナはスポーツドリンクを口に含んだ。次の瞬間,意を決した刹那はアスナに質問をぶつけた。

「し,失神するくらいのディープキスってどうやるんですか?!!!」
4572/13  ◆yuri0euJXw :2008/09/07(日) 22:16:04 ID:99NT2JeF
質問内容が聞こえた瞬間,アスナは口からドリンクを噴き出してしまった。
ゼーハーと荒い息の音が聞こえる。アスナの手に握られていたペットボトルは無残な姿に変形していた。

「ちょっっっっ!刹那さん!!いきなり何聞いてくんのよー!」

刹那は赤い顔をしたまま,しょんぼりとして反省の色を見せていたが,聞かずにいられなかったという何か分けありな感じだった。

「すみません。でも聞ける人がアスナさんしかいなくって‥。」

指を絡ませ,もじもじしながら刹那は続ける。

「ね‥ネギ先生と‥あんなスゴイの‥なかなか忘れられなくて‥‥。」
「あ"ぅっぅぅ。忘れてって言ったのにぃ〜。」

赤面したアスナは,両手を振り上げ過去の苦い記憶をかき消そうと暴れていた。
それは,読者の記憶にも残る第78回麻帆良祭1日目のハプニングのことだった。

しばらくして落ちついたアスナは,赤面したまま黙って立ちすくんでいた刹那を近くに座らせ,事情を聞くことにした。
律儀な刹那のことだ。わざわざ興味本位だけの理由で聞いてきたわけでもないだろう。

「なんでそんなこと聞きたいのよ‥?」

アスナは仏頂面をしていたが,声色だけは冷静さを保っていた。
赤くなってもじもじしたまま刹那は,あーとかうーとか言うものの,中々事情を話そうとしない。

「‥‥刹那さん。他に誰もいないんだからもう少し落ちついたらどう?」

本当に恥かしいのは当事者のアスナの方なのに,刹那の方がオロオロしているのは可笑しかった。
ふっと息を吐いて刹那を諭すと,そうですよねと,自分の過度な緊張を解こうとする。
刹那は,深呼吸して気持ちを落ちつけると,アスナにゆっくりと事情を説明した。
4583/13  ◆yuri0euJXw :2008/09/07(日) 22:16:39 ID:99NT2JeF
「‥‥特別大した理由はないんです。ただ‥‥どうしたら‥‥あんな凄いキスができるのかと‥‥。」

照れているためなのか,それとも別に理由があるのかわからないが,アスナにそう告げると地面に座っている刹那は自分のひざを抱えて,
体を小さくしながら視線を地面へと落とした。地面にのの字を書きながら,刹那はしゅんとした表情で元気なくアスナに聞いた。

「‥‥目の前で見たときは‥その‥‥正直過激過ぎて驚きました‥‥。」

でも,と刹那は言葉を続ける。それまで下を向いていた視線をアスナに向け,本心からの自分の気持ちを述べた。

「あ‥‥あの時のアスナさんは,何だか‥‥とっても気持ち良さそうで‥‥‥。」

紅潮した顔で口篭もりながら,刹那は言う。そして,また何かを思うように,視線を遠くに向けた。

「私だって驚いたわよ。いくら魔力のせいだからってネギにあんなキスされるなんて。」
「時々寝ぼけてキスされることもあったけど,あんなの‥‥その‥‥初めてだったし‥‥。」

アスナも記憶を振り返って自分がどんな状況だったか回想した。認めるのは憚られたがアスナも思うところがあった。
魔力に操られたネギのフレンチキスがどんなに官能的な味わいを自分に知らしめたかを‥。
寝ぼけ状態や仮契約では触れるだけのキスが多い。
しかし,その唇の柔らかさと体温の温もりは知ってしまうと忘れられない甘美な感覚を体に植え付けていった。
回想しつつ,アスナの体が震える。あの時感じた感覚が体に再現される。自分の意志とは関係なく訪れた全身を包む甘美な快感‥。

今二人を支配するのは,当時の記憶と,重苦しい空気。青々とした空には爽快な風が吹いていたが,二人の表情はそれとは対照的だった。
刹那が何を知りたいのか,本当に言葉通りの意味なのかアスナにはわからない。
ただ刹那の紅潮した顔の裏側に何か隠された感情があるような気がしてならなかった。微妙な空気の中でアスナは口を開く。

「でも‥‥刹那さん。」
「はぁ。なんでしょう?」

自分の脳裏にかかるピンク色のもやを押し退けるように,アスナは深呼吸して刹那に悪戯っぽく問い詰める。
4594/13  ◆yuri0euJXw :2008/09/07(日) 22:17:37 ID:99NT2JeF
「そんなに真剣に‥‥‥誰としたいのよ?失神するくらいの凄いキス。」
「ななな,何を急にっっっ。そんなんじゃないですって!!!」

意表を突いたアスナの質問に,刹那は戸惑いを隠せない。刹那のアスナに対する問い掛けを冷静に分析すれば,刹那には当然問い詰められてもおかしくない
質問だった。しかし刹那はそんなこと聞かれるとは思わなかったといわんばかりに動揺し,紅潮させた顔をアスナから背ける。

「でもさっき言ってたじゃない。”どうしたらあんな凄いキスができるのか”って。」

刹那は自分の軽率さを悔やんだ。確かにアスナの言うとおり裏を返せば”誰かとあんな凄いキスがしたい”と言っているようなものだった。
ばらしてしまえとアスナの顔に書いてあるが,刹那はそれをプイッと無視して,赤面した顔を背けた。

「/////あ‥アスナさんでも‥‥それは言えません。」
「ふーん?でも言えないってことはやっぱり誰かいるんだ。」
「/////‥くっ‥‥‥ノーコメントですっ。」

愉しげにアスナは刹那に詰め寄る。そのとき何か閃いたのか,アスナの突込みは刹那を精神的にふっ飛ばした。

「もしかして,木乃香だったりして?」

アスナの驚きの言葉に,刹那はどうリアクションを取って良いかわからず呆然としてしまった。
しかし,アスナはけらけらと笑いながら刹那の心配をよそに既に自己解決していた。

「でもそんなわけないわよね〜。木乃香との仮契約だって刹那さん困ってるんだし‥。」

ましてディープなんて無理よ,無理っとアスナは自己完結させて会話を止める。けれども,刹那の表情を観察するのは止めなかった。
アスナはじぃっと刹那を見つめ続ける。頑なに刹那は視線を別な方向へ向け,アスナに抵抗する。
ふぅと溜息をつくと,アスナは両手をひらひらさせて重たい空気を払いのけた。

「この間,同じこと木乃香にも聞かれたのよ。まったく二人ともどうしたのかしらね〜?」
4605/13  ◆yuri0euJXw :2008/09/07(日) 22:18:46 ID:99NT2JeF
アスナの意味ありげな視線を全身で感じながら,頑なに刹那はアスナと視線を合わせないようにしていた。
じっとりと手のひらが汗ばんでくるが,今動いたら負けだと刹那は心の中で呪文のように唱えていた。
そのときの木乃香の様子を思い出して,アスナはその様子を刹那に説明した。

◇◆◇

部屋にはアスナと木乃香しかいない。夕食には時間が早く,二人ともお茶とおやつを片手にゆっくりと
くつろいでいた。雑誌を眺めていたアスナに,お茶をすすりながら木乃香が口を開いた。

「あんなぁ,アスナ‥。」
「ん‥なぁに?」

お茶をすすりながら,何気なく木乃香はアスナに声をかけた。アスナも雑誌に目を向けたまま,何気なく答える。

「ネギ君とディープキスしたとき,どんな感じやったん?」
「ん‥‥そうねぇ‥‥‥って,ええええっっぇっぇっぇっぇぇ!!!」
「何よ!急に,そんな昔のこと‥‥。」

読んでいた雑誌を払い飛ばして,アスナは動揺を隠せずに木乃香に詰め寄る。

「あんとき,うちもアスナも動揺しとったし,なんか色々ごたごたしてたからよう聞かれへんかったけど。うちな,一回聞いてみたかったんや。だって凄かったぇ?ネギ君のキス。やっぱ10歳でも英国紳士はキスが上手なん?」

興味津々という表情で木乃香は悪びれもなく聞いてくる。今はネギもいないし,他に人もいない。絶好のチャンスと思ったのか
ウキウキして非常に愉しそうだった。袖で顔を隠しアスナは誤魔化そうとしたが,木乃香の追及の手は中々止まなかった。
アスナにしか聞けないことでどうしても知りたいと木乃香は懇願する。このお姫様のおねだりにはアスナも弱かった。

「真面目に答えなきゃダメ?」
「そやな〜,嫌ならええんやけど,教えてくれんのやったら‥‥」
「やったら?」
「‥‥うちがアスナの代わりにネギ君と添い寝したろかな〜?」
4616/13  ◆yuri0euJXw :2008/09/07(日) 22:19:18 ID:99NT2JeF
ネギ君寝ぼけてうちにもアスナみたいにムチュッとしてくれるかもしれへんし〜,とウキウキしながら木乃香は言う。
木乃香の反応に呆れ,項垂れたままアスナは木乃香を諭す。

「‥‥‥木乃香やめときなよ。あいつホントにキス魔だし。」
「やっぱりそうなん?アスナってほんまネギ君とようキスしとるんやねぇ〜?」
「!‥‥‥。//////」

やや墓穴を掘り気味のアスナであった。木乃香は楽しそうに同居人をからかう。

「ねぇ〜アスナ〜。心配せんでもうちが興味あるんはキスのほうや。ネギ君ちゃうで?」
「ムキ〜!!なんで私がそんなこと気にしなきゃいけないのよ〜。ネギとはそんなんじゃないんだから〜。」

ガキよガキ!あいつはガキなの!!っと,ゼーハーと荒い息をしつつ一騒ぎが終わりを告げた。二人とも深呼吸して落ち着いたところで本題にはいる。

「‥‥仕方ないわね。でもどんなだったかなんてとてもじゃないけど言えないわよ。」
「ん〜。それじゃ,うちにシてくれる?」
「ばっっ馬鹿なこと言ってんじゃないわよ〜!!」
「ええやんけち。減るもんやないし。」
「そう言う問題じゃないでしょ!!!(汗」

おっとりとしたお嬢様は,時々とんでもないことを平気で口にする。さすがのアスナでも木乃香にディープキスはちょっと抵抗があった。
なんとか木乃香に勘弁してもらって,お互いに最大限譲歩した結果,もう少し具体的に話すことで合意した。

「う〜ん。具体的にか〜。そやな〜。」
「う‥‥うん。なに?」
「あんなに気持ち良さそうにキスするんには,どやって舌絡めたらええのん?」

アスナ撃沈。
4627/13  ◆yuri0euJXw :2008/09/07(日) 22:19:50 ID:99NT2JeF
「こ〜の〜か〜。」
「せやかて,具体的にってゆうたや〜ん。」
「ちょっ,具体的過ぎるのよ!!!せめて‥‥もうすこしソフトな質問にしてよ‥。」
「んもう。難しいなぁ。なら,一問一答や!ずばりキスされてる時,ええ気持ちやった?」
「!!!!!!!」
「あ〜ん。アスナ〜,ちゃんと答えてや〜。」

木乃香はアスナの両手を自分の両手で包み込み,ぎゅっと握り締める。表情は愉快そうにニコニコしているが,その目には真摯な色合いが含まれていた。

「あ‥‥‥。」

(気持ちよかったかなんて‥‥。)

アスナは困惑する。あの時は世界樹の魔力のせいでネギがおかしくなって,キスターミネーターと化したネギからのどかを守るのに必死だった。
あの刹那でさえ,そう簡単にはネギを捕えることはできなかったのだ。勢いあまって自分にキスしてからにしろなどど言ってしまって,
とんでもない結果に終わった。今改めて振り返ってみると,あの時は必死で何が起きたのかよくわからなかった。
友人達が見守る中,気の遠くなるような鮮烈な感覚が全身を支配して,抵抗する力なんかほとんどなかった。
もっと正確に言うと,あのキスはアスナから抵抗する意志すら奪い去っていた。
後から自分がどんな目に会ったのか理解して,死ぬほど恥かしかったが‥‥。アスナは認めたくなかった。でもたった一つだけははっきりしていた。

(でも‥‥‥嫌じゃなかった‥‥‥。)

あのキスがどうだったかなんて,言葉では表現しきれない。ネギだから良かったとかそういうわけでもなかった。
でも相手がネギじゃなかったら想像することすらできない。あの全身を支配する甘美な感覚。頭の中が蕩けそうになって全身から力が抜けていく。
まるで強大な魔力が全身に満ちたみたいな‥。そして口の中の敏感なところを舌で弄られて,しびれて‥‥。

(/////‥‥き‥‥‥気持ち良かった。)

アスナは自分の回想から導き出された感想に,全身から湯気が出てしまいそうなくらいの高揚感を感じた。全身が熱くなっていく。
顔がみるみる赤くなっていくのを自分でも感じた。あまりの恥かしさに木乃香に顔を見られるのもはばかられ、慌てて顔を伏せた。
4638/13  ◆yuri0euJXw :2008/09/07(日) 22:20:24 ID:99NT2JeF
「アスナ‥。」
「/////‥誰にも言わないでね。‥‥‥‥信じられないくらい‥‥‥‥‥気持ち良かった‥‥。」

プスプスとオーバーヒートする音が聞こえそうなアスナからもたらされた正直な告白を,木乃香はその胸に大切に受けとめていた。

◇◆◇

刹那にここまで詳しくはさすがのアスナも話せなかったが,それとなく雰囲気を伝えていた。

「‥‥‥というわけでね。」

とアスナは刹那に説明し終えた。刹那は,話しの具体的さにやや困惑するところもあったがじっと話に耳を傾けていた。

「木乃香も刹那さんも私だって,お年頃ですからそりゃ興味あるわよね〜。でも‥‥。」
「あははは。‥‥それだけあのシーンは私達にとって刺激的過ぎたってことですよ。」

なんでこうもまとまって二人とも同じこと聞いてくるのよとアスナは言う。刹那はやや荒れ気味のアスナを微笑みながら宥めていた。
キス談義も一区切りしたところで,二人とも戻る準備をしていると,遠くの方から二人に近付いてくる一人の人影。

「ふたりとも修行ご苦労様♪」

話題のお姫様の登場だった。手には二人分のお弁当を携え,ニコニコと微笑んで手渡した。

「はい,せっちゃん。うちの愛情が一杯詰まっとるからな♪」
「いつもありがとうございます,お嬢様。おいしく頂戴させていただきます。」

木乃香は殊の外笑顔で刹那に弁当を手渡す。

「ほな,いこか。」
4649/13  ◆yuri0euJXw :2008/09/07(日) 22:20:53 ID:99NT2JeF
最近ずっと続いている朝の風景。こうして三人の一日は始まりを告げた。

◇◆◇

刹那と木乃香はそれぞれ胸に秘める想いがあった。でもそれは誰も知らず,誰にも知らせずひっそりと自分の胸の中にだけ留めていた。
それがどういうものなのか二人とも十分に自覚していた。一方は,チャンスを待ち,自分の秘めた想いをどのように伝えようかと画策していた。
もう一方は自分の秘めた想いは自分の胸にのみ留め,誰にも知らせず封印しようと誓っていた。しかし,当初の予定とは大幅に狂いが生じた。
チャンスを待った一人は,一向に恵まれないチャンスに痺れを切らし,酷い焦燥感に苛まれていた。
封印を決意した一人は,自分の中で膨らみ続ける想いに戸惑い,その想いの後ろに見え隠れする自分の邪な欲望と戦っていた。

そんな心理戦が二人それぞれの中で繰り広げられている中で起きた事件がアスナのディープキスだった。
その衝撃的なシーンを目の当たりにした傍観者は全員その場に立ち尽くし,呼吸すら忘れてしまいそうだった。
あまりの衝撃に呆然と立ち尽くす木乃香を背で庇い,無意識の動作で木乃香を守ろうとする刹那。
二人ともわずかに触れ合った部分からお互いを感じつつアスナとネギのラブシーンを凝視してしまった。
はじめて遭遇する鮮烈な情景に二人は動揺を隠せない。早まる鼓動が全身の動きを制限し,微動すら出来なかった。
刹那の背でぎゅっと握り締める手が‥‥,木乃香を庇うために広げられた腕の震えが‥‥,二人の心情を表現するわずかな動きだった。

◇◆◇

ある日の夜,刹那は眠れない夜を過ごしていた。眠れない夜を過ごすことは刹那にとってそう珍しいことではなかった。
修学旅行で木乃香との関係を取り戻した刹那にとって,想像すらできなかった幸せな学園生活が始まった。
しかしその頃から,刹那を悩ませる問題は後を立たない。刹那を悩ませるもの,それは木乃香のことだった。

(‥‥お嬢様は一体どうお考えなのだろうか‥‥。)

修学旅行以来,木乃香の隣は刹那の居場所となった。いつも自然にその位置に立てる。護衛と言う意味でもそこは最も適切な場所だが,
木乃香の刹那に向ける態度は親友のそれ‥。自分の立場も忘れ,幼い頃より想い続けた麗しの親友との語らいに時間が過ぎるのも忘れる。
しかし,二人を隔てた長い時間と距離は,刹那の心の中の木乃香への想いを少しずつ変化させていた。
刹那にとって木乃香は,近衛の長の娘であり,遠い昔,自分の心の傷を癒してくれた大切な幼馴染であり,
自分の命と引き換えにしてでも護らなければならない大切な存在である。しかし,一方で決して表には出すことのできない秘められた想いも存在した。
465名無しさん@秘密の花園:2008/09/07(日) 23:30:12 ID:JFX50gqx
連投規制回避wktk!
46610/13  ◆yuri0euJXw :2008/09/07(日) 23:54:12 ID:99NT2JeF
誰にも気付かれてはならない。木乃香ですら‥。

シネマ村で冷やかされた時には焦ってはいたが,まだそれほど心配することもなかった。それは木乃香との距離を保っていられたから。
けれど,日に日に過激さが増してくる木乃香のアプローチに,何気ないふりをするのにも限界があった。
そして,自分の想いを気付かれてはならないと固く誓うのだった。

(お嬢様は私のことをよく”大好き”と仰って下さる。それはどんな意味でも私にとっては嬉しい限りだ。
ただ,私が”お慕いしています”と返事を返すと一瞬不満そうな顔をなされる。)

ゴロンと寝返りをうって小さく溜息をつく。

(‥‥一体どのような返事をお望みなのだろう。)

胸の内をよぎるのは,ひそかな願望。もしも木乃香が主従としてではなく,友人としてでもなく自分を必要としてくれているのだとしたら‥‥。
しかし刹那は自分の考えを一蹴する。何度そうやって思い巡らせてきたことか。日々の思わせぶりな木乃香の行動が,刹那の決意を揺らがせる。
しかし,木乃香の真実を知らない刹那にとってそれは頭を悩ませる問題にしか過ぎなかった。日々募るフラストレーションが刹那を悩ませる。

(‥‥私は心からお嬢様をお慕いしております‥‥。)

両手でぎゅっと自分の体を抱き締める。

(この手で貴方を抱き締める日が来ることを求めないわけではありません。貴方のその艶やかな唇に‥清らかな体に触れたいと想う私を許して下さい。)

屈託の無い笑顔を向ける木乃香を想像しつつ,眠りにつく刹那。刹那の眠れない夜はまだまだ終わる気配は無かった。

◇◆◇

アスナ達の部屋のバスルームからシャワーの音が聞こえる。木乃香は熱めのシャワーを浴びていた。
充満する湯気がスクリーン代りとなって,そのしなやかな肢体はシルエットだけが映し出された。
鏡に映る自分の体を眺め,同居人ほどではないが,日に日に女性らしさを増す自分の体を見つめる。
46711/13  ◆yuri0euJXw :2008/09/07(日) 23:54:43 ID:99NT2JeF
(‥‥今日も‥せっちゃんの気持ち‥‥掴めんかったな‥‥。)

ボディーソープを手に取り,泡立て,自分の体に擦りつけていく。きめ細やかな優しい泡に木乃香の全身が包まれていく。

(なんで‥うちのことはぐらかすんやろ‥‥。もっと素直になったらええのに‥‥。)

刹那のことを想うと,自分の体を洗うのにも磨きがかかる。いつでも最上の自分を用意していたいと思うのはちょっとした女性の自尊心からか。
それとも,どんなことをしても自分に傾いてくる気配の無い刹那に対する挑戦か。いずれにせよ,木乃香の意識は刹那に向けられていた。

言葉も時間も共有することは無かったが,中学に入ってから刹那は自分の近くにずっといてくれた。
刹那の立場を知ることの無かった木乃香にとって,昔と異なる一面を見せる幼馴染に当時は困惑したものだった。
しかし,修学旅行のときにそれは杞憂だと知った。何があっても木乃香を護ると言って,護り抜いてくれた幼馴染。
木乃香を護れるように強くなるからと泣きながら誓った幼い姿が,今の刹那の姿と重なる。
一途で純粋で,誠実で,時々見せる情熱的な振る舞いは,幼い頃とまったく代わらない木乃香の知っている刹那だった。

でもいつからか気付いてしまった,自分の心。変ってしまったのは自分のほうだった。気付いてしまった今,幼い頃と同じ気持ちではいられない。

熱めのシャワーを頭からかぶる。全身を覆っていた泡は,音を立て排水溝へ吸いこまれていく。木乃香の気鬱を泡と共に流せたらどんなに楽だろう。

屈託の無い笑顔を木乃香に向ける刹那。身を呈して木乃香を護る刹那。木乃香の不安を癒してくれる刹那。
木乃香は,他にも色々な刹那を目の当たりにしてきた。

目の前にいるのにどうして自分の隣に来てくれないのかという葛藤は,刹那の全てを知ってから掻き消え,代わりに常に自分と共にあるという安心感が生まれた。
そんな刹那を見続けるうちに,気付いてしまったのは友情とは異なる感情。幼き日以来,もともと刹那は木乃香にとって特別な存在だった。それは今も変わらない。
変ってしまったのは時間のせい。もう幼子ではない木乃香と刹那ゆえに‥‥。

(‥‥切ないなぁ。なんで気付いてしもうたんやろ。‥‥うち‥せっちゃんのこと‥‥。)

そっと胸のふくらみに触れる。じんわりとした感覚が全身に広がっていく。この手が刹那の手だったら‥‥。
そう思うと刹那の声が頭の中に響いてくる。幾度と無く繰り返された問答。
46812/13  ◆yuri0euJXw :2008/09/07(日) 23:55:14 ID:99NT2JeF
『‥‥大好きやで‥‥』
『‥私も‥‥お慕いしております‥‥。』

胸に触れていた手に力がこもる。鈍い感覚が伝わってくる。掌には硬く立った先端の感触を感じる。

(‥‥うちの”好き”と‥‥せっちゃんの”好き”は違うんや‥‥。何回聞いてもそうとしか思えへん‥‥)

熱い溜息をこぼしつつ,奥のほうでジンジンとくすぶっている感覚にあいている方の手が引き寄せられていく。
体の奥にくすぶる熱を開放するために下腹部に手を伸ばそうとした瞬間,ドア越しに同居人の声が木乃香にかけられた。

「木乃香〜。アイス食べるよね〜。」

一瞬木乃香の体に緊張が走る。が,怪しまれないように直ぐに返事を返した。

「う〜ん。うちの分もあるの?」
「これから買ってくるの。いつもので良い?」
「ええで。頼むわ〜。」
「それじゃ行ってくるね。」

慌しくアスナは部屋を出ていく。内心驚いていた木乃香はふぅっと溜息をつくと,ふと冷静になって今の自分を見つめた。

(//////‥‥なにしとんのや。うち‥‥。)

刹那を想って自慰に浸ろうとしていた自分がちょっと恥かしかった。熱めのシャワーを全身に浴び,キュッと栓を占め,大きめのバスタオルに身を包む。
いつまでもこんなやるせない気分でいるわけにはいかなかった。しかし,今の木乃香には,胸の内のもやもやを解消する手立てが無かった。

◇◆◇

試験前になると,勉強の苦手な刹那に木乃香が教えるという構図は珍しくなくなった。場所は様々で,図書室のこともあれば,お互いの部屋のこともある。
試験期間中は二人は一緒というのが,通例になっていた。本日の会場は刹那の部屋ということらしい。
46913/13  ◆yuri0euJXw :2008/09/07(日) 23:55:44 ID:99NT2JeF
「ここはこうすると解けるんよ?」
「あぁ,なるほど。お嬢様の教え方は本当にわかりやすいですね。」
「ふふっ,せっちゃん褒めてもなにも出てこんよ。」
「そんなんじゃありませんって。私は本当のことを言ったまでで‥‥。」
「じゃ,今度のテストも頑張ってや?悪い点とったら承知せんからね。」
「‥‥‥善処します。」

なんだかんだ言って木乃香は楽しそうに刹那と勉強している。
刹那は一生懸命で,楽しむ余裕はないようだが。
それでもこれだけ一生懸命になれるのは木乃香と一緒だからだろうか。

「ふぅ。これでひと区切りやね。」
「じゃあ。お茶でも入れてきます。」
「ええよ。うちがするから。」
「ダメです。お嬢様にそんなこと。」
「ダメ。うちが入れたいん。」
「〜〜〜。」

木乃香は嬉しそうにキッチンへと向かった。
刹那は仕方なく,テーブルの上を片付ける。
鼻歌を歌いながら慣れた手つきでお茶を用意する木乃香を眺め,刹那は微笑んだ。
京都にいたままでは木乃香とこのような時間を過ごすことなんてありえなかった。
そんな自分の待遇と幸福感を刹那は噛みしめ,手早く片付けるのだった。

「なんや嬉しそうやな。せっちゃん。」
「そうですか?」
「うん。」

テーブルにつき,一口お茶を含むと,木乃香はそう言った。
470ここで断念したんだYo!  ◆yuri0euJXw :2008/09/08(月) 00:00:21 ID:oK2IE1Zb
お粗末さまです。
465サポありがとうございます。

萌成分を残したままエロが書きたかったので止まってしまったようです。>>自分分析
エロなしでもいいので,ハッピーエンドで終わらせたい!というのが希望です。
読んでくださった奇特なお方,あなたのご意見と妄想をぜひ聞かせてください!!


ちなみにまだほかにも進んでない長編が1本あります。
そっちは悲恋なんだけど,最後はハッピーエンドで終わらせたいんだ。
最近Candy boyがマイブームなのでそっちに力入れてますが,
このせつ大好きは変わんないよ!!!
471名無しさん@秘密の花園:2008/09/09(火) 08:58:13 ID:gokQzkgk
人少なっ!過疎ってるなぁ。

久々に初々しい2人をみた気がします。熟練夫婦もいいけどこう言うのも懐かしくて好きだ。

このまま微妙な距離を保ちながら何となく心通わせて……end

というのもいいかと。
参考にならなくてスマソ(・ω・)/
472名無しさん@秘密の花園:2008/09/10(水) 00:25:22 ID:j4083kG5
>>470
久しぶりの燃料ktkr!! すれ違い両想いはいいものだ。
ディープキスの勢いで怒涛のエロ突入…てのも読みたい気がするが、エロ無しでも全然読みたいです。
473名無しさん@秘密の花園:2008/09/10(水) 00:51:22 ID:hDcoWfXC
>>470
久々にキュンキュンしたぜ
やはり百合は恋愛未満に限る
最後はハッピーエンドになってほすぃけどね
474名無しさん@秘密の花園:2008/09/10(水) 01:37:55 ID:sB9PkKuh
>>470
GJ!!
久しぶりにエロが読みたくなった。

ここまで来たら、最後まで言って欲しいのが本音。
自慰未遂の木乃香が受けとおもいきや、刹那受けというのが面白そうかな、
とか思ってみる。
475名無しさん@秘密の花園:2008/09/11(木) 21:38:56 ID:TJVF0SJz
み、みんなっ!
ドラマCDにこのせつ関連ほとんど入ってなかったぞ・・・っ!!

おまいらのちからであと半分、頑張ってみないか?
476名無しさん@秘密の花園:2008/09/12(金) 12:45:37 ID:vCKfW30D
もう新撰組に入れたけど、2回投票できるんだっけ
477名無しさん@秘密の花園:2008/09/13(土) 14:55:45 ID:Op91ktbP
懺悔室はこのせつ票だろ
478名無しさん@秘密の花園:2008/09/13(土) 15:50:18 ID:qS6zj7uY
>>476
ひとつのアドレスにつき一回、が正しいだろうな。

ちなみに俺も新撰組だっ!
懺悔室はこのせつだが、刹那しか出ないからな・・・。
出来るなら二人でてイチャコラするんがよくね?
479 ◆yuri0euJXw :2008/09/15(月) 00:23:15 ID:DiPR/G9/
読んでくれた人ありがと。
もう少し頑張ってみる。

本編といい,DVDといい思ってる以上にこのせつ分が少ないんだよな。
ああぁ,このせつ「で」萌えたい!!!
480名無しさん@秘密の花園:2008/09/15(月) 02:44:44 ID:lff0KMVd
>>479
いつまでもおまいを待ってるぜ。
頑張ってくれっ!!
481名無しさん@秘密の花園:2008/09/15(月) 06:58:32 ID:R6Jk97jP
管理人さん、乙です。
そんでもって247の続編の後編の続きが読めませんでした(T_T)。(携帯)

482まとめ”管理”人:2008/09/15(月) 07:25:05 ID:1oNfnu5q
>>481
報告どうもです。
修正しようと思ったんですが、どこの247か分かりませんでした・・・
スレ番も教えてもらえませんか?
483名無しさん@秘密の花園:2008/09/15(月) 07:45:26 ID:R6Jk97jP
スミマセン(>_<)
勢い余って忘れました。11スレです。今回の更新分。

こうやってみてみると過疎ってるなと思ったのが嘘のよう。
一発ネタすらQ高くて嬉しくなります。
いい保管湖ですね。
個々の作品にはアクセスしやすいし。
ただ連載ものや続編的な作品の前後関係はちとわかりにくい物もありますが……。
特に年齢制限とかはさむとね。まぁ仕方ないのですが……(^o^;)
484まとめ”管理”人:2008/09/15(月) 16:54:35 ID:1oNfnu5q
すみません… やっぱり>>247は分かりませんでしたorz

今回の更新分は289レス以降を対象にまとめています。
1レス完結に保守作品。
コテハンにクラフト氏>>377、◆GvbCrZA3mg氏>>393、◆yuri0euJXw氏>>456をまとめました。

もう一度リンクがおかしかった場所のレス番を確認して貰えませんか?
485まとめ”管理”人:2008/09/15(月) 17:03:29 ID:1oNfnu5q
自己完結できました。
たぶん>>249の続編で◆yuri0euJXw氏の後編ですよね?
リンク修正しました。

今後もリンクがおかしい場所を見つけたら報告お願いします。
486名無しさん@秘密の花園:2008/09/16(火) 00:28:25 ID:rlVTQ2xS
>>485
番号も違ってましたか( ̄口 ̄)

申し訳ない。そして確認したら直ってました。
迅速な対応ありがとうございました〜。
487名無しさん@秘密の花園:2008/09/16(火) 19:38:14 ID:DDHc+WEB
こんなクオリティの高い管理人どこ行ったっていねぇw
しかもかなり長い間飽きずに続けてくれてるしなあ。
488名無しさん@秘密の花園:2008/09/17(水) 00:17:49 ID:syWrHEbP
いいスレだなあ
作品もさることながら、管理人さんまで。
いいスレだなあ
489名無しさん@秘密の花園:2008/09/18(木) 01:39:17 ID:5kvld67t
まったり (´∀`) このせつに癒されてます
490名無しさん@秘密の花園:2008/09/18(木) 07:33:25 ID:z7Vy8GLX
このせつが足りない
491名無しさん@秘密の花園:2008/09/18(木) 19:25:31 ID:z7Vy8GLX
エアーマンが倒せないの替え歌で 「このせつが足りない」


気がついたら 運命の二人に出会ってた
今日もサイト巡りこのせつ探す

SS見つけた ニヤニヤしながら読破するけど
すぐこのせつ欠乏症なる

ネギま4巻手に取り萌え補給
一気に新刊まで読んだけれど
何回読んでも何度捲っても

二人の戯れ減ってるよ

夫婦宣言7巻収録したのに
まほら文化祭長い連載
妻応援席ハブられる

せっちゃんメイン回!
このせつくるかも…
アスネギだらけじゃん 邪魔くさい!

来週は絡みあるといいな……
儚い出番を胸に今日も妄想で過ごす

492名無しさん@秘密の花園:2008/09/18(木) 19:28:27 ID:z7Vy8GLX
これまじで本物?
スレに動揺広がった
パクテオ寸前現場2ch出回る

待ちに待った二人のパクティオーシーンなのに
なぜだか怒りこみあげる

馬鹿アスナ知ってたならノックしろよ
赤松推奨アス刹いらねえ
ネタバレすんなよ これ以上焦らすなよ


このせつ欠乏症 重症だよ!

魔法世界できっとパクテオーするよね
ネギま部バラバラ このせつセットでしょ
見事にアス刹裏切られる
待望の再会チュッチュッきたけどフレームアウトじゃ意味がない!

来週もどうせ絡み無いよね

こうしてこのせつ離れスレ過疎化していく


(書き込み無いよ)


お姫様だっこの話題でもちきり

指ちゅぱ映像化されていたんだ

戯れシーンを永遠リピート

やっぱりこのせつ最高だよ!

はんなりお嬢へたれな護衛ってだけなのに

心奪われた!
もっと萌えくれ このせつ足りないと叫ぶ

自分で書いてみよう
ネタ浮かぶけど文才皆無じゃ意味がない!

誰か書いてくれると信じて
今日もネタだけ書き込みリロード連打する



仕事中こんな歌ができました
493名無しさん@秘密の花園:2008/09/18(木) 20:00:47 ID:5kvld67t
元歌わからんのでかえったらニコニコ逝ってくる。

だが歌詞にワロタwww

合唱してニコに上げないか!
と思てしまったヨ!

だがしかし








SSいいからもっとネタ落としてくれよ!
494名無しさん@秘密の花園:2008/09/19(金) 00:49:18 ID:gKu5mIE6
SS投下したいのにPC規制とは……
495名無しさん@秘密の花園:2008/09/20(土) 01:23:34 ID:IkLNez5Q
>>491
まさにこの通りだなw
気持ちを込めて熱唱できそうだけど、歌いにk
496名無しさん@秘密の花園:2008/09/23(火) 05:41:11 ID:nfWl9RUR
このせつの新しい情報が出たというのに、このスレときたら……
OAD2巻、このせつファンなら買うよな?
497名無しさん@秘密の花園:2008/09/23(火) 13:26:43 ID:roHS4D6R
こんどこそ出番多いかな?
ラブラブ宣言に期待
498名無しさん@秘密の花園:2008/09/23(火) 16:25:04 ID:ve8GBqVU
添い寝かなw
499名無しさん@秘密の花園:2008/09/23(火) 17:26:54 ID:7EgFpG+u
添い寝だったらナイル川の水一気飲みするわ。
500名無しさん@秘密の花園:2008/09/24(水) 00:23:27 ID:rCKsGqfX
俺なんて三途の川一気飲みするわ。
501名無しさん@秘密の花園:2008/09/25(木) 13:32:49 ID:GLeu8vey
ttp://www3.uploader.jp/dl/konosetu/konosetu_uljp00001.mp3.html

>>491-492の歌詞で歌ってみた。
歌詞が、どうしても歌いきれない(字余りしちゃう)
ところは省いたり少し変えたりしたけど、
基本はほとんど変えずに歌ってみたら、大変にカツカツなことになった。

こういうの嫌いな人たちにはごめんなさい。
502名無しさん@秘密の花園:2008/09/25(木) 13:36:16 ID:GLeu8vey
あ、そうだ。もう一言、言い忘れてた…

自重しないですいません。
叩きまくってくれて大丈夫です…
503名無しさん@秘密の花園:2008/09/25(木) 16:58:41 ID:ApVZsIt9
>>502
斬岩剣!
504名無しさん@秘密の花園:2008/09/25(木) 20:53:57 ID:33TuCNJq
>>502
百烈桜花斬!!!

意外とよかったwww
MAD作ってニコニコにあげようぜ!と思うがMAD素材がない(>o<)
505名無しさん@秘密の花園:2008/09/25(木) 23:51:11 ID:JNCbfpHG
ちょ、まさか歌ってくれる人がいるとは思ってなかったんで、字余りとか気にして無かったよ
めっちゃ歌い辛い歌詞でごめんねw実際に歌って書きこむべきだったな
ニコニコにあげるのって無料会員でもできる?
506名無しさん@秘密の花園:2008/09/25(木) 23:56:59 ID:WRHwg5Qr
>>505
できるよ。
myページのスマイルなんとかからいくんだ。
507名無しさん@秘密の花園:2008/09/26(金) 01:05:37 ID:QHUqZtLy
>>503-504
っぐは…正直すまんかっ…た…

でも…ありがとう


>>505
いやぁこれは歌ってみたくなるでしょう!
自重しなくてホントごめんなさい
実際歌ってみると、ものすごく酸素足りなくなったよw

てか、あげちゃうの?(´・ω・`)
だったら歌い直す…
508名無しさん@秘密の花園:2008/09/26(金) 09:37:30 ID:vgBfEcBU
あげませんよ。MAD作れるスペックのパソコンが無いんだも('A`)
509名無しさん@秘密の花園:2008/09/26(金) 12:23:23 ID:QHUqZtLy
ttp://www3.uploader.jp/dl/konosetu/konosetu_uljp00002.mp3.html

とりあえず歌い直した
+自分なりのこのせつへの想いとか、ハモリとかも付け足してみた

自己満足で自分でニコニコにあげるかも知れんけど
自分もMADの映像作ったことないから
もしあげるとしたら先になるわ

そして、いきなり歌をあげるとか、空気読まないことしてみんなごめん
このスレは例え過疎化しても良スレだし、続いていって欲しいと思ってます

SS職人さん、ネタ持ってくる人、そしてまとめ管理人さん
いつもありがとう!
510名無しさん@秘密の花園:2008/09/28(日) 16:49:07 ID:cm+efT2I
>>509
なんか本格的にアレンジされてて面白かったYo。
あげたいなぁとは思うが,MAD素材がないぜ!!!!

なかなかいい感じに歌いあがってるからおkと思ふ。
ああ,SS書きてぇ。くそ忙しいぜ,まったくよ。
てか,マジこのせつ欠乏症だよ。
511名無しさん@秘密の花園:2008/09/28(日) 17:06:26 ID:IYBLZYll
MAD素材がなければ描けばいいじゃない
512名無しさん@秘密の花園:2008/09/30(火) 01:32:42 ID:9U0KMCwK
書けたら書いてるわい。
……GJ



俺は俺の道を行くぜ。
取り敢えず続きでも書いてみっか 》 SS
513名無しさん@秘密の花園:2008/10/01(水) 00:45:04 ID:B+dqPB1p
うpロダの管理人だが、正直仕事忙しくてネットがつなげない・・・。
本当に申し訳ないがバトンタッチを頼みます。
どなたか新しいうpロダをお願いします。
514名無しさん@秘密の花園:2008/10/01(水) 01:14:49 ID:2+h0pYvk
クラさん……
俺にネット環境があれば今すぐにでも変わってあげられるのに
515名無しさん@秘密の花園:2008/10/02(木) 21:26:49 ID:+Ugn87LZ
相変わらず過疎ってるねぇ
516名無しさん@秘密の花園:2008/10/03(金) 01:48:07 ID:7EVsRFdd
原作の方でこのせつ成分でてこないからしょうがあるまい。
刹那単体のスレなら今週は話題になってるんじゃないの。あっちは見てないから知らんが。
てか存続してるのかも知らないな。してるの?
517名無しさん@秘密の花園:2008/10/03(金) 08:52:27 ID:6ZJcJtAl
キャラスレもあんまにぎわってないよ。

あぁん♥かっこええわぁ〜♥せっちゃぁ〜ん

とこのかがノロケる刹那を並べて見たい。
518名無しさん@秘密の花園:2008/10/07(火) 21:42:38 ID:Ff//5LFn
あげ
519+MsjtAH+:2008/10/08(水) 05:24:01 ID:PdeLbCoj
他スレにてですが、数年ぶりにこのせつを投下してみます。
読んでいただけたら幸いです。
520+MsjtAH+:2008/10/08(水) 05:24:53 ID:PdeLbCoj
「もうすぐ、金木犀の季節も終わりですね」

何気なく、せっちゃんは言った。

帰り道、乾いた風が花の香りを運んできたせいで、そんなことを思いついたのだろう。

夕日が斜めに二人の顔を照らして差して、ウチらの背後には、ふたつの影が道路に背伸びして映っている。


「どうして、やろな」

え、と疑問の声が聞こえたけど、ウチは前を向いたまま、歩き続けた。

だから、せっちゃんも黙ってついてくる。

枯れ葉が目立ち始めた舗道を、隣り合って歩いていく。

せっちゃんの顔を見てはいないけど、いつもの、少し困った顔をしているのだろう。

ウチの大切な人。強くて、凛として、でも儚い。大好きなヒト。


 どうして


その先は口に出せなかった。言葉にしてしまえば、それが本当になるかもしれないから。

ウチの予感は当たるんや。


いつまでも咲き続ける花が無く、移りゆく季節など有りはしないのに。

 どうして、変わっていくのか。

時間も、人も。

自分も、相手も。
521+MsjtAH+:2008/10/08(水) 05:28:38 ID:PdeLbCoj
つい最近まで、夏の残りがつきまとっていた気がするけど、気づけばあっという間に肌寒くなってきた。
時間の流れることなんて、昔はあまり意識せずに過ごしてきた。
ほんの、つい最近になって考えるようになった。
楽しい時間は飛ぶように過ぎる、なんて聞くけれど、そうなのか。
年齢を重ねれば、自然と気づくもの。そうかもしれない。
でも。違う。少なくともウチの場合は。
じゃあ、こんな事考えるのは、誰のせい?


「最近は、急に寒くなってきましたよね」
少し、恐るおそると言った様子で声をかけられた。
ウチがだんまりして、気を遣ってくれているのだろう。
まったく。そういうところも大好き。

恋人同士の、どこが好きかという問いに対する、すべてと言うありきたりな答え。
そんなん気恥ずかしいし、つまらないけど、実はウチにとっての模範解答。
つまり、せっちゃんが大好き。
そんな些細なことで幸せを感じるウチも、なんや。ちっちゃいなぁ。

まったく。

自分の些末な憂いに、思わずため息をついてしまった。
ふぅ、と吐いた息は、白いもやのように変わって、少しだけのぼって消えた。
確かに日中でも冷え込むようになってから、間もない。
クラスメイト達の服装も、制服ではあるけれど、ちらほらと厚着になってきた。
そのため息が、ウチの顔色を窺うせっちゃんを惑わせたようだ。

「あ・・で、でも!まだ残暑も続きそうですね!」

そやないって。かわいいなぁ。
522+MsjtAH+:2008/10/08(水) 05:31:22 ID:PdeLbCoj
でもね。せっちゃん。

スキとキライは正反対ではないんよ?
つまり、ウチを含めて、他人に気を遣うせっちゃんはキライや。
優しいところも。強くて凛々しいところも。全部キライ。

いわゆる嫉妬や、やきもちではない、それは分かっている。
だって、せっちゃんが一番愛してるのは、ウチのことだから。

‥‥自惚れてる、かなぁ。うん、半分はただの願望やな。
とにかく、このままじゃあ、せっちゃんの全てをキライになるかもしれないってことや。


「あの、やはり四季の中で秋は一番過ごしやすいですね。‥‥ですよね?」

うん、あのねせっちゃん。そういう話じゃないんよ。
やっぱり少しズレてるなぁ。しっかり者のくせに。
かわいいけど、ねぇ、本当に分かってる?

