やはりあなたも長森瑞佳が大好きですか!♯3

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78ぼくらがここにいる不思議
 オレの部屋の電気は消えていた。光と呼べるものはただ月の明かりだけだった。役に立たない視覚
を補うかのように、オレ達はお互いの存在を体で確認し合った。抱きしめ合い、口づけを交わす。
暗闇の中、お互いを体全体で感じようとする。オレは長森のセーターのボタンを一つずつ丁寧に外し
て行く。セーターを脱がし、その下に着ていた白のブラウスの第一ボタンに手を掛ける。
「わたしだけ脱ぐのは不公平だよ。浩平も脱がないとダメだよ」
 そんなことを言って、長森はオレの上着を手際よく脱がせる。Tシャツを捲り上げ、むきだしのオ
レの胸板にそっと手を当てる。
「浩平って、結構胸板厚いんだね」
 そんな言葉がなぜか気恥ずかしい。オレはTシャツを脱ぎ捨て、長森の唇を奪う。片手で長森の
頭を抱えながら、もう一方の手でブラウスのボタンを外していく。下着の下で窮屈そうにしている
膨らみを解放してやる。形の良い乳房が月の光に照らされている。その暖かい膨らみに手のひら
を当てながら、なおもオレは長森の唇を吸い続ける。互いの舌と舌とが絡まり、唾液を交換し合う。
今動かしている舌が果たして自分の舌なのか、長森のそれなのかが判然としなくなってくる。
 長森の心臓の鼓動が早鐘のようなリズムを刻んでいる。女の子は肉体を介した直接的刺激よりも、
ムードや精神的な満足感による快感の方が強いと聞いたことがある。ならば、こうしているだけでも
長森にとっては充分に気持ちいいことなのだろうか。
 だが、オレはそうも行かない。男の悲しさだ。肉体の具体性がなければ完全な満足には到達でき
ない。かといって無理に長森を求める訳にも行かない。3年前、オレは長森を初めて抱いたあの後
オレは自分の情けなさに涙が出た。いくら熱に浮かされていたとはいえ、あれは強姦と変わら
ない行為だった。だから、オレは今まで長森を抱こうとはしなかったのだ。自分の力で長森を
充分に満足させてやる自信が欲しかったのだ。
 オレは長森のスカートに手を伸ばし、ファスナーを探そうとする。だが、見つからない。
「ぬぁっ… 一体どこをどうすればいいんだ…」
 困惑の呻き声を上げてしまう。長森はそれを聞くと苦笑しながら、自分の手でスカートに手を掛け
ゆっくりと脱ぐ。
オレは長森の体を覆う最後の一枚を脱がそうとする。慌てたように何か言おうとした長森の口
を唇で塞ぐ。下着を脱がし、最も敏感な部分に指を当てる。注射針を血管に刺し込まれた瞬間の
ように、長森は体を強張らせる。オレはその強張りを解いてやろうと長森の耳たぶ、首筋、肩、
乳房、あらゆる所に口づけのシャワーを降らせる。
79ぼくらがここにいる不思議:2000/12/19(火) 20:49
 手探りで長森の下腹部をまさぐり、最も敏感だといわれる小さな突起を探り当てる。爪で傷
付けないように慎重に指の腹で触れてみる。湿り気を帯びたそこは、思っていたよりも激しく
脈動していた。ゆっくりと指を動かし、そこを刺激する。指が触れるたびに、そこは震えた。
「はぅっ…」
 くぐもったような声を上げ、長森が唇を噛みしめる。両手でシーツを掴み、何かを堪えるように
体を震わせている。もしかしたら、これは辛いことなのだろうか。オレは居た堪れなくなって、
長森に問うた。
「悪い、長森。やっぱり気持ち悪かったか?」
 長森は体を震わせ、天井を仰ぎながら息を荒くして答える。
「うぅん… 気持ち悪いとか、痛いとかじゃないんだけど… なんか、変な感じがして怖いよ…」
「気持ち悪かったり、嫌だったりしたらすぐに言ってくれよ。オレはそんなことをしたいんじゃ
ないんだからな。その代わり、気持ちいいんだったら気持ちいいって言ってくれよ」
「そんな… 恥ずかしいよ…」
「オレは長森に喜んでもらえる事が一番嬉しいんだ。長森が気持ちいいって感じてくれればオレ
も気持ちいいんだ」
「浩平っ…!」
 突然激しくオレに抱きついてくる。オレの唇を貪るように奪いながら、オレの肩を強く抱く。
 愛撫を繰り返していた指先が長森のそこから暖かい液体が溢れ出しているのを感じた。脈動は
最早収まることなく激しくなり、指がきつく締め付けられる。
「浩平っ、浩平っ、浩平っ…!」
 ひときわ大きな声を上げ、長森が痙攣する。指がより一層強く締め付けられ、抜けなくなる
のではないか、と危惧してしまう。止めどもなく溢れる液体がオレの指を濡らす。
