葉鍵聖戦 3rd Period

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82河島はるか@決戦(11)
 裏口――
 人の気配なんてどこにもなかった。
「あ、人じゃなくて妖弧だった」
 まあ、どちらでもいいや、と私は周囲を見渡した。
 ガレキと砂埃しか見えない。
 溜息をつきたくなる。
「なつみさんには、建物中に戻ってろ、言われたけど、どうしよっか……」
 緒方理奈の姿を見つけたと、なつみさんはどこかに行った。
 助けになりたかったけど、どう考えてみても足手まといだった。
「こんなものかな、やっぱり」
「まあ、そうか……そうかもな……」
 ふと声。いつの間にか隣に藤田さんが立っていた。
 プラス因子を持つ男の人。
「ああ、ダメなんだよ……そんなことじゃあ……」
 なにか言いたそうに私を見てくる。
「……やれることってなにかな、そっか、そうだよ……」
「やれること、ですか?」
「そんなもん……か、やっぱし……」
 そう言って浩之さんは私の手を握ってくる。
 なぜか温かい。
 体温というよりも、それは……。
「見つけたわよ、浩之」
 慌てて探していたのか志保さんが、でも冷静に、綾香さんを演じていた。
「ほら、外に出たら風邪引くわよ」
 そう促して、結界を張った建物に入っていった。
 今のはなんだったのだろうか。手に残った温かい感触……。
「後は任させた、そう言ったの?」
 でも、何も答えてくれない彼の後ろ姿だけを、私は見送っていた。