葉鍵聖戦 3rd Period

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさんだよもん
2000年冬から2001年へ不意に続く、もう一つの世界。

葉鍵キャラがオリジナル設定で大暴れしまくりな日記形式のリレー小説だゴルァ(゚д゚)
書き手も読み手もルール守ってマターリ逝こうぜゴルァ(゚д゚)

1 基本的にsageでお願い致します。
 (ただし、dat逝きを防ぐためにageても構いません。目安はスレッド順位が300位以下になった時です)
2 どんな人間がどのキャラを書くのも構いませんが、それまでの伏線は重視する方向でお願い致します。
3 あまりに立て続けのカキコは自粛しましょう。
4 これはあくまでの2chのスレッドです。
  当然書き手に否定的な意見等もあるかもしれませんが、いちいち反応せずに作品で結果を見せましょう。
5 他の書き手が納得出来ない展開はご遠慮下さい。
6 新規参入者は、過去ログを熟読して下さい。
7 1つの書き込みをした後には必ず2回ほど回して下さいますようお願い致します。
  なお、連続で書き込む場合は、書き込みが終了した後に数回回して下さい。

では、貴方も葉鍵な聖戦の世界へ……

なお、過去ログ等は>>2にございます。
2名無しさんだよもん:2001/05/07(月) 05:26
>>3にあります。
3名無しさんだよもん:2001/05/07(月) 05:26
前スレおよび過去ログ等は下記の通りです。

初代スレ:「邪悪な葉鍵キャラの日記」
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/973/973607248.html

前々スレ:「葉鍵聖戦」 (現在、閲覧不能です(2001.2.19現在))
http://cheese.2ch.net/test/kako/975/975572864.html

前スレ:「葉鍵聖戦 2nd Period」
http://cheese.2ch.net/test/kako/982/982520510.html

過去ログ保管サイト
http://members.tripod.co.jp/bou_ichikakite/

また、掲示板もございます。ご意見、批評、感想、要望および雑談等はこちらにお願いいたします。

葉鍵聖戦な掲示板
http://green.jbbs.net/sports/310/xiantou.html
4名無しさんだよもん:2001/05/07(月) 05:36
>>3
おっと、前々スレに「現在閲覧不能」って書いてありましたが、今はそんなことはないです。
5名無しさんだよもん:2001/05/09(水) 22:54
前スレおよび過去ログ等は下記の通りです。

初代スレ:「邪悪な葉鍵キャラの日記」
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/973/973607248.html

前々スレ:「葉鍵聖戦」 (現在、閲覧不能です(2001.2.19現在))
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/975/975572864.html

前スレ:「葉鍵聖戦 2nd Period」
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/982/982520510.html

過去ログ保管サイト
http://members.tripod.co.jp/bou_ichikakite/

また、掲示板もございます。ご意見、批評、感想、要望および雑談等はこちらにお願いいたします。

葉鍵聖戦な掲示板
http://green.jbbs.net/sports/310/xiantou.html
65:2001/05/09(水) 22:57
>>5
>>2の過去ログに間違いがあったので訂正をば。
7名無しさんだよもん:2001/05/12(土) 21:59
aaddww
8岡田(三人娘の一人) (1/2):2001/05/14(月) 05:26
 ……もう……これまでか……な……。

 白い妖狐の大群にはまったく歯が立たなかった。
 もう体も動かない。痛みも感じなくなってしまい、目の前が真っ暗になってきた。

 死ぬのかな……。

 生まれて初めてそんな気分になった。
 今までそんな事を思ったこともなかった。
 でも……怖いなんて思わなかった。
 何も感じなくなっていたから。

 ツインテール……これのために私はいやな目に遭わされてきた。
 変な僧や物の怪に付きまとわれては、命を狙われかけた。
 そのたびにどうにか防ぎきっていた。
 でも、今回はそうはいかないみたい……。

 吉井に松本が九尾にさらわれなかっただけでもよかったのかもしれない。
 助けることができた……これだけでもよしとしなくちゃ。
 それに、手を回してくれた清水サンとリアンにも感謝しなくちゃ……ね……。
 んで……あと……保科さんには敵を討ってもらおう……か……な……。
 いやな……人だ……けど……。

 ……もぅ……息も……できない……。
 あ……目の前に人影……。
 多分、妖狐……かな……。

 もう……これまで……ね……。
 あとは……頼んだ……わよ……。ほしな……さん……。

 そのとき……下のほうへ引きずり込まれた気がした。
9岡田(三人娘の一人) (2/2):2001/05/14(月) 05:30
「……逝っちまうのはまだ早ぇぞ……」
 よく効くと暗そうな女の声……どっかで聞いたような……。
「こら、はねっかえりのテメーがくたばってどーすんよ」
 今度は女の子の声だけど、口調が汚いわね。

――パン!!

 いきなり頬をぶたれた。ただでさえ痛いのに……。
 私は体を起こして、そのぶった相手をにらみつけた。

「おいおいやっと目を覚ましやがったか」
 その目の前の相手――青い髪の眼鏡を掛けた女の子は仕方なさそうに私の顔を見つめて
いた。気づけば体もある程度は回復している(もっとも、骨は折れたままだ)。
 そして、どこか真っ暗な場所にいるようだ。
 その人物の顔は手にした懐中電灯でぼんやりと見えている。

「リアン、回復魔法はやっぱり姉に劣るわね」
「第一声がそれかい! まったく……」
「……喧嘩はそれまでにしておきましょうか……コリンさんに任せてばっかりでは
気の毒です……」
「まあ……それもそうだな……。とにかく、岡田。アンタは動けるかい?」
「なんとかね。ただ戦闘は多分無理だけど」
「動けるなら……早速手伝ってもらうよ」
 そう言って、リアンは暗闇の奥へと足を進めていった。一緒にいた彩もその後に続く。

 ――仕方ないね……。

 私も彼女たちについて行くことにした……。
10名無しさんだよもん:2001/05/14(月) 05:32
さて、今回は何とかdat逝きは防がねば……。
11名無しさんだよもん:2001/05/14(月) 05:33
前スレが180ぐらいで終わったのはもったいない。
12名無しさんだよもん:2001/05/14(月) 05:34
さて、今回はどれだけネタを入れられるか。
13名無しさんだよもん:2001/05/14(月) 23:01
序盤を読み返してたらみしおたんの心の鍵云々の描写があった。
これ、直接出てきてないよね?

場所は、ログ倉庫のNO4あたり。
14清水なつき(1/6):2001/05/15(火) 05:46
 5月29日

 今日はそんなに書かないとはいえ、どれだけの量になっちゃんだろう。
 んなことはどうでもいいんだけど、ふと思っちゃうんだよね。
(そうそう、ついでに今まではかなり偉そうな文体で書いてたけど、なんとなくおかしいから
今日からは話し言葉とおんなじ調子で書くよ)

 今朝、彼の地を盗聴したテープを電話越しに聞いたんだけど、ついに妖狐どもが殴り込みを
かけたようだね。スフィーや岡田さんはもちろん、聖さんや保科さんも大丈夫かな。
 相手は白狐4000匹プラス緒方兄妹プラス名倉姉妹……なんか、やな予感がするんだけど。
 コリンさんや玲子にリアンと彩さんが何でも奇襲を掛けるってことを吉井がその電話で話し
ていたけど……やっぱり心配。

 そうそう、あとユンナさんが4人ぐらいの人を彼の地から連れ出したみたい。
 でもその人たちについて、いくつか気になることがあるの。
 まず、巳間晴香って人なんだけど、話を聞いた限りどうも『えいえんのせかい』のリスクを
知らないみたい。これについては、ここで書くと結構長くなるので次の機会にするけど、とに
かくいろんな意味で危ないよ。晴香さんとは近いうちに直に話をしようと思うんだけど。

 それから高瀬瑞希って人だけど、吉井や彩さんから話を聞いた限りだと、あの人――浩平お
兄ちゃん(本当はこう呼ぶべきじゃないんだけど、どうも……)が造った人工妖狐の試作体っ
てのは間違いないね。もう一度、浩平お兄ちゃんが書いた遠野みちるの製作日記(前スレ119
参照)を読み返してみたんだけど。(もっとも、この手記は彩さんがどこからか手に入れてき
たものを去年にもらったんだよね。当然、手記は既に破棄されたと思っていた敬介さんは、こ
れを目にした途端に腰を抜かしてしまったけど(笑))
 そしたら、7日目にこんな記述があったよ。

『七日目
 きょう、みちるに前に作った人工妖狐を処分させた。こいつはみちると比べ物にならないほ
どのできそこないだ。みさおの姉になれるわけなんかない。みちるはあっという間にこいつを
消し去ってくれた。さすがだ。できそこないなんていらないんだ。だからすてたんだ』
15清水なつき(2/6):2001/05/15(火) 05:48
 この手記を読むのって嫌だよ。なんか、気味が悪いっていうか……。
 よくよく思ってみたら、浩平お兄ちゃんが変に入れ込んでいたのってこの事だったんだね。
一日中、法術の修行に明け暮れて、さまざまな文献に挑んでいたね。なんでこんなに一生懸命
になってるのとなつきが尋ねたら、浩平お兄ちゃんはこう言ったっけ――

 妹のためだよ、って――。

 この言葉を思い出したら、急に背筋が震えてきたの。なんて言うか……怖いの。
 確かに病気の『妹』のみさおさんはあと数日の命だったよ。んで、みさおさんに対して一生
懸命に接しようとする浩平お兄ちゃんの気持ちは分からないでもないけど……。
 でも、そうだからといって、他の人を悲しませて――勝手に命を作っては捨ててしまうのっ
て――おかしいよ。あまりに変だよ。

 ――狂ってるよ……浩平お兄ちゃん――。

 結局、瑞希さんは浩平お兄ちゃんに捨てられてしまった。んで、その後に千堂和樹さんに面
倒を見てもらっていた所まではいいんだけど、その和樹さんも例のこみパでの殺人で濡れ衣を
着せられて逮捕されてしまって……んで、あろうことか立川郁美に目をつけられて、ものみの
丘に連れて行かれて、九尾にかわいがられたように見えたが、最終的には捨てられた……。
 かわいそう――。
 そんなことを思うと、涙が流れてきたよ。んで、なんか腹が立ってきたよ……。
 ひどいよ……ひどすぎるよ……浩平お兄ちゃん……。

 そういえば昨日届いた澪ちゃんからの手紙に、浩平お兄ちゃんをこの世界に連れ戻すといっ
た事が書かれていたね。なんでも、そのためにゴッドハンドからパンドラの箱を強奪したみた
い。それに神奈と九尾を封じ込めて、その力を利用して真の『えいえんのせかい』にいると思
う浩平お兄ちゃんを連れ出すみたいなのだけど……。

 やばいよ……繭ちゃん。浩平お兄ちゃんはそんなところにいないと思うよ。
16清水なつき(3/6):2001/05/15(火) 05:52
 ふと思い出したんだ。
 浩平お兄ちゃんがみさおちゃんを蘇らそうとして……蘇ったのはいいけど、浩平お兄ちゃん
と瑞佳さんが消えてしまった時の事を。
 あの時、なつきは八尾比丘尼の動きに注意していて、そっちの方にはあまり気が向いていな
かったんだけど、たしかに人が蘇った気配がしたの。

 でも……なんかその時に妙な気配を感じたの。
 明らかに『えいえんのせかい』のものではない……邪念だったよ。
 そしたら、一瞬浩平お兄ちゃんのことを忘れかけて(結局忘れなかったんだけど、それはど
うもなつきが永遠に関する素質があるからってみさおちゃんが言ってた)、気が付いたら水鏡
湖の方が光って、『えいえんのせかい』がやってきたんだよ。
 そして――浩平お兄ちゃんと瑞佳さんは消えていったの。

 その後――なつきが『えいえんのせかい』に行って浩平お兄ちゃんと瑞佳さんを一生懸命探
したけどいなかった。そのためだけに管理人にまでなったんだけど、それでも無理だった。
 最初、なつきは浩平お兄ちゃんは『えいえんのせかい』から逃げ出したと思っていたんだけ
ど、シュンさんに訊いて分かったんだよ(もっとも、ずっと答えるのを渋ってたから、ちょっ
と力づくでやっちゃったけど(笑))。
 どうも浩平お兄ちゃんは『えいえんのせかい』にたどり着く前に消えてしまったみたいなん
だって。ついで瑞佳さんも来た気配はなかったんだって。やって来たのはみさおちゃんだけ
だったみたいだよ。
 でも……一ついっておくと……真の『えいえんのせかい』に行くためにはシュンさんの管理
している『えいえんのせかい』を通り過ぎなくちゃ行くことができないんだよ?
 真の『えいえんのせかい』はいってみれば深層の世界。そこに行くためには表層――繭ちゃ
んの言葉を借りたら仮初めの『えいえんのせかい』かな――を通らなくちゃいけないよ?
 どうも繭ちゃんはそこまでは話されてなかったみたいだね。
 どこに浩平お兄ちゃんは消えたのか――結局、なつきには分からないまま2年も経ったよ。
 でも、今やっとようやく分かりかけてきたよ。手がかりは、例の手記の中にあったんだよ。
17清水なつき(4/5):2001/05/15(火) 05:54
(例の手記の内容をここに書いてみるよ)

『八日目
 高野の奴らが気づいたみたいだ。このままではみちるが消されてしまう。
 そうだ、高野を滅ぼしてしまおうか。だったら、みちるを消されずに済む。
 そうだろ、みちる

 九日目
 この世界の奴らがうっとうしい。深山先輩も里村も、瑞佳も。
 どうだっていいんだ。みさおがいないこんな世界なんか嫌だ。

 十日目
 みちるはきっとこの世界を滅ぼしてくれる。こんな世界なんかいらないんだ。

 十一日目
 ずっと前に作ったおもちゃを引き取ってくれた女の人が話し掛けてきた。
 世界を滅ぼす前にみさおを蘇らせてみてはどうかなんて言ってきたんだ。

 十二日目
 みさおを蘇らすには反魂の術がうってつけだ。里村と七瀬に手伝ってもらおうか。
 術は水鏡湖でやるのがいいと女の人が言ってたと瑞佳が言ってた。この人がいなければあやうくこのチャンスを逃すところだった。

 十三日目
 里村も七瀬もOKを出してくれた。よかった。
 みさおが帰ってくるのは時間の問題だ。みちるなんかどうでもいい。

 十四日目
 今からみさおを蘇らせる。待ってろよ、みさお』
18清水なつき(5/5):2001/05/15(火) 05:57
 ポイントは十一日目に話し掛けてきた『女の人』……。
 それまで自暴自棄だった浩平お兄ちゃんになんでそんな話を持ちかけてきたのかな?
 そして十四日目に浩平お兄ちゃんは消えてしまった……。

 人の心をついた話を持ちかけることのできて、かつ高野の内部の最大の霊力ポイントを知っ
ている、この『女の人』……なつきが思い当たったのはたった一人……あいつかな?
 でも、あいつだとしたら、なんでみさおちゃんを蘇らせる必要があったのかな?

 待って。ちょっと思い当たったことがあったよ。
 あいつはみさおちゃんを狙っていたわけじゃなかったかも。
 今の彼の地で起こっている現状に浩平お兄ちゃんが消えてしまったときの現状、浩平お兄
ちゃんが作った『おもちゃ』をあいつが引き取ったことや、さらには『この書類』の事実を踏
まえたら……あいつの目的は恐らく、違ったところにあったのかも。
 もしこれが正しいとしたら、裏葉さんがあの人に憑依した事の説明もつくよ。
 もっとも、これについては証拠が少ないから、想像の域を出ないのだけど。

 とにかく、今の時点で確実に言えるのは水瀬名雪ってのは非常に危険だということかな。天
使の禁断の技もまったく効かなかったし……まあ、彼女の実態を踏まえれば当然かな。
 もっとも、彼女の実態についてもあいつの件と同様にはっきりとは言い切れないけど……。
 ただ、繭さんが彼女と遭遇しないことを願うばかりだよ。
(もっとも彼女を横浜あたりにでも連れ出したら、彼女を叩き潰すことは赤子の手をひねるよ
りも簡単なんだけど……って、遠まわしすぎるかな?)
 手元にあった『この書類』――先日、秘密裏に手に入れたある人物の死亡届をもう一度見直
して思ったよ。
 とにかく、あいつをこのまま放置していたらロクなことにならないと。
 神奈と九尾の方も結構頭が痛いけど、こっちは余計タチが悪いと。
 本当になつきも彼の地に向かったほうがいいかも。
19名無しさんだよもん:2001/05/15(火) 06:00
回しま〜す。
20名無しさんだよもん:2001/05/15(火) 06:05
回し。
21名無しさんだよもん:2001/05/15(火) 06:24
>>13
確かにあったけど、あまりそれについては触れられてないね。
22名無しさんだよもん:2001/05/15(火) 06:27
まあ、まったりと書いていきましょう。
23名無しさんだよもん:2001/05/15(火) 07:37
流れに反するが、こんなのあたよ
ttp://www10.freeweb.ne.jp/play/yahhou/night.htm
24名無しさんだよもん:2001/05/17(木) 11:16
誰彼のキャラ達はいつ出てくるのかな〜。
25名無しさんだよもん:2001/05/23(水) 10:31
とりあえず保存してみたり。
26名無しさんだよもん:2001/05/24(木) 22:23
誰か書いて下さい。
期待age
27シイ原:2001/05/26(土) 00:09
ageるよ。
書くのはまた今度……
28名無しさんだよもん:2001/05/26(土) 00:14
            , ----- 、
        ____/〃"  、、、 ヽ
      ∠> ` ̄ ̄`ヽ, --z _ i
     / ,>           ヽ  ̄\
    ./,∠.    人  、   ゛゛゛ ヽ゛、 ヽ
   / _ノ .  /  | /|人  ゛゛゛ |   i     ___________
   |  〉/ ./|  レ´/ `ヽ λ │ | |i |   /
   i ll 〈/|  |‐ヽ   , ― 、 |ノ |  丿| |┤| <
    |   |人′・ノ   、・_丿 /ヽ,ノ レ 、/   \___________
   ゞ、 ゛   | ヽ    , メ б│、| "/
     \゛、 ヽ  ー     ゝ.ノ "  /
      `‐ヽ _\ _ _ ノ /レ'__/
              |    .|
         ______.ノ     人(⌒)
        //::::::::|-、 ,-/::::::ノ ~.レ-r┐
       / /:::::::::::|  /:::::ノ__ | .| ト、
       | /:::::::::::::::| 〈 ̄   `-Lλ_レ′
       レ::::::::::::::::::|/::: ̄`ー‐---‐′
うわ、この前のスレが落ちて行ったからもう諦めていたけど、また書いていいかな?
30名無しさんだよもん:2001/05/26(土) 20:36
>>29
是非。
31名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 00:00
>>30
どうもです。とりあえずネタ仕込んどきます。
32椎名繭:2001/05/27(日) 01:23
 そこに在るのが当たり前だった。
 側にいてくれるのが日常という日々の欠片だった。
『永遠はあるよ……』
『ここにあるよ……』
 止めて欲しい。救いのない希望を私に与えないで欲しい。
 季節は留まらないから美しい。
 雪は必ず解けるから春の花は頑張って咲こうとする。
「永遠に執着するものよ……」
 誰かの声が聞こえる。
「そこにあるのが希望だと惑う者どもよ」
 でも、すぐに消えた。
「力の消えたツインテールに、参謀役の小娘だと肩慣らしにもならないわね」
 それは私の意識が無くなった時に聞いた声だった。
 天野美汐。ここで会うのは計算外だった。
 川名さんはどうしたのだろう……?
 生きてる……? それとも、もしかして……?
「繭さん、起きたのですか?」
 眼を開けると、そこに在ったのは馴染みのある笑顔だった。
「里村さん、久しぶりですね。お元気でしたか?」
「ええ、繭さんもお元気そうでなりよりです」
 ふと視線を彼女の持つ武具にやる。
「ついに手に入れたんですね? 私の予測以上ですよ」
「偶然です。でも、引き換えに秋子さんと手を組むことになりました」
「いえ、いいんです。誰か一人でも永遠に手が届くように……それが私たちの誓いでしょ?」
 そう言葉を零すと、彼女はくすっと微笑んだ。
「今は行くことにします」
「そうですか。七瀬さんとは顔をあわせないんですか?」
「はい、彼女は……怒ってくれそうなので……」
 そう言って彼女は旅立っていった。
 やることは無数にある。でも急がなくても構わない。
 いつか、そこに……。
「たどり着けたなら、ですよね、皆さん」
 そして、私はもう少し寝入ることに決めた。
 七瀬さんの傍らで……。
33名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 01:24
今日はここまでだよもん。
「もう息も切れ切れやな……」
 自分でも笑ってしまうくらい情けない声を上げる。
 呻き声でもなくはなかったが。
「何が何でも卒業試験が九尾と邪術士の二人掛かりとはきついでスフィー」
 私の顔を思い浮かべて言い放つ。
 しかし、どうしてか私の顔は綻んでいた。
 九尾の尻尾が私に襲い掛かる。でも余裕に躱すことが出来た。
 懐に入り込んで掌を九尾の腹に当てる。
「いてまうで!」
 突如爆発。気を送り込んでやったんや。これは効くで。
 そして、後方に生まれる気配。
「今度はそっちか!」
 邪術士の放つ暗黒弾を素手で止めて、それを投げ返す。
 激しい爆音。しかし、まだこれくらいでは殺れん。
「でもな、あたしも技の一つや二つ持ってるで!」
 両手に炎が灯る。手が真っ赤に燃えていた。
 力が無尽蔵に湧いてくる感覚。
「喰らえや! 長瀬流炎殺拳――最終奥義<メギドブレイク>!」
 極限まで高められた炎気が私の拳から放たれる。
 それは、水瀬秋子を容易く飲み込んでいった。
「どないや!」
 直後――隙を突いたつもりだろうか。
 倒れていた九尾がこちらに向かって妖弾を叩きつけてくる。
「ちっ! もう終わっとけ!」
 軽い目眩を覚えながらもメキド<源炎>の残り火で剣を作り出す。
「長瀬流炎殺剣<レーヴァテイン>」
 掲げ上げた炎の剣で九尾を一刀両断にする。
 そして、燃えカスも残らないまま、二人の強者は敗者へと変わった。
「ふう、これで終いか……もう動けんわ。おーい、スフィーこれで終わりやろ?」
 正直言って、まだ続くようやったら身体はもてへん。
 でも、そこで――
 不吉な気配を私は感じていた。
「保科智子――死になさい!」
 完全に不意を付けた。
 この異空間は元から気配を隠し易いようにしているらしい。
 余程の使い手でもなかったら、すぐそこにある殺気にさえ気づかないだろう。
 しかしレプリカとはいえ、水瀬秋子と沢渡真琴の両人に等しい死を与えるとは……。
「秋子が早めに始末したかったのも分かり気がするわね……」
 倒れ伏した保科智子を見てほっと安堵の息をつく。
「任務成功ね」
「いや失敗とちゃうか?」
「――え!?」
 私は驚いて声がする方に眼をやった。
「あ、あなた……そんな――あれを喰らって無事でいられるなんて……」
「無事って――あのな、頭のところにタンコブできたわ。どなしてくれんねん?」
 保科智子は頭を掻きながら、そんなことを軽く言い放つ。
「くっ!」
 私はすばやく不可視の力を解放する。
「裂けろ!」
 しかし私が意識を集中した先には彼女の姿はなかった。
「遅い遅い。こっちや!」
 そこへ振り向こうとした時、熱い衝撃波が私に襲い掛かってきた。
 身体全体が燃え上がるようだった。
「ふう、まさかほんまもんの名倉友里かいな? スフィーの奴なにしとんねん、まったく」
 保科智子は悪態を付いていた。それを見て私は思う。
(格が違う……)
 背筋が凍るような思いだった。
「ま、ええわ。それよりあんたをどうするかやけど……なんか殺すのも馬鹿らしいわ。
 おとなしく捕まってくれんか? 悪いようにはせえへんつもりやで」
「…………ねえ、知ってる?」
「うん?」
 私は覚悟をして保科智子に笑ってみせた。
「どうしたんや?」
 自分で言っといて何々やけどホンマにおとなしくなってくれるとは思わんかった。
 なんや、まだなにかするつもりかいな? やれやれ。
「幸せってすぐに壊れるの……」
「はあ?」
 なに言っとるんやこいつ。
「どうしたらずっと幸せでいられるか考えていたわ。答えは出なかったけどね……」
「…………だから永遠に手を出したんかい?」
「そうね、そうかも知れないわね。でも、どんな理由があったとしてもあなたには理解できないでしょう?」
「当たり前や! 人を犠牲にしてまで、そんなもんに執着できるか!」
「それは……あなたがそう言うのは、永遠を理解できていない証拠なのにね……」
「あん? どういう意味や?」
「水瀬秋子は、あなたの敵でしかありえないってことよ」
「何を今更……わけ分からんわっ!」
「いいのよ。分からなくてもね……でも、だから私はあなたの敵なのよ」
「あんた、その眼……」
 友里の瞳が黄金色へと変化していく。
「ええ、私の制御できる不可視の力は微々たるものだわ。だから敢えて制御しない。
 暴走させるわ。保科さん一緒に死にましょう」
 凍りついた空間で、それ以上に凍り付いていた友里の心。
 一瞬だけ交錯して……。
「あんた、あんた――ホンマもんのアホやわ……!」
「そうかも……知れないわね……」
 そう言って名倉友里は深い闇に沈んでいった。
 もう眼を開けることもない。
「…………」
 私の手は名倉友里の血によって赤く染まっていた。
「おい、智子、生きてるか?」
 それからどれくらいの時間が経ったのか、スフィーの声が聞こえてきた。
「ああ、生きとるで」
「終わったみたいやな。今から出したる」
「分かった……」
 視界が一瞬暗くなったがすぐに明るい光が眼に差し込んでくる。
 長かったようで、短かった訓練が、その時やっと終わりを告げた。
「どうだ? レベルアップの方は順調に出来たか?」
「まあな……そんなことより、戦況の方はどないなっとる?」
「五分と五分……と言いたいところだが、ちっとばかし悪いな……」
「そうか。じゃあ、こっから巻き返したるわ」
「おぉ、頼もしいね」
 スフィーが口笛を鳴らす。
「あ、そうそう、名倉姉妹をそっちに送っといたけど、どうやった?」
 この街の地図を広げながら、スフィーが言っていた。
「うん、来なかったのか?」
「…………いや、始末しておいた」
「ま、あんたの実力から言ったら、軽いもんだったろけどな」
 私は曖昧に頷いていた。
 力に対して、私はさらに強い力を手に入れた。
 今はそれが正しいのか、悪いのか、考えてる暇はなかったが……。
「他のみんな、まだ無事かな……」
 仲間を救うためには最善の道だったと私は固く信じた。
「……お姉ちゃん?」
 知らない場所にわたしは居ました。
「……お姉ちゃん、どこなの?」
 もう一度呼びかける。
 それでも返事がなくてわたしは戸惑いました。
「もしかして……」 
 最悪の展開が脳裏を横切る。
 優しいお姉ちゃん。
 いつでも一緒だったお姉ちゃん。
「お姉ちゃん……」
 鼻の先が震える。今にも『わんわん』泣きたくなってくる。
 悲しい。とても悲しい。
「お姉ちゃん! どこ!? お願いです! もう、もう――独りにしないで下さい!」
 歩く。ただひたすら歩く。お姉ちゃんの姿を追い求めて。
 でも、突き当たった部屋の角で……わたしは見てしまった。
 そこにある、絶望を……。
「お、お姉ちゃん!」
 最初は時間がなかった。でも手で触れて、冷たくて、わたしは理解した。
 ――したくなかった。
 本当は理解なんて出来なかった。
 お姉ちゃんが死んだなんて信じたくなかった。
 だから……。
『永遠はあるよ……』
『ここにあるよ……』
 白いワンピースを着た女の子がわたしの目の前に現れた。
 でも、それはわたしの望んでいた言葉じゃない。
 女の子は、そっと微笑んでこう言った。
『友里、お姉ちゃんと一緒に行こうか?』
「うんっ!」
 それが永遠の始まり……。
39名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 20:38
コミケに落ちただよもん。
40名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 20:38
鬱だよもん。
41名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 20:40
初参加の夢は遠のいたもん。
42名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 20:41
長い夏になりそうだよもん。
43名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 20:42
つーか間違っただよもん。
44名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 20:43
×『友里、お姉ちゃんと一緒に行こうか?』
○『由依、お姉ちゃんと一緒に行こうか?』
45名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 20:51
さらに鬱だよもん。
46名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 20:53
それじゃあお約束通り逝ってくるだよもん。
47名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 20:54
その前にageとくもぅん。
48名無しさんだよもん:2001/05/30(水) 00:25
死ね!
49名無しさんだよもん:2001/05/30(水) 18:30
生きろ!
50名無しさんだよもん:2001/05/30(水) 19:43
生きる阿呆に死ぬ阿呆
同じ阿呆なら生きなきゃ損々
51名無しさんだよもん:2001/06/04(月) 23:55
生きるためにage
 想いは遠くにある。
 それを探し求めていたのは私だった。
 眠れる力。宿いし心。
『強くありなさい』
 まだその言葉の意味が分からない。
「由紀子さん……」
 高野の大僧正・小坂由起子は私のために死んでいったのだから、
 今の私がこんなのでは救われないだろう。
 だから、探していた。
 由紀子さんのために、由紀子さんが生きた証に、由紀子さんになら出来たこと。
 その想いは、やはり見つからない。
 でも、薄っすらとでも感じるためにここに降り立つ。
 命を懸けてでも……。
「こんにちは、邪術士・水瀬秋子さん」
 木に囲まれた森の中で邪術士は余裕を持って切り株に座っていた。
「あら、こんにちは。なにか御用ですか?」
 にっこりと笑う彼女と同じくらいの笑顔で私は言った。
「死んでくださらない?」
 しかし、彼女は顔色も変えないで、どうぞ、と返す。
「やれるものなら、ね」
 私は空に祈りを込めて呪印を切った。
53深山雪見@虚構という真実(2/9):2001/06/07(木) 19:01
「解呪・神<霊月>」
 術を発動すると私の身体が光に包まれる。
 それは聖なる月の光。
「大僧正にだけ伝わる高野の秘術ですね」
「ええ、開祖である水瀬秋子、あなたを倒す為だけに歴代の大僧正が編み出した技よ」
「そして、対翼人ように、でしたっけ?」
「……そうよ。翼人の力は強大で、かつ高野の後ろ盾にもなったけど、いつも恐れていた」
「それに、いつ復活するのか分からない私を倒す手段として」
「貴方の編み出した方術は数多でも、決定的なところでは、あなたには到底、敵わない……」
 私はひとつ小さく溜息を付いた。
「あなたがいなくなった高野は、簡単に翼人の手に渡ったわ。そしてくだらない妖弧との死闘」
「……妖弧との戦いは、あなたがたが望んだものではないと?」
「ふっ、最初は単なる奴らの娘のやりとりよ。そんなのがきっかけなんてお粗末過ぎるわ」
「母親になったことのない人の意見でしかないわよ、それって」
「でも、くだらないのよ」
 私は眼を閉じて言葉を区切った。
 そんなことのために千年の因縁が続いているのは馬鹿らしかった。
 由紀子さんと、みんなとの、高野での思い出は、そのためだけに滅んだのだから。
「……さすがに知りませんか……」
「……なんのこと?」
 聞き返したのはほとんど反射的なものだった。
 でも、なぜか心に引っ掛かる。
「いえ、考えもしないわけですね……」
「……なにがよ!?」
 とうとう私は怒鳴っていた。
 何に苛付いているというのだろう?
「……私に勝ったら教えますよ」
 その時の水瀬秋子は、普段からは想像出来ないくらい怒りの念を外に出していた。
54名無しさんだよもん:2001/06/07(木) 19:02
ああ、間違って上げちゃったよ。
55名無しさんだよもん:2001/06/07(木) 19:02
しばらく放置しときます。すみません。
「裂<新月>――乱!」
 いくつもの三日月の光刃が邪術士に襲い掛かる。
 しかし、奴を取り巻く光の幕に阻まれて刃は届かない。
「この程度ですか?」
「まさか――小手調べに過ぎないわ!」
「ふふっ、楽しみにしてますよ」
「光<満月>!」
 両手の平に大きな光の玉が生まれる。
「月の霊法ですか……蝕まれた力ですね」
 邪術士が何か言ってくるが、意に介する必要もない。
 私は力を放つため意識を集中させる。
 そのとき――
「霊術<反射鏡>」
 邪術士が初めて自らを防御する為に術を唱えた。
 大きな鏡が表れたかと思うと、私の光弾はその中に取り込まれてしまう。
 さながら、湖に石を放り投げたように、波紋だけを残して。
「くっ!」
 さすがに驚嘆は隠せなかったが、まだやれるはずだ。
「刃<三日月>」
 手に光で作られた剣が生まれる。
 斬りかかる。
「無駄ですよ……」
 邪術士は手も動かせないまま私の体を制して見せた。
 地面に倒れこんでしまう。
 ここまでなんだろうか?
 こんなにも力の差があったのだろうか?
「由紀子さんだったら……」
 もっと、どうにかなったのかもしれない。
 所詮、私は未熟者だったのか。
 やれる。まだ、やれる。私はこの程度ではないはずだった。
「……どうして、立ち上がろうとするのですか?」
 そうじゃないと、由紀子さんの……由紀子さんの想いはどうなるの?
 こんな私を救うために由紀子さんは死んでいったの?
「違う!」
 私はそれこそ鬼のような形相で最後の術に命を懸けた。
「解呪・滅<十六夜>」
 それは禁断の秘術だった。
 十六夜とは、十五夜を迎えた月が欠けていくだけの、ただ崩れていくだけの月の想い。
 全身の霊気を一点集中させて、暴走させる自己犠牲呪文にしか過ぎなかった。
「私の命をあなたに上げる……」
「…………」
 それでも邪術士は何も言わずに哀れんだ視線を私に送っていた。
「確かに、これでもあなたを倒せないかもしれない。でも、やってみる価値はあるのよ!」
「……本当に、そう思っているのですか?」
「あ、当たり前よ!」
「悲しい人ですね……私と同じように、そういう生き方しか出来ないなんて……」
「……え?」
 邪術士は首を振って、こう言ってきた。
「千年というのは長かった。この身体が朽ちるほどに」
「……何を言ってるの?」
「昔話ですよ。私には娘がいました……」
 いました、と邪術士は言った。
「どうして過去形なの? あなたの娘の名雪は……」
「そうね、私には名雪がいる。本当の名雪ではない名雪が……」
「――なっ!」
 嘘だと思えなかったのは、どうしてか今は分からなかった。
 ただ、彼女の言葉に私は聞き入っていた。
「千年前の私は単なるひとりの女だった。
 普通に生きて、それこそ、普通の生活をして、普通の結婚を夢見ていました」
「……どういうことなの? だって、あなたは……」
「もちろん普通の人間ですよ……。
 ただひとつ違っていたのは、娘の方なんですよ」
「名雪が、ってこと?」
 邪術士は何も言わずにただ微笑んでいた。
「かぐや姫の話って知ってます?」
「ええ、知ってるわ」
 誰でも知っているだろう昔話だった。
 竹やぶに光る竹があって、その中に美しい少女が眠っていた。
 そして成人すると、その美しさに都の貴族が集まり求婚したが、かぐや姫は月に帰らなければならない。
 ある満月の夜、迎えが来て、皆が見守る中、月へと帰っていった。
「……それが、どうしたっていうの?」
「私が十ニの頃です。それを見つけたのは……」
「え?」
 どうしてか話がよく見えなくて、そんな素っ頓狂な言葉を呟いていた。
 いや、もしかしたら、薄々とは分かっていたんだろう。
「あの子は幸せだったのでしょうか?」
「…………」
「……私なんかと暮らして幸せだったのでしょうか?」
「水瀬秋子……あなた……」
「私は類まれなる霊力がありました。でも、一生使う必要はないと思っていました」
 今、私が考えていることは、すべてを容易く否定してしまう。
 もう、これ以上は、思案していては駄目だった。
「しかし、私も母親でした。間違いなく母親だったんです。
 あの子の本当≠フ行き先を突き止めようと、高野に寺院を立てて修行に明け暮れました」
 誰かに似ていると思った。
 でも、誰に似ているのまでは思い出せなかった。
「……それも長くは続きませんでした。
 権力に溺れた人たちに私は大僧正の地位を追い立てられました。
 でも別に良かったんです。娘を探す為に欲しい術はすべて私のうちにありましたから。
 私を追い出す大義名分のため悪評を世に出されたとしても、構いもしませんでした」
「…………」
 もう私に言葉は挟めなかった。
 ただ訊くだけ。
「何年も、何十年も、彷徨い続けました。
 永遠の樹、そして仮初の永遠、記憶の欠片、そこにある月……」
 今もなお頭上にある。
「何かを掴み取る為に探していた。あの子ともう一度会う為に……。
 そして、千年目の冬でした……もう、本当は諦めていのかもしれません」
 邪術士は淡々と話し始めた。
 雪の街にたどり着いたときのことを……。
 寂しさと、あの子に対する思いから、戯れに雪でかたどった人形に命を吹き込んだらしい。
 己の魂と蒼い髪を織り込んで、そこに新しい命が生まれた。
「私はその子に、名前の『名』と、この街の象徴たるの『雪』を合わせて……。
 名雪、と名付けました……」
「それじゃあ、名雪って、そういうことなの……?」
 でも、彼女は笑うだけで何も答えない。いや、もしかしたら笑ってすらないのかもしれない。
 能面……。表情がない。
「もちろん命は長くなかったわ。だから、このジャムを食べさせるの」
 彼女が持っていたのは、オレンジ色の物体……。
「これの材料って何だと思います? 分かるでしょう?
 そうしないと……嫌でも食べさせないと、あの子の身体は保っていられないのよ」
 吐き気がのど元までくる。
 しかし、だからと言って彼女はまったくの……。
「これがすべてです。永遠を望むのは……私がそれを望むのは……」
 虚ろな瞳だった。
 そこにある千年の想いは、もしかしたら……。
「……ひとつ聞いていい?」
「なんでしょう?」
「どうして、そんなことを私に……聞かせたの?」
「結論から言うとね、私は娘に会えたのよ」
「…………?」
 私が疑問符を浮かべていると、彼女はおかしそうに笑った。
「この話を聞かせるのは、あなたで二人目だわ」
「……ひとり目は」
「あなたなら分かるでしょう?」
「そうか……効かないわけよね、月の霊法……」
 嘆息して、私は瞳を閉じる。
「どうします? それでも私と対峙しますか?」
「……止めとくわ」
「はい」
 私は今まで溜めていた力を収束させていく。
「この力は別のことに使うから」
 もう借りは返したと思っていたのに、まだ世話を焼かせるんだから。
 あの子は……。
 でもようやっと分かったような気がする。
『強くありなさい』
 由紀子さんの言葉を……。
「別に、あなたを許すつもりはないわよ」
「それはそうでしょう」
「ただ、私がその役になるのは、役者不足なだけよ。他の人に任せるわ」
 邪術士は何も言わないで、頷いていた。
「みさき、受け取ってくれる?」
 私の想いを……。
「うーん、痛いよー」
 私は倒れていた地面から起き上がっていた。
「あれれ?」
 目の前にある視界は以前のものだったから、素直に驚いてしまう。
 どうしてだろう、死んだと思ったのに……。
 わけが分からなかったけど、何故か哀し気持ちになった。
「雪ちゃん?」
 かすんだ声が風に流される。
 そこに……。
『やっと見つけたの』
 大切な友達の呼びかけがあった。
「あ、澪ちゃん」
 近づいてくる足音の方を振り向く。
 そこには澪ちゃんのほかにも女の子がいるみたいだ。
 羽の付いたリュックがパコパコ揺れている。
「あれは、誰だろう……?」
 寝起きのせいだろうか頭が働かない。
 零れる涙。
 理由すら分からない。
「何で泣いてるんだろうね、わたし……」
 呆然と呟く。でも、また笑えるようになるから。
 今は泣いていたいと思った。

