>>514 これはGJと言わざるを得ない! 素晴らしい
王道百合、いいですね。最後の台詞にやられましたw
こんばんは、時計擬人化の人です。
とけいけ続編置いていきますね。
略記は、短→短針、長→長針、秒→秒針、ア→アラーム針のことです。
とけいけ、AM7:00:00。
秒「むにゃむにゃ……もう食べられないよ〜」
「………」
短「……あらあら、秒ちゃんにはまだ早いわ〜」
「………」
長「……あんたら、寝言くらい成長しなさいよ〜」
「………」
秒「はっ! あれ、アラームさん鳴らないよ!」
長「げ、マジ!? 私、次で反省文なのよ!」
短「まあ。困ったわね」
長「ちょっとアラーム、仕事しなさいよ!」
ア「……ずび」
短「あら。耳たぶを甘噛みしたから拗ねちゃったのかしら」
長「……短姉、夜中にそんなことしてたの?」
秒「野良犬にかまれたと思って忘れようよ、アラームさん」
ア「ずびばぜん。風邪をひきました」
短&長&秒『……はい?』
アラームさんのお部屋です。
短「はい、お布団敷いたわよ」
ア「ありがとうございます……」
短「しかし、針でも風邪引くものね。驚いたわ」
ア「なんだかふらふらしますです。長針と秒針はどうなりました?」
短「大丈夫、間に合ったみたい。今は、余計な心配しないでいいのよ」
ア「はい……」
短「さて、風邪と言えばこれ。水枕をどうぞ」
ア「昔ながらの、ゴム製でたぷたぷいうものですね」
短「最近は冷えピタとかあるけど、やっぱりこれだと思うのよ」
ア「ええ。ありがとうございます」
短「そして、風邪と言えばこれも。じゃじゃーん、桃缶!」
ア「あの、短針。私は子供ではありませんよ……?」
短「なによ、こんなすべすべなお肌しちゃって」
ア「ひゃう!」
短「そして、風邪と言えばやはり!」
ア「まだあるのですか?」
短「直腸検温」
ア「無いです! それはありません!」
短「さあ、四の五の言わずにパジャマどころかぱんつまで下ろすのよ!」
ア「その構えが本気っぽくて嫌です。やめてください、短針!」
アラームさん、お尻の貞操はなんとか守りぬいた様子。
短「37.6度、か。普通に風邪ね」
ア「先ほどの戦いによる上昇分は差し引いてください!」
短「おとなしく寝ていらっしゃい。何かあったら、私を呼んでいいから」
ぱたん。
ア「……ふふ。風邪を引いた時、看病してくれる人がいることは、何よりもありがたいことですね」
とけいけ、PM3:30:35。
ア「もう、お昼過ぎですか。だいぶ熱も引いてきたようです」
がらっ☆
秒「ごっきげんよー! みんなのアイドル、秒ちゃんだよー! ぴかっ☆」
ア「そのまばゆさに、今日は目がくらみます。用件は手短に」
秒「うふふ。病身といえば秒針に任しとけなのです。このお菓子を食べれば、風邪なんていちころですよー!」
ア「これはどう見ても、練ると色の変わる、例のお菓子なのですが……」
秒「そう。この魔法のお菓子を食すれば、心うきうき、風邪なんて吹き飛んじゃうよ!」
ア「吹き飛ぶどころか定着する気がします」
秒「そんなこと言わずに食べてよー。あたし、袋開けたんだよ? ね、お願い!」
ア「……秒針にそこまで言われては断れませんね。では一口」
その時、アラーム針に衝撃走る。
ア「な、なんですか、この味は……!」
秒「えへへー。かくし味!」
ア「袋を開けたというのは、まさか……」
秒「そう。ねるねの効果だけじゃ弱いと思って、砂糖と味の素をぶっかけました。いうなれば、ねるねギガダイン!」
ア「なんという凶悪な! そして謎が解決した今、これを食べるのは死に通ずるのですが」
秒「お願い、食べてよー。あたし、早くアラームさんに良くなって欲しいの!」
ア「……っ! 笑顔がまばゆいです!」
秒「お願いだよー、食べてくれないと魔法少女に変身して口から突っ込むよ?」
ア「それが魔法少女のすることですか! やれやれ、仕方ありませんね……げふっ!」
とけいけ、PM6:35:00。
ア「酷い目に会いました。これは、延長戦確定ですね……」
がらっ!