「本当に分かってるん!?」

と、不覚にも心の声が飛び出してしまった。
電気が走ったようにビクッと肩をふるわせるせっちゃん。驚くのは無理もない。

「あぁ、ご、ごめんなさい‥!春の方が好きでしたか!?」

と、ウチの理不尽な言葉に対しても、やはり少し抜けた回答。
まったく。意図せず微笑がこぼれる。
対してせっちゃんは、なぜ笑われたのか分からず、さらに困った顔になる。
523+MsjtAH+:2008/10/08(水) 05:33:27 ID:PdeLbCoj
「せやからなぁ、せっちゃん?」

二、三歩ほど大きく足を出し、せっちゃんの前に出てから、振り向いた。
斜陽に背を向けたウチの顔を、せっちゃんはまぶしそうに覗く。

「ウチの予感は当たるってこと!」

そして、早く帰ろう、と背後のせっちゃんを急かし、ウチは走り出した。
ひと間置いて、戸惑いを含んだ声で、待って下さいと呼ばれた。
同時に、駆け足の音がついてくる。

「な、なにがそんなに愉快なんですか?」

ほどなくして継いで問われる。

せっちゃんにはウチが楽しそうに見えたみたい。それは良かった。
だって、さっきの、ウチのほんの一握りの訴えをぶつけたとき、自分では分からなかったから。

ウチは、自然に笑えていただろうか、と。

せっちゃんからして逆光だったのが僥倖。でも、
ホントは気づいて欲しかったから、不運。

どちらにせよ、この秋空に沈んでいく夕日のせいだと思った。



もうすぐ、金木犀の季節も終わる。
524+MsjtAH+:2008/10/08(水) 05:36:30 ID:PdeLbCoj
読んでいただいた方、ありがとうございます。
今回はここまでです。
最初に改行を多く取りすぎて、失礼しました。
続き物ですが、次回はいつになるか未定です。
では。
525名無しさん@秘密の花園:2008/10/08(水) 22:51:19 ID:2W8CdPfj
久々の投下きた━('∀')━!
でもせっちゃんと同じ状態になりました。木乃香が何を言いたいのか、読者である私にも全く分かりません。
だから早急に続きを書いてください。
526名無しさん@秘密の花園:2008/10/09(木) 23:40:08 ID:d8SC0FmU
このちゃん!このちゃんこのちゃん!このちゃん!せっちゃん!せっちゃん!せっちゃんせっちゃん!
このせつー!ぐぁ、足りねえどぉぉぉっ!
とりあえず>>524GJなんだな。
527名無しさん@秘密の花園:2008/10/14(火) 00:24:46 ID:2QUZviXk
久々の投稿に感激のあまりなんて感想書いて良いかわかんね。(良い意味で!)
取り敢えず思い付くままにGJ!と続きキボンとさせていただく。
続編来てから改めて感想書かしてチョーダイ。リハリハ。

住民もきっとのんびりしてるから,反応ねぇとか残念に思わないで下さいな。
528名無しさん@秘密の花園:2008/10/16(木) 16:24:12 ID:mvzr05X8
久しぶりにきたらSSが投下されてたー
>>524
今更ですがGJそして続きを!

最近本当にこのせつ分が足りないorz
529名無しさん@秘密の花園:2008/10/17(金) 16:28:35 ID:mxmG2bKL
OAD2巻にはほんのちょっとだが、オリジナルのこのせつシーンがあるぜ
530名無しさん@秘密の花園:2008/10/20(月) 00:33:54 ID:GURLca2C
みんな…行ける方は図書館島にGOだ。
531名無しさん@秘密の花園:2008/10/20(月) 01:30:32 ID:jju2z1fT
せっちゃんがこのちゃんのこと思ってオナニーしてるSSお願いします
532名無しさん@秘密の花園:2008/10/22(水) 21:26:19 ID:gvpHWn43
そうゆうのって個人のブログとかで言いなよ。
別に関係ない人が書き込んでても自己演でも。
533名無しさん@秘密の花園:2008/10/23(木) 00:08:23 ID:XMwWD0Gk
>>532
日本語でおk
534名無しさん@秘密の花園:2008/10/25(土) 15:45:43 ID:ZsVxEW3U
NEO2巻買ったら神だった…
今まで「どうせ同人だろ?」なんて思ってた俺を恥じる。
535名無しさん@秘密の花園:2008/10/25(土) 22:05:38 ID:wO52jNGz
>>534
激しく同意。
確かに絵はアレだけど、絡みはいいよな!
536名無しさん@秘密の花園:2008/10/26(日) 00:09:29 ID:JR+HoNyh
>>534
マジか!?
俺も絵がなあとか思ってたんだが…
そんなになのか!?
じゃあ…
ちょっくら買いに行ってくるわ。
537名無しさん@秘密の花園:2008/10/26(日) 01:09:50 ID:AeDDeNF/
アレは普通に百合いこのせつ
538名無しさん@秘密の花園:2008/10/26(日) 02:10:52 ID:pNflqyrI
1000スパをBGMにしながらどうぞ
539名無しさん@秘密の花園:2008/10/26(日) 13:09:41 ID:W5ojwN8t
同人誌だったら買うと思うが商業誌と思うと何故か買う気がしない…
540名無しさん@秘密の花園:2008/10/26(日) 17:09:45 ID:FAIBn8q5
このかの下着盗まれたときの刹那が怖くてかわいいww
541名無しさん@秘密の花園:2008/10/29(水) 02:18:47 ID:jtZ7nR4a
ハロウィンって、今月末だっけか。
たしか、犯しをくれないとイタズラされる・・・んだよな?
542名無しさん@秘密の花園:2008/10/29(水) 04:19:56 ID:xowW+JjC
貴方のPC、長文入力して変換してみたら面白そうだね
543名無しさん@秘密の花園:2008/10/30(木) 00:27:19 ID:eYpVOi9v
言わないでおこうと思ったけど
突っ込まずにはいられないなwww

卑猥な感じでおK!
544名無しさん@秘密の花園:2008/11/01(土) 01:00:29 ID:yWpHtuI3
あれ?ハロウィンSSが来ると期待してたのに投下が無いなんて
545名無しさん@秘密の花園:2008/11/01(土) 14:22:54 ID:PARY5aCf
お姫様このちゃんと、騎士せっちゃんのラブラブ甘々SSが読みたいよー
せっちゃんがこのちゃんの手の甲にキッスするみたいなやつ
546名無しさん@秘密の花園:2008/11/01(土) 21:23:34 ID:YDrfk/GQ
>>545
とりあえずク氏の過去SSでも読んどけ
毒花だったかなんかの過去SSにお手手キッスのカッコイい奴あったから。
なかなかこのせつまで手が回らなくてオイラ涙目(;。;)
547名無しさん@秘密の花園:2008/11/02(日) 19:06:34 ID:jpqJmrDA
548名無しさん@秘密の花園:2008/11/02(日) 19:59:56 ID:jpqJmrDA
549名無しさん@秘密の花園:2008/11/02(日) 22:31:30 ID:p123SEjk
お主、vipperじゃなw
550名無しさん@秘密の花園:2008/11/02(日) 23:38:46 ID:jpqJmrDA
551名無しさん@秘密の花園:2008/11/06(木) 01:57:37 ID:+QbzAnUr
この過疎期を期に週末あたりにでも
行き詰まった長編SSを落としてみよかな。

悲恋このせつ
龍刹エロ大部分
オリキャラで野郎あり

なんていうとんでもない奴だけどね。

最後は必ずラブラブこのせつで締めますよ!(意気込みだけ)

まあ保守ってことで。
552名無しさん@秘密の花園:2008/11/06(木) 04:51:30 ID:RQaLtbT+
また荒れそうなSSだな
553添削も推敲もしてないけど  ◆yuri0euJXw :2008/11/08(土) 01:01:13 ID:3fnPbc9V
あれ?過疎なはずなのにレスが‥‥。
それじゃ,行き詰った長編SSを吐きだそうかww

詳細は551で書いた通り。あと少し未来設定。
完全な創作妄想SSです。
完成する時がきたら,まったく別のものになってる可能性はかなり大!
以上のことを先に言い訳しておきます。

もう駄目だコイツwwwと思ったらNG登録かあぽんしてください。

すっげー長いから10レスごと(連投規制?)に投下逃げします。
保守のつもりだけど,最悪荒れてきたら「ごめんなさい」して旅に出ますね。
それじゃ投下。
554未完成でしかも駄作 1/??  ◆yuri0euJXw :2008/11/08(土) 01:03:09 ID:3fnPbc9V
麻帆良学園を一望できる丘の上で,一組の男女が佇んでいた。年はそう,20代前後といったところか。
長い髪が夕日に煌き,女性の姿を優しく引き立てている。
大和撫子という形容がもっともな女性は,優しそうな笑顔をその男性に見せていた。
温かみのある夕焼けの中,二人の陰は重なり合っていった。

付近に林立する大樹の陰に,人の気配を感じさせない人影があった。
野太刀を携えるその姿は,華奢な風貌にそぐわない印象を受ける。
しかしその太刀が醸し出す雰囲気は彼女そのものといっても差支えないだろう。
触れたら斬れそうな、そんな鋭利な気迫を感じる。
彼女は手にした太刀の鞘を握り締め,丘の上を見詰めていた。
そして,そのままその二人が去るまで彼女はじっと二人を見守っていた。

◇◆◇

「たまには入り口から帰って来い。」

窓から帰宅する同居人に真名は注意する。

「いいだろ‥‥。別に‥‥。」
「またか‥‥。」

窓から帰宅した同居人は,定位置に野太刀「夕凪」を立てかけ,乱暴に着ていた物を脱ぎ捨てた。
真名の忠告にも耳をかさずに,刹那は着替え始めた。

「乱暴だな‥‥刹那。」
「放っておいてくれ‥‥。」
555未完成でしかも駄作 2/??  ◆yuri0euJXw :2008/11/08(土) 01:04:18 ID:3fnPbc9V
白い背中が露わになる。
鍛えられた体には余分なところはなく,しなやかな姿を作り出していた。
しかし真名には,刹那のやるせない思いが背中から溢れ出しているのが見えた。
荒っぽい動きで着替えはじめる刹那を,真名は背後からそっと抱き締める。
スラリと伸びた指先は,良く知った刹那の敏感な部分へと伸ばされた。

「やめっ‥‥ろっ‥!」
「‥‥背中が泣いてるぞ‥。」

髪をまとめた刹那の項に真名はそっと唇を寄せた。

「くっ‥‥ぁ‥‥」
「もうよせ‥。」

ほとんど全裸だった刹那を抱え,真名はそのままベットに押し倒す。

「やめ‥‥ろ‥‥っ」

もがく刹那を押さえ込むと,そのまま乱暴に口を塞ぐ。
そして長い指先は,ぴっちりと閉じた刹那の秘所を弄った。
敏感な秘芯を探り出し,性急に揉み解していく。

「っ‥‥うぅっぅっ‥‥!!」

口を塞がれたままうめき声を上げ,刹那は果てた。
開放された唇からは荒い息が零れる。

「これほどまでに傷ついて,お前になんのメリットがあるんだ。」
556未完成でしかも駄作 3/??  ◆yuri0euJXw :2008/11/08(土) 01:06:32 ID:3fnPbc9V
息一つ乱していない真名の口から,そんな言葉が吐き出される。
刹那は無遠慮に言葉を投げかける真名を憎らしげに見つめた。
刺すような視線を真名に向けるが,にらみ切れずに視線をそらした。

「お前だって承知の上だろう。」

真名を直視できないまま,刹那はそう吐き捨てる。

「はじめに求めてきたのはお前だよ。」

真名の指先が,刹那の頬を伝う。

「私とこうなりたいと望んだのは龍宮,お前の方だ。」

真名の手が,刹那の視線を誘導する。
刹那の視線が真名をとらえる位置に来た時,刹那はそう言葉を返した。
真名の耳に届く,どこか投げやりな刹那の言葉‥‥。
ふっと笑みを零し,真名は刹那の顎を掬う。
どんな状況であれ,確かに始まりはそうだった。
真名の赤い舌が,刹那の唇を舐め取る。

「ああ,そうだ。」

真名の舌はそのまま刹那の口腔内に進入し,刹那のそれを絡め取る。
その温もりには,刹那の深層に絡まっている蟠り(わだかまり)を解きほぐす包容力があった。
刹那の目から鋭い眼光が薄まるのを確認すると真名はきつく吸い上げてそこを開放する。
どちらのものともわからない唾液が二人の間を繋いだ。
真名の口から発せられる言葉は,刹那に深く染み込んでいく。

「お前が,近衛を捨てたあの日から,お前は私のものだ。」
557未完成でしかも駄作 4/??  ◆yuri0euJXw :2008/11/08(土) 01:07:37 ID:3fnPbc9V
真名はそのまま刹那の首筋に舌を這わせて,刹那を味わう。
耳を甘噛むと,刹那は小さく声を上げた。
その敏感な耳傍で,何度も真名は繰り返し囁く。

「‥‥白い翼を持つ天使は,今は私のものだ。」
「私はっ‥ぁ‥‥誰のものでもっ‥‥はぁ‥‥ないっ‥‥。」
「私のものだ‥‥‥刹那‥‥‥」

耳元で繰り返される言葉は,徐々に刹那を絡め取っていく。
抵抗も空しく,刹那は真名の性技に陥ちていった。

◇◆◇

「ねぇねぇ木乃香,木乃香。例の彼氏とはどこまでいったの?」
「ど‥どこまでゆうてもなあ‥‥。」

麻帆良学園高等部のとあるクラス。
放課後,木乃香は友人に囲まれ,質問攻めにあっていた。
その話題の中心は木乃香の見合い相手についてだ。
囲んだクラスメートの中には中等部からの見知った仲間たちも含まれていた。

「木乃香もまんざらじゃないんでしょ?学園長先生も大乗り気だっていうじゃない!」
「そ‥そないなことゆうてもなぁ‥‥。」
「ばらしちゃえってっ!」

相変わらず押しの強い仲間達。でもその中に刹那や龍宮の姿はなかった。

「しょうもないなぁ。」

まんざらでもないというのは嘘ではないようで,木乃香は恥ずかしそうに昨日の出来事を話し始めた。
558未完成でしかも駄作 5/??  ◆yuri0euJXw :2008/11/08(土) 01:08:33 ID:3fnPbc9V
「あんな‥‥昨日な‥‥その‥‥キスされてもうた。」

おおっと歓声が上がる。
木乃香は困ったような顔をしたが,決して嫌そうではない。
本心からというと語弊があるが,そうなることを望んでいるともとらえられる表情をしていた。

「じゃさ,あとは時間の問題ってなわけ?」
「みんな他人事や思うてせっかちやな。まだそんなんじゃないえ〜。」

明るい笑い声が教室に鳴り響いていた。

「でもさぁ,あんなに逃げ回ってた木乃香がこんなにお見合いに積極的になるなんて予想できなかったよね?」
「ほんとだよ〜。桜咲さんがいなくなってから,あんた本当に沈んじゃって‥って‥‥。」
「あっ。っこコラ!バカ!」
「あ‥‥‥。」

それまでの明るい雰囲気は一瞬にして途切れる。
重苦しい空気が立ちこめるがそれを打ち破ったのは木乃香だった。

「気にせんどいて。うちもう,大丈夫やから。」

ほな,お先になと言って木乃香は教室を後にした。
重い空気の中,皆は木乃香の背中を見送る。
そして,その姿が見えなくなった頃,全員は深い溜息をついて元の空気を取り戻した。

「もう!ダメじゃないの木乃香の前で刹那さんの話はタブーだってば!」
「ごめん。アスナ。あんなに元気そうな木乃香見ちゃうとさ,つい‥‥。」
559未完成でしかも駄作 6/??  ◆yuri0euJXw :2008/11/08(土) 01:09:50 ID:3fnPbc9V
クラスメイトの気遣いをアスナも嬉しく思う。
今でも木乃香と同室に暮らしているアスナにとって
木乃香が明るさを取り戻したことは自分のことのように嬉しかった。
刹那がいなくなった当時はアスナですら,ただ木乃香を見守ることしか出来なかったのだから。

「麻帆良学園女子中等学校3−Aは,高校生になってもそのままエスカレータだと思ってたのになっ。」
「高校に上がるときに意外と減っちゃったよね。」
「別な高校の人もいたし,麻帆良をでてった人もいたしさ。」
「‥‥いいじゃない。いつまでも私達子供じゃないもの。」

アスナは何か割り切った表情でそう会話を閉じた。
くれぐれも刹那の話はしないようにと念を押して,各自は帰路へついた。
アスナは一人,木乃香を心配して自室へ向う足を急がせた。

◇◆◇

木乃香は一人,自分のベッドに倒れこんでいた。
大き目の抱き枕を抱え,そこへ顔を埋める。

「せっちゃん‥‥。」

そう刹那の名を呼び,深く溜息をついた。
もう遠い昔の思い出と忘れることが出来るなら‥‥。
昔憬れた想い人と割り切ることが出来るなら‥‥。
幼い頃からの大切な友人。そして,はじめての恋‥‥。
初めて感じた他者の温もり‥‥。そして‥‥はじめての失恋‥‥。
”愛して愛を失いしは愛せざるより良し”と書かれた書物を昔,図書館島で手にしたことがあった。
納得して失った恋なら,そう思えるかもしれない。でも‥‥。

「どうして‥‥うちの前から消えてしもたん‥‥。」
560未完成でしかも駄作 7/??  ◆yuri0euJXw :2008/11/08(土) 01:11:26 ID:3fnPbc9V
誰もいない部屋で木乃香の声が静かに響く。
何も返ってこない静寂に,妙に寂しさを覚える。
アスナはまだ帰ってこない。

「ずっと‥‥うちのこと護ってくれるって‥‥言うたやないか‥‥。」

木乃香は嗚咽を堪えながら,静かに涙を流していた。

◇◆◇

「突然何を言い出すんだね,刹那君。」
「学園長。勝手なお願いをして誠に申し訳ありません。ですが,私の願いを聞き入れて下さらない場合は,京都へ戻らせて頂きます。」
「待ちなさい。それは木乃香の護衛の任を廃すると言うことかね?」
「はい。そして,退魔の仕事も一切の全てを‥‥です。この麻帆良学園に関する全ての任を放棄します。その代り,どのようなお咎めも覚悟しています。」
「一体どんな事情がキミをそうさせるのかね。」
「一身上の都合により‥‥とだけ。申し訳ありません。何もお尋ねにならずに,お聞き届け下さい。」
「ふぅむ‥‥‥。」

学園長室で極秘に繰り広げられたやり取り。刹那は一人,学園長に直訴していた。
刹那の願いはたった一つ。木乃香の前から自分の存在を消すこと。
これからの進路を分け,木乃香の前に一切現れないようにすること。
その条件を満たさなければ木乃香の護衛以下,刹那が行なってきた全ての仕事を放棄し,麻帆良を去ると言ったのだ。

「少し‥‥考えさせてくれんかね。」
「承知致しました。」

刹那は踵を返し,戸口に向かった。

「刹那君。」
561未完成でしかも駄作 8/??  ◆yuri0euJXw :2008/11/08(土) 01:13:13 ID:3fnPbc9V
学園長が刹那を呼びとめた。その声に刹那は歩みを止める。

「木乃香と何かあったのかね?」

学園長の問いに,刹那は振りかえって自嘲的な笑みを見せて答えた。

「‥‥‥いえ‥‥何も‥‥。」

そのまま,刹那は学園長室を後にした。ふぅっと溜息をついて近右衛門は腕を組む。

「どう思うかね?しずな先生。」

その呼びかけに応じて,部屋の隅からスタイルの良い女性が現れた。

「この学園から彼女を失った場合の損失は大きいかと‥‥。」
「ふぅむ。」
「極めて異例ですが,彼女の要望を聞き入れてあげてはいかがですか?」
「‥‥しずな先生もそう思うか。」
「じゃが‥‥‥‥木乃香が悲しむのう。果たしてどうしたものか‥‥。」
「極秘任務と言うことで押し切ろうかのぅ。」

近右衛門は顎鬚に手を伸ばし,窓から遠くを眺めて呟いた。

◇◆◇

「せっちゃん。用事済んだ?」
「はい,お嬢様。お願いしてまいりました。」
562未完成でしかも駄作 9/??  ◆yuri0euJXw :2008/11/08(土) 01:14:27 ID:3fnPbc9V
そしたら来年からうちら同じ部屋やね,と木乃香は嬉しそうに刹那の手を握った。
いつも通り,放課後は二人の時間。
気ままに散歩したり,街に出かけたり,カフェに居座ったり‥‥。
木乃香と刹那は二人の関係を取り戻してから,急速に接近するようになった。

いつからか自然に想いを酌み交わすようになり,今はお互いに友達以上に大切に想う関係となった。
木乃香は,学園長である祖父に,常日頃から刹那と同室にするようにとおねだりを繰り返していた。
木乃香に甘い近右衛門は,刹那が望むなら高校へ進学する機会に変更しても良いと木乃香に伝えていた。
だから木乃香は,刹那にも近右衛門に希望を出すようにと伝えたのだった。

二人は,桜の蕾も膨らんだ並木道を歩いていた。
将来に対する期待と不安,様々な思いを交し合う。
木乃香にとってはそれが今一番大切なことだった。
刹那がそこにいて,自分が隣にいる。
ずっとこの関係が続いていくと信じて疑わなかった。

「お嬢さま。」
「ん?なぁに?」
「‥‥今晩,私の部屋に泊まりに来ませんか?龍宮も引っ越していませんので‥‥。」

刹那は木乃香から繋がれた手を,ぎゅっと握り返した。
木乃香は刹那の紅潮した顔をみて,刹那が言わんとすることを察した。
握り締められた手をまた握り返して答える。

「‥‥‥ん‥‥行くえ。」

それは刹那からの誘い。これから始まる新生活の始まり‥‥。
しかしそれは,二人にとって最後の思い出となった。

◇◆◇
「木乃香〜?」

アスナが部屋に戻ってきた。
急いで開けたドアの中は,カーテンが締まっていて人の気配が感じられなかった。
アスナは誰もいないのかと思って部屋に入るが,ベッドには寝静まる木乃香がいた。
泣き疲れて眠ってしまったらしい。
そっと顔を覗き込むと,泣き腫らした目が痛々しかった。

アスナは自分の机の奥にしまい込んだ一枚の写真を取り出す。
刹那と木乃香とが映った写真。3人で映った写真はあの頃のものだった。
そして,アスナは最後に刹那と会った時のことを思い出していた。

木乃香が刹那の部屋に泊まりに行った翌日の早朝。
刹那は木乃香を抱えてアスナの部屋を訪ねた。

「アスナさん。おはようございます。きっといらっしゃると思ってました。」
「あ,刹那さん。おはよう。どうしたのこんな朝早く。」
「お嬢様をお連れしました。」

そう言って刹那は部屋に入り,木乃香のベッドへ木乃香を寝かせた。
穏やかな寝息を繰り返す木乃香の額を撫で,そこへ軽くキスを施す。
その自然な流れにアスナは頬を染めつつも茫然と眺めていた。
まだアスナは二人の関係を知らなかった。薄々感ずいていたようだったが‥‥。
照れ隠しも含め,アスナは刹那に冷やかすように声をかけた。
しかし刹那からの返答は,アスナの予想に反していた。

「よっく木乃香起きないわね〜。刹那さんがキスしているのに〜。」
「‥‥眠りの術が施してあります。」
「え?」
「これを‥‥。」
手渡されたのは一通の手紙。目が覚めたら木乃香に渡すようにとのことだった。

「アスナさん。貴方との修行は私にとって大切な時間でした。貴方に会えて本当に良かったと思っています。」
「何よ,改まっちゃって。今生の別れってわけでもないのに‥‥。」

アスナのその言葉に,刹那は押し黙る。
刹那は口をつぐんだまま,黙って右手を差し出した。
アスナもつられて右手を差し出す。その手を刹那は強く握り締めた。

「アスナさん。お嬢様をお願いします。」

そう一言だけ告げると,刹那は握り合った手を乱暴に解いて部屋を後に走り去っていった。

「えっ?!ちょっと!刹那さん?!」

飛び出していく刹那の後姿をわけもわからず眺めていた。
その後,目覚めてすぐに手紙を読んだ木乃香が茫然自失となって,その時初めて何が起きたのかを知った。

「ん?アスナ〜?」

木乃香が目覚めたようだ。腫れた眼を擦りつつ,その身を起す。
慌ててアスナは写真を戻し,木乃香の様子を窺った。
アスナは木乃香のベッドに越しかけ,木乃香をそっと抱き寄せた。

「ん‥‥堪忍な‥心配かけて。うちもう大丈夫やから‥‥。」
「そんなに簡単に吹っ切れるわけないでしょ?」
「うち‥あれから色んな人と付き合うとるえ?世の中いろんな恋があるって知ってるんよ。だから‥‥大丈夫‥‥や。」
「っ‥‥だったら,なんでこんなに泣き腫らしてるのよ?」
「そんなこと言ったって仕方ないやんか‥‥もうせっちゃんはおらんのやもん‥‥。」
木乃香は,アスナの胸で静かに声を響かせる。
しかし,その続きは力無いものだった。

「うちの傍には‥‥‥もう‥‥いいひんのや‥‥。」

そのまま,アスナの胸で木乃香は泣き続けた。
流した涙と共に刹那のことを忘れてしまえたらどんなに楽だろう‥‥と。
こんな思いをするくらいならいっそ好きにならなければよかった。
何度同じことを繰り返し思ったことだろう。でも,忘れられることなんかできない。
忘れるくらいならきっと想いを寄せることすらなかった。
この苦しみは、刹那を愛した証拠だと‥‥。
そう感じられる自分は刹那を本当に愛していたと‥‥,今やっと木乃香はそう思えるようになってきたところだった。

◇◆◇

「落ち着いたか?」

真名は腕の中で丸くなっている刹那に声をかけた。
刹那は抱かれた胸に甘えるように頬擦りをしていた。

「今日は何があった?」

真名は刹那に尋ねる。その声色は先ほどまでと違い優しさが篭っていた。

「お嬢様は‥‥ヤツとキスをしていた。どちらかと言うとされていた‥‥かな?」
「なんだ,キスに嫉妬したのか?」
「なっ?!」
「そうだろ?」
真名は刹那の背筋に沿って指を這わせ,仰け反る首筋に軽くキスした。
真名に図星をつかれて居心地の悪い思いをしたのか,刹那は話題を変えた。

「はぁ‥‥頼んどいた件‥んっ‥‥出来てるんだろうなっぁ‥‥?」
「ああ。ヤツの身元照会だったな?徹底的にやってある。」
「そう‥‥か‥ぁ‥‥助かるっ‥‥。」
「結構手間取ったからな。この報酬は高いぞ?」

その言葉に刹那は体を起し,真名を見詰めた。
その顔は不敵に微笑んでいて,なんとも小憎らしかった。

「そうだな‥‥お前に恥かしいことでもしてもらおうか?」

不適にニヤリと笑みを浮かべる挑戦的な真名の様子に刹那は,真っ向から受けてたった。

「良いだろう。受けてやる。」
「後で泣いて謝っても聞いてやらないからな。」
「言わん!」

そういうと,真名は再び刹那の体に触れた。
刹那は,真名の指に唇に,舌に過敏に反応していく。
ここ数年,手練手管を相手にしてきたのだ。
刹那の体ももう随分と開発されていた。

刹那は体の奥のほうに疼きを感じた。
次第にそれは大きくなり,刹那の体の中で蠢く欲望の塊となる。
真名の動きと共に零れ出る嬌声がその大きさを伝えていた。

「頃合か‥‥」
そう言うと真名は組み伏せていた刹那を開放し,自分は仰向けに寝転がった。
真名はたくさんのクッションに背を預け,上半身をやや起き上がらせた状態で横たわった。
しなやかな褐色の肌が顕になる。その腹部に真名の長い指が2本立てられていた。

「おいで‥‥刹那‥‥。欲しいんだろ?」

先ほどまでの性技に翻弄されていた刹那は,真名の意図することがいまいち理解できなかった。
困惑した様子を見せると,真名から次の指示があった。その言葉に刹那の脳は徐々に覚醒する。

「自分で入れてみな?」
「な‥‥に?」
「何度も言わせるな。欲しいんだろ?自分で入れてみろ。」

挑発的に真名は刹那を煽る。刹那は体の疼きを持て余し,堪らなく昂っていた。
けれど,このまま真名の言う通りにしてしまうのは癇に障る。
それに,従ったら最後何をされるかわからない。
でも,刹那は‥‥真名に言われるまでもなく‥‥その言葉通り‥‥欲しくてたまらなかった。
刹那の感じるところを的確に刺激してくる真名の指で,自分をもっと昂らせてほしかった。

普段からは考えられないくらい異常に興奮している自分に刹那は戸惑う。
それは木乃香のことが原因であると真名に指摘されるまでもなく,自覚があった。
学園長推薦の見合い相手と順調に事が進むのは従者として喜ばなくてはならない。
それはわかっているが,これまでも木乃香が見合い相手と進展を見せるたびに荒れる自分がいた。
嫌いで離れたわけではない。心の底から愛していた。
その想いが何かの折に冷静な刹那の精神を乱す原因となっていた。
しかし,現実は真名の言う通り,刹那は木乃香を捨てた。それ以外何の言い分もない。
火のついた裂情が体の中で燻り,刹那をかき乱す。
今はもう,冷静な判断などできはしなかった。ただ,この想いを散らしたい。
体中を支配する欲望に誘われるように,刹那は真名の言う通りに体を動かしていった。
刹那は真名の体の上に跨り,真名の指を自分の秘所へと宛がう。
欲望のままに動く自分がたまらなく恥ずかしいのか,刹那は羞恥に頬を染めていた。
伏し目がちな視線で真名を見つめる。羞恥のためか更にその肌は高揚していた。
それでも素直に真名の言葉に従う刹那が,真名にはいじらしくてならなかった。

「いい子だ。」

真名は勝ち誇ったように不敵な笑みを浮かべる。そして体を起し,刹那にキスを降らす。
そして,まだ進入していない刹那の入り口付近を指先で軽く撫でた。
刹那のそこはもう十分に湿っていて,いつでも真名を受け入れられた。

「ん‥はぁ‥‥ぁっ‥‥もう‥‥いい‥か?」
「いいぞ,入れてみろ。」

刹那は目を瞑り,ゆっくりと腰を落としていく。騎乗位な分奥まで入りこんだ指の動きを感じた。

「んぁ‥‥はぁっ‥‥」

でも,その中での動きはほとんどない。
触れて欲しいのに,一番感じるところをもっと触って欲しいのに‥‥。
真名から動くことは無かった。うっすらと目を開け,真名を見詰める。
その視線には疑問の色と,熱い欲望の色が見え隠れしていた。
その扇情的な刹那の表情に真名は,自分の中のサディスティックな欲望がざわめき立つのを感じた。

「自分で動くんだよ。いつも私がしてばっかりじゃなんだろ?」
「なっ?!」
そう言うと真名は空いている方の手で,刹那の胸を弄る。
その動きから逃れようと刹那の体は動き出す。
しかし,その動きが返って刹那自身の内部を抉ることとなり,腰に響くような鈍い快感が刹那の体を襲った。

「中々良いなっ‥これ。お前の全身を隈なく眺めれるし,‥‥なにより,指がお前の中に入っているのが良く見える。」
「やめ‥‥っ!‥‥言う‥‥なっ!」
「ほら‥‥どんどん溢れてくるぞ‥。」
「うあぁ‥ふぁぁ‥‥あぅ‥あぁぁあぁぅぅぃ‥‥。」

真名は何度も刹那の体を弄る。そのたびに刹那の体ははじけるように動いてしまう。
その度に刹那自身の手によって,真名の指は刹那の内壁を抉ることとなった。
何度か繰り返しているうちに,次第に刹那の腰は自発的に動くようになっていった。

「はぁはぁ‥ぁふ‥ぅん‥‥いい‥‥ぁぁあ‥‥。」
「もう堪らないんだろう。イくまで続けるか?それとも私と一緒にイくか?」
「もう‥‥やめ‥‥ろ‥‥ぁっ‥‥。」
「それはなしだ。」
「‥では‥‥好‥‥きに‥しろ‥。」

真名はふふっと不敵な笑みを浮かべる。
普段は零れる嬌声を押し殺し,決して屈せずという構えを見せる刹那だったが,今日の刹那は惜しげもなく甘い嬌声をこぼして憚らない。
普段よりも異常なほどに精神が興奮していると手に取るようにわかった。
そんな刹那が堪らなく欲しくなり,真名は少し乱暴に刹那を扱った。
入っていた二本の指を自在に動かし,動く刹那に合わせてよりピンポイントに指を動かしていった。
仰け反って喘ぐ刹那を横たわらせ,そのままそこを舌で念入りに弄った。
刹那は身悶え霰もない嬌声を上げる。
真名は指を抜き取ると,刹那の体に自身を割りこませ,刹那の秘所に自分の秘所を密着させた。

「いくぞ‥。」
真名は的確に腰を動かす。刹那は秘裂と秘芯を同時に刺激され,激しい快感をその身に受けていた。
目を瞑り,その衝撃に耐えていると,不意に真名の動きが止まった。

「刹那‥‥私を見ろ‥。」
「龍‥‥宮‥‥?」
「今お前を抱いているのは私だ。私を見ろ。」

ジンジンと疼く自分の奥の欲望にその身を支配されている刹那は,真名を見詰める視線も熱を帯びていてひどく扇情的だった。

「もの欲しそうな目だな‥‥私が欲しいのか?」

真名の強い視線から逃れようと刹那は視線を逸らす。
しかし真名に顎を取られ,その動きは制限される。

「私から目を逸らしたら止めるぞ。」

刹那は追い詰められた。このまま,焦らされつづけたら本当にどうにかなってしまいそうだった。
刹那の脳裏に木乃香が浮かぶ。しかし,その隣には今の彼女の相手の顔が‥‥。
そして,今自分を抱いている者の顔を見詰める。刹那の眼尻に光る滴が浮かんだ。
どんなに想いを募らせたってもう戻ってはこない。
自分が望んだ愛の芽は自らの手で摘んだのだから。

「龍‥‥宮ぁ‥‥。」
「ん?なんだ?」
「今は‥‥お前しかいない‥‥お前が‥はぁ‥‥ぅ‥欲しいん‥だ‥‥んぁあ‥‥。」
「‥‥‥わかった。」

嬉しそうに真名は微笑むと腰の動きを再開する。
その動きは荒荒しかったが,決して乱暴ではなかった。
全身を包む快楽が二人を支配する。やがて二人は同時に達した。
激しく求め合った後,軽く気を失っていた刹那は,けだるげに体を起して辺りを見まわす。
シャワーを終えた真名は椅子に腰掛け,刹那が真名に依頼した調査書を最終確認のために目を通していた。
刹那は平然とする真名を憎らしそうに見詰め,自由の効かない体を無理やりに動かした。

「龍宮!偶には手加減しろ!」
「ん?激しくして欲しいと言ったのはお前だろ?」
「私は一言もそんなこと言っていない!!」
「まあいい。済んだことだ。シャワー浴びて来い。それから仕事の話しだ。」

刹那は仕方なく,けだるい体を起し,倦怠感の残る腰を伸ばしながらバスルームへと向かった。

◇◆◇

「例の男,関西呪術協会と接点があるぞ。」
「学園長の紹介だから関西呪術協会なら別に不思議ではない。」
「甘いな‥‥こいつの持つコネクションは例の一派だよ。」
「例の‥‥‥?まさか?!」
「しばらく音沙汰が無かったのに今度は何を企んでいるのだろうな?」

二人が話しているのは,木乃香の見合い相手のこと。それはお見合い好きの学園長が進めた縁談の一つだった。
京都の名家出身で現在は麻帆良で魔法工学について勉強している才子だった。
その彼が,どうもかつて木乃香をさらって関西呪術協会を牛耳ろうと企てた一派と接点を持つようだった。

「ま,随分と以前の話だ。今でもそのコネクションが生きているかはわからないな。」
「‥‥そうかしばらく足取りを確認しておこう。もし何かの企てがあるとすれば,お嬢様が危ない。」

真名はふっと溜息をつき,刹那を見遣る。
活き活きとした姿を見せる刹那に悔しいけれど何故か嬉しさを感じた。

「では龍宮‥もう少し調べてみてくれ。私はヤツの足取りをつけてみる。‥‥‥どうした?」
じっと自分を見詰める真名の視線に,刹那は疑問を感じた。
何事もないように真名は書類をしまい,刹那に手渡しながら言った。

「なんでもない。もう少し調べてみるよ。」
「頼む。」

そう言い残すと刹那は早速夕凪を手に取り,再び窓から外へ飛び立って行った。

「‥‥‥刹那‥‥‥。偶には玄関使え。」

窓を閉めつつ,ボソッと呟く真名であった。

◇◆◇

初めて会った日から,幾度となくデートを重ねた。
木乃香はこの男に心を許し始めていた。
木乃香よりも少し年上のこの男性は申し分のないフェミニストで,女性の扱いが上手だった。
エスコートも上手で,格闘技や魔法も上々。頭脳明晰で近右衛門や詠春は相手に不足を感じていなかった。
後は,木乃香の気持ち次第だ‥‥と。

刹那を失った時の木乃香は,誰もが見守ることさえつらい状況だった。
その嘆き様から刹那と木乃香の何らかの関係を感じ取った人がいたかもしれない。
木乃香を慰めるために,新しい恋が昔の恋を忘れさせると口にした人もいた。
しかし,木乃香にはそれは逆効果だった。木乃香は今でも,その言葉を信じていない。

――あの恋を越える相手にはもうきっと出会うことはない。

‥‥ならば割り切ろう。残された自分の運命を全うして生きようと。
573名無しさん@秘密の花園:2008/11/08(土) 14:37:59 ID:2WTT18+a
連投規制阻止wktk!
それでも木乃香は暫くの間諦めなかった。どこかで刹那にきっとまた出会えると信じていた。
でも誰もその行方はわからなかった。
近右衛門や詠春は何も語らず,薄情なことに早く忘れろと言う始末だった。
京都でも同様で,小太郎達に頼んではみるものの,まったく噂の欠片すらない。
千雨のアーティファクトでも情報の痕跡すら見つからなかった。
一体どこに潜んでいるのか,国内か国外か,生きているのか死んでいるのか‥‥。
それすらも情報がなかった。

そうこうしている間に時間ばかりが過ぎていった。
木乃香の気分が少しずつ落ち着いてきてから,勧められたのはお見合いだった。
気分転換になればと,木乃香は自分でそれを断るのを止めた。
昔と違って年頃の木乃香には,年頃の相手が紹介された。
話術の得意な人が多く,木乃香の世界も少しずつ広がった。
でもそれだけ。どの話しも進展は見せなかった。今のこの相手以外は‥‥。

刹那を連想させる悲しげで優しい笑みが木乃香の興味を引いた。
ちょっとしたしぐさに,刹那の匂いを感じた。
木乃香は,自分の中で失われたものが形を変えて補われたような錯覚を覚えた。
彼と会ううちに,少しずつ慣れ親しんでいく木乃香がいた。
会う回数を重ねるたびに木乃香は少しずつ色々なものを彼に許していった。
そして先日は唇を許した。この人になら,身を任せても良いのではないだろうか?
木乃香の心の中にふとそんな想いも過ぎる。

そんな頃,彼は結婚の意思を仄めかした。
正式なものではなかったが自然な成り行きだった。
その日のデートを終えると,彼は寮の近くまで木乃香を送り,そのまま家路についた。
その後を,一人の影が追う。
その影は,彼が素直に家路につけば良いと心の中で願っていた。

◇◆◇
その男が目的としていたのは,麻帆良学園都市の結界をわずかに外へ出た郊外の居酒屋だった。
誰かと待ち合わせをしている様子だ。
刹那は客を装ってその店に入ろうと考えたが,刹那が入るにはやや不自然だった。
一応まだ未成年だからか‥‥。恐らく真名なら先入捜査は可能だったろう。
仕方が無いので,ややバージョンアップしたちびせつなを潜り込ませることにした。

「頑張れ。ちびせつな。こういう時のために気配隠しの術を施せるようにしたんだから。」
「はいな。了解ですぅ。」

頭の悪さは中々レベルアップしないが,ちびせつなは手馴れた様子で,店内に進入していった。
刹那はちびせつなを通じて念波を受信すると,ざわざわとした店内の喧騒が聞こえた。
ちびせつなを通じて得る気は,刹那にとって十分な情報源であった。

”首尾はどうだ?”
”まぁ,順調ですよ。お嬢様は私に随分心を開いてくださってますから。”
”そうか,3年前は酷い目にあったが,今度こそ我々の手に‥‥”
”どうかしましたか?”
”いや,何者かがこちらを探っているような気配がした気がしたんだが‥‥。”
”まぁ,こんな場所ですからね‥‥。”
”それより,大丈夫なのか?例の期限まで‥‥。”
”ええ,まぁ。”数え”でしたよね?それにしても20歳までになんて‥‥。”
”後2年だ。いや,すべてが終わるまでが‥‥だからな。”
”はぁ。‥‥協力している以上は仕方ないですね。それじゃ,‥‥そろそろ目処を立てないと‥‥。”

後は,他愛も無い話ばかりが続いた。男達が店を出て行くのを確認して,ちびせつなを呼び戻した。

「ふぅ‥‥危うくばれるところだったな。」
「すみませ〜ん。以後精進しますぅ。」
「いや‥‥精進するのは私のほうだ。済まなかった。」
くるりと踵を返し,追跡の体勢を整える。

「私はあの男を追う。奴のことは任せる。」
「はい。了解ですぅ。」

木乃香の恋人の尾行をちびせつなに任せ,刹那はもう一人の男の後を追った。
追跡を続ける刹那だったが,その男はかなりのやり手らしく,途中で撒かれてしまった。
しかし,気配を見失った辺りで陰陽術を使った痕跡を見つけた。
刹那の背を、ぞくっと悪寒が走る。刹那は何か不吉な予感を感じた。

「‥‥恐らく間違い無い。今度はお嬢様の何を狙っているんだ‥‥。」

彼らの話していた内容といい,未だ刹那の知り得ない謀略が秘密裏に進められているのは確かだった。

◇◆◇

「ねぇねぇ,木乃香,聞いたよ?例の彼氏と遠出するんだって?」
「なっ‥‥なんのこと?」
「声ひっくり返ってるよww」
「でさ‥‥‥それってお泊まり?」
「ちゃう,ちゃうちゃう。日帰りや。」
「だ〜か〜ら〜声ひっくり返ってるって‥‥。」
「‥‥‥‥。」

