「春が来なかったら、どうしよう・・・」
何を言ってるのだろう?春が来るのは当たり前の事なのに・・・私以外は。
「寒い、ね・・・」
今まで元気そうだったその子が、突然身を縮めて震え始めた。
「それじゃあ、私と正反対なんですね。」
思わず口を付いて出てしまった言葉。
「あう?」
その子が不思議そうにこちらを見る。
「あ・・なんでもないですよ。」
私は立ち上がった。一瞬でも、この子を蔑んだ事を心から恥じた。
「もう行っちゃうの?」
「はい・・・」
私は振り向くと、その子に言った。もう絶対に使わないと思っていた言葉を。
「早く、春が来るといいですね。」
「うん!!そうしたら・・・」
その子は、ぱっと笑顔に変わって言った。
「また、ここで会おうよ!約束だよ!」
・・・まったくこの子は。
「ええ、約束しましょう。春になったら・・・」
私はそう言うと、もう本降りになった雪の中を走り出した。
手の中のアイスは溶けるどころか、更に冷たさを増していた。