【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ネコ2匹目
かずさはやっぱ糖分過剰摂取じゃないとなw
千晶がとういう格好してるのか気になる
「あ、瀬ノ内さん。今日は…」
板倉記者が口を開いたところを、すかさず千晶は自分のセリフを重ねてつぶす。
千晶はいつもこの手でこの小うるさい雑誌記者をはぐらかしていた。舞台の間の取り方を逆用したワザである。
「ああ、冬馬さん。わたし。クラス別だったけど学年同じだったよ。でも覚えてないよね。瀬能千晶っていうんだけど」
突然見知らぬ学友に話しかけられ、今度は冬馬が泡を食う。
「え、ええ?」
かまわず千晶は続ける。
「ひょっとして、今の舞台見ていた? ごめんごめん、全然気付かなかった」
そういう千晶の顔は悪戯を見つけられた少年のものだった。だが、その目はひそかにかずさの反応を注意深く見ている。
「あ、いや、今日は別件で…」
その答えを聞き、千晶は軽い舌うちとともにぼやいた。
「やっぱりか…、ちぇ。春希も雪菜もチケット渡したのに見に来なかったし…」
そのつぶやきは誰にも聞きとれないほど小さかった。しかし、ピアニストであるかずさの耳にははっきりと聞こえた。
「…春希たちの知り合い?」
かずさの声のトーンが微妙に変わったのを千晶は聞き逃さない。
「うん、春希とは何度か寝たよ」
「…っ!」
「わたしはベッドで春希は床で」
「………」
からかわれたことに気付いたかずさは凶悪な目つきで千晶を睨む。しかし千晶は気押されることなく、飄逸な口調をやめない。
「ごめんごめん、ゆるしてちょんまげぇ〜…って」
かずさから、けして許すまじとばかりの怒りのオーラが立ち上る。千晶はその様子をひととおり観察し終わるや、カバンから何かを取り出し、両手を前で組んで言った。
「まぁ、おわびといっちゃあなんだけど…『かずさぁ、明日ヒマ?』」
その言葉に、かずさは不意をうたれる。急になれなれしく名前で呼ばれたことに対してではない。
その口調、しぐさがまるで…かずさの不倶戴天の親友のまさにそれであったから。
「???っ…あ、ああ…」
かずさは思わず肯定の返事を返してしまった。
「『よかったぁ。じゃ、絶対絶対来てよね。…来てくれないとちょっとだけ傷ついちゃうかもなぁ…』」
そう言って、千晶はかずさの手に強引にチケットを2枚握らせる。
その際の演技も完璧に『小木曽雪菜』のそれであった。かずさは混乱のあまり何も反抗できずにチケットを受け取る。
「『じゃあ、見終わったらまたこの場所で会おうね』」
「………、あ、うん…」
かずさは呆気にとられ、こくりとうなずくばかりであった。
その後の事はかずさはよく覚えていない。
たしか、瀬能千晶と名乗るあの新人女優は板倉記者にもチケットを渡して去っていった。
板倉記者からはいろいろと質問されたが、何も答えられなかった。ただ、一緒に翌日の舞台を見に行く約束だけして別れた。
自分と峰城大付の同学年ということだが、もちろん覚えはない。『春希』と『雪菜』を名前で呼ぶあの人物は何者?
ただの大学とかの同窓生? あの時見せた演技は何? ただのモノマネ上手?
いろいろ考えたけど埒があくはずもない。
かずさは考えるのをやめた。明日、あの瀬能千晶という女に直接聞けばわかることだ。
寝床に転がりながら眺めた、シーリングライトに透けるそのチケットには「5/13(木) シアターモーラス 劇団コーネックス二百三十度『届かない恋』」と印刷されていた。
**********5/13(木)「シアターモーラス」『届かない恋』開演前
「明日の講演後このコ連れて来て。そしたら取材でも何でも応じるよ」
瀬之内晶はそう言って板倉記者にチケットを握らせると、あっという間に雑踏へ消え失せてしまった。
あとに残されたかずさと板倉記者だが、かずさのほうは呆気にとられたようすで、板倉記者が何を話しかけても生返事しか返ってこなかった。
仕方なく、明日会う約束だけしてその場は別れた板倉記者だったが、かずさが来るかは半信半疑だった。久しぶりに会った学友?にしては様子がおかしかったが…
翌日の講演開始10分前。待ち合わせは20分前だったから、もう10分の遅刻だ。
「…また騙されたかも?」
シアターモーラスの入口で待ちつつ、そうぼやいた板倉であったが、程なく彼女は現れた。
「…やあ、板倉さん」
「はいはい、かずささんこんにちは〜。今日はお付き合いありがとうございます。いやいや、本日は僭越ながら御同席させていただきますので…」
かずさが現れた嬉しさのあまり、忽ちテンションを上げる板倉であったが、かずさはそんな板倉がまるで視界に入っていないように、
「…行くか…」
と言うと、すたすた劇場に脚を進めた。
訝しげな表情のまま付いていく板倉であったが、彼女の記者のカンは、
『ここは機会を待て、じきに大ネタが来る』
と告げていた。
「これ、どんな劇なの?」
開演を待つかずさにそう問われ、板倉は答えた。
「ええ、一人の男性をめぐる二人の女性の恋と友情の物語ですね。バンドを組んで友情を深めた三人が三角関係に苦しみつつ成長する、という話です…かずささんは演劇はよく御覧になるのですか?」
「…いや……それで、瀬能さんは?」
「瀬之内さんはヒロインの一人、冬木榛名役です。脚本も瀬之内さんが大学時代に所属していた劇団で書いたもので、なんとその時はもう一人のヒロイン、初芝雪音も瀬之内さんが演じました。つまり、一人二役ですね」
「…へぇ…」
自分で聞いておきながら、かずさの目はまだ開かぬ舞台に、正確にはその向こうにいるであろう瀬能千晶という女に釘付けになっていた。
彼女は…何者? 春希たちとの関係は?
この時既に、かずさは千晶という役者の罠に心の奥まで完全に絡めとられていた。
間もなく舞台が始まった。オープニングニングに流れたのは「White Album」。かずさにとっても懐かしい曲だ。
メジャーデビューを夢見る高校生、西村和希が二人のヒロインをバンドに引き込もうとするシーン…前半はラブコメディ色が強い
「俺と合わせられるのはお前しかいない!」
「だから質問に答えろ」
「俺みたいなヘタクソをフォローするには、お前くらいの腕がないと不可能なんだよ!」
開演後、しばらくして…2人目のヒロイン『冬木榛名』登場のあたりから…板倉はかずさの異変に気づいた。
最初はギャグシーンで他の観客と同じようにクスクス笑っていたかずさが、やがてクスリとも笑わなくなったばかりか、だんだんと表情を強ばらせている。
「…あの…かずささん?」
「…まさ…か……っ」
かずさは、気付きつつあった。
この劇は…彼女と春希、そして雪菜の関係をモデルにしている。いや、三人の性格から関係、あの日々までを調べ尽くし、えぐり出している。
なぜ? なぜこんなことまであの女は知っている? どうやって知った? 誰から聞いた?
…そして、なぜ、自分にこの劇を見せようとした?
かずさは舞台の上の『冬木榛名』から、もはや目を逸らすことができなかった。
榛名の演技は、かずさにとってあたかも呪いの鏡であり、かずさは自分の虚像たる榛名に存在を突き崩されつつあった。
舞台はコンテストの直前、控え室での和希と雪音。雪音が和希にキスをねだるシーンだ。
「じゃ、もう一度目をつぶるので考えてみてください。制限時間は30秒!」
「え? え? え?」
「ん〜っ!」
「目をつぶったのはわかったけどさ…その背延びは何?」
「残り20秒〜」
「ゆ、雪音…?」
「残り10秒〜」
「10秒はやっ!?」
「………」
「………」
「残り15秒〜」
「増えてる!?」
「…っ!」
観客がどっと笑ったその時、かずさの口から漏れたのは笑いではなく驚きの絡んだ呻き声であった。
気付いたのは板倉だけであった。彼女がかずさの視線の先を追うと、その先には舞台袖に控える千晶がいた。
千晶はそんなかずさの様子を観察して悦に入っていた。
「いやいや、あの席は特等席だねぇ…」
前列端のその席は舞台を見るための特等席ではなかった。舞台袖に控える役者がその観客を観察するための特等席だったのだ。
「3人の1人しか引っ掛からなかったのは残念だけど…さあ、見せてちょうだい。冬馬かずさの怒り、嫉妬、嘆き、叫び、涙。全部を…」
千晶はそう呟くと『榛名』に戻り、舞台へ踏み出した。
終わってなかったのかよw
気持ちはわかるがあまり一気に投下すると何だから焦らず日を跨いだ方がいいんじゃない?
どうせ過疎ってるんだし
あまりに長文すぎると読むこと自体拒絶したくなるわ
何より連投規制で引っ掛かる可能性が高くなる(まして書き込みの少なくなる深夜)
こんばんは
昨日は長文連投失礼。
もうラスト以外できているけど、ペース配分して投稿します。
今日は、『届かない恋』の終幕まで。
ちなみに、雪菜True後の後日談ですので、千晶Trueの『届かない恋』とは内容異なる
(千晶入れ込んでない、雪音に千晶入ってない等)ってことでご了承ください。
「イチャイチャしたりジタバタしたり忙しいな」
「うぇっ!? ふ、冬木?」
ガタンッ!
「えっ!? かずささん!?」
突然立ち上がったかずさに驚いたのは板倉だった。かずさの顔からは血の気が失せていた。
「ごめんな… それから、今日まで本当にありがとう」
「…まだ終わってないだろ。最後の、一番めんどくさい本番が残ってる」
「そうだな…これが最後だ」
「………っ」
「行こうか、冬木。雪音が待ってる」
「………西村」
「ん…?」
『冬木榛名』が『西村和希』に歩みを進める。
「…やめ…ろ…」
かずさには次の『榛名』の行動がわかっていたから、抗議の声を漏らさざるを得なかった。
しかし、かずさの弱々しい声は聞き入れられず、『榛名』は『和希』に唇をよせる。
舞台上のキスにどよめきの声を上げる観客の中で、かずさ一人だけが軋むような声を上げていた。
そして流れる『3人』の「届かない恋」
かずさの心の悲鳴は止まらなかった。
**********幕間
「…かずささん?」
板倉に話しかけられてかずさは我に返った。
『榛名』のキスシーンから第一幕の終わりまで、結局かずさはずっと立ちっぱなしだった。
「…行く…」
そうつぶやいたかずさに板倉は聞き返した。
「?…おトイレですか?」
「あの女のとこだよ!」
「えっ? かずささん?」
板倉を押しのけて出ようとするかずさであったが、座っていたのは端が詰まった席であったため、板倉や他の観客が邪魔になりすぐに出られない。
無理に出ようとしてつんのめったかずさを板倉は止めた。
「かずささん! まだ一幕目が終わっただけで、すぐ次が始まりますよ! まだ瀬之内さんには会えませんってば!」
そう諭されて、我に返り腰を下ろすかずさ。
しかし、体は座しつつもその目は怒りと苛立ちに満ちており、今にも舞台に飛び上がりそうであった。
何で? 何を怒っているの?
