葉鍵SS鬼畜物投稿専用スレッド

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251すれ違い・前編
『あたしもう折原の事嫌いになっちゃったよ…。じゃあね、さよなら』
「ふう…」
 オレは一人公園で缶コーヒーを飲みながら、溜息をつく。
 それはつい先程、教室の中で起こった出来事。
 嫌がる七瀬を無視して、強引にあいつの中へ入ってしまった、オレ。
 七瀬の中は熱くオレの息子を締め上げ、まるでオレの心ごと抱いてくれているような錯
覚に誘ってくれた。
 だが、結局その考えもオレの都合のいい思い込みに過ぎなかったようだ。
(さよなら…か)
 誰も居ない公園の中心で、オレは空を見上げながらそう一人呟く。
 空。空の果て。雲の向こう側。そして…えいえんの世界。
 ふと、気を抜けば今すぐにでもその見知らぬ世界へ連れて行かれそうな感覚を覚える。
「…くッ…!」
 オレは拳を握り占めながら、そんな危険な感覚を振り払う為に様々な思い出を頭の中に
送り込む。
 だがそんな考えも空しく、大切な思い出はまるでシャボン玉のようにオレの頭の中で弾
けては消えて行く。
 誰もオレを繋ぎ止めてはくれないのか?
 オレはこの世界の住人として相応しくないのか?
 幾多の考えがビリヤードの球のように互いにぶつかりあい、オレの心に更なる混乱を巻
き起こす。
(七瀬…)
 そして最後に紡ぎ出される、本当に大切な人の名前。そのぬくもり。
 本当は解っていて欲しかった。今のオレに起こっている様々な事象をあいつが理解して
くれるていると信じていた。
 だが、それ自身がオレの勝手な妄想に過ぎなかったのだ。
 世の中がそうそう自分の思い通りにいくはずがない。
 自分で重々承知していたはずなのに、こんなところでポカを出してしまうとは…。
「ちッ…!」
 オレは舌打ちしながら、己の愚かさを心底憎む。
 とっくに冷えたホットコーヒーがオレの手の中で嘲笑うかのように握り締められていた。
252すれ違い・前編:2001/04/25(水) 12:48
 翌日。
 目覚まし時計の音に激しく急き立てられ、オレはのろのろと身を起こす。
 誰も開けてくれないカーテン。
 引き剥がしてくれない布団。
 それらを見るにつけ、オレは自分の今立っている現実に激しい憤りを感じざる負えなか
った。
 オレの耳に届くのは無機質な目覚まし時計の音だけ。
 誰もオレを見てくれない。構ってはくれない。
「くッ…!」
 オレは苛つく声を吐き出しながら、目の前の目覚まし時計を手に取り、部屋の床に思い
きり叩き付ける。
 ガシャッ!
 心地よい破壊の音がオレの心に鳴り響く。
 でも、それだけ。
 後に残るのは絶望的な静寂。心を侵食するえいえんの虚無。
「うあああああああああああああああーーーーーーーーーーーーッ!」
 そしていつしかオレは叫んでいた。
 その静寂を掻き消す為に。心の中の虚無に抗う為に。
 誰もいない薄暗い部屋の中でオレの声だけが空しく鳴り響いていた。
253すれ違い・前編:2001/04/25(水) 12:49
 その日の学校は最悪だった。
 徐々に薄れて行く自分という存在。そしてその事象を証明するかの如く、オレの周りに
は誰一人近づこうとしない。
 親友の住井や他の友人連中。かろうじてオレと言う存在をまだ認識している長森でさえ、
ふと目を逸らすとまるで他人でも見ているような瞳でオレを悲しみの海へ叩き落す。
 そして目の前に座っているオレの恋人。
 だが、そんなオレの唯一の拠り所である七瀬ですら、昨日の件が尾を引いているのか、
未だオレと口をきこうとはしない。
 背中から発散されるのは拒絶の意志。怒りのオーラ。
 そんな悲しい気配を強く感じ取り、オレの心は更なるどん底へと転がり落ちて行く。
(七瀬…) 
 そんな中、ふと思い出される過去の楽しかった記憶。
 初めての出会い。そしてあの長い髪の毛をおもちゃの様にいじくった日々。
 公園での拙いダンス。初めての口付け。そしてオレの部屋で行なわれた神秘的な初体験。
 全てがオレの中で宝石のように光り輝いている。
 出来るなら取り戻したい。時計の針を巻き戻すように、あの頃の輝いていた季節に舞い
戻りたい。
 だが、今となっては後の末路。
 オレはオレ自身の意志でその幸せを放棄してしまったのだ。
 その一瞬の煌きを。絶え間なく燃え続けていた幸せと言う名の炎を。
(くっ…!)
