新 leaf vs key リレー仮想戦記

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1前スレの1

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―――――――――投稿のお約束―――――――――

実在の人物をネタにする場合は節度を守ること。
21@麻枝とYETの再会1 :2000/09/01(金) 02:22

 2000年1月。
 シベリアから流れ込む高気圧が日本列島を覆い、
 乾いた雪が街を白く染め上げている。
 空の彼方から射し込む陽射しは、
 光と熱を帯びて大気を貫き、白銀の世界を七色に照らす。
 街を行き交う人々は、吹き抜ける冷たい風に背中をまるめ、
 処女雪を踏み鳴らしながら歩いてゆく。
 男は、そんないつもと変わらぬ冬の情景を、なんの感慨もなく見おろしていた。
 白い湯気が立ち昇る紅茶をすすり、静かにため息を吐き出す。
 机に向き直り、視線を落とすと、
 無造作に並べられたA4判の紙にシャーペンを走らせる。
 静かに、しかし苛烈に。
 覇気と野望をたたえた瞳は、あふれるだす活力にきらめいている。
 机の端に積み上げられたファイルは、
 王座を見据える彼の手垢によって汚されている。
 企画の立案から3ヶ月。
 男は、持てる力を全て注ぎ込む覚悟で、覇業の完成に取り組んでいた。
31@麻枝とYETの再会2 :2000/09/01(金) 02:23

 無機質な高周波が、彼を包んでいた重い静寂を破った。
 不快な電子音が、鼓膜を激しく揺らす。
 思考の大海原から意識を現実に引き戻すと、
 男は壁に掛けられた内線に歩み寄る。
 受話器を介して聴こえてきたのは、若い女性の軽やかな声だった。
「ネクストンのYET氏が面会を求めておられますが」
 よく知った男の名を告げられ、麻枝は唇を軽く噛んだ。
 かつての上司の姿が、忌々しい記憶をともなって脳裏に蘇る。
 タクティクスを飛び出して、もう一年以上の時が流れていた。
 しかし、彼と共有したと喜びは、
 いまも色あせることなく、思い出の一角を占めている。
 麻枝は、いくらか思案したのち、感情を押し殺しながら言葉を吐き出した。
「すぐに行く。ロビーで待たせておけ」
41@麻枝とYETの再会3 :2000/09/01(金) 02:24

 紺色のソファに腰を下ろしながら、YETは静かに旧友を待っていた。
 緑の葉を生い茂らせる観葉植物を見つめる彼の瞳には、
 形容しがたい感情の波が揺れている。
 もっともそれは、限りなく平坦に近く、
 さざなみとさえ呼べるものではなかったのだが。
 大理石を踏み鳴らす足音が徐々に近づき、YETの背後でとまった。
 振り向いた先には、部下であり友であった男の姿があった。
「久しぶりだな、麻枝」
 YETはゆったりとした動作で立ち上がると、
 薄い笑みを浮かべながら麻枝に向き直る。
 一年半ぶりの対峙。
 無機質な視線が交錯し、瞳に互いの姿が映し出される。
 永遠とも思える時を経て、
 タクティクスの名を業界に知らしめた二人は、ここに再会を果たした。
 麻枝が、乾いた空気を乾いた声帯で震わした。
51@麻枝とYETの再会4 :2000/09/01(金) 02:25

「今さらなんの用だ」
「べつにお前が恋しくて会いに来たわけじゃない。
 それよりも、遅ればせながら、まずはおめでとうと言っておこうか」
「なんのことだ」
「決まってるだろ、KANONのことだ。
 落ち目とはいえ、あのリーフを脅かすほどの売上らしいじゃないか」
「俺たちの実力なら当然のことだ」
「まあ、俺もそんな予感はしてたんだ。
 ONEを完成させた時、
 こいつらならリーフの牙城を崩せるんじゃないかって」
 麻枝は、苛立ちを込めた視線でかつての上司を睨みつけた。
「そんな話を聞くために貴重な時間をさいたんじゃない。用件はなんだ」
 YETは軽くおどけてみせると、せきばらいをし、本題を切り出した。
「わざわざおまえに会いに来たのは他でもない。社長の言付けを伝えるためだ」
「社長? ネクストンのか?」
「そうだ」
 思いもよらぬ展開に麻枝は目を細めたが、それはすぐに見開かれた。
「社長は和解を望んでいる。ネクストンに戻る気はないか?」
61@麻枝とYETの再会5 :2000/09/01(金) 02:25

 まさしく、突然のことだった。
 社長との確執からネクストンを飛び出し、
 ビジュアルアーツの傘下に収まった麻枝。
 二度と戻らない覚悟で新天地に移り、
 ネクストンへの復帰など考えたことさえなかった。
「おまえも知ってるだろう、麻枝。
 社長がwebサイトでおまえたちの移籍を愚痴ったことを。
 社長は本当に後悔している。それは、社長のそばにいた俺がよく知っている。
 どうだ、話し合うだけでもいい、会ってみる気はないか」
 多少の困惑を覚えたものの、それは一考に値するものではなかった。
「なにを言ってる。俺たちはあいつと復縁する気なんてありはしない。
 それに新作も動き出してる。戻れるはずがない。
 そんなことはおまえだって分かるだろう」
「確かに。だが俺は、社長とは正反対の意見なんだ」
「どういうことだ」
 麻枝の瞳に、鋭い光がひらめいた。
「正直に言うと、俺は、おまえたちの実力を過大評価していたようだ。
 KANONの製作が発表された当時から予感はあったが、
 実際にプレイしてみて、それは現実のものとなった」
 苛烈な視線が、頬をこわばらせる麻枝に向けらた。
「残念だよ。おまえたちには失望した」
71@麻枝とYETの再会6 :2000/09/01(金) 02:26

「……なにが言いたい」
「分からないならはっきり言ってやろう。おまえたちはしょせん一発屋だ。
 名声を失うことを恐れ、守りに入ったおまえたちは、
 KANONというONEのデッドコピーを作ってしまった。
 そんな連中がトップを取れると、本気で信じてるのか?
 だったら、とんだ茶番だ。
 挑戦をやめてしまえばどうなるか、リーフの現状を見れば分かるだろう。
 人は精気を失い、腐敗が始まる。
 俺はタクティクスを再建し、新たな道を切り開こうとしている。
 新生タクティクスは無限の可能性を秘めている。
 今はまだ原石にすぎないが、磨けば必ずダイアに化ける。
 そんなフロンティアに、腐ったミカンを迎えるわけにはいかない。
 おまえたちはいずれ、
 ビジュアルアーツという巨木を根から腐らせてしまうだろう。
 そうなってからでは手遅れなのだ」
 独白を聞き終えた麻枝の表情は、
 怒りと憎しみに歪み、瞳には暗い炎が揺らめいていた。
 弾け飛びそうになる理性を必死になだめながら、罵倒を浴びせ返す。
81@麻枝とYETの再会7 :2000/09/01(金) 02:27