 わたしは懸命に走っていた。
 あいつの言ったことを嘘だって言ってもらうために。
 心が臆病にならないように。
 でも、知った真実は、あまりにも重かった。
 挫けそうになるくらい。
 だから、改めて訊きたかった。
 高野の大僧正って人が光となって消えていったとき、わたしは訊ねる。
「お母さん、あれって本当のことなの?」
「名雪……訊いてたの?」
 暫くの沈黙。
 わたしにとっては永遠にも感じられた時間だった。
「あははっ……お母さんの困ってる顔って、始めて見たよ……」
 じゃあ、わたしって、何なの?
 ねえ、何なの?
 訊いてるの、お母さん?
 雪で作った、どうでもいい……。
「どうでもいい、いくらでも代わりがいる名雪っていう作りものなの!?」
 わたしは、駆け出していた。
 場所も、ここがどこすらも、分からないまま……。
 見えないまま……。
「祐一……」
 大切な人の名前すら冷たい風にさらされて……。
63名無しさんだよもん:2001/06/07(木) 21:11
それでは回すだよもん。
64名無しさんだよもん:2001/06/07(木) 21:15
まだ回すだよもん。
65名無しさんだよもん:2001/06/07(木) 21:16
そろそろ高野の襲撃の話に付いて触れたいだよもん。
66名無しさんだよもん:2001/06/07(木) 21:17
でも彩じゃないとすると誰だろうだよもん。
67名無しさんだよもん:2001/06/07(木) 21:18
分かんないだよもん。
68名無しさんだよもん:2001/06/07(木) 21:32
もしかしたら見当違いの話になるかもだよもん。
69名無しさんだよもん:2001/06/07(木) 21:33
少し様子を見た方がいいかもだよもん。
70名無しさんだよもん:2001/06/07(木) 21:33
失礼するだよもん。
71名無しさんだよもん:2001/06/10(日) 10:51
いつの間にか再開してるので期待age
72猪名川由宇@決戦(4):2001/06/15(金) 16:56
 事態は最悪なものに変わっていた。
 せっかく聖ハンが逃がしてくれたと思ったのに回り込まれていたんや。
 幼いツインテール……塚本千紗に。
 あたしらが向かった先で、あいつらが待ち伏せしていた。
「にゃあ、お馬鹿さんですね〜。逃げ切れるなんて思ってたんですか?」
 微笑を浮かべる千紗。そこに幼さの影はなく。
「ダメです。死んでくださいね」
 千紗の後ろに控えていた白弧――推定1000――ほどに命令を下す。
「やっちゃってください!」
 疲弊しきったあたしたちでは敵う筈もなかった。
 皆が皆、散り散りになっていく。
 あたしはせめて佳乃ちゃんだけでも助けたかった。
 でも、もう駄目やろうな……。 
 見渡すと視界を埋め尽くす限りに白狐が居てた。
「ふん、好きにせい…………」
 あたしはその場に倒れ込んだ。
 白い雪が心地よかった。もうこれで終わる。
(詠美、すまんかったな)
 最後に浮かんできたのは親友の顔やった。
 馬鹿で、我侭で、どうしようもないほど自己中で、でも一番の……。
「なに考えとるんや、うちは……」
 視界が黒くなる。意識が保っていられない。
 例えば、そう……公園で撒いたパンの耳を啄ばむ鳩や烏のように、千切られていく肉片……。
 痛い、っていう感覚はなかった。ただ心配だっただけ。
「他の皆には生きてて欲しいな……」
 それだけを言って目を閉じる。気分はまあ悪くない。
「頼んだで……」
「……分かった。約束しよう」
 そう誰かがそう答えてくれたから安心やった。
(さようならや、みんな……。
 あいつ馬鹿やけど寂しがり屋やから、うちが一緒に付いててやらんとあかんねん)
 そして、次の世代に希望を託す……。
「行くわよ、蝉丸君。弔ってあげたいけど、今は、ね……」
「……分かっている。だが、少し時間をくれないか」
「ふう、頑固なのよね、あなたたちって。いいわ、高子も手伝ってあげなさい」
「はい、分かりましたわ」
 ほんのささやかで、大きな希望に……。
73塚本千紗@決戦(5):2001/06/15(金) 17:32
 千紗は血に塗れた戦場を悠然と歩いていました。
「にゃあ〜、千紗の妖弧軍は圧倒的ですね〜」
 どこからか爆発音。どこからか悲鳴。火の手もところどころで上がっています。
 辛気臭いですね、まったく。前線はこれだから嫌なんですよ。
 千紗はどちらかと言うと、王座に座って敵を待つ、とかいうシチュエーションの方が好きなんです。
 でもでも、仕方ないんですよ〜。
 この前、恥を欠かせてくれた長谷部彩とリアンがこの区域に居るって聞いたんです。
 絶対に仕返しはするんですよ(あの件で真琴に怒られちゃったんですから)。
「どこかな? どこかな?」
 それにしても意外に広い街ですね。
 探せるんでしょうか?
「……許さない」
 どこから声が聞こえてきました。
 誰なんでしょう? 忙しいんですけどね、千紗は……。
「貴女だけは絶対に許さないんだからっ!」
 服はボロボロ。痣がいたる所にあって怪我もしている。ドロンコですね。
 傷口に悪そうです。
 この小娘は確か……霧島佳乃、とか言いましたっけ?
「だったら、どうするんですか?」
 暇つぶしに遊んであげることにしましょう。
 それに、この子を餌に他の奴らをおびき出すのも楽しいでしょう、きっと。
74霧島聖@決戦(6):2001/06/15(金) 17:53
 実際のところ北川君は善戦していた。
 数百の妖弧を目の前にしても衰えを見せないで駆逐していた。
(強くなっている……だが、これは)
 妖弧の力。沢渡真琴と同質の気を放っていた。
 なつみ君の報告を思い出す。
『キタガワサンガカワスミサンヲコロシマシタ ナツミ』
 それを確信させるほど、今の北川君の表情は邪気で満ちていた。
 しかし、妖弧と戦いを演じているという事実はどうだ?
 ……不確定要素が多すぎる。
 信頼したいという想いと相反する心の警鐘がせめぎ合う。
(どっちにしろ、力尽きた私では傍観しかできんか)
 そう、苦笑する。
 彼の思惑がどうあれシンガリを務めた私の役割を担ってくれているのだ。
 それだけで十分だった。
(ふっ、いつからこんなにも薄情になったのだろうな、私は)
 指揮官として拘りすぎていたのかもしれない。
「任せるよ、北川君」
 私はそう微笑んだつもりだった。
「しかしな、私は加勢できないみたいだ……」
 それが悔しかった。
 閉じられていく視界の中で彼が笑ったような気がした。
 あの時と一寸も変わらない笑み。
 私は安心したのか、身体が求めるままに、眠り込んでしまった。
 また、戦う力を養うために……。
75岩切花枝@決戦(7):2001/06/15(金) 18:37
「光岡が死んだ……」
「ちっ、水瀬秋子って奴にかい?」
 私は頷く。しかし奴の叱責は同じ強化兵を失った悲しみでもあるまい。
 優秀な手ごまを失ったというところだろう。
 私も同意見だったが。それについて――まさか――論じることもなかった。
「奴に近づきさえすれば、生命樹が手に入るって言うのに」
「事を急ぐこともあるまい?」
 注意を促すことを忘れてはならない。奴もまた手ごまなのだから。
「ふん、言われなくても分かってるよ」
 どうだか、と思うが敢えて言葉には済まい。
 愛用の南部十二式を取り出して御堂は薄く笑った。
 もちろん見かけだけそうであって、銃自体にはあらゆる科学の粋を集めたカラクリがなされてある。
 それをしたのは、犬飼という男だった。
「完全体になるまでは、な」
「決まっている、今度は沢渡真琴って奴に話を持ちかける」
「……出来るのか?」
 純粋な疑問に御堂は鼻で笑っていた。
「ああ、今度は手土産を持っていくことにするからな」
「ふっ、なるほど」
「とりあえずは、あのいけ好かない蝉丸だ」
「そうか、付き合おう」
 微笑することは自重した。それくらいの忍耐はあった。
(奴とは違う……)
 でも、まずは――
「石原麗子も奴の側に居るぞ。それはどうする?」
「分かってねえーな、お前はよ」
 にやっと不可解な笑みを零して奴は言った。
「俺たちには、こいつらがいるじゃねーか」
 奴の後ろにある三百体もの機械仕掛けが動き出した。
 感情のない、狂気のままに……。
76名無しさんだよもん:2001/06/15(金) 18:40
この辺で少し回しとくもん。
77名無しさんだよもん:2001/06/15(金) 18:43
決戦は前スレよりの続きだよもん。
78名無しさんだよもん:2001/06/15(金) 18:46
思うに残りの白狐は2800くらいだよもん。
79長瀬祐介@決戦(8):2001/06/15(金) 19:26
 銀狼は凄まじい速度で駆けていた。
 だが、逃がしはしない。
 仇だ。
 あいつが瑠璃子さんや月島さんを殺したんだ。
 許せない。
 瑠璃子さんはそれを望んでいないのかもしれない。
 でも、駄目なんだ。
 あいつを討たないと狂気が暴走しそうだった。
 早く! 早く!
 訴えかけてくるものがある。
 身を委ねたい。
 僕はあいつを狂い殺してやりたい。
 分かっている。
 ――分かってはいるんだ!
 でも、止まらない。
 駆け出していくのは足ではなくて狂気であったとしても。
 僕は走り続けていた。
80緒方英二@決戦(9):2001/06/15(金) 19:30
 俺は薄笑いをして見せた。
 逃げたと見せかけて本当は理奈のところに向かっていた。
 この広大な土地でも妹の歌は聞こえてくる。
「さあ、唄え――緒方理奈!」
 お前の歌声があの少年の意識を狂わせる。
 破滅の道に向かわせる。
「はーはっはっはっーーーっ!」
 狂気だろうか。この土地に含んだ瘴気はあまりに大きい。
 誰も彼もが狂ってる!
「ほう、理奈、戦っているのか?」
 遠くの気配が読み取れる。
「任せておけ! お前が歌うのを邪魔する奴はすべて消してやる!」
 どこまでも風は駆け抜ける。
「少年よ、来るがいい」
 嘲る。微笑。見下す。哀れみ。下位。人。人間――
「今、認めてやろう!」
 狂気なる電波使いよ――貴様こそ、我が敵に相応しいと。
81藍原瑞穂@決戦(10):2001/06/15(金) 22:24
 正面出口――
 そこが私と香奈子ちゃんの居るところだった。
 緒方姉妹が来たからと言って祐介さんが出て行ってから大分時間が経つ。
「大丈夫なのかな……」
 そう呟くには居られなかった。
 もちろん、こっちだって大変なんだろうけど、今はそう言った様子は見えない。
 どうやら聖さん達が頑張ってくれているみたいだ。
「でも、それだけ負担かけてるってこと、忘れないでね」
「あ、うん……」
 香奈子ちゃんが私の心を読み取ったのか言われてしまう。
 だけど、こう思っちゃ駄目かな?
 こうして香奈子ちゃんと居られる時間を大切にしていたい。
 本当は戦いなんて嫌いで仕方ない。
 怖くて仕方ない。
 でも、香奈子ちゃんと一緒だから……。
「私も頑張るよ」
「……そうね、そうだよ、きっと」
 香奈子ちゃんも笑ってくれた。
 しかし、現実は厳しくて、残酷だった。
「サラさん!」
 大きな声で香奈子ちゃんが叫んだ。その先に傷だらけの彼女がいた。
「参ったわね、このサラ様ともあろうものが」
「しっかりしてください!」
 そのまま彼女は香奈子ちゃんの胸の中に倒れて込んでしまった。
82河島はるか@決戦(11):2001/06/15(金) 22:27
 裏口――
 人の気配なんてどこにもなかった。
「あ、人じゃなくて妖弧だった」
 まあ、どちらでもいいや、と私は周囲を見渡した。
 ガレキと砂埃しか見えない。
 溜息をつきたくなる。
「なつみさんには、建物中に戻ってろ、言われたけど、どうしよっか……」
 緒方理奈の姿を見つけたと、なつみさんはどこかに行った。
 助けになりたかったけど、どう考えてみても足手まといだった。
「こんなものかな、やっぱり」
「まあ、そうか……そうかもな……」
 ふと声。いつの間にか隣に藤田さんが立っていた。
 プラス因子を持つ男の人。
「ああ、ダメなんだよ……そんなことじゃあ……」
 なにか言いたそうに私を見てくる。
「……やれることってなにかな、そっか、そうだよ……」
「やれること、ですか?」
「そんなもん……か、やっぱし……」
 そう言って浩之さんは私の手を握ってくる。
 なぜか温かい。
 体温というよりも、それは……。
「見つけたわよ、浩之」
 慌てて探していたのか志保さんが、でも冷静に、綾香さんを演じていた。
「ほら、外に出たら風邪引くわよ」
 そう促して、結界を張った建物に入っていった。
 今のはなんだったのだろうか。手に残った温かい感触……。
「後は任させた、そう言ったの?」
 でも、何も答えてくれない彼の後ろ姿だけを、私は見送っていた。
83三井寺月代@決戦(12):2001/06/15(金) 23:35
「治りそうか?」
「はい、これくらいならなんとかなりそうです」
「良かったわ」
「はは、高子さんほどじゃないですけどね」
「そんなことないよ、月代ちゃん」
 戦地からやや離れた場所であたしたちは歩を止めていた。
 蝉丸さん達だけ先に行っているのが、少し不満だったけど、彼女達を見捨てては置けない。
 傷ついている人を助けるために、あたし達はここに来たんだから。
「よーし、この調子で行こう!」
「おーう!」
 あたしの掛け声に夕ちゃんも応えてくれる。
 うー、嬉しいよ。
 いい友達を持ったよ、あたしは。
「ああ、そうそう、自己紹介がまだでしたね」
 そう言い出したのは、長い黒髪の綺麗なお姉さんだった。
 どうしてか、呆然としていたようだけど……まあ、気にしないでいこう。
「私は柏木千鶴。こちらは妹の梓です。それに――」
 楓ちゃんに、耕一さんか、なるほど……覚えておこう。
 二人とも安静に寝ててよね。
「あたしは、三井寺月代、それで――」
 さっと夕ちゃんの方に手を差し出す。
「あ、あの……砧夕霧です。よろしくお願いします」
 ぺこりとお辞儀する夕ちゃん。
 そして、あたし達は続けていった。
「軍部特殊部隊『誰彼』です!」
 千鶴さんと梓さんは口を揃えていった。
「なにそれ?」
 ……何だか『どうにでもなれ』って気分になった。
 うー、くやしいよ。
「あぅー、皆さんどこいったんですか?」
 付き添っていた二人から離れて私はひとりです。
 どうしたらいんでしょう?
 私が目覚めたのは暗い部屋の一室でした。
 詳しい事情はわからないんですけど、軍部の皆さんが起動してくれたみたいです。
 来栖川重工は軍にも太いパイプラインがあったみたいです。
 より強力になる為にここで改造手術されちゃいました。
 HMX―12の後継機であるHMX―14『ミライ』――私の妹の機体です。
 でもでも、特別機というか、ただの量産タイプではないみたいですね。
 ああ、だけど、セリオさんらしき影が見えたので、皆さんと離れたのが失敗でした。
「月代さーん! 夕霧さーん! どこですか!?」
 もう、やっぱり駄目なメイドロボットです、私は……。
 このまま出番なく終わってしまうのでしょうか?
 せっかく強くしてもらったのに……。
「残念です」
 私はこの街に着いてから丁度百回目の溜息をつきました。
 メモリーだけはパワーアップですね。
 ……さすがに笑えません。
85名無しさんだよもん:2001/06/15(金) 23:54
さすがに今日はもう駄目だもん。
86名無しさんだよもん:2001/06/15(金) 23:56
寝ることにするだよもん。
87名無しさんだよもん:2001/06/18(月) 00:19
続いてる…(感動
dat逝きになったと諦めてたよ。

書き手さん頑張れ。
『……当機は新東京国際空港到着の予定でしたが、天候の関係により、勝手ながらではあり
ますが、福岡空港に着陸いたします……』

 あまりにも唐突なアナウンスに乗客が怒り出すのは目に見えていました。
 現に女性の客室乗務員に掴みかかろうとする客もいました。
 何でも天候がかなり悪いのが原因のようです。
 プノンペンから香港を経由して日本に向かう飛行機での事です。

「福岡に着陸かいな。まったくたまらんわ……」
 隣に座っている晴子さんもいらだちを隠せず、座席の肘掛を人差し指で何回も叩いていま
した。その横では敬介さんが呆れた顔をしながら、ため息をついていました。
 そうなるのも無理はないのかもしれません。どうやら彼の地に今日中に到着つもりでした
が、それは絶望的になりました。
「しかし外はこんなに晴れとるのに天候不順なんて……今一つ納得でけへんわ」
「強い乱気流が日本上空で発生しているみたいだよ。ほら現に結構揺れていると思わない?」
 今までずっと雑誌を読みふけっていたなつきさんが顔を上げました。彼女の言うように、
確かにここ30分くらい揺れがひどくなってきていました。今は東シナ海上空のだと思います
が、本来ならジェット気流に乗って安定している筈です。
「確かにそうやな」
「でしょ? んで、感じない?」
「何をや……って、これ……?」
 急に晴子さんが口をつぐみました。強張ったままでじっと前の方を睨み付けています。
その横にいた観鈴ちゃんの表情もみるみるうちに険しくなっていきました。
「が、がお……」
 観鈴ちゃんの口からなにかを呻くような声が出てきました。
 彼女たちの感じているただならぬ気配……私もわずかながらですが感じました。

「瘴気ですか……」
 私の言葉になつきさんは、その通りですよ、と返してきました。
「恐らく彼の地から発せられている瘴気でしょう。日本上空で巻き起こっている乱気流も、
恐らくこいつの仕業かと思います。しかし、ジェット気流を逆行するほどですから……とん
でもなく強烈でしょうね。多分、国内線は大多数が欠航になっていると思います。もちろ
ん、千歳行きもでしょうね」
 それから1時間ほどして空港につきましたが、なつきさんの言った通り、札幌や東京はもち
ろん大阪方面へ行く飛行機も、天候の関係でほとんどが運休しているといった状態でした。
 ただ、新幹線は動いているとの事で、他の客と同様私たちも博多駅に向かいました。
 長蛇の列が切符売り場の前にできていましたが、なんとか切符は取れたようです。

「……って、これグリーン車やん。えらい豪勢やねぇ」
「こんなときにこそこのテの席は威力を発揮するものなのね。まあ、東京まで結構時間がか
かるから今のうちに寝ていた方がいいと思うけど」
「せやね。そうしとくわ」
 なつきさんの勧めに晴子さんは素直に応じて、そのまま席にぐったりともたれかかって目
を閉じていました。さすがに座席も快適に造られているせいか、すぐに寝つけたようです。

 小倉駅を出発した頃には観鈴ちゃんも敬介さんもすっかり眠っていました。
 一方でなつきさんは数多くの書類をずっと読み漁っていました。思えば飛行機に乗ってか
らその状態でした。多分一睡もしていないはずです。

「ずっと寝ていないようですけど……お体の方は大丈夫ですか?」
「ご心配なく。最低でも1週間起きている自信はありますから。
 それよりも調べることはまだ山ほどありますので。彼の地の現況だけでも、まだ十分に掴
みきっていないのですから」
「どうも『誰彼』の面子も彼の地に派遣されたといいますし……」
「政府も何を考えているのやら。恐らく石原の口車に乗せられたといった所でしょう。
 しかし彼女も一体何を考えているのやら……。
これじゃあ、火に油を注ぐようなものですよ」
 なつきさんは一つため息を吐きながら、顔を上げて窓の外の景色を眺めようとしました
が、それをやめて再び膝の上に広げた資料に目を通し出しました。
 まあ、新関門トンネル通過中の列車から外の景色を見ろというなんて彼女でもやらないで
しょう。
 その時、ふと気になることが有ったので私は彼女に訊くことにしました。
「そういえば、例の寺院から小さな石像を持ち出してきましたけど、これで本当にあの翼人
や妖狐や邪術師を封印できるのですか?」

「ああ、あれですか。
 それは封印というよりかは、あの例の巨大石像に対象を転送させるための装置ですよ」
「転送……といいますと?」
 視線を網棚の上に移すと、その先には、アンコールワット付近からなつきさんが持ち出し
たという小さなさ石像が一体、丁寧に布で梱包されて棚の上にのっかかっていました。
 そう、例の巨大石像の脇に並んでいた小さな石像の内の一つです。大きな石像と同様に、
顔の輪郭はあれど顔の各パーツは彫られていません。
「読んで字の如くです。
 もともと、あの巨大石像はアジアの全域に散在していた魔物や物の怪、さらには荒れた土
着の神が鎮まるように作ったといわれています。ただ、あれにも欠点はあるようです」
「欠点といいますと、あの石像の力が広範囲に及ばないということですか?」
「そんなところです。古代の文献や伝承から判断して算出した結果、範囲はせいぜい半径
2kmぐらいだということです。だが、対象はそれこそ広範囲に散らばっていました。
だから、例の石像に対象を転送させる必要があったわけです」
「それで、遠隔地にも持ち運べるように、転送装置としてこの小さい石像を大量に作ったの
ですか。まるで、コードレス電話みたいですね」
「そんな感じですね。まあ、この小さい石像の効果ですが、唐の時代に現在でいう崑崙山脈
付近で、あるものを転送したという記録が残っています。まあ、それに関してはなかなか興
味深いものがあるんですよ」
「興味深いといいますと……その転送した『あるもの』の事ですか?」
「ええ。その事です。
 かつて例の寺院の僧侶が記したという日記があるのですが、そいつの記述にそれに関する
ことが記されていました。そこに、件の書物が置いてますのでまずは一度、目を通してみて
下さい。ちょっと、本自体が痛んでいる上に、古代の文字で記されているので、内容を把握
するのに多少苦労するかとは思いますけど」
 なつきさんは、私の足元においてあった鞄を指差しました。その中には様々な書類やフロ
ッピーなんかが入っていましたが、唯一、古ぼけた書物が一つ入っていました。私は迷わず
それを取り出して、その書物の表紙を慎重にめくってみました。
 書かれている文字はかすれている上に、破損している所もありましたが、内容はだいたい
分かりました。
 例の石像は9世紀頃に作られたこと(ちなみに石像を収めている寺院は12世紀のアンコー
ル朝の全盛期の頃に作られた事が、別の歴史書に記されていた)やその石像で様々な物の怪
を静めさせるために封印した記録が長々と記されていました。
 そして件の箇所の記述は以下の通りでした。

『山に入ってから10日目の事。
 我の目の前に苦しむ者あり。その者、見ると人ではない。
 一見すると人だが、背中は鳥になっている。白い羽をひろげている。
 その者、邪念に侵され、近づく生ける者を殺していた。近隣の村の住人がそれを恐れている。
 その者、我にも襲い掛かってきたが、一寸の真の心あって、我に殺すように懇願している。
 だが、その者は噂に聞く…………である。我の力では到底殺めることなぞできない。
 それに、我はそれには忍びなく、持っていた石像でその者を鎮めさせる然るべき地へ運ぶ
ことにする。その者の真の心もそれに同意したので、我はすぐにその石像を地面に置き、文
言を唱え、その像の力を発動させた。
 すると、見る見るうちにその者は像に引き寄せられ、像の口に吸い込まれて姿を消した。
 途端に南の空が一瞬、黄色く光った。
 どうやら無事、あの者はこの石像が転送した先の入口より、然るべき安住の地へ運ばれた
ものと思われる。どれくらいの年月がかかるか分からないが、安らぎを取り戻し、いつかこ
の地に戻るようになれることを願ってやまない。
 彼の民は、遥か太古よりさまざまな災厄に苦しめられてきたという。
 それを思うと、そんな感が一層強い』

 これって……まさか……?
「翼人を……封じたというのですか……?」
 私は文面を見て、すぐに思い浮かんだ"その者"の正体を口にすると、なつきさんは
「その通りですよ」と答えを返してきました。
「ただ、封じたという言い方はちょっと違うかもしれません。
 厳密に言うなら隔離場所……といっていいのでしょうか、とにかく気が荒くなって自分
を見失ってしまった者を転送させて、落ち着かせるための場所へ送ったってところでしょうか。
 そして、封じた神や物の怪を冷静にさせたあとで、彼ら自身にじっくり考えさせた上で、
場合によっては現世に戻したりもしていたそうです。ただ……」
「ただ? 何でしょう?」

「今ひとつ――使おうという気になれないのです」
 なつきさんの口から出た言葉は、私が思っていたものとはあまりにも違ったもの――
いうなれば正反対といってもおかしくありません。
 翼人を収めるものを2年もの間に探して、ようやく発見することができたのにです。
 何かしら理由でもあるのでしょうか、と私は尋ねてみました。
「なんといいますか……いきなりこれに神奈を押し込めるのはあまりに早計すぎるか
なと思えてきたのです。ついでいうなら、九尾に関しても同様です。
 って、なんか理由になっていないようですね」
「いいえ。私はあまりそうだとは感じていませんけど……。
 でもなんでそんな気になってきたのですか? 何か他の手段でもあるからですか?」
「そういうわけではないんです。他にはこれといって方法は思いつきません。
 でも、現地からの話を聞いているうちになんとなくですが、思えてきたのです」
 そしてなつきさんは一呼吸置き……そして言いました。

「ひょっとしたら……翼人と妖狐は和解できるかもしれないかと……」
 それはあまりにも荒唐無稽すぎるといってもおかしくない話でした。そんな話がなつきさ
んの口からでるなんて思いもよらなく、唖然としてしまったのが正直な感想です。
 過去の歴史を紐解いてみても、そんな歩み寄りを見せるどころか、むしろますます両者の
溝が深くなっているのが実状だといいますのに……。
 実現する可能性が皆無な上に、実行するにもとんでもない労力を必要として、それこそな
つきさんが嫌う割の悪い行為かと思いますが。
「といって、これが実現する確率はロトくじがあたるより遥かに低いと思いますけど」
 清水さんもその事は承知していたようで、苦笑いをしながら話していました。
「和解するのならそれに越したことはないかもしれませんね。人にしても物の怪にしても
……争いで血や涙を流されるのを目にするのは嫌ですから。
 でも、何でそんなことを思うようになったのでしょうか?」
「最近の九尾の様子を耳にしてからこんな事を思うようになったのだと思います。
 九尾はだんだん力をつけてきていますが、それと同時にどうもある幼い妖狐の人格が顔を
表しているようなんです。考えてみれば、現在、九尾も神奈も……ついでいうなら、神奈の
母の八百比久尼も、九尾の娘の裏葉もすべて他人に憑依している形になっています。
 ただ、いずれも憑依している宿主の精神の影響を多少なりとも受けているようです」
 清水さんは一旦ここで言葉を切って、一呼吸置いてから話し出しました。

「まあ過去の因縁から彼女ら、特に九尾を和解に同意させるのは極めて難しいと思います。
 だからこそ……賭けてみたいんです……沢渡真琴さんの心に……」

 なつきさんが再び窓の外に視線を移したその時、列車は丁度、新岩国駅を通過している所でした。
94名無しさんだよもん:2001/06/18(月) 07:16
さて、一旦ここまでにしときます。
95名無しさんだよもん:2001/06/18(月) 07:17
しかし相変わらずクソ長いよぉ〜。
96名無しさんだよもん:2001/06/18(月) 07:19
後編は、後日書き込むよぉ〜。
97名無しさんだよもん:2001/06/18(月) 07:21
よくみたら、6つめの下から4行目にミス発見だよぉ〜。
98名無しさんだよもん:2001/06/18(月) 07:22
誤:清水さん 正:なつきさん
どーでもいいけど、なんか鬱だよぉ〜。
99名無しさんだよもん:2001/06/18(月) 07:23
もう、眠いからねるよぉ〜。
100名無しさんだよもん:2001/06/18(月) 07:25
100レス目でおやすみなさいだよぉ〜。
101名無しさんだよもん:2001/06/18(月) 15:07
更新age!
102名無しさんだよもん:2001/06/18(月) 16:59
>>38 今更訂正です。
>最初は時間がなかった――ではなく――最初は自覚がなかった、でした。
103佐藤雅史@決戦(14):2001/06/18(月) 21:13
 のどが渇いた。
 ぎらぎらと陽の照った砂漠を歩いている旅人のように眼も虚ろだった。
 実際には、そこが雪の街で、都市街であったとしても、何の違いもなかった。
 そう、のどが枯れるという事象には、難しい要素など何もない。
 たんに見てしまっただけだ。
 盟友の……親友といえた友の成れの果てを……。

 その男の名前を北川潤といった。

 でも、再会に喜びの情なんて湧いて来なかった……。
 やつの近くで倒れている人影は、間違いなく聖さんだった。
 その他にも、無数の白狐がゴミのように散乱している。

 僕がここに辿り着いてしまったのは何の因果だろう。
 幼いツインテールの少女に圧倒されて、みんなが散り散りになった先がこれだった。

 どうして、僕はあの時……殺されなかったのだろう?