 そしてオレは誰も聞こえない心の中で、一人自虐的な呟きを漏らす。
 大切な人。本当に好きな人が目の前にいるのに、オレには何も出来ないのだ。
 どうしてこんな事になってしまったのか?
 元からこうなる事がオレの運命だったのか?
 オレは窓の向こうに映る巨大な雲を見上げながら、訴えかける。
 だが何も聞こえない。何の返事も返って来ない。
 オレは誰もいない世界で無意味な歌声を張り上げる哀れなボーカリスト。
 空しさだけが響き渡る空間で嗚咽を漏らす悲しき愚か者。
254すれ違い・前編:2001/04/25(水) 12:49
「七瀬さんはこちらにおられますか?」
 その時。
 オレの耳に届く知らない女の子の声。
 そんな見知らぬ声に反応して、前方の七瀬がゆっくりとした動きで声のした方向へ首を
曲げる。
 その瞬間交わされる瞳と瞳。
 だが、そんなオレを見つめる七瀬の瞳は鋭利な冷たさに満ち満ちていた。
 オレは再び叩き付けられる過酷な現実に翻弄されながら、その視線を机の方に向ける。
 もう、何も見たくない。
 もう、何も聞きたくない。
 オレは寝るような姿勢で机にもたれかかり、ただひたすら時が経つのを待ち続ける。
「あたしが七瀬ですけど…。あなたは?」
「あ、初めまして。わたしB組の白川って言うんですけど…」
 だが、そんなオレの意図を無視するように響き渡る七瀬と知らない女の子との会話。
 目は瞑る事が出来るけど、耳は瞑る事が出来ない。
 オレはそんな当たり前の事実を反芻しながら、二人の会話内容を受け入れる。
 いや、受け入れざる負えなかった。
「…それでですね、突然ですけど七瀬さんもう一度剣道をやる気はありませんか?」
「…え?」
 その瞬間、七瀬の呆けた声が響き渡る。
 剣道。
 それは七瀬が以前の学校で行なっていたと言われる部活動。
 だが、何らかの故障が原因で辞めざる負えなくなったと言う事をオレは以前に聞いた事
がある。
 それが何故今となって…?
「先週、ウチの高校と試合をした相手校の人から聞いたんですよ。この学校に以前主将を
務めた人が転校して来てるはずだって。それでちょっと調べさせてもらったんです」
「そう…」
 徐々に熱を帯びて行く白川という女の子とは対照的にそ知らぬ反応を見せる七瀬。
 その対比が妙な雰囲気をその場に作り出していた。
「お願いします七瀬さん。ウチの剣道部に入って下さい。最近ウチの剣道部、部員がどん
どん減っちゃって…、試合するのもままならない状態なんです。でも七瀬さんみたいな人
が居てくれたらどんなに心強いか…。お願いします。お願いします」
 そして弾き出される熱意の咆哮。
 だが、七瀬の返事はない。
 一体今あいつはどんな表情をしているのか?