「ふん、負け惜しみか。みっともないな。
 俺もおまえを過大評価していたようだな。そんな小さな野郎だったとはな。
 そんなに俺たちを失ったのが悔しいか?
 おまえはさっき、KANONをプレイしたと言ったな。
 それなら、イソップの童話を知ってるだろう。すっぱいブドウの話だ。
 おまえは強がるキツネに過ぎない。
 俺たちこそ、タクティクスを離脱して正解だった」
 罵倒を浴びせて憎しみがいくらか晴れたのか、
 麻枝は余裕を取り戻し、頬を緩めた。
 YETが、哀れみを込めた瞳で麻枝を見据える。
「……俺はおまえたちのことを思って言ってるんだ。
 いい加減に夢から覚めたらどうだ」
「夢だと? おまえこそ、俺たちを失った悪夢から覚めたらどうだ」
「自分の気持ちに正直になってみろ。怖いんだろう。
 挑戦の代償として名声を失うことが。言ってただろう。
 いつかはRPGを作ってみたいと。その心意気はどこへ消えた?」
91@麻枝とYETの再会8 :2000/09/01(金) 02:28

 ……幼き日の麻枝は夢を抱いていた。
 彼は毎夜、薄いノートにRPGのアイディアを書きつづり、
 いつかは自分の手で、
 壮大な世界観と緻密なシステムで練り上げられたRPGを作るという夢に想いをはせていた。
 いつからだろう。
 夢と向き合う勇気を捨て、希望に胸を膨らませることを忘れたのは。
 いつだっただろう。
 それが大人になることなんだって、自分に言い聞かせたのは。
 夢に胸を弾ませた日々が、脳裏に鮮やかに蘇り、
 言い知れぬ焦燥感がこみ上げてくる。
 けれど、後戻りは出来ない。
 俺は決めたんだ。
 この道で覇王の座を手にすると。
 うつむく麻枝を見つめながら、YETが最後の忠告を送る。
「鍵っ子と決別しろ。今ならまだ間にあう。
『泣き』と『萌え』に頼る限り、進歩はありえない。
 そしてそれが、おまえたちの限界になる。
 待っているのは栄光じゃない。敗北と退廃だ」
 垂れていた頭をゆっくりと起こすと、
 妖しい光を瞳にたたえながら、麻枝が口元を軽く歪めた。
「上等だ。俺たちに限界など無い。次回作でそのことを証明してやる。
 『泣き』と『萌え』でこの業界を制覇してやる。この俺に二言は無い。
 必ず成功し、吠え面をかかせてやる。その時を楽しみにしてるんだな、YET」
 麻枝は吐き捨てると、射抜くような鋭い視線でYETを睨みつける。
 それはまさしく、怒りで書き殴られた挑戦状が叩きつけられた瞬間であった。

 二月の下旬、ついにkeyの新作が発表された。
 ――Air。
 それが、麻枝のプライドをかけた新作のタイトルだった。

 続く
10某T@読みました :2000/09/01(金) 05:54
上手いので打つだ誌のうです。
もっと頑張らなくては…。
全編クールにまとまってていいです♪
ただし、これの続きはAirの発売と、其の評価を待たれるところでありますね。⌒∇⌒
ところで、すごい事件が起こってしまいましたね。(^^;

ttp://key.visualarts.gr.jp/web.htm
といっても皆さんご存じでしょうが。
ホントに次から次へと格好のネタを用意してくれるな(藁
14名無しさん@そうだ選挙にいこう :2000/09/02(土) 10:37
告知あげ
15名無し君@精進します :2000/09/03(日) 01:30
ミッシングリンク …北海道激震編「策謀」
前スレ〜339、354の続き。時間的にはコミパの前に入ります。
時系列が狂ってますがご容赦の程を。

 マントルピースでは炎が赤々と周囲を暖かく染めていた。
 札幌のアボガドパワーズ本社オフィスである。
 そこは都心でありながらも広い敷地を持った古い洋館であった。
 外から見るととてもエロゲーの製作会社には見えない。そして内装も余りエロゲー会社のようには見えなかった。
 アンティックを思わせる古い家具。マントルピース。厚い洋書の入った本棚。その本棚の前を頭に包帯を巻いた青紫が喜々として眺めていた。
「凄いですよ。高橋さん。『アル・アジフ』がある。『エイボンの書』もある。これなんか『無名祭祀書』ですよ」
 青紫は鉄の留め金の付いた皮装丁の本を掲げてみせる。
 その様子を見る限り暗鬱の気配はない。高橋は安心して溜息を付いた。
 深くソファに腰掛け瞑目する。
 自分の奇妙な運命に思いを馳せながら。
「お待たせしました、ちょっと電話をかけねばならなかったもので」
 大槻が姿を見せる。屋内であるのに帽子もサングラスもはずしていない。無精髭の伸びた顎をさすりながら高橋の対面に腰を下ろした。
「いいところですね。札幌の都心にこんなオフィスが持てるとは羨ましい」
「これで家賃は月4万ですからね。ただ内装はあまりのぼろだったので社員総出で修理しましたが…
 さて、高橋さん。どうするのですか? あなたは」
「決まっている。切られたら切り返すだけだ!」
 目の前の男が下川であるかのように睨み付ける。
「良い瞳だ。高橋さん。やはりあなたは腐っちゃいない。業界を背負っていける器だ」
「買いかぶりですよ」
 視線を落とした。だが、大槻はそれにかまわず言葉を続ける。
「天下三分の計って、ご存じでしょうか?」
 高橋は驚愕した。その言葉の意味を理解して。
16名無し君@精進します :2000/09/03(日) 01:31

 天下三分の計。それは高橋がリーフに入った時にビジュアルノベル三部策と同時に下川に献策した天下取りの秘策であった。
 そして大槻が語ったことは高橋の予想を超えて遥かに壮大であったのである。
「我々北海道のソフトハウスは近いうちに連合し、一つの共同体になります。リューノスはその手始めにすぎません。
 だが我々はまだ若い。大手の老獪なソフトハウスには太刀打ちできるか判りません。
 だから、我々が力を付けるまでの間、業界が二つに分かれて争っているのが望ましい。我々に手を出せず、かといって一つにもなれず、共倒れにもならず」
「それはリーフとkeyのことか?」
「小さい、小さい。アリスもエルフもD.Oも含めてすべてです。
 高橋さんにはそれらすべてを巻き込んで大戦国時代を演出していただければ。
 それにソフトハウスの競争はユーザーにとっても望ましいはずです」
 策士大槻の業界全体をとらえた戦略眼は高橋を発憤させるに十分であった。
「面白い。だが、大槻さん。あなたのもくろみ通りになりますか?」
「さて。業界が活性化すれば喜ぶのはユーザーですから。私はユーザー第一に考えているのですよ」
 無言の応酬が続く。
 先に視線をはずしたのは大槻であった。
「青紫くんは盗作騒動が一息付くまでこちらで預かっておきます。心おきなくどうぞ」
 退出を促され高橋はアボガドパワーズを背にした。
「まずは、コミパを潰す!」
 新たな決意を胸に秘めて。

