(困った)
大分後半まで来た所で、どうしようもない壁にぶつかる。
「よく混ぜてください」
その言葉を信じてずっと混ぜているのはいいんだけど、これではきりが無い。
よく見ると、私の周りはもう既に焼く手前まで来ているようだ。
(どうしよう・・・・)
そう思っていると、一番目があって欲しくない奴と目が合った。
「はぁーい、奈緒ちゃん・・・呼んだ?」
杉浦がニコニコしながら、こっちに近づいてくる。
「呼んでないわよ」
「誤魔化しても無駄・・・・・・困ってるのは分かってるんだから!」
そう言って、力強く人差し指を私に突き刺してくる。
(鬱陶しい・・・・相変わらず意味不明な奴)
大人しく聞いて、さっさと退散してもらう事にする。
「あのさ、どれくらい混ぜればいいの?」
「どうしたの、奈緒ちゃん・・・・・随分マジメじゃない」
明らかにニタニタ笑っている杉浦。
鬱陶しいを通り越して、殴りたくなってくる。
「うっさい・・・聞いてるんだから答えたら?」
「・・・・・誰か好きな人できたんでしょ」
「そっ・・・そんなわけないでしょ!」
好きな人。
その言葉を聞いた瞬間、一瞬だけなつきのことを考えてしまう。
(しまっ・・・た)
反省した時にはもう遅い。
杉浦は満面の笑みを浮かべながら、一人で満足そうに頷いている。
「そうか・・・まさか奈緒ちゃんがねぇ・・・・へぇ」
「何一人で納得してんのよ」
マズイ。
口では否定できるけど、頭の中では一人の人物が大きくなってくる。
「ねぇ、誰?・・・・・碧ちゃん気になる〜」
「そんな奴いないわよ」
「私の知らない人?」
「違う」
「じゃあ、知ってる人だ」
「違うわよ」
否定するたびに、笑顔のなつきが大きくなっていく。
頬っぺたにゆっくりと熱が集まっているような気がする。
「奈緒ちゃん・・・・意外と分かりやすいのね」
「何も言ってないでしょ」
「まぁまぁ・・・照れないでよ」
「照れてなんかいないわよ!」
もう我慢できない。
杉浦の方向に、パンチを繰り出す・・・・んだけど、杉浦はあっさりと見切る。
「危ない、危ない・・・・それじゃあ退散しますか」
ちっとも危なくなさそうに呟く杉浦。
「ちょっと・・・・何時まで混ぜればいいのか教えてよ」
「ああ・・・・・もう充分だから、後は一口サイズに千切ってね」
最後の最後にようやく聞きたかったことに答えて、杉浦は背中を向ける。
「奈緒ちゃんは普段ツンツンしてるんだから、素直になったらイチコロよ」
有難くない置き土産を置いて、ようやく教壇に帰ってくれた。
(まったく・・・何しに来たんだか)
遠ざかっていく背中を見ながら、私は生地を一口サイズに千切っていく。
(・・・・素直になれたら誰も苦労しないわよ)
頭の中は、もうなつきのことで一杯だった。
今、私の手には出来たばっかりのクッキーの袋が握られている。
はっきり言って、かなり上手に出来た。
これなら誰に渡しても恥ずかしくないだろう。
(上手く出来たから・・・ついでよ・・・ついでだからね)
渡す時の台詞を考えながら、私はある人の部屋を目指して歩く。
(ホントに・・・ママにあげるついでなんだから)
心の中で言い訳した時、ようやくその人の部屋にたどり着いた。
支援、支援
続きが気になる…頑張れ
んーいいっす!
ワクテカで待ってます!!
オッケーイ
もっと激しくしてくれてもかまわんよ
>>882 GJ!
奈緒かわいいよ奈緒おおおお
何はともあれ、このスレ、次スレからは「舞-HiME&舞-乙HiMEで百合〜」に呼称変更しなければならないなあ。
>>882 ハァーン!待ってるぜぇぇぇぇ(*´Д`)<GJ!
>882
GJ!
