葉鍵ロワイアル!#11

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1名無しさんだよもん
基本ルール 、設定等は前スレ熟読のこと。

・書き手のマナー
キャラの死を扱う際は最大限の注意をしましょう。
誰にでも納得いくものを目指して下さい。
また過去ログを精読し、NGを出さないように勤めてください。
なお、同人作品からの引用はキャラ、ネタにかかわらず
全面的に禁止します。

・読み手のマナー
自分の贔屓しているキャラが死んだ場合は、
あまりにもぞんざいな扱いだった場合だけ、理性的に意見してください。
頻繁にNGを唱えてはいけません。
また苛烈な書き手叩きは控えましょう。

前スレ
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=995172541
感想スレ
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=997286517
感想、突っ込んだ議論、NG処理、アナザー没ネタ等にお願いします。
そして、絶対にNG議論は本スレで行わないように。

その他のリンクやキャラの状況は>>2-5にあります
2名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 02:11
2!
3名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 02:12
――――――――――――――――――
ねぇ、この隣で寝てるのはなんてゆーの?
__  __. r――――――――――――
    ∨   | ZZZ・・・。
日 凸 U | ______
≡≡≡≡≡| /   ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 U ∩ [] ∨% (´∀` ) < シラネーヨ
_▼⌒⌒▼__ ∧ ∧___.)__\_____
 ノ |   ノ )日 ( ´ー`)⊂⊃
-.| ノミ_ミ| ノ―--\ <-------------/| ―――
 从   从)      \.\∩∩__∩∩/ /
  ━┳━・゛       \_____/
 ̄ ̄┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄━┳━ ━┳━
   ┻           ┻    ┻
4名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 02:12
●リンク
ストーリー編集 (いつもありがとうございます)
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/1168/index.htm

アナザー(外部スレ)
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=993054328

現在のアイテムリスト(7/21現在)
http://t-niimura.hoops.ne.jp/2ch/itemlist.txt

読み手チャット&書き手チャット。
http://village.infoweb.ne.jp/~chat/passchat/passchat.htm
パスは読み手ならyomite、書き手ならhakarowaでどうぞ。

外部の避難所はこちら。
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Queen/3996/index2.html
5名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 02:12
◆◆◆(新)芸能人彼氏とH芸能界の表裏画像動画大公開◆◆◆
◆アイドル画像秘宝館◆
http://www.futomomo.com/netidol/idolhappy/maki/
◆綺麗なおねぇさんは好きですか?◆
http://www.futomomo.com/netidol/sister/megu/
◆セーラー服◆
http://www.futomomo.com/netidol/sailor/miku/
◆モーニング娘 ◆
http://www.futomomo.com/netidol/morning/mai/
6名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 02:12
各キャラ状況
市街地で大乱闘組
048少年 003天沢郁未(ついに再会)
033国崎往人 037来栖川芹香(少年の動向を探る)
024神尾観鈴 029北川潤(新規参入予定)
フランク(雲隠れ中)

西に移動組み
020柏木千鶴 061月宮あゆ

彰探索組み
088観月マナ 021柏木初音(それぞれ声の届く範囲で行動中)

施設留守番組み
011大庭詠美 046椎名繭 獣たち GN ヘルプマルチ(CD解析中)

灯台探索組み
069七瀬留美 092巳間晴香(これと言って変化無し)

単独
017柏木梓(反転ダケ探索)
022鹿沼葉子(高槻の死体探索、北の森へ移動)
050スフィー(祠へ)
023神尾晴子(観鈴捜索へ)
019柏木耕一(彰に撃たれ負傷中)
068七瀬彰(彷徨う)
7名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 02:14


2!
8名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 02:14
         まて〜このオタ猫、頃すぞゴルァ
     \__ ___________________/
         ∨ 

       (⌒Y⌒Y⌒)    ♪同人誌くわえたヲタ猫追っかけて
     /\__/       慌てて駆けてく不細工ヲタァ〜エさん♪
    /  /    \                ..../\ /\
    / /     \/\              ../   ̄  \
 (⌒ /    ー◎-◎-)           ./      U \
(  (6      (_ _) )   _      ../ U       \/\
 ( | .∴ ノ  3 ノ   (_\    ..|       ー◎-◎-) 
    \         /     ...\\_ ..|    三  (_ _) ) 三 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     \____/      / ̄  \|   .∴ ノ  3 ノ < ハァ、ハァ、ハァ……
     /    \     /^v .      \         /     \_______
    ⊂  )   ノ\つ    ''\/\     L\__U__ノ
      (_⌒ヽ            \   _ ○\
       ヽ ヘ }            .\ \  ̄\ \
  ε≡Ξ ノノ `J              L.」」.〉   L.」」.〉  
9名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 02:14
10!
10名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 02:15
国崎死亡

よって

=========終了===========
11名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 02:16

    彡ミミミヽ ノ彡ミミ)
   ((彡ミミミミ))彡彡)))彡)
   彡彡゙゙゙゙゙"゙゙""""""ヾ彡彡)
   ミ彡゙ .._    _   ミミミ彡
  ((ミ彡 '´ ̄ヽ '´/ ̄ ` ,|ミミ))
  ミ彡  ' ̄ ̄'  〈 ̄ ̄ .|ミミ彡
  ミ彡|  ) ) | | `( ( |ミ彡
  ((ミ彡|  ( ( -し`) ) )|ミミミ   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    ゞ|  ) )  、,! 」( ( |ソ   < このスレはよく頑張った。感動した! 終了!
     ヽ( ( ̄ ̄ ̄' ) )/      \_______________
     ,.|\、)    ' ( /|、
   ̄ ̄| `\.`──'´/ | ̄ ̄`
      \ ~\,,/~  /
       \/▽\/
■■■■■■■■■■板違いにつき終了■■■■■■■■■■
121:2001/08/18(土) 02:18
じゃあ終了ってことで

\\\\\\\\\\\完\\\\\\\\\\\\\
13名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 02:19
新スレおめ

おつかれさま
14名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 02:20
>>13
だからもう終わったんだって。
あゆが生き残ったの。
15百円玉:2001/08/18(土) 02:21
  ウジ虫どもが大量発生してやがるぜ 氏ね   
_  ______________                       
  V                     
_−へ____              
    ____)       ・'゚。.::。.::・'・'゚。.::。.::・'・'゚。.::。.::・'      
   / \| | .::.::.::.::.::・・'゚。.::。.::・'・'゚。.::。.::・''・'゚。.::。.:'・'゚。.::。.:
  (   /_\       ・'゚。.::。.::・'・'゚。.::。.::・・'゚。.::。.::・''
\  \|     |    プシューッ                
  \_ )   |                             
     |フマキラー|                               
     |     |                                
     |     |
     |     |                                
     |     |
     |     |                                
     |___|  
16名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 02:22

       ζ                  ζ              |    _||||||||| |
     / ̄ ̄ ̄ ̄ \          / ̄ ̄ ̄ ̄ \         \ / \_/ / 
    /          \         /          \           \____/    
   /\    ⌒  ⌒  |      /\    ⌒  ⌒  | 
   | |    (・)  (・) |       | |    (・)  (・) | 
   (6-------◯⌒つ |       (6-------◯⌒つ |    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   |    _||||||||| |       |    _||||||||| |  < リーチ!!
    \ / \_/ /        \ / \_/ /    \_______
      \____/            \____/     
171:2001/08/18(土) 02:29
初めまして。1と申します。
書き込みお初です。
ロリ系のホームページ探していて辿り着きました。(笑)
かなり以前から、自分はロリコンだと
分かっていたのですが、ここ最近休憩していました。
・・が!先日、車で海水浴場の側を走行中
かわいらしい女の子がスッポンポンで着替えているのを
目にしました。もちろんワレメも丸見えで、
これを見た瞬間に、またロリが蘇ってきました。(笑)
ロリロリ万歳っ!!(謎)
小さい女の子はかわいいですね。
それに自分はワレメフェチなのでワレメがなんとも・・。(^-^;
ワレメ見たさに、女の子がスッポンポンで水遊びを
していそうな場所へフラフラと出かけたりしています。
結構成果があるものですね。
その時の事は、また報告します。(笑)
まだまだ未熟者ですが、どうぞよろしくお願いしますね〜。
18名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 02:32
1は駄スレを立て続けた。どれほど休まずに立てたかは想像の外である。
どこでどんな駄スレを立てたのかも覚えていない。流れに流れて1は
このスレを立てたのだった。
1が明瞭な意識を取り戻したのは、このレスを見たためである。
体を椅子にもたれかけさせて見ていた。おびただしい数のレスが
1の眼球に浮遊していた。
身を起こして、レスの一つ一つを心行くまでじっくりながめた。
異様なコピペのアラシ。無数の人間の罵倒がいっせいにここに
集まったようにも見える。だが、ここからはこれらの人間ども
が一体何者かは分からない。
1は椅子の上に膝を組んで長いことそれを眺めた。
気がつくと、1はパソコンを1自らの手で破壊していた。
手や足、体の至る所に擦り傷が出来、服にはおびただしい量の
血が付いていた。1は遁れた獣のようにその傷口を舐めた。
ポケットをまさぐると、煙草が手に触れた。1は煙草を飲んだ。
一仕事を終えて一服している人がよくそう思うように、
生きようと1は思った。
19名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 06:28
夏厨大暴れかよ、嗚呼…。
20名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 08:36
>>19
気にしない気にしない、一休み一休み。
21名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 11:37

        (\
         \\
          (\\
           \\\
           (\\\\
           (\\\\\
            \\ |||
( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ | ⊂⊃
  ̄ ̄( ̄ ̄//// ̄\  ∧ ∧    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      ̄(//// ̄\\( ゜Д゜) < 氏ねや基地外夏厨共 ゴルァァァァ!!!
   ".;":  (/(/// ̄(つ つ   \_____________
".;":         (/(/|  \\
 .;".;": ..;".;;:  (/((/ ∧|\\       .;".;": ..;.;".;
   .;".;": ..  ;    ∪ ∪  \\         .;".;": ..;.;".
.;".;"    .;".;             \\
   ゴ オ ォ ォ …… ! !      \\   ;": ..;.;".;":
          .;".;": _.;.;__       \\   ド カ ァ ン !
 .;".;": ..;.;".; ζ /_.;_/| .;".;"_ \\  .;".;.;".;":
.;".;": ..;.;".;": ;:'.;| ΓΓ | |;":从へ_/|  \\.;".;"_.;__..:
从へ从へへ从  ; ζ  | Γ从 | |;:.. |从Γ | |    \\ ∠___/|
    ( ⌒( ⌒ ) ζ | 从Γ | |.:;. |从Γζ.;"._ \\|ΓΓΓ| |
(   ⌒ ⌒  ⌒ );  | ΓΓ | |.;;::|ΓΓ | |  ( 从へ;: |从ΓΓ| |
 Σ( ⌒( ⌒ ) ζ  ( ( ) )⌒ ) ( 从へ从)_.;;:.;|Γ从Γ| |
 ( (( ( ⌒ )) )  从 Σ( ⌒(  从へ从) ∠___/|
Σ (( ( ⌒ )) ) )(( ⌒ ( 从へ从) .;".;:;|ΓΓΓ| |
 (( ⌒ ( ( ) )⌒ );:;   .;".;": ..;.;".….;”:…….””’’’’:   
22名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 11:38
         _ , -―-、
              , 'ニニニ、::::(0::::::::::ヽ、
                ̄ ̄ヽ':::::::::::::::  ヾ みてごらん>>1->>18を あれが夏厨だよ
                   ):::  ....   \
                  /    ::::::::::::::::::ヽ
                  /      :::::::::::::::::|
                 /       :::::::::::::::::|
                 /        :::::::::::::::::::|
                /        ::::::::::::::::::::|
                |         :::::::::::::::::::::|
               . |         :::::::::::::::::::::|
          _ , ―-、|         /::::::::::::::/::::|
          \ヲ'⌒ヽ:|         /:::::::::::::::/::::::|
            ト`_ ノ::|        /:::::::::::::/::::::::|
           人;;;;;;;::::;:|        |:::::::::::::/::::::::/
          /γ  `:::::|       |::::::::::::/::::::::/
          / (  ヽ   :::|       |:::::::::/::::::::/   ふーん、なんだか
         {  }  )  ::|       |::::::::{::::::::/    頭悪そうだね、ぱぱ
          | /   }   ::|       .ヽ::::|:::::::/
          ) {  /   ::|       .ヽノ ::::/
          } |  (    :λ         :::|
         ( ヽ、 )    ノヽ        ::::|
          ヽ,   ~    〈  ト、_  |    ::::::ヽ、
          (     ,' ノ  |   |~7  ::::::::::::::`ヽ、
           ヽ,、,、,γ' ノ, -‐W~フ {  ト、:::::::::::::::::::ヽ、
          ∠____ト-┘z__,―' ̄Σ Z  ̄ヽ―-、_ノ
                    '―z_,┴'~        
23死神と、天使と、(1):2001/08/18(土) 12:10
彼女たちは、七瀬彰を捜していた。
もう、どれぐらい前からだろうか。
彼女たちは今、町の東側にある森の中で、時間的感覚も希薄になるほど、彰を捜している。
三人を動かしているのは、後悔の念。
できるだけ広い範囲を、そしてお互いの無事を確認するために、声を張り上げながら、捜す。
殺人者と死神が大手を振って歩くこの島で、大声をあげることは誇張ではなく自殺行為。
だが、もちろん彼女たちは自殺志願者ではない。
なぜなら、それだけのリスクを負っても、捜さなくてはならない人だからだ。

「あきらさーん」
マナが叫ぶ。
「あきら、おにいちゃーん」
初音が叫ぶ。
「あきらさーん」
葉子が叫ぶ。


――島内に生き残る、全ての善意ある参加者たちよ!!  聞いているだろうか?

どこか、遠くから蝉丸の声が聞こえた。
呼びかけをすることによって、この戦いを終わらせる。
そう言って別れた蝉丸は、その言葉通りやってのけた。
彼女たちはしばしの間声をあげるのを止め、放送に聞き入る。

――現在求められているのは“魔法使い”だ!
心当たりのある者は、是非とも名乗り出て欲しい。
その知識と、能力に期待する!


魔法使い……
もしも、自分が魔法使いならば。
彰を簡単に見つけることができるかもしれない。
彰の所に飛んでいくことができるかもしれない。
彰の心の闇を晴らすことができるかもしれない。
そう、あり得ないことを初音は夢想する。
24死神と、天使と、(2):2001/08/18(土) 12:17

「あきらさーん」
遠くからマナの声が聞こえる。
初音はくだらない想像をしていたことに赤面し、あわてて同じように声をあげる。

「あきらさーん」
マナが叫ぶ。
「あきら、おにいちゃーん」
初音が叫ぶ。

違和感。
そして、二人は気が付いた。
鹿沼葉子の声がないことに。

「ようこさーん」
マナが叫ぶ。
「ようこ、おねえちゃーん」
初音が叫ぶ。

しかし、葉子の声が返ってくることはなかった。

「マナさん!」
初音がマナのもとに走ってくる。
「初音ちゃん」
マナも小走りに初音に向かって走る。
葉子の返事がない、ということは先ほどの放送の間に、彼女の身に何かがあったに他ならない。
だが、もしかしたら声が嗄れてしまい、休んでいるだけかもしれない。
そう、思って葉子の声が最後に聞こえた所を警戒しながら捜してみた。
しかし、彼女の姿も、血の痕も、争った痕跡も見つからなかった。
25死神と、天使と、(3):2001/08/18(土) 12:19

二人は途方に暮れた。
彼女たちは服が汚れるのも構わず、地面に座り込む。
疲労と無力感が彼女たちを苛む。
彰は見つからない。
葉子も行方不明。
そして、なにより、

耕一は死んだ。

今になって落ち着くと、その事実に体が震える。
実際にその死に様を見たわけではない。
だが、彰の言葉と、そしてなにより、浴びていた血が雄弁にそれを物語っていた。


藤井さんも、お姉ちゃんも、澤倉先輩も、霧島先生も、きよみさんも、藤田も、長瀬さんも、天野さんも、佳乃ちゃんも。
みんな、みんな死んでいった。
そして、耕一も……。
もう、何もかもが嫌になった。
一人でも多くの人を助けたい。一人でも多くの人と島から抜け出たい。
そんな、無邪気な絵空事を考えていた。だけど……
出会う人、出会う人、皆、死んでいく。
本当に、終わりがあるの?
すべての野が赤く染められ、白い骨の木が立ち並ぶまで続けられるの?
私が生きていても、他人を犠牲にしてぬくぬくと生き長らえているだけ。
そして、死んだ人を見て偽善的な悲しみをするだけ。
自分が生きている優越感に浸りながら。
『死んだ方がまし』そんな言葉を前に鼻でせせら笑ったことがあるけど。
確かに、あるのね。そんなことが。
自殺は根性なしの敗北者がするものだと思っていたけど……。

そうか、今の私みたいなのを指すんだ。
26死神と、天使と、(4):2001/08/18(土) 12:24
初音ちゃんに花を摘みに行くと言って少し離れる。
手には撃つことはないと思っていた銃。
適当に言い訳をして、初音ちゃんから借りた。
誰かが、頭を一発で撃ち抜けば痛みも感じず死ねると言っていた。
先に死んじゃうけど、初音ちゃん、ゴメンね。
でも、私が一緒にいると、初音ちゃんにも迷惑がかかると思うから。

セイフティーを外し、
こめかみに銃を押しつける。
そして、人差し指で引き金を……



ガァンッ!