「青紫くん、気に入ったようだね。どうだいしばらくこっちに住んでみないか。今度セラエノの図書館につれていってあげよう」
「本当ですか」
 高橋と大槻の応酬も知らず無邪気に本を読みふけっていた青紫は嬉しそうに返事をする。
 ゆっくりと大槻はサングラスをはずしていった。そして、その下から現れた彼の瞳を見て青紫の顔色が変わっていく。
「あああああぁぁぁぁ…」
 絶叫が聞く者とていない部屋に響いた。
 その後青紫の姿を見た者はいない。
17名無し君@精進します :2000/09/03(日) 01:37
新スレ待ってました。
おこがましくも自分も混ぜて欲しくて載っけてしまいました。
ヘタレのみせたがりですがよろしくお願いします。

>1さん
ファンです。もっと読んでみたいです。
大変だと思いますががんばってください。
18名無しさん@そうだ選挙にいこう :2000/09/03(日) 02:19
この大槻っていう人・・・何者(笑)
19某T@大槻氏は :2000/09/03(日) 03:20
>>18
アボパのシナリオさん…はご存知として、
黒の断章あたりやったら…何となく判る。
浦社長も…出そうかな?
20名無しさん :2000/09/03(日) 18:02
417 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/06/07(水) 10:16

アリスなんかは会員価格と称してはいるが、直販は価格をか
なり引き下げている。
メーカー直販でも定価で売ってるところが結構あるけど、直
販なら流通を通さないんだから、もっと安く売れるんじゃね
えか?・・・と、素人目には思ったりするんだが・・・やっぱそう
いう事すると流通に怒られるのかな?

418 名前: >417 投稿日: 2000/06/07(水) 10:24

>やっぱそういう事すると流通に怒られるのかな?
まさにその通り!・・・らしい。
次回作購入時の割引チケットさえ、文句を言わるとかなんとか。

419 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/06/07(水) 10:28

やっぱ流通をどうにかしねえと、この業界に未来はないよな。
聞いてるか?ヨモギダ。

420 名前: >417 投稿日: 2000/06/07(水) 11:49

前にも書いたけど、流通が営業(プロモーション)をしなくなる。
その他、いやがらせなどデメリットいっぱい(ワラ

421 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/06/07(水) 11:54

中小はともかく大手は流通の営業って必要?

共同自社流通とか不可能?
リーフとかアリスとかエルフとか
21名無しさん :2000/09/03(日) 18:03
422 名前: >421 投稿日: 2000/06/07(水) 12:18

大手にはヘコヘコ。
それが流通

423 名前: >422 投稿日: 2000/06/07(水) 13:32

そうでもないぞ

424 名前: >423 投稿日: 2000/06/07(水) 13:40

ん? R○Kはそうだったけど?

425 名前: >424 投稿日: 2000/06/07(水) 13:44

バンクとかビューズね

429 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/06/07(水) 14:59

>共同自社流通とか不可能?
>リーフとかアリスとかエルフとか
ムリ。こいつら仲悪いんだもん(笑)

流通に対抗しようにもメーカー同士あんまり仲良くないからなあ、この業界。
儲かってるメーカーは自分とこが儲かってればいいや的な態度だし、
儲かってないとこは儲かってないからなんにもできないし。

430 名前: >425 投稿日: 2000/06/07(水) 15:11

いやーんビューズちゃんをいじめないでー
うふ(^^)
22名無しさん :2000/09/03(日) 18:04
431 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/06/07(水) 15:13

ふははは、貧乏なくせに陳腐な政治的対立で内戦やってる国みたいやな

結局、武器商人(流通)にいいとこ喰われるだけかい

432 名前: >431 投稿日: 2000/06/07(水) 15:14

(ノ≧▽≦)ノ〜====┻━┻逝って良し!!


433 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/06/07(水) 15:19

逝くのはメーカー、そして流通系だけが太っていく
ククク

434 名前: >431 投稿日: 2000/06/07(水) 15:33

その喩って、シャレになってない気がするんだけど。

435 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/06/07(水) 16:17

ユーザーから見ると、北海道メーカーって仲良さそう…。

436 名前: >435 投稿日: 2000/06/07(水) 17:00

そうですね。カレンダーなんかも作ってるし。
寒いと人のぬくもりが恋しくなるのかも(笑)

437 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/06/07(水) 23:57

関西系メーカーは関東に比べたらまだ仲いい方よ。関東だと
お互い本当に仲悪い所ある。元辿るとほとんど一社に辿り着
くのも遠因かもね

438 名前: >435 投稿日: 2000/06/08(木) 00:12

リューノスなんてものが出来るくらいだもんな。

439 名前: >438 投稿日: 2000/06/08(木) 00:41

>リューノス
あれは小池定路をアーカムが起用する際に移籍とかのネガティブな噂が
立たないようにわざわざ作った別ブランドなんだよね。そう考えると
メーカー間でそんな気使いするって事はやっぱりそれだけ仲がいいって
ことなんだろうね。
23名無しさん@そうだ選挙にいこう :2000/09/04(月) 18:03
あげあげ
24名無しさん@そうだ選挙にいこう :2000/09/04(月) 18:52
>>20-22
はこれ、資料なの??
コミパの乱
前スレ556の続き。

 両軍併せて7万の軍勢(一説によると10万)が激突したこの合戦のことを歴史書では有明合戦と記している。
 だが、この場では一般に流布されている通称「コミパの乱」で呼ぼう。
 KEY率いる鍵っ子はおよそ4万。
 一方、リーフ率いる葉っぱ信者は約3万。
 数字のみ見ると鍵っ子有利であるが、カノンにより急速に拡大した鍵っ子は戦意こそ旺盛であったが、スキルが足りず容易に暴徒と化す危険性があった。
 だが、リーフとて盤石ではない。
 外様、新参を多く含み、指揮系統が一元化されていなかったのである。