 目を閉じているオレには永遠に解らない事だった。
255すれ違い・前編:2001/04/25(水) 12:49
「…ごめんなさい」
 だが、次の瞬間。
 静かに紡ぎ出される七瀬の拒絶の言葉。
 一瞬、凍り付いた場の雰囲気がオレの全身を包み込む。
 そしてそれはあの女の子も同様だろう。
「そう…ですか」
 そして、今にも壊れそうなくらい落胆した女の子の声がオレの耳に届く。
 それは今のオレと同じ感情の形を描いているように感じられた。
 悲しみと空しさが織り成す心の形。
 オレはその事を心に留めながら、二人の会話の先を追う。
「あたし…。もう剣道からは足を洗った身分だから…。まだ故障からも完全に立ち直って
ないし…。何より今のあたしには他にやらなくちゃいけない事があるから…。ごめんなさ
い。本当にごめんなさい」
 そして本当に申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べる七瀬。
 女の子からの返事はまだない。
 恐らく何と返せばいいのか考えあぐんでいるのだろう。
「そう…、ですよね。まだ故障も完全に直っていないんですよね。ごめんなさい、わたし
一人で突っ走っちゃって…。でも…、もしもまたちょっとでも興味が湧いてくれたら部室
のドアを叩いて下さい。わたし達ずっと待ってますんで…」
「うん…」
「それではまた!」
 そう言いながら、教室のドアから出て行く剣道部の女の子。
 最後の方は涙声になっていたのをオレは聞き逃さなかった。
256すれ違い・前編:2001/04/25(水) 12:53
「…今の子、『また』って言ってたな。まだ諦めてないのかも知れないな」
「そうね…。あっ…!」
 その瞬間、動きを止めるオレ達。
 七瀬も『しまった』という表情でオレの方を見つめている。
 オレも何ともやり辛い表情をして七瀬の顔を見入る。
 何時の間にか会話に聞き入ってしまっていたオレが無意識にいつもの口調で話し掛けて
しまったのだ。
 だけど…。だけどオレは…。
「せっかくの勧誘だったのに、断って良かったのか? もったいない」
 しかしオレはその後も普段と同じ口調で話し出す。
 七瀬との間に出来た溝を埋める為に必死になって喋り続ける。
 オレは先程の子が偶然作り出してくれたチャンスに感謝しつつ、機関銃のように七瀬に
言葉を投げ掛ける。何故か? それは七瀬の事が好きだから。こんな事で別れるなんて寂し過ぎるから。そんな儚い一念だけが今のオレを支配する全てなのだから。だからオレは喋る。それだけが今のオレに出来る道しるべなのだから。
「確かに以前の学校で剣道やってたって言ってたもんなお前」
 一言喋るたびに溜まっていた欲求や不満が嘘のようにこびり落ちていくのを感じる。荒涼とした心の大地が潤って行くのが解る。七瀬の事をどれだけ好きであるかを自ら思い知らされる。
「まあ、一度でいいから七瀬の剣道してる姿を見てみたいってのがオレの本音かな? 勇
ましい姿がお前には似合いそうだし」
 そして昔を懐かしむようなからかい口調。徐々にいつもの自分を取り戻して行く感触が心地良い。
「………………」
 だが、いつになっても七瀬の返事は返って来ない。
 オレはその態度に多少の不安を残しつつも、矢継ぎ早に様々な話題を振って行く。
 休み時間はもう残り少なかった。
「折原…」
 そしてようやく紡ぎ出される七瀬の言葉。
「ん? 何だ」
 オレは何事もなかったようににこやかな笑みを七瀬に返す。
 大丈夫。もう、これで大丈夫だ。
 これでもうオレ達は昔のまま。多少のトラブルがあったものの、結局はこういう風に丸
く収まるように出来ているんだ。
 オレは先程願いをかけた青空に感謝しながら、余裕の態度で七瀬の言葉に耳を傾ける。
 だが次に吐き出された七瀬の言葉はオレのそんな儚い希望を死に至らしめる一言だった。
257すれ違い・前編:2001/04/25(水) 12:54
「あんまり気安く話し掛けないで。あたし達もう何でもないんだから」
 そう言いながらまるで機械のような正確な動作で席に着く七瀬。
 オレの思考はその一言によって一瞬で凍て付き、砕け散っていく。
 何だ?
