★★★SS投稿用スレッドLeaf.key板マーク2★★★

このエントリーをはてなブックマークに追加
52まこプー
 了承です。>OVAさん


 『肉バイブ祐一』

「気づいたようですね、二人とも」
 長い眠りから覚醒したばかりのぼんやりとした思考で、俺は秋子さんの
言葉を反芻していた。
(二人…二人って……誰のことだ…?)
「いつもいつも甘い顔だけをしているわけじゃないんですよ?」
「あれを見られてしまったからには…」
(…その内の一人は俺なのか…)
「ただで済ませるわけにはいきません」
(そうか……俺は北川と……)
 俺と同じくロープで縛られた姿の北川が目を覚ました頃、ようやく俺は
今、二人がおかれている状況を理解した。
 詳細は省く。端的に言えば、俺と北川は水瀬家のタブーを犯したのだ。
決して見てはならないもの。決して知ってはいけないこと。ああ、どうして
俺たちはあんなに迂闊にも、秋子さんの部屋を訪れてしまったのだろう。
「まさかそんな姿で逃げようなんて思っていませんよね?」
「なぁ相沢…、俺、いまいちよく分かってないんだけど……」
「…なんだ?」
「どうして俺たち、こんな姿になっているんだ?」
「それは……」
「秘密です」
 答えを持たない俺の言葉を、秋子さんが継いだが、何の解決にもなりは
しなかった。
「二人にはそのままの姿で罰を受けてもらいます」
「…ば、罰…」
 北川が呻いた。このままではマズい。下手をすれば命にかかわる! 俺の
本能がそう叫んでいた。なんとか秋子さんの隙をついて逃げ出すしかない!
 その時、
「おかーさーん? 電話だよー」
 悲しいくらいにいつもの調子で、名雪がドアを開いた。
(い、今だ!)
「逃げるぞ北川!!」「あ、ああ!」
 俺たちはそれぞれ縛られた両手両足をそのままに、古人の描いた馬の様に、
跳びはね駆けだした。「きゃっ」と名雪の驚く声を後ろに、廊下を抜ける。
中庭に通じたガラスを体当たりで破り、往路へと逃げる。
「相沢あっ! 俺たち、どうなるんだあっ」
「そんなの俺にもわからねえ! でも走るしかないんだっ!」
 こんな姿になってしまった二人には、道行く人々に驚愕と嘲笑、混乱を
振りまきながら、あて無き道を豚走するしか残されていなかったのだ。
 どの様な魔法でか、可愛らしい子豚の姿へと変化させられた俺たちには…。
「ブヒヒヒーッ!!(誰か助けてくれー!)」
「ブヒヒーッ!(俺は巻き添えだぁ!)」

 『肉ベイブ祐一』・完


 鬱だ死のう…。(´Д`)