葉鍵SS鬼畜物投稿専用スレッド

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70誕生日
 今日はわたしの誕生日。これでわたしも祐一と同じ年だよ。
「お、そう言えば今日って名雪の誕生日だったっけ?」
 階下へ降りたわたしを待っていたのは祐一のそんな嬉しい一言だった。
「そうだよー。覚えていてくれたんだ」
 わたしは顔を綻ばせながらそう答える。
 嬉しい。覚えていてくれた。祐一が覚えていてくれた。
 目の前に置かれたイチゴジャムをパンに塗り付けながらわたしは幸せに包まれたこの空
間を満喫する。
「そっか…。じゃあプレゼントあげなくちゃいけないな」
「え?いいよいいよそんな。何か催促しているみたいだし」
 わたしはそう答えながらも内心、祐一の優しい気持ちに心を躍らせる。
 イヤなくらい心臓がバクバクいってる。
「…そうだな。よし、それならこの前みたいに部屋の片付けを手伝ってやろうか?」
 部屋の片付け。
 そう、わたしは先週の日曜日。祐一に部屋の片付けを手伝ってもらった。
 原因はその日の夜に起こった震度四くらいの地震。
 こっちへ越してきてまだ日も浅い祐一の部屋に大した被害はなかったのだが、わたしの
部屋は置いてあったぬいぐるみや目覚まし時計や机に立てかけていたノートなんかが総崩
れになって、大変な状況になってしまっていた。
 …何故過去形なのかと言うと、わたしはそんな状態にも関わらずぐっすりと寝入ってし
まっていたらしい。
 さすがにこの時は自分の鈍感さに呆れてしまった記憶がある。
71誕生日:2001/01/17(水) 02:38
「うーん…。でも今はお部屋もぴっかぴかだし…」
 とりあえずわたしは祐一の申し出に答える。すると。
「ハハハ、冗談だよ。せっかくの誕生日なのにそんなチンケなプレゼントはしねーよ。ま
あ期待してろよ名雪。お前の願いを叶えるとびっきりのプレゼントをしてやるから」
 祐一が嬉々とした表情でそんな事を言ってくれる。
 わたしの願い?
 一体何だろう?
 わたしは期待に胸を躍らせながら大好きなイチゴジャムをのっけたパンを頬張る。
 口一杯に広がる甘みをこのまったりとした空気と重ね合わせながら、わたしは大好きな
祐一の顔を見つめる。
「…何だ?俺の顔に何かついてるか?」
「別にー」
 そして交わされるいつものやり取り。
 わたしは今、幸せの渦中にいると言う事を心の底から実感する。
「…そんじゃあそろそろ行くか。とりあえず今日の夜を楽しみにしてろよ、名雪」
「今日はご馳走ね、名雪」
「うん」
 お母さんの暖かい言葉を受けながらわたし達はいつもの時間に家を出る。
 そばにある祐一の横顔をいつになく眩しく見つめながら。
72誕生日:2001/01/17(水) 02:38
『お前の願いを叶えるとびっきりのプレゼントをしてやるから』
 放課後。夕日が早々と地平線の彼方へ消えてしまった時間帯。わたしはこの言葉をひた
すら反芻しながら家路を急いでいた。
 今日で二学期も終了。だが陸上部の部長であったわたしは後輩達の開いてくれた送別会
に参加していた為こんな遅くになってしまったのだ。
 もう祐一は帰っているだろうか?
 送別会の最中も頭の中はひたすらその事で頭が一杯だった。
 余りにも上の空であるわたしを見てからかう後輩が居たほどだ。
 だが、それも致し方ない。
 大好きな人にあんな事を言われて、紅潮しない方がおかしい。
 わたしは自分でそう言い聞かせながら、陸上部で鍛えた足を駆使してひたすら家路を急
ぐ。
 神様に願いを叶えてくれるよう祈りながら。
「ただいまー」
 そしてわたしは息を切らしながら玄関に飛び込む。
(あ…っ)
 そんなわたしを出迎えるように置かれている祐一の靴。
 帰って来てる。祐一が帰って来てる。
 私は祐一からのプレゼントに期待と胸を躍らせながら、そそくさと廊下へ駆け上がる。
73誕生日:2001/01/17(水) 02:39
「あら、おかえりなさい名雪」
 そんなわたしの姿を見付けたお母さんがわたしに向かっていつもの笑顔で答えてくれる。
「ただいまお母さん。…あの、祐一は?」
「祐一さんなら部屋であなたを待っているわよ」
「ほんと!?」
 わたしはつい心の中の本音を目の前に曝け出してしまう。
 喜びと期待に胸一杯の本音を。
「早く行ってやりなさい。祐一さん心待ちにしていたわよ」
「うん」
 そしてお母さんに促されるままにわたしは二階への階段を駆け上る。
 胸がドキドキしてる。期待と不安で胸が張り裂けそうになってる。
 でもきっと大丈夫。だってそれは祐一だから。祐一ならきっとわたしの想像を超えるよ
うなプレゼントを用意してくれているはず。きっとわたしの願いを叶えてくれるはず。だ
ってそれは祐一だから。わたしの大好きな祐一だから。
 そう確信したわたしは意気揚揚と祐一の部屋をノックする。
「お、名雪か?待ってたぞ、どうぞ入ってきてくれ」
 扉の向こうから届く好きな人の声。
「うん」
 そしてわたしは扉を開ける。
 幸せと希望に包まれた世界へ誘う扉を。
74誕生日:2001/01/17(水) 02:40
「ハッピーバースデーだ、名雪」
 部屋に入るそうそう、祐一がリボンに包まれた大き目の箱をわたしに手渡す。
 わたしはいきなりの行動に慌てながらもその箱をしっかりと抱き締める。
 祐一の匂い。大好きな祐一の心遣いが箱の中から染み渡ってくる。
「祐一…ありがとう…」
 わたしは感動と喜びに打ち振るえながら心の底からの言葉を祐一に送り返す。
「なーに、気にすんなって。ははは…」
 その言葉を聞いて何となく照れ臭そうにしている祐一が愛しい。
 何せこれが祐一から貰った初めてのプレゼントなのだ。嬉しく無い訳がない。
 しかも祐一はわたしの願いを叶えてくれると言っていた。一体何が入っているのだろう
か?わたしの期待は胸が破裂しかねないくらいに最高潮に達する。
「ねえ…開けていい?祐一」
「ああ、どうぞどうぞ、遠慮無く開けてくれ」
 そんなわたしの言葉に自信のこもった笑みを返す祐一。
 わたしは最高の気分で箱に包まれた包装紙を破いて行く。
 ひとつひとつ取り払って行くたびにわたしの中で心地よいリズムが鳴り響く。
 祐一も笑顔を称えながらそんなわたしの姿を眺めている。
 わたしはそんな愛しい祐一の視線を感じながら箱の蓋を開ける。だが。
(?)