 そんな後悔だけ湧き上がってしまう。
 だって、見てしまったのだ。
 僕を裏切っていった北川潤という男を……。

 許せるわけないだろう?
 聖さんだって倒れているじゃないか?

 誰がそれを為したのか考える余地すらなかった。
 今は、疲れ切ったのだろう――やつは地面に腰を落ち着かせていた。

 ああ、きっと僕は、今、こう思っているはずだろう。
 純粋に、ただ子供のように単純な発想……。

 ――――――――――殺す――――――――――

 その為だけに、僕は……北川の後ろにそっと近づいている。
 友情は、もう先に……誰かに殺されていた。
104霧島佳乃@決戦(15):2001/06/18(月) 21:26
 あたしは怒りに震えていた。
 こんなのは生まれて初めてのことだった。
 塚本千紗と名乗ったツインテールは、眼を細めて見下したように言ってくる。
「だったら、どうするんですか?」
「あなたのこと、倒してやるんだからねぇ!」
「ふーん」
 妖弧の少女は無防備でこちらに歩む寄ってきた。
「え? なに……?」
 あまりのことに何も出来ないでいると妖弧の少女はあたしの頬を張ってきた。
 ぴしっと軽い音。
 弾かれた頬には赤味が差してくる。
 痛みは最初なくて、後になってひりひりと来た。
「早く倒してくださいよ」
「絶対に――」
 言葉を出そうとしたら、今度はもっと激しい痛みが襲ってきた。
 拳で顔を殴られた――それだけだった。
「ほら、あの犬っころを呼んだらどうですか?」
「……うぐっ」
 襟元を捕まれて――どこにそんな力があるのか――あたしの足は宙に浮いていた。
 ポテトはあたしを逃がす為に、妖弧の海に飛び込んでいった。
 それまでは由宇さんが一緒だったけど、傷がひどくてあたしを護るために犠牲になって……。
『佳乃ちゃんだけでも逃げてくれんか? 聖ハンに怒られるのは敵わんからな』
 あたしがそれでも動けないでいると、哀しそうに笑って……。
『佳乃ちゃんは優しいな……。でも、無駄死にだけは勘弁やで……』
 由宇さんは、あたしの肩を掴んで、くるっと回して……背中をポンと押してくれた。
『長生きしてな……うちの分も……』
 何も出来なかった。
 あたしには今もあの時も何も出来ないでいた。
 ――悔しかった。
 足手まといになるつもりなんてなかったのに……。
105霧島佳乃@決戦(16):2001/06/18(月) 21:29
「これで終わりですか? つまんないですよ。千紗をもっと楽しませてください」
「……あっ!」
 ぽいっと地面に放り投げられる。そして衝撃が襲ってきた。
「にゃあ〜、どうしたんですか?」
 ぐりぐりと幼い妖弧の少女は足に力を込めてお腹を踏みつける。
 あごを蹴り上げるのも、浮遊感が漂うだけだった。
 ……痛いよりも、悲しい。
 どうして、あたしは戻ってきたんだろう?
 何も出来ないくせに、どうして……このままじゃあ終われないって思ったんだろう?
「弱いくせにでしゃばるなんて、身のほど知らずにもほどがありますね」
 そうだ。彼女の言うとおりだった。
 あたしがいたから、由宇さんは……みんなは……お姉ちゃんは苦労して……。
 庇われるばかりで……護られるばかりで……。
 そのせいでみんなが傷つく事だって少なくなかったのに……。
「だから……」
「うん? なんですか? 聞こえませんよ」
 そう、だからなんだ……。
 このままだと、みんなと合わす顔がないって、あたしは……。
「…………」
 私は右手を掲げて、まるでスローモーションのように、左手で黄色いバンダナを解いた……。
 魔法――
 幼いころからずっと憧れていたもの。
「上手に使えたら、いいな……」
 あたしは泣きながら空を見ていた。仰向けで寝ているから良く見える。とても蒼い。
 空から白い羽が落ちてきたような気がした……。
「……お母さん、見ててくれる?」
 頑張れるよね、あたし。
 みんなのために、お姉ちゃんのために、自分のために……。

 ――この地に訪れてくれたすべての人に、祈りをこめて――

「来て、白穂……」
 今、自分に出来ることを、確かめたい。
 ――信じたい。

 辿り着いた先には幸せが待っているって……。
106名無しさんだよもん:2001/06/18(月) 22:59
回すだよもん。
107名無しさんだよもん:2001/06/18(月) 22:59
もう一回だよもん。
108名無しさんだよもん:2001/06/19(火) 15:59
>>82 さらに訂正です。
>建物中に戻ってろ、言われたけど――ではなく――建物中に戻ってろ、って言われたけど、でした。
もう探すのも嫌なくらいに誤字と脱字が……。
「目標確認しました……」
 機械的な音声の後に機械独特の起動音が鈍く鳴り響く。
 今までスリープ状態だった私でしたが、ようやく浩之の居場所を探知することが出来ました。
 結界ですか、なるほど……サテライトシステムでも見つからなかったわけです。
 しかし、これで浩之を護ることが出来るのですね。
「そう、やっと想いが叶うのよ」
 満足だった。
 それは偽りのない想いだった。
 でも――
『見つけたわよ、浩之』
 どこかの誰かが浩之に近づいていくのがデータに残っていました。
『ほら、外に出たら風邪引くわよ』
 サテライトシステムを使った紹介では長岡志保とあります。
 いえ、私は知っていたのでしょう。
 緊急のバックアップだったせいかところどころ破損しているようです。
「でもね、分かっていないのよ、長岡さん」
 私は目標の建物向かって行動を開始しました。
「浩之は私が護るんだから」
 ……どこかで何かが狂っていたのかもしれません。
 細部に傷があるとか、そういうのは、この街では当然でしょう。
 だからといって、私の心拍数はすこぶる順調でした。
 送られてくるデータも、オールグリーンのランプが照っています。
 そう、異常などどこにもないのです。


『浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る』
『浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る』
『浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る』
『浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る』
『浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る浩之は私が護る』


 目標獲得の為の手段は問いません。
 すべては私の心≠フあるがままに行動します。
「そーいうこと。待ってなさいよ、浩之」
 必ず私たち≠フもとに……。
110北川潤@決戦(18):2001/06/19(火) 19:05
 視界に入るすべての妖弧を駆逐するのは決して易しくはなかった。
 最初こそ俺の妖気に戸惑っていたが、後は本能的に敵と悟ってか奴らの攻撃は熾烈を極めた。
 身体を啄ばまれて、どこからでも――四方八方から奴らは襲ってくる。
 陣形の整えられた者たちですら、手勢に無勢だったのだ。
 初めから無傷で勝とうとは思っていなかったが、こいつらに殺されるのは面白くない。
(俺はあいつに逢いに来たんだからな)
 そうやって覚悟を決めるのは、あまりにも簡単だった。
「俺のこの手が真っ赤に燃える! 勝利を掴めと轟き叫ぶ! 必殺・ゴッドフィンガー!」
 東方不敗先生から教わった技を妖弧の大群目掛けて解き放つ。
 一撃放つのがやっとだったこの技も、今では何度でも撃てるようになっていた。
(妖弧の力か……)
 忌々しい、というのはなかった。
 少なくても今は皆の役に立っていると実感できたからだった。
(力は使うものの心がけ次第)
 師匠から教わった数少ない言葉のひとつだった。
 後は俺がどうしたいのか? いや――答えなんて決まっていた。
 だからだろうか……その瞬間が来ても驚くことはない。
 それは、妖弧の大群を蹴散らしてやった後の出来事だった。
 後ろに気配を感じた。
 殺気……というよりも悲哀の情だろうか、どちらにしろ、これで終わっても構わなかった。
 わざと眠ったフリをする。
 そう、俺は雅史に会って一言謝りたくてここまで来たんだ。
(……死で詫びるという形も悪くない)
 この手はあまりにも血で染まりすぎた。もう償ってもいいだろう。
 香里、それに舞……すまなかった。
(俺がもう少ししっかりしていたら良かったんだよ)
 そう、素直に思った。
 しかし、俺が望んでいた瞬間は、一向にやって来なかった。
111佐藤雅史@決戦(19):2001/06/19(火) 19:06
「どうして、どうして、何の抵抗もしないんだ!」
 僕は狂ってしまったのかもしれない。殺そうとしている相手に抵抗を求めているのだから。
 ――傲慢もいいところだった。
「何とか言えよ――北川潤!!」
 虚しい問いかけ。どうしたっていうんだ僕は……こいつは妖弧側じゃないか!
 人であることを止めたって報告があったじゃないか!
 それなのに、それなのに、どうして、こんなにも――悲しんだよ!
「この馬鹿野郎!」
 僕は北川の胸倉を掴んで思い切り殴ってやった。
「気づいてないフリなんてしてんじゃないぞ!」
「……さすが雅史だな、でも、だったらどうするって言うんだ?」
「反撃してみろ! 無様に突っかかって来いよ! 僕を失望させるんだ!」
「……言うね、お前らしくもない」
「黙れよーっ! 貴様なんかに僕の気持ちなんて分かるもんか!」
「ああ、分からねーよ」
「――言ったな!」
 僕はまた手を大きく振りかぶって殴りかかったが、今度は北川の方から拳が飛んできた。
 もろに顔面へと突き刺さる。
「へっ、せっかくチャンスをくれてやったのに、甘いんだよ……」
 どこか楽しそうに微笑む北川に、僕は沈んだ身体を必死に起こして蹴りを放っていた。
「がっ!」
 北川がうめく。
「油断してるのは、どっちだよ。そっち……の方が、ぼろぼろのくせに……」
「……ばーか。そっちだって息が上がってるじゃないか……」
 僕はにやりと笑った。潤もそうだった。
「そういったら、あの時の決着が付いてなかったね……」
「あれは……俺の勝ちだろうに……」
「じゃあ、これはリベンジだよ……掛かって来い、北川潤――!」
「いくぜーっ!」
 そうだ。結局はこうなるんだな、僕達は……。
 でも、悪くない……。
 だって、潤こそ僕の大切な親友だったから……。
112霧島聖@決戦(20):2001/06/19(火) 19:10
「やれやれ、どうなることかと思っていたが、やはり男の子だな、二人とも……」
 私はあまりの喧騒に眠りから覚めていた。
 頭を二、三度回してみる。ごきごきと首の付け根から悲鳴が出ていった。
 まあ、良好と言えなくもない。
「俺はたくさん殺したんだぞ!」
 心の底から振り絞ったような絶叫を北川君が上げた。
「知ってるよ! だから言ってやる! それがどうしたって言うんだよ!」
「好きなやつも護れなかった! 逆恨みの復讐だってした! アジトの場所を教えたのだって俺なんだよ!」
「ああ、そうか! よけいな世話かけさせやがったな!」
「そうだ。全部が俺のせいなんだよ!」
 二人はなおも――これも喧嘩というのだろうか――拳で語り合っていた。
 北川君の言い分は、まあ問題なところもあったが、自我はマインドコントロールされてなさそうだった。
(アジトの場所か……言い方は悪役だよ、それでは)
 ふっと苦笑する。
 別に彼を非難してのことではなかった。
 相手は邪術士なのだ。そんなものとうの昔に分かっていたことだろう。
 人の弱みに付けこむのが相変わらず上手い。
「潤のせいだって!? 笑わせるなよ! お前ひとりで出来ることなんて泣くことだけだ!」
「なんだって――取り消せよ!」
 北川君の渾身の一撃が、佐藤君に躱されて、カウンターのように拳が飛んでくる。
「これで終わりにしてやるよーーっ!」
「――――!」
 決まったな、と私は腰を上げることにした。
 こちら側に――かなりの勢いで――地面を滑ってくる北川君の肩を受け止める。
113霧島聖@決戦(21):2001/06/19(火) 19:12
「きりしま、ねえ……」
「もう、喋るな。傷口に障るぞ」
「だって、俺……俺は取り返しのつかないことを……」
 今にも泣き出しそうな北川君の頬を、私は力の限り引っ叩いてやった。
「甘ったれるのもいい加減にしたまえ!」
「…………」
 北川君はびくっと震えて、肩を小さくさせた。
(まったく、出来の悪い弟を持ったような気分だよ)
 それは口には出さないで――言う。
「みんな君の帰りを待っていたんだ……これいじょう我侭を言うようなら問答無用で連れ帰るぞ!」
「…………」
 北川君は何も言わないで、逃げるような……縋るような視線を――佐藤君に送った。
 彼もまた、何も言わないで、ただ……笑って頷く。
「今度は僕の勝ちだよ」
「ああ、貸しにしといてやるよ……」
 そう言って、二人は握手を交わそうと、手を差し出しあった――ところで。
 パーン!
 風船が割れるよりも小さな破裂音――銃声が鳴り響いた。
「北川……?」
 私と北川君の目の前で、北川君の頭部は何者かに撃ち抜かれていた。
114名無しさんだよもん:2001/06/19(火) 19:27
>>113 最低だ。
私と北川君の目の前で――ではなく――私と佐藤君の目の前で、でした。
115名無しさんだよもん:2001/06/19(火) 19:28
ああ、もう観鈴ちんかよ、俺は……。
116名無しさんだよもん:2001/06/19(火) 19:29
がおがお。
117名無しさんだよもん:2001/06/19(火) 19:30
とりあえず回すの終了です。
118名無しさんだよもん:2001/06/20(水) 20:24
>>113 ちょっとした訂正。
今にも泣き出しそうな北川君の頬を――ではなく――北川君のその頬を、の方が良いですね。
119犬神ポテト@決戦(22):2001/06/21(木) 18:05
 主様を助けようとしたのはいいが、俺の力も限界に近かった。
 ここは俺様のプライドを捨ててでも、誰かに頼るしかない。
 雪の街を駆けている途中、そいつらに出会ったのは幸運といえるだろう。
 大人しそうな顔立ちの女と、ふちのない眼鏡をかけた女に俺はこう命令した。

「ぴこぴこ〜」
(おい。てめーら力を貸してくれい!)

「……なんですか、この犬畜生は?」
「なんか慌ててるみたいね」

「ぴこぴこ〜」
(いいから付いて来いよ! とろくせー!)

「なんだか、こう……非常に不愉快な気持ちになりますが……何故でしょう……?」
「奇遇だな……。俺もそうだよ」

 くそっ、言葉が通じないとは……ああ、なんかいい手はないものか?
 仕方ない、下手に出てやるか。

「ぴこぴこ〜」
(ああ、俺が悪かったよ。助けてください。お願いしますよ)

「……え? DC版こみっくパーティまたもや発売延期?」
「それって何回目だよ!?」

「ぴこぴこ〜」
(てめーなめとんのか! 違うだろうが!)

「……え? DC版AIRは声付けただけで売れるのに情けない? 所詮はそれまで?」
「お、おい、彩……こんな犬畜生にムキになるなよ?」
「……ついでに、『まじ☆アン』はアニメ化どころか移植もされない駄作品って言ってます」
「てめー、言ってはならないことを言ってくれたな……殺してやろうか?」
「ええ、所詮『葉』と『鍵』は相容れない仲だったということです……」
120犬神ポテト@決戦(23):2001/06/21(木) 18:08
「ぴこぴこ〜」
(ちょっと待て! なんでそうなる?)

 わざとやってるんじゃないかこいつら、と思いつつも言葉が通じないなら、
 何とかジェスチャーで伝えてみようと試みる。

「ぐわっ!」
「リアンさん、どうしたの?」

 いきなり倒れ込む眼鏡っ子に、さすがの俺も「持病も持ちか?」と心配してしまった。
 だが――

「マジックポイントを吸われたみたいだ!」
「この犬畜生の不思議な踊りにですか!?」

 ぜってー殺ス! 俺は心の底からそう思っていた。 
 ところで――

「あのさ、もしかして霧島さんの妹がピンチだって言ってるじゃないかな?」

 ツインテールの女が俺の心を熱烈に代弁してくれた。
 ナイス! イカス!

「……それでは遊びはこの辺にしときましょうか……」
「ああ、そうだな……」

 いきなり真顔になる二人の頬に冷や汗が流れているのを俺は見逃さなかった。

「ぴこぴこ〜」
(大丈夫なのか、こいつら?)

「まあ、便りにはなるわよ」

 そう応えたのはやはりツインテールの少女だった。
 もしかして、言葉通じてる?
121名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:09
>>120
便りじゃなくて……頼り……。
122名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:10
きっと疲れてるんだ……と自己弁護しとく。
123雛山理緒@決戦(24):2001/06/21(木) 18:20
 医務室から出てきたところで藤井さんに話し掛けられた。
 サラさんの容体についてだった。
 スフィーさんの魔法でひとまずは大丈夫だという旨を伝えるとほ彼はっとしたようだった。
 この人も大変だなーと素直に思う。

 宮田さんのことはスフィーさんには話しておいたけど納得顔で頷かれただけだった。
 重要視していない、というよりも――仕方ない、というような面持ちだったのが印象に残った。
 あの因縁の名刀・村正が消えていたのも彼が持ち出したからだろう。

 まあ、心配事はたくさんあったけど、長岡さんに呼び出しを受けているのが今のところ一番だった。
 ちょっと目を離した隙に藤田君がいなくなっていた。
 探すのを手伝ってもらおうと長岡さんに言ったら、私はこっぴどく怒鳴られたものだ。
 うー、それって考えてみたら、あの人に気絶させられていたからなんだよね。

 でも、仕方ないか……長岡さんの気持ちってよく分かるから……。
 だって、私も藤田君のことが……。

 入り口の方から誰か入って来たことに気づいて、私はその思考を中断させざるを得なかった。
 妖弧だろうか、と身体を堅くさせてしまったが、視界に入ったのはセリオさんだった。
 結界に引っかからなかったということは、敵ではないということだ。
 だから、藤田君と面会したいという彼女の申し出を私は快く受けてしまった。

 それが悲劇の始まりであったことに今の私は気づかなかった……。
124名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:21
回すだよもん。
125名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:21
さらに回すだよもん。
126霧島聖@決戦@(25):2001/06/21(木) 19:43
「うわあああぁぁぁあああああああああつつつつつつつつつつーーーーーーーー!!」
 悲鳴を上げたのは佐藤君だった。
「北川! 北川! 潤! どうしたんだよ、潤! 起きろよ! 目を覚ませよ! なんで黙ってるんだよ!」
「落ち着きたまえ、佐藤君――来るぞ!」
 私は冷静に――表面上だけでも取り繕って――周囲に気を配っていた。
 どうして敵の接近に、今まで気づかなかったのか自らを叱責する。
(北川君……)
 私も怒りを隠せなかった。
 確かに彼は罪のない者をこの手にかけただろう。
 だからと言って、これが報いなのか!
 もしも神がいるというのなら、なぜそんな過酷な運命を背負わせなさる!
 せっかく、私たちのもとに帰ってきてくれたというのに……。
「くくく、そやつは妖弧だろう? どうして怒る?」
 嘲るような笑みが真正面から聞こえてきた。見ると黒いフードに見を包んだ女性がいる。
 知っている……私がこの身を変えた場所で見たことがある。
 誰彼の強化兵士・岩切花枝……。
「貴様か! 貴様が僕の潤を殺したのか!」
「ああ、そうだよ」
 今にも突進しそうな佐藤君を手で制して、私はまだ何かある――と周囲に気を分散させていた。
「確かに北川君は妖弧の欠片を身に宿していた――しかし、悪ではなかった」
「詭弁だよ、それは」
 岩切がそう笑ったところで、また銃声が響いた。
 もちろん、私はそいつの接近に気づいていたので佐藤君を抱きかかながら横に跳ぶ。
「ちっ、逃がしたか!」
「御堂もか……貴様ら、一体何を考えている!?」
 私は怒りを顕わにして、そう叫んだ。
「はん! 俺が欲しいのは完全体だ! それ以外は興味は持ち合わせてね!」
 御堂は連続で銃を撃ってきた。しかし、そう簡単に当たって堪るものでもない。
 だが、問題は実は佐藤君のほうだった。今も私の手から抜け出してやつらに戦いを挑もうとしている。
 気持ちは分かる。でも、今戦ったところで無駄死なのは目に見えてる。
 ――逃げるしかない。
(すまない、北川君……)
 私ひとりなら即刻、やつらに飛びかかったかもしれないが、今は佐藤君がいる。
 だからこその撤退だったのだが――
127霧島聖@決戦@(26):2001/06/21(木) 19:47
「囲まれている……?」
 正直言って、ぞっとしたのは恐怖からだった。
 他のものなら気づかないような敵意みたいなものが周囲に散らばっている。
 殺気はない。そう、ないのだ。
 しかし――長年の勘が危険だと警告していた。
「……気づかれている様だぞ」
「ああ、まさか気づくとはな……勘のいいやつだぜ。まあ、いい――なら見せてやろうじゃねーか!」
 御堂が私たちを指差すと、辺り一面から銃弾が飛んできた。
 さながら鉛の雨。躱す意思すら無くなるような絶望の弾数だった。
 私はきつく目を閉じた。それらを躱す術がないことを知って……。
 だが、実際にはどうだ? 私は傷を負っていないどころか、むしろ回復していた。
「もう大丈夫ですよ」
 そう微笑みかけてくるのは、よく知った馴染みの顔だった。
「高子君……それに麗子もか……」
 桑島高子と石原麗子……ともに医療機関で知り合った仲だった。
 それに、最強の強化兵・坂上蝉丸……。
「よくも貴女が腰を上げたものだな、石原先生……」
「あら? 私の可愛い後輩だもの。見捨てては置けないでしょう?」
 それが嘘だというのはすぐに分かった。
 彼女は動かない。例え地球が終わるその日でも。ただ見届ける……。
「まあ、ちゃんとした理由もあるんだけどね」
 麗子は、御堂と、その隣にいるもうひとりの強化兵、岩切を睨みつけた。
128霧島聖@決戦@(27):2001/06/21(木) 19:50
「犬飼とクローンの杜若は抑えてあるわ! もうよしなさい!」
「ぎゃはははははーーーっ! 笑わせるなよ! ここまで来て止められるわけねーだろが!」
「待て御堂! 石原麗子、どういうことだ?」
 御堂が銃を構えるのを制して、岩切は麗子に話を促した。
「そのままのことよ。犬飼が政府の高官に入れ知恵をして、彼の地にある生命樹を奪おうとしていたのが明るみに出た」
「犬飼はどうなった?」
「警察に連行。証人喚問は後日」
「なるほど」
 岩切同様、私も胸中で頷いていた。麗子の動いた理由はこれだったのだ。
 自分の配下にあるものが仕出かした事件なのだ。これなら責任者である麗子が出張らないわけにはいかない。
「そうか、ならば……」
「投降してくれる?」
 まるで期待していない声音で麗子が言う。岩切は笑った。
「……ならば、止まることはもはや出来なくなった。お前らにはここで死んでもらおう」
「そんなことしてただで済むと思っているの?」
「いや。だが……それなら余計に妖弧側に付かなければならないだろう……」
「どういうことかしら……?」
「完全体を目指しているのは何も御堂だけではない……私もそうだと言うことだ」
 岩切が短剣を構えると、毛卑た笑みを浮かべて御堂が絶叫した。
「やれ! てめーら! こいつらを殺せ!」
 その声に応じたのは視界の隅々まで埋まるほどのメイドロボットたちだった。
「情けないことにね、量産型のHMX−12型をやつらにおさえられたのよ。その数300くらい」
「――馬鹿者! 本当に情けないわ!」
 たまらずに突っ込んでしまった。
「確かに状況は不利だな……」
 そこに今まで黙していた青年が立ち上がっていた。
 戦いが始まる……。
129名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 20:00
一生懸命に回すだよもん。
130名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 20:01
まだまだ回すだよもん。
131決戦@エピローグ:2001/06/21(木) 20:13
 我が子よ…。
 よくお聞きなさい。
 これからあなたに話すのは、とても大切なこと。
 母から子へと、伝えられていく。
 とても悲しい記憶の物語りなのです。

 これまで幾多の試練がありました。
 悲しいこと辛いことも数多くありました。

 それでも私たちは無限に記憶を紡いでいきましょう。
 それこそ、この星の生きた証。
 私たちは、星の記憶を司る者なのです。

 星の記憶は永遠に幸せでなくてはなりません。
 憎しみや争いで空が覆い尽くされた時、
 この星はあらゆるものを生み出した己を忌むことでしょう。
 すべては混沌に戻り、そして無に帰すでしょう。

 だから、私たちは幸せであり続けましょう。
 地や空や海に暮らす者たちすべてに、無限の恵みをもたらすよう……。
 それこそが、私たちという種の役目。
 忘れることを許されない、私たちの誇り。

 でも、時に立ち向かえるほど、私たちは強くもありません。
 私たちもいつの日か、滅びのときを迎えるでしょう。
 それは、避けようのない結末。

 けれど、最後は…。
 星の記憶の担う最後の子には……。
 どうか、幸せな記憶を。

 その時こそ……。
 私たちは役目を終え、眠りにつけるのでしょうから。
132葉鍵聖戦@プロローグ:2001/06/21(木) 20:16
 別れの時が来ました。

 星は不幸で心を満たされました。
 あなたと暮らした日々では補えないほどの悲しみがあります。

 私は行かなければなりません。
 この星の悲しみを癒す為に旅立たなければなりません。

 けれど、最後は…。

 星の記憶の担う最後の子には……。
 どうか、幸せな記憶を。

 我が子よ…。
 大切な私の子供……。

 あゆ。

 月の巫女よ。

 あなたには、あなたの幸せを……
 その翼に、宿しますように……。

 あなたには、その力を生み出せる力があるのです。

 それは、ただ、純粋な……。

『――――』なのですから。
133名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 20:18
だよもん♪ だよもん♪ 『決戦』がやっとひと段落だよもん!
134名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 20:20
まあ、何だか全然終わっていないように見えるかもだよもん。
135名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 20:22
と、素に戻って恐縮ですが、これまでの数日の連続カキコ申し訳ありませんでした。
136名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 20:24
本当は『決戦』を二日くらいで終わらすつもりだったのですが、見ての通り――
まる一週間ほども掛かってしまいました。
137名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 20:27
『決戦』は今ある状況把握のために書いていたのでして、
話も途中で区切って、入り易いところ(主観ですが)で留めているつもりです。
138名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 20:32
余計なお世話といわれるかもしれませんが、やっぱり私もリレー小説を楽しみたいので、
我侭かもしれませんが、皆さんにも入っていただけれたら、という想いです。
139名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 20:42
そんなわけでクオリティよりもスピード重視でしたが、それはこれまでにしときます。
140名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 20:46
……て、何だかいい子ちゃんみたいで嫌ですね、こういうの。
141名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 20:55
本音を言ったら、だもんよ氏の、だってばよ氏の、美汐たん書いてます氏、
書き手さんだよもん氏、某一書き手氏、それに他の皆さんの話がもっと読みたいんだよもん。
142名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 20:57
もちろん時間が取れないとかの理由は分かってるんですが……。
さすがに智子たんや美汐たんの話は今までの書き手にこそ相応しいと思ったもので。
143名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 20:59
うー、意見の押し付けは厨房だって分かってるんですけど、なんだかもったいなくて……。
144名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 21:00
とりあえず回すのは終了ですね。回線切って逝っときます……。
「あらら。少しすみません」
 突然なつきさんがポケットをまさぐりだしました。そこから取り出した手には一台の携帯電話
が握られていました。バイブにしているのか、振るえながら着信を知らせています。
「ちょっと席を外しますね」
 なつきさんはそう言って、慌てて車両のデッキまで移動しました。
 やれやれと思ったとき、私も用を足したくなったので彼女についていく形になりましたが。

 とにかく、済ませるべきことを済ませてからトイレを出ようとした時、電話で話している
なつきさんの声が聞こえてきました。
「……どうしたの? なに……それ本当……?」
 先程までののんびりとした感じとは打って変わって、ドスを効かせた口調でした。目つき
もさながら相手が目の前にいるのなら睨み付けているといった具合です。
「……分かったよ。今から行くから、地下鉄の梅田……いや、環状線のホームで待ってて」
 なつきさんはそこで携帯電話のスイッチを切ると、何事もなかったかのようにデッキを後
にしました。
 ……何か思わしくない事が起こったのでしょうか……?
 ――さっきの会話……多分、南さんに聞かれただろうな。
 なつきはそんなことを思いながら座席に戻ったよ。
 電話を切る際……ちらっとトイレの方を横目で見ると、わずかに開いたドアの隙間から誰
かが覗いいたのが見えた。気配からそれが南さんだと分かるのには、難しくなかった。
 もっとも、聞かれたとしても困るってわけではないけど。
 ただ、どうやらなつきだけ予定を変更しなければいけないみたい。

 南さんが元の座席に腰掛けたのを確認してから、なつきはそっと彼女に耳打ちをした。
「すみません……ちょっと用事ができたので、なつきは新大阪で降ります。それが終わった
ら、すぐに追いかけますので」
「そうですか。大変ですね」
「いえいえ。ちょっと、先日の高野の爆破事件について、なつきの知り合いがそれに心当た
りがあると言い出してきたものですから、その人に会って真偽を確かめようと思いまして。
 とにかく、南さんらはこのまま東京に向かってください。そこから新幹線と特急を乗り継
げば、今日中には旭川までにはつけると思いますので。そこから先は、現地付近にいる知人
に車で迎えにこさせようと思うのですけどどうでしょうか?」
「確か旭川から彼の地までも100キロ以上離れているのですよね? だったら、迎えにくる人
に結構負担がかかると思いますので、札幌か旭川で1泊してから向かうつもりです」
「そうしたら……一応彼の地付近までの乗車券と札幌までの特急券等を渡しておきますね」
 とにかく南さんに切符と、特急券やグリーン券、さらには念のために、数万の現金を預け
ておいた。
 それから、しばらくして列車は新大阪駅に到着した。
「じゃあ、後はお願いします」
 なつきは列車から降りると、客席の中でこちらを見つめている南さんに大きく手を振っ
た。神尾親子と敬介さんはそれに気づく様子も無く、ただ眠っていた。
 まあ、彼らには後で電話で事情を話しておくとするかな。
 やがて、すぐに発車を知らせるアナウンスが駅の構内に流れ、列車のドアは閉まった。
 南さんらを乗せた列車が出発するのを見送った後、なつきはホームの階段を下りた。

 すぐに新大阪駅から在来線の列車で一駅――大阪駅まで行った。
 列車を下りるとそれまで気づかなかったけど、結構暑かった。
 これまで、年中暑いカンボジアにいたけど、もう日本も夏になってきたのかな、なんて思ったりもした。
 まあ、それはともかくなつきはそのまま環状線のホームに向かったよ。
 お昼で結構人でごった返したけど、探していた人物はすぐに見つかった。

「お久しぶりね。あなたに会うのは確か1年半ぶりね」
 黒いロングヘアーに黒のワンピースを着た、おとなしそうな女性――それはどこかのお嬢
様といってもおかしくない雰囲気(といっても、かつては本当にお嬢様だったのだけどね)
だった。
「ひさしぶりだね。元気にしていた――きよみさん」
「ええ。おかげさまで。
 といっても、『元気?』なんて訊かれると、妙に思うのは私だけかしら?」
「そういえば、あなたの状態を踏まえたらたしかにそう思うのも無理はないかもね」
 なつきとその女性――杜若きよみさん――は互いにおかしく思い、クスクスと笑いあったよ。
148某一書き手:2001/06/22(金) 03:48
とにかく回し。
149某一書き手:2001/06/22(金) 03:49
天候不順の前編で名前を書いていなかったです。
150某一書き手:2001/06/22(金) 03:50
遅れまして、皆様お久しぶりです。
151某一書き手:2001/06/22(金) 03:51
ようやく復帰ネタを書き込んだ次第です。
152某一書き手:2001/06/22(金) 03:53
>>141の書き手さん
漏れもこれから入っていきますので、こちらこそ一つよろしくお願いします。
153某一書き手:2001/06/22(金) 03:54
それではこの辺で……。
 んんっ……。
 ここは……?

