葉鍵聖戦 2nd period

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1某一書き手
2000年冬から2001年へ不意に続く、もう一つの世界。

葉鍵キャラがオリジナル設定で大暴れしまくりな日記形式のリレー小説だゴルァ(゚д゚)
書き手も読み手もルール守ってマターリ逝こうぜゴルァ(゚д゚)

1 基本的にsageでお願い致します。
2 どんな人間がどのキャラを書くのも構いませんが、
それまでの伏線は重視する方向でお願い致します。
3 あまりに立て続けのカキコは自粛しましょう。
4 これはあくまでの2chのスレッドです。
  当然書き手に否定的な意見等もあるかもしれませんが、いちいち反応せずに、
  作品で結果を見せましょう。
5 他の書き手が納得出来ない展開はご遠慮下さい。
6 新規参入者は、過去ログを熟読して下さい。
7 1つの書き込みをした後には必ず2回ほど回して下さいますようお願い致します。
  なお、連続で書き込む場合は、書き込みが終了した後に数回回して下さい。

では、貴方も葉鍵な聖戦の世界へ……

なお、過去ログ等は>>2にございます。
2某一書き手:2001/02/19(月) 03:24
前スレおよび過去ログ等は下記の通りです。

前々スレ:「邪悪な葉鍵キャラの日記」
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=973607248

前スレ:「葉鍵聖戦」 (現在、閲覧不能です(2001.2.19現在))
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=975572864

過去ログ保管サイト
http://members.tripod.co.jp/bou_ichikakite/

また、掲示板もございます。ご意見、批評、感想、要望および雑談等はこちらにお願いいたします。

「葉鍵聖戦な掲示板」(名無しさんだもんよ氏運営)
http://green.jbbs.net/sports/310/xiantou.html
3国崎往人(1/2):2001/02/19(月) 03:30
 俺は目の前で起こった光景に身を震わせていた。
(おいおい、どうしたんだよ?)
 美汐から放たれたこの上ない力は妖弧どもを一蹴していた。以前の美汐からは考えられないほどの出力をもって。
(これも神奈を降ろした影響なのか?)
今まで見せたことないような顔を作って美汐は言う。
「んじゃあ、今度は追撃戦と行こうか」
「お、おう」
 少し躊躇いながら俺は返事をしていた。
(なんだ、この感覚は……?)
 美汐の一挙一動に不自然さが見えた。長年に渡って培われた勘が何かを俺に伝えている。
 しかし、それも思考する前に泡のように消えてしまった。目の前に現れた一人の男の存在によって。
「よっ。待ってたぜ、天野」
「……誰?」
 駆けていた丘の向こうに人影があった。随分と余裕そうにへらへら笑っている。
 だけど、嫌味は感じない……そんな不思議な表情だった。
 何かを諦めた者の持つ空虚感かも知れない、と俺は場違いなことを考えてしまっていた。
「ふっ、相変わらずきついね。北川潤だよ、覚えてねえとは言わせないぜ?」
「……知らないわ」
 北川と名乗った男は肩をすくめて見せた。どこか底知れない笑みを浮かべながら続ける。
「まあ、いいや。天野がここで死ぬってことに変わりはないんだからな」
「随分な言い草ですね」
 俺の背中に悪寒が疾った。
(こいつ……)
 美凪とみちるに目で合図を送る。美凪は静かに頷き、みちるは『あっかんべー』で返してくれたが、
 二人にも分かっているみたいだった、目の前にいる男の強さと妖気を……。
4国崎往人(2/2):2001/02/19(月) 03:31
「無駄話はこれくらいにしとくか……」
 北川が歩み寄ってくる。
 その挙動にまず動いたのが美凪とみちるだった。
 奴目掛けて美凪が符を投げつける。それを躱そうともしないで北川は素手で受け止めた。
 ――ところで、眩しいまでの光が目の前で弾ける。
「目暗ましか!?」
「もらった!」
 みちるが奴の後ろを取っていた。そこから放たれる蹴り。
 もちろんただの蹴りではない。みちるの腕力は地面を軽く割るくらいの力があるのだ。
「狙いはいいんだけどな……」
 それを奴は片手で受け止めていた。紅く染まるオーラを纏って不適に笑う。
「お前らは眼中ない。おとなしくしてろ」
「わあああぁぁぁぁぁあああーーーーーーーっ!」
 ぽいっとみちるを放り投げる。
 こちらを向いたその姿は炎のように、血のように赤くて……。
「その力……」
「ああ、やっぱり天野には分かるか? 明鏡止水の心……何事にも揺らぐことない強固な魂……」
 薄ら笑いを浮かべて奴は言った。
「沢渡真琴から貰った力だよ」
 4対1だというのに、俺はまったく勝てる気がしなかった。
5名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 03:32
回します。
6名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 03:33
回し。
7名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 03:33
回し。
8名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 03:34
回し中です。
9某一書き手:2001/02/19(月) 03:35
一応、前スレにあった作品を一部掲載させて頂いておりますが、
連続した書き込みをした時は上記の様な回し方でいいかと思います。
10名倉友里:2001/02/19(月) 03:36
「あそこがそうか……」
「そうみたいね、兄さん」
 二人の妖弧が口元を妖しく歪める。それは緒方兄妹だった。
銀狼¥助が言うには瑞希は逝ってしまったらしい。だからと言われても別にどうでもいいことだった。
 私たち姉妹にとって必要なのは妖弧の大群を操れる上位のツインテールなのだから。
「お姉ちゃん」
「なに?」
「もうすぐで永遠が手に入るんだね?」
「ええ、そうよ」
 私は優しく由依の頭を撫でる。
 銀色に染まった街。視界の向こうには長瀬一派の拠点があった。
『…………』
 白色の妖弧が緒方の許に跪く。どうやら準備は整ったようだ。
 白い毛皮は中位の妖弧の証だった。今までの下位妖弧の何倍もの妖力を秘めている。
 それが五千。奴らの拠点を取り囲んでいるのだ。
「聞け! 我が眷属よ!」
 緒方がそれらに向かって叱咤する。
「真琴様の復活はなされた! 時代は我らのものである! それを阻む愚か者どもをこの地にひれ伏せさせよ!
 敵は彼の地にあり! 全軍突撃ガンパレードマーチ! 真琴様のために命を懸けろ!
 最後の一匹までことごとく敵と闘って死ね! 持っている全ての妖力を駆使しろ! これは聖戦である!」
 街の中からは次々と鬨の声が上がる。どこまでも空高く『コーン!コーン!』と響いていた。
「突撃!」
 その声に応えて凄まじい雄叫びが街を包み込む。
 白い妖弧の一団は雪崩のように止まることない勢いで、ある一点に収束していった。
「俺たちも行くぞ!」
「分かってるわ!」
 それに続いて緒方兄妹も意気揚々と戦地に向かっていった。
 再び闘えることに歓喜を抱いてだろう……兄妹の表情は至福に満ちていた。
「妖弧か……いずれ奴らも……」
 私は奴らのあまりの滑稽さに笑いを禁じえなかった。
「それじゃあ、私たちも行くわよ」
「うんっ」
 そうは言っても別に奴らを協力しに行くわけではなかった。
 今の私たち真琴よりも秋子の命令で動いていたから。
 すなわち、それ――
「この混乱に乗じての保科智子の暗殺か……案外簡単に終わりそうね……」
 雪の街が今紅く染まろうとしていた。
11名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 03:37
回します。
12名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 03:38
回す回数は1作品あたり2回がいいかと……。
13月宮あゆ:2001/02/19(月) 03:39
「そう、里村さんって人を探してるんだ?」
『でも、道に迷ったの』
「その人……里村さんだっけ? 行き先とかは分かる?」
『繭ちゃんが地図を描いてくれたけど、無くしちゃったの』
「そうなんだ」
 うぐぅ、とボクはため息をついた。
(ボクだって迷子なのに人捜しなんて出来るのかな?)
 そう思っていた矢先、街を響く轟音が聞こえた。
「なに?」
 白い塊りが商店街を突き抜けようと真っ直ぐに進んでくる。
 あまりの勢いに逃げられないと悟ったボクは、咄嗟に光の翼を広げて大空に舞い上がった。
「澪ちゃん、ボクに掴まってて!」
『わかったの』
 間一髪のところで白いものが駆け抜けていく。
「雪崩? ううん、違う……あれは妖弧だね」
『それも一杯いるの』
 どうなっているのかよくわからないけど、妖弧の向かった先には何かがあるんだ。
 でも、そこに行くのは非常に危険だということもわかった。
「…………」
 そして、次にボクの取った行動は……。
14名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 03:40
回します。
15名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 03:40
回し。
16椎名繭(1/2):2001/02/19(月) 03:41
 水瀬名雪……。彼女の存在が希薄に思えてならなかった。
 あの邪術士の娘。そう、それが引っ掛かる……。
 どうしてだろう? こんなにも違和感を感じるなんて……。
 千年生きてきたという水瀬秋子と、その境界線上にあるこの街……。
 物の怪の丘のある、この地に彼女が根を下ろしたのが偶然だったとは考えにくい。
 だったら、あるいは……。
「あの、七瀬さん……」
「なに?」
「名雪さんって……本当に水瀬秋子の子供なんでしょうか……?」
「え、どういう意味?」
「それは……」
 話そうとしたときに川名さんがいないことに気づく。
「あれ? 川名さんはどうしたんですか?」
「ああ、あのね……」
 七瀬さんが私に耳打ちする。なんでも生理現象がどうのこうのって……。
「トイレのことですか? だったら、そう言ってください」
「あのね、乙女はそんなはしたないこと口にはしないものよ。それに……」
 もごもごと口ごもる。
「どうしたんですか?」
「もういいわ。繭はお子様だからいいかもしれないけど……鬱だわ」
 ああ、ここは山の中だから、自分も催したとき、どうしたらいいかってことですか……。
 呑気ですね……。次の瞬間には命を無くしてるかもしれない状況なのに。
 でも、だからこそ、七瀬さんたちといて良かったとも思えます。それって意地悪でしょうか?
 だけど……。
 私はある可能性に思い至って激しい自己嫌悪に陥ってしまった。
17椎名繭(2/2):2001/02/19(月) 03:42
「探しに行きましょう!」
「え? ど、どうしたの血相変えて?」
「しくじりました」
「だから何が? 何なの? どうなったって言うのよ!?」
「白状します。私の結界は……存在を希薄にして気配を消す能力のことですけど、欠陥があるんです」
「え?」
「せいぜい一人。多くても二人。とてもじゃありませんが三人なんて大人数はカバーできません」
「それって、ここに私たちがいるのがバレバレってこと?」
「半分はそうです。でも、私は細工をして、見つからないように、カモフラージュをしていたつもりでした」
 そうなのだ。だからこそ二人には要らぬ心配を掛けないよう話さなかったのだ。
 その場から動かないこと。限定結界。範囲は狭まるが効力は格段に上がるはずだった。
「でも、それを見破れるほどの人物がいた。一人は川名さん自身の心眼と……」
「もう一つは?」
 私は息を飲んで応えた。
「……水瀬秋子の邪眼です。それしかないでしょう」
「うそ……。だって、みさきさんはトイレに行きたいって出て行っただけなのよ」
「……言ったはずですよ。永遠の存在に気づいているものなら、もうお腹が空くこともないし、
 食事をとる必要もないってことを知っています。もちろん、生理現象だって起こりません」
「じゃあ……」
「川名さんは気づいていました。だから……」
「急ぐわよ、繭!」
「はい」
 私は悔しくて舌打ちしてしまう。
 お願いです川名さん、早まらないでくださいよ……。
18名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 03:43
まわします。
19名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 03:43
まわします。
20名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 03:44
まわします。
21名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 03:44
まわし……これで完了です。
22某一書き手:2001/02/19(月) 03:47
一応、2月13日に前スレに掲載されていたログの一部を転載いたしました。
なお、>>12の「1作品」は「1回の長文書き込み」の間違いです。スマソ。
23某一書き手:2001/02/19(月) 03:56
そうそう、後書きや訂正などがございましたら、>>22のように回した後に
書き込めばよろしいかと思います。
「……なんとか……追手を巻いたみたいですね……」
 彩が背後をうかがいながらほっと胸をなで下ろしていた。
「でも、まだ油断はできません、くっ!!」
 俺は咄嗟に急ブレーキを踏んだ。

 キィィィィ!!