朝からニヤニヤが止まりません。
GJ&感想くれた方、本当にありがとうございます。
めっちゃ嬉しいです。
それじゃ、前半と違いなつきたっぷりの後半です。
>>882 (気楽に渡せばいいのよ)
そう思いながら、ドアホンに指を伸ばす・・・・んだけど押せない。
(もう一回練習しよう)
頭の中で、もう一回だけ練習する。
(一杯出来たから、ついでにあげる)
よし、完璧。
さっきから何回も練習しているから、もう完璧に出来るはず。
(あとは渡すだけね)
そう思いドアホンに指を伸ばすんだけど、何故か押せない・・・・
ずっとこれを繰り返しているような気がする。
大体、なつきは部屋に居ないはずだ。
今はお昼休みのど真ん中。
普通に考えたら、なつきはお昼ご飯を食べに食堂かどっかに行ってるはずだ。
(そうそう・・・居ないんだからこんなに緊張してたらバカらしいわね)
そう考えたら、急に気が楽になったような気がする。
一回深呼吸してリラックス。
(よし、準備万端)
ゆっくりと指を伸ばす。
(・・・・・・)
又しても指が止まってしまう。
(・・・・なつきが出てきたらどうしよう)
本当にクッキーを渡す事が出来るのだろうか。
いつもみたいに憎まれ口を叩くだけかもしれない。
(・・・・・何うだうだ考えてんのよ)
渡す前に失敗したときのこと考えるなんて、私らしくない。
(素直になればイチコロよ)
有難くなかったはずの杉浦の言葉が、頭の中をよぎる。
(素直に、可愛く)
普段見れない私を見たら、なつきも少しぐらいはドキドキするのだろうか?
ちょっとぐらいは私のこと意識してくれるのだろうか?
(マズイ・・・また緊張してきた)
余計な邪念を取り払おうと咳払いをした時、
「奈緒・・・・・さっきから何してるんだ?」
聞けるはずのない声が後ろから聞こえてきた。
「奈緒、大丈夫か?」
背中から声をかけられて、必要以上にビクッと体が飛び上がる。
後ろ手に持っていたクッキーを慌てて隠す。
「いやっ・・・・あの・・・その・・・なつき居るかなと思って」
「何を慌ててるんだ」
「急に声かけたから驚いただけでしょ」
「ふーん」
「あの・・・・見た?」
「見たって・・・何のことだ」
よかった。
不思議に思われているみたいだけど、クッキーの事は気が付いてないようだ。
「何か用か?」
なつきは少し不機嫌そうだ。
ここ最近なつきのこんな顔は見てなかったので、懐かしいような不思議な気分。
「もしよかったら、一緒に昼ご飯食べようかと思って」
とりあえず適当に話を進めると、なつきは不機嫌そうに呟いた。
「残念だが、今日は食堂が休みらしいぞ」
「へぇ」
「だから部屋でも探して、パンでも食べようと思ってな」
なんて幸運。
(じゃあさ、可哀想だからクッキーあげるわ)
なんて自然な流れなんだろう。
普段はめんどくさいけど、この日のためにシスターを頑張っていて良かった。
「じゃあね・・・あのね・・・」
「何だ?」
「あのね・・・その」
あとちょっとじゃない。
(頑張れ・・・私、頑張れ)
「お前らしくないぞ・・・・はっきり言ったらどうだ」
「うるさいわね・・・・だから・・・・その」
「何なんだ?」
なつきはめずらしく緊張している私を見て、クスクス笑っている。
「じゃあ・・・・また今度ご飯食べに行こうよ」
「何だ・・・そんな事、今更だろ」
「・・・・そうだね」
(こんなこと言いたかったんじゃないのに・・・)
もし受け取ってもらえなかったら・・・・
もし嫌そうな顔をされたら・・・・
そのことを想像するだけで、泣きそうになってしまう。
「じゃあ・・・私、もう帰るね」
「もう帰るのか?」
「うん・・・ご飯食べるから」
笑顔でなつきと話していると、涙がこぼれそうになる。
「じゃあね」
なつきの前では泣くわけにいかない。
急いで帰ろうとするんだけど、なつきが何故か私の手を掴んで離してくれない。
「何よ・・・離してよ」
「まったく素直じゃないな」
「・・・・・何のこと言ってんの」
「ほら・・・忘れてる事あるだろ」
なつきが握っていた手の力を少しだけ強くする。
「あのね・・・・クッキー作ったから・・・・食べる?」
私はその手に勇気を貰う。
「そうだな・・・・それじゃ一緒に食べるか」
なつきは嬉しそうに笑ってくれた。
「これ、ホントにお前が作ったのか」
なつきが驚きながら聞いてくる。
「失礼ね・・・・誰かと違って器用なのよ」
向かい合って座りながら、私は少し得意げな気持ちになった。