 目を覚ますと、白い天井が見えました。
 窓が近くにあるのか、まぶしい光が差し込んできているようです。
 ただぼんやりとしか見えないので、体を起こそうとしました。

 ……イタッ!!

 途端に全身に激痛が走りました。手も足も――顔でさえもまったく動かせません。
 あまりの痛さに私は思わず悲鳴をあげてしまいました。

「ちょっと。無茶しないでよね。
 全身の骨が折れてしまって、全然直りきってないってのに」
 いきなり真上から声がしたかと思うと、一人の女の人が私の顔を覗き込んできました。
「まだじっとしててね。
さすがにあんたでもこの怪我を治すのには、だいぶ時間がかかると思うし」
 ――え?
 この人は知っているのでしょうか……私が作られた妖狐だってこと……。
 それより……

 かずきは……どこなの……。
 あいたいよ……。

 私は思い出しました。ずっと逢いたくて仕方のない人。
 ただ、つい先ほど顔を合わせた気がしましたがよく覚えていません。
 思い出そうとしても、そのときの記憶がまったくないのです。

 ただ……私が2回も――浩平って人と真琴に捨てられてしまったのは覚えていました。
 私はこのようにずっと捨て去られ続けなければならないのでしょうか……。
「かずき? 彼もここで手当てしてるけど」

 その答えに私は思わず飛び起きようとしましたが、さっきと同じでとてつもない痛み
が全身をを襲いました。思わずベッドの上に転がります。

「まったく……彼氏に会いたいのは分かるけど。もう少し落ち着いたら?
 あんた、まだ動ける状態じゃないのよ。その辺分かってよね」
 その女の人は仕方なさそうといった顔つきで、小さくため息をつきました。
「とにかく今は動ける状態にするのが先よ。彼の方もあんたと同様、全身ボロボロで動
けないし……。
 おっと、そういえば初対面の人に名前も言わないのはどうかしてるわね。
 あたしは吉井ユカリ。これからもよろしくね」
 ユカリって人はそう自己紹介を済ませると小さく微笑みかけてくれました。
 どうやら暖かく迎え入れてくれるようです。

「とにかくじっとしてるのも何だから、ラジオでもつける?」
 ユカリがそういうので、私は小さく「ええ」といいました。ユカリは近くにあるらし
きラジオのスイッチを入れたのでしょうか、陽気な男の人の声が流れてきました。

『……今は6月1日の午後2時30分! ここで曲を一曲リクエストで……』

 6月1日……1月7日じゃないの?
 ちょっと……5ヶ月近くも眠っていたってこと!?
 私はすっかりわけがわからなくなりました。

 でも、怪我をしている私を介抱しているユカリって人……どうやら私を捨てるってこ
とはしないように思えます。

 でも……どことなく不安です。
 私はそんな気持ちで、ずっとベッドの中にもぐりこんでいました。
「んで、彼女の様子はどうなの?」
「そうね。法術を使っても完治するまでには2週間はかかりそうね。
 なにせ全身の骨を折られている上に、内臓も破裂寸前のところまできていたのだから。
 あれで生きているのが奇跡っていってもおかしくないぐらいよ」
「一方で彼氏の方は、意識不明の重体ってとこか。ホント手が焼けるわね」
 テーブルに肘をついて、紫煙をくゆらせながら、目の前の正天使は仕方なさそうな
表情でそうつぶやいた。

 彼の地から25キロほど離れた山奥にあるペンション――
 ここに来てから既に3ヶ月半になるかな……。
 確か、その丘のある彼の地に行った時はこの辺も一面の雪で埋まっていたっけ。
 その時は高野の連中が妖狐退治どころか、身内の天野さんを鎮めるのにも手間取って
いたから、その馬鹿っぷりを見てやろうと思った。
 そうしたら、彼の地で知り合いのリアンに会ったんだけど、彼女はいきなり
「ここは危ねえから、避難しな」って、このペンションに隠れておくようにって言って
きた。
 話を聞くと、岡田を妖狐どもが仲間に引き入れようとするためにあたしを半妖にしよ
うとしているとの事だったから、素直にそれに応じた。
 さすがに岡田に迷惑は掛けられないから……。

 しばらくひとりぼっちだったけど、それにも慣れた。
 そうしたら、4日前に知り合いの人が、数人のけが人を抱えてやってきた。
 それが目の前にいるユンナさんだった。
 かつて高野にいた頃に法術を教えてくれて、面倒を見てくれた清水さんの知人だという。
「んで、彼の地のあたりは相変わらず吹雪が吹き荒れているっての? 3ヶ月前みたいに」
「信じられないけど、そうなのよ。春が来るどころか、日付は1月7日のまんま。
 時は確実に止まりつつあるわ」
「それって小耳にはさんだことがあるけど、永遠に飲み込まれそうになってるってこと?」
「そう思いがちなのけど……違うのよね」
 ユンナさんは残り少ない煙草の火を灰皿の上でもみ消した。
 そして、そっとテーブルに隣接している窓に目をやる。
 窓の外は到底冬とは思えない――北国の山奥の夏の風景が広がっていた。

「違うって、どういうこと?」
 さっぱり分からなかった。ただでさえ『永遠がやってくる』という事もあいまい過ぎて
分からないというのに。
 この人は何かしらの手がかりでも掴んだのだろうか?
「そうね……言葉には簡単に言い表しにくいんだけど……」
 ここでユンナさんは一旦言葉を切ってから、続きを切り出した。

「彼の地の『永遠とされている空間』は『邪術師が作り出した』って気がするのよ」
 さっぱり意味がわからなかった。
 ていうか、永遠を邪術師が呼び出しているのだから、そのことを言い換えた
に過ぎないって気がするんだけど。
 それってどういう事……と話し出そうとしたその時だった。

「……もう少し分かりやすく話してほしいわね」

 背後から声に振り向くと、そこにはパジャマ姿の晴香さんが立っていた。
 ただ、腕や頭に包帯を巻いている彼女が時折ふらついていているのを見ると、
痛々しく感じられた。

「まったく貴女は仕方が無いわね。もう少し寝てなさいって言ったでしょ。
 そんなのでよく2階から下りてこられたわね」
 ユンナさんは呆れたといった様子で、晴香さんのそんな姿を見ていた。
「なんとなくじっとしてられなかったのよ。
 降りてみたらあなたたちが永遠の話をしているから気になって……」
「本当になんて言うか……。
 まあいいわ、内臓はだいぶ回復しているから……そこにかけなさい」
 ため息を吐きながら、ユンナさんは晴香さんに私の隣の席につくように促した。
159名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 06:24
さぁて、回しますか。
160名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 06:27
ちなみに吉井ですけど……
161名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 06:28
ゲーム内では、下の名は不明なんですね。
162名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 06:29
じゃあ、下の名はどこから出てきたんだって事ですけど……
163名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 06:31
ソースは吉井ちゃんスレのネタを使用していたりします。
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=973636637
164名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 06:32
もっとも、その名前が正式だという根拠はまったくないのですけど。
165名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 06:33
思い切り考え物ですけどね。安易にネタを使うのも。
166名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 06:34
しかし、岡田と同様、吉井ちゃんも下の名がないってのはどうも。
167名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 06:35
そういえば、松本を忘れていた(藁)
168名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 06:38
やれやれ……。
169名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 06:40
語ってしまった。スマソ。
170名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 11:57
ageときますか。
171名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 13:14
おお、久々ですな…(遠い目)
172シイ原=だもんよ:2001/06/27(水) 16:23
申し訳ねぇ……
あともう少し待ってくれれば時間ができます。
もう少しだけ……待っててください。

きっと書きに戻ってきます。
173名無しさんで逝こう:2001/06/27(水) 18:33
>>172
待ってるにょ!
 椎名繭は起き上がった。
 周りを見る。ゆうに一晩は寝ていたのかもしれないが夕日は暮れてもいない。
 夜さえ迎えていない。もしかしたら他の空間は何週間も経っているのかも知れないが、
 この地はウラシマ現象のように、外界からはもはや切り離されているのだ。
 永遠は確実に近くなっている。
 どうして、この地が永遠になろうとしているのか彼女は知っていたが――語らない。
 彼女は何も語らない。

 七瀬留美はまだ眠っている。
 その髪を撫でて少女はやっと年に相応しい面影をみせた。
 かすかに笑う。

 少女は前を見た。
 ものみの丘……いやすでに物の怪の丘となった頂上部を見上げる。
 天野美汐に宿いし魂、神奈備命……最後の翼人。
 待ち迎えるは最強の妖弧、九尾。
 もう、引き返す術はないと、少女はオルゴールサイズの箱を抱き締めた。

「行きますよ、七瀬さん……」

 彼女にとっての永遠は、実はそこにある。
 氷上シュンは成り行きを見守るだけだった。
 九尾も翼人も邪術士も天使も関係ない。
 折原浩平を今一目見る。それだけが彼の望みだった。

 彼は知っている。
 永遠の世界に彼がいたことを。
 それは過去のこと。そして一瞬のことだった。
 折原みさおなんてどうでもいい。
 清水なつきさえ関係ない。

「嘘はついていない。ただ、永遠はずっと……」

 彼は知っていた。そして何も知らなかった。
 今、そこにある永遠が仮初だったとしても、彼はそこに在る。
 それ自体……。

「……裏切りは裏切りによって返される――そうだろう……?」

 彼は薄く笑っていた。
 最強の妖弧である沢渡真琴は怒りに満ちていた。
 その憤りは娘である裏葉の抵抗から来ているものだと誰もが思っていた。
 しかし――違う。そんなものなど些細なことだった。
 この時を何年待っただろう。千年……そう千年もの長き間ずっと待っていたのだ。
 裏葉の後ろ……林の向こうからひとりの少女が歩いてくる。

 少女の名前を天野美汐と言った。
 宿いし魂の名を神奈備命と九尾は記憶していた。

 最後の翼人と最強の妖弧。

 沢渡真琴は地面に横たわった二つの身体を踏み潰して糧とした。
 裏葉の目が驚愕に変わる。
 彼女が理解したのは何でもない――二つの狂気だった。
 誰に止められはしない。

 運命はどこまでも巡り、今、邂逅の時を生み出す。
 邪眼とは神眼でもある。
 水瀬秋子はある意味最強≠セと言えた。
 彼女は千年という年月に捉われていたが今はそうでもない。
 最愛の娘がいるからだ。
 水瀬名雪。
 水瀬の性は高野の大僧正であった由起子によって世間に認識されていた。
 彼女らが友人であったことを知るものはあまりに少ない。
 水瀬秋子は彼女とあるひとつの約束をしていた。
 相沢祐一という少年の身を時≠ェ来るまで絶対に護ること。
 彼に両親はいない。
 相沢祐一は小坂由起子の知り合いでしかない。
 しかし、彼は特別だった。秋子もそれを了承していた。
 結果として、彼女もこの街の狂気に飲み込まれてはしまったが、それも仕方ない。
 実際のところ、彼女は母親だった。
 それだけのことだった。
 だが、その結果はあまりにも――

「どうでもいい、いくらでも代わりがいる名雪っていう作りものなの!?」
 名雪は泣いている。
 秋子のもとから去って行ってしまう。
 水瀬秋子は唇を噛んだ。

 邪眼とは神眼でもある。
 水瀬秋子はある意味最強≠セと言えた。
 なればこそ弱者でもあった。
 彼女もひとりの優しき母親であったからそこ≠つかれた。
 今、彼女は邪術士と呼ばれている。
 国崎往人は少なからず天野美汐に好意を抱いていた。
 もしかしたら好きだと言えるのかもしれない。
 しかし、それは、その感情は一気にかき消されてしまった。

 彼は一人の男と出会っていた。

 ここは物の怪の丘だった。
 そこにいるというだけでそいつが尋常でないことは分かっていた。
 名前を聞いたら、とても不可解な違和感が生まれた。
 どこかでそいつと会ってるような気がしたが、それは間違いだった。
 その名前を知っていて、往人は当然だった。
 ただ、理解するのはとても難解で、往人はその名前を呟いていた。

「柳也だと?」

 そいつが頷く。
 国崎往人は知っていた。
 知らないわけがないくらい覚えていて当然だった。
 その名前は、祖先から伝わる……。

「巨大な妖気を感じて、こちらに歩みを進めたのだが、勘違いだったみたいだ」

 往人は吐き気を催した。
 気分が悪い。そいつを見ていると、どうしてか自分が自分でいられなくなる。
 往人は悟り出していた。
 彼は天野美汐に好意を抱いていたのではなくて、実は、その中にある……。

「九尾はどこだ?」
「うるせぇ!」

 往人が毒づくと彼は目を丸くした。
 そして、言う。

「お前が探している神奈もそこで待っているぞ?」
 保科智子は不機嫌だったと言える。
 どこが不機嫌に見えたかといえば言葉に出来るものはいないだろう。
 だが間違いなくそうだった。
 表情は冷静。声も正常。何より動悸に乱れがない。
 何もかもが自然。
 だからこそ彼女の怒りは針を刺すよう皆に伝わってきていた。
 彼女は唇を開けた。
 こともなげに言う――

「水瀬秋子をシバキに行ってくる」

 スフィーはその場いなかった。
 怪我人の治療に当たっていたからだった。
 彼女を止められなかったことを後になって後悔する。
 スフィーは知っていた。
 保科智子は今一歩のところで水瀬秋子に届かない。

 それを知っていたのだ。
 河島はるかは右手を握っていた。
 その手の中で温かい光が無限に生まれていた。
 そして、確信する。

 彼女は――もうすでに譲り受けていた。
 若く見えるが石原麗子は、実は最年長者である。
 邪術士を含めた千年にいたる戦いの強者たちを数に含めてもそうなのである。
 彼の人曰く――

彼女の行動を妨げてはならない
彼女の行動を理解しようとしてはならない

 彼女は自由だった。何事にも捉われることなく生きていた。
 しかし、それは崩れ去ろうとしている。
 いや、すでに崩れ去っていた。

 彼女は決して最強ではない。むしろ最弱である。
 そのことをを理解していないものが彼女に最強の称号を与える。
 だが、彼女から言わせれば――

「残念ね、今は手加減できないわ」

 彼女は一瞬にして量産型の機械仕掛け20体を闇へと葬り去った。

 最強でないから邪術士には敵わない。
 最弱であるからして手加減はそこに存在しない。

 しかし、自由もそこになかった。
 今は、見届けないで、動くことに彼女はした。

 護るべきものがそこにあるのなら。


 死人はなにも語らない――
 里村茜は待っている。

 物の怪の槍は告げていた。
 敵は九尾ではない。邪術士でもない。
 槍は沈黙している。
 振るわれるのは敵と見なしたものを混沌へ還す時――
 里村茜はそれに従う。

 今は見ているだけだった。
 川名みさきは奇妙な感覚に襲われていた。
 誰かの声が聞こえてくる。
『みさき……』
 知っている声だったので安心したのと同時に深い悲しみも生まれてきた。
 みさき自身も声を掛けようとしていたが向こうには聞こえない。
 残留思念。残された魂の遺言。それは一方的に告げてくるだけだった。
『私は貴女に伝えておくことがあるの……』
『貴女の魂は私の術で少しの間だけ大地に繋ぎ止めているだけ……』
『もって十時間の命だわ……』
 みさきは驚かなかった。
 死んだはずの自分が生きてる理由が分かって逆に安心する。
 声が反響した。
『私には強くあること≠ェ出来なかった……』
『でも、みさきは強い子だと私は思うから力を託すね……』
『この力を何に使うのかは貴女の自由……』
『残された時の中で考えてみて……』
 みさきは力強く頷いた。
 泣くことはしたくなかったから代わりに大きく声を出していた。
「ありがとう、雪ちゃん……」
『ありがとう、みさき……』
 重なりあった声が風に流されていく。
 溶け合った二人の心はみさきに更なる力を与えた。
 そして、視てしまった。
 みさきは小さな声で呟いた。いや漏れてしまったのだろう。
「わたしたちの中にユダがいる……?」
 つまり――長森瑞佳、里村茜、椎名繭、七瀬留美、上月澪の中に、裏切り者がいるらしい。
 不完全な予測でしかなかった。
 しかし、みさきは何かの間違いだと言い切ることが出来なかった。
『強くありなさい……』
 風の音がそんなふうに響いていたから。
 月宮あゆはどこからこの物語に関わっていたのだろう?

 それを知る者はいない。
 彼女の記憶は悲しみに包まれていたから思い出さえない。

 しかし、これだけは言える。

 彼女はこの物語を彩るのには適していない。
 彼女は必要とされていない。

 翼人でもない。
 天使でもない。
 人間でもない。

 そして、そのすべてだった。

 イレギュラーであると誰かが言った。
 それが誰なのかは分からない。

 彼女がイレギュラーである理由はたったひとつである。

『ボクのこと忘れてください』

 七年前、彼女はある人にそう言った。
 実は、それが……。
 遠野美凪の意識が開けた時、誰の姿もなかった。
 そう思ったら涙が出てきた。

 彼女には何もない。
 人工術士である彼女には戦うことがすべてだった。

 みちる…。
 
 みちるに会いたい……。

 ただ、そう呟く。

 そして、その想いに応えるかのようにみちるは現れた。

 美凪はまた泣いた。

 みちるは抱き締めてくる彼女の胸の中で困っていた。
 だって、みちるは目覚めてしまっていたから、美凪に対して……。

 ……悲鳴はなかった。
どうしてみんな仲良くできないの?

 少女は思った。

 そして、思い出す。

『キャラメルのおまけなんて入らなかったんだ!』

 ある少年のことを。

「いっぱい遊べるのに」

 今でも少女は分からない。

 たくさん遊んでいたくないのかと思ってしまう。

「おいでよ、こっちに」

 少女は呼びかけた。

「永遠はあるよ」

 笑顔でこちらに言う。

「ここにあるよ」

 盟約は誰か結んだのだろうか。

「わたしがそばにいてあげるよ、これからは」

 今でも、少女は信じている。

 その人が迎えに来てくれる日の訪れを……。
 時が来たのかもしれないと彼女は思った。
 皆を裏切ることになる。

 すべては承知の上だったが止まることはしないだろう。

 折原浩平の行き着いた先を彼女は知っていた。
 清水なつきは気づき始めている。

 早くしないといけない。

 彼女は思う。

 いや誰だって気づいていないわけがない。

 浩平はひとり。

 彼を愛した人は自分も含めた6人の少女。

 愛されるのはひとり。

 ……彼女に後悔はなかった。

 
 そして、物語は終局を迎える――
189名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 19:44
さてさて回すだよもん。
190名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 19:46
一人称を敢えて崩してみただよもん。
191名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 19:49
含みを多くしてあるだよもんがどうだよもん?
192名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 19:50
決戦のときは心身ともに疲れていただよもん。
193名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 19:51
それよりはマシになってると思うだよもんが……。
194名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 19:52
書き込む量が多い時はやっぱり分けるべきだよもんか?
195名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 19:53
そこら辺の加減がよく分からないだよもん。
196名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 19:55
『決戦』と『過程』を書き終えて好き勝手なことやってるな、とやっぱり反省だよもん。
197名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 19:56
それにやっていないゲームがあるのが痛いだよもん。
198名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 19:58
フィルスとWAと雫のキャラクターは難しいもん。
199名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 20:02
そろそろ回すのも頃合だよもん。
200名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 20:04
>>152
遅くなりましたが、こちらこそよろしくお願いします、だよもん♪
201名無しさんだよもん:2001/07/03(火) 14:16
SAGE
202名無しさんだよもん:2001/07/06(金) 00:30
age
203水瀬名雪@雪の少女(1/6):2001/07/06(金) 23:33
 風はどこまでも冷たい。
 雪の街はその装いを決して変えることはなかった。
 わたしは今、泣いている。
 お母さんへの愛が揺らいでいるから。
 もう、誰も信じられない。
 祐一以外は……。
 目を閉じてみよう。
 そこにはきっと暗闇が広がっている。
 死んでしまってもいいと思う。
 祐一と一緒なら。
 わたしの側に祐一がいてくれるのなら。
 永遠に、祐一が私のものになるのだったら――そう、すべてを許せる。
 わたしにはもう、祐一しかいなかったから。
 それなのに、祐一はわたしに何も語ってくれない。
 氷の棺の中で、凍ったままだった。
 目も虚ろでしかなかった。

「そんなにあゆちゃんの方がいいの……?」
「わたしを愛してくれたなら、その氷は溶けるようになっているんだよ……?」

 答えは返らなかった。
 祐一は氷の棺の中にいてわたしは外で泣くことしかできない。

「でも、でもね、ようやく気づいたよ」

 あの子が現れてから、祐一は可笑しくなったんだよ。
 だから、殺してあげる。
 わたしたちの邪魔をするものすべてを凍りつかせるよ。

「ねえ、祐一、聞いてる? もう、いいよね?」

 あゆちゃん、殺してたっていいよね?

 ――いいよね?
204月宮あゆ@雪の少女(2/6):2001/07/06(金) 23:38
 ボクはものみの丘の中腹部で川名みさきという人物に出会っていた。
 みさきさんは澪ちゃんの友人で高野の法術士だという。
「昔の話だよ」
 どうしてか憂いを帯びた表情でみさきさんは言った。
 ボクのことを警戒しているのか、少しだけ態度が固かったみたい。
「それで、あゆちゃん……だっけ? あゆちゃんはこの戦いを止めたいんだ?」
「うんっ。もうこれ以上、無駄な血は流させたくないよ」
「……そっか、わたしもその意見には激しく同意だよ」
『同意なの!』
「はは、澪ちゃんもなんだ。嬉しいよ」
 口元に手を当ててみさきさんが本当に嬉しそうに笑った。
 しかし、その表情はなお――頑なままだった。
「でも、そんなことできるのかな?」
「それは……」
 ボクは口をつぐんでしまった。確かにそんな都合のいい方法があるとは思えない。
 それに、ボクは詳しい事情だって何一つ分かっていなかった。
 ……どうしたら、いいんだろう。
『大丈夫なの』
 ボクの心配事なんてどこ吹く風で澪ちゃんが笑った。
『繭ちゃんに相談したら何とかしてくれるの』
「……繭ちゃん?」
「椎名繭……最年少で博士号を獲得した天才少女、わたしたちのブレインをしてくれてる女の子だよ」
 みさきさんが暗唱ごとのようにすらすらと答えてくれた。
 どこか、やっぱり陰りがあったけど……。
「そうだね、繭ちゃんなら、なんとかしてくれるかも……」
『きっとなの』
「わたしも、繭ちゃんに相談したいことがあるし、探してみようか?」
 そう言って、みさきさんは目を閉じる。
『遠くを見る目』を使っているらしいことは、その凄まじい霊力で分かった。
「ここから、近いところ……ものみの丘の頂上部に向かっているけど、近道したらすぐ追いつくよ」
 うん、と大きくボクらは頷いて、その先へと歩いていった。
205七瀬留美@雪の少女(3/6):2001/07/06(金) 23:44
 繭が足をとめた。あたしもそれに倣って立ち止まる。
「どうしたの?」
 ここはまだ頂上部に向かう林の中だった。
 丘にいた妖弧たちはすべて街に向かったのか出会うこともなかったけど、不安は消えない。
 この丘には、あの九尾≠ナある妖弧の長・沢渡真琴がいるのだ。
 あたしはそんな焦りもあって、繭の肩をぎゅっと掴んでいた。
「なるほど、やはりですか……」
「だからさ、どうしたのよ? 深刻な顔して」
「まあ、川名さんのことだから、大丈夫だとは思っていましたけど、徒労もいいところですよ」
「うん? みさきさんのこと?」
「ええ、こちらに向かっているみたいです。澪も一緒みたいですね……」
 繭は肩を竦めてみせた。みさきさんを心配して探していたのも相まって複雑な感情も入り混じってるのだろう。
 みさきさんにとっては、要らぬ心配だったのかもしれない。
 そう考えると、さすがに鬱だった。力を無くしてしまったことを悔いてしまう。
「そうでもないですよ」
「えっ?」
「七瀬さんは七瀬さんということです」
「なに、それ?」
「一緒にいて退屈しないってことですよ」
 うん? なんだか酷いいわれような気がするけど、まあ、いいか。
 繭は楽しそうに、そっと目を伏して続きを言った。
「力のあるなしなんて関係ありません」
「…………」
 ちょっと照れてしまうが、そんなことないと思う。
 まあ、みんなにはよく弄られてるなー、って感じはするけど……。
「少し休みましょうか?」
 にこっと微笑んで言う少女に、あたしはただ頷いていた。
 伏龍の繭……彼女には助けられてばかりだった。
 しかし、意味深な顔は止めて……お願い。 
206椎名繭@雪の少女(4/6):2001/07/06(金) 23:52
「……結論としては不可能です」
 皆さんが揃ったところで私は言っていた。残念そうにみんなが俯く。
『どうしてもなの』
 諦めきれないのか澪が悲しそうに私を見ていたが、あくまでも非常に徹する。
 方法がないわけではない。ただやり方が複雑すぎて、私のプランに損傷をきたしてしまう。
 成功の確率も、かなり低い……言いたくはないが、天文学的数字だった。
 だったら、今の計画の実行を優先すべきだった。
 最善の方法があるのなら、伏龍≠フ名において私はそちらを選ぶのだろう。
「どうしても、です。……いえ、千年に及んだ戦いを私たちが止めるのはエゴというものですよ」
 嘘をつくのだけは上手くなったと、私は胸中で苦笑した。
「いいですか? 彼女らの力というのは計りきれません。水瀬秋子が動く前に私たちが消耗してどうします?
 私たちには為すべきことがあります。永遠をこの地に迎え入れる準備をすることが先決でしょう。
 そうしなければ永遠が溢れてしまって、この間のように取り返しのつかない事態になりますよ。
 彼だって……そうしないと、戻っては来てくれません――分かりますね?」
「…………」
 私がぴしっとそう言うと静まり返ってしまった。
「うぐぅ、そんなのってないよ……」
 悲しそうに呟いたのは、月宮あゆだった。
「あるいは……」
 貴女なら何とか出来るかもしれませんね、との言葉を私は飲み込んでいた。
 彼女は、澪とここまで一緒に来てくれたらしい。
 それには、純粋に感謝するが、邪魔をされるかもしれないという可能性も否定できない。
 しかし、逆に言えば、彼女は切り札にもなり得るのだ。
 保険として扱うのがベストだと、私は打算して、答えを導き出した。
(……ええ、そうね。何をやってるのかしら、私は……)
 ぎゅっと唇を噛んで、私は言った。
「いえ、何でもありません。この件については以上です」
 そう言って、私はなぜか立ち上がっていた。……いたたまれなくなったのかも知れない。
「出発は一時間後にしましょう。それまで各自休息していてください」
 何を言ってるんだか、と思いつつも、心を凍らせて、私は踵を返していた。
「繭ちゃん、ちょっといいかな?」
「はい?」
 川名さんが私に相談したいことがあると申し出ていた。
207川名みさき@雪の少女(5/6):2001/07/07(土) 00:05
「……裏切り者がいる?」
 繭ちゃんは、何かを考えるように顎に手をやって、その片手を肘に当てていた。
「それは、確かなんですか?」
「……信じられないのも無理ないよ。わたしだってそうなんだ。何かの間違いだって思うんだけど……」
 今まで見たことを、私はすべて繭ちゃんに話していた。
 その中には、わたしの命が後僅かなことも含まれていたけど、繭ちゃんは黙って聞いてくれていた。
 雪ちゃんのこと、名雪って人のこと、あと由紀子さんのことも、全部のことを話した。
「ユキですか、この街らしいですね……」
 止んでいたと思ったら、また濁った空から螺旋を描いて雪が落ちてきていた。
 繭ちゃんは、手を伸ばして、その手のひらに雪を受け止める。しかし、すぐにそれは、溶けて消えていってしまった。
「冷え込むかもしれませんね……」
「そうだね……」
 繭ちゃんはその光景をみて、優しく微笑んでいた。
 わたしは、彼女がそんな風に笑うところを、見たことがなかった。
「繭ちゃん……」
 雪色に染まる街はなにを思っているのだろう。
 木々の先に霜のような雪が纏わりつく。
「……七瀬さんには黙っていましたが、里村さんが離反しました」
「え? じゃあ、裏切りって、もしかして――」
 わたしが言葉を続けようとした時、彼女はあの笑顔のまま小さく首を横に振って、窘めてくれていた。
「それに、長森さんとも連絡がつきませんし、七瀬さんだって元とは言え妖弧です」
「…………?」
 繭ちゃんがなにを言おうとしているのか、わたしには分からなかった。
「澪はゴッドハンドの影響下にあるかもしれませんし、もちろん私だって永遠と交わりました」
「繭ちゃん……それって」
 彼女はステップを踏んでくるりと回った。雪と戯れるように……。
「私は誰がなにをしようと、それを受け止めるつもりです。……後悔なんてないですよ、私はみんなのことが好きですから」
「それで……いいの?」
「はい。こう見えても、私は今、幸せなんですよ?」
 わたしたちと居ることができて彼女は嬉しいと言ってくれた。
 だったら、わたしも……。
「繭ちゃんと一緒にいれて幸せだよ」
 そう素直に思った。
208七瀬留美@雪の少女(6/6):2001/07/07(土) 00:07
 一瞬……目の前で起こったことが理解できなかった。
 冷たい雪に溶け込んだように、彼女はどこからか唐突に、あたし達の前に現れた。
 そして早く、迅速に、彼女は……まず澪を凍らせていた。
 あたしの身体が動かなかったのには、理由があった。強く地面に叩きつけられていたからだった。
 澪に弾かれて……あの子は襲いくる結晶から、あたしを庇ってくれた。
 その代償に、澪の呼吸は容易に止まってしまった。
 目にした光景は、壮絶だった。
 白い式服に、風に流される青い髪、雪の少女……彼女の名前を水瀬名雪と言った。
「やっと会えたね、あゆちゃん」
「……名雪さん?」
 あゆちゃんはひどく目を丸くさせて、身体を震わせていた。
 恐れじゃない……戸惑い、あゆちゃんは信じられないように、名雪に言う。
「そんな……どうして名雪さんが?」
「何も知らないんだね、あゆちゃんは……。わたしはずっと前からあゆちゃんのこと嫌いだったんだよ。
 この――どろぼう猫! 貴女なんかに祐一は渡さない! 絶対に――渡さないんだから!」
「どうしちゃったの、名雪さん?」
「知らない! 知らない! 知らないよう! 貴女なんかだいっ嫌い!」
 雪の結晶が名雪を中心に、円を描く。そして――
「危ない!」
「死んじゃえ!」
 あたしの言葉は届かなかったのか、あゆちゃんはまともにそれを喰らって、地面に崩れていった。
 雪の飛礫(つぶて)、圧縮された雪の結晶の弾丸だった。
「……祐一君」
 赤い。赤い雪。血が広がっていく。白から赤へと変わっていく。
 流れでたのは、言うまでもなくあゆちゃんの血液だった。
「きゃあーっ!」
 あたしは絶叫した。
「死んじゃえ! あゆちゃんなんて死んじゃってよ! わたしからすべて取らないでよ!」
「…………」
「お母さんも、祐一も、みんなみんな――わたしのものだよ!」
 名雪――雪の少女は、止めを刺すべく、手に氷柱のような剣を握っていた。
 血塗れになった少女の側まで歩み寄る。
「あゆちゃん、逝ってよし!」
 あたしには……こんなあたしでは、その凶行を止めることは出来なかった。
「……止めて……よ」
 見ていることしか出来ないその力のなさに、あたしは嘆いていた。
209名無しさんだよもん:2001/07/07(土) 00:09
だよもんだよもん。
210名無しさんだよもん:2001/07/07(土) 00:10
改行が多いって言われて鬱だよもん。
211名無しさんだよもん:2001/07/07(土) 00:12
所々削って送るだよもん。
212名無しさんだよもん:2001/07/07(土) 00:14
それにしても名雪を描くのは難しいもん。
213名無しさんだよもん:2001/07/07(土) 00:17
さて、そろそろクライマックスかもだよもん。
214名無しさんだよもん:2001/07/07(土) 00:19
でも、まだまだかもしれないもん。
215名無しさんだよもん:2001/07/07(土) 00:20
難しいところだよもん。
216名無しさんだよもん:2001/07/07(土) 00:22
とりあえず夏は好きだもん。
217名無しさんだよもん:2001/07/07(土) 00:26
AIRをもう一度やってみるだよもん。
218名無しさんだよもん:2001/07/07(土) 00:27
回し終了だよもん。
219名無しさんだよもん:2001/07/08(日) 21:59
age
220名無しさんだよもん:2001/07/10(火) 04:12
一応age
221白穂@空への願い(1/10):2001/07/11(水) 16:56
 彼女の意識はどこかに飛んでいた。
 何を感じていたかと問われたなら言葉には出来ない。
 ただ、喪失していく理性は彼女を狂わせた。
 視界が広がる。
 雪の街。白い雪。冷たい雪。吹雪。風は荒れ狂う。
 彼女の意識と同じように……。
 あかい。紅い。赤いものが視界に映っていた。
 誰かの流した血。
 右手から熱いものが零れていく。
 魔法……。
 彼女が求めていたもの。
 そして……。
 そして…………。
 今、彼女の心は滅亡と狂気に捉われてしまった。
 それは死≠意味するのかもしれない。
 思い出が巡る。
 記憶の中で彩っている。
 暑さ……。
 そう、灼けるアスファルトに、セミの声と、診療室に響く空調の音。
 彼女は誰かを待っていた。
 白いワンピースに、右手には、黄色いバンダナ……いつもと同じ夏の風景。
 でも、もう思い出すことはなくなって……。