 車輪が悲鳴を上げていた。
 スピードは多少落ちるものの、路面が凍結しているために車はやや斜めになったまま、
なおも進み――ていうか滑りつづけていた。
「くそったれ!!」
 俺は下手にハンドルを動かさずに、ブレーキを懸命に踏みつづけていた。

 キィィィ……。

 やがて……悲鳴を落としながら……車は止まった……。
 運よく――俺にブレーキを踏ませた原因のほんのわずかな手前で止まった。

「……何があったのですか……!?」
 急ブレーキの衝撃で彩が額に手を当てながら、俺の方を睨み付けてくる。
 声にもわずかながら怒気が含まれていた。
 どうやら、前の座席に頭をぶつけてしまったらしい。
 そんな彩の膝の上には和樹が倒れ込んでいた。
 瑞希も危うくダッシュボードに頭をぶつけそうになったものの、シートベルトを付けてい
たために、損傷は免れたといった様子だ。
 そーいや、怪我人がいたことをすっかり失念しちまってたな……。だが……。

「あれを見て下さい」
 俺は目の前の「原因」――二つの人影を指差した。
 行く手を遮るかのように、この「原因」が横切ろうとしたのが目に入ってしまっての事だ。
「……よく気付きましたね……でも、こんなところで交通安全もへったくれもないです……」
 彩はため息を吐きながら、目の前の二人――青い髪の女を背負った、すみれ色の髪の女を
じっと見詰めていた。
「……危ないですよ……」
 後部座席に乗っていた、いかにも暗そうな黒髪の女の人は開口一番にそう言ってきた。
 ちょっと、待ってよ。それはあんたたちでしょ――と言い返そうとした時、ふと、手元の銃
が目に入った。しかも、足元のスポーツバッグからはさらに大量の銃弾が顔を覗かせていた。
 ――なんか、ヤバそうな方達ね――いつでも、射殺はOKってこと?
 下手に反抗せず、ただごめんなさいと謝った。
「……そういう意味じゃなく……この区域にいるのが、貴女達にとっても非常に危険だと言っ
てるのです……」
「え? それはどういう事?」
「……リアンさん……まずいです……」
 黒髪の女の人は運転席にいた、眼鏡をかけた青い髪の女の人――ていうより女の子の方が適
当かな――に声をかけていた。ちょっと、こっちの質問に答えずに無視なんてどういうつもり?
「妖狐の群れの気配が近づいていますね。見つかるのも時間の問題です。
 じゃあ、とにかく瑞希さんを後部座席に移しますので、手伝ってくれませんか?」
「……分かりました……」
 黒い髪の女の人はすぐに車から降りて、助手席側のドアを開ける。そして助手席に座ってい
た紅い髪の女の人――その人はどう見てもかなりの重傷を負っている状態だった――の両肩を
掴む。そして引きずり出すと同時に、運転席にいた青い髪の女の子が足を持って、二人掛かり
でそのまま後部座席に運ぶ。そして一連の作業を終えると、青い髪の女の子はあたしに向かっ
て言った。
「とにかく、一旦この場から立ち去ろうと思うのですけど、どうですか? 巳間晴香さん」

 な、なんで――あたしの名前を知っているのよ?
 こいつら一体……何者?
 あたしがさらに警戒してしまったのは言うまでも無かった。
 ――ちょっと待ってよ!!
 車が走り出してから、間もない内に状況は悪化した。

 突然、背後の脇道から白い妖狐どもがこちらに向けて押し寄せてきた。
 白の妖狐ときたら、中位の妖狐で精鋭じゃないの!!
 しかも数はこれまたとんでもない数……追いつかれたらお終いね。

 見ると、彩っていう黒い髪の女が、窓から身を乗り出して、追手に向けてマシンガンを乱射
していた。弾が命中した分だけ妖狐は倒れているのがバックミラー越しに見えるが、それでも
数は全然減っていないような気がする。

「く……これじゃあ、らちがあかない……。
 妖狐3000に加えて、白の妖狐1000ってところか……」
 リアンはそう小声で呟いた。そして――。
「晴香さん。車の運転はできます?」
「へ?」
 あたしは一瞬呆気に取られた。
 一体何を言い出すのかと思えば……。初対面の人にいきなりそれは……。
「だから、運転できるかと訊いているのですが……」
 リアンの声にいらだちが含まれていた。
「い、一応ね」
 そう、あたしはFARGOの施設から逃げる時に、施設の車を奪い取った。
その時に運転したのだけど……。ただ免許は持ってないけどね……。
「そう。だったらこの後の運転頼みます」
 リアンはそう言って、後部座席に素早く飛び移った……って、運転席がお留守じゃないの!!
 あたしはとっさに運転席に移った。(郁未には悪いけど、太股をふんずけじゃった……)
 とにかく、ハンドルを握って、アクセルを吹かす――って、事故っても知らないよ?
 リアンはそんな私に構うことなく、後部座席の窓から身を乗り出して、拳銃を妖狐どもに
ぶっぱなしていた。
 もう、どうにでもなれって気分で、あたしは夢中でハンドルを握っていた――。

 こうして、命懸けのカーチェイスにあたし達も巻き込まれる羽目になってしまった――。
 ――ひっ!!

 ハンドルを取られそうになって、危うく壁に車をぶつけそうになった。
 狭い路地で、しかもこの雪道を時速70キロ……あまりにも無茶すぎるわよ。
 道は雪が積もってるから、遠慮なく滑ってくれるし……。
 本当、今こうしてまともに逃げているのが奇跡ね。

 後部座席では彩がマシンガンのカートリッジを交換して、再度左側の窓から身を乗り出して、
追っかけてくる妖狐の群れに銃弾を浴びせていた。一方、リアンも拳銃を手にして、やはり右
側の窓から身を乗り出していた。
 とにかく、銃声とタイヤの悲鳴が周囲に響いていた。

「ちっ!! これじゃあ埒があかねぇな」
 リアンは舌打ちすると、弾の切れた拳銃を車の床に放り出し、何かしらの文句を呟き出した。
 日本語ではないのは確か。何を言っているのかさっぱり分からなかった。
 そして、彼女は左手をゆっくり突き出して、大声で何かを叫んでいた(もちろん意味不明)。

 ギャアアアアア!!

 ――何なの……あれ?
 耳をつんざく獣の鳴き声がしたかと思うと、リアンの左手から巨大な竜(の様な生物)が飛び
出した。その竜らしきものは出てくるや否や口から炎を出して、妖狐どもにお見舞いしていた。

 ――こいつら……一体、何者?

 バックミラーに写る超常現象に呆然としていたが、すぐに我に返って目を前に戻した。

 ――やばい!!
 なんと、目の前の道が右へ折れていた。
 このスピードで曲がれるの……!?
 恐いとか、もう終わりだとか――そんな感情はなかった。
 むしろ恐いぐらい冷静だった。
 あたしはハンドルを強く握ると、神に祈る思いでハンドルを切った――。
 目の前には――

 ……ビルの谷間が延々と前へ伸びていた。
 どうやら……曲がれたみたい……。
 だが、胸をなで下ろすまでの余裕はなかった。
 後ろからは相変わらず妖狐の群れが、洪水のように背後の路地を飲み込んでいっているから。

「……晴香さん……大した腕前です……」
「どうも」
 彩の誉め言葉にあたしは素っ気無く答え、そのまま前に集中していた。
「ちっ、サラマンダーの炎でも奴等は懲りねぇか……」
 対照的にリアンは不機嫌そうに後を追いかけて来る妖狐の群れを恨めしそうに見ている。
 たしかに強烈な炎を浴びせて、数は一気に減らせたと思ったのだろうけど、現実はそんなに甘
くないようね。さっきと数は一向に減っていないような気がする。
 リアンはまた、例のわけの分からない外国語(?)で何かを呟くと、左手の中にサラマンダー
を収めた。そして、大きなため息を吐く。
 一方、彩は銃器で狐を撃つのを止めて、ノートパソコンをスポーツバッグの中から取り出して
いた。画面を開けて、忙しくキーボードを叩いている。
「カーナビでも付いてるの、それ?」
「……いいえ。衛星の電波が届いていないから、カーナビは使えません……」
 冗談の効かない女ね。
 その間にも車は一つの交差点を通りすぎた。
 右手にはほんの一瞬、あの例の丘が小さく見えた。
 そのまま通りを曲がることなく、目の前の細い路地を突き進む。
「……次の交差点で左に曲がって下さい……」
「いいわよ」
「……そして曲がったら、思い切りアクセルをふかして下さい……」
「ちょっと、何をするつもりなの?」
 彼女の意とが全く読めなかった。
 彩の顔を見ようとちらっとバックミラーを覗き込む。
「……今から……面白いものをお見せしましょう……」
 そう言って、彩はかすかに微笑んだ。
 その笑みが――どことなく不気味に見えたのはあたしだけだろうか……。
「分かったわ」
 あたしはそれ以上何も言わず、やがて見えた交差点をなんとか左に曲がりきった。
(中編2と同じ頃――)
「兄さん、なんか変な音しなかった?」
「ああ。俺にも聞こえた。
 どうやら車のブレーキ音のようだな……」
 狐どもに合図を送った直後に理奈が聞いた音――それは間違いなく車のブレーキ音だ。
 ――保科への援軍か? となれば厄介な事になるな――。
 するべき事は一つだ。
 ――潰しておく必要がある。
 俺は、今し方突進していった5000の妖狐のうち、1000の妖狐に命じた。

 ――近くを走っている車を襲撃せよ、と。

 それまで雪崩のように押しかけていた妖狐の群れが二つに分かれた。分かれた方はひたすら
音のした方角へと突進していく。

「ちょっと、兄さん。そんな仕事をさせるのに眷族を向かわせるなんてもったいなさすぎるわよ。
 むしろ、あの役立たずの名倉姉妹をけしかけた方がいいと思うけど」
 理奈は当然口にするであろう疑問を投げかけてきた。
「まあまあ。あの姉妹は行ってしまった後だ。それにどうせ、水瀬秋子にけしかけられてやって
いる事だろう。俺達が勝手にいじくっては後が厄介だ」
「なんで、あの女の意向を汲んでやるのよ。あんな女のさばらせておいたら害になるだけよ。
 それにあの年増女自体、私は気に食わないのよ」
「まあまあ、落ち着け。俺だってあの女の言うがままになってやるつもりはさらさらない。
 ただ、利用する価値は十分にある――。
 というか、まあ俺達が徹底的にしゃぶりつくした上で、再起不能にしてやるだけだがな」
「なぁるほど……」
 理奈は満足げな笑みを浮かべていた――。
 そこは大きな通りだった。
 両側はビルに囲まれているものの、目の前には何の障害はなかった。
 もっとも――吹雪のせいで視界が悪いってのはあったが。

「じゃあ、いくわよ」
 あたしは一気にアクセルペダルを踏みつけた。
 エンジン急に激しくうなり、周囲の風景の流されていくのが早くなっていく。
 バックミラーを見ると、妖狐の群れが先程通ってきた所から、この通りへと流れ込んでいく
のが見えた。相変わらずものすごい執念だこと……。

 ……120……130……140……150……160……170……
 スピードメーターはどんどんと上がっていき、やがて針が振り切れるという所まできていた。
 今まで背後を追ってきていた妖狐の群れがみるみるうちに小さくなっていく。

 そろそろビル街を出ようとしていた頃――。
「……そろそろですね……」
 彩はじっと腕時計を見ていた。
 何かのタイミングでも計っているの……?

 そして――ビル街を抜けると――

「……いきます……」
 彩はキーボードの一つを強く押した――。

 どどどどどーん!!

 ――!?
 背後から地面を揺らすような大きな轟音がした。
 咄嗟にバックミラーをみると――

 ……ビルが……崩れていってる……。
 鏡の中には信じられない風景が広がっていた。

 ビルが次々と通りに向かって崩れていく。

 さっき通った大通りや――そこを通っていた妖狐どもが――
 ――崩れていくビルのがれきに埋もれていってる――。

 間違いなく――全滅ね――。

 あたしは……言葉が出なかった。
 ただ……リアンと彩は……満足げにその光景を見ていた――。
31名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:19
回し。
32名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:20
あと13回…。
33名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:20
でも、回す。
34名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:21
回しの最中にネタをしたいが……我慢。
35名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:22
回すお〜。
36名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:26
やっとあと一ケタに入ったよ〜。
37名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:27
でも、まだ回すよ〜。
38名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:27
回し。
39名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:28
やっと半分。
40名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:29
回し。
41名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:29
まだ回し。
42名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:30
回し。
43名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:31
ちょいネタ入ってるっぽい……回し。
44名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:32
やっとラスト……回し。
45某一書き手:2001/02/19(月) 04:36
ここでちょい訂正です。
>>26のタイトルにミスがありました。
正しくは「巳間晴香 ―the background of their fight(中編−3)―」です……。
しかも、今見返したらスレ立てた本人が連続カキコをしている形になっちまってる……。
羽都打篠兎……。
46名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 04:41
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  答えたまえ。もう少し短いのでもいいのかね。
\_  ____________
   ∨
  ___
 | ∧_∧ フー
 |( ´∀`)y━~~~
 |( ⊃  ノ
[]/⌒ヽ[]
 (__)⌒|
  _||(_)
47スフィー 〜滅亡の前哨戦〜:2001/02/19(月) 09:17
何やら、穏やかならぬ方向に事態が動いてやがるな。
銀狼……なかなかハッタリが効いてやがる。名前だけでなく、能力の方も高そうだぜ。
あんな小生意気なクソガキは俺が畳んでやってもいい処だが、生憎と俺はパンピーどものお守りをしてやらなくちゃいけねえ。……ったく、長瀬のじーさんにここまで借りがあったっけねぇ。ま、今更足抜けはできねえだろうけどよ。
 ひとまず、リアン達もここに向かっているはずだから、防衛戦が有利だ。こちらは臨界点ギリギリに陣形を組み、迎撃する。上手くいけば、リアンの方と挟み撃ちが可能だ。
 俺と智子が参加できねぇから戦力はがた落ちだが、それでも聖やら佳乃やら祐介やらの戦闘能力を考えれば、何とか凌ぐくらいの事はできるだろう。リアンとの挟撃が成立すれば、ほぼこちらの勝ちだ。
 俺が指揮してやろうかとも思ったが、聖に任せる事にする。俺は結界から出れないし、奴の常にクレバーな思考は、ある意味俺以上に的確だ。
 ま、きっと何とかなるだろ――
48保科智子 〜未踏の超越者〜:2001/02/19(月) 09:19

