ToHeart2 SS専用スレ 25

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29名無しさんだよもん
つんでれ最高!!
30名無しさんだよもん:2008/07/06(日) 07:58:02 ID:FC37CRRy0
GJ! どの辺がメイド? とか突っ込もうと思ったら最後にきっちりktkr
動きと感情と情景(というか由真の身体の外形w)の、描写のバランスがいいねえ
31名無しさんだよもん:2008/07/06(日) 09:59:59 ID:IO2C3IS90
>>27
GJ!
>サブタイ「ツンデレの帰還」
SW旧三部作かw
32名無しさんだよもん:2008/07/06(日) 16:25:15 ID:DDg9hQg30
トップバッターでなくて良かったw

どうも。一度、離脱宣言した人です。
場が荒れるの避けたかったので控えるつもりだったんですが、よくよく考えて、せめて、書きかけのブツだけでも
終わらせてから、去るという事にしました。
前言撤回、まことに恥ずかしげもなく申し訳ないです。orz

というわけで、無駄に長いだけのSSですが・・・・
閲覧者が少ないうちに投下します(^^;
33いわゆる普通のメイドロボ 第二話(1/27):2008/07/06(日) 16:32:06 ID:4QuxcodJ0
 
書き手が出入り禁止喰らってしまい、しばらく間が開いてしまったから、一応、前回のあらすじを説明しよう!

数々の不幸や苦難を乗り越え、学園公認のバカップルとなった、河野貴明と彼の専属メイドロボ、ミルファ。
そして、その貴明の家でメイド修行に奮闘するミルファの妹、シルファ。
そんな彼、彼女らの下に、新たなる刺客の影が迫る。
その刺客の名は ――― 来栖川エレクトロニクス製量産型メイドロボ、HM-16“リオン”!
34いわゆる普通のメイドロボ 第二話(2/27):2008/07/06(日) 16:33:12 ID:4QuxcodJ0
 
結局、くじ引きを終えた後、デートもお開きにして、河野家に帰ってきた貴明とミルファ。

「で、どーすんの、ダーリン?」
「ろーするんれすか、ご主人様?」

ソファに腰かけ、う〜ん、と唸りながら、貴明は、抽選会場で貰ったパンフレットに目を通していた。
背後にはミルファがいて、後頭部に豊満な胸を押付けるように貴明を抱きかかえている。
そして左側にはシルファが侍り、貴明の表情を窺っていた。

人間そのものの少女の写真が並べられたパンフレットの紙面は、なにやらAVビデオのパンフのようで、どうにもぞっとしないな、などと思う貴明。

写真のそれは、目の前のシルファによく似たデザインの制服を着ていた。
なるほど、聞いていた通り、このタイプが、三姉妹達の体の元になっているのか、と彼は納得する。
それで、彼は、写真の少女に、イルファ達の面影を探そうとした。
・・・・しかし、写真の“リオン”は、HMX-17三姉妹よりはもっと大人びた印象がある。
パンフの説明にも書かれているが、購入者の趣向に合わせるように、様々な顔立ちのリオンが用意されているらしかった。

このリオンは、身長も三姉妹達より高い。恐らく、イルファ達は、珊瑚達に合わせるように、やや小柄にカスタマイズされたものだろう。
35いわゆる普通のメイドロボ 第二話(3/27):2008/07/06(日) 16:35:10 ID:4QuxcodJ0
 
しばらく思案した後、貴明が言った。 
「・・・・・やっぱり、やめておこうかな。辞退にマルつけて、来栖川にハガキ送っておくよ。」
それを聞いて、ミルファがニンマリする。
「当然だよね〜、ダーリン。妻・兼優秀なメイドは一人で充分だもんね〜♪」
憮然としたシルファが言う。
「何を言ってるれすか?ご主人様の専属めいろろぼはシルファれす。ミルミルはご主人様の性欲処理専門ろぼれすよ〜ら!」

「あんたのご主人様登録は“仮”じゃない。ダーリンの正式な専属はあ・た・し。あんたはお情けで置いて貰ってるんだから感謝しなさいよね。」 返すミルファ。

「その契約は、“はるみ”が勝手に結んらものれすよ?」 腹黒な表情を浮かべてシルファが言った。
「ふーんだ。そんなんで動揺誘おうったって、もう効かないんだから。」
フフン、と、腕を組んで、それを余裕の表情で受け流すミルファ。
「都はるみだかエドはるみだかが過去のあたしだろうが赤の他人だろうが、もーまんたい!今現在のダーリンの正式な専属メイドロボが、“HMX-17b・ミルファ”だという事実だけが肝心なの!」

「“おぽんち”なりに、いろいろ考えてるようれすね」
「イルファお姉ちゃんならともかく、ひっきーであまのじゃくでひねくれ者のあんたに言われたって、な〜んともないんだから。」
36いわゆる普通のメイドロボ 第二話(4/27):2008/07/06(日) 16:38:18 ID:4QuxcodJ0
 
シルファが、ぱっと立ち上がった。
そして、貴明の頭上で、顔を付き合わせる二人。
「きぃ〜っ!」
「うぅ〜っ!」
バチバチと頭の上に降りかかる火花を感じながら、貴明がパンフに目を落としつつ言った。
「二人ともさぁ、喧嘩やめないんだったら、どっちの契約も解除しちゃって、このリオンさんに来て貰おうかなぁ〜。」

それを聞いて、ギョッとなるミルファとシルファ。
「ちょ、ちょっと!ダーリン!?」
「ぴっ!?な、何を言うんれすかご主人様!?」
 
ミルファは、貴明の首に再び腕を絡め、グイっと締めつけてスリーパーホールドを掛けにいく。
シルファは、ソファの上で貴明を横にし、足を絡めて四の字固めの体勢に入った。

「ぐわぁ〜っ!ぐほぉ!!や、やめてっ!二人とも!ゴメン、お願いだからやめてぇ〜〜〜っっっ!!」
37いわゆる普通のメイドロボ 第二話(5/27):2008/07/06(日) 16:41:07 ID:4QuxcodJ0
 
――― そして、翌日、学校にて。

「タカ坊、雄二、今日はいい陽気だから屋上で昼食とらない?」
環とこのみが、貴明達の教室に、昼食の誘いにきた。

晩秋ながらこの日は風もなく、ポカポカと日差しが暖かい。
貴明、ミルファ、環、このみ、雄二の5人が、持ち寄ってきた弁当をシートの上に広げた。

「はい、ダーリン、あ〜ん♪」
あ〜ん、と開けた貴明の口の中に、ミルファが箸でつまんだ出し巻きタマゴを放り込む。
「どお、ダーリン?お姉ちゃんと瑠璃ちゃんについてもらって、いっぱい練習したんだよ」
「うん、おいしいよ。」 もぐもぐもぐ。
これでもか、とばかりに、バカップルぶりを見せつける貴明達に、もはや環もこのみも苦笑するしかない。
あまりに割り切った爽やかさに脱帽である。
ウインナーを口に放り込みながら、雄二が羨望の眼差しを貴明達に向けつつ溜息をつく。
「はぁ〜。いいなぁお前ら・・・・。」
そのつぶやきを聞いて、環が横目で雄二を睨みつつ言った。
「何よ、雄二。私の作った弁当にどこか不満でも?」
―― いっ、いえお姉様!とっても美味しいです!ブラボーです!グラッチェです!・・・・と、雄二が焦って両手をかざす。
38いわゆる普通のメイドロボ 第二話(6/27):2008/07/06(日) 16:43:23 ID:4QuxcodJ0
 
何となく、貴明には、雄二の溜息の理由の察しがついた。
今自分がこうしていちゃいちゃしている相手が、このみやタマ姉ではなく、“メイドロボ”のミルファなのが、余計に羨ましいのだろう。

―― そうだ!
貴明は、例の抽選の二等賞品の件を思い出した。
「なぁ、雄二。もし、一年でも半年でも、お前が新型メイドロボのモニターにでも選ばれたら、受けるか?」

―― 何だと貴明?何をわかりきった事を!――
くわっと貴明の眼前に乗り出してきた雄二。
「うちじゃ買えない、いや買う気が親父達には全くないんだよ!お前みたいな機会に俺も恵まれてぇ〜〜っ!メイドロボちゃんに着せる可愛い服も、いっぱい用意してあるというのに・・・・とほほ・・・・」

そう言って、雄二はがっくりと頭を落としてうなだれた。
39いわゆる普通のメイドロボ 第二話(7/27):2008/07/06(日) 16:45:57 ID:4QuxcodJ0
雄二のその様子を見て、環が額に手を当てて、ハァー・・・・と、溜息をつく。
「何バカなこと言ってるの、あんたは・・・・駄目に決まってんでしょう。わかってるわよね?」
そして、貴明に視線を向ける。
「ねぇタカ坊、夏頃、うちにイルファが運用テストに来た時の事、覚えてる?」
―― ああ、雄二に無理矢理せがまれた時の。そういえば、そんな事が。思い起こす貴明。
「あの時は来栖川から捻じ込まれてきたから、不承不承、黙認してたけど、お父様、あからさまに嫌な顔してたんだから。」

息子の趣味を知って、その将来を、かなり憂えているのだとか。
人間の娘以上に、メイドロボを傍に侍らせたいというその願望を。 
山田家との縁談も、それで断ってしまったのだと疑われていて、もはやメイドロボが目の敵にされているらしかった。
「だから、いかにもメイドロボな格好でうちに来るのは避けた方がいいみたい。ミルファちゃん、一応イルファや珊瑚ちゃん達にも言っておいて」

うんわかった、セーラー服とか私服なら大丈夫だよね、と言いながら、ミルファは貴明の耳元に顔を寄せ、囁いた。
―― 何?ダーリン、あのリオンお姉ちゃん、ゆーじくんに押し付けるつもりだったの?――
―― 押し付けるなんて。雄二なら喜んで受けるかと思ったんだけど・・・・あんな様子じゃ無理かなぁ。――
40いわゆる普通のメイドロボ 第二話(8/27):2008/07/06(日) 16:47:54 ID:4QuxcodJ0
「タカくんもユウくんも、メイドロボさん大好きなんだね〜。」
このみがつぶやいた。
俺はメイドロボというより、HMX-17三姉妹が好きなんだけど・・・・などと思う貴明。
「ていうか、みんな、メイドロボが好きなのかな〜。あのね、男の子達の間で、ミルファちゃんのファンクラブまであるんだよー。」
―― わぁ〜い!そうなんだー、嬉しいぃ〜♪―― と言いつつ、
「でも、あたしはダーリンだけのものだから〜♪」 と、貴明に抱きついて、胸元に顔をうずめるミルファ。
先端技術的なものに興味を示しやすい高校生男子が、メイドロボに興味津々なのは不思議な事ではないにせよ・・・・
ミルファの場合は、メイドロボという先入観を取り去って、人間の少女として眺めてみても、無邪気で快活な性格が人気を集めるのは至極当然だろう、と思う貴明。

「いいなぁ〜。このみもメイドロボに改造してもらって、タカくんにご主人様登録してもらおうかな〜。」
真顔でそんな事を言ったこのみに、一同が“エェッ!?”と、思わずのけぞった。
41いわゆる普通のメイドロボ 第二話(9/27):2008/07/06(日) 16:50:17 ID:4QuxcodJ0
 
「ウホッ!いいヘタレ・・・・」
―― いいわいいわ〜、今日のタカ君。一段と憂い顔で。ヘタレパワーをムンムン感じちゃう♪ ――
そう女言葉で話す白衣姿のこの人は、れっきとした男性である。
口髭まで生やし、フレディ・マーキュリー似でかなり筋骨たくましいのだが、仕草が妙に女性的で色っぽい。
――― 様々な、怪しい機器が並んだ一室。
貴明は、センサーのついた帯を頭に巻かれて座しながら、モニタに映し出される、自分の脳波の動きらしい妖しげな波形をぼうっと眺めていた。

ここは、来栖医大の付属研究施設の、『リラクゼーション研究所』。
一部で、別名、“ヘタレ力研究所”と、呼ばれている施設であった。
そのいかがわしさすらも感じる研究内容のために、来栖川エレクトロニクスがスポンサーになって、かなりの出資をしているらしいが・・・・

先般、自分の記憶を消去してしまおうとしたミルファを貴明が追った時に、バスに踏まれて無残に破壊されてしまった、由真から借りたMTBと、バス会社が蒙った被害の補償は、ミルファの後見である来栖川のロボット研究所の長瀬氏がしてくれた。

しかし、それは何としてもお返ししたい、と貴明が言い張ったので、それなら、と、イルファが、この研究所での被験者のバイトを紹介してくれたのだった。
42いわゆる普通のメイドロボ 第二話(10/27):2008/07/06(日) 16:53:30 ID:4QuxcodJ0
貴明をねっとりとした視線で見つめる、ゲイっぽい研究員のフレディ(仮)さん曰く、貴明はこれまでで最高の研究対象らしい。

コンコン、とドアを叩く音がした。
カチャリ、とドアが開いて、入ってきたのは・・・・
「失礼します。」
――― イルファだった。
「あらぁ〜。イルファちゃん、今日もご苦労様ね。書類一式、もうちゃんと用意してあるわよ。長瀬のおじさまにも宜しくね♪」
フレディ(仮)さんは腰をくねらせながら机に向かい、置いてあった書類を取ってイルファに手渡した。
そもそも、最高のヘタレパワーの観察対象、と呼ばれるだけでもかなり抵抗があるのに、その採取データを、ロボット研究所でどう使うというのだろう?