えっ!
私はまだ、撃っていない。
そして、再び銃声が聞こえる。
そんなに、遠くではない。
もしかして……
私は初音ちゃんの所に駆け戻る。
初音ちゃんも聞いたようだ。緊張した面もちでこちらを見る。
今度は三連発の銃声が聞こえる。
その方向を確かめて、私たちは走った。


走るにつれ、何度か銃声が聞こえる。
私たちの緊張が増す。
そして、森を抜けた所に、それはあった。
倒れ伏した一人の男。
近づくにつれ、その正体が分かってくる。

柏木 耕一
27死神と、天使と、(5):2001/08/18(土) 12:25
初音の顔が泣きそうになる。いや、私も恐らく同じ顔だろう。
話しに聞いていても、実際に死体を見て改めて認識させられるのとは、別だ。

もし、神がいるとしたら、なんて残酷なのだろう。
銃声をあと十秒、いや五秒遅らせてくれたら、
また、こんな苦しみを味あわなくて済んだのに。
28死神と、天使と、(6):2001/08/18(土) 12:26
だけど、死体をこのまま放置して置くわけにはいかない。
私は運ぼうと思い、腕をつかんだ。
あたたかい?
腕の動脈をつかみ、そして耕一の口に耳を寄せる。
生きてる?
私は、軽く耕一の頬を叩く。
反応がない。
耕一の耳元で名前を呼ぶ。
返事はない。
まさか、と思い心臓に耳をつけてみるが防弾服が邪魔だった。
あせる気持ちを必死に抑えて、ボタンを外す。
そして、耳を胸に当てる。
命の鼓動。命の温もり。
それを感じたとき、自分の胸の奥が暖かくなった。
そう思ったとき、誰かが私の頭を撫でていた。
耕一だった。
いつもは頭を撫でられるのが嫌だったが、今は不思議と不快感はない。
むしろ、心地良い。
「やあ……、マナちゃん」
耕一は絞るように、そう言った。
「バカ! 私、心配したのよ! 本当に心配したのよ!」

私は耕一の胸の中で、泣いた。
嬉しくて、いつまでも泣いた。


【マナ:医者セット 鉤爪ロープ 銃身が少し曲がった散弾銃(残り一発)】
【初音:ダイナマイト ベレッタ ペンダント】
【耕一:中華キャノン ナイフ ニードルガン ベレッタ(彰が所持していたもの】
29死神と、天使と、(6):2001/08/18(土) 12:29
だけど、死体をこのまま放置して置くわけにはいかない。
私は運ぼうと思い、腕をつかんだ。
あたたかい?
腕の動脈をつかみ、そして耕一の口に耳を寄せる。
生きてる?
私は、軽く耕一の頬を叩く。
反応がない。
耕一の耳元で名前を呼ぶ。
返事はない。
まさか、と思い心臓に耳をつけてみるが防弾服が邪魔だった。
あせる気持ちを必死に抑えて、ボタンを外す。
そして、耳を胸に当てる。
命の鼓動。命の温もり。
それを感じたとき、自分の胸の奥が暖かくなった。
そう思ったとき、誰かが私の頭を撫でていた。
耕一だった。
いつもは頭を撫でられるのが嫌だったが、今は不思議と不快感はない。
むしろ、心地良い。
「やあ……、マナちゃん」
耕一は絞るように、そう言った。
「バカ! 私、心配したのよ! 本当に心配したのよ!」

私は耕一の胸の中で、泣いた。
嬉しくて、いつまでも泣いた。


【マナ:医者セット 鉤爪ロープ 銃身が少し曲がった散弾銃(残り一発)】
【初音:ダイナマイト ベレッタ ペンダント】
【耕一:中華キャノン ナイフ ニードルガン ベレッタ(彰が所持していたもの】
30ブライト=ノア:2001/08/18(土) 13:34
みなさん、ご迷惑をおかけしております。 私、>>1の所属する艦の艦長をしております、ブライト=ノアです。
どうやら1がこのような駄スレを立ててしまったようで、1に変わって修正を受けます。申しわけありません。

しかし、ひとことだけ申し上げておく必要があります。 悪いのは1だけではないのです。もちろんエウーゴでもティターンズでもありません。
本当に悪いのは、1をこんな状態にしてしまった、この戦争そのものなのです。
すでにご存知かもしれませんが、1は人間の革新を体現する「ニュータイプ」と目され、この戦争で わがエウーゴの中心的パイロットとして数々の活躍をしてきました。
ですが、その裏では、 すんでいた街を追われ、両親を目の前で失い、恋をした女性にも死なれ、 姉のように慕っていた上官にも裏切られ、敵の士官の説得にも失敗し、他にも数々の大事な人たちを 30分たらずの間に死なせてしまうなど、精神的に強い傷を負ってしまったのです。
その結果、人格に異状をきたし、「彗星はもっとヴァァァァッて動くもんな」など、 幼稚な書き込みや意味不明なレスを繰り返すようになってしまったのです。

彼を許してくれとはいいません。ですが、せめて、一刻も早くこの戦争が終る事を、ともに祈ってください。
31名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 13:37
   │ここの1が必死
   │  なんだって・・
     \   ______/
      \/   ∧_∧ゴニョゴニョ・・
           ( ´Д`) ∧_∧
         / \/ )(´Д` ) __ウンウン・・
        /  \___//       \
  __   .|     | / /\_ _ \ \_____
  \   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄(__ノ   \    \__)      \
  ||\             \  .||\            \
  ||\|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄  ||\|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄
  ||  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||    ||  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
     .||              ||       .||              ||
32名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 13:40

                    /⌒\
                    (    )
                    |   |
                    |   |
                    |   |
                    |   |    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |   | <  夏厨さん、このスレを荒らさないで
                    (∀・  )   \_____________
                   _ノ_ノ´ ./
                   ( (´ ろ
                 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          /⌒ ────── 、    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        /   .            ヽ  <  お願いしますっ!
        (   ,,ノ_____/ノ  丿    \_____________
                       υυ(´ ろ
                 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          /⌒ ────── 、
        /   .            ヽ
  〜′ ⌒ (∧ ,,ノ_____/ノ  丿
   UU⌒⊂( ; ゚Д)つ      υυ(´ ろ
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄
|   ・・・とりあえずちんちんどけろ
\___________
33名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 14:51
age
34名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 14:55
体体体●                           
体体体●               ●●●●●       
体体体●               ●頭頭頭頭●●     
体体体●              ●●頭頭頭頭頭頭●●●  
体体体●          ●●●●茎●頭頭頭頭頭頭頭頭頭●●
体体体●     ●●●●●茎茎茎茎茎茎●頭頭頭頭頭頭頭頭頭●
体体体● ●●●●茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎●頭頭頭頭頭頭頭頭●
体体体●●茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎●頭頭頭頭頭頭●  我
体体体茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎●●●●●●●●    慢
体体体体茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎茎●●●●            我慢
体体体体茎茎茎茎茎茎茎茎茎●●●●                慢我慢
体体体体茎茎茎茎茎●●●●                    我慢我慢
体体体体茎茎●●●                        慢我慢我
体体体体茎茎●                           慢我
体体体体袋袋●                        
体体体体袋袋袋●                       
体体体体袋袋袋袋●                      
体体体体袋袋袋袋●        
35名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 14:56

                     Λ_Λ  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     ∧_∧____         (´Д` )<家が焼けちゃったんだ・・・・
    /(*゚ー゚) ./\        (    ) \_____
  /| ̄∪∪ ̄|\/       | | |
    |____|/         (_(_)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



   イッショニスム?           Λ_Λ
     ∧_∧____         (´Д`; )
    /(*゚ー゚) ./\        (    )
  /| ̄∪∪ ̄|\/       | | |
    |____|/         (_(_)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
36名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 14:58
 :   :     : : :   :  :
:  .    :  。:   ;    :.
       : ;/ \ . .   .
 :  :   /    \;   : .
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 :   ; ⌒⌒⌒||⌒⌒⌒; .  :
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. :.  : (*゚ー゚)||     :  :
  .   ι つ     . :  :
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3718才の◇◇◇(新)芸能人彼氏と芸能人:2001/08/18(土) 15:18
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38名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 15:42


            , - ── - - 、
           , ′      _ - "
         /    _ -
        / , -─ "
      _ / ∠__      __
    ,・ , '∠-──`=-−'  ̄   ─ _
   / //        ̄=_- _      - _
   | //          ミ、`ミ ・ - 、     - 、
  | ‖//巛 | | | | 》 》  ミ \ミ     ̄ ・ - . _ ゝ
  | || ‖-─- ソ/ノ-ソ.._ 》ヾ ヽ、ミ゛  ______
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39名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 15:47
イイ(・∀・)ヨ!!
40夢をみるひと。:2001/08/18(土) 16:12

泣きじゃくるマナを見ながら、自分の頬にも涙が伝っていた事に気付いて、初音は思わず息を吐いた。
本当に良かった。
自分は、大切な人を失わないで済む事が出来たのだ。

だが、その耕一の顔を見て安堵の息を吐く事が出来たのも、ほんの束の間のことだった。
柏木初音の思考を次に襲ったのは、耕一を撃ったのは誰か、という事だった。
初音はすぐにすべてを理解する。そして無意識のうちに唇を噛んで、目を閉じた。
耕一を殺せなかった彰。
それは彰がまだ――すべての人の心に巣食っている狂気、という意味での――鬼に、成り切っていない事を証明していた。
それならば、まだ止めようがあるのかもしれない。
彰は街の外へ出たのだろうか。
そうだとしたら彼は何処へ向かう?
呼吸を乱しながらも、耕一は自分の顔を見て、真剣な顔で云った。
「――彰が、その森に入って、いった。早く追わない、と、手遅れになるかも、しれない」
多分自殺するつもりだ、と付け加えて、耕一は少し呻いて顔を歪める。
「俺は、少し、休んでから行く。どうも、眩暈が、する」
途切れ途切れに言葉を漏らしながら、そのまま倒れ込む。
「耕一さんっ!」
上に乗られたマナは、その耕一の様子に本気でうろたえたが、
「……大丈夫。ちょっと、まだ、血が、出来てない、だけだから」
耕一はそう云って笑う。――無理に微笑んでいるようにしか見えなかったが。
次に、寝転んだまま腕を伸ばし、耕一は初音の頭を撫でた。
「初音ちゃん。……彰を止められるとしたら、君だけだ。初音ちゃん以外には、止められないと思う」
早く行ってあげるんだ。東に行った筈だから――耕一が、もう一度目を細めた、
――その瞬間。
41夢をみるひと。:2001/08/18(土) 16:12
奇妙なほど高い心臓の音が、初音の肉体を支配する。
どくん、どくん、どくん。
高い脈を打ち、初音の顔は一気に何か悪霊に囚われたような、そんな顔になった。

「――初音ちゃん?」
耕一に抱きすくめられていた観月マナが異変に気付く。
怪訝な顔になり、自分の顔を覗き込んでいるのが判る。
身体を起こした耕一も同じような顔をして自分を見る。
「初音ちゃん? どうした? なあ、はつねちゃん――」

それにもまともに反応も出来ないほど、初音の頬は紅潮している。

呆然とした初音の意識が、何かに支配される。
何かの意識が流れ込んでくるような感覚。
新たな記憶が植え付けられていくような感覚。
記憶と思考の渦が、不快な音を立てて初音の身体を支配する。

前にも、何処かでこんな事を経験した記憶がある。
不思議な力が、わたしにゆっくりと、働きかけているのだ。
ああ。

「初音ちゃんっ、どうしたの! ねえ、」
マナが呆然と自失した表情の初音の肩を揺する。
ごめんね、心配かけてごめんね、マナちゃん。
身体を無理矢理に起こし、耕一も立ちあがっていた。
「初音ちゃんっ、どうした、何か具合でも――」
膝を付き呼吸を乱す自分の顔を、耕一も不安そうに覗き込む。
ああ、ごめんね、耕一お兄ちゃん。折角再会できたのに、こんな顔をしててごめんね?
42夢をみるひと。:2001/08/18(土) 16:12

流れ込む意識の正体は、何なのだろう?
鋭く冴え過ぎた、自分の思考なのだろうか?
それとも、まったく別種の力が、自分に働きかけているのか?

――そう、彰お兄ちゃんは、きっとあそこに向かったんだ。
――わたしと最初に出会った場所の、
――対岸。
――東の海神から、西の蒼海へ向けて、彰お兄ちゃんは走り出したのだ。

不思議な確信が、自分の脳髄に刻み込まれる。
西だ。西に彰は向かった筈なのだ。
その思考が何処から生まれたのかなど、わたしには考える術もない。
流れ込んできた意志は、誰のもの?
その根拠のない考えに、不自然なほど自分の意志を依存しようとするのは何故だ?

それは、きっと超直感と呼んで差し支えの無いものだっただろう。
直感以外の何物でもない、彰は東の森に入ったのだろう? 耕一はそう云っているじゃないか。
なのに、その直感の方が、今は信頼できる気さえするのだ。
今は走り出さなければならない、もう一人の大切な人を捜し出すために。

「マナちゃん、耕一お兄ちゃん、――ごめん」

そう云って初音は――西に向けて走り出した。
「初音ちゃん!」
二人の声が聞こえる。二人の声が、聞こえる。
「初音ちゃん! 彰はそっちじゃない、こっちの森に入っていったんだから!」
そんな声も無視して、初音は正反対に駆け出していく。
――彰は、西だ!
43夢をみるひと。:2001/08/18(土) 16:16
七瀬彰は、自分が何処へ向かっているのかも知らぬまま、森の中を呆然と歩き回っていた。
この森はあまりに深く、空を望む事が叶わない。
がさりと草を踏み、土に足がついていることを確かめると、彰は自分が何処に向かっているのか考えていた。

初音との出会いの場所。初音を最初に抱きしめた場所。
島の東の端で、朝陽を望みながら、彼女を護るために戦おうと、最初に決意した場所。
そこに向かっているつもりだった。
考えてみれば今自分は間違いなく島の東側にいる筈だったし、
それならば少し森を抜けて歩けば、目的の場所、東の海に至る事が出来る筈だった。
それなのに、木々の隙間から覗ける森の外には、まるで海は見えない。
もしかしたら、森の中を迂回して、まったく違うところに向かっているのだろうか。

自分がまるで、東の空に向かう事を、拒んでいるかのように思えた。

土を踏みながら、彰は考える。
もう一度だけ、初音に逢いたい。
逢って、言わなければならないことがある。
彰はもう、生きていくつもりはなかったけれど、初音には、生き残って欲しいから。
だから、云いたい言葉がある。

眩暈がするのが判る。
血はそれ程流れていないのに、まるで貧血状態であるかのように、身体が言うことを効かない。
もし歩む事を止めれば、自分は多分二度と歩けないだろう。
生きていくつもりも何も、自分はすぐに死んでしまうのかもしれないな、という気もする。
ともかく、生きていくには僕は駄目になりすぎた。

どうやら森が終わったのだと理解したのは、その先には海が見えたからだ。
真っ青な美しい海と、赤く焼けた空、だった。
今にも沈みかかっていた陽。

――ここは、西の海だった。
44夢をみるひと。:2001/08/18(土) 16:16
初音は市街地を全速力で抜け、西に繋がる森に入る。
ここを一直線に抜けていけば、彰に逢える。流れ込む意識は、きっと正しい。
初音がそれに確信を抱いていたのは、

身体の節々が痛む。この島で初音自身、たくさんの怪我をした。だが、それでも自分は生きている。
自分自身で武器を持ったことなど殆どない。
他人を傷つけた事も殆どなかっただろう。
それなのにこの殺し合いを強要される島で、誰も傷つけることなく、自分もそれほど傷を負うことなく、
自分がここまで生き残って来れたのは、自分を護ってきてくれた人たちのお陰なのだ。
本当にたくさんの人と出会った。
弱い自分を護ってくれた、大切な人達。

そして、彰。

彰との、この島での日々を思う。
茂みの裏で震えるわたしを見つけた彰お兄ちゃんは、にこりと微笑んでくれた。
一人泣いているわたしを、彰お兄ちゃんは抱きしめてくれた。
体調が悪化したわたしを、彰お兄ちゃんは看病してくれた。
殺されそうになりながら、彰お兄ちゃんは戦ってきた。
危険に晒されたわたしを、彰お兄ちゃんは護ってくれた。
そして、彰お兄ちゃんとわたしは肌を重ねた。
そして、彰お兄ちゃんはわたしに優しいキスをくれた。

……耕一は、彰は自殺するかもしれない、と言った。
初音にも、彰の心境の想像はついた。多分、彰はこんな事を考えているのだ。
45夢をみるひと。:2001/08/18(土) 16:17

――狂気に侵された自分が初音と共にいたならば、きっと自分は初音を傷つける。
――傷つけるくらいなら、死んでしまったほうが良い。まだ、自分自身の理性が残っているうちに。

そう、彰は誰よりも優しい人だから。耕一を傷つけ、自分を傷つけようとした事が、どうしようもない罪に思えたのだろう。
それならば、自分がするべき事は一つだ。
傷つけても構わない、と抱きしめてあげれば良いのだ。
傷つけても良いんだよ、と微笑ってあげれば良いのだ。

今までずっと護ってきてもらったのだ。
彰がいなければ、わたしは当の昔に壊れてしまっていただろう。

あの時、初めて出会ったときの彰お兄ちゃんの笑顔で、
そして、今までずっと笑ってきてくれた彰お兄ちゃんの笑顔で、
わたしがどれだけ救われたか、判っているの?

