■SS投稿スレcheese3

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320もう一つの結末
「……君……相沢君っ!」
呼ばれて、ふと我に返る。
「行きましょう。早くしないと遅れるわよ」
既にいつもの香里がそこに居た。
そうだ…今日は終業式だった。
一つの終わり。そして始まり。
何度も繰返されてきた現実。
一つだけ違う事。
本当に好きだった人が、この世界から消えた事。
一つだけ確かな事。
奇跡が起こらなかったと言う事。
また日常が始まる。今までと同じように。
何事も無かったように。

栞、雪だるま、やっぱりつくれなかったよ。ごめんな。
俺は今、多分…好きな奴がいる。お前と同じ位、馬鹿な奴だよ。
そいつ、一人ぼっちなんだ。どうしようもない位、一人でね。
おまえの事、忘れようなんて思わないよ。
でも、いいよな?あいつの事、好きになっても…
なぁ栞、最後にあの台詞、本気で言ってくれないか?
俺はダメな奴だから…甘えてしまうんだよ、お前の思い出に。
だから一度だけ、一度でいい。俺に本当の嘘を吐いてくれ。

『そんなこと言う人、嫌いです』

春が近い。
雪ももうすぐ溶け始める……