長「よう中学生、元気に病気してるー?」
ア「……どこから突っ込めばいいのですか」
長「お尻にネギとかどうよ」
ア「お断りします」
長「風邪といえば、何といっても元気の出るもの。……ということで、私わざわざ出前しました!」
ア「……この濃厚な気配はまさか……」
長「そのとーり! にんにくらーめん、ふかひれちゃーしゅー入りでーっす!」
ア「うわあ!? ひょっとしてあなた、私を殺害しに来たのですか?」
長「何言ってんのよ! ほらほら、チャーシューですよー? ふかひれさんがプリプリしてますよー?」
ア「止めてください! こんな時にそんな消化に悪いものを食べたら、病状が悪化してしまいます!」
長「そりゃ考えようってもんよ、汗が出て元気になるかもしれないじゃん」
ア「そんなことありません!」
長「私、あんたに良くなってもらいたいんだってば!」
ア「良くなりません! はっきり言って、その匂いだけで針が曲がりそうです!」
長「……そこまで言われては仕方ない」
ア「分かってもらえましたか」
長「ほら、これ見て。ぴら〜ん」
ア「写真ですか? こ、これはまさか……」
長「そのまさかよ。短姉の高校時代の写真でございます」
ア「……なんて初々しい!」
長「どう、おさげにしちゃって可愛いでしょ? これ、入学式なの」
ア「レア度抜群です……」
長「さて、どうよ。私の言うことにも一理あると思わない?」
ア「くっ。確かに、塞翁が馬ということわざもあることですし、食べ物を粗末にするわけにもいきませんし」
長「話が早くて助かるわ。さ、これ食べて元気出して!」
さすがにスープは無理でした。
ア「うう。宝物は増えましたが、払った代償は大きい。延長戦が3日に増えましたね……」
とけいけ、PM7:00:00。
がらっ(はぁと)
短「お加減はどうかしら、私の患者さん?」
ア「……たったいま、たいへん悪くなりました」
短「あら、どうして?」
ア「一体なんですか、そのナース姿は! 色はピンク、裾は超ミニ、やたらに艶めかしいストッキング!」
短「あら。説明ありがとう」
ア「そんな格好では、私の熱も上がってしまいます!」
短「うふふ。今日は、”私、あなただけの看護婦なの!”って言う設定よ?」
ア「設定だけで充分です。お引き取りください」
短「ああん、そんないけずなこと言わないで。それに、ちゃんと食べないと、治るものも治らないわよ?」
ア「まさか、短針もひどいものを持ってきたのですか?」
短「あの子たち、何を持ってきたの? 大丈夫、私のはただのおかゆよ」
ア「……ああ、普通のごはんの香りがする。ありがとうございます、短針」
短「うふふ。可愛い患者さんのためですもの、これくらい当然よ」
ア「助かります。では、その土鍋をお貸しください」
短「だめ」
ア「?」
短「蓋を開けて、れんげに盛って、っと。あら熱いわね、ふーふーして冷ましてあげなきゃ」
ア「ま、まさか……」
短「『はい、あーん』」
ア「こ、困ります! そんなはしたない!」
短「はしたなくなんかないわ。看護の基本ですもの」
ア「いけません、私には刺激が強すぎます!」
短「あら。病人を組み敷くなんて、健康な人には簡単なことよ?」
ア「そんなひどいー!」
ア「……結局、全部アレで食べさせられました。すごく大切なものを失った気分です……」
短「何ぶつぶつ言ってるの?」
ア「何でも。ともあれ、このままでは短針に風邪が移ってしまいます。そろそろお引き取りを」
短「そういうわけにはいかないの。まだナースの務めが残ってるもの」
ア「何のことです?」
短「それでは失礼いたしまして」
ア「ちょっと! なぜ布団に入ってくるのですか、どうして擦り寄ってくるのですか!?」
短「ねえ、知ってる? 風邪は人に移すと、治りが早いっていうわ」
ア「それは俗信です!」
短「私、アラームちゃんの風邪だったら喜んで受け入れるわ。辛そうなあなた、見ていられないもの!」
ア「抱きしめないでください! あの、その、やわらかい何かが密着してます!」
短「ぎゅむーっ!」
ア「も、もう限界です……!」
短「あら、ちょっと。アラームちゃん?」
秒「アラームさんどうしたの? ……って、泡吹いてるじゃない、たん姉ちゃんなにしたのよー!」
長「うわっ、なんで布団で絡み合ってんだあんたらー!」
ア「………」
暗闇の中、幼さの残る肢体が浮かぶ。
ア「夢、ですか。ここは……」
”どうですか、具合は”
ア「おおむね最悪です」
”ふふ。どうやらあなたは、 しょうじきもの ですね”
ア「突っ込みませんからね。貴女は一体?」
”私は、『針』を意味するもの。こうでもなければ、あなたと会えませんから”
ア「なるほど。私は夢をほとんど見ませんから」
”今日は、あなたに聞きたいことがあってやってきたの”
ア「何でしょう?」
”ねえ、今の自分に不満じゃない?”