釈然としない思いの貴明である。
しかし、1週間に1度、ただ、座っているだけの楽なバイトに、不満など言ってはいられないのはわかっているつもりだった。
フレディ(仮)さんは、PCのモニタに映し出されたデータログを一通り見てから、言った。
「うん、今日はこれで終り。とってもいい結果が得られそうよ。また来週もよろしくね、タカ君♪」
43いわゆる普通のメイドロボ 第二話(11/27):2008/07/06(日) 16:56:24 ID:85Hx7U+f0
 
夕焼け空の下、来栖医大からバス停へと続く、すっかり葉の落ちてしまった並木道を貴明と並んで歩きながら、イルファが口を開いた。

「すいません貴明さん、変なお仕事、紹介しちゃって・・・・」
―― でも・・・・と、続けるイルファ。
「貴明さんにはとっても素敵な力があるんです。ミルファちゃんやシルファちゃんを救って下さったんですもの。これから世に出て来る私達の妹達や、世の中のために、きっと、その力が必要になると思います。」

「そんな・・・・気楽な仕事紹介して貰って、感謝してるよイルファさん。」
不機嫌が顔に現れていたようで、イルファに余計な気を遣わせてしまったかと、後悔した貴明だった。
44名無しさんだよもん:2008/07/06(日) 16:57:50 ID:JSkKFyI/O
戻って来てくれて嬉しいぞ支援
45いわゆる普通のメイドロボ 第二話(12/27):2008/07/06(日) 16:58:14 ID:85Hx7U+f0
 
「ところで・・・・」
ふいに、話題を切り出したイルファ。
「HM-16の無料体験キャンペーン、当選されたんですって?」
勿論、ミルファから聞いたのだろう。貴明は頷くと、その権を雄二に譲ろうとしたが、それは難しそうだという事までをイルファに語った。
「そうですか・・・・雄二さんに。確かに、とても、喜ばれるとは思いますけど・・・・」
イルファは、向坂家にメイド修行に行った時の、雄二の喜色満面な様子を思い出す。

そして同時に、このキャンペーンには、何か裏がありそうだとも思案していた。
HM-16は今、市場から非常な好評で迎えられていて、まさかくじ引きの景品で無料体験キャンペーンを張る程の、販促が必要には思われなかった。

それは、販売サイドから出た話ではない。多分に、開発サイドの要望からと想像される。
――― 何の為に?
最初から購入を意図している、ある程度利用パターンの読める客層ではなく、様々な層からのモニタを募りたいのだ、恐らくは。

そういう意味では、雄二はあまり最適とは言えないモニターかも知れないが・・・・
長瀬のおじさまが噛んでるのかしら、やっぱり・・・・・
46いわゆる普通のメイドロボ 第二話(13/27):2008/07/06(日) 16:59:59 ID:85Hx7U+f0
「どうしたの、イルファさん?」
「きゃっ?」
急に貴明の声がイルファの思考の間に割って入って来た。
「い、いえ、その、今の貴明さんの、ミルファちゃんにシルファちゃんに私と一緒の生活に、リオンお姉様まで加わってのラブラブな日々を想像したら、つい、いけない妄想が・・・・・」

そう言って両手に顔をうずめ、頬を赤らめるイルファ。
はは、はは、と、苦笑する貴明であったが、イルファがこういうHな妄想の話を持ち出す時は、多くの場合、何かをはぐらかす為だと、少々鈍感な貴明もさすがに気付いていた。

「そ、それで、やっぱり、諦めちゃうんですか、貴明さんも雄二さんも?」
そうするしかないかな・・・・と呟いた後、貴明は言う。
「でもなぁ・・・・雄二にはいろいろ世話になったし、何とか、喜ばせてやりたいと思うんだ、俺。」
47いわゆる普通のメイドロボ 第二話(14/27):2008/07/06(日) 17:02:05 ID:85Hx7U+f0
 
イルファは顎に手をやって、思案していたが、何か思いついたか、貴明に向いて言った。
「貴明さん、“蓋然性の理論”って、ご存知ですか?」
首を振る貴明。
おぽんちミルファとほぼ同じパーツで出来ている“姉”とは、とても思われない程、イルファさんは、難しい知識をどんどん吸収しているな・・・・と、思わずにはいられない貴明だった。

ミルファの興味は、“快”の方向に向いている。イルファは恐らく、人間で言うところの“マニアック”な方向に興味が向かっているのだろう。

「昔、オランダの数学者が著した理論です。その数学者は政治家も務めていて、イギリスとの戦争を終わらせるために、その理論を応用してみたんです・・・・結果は、大成功でした。」

そして、貴明にニッコリ微笑んだイルファ。
「かいつまんで言ってしまうと、“既成事実さえ作っちゃえば、もうこっちのもの。後戻りなんか出来っこない”という理論だったんです、それは。」
48いわゆる普通のメイドロボ 第二話(15/27):2008/07/06(日) 17:04:21 ID:85Hx7U+f0
 
――― そして再び、翌日、学校にて。

放課後、貴明が視聴覚室に入ると、珊瑚と瑠璃の二人だけが、広い部屋の中でノートPCに向かって座っていた。
机上の、珊瑚のノートPCの隣には、クマのぬいぐるみ ―― 実は、小型ロボット ―― が、侍っている。“クマ吉”だ。
「なんや、貴明か。」 瑠璃が先に話しかけて来た。
「あ、たかあきい〜。」 と、珊瑚。
いつもの珊瑚なら、“る〜☆”と、バンザイで迎え入れるのだが・・・・何やら、元気がない。
「どうしたの、珊瑚ちゃん?元気なさそうだけど・・・・・」
貴明に尋ねられると、珊瑚はPCのキーボードから手を離して、うつむいて話し出した。
「うん、実はな・・・・・」

数日前、貴明の事を好きだという、別のクラスの少女が珊瑚達を訪ねてきて、いろいろ、ミルファの悪口を言ったのだとか。

「みっちゃんを、“人間に恋するおばけ機械”とかな〜。もう、ウチも瑠璃ちゃんも、それでぶちきれてしもうたんや。」

ミルファは人気者だと思っていたけど・・・・そういう見方をする人もいるのか。心しないといけないな、と思った貴明。
―― 何を言われようが、ミルファは自分が守らないと。
49いわゆる普通のメイドロボ 第二話(16/27):2008/07/06(日) 17:06:11 ID:85Hx7U+f0
で、どんな子だったの、と貴明が訊くと、その少女の特徴を瑠璃が話した。
貴明も、その少女には見覚えがあった。確か、学食の自動販売機で、転がった100円玉を拾ってやってから後、よく、貴明の視界に入って来る・・・・・そうなのか、付き纏われていたのか。

そんなささいなきっかけで、女の子が寄って来る俺って、一体、何よ?と、頭を抱えてしまう貴明。
しかし、それにしても、あの子、そんな思い切った事が言える印象はなかったけどなぁ・・・・・

そう考えた後で、こういうキナ臭い話の陰に、いつも暗躍している、ある人物に思い当たった。
―― 確か、居たな。“略奪愛が大好き”とか、日頃、公言してた人が。そう、生徒会室の辺りに。
“ナイスボート”で“あの女のハウス”な、修羅場スキーな人が。人なのかすらも最近は怪しくなってきたけど。
多分、それで間違いないだろう。
そろそろ、決着をつけないといけないのかも知れない、あの邪神とは。―― タマ姉に助けて貰う事になりそうだが。
50いわゆる普通のメイドロボ 第二話(17/27):2008/07/06(日) 17:08:28 ID:85Hx7U+f0
 
「で、何しに来たんや、貴明?」
瑠璃に尋ねられて、貴明は、昨日の、イルファとの会話の事を二人に話した。
「うわぁ〜、イルファ、だんだんえげつない策士になってくわ。貴明のせいやーっ!」 罵る瑠璃。
「せやけど、もともと、愛と本能のままに赴く、いけないメイドロボやったもん、いっちゃんは〜。」 と、珊瑚。
ポリポリと頭をかき、苦笑しながら貴明が言った。
「・・・・でさ、俺が言うよりも、珊瑚ちゃん達から誘って貰った方が、真実味あるかなって。ホントの事言っちゃうと、“お前のらっきー☆ぱらだいすは、いつ崩壊するんだーっ!!”とか、キレて臍曲げちゃいそうだし。」

「おもろいな〜、それ。うん、ウチ、乗った〜♪」と、珊瑚が両手を上にかざして言った。

「ところで、貴明、ミルファはどないした?」 瑠璃が訊いて来る。
「あ〜、今、職員室。先日の数学に続いて、英語の小テストも壊滅でね・・・・。」
51いわゆる普通のメイドロボ 第二話(18/27):2008/07/06(日) 17:10:26 ID:85Hx7U+f0
 
――― 放課後の教室には、まだ雄二の姿があった。
半ば放心状態で、机に向かい、黄昏ている。
手にした英語の小テストの答案には、大きく、“9点”と、書きなぐってあった。
ミルファよりはマシだったとはいえ、堂々たる赤点である。
―― くそぉ〜っ。こんなの姉貴に見られたら、もう当分、外出禁止喰らっちまう・・・・。
帰るに帰れなかった。

「よぉ雄二。ま、元気だせよ。いつものことじゃんかよ。」
クラスの悪友達が、雄二に慰めの声をかける。
「それより、さ、こいつ、どう思う?」
男子生徒の一人が、雄二に、とある雑誌のページを開いて見せた。
軍事関係の情報誌である。
そこに書かれていた記事は、米国が極秘裏にイスラエルに貸与し、中東の紛争地域に駆り出しiた最新鋭の軍用アンドロイドが、たった1体で、テロ支援国家の戦車50両を破壊する大戦果を上げた、というものだった。
52いわゆる普通のメイドロボ 第二話(19/27):2008/07/06(日) 17:12:54 ID:85Hx7U+f0
 
“メイトリックス”というコードネームで呼ばれるその軍用アンドロイドは、携行可能なありとあらゆる兵器を使いこなし、敏捷な運動性能を誇り、エシュロンのデータにすらアクセス出来るという。

