梓様の御通りであるvol.4、下にぃ〜下にぃ〜

このエントリーをはてなブックマークに追加
「ああ、ありがとう梓」
「うむ、素直でよろしい!」
腕を組んで大仰に頷いてみせるそのしぐさに、二人どちらからともなく笑い出した。
……ひとしきり笑った後、先に立ち上がった梓が手を伸ばしてくる。
「さ、コテージに帰ろ。みんな待ってるし」
「ああ」
差し出された手をとって、俺も立ち上がった。
水平線に飲み込まれる太陽が、やがて来る夜の闇に、赤く滲んで消えてゆく。
緋色の世界の波打ち際を、梓と一緒に歩く。
夕日に照り映える横顔がとても…
「綺麗だな…」
「そうだね、すごい夕日…」
「……景色の事じゃないんだけどな」
「え?」

しばしの沈黙。
やっと、意味に気付いた梓が、俺の顔を見上げて笑う。
「顔、赤くなってない?」
「…夕日のせいだろ」
そっぽを向いてごまかす俺の顔は、当然真っ赤になっていた。

…不意に腕を暖かいものが包んだ。
「…ありがと…」
寄り添う梓の体温を感じながら、ゆっくりとした歩みで帰路に着いた俺達を
迎えたのは、おびえた瞳の初音ちゃんと現実逃避に忙しい楓ちゃん、
そして千鶴さんのトロピカル料理だった……。 <終われ>