 パリパリ……
 乾いた血で硬くなった包帯を剥がし、捨てた。代わりにセーラー服の一部を破き、太股を縛る。血はすでに止まりかけているが、不可視の力でえぐられた傷は容易に塞がらない。
 私は、大きな木立の陰で一人呼吸を整えていた。連日の死闘に次ぐ死闘で、一息つく暇もない。あちこちに負った怪我が、思い出したように痛みを訴え出す。
(やれやれ……ここに捨てられてから何日経つやろか)
 溜息をつき、すっかり筋肉が硬直してしまっている両腕を眺める。
 ――そして、気配を察知し、大きく息を吸い込んだ。
「グウォォォォォォ!!」
 背後の樹を薙ぎ倒し、私に迫る巨体。鬼だ。
 大木を一撃で爆砕したその一撃を、私は右掌で受け止める。
「グゥオオオオオ! グオ!」
 鬼が、怒り狂う。女の細腕に自慢の一撃を止められて、プライドが傷ついたらしい。
 ――まあ実際、無茶苦茶な話ではある。私もまさか、こんな真似ができるようになるとは思わなかった。どんどん目醒めてゆく力が、未だにはっきりと自覚できない。
「とりあえず――逝けや!」
 私は、鬼の拳を――握り潰した。半狂乱になるその巨体を、拳鎚のみで叩き伏せる。
 ……やれやれ。これで何匹めだっけ。
 鬼の死体を見下ろしながら、私はもう一度溜息をつく。
 次の殺戮者の息吹を、間近に感じながら――
49名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 13:46
少しだけ語るだよもん。
50名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 13:47
上記の>>47はスフィーが結界を張って智子と一般人を護ってるんだよもん。
51名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 13:48
前スレよりだよもん。
52名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 17:05
 あと「ONE」の昔からそうだが、どーしてここのゲーム会社の主人公どもは、じっとしてられないのか。せんぷーきに向かっていまさらのようにワレワレハコノホシヲとかやるなよ……。そんなんだから仏頂面しててもいい人に見えるとか思われるんだぞ。確かにそんなに無防備な人間に悪人はいねーだろう。
 あと主人公の思考パターンがしょうもなくていいですな。人形をなくして窮地に立ったときに、カバンのなかを見て「動かしても愛嬌のあるモノがない」と慨嘆するあたり。思考法がそっちにしか行かないあたり、本気でセンスがねえのだと思われる。説得力ある。
53名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 17:05
あと!!
 晴子さんさいこー。
 いやなんかもう、酒飲まなきゃやってられないよーなしょうがなさそうな人ではあるんですけど、いや、いっすよ。このノリ。このツッコミの反射神経は七瀬の再来だ。娘さんボケの親御さんツッコミ。ああいい親子だ(←なにゆってるかおまえ)。こういう豪快さんな人には無条件で弱い。内面が実にしょーもなさそーなあたりもよい。一升瓶で飲んでるあたり、安そうな日本酒である点もよい。あれは白鶴マルとかのものもとかそういうレベルの日本酒なのだと思った。勝手に。もう酔うために飲む、というコンセプトがはっきりしてるあたりがいいぞ晴子さん!!
 冷静さ?
 はッ。ないよそんなもの(なにを強気になっておるか)。


 
54ト書き:2001/02/19(月) 17:08
>>52-53
こらこら。大人げない。
55名無しさんだよもん:2001/02/19(月) 17:30
>>54
いま流行りの新手のコピペ荒らしです。
忘れて続けましょう。
56水瀬名雪:2001/02/19(月) 20:56
 私が追いかけていたのは三人の少女たち。
 永遠を追う者……お母さんはそう言っていた。
 だから、彼女がそこで待ち構えていてくれたのは都合のいいことだった。
「待たせたみたいだね」
「……ううん、そうでもないよ」
 私の軽口に平然と応えるのは盲目の才女$名みさきだった。
 盲目の才女だった、と過去形で言うべきかな? 今では目が見えるみたいだからね。
「一人で来るとはいい度胸だよ」
「うーん、ちょっと訳ありなんだ。こうでもしないと名雪ちゃんに負けちゃうからね」
 私の名前を知っていることに驚くこともなく……。
「そう? 負けるのは貴女のほうだよ」
「そうかもしれないね」
「随分と余裕だね。気に入らないよ」
「これでも緊張してるんだよ?」
 川名さんはくすっと微笑を漏らした。その仕草も気に入らなかった。
 私は殺気を顕わにして間合いを詰めようとしたとき……。
「待って!」
「……命乞い? 言っておくけど、無駄だよ」
「違うよ。場所を変えようと思ってね」
「……?」
「そうじゃないと、あの子たち来ちゃうから……」
 それは椎名繭と七瀬留美のことだろう。
 お母さんは五人の少女のうち、椎名繭と七瀬留美、それに上月澪と長森瑞佳、
 そして、目の前にいる川名みさきのいずれかの抹殺を命じてきた。
 でも、そのうちの処分は一人だけ……。
 だとしたら、そうなるほうが私にとっても好都合なのかもしれない。
「分かったよ」
「うん、ありがとう」
 結局、場所を移しての仕切り直しになっちゃうんだ。
 早く祐一のところに帰りたいのにね……。
57水瀬名雪:2001/02/19(月) 20:57
回すよーっ。
58水瀬名雪:2001/02/19(月) 20:58
もう一回いくよーっ!
59柏木耕一@悲しい結末(1/7):2001/02/19(月) 23:42
「いや、もう遅いか……戦いの火蓋は切って落とされたのだからな……」
 遠くから妖弧どもの雄叫びが聞こえてきていた。
「これは!?」
「戦いののろし代わりだよ。お前たちの潜伏先に妖弧の大群を送らせてもらった」
「くそっ! 楓ちゃん、ここは一端引いて千鶴さんたちを――」
 言い掛けたところで背中に悪寒が疾った。
「引く? 言ったはずだ……戦いはすでに始まっていると」
 低い声だった。しかし、それは誰であろうと屈服してしまいそうな重みがあった。
 鬼の身であっても耐え切れないほどの重圧。身体が怯えきっているのか、力が抜けていくようだった。
「それに、楓の中に眠る私の魂の欠片も回収しなくてはな……」
 瞳の色が金色に煌いていた。揺らめく九本の尾。それすらも全て光り輝いて……。
「逃げるぞ!」
 楓ちゃんを抱きかかえて全力疾走しようとする。
 だが、目の前には……九尾が立っていた。
「遅いな。川澄舞の神速の方が早かったぞ。鬼といっても所詮はその程度か?」
「…………」
 残る手は一つしか思い浮かばなかった。
 楓ちゃんを逃がして、俺が時間稼ぎをする……それしかない。
 後は楓ちゃんが納得してくれるかどうかだけど……。
「耕一さん」
 ぎゅっと俺の服の袖を掴んでくる。
「駄目だ!」
「嫌です!」
 その二つの悲痛な声は同時に上がった。
 強い意志の表れ。楓ちゃんは真っ直ぐに俺を見てくる。
 でも、だからこそ、楓ちゃんだけでも……。
「悪いがそういう茶番は他所でやってくれないか?」
 近く……とても近くから、俺の耳にささやくように真琴が呟く。
 次の瞬間には空が見えた。とてもじゃないが青空なんて期待できなかった。
 雲が陽光を遮っている。
「美汐が近くまで来ているようなのでな、やるなら早くその気になってくれ」
 まるで、母親が子供を諭すような口調だった。
 背中から地面に叩きつけられた、という事実に俺はやっと正気に返った。
「楓ちゃん、サポートしてくれ」
「はい」
 もう迷わない。俺は楓ちゃんと一緒に生きる為に闘う決意をした。
60柏木楓@悲しい結末(2/7):2001/02/19(月) 23:45
「駄目です」
 私は耕一さんに目で合図を送った。
 沢渡真琴と闘って勝てる勝算はあまりにも低い。
 それなら勝つことよりも、逃げることを先決すべきだった。
 九尾と言っても万能ではないはず。どこかに必ず隙は生まれる。
 そのときが勝負だった。
「わかった。いくぜ!」
 耕一さんが咆哮を上げて獣の……真なるエルクゥの姿に返っていく。
 私は妖鬼を使って新たなる力を生成する。
 使いこなせるかどうか分からなかったけど、半端なことでは意味がない。
 九尾には通用しないから。
「お願い!」
 不思議な感覚だった。
 身体から力が抜けていくようで、気の高まりを感じる、矛盾した二つの錯覚に陥ってしまう。
 やれる、答えはそんな風に身体を満たしていった。
「閃牙!」
 一筋の煌きが私の手から放たれて九尾を貫いていく。
「これは!?」
 直撃はしなかった。でも沢渡さんの驚嘆によって分かったことがあった。
(私の力でも通用する!)
 耕一さんの足手まといにならない。
 それは私にとって、とても嬉しいことだった。
「大分苦戦しているみたいだな」
 この戦地に加わるもう一つの声があった。
「柳川さん!?」
「お楽しみのところ悪いが、俺も参加させて貰うぜ」
 エルクゥの血を引く血統がここにもう一人。
 咆哮を上げて真なるエルクゥの姿へと変わっていった。
「柳川か……複雑な気分だが、恩に着るよ」
「ふっ、そういうな。お前らに感謝される覚えはないぜ」
 これで何とかなるかも、そう思っていた矢先、私は自分の考えの甘さを思い知ることになった。
 どうしてか柳川さんの牙は沢渡さんにではなく、耕一さんに向かっていたから。
61柳川祐也 @悲しい結末(3/7):2001/02/19(月) 23:51
「どういうつもりだ!」
「おかしいか? 警察の、『妖弧対策本部』の責任者が妖弧と組むのは?」
「柳川さん……」
 二人の非難の視線が俺に向けられる。
「言ったはずだぜ? 感謝される覚えはないってな」
「裏切ったのか……?」
「そうなるな。しかしお前らも高野に付いたんだろ? 裏切りはお相子さ」
「どうしてだ? お前だってエルクゥの力を制御するのには成功していたはずだぞ、それを」
「目的を聞きたいのか? 言うまでもないだろ、エルクゥは狩猟者だ」
「柳川! お前はまだそんなことを!!」
「いや、今のは冗談だ……」
 俺は苦笑して見せた。
「お前らが敵だったなら、問題はなかったんだろうな……」
「…………?」
「ふん、鈍い奴だな……味方同志だとお前と戦えないだろう?」
「そんなことのために妖弧につく必要があるのか!?」
「無いな……」
 耕一の波動が大気を揺るがした。かなり気に障ったのだろう。
 からかいがいのある奴だった。
「しかし、舞台は必要だろ?」
「何のだ?」
「決まってるだろ、真の……最強の鬼はどちらかって決着をつける舞台だよ!」
 その為だけに俺は全てを投げ捨てたのだからな。
62沢渡真琴@悲しい結末(4/7):2001/02/19(月) 23:54
「柳川か……そういう約束だったな、好きにしろ」
「ああ、ここは譲ってもうぜ」
 エルクゥか……。奴らも我らと同じなのだろう。
 戦いとなったときに、よく笑う。
「そうそう、さと……何とかってやつ、例のアレ′@り出せたみたいだったぜ」
「報告は後でいい。今は自由に闘え」
「ふっ、そうだったな」
 柳川は耳をつんざくような咆哮を上げて柏木家の長男に向かっていった。
「耕一さん!」
 楓が耕一のサポートに入ろうとする。
 ひどく焦っているのか、私には気づいていないようだった。
 その華奢な腕をつかまえて、一気に空高く持ち上げる。
「少し強くいくぞ!」
 そのまま地面に叩きつけてやる。
 しかし、エルクゥというのは存外頑丈に出来ているらしい。
 まだ致命傷には至ってないようだった。
「楓ちゃん!」
「どこを見ている! お前の相手は俺だろう!」
 柳川もまた、よくやってくれている。
「さて、そろそろ、楓の中の妖気を回収するか……」
 地面に叩きつけられて、ろくに動けそうもない楓の頭を持ち上げて、濃厚な付けを交わす。
「ん……あっ、やめ……」
 時折、唇についた血を舐め取るように、舌を転がした。
 そして、また深く楓の口の中に舌を蠢かせる。ねっとりとした感触を求め合う。
「……あっ」
 楓が卑猥に身体を震わせていた。滴り落ちる唾液に、楓は顔を背けようとする。
 しかし、それを許さずに私は楓の口を開かせたまま、二人の粘液の混じったものを舌先から落としてみせる。
 それが充分に行き渡ると、今度は逆に口を閉じさせて、無理やり飲み込ませる。
「…………う」
 すると楓の瞳からすっと涙が流れてきた。
63柏木楓@悲しい結末(5/7):2001/02/19(月) 23:57
 耕一さんともしたことなかったのに……。
 そんな場違いなことを考えながら、私は沢渡さんの玩具となっていた。
 キスを交わすたびに、私の中の力が抜けていくようだった。
 実際にそうだとも思った。
 口の中で私の舌と沢渡さんの舌が絡み合っている。
 心地よかった……。
 そう思えることが恐怖だったとしても逆らう術を私は持っていなかった。
 身体が熱くなって、キスだけでは足らなくなって……。
 それが悟られたのか、沢渡さんの手が胸元に入り込んできた。
 制服のボタンがひとつ、またひとつ剥ぎ取られて、淫らにピンと張ってしまった赤い先端が外気に晒される。
「楓ちゃん!」
「……見ないで……ください」
 汚(けが)れていく私を……。
 制服の隙間から見え隠れしている乳首を、沢渡さんがまた舌先で……。
 もう、頭の中が真っ白になって、何も考えられなくなって……。
「あ、あん……あんん……」
 気が付くと私は声を上げて善がっていた。
64柏木耕一@悲しい結末(6/7):2001/02/20(火) 00:01
「くそう!」
 楓ちゃんを助けようとするが前にはなかなか進めない。
「どけ!」
「そんなに気になるか? だったら後で俺があいつを抱いてやるよ」
「このやろう!」
 熱くなっては駄目だった。でも楓ちゃんのことで頭が一杯だった。
 無我夢中に腕を振るっても、かすりもしなかった。
 それが、ますます俺を熱くさせてしまう。
「哀れだな……」
「なにを!」
「がら空きなんだよ!」
 横腹に衝撃が走っていた。いつの間にか分からないほどに柳川の攻撃は鋭かった。
 意識が一瞬だけ跳ぶ。しかし、この程度では終われない。
「てやっ!」
 こちらも負けじと鬼の爪で柳川の身体を引き裂こうとする。
 だけど、振り上げたはずの手が動かなかった。金色に輝く尻尾に押さえつけられている。
「早く終わらせろ」
 そして、柳川の鬼の爪が俺の腹を薙いでいた。
 体中の血液が逆流する。鮮血が空を舞う。それでも俺はもう片一方の手を振り上げていた。
 残された最後の力を込めて、渾身の一撃を。
「…………!?」
 しかし動かなかった。両手両足の全てに金色の束縛が為されている。
 柳川の振り下ろされる最後の一撃を、俺は絶望の思いで見ているしかなかった
65柏木楓@悲しい結末(7/7):2001/02/20(火) 00:11
「……致命傷には至ってないようだが?」
「黙れ! これはエルクゥの誇りを懸けた一戦だった!」
 遠くから言い争う声が聞こえていた。
 私は達してしまったのだろうか、少しの間、気を失っていたようだ。
「邪魔立てするな、そういうことか?」
「そうだ。貴様の力を借りなくても俺は勝っていた!」
 耕一さんは隣で死んだように眠っていた。
 だけど、生きている。それだけで私には充分だった。
「それにお前の方こそ楓を完全にものにはしていないだろう? どうしてだ!?」
「……勘違いするな。私にそのような趣味はないのだよ。力は全て取り戻した、それだけでよい」
 よかった……。私は純粋にそう思った。
 これなら耕一さんにも嫌われることないよね……?
「それは本当にお前の意思なのか?」
「……どういう意味だ?」
 もういい。このまま耕一さんの隣で眠り込んでしまいたい。
 だけど……。
「あの倉田佐祐理には死姦までしてみせた九尾の言葉とは思えんがな」
「……我を愚弄する気か? あれは見せしめだよ」
 このままだと耕一さんは……。
 耕一さんの傷口からは今も止め処なく血が流れていた。
「だったら、楓も……」
「ふん、なにか勘違いしていないか?」
 私は耕一さんの側に寄り添って……。
 その唇に私はそっと口付をする。さっきのとは違う、ほんの触れ合うだけのキスだった。
「ぐぅ……お前……」
「私はお前を味方につけた覚えはないのだよ」
 少し、ほんの少しでいい。
 力が欲しい、好きな人を護れる力を……。
「いや……ありがとう……。これで、俺はやっと……戻れるんだな……」
「柳川よ、もう悠久の時の中で休むがいい。ダリエリの魂を道連れに……」
 でも、私の力は尽きていた。
(もう駄目なの……?)
何も出来ないのだ、私は今も……。
66悲しい結末@エピローグ:2001/02/20(火) 00:15