最短距離で森を抜けるつもりだったが、予想以上に道は困難だった。
一つ勾配の急な丘を超えなければならず、それには相当の時間を尽くさなければならなかった。
迂回していこうかとも思ったが、それにも時間がかかると思い、わたしはそこを登っていく。
結局、太陽が傾くような時間まで、そこで時間を使ってしまった。
ともかく、そこを超えると、すぐに森は終わりになった。

広がる海と、傾きかけた、太陽。

――そこには、七瀬彰が一人、立ち尽くしていた。



【七瀬彰 柏木初音  ――――――――――再会。  時間軸は死亡放送三十分前位です】
4618才の◇◇◇(新)芸能人彼氏と芸能人:2001/08/18(土) 16:24
みんなこんなエエ女見たことある?
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47禊 (1):2001/08/18(土) 16:25
階段を隔てて、天沢郁未と少年は対峙する。
「具合は、どうだい?見たところ元気そうだね。」
その少年の声に、だが、郁未は無言しか返さない。
「なんだよ、無愛想だな」
少年はヒョイと肩をすくめる。
「とにかくあがってきなよ。そこは狙撃される心配がある」
確かにそれはそうね、と郁未は思った。
私は彼を、救うのか。
私は彼を、殺すのか。
どちらにせよあの髭面の男に邪魔されたくはない。
だから、郁未は既に手にしていた発煙筒と煙球(椎名繭のバックの中にあった花火セットのものだ)に火をつけて、そこらへんに放り投げた。
無論ベネリショットガンは構えたままだ。
たちまち、ホールに煙が充満し、往人の爆弾のせいでただでさえ悪くなっていたホールの視界がさらに悪化する。
流石に郁未と少年の距離ならばお互いの姿が視認できるが、外からの狙撃は無理だろう。
そうして、郁未は少年のほうへ銃口を向ける。
「あなたは、人を殺したの?殺したのね?」

「…!」
ホール内にたちこむ煙幕にフランクは歯噛みする。
ようやく狙撃ポイントについたというのにこれでは…
どうするか…煙幕が晴れるまでここに待機するか…
だが、一度狙撃手の存在を明らかにした以上、狙撃の最も大きい利点、不意打ちはもはや期待できない。
フランクは舌打ちをするとさらに移動をはじめた。
48禊 (2):2001/08/18(土) 16:26
「ああ、殺したよ」
何ら変わることのない少年の声。
「僕がそうするって事は、郁未が一番良く知っているだろう?」
「…そうね…」
そう、郁未こそが一番良く知っていた。神奈に侵食されている郁未こそが、今少年がどういう存在か一番良く分かるのだ。
「あなたは、空虚。我を持たない、ただ姫君の望むように動く操り人形。そんなこと分かってた。でも」
痛い。胸が痛い。
「救いたかった。あなたを救いたかった。救いたかったんだよ」
泣き声にならないようにするのは大変だった。
「あなたのこと大切だったから…」
「救いたかったか…」
少年は一歩前に踏み出す。
「過去形なんだね。それじゃあ今は?やっぱり殺すのかい?」
「……」
無言のまま郁未は引き金に指をかける。だが、その手はどうしても震えてしまう。
胸が…痛い…
少年はその動きに頓着せず、一歩一歩階段を下りる。いつもの柔らかな声を出しながら。
「こないで…撃つわよ…」
途切れ途切れの郁未の声はひどくか細く弱弱しい。
「何のために?」
「…何のためって…それは…」
それは…なんだろう?
「何のために撃つんだい?その胸の痛みと引き換えに、君はなにを得るんだい?」
「黙って…こないでよ…」
どうしてこんなに胸が痛いの?私には痛みなんてなくなっているはずなのに。
「郁未。救いが必要なのは君のほうなんじゃないか?」
「黙ってて言ってるでしょ!!」
力を振り絞って叫ぶ郁未。だがもうそれは遅く。
銃身を少年に払われるとその勢いで壁に押し付けられて両手の手首を握られてしまう。
49禊 (3):2001/08/18(土) 16:27
「かわいそうな郁未」
まるで口付けを交わすような距離で少年は続ける。
「とても痛いんだね。伝わってくるよ。郁未の痛みが」
「いやだ…離して…」
身をよじらせるるけれど、力が入らない。ただ、胸だけが痛くてそこだけしか感覚がないみたい。
「郁未はずっと強くなければいけなかったんだよね。ずっと痛みに耐えなくてはいけなかったんだよね。
 本当にめったにいないんだ。いきなりAクラスに所属する女の子なんて」
FARGOのクラス分けは精神力の強さ、過去にどれだけの痛みに耐えたかで決まる。
「この島に着てからも、郁未には辛いことだらけだ。母親の裏切り、死。親友の死。そして僕のことも」
「やめてよ…お願いだから…」
反則だよ。こんなの。こんなふうに…拘束するなんて。
まだ覚えているのに。少年のぬくもりも、抱かれた日のことも。
50禊 (4):2001/08/18(土) 16:28
「そんな中でも郁未は強くあろうとした。それがお母さんが君に望んだことだから」
そう、お母さんは傷ついていた。そうして、そのことに耐えて行けるような強さを身に付けるためにFARGOに入信し、この大会に参加した。
そうして、お母さんは憧れていた。不可視の力を使えるような強さを持つ私に…
「でも、それはとても辛かったはずだ。本当は誰かに頼って楽になりたかったんじゃないか?本当は、侵食が始まった事に安心したんじゃないか?」
「そんなことない…」
嘘だ。分かっていた。
私はどこかで安心していた。侵食が始まったことに。私という存在が姫君に飲み込まれていくことに。痛みが徐々に消えていくことに。
そうして、どこかで期待していた。侵食が進んで姫君に意識を飲まれることで、お母さんやこいつへの辛い思いも消えてしまうんじゃないかと。
郁未の手からベネリが落ちる。
もう少年も力をこめていなく、拘束しているというよりも抱いているといったほうがふさわしかった。
「本来、僕は我を持たない空虚な存在だ。だけど今は違う。
 僕自身誤解していたけど、擬似人格は消滅したわけじゃないんだよ。たしかに巨大な意識に吸収されて同一化してしまったけど、その中で確かに生きているんだ。
 郁未を大切に思う気持ちは確かにあるんだよ」
その少年の言葉は嘘じゃなかった。侵食されている郁未にはそれがわかる。
「郁未、僕と一つにならないか?姫君という大きなな意識に同一化する。それは確かに一つの救いだよ」
痛みもなく苦しみもなく孤独にさいなまれることもない。それは確かに救いの形。お母さんが望んだことそのもの。
「…ちょっとクサイかなぁ。流石に照れるや」
少年は少しはにかんで。
「でも、郁未だって嫌いじゃないだろ。こういうふうに口説かれるの」
「う…ん…」
そっと、口付けが交わされた。
51禊 (5):2001/08/18(土) 16:30
「どうやら、あいつも敵みたいだな」
ささやく往人の声に、芹香は黙ってうなずいた。
煙幕のせいで中の様子はわからないが、途切れ途切れ聞こえてくる会話、一発も放たれない銃声、移動もせず消えもしない人物探知機の二つの光点を考えるにそう判断するしかない。
「でもどうするの?これじゃ叔父様の援護も期待できないわよ? 」
「…いや、むしろこいつはチャンスだ」
問い掛ける芹香の視線に、往人は先を続ける。
「銃撃戦ってのは、初撃が勝負になる事が多い。だから、視界の効かない場所では相手の位置を先に発見できた方が勝つ。だが」
往人は人物探知器をカチャカチャとふる。
「こいつがあるなら、相手の位置を探す必要なんてない。あの煙幕の中じゃこいつはでかいアドバンテージだぜ」
「…一理あるわね」
煙幕が晴れるまで待つという手も確かにあるが…
「じゃあ、踏み込むのね。」
「ああ、ちょっと待ってろ。すぐ帰ってくる」
「な、なんでよ。私も行くわ!!」
慌てる芹香に往人は冷たい視線を向ける。
「武器もないのないのにか? 今からやるのは不意打ちだ。無駄に人数を増やしたら気配を悟られるだけじゃねぇか」
「だったら私が…あんた怪我してるし…」
「芹香」
芹香の抗議を往人が遮る。
「おまえは人を殺した事があるのか?」
その鋭い言葉、視線に芹香の息が詰まる。
「…ないみたいだな。だったら足手まといだ。躊躇なく敵を撃てるかどうかわからない奴なんてな」
「…そんな言い方しなくたって…」
「俺なら撃てる。ためらいなくな」
それだけいうと、往人は芹香に背を向ける。
「ちょっと、もう!!もうちょっと言い方とかあるでしょう!!か弱い女の子に向かって!!」
「誰がか弱い女の子だよ。その性格で良く言うぜ」
「…あのね…本当の私は…」
だが、そういったきり芹香は黙りこくってしまう。
「チッ」
なんなんだよ、調子狂うぜ。柄でもない。
「すぐ帰ってくる、おとなしく待ってろ」
それだけいうと、往人は身を低くしてホールに向かって走りはじめた。
52禊 (6):2001/08/18(土) 16:31
「ほんと、もうちょっとまともな言い方できないのかしら」
走っていく往人の背を見ながら、芹香は呟く。
基本的に往人の言っている事が正しいというのはわかってはいるが…
そう言っているうちに往人の姿は建物の中へ消えた。
(大丈夫だよね…!? )
不意に、芹香は背後に人が立っている事に気づいた。
慌てて振り替える芹香そこには、
「叔父様!?」
フランクがたっていた。
ほっとする、芹香。だが、その腹にフランクの拳がめり込む。
「叔父様…なんで…」
何か熱いものが喉をせり上げてきて、芹香の意識は闇に落ちた。

芹香が胃液とともに吐き出したものを、フランクは摘み上げる。
それは参加者に仕掛けられた爆弾だ。
胃から摘出しても爆発しない事をフランクは当然知っていた。その起爆の方法も。
フランクはビルの2階のホールを見上げる。煙幕のせいで中はなにもみえないが。
これを使えば、あの化け物を倒せるかもしれない。
それほどの威力のあるものではないが、先ほどの往人の爆弾で、ホール自体が半壊している。
もう一度爆発を与えたならば、うまく支柱を破壊すればホールごと潰せるかもしれない。
ここからでも、二階にこの爆弾を投げ込む事はできるだろう。
だが、それはすなわち、既にビルの中には入ってしまった、往人をも巻き込む事になる。
芹香を気絶させたのは、爆弾を取り出すためだけではなく邪魔されないためでもある。
だが…、
フランクは己の感傷を自嘲した。
お笑い種だ。100人の参加者、多くのスタッフ、傭兵を巻き込んでいて、
今更、感傷だと。偽善にもほどがある。
何を犠牲にしても、かりそめの仲間、いや、己の命を犠牲にしても目的は達成しなくてはならない。彰を守るためならば。
手段を選ぶ贅沢など許されるものか…
だが、その自嘲の裏には確かに動揺があったのだろう。
「動くなよ、おっさん!! 」
デザートイーグルの銃口がフランクの後頭部を小突くまで、
北川潤、神尾観鈴という素人の接近にも気づかなかったのだから。
53禊 (7):2001/08/18(土) 16:33
一階をぬけ、既に停止しているエスカレーターから往人は二階に抜ける。
予想どうり、そこには煙の充満と炎の揺らめきのせいで視界が極端に悪い。何も見えないという訳ではないが…
( 奴等の位置は…非常階段の側か…)
こちらの侵入、接近を悟られない事を祈りながら、往人は可能な限り身を低くして移動を開始する。
(落ち着け…有利なのはこっちだ…)
額に汗が浮かぶ。
人物探知器で相手の位置がわかっているとしても、この煙幕、炎はプレッシャーだ。
だが、それでも往人は気配を消しながら、着実に二つの光点に接近していった。
そして…
(あれか!!)
煙幕の切れ目にみえる己と同じ銀髪の頭。
非常階段口からのぞくそれは、確かに光点と同じ位置。
まだ、こちらを向いていない。気づいていない。
(初撃が勝負。この距離ならいける)
確かに視界は悪いが…
ゆっくりとアサルトライフルを構え、狙いをつける。
まだ、相手に動きはない

悪く思うなよ…俺の勝ちだ!!

往人は引き金をひき、
そして、銃声とともに、銀髪の頭がはじけとんだ。
54名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 16:33

            , - ── - - 、
           , ′      _ - "
         /    _ -
        / , -─ "
      _ / ∠__      __
    ,・ , '∠-──`=-−'  ̄   ─ _
   / //        ̄=_- _      - _
   | //          ミ、`ミ ・ - 、     - 、
  | ‖//巛 | | | | 》 》  ミ \ミ     ̄ ・ - . _ ゝ
  | || ‖-─- ソ/ノ-ソ.._ 》ヾ ヽ、ミ゛  ______
 │|.川 |, ┬ 、  ,- 、 》》)ミ、゛  /
  │Y,.| |-'│    |-i ;′ミヽ   < >>1さん、終わりにしようよ。
  ‖巛ミ゛- '  _' `" ; ミ、ミ ミヽ  \______
  川‖|ヾゞミ _  _ . ' ミ ヽ 丶ミ ミ ミ 、
 │|‖ヾ `|\Ξミ 、  ミ ミ  ミ ミ
55禊 (8):2001/08/18(土) 16:34
「観鈴、こいつが管理者なのか?」
北川の問いに、観鈴は首をかしげる。
「敵だとは思うけど…この人に一度襲われているし…」
だけど…郁未さんがいった管理者とはこの人の事ではないはずで…
「はっきりしないな。けど、確かにきな臭い奴ではあるよな」
フランクの足元には、芹香が倒れている。ほんの数時間前に蹴りをくれた少女だ。
彼女が殴られる所を北川たちは見ていた。
(くそ。やっぱりトラブルかよ…)
ある程度は覚悟していたし、それを分かって観鈴についてきたのだが…
だが、まあよしとしなくちゃならないかもしれない。
とりあえず、芹香の危機は救えたと思うので。
(ていうか、そう思わなきゃやってらんねぇよ)
どう決断したって、俺みたいな優柔不断なやつは後悔する訳で。
だったら、いい事もあったと思うことにしよう。
「おい、あんた!!天沢郁未ってのはあのなかにいるのか?」
フランクは答えずにただ自嘲の笑みを浮かべるだけだ。
(くそ、どうするよ)
スナイパーライフルの方はもう捨てさせているが、握り締めたままの右手が気にかかる。
(だからといってここで撃っちまうのはどうにも)
「とりあえず…」
観鈴に指示をだそうとして、そこでビルの中から立て続けに2発の銃声がこだました。
「…!!郁未さん!!」
たまらず、観鈴は走りはじめる。
「おい、ちょっと待て!!」
北川の制止の声にも耳を貸さずに。
5618才の◇◇◇(新)芸能人彼氏と芸能人:2001/08/18(土) 16:39
みんなこんなエエ女見たことある?
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57禊 (9):2001/08/18(土) 16:41
往人の目の前で銀髪の頭は確かにはじけとんだ。

やったぜ…俺は…

まだ、天沢郁未という潜在的な敵は残っているものの、とにかく最強の敵を倒した訳で…
だが、そこで気づいてしまう。
光点の数が減らない事に、
そして、今自分が撃ったものが首だけの存在という事に。
それが坂神蝉丸の頭部であり、本来ならフランクの狙撃に対するフェイクとして少年が用意していた事など、往人の知る由も無い事。
ただ、その異様な光景に往人の思考がとまってしまう。
そして、気づくのが遅れてしまう。
すでに己の銃声によって、人物探知器によるアドバンテージが失われてしまったという事に。