どこからネタを仕入れてきたのか,クラスメイトはこっそりと木乃香を囃し立てる。
小声で,こそこそと話し出す二人。
「一体どこで聞いたん,そんな話‥‥。」
「迂闊だったね,廊下でアスナと話してるの聞いちゃったんだ。ご免ね。」
「あ‥‥そういえばそやったわ。」
「でね‥核心は?」
「内緒やww」

くぅ〜〜と唸るクラスメイト約一名。木乃香はその場を誤魔化し,部屋に戻った。
部屋ではアスナが木乃香の帰りを待っていた。

「‥‥覚悟決まった?」

木乃香は,力無く項垂れて首を振った。
鞄を置き,制服のまま部屋の中央にあるテーブルにつく。
小さい溜息をついて木乃香は答えた。

「正直わからんのよ。嫌やないんやけど,OKしてええのかどうか‥‥。」

木乃香は,先日受けたプロポーズに迷っていた。
正直早過ぎると思っていたが,祖父も父も納得済みで,後は自分の気持ち次第と言われている。
つまり,木乃香の好み以外は近衛家に相応しい人物であると評価済みなのだ。
でも木乃香の直感としてなにかが引っかかっていた。

「でも,もう少し考えるために週末出かけてくるわ。もっとよく知ったらええかもしれんしな。」
「でも泊まりでしょ?大丈夫なの?二人で‥‥その‥‥。」
「別荘言うてたし,お手伝いさんもきっとおるえ。それともアスナ,一緒にいく?」
「ばっ,ばか言いなさいよ!!誰がっ‥‥!」
「でも,おじいちゃんには内緒でお願いな。いくら相手があの人でも何言われるかわからんし。」
「っ‥‥‥アタシにはちゃんと連絡いれなさいよ!」
「はいな。わかっとるえ。」
18歳ゆえの好奇心か,木乃香は次の休みに恋人からの誘いに応じることにした。
人を疑わないのが木乃香のいいところだとはいえ,あまり警戒心がなさすぎるのもどうかと頭を悩ませるアスナだった。
でも,木乃香が軽々しい振舞いをするとは思えないし,それなりに信頼のおけそうな相手だとアスナも感じていた。
自分も恋人との逢瀬時には配慮してもらっているので,心配しつつも同意を示していた。

一方刹那は,先日の居酒屋での話について調べるために木乃香の実家を訪ねていた。
内容が内容だけに,手軽な通信手段は使えなかったのだった。

「長に窺いたいことがあって,参りました。」
「随分と久しぶりだね。木乃香は元気かい?」
「はい,仲睦まじくお過ごしのようです。」

刹那の言葉に詠春は眉を軽くひそめる。しかし直ぐに表情を戻し,次の話題に移った。

「‥‥‥言いたい事は色々とあるが,本題のほうを先に伺おうか。」
「お嬢様に関することで二十歳という年齢が関わってくる重要事項等ございませんでしょうか。」

人払いの済んだ広間は,閑散としていて秋のそよ風だけが,通りすぎていた。
怪訝な顔をして詠春は問い返す。かなり重大な内容のようだった。

「‥‥‥何かあったのかね?」
「私には教えていただけない内容ですか?」
「‥‥‥。」
「お嬢様に‥‥危険が迫っているかもしれない‥‥との懸念からです。」
「そうですか。」

扇子で口元を隠し,詠春は軽く溜息をついた。
口外しなければ悪用されることも無いと思っていたのですが,と言葉を続けた。
「近衛家の娘は代々霊能力や魔力に秀でたものが多く排出される家系です。ご存知の通り,木乃香もその一人です。」
「はい。最近では随分と治癒の術も上達されたようです。」
「ただ,この家系には,優秀な子孫を存続させるための極めて稀な能力が存在します。」
「代々の長の口述伝承でのみ引き継がれ,他言無用です。」
「それが二十歳の謎‥‥。」
「はい,近衛の娘は数えで二十歳までに妊娠し,出産を終えると必然的に母親の能力が全て子に引き継がれます。」
「二十歳以降ではそのような事は起きず,別の方法を持って潜在能力が育っていきます。」
「恐らく木乃香にもこの形質は引き継がれているでしょう。ですから,不慮の事故であっても二十歳を過ぎるまで,絶対に間違いなど起こってはなりません。その意味もあって,腕利きの護衛が木乃香には必要なのですよ。」

刹那の握り締める拳が震える。
万が一,間違いが起きてしまったら‥‥それをヤツらが狙っているとしたら。

「私は教えましたよ‥‥。キミの秘密も教えてくれませんか。」
「私の調べでは‥‥‥」

喉が詰まりそうな緊張感が漂った。刹那の調べでは恐らく間違い無い。

「恐らく,今お嬢様の傍にいる男性は‥‥天ヶ崎千草一派の残党に係わり合いがあります。そして恐らく今長が仰ったことを実現しようと企んでいるのかと‥‥。」
「‥‥なんですと?」

静かに詠春は問い返す。刹那は自分の推測を詠春に伝えた。

「お嬢様の御子を傀儡に,関西呪術協会を拠点に勢力拡大を謀っているのではと‥‥。」
「彼は我々の調べでは問題の無い人物のはず‥‥。」
「巧妙に隠していた可能性があります。」
「ふぅむ。俄に信じがたいが,キミの情報網も侮れませんしね。私のほうでも一度調べてみましょう。」
「事情も事情ですし,引き続き木乃香の護衛をお願いしますね。」
「はい。」
刹那は詠春の指令を受け取ると,そのまま部屋を退室しようとした。
そんな時,思いがけず,詠春からの問いかけを受ける。

「‥‥ところで刹那君。本当にこのまま木乃香の前から姿を消してしまって良いのかな?」

契約改定後3年は経っているのに,詠春は改めて刹那に尋ねた。
部屋を退室しようとする刹那は,歩みを止め,詠春に答えた。

「‥‥はい。お嬢様はもう私のことはお忘れでしょう。それに‥‥私がお嬢様の傍にいたところで近衛家のためになりませんから。」

それでは失礼しますと,刹那は広間を後にした。

「ふぅ。強情ですね,刹那君も。」

詠春は刹那の話を思い返し,ため息をついた。

「‥‥近衛家のため‥‥ね‥‥。」

詠春は刹那の話の裏付けをとるため,改めて木乃香の見合い相手の身辺調査を洗い直すように手配した。

◇◆◇

麻帆良へ戻った刹那は,身代わりにおいていったちびせつなを探した。
しかし,気の届く範囲にはいなかった。
麻帆良学園都市は言うに及ばず,都内なら十分な距離のはずだった。
慌てて街に残された気を探し出すと,とある駅にたどり着いた。
電車に乗って出かけた木乃香を追ってそのまま移動しているようだ。
ある程度の気は補充しておいたが,あまり長くはもつまい。もって後一日,二日‥‥。
学園長に木乃香の行き先を尋ねようも,木乃香のこの出かけ方はお忍びそのもの。
恐らく学園長はこのことを知らないだろう。
万が一,木乃香の身に何かあっては‥‥。しかも今は未知な陰謀を暴きつつある最中だ。
刹那は焦る思いを抑えて,一人平静を保つことに専念する。
たった一つ,木乃香の行き先を知る確実な場所が刹那の脳裏に思い浮かんだ。
迷っている時間はない。アスナの元へ刹那は急いだ。

アスナは一人,自室で留守を楽しんでいた。
木乃香からの連絡を受け,一人ぶつぶつと想像を巡らしていた。
心配する気もあるが,まんざらでもない木乃香の様子に少しだけ安堵する。
話す相手もいないので,珍しく静かな自室で一人寛いでいると,部屋のドアを叩く音がした。
寮生ならこんなに静かに扉を叩くことは無いだろう。
コンコンと静かに響くノックの音が,かつて刹那が行なっていた動作を彷彿とさせた。

アスナは,そのノックの音に刹那を思い出しつつ,来客が誰か確認するためにドアを開けた。
わずかに開いたドアの隙間から,すっと中へ入ってくる人影があった。
人の気配を感じさせないその影に,アスナは警戒心を発した。

「だっ,誰?」
「あっ怪しいものではありません。申し訳ありません,急に訪ねまして。」

昔懐かしい口調と,少し落ちついた声色。アスナは驚いてその影を捕まえて,顔を確認する。

「刹那さん!!!」
「しっ。静かに。ずうずうしいお願いと承知で窺いました。アスナさんの協力が必要なんです。」

懐かしい面影を残し,少し大人びた刹那の姿がアスナの目の前にあった。
驚きを隠せないアスナだったが,何事も無い様子で眼前に現れ,
そして何事も無かったかのように淡々と事を進める刹那に苛立ちを感じた。
そしてその抑え切れない苛立ちは,次の一手としてアスナを動かした。
「‥‥‥刹那さん。話を聞く前に‥‥一つだけ良い?」
「何でしょう?」

刹那が身構える間も無く,とんできたのはアスナの平手打ち。乾いた音が部屋に響いた。
思いもかけない歓迎に刹那は驚き,そしてその勢いに2,3歩後退ってしまった。

「アスナさん‥‥‥。」

刹那は張られた頬に手を添え,アスナを見る。彼女の目には涙がたっぷりと蓄えられていた。

「今までどこにいたのよ!あんな別れ方して,木乃香がどれだけ苦しんだか知ってるの?」

ジンジンと響く頬に手を添え,叩かれた頬の痛みを噛みしめる。アスナの言葉に対して刹那は静かに口を開いた。

「知っています。‥‥ずっと傍にいましたから。」
「え?」
「それよりアスナさん。お嬢様の行方をご存じありませんか?」

重い空気を払拭するかのように,刹那はアスナに問う。

「木乃香?木乃香は今日は帰ってこないって,連絡あったばかりだけど‥‥。」
「なんですって?!だ,っ誰と,どこへっ?」
「え‥‥木乃香のお見合い相手とその人の山荘って言ってたけど‥‥」

どうかしたの?と怒るのも忘れてアスナは刹那に尋ねる。
少しの間考え,刹那はアスナの肩を掴み,掻い摘んで事情を説明した。

「そんな‥‥。つまり木乃香がヤっちゃってできちゃったらまずいってこと?」
「アスナさぁん‥‥。(言い方が下品ですが否定できません。)茫然としている場合ではありません。とにかくアスナさん。手伝って頂けますか?」
「いいわ。刹那さんをとっちめるのはその後ね。」
刹那は苦笑すると,アスナを連れて寮の屋上へと駆け上がった。

「空からのが場所を特定しやすいですし,何より一刻も早くお嬢様の元へ行けます。」

アスナを抱きかかえると、刹那は背中の翼を解放した。
それは以前の翼よりもずっと大きく,力強い羽ばたきを見せていた。
夕暮れの中,刹那の白い大きな翼は天高く舞い上がっていった。

◇◆◇

「プロポーズの件,考えてくれましたか?」

ソファーに腰掛ける木乃香に上品なカップに入った紅茶を手渡す。
黄金色に輝く紅茶には木乃香の不安そうな表情が写っていた。

「ずっと先延ばししててすみません。まだ決められないんです。」

木乃香は,手渡されたカップをじっと見つめたまま言った。

「急がなくていいですよ。でも今日ここに来てくれたことは,前向きに考えてもいいんでしょう?」

紅茶の液面を見つめていた木乃香はふっと視線を上げる。すると,木乃香を見詰める大きく優しそうな瞳が目に入った。

「そないに見んで下さい。いややわ。恥ずかしい。」

そう言って木乃香は照れ隠しに紅茶を飲みほした。

「せっかく湖畔の別荘に招待したのにあいにくの雨模様ですね。屋内を案内しましょう。」
「あいにくなんてとんでもないです。雨には雨の情緒がありますよって。」
「あなたは‥‥お優しい人ですね。」
木乃香の手を引いて彼は部屋を案内するために,移動を始めた。
窓からのぞく湖畔は,鉛色に濁る雲を映し出していた。
そこに小さく映える真白い翼に木乃香は気がつくことはなかった。

◇◆◇

「雨が降りそうですね。急ぎましょう。」
「刹那さん。何か感じる?」
「微弱ながら,ちびせつなの気の跡がつかめました。」
「それから、あちらの方からお嬢様の気配がする気がします。」

刹那らは,湖のそばの館へと向かった。地上に降り立つと同時に雨が降り出す。
あたりの様子を探っていると,ふらふらと漂っているちびせつなを発見した。

「あ〜ん。心細かったですぅ。」
「よくやった,ちびせつな。木乃香お嬢様を追いかけたんだな。」
「そうですぅ。このお屋敷へ入っていかれました。でも,このお屋敷ちょっと変なんですぅ。わたくし侵入を試みてるんですが,阻まれてしまって‥‥。」

ちびせつなの言う通り,確かに屋敷の周囲には結界が張り巡らされていた。
防犯のために結界が張ってるのは,所有者がその道のものなら一般的だ。
しかし,これは侵入防止というよりも鳴子のようなものだ。
誰かの侵入を察知するためにわざと破りやすい結界を張っている。
それに確かにこの中からは木乃香お嬢様の気を感じる。
そしてもう一人,おそらくヤツだろう。ほかに強烈な気は感じられない。
策謀の色は薄い。

「どうなのよ,刹那さん。木乃香いる?それに身の安全は?」
「‥‥中にいるのはお嬢様とヤツ‥‥あの方だけのようです。ほかに気配はありません。しかし‥‥」
「しかし?」
「この結界の張り方が納得いきません。それにお嬢様の身の安全はこのままでは測りかねます。」
「じゃあ,どうすんのよ。」
「‥‥‥どうしましょう‥‥?」
「もぉ〜!!!」

余りな対応の刹那にアスナはしびれを切らすが,腑に落ちないという刹那の直感が警報を鳴らしていた。
ひとまずは騒ぎ立てず,木乃香を保護するのが先決と考えていた。

「とりあえず,無難な侵入経路を確保しましょう。」

この鳴子のような結界は屋敷全体に緻密に張り巡らされていて隙がない。
刹那は,木乃香を助ける最善の方法を思案していた。

◇◆◇

木乃香たちは夕食を終えて,居間でくつろいでいた。
というより,時間が時々刻々と過ぎていく緊張感に木乃香は耐えきれなかった。
決して少しも警戒感がないわけではない。木乃香とてまだその気ではないのだ。
しかし強引な行為にあっては逃げることはできない。
木乃香は窓辺に立ち,外を眺めた。強く降りかかる雨が窓ガラスを激しく鳴らしていた。

「不安ですか?」

木乃香の横に立ち,その肩にそっと手を添える。

「‥‥雨が強いなって思うただけです。」

警戒していることを悟られないようにしていたつもりだったが,彼にはそれはお見通しだった。
肩に添えられた手が木乃香の肩をとらえる。
その手を払わず,じっとして見せたのは木乃香の強がりだった。
彼は肩を抱いた手をそのままに,もう一方の手で木乃香の顎をとった。
そっと触れるのは,薄い唇。そしてキスされた場所は額だった。

「今日はもう,お休みになってはいかがですか?」
「でも‥‥。」
「眠いときに眠りにつくのは,体に良いことですよ?それにまだあなたに嫌われたくないですからね。」

優しく微笑まれて,木乃香は眠気を増すのを感じた。

「明日天気が良くなることを祈っていて下さい。今度はこの辺りをご紹介しますよ。」

そう言われて,木乃香は寝室へ向かうことを促される。
なんだかんだ言っても強がっていた自分を振り返り,木乃香は彼の言葉に甘えることにした。

「‥‥済みません。それじゃ‥今日は休ませてもらいます。」

木乃香はそう言うと,宛がわれた寝室へと足を運んだ。
部屋を出ていく木乃香の後姿を眺め,彼は一人愉しそうに残る。

「さて‥と‥‥‥どうしたものかな‥‥‥。」

これから行なおうとする計画の景気付けといわんばかりに,
手にしたワイングラスを傾けて一気に飲み干した。
木乃香が就寝したのを確認すると,屋敷中の明かりを消し,
彼は静かに中央のソファーに腰を沈めた。

◇◆◇

「雨か‥‥‥。」
雲行きが一層あやしくなると,とたんに激しい雨が降り始めた。
アスナと刹那とちびせつなは急いで雨宿りできそうな木陰に入りこんだ。
この先どうしようか‥‥。秘密裏に侵入を果たすために,刹那は思案していた。

「木乃香‥‥。」

アスナが心配そうに呟く。なんでこんなことになったのか‥‥。
やっと元気を取り戻した木乃香がこんな目に遭うなんて‥‥。
元凶である刹那が目の前にいるけれど,今それを責めるわけにはいかない。
なんとか木乃香の無事を確かめるのが先だった。そして,企みを阻止しなければならなかった。

「折角‥‥良い感じだったのに‥‥そううまくいかないものね‥‥。」

鈍い色をした空を眺め,アスナが呟いた。

「お嬢様は‥‥その‥‥ヤツ‥‥あの方のことを‥‥?」

アスナは視線を戻し,刹那を見る。そして黙って首を振った。

「木乃香は‥‥‥。」
「!!待って,アスナさん!」

刹那は,アスナの言葉を遮り,さっと木陰へ身を寄せた。
刹那の視線の先には,満面の笑みを浮かべるちびせつなの姿があった。

「えっへへ。穴あけちゃいました!」

秘密裏に進める方法を考えていたはずなのに‥‥。勢い余ってしまったらしい。
台詞とともにポーズを決めた後,ばつが悪そうにちびせつなは頭を下げた。
「‥‥こうなっては仕方ない。先を急ごう。アスナさんこっちです。」

済みませんと謝るちびせつなとアスナを抱え,刹那は屋敷の方へ向かった。

「不法侵入ですが,仕方ありません。緊急時ですので,お嬢様を見つけて早く退散しましょう。」

アスナとちびせつなは刹那の言葉に頷き,木乃香を探しに静かに散開した。
屋敷内部は人の気配が無かったので,刹那はこの方法はリスクが少ないと踏んだはずだった。
とある部屋で,屋敷の主と出会うまでは。

◇◆◇

明かりのついていない部屋を前に,刹那は立ち止まった。
これまで確認してきた部屋には木乃香はいなかった。
恐らくこれから探る部屋のどこかにいるはずだった。
巧妙に木乃香の気が隠されていた。
焦る気をおちつけ,探索を再会しようとしたとき,部屋の中から刹那を呼ぶ声がした。

「随分と杜撰な侵入方法だね。神鳴流剣士。中へ入ってきてはどうだい?」

相手に刹那らの存在がばれていることを悟ると,警戒しつつ刹那は声を返した。

「杜撰なのは,お互い様だろう。汚い手を使ってお嬢様を‥‥。」
「なんの事かな?近衛のお嬢さんは,自分の意志でここへ来たんだよ。それにキミの出る幕じゃない。」
「お前達の計画は既に露見した。お嬢様を良い様にはさせない。」
「ああ,あの話か‥‥。まぁ,姿を見せなよ。神鳴流剣士。話はそれからだ。」

刹那を挑発するかのように部屋の中から,気が流出する。
その気を感じ,刹那は相手が手練であることを改めて感じた。
全ての場合を想定しつつも,用心深く刹那は部屋へ入っていった。
「はじめまして。神鳴流剣士。お話は伺ってるよ。」
「‥‥何度繰り返せば気が済むんだ。お嬢様は渡さん。」
「別にあの計画のためだけに,近衛のお嬢様にプロポーズした気は無いよ。」
「なっ?!」
「‥‥でも,今の時期にしたのは計画のためかな?」
「どういうことだ?」
「二十歳までに子供を産ませる。それはヤツらとの取引さ。」
「‥‥そして,その子を傀儡に仕立て上げ,お嬢様は用済み‥‥か。」

静かに言葉を続ける刹那だったが,体から漏れる闘志が暗闇の中で刹那を際立たせる。
そして歯音が聞こえそうなくらい,きりきりと歯を食いしばっていた。

「べつに用済みではないさ。かえってあの方には強大な力は邪魔だろう。早く楽にして差し上げたいものだ。」
「欺瞞だ。」
「‥‥彼女を捨てたキミにはわからないよ。」
「!‥‥‥‥」

彼は腰掛けていたソファーから立ち上がり,窓辺に歩み寄って刹那と対峙した。

「驚くことかい?キミが僕のことを探り当てられるほど,難しいとは思わないけど?」
「何が言いたい。」
「特には‥‥それに,ここまできた以上黙って帰るわけでは無いんだろ?」
「貴様を熨して,お嬢様を連れて帰る!!」

先手を取ったのは刹那だった。しかし,その攻撃は優雅に避けられた。
そしてその背後を狙うのは無数のクナイ。

「うぁ!!」

かろうじて致命傷は避けたものの,刹那は無数の傷を負ってしまった。そして,その攻撃の背景に感じる近しい気の操り‥‥。
590名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 00:11:19 ID:eOtfe8w2
連投規制阻止カキコ
「貴様も‥‥神鳴流‥‥。」
「ふ‥‥ん。神鳴流は『武器を選ばず』だろ?」

張り詰めた空気の中で,繰り広げられた気の応酬。
全ての攻撃において,刹那は不利な状況に立っていた。
相手は刹那の命を奪う気配は無かったが,ことごとく体力が削り取られていっていた。
流れ出る血液の量が刹那の気を遠くさせる。

「‥‥もうそれくらいにしたらどうだ?‥‥力量差は歴然だよ。」
「‥‥お前にお嬢様は渡さん。」
「でも‥‥その体でどうやって僕から近衛のお嬢様を取り戻すんだい?」

余裕の笑みを浮かべている様子だったが,時折見せる悲しい表情がひどく刹那の印象に残った。

「意地だけでは強くはなれないよ?」
「お前にかけられる情けはない!!」

切りかかる渾身の一太刀をよけられ,刹那は倒れこむ。
しかし,次の攻撃が刹那を襲うことはなかった。
流血のせいで,気が遠くなり始める。
立ち上がろうとするが,ふらつく足元は力を失い,そして太刀を手落としその場に倒れこんだ。

「お‥‥嬢‥‥さ‥‥。」

遠退く意識の中で,刹那は懐かしい木乃香の気を感じた。

◇◆◇

「木乃香‥‥木乃香‥‥。」
「ん‥‥‥あ‥‥れぇ?‥‥アスナぁ?‥‥」
聞きなれた同居人の声で木乃香は目覚めた。
あるはずがないのに,なぜか見慣れたアスナはそこにいた。

「なんでぇ‥‥アスナぁが‥‥ここにおるん?」
「心配であんた迎えに来たのよ!!」
「だってぇ‥‥連絡したやんか‥‥。」
「問答無用!!近衛家の箱入り娘がこんなことしちゃいけないのっ!!!」

木乃香がまだ半分寝ぼけているのをいいことに,アスナは強引に木乃香を連れ出した。
家主に声をかけていかないといけないという木乃香の意見に一応耳を貸すも,
不法侵入の身分を心配しつつ,木乃香に連れられて主のいる部屋へたどり着いた。
しかし二人は異様な気配をその部屋から感じ,部屋の外で立ち止まった。
暗い部屋からは打撃音のような鈍い音が聞こえてくる。
そして,内部から聞こえるのは二人の声。一人は男性の低く静かに響く声。
そしてもう一つは聞き慣れたトーンの女性のものだった。

激しい音が続いたが,しばらくして静寂が戻ってきた。
恐る恐る二人は内部の様子を探りつつ,家主に声をかけた。

「どうかしはったんですか?」

アスナに連れられた木乃香は,おそるおそる声をかける。
静寂の戻った部屋に侵入したが,暗闇の中でよく様子がわからない。
アスナと木乃香は明かりをつけようとスイッチを手探りで探していた。
その途中で,アスナは足下にあった何かにつまずいて転んでしまった。
その後スイッチにたどり着いた木乃香の手によって部屋は明るさを取り戻した。

「起こしてしまったようですね。すみません。」
「何があったんですか?」
「不法侵入者ですよ‥‥。おや?そちらの方は‥‥確か‥‥。」
「不法侵入者?」

闇に慣れていた目にはこの部屋の明かりはまぶしかった。
目をしばしばさせながら,木乃香は彼の視線の先を追った。

「刹那さん!!!」

アスナがつまずいたのは倒れ込んだ刹那だった。
意識なく転がる刹那にアスナは必死で呼びかける。
アスナと木乃香の目には,無残な姿で倒れている刹那の姿が映った。
アスナの悲痛な叫びに,木乃香の時は一瞬止まった。
アスナの口から発せられたのは、自分が探しつづけた人の名前‥‥。
いなくなったあの日から、ほとんど口にすることはなかったはずなのに‥‥。

「刹那さん!!刹那さん!!しっかりして!!」

繰り返しアスナは刹那の名を呼ぶ。そして抱き起こすが,やはり意識はなかった。
そして,今何故その名前をアスナが口にするのか‥‥。
駆け寄ったアスナが抱きかかえた人影は‥‥。血にまみれた小柄な女性‥‥。
昔の面影の残る,想い人その人だった。

「せっちゃん!!!」

木乃香は、無数の切り傷を負った刹那に慌てて駆け寄る。
傷を受けてから経過した時間は,無情にも木乃香の完全治癒を妨げる。
仕方なく,何とか治せそうな傷から慌てて塞ぎはじめた。
当時よりも上達した魔法だったが,気が動転している木乃香では焼け石に水程度の治癒魔法しか施せなかった。

「どうして‥‥なんで‥‥こんな‥‥」
混乱したまま木乃香は,必死に刹那に止血を施していた。
突然の出来事と流血のショックで木乃香は,周囲を把握できるほど冷静ではなかった。
それでも必死に,あふれ出る血を懸命に止めようと,一心不乱に刹那の傷を手当てしていた。

「あのっ‥‥勝手に入ったことは謝ります。でもっ‥‥木乃香は連れて帰りますから!!」

アスナの剣幕に圧され,彼はやれやれといった表情で承諾した。
アスナは刹那を抱え,木乃香を引きずって庭先に出て,パクティオカードを額に当てた。
ネギと通信するアスナは,急いでこの場を離れたい旨をネギに告げ,
諾という返事とともに光の中に身を投じた。
次の瞬間目をあけるとそこはネギの部屋だった。

「はっ、早く刹那さんを病院へっ。」
「いえ、アスナさん。この様子だと安静にしていれば大丈夫ですよ。幸い命に別状はないようだし。」

ネギが器用に刹那の傷を確認している間に,アスナは木乃香の声がするほうを向いた。

「‥‥‥そや、もう血は止まっとるえ。」

さっきまで取り乱していた木乃香だったが,今は平静を取り戻したかのように刹那の脈をとっていた。

「木乃香‥‥‥。」
「アスナ。せっちゃん,うちらの部屋に運んでもかまわん?」
「えっ‥‥‥ええ,いいけど‥‥。」

木乃香の一言によって刹那はアスナと木乃香の部屋へ移送された。
出血の治まった刹那はあとは気がつくまで安静が必要だった。
部屋に入ると,木乃香のベッドへ刹那は寝かされた。
そっと布団をかけ,木乃香は刹那を見つめたまま微動だにしなかった。
アスナは木乃香の背中をじっと見つめていたが,木乃香は振り向かなかった。
「うちが看病するから‥‥あと‥‥しばらく二人にして‥‥。」
「‥‥‥うん‥‥‥あたしはネギんとこにいるから‥‥。」

言葉少なく木乃香はアスナに言う。
アスナは木乃香のさみしげな声に何も言えず,しばらく二人にするために部屋を出ていった。
木乃香の中で渦巻く混乱は計り知れない。
しかし,今はそっとしておくべきかと,アスナは思った。

「刹那さんをとっちめるのは目が覚めてからね‥‥。」

部屋の外でアスナは一人呟く。しかし,アスナの計画は達成されることはなかった。

◇◆◇

「せっちゃん‥‥‥。」

木乃香は無表情に刹那の名を呟く。
どんな手段でも見つからなかった刹那が,突然木乃香の前に血まみれになって現れたのだ。
必死の止血の甲斐あって,今は刹那の顔色も温かみを取り戻していた。

「あっ,そや。多分あったと思うけど‥‥。」

何かを思い出したように,木乃香はクローゼットの隅から,大事そうに箱を取り出した。
古風な入れ物だったが,中身は乾燥した草の葉のようなものが綺麗に整理され,状態良く保管されていた。
木乃香はその葉を数枚取り出し,キッチンに走った。
戻ってきたときには,漢方独特のにおいのする煎じ汁を手にしていた。
まだ目を開けない刹那の横で,木乃香は湯呑みを手で包み込みながら冷ましていた。
程よい暖かさであることを自分の口で確かめると,木乃香は湯呑みを刹那の口に寄せ,少し口に含ませた。
しかし,まだ意識が回復しない刹那では,それを口に含み飲み下すことはできなかった。
刹那の頬に伝う滴を見て,木乃香は一瞬考えた。
そして,湯呑みに口を付けるとその液体を一口自分の口に含んだ。
木乃香は,まだ目覚めぬ刹那を見つめる。
そしてそっと目をつぶると,刹那の口を自分のそれで塞ぎ,少しずつ刹那の口の中へ注ぎこんだのだった。
刹那の喉が鳴るのを確認する。液体を飲み下した証拠だった。
少しずつ,木乃香は同じ行為を繰り返すことによって,すべてを飲ますことに成功した。
刹那の額をなでながら木乃香は刹那に向けてつぶやいた。

「‥‥昔な‥楓さんに教えてもらったんよ。せっちゃんは絶対切り傷なくならんからって。」
「うちの魔法があるから大丈夫っていったらな‥‥。」
「魔法も万能じゃないからって。知ってて損はないって‥‥。」

刹那の額をなでながら,木乃香は続けた。
視界が徐々にぼやけてくる。一滴,木乃香の胸ではじけた。

「‥‥でも‥‥今必要なんて‥‥なんで‥‥なんでせっちゃん‥‥あそこにおったん?‥‥。」

あふれる涙は止まらなかった。声を押し殺し,木乃香は刹那に問う。

「今まで‥‥どこにおったん‥‥ずっと‥‥ずっと‥‥。」

想いは涙に形をかえ,とめどなく流れ落ちた。まだ刹那は目覚める気配はなかった。

◇◆◇

何度目かの薬草治療の後,緊張と疲れからか木乃香は眠ってしまったようだった。
ふと眼を覚ますと,外は朝もやがかかっていた。
静かに眠っている刹那に手を添え,呼吸と脈と体温を確かめた。
何とか落ち着いた状態を保っているようだ。
愛しげに刹那をなで,そっと口づけようとした時だった。
「そのくらいにしといたほうがいいぞ。近衛。」
「だっ誰?!」

誰もいるはずのないその部屋に,気配一つ現さずに侵入した者がいた。
声に驚き,木乃香は急いで部屋を見渡すと,壁際に長身の女性が立っていた。
褐色の肌に長い髪‥‥。その風貌はかつての級友を思わせた。

「た‥‥龍宮さん?」
「久しぶりだな。近衛。刹那を返してもらいにきた。」

つかつかっと歩み寄り,真名は刹那を抱き上げた。

「ちょっと待って。」
「待ってどうする。お前だってこれ以上どうしようもないだろう。」
「‥‥でも‥‥」

刹那を抱える真名の腕にしがみつき,何とか刹那を行かせまいとする。
しかし,真名に知らされたのは現実の重さだった。

「私はこいつに頼まれているんだ。何かあった時は,骨ぐらい拾ってくれって。」
「まだ死んでないもん。」
「‥‥それは言葉のあやだ。連れて帰ってくれと言われている。」

今の刹那の世話をしているのは自分だと,真名は冷たく木乃香に言い放った。

「‥‥どこへ?」
「それは言えないな。‥‥もう問答はいいだろ?そろそろ失礼するよ。」

真名には拒絶されたが,やはり木乃香は諦めきれない。人生に絶望するくらい離別に嘆き,
再会をあきらめていた想い人を目前にしたのだ。どうして引き下がれるだろう。
想いの絶頂期に手紙一つで自分を突き放し,後片もなく消え失せてしまった元恋人を木乃香は手放す気にはなれなかった。

「ダメっ。やっぱ連れてかんで!」
「‥‥ここで刹那が目覚めてどうする。もうお前とは関係ないんだ。」
「でもっ。うちのためにそんな怪我までっ‥。」
「刹那がそう言ったのか?」

念のためにという思いからか,真名は例の話について木乃香に探りを入れた。

「刹那から話を聞いたのか?」
「何のこと?うちが気づいたときにはもうせっちゃんは気を失っとったんよ。」
「‥‥それならいいんだ。近衛。一言だけ言っておこう。」

何も知らないなら知らないほうがいいだろう。
刹那から京都へ行った旨を聞いていた真名は,後日周囲が動き出すことを察知していた。
刹那から何も聞いていないなら,むしろ今は何も触れないほうがいい。
それに,刹那も木乃香に会ってしまったことを知ったら悔いるだろう。

「今刹那がお前に会えば、きっと悲しむ。そして自分を責めるだろう。」

真名の言葉は木乃香に重く圧し掛かった。

「せっちゃんのために会わんほうがええっていうこと?」
「解釈はお前に任せるよ。」

木乃香の目に涙が浮かぶ。平静を装いつつも言葉はとぎれとぎれになった。

「‥‥せっちゃんには‥‥そのほうが幸せなん‥‥?」

しかし,真名はいつもの調子で冷静に応えるだけだった。
「それも同じ答えだ。お前の解釈に任せるよ。近衛。」
「それでは私は行くぞ。」

あまり長居することはかなわなかった。刹那の意識が回復する前にこの場を離れたい。
そして木乃香に余分な時間を与える前に,真名は姿を消してしまいたかった。

「‥‥せっちゃん‥‥」

小さくつぶやく木乃香の目からは,一滴悲しみの涙が伝った。
やはりこの運命は失われたままなのか,劇的な再会だったが別れはやはり辛かった。
刹那のために木乃香のもとにいないほうがいいという真名の言葉が重かった。
部屋を退室しようとする真名は足を止めて木乃香に言う。
振り向くことはなく声だけが木乃香に送られた。

「近衛‥‥刹那はお前には嘘は吐かなかった。そうだろ?」
「龍宮さん?」
「今も‥‥こいつは変わっていないよ‥‥。」

そう言い残すと,真名は刹那を抱えて木乃香の部屋を去っていった。

木乃香は自分のベッドに視線を移す。すぐ先ほどまで刹那のいた場所。
そっと手で触れると,まだ残っている刹那の温もりを感じた。
涙を湛えたまま,木乃香は刹那が寝ていた場所に体をうずめた。
そして声を殺して泣き続けた。押し殺した嗚咽は誰もいない部屋に響く。
絞り出される声と涙は行き場のない憤りと悲しみにまみれていた。

「せっちゃん‥‥‥せっちゃん‥‥‥。」
「どうして‥‥どうしてうちの傍から離れていったん‥‥。」
「なんで‥‥あそこにいたん‥‥。」
週末の好奇心は単なる旅行ですむはずだった。
しかしそこで忘れてしまいたかった想いに再び出会った。
この出会いが偶然かどうかなんて誰にもわからない。
けれど木乃香は,探し求めていたもののかけらを見つけた。

どうしたらいいのだろう。木乃香は混乱の中にいた。
今は気持ちが落ち着くまで泣き尽くせばいい。
朝日が差し込み始めた部屋には,昨日までとは違う新たな空気が満ち始めていた。

◇◆◇

そっと部屋に入ってくる人影があった。他の誰でもない。
木乃香を気遣うその優しい気配はアスナだった。

「‥‥木乃香‥‥刹那さんは?」
「‥‥せっちゃんなら‥‥おらんよ‥‥。」

新聞配達から帰ったアスナは木乃香に訊ねた。
さすがにあの傷でどこかへ行くとは思わなかったのか,刹那の姿がないことを疑問に感じたのだ。
でも,木乃香の返事はアスナの予想とは反対で,刹那が本当にいないことを告げるものだった。

「なぁ‥‥アスナ‥‥‥。」

じっと座ったまま,木乃香は微動だにしない。刹那が寝ていた場所を見つめたまま,動こうとしないのだ。

「どうしたの?」

アスナはまたいつかみたいに取り乱すのではないかと内心緊張していた。
しかし,木乃香の声は凛としたものだった。静かに尋ねてくる木乃香の声が響いた。
「うちって‥‥あきらめ悪いんよ‥‥。も一回だけ‥‥協力してくれへん?」
「木乃香‥‥。」
「きっとせっちゃんの行方は今でも掴めんと思う。でもせっちゃんはうちの前に現れたんや。」

木乃香は,一人うんと頷く。

「日本にいるかすらもわからんかったのに‥‥。うちのために‥‥血塗れになって‥‥。」

木乃香の手が震える。そしておもむろに立ち上がり,アスナのもとに駆け寄った。

「きっとせっちゃん近くにおる。それに龍宮さんなら探せるかもしれへん。」
「龍宮さん?」
「そや。今朝早く,龍宮さんが来てな,せっちゃん迎えに来たゆうとったん。」
「龍宮さんね‥‥。」
「せっちゃんがだめなら,龍宮さんや。うち諦めん。‥‥ううん。諦めきれない。せっちゃんにまた会えた。今度こそ‥‥確かめたいんよ。」

聞きたいことは数えきれないくらいあった。それは木乃香だけではない。
アスナにだって,問い詰めたいことは山のようにあった。
昔とは違う,勢いのある木乃香にアスナも影響され,再び刹那探しに挑もうと決意する。
目の前に可能性が転がっているのに諦めるわけにはいかなかった。

「わかった。木乃香。もう一回挑戦しよう!絶対刹那さん見つけ出してとっちめてやるんだから!!」
「その前に‥‥アスナ‥‥。」
「なによ。いい感じにノってきたのに〜。」
「うちに‥‥教えて。知ってること‥‥全部‥‥。昨日なんであそこにおったんかとか‥‥な?」

にこやかな笑みの裏側の黒いオーラを感じてアスナは思わず後退りしてしまった。しかし,微笑みのまま問い詰められて
逃げ場を失い,どうにも避けられない状態だった。刹那に口止めされていたのは,例の事件のことだけだ。
余分なことは知らなくていいと,木乃香が人間不信に陥るようなことになってはならないという配慮からだった。
その時アスナは刹那自身のことについても問い詰めようとしたが,それはうまく逃げられてしまった。
アスナの心の奥に,ふつふつと刹那に対する感情が煮えたぎる。
かつてとった刹那の行動が親友としてショックだったのだ。悲しんで怒り狂った思いは木乃香と同じだった。

「‥‥いいわ。この責任は刹那さんに取ってもらうから。」
「ええ感じや。頼もしいで。」

二人は,本格的に計画を実行すべく,そして情報を共有するためにじっくりと話し合いを決め込むこととなった。

◇◆◇

「ね〜ネギ。」
「なんですか?アスナさん。」

高校に進学して,部屋が別々になったけれど,アスナとネギはお互いの部屋を行き来していた。
二人はパートナーの関係にあったが,プライベートでも進展があったようだった。
数え10歳で教職に就いたネギも,御歳14歳,教職経験4年目というベテランになりつつあった。

「あんたさ〜。今龍宮さんが何してるのか知ってる?」
「隊長が?ん〜そうですねぇ。隊長のことは‥‥確かランクBくらいだったかなぁ?」

自室で机に向かって何やら物書きを進めていたネギは,その手を止め,何やら考え込んでいた。

「ランクBってなによ?」
「守秘義務範囲です。ちなみに前にも言いましたが,刹那さんのことはランクSなので, 知ってるってことも本当は秘密です。」
「‥‥それは,だから,木乃香にもネギは知らないって言ってあるわ。それにあんたが問い詰められた時もそうだったし‥‥。」
「で‥‥隊長のことでしたね。今も麻帆良学園に残っていますよ。」
「え?!」
「隊長は,スナイパーの腕を乞われて学園にいるんですが,今では情報収集など探偵めいたこともされてるみたいです。」
「へぇ〜。あんた良く知ってるわねぇ〜。」
「あはっ,最近銃を習っているんですよ。弾道学は魔法の矢の命中率を上げるのに役立ちますから。」
「そいじゃさ‥‥住んでる場所とかって‥‥知ってたりする?」

アスナは胸の内の緊張を隠しながら,平静を装ってネギに問いかけた。
その様子に,ネギは若干の不自然さを感じたが,他でもないアスナの問いかけなので正直に答えることにした。

「う〜ん。僕もよく知らないんです。でも,いつも同じ所で分かれるのでその近くかも‥‥。」
「えっ,えっ,どこどこ??」
「それはですね‥‥。」

ネギはアスナにその場所を教えた。そのエリアの近くには,居住エリアがいくつかあり,そのあたりの一つかもしれないと
予想がたつ。しかし,そこは学生街とは正反対な位置。学生があまり寄りつかないエリアだった。

「‥‥今度はいつ会うの?」
「最近少し忙しいらしいので,予定入ってないんです。」
「そう。」

せっかく手に入りそうだった情報だったのだが。
膨らんだ期待がおおきすぎて,アスナからは深いため息が出た。

「‥‥変なアスナさん‥‥。」

仕方ないので,ネギに次のコンタクトが取れたら教えるようにと頼みこんで部屋を後にした。

◇◆◇

見慣れた天井が視界の向こうにぼやけて見えた。口の中は薬草の独特な味が残っている。
だんだんはっきりとしてきた視界を,今度は自分の周辺に向けた。
良く見知った,3年前に転がり込んだ真名の部屋。
でもそこには,同居人の姿はなかった。体中に鈍い痛みが走って体を起こすことができない。
痛みに悶えていると,鍵とドアの開く音が聞こえた。
「‥‥やっと目覚めたか‥‥。」
「龍宮‥‥私はどうしたんだ‥‥。」

刹那の近くまで真名は近づき,額に手を当てた。

「どこまで覚えているんだ?っと‥熱はいいみたいだな。」
「湖畔の別荘に侵入して‥‥。」

刹那はそう言いかけて,自分の姿を見た。全身が包帯に包まれていた。
そうでないところにも,あちこち切り傷が散っていた。

「‥‥そうか‥‥私は‥‥奴に‥‥負けたのか‥‥。」

強かった木乃香の見合い相手を思い返した。やつも神鳴流‥‥だった。

「そうだ‥‥私はどうやってここへ?お前が連れ帰ってくれたのか?」
「ま‥‥そんなとこだ。」

一息ついて,刹那は大切なことを思い出した。

「そうだ,お嬢様は!それにアスナさんは?!ご無事か?」
「無様だな‥‥お前が負けて,主の安否を気にするなんて‥‥。普通なら護衛が死んだ時点でアウトだ‥‥。」

真名の言葉を聞いて落胆する刹那を可哀想に思ったがこの世界で生きていく仲間として事実を認識させる必要があった。
そして,ことの真実は巧妙に伏せ,真名は木乃香とアスナの安否だけを刹那に伝えた。

「そうか,お嬢様の貞操もご無事か‥‥。」
「ゆっくり体を治せ。ヤツも今回のことがあったから早々派手なことはしないさ。」

真名は煎じてあった薬草を刹那に差し出す。
「これ‥‥お前だったのか?」
「黙って飲め。」
「いや,もういい。」
「‥‥仕方ないな。」

真名はそれを口に含み,刹那のそこに押しあて,無理やり刹那の口の中へ流し込んだ。
いきなりの行動に刹那は抵抗できず,それを飲み干す。そして次の一口の準備に入る真名の隙を見て真名を振り払った。

