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176名無しさん@へたれ書き
「Aー555に対し、シンクロレベル同調」

「これより第四段階実験開始」

機械音が鳴り響き、俺の意識は闇に包まれていった。


   『真実』


「おはよう、俺」

「ああ・・・」

色濃い暗闇の中で俺は名雪を犯している俺の前で立ちすくんでいた。
頭の中に細かい蟲がびっしりと蠢いているような感覚が俺を襲い、
思考を正常に働かせることができない。

「お前は・・・俺か・・・」

「どうだ?参加するか?」

「断る。名雪嫌がっているじゃないか!!」

俺は名雪を犯す俺を殴りつけ、名雪を抱き起こした。

「大丈夫か、名雪」

「祐一って・・・甘ちゃんだよね」

突然首筋に激痛、見るとそこには名雪が噛みついていて。

「ああ・・・」

俺の意識はまた遠くなった。

俺は目覚めた。その前には栞が立っている。

「お目覚めですか、祐一さん」

「夢を見たんだ・・・」

「どんな夢を見たんですか?」

「栞の病気が治る夢だ。俺は栞と恋人同士になって、ずっと仲良く
幸せに暮せると思っていた。なのに・・・」

「・・・」

「いつしかだんだん付き合いが上手くいかなくなってきて・・・
お前は働くつもりだったけど、俺はやめてほしかった。
結婚も・・・こじれて。でもなんで・・・」

「なんで?」

「お前と殺しあうことに・・・」

「それは憎悪こそが、そして憎悪から生まれる破壊こそが人間の本質だからですよ」

「栞・・・?いや・・・お前は佐祐理」

「あははーっまだわからないんですか、祐一さん。人間は、人間だけじゃない、
犬さん猫さん馬さん羊さん猿さん・・・人間を含めた全ての獣の魂の
原初にあるもの、それはタナトス」

「タナトス・・・?」

「それは「破壊衝動」それは「死への渇望」エロスは、セックスは擬似的な
死に過ぎない。それは擬似的な自傷に、擬似的な破壊にしかすぎない。
まがい物では真の欲望を抑えることなどできないんですよーっ。
破壊を求めるのは当たり前のことなんですよーっ」
177名無しさん@へたれ書き:2000/07/19(水) 19:31
「その通りだ祐一」

「舞?」

「ふぎゃあっぷどげぎゃあ!!」

倉田佐祐理の悲鳴が轟き渡った。
倉田佐祐理の上半身が唐竹割りに二つに裂け、その隙間から
剣を突き出した川澄舞の姿が映る。

「憎悪は楽しい   祐一も憎むがいい」

「楽しいのか・・・」

「病気を恨んだんですよ。冷たいお姉ちゃんを、健康なみんなを
そして私にこの仕打ちを与えた世界を憎みました」

「栞・・・」

「憎んで憎んで憎んで、心が全て憎しみで染まり、心から憎しみが
溢れ出すほど憎んだんですよ」

栞は笑った。これは心のそこから笑っている顔だ。

「気が付いたんです。憎しみの果てに、素敵な場所があることを。
憎悪で心を焼き尽くせば、その果てにある空虚に触れるんです。
そして、その空虚を憎悪を晴らすことで埋めようとすると、
さらに空虚になるんです。その空虚さはとても素敵なんです。
だから・・・」

目の前に血まみれの残骸が現れる・・・これは物だ、人間であった物
の絞りカスだ。

「だから私はお姉ちゃんを殺しました。両親を殺しました。クラスメート
を殺しました。街いく人々を殺しました。自分も殺しました。

栞の手首がスッパリと切れていき、鮮血が勢い良く吹き出す。

「祐一さん。もちろんあなたも殺します」

栞が手を振り上げる。その手には黄色いカッターナイフが。

「ぐうっ」

俺の右目に激痛が走った。栞がカッターナイフで俺の右目を切り裂いたのだ。

「いたい?いたい?いたい?うふふ・・・」

「クソッ、お前なんかに、俺の苦労も知らず、要求ばかりして、一度の浮気
で俺のことを限りなく責め立てるお前なんかにィ!!」

「ひぎゅあっ!?」

俺は栞の首を全力で掴み、絞めにかかっていた。栞の顔が鬱血し、汚らしい声が
一瞬漏れる。

「死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネェ!!」

栞の顔が青を通り越してドス黒く変色していく。それをみた俺の心のうちに沸きあがる
憎悪と歓喜!!

俺は射精していた。俺はモノとなった栞の身体を投げ捨てた。
178名無しさん@へたれ書き:2000/07/19(水) 19:32
「あらあら」

秋子さんが笑いながら、栞の死骸を持ち上げる。

「これは狐に比べると食べがいがありそうね」

「秋子さんか」

秋子さんは穏やかに微笑んだ。

「ねっ祐一君、私の言った通りでしょ。愛情の上に成り立つ幸せなんて
この世界にはないの。いくら愛し合っていると思いこんでいた二人だって
いつかは破局するわ。破局せず一生自分と相手自身を騙し通していける
恋人なんて滅多にいないわ。私とあの人がそうじゃなかったようにね」

「秋子さんも違うのか」

「当たり前よ。人間はね。ずっと同じには耐えられないの。明日も、明後日も、
明々後日も、それから先もずっと同じ幸せな日々・・・ふふっ理想に見える?

「でもね。かならず飽きが来るのよ。そして人間は心の奥底で常に破滅を
望んでいるのよ」

「祐一君、私がね、今までで一番、幸せを感じたのは、
嬉しそうな顔を浮かべながら隣で寝ているあの人の首を、包丁で
突き刺した時だったわ」

「・・・」

俺は俺の下で喘いでいる名雪の顔を見下ろした。俺の愛する名雪、
栞なんかとは違う、俺が心から愛する名雪。
(醜い)
どうしてSEXで喘いでいる女を下から見下ろすとこんなに醜く
見えるのだろう。そしてその醜さと愛おしさが愉しい。

(これをもっと愉しくする方法を俺は知っている)

俺は後ろ手にベッドサイドの机に手をかけ、引出しをあけると
黄色いカッターナイフを取り出した。

ズシャッ

(ああ、秋子の言う通りだ。
自分の大切なモノ、愛するモノを破壊するのが
これほど愉しいなんて)

ああ・・・憎むこと、愛すること、その二つは同じなんだ。

全てを壊したい。全てを殺したい。世界の全てを・・・

「郁未宗主。相沢祐一のELPOD同調率が700%に達しました。
もはや通常の人間の人格は保っていないかと」

「ふふ。違うわね。本当の人間に、人間の本来の姿に戻るのよ」

「はあ・・・この後はどうするのですか」

「祐一君を実験から解放して家に返してあげなさい」

「・・・?あの、この度の実験の意味はなんなんでしょうか?」

「貴方が知る必要のないことよ」「私になら教えてくれても良いでしょう」

「ええ、葉子さん貴方になら。あの街にいる超常能力者を
抹殺するのに一番手間隙がかからない方法なのよ、これはね」

                      
179名無しさん@へたれ書き:2000/07/19(水) 19:38
一応これで終りです(続けて書くことも可能な終り方ですが)
基本的に人の善よりも悪に、光より闇に、愛おしさよりも憎悪にこそ
力があると思えますし、人間自体、世界自体、結局のところ闇でしかないと
思っているので、ハッピーエンドにはできません。
ハッピーエンドを書いたり、信じられる人は嫌味ではなく本当に
うらやましいと思っていますよ。それは人間を信じられる心を
持っているということですからね。