ドンッ

銃声、非常階段口に走るマズルフラッシュ、
少年によるベレッタの一撃は、
先ほど手当てしたところと同じ肩口を貫き、激痛が走る、
それでもライフルを手放さずに倒れなかった往人は賞賛に値するが、
少年のスピードに対応できるはずも無く、その頬に拳がめり込み、
往人は仰向けに倒されて、怪我している肩口と、
右手を少年の足が踏み潰し、ついにライフルを手放してしまう。
58禊 (10):2001/08/18(土) 16:41
「ガアッ!!」
激痛にのたうつ往人。何とか立ち上がろうとするも、もうそんな力は入らない。
致命傷ではないにしても、けっして軽い傷ではないのだ。
「郁未…大丈夫かい?」
少年は往人を見下ろしたまま、優しく声をかける。
「うん…大丈夫…」
煙の中、往人は郁未をみた。
その目は虚ろだ。前に会った時のあの強い意志の光はもう感じられない。
「その人…」
「ああ、こいつ? 敵だよ。僕らの命を狙おうとしただろ」
「でも…その人は…」
「敵だよ、郁未。敵は殺さなくちゃ」
往人のライフルを拾い上げると、少年は踏み潰している肩口を軸にくるっとまわって、郁未の方をむく。
「…!!畜生…」
激痛に往人は意識をつなぐ事しかできない。
「郁未がやるんだ。そのショットガンで」
「私が…? 」
「そう、君が。そうして楽になるといい」
これは、禊。今までの自分を断ち切る儀式。
本来なら、神尾観鈴がこの役割を果たすはずだった。
大魔法による神奈の弱体化さえなければ、すぐに侵食は進み、
観鈴を殺す事で、郁未の侵食は完了するはずだった。
そう、これで侵食は完了するはずだ。殺人という罪を犯す事で。

「さあ殺すんだ。郁未」
その声に応じて、ベネリM3の銃口が倒れたままの往人に向けられる ――――――

【来栖川芹香 気絶。胃から爆弾摘出】
【北川、フランクに銃口を突きつけている。フランク胃爆弾所持】
【神尾観鈴 二階ホールに移動。G3A3ライフル所持】
【ホール内煙幕。視界悪し】
【少年、郁未、往人ホール内。往人、肩に負傷】
59名無しさんだよもん:2001/08/18(土) 19:03
ふたりぶんの青空を
君は手で囲った
陽の匂いのする草を
僕は手に結んだ

風を背に今、僕らが走り抜けたよ

あの大空 目指してた

遠くへ 遠くへ

越えてゆく遥か夏も
渡る川の流れも
いつか変わって いつか忘れて
同じ思い守れずにいる

ふたりぶんの青空に
飛行機雲 とばした

笑ってる子供たちの
手には虫かご あの思い出

越えてゆく遥か夢も
流る川のほとりを
いつもひとりで いつも歩いた
今は違う途を

遠くなる遥か夏よ
流る川の町で
僕ら遊んだ 僕ら生きてた

今も覚えてる
60死神と、天使と、作者:2001/08/18(土) 23:29
いつも、いつも、すいません。

死神と、天使と、(6)は二重カキコです。
後の方は抹消してください。

あと、マナの所持品に『聖のメス』を追加してください。

よろしくお願いします。
61輝きと虚しさ(1):2001/08/19(日) 19:23
ただ巨木が、其処此処に立ち連なるのみだった。
見上げれば、覆い被さるような高みに茂る枝葉があるだけだ。
傾き始めた太陽の光を遮断して、僅かに赤みがかった光を通している。
湿気を帯びた空気が、暗い原生林を抜けて冷風をもたらしていた。

何よりも、其処を異様な世界に仕立てていたのは、眠るように倒れ伏した人々の姿。
その表情には、何もない。
苦痛も、安寧も、後悔も、驚愕も-----何も、なかった。

おそらく、誰も生き残っては居ないだろう、そう思いつつもスフィーは生存者を探しながら歩いた。
その間に、遠くからの放送を聞いてもいる。
二人の女子高生から聞いた、蝉丸とかいうリーダー格の男の演説。
しかし、ここまで離れてしまって何の成果も無いまま、いまさら町の南まで戻れはしない。

(何よ、もう!タイミングが悪いのよ!)
単独でこんな所まで来るはめになったのは、人数不足だから、と割り切った結果なのだ。
腹を立てながら死体調査を続ける。
(…”死体”?)
ふと、気が付く。
いつの間にか、”生存者”ではなく”死体”を相手にしていた。
(あたし、この人たちの”死に方”を観察しているだけかもしれない…)
自分に対する苛立ちから、スフィーは憮然とした表情で大きく溜息をつき、天を仰ぐ。

…ひとりは、さみしい。
生き残るという事が、どれほど幸せなのだろうか。
木々に締め付けられた小さな視界の先にある、小さな雲の流れを見送りながら、スフィーは考えた。

そして、おもむろに雲へと手を伸ばす。
当然届かない掌を、ぐっと握り締める。
いつの間にか、大人のそれに戻っている大きなこぶし。

 けれど、それはもう。
 虚しさだけしか、掴めない。

 
62輝きと虚しさ(2):2001/08/19(日) 19:23
「うりゅ…」
じわり、と歪んだ視界を振り切るように、目をしばたいて視線を地上に戻す。
相変わらず、死因の解らぬ人々が、芝居のようにばたばたと倒れている。
まるで役者が観客に背を向けぬように、全員が同じ方向へ向いていた。
(……お芝居、ね…)

虫の知らせ、だろうか。
なんの気なしに、スフィーは振り向いた。

この芝居の観客は、ここに倒れ伏す人々や、その指導者だとばかり思っていた。
…最初はそうだったのだろう。
でも、今は。
ひょっとして、違うのかもしれない。
役者のひとりが、いつの間にか、全てを仕切っていたのではないか。
(それが、あなたなのね-----)
ゆっくりと、その倒れた人々の脚の先へと、視界を巡らせる。

 無数の巨木が遮る中、狭い狭い空間を。
 遥か、遠くまで見通すと。
 -----何かが、ぼんやりと光っていた。

 彼女は独り、立っていた。
 輝きは、白い羽根。

 夜闇のように黒い、二つの虚空。
 それは、こちらを見返す瞳であった。
 
63輝きと虚しさ(3):2001/08/19(日) 19:24
スフィーが目を合わせたのを確認すると、彼女は薄く笑う。
温かみの無い、純度の高い氷のような-----透明な、透明な-----微笑み。
ぞくり、とスフィーの毛が逆立つ。

 …この感じは、冷気?
 顔が、脚が、腕が、こわばる。

刀の中に封じられ、祠に据えられた、目を閉じて座した翼ある少女。
そんなイメージを打ち砕いて。
彼女は独り、立っていた。
「あ…あなた……」
スフィーの口は、上手く回らない。


 「存じておろう?
  余は、神奈…神奈備命じゃ」

 
64名無したちの挽歌:2001/08/19(日) 19:27
【スフィー、神奈備命と遭遇】


「輝きと虚しさ」です。
神奈関連は、いろいろと不都合がありそうですけれども。

仕様ということで、ひとつ(ぉぃ
「私が、殺すの?」
 郁未は虚ろな目をしながら往人に銃口を向けている。
「ああ、そうすれば楽になれる。僕と一つになれる」
「あなたと、一つに……」
『カシャ』
 引き金に指をかける。
「こうすれば、もうつらい思いはしなくなるのね」
「郁未さんっ!!」

『ガンッ』
 ホール内に銃声が響く。
『カラララッ』
 銃が床をすべる音がそれに続く。
『ポタッポタッ』
 腕から血が滴り落ちる。

「これはどういうことかな?郁未」
「見たままのとおりよ。私はもう迷わない。あなたを救ってあげるわ!」
 入り口の近くで観鈴が腰を抜かしている。
「郁美さん………」
「ありがとう観鈴。あなたの声って目が覚めるわね」
「み、観鈴…」
 往人がうめきながら言う。
「観鈴、あなたはこの人のことお願いね」
 そう言い放つと郁未はベネリを構えなおし少年に向けて撃つ。
 しかし、そこに少年の姿はもう無く、少年は外に飛び出していた。
 郁未も続けて外に出る。
「往人さん!」
「無事、だったんだな」
 つらそうに往人は声を搾り出す。
「うん、郁未さんと一緒だったんだよ」
「そうか…、すまんが少し眠い。すこし眠っていいか?」
「えっ?」
 観鈴は一瞬不安になったが往人がすぅすぅと寝息を立てるのを聞きほっと胸をなでおろした。
「よかった」
 観鈴の頬に一筋の涙がつたう。


「分が悪いな」
 外に飛び出した少年はすぐに森に身を隠そうとしていた。
 いくら女二人とはいえ銃を持ったもの二人を相手にするのは具合が悪すぎた。
「待ちなさい!」
 少年が振り返るとそこには郁未が銃を構え立っていた。
「追ってきたのかい?」
「もう、終わりにしましょう」
 悲痛な顔をした郁未がそこに立っている。
「さっき、彼を撃っていればそんなつらい思いしなくてもすんだのに…」
「そうね、そうすれば私の心は壊れていたでしょうから。
 でも、それは私じゃないもの。私は私が私で無くなってまで生きたいとは思わない」
「つらい選択だね」
 その言葉を最後に少年は一気に間合いを詰める。
 郁未は鞄からバルサンを取り出し煙を放出させる。
 煙を前に少年は一瞬躊躇する。
 その隙に煙に紛れ郁未は木に登る。
 そして少年がいたと思われるところに銃を向け撃とうとする。
 しかし、ゾクリと背中に悪寒が走りはっと後ろを振り返ると、
 少年が微笑を浮かべながらそこにいた。
 次の瞬間、郁未は吹き飛ばされ、木から落ち、地面に転がる。
 その衝撃で銃も遠くに転がってしまう。
 身を守るものが無くなった郁未にゆっくりと少年が近づく。
 辺りにはバルサンの煙が立ちこめている。
 そして郁未は起き上がりながら鞄をがさがさとあさり、ロケット花火(笛付き)を取り出していた。
「そんなものでどうしようというんだい?」
 郁未はロケット花火に火をつけ少年に投げ付けようとする。
 しかし狙いが定まらないのか、それは少年の遥か後方にいき、
『ヒュルル〜、パン』
 と、情けない音とともに破裂した。
 少年はそれを振り返ろうともせず、
「『もう終わりにしよう』郁未はさっきこう言ったね
 でも、郁未には僕を殺せない。例え、君がどんな銃器を持っていようとね。
 違うかい?」
 と、微笑を浮かべながら言った。
「ええ、そうね。きっと私にはあなたを殺せないでしょうね」
「それじゃ、どうやって終わらせる?
 残念だよ、郁未。君には僕といっしょにいきてほしかったのに!
 まあ、姫君の分身を持つ人間はきみだけではない。
 最後は僕の手で眠らせてあげるよ。」
 偽典の一枚を破り、それで郁未の首に斬りかかった。
『ザシュッ』
 血が吹き出る。
 辺りを取り巻いていたバルサンの煙は風に流され、それはほとんど無くなっていた。

 振りかかったものは郁未の首筋にに深深と突き刺さっていた。
「最後に言っておくよ、愛していたよ。郁未」
 血を流す唇に口付けをする少年。
『ドンッ』
 鈍い音がする。
 唇を離す二人。
 そして郁未は彼を強く抱きしめる。
「さっき、言ったわよね。私にはあなたを殺せない
 そのとおりよ。だからそれは別の人にしてもらうことにしたわ」
 郁未は血を吐きながら呟く。
「おお!なんだ?いまのは?敵襲?ミサイル?
 びっくりして思わず撃ち返してしまったじゃねえか」
「……!!…!」
「なに?もっと撃て?じゃないとやられる?」
「…!」
「わかったよ、撃てばいいんだろ?」
 そう言って、北川はデザートイーグルを先ほどなにかが飛んできた方に向けて撃ち始めた。
 フランクも地面に落としていたライフルを拾い撃った。


「今の弾は僕を貫通してるぞ、郁未」
「ええ、そうね。わたしにもあたっているわ」
「どうして!?そうか、煙は身を隠すためでなく僕に周りを見せないためだったのか…
 そして、ロケット花火で僕の位置を知らせたわけか…
 すばらしい連携プレイじゃないか」
「はじめから狙ってたわけじゃないわ。
 あなたを追う途中で銃を構えてた人を見かけたからもしかたらと思っただけ…」
「いちかばちかの賭けに出たということか。郁未らしくないな」
『ドンッドンッ』
 少年の体に銃弾が突き刺さる。
 それはもちろん貫通して郁未の体にも突き刺さる。
 外れた弾が二人の周りを通過する。
「私も言っておくわ。愛していたわ。いえ、愛しているわ」
 ふたりの唇が重なる。

「いっしょにいきましょう」

 そして、二人は抱き合いながらその場に倒れ、再び起き上がることは無かった。



【天沢郁未、少年、死亡】
【残り18人】
 少年に促され、ゆっくりとベネリの銃口が往人のほうを向く。
 うつろに冴え渡る瞳とは対照的に、郁未の手元は定まらない。
 拮抗しているのだろう。理性と感情とが。

 しかしそれも時間の問題だと少年は踏んだ。時が経てば経つほど侵食は進む。
 何より迷いは心を弱らせる。一時的にせよ。
「もう思い悩む必要はない。辛い思いをすることはないんだ」
 どこまでも穏やかに、少年は語りかける。
「さあ郁未。共に行こう――」

「……郁…未さ……ん!」

 彼方より、突如聞こえてきたその声に。
 びくり、と郁未の体が震える。

「……郁未……さ……ん!」

 声はわずかに近づき。そして震えが体全体に伝わっていく。

「……郁……未…さん!」

 そう。その声は、突き刺さるような優しい記憶のかけら。
 その痛みに、郁未の意識は激しく揺れた。
「……なんとまあ、困ったね。神尾観鈴……か」
 少年は声の主を思う。観鈴はここに来るだろう。だが、今の郁未に観鈴はまだ殺せまい。
 そして観鈴がいては郁未に悪影響を及ぼす。
「郁未を困らせるいけない子には、とりあえず消えてもらおうか」
 呟くと、足元の往人を一瞥しえぐり込むようにその右肩を踏みつける。
 ゴキリと音がして、往人の右肩が外れた。
「ぐあっ……」
 往人の呻き声。
 少年は往人の上から降りると階段の方へ歩き出そうとする。


(ぐ……観鈴、だと)
 往人は激しい痛みの中、紙一重で意識を保っていた。
 少年は観鈴と言った。
 目の前で銃を突きつけている女――郁未は、観鈴らしき声が聞こえ出してから様子がおかしい。
 そして少年の行動。消えてもらおうか。その一文がリフレインする。
(あの馬鹿……なんでわざわざこんなところに来るんだ)
 護りたかった者は次々に消えていった。だからせめて、観鈴だけは。
(殺させるわけには、いかない……)
 そして同時に、これは最初で最後のチャンス。
 少年に不意打ちを食らったとき、銃を最後まで離さずにいられた。だから仕込みができた。
 何度も意識を失いそうになりつつ、耐えた。だからまだそれは生きている。
 郁未を見る。心ここにあらずといった様子だ。今ならわずかな隙をつけるだろう。
 少年を見る。そして彼の持つアサルトライフルに、念を集中する。
 法術、それはほんのわずかな力に過ぎない。だが……ただ引き金を引くだけなら、それで充分。
(さあ……楽しい人形劇のはじまり、だ)
 唐突に、少年のライフルが勝手に発砲した。
「な……これはっ!?」
 立て続けにもう一度、発砲。
 片手で、しかも不意を突かれては、発射の反動に耐えるべくも無い。
 二度の反動で少年の上半身は回転し、大きくよろけた。
 同時に往人が、全身の力を振り絞って跳ね起きる。
「うおおおおおおおおおっ!!」
 叫ぶ。そうしなければ、動くこともできなかっただろうから。
 往人はすぐさま腰の後ろから弾切れのデザートイーグルを抜き放つと、少年に躍りかかる。
 少年の体勢は崩れたまま。
 立て直す暇を与えず、往人は1.8キロの銃床をその頭部に叩き込む――
 ――その途端、一発の銃声が横から聞こえ、二人はまとめて吹っ飛んだ。
 銃声と叫び声に郁未の意識がはっきりしたとき、
 目に入ったのは襲い掛かられる少年だった。
 操られた意識と郁未の心は同時に同じ判断を下した。
 少年を救え、と。
 そしてとっさに発砲した。狙いもろくに定めずに。
「……」
 倒れ伏す少年に近づく。――息はある。
 散弾は少年をも巻き込んだが、偽典の守りもあってか致命傷にはなっていないようだ。
 気絶しているのは殴られたせいだろう。
 往人を見る。――こちらも、まだかろうじて生きている。
 直撃ではなかった。しかし、積もり積もった怪我はかなり深刻になっている。
 放っておけば死ぬかもしれない。
「…………」
 郁未は少年を担いで引きずり移動させ、往人のほうを見る。
 少し考えて、そしてベネリをゆっくりと――

