10番目の隘路に舞う迷子の子猫___楓

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599名無しさんだよもん
灼けたホームに熱風をまとい山手線が滑り込んでくる。
(東京は暑いし電車も混んでていやだなぁ…)
耕一に会うためとはいえ慣れない都会の熱と人ごみに楓はいいかげんウンザリしていた。
もともと暑いのは苦手な方だった。他人が見ると涼しそうに見えるらしいのだが…
ドアは最後尾に並んでいた楓が乗り込むのとほぼ同時に容赦無く閉まり、電車は発車した。

………!?
(なに?なんだろう…おしりの所になにか当たってる)
楓はそれを避けようと、寿司詰め状態の中かろうじて腰をよじる
混んでいるし仕方ないか。
そう思った矢先、楓の閉じた腿の間に今度は露骨に異物が進入して来た
………!!
(また…あ!…もぞもぞ動いてる…手だ!)
痴漢…?
田舎育ちの彼女は“それ”を知識として知りつつも
隆山を走る鉄道はラッシュとは無縁であり
現実に自分がそのような直面することなど考えたことすらなかった。
(どうしよう……どうしよう…どうしよう!)
声を上げようにも口が、言葉を発する機能そのものが未知の恐怖のため
働かなくなってしまっていた。