【ウメコ】菊地美香&木下あゆ美スレ【ジャスミン】
『件名:あゆ美ちゃんへ
本文:ミカは、あゆ美ちゃんが大大大スキです♪♪
私と付き合ってください(^O^)』
携帯の下書きBOXに入りっぱなしのメールは、今日も送信できなかった。
鹿児島でのイベントでの夜、あゆ美ちゃんと1回だけしたキスの感触が、いまだ口から離れない。
抱き合ったときの体温。掛けてくれた言葉一つ一つ。やさしさ。
デカレンジャーファイナルライブも終盤間近で、私は現場と自宅で泣いてばっかりだ。
みんなと別れること、デカレンジャーが終わってしまう事の寂しさはもちろんだけど、加えてあゆ美ちゃんへの気持ちが日に日に強くなり、抑えきれなくなっていることへの戸惑いも手伝った。
あゆ美ちゃんには、今まで何度か面と向かって「好き」と言っている。
ホームページのコメントにも書いたことがあった。
毎回、あゆ美ちゃんは「ありがとう」とにこにこしてくれた。
あゆ美ちゃんと付き合いたいって、どういうことだろう?
あゆ美ちゃんは、かっこよくてやさしい男の人のお嫁さんになって、幸せな家庭を築くのを望んでいるはずだ。
告白したら、どうなるっていうの?付き合い始めたら、どうなるっていうの?
肉体関係にまでなりたいってこと?お友達の関係のままなら、ダメなの?
わかんないよ。どうしたいの私。
デカレンジャーの仕事に行くのが、とても楽しみで、とても辛い。
私は真っ赤になった目をティッシュで一度抑えてから、家を出た。
32 :
シーン2 駅:2006/08/26(土) 10:29:45 ID:SoFdxFBj
「みなさん、本当にお疲れ様でしたー!」
デカレンジャーファイナルライブツアー千秋楽から戻り、メンバーとスタッフさんとは駅で解散した。
本番、打ち上げ、移動。とてもじゃないけど、あゆ美ちゃんに告白する雰囲気とタイミングはなかった。
散り散りになっていくみんなの後姿。また泣きそうになってきた。
「みんなぁ〜、ありがとー!!また絶対集まろうねー!!」
私は人目を気にせず、駅で大声を出した。みんなが振り返り、笑顔で手を振り返した。
駅でタクシーを拾い、自宅に向かう。
千秋楽から今までずっと周りに誰か居たけど、やっとここでひとりぼっちになった。
デカレンジャーの思い出が、次々と浮かんでくる。
オーディション。顔合わせ。制作発表。稽古。アフレコ。京都ロケ。地方ライブ。打ち上げ。最終回。
『じゃあな、ウメコ』『元気でいろよ』『また会おうな』『辛い事があっても泣くんじゃないぞ』
メンバーが一人一人私の周りから遠くへ離れては消えていく。
『…美香ちゃん、今までどうもありがとう。さようなら』
最後はあゆ美ちゃんだ。
…嫌だ。行かないであゆ美ちゃん。
私の側に居て。
「お客さん、大丈夫ですか。何かあったんですか」
運転手さんの声で、我に帰った。
また、泣いていた。
「大丈夫です。すみません…」
私は携帯を手にし、メールの下書きBOXを起動していた。
あゆ美ちゃんに気持ちを伝えたい。送信ボタンに手をかけた。
急に、「付き合ってください」の部分が不安になった。
削除して、「また遊んでください」に変えた。
この文でいいのかどうかわからない。自分でも何をしたいのかもわからない。
手紙が飛ぶアニメーションが終わり、「送信完了しました」の文字。
自宅に戻って、ベットに倒れこむ。
タクシーでメールを送ってから、ずっと携帯を握り締めたままだ。
早く返事が欲しい。待っている間の一分一秒がいつもよりずっと長い。
疲れているのに、携帯が気になって寝付けない。
うとうとして眠りかけてたころ、携帯の着信音が鳴り響き、はっと目を覚ました。
返事が来た。
『件名:私も!
本文:美香ちゃんのこと大好きだよ\(^O^)/ また遊ぼ〜☆』
私はすぐに返信を書いた。
『件名:Re:私も!
