日差しが暑くなってきた。
また、夏が来る…
あの子が好きだった季節……
あれからもうじき1年が過ぎようとしている。
仕事も軌道に乗った。毎日が充実している。
でも、
家に帰った途端
寂しさを感じる。
誰も居ない。
今までは、たとえ顔を合わすことはなくても、
「そこにいる」と感じることができた。
たったそれだけで安心することができた。
居候が突然住み着いたり、烏に突つかれたりと
面倒事もいろいろあったが、今ではそれも
楽しい思い出。
(続く)
そして10年たってようやくたどり着いた「家族」。
かけがえのない二人の時間。。。
でも、今は一人。
仕事から帰っても、誰と話すこともない。
ただテレビをつけたままにして、
無音の空間を埋める日々。
雑誌をめくりながら、時間が過ぎるのを待つ。
いつもと変わらない一人の夜。しかし、今日は違った。
頁を捲る手が止まる。
わずか数ページの特集に見入る。
終わりまで読み、初めに戻る。
何度も、何度も。。。
思わず口に出る。
「そんなことしても、あの子が帰ってくるわけないやん…」
「所詮偽善者やん…」
侮蔑の口調。
夜が更けても頁を捲る音は絶えることなかった。
==============================続く
翌朝
いつもより早い時間だったが、
もう彼女はいなかった。
テーブルの上に、昨夜の雑誌が置かれている。
窓は空きっぱなし。
夏の匂いを乗せた風が部屋の中を踊る。
ふと風が強くなった。
風が頁を捲る。
真新しい雑誌に、不自然なほど擦り切れた頁。
擦り切れた頁に、特集のタイトルが見えた。
世界中に幸せな記憶を
―――UD Agent―――
..........................................end
追記
その日、隣町のヨド○シにて、P4搭載マシンを猛烈な勢いで
値切り倒す関西弁の女性がいたという。
複数の店員相手に一歩も引かず、思う存分値切り倒した後、
汗だくの店員を尻目に、赤いバイクで走り去っていった。
商品の宛名は「神尾晴子」であった。