「ぷはっ,やめろっ。」
「だめだ。」

結局刹那は数回に分けて真名にその薬を飲まされることとなった。
しかし真名に塞がれた唇の感触に違和感を感じる。
刹那は自分の唇にそっと指を添えながら真名に尋ねた。

「お前‥‥ずっと?」
「‥‥‥ああ。」

真名の言葉にはウソは感じない。でも体が違うと言っていた。
懐かしい唇の感触‥‥。昔,はじめて体に刻んだ他者の温もり‥‥。
柔らかく慈愛に満ちたそれは,触れるだけで刹那を癒していた。

(‥‥お嬢様‥‥。)

刹那は自分の唇をなぞる。
会うはずもなく,触れることもないはずの木乃香の記憶に刹那は戸惑いを感じた。
きっと真名の感触を夢見心地に感じて,昔の記憶と繋がったにすぎないのかもしれない。
でも嫌にそれが心地よく,刹那は安らぎを感じていた。

◇◆◇
あれから数日が過ぎた。刹那も幾分落ち着いてきた。痛みも引き,体を起こすこともできる。

「刹那‥‥これで最後だ‥‥。」

私は手に例の煎じ汁をもって刹那に手渡す。しかし,嫌がる刹那はそれを飲もうとしない。
やれやれとため息をつき,私は動きの緩慢な刹那を捕らえて片手で押さえ込んだ。
煎じ汁を口に含み,刹那に口移しで飲ませる。
嫌々する刹那を抑え込んだまま,私はそのまま刹那が飲み干すまで解放しなかった。

「‥‥っはぁ‥‥。もう‥‥嫌だ‥‥。」
「だから最後だって。」

刹那の潤んだ瞳と濡れた唇を間近で捕らえる。
暫くの間刹那は安静が必要だったので,私は今まで刹那を看病し続けていた。
刹那を連れ戻って,もう一週間が経とうとしていた。

「近衛の長から連絡があった。」
「なにっ?」
「‥‥近衛の婚約は近衛の長によって破棄されたそうだ。」
「‥‥お嬢様には?」
「近衛は何も知らされていない。婚約破棄にずいぶんと気落ちしたらしいが‥‥。」
「‥‥そうか‥‥。」

刹那は寝返りを打つと,壁側に向き,私に背を向けた。

「‥‥相手が強かったのは事実だ。お前にお咎めはない。むしろこの計画を見つけ出したことを褒めていた。」

刹那は背を向けたまま,力無く声を漏らした。

「何が褒められることがある。私はお嬢様を護るどころか,完膚なきまでに叩きのめされたんだ。長に会わす顔がない。」
覇気のない声に私は何も答えることはなく,必要事項だけを伝えた。

「‥‥怪我がよくなったら,一度学園長と近衛の長に会うようにとの伝言だ。」

無言のまま,刹那は私の言葉を受け止めていた。
悔しさに身を震わせる刹那に,私は懺悔の念が絶えなかった。
刹那の今のパートナーは私だ。タッグを組む仕事において相手の信頼は欠かせない。
そして刹那は私の調査の腕を信用してくれている。
命をかける仕事に失敗は許されない。しかし,私は自分の力を過信していた。
軽い仕事だと,戦場を経験している私にとって
この仕事の軽さ――命の危険が薄いことを――を甘く見ていたのかもしれなかった。

無表情のまま,私は自分の洩らす言葉を他人事のように聞いていた。

「‥‥すまない。まさか神鳴流だとは‥‥。私の調査不足だ,刹那。」

無言のまま背を向けている刹那に私はそっと触れる。
刹那の温かみを感じ,私はやや安心する。
一歩間違えばこの温もりは失われていたのだから。

「お前を‥‥危険な目にさらしてしまった。‥‥私の落ち度だ‥‥。」
「‥‥お前のせいではない‥‥私が甘かったのだ。」
「‥‥しかし‥‥。」
「すまん‥‥独りにしてくれ。」

私は静かに立ち上がり,部屋を後にした。私が部屋を出て行くまで,刹那はずっと背を向けていた。
私はドアを静かに開け,外へ出た。静かにドアを閉めるとそこへ寄りかかる。
しばらくすると,ドア越しに刹那の押し殺した嗚咽が聞こえた気がした。
負けたことに対する悔しさか,任務を全うできなかった悔しさか,それとも‥‥。
なんにせよ刹那を落涙させたのは私だ‥‥。
昔の私なら,感情など捨てて冷徹に仕事をこなすだけだっただろう。おそらく刹那も‥‥。
私は表に出て寒風吹きすさぶ中,麻帆良中学のある方へ向かっていた。
特に意味はない。昔を懐かしむつもりもなかった。しかしなぜか足はそちらへ向いていた。

「‥‥どこで道を誤ったのかな‥‥。」

力ない自分が,愛する者を守れなかった自分が‥‥。
言いようもなくただ悔しさだけが私を支配していた。
散々味わった寂しさから二度と繰り返すまいと力を身に付けたはずなのに。

「隊長!!どうしたんですかこんなところで?!」

私を変えた声が聞こえた。いつの間にか学園まで来ていたようだ。
あの頃,彼は小さい体で一心に強さを求めていた。誰かを護るために,自分の大切な人を助けるために。
何かを叫びながら一生懸命にかけてくる姿を遠くに眺めていると,私の中を様々な記憶がよぎった。
数年たってもまだ幼さを残していたが,ずいぶん成長したネギが駆け寄ってきていた。

「‥‥久しぶりだな‥‥また修業を始めようかと思って‥‥。」
「電話でよかったのに‥‥わざわざ来てくださってありがとうございます。」
「いや‥‥私も‥‥腕が鈍ってしまうから‥‥ついでだよ‥‥。」

私にも彼みたいに純真に気持ちをぶつけられたら‥‥と柄にもないことを考えてしまう。
次の修行の予定を立てると,私はそのまま懐かしい校舎を後にした。
そして,追い出された自分の家へと戻る道をたどる。
刹那も落ち着いた頃だろうか。

愛しい恋人を想う。決して愛されているわけではないとわかっていてもあいつは私を必要としていると感じていた。
刹那は捨てられない近衛への感情をどう昇華していいのか分からないのだ。
愛されることに慣れていない者がどう愛を確かめ合えばいいのか,きっとそれすらも知らないのだろう。
私は‥‥いつからか刹那に想いを寄せていた。
逞しい精神力と意志の強さ。どんなことがあっても
曲がることを知らない純真さは私には無いものだった。
どんなことをしても私はあいつを自分のものにしたかった。

「後悔なんてしていない。今は私のものだ。」

刹那の近衛への想いはきっと尽きることはない。近衛の刹那に対する想いもおそらくは‥‥。
でも刹那はそれでも二人の運命を引き裂いてきた。
何があったかは知らないが,別れたその日,新居の整理をしていた私の元に刹那は転がり込んできた。
私を利用して済まないと一言こぼしたことがあったが,憎からず思っていてくれていたことが嬉しかった。

私は冷たい外気の中で深呼吸をすると,深くため息をついた。
珍しく辺りをうろうろしているうちに色々なことを考えていたようだ。
ぐちゃぐちゃになった頭の中を一気に整理する。
私が何を考えたところで,何かが解決するわけでもない。

私は顔を叩くと,何事もなかった顔をして部屋に戻ることにした。
私は任された仕事をただ完璧にこなすだけだと再び気持ちを入れ替える。
泣き言をいう暇などかけらもないのだと自分に言い聞かせるのだった。

◇◆◇

「木乃香!木乃香〜!!龍宮さん捕まえたよ〜!!」

アスナは慌てて部屋に駆け込んできた。
自分の机に向って元気なく座っている木乃香は徐に振り返った。

「ほらぁ。また落ち込んでる。」
「せやかて‥‥。」
「婚約解消は木乃香のせいじゃないの。あんな奴やめといて正解よっ!」
610名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 07:27:10 ID:Jf3IUz6j
これはいい
611名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 10:02:14 ID:HQwidqr2
まだまだ続きそうだな。いいぞ!もっとやれ!
612名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 11:50:44 ID:eOtfe8w2
ここで止められたら泣くぞ
613名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 12:20:44 ID:CsdthwvZ
最高です!続きwktk!
パタパタと荷物を置いて着替え始めるアスナに,木乃香は温かい飲み物を用意していた。
少し熱めのマグカップで暖をとると,アスナは龍宮の情報を木乃香に伝えた。

「ネギ君に悪いことしてもうたなぁ。」
「言ったでしょ。今度こそ刹那さん捕まえるんだから。」
「‥‥でも,うちのせいで‥‥。」

この間の威勢はどこへ行ったのか,木乃香はしゅんとしてアスナに言った。

「いい?ネギはアタシに協力してるの。木乃香は直接関わってないの。」
「せやかて‥‥。」
「刹那さんに‥‥会いたくないの?」

飲みごろになったココアを一口飲み,アスナは木乃香に詰め寄る。

「‥‥会いたいえ‥‥会いたいけど‥‥‥。」
「じゃあ,覚悟決めなさい。木乃香が辞めてもあたしは諦めないからね。」
「アスナぁ‥‥。‥‥わかったえ。」

木乃香は飲みかけのマグカップを弄びながら,アスナに言った。

「うち‥‥いろんな人に迷惑かけとるな。」
「まぁ‥‥なんて言うか‥‥そういうものよ。」
「でも,何でいつもうちは蚊帳の外なんやろ?婚約破棄の理由だってうちは何も知らされてへんえ。」
「二人で外泊したのが気に入らなかったんじゃないの?」

木乃香の静かな剣幕にアスナは知らないふりを決め込む。どうして言えるだろう。
ただの外泊旅行のはずが,その裏で魔法界を揺るがす陰謀が画策されていただなんて。
「それなら,うちが怒られなっ。なんやおかしいんやない?いきなり婚約破棄やなんて‥‥。」
「なに木乃香?意外と勿体無いなんて思ってるの?」
「アスナぁ。そういうわけやないんやけど。」
「まっ,まんざらでもなかったみたいだしね〜。でもやめときなさい,あんな男。」
「あの人のこと悪く言わんで。そないに悪い人やないえ。」
「悪人よあんな奴。それに今木乃香は刹那さんのことで一杯じゃない。丁度いいんじゃないの?」

木乃香はアスナの言葉に押され,少しの間黙りこんだ。
一口残ったココアを口に含み,ぼそっと呟いた。

「せっちゃん‥‥会ってくれるやろか?」
「会う会わないは刹那さんの問題じゃない。木乃香,あんたの問題よ。」
「でも‥‥。」
「少しぐらい強引じゃないと,また逃げられるわよ?」

カタカタと窓の向こうで飲み捨てられた空き缶が音を立てて転がっていった。
秋も過ぎ,乾燥した木枯らしが街を包んでいた。

◇◆◇

少し時間のたった印象を受ける手紙。今,木乃香の手に握られていた。
刹那が木乃香に別れを告げるために置いていった手紙だった。
木乃香はそれを片時も手放すことはなかった。

「うち‥‥‥諦めんからね。」

そう言って木乃香は引き出しにその手紙を戻すと,静かに玄関を出ていった。
今日は龍宮がネギと会う日,この日のためにアスナと木乃香は真名を捕まえるポイントを絞りこんでいた。
念のため,アスナと木乃香は別々の場所に向かう。尾行を捲かれたのは一度や二度ではなかったからだ。
落ち葉の散った後の銀杏並木を眺めてから木乃香はそっとその木陰に身を寄せた。
季節が秋ならばそこは黄金の並木道。刹那とそこを通ったことも数えきれないくらいあった。
しかし,今はその葉もなくなり身を切るような北風が残った木の葉をころころと転がせていた。

息をひそめて,木乃香は真名の通りかかるのを待った。
しばらくすると真名が差し掛かかった。
いつもなら通りかかった後,次の瞬間消えてしまうかのように尾行をまかれるのだが,今日はそのまま変わらずに足を進めていた。
タイミングを逃さず捕まえようと木乃香は身構えた。

「‥‥何の用だ。」

しかし,その構えもフライングに終わる。
真名は歩みをやめ,木陰に潜む木乃香に声をかけたのだ。

「いるんだろ?そんなところで隠れているつもりだろうが,丸見えだ。」

しぶしぶと木乃香は真名の前に出た。

「‥‥毎回何の用なんだ。お前が私に用があるとは思えないが?」
「‥‥せっちゃんに‥‥会わせて‥‥。」

真名は木乃香に視線を合わすことなく,その言葉を無視した。

「‥‥どこから私の動向を探ったのかはあらかた見当がつく。」
「‥‥。」
「自分のために,元担任をはめたか‥‥。っと,今は親友の恋人だったな。」

真名は嘲笑を浮かべ,木乃香を横目に見つめた。そのしぐさに木乃香は身を切られる。
しかし,諦めるわけにはいかなかった。
「お願いや,龍宮さん。せっちゃんに会わせて。一目でいいから‥‥せっちゃんに‥‥。」

震える唇で木乃香は懇願する。しかし,木乃香のその様子を眺めたまま,真名は姿勢を崩すことはなかった。

「今更会ってどうする。もう済んだことだ。」
「済んでないえ。せっちゃんは‥‥黙ってうちの前から消えたんよ。うちの中では終わってなんかいないんよ。」
「‥‥あいつの方もそうだと言うのか?」

木乃香はその言葉に体が凍りつく。その不安定さを見逃すことなく,
真名は木乃香に詰め寄った。そして顎をしゃくりあげ,
木乃香の視線を自分に向けさせた。真名の強い視線が木乃香の目に向けられた。

「あいつも同じだとなぜ言える?お前のもとを自分から去ったんだぞ?」
「‥‥そんなの‥‥わからんえ‥‥。でもうちはそう信じとるんよ。」
「お前が思っているだけだ。」

真名の強い視線に射抜かれ,木乃香はふらふらと頼りなく立ち竦んだ。
手を離し,その場を去ろうとする真名に向かって,木乃香は再び声をかける。

「じゃ‥‥一つだけ教えて。」
「‥‥なんだ‥‥。」
「けが‥‥怪我の具合は?せっちゃん元気になったん?」

真名は背を向けたまま,木乃香の言葉を受け取ると,そのまま言葉を返した。

「‥‥まだ生きているよ。起き上がれるようになったところだ。もうしばらくすればまた動き回れるだろう。」
「そか‥‥。よかった‥‥。」
「‥‥お前の応急処置が効いたようだな。‥‥そうだ。近衛,なぜおまえあの薬を持っていた?」
「薬?‥‥あぁ。‥‥前に楓さんにもらったんよ。せっちゃん切り傷絶えんからって。うちの魔法じゃどうにもならないこともあるからって。」
「楓が?‥‥そうか‥‥。あいつが‥‥。」
木乃香に背を向けたままだったが,一瞬真名の背中から厳しい雰囲気が和らいだ気がした。
その雰囲気のせいか,木乃香も会話を続けた。

「‥‥せっちゃん‥‥龍宮さんといるん?」
「‥‥‥。」

真名は何も答えなかったが,木乃香はそれを諾と解釈した。

「せっちゃん‥‥いるんやね?‥‥麻帆良に‥‥ここに‥‥。」

真名は何も言わない。何も答えない。けれど,木乃香にはそれで十分だった。
無事で生きていること,生きて麻帆良にいることがわかっただけでも十分だった。

「もう会うこともあるまい。お前はこのまま刹那が望んだように,陽の当たる道を進め。」
「陽の‥‥当たる道?」
「じゃあな。身辺には注意しろ。自分の身の上を弁えて‥‥な。」

立ち去っていく真名の姿を木乃香はじっと見つめていた。
真名の言葉を何度も反復し,その真意を探るが‥‥木乃香には皆目見当もつかなかった。
遠のく後姿が最後の望みを断とうとしている。
しかし,これで終わったわけではない。
麻帆良に,自分のそばに刹那がいることに確証を得た木乃香には以前のような絶望感は漂ってはいなかった。
いつかまた会える。そんな予感が感じられた。
何も根拠はなくとも,木乃香の胸には小さいけれど希望の炎が灯された。
真名の去っていった方角と逆に木乃香は歩みを進める。親友の待つ自室へ向って。
その足取りは決して重いものではなかった。
”逃げられちゃった。”と親友に告げる言葉も,決して悲しいものではなかった。
傍にいる。同じ空の下に刹那がいるという事実が木乃香の身を優しく包んでいた。

”いつでも‥‥あなたをお護りいたします‥‥”
(せっちゃんの言葉‥‥嘘やなかった。ずっとうちのこと‥‥)

木乃香は再び古びた手紙を手に取り,そして大事にもとへ戻した。
あの時から時間は進んでいない。でも揺らぎかけた刹那への信頼を木乃香は取り戻せたようだった。

◇◆◇

木乃香の携帯が鳴る。アスナに気づかれないようにそっと手にとると,急いで部屋を駆け出した。
まだ外は明るい。あの日から数か月経ち,外は冬の装いを強めていた。

「はぁっ‥‥お待たせしてすみません。」
「待ってないよ。落ち着いて。」

相変わらず優しい顔で彼が待っていた。
この数か月色々あって木乃香の周りも激変していた。
婚約は木乃香の返事を待つまでもなく白紙になり,理由もわからずこの話は流れてしまった。
詠春がこの話を断ったことを,木乃香はしばらくしてから人伝に知った。
近右衛門は深く追求しなかったが,様子を見ることで合意したらしい。
当人である木乃香には何一つ知らされず,会うことすら許されなかった。

連絡を取ることも当然許されず,相手も自粛していたのか,携帯に連絡があるのは久しぶりのことだった。

「久しぶりだね。以前に電話して以来だったかな‥‥?」
「あっ。あのときはすみません。部屋で出たらアスナに携帯取り上げられちゃってなんだかひどいことを‥‥。」
「まぁ,あんなことのあった後じゃねぇ‥‥。仕方ないんじゃないかな?」

二人は,寮から少し離れた公園に来ていた。
冬ともなると人通りも少なくなり,静かに木の葉だけがころころと遊んでいた。
ベンチで並ぶ二人。彼は寒かろうと温かい缶コーヒーを買って木乃香に手渡した。
木枯らしの中で二人並んでベンチに座ると日差しが暖かかった。
「あの‥‥。」

木乃香は沈黙を破り言葉を続ける。しかし,続く言葉はなかなか出てこない。
聞きたい。刹那のこと‥‥あの日のこと‥‥どうして急に会ってはいけなくなったのか‥‥。
大事なことはいつも蚊帳の外。自分のことなのに自由にならない。
絡めとられた手足を必死に動かしてもがいてきた。
そんな自分をうまく表現する言葉が見つからず,戸惑ってしまっていた。
そんな木乃香の表情から何かを感じたのか,彼は口を開いた。

「知りたいのかな?色々‥‥。でも知らなくてもいいことなんじゃないの?」

見透かされた一言に木乃香は身を震わせた。
しかし,その一言で自分の気持ちにけじめがついたようだった。

「教えてください。どうしていつもうちだけ蚊帳の外‥‥。自分のことなのに‥‥。」

まだ熱かったが,木乃香は缶を握り締めて言った。

「何が知りたいの?婚約破棄の理由?それとも‥‥。」

彼はいったん言葉を切ると,不敵に微笑んで言った。

「あの神鳴流剣士のこと?」

はっとした表情で木乃香は顔をあげ,彼の方を向く。
彼は湛えていた不敵な笑みを消し,いつも通りの表情を木乃香に返した。

「知ってるんですか?せっちゃんのこと‥‥。」
「ええ。まぁ。」
「なんでもいいです。知ってること教えてください。」
「‥‥ご希望なら‥‥会わせて差し上げますよ?」
「なっ‥‥!!」

突然の発言に木乃香は驚きを隠せず,唖然とした表情を見せていた。
腕を組み,何かを考え込むようなしぐさを彼は木乃香に見せると,周囲から見えないように何かを取り出し木乃香に手渡した。

「僕の言ってることが嘘でないことの証明にこれを差し上げましょう。」

小さいレンズのような小物を手に取り,木乃香は首をかしげる。
様々なマジックアイテムにも目がない木乃香であったが,その道具を知ることはなかった。

「なんなんですの?これは。」
「隠密の術で姿を消しているものが見える道具です。ただ簡単なものなので式神程度しか見えないでしょう。」
「式神?」
「あなたの良く知る物が見えるかもしれませんよ?」

「まあ騙されたと思って使ってみてください。」と使い方をレクチャーし,彼はその場を後にした。

「もし,あなたの望むものが見えたら僕のこと信じてくれますね?」

彼はそう木乃香に言い残し,いい返事を待つと言って去っていった。
不思議な思いに浸る木乃香だったが,裏腹に胸は高鳴っていた。
もしかしたら刹那に会えるかもしれない。
しかし誰一人そのようなことを口にしたものは今までにいなかった。
まだ半信半疑だけれど,不思議と彼の言葉にウソは感じられなかった。

ごくっと唾を飲み込むと,木乃香は教えられた通り手渡されたアイテムを使った。

”何かいるような気配がするほうへ向けて呪文を唱えます。”
教えられた文言を口にする。木乃香も時々感じていたのだった。
何かがいる気配を。しかしなにもいるはずもなく,痕跡もない。
もしかしたらと思って木乃香は試してみたのだった。

自分の膝の上,特に重さを感じるわけではないけど何か気配がする。
それは木乃香が一人でいるときによくあることだった。
恐る恐る木乃香はアイテムを通して自分の膝の上を覗き込む。

「あっ!!」

予期しない姿を見て木乃香の口から驚嘆の声が漏れた。
木乃香の膝の上には,よく見知った式神,ちびせつながいたのだ。

小さな背中を木乃香に向け,ちょこんと座って小さな刀の手入れをしている。
小さいなりに刹那のしぐさをよく反映した様子がひどく懐かしかった。
何と言い表していいのか複雑な感情を抱きながら木乃香の視界は次第に揺らいでいった。
湛えた涙が一粒,膝にしみを作る。

涙のしずくが落ちるのに気がつくとちびせつなは木乃香の方を見上げた。
急変した木乃香に戸惑っているのか,口をポカンとあけて木乃香を見上げていた。
そして木乃香のまわりをひょこひょこと移動しながら様子を窺う。
ところがどの位置に移動しても,木乃香の視線からちびせつなの姿が外れることはなかった。
ちびせつなはいつもと違う木乃香の様子に頭を捻る。
そして恐る恐る木乃香を見つめ直した。

「ちびせつなちゃん‥‥久しぶりやね‥‥いつからおったん?」
「ひぇ〜〜!!こっこっ木乃香お嬢様!!私が見えるんですか?」

驚き慌てふためくちびせつなの姿を楽しそうに見つめ,
木乃香は涙をぬぐって嬉しそうに笑みを浮かべた。
「そうみたいや‥‥。あっ!逃げんで。いかんといて。」

慌てて飛び去ろうとするちびせつなを木乃香は呼び止めた。
飛び去ろうとしていたちびせつなは,木乃香のその声に呼び止められ,黙って振り返るとしぶしぶと留まった。

「もしかして‥‥せっちゃんにばれてまう?」
「いえ‥今の私は”すたんどあっろーんもーど”なのでしばらくは大丈夫ですけど‥‥。」

両手を伸ばしてちびせつなを呼ぶ木乃香の元にちびせつなはしぶしぶ舞い降りる。

「おいで‥‥ちびせつなちゃん‥‥。」

そして誘われるようにちびせつなは木乃香の胸元に沈み込んでいった。
温かいぬくもりに包まれ,本体よりも刹那の心が素直に現れた式神は,ぽろぽろと涙をこぼす。

「うわ〜ん!!木乃香お嬢さま〜〜!!」

ずっと傍で見守ってきた。本体とともに,本体の代わりに‥‥。

「ちびせつなちゃん‥‥‥‥。」

木乃香にしがみついて泣きじゃくるちびせつなの頭を優しく撫でてちびせつなの名を呼ぶ。
決して責めることはない。優しい空気が二人を包んでいた。

◇◆◇

「じゃあずっとうちのこと‥‥?」

落ち着いた二人は,言葉少なに会話を始めていた。刹那には直接感応しないとはいえ,
ちびせつなは刹那の式神なのだ。木乃香とちびせつなの接触を刹那が見逃すはずはない。
624名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 12:55:22 ID:eOtfe8w2
連投規制阻止カキコ
「はい〜。でもまさかお嬢さまが隠密の術をお破りになるとは思いませんでした〜。」
「術が破られたことは本体も知っていると思うので,私暫くお嬢様に会うことはできません〜。」

愛らしいちびせつなとの再会に頬の緩んだ木乃香だったが,その言葉を聞いて再び影が差す。

「せっちゃん‥‥随分とうちのこと‥‥嫌ろうてるんね‥‥。」
「あっ‥ちっ違いますぅ〜〜。そうじゃないんですぅ〜。事情が‥‥あ‥‥ガガッ‥‥ダメ‥‥。」

何かを言いかけたちびせつなの姿にかすれが生じた。
声も途切れ途切れになる。

「こ‥‥のか‥おじょう‥さま‥‥だいす‥‥プッ。」

木乃香に伸ばされた小さな手が忽然と消えた。
少しの痕跡も吹き飛ばそうとするように風が吹き抜ける。
木乃香の長い髪が風に揺れた。

落ち着いた空からはらはらと舞い降りてくるのは人型の紙。
手元に落ちてきたその紙をじっと見つめると,また涙が溢れてきた。

いつまでも,どこまでも翻弄される。
置き手紙一つで自分のもとを去っていったくせに,分からないようにずっとそばにいたなんて。
自分のことを見守っていてくれたないんて。
そんなことも知らずに,ずっと自分は悲しみに暮れていた。
いや,自分だけじゃない。アスナだって,他のみんなだって‥‥。

今も,消えた悲しみを癒していたら,刹那が現れた。
そしてまた姿を消し,ぽろぽろとその痕跡だけを残していく。
遠く感じていた目的地は意外と近いところにあるのかもしれない。
木乃香は何としても刹那に会いたかった。
ちびせつなの様子と,真名の言葉‥‥。
何が真実か,何を信じていいのかもう木乃香にもわからなかった。

◇◆◇

「どうしたの?木乃香?」

得意な味噌汁をぐつぐつと煮立たせたまま,ボーっとしている木乃香にアスナは声をかけた。

「へ?‥‥なに?」

何回か目の呼びかけに,やっと木乃香は気がつく。
いつもは集中して煮立たせることのない味噌汁を,今日はどうしてぐつぐつやっているのかとアスナが問えば,木乃香は慌てて火を切る始末。

「‥‥。」

しかしまた,ぼんやりとして今度は湯呑にご飯をのせようしていた。

「ちょっっ!!ストップ!!」

そんな木乃香の様子を見咎め,今日の食事番はアスナが交代した。
交代もなにも後は並べるだけなのだが。

気に病むことが続いたせいで,木乃香が気を落としていると思い,アスナは色々と励まそうとする。
しかし,木乃香は頷き返事はするものの,その脳裏は別のことを考えていた。

「アスナ‥‥。堪忍な‥‥。」

じっと見つめたかと思うと,木乃香はアスナに一言だけ告げた。
「な‥‥なによ。改まって‥‥。」
「ん‥‥なんでもあらへんよ。」
「そう。‥‥早く元気出しなさいって!」

今日の片付けは全部アタシがやるからとアスナは張り切って食器を片付け始める。
カシャカシャという食器の擦れる音と,時々激しく床に落ちる音がする。
明日までに同じ食器がどれくらい残っているかあやしいところだったが,木乃香にはそれがなぜか嬉しかった。
悪戦苦闘しているアスナを優しい視線で見つめて,もう一度木乃香はアスナに「堪忍な‥‥。」と呟いていた。

それがアスナに聞こえることはなくても,木乃香にはそれだけ伝えておきたかったのかもしれない。
それは,これから自分がしようとすることについての懺悔の気持ち。
アスナの助言を裏切ること,また迷惑かけてしまうことだけははっきりとしていたから。

◇◆◇

「ほんまに,せっちゃんに会わせてくれはるんですか?」
「僕の言う通りにしてくだされば,必ず会えますよ。」

これから日も暮れようとする午後,木乃香は一人で彼と向き合っていた。
あの日以来,彼に会うとなるとアスナは反対し,木乃香を止めるために大騒ぎになる。
気づかれないようにそっと抜けてくるのも,木乃香には一苦労だった。
でも,誰にも止められたくない。不意に現れた好機に木乃香は揺れていた。

彼はにっこりとほほ笑んだまま,木乃香の肩を抱き寄せる。
傍から見れば恋人通しが寄り添うように見えなくもないが,そっと耳打ちする内容はそれと程遠いものだった。

「さて,もう一人撒きますね。」

そう言って小さく動いて,彼は何かの札を胸ポケットから取り出す。
そして何かの呪文を唱えた。
「じっとしてて下さいね。あと呼吸を静かに。」

別段何も変わった様子はない。けれど木乃香は言われた通りに息をひそめていた。
しばらくすると,木陰から突然影が現れた。それは血相を変えた真名だった。
彼女は辺りを振り向き,あちこちを探し回る。そして慌てて立ち去っていった。

「さてと,それでは参りましょうか。」

いつもの優しい笑顔が木乃香を誘う。
誰一人として叶えられなかった木乃香の願いを彼は叶えようという。
そしてその誘惑に木乃香は抗えなかった。
代償として求められた交換条件‥‥その内容は未だ分からない。
けれど何をしても,刹那に会いたい。その想いだけが木乃香を動かしていた。

◇◆◇

気がつくまではそんなこと知りもしなかった。
見えないところで真名が,ちびせつなが木乃香を護っていた。おそらく刹那も‥‥。
目の前で彼らが去っていくところを目の当たりにすると,心細さを感じる。
何とはなく感じていた安心感は彼らが作り出していたものなのだと初めて知った。

「はぁ。」

木乃香は連れ込まれた建物の中で,ため息をつく。
良く弾む柔らかいベッドと簡素なテーブルがひと組。
広いガラス張りの浴室が珍しかった。
ここへ入ってくる前に聞いた言葉を木乃香は一人思い出していた。

「木を隠すなら森の中,人を隠すなら人の中。そして灯台下暗し。」
「はい?」
「匿名性が高くて,僕やあなたとあまり関係がないところに身を潜めるのがよろしいでしょう。」
「それに僕らが利用しても怪しまれませんでしょうしね。」
「はぁ‥‥?」

抵抗する間もなかったとはいえ,少し軽率だったかと木乃香は深く反省していた。
いくら刹那に会うためとはいっても,男性と二人でのラブホテルへの入場とは‥‥。
かといって彼に別段変った雰囲気はない。
椅子に腰かけたまま再び木乃香はため息をこぼし,部屋に備え付けのドリンクに口をつけた。

「心配ですか?僕とこんなところにきて。」
「‥‥‥ほんまに‥‥せっちゃんに会わせてくれはるんですか?」

ベッドに腰かけたまま,彼は木乃香に声をかける。
その言葉に,少し警戒感を見せながら木乃香は心配そうに問いかけ直した。

「‥‥あまり人目につくところでは困るんですよ。それに‥‥。」

おもむろに立ち上がり,木乃香のそばに近寄る。
そっと木乃香の顎をとり,視線の先に木乃香を捉えた。

「僕のお願いは,まだあなたに伝えていませんでしたしね。」

彼の手から,木乃香は振り逃げ視線を逸らす。
流石にこの状況での接触には抵抗があったようだ。
緊張に弾む鼓動を押さえながら,木乃香は今の状況を歯痒く感じていた。

「彼女は,僕とあなたが二人で出掛けた時に現れました。あんなに遠くてもね。」
「えっ‥‥?」
「あなたが僕に何かされるんではないかと懸念してね。」
なかなか落ち着かない鼓動をどうにかしたくて勢いよくドリンクを飲み干した。
しかし一向に落ち着くことはなかった。
むしろそれ以上にどんどん体が熱くなっていく。
木乃香はじわっと手に汗がにじむような気がした。

「あなたの危機に,彼女は駆けつける。そうでしょ?」

わずかな雰囲気の変化に,木乃香は弾む息を抑えて彼の方を振り返った。
しかし時は既に遅かった。彼は木乃香を抱き上げるとそのままベッドへ向かったのだ。
抵抗する力も木乃香には残っていない。もがいて抗議するも簡単に制されてしまった。

「ぁ‥‥やめてっ‥‥くださ‥‥。」
「僕のお願いまだ言ってませんでしたね。」
「いやっ‥‥!」
「僕の子供‥‥生んでください。」
「!!!!」

木乃香が彼の無謀で強引な要望に抗議の声を上げようとした隙に唇を奪われ押し倒されてしまった。
必死に逃れようとする木乃香だったが,力の入らない体ではどうにもならなかった。
強引に口を開かされ,口腔内に侵入してくる舌とともに何かを飲まされ嚥下させられた。
その後すぐに解放され,急いで木乃香は飲まされた何かを吐き出そうとしたがそれは無駄だった。

「なに‥‥飲ませたん?」
「睡眠薬ですよ。少しでも‥‥ね。」
「!!」
「っと,それから断っておきますが,今あなたに効いている物は僕ではありませんからね。」

何のことかわからない様子の木乃香に,彼は木乃香の背筋を服越しに線を引いた。
今まで感じたことのないくらいにぞくぞくとした感覚が背筋を走った。
艶っぽい声とため息が漏れる。十分すぎる刺激に木乃香は息を飲んだ。
「うち‥‥何もしてへん‥‥。」
「こんなところにあるものがただのジュースだなんて思わないで下さいね。」
「えっ‥‥?」
「媚薬か興奮剤か何か入っていたのでしょう?とは言え情熱的な方が僕も嬉しいですけど。」
「やめ‥‥て‥‥下さい。‥‥堪忍‥‥して‥‥。」
「‥‥大事にしますよ‥‥あなたのこと‥‥。」
「いやっ‥‥。」
「神鳴流剣士が間に合うか‥”賭け”ですよ。これは‥‥。」
「せっ‥‥ちゃん‥‥た‥‥すけ‥‥‥‥。」
「‥‥約束は守りますよ。必ずね。」

そう言って,まだじたばたする木乃香の服を脱がし始める。
もがく中で,器用にボタンを外していくとその間から,わずかに高揚した白い肌と下着に包まれた豊満な乳房が零れた。
もがく木乃香を制し,スカートを脱がす。
手荒なことはしない。飽くまで優しく丁寧に‥‥。先は長いのだから。
優しく丁寧に木乃香に触れる。

薬のせいとはいえ,彼の作り出す刺激に従順に反応してしまう自分に困惑していた。
次第に意識が朦朧としてくる。

「‥‥ぁ‥‥ヤメッ‥‥堪忍‥‥して‥‥。」
「感じているあなたの姿も‥‥綺麗です‥‥。‥‥堪らないな‥‥。」

昂りも隠せず彼は,荒い息を吐きながら木乃香の耳元でそう呟く。
これまで死守していた下着に手が添えられる。力が入らないとはいえ,望まない行為に同意した覚えもない。
頼りない手つきでも,木乃香は何とか抵抗して見せた。しかし,無理やり飲まされた睡眠薬はじわじわと効き始める。
木乃香は朦朧とした意識の下で,最後の抵抗が取り払われていくのを感じた。

子供をあやすように余裕の表情で彼は木乃香を制した。
そして彼女の下着に手をかけようとしたとき,彼は背筋に鋭利な感覚と,強烈な殺気を感じたのだった。
「卑怯だな。それがお前たちのやり方か?」

振り向かずとも侵入者の正体は明らかだった。
殺気だけで人を射殺すような強烈な気。
そして,気をまとった武具が作り上げる特殊なオーラ。

「‥‥良くここがわかったね‥‥神鳴流剣士‥‥。」

彼が賭けだと言った,神鳴流剣士。その切先が彼の背を捉えていたのだ。
彼がつぶやいた言葉は,朦朧とした意識の下にいる木乃香にも届いた。
そして彼の攻め手が止まったのを機に,何とかその背後に立つ影の正体を確かめようと視線を集中する。

(‥‥せっ‥‥‥ちゃん‥‥?)

しかし強力な睡眠薬だったのか,張っていた気が途切れたのか,
木乃香は眼尻に涙を溜めたまま,その意志に反して目蓋は閉じていった。

「今日こそは‥‥許さん!!」
「今度は血だるまじゃ済まないよ?神鳴流剣士。」

木乃香をそのまま寝かせ,彼は立ち上がり,刹那と向き合う。
その顔は余裕の笑みをたたえていた。
まるで刹那が来ることを知っていたみたいに。

「ここが,良くわかったね。尾行は全て撒いたはずだったけど‥‥。」
「お嬢さまがお呼びになった。私にはそれだけで十分だ。」

刹那は怒りを抑えながら,夕凪に手を添えた。

「やれやれ‥‥。それでは準備させてもらおう。戦場のね。」
余裕の笑みで彼は指をはじく。すると,隠されていた呪符が発動し,結界が張られた。

「物理的損壊は後々大変なんだ。社会とは窮屈だよ。それと‥‥全力‥‥出したいだろ?」

パチンと指をはじいたかと思うと,強烈なつむじ風が発生し,刹那の視界を遮った。
刹那は両手で両目を護り,一陣の風に耐えているとすぐにその風は消えた。

「場所替えの術か‥‥‥。」

かなりの高等呪術を目の前でやって見せた敵は相変わらず不敵に笑みをたたえている。
剣なら負けはしない。しかし‥‥。冷たい汗が刹那の背筋を伝った。
ごくっと唾を飲み込み,歯を食いしばる。

「ああ。部屋の料金は前払いだから心配しなくてもいいよ。別にいなくなったからって騒ぎになることもないだろう。」

刹那の抱える緊張感など,相手には微塵も関係ない様子だ。
クスッと笑って,先ほどまでいた場所についての参考を刹那に知らせた。
そのまま間合いを取って,一緒に移動してきた木乃香に近づき,自分の上着をかぶせた。
眼尻に涙を溜めたまま,木乃香は静かに横たわっていた。

「さて‥‥どうする?神鳴流剣士。」
「‥‥っ,どうであれ,私が貴様を倒すことに変わりはない。」
「熱いんだね。嬉しいよ。あっさり僕に血だるまにされたのがキミの実力とは思いたくないからね。」
「刺し違えても,貴様は倒す。」

言葉と同時に,刹那は一太刀目を振り落とす。
その太刀筋は前回をは比べ物にもならないほど鋭さを増していた。
しかし,その太刀すらも彼は優雅に交わしていく。
そして隠し持っていたのか,短めの刀を両手に持ち間をおかずに攻める。
その隙の攻防も類を見ないくらいの速さだった。
ピリピリとした空気が世界を治めている。
この空気の中で,隙のできた方が負ける。
わずかな気の乱れが勝敗を決める戦いだった。

呼吸を忘れるほどの攻防が続く中,刹那の一太刀が彼の頬を掠った。
静まる空気が二人の動きを止めさせた。
お互いの姿を視野に入れ,間合いを取り直す。
彼の頬の傷から,体液が流れる。しかしその色は赤くはなかった。

「‥‥やはり‥‥貴様‥‥人ではないな?」
「血の色くらいで判断するのかい?ハーフなキミだって赤い血は流すじゃないか。」

そう言って彼は流れた血を拭う。拭った傷跡から流れ出した血は今度は鮮やかな赤色だった。
それを視線にとらえ,刹那は思う。

「人だったら‥‥‥」と刹那は,とどめを刺すことに戸惑いを持っていた。
しかし,尋常でない力はそれを疑わせる。
真名の調査でも,この高度な呪術を使えることや剣技の鮮やかさを裏付けるものはなかった。
しかし,流した血の色は見慣れた妖魔の血‥‥‥そしてそれは鮮血色に変わった。
心に合った迷いは,その事象を確認したことで払拭された。
おそらくは,心身共に妖魔に侵されている。しかし今ならまだ彼を取り戻すことも可能だ。

「烏族とのハーフらしいが,人の血のが濃いのかい?しかしその好戦的なところは烏族の血を色濃く継いでいるな。」
「黙れ。」

くぐもった笑いが響く。あまり戦いを長引かせても勝機は薄れるだけだろう。
チャンスはおそらく‥‥‥一度しかない。

「そろそろ決着をつけようじゃないか。この戦いにこれ以上の時間は必要ない。」
「そうかい。じゃあ僕は速いとこキミを倒して,お嬢さんをもらうことにしよう。」
635名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 13:22:23 ID:eOtfe8w2
連投規制阻止カキコ
空気が震える。刹那の眉がわずかに動いた。

「安心しな。彼女は大切にするよ。それからキミの記憶は消させてもらうよ。それで僕たちの計画は完遂だ。」
「‥‥っ。」
「彼らは殺せって言ってたけどね,僕は木乃香お嬢さんを殺しはしないよ。この体の主だけじゃなく僕も気にいってるからね。」
「なに?!」
「彼女は僕の子を生んで,その強大な力をその子に譲渡し,何物からも解放された彼女は僕らと幸せに暮らすのさ。」
「‥‥お前に‥‥お前なんかに‥‥お嬢様が幸せにできるものか!!」
「幸せになるために必要なことは,幸せと感じられることだ。どうとでもなるんだよ。人の心なんてね。」
「どうせ‥‥術でお嬢様も操り人形のように扱うつもりだろう。」
「へぇ‥‥よくわかったねぇ。」
「貴様たちの手口は分かっている。これ以上お嬢さまを侮辱することは許さない!」

激しい言い争いに木乃香は目を覚ました。
睡眠薬で眠りについているはずが,割合と早く目を覚ましたようだ。
多少の抵抗性を持っているとはいえ,無理やり飲まされた睡眠薬の分量が少なかったせいもあるのだろう。
おそらく薬で木乃香が朦朧としている間に,彼は記憶操作をするつもりだったのだろうか。
長引いた戦いにそれもかなわず,決戦の幕引きに合せて木乃香は目を覚ますこととなった。

ぼんやりとする視界はまだ頼りにならず,耳に聞こえてくるのは刹那とその相手の言葉。
今にも死闘が始まりそうな張り詰めた空気は木乃香でも痛いほど感じた。
その空気から思い起こされるのは,刹那が血だるまにされたあの事件のことだった。
その時の光景が脳裏にフラッシュバックされ,うつろなまま,木乃香は精一杯声を張り上げるのだった。

「ダメっ!!っせっちゃん!死んじゃう!!!」
「!っお嬢さま?ダメですっ!!こちらに来てはいけません!!!」

集中していた矢先に飛び込んできた木乃香の声に刹那は注意が削がれた。
死闘に木乃香を巻き込んではいけないと,敵と間合いを取りながら,刹那も声を張り上げる。
しかし一度発散した集中力は簡単には戻らない。
そしてその隙を,彼が見逃すはずもなく‥‥。

「そんなんじゃ‥‥死ぬよ?」

そう言って,木乃香の声に気を取られた刹那に,敵の刃が向かった。

「うぁ!!」

かろうじて瞬殺は免れたものの,見事に刹那の体を貫通した刃からは赤い血が滴り落ちていた。
瞬く間に刹那の足元は鮮血で染まった。
貫かれた痛みに,気が遠くなりそうになる。肺をかすったのか,息が止まりそうになり,口からは大量の血が吹き出る。
しかし,刹那は崩れ落ちそうになる体を自分を貫いている刃で支え,武器ごと敵を絡めとった。
痛みはもう感じない。この近距離で狙えるチャンスはもう二度とない。
そしてこの機会を逃したら,次の反撃の機会は皆無だ。
刹那は夕凪を握りなおし,奴に強い視線を向けた。