 暖かかった。そして優しかった。
 私を包み込んでくれるもうひとつの魂があった。
「エディフェル……?」
 幻かもしれない。でも、彼女は優しい微笑みを私に向けてくれていた。
 私の前から、すっと耕一さんの姿は消えていく。
 これで、いいんだよね。

『アズエル姉さん』
「千鶴姉さん……」
『リズエル姉さん』
「梓姉さん……」
『リネット』
「初音……」

 耕一さんのこと、よろしくね……。

 私はそう微笑んでいた。いつまでも、いつまでも……。
 ずっと笑っていたかったから、あの人のために……、
67名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 00:17
回すだよもん。
68名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 00:17
それにしても楓ちゃんはどうなっただよもん。
69名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 00:18
最後があやふやだよもん。
70名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 00:19
他の書き手さん次第かもだよもん。
71名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 00:19
それにしても連続カキコは自粛したいもん。
72名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 00:20
それなのに書き込んでしまうのは悪い癖だよもん。
73名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 00:21
逝ってよしだよもん。
74名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 00:22
これくらい回したらもういいかもだよもん。
75名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 00:23
それではお約束通り逝って来るだよもん。
76牧部なつみ 〜死出の対峙〜:2001/02/20(火) 01:04
聖さん達は、実際善戦していた。
 決して弱くない白狼の群れを相手取って、爽快な程に大暴れしている。
 河島さんの電波が数匹を狂わせれば、聖さんのメスが首を獲る。佳乃ちゃんの理解を超
えた力が数匹を薙ぎ倒し、佐藤さんの紫炎の球体が焼き尽くす。太田さんが両腕で抱えら
れる限りの白狼を締め上げ、地面に叩きつけ、岡田さんが止めを刺す。由宇さんが、狂っ
たように疾駆しながらハリセンを振り回し、掻き回す。
 ――だが、気掛かりな事が一つある。それは、こちらが明らかにエンジン全開だとい
う事だ。
 一応私と祐介くんは緒方兄妹を抑えるために待機しているが、迎撃部隊の方のスタミ
ナはすでにレッドゾーンの域に達している。このままでは――

「……来ますよ」
 祐介くんが表情を変えずにつぶやいた。
「別々に来てる。僕は、銀狼を殺します。牧部さんは、妹の方を抑えてください」
「分かったわ」
 私は頷いた。
「たった一人? 随分と強気じゃないか」
 銀狼は、嘲るように言い放った。
 僕は――
「はーはっはっはっはっはっはっはあっ!」
 大笑いしていた。あまりの嬉しさに。止められなかった。あいつ等を殺せる。
「死ねよ! お前等が瑠璃子さんや月島さんを殺したんだろう!? 死んじまえ!!」
 狂気。やっと戻ってきたか。お帰り。さあ、僕と行こう。
「何もかも消し飛べッ!」
 僕は、狂気とともに叫んだ。
 ぐにゃりと、視界が一瞬歪んだ気がした。
 銀狼が、何か叫んでいる。頭を抱え、必死に叫ぶ。
 僕の頭に、どろりとした何かが染み込んでくる。奴の術だ。
 僕は、蝶を踏みにじるイメージを思い描いた。瞬間、頭の中の異物が消える。
「無駄なんだよッ! 消しとんじまえってんだ! ホラ早く!」
 奴も笑っていた。泡を撒き散らしながら、それが全てであるかのように笑っていた。
 僕のこめかみから血が噴き出した。赤い。紅い。朱い。
 しまった。
 このままでは、僕も――

『祐くん。そんなの違う。負けてるよ』
『長瀬ちゃん。違うよ。狂気の扉は閉めなきゃ』

 どっくん。
 心臓の鼓動に合わせ、僕の毛細血管から血が噴き出す。
 そうだ。
 狂気に流されてどうする。
 僕は、電波を止め、防御に全てを尽くした。血が止まり、世界が直る。
 奴が、逃げだした。
「逃がさないぞ!」
 僕は、駆けだした。
78牧部なつみ 〜死出の対峙〜:2001/02/20(火) 01:07
「あああ……」
「呆気ないわね。その程度?」
 私は、胸に突き立てたナイフを握りしめて呻いた。
 甘かった。実力に差がありすぎた。奴の音波は、あっという間に私を壊したのだ。
 気が付けば、自分のナイフで自分の心臓を貫いていた……。
「かはっ」
 吐血する。草が紅く染まり、全てが一瞬遠くなる。
「その程度で私に刃向かうとはね」
 奴が嘲笑し、私の腹を蹴り上げる。
「ぐはっ!」
 胸からだくだくと血が流れる。喪失感が体中を支配し、全てがどうでも良くなる。
 ココロ……ココロを……
「ホラ、なんか抵抗してみなさい」
 頭を踏みにじられる。
 最期に……
 せめて、約束を……
 私は、ココロを飛ばした。
 金色のロケットを持たせて。
 藤井さんの所へ……

 私は、ようやく訪れた安息に、薄く笑って身を任せた。

79名無しさんだもんよ:2001/02/20(火) 01:30
そういえば
80名無しさんだもんよ:2001/02/20(火) 01:30
まわすのを
81名無しさんだもんよ:2001/02/20(火) 01:31
忘れてました。
82名無しさんだもんよ:2001/02/20(火) 01:32
相変わらず独りよがりな文章で恐縮です。
83天野美汐 (1/4):2001/02/20(火) 06:22
移動しながら、神奈とわたしは会話をする。
─…ちょっと聞きたいんだけど、わたしの持っている武防具が反応しないのは、やっぱり負の影響なの?
「それはどのようなものなのだ?」
わたしはそれらについて説明した。
「…ふむ。その武防具とやらが壊れているか、或いは負による影響かもしれぬな。あくまで推測であるが…」
「負が増大した為であるならば、今はかなり縮小している故、使えるようになったのかもしれぬ」
─神奈がわたしの中に入ってくるとき、負を消滅させてたっけ。
「しかし、一時的なものだ。余がおぬしの中から去れば、また増えるであろう…」
─そう。でも何とかして使えるようにならなくては…

「ところでおぬしは気付いているか?九尾以外にも禍禍しき者が此の地に在ることに」
─九尾の反応が強くなったのかと思ったけど、どうやら別の存在だったみたいね。
「実は近頃どうも外が見辛くなった。今までは真の余の陰からそっと覗けたが、今はほとんど分からんのだ」
「けれどある程度は知り得たことがある。彼の者の名は水瀬秋子。人であって人に在らざる程の力を有した存在だ」
「此奴が何をしているのか、何をしようとするのかは、残念だが今の余ではわからぬ」
「…もしかすると、余は彼の者と正面切って戦うことになるやもしれん。それは…避けたい」
─勝てないの?
「母上より力を受け継いだこの余に、敵う相手など居りはせぬ。…ただ余がこの大地で、全力を以て戦うと」
「色々と不味いことが起きるのだ。おぬしの身体に降りし今なら、余の力を用いても大事には至らぬ」
怪獣大決戦…ふと、わたしのなかにそんな単語が過ぎった。
「…おぬし、何か無礼なことを考えておらぬか?」
─他に不味いこととは?
「…まあよい。他の憂い事は、真の余が呪詛から解放された後の事だ。真の余は千年前より時が経過しておらぬ」
「真の余がおかしな事をせぬうちに、何とかして余は真の余に会う必要がある。母上の事などで、色々混乱しそうなのだ」
「………柳也どのや、裏葉の事も話せばならぬし…」
最後の方が良く聞こえなかったので聞き返すと、神奈は「…なんでもない」と言ったきり押し黙ってしまった。
84天野美汐 (2/4):2001/02/20(火) 06:27
唐突に神奈が止まる。わたしもその場に止まった。
「…見るがよい。今のおぬしの姿だ」
空間に浮かんだ外の景色。どうやら現実のわたしを少し上から見た視点のようだ。わたしは外を垣間見た…

……
 「へぇー、面白いじゃない。私と遊んでくれるわけ」
 北川と名乗った男が、私に対して宣戦布告をした。小賢しいことに妖狐の力を得ている。
 早速みちるが攻撃を仕掛けるものの、てんで相手になっていない。丁度いい、雑魚ばっかりで退屈していた所だ。
「下がって、あんた達じゃあ勝てないよ。それにこのおもちゃは、私が独り占めにするんだから」
 全長五尺に達する長剣、天之御劔を構え、私は北川という男目掛けて突っ込んでいく。
 外に出られた喜び、殺戮できる喜び。それを噛み締めながら、渾身の力を込めて、剣を振り下ろした。
 それを防ごうとする北川。さて、どっちが強いかな。辺りには再び妖狐が集まっている。嬉しいねぇ。
 私の一撃をまともに喰らい、しばらく動けないだろう北川を取り敢えず放っておいて、鬱陶しい狐共に攻撃を仕掛ける。
 連斬。切っ先の速度は軽く音速を超えている。一振りする毎に、妖狐は面白いように消え去っていく。そう、文字通り雲散するのだ。
 果敢にも攻めてくる妖狐、怯えて逃げ出す妖狐。全てに等しく滅びを与える。
 …楽しい。楽しくて仕方がない。何が楽しいのか分からないが、この行為自体に非常な喜びを感じる。
 もっと敵が、獲物が欲しい。何時までもこの喜びに浸っていたい……いや、浸らせろ……
……

「…酷いものだの。負により影響が露骨に現れておる…」
─何なの、これは…
「完全に正気を失っておるな。真のおぬしの心と負が互いに影響した結果だ」
─…もしかしたらこの狂気度合いは、偏に負だけのせいではないのかもしれない…
「…それは分からぬ…だが今は問わぬ方が良かろう…」
─……しかし、今”わたし”が用いている業は何?いつも使っているのとは、完全に異なる。
─そしてあの剣。一体何故?確かに撃剣術ならばそれなりに覚えた。今では結構な腕前だと自負している。
─だけど剣は性に合わないので、必要な時以外は使わないのに…
85天野美汐 (3/4):2001/02/20(火) 06:28
「恐らく真のおぬしの一番なじみの深い業、であると思うのだが…」
「ともかく、今の真のおぬしはまともではない。ひとまずおぬしが取って代わることを優先させよ」
─そうね。考えていても仕方がない。…それでは神奈、お願い。
「あい分かった。真のおぬしを捕縛する」
そう言い終えると神奈は目を瞑り、意識を集中させ始めた。
美しい羽が再び現れ、光が集まる。神奈の中で力が膨らんでいくのが分かる。
そして…ゆっくりと浮かび上がり、上方で姿を消した。