 わたしの眼前に現れたのは一目では判別出来ない不思議なモノだった。
 いや、それが何の動物に類するものかは一目で判断出来るのだが、使い方がさっぱり解
らないモノばかりだった。
 それは猫。わたしの大好きな猫さんのグッズ。
 猫さんの耳を模ったヘアバンド。猫さんに付ける首輪。そして猫さんの尻尾。
 わたしが不思議そうな目でそれらを見ていると、祐一が肩に手を置きながら話し掛けて
くる。
「どうだ名雪?気に入ったか?」
「う…うん。嬉しいよ祐一。でもこれってどうやって使うのかな…?」
 わたしは差し障りのない言葉を探しながらそう返事する。すると。
「それはな…こう使うんだよ!」
 突然の咆哮をあげながら祐一がいきなり襲いかかって来た。
75誕生日:2001/01/17(水) 02:41
「いやあっ!何するの祐一!?」
 突如人が変わったように襲いかかって来た祐一がわたしの胸を服越しに掴み、強引に揉
みしだく。
 わたしはその余りに突然の事態に頭の中が真っ白になってしまい、祐一のされるがまま
になる。
 「名雪って物凄く着痩せするタイプだよな。直接触るとこんなにデカイだなんて思って
もみなかったよ」
 祐一は興奮気味にわたしにそう語る。
 どうして?どうしてこんな事をするの?
 わたしは祐一の豹変ぶりに恐怖を感じながらこの状況から逃れ様と必死にあがく。
 だが、祐一はわたしをがっしりと掴んで離さない。そしてまるで『動物』でも弄ぶよう
にわたしの身体を好きなように弄くりまくる。
 ブチィッ!
 そしてわたしの胸を覆う制服が力任せに引き千切られ、誰にも見せた事がないバストが
露になる。
「いやあああッ!」
 わたしは恐怖と恥ずかしさのこもった大声を出して階下のお母さんに助けを求める。
 だが、お母さんが二階へ上がってくる気配は全くない。
 どうして?何故お母さんはわたしを助けに来てくれないの?
 わたしは先程の幸せから急降下する自分を感じながらひたすら自問自答を繰り返す。
「うおッ!手に吸い付くみたいだ。しかも思っていたより全然柔らかい…。凄いな名雪。こんなモノ隠し持っていたとは」
 祐一がわたしの胸を直に触りながらその感触を逐一わたしに報告する。  
 それは野獣の目。わたしを狩る肉食動物の目。
76誕生日:2001/01/17(水) 02:41
「祐一…!何で?何で突然こんな事をするの?酷いよ…。酷過ぎるよ祐一…!」 
わたしは涙目になりながらいきなり狂ってしまった祐一にひたすらこの行為の理由を尋
ねる。
 だが、祐一はわたしの吐き出した渾身の訴えすらもしれっとした表情で受け流す。
「何でこんな事するかって…。何言ってるんだ名雪?これが『プレゼント』だよ。お前の
願いを叶えてやるって言ってただろ?だから叶えてやってるんだよ。お前の希望を」
 願いを叶えてやってる?
 何を言っているの?一体祐一は何を言っているの?
 そんな疑念が嵐のように頭の中を駆け巡る中、遂に祐一の手がわたしのスカートに伸び
る。
「やだ!やだやだやだあッ!!」
 わたしは全身全霊をもって祐一のそんな動きに抵抗する。
 だが所詮女の力。本気を出した祐一にはかなわない。
 祐一の力の篭った両腕がわたしのスカートとショーツをいっしょくたに引き剥がす。
 びりびりびりィッ!
「いやああああああッ!」
 大好きな学校の制服が引き剥がされ、わたしは生まれたままの姿で祐一の部屋の床に転がされる。
77誕生日:2001/01/17(水) 02:42
「うっうっ…」
 わたしは目に涙をたくさん零しながら、この豹変した世界に激しい悲しみを感じる。
 ちょっと前。
 ほんのちょっと前まで幸せの絶頂にいたわたしはすっかりなりを潜め、涙で彩られた今
のわたしを照らし出す。
「綺麗だぜ名雪…。それが生まれたままの姿なんだな」
 祐一がわたしに向かって何とも言えない表情でそう語る。
 わたしはとりあえず胸とあそこを両手で隠しながらみの虫のような姿勢で祐一に質問を
投げ掛ける。
「祐一…何なの…?わたしの願い事って何なの…?これがそのプレゼントだって言うの
…?解らないよ…。わたしには祐一の言っている事が解らないよ…」
 わたしは嗚咽を漏らしながら祐一にそう語る。
 だが祐一はわたしのその質問に対して待ってましたとばかりの表情を見せる。
 口の端を歪めたいやらしい笑みをわたしに見せつける。
「え?願い事?ははは何を言ってるんだ名雪。ちゃんと叶えてやってるだろ?この『ノー
ト』に書いてあるみたいに」
 そういって見覚えのあるノートをわたしの前にひけらかす。
 あれは…。あのノートは…?