 これが必要以上に事態の推移を混乱させ、状況を把握させることを不可能とさせていた。

 そしてさらにD.Oの参戦。日和見連中。物見高い観戦主義者等の無秩序な行動により混迷の度は増していくのである。
「突撃! 突撃!!」
 戸越まごめは喉も裂けんばかりに絶叫した。
 普段机の前に座っている彼が前線指揮をかって出たのには理由がある。
 戦勲に乏しい彼は少しでも戦功を立て発言力を強化して置かねばならなかったのであった。
 出世のためには肉体労働も厭わじ。殊勝な心がけであったが、彼の本来の仕事は謀略家であり現場指揮官ではない。経験の無いことが彼の弱点であった。
「何を難しいことがあろうか。相手の行列を分断し、混乱を助長させる。
 それが勝利のための方策であろう」
 彼とて莫迦ではない。これくらいのことは理解している。
 頭だけで。
「なんだ!? あれは。大海嘯?」
 それが戸越まごめの見た最後の光景になった。
 押し寄せるデブ、メガネ、ロン毛、の大津波。
 それを避けることもできず呆然と眺めるだけである。
 呑み込まれた彼の姿は再び現れることがなかった。

 戸越まごめ戦死。
 それは後に誤報であることが判明するのだが、鍵っ子の足並みが乱れるのには十分であった。
次回はもっと架空戦記っぽく行きます。
ぉぃぉぃ。まごめまで殺しちゃまずいだろ(藁
面白いからいいけど。
29名無しさん@そうだ選挙にいこう :2000/09/05(火) 18:41
いくらなんでも下がりすぎなので上げ。
おいおい、無茶苦茶にすりゃいいってもんじゃねえだろ。
いつからギャグ小説になったんだ?
3127 :2000/09/06(水) 01:11
>28
まごめさんは氏んでません。この後救急車で運ばれていくのです。

>30
スマソ。水無月VSいたるの一騎打ちなんか考えていたけどやめにする。
32名無しさん@1周年 :2000/09/07(木) 02:04
KEYがハクられたのはLEAFの仕業って感じで誰か続きキボンヌ
33名無しさん@そうだ選挙にいこう :2000/09/07(木) 02:10
>>32
じつは子並社員のしわざ
フィーネ萌えーダロウガヨ>32
フィーナ萌え〜が個並社員だったんだヨ
36名無しさん@そうだ選挙にいこう :2000/09/09(土) 04:01
(゚◇゚)
37某T@年いくつだよ… :2000/09/09(土) 12:06
>>36
トシちゃん感激?(…古)
続編みたいよぉ
速く載せてよぉ
わがままいっても皆Airやってるから無理さ(藁
あ、なるほど>Air
初回出荷数が14万本とも言われて、激昂するシェンムー。
で、トチ狂った結果、周りに
「『アビス・ボート』の初回出荷数は20万本にせよ!!」と命令。

で、AIRの店頭在庫の山を見て、一人ほくそ笑むシェンムー。

などというシーンをキボンヌ。
42名無しさん@そうだ選挙にいこう :2000/09/10(日) 11:54
頑張れシェンムー
「鳥のの歌」(誤字にあらず)という即興の替え歌作ったが、
ここの趣旨に反しているようならUPやめる。

承認が出れば1〜2日後くらいに。
>43
興味ある
ただ「見送った」と「澪食った」を替える程度ものなら要りません
>>44
>「見送った」と「澪食った」
自分ではなかなか巧いと思ってたりして。
46某T@まえがき :2000/09/11(月) 06:15
1さんの続きになりますが、
若干、AIRネタバレを含む危険性があります。
そのあたり、ご勘弁を。
47某T@自分にできること・1 :2000/09/11(月) 06:16
夢を、見ていた。
寒い日の、夢を。
あの日から、すでに4カ月。
5月の日差しは、少しずつ暑さを増していた。
エアコンのモードは、いつの間にかヒーターからドライに変わった。
『挑戦をやめてしまえばどうなるか、リーフの現状を見れば分かるだろう』
あの時の吉沢の言葉が、頭の中で何度も繰り返される。
「挑戦…か」
麻枝は、力なくつぶやいた。
ウイルス事件で駄目になったシナリオの書き直し。
それが、ここのところの麻枝の仕事だった。
だが、その作業は遅々として進んでいない。
「何に挑めばいい…今は」
麻枝の足元には、丸められた紙が無数に転がっていた。
どうせならと、一から書き始めたシナリオ。
だが、満足のいくものはできなかった。
「何がやりたいんだ? 俺?」
麻枝はつぶやくと、力任せにシャープペンシルを投げ出す。
そして、モニターの前に座り、シーケンサーソフトを立ち上げる。
シナリオに詰まると音楽。それはいつもの麻枝のパターンだ。
「…こっちも駄目か」
メロディーと呼べるようなものは、浮かんでこなかった。
「チャーシューメン一丁!」
気分転換に、訳の判らないことを言ってみたが、気分が晴れるわけでもない。
「アホか…」
麻枝は椅子に体を投げ出すと、目を閉じた。
その時、ドアがノックされた。
「誰ですか?」
『久弥です』
「…用は?」
『弁当、持ってきました』
「判った…ちょっと待ってくれ」
今のままではあまりにも見苦しい。
麻枝は、少しだけ部屋を片付けてから、ドアを開けた。
48某T@自分にできること・2 :2000/09/11(月) 06:17
「すまんな、久弥。こんなことまでしてもらって」
「いいんですよ。今、僕にできるのは、雑用ぐらいのもんですし」
「…またコンビニ弁当か?」
「はい。好きですから」
「もっとちゃんとしたもの、食えよな」
あまりの久弥らしさに、麻枝は苦笑した。
「おいしいですよ」
「まぁ…この場じゃ、悪くはないかもな」
ローソンのトンカツ弁当に箸をつけながら、
麻枝は誰に語るでもなくそう言った。
「…苦労してますね」
「判るか?」
「麻枝さんは、すぐ顔に出ますから」
「大丈夫…と言いたいとこなんだけどな」
麻枝の表情が、少し硬くなる。
「ちょっと、引っ掛かっててな」
「?」
「俺は守りに入ってるのかな?」
「え?」
久弥の表情に疑問の色が浮かぶ。
「半年ほど前に、吉沢さんに言われてな。
挑戦をやめてしまえば進歩はないって」
「Kanonのことですか?」
「ま、そういうことだな」
しばらく黙っていた久弥が、おもむろに口を開く。
「あれがあの時、自分にできる精一杯でしたから」
「…」
「僕にとって企画は初めてだったし、今でもあれに不満はありますし」
「不満?」
「僕は別に、周囲から夢想家とか、甘いとか言われてもいいんですよ。
でも…本当に自分のやりたいことができたのか、というと…」
「まだ完全じゃない、と」
「多分それは、麻枝さんとはかなり違うんでしょうけれど」
「なるほど…な」
49某T@自分にできること・3 :2000/09/11(月) 06:18
「守ることが正しいとは思えないんですけれど」
久弥は静かに話し始める。
「だからって、無闇に挑戦すればいいってもんでも…ないと思います」
「…」
「麻枝さんには麻枝さんにしか、僕には僕にしか
…できないことが、ありますから」
「自分にしか、できないこと?」
「なぜ麻枝さんは、RPGを作ろうと思ったんですか」
少し間を置いて、麻枝は口を開いた。
「RPGを作るということは、1つの世界を作ることなんだ。
少なくとも、その世界においては、自分は創造主=神でいられる。
そして、その自分が作った世界で、
…人が生きる姿、人が成長する姿を描きたかった…から?」
「え?」
「成…長?」
「どうしたんですか?」
「…ゲームの中では、人は成長できないんだよな」
「ま、まあ確かに」
「自分の世界…自分の…」
「麻枝…さん?」
「悪い、久弥。しばらく一人にしてくれないか?」
「?」
「…お前も俺も同じだ。書く時は一人だ」
「はい!」
麻枝の、そして久弥に笑顔が浮かんだ。
シャープペンシルの滑る音が聞こえ始めた。
50某T@あとがき :2000/09/11(月) 06:22
久々に書いてみました。
なんだか、文章にまとまりがないな。
とりあえず、AIR編のイントロに…なってないような。
鬱…。
51名無しSAN :2000/09/11(月) 10:40
「鳥のの歌」
(AIR「鳥の歌」替え歌)