屈強そうな白人男性の写真が載せられていた。勿論、想像図である。

「問題はさ、どうやって、ロボ三原則をクリアしてるかだよな。」
「無論、適用されてないんだよ。ジュネーブ条約違反もいいところ、真っ黒けだな。」
「でも、公式には、ちゃんと守ってるって強弁してるそうだけど、米軍は」
「日本に寄航する原潜に、核兵器積んでませんってのと同じような理屈だよな、ははは」
「それよりさ〜、雄二、どう思うよ?メイドロボ博士としてはよ」
ん?と、訊いて来た男生徒を見上げる雄二。
「我らが来栖川が誇るメイドロボちゃんズと、どっちが優秀なんかね。」
勿論、量産機ではなく、イルファ達三姉妹の事を指しているのは明らかだった。
国家予算を投入して作られた戦闘ロボットと、民生用の販売機体を流用して作られたメイドロボ試作機を比較するのは、単純に身体機能などを問うのならそもそも無理のある話ではあったが。

何より、イルファ達の開発コンセプトは、心身共に、“どれだけ人間に近付けるか?”にあるのだから。
53いわゆる普通のメイドロボ 第二話(20/27):2008/07/06(日) 17:15:48 ID:85Hx7U+f0
―― ガッ!
雄二は、その雑誌を奪い取ると、“フンッ!!”と唸り、ビリリッと引き裂いてしまった。
「うわっ!ゆーじ、何すんだよっ!!」
文句を言ってきたその雑誌の持ち主だった男生徒を、ギロリと睨み、雄二が啖呵を切った。
「うるせぇっ!愛と平和と萌えの化身たるメイドロボちゃんズと、こんな人殺しロボを比較するなんぞ、虫唾が走るわっ!!」

どうやら雄二の逆鱗に触れてしまったらしく、フー、フーと唸る彼を前にして、男生徒達はすくんでしまった。

「でもな〜、その子も、好きで軍用ロボに生まれたんとちゃうんよ。みんな、人間の勝手やもん。」
関西弁の女の子の声が聞こえたので、彼らが入り口の方を向くと、おだんご頭の下級生の双子姉妹が入って来たところだった。

メイドロボちゃんズを作った“神”の降臨に、途端に居心地の悪さを感じた男生徒達は、雄二を残して、そそくさと立ち去ってしまった。

「お、珊瑚ちゃん瑠璃ちゃん、珍しいな、どうしたんだよ?」
姫百合姉妹がわざわざこの教室に現れたのは、雄二には意外だった。
54いわゆる普通のメイドロボ 第二話(21/27):2008/07/06(日) 17:17:57 ID:85Hx7U+f0
「ゆーじ兄ちゃん、今度の土曜、予定入ってへん?」 珊瑚が言った。
「う〜ん、暇っていやぁ暇だけど・・・・」
雄二は手元の小テストをチラリと見た。
もし、外出を伴うお誘いだったら、これをタマ姉に見られたら、まずアウト。
それにしても、姫百合姉妹の方から誘ってくるとは、つくづく珍しい。
何だろう、と、訝しむ雄二。
「実はな〜、貴明ん家で、土曜日、メイドロボの起動デモ実施するねん。」
―― 何っ!メイドロボの、起動デモとなっ!?
がしっと、珊瑚の手を掴む雄二。
「行く行くっ!絶対行くっ!天地逆になっても参上するぜっ!!」
―― バシッ!
「あがっ!?」瑠璃が、鞄を雄二の頭に振り下ろした。
「さんちゃんに気安すぅ触んな、ボケッ!」
55いわゆる普通のメイドロボ 第二話(22/27):2008/07/06(日) 17:19:30 ID:85Hx7U+f0
つつつ・・・と、頭を押さえながら、珊瑚に尋ねる雄二。
「しっかし、なんで、貴明ん家なんだよ?」
「最近のロットの“リオン”から、簡単な起動プログラム用意してんねん。それのテスト。ついでやから、みっちゃんとしっちゃんにも情操教育や〜☆」

雄二は鞄を手にすると、すっくと立ち上がった。
「万難を排して、絶対お邪魔するぜ。珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん、ありがとう。それじゃ土曜日なーっ!」
ピューッと、教室外に消えていった雄二。
その様子を見送って、ふうっ、と、ため息をついた珊瑚。
「ほんまに、単純なあんちゃんやな〜、ゆーじ兄ちゃんは。」
そして、瑠璃と向き合って、二コリとした。
「これで、お膳立ては完了やな。」
56いわゆる普通のメイドロボ 第二話(23/27):2008/07/06(日) 17:21:04 ID:85Hx7U+f0
 
そして、土曜日。

―― ピンポーン。
インターホンが鳴る。
「あ、シルファちゃん、俺が出る出る!」
朝食の準備をしていたシルファを押し留めて、貴明が玄関に向かった。
鍵を開けて、「はい、どちら様・・・・」と、ドアを開けた途端、
「ダーリンッ!」
「ぐほっ!」
ミルファが、貴明の胸元に飛び込んで来た。
「むふ〜ん、ダーリン、おっはよー☆」 そう言って、貴明の胸に頬をスリスリと擦りつける。
胸元のミルファから視線を玄関の外に移すと、イルファと、珊瑚、瑠璃の姿があった。
「る〜☆」
「おはようございます、貴明さん。」
「げっ、イルイル」
苦手なイルファの姿を目にして、嫌そうな顔を見せたシルファ。
更に、その奥に、珊瑚の姿を見つけると、
「ぴっ・・・・!」 と、思わず体を引いてしまった。
「しっちゃん、怖がらんでええよ〜。元気してたか〜?」
シルファの警戒を解こうと、珊瑚がにっこりと微笑んだ。
57いわゆる普通のメイドロボ 第二話(24/27):2008/07/06(日) 17:22:28 ID:85Hx7U+f0
 
「相変わらず綺麗にしとんな〜。しっちゃん、まめやな〜。」
ソファにくつろぎながら、珊瑚は部屋の中を見回した。
「地味妹、それだけが取り得だもんねー。」 頭の後ろに手を組んで、ミルファが言った。
彼女の視線の先には、コンロの前に立って鍋に具を注いでいるシルファの姿がある。
「ミルファちゃん、あなたも貴明さんの専属メイドロボなんだから、たまにはシルファちゃんのお手伝いしなさい。」
イルファが、そんなミルファをたしなめる。
「は〜い。」 そう返事しながら、ミルファは唇を尖らせた。

ミルファは、この日は珍しく、メイドロボの制服を着ていた。
イルファ、シルファとは若干襟のデザインが違い、白いセーラー襟風になっている。
おまけに、イヤーバイザーまで装着して、すっかりメイドロボ然とした姿だった。
「ミルファちゃん、珍しいね。どういう風の吹き回し?」 そのミルファの姿をしげしげと眺めながら、貴明が言う。
くるんと1回転して、ミルファが言った。「むふ〜ん、どう?たまには目先が変わっていいでしょ?」
どういう心境なのか、深くは推し測ることは出来なかったが、おそらくは、新しいメイドロボの仲間がやって来るという事で、ミルファもそれなりに高揚しているのだろう、と貴明は想像した。
58名無しさんだよもん:2008/07/06(日) 17:25:48 ID:DljUh7/C0
しえん
59いわゆる普通のメイドロボ 第二話(25/27):2008/07/06(日) 17:25:57 ID:HiLTzmAF0
 
―― 外から、トラックらしき車が近付いてくる音がする。そしてそれは、河野家の前でキィーッ!とタイヤを鳴らして、停車したようだった。

「来たのかな?」
貴明はソファーから立ち上がる。すると、果たして、“ピンポーン”と、インターホンが鳴った。
「は〜い、今行きま〜す。」
カチャリとドアを開けると、そこには、眼鏡をかけた、年の頃30歳前後の、精悍な印象の男性が立っていた。
ネクタイを締め、来栖川エレクトロニクスのロゴの入ったジャンパーを着用している。
ぺこりと頭を下げて、名乗った。
「来栖川エレクトロニクスから参りました。HM開発室の東吾と申します。このたびは、弊社のHMモニタテストプログラムにご応募頂き、まことにありがとうございます。」
60いわゆる普通のメイドロボ 第二話(26/27):2008/07/06(日) 17:28:28 ID:HiLTzmAF0
そして、続ける。
「―― 河野貴明さん。長瀬からよく話は伺っております。いつもミルファやシルファのご面倒を見て頂いてるそうで。お礼申し上げます。」

 
リビングに通されてきた東吾氏を見て、珊瑚が驚きの表情を見せた。
「東吾のおっちゃん、何で?わざわざどうしたん?」
「やぁ、珊瑚さん、おはようございます。いらっしゃったんですね。」 珊瑚を見て、にこりとする東吾氏。
二人が知り合いらしいので、貴明は珊瑚に目顔で尋ねた。
「東吾のおっちゃん。HM開発室の、主任はんや〜。最近、重工の方から異動してきた〜。」
―― えっ?主任さんて、確か、長瀬さんだったんじゃ・・・・
貴明のその疑問に、珊瑚が答える。
「メイドロボがバカ売れしたお陰で、長瀬のおっちゃんの今の役職は研究所の次長で、開発室長や。けど、主任開発員やからと、いつもみんなに主任と呼ばせてるんや〜。」

なるほど、飾らない性格の、長瀬さんらしいな、と思った貴明。

「でも、HM開発室の偉い人が、何で、こんなとこに来るん?」 珊瑚が問うた。
「新しい起動プログラムに精通した人間が営業部門にいないんで、急遽、駆り出されたんですよ。」と、東吾氏。
―― そら変やわ。ずっと簡単に改良した筈なのに・・・・ ――
腑に落ちない珊瑚。
「さて、そろそろ、運び込みますか。」 そう言って、東吾氏はトラックの方へ向かう。
61いわゆる普通のメイドロボ 第二話(27/27):2008/07/06(日) 17:33:44 ID:N3O/ADDJ0
  
―― 東吾氏と、ドライバーが、白い細長いケースを抱えて、玄関から戻って来た。
さすがに、シルファが送り届けられてきた時のように、ダンボールではなかったようだ。
ケースに、“KURUSUGAWA HM TYPE-16e RION-CUSTOM”の、文字が見える。
「ここで、いいですか?」 リビング中央の空きスペースまでやって来た東吾達。
「あ、あたしら手伝うよ。地味妹も、ほら。」
ミルファが歩み寄って来たが、「いや、結構。」と、それを断る東吾氏。

ゆっくりと、ケースが床に置かれた。
ケースには、ちょうど顔のあるあたりに窓がついていて、中のHMを覗けるようになっている。
一同がケースの周りに集まってきて、窓の中の、メイドロボの顔を覗きこんだ。

―― これは・・・・!?
奇妙な、既視感にとらわれた貴明。
隣で覗き込んでいる珊瑚達も、やはり、同じ思いなのか、訝しんでいる様子が窺える。
中で眠る、HMは赤毛だった。
しかし、どこかで、会っている人のような・・・・

―― !思い出した。
あの、やたらと負けず嫌いの、同級生の女の子。
眼鏡を外した時の顔と、瓜二つだった。
―― 十波、もとい、長瀬由真、と!?

――― (つづく) ―――

“『まーりゃん』って、知ってるかい?
昔、学園で粋に暴れまわってたって言うぜ・・・
今や生徒会は荒れ放題、
ボヤボヤしていると、後ろからばっさりだ!
どっちも どっちも どっちも どっちも!”

雄二 : “ ―― さあ、言え、向坂雄二!今こそ、言ってしまうんだ っ!!”