板倉は不安を隠せなかった。
やがて、第2幕が始まった。
ここからは物語が大きく現実から逸れ始めた。板倉がかずさの方を見ると、射抜かんばかりの視線で舞台を見ていた。板倉はホッとした。とりあえずは大人しく鑑賞しているようだ…
榛名の想いを知りつつ、和希に猛烈アタックを仕掛ける雪音。やがて、二人は恋人として付き合いを始める。
しかし、新進気鋭のポップス歌手として一人メジャーデビューを果たした雪音は和希とすれ違いの生活を続け、やがて、和希は雪音に隔意と嫉妬を抱き苦しむ。
一方、ピアノより和希のそばにいることを、雪音の身代わりであり続けることを選んだ榛名。しかし、やがて二人は過ちを犯してしまう。
『お前のことなんか別に何とも思っていなかった』榛名の、本当の、そして真摯で深い思いの発露。
そして…
「後悔…するぞ…」
「後悔なんて…し飽きた…」
暗転する舞台
「いつもの約束…守れよ?」
「榛名…」
「雪音には…内緒だぞ」
雪音は、ふたりの逢瀬に気付きつつも、カタチだけの「遠距離恋愛の彼氏と彼女」の関係にすがりつく。
いや、カタチだけの廃墟同然の関係にすがり、崩壊だけ先延ばしにするような日々を送る。
「『もぉ〜、ひどいよねぇ〜。誕生日にまで仕事入れられて〜』」
「『てなわけで、和希くんゴメン! 電話してくれてうれしかったよ! じゃあ…』」
場面が明転し、雪音の自室。電話の切れる音ともに枕に伏し、独り涙をこらえる雪音。
くすんだ色の空虚な部屋から「会えない二人」のハリボテのような関係がにじみ出ていた。
枕元に置かれた写真立ての中にだけ、3人の色褪せない姿がある。
…優しさ故、会えない日々の中で一人待ち続ける雪音
…臆病さ故、和希の想いから逃げ続ける榛名
…立ちどまる和希
かずさは血色を失いつつも舞台を凝視し続ける。板倉が時折小声で心配そうに話しかけたが、全く反応しない。
ピアノを捨てた榛名には、和希が側に残り、捨てなかった雪音には、歌だけが残される。
そうして、第2幕が終わったが、かずさは手足が震えてもはや立ち上がることすら出来きなかった。
ただ、張り付けられたように幕の閉じられた舞台を見つめ続けるのみであった。
そして、最終幕。
そんな嘘に塗り固められた日々に疲れた和希がふと、榛名のピアノを聞きたいと漏らしたところから話は終盤に向かう。
ブランクとスランプに喘ぎ、自暴自棄になって和希まで拒絶して引きこもってしまった榛名。その危機を救う為に現れたのは他でもない、雪音であった。
「…何のために来た…? わたしを罵りに来たのか? それとも…憐れみに来てくれたとでも言うのか?」
雪音を拒絶する榛名。しかし、雪音は引き下がらない。
「どうしてそんなこと…そんなこと、どうして言うの…全部あなたが臆病なのが悪いんじゃない!」
ぱしっ。平手の音が響く。
「勝手な…ことを言うな…あいつの…想いも夢も、尊敬も、焦りも、嫉妬も、彼女の座もずっと独り占めしておいて…今さら被害者ですよってしゃしゃり出てくるなっ」
ぱしんっ。榛名も負けじと返す。
平手打ちとともにお互いの本音をぶつけ合い、いつしか和解する二人。
「おまじないだよ」
別れ際に雪音が榛名に渡したのは、あのコンテストの控え室で和希から受け取り、以来片時も離すことがなかった、和希との絆のギターピックだった。
「おまじないだ」
そして、和希からは、キスを
舞台にあのコンテストの日の「届かない恋」が流れ、榛名はピアノを取り戻す。しかし、それは皮肉にもあの日の3人の思い出と和希と雪音の仲まで取り戻してしまった。
二人の為に身を引く決意を固める榛名。
榛名がピアノを取り戻したことを知った母親からの留学の薦めを承け、誰にも知らせずウィーンへ去ろうとする。
飛行機が起つ直前でその事を知り、空港へと向かう和希と雪音。
雪による遅延で奇跡的に3人は出会うことができた。
再会を誓い、和希と雪音は榛名を見送る。しかし、榛名はもう二人の元に戻らないと心に決めていた。
「あれ?」
「何か…ポケットに…」
「これ…和希のギターピック…」
その意味に愕然として飛行機に向かい榛名の名を叫ぶ雪音。その雪音に寄り添う和希。
二人の姿を照らしていたスポットライトが徐々に絞られ、舞台は暗転し、最終幕は閉じられた。
スポットライトが最後に照らしたのは二人の繋がれた手、それは二人の未来を暗示していた。
拍手に包まれる劇場にかずさの慟哭が響き渡った。
投下完了。
明日、明後日はかずさvs千晶です。
>>142-146 いきなりかずさに馴れ馴れしすぎるような>千晶
千晶演じる雪菜に騙くらかされうなずいてしまうかずさ
バンドを組んで友情を深めた三人が三角関係にってとこでちょっと反応欲しかった気も
かずさの前で榛名を演じニヤニヤする千晶、美味しいぞw
あら随分大作
ご苦労さん
でもこのスレ的には雪菜End後より、千晶End後の方が需要があったような…
>>150-154 ん〜もう少しかずさの蒼白度(?)が欲しかったかなーと
それこそ顔面蒼白で声も出せないみたいな
て、なぜに張り手合戦!?まさか千晶はその後もずっと観察し続けてたとか?
ピック、たしか雪音は返さなかったんだよな
次はかずさが楽屋へ乗り込んで派手に張り手合戦、と読んだw
>>156 >>158 感想サンクスです。
スマホからで恐縮ですが、千晶さんにインタビュー
>>千晶さん。かずささんに馴れ馴れしくないですか?
「あはは。そこは賭けだったなぁ。向こうは今をときめくヒトだし、こちらも時間ない中、最終日前にかずささんの『演技指導』受けたかったしね
…決め手は春希と雪菜の名前出した時の反応かな。『かずさの事も知っている二人の共通の友人』って誤解させて切り込むコトにした」
>>バンド組んで三角関係って、かずささんとってはすごくトラウマですよね。かずささんの反応薄くなかったですか?
「ん〜。確かに。1幕より三角関係露わな2、3幕の方が反応薄かったよねぇ? 事実から離れてるからかな? 閉幕時の声はでかかったけど…何でかなぁ?」
>>どうして張り手合戦?
「あれ? 三角関係の争いで張り手合戦って定番じゃない? いやさ、雪音はともかく榛名ピアニストなのに張り手いいのかわかんないけどさ」
>>雪音ちゃん、ピックを一時手放しちゃうんですね。
「うん。『和希から離れてもピックは返さない雪音』も構想したけども、雪音には愛や友情のために誓いを犠牲にできる強さがあると思った」
「さて、なんか控え室で待っていても来そうにないし。ちょっと行ってきま〜す」
**********「シアターモーラス」『届かない恋』閉幕後、場外のベンチにて
「…かずささん! …大丈夫ですか? しっかりして下さい!」
「………ううぅ…うう…」
板倉は困り果てた。閉幕後、板倉が何度呼びかけてもかずさはベンチにうずくまり、立ち上がろうとしない。
そこへ現れたのは千晶だった。
「いやぁ、そんなに泣かれるほど感動されると役者冥利に尽きるねぇ…」
「…っ!」
かずさが顔を上げ、涙も拭かず、憤怒の視線を千晶に向ける。
千晶は鋭い睨みにもひるむことなく、手にしたボストンバッグを床に置くと、飄々と芝居じみた語り口を始めた。
その口調は雪菜のものを模していた。いや、意図的に慇懃無礼な言葉を選んでおり、彼女を知るものなら怒り出すように意図されたバッドコピーだった。
「いやいや…『本日は脚本、私、瀬ノ内晶。本名、和泉千晶の劇『届かない恋』ご覧いただき誠にありがとうございました。
甚く嘆称いただけ何よりです。この度はご感想を頂戴したく参りました』」
それが、かずさの逆鱗に触れた。
…わたしの前でその女のマネをするな…
ゆらりとかずさが立ち上がった。そして、
バシンッ! …どさっ
平手打ち一閃。千晶は豆が弾かれたように床に吹き飛んだ。
「かずささん! やめてください! 手を出すなんて!」
板倉が止めに入る。
が、その背後で背筋が凍るような冷たい声がした。
「これか…これが足りなかった…」
「!?」
驚く板倉が目を向けると、千晶がすくりと立ち上がった。
「ピアニストだから本能的に手をかばう、なんて都市伝説だね。フルパワーじゃん。
それに、昨日も触って思ったけど鍛えられた硬い手指。鉤爪みたいだね。弱々しい音ばかりの平手打ちとは月とスッポンだ」
「まさか…あなた…」
板倉は悟った。さっきの吹き飛び方はいくらなんでもおかしかった。手も予想していたように素早く顔を完全にガードしていた。それに、吹き飛んだ先には本人が事前に置いた大きなボストンバッグ。
「…わざと、冬馬かずささんを怒らせて…手を出させた?」
「ご名答」
「…なんで?」
「『恋敵に対してするように手を出して下さい』ってお願いしたらちゃんとやってくれた?」
「?? …なんで冬馬さんに…っ!? まさか…」
板倉は勘付いた。かずさも気づいた。
「そう、演技指導は本人にお願いするのが一番だしね」
この女、和泉千晶は自分の脚本のために、演技のために、実在の人物を糧とする怪物であることに。
「そうか…そうやって春希たちにも近づいたんだな…なぜだよ…」
砂でも飲み込んだかのようなかすれた声でかずさは聞いた。
「だって、あたしファンだも〜ん。あなたたちの…そう、付属時代のステージから」
「…っ!」
「あんたたちの三角関係、歌からダダ漏れだったもん。もうはまっちゃってさぁ。
絶対これは脚本にしてやろうって。で、大学の三年間、二人を調べさせていただきました〜」
それから千晶は、かずさたちが聞きに入ったのを見計らい、ぺらぺらと何の罪悪感もなく、どうやって3人の関係を調べ上げたか喋り出した。
『女を感じさせない女性』を装って春希に近づいた事。
『商学部の長瀬晶子』に化けて雪菜に近づいた事。
春希からより多くの情報を得るために母との不仲を装い、夜明けまで語りあったことまで…
かずさは魂を抜かれたように聞き続けた。
全て話し終えた後で、千晶はそれまでのうすら笑いではなく、にこやかな微笑みを浮かべて言った。
「まぁ、でも、ケリついたみたいだね。あんたたちの関係」
「!? っ! 何を!?」
「アンサンブル増刊号、付属CD『White Album』ボーナストラック」
「!?」
「3人の和解の産物。あなたから声掛けないとあり得ないよね。あんな曲売られるの」
「………」
「春希とおめでとう、とだけ言わせてもらうわ。これだけは心から言える。」
「何…を…?」
「わたしが2年前最後に2人に合った時も雪菜ちゃんとの仲冷えてたしさ。特級スーパーかずさとして凱旋してきたあなたなら春希くんも鎧袖一触一発撃沈〜。そりゃあ雪菜ちゃんも笑ってあんたに譲るしかないさ」
「………違うんだ…」
かずさは弱々しい声で訂正しようとするが、千晶は聞こえないふりをして続ける。かずさの口調を真似て。
「トドメに『過去の事は忘れたさ。3人であの日に戻ってみるか。さぁ、わたしのピアノについて…』」
「違うんだってば!」
いつの間にかかずさの目から滂沱と涙があふれている。千晶は驚きの表情を見せて聞き返した。
「え? 何が?」
「………」
「まさか?」
千晶が不安げな表情をつくり、かずさを見返す。
「……うぅっ」
かずさは答えられず。ただ眼から涙を流し続ける。
その様子を念入りに伺って、千晶は言った。
「あ〜。誰かに話したほうが楽になれるよ? …例え相手が最低のクソ女でも」
かずさは訥訥と語り始めた。
「もう、春希は…」
ストラスブールでの再会。日本での公演を決めたわけ。日本での再会。イラついて板倉にあたり、春希に助けを求める羽目になったこと。
母親の悪だくみ、いや、計らいで春希の隣室で過ごした日々。
しかし…
コンサートの時に来なかった春希とズタボロの演奏。
旧冬馬宅まで逃げた自分を追ってきた春希。自分を支えようとする春希。
だが…
「わたしは………春希を信じることができなかった………自分の親も………」
そして、知るべきでなかった真実を知ってしまう。母と春希が隠していた、母を蝕んでいた病魔…
世界を失い、部屋に籠る自分を助けに来たのは…
「雪菜…だったんだ…」
雪菜を拒絶した。
しかし、かずさを恐れず、春希を失うことも恐れず、自分の持てる力の限りの世界を巻き込んで、ただ自分を救おうとしてくれた雪菜に…
「完敗…だった」
元より周回遅れだった自分は身を退くしかなかったのだと。
言い終わったかずさの手足から力が抜け、かずさはその場に崩れ落ちた。
千晶はその結果に唖然としているかのように口を開けていたが、すぐに涙を流して見せた。
「ごめんなさいっ! そんな事になっていたなんて…知らなかった…全然想像もつかなかった!」
慌てて駆け寄り、慰めようとかずさの肩を抱く千晶。
今日はここまでです。
感想お待ちしてます。
>>159 ちょっw
千晶が賭けをするとはw失敗したら千晶的に劇の面白さが(リスク高すぎ)
冷静に自己分析するかずさ・・・ありえねぇw
>>160-163 閉幕後にしてはちょっと元気すぎって感じがしなくもないけど
かずさに頬を張られて役者本能に目覚める千晶はナイス展開ですな
かずさが手を庇わないのもストラスブールのストキング事件で証明済みだし説得力感じる
で・・・・・・・・次は、まさかの百合展開とか
春希がいないなら、自暴自棄半分でかずさ意外と目覚めてしまったりしてw
千晶も引き出し広げるためにあえて果敢に挑戦
・・・やばい、わりと真面目に可能性あるような気がしてきた;;
「**の表情を見せて」
「不安げな表情をつくり」
「涙を流して見せた」
だまされるな〜かずさ〜
整理してたらWA2のピロートークCDが出てきた
久しぶりに心温まる猥談を聞いたらまた千晶熱がぶり返してきたぜ
FD欲しいな…後日談欲しいな…勿論18禁要素アリで
今日は日付変わるまで仕事して、明日は6時出;;
ともあれ、今日はかずさvs千晶の続き
その鼓動のリズムはゆっくりと、規則的だった。あの時の、春希と同じ…
「………っ!」
だからこそかずさは気づいてしまう。感情を押し殺し、何かを隠そうとしている鼓動だと
どんっ!
「きゃっ!?」
かずさから両手で突き放され、慌てて声をあげ、距離をとる千晶。
「だからぁ………悪かったって……」
だが、かずさは暗く震えた口調で千晶を問い詰める。
「『知らなかったから』悪かった…って、本当に思っているというのか?」
「え?」
「本当に『知らなかった』『想像もつかなかった』と言うのか?」
「何を?」
千晶はあくまでシラを切ろうとした。
しかし、かずさは追及の刃を振り上げる。
「嘘を吐けっ! お前のシナリオでは雪音が勝っているだろう!