やっぱり人に褒めてもらえるのは気分がいい。
「ねぇ・・・・食べないの?」
何時までも袋を開けないで、外から見ているなつき。
嬉しそうなのは顔が見れるのはいいんだけど、焦らされてるみたいでドキドキする。
「そうだ、お腹空いてたんだった」
なつきは照れたように笑い、リボンをそっと外す。
その途端フワッと甘い空気が部屋の中に広がっていく。
(なんか・・・・緊張してきた)
これからなつきが食べるんだと思ったら、ドキドキしすぎて死にそう。
「へぇ・・・上手に焼きあがってるじゃないか」
なつきはクッキーを持って、嬉しそうにジロジロ見てる。
「・・・・・・ありがと」
形を褒めてもらうのは嬉しい。
嬉しいけど、早く食べてもらわないと本当に死んでしまうかもしれない。
「おいしそうだな」
そう言ってこっちに笑いかけてくるなつき。
(お願い・・・・早く食べてよ)
その願いが通じたのか。
「じゃあ、いただきます」
ようやくその声が聞こえてきた。
(上手く出来てるよね)
胸が爆発しそうになる。
ゆっくりとなつきの唇に近づいていくクッキー。
薄くピンク色のなつきの唇。
思わず誘われるように見入ってしまう。
瑞々しく、見るものを虜にしてしまう魅力。
(美味しそう・・・・・)
私はそれに魅了されてしまう。
「奈緒・・・・そんなに見るな・・・恥ずかしい」
「へっ・・・・あっ、ごめん」
凄い勢いで下を向く。
一気に頬が赤くなっていくのが分かる。
(何考えてたか・・・・ばれてないよね)
チラッとなつきを見ると、少し赤い顔でクッキーを食べたところだった。
「うん・・・・美味しい・・・・上手いじゃないか、奈緒」
「ホント?」
思わず身を乗り出してしまう。
「ホントに?」
なつきの目を見ながら、もう一回聞く。
「ああ・・・・これならお店で出せるんじゃないか」
なつきは嬉しそうにパクパク食べている。
(よかった)
美味しいと言ってもらえた事。
でも、それよりも嬉しそうに喜んでもらえたことが一番嬉しい。
(ホント・・・作ってよかった)
それまで忘れていた疲れが、一斉に襲い掛かってくる。
嬉しそうななつきを見ながら、グニャッと座り込む。
「何ダラダラしてるんだ」
「しょうがないでしょ・・・・疲れてるのよ」
「食べないのか?」
(食べる気しないわよ)
はっきり言って、私は物を食べられる状態じゃない。
「なつきがお腹一杯になるまで食べていいわよ」
「しょうがないな」
なつきがこっちに歩いてくる。
「ほら・・・・美味しいぞ?」
隣に座ったなつきが、クッキーを持って私に向けてくる。
「何?」
「あーん」
「なっ・・・・出来るわけないでしょ!」
まったく恥ずかしくなさそうななつき。
それに比べて、私の顔は真っ赤に染まっている。
「ふーん・・・奈緒は食べないのか」
私を見て、ニタニタ笑っているなつき。
「残念だな・・・せっかく作ってくれたお礼にサービスしたのに・・・」
明らかに私を誘い込んでいる。
「食べたくないんじゃ、しょうがないな」
下手な芝居でこっちを見ながら、持っていたクッキーをゆっくりと食べた。
(むかつくわね)
一言文句を言ってやろう。
「あのね・・・・なつき」
強い意志を持って、なつきにびしっと言ってやる。
「何だ?」
そう言いながら、なつきは私の目の前にクッキーを差し出してくる。
「あの・・・・・一個頂戴」
(かっこわる)
強い意志は何処に行ったんだろう。
あっさりと誘惑に負けてしまった。
「最初から甘えておけ・・・・・まぁ奈緒らしいが」
呆れたように・・・・・でも嬉しそうになつきが笑う。
「ほら」
クッキーが口に入る瞬間。
ほんのちょっと、なつきの指が唇に感触を残していく。
少し冷たい指先が、上がりすぎた体温に心地よい。
「どうだ・・・・美味しいだろ?」
ドキドキしてる私を置いて、何もなかったかのようになつきはクッキーを食べてる。
「・・・・・・・・」
美味しいかと聞かれても、ドキドキしすぎて味がよく分からない。
(しょうがない・・・・味が分からないんだもん)
だからもう一個食べないと満足できない。
「なつき・・・・今、小さいの食べさしたでしょ」
「なっ・・・そんなわけないだろ」
「なつきはケチだからね」
そう言って、軽く口をあけて待つ。
「お前なぁ、普通にお願いできないのか」
「何の事だか・・・・サービスしてくれるんでしょ?」
「まったく・・・・・・・ほら、これだったら文句無いだろ」
口に押し込まれてきた少し大きめのクッキー。