「祐一!?そのノートは…!」
 そしてわたしは思い出す。あれはわたしの日記帳。子供の頃からかかさずつけている古
い古い日記帳。
 いつからつけ始めたのかは記憶的に定かではないが少なくとも祐一には内緒にしてお
いたはずだ。
どうしてそれが祐一の手に…?
「いやあ、俺もびっくりしたよ。まさか名雪が『猫になりたかった』だなんて…。しかも八歳の頃からずっとずっとなりたがっていたと言うじゃないか…。秋子さんも同じ事を言っていたよ。名雪が猫になりたがっていたって」
 その言葉を聞いてわたしは愕然とする。同時に懐かしい記憶がわたしの中で蘇る。
 幼かった子供の頃、猫さんに近寄れないわたしが目に涙を浮かべながらお母さんにそんな事を言っていた事実を思い出す。
 猫さんになれたら自分も猫さん達と仲良く出来ると。大きくなったら必ず猫さんになる
と。
 その日記帳にもそう書き込んだのは事実だ。
 かと言ってこんな…。こんな事をしなくても…。
78誕生日:2001/01/17(水) 02:43
「だから俺が十年越しの願いを叶えてやろうと思ってさっきのグッズを買い込んで来たっ
て訳さ。結構恥ずかしかったんだぜ。でも名雪の為だと思って、頑張って買って来た
んだ。どうだ?嬉しいだろ名雪」
 そう言って純真な笑みを浮かべる祐一。わたしはその笑みを見て心の底から冷や汗が流
れるのを感じる。
 本気だ。祐一は本気だ。
「まあ、その日記に関してもこの前の地震がなかったら手に入る事もなかったろうけど
な。俺も偶然見た時はビックリしたよ。名雪がそんな事を考えていたなんて露とも思って
いなかったからな」
(この前の地震?)
 わたしはその発言を受けてハッとする。
 そうか。この前の地震でメチャクチャになってしまった部屋の片付けを手伝って貰った
時に祐一はあのノートを…。
 酷い。酷過ぎる。
 祐一がそんな事をする人だなんて思ってもいなかった。
 わたしの中で祐一に対する想いがみるみる冷めていく。
「さーてそれじゃ始めるか名雪。まずはどれを付けよっかな〜♪」
 だが祐一はそんなわたしの心情の変化などお構いなしに嬉々として先程の猫グッズをいじり始める。
 わたしはそんな祐一の姿を見ながらまるで金縛りにあったように身体を震え上がらせる。
 それは狂った部屋。
 助けを呼ぶ声すらも掻き消される異形の空間。
79誕生日:2001/01/17(水) 02:44
「まずはコレだな」
 そう言って祐一が最初に取り出したのは猫が付けている鈴付きの首輪だった。
 だがよくよく見るとそれは人の首が入るくらいの大きさに調整され、わたしを地獄の釜
の底へと誘う。
「ほら名雪、付けてやるからこっちへ来い」
 祐一がゆらーとわたしに首輪を差し向けながらこちらへ近づいて来る。
 それは幽鬼。
 わたしを絶望の淵へ追い込む狂気の案内人。
「やだあッ!そんなの付けたくない。やだやだやだぁッ!」
 わたしは力一杯祐一の狂った暴走を止め様と必死で抗う。だが。
 バシッ!バシィッ!
「きゃあッ!」
 祐一の力の入った平手打ちにわたしは再び床に転がされる。
 初めて祐一に殴られたショックでわたしはしばし呆然となる。その隙に。
 ガチッ!
 わたしの首に猫の首輪が付けられる。
80誕生日:2001/01/17(水) 02:45
「あはははは!良く似合っているぞ名雪」
 祐一はそんなわたしの姿を見て手を叩きながらこの状況を賛美する。
 わたしはそんな非情な態度を見せる祐一を見て更なる涙を流す。
「お?嬉し涙か、名雪。いやー俺もそれだけ喜ばれると買って来た甲斐があったってもん
だよ。さーて次は…」
 大はしゃぎする祐一を虚ろな視線で見つめながら、わたしは神様に必死に助けを求める。
 だがいくら祈っても、いくら懇願しても状況が改善される事はない。
 何故?どうして?
 いくら質問を投げかけても答えは返って来ない。
 カチッ!
 そうこうしている間に今度は頭の部分に猫耳のヘアバンドを付けられる。
 これでわたしは上半身に限って言えば猫と同じ姿になってしまった。
 祐一の求める猫の姿に。十年前のわたしが望んだ猫の姿に。
81誕生日:2001/01/17(水) 02:45
「さーて、最後はコレだな」
 そしていやらしい笑みを零しながら祐一は猫の尻尾を取り出す。
 そのフサフサした外見に隠された非道の姿にわたしは背筋を凍らせる。
 大体あんなモノどうやって付けると言うのか?わたしは尻尾の根元部分を眺めながらそ
う自分に語りかける。
 己の想像が間違いであるように必死に祈り続ける。
「これは結構付けるのが大変かも知れないな。我慢してくれよ名雪」
 祐一はそう語りながらわたしを無理やり四つんばいにさせる。わたしは必死に抵抗を試
みるが。
 バシッ!
「痛いッ!」
 祐一の無言の尻叩きにあい、わたしは沈黙せざる負えなくなる。
「まずはここをこう広げて…」
そして何事もなかったように一人でブツブツ呟く祐一を見ながらわたしは身体を震わせな
がらありったけの涙を流す。
 だが祐一がそんなわたしに気付く事はない。
 朝での幸せなやり取りがまるで夢であったかのように霞んで消えて行く。
 何故?どうしてこうなってしまったのか?