消えるアクアプラス 僕たちは見送った
ケンカして逃げた いつだって弱くて
中途は 変わらず
いつまでも変わらずに
扱い悪いこと 生波夢とグチる

鳥のはまだ 所属ないのか
いままでAIRのお手伝い
届かない自作ブランドゲー
願いだけ秘めて フォトショップ

鍵っ子達は 萌えの路線歩く
特典に お金を切らして
鍵板は 厨房カキコ
両手には いたるのグッズを

消えるアクアプラス ぬけだしてぬけだして
ここに移籍した あの日から変わらず
待遇は 変わらず
僕たちはあるように
目立たずに辞めるのか きっと・・・


KanonにもAIRにも参加してるのに、コメントがない鳥の氏、
個人的にこの人がいないのもリーフが
VN4を作れない一因ではないかと思っています。
まあこの人、リーフのスタッフコメントとか見ると、
目立つの好きでないように見えるんだけど。

全体的にまとまりがないな、即興だし。
言い回しも「澪食った」のほうが上手いな。
さっさと逝こう。
52名無しSAN :2000/09/11(月) 11:10
>扱い悪いこと 生波夢とグチる
→扱い悪いこと 生波夢とグチをとばす

>目立たずに辞めるのか きっと・・・
→また背景で目立たずに辞めるのか きっと・・・

修正忘れてた、鬱だ。

鳥のって、外注で背景受けてただけって話ですぜ、旦那。
> 鍵っ子達は 萌えの路線歩く
> 特典に お金を切らして
> 鍵板は 厨房カキコ
> 両手には いたるのグッズを
わろた(藁
54名無し君@精進します :2000/09/12(火) 00:52
コミパの乱・混雑と混乱と混沌

 下川は迷っていた。
 周囲では悲鳴のような被害報告が続いている。
「東3戦線崩壊!」
「鈴木混対部隊壊滅! 行列を維持できません」
「人が多すぎて地面が黒く見えない。
 いいか、人が七分に地面が三分。人が七分に三分地面だ」
 被害状況は手に取るように判るのだが、こちらの指令は届かない。
 高橋の巧妙とも言える指示系統編成である。
 大本営を孤立させリーフの敗北する様を見せつけながら何も手を出すことができない。
 身悶えする下川を嘲笑する高橋の悪意による編成であった。
 だが、下川に全く対策がなかったわけではない。
 直属の親衛隊が五千。下川の命令を待っていた。
 彼らは麻雀の頃からリーフに忠誠を尽くしたいわば精鋭中の精鋭。
 リーフが彼らを裏切ることがあっても、彼らがリーフを裏切ることはない。
 この混沌とする戦場に置いて彼らの組織だった行動力は勝敗の帰趨にかなりの影響をもたらすだろう。
 しかし、それだけに投入する時機を誤ってはならない。
 無駄に彼らを消耗してしまっては今後の販売戦略にも損害が出てくるだろう。
 だから下川は迷っていた。
 戦場では常に誤謬と逡巡はつきまとう。瞬時の判断が勝敗を分けるのである。
 無駄に迷っていては好機をつかめない。
「専務、ご采配を」
 それでも下川は動かなかった。いや、動けなかった。
55名無しさん@そうだ選挙にいこう :2000/09/12(火) 20:07
age
56名無しさん@そうだ選挙にいこう :2000/09/12(火) 20:39
>>54
>リーフが彼らを裏切ることがあっても、彼らがリーフを裏切ることはない。
笑った

 9月8日。
 二度の延期を経て、麻枝の全身全霊を込めた新作が、
 ついに審判を受けることになった。
 オタクの聖地・秋葉原は、
 午前0時発売のAIRに群がる鍵っ子であふれかえり、
 歓喜の叫びが夜空に吸い込まれてゆく。
 特典を抱えた鍵っ子が、息を弾ませながら、
 不規則にうねる行列を横目に走り去ってゆく。
 彼らの熱気は天を焦がさんばかりに燃え上がり、
 にじみ出る汗は街灯を照り返して七色の輝きを放つ。
 悲鳴と怒号が不協和音を奏で、前人未到の喧騒が深夜の電気街を包む。
 信徒は恍惚の笑みを浮かべ、
 ウォッチャーはそんな彼らを苦笑まじりに見つめている。
 雲の切れ目から射し込む月明かりは、
 天の啓示を連想させるほどに神々しくまばゆい。
 夜空に抱かれた無数の星は、鮮やかな花火さながらに瞬いている。
 人々は、歴史の証人となれたことを喜び、
 肩を寄せ合いながら空に向かって歌い上げる。
 夢におぼれる虚ろな瞳、うわごとを刻む乾いた唇……。
 吹き抜ける冷たい風が頬をなで、失いかけた自我を現実に引き戻す。
 しかし、彼らは飽きることなく想いを馳せる。
 ――AIRが与えてくれるであろう、新たな感動に。