本文:やったぁ! じゃあ早速しつもーん♪ いつ暇?p(^^)q』
次はいつ会えるかわからない。
気が早過ぎるかもしれないが、今すぐにでも会いたかった。
私は、あゆ美ちゃんの自宅へ向かっている。
数回のメールのやり取りの後、あゆ美ちゃんの家で宅飲みをすることになった。
と言っても、企画の大部分は私のリクエストだ。あゆ美ちゃんの家に遊びに行きたかった。
今夜、思い切って告白する。
その先どうなるかはわからない。嫌われてしまうかもしれない。でも、こんな辛い気持ちのままなのは、もう我慢できない。
デカレンジャー関係の仕事はほとんど終わり、あゆ美ちゃんと共演することはほぼ無くなる。
もっと前、撮影期間中に告白して、もし振られたら、仕事中ずっと気まずい思いすることになっただろう。
でも、たとえ変に思われても、振られてたとしても、今日告白してから離れ離れになって時間を置けば、いつか笑って話せる時が来るに違いない。
チャンスは、今夜しかない。
玄関のチャイムを鳴らすと、中からエプロン姿のあゆ美ちゃんが現れた。
「今、晩御飯作ってたとこなの。さあ、上がって上がって」
さま〜ずの番組で公開されていた通り、あゆ美ちゃんの自宅は庶民的で生活感に溢れていた。
「何作ってるの?」
台所に向かっているあゆ美ちゃんの横から覗き込んだ。
「ハヤシライス。得意なんだ。出来るまで向こうで待ってて」
鍋の中からいい臭いが立ち込める。
うぅ、おいしそう。
かわいい上に料理が上手いなんて、女の子として完璧じゃないか。ずるい。
料理ができる間、何となく私は部屋を見回した。
スノーボード、エレキギター、英会話の本、小説、映画のDVD、プレステ…何だか多趣味っぽい。
とんとんとん、と、何かを刻む音。
エプロン後ろ姿のあゆ美ちゃんが見える。長い髪が掛からない様後ろに縛っている。セクシーだ。
料理の手つきは滑らかで、いつも自炊をしていることがわかる。
旦那さんだったら、毎日あゆ美ちゃんの手料理が食べられるんだ。
私は、誰かもわからない男に嫉妬した。私が代わりに旦那になりたい。あゆ美ちゃんなら、絶対いいお嫁さんになる。
あゆ美ちゃんと、結婚、かぁ…。
女同士って、できるものなのかな。
告白することに怖気づきそうになり、あわてて気を持ち直す。
おいしいハヤシライスをご馳走になった後、録画していたデカレンジャーを見ながら、しばらく思い出話に花を咲かせる。
話しながらも、どうやって告白に持って行くか脇で考えてしまい、たびたび会話が上の空になった。
お酒を飲む。いつもよりペースが速い。
お酒の力を借りて、酔いの勢いに任せようとしている自分に嫌気が刺した。
私の弱虫。
身体が、熱くなってきた。
座ったまま、お尻を使ってすりすりとあゆ美ちゃんの隣へ移動して行く。
酔うといつもべたべたしたくなる。
相手があゆ美ちゃんなら、尚更。
「あゆ美ちゃ〜ん」
あゆ美ちゃんの肩に頭を乗せる。細い腰に手を回す。
「まーた飲みすぎちゃって。フフ」
あゆ美ちゃんが私に微笑む。顔の距離が、近い。
「あ…」
あゆ美ちゃんの口から声が漏れる。
ちゅっと一瞬だけキスをした。
今度は、私の方から行った。
きょとんとしているあゆ美ちゃんの言葉を待たずに、二回目。
…5秒。10秒…。
「…んっ、んっ…」
ばたん!