 わたしは今日一日の行動を振り返りながらその原因を必死で考える。
 だが何も解らない。何も思い付かない。
 ただ猫のようなポーズを取らされて、静かに震えているだけ。
 それが悲しく、みじめだった。
82誕生日:2001/01/17(水) 02:46
 ムニュッ!
「ひッ!?」
 突然お尻に伝わる肌の感触におぞけた気配を感じ取ったわたしは驚きの声をあげる。
 そして。
「…ここを思いっきり広げてと」
 ムニュウウゥゥーーーーーーーーーーッ!!
「いやあああああああああッ!」
 わたしは突然の出来事にこれまでにない叫び声を部屋に轟かす。
 突如祐一が私のお尻の左右を掴み思いきり広げてきたのだ。
 こんな事をされてはわたしのお尻の穴が丸見えになってしまう。いや、丸見えにする為
にやっているのか。
 わたしは混乱した頭を抱えながら祐一の肛虐に背筋を凍らせる。
「おー。ケツ毛もあそこも丸見えだぞ名雪。なかなかいい感じだ」
 そして祐一は悦に浸りながらそう語る。
 わたしはその言葉を聞いて涙を零しながら恥ずかしさに耐える。自分が意志のないロボットであると必死に囁き掛ける。
 だがそれも束の間。
 ブスッ!
「ひッ!?」
 肛門に伝わる激しい痛み。しかもその痛みは徐々に激しさを増し、わたしの精神を激し
く掻き乱す。
 グリッ!グリグリグリ!グリッ!
「いたい、いたい!やめて…!やめて祐一ィーーーーーーーーッ!」
 わたしは大声で叫びながら懸命に祐一に対して助けを請う。
 だが祐一はそんなわたしの声などお構いなしに先程の尻尾の根元をわたしの肛門に入れ
ようと必死になっている。
83誕生日:2001/01/17(水) 02:47
「くそッ…!なかなか入らねえな…。くそッ!くそッ…!」
 ミシッ…!ミシミシミシ……!
「痛い…や・・め…」
 いらつく祐一の感情に応えるように尻尾が肉を軋ませながらわたしの肛門に入っていく。
 だが。
 コツンッ!
「ん?」
 尻尾の根元がわたしのお腹の中にある『何か』にあたり、それ以上先に進まなくなる。
 これは何だろう?何にあたっているのだろう?
 わたしが一人疑問に思っていると祐一が手を叩きながら一人で激しく納得している。
「そっか、そっか。まず『アレ』をしないと駄目だって事だな」
 『アレ』? 『アレ』とは一体何の事だろうか?
 そう一人で悩んでいると祐一が机の引出しから有るモノを取り出してくる。
 わたしはそれを見て身体の水分が一瞬で凍り付くほどのショックを受ける。
84誕生日:2001/01/17(水) 02:47
「ほ〜ら、名雪〜。今からお腹の中を綺麗にしてやるからな〜」
「やだあッ!やめてえッ!やめて祐一ッ!!」
 一体何処で入手したのだろうか?
 祐一が巨大な注射器のような物でわたしの壊れかけた精神に更なる追い討ちをかける。
 それは浣腸器。浣腸器と呼ばれるモノ。
 恐怖と絶望に彩られた巨大な兵器がわたしを破壊するべく狂気の笑みと共にゆっくりと
近づいて来る。
「お願いッ!それは…!それだけは許してッ!」
 わたしは涙を撒き散らしながら必死に祐一に懇願する。
 だが祐一はそんなわたしを見て己の可虐心に更なる火を灯す。
「大丈夫だって…。思いっきり吹き出しても俺は気にしないからさ。ほら、一応洗面器を
用意してあるからここにしてくれればそんなに汚れないさ。だから心配するなって、な」
 そして紡ぎ出される狂った言葉。
 まるで堕天使に操られているかの如く祐一の悪魔的な暴虐は続く。
 わたしの心を削り取るように。まるで壊す様に。
 ピトッ!
「ひッ!」
 そして浣腸器の先端がわたしの肛門にあてがわれる。
 そのお尻から伝わるプラスチックの冷たさがまるで祐一の心のように感じられ、わたし
の心に更なる影を落とす。
「一気にいくから覚悟しろよ〜♪」
 ドクッ!ドクドクドクッ!
「いやあああああああああああッ!や…ッ!やめてえええええええええッ!」
 そしてまるで遊びにでも行くような軽い口調と共にわたしのお腹の中に冷たい液体が注
ぎ込まれる。
 その激しい濁流は内臓を通り抜けわたしの心に残った暖かな灯火を一気に押し流す。
 祐一に対する愛情と共に。
85誕生日:2001/01/17(水) 02:48
「はあッ!はあッ!はあッ!はあッ!」
 苦しい。お腹が痛い。吐き気がする。
 全て入れ終わったわたしを待ち構えていたのは地獄の苦しみ。お腹の中を掻き乱す感触と激しい羞恥心だった。
 だがそんなわたしの姿を祐一は愉悦の表情を浮かべながら眺めている。
 まるでショーのように。火事に群がる野次馬のように。
 わたしはそんな祐一を喜ばせないようにお腹に力を入れ、必死で爆発するのを持ち堪え
る。だが。
 むにゅうッ!
「きゃあッ!」
 いつのまにか横にしゃがみ込んでいる祐一がわたしのお腹を右手で掴みながら前後左右
に激しく揺らす。
「いや…ッ!や…め…。ゆう・・い…ち…」
 わたしは歯を食いしばりながら全力で祐一の攻撃に耐える。
 だがそんなわたしの態度は祐一の可虐心を煽るだけだった。
「おー、がんばるねえ。んじゃこれはどうかな?」
 飄々とした口調でわたしの行為を言葉で返す祐一の姿が一瞬消える。そして。
 くちゅッ!