雪音はっ、自分を省みず榛名を助けに来たじゃないか!
わたしが雪菜に勝ったと思っているならなんで、わたしを怒らすのに雪菜のマネをしてみせたんだっ!
おかしいんだよっ! おまえはっ!」
掴みかからんばかりの剣幕に慌てて板倉が間に入ろうとするが、かずさの手足には未だ立ち上がる力は戻っていなかった。
「…ちぇ…おかしいのはあんただよ」
千晶の目からは既に涙は引いていた。
千晶は舌打ちすると先ほどまで被っていた仮面の表情を一枚外し、不機嫌そうに眉を寄せて言った。
「…明らかに判断材料は足りていないのに…推論を勘だけで確証づけて正解に至ってしまうタイプ…
あたしの一番むかつくタイプだ」
「…っ!」
千晶は思った。
慰めさせてももらえないか。
じゃあ、あんたに本当に必要なモノをくれてやるよ。
春希も、あんたの母親もしてくれないことをね。あんたのファンだからね。
ここまでする義理なんてないけど。蛇足だけど。
副作用の強い『劇』薬だけど。くらいやがれ。
そして、一週間で立ち直れよ。
「ああ、そうだよ。振られたのはあんたの方だって、ハナから気づいてたよ。あんたに勝ち目はないって」
「…っ!」
「あんたの話を引き出して、自分の脚本の『答え合わせ』したかっただけだよ。ペラペラしゃべってくれてありがとさん」
「………なんで、わたしが…ふられたと…」
「だってそうじゃん。自分から和解を申し出られるくらいなら、3年間2人に音沙汰なしなんてはずがない。
雪菜の方だろ。あんたに足蹴にされても和解を求めたの」
容赦ない言葉の刃がかずさを血まみれにする。
「逃げてたんだろ? 春希の想いから! 空港であんたを抱きしめてくれたやつから! 恋人の前にもかかわらず!」
「…馬鹿やろう…あたしが…どれ…だけ…」
消え入りそうなかずさの声に、千晶は容赦ない凍てつかんばかりの冷水を浴びせる。
「ああ、全く想定内の負け犬の遠吠えならぬ遠ピアノだね。全部ピアノにぶつけてやんの。
帰ってきても中身は高校生のガキのまんま。ぶっぶー」
「………」
「…雪菜はね。じっと待ってた。選ばれるのが自分でない可能性に怯えつつも。春希の側で傷付きつつも、ね」
「………あ…あぁ…」
千晶は頃合いを見極め、トドメを入れた。
「春希や雪菜のイメージの中のあんたはともかく、実物のあんたを見てると反吐が出る。
脚本家の対象外。『お話にならない』ってやつさ。
『悪いのは自分だ、こんな自分は誰にも愛される訳がない』なんて、
あんたを想う人を踏みにじる有り得ない言い訳に逃げ帰りな、冬馬かずささん」
かずさの目から涙も、光も何もかもが消えた。
「ひどい…ひどいです。瀬ノ内さん。人を何だと思っているんですか!」
板倉が動かないかずさを抱きしめつつ、泣きそうな声で千晶を責めるが、千晶は口調を変えずに答えた。
「そだね〜。『これも役作りのため。わたしにとっては芸がすべて』かな。
あんたが聞きたがっていた『瀬ノ内晶さんの役作りの秘訣は何ですか?』の答えがこれ。記事にしていいよ」
「…っ!」
板倉はくちびるを噛んだ。記事にしてこの怪物を懲らしてやりたいのはやまやま。
しかし、それが冬馬かずさを再び傷つけるのは明白。記事にできようはずがない。千晶もそれがわかって言っている。
魂まで打ち砕かれたかのようなかずさが、床に手をついたままで口を開く。
「…最後の…質問だ…」
千晶は人を喰った態度を続ける。
「〜ん〜。最後だなんて名残惜しいねぇ。でも、まぁ、何でも聞いてちょ」
かずさが絞り出すような声で質問を紡ぐ。
「話にならないわたしは…ともかく…なぜ…榛名は和希と…話の中で結ばれない…」
「へ?」
亡骸のような様子だったかずさの首が持ち上がり、死霊のような呪いの声を上げる。
「なぜ榛名は和希と結ばれなかったのかと聞いているんだっ! 結ばれる結末はなかったかと聞いているんだっ!」
完全に予想外の質問だった。千晶は平静を装うことすらできず、今日初めてかずさの前でうろたえる姿を見せる。
「答えろっ!」
「………」
役者、和泉千晶は何のアドリブも返すことができず。立ちつくした。
こよいはここまでにしとうごじゃります。
…かずさいじめすぎて胃が痛い
>>170-172 うーん、かずさって取られたってワンワン泣きじゃくるタイプではあると思うけど
ここまで恋愛の勝ち負けにこだわるタイプでもなさそうな気が
というか、ここまでかずさが初対面の相手にペラペラ本音打ち明けるようにも思えないw
ちょっと強引すぎな展開の感じもするかもw
>>174 感想まじありがてぇ
>>かずさ恋の勝ち負けこだわりすぎでは?
「雪菜trueでかずさ潔く身を引きすぎ」って感じたのが、このSS書き始めた動機の一つなもので(^。^;)ゞ
反動で導入から黒い感情くすぶったかずさになってます。
>>かずさペラペラしゃべり過ぎ
千晶マジックということで(^-^;)
今日は日付変わる前に投稿できそう
ういっす。本日分投下開始。
**********5/16(日)冬馬宅にて
「かずささん! 開けてください! …せめて何か食べてください…」
これで丸3日、自室に籠もりきりのかずさの身を心配して美代子が扉を叩く。
最早かずさが冬馬曜子オフィスの唯一の稼ぎ手なわけだが、来週末に公演を控えた彼女がこの状態。美代子の心中穏やかならざることいかばかりか、である。
そこへ曜子が帰宅してきた。
「ふう…毎度の事ながらわが娘にも困ったものね…でも、今日は助っ人を連れてきたわよ…」
「こ、こんばんは…ははは…」
「…お邪魔します…」
「ばんわ〜っ」
「失礼します。お邪魔させていただきます」
かずさの友人の武也、依緒、そして、彼らに首根っこを摘ままれるようにして現れたのは千晶。最後は板倉記者であった。
あの劇の日の翌朝、レッスンに行こうとしないかずさに当惑する冬馬曜子オフィスに板倉記者から電話があった。
「お電話失礼します。東邦出版の板倉です。…ええ、その節はどうも
…いえいえ…いえ、今回は取材ではなくて
…はい、実は昨晩、かずささんと元御学友の方との間でトラブルがありまして
…はい、私もその場にいたのですが、その後もかずささんのご様子が尋常ではなかったので、ご自宅まで送らせていただいたのですが
…はい、その後問題ございませんでしたかと老婆心ながら
…はい。はい?…はい、東邦出版の板倉と申しますが、
…トラブルの内容につきましてはお電話では何かと伝えにく…え、冬馬曜子様!?
はい!、はい、すぐタクシーでそちらに向かいます!」
自室に籠城するかずさの元に、曜子、美代子、板倉の3人が到着したのが2時間後。以来、天の岩戸を開けるべく説得が続けられた。
「お〜いっ。お前のお母さんは泣いているぞ〜」
「………」
全く効き目の無い曜子の説得に業を煮やした美代子は、かずさの友人達を頼ることにした。
そして呼ばれたのが武也と依緒。春希と雪菜では却って刺激してしまうと恐れ、まだ知らせていない。
また、主犯である千晶も来た。
正確には武也と曜子が、プライバシー侵害、名誉毀損から楽曲「届かない恋」無断使用による訴訟までちらつかせ、劇の最終日が終わるやいなや連行してきたのだ。
今回の説得の口火を切ったのは依緒であった。
「冬馬さん…食事くらい食べたら?」
「…いい。…食欲ない…」
その後もかずさの身体を気遣う依緒だが、かずさには聞き入れられなかった。
続いて武也が話しかける。
「…冬馬…春希が聞いたら心配するぞ…」
「っ!…おねがいだよぉ…やめてくれよぉ…こんな…こんな情けないわたしを春希に見せないでくれよぉ…」
かずさの声が泣きそうなほど弱るのを聞き、これは逆効果と悟る武也。
曜子は次の説得相手を見繕ったが…美代子も板倉記者も効果は望めない…
…と、なればこの千晶という、今回の件の主犯格と言える怪しい新人女優しかいない。
「…あなたが説得できなかったら、コンサート中止の賠償金を払って貰おうかな?」
軽く脅しを入れる曜子に、千晶が口を開く。
「え〜。お言葉ですがお母さん」
「はい? 何よ?」
「今年頭の来日時に〜、春希を指名してかずさの密着取材仕向けた上に〜、
春希の隣の部屋を押さえてかずささんに半同棲生活強要なんて、
『それなんてコロンビーナ文庫?』なマネしちゃったお母さんにも、
かずささんが失恋の傷こじらせた原因あるんじゃないかなと」
「…っ!」
曜子は毒づいた。痛い所を突かれたからではない。千晶は曜子と武也、依緒の切り崩しを図ったのだ。
現に、武也は僅かながら、依緒は露骨に『そんな事していたのか』と疑念の視線を曜子に向けた。
不利な状況に置かれながらも徐々にその場の主導権を掴む為の手を選ぶ。文字の意味以上に千晶は『役者』であった。
曜子は眉をよせつつ、
「…うちの娘泣かせた分くらいは働きなさい」
と、千晶に説得を促した。
「…ん」
促されてドアの前に立つ千晶。しばし考え込むも、やがて何か諦めたように首を振り、たどだしく口を開いた。
「…あのさ、冬馬さん。あれからずっと考えてはみたんだけど…」
ドアの向こうからは返事はない。しかし、千晶は構わず続ける。まるで自分自身にきかせるように。
「…結局、榛名が和希と結ばれて幸せになるエンディングは思い浮かばなかった…」
『結ばれるエンディングも構想していたが、ボツしただけ』という嘘が至極簡単なのは百も承知であったが、千晶の脚本書きとしてのプライドがそれを許さなかった。
ドアの向こうから僅かにため息が漏れたのが感じられた。
「榛名は…自分が傷つくことにも他人を傷つけることにも、ピアノを捨てることにも、
三人の中で一番臆病で一番不器用で…人と交わることも一番苦手なキャラだから…わたしがそういうキャラに作ったから…
…和希と幸せに結ばれるように動いてくれないんだ」
ドアの向こうから何も返らないが、千晶は滔々と語り続ける。
「…でもさ、榛名はエンディングがどうとか、そんなこと考えて生きちゃいないんだよ」
もう、千晶はドアの向こうの反応を伺うのをやめていた。
「誰だってそうだろ? 和希だって雪音だってそうだ。いや、例え意地悪な神が後味最悪のエンディングをちらつかせても、やつらは恋も友情も音楽も、そうして支え傷つき傷つけあうことをやめない。
幕が下りるまで、舞台の上で演じ続けるんだ」
千晶の独白が続くが、曜子たちもそれを見守っている。
「エンディングが予想できる? だから脚本がつまらない、観たくないなんて言う観客は馬鹿だ。演じたくないなんていう役者がいたら大馬鹿だ。
結果が、エンディングが劇なんじゃない。エンディングに向かうまでが劇なんだ」
ここまで言った後、千晶は少し惨めそうな表情になった。
「榛名は孤独だけど、お前は孤独じゃないだろう? こんな、ちょっとしょげただけで、親友達5人駆けつけてくれるなんて、普通ないぞ?
あたしが去年夏風邪こじらせて寝込んだ時なんて、3日目に親からようやくお見舞いメール一件『治った?』たった4文字だけだったんだぞぉ…」
もはや、説得しているんだか自分がいじけているんだか千晶本人も解っていない。
「お前の来週のコンサートなんてなぁ、お前ひとりにS席5500円だぞ?
わたしはビンボーだからC席2500円しか買えなかったんだぞ!
ウチの劇団のチケットなんて、役者から裏方さんまで束になってかかってやっと一枚5000円なんだぞ!