……
 「なーんだ。もう無くなっちゃった」
 辺りに動く物は見られない。妖狐の大半は消え失せ、残りは逃げたのだろう。北川と名乗る男と、往人達の姿も見えない。
 どちらも去ったか…或いは巻き添えを喰って雲散したか…まあどうでもいい。
 「つまんないな。んじゃあ、ひとっ飛びして場所を移動しよう」
 両足に力を込める。今の私なら跳べる筈。限界まで力を溜め…一気に解放した。
 跳躍…いや、最早飛翔と呼べるほどの高さ、距離だ。
 「スゴイよ。ホントに跳べた。……っと、獲物はどこかなー?……………いたーっ」
 下をうろついていた二体の影。妖狐じゃないが…まあ何でもいい。動く物なら、どんな物でも獲物だ…
 私はそいつらの目の前に着地した。あまりに突然の出現に驚いたのか、慌てて戦闘態勢をとっている。
 「もしかして私とやる気?無駄な抵抗だね。でもその方が面白いか…まあせいぜい頑張ってね…」
 「……ふふふふ…おもちゃ…獲物…すぐに消してあげる……消す………消え…失せろ…」
 塵芥に等しい妖狐よりは強いだろう……さあ…楽しむか………
 ………
 「……あれ?おかしいな、急に前が…………まさか…ちゃんと封じておいたのに。どうして?どうして?」
 何故だ?あいつは負のまっただ中に置いてきたのに。何故だ!…また…彼処に戻らなくてはいけないのか!
 しかし無常にも、周りの景色は次第に薄れゆく……
 あいつは一体どうやったんだ?そんなことを考えている内に、視界は完全に奪われた。そして再び狭間へ…
……
86天野美汐 (4/4):2001/02/20(火) 06:28
一度消えた神奈が再び戻ってきた。腕の中には”わたし”が居る。凄まじい暴れようだ。
だが神奈は平然と押さえつけている。”わたし”の反撃など、全く意に介していない。
「捕まえてきたぞ。ほんに、苦労を掛けさせおって…」
罵詈雑言を並べる”わたし”。しかしそれも完全に無駄な足掻きだ。
「さあそろそろ行くがよい。九尾復活まで、もうあまり猶予がなかろう」
─分かったわ。
わたしは自分の身体に戻ることをイメージした。すっとわたしは浮かび、神奈達が現れた箇所へと移動する。
”わたし”と擦れ違った瞬間、意識がぼやけてきた。そう。わたしの身体に戻り、いわば夢を見ている状態になったわけだ。
ふと、神奈の方を振り向いた。彼女が話しかけてくる。

「…後言い忘れておったが、負に囚われた真のおぬし、余には抑えておくことしか出来ぬ」
「九尾を封じし後、余がおぬしの身体から出たあとも、真のお主は負に囚われ続けておるだろう」
「おぬしにある巨大な負は、おぬし自身にも原因がある。ゆえ、それよりはおぬしのみにて、負と対峙せよ」
「…残念だが、余はおぬしが負に抗う様を見ていることしかできぬ。おぬしの力で全てを決せねばならぬ」
─言われるまでもないよ。無様に組み敷かれはしない。最後まで抗ってみせる。
「では、さらばだ。短い付き合いだったな、美汐よ…」
─ええ。さようなら、神奈。
暴れる”わたし”を後目に、わたしは有意識下へと戻っていく。九尾を倒すため。
そして、本当のわたしを目覚めさせるため。
87名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 06:29
回します。
88名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 06:29
北川や、往人はどうなったのか?
89名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 06:30
死んではいないはず…
90名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 06:30
それにしても、分割する場所が不自然…
91名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 06:31
偏に、本文の長さを分かっていないのが原因…
92名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 06:31
一回にどの位送れるのでしょうか?
93名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 06:32
あと、このスレの住民は何人位なんでしょうね。
94名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 06:33
回します。
95名無しさんだよもん:2001/02/20(火) 06:33
駄目押し。
「……王大人がこんな状況を見たらなんて言うでしょうか……?」
「『妖狐4000匹、死亡確認!!』ってですか? くすくす……」
 どこが笑えるのよ。
 下手なオヤジギャク以下じゃない。訳もわかんないし。
 あたしはため息を吐きながら、後部座席で笑っている二人の顔が目に入らないようにして、
じっと前を見詰めていた。

 しかし、本当に無茶をやったものね。
 今走っている道が直線道路じゃなかったら、今ごろどうなっていたか……。
 速度も50km/hに落としての安全走行。
 さっきのカーチェイスが夢のようだった。

 彩が言うにはこの道は街の外に出る国道らしい。
 なるほど、脇を見るとたしかに国道標識があるわね。
 あたしはただ車を前へ向けて走らせているだけだった。

 やがて建物の高さは低くなり、しまいには建物そのものが見えなくなった。
 どうやら街を抜けたらしいわね。
 その時だった。

 ――!!

 目の前が急に明るくなった。
 今まで真っ暗な夜だったのに、その先には日光が差し込んでいるように見えた。
 ちょっと――この先が昼――!?
 だが、それははっきりと分からない。
 何かうっすらと白い幕の様なものが空から垂れ下がって、そこから先が霞んで見えなかった。
 あえて言うなら、磨りガラス越しに向こう側を見たような――そんな感じだった。
「どうやら、外の正常な空間との境目まで来たようですね」
 リアンはいつの間にか笑うのを止めて、目の前の幕の様な物をじっと見ていた。
「この先には行けそうなの?」
 あたしは当然の質問をした。
 もし、これが結界のようなものとしたら危ないじゃない。こんな得体の知れないもののをく
ぐり抜ける気はしなかった。自然と足をブレーキペダルに移そうとしたが……。

「大丈夫です」
 リアンはきっぱりと言った。
 ちょっと、なぜそんなにはっきりと言い切れるのよ?
「……本当ですか……?」
 彩も同じことを思っていたみたい。リアンの目の前に顔を近づけながら問い掛けていた。
「ええ。先発していたユンナさんが無事通り抜けたって、さっき話していましたから」
 確か、リアンはちょっと前に携帯で話をしていたみたいだったけど……。
 まあ、前に無事に通った人がいるのなら大丈夫よね……

「じゃあ、このまま進むけど……いいね?」
 あたしは最後の念押しをした。
「もちろんです」
「……お願いします……」
 御二方の返事を確認すると、あたしはそのままゆっくりとアクセルペダルを踏み込んだ。
 やがて車は――その「境目」の所まできて――

 ――境目がさながら幕のように車の屋根の上に掛かる。
 そして――通り過ぎた――。

 そこで見た風景は――

 ――あらゆるものを覆い尽くしていた雪も――
 ――容赦なく吹き付けていた吹雪も――
 ――ずっと空を覆っていた黒い雪雲も――漆黒の闇も――
 ――嘘のように消え去ってしまっていた――

 ――ただ――温かい日差しに照らされた緑の草原だけが――そこにはあった――
 いったい……これって……?
 だって――今は1月7日で――
 真冬だから――ここみたいな北国だったら――雪だらけの筈なのに――

 だが――どのように見ても、目の前に広がっているのは冬の光景じゃなかった。
 むしろ――夏の光景だった――。

「……びっくりされていることでしょう……」
「ええ……」
 あたりまえでしょ、なんて言葉は思いつかなかった。
 呆然としながら、あたしは空返事をしていた。

 今まで、とんでもない事にたくさん遭遇してきたけど……
 こんなに唖然とさせられたことはなかった――。

「ちょっと止まって下さい」
 ふと、リアンが声をかけてきたので、あたしは慌ててブレーキを踏んだ。
 乗っていた全員が前へつんのめる。
「乱暴ですね」
 前に倒れかけた瑞希の体を抱き起こしながら、リアンが抗議の声を上げた。
「……でも……仕方ないですよ……。
 ……あなたは……こんな超常的な風景の移り変わりなんて見たことないのでしょうけど……」
 彩はそう言いながら、窓の外の夏の草原を眺めていた。

「オマエモナー」
「……オマエモナー……」
 後部座席の二人の声がハモっていた。
 彩もリアンも……どっちもどっちじゃないの。
「ぷっ……」
 そんな彼女らのやり取りに思わず吹き出してしまった。
 もっとも、彼女らがそんなあたしをねめつける目で見てきたので、慌てて止めたが――。
「……考えてみれば……私たちおかしいですね……ふふふ……」
「そ……そうですね……ふふふ……あはははは」
 二人は一度に笑い出した。あたしもつられて笑い出す。
 しばらく――車の中には笑い声だけが響いていた――。

 やがて目の前に1台の赤いライトバンらしき車が停まっているのが見えた。
 その脇で、黒いジージャンを羽織ったショートカットの髪の女が立っている。
「あっ、そこで停めて下さい」
 あたしはその赤い車に横付けするようにして車を止めた。
「ごめんなさいね。体調もあまり良くないのに無理させてしまいまして」
「どうってことないわよ。気にしないで。
 まあ、神気はほとんど使っちゃってスッカラカンに近い状態だけどね」
 ユンナは苦笑いをしながら、俺の車の中で気絶している3人の男女をドアから覗き込んでいた。
 水瀬のバカ娘にやられて当初は生死の境を彷っていたようだが、今では体を動かせるぐらいには
回復していた。(もっとも天使としての能力の回復にはまだまだ時間が掛かるが。まあ、回復の
力ぐらいは使えるようになったかなと本人は言っていたが)
「ありゃりゃ……。全員が全員、重傷もいい所じゃないの。
 とにかく、運び出すのは後ろの2人と助手席の女の子でいいのね?」
「ええ。お願いします」
 俺はそう言うと、晴香の方を向く。
 ユンナと彩はさっそく俺の乗ってきた車の中にいる怪我人を、ユンナが乗ってきた赤いステー
ジアに移し替える作業に掛かっていた。
「とにかく郁未さんはかなり危ない状態なので手当をしておきますけど、いいですか?」
「ええ、頼むわ。でも、郁未はそれに甘んじるかしら?」
「といいますと?」
 晴香は急に下を俯いて、呟くようにして話し出した。
「郁未ね……今でも気にしていると思うの。葉子さんと友里さんのこと……」
「それがありましたね。ただ今それをやるのは今は難しすぎるかと思います。
 それに……晴香さん。あなたも何か気に掛かっていることがあるようですね」
「え? そ、そんなことないわよ!」
 俺の指摘に晴香はしどろもどろしながら、否定していた。
 だが……どう見たって図星であるとしか、俺には思えないのだが(藁)。
「まあそれは置いておきましょう。しかし、どうであれ彼の地に戻るのは、今のあなたの状態
では自殺行為だといってもおかしくありません」
「そ、それでもいいのよ。
 だって、あたしは永遠を手に入れたいのだか……」

 晴香は思わず手をふさいでしまった。
 どうやら、彼女の企みはそれか……。危ないことを考えやがる。
「あ……ああ……」
 さっきまでの勝ち気な態度とは一転して、落ち着きなく目を動かしていた。
 その時、俺のポケットの中の携帯電話のメロディが鳴り響いた。
 ディスプレイを覗き込むと、発信者の名前が表示されているのが見えた。

 ――「スフィー」――
 って、姉貴からじゃねぇか。
 俺は即、電話に出た。

 姉貴はせっぱ詰まっていた。口調からそれが容易にうかがえる。
「姉さん、どうかしましたか?」
「どうかしたのじゃないわよ。
 リアン!! あんた何してるのよ!!」
「何してるって、今やっと和樹さんらを区域の境目の外に運び出したところなのですが」
「すぐにこっちにきてよ!! 妖狐どもの大軍が今にもこっちに押し寄せてきそうなのよ!!」
「妖狐の大軍って、白い妖狐の大軍が?」
「そうよ!! しかも緒方兄妹と名倉姉妹のおまけ付きで!!
 こっちは怪我人がいて大変だというのに」
「んで、どうすればいいのですか?」
「とにかく奴等の背後に忍び込んで、魔法を打ち込んで。要は挟み撃ちにするのよ」
「あいにくそれは難しいと思いますよ」
「なんでなのよ」
「さっき、白の妖狐1000匹に追われましたから。多分、緒方兄妹もそちらに援軍が向かって
いることを警戒している筈です」
「それを何とかするのがあんたの役目でしょ!!」
「あまりにも危険過ぎます!!」
 そう、今例の区域に戻るのはあまりに危険極まりない行為だった。緒方兄妹はおろか、
名倉姉妹にも勘付かれたら後が面倒だ。
 しかも、水瀬母娘もあの区域内で陣取っているのだから……
 だから……俺は街を出る前に……

 ――別の方向で準備を進めていた。
 俺は一旦、保留のボタンを押す。そして、ユンナに訊いた。
「例の準備の方はどうでしたか?」
「あれね。順調にいってたわよ。
 私が出た時点ではあと150ってところだったかな?」
「どうもすみません」
 俺は携帯の保留を解除して、再び姉貴に電話越しで話し掛ける。
「こっちも準備は進んでいますよ。もう少しだけこらえて下さい」
「そうなの。早く言ってよね」
「だから……そっちも準備の方お願いします」
 俺は電話を切った。
 一方、怪我人の移し替えも終わって、ユンナも彩も一息ついていた。
「……今から戻りますか……」
「ええ。そのつもりです」
「……じゃあ早速行動に移しましょう……」
 彩は早速運転席に乗り込んだ。
「晴香さんは……どうしますか?」
 俺は改めて晴香に問い掛けた。
「あたし……」
 晴香は返答に困っているようだった。
 『永遠』――それへの拘りを断ち切れないでいる。だから迷っている――。
 まあ、それを本来の目的として、こんな魑魅魍魎の蠢く危険地帯に足を踏み入れたのだ
から無理はないが。

「ちょっといい?」
 脇で和樹のからだの手当をしていたユンナがその手を止めて、会話に割って入って来た。
「晴香さんっていったっけ……。悪いことは言わないわ。
 やめた方がいい。下手をしたらマジで身を滅ぼしかねないわよ」
「…………」
 晴香は相手の言葉に噛み付くことなく、ただ押し黙ったまま下を向いていた。