「いやッ!」
 わたしの秘部を貫く不気味な感触。
 何事かと思い後ろを振り向くと祐一がわたしの後方に陣取り、あそこに顔を向けながら
手を怪しく動かしている。
 わたしの秘部を。わたしの一番大事なところをおもちゃのように弄り回している。
「い……ッ!いやあああああああッ!」
 わたしはそのおぞましい行動にお腹の事を忘れて絶叫する。そうやって気を抜いたその
瞬間。
 むにィッ!
「かは…!」
 祐一の手がわたしのお腹を思いきり押し込む。
 ピシッ!
 そして何かが決壊する音。それはわたしの尊厳を崩す音。人間としての資格を消し去る
音。わたしの思考は巨大な渦に巻き込まれ、大いなる自然の力を経てこの世から消え去る。
 この時。この瞬間に。
86誕生日:2001/01/17(水) 02:49
 ビュ…!ブリュリュリュリュリュリュリューーーーーーーーッ!
「いや…!いやあああああああッ!見ないでッ!見ないでーーーーーーッ!」
 そしてこの部屋に響き渡る絶望の協奏曲。わたしは喉が張り裂けんばかりの大絶叫をあ
げる。
「うひょーーー。凄い勢いだぜ名雪。よっぽど溜まってたんだなあ」
 そしてその光景を見て楽しそうに語る祐一。
 正に悪夢。
 いや悪夢としか言いようがない状況だった。
「…はあッ!…はあッ!…はあッ!」
 絶望的な瞬間を見られたわたしは激しく嗚咽しながら大粒の涙を滝のように流す。
「助けて…!お母さん助けてーーーーっ!」
 そしてわたしは一階にいるはずのお母さんに向かって賢明に助けを請う。
 しかしながら何時になってもお母さんがこの部屋にやって来る気配を微塵も感じない。
 一体何がどうなっているのか?
 わたしには何がなんだか解らなかった。
 そんな事を思い浮かべながら気を抜いた瞬間。
 ズンッ!
「ぎゃッ…!」
 わたしの肛門に激しく太い棒が叩き込まれる。わたしはその強烈な痛みに身悶えしなが
ら背後の祐一に顔を向ける。
「よし、尻尾も無事入ったな!これで完成だ!良かったな名雪。念願の猫になれたぞ。
ほら、ニャーって鳴いてみ?ニャーって」
 無邪気にはしゃぐ祐一を見ながらわたしは急速に意識を失っていく。
 それは虚無感。全ての幸せを踏みにじられたわたしに訪れた負の世界からの来訪者。
 わたしはその来訪者に導かれるままに意識を闇に閉じる。
 制服に撒き散らかれた糞尿の匂いが印象的だった。
87誕生日:2001/01/17(水) 02:49
 夢。
 夢を見ている。
 これは昔のわたし。大好きな猫さんを追い掛け回す昔のわたし。
 でもわたしが猫さんと仲良くなれる事は絶対にない。
 猫さんに近づくとまるで呪われたようにわたしの身体は変調をきたす。
 初めてその事に気付いた時は悲しかった。
 この世界を。こんな体質に生んでしまったお母さんすらも恨んだ。
 だからわたしは考えた。
 必死に必死に考えた。
 そして紡ぎ出された結論。
 そう。わたしが『人間』だからいけないんだ。
 わたしが『猫さん』になればいいんだ。
 わたしが『猫さん』になればきっと仲良くなれる。
 何時までも幸せでいれる。
 わたしはそう思い、日永一日ずーとその事を考えるようになった。
 何度も何度も神様にお願いした。
 神様を信じて。その儚い願いを空に掲げて。
 そうして宙に舞ったわたしの思いは一体何処へ行き、何をわたしにもたらしたのか?
 それは誰にも解らない。誰にも。
88誕生日:2001/01/17(水) 02:50
「…………き」
 誰かがわたしを呼ぶ声がする。
 それは懐かしい声。わたしを抱き寄せる暖かい声。
「……き。……ゆき」
 そしてその声はどんどん大きくなりわたしの意識の覚醒を手助けする。
 誰?この声は一体誰なの?
 その疑問を解決する為に、わたしは耳を澄ましながらその声の元へ近づいていく。
 わたしに安らぎを与えてくれるその人のところに。
 わたしを育ててくれたその人のところに。
 そして。
「名雪」
「………ん」
 わたしの眼前に誰かの顔が映し出される。
 それはお母さん。わたしの大好きなお母さんの顔。
(来てくれたんだ…。助けに来てくれたんだ…)
 急速に蘇る意識の中。わたしはお母さんの優しい笑顔を見つめながら、涙で頬を濡らす。
 それと同時に蘇る先程の記憶。
 恐怖と絶望に彩られた悪夢がわたしの脳裏に浮かび上がる。
89誕生日:2001/01/17(水) 02:51
「うう…」
「……名雪?」
「うわああああああーーーーーーーん。おかあさーーーーーんっ!」
 だからわたしはお母さんに思いきり抱き付く。
 悪夢を振り払う為に。わたしに刻まれた恐怖を払い落とす為。
 わたしは嗚咽を漏らしながらただひたすらに泣き続ける。その時。
 ポン。
 そんなわたしの頭に乗せられる、お母さんの暖かい手。
「何がそんなに怖かったのかは知らないけど、もう大丈夫よ。お母さんがついてるから」
 そして紡ぎ出されるお母さんの優しい言葉。
 助かった。わたしは助かったんだ。
 わたしはお母さんの胸の中でようやく訪れた平和に心の鐘を打ち鳴らす。
「それにしてもとっても『似合ってるわよ』名雪。まるで本物の『猫さん』みたい」
「……え?」
 だがそんなわたしの鐘を一瞬で破壊する、お母さんの非情な一言。
 まさか…。まさか、まさか、まさか…!?