 叶う? 叶えるもの……。
 魔法? 使えるように……。
 羽根? 空から……。

 今、舞い降りて、願いを叶えるために……。
 彼女は、口を開いた。

「――貴女に、決定的な死≠与えます」

 移り、芽生えた意識……彼女の名前を白穂と言った。
222白穂@空への願い(2/10):2001/07/11(水) 16:58
 言葉を失ったのは無論、幼い妖弧だった。
 彼女から漏れでる神力は妖弧である塚本千紗を遥かに凌駕していた。
「わたくしの子供、八雲はあなたたち妖弧によってその生を閉ざされました……」
 霊気に満ちた霧島佳乃の姿である白穂は滑らかな口調で言う。
「恨み言ではない、と申せば嘘になりましょう。しかし、わたくしは……この子のために力を宿します」
 幼い妖弧は、目を大きくさせて、肩をがくがくと震わせていた。
 力の差は歴然だった。翼人の力の欠片を彼女らは使おうというのだから。
「生まれるのは、ただ純粋な願いから……」
「そ、そんな……」
 幼い妖弧は瞳に涙を浮かべていた。
「さっきまでは、千紗の方が勝っていたんですよ……」
「始まるのは、ただ偶然から……」
 白穂は天に向かって、手を掲げ上げていた。
 白い光が降り注ぐ……。
「こんなところで千紗は死ねないんですよ……」
 泣き言。怯え。恐怖。死。虚無――その先には何もない。
 待つのは、混沌のみ……。
「虚ろなれども、ただ想うは愛の子よ……」
「死ねないんですよ……」
 終わり。生の終わり。生きることはない。転生すらない。
 もう、何もできない……。
「ねんねころりよ、おころりよ……」
「千紗は……」
 幼い妖弧は怯えていた。そこにある死を実感していた。
 すぐ側で死神が手招きをしている……。
 あるのは、そこにあったのは、単なる――単なる、終焉……。
「千紗は、こんなところで死なないって言ってるんですよ!」
 そして、決着というのは呆気ないものだった。
 光が弾けた。
 風が吹く。
 羽根が震える。
 最後の夢。
 夢でない夢。
 記憶ではない記憶。
 金色の海。
 奥底に眠る。
 それは……。
 たましいのありか。
 あたしは夢を見ていた。
 呼び覚ます記憶。
 母でない人。
 母であった人。
 姉……。
 もう二度と会えない。
 力を……魔法を使ったら……。
 ――でも、止められない。
 仇を討ちたい。
 みんなの仇をあたしが討ってあげたい。
 そうしたら、いい。
 そうできたなら、と思う。
 でも……。
 でも…………。
 もう一度だけでいい。
 会いたい。
 お姉ちゃんと会いたい。
 白穂……。
 あたしは……。
 夢……。
 これは夢……。
 それも夢……。
 あたしの夢……。

 そのはずなのに、違う人がいた……。

 こんにちは、と彼は呼びかけてきた。
 ……子供だった。あたしよりもずっと幼い男の子だった。
 どうしたの、ってあたしは問い掛ける。
 どうして、こんな寂びしい場所にいるのか聞いてみる。
 何もなかったのだここは。
 原っぱでもない。
 荒れ果てた土地でもない。
 ただ、そこは本当に何でもない場所だった。
 悲しいだけの世界……。
 遠くを見る。
 ネオンのライトが眩しい。
 時間を見ている、とそんな感じがした。

 どうして、こんな所にいるの、と再度あたしは訊ねていた。
 男の子は、あそこから来たって分かってるんだね、とだけ答えてくれた。
 訳が分からなかった。それなのに、彼は続けた。
 旅立ったんだよ、遠い昔に、と言って寂しそうに笑っていた。
 いや、もしかしたら……。

 泣いていたのかも知れない、とあたしは思った。
 だからって、どうしようもなかった。
 気が付いたら、違う世界に来ていた。
 また、旅立ったのかもしれない。
 少し異なっていたのは、あたしが空を飛んでいることだった。
 空だけの世界。でも、それだけで何もなかった。
 とても悲しい世界だった。
 あたしは、あたしの望んでいたことは、たったひとつの意味さえもたなかった。
 そのことに、あたしは気づいていた。
 誰も居なかったからだ。
 探し求めていたものはここにはなかった。
 しかし、その世界は優しさで溢れているのだから、居心地は悪くない。
 あたしは悟っていた。
 ここでなら、誰も傷つかないで生きられるのではないか、と。
 しかし、出会いも何もない。
 風さえ存在しない。感傷にも浸れない。誰も愛せない。
 こんな世界では、愛することは出来ない。
 悲しみの生まれない世界はただそれだけで悲しい。
 あたしは、ひとりだ。
 あるのは優しかった思い出だけで、他には何もない。
 空虚だった。
 だからこそ傷つかないで済むのだと、あたしは知った。
 この世界は、誰にも望まれていないことを、望んでいるような気がする。
 この世界は、もう終わってしまった世界……。
 また、意識がくるくると、回った。 
 君は悲しいからここに来たんじゃないんだね、と彼は言った。
 男の子のはずなのに、あたしは彼を年下とは思えなくなっていた。
 始まらない。終わらない。生まれない。滅びない。

 ――分かるかな?

 あたしは首を横に振っていた。
 男の子は、それでいい、とでも言うように頷いてくれていた。
 君は、永遠には来れないよ、と嬉しそうに笑う。

 ――君はちょっとの間だけ迷い込んでしまっただけなんだ。

 何のことだかは理解できなかったけど、少年が言うと「そうなんだ」と納得していた。
 知らなかった心がある。知りたかった想いがある。

 風が吹いている。
 何もなかった世界が色付き始めている。

 ――希望が生まれたんだよ。

 吹き始めたそよ風に彼も身を委ねていた。
 髪の毛がふわりと揺れる。あたしも彼と同じ風を感じている。
 また、違う風が吹いていた。
 それは、夏の予感を胸に抱かさせる暖かい風だった。
 そう、こんな小さな風だって、勇気をもってる。

 ――そうだね。

 彼は泣きそうな顔をしているのに笑っていた。
 だから、あたしも笑った。

 ……それでいいと思った。
 一緒に帰ろうよ、とあたしは言った。
 この世界は、あまりにも思うとおりにいき過ぎて人の居るべき場所ではないと思った。
 しかし、彼は悲しそうに首を横に振るだけだった。
 出来ない。怖い。戻れない。帰れない。還れもしない。憎まれてる。

 ――まだ、永遠はぼくを離してくれない。

 まだ知らない悲しみがあると言って、彼は泣き続けた。
 そんな悲しみ、どこにも無いのに……。

 ――永遠は、優しかった。

 それでも彼はこの世界が永遠ではないと教えてくれた。
 現実でも、永遠でもない、仮初の世界……。

 ――それは、ぼくのココロだよ。

 あたしには彼の言ってることがよく分からなかった。
 でも、すぐそこに、優しいなにか≠ェ広がっていて、それが本当の永遠であるとあたしは何となく気づいた。
 だったら、なおさら彼を引き摺ってでも、この世界から連れ出したかった。
 それなのに、世界はあたしを突き放し始めていた。

 ――本当のぼくと、新しいぼく……どちらもぼくではない。

 どうして、とあたしは言っていた。
 なにが彼をそうまでさせるのか知りたかった。

 ――希望が無いから、かな……でも、もし、それを見せてくれたなら……。

 もう、それまでだった。
 あたしはこの世界から引き離されようとしている。
 希望。彼には絶望。そこにある可能性。どちらでもない自分。

 ――君は、もう一度、がんばれるよ。

 そして、世界は元の姿へと変わっていった。
 多分、あたしは彼の言ったことの半分も理解できなかったのだと思う。
 でも、あたしは帰ってこれたから、彼もいつか帰ってこれるものだと信じた。

 だから、今、出来るあたしの可能性も信じてみたい。
 永遠というのは、つまり……そういうことなんだろうとあたしは思った。
 みんなが求めている永遠は、千差万別でありながら、唯一無二で、表裏一体……そういうものなんだ。

 あたしは、永遠に逝ってしまったのは、つまり……。
 ううん、それは今でなく、後で考えもいいことだったので、感謝する。

 おりはらこうへい。

 ただ、彼に……。

「お母さん、あたしはまだそこに行けないみたい」

 その永遠の世界では、きっとお母さんが待っていてくれていたはずなのだ。
 しかし、何の因果か彼と出会って、あたしはここで留まった。

「お姉ちゃんが、きっと心配してるから」

 そう、今……あたしはそのためだけでもいい、生きてみたい。

『辛いのなら、私と来てもいいのよ』

 声が聞こえた。
 幼い少女の声だった。でも、それは――すぐに変わった。

『あなたはいつまでも、甘えんぼうだから』

  お母さんの声に……。

『私といつまでも一緒に居てもいいのよ』

 そして、差し出された手のひらが目の前にあった。
 あたしが望んでいたもの。ずっと探し求めていたものがそこに……。
「えっとね、ありがとう……」

 私を生んだせいでお母さんは長生き出来なかったけど、
 あまりお母さんのこと、覚えてないけど、ありがとうって言いたかった。

「あたしを生んでくれて、ありがとう、お母さん」

 それだけ言いたかった。
 お母さんは、何も言ってくれなかったけど、微笑んでくれていたから、それで良かった。

 あたしには羽根が無いけど、大地を歩ける足がある。
 お姉ちゃんもいるし、ポテトもいる。

 あたしはここで幸せになりたい。

 白穂にも伝えてあげたい。

 ――八雲君は、充分に幸せだったよ、って……。

 だから、還るのだ、あたしは。

 ずっと居たかった、これからも居続けたい場所に。

 ――はい。

 その声は、待ち遠しい春の訪れを語る風のように、響いた。

 すべてが還る。この空に。

 ここは、雪の街。でも、季節は巡る……。

 春は、もうすぐそこに……。
 幼い妖弧はあまりの出来事に狂ったように笑い出していた。
 強かった光は、その輝きを失って、始まりの少女の元に還っていく。
 すべてがここで終わって、また始まったのだろう。
 しかし、それを理解できないで、幼い妖弧は思いの限り牙を向けた。
「単なるこけおどしなんて……千紗を馬鹿にするのも大概にしとかないと痛い目にあいますよ!」
 佳乃はそんな言葉に耳も貸さないで、右手を見続けていた。
「……随分、時間掛かっちゃったな……」
 佳乃の視線は、地面に落ちた黄色いバンダナに注がれて、その自分を無視した行為に幼い妖弧は憤りを感じていた。
「千紗のこと舐めて舐めて、舐めまくってますね」
「……これ、外すのに……」
 幼い妖弧の怒りが頂点にまで達した。ツインテールが金色へと輝き出す。
 潜在能力だけはあった妖弧の力の解放。
 佳乃は、それを見て、どうしようともしなかった。
 秘策があったわけでもないし、余裕ですらなかったし、本当は恐怖で一杯だった。
 だから……ただ、信じる。
 もっとも信頼しているパートナーのことを……。
 そして、その想いは、天に届いていた。
「なっ!?}
 幼い妖弧に向かって弾丸の雨が降り注ぐ。驚いて振り向いた先には、幼い妖弧が煮え湯を飲まされた相手がいた。
 青い髪の眼鏡を掛けた女の子と、大人しい雰囲気をかもし出す少女がふたり、そこにいる。
「あの、私もいるんだけど……」
 そして、青いツインテールの少女が佳乃の側でまた、佇んでいた。
 またひとつ、宿命の戦いが始まろうとしている。
231名無しさんだよもん:2001/07/11(水) 17:23
回すもん。
232名無しさんだよもん:2001/07/11(水) 17:26
力尽きたもん。
233名無しさんだよもん:2001/07/11(水) 17:32
ここでバトンタッチしたいもん。
234名無しさんだよもん:2001/07/11(水) 17:34
味のあるキャラクターはその人に任せたいもん。
235名無しさんだよもん:2001/07/11(水) 17:34
お願いするだよもん。
236名無しさんだよもん:2001/07/11(水) 17:36
少しだけ訂正だよもん。
237名無しさんだよもん:2001/07/11(水) 17:36
「あの、私もいるんだけど……」のあとに「ぴこぴこ」と続けてくれたらいい感じだよもん。
238名無しさんだよもん:2001/07/11(水) 17:38
それでは失礼するだよもん。
239雛山理緒@蓮華(1/6):2001/07/13(金) 16:53
 ……起こったこと自体はたいしたこと無いのだろう。
 傍目から見ると、とてつもない惨劇に見えるかもしれないが、そこには何かしら理由があるのだ。
 そう。彼女らには彼女らにしか理解できない理由が、確かに存在していた。
 恋愛感情というものは、時には人を悪魔にも天使にもさせる。
 私には、まだ分からないけど、時には人を傷つけるほど、それは惨酷なのだろう。
 つまり……狂えるほど、愛しい、ということだった。

 長岡さんは悲鳴を上げることもなかった。
 セリオさんを連れて医務室のドアを開けたところで、私は自分の仕出かした過ちを気づいていた。
 しかし、それはあまりにも遅かった。
 セリオさんの左手から放たれたガトリングガンの薬莢は数百単位で地面に散らばっている。
 まだプスプスと煙を上げる、その手は呆然と彼に向かって上げられたままだった。
 私も悲鳴すら上げられなかった。
 ……分かっている。何が起きたのか分かってはいるっ!
 でも、でも……その場に居る私たちは、信じたくなくて沈黙を守り続けていた。
 危うい均衡が周囲を支配していた。
 もし、この静寂が破られたなら私は泣いてしまうだろう。
 きっと、大声を出して泣いてしまうだろう。
 だって……藤田君は、藤田君は死んでしまったんだから。
 たくさん服に穴があいて、どくどくと血を流しているんだから。
 長岡さんも呆然とそれを見ていた。
 焦点の定まっていない虚ろな眼でそれを観察していた。

 もう、あの日には還れない……。

 平穏だった日には還れないことを改めて、私たちは思い知らされていた。
240長岡志保@蓮華(2/6):2001/07/13(金) 16:55
 私はどうしてしまったんだろう?
 目の前でヒロが散っていってしまったのに、どうして悲鳴のひとつも涙すらも流せないのだろう?

 それは、本当に……突然の出来事だった。
 扉が開いた瞬間、いきなりいくつもの銃声が鳴り響いた。
 いや、パーンなんて音じゃなくて、タタタターとか随分、間の抜けた音だった。
 その弾道の先にいたのはHMX−13型セリオだった。
 しかし、私の目にはセリオではなくて、そいつが綾香に見えた。
 今にも陽気に「はーい」とか言ってきそうだが、それはもはや叶わないだろう。
 浩之を殺したのは、その綾香だったから。
 どうしてヒロが私を庇ったのかなんて、彼女は思いもしないことだろう。
 綾香を愛するが故に、綾香と思い込んでいる私、長岡志保を助けてヒロは死んでいったのだ。
 なんていう皮肉なんだろう。
 愛するものが、愛するものを殺して、愛するものを助けるために、愛するものが死んでいったのだ。
「くくくっ……」
 思わず笑ってしまった。愉快でしょうがない。ザマアミローって感じだった。
 こんなにも私はヒロのことが好きなのに、彼は所詮、綾香しか見ていなかったのだ。
 なんてことだ。道化もいいところだった。
 私がつまんない意地なんて張らなかったら、ヒロは死んでいなかったのだ。
 綾香の代用品。それでもよかった。ヒロがいてくれるのなら。それで……良かったのに。
「アハハ、ハハッハハハッ……アハハッハハハッハハハッハハッーーーーー!」
 気がどうにかなりそうだった。いや、もう充分に可笑しくなっていた。
 可笑しくて可笑しくて堪らなかった。
 そうだ。死ぬべきだったのは私のほうだったのだ。
 虚構でしか愛されない私ではなくて、そこにいる綾香の方が適していたのだ。
 ヒロが生きてさえいたら、私は別に死んでも構わなかった。
 ――構わなかった!
「ヒロユキー!」
 絶叫が部屋の中を越えて建物中に響き渡った。
241雛山理緒@蓮華(3/6):2001/07/13(金) 16:56
 ……愚かだったの誰だろう。
 HMX−13型セリオは何のためにここまでやって来たのだろう。

 私は長岡さんが泣いているのを見て、そう思わずには居られなかった。
 今はセリオさんもその機能を停止している。機械である彼女にとってもよほどショックだったに違いない。
 それはセリオさんにも感情があったことを意味していた。
 でも、それが、どれほどのこと?
 彼女が彼を殺したことは永遠≠ノ私の記憶に刻み込まれて消えはしない。
 許せない。しかし怒りさえ湧いてこない。
 そうだ。もう何をしても、どんなに叫んでも怒っても、泣いても……彼は還ってこない。
 私はそれを知っていたのだろう。
 理性で、私は何もかも丸め込んでいた。そして、感情は蛻の殻だった。
 セリオさんに向かって、よたよたと歩いていく長岡さんを見ても、何もする気にはなれなかった。
 手には、花瓶を持っている。
 さっき生けたばかりの花はまだ瑞々しく透き通っている。
 長岡さんは、それを振り上げて、セリオさんの頭を叩いていた。
 ガラスが割れるような音が響くが、そんなものでは彼女は崩れたりはしない。
 だけど、花瓶の水に濡れたのか、その機体は水浸しになって、しとしとと零れ落ちている。
 その光景は、まるでセリオさんが涙を流しているみたいに見えた。

 長岡さんは憤怒の表情で、彼女の頬をはたいていた。
 でも硬い機械でできた彼女の頬は冷たくて、ただ無機質だった。
「返してよー!」
 泣きながら長岡さんが叫んでいた。
「ヒロを返してよー!」
 赤子のように泣きじゃくって嗚咽に苦しんでいた。
242雛山理緒@蓮華(4/6):2001/07/13(金) 16:58
 ……また、火花が散った。
 もう二度と動かないだろうと思っていたセリオさんがほんの少しだけ動きを見せた。
 長岡さんのお腹にぽっかりと穴が開いている。
「私のヒロを返してよ……」
 でも長岡さんは、痛みも感じていないのか、ただそれを言い続けてセリオさんの襟首を掴んでいた。
 それから、そんな動作を二分ほど繰り返して……事切れた。
 地面にずるずると落ちていく長岡さんを見て、彼女は勝ち誇ったかのように見下していた。
『浩之はわたしのものよ』
 そう告げているように見えて、私は驚愕した。
(……狂ってる!)
 彼女は機械以上に冷たい人の心を持ってしまったのだ。
 復讐の為ならいくらでも残虐になれる人の心。大切なものを喪失した後の空虚感。
 何をとっても、彼女は人間のようであった。
「なにかあったんですか!?」
 病室のドアが開かれて、冬弥さんが入ってきた。
 その他にも、たくさんの人が次々と、この部屋に入ってきて、みんな一様に言葉を失った。
 何をしても動かないセリオさんと、地面に横たわった二つの死体……。
 そして、血塗れの私……。
 誰も一言も喋れない、動けない中、ひとりの少女が凄然な光景の中を歩いていた。
 それは、王者のように悠然としている。
「何があった?」
 少女は私に向かって呼び掛ける。
「……ア…アッ……」
 上手く言葉を発せない私に少女はピシッと頬をはたいた。
 それで、ようやく正気に戻ったのか、私の瞳はやっとその少女を捉えることができた。
「……あ、あ、す……スフィーさん!」
 少女の姿に安心したのか、ただ泣きつく。
 スフィーさんの胸の中で慟哭する。
「ああああぁぁぁぁああああーーーーーーーーーーー!」
 スフィーさんは、今度は何も言わないで、私を抱きとめてくれていた。
243スフィー@蓮華(4/6):2001/07/13(金) 17:01
 俺はこんなにも抜けていたのかと自問自答していた。
 智子のやつの出奔を耳にして、どうするべきか考え込んでいたら、いつの間にかこうなっていやがった。
 一体なんなんだ……?
 落ち着かせた理緒から聞いた話は荒唐無稽とも言える痴情のもつれだった。
 だとして、どうして今なんだ? どうして今になって訪れる?
 HMX−13型セリオ……俺の霊視には、その機体には綾香の影が映っている。
 いや正確に言えばその残滓だった。
 こいつは、もう生きる目的を失って事切れている。
 霊ってやつは、この世に未練があって、想いだけで生きてるものだから当然だと言えた。
 悪霊にならなかったのが、救い……不幸中の幸いってことか?
(はっ、話にもなんねー)
 俺も可笑しくなって来ているのかもしれない。
 だったら……いや、だからこそ、俺はこれ以上の無意味は許せない。
 俺が智子のサポートをすれば、秋子を封じることは、容易……とは言わないが可能だろう。
 しかし、その間はこの建物から結界が消えて、妖弧どもの暴れたい放題になる。
 どちらが最適なのか答えは出なかったが、今はもう……。
「…………」
 誰もいなくなった病室を俺は見ていた。
 二人の屍を手厚く葬るように言ってはいたが、別にそんなこと言う必要はなかった。
 あいつらなら言われなくても、そうするだろうから。
「さようなら、哀れな操り人形=iマリオネット)……」
 セリオの方を見やって、俺はしばしの黙祷を捧げてから部屋のドアを閉じた。
 静寂の訪れ……。
 眠れる機械にせめていい夢を――
244河島はるか@蓮華(6/6):2001/07/13(金) 17:04
 藤田さんは死んだ……。
 さっきまで普通に話していたのに、もう二度と会うことはない。
 私はこれからどうしたらいいのか分からなかったけど、彼の想いに報いたいと思っていた。
 長岡さんと二人でいた藤田さんは虚ろだったけど、とても幸せそうに見えた。
 もしかしたら、彼は長岡さんのことを……。いや、それは私の憶測で考えていいことじゃなかった。
「…………」
 でも、私の手はこんなにも温かい。
 彼はすべてを見越して、私に力を託してくれたんじゃないかと思っていた。
 こんな私がどこまで出来るかは分からないけど、やってみたい。
 自分にしか出来ないことなら、尚更だった。
「スフィーさん」
 私は呼びかけていた。
「すまねえ。今、忙しいんだ」
 彼女の多忙はよく分かっているつもりだった。
 でも、続ける。
「スフィーさんに頼みたいことがあるんです」
 彼女がこれから為そうとしていることが何なのか私は知らない。
 彼女の覚悟が何なのか分からない。
「うん?」
 スフィーさんは仕方ないという風に私の方を見てきた。
 私も手間を取らせるつもりはなかったので、意を決して口を動かした。
「保科さんの所まで、私をテレポートさせてください」
「…………あ?」
 口をポカンと空けている彼女に私は微笑んで見せた。
 これが最後の挨拶になると思うから、一生懸命に笑って見せた。
 私の為すべきことが、そこ≠ノある。
245名無しさんだよもん:2001/07/13(金) 17:07
回すだよもん。
246名無しさんだよもん:2001/07/13(金) 17:08
まだまだ回すだよもん。
247名無しさんだよもん:2001/07/13(金) 17:10
タイトルには意味ないもん。
248名無しさんだよもん:2001/07/13(金) 17:12
しかしこのまま進んでいってもいいだよもんか?
249名無しさんだよもん:2001/07/13(金) 17:13
よく分からないだよもん。
250名無しさんだよもん:2001/07/13(金) 17:16
秋子VS智子は書いてもいいだよもんか?
251名無しさんだよもん:2001/07/13(金) 17:17
少し様子を見るだよもん。
252名無しさんだよもん:2001/07/13(金) 17:17
それではだよもん。
253勇み足の英雄(その1):2001/07/18(水) 00:25
 膝が笑った。
 馬鹿馬鹿しい程にがたがたと揺れる。二、三度はたいてやったが、止まらない。
 穏やかに微笑む、その女性。
 眼差しは神々しく、しかし尊大さは無い。同じ視点で、奴は私を見ている。
 あらゆる母親のイメージが、そこに帰結していた。

「なあ、秋子さんってのはアンタやな?」

 言葉が耳朶を打った瞬間、自分が口を開いたのを知った。
 気がついたら喋っていた。意識を超えた恐怖が、感覚を支配してしまっている。

「ええ、そうですよ」

 恐怖する材料など無かったはずだ。
 自分は、至高の力を手に入れたのだ。お師さまや、スフィー、あらゆる存在を下に見る存在となったはずなのだ。
 傲慢では無い。自分でも想像すらできないほどの力が、幾層にも渡って眠っているのを感じる。
 ナユタだのアソウギだのの単位が実感できないように、巨大すぎて把握できないのだ。

「私と、勝負してんか」

 なのに、膝が笑った。
 慈愛に満ちた聖母。全てが還る大地の母。混沌を統べる万物の母。

「構いませんよ……」

 奴が、穏やかに微笑んだ。

「ただし、今は色々と取り込んでいますから……一瞬で終わってしまうかもしれません」

 その瞬間。
 私は、蒼い光を視た。巨大な力が、半月の形で以て私を切り刻もうとしている。
 その軌道から大きく身をずらし、慌てて奴の方へ向き直る。

 秋子が笑った。
254勇み足の英雄(その2):2001/07/18(水) 00:37
「はぁっ!」

 怖い。
 長い間、向かい合っていたくない。早く終わらせてしまいたい。

 炎が、秋子を中心に大きく弾けた。それは球状の巨大な膜へと変わり、再び中心へと殺到する。
 秋子の服が、一瞬にして燃え尽きた。赤の狂気が激しく踊り、万物を始原のゼロへと帰す。

 そうだ。燃え尽きてしまえ。終わってくれ。

『これは……』

 炎が、突然宙へ向かって逆巻いた。
 私は何もしていない。奴がやったのだ。

『貴女は……何者ですか?』

 その声を引き金に。
 炎が、止んだ。

 秋子は笑っている。
255勇み足の英雄(その3):2001/07/18(水) 00:52
 汚れの無い裸体を晒し、秋子が、静かに手を振った。
 瞬きひとつ程度の間に、辺りの景色が塗り変わってしまった。
「ここは……雨月山と言ってね。私が昔、ただの一度だけ遅れをとった場所です」
 秋子は、懐かしそうに周囲を見回した。
「これは私がこしらえた、まがい物ですけど。なかなか、良く出来てるでしょう?
 良く出来ているどころではない。完全に、一つの景色として完成している。
「色んな人と、戦いました……安宅さん、川澄さん、柳也さん、鬼の一族達……」
 灰色の雲が、急速に空に満ち始めた。影が闇に呑まれる。
「でもね、負けたままでは縁起が悪いでしょう? ですから、貴女で……」
 秋子が、そっと宙に浮いた。
 まばゆい光が走った。雷鳴が轟き、大地を震撼させる。
「この私の汚点を、拭いさらせて頂きます」
「じょ……」
 雷が、秋子の遙か彼方に落ちた。その瞬間、私の中で覚悟が弾けた。
「上等や、コラぁッ!」
 炎を纏い、私は勢い良く地を蹴った。
256勇み足の英雄(その4):2001/07/18(水) 01:19
「オラオラオラオラオラオラァッ!」
 全ての力を注ぎ込み、私は拳の連打を放った。とにかく、奴の攻撃を抑えなければ。
 秋子は、そのか細い腕でその全てを受け止める。時折顔が歪むところを見ると、決してノーダメージでは無い。
「ドララララララララララララッ!」
 私は、どんどん連打の速度を上げた。奴の身体には一度もヒットしないが、確実にダメージにはなっている。
「くっ」
 秋子が呻いた。時折空間を切り裂いての攻撃を放とうとしては来るが、全て私が封じていた。
「うおおおおおおおおおッ!」
 私は、特大の力を込めた一撃を、奴に叩き込んだ。
「あうっ!?」
 ガードが弾け、秋子は勢い良く吹っ飛んだ。その身体が、爆音と共に地に穴を穿つ。
「そのまま、くたばりさらせッ!」
 私は、両手で超高温の火の玉を生み出した。叩きつけるように、それを秋子に投げつける。
「はっ!」
 秋子が、火の玉に向かって手をかざした。火の玉は一瞬震えた後、勢い良く跳ね返ってきた。
「うおおっ!?」
 何とか身をかわしたが、秋子がすぐ眼前に迫っていた。
「覚悟なさい」
 先刻までの余裕の眼差しではない。
 次々と、手刀が繰り出される。私は払ったりかわしたりして受け流すのが精一杯だった。
 余裕を無くした所に、不可視の刃での攻撃が加わる。私は耐えきれず、ダメージ覚悟で爆球を生んだ。
 両者の間で凄まじい爆発が起き、それぞれ逆方向へと吹き飛ぶ。奴はそれほど応えていないようだが、私はすぐに立ち上がれなかった。
「驚きました……まさか、これほどとは。すでに、翼人や九尾などとは別次元です」
 秋子が、少しだけ嬉しそうに笑う。
「そりゃ、光栄やな……」
 脇腹を押さえながら、私は何とか立ち上がった。 
257名無しさんだもんよ:2001/07/18(水) 01:19
258名無しさんだもんよ:2001/07/18(水) 01:20
259名無しさんだもんよ:2001/07/18(水) 01:20
260名無しさんだもんよ:2001/07/18(水) 01:20
261名無しさんだもんよ:2001/07/18(水) 01:20
ト。
262名無しさんだもんよ:2001/07/18(水) 01:21
263名無しさんだもんよ:2001/07/18(水) 01:22
264名無しさんだもんよ:2001/07/18(水) 01:22
265名無しさんだもんよ:2001/07/18(水) 01:23
266名無しさんだもんよ:2001/07/18(水) 01:23
ダ。
267名無しさんだもんよ:2001/07/18(水) 01:25
回し完了。
>>253-256
即興で書いたため、なぜか悟空対フリーザみたいになってしまいました。お許しを。
続きは任せました。
268月宮あゆ@夢の少女(1/10):2001/07/18(水) 21:17
 夢……。

「あゆちゃんっていうんだ?」
「うん」

 夢を見ている……。

「わたしのことはなゆちゃんでいいよ」
「……なゆちゃん?」
「ええい。ややこしいから止めてくれ!」

 それは夢……。

「ボクは名雪さんって呼ばせて貰うことにするよ」

 楽しかった思い出で……。

「でも、なんだか他人行儀みたいで残念だよ」
「まだ会ったばかりじゃないか」

 そして、過去の出来事……。

「そうなんだけど、どうしてか懐かしい感じがするんだよ……」
「……え?」

 反芻される……。
269月宮あゆ@夢の少女(2/10):2001/07/18(水) 21:19
「この子は……?」
「相沢祐一、知っているでしょう?」

 これは別の夢……。

「ええ。何かと有名ですし」
「率直に言うわ。彼のこと秋子に預かって欲しいのよ」

 違う人の記憶……。

「……なんのためにかしら? 彼のこと――私は知っているって言ったのよ」
「悲しい夢を終わらせる為によ。天野美汐は私のところにいる。この意味の分からない貴女ではないでしょう?」

 ひとりは秋子さん……。

「今ある負の元凶ですか。九尾復活も近いということですね」
「いいえ。今度は復活どころか覚醒するのよ。千年の因縁が解放されるわ」
「……それでも、私は興味がないわよ、由紀子」

 もうひとりは高野の法術士……。

「そこに永遠が降り立つとしてもかしら?」
「……知っていたの? いえ、ようやく気づいたのね貴方達も……」

 ふたりとも真剣に言葉を交わしている……。

「相沢祐一のもとに九尾は必ず現れる。秋子にはただそれを受け入れて欲しいだけ」
「……出会いは避けられないけれど、悲劇は避けられるかもしれない、そういうこと?」

 女の人は小さく頷いていた。
270月宮あゆ@夢の少女(3/10):2001/07/18(水) 21:20
 夢が渦を巻いている。
 大海に放り出されたように見えるものは青ばかりだった。
 ボクは何かを探していた。
 とても大切で無くしてはならないものだったはずなのに、ボクはそれが何なのか思い出せない。
 プレゼント? 誰からから貰った贈り物なの? それは天使の……。

 また、夢がカタチを変える。
271月宮あゆ@夢の少女(4/10):2001/07/18(水) 21:22
 誰かが泣いている。
 ぐしゅぐしゅと涙を浮かべている。
 霞んだ視界は出来の悪い映像を見てるかのようにいびつに歪んでいた。

