秒「ねえ、ちょー姉」
長「ん」
秒「たん姉ちゃんってさ」
長「うん」
秒「冬になると、コタツからぜんっぜん動かないよね」
長「あ、それ私も思ってた。昨日も今日も、朝コタツにいたし」
秒「あたし早く帰ってくると、姉ちゃんいっつもコタツでお昼寝してるよ」
長「夜なんて、コタツどころかチャンネルポジションまでがっちりキープよ? おかげで私、ローカル線に異常に詳しくなったわ。飯田線とか」
秒「困ったもんだよねえ」
長「困ったもんよ」
秒「たん姉ちゃんはもっと運動すべきだよ。このままだと、せっかくのBQBなセクシーダイナマイトバディがはたんしてしまうよ」
長「あんた何言ってんの」
秒「ゆゆしき事態ってことだよ!」
長「……ま、短姉が運動すべきってのには同意するけどね」
秒「先生言ってた。こういうことは、本人にはっきり言うべきだよね!(ばたばたばた)」
長「へ? ……ちょっとあんた、待ちなさいよ!」
ばばーん!
秒「たん姉ちゃんにものもーす!」
短「あら、可愛い子猫ちゃん。こっちへいらっしゃい、みかんあるわよ?」
秒「……えへへー。おじゃましまーす」
短「みかんの皮をむいて、筋を取って、と。はい、あーん」
秒「あーん! うーん、おいしいー」
長「……おいそこのバカ姉とアホ猫」
短「まあ。失礼ね」
秒「猫じゃないです針なのです!」
長「どうでもいいわよ。あんた、短姉に言うことがあるんじゃなかったの!?」
秒「は!(ふきふき) ……そうであった。あやうく悪のみかんの手に落ちるところだった」
短「私、みかん星人だったのね」
秒「あたしは今日この身をかけて、たん姉ちゃんに言いたいことがあるのです!」
長「そうだ、言ってやれ」
短「うふふ。なにかしら」
秒「たん姉ちゃんはマグロすぎる!」
短「………」
長「………」
短「ちょーちゃーーーん?」
長「ちょ、ギブギブ! 私じゃないっス! マジです!」
秒「あれ、違うの? マグロって『動かない人』なんでしょ?」
短「それは、そう、かもしれないけどね。びょうちゃん、だれにそんなこときいたのかしらー?」
秒「聞いてない。たん姉ちゃんの部屋にあった変な本に書いてあった」
短「………」
長「………ごそごそ」
短「ちょっと、嫌ぁ! お酢の匂い嫌ぁ!」
長「そんなわけで、短姉も運動すべきって話です」
秒「すべきなのです!」
短「あらあら」
長「そもそも、一日中コタツでゴロゴロしてるのしか見たこと無い。短姉は運動量が足りなさすぎる!」
秒「そうだそうだー!」
長「だいたい、運動しないとエイジングが進むんでしょ? いいんですか、その歳で少女臭とか」
短「……ふふ。その歳でスキマ送りにされたいのかしら」
長「ごめんなさい適当ぶっこきました」
短「よろしい。……第一、私、ちゃんと運動してるわよ?」
長「嘘!? 指回し健康法とかは運動に入らないよ?」
短「失礼ね。それは数えて無いわ」
秒「あたしも知らない……」
短「まあ、あなたたちには見えないかも知れないけどね?」
長「見えない? つまり、私や秒のいない時に運動してる、ってこと?」
秒「そんなの、たん姉ちゃんのキャラじゃないよー」
長「ぜっったい、嘘ね」
短「まあ、秒ちゃんまで! じゃあ、今からやってみせるわ!」
長「大丈夫なの?」
短「ふッ、姉にはやらねばならぬ刻がある。こうでもせねば世界は変わらぬッ。許せよ、長、秒ッ!」
秒「な、なんか凄いオーラなのだ……」
長「ていうか、何その変なキャラ……」
「問答無用! まず、就寝時!」
短針、コタツの0時方向に移動。
「そして、朝食時!」
短針、コタツの7時方向に移動。
「さらに、お昼時!」
短針、コタツの0時方向に再び移動。
「夕餉の一時!」
短針、コタツの7時半くらいの方向に移動。
「再び、就寝!」
短針、コタツの0時方向に戻る。
短「ふう。やり切ったわあ」
秒「どこが運動なの……」
長「くっだらない。『とろくて見えない』だけか。心配して損した……」
短「あら。何よあなたたち、その不満そうな顔は」