しかも、チケットタダであげたのに来てくれない奴もいるんだぞ!」
もはや、ただの駄々っ子だ。
ここまでで、ようやく千晶の愚痴が終わった。当然ながらというか、ドアは開かない。少し息を荒くしつつ、千晶は考えた。
『やっぱりこの手しかないか…』
千晶は落ち着いて、心を研ぎ澄ました。
イメージするのは春希。説得の成功率が一番高そうな人物だ。もちろん、リスクもある。
第一、自分が演じているのはバレバレなのだから、すぐ反感を買うだろう。
しかし、自分の才能にかけて失敗したくはない。
自分の演技力を駆使して、一瞬だけでもかずさの心に春希を映してみせる。千晶はそう決意した。
すうっ
呼吸一つであたりの空気が舞台の上のそれとなり、緊張感が走る。
曜子たちはただならぬ気配を感じつつも、気圧されて立ち尽くす。
『チャンスは一瞬。ひとセリフで決めてやる…』
瀬之内晶の役者としての血が彼女の全身をめぐると、肩のつきや胸のはり、腰の伸び、そして目の輝きがまるで男性の、いや特定の男性の『型』を為しつつあった。
曜子や武也たちが息を呑んで見守る中、瀬之内晶の最後の変化が始まる。
わたしは、誰だ? …おれは…北村春希
…かずさが泣いていたら…何が何でも…何を犠牲にしても助けたいと思うだろう…
できるか? …やる。 おれは…
しばらくの後、瀬之内晶の体に錬成された春希の魂が憑依する。
そして、一瞬の魂の叫びを以てかずさを救うべく、ドアへ一歩踏み出した。
<Ding Dong>
本日の投下は終了しました。
明日は…たぶん投下できますが、今週末は投下できそうにないです。
>>177-180 かずさ、引き篭もったかw
って友人連れてきたってイオタケに千晶って敵ばっかじゃねーか!
天の岩戸の前での曜子さん、お茶目(脳内再生余裕だ)
千晶には曜子ママに「いま公演中で忙しいんですけど〜」くらいの嫌味言って欲しかった
うーんピシャリと言い放つ千晶は格好いいな千晶らしいというか(イオタケの前で爆弾投下はどうかと思うがw)
千晶は、どうなんだろう心理描写とかはあんまりない方がいいように思うウんだけど
一見能天気そうに前触れなくいきなり爆弾投下みたいな方がインパクト出るんじゃないかな
で、まずいぞ春希、いや春希な千晶・・・かずさの忠犬にならないよう気をつけろーwww
>>182 劇の最終日が終わるや否や連行してきた、とあるから、その愚痴はない。
ただし、かずさが観劇した翌日の話となってて、
しかも「訴訟をちらつかせた」とあるから、大分破綻気味な状況なのは確かw
その辺は惜しいなぁと思いつつも、毎日楽しみにしてます>作者様
あ、いや籠城して3日と書いてあったわ。すまん
>>184 いや、ども。
こちらも思いついた順に書いていたんで、
読み返して見たら確かに解りにくいわ。
説得開始前の千晶の楽屋エピソードあるんで、
wikiとかに投稿し直す際は修正&千晶エピソード
先にはさみます。
>>182 イオタケ敵じゃないッスよ。
春希に変な気起こさなければ今のところはw
千晶の心理描写なんだけど、省くと書いているほうも訳わからなくなっちゃうので書いてますw
謎の多い千晶のサプライズアタックも魅力的なんですが(あぁ、蘇る本編プレイ時の衝撃)
私には真似できないなあ(^-^;)
では本日分投下
春希を象られた口が言葉を発するために開かれる。その刹那だった。
バタンっ、ごんっ!
「かづっ#@&!※@#!」
勢い良く開けられたらドアに、千晶はしたたかに顔を打ち、言葉にならぬ悲鳴とともに尻餅をついた。
「…母さん、美代子さん、ごめんなさいっ!」
籠城戦の集結を告げる謝罪の声の大きさに安堵の表情になる曜子や武也たち。
「…部長も依緒もありがとう。迷惑、かけたな…。この埋め合わせはきっとさせてもらうよ…」
「いやいや。いいって、いいって。いいってことよ〜へへへ」
「よかった、冬馬ぁ…」
「板倉さんもいろいろありがとうございます」
「い〜え〜。どう致しまして」
と、ひととおり礼を言ってまわるかずさを、千晶は尻をついたまま鼻を押さえて涙目で恨みがましく睨みつける。
そんな千晶にやっと気づいたように、かずさが声をかける。
「瀬能さん許してちょんまげ」
「…※@#※&!」
痛みでまだ声が出ない千晶は、声にならない怒声と共に中指を立てた。
かずさは礼を言い終わると、
「みんな悪いけど、すぐにカンを取り戻したいんだ。下のスタジオに行くから。あ、美代子さん、さっきのサンドイッチ持って来て」
そう告げて慌ただしく階下に降りてしまった。美代子はかずさの回復ぶりに嬉々として後を追う。
「…っあぁ。あいたたた…もう、これ腫れちゃうよぉ…最終日の後でよかった…すいません、洗面所借ります…」
ようやく声が出るようになった千晶が、立ち上がりよろよろと洗面所に向かった。
「…ほんと、我が娘は…」
残された曜子が詫びともつかない呟きをもらす。武也も、呆れ顔で言う。
「完全復活…ですね」
板倉と依緒も、かずさの回復を喜びつつ、何か釈然としない表情であった。
「あれは…瀬之内さんの説得が効を奏したのでしょうか?」
「…なんで? どこが?」
翌日、レッスンに来たかずさのピアノを聞いた彼女の師、ヴァレンガリア・溝口は呆れたようにこう語った。
なんで、レッスン休んでおいて完璧に仕上がってるの、と。
**********5/16(日)少し時間を巻き戻り、『シアターモーラス』控え室、『届かない恋』公演最終日カーテンコール後
鏡の前でメイクを落としている先輩女優を前に、千晶はどう声をかけたものかと思案していた。
女優、似鳥まふゆ。劇団「コーネックス二百三十度」所属の看板女優にして、日本屈指の若手演技派舞台女優である。
舞台の下では『そこそこの美人』程度の印象しか与えない彼女だが、一度舞台に上がると圧倒的な存在感で観客の心を鷲掴みにする。
演技力も演技の幅も千晶を凌いでおり、また、豊富な声量とそれを最大限活用した高い歌唱力を誇っている。
それでいて博識で鋭い洞察力、理解力を有しており、旺盛なバイタリティで脚本を貪欲に吸収する。
千晶の脚本『届かない恋』についても鋭い質問を重ね、あっという間に『初芝雪音』役を自分のものにしてみせた。
千晶が彼女に勝てる点は一点、脚本家としての能力のみであり、つまりは役者として何一つ勝てる点はなかった。
千晶がこの劇団に入団したのも彼女がいるからである、と言って過言でない。
彼女は千晶にとって尊敬する目標であり、越えるべき壁であった。
後ろでもじもじしている後輩に声をかけたのは似鳥の方からだった。
「脚本の直し、良かったわよ。平手打ち対決のシーンも金曜日からぐっと良くなってた」
「は、はい!」
先輩から誉められて千晶は顔を明るくする。
彼女の言う「脚本の直し」とは、今公演『届かない恋』最終日間際にラストシーンに入れた修正である。
大きな修正ではないが、重大な修正だった。
ラストシーン、幕が閉じる直前に機上の榛名の慟哭の声を入れる、それだけだった。
自ら身を引いた榛名の未練を露わにし、後味を一気に悪くするこの修正を劇団は快諾してくれたが…この先輩にどう評価されたかまでは不安だった。
「榛名の慕情の生々しさが出てる。前のはきれいすぎ。あれでいい」
「あ、ありがとうございます!」
千晶はほっと息をついた。
自分のような新人の脚本が公演されるに至ったのは、実力というより「劇団に試されている」面が大きい。
特にこの先輩の評価は怖かった。
二人一役でやっていた大学時代の脚本を磨きなおしてはみたものの…
…直接モデルに会っていない「冬木榛名」の人物描写はまだ改善の余地があるものだった。
そんな折に目の前にひょっこり現れてしまったかずさも不運だったのだろうが…
千晶が強引にかずさを『観察』しにかかったのはそういうわけでもあった。
「でも、最初から思いつかないあたり、あんたやっぱり『まだ』ね」
「…*※#!」
自身のプライベートな極秘事項を言い当てられ、慌て驚く千晶。
「カラダ捧げたオトコから簡単に身を引けるなら苦労しないってこと。あんたも早く経験しときなさい」
「あはは…」
先輩の生々しい指導に苦笑する千晶だった。言われて思い浮かべてしまうのは特定の男性。
千晶は慌ててそのイメージを振り払って、本来伝えるべき話に戻ろうとする。
「…あの、先輩、実は今日の打ち上げちょっと…怖いヒトに呼ばれちゃって…」
「原因は冬馬かずさ?」
「!」
またもや言い当てられ、驚く千晶に似鳥は言う。
「そりゃわかるわよ。前列の方に一幕目なのに顔強ばらせた美人がいればね。あなたが呼んだんでしょ。自分の芸の肥やしに」
「は、はい」
たじろいで答える千晶
2年前の春希や雪菜の時のように十分に作戦を練ることなく、強引にかずさをひっかきまわしたツケは最終日の後に回ってきた。
あの日以来―今日で3日目になる―かずさは部屋に籠って食事もとっていないらしい。
そして、かずさを心配する周りの人間―母親である曜子や友人たち―により、千晶はひっ立てられる羽目になってしまったのだ。
「まあ、脚本の直しに貢献してくれたからいいか…って言えるのは、劇団に迷惑かけないようにしてからね」
「は、はい。そういうわけで今日は失礼します…新人の分際ですいません…」
「ちゃんとみんなもフォローするから、心配しなくても良いわよ」
「あ、ありがとうございます!」
千晶は思った。
本当にこの人はいい人だ。役者としても、先輩としても尊敬できる…ある一点を除いて
「ま、そういうわけだから、来週末はわたしに付き合いなさい。TRPGのコンベンション」
「…え…また…ですか」
「今度はクトゥルフ神話RPGオンリーイベント。どっかのラノベで扱われて以来、変なファンが増えているから、ちゃんと本気のクトゥルフ神話を教えてあげないとね〜」
「あの、来週末はちょっち用事が…」
「あら、じゃあ土日どちらかでいいわよ」
「…」
両方潰させる気だったのか、この先輩は。
「はやく千晶ちゃんにもルール覚えてもらってゲームマスターとかキーパーとかしてもらいたいのよ。千晶ちゃんの作るシナリオ楽しみ〜」
「あはは…じゃあ日曜に…失礼します」
TRPG―テーブルトークRPGという、審判役一人と複数のプレイヤーが架空の人物になりきり、アドリブ会話とサイコロで進行するRPGゲーム―に無理やり人を誘うのが、女優、似鳥まふゆの悪癖であった。
<ぽーん>
本日の投下終了。
週末は仕事で投稿できませんが、
週明けにはかずさの逆襲の話とかずさの籠城時のシーン(ドアの中のシーン)が入ります。
>>188-192 ・ひととおり礼を言ってまわるかずさ
・「瀬能さん許してちょんまげ」
・先輩から誉められて千晶は顔を明るくする。
・・・か、かずさじゃねぇ (( ;゚Д゚)))ガクブル
・・・ち、千晶じゃねぇ (( ;゚Д゚)))ガクブル
まさにこれぞ、もっと恐ろしいものの片鱗をみたぜ!(AA略
>>194 >>謝罪かずさ
美代子への土下座もありましたし、ひととおりくらいはやるかなと
>>ちょんまげ
雪菜に日本に残るコト伝える際の話ふりや、夢想でのルーベンス談からするに、たまにケレンミある皮肉、意趣返しするコかなと
いや「ちょんまげ」の言い返しはキャラずれた苦笑ものと自分でも認識してますが(^。^;)「千晶をからかい返すかずさ」は入れたかったので
>>誉められ喜ぶ千晶
付属演劇部長、ウァトス姫の横暴ぶりから、逆に優れた役者には追従するかなと
雪音役取られ+完璧に演じられ&榛名役酷評され焦る千晶の話を先に入れた方が良かったかなぁ
あと、もう一人ナンバー2先輩構想してますが、横暴な先輩にして「あの男の相手をしろ」と付属演劇部時代のブーメランやるか、は需要あれば
予定早めてスマホから投下
改行乱れ勘弁
**********5/22(土)フィリア音楽ホールにほど近いフレンチレストランにて
千晶が復活した冬馬かずさのコンサートに来てみれば、チケットを購入したC席にはかずさのマネージャーの工藤美代子が待ち受けていた。
そして、S席に案内された。おかげで1ランク上の音楽鑑賞ができた。
さらに、『コンサート後に会食があるのでかずさの友人のあなたも来てほしい』と言われた。
「こないだの件か…S席に案内して聴かせてくれた上に、わざわざ食事に呼ぶのは和解の呼びかけかな? 向こうも訴訟ちらつかせたりしてたし」
と、その時千晶は思っていた。
会食の席もメンバーもだいたい千晶の予想どおりだった。
自分がなぜかかずさの隣り。
板倉や依緒、美代子が周りを囲んでいたが、一人だけ予想外の人物が曜子の隣りにいた。
毛利祐子…今の座長の奥さんだ。劇団の営業主任でもある。
無名の時代から座長を支えてきたヒトだが、嫉妬深く、すぐ座長の浮気を疑うらしい。
入団する新人女優をチェックするのもその一環だとまことしやかに噂されている。
どうやら、曜子と祐子は旧知の間柄だったらしい。
食事は「かずさのコンサート成功を祝して」ということで始められたが、ほどなく祐子と曜子の昔話に花が咲きだした。いや、火花がちりだした。
表面上はにこやかであるが、座長、毛利久志の話になるや、言葉の節々に棘が飛び出し始めたのだ。
「しっかし、あの久志くんのほうからあなたにプロポーズしてきたなんて、今だに信じられないわねぇ」
「ええ、どこぞの性悪女が引っ掻き回してくれやがらなったら、もっと平和だったでしょうねぇ」
「まぁ、賞味期限切れまで平穏無事、なんてことなくて良かったわぁ。ところで、10年目にもつれこんだ結婚生活はまだ楽しい?」
「もちろん。和えて不満を言うとすれば、あなたが永遠にウィーンで頑張ってくれていたらもっと楽しかったのにねぇ」
…あまり関わりたくない会話だ。
と、他の誰もが思った。
しかし、不幸にも千晶に次の会話のバトンが渡された。
「瀬之内ちゃん。曜子となんかトラブったんだって?」
「はい、ちょっと…冬馬かずささんと」
「本当に?」
「? はい」
「…う〜ん。本当か…」
何を疑っているのか、という疑問は曜子が明らかにした。
「だからそう言っているじゃない。久志クンと会ったのは、あくまでかずさと瀬之内ちゃんの件だってば。ここにいるみんな証人よ」
「娘の件をダシにしてまた久志にコナかけに来た、という可能性も残っているけどね」
…四十路めぐってるのにどれだけ信用ないんだ、曜子さんは。
察するに、曜子が劇団を訪れたのを聞いて座長、つまり夫の浮気を疑った、ということらしい。
つまり、千晶、板倉、依緒は「曜子が劇団を訪れた訳」にウソがないことを示す証人というわけだ。
しょーもな…まぁ、変な態度を取って座長の奥さんに睨まれてとばっちりを喰らわないようにしよう、と千晶はそう思っていた。
「で、かずさちゃんはウチの劇団員とどんなトラブルがあったの?」
「あ…それは…ちょっと話す前に『千晶』に確認することが」
「…っ!?」
「ねぇ、千晶…」
千晶は戦慄した。かずさに『千晶』と名前で呼ばれたのは初めてだ。なれなれしさよりもっと危険なものを感じる。
彼女の勘が非常ベルをけたたましく鳴らし始めた。
「千晶…あんたさ…」
**********先週の真相、5/16(日)籠城中のかずさの部屋
かずさは深く、暗い海の底にいた。
明るい場所で現実を見たくなかったから。
電気を消して、厚い遮光カーテンを閉じれば何も見えない世界ができた。
胸の中の苦しみだけは消えないが、その世界の居心地は良かった。
あの女、瀬能千晶はもちろん、雪菜も春希も、そして、一番嫌いな自分すらいなかった。
こうしてピアノを弾かずにいると、自分自身すら見ずに済んだ。
3日間そうしていると、友人達が来た。
拒絶する気力もなく、ふらふらと漂うようにドアの前まで足を進める。
依緒は自分の身体を心配してくれた。
3日前に飴玉を一袋噛み砕いた後は水しか飲んでいない。
しかし、足は少々ふらつくが、食欲もない。 元気になりたくないとすら思った。
まだ…ベッドからドアの前まで来る力はあるよ…だから、そっとしておいてよ…
部長は春希が心配すると言った。
あぁ、わたしは今ヒドい化け物になっているに違いない。なにせ、ずっと暗い所で何もしていないのだ。
見られたくなかった。弱った…
そうしていると、ドアの向こうから、微かに別の声がした。
「今年頭の来日時に〜、春希を指名してかずさの密着取材仕向けた上に〜、#※@※&*」
この声は…あの女だ…何しに来たのだろう。
不思議と嫌悪感は感じなかった。ドアの中で化け物になっている自分の方がずっと嫌いだったから。
その女がドアの前でしゃべり始めた。
「『…あのさ、冬馬さん。あれからずっと考えてはみたんだけど…』」
はて、何を聞いたっけ…?