ア「不満?」
”そう。だってあなたは、自分で動くことができない。時計家の三姉妹は、みんな別々に動くことができるのに”
ア「………」
”不自由を感じたことはないの? 他の娘たちと同じように、自由に時計盤を走り回りたい、と思ったことは?”
ア「………」
”私は『針』を意味するもの。あなたが望むなら、願いをかなえるわ”
ア「……そうですね。私も確かに、元気に走り回る秒針がうらやましい。注目を集める長針がうらやましい」
”そうでしょう?”
ア「そして何より、一日をゆったりと刻む短針が恋しい」
”あらあら”
ア「……でも、今はもう、そういう存在になりたいとは思いません」
”あら。どうして?”
ア「なぜなら、短針が、動かない私を必要としてくれるからです」
”あのマイペースさんが、誰かを必要とするようには思えないのだけれど”
ア「いいえ。短針とて、時計盤を回るだけの存在。目印がなければ、自分の居場所が分からなくなってしまいます」
”………”
ア「私は、あの人の目印になれる。あの人が必ず戻って来られる場所として、私は同じ所処で留まっていたいのです」
”『12時』、という場所もありますよ?”
ア「短針にとって、12時は始まりの場所ではありません。私と会うことが、あの人の一日の始まりです」
”あらあら。ずいぶんな自信なのね”
ア「あの人は、私と会うことが特別だ、と言ってくれました。……私は、その言葉を信じています」
”うふふ。あなたは本当に、どうしようもないお馬鹿さんなのね”
ア「……ええ。ですから、お言葉ですが」
”そこまでのろけられちゃ仕方ない。いいわ、今まで通りになさい”
ア「ありがとうございます」
”ふふ、じゃあね。調子は元に戻しておいてあげる”
ア「……あの人は、一日に一回、私のことだけを見てくれる。私は、それで充分なのです……」
溶暗。
夜半。アラーム針の個室にて。
ア「やはり夢でしたか……」
秒「……むにゃむにゃ……うーん、もう食べられないよ〜」
短「……あらあら、秒ちゃんにはまだ早いわ〜」
長「……ついに成長を放棄したわね〜」
ア「やれやれ。病人の部屋で全員寝こけるとは、一体どういうおつもりでしょう」
秒「……すう、すう……」
長「……くかー……」
ア「病みあがりですし、動くわけにもいきません。そっとしておいて差し上げましょう」
短「……うーん……アラームちゃん、愛してる」
ア「……ばか。」
明くる朝。
ア「ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ!」
秒「うるさいよー!」
長「何なの! ……って、なんで私アラームの部屋で寝ちゃってるわけ!?」
短「あら。ナース服、しわになっちゃった」
ア「言い訳無用! さあお三方とも、早く出ていってください。ここは病みあがりの部屋です」
秒「うるさいなー」
ア「うるさくありません、秒針まで風邪を引いたらどうするのですか!」
長「なによもう、ちょっと元気になったらすぐコレなんだから」
ア「長針、私が仕事をしなかったら、また反省文ですよ!」
短「せっかくイイ服で看病してあげたのにー」
ア「短針、あれは看病ではありません! ええと……とにかく、性的な何かです! 病人にはいけません!」
短「いけずなんだから」
ア「……それから、お三方!」
短&長&秒「ひゃいっ!」
ア「お心づかい、ありがとうございました。感謝します」
短&長&秒『……どういたしまして!』
とけいけは今日も平和です。
以上です。
先週も書きましたが、身辺が少し忙しくなってきましたので、「とけいけ。」は一時中断させていただきます。
長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。
つーか、全部読んだ人はいるのかな。いたら凄いと思いますが……