身じまいを終えて後ろ手に扉を閉めたとき、偶然名雪に出くわした。
「あれ?お母さんの部屋に何の用だったの?」
「え、あ、あ・・・その、あれだ。家賃を払ってたんだ。」
「ええっ!お母さん、祐一から家賃を貰ってたのっ?」
「いや、家賃なんていっても、食費がほとんどだし。
お礼みたいなものでそれこそ大した金額じゃないし・・」
「で、でも・・・」
「勿論、秋子さんから言い出した訳じゃない。俺から無理に頼んだんだ。
だから、名雪が気にすることなんて全然ないぞ。」
「うん・・・でも、なんか嫌だよ。
私は祐一のコト、下宿してるとか居候してるとか思ってないよ・・・」
「ああ分かってる。ありがとな、名雪・・・」
寂しそうに自室に戻っていく名雪を見送りながら、俺は胸を撫で下ろしていた。
「ふう。なんとか誤魔化せたか。
・・・・まあ、家賃みたいなもんだし、あながち嘘でもないか。」
そう言うと俺はまた、つい数刻前まで目の当たりにしていた
秋子の張りのある肢体を心に思い浮かべ、野卑な嘲いを漏らした。