[構想]レズ百合♀総合創作スレッド[妄想]

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429とけいけ。5【1/8】
今回は、『とけいけ』の次女こと長針さんの通う高校のお話。
外は春らしく、うららかな陽気なのですが……

長「……はあ。掃除かあ」
ほうき「3人でやればすぐ終わるぜ!」
ちりとり「そういえば、長針さまは先ほどから浮かれぬご様子です。ひょっとして、掃除はお嫌いですか?」
長「あんたらは好きなの?」
ほうき「そりゃもう、あたしとちりとりに任せとけば、どこだってピカピカだ! ただし、ゴミはちりとりの尻から出る!」
ちりとり「で、出ません! 今日は大丈夫ですよ、音楽室のゴミ袋は大きいですから」
長「……なぜあんたが尻を押さえたのかは、突っ込まないからね」
ちりとり「だってほうきさんが無理矢理!」
長「突っ込まないっつってんでしょうが!」
ちりとり「お心遣い、痛み入ります……」
長「まあ、私も掃除が嫌ってわけじゃないのよ。よりによって音楽室なのがね……」
ちりとり「音楽室が苦手なのですか? まさか、音楽室の怪談がこーわーいー、ですとか?」
長「違うわよ! 単に、ちょっと苦手なのがいるだけ」
ほうき「ふーん。長針は友達たくさんいるのに、珍しいな!」
430とけいけ。5【2/8】:2010/04/23(金) 19:32:42 ID:imScqGHM
かくして音楽室。

?「あーら、放課後から嫌なものを見てしまいましたわ。ともあれごきげんよう、長針さん」
長「それはこっちの台詞だ。出たな、メトロノーム!」

ほうき&ちりとり「メトロノームぅ?」
長「そう。私はこいつだけは許せないの!」
ほうき「一体どうしたのだ、長針」
ちりとり「音楽室といえばピアノ、ピアノといえばメトロノームですわ」
長「だってこいつ、1分間に132回とか78回とか変なカウントすんのよ!?」
ほうき「……メトロノームなんだから当たり前だろう」
長「私はね、60カウントで1つ繰り上がるようにできてんの! こんな変な数え方ばっかりするトンチキ発明品は嫌なのよ!」
メ「……なんて失礼な。一体誰がトンチキですの!?」
長「あんた!」
メ「私がトンチキなら貴女はインチキですわ。M.M.=60固定だなんて、1分間を測る立場として恥ずかしいと思いませんの!?」
長「知らないわよ! 1分間が152秒だったり88秒だったりするあんたよりよっぽどマシね!」
メ「失礼な! そもそも、M.M.=60固定などと言われては、アダージョ以外演奏できないではありませんの!」
長「じゃ、それだけやってればいいじゃない。だいたい、アレグロだのマダンテだの、あんたの言うことは訳わかんないのよ!」
メ「貴女、いい加減ネジが抜けてるんではありませんの? マダンテではありません、アンダンテです!」
長「似たようなもんじゃん」
メ「まるで違います! アンダンテとは、歩くような速さで、という意味ですわ」
長「歩き回るより、MPをダメージにした方がマシよ!」
メ「なんて嘆かわしい! そんなことですから、鑑賞会であんな醜態をさらすことになるんですのよ?」
ほうき「……長針、泡吹いて卒倒してたな」
ちりとり「……ええ。お尻から魂が抜けていらっしゃいました。よりによってお尻から」
長「う、うっさい! あ、あんなでたらめなテンポ、我慢できなかっただけよ!」
メ「まったく、これだから芸術を理解しないお芋さんは。それに私、アンティークとしてもたいへんな価値がありますのよ? ご覧なさい、
  この見事な縦ロール!」
長「時計には実用性があればそれで充分! そもそも、若いうちから付加価値なんて必要ないわよ」
メ「ふん。さしづめ貴女、100均のザ・時計シリーズなんでしょう?」
長「失礼ね! 私はにとりの2,980円よ!」
メ「語るに落ちたとはこのことね! 私なんて……」