「『…結局、榛名が和希と結ばれて幸せになるエンディングは思い浮かばなかった…』」
ああ…そうだ、榛名だけでも幸せにできなかったのか聞いたっけ
そうか、やっぱりだめなのか
「『榛名は…自分が傷つくことにも…$#$%&…』」
ドアの外では千晶が何か喋っているが、かずさの耳には全く入っていない。
自分がいなくても、どこかで自分に似たピアニストが幸せになってくれればと思った。
…バカな話だ…諦めよう…
外ではまだ千晶がしゃべっている。
「『…例え意地悪な神が※#@&…』」
ああ、なんか言ってる。こいつの芝居なんて見に行くんじゃなかった。
たしか、春希や雪菜も来なかったんだっけ。
…へぼ芝居だからだよ…
…そういえば、わたしのコンサートにも、春希や雪菜まだ来たことないなぁ…まぁ、しょうがないか…
あ、思い出した。そういえばこの女、コンサートにも来ていたな…しかも全部…たしか、終始きょろきょろと…誰か探していたみたいで、目障りだった。
…誰を探していたんだ?
…もしかして、春希たちが来ていないかと…
「『…しかも、チケットタダであげたのに来てくれない奴もいるんだぞ!』」
…今のは…間違いなく春希たちのことだな。
そういえば、私にくれたチケットは2枚…わたしが春希や雪菜を連れてくるのを期待した?
…それだったら3枚だろう。この瀬能という女は、私達の和解を知っているんだから。
…いや待て。たしか、あの記者にもチケット渡していたぞ。わざわざ、2枚しか私に渡さなかったのはなぜ?
…まさか、春希だけ呼んで欲しかったとか…
…そう考えると、いろいろ辻褄が合ってきたように感じる…この女は実は春希のことが好きなんじゃないか?
そう気づいた瞬間、不思議な感覚が足元を包んだ。
さっきまで暗い海の底で一人溺れていたような気分であった。そうしたらどこからか、ぴちゃぴちゃ水をかく音が聞こえた。
こんな胸の中が苦しい世界でも一人じゃない。そう気づいた。
そのとたん、いままで自分が嵌まっていたのが、深い海でなく、足がつくほど浅い水たまりだったことがわかった。
…もう出よう…
かずさはドアノブに手を掛けた。
…自分のわがままでまたみんなに迷惑かけてたな。
よし、謝ろう。ちゃんと。
かずさは勢い良くドアを開けた。
**********再び、5/22(土)レストラン 千晶とかずさ
「千晶…あんたさ…春希の事好きだったんだね」
「んなっ!? #$&%$”!」
千晶の口から言葉にならない吃驚の声が飛びだした。
「そりゃあ千晶もわたしを臆病者呼ばわりして怒るね。私だけが失恋したみたいにあんたの前で喚いてみせてさ。
あの時はそれに気付かなかったんだ。手を出して悪かった」
「いや、それ、ちょっとちょっと! ちがうちがう!
個々の事実が合ってるだけで、脈絡も動機も時系列も全部めちゃくちゃじゃん!!」
あわてて訂正を入れようとする千晶だが、突っ込みどころが多すぎて何から正していいやらわからない。
それを聞いて曜子が笑いをこらえながら言う。
「あらあら、春希ちゃんのこと好きだったのは否定しないんだ?」
………しまった…一番最初に否定すべきはそこだった…何てこと…
痛恨の極み…不意を突かれた感情に顔が赤らむのを抑えきれない…何たる不覚…
うなだれる千晶を、曜子は娘の意趣返しとばかり容赦なくたたみかける。
「春希ちゃんすごくいい男だしねぇ…わたしも娘の敵討ちにアタックしちゃおうかな?」
「黙れ。この色情狂」かずさがツッコむ。
「でも、千晶ちゃん赤くなって初々しいわねぇ。どう? ゲストの祐子ちゃん」
「いやはや。今のかわいい反応が演技だったらもう降参。似鳥ちゃん、長谷川ちゃん抜いて劇団トップだわ」
「祐子ちゃんはこう言ってますがどうでしょう? 解説の依緒ちゃん」
「ん〜。お友達の前で好きな子言いあてられちゃった中学生か、お前はっ、って感じですね〜」
「社長! からかうのはやめてあげて下さい!」
………だめだ…なんだこの茶番
しかし、「春希の事を言いあてられて思わず赤面してしまう」というミスはどうにも拭い去れない。
なぜ、かずさはその事に気付いたのだろう?
「なぜ…わたしが春希の事が好きだったって…思うわけ?」
「うん…春希が自分の劇見に来てくれないとかぶつくさ言ってるとことか、私のコンサートでいつも観客席見回しているとことかかな」
…それだけ? …
…明らかに判断材料は足りていないのに
…推論を勘だけで確証づけて正解に至ってしまうタイプ
…あたしの一番…苦手なタイプだ
「と、いうわけで許してくれるかな? 千晶」
「………」
千晶は思った。
もはや失地は回復できそうにない以上、諦めて和解は成立させておこう。
「うん…わたしもヒドいこと言って悪かった」
「こちらも手をあげて悪かった」
これで手打ちか、と、ひとまず胸をなで下ろす千晶に、依緒がとんでもないことを言った。
「…これで元どおり友達だね」
<ぽーん>
ちょっと切れ目がわるいけど、残りはまた明日
昼休みなので投下
「…ちょっと待て誰が友達だ」
すかさず問い返す千晶に依緒はわざとらしく問い返す。
「え? 違うの? 冬馬」
「ああ、わたしの落ち込んでいる時に自宅まで励ましに来てくれた。もう友達じゃないなんて言われてしまうと傷ついてしまうな」
「………」
「許してくれるよね?」
なんてことだ…ここで「嫌」と言えるわけがない。言ったところで、「失恋が原因で喧嘩していた『友人』」の代わりに「失恋が原因で喧嘩中の『友人』」にされるだけだ。
かずさたちを自分の関心の対象にして馴れ馴れしく近づいた報いがブーメランのように返ってきた。
千晶はうなづくしかなかった。
「ああ。一人の男をめぐって争っていた2人が友情を取り戻すっていいコトだわ」
「あなたが言うと説得力無さすぎだわ。曜子」
もう、何とでも言ってくれ…千晶が理解し、受け入れるしかなかったのは、自分がなぜか逆にかずさの趣味の悪い執着の対象になってしまい、容易に逃れられそうにないことだった。
「じゃあ、仲直りですね。約束通り写真、撮ってもいいですか?」
「もちろんだよ、板倉さん」
板倉はカメラを千晶たちに向けた。映像素子には屈辱を堪える千晶の表情があった。
依緒もスマホを取り出し、「仲直りの2人」を撮り始めた。
どうやら、依緒や板倉まで打ち合わせ済だったらしい。
…冬馬かずさ…これが、おまえの復讐なのか…
「ホント。娘泣かせてきたからどんな悪たれかと思ったらこんなかわいい子だと思わなかったわ」
かずさが機嫌良く微笑む母にあいづちを打つ。
「ああ。ふだんは人を喰った性格の役に入っているだけだったんだな。千晶は」
「…っ!」
千晶の普段の感情コントロールは完璧に近いが、それは千晶が「怠惰で軽妙洒脱な和泉千晶」なり「芸のためなら人を人と思わない瀬之内晶」なりの役に入っていた場合に限る。
その事にかずさは、明らかに判断材料は足りていないのに、推論を勘だけで…以下略。
では、どうして千晶は「和泉千晶」「瀬之内晶」の演技に入れなかったか…
…たまたま同席していた祐子を警戒し、「余計なコトを言うまい」とするあまり、舞台にしゃしゃり出たがる2人の「役」を引っ込ませていたからだ。
そして、本人すら気づかない弱点を露呈させてしまっていたのだ。
役を作るのに念を入れる分、役に入っていない「ただの千晶」状態ではアドリブが効かないのが千晶の泣きどころであった。
千晶はそのかずさの言葉を聞いて、ようやく自分が「演技ができていない」ことに思い至った。
それに気づいた千晶はすかさず自分の「役」を選びなおす。
すうっ
千晶が一呼吸すると千晶の『役者』の引き出しが開かれ、何百もの役の仮面が彼女の脳裏に陳列された。
西村和希、初芝雪音、冬木榛名、長瀬晶子、柏木四姉妹、おつう…それは彼女が役者人生で培ったライブラリーだった。
あとは、この場にふさわしい無難な―例えば猫かぶりな―役のチョイスだけだった。
しかし、その刹那のかずさの思いがけない行動が、千晶の選択を決定的に誤らせた。
「千晶かわいいよ千晶」
なでなで
『なっ!』
子どものように頭をなでられて思わず千晶が選んでしまった仮面は、
「ふにゃぁ!? なにするにゃあ! ………あ…」
子猫の仮面であった。
誰も爆笑をこらえることはできなかった。
曜子は「お腹痛い」と椅子から転げ落ちた。
美代子は、なぜか顔を赤らめ「か…かわいい」とつぶやきつづけていた。
祐子は真似して遊んだ。
ひどいのは依緒で、実は動画撮影していたスマホからの映像を全員の携帯に転送した。
それを着信音に設定したかずさもたいがいである。
「あたしが初めて自分から作った友達だしさ…、一生大事にするよ」
それは大事にしていると言わない…。おもちゃにしていると言うんだ…。
千晶の心の慟哭は止まらなかった。
好きなひとは他のコとデキた。
一生トラウマものの友達ができた。
どうしてこうなるんだろう。
どうしてこうなっちゃったんだろう。
<ぽーん>
ひとまず、かずさと千晶の出会い編終了
あと、依緒スレに続編(かずさといおたけ)書いた後、また千晶書きます。たぶん。
ご意見、ご要望お待ちしています。
>>197-
場面が結構切り替わるのでちょっと混乱しそうになった
で
「――わたしも娘の敵討ちにアタックしちゃおうかな?」
上段になってないです曜子さん
いや、いっそこうなったら雪菜から寝取っちゃいませんか!