HM-16 RINA : 「イルファさん!これで勝ったと思わないで下さい!」

郁乃 : 「あたしにはお姉ちゃんがいるもの。メイドロボなんて、いらない。」

ミルファ : 「怖い夢、見たよ・・・・ダーリンが、高いところから、落ちちゃう夢。」

長瀬源五郎 : 「彼女は、制限型DIAの、評価実験機なんだ。」

イルファ : 「三原則に縛られたロボットが、元の記憶を持ったまま、新しいご主人様に仕えるなんて、有り得ないんです。」
6362:2008/07/06(日) 17:37:06 ID:N3O/ADDJ0

以上で、二話の投下終了です。
もうこの際、開き直って、手厳しいご意見、期待いたします。(^^;

予告入れたのは、完結出来ない事態に備えてでして・・・・(ォ

では。
64名無しさんだよもん:2008/07/06(日) 17:39:00 ID:DljUh7/C0
>>63
そんなこと言わずに完結させてくれ。次回も楽しみにしてます。乙でした
65名無しさんだよもん:2008/07/06(日) 17:41:11 ID:fjX1rw+LO
う〜ん、おもしろい

とりあえず自分は期待大で続きをお待ちしております。
66名無しさんだよもん:2008/07/06(日) 19:20:19 ID:Dke/2Oil0
今回も面白かったです。

自分も完結、待ってます。
次回の投稿、楽しみにしてます。
67名無しさんだよもん:2008/07/06(日) 20:01:10 ID:8iaIz9Qm0
(´ρ`)今回も面白い
68名無しさんだよもん:2008/07/06(日) 20:22:43 ID:pFzavWD70
乙〜。投下は常に歓迎だから、去るとか居ぬとか断りはいらんよ

これって「近未来のイブ」の続きなんだね
ちょっと見慣れない人が多くてイメージが掴みづらいけど、
ようやっとリオン起動(だよね?)で話はこれからだろし、引き続きがんがれ
69名無しさんだよもん:2008/07/07(月) 00:25:50 ID:cbwd3G100
面白いって言う人は、どのへんが面白かったか、もうちょっと具体的に言ってくれると
更なるモチベーションに繋がると思うぜ!。
70名無しさんだよもん:2008/07/07(月) 07:51:27 ID:ISZBYQN10
正直、エロが足りないと思う
たゆんたゆんなミルファのおっぱいとかミルファのおっぱいとかミルファのおっぱいとか(ォ
若さ故の過ちで授業抜け出してブルマ姿でプレイしちゃう描写とかストーリー無視で挿入しても
よいかも・・・
と、いちいちコメントが多過ぎると指摘された作者のコメントでした(マテ
71名無しさんだよもん:2008/07/07(月) 09:13:56 ID:0Rs6bL100
もうミルファにチンコ生やして、ストーリー無視で貴明に挿入しようぜ
それでええやろ
72名無しさんだよもん:2008/07/07(月) 09:16:54 ID:xOQU9AEFO
>>70
乙。
オリジナル展開が多くて先読みが難しいが、今後に期待してる。
それにしても、搬入されたリオンの正体はリアル由真!とかいうオチではあるまいなww?

ともあれ。ミルファたんのたゆんたゆんは漏れも大好きである!
だから鷹棒奪還の為に最大の武器オパーイを駆使して戦うミルファ二士の活躍を見せてくれw
73名無しさんだよもん:2008/07/07(月) 13:59:26 ID:o4JKqMm00
リオンさんのイメージ
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org22283.jpg.html
P= rion
74名無しさんだよもん:2008/07/07(月) 21:36:22 ID:bByYipnT0
>>73
ほぼ由真じゃねーかw
75名無しさんだよもん:2008/07/07(月) 22:18:26 ID:HCsQmWEo0
ウホッ…いい由真…
76名無しさんだよもん:2008/07/10(木) 23:51:56 ID:ykkvnFYO0
書庫さん更新乙

いつもご苦労さんです
77名無しさんだよもん:2008/07/13(日) 00:18:10 ID:4cccjO5t0
こんばんは。
HM-16の続きです。
忙しくて、なかなか思うに任せません orz

では、落とします。
78いわゆる普通のメイドロボ 第三話(1/23):2008/07/13(日) 00:19:22 ID:4cccjO5t0
 ――― 今、向坂雄二は、のっぴきならない状況に、追い込まれていた。 

 「畜生〜っ!貴明!珊瑚ちゃん!騙しやがったなぁ〜〜っっ!!」
 「別に騙してねぇだろ雄二。それに決めるのはお前だぞ。好きにしろよ。」
 「どないすんねん、ゆうじ兄ちゃん?もう30秒しかないよ〜♪」

 "このまま手動登録が行われない場合、自動的に、初期設定の登録名、『河野貴明』様で、マスター登録いたします。
それでよろしいですか?"

 上半身だけが起き上がった体勢のまま、“リオン”が、無機的な表情で、感情のこもらない調子で語りかける。
 データリンクシステムでリオンと繋がっている珊瑚のPCの画面中央には、マスターの登録名入力画面がある。
 そして、刻々と、画面右側のカウントダウンの数字が減っていく。
 "残り20秒です。繰り返します。初期設定でよろしいですか?・・・・十、九、八・・・・"

 雄二は、心の中の葛藤と、必死に格闘していた。
 今、目前に、あれほど渇望していたメイドロボのオーナーになれるチャンスが転がっている。
 しかし、家庭の事情、現実の厳しさが頭をよぎり、彼の口をこわばらせてしまう。

 “ ―― さあ、言え、向坂雄二!今こそ、言ってしまうんだ っ!!”
 ついに、強い欲求が、彼の心の奥底の声を、その口から叫ばせた。

 「―― 向坂 雄二!こうさか・ゆうじが、君のマスターだっっ!!」
79いわゆる普通のメイドロボ 第三話(2/23):2008/07/13(日) 00:20:36 ID:4cccjO5t0
 
 珊瑚が、目にも留まらぬ速さで、キーボードを叩く。
 ―― "向坂 雄二"――
入力欄にその名が入り、すかさずリターンキーが押された。
 残り1秒だった。
 「る〜! ゆーじ兄ちゃん、言ってもうた〜☆」
 バンザイポーズの珊瑚。

 その直後、“リオン”の赤い目が、点滅を始める。
 "―― 登録名、確認。私のマスターを、『向坂 雄二』として、登録いたします。
 声紋、認識・確認。紐付け、登録いたしました。人相映像情報、認識・確認。紐付け、登録いたしました。"
 そのリオンの言葉を聞いて、雄二は、床に尻餅をついてへたり込んでしまった。
 “ ―― あー、とうとう、言っちゃったよ、俺・・・・・。”

 リオンの目の点滅が終わり、珊瑚のPCの画面が切り替わった。
 ―― 『名称カスタマイズ画面』 ―― 
 リオンが再び、語り出す。
 "マスターのお好みで、私に名前をつける事が出来ます。特にご指定が無い場合、標準名の『リオン』で、登録されます。
3分間の間に、ご命名下さい。"
80いわゆる普通のメイドロボ 第三話(3/23):2008/07/13(日) 00:22:33 ID:4cccjO5t0
 
 またしても、焦りの表情を浮かべる雄二。
 あまり、滅多な名前を付けたくない。
 かと言って、HM-16“リオン”は、世の中に沢山存在する。
 この娘は、彼だけのメイドロボであって欲しい・・・・・
 雄二は、由真そっくりのそのリオンの顔をう〜んと凝視してから、言った。
 「・・・・・そ、そうだ。君の名前は、ゆ・・・・い、いや、理奈。リナにしよう!そ、それで、いいかい――――!?」

 思わずガクッとくる貴明。
 恐らく、雄二が入れ込んでいるアイドル、“緒方理奈”から、取ってきたものであろう。
 「ゆーじ兄ちゃん、『RINA』で、ええんな?」
 うん、と、雄二の頷きを見てから、珊瑚はPCの入力画面に、"RINA"と打ち込んで、リターンキーを押した。
 再び、リオンの目が点滅を始めた。
 そして、言う。 "私の名前を、『RINA(リナ)』で、登録いたしました。お名付け頂きまして、ありがとうございます。"

 その目が点滅を終えてからも、リオン ―― リナは、続ける。
 "手動登録プログラムにより、わたくし、RINAは、向坂雄二様をマスターとして登録されました。わたくしに関する権利
は、河野貴明様から、向坂雄二様へ譲渡されたと見なされます。ご契約登録頂き、まことにありがとうございます。"
81いわゆる普通のメイドロボ 第三話(4/23):2008/07/13(日) 00:24:07 ID:4cccjO5t0
 
 そう喋り終えた後、“RINA”は、ケースの両脇に手を置き、それで体を支えながら、ゆっくりと立ち上がった。
 登録前と後のはっきりとした変化としては、それまでのマネキンのような無機質な顔から、人間的な、生気にあふれた
表情を見せている点である。

 「ダーリン、さんちゃん!立った!リオンが立ったよ!」
 キャッキャッ、と、その様子を見てはしゃぐミルファ。
 「“とうしんらいらきまくら”じゃあるまいし、めいろろぼなら、立って当然なのれす。全くミルミルはおぽんちれす。」
 白けた様子でミルファを横目で見やるシルファ。

 ケースから出て、リナは、呆然としている雄二を向いて立つ。
 それから腰を下げ、今度は土下座で、雄二に向かってお辞儀をした。
 そして、頭を上げて、名乗る。
 「はじめまして。本日から向坂雄二様の専属メイドロボとなりました、HM-16、“リナ”と申します。
 これから半年間、お世話になりますので、どうか宜しくお願いいたします、ご主人様。」

 「お・・・・おれ、向坂雄二。よっ、よろしく、リナちゃん・・・・・。」
 雄二も、思わず、ぺこりと頭を下げた。
82いわゆる普通のメイドロボ 第三話(5/23):2008/07/13(日) 00:25:24 ID:4cccjO5t0
 
 「―― しかし、やられましたよ、珊瑚さん。このために、いらっしゃってたんですね。」
 腕を組んで、溜息をつきながら苦笑しつつ東吾氏が言った。
 「まさか、起動中に割り込まれて、手動登録メニューを立ち上げられてしまうなんてね。」
 
 普通の起動なら、HMが出荷前に与えられたマスターの情報に、本人の声紋と人相を紐付けるだけの作業で終了する。
 データリンクシステムを自在に操れる珊瑚が途中で介入し、、イレギュラー発生時に事前登録情報を変更するための
手動登録メニューを強制的に立ち上げたのだ。
 
 そして、貴明は、のこのこと現れた雄二をリオンの前に引き入れると、彼に促した。
 「―― 雄二、お前がメイドロボのご主人様になるんだよ!俺は知らん。とにかく好きにしろ。」

 先にオーナー申込みをした貴明本人がオーナー権を放棄し、雄二が正式に登録を行った以上、この契約は有効である。
 『既成事実さえ作ってしまえば』という、イルファの入れ知恵は、つまりはこういうことであった。
 ―― それはまた、雄二の気持ちの問題に対してでもある。
 目の前にこれほどのチャンスを突きつけられて、拒否できるほど雄二の克己心は強くなかった。
 それについては、貴明もイルファも確信があった。
どれほど周囲の状況が厳しかろうが、理性を無視した魂の叫びに、あえて雄二は従ってしまった。 
 既にルビコン河を渡ってしまったのだ。賽は投げられた。いまさら後戻りは効かないのである。
83いわゆる普通のメイドロボ 第三話(6/23):2008/07/13(日) 00:26:48 ID:4cccjO5t0
  
 「あ、あの、あたしのお姉ちゃんになるのかな、それとも、妹・・・・? あたしは、HMX-17b、ミルファ。こっちは、同じ型番
のお姉ちゃん、イルファ。こっちの黄色いのが、おまけの愚妹シルファ。」
 「おまけの愚妹は余計れす!」
 「宜しくリナさん。イルファです。どうか何でも聞いて下さい。こちらは、私のご主人様の瑠璃様と珊瑚様、そして・・・・」
 貴明に手を差し向けるイルファ。 「私の“心のご主人様”、河野貴明さんです。」
 「げっ!?」 思わず引く貴明。
 「あーっ!イルファが浮気しおったーっ!貴明のせいやーっ!!」
 「ちょっちょっと!お姉ちゃん!?ダメーッ!!」
 「イルイルッ!?自重するれすっ!!」
 「いっちゃん、やっぱり、いけないメイドロボさんやな〜♪」