「はいはい、そこまで!」
431とけいけ。5【3/8】:2010/04/23(金) 19:33:33 ID:imScqGHM

長&メ「ピアノ先生!」

ピ「響板からよっこいしょ。音楽室であんまり騒ぐものですから、先生思わず出てきちゃいました」

ほうき「(……おい、無茶すぎだろ。『ピアノ先生』はあんまりだ)」
ちりとり「(……仕方ないです。スレの主旨には忠実に、だそうですから)」
ピ「こほん。まず、メトロノームさん?」
メ「はい」
ピ「あまり、長針さんのことを悪しざまに言ってはいけませんよ」
メ「固定速なんて信じられませんわ!」
ピ「彼女は万国共通の時を刻むためのもの、あなたとは目的が違うのよ?」
メ「ですが先生!」
ピ「それから、長針さん?」
長「なんですか」
ピ「あなたは、芸術に無頓着すぎるわ。時計人の教養として、もう少し音楽に興味を持って欲しいのだけど」
長「お断りします! こんな気まぐれテンポの馬鹿ロールなんて理解できません!」
メ「何ですってぇ!?」
長「なによ。第一、あんた音楽の授業以外で役に立たないじゃない!」
メ「芸術の可能性は無限ですわ。もっとも、右脳の退化したお馬鹿さんには理解できないかも知れませんけど!」
ピ「……はぁい2人とも、ここに頭を挟んでちょうだい?」
長「こう?」
メ「一体何ですの?」
ピ「えい、『突上棒外し』!」

がつん!

長「痛い! 天井板むっちゃ痛い!」
メ「ちなみに突上棒(つきあげぼう)とは、グランドピアノの天井板を支えるつっかい棒のことですわ。
  ……先生、自重なさってください! ぜんまいが狂います!」
ピ「だってあなたたち、まるで言うこと聞いてくれないんだもの」
長「うう、清楚なふりして、こんな暴力教師だったとは……」
432とけいけ。5【4/8】:2010/04/23(金) 19:34:04 ID:imScqGHM

ピ「ですから、長針さんには少し音楽の勉強をしてもらいたいの」
長「嫌ですってば!」
ピ「あのね。音楽室には、他にもいろんな凶器があるのよ? 例えば、これとか」
長「まさか、Yの悲劇!? いや、ちゃんと演奏に使いましょうよ!」
ピ「うふふふふふ?」
長「分かった、分かりました! ……この手のキャラには弄られっぱなしだわ、私」
ピ「大丈夫、そこまで大変なことは言わないわよ。ここに書いてある3曲だけ、聞いてもらいましょう」
長「はーい……」
ピ「ちなみに、全部ピアノ曲ですから。メトロノームさん、弾いてくださいね?」
メ「わたくし!? 先生がお弾きになればよろしいじゃありませんの」
ピ「……ここにお琴があります」
メ「それがどうかいたしまして?」
ピ「中国の故事で、これに鉛を仕込んで人に投げつけて殺そうとしたことが」
メ「ま、まさかの始皇帝暗殺ですの!?」
ピ「うふふふふふ?」
メ「よ、喜んでお弾きいたしますわ!」

ほうき「……さて、掃除終わったし、あたしらは空気読んで退散するぜ!」
ちりとり「あ、こら! ほうきさん、あなた聞きたくないだけでしょう!」

ピ「それじゃ、後はよろしくね。先生、バイオリンとデートだから」
長「おいィ!?」
433とけいけ。5【5/8】:2010/04/23(金) 19:34:39 ID:imScqGHM
かくして音楽室に取り残される2人。

長「なによあの女! 結局デートなんじゃない」
メ「仕方ありませんわ。ソナタ・バカップルですもの」
長「やれやれ。ま、ピアノはともかく、バイオリンさんは可憐な感じの人よね」
メ「そうそう、楚々とした白百合という感じの……って、なんで貴女と意気投合しなきゃいけないんですの!」
長「それはこっちの台詞だ! いいから、さっさと弾けば?」
メ「言われなくても。覚悟なさい!」

1曲目
ショパン「小犬のワルツ」

長「ぎゃー! なによ、このくそ速いテンポは!」
メ「……何をおっしゃるの。この程度、速いうちにも入りませんわ」
長「ちょっと! だからって、いきなり遅くしないでよ。胃がもたれるじゃない」
メ「ショパンお得意の構成です。軽快な部分に続いて情緒的な部分、それから……」
長「また速いいい! 胃から戻る戻る!」
メ「最後は軽快に、締める! じゃん!」
長「きゃん!」
メ「少しは勉強になりまして?」
長「……小犬が哀れだったわ」
メ「……それ、何の勉強ですの」

2曲目
J.シュトラウス「美しき青きドナウ」(ピアノ編集版)