適当に楽しんで飽きてきたら娘にポイッと・・・うん、さすがにないですね、すみません;;
ちなみに投下されてたこと今の今まで全然気付いてなかったとか何とか
>>210-
仲直りの記念写真
もし2人そろってピースとすしてたりした日には完全にキャラ崩壊 ・・・あ、ありえねぇ (( ;゚Д゚)))ガクブル
むしろ腕組みしたまま背を向け合ってツンケンみたいな方がイメージ的には合ってるかも
「千晶かわいいよ千晶」
なでなで
・・・爆笑したwwww
そして確信した、これはかずさの冒険英雄記なのだと
で、次の獲物は依緒ですか
曜子さん、武也なら誘惑しても娘さんはきっと文句言いませんぜ!(呆れ返るだろうけど)
>>215 >>記念写真
多分、千晶の方は微妙な顔してるでしょうねw
>>「千晶かわいいよ千晶」
元ネタ知りませんが、このスレリスペクトで入れました。
ご笑納いただけ何より。
>>冒険英雄記
ご指摘のとおり。千晶は最初に仲間になる魔法使いでしょうね。
>>依緒武也
依緒との経緯は依緒スレに一部
投下済みです。(加筆修正予定ありますが)
次に武也エピソードありますが、投下先未定。
千晶も絡みませますが。
曜子再登場は暫く予定なしです。すいませんw
と、イオタケまとめているうちに、春希と曜子のネタ思い付いてしまった。さて、千晶絡まないし、どこに投下しよう…
>>218 おお、春希スレがあったか。
さっそく投下しました
しかし、いろいろなスレに投下してそろそろ訳のわからないことになりつつありますね。
一段落ついたらSSのwikiに投稿します。
夏の千晶イイなぁ
懲りずにSS投下
前話の1週間後、かずさ誕生日
かずさの暴走&千晶泥かぶりといく予定です
**********5月28日(金)冬馬邸
「誕生日おめでとう〜っ!」
ぱんぱんっ
今日はかずさの誕生日。
曜子に美代子、武也、依緒、春希、雪菜、そして、かずさの新しい友達である千晶が冬馬邸に集い、彼女の24の誕生日を祝った。
「…で、何でおまえがこんな所にいるんだ? 和泉」
「和泉? 長瀬さんじゃなくて?」
春希と雪菜が千晶を見て言う。
武也と依緒は千晶の正体を知っていたが、本人なりかずさが説明するだろうと思って静観していた。
「ああ、千晶は私の友達だ。こないだ知り合ったんだが、付属の同学年、武也のクラスだったそうだぞ」
かずさの説明は通り一編の内容から始まった。
「春希とも大学3年生の時同じゼミだったそうだな。もっともこいつは留年したらしいが」
「実はそうなの〜。ゴメンね、春希。ちょっとサークルが忙しくなって」
「…お、おう…」
春希は説教の一つもくれてやりたかったが、今日の主役の前で二年前の話を蒸し返すのもなんだと思ってここでは控えることにした。
「去年の春晴れて卒業。劇団『コーネックス二百三十度』で舞台女優『瀬之内晶』として頑張ってる…わたしとも劇場で会ったんだ」
「…和泉ってそんな才能あったのか」
「そ〜なの〜。これからの千晶の活動にご期待くださいっ」
とりあえず、春希の『千晶はどこでなにしてた』という疑問は解消された。
「…長瀬さんじゃなくて?」
この時点で未解決なのは、雪菜の『彼女は長瀬晶子っていうんじゃない?』という疑問だったが、かずさはそこは流すことにした。
「まあ、千晶については色々あるが、その前にお前たちに追究したいことがある」
「?」
「これはなんだ?」
かずさが指したテーブルの上には大小のプレゼントの箱があった。中身はどれもかずさの好みをおさえていた。
問題はその通奏低音たる要素であった。
美代子からはパティスリー・コアンドルの焼き菓子
千晶からは福間屋のカステラ
依緒からは鈴々屋の和菓子
武也からはRIKUDOHのショコラ・アラカルトだった。
24歳の誕生日のプレゼントがスイーツオンリーという事態は避けたいと皆思っていた。
しかし、雪菜からは手作りのベイクドチーズケーキだった。
「…甘さは控え目なんだけど…」それが何のなぐさめになるというのか。
残すは春希のプレゼントのみとなった。
皆、最後の希望を託した。
「甘いものがかぶる事態は想定していたから…」
皆、期待した。
「日持ちのするものにした」
皆、落胆した。
春希からは堤政伸シェフの高級ジャム詰め合わせだった。
「…お前たちの気持ち、ありがたく受け取っておく…」
せめて、誰か一人でも外してくれればここまで微妙な雰囲気にならなかっただろうに…
と、そこで以外なところから助け舟が出た。
「あら、わたし以外甘いもの持ってきたんだ」
さっそくそちらへ話題転換を図る春希
「あ、曜子さんのプレゼントは何だったんですか?」
「っ! 待て」
かずさが制止する間もなく答える曜子
「トライアンフの下着よ。確認してあげる?」
「………」
助け舟は泥製だった。
別の意味で気まずい雰囲気が場を包んだ。
<ぽーん>
ども、しばし歓談の後、修羅場いれます。
ども、毎度スレ汚しすまないっす
SS続きです。
雰囲気を打破したのは依緒だった。
「先週はコンサート良かったよ〜」
「そういえば依緒と千晶は見に来てくれたな…そう、千晶なんて全部来てくれてるんだ。一回も来ない薄情者は…おや? まだいたかな?」
「あはは…ゴメンね」
「悪い…かずさ…」
「気にする事はない。これから何度も日本でコンサートやるんだからな。美代子さんに言ってくれれば席押さえるよ。雪菜」
かずさの機嫌がどうやら上向きになりつつあるのを見て、一同胸をなで下ろした。
「ありがとう、かずさ」
「開桜社も春希みたいなぺーぺーに回す関係者チケットないみたいだな。自前で入手してくれ」
「…はは。了解」
武也がさり気なく突っ込む。
「自腹切って観賞しないと、春希のやつ寝かねないからな」
「うっ…武也〜。この〜」
一同笑いをこぼす。
「と、場がくだけたところで、重大発表です」
武也がかしこまって語り出す。
「え〜、この度、冬馬かずささんは弊社アンピトリテ社のCMに出ていただけることになりました」
「えっ? すごいじゃん冬馬〜」
「かずさすごいよ〜」
「ってことは、かずさのテレビデビューか!」
「ひひひ〜。すごいね〜。ねぇねぇ、儲かった?」
興奮する一同
しばし、みなでCMの話で盛り上がる。
そのうち話は『今どんなCMやってたっけ」という話になり、テレビがつけられた。
「格安結婚式はヤス婚。自己資金18万円から」
一気に場が凍りついた。この場の誰もが春希が雪菜と婚約し、かずさが失恋したことを知っている。
二人の結婚式の話もこの誕生会の場では触れずに済ましたいのが皆の共通認識だったが、さすがにこの状態で流すのは無理がありすぎる。
ええい、ままよ
どのみちいつかは話さない訳にはいかない。
かずさは意を決して口を開いた。
「雪菜たちはさ、もう式場とか決まったのかな?」
自分で思ったより自然な声が出せてかずさは安心した。
雪菜も落ち着いて返事する。
「もうすぐ決まりそうなんだけど、なかなか決まらないの、年内にはと思っているんだけど…」
「そうか…なら一つ条件がある」
「? 何?」
かずさは得意げに言った。
「披露宴会場にはピアノを用意してくれ。アップライトじゃないやつ。二人の顔がよく見える位置にさ」
「それって…」
「ああ、祝福させてもらうよ」
雪菜は涙目になって喜んだ。
「あ…ありがとう、かずさ…」
「ありがたく思え。普通ならギャラふんだくるとこだが、貧乏物書きを破産させる趣味はないからタダでやるさ」
「…恩にきるよ、かずさ…」
春希も感涙していた。
千晶と武也は慎重にかずさの様子を伺っていたが、かずさが本心から言っていると確信し、ほっと一息ついた。
そう、かずさもこの時点では偽りない祝福の気持ちを表していた。
問題が起きたのは依緒がウェディングドレスの話題を振った時だった。
<ぽーん>
千晶巻き込まれるシーンまでいきませんでした。次回までお待ちをば
続き投下します。
「ねぇ。ドレスは決まったの?」
「まだなの。『コレ!』って思ったやつはサイズ合わなかったりしてさぁ…」
「幸せ太り?」
「まさかぁ。やめてよ」
「…もしかして、授かり?」
「もぉ! 依緒ったら。そんなことならないように最近は気をつけてるよ…」
その時だった。
どぼどぼどぼ…ごくごくっ
かずさが手元のジュースを乱暴にコップに注ぐや否や一気のみをしたのだ。
かずさの雰囲気が一気に冷たいものに変わっているのに誰もが気づいた。
目つきが明らかにおかしく、不機嫌さをあらわにしている。
原因はわからなかったが、何とかせねばと皆考えた。
ここで空気を読まず呼びかけたのは春希だった。
「か、かずさ?」
しかし、かずさは怒りに満ちた目で春希をにらみ返す。その口が開きかけ、春希に噛みつかんと言葉を探しているのがありありと見て取れた。
…ここは『ジュースリセット』いくか? …ちっ
千晶が考えたのは、まずいことになる前に『ワザとジュースをこぼして場を切る』荒技だったが、生憎、手元にはわずかに残った缶ビールしかなかった。
初手を打ったのは会話のイニシアチブを持っていた雪菜だった。
「あ、そうそう。わたし、千晶さんに質問あったんだけど、いいかな?」
ナイスぶったぎり! 千晶ほか若干名は心の中で快哉をさけんだ。
しかし、そこでかずさの爆弾が爆発した。
「…千晶のことは春希に聞いたほうがいいんじゃないか? 何せ、二人は『寝た』仲なんだし」
千晶は毒づいた。
まったく、厳しいアドリブ要求するよ。
千晶が観察するに、武也、曜子を除いて注目は自分、これはよし。
問題のかずさはさすがに『まずいことを言ってしまった』との表情が顔に浮き出ているが、これもまあ仕方ない。
問題は落としどころだが…今日はかずさの日だし、わたしが泥かぶるか…
「わったたたっ! かずさ。それはかずさからかっただけで、違うんだよ〜」
すかさず慌てたフリをして返す千晶
そこで、かなり強ばった声で雪菜が聞いてきた。
「千晶…さん?」
「ほい? ナニ?」
「先一昨年の末、春希君の携帯に夜中電話かけたら女の人が出たことあったんだけど…あれ、千晶さんだよね?」
春希は硬直した。
よし、食いついたっ。
千晶はちょっとだけすまなさそうなふりをして答えた。
「そ〜なの。実は、わたしも昔春希のこと狙っててさ〜」
「いっ! …ち…千晶」
「…ゼミのレポートの手伝い名目で春希の本丸侵入完了って、喜んでたけど、春希のやつ全然私のゆ〜わくに引っかからないんでやんの」
「え? …ち、千晶、そんな…」
「ほら、こんなふうにこの朴念仁全然気づいてな〜い」
千晶はここで全員の視線を再確認。
ほぼ全員自分を注視。雪菜と依緒の視線は怖い。かずさはうつむいているし、武也はそんなかずさの様子を見ている。…問題なし。
「そんな悲しい夜に彼女らしきヒトから春希のケータイに電話あったから『こいつ彼女いるじゃん!』って腹が立って、ワザと雪菜ちゃんからのコールに出ちゃいました。…ごめん」
「…はは…そうだったんだ…」
「おま…そんなこと…」
苦笑する雪菜に泡を食う春希。
「そうなんだよな。春希と雪菜ちゃん、はやくくっつかなかったから、周りで勘違いして被害受ける奴多かったこと。
…おやおや、ここにも被害者いたとは…春希だけでも片手で数えられないんじゃね?」
武也っ。援護射撃さんきゅっ。…あとは『長瀬晶子』の後処理もしておくか…
「ねえ、雪菜ちゃん。『長瀬晶子』って覚えてる」
「え…やっぱり…」