「――郁未さん!」

 すぐ近くから呼ぶ声が聞こえ、郁未は顔をあげる。
 やがて煙の向こうから観鈴が姿をあらわして、

 そして二人は再会した。


【郁未、観鈴、少年、往人 ホール内】
【ホール内の煙幕は薄れ始めている】
【往人 重症による気絶】
【少年 軽症・脳震盪による気絶】
73そして〜作者:2001/08/20(月) 04:04
should作者のかたが辞退されたようなので、あげてみました。
法術関連が少々微妙ですが・・・直接的ではないので、ご勘弁を。
74名無しさんだよもん:2001/08/20(月) 07:33
syounennmannse-
75名無しさんだよもん:2001/08/20(月) 23:13
メンテ。
76明星。:2001/08/21(火) 01:24
彰は東に、初音はその正反対である――西に向かって行ってしまった。
まるで何が起こったのか判らない。初音の心に何があったのか?
考えても埒があかない。初音が何を意図しているかなど考える前に、自分は東へ向かうべきなのだ。
耕一の言葉を信じるなら、東に彰はいる筈なのだから。
私、観月マナは座り込んでいる耕一の包帯を巻き直しながら、そんな事を考える。
だが、まったく東に向かう気がしないのは何故だ。
――それは、きっと彰は初音が向かった方にいるのだと、そんな淡い予感を抱いていたからだった。

「初音ちゃんは、彰さんのところに行ったんだと思うんだ」
「どうして? 彰は正反対の方向に行ったんだぜ」
「――良く、わからないけど。乙女っぽく言うなら、恋する女の子のカン、っていうのかな、
 彰さんが島を迂回して西側に行ったんじゃないか、って直感したんじゃないかと思うのよ」
「……乙女、ねえ」
なんかに毒されてるんじゃないか? そんな風な目である。
「……ナニよ、その目は」


初音の行動によって、幾許かの不安に駆られているだろう耕一は、それでも大人しくマナの治療を受けている。
それは、自分自身がすぐに動き出せるほど、肉体に活気があるわけではない事が良く判っていたからだ。
数々の切り傷や、先程銃で撃たれた衝撃。それらは、耕一を立ち上がらせる事さえ困難にしていた。

彰が自殺するつもりである事は判っていた。
銃を捨てた彰がどうやって自殺するか。考えられるのは海へ身投げする事くらいである。
ひとたび立ち上がる事が出来たら、そのまま走り出そう。何処でも良い、必ず見つけてやる。
あの二人をなくすわけにはいかない。
77明星。:2001/08/21(火) 01:24

――それにしても、なんて深い傷ばかりなのだろう。私は
多分、相当量の血も流れただろう事が想像できる。
簡潔な治療しか為されておらず、常人ならば気を失うどころか、死に至る可能性すらあっただろう。
太い腕と厚い胸板は強い男の象徴で、自分に向けているその優しい目と笑顔は、優しい男の象徴だった。
(……なんだか私ってば、ヘンな感情を抱いている気がするわ)
「アンタ……それにしても、よくこんだけやられて無事だったわね」
それをごまかすかのように、私は憎まれ口を叩く。
「丈夫だけが売り物だからね、……って、あうちっ! もう少し優しくっ」
耕一は苦しそうな顔をしつつも、優しく微笑んで私の頭を撫でる。

「マナちゃん……生きていてくれて、ありがとう」

そして耕一は、掠れた声でそんな言葉を呟いた。
その言葉を聞いて、どうしてか私は泣きそうになる。
「アンタこそ……ホントに、ホントに心配したんだからねっ! 無茶ばかりやってっ……」
涙を堪えて吐いた言葉は――そんな言葉だった。なんて不似合いな言葉を吐くのだろう、今日の私は。
「ありがとう、マナちゃん」
優しく微笑む耕一の顔を直視できない。
――なんでよ。
78明星。:2001/08/21(火) 01:24

「――そろそろ、戻ったかな」
そんな事を呟いて、耕一は身体を起こす。
手のひらを握り、何かの感触を掴むような様子を見せた後、
「うん、眩暈は収まった。――そろそろ行こう」
耕一はそう呟いて立ちあがった。その目には穏やかさと強い意志が同居していて、
今までに見た事もなかったような、途方もなく――深い耕一を、私は目の当たりにした。
私は一瞬その表情に見蕩れかけたが、慌てて立ちあがると、歩き出した耕一に付随した。
向かっている方向は、西だった。
結局耕一は、初音の向かった方へ行く事にしたのだった。
彼女こそが彰を一番に見つける事が出来るのだという感覚もあったのだろう。

そんな事を考えながら、わたしはふと気配を近くに感じて振り返る。
耕一も同じような気配を感じたのだろう、立ち止まって振り返る。
一瞬の緊張。あの放送を聞いて集まろうとした人間の一人だろうか?

がさり、と音を立てて茂みから現れたのは――
「……耕一っ!」
「――あずさ?」
ショートカットの長身でスタイルの良い、可愛い女の子だった。
いろいろ荷物を持っているが、手に持ったレーダーのようなものが目に付いた。あれはそのまま、レーダーなのだろうか。
「……やっと、やっと逢えた――レーダーで初音捜してたら、あんたが近くにいるみたいだったから、」
ああ、もうっ――顔をくしゃくしゃにして、女の子は笑った。

言葉を失い呆然とした表情の耕一と、涙を流して喜ぶ女の子の姿が、やけに眩しく見えた。
79明星。:2001/08/21(火) 01:25

そんな私の気持ちなどまったく気にも留めないように二人は二人だけの世界を作り出し、手を取り合って踊っていた。
……むかつく。

「梓、再会を激しく喜びたいところなんだが、残念ながら時間がない。初音ちゃんは何処らへんにいるか判るか?」
耕一は梓というその少女の肩に手を置くと、そんな風に云った。
「わかってるよ。初音は突然西に向けて走り出した。まだ森の中だね。丘の辺りかな。
 芹香っていう女の子も捜さなくちゃいけないけど、まずは初音に逢いたい。急ごう」
……結局千鶴姉達と同じ方向に行く事になるのか。そんな呟きが聞こえた。

そうして私達三人は森の中を駆け出した。
耕一の体調もあって、それ程の速度ではない。そういうわけで、話をする余裕もあった。
「そういえば自己紹介がまだだったね」
そう云って梓は笑う。その屈託のない笑みが先程の私の苛立ちを助長する、という事は殆どなく、
むしろ素直に、爽やかな人だ、という印象を覚えるばかりだった。
「あたしは柏木梓。こいつの従姉妹だよ」
そういって爽やかに笑う梓に、私も微笑んだ。
なんとなく、この人と耕一は、そういう関係にあるんじゃないのかな、と思ってしまう。
大人の女性だもんなあ、すごいもの、スタイル。信じられない。
それでいて顔立ちは子供っぽいところがある可愛い顔だっていうんだから……。
「私は観月マナ。よろしく、梓さん」

梓が自分と同じ年齢だという事を知るのは、もっと後になってからである。
ともかく、彰と初音の場所に向かうことが先決だった。


【柏木耕一 観月マナ 柏木梓  ――西に向かって進行。時間帯は初音と彰が再会する十五分ほど前です】
80名無しさんだよもん:2001/08/21(火) 01:29
補足です。
往人の爆破音の記述が無かったのは、街から離れた場所だった故、としてください。
梓と出会って町から離れた頃、爆発――という事で。
81名無しさんだよもん:2001/08/22(水) 01:19
メンテでぃす。書き手の皆さん、頑張って下さい。
82名無しさんだよもん:2001/08/22(水) 03:33
早くバトロワ本編を読まなきゃメソテ
83名無しさんだよもん:2001/08/22(水) 05:53
寝る前にメンテ
84魂喰らい(1):2001/08/22(水) 07:47
斜面に、二つの人影があった。
そこは山の中腹。
山頂に近づくにつれて木々の高さが増すという、不自然な植生。
それがこの山の異常性を、雄弁に物語っている。

肩の高さを越える木がちらほらと現れ始めたせいか、小柄なほうの人影が狭まる視界に不快げな表情を作った。
「…うぐぅ」
この小さな人物は、月宮あゆ。
何かに引き付けられるように、乏しい体力を振り絞って、この山頂を目指している。

大きなほうの人影が、腰に手を当てて一息つく。
「ねえ、あゆちゃん?
 本当に、こちらなの?」
比べて大きな人物は、柏木千鶴。
あゆの周辺で起こる怪奇現象を目の当たりにして、いつになく現実的な思考を捨てて、彼女の主張を優先させている。

 先ほどの放送で、今後の方針は決定していた。
 (施設に残った詠美ちゃんと繭ちゃんを回収して、梓と合流したら小学校に行こう)
 放送のあとに聞こえた声が、いまだに殺し合いの続いている事を知らしめていたが、一つの指針として小学校を意識する
 人間は、結構いるのではないだろうか。
 そう考えての結論である。

 …しかし、今は。
 「間に合わない」という言葉に、背中を押されている。
 何故かは解らないが、千鶴自身も焦りのような胸騒ぎのような、何かを感じている。
 あゆに投げかけた言葉は、「問い」ではなく「確認」なのかもしれない。

 
85魂喰らい(2):2001/08/22(水) 07:47
「うんっ、ここのっ、上、だよっ」
「…そんなに慌てないといけないの?」
登り始めはやたらと元気だったあゆだが、今では肩で息をしていた。
上に危険があるのならば、この状態で辿り付いても得るものはない。
そう考えて、何度か休憩を提案したが、あゆは山を登り始めてからというものの、今まで以上に急いでいるようだった。

「そう、急がないと、駄目、なんだよっ…って、あれっ?」
断言したあゆが、言葉と裏腹に立ち止まる。
「…あら……?」
千鶴も立ち止まって、あたりを見回す。
木々は高さと密度を増す一方だったが、ある一線を境に全く生えていないのだ。
不自然に開けた視界の先には、再び林が見える。
今までの雑木林ではなく、縄と紙を巻きつけた、異常に高い巨木が連なっていた。

「何かしら、これ?」
「うぐぅ?」
よく解らないが、何かある。
そんな場所に到達したと二人は確信しながら、首を捻っていた。


 
86魂喰らい(3):2001/08/22(水) 07:48
暗い林の中で、一つの人影と、一つの人影-----いや、輝く人-----が距離をおいて見つめあっている。
影は儚げで、輝きは誇らしげに立っていた。

……寒い。
それに、苦しい。
スフィーは酸欠状態の魚のように、ただ口をぱくつかせていた。
ほんの数時間前には、暑ささえ感じられた空気が、今では真冬のように冷え込んでいる。

響くのは、まだ幼さの残る声。
先の放送よりも小さな声なのに、すぐ隣に居るかのように、明瞭だった。
「…何を、恐れる?
 お主は、余に会いにきたのであろう?」
親しげな口調。
神奈はあきれたように余裕をちらつかせて、言葉を続ける。
「都合よく、反りの合う人格を探しにきたか?
 …よく、考えよ。
 今の余も、お主の期待した人格も、余の一部に過ぎぬ」

封じられ、動けぬはずの存在が、雄弁に物語る。
スフィーが何もいわないうちから、彼女は先へ先へと話を進めて行く。
「誰しも、心のかたちは平面ではあらぬ。
 複雑な多くの切り口を持った、巨大な多面体ようなものじゃ。
 お気に入りの一面だけを説得して、余という存在の全てを掌握できる、とでも思ったか?」
「くっ……」
強力な現在の神奈の意志の前に、スフィーの希望は儚いものであった。
そして神奈にとっては、僭越な支配欲にしか映らない。

 …いつの間にか、彼女が近付いていた。
 歩を進めることもなく、翼をはためかせることもなく。
 ただ事実として-----近付いている。

「もっとも、着眼点は悪くなかったやもしれぬ。
 いや、惜しいところであった、かの?
 先ほどの外法…あれで、消えたのじゃ。」
無感動に評価を下す神奈。
 
87魂喰らい(4):2001/08/22(水) 07:50
それに対してスフィーは、悲壮な顔で尋ねる。
「消えたって…どういうこと!?」
「文字通りじゃ。
 もはや、お主の期待する神奈は存在せぬ。
 今ここにある余が、唯一にして全てなのじゃ」

 …寒い…こごえてしまいそう。
 どうして彼女は、あたしのそばに来るのだろう?

「…お主がここに来たのは無駄足であったろうが、余は歓迎する。
 その甘美な魂の絶望を、差し出すがよい」
そう言って再び、あの氷のような微笑を浮かべる。

 目の前に、彼女がいた。
 そうだ、この感じは。
 もはや冷気などではない。

「そして余の肉として-----」
笑みが、無限に広がっていく。

 これは、凍気だ。
 顔が、脚が、腕がこわばる。
 身体が、精神がこごえる。

「-----余に、従え」
神奈が手を伸ばす。
スフィーは微動だに出来なかった。

 寒い。寒い寒い寒い。
 …あたしの思考が。
 …あたしの思考が、寒さの中で凍てついて……。


夕暮れの空に染みる微かな赤は、まだ予兆に過ぎない。
二つの影は-----いや、一つの影と、一つの輝きは----今まさに、重なろうとしていた。
 
88名無したちの挽歌:2001/08/22(水) 07:52
そんなわけで「魂喰らい」お送りいたします。

神奈ネタは微妙なものなので…この辺で切っておきます。
89名無しさんだよもん:2001/08/22(水) 12:26
せっかくだからあげる
90         :2001/08/22(水) 17:27
何だか自信が無くなって来たけどメンテ
91名無しさんだよもん:2001/08/22(水) 18:17
age
92名無しさんだよもん:2001/08/22(水) 19:18
話を切るようで悪いんだが…メンテはしないと駄目なので。
93名無しさんだよもん:2001/08/22(水) 21:41
ちとブックマークをはさんでおきます…
94女、二人(1):2001/08/22(水) 22:03
「……来ちゃったんだ」

ぼそりと呟く。
全身から覇気が失われ、一見すれば過度に疲弊したように思えるその風体。
だが見るものが見ればそれは――。

「う……うん」

白くけぶる視界に翻弄されつつも、ようやく観鈴の瞳は郁未の姿を捉えた。

「え…………」

驚き、ではなく戸惑い。
混濁した彼女の瞳は、未だ観鈴の見たことのないものだったから。

「言うこと聞かない子なんだから……」

郁未の口から吐き出されたのは、観鈴の行動をたしなめるセリフ。
だがその口調に厳しさはない。
むしろ――緩い。

「いくみ……さん」

定石を欠いた、返事になっていない返事。
だが今の観鈴には彼女の名前を呼ぶことくらいしか思いつかなかった。

「……来ちゃったんだ」

ぼそりと呟く。
全身から覇気が失われ、一見すれば過度に疲弊したように思えるその風体。
だが見るものが見ればそれは――。

「う……うん」

白くけぶる視界に翻弄されつつも、ようやく観鈴の瞳は郁未の姿を捉えた。
95女、二人(2):2001/08/22(水) 22:03

「え…………」

驚き、ではなく戸惑い。
混濁した彼女の瞳は、未だ観鈴の見たことのないものだったから。

「言うこと聞かない子なんだから……」

郁未の口から吐き出されたのは、観鈴の行動をたしなめるセリフ。
だがその口調に厳しさはない。
むしろ――緩い。

「いくみ……さん」

定石を欠いた、返事になっていない返事。
だが今の観鈴には彼女の名前を呼ぶことくらいしか思いつかなかった。

「わたしを助けに来てくれたの? それとも――」

それでも自分の気持ちを――混雑し翻弄され、もうずいぶんと儚げに感じられていても――伝えようとして、
観鈴は郁未のことを一心に見つめていた。
――そして気付いた。
彼女の目は、自分を見ていないと言うことに。

「止めに来たの? 私を?」

チャキッ。

小気味いい音を立てて拳銃が構えられる。
それに呼応したように……煙が晴れる。

荒い息。
どす黒く滲んだ紅。
すすに黒く汚れた衣服。

「――往人さん!?」
96女、二人(3):2001/08/22(水) 22:09
彼女が見ていたものは、
そして彼女が銃を向けているのは他でもない。

往人だった。


もういいかな……。
既にそんなことを思い始めていた。
”私”の中に渦巻いていたいろいろな感情、
それら全てがまるでもともとそうであったかのように色褪せて、
”私”の中で希薄になってゆく。
意識してそれらを区別しなきゃならないほどに、曖昧になってゆく。
穏やかに融けていく。
なんだろう……。
少し早いのかな?
本来、”私”がこうなってしまうには。

――穏やかな侵食は”壁”を突き崩し、
少年との邂逅をきっかけに、今まさに郁未を取り込もうとしている。

突然、ではないよね。
うん、分かっていたもの。
いつかはこうなってしまうことは。
ただ少し早いだけ。
茫洋が私をうずめていく。
――私だけの自我、によるものじゃないかも知れないけど。
どうして、こんな気持ちになってしまったんだろう。

瞬間。
少年を救おうとして、発砲。
”私”のほとんどは”彼”というとろけるように甘美な存在の中に在って――。
そしてそれを激しく揺さぶる。
抑揚?
そう、――感情の。
どんどん進行しているのは、恐らくその反動なのね。
97女、二人(4):2001/08/22(水) 22:10
その理解を何から齎されたのか――神奈か、少年か、それとも彼女自身か――そんなことを考える必要などないほどに、
滑らかに流れ行く思考。
彼女は、ある一定の方向へ澄み渡っていた。