メ「これは普通の曲ですわ。先生、なんでリストに入れたのでしょう?」
長「そうね、出だしは普通っぽいけど……びく!」
メ「なんですの」
長「ちょっと、何よそれは」
メ「何って、ワルツですわ」
長「そうじゃなくて。2拍目と3拍目の間に、こそばゆい『間』があるでしょ!」
メ「ははーん。これは、ウィンナーワルツの特徴ですわ。2拍目と3拍目の間にわざと間を置くことで、踊るようなリズムになるのです」
長「びく! ひ、非常識じゃない、時計的に! リズムやテンポは一定であるべきでしょう!?」
メ「ワルツ王に怒られますわよ」
長「びく! 私の三半規管が! これは酔うー!」

メ「さて、次ですわ!」
長「もう許してー!」
434とけいけ。5【6/8】:2010/04/23(金) 19:35:12 ID:imScqGHM

3曲目

メ「……何ですの、この指示」
長「なに、もう終わり?」
メ「そういうわけでは、ないのですけれども」
長「なーるほど。超絶E難度の曲で、弾くに弾けないのね?」
メ「そんなことありませんわ! そこまで仰るのでしたら、弾いてさしあげます!」
長「……あーあ、また酷いテンポなのよね、きっと。あの女は魔女に違いない」
メ「次に限っては、大丈夫です」
長「どういうこと?」
メ「な、何でもありませんわ。黙ってお聞きなさい」

ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ『悲愴』 第2楽章」

長「あ、なんだろう。すごく、落ち着く感じ……」
メ「そうかも知れませんわね」
長「分かった。これ、秒のリズムと同じでしょ」
メ「ええ。テンポ60ですから」
長「……いい曲ね」
メ「貴女でも、聞きやすいでしょう?」
長「……うん」
メ「……うれしい」
長「………」
メ「……はい。終わりです」

長「さんきゅ。……なんか、ほっとした」
メ「感謝されるほどのことではありませんわ。先生に言われただけですもの」
長「ふーん。なんて書いてあったの?」
メ「あ、こら。見てはいけません!」
長「あんたばっかずるい!」
メ「貴女なんかに読めませんわよ! えい!」
長「こら投げるなー! あーあ、外に行っちゃった……」
メ「た、たいしたこと、書いてありませんでしたわ!」
435とけいけ。5【7/8】:2010/04/23(金) 19:35:44 ID:imScqGHM

長「……なにさ、メトロノームのけち」
メ「けちで結構です」
長「メトロノームのいじわる」
メ「いじわるで結構ですわ」
長「メトロノームの縦ロールちょう変」
メ「変なうえに、実は重いですわ。……って何おっしゃるの!」
長「ふんだ。正直な感想でーす」
メ「毎朝2時間もかけてセットしてますのに!」
長「あんた、人生の12分の1を無駄にしてんのね」
メ「乙女には身だしなみが必要なのです!」
長「私には不要な努力にしか見えませんけど?」
メ「なんですって!? 掃除も終わったようですし、さっさとお帰りになったら!」
長「ふんだ。言われなくても帰りますよーだ!」
メ「本当に失礼な人ですわ!」


長「……あのさ。今日は、もう帰るけど」
メ「望外の喜びですわ。音楽室が芋くさいったらありゃしない」
長「さっきの、また聞かせてよ。気に入った」
メ「……! 貴女が真面目に音楽の授業にいらしたら、考えてさしあげます!」
436とけいけ。5【8/8】:2010/04/23(金) 19:36:11 ID:imScqGHM

秒「じゃじゃーん! 皆勤賞を目指す、良い子の秒ちゃんだよー!」
秒「なんとー! 都合のいい事に、秒の学校は長姉の学校の隣にあるのです!」
秒「さらに、な、なんとー! 春の風に誘われて、何やら紙切れが落ちてきましたよ? なになに?」

『3曲目。あなたが、一番練習している曲。』
437名無しさん@秘密の花園:2010/04/23(金) 19:36:51 ID:imScqGHM
以上です。だぶん失礼しました。

囚われのお姫様さん、お疲れさまでした。
JK×JSスレもお忙しそうですが、当然続編お待ちしておりますw

うちにもあります、メトロノーム。ねじを巻いて、重りの位置を変えてテンポ調整するやつ。
私的にメトロノームといえばそれなのですが、最近は電子式の方が一般的なのかな。

次回は秒針さん奮闘編かな。