「なに?!」
「貴様がっ‥‥人でないなら‥‥私にはいくらでも‥‥対処法がある‥‥。」

渾身の力で大きく振りかぶり,刹那はその身が引き裂かれるのも無視して,奥義の態勢をとる。

「神鳴流奥義!!斬魔剣・散!!!」

振り落とされた太刀は,奴の胴体を貫いた。二人は,太刀から迸る閃光に包まれる。
まばゆい光の中で現れた影が木乃香の視界にも映し出された。
彼の体から,その内部に宿る魔が逃げ出したのだ。
しかし,その光の浄化力から逃れることはできず,そして姿を見せた魔は絶叫とともにこの世から消滅した。
その絶叫とともに急速に光は止み,元の世界が戻る。
彼の体から夕凪を抜き,刹那は彼を見つめた。
支配者を失った体は,気を失い,その場に倒れこんだ。
彼の顔からは,影を持ついやらしい笑みは消え,憑きものが取れたようなすっきりとした表情をしていた。
その姿を見届けると,刹那は失血から遠くなる気の中で木乃香を見やった。
慌てて駆けつけてくる木乃香を視界にとらえると,安心したように刹那はその場に倒れ込んだ。

「せっちゃん!!せっちゃん!!今助けるから!!」

遠くなっていく世界の中で木乃香の声だけが刹那の中に響いていた。

◇◆◇

かなりの失血量からか,血の気の引いていく刹那を抱えて,木乃香は震えながらパクティオカードを手に取った。
ずっと仮契約の解除を求めていた木乃香だったが,今はこのカードがあってよかったと心底思った。
治癒の術しか使えないが,その術が今必要だった。
こんな時,自分の大事な人が傷だらけで自分を守ってくれる時,何もできない自分が嫌だった。
でも,これは木乃香の力。ネギとの契約が木乃香の強さを支えていた。

「もう時間がないえ。うちに力貸して。せっちゃんを助けて!!」

眩しい光に包まれ,木乃香の身に魔力が宿る。
慈愛に満ちた光とともに,木乃香は刹那を抱きしめる。
その慈愛の光は刹那を包み込み,傷を埋め,包み込んで消していく。
痛々しいくらいの傷は,後片もなく見る見るうちに治癒されていった。
強大な魔力が刹那の体に宿る。刹那の胸は鼓動を打ち,打つ度に力強さを取り戻していった。

「‥‥‥せっちゃん。本当にいつも‥‥ありがとな‥‥。」

傷の塞がった刹那を休ませようと木乃香は刹那を抱きかかえた。
あまり背丈の変わらぬ刹那であったが,相変わらず華奢なままだった。
刹那の重さを感じながら木乃香は苦笑する。そっと刹那の頭に手を添え,
膝の上に載せる。そしてそっとその頭をなでていた。木乃香はそのまま,その目覚めを待っていた。
ここがどこだかわからない。気がついたらいつの間にかここにいた。
さわやかな風が頬を撫でる。
真冬だというのに,ここの風は穏やかだった。
荒れた野原のような場所。でも空は高く,澄んでいた。

呼吸も脈も安定したとはいえ,一度離れた意識が戻ってくるまでには時間が必要だった。
緊張感の漂う中,静かな時が流れた。
刹那の落ち着いた穏やかな呼吸が木乃香の膝の上で繰り返される。
小さく呻くと,温かみを取り戻した刹那が目を開けようとしていた。

「良かった‥‥。」

木乃香はそのまま,安心のため息を吐いた。

◇◆◇

刹那は目覚めた。初めに目に飛び込んだのは,澄んだ青空。
そして次に見えたのは,目に涙を湛えた木乃香だった。
木乃香の滴が一筋,刹那の頬に落ちてはじけた。
震える唇は命の息吹を取り戻した想い人の名を刻んだ。

「‥‥お嬢‥‥さま?」
「‥‥せっちゃんの‥‥‥‥あほ‥‥。」

刹那は起き上がると,嗚咽をこぼした木乃香が胸に飛び込んできた。
良く分からないまま,木乃香を抱きしめる。
そのぬくもりに,自分が生きてここにいることを理解した。
心の底から欲していた愛する人の温もりを感じ,刹那は自分の状況を把握していった。
木乃香の腕の中で,困ったように刹那は木乃香の名を呼んだ。
ただ木乃香には,刹那の命を繋いだことが,ただそれだけが嬉しかった。
「ヤツ‥‥あの方は‥‥?」

恐る恐る刹那は尋ねる。
木乃香は黙ったまま体を起こし,倒れたままの彼の姿を指差した。
そのまま倒れこんでいたが,その姿は酷い傷もなく穏やかであった。

「寝かそ思たんやけど,うちには無理やったん。」
「っ!‥またっ,あなたって人はっ!!どうしてそう警戒心がないんですか!」

刹那は木乃香の両肩をつかみ,慌てて言い放つ。

「違うん。あの人悪い人やない。うち見てたん。せっちゃんがあの人の中にいた悪者やっつけるとこっ!」
「‥‥お嬢様。」

そっと体を起こし,木乃香は刹那から視線をそらした。
力ない視線はそこで横たわっている彼に向けられていた。

「うちのせい‥‥やね。‥‥また迷惑かけてもうたん。」

木乃香は刹那から離れる。
木乃香の言葉に刹那が何も言えずにいると,木乃香は服を整え言葉を続けた。

「せっちゃんにも‥‥あの人にも‥‥悪いことしてもうたね。」

悲しそうな響きに刹那は思わず身を強張らせた。
体を貫く傷は後片もなく,身を貫く痛さも嘘のように引いていた。
身の軽さを感じながら,刹那は木乃香に詰め寄る。

「違います。あなたが悪いわけじゃない。あなたが悪いんじゃないんです。」
しかし木乃香は,刹那と目を合わせることはしなかった。
次に続ける言葉も見つからないまま,二人の間には沈黙が流れた。

「っ‥‥ひとまず麻帆良へ帰りましょう。」

刹那はそう言うと,一枚の型紙を取り出し,呪文を唱えた。

「こい!ちびせつな!GPSモード!!」
「はいな!ちびせつな参上ですぅ」
「な〜に?GPSモードって?」
「はぁい。このかお嬢様♪ご無事で何よりですぅ。私が今からここがどこか調べますのでしばしお待ちを!!」
「は,はあ。」

しばし時は流れ,ちびせつなは嬉しそうに現状報告をした。

「大体場所はわかりました。」
「帰れるん?」
「しかし,私が飛んでいくしか手段がないので。」

刹那が木乃香と,まだ横たわっている彼を見つめる。

「すみません。本当はこんなこと失礼なのですが‥‥。」
「ええて,気にしんといて。それよりも堪忍なぁ。」

小脇に木乃香を抱え,刹那は翼を出して舞い上がった。
流石に大人二人を抱えての飛行には刹那にも無理があったが何とか持ちこたえ,麻帆良に向かった。

「すぐに着きますから,少しの間辛抱して下さい。」

そう言って刹那は,二人を抱えながら,必死にゆらゆらと飛んでいった。
◇◆◇

清潔な白色に囲まれた病室に,木乃香は座っていた。
そしてその隣には少し距離を置いて刹那が,ベッドにはまだ気がつかない彼の姿があった。
悲しげな瞳で彼を見つめ続ける木乃香を見ていられなかったのか,刹那は黙って部屋を出ようとする。
しかしその刹那を木乃香は呼び止めた。

「‥‥せっちゃん。また‥‥どこかへいってしまうん?」

視線を合わせず,声だけが刹那に向かう。
その言葉が刹那に深く突き刺さる。痛いほど,木乃香の感情が籠っていた。

「‥‥いいえ。廊下にいます。ここではお邪魔でしょうから。」
「‥‥。」

木乃香からの返事はなく,刹那は廊下へ出た。並んでいる長椅子へ深く腰かける。
そして,溜めていた息を深く深く吐いた。
改めて深呼吸するも,余計に酸素が足りない気がして息苦しかった。
体の中に渦巻く木乃香の魔力を感じる。気と魔力は相容れることのできない存在。
それゆえに刹那の体の中では落ち着きのない魔力が行き場を求めてさまよっていた。
その不安定さは,今の刹那自身と同じか,彼女の内面そのものを現しているようだった。

静かだった病室にわずかなうめき声が響いた。
空気が揺れたのを感じると,彼はゆっくりとまぶたを開いていった。
木乃香は,そっと彼のそばに寄り声をかける。

「あ‥‥気付きはったん?大丈夫ですか?」
「ここは‥‥?」

木乃香は目覚めた彼に今いる場所を説明する。
そこは麻帆良学園都市内の魔法生徒専用病棟のある比較的大きい病院の一室だった。
事件が事件だけに,限られた人だけが立ち入ることのできるプライベートエリアに彼は運ばれていた。
彼は自分の体が自由にならないことを悟ると,おとなしく寝た状態で木乃香に謝罪の言を述べた。

「‥‥あなたに‥‥酷いことしてしまったようですね‥‥。」
「覚えてはるんですか?」
「記憶がないわけじゃないんだ。所々無い部分もあるけれど‥‥。」
「操られてたみたいですよって。」
「僕が‥‥悪魔に魂を売ったんですよ。」
「どういうことですか?」
「あなたに近づくために,僕が彼らの案に乗ったんです。」

目覚めてから,少しづつ彼の独白が続いた。
木乃香は黙ってそれを聞く。
懺悔のつもりなのか,彼は話さずにはいられなかったようだった。
その言葉とともに,落涙する彼を見て木乃香はこの人も被害者だと痛感した。

「すみません。少し混乱してるようなので,後日改めて謝罪させていただきます。」
「いいえ,そないに自分を責めないで下さい。うち,気にしてまへんよって。」

木乃香は優しく微笑み,病室を後にした。
外には,関東魔法協会や関西呪術協会の関係者らしき人物が数名立っていた。

「‥‥彼は重要人物なので何人かの護衛が付いています。」

不審そうに男たちを見つめる木乃香に刹那はそう声をかけた。
木乃香は,刹那を一瞥すると何も言わず,ただ刹那を見つめた。
いや,言いたいことは山ほどあった。でも必要な言葉が口から出ようとしない。
胸が苦しくなる。締め付けられるような想いが木乃香の視線に籠っていた。
刹那は木乃香の視線に捕われたまま微動だにできなかった。
「もう行くわ。うち‥‥。」

木乃香は踵を返すと,刹那は何も言えず木乃香の視線に捕らえられたまま後につき従った。
一定の距離を保って二人は移動する。見えない壁が二人の間に立ちはだかっているようだった。
しかし,刹那はその場を後にすることはせず,黙ったまま木乃香につき従った。
やがて,木乃香の歩みが止まる。そこは木乃香とアスナの部屋だった。
木乃香はドアを開け,部屋に入っていく。
刹那はドアの開いた部屋の前で立ち尽くしていた。
玄関先で木乃香は刹那の方を振り返る。
刹那はそれまで木乃香の背中しか見ていなかったのでこの時初めて木乃香の顔を見ることとなった。

「お茶くらい飲んでかん?」

にこやかな笑みを浮かべ,木乃香はそう言った。
刹那は黙って頷くと,促されるまま,部屋に入り勧められるままに炬燵に着席した。
刹那はキッチンでお茶の準備をする木乃香を見つめる。
刹那自身,今の自分の状況に困惑していた。
静かな時が流れ,勧められたお茶をすすった。
温かさが身に染みる。それはお茶の温かさだけではなかった。
じんわりと体が温まる。そしてそれまで足りなかったものが埋まっていくような気がした。
沈黙の中,刹那は口を開いた。

「お嬢さまを危険な目に遭わせてしまい,申し訳ありませんでした。」

木乃香の方を向いて,刹那は手をつき頭を垂れる。

「せっちゃんのせいやない。頭なんか下げんといて。」
「でも‥‥!」
「うちが呼んだ時,せっちゃん助けにきてくれたやんか。」
「あなたを危険から守るために私がいるのに,このような失態‥‥本当にお詫びのしようがありません。」
沈黙が流れる。着席した後,木乃香は刹那と目を合わせることはなかった。
刹那は木乃香を見つめる。穏やかな雰囲気のまま木乃香は話題を変えた。

「もう体,何んともあらへんの?」

お茶をすすりながら木乃香は刹那に言う。
刹那は手を止め,五体を確認して見せた。

「はい。この通りです。」
「ほかほか。‥‥‥今度は‥‥間に合おて良かったえ‥‥。」

温かい湯呑を両手で包み込み,木乃香は初めて刹那と視線を交わした。
嬉しそうに,安心した様子で安らかな笑顔を刹那に向けていた。
その微笑みに刹那の心は安らぎを感じた。
しかし,その微笑みにそぐわぬ一筋の涙が流れた。
慌てて木乃香はその滴をぬぐう。しかし涙はとめどなく流れ落ちた。

「あっ‥‥堪忍‥‥うち‥‥どうかしてるわ‥‥。」

涙をこらえたまま,木乃香は急いで立ち上がりキッチンに向かった。
これ以上我慢することは無理だった。この涙の意味を刹那に知られるわけにはいかない。
しかし,キッチンに向かう途中,刹那に手を取られてしまった。

「おっ‥‥お嬢様っ‥‥。」

戸惑う刹那を間近で確認する。
血色のいい顔色,以前この部屋に来た時とは別人のようだった。
もしもこれが木乃香との再会のために来てくれているのなら,この涙を堪える必要は無かったのかもしれない。
でも今は,敵の手に落ちた木乃香を助けるために身を呈して戦った刹那だった。
この再会は策謀の果ての故意かもしれない。それは刹那の意思とは関係なく‥‥。
646名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 17:04:43 ID:sKcglSog
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wktkwktk!
「夢なら‥‥早く覚めて‥‥。」

堪え切れない涙を流し,木乃香は自分の手を取る刹那の胸に飛び込んだ。
またすぐに木乃香の目の前から消えてしまうだろう。
今日の出来事も,刹那との再会も夢と思えればそれほどつらくはない。
でも今感じている温もりは刹那のもの。
背に回され,優しく抱きしめてくれる腕は忘れもしない刹那のものなのだ。
あの日から,枯れ果てるほど流した涙がまた再び刹那のために木乃香の瞳から溢れていた。

◇◆◇

刹那は木乃香をそっと抱きしめていた。
本当に愛おしいように涙を流す姫をただ黙って抱きしめていた。
そして,それまで自分の行って来たことを思い返していた。
自分のために涙を流してくれる木乃香に刹那は聞いてみたいことがあった。
木乃香が落ち着きを見せたころ,自嘲気味に刹那は口を開いた。

「あなたは変わらずにお優しいのですね。私をなじってもいいんですよ?」

刹那は木乃香の肩に手を添え,泣き腫らした顔を見つめた。
その瞳は純真にただ刹那だけを見つめていた。
刹那の言葉を疑問に思ったのか,木乃香は首を傾げて問い返す。

「いえ‥‥アスナさんにお会いした時,その‥‥頬を張られて‥‥泣きながら怒られて‥‥。」
「アスナ‥‥そんなことしたん‥‥。」
「お嬢さまが‥‥どんなに苦しまれたのか知っているのかと‥‥。」

自嘲気味に言って,刹那は顔をそむける。
しかし刹那の顔に手を添え,自分の方を向けさせると,木乃香は優しげな視線とともに言葉を続けた。
「ずっと‥‥うちのこと‥‥見てたんやろ?」
「‥‥‥はい。」
「‥‥ずっと‥‥うちのこと‥‥守ってくれてたんやね‥‥。うち‥‥全然知らなくて‥‥。」
「‥‥お‥‥お嬢様‥‥。」
「今思うと,なんか悔しいわ。もう二度と会えないと思ってたんよ‥‥うち‥‥。」

優しく刹那の頬を撫でる。木乃香の表情には刹那を非難するような色は微塵も含まれていなかった。
彼女の言葉通り,木乃香はまた再び刹那に出会えたことがただ純粋にうれしかったのだ。

「私は‥‥あなたを苦しませた‥‥だから恨んだっていいんですよ?」

刹那の顔に添えられた手を取り,刹那は木乃香に再び問い返す。
しかし,木乃香は首を振り刹那の言葉を否定した。

「‥‥うちは何も言えん。せっちゃんは‥‥せっちゃんの幸せ,掴んで欲しいから。」
「お嬢さま?一体何を‥‥?」
「龍宮さんがせっちゃんのこと迎えに来た時,言われたんや。『うちの思ってることがせっちゃんの幸せとは限らない』って。」

再び木乃香の目に滴が湧き上がった。

「うちのせいでせっちゃんにも迷惑かけとる。」
「うちは‥‥うちは‥‥せっちゃん好きやから‥‥せっちゃんに‥‥幸せになってもらいたい‥‥。」
「せっちゃんが決めたこと‥‥うちはなじれん。」

溢れだす涙は木乃香の頬を伝う。
木乃香は刹那の手を振りほどき,刹那の視線から逃れるように刹那に背を向けた。

「でも,また迷惑かけちゃった。それにあの人にもな。」
「うちが強力な魔力持ってるから‥‥,近衛家の‥‥跡取りやから‥‥。」
刹那は黙って,震える木乃香の背を見つめ続けた。
木乃香の独白を遮るようなことは刹那にはできなかった。

「うちには,その力だって大好きな人を護るために使いこなしてへんのに。」
「もう‥‥うち‥‥‥‥。」

木乃香の嗚咽だけが聞こえる。もう言葉は続かなかった。
木乃香の苦しみがひしひしと刹那に届く。
彼女を苦しませないために,守るために自分はいるのに。
刹那はただ自分の無力さを悔やんでいた。
木乃香の苦しみを自分の身に刻むかのように刹那は強く唇を噛み締める。
そして,木乃香の震える背中を後ろからそっと抱きしめた。

「貴方のせいではありません。ご自分を‥‥責めないでください。」
「‥‥せっちゃん‥‥。」
「あなたには‥‥やはりお話ししておかなければなりません。」

強く抱きしめられる腕の中で,刹那の温もりを背中に感じて木乃香は刹那の言葉に耳を傾けた。
刹那の口から語られた内容は,近衛家の秘密‥‥今回の事件のこと‥‥。
どうして今まで何も知らされてこなかったのか,木乃香にもそれは十分に理解できた。

「うち‥嬉しいわ‥‥せっちゃんから聞けて‥‥ほんに‥‥ありがとな。」
「私からお話しするのは僭越ですが,事実を知ることであなたのお苦しみを少しでも和らげることができればと‥‥。」

見なくても木乃香にはわかった気がした。
どんな表情で,どんな気持ちで刹那は木乃香に言ったのか。
今も刹那は変わらない,木乃香の知っている,木乃香の好きになった刹那だったから。

「また‥‥‥行ってまうん?」
悲しそうに,木乃香は問う。しかしその返事を耳にすることはなかった。
再びあふれた涙が,刹那の手に落ちてはねた。

「夢なら‥‥覚めない‥‥で‥‥欲しいわ。」

刹那は木乃香を自分の方に向けさせる。
止まらない涙を見られまいと木乃香は自分の手で必死に拭った。
しかしその手は,刹那に止められる。

「そんなに擦っては‥‥腫れてしまいますよ?」

そう言って,木乃香の頬を伝う涙を刹那は唇で吸い取った。
目尻を優しく撫でるように,そっと刹那はキスを落とす。
何度も何度も溢れてくる涙の数だけ優しいキスを木乃香に降らせた。

「今日だけ‥‥‥今夜だけ‥‥一緒にいてくれへん?」

木乃香は刹那に問いかける。嗚咽の間に言葉を挟む。
断られるかもしれない。でも弱った木乃香の心はどうしようもなく刹那を求めていた。

「でも‥‥アスナさんは?」
「アスナはネギ君とこや。今日は戻ってこん。」
「それは‥‥?」
「誰かて好きな人とは一緒にいたいもんやろ?」
「アスナ‥‥はじめうちに遠慮してたんやけどな‥‥。うちアスナに言うたんや。」
「なんて?」
「『好きな人がそばにおるんに,なに遠慮することがあるん?そんな風に気を使われる方がよっぽど嫌や!』って」

木乃香はその時のことを思い出してふっと微笑みを覗かせた。
「その後大喧嘩になってな。うちはじめてアスナと喧嘩したんよ。」
「せっちゃんのこと‥‥アスナにだけは話とったから‥‥。」

木乃香は刹那の腕を掴む。震える手で必死に刹那にしがみついた。

「うち‥‥本当は‥‥辛かった。でもアスナの気持ちもよくわかったし‥‥。」
「うちは‥‥何よりアスナに幸せ‥‥逃がして欲しくなかったんや。」

木乃香は刹那の胸に体を預けた。
震える手で刹那を掴んだまま,渾身の告白を伝えた。

「うちは,せっちゃんのこと好き。」
「お嬢さま‥‥。」
「もしかしたらせっちゃんには重荷かもしれへん。でも,うちのことまだ想うてくれてるんやったら‥‥。」
「うちを‥‥‥一人にしないで‥‥。」

また一筋,涙が流れた。一層震える腕と,まっすぐに刹那を見つめる瞳。
ずっと見守ってはいたが刹那は自分が去った後の木乃香の全てを知るわけではなかった。
刹那は自分のしたことがどれほど木乃香を苦しめていたのか痛いほど感じた。
嫌いで離れたわけではない。恋愛の絶頂期に身を引いた刹那だ。
木乃香に対する愛しさは,それこそ言葉にできるものではなかった。

木乃香を抱きよせ,きつく唇を奪う。
息苦しさから唇を離そうとする木乃香をとらえ,さらに深く口付ける。
もう止まらなかった。刹那の中で切ないほどに木乃香を求める欲求が渦巻く。
激しい刹那のキスに戸惑いながらも,木乃香は刹那に身を任せた。
忘れもしない,あの日の夜。戸惑いながらも求めあった二人はまだ幼かった。
でも純粋にお互いを求めあって‥‥。
再び刹那は姿を消してしまうかもしれない。でも木乃香にはそれでも良かった。
刹那は将に刹那の恋人‥‥。今日‥‥今夜だけの‥‥木乃香の‥‥大切な‥‥。
激しい求愛行為の最中に,木乃香は脳裏の片隅でそう思っていた。

◇◆◇

肌寒さから木乃香は目を覚ました。
身を起こそうとするが,普段では感じない重さを体の上に感じ,動くことはできなかった。
まだ夜更けらしい。時計の針は深夜を指していた。
ぼんやりした頭のまま木乃香は自身の状態を確認した。

体の上に感じた重さは,いないかもしれないと思っていた愛しい人。
彼女は,木乃香の上で静かに寝息を立てていた。
肌蹴たままの衣服を急いで整え,毛布を手繰り寄せるために体を動かした。
いつの間にか木乃香は自分のベッドに移動していた。
今までのことを思い出そうとするが,良くは覚えていない。

”ご自分を‥‥責めてはいけません‥‥。もう‥‥大丈夫ですから‥‥。”

優しく囁かれる刹那の声だけは鮮明に覚えていた。
木乃香が記憶の糸をたどっているうちに,もぞもぞと彼女の想い人は目を覚ます。

木乃香と同じように着衣は乱れ,白く透き通るような肌が露出していた。
そこにはいくつかの古傷も見え隠れしていた。
木乃香はそっとその傷を撫でる。
木乃香の冷えた指先が触れると,刹那は肌でその冷たさを感じ,そっとその手を包み込んだ。

「‥‥すみません。こんなに冷たく‥‥。」
木乃香の手を取り,すぐに温めますと言わんばかりに刹那は再び木乃香と熱い抱擁を交わす。
触れる薄い唇は木乃香の性感帯を的確に攻める。
まだ寝ぼけ眼をしているくせに,的確な愛撫は木乃香を昂らせ始める。
その刺激に,木乃香は先ほどまでの激しい行為を思い出さずにはいられなかった。

「ふぁ‥‥っく‥‥ん‥‥せっちゃっ‥‥。」
「‥‥お嬢さま‥‥。」

再び脳が蕩けそうになる。求めても得られなかった温もり。
事情もよくわからないまま巻き込まれた事件‥‥。
色んなことがありすぎて,疲弊しきった木乃香には魅惑的な時間だった。
今はただ,堕ちてしまいたい。そんな思いだけが全身を支配する。

でも,この甘美な時はいつまでも続きはしない。
なぜなら,何一つ問題は解決していないのだから。

「せっちゃ‥‥ん‥‥上手や‥ん‥,誰と‥‥?」

無言のまま,刹那は木乃香の敏感な胸の頂に唇を寄せる。

「ひゃっ‥‥ぅん‥‥龍宮‥‥さん?」

刹那はそこを咥えたま,強く吸いついた。
丹念にねぶるその動きは,明らかに木乃香の言葉に動揺していた。
体に残る快楽の残渣は,木乃香の神経を敏感にさせていた。
再び繰り返される行為により鋭敏に反応するために,快楽の呼び水は奥底に溜まっていた。

「ぁ‥‥ぁあん‥‥。こ‥‥答えてぇ‥‥。」
快楽にかき消されてしまう言葉を必死に紡ぐ。
木乃香は刹那の頭を抱きかかえるように身悶えていた。
木乃香の胸を揉みし抱く手つきは柔らかだった。
労わるように,そっと包み込み芯を解すように揉みし抱く刹那の指先。
いつかの感触とは異なる刹那を木乃香は,頭の片隅で寂しく感じた。

「はぁ‥‥ん‥‥っく‥ぅん‥‥」

刹那の慣れた手つきに解きほぐされていく。いなくなってから刹那に何があったのか,
木乃香が知るはずもない。木乃香の知らない刹那に木乃香の体は翻弄されていく。
その間を木乃香の知っている刹那が見え隠れする。
愛しているのに,誰かの影が刹那の後ろで行き来して,木乃香の思いを邪魔している。
木乃香の中で刹那に対する愛しさと悲しさが交互に浮かび上がり消えていく。
その様子に,行為を止め,刹那は木乃香の顔を覗き込んだ。
起き上がった刹那の顔を両手で包み込み,木乃香はその姿を捉えた。

「せっちゃんの看病‥‥龍宮さんがしとったんやてね‥‥。」
「‥‥お嬢様?」
「傷‥‥綺麗になってよかったわ。」

できるだけそっと,触れるか触れないかのわずかなタッチで優しく顔の傷に触れる。
白く艶やかな肌にうっすらとわずかに残る傷跡。
まだ少し真新しい刀傷は記憶に新しい。
あちこちにあった中でも深かった傷なので木乃香もよく覚えていた。
常人ではこれほど綺麗に治るものではないことも,その傷の目立たなさを見れば明らかだ。
木乃香はそこにそっと口付けた。

「お嬢さまが‥‥私の命を救って下さったんですね。」
「ん?‥‥今日は間に合おて良かったわ。」
「いえ‥‥この前のことです。」
にっこりとほほ笑むと刹那は,木乃香の唇に口付けた。触れるだけの優しいキス。
何度も何度も触れ合い,その感触を確かめる。
刹那の長い長い優しいキスに木乃香は陶酔しかけていた。

「夢の中で‥‥あなたを感じました。」

長い接吻を終え,刹那は言葉を紡ぐ。優しい声色は木乃香の耳に柔らかな波動を響かせた。

「夢だと思っていました。でも,夢じゃなかった。」
「あの苦い薬草の記憶からは‥‥今と同じ‥‥あなたを感じた‥‥。」

再び刹那は口付ける。今度は深く舌を絡ませる激しいキス。
木乃香の唾液を啜り,自分のと混ぜ合わせると今度は木乃香に流し込む。
熱い体液交換の儀式。それは二人の興奮をさらに激しく煽るための媚薬だった。

「ぁ‥‥ぅ‥‥ん。」
「今は‥‥何もかも忘れてください。あなたを‥‥一人にはしませんから‥‥。」
「せっちゃん‥‥でも‥‥行ってまうん‥‥やろ?」
「‥‥今は‥‥何も‥‥考えたくない‥‥。」

熱く濡れた木乃香の秘所に刹那の指が滑り込む。
刹那は指先で木乃香の秘裂をそっと撫で,溢れる愛液を指先に絡め取った。

「こんなに濡れて‥‥お嬢さまも‥‥いつの間にこんなに感じやすくなったんですか?」
「違‥‥う‥‥せっちゃんやから‥‥せっちゃんが上手やから‥‥。」
「中だって凄く感じていましたよ。」

そのままくいっと指先を内部に侵入させ,内壁を抉るように掻き乱した。
「ひぃっ‥‥あっ‥そこっ‥‥ダメっ‥‥。」
「こんなに感じて‥‥。」
「せっちゃんだけっ‥‥せっちゃんだけやっ‥‥うちのこんなん‥‥知っとんのはっ‥‥。」
「わかってますよ。」
「だったらっ‥‥なん‥‥でっ‥‥?!」
「あなたを汚してしまったのは‥‥私ですから‥‥。」

指を増やし,再び木乃香を攻め立てる。
激しく身悶える木乃香をそのままに,刹那は体をずらして木乃香の秘芯に唇を寄せた。
起立している秘芯をむき出し,そっとそこを舌先で舐め上げる。
大事に大事に撫でさする刺激は,木乃香を更に快感の波に誘う。

「ひぐっ‥‥ふぁ‥‥うちっ‥‥ダメぇ‥‥おかしっ‥‥なる‥‥ぅ。」
「すみません‥‥お嬢様‥‥。」

何に対する謝罪なのか。刹那はそう言いながら,木乃香を絶頂へと導く。
熱烈な攻めから解放された木乃香は,激しく胸を上下させたまま,そうさせた張本人の姿を見つめた。
平然としたその姿に,自分との距離をはっきりと認識させられる。
しかし彼女の顔をてらてらと光らせるのは,自分の体液だと気がつくと急に恥ずかしくなる。
初めて刹那と関係を持った時は,こんなに生々しい行為は想像もつかなかった。

「いつも‥‥こんなん‥‥してるん?」
「あなただから‥‥ですよ‥‥。」

刹那は形振り構わず木乃香を抱きしめた。

◇◆◇

「せっちゃん‥‥いないと思ってた。」
657名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 17:29:05 ID:eOtfe8w2
連投規制阻止カキコ
静かに二人は抱き合いながら言葉を交わす。

「覚悟が‥‥揺らいでしまって‥‥。」

「覚悟?」と木乃香が聞き返すと,刹那は自嘲気味に答えた。

「あんなに頼りないあなたをまた見ることになるのかと思うと‥‥。」

刹那は3年前のことを思い出しながら言った。あれほど憔悴した頼りない木乃香を
目の当たりにするなど‥‥。しかもそれが自分のせいで‥‥。
また再び繰り返されるかと思うと,覚悟が揺らいだと刹那は言う。

「行ってまうなら‥‥一緒やんか‥‥。」

「あほやなぁ。」と木乃香は優しく微笑んで刹那の額にキスした。
刹那は愛おしそうに木乃香の髪を撫で,その額に顎を寄せた。

「もどって‥‥あげなん。‥‥きっと‥‥待っとるよ。」

本当は渡したくない。誰にも‥‥どこにも‥‥。
でも‥‥待ってる人の気持ちも‥‥木乃香は知っているから‥‥。
今なら,笑って送ってあげられる,そんな気がしたから。

「‥‥お嬢様‥‥。」
「一つだけ教えて‥‥。それが‥‥理由なん?」
「なにが‥‥ですか?」
「うち以外に好きな人できたから‥‥うちから離れてったの?」

驚いたように刹那は木乃香の顔を覗き込んだ。
悲しそうににっこりとほほ笑む木乃香は涙を浮かべて笑顔を作っていた。
「‥‥!」
「‥‥そうなら‥‥そう言って欲しかったえ。」
「いつでもうちのこと護るなんて‥‥書いて残さんでもよかったのに‥‥。」

別れ話で刹那を困らせるようなことはしなかったのにと,木乃香は泣きながら答えた。

「違います。あなた以上に‥‥誰も‥‥愛せるわけないじゃないですか!」

木乃香の肩口に顔をうずめ,刹那は必死に弁明する。
しかし木乃香は冷静に,刹那に問い返すのだった。

「うちの隣以上に,うちを守れる場所なんてあるの?」
「‥‥ありませんよ。でも‥‥。」
「あなたの傍は‥‥居心地が良すぎて‥‥自分の分を‥‥忘れてしまいそうで‥‥。」

刹那は震える声で続けた。
木乃香を抱きしめる腕は力なく,小刻みに震えていた。
木乃香を抱きかかえていた刹那は,いつの間にか木乃香に縋りつくような姿勢になっていた。

「あなたが大切だから‥‥。だから‥‥あなたのそばを離れようと‥‥。」
「‥‥なんで?」
「あなたが学園長のお見合いを断わったとき‥‥私は気がついたんです。」

日常茶飯事のように繰り返されていたお見合い話の中の,ある日の出来事だった。
木乃香が,刹那と両思いなのにお見合いに行くのは浮気してるみたいで嫌だと語ったことがあった。

「私がお傍にいては‥‥私の心があなたに向いている限り‥‥。お嬢さまが私にお心をかけて下さる限り‥‥。」
「私は恩のある近衛家に‥‥仇をなすことになると‥‥。」

刹那の震える声が,次第に涙声に変わる。
「私のために,私の存在が‥‥お嬢さまの将来を傷つけると‥‥。」
「それが‥‥私には‥‥我慢できなかった‥‥。」

啜り泣く刹那をそっと抱きしめる。

「私は半妖です。白烏の血は変えられません。でも‥‥あなたとの出会いで私の生きる道は決まった。」

涙を拭き,刹那は顔を上げる。辛そうにでも力強く木乃香に言い聞かせる。

「私の全てはあなたです,お嬢様。しかし,あなたの人生が私に関わる必要はないんです。」
「せっ‥‥ちゃん?」
「私のことは‥‥忘れてください‥‥。」

刹那の眼尻に溜まる涙を,木乃香は指先でそっとふき取る。
刹那の中の葛藤と決断をその強い視線の奥に感じた。
でも,力なく涙を溜める刹那の姿も木乃香には見えていた。

「なら‥‥なんでそんな悲しそうな顔するん?」
「し‥‥してませっ‥‥ん‥‥。」
「嘘や‥‥本当は離れたくないって‥‥顔に書いてあるえ‥‥。」

木乃香の視線から逃げるように刹那は顔を背ける。
木乃香に背を向け,刹那は逃げるように脱ぎ捨てた衣服に手を伸ばした。
木乃香は逃げる背中を追いかけ,抱き寄せる。
刹那の華奢な背中はびくっと震え,動きをやめた。

「‥‥もう無理や‥‥うち‥‥気付いてもうたん‥‥。せっちゃん以外のひと‥‥好きになれへん‥‥。忘れるなんて‥‥できへんえ‥‥。」
「お‥‥嬢さま。」
「せっちゃん‥‥おらんのなら‥‥生きてても無駄や。家に縛られて生きるだけなら‥‥生きてる意味なんて‥‥あらへんもん‥‥。」
その言葉を聞いて,刹那の動きが止まる。
そっと木乃香は刹那の背に寄り添った。
じんわりと彼女の言葉が刹那に染み込む。
刹那に自分の思いを伝えるために,木乃香はゆっくりと語りかけ始めた。

「うちが幸せになるためには‥‥せっちゃんが必要なんよ‥‥。」
「私が‥‥必要‥‥?」
「せっちゃんは‥‥お父様とうちとどっちが大事なん?」

刹那は木乃香に,木乃香とともにいることが近衛家に仇をなすと言った。
刹那にとってそれは本来比べられるはずもないものだった。
しかし,刹那はそれを無理やり秤にかけたのだった。
苦渋の選択だったとはいえ,今でもその判断は決められないままでいた。
ただ刹那は自分に,木乃香のためだと言い聞かせ,無理やりに自分を押し籠めていたのだから。

「‥‥‥‥。」
「答えれんのならええわ。」

木乃香は刹那を抱きしめる腕を解放する。
しなやかな刹那の背中にはいくつかの目新しい傷跡が広がっていた。

「この傷も‥‥こっちの傷も‥‥あの時のやね‥‥。」

そう言って木乃香は愛しげに傷に口付ける。
刹那の全身に広がっているその傷に木乃香は一つ一つ優しく触れた。
木乃香の指先が傷に触れるたびに刹那の体はわずかに震えた。

「うちが‥‥綺麗にしたる‥‥。」
「うぁ‥‥お‥‥お嬢‥‥さまっ‥‥んっ。」
傷に沿って指を這わせ,また口付ける。
次第に刹那の息が荒くなっていく。
木乃香が口付けた部分に魔力とともに熱がこもる。
傷にこもった魔力がはじけると同時に傷跡が消え,じんわりとした熱が刹那の体に残った。

「は‥‥ぅ‥‥お嬢さま‥‥。」
「いっぱい攻められたから,今度はうちがせっちゃんのこと愛してあげるえ‥‥。」
「ひっ‥‥ぁ‥‥そんなっ‥‥そこはっ‥‥。」

木乃香の指先は刹那の秘所を弄っていた。
起立した秘芯と濡れそぼった秘裂を行き来し,刹那のもう十分に潤っている場所に指先を伸ばす。
ゆっくりと,ゆっくりと秘芯を撫でる。
木乃香の指先はそこを愛しげに撫で,刹那の様子を探っていた。
決して強い刺激はしない。ただ純粋に刹那の精神を解きほぐそうとしていた。
そう,先刻刹那に激しく求められた時のことを想って‥‥。

刹那の全身に残っていた傷跡は,後片もなく綺麗に消え,白い肌は淡く色付いていた。
刹那の体に送り込まれた魔力は傷とともに弾けると姿を変えて刹那の中をぐるぐると廻り始める。
気と魔力はよほどのことがない限り交わることはない。反発しあう力は刹那の理性を奪う。
木乃香の緩やかな攻めに誘われ,軽く官能の頂きを見ると,刹那は再び木乃香を求めた。
体を巡る魔力は,木乃香の情熱,反する刹那の気は刹那の意志。
熱い奔流に流されて,再び木乃香が目覚めたときには愛しい人の姿はそこにはなかった。

◇◆◇

「主犯格の追跡も大詰めだ。もう時間の問題だろう。」

珍しく朝帰りした刹那に,私は今の状況を伝えた。
相変わらず窓から入ってくる習慣は変わらない。何とかならないものだろうか。
「そうか。」

ぶっきらぼうに返事を返す刹那は,なんだか妙によそよそしい。

「シャワー‥‥使うぞ‥‥。」

バスルームに向かうために刹那が私の横を通り過ぎた時,一瞬嗅ぎ慣れない匂いを感じた。
私は通り過ぎる刹那の腕をとり,捕まえる。

「!!‥‥放せっ!」

慌てて刹那は私の腕を振り払った。しかし私は見てしまった。
刹那はうまく隠しているつもりだったのだろうが,迂闊にもほどがある。

「なんだ。浮気して帰ってきたのにシャワーも浴びてないのか?」

私は挑発するように刹那にそう言葉を投げつけた。
刹那の胸元には淡くうっ血した跡が見え隠れしていた。
擦り傷と言われれば,そう思えなくもない。
しかし,刹那は私の言葉にひどく動揺した様子で私を睨みつけていた。

「‥‥これ‥‥キスマークだろ?私がつけたものじゃないな。」

とんとんと自分の胸元を指さし,刹那に示した。
刹那はあわてて自分の胸元を隠した。
馬鹿な奴だ。なんとか言って誤魔化すくらいの知恵もないのか。
もしくは,開き直って誰と寝てきたのか言えばいいじゃないか。
私と刹那は別に正式な恋人同士というわけではないのだから。

誰と寝たかだって?聞くまでもないだろう。あいつが求めているのは一人しかいない。
私は刹那の顔にあるはずの幾分薄くなった傷がなくなっていることに気がついた。
今までも十分綺麗だったが,透き通るような肌が一段と輝きを増していた。

「お前‥‥傷‥‥。」

私は,刹那の顎を取り,顔を上げさせる。
私の疑問の声に刹那は視線をそらしながら,私の腕から逃れようとしていた。
予想は確証に変わった。

「近衛‥‥か‥‥。」

この治癒能力‥‥あいつしかいないだろう。
しかし何があったというのだ?刹那と近衛の間に‥‥。

「っ!‥‥放せ。」
「何があった‥‥言え!」
「‥‥傷を‥‥直してもらっただけだ‥‥。」

刹那は私の腕を振り払い,背を向けて言い捨てた。

「傷を治してもらうだけでそんな跡をつけて帰ってくるのか?」

振り返った刹那の首筋にもいくつか痕跡が残っていた。

「今更どの面下げて,近衛の前に出たんだよ。お前‥‥。」
「っ‥‥なんとでも言え。お前にとやかく言われる筋合いはない。」
「‥‥あるよ‥‥。お前は‥‥今は私のものだ‥‥そう言ったはずだ。」

私は力任せに刹那の腕を握り締めた。痛みに刹那の顔がゆがむ。
私はそのまま刹那をベッドに放り投げた。
「なっ!何をっ‥‥する!」

私は刹那の服を剥ぎ取る。刹那が激しく抵抗したため,半ば破りとるような形となってしまった。
体中にあった傷跡がなくなっている。
そしてその代わりとでも言うように,体のあちらこちらに淡く花弁が散っていた。

「ふん‥‥。随分お楽しみだったようだな?」
「やめろっ!!」
「お前‥‥近衛が相手でも受けなのか?」

そう言っていつものように私は刹那の体に舌を這わせた。
いつも変わらない。弾力と張りのある肌はいつも私を惹きつけて止まない。
そして,刹那の首筋の皮膚の柔らかいところを少し強めに吸いついた。
近衛のとは別に私の所有印を刻んだ。

「やめろっ‥‥よせっ‥‥。」
「なんだ。シャワーも浴びずに逃げかえってきたのか。」
「もう‥‥やだっ‥‥あ‥‥言わな‥‥。」
「私も骨を折ったんだぞ?今回は‥‥。」
「い‥‥やだ‥‥はな‥‥っせ‥‥」

刹那の言葉も聞かず,私は刹那を裸にしていく。
簡単なものだ。抵抗してもがいたところで,私にとってはなんでもない。
そしてそのうち観念したように,私を受け入れるのが常であった。
しかし,今日は違った。
何度目かの抵抗の後,不意に刹那の指先が私の頬をかすった。
鋭利な爪が私の皮膚を軽く引き裂く。じわっと血が浮き出るのがわかった。
息を荒げて必死で私の手から逃れようとする刹那に無性に腹立たしさを感じて,思わず私は刹那を叩いた。
乾いた音とともに,刹那の頬が赤くなる。唇を切ったのか,口の端から血が流れた。
そして静寂の中,刹那は抵抗の手を止めた。
「もう‥‥やめろ。私は誰のものでもない。」
「刹‥‥那‥‥?」
「報酬が欲しいのなら好きにしろ‥‥。もう抵抗はしない。」

そう言って刹那はベッドの上で,無防備に体を晒した。
目をつぶって,私を待っている。
私は恐る恐る刹那に触れた。
びくっと震える体は毎晩のように私と交わった,よく知った刹那とは違った。

何かあったに違いない。刹那の身に‥‥。近衛との間に‥‥。
それ以外に私を拒絶する理由はないのだ。
私との関係は仕事の関係の延長で,たまたま求め合った。ただそれだけ。
私の部屋に同居する駄賃として,仕事の報酬だなどと託けて,私は刹那を求めた。
刹那は,私を利用して済まないと,そう言って私を受け入れた。
ただそれだけの関係だ。

はじめは私からだったかもしれない。
こいつの‥‥私には無いこいつの性(さが)に惹かれていた。
そして,近衛を失ったことで不安定になったこいつを間近で感じて‥‥。
物足りなさはあったが,私を選んでいるという事実がそれなりに私を満足させていた。
しかし今のこいつは違う。
私を拒絶している。ただの体の関係。心なんて元から無かったかのように。

私は震える手で,そっと刹那を抱きしめた。
ゆっくりと唇で触れながら,いつもよりも念入りに愛撫を施した。
慣れた行為だったが,なぜか冷たかった。
体も,心も冷めたまま,燃えるような欲望は湧いてこなかった。
形だけの行為が続く。行為に慣れた私の体はただ黙々と技術だけをこなしていく。
ただ相手を攻めるだけの,相手を堕としていくためだけの性技。
刹那からは耐えきれない嬌声と,悔しそうな歯ぎしりの音が漏れていた。
行為に慣れた刹那の体は,それでも私の行為に応えてくれる。
いつもよりも激しく刹那は乱れていた。
濡れそぼる秘所へ指を沿わせ,じっくりとそこを弄る。
どこをどうすれば刹那が感じるのか,私はよく知っていた。
いつものようにゆっくりと刹那を昂ぶらせる。

切羽詰まったような嬌声とともに,刹那は涙を流していた。
絶頂にいたり,激しく息を吐いている中,静かに一筋,涙が光った。

「なぜ‥‥泣く?」

私の口からこぼれたのはそんな言葉。
刹那はただ黙って,息を静めていた。
私とのこの行為に刹那は何を思っているのだろう。
結局刹那は私の問いに答えることはなかった。
私に背を向け,刹那はしばらく静かに泣いていた。

何かが変わってしまった。それだけは間違いない。
でもそれが何なのか。私にはわからなった。
泣きながら,いつしか寝息を立てている刹那を後ろからそっと抱き寄せた。
近衛を捨てたあの日から,こいつは私のものだと思っていた。
‥‥そう,思い込もうとしていた。
こいつがいる日々が思いの外,心地よくて私の胸に開いた穴を埋めてくれた気がしていたから。
そんなことをぼんやりと考えながら,私もいつしか眠りに落ちてた。

◇◆◇

しばらく仮眠していると,部屋には朝日が差し込んでいた。
徹夜目への日差しは酷く沁みた。
668名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 18:12:25 ID:eOtfe8w2
連投規制阻止カキコ
これは予想外の展開wktk!
669名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 18:44:58 ID:sKcglSog
wktkwktk!!!
泣き疲れたのか刹那はまだ隣で静かに眠っている。
刹那を起こさないようにベッドを出ると,私はキッチンへと向かった。
やかんが蒸気を吹き,小気味良い音を響かせる。そのうち刹那は起きて来てシャワー室に向かった。
私は二人分のコーヒーを入れ,テーブルに並べる。

濡れた髪にタオルをかけ,とぼとぼと刹那はテーブルについた。
私の用意したカップに少しだけ口付けると,一心地ついたのか徐に口を開いた。

「事件が解決すれば‥‥‥ここに留まる理由も無い。」
「‥‥‥。」
「今まで‥‥‥‥お前のこと利用して済まなかった。」

刹那はコーヒーを飲み干し,服を着替えると夕凪の入った刀袋を手にした。
刹那はそのまま,珍しく玄関へ向かった。

「あっ‥‥刹那?」
「お前との暮らし,結構好きだった。中学で‥‥初めて同室になった時から。」
「あ‥‥。」
「それじゃ‥‥。世話になった。今回の報酬は私の分まで受け取ってくれ。せめてもの礼だ。」

刹那の背中が見えなくなると同時にバタンと音を立ててドアが閉まった。
急に広くなった部屋に違和感を感じる。
私の中で焦燥感がわき上がる。
私は理由も分からず,外へ駈け出していた。

「刹那!!」

まだそう遠くない刹那を追う。

「行くな!!刹那‥‥‥ここにいろ!!」
刹那の背中を捕まえ,私は力いっぱい抱きしめた。
抑揚のない声で刹那は言った。

「勝手を言ってすまない。でも‥‥‥お前の気持ちに‥‥応えることは‥‥できない。できないんだ‥‥‥‥。」
「それでも‥‥私はお前を離したくないんだ。」

強く抱きしめる私の腕に刹那はそっと触れた。
何かを振り切ったようなすっきりとした声で,見透かしたように言葉を続けた。

「‥‥お前は‥‥私にあいつの姿を求めていたんじゃないのか。」

思いがけない刹那の言葉に私は戸惑いを覚えた。

「‥‥‥な‥‥‥に?」

私の脳裏に昔の映像がフラッシュバックする。振り切ったはずの記憶。
私を置いて旅立った戦友の姿を。割り切ったはずなのに。
私の動揺が現れたのか,刹那を抱きしめる腕が小刻みに震えていた。

「楓が旅立つ前に私に会っていったんだ。お前との未来のために試練に出るって‥‥。」
「私との‥‥‥未来?」
「お前を守れるくらいに強くなってくるって。」

いつか言った言葉。弱い奴は嫌いだと。自分も守れない奴は足手まといだと。
そんな言葉を真に受けたのだろうか。
私は楓の強さを認めた上での言葉だったのに。

「‥‥‥あいつ‥‥‥。」

でもなぜか嬉しかった。
「何で言わなかった?」
「口止めされてたしな。それに‥‥‥その方が都合がよかったんだ。お前とならお嬢さまのこと忘れられるかもって思ったから。」

でも違った。刹那はそう続けた。

「私もお前も自分に素直になれなかっただけだったんだ。」

表情は見えないが,刹那は笑っていた。
健やかなとても穏やかな表情で。少なくとも私はそう感じた。

刹那は自分に素直になってどうするんだ?
そして私は自分に素直になってどうしたいんだ?