摘み取られていく痛み。
それがどこへ向かっていくかなど知らない。
今、この瞬間の私を認識できていればそれでいい。

――禊は、誰も予期し得なかったベクトルで為されたのだから。


観鈴は表情をこわばらせたまま絶句している。

死。
眼前に突きつけられ、直視することを求められた――死。
誰のものであったとしても、その事実は心を深くえぐる。
そして今回起こりえるだろうそれは、一際大きな痛みを彼女に残すだろうことは明白だった。
失う悲しみも、奪われる痛みももう十分に知りすぎた……。

「……違うようね。それならばそれでも良かったのに」
「え――」

だが、そこに観鈴を能動的に殺そうとする意図は含めていなかった。
いや、本来なら誰の命であっても奪おうなどとは考えない。
守る。
守るための戦い。
今私の側に倒れている、”彼”を守るため。
それであってこそ、私はこの銃を放つことが出来る。
守ることも殺すことも、全て私が立てた誓い。
私の思いゆえにある、純粋な思い。
なら、私は新たな決意をしよう。
私は――。

「彼を守るためなら、あなただって殺すわ」

――守るために、殺そう。
98女、二人(5):2001/08/22(水) 22:18

郁未の瞳に掛かっていた虚ろの影がスッと消える。
光が、再び灯る。
その輝きは――それが偽りのものでないかどうかなど確かめる術はないが――、
かつての侵食される前の郁未のそれと同じように見えた。

「――撃っちゃうわよ。いいの?」
郁未はあっさりとそう言う。

「だって彼を殺さないと私たちが殺されるんだもの」
ならばなぜ――。

「そんなことないよ……。往人さんがそんな人じゃないってことは、郁美さんも知って――」
「現実を見なさいよ。あなたが今目にしているもの、それこそが紛れもない事実、そして真実なのよ」
私は一思いに撃ってしまわない――。

「――でもあなたにも選択肢はある」
「え?」
「その銃で私と彼を殺す。そうすればそっちの彼も生き残れるかもしれない」
「!?」

観鈴は再び顔を強張らせた。
それは奇しくも立場の反転――。
観鈴の立たされた状況は、先ほどまでの郁未のそれと酷似していた。

全ての方向にいい顔など出来るわけがない。
そんな偽善はもう通じない。
何かを守るために何かを傷つけなければならないところまで、事態は進んでいる。
――そんなことは、もうみんな分かっていたはずなのに。
99女、二人(6):2001/08/22(水) 22:18
「……撃たないの? じゃあ、そこまでね」

撃鉄が、落ちる。
一瞬の刹那の後、轟音が耳を劈いた。

ダァァァァァンン!

煙は晴れた。
だが建物を包む炎は、次第にその勢いを増していく。
いつ、彼女たちに襲い掛かってもおかしくない程に。

――意識を失い倒れたままの黒い影。
   少年は黙したまま、何も語らない――。

【時間的には前話から数分程度の経過】
【被弾したものがいるかどうかは次の書き手に委任】
【ホール内の煙は大分晴れている】
【炎自体の勢いは増している】
100作者:2001/08/22(水) 22:23
……すみません。
コピペしくじって最初の方で変にループしていますね。
(1)の26行目までダブっています。
混乱せぬようお願いします。
101名無しさんだよもん:2001/08/23(木) 06:26
dat落ちしたらしたで建て直せば済むことではあろうがしかし…メンテ。
102名無しさんだよもん:2001/08/23(木) 12:29
メンt
103確信、そして…(1/2):2001/08/23(木) 23:34
スフィーの体の中を冷気が駆けめぐる。
そして、一つの影と一つの輝きは次第にその距離を狭めつつあった。

しかし、それは完全に重なる事はなかった。
「…邪魔者が来ておる」
相変わらず冷静な声が響く。
「お主も運のある奴よ」
スフィーは微動だにできない。
「その運の尽きるまで、せいぜい踊っておればよい。我が掌の中で」
捨て台詞を残して、その輝きはゆっくりと消えていく。
そして、その場には何も出来ずに立ちつくしたままのスフィーだけが取り残された。

やがてその地に新たな二つの影が現れるまで、時間はかからなかった。

---
104確信、そして…(2/2):2001/08/23(木) 23:35
---

道の両脇に立ち並ぶ巨木。
そして道の上には数え切れないほどの死体。
その死体の群れに時折足を取られながらも、あゆはなお必死に足を進めている。
後ろを歩く千鶴共々、息はすでに上がっていた。
「あゆちゃん、一体どこまで行けばいいの?」
「よくわからない、けど…、すぐ近くのような気がするよ」

実は、千鶴も感じ始めていた。
背筋に感じるうっすらとした冷気を。
この先には"何か"がある。
それがあゆを急がせる理由なのか、はっきりとは解らないけれども。

二人が山道に分け入ってから何時間経っただろうか。
延々と続く道の向こうに何かを見つけたその時、
「あっ!」
図らずも、二人同時に声を上げた。

二人が見たものは、死体の中でただ一人立ちつくす少女。
ピンク色の髪が、周囲の景色とのアンバランスさを一段と際立たせている。
その少女へあゆが歩み寄ろうとした時、少女もまた地面に倒れ込んでしまった。

「…うぐぅ、だいじょうぶ?」
「…だめ…ここ…危ないから…逃げて…」
少女は、とぎれとぎれに話すことしかできないようだった。

【あゆ・千鶴、スフィーを発見】
【神奈は姿を消した】
105名無しさんだよもん:2001/08/24(金) 02:32
メンテしておきます。
106凶刃(1):2001/08/24(金) 08:08
頂上部は、荒涼としていた。
再び巨木は姿を消し、祠のある岩場がぽつんと存在するのみである。
しかも綿密に配置されていたであろう祭器は、ある物は破壊され、ある物は転がり、既に封印の意味を
為していなかった。

「ねえ、あゆちゃん……こういうのは、詳しくないのだけれど…危険な気がしない?」
遭遇後、すぐに気絶してしまったピンク色の髪の女性を背負い、その意に反して千鶴はここまで来ていた。
あゆの意思を尊重するという方針を、今になって曲げる気もなかったからだ。

「……お化け出そう…でででで・でもでも、こここ・この中なんだよっ!」
右手と右足を同時に出しながら、なんば歩きで祠に突進するあゆ。
顔は仮面のように強張っている。
それを見て苦笑しつつ、スフィーを安定した岩場に寝かせた千鶴が後を追う。

半ば破壊された祠は、とくに大きなものでも立派なものでもなく、ただその効力だけを期待されていたんだろう。
すぐに封じられていた物品が発見できた。

 それは、ひとふりの刀。

以前の大会で振るわれ、参加者のうち四割と、その振るい手を殺戮した凶刃。
だが今は、静かに薄青く輝くのみだ。

もちろん、そんな事を知る由もない二人にとっては、ただの刀。
場の雰囲気が、それを不気味なものに見せてはいるが、それ以上ではあり得なかった。
「…これが、あゆちゃんを呼んでいたの?」
「うん…たぶん」
なんとなく釈然としない気分で、二人は首を捻っていた。
107凶刃(2):2001/08/24(金) 08:09
「呪いの品ね」
ほどなく意識を取り戻したスフィーは、口を開くなり不吉な事を口走る。
「わわわっ」
「きゃっ」
二人で持っていた刀を、思わず同時にお手玉する千鶴とあゆ。

「もう、大丈夫よ。
 ”元”呪いの品、”現”魔法の品、だからね」
見かけも大きさも全く違う二人が、親子か姉妹かのようにシンクロしているのを笑いながら、スフィーが訂正する。
「それに、わたしの目的も見つかったわ。
 もうほとんど消えているけれど、ここに”居る”のね…」
穏やかな表情で、刀を抱くスフィー。
きょとんとした保油状で、その仕草を見守る千鶴とあゆ。

再び笑って、それからスフィーは考える。
「そうだ、説明しなきゃね。
 うーん、何から言えばいいのかなー…?」
込み入った事情に予測を挟んで、現状から推理した結論は以下のとおり。

 源之助の魔法により、神奈のみならず神奈の封印も攻撃された。
 それは神奈の意図によるな現象なのか、魔法自体がそういうものなのかは解らない。

 その際に神奈の中の、突出した強い意識-----すなわち悪意-----は封印された刀の中から抜け出る事が出来た。
 先ほどスフィーを襲った輝きは、悪意の顕現に他ならない。

 その悪意を込めていたからこそ、刀は強力な呪いの品であり、今は意識を封じる力はあれど、ただの刀にすぎない。
108凶刃(3):2001/08/24(金) 08:10
千鶴がこめかみに手を当てて、スフィーの説明を止める。
「あの、スフィーさん……ちょっと、待ってくれる?」
「ハイどうぞ」
「スフィーさん達が先日接触した神奈という存在は、封印されていても大暴れしたのでしょう?」
「そうですね」
「そんな存在の、悪意の部分が抜け出てどこかへ消えたというのは、拙いのではないかしら?」
「そうですね」
「しかも、あなたを取り込もうとしたという事は、実体を得て行動しようと考えているのよね?」
「そうですね」
「そうですか」
「そうですね」
「……」
「……」
「……うぐぅ」
淡々とした口調で語られた厳しい事実に、がっくりとうなだれる千鶴とあゆ。
それを気にしているのか気にしていないのか、スフィーはとにかく説明を続ける。

「ですが、あの時暴れなかったという事は、あの神奈もまた、力が弱くなっているのだと思います。
 全ての意識を統合できていない彼女が、かつての威光を示す事はないのかもしれません。
 なにしろ彼女が”消えた”と言っていた他の意識は、彼女が気が付かなかっただけで、この刀の中に微弱に残っているのです」
「そうだね、聞こえるよっ」
ころりと表情を変えて、あゆが笑顔で賛成する。

唯一漠然とした感覚でしか捕らえられない千鶴は、ほとんどお手上げ状態なのだが、一応の確認を取る。
「それで…出て行った神奈は今どこに行ったと思いますか?」
スフィーも流石に考えこむ。
「…たぶん、自分が取り憑ける何者かのところへ。
 例えば、自分と繋がりの強い誰か。
 もしくは、死んだばかりの誰か。
 それとも、自意識を失っている誰か。
 …そんなところでしょうか」
不思議現象の理解に苦しみながら、千鶴はなんとか噛み砕いて理解する。
「あまり限定できていない気もするけれど…あと一つだけ。
 もし、その神奈に出会ったら、どうすれば良いの?」
109凶刃(4):2001/08/24(金) 08:11
 -----沈黙。

「あなたには、解っているのでしょう?」
「……はい」
溜息、ひとつ。
いや、スフィーのものと合わせて、ふたつ。

「…わたしにも、解ったわ」
「…物品に収まれば、今の神奈ならば私でも封じていられると思うんです。
 他にも芹香さんという術師がいますし、その状態でCDによる攻撃をかければ…」
二人で空を見上げる。
虚空を舞う神奈を睨むように。

 対処方法は、一つしかない。
 実体のない神奈に対して可能な処方は-----

 -----斬る、ことだ。
 この刀で、彼女の存在そのものを斬る。
 それしか神奈を抑える術はない。

もちろん、意識だけが浮いている状態でCDによる攻撃をかけても、神奈は滅ぼせるだろう。
それは、期待でしかないのだが。 
110凶刃(5)(おまけ):2001/08/24(金) 08:12
「あら?」
数瞬の後、千鶴が少し驚いた顔をスフィーに向ける。
「はい?」
「CDの存在、あなたも知っているのね?!」
「はい、あたしも数枚所持していた人と一緒に居たから。
 もうそろそろ岩山の施設に辿りついても良いころだと思いますけど…」
「それなら神奈が、誰かに取り憑く前に処置できそうね」
にこりと笑う千鶴。
一抹の不安に眉をしかめるスフィー。
「思いますけど…うりゅ…」
「……?」

 北川は、いま。


「ああ、それから!」
「はいー!」
固まりかけたスフィーにネタを振る千鶴。
「芹香さんと、知り合いなの?」
「ええ、と言っても、あたし達がこの島に来てからですけど」
「何度かお話した事があるんだけれど、物静かな、いい娘よねー」
「物静かな…うりゅ…」
「……?」

 芹香は、いま。


「それで!」
「はいー!」
再度硬直するスフィーにネタを振る千鶴。
「今ごろわたしの妹の、梓が芹香さんのところへ…」

 梓は、いま。

 
111名無したちの挽歌:2001/08/24(金) 08:12
【スフィー、千鶴、あゆ、対神奈用の刀を入手】
【神奈 侵蝕できる隙のある人間を求めてどこかへ】
※気絶している芹香のような人物、神経衰弱している彰や初音のような人物、不可視の力を持つキャラ達、
 もしくはそこらの死体に侵蝕するでしょう。

…これで神奈もなんとか…なるでしょうか…?
112母 1:2001/08/24(金) 18:40
「撃たないの? じゃあ、そこまでね」

 そして、銃声が響いた。

 弾丸を受けてよろけたのは、郁未。
 撃ったのは――
「観鈴ッ! 伏せときや!」
「お母、さん……?」
 ――神尾、晴子。


 時間は少し遡る。
 それは放送を聞いて晴子が喫茶店を発ったあと。
 放送とおかしな声に導かれ、辿り着いた先には死体が二つ。
(な……どういうこっちゃ、これは)
 手近な建物に隠れ、しばらく様子をうかがった。
 そこに現れたのはあの名も無き少年。
 その少年が、死体から首を切り取って持ち去るのを見た。
(首? 何をする気なんや、あいつは)
 なんにしろ、それが危険なものであることは間違いないだろう。
 やはりあの少年は敵だったのだろうか?
 観鈴も彼に……殺されたのだろうか?
(いや、まだ解らん。勝手に決め付けて絶望するのはもうええわ。
 この目で確かめる。まずはそれからや)
 晴子は、唯一の手掛かりである少年を追った。

 迷い、見失い、爆音と煙を目印にホールを昇る。
 再び少年を見つけたときには二人の男は倒れ伏し、一人の女が立っていた。
「――郁未さん!」
 そして、そこに観鈴が現われたのだ。
113母 2:2001/08/24(金) 18:42


   郁未と観鈴が語りはじめたのを聞いて、とりあえず飛び出すのはやめた。
  (観鈴があんなに執着するなんて、いつの間に仲良くなったんやろ)
   しかし今は、銃を向け合っている。
   殺し合おうとしている。
  (観鈴は……小さい頃からひとりぼっちで、ずっと苦しんできた。
   友達だって片手の指で数えられるほどしかおらん。なのに、それでも殺し合えっちゅうんか)
   やがて、観鈴が残酷な二択をせまられる。
  『その銃で私と彼を殺す。そうすればそっちの彼も生き残れるかもしれない』
   郁未が、そして観鈴までもが引き金を引こううとするのを見て、たまらず晴子は発砲した。

 銃撃をその身に受け、郁未はよろける。
「観鈴ッ! 伏せときや!」
「お母、さん……?」

   観鈴のほうは、本当に発砲する気だったのかは解らない。
   だが、もし撃つ気だったのなら、友達をその手で撃ったという事実はいつまでも観鈴を苦しめるだろう。
   撃たなければ往人が死ぬ。どちらにしても観鈴は苦しむしかない。
  (あの子は、なんでも一人で抱え込んでしまうからな……)

 郁未は体勢を立て直すと、晴子に向かって散弾を撃ちこんだ。
 散弾が晴子の隠れた壁の端を削り飛ばし、その破片で一瞬晴子の視線が遮られる。
 その隙に郁未は少年を背負う。
 晴子は舌打ちした。煙と破片に紛れ、壁の影からでは郁未を狙う事が出来ない。

  (あの子はもう充分苦しんだ。それでもまだ苦しみが避けられないというんやったら、
   ウチが観鈴の代わりに苦しんだる。
   ウチが観鈴の代わりに手を汚す。
   エゴと言われても、過保護と言われても、自己満足と言われてもかまわへん。
   それで、観鈴がいつか笑ってくれるのなら――)
114母 3:2001/08/24(金) 18:43

「ウチはエゴイストにでもなんにでもなったるわ!」
 晴子は物陰から飛び出すと、郁未に3度発砲する。
 一発は外れ、残り二発は背負われた少年に命中し――そしてあらぬ方向へ弾かれた。
 9mmショートでは偽典に対して力負けしてしまうのだろう。だが、晴子はそんな事を知らない。
 郁未は振り向き様にベネリを撃つ。晴子は物陰に転がり込んでなんとか回避する。

 やがて、回り始めた煙に紛れて、郁未は後退していく。
 そして後を追おうとした晴子を牽制するように、一発、二発と散弾を撃ちこんだ。

 晴子がなんとか階段まで辿り着き、下の階を覗くと、ちょうど郁未はこちらに銃を向けているところだった。
 手すりが吹き飛び、晴子はそれを避けようと大きくのけぞって後ろに転がる。
 もう一度覗いたときには、もう郁未の姿は見えなくなっていた。