「あれ実は変装したわたし。いや〜、春希の彼女ってどんなヒトかって確かめずにいられなかったんで…会ってビックリ、ミス峰城大付三連覇の小木曽雪菜? なにその彼女いないいない詐欺は! って打ちのめされましたよ。わたしは〜」
「………」
雪菜も春希ももはや声も出ない
千晶は両手を合わせて『お願い』のボーズで締めにかかる。
「てなわけで、和泉千晶も諦めてお二人のコト祝福させてもらいます。いいかな?」
「ははは…ありがと…」
「…了解…」
怒ることもできずに納得する雪菜と春希
「………」
怒っているものの何も言えない依緒
「てなわけで、かずさもごめんね。わたしと春希は実は何でもなかったの。かずさからかってただけなの」
ここで、ようやく本日の主役にバトンを返す千晶。
「…あ…ああ、いいよ…」
かずさは、ものすごくすまなさそうな顔でうなづく。
武也は、呆れたふりをしてかずさに言った。
「冬馬、やはりお前、友達もう少し選んだほうがいいわ」
「…はは、どうも。部長」
かずさの顔は引きつっていたが、落ち着きは取り戻したようだった。
その後は大学の卒業旅行の話など当たり障りない話で盛り上がり、誕生会はひとまずお開きとなった。
<ぽーん>
次回、千晶がお説教?モードでかずさ苛めます。
続きです
**********
春希たちは皆、翌日仕事があるので帰宅。曜子も薬を飲んで寝室に向かったので、居間に残ったのは千晶とかずさだけになった。
千晶は、ふたりになったのを見計らい、かずさに意地悪そうに言った。
「はい。反省会〜」
「うう…。千晶ごめん…」
かずさは机につっ伏して謝った。泣いているようだった。
「だいたい、最初の方から春希につっかかり放しじゃない。武也とかも腫れ物扱いしてフォローしてたけど」
「ほんと…ごめん…」
かずさの声は消え入りそうだった。
「トドメにわたし陥れてまで春希に食ってかかるって何それ? わたしじゃなきゃ絶交ものだよ」
「ううう…」
春希と『寝た』なんてのは、かずさと最初に会ったときにからかうために使って、すぐ否定したただのネタであり、そんなことかずさもわかりきっているコトなのだ。
「でも、やっぱりアンタ面白いわ。結婚式の話のトコでは落ち着いて祝福できてたのに、次の話題で思いっきり豹変して…ねぇねぇ、言っていい?」
「………?」
かずさが僅かに机から顔を上げる。
千晶は座椅子から立ち、かずさの後ろから覆い被さると、耳元をなめるように囁いた。
「この『色情狂』」
「〜〜〜っ!」
かずさは返す言葉もなく紅潮する。
千晶はそんなかずさの表情を、至近距離から舐めるように堪能した。
「いやぁ〜、わたし女で良かったわ。…男だったらガマンできずにあんた押し倒してるわ」
そういってわき腹のあたりを撫で回してくる千晶に、かずさはたまらず抗議の声をあげる。
「ちょ、ちょっと、やめろよぉ」
「ふふふ…嫉妬したんだよねぇ。式を前に避妊なんてしてる雪菜ちゃんムカついたんだよねぇ」
「…うっ…うっ…ふえぇ…」
図星を指されかずさは情けない声を漏らす。
千晶はかずさの下腹辺りに手を回し、子宮に響かせるように声を伝える。
「きっと、雪菜たち。帰ってからえっちしているよ。でも、胎内には出さないんだ…もったいない、自分なら…」
「うう、さわるな…」
抵抗する声も弱々しく、千晶の手を振り払えない。
「ねぇ…雪菜たちと距離置いたら?」
「!」
ばさっ
かずさはそれだけは嫌だといわんばかりに千晶の手を振りほどき、振り返って千晶を睨む。
千晶はのしかかっていた身体を離すと、事も無げに言った。
「〜♪ 怖くない? じきに、未練と嫉妬と劣情にまみれたあなたを知られるよ? 結婚式の場でも平静でいられる? ピアノならごまかせる?」
「うああ…、苛めるなぁ…、千晶は意地悪だぁ…」
こてりと千晶の胸に顔を埋めるかずさ。
「…でもね、千晶、逃げ出した後の方がもっと怖い…」
「………」
「5年間、5年間我慢してた。雪菜たちにも残酷なことしてた。それが…」
かずさは、ここで落ち着いて一息つくと、自嘲するように言った。
「ストラスブールで台無しだ。ひと目で台無し。後に残ったのは5年分の未練をさらけ出して、潰れそうになった情けない女さ。
…まぁ、逃げていたうちは、我慢できる、いつか忘れられると思っていられたんだけどさ」
「………」
「それにさ、何よりわたし自身も見たいんだ。わたしの代わりに幸せになってくれる2人を。友人として」
「…いいね。今のあなた良い顔してる。春希も惚れ直すよ」
「ありがとう…でもさ、時々雪菜が憎らしくなる自分が抑えられなかったりするさ…ピアノ弾いている時とかもね」
「…ふーん。でも、矛先はいつも春希だよね?」
「…そう、だな。ついつい春希には言葉きつくなるんだよな」
「や〜ん、春希に甘えたがってるの丸わかり〜♪ ああ、いつもの愛のお説教でわたしをいじめて♪」
「やめろよ、千晶」
そこで、千晶は春希の口調を真似て言った。
「『いつまでも拗ねてるんじゃない! いい加減にしろっ!』」
「あ…」
かずさは再び千晶の胸に突っ伏した。肩に掛けたその手が震えている。
「どしたの? 似てない?」
「いや、…千晶が女でよかったよ。そんな反則技…」
かずさの手に力がこもる。千晶は耐えきれず後退して、後ろのソファーに押しつけられるように座り込む。
千晶の胸に顔を埋めたままかずさが『春希』に返答する。
「誰のせいだと思っている…全部、お前のせいなんだぞ」
押し倒されつつも、千晶は『春希』の演技をつづける。
「『そうやって人のせいにするところが子供だっていうんだ! 一体何才なんだ、お前は!』」
「今日で24だよ。24の女がお前忘れられなくて悪いか? 雪菜に嫉妬して悪いか? 未練たらしくて何が悪いっていうんだ!」
「『少しは他人の事情も考えてやれ。お前、春希と雪菜のこと、祝福するって約束しただろう』」
「だからって、わたしの前でのろけてみせるな。そういうところデリカシーないんだよ。昔から二人とも!」
「『だっ…誰が…、う…、あれぐらい普通だろ』って、ごほごほっ。かずさわたしをお〜そ〜う〜な〜」
いつしかソファーに横倒しにされ、覆い被されたような体勢の千晶がわざとらしく抗議の声を上げる。
「っつ! ご、ごめん!」
「いやあ、やっぱりかずさ女でよかったわ。危うく乙女の純潔汚されるトコだったよ」
「………」
「…この調子で春希襲っちゃえば? 『春希ぃ…やっぱりわたし、お前がいないとだめだよぉ…』って、泣きついてさ」
「…そんなことできるかよ…雪菜に悪いよ」
今度は、千晶は雪菜の口調を真似る。
「『そんなことないよ、かずさ。わたし、かずさの気持ち知ってるもの…春希くんがそれを選ぶなら…』」
「…はは、あいつならそう言うかもな。でも、春希に悪いよ。あいつ、引きずるやつだから…。例え雪菜が許したとしても、あいつ、自分で自分を責めて駄目になるよ」
「そだね〜。春希が二股かける優柔不断オトコだった方がまだマシだったね。何せ、あんたのせいで3年間引きずってたんだって? あの2人」
「雪菜の方は春希を許そうとしてたらしいんだけどな…」
「いや、春希やっぱり重度のマザコンだね」
「? どうしてだ?」
「彼女裏切って自分の方がめちゃ落ち込むなんてさ。裏切られた母親見てるからでしょ」
「…それもつらいな」
「ついでにあの説教癖も、母親にかまってもらえない裏返しでしょ」
「あ、でも、春希のやつ、母親とは関係改善できたみたいだよ」
「へ? うそ! そりゃめでたい」
「…雪菜のおかげらしいけど」
「ありゃ。そりゃめでたくない」
「? なぜ?」
千晶はそこでかずさの両頬に手をあてて言った。
「ただでさえ雪菜有利でゴール間近なのに、だめ押しの満塁ホームランくらったみたいじゃん」
かずさは笑って答えた。
「はははっ。わたし、ぼろ負けだなぁ」
そこで千晶は手を放して少し険しい顔をして言った。
「…雪菜に負けて、悔しくない?」
「…ないね。わたしが何もしてあげられなかったのは悔やまれるけど、雪菜が代わりにしてくれたのは単純にうれしいよ」
そこで、かずさは天井を仰いでつぶやいた。
「そういえば、春希や雪菜に何ひとつ借りを返せてないなぁ。結婚式は頑張らないとな。うん」
「…ふぅ。やっぱりあんたにはかなわないわ。なによ『情けない女』かと思ったら『いい女』じゃん」
「なんだか、微妙な誉め方だな」
「いひひ。でも、春希的には『情けない女』の方がツボかも知れないよ」
「やめてくれよ」
「いやあ、あんた参考になるよ…わたしの演劇のね」
「ああ、脚本にでも何でもしやがれ。『いい女』になってやるとも。春希が振ったことを改めて後悔してくれるような、雪菜が友人として誇らしく思ってくれるような、ね」
そこで、かずさは微笑んでみせた。
女の千晶も惚れ惚れとするような笑顔だった。
ホント、参考にさせてもらうよ。あなたの人生。
先に待っているのが幸せか、平和な日々か、破滅か、地獄のような日々か知らないけどさ。
ひとまず幕が閉じるまで見届けさせてもらうよ。
でもね、まだまだわたしという観客を引っ張るんだから、どうせなら美しい話で終わらせて欲しいな。
千晶はそう願わずにはいられなかった。
<ぽーん>
ども、毎度スレ汚し失礼
あとちょっと小咄追加ありますがひとまず終わりです。
ちょい質問。
ゼミコンパの日に千晶と御宿駅でキスしておいてCC雪菜エンド行くこと可能?
前一度できた気がするんだが記憶違いかもしれん。
>>249 いや、千晶と××してない。
ずっとひとりでいる選択肢で朋出てきてた記憶
あるんだが…今日いろいろやったが再現できないなあ
追加小咄
**********
依緒は帰り道でずっと千晶の悪口を言っていた。
「何あの子? 冬馬騙されているんじゃない?」
しばらくは黙って聞いていた武也だったが、やがて呆れたように口を開いた。
「…いいかげんにしろよ」
「何? あんな女の肩持つの?」
「お前、やっぱわかってないなぁ。あれ、完全にワザと道化やってたぞ」
「何で? そんなこと」
「…わかんないほうがいいよ。わかんないだろ。お前は」
女の嫉妬なんてさ。
「何それ?」
**********
一方の雪菜たちも千晶のことを話題にしていた。
「面白い人だったねぇ。千晶さん」
「いや。あまり隣にいてほしくないタイプだ」
「むぅ、春希くん。お友達に冷たいんじゃない?」
「正直、もう友達でもないと思っていた」
「ははは…。でも、かずさの友達だから、もうわたしたちとも友達だよ?」
「そう、だな」
「しかし、春希くんも結構女泣かせだったんだね〜。ふ〜ん。このこの〜」
「ごめん。雪菜」
「うん、許す。でも、条件が一つ」
「? 何? 雪菜」
「彼女の事を許してあげて」
「…うん。わかった」
>>220 これってアクアプラスStoreの特典だっけ?
いいね
春希との夏デートを想像
千晶2周目やり直してきたがやればやるほど味でるなあ
アニメ化くる?
別にかずさディスるつもりはないんだが、俺はヒロインの中で一番かずさに魅力を感じなかったわ
CCが好き過ぎて雪菜もかずさもどうでもいいてっだけなんだけどねw
千晶と小春と麻理さん最高や
上から目線極まって母性で愛してしまうとはね。
すげーわ
千晶二週目√クリア後、ゲーム進めるのに結構なリハビリ時間が必要だったw
で最終的なゲームクリア後、やっぱり最後は千晶√で締めました
千晶かわいいよ千晶
この「千晶かわいいよ千晶」って元ネタ何なの?