 そしてわたしは気付く。わたしが先程と同じ格好をしている事を。祐一の望んだネコの
格好をしている事を。
「い……。いやああああああーーーーーーーーーーッ!」
 わたしは暗転した意識を振り絞りながら、この部屋をつんざく大絶叫をあげる。
(何故?どうして?どうしてお母さんはわたしのこの姿を見て何の疑問を抱かないの?ど
うして祐一に何も言わないの?解らないよ。何がなんだか解らないよ…!)
 そう心の中で激しい叫びを繰り返すわたしを見つめる悪魔の視線。
 わたしを恐怖のどん底に叩き落すもののけの気配。
 祐一が。
 絶望におののくわたしの真後ろで、祐一が愉悦の表情を浮かべながらわたしを見据えて
いた。
90誕生日:2001/01/17(水) 02:51
「おはよう名雪!…とは言ってもほんの数分、気を失っていだけだがな。ま、名雪にして
は早く目が覚めた方か。上出来、上出来」
 祐一が白い歯を見せながら陽気にそう語り掛ける。
 だが、わたしは知っている。
 あの笑みの向こうに潜むもう一つの姿を。わたしの理性を貪り食らう悪魔の形相を。
 その事を思い出したわたしは恐怖の余り歯をガチガチと打ち鳴らす。
「おいおいどうしたんだよ、そんなに悲しそうな顔をして?念願の猫さんになれたんだ
ぞ。ほらもっと喜んで。ほらほら」
 祐一が謎のゼスチャーを織り交ぜながらわたしにそう語って来る。
 あきらかに狂った態度。コンピューターの壊れたロボット。
 わたしはその突き付けられた現実に身も心も破壊されていく。
「そうよ名雪。せっかくお願いが叶ったんだから、もっと猫らしくしないと駄目よ。子
供の頃からの夢だったんでしょ?」
 そして背後に迫るもう一つの狂気。
 お母さんが。狂った電波に操られるお母さんがわたしを強引に四つんばいにさせる。
 動物のように。わたしの大好きな猫さんのように。
「おー可愛いぞ名雪。マジでその辺のノラ猫よりも全然いいぜ」
 そして余りにも的外れな絶賛をわたしに送る祐一。
 こんな格好ではわたしの大事な部分が丸見えだ。胸も、お尻も、あそこも全て祐一の前に曝け出されている。わたしは顔を真っ赤に染めながらこの羞恥に耐える。
 だが、祐一はそれがさも当然の事であるような視線をわたしに送る。
 何故か?何故なのか?
91誕生日:2001/01/17(水) 02:52
「さてそれじゃあそろそろ夕食にしましょうか。祐一さんも名雪もお腹がすいたでしょ
う?」
「そうですね秋子さん。ほら名雪行こうぜ」
 そして二人の間で『のみ』交わされるごく普通の日常会話。
 いつのまにか張り巡らされた見えない壁がわたしの心の行く手を遮る。
「うっうっ……」
 わたしは止めど無く流れる涙を必死に堪え、両手で胸とあそこを隠しながらその場に立
ち上がる。
 だが、その時。
 グイッ!
 両肩を掴む二本の太い腕が立ち上がろうとするわたしを制す。
「…きゃッ!」
 いきなりの出来事にびっくりしたわたしはその腕の主の正体を確かめるべく後ろを振り
向く。
 そこには祐一が。不思議そうな表情でわたしを見据える祐一が両肩を押さえつけながら
わたしの背後にそびえたっていた。
「何やってるんだ名雪?名雪は猫なんだから立って歩いちゃ駄目だろ?ほらちゃんと四
つんばいになって」
 そんな事をさも当たり前のように語りながら祐一はわたしに猫の姿勢を強要する。
 いや、本人は強要しているだなんて露ほども思っていないのだろう。
 そう思った瞬間、わたしの中で蠢いていた先程の疑問が一気に氷解する。
 そうか。そうなんだ。
 わたしは『猫』なんだ。
 だから祐一もわたしの裸を見ても無表情なんだ。
 だって猫だから。猫が服を着ないのは当たり前だから。
 首に付けた鈴の音が廊下に響き渡る中、わたしは一人心の中で号泣する。
 床から伝わる冷気を全身に感じながら。
92誕生日:2001/01/17(水) 02:53
「ハッピーバースデイ、名雪」
「名雪、誕生日おめでとう」
 二人のこれ以上ない笑顔に包まれながらわたしは十八歳の誕生日を迎える。
 テーブルに並べられた豪華な料理。お母さんが腕によりをかけた自慢の料理。
 なのに何故わたしはこんな目に遭っているのだろう?
 何故こんな格好で動物のように這いつくばっているのだろうか?