 数日後。
 AIRを絶賛する声がwebを席巻した。
 ノスタルジアを想起させるシナリオ、心の琴線に触れるメロディ、
 極限まで描きこまれた美麗なCGがつむぎだす、
 儚いまでに哀しく描かれる母子の愛に、人々の瞳には感涙があふれ、
 せつない想いに胸を締めつけられたのだ。
 果てしなき時の流れ。
 時を越えて受け継がれる悲しい記憶。
 あわれむほどに弱い人の心。
 夢心地で物語を見守り、そして結末を迎えたとき、
 深い感傷に満たされた心に、何かが産み落とされた。
 彼らは、それを表現する術をもたない。
 ただ一言。
 ――素晴らしい。
 誰もが、そう漏らした。

 東天満のビルの一室に、高らかに祝杯を挙げる者たちの姿があった。
 この世にAIRを送り出し、覇王の座を手中にしたkeyの面々である。
 彼らはみな一様に頬を上気させ、
 とめどなく押し寄せる勝利の喜びに身をゆだねている。
 つぶらな瞳は明るい光をきらめかせ、
 アルコールに濡れた声帯はなめらかに震える。
 ワインを注がれたグラスに唇をあてる麻枝に、
 折戸が軽やかな足取りで歩み寄った。
「やったな、麻枝」
「ああ。俺たちの実力からすれば当然だが、やはり嬉しいものだな。
 地団駄を踏む下川の姿が目に浮かぶよ」
 そう言って、地平線の彼方にあるアクアプラス本社に視線を向ける。
 万感の想いを瞳に込めながら、麻枝はゆっくりとうつむく。
 長かった。
 この業界でトップを取ると誓ったあの日から、もう五年が経とうとしている。
 本当にいろいろなことがあった。
 信じがたいほどの薄給で酷使された、駆け出しの頃の毎日。
 いたるや折戸、久弥との出会い。
 パクリ野郎だと罵倒されたタクティクス時代。
 くされヲタの機嫌を取るために仕方なく作ったKANON。
 電波を撒き散らす守銭奴の介入。
 幾多の困難の末、今年、ついにAIRは完成した。
 そして、業界はこの俺にひざまずいたのだ!

 見たか、YETめ。
 俺に限界などないことが、これでよく分かっただろう。
 軽率な言動を悔やみ、吠え面をかくがいい。
 勝利を宣言するように、麻枝が高い笑い声を上げた。
 そんな同僚の心情を察してか、折戸は口元を緩め、薄く笑う。
 今ごろ、下川はどうしているのだろうか。
 高橋と水無月は独立し、果ては宇陀児にも逃げられた。
 残されたのは、同人意識まるだしのペド野郎。
 しかも、なにを血迷ったのか、次回作は3Dアドベンチャーだという。
 落ちぶれたといっても、リーフは俺の古巣だ。
 復活を期待する気持ちがなかったとは言えない。
 それだけに、下川には失望だ。
 好きな所まで落ちるがいい。
 俺は、さらなる高みを目指して羽ばたく。
 折戸は、脳裏にこびり付いた過去を流し去るように、
 グラスのワインを一気に仰いだ。
 思考を元に戻し、饒舌を滑らせる二人のもとに、
 きらびやかなドレスを引きずりながら、いたるが歩み寄ってきた。

「随分とお酒が入ってるみたいね、
 普段はあんまり飲まないくせに。よっぽど嬉しいのね」
 いたずらっぽく笑いながら、いたるは交互に二人を見やる。
 相手の瞳に、ほろ酔いした自分の姿を認め、麻枝と折戸は吹きだした。
 いつになく緩んだ頬が、どうしようもなくおかしかったのだ。
「それはそうと、久弥くんが居ないんだけど、どうしたのかしら」
 周囲の人ごみを見回しながら、いたるが怪訝な表情で呟く。
 いたるの指摘で思い起こしたのか、麻枝と折戸も顔をしかめる。
 振り返れば、久弥の姿は今朝から見あたらなかった。
 どうせすぐに来るだろうと、誰も気にとめなかったのだが、
 祝勝会が始まった今も、久弥の姿は影さえ認められない。
「どうしたんだろうな。電話でもしてみるか?」
「そうだな」
 麻枝は携帯を取り出すと、ためらうことなく久弥の番号をコールした。
 数秒後、麻枝の眉間にしわが寄せられた。
「……電源を切ってやがる」
 苛立ち気味に携帯を仕舞い、いたると折戸に視線を転じる。

「本当にどうしたのかしら。
 急な用事が入ったとしても、久弥くんなら必ず連絡くらい寄越すはずなのに」
 久弥の几帳面な性格を想起しながら、不審な行動に首をひねるいたる。
 麻枝と折戸も思いあたる節がないのか、
 親指と人差し指をあごにそえながらうつむく。
 三人の視線が床の一点で交わろうとしたその瞬間、爆音が鼓膜を震わした。
「この音は……」
 聞き覚えのある音に、麻枝が窓から身を乗り出し、
 敷地内の駐車場を見下ろすと、そこには見慣れた男の姿があった。
 しかし、どこかおかしい。
 ちからなく駐車場に立ち尽くし、夜空に視線を泳がせているように見える。
「久弥くん、どうしたのかしら」
 いたるは、麻枝の肩越しに、心配そうに久弥を見つめる。
 不吉な予感が、麻枝の脳裏をよぎった。
 それはまさしく、長大な時空を共有してきた者にのみ与えられる、
 霊感とも形容できるものだった。
 次の瞬間、麻枝は祝勝会の会場を飛び出していた。
 驚いたいたると折戸は顔を見合わせ、麻枝の後を追った。

「久弥!」
 冷たい秋風を切りながら、麻枝は戦友の名を叫んだ。
 しかし、聴覚が機能していないかのように、
 久弥は宙の一点を見つめ続けている。
 互いの吐息を感じ取れる距離まで近づいたところで、
 久弥はようやく向き直った。
 麻枝は絶句した。
 精気を失った瞳、からからに乾いた唇、やせこけた頬。
 吹き抜ける風に髪をなびかせながら立ち尽くす久弥は、
 言うなれば、抜け殻のようであった。
「どうしたんだ、いったい……」
 痛々しい姿を見つめながら、麻枝は声を絞り出した。
 遅れて到着したいたると折戸も、
 変わり果てた久弥を視野に収め、驚きのあまり言葉を失った。
 視線を注ぐ三人を順に見やり、久弥は再び天を仰ぐ。
 降り注ぐ星の光は痛いまでに冷たく、
 やつれた久弥の頬をいっそう青白く染め上げる。
 風に吹かれる雲は、月明かりを明滅させながら、あてもなく流れてゆく。
 駐車場の縁に沿って並ぶ白熱灯は、アスファルトに濃淡のある模様を描き出す。