知らんけど能登かわいいよ能登とかじゃねーの
声優の
千晶エロいよ千晶
アニメ化がICのみで千晶の出番がほとんど無くても、千晶かわいいよ
むしろ千晶trueエンドをアニメ化すればいいのに…
仮にCCをアニメ化しても寄り道なしで雪菜√に直行しそう
新規「千晶?なんか意味深なセリフばっかの変な女だな」
千晶√は"起承転結"ハッキリしてるから案外アニメ化はしやすい脚本だと思うけどな
特に"転"がすごいインパクトになると思うw
265 :
ぽっと出:2013/07/21(日) NY:AN:NY.AN ID:isAkaNDu0
wikiの長編SSに千晶エピソード追加。雪菜スレからリンク張ってます。
一部を紹介
----
今、千晶の顔から見て取れるのは怯えの色だけだ。みるみるうちに顔から血の気が引き、口元が震えている。
「お、怒ってる?」
春希は少し口を開きかけ、黙り込む。
千晶はチラリと春希の目をのぞいた。そして、恐ろしいものを見たように目を見開いた。
「あわわわ…」
あわをくったように千晶は後ずさりするが、すぐテントの壁に退路を断たれる。千晶は太ももにズレたホットパンツを戻すことも諦めたように地面にへたり込んだまま体を震えさせる。
「や、やめて。…み…見ないで…」
千晶はこれから自分の身に起こる事を悟ってしまったかのように内股を固く閉じ、水着のみをまとった身体を手で隠す。
「ゆ、許して」
しかし、その抵抗も、身をよじるしぐさも、許しを乞う言葉も、そしてその恐怖に引きつった表情すらも、男の劣情と嗜虐心をかきたてるように調律されたものだった。
先程までの千晶とは全くの別人。今の千晶は怯えて震える被食者だった。
----
経緯はwikiで
千晶誕生日おめ
千晶かわいいよ千晶
お誕生日おめでとう
お誕生日おめでとうございます、千晶さま
千晶の誕生日に合わせてPSvita移植ニュース来たみたいだな
誕生日逃しちまった…orz
今更だが誕生日おめ
tes
千晶=風子
アニメ1クール目で出番ある可能性が一番高いのに、こちらのスレは静かだねっと保守
今朝千晶Tルート?をクリアして何か語りたくなってしまった。
(Codaはまだ、CCは全ルートクリアの上、ストラスブールでストップしてある)
今どき初プレイの人もなかなかいないしなあw
で、千晶の演劇を2種類にして、@千晶TルートA雪菜復活アナザールートみたいにできそうな気がした。
@は「舞台に上がった千晶」がメインに来る今回の演劇
Aは「舞台から逃げた雪菜」もしくは「舞台から降りる決意をした千晶」がメインにくる演劇
Aを見て今の自分を再認識した雪菜が覚醒して「私は、降りないよ・・・」みたいな展開。
というか、CCは千晶が強すぎてこいつなら春樹と雪菜を倒せてしまう?解放できてしまう?と思ってしまうレベル。
我ながら、何言ってるんだろうw
書き込みないなあw
ようやく全コンプ。
俺はこのスレの住人になることを決意した(意味不明)。
人は少ないけど。
小春VSかずさ・麻理VSかずさ はきっと戦うまでもなくかずさの勝ち。
しかし、千晶VSかずさ の場合、あらゆる手段を使って千晶は春希を落としにかかるからいい勝負になりそう。
家庭環境のせいで、春希は父性を発揮したい・母性に守られたいという2つの願望を持っているっぽいけど、千晶はどうもそこを把握して動いていたっぽいし。
まさに、対春希専用最終決戦兵器だなw
>>277 その仕様に自らカスタマイズした、と言うことで。
ただ、気づいたときには汎用機に戻れなかったと。
279 :
名無しさんだよもん:2013/10/19(土) 23:22:54.76 ID:j4yWQIe10
初芝雪音とCoda雪菜を比較すると、千晶が天才だったことが良く分かる。
もしも千晶と春希が学園時代から同じクラスだったなら春希は千晶もほっとけなかったろうなあ
ある意味ヒロイン2人組よりも千晶は破綻してるよね色々と…
だからこそ千晶はWA2の裏ボスみたいな印象
coda終わった後、後味的になんとなく千晶trueもう一周せずにいられなかったのもいい思い出
>>280 千晶はかずさみたいに見るからに破綻者ではないんじゃ?
普段の成績こそ低空飛行だが、演劇部長で大学にも合格してるし
>>277 CCの各ルート終了後に、雪菜と同じようなcodaの展開があったとして
小春VSかずさ・麻理VSかずさ だったら、かずさは瞬殺されるよ
早い段階で隣室の存在がばれて、かずさが追い出されて終わりw
でも、千晶だったら黙って行く末を見守ると思う
codaの時に、近くに千晶、小春、麻理の三人がいたら
小春と麻理は雪菜の味方だろうけど、千晶だけはかずさの味方になるだろうな
>>284 千晶はCC雪菜祝福してるし、それはない
>>285 かずさの味方ってところ?
高校時代から、三人の本当の気持ちを見抜いていたし
芸術家として、かずさを認たり、ステージを最優先に考えたい気持ちもあるだろうし
何より、世間的なモラルより、話の面白さを優先させるだろうから
つーか、かずさが帰国した時点で、新しい芝居の脚本のために
周辺取材を始めてそうな気がするw
>>286 キャラ紹介とか千晶Nとか小春のあしらい見ればわかるように千晶は基本は引っ掻き回さず、(知られなければ)皆が幸せになる方に立ち回るからなぁ
>>286 千晶は知られさえしなければ周りを幸せに持っていく方に動く人間だよ、自分本意劇至上主義だが、現実まで面白さ優先でかき回す人でなしの愉快犯ではない
Codaに出てきたら、かずさと春希が不幸な形でしか結ばれないことわかっているから、雪菜Trueを補助する方向で動くだろうね、全員の事考えればあれが最適解だろうし
>>288 CodaかずさTrue√でも千晶なら説得に回りそうだし、成功しそうだな
>>279 初芝雪音って、codaかずさじゃないの?
もし千晶ルートに入っていなければ、劇団ファトスの「届かない恋」は
舞台上から初芝雪音が、「私への思いを終わらせて、あなたは幸せになって」
みたいなメッセージを訴える芝居だったんじゃないかな?
さらには「ピアノ(歌)をもう一度やってくれ」とも言ったと思う
>>291 千晶ルート2回目に入らないと、台本が上がらなくて別の芝居を上演したと思うなあ。
あ、台本が間に合わなくで座長が苦境に立たされる可能性もあるね。
千晶が「芝居の1本や2本中止になったからって気にするな」とうそぶくか、
身を削ってでも別の題材で間に合わせるか、どっちだろうね?
リアル千晶の、その辺りの感情は読めないなあ。
確かにあの芝居は千晶Trueだったからこそって面はあるな
それ以外では結局台本は難航したまま仕上げられなかったってのも確かにそんな気も
あのサークルの活動や内容自体、姫のご機嫌次第って感じだし
少なくともCC雪菜ENDでは完成してたハズだろう
他のENDでも一応は出来上がってたんじゃないか?
内容や結末、完成度は√ごとに違ってたりしそうだけど
>>282 全国大会にも出るような演劇部の部長なのに学校行事はことごとくサボり授業もむしろ放課後にしか出てこない、
そんなクラスメイトなら春希なら何かしらお節介したような気が
あとワンマン過ぎて部員がいなくなって一人芝居になっても逆に劇の完成度が上がるくらいには常人離れしてるとことか
武也が瀬能ほど意味不明な女はいないと言うくらいだし…
さて次回は千晶喋るかな
うぽつ
あ
長編SS「月への恋」第四十六話「練習開始?」第四十七話「練習中?」投稿しました。
千晶がかずさと悪だくみ?
長編SS「月への恋」第四十八話「式の前日?」投稿しました。
長編SS「月への恋」第四十九話「届かない恋?」投稿しました。
千晶はある意味主役ですが…作者が雪菜派に殺されそう
エロは一番使えた
キャラは一番怖かった
久々にのぞいたらss投下がすごいことになっているな
圧倒された!今から読むぞ!
>>311 あ、どうも。作者です。
ちなみに50話まで書き終わって第1部終了してます。
千晶出てこない話も多いですが、楽しんで貰えれば光栄です。
千晶true後のSSも一個だけ
>>283あります。
>>310 そのどちらもが千晶の魅力ですから!
icまでは普通にかずさ派だったが今や千晶以外は考えられん体になってしもうた
ageてsageてageるのが千晶の良さ
最初にsageてからageる春希よりも質が悪い
今年もまた、サンタコスの季節がやってきた…
正月はやっぱり千晶だね
悪女な千晶ちゃんにオシオキしたい人は居ますか?
むしろ女王様コスの千晶にオシオキされたい
今度の劇で女王役やるんだけど春希役作り手伝ってくれない?みたいな
その夜マンションには痛みとも快感ともつかない男の叫び声が朝までこだましていたという…
確かに座長はホモ臭いよな
おっぱい予測
千晶>かずさ>雪菜>>小春
>>319 かずさt後のイオタケWAも別に女2男1と明言してないしな
>>318 武也「おい春希どうしたんだよその痣と縄の跡は!まさか強漢にでも…」
春希「…ちょっと女王様に、な」
武也「???」
www
確かに千晶はかなり胸でかい。かずさ並かそれ以上かも
麻理さん忘れてた。こうかな
千晶>曜子>かずさ>麻里>雪菜>>小春
小春と依緒はどっちのほうが胸あんのかな?
依緒は男の娘だから、まな板だろ
小春よりはあるだろうな
千晶>曜子>かずさ>麻里>秋菜>雪菜>>美穂子>依緒>小春
依緒のタンクトップ姿とか見たい。ホワルバ2で一番汗が似合うと思うシリーズ総合では里奈だけど千晶はなんだかんであの私服が一番
>>328 codaのかずさが全ヒロイン最大って話なので
かずさ>千晶>曜子>中川>かずさ(学生)>麻里>秋菜>雪菜>>美穂子>依緒≧小春
って感じだな
千晶も小春も成長するだろ
曜子さんの胸のでかさって何で判断してんの?
アニメ? 原作の立ち絵見た限りじゃでかそうに見えないけど……
むしろ曜子さんは無い方だと思うけどね
携帯でドレス姿で写ってた画像あったけどそれじゃね?
千晶の制服姿みたかった
おはよう千晶
そういえば劇中劇のwhite albumは千晶じゃなくて雪菜だよね?
千晶だよ
千晶版の届かない恋もいいね
あの時の千晶の衣装良かった
もしFD出るならあの衣装をもっと有効活用して欲しい。主に夜の生活面で
千晶の声は確かに好きだな。千晶の声優も凄いよね
>>339 サンキュー。
録り比べしてわからなくて、ミキシングしてみて本当に違ってたわ。
サビが雪菜の方が走っていて、「アルバムの空白を全部」の最後が確実に違ってた。
サントラにしてほしいな、ピアノギター千晶のバージョン。
確かに俺も千晶のバニーガールコスHが実装されるのを心待ちにしている人の一人だ
white abumをうたっている千晶は中の人がオーディションでうたった千晶じゃない千晶だよね。
千晶のss少ないよな。一番俺は千晶trueが幸せな気がする
>大丈夫、二度とあんたを傷つけたりしない。そのせいで自分を傷つけたりもしない。
>一対一、対等。ずっと一緒にいて、けれど別の目標に向かって、進む方向は違うけど二人で上って行こう。
>これからも、そんな前向きな関係でいようね?
ピロートークCDのこの部分好き
映像化はよ。もちろん前後のエロシーン込みで
最近2週目やったけど、千晶も結構魅力あるな
1週目の時は雪菜とかずさのことしか頭になかった上に、中盤の展開で印象悪くなってたからあんま好きになれなかったけど
心のゆとりって大切
千晶ルートは打算を感情が上回ってミイラ取りがミイラになってしまうところが見どころ
春希の「あいつをこれからもずっと女として扱えるのは世界一ころっと騙された俺くらい」だっけかのセリフは個人的に春希の名台詞の1つ
彼の生来のマゾヒストっぷりには思わず脱帽
あの春希はさすがに無理あるわ、わけわからん
千晶の内面を知ってもう放っとくことが出来なくなったんだろう。あいつにはもう俺しかない、みたいな?
学園時代もクラスの問題児だったかずさを放っとけなくてめげずにおせっかい焼いてたしな
千晶は、求道者チックな魅力がある
岸部露伴のような
属性的にね
354 :
名無しさんだよもん:2014/02/28(金) 23:23:12.30 ID:j0foT6Sm0
千晶クリアー。あーなんだ、琥珀さんだな。
正直ノーマルいらねえだろこれ。その分三十路さんの後日談に回してやれば………
本番もイケメン補正に抗えず勝手に自滅していったのがなんとも。
ひたすら我を通して、主人公が立ち直って千晶を肯定して、単純そうに見えて複雑怪奇なのは主人公だったって方が面白いのに。
ついでにやってないエロゲーのネタバレくれたのもマイナス
千晶ルートおわた
千晶とは幸せな別れ方をして雪菜にいくエンドを想像してたから、ショックあった
おやすみ
私も千晶は千晶N推し
千晶trueはEndingあたりの雪菜の「わたしとかずさからやっと卒業していくあなたを〜」、
みたいな駅でのセリフがベタなシーンではあったが特に印象的だった記憶。
なんでか繰り返さないとtrueに行けない面倒な仕様も含めて、このルートはそういう位置付けかってなんとなく思った。
>>354 イケメン補正というより、そもそも初っ端から打算上回る
何か衝動があっただろうという感じ。一目惚れみたいな。
3年前に春希をターゲットにしてから処女守り通してたのが
そもそも異常w
女を練習する稽古台の男ひっかけるくらい造作もなかったはず。
何で最初の男が春希でないとダメだったのかw
確かに途中までほとんど同じだし別にNormal無くてもよかったな
製作側にはちゃんと2周目でtrueにする意図があるんだろうけども
>>358 好きだよ。大好き。じゃなきゃ寝るもんか。…だっけ、そんな千晶の言葉があったな
過疎
千晶たんはおっぱいが大きくて、
猫の鳴き声の真似が可愛いですね。
スタイルいいよな
ほ
なぜか某アニメの星空凛と被る
オレの千晶は唯一無二だよ
かずさより胸ある気がする。身長も立ち絵では同じくらいだしスタイルも
千晶と暑い中エロい事したい
ただのミスだろ
千晶の顔をボコボコにする薄い本ないの?
そのあとに孕ませたら最高
アニメの千晶なんか違う
今更だがファンディスク出ないかなあ
エピローグのぐうたら生活の続きが見たい
お互い依存関係のヒロインとか個人的に好きなシチュエーションなんだよね