「お母さん……」

 その子は何度もうわ言のように『お母さん』と繰り返していた。
 白いリボン。幼い顔には涙の跡が痛々しく残っている。鼻の頭も少し赤くなっていた。

「えーとだな……」

 そこに女の子と同じ年くらいの男の子がいた。
 男の子は困ったように言葉を捜している。

「とりあえず、きみの名前は?」
「……えぐっ……えぐっ……」

 男の子の問いを返せずに女の子はまだ泣いていた。
 深い悲しみに女の子は包まれている。

「えぐっえぐっ? へんな名前だな……」
「うぐぅ、違うもん……」

 ゴシゴシと涙目を擦って女の子は口を動かそうとした。
 そして……。

「ボクの名前は――」
272月宮あゆ@夢の少女(5/10):2001/07/18(水) 21:26
「月宮あゆちゃん……?」

 秋子さんは小さな声でボクの名前を繰り返していた。
 祐一君も隣で不思議そうにしている。

「あの……ボクの顔に何かついてるかな?」
「たいやきの餡子がついてるぞ」
「え? 本当!?」
「もちろん嘘だ」
「うぐぅ、祐一君の意地悪……」

 気まずくなった雰囲気を緩和するようにボクらは他愛ない会話をしていた。
 それでも、秋子さんの様子は変わらなかった。

「あゆちゃん……」
「はい」

 呼ぶと言うよりは口から漏れでたように秋子さんが言う。
 暫くの間、秋子さんとボクは見詰め合うことになってしまった。
 なんだか気恥ずかしい……。

「いいえ、ごめんなさい。やっぱり私の気のせいですね」

 どこか遠くを見るように秋子さんは言った。

 夢は巡りくる――
273月宮あゆ@夢の少女(6/10):2001/07/18(水) 21:28
「私はあゆちゃんのお母さんにはもう≠ネれないけど……」

 意識が遠のいていく。
 ボクはどうして今ごろになってこんな夢を見ているんだろう。

「あゆちゃんとは、家族になれると思っているから」
「秋子さん、ボクは……」

 もうずっと前の意識の欠片。
 あの日から閉ざされていた思い出たち。

「行くところが無いのなら、あゆちゃんが良かったらだけど……一緒に住まない?」
「え? でも……」

 もっともっと遠くにあった昔の記憶が開かれていく。
 秋子さんに抱き締められると、とても懐かしい。

「もう、どこにも行かないで、あゆ……」
「……秋子さん、泣いてるの?」
「……あゆ、ごめんね……ごめんなさいね……」

 探していたものはなんだったのだろう。
 追いかけていたものはなんだったのだろう。

 答えは未だ出ない……。
274月宮あゆ@夢の少女(7/10):2001/07/18(水) 21:30
「お母さんを探しているんだ」

 また小さな女の子が出てくる夢だった。

「ずっとずっと昔から探しているんだよ」
「あゆ……」

 しかし、それはボク自身だった。
 今のボクにはない記憶を女の子は持っている。

「本当のお母さんはもう居ないから、ボクのお母さんはあの人だけなんだ」
「……もう居ないって、どういうことだ?」

 どういうことなのか、ボクにも分からなかった。
 知りたい……。

「女の子は夢を見るんだよ」
「え?」
「……祐一君は、翼人って知ってる?」

 女の子は知っていた。
 ボクはそれを思い出してしまった。

「ボクは滅んでいった星の記憶を受け継いでいるんだよ」

 そこには何も生まれなかった。
275月宮あゆ@夢の少女(8/10):2001/07/18(水) 21:44
「――は邪術士の貴女も例外ではないのよ」
「そうね……認めるわ」

 辿ることは夢の終わりを意味している。
 そこに生まれるものを温かく包み込むために存在したい。

「つまりは私たちだけでも負に飲み込まれないようにしないといけないのよ」
「力が必要なわけね? 残念だけど私の力の大半は名雪の生命維持に使ってるから期待はしないでよ」
「分かっているわ。その為に秘術と秘薬を用いるの」
「……続けてくれる?」
「ひとつは『相互供給型連動式秘術<比翼>』を使わせてもらう」
「互いの霊力の置き換えですか? 確かにそれなら力≠相乗の効果で得られるわね」

 ボクは形なんて無い夢の中を漂っている。
 悲しい夢も、辛い夢も、楽しい夢も、嬉しい夢でも、そこではひと括りの存在だった。

「それと『輪廻転生回転丹<枝伝>』を貴女に差し上げるわ」
「……これは?」
「反魂の術なんていう夢追い人の作り出した生命維持の方法よ。
 もちろん完全ではないけど、あの子にはそれなりに効くんじゃない?」

 そして、ボクの夢は……。

「いい? <比翼>は互いの霊力を高めあう術よ。どちらかが欠ければその効力は失われる」
「私なら大丈夫よ。それより問題は貴女の方じゃない?」

 七年前のように……。

「それも考慮のうえよ。私の霊力の源は<月の霊法>よ。もし私が存在が終わったとしても受け継ぐものが、
 <月の霊法>の本当の意味を知ってくれれば、同じ効果が得られるわ」
「用意周到なことね。邪術士の私に何を期待してるのかしら?」

 今、消える……。

「秋子には悪いと思っているわ。でも事は急を要するのよ。あの子たちのために私が終わらない夢≠終わらせたい」
276月宮あゆ@夢の少女(9/10):2001/07/18(水) 21:46
 夢……。
 夢を見ている……。

 毎日見る夢。
 終わりの無い夢。

 赤い雪。
 流れる夕焼け。

 赤く染まった世界。

 誰かの泣き声。
 子供の泣き声。

 夕焼け空を覆うように、小さな子供が泣いていた。

 どうすることもできずに、ただ夕焼けに染まるその子の顔を見ていることしかできなかった。

 だから、せめて……流れる涙を拭いたかった。
 だけど、手は動かなくて……頬を伝う涙は雪に吸い込まれて……見ていることしかできなくて……。
 悔しくて……悲しくて……。

 大丈夫だから……。
 だから、泣かないで……。

 言葉にならない声。
 届かない声。

「約束だから……」

 それは、誰の言葉だっただろう。
 夢が、別の色に染まっていく。

「うん、約束だよ」

 ただ、ボクは約束を果たしたかっただけだから。
277月宮あゆ@夢の少女(10/10):2001/07/18(水) 21:47
 目が覚めていた。
 雪が降り積もっている。
 ボクの体は白い雪に埋もれようとしている。
 でも、周囲は赤かくなっている。
 頭から血が流れているみたいだから。
 指先にすら力が入らない。
 視界は闇に包まれていた。
 何も見えていないのと一緒だった。
 誰かがにじり寄ってくる。
 冷たい空気。
 頭痛のような痛みと痺れたような感覚。
 また、意識が遠くなる。
 そうか、またこれも……。
 夢の続きなんだ。

「あゆちゃん、死んで」

 悪夢は終わらない。
278名無しさんだよもん:2001/07/18(水) 21:48
だよもんだよもん。
279名無しさんだよもん:2001/07/18(水) 21:51
回すだよもん。
280名無しさんだよもん:2001/07/18(水) 21:55
回すのって案外大変だよもん。
281名無しさんだよもん:2001/07/18(水) 21:59
まだまだ回してみるもんだよ。
282名無しさんだよもん:2001/07/18(水) 22:03
しかし今回の話は意味不明だよもん。
283名無しさんだよもん:2001/07/18(水) 22:07
伏線ひとまとめだよもん。
284名無しさんだよもん:2001/07/18(水) 22:12
話が長くなって鬱だよもん。
285名無しさんだよもん:2001/07/18(水) 22:15
そのわりには進まないだよもん。
286名無しさんだよもん:2001/07/18(水) 22:19
それではだよもん。
287名無しさんだよもん:2001/07/19(木) 22:01
age
288名無しさんだよもん:2001/07/20(金) 08:20
…ログ全部確認したけどこのスレはリレー?
その割に一人で書いてるようにも見える…
289長岡志保・夢:2001/07/20(金) 12:50
闇。
闇の中に、ぽっかりと浮かんでいる。
上もない。下もない。ただ、そこにある。寒いのか、暑いのか、それすらもわからない。
ただ、自分が死んだ、ということだけは、はっきりとわかっている。
死。
死ぬということ。それは、こんなにも虚ろな事だったのか。
ただ、あたしの手の中にあるものだけが、「あたし」を維持しつづける。
藤田浩之。
プラス因子を持つ、創世の力の片割れ。その心と力が、長岡志保をこの世界に繋ぎ止める。
そうでなければ、何の力も持たないあたしが、幽体とはいえ、以前の形を維持できるわけない。

なんで?何でよ、ヒロ?
あたしは綾香じゃない。あんたの求めてる女じゃない。あたしを繋ぎ止めている意味なんて、あんたにはない。

……無い筈なのに。

何で、あんたはそんなに優しいの?
どうして、そんなに暖かくあたしを守ってくれるの?

(彼は知っているからです)
声が聞こえる。
(藤田浩之の力は、もう覚醒するでしょう)
知らない、誰かの声が。
(あなたが、最後の鍵です。世界を守るための)
あたしが?…何の力もない、ヒロ一人守れない、このあたしが鍵?
(あなたは繋ぎ止めました。消えそうになった、「藤田浩之という器」の、心を。あなたは守りました。壊れ、失われそうになった、彼の拠り所を)
闇の中に浮かぶ人影が、あたしと、ヒロの欠片を照らす。穏やかな顔。優しげな、包容力を持った女性。
しかし、あたしはその人を知らなかった。
最強と言われる、邪術士の名を。
その悲しみが生み出した、もう一人の彼女の事を。
290長岡志保・夢2:2001/07/20(金) 13:07
彼女がささやく。
(さあ、目覚めなさい、藤田浩之。秋子の影でしかない私では
あなたをよみがえらせることはできません。あなたが自分の力で目覚めるのです)
ヒロが……目を覚ます。
それに引きずられるようにして、あたしも夢から覚めていく。
(長岡志保さん……本当に彼を愛しているのなら……忘れないで)
彼女の声が、遠ざかっていく。
(愛というものは、人を自分の思い通りにすることではない。
……相手を思いやってこその、愛だということを)
彼女の頬を、涙が伝う。
(私はもう間違ってしまったけれど……貴女なら…きっとできるから)
291藤田浩之・覚醒:2001/07/20(金) 13:55
目が覚めた。
今だかつてないほど、頭が冴え渡っている。土くれの中から、俺は身を起こした。
志保の体を腕に抱く。その目がうっすらと開き、ヒロ…とつぶやく。
もう大丈夫だ、志保。もう、俺はどこにも行かない。
「救世主は、三度土からよみがえる、っていうけどな」
からかうような声が聞こえてきた。振り向いたその先には、見覚えのある顔。
「スフィー……だな?」
「まさか、とは思った。だが、あんたは確かに以前一度、復活している」
声の調子は相変わらずだが、その瞳は少しも笑っていない。
「どうやら、力を完全に支配しているみたいだな。これから、どうするつもりだ」
「……別に。あかり、綾香、セリオ、みんな…もうこれ以上、俺が原因で、失いたくはないだけだ」
そういって、腕の中の志保に、優しげな視線を送る。
「だから、俺はこいつと、俺達でできることをやる。みんなには、黙っていてくれ。
あんた達の手は借りない」
「……まぁ、俺はかまわねぇがな」
スフィーはそういって、じろじろと俺に視線を送る。
「素っ裸で再生したみたいだが、服もいらねぇみたいだな」
「すいません、ください、スフィーさん」
……俺は、思わず土下座してしまった。
292名無しさんだよもん:2001/07/20(金) 13:57
回します
293名無しさんだよもん:2001/07/20(金) 13:58
長くなってすいません
294名無しさんだよもん:2001/07/20(金) 13:59
くるくる回します
295名無しさんだよもん:2001/07/20(金) 14:01
至らない点がありましたら、ご指導ください
296保科智子@炎の誓い(1/4):2001/07/20(金) 21:57
 これほど力の差があったとは正直、計算外だった。
 水瀬秋子……これが人類の有史以来から最強を謳われる邪術士の力だった。
 私程度の能力者が戦いを挑むのは、無謀だったということか。
 いや、答えは初めからそこ≠ノあったのかも知れない。
「運が悪かったですね」
「…………」
 秋子は頬に手を当てて残念そうに言った。
 嘲笑だろうか。それとも溜息なのだろうか。意図は分からない。
 しかし、確かなことは、命を懸けないで勝ち負けできる相手ではなかった。
「ええで。受けてたったる!」
 覚悟を決めるのは、ひと呼吸のうちで充分だった。
 その刹那の間で、幾人もの友と呼んだ人たちの顔が脳裏を横切っていった。
(師匠、禁術を使わせてもらいます)
 故・長瀬源之助の姿を思い浮かべて今誓いを果たす。
 本当に護りたいものがあるのなら、力というものはそのために存在する。
 <魂の揺らめき>フレイム=ソウル。
 己の魂をその対価に、唯一無二の炎を得られる禁断の秘術。
「私の最後の炎や……これでアンタの防御壁を破れたら私の勝ちで、そうやなかったらアンタの勝ちや、どうやシンプルでええやろ?」
「そう? 両親に教わらなかったかしら? 火遊びはいけませんよ、って」
 絶対の自信。揺るぐことのない眼差し。水瀬秋子……。
 相手にとって不足はない。
「何とでも言うがええ。そやけど最後には――私が勝つ!」
「……あなたも同じなんですね」
 今まで静かだった邪術士の気≠ェ高まっていく。
「……いいでしょう。受けてたちます」
 邪術士が気を解放させて、こちらを見つめた。
297保科智子@炎の誓い(2/4):2001/07/20(金) 22:03
「ハアァァァァァーーーーーーーーーー!」
 私の持てるものすべてを利き腕に集めていく。体はコロナのように燃え滾っていた。
 炎が爆ぜる。元始の炎。源炎。この世の終わりにすべての邪悪を焼き尽くすというメキド・フレイム。
 今の私なら使いこなせる。すべてを無くしたとしても、この刹那のために――
「長瀬流炎殺拳最終奥義<メギド・ブレイク>!」
 右腕が真っ赤に燃えていた。大気を漂う霊気。大地に宿る龍気。空間に彷徨う魔気。
 そして、己の魂の力……すべてが炎に変換された極限の力を、邪術士・水瀬秋子に向かって放つ。
 だが――私は目を見張った。水瀬秋子が二人いる?
「幻影ですよ。後十秒ほどで消えますけど、戦いに置いては充分すぎる時間でしょう?」
 単純な答えだった。単なる時間稼ぎなのだろう。しかし私には迷っている暇なんてなかった。
 こうしている間にも、ものすごい勢いで私の生命は尽きているのだ。
 見分ける方法はなかった。しかし、水瀬秋子は致命的な過ちを犯している。
 この勝負――貰った!
「喰らえやあああぁぁぁぁああああああーーーーーーー!」
 炎が咆哮した。莫大なエネルギーが荒れ狂う。
 そう。これならふたりまとめて処理するに充分な威力だった。
 私の力を甘く見た――敗因はまさにそれ。
「……終わったんか?」
 薄れていく爆炎の中で私は目を凝らしていた。
 手応えはあった。アレを喰らって無傷ならもう……手段は何もない。
 そして、私の目の前に映ったものは……。
298保科智子@炎の誓い(3/4):2001/07/20(金) 22:05
「……え?」
 素頓狂な声を上げたのは結果があまりにも自分本位なものだったからだ。
 煙が消えた後には、煤こけた死体がひとつあっただけだった。
 自分の勝利を確信できなくて、それの近くに私は歩み寄っていく。
「……勝ったのか?」
 霧が晴れるように雨月山だった風景は物の怪の丘へと変わっていた。
 そこにある、亡骸だけを残して……。
「……やった。私は勝ったんやあの水瀬秋子に!」
 私は信じられない面持ちで、勝利の味に陶酔していた。
「誰もが挑んで、誰もが敗北していった水瀬秋子に、私は勝てたんや!」
 格闘の世界に闘志を滾らせる者なら、誰もが一度は夢見た最強の称号を私は手に入れたことになる。
 欺瞞だろうか? いや何でもよかった。
「そう何でもええ。これでみんな報われるんや! やったで! 私はみんなの仇をとったんや!」
 歓喜に震えた。そこにあったはずの亡骸が消えていることにも気づかないほど有頂天だった。
 それほどまでに私は浮かれていたのだ。
「保科さん危ない!」
「な――!?」
 その声は河島はるかの声だった。
 どうしてここにいるのかというよりも早く体は反応していた。
 無理に体を跳ねさせる。首筋を突く徒手に逆らうように仰け反って。
「あら? 外れちゃいましたね」
 そこには何食わぬ顔で佇む水瀬秋子の姿があった。
299保科智子@炎の誓い(4/4):2001/07/20(金) 22:08
「何故って顔をしていますから答えましょう」
 静かに微笑んで秋子は言った。
「誰も幻影はひとつだとは言っていません。それだけのことです」
「なんやて? それやったら、あの手応えは何やったんや?」
 苦笑だろう間違いなく。水瀬秋子は笑っていた。
「強いですね保科さん。力だけなら本当、九尾や翼人とさほど変わらないかも知れませんね。
 あれをまともに喰らっていたら、私も危ないところでした。でもですね、戦いの年季が違うんですよ」
「あの手応えはなんやってんって訊いとんのや!?」
「……サービスですよ」
「……はあ?」
「せっかく勝利の余韻を楽しんでもらっているうちにとどめを刺そうとしていたのに、とんだ邪魔者が現れたものです」
「お前は――どこまで人の心を弄ぶんや!」
「あらあら。サービスのつもりだったんですけど、お気に召しませんでしたか?」
 震えた。さっきとは別の意味で体が震えた。純粋な怒り。それとも自分の傲慢さだったろうか?
 力はともかく戦いの駆け引きに置いて、私は遠く及ばなかったのだ。
 千年の歳月。私の人生は十七年。それでも劣っていたと思ったことは一度たりともなかったのに……。
「もう立っているのも辛いんでしょう保科さん? 分かっているわ。そちらの方と一緒に消えてもらいますね」
 私と、そしてはるかを見つめて、秋子は前に足を進めてきた。
「はるか、逃げて――」
「私は足手まとい?」
 素早く私の言葉を遮って、はるかは言い切っていた。
 途端に、どうしてはるかがここに来ているのか疑問をもつが、それより――
「はるか、あんた……それ」
「私は一人じゃ何も出来ない――だから、保科さんの力を貸して欲しい。ふたり一緒に――」
 水瀬秋子を討とう、とはるかは言ってくれた。
「そうやったな」
 私は一人じゃなかった。たくさんの仲間がいてくれる。
 そやから今まで私は戦ってこれて、今を生きていることが出来たんやったな。
「どうして忘れてたんやろう……」
 支えあうこと。それはきっと邪術士にはない私たちの聖なる力。
 もう一度、立ち上がる勇気だった。
300名無しさんだよもん:2001/07/20(金) 22:09
回すだよもん。
301名無しさんだよもん:2001/07/20(金) 22:10
他の書き手さんたちが書いてるのを見ると、やっぱり張りがあるだよもん。
302名無しさんだよもん:2001/07/20(金) 22:11
秋子VS智子はもう少し引っ張るだよもん。
303名無しさんだよもん:2001/07/20(金) 22:12
このまま書ききっていいのかどうか疑問だからだよもん。
304名無しさんだよもん:2001/07/20(金) 22:13
もう少し様子を見るだよもん。
305名無しさんだよもん:2001/07/20(金) 22:16
>>267
至らぬ点はあるかもだよもんが続けてみただよもん。
306名無しさんだよもん:2001/07/20(金) 22:17
>>295
自分が言うのも何なのだよもんが自分自身が楽しむのが一番だと思うだよもん。
307名無しさんだよもん:2001/07/20(金) 22:18
それでは回し終了だよもん。
308杜若きよみ −検証(1/6)−:2001/07/23(月) 02:52
「――やっぱりな……」
 桃色の髪の少女は目の前の焼け跡を目にしてぼそりとつぶやいた。
 その顔つきからして、どうやら何かしらの確信を得たようだといった感じだった。

 6月1日――高野山金剛峰寺にて――
 襲撃事件から5ヶ月近くが経過したこともあり、主な寺院の施設等は大方再建されて
いた。ただ、完全に復興したというわけではなく、一部は襲撃がなされたままの状態の
所もあり、当時の傷痕がなまなましく残っていた。
 そして――何より、大僧正の深山雪見を筆頭として主な法術僧らが不在のままである
というのが、この寺院が普段の状態ではないというなによりの証だった。

 今、私と桃色の髪の少女――なつきは、高野の中でも特に被害のひどかった部分に立
っていた。そこは、かつては台所にあたる部分だったとの事だったが、それを示す跡す
ら残っていなかった。辛うじて、地下へ通じる階段があったのが、残っていたぐらいだ。
 なつきは崩れかかった、その階段を慎重に下りていく。
 私もそれに付いていくと、目の前には大きな金属製の扉につきあたった。
 それは銀行の金庫などに使われている扉と似ていた。見かけと同様に頑丈にできてい
たらしく、強烈な爆発にもかかわらず、歪みすら見られない。
 その扉の横には数種類の装置がついていたが、それが何なのかは今一つ見当がつかない。

「……7231221243448532……」
 なつきは最初、腕時計をちらりと見た後に、適当な数字をつぶやきながら、装置にあ
る数字の記された釦を押したりしていた。すると、がちゃりという音がした。
309杜若きよみ −検証(2/6)− :2001/07/23(月) 02:55
 どうやら鍵が開いたらしい。
 なつきはノブに手を掛けると、ゆっくりと扉を引っ張り出した。
 ギギギ……と重苦しい金属音を立てながら、その扉はゆっくりと開く。

 扉の先には、さらに地中深くへと突き進む階段が伸びているのが見えた。
 ただ、照明が無いので、奥深くまではまったく見えない。階段は石造りで、どの段に
もうっすらと埃が積もっていた。長い間、誰も立ち入ってないことがうかがえる。

 ――いったい、何なの? この施設は?

 私がそう思っていると、なつきはすぐに扉を閉めてしまった。

 え……? 奥へ進むのじゃないの?

 戸惑う私を尻目になつきはその場を立ち去ろうとした。彼女は一体何を考えているの?

「中には入らないの?」
「入る必要はないよ。ただ『誰かが中に入った痕跡があった』か否かを確かめられたら
それで十分だから」
 なつきはそう言いながら、崩れた階段を這い上がって地上に出た。私も今ひとつわけ
のわからぬまま、その後に続く。
 目の前には青空が広がっていた。その下には、立て直されて間もない寺院があり、
そこを訪れる参拝者でごったがえしている。表向きは復興したように見せかけているのだ。

「しかし……」
「しかし?」
「……やっぱ太平洋戦争の時点のまま頭が立ち腐っとるみたいやのう……」
 なつきはさながら独り言を言うかのように、呟きだした。
310杜若きよみ −検証(3/6)− :2001/07/23(月) 02:56
 結局、その後なつきと私はそのまま高野山を後にした。
 高野山から橋本へ向かう普通列車の中でなつきから聞いたことをまとめておく。

 どうもあの地下室、元は旧陸軍が戦時中に大本営として築いたとの事だった。
 それをなつきがあんな核シェルター並みの格納庫に改造してしまったのである。
 入口に有った数字錠も10分が経過する毎に、開錠番号が変化するといった代物だという。
(なんでも、番号の進数を変化させてしまうとの事で、ちなみになつきが先程開けた時は
丁度10進数だったという。だから開錠にかかる前に時刻を確認していたのだ)

 しかし、そんな頑丈な格納庫に収納していた物についてはなつきは語ろうとしなかった。
 彼女曰く、「少なくとも重要な書物や秘蔵の武器はあそこには収納していなかった」と
の事。ただ、開錠番号と、『格納庫を作った当時は高野は食糧難に陥っていたが、造った
おかげで解消された』という事情から、中に収納されていたのは何かというのは、私にも
すぐに分かる事が出来るという。

 あと、なつきは一冊の古ぼけた手記を見せてくれた。それは旧陸軍の兵器開発部門に所
属していた将校のもので、パラパラと頁を繰ると、当時の状況が克明に記されていた。
 なんでも、この部門は秘密裏に様々な兵器を研究していた。
 そう……特殊部隊の『誰彼』に所属する強化兵の開発にこの部門も関わっていたのだ。
 その文字を見るなり、私はなんとなく妙な気分に陥った。
 とにかく頁をめくった。

 すると、途中で気になる記述を見つけた。
311杜若きよみ −検証(4/6)− :2001/07/23(月) 02:58
『九月廿八日
 漸ク、………ヲ入手シタリ。
 此ヲ使ヘバ、戦局ハ逆転スルモノト思ハレ。大日本帝國ノ勝利ハ確実ナリ。
 只、上官ノ命令ニ依リ、北海道ハ怪ノ丘ノ大本営ニ移動セリ。
 和歌山港ヨリ伊都ノ大本営ニ一旦運ビシ後、ソコカラ軍用車伍拾台、人員凡ソ八百名
 ニテ奈良マデ移動サセタ後、軍用列車ニテ輸送セリ』

 何を運んだのかは、字が霞んでいて分からなかった。だが、何かとてつもない兵器を
運んでいたという事はこの文面から読み取る事が出来る。
 そして……それが何であるのかという事も。

 列車はいつのまにか終点の橋本駅に到着していた。ここで、難波方面行きの急行列車
に乗るものだと思いきや、なつきは奈良方面行きの普通列車に乗り込んでいた。
「一体、どこに行くつもりなの?」
「今からちょっと吉野までね」
「吉野ですって? 一体、何の関係があってそんなところまで……」
 私は彼女の意図がさっぱりわからなかった。
 例の格納庫ではちょっと見ただけですぐに立ち去ってしまったし、今度も一体何の目的
で行くのか、不可解もいいところだった。

 とにかく、疑問に思いつつも彼女に付いていくことにした。
312杜若きよみ −検証(5/6)− :2001/07/23(月) 03:00
 途中でもう一度列車を乗り換えた後、しばらくして吉野に到着した。
 かつては南北に朝廷が分かれた時に、南の朝廷が置かれたこともあるこの地は、
今この時も観光地としてにぎわっている。

「ほら、さっき電話で話してくれたじゃない。その事に関してちょい資料を漁りにね」
 なつきはこの場で漸く疑問に答えたけど、その当てがこの地にあるとでもいうの?

 私が横にいるかつて高野の高位僧だった女に話した事実――

 ――犬飼が高野を襲撃しようと画策していたこと。
 ――そして、犬飼が御堂にそのことを実行させたこと。

 でも、それは先程高野で検証を――それもロクにやらなかった筈。
 むしろ、吉野くんだりにその手がかりなんかあるわけないじゃない……。
 やっぱり、彼女の行動はまったく不可解だった。

 だが、それが何を示していたのか、その答えが示されるときはすぐにやってきた。
 なつきはふとこちらに顔を向けた。
 そこにあるのは幼げな少女特有の無邪気そうな微笑。
 ――しかし、その目は笑っていなかった。

「そうそう、言っておくけど、高野には仙命樹みたいな気の利いたものはないよ」

 やっぱり、彼女にはお見通しだったのだ。
 裏社会で名の通った法術士であり、昔の知人である彼女が日本に来るという情報を聞
きつけて、わざわざ拘置所から脱走してまで彼女に会おうとした真の理由――。
313杜若きよみ −検証(6/6)− :2001/07/23(月) 03:03
「――いつの時点で気づいたのかしら?」
「う〜ん……実を言うとね、きよみさんが電話を掛けてきたときかな。
 だって、拘留中のはずのきよみさんがわざわざなつきに電話を掛けてくるなんておかしいって思ってたもん。拘留された理由から考えて、これだと思ってたんだけどね」
「それを知ってて……貴女は一体何を考えてるの?」
「いろいろ聞きたい事があったもの。
 それより、ちょっとそこでちょっと休まない?」
 目の前にはお土産屋や茶店が軒を連ねていた。なつきはその中の一軒の茶店を指差す。
 私自身も少々歩き疲れていたという事もあって、それに同意した。

「……とにかく、犬飼が例の話を持ち出してきたんだね」
 なつきは注文したお汁粉がやってくるや否や、手を付け出した。
「ええ」
 私はそれに頷いた。
 本当のことだった。
 そして、私は犬飼の持ち出してきた話に乗ったのだ。

 ただ、犬飼や御堂らに全面協力をしたわけではなかった。
 仙命樹を手に入れたかったのは完全体になりたかったからではなかった。

 ――使われる前にこの世から仙命樹を消し去りたかったからなのだ――
 ――強化兵らを狂わせる元になった元凶になった――
 そして、蝉丸さんまでも彼の地に駆り出させた原因になったあの物体を――

 犬飼の企みが露見された時、警察は即座に動き出した。
 一緒にいた私もともに逮捕された。
 ただ、気がかりだったのだ――警察から逃れつづけている御堂の存在が。
 どうにかして、あの人物をとめる必要があった。
 だから私は拘置所を脱走してまで、あの人物より先に仙命樹を手に入れようと思った。
 その第一歩として、かつて裏社会の場で知り合ったなつきにこの話を持ちかけて協力
してもらうつもりだったのだが――。
314名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 03:03
回し開始。
315名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 03:05
回す。
316名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 03:06
回し中。
317名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 03:08
しかし、何ですな。
318名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 03:09
娑婆はもう夏休みですな。
319名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 03:11
やれやれですな。
320名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 03:13
>>295
いえいえ、こちらこそお願いしますんですな。
321名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 03:19
>>308-313
この分の回し完了なんですな。
322スフィー・兆し:2001/07/23(月) 15:20
光明が見えてきた。
微かではあるが、それは確かに、俺たちにとっての『希望』だった。

復活した藤田は、いまだ目を覚まさない志保を連れて、ここを出ていった。
志保については、浩之が復活する際の「母体」として機能したために、一時的に衰弱している、ということだった。
奴はああいっていたが、藤田浩之の存在は、確実に、こちらの切り札になってくれるだろう。
何より、義理堅いあいつが、今までかくまっていた俺たちに、恩義を感じていないはずはないのだから。

だがとにかく今は、智子とはるかの方を、何とかしなければならない。
冷静に見えるくせに、直情なところもある智子では、奴の狡猾さに太刀打ちできないだろう。
俺が行ければ、少しは何とかなるのだろうが、それは狐に背を見せることに他ならない。
今のところ、はるかが藤田から受け取ったという、『ちから』だけが頼りだった。

俺は今、懸命に大地に魔法陣を描いている。ただの魔方陣ではない。
俺の血と、命と、藤田から服の礼の代わりにせしめた『ちから』でもって行われる、俺の生涯最大になろうかという、大魔術の準備である。
「うまくいってくれよな………」
祈るべき神もいない。すがるべき拠り所もない。
それでも俺は、何かに祈らずにはいられなかった。
323長岡志保:2001/07/23(月) 15:37
これは夢だ、と思った。
そうでなければ、説明がつかない。
「ったく、相変わらず寝起き悪い奴だな、お前は」
これは、いつもの夢だ。ヒロが綾香の代わりでないあたしに、微笑みかけてくれる。
目が覚めたとたん、言い知れない絶望と虚無を味わうことになる、いつもの夢だ。
「何だよ、鳩が豆鉄砲食らったような顔して。そりゃ、お前の顔は確かに人並み
より少しは上だが、少ししか上じゃねーんだから、間抜け面は、この上もなく
間抜け面でしかないぞ」
夢……夢のはずなのに……
「ヒ……ヒロ?」
言ってから、しまったと思った。ヒロは、あたしを綾香だと思っている。綾香は、
ヒロだなんていわない。綾香は………
「ヒロユ…」
「やっと目が覚めたか、志保。寝すぎで脳みそ腐ったのかと思ったぞ」
え?
今……なんて言った……?
324長岡志保:2001/07/23(月) 16:13
「ったく、お前を担いでここまで来るのに、どんだけ苦労したと思ってんだ。
だいたい志保、お前はぐーすか気楽に寝てりゃあいいけど、俺は……」
そこまでだった。あたしの前で、ヒロの顔がぐにゃりと歪む。
違う。歪んでるのはヒロの顔じゃなくて、あたしの目の方だ。
涙腺が壊れたみたいに、次から次へと雫が零れ落ちる。
ヒロだった。ヒロが戻ってきたんだ。あたしの知ってる、あのヒロが。
「な…なんだよお前、泣いてんのかよ……」
「泣いてなんか…ないわよぉ」
「じゃあ…これは何だ?」
ヒロが、あたしの顔を上に向ける。その指で、そっとあたしの目をぬぐった。
「いろいろ辛い思いさせて悪かったな、志保。けど、もう大丈夫だ。
俺は、もうどこにも行かない。これからずっと、お前と一緒にいるよ」
もう…限界だった。
あたしは、声をあげて泣いた。ヒロに胸にすがり、幾度となくその名を呼びながら
泣きつづけた。今まで我慢しつづけた涙が、ここぞとばかりに溢れていく。
ヒロ、ヒロ、ヒロ、ヒロ………
子供みたいだった。それでもヒロは、じっと優しく、あたしを抱きとめてくれた。

叶わない夢のはずだった。ヒロの隣にいたのは、いつもあかりだったり、綾香
だったりした。あたしはただ、ヒロの周りで、うるさく騒ぐだけの存在だった。
ヒロの視線がこっちを向くなんてこと、ありえるはずがなかった。
そしてそれは、心が壊れたヒロを看病していて、嫌と言うほどわかった筈だった。
でも………いま、ヒロはあたしだけの存在だった。あたしだけを見てくれていた。
嬉しかった。悲しかった。何より、今まで死んでいった皆の想いを知るだけに、
余計に涙が止まらなかった。
ごめん、あかり。ごめん、綾香。ごめん……ヒロを好きだった皆。
でも、今だけ。今この瞬間だけ、ヒロを占領させて……
伝わるヒロのぬくもり。それを感じながら、あたしは再び、眠りに落ちていった。
325名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 16:15
回しま〜す
326名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 16:17
回ってま〜す
327名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 16:23
回し損ね
328名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 16:24
回し者
329名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 16:30
そろそろageた方がいいですか?
 永遠に生きる樹があるという……。
 彼らの過ちは、そんな幻想を信じたことから始まった。