(行ったか。……あとは、炎に巻かれる前にここを逃げ出さな)
 振り向くと、観鈴がすぐ近くで晴子を見つめていた。
「お母さん……」
「観鈴……無事でよかった……」
 晴子は観鈴を抱きしめたかった。だが、今は出来ない。
 まだ自分には、郁未を――観鈴の友と呼べる人を撃った、その硝煙の匂いが立ち込めているから。
「なんや言いたいことがあるのはわかる。……文句は後で聞くわ。
 とりあえずは、居候をなんとかせんとあかんやろ」
「う、うん……そうだね」
 ぱたぱたと往人の元へ駆けていく観鈴を見て、晴子は思う。
 この先、観鈴が心から笑える日が来るだろうか?
「……それにはまず、生き残らんとな」
 炎はますます盛っている。余裕はあまりない。
 晴子は懐から包帯を取り出すと(耕一を手当てした余りだ)、往人のほうへ歩き出した。
115母 4:2001/08/24(金) 18:44


 ホールを逃げ出した郁未は、少年を背負ったまま街の裏通りを駆けていた。
「盾代わりにして、悪かったわね」
 未だ気を失ったままの少年に話しかける。
(こいつを護る)
 それが神奈の意志なのか、自分の意志なのか、もうはっきりとは解らない。
 だが、浸食される前の自分は。
(こいつのことを大切に思っていた。愛していた。それだけは確か)
 ならば、それでいい。
 神奈などわたしは知らない。
 自分の意志で、こいつを護る。
 それでいい。

 観鈴、そして耕一……今まで出会った人たちの顔が、浮かんでは消える。
 なぜわたしは、観鈴を撃たなかったのだろう。
 期待していたのかもしれない。自分を止めてくれる事を。
(……でも次にあったときは、もう殺さなくてはいけない)
 それを思うと、まだわずかに胸が痛んだ。
(もう銃で撃たれても痛みを感じないのに、そんなことで痛みを感じるなんて)
 それはきっと、まだ自分の心が残っている証なのだろう。
 ならば、それでいい。
 この痛みもまた、わたしなのだから。
 自分の意志でこいつを護っていける。
 それは幸せなことなのだから。


 気がつけば空は夕焼け。街並みをただ赤く照らしていた。
 それは禍々しい血の赤とは違う、どこまでも穏やかな赤だった。

【ホールにはもうかなり炎がまわっている】
【郁未と少年、ホールから離脱】
【往人と観鈴と晴子、合流】
116contradiction(その1):2001/08/24(金) 23:10
「よっしゃ!これでどうだ!」
G.N.が声をあげた。
するとメインモニターには「029 北川潤」という文字と
一人の少年が制服にカレーの汁を飛び散らせながらカレーうどんをすすっている写真が写し出された。
「どうだ!参ったか!ワシにかかればこの程度のこと朝飯前よ!」
コンピュータから自慢げな声が漏れる。
「こいつがCDをもってるわけ?」
「ああ、残りの三枚全部この坊主が持ってるみたいだな」
「ふ〜ん、そうなんだ。じゃあそのひとをさがせばいいわけね」
「お嬢、『ありがとう、Gちゃん。あなたは素晴らしいわ!』位言えないのか。人が折角やってやったのに」
「ふみゅ〜ん!なんでわたしがそんなこといわなきゃいけないのよ〜!」
「まぁ、それは冗談だけどな。あ、そうそう。お嬢ちゃん」
「なによ〜」
「ワシが起動する前に何か知らないが参加者が島中に向けて放送をしてたけどそのこと知ってるか?」
「なんのこと?」
「あらら、やっぱり聞いてなかったか。ま、ワシの記録データに残ってるから聞かせてあげようではないか」
「いいわよ、べつに」
「遠慮するなって。う〜ん、やっぱりワシはいい人だねぇ」
「だからいいっていってるでしょ〜!」
「それではスタート!」
117contradiction(その2):2001/08/24(金) 23:11
(2行空け)
『―――――――――――――――――
 心当たりのある者は、是非とも名乗り出て欲しい。
 その知識と、能力に期待する!』

「うわぁ!すごい!これでわたしたちかえれるんだ〜!」
放送を聞き終わった詠美は興奮した口調でそう言った。
「………おいおい、お嬢。それ、本気で言ってるのか?」
G.N.が呆れたような声を出した。
「なにいってるのよ、いまのきいたでしょ!」
「あ〜、お嬢。君はあの放送が何かの罠だとかそう言う考えは持たなかったのか?」
「へ?」
「ハァ〜やれやれ………」
「な、なによ〜!」
「この島で3日も生き残ってるなら普通はそう言う考えに行き着くと思うぞ」
「ふ、ふみゅ〜ん………」
「お嬢。一言だけ忠告しておくが、そういう甘い考えは捨てないと間違いなく死ぬぞ」
「で、でも!」
「現にこの放送をした場所に3人いたんだがそのうち2人はもう死んでるぞ」
「………」
「殺したのは残った一人のようだしあの放送で出てきた奴を殺すつもりなんだろうな」
そこで一旦言葉を止めた。
詠美は言い負かされたのが悔しいのか既に涙目になっている。
「この島はそういう島なんだよ、お嬢。生き残りたかったら他の奴を殺すのが手っ取り早いしな」
「どうしてそういうこというのよ!」
「どうしてと言われてもなぁ。ワシが何か間違ったこと言ったか?」
「ふみゅ〜ん」
「ほれ、ワシとそこのロボットはCDの解析をしなきゃならんから。お嬢はあっちの子供の所にでも行ってきなさい」
子供をあしらうような口調でG.N.がそう告げた。
118contradiction(その3):2001/08/24(金) 23:12
「ふみゅ〜ん!むかつく〜!」
「みゅ〜!」
「にゃ〜………(いっそ殺してくれ………)」
「なによあいつ〜!ちょっとあたまいいからってなまいき〜!」
「みゅ〜?」
「ばっさばっさ(ぽち君、何かあの子僕たちの方を見てるんだが)」
「しゃ〜、しゃ〜(逃げた方が良さそうね、あいつみたいになりたくないし)」
「ばっさばっさ(賛成だな)」
「やっぱりコンピュータににんげんのきもちなんかわかんないのね」
「みゅ〜♪」
「あ〜!むかつく〜!!!!」

「お〜い、とっとと始めるぞ」
ワシはCDの解析を始めようとロボットに声をかけた。
「あ、あのですね」
「ん?何だ?」
「どうしてあんな事言ったんですか?詠美さんが可哀想ですぅ」
「ワシは事実を言ったまでだぞ」
「でも………」
ロボットは、まだ何かを言いたそうな様子だった。
「お前さんもロボットらしからぬ考えを持ってるのう。そう言えばHMX−12には感情があるらしいな、その影響か?」
「わ、分からないですぅ。スミマセン〜」
「ま、そんなことはどうでもいい。とっととCD解析始めるぞ」
「は、はい〜」
「んじゃまずお前さんが解析した分のデータをよこせ」
「分かりました〜」
119contradiction(その4):2001/08/24(金) 23:13
あ〜、そろそろ放送の準備も始めにゃならんなぁ。
同時進行で進めておくかな。

………にしてもワシも何であの嬢ちゃんにあんなこと言ったのかね。
プログラムされたこのゲームを取り仕切る、という任務からすれば
ああ言う忠告を参加者にするのはよろしくない、と論理的に出てるんだがなぁ。
前に起動したときにはこういう思考矛盾は出なかったはずだけど、おかしいな。
何ぞバグでもあるのかねぇ。
後から調べてみるかね。

【CD解析開始】
【G.N. 放送準備開始】
120名無しさんだよもん:2001/08/25(土) 03:01
メンテ。
121糸口(1):2001/08/25(土) 07:05
「我々は手を組んで立ち上がるべきなのだ!!
 我が意に賛同する者は、学校に集って欲しい。
 そして我らが希望に反する者どもよ、決着をつけようじゃないか!! 」

島の最北にある灯台。その、最深部の管制室に人影が二つあった。
「蝉丸さんだね……」
手近にある椅子に腰掛けながら七瀬は呟く。
その言葉に晴香は無言で頷く。

『学校は、市街地南部に広がる山の東側にある!
 街から山を見て、その左だ。
 繰り返す。学校は市街地の南にある山の東だ!!』

「学校? そんなもんがこの島にあるの?」
同じく適当に座った晴香が七瀬に尋ねる。
「あ、うん。まあ。私、行ったことがあるけど……」
そう言って、七瀬は曖昧に微笑む。
晴香はその表情と言葉のニュアンスから触れられたくない話題だと察し、それ以上突っ込んだ話しは聞かなかった。
(死体を見て悲鳴を上げるとき『ギャー』はないわよね。乙女として……)


『恐らく既に知らぬものはいないだろうが、我々の中には多くの異能者が存在する。
中でも現在求められているのは“魔法使い”だ!
心当たりのある者は、是非とも名乗り出て欲しい。
その知識と、能力に期待する!』

「異能者と魔法使いねぇ……。そういえば、一応、晴香も異能者なんだよね?」
「一応って、まあ不本意ながらね……」
晴香がFARGOに入信したのは兄を捜すためであり、『不可視の力』を求めてではなかった。
『不可視の力』は兄が失踪する原因の一端を担っている。それなのに、自分が使えるようになったことは運命とは皮肉なものだと彼女は思っている。
122糸口(2):2001/08/25(土) 07:22
「あんただって、なんか特殊な力があるんでしょ?」
晴香のその言葉に七瀬は大きく首を横に振る。
「まっさかー。私は普通の女子高生よ」
(普通の女子高生が鉄パイプやポン刀をブンブン振り回すの……)
晴香はジト目で七瀬を見ながら、彼女の『普通』という言葉を信じないことに決めた。


放送が終わり、二人は改めて管制室を調べた。
いくつものモニター、いくつもの端末。
そして、数多くあるスイッチ類。
コンピュータ関係に疎い二人は無闇に端末に触ることはせずに、まずはスイッチに書いてある文字を読んでこの施設の特性を把握しようとした。
「こんなことだったら北川を連れてくるんだったわ。あいつコンピュータに強いし……」
「Emergency Call? 非常ボタンみたいなものね」
もっとも、それらは欧文で書かれているために、簡単な英語で書かれているものしか解読できなかったが。
「ちょっ、ちょっと七瀬、来て」
部屋のはじのほうにある端末を調べていた晴香が興奮した声で手招きをする。
「なに?」
そして、晴香が指さしたボタンは他のものと違い、プラスチックの封で覆われていた。
簡単に使えないように、封を割らなければ押せないようになっている。それだけ重要なボタンだということだ。
「ふえー、なに、このボタン。さーふぇいす、とぅ、えあー?」
「Surface-to-air 日本語に訳すと地対空」
七瀬はその意味を察し、ギョッとする。
「えっ! だとすると、これ……」
「そう、ミサイルよ」
123糸口(3):2001/08/25(土) 07:31


二人はしばし言葉がなかった。
いくつもの銃器や数多くの管理者の兵隊を見たが、まさかこんなものがあったとは……。
このプログラムは本当にただの金持ちの道楽なのだろうか?
そんな事が彼女たちの頭に浮かんだが、真相を予測することはまず不可能であろう。
「これで、脱出の手段が一つ増えたわね」
晴香の言葉に七瀬は首を傾げる。
「どうやって? まさか、あれに乗っていくとか言わないでしょうね?」
その的外れの言葉に晴香は『ふう、やれやれだぜ』、と言わんばかりに肩をすくめる。
「なに、頭、あったかいこと言ってるの? そんなわけないじゃない!」
「じゃあ、どうるのよ」
くちびるを尖らせて七瀬は反論する。
「いい? この島がどこにあるか知らないけど。地球上にあるのは間違いないわね」
「当たり前じゃない」
「じゃあ、どこの国とも分からないミサイルが発射されたら、今の地球ではどうなる?」
「そりゃ、近くの国か、某大国が調べに……そうか!」
「そう、地面にHELPかS.O.S.を大きく書けば、救助が来る」
出来の悪い生徒がようやく解答を導き出したことに、晴香は満足そうに頷いた。


思いがけず別の脱出法を二人は見つけた。
だが、脱出の選択肢は多いにこしたことがないので、さらに探索する事を決めた。
そして、通路を先に進む。
管制室に人がいなかったからこの施設は無人化もしれない。
だが、慎重に彼女らは懐中電灯をつけず、警戒して歩いていく。
「なんかジメジメしてきたわね」
「この先かしら、潜水艦は」
「そうね」
そう小声で二人は話し合う。
初期の目的である潜水艦を見つけることが出来そうなので二人の足取りは軽い。
やがて、潮の香りがにおい始め、狭い通路が終わった先には岩場をくりぬいた天然の港があった。
そして、そこに一隻だけ係留されていたのは、
「あ、あれ?」
「なに、あのへちょいの!?」
長さが二十メートルにも満たない丸く小さな潜水艇だった。
124糸口(4):2001/08/25(土) 07:32

意気消沈する二人だったが、せっかくここまで来たのだから、と調べてみることにした。
「なんだか、三人か詰めて四、五人ぐらいまでしか乗れないわね」
「でも、そんなに乗って空気は保つの?」
上部にあるハッチを開けると見かけ以上に艇内は狭かった。本来は二人乗り用なのだろう。
「えっと、動かすのはどうすんだろ……」
「ちょっと、あんた。適当にスイッチを押さないでよね」
七瀬は操縦席を見渡したが、車の免許すら持っていないので、もちろん動かし方など分かるはずもない。
「分かってるわよ。ちょっと見てるだけだってば。って晴香押さないでよ」
「狭いんだからしょうがないじゃない」
「しょうがないって言っても……きゃ!」
晴香に押され、七瀬は操縦席の右側にある黒いパネルを押した。
すると、

「指紋、照合できませんでした。お手を拭きになって、もう一度お願いします」

と、艇内のスピーカーから無味乾燥な音声が聞こえた。
「出るわよ、七瀬」
「えっ、うん」
その合成音声の意味を瞬時に理解した晴香はため息をつき、艇外に出ていった。
125糸口(5):2001/08/25(土) 07:36
いままでの通路をたどり、二人は灯台の入り口に戻ってきた。
もちろん、地下への入り口は開けたままである。
「ま、かなりの収穫はあったわね」
二人は久々に浴びた陽光の下で大きく伸びをする。
「そうね。でも晴香。あいつ言うことが大げさだったね。潜水艦って言うからみんなが乗れるぐらいのものかと思ったのに」
「まあ、あいつは物事を大きく言うのが好きそうだし。まあ、小人にありがちね」
そう言って、晴香は歩き出し七瀬も続く。
二人は別の所にある潜水艦ELPODの存在を知らない。
「それに、あの船動かせないし……やっぱりミサイル撃つしかないのかな」
「でも、あれを動かす手はあるにはあるんだけど……」
「手って。どんな手?」
七瀬が身を乗り出して聞く。
「手を持ってくる手」
「はあ?」
「あれのキーロックをはずせそうな人の手を持ってくるのよ」
「げ!」


そして、二人は脱出についてあれこれ話しながら、事の成果を皆に話そうと学校へと向かった。
呼び出した本人が、既にこの世にいないことも知らずに。


【069七瀬留美 毒刀、手榴弾三個、志保ちゃんレーダー、レーザーポインター、瑞佳のリボン、ナイフ所持】
【092巳間晴香 日本刀、ワルサーP38所持】
126名無しさんだよもん:2001/08/25(土) 07:48
長丁場age
127名無しさんだよもん:2001/08/25(土) 20:20
討論スレからコピペ

211 名前:名無しさんだよもん 投稿日:2001/08/25(土) 20:16
葉鍵板が潰れるかもしんないので誘導コピペ。
いざというときのために、ブックマークをお勧めします。


読み手チャット&書き手チャット。
http://village.infoweb.ne.jp/~chat/passchat/passchat.htm
パスは読み手ならyomite、書き手ならhakarowaでどうぞ。

外部の避難所はこちら。
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Queen/3996/index2.html

作品のアプは…アナザー出張先の掲示板をお借りするというのはどうか。

ちなみにアナザー(外部スレ)
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=993054328
風が吹いていた。ここ数日のひどい暑さに比べて、今は若干の肌寒さを感じるほどだったが、
それは多分、今わたしの身体を襲っているさむけとは関係がないだろう。
小さな唾を呑みこんで、夕陽を前に立ち尽くす七瀬彰の姿を見つめる。
自分の直感は、果たして正しかったのだ。西の空、赤い空の下で、わたし達は再び逢う事が出来たのだ。

――わたしは今、理解している。自分の今感じている寒気の正体が何であるかという事を。
――その寒気の正体が「それ」であるならば、わたしに出来る事は一つだけだ。


僕は、背後にやってきた何者かの気配に気付いていたが、振り向く事は出来なかった。
それが誰であるかという事が手に取るように判るし、彼女以外には有り得ないとも思っていたからだ。
顔を見たら泣き出してしまいそうだった。自分の事を愛してくれた人。自分が愛した大切な人。
この赤く染まった空の下で、僕は彼女に、柏木初音に送らなければならないものがある。