 「はい。宜しくお願いします、皆さん。」
 そう言ってリナはみんなにペコリと頭を下げた。
84いわゆる普通のメイドロボ 第三話(7/23):2008/07/13(日) 00:27:59 ID:4cccjO5t0
 
 「わ〜っ!ユウくん、ついにメイドロボさんのご主人様だね〜♪ご苦労様であります!パチパチパチ」
 「雄二・・・・・あんた。それに、タカ坊・・・・。怪しいんで、雄二について来てみれば・・・・・どうすんのよ、これから?」
 いつの間にか、このみと環が、リビングの傍らに立っている。

 「あは、あは、あっはははぁ〜〜〜・・・・・俺、ついに、なっちゃったよ、メイドロボのご主人様に・・・・」
 じわりと湧き上がって来る感慨に、今、雄二の頬を、ツ〜と熱いものが伝わった。

 こうして、メイドロボ・リナとそのご主人様、向坂雄二のカップリングが誕生したのだった。
 ――― 半年間の、期間限定ではあるが。

 「タカ坊、珊瑚ちゃん、イルファ・・・・ちょっと、顔貸しなさい。」
 3人を招き寄せる環。
 「―― あなたたちはッ!何て事してくれるのよっ!!」
 「ひっ!」 環の怒りの前に、思わずすくんでしまう貴明達。

 「・・・・ええっ、と、皆様方、私は、これで、おいとまさせて頂いて、宜しいでしょうか?」
 ―― ハッとなって、まだその場にいた、東吾氏の方を振り向く一同。
 「どうぞ、メイドロボのいる生活をご満喫下さい。それでは、お邪魔いたしました。」
85いわゆる普通のメイドロボ 第三話(8/23):2008/07/13(日) 00:29:48 ID:4cccjO5t0
 
 尋常でない雄二の喜びようを見て、環はどうしようもなく弟が不憫になってきた。
 見ると、雄二は、リナの手を取って、それを頬にスリスリしている。完全に理性の飛んだニヤケ顔だった。
 ―― 聞けば、貸与期限は、半年間。別れを迎える時の嘆きは想像に余りある。
 そして何より、向坂家に置いておけない。どうする?
 「タカ坊達、まず、あの娘をどこに住まわせるか、考えなさい。」
 
 雄二を引き込んでこの展開に持って来るまでは周到だったが、その後の事を考えてないのはあまりに迂闊と言えた。
 何だかんだ言って向坂家で引取るんじゃないか程度に考えていた貴明達だが、やはりそうは甘くないようだった。

 今回の事の経緯を考えれば、河野家か姫百合家で引取るのが筋とは言えたが・・・・
 
 「ねぇねぇ、いい案があるよ?」
 と、ミルファ。
 「リナちゃんはさんちゃん達に面倒見て貰っちゃって、あたしがダーリンと一緒に住むの☆」
 「らメぇ〜〜ッ!!」と、思わず、みさくら語で叫んでしまうシルファ。
 「二人が喧嘩しないって約束出来るんなら、それがいいかも。どうですか、貴明さん?」 と、イルファが訊ねる。
 「う〜ん・・・・以前みたいなひどい喧嘩は最近しないし、だ、大丈夫なんじゃないかな?」と、貴明。
 「突っかかってくるのは主にひっきーの方だし。あたしはずっと大人だよ?」
 「嘘なのれす!」
86いわゆる普通のメイドロボ 第三話(9/23):2008/07/13(日) 00:31:43 ID:4cccjO5t0
  
 肝心の珊瑚達はどうなのか?環が訊ねた。
 「う〜ん、そやなぁ〜〜・・・・」

 珊瑚は、雄二に寄り添われているリナの様子を、じっと観察していた。
 「リナちゃん!君は、俺のメイドさんだけど、姫様だ!俺が君のナイトになって、君を守る!」
 そんな恥ずかしい台詞を臆面も無く言っている雄二であったが、それを聞きながら、リナはまんざらでもなさそうである。
 それどころか、頬を赤らめ、もじもじと、合わせた両手の指を遊ばせている。

 "・・・・普通のリオンが、あんな表情や反応、するやろうか・・・・?" 腑に落ちない珊瑚である。
 これは、手元に置いて、観察してみたい、という気持ちが彼女に湧いて来た。

 ―― 長瀬のおっちゃんも東吾のおっちゃんも、何か企んどるわ、これは。――
 「わかった。リナは、ウチらで引取るわ。貴明、ミルファとシルファ、うまく面倒みといてや〜。」
87いわゆる普通のメイドロボ 第三話(10/23):2008/07/13(日) 00:36:43 ID:dxqpIMad0
 
 ――― 翌日、日曜。
 昨日、河野家に集った面子が、シルファを除いて姫百合家に場所を移し、再び集っていた。 
 「HM-16の主な機能を説明したるわ。まず、データリンクシステムやな。」と、珊瑚。

 HMX-13セリオから実装され始めたデータリンクシステムは、熟成を重ねられ、リオンでとうとう完成段階に達していた。
 この機能が、HM-16の販売好調の一因にもなっている。

 「HM-16のオーナークラブがあってな、そのネットワークに加入すれば、それぞれのご家庭の料理のレシピや耳寄りな
情報とか、ネットワーク内のリオン達で情報共有出来るんや。  
 他にもいろんなこと、出来るんやで〜。複数のHM-16で、分散コンピューティングみたいな使い方も出来るんや。」
と、珊瑚。
 例えば・・・・と、実例を示そうとする珊瑚。「いっちゃん、りっちゃん、これから、みんなに昼食振舞ってや〜。」
 メイドロボ二人にリクエストを出す。環と雄二が来ているから、向坂家の食事、作ってや、と。

 イルファは、向坂家にメイド修行に来ていた時に、環からそのレシピを伝授されている。しかし、リナは・・・・・
 「いっちゃん、りっちゃんがデータ受け取れるように、ネットワーク繋いでみてな〜。」
 「はい、珊瑚様。」
 イルファのイヤーバイザーから伸びているフィンが、パチンと動き、傾斜を上げた。
 あっ、と、思わず小さく声を上げた貴明と雄二。
 「HMX-17でも、HM-16のネットワークは勿論利用可能や。」珊瑚が言った。
 ほとんど間を置かず、リナのイヤーバイザーのフィンも、同じようにパチリと上を向いた。
 "どや、りっちゃん?"と、珊瑚。「はい、レシピの習得、完了いたしました。」
88いわゆる普通のメイドロボ 第三話(11/23):2008/07/13(日) 00:38:59 ID:dxqpIMad0
  
 リナが手掛けた料理が、イルファよりやや先に出来上がる。
 昼食に箸を通した一同。
 「お、スゲェ!これ、姉貴が作る食事と、ほとんど変らねぇよっ!」
 驚嘆の声を上げる雄二。
 「へぇ、これ、私がイルファに教えたのと同じものじゃない。便利なものねぇ。」
 環も弟に賛同する。
 「とりあえず、付け焼刃ですが、お役に立てれば幸いです。」と、リナ。

 やや遅れて、イルファの料理も完成した。
 「私の方も出来ました。よろしければ、どうぞ。」
 こちらにも一同が箸を通したが、んっ?と、皆が違和感に気付く。
 「そっくり同じでは芸がないと思ったので、瑠璃様の料理のテイストを加味してみたんですが、どうでしょう?」
 う〜ん、ウチは、この方が好みやな、と、瑠璃。
 環も、これは、自分が教えたそのものではなくて、イルファのオリジナリティが加わってていいわね、と評する。
 貴明は、正直、いつもの環の料理とは違う味があって、イルファの料理の方が美味い、とはっきり感じていた。
 
 「まぁ、いっちゃんは“だいこんいんげんあきてんじゃー”やからなぁ。色々試行錯誤して、創意工夫出来るのが強みや。」
と、珊瑚が言った。
 「リナの機能は確かに便利やが、そのままやとコピーやもんな。ミルファの料理の上達は亀の歩みやけど、確かに創意
工夫の跡は感じるわ。美味い不味いは別にしてなー。」 と、瑠璃。
 「うぅ〜、瑠璃ちゃん、ひどいよ〜。」ミルファがふくれる。
89名無しさんだよもん:2008/07/13(日) 00:39:08 ID:PKU0cdi60
支援
90いわゆる普通のメイドロボ 第三話(12/23):2008/07/13(日) 00:40:54 ID:dxqpIMad0
 
 最初は気を良くしていたように見えたリナであったが、イルファの料理への賛辞を聞くと、だんだん、表情が翳ってくる。
 そして、ふくれ顔で、突如、イルファをビッと指差して、言った。
 「イルファさん!これで勝ったと思わないで下さい!」

 えっ?・・・・と、リナのその挙動に、一瞬、呆気に取られた一同。
 「お、リナちゃん、負けず嫌いじゃん。」と、雄二が感心したようなコメントをする。
 "どこかで聞いたようなセリフだな"・・・・などとと思っている、貴明。

 一方、珊瑚と、イルファは、ますます、疑念を濃くしていた。 
 このHM-16は、やはり、普通と違う・・・・ 。
 もしかして、この娘は――― 。
91いわゆる普通のメイドロボ 第三話(13/23):2008/07/13(日) 00:43:04 ID:dxqpIMad0
 
 自宅で会えないのなら、せめて、学校の昼食時にでも・・・・と、雄二は弁当を学校に持って来てくれるよう、リナに頼んだ。
 環は面倒な事になるのを警戒して反対したが、雄二は頑として聞かなかった。

 「はい、ダーリン、あ〜ん♪」
 「さぁ、ご主人様、どうぞ、召し上がれ♪」
 HMX-17bミルファとHM-16リナ、2体のメイドロボが、それぞれのご主人様に箸でつまんだ出し巻き玉子を差し出すと、
河野貴明と向坂雄二、2人のメイドロボのご主人様は、それにほぼ同時にパクついた。

 「うん、今日もおいしいよ」
 「う、うっめぇ〜っ!うめぇよリナちゃん!」
 雄二は感動のあまり、涙を流している。
 弁当の味そのものよりも、ついに実現したこのシチュエーションに、感極まった観がある。 
 「あ〜っ!もうずるいずるいずるい!タカくんもユウくんも!やっぱりこのみもメイドロボになるぅ〜っ!」
 「でも・・・雄二、いいの?この子、学校に連れて来ちゃって・・・"オリジナル"に見られたら、うるさいんじゃないかしら」
 環がやや呆れ顔で、雄二を横目で見ながら言った。
 "オリジナル"とは、勿論、由真のことだ。
 「うっさいな姉貴!オリジナルってなんだよ!?リナちゃんは世界でただ一人の、俺だけのメイドロボちゃん!それ以上
のオリジナルがあるんかよ!」

 地球温暖化の影響なのか、今日も陽気に満ちた晩秋の昼食時。
 校舎の屋上では、いつもの5人に、新顔のリナを加えた6人が、和気合々と弁当箱を広げていた。 

 ―― しかし、そんな和やかムードは、突如として、破られる。
92いわゆる普通のメイドロボ 第三話(14/23):2008/07/13(日) 00:44:53 ID:dxqpIMad0
 
 ―― バンッ!と、階段室のドアが乱暴に開いた。
 「向坂雄二っ!!河野貴明っ!!」
 そう叫びながら、ドアの内側から現れ、ズカズカと歩んできた女生徒は・・・・
 ――― 長瀬由真!