「残念ね、今は手加減できないわ」
 誰もが瞬きも出来ない刹那のうちに彼女、石原麗子は鋭利な刃物を懐から取り出して四方八方に投げつけた。
 途端に轟音が鼓膜をつんざく。連鎖する破壊は二十体ほどの量産型マルチを鉄くずに変えた。
「なんだと!?」
 さすがにこれは想像の域を出ていたのか御堂が絶叫を上げる。
 岩切も声こそ上げなかったが、驚きを隠せないで顔は微妙に歪んでいた。
「さすがとしか言いようがないな」
 石原麗子を敵に回すことは、私でもしたくはないのに、まったく愚かな連中だ。
「この程度でお手上げなんて言わないでよ。せっかくこの私直々に足を運んであげたんだから」
「……私と以前に会った時から、その意地の悪い性格は変わっていないようだな?」
「あら、言ってくれるわね。これでも聖と南がいなくなって苦労したのよ」
「訂正する。以前よりも悪くなったみたいだな。明らかに嘘と分かる嘘は嫌味にしかならんぞ」
「そうかもね」とウインクされる。
「――お喋りはそこまでだ、来るぞ!」
 私たちの会話を遮って蝉丸君が剣を握りしめていた。
「分かっているわ。高子、結界くらい一人で張れるわね?」
「はい、もちろんです」
「任せるわ。それと聖は佐藤君の面倒を見てあげてて」
「ほう。たった二人であの大群と勝負するのかね?」
 いくらなんでも無謀だと思って私は声を掛けた。
 しかし、彼女は肩を竦めて言う。
「ええ、そうよ。ハンデには丁度いいんじゃない?」
 言葉はもう要らなかった。
 先に動いたのは御堂の方だった。
 愛用の南部十四式カスタムが蝉丸君の眉間にレーザー照準される。
(……一体どういう武器だ――それは! どうして南部十四式からレーザーなのだ!)
 改造したであろう犬飼の趣味に私は付いていけなかった。
「俺の銃の腕は知ってるだろ!」
 レーザー照準使ってながらそんなこと言うのか?
「ああ、怖いくらいにな……」
 神妙に言う蝉丸君。まあ眉間にポイントされていたのでは分からないでもない。
「けっけっけっ。俺の愛銃もパワーアップしてよ、精度抜群だぜ」
 いや……パワーアップっていう単語を口に出すところが、そこはかとなく昭和の前時代を彷彿させる。
「なっ! そうなのか!?」
 本気で驚いてるように見える。
 乗りで言うと『これが地球破壊爆弾だ!』『なんだと!?』くらい純粋に反応がいい。
「その通りさ。光栄に思えよ、これを使うのはお前が最初だって決めてたからな」
 北川君はこんな奴らにやられたのか……さぞかし無念だろう。
「ところで今気づいたんだが、その銃から出ている赤い線はなんだ?」
 今まで気づいてなかったんのか!?
「けっ。気になるかい? これはな俺が予測するに電子レンジ砲だ!」
 ……どこから突っ込んだらいいのか良く分からんが、とりあえず自分で武器を予測するな!
 電子レンジ砲って言うのも寒いぞ! 本気なところがさらにだ!
「なんだと!?」
 お前もいちいち驚くな!
「こいつを喰らって逝けや蝉丸!」
 勝手にやってろ。真面目に聞いてると私の身が持たん。
「……は?」
 私は瞬きをしながら今見た現実を受け止めようとした。
 赤い光線が目の前を高速で通り過ぎていったかと思ったら、とんでもない爆発音が辺りに轟いた。
(まさか本物だったのか? 蝉丸君が危ない!))
 私は精神崩壊を起こしそうになった光景を今一度この眼で見やった。
「あつうううぅぅぅぅぅうううういじゃねーか!」
「…………は?」
 どうしてだろう? 私はまたしても目を丸くせざるを得なかった。
 御堂の銃が真っ赤に燃えている。多分あまりの熱量に銃が耐え切れなかったのだろう。
 いやいや暴発しなかっただけ見事というべきか?
「ふっ。御堂、勝負あったぞ!」
 ……おい、蝉丸君。武器の無くなった相手にその態度の豹変はなんなのだ。
 御堂も御堂で火傷した手を口でふーふー吹いてる……。
 こいつら、本当にあの軍部でも恐れられていた『誰彼』部隊なのだろうか?
 ……私には言い切る自信はないぞ。
「御堂何をやっている!」
 堪らずに岩切が御堂に詰め寄っていった。
 敵ながら気持ちは分かる。
「最終兵器を先に出すとは何事だ!」
 問題はそっちなのか!?
「すまねえ……」
 しかも謝ってる?
「仲間割れは醜いぞ!」
 蝉丸君! 君が言うな!
 私はあまりの戦いの凄まじさに頭を抱えてしまった。
「高子君、君は平気そうだな?」
「わたし……慣れてますから……」
 もじもじと恥ずかしそうに手の先をいじりながら高子君は言った。
「苦労してたんだな……」
「はい……」
 顔を真っ赤にして高子君は俯いてしまった。
333名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 21:31
回すだよもん。
334名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 21:34
まだまだ回すだよもん。
335名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 21:36
とりあえず前回のやつを修正するだよもん。
336名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 21:38
>>298
×その声は河島はるかの声だった。
○それは河島はるかの声だった。
337名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 21:40
他の誤字脱字については許して欲しいだよもん。
338名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 21:43
もっと推敲するだよもん。
339名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 21:44
今回の話についてはノーコメントだよもん。
340名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 21:45
気づいたらこうなってただよもん。
341名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 21:48
そろそろ自分もageときたいもん。
342名無しさんだよもん:2001/07/23(月) 21:51
回し終了age!
「川名さん、実は永遠というのは……」
「うん?」
 口を噤んいたで繭ちゃんが言い難そうに唇を動かそうとした時、耳をつんざく悲鳴が聞こえてきた。
 聞き間違えるはずもない。それは留美ちゃんの声だった。
 誤算だった。ほんの少し離れたうちに彼女達に災いが降り立つなんて……。
「繭ちゃん今の!」
「ええ。すぐに戻りましょう」
 言うや否や繭ちゃんは走り出していた。わたしもそれに続く。
 留美ちゃん達とそれほど離れた場所にいたわけではなかったので、すぐ現場にたどり着く。
 ――冷たい。
 それがわたしの最初に感じた印象だった。寒いではなくてそれは冷たかった。
 この感覚をわたしは知っていた。いや前以上の凍気≠もって彼女はわたし達の前にいた。
 水瀬名雪。雪の少女は薄笑いを浮かべながら、あゆちゃんの胸に氷柱を刺しこんでいた。
「な――!?」
 狂気の笑みだった。見る者を震えさすほどそれは冷たい。
 わたしの背中にも同じく冷たいものが疾っていた。
「みお……」
「うそ、澪ちゃんも……うそだよ」
 繭ちゃんの呟きにわたしもそちらを見やる――と絶望がそこにあった。
 氷の棺だろうか、そんなものに澪ちゃんは閉じ込められていた。
 顔色……そう顔色何ていうのも可笑しいけど、真っ青になって体温の欠片もない。
 虚ろだった。まさしくそれは、死に行くものの……。
「ごめんなさい……わたしのせいで澪は……」
 力なく呟く留美ちゃん。その瞳には涙が溢れていた。
「あはは、脆いね……ほら、こんなにも簡単に人は死ぬんだよ」
「名雪さん! あなたは――」
 氷の微笑を浮かべて雪の少女はすべてのものを嘲笑う。
 許せない――わたしが仕掛けようとした時、ゆらりと赴く影があった。
「……繭ちゃん?」
 それは本当に繭ちゃんだったのだろうか? すごく怖かった。
「水瀬名雪さん……私を怒らせましたね?」
 ただ冷静に言い放つ彼女は、雪の少女以上に冷たい笑みを浮かべていた。
「だったら、どうだっていうの?」
 わたしは純粋な好奇心から椎名繭とかいう女の子に言っていた。
 見たところ何の力も持たない普通の女の子。それなのにわたしに敵対している。
 これは力≠るものへの冒涜に等しい行為だった。
「あなたが何かしてくれるのかな? 繭ちゃん」
「う、うぐぅ……!」
 足元にいるあゆちゃんを踏みつけてるのは威圧行為でも何でもなかった。
 ただ、そうしたかったからそうしただけ……意味なんてない。
「ああ、あゆちゃんそこにいたんだ? 痛かった? ごめんね、もっと優しくするよ」
 ぐりぐり、あゆちゃんの胸に刺さったままの氷柱をいじる。
 そうすると、あゆちゃんはとても言い声で鳴いてくれた。
 ――強者が弱者をいたぶるのは、感じてしまうほど気持ちがいい。
「はあ、いい加減弱いものいじめは止めてください。それとも、わたしと闘うのは怖いんですか?」
 水をさすように繭ちゃんが言ってくるが、別に怒りなんて湧かなかった。
「……言うね、安い挑発だけど乗ってあげるよ。繭ちゃんはもっといい声出してくれるよね?」
「泣くのはあなたの方ですよ、水瀬さん。親の七光りの力なんて見っとも無いんですよ」
 もうわたしは言い返さなかった。軽口を叩くあの子がどんな鳴き声を上げるか考えただけでいきそうになる。
(川名さん、私が時間を稼いでいる間に澪と月宮さんのことをお願いします)
(――あ、うん、分かったよ。でも繭ちゃん本当に大丈夫なの?)
 それで内緒話してるつもり? 全部筒抜けだよ。
(ええ。私で充分ですよ。川名さんが立つまでもありません)
 だけど、その言葉は感心しないよ。まるで目暗の彼女でも勝てるみたいな言い方だね。
 わたしはすっごく強いのに、全然そのことを理解してないんだ。許せないよ。
「繭ちゃん、そろそろわたしの方から行かせてもらうね」
「……いつでも結構です」
 そう、わたしは強い。とても強いんだから誰にも負けない。
 氷の結晶がわたしを取り囲むように渦を巻く。
「飛べ!」
 わたしの呼び声に応えて、雪の飛礫は椎名繭目掛けて飛んでいく。
 もちろん小手調べの技だったけど、彼女はわたしの思いも寄らない行動に移ってくれた。
「――え?」
 わたしに背を向けて繭ちゃんは一目散に逃げ出していた。
「あはは、あれだけでかい口を叩いてすることは逃げることなの?」
 彼女が追いかけてくるのを確認しながら、私は森の中を駆けていった。
 まあ、逃げたら追いかけたくなるのは人情なので、大方の予測はついていたけど、彼女だって馬鹿ではない。
「分かっているよ。みんなを巻き込まないために場所を変えてるんだよね?」
 したり顔で言うのを訊いて、私はうんざりしていた。
 訂正する。彼女はどうやら馬鹿のようだ。誘いに乗ってくれたのは嬉しいけどそれだけではない。
「でも、追いかけっこってあまり好きじゃないんだ。足を狙わせてもらうよ」
 冷気が周囲を支配する。丘の温度が急激に冷えていく。
「飛べ!」
 雪の飛礫が先ほどと同じように飛んでくる。
 私は溜息もつけないことに溜息をつきたかったが、とりあえず眉間にしわを寄せるだけに我慢して、
 体操の選手がそうするように、胸で円を描くように飛び上がっていた。
「あれ? どうして外れるの?」
 なんとも呑気な声で水瀬さんが言う。足を狙うとか言ってて躱せない方がどうかしてる。
 それか私の意外な(自分で言うのもなんだけど)運動神経に驚いているのかも知れないけどね。
「――とっ」
 私は手短にあった木の枝に飛びつく。回転はサービス。余裕があるよって合図だった。
 そのまま木と木の間を飛んで渡っていく。もちろん走った方が効率がいいんだど細工しておくにはこれでいい。
「待ちなさいよー!」
「……嫌です」
 誰かさんの口癖を真似てみて彼女はさらに頭に血を上らせたようだ。
 冷静に見える人ほど、自分の思うように行かないと脆い。
 彼女がそうだってことに確信はなかったけど、これで確認は取れた。
 もう少し様子を見て、それが芝居でないことが分かったら、この闘いは私の勝ちだろう。
 彼女が本当に冷静な人なら、別の案を考慮していたけど、まあ、これで充分なようだった。
「澪にしてくれた借りは倍返しでさせてもらいます」
 私は薄く笑っていた。
 わたしは強い。彼女は弱い。
 それはとても簡単なことで偽りの無い力の差だった。
 負けるわけが無い。彼女にはわたしを傷つける術など何ひとつ持ち合わせていない。
 逃げ回ってるだけでは勝てない。だからわたしは負けない。
 単純かつ簡単なことだった。わたしは強いのだから。
 もう彼女の遊びなんかに付き合ってはいられなかった。
 大気の気流に乗る。そう。わたしは今では空を翔けることすら容易い。
 ぐんぐんとスピードを増して彼女に追いつく。
「もう逃がさないよ!」
 わたしは大気の温度を下げて空気中から水分を取り出してそれを凍りつかせる。
 先のよく尖った氷柱が何十という数で出来上がっていく。
「刺さっちゃえ!」
 わたしの呼び声に応えて一斉に氷柱は繭ちゃん目掛けて飛んでいった。
 彼女はわたしの予想通り∫]してくれたが、その氷柱は壁のように大きく立ちはだかる。
 もう逃げ場所は無い。鬼ごっこは終わったということだ。
「さて、繭ちゃんどうするの? どうやってこの窮地から脱出してくれるのか見ものだよ」
「…………」
 彼女はなにも言わなかった。
 当然だ。打つ手なんてどこにもないんだから。
「どうしたの? 何もしないんだったら、わたしが凍らせちゃうよ」
 それでも何も言ってこなかったので、わたしは異様に腹立たしく思ってしまった。
 何も言わない。何もしない。わたしは彼女の泣き言を聞きたいのだ。
 なぜ? それなのにどうして、彼女の目は奥の深い眼差しでわたしを射抜いているんだろう。
「……それ、むかつく」
 わたしは彼女に向かって雪玉を投げつけた。もちろん石を入れたものなんかより威力は格段だった。
 避けることもなく……いや、避けようがなくて、彼女の額にそれはぶつかった。
 その額から血がスーッと流れ落ちた……。
 視界の中に赤いものが混じっていた。
 手のひらで拭ってみると、生暖かい感触のそれはべっとりとしている。
 血。赤い血。私から流れ出た赤い液体……。
「澪や月宮さんは、この何倍も痛かったんでしょうね……」
 私も痛くないわけではなかったが、不思議なことに痛みはすぐに引いていった。
 わざと受け入れたそれにも、私の心にはまったく響かなかった。
「ほら、繭ちゃんは追い詰められたんだよ。何とか言ってみなよっ!」
「……随分な言われようですね。そんなに私のことが怖いですか?」
 私の言葉に彼女の顔は見る見るうちに真っ赤になった。
「図星ですか?」
「……繭ちゃんは弱いんだよ。わたしにそんな口を聞いてもいいの……?」
 表面上あくまで冷静を装う彼女は、もはや哀れというより他はない。
「確かに私は弱いです。だけど、貴女のように愚かではありません」
「言葉は……もう言葉なんて要らないよ! そんなの何にもならないじゃない! もっと他のもので示してよ!」
「……貴女は不幸です。自分が災いの中にいることを気づかないなんて」
「だ、黙ってよっ!」
 雪の結晶がこの空間に乱れ飛んでいる。私を狙っているのだろうが当たりはしない。
 もはや私に当たる気も無かった。
「終わらせましょう。貴女の心の楔を私が断ち切って上げます」
 懐の中に忍ばしていた44マグナムを彼女に向ける。
 彼女にとっては余計なお世話だろうけど、本当の名雪さんは終焉を求めているのだから。
「……あはは、ははっはははははははっ……あははっはははっはははっははっーーーーー!」
 彼女は狂ったように笑い出していた。そのこと自体に疑問は無かった。
「そんなもので、わたしを殺そうとしてたの? 馬鹿げてるよ、可笑しすぎるよーっ!」
「……そうですか? この引き金を引いたら分かりますよ」
 この大きなグリップは馴染まなくて、私はあまりこの銃が好きではなかった。
 しかし今は感謝しよう。本当は反動の大きさを考えて片手打ちは止めておいた方がいいのだけど、
 私は躊躇わないでマグナムのトリガーを引いた。
「――――?」
 彼女の体は大量の炎に包まれた。
 簡単だと思っていた。
 繭ちゃんを倒すことはとても簡単なことだと思っていた。
「……うそ?」
 それなのに溶けていくのはわたしの方だった。
 本当に訳が分からなかった。銃弾は躱せたのにその後の炎がわたしを焼いていた。
「……どうして? どうして、こんな……」
「簡単なことですよ」
 嫌味だろうかそれは……。事も無げに彼女は言ってくる。
「ただ私は逃げていただけではありません。木々に結界を張って逃げていたんですよ」
「……そんなの気づいてたよ。でも、どうして……なの? こんな強力な術の効果の結界なんて……」
「そうですね。こんな大規模の火炎術を貴女なら見落とすわけが無い――ですか貴女は勘違いをしています」
 彼女に表情らしい表情はなかった。ただ告げる。
「私に方術は使えません。初歩的なものでもそうでしょう。しかし少しばかりの知識はあります。
 いえ、知識というのもおこがましいでしょう。酸素は火を燃やす為の栄養剤ですよ。そんなの小学生でも知ってます。
 気づきませんでしたか? この大気中の酸素濃度は通常より980パーセント増しなんです。
 ほんのちょっとした……そうですね、ハンマーが落ちるくらいの衝撃で引火するのには充分なんですよ」
「だったら……だったら、なんで……繭ちゃんは燃えないの?」
 こんな大規模火災だというのに、木々は一本足りとも燃えていなかった。
 そこにある物質はまるで、わたしだけというように……。
「貴女は中途半端に強かったんですよ。酸素中毒症になるくらいの弱さは欲しかったですね」
「あ……」
 どうして? どうしてこうなっちゃたんだろう? 祐一は?
 そうだ。祐一が側に居てくれたらそれでよかったのに、わたしは何をやっていたんだろう。
 ……どこで道を間違えたんだろう?
「もうすぐ火は尽きますね。その前に終わらせましょうか?」
 彼女は銃口を私の額に狙い定めていた。
 終わる? そう終わってしまうのだ。もうここで尽きてしまう。
「貴女の敗因はただひとつですよ。伏龍≠ニいう私の二つ名を知らなかった……それだけのことです」
 もう何も聞こえない。銃声すら耳に入らない。痛みすらない。
 目を閉じてみた。待っていたのは暗闇。いや本当はそこに何も待っていなかった。
 ――静寂が訪れる。
「――繭!」
 あたしは繭の姿を見つけると抱き締めずにはいられなかった。
「……痛いですよ、七瀬さん」
「馬鹿! 馬鹿! ひとりで勝手なことしてさ!」
「……七瀬さんに馬鹿って言われると、本当に馬鹿になった気がします」
「もう、本当に馬鹿よ……こういう時くらい素直になりなさい」
「……はい。そうさせて貰います、七瀬さん……」
 よっぽど疲れていたんだろう繭は、あたしに体を預けてくれる。
 強張っていた顔が、こんなにも優しくなっている。
 笑顔のこの子は、本当に可愛いんだから。
「……終わったんだね、繭ちゃん」
「ええ。それより、澪と月宮さんの具合はどうですか?」
「澪ちゃんの方は大丈夫なんだけど、あゆちゃんのほうが……」
 みさきさんが難しい顔で言う。それだけで悟ったのか繭はそれ以上何も言わなかった。
 澪の方はみさきさんの方術で回復に向かっていたけど、あゆの方は傷を何とか塞いだだけだった。
 いつ死んでも可笑しくない怪我らしい。後はあゆの生命力に懸けるしかないようだ。
「……七瀬さん、川名さん、お願いがあります」
「うん?」
 あたしとみさきさんは同時に首をかしげる。こんな繭を見るのは初めてだったから。
 頼み事なんてしない性格なのに……。
「ふたりの看病をお願いします」
「え? それは構わないけど繭はどうするつもり?」
「私は……私は九尾と翼人との戦いを見届けに行きます!」
 それは予想外の答えで、あたしは言うべき言葉をすぐに見つけられなかった。
「そんなの……」
「そんなの認めるわけには行かないよ、繭ちゃん」
 情けないあたしの代わりに、みさきさんが強い口調でそれを否定した。
「もうすぐ九尾と翼人との戦いが始まります。この機を逃すことはできません」
「そうかもしれないけど、そこがどんな危険な場所か分かっている? ひとりでなんて行かせられないよ」
「しかし――」
「――絶対に駄目だからね」
 ふたりとも取り付く島も無いまま睨み合っていた。
「どうしてです? 元々危険は承知の上でこの丘まで来たんですよ?」
「……状況の問題だよ。わたしには繭ちゃんが焦っているように見えるんだ」
「そんなことありません。すべて計算付くです」
「わたしの眼を騙すことはできないよ、繭ちゃん」
「心を読んだんですか?」
「そんな無粋な真似はしないよ。大人の目から見たら子供の考えはすぐに分かるんだよ」
「私は子供じゃありません。川名さんは大喰らいなだけです」
 ぷいっと横を向く繭。みさきさんちょっと顔が引きつってる。
「繭ちゃん、自分で子供じゃないっていう人は、子供っていう証拠なんだよ?」
「自分で大人という人は少なくても大人じゃありませんよね?」
「面白いこと言うね、繭ちゃん」
「そんなこと……川名さんほどじゃないですよ」
 ……あ、火花が散ってるような気がするのはあたしの気のせい?
 ちょっとこわひ……。
「七瀬さん!」
「留美ちゃん!」
「は、はい――!」
 二人に呼びかけられて思わず後ずさりしてしまう。
「七瀬さん(留美ちゃん)はどっちの味方なんですか?」
 ああ、そう来るのかやっぱし!
 繭の言い分も分かるけど、みさきさんの気持ちだって分かる……というよりも、みさきさんにあたしは賛成だ。
「あの、繭ちゃん?」
「――なんですか?」
 ひぃ。怖い。とてつもなく怖い……。
「留美ちゃんは、わたしの意見に賛成だって言ってるんだよ」
 おわーっ! 笑顔でさらっと怖いことを!
「……そうなんですか?」
 繭にジト目で見られた! 素敵なほど似合ってるよそれ!
「どっちなんですか!?」
 ……結論、ふたりとも怖い。
「看病だったらわたしにさせてくれないかな?」
「――え?」
 意外な声が響いたので、あたしはちょっと驚いてしまった。
「あはは、なんか名雪っちの声がしたような気がするけど、このあたしも耄碌したもんよね」
「いえ。七瀬さんの後ろにいますよ、名雪さん」
「またまた、そんな嘘を」
 あたしは手をパタパタさせながら、ちらっと後ろをのぞき見ると、そこには――
「お、お、お、お、お化けえええええーーーーーー!」
「……失礼だね。足は付いてるよ」
 腰が抜けそうなほど驚いてるあたしを見ても彼女はのんびりと言い放つ。
「幽霊じゃないの? でも、あの邪術士の娘なのよ! さっきまであたし達を殺そうとしていたのよ」
「まあまあ、留美ちゃん。落ち付いてよ」
「な、なんでみさきさんは平気なのよ。繭はともかくとして、可笑しいじゃない!?」
「だって、わたし戦いを見てたし……繭ちゃんが危なくなったら、すぐに駆けつけるつもりで」
 みさきさんが言うのを、分かってます、という風に繭は頷いていた。
「だったら、いったいどういうことなのよ?」
「別に深い意味はありません。永遠の力を利用して人を殺めることはしたくなかっただけです」
「……と、言いながら繭ちゃんは照れてます。優しいんだから、ほんと」
 みさきさんが言うと、繭はふーんと首を横に向けてしまった。
「ああ、なるほど……でも看病させてって言うのは?」
 ふたりが警戒もしていないのに、あたしだけ焦っても仕方ないので水瀬さんに軽く訊いた。
 ……しかし、疎外感あるなー。
「あゆちゃんを看病したいから、じゃあ理由にならない?」
「ならないって、あんたねー、自分で傷つけておいて」
「――分かりました。お願いします」
「って、そうお願いするわ……ってなんでじゃあ!?」
「留美ちゃん、楽しすぎ」
 卓袱台があったら絶対ひっくり返してた、うん……。
「もう分かったわよ。じゃあ九尾目指して出発!――これでいい?」
「うん、出発出発がんばろう!」
 ガッツポーズというのか勝利のポーズというのか手を上げてる彼女らをとても羨ましいと思った。
 川名さんに七瀬さん、見てるだけで私は本当に元気づく。
「いいよね、彼女」
「はい、そうですね……」
 私と同じ印象を持ったのか名雪さんも同じように笑う。つられて私も笑ってしまう。
「でも、どうして? わたしなんかを信用してもいいの?」
「……七瀬さんが信用したのなら、私が言葉を挟む余地なんてないですよ」
「彼女が一番信用してくれてなさそうだったけど?」
「嘘つき。七瀬さんが誰よりも先に貴女と打ち解けたことは一目瞭然です」
「……ありがとう」
 名雪さんが笑っている。
 私には有難うと言われる筋合いはなかったけど今だけは笑って応えよう。
「貴女の中にあった負はパンドラの箱ですべて吸い取りました。理由がいるならそれですよ」
「じゃあ理由なんて要らないよ。がんばってきてね」
「……はい、言われなくてもそうします」
 最後の言葉は薮蛇だったことに気づいて私は顔を赤くさせた。
 今の彼女は間違いなく強かった。私よりもずっと。
「行くわよ、繭!」
「はい。分かってますよ」
 七瀬さんが私を呼んでくれている。
 でも、その前に澪の頭を撫でてから行くことにする。
「任せましたよ、名雪さん」
「うん。繭ちゃんも、ふぁいと、だよ」
 名雪さんの声援。七瀬さんの呼び声。私は今幸せの中にいた。
「行ってきます!」
 そして、雪の街の物語は最終局面を迎えようとしていた。
回すだよもん。
354名無しさんだよもん:2001/07/25(水) 17:30
くっきー残ってただよもん。
355名無しさんだよもん:2001/07/25(水) 17:35
だいたい1レス分書くのに20〜30分だよもん。
356名無しさんだよもん:2001/07/25(水) 17:37
今回はちょっと掛かり過ぎだったもん。
357名無しさんだよもん:2001/07/25(水) 17:38
もう少しくらい上手くなりたいもん。
358名無しさんだよもん:2001/07/25(水) 17:45
とうとう真琴VS美汐だよもん。
359名無しさんだよもん:2001/07/25(水) 17:48
しかしもう力尽きただよもん。
360名無しさんだよもん:2001/07/25(水) 17:48
暫く様子を見るもん。
361名無しさんだよもん:2001/07/25(水) 17:50
それではだよもん。
362沢渡真琴・千の季節:2001/07/26(木) 11:29