キスをしながら、私があゆ美ちゃんを押し倒す形になった。
足がテーブルにぶつかり、グラスが倒れた。こぼれ出たお酒が、絨毯に染みを作っていく。
「はぁっ…、はぁっ…」
私の息づかいが荒くなっていた。
いつも明るく振りまっている私の姿は、そこには無くなっていた。
「え、え、美香ちゃん…?」
言葉をかけずに、三回目。
強い抵抗こそしていなかったものの、
キスの秒数が長くなるにしたがって、あゆ美ちゃんが身体を強張らせているのが伝わった。
「今日の美香ちゃん、変だよ…。どうしたの…?」
「あゆ美ちゃん…。あゆ美ちゃん…」
むらむらしてキスして押し倒してしまったけど、これから、どうしていいかわからない。頭の中は真っ白になっていた。
私の手が、あゆ美ちゃんの胸に延びていた。服の上から膨らみを触る。
「…痛っ。痛いよ。痛いよ、美香ちゃん」
焦っていたのか、思った以上に力が入っていた。
あゆ美ちゃんの手が私の腕を掴む。
「やめて…」
あゆ美ちゃんが小さな声で呟いた。
「……!」
慌てて私はあゆ美ちゃんから身体を離した。
あゆ美ちゃんが嫌がっている。
自分への嫌悪感と罪悪感でいっぱいになった。
一年半みんなとがんばって作り上げたデカレンジャー。
作り上げたチームワーク。
辛かったけど、振り返るとかけがいの無い思い出。
私とあゆ美ちゃんとの仲。
そのすべてを、私の今の行動でぶち壊した気がした。
取り返しのつかないことをした。
「うぁぁぁぁぁ! あゆ美ちゃん、ごめんなさい!ごめんなさい!!」
大粒の涙が溢れ出た。「ごめん」を連発していた。
「…あゆ美ちゃん、私は、私は…。
…あゆ美ちゃんが、好きで、好きで、しょうがなくなってきて…、
…だから、だから……」
言葉が続かない。
「付き合う」「恋人」「結婚」というフレーズが浮かんで来て、すぐに打ち消す。
そんな言葉かけられる訳が無い。
あゆ美ちゃんは、ずっと心配そうな顔をしながら、黙って私の言葉に耳を傾けている。
「だから…。……だ か ら……」
ダメだ。
自分の気持ちがうまく説明できない。言葉で出てこない。
あゆ美ちゃん、ジャスミンみたく、私の気持ちをエスパーで読み取ってよ。お願い。
「美香ちゃん!」
あゆ美ちゃんは、私を抱きしめた。
「かわいい。…美香ちゃんかわいいよ。
美香ちゃんだったら、絶対素敵な男の人が現れて、美香ちゃんを幸せにしてくれるよ。
私も近くに居るから。寂しくなんかないよ」
「えっ…?」
本当に、あゆ美ちゃんがエスパー能力を使ったのかと錯覚した。
「…あゆ美ちゃん、…私、私…、あゆ美ちゃんとずっと一緒に、居たい…」
「…気持ち、すっごく嬉しいよ。
…でも、私、美香ちゃんの気持ちに応えられそうにない。
ずっとずっと、いいお友達でいよう?
…ごめん」
振られた。
全身の力が抜けた。
気持ちをきちんと伝えられたからかもしれない。結果が出たからかもしれない。
まとわり付いていた不安が、すーっと抜けていった。
私の不埒な行動と、しどろもどろの告白を拒絶することなく受け止めてくれた事が、何より嬉しかった。
「あゆ美ちゃん、あゆ美ちゃん…」
私はあゆ美ちゃんの胸の中で、泣きながらありがとうとごめんなさいの言葉を繰り返す事しかできなかった。
41 :
シーン5 朝:2006/08/26(土) 10:39:43 ID:SoFdxFBj
鳥のさえずりが聞こえる。窓から光が差し込んでいる。
外は朝になっていた。いつの間にか寝てしまったのだろうか?
すぐ横にあゆ美ちゃんの寝顔があった。
…くやしいぐらいかわいい。
同じベットに同じ布団。眠りながら、あゆ美ちゃんの手は私の手をしっかりと握ってくれていた。
酔っ払った私を、また寝かしつけてくれたのだろうか?
あゆ美ちゃん、いい子過ぎるってば。
もう、忘れることなんて、無理だ。
キスしたい。あゆ美ちゃんの寝顔に。
…いけない。
私は衝動をぐっと堪えた。
もう、終わったんだ。デカレンジャーも、私の恋も。
私は寝たふりをしながら、あゆ美ちゃんが起きるまで添い寝を楽しんだ。
「じゃあ、そろそろ行くね」
荷物をまとめて、私は玄関に向かった。
ちょっと、気まずい。
あゆ美ちゃんが作ってくれた朝ごはんを二人で食べているときも、沈黙の時間が多かった気がする。
恥ずかしくて、顔をまともに見ることができない。
告白なんてしない方がよかったんだろうか?
「次は、映画の「VS」の撮影の時かな。それまで元気でね!」
恥ずかしさを押し殺して、私は明るい声を出す。
「美香ちゃん」
ドアを手にかけたとき、あゆ美ちゃんが私を呼び止めた。
「ん?」
「また、遊びに来てね。
仕事で辛い事があったら、いつでも連絡して。
たくさん、お話しようね」
「…あゆ美ちゃん…。
…最後に、私のお願いを聞いて。
…もう1回だけ、キス、したいな」
自分でも何を言ってるんだろうと思った。
「…えぇ!? もう。 ほんとにこれが最後だよ?」
唇と唇が重なる。
…やっぱり、また好きになってきちゃった。
おわり