「永遠なんて、この世に生きている生物がやすやすと自分のものにできるほど甘いものじゃ
ないわ。それにあそこにあるのは……」
 ユンナは彼の地の方向――ちょうど上空をどす黒い雲で覆われていた場所――を指差した。

「――『永遠』なんてものじゃないわよ」
「どういうこと……」
 訳が分からないといった様子で、蚊のような小さい声で問い掛ける。
「まあ、今話すと長くなるから落ち着いてからゆっくり話をするわ。
 それに私の友達に『永遠の世界』に詳しい人がいるから、その人に話をしてからの方がいい
かもね。まあ、あなたが『永遠』で何をしたいのかは知らないけど。
 それから、どっちにしたってそんなに体がボロボロだったらまずいわよ」
 確かにそうだな。
 晴香は一見丈夫そうに見えるが、俺が見た限り脇腹をやっちまっている。
 しかも、お得意の能力もすっかり使い果たしてしまったようだ。
 連れていった所で足手まといになるのは目に見えていた。

「……分かったわ。
 あなたの言うことも一理あるわね。それに――」
 そこまで言いかけた時、晴香は急に顔を歪めた。脇腹を左手で抑えている。
 どうやら今まで激痛を我慢していたようだ。まったく――。
「……無理はするものじゃないわね」
 晴香はそう言って、笑みを作ってみせた。
「とにかくあなたは助手席に乗って。今から出発するから」
 ユンナに言われるままに晴香はゆっくりとした動きで赤い車の助手席に乗り込む。
「じゃあ、あとお願いします」
「OK。任せてね」
 ユンナはそう言うと、すぐに車に乗り込んだ。
 そして彼女たちを乗せた赤いステージアはゆっくりと走り去っていった。
 当然、例の区域とは正反対の方向へと。
 あと15キロぐらい行った所の山の中にあるペンションにて手当てをしておくという。
(もっともそこはかつて姉貴がパンピーどもを隔離する所として使った所だが)
 やがて、草原の奥に広がっている山脈の中に赤い車は消えていった。

「さてと……私たちもすぐに行きましょうか」
「……はい……」
 俺は助手席に座ると同時に、彩は車を発進させた――例の区域に向かって――。

 ものみの丘から10キロの地点での出来事だった――。
103某一書き手:2001/02/21(水) 02:46
回しの間にちょっとスマソ。
104某一書き手:2001/02/21(水) 02:48
相変わらず連続カキコっす。
105某一書き手:2001/02/21(水) 02:51
しかもこの章だけで計7回のカキコを3編……
106某一書き手:2001/02/21(水) 02:53
本当にスマソ……
107某一書き手:2001/02/21(水) 02:56
逝ってきます……
108某一書き手:2001/02/21(水) 02:57
とにかく回し。
109某一書き手:2001/02/21(水) 02:59
1回あたり30〜35行でやってますが……
110某一書き手:2001/02/21(水) 03:00
長いかな……。
111某一書き手:2001/02/21(水) 03:01
私信になってしまった。スマソ。
112某一書き手:2001/02/21(水) 03:02
最後の回し。
113某一書き手:2001/02/21(水) 03:03
もひとつ回しとこう。
「運命に感謝しなきゃね――」
 私は、現れた敵の姿を見て笑った。
「次の命知らずはあなた?」
 緒方理奈が、不敵に笑う。
「そういう事になるかしら。あ、『命知らず』っていうのは否定しておくわね」
 私は、攻撃性剥き出しの妖怪に向けて気さくに話しかけた。
「緒方プロダクションの二本柱の一人にして、冷酷な強さを身につけたツインテール。そんな存在に
 ケンカを売るほどバカじゃないわ。私は」
「へえ、良く知ってるじゃない」
「森川由綺の才能に嫉妬し、徹底的に身辺調査をし、恋人の関係者を自殺にみせかけて殺した。
 そして結果的に森川由綺の命を奪い、今の揺るぎない地位を手に入れた――」
「……!?」
 言葉を失う緒方。
「詳しいでしょ? どう、もっと教えてあげてもいいわよ」
「あなた……何者!?」
「私は、交友関係が広くてね。業界のアイドルのマネージャーなんかにも、後輩がいたの。
 もっとも、先日死んだけどね」
 私は、右手を掲げた。
「半妖狐。あなた達には、さぞ利用しやすい存在だったでしょう。彼女は、森川由綺を殺害した七瀬彰に
 殺意を抱いていた。殺そうとしていた。彼もまた、利用された駒の一つとも知らずにね」
 右手の筋肉が膨張し、服が千切れる。爪が伸び、皮膚の色が狐色へと変わる。
「私は、この事件の真相を知った。あなたが黒幕だと教える事はできた。でも、それを教えれば
 彼女はあなたに牙をむいていたでしょうね。でも、彼女ではあなたに勝てない。だから、敢えて黙っていた。
 ある一つの誓いを立ててね……」
 私は、犬歯を剥き出しにして叫んだ。
「緒方理奈、あなたは私が確実に殺す!」
 一撃必殺――
 マイクを構える奴の姿を認めながら、私は奴に突進した。
115名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 15:11
書き込む前に回しておきます。
116名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 15:12
もう一回いっときます。
117北川潤@風の行方(1/6):2001/02/23(金) 16:36
 意識はあった。朦朧としていたが、それはさほど問題ではなかった。
 苛立ち。そして焦り。そのことで頭が一杯だった。
「どうして止めた? どうして助けに入った!?」
「…………」
「なぜ黙っている?」
「……貴方は、そんなにも死にたいの?」
 胸に痛みが走った。それを無視して俺は続けた。
「俺のことは二の次だ! 本気を出していたら神奈の覚醒まで持っていけたかもしれないんだぞ!」
「自分の命を犠牲にしてまで、ですか?」
「ああ……ああ、そうだよ!」
 激昂しながら、なおも俺は言い募る。
「そのために俺は力を得たんだからな!」
「……無理ですよ」
「なに?」
「貴方には無理です。そんな心のままじゃ誰にだって勝てません」
「……それはお前だってそうだろ?」
「そうかもしれませんね……。でも、貴方を助けたのは間違いだとは思っていませんよ」
「よく言うよ」
 どうしてか気持ちが静まっていくのを感じていた。
 目の前にいる少女の物言いは、冷たい口調だったが――内心ではひどく気を使ってくれている。
 そんな真摯な思いが伝わって来たからかもしれない。
 金色に輝く長い髪を持つ少女。三つ編みは止めてしまったのだと言う。
 片手には、古ぼけた槍を携えている。
 報告には聞いていたが、これがものみの丘に埋まっていた遺産だった。
 生きとし生けるすべての生命を、滅殺するために生まれてきた槍。
 対『九尾』対『翼人』対『邪術士』仕様に創られた伝説の槍の名をこう言った。
 破邪槍『物の怪の槍』と。
 この年端も往かぬ少女がその持ち主となったのは驚きだったが……。
「綺麗な月ですね……」
 夜空に浮かんでいた大きな満月を見て少女・里村茜はそう呟いていた。
118里村茜@風の行方(2/6):2001/02/23(金) 16:41
「どうして妖弧側についたんだ?」
「……別に言うほどのことではありません」
 月を見ている傍らで北川君が言う。
「私は振られたんですから……」
 少し訝しげに北川君が眉をひそめて、しばらくの間、私の顔をじっと見ていた。
 堰き込むように彼は言う。
「あんたほどの女を振るなんて、見る目のない男だよな……」
「……それ、褒めてるんですか?」
 私がそう言ったら、しまったという風に口を閉じてそっぽを向いてしまう。
 その仕草がなんとなく可笑しかった。
「秋子さんに逢ったからです」
「え?」
 そっと紡がれる声に北川君が聞き返した。
「さっきの質問の答えですよ」
「うん、ああ、それでどうなったんだ……」
「つまらない話です。大切な人のことを思い出したとき、私は初めて彼に逢った場所に行きました」
「……それでどうなったんだ?」
「もちろんそこには誰も居ませんでした」
 だけど、それでも彼を待っていたことを北川君に伝えた。
 雪が降っていて、凍るような寒さの中を、私はずっと待っていた。
 何時間も、ずっと浩平が来てくれることだけを信じて……。
 でも、やっぱり来てはくれなかった。
「そのときに秋子さんが言ってくれたんです。『貴女は振られたのよ』って」
「言わねーよな、普通は」
「はい、そうですね。でも、私はそこからやっと一歩を踏み出せたんですよ」
「里村も充分に変わってるよ」
「そうかも……しれませんね……」
 そして、私は彼女に付いて行った。邪術士と言われる彼女と一緒に……。
 ものみの丘の最奥まで案内されて、九尾とも謁見した。
 それから、私は遺跡まで連れて行かれた。
「そこで見つけたんです、これを」
 私は古ぼけた槍を北川君に見せてあげた。彼が興味深々って感じだったから。
 そして、また私は語って聞かせた。その成り行きを……。
119里村茜@風の行方(3/6):2001/02/23(金) 16:45
 訪れた場所は空洞だった。
 日の差し込む隙間もないのに光りがあったのは驚きだった。
 進んで行った先が草花の生い茂る『秘密の花園』だったのにはもっと驚いたけど。
「今日のお客さんは君かい?」
「誰……?」
 私は声の方に慌てて振り返った。
 どうして? 気配なんてどこにもなかったのに?
 見落としていたの?
「いわゆる宝の番人ってやつ。こういう遺跡には必須だって聞いたけど?」
 あっけらかんと言われる。どこか掴めない人だった。
「ここにある遺産の回収に来ました」
 その少年に、私は気圧されることなく言った。
 それは覚悟の表れだったのかもしれない。
「えーと、ぼくは宝の番人だから、そんなこと言われても困るんだけどな……」
「教えてください……それが、どこにあるのか」
「弱ったな。どうして、あんなものが必要なんだい?」
「力が欲しいからです」
「そう言われて来たのかい? それとも君の意思かな?」
「その両方です」
「参ったね。そうやって真っ直ぐに来られるとぼくの方も手立てがないよ」
 名も知らない少年は、指先を明後日の方向に向けた。
 そこには、何もなかったはずなのに、今では大きな巨木が立っている。
「あそこに刺さってるよ。欲しければ持っていけばいい」
 疑惑の念に駆られながらも、私はその巨木に近づいて行った。
 確かに、何かが刺さっている。
「破邪槍『物の怪の槍』……そう呼ばれていたらしいよ」
 能天気に彼が言ってくる。
 私は力を込めて槍を引き抜こうとした。
 でも――
120少年@風の行方(4/6):2001/02/23(金) 16:52
「力だけで引き出せるものじゃないよ」
 悪戦苦闘している彼女にぼくは言ってやる。
 何人もの人たちがそれを求めてやってきたけど誰にだって抜けなかった。
 ニ十年ほど前に邪術士といわれる人間も来たけど、抜くことは出来なかった。
 彼女で抜けないのなら、後千年はその槍の呼び声が聞こえるものは居ないと思った。
 だから、頑張って引き抜こうとしている彼女にぼくは言ってやる。
「諦めなよ」
「…………」
 ぼくの声が聞こえていないはずもないんだけど、彼女は一心不乱に頑張っている。
 さて、どうしようか? いつも通り諦めるのを待とう。
「それがいいや」
 ぼくは仰向けになって眠り込んでいた。
 どのくらい時間がたったのか、ぼくには分からない。
 あまり気にしていなかったからだけど、彼女が諦めて充分に足るほど眠り込んでいたはずだった。
 手に豆が出来ているのか、もう潰れてしまったのか、赤い血で槍が濡れている。
 でも、無駄なものは無駄だった。
 そんなことで槍が抜けるはずがない。
アレはそれ自体に意思が合って持ち主を選ぶから。
 だから、もう一度ぼくは問う。
121少年@風の行方(5/6):2001/02/23(金) 16:53
「何の為にその槍を引き抜くの?」
「力が欲しいからです」
「そんなことのためだけに?」
「……嫌なんです」
 本当にどれだけそうしていたのか彼女の三つ編みがほどけていた。
「なにが嫌なんだい?」
「たった……力が足りないと言う、そんなちっぽけな理由だけで……」
 ボロボロになった靴も脱いでいた。
「大切な人たちを止められないのは、嫌なんです!」
 それでも、ただ槍を引き抜こうとしていた。
 その、大切な人のために……。
「ささやかな理由だね」
「そうですか? 私にとっては命を懸ける理由が充分にありますよ」
「だからこそ強いのか、人間と言うのは……」
 どうやら、ぼくは負けてもいいと思っているようだ。
 仕方ないね、彼女は可愛いし。ついつい甘い顔をしてしまう。
「上げるよ、ぼくの魂を」
「え?」
 彼女の問いかけに応えることはもう出来なかった。
 すべての空間が歪曲していく。そして、ぼくの身体も変形して行く。
「ごめんね、それ本当の槍じゃないんだ」
 そういい残した後、ぼくの姿は真実のものに変わった。
 それを、破邪槍『物の怪の槍』という。
122里村茜@風の行方(6/6):2001/02/23(金) 16:56
「……そういうわけなんです」
 すべてを語って聞かせると北川君は複雑な表情を見せた。
 言うべきかどうかを迷ったのだろう、戸惑いながら私に告げる。
「里村も……操られているわけじゃないんだな、秋子さんに」
「……分かりません。秋子さんの言葉に従ったときは、虚ろでしたからね」
「俺もそんな感じだったよ。心の隙間に付け入るのが上手いよな、あの人は」
「伊達に、千年も生きているわけではありませんからね」
 そうやって笑い合う。秋子さんが聞いたら怒るかもしれませんね。
 邪術士と言われるほどの悪名を持つ彼女を、私はどうしてか憎めないでいた。
 そういう風な暗示を掛けられているのかもしれない。
 でも、そんな小細工を使う人でもないと思った。
「これから、里村はどうするんだ?」
「……美汐のところに行きます」
「そうか……」
 美汐……約束しましたよね。貴女が負の力に捉われたときは私が美汐を討つって。
 さっき見た彼女は……。どうやら、私は最悪の現実に直面してしまったみたいです。
「北川君はどうするんですか?」
「俺は戦地に行くよ。あいつに謝らないといけないからな……」
「恋人ですか?」
「それは……皮肉だな。違うよ、単なる友達さ」
 そう微笑んだ彼は、何かを吹っ切ったかのように見えた。
「じゃあな、里村」
「はい、お元気で……」
 別れの挨拶をする。きっと二度目はない。
 だから、こう言うのは自然に思えた。
「また、お話したいですね」
「奇遇だな、俺もだよ」
 そうやって、二人は分かれた。
 別々の道に向かって歩き出すのが人の生きる道なんだろうなと思いながら。
123名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 16:59
それじゃあ回すだよもん。
124名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 17:00
相変わらずベタベタな展開だよもん。
125名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 17:00
『物の怪の槍』はないだろだよもん。
126名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 17:02
許して欲しいだよもん。
127名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 17:03
まだまだ回すだよもん。
128名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 17:04
だよもんというのにも問題があるんだよもん。
129名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 17:05
普通に回すことにするだよもん。
130名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 17:06
しかしだよもん使いだよもん。
131名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 17:07
これに懲りて逝ってくるだよもん。
132阿部貴之(1/5):2001/02/23(金) 21:15