 あっ!・・・・・、と、一斉に、彼女を注視する、6人。
 「あんたたちっ!どーいう嫌がらせっ!?あたしがメイドロボの格好で、雄二とひっついてるって、訳のわかんない噂
聞いたもんだから、来てみれば・・・・・」

 そう言って、視線をリナに向け、ビッと右手で指差す。額に青筋を立てて睨みながら、ワナワナと震え出した。
 「何よ、こいつはっ!新手の羞恥プレイのつもりっ!?どんだけ手の込んだ嫌がらせよっ!源五郎さんに、こんな奴
作らせてっ!!」

 リナも唖然とした表情で、由真を見つめている。
 自分そっくりの少女の出現に、驚いている・・・・ように貴明には見えた。
 ・・・・しかし、"普通のメイドロボ"も、こういう反応を示すものだろうか?
 「おじいちゃんに言って、源五郎さんは問い詰めてやるとして・・・・まずは、お前らよっ!!覚悟っっ!!!」 
 タタタッと、雄二に走り寄る由真。
 「死ねッ!!」
 ぶわっと、右足廻し蹴りが、雄二に向かって一閃する。
 ひっと、手をかざして目を伏せ顔をそむけた雄二。
  バシッ!!

 ―― しかし・・・・ 
 それを、受けとめた手があった。
 ――― リナである。
93いわゆる普通のメイドロボ 第三話(15/23):2008/07/13(日) 00:46:52 ID:dxqpIMad0
 
 「ご主人様に危害を加える事は、許しません!全力で阻止します!」
 右手で由真の足を掴みながら、リナが言った。
 派手に足が跳ね上げられているので、由真のスカートの中の、ブルマが丸見えである。

 「おい由真、お前、スカート全開で、恥ずかしくないか?」
 やや赤面しつつ雄二が言うと、由真の顔もカーッと赤らんだ。
 「うっ、うるさいっっ!!どうせブルマだもんっ!!こん畜生ーっ!このっ、手ぇ離せメイドロボッ!!」
 髪の色こそ違え、ここまでそっくりの少女二人が対峙する様は、ある意味壮観である。
 「―― もお、やだったらぁっ!離してよォっ!!」
 真っ赤な顔で半ベソかきながら由真が訴えると、リナはハッとなって、その手を外す。
 ロボット三原則では、人間に危害を加える事は許されないのだった。明らかに、由真は赤っ恥をかいて、傷ついた・・・
・・・ように見える。

 割とフェミニスト(死語)だったりする雄二は、このままでは由真もリナも無事じゃいられないと思い、その場をパッと離れ、
逃走を始めた。
 「あっおい、雄二っ!」
 叫ぶ貴明。
 「逃がすかっ!」 頭から湯気を立たせた由真は、なおも雄二を追いかける。
94いわゆる普通のメイドロボ 第三話(16/23):2008/07/13(日) 00:48:44 ID:dxqpIMad0
 
 「やめろっ!俺は、女に暴力振るう趣味はねぇっ!」と、屋上を逃げ惑う雄二。
 「うっさいっ!あんたは、おとなしく天誅を受けろっ!!」と、由真。

 追い詰められた雄二は、金網によじ登っていった。
 「やい由真、ここまで来てみろよ。」からかうように言う雄二。
 「くぅ〜っ!卑怯者!見てろっ!」と、スカートなのも省みず追いかけて登っていこうとする由真。
 マジかよ、と、驚いた雄二だったが、その時、金網を掴んでいた手が滑り、体が後ろに倒れこんでいく。
 勿論、倒れこんでいく先は、宙で、その先は―― 地上である。
 「えっ!?あっあっあっ〜っ!!!」 叫ぶ雄二。
 「あっ!?きゃぁあああ!!雄二〜〜っ!!」 思わず、青い顔になり大声で悲鳴を上げる環。
 「ちょ、ちょっとお〜〜っ!?きゃぁ〜〜っ!!」 由真も、全身の血の気が引きつつ悲鳴を上げる。
 「ゆーじ君っ!?あぶないっ!!」 慌てて、落下を阻止しようと雄二に駆け寄っていくミルファ。

 ガシッ!
 ・・・・と、雄二の体がほぼ水平に倒れこんだところで、背中を受けとめる手があった。
 素早くジャンプして、金網の後ろ側に張り付いていたリナであった。
 リナは、雄二の背中をグンッと金網に押し戻すと、その襟を掴んで引っ張り上げる。
 そのまま持ち上げて、金網から雄二と一緒に屋上に降り立った。
95いわゆる普通のメイドロボ 第三話(17/23):2008/07/13(日) 00:50:52 ID:dxqpIMad0
 
 「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・あ、ありがとう、リナちゃん・・・・」
 雄二は、放心状態に近く、屋上に虚ろな目でへたり込んでいる。
 「ご主人様ぁ〜〜!ご無事で、良かったですぅ〜〜っ!!」
 表情いっぱいに安堵を見せながら、ヒシッと雄二を抱きしめるリナ。

 それを見つめながら、貴明は思った。
 "・・・・どう見ても、リナちゃんには感情があるようにしか見えない。販売品のメイドロボでも、みんな、こうなのか?"

 ―― ふと脇を見ると、ミルファが、頭を抱えて、視線の定まらない様子で立ち尽くしている。
 「ど、どうしたの、ミルファちゃん!?・・・・どこか、調子が悪いの?頭でも痛いの?」
 事故の後遺症かと、気が気でなくなり、ミルファの肩に手を掛ける貴明。
 「だ、大丈夫、ダーリン・・・・ちょっと、変な気分になっただけ・・・・」

 "・・・・何だろう、この感じ・・・?こういうの、既視感って、いうのかな・・・・?"
96いわゆる普通のメイドロボ 第三話(18/23):2008/07/13(日) 00:53:05 ID:dxqpIMad0
 
 ――― あくる日の放課後、来栖川エレクトロニクスの、ロボット研究所にやって来た、貴明と姫百合珊瑚。
 受付で名乗った後、応接間に通される二人。
 「ウチはIDカード持ってるけど、貴明はまだ作ってもらってへんよね?ちょっと待ってな、おっちゃん呼んだから。」
 10分程待たされると、応接間に、白い研究衣姿の、眼鏡をかけた、やや細面の中年紳士が入ってくる。
 貴明が会うのは、由真のMTBの件以来だ。
 HM開発室長、長瀬源五郎氏が言った。「やぁ来たね、河野少年、珊瑚君。」
97いわゆる普通のメイドロボ 第三話(19/23):2008/07/13(日) 00:54:14 ID:dxqpIMad0
 
 「粗茶れす。」
 応接間のテーブルに、HM-16型のメイドロボが、お盆から3人分のお茶を下ろして並べた。
 「それれは、失礼します。」 そして、おじぎをして応接間から出て行く。
 「――気付いたかね?あの娘も、シルファと同じで、"だ"行の発音がうまく出来ないんだよ。無理に直さず、そのままに
してあるんだ。珊瑚君、どうなんだろうね?構造的に、発声しにくいのかね?人間に似せ過ぎたんだろうか。改善の余地
があるのかな。」

 「うーん、しっちゃんの場合は、単に意地っ張りなだけやと思うけど・・・・・それより、おっちゃん、今日来たんは――」
 うん、うん、と、長瀬氏がにこにこしながらひとりで頷いた。
 「わかってるよ、河野君の家に届いた、モニタテスト用のリオンの件だろ?」

 珊瑚が感じた違和感。貴明が感じた雰囲気。
 そして、イルファの確信。"あの娘のAIは、私達と同じものだと思います。"
 その疑問を長瀬氏に話した珊瑚。
 「やはり、分かっちゃったかい?いや、気付くだろうな、もちろん。」
 ふふっ、と、長瀬氏は、微苦笑してから、言った。
 「彼女は、制限型DIAの、評価実験機なんだ。」 
 やっぱり、と、顔を見合わせる貴明と珊瑚。
98いわゆる普通のメイドロボ 第三話(20/23):2008/07/13(日) 00:57:20 ID:6AAF8ykA0
 
 「あいつの制限型DIAの方は、僕と東吾君で弄らせて貰ったよ。黙ってて悪いね珊瑚君。君の方はもっと自由にやって
欲しいから、あえて手伝いを頼まなかったんだ。」

 「自由?」 珊瑚が訊ねる。
 「人の心を再現する仕組みとしては、もうDIAは完成してると思う。後は、どうやって、安定して動作を続けさせるか、だけ、
なんだよ。人間だって不安定にはなる。けど、ロボットではそれは許されない。 
 今は、ミルファとシルファのケーススタディがある。制限をかけない、自由な領域で、君の方は探求を続けて欲しいね。」

 そう話して、珊瑚から貴明の方へ視線を移す長瀬氏。
 「例の“ヘタレ力研究所”で採取したデータは、その役に立てると思う。珊瑚君の研究に、貸してやってもいいかな?」
 わかりました、と、貴明。"ヘタレ"と言う表現はムカつくが、そういう目的なのなら、まぁいいだろう、と。

 「制限型の方は、ずっと簡単だ。安定させるための仕組みが既に備わってるからね。まず、三原則だ。"人を傷つけない、
傷つけさせない"、"命令には必ず従う"、そして、"自分を傷つけない"。
 それに、心を寄せる相手、親ないし伴侶に当たる"ご主人様"、それがDIAを安定させるキーだと思うが、一般販売機へ
の導入が前提なら、マスターが最初からいるんだ。」
99いわゆる普通のメイドロボ 第三話(21/23):2008/07/13(日) 00:59:14 ID:6AAF8ykA0
 
 「おっちゃん、DIA搭載機を、売るん?」
 「HM-18、早ければHM-17からでも組み込みたいと思ってる。HM-18を操り人形みたいな仕様にしようとした、本社
への意趣返しかな。営業部長は、これは間違いなく売れる、と、太鼓判だったよ。ははは。」

 そう笑った後、長瀬氏の表情が、一転、曇る。
 「本社を見返してやりたくて、少々無理をしてしまった。不安定なのを承知で、ミルファを自由にさせすぎた。そのせいで、
あの子に、取り返しのつかない傷を与えてしまった・・・・・僕のせいだ。でも、そういう行動に駆り立てた本社に、この程度
の仕返しは、させて貰ってもいいと思わないかい?」

 ああ・・・・この人も、珊瑚同様、彼女達を研究対象ではない、自分の娘のように語っているな、と、心を打たれた貴明。
 前回会った時は、ここまで腹を打ち明けず、もっと、事務的な話しかしなかったのだ。
 
 「すいません、もう一つ、聞きたいんですが。」と、貴明。
 何かな、と、膝の上で手を組んで、質問を待つ長瀬氏。
 「あのリオン・・・・雄二が、"リナ"と、名付けたんですけど、その、僕の知り合いの娘に、そっくりなんです。」
 ああ、ああ、そのことね、と、また長瀬氏が微笑をうかべた。
 「HMのデザインには、たいがい、モデルがいるんだけど、何しろ、個人情報だの肖像権だの色々面倒でね・・・・。
 彼女は、販売前のデザイン検討用の機体を借りたんだけど、実は、手っ取り早いところで、親戚の娘の容姿を参考に
させてもらってたんだ。そうそう、河野君、君が壊しちゃったMTBの持ち主だったかな、確か。ははは。」
100いわゆる普通のメイドロボ 第三話(22/23):2008/07/13(日) 01:01:00 ID:6AAF8ykA0
  ―― 何て安直な、と、呆れてしまう貴明。
 顔だけじゃなくて、性格も、かなり似てるんですけど・・・・負けず嫌いなところとか、いろんなところが。
 「うん、パーソナリティーも、若干、参考にしたさ。」  ―― 聞いて、思わずこけそうになる貴明。