永い、あまりにも永い時をすごした。
千の夏。千の冬。いくつもの季節を、ただじっと耐えつづけた。
そう、ただこの時、この瞬間を待ちわびて。
翼人……神奈。因縁と呼ぶには、あまりにも深い絆を、断ち切るために。
今なら、断言できる。
私は、この瞬間のために存在していたのだと。
363沢渡真琴・千の季節:2001/07/26(木) 11:36
ゆっくりと、互いに歩み寄る二人。
千の季節を経た因縁が、今ようやく、ここに交差する。
邂逅の刻は来た。
翼人と、妖狐。
私は、ゆっくりと最後の翼人を降ろした女に身体を向けた。
「……永かった」
私の口から、自然と言葉がつむがれる。
この身体に満ちる震えは、まるで遠い親友にでも偶然出くわしたかのような、途方もない歓喜の現れだった。
「……永遠とも思える数の、冬を耐えた」
目の前の少女…天野美汐もまた、その内に秘める力を高めていく。
いい目だ。何者にも勝る、強い意思。神奈をその身に宿しながら、負に囚われていない。
そうでなくては、殺しがいがない。
「母上様……」
「裏葉。お前の話は、後で聞く」
そういって、私は裏葉に、下がっているように命じた。
裏葉の顔が、一瞬、表現しがたい表情になる。普段から顔色を変えないこいつにしては、珍しい。
私と天野は、いくらかの距離を置き、対峙する。力が均衡する者同士にありがちな、硬直状態だ。
互いの隙を狙い、じっと相手を伺う。
私は、両手をだらりと下げた、自然体で。天野は、私を真正面に見据え、心持ち半身で。
「見せてくれ、お前の……天野美汐と、その身に受けし、神奈の力を」
「…後悔しますよ。わたしはあなたを倒します。そう、わたしの総てを賭けて」
それが、戦いの開始の合図だった。
364名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 11:38
回し。まこぴVS美汐始めちゃいました。
365名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 11:39
同じネタ考えてた人がいたら、ゴメンナサイ。
366天野美汐・丘の上で:2001/07/26(木) 11:49
痛いほどの沈黙を破ったのは、わたしの方からだった。
「…………いきますよ……妖狐・沢渡真琴……!」
瞬時に気を練り、その手から光球を放つ。真琴は後ろに飛び跳ねると、身を捻ってそれをかわす。
わたしはさらにそれを追い駆け、呪を口ずさむ。私の目の前に、刃の形をしたエネルギーが、三つ。
「高野錬禁呪法27式…『幻無陣』」
その刃が、回転しながら真琴に迫り来る。奴はは即座に己の気を開放し、はじき返すべくその刃にぶつけた。
「無駄です!」
気が、刃をすり抜ける。とっさに身を翻したにもかかわらず、一本の刃が、真琴のわき腹を掠めた。
「……ちぃ!」
真琴は舌打ちすると、再び回転しながら戻ってくる刃に、手の中に生み出した狐火をぶつける。だが、またもやその炎は、むなしく刃をすり抜けた。
「幻無陣の刃は、位相のずれにより、「ちから」で相殺する事は出来ません。そう、あなたを切り刻むまで、永遠に追い続けるのです」
そう言いながら、わたしはさらに印を組み、呪を唱える。
幻無陣により相手の動きを半減させ、さらに大技でダメージを与える。
「……お前らしい、実直で確実な戦法だな」
「高野錬禁呪法48式…『蹄花焔爆』!」
真琴のぎれごとを無視し、わたしはさらに力をこめて、呪法を放った。
367沢渡真琴・丘の上で:2001/07/26(木) 12:00
天野の身体から、すさまじい呪力が放たれ、目の前に炎のあぎとが広がる。
あまりの熱量に草原の草が見る間に炭化し、巻き起こる風に吹き飛ばされた。
正面から迫る、天野の繰り出した巨大な炎。そして、背後、右手、頭上と完璧に死角を捉えた形で、三つの刃が迫る。
そして、わざとらしいほどに開いた、左側。塚本千紗程度の妖狐なら、苦もなく引っかかったであろう。
恐らくかわした先に、必殺の罠があるのだろう。タイミングは完璧だ。
だから、私はその場を動かなかった。私の身体に、次々に刃が突き刺さる。
「避けない!?」
天野が、驚愕の声をあげる。
「力がすり抜けるなら、私の身体を使って粉砕するだけだ」
次の瞬間、三つの刃は、こなごなに砕け散った。私の身体には、毛ほどの傷もついていない。
そして、正面の巨大な炎。
「……ふっ!」
短く息を吐き、少しだけ尾を振るう。恐らくは、高野山の奥義の一つであろう膨大な炎が、影も残さず掻き消えた。
噂に聞く、長瀬流炎殺拳の、奥義に次ぐ威力を持っていたと思う。しかしそれも、私の身体を傷付けることはできない。
「…………っ!!」
天野が、初めて感情をあらわにする。
「どうした?まさか本当に、翼人の力なしで、この私を倒そうなどと、思っているのか?」
からかうような私の挑発にも、天野は眉一つ動かさず、いつもの無表情を取り戻す。
「まだまだ、勝負はこれからです」
そう言いながらも、天野の声には、はっきりと動揺が現れていた。
368沢渡真琴・丘の上で:2001/07/26(木) 12:09
天野は三度、呪文を唱えた。
恐らくは水瀬秋子に匹敵するのではないか、と思わせるような、すさまじい呪力が轟く。
「かの地より禁じられし聖地へ、紡ぐもの、織り成すもの、とわに呪われてあれ!」
天野が手を振ると、壮絶な冷気と、氷塊、さらに、氷をレンズに見立て、死角から光条が私を襲う。
氷をかわせてもレーザーが、レーザーを避ければ冷気が、相手を粉砕する、という寸法だ。禁呪、と言うだけあって、随分とえげつない呪法だ。
「高野錬禁呪法7式『凍溜旋』!!」
「だが……やはり無駄だ」
次の瞬間、荒れ狂うブリザードも、氷解の間を走る光線も、全てが消え去った。
「……な……!?」
まさか、ここまであっさりかき消されるとは思っても見なかったのだろう。
天野の顔が、再び驚愕に彩られる。
私には、天野の魂胆は見えていた。神奈の力を解放出来るのは、ほんの一時。
もし長時間神奈を解放すれば、そのまま負に飲み込まれる可能性もあったし、暴走の危険も飛躍的に増大する。
ならば……刹那の間、相手がひるんだ隙を狙い、全力で神奈の力を、私にぶつける。
「……そうすれば、神奈も善神に戻れる上、お前も助かり、万万歳だな?」
天野が、血がにじむほど、強く唇を噛み締めた。
「だが、生半可な呪法で傷付くほど、私は甘くないぞ?」
愉しい。歓喜が、強者と戦える悦びが、私を埋め尽くしていく。
そうだ、もっと憎め。もっと怖がれ。
もっと、もっと私を愉しませてくれ、天野美汐!!
369天野美汐・丘の上で:2001/07/26(木) 12:15
正直、信じられなかった。
凍溜旋も、蹄花焔爆も、高野山の伝える呪法の中では、最上級の破壊力を持つ、とまで言われているのだ。
それゆえに禁呪と称され、封印されてきた呪法だ。
単純な殺傷力なら、間接的でない分、禁忌法術ブラフマーストラよりも上のはずだ。
もし食らえば、例えあの水瀬秋子と言えど、無傷ではいられないだろう自信がある。
避けるならともかく、瞬時に無効化するのは、一体どんな手段によるものなのか。
「どうした?今ので終わりか?なら随分と、つまらない余興だな」
沢渡は、腕を組んだまま、轟然とこちらを見下ろしてくる。
ただそれだけで、すさまじいプレッシャーが体を苛む。
頬に、汗が一筋浮かぶ。今すぐにでも、神奈の力に頼りたい衝動に駆られる。
だが、それでは奴の思う壺だ。もし今神奈を出しても、確実に奴を倒せる保証はない。
最悪、奴が全力で逃げ出せば、神奈には追う事は出来ない。
奴を捕まえ、止めを刺す前にタイムリミットが来る。
それに……それに、万が一、神奈の力すら、奴に効かなかったら?
力の総量……キャパシティで言えば、真琴、秋子…それに、今秋子と戦っているらしい誰かは、ほぼ同じ水準だろう。
私本来の力は、それより若干劣り、翼人の力は、彼女らよりワンランク上、と言った所か。
だが……私は薄々気が付いていた。
力の総量が、そのまま相手の戦闘能力に、直結するわけではない事を。
370天野美汐・丘の上で:2001/07/26(木) 12:24
「……そろそろ、憎き神奈に出てきてもらおうか。お前では、つまらん」
退屈そうに、けれど、どこかまだ期待した風に、真琴がつぶやく。
「な……なめないでください!!」
わたしはがむしゃらに幾度も力を練り、叩きつける。だがその度に、瞬く間に掻き消されてしまう。
「そろそろ、こちらから行くぞ?」
真琴が、笑いをこらえるように、そんなことを言った。
「結界の準備をしておけ、天野。裏葉、お前も、もう少し下がれ」
親切ごかして、奴はそんな事をいった。かっと、頭に血が上る。完全に、遊ばれている。
「見るがいい、これが九尾の真の使い方。いつぞやの魔物狩りの娘の時のように、手加減はせんぞ」
次の瞬間、わたしは本能的に全力で結界を張り巡らし……すさまじい苦痛が、全身を襲った。
「ぐううううっっ!?」
ただの、水飛沫。それが、結界で阻みきれず、僅かに体にかかった、ただそれだけで、すさまじい痛みが私を苛む。
水がかかった剥き出しの腕が、紫色に変色する。術の気配はなかった。ただいきなり、降り注いできたのだ。
「ただの水飛沫で、何をそんなに騒いでいる?……まあ、液体窒素を浴びれば、痛いのは当然か」
「え……液体窒素!?」
呪文も、動作も何もない、ただ唐突に、液体窒素を作り出したというのか?
足元まで液体が流れてきたので、わたしは慌てて跳び下がった。
「そろそろ、種明かしをしてやろうか」
371天野美汐・丘の上で:2001/07/26(木) 12:33
液体窒素の上げる白煙の中に佇みながら、真琴は悪戯が成功した時のような、満面の笑みを浮かべた。
足もとの液体窒素が、突然盛り上がり、円錐を形作る……まさか!?
「そう、これは私の九本の尾のうち、一つが変化したものだ」
やがてそれは、半透明の、だか完全に巨大な狐の尾へと変化した。
「九尾が一、四精の尾。地水火風、あらゆる物質へと変化させられる」
言うが早いか、その尾が、すさまじい炎の塊へと変わる。
「灼熱の尾よ、焼き尽くせ!」
幾重にも張り巡らせった結界すら揺さぶる、すさまじい炎が私を包み込んだ。
これに比べたら、私の放った蹄火焔爆など、線香花火にも等しい。
太陽のコロナにも匹敵するのではないか、と思わせるような、熱量。
結界が……もたないっ!
…だが、真琴はこれで止めを刺すつもりもなかった。周りを包んでいた炎が一転、鋼鉄の塊へと変わる。
しなるように動き、結界ごと、私を叩き伏せる。回避は不可能だった。
すさまじい衝撃が、私の意識を揺さぶる。内臓が破裂したのか、喉の奥から、熱いものがこみ上げてきた。
それでも私は、必死にめり込んだ身体を地面から引き剥がし、次の攻撃に備えて身構える。その私の前に、無数の銃器が突き付けられた。
「!?」
考えるより先に、最大限に結界の物理防御力を上げる。
その上から、雨あられと鉛弾が降り注いだ。時々混じる鋭い衝撃は、劣化ウラン弾だろうか。
ぞっとするような恐怖が、足元から這い上がってくる。
人間の扱う銃火器ぐらいで、突破できるようなやわな結界ではない。だが、これはあまりに常軌を逸していた。
「……ふむ、やはりこの程度では、おまえの結界は敗れないか」
銃撃がやみ、硝煙の向こうから、飄々とした顔の真琴が現れた。
………強い。いや、強すぎる。
足元に転がる無数の銃弾と、あらゆる銃の形を模した尾が、攻撃のすさまじさを物語っていた。
液体窒素や、炎や鋼だけではない。あの尾は、銃ですら生み出せるのだ。
372天野美汐・丘の上で:2001/07/26(木) 12:49
……正直、見くびりすぎていたのだろうか。
あるいは、戦闘力では水瀬秋子をも上回っているかもしれない。
「何も、力の総キャパシティ量が、絶対の戦闘力じゃない。…そういう事だ。
力だけあっても、それを使いこなせなければ、何ら意味はない。そう、お前や保科智子のように」
ゆらりと揺れる尾が、今度は半透明状に変わり、見えなくなる。仕舞ったらしい。
……今だ!!
「……星より繋がれし見えざる鎖もて、万物に等しく滅びを!!禁忌法術・ブラフマーストラっ!!」
奴の気が緩んだ一瞬の隙を付いて、私はもう一つの切り札を使った。
術者の周囲に、超重力場を作りだし、あらゆる物質を分解する禁呪法。
いくら奴とはいえ、隙を突いた不意打ちで、これを無効化する事なんて……
「そして、これが私の2番目の尾。次元の尾」
ぐにゃりと歪む視界の中で、そこだけが切り取られたように、真琴の姿が浮かび上がった。
「空間に干渉し、時に切り取り、時に歪め、時に別次元への扉を開く」
……重力とはすなわち、空間の歪みだ。地球に重力があるのも、地球があまりに重く
それゆえ空間が歪み、周りの物質を引き付けている、と聞いたことがある。
もし自在に空間を支配できるのなら、この擬似重力場を中和する事も、可能なのだろう。
少しも真琴に傷を負わせることなく、虚しくブラフマーストラの重力場が、消滅する。
「……さっきから術を無効化していたのも、それの力なのね……」
「そうだ。炎の部分、氷の部分の空間を切り取り、他の何もないところの空間を持ってきた。…こんな風に」
ぐねり、と尾が空間を薙ぐと、大量の水が、飛び散った。その飛沫が、私の頬を濡らす
「今のは、海の中に空間を繋げてみたのだ。なんなら、宇宙空間にでも繋げて、宇宙遊泳をさせてやってもいいぞ」
冗談を言っているように見えて、それが実行可能だ、というのは、聞かなくてもわかった。
「川澄舞のような、限定的な空間への干渉ではない。これが本当の空間干渉能力だ」
………あるいは、神奈ですら、今の真琴には勝てないかもしれない。
そんな漠然とした不安が這い上がってくるのを、わたしは正直、抑えきれなかった。
373名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 12:50
回し
374名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 12:51
今まで何か真琴が弱そうだったので、真の力を出させてみました。
375名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 12:57
長々と書いてすいません
376名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 12:59
しかも読みずらいですね…
377名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 13:02
うげ、ミス。366@奴はは即座に→奴は即座に
すいません
378名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 13:03
あと尾は7本も残ってますね〜
379名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 13:06
回し損ね
380名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 13:07
いつもより多く回してます
381名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 13:10
最後に回し
382里村茜@想い届けて(1/6):2001/07/26(木) 21:27
「戦いが始まったようですね……」
 この街を包んでいた瘴気がすべて物の怪の丘に集まっていく。
 訪れたのだろう。宿命の決着をつける時が。
「私には見ているだけしかできません。でも美汐ならやれると信じています」
 破邪槍『物の怪の槍』は未だに動きを見せなかった。
 まだ待てということなのだろう。いやそれとも槍の役目はもうないのかも知れない。
「九尾は強いです。でも美汐はひとりで闘っているわけではないんですよ」
 私には分かる。美汐を見守る優しい力の波動が私には見える。
 負の対極にある聖なる力。真の魂。星の記憶。
「美汐、私に見せてください。翼人はもう貴女と別存在ではないんです」
 私は空を見上げた。流れるような星の海。明るく照らす月。昼も夜もそこには関係ない。
 太陽はいつでも輝いているのだから。
「九尾の力は比類ない。でも力だけがすべてではありません」
 そのことを美汐はもう気づいていた。
「だったら、きっと真琴の想いに美汐なら応えて上げられるはずです」
 翼人と九尾。美汐と真琴。人間と妖弧。
 すべては出来すぎたシナリオのようにパズルの欠片が今そろう。
 それは、終焉を意味して……。
「私は……私のやれることをするつもりです」
383国埼往人@想い届けて(2/6):2001/07/26(木) 21:31
「……遅かったみたいだ」
「なにがだよ!」
 柳也がひとりだけ分かったように頷いてるのを見て俺は舌打ちした。
「九尾と翼人との戦いが始まったようだ」
「……美汐が闘っているのか?」
「ああ。名前までは知らないが、そういうことだろうな」
 奴のどこまでも冷静な口調に俺は苛立っていた。
「一度死んだ奴は余裕でいいね」
「そう言うな。俺だってこうなるとは思っていなかったんだ」
「どういう意味だそれは?」
「妖弧に伝わる転生術は人間には上手く作用しなかった。当然といえば当然だがな」
「裏葉……その女の術か?」
「まあ、そういうことだ。神奈を残しては逝けないということで俺も了承したんだが……」
「時間的にズレが生じてしまって、裏葉とお前が出会うことは無理だったってことか?」
「飲み込みが早いな。しかし、人の身を借りることになるなんて、裏葉は説明もしなかったよ」
 走りながら俺たちは丘を登っていく。
 この先に待つものを求めてただひたすらに駆け上がっていく。
 しかし、そこにあったものは……。
「――なんで?」
「……怪我をしているようだな」
 そんなことを呑気に言い放つ奴に怒鳴ることも出来ないで俺は首を垂れていた。
「遠野――!」
 血の残った地面に倒れていたのは間違いなく遠野美凪だった。
『永遠はあるよ……』
『ここにあるよ……』
 声が聞こえてきた。とても近くから。それなのに遠くから。
 幼い少女は美凪を連れて逝こうとしていた。
384長瀬祐介@想い届けて(3/6):2001/07/26(木) 21:36
「真琴様の復活……ついにこの時がきたのか……」
「長かった……そう、ようやく私たちの世界が訪れるのね……」
 ふたりの妖弧が酔いしれたように言葉を紡でいた。
 何を言ってるんだ奴らは……妖弧の世界……そいうことなのか?
「そんなこと僕が絶対にさせないっ!」
「ほう、まだ狂っていなかったのか、電波の少年よ」
「無理よ兄さん。こいつは元々狂っているの。私でもどうしようもないほどにね」
「ははっ、そいつはいい。聞いたか電波の少年? 貴様はすでに狂っているのだとさ!」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れダマれ黙レだマレだマレダマレダマレだマレよーー!」
 心臓の鼓動が増す。血液が逆流する。脳内に何かが分泌される。
「ほう、まだ立ち向かうのか? 哀れだ……狂えるほど哀れでならないぞ!」
「僕は負けない。お前らは瑠璃子さんの仇じゃないか。シネよ! シンデしまえよ!」
「……だ、駄目よ……長瀬君……」
 誰かの声が聞こえる。いや聞こえない。もう耳には何も聞こえない。
「あら……まだ死んでいなかったの、編集長さん?」
「ふん。妖弧にシルバーブレット如きが効くとでも思ったか?」
 ――オワルノカ? ココデオワルカ? カタキダロ? コワセヨ! コワシテシマエヨ!
 内なる声が僕を導く。そう心地よい。もういっそうすべてを壊してしまおう。
 ミナゴロシ――
「駄目……狂気を生み出さないで……」
「クルウ……コワス……スベテ……ルリコ……ボク……ソウ……デンパ……クルエ……シネ!」
 僕の心は壊れた。そう思った時にそれは起こった。
(あ……何だろう、これ……聞いたことある)
 歌声だった。懐かしい流行歌……いや、違う。もっと心に残っている。
「兄さん! これって!」
「――まさか? そんなことが有り得ん!」
 この曲の名を確か……『POWDER SNOW』と僕は記憶していた。
385神尾観鈴@想い届けて(4/6):2001/07/26(木) 21:41
「観鈴……どないしたんや?」
「……え?」
 お母さんが何を言っているのか分からなくてわたしは首をかしげていた。
「……どうしたの、お母さん?」
「だって、観鈴……泣いてるやん」
「うそ……」
 わたしは自分の頬を伝うものが涙だとは思わなかった。
 泣いているなんて思いもしなかった。
「もしかして、いつもの発作か?」
「……違うと思う」
「だったら、なんでや? そんな顔されたら……うち、寂しいやん」
「にはは、大丈夫だよ。それより、まだ目的地まで遠いんでしょう?」
「ああ、東京駅に着いても、まだ乗り換えなあかんからな……」
「うん。わたしもう少し寝てるね……」
「そうやな。そうしとき。いい夢見れるといいな」
「にはは、いいねー」
 ……本当にわたしは泣いていたんだろうか。
 なにかとても懐かしいものに触れたような気がして知らないうちに泣いていたんだろうか。
 寝ているときとかかな……。
 ちょっと、観鈴ちんには分からない。
 でも、この曲はすごく胸に響いてくるような気がする。
 なんて曲名だったかな? 雪に託された恋人への想いを綴ったこの詩を……。
 ……パウダースノー。
「そうだ。お母さんも、この歌って好きだったよね?」
「……なに言うとんのや観鈴。カラオケ付きのバスやあるまいし新幹線にBGMなんかつかんわ」
「あれ? だって今も……」
 懐かしいあの歌声が聞こえてるのに……。
386藤井冬弥@想い届けて(5/6):2001/07/26(木) 21:44
「ゆき……?」
「ああ、また振り出してきたのか……」
 スフィーさんは窓の外に降り積もる雪を一瞥すると溜息をついた。
 この人には珍しく……いや、何度も見てきたような気もしないではないような……。
(なんか、こういうところが優柔不断なのかな?)
 ちょっとだけ僕も溜息をついてしまう。
 スフィーさんの方をちらっと見ると「忙しい忙しい」となにかバタバタとしていた。
「こんなものなのかな?」
 温度差でできた窓の水蒸気を見つめる。
 ここにはストーブと温かいコーヒーもある。
 あまりにも静かだった。
 外は今も戦いが続いているというのに……。
 僕はなんとなくコーヒーにそれ以上口をつけなくなっていた。
「本当に静かだ……」
 この部屋には僕一人だったので、余計に孤独を感じていた。
「……あれ?」
 でもそこにいつの間にか由綺の歌が流れていた。
 心地よいBGMだった。CDで出ていたのより何倍も心に響く。
「由綺に会いたいよ……」
 それを子守唄代わりに僕は眠り込んでいた。
387長瀬祐介@想い届けて(6/6):2001/07/26(木) 21:47
「僕はいったい何を……していたんだ……」
 正気? まだ頭の中がずきずきと痛んでいたが自我は戻ったみたいだ。
 さっきまであった強迫観念のような衝動は嘘のように消えている。
「兄さん! どうして? どうして由綺の声なんか!?」
「……分からない。いや、これは、この波動は……間違いなく彼女の……」
 妖弧は何やら混乱している。不意を付きたいところだったけど真紀子さんの方が気になる。
 彼女は僕の狂気に飲み込まれて脳に支障をきたしてしまったんだから。
「真紀子さん! 大丈夫ですか?」
 僕は慌てて彼女のもとに向かおうとするが別の気配がそこにあった。
「はい。動かないでくださいね」
「外傷は多々見られるけど傷は浅いですよ」
 理由は分からないが、ふたりの少女が真紀子さんの治療をしてくれていた。
 そのことに戸惑いはなかった。だって彼女たちの姿も一緒に見とることができたから。
「今の歌声は私たちにも聞こえました。だから……ここに来ることができたんです」
「悲しい歌声だったよ。だからこそ、あたしはあんたらのことが許せない」
 鬼一族の長女・柏木千鶴。次女・柏木梓。
「長瀬さん……もう大丈夫ですよ」
 にこりと彼女は僕に微笑んでくれた。
 それは瑠璃子さんのようにとても素敵な笑顔だった。
「ありがとう、みんな……」
 感謝の言葉がある。
 僕はもう独りなんかじゃなかった。
388名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 21:49
回すだよもん。
389名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 21:50
まだまだ回すだよもん。
390名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 21:54
『電波の少年』を『電波少年』にしたら途端に間抜けになるだよもん。
391名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 21:57
例:ほう、まだ狂っていなかったのか、電波少年よ
392名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 21:59
これを独りで笑ってしまった自分はかなり『逝ってよし』だと思うもん。
393名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 22:02
『雫』も『WA』も未プレイなところがさらに逝ってよしだよもん。
394名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 22:04
物語りも佳境だよもん。
395名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 22:06
まずは外堀から埋めていくもん。
396名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 22:07
でも出来たらこの戦いの続きは他の書き手さんにお願いしたいもん。
397名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 22:12
それではだよもん。
398名無しさんだよもん:2001/07/26(木) 22:58
>>386
×温度差でできた窓の水蒸気を見つめる。
○温度差でできた窓の水滴を見つめる。
399状況報告:2001/07/27(金) 12:55
新城沙織   祐介を助けるため、植物状態に。
月島瑠璃子  石化・その後長瀬祐介を助けるため、死亡
太田加奈子  瑞恵と共に、白狐と戦った。気絶したサラと合流。
相原瑞恵   加奈子と共に、白狐と戦っていた。初代リーフめがねっこ。

長瀬祐介   復活した緒方兄妹と戦い、狂気に呑まれそうになったところを、『歌』に救われる。
月島拓也   緒方英二と戦い、相打ち。死亡

柏木千鶴   鬼の血を引く柏木家長女。歌に導かれ、長瀬祐介に加勢。緒方兄妹と戦う。
柏木梓    鬼の血を引く柏木家次女。千鶴と共に、参戦する。
柏木楓    柏木家三女。沢渡真琴と交戦、妖狐の力を奪われる。死んだと思われていたが、誰彼部隊に助けられる。
柏木初音   柏木家四女。水瀬秋子と交戦、ヨークの力を使うも、敵わず。死亡?ほかの姉妹は、死亡を知らない。

柳川裕也   耕一と戦うため、真琴側につく。耕一と戦った後、真琴に殺されそうになるも、貴之と裏葉の横槍で、死ななかった。
       ダリエリらしい。
柏木耕一   柳川と交戦、真琴の横槍が入り、敗北。誰彼部隊に救助される。
安部貴之   真琴に攻撃、柳川を救出する。その後の消息不明。
400状況報告2:2001/07/27(金) 12:58
神岸あかり  自らの力を制御できず、芹香と戦い、敗れる。死亡
長岡志保   藤田浩之を殺され、逆上する。セリオに殺されるが、後、浩之の力により、再生。
来栖川綾香  神岸あかりに殺される。残留思念が、セリオに乗り移っていた。
来栖川芹香  ガディムを制御できず、あかりと戦う。辛くも勝つが、浩之の死体とともに焼き尽くされる。
保科智子   源之助の弟子。炎を操る格闘戦を得意とする。秋子、真琴に匹敵する力を得る。水瀬秋子と交戦中。
宮内レミィ  神岸あかりに殺される。
雛山理緒   病院でバイト。志保と浩之の殺されるさまを見て、鬱状態。
姫川琴音   超能力者。浩之を殺そうとするも、葵に倒される。死亡。
松原葵    浩之とともに殺される。真琴の配下によるもの。
HMX13マルチ  改造され、HMX14ミライに移植される。
HMX12セリオ  綾香の残留思念を受ける。浩之殺害後、機能停止。
HMX14ミライ(マルチ) 誰彼軍部によって、改造されている。現在迷子。

佐藤雅史   親友、北川を殺され、逆上。霧島聖の横にいるはずだが、存在感の薄さゆえ、忘れ去られている。哀れ。
藤田浩之   次元修正能力を持つ、プラス因子の片割れ。真琴の配下に一度殺され、後再生。その後、志保を庇って、セリオに射殺され、さらにその後、復活。現在は再生させた志保と共に、行動中。

森川由紀   七瀬彰により殺害された。しかし、復活の兆し?
緒方里奈   高位妖狐ツインテールの一人。歌で心を支配する。一度死に、復活。兄の英二と共に、祐介と交戦。
澤倉美咲   藤井冬也におもいをはせ、自殺。
河島はるか  負の次元修正能力の持ち主。電波使い。藤田浩之より『力』を譲り受ける。智子の加勢にやってきた。
観月マナ   高位妖狐、ツインテールの一人。加奈子と戦い、死亡。
篠塚弥生   半妖狐。森川由紀を愛していた。高倉みどりに思いをたくし、死亡。

藤井冬弥   森川由紀の恋人。由紀を殺した彰と和解、由紀を復活してくれるよう、スフィーに頼んだ。
七瀬彰    美咲に思いをはせ、自殺の原因となった冬弥を殺そうとした。現在、和解している。
緒方英二   通称、銀狐。緒方理奈の兄。一度死亡後、再生した。真琴配下だが、別の目的をたくらんでいる。祐介と交戦中。
401状況報告3:2001/07/27(金) 13:01
江藤結花   七瀬留美と交戦、これを倒すも、重傷を負う。戦線復帰は絶望的。
スフィー・リム・アトワリア・クリエール
       骨董美術品密輸商人。魔法使いにして、徹底合理主義者。生涯最大の術の準備を行っている。現在は病院内部に、結界を張っている。
リアン・エル・アトワリア・クリエール
       スフィーの妹。めがねっこ。死にかけていた岡田を救出。ポテトの不思議な踊りにMPを吸われる。彩、佳乃と共に、塚本千紗と戦闘開始。
高倉みどり  弥生の思いを伝えた後、真琴と交戦、死亡する。
牧部なつみ  緒方理奈の精神支配により、自殺。

宮田健太郎  妖刀、村雨を追ってきた。現在、柳也に憑依されている。往人と合流、丘に向かう。
長瀬源之助  過労死。スフィーとリアン、智子の師匠。

三井寺月代  軍部特殊部隊『誰彼』の一人。柏木姉妹の治療をしていた。
砧夕霧    軍部特殊部隊『誰彼』の一人。柏木姉妹の治療をしていた。めがねっこ。
桑島高子   軍部特殊部隊『誰彼』の一人。霧島聖と医療機関で知り合った。御堂・岩切と交戦中。
石原麗子   軍部特殊部隊『誰彼』の一人。女医。霧島聖とは旧友にして先輩。御堂・岩切と交戦中。

坂神蝉丸   不死身の軍人にして、強化兵。誰彼部隊きっての実力者。天然。
御堂     南部十二式、南部十四式カスタムを扱う。蝉丸の宿敵。ギャグ要員か、天然ボケか、どこか抜けている。
岩切花枝   強化兵士。生命樹が狙い。北川を殺害。御堂と二人そろって、独自のアホ空間を作り、霧島聖を苦しめている。

水瀬名雪   水瀬秋子の娘。椎名繭に敗北。パンドラの箱に負を浄化され、正気に返る。現在あゆを看病している。
水瀬秋子   史上最凶の邪術士。あらゆる術を使いこなし、狡猾にして残忍。しかし、真意は不明。保科智子と交戦中。
影の秋子   死亡した志保の前に現れた、秋子の影。秋子が切り捨てた、慈愛と母性を感じさせる。
沢渡真琴   妖狐の長にして、最強の戦闘力をもつ古の獣。天野と翼人、千年の決着を付けるべく、交戦中。
天野美汐   妖狐・沢渡真琴と、交戦中。翼人、神奈をその身に宿す。
402名無しさんだよもん:2001/07/27(金) 13:02
回し。現状をまとめてみました
403名無しさんだよもん:2001/07/27(金) 13:04
作品別。こみぱ連中と鍵キャラは、パス。だれか、続きお願い…
404名無しさんだよもん:2001/07/27(金) 13:06
回し。こみぱとONEやってないんですよね。鬱。
405名無しさんだよもん:2001/07/27(金) 13:07
回し。まとめてたら、3時間もかかっちゃいました。とほほ
406状況報告4:2001/07/27(金) 17:40
霧島聖   特別対策室の切札。北川に協力を依頼した張本人。
      今は『誰彼』部隊の先頭を見守っている。佳乃や雅史のことも案じている。
霧島佳乃  翼人の羽根の魔力により白穂の力を得るが、夢の中の不思議な少年に諭されて翼人の力は使用せず。
      千紗に痛めつけられてるところに、仲間の助けに安心して気絶する。  
北川潤   マスターアジアの元で神の指を会得。通り名は北方不敗。香里の忠犬。
      真琴と戦っていた舞に復讐。茜と良い雰囲気を築けたがこれまた失恋? 白弧に襲われていた
      聖を助けに入って活躍の場を見せるが、後に呆気なく死亡。これもまた脇役の宿命だ。
里村茜   美汐の修行仲間で親友。法術の威力は彼女以上。回復術に秀でる。友人の司を死なせてしまった過去有。
      負の力に飲み込まれないよう美汐を監視している。今は戦いを見守るのみ。少年の変化した物の怪の槍を持っている。
柚木詩子  茜の幼なじみであり、高レベルの法術師。幼い日に司の死を間近に見たことで怯えてしまい、
      それ以来茜との間に距離が出来てしまう。美汐に茜を奪われたと感じ、密かに対抗意識を燃やす。
      しかしその結果、秋子に魂を売って聖の力を取り込もうとするが、その戦いに破れる。
住井護   深山大僧正の命令で表向きは茜と共に美汐のサポートに当たる。高野山が全滅した今、
      現存する数少ない術師。美汐や詩子に対する詳しい感情は不明。詩子に吸収される。
国崎往人  国崎流法術の使い手。高野とは折り合いが悪く美汐個人に味方しているが、
      その感情は別なところから来ているのではないかと訝っている。今は柳也と一緒に行動している。
遠野美凪  佐祐理作の人工術師だが、高野山をマスターと誤認識させられている。
      美汐のガードに当たることになっていたが、その当人に吹っ飛ばされて行方不明に。みちると再会するが……。
遠野みちる 浩平によって美汐と真琴のDNAから作られるが、橘(?)に廃棄される。
      それを佐祐理に発見され、格闘型式神として第二の人生を歩むことになったはずが意識が暴走する。
407状況報告5:2001/07/27(金) 17:43
八百比丘尼 あまりの威力に、封印されていた翼人。娘の神奈を溺愛するあまり妖狐と人間を激しく憎む。
      雪見の身体を乗っ取って目的達成を狙うも、逆に侵食されて雪見に取り込まれる。
深山雪見  現高野山大僧正。八百比丘尼の意識と力を取り込んで、由起子の怨念を晴らそうとするが、みさきの心によって
      改心する。そして自分の出来ることを探して秋子と戦っていたが、月の霊法の意味を悟りみさきに力を託す。
川澄舞   父に母を生贄にされて以来魔を憎むようになった。左腕に「サイコカノン」を身につけ、
      ついには奥義「次元斬」を修得。数々の強敵と戦った末にものみの丘に単身踏み込むが今一歩のところで届かず。
鹿沼葉子  郁未に次ぐ不可視の力の持ち主。真琴側の郁未たちを裏切った。
      祐一や覚醒前のあゆの力を狙っていたが、意見を翻して街を出ようとしていたところ秋子に捕まり贄にされる。
ティリア  佐祐理に召還された光の勇者。しかし出番らしい出番なく秋子に捕まり生贄に捧げられる。
      これも知名度の低さゆえだろうか? 誰彼よりも目立てなかった忘れられた存在。
大庭詠美  数多のおたくを引き連れやってきたこみぱのくいーん。一回警察に捕まるも釈放。
      おたく共を供え物にしてたこのかみさまの復活を狙っていたが秋子さまに野望を粉砕される。
九品仏大志 あさひを追ってやってくるが、詠美の術に取り込まれて仮想現実の世界で秋子と戦う。負けたので生贄。
芳賀玲子  七変化の玲子。腹黒い姉妹の翔様総受け本目当てで詠美の案に乗るが失敗。今は別の地にて療養中。
裏葉    真琴の娘だが、敵方である高野の神奈備命の女官となった。鬼菩薩と呼ばれたほどの法術の使い手で、
      その血は美凪のベースとされた。現在は瑞佳の身体に共生し真琴と美汐の戦いを見守る。
柳也    よくわからないうちに転生させられた神奈の随身。往人と共に丘の頂上に向かう。村雨を持っているらしい。
名倉友里  不可視の力の使い手。あまりにも目立たないので秋子に相談。郁美を裏切って永遠を求める。智子と戦って敗れる。
名倉由依  友里の妹。姉の死を受け止められずに、永遠はあるんだよもんに連れて行かれる。
408状況報告6:2001/07/27(金) 17:45
川名みさき 心眼の使い手。今では雪見の力も受け継いで月の霊法も扱えるらしい。視力も回復している。
      椎名繭と七瀬留美と一緒に行動している。しかし余命数時間の命らしい。裏切り者について考えている。
上月澪   心優しきゴッドハンド。言葉の代償に力を得た。本調子ではないのであっさり名雪に敗北。今はあゆの隣で寝ている。
椎名繭   かつて伏龍と呼ばれたほどの天才少女。不可視の力や法術を研究していた。知識と知性を引き替えに澪の使徒となったため、
      天然ボケになっていた。今は留美とみさきと行動している。みんなのブレイン。
七瀬留美  妖狐の少女。高野山に潜入した際に浩平らと出会う。彼が永遠に消えて以来の記憶がなかったが全てを思い出してからは、
      繭たちと行動を共にしている。今は髪の毛はショートカット。パンドラの箱の力で妖力はなくなたらしい。
長森瑞佳  治癒能力を持つ郁未の友人。両親の都合で高野に預けられたことがある。
      現在は裏葉と共生関係(?)になり、真琴と対峙する。皆の記憶を消したのは彼女?
氷上シュン 本当の永遠を手に入れた浩平に執着するが、みさきに牽制され戦線離脱して仮初の永遠に身を潜める。
      永遠の世界の管理人であり、みさおやなつきとも旧知の仲。しかし今は何かをやろうとしている?
折原浩平  大僧正だった由紀子の甥。妹みさおを救おうと法術を習うが、彼女の死により禁忌反魂の術に手を出す。
      その結果完全なる「えいえん」を手に入れ、この世から消えた……と思われていたが。
折原みさお 浩平の妹だが、病で亡くなる。現在は永遠の世界の管理人となっている。
相沢祐一  プラス因子を持ち、次元矯正力を秘めているらしい。あゆを追い、名雪に別れを告げ水瀬家を出る。
      戦闘能力の有無は今のところ不明。ものみの丘に向かったが、名雪に捕まり氷付け。今のところ出番なし。
409状況報告7:2001/07/27(金) 17:46
折原由紀子 高野の大僧正だった。八百比丘尼に憑かれた雪見に殺される。
高槻    FARGOを追って美坂家に乗り込むも、香里に返り討ちに。
倉田佐祐理 妖狐に襲われ力を食われるが、土壇場で真琴に罠を仕掛ける。現在はあの世から街を観測中。
アレイ   あさひの人格「ピーチ」によって魔界に返される。
イビル   あさひの多重人格並操に敗れ、魔界に返される。
エビル   あさひの多重人格並操に敗れるも、彼女に覇滅の楔を打ち込んだ。
たま 封印の御子・ピーチに遭遇し、魔界に返される。
美坂香里  ゴッドハンドと化した栞に贄にされるも、脱出。姉妹和解したところ、納得ずくで舞に消される。
美坂栞   覇王の卵によりゴッドハンドとなる。香里と和解し、幸せをつかんだまま天へと還る。
高倉みどり 弥生にシンパシーを感じ、仇討ちに真琴と対決する。傷を負わせるも死亡。
高野山の僧兵  何者かの手により、外部にいる少数の生き残りを除き全滅。
ゴッドハンド  繭に預けたパンドラの箱に負を吸収しきられ、消滅。
ルミラ・ディ・デュラル
      あさひと真っ向から戦い、全魔力を出し切り魔界へ帰る。
      桜井あさひ覇滅の楔の影響で、ルミラを魔界に返すと同時に死を迎える。
410名無しさんだよもん:2001/07/27(金) 17:49
乗りでこちらに書いてみただよもん。
411名無しさんだよもん:2001/07/27(金) 17:52
『状況報告7』はだってばよさんのをそのままコピーさせて頂いただよもん。
412名無しさんだよもん:2001/07/27(金) 18:00
とりあえず自分の使ったことのあるキャラだけ(二名を除く)の近況報告。他はよく分からないだよもん。
413名無しさんだよもん
それではだよもん。