 朝食時の光景が遠い昔の事のように思えてくる。
 それは幻想。今のわたしには辿り付けない幸せのかたち。
「はい、名雪にはコレね」
 いつものように頬に手をあて『偽り』の微笑みを差し向けながら、お母さんがわたしの
食事を持って来る。
 巨大なお椀に盛られたねこまんま。一番上に乗せられたメザシがまるでわたしを嘲笑う
かの如く死んだ瞳を向ける。
「うっく…」
テーブルから漂ってくる芳しい香りとのギャップがわたしの心を激しく締め付ける。
まるで雑巾を搾り取る様に。わたしに残った涙を搾り出すように。
「いやー、うまいうまい。さすがは秋子さん。まるでレストランで食べているみたいです
よ」
「祐一さんったらお上手ね」
 食卓では祐一とお母さんがまるでわたしが『居ない』かの如く楽しい会話を繰り広げる。
 いや、正しくはわたしが『居る』事は知っている。
 しかし誰だって猫と会話しながら食事をしたりはしない。
 二人はそんな当たり前の事をしているに過ぎない。
 そう考えると今の自分がますますみじめに思えてくる。
「うぅ…。ひっくひっく…」
 わたしは涙をポロポロ零しながら目の前に置かれた自分の食事に手を付ける。
 いや、正しくは口を付ける。
 ネコのような食べ方しか許されていないわたしにはその方法しか道がなかった。
 涙で味付けされたねこまんまは少ししょっぱかった。
93誕生日:2001/01/17(水) 02:54
「…えーと、こっちが小便用でこっちが大便用な」
 夕食後。
 わたしに『トイレ』の場所を教える祐一の声が応接間に響く。
 どうやら猫になってしまったわたしには人間のトイレを使う事すら許されていないよう
である。
 当然自室も使えなくなるのだろう。
 だってわたしは『猫』だから。猫一匹の為に一部屋使うなんてどう考えても馬鹿げてい
る。
 少なくとも、祐一とお母さんはそう考えているんだろう。
 わたしはその事を考えると自然と涙が零れ落ちてくる。
 だが、誰も気付かない。誰も慰めてはくれない。
 その厳然たる事実に気付いたわたしの心は更なる闇に溶け込んでいく。
 正に悪循環。
 わたしは底無し沼に嵌ってしまった己の姿を思い浮かべる。
「ちなみに食事は朝、昼、晩の三回な。まあその辺りは今とそんな変わらないか」
 そんなわたしの横で奏でられる祐一の声。
 わたしは自分自身の立場に戸惑いを隠し切れないまま祐一の言葉に耳を傾ける。
 既に精神は疲弊しきっていてまともな思考は全く浮かんで来なかった。
94誕生日:2001/01/17(水) 02:54
(なら…それでもいいや)
 その瞬間、わたしはとある事に気付く。
 どうせ、何をやっても無駄なのだ。それなら与えられた環境の中で精一杯前向きに考え
た方がいいに決まっている。
 そうやって残りの人生を生きていこう。
 そう判断したわたしは今後の事についてあれこれ考えて見る。
 まず最初に考え付くのは学校の事。
 恐らくこのままでは学校も卒業出来ないに違いない。
 でも一つだけ安心出来る事がある。だって陸上部の送別会は既に終わったのだから。
 わたしはもう部長さんではないのだから。
 きっと今後はわたしの後輩たちがしっかりとやってくれる事だろう。
 心配する事は何もない。何もないのだ。
「あんまり大便の方はしないでくれよ。匂いが篭るからな」
 そしてわたしは祐一の言葉をしっかりと噛み締める。
 大便は余りしてはいけない。わたしはその言葉を頭の中で反芻しながら、今後の展望を
頭の中に思い描いて見る。
 恐らくこのままわたしは猫さんとしてこの家で飼われる事になるのだろう。
 そして飼われているうちに今こんな事を考えている『自分』すらも消えてしまって、完
璧な猫さんとして生まれ変わるのだろう。
 そしてたくさんの猫さんに囲まれて一生を過ごすに違いない。
95誕生日:2001/01/17(水) 02:55
(あれ?)
 その時、わたしはとある事に気付く。
 猫さんに囲まれながら暮らす?
 何だ。
 良い事づくめじゃないか。
 さすがは祐一だ。わたしの願いを完璧に叶えてくれる。
 こんな事が出来るのはわたしの大好きな祐一以外にありえない。
 わたしはその事を考えながら、今朝交わした祐一との会話を思い出して見る。
 階段から降りて来たわたしに誕生日の事を聞いてきた祐一。
 大好きなイチゴジャムを乗せたパンを頬張るわたしをからかう祐一。
 わたしの願いを叶えてくれると言った祐一。
 その事を神様にお願いしたわたし。
 わたし。わたし。わたし。
 そんな朝の光景を思い出しながらわたしはある事にふと気付く。
 そうだ、今後の為に猫の朝食の事について考えて見るのも悪くないかもしれない。
 やっぱりキャットフードかな?それともねこまんま?
 だからわたしはわたし自身が今朝、食べていた物に思いを巡らす。
 イチゴジャムを付けたパン。更にコーヒーまでセットらしい。
 へー珍しい。猫さんがそんなモノ食べるなんて、わたし思いもよらなかったよ。
 凄いやわたし。わたしって猫さんなのに猫舌じゃなかったんだね。
 え?何で過去形?
 何で、何で、何で?
 そんな事を考えているとたくさんの猫さんに囲まれたわたしの姿が浮かび上がって来
る。
 学校の制服を着たわたしの姿が浮かび上がって来る。
 わたしはたくさんの猫さんに囲まれて幸せな表情を周囲に撒き散らしている。
 あれは誰?あの制服に身を包んで楽しく猫さんと戯れている『人間』は誰?
 それはわたし。本当のわたし。嘘偽りのないわたし。
 そんな思念が心の中を覆い尽くした時。
 わたしの中で眠りつつあった何かが爆発する。
96誕生日:2001/01/17(水) 02:56
「ぃ…やあああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーッ!」
 その瞬間、天を劈く絶叫。その声は空に浮かぶ雲に溶け込み、わたしの心に激しい豪雨
を降らせる。
 眠りかけた精神を奮い起こす為。心の目を覚ます為。
 そしてわたしは取り戻す。
 人間としての尊厳を。わたし自身の誇りを。そして。
 ガシャアッ!パーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!