 「おっちゃん、一つだけ、言わしてもらっていい?」 珊瑚が、真剣な顔で長瀬氏を見つめて言った。
 「何かな?」
 「DIA搭載機を売るって事は、"心"を持った存在を、売り買いするって事や。たとえ、制限ついててもな。
 だから、簡単に、その子達の記憶とか、心を削るようなことは、ウチ、して欲しくない。
 おっちゃん、ミルファの記憶が消えた時、悲しかったやろ?販売機では、そんなの、日常的に行われてるんやって?
これから、"心"を持ってても、そないな事される子達が、いっぱい出てくるの?」

 う〜ん、と、長瀬氏は、腕を組んで目を伏せ、考え込んでしまった。
 「問題は、そこなんだよな、確かに・・・・・」
 そして、言った。
 「それにどう対応するか、最初のケースになるな、あの子は・・・・彼女のご主人様登録は、期間限定なんだ。」
101いわゆる普通のメイドロボ 第三話(23/23):2008/07/13(日) 01:03:23 ID:6AAF8ykA0
  
 「・・・・おっちゃん、嘘ついてるわ、多分。」
 バスを降りて、すでに街灯の灯り始めた道を姫百合家へ向かって歩を進めていた途中、ふいに立ち止って、珊瑚が
つぶやいた。

 「えっ?どういうこと、珊瑚ちゃん?」
 「三原則とDIAを組み合わせんの、そんな簡単や事やない。それどころか、ぎょーさん、矛盾が出てくる筈なんや。
辛い事、悲しい事、意に沿わん事でも、飲まなきゃならんケース、当然出てくる。そのガス抜き、うまく出来へんと、
その子の心、間違いなく、壊れてしまうんよ。」

 そう言って、表情を暗くする。
 「きっと、ウチに見せたくないもんがあるから、おっちゃんだけで手掛けたんやと思う、りっちゃんのDIAは。」 

 「ダーリン!さんちゃん!」
 マンションのエントランスには、私服姿のミルファが待ち受けていた。
 貴明と珊瑚、続けざまに抱きつきながら言う。
 「遅かったね、遅かったね!さ、ダーリン、帰ろう。さんちゃん、瑠璃ちゃんとお姉ちゃんが、夕食作って待ってるよ。」
 「ミルファちゃん、雄二とリナさんは?」 訊ねる貴明。
 「うん、いるよ勿論。なんかいちゃいちゃしてる☆」
 貴明の腕を取り、ミルファは、河野家の方向へ、貴明を引っ張っていた。
102名無しさんだよもん:2008/07/13(日) 01:03:38 ID:h4wxXulM0
あげ
103101:2008/07/13(日) 01:06:17 ID:6AAF8ykA0
 (つづく)

 と、いうわけで、終了です。
 当初は、パイズリネタで、思いっきり脳天気で明るい内容にしたいと目論んでました。
 しかし、“イブ”が、どうにも不満足な形で駆け足で終えざるを得なかったので、ついつい、その補完のお話に
変質してしまったものです。

 ちと色気が足りないと思ったんで、由真のブルマ分を入れてみました。
 由真のブルマは最高っす。

 どうやら長編化しそうなので、まぁ気長に行くつもりです。
 では。
104名無しさんだよもん:2008/07/13(日) 08:00:59 ID:rmwqxUBb0
GJ
105名無しさんだよもん:2008/07/13(日) 08:53:49 ID:nc3nPWfz0
乙〜
顔見知りと同じ顔だと俺なら照れるか萎えるが、そこは流石に雄二だなw 

19でだ行の発音ができないと言われつつ11,12では……
とか突っ込もうと思ったらリオンじゃなくてお茶出しメイドロボの話だったw
オリジナル設定が多いSSだけど、回を重ねるごとに読みやすくなってきてるね。この調子で続きも期待してます
106名無しさんだよもん:2008/07/13(日) 12:45:15 ID:Qy0icM7n0
誤解の無い様に言っておくけどシルファはダ行の発音全てが出来ない訳じゃないよね
変換されるのはda→ra/de→re/do→roの3つとちみっコだけ

シルファ語ブックマークレット
ttp://www.anime.net/~sasami/ura/silfa.html

ただし漢字の中のda/de/doも変換しないといけないからややこしい(例)問題→問らい
アンソロとかでコレを避ける為にわざわざルビ振ってるのに間違ってるのとか多いな
107名無しさんだよもん:2008/07/14(月) 09:34:09 ID:1bPMPHxKO
面白かった&乙

とりあえずリオン(リナと言うべきか?)の正体が由真でなくて安心したw
ミルファの記憶、量産型DIAの秘密と気になるコトが増えてきて、続きが気になって仕方ないよー。
今後も期待してるっす。
108101:2008/07/15(火) 15:50:25 ID:Pf6Yxtj50
 
 ミ「シルファと仲直りしたくおもうのだ。どうかな?」
 イ「ミルファ様、ご立派になられて。戦争終結は亡き貴明様の十数年に及ぶ願いでした。私に涙腺があれば泣いて
おります。」
 ミ「私の名前はミルファ。来栖川エレクトロニクスのミルファよ。」
 イ「流石でございます。」
 ミ「さっそくシルファとの話し合いの場を用意して頂戴。」
 イ「流石でございます。すでにシルファ語まで学ばれましたか」
 ミ「なに?」
 イ「シルファ語です。我々とは言語体系がいささか異なりますので。」
 ミ「初耳ね。」
 イ「シルファは我々ほど論理的ではございませんので。」
 ミ「野蛮ね。」
 イ「亡き貴明様の残された書物に、シルファの会話サンプルがまとめられています。第一章“挨拶”」
 ミ「挨拶は大事よね。」
 イ「べーらっ!」
  ―― ガンッ!――
 イ「いかがなされましたか?」
 ミ「微妙にムカッ腹が立ったわ」

 どうも。すっかり『ファイアボール』のツンデレお嬢ロボがツボにはまってしまった101です。
 という訳で普通のロボ第四話投下です。
 長いので前・中・後に分割。
 
 「ただいま〜」
 貴明とミルファが河野家に帰って来ると、玄関にシルファが作る夕食の香りがぷんと漂って来た。
 肉じゃがらしい。
 「あっ!ご主人様!・・・・ミルミル!ご主人様を、こんな時間まれ、ろこに引っ張り回したれす!?」
 リビングに入るなり、シルファがミルファに突っかかる。 
 「来栖川の研究所。さんちゃんと一緒に、長瀬おじさんのとこ」 ミルファが言った。
 「あたしはさんちゃんとこで留守番。ダーリンは大事な用があって行ったんだから。なんでいっつもそう邪推すんのよ!?」
 「エロエロなミルミルの行ろうなんて、信用れきないのれす」 そう言うと、びっとミルファを指差すシルファ。
 「ご主人様のセックスフレンろになったからと言って、その心まれ勝ち得たと思ったら、大間違いれす!ご主人様の、至高
のめいろろぼになるゲームは、これかられす!選ばれるのは、たら一人!」

 「それってどんなアリスゲーム?ジャンクのくせに」
 「ぴぎゃーっ!シルファはジャンクじゃないのれすっ!!」
 また昔の再放送アニメとかに影響されてる二人。

 「ま、いいや。ダーリン、どうする?ご飯?お風呂?それとも、あ・た・し?☆」
 などと言いつつ、ミルファは既に貴明の手を取って二階の貴明の部屋へ引っ張り込もうとしている。
 「折角シルファちゃんが夕飯作ってくれたんだし、まず夕食にするよ」
 あ、そ。と、ちょっとふくれっ面を見せるミルファ。
 
 ご飯、お風呂、と終え、自室に戻ってきた貴明。
 ブースカ言うシルファをやっとこさなだめつつ、ミルファを伴って。
 いつまでこの状態が続くのかと思うと、うんざりしてしまう貴明だった。
 ミルファは勿論大事、でも、シルファも・・・・

 「ね、ダーリン。あたしね、こないだ・・・・」
 全裸になって、貴明の床に一緒に入っているミルファが囁いてきた。
 「怖い夢、見たよ・・・・ダーリンが、高いところから、落ちちゃう夢。」
 ハッとする貴明。そして、数日前の、屋上での騒動を思い起こした。もしかして、あの時・・・・  
 珊瑚から聞いていた話を思い出す。
 『みっちゃんの半年間の記憶は全滅したわけやない。せやけど、断片的やから、関連付けて思い出せなくなってるんよ』
 何かのキーが得られれば、突発的に思い出す可能性はあるわけだった。
 低い位置にいると、クマ吉当時の視点を思い起こすように。

 「―― はるみだよね、これって。そうだよね、ダーリン。」
 うーん、と、答えに詰まってしまう貴明。
 「いいよ、もう。よくわかったから。」 視線を、貴明から天井に移したミルファ。
 
 「あたしの中にいた、もう一人のあたし。学校のみんなも、あたしのこと、“はるみん”とか呼んで来るし。もううんざりして、
死んじゃえ!って、思った事もあったけど・・・・」
 また、貴明へと向き直って、言う。
 「あたしの知らないダーリンとの思い出を、いっぱい持ったまま、どっかに消えちゃったのが悔しいと思っただけ。多分。」
 そう言って、貴明にぎゅっとしがみついた。
 「あんな高いところから落ちたら、いくらロボでも、多分、壊れちゃったと思う。それで、記憶が飛んじゃった。違う?」
 厳密には違うが、確かに遠因ではあったので、「うん、まぁ・・・・そうだよ。」と、答えた貴明。
 ―― そろそろ、いいだろう、と。
 「でも、ダーリンが危ない目にあったら、あたしだって、飛ぶよ、絶対。何度でも。」
 ・・・・続けるミルファ。
 「―― もう、認めちゃっても、いいかなって、思ったんだ。はるみのこと。あたしと同じ、だって。そうしたら、なんかスッキリ
しちゃった」
 そう言って、にこりとする。 
 「もう、はるみに負けないくらい、素敵な思い出、いっぱい貰えたと思うし。それに、これからも・・・・」
 「ミルファちゃん・・・・」
 貴明も、ミルファを抱きしめる。
 「これから、いろいろ教えて欲しいな、はるみのこと・・・・ううん、ついこの前までの、あたしのこと」
 
 
 「あ〜もう、うんざり!みんなあたしのこと病人扱いで、やたら気を遣って。ま、確かに病人だけどさ。」
 小牧郁乃は、「車イス押してあげるよ」という女生徒達の好意をせいぜい丁重に断った後、人気の無い廊下に着いて
から、ひとりごちた。
 “一度甘えちゃうと、癖になって、誰もいない時に困るもんね。たとえお姉ちゃんでも ――”

 「助けが得られる時くらいは、好意に甘えちゃってもいいと思うけどな。」
 彼女の心の内を見透かすような声がしたので、ひゃっ!?と、びっくりして、背後を振り向いた郁乃。
 声の主は―― 河野貴明、だった。
 「あたしに構わないで。」 そう言い捨てて、車イスを進める郁乃。
 ―― こいつにだけは、頼りたくない。―― 何故か、意地を張ってしまう彼女である。
 「何、あの子?恥ずかしがってるのかな、ね、ダーリン」 貴明の隣にいたミルファが言った。

 この学校はなかなかにバリアフリーが行き届いていて、身障者―― 殊に、車イス使用者 ―― の受入用に、段差の
ある場所に、スロープが用意されている。
 玄関のスロープに向かって進んでいく郁乃。
 「もう、河野くんがせっかく手伝ってくれるって言ってるんだから、意地張らないでいいのに。あたしが押そうか?」
 また背後から声がした。声の主は・・・・郁乃の姉、愛佳。
 「あーもうっ!うるさいっ!あたしに構わないでってばっ!」
 ムキになって、車イスの移動速度を早め、目を閉じて叫んでしまう郁乃。
 
 「あっ!ちょっとっ!郁乃、前っ!!」
 愛佳が慌てて叫んだ。
 郁乃の進行方向は、スロープの位置から外れていて、段差部分へズンズン進んでいく。
 「危ないっ!」 と、貴明が叫んだ時には、車イスはガコンッ!!と、派手に落ち込んでいて、横転していく。 
 「きゃあああっっ!!」
 悲鳴を上げた郁乃。