 時は、静かに流れた。
 押し殺した声が、永遠とも思われた沈黙を破った。
「おめでとう。大成功なんだってね」
 悲哀に彩られた瞳に、固唾を飲む三人の姿が映し出された。
「これは凄いことだよ。みんなに絶賛されるなんて」
 その声は、死に瀕した小動物の喘ぎのように弱々しい。
「もう僕なんて必要ないね。君らだけで十分やっていけそうじゃないか」
「なにを言ってるんだ、久弥」
 無機質な独白に耐えかねた麻枝が、強い意思を込めて声帯を震わした。
 久弥は、自嘲ともとれる笑い声を漏らし、再び星の海を仰ぐ。
「隠さなくてもいいんだよ。
 非難されてることが分からないほど、僕は馬鹿じゃない……」
 いくらか、久弥の表情から固さがとれたように見えた。
「僕は信じてた。『萌え』こそがエロゲーの命だって。
 だから僕は、ずっと萌えキャラを書き続けてきた。
 そうすれば、みんな誉めてくれた。最高ですって言ってくれる。
 その瞬間、僕はたまらなく幸せな気分になれる。
 だって、誰かに必要とされることほど嬉しいことはないからね」
 瞳に映った星の大海が、緩やかに波を打った。
「今だから言えるんだけどね、麻枝、僕はAIRのデバッグをしてた時、
 これはダメだなって思った。キャラ萌えの要素が全然ないんだもの。A
 IRはこける、そう確信した」
 麻枝は、無意識のうちに乾いた唇をなめた。

「だけど、それは僕の思い違いだった。AIRは大絶賛。
 みんな口を揃えて言う。最高のシナリオです、って。
 そして、こう付け加えるんだ」
 ――久弥はいらない。
 冷気にさらされた指先が、わなわなと震える。
 そして、押さえ込んでいた感情を吐き出すようにまくしたてる。
「おかしいよ、絶対。萌えがいらないなんて。
 皆なんの為にエロゲーをやるんだい? 萌えるためでしょ。
 どうしてそれを否定するようなことを言うんだ。
 そんなのはギャルゲーとさえ呼べないじゃないか」
 久弥は叫ぶ。
「売るためにエロゲーの名をかたるなんて、萌えに対する冒涜だよ!」
 懸命に押し出された涙声は、聴く者の胸を執拗に突き刺した。
 なぜなら、久弥の非難には反論の余地がなかったからだ。
 麻枝は汚れた過去を、苦虫を噛み殺す思いで振り返る。
 彼がAIRで表現したかったのは、
 これまでの作品からも分かる通り、家族の愛だった。
 親子の絆を作中で表現しきった自信はある。
 18禁とする必然性などなかった。
 だが、麻枝は妥協した。

 より多くの名声を得るために、彼は18禁という安易な道を選び、
 エロ無し萌え無しという、
 エロゲーとしては前代未聞の作品を世に送り出してしまったのだ。
 そして、それを否定するどころか肯定さえするいたると折戸。
 名声という快楽に溺れた彼ら三人は、久弥から見れば、まぎれもない反逆者であった。
 埋めることの出来ない溝が、久弥と麻枝たちを静かに隔ててゆく。
 誰も、言葉を発しようとはしない。
 ……雷鳴が轟いた。
 見上げると、宝石箱をぶちまけられた漆黒のキャンバスは、
 分厚い雨雲に覆われていた。
 大気を泳ぐ雨粒が、立ち尽くす子羊の肌を激しく打ち据え始めた。
 幾千もの水の槍が視野を斜めに貫き、5メートル先さえ見通すことが出来ない。
 しかし、その場を離れようとするものは一人もいなかった。
 不意に、人の影が崩れ落ちた。
「久弥!」
 麻枝が叫んだときには、すでにアスファルトに身体を預けていた。
 雨粒がアスファルトを叩く音を救急車のサイレンが破るのは、
 それから五分後のことであった。

 2001年3月。
 業界を駆け巡った衝撃に、誰もが耳を疑った。
 ――keyの解散宣言。
 突然のそれは、憶測が憶測を呼んだ。
 ある者は語る。
「社長の横暴に腹を据えかねた」
 またある者は語る。
「ビジュアルアーツの内部分裂が原因だ」
 錯綜する推測は、どれも上面を撫でるものでさえなかった。
 keyの面々は、誰もこの件に関しては口を開こうとはしない。
 天下を取ったkeyに何が起こったのか。
 人々は、限られた情報を頼りに想像を膨らませることしか出来ないはがゆさに、
 ただ胸を詰まらせるばかりだった。
 2001年5月。
 多くのファンに惜しまれながら、keyは正式に解散した。
 ビジュアルアーツ離脱に際して、麻枝らには多くのメーカーから声が掛けられたが、
 差し伸べられたその手を掴む者はいなかった。
 理由は分からない。
 そして、彼らがその後どうなったのか、知る者はいない。

 ファンは願った。
 彼らがいつか、新たな感動を届けるために帰って来てくれることを。
 多くの時が流れた。
 本当に多くの時が流れた。
 しかし、ついに、その願いが聴きいれられることはなかった。
 人々は知っていた。
 季節は巡り、全ては想い出の彼方に還ってゆく。
 失われるからこそ輝く想い。
 かけがえなのない日常。
 さりげない優しさ。
 なにげない幸福。
 感謝しよう。
 今も色あせない感動を与えてくれたことを。
 胸に刻もう。
 小さな勇気をくれたことを。
 そして伝えよう。
 彼らから受け取った全てを。

 ――――――――― 鍵列伝・完 ―――――――――
69:2000/09/12(火) 21:16
ごめん、もう誰も続きを書かないと思って完結させちゃった。
気にしないで続けて。
70某T@ヤバ… :2000/09/12(火) 21:21
これ見ると…書きにくいんですが。
完成度的に。
前の…やっぱり出来悪かったかな…。

あとは…ミッシングリンクをどうやって書くか…。
71名無し君@精進します :2000/09/13(水) 00:36
うへえ。どうしましょうか。
このまま1さんの美麗な文章で完結にしたい気分と
自分のヘタレ文章で続きを書きたい気分がせめぎ合っているよ。

でも自分は厨房気質なのでそのうちヘタレ文章アップしてしまうのだろうな。
>>57-69
あ、完結してしまいましたね。お疲れ様です。
いや、まだ続き書くつもりはあったのですが、仕事が忙しく書く暇がなかったので。
短編が一つあるのですが、これはこみパ後のネタなので出す時期を選ぶし。
何よりこう綺麗に締めてしまったところに私の駄文を書き足すのも何なので…
とりあえずもうちょっと時期待ち。

ただ、まだ、冬コミとか、夏コミとか、まじアンとか書かれてませんし、機が熟したら、番外編とか外伝とかという感じで書こうと思います。既に葉vs鍵じゃなくなっているかもしれませんが。
まだ皆様の作品を読みたいですので、続いてアップしてもらえると嬉しいです。