 何を言ったんだ、七瀬は?
 七瀬は今、オレに向かって何て言葉を吐き出したんだ?
 血の流れが寸断され、膨張した思考が急速に萎んでいくのが解る。
 ようやく火の灯った蝋燭に巨大な豪雨が降り掛かるのを感じる。
 後に残されるのは空虚。
 死臭が充満し、生けとし生けるモノを絶望の淵へ追い込む灰色の世界。
 オレはそんな悪夢のような世界を宛てもなくさ迷う永遠の迷い人。
 その先に待つ者は誰か? 誰なのか?
「………なな…!」
 キーーーンコーーーンカーーーンコーーーン
 そんなオレの心の軌跡を嘲笑うかのように鳴り響く、授業開始の音。
 七瀬はオレの方を振り向く事なく、ただ黙々と次の授業の準備を始めていた。
258すれ違い・前編:2001/04/25(水) 12:55
 夕日。
 夕日が輝いている。
 オレは暮れ行く夕日に目を細めながら、ただひたすらに歩を進めて行く。
 授業終了のベルが鳴った直後、オレは脱兎の如く学校を飛び出していた。
 そうして気付かぬ間にオレの目の前に広がるのは、見知らぬ土地。見知らぬ人。
 オレはそんな見知らぬ空間を歩きながら、乱れた思考を整えようと懸命になる。
 心と身体が分離した状態。
 まるで無人運転しているかのようにオレの身体はオレの意志に反して、あべこべな方向
へ足を動かして行く。
『あんまり気安く話し掛けないで。あたし達もう何でもないんだから』
 そしてオレの心に先程から響き渡る、絶望と言う名の不協和音。
 その忌まわしき音はオレの体内に深々と侵入し、オレの思考、行動、心を滅茶苦茶に掻
き回して行く。
 増殖に増殖を重ねるウイルス。
 だがオレはそのウイルスを消し去るワクチンを持ってはいないのだ。
「…くっ…」
 そして何時の間にか紡ぎ出される激しい憤りの声。
 その瞬間、目の前の光景がグニャリと曲り、口の中がいつしか塩辛い味で充満していく。
 悔しい。
 そして無性に悲しい。
 頬を濡らす涙はそんなオレの心を代弁するかのように、次々と溢れ出て行く。
 その瞬間、フラッシュバックされる過去の映像。
 涙。悲しい思い出。幼き日の記憶。
 そんな昔の自分と現在がシンクロした瞬間、オレは堪え切れなくなりその場を駆け出す。
 オレンジ色の光が交錯する街の中を懸命に走り抜ける。
 あの時の自分に囚われない為に。
 輝かしい未来を掴み取る為に。
 だが、今のオレの前に待ち受けるのは未知なる恐怖。
 悲しみに満ちたオレ自身が作り出したえいえんの世界。
 地平線の向こう側に消えて行く夕日の光が、オレを誘うように赤々と光り輝いていた。
259すれ違い・前編:2001/04/25(水) 12:55
 数時間後。
 オレは何時の間にか辿り付いたいつもの公園のベンチにもたれかかり、誰はばかる事な
く真っ白に輝く月を眺めていた。
 もうどうなったっていい。オレを必要とする人間などもうこの世にいないのだ。
 次々と繰り出される自虐的な言葉に、オレはオレ自身の心の死期を悟る。
 それは近いうち。いや、下手をすると今この瞬間にでも起こり得る事態としてオレ自身
に大いなる恐怖を投げ掛ける。
 出来るならすがりたい。
 七瀬のふくよかな胸の中に顔をうずめ、思い切り慰めてもらいたい。
 だが、それは永遠に果たされない願い。
 何故ならその恐怖を投げ掛けているのは他ならぬ七瀬なのだ。
「七瀬…」
 そしてオレは呟く。
 七瀬の姿を。あの楽しかった思い出を取り戻す為に誰もいない公園で呪文を唱えるよう