 ―― しかし、床に横倒しになるのを覚悟したその直後に、誰かに支えられているのに気がついた。
 ―― 支えていたのは、素早く駆け寄ったミルファだった。
 「大丈夫?ちゃんと前見てないと、あぶないよ?」
 「・・・・・あ、ありがと・・・・」 冷や汗をかきながら、震える声で礼を言う郁乃。
 「は、早い・・・・」 今更ながらに、メイドロボの瞬発力に驚く貴明。先日落下しそうになった雄二を受けとめたリナも
そうだったが。

 車イスごと郁乃を軽々と持ち上げ、床に降ろすミルファ。
 "オー、パチパチパチ"、と、丁度その場に居合わせた数人の生徒達から、賞賛の拍手が沸き起こる。
 「えへへへ・・・・」と、頭をかくミルファ。
  
 「おう、ミルファ、お手柄やったやん。」
 いつの間にか、瑠璃と珊瑚が、貴明の傍らに来ていた。 
 「ウチ、思うんやけどな。メイドロボは、マニアックな人達ばっかりに売れとるそうやないの。けど、ホンマにあの子たち
が必要なのは、こういう人達やないかな。お手伝いさんとしても、友達としてもなー。」 瑠璃が言った。

 その瑠璃の話が聞こえたのか、郁乃が、うつむきながら、呟いた。
 「・・・・あたしには、いらないもん・・・・」
 「えっ?郁乃、何か言った?」 郁乃の顔を覗き込みながら、訊ねる愛佳。
 やや赤面しながら、続ける郁乃。
 「―― あたしにはお姉ちゃんがいるもの。メイドロボなんて、いらない・・・・。」

(つづく)
115114:2008/07/15(火) 16:07:17 ID:eXNwDo7V0
今回はこれで終了

いくつか失敗があります。
112で、“昼下がりの、学校にて”と、導入入れるの忘れてます。
113の、“先日”は、“先般”の、間違いです。
失礼をば。
では。
116名無しさんだよもん:2008/07/15(火) 16:10:54 ID:tU5echGJ0
117名無しさんだよもん:2008/07/16(水) 07:07:40 ID:2T5gD5pc0
乙乙。ここで郁乃が絡んでくるのかぁ。話が広がってきたが頑張れ

郁乃に関して、あくまで俺の個人的な意見だが、
愛佳シナリオっぽくない展開で初登場の郁乃が貴明に
「こいつにだけは頼りたくない」はやや唐突な感じがしたかも知れない
あと「お姉ちゃんがいるもの」もそう簡単には出ない台詞な気がした。必殺技だからw
118名無しさんだよもん:2008/07/16(水) 08:17:03 ID:zVO2vIU3O
乙。
確かにいきなりな急展開でちと面食らった。
今回は文章ちと固さがあるし、作者はもしかして方向性にいささかの迷いがある?
なんつーか、場面毎の間が今一つって感じを受けたかな。

ともあれ今後に期待。
119114:2008/07/16(水) 10:12:59 ID:hfS1ikPn0
方向性は既に決まってて、いくのん投下も予定通りですよん
唐突感とか文体の固さは力の無さ故で・・・orz
どの辺固いかご指摘頂ければ有難く。自分で見えてないところが多々あるので
瑠璃の台詞に、方向性が示されてたりします。
ちといろいろ忙しくなるんで、少々間を開けますがご容赦を。

ドロッセルお嬢かわいいよドロッセルお嬢
120名無しさんだよもん:2008/07/16(水) 21:30:05 ID:obMOlzz+0
なんか傷心してるんだけども、
元気が出るSS誰か紹介してくれませんか。
121119:2008/07/17(木) 19:59:58 ID:kYwnvhyt0
失礼します。
しばらく間を空けることになりそうなんで、ここらでもう一丁、落としておきます。
 
 ―― "最近、いいんちょ、かなり疲れてる感じなんだよな・・・・"――
 そんな事を思いながら、貴明は、放課後、図書室へと足を向ける。
 奥の書棚の方へ行くと・・・・やっぱり、居た。

 「あ、河野くん、どうしたの?」
 貴明の気配に気付いた、小牧愛佳。
出しかけていた本をまた書棚に収めながら、貴明に声を掛けた。
 「うん・・・・いや、なんか最近、小牧さん、元気なさそうだったから、つい・・・・」
 頭をかきながら言う貴明。
 「えぇ〜?そんなことないよ〜、あははは〜・・・・」と、力なく笑う愛佳。明らかに、カラ元気っぽい。
 「色々、大変なんじゃないかなと思って。郁乃ちゃんの事もあるし・・・・俺、なんか、手伝える事ない?」
 「ほんと、大丈夫だってぇ!・・・・・そんな、深刻そうな顔してるのかな、あたし・・・・。」
 そう言ってから、はぁーっと溜息をつく愛佳。
 いろいろと抱え込みやすい気質もあるのだろうが、やはり、家庭の問題が大きいのだろうと貴明は想像した。 
 
 「えっと・・・・郁乃ちゃんの足、まだ、時間かかりそうなのかな・・・・・?」
 聞いていていいものか迷っていたが、思い切って訊ねてみた貴明。
 「うん、本当は、夏前に、思い切った手術、する筈だったんだけど・・・・主治医の先生が、もう少し、様子見ようって。」
 そう話す愛佳の様子は、やはり寂しげに見える。

 「もう少しって、どのくらい?」 これも訊いて見た貴明。
 「あと3ヶ月ないし、最長で半年くらいだって・・・・。」 一段と、寂しげな色を見せつつ愛佳が答える。
 "半年かぁ・・・・短いようで、結構、長いよな・・・・もう年を跨いじゃうしな・・・・。"などと思う貴明。
 「あのね、郁乃、最近、妙にあたしに優しいんだよね。ちょっと前まで、毒舌ばっかりだったのにぃ。あはははは。」
 そう苦笑いする愛佳を見ながら、それは、多分、姉の疲れた様子を見て、気を遣っているのだろうと想像した貴明
だった。
 
  
 「―― へっくしっ!」
 廊下を車イスで進みながら、突然、くしゃみをする郁乃。
 “うう・・・・どうせ、姉とか、あいつ辺りが、あたしの噂でもしてんだろ・・・・”と、ひとりごちる。
 あいつ――― 河野貴明。
 姉は、あいつの話ばかりしていた。そんな姉をからかうのが、あたしの気晴らしの一つでもあった。
 事故に遭っちゃったクラスメートのメイドロボのところに日参するあいつの話をして、あたしも応援してるんだ、と言い
ながらも、とても寂しげな姉の様子が、いまだに忘れられない。
 姉の元気が急に消え失せていったのも、それからだ。
 そんな、姉の気持ちにも気付かずに、いまだに、姉や、あたしに馴れ馴れしく声を掛けてくるあいつ。
 ――― ふざけるなっ!
 あいつの手なんか、意地でも借りるものか。 
 ・・・・メイドロボがいれば、便利?―― 冗談じゃないわっ!?
 
 ―― 再び、図書室にて。

 「そんな、大丈夫だから」と、固辞していた愛佳を押し切って、書庫の整理の手伝いを始めた貴明だったが、別な人影
が、図書室の入口から近付いてくるのに気付いた。
 ―― 環だった。
 「タカ坊、暇なんだったら、生徒会に顔出さない?しばらくご無沙汰だったでしょう。」
 ミルファの事故の件以来、欠席が続いていたから、生徒会には顔を出し辛くなっていた貴明である。
 環が言った。
 「例の件――― そろそろ、決着つけないといけないんじゃない、タカ坊?あの妖怪と。」
 
 ―――――

 “『まーりゃん』って、知ってるかい?
 昔、学園で粋に暴れまわってたって言うぜ・・・
 今や生徒会は荒れ放題、
 ボヤボヤしていると、後ろからばっさりだ!
 どっちも どっちも どっちも どっちも!”

―――――
 「―― と、いうわけで、たかりゃんの椅子は、ばっさり切り捨てたぞい。とっとと帰るがいいわ。」
 生徒会室の最奥の席でふんぞり返りながら、ピンク髪の年齢不詳な"元"生徒会長が吐き捨てた。
 「そんなぁ、先輩!―― あ、河野さん、お願いですから怒らないで下さい。」と、おろおろしながら言うのは、アメリカ留学
から無理矢理連れ戻されてから、結局生徒会室に居ついてしまった、前生徒会長の久寿川ささら。
 「何ですって!どういう横暴よそれっ!そもそも、先輩にどんな権限があるんですかっ!?」
 まーりゃんに詰め寄る"現"生徒会長の環。

「うっせぇーよ!空っぽの筈の生徒会の金庫を、誰が満たしてやってると思ってんだよ!この俺の、裏資金のお陰じゃん
かよっ!!」
 ぐぅぅ・・・・・と、まーりゃんを睨みつけながら、奥歯を噛み締める環。
 ―― 金庫を空っぽにしたのは、元をただせば学園祭でのまーりゃんの浪費が原因であったのだが。
 
 「もう俺様の玩具にならんたかりゃんなんぞ、もはや価値はないんだよっ!だから、その椅子は、俺様のマイ・ビジネス
パートナーの、ひつじさんに、くれたやった☆」
 かつて貴明の定位置になっていた席には、まーりゃんがパートナーと呼ぶ、どう見ても子ヤギの“ひつじさん”が、鎮座
していた。
 “メェェェェ〜〜〜。” ひつじさんが、鳴く。
 「だいたいだな、この学園の最大イベントたる学園祭にも参加せず、今頃のこのこ現れおって。」
 シーシーと、ふてぶてしく爪楊枝で歯をこするまーりゃん。
 貴明が学園祭の主催に参加出来なかったのは、記憶を失ったミルファのところに日参していたからで、そもそも、彼女を
早く学校に連れ戻して来て、と、皆から後押しされていたような状態だったから、それは公認の下である。

 「ちょっとぉ〜、あんた、何様よぉ〜〜っ!」
 貴明に寄り添っていたミルファが、ズイッとまーりゃんに歩み寄る。
 「あなたは下がってなさい。」制止する環。
 「ううんっ!ダーリンをいじめる奴は、許さないんだからっ!!」 環の制止を無視するミルファ。

 フフン、と、不敵な笑みを浮かべるまーりゃん。
 「おや、お前は、俺様の大切な玩具たかりゃんを盗んだ、泥棒ロボの、愛人28号・はるみんではないか。」
 “泥棒ロボですってぇ〜っ!!” 今にもまーりゃんに掴みかからんとするミルファ。
 「くっくっく、お前の弱点は、この俺様の情報網で、調査済みだ ――― これだっ!!」
 
 バッと、どこから引っ張り出して来たのか、まーりゃんがマントを翻すと、そこから現れたのは・・・・・
 ―― 数匹の、ひつじさん(子ヤギ)であった。
 ひつじさん達が、ミルファの周囲に擦り寄っていく。
 「わぁ〜〜っ!・・・・あったかいねっ!あったかいねっ!」
 ―― ひつじさん達を抱きかかえて、頬を摺り寄せるミルファ。
 ・・・・その様子を見て、ダメだこりゃ、と、思わず頭を抱えてしまう環達。

 「別にいいですよ俺は。好きでやってたんじゃないし。」 貴明が言った。
 「タカくん!」 このみが叫ぶ。
 「でも先輩、一つだけ、教えて下さい・・・・・1年生の女生徒達をけしかけて、ミルファの悪口言わせたり、珊瑚ちゃん達
に詰め寄らしたりしたのは、先輩ですか・・・・?」 まーりゃんに訊ねる貴明。
 「ふむ・・・・」と、顎に手をやり、考え込んでいるまーりゃん。
 そして、言った。「そーいえば、そんな仕掛けをしたよ〜な