 長森はまだ体を震わせながら、激しく息を付く。到達してくれたのだろうか。オレにはよく
分からなかったが、まさか聞く訳にもいかない。オレは長森の脚を少しだけ開き、頭を入れて
そこを覗き込もうとした。
80ぼくらがここにいる不思議:2000/12/19(火) 20:49
「浩平っ、やめ…っ」
 流石に恥ずかしいのだろう。脚を閉じて抵抗しようとする。だがオレは意に介さず頭を奥に
入れ、長森のそこに鼻先を近づける。充満する長森の匂いにむせかえりそうになる。指をそっと
差し入れ、溢れている液体をすくう。てらてらと濡れた指先をぺろりと舐めてみる。表現し難い
味。だが悪い気分ではなかった。オレは口を近づけ、さっきまで指で刺激していた突起に舌を
這わせる。
「やっ…」
 悲鳴を上げ、オレの頭を押し返そうとする。オレは少しムキになって押し出されないように
首に力を入れ、執拗に舌を動かす。オレの舌が長森のそこに触れるたびに、そこは震えるよう
に脈打つ。
(結構感じやすいんだろうか…)
 思わずそんなことを考えてしまう。指を使っていた時よりもずっと大量の液体が溢れ、オレ
の口元はべたべたと濡れてしまっていた。長森の震えは止まらなくなり、シーツをまるで、それ
だけがすがれるものであるかのように握り締めている。オレは指で押し広げるようにして長森の
そこを開き、舌のざらざらとした部分を這わせる。味蕾が未知の感覚に刺激される。
「やめてっ…お願いだからやめてっ、浩平っ!」
 叫び声がした。オレは慌てて顔を上げ、長森を見る。長森は涙を流していた。オレは身を
焼くような後悔に苛まれる。
「悪い… 調子に乗ってやりすぎた…」
 オレは頭を下げ、謝罪する。長森が気持ちいいと感じてくれていると思って図に乗りすぎた。
あんな所を男に舐められて平気な訳がないじゃないか。長森を傷つけてしまった。
 だが、頭を垂れうなだれているオレに長森は言った。
「ううん、違うんだよ… ごめんね… 何だか浩平ばっかりわたしのために色々してくれている
のに、こんなことまでしてくれているのに、わたしは何もしなくって… だから、次はわたしが
するよ。どうやったらいいかよく分からないから、もしかしたら嫌かもしれないけど、やってみるよ」
 そう言って、オレの下半身に手を伸ばしてくる。オレは慌てて長森の手を押さえ、近づけさせ
ないようにする。長森はオレが長森のことを愛撫している間、オレ自身は気持ちよくなっていない
と考えているようだが、大きな誤解だ。好きな女の子を自分の手で悦ばせている、というだけで
男にとっては大きな快感だ。オレもその例に漏れず、長森を愛撫しているだけで既に限界に達し
そうだ。長森の手がオレのものに触れでもしたら、その瞬間に果ててしまうだろう。
「い、いやオレはいいよ。別にそんなことをしてくれなくてもいい。大体汚いだろ? こんな所」
 自分の股間を指差しながら言うオレに向かって長森は悲しそうに俯く。
「でも… 浩平だってしてくれたんだし… わたしもやってみるよ」
 決意は変わらず、オレの股間に顔を近づけようとする。オレは長森の頭を抱え、無理やり
に唇を奪った。こうでもしなければ本当に長森はやろうとするだろう。
「んっ…」
 唇が重なり、吐息が漏れる。長森はオレの背中に手を遣り、ぎゅっと抱き締めてくる。そうや
って、暫くの間オレ達はお互いを感じあっていた。
81ぼくらがここにいる不思議:2000/12/19(火) 20:50
 そろそろ挿入してもいいかもしれない、と思えてきた。こうしているだけでも長森は充分に悦ん
でくれているようだったが、やはりオレとしては最後まで到達したかった。しかし、まだ経験の
乏しいと思われる長森に、その行為は酷なものではなかろうか、との憂いも拭えなかった。
だが、長森の最も大事な部分は充分に暖かく濡れ、オレのことを受け入れる準備を整えているよう
に思えた。
 オレは机の引出しからコンドームを取り出し、封を切る。薄いピンク色をしたゴムの膜をオレの
ものに被せる。ゴムの感触に違和感を感じつつも、長森にそっと囁く。
「痛かったら痛いって言ってくれよ。お前ただでさえそういうこと言わないからな。ちゃんと
言ってくれないと分かんないからな」
 長森は既に限界にまで怒張したオレのものを見て一瞬ためらったようだったが、すぐに言う。
「うん… 今日は大丈夫だと思うよ。それに、わたしばっかりじゃ不公平だしね。」
 強がりだとは分かっていたが、そう言ってくれたことが嬉しかった。