73名無しさんだよもん :2000/09/13(水) 10:56
1さんのを夢オチにすればつながるとは思いますが、
それでは完成度が高いのにもったいないし、
失礼かなと思っています。
747世 :2000/09/13(水) 11:59
久弥氏にリストカットして欲しかったんですが…個人的に…

ここから繋げるんですか?
俺も少し考えてみるかな。

…でも駄文をさらしたくないしなあ。
思い付いたら書きます。
75名無しさん@そうだ選挙にいこう :2000/09/13(水) 23:40
終わってしまってからで非常に申し訳ないんだが…
サフィールの代表取締役は「あきら」じゃないと思うぞ。
確か男のはず。
76名無しさんだよもん :2000/09/13(水) 23:52
323強姦から一気にしぼんだネここのスレ。
77名無しさんだよもん :2000/09/14(木) 00:22
それはいっちゃいかん。
78名無しさんだよもん :2000/09/14(木) 00:51
>76
323事件SSの時点で書きこみペースが遅延気味だったし、誰かがブツを上げるのを誰も止めれんかったろうな。
まあ、この板は21禁だし、そもそも2chであるからしていずれは誰かがああいったのを書いたろうよ。

どっちかって言うと鬼畜SSスレに書いて引用した方がよかったんじゃねーか?と、いまさらながら…
79ちんこむぎゅう :2000/09/16(土) 01:35
http://saki.2ch.net/test/read.cgi?bbs=sakura&key=968736899&ls=100

ま、さくらとまるちの小説だ
結構盛り上がってきてるから萌えるはずだ
見たければみるがよい
80名無しさんだよもん :2000/09/18(月) 19:56
あまりにも下げるのは惜しいので、
1度だけあげます。
コミパの乱 終わりと始まり

 そこには会場の容量を遥かに超える人数が押し込められていた。
 心理学的に言うと「レポールをかける」現象が起きていたのである。コンサート会場などでよく見られる現象で、定量を超えて密着させられた人間は無意識のうちに周囲と同化行動をとるのだ。かつてナチスの宣伝相ゲッペルスが党大会で効果的にそれを利用している。
 そしてそれはここ、コミパの会場でも発生していた。

 コミパの混乱は最終局面を迎えようとしている。
 そこに集まった人間達は壇上を注目していた。
 後に下川の三大愚行に数えられるコミパ会場の特設ステージである。コミパの終わりに当たってそこで下川専務からの重大発表があるはずであった。
 その内容は根拠のない噂であるが信者達の間では信憑性を持って囁かれている。『高橋が居なくなった』おそらくこのことについて下川から正式なコメントが下されるはずであった。
 盛大な拍手の中、下川が壇上に現れる。
 大観衆の注目を浴びて彼は最初の台詞を発した。
「まずは、コミパの成功と勝利をここにいる皆様と共に感謝します」
 それは事実を無視した勝利宣言である。だが、実態を知る一部の者のブーイングは信者の声にかき消された。
「勝利万歳!」
「リーフに栄光を!」
 狂躁はすぐに会場全体に広がったが、下川はあわてなかった。ゆっくりと会場を見渡し、騒ぎが自発的に収まるのを待つ。
 しばらくして会場は静まり返り、誰もが固唾をのんで下川の次の台詞を待ちかまえた。
「こみっくぱーてぃーをドリームキャストに移植します」
 沸いた。会場は割れんばかりの歓声に。
 半分は事実を隠蔽するリーフへの怒声だったのだが、所詮は信者の前にはかなわなかった。
「万歳! 万歳! リーフ万歳!」
 重なりあう歓呼の声はやがて自発的な歌となり、楽団が即興で曲をつける。

今日も我らは視るほどに、聴くほどに胸が熱くなる偉大なリーフを仰ぎ見て、永遠なる人生の太陽として声の限り万歳歓呼を捧げるのであ〜る〜♪
これからも我らは敬愛する下川専務様の下〜 死んでも勝利者たる道を進むべく戦っていくのだ〜♪
激しい嵐も払いのけ、信念をくださる下川専務様〜
あなたがなければリーフもなく、リーフがなければ我らもない♪

(敬愛するゲームクリエイターにして偉大なる指導者、下川専務様が右手を挙げ、応えてくださる。ああ、我らは東洋一の果報者だ。喜びに輝く同志達の顔。オーバーラップするように勇壮な曲)

 これより後、下川は独裁体制をより強固な物にしていく。
 そのことを如実に表しているのが「血の日曜日事件」リーフ公式掲示板言論封殺事件であった。
もう誰も読んでいないかな?
84某T@読んでます :2000/09/22(金) 07:10
>>83
こういうスラップスティックは書くのが得意とは言い難いので…。
結構うらやましかったりします。私は。
>>83
読んでますよ〜。もしかしてこのまま沈んでしまうのではないかと心配してました。
最近多忙なので、私は新作を書けなくて。ここもあんまり覗けないし。
10月になったら何とか。
86名無しさんだよもん :2000/09/26(火) 21:41
気になって覗いてみたら、いつのまにか再開しているではないか!
葉鍵板の地下活動、恐るべし・・・
ここってあげてもいいのかな?
88名無しさんだよもん :2000/09/27(水) 18:00
流石に誰も荒さんだろうし、定期的にあげてもいいと思うが。
地下に置いとくのはもったいないと思う。
89名無しさんだよもん :2000/09/28(木) 17:21
…と言う事なので揚げ。
90名無しさんだよもん :2000/09/28(木) 17:23
>>89
なぜこの最悪のタイミングで揚げる・・・
91名無しさんだよもんNo.89 :2000/09/28(木) 17:34
まずいようなので下げ。(ぉ
92名無しさんだよもん :2000/10/01(日) 12:59
ところで続きはやって頂けないのでしょうか?
93名無しさんだよもん :2000/10/05(木) 02:46
前レスから一気に読んだよー続きぜひやってくださいね。
94age魔2 :2000/10/09(月) 16:02
     へヘ
    /〃⌒⌒ヽ  「にははっゴルァ」
    〈〈 ノノノハ)))
    |ヽ||` ∀´||
   ⊂[リ∨╂リ]つ
    リ /リリリリリ
       U U
95名無しさんだよもん :2000/10/17(火) 01:30
流石にもう無理か……
96名無し:2000/11/17(金) 14:06
がんばれ〜
97名無しさんだよもん:2000/11/21(火) 01:15
あげてみる
98名無しさんだよもん:2000/12/28(木) 22:43
あげ
99ちょいと気になった。
上月会長と下川氏の会談。
気になるので執筆希望なりぃ。