「‥‥‥近衛のもとに戻るのか?」

ありえないとは思いながらも,刹那に尋ねる。
私は自分のことすらよくわからない。刹那はもう自分に答えを出しているんだろうか。
刹那は微動だにしないまま,自嘲気味に答えた。

「いや‥‥‥それこそ,どんな顔して行けばいいんだ。今更‥‥お嬢さまから二度も逃げ出した私が‥‥。」
「長との約束の三年が過ぎた。今後のこともある。一度‥‥‥京都へ帰るよ。」

凛とした声色の中に,私は刹那の思いを感じ取った。
覚悟を‥‥‥決めた気がした。

「‥‥そうか。行ってこい。そして戻ってきたらまた会いにきてくれ。」
「ん‥‥‥わかった。」

華奢な刹那が一層弱々しく感じた。
決意に満ちた強い意志が,今は刹那を支えていた。
この気質に惚れたのだと。決して誰かの代わりではなく‥‥。
私は腕に込めた力を少しずつ緩めた。
振り向いて私に優しく微笑む刹那の表情がいやに印象的だった。
なんだろう‥‥この気持ちは。なぜあいつはあんなにも幸せそうに微笑むことができるのだ。
自ら下した結論は一層刹那を苦しめるものだというのに。

私は小さくなっていく刹那の背中を眺め続ける。
無残な自分の姿にも気付く余裕もなく,ゆらゆらとゆがんでいく刹那の姿をただじっと見つめていた。
674未完成でしかも駄作 みかん!  ◆yuri0euJXw :2008/11/09(日) 19:18:54 ID:rwmCoK6t
おや?過疎のはずなのにレスが‥‥‥。

いえいえ,お目汚し失礼しました。
ここまでお付き合いいただいた方々(複数でいいんだよね?)本当にありがとうございました。
超恥ずかしい書きかけSSに目を通してくださり,嬉しいやら恥ずかしいやら。

さて問題です。この先どうしましょう!
色々書きかけてはいたのですが,
忙しいやら,このせつ分不足やら,Candy Boyにもべた惚れやらで,なかなか進まない有様。

で,創作意欲(妄想力だよね?多分)補充のためにご意見ご感想をお聞かせいただけたらと思います。
ずうずうしいお願いですみません。これだけで,200KB弱費やしてしまったのに‥‥。
675名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 19:31:31 ID:sKcglSog
すごくよかったGJ!
そして続き期待大。

個人的には刹那と木乃香は一緒にいるってなってほしいな。
木乃香が京都に行くでも、
刹那が長のはからい(再命令)でまた麻帆良に戻るでも。

それと、隊長が不憫だ・・・。
スレチ含まれるかもだが、最後は隊長も楓と再会して欲しい。

色々要求が多くてすまない。
個人的にはこんな感じだ。
676名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 19:59:10 ID:uF0sTTVQ
続き期待なんだぜ。
内容は>>675のようなのがフレッシュに終われそう…

それに、せっちゃんはアスナに怒られてこないとな。
677名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 20:00:22 ID:uF0sTTVQ
言い忘れた。
GJなんだな!(`・ω・)
678名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 20:14:59 ID:eOtfe8w2
GJでした!気が付いたら108レスもの大作だったのですね!
108という数に意味がある気がするのは私だけ?w
679名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 20:36:06 ID:9sXMhJZW
GJ!!!後日談たのみます!!!
680名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 21:32:32 ID:h/xoog0N
これで終わりもいいけど、やっぱり木乃香との絡みをもっと欲しいな
できるだけハッピーなのお願いします!
681名無しさん@秘密の花園:2008/11/09(日) 22:20:01 ID:VF1JdlDp
数日間放置しただけなのに…
なんなんだこのSSラッシュは!?
とか思ったら実は超大作じゃないですか!!
GJ!!!!
この言葉に尽きる。
全然駄作じゃありません!!
そしてハッピーエンドならなんでもいいんで続きwktk!
682 ◆yuri0euJXw :2008/11/10(月) 00:02:39 ID:rlbfOMNo
>>675-681
レスありがとうございます!
(相変わらずずうずうしいですが,まだまだ募集してます!<感想>)

自分的にはこれは中盤止まりなんですww
なんか久しぶりに読み返したら色々盛り上がってきた(頭の中で)!

直には無理だけど,何とか続き書いてみます。
もしよかったら,挿絵をつけていただけるともっと励みになります!(絵師さまよろしく!!)
管理人さん泣かせな投稿になってしまったけど,ここの住民は皆寛大だから
投稿しやすくて好きだ!

マターリ待っておくんなまし。あと,エロ注意って注意書きしなくてすみませんでした♪
683名無しさん@秘密の花園:2008/11/10(月) 00:04:39 ID:h/xoog0N
これで中盤w
knstして待ってる!!
684名無しさん@秘密の花園:2008/11/10(月) 00:10:45 ID:gXmv7Nw8
いい子に正座して待ってます!
685名無しさん@秘密の花園:2008/11/10(月) 01:14:20 ID:HhXVGlwn
やべえww超イイw
GJ!!
686名無しさん@秘密の花園:2008/11/10(月) 16:44:44 ID:/l1wtgXW
露骨なのが読みたい
まんこ舐めたとか具合わせしたとかアナルに舌ねじこんだとかな
ちびせつな入れて3Pとかも良いね
687名無しさん@秘密の花園:2008/11/10(月) 18:36:01 ID:1mknuVl9
一気に読んでしまった。
GJ!!

続き待ってます
688名無しさん@秘密の花園:2008/11/10(月) 23:38:42 ID:V/SFb/B6
アフタヌーンの柔道漫画の三年生にそっくりなんだが
689名無しさん@秘密の花園:2008/11/10(月) 23:45:16 ID:iVmZrBIf
なにそれ。知らん。
690名無しさん@秘密の花園:2008/11/11(火) 22:37:27 ID:vtDG7cn+
>>678
俺の波動きゅ(ry
691名無しさん@秘密の花園:2008/11/11(火) 22:39:43 ID:0fyYltnC
略された 中身がわからん 今日この頃 φ(.. )
692名無しさん@秘密の花園:2008/11/12(水) 21:18:53 ID:XJpU2E6P
このせつがーたりないんだぁぁ!
勉強がはかどらないぜ…
693名無しさん@秘密の花園:2008/11/13(木) 23:24:38 ID:bM7C6WIU
>>682
うぉっ。乗り遅れた!GJ!GJ!
悲恋系ときいて読むのためらった自分を殴りたいぜ。
オリキャラも違和感なかったしすごく物語に引き込まれた。

続きが気になる・・・
自分的には、木乃香や長ではなく刹那自身が、木乃香のそばにいること
すなわち自分が幸せになることを許せるようになるといいなぁと思う。
近衛家への恩とか気にしてるの刹那自身だけだと気づいてほしいなぁ。

後、他の方も言ってるがスレチを承知で龍にんも気になる俺。

勝手ばかり言ってスマン。続き楽しみにしてる。
694名無しさん@秘密の花園:2008/11/14(金) 19:35:33 ID:2jwQSSXy
ODA二巻、若干このせつ入っててよかった…だが少なすぎorz
もっとイチャついてほしいもんだ
695名無しさん@秘密の花園:2008/11/15(土) 01:24:27 ID:jiR1uWQW
メガミマガジン見ればいい
696名無しさん@秘密の花園:2008/11/15(土) 23:18:07 ID:59VsqMvV
>>695
kwsk
697名無しさん@秘密の花園:2008/11/16(日) 15:55:34 ID:BGcwF1i3
ネオじゃん?
698名無しさん@秘密の花園:2008/11/16(日) 21:39:40 ID:IAAobwrZ
>>694
やっと見れた。
周りに流されず愛を深め合う
二人はやはりイイ(*´Д`)=з

699名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 01:37:17 ID:qsPIadM6
周りがドッタンバッタンやってる間、夜通し同じ布団でいちゃつく2人。

「騒がしいですね…」

「そやなあ…でもこれでウチらが多少大きい声出してもうるさくないな♪」

「え゛…そ、それは一体…」

「あ〜、せっちゃんもしかしてヤらしいこと考えたんちゃうん?」

「い、いえ!断じてそのようなことは…」

「せっちゃんはウチとやらしいこと、しとうないん…?」

「え…お、お嬢様?」

「ウチは…せっちゃんとやったら…いいよ…」

「…、わ、私も…!」

「…ぷっ!やっぱりせっちゃんしたいんやん」

「…お嬢様…ひ、酷いです…」

「ごめんごめん。でも、ウチの気持ち、嘘ないよ?」

「…お嬢様…」

「…せっちゃん…」

こうして夜は、ふけていったそうな。

700名無しさん@秘密の花園:2008/11/17(月) 08:26:43 ID:jg5isiu8
さあSSにする準備を始めるんだ!
701名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 00:25:23 ID:JiCPi3At
過疎な感じをねらって質問。

学園長は近衛右衛門で関東魔法協会の長なんだよな。
それでその娘がこのかのかーちゃんなわけじゃない。
詠春は婿養子だろ?それで関西呪術協会の長なんだよな。

関西と関東の関係ってどうよ?近衛家は関西よりだから
近衛右衛門が西から東へ呼ばれたみたいな感じなんかな?

いまいち関係がうまく収まらない。俺頭悪りいな。

誰か教えて。ヘルプミー。
702名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 01:57:38 ID:DbsNTfuX
>>701
そこは前々から変だと思ってた。やっぱ学園長は元々西の人で
東から呼ばれたと考えるしかないんじゃないかな…
703名無しさん@秘密の花園:2008/11/21(金) 02:22:02 ID:NEL3p6jF
東洋西洋まとめた魔法世界全体で見た場合、関東魔法協会は日本で最大勢力の魔法組織。
一方関西呪術協会は、有力ではあるけど西洋魔法組織との関わりの薄さからローカル組織扱い。

じい様は排他的な気風の西にはなじめず(←エヴァとの会話等から見た無根拠な思い込み)、
東しか行き所がなかった。
能力的には上位、西でもぶいぶいいわせていたであろうじい様は東でも頭角をあらわし、結果的に関東の会長となる。
偶然か狙いか、娘婿という形で関西に影響力を持つ手駒も得られた。
ローカル組織(関西)にその手駒を差し向け長に据えることで関西でも影響力を強めたじい様。
そうして国内組織一本化への土台を着々と整えていくのであった。


などという砂上の楼閣を増床増設するようなのならいくらでも出てくるだろうけど、
しっくりくる図式を作るには情報少ないんじゃないかなー。
赤松のとこで質問できるならそちらをお勧め。
704名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 01:19:08 ID:R9TWq/d6
赤松に聞くのも良い手だが703の考えに納得してしまった。
元々創作だから辻褄の合う範囲で勝手に妄想してもいいよね。うん。
詠春とこのかのかーちゃんがどんな経緯で結婚して
このかがどんな風に育てられたんだろうって
まじめに考えてしまった。

貴重な意見ありがとう。
過疎なはずなのにすぐにレスがつくこのスレの住人は頼もしいのぉ。

108レスの続き妄想中。果たしてどうなることやら!
705名無しさん@秘密の花園:2008/11/22(土) 06:37:01 ID:LIiBvMMX
>>704
wkwk
706名無しさん@秘密の花園:2008/11/25(火) 00:36:35 ID:IZYQqu2P
108レスの続き楽しみにしてます!

できれば最後はハッピーエンドに☆
応援してるんで頑張ってください!
707名無しさん@秘密の花園:2008/11/30(日) 15:39:47 ID:wYMjA/7r
過疎ってるな・・・
708名無しさん@秘密の花園:2008/11/30(日) 15:50:16 ID:D/1GZPRj
NEXT というこのせつの同人誌(R18)を探してるんだけど知ってる人いる?
709名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 00:15:46 ID:felWQd5t
知ってるけど、売ってる場所までは把握してないなー。
役に立てなくてごめんね。
710名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 00:16:22 ID:felWQd5t
下げ忘れた。
711名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 00:49:57 ID:/a+W4wC0
内容を掻い摘んで教えていただけるとありがたいがどう?
712名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 02:09:43 ID:3BE/HIfo
>>711
このせつ。ふたなり。3P(このかが魔法の薬で分裂)。

と、これだけかくとなんだかハードに思えるけど
二人の心情としては、せつなが好きでエッチしたいこのかと
このかが好きでそういうこともしたい気持ちもあるけど恥ずかしさがさきにたつせつな
みたいな感じなのでラブラブともとれる。

作者のこのせつ本の二冊目だけど、続きではないので大丈夫。
2005の冬発売だから、今、手にいれようとするなら中古の同人屋がベター。

・・・と、ここまで書いて>>708 の言ってる本と違ってたらどうしようwww
713名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 02:33:26 ID:felWQd5t
>>712ので合ってるんじゃないかな。
私的にヒメハジメの方が好きだけど、やっぱふたなりなんだよな。
714名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 03:06:19 ID:50c66n17
>>712-713
どっちがふたなり?
715名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 03:26:09 ID:3BE/HIfo
>>713
タイトルが他にもありそうだったからどうかなぁと思って。
とりあえず>>713とは同じようだな。自分もヒメハジメのほうが好きだ!

>>714
このか。はじめから最後までこのか攻め。
716名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 07:10:23 ID:/a+W4wC0
なるほろ!dクス!

ヒメハジメがツボったので同作者の別本があると
知ってから中身が気になって仕方なかったんだ。
情報感謝!
717名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 21:06:36 ID:IZi4tEWi
病んでるSS投下します。ほのぼのが好きな方はご注意を。
718名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 21:07:57 ID:IZi4tEWi
 天高く幻の陽が登る時。別荘で修業に励んでいた汗臭い友人たちが、動を静め思い思いに休憩をとっていた。
私はというと、汗を拭きながら木乃香お嬢様を捜索中だ。斬り傷を作ってしまった。
そんな時、ベンチに座りジュースを飲んでいる前髪の短い少女、綾瀬夕映さんに目が止まった。

「綾瀬さん、お疲れ様です。木乃香お嬢様どこにいるか知りませんか?」
「お疲れ様です。トイレに駆け込んでましたよ」

綾瀬さんが指差すほうへ視線をたどると、ここにひとつしかないトイレの鍵が赤くなっていた。綾瀬さんはトイレの空き待ちだそうだ。
それならすぐ戻ってくるだろうと、私は綾瀬さんの隣りに腰を降ろした。
よく冷えたジュースパックを勧められたが、明太子風味という言葉が目に入りやんわりと断った。
 綾瀬さんも疲れているのかしばらく沈黙が続き、ふぅ〜、と深呼吸のような溜め息が聞こえてくる。
ヤシの木が作る小陰と髪を撫でるように吹く風は、ほてった体を心地よく沈めてくれる。
隣から聞こえるずずずーっと耳障りな音がなければ最高なのだが……。
みすぼらしくなっていくジュースパックを離した綾瀬さんは、なにやらゆっくりと語り始めた。

「木乃香さんってやっぱすごい方ですね。さすが極東一の魔力の持ち主だと実感せざるをえません」
「え?」

独り言のように呟いた綾瀬さんの瞳は、嫉妬の意が込められているように見える。

「先ほどの話です。ネギ先生の足に茶々零さんの剣が刺さってしまい、太ももぱっくり骨まで丸見えになってしまったんです」

綾瀬さんはしきりに左膝をさすっている。
衝撃映像を思い出してしまったようだ。
719名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 21:09:38 ID:IZi4tEWi
「私とのどかは涙しておろおろするばかりでしたが……。ネギ先生に召喚されてきた木乃香さんは怪我から目を逸らすことなく、あっという間に治してしまいました。
 アーティファクトのおかげだと木乃香さんは言っていますが、あの適対応能力は紛れもない本物ですよね」

ネギ先生の力になれている。羨ましい。自分の無力さに泣けてくる。生まれ持った素質には敵わない。
お嬢様を妬むかのように淡々と話す綾瀬さんの言葉に、私は赤く染まり始めたタオルを隠すように握り締め、静かに耳を傾けていた。
既に空になっているジュースパックをすする音とため息。そして沈黙。
普通ならここで何か相打ちを返さないといけないのだが、うまく言葉がでてこない。

「すみません。ちょ、ちょっと他のトイレに行ってくるです」

ばたばたと走っていく綾瀬さんの後姿を、私はただ睨みつけるしかできなかった。




 全身に赤く散らばる小さな擦り傷を治すためだと、修行後はいつも別荘にある寝室へ引っ張られていく。
太陽に眩しく輝く黒髪をなびかせ、前を迷いもなく歩いて行く華奢な後ろ姿は、いつ見ても堪らなく愛おしい。
怪我をしたと駆け寄ってくる友人たちの声にも、輝くような笑顔で対応しては一瞬で赤を蒸発させていく。自慢したい素晴らしい私の主だ。
だがそれは、皆に心配をかけたくないというお嬢様の優しさが現れているだけ。
俗にいう、ただの演技──。だって、こんなにもお嬢様の手は震えている。

お嬢様が鍵を閉め、私が人払いの結界を張った途端、私はベッドに押し倒される。これはいつもの行為。そして溜まりに溜まった不満の固まりをめい一杯ぶつけられる。

「また傷いっぱい作ったんか! せっちゃんが傷だらけになるの見たくないっていつも言うてるやろ!」
「ごめん、なさ」
「謝っても許さん! お願いやから、自分の身も守って……」
720名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 21:11:07 ID:IZi4tEWi
お嬢様は私の左肩にできた無数のすり傷をそっと撫でると、いきなり傷口へ吸い付いてきた。

「ぃっ……!?」
「ええ子やからおとなしくしときぃ。な?」

私の血で赤く染まった唇の口角をわずかにあげ、微笑むお嬢様の目はまったく笑っていない。
それはまるで深夜に見る日本人形のようで、見る者を凍らせる不気味な笑みだ。
私が動けずにいるとお嬢様はクスクス笑い、ゆっくり覆いかぶさってきた。
 柔らかい指が私の体に纏わりつき敏感な箇所を的確に攻めてくる。
こうなるともうお嬢様の歯止めは効かなくなる。私が何を言っても反応を示さずに、ただ私を求めてくる。
スリ傷ひとつひとつに赤い舌が這いずり回っていく。頬から始まり、肩、腕、わき腹、太もも……と徐々にきわどい場所へ。不
思議と痛みが快感へ変わっていき、急激に汗ばんでいく。

 どれくらいたっただろう。私もお嬢様も、笑っていた。二人だけという待ち望んだ時間に溺れているかのように。
木乃香お嬢様が愛しすぎて、体に縛り付けてでも手元に置いておきたい。
二人を邪魔するものは、全て斬り裂いてしまいたい。それが例え、仲間であろうとも。
少しでも独占欲による醜い、化け物らしい感情を消し去ろうと、羞恥心も忘れて私たちは日々求め合っていた。
721名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 21:13:46 ID:IZi4tEWi
「ひゃ!」
「……っ」
光輝く唾と深いため息が、名残惜しそうに私の右胸に落ちてくる。
何事かと聞くまでもない。あの連絡が入ったのだ。

「エヴァちゃんから念話ー」

やっぱり。
拗ねたようにふくれっつらをした木乃香お嬢様は、私の上にまたがったまま、あまり汚れていない左手でスカートのポケットを探り始めた。
お嬢様の真っ赤に染まった唇からだらしなく垂れるよだれを拭いてさしあげたいが、体に全く力が入らない。
それに感づいたのか、お嬢様はエヴァンジェリンさんの話を聞きながらよだれを拭い取ると、その手を私の口元に差し出してきた。舐めて綺麗にしろとおっしゃるのだ。
私の血も混ざっていて少し抵抗があったが、犬のように一心不乱に舌を動かした。
一度簡単に絶頂を迎えた私の体は、思考も見事に木乃香お嬢様に支配されていた。

「はいはい、聞いてます。準備するから待っといてー」

事務的に近い声と共に、私のよだれまみれになっている指は離れていった。

「ネギ君が左足怪我したんやて。後2分。もぉ、休憩中に修業しないでほしいわ」

準備すると言っておきながら、背中にぎゅうっと回された腕が可笑しくて少し笑ってしまった。
お嬢様は相変わらず後先考えず行動なさる方だ。修学旅行の時だってそうだ。私は落ちている間さえも羽を出すべきか迷っていたというのに。

「私の事は、気にせず、早く助けに行っ」

軽く口付けを落とされた。

「すぐ戻るから、このままで、な?」

お嬢様の凶暴的だった目は一変し、優しく微笑みながら離れていく。急に出てくる温厚なお姿を目の当たりにすると、一人、渦巻いた黒い感情の世界に置いていかれた気がして、気がくるいそうになる。
激しく暴れ回る鼓動と急激に迫りくる孤独感をどうにか押さえようと、真っ白なシーツをたぐりよせ小さくうずくまった
722名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 21:17:17 ID:IZi4tEWi
ここは別荘に入ると、毎晩お嬢様がご使用しているベッドの中。
お嬢様特有の優しい甘美な残り香が、荒げた息により余計に鼻孔をくすぐっていき、より一層寂しさを増感させた。
匂いだけのお嬢様の変わりでは、やはり駄目だ。
心地よい重みと温もりが消え、一人寝転がるベッドは、シングルサイズなのに広く感じた。
ギシッと軋むベッド。木乃香お嬢様は手の甲で横髪をかきあげ、転がっているであろう白い靴に視線を落としていた。

行かないで……。

目の前にある背中を抱きしめたい。だけど、木乃香お嬢様はまだ、自力で骨折を治癒する力を持ち合わせていない。
即死しないかぎり、どんな怪我も治せてしまう夢のような時間は、怪我を負ってからたった3分間。
時間切れで治せなかったと泣き崩れる姿を見るよりは、今の背中を見ているほうが幾分ましだ。

蛇口のひねる音が響き、静かだった寝室に水音が流れだした。
お嬢様の口元についた私の濁った血液や、柔らかい手に染みついた私の潤滑液が、手際よく流されていく。
自分が汚い存在だと言われているようで、いつも直視できない。
枕元に視線をそらすと、木乃香お嬢様が描かれた仮契約カードが、私をあざ笑うかのように光っていた。
嫉妬心が沸々とこみあがってくる。
じっと見つめていると、カードが宙を舞った。

「こちらこのかー準備できたえー」

変わりに本物のお嬢様があやすかのように私の頬に降りてきた。心が安らぐ……。
私はその手を捕ると、目を閉じそっと口付けをした。
この手を求める人は私だけではない。この世に沢山いる。カードを斬るなんて考えはやめよう。
瞬間部屋に白い光が溢れ、愛おしい温もりも気配も消えていった。

723名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 21:22:38 ID:IZi4tEWi
辛い。苦しい。お嬢様の感情は感染する。
エヴァンジェリンさんの地獄の特訓では、私たちが大怪我をする幻想世界を幾度となく見せつけられたらしい。

 そして今も別の意味で地獄の特訓は継続されている。
特訓が始まったころ、今のように緊急時になるとお嬢様がいきなり光に包まれ、神隠しのよう忽然と消えてしまうことが何度もあった。
 青空をバックに勝手に捲れていくノート。
軽快な包丁音と鼻歌を刻んでいた主が消え、いい匂いを放つ鍋の音だけが響くキッチン。
いつまでも鍵の掛かったトイレ。
腕の中からいきなり消える温もりと、残されたおかしな格好をしている私。
私は寝ぼけて敵襲かと一人泣きわめいた事もあった。
それだけ皆さんが寝ずの修行に精を出し、初歩的な回復魔法が効かない大怪我を負うほど、頑張っている証拠……。
私が言うのもなんだが、修行はほどほどにしてほしい。

『慣れる日がくるんやろか……?』

木乃香お嬢様は怪我を治しに召喚されたとき、必ず顔に影を落として帰ってくる。
当たり前だ。友人の骨が見えるほどの大怪我を目の当たりにして、平気でいられる中学生など存在しない。
笑顔で感情を隠しているのだ。昔から、そう。
食事も喉に通らないようで、最近上に乗るお嬢様の体重は、前より随分軽くなったように思える。

皆に文句を言ってやりたい。お嬢様の気持ちも考えろと。
でも、戦いはいつも命がけで、一休みなんてありえない。全部修業の一環。それをエヴァンジェリンさんは教えてくださっているのだ。
分かってる。分かっているんだけど。
唯一の愛しい癒しの存在を引き離され、黒い感情がどんどん積もっていく。
この今までにない依存量は本当にやばいのかもしれない。

私は「待て」の言葉を無視して、お嬢様の元へ向かう準備を始めた。早く会いたい。
全身にあったスリ傷はお嬢様の力により綺麗に無くなっていた。素晴らしい。確実に修行の成果が現れている。
また斬ったら私の元に駆けつけてくれるだろうか? 私を求めてくださるだろうか? 今お嬢様の力だけで治せる傷はどれくらいなんだろう。
私は床に落ちていた夕凪を鞘から引き抜き、無意識のうちに自分の手のひらに──。

END
724名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 21:25:19 ID:IZi4tEWi
久しぶりの投下、緊張します。
PCに眠っていたSSを修正しました。昔の俺、病みすぎだろw
725名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 21:26:16 ID:felWQd5t
いってぇ
でもGJ
726名無しさん@秘密の花園:2008/12/01(月) 21:45:00 ID:GLPc+2OD
いたいいたいいたい。
でも木乃香が言ってた地獄の特訓ってこんな感じだったのかもね。なるほどんって思ったよ。GJ。
727名無しさん@秘密の花園:2008/12/02(火) 00:26:55 ID:AvEmZL6w
いたたたた。

なんだかネギたちと仲良くなる前の初期の刹那を思い出した。
病んでる自分を自覚して押さえ込もうとしてるとこがいいな、GJ!
728名無しさん@秘密の花園:2008/12/02(火) 01:11:55 ID:SaquOj1Y
イイヨイイヨ(*´Д`)=з

痛いけど良いよー!!
このせつは黒いのもぼのぼのもイけるからいいよな。

このかの成長に揺れるせっちゃんよかったよ。
GJ!
729名無しさん@秘密の花園:2008/12/02(火) 01:15:50 ID:8kXA2kFG
あいたー
誤字脱字沢山あるじゃん。脳内補完してください。
GJありがとうございます!こんなに早く感想もらえるとは驚きです。
過疎に見えても張り付いている人多いんですねwまた今度投下します
730名無しさん@秘密の花園:2008/12/03(水) 00:55:05 ID:sAL5OHx6
管理人さん乙です!
相変わらずの丁寧なお仕に感謝していますです。
731名無しさん@秘密の花園:2008/12/05(金) 01:57:01 ID:zVUn0MuM
ここってマガジンネタNGだったか?
イマイチ盛り上がらんけど
732名無しさん@秘密の花園:2008/12/05(金) 08:57:56 ID:hFLjGve/
>>731
全然okですよ
ただ、今週のマガジンみたいに皆でワイワイよりもこのせつ二人きりでシリアスに・・・という場面が好きな人が多いと思う
733名無しさん@秘密の花園:2008/12/05(金) 10:42:48 ID:9hN2dz1z
補足しとくと
ライブ展開についていけない輩も多々いる

オレだけ?
734名無しさん@秘密の花園:2008/12/05(金) 19:20:25 ID:MCpqHn6k
俺もコミックスしか買ってない。ただスレが盛り上がる分には歓迎
735名無しさん@秘密の花園:2008/12/12(金) 23:50:02 ID:BEW4EA2x
たまにはあげてみる
736名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 00:37:36 ID:3FVALIDr

「刹那くん、しっかりと休めてるかい?」
「あ・・・・はい、高畑先生」
「部屋、一人部屋になっちゃってすまないね」
「いえ、お気になさらないでください」

寒くなってきた季節に、刹那は紅葉の美しい山に来ていた。
周りには先ほど話していた高畑。
それとそのほかの魔法教師の面々がいた。

「高畑君、一杯どう?」
「いえ、僕はこのあと学園に戻らないといけないので」
「そうか・・・・確かに学園ががら空きになるのは不安だからな・・・・すまないね」

魔法教師・魔法生徒を中心とした休心目的の旅行といった所だ。
もちろん刹那のほかにも生徒はいる。
龍宮も来ていたし、どこかで見たことがあるようなシスターも楽しげに周りと話していた。

「なんだ、つまらなそうだな。刹那」
「・・・・何もしないというのは慣れてなくてな」
「確かに何もなくボーっとしてるお前は珍しいな。いつも"こ"の付く誰かさんのストーカーを――」
「護衛と言ってくれ。ちょっと凹むから」
「すまんすまん」

普段ぶっきらぼうな龍宮と刹那の会話にも、和やかな会話が見て取れた。
しかし一途な思いで護衛していた刹那にとって、ストーカーという言葉は胸に刺さるものがあったらしい。

「近衛も連れてくればよかったじゃないか」
「お嬢様は魔法生徒として正式な登録をしていないから・・・・」
「学園長の孫で魔法修行中なら、十分許可は取れたと思うがな」

「飲むか?」と龍宮が刹那にコップを差し出す。
刹那はそれを受け取りつつ、「それもそうなんだが」と軽く返した。
737名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 00:38:59 ID:3FVALIDr

「・・・・夕食も済んだし、部屋で紅葉でも見たらどうだ」
「紅葉を見るだけならここでも・・・・」
「これ以上酔っ払った大人は面倒だぞ」

確かにあまり会話が好きでない刹那の事、酔っ払った教師が話しかけてきても愛想笑いをするしかない。
世渡りが上手な龍宮なら出世に役立てるだろうが、刹那なら疲れ果ててせっかくの旅行がパーになりかねない。
それを配慮しての助言だった。

「そうか・・・・じゃあ宵が進む前に退散するか。・・・・何かあったら――」
「何かあっても教員たちが何とかしてくれるさ」
「はは、そうだな・・・・では今日はゆっくりと休ませてもらうとするよ」

刹那は龍宮の気遣いを素直に受け止める。
そして「お先に失礼します」と周りの教師たちに告げ、その場を立ち去った。

*

自然の中にある旅館なだけあり、部屋に入るとそこはもう無音の世界だった。
刹那の部屋は二人用の和室。
しかし同じ部屋になる予定だった人が急遽これなくなってしまい、一人で使う事になっていた。
その部屋で刹那は特に何をするわけでもなく、窓の外に広がる紅葉を眺めていた。

(・・・・暇だな・・・・お嬢様・・・・)

そこまで考えて刹那はハッとする。
先ほどストーカーと言われたばかりなのに、また木乃香の事を考えている。
誰もいない広い部屋で、刹那は一人悶えた。

(かといって忘れられるわけもないじゃないか・・・・今までずっと見てきたんだし・・・・!)
738名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 00:41:22 ID:3FVALIDr

そう、ずっと・・・・だ。
木乃香を守るために強くなって、木乃香を守るために麻帆良にきた。
木乃香の事を考える事が刹那の日常である。
今一時仕事を忘れて休めといわれても・・・・。

「仕事を忘れても・・・・お嬢様の事は頭から離れないですよ・・・・」

既に敷かれてあった布団に転がり、刹那は独り言を言う。
・・・・今頃は何をしてるだろう?
夕飯の時間は過ぎたから・・・・後片付けを済ませて、宿題でもしているだろうか。
いや、宿題はエヴァンジェリンの別荘で皆で済ませる習慣になってきていた。
だから明日菜と一緒にテレビでも見ているかもしれない。

(電話・・・・してみようかな・・・・)

手元には、昔は仕事でしかほとんど使っていなかった携帯。
今では着信記録に見慣れた名前が並んでいた。
毎日のようにかかってくる電話・・・・ついに最近、龍宮に『バカップルだな』と言われた。

(今、電話・・・・していいかな・・・・?)