 オレはその言葉に安心し、長森の体を強く引き寄せる。長森のそこにオレ自身をあてがい、
ゆっくりと挿入する。充分に湿り気を帯びたそこは、記憶よりも遥かに容易く挿入を許してはく
れたが、それでも長森にとっては苦痛を伴うものであろう。オレは徐行運転をするように、ゆっ
くりと体を押し進める。やがて何かに当たったような感触と共に、オレと長森とは完全に繋がった。
 挿入された異物感に長森は顔をしかめるが、オレには最早いたわりの言葉を掛ける余裕はなかっ
た。暖かく締め付けられる感覚が脳髄に電流を流す。終わらないようにするので精一杯だ。
長森に激しくオレをぶつけたい衝動を押さえ込み、ゆっくりと律動する。傍目には分からない程の
僅かな隙間を作り、腰を動かす。奥に突き立てるのではなく、内襞を擦るようにゆっくりと動かす。
今にも達しそうになるのを歯を食いしばって堪え、長森の肩を抱きしめる。
「大丈夫かっ… 長森っ…」
 そう言うのがやっとだった。長森はその言葉が耳に入っていないかのように、オレに抱きつき、
唇を貪ってくる。長森も再び登りつめようとしているのだろうか、心臓の脈動が速くなり、オレの
背中に爪を立てる。手加減無しに爪を立てているのでオレの背中は長森の爪痕でいっぱいだろう。
「はぁっ… 浩平っ、好きだよっ、浩平っ」
「瑞佳っ。オレもだ、瑞佳。好きだった。ずっと、好きだったよ。瑞佳っ」
 律動の速度を抑えることが出来なくなる。長森は背筋を仰け反らせ、痙攣する。オレも限界に
達し、長森の中に止めどもなく放った。
82ぼくらがここにいる不思議:2000/12/19(火) 20:51
 目覚めは、眩しかった。長森を起こさないように、そっとベッドから這い出た。窓に近づき、カー
テンをさっと開ける。あれほど降っていた雪はもう止み、空を覆っていた灰色のカーテンは取り払わ
れていた。吸い込まれそうな青空に太陽が輝き、屋根に積もった雪に乱反射する。子ども達が早速雪
合戦に興じているのだろう、楽しげな声が外から聞こえた。
 横を向いて、まだ眠っている長森の顔をじっと見詰める。穏やかな寝顔。オレはこの光景を
守りたい、と心から願った。そして今、オレたちがここにこうしていることの不思議を思った。

いつの間に、オレはこんなにも長森のことが好きになっていたのだろう。
 いつの間に、長森はこんなにもオレのことを好きになってくれていたのだろう。

「あ、もう起きてたんだ、浩平」
 ぼんやりとそんなことを考えていたら、長森が目覚め、ベッドから体を起こしながら言った。
「あぁ、ついさっきな。それにしても見ろ、いい天気だぞ」
「わぁっ、何でカーテン開けてるんだよっ! 早く閉めてよっ!」
 慌ててシーツを被り直す。そういえばオレ達は裸のままだった。
「折角のいい天気なのに、勿体無いなぁ」
 そんなことを言いながら、カーテンを閉め直す。カーテン越しに陽光が差し込み、部屋の空気を暖める。
オレがカーテンを閉めたのを確認すると、長森はようやくシーツから顔を出してきた。オレは再びベッド
の中に潜り込んだ。
「わぁっ、人が寝ている所に入ってこないでよっ」
「何言ってるんだ、これは元々オレのベッドだ。不法侵入してるのはお前の方だぞ」
「それはそうだけど… もうっ」
 いつもの下らない掛け合い。でもこれからは今までとは少しだけ違った日々になるような気がした。
 暫くの間オレ達は何も喋らず、ただベッドの上で寝ていた。ふと気付いたように、長森がオレの方
を向いて言う。
「そういえばさ、クリスマスにこうしてわたしが浩平の部屋に来たのって2度目なんだよ。知ってた?」
「いや、記憶にないな。そんなことあったか?」
「浩平がさ、この街に初めてやって来た年のクリスマスにね」
「うぅむ、全く覚えていないぞ」
「その時ね、わたしはお祝いしようと思ってたのに、浩平ってば全然相手してくれなかったんだよ」
 憮然とした口調でオレのことをなじる。
「そんな昔のこと、責任取れるかっ。全く、そんなことを蒸し返して一体オレにどうしろって言うんだ」
「だからね、今ここでお祝いしようよ。まだ言ってなかったでしょ? ちゃんと祝いの言葉は上げないとね」
 確かにオレ達はまだその言葉を言ってはいなかった。今日という日を祝うための言葉を。
 長森は笑顔でオレのことを見詰める。オレも思わず顔を綻ばせ、長森の顔を眺める。
 オレと長森の口が同じ形に動き、同時にその祝辞を唱えた。

「メリー・クリスマス」

―終―