に呟き続ける。
「七瀬…ななせ…七瀬…ななせ…七瀬…ななせ…」
 一言呟くたびに、まるで魔法にでも掛かった如くオレの頭の中に七瀬の映像が浮かび上
がる。
 七瀬の愛嬌溢れる大きな瞳。
 柔らかく甘い唇。
 ふくよかで手が吸い付くような張りのある胸。
 その先端に付いたさくらんぼ色の乳首。
 そしてまるで赤貝のようにひくつかせながらオレのペニスを受け入れてくれたヴァギナ。
 全てが。全てが煌く星の光のようにオレの心の中で輝き続けている。
 だが、それも今となっては遠い昔。
 今のオレには辿り付けない異郷の地。
「ぐッ…!」
 オレは導き出されたその結論を前にして、唸り声をあげざる負えなかった。
 嫌だ。
 そんな結末は嫌だ。
 もう一度七瀬と肌を重ねたい。
 七瀬の喘ぐ顔が見たい。
 そんな心の中に映し出された七瀬の表情と先程の言葉。そして昨日の情事の姿が重なり
合った瞬間。
260すれ違い・前編:2001/04/25(水) 12:57
「うおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーッ!」
 身体中の全ての細胞から弾き出される激しい叫び声。
 全身が強張り、頭の中がさあっと真っ白い世界に覆い尽くされる。
 その瞬間。
 オレはオレの心の中を横切る一筋の閃光を発見する。
 そしてその光はオレの腐り淀んだ心に隕石のように飛来し、激しい炎を巻き起こす。
 その炎から導き出されるある一つの考え。
 圧倒的な結論。
 そうだ、そうだよ。
 何でこんな簡単な事に気付かなかったんだ?
 何でオレだけがこんな馬鹿みたいに悩まなくてはならないんだ?
 全ての原因はオレではなくむしろ『七瀬』にあるんじゃないのか?
 あいつがオレのささやかな願いを聞き入れてくれなかったのが悪いんじゃないのか?
 オレはひとまずベンチに座り込み様々な事を考える。確かに学校であんな事を強要した
オレにも責任はあるのかも知れない。だが、だからと言ってあそこまで冷たい態度を取ら
れるいわれが一体何処にあるのだと言うのだろうか?
 元よりオレ達は恋人同士じゃなかったのか? 
 恋人なら彼氏の言う事を聞くのは当たり前の事じゃないのか?
 オレはそんな考えに自ら強く頷かされる。確かにこの考えは多少横暴であるかも知れな
い。だがそこでオレは更に考える。そもそも最初にオレの方に言い寄って来たのは七瀬の
方ではないか。
 なのに、いざとなったらオレの方が悪いと言い切る七瀬の姿勢。その軽蔑な眼差し。よくよく考えたらオレなんかよりあいつの方がよほど横暴と言えないだろうか?
261すれ違い・前編:2001/04/25(水) 13:01
「そうだ…そうだよ」
 そして何時の間にかオレはそんな言葉を口に出して喋っていた。同時に一気に膨れ上が
る七瀬への不満。いや、それは既に『憎しみ』と言っても過言ではなかったかも知れない。
「…そうと解った以上、ここでこんな事をしてる場合じゃないな」
 強い確信を込めた言葉を紡ぎ出しながらそうしてオレはその場を立ち上がる。
 いろいろとやる事があった。
 誰も今のオレを止める事は出来ない。
 何故ならオレは子供の頃の『僕』とは違うんだから。
 ただひたすらに涙を流し、状況に流されていた頃のオレとは違うんだから。
 満月に輝く月を背にしながら、オレは七瀬とのダンスを行なった、この懐かしい公園を
後にする。
 心から迸る火花を寒空の中に散らしながら。