倉田佐祐理は我らが女神!

このエントリーをはてなブックマークに追加
862姉くれ者
定刻を少々過ぎた頃にバイトを終え、祐一は店長に挨拶をして帰路についた。
周りの景色が紅から闇へと溶け込む色を変える中、二人の待つアパートの階段を登る。
ゆっくり歩きすぎたか、と思いながら。
扉を開けた祐一を襲うのは独特の香り。
目に映るのはうつ伏せに力無く倒れ付す黒髪の女性―――舞。

「お帰りなさい、祐一さん」
横手から声が掛かる。
「いつもより遅かったですね?」
包丁を持った佐祐理。
「待ちくたびれちゃいました、舞も佐祐理も」
その顔は涙に濡れて。
「あはは、ひどい顔ですよね…」

「舞は?」
佐祐理が何をしたのか理解していながら、質問だけ返す。
「見ての通りです」
視線だけを舞のほうに向ける。ぴくりとも動かない。
「舞には悪いとは思ったんですけど…祐一さんが帰るより先に寝かせておいてあげました」
「どうして…」
「わかりませんか?二人とも佐祐理がいない間に何をしていたか思い出してください」
祐一の背筋が凍った。
三人での生活の中、普段そういったコトは控えていたのだが。
その反動からだろう。佐祐理が実家に帰っている間、舞と祐一はその場の感情に流されて、
堕落しきった生活を送っていた。思えば気付かれない筈が無かったのだ。
「佐祐理は祐一さんのことも舞のことも大切に思っているんですよ…それなのに…
  でも、これからはそんなことは起こりませんよ…佐祐理がさせません…」
「佐祐理さん…」

            「すぐに終わります、祐一さん…」
              腹部に鈍い衝撃が走った