やっぱりその味は、ドキドキしすぎてまったく分からなかった。
「ホントに全部食べてよかったのか」
「別にいいわよ・・・・・他にあげる人いないから」
(ママ、ごめんね)
美味しそうに食べてるなつきを見たら、嬉しくなって全部あげてしまった。
(ママなら許してくれるよね)
事情は説明できないけど、ママなら笑って許してくれるだろう。
「それにしても美味しかったな」
「ん?」
遠くに言っていた意識が呼び戻される。
「奈緒のクッキー」
「ああ・・・・・なつき、一人でバクバク食べてたしね」
「・・・・後半は奈緒も結構食べてたぞ」
「私は一個ずつだから、なつきに比べたら食べてないでしょ」
「まぁ・・・・そうだが」
どこか納得していないようななつき。
対照的に、私は凄く気分がいい。
「ねぇ・・・・・そんなに美味しかった?」
私より後ろを歩いているなつきに尋ねてみる。
「ああ」
「また食べたい?」
「そうだな」
その言葉を聞いて、私は立ち止まる。
「しょうがない・・・・じゃあ、また今度作ってあげる」
振り向きながら、なつきに笑顔でそう言ってあげる。
「・・・・・・」
「なつき?」
「・・・しょうがないから、また今度も食べてやる」
そう言って、困ったように笑うなつき。
その顔は少しだけ赤く染まって見えた・・・・・・・・
終わり
>892-902(◆JirmzAivjsさん)
なんつーか…もうね・・・こう…奈緒が奈緒がーーーーーーー可愛い過ぎる…w(;´Д`)ハァハァ
やっぱりこの二人は最強だw(;´Д`)ハァハァ
>>902 うわああ萌え死ぬうう!!
いつも本当にGJっす!
なつ奈緒大好きになっちゃったよ(*´Д`*)
>>◆JirmzAivjs氏
顔中の筋肉が緩みきって垂れ下がる一方なのですが!!!
どうしてくれますか!!!!
(*´Д`)<GJGJ!
ママンの方には俺がクッキーを届けておきます
>>902 GJ!!!!
弱気な奈緒と男前のなつきが最高だ
>>907 じゃあ俺はケーキとシャンペンをプレゼントするよ。
>>902 GJ
でも密かに前半の碧ちゃんがそのまま攻めに回らないかと期待してしまった漏れがw
なつきには奈緒のほうがにあってるんじゃないかな
最近そう思ってる
昨日寝過ごしちゃったんだけど、舞乙の感想きぼんぬだよ
おまいら
でぼちんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
トモエキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
舞衣キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
これに尽きる
関西━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
なのでまだ見てない
>>915 VI…いや
ユキノキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
も言ってくれヨ
あの仮面赤毛、俺は舞衣ではなくミドリちゃんと見ている。
黒の谷の兄上見た時のヨウコの反応が気になるんだ…
>>917 俺はマイだと思った。
ナツキの言う「あいつ」がマイならば、死んだと思われてたマイが黒き谷に拾われて……って線を考えた。
でも、ヨウコ先生の反応を考えると、ミドリ説も一理あると思った。
……何にしても、スタッフにいいように踊らされてる俺。
百合分が足りない
920 :
名無しさん@秘密の花園:2005/10/28(金) 23:56:19 ID:omyTSuB2
乙スレ消えた???
トゥモエはなかなか見所ありそうだ
お背中流しますと聞いて違う方のサービス想像した奴の数→
泡踊りとか?
トモエモエ
>>920 こっちで乙の内容まで扱ってるし妥当かと
そのうち神が降臨して乙ネタで(ry
乙ではナオニナの組み合わせに食指が動きそう
>>917>>918 舞衣は次回予告に出てる。
ブルセラショップもどきの店のポスターでw
パールの制服姿。
GJ&感想を下さった皆様、本当にありがとうです。
すんげー嬉しいです。
少し遅くなるかもですが、次の話も考えてますんでこれからもよろしくです。
そのうち乙の話も書きたいんですが、今んとこ奈緒となつきが絡んでないような?
乙はニナが個人的にいい感じです。
トモエは
表と裏の顔の差が激しい怖い系の百合と見た…