黒猫まっしぐら!〜楓スレ#9

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620「夏風邪」 4
「あ、起こしちゃったかな。楓ちゃん」
誰かが私を起こす。
おかしいな。家には誰もいないはずなのに……
目を開けると、そこには、耕一さんの姿があった。
「え……あ、耕一さん! どうして……?」
「何となく楓ちゃんに会いたくなって、昨日の夜行で来ちゃった。迷惑だった?」
ふるふるふる。
私は目いっぱい首を横にふる。
嬉しい。
「そんなことないです……ただ、今日は風邪ひいてるから、耕一さんにうつしたらいけないし……」
「楓ちゃんのだったら風邪でも嬉しいよ。何か俺にできることがあったら何でもするよ」
「いえ、その言葉だけで嬉しい……あ」
「どうしたの、楓ちゃん?」
「一つだけ、お願いが」
「何?」
さっ、と耕一さんの手を取る。やっぱり、大きい手。
「……このまま、手を握っていて、ください」