修学旅行が終わった時に木乃香の電話番号を知った。
元々式神を使った連絡手段をとる刹那にとっては、携帯はあっても無いような物。
その必要最低限の番号が入ってない刹那の携帯に、初めて仕事以外の番号が入った。
いや、正確に言えば木乃香関連の番号(もちろん木乃香も含めて)は全て仕事なのだが・・・・。
刹那はその時の事を鮮明に覚えている。

『ありがとうございます。私の番号も教えますね』
『あ・・・・知っとるから・・・・ええよ?』
『え? 教えましたっけ・・・・?』
『おじいちゃんにずっと前からきいとったんよ。・・・・電話する勇気、出ーへんかったけど』
739名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 00:43:57 ID:3FVALIDr

そのときの木乃香の頬は少し赤くなっていた。
それが照れなのか、悲しさなのかは刹那にはわからなかった。
ただ一言・・・・すみません、とだけその時は伝えた。

(近くにいるときよりも緊張する・・・・なぜだろう)

昔の事を思い出し、こちらから勇気をだして電話しようと試みる。
しかしそのボタン一個一個がとても重く感じた。
なぜこうも緊張するのだろうか。
いつもは木乃香から電話してくれるから慣れてないだけだ、と自分に言い聞かせる。

プルル・・・・プルル・・・・。

木乃香が出たらまずなんと言うべきだ?
刹那は寝転がったまま考える。
今話が出来るかを聞いて・・・・いや、その前にちゃんと挨拶を――。

『は、はいっ、せっちゃん?』
「あ、えと・・・・その・・・・こん、ばんは」

声が裏返った。
普段の仕事の電話なら、もっとハキハキと話せるのに。
木乃香の声が携帯から聞こえた瞬間、刹那の頭は真っ白になり、口はうまく動かなくなる。

「い、今は、どんなご様子かと・・・・気になってしまいまして・・・・」
『う、ウチは・・・・大丈夫やえ?』

明らかに電話の先の声は動揺している。
敵に襲われてるわけでは無さそうだが、傍にいないだけさらに気になる。

「・・・・どうかしました?」
『ち、ちょっと・・・・な。せっちゃんは、何してたん?』
「久しぶりの暇で・・・・電話してしまいました。ご迷惑でしたか?」
『ううん! めっちゃ嬉しいえ!』
740名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 00:45:34 ID:3FVALIDr

木乃香の声がいつも通りに戻り、刹那は少しほっとした。
しかし若干気になることがある。
今の木乃香のいる位置が、いつもの部屋でない事を受話器越しに感じたからだ。

「いまどちらに?」
『え? へ、部屋やけど?』
「・・・・いつもと周りの音が違うようなので・・・・思い過ごしならいいのですが」
『あ、う・・・・えーと・・・・』

珍しく木乃香が言葉に詰まった。
間違いなく刹那に何かを隠している。
いくら鈍感な刹那でも、さすがに気付いた。

「私がいないからといって、変なところにいるんですか?」
『ちゃ、ちゃうよ、変な所ちゃうけど・・・・』
「・・・・私が邪魔でしたら、もうそちらに戻りませんが」
『え?』
(あっ・・・・しまった・・・・)

言ってしまってから刹那はハッとした。
木乃香が隠し事をしてるからといって、何を拗ねてるんだろうと自分の頭を掻く。
木乃香だって隠したい事の一つや二つはあるのだから、ここは親友として黙っておくべきじゃないか。
龍宮にストーカーと言われた事を引きずっていた自分に呆れながら、刹那は慌てて弁解しようとした。

「おじょう・・・・」
『堪忍せっちゃん! 話すからもどってきてぇなぁ!!』
「うぁっ!?」

あまりの声の大きさにキーンと耳が鳴った。
予想外の取り乱しように、刹那がぽかんとする。
その間にも木乃香は取り乱しいて、どこかへ向かって走っている音が受話器越しに聞こえた。

『ご飯ちゃんと作るし、お風呂も一緒に入ったるー! ほんで夜も一緒に寝て――』
「お、おちついてください! ていうか周りに誰もいないでしょうね!?」
『誰か? 高畑先生がおるけどー!?』
「え、ちょ、声を抑えて・・・・って、え? 高畑先生?」
741名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 00:53:59 ID:3FVALIDr

木乃香の口からでた名前に、刹那は疑問を感じた。
高畑は先ほどまで一緒に食事をしていたはずだ。
高畑は転移魔法は使えないはずだし、まだ学園に戻るには早すぎる。
もしや・・・・。

「・・・・お嬢様? もしかして・・・・来てます?」
『あ・・・・しもた・・・・』
「・・・・・・・・いつの間に」
『ばれてもうたぁ〜・・・・』

予想外すぎる展開だが、こういったドタバタは麻帆良学園ではよくあること。
さすがの刹那にも、大分抗体ができていた。
さてどうしたものかと刹那は考える。
昔よりも随分とおてんばになったと学園長が言っていたが、まさかここまでとは。
教師たちの旅行についてくる生徒だなんて、そこいらには絶対にいないだろう。
というかどうやって潜り込んだのかが気になる。

(とりあえず・・・・学園長に報告しておくべきか)

木乃香の祖父である学園長に知らせておけば、とりあえず大事には至らないだろう。
刹那は木乃香に居場所を尋ねようと、携帯に再び意識を戻した。

「お嬢様、今どちらに?」
『い、今な・・・・その・・・・な、なぁ・・・・ドア、あけてくれる?』
「はい?」
『部屋の前、きてもうた』
「・・・・え!?」

刹那は飛び起きて、部屋のドアについている覗き窓を覗いた。
・・・・間違いなく、木乃香がいた。
浴衣姿でぜぇぜぇと息を切らし、覗き穴の方を見ている。
742名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 01:02:58 ID:3FVALIDr

「――本当にいますね・・・・ここまで走ってきたんですか?」
『なぁ、開けて? こないに近いのに電話なんておかしいわー』
「・・・・ぷっ、初めて電話したとき部屋から走ってきた人が言う事です?」
『だ、だってあんときは嬉しかったんやもん!』

刹那が笑いながら話すのは、電話番号を教えてもらった日のことだ。
自室にいる木乃香に様子を聞こうと電話したとき、木乃香は感極まって部屋に駆け込んできた。
これじゃあ電話の意味がないですよ、と笑い合ったのもいい思い出。

『なぁ、許してー?』
『ふふ・・・・さぁ、どうしましょうか?』
『なんや今日のせっちゃんは意地悪や〜〜〜』

さっきの台詞を真に受けたらしく、木乃香は涙目で縋ってきていた。
このまましばらく放置してみようか、と刹那に悪戯心が疼く。
しかしすぐさま自分の本職を思い出してドアのカギを外した。
今は休みだが、本来は護衛というのを危うく忘れる所だった。
風邪をひかれては困る。

「こんばんは、お嬢様・・・・っ」
「・・・・なに笑っとるん?」
「いえ、つい、思い出し笑いを・・・・それよりどうやってここに?」
「おじーちゃんに連れてきてもろたんよ」

そういえば・・・・学園長は学園関係の仕事で遅れて到着といってた気がする。
なるほど、遅れてくる学園長に付いてくれば他の魔法教師には変な目で見られることもない。
しかし電話であれだけ叫んで走り回ってたら、さすがに変な目で見られただろうに・・・・。

「ウチ、まだ働けへんからな・・・・こっそり付いてくるしかあらへん」
「そんな無理して付いてこなくても・・・・明日の夕刻には戻りましたし、用事があるなら電話で――」
「せっちゃんの事ストーカーしたくてしゃーないんやもん。それに旅行やなんてめったに出来けへんやん」
「うっ・・・・」
743名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 01:09:04 ID:3FVALIDr

木乃香はニコッと笑いながら言った。
しかし刹那はストーカーの文字に、ちょっと困った顔になってしまった。

「嫌やった?」
「い、いえ、嬉しいのですが・・・・! ・・・・私がお嬢様のストーカーだったので・・・・」
「ストーカーやったの?」
「・・・・護衛だと、言い張りたいのですが――あっ」
「ひゃ」

話の最中に、廊下から大勢の話し声が聞こえてきた。
どうやら宴会も終わったようで、教師たちが戻ってきたようだ。
刹那は無意識に木乃香を引っ張って部屋に引き込んだ。
幸い教師たちは誰も気付かなかったようで、何事もないかのように部屋の前を通り過ぎていく。

「・・・・ウチのこと隠す事ないんやないの?」
「酔っ払いに見つかったら厄介だと、龍宮が教えてくれましたからね」
「ふーん・・・・でも、なんか得したわ」
「え? ・・・・あっ!?」

言われて初めて、無意識に木乃香を抱きしめていた事に気付く。
慌てて離そうとしたが、今度は木乃香に抱きしめられていた。

「そないにウチの事独占したいん? しゃーないなぁ」
「い、いや・・・・そうでなくて・・・・!」
「もー照れてかわええー!」

一際強く抱きしめられ、刹那は呻く。
先ほどまでの形勢は逆転。
木乃香が刹那から離れる頃には、完全に木乃香が主導権を握っていた。
744名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 01:12:32 ID:3FVALIDr

「へぇ〜、せっちゃん一人なのに二人部屋なん?」
「あ、はい。参加者が一人予定が入ってこれなくなったようで・・・・」
「誰との予定だったん?」
「え? えっと・・・・あれ?」

ここまで言って刹那は疑問に思った。
刹那は同室者の名前を知らなかったのだ。
普通旅行の部屋を共にするなら、親しい者か何か目的のある人物になるはず。
疑問に思いつつも目の前の木乃香に目をやると、木乃香は意味ありでな笑顔で刹那を見ていた。

「もしかして・・・・お嬢様、今晩どこで泊まる予定なのですか?」
「ん? 当たり前やんー? ここやえ?」
「・・・・やっぱり」

当たり前のように木乃香は笑いながら答えた。
どうやら刹那は、はめられたようだ。
木乃香は学園長に頼んで、二人部屋を確保したに違いない。
全ては計画通り・・・・というところか。
先ほども刹那に気付かれないように訪問し、驚かせるつもりだったに違いない。

「初めから話して下されば・・・・」
「せやかて、せっちゃん絶対断るしなぁー」
「断りませんよ」
「断るやんー!」
「断りません!」
「絶対に断・・・・ひゃっ!?」
「あ、危ないっ」

ムキになって言い返し合ってる最中、木乃香は後ろにいる刹那を軽く睨む。
その際、床に敷いてあった布団に気付かずつまずいてしまった。
もちろん刹那がそれを見逃すはずもなく、目にもとまらぬ速度で抱きかかえる。
布団の上で刹那に抱かれ、木乃香は顔が赤くなるのを感じた。
745名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 01:19:38 ID:3FVALIDr

「え、えへへ・・・・ありがとな」
「気をつけてください。・・・・あれ?」
「どないしたん?」
「いえ・・・・その、温泉にもう入ったんですね」
「うん、みんながご飯食べてる間になー」

良い香りが刹那の鼻をくすぐる。
刹那には木乃香の姿が異様に色っぽく見えていた。
浴衣を着ているせいでもあるだろうが、何より刹那に完全に身を任せて笑う姿が妙に何かをそそる。

「・・・・せっちゃん?」
「あ、いえ、ではもう寝るだけですね!」
「もう寝るん? まだ心の準備が・・・・」
「へ!?」
「あ、な、何でもあらへんよ?」

うっかり口を滑らせ、慌てて距離をとる木乃香。
二人はしばらく沈黙し、相手の出方を伺った。
・・・・刹那とて、その気がないわけではない。
ただやはり二人はまだ若く、進んでそういった行為を行うことはなかった。
たまに二人きりで寝るとき・・・・その時にどちらかが相手の布団に潜り込んで、
自然とそういう雰囲気になる。
そして今日がその日になると、刹那も木乃香もすでに感じていた。

「・・・・寝る?」
「は、はい・・・・では布団をもう一つ――」
「一つでええやん」
「うっ・・・・」

もう刹那の頭には完全に血が上ってしまい、判断力が低下していた。
逆に心の準備を済ませた木乃香が刹那をリードする。
二人で同じ布団に潜り込み、遠慮がちに抱き合った。

「せっちゃんええ匂いー」
「お嬢――このちゃん、も・・・・」
「ちゃんと呼んでくれて嬉しいなぁ・・・・」
746名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 01:23:37 ID:0HJKq25k
連投規制阻止wktk!
747名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 01:24:30 ID:3FVALIDr

お互いに相手を確認するように触れ合う。
その動作は二人の性感を刺激し、体温は急上昇していった。
いつしか掛け布団が暑苦しくなり、刹那はそれを剥ぎ取る。
そして代わりに木乃香に覆い被さり、深い口付けを降らした。
降り注がれるキスに木乃香の身体は跳ね上がる。

「んっ・・・・今日は、ぁ・・・・積極的やね」
「今日の私は護衛ではありませんから・・・・それに、結構溜まってたんですよ」
「・・・・お休みに、役に立ててよかったわぁ・・・・ひゃん」

スルリと刹那の手が木乃香の浴衣をも剥ぐ。
木乃香の肌は熱く火照り、薄暗い部屋でもわかるほどに怪しい雰囲気を漂わせる。
そしてそれは刹那の欲望をより一層掻き立てた。

「お嬢様・・・・綺麗です」
「やん・・・・このちゃん言うて・・・・」
「このちゃん・・・・今宵は、とても良い紅葉が見れそうです」
「・・・・それって・・・・ふぁっ」

耳元で囁かれる言葉と優しい手つきに、木乃香は翻弄される。
そしてその晩、二人の身体が離れる事はなかった。

*

次の日、朝食をとりに二人は部屋を出た。
一応朝食の時間は決められていたので、寝過ごすわけにもいかなかったのだ。
さすがに教師は誰一人として遅刻はしていなかった。
ただ二日酔いで死に掛けている者はいたが。

「む? きてたのか近衛」
「龍宮さん、おはようさんー。昨日の夜に到着したんよ」

教師陣とは少し離れた所で龍宮が朝食をとっていた。
刹那は学園長に挨拶をとのことで、一度木乃香から離れる。
その間に木乃香は龍宮と会話をしていた。
748名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 01:27:52 ID:3FVALIDr

「昨晩、随分とあっさり寝たと思いきや・・・・なるほどな」
「へ? せっちゃんのこと?」
「そうだ。あいつは暇になると、一人で勝手に見回りとか始めるからな。
 寝かし付けてくれたのならそれに越した事はない」
「何の話ですか?」

しばらく話をしていると刹那が木乃香の背後に戻ってきていた。
二人分の朝食を器用に両手で持ち、片方を木乃香に手渡す。

「何を吹き込んでいたんだ、龍宮」
「事実だ」
「お前は事実を曲げるからな」
「私から見たらそうなんだよ」
「まぁまぁ二人とも、みんなが見てるえ」

保護者のように見下す龍宮に食って掛かる刹那をなだめ、木乃香は龍宮の前の席に座った。
それに習って刹那も木乃香の隣に腰を下ろす。
木乃香にとってこの二人の会話はとても興味深いものだ。
今まで木乃香がいた世界とは違う世界に住む二人の会話に入れるだけで、
自分も仲間になれたと実感が持てる。
何より龍宮がいる事で、刹那の別の一面が自然と見れるのだ。
少し嫉妬する所はあるものの、それ以上の収穫はあった。

「それより・・・・刹那、良い紅葉は見れたかい?」
「あぁ・・・・昨晩は、とても綺麗な紅葉を見せてもらったよ。紅くて可愛らしかった」
「っ! ・・・・////」
「そうか、それはよかったな。・・・・ところで近衛は、何を思い出して赤面してるんだ?」
「な、なんでもあらへんよ!」
「お嬢様もご覧になればよかったのに。疲れてたんですね」
「う、うん・・・・ちょっとな、あはは・・・・」
「それはもったいない事をしたな近衛。月明かりに照らされる紅葉もなかなかの見物だったのに」
749名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 01:35:34 ID:3FVALIDr

刹那の言い回しが妙に生々しく、木乃香は昨晩の事を思い出していた。
刹那は同じような事を、昨晩に木乃香に向けて言っていたのだから。
リラックスした刹那があそこまで口達者だとは、木乃香も想像すらしてなかった。
言葉攻めであんなにも乱れたのは今回が初めて・・・・思い出しただけで、顔が紅くなる。

「どうかなさいましたか?」
「え、あ、ううん! 今日は紅葉見たいなーって思うてな!」
「今日は16時まで自由行動、だそうだ」
「では、今日はゆっくりと山道を歩くとしましょうか。お嬢様」
「紅葉狩りやね、楽しみやなぁ」
「私はせっかくだからのんびりと過ごすよ、温泉もあることだしな」
「そうか、ごゆっくり」
「いってくるなー龍宮さん」

朝食を手早く終わらせ、二人は急ぎ足でその場を去る。
木乃香が刹那の手を半分強制的に繋いで、部屋へと走っていった。
その二人を龍宮がお茶を飲みながら見送る。

「ふぅ・・・・刹那も成長したものだ。それに比べてあいつは・・・・」

まるで保護者のように言い、龍宮は軽くため息をつく。
そしてぐいっと最後の一口を飲み干し、龍宮は席を立った。
目線の先には寝坊してきた楓の姿があった。

「お前は寝すぎだ、楓。昨日いつまで散歩してたんだ?」
「すまぬでござるよ。木枯らしの散歩は心が洗われて、時間を忘れたでござる」
「・・・・お前も紅葉させてやろうか?」
「?」

キョトンとする楓を前に、龍宮は怪しげな笑みを浮かべた。


FIN              KEYWORD PUZZLE( ttp://id41.fm-p.jp/35/sieg74/ )
750名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 01:36:45 ID:3FVALIDr
キーワード:『紅葉』

時期はずれ&久々の投下で、雑な文章ですみません。
このせつ最高ー。

規制阻止ありがとうございます。
引っかからないように短めに終わらせたつもりなのですが、規制きつくなった?

751名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 01:40:33 ID:0HJKq25k
>>750
GJ!お疲れです!!!

連投規制は11回目の書き込みが出来ないんじゃなかったっけ?
10レス連続で書き込まれていたので一回入れときました。
752名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 02:47:38 ID:kGGzy90c
クの付く人来てた―!
相変わらずGJです最強ですむしろHです
753名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 03:08:43 ID:/R6tIjY8
がはっ!!!GJ!!Gj!!!
あなたのこのせつは刹那がヘタレだけじゃないとこが好きだ!
754名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 14:08:15 ID:4kJhJTHV
始終ニヤニヤしてましたwごち!
755名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 15:47:49 ID:ID3RM5UY
うはっぁwwww来た来たキタ━━━━(゚∀゚)━━━━━!!

ク氏まってたよ〜。この萌はク氏味がした!!!
このスレの住人は持ち味がみな独特で
色んな萌えを楽しめるのがイイ(・∀・)

ふぁぁぁ。おなかいっぱいになりました♪
756名無しさん@秘密の花園:2008/12/14(日) 21:47:54 ID:UguInVw5
あーもーずーっと互いのストーカーしてろバカップルどもめw

そしてせっちゃんと隊長には言いたい、エロスは程々に!







嘘っスこれまで通りの貴女方でいてください
相変わらずの甘さとにぎやかさでした、ク氏GJ!
757名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 18:59:24 ID:bStCgGFx
定住者は六人でおK?
758名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 22:35:26 ID:5lPh9HJP
ここに最近このせつにはまった新参者が一人いるぜ!
759名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 22:54:39 ID:bStCgGFx
このせつは!

保管庫でさらにこのせつを堪能して下さいな。
760名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 23:16:28 ID:M9bhZ6C1
まだ居るぜ〜 ク氏は毎度GJすぎるな…
761名無しさん@秘密の花園:2008/12/16(火) 23:32:07 ID:djum6Gv+
龍にんスレや総合スレと掛け持ちしてる奴がここに一匹。
原作はいささかツラい状況だけど、
こんな時だからこそ妄想を垂れ流していきたいと思う。
762名無しさん@秘密の花園:2008/12/17(水) 18:33:31 ID:MRYsGFni
銭湯の漫画コーナーで1巻と5巻だけ読んでここに入り浸ってる馬鹿もここに1名…。
いや、ROM専ですが。
763名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 20:19:55 ID:VED6f7qk
シリアスとほのぼのとエロ、どれがいい?
764名無しさん@秘密の花園:2008/12/19(金) 20:54:06 ID:NgTdQgQc
ほのぼの→エロ→シリアス
765名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 02:28:30 ID:391FJO3g
エロ⇒のぼのぼ⇒シリアスせっちゃんの攻めが好き
766名無しさん@秘密の花園:2008/12/20(土) 17:08:40 ID:IVFUdiNI
エロ→エロ→京都弁せっちゃんの攻め
767名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 00:48:39 ID:NQb3hcUK
シリアス→エロ→ほのぼの 
もちろんせっちゃん攻め
768名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 03:52:29 ID:jVoFyC46
正直な奴らめ。
・・・・しかし、刹那攻めのストックがない。
769名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 17:30:56 ID:+ZJe0uCl
ここはせつこの派が多いのかしら…
770名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 18:29:14 ID:XULGVOsL
このちゃんは誘い受けと言うか、襲い受けだと信じてる。

せっちゃんは鬼畜もイケるヘタレ攻めじゃなかろうか。

……つまり龍にんにけしかけられ明日菜に期待され、このちゃんに誘惑されてついにせっちゃんの理性飛んじゃう!?


と自分の脳内ではこんなん。
771名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 20:56:53 ID:DBn0I4oC
俺は原作+α(キス程度)で刹那受けがいい
772名無しさん@秘密の花園:2008/12/21(日) 21:11:52 ID:SY1WDCAZ
このかはむしろせっちゃんだけには奥手かつ乙女くらいがいいな
二人して真っ赤になってドキドキしてて欲しい
773名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 01:35:26 ID:CR2Rb6IW
指ちゅぱする子が奥手……?
774名無しさん@秘密の花園:2008/12/22(月) 20:55:26 ID:rd610YdZ
>>773
うん、あくまで理想だから気にしないでくれ。
775名無しさん@秘密の花園:2008/12/23(火) 03:12:59 ID:CUgeTdzg
いやー俺も>>772みたいのがツボだわ。
指ちゅぱとかでからかってたらせっちゃんが本気になっちゃって
えっヤバいどうしよう?!みたいな。

…いかん寝よう
776名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 15:29:01 ID:JFZXEQHI
2人でマックへ。

「なに食べるん?」

「お嬢様先に決めていいですよ」

「せっちゃんと一緒がいいんよ」

「え…///しかし私こうゆう食べ物あまり
食べたことないんで何がいいものか///」

「じゃ一緒に決めよ♪」

「///…はい(うしろ詰まってるけど…いいか)」

777名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 15:31:32 ID:JFZXEQHI
店内で食べることに。

「せっちゃん、チーズバーガーおいしい?」

「はい…お嬢様は?」

「めっちゃ美味しいよ♪食べてみる?」

「はい、よろしければ」

「じゃはい、あーん♪」

「!?…その、それは人前では///」

「じゃ口移しね…うー」

「…!!その、それもちょっと…///」

「あーんと口移し、どっちがいい???」

「…あーんで…///(店内の人は見てみぬ振りしてる…恥ずかしい)」


778名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 23:22:47 ID:wluJF2JX
店内のお客さんになりたいわ(*´Д`)=з

Gj!
779イヴ即席SS:2008/12/24(水) 23:50:25 ID:93U5ecgk

ひどく鼓動が高鳴っている。
明日のために寝なければいけないのだが、鼓動が邪魔で寝れない。
もう学校は昨日から冬休みなのだが、ベッドに転がる少女――刹那には、
退魔の仕事などやることはいっぱいあるのだ。

「・・・・むう」

刹那は胸を押さえて寝返りを打つ。
同居人はいない。
同居人は何やら小荷物を持って昼に出かけていったきりだ。
一人きりの静かなこの空間が、妙に怖い。

(なぜこんなに・・・・不安なんだ・・・・?)

なぜこんなに、この空間が不安で恐ろしいのだろう。
今日は何事もなかったはずだ。
クラスメイトとも話す事はなかったし、幼馴染とも少ししか話さなかった。
学寮内の生徒たちは、実家に戻る準備やクリスマス会の準備でバタバタしていた。
もちろん刹那の幼馴染――木乃香も例外ではなかった。
木乃香は実家に戻る事は無いようだが、クリスマス会の準備にかり出されていた。

『せっちゃん、クリスマス会出るやろ?』
『いえ・・・・すみません。明日予定があるので、早めに寝ようと思っていて・・・・』
『そうなんや・・・・あ、そや――』
『このかー、はやくー!』
『あ・・・・堪忍な、せっちゃん』

――ズキッ

幼馴染の木乃香がその場を去ることに、なぜか胸が痛んだ。
そして幼馴染が去った後に周りに誰もいない――そんな自分がとても哀れに見えた。
幼馴染の周りにはあんなに人がいるのに、なぜ自分は無意識に皆から一歩退いているのだろうか。
修学旅行が終わってから随分と打ち解けてはいたが、木乃香がいなければ周りとあまり話さないのは相変わらずだった。
780イヴ即席SS:2008/12/24(水) 23:51:52 ID:93U5ecgk

(準備を手伝う気にもなれない・・・・今日は部屋に戻ろう・・・・)

そこから先のことは特に覚えていない。
クラスメイトに会わないように部屋に逃げてきたから。
逃げ回る私はとても情けなかったに違いない。

「・・・・くっ」

胸の痛みを和らげようとするためか、身体は自然と泣き出した。
呼吸に困難を感じて息を吐けば、それには嗚咽が混じる。
それは怪我の痛みで流す涙とは違った。

(私は一人で大丈夫だったじゃないか・・・・お嬢様が無事でいてくれれば・・・・お嬢様が、いれば・・・・)

だがその木乃香は自分のものではない。
ずっと自分の所にいてくれるわけではない。
木乃香の周りには自然と人が集まる。
人柄がいいから・・・・それは当然の事だ。
だがそれが刹那の心を痛めた。
木乃香がいなければ、自分は周りに気にも止められないから。

(お嬢様がいなければ・・・・私は変わっていた? ・・・・何を考えてるんだ・・・・!)

周りのお祭り騒ぎに刺激され、自己主張を始めた心。
主である木乃香にすらも嫉んでしまう。
自分で選んだ道なのに、自分より木乃香を選んだのは自分なのに・・・・。
矛盾に自己嫌悪し、布団の中でもがく。
誰もいない暗闇である事が唯一の救いだった。

(私は、皆と・・・・お嬢様・・・・、このちゃんともっと仲良くなりたい――)

そう、"私"として。
従者ではなく、半妖でもなく。
"唯一無二の存在"として、木乃香の元にいることが出来たなら・・・・。
そうしたら彼女は、私の想いに答えてくれるだろうか?
781イヴ即席SS:2008/12/24(水) 23:52:53 ID:93U5ecgk

――私のことだけを見てくれるだろうか?

ダンッ!

邪念を振り払うように、敷布団ごとベッドを叩いた。
所詮出来るはずがない。
思っただけですぐ変われるなら、誰も苦労はしないんだから。

(キリがない・・・・呪術で意識を落とそう・・・・)

朝になればきっと、いつも通りの自分がいるから。
刹那は意識的に自身の魔法抵抗力を下げる。
そして札を取り出して、睡眠の呪術を自らにかけた。

*

「せっちゃんー、おきとるー?」

呼び鈴を鳴らしてみるも、幼馴染の反応はない。
もう寝てしまったのだろうか?
いや、例え寝てても呼び鈴を鳴らせば起きるはずだ。
彼女はそこまで眠りが深くないはずだから。

「おっかしいなぁ・・・・ありゃ、カギあいとるやんー」

何気なく手をかけたドアノブを押し引くと、ドアは何の抵抗も無しに開いた。
悪いとは思いつつも、真っ暗な部屋に明かりをつけて奥へと進む。
部屋の奥には布団にもぐる幼馴染がいた。

「せっちゃん、具合悪いん?」
「・・・・すぅ」
「せっちゃん? ・・・・珍しいなぁ、熟睡してるん・・・・?」
782イヴ即席SS:2008/12/24(水) 23:55:32 ID:93U5ecgk

修学旅行で仲直りしてから、共に寝ることは珍しくなかった。
しかしここまで深く眠っている事は初めて。
木乃香が夜中に少し意識を覚醒させただけで、その気配に気付いて一緒に起きるほど彼女は眠りが浅いのだ。
ふっと木乃香は刹那の目尻が赤いことに気付いた。

(せっちゃん・・・・泣いてた?)

一度立ち上がって、持ってきたケーキとプレゼントをテーブルに置く。
時間を見ると、まだ20時。
刹那がまだ起きてると思って、クラスのクリスマス会を抜け出してきたのだ。
もちろん、刹那と二人っきりのクリスマス会をしようと思って・・・・だ。

「せっちゃん? なんかあったん・・・・?」

刹那の髪を撫でながら、先ほどよりも近い距離で顔を見つめる。
頬にはまだ乾ききっていない雫の後、手元には魔法に使用する札。
それはついさっきまで泣いていた証拠だった。
幼馴染が無理やり自らを眠りにつかせていた事に、木乃香も気付く。

(せっちゃん・・・・一人で泣くタイプなんやな・・・・)

滅多に見ない涙に、木乃香はどうすることもできなかった。
何が辛かったのだろう。
泣くほど辛い事があった幼馴染に気付く事が出来なかった自分が嫌になってくる。
昔も・・・・泣いて謝る刹那に何もしてあげられず、結果離れ離れになってしまった。

「せっちゃん・・・・」

本当ならばアーティファクトで起こして、謝って・・・・できるなら、抱きしめたい。
でも刹那を起こすのは悪い気がした。
クラスでのクリスマス会よりも――自分よりも、刹那は仕事を選んだのだから。

「せっちゃーん、手作りのケーキなんやよー?」
783イヴ即席SS:2008/12/24(水) 23:57:08 ID:93U5ecgk

反応はないとわかっていても、話しかけずにはいられなかった。
きっと答えはこう。
――さすがはお嬢様です。

「せっちゃんは、クリスマス会とか嫌い?」
『嫌いではないのですが・・・・まだ慣れていなくて』

返ってくる言葉は予想できるのに、なぜ心はわからないのか。
刹那の横に寝転がって寝顔を見つめる。
何が悲しかった?
ウチでは力になれなかった?

「堪忍な、気づけへんで・・・・。いつも傍にいてくれるから・・・・思いあがっとった」

忙しさで時間があっという間に過ぎて、気がつけば刹那が傍にいなくて。
きっと仕事の準備で忙しいんだろうと思っていた。
でもいつまでたっても戻ってこなくて、不安になって・・・・。
もっと早く来ていれば、刹那は一人で泣いてなかったかもしれない。
傍で助けになれていたかもしれない。

「なぁ、もし・・・・もしな・・・・」

そっと刹那の手を引き寄せて、それを胸に抱きしめる。
暖かい手に少し安心して、木乃香は目を閉じた。

(ホンマにサンタさんがおったら・・・・ウチ、せっちゃんの心がほしい・・・・な・・・・)

暖かい温もりと優しい香りが、木乃香を夢の中へと誘う。
きっと目が覚めたら、そこにはいつも通りの刹那がいて・・・・驚いた顔で起こしてくれるに違いない。
その時に試しに言ってみようか。

『せっちゃんの心をください』と。


FIN              KEYWORD PUZZLE( ttp://id41.fm-p.jp/35/sieg74/ )
784名無しさん@秘密の花園:2008/12/24(水) 23:58:28 ID:93U5ecgk
クリスマスSSの存在をすっかり忘れてたので、当日書きのイヴ即席SSです。
大慌てでパッと思いついたネタで書きました。
クオリティ低くてすみません。

カップルになってない設定です。
バトン置いとくんで、誰かリレーしてくれませんか。
クリスマス当日の甘いの希望・・・・。

(´・ω・`)ノ ミ _
785名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 00:07:48 ID:Z0zSv2Of
GJ!ク氏ラブ!
786名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 01:11:17 ID:8xkhjRl3
投下直後にク氏作見れたの初めてだ
忙しい年末前にありがたいサプライズ
GJでした〜
787名無しさん@秘密の花園:2008/12/25(木) 07:33:22 ID:0siI/P95
GJでした!

この後の続きを書くなんて私にはむりぽです・・・
788名無しさん@秘密の花園:2008/12/26(金) 01:22:04 ID:yQQPyWom
クラさんGJ!

http://www3.uploader.jp/dl/konosetu/konosetu_uljp00003.jpg.html
単行本派の方はネタバレ注意。パスは夫婦の出席番号

萌が足りなくてやってしまった。こんなの町中にあふれてたらいいのに
789名無しさん@秘密の花園:2008/12/27(土) 02:11:58 ID:VSGTmDf0
>>788
ぜひ全国の非常口はこの看板にして欲しいwww
790名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/27(土) 11:45:00 ID:ibVYSDcn
791名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/28(日) 00:01:54 ID:RJgpWGmx
>>788
むほほwいただきました!壁紙に設定・・・目が痛いw

>>790
もう消えてるorz
792名無しさん@ローカルルール変更議論中:2008/12/31(水) 16:42:51 ID:ouiPSTyo
今年もありがとう。
来年もよろしく。
793名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/01(木) 00:40:05 ID:HmWKm545
このせつはどうもお世話になりました
今年もよろしくお願いしますえ
794 【凶】 【1636円】 :2009/01/01(木) 21:14:06 ID:4iBs9pdX
あけましてこのせつ。
795 【だん吉】 【482円】 :2009/01/01(木) 21:15:53 ID:4iBs9pdX
なんで凶なんだよー。
ごめんな凶で。
今年もこのせつと共に幸せになりましょう。
796名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/02(金) 00:57:29 ID:+69JFvi9
このせつはどうも。
今年もよろしく。
797名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/02(金) 23:01:58 ID:gHbvZbiE
遅ればせながらあけおめことよろ。
今年も全力でこのせつに萌えましょうな。
皆の衆!!
798名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/04(日) 18:54:50 ID:SgDmwh4N
おせちを食べながら「かずのこ」を並べ替えると「このかズ」になることに気付いて、
新年早々沢山のちっちゃい木乃香に囲まれる妄想をして悶々とするせっちゃん

…という妄想をする正月の俺
799名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/04(日) 22:28:27 ID:0HuEMVsh
このか…ずのこ、美味しいですね!
800名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/05(月) 20:49:13 ID:SV9xMTLp
このかを美味しく頂いちゃうせっちゃんの話しようぜ
801名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/06(火) 01:26:32 ID:YV0bNlzF
この流れでこのせつSSはだめか?
802名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/06(火) 01:31:43 ID:1jbEpXzE
何をためらうことがあるさぁ早くSSを
803名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/06(火) 07:32:59 ID:WCUdhby5
>>801
その為のこのスレだぜ?迷う事はない!
804名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/06(火) 08:36:29 ID:YV0bNlzF
よーし、投下する勇気が出た。
今夜落とす。
805名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/06(火) 11:25:22 ID:a49O7IrR
楽しみにしてるぜ!
806名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/06(火) 23:01:42 ID:OKM5DD0H
まだー?チンチン
807名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 00:54:48 ID:XRerwMBR

「ひゃー、すっかり遅くなってもうた」

ローラーブレードで帰路を走るのは近衛木乃香。
どうやら今日はこの後に約束があるらしい。
普段は登校時にしか使用しないローラーブレードが、彼女が急いでいる事を示していた。

「せっちゃんお腹すかせてるやろなー、はよ帰らなー」

約束とは、大事な幼馴染とのものだった。
途中の階段を器用にローラーブレードで駆け下りる。
彼女は体力はさほどないが、図書館探検部で鍛えられたバランス感覚はなかなかのものだった。
しかし今は何時もの朝ではなく、光が少ない。
木乃香は足元に転がる石に気付かなかった。

――ガンッ

「ひゃっ!? ・・・・いたた」

その石で見事に転んでしまった。
咄嗟に仰向けに倒れたので顔面に怪我は負わなかったが、それでも背中に鈍い痛みが走る。
あぁやってもうたな、と木乃香は小さく唸った。

「誰も見てへんよね・・・・プラクテ・ビギ・ナル・・・・」

木乃香はその場で治癒魔法を自分にかけた。
淡い光が辺りを照らす。
光が収まった頃には、木乃香の身体から痛みも消えていた。

「よし。怪我なんてしていったら、せっちゃんに怒られてまうからな・・・・」
「にゃーん」
「へ? 猫?」

木乃香がその場で振り向く。
しかし草むらに隠れているのか、声の主は見えなかった。
808名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 00:56:01 ID:XRerwMBR

「仔猫やろか? おーい、出といでー」
「・・・・フシャー!」
「こわがらんでええよ・・・・ひゃあ!?」

猫の影が見えた・・・・と思った瞬間、木乃香の視界は真っ暗となった。

*

――ピンポーン

「はい、今開けます」

一つの部屋に呼び鈴が鳴る。
その部屋の主は桜咲刹那。
同居人もいるのだが、今夜は別の所にいるようだ。

「せっちゃーん、遅れて堪忍!」
「私も今戻ってきたばかりで――わっ、ドロだらけじゃないですか!」
「へへ、転んでもうた・・・・怪我は自分で治したんやけどな」
「・・・・もう、気をつけてくださいね」

刹那が呼び鈴に答えてドアを開けると、そこには予想通り木乃香がいた。
制服はドロだらけで、手には着替えとお風呂道具。
さすがにこのままで料理を作るには衛生上よくないので、料理の前にシャワーを借りる事にしたらしい。

「自室で入られてきてもよかったのに」
「明日菜が入ってたんー。せやからこっち借りた方が早いやろ?」
「ま、まぁそうですが・・・・では制服は私がクリーニングルームに置いてきますね」
「ありがとなー!」

クリーニングルームとは、寮に特別に配置された学生専用の施設だ。
そこに汚れた制服を置いてくると、専用の業務員が定期的にドライクリーニングしてくれる。
クリーニング代などは全て学費でまかなわれているので、金銭的に学生に負担はかからない。
善良的で学生にも喜ばれてる。
809名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 00:58:52 ID:XRerwMBR

「ほな、すぐ入ってまうなー。はい、制服」
「は、はい、ゆっくり!」
「すぐ入るって言うとんやんー? お腹すかせとるやろ?」
「わ、わかりましたから! ドア閉めて下さいっ」

ゴンッ

「イタっ」
「す、すみません!」
「せっちゃん慌てすぎやー、あははv」

鈍い音と笑い声が響く。
刹那は脱ぎたての制服を手渡された。
もちろん制服が刹那の手にあるのだから、ドアの向こうの木乃香は全裸もしくは半裸なわけで・・・・。
手渡すために開いたドアが予想以上に大きく開いた事に驚いて、咄嗟に押し返してしまった。
そしてそのドアに木乃香は頭をぶつけてしまったのだ。
音はかなり痛そうなものだったが、はんなりとした木乃香は笑って許してくれた。

(あ、あせった・・・・見えるかと・・・・)

刹那は木乃香の制服を丁寧にたたみ、部屋を後にする。
木乃香のぬくもりがまだ残る制服。
手にあるそれが木乃香の裸を連想させてしまい、再び顔が紅くなる。

(と、とにかく制服を置いてすぐ戻らないと!)

邪な感情を振り払い、刹那は急ぎ足で目的地へと向かう。
クリーニングルームにはちらほらと他の学生もいた。
コインランドリーのように学生自身が洗濯出来る設備も整っているので、シャツや私服などを自分で洗っているのだ。
もちろん刹那も普段利用してるのだが、今回は目的が違うのでその場を通り過ぎる。
目的の場所には箱と受付用紙が置いてあった。

(名前と学籍番号と・・・・あ、私の書いても意味ないな。お嬢様の番号は・・・・)

うっかり自分の名前を記入した刹那は、間違えた紙を折り畳んでゴミ箱に入れる。
そして受付用紙に木乃香の名前、学籍番号、部屋番号を記入し直して、制服と一緒に箱に入れた。
810名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 01:01:12 ID:XRerwMBR

(・・・・ん?)

その時に初めて、木乃香の制服に若干の違和感を感じた。
木乃香の制服から微量だが魔力が感じられたからだ。

(・・・・魔力? 自分で治療したときのか?)

「あ、桜咲さんやない。制服どないしたん?」
「いえ・・・・転んでしまいまして」
「気ぃつけてなー。ウチ保健委員やけど、血苦手やし・・・・」

一瞬手が止まったものの、同じ場にいた亜子に呼びかけられて刹那の集中力は途絶える。
この時刹那は気付いていなかった。
感知した魔力が木乃香の制服ではなく、制服についた獣の毛から発せられていた事に――。

*

「戻りまし――わっ!?」
「せっちゃんお帰りー! 遅かったやんー」
「あ、亜子さんと話してまして・・・・じゃなくて、なんでそんな色っぽ・・・・寒そうな格好を!」
「えー? 部屋暖かいから寒くあらへんえ?」

すでに料理を始めていた木乃香の格好の格好に、刹那は思考能力を大きく削られた。
胸元の大きく開いたワンピースにエプロン。
この時期にはかなりの軽装だ。
確かに暖房をつけてあるのだから暖かいのだが・・・・予想外の露出度の高さに、刹那の思考回路は一瞬ショートしそうになる。

「すぐできるからまっとってなー」
「あ、私も手伝います!」
「せっちゃんも仕事から戻ったばかりなんやろ? シャワー浴びてき?」
「う・・・・」

そう、刹那は今日仕事だった。
それで木乃香は今日は一人で帰宅をしたのだ。
かなり動く仕事だったから汗臭いだろうか。
刹那は少し迷ったが、木乃香の言葉に甘えてシャワーを浴びる事にした。

(なんか変な感じだな・・・・シャワー中に他の人がいるって・・・・)

いつもシャワーを浴びるときは、部屋に誰もいないか龍宮がいる程度。
特殊な結界を張ってあるため、手に取るように木乃香の様子がわかる。
さすがに木乃香が途中で乱入してくる事はないだろうが・・・・それでも刹那は無意識に警戒してしまっていた。
まぁ自分のテリトリーに護衛対象がいてくれるのは、護衛しやすいともいえるのだが。
811名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 01:04:21 ID:XRerwMBR

(木乃香お嬢様や明日菜さんたちと、同じ部屋になれたら・・・・楽しそうだな・・・・)

最近一緒に登校している時によく思うことだ。
いつも途中から合流するのは刹那だけで、木乃香と明日菜とネギはほぼ一緒に行動している。
先に来ても後に来ても、結局一人で合流する自分がなんだか寂しかった。
それと同時に、ネギが羨ましかった。

(もしネギ先生が教師専用の寮に移ったら・・・・)

そう考える自分が、穢れているように見えて。
ネギの世話を焼く二人の親友を裏切っているようで。
ネギは教師で男なのだからいつかは出て行く・・・・それを理由に自分を正当化する、そんな自分が余計に嫌だった。

「せっちゃん、ちゃんと頭拭かなあかんよ?」
「あ・・・・すみません」
「ドライヤーとか使わんの? 髪痛んでまうえ」
「わっ」

シャワールームから出てきた刹那に、木乃香は鍋の火を弱くして近づいてきた。
肩にかけてたバスタオルで強引に、でも優しく髪を拭かれる。
誰に見られてるわけでもないが、刹那は無性に恥ずかしくなって身をよじった。

「じ、自分で拭けますよ・・・・!」
「あはは、堪忍なぁ。ネギ君が明日菜から逃げてびしょびしょで戻ってくるから、つい癖でな」
「ネギ先生もですか・・・・」
「あ、そや。明日菜とも話しとったんやけど・・・・」
「はい?」

木乃香は刹那の乱れた前髪を直して、鍋の前に戻る。
刹那も手伝うために台所に入ったが、どうやら夕飯の準備はあらかた終わってしまったようだ。
部屋にはとても良い匂いが充満していて、料理ももう部屋のテーブルに並べられていた。

「あんな、ネギ君がウチらの部屋からいなくなってもうたら・・・・せっちゃん来ぃへん?」
「え・・・・?」
「高校女子寮でも三人部屋とれたし・・・・高校で自由に部屋換えしてもええって言うとったやん?」

刹那は驚いて硬直した。
まさか木乃香も同じ事を考えていたとは思っていなかった。
突然の申し出になんと言えばいいか分からない。
かといって何もせず黙ってるわけにも行かなかったので、冷蔵庫を開けて牛乳を取り出した。
さすがに話の途中で飲むわけにもいかないので、手に持つだけだったが。

「え、と・・・・その・・・・」
「あ、龍宮さんと同じ部屋がええ? そやったら、変な事言うてもうて――」
「い、いえ! お、お嬢様たちがご迷惑でなければ・・・・喜んで!」
「ほんま!? やったー!」
「うわっ!?」
812名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 01:12:10 ID:RLjix5bk
連投規制阻止?
813名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 01:15:48 ID:XRerwMBR

木乃香は感極まって刹那に抱きつく。
その反動で牛乳パックを落としそうになった刹那は、木乃香を抱き返して体勢を立て直した。

(あ・・・・せっちゃんの抱っこ・・・・なんか久しぶりやなぁ・・・・)
「ふぅ・・・・」

転ぶ事もこぼす事もなかった事に、刹那はほっとした。
しっかりと抱き合っている事にも、木乃香が顔を赤くしている事にも気付かなかった。

「・・・・危なかった。気をつけてください」
「えへへ、堪忍な。・・・・なんや、喜んだらウチ・・・・お腹空いてもうたな・・・・」
「あ、ではすぐ食べれるように――」
「んーせっちゃん、美味しそうな匂いする・・・・」

「え?」という刹那の言葉は、顔を上げた木乃香に飲み込まれた。
鍋からのグツグツという音が妙に大きく聞こえる。
木乃香はねっとりと刹那の唇を味わい、舌を侵入させた。

「んぐっ・・・・っ・・・・」

コクンっと木乃香が喉を鳴らした。
唾液を掬い出されると同時に力が抜けていく。
木乃香が刹那を開放する頃には、刹那は壁に手をついて立つのがやっとの状態だった。

「――おいしいなぁ・・・・」
「お、お嬢様・・・・?」
「食べても・・・・ええよね? 最近忙しゅうてお預けやったやん」

木乃香は片手で火を止めて、刹那をベッドへと導いた。
あぁこれは・・・・久しぶりにアレかな、と刹那は困ったような顔で引っ張られていく。
一瞬振り向いたその目――その視線に刹那は背中が凍りついた。
それは、獲物を捕らえた獣のようであった。

「お嬢様、待ってくださいっ」
「いやや」
「お嬢様は・・・・むぅ!?」

口答えをする刹那を強引に引き寄せ、再び口付けで黙らせる。
刹那は視線で気付いた。
木乃香が妖怪の類に取り付かれていることに。

「ん・・・・ふ、う・・・・」
「・・・・そう、大人しくしてればええんよ?」
「お嬢様・・・・、正気・・・・?」
「もちろんやえ? ・・・・あ、せっちゃん気付いてもうた?」

はっきりと答える言の葉は、間違いなく木乃香のものだと刹那は判断する。
どうやら木乃香は取り付かれているのを自覚しているようで、影響されているのは感情だけのようだ。
そして木乃香に取り付く妖怪は、刹那にターゲットを絞り込んでいた。
取り押さえられる前に何とかしなければ・・・・木乃香よりも先に自分がやられる。
そして木乃香もその後にやられるかもしれない。
しかし木乃香の魔力が刹那の気を邪魔していて、得物なしでの退魔は非常に困難だった。
814名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 01:24:08 ID:XRerwMBR

「ん〜・・・・もうここでええわ」
「え・・・・あっ」

ベッドへ向かう途中のソファーに押し倒される。
どうやらベッドまで待ってはもらえないようだ。
刹那は力なく抵抗しながらも周りを見渡す。
だがクリーニングルームに行く前にはあったはずの夕凪だけでなく、普段から置いてある退魔道具は見当たらなかった。

「探しても無駄やえ、さっき片付けたもん」
「なっ・・・・お嬢様、わかってて・・・・」
「んーん、この子について話そうと思ってたから・・・・でも今は・・・・せっちゃんが美味しそうや・・・・」

木乃香が"この子"と言うのが、刹那を狙う妖怪であることに間違いはなかった。
しかし木乃香はもう目の前の刹那しか目に映らないようで、その手は刹那の服を剥いでいく。
先ほどから刹那は、身を任せながらも何とも言い難い恐怖感に襲われていた。
逃げろ、と本能が警告音を鳴らしている。
しかし目の前で愛情を傾けてくれる主人を放っておく事は出来ず・・・・
またそれ以前に既に恐怖によって、ヘビに睨まれたカエル状態。
何も出来ず無防備に身を任せるしか出来なかった。

「ぁ・・・・!」
「ぴくぴくしてかわええなぁ・・・・」
「お、お嬢様・・・・」
「ダーメ」

身をよじって逃げようとする刹那を上から押さえ付ける。
そのまま素肌に舌を這わせ、快楽で抵抗力を奪っていった。

「ぅ・・・・くすぐった・・・・」
「気持ちええの間違いやろ・・・・?」
「・・・・ぅっ!?」

舌で胸の先端を捉えられながらも、刹那は快楽で出る声を抑える。
だがその様子はさらに木乃香を興奮させ、行為はより深いものになっていった。
情熱的にキスを繰り返し、熱い抱擁をする。
木乃香は刹那の背中に手を這わせると、隠されたものがある事を思い出した。

