「腹へった・・・」
昼下がり、俺は例のごとく空きっ腹を抱え堤防にいた。
足下に空き缶が転がってくる。何で俺にぶつかるんだ、空腹のせいか無性に腹が立つ。
「青春のバカヤロー!」
訳の分からないことを叫んで空き缶を掴み、投げる。
ヘロヘロヘロ〜情けない擬音で空き缶が空を舞う。
急に向かい風が吹いた。投げた空き缶がこちらに流されてくる。
よけようとしたが空腹で体が動かない。
コーン!いい音を聞いて俺は意識を失った。
「・・・さん、国崎さん」
誰かが俺を呼ぶ声にがする・・・目を開けると目の前に遠野がいた。
「おはようございます、国崎さん」
目を覚ました俺を見て遠野が言う。
「遠野・・・お前なんでこんなところにいるんだ?」
「部活に行く途中です」
「それはそうと・・・さっきは面白いものを見せてもらったので進呈」
そう言って遠野が鞄の中からドカ弁を差し出す。
ぐあ・・・アレを見られていたのか。それにしても・・・
「今日は例のヤツじゃないのか?」
こくり
「まあ、腹減ってるからこっちの方がありがたいけどな」
喜々としてドカ弁を受け取る。
「じゃあ、私部活に行きますね・・・」
「ああ、頑張ってこい」
「・・・ガッツ」
小さくガッツポーズをつくる。
「それはいいから早くいけっ!」
遠野を見送ってから、手に持ったドカ弁に目をうつす。
遠野がつくった弁当だ、中身は期待していいだろう。
具はなんだ、特製ハンバーグか、それともアジフライか?
はやる気持ちを抑え、弁当箱のふたを取り中身を確認する。
・・・・・・・・・
一瞬我が目を疑う。見間違いかもしれない、そう思い一度ふたをして再びふたを取る。
見間違いではなかった・・・弁当の中身はさっきと同じぺんぺんに詰められた白飯だった。
「せめてタクアンぐらい入れてくれー!」
俺は心の底から叫んだ。
それでも腹を満たすためには食うしかない。
涙と共に白飯をかきこむ。塩味がした・・・