SS統合スレッド(#5)

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110この夏、私の想い
「天野には色々世話になったからな。その恩返しはしなきゃならないと思ってたし、それになによ
り俺達は友達だろ? 友達を遊びに誘うのは当然だと思うけどな」
「友達……ですか」
 ――友達。それは私にとって長い間、縁のなかったもの。その言葉を相沢さんから聞いた瞬間、
私は嬉しくもあり、そして、なぜだか悲しくもあった。
「それと真琴も天野のことを連れて来いって。あいつ、天野と一緒じゃなきゃ嫌だってうるさくてな」
「真琴が、ですか?」
「ああ、あいつ、すっかり天野になついててな。ホント、あいつの遊び相手になってくれて助かるよ」
「そんな……、私も真琴と遊ぶのは楽しいですから」
 私はそう言いながら、浜辺を見つめていた。この浜辺のどこかで相沢さんの姿を探している真
琴のことを思っていた。
「あと、もう一つ」
「なんですか?」
「天野を誘った理由だけど、俺、なんだか天野に避けられてるような気がしてさ、もしかしたら嫌
われちゃったかな? と思って。もしそうならば、その理由を聞きたかったし、なにより謝りたかっ
た。」
 相沢さんは、ぽりぽりと頬を掻きながら言った。
「……俺、天野に対してなんかしちゃったかな?」
 私は慌てて「そんなことありません!」と答えた。たしかに私は相沢さんの事を避けていた。だ
けど、それは決して相沢さんの事を嫌いになった為ではなく、ただ、私自身の弱さの為。相沢さ
んの笑顔から、あの感情から逃れる為。その為に相沢さんに心配をかけさせて知らなかった。