「せっちゃん・・・・翼、出して?」
「な、んで・・・・」
「ええから、ほら・・・・」
「・・・・は、い」

快楽で自己判断能力を削られた刹那は、木乃香の優しい声に答えて白い翼をさらけ出した。
白くてやわらかいそれを見た木乃香はゴクリと喉を鳴らす。
その様子に刹那はゾクッとした。
興味のあるものを見つけた時の眼・・・・刹那は"苦手なモノ"と木乃香を重ね合わせた。
あまりにもよく似ていて、恐怖がこみ上げてくる。
木乃香はそんな刹那をあやす様に翼を撫でると、急に爪を立てて翼ごと刹那を押さえつけた。
815名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 01:36:05 ID:XRerwMBR

「いっ・・・・」
「せっちゃん・・・・すごい、美味しそう・・・・」
「うっ、・・・・はぁ・・・・っ」

その状態で胸の先端を啄ばまれ、ビクッと身体がはねた。
痛みと快楽、恐怖と欲求が交じり合い、刹那を快楽の波に飲み込んでいく。
しかしいくら快楽に飲まれようと、刹那は抵抗する事をやめなかった。
なぜならば、妖艶な木乃香の裏側にいる"何か"が、刹那を捕食対象として捕らえていたからだ。
いつ喰われるかわからぬ状況が刹那を焦らせる。
その状況を知ってか知らずか、木乃香は刹那の下半身に手を伸ばした。

「せっちゃん、もうここトロトロや」
「だ、だめ、触らな・・・・うぁ・・・・」
「身体は素直に悦んどるよ・・・・?」
「ふっ・・・・はぁ・・・・っ」

溢れる蜜を絡め取られ、そのまま敏感な場所を弄ばれる。
恐怖心でギリギリ理性を維持している状態で、さらに限界を刺激される。
刹那は大きく空気を仰いで耐え続けた。

(こ、怖い・・・・! でも・・・・あぁ・・・・)

抵抗力を全て無くせば――喰われる、逃げろ。
ここで快楽に飲まれて――果ててしまいたい。

逃走本能と性的本能、二つの刹那の本能は戦い続ける。
そこを木乃香が絶妙なタイミングで、後者を高ぶらせていた。
舌で撫ぜられる度に身体は痺れて力が抜け、指で触られる度に電流のような快楽が身体を駆け巡る。

――張り詰めた緊張感は、無意識に刹那を興奮させていた。

「ほんと、に・・・・ダメ・・・・げんか、い・・・・!」
「大丈夫やて、大丈夫やから・・・・大好きやえ、せっちゃん」
「あ、あぁ・・・・やッ・・・・、あぁぁ――っ!」

木乃香の最後の一押しだった。
耳元で安心させるように囁かれて、ついに耐え切れずに刹那は果てた。
ぐったりと横たわる刹那に向けられる木乃香の視線・・・・それは獲物を見る瞳。
しかし慌てて木乃香は自らの瞳を押さえると、言い聞かせるように呟いた。

「アカン、食べちゃダメ・・・・ええ子やから・・・・」

木乃香が再び目を開く。
そこにはいつもと変わらぬ優しい目があった。
816名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 01:42:21 ID:9GYeLGBy
連投規制あげワクテク
817名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 01:44:12 ID:XRerwMBR

*

「もし危険な類だったらどうするんですか!」
「大丈夫やえ、せやかてせっちゃんも気付かんくらい大人しい子やったろ?」
「そ、それは私が未熟なだけで・・・・やはり一人にさせるんじゃなかった・・・・」
「せっちゃんは過保護や」

数十分立って目を覚ました刹那は、すぐさま木乃香に付く妖怪を退治しようとした。
しかし木乃香が妖怪を庇い、許して欲しいとお願いした。
どうやら木乃香は可愛い容姿をした妖怪を気に入って、連れて来てしまったようだ。
そしてその肝心の妖怪はと言うと、刹那が台所に置いてきてしまった程好く温くなった牛乳を木乃香から与えられて上機嫌に喉を鳴らしていた。

「お嬢様だって取り付かれてわかったでしょう? そいつは私を喰らおうとしてましたよ」
「そ、そうやけど・・・・ダメって言うたらちゃんということ聞いてくれたえ。ええ子や」

木乃香は必死に妖怪を庇う。
自分を喰おうとした妖怪を庇う姿に、刹那は苛立ちを隠せなかった。
やっと見つけ出した退魔道具を手に妖怪に詰め寄る。

「と、とりあえずいくら可愛くても妖怪は妖怪です! 処理します!」
「ダメやて! いくらせっちゃんでもそれは許さんよ!」
「問答無用です! これはお嬢様の安全のためで――」
「にゃーん」
「わっ!?」
「・・・・へ?」

叱られる木乃香を心配するように、仔猫の姿をした妖怪は一声鳴いた。
それに刹那は驚き、身を引く。
一気に勢いが消えた刹那の姿は、誰から見ても不自然だった。

「もしかして、せっちゃん・・・・苦手なん?」
「う・・・・。そ、そういうわけでは・・・・」
「・・・・猫、苦手なんや?」
「ぐ・・・・」

刹那の行動に木乃香は察した。
妖怪を身に隠していた木乃香に抱かれていた時の・・・・あの異様な怯え様。
そしてこの猫の姿をした妖怪に対する反応で予想できた。
この反応は、苦手なものに対する反応だと。

「・・・・お嬢様。あのですね・・・・私の種族を知ってるでしょう?」
「えと、ウゾク・・・・やっけ?」
「そうです。いくら半分で妖怪の血言えど、私は烏の性質もあるわけで――」
「猫が苦手なんやね」
「にゃ?」
「だ、だから、寄せないで下さい! 斬りますよ!」

話してる途中に、目の前に妖怪を持ち上げる。
刹那は大慌てで距離をとった。
その様子に木乃香は笑いをこらえきれず、妖怪を抱えたまま噴出した。
818名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 01:49:36 ID:XRerwMBR

「ぷっ、ウチの護衛さんが猫嫌いなんてなぁ・・・・」
「・・・・嫌いでなくて、本能的に避けてしまうだけで・・・・それに、仕事と割り切れば斬り捨てる事は出来ます」
「あかんて。この子はお父様に頼んで、ウチの子にするんやから」
「なっ!?」
「式神・・・・やっけ? あれって妖怪でもええんやろ?」
「そ、それはそうですが・・・・」
「なら決定や〜、ずっと猫飼いたかったん。怯えるせっちゃんも可愛えかったしなv」
「そんな・・・・うっ、こっち見るな・・・・!」

随分と木乃香に懐いてしまった妖怪は、未だに刹那を興味津々と言った感じで見ている。
刹那が本能的に猫を苦手としているのと同じように、この妖怪もまた本能的に刹那を獲物としてみてしまうのだろう。
主の命令で斬り捨てる事も出来ない刹那は、ただ距離をとってその視線に耐えるしかなかった。

「あぁ、もう・・・・お、お嬢様! それを使役するのでしたら、同じ部屋で暮らすのは保留ですよ!」
「そら困ったなぁ・・・・苦手なん知らんかったから拾ってきてもうたし・・・・」
「にゃー」
「うっ、わわっ! このちゃんは私と猫どっちが大切なんですか!?」
「せっちゃん、それむちゃくちゃやわー」

珍しく取り乱す刹那。
しかし刹那の必死の抵抗も空しく、後日にその妖怪は学園長の手によって京都に送られた。

*

妖怪がいなくなってからも二人は少しギクシャクしていた。
弱点を知られると言うのは、例え相手が親友であってもやりずらいものだ。
猫グッズなどをクラスメイトが持ってくるたびに、木乃香が何か仕掛けてこないかと刹那はビクビクしていた。

「ひゃー、かわええなぁ」
「原宿で安かったんだ。木乃香も猫好きなら揃えてみたら?」

そしてこの日も、刹那の隣の釘宮が猫模様の筆箱を片付けていた。
刹那と一緒に帰ろうと木乃香がきたタイミングだったので、刹那は露骨に避けることも出来ずに緊張する。
さすがに猫のキャラクター自体に恐怖心はない。
しかしもし木乃香が、クラスメイトにばらしてしまったら・・・・。
報道部のパパラッチに全体公開されて、本物を連れてこられる可能性が高い。
気を使ったりしてくれるものもいるだろうが、圧倒的に面白がる人のほうが多いだろう。

「んー、そやなぁ・・・・ウチはまだ買い換えるんのは早いかも」
「木乃香ってそういうところはしっかりしてるよねぇ。良いお嫁さんになるよ」
「えへへ、ありがとな。ほなせっちゃん、帰ろ?」
「は、はい・・・・」
819名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 02:06:28 ID:XRerwMBR

しかし刹那の予想に反して、木乃香は刹那の弱点をクラスメイトに話すことはなかった。
ハルナのいる図書館探検部はもちろんのこと、明日菜とネギにも話してはいないようだ。
木乃香の荷物を手に取りつつも顔を窺う刹那に、木乃香はため息をついた。

「・・・・もう、せっちゃん。ウチがそんなペラペラ話す思うてるん?」
「あ、いえ・・・・その・・・・すみません・・・・」
「思うとったんや? 傷付くえ〜」

木乃香は刹那からカバンを奪い返し、数歩先を歩く。
その数歩の距離が刹那には大きな差に見えた。

「あの、お嬢様・・・・・」
「前の猫ちゃんな、お父様に頼んで他の人に面倒見てもらうことにしたえ」
「・・・・え? お嬢様が使役するのでは・・・・」
「あの子飼ってせっちゃんがいなくなる方が、ずっと嫌やもん〜」

あくまで"飼う"と言っている所が木乃香らしかった。
彼女にとってはどんなに恐ろしい妖怪でも、犬や猫のようなペット扱いなのだろう。
だからこそ、純粋な人間でない刹那も人間としてみてくれる。
刹那は改めてそれを実感した。
何よりも、あんなに妖怪を庇っていたのに自分を優先してくれた事が嬉しかった。

「あんなに拒絶してすみませんでした・・・・。ただどうしても、その・・・・相容れないというか・・・・」
「誰だって苦手なもんがおると思うたら、ビクビクしてまうと思うえ。ウチこそごめんな・・・・」
「いえ・・・・私も克服しようとは思っているのですが・・・・弱点があるのは不自由ですし」
「え、ほんま? ・・・・ほな今日ウチの部屋来てみる?」
「はい?」
「せっちゃんが嫌がらんかったら、慣れるように訓練してみようと思うてたん」

どうやら猫嫌いの克服のために、木乃香は部屋で密かに準備をしていたらしい。
刹那は少し警戒したが、それでも逃げてばかり入られないと腹をくくって木乃香の部屋に向かった。

「ただいまー」
「お邪魔しま・・・・!?」
「あ、刹那さんに木乃香さん。おかえりなさい」
「ただいまー、ネギ君」
「あ、木乃香。頼まれた仔猫、茶々丸さんから借りてきたんだけど・・・・」
「ここ、木乃香お嬢ちゃん、俺っちさっきから噛まれてやばいっすよー! 助け――・・・・ぎゃー!」
820名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 02:07:44 ID:XRerwMBR

「どうして仔猫を借りてきたんですか?」
「訓練やえー、訓練」
「猫で訓練? いったい何考えてるのよ?」
「ネギ君と明日菜も手伝ってな? ほらせっちゃん・・・・せっちゃん?」

木乃香が黙ってしまった刹那を振り返ると、大量の汗をかいた刹那が硬直していた。
予想はしていた・・・・が、これほどの恐怖を感じるとは思っていなかった。
先日まではここまで苦手ではなかったはずだ。
しかし木乃香と妖怪に恐怖心を煽られた事と、隠し通していた弱点がばれたことがきっかけで、完全なトラウマとなってしまったらしい。
そして肝心の仔猫たちはというと、見事に刹那に興味が移ったようで、魂が抜けたカモから離れて刹那に近づいてきた。

「せっちゃん、普通の仔猫やから・・・・まだ大丈夫やろ?」
「お、お嬢様が、気を使って仔猫にしてくれたのは、わかります・・・・」
「うん」
「慣れなければいけない、ことも・・・・でも・・・・」
「でも?」

「・・・・数が多すぎですっ!!」

その声を合図に、5匹の仔猫が刹那に飛び掛った。
天然か確信犯かわからぬ木乃香に、珍しく刹那が怒った正月明けであった。


FIN              KEYWORD PUZZLE( ttp://id41.fm-p.jp/35/sieg74/ )
821名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 02:09:08 ID:XRerwMBR

『ヒメハジメ』『猫嫌い』

刹那がもし猫嫌いだったら・・・・の妄想。
ヒメハジメだけの予定が、刹那が可哀想な事になりました。
こういうSSは不評でしょうか。
822名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 05:57:37 ID:6EmLpoCU
まさか。

ぬこかぁいいよぬこ……じゃなくて。
このちゃんの精神的なタフさというかニブさというか、猫妖怪相手への対応の鷹揚さに苦笑が止まりません。
せっちゃん大変だなぁ……w
ク氏GJかつ乙でした。
823803:2009/01/07(水) 07:47:50 ID:pVV9d8og
ク氏だったのかw
あなたが投下を遠慮したらアカンwwGJでした!
824名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 08:39:54 ID:XRerwMBR
>>822
ゲームで同様のシーンがあるんですよ。
妖怪と遊ぶ木乃香に刹那が取り乱して、ネギと明日菜の前で痴話喧嘩を始めるって言うのが。
825名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 19:41:58 ID:QKIdcbbm
戯れの描写があるなんて珍しい。明日の天気常夏なんじゃね?
826名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 20:56:39 ID:pVV9d8og
827名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 21:14:22 ID:9GYeLGBy
二期か。いいな。かわええww

刹那「た……食べちゃいたい。」
828名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/07(水) 21:27:10 ID:QKIdcbbm
刹那「はぁ……このままお持ちかえりしたい…はっ何を言っているんだ私は…お嬢様をお持ちかえりだなんて!」

2期せっちゃんの台詞が脳内再生されるから困る
829名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/09(金) 08:21:09 ID:7lJpfpHP
せっちゃんがお持ち帰りされる
話が読みたいです。
いちゃらぶな奴で。
830転載:2009/01/11(日) 13:36:35 ID:bT7jBy+v

このか「せっちゃんはS?それともM?」
 刹那「えっ、お、お嬢様、な、なぜそのような質問を…」
このか「今夜のために知りたいんよ」
 刹那「ど、どっちかというと、いじめられる方が…え、Mですかね?」
このか「なに言うとるん?服のサイズを聞いとるんよ?パジャマをプレゼントしたくて…」
831名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/11(日) 15:07:21 ID:7k9yXPum
せっちゃん恥ずかしw
832名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/12(月) 21:01:03 ID:o/z2CV5f
うちらアツアツやもんね♥せっちゃん♥
833名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/16(金) 03:23:19 ID:hydeObs5
せっちゃんマダー
834名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/17(土) 01:23:35 ID:Sm18MWpm
せっちゃん誕生日おめでとう!
835名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/17(土) 23:00:37 ID:mSjA0Xf0
せっちゃんおめ
836名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/20(火) 02:12:37 ID:05DsNmlA
埋めますね。
837名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/20(火) 02:13:08 ID:05DsNmlA

とある日の朝。
3−Aの教室では、静かなホームルームが開かれていた。
クラスの面々は担任のネギを認めていて、しっかりと話を聞く。
そこには教師と生徒の信頼関係が見てとれた。

「そうだ、皆さん。今日の一時間目の体育は何か希望ありますか?」
「なんでネギが聞くのよ?」
「担当の先生が急にお休みになりまして・・・・僕が代理をする事になったんです」
「へぇー、じゃあ何でもいいんだ?」
「競技にもよりますけれど・・・・」

静かだった教室が急に賑やかになる。
皆が皆、やりたい事を周りと相談しているようだった。
そんな中、少し静かになった隙を突いて一人が大きな声を出した。

「なぁなぁ、ドッヂボールなんてどや?」
「ドッヂボール? 何で今さら?」
「ネギ君がきた時にやった、思い出の球技やろ? そろそろ進級でバラバラになってまうし・・・・」
「思い出に、とのことですわね。わたくしも賛成ですわ!」
「ドッヂボールかぁ。なんか懐かしいね」

木乃香の意見にクラス全体が賛同し、この日の体育はドッヂボールとなった。
みんな更衣室に向かうために、席を立ち始める。
ネギもいつの間にか誰かに連れ去られていた。

「珍しいわね、コノカ」
「ん? なんでや?」
「コノカ運動苦手じゃん。なのに全員参加の球技なんてさ」
「せやから思い出作りやて。それに・・・・」
「それに?」
「ううん、なんでもあらへんよ」

木乃香はクラスの隅で静かにしている幼馴染を見る。
どうやらこちらにも思い出があるらしく、何か企んでいる様な目であった。
その視線に気付いたのか、刹那は二人の方に振り向く。

「あ、刹那さん気付いた」
「せやね。せっちゃーん、一緒に更衣室いこ」
「は、はい」
「刹那さん強そうだよね。同じチームがいいかも」

刹那は少し戸惑いながらも、体育着をもって近づいてくる。
明日菜と親しげに話すその顔は、普通の女子中学生のものだった。
838名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/20(火) 02:15:43 ID:05DsNmlA

*

着替えを済ませた3−Aは体育館に集まってチームを決める。
こういったことは3年間一緒にいるクラスに任せたほうがいい。
ネギはあやかと明日菜に後を任せ、審判席で様子を見守っていた。

「じゃあメンバー取りよろしくね。アスナにいいんちょ」
「だからなんで私なのよ・・・・」
「アスナさんより良いメンバーをとってみせますわ!」

身体能力的に差が大きいこのクラスでは、まず力量が同等のリーダーを決める。
そしてそれぞれのリーダーが、順番にクラスメイトを一人ずつ引き抜いていく。
この方法だと大抵は運動神経のいい人から順番に抜けていくので、バランスもちょうどよくなるのだ。

「じゃあじゃんけんで先を決め――」
「待ったー! 今回はいいんちょじゃなくて桜咲さんがいいと思うな」
「え? なんで――」
「私ですか?」
「なんでですの!?」
「だってさ。この方法でいつも同じ人がリーダーだと、似たようなチームになっちゃうじゃん」
「あ、それは一理あるかも」
「それにアスナと桜咲さんは麻帆良祭でヒーローユニットだったもんね。分けないとまずそう」
「・・・・では、一人ずつ選べばいいんですよね。アスナさんからどうぞ」
「んー、しょうがないわねぇ・・・・」

さすがにあやかも言い返すことはなかった。
クラスの意見を優先して、押し留まったのだ。
そして刹那も誰をとるかを決めるために、明日菜から少し距離をとった。

「・・・・んー、あかんなぁ」
「どうしたの?」

刹那が離れたのを見て木乃香が明日菜に話しかけた。
何か考えているようで、こっそりと耳元に口を寄せる。

「なぁアスナ・・・・ウチのこと選んでくれへん?」
「え、どうしてよ? 刹那さんと一緒になりたいんじゃないの?」
「ええからー。な、お願いー」
「アスナさん、早くお決めになってください!」

明日菜は木乃香のお願いに疑問を感じる。
しかし理由を問い質す前に、あやかから急かされた。
さてどうしようかと明日菜は考える。

(うーん、取るんだったら早目がいいわよね・・・・)

普段一緒にいる関係だからこその探りあい。
チームの勝利を考えるなら、ここはバカレンジャーの誰かを取るのが妥当だろう。
しかし木乃香の要望に答えるなら、早めに木乃香を取っておいた方がいい。

(刹那さんのことだから、木乃香を一番に取りそうだし・・・・ね。ごめん、皆)
839名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/20(火) 02:19:06 ID:05DsNmlA

明日菜は木乃香のお願いに答える事にした。
普段世話になっている親友のお願いなのだ。
そういった私情を含んでも、少しぐらいの我侭なら許してくれるだろう。

「じゃあ・・・・コノカ。こっちね」
「やった!」
「あ、コノカ勝つつもりでアスナに取り入ったなー!」
「そんなんちゃうえー?」
「えと、では・・・・えーと・・・・」

どうやら刹那は木乃香をとるつもりだったらしい。
先に取られた事に若干焦りながらも、刹那も明日菜のことを探る。

(なんか避けられた気が・・・・ドッヂボールは良い思い出がないな・・・・)

刹那もドッヂボールにはトラウマがあるらしく、少しギクシャクしていた。
しかしここは遊びの場。
出来るだけ前向きに考え、刹那は周りを見渡した。

(お二人は同じ部屋なのだし、同じチームになりたかっただけかも・・・・フェアにしますか)

「・・・・村上さん、お願いできますか?」
「え、私!?」
「良かったわね夏美ちゃん。リーダーに選ばれたエースよ。頑張ってね」
「なんで私なの!? 弱いのに〜!?」
「あ、いえ・・・・目が合いましたので・・・・」

刹那は周りを見渡し、一番先に目の合った夏美を指名した。
一般人の文化部に絞っていたようだ。
文化部の木乃香を選んだ明日菜チームに対して、フェアにするために。
例え遊びであっても、最初から有利な位置に立ちたくない・・・・そんな刹那らしい選択であった。

「さすがせっちゃん。運動部選らばへんかったな〜」
「気を使わせちゃったね。で、何企んでるのよ」
「なんも企んでへんよ? ほらアスナは次の人決めな。・・・・せっちゃん、がんばろな?」
「あ、は、はい」

木乃香は明日菜をはぐらかしつつ、刹那に笑いかける。
その後は特に問題もなく、運動部を中心に選ばれていった。
木乃香は慣れないチーム決めをする刹那の顔を見ながら、昔の事を思い出す。
最後に刹那とドッヂボールをやった頃・・・・。
その時はまだ、刹那は木乃香の事を避けていた。
840名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/20(火) 02:23:40 ID:05DsNmlA

*

――最後にクラスメイトだけでドッヂボールをしたのは、いつごろだっただろうか。
中2の一学期だったか。
ネギがまだきていない頃だということは確かである。

その時の刹那は、クラスメイトからエヴァに続く不良生徒と思われていた。
他者と関わりは持たないし、授業は出てるものの成績はそれほどよくない。
消灯時間がとっくに過ぎた深夜に寮の外を出歩いている、と言う噂もチラッとだけ出たことがあった。
実際は仕事のために学業を捨てていただけなのだが。

そんな時期、体育の授業が自習になって今回のようにドッヂボールになった。
その時も木乃香と刹那は別のチームだったのを、木乃香は鮮明に覚えている。
木乃香は運動神経がよくないのでいつも終盤に選ばれる側だったし、
刹那も身体能力など一切不明だった上、クラスメイトと仲がよくなかったので選ばれるのが遅かった。
なのでほぼ同時に決定され、チームが分かれてしまったのだ。

「木乃香ー、こっちきてこっちー!」
「はいなー!」
「では桜咲さん、こちらへ!」
「・・・・あ、せっちゃん・・・・」

お互い呼ばれた方向の関係で、すれ違った。
しかしやはり刹那は、木乃香の言葉に答えなかった。

(せっちゃんと敵・・・・なんか嫌やな・・・・)

もやもやした気持ちが残りながらも、ゲームは開始される。
大抵ドッヂボールになると、外野の方が楽なのでわざと当たる者が多い。
図書館組の夕映やハルナなどがいい例である。
最初にわざと当ててもらう場面もあり、あやかに注意されていた。

(何とかボールとれへんかな〜)

しかし同じ図書館組である木乃香は他と違い、物の考え方が優等生だった。
勝てないゲームであっても、最後まで腐ることなくやる気を見せる。
取るまではいかないものの、しっかりとボールを避けていた。
部活で鍛えたバランス感覚は、こういった面で役に立つのだ。

(せっちゃんは・・・・ちゃんと参加しとるみたいやね)

いつもなら刹那は、最初から外野にいたり見学している側。
しかしその時は珍しく内野に残っていた。
まぁ刹那は不良と思われているのだから、外野からしても当てにくい部分があったのだろう。
刹那自身に対してやる気は見られなかったが、軽く動くだけでボールを避けていた。
その動きに隙はなく、昔京都で稽古をしている姿がよみがえった――。

「木乃香! そっち転がったよ!」
「あっ・・・・! とったえ!」

どうやら相手の外野が取り損ねたらしく、壁にぶつかって戻ってきたボールが木乃香の足元に転がった。
このチャンスを逃すことなく、木乃香はそのボールをキャッチする。

「よーし、なげちゃえ!」
「え・・・・ど、どないしよ」
「誰でもいいから、ほら急いで!」
841名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/20(火) 02:27:04 ID:05DsNmlA

普段回ってこないボール。
いきなり敵に投げろといわれても、目移りしてしまい標準が定まらない。
一番最初にしっかりと目に移ったのは・・・・遠くからこちらを見つめている幼馴染だった。
目が合う・・・・もう、木乃香には刹那しか見えていなかった。

「え、えぇーい。せっちゃんー!」
「え?」

渾身の力を込めて、木乃香は刹那にボールを投げた。
お世辞にも勢いがあるとはいえない投球。
綺麗な弧を描いて、ボールはまっすぐ刹那の元に飛んでった。
「これは取られる」と、明日菜チームの誰もがそう思った。

バシッ――トン、トン・・・・

「桜咲さんアウトー!」
「・・・・え?」
「ドンマイ、桜咲さん!」
「ここからよ、巻き返していこうー!」

ピピーッ

「残念ですが、ちょうど時間切れです。・・・・先ほどのアウトで、アスナさんチームの勝ちです」
「やったー!!」
「やるじゃんコノカ!」
「あ・・・・う、うん」

木乃香の活躍による逆転勝利に、皆が木乃香を囲んで勝利を喜ぶ。
しかし木乃香は素直に喜べなかった。
刹那は確かに、ボールを取ろうとしていた。
取られたと思った。
しかし急に刹那は手を引いて・・・・その手にボールが当たって床に落ちた。
木乃香の投げたボールを刹那は受け取らなかった。
刹那に拒否されたのと同じ意味だった。

(せっちゃん・・・・迷惑やった・・・・?)

その問いも、本人にかけることが出来ない。
木乃香はチームの勝ちに喜ぶことも出来ずに、静かに体育館を立ち去る刹那を見送るしかなかった。
842名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/20(火) 02:30:43 ID:05DsNmlA

*

ピピッー!

「本屋ちゃんアウトー!」
「ふえぇ、ごめんなさいです〜・・・・」
「どんまいどんまい、外野よろしくね!」
「いっけー、アスナー!」

笛の音で木乃香は現実に呼び戻された。
あれから幾分成長したクラスメイトたち。
変わらないメンツだが、格段に強くなった彼女たちは激戦を繰り広げていた。
明日菜の怪物並のシュートに、相手は恐れ戦く。
しかしそのシュートに正面から立ち向かう者もいた。

バシッ!

「あ、刹那さん!」
「まだまだ甘いですよ、アスナさん」
「さっすがリーダー!」
「わ、わたくしたちの桜咲さんをなめると痛い目みますわよ!」
「バカレッドだって、負けないもんねー!」
「誰がバカよ!!」

あの頃とは違う。
刹那はチームの主力として、皆に頼られていた。
当たりそうになるチームメイトを助けるシーンも幾度か見れた。
それを客観的に見られただけで、木乃香は敵チームに入ったのは正解だったと思う。
普段は守られる側だから、こういった立場で刹那を見られるのは新鮮なのだ。

(せやけど・・・・せっちゃんウチに投げてきーへんなぁ)

絶対に取ってやろうと意気込んでいたが、刹那は木乃香に対して投げる事はなかった。
いや、そもそも敵に投げるという事がなかった。
がんがん攻撃する明日菜とは違い、刹那はどちらかといえば守り。
取ったボールは他の内野や外野にパスしてしまうのだ。

(・・・・さっきからお嬢様に睨まれているような・・・・)

木乃香の視線に刹那も気付く。
真剣な木乃香の眼差しが、ボールを取ろうとしているのを表していた。
が、刹那には木乃香に攻撃にする勇気がなかった。
パスするわけにもいかない。
木乃香は今は敵なのである。
843名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/20(火) 02:36:19 ID:05DsNmlA

「あ、あー! ごめん桜咲さん! 取り損ねた!」
「コノカー、そっちいったよー!」
「あ・・・・」

足元に転がるボール。
そう、まさに昔と同じように。
木乃香は慌ててボールを拾い上げると、しっかりと投げる体勢に入った。
あの時は迷ったが、今は迷いはない。

「こんどこそ〜・・・・せっちゃーん!」
「え? え?」

パシッ

あの時と同じように、綺麗な弧を描いて。
そのボールを刹那は困惑しながらもしっかりと受け取っていた。
攻撃というよりは、パスだ。
でも木乃香は嬉しそうに飛び跳ねた。

「やったー、ウチのボール受け取ったー!」
「・・・・ってコノカ! ボール渡してどうするのよ!」
「ヒュー、ラブラブだねぇ」
「刹那さん固まっちゃったじゃん」

冷やかしが木乃香に飛ぶ中、刹那はボールを持ったまま固まっていた。
しかし顔は赤くない。
このボールが意味する事を、やや混乱しながらも受け取っていた。

(・・・・そうか・・・・お嬢様も覚えていたのか。・・・・あの日の事を・・・・)

刹那も昔のゲームを忘れていなかった。
木乃香が自分を真っ直ぐ見て、真っ直ぐに投げてきたボールを。
それを反射的に受け取ろうとした。
だが受け取ったら最後、そこから・・・・今まで空けていた距離感が崩れそうで。
拒否してしまった。それを見られてしまった。
必死で投げてきた木乃香に対して、やりすぎたと後悔した日だった。
844名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/20(火) 02:37:04 ID:05DsNmlA

(昔から、投げかけてくれる思いを拒否してばかりで・・・・トラウマになっていましたか・・・・?)

目の前で喜ぶ木乃香の姿が、相当傷付けてしまっていた事を物語っていた。
ぎゅっとボールを持つ手に力を込める。
いつも投げられてばかりじゃ、悪いじゃないか。
刹那はボールから目を離して敵陣地を睨みつけた。

「やば、刹那さんが攻撃してくるよ!」
「わわ、全員戦闘配置ー!」

身構えるクラスメイト。
しかし刹那の目標は、ただ一人。
それ以外は射程外。
刹那の目にはただ一人の姿しか映っていなかった。

(私の想いは、受け取れますか?)

「・・・・このちゃん!」
「!?」

パシッ――

体育館に響く音。
一つのボールに託された想いは、しっかりと相手に・・・・。


FIN              KEYWORD PUZZLE
845名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/20(火) 02:38:24 ID:05DsNmlA
すみません、埋めておきながら新スレの立て方がわかりません。
支援お願いします。
846名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/20(火) 05:57:17 ID:Vxtkf2DK
【ネギま!】近衛木乃香・桜咲刹那百合専用スレ(12)
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1232398231/

支援。

その後、嬉しさのあまり永遠とキャッチボールが行われるんですね。分かります。
847名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/20(火) 07:52:19 ID:8mhchEgr
     A.木乃香は両手で受け止めた
 ニア  B.木乃香は顔面で受け止めた

せッちゃん鬼畜
848名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/20(火) 08:30:18 ID:05DsNmlA
>>846
支援ありがとう。

>>847
俺はAだと信じたい。

眠くてかきわすれた注意書き・・・・
・クラスメイトの会話は、脳内補正で適当に人物を当てはめてください。
・寝れなかったので2時間で作った安価、なので過剰突っ込みは・・・・。
・俺の脳内は、ドッヂボールでも刹那総受け。
849名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/20(火) 22:52:18 ID:iS9Bh+7E
このちゃん再びボールをせっちゃんに投げる。
今度こそせっちゃんは顔面キャッチ。
850名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/21(水) 17:14:43 ID:YrjDTZlC
たまにはかっこいいせっちゃんで終わらせようよw
851名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/23(金) 00:35:17 ID:m1uf5TCG
やっぱこのせつはええわ〜。
852名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/27(火) 20:27:10 ID:z3RULaw8
次スレ落ちてんじゃないw
853名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/28(水) 00:56:20 ID:LWFguYRP
ええ!?せっかく立てたのに!
854名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/28(水) 07:17:06 ID:sszx7TyA
うはっ マジだ;;
855名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/28(水) 23:15:45 ID:aJZwY0Cu
即死したか。15か20レス無いとダメなんだっけか?
856名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/29(木) 04:10:20 ID:tkdhuN1O
職人はどこいったんだろ…
857名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/29(木) 08:22:22 ID:f6OVuNpU
寒さで凍えてます。
ロリこのかで楽しむせっちゃんを一人で妄想中。
858名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/29(木) 23:24:37 ID:f6OVuNpU
そう言えば次スレたてるんだよな?
859名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/01/30(金) 01:26:10 ID:8Ndsvbhw
納得してないクオリティのSSなら、ストックあるんだが・・・・
我慢してなんとかやっとギリギリ読めるレベルでいいなら、今週末あたりに。
次スレの埋め程度にはなるように投下するので、立ててくれると嬉しい。
860名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/01(日) 15:26:23 ID:VmNrdreK
携帯で立てました。このせつ分補給ゆっくりしていってね!

【ネギま!】近衛木乃香・桜咲刹那百合専用スレ(12)
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1233468734/
861名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/01(日) 17:00:55 ID:fAad8DGk
乙です
862名無しさん@ローカルルール変更議論中:2009/02/01(日) 18:32:49 ID:BtBC3HFa
ク氏も待ってるからねwww
そうじゃなくてもいつでもカモン
863まえがき  ◆yuri0euJXw :2009/02/01(日) 20:03:20 ID:BtBC3HFa
よし梅ネタ。

落ちなし意味なしエロありって感じです。
読者様の想像力に大いに依存した作品となりました。
精一杯脳内補完して下さい。

もしかしていっぱいになったら
続きは次スレにおとさせていただきます。
8641/12  ◆yuri0euJXw :2009/02/01(日) 20:04:08 ID:BtBC3HFa
―――この命と引き換えに貴様に最上の屈辱を与えよう
―――極上の悦楽に貴様が屈伏した時,我は‥‥

私の体を捕らえる無数の触手の一つに渾身の力を込めた一太刀を喰らわせた。
苦悶の叫びが地響きのように鳴り響く中で,
飛びそうになる意識とともに耳に届いた忌まわしき言葉がそれだった。
その言葉と同時に私の体を捕らえていた触手は,私への復讐の序曲を奏でるために私の体の中へと消えていった。

その時私は,自分の魔物に対する耐性を過信していたのかもしれない。
仕事をやり遂げ,その言葉を特に気にせずに自らの帰る場所へと足を向ける。
わずかに感じた体の奥底の違和感を気に留めることもないまま‥‥。

◇◆◇

落ち着かない。
体中のざわめきを振り払うかのように,私は全身に熱めのシャワーを浴びた。
血と埃の混じった匂いは消えても,この不快感は消えなかった。
むしろそのざわめきは大きくなっていくばかりだ。
体を伝って流れていく水滴の軌跡を敏感に感じる。
まるで水に弄られているかのように,一筋,また一筋が私の息を弾ませる。

今夜の仕事について龍宮と話していると,黙って魔封じの丸薬を手渡された。
しかし,この手のものは私にとっても副作用が強く働く場合がある。
受け取るだけ受け取って,私はそれをそっとポケットにしまった。

今にしてみたら,それも仇となったのかもしれない。

衣擦れすらも私の神経を煽る。
一歩一歩踏み出す度に狂おしい程の快感に包まれる。
私は,少しの希望を抱いてわずかな時間,眠りについた。
8652/12  ◆yuri0euJXw :2009/02/01(日) 20:04:44 ID:BtBC3HFa
◇◆◇

―――我が魔力尽きるが先か,貴様が隷属を誓うが先か

「‥‥誓うものかっ。」

―――貴様も所詮は獣だ

「‥‥ちがっ。」

ひんやりとした冷たい感触が現実へ引き戻してくれた。
目をあけると龍宮の顔が見えた。

「大丈夫か?凄い汗だが。」

龍宮が私の額に当てていた手で汗をぬぐってくれた。

「っん。」

ぞわぞわとした感覚が背筋を伝って体中に響く。
私はくっと歯を食いしばり,今日は学校を休む旨を伝えた。
龍宮が部屋を去ったあと,机に置いた携帯がバイブレーションしていた。
今は起き上がることもできない。

「お嬢様‥‥きっと心配してるだろうな。」

いつもの約束の場所に私がいなかったからだろう。
携帯はきっとお嬢様からのものだ。
しかしこの状態では起き上がることすらままならない。
早く解決を図らなければ。
8663/12  ◆yuri0euJXw :2009/02/01(日) 20:05:26 ID:BtBC3HFa
夢の中で響いた声は昨日倒したはずの魔物だ。
体中に這い廻る淫卑な刺激はまだ私の頭までは侵しきっていない。私は現状を整理する。

おそらく昨日私の体に消えた奴の一部が残存する魔力の根源だろう。
奴はその残りの魔力で私を乗っ取り復活を計っているといったところか。

「‥‥そうはさせん。」

私は自分の体の中の異質な存在を探した。

◇◆◇

「ねぇ,龍宮さん。せっちゃんどうしたん?」
「‥‥‥近衛,ちょっといいか?」

昼休みの出来事だった。
刹那の様子を聞きに龍宮を訪ねた木乃香を,神妙な顔をして
人気のない場所まで連れ出す龍宮はいつもと違う様子だった。

「なんかとんでもないことなん?」
「あいつな‥‥多分,魔物に取り憑かれてる。」
「えっ?」
「それも多分‥‥淫魔の類。」

しばらくの間沈黙が訪れたが,それを打ち破ったのは木乃香だった。

「だ‥‥大丈夫‥‥よね?」
「まぁ,魔物自体は大したことないだろう。けど,淫魔は精神に巣食う魔物だ。」
「精神に‥‥‥巣食う‥‥。」
「あいつは強い。しかし意外と脆い一面もあるんだ。‥‥こういう場合は特にな。」
8674/12  ◆yuri0euJXw :2009/02/01(日) 20:05:57 ID:BtBC3HFa
「ど‥‥‥何とかできへんの?」

龍宮はごそごそっとポケットからなにやら取り出した。

「治療薬だ。」
「治療薬?」
「魔物の正体を明らかにしないと対策は立てられないが,基本は同じだから。」
「基本?」

木乃香は龍宮の言葉を繰り返して小首を傾げる。
ふっとため息をついて,龍宮はポンと木乃香の肩を叩いた。

「お前に足りないのは魔封じの能力だろ?これを使ってあいつを治療してやれ。」
「使い方は?」
「魔物の本体を見つけて,それを直接塗りつけるようにして体の中から取り出すんだ。
その薬で魔力を封じてしまえば,取り出すのも簡単だろう。日の光に曝せば消えてなくなる。」

龍宮から薬を手渡された木乃香はじっとそれを見つめた。
そしてその瓶越しに龍宮を見つめる。

「どうして朝,せっちゃんにそうしてあげなかったん?」
「まさかと思ってな。だからその薬を手に入れてきたんじゃないか。」
「なんでうちなん?」

じゃあと背を向け立ち去ろうとする龍宮に木乃香は声をかける。

「あいつにとって,お前以上の良薬はないだろ?」

愚門だとでも言うようにそう吐き捨てると真名は去っていった。
木乃香はきゅっと受け取った小瓶を握り締め,刹那のいる寮へと走った。
8685/12  ◆yuri0euJXw :2009/02/01(日) 20:06:34 ID:BtBC3HFa
◇◆◇

―――手強いのはいい。堕ちていく様が長く楽しめる

「ふぅ‥‥んっ‥‥。」

玉のような汗が噴き出る。熱くて堪らない。
体の奥から湧き上がる粘質な刺激が体を揺さぶる。

私が魔力の発信部を探り始めると直に攻めの手は勢いを増した。
ありとあらゆる場所が過敏になり,流れる汗ですら甘い吐息をこぼしてしまう。

「な‥‥‥んだっ?」

言葉を紡ぐのも難しい。口を開けば意に介さないような声が淫らに響く。

―――手練の対魔士といえども,一皮剥けば只の獣だ

「ふぁっ‥‥‥おじょ‥‥‥さまっ‥‥。」

一瞬,脳裏をよぎったのはお嬢様の姿だった。
心と体を性的な快楽で犯されようとしているときにお嬢様を想うなんて‥‥。
この快楽が敵の手によるものでなければと思う自分の浅ましさを呪った。

しかし,それも敵に察知されてしまう。
自分の中に敵がいるというのは厄介なものだ。
本能と理性とが揺れ動く狭間で深層心理まで心を閉ざすことの難しさを知る。

―――貴様の望む快楽を与えよう
8696/12  ◆yuri0euJXw :2009/02/01(日) 20:07:08 ID:BtBC3HFa
奴は記憶の中のお嬢さまを使って攻めの手を変えた。
心と体に刻まれたお嬢さまの軌跡。やつはそれを見事に再現してみせる。

「んんんぁっ‥‥‥ぁふっ‥‥ぁっぁぁあ‥‥っっ!」

弾けるように体が揺れる。まるでお嬢さまがそうしてるような
甘く切ない愛撫が私の体を襲う。

「‥‥んっ‥‥ふぁ‥‥んんっ‥‥はぁ‥んっ‥お嬢‥‥さまぁ。」

そして記憶以上の行為が仮想現実として私を襲い始めた。
分かっている。これはお嬢さまではない。しかし,なんと甘美なのだろう。
私という素材をすべて使って,奴は私を征服しようとしている。
これが‥‥淫魔というもの‥‥か。

「せっちゃん!」

お嬢さまの声が聞こえる。心地よい私を呼ぶ声。

「せっちゃん!!しっかりして!!」

意識が飛びそうになるくらい強烈な快楽の中でそれはとても異質だった。
でも,それは真実の重さがある私を導く声だった。私は重たい瞼をそっと開いた。

「せっちゃん!!」
「お‥‥じょ‥‥さま‥‥。」
「せっちゃん!今助けてあげるえ。」

ばらばらと何かいろんな小物を引っさげて駆け付けたお嬢様をぼぅっと眺めた。
ああ,そうだ。私は奴に惑わされて‥‥。
8707/12  ◆yuri0euJXw
「おじょっ‥‥さま。い‥‥けません。私には魔物がっ‥‥。」
「ん。わかってるえ。だから助けに来たんよ。」
「だめっ,きけ‥‥んっ。はっ‥‥なれ‥‥。」

私は手を伸ばし,お嬢さまに離れるように促す。
しかしその手はお嬢様に取られ,きゅっと握りしめられた。
強烈な快感に思わず声を上げた。

でも私は安心した。それまで感じていたものと違っていたから。
お嬢さまの感覚,お嬢様の手。間違いない。もう迷うことはない。
涙がこぼれおちる。なぜだろう。
こんな情けない所を晒して,無様な私をお嬢様に曝しているのに‥‥。

「おじょ‥‥さまっ‥‥はぁっ‥‥たすけっ‥‥くだっ‥‥っぁあぁっ!!」

その瞬間,やつは私の体の中でこれまで以上に暴れまわった。
最期が近いことを感じているのだろう。
奴の致命的な欠点は,寄生した宿主を殺せないところだ。

どんなに暴れまわったところでもう私が屈することはない。
本当ならお嬢様に指示を出すべきなのだが,
生憎私は意識を保つのがやっとな状態だった。

お嬢さまはいろんな小物の中から何かを取り出すと私の体を探り始めた。
誰に聞いたのか,私に取り憑いている魔物の正体を知っている。
おそらく魔力の発生源を見つけるマジックアイテム。
あぁ,ばれてしまうのか‥‥奴の居所。

「せっちゃん,服脱がすえ。我慢してな。」
「はっ‥ぁ‥‥いっ。」