 わたしは横の棚に置いてあった花瓶を問答無用に叩き壊す。
 二人は突然のわたしの行動に驚きを隠し切れない表情でこちらを見つめる。
 だが、構わない。
わたしはわたし自身である事をみんなに証明する為に手当たり次第に周囲のモノを破壊
する。
 猫なんかじゃ出来ない、人間にしか出来ない『破壊』という行為をあの二人に見せつけ
る。
 だってわたしは『人間』なのだから。決して『猫』なんかじゃないのだから。
 目の前に写されたインテリア用品や家具が何者かの手によってバラバラに崩れ落ちていく。
 わたしの思いを。わたしの願いを込めた両の腕がこの部屋の成り立ちを滅茶苦茶にする。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
 そしてわたしの叫びは既に何を言っているのか解らないレベルにまで到達する。
 訴えたい事が多過ぎると人は言葉という物をコントロール出来なくなると言う事を今、初めて知る。だが、次の瞬間。
 ガンッ!
 わたしの脳天を駆け巡る鋭い痛み。
 わたしの主張を遮る激しい打撃。
 その強烈な攻撃を受けてわたしの身体は崩れ落ちざる負えなかった。
 背後に立つ二人の気配を感じながら。
97誕生日:2001/01/17(水) 02:57
「この子ったらどうしちゃったのかしら…?せっかく祐一さんがいろいろ手を尽くしてくれたのに…」
「まだ慣れてないんですよ。まあ、もしかしたらちょっとした『躾』が必要なのかも知れ
ませんけどね」
 そして口々に勝手な事を言い合う。
 わたしは二人に抵抗する為、全力を振り絞って何とか立ち上がろうとする。
 だが身体が言う事を効かない。先程の打撃はわたしが思っている以上に深いダメージを
与えていたようだ。
 心と身体、両方に。
「…そうかも知れませんね。じゃあ祐一さん、その辺りの事はお任せしますね」
「ええ、わかりました」
 そして紡ぎ出される悪意の宣告。
 わたしはこの場から逃げる為に必死になって床を這いずり回る。猫のように。人間に飼われる悲しきペットのように。
 だが一向に前に進む気配を見せない。
 わたしの反撃が。先程見せたわたしの暴走が原因なのだろうか?
 そんな恐ろしい考えが頭をよぎったその時。
 ムニッ!
「いやッ!?」
 わたしの胸を掴む何者かの手。
 その手はわたしの全身を這いながらわたしの野ざらしにされた恥ずかしい箇所をいじくり始める。
98誕生日:2001/01/17(水) 02:57
「や…だ…やめて…!」
 わたしは突如始められたそのいやらしい攻撃に戸惑いながら、その手を振り解こうと必
死にもがく。
 だが両の腕はそんなわたしの動きを見通したようにかわしながらわたしの身体に更なる淫虐を叩き込む。
「いやあ…!いやああああーーーーーッ!」
 わたしは叫ぶ。この悪夢から覚める為に。この絶対絶命の状況から脱出をはかるために。
 しかし、わたしを助ける者は誰もいない。
 当然だ、だって祐一とお母さんはわたしの敵なんだから。わたしが思い描いた幸せなバースデーパーティーを滅茶苦茶にした張本人なんだから。
 そしてわたしのあそこに何かがあてがわれる。その事実を知り、逃げ出そうとした瞬間。
ブチッ!ブチブチブチブチブチーーーーーーーーーーッ!
「……ッ!ギャアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
 巨大な何かがわたしの身体を突き刺す。
 わたしの思いを消し去る為に。人間としての心を葬る為に。
 そして、その何かはわたしを破壊するべく容赦のない律動を開始する。
「ぐはぁッ!ぎひィっ!ぎゃはぁッ!ひぐゥっ!」
 既に痛みとかいうレベルを超えた感覚がわたしの中の人間性をボロボロに剥がしていく。
 パズルのピースを取って行くように。『水瀬名雪』という絵柄を壊すように。
 その先に残るのは一体何?何なのか?
「うッ!出るッ!」
 ドクドクドクドクドクドクドクッ!
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
 そしてわたしの中に叩き込まれる白い洗礼。
 その濁流はわたしの心のピースを押し流し、全く別の様相をわたしの中に照らし出す。
 そこに残されたのは白き板。そして新たな絵柄を描き出すピース。
99誕生日:2001/01/17(水) 02:58
「まあ、これくらい折檻してやれば、こいつも大人しくなるでしょう」
「さすがは祐一さんね」
 何者かの声がわたしの耳に響き渡る。だがその言葉はわたしの心を素通りして宙に消え
去る。
 今、自分がどんな表情をし、どんな感情であるかですら解らない。
 わたしは何とか己を取り戻す為に必死に声を紡ぎ出す。だが。
「にゃあ…」
 わたしの口からこぼれ出た言葉。それは既に『人間のモノ』ではなかった。
 それは『猫』。二人が望んだ『猫の鳴き声』。
 二人はそんなわたしの声を聞いて一転、喜びに溢れ返る。
「良かったわね名雪」
「だから言ったろ?『お前の願いを叶えるとびっきりのプレゼントをしてやるから』って」
 そしてわたしは祐一のその言葉を聞いてハッとなる。
 そうだ。お願いしたんだ。わたしは帰宅途中、神様にお願いしたんだ。『祐一の願いが
叶います様に』と。そしてそれはまんまわたしの願いでもあったんだ。『猫になれますよ
うに』という子供の頃の拙いお願いそのものだったんだ。その最後のひと押しをわたしが
『押してしまった』だけなんだ。だからわたしは猫になれたんだ。神様がお願いを叶えて
くれたから。わたしの子供の頃からのお願いを叶えてくれたから。
「にゃぁ〜…。うにゃあ〜」
 二人が部屋から出て行くのを見届けながらわたしは猫の言葉を紡ぎ出す。
 だって猫だから。わたしは人間じゃないのだから。
 そう自分で自覚しながらわたしは新しいパズルを自分の手で組み立てて行く。
 名雪という名の『猫』の絵柄を。
 窓から見える満天の星空が何事もなかったかのようにわたしの姿を照らし出していた。