――ごめんね。ずっと護ってあげると約束したのに、約束、守れないよ。
――せめてと云ったらなんだけど、僕は君に「さいごのことば」を送るから。


僅かの沈黙と躊躇の末に振り向いた七瀬彰は、鼻の頭を掻きながら、
「よく、ここが判ったね」
出来得る限りの微笑を見せて、そう云った。
「うん」
「そういえば、初めて出会った場所にすごく似ているね、ここ」
「うん」
ただ頷くだけの柏木初音もまた、薄く笑みを浮かべている。
それは、笑っているのか泣いているのか判らないような、中途半端なものではあったけれど。

「でも本当は全然違う。あの時は昇っていく朝陽を見ていたけど」
今見ているのは、沈みゆく太陽だ。

「考えてみれば、すごく短い時間だったね」
「うん」
二人の間には、手を伸ばせば届くほどの距離。
高い崖の上、森を背にした初音と、海と赤い空を背にした彰。
「太陽が昇って、沈む。その程度の、短い時間だった」
彰は笑う。
「でも、すごく楽しかったよ」
「僕も、楽しかった」

「――でも、終わりだ」
彰は手を伸ばして、初音の肩に手を置いた。
「これ以上一緒にいる事は出来ない。僕の心はだんだんおかしくなってきているから」
唇を噛む初音の頬に触れる。がたがたと震える身体は、それでも温い。
(これ以上一緒にいたら、君を傷つけてしまうから――)
「こうやって君の傍にいるだけで、君の事を傷つけてしまいそうなんだ」
上手く笑えているだろうか。
「僕は君の盾になりたかった。君の事をずっと護っていきたかったけど、それも無理みたいだから、
 僕はもう死ぬつもりだ。君の事を傷つけて、殺してしまう前に」
彰は遠くの空を指差して云う。先にあるのは赤い太陽、そして、永遠の海と風。
「何となく、僕らがここに集まった理由が判ったよ。ほら、太陽が沈んでいくだろう?」
そして、僕達は日が昇る場所で出会った。

「それと同じように、僕らの邂逅も、これで終わりを迎えるべきなんだ、という事さ」

「さよならだ、初音ちゃん」

云うべき事。
彼女がこれから生きていくために云わなければならない事。

「本当は――言うべきじゃないのかとも思ったんだけどね」
云うんだ。それが僕にとって身を切られるような嘘でも。

「君の事好きだと云っただろ、あれ、嘘だ」
君のその顔を見るのが嫌だった。何を言っているの?――そう云っているような顔が。

「君に新しい日常をあげるとも云っただろ? あれも嘘だ」
君は聡明な子だから、僕の言葉の意味もすぐに理解できているだろう。

「君を利用しただけさ、貧弱な僕がなんとか生き残るためにはね、そうでもしなくちゃいけなかったのさ」
君は聡明な子だから、僕のこの言葉がただの嘘だという事も判ってしまうのだろう。

「大体さ、僕が君みたいな子供を相手にするわけがないじゃないか、そうだろう?」
そして何より、君はすごく優しい人だから。嘘だと判っている言葉でも傷ついてしまうような。

「本当はこんな事云わないでさよならした方が、卑怯者の僕には相応しかったかもしれないね」
自嘲気味に笑えば、きっとそれは嘲笑の笑みと――それ程違わない、虚しい笑いになるだろう。

「最後まで素敵なお兄ちゃんで、だ。考えるだけで笑えてくるよ」
ともかく、だ。

「それでも、まあ、最後だから本当の事を云ってしまおうと思ったんだ、せめて最後くらい正直者に、だ」
初音ちゃん。云いたい言葉があるんだ。誰よりも優しい君に。けれど、けして云ってはいけない言葉。

「まあ、君がそんな事考えるわけがないとは思うけどさ。僕が死んだ後、後追いとかはやめてくれよ」
人は、強くなくちゃ生きていけない。弱い人は、生きていく事も出来ない。

「そういうのって気色悪いんだよね。っていうか、君みたいなのに後追いされても何も嬉しくないんだ」
だけど。

優しくなければ、生きていく価値はないんだよ。

「まあ、そういうわけだからさ。君の事なんて好きでも何でもなかったけど、
 まあ、やっぱ結構な時間一緒にいたわけだから、情も少しはある」
生きて欲しい。生き残って欲しい。

「こんな僕の事なんか忘れろ、そいで、――まあ、生き残ってくれると嬉しいかな。
 僕はきちがいになる前に死ぬ事にするから。君を殺す前に死ぬことにする」
君が生き残れば、それがこのくそったれゲームへの、最大の勝利になるんだ。

さようなら、優しいあなたよ。
さようなら、愛しいあなたよ。

云わねばならぬ事はすべて言った。云ってはならぬことも、僕は云わないで済んだ。
――僕は振り返り、赤く広がる空を見つめた。
あと、五歩。それで僕はこの赤い空と海の間に落ちていく。
小さく息を吐いて、僕が歩き出そうとしたとき。
今までずっと黙り込んでいた初音の、囁くような声が聞こえた。



――いいよ、殺しても。


確かに、そう聞こえた。何を言っているんだい、君は。
振り返り、その表情を見る。俯いた顔をあげて見せた表情には、まるで迷いが見えなかった。
うっすらと浮かべた涙の奥に見えたものは、何の光だ?
「いいよ、殺しても。彰お兄ちゃんは、わたしを殺しても良い」

僕は溜息を吐いて、再び初音の傍に寄り、その大きな瞳を見つめる。
そして初音もまた僕の傍で、まっすぐな目で僕の瞳を見つめた。
「人の話、聞いてなかったのか? 殺したくないんだよ。
 殺したくないから死ぬって云ってるのに、何で殺しても良い、とか云うんだよ」

「馬鹿だよ、彰お兄ちゃん」
初音は、少しだけ笑って云った。
「どっちがつらいと思う? 大切な人を失くして生きていく事と、大切な人に殺される事」
僕は目を細めて、その言葉の真意を確かめるように、一つごくりと唾を呑む。
「何を云ってる……殺されるほうが嫌に決まってるだろ――」
「だから彰お兄ちゃんは馬鹿なんだよ。わたしにとってはね、彰お兄ちゃんを失くす事のほうが余っ程嫌なんだ」
わたしは、呆然とした顔をした彰の顔を見つめて、少しだけ笑った。
「彰お兄ちゃんがいなかったなら、きっとわたしはずっと前に死んでいたよ。
 肉体的な意味じゃない。もし彰お兄ちゃんに逢うのがもう少し遅かったら、わたしの心は死んでいた」
喉が涸れて、上手く声が出ていない。ちゃんとわたしの言葉は通じているだろうか。
「彰お兄ちゃんは、すごく強くて、優しかったから。震えているだけしか出来なかったわたしを、抱きしめてくれた」
彰は俯いて、言葉を吐く。
「抱きしめたのも、好きだといったのも、全部嘘だと、そう云っただろう――」
「――彰お兄ちゃんは、嘘吐くのが下手なんだよ。――それにね、さっきのが嘘じゃなかったとしても」

「わたしはね、彰お兄ちゃんの事が好きだから。――わたしは、彰お兄ちゃんじゃなきゃ駄目なんだよ」

「傷つけても良い。殴っても蹴っても、殺しても良い。でも、わたしの事を本当に気遣うのなら、死なないで欲しい」
丸く目を見開いた彰の身体から、何かが抜けたような気がしたのはわたしの気のせいだろうか?
「死ぬのはね、自己満足だよ。わたしも、耕一お兄ちゃんも、誰もそれじゃ充たされないよ」

「それにね、さっき云ったよね? 太陽が沈むように、わたしたちの生活も終わらせるんだって」
「――ああ」
彰は、思い出したかのように云う。茫然自失とした顔の裏には、理解があった。
今からわたしが何を云うかが、想像がついたのだろう。
「本当に馬鹿だね、彰お兄ちゃん」
こんなの、当たり前の事じゃないか。何を勘違いしてるんだよ、彰お兄ちゃん。

「太陽は何度だって昇る。何度だって朝はやってくるんだよ」
そうさ、夜は何度だって明ける。人が望む限り、永遠に。
「日々はいつか終わる。いつか太陽が昇らなくなる日も来るだろうと思うよ。でもね、終わらせる必要は無いんだよ」
云って、わたしの身体から――力が抜けた。

「だからね、出来る限りわたしと一緒にいて。それで、わたしを殺したくなったなら、」
「殺せば良いから」

わたしは未だ、何処かの風の中にいる。その風はきっと彰にも吹き付けている、悲しい風だ。
わたしの表情も、彰の表情も、その風の中で

「――ばかだよ、初音ちゃん」

次の瞬間だった。
一歩、近づく音がした。その一歩で、わたしと彰の距離は、一層近くなる。
そして彰は本当に悲しそうな顔をすると、

――わたしの首に手をかけた。

「本当に、殺してしまうかもしれないと云っているのに」

【七瀬彰 柏木初音   海の前で会話中。耕一達の到着はまだ後】
135赤い光(1):01/08/26 11:48
「ああ、神様。 神様、聞いてください。
 そして願わくば、迷える子羊に啓示を頂きたく存じますですハイ。
 …嫌だなんて言わないで下さいよ。 俺、マジ困ってんスから。

 えー、コホン。
 なにゆえ私北川は、斯様な運命を背負わされているのでしょうか?
 使命をひとまず退けてまで、あの婦女子を助けようとした事は、間違っていたのでしょうか?
 神様、これはその罰なのでしょうか?
 婦女子は無情にも私北川を置いて、さっさと行ってしまいやがったですよ。 ええ、放置ですよ放置。
 いかにも危険そうだったから、制止したんですけど…無視ですわ、ハイ。
 脇役はすっこんでろというか、アウト・オブ・眼中って感じでしたよ。
 庶民の言葉では、シカトとも言いますねシ・カ・ト。

 …すんません、愚痴が長くなりました…それでですね。
 その後、建物の中はやたらと盛り上がってるんですけど…
 …なにゆえ私は、かくも長時間ヒゲオヤジと静かに見つめ合ってなきゃならんのでしょうか?
 しかもこのヒゲオヤジ、ブルーな顔してニヒルに笑ってやがるんです。
 もちろん、度重なる語りかけに対する返事は、全くありません。

 うはあああああ!怖えええええええ!!
 何が怖いって、言葉がのやりとりが通じないって程、怖い事はありません。

 私北川、この喋りこそが自己確立の礎とでも申しましょうか、キタガワという名の分子活動集合体が織り成す最大の
 偉業と心得ておりますゆえ、何を語りかけても返事が返ってこないというのは、まさしく存在の否定なんですよ!
 言わば、致命の一撃なんですよ!
 誰だよ!立ち絵の出番が薄いからセリフだけ、とか言ってるのは! ていうか立ち絵って何!?
 ああ、とにかく!!
 俺からトークを奪ったら、ただの色男しか残らないんだ!

 ん?…それ、いいかもしんない?」
136赤い光(2):01/08/26 11:49


はじめに長い沈黙があった。
しかしその後、あまりに勝手な妄想を延々と語り始めた北川の結論に耐えられなくなったのだろうか。
フランクが、遂に口を開く。
「……」
「…は?なんだって?」
その独特の小声に、思わず耳を傾ける北川。

「……爆弾、だ」
ゆっくりと握った手を開くフランク。 掌に収まる大きさの、ハイテクノロジーを尽くした見慣れぬ機械。
吐瀉物にまみれ詳細は判別できないが、ダイオードの青い小さな光点が見て取れる。

「…爆弾?…ってオイおっさん!?」
思わずのけぞる北川。
「……!」
一瞬の隙を逃さず、フランクは後ろに転がりつつ北川の銃めがけて蹴り上げる。
「くそっ!」
フランクの額に合わせた照準がずれ、慌てて発砲する北川。

 ガン!
  ズドン!

-----銃声、そして着弾音。

体術はさほど優れていないフランクだが、デザートイーグルの巨大な銃身を外す程、不得手ではない。
銃の重さもあってか北川の発砲は僅かに遅れ、銃身を蹴り上げられた事により弾丸はあさっての方向へ飛んでいた。
「…ぐあ…っ!」
遅れて苦痛のうめきを漏らし、前かがみになった北川の手から銃がこぼれ落ちる。
握りこみが甘いかたちで発砲した結果、右手の人差し指が妙な方向へと曲がっていたのだ。
137赤い光(3):01/08/26 11:51

「……!」
静かに立ち上がったフランクが、低くなった北川の即頭部に蹴りを見舞う。
「がっ!」
情況が確認できぬまま、鈍い音と共に為す術もなく吹き飛ばされる北川。
対するフランクは周囲を見回し、愛用のライフルと北川の拳銃を回収すると、掌の機械に注意を逸らした。

その機械は、芹香の位置を認識させていた爆弾である。
胃内でロックが解除しないように、複雑な手順を踏まないと手動の起爆は不可能なように作られている。
もしもの時は投げたあとに狙撃するしかないと思って回収したのだが、幸いにして時間はできた。
北川と芹香に動きの無いことを確認して、フランクはロックを解除した。

 『お母さん……』
作業中、聞き覚えのある少女の声が、ぽつぽつと耳に届く。
あとは左右のパーツを押し込んで、手を離せばほどなく爆発する筈だ。
そこまで来て、ようやく静けさが戻ってきた事にフランクは気が付いた。

 『……それにはまず、生き残らんとな』
そのとき耳に飛び込んだ特徴のある方言に、フランクは反応した。
さすがにこれだけ印象が強いと、聞き覚え程度では済まされないのだ。

 『居候…生きとるか?』
この声の主は、あの集団の中でもっとも好戦的な女。
往人という男と違い、話の通じる相手ではない。
右手にデザートイーグルを握り、左手の爆弾を押し込む。
ピピッと電子音がして、握り締めた拳から赤い光が漏れている。

あとは手を放して数秒後に爆発するはずだ。
準備を整えたフランクが、くるりと振り向く。
 
138赤い光(4):01/08/26 11:53
 『いくらウチでも、死に損ないの兄ちゃんを-----』
 -----目が、合った。


「居候…生きとるか?」
肩関節一個分長くなった、往人の腕を不安そうに見つめながら、晴子は尋ねる。
返事を待つまでもなく、荒い呼吸音が聞こえ、ひとまず安堵の溜息をつく。
「…ま、耕一君より活きがエエな」
「お母さん、耕一くんって誰?」
観鈴が、聞きなれない名前に耳を立てる。

「ああ、もっとボロボロなんが居ったんや」
それと比べれば、この程度、とばかりにカラリと笑う晴子。
「…ちゃんと、手当てしてあげた?
 いつもみたいに、乱暴してない?」
会ってもいない”耕一くん”のために、思いっきり不安そうな顔をして尋ねる観鈴。
失敬な奴っちゃな、と自覚のない晴子は腹を立てながら答える。
「いくらウチでも、死に損ないの兄ちゃんを-----」
言葉の途中で、晴子が固まる。

そこには、自分たちが離れ離れになった原因のひとつである、忘れもしない髭の男が立っていた。
(あいつは……!)
思考より先に、反応していた。
向こうも同じであったかもしれない。
二人の殺気が交錯する。
「……お母さん?」
駆け寄ろうとする観鈴。
「来んなっ!」
叫ぶと同時に、晴子は素早く拳銃を抜き、横へ飛ぶ。
着地すると同時に態勢を整えると、そのまま発砲した。
139赤い光(5):01/08/26 11:55

 タタン! ガン!
   タンタン! ガン!

四発の高い発砲音と、二発の地響きが轟く。
一瞬遅れて聞こえた着弾音と共に、ホールに異変が訪れた。
割れた窓ガラスのアルミ枠が火花を散らしてバキンと吹き飛び、更にその下の壁面にひびが入った。
もう一発は天井の石材に斜めの角度でめり込み、割れた石板がボロボロと崩れ落ちる。
「くそっ!一発くらい、当たっとれよ!」

 …からん、かつん。

妙に、軽い音がした。
壁を盾にして、文句をいう晴子の隣。
すなわち、往人が倒れている場所。
そこに、”何か”が投げ込まれていた。

 それは赤い光を放つ、小さな機械。
 ピ。
 聞こえるのは小さな電子音。
 ピピ。
 (なんやねん、コレ)
 ピピピ。
 (ひょっとして-----)
 ピピピピ…
 (-----やばいんちゃうか-----!?)

晴子は、思わず駆け出した。
 
140名無したちの挽歌
【北川&芹香&往人:気絶中】
【フランク:晴子の弾が当たったかは不明。デザートイーグル&狙撃用ライフル所持】
【爆弾:あと少しで爆発。晴子が間に合うかどうかは不明】


「赤い光」です。
格闘あり銃撃ありの、小規模かつ短時間ながら、派手目の戦闘になったかと。