レズ声優出張所Part4

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愛ちゃんは思い出しちゃったみたい。
私たちが共演しているストパニの、愛ちゃんが不機嫌になるきっかけの12話のストーリー
と、それを見た時の感情が。
愛ちゃんの演じているキャラは、私が演じているキャラのことが好きなんだけど……。
その、ねぇ……?
私が演じる渚砂は、愛ちゃんが演じる玉青ちゃんより気になる人がいて、あろうことか玉
青ちゃんがいない間にその、キスしてしまうの。
愛ちゃんは役に気持ちを左右されることがよくあるのは知ってるけど。
今回はさすがに……ねぇ? 相手女の子だし。
すっかり役と自分がシンクロしてしまったらしく、はぁ、どうすればいいのかな?


「ねぇ、愛ちゃん…?」
ラジオを終えて愛ちゃんを喫茶店に連れ出した。
さすがにあのままスタジオにいて、愛ちゃんにあの話題を自ら振るのは、スタッフさんに
悪い気がして。
お仕事だから、他のコーナーの収録中は平静を装っていてくれたけれど、それは何の解決
にもならないし、押さえきれない不穏な空気を私は肌に感じたから。
「なぁに?」
言葉だけなら、普通なんだけど。
その目はちょっと据わっていて、不機嫌からか顔は笑ってないし、声も低めのトーンで戦
闘中みたい……。
さっき運ばれてきたケーキに視線を落としたままだから、ちょっとはマシ…かな?
「そんなにすねないでよ。役の上での話なんだし……」
じろっと私を見た愛ちゃんの迫力に、私はびくっと怯えてしまう。
「わかってるよ。だけど嫌なんだもん。せっかくがんばってきたのにーって」
ダメだ、下手に触れると逆に怒り出しちゃう。
さっきよりはまだ落ち着いてきてるんだから、慎重にいかないと。
いつもよりも勢いよくフォークでケーキを切っていく愛ちゃんの姿は、慎重を意識しよう
とする私の決心を硬いものにしてくれる。