『……良かった…本当に良かった…』
 気が付いた時は白い部屋、白いベッドの上だった。
 普段決して見せない彼の脆い表情、ぽたぽたと零れる涙。
 それを認識した瞬間、俺もまた嬉しくて泣いた。
 生きている。それだけのことが奇跡のようなものだった。
 彼の姿はあちこち包帯だらけだったが、そんなことは些細なことだ。
 俺たちがまた、二人で笑えるのならいい。
 穏やかに日々を過ごせるのならいい。
 前みたいに、笑っていられればいい。

 それだけのことだ。

 ……俺は他人の精神に、強く感応してしまう能力を持って生まれついた。
 その感情を取り込んで生きる、人間でありながらそれを超えた者。
 冗談じゃあなかった。俺は普通に生きたかった。
 いつも自分の力を忌み、他人との距離を笑顔でごまかす毎日。
 まっぴらだと思った。
 俺の力を嗅ぎつけたチンピラに絡まれ、薬漬けにされたこともあった。
 何もかもを捨ててしまいたかった。最悪だった。

 だけど俺は、彼──柳川さんとの出会いで、変わることが出来た。
ひょんなことから知り合い、お互いが奇妙な力に悩まされていることを
打ち明けあった俺たちは、仲間だと言う安心感からかそれなりに力を制御
できるようになっていったのだ。精神的に追い詰められなくなったのが大
きいのか、俺の力はほとんど消えた。
 その結果俺は例のやくざに意識不明になるまで殴られ、数ヶ月間植物状
 態に陥った。その間色々世間は騒がしかったようだが──ともかく、俺
 は辛うじて意識を取り戻すことに成功したのだ。
133阿部貴之(2/5):2001/02/23(金) 21:16

 そして俺は、能力をなくしたまま元のマンションに住んでいる。
 巷を騒がせた猟奇事件の真実も、何もかもを胸のうちにしまって。
 その話を聞いたとき、俺は全てを胸にしまって鍵をかけることに
決めたからだ。亡くなった人には申し訳ないと思ったけれど、彼の
罪が表向き隠蔽されることとなった以上、弱い俺には自らそれを破る
ことはとても出来なかった。

 だからずっと、このまま柳川さんを支えようと思った。
 彼の力を知る者として、それが俺にできることだと思ったから。

 ……なのに。

『大なる結界は血と裏切りの果て、遠からずほころぶ』

 このメールが俺の携帯に入ったときを境に、柳川さんの様子は
日に日に安定を欠いていった。何か大きな事件の対策本部で北海道に
出向くと言って出て行ったきりメールと携帯で話すことしかできなか
ったけれど、間違いなく彼の様子はおかしくなっていった。
例の文章について聞いてみても、驚くそぶりを見せるだけで結局は何も
答えてはくれなかった。間違いなく大きな意味があるにもかかわらず。

 そして2日前、ついにメールが途切れた。
『おまえはくるなくるなきちゃだめだいいな』
 この、不吉な文章を最後にして。
134阿部貴之(3/5):2001/02/23(金) 21:16

それから、柳川さんの友人の霧島さんに電話をして、俺はすぐ支度をした。
 来るなと言われて行くのはバカなことだと知っている。
 自分に酔った三流のヒロインのすることだ。
 だけど、彼を止められるのは俺しかいないと言う確信があったから。
 きっとまた彼は苦しんでいる。
 俺がのうのうと眠っていたときに味わった苦痛を、また味あわされている。
 後悔はしたくない。

 だから、俺は走っていた。
 ひたすらに、少しでも速く、一秒をも惜しんで。
 容赦ない運命が全てを押し流してしまう前に。
 風を切り雪を踏みしめ、彼のもとへ。
 封じ込めた能力を必死で呼び覚まして。
 彼の心の声が聞こえるよう耳を澄まして。
 街に着いてから通りを駆け、山道を上り。
 ひたすらに走る。直感だけを信じて、人間であることを忘れるくらいに走る。

 今度は俺が、助ける番だった。
135柳川祐也(4/5):2001/02/23(金) 21:17

「悠久の時の中で休むがいい。ダリエリの魂を道連れに……」
 ……もういいのか。
 もう苦しまず、胸をかきむしるような痛みも消えるのだろうか。
 楽になれるのか。
 ふいにその思考が頭をよぎった時、力が抜けた。
 何もかもがどうでもよい、そんな気分になった。
 戦いに生きることが許されぬ今、俺に出来ることはもう何もない。
 しゅう…と、鬼の姿から人間の姿に戻っていくのが分かる。
 幼さを残す少女がにっこりと微笑み、左手を高く掲げ光の槍を打ち出そうとしたその時。

『やめろぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!!!!!』

 声。
 叫び。
 誰かの。
 懐かしい。
 呼び覚ます。
 感情を揺らす。

 ……力が、戻る。

「九尾! 謀ったな!!」
 瞬時に変化した爪が、少女の金色の尾を引き裂いた。
136柏木千鶴(5/5):2001/02/23(金) 21:18

私と梓が見たものは──激闘でした。
 楓と耕一さんを追ってものみの丘へ急行する最中も、びりびりと強い妖気が
まとわりついてきて、その凄まじさに身を震わせるほどでした。
 横たわる楓と、耕一さん。
 激しい攻防を繰り広げる九尾と鬼。
 誰?!
「……千鶴姉、あいつだ…ダリエリだ!!」
 梓の言葉に、私は耳を疑う間もなく耕一さんと楓を抱き起こしました。
「…しっかりして、楓! 耕一さん、目を醒まして!」
「早く、九尾が気を取られてる間に二人を……!」
 爆発音、血が飛び散る匂い、地面を揺るがす衝撃。
 その中で必死に二人がかりで楓と耕一さんを背負い、退避をしようとした正にその時。
「梓、あそこに人が!」
「え!?」
 間違いなく、あれは人でした。
 銀色に光を放ってはいるものの、強化されていない生身の人間……
 私は息を呑みました。
 増してゆく光が最大限に膨れ上がったとき、
 ───そこには尾の消えた、少女の姿の九尾と……柳川さんが、
 眠るように倒れこんでいました。

 唖然としたまま立ち尽くす私たちの前に現れたのは、長い髪の少女。

「……裏葉と申します」

 その言葉に、私たちは驚きを隠すことが出来ませんでした……
137名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 21:18
まわしだよ〜
138名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 21:18
伏線回収に必死だったよ〜
139名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 21:19
そのせいか文章がぎこちなくて恥ずかしいよ〜
140名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 21:19
とにかくまわすよ〜
141名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 21:20
なんだかマシンを変えてから調子が戻らないよ〜
142名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 21:20
愚痴ってないでもひとつまわすよ〜
143名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 21:20
まだまだだよ〜
144名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 21:20
まだまだまだだよ〜
145名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 21:21
あとひとつだよ〜
146名無しさんだよもん:2001/02/23(金) 21:21
終了、だよ〜
147名無しさんだよもん:2001/03/03(土) 23:45
まだまだ終わらんよ!!!!!
148裏葉(1):2001/03/04(日) 16:27
「私の名前を知っておられるのですか?」
「九尾の娘、鬼菩薩の裏葉……それくらいの調べは付いていましたけど……」
 そう言った後、彼女は慌てて自分の名前を名乗りました。
 柏木千鶴、そして梓さんと楓さん、それに耕一さん……。
「怪我がひどいようですね……見せてください」
 千鶴さんに抱きかかえられた楓さん、梓さんにおんぶされている耕一さんに私は気を送り込みます。
 治癒の力……でも、これは私ではなく長森さんの力ですけど、効果はあったようです。
「これですぐに傷の方も良くなると存じます」
「あ、ありがとうございます」
「いえ、礼には及びません。それは母の為したこと。謝罪いたします」
 私は言葉通り頭を下げる。しかし、それが何になると言うのでしょうか?
 どうしても、遣り切れません。
 それに、お母様も私の術程度では参らないでしょう。
「勝手なことと存じ上げておりますが、ここから一刻も早くお逃げください」
「……でも」
「お母様……いえ、九尾はこのくらいでは到底――」
 言いかけたところで衝撃が駆け抜けた。
 私の眉間を何かが貫く。咄嗟に防御していなければ惨事となっていたことでしょう。
「裏葉……相変わらず聞き分けのない」
「お母様の子供ですから、それは仕方ないことだと諦めております」
「仕置きが必要なようだな……」
「裏葉はもう子供ではありません」
 私は懐に入れておいた扇を取り出しました。
 気後れしないよう声高く。
149裏葉(2):2001/03/04(日) 16:28
「残・霊盾!」
 扇が真実の姿より大きく開いて防壁となり私たちを覆い尽くします。
「さあ、今のうちに!」
 千鶴さんと梓さんが頷きあって退いて行く。
 間に合うのでしょうか? 私の力がどこまでお母様に通用するのか分かりません。
「妖炎・四球尾!」
 火が四方に分かれて球体となり九尾に降りかかります。
 ですが、所詮は時間稼ぎにしかなりません。
 私の扇が破壊されたそのときです。
「千鶴姉さん……」
「楓? 大丈夫なの!?」
「梓姉さん……」
「あたしならここだぞ」
「初音……」
「初音も大丈夫だ」
「耕一さんのこと、よろしくね」
 それは柔らかい光でした。
 どんなに闇に潜んだものでも優しく包み込んでくれるような光です。
 彼女がそう笑ったとき、光りが弾けて彼女たちは、どこかに遠くの地へと。
「やってくれたな、裏葉……」
 そのことに感慨ふける暇もなく、私はお母様と対峙することになっていました。

150名無しさんだよもん:2001/03/04(日) 16:30
先週は忙しくてなかなか書けませんでした。
151名無しさんだよもん:2001/03/04(日) 16:32
でもまあ、こんな風にのんびりとやっていくのも良いですよね、きっと。
152坂神蝉丸:2001/03/04(日) 17:12
 コン…コン…。
 鈍い音が響いていた。
 コン…コン…。
 近づいてきている。
 この部屋に訪れるもの。
 分かっている、軍部の人間だ……。
 まだ俺の体は動かない。
 いや……考えることが出来ること事態が目覚めの時なのだろう。
「蝉丸、起きているわね?」
「…………」
 声は出なかった。しかし女は続ける。
「警視庁からやっとこさ政府に話がいって、正式に軍部へと連絡があったわ」
 なんのことだ?
 俺には分からないが……。
「やれやれ、堅物揃いのお偉方もやっと事の重大さが理解できたみたい」
 嘆息する。女の脈拍に乱れはなかったが。
「強化兵……あなた達の出番よ」
 その女は石原麗子と名乗った。生研科の人間だと言う。
 俺たちのような化け物を作り出した愚かな者たち。
「北の街に向かいなさい」
 だが、それが命令ならば従うしかないのだろう……
153名無しさんだよもん:2001/03/04(日) 17:13
誰彼参加といってもあまり深いところまでは突っ込まないと思います。
154名無しさんだよもん:2001/03/04(日) 17:15
まあ、気楽に書いていきますので。
155名無しさんだよもん:2001/03/12(月) 01:23
保存sage
156名無しさんだよもん:2001/03/13(火) 00:03
新しいスレできてたのか。今まで気がつかなかった。
157名無しさんだよもん:2001/03/13(火) 23:22
どうも最近板が荒れてて困るねえ。
158コリン:2001/03/22(木) 01:19
 もうっ、なんか地味な仕事やってるけど……?
 でも、結構大切なことなんだって、ユンナもスフィーちゃんも言ってたから。
 うるさいし、煙たいし、こんなところにあんまりいたくないんだけどな〜。
「にゃははは。あんまり気にしない、気にしない」
 横では玲子ちゃんがいつもどおりの笑顔で『作業』をしていた。
 彼女、こんな環境が悪いところでも平気なのかなぁ。苦しくもなんとも思ってないみたい。
 う〜ん、それともこんなことには慣れてるからなのかなぁ?

 それはいいとして、これを始めてからどれくらいになるかな〜。
 スフィーちゃんが出て行って、その後、ずっと気になっていた天使を探していたら、
玲子ちゃんが吹雪の中でうずくまっているのを見つけから、ビックリしちゃった。
 彼女とは今まででもさまざまな付き合いをしてきたんだけど、何でこんな所にいるわけ〜?
 話を聞いてみたら、なんとかって人の総受け本が目当てだったんだって。
 相変わらず大好きだね〜。そのテの本。
 でもほどほどにしなくちゃね。それで何度も死にかけたことあったんだからね。
 って、後ろからこっちへ走ってくる足音がするよ。
 慌てて近くの窪みに隠れたけど……どうも、ここに向かっているのは二人みたい。
 ちょっと〜。妖狐や邪術師なの〜? としたら洒落になんないよ〜。

 あらら……。そうじゃなかったみたい。
 リアンちゃんと彩さんじゃないの。びっくりさせないでよ〜。
 なんでも、途中で怪我をした人を運ぶのに時間がかかっていたんだって。
 妖狐4000匹に追われていたんだって〜。大変だよ、それ。
159名無しさんだよもん:2001/03/25(日) 06:00
age
160名無しさんだよもん:2001/03/30(金) 10:12
息切れか?
161名無しさんだよもん:2001/03/31(土) 07:04
コテハンコロシアムや、葉鍵ロワイヤルもいいけど、
このスレも忘れないでねage
162名無しさんだよもん:2001/03/31(土) 10:41
こんなのあったなんて今知った(w
163名無しさんだよもん:2001/03/31(土) 10:48
たしか元々、キャラ日記だったのが、だったら独自スレをつくってそっちで
やったほうがいいんじゃないのか?
となってできたんじゃなかったかな。
164名無しさんだよもん:2001/03/31(土) 20:29
葉鍵ロワイヤル読んで書きたくなったもん。
「……その程度なの?」
 欠伸が出てしまうくらい呆気なかった。
 川名さんはもう虫の息だった。
「詰まんないこと言うから、そうなるんだよ?」
「…………」
 声も出ないのか口だけがパクパクと動いている。
「可哀想……?」
 さっき川名さんが言ったことを私は繰り返し言っていた。
「それって貴女のことでしょう? 私は可哀想なんかじゃないんだよ。
 私はここに生きてるんだよ? 貴女はここで死ぬんだよ?」
 どっちが可哀想かで訊かれたら、誰だって彼女の方だと言うに違いない。
「それなのに……」
 彼女の目は私を哀れんでいた。許せなかった。
「私は『お母さんの子供』なんだよ。なんで『違う』なんて言うの?」
「…………」
「私の魂が見えない? ここに私はいない? そんなことよく言えたよね!?」
 とうとう私は絶叫していた。何故だろう……彼女の言葉に動揺している。
 そんなことあるわけないのに……。
『永遠はあるよ……』
『ここにあるよ……』
 不意に聞こえてきた声はよりいっそう私の心を打ちのめすようだった。
「――誰? 誰かいるの?」
 しかし、周りを見渡しても人の気配はなかった。
 そして、不安になる。
「お母さん……祐一……」
 いつの間にか涙を零す自分に気づいて、私は母のもとへと向かっていた。
「結界が張ってあるわね」
 敵の拠点に入り込んではいたが割合気楽に言葉を紡ぎ出す。
「誘い? それとも罠?」
 保科智子がこの先にいるのは間違いない。
 奴こそが、今の妖弧陣営最大の敵にして、私の標的だった。
「まあ、行くしかないわね」
 他の連中が雑魚妖弧を相手にしている間に事を片付けなければならない。
 迷ってる時間も惜しいのだ。
「『虎穴にいらずんば虎児を得ず』だしね、お姉ちゃん」
 笑顔で由衣が言う。そうね、と私は頷く。
 目的は、私たちの為すべきことがそこにあるなら、行かないわけにはいかない。
 でも――由依は別だった。
「――え?」
「ごめんね、由依……」
 私は由依の首元をそっと叩く。そこは急所だった。
「お姉ちゃん……」
 由依が意識を失ったのを確認して、私は埋まれていたイスの上に彼女を座らせる。
「ここから先は、お姉ちゃんひとりで行くわ」
 妹の寝顔に、くすっと微笑んで、私はその空間に足を踏み入れた。
『永遠はあるよ……』
『ここにあるよ……』
 声が聞こえてきた。とても遠くて、それなのに近くて……。
「そうね……」
 もうすぐ、永遠が手に入る。
「そう、私の力となりたいのね?」
「……そうではない。わが剣に懸けて坂上蝉丸は俺が討つ!」
「そうなんですか、光岡さん……? それで軍部を裏切って私のもとに助力を乞うのは不自然ではないですか?」
「軍部? ふん! あの、石原や犬飼の目的――政府が手に入れたいのは生命樹でしかない!」
「…………」
「そんなことで、俺とあいつとの決闘に茶々を入れられて堪るものか!」
「なるほど、よく分かりました……」
「……そういうことだ、俺はあいつとの決闘を邪魔されたくない」
「手を出さないようにすればいいのですね?」
「理解して貰えたなら、それでいい」
「――ですが、面白くはありませんね……」
「なに!?」
「貴方のような半端な不老は気に入りません、と言ったのですよ」

 しかし――それはもう動かない。

「そういうのは『永遠』を侮辱しているとは思いませんか?」
「…………」
「……軍部の特殊部隊『誰彼』ですか、今更何をしようというのです、麗子……」

『永遠はあるよ……』
『ここにあるよ……』

「そうでしたね、今は待ちましょう、その時を――」

 その遺体は圧縮されてオレンジ色の物体へと変化していった。
168里村茜@永遠のプレリュード:2001/03/31(土) 20:44
 美汐を追って私はこの丘を駆けていた。
 この異様な気配は、静かな森の中では強すぎて、居場所は簡単に掴めていた。
「美汐、待っていてください……」
 貴女が『負』に身を任したなら、私がこの手で討つという約束を今果たしましょう。
「そのための法具も手に入れました……」
 破邪槍『物の怪の槍』を手に握り締めて私は誓います。
「――もう、迷いはありません」
 道が開けた。そこで私が見たものは最悪のシーンだった。
「遅かったですね」
「繭ちゃん! 七瀬さん!」
 美汐の足元に彼女たちが倒れ伏していた。
「これは――!?」
「……今、収まったところなんです」
「何のことです?」
 彼女は改まったように言ってくるが、私は怒りのあまり声を抑えるのが精一杯だった。
 親友を傷つけられて、それを傷つけたのも親友で……。
 負の力……それが、すべての始まりだった。
「信じてもらえないかもしれないけど、今、負の力は私のうちにあります」
「……それは、再び、封印した、ということですか? そんな言い訳じみたことを信じろと?」
「そうです。ただ、彼女たちが危ないところだったのは、言い訳の余地もありません」
「当たり前です。ふたりにもしものことがあったら、たとえ美汐でも……」
 私は言葉を区切った。これ以上は声にしてはいけなかった。
 だって、美汐は本当に辛そうに……。
「……本当にごめんなさい」
「美汐……」
 見るに、ふたりとも致命傷のようなものは見当たらなかった。
 そして、私は覚悟をしていたはずなのに、それでも一縷の希望に期待してしまう。
「本当に、元の美汐に戻ったんですか?」
「今は、何とか閉じ込めているだけです……まだ、ちょっとした表紙で元に戻ってしまうかもしれませんが」
「九尾を討つ為に?」
「……そうですね。今はただそれだけです……」
 信じたい。そう素直に思えるのが人間ではなかったか。
 私は何となく頷いていた。
「分かりました。この場だけは見逃します」
「ありがとう、茜……」
 彼女はそれだけを言うと去っていった。
 この森の奥に……。
「でも、もしも、負の力が暴走したそのときは……」
 私は手に持った槍を強く握り締めていた。
169名無しさんだよもん:2001/03/31(土) 20:45
回すよー!
170名無しさんだよもん:2001/03/31(土) 20:45
まだまだ回すよー!
171名無しさんだよもん:2001/03/31(土) 20:46
さらに回すよー!
172名無しさんだよもん:2001/03/31(土) 20:47
これくらい回すよー!
173名無しさんだよもん:2001/03/31(土) 21:04
最後にもう一度回すよー!
174霧島聖@決戦(1):2001/04/01(日) 00:13
「くっ、やはり数が多すぎるか……」
 私らしくもない。弱音を吐いてもどうすることも出来ない。
「きゃあ!」
 佳乃の悲鳴が聞こえる。
「ちっ!」
 抜き放ったメスを妖弧の軍団に投げつける。
「砕けろ!」
 白い妖弧が空に霧散する。しかしまた後から続々と出てくる。
「ありがとう、お姉ちゃん」
 そういう佳乃の息はすでに上がり切っている。
 かくいう私のメスも今ので最後だった。
「雅史! 由宇! そちらはどうだ?」
 生きていることを確認しようと大声を上げる。
「ちょっと厳しいかもね……」
「アカン、岡田もサラも、もう虫の息やわ……」
 ふたりとも絶望の吐息だった。
 ここは、もう本当なら引き際かもしれないが、この戦いに撤退という単語は皆無だった。
(腹を括るしかないか……)
 佳乃たちを逃がす時間稼ぎを自分ひとりでして、そののち結界の張ってある建物で休息する……。
 白い妖弧の数もかなり減らしたはずだ、一時間程度なら結界も持つだろう……。
(それしかないな……)
 いや、やはり駄目だ。こちらで勝手に退却を決めても、祐介やなつみたちはどうなる?
 見捨てるのか?
(しかし、このままでは全滅だぞ……)
 佳乃を始め、他の皆も限界なのは目に見えていた。
 決断を迅速にしなければならない。
「撤退だ!」
「……え? お姉ちゃん」
「聞いてなかったのか? 早く撤退しろ!」
「う、うん」
 佳乃が頷いたのを見て、私はふっと笑った。
「皆のもの! 聞こえていたな!? シンガリは私が務める――早く行け!」
「で、でも――」
「バカモノ! 言ってる暇があったらとっとと行けい! 私もすぐに引く!」
「…………」
 その叱咤が聞いたのか足音が遠ざかっていく。
 でも、まだひとり残っているみたいだった。
「お姉ちゃん、絶対に帰ってきてよ! そうじゃないとあたしの料理食べてくれる人いなくなるんだよぉ」
「ああ、分かってるよ……」
 そして、佳乃が視界の奥に消えていくのを確認してから、私は死を覚悟した。
「すまないな、佳乃……お前の姉は嘘つきだ」
175霧島佳乃@決戦(2):2001/04/01(日) 00:13
「……やっぱり、あたし戻ることにするよぉ」
「ば、馬鹿なこと言わんとき! 何のために聖ハンは自らを犠牲にしたと思ってんねん!」
「……犠牲?」
 あたしが聞き返すと『しまった』というように由宇さんは目を逸らした。
(嘘だよ。お姉ちゃん戻ってくるって言ったんだよ?)
 今までお姉ちゃんが嘘をついたことはなかった。
 だから――あの言葉を信じたんだよ。
「待ち! あんたが行ってどうすんねん? もうボロボロやろ? 余力なんてあらへん……」
「じゃあ見捨てろって言うの? 薄情だよ、みんなっ!!」
「アホ言うな! そんなんちゃうねん!」
 ぴしっと静かな戦場に音が鳴る。由宇さんに頬を打たれたのだ。
「つらいんは、あんただけか!?」
「……由宇さん」
「うちらは逃げるんとちゃうねんで……これから、まだまだ戦っていかなあかんねん……」
「…………」
「聖ハンの気持ちを無駄にせんといてーな……」
「……でも、この気持ちはどうしたらいいの? お姉ちゃんが死んじゃったら、あたし、あたし……」
「ごめんな、ホンマごめんな……。恨むんやったら、うちを恨んでくれていい……」
「そんなこと、そんなことできるわけないよぉ〜!」
 泣く前にできることを見つけてみいと由宇さんは言った。
 だから、泣くことはしたくなかった。
 今のあたしのできることを見つけたから。
(信じてるよ、お姉ちゃん)
 絶対に戻ってきてくれるって言葉を真っ直ぐに……。
176霧島佳乃@決戦(3):2001/04/01(日) 00:14
「ここまでか……」
 白い妖弧どもが『じりじり』と向かってくる。
 もう、手持ちの武器は尽きていた。やれることは全てやった、と思った。
「しかし、佳乃には合わす顔がないか……すまぬな、母よ」
 佳乃の側にずっといるって約束したのにな……。
「後は、足掻くだけ足掻くことにするか……」
 そう思ったのも束の間で、強い妖気をもった奴の気配を察知していた。
(上級妖弧……?)
 この戦地にいる上級妖弧といったら緒方姉妹しかいない。
(祐介君やなつみ君が突破されたのか……)
 失われていた戦意が甦ってくるのが分かった。
 もし仲間がやられていたのなら、どんなことがあってもその報いは受けてもらうぞ!
「ふっ、まだ終われないみたいだな……」
 妖弧が近づいてくる。とてつもない早さだった。
(来るか?)
 身構えてじっと待つ……。
 そして――妖弧の群れが大きな爆発音と共に飛び散った。
「なんだと!?」
 その爆煙の中に立っていたのは……。
「北川君……」
「久しぶり霧島姉!」
 あの時と変わらない爽やかな笑みがそこにあった。
177名無しさんだよもん:2001/04/01(日) 00:15
今宵はここまでだよもん。
178名無しさんだよもん:2001/04/01(日) 00:15
力尽きただよもん。
179名無しさんだよもん:2001/04/01(日) 00:16
ちなみに間違っただよもん。
180名無しさんだよもん:2001/04/01(日) 00:23
>>176は『霧島聖』だよもん。
181名無しさんだよもん:2001/04/01(日) 00:23
鬱だもん。
182名無しさんだよもん:2001/04/01(日) 00:24
おやすみだよもん。
183名無しさんだよもん
ああ、書き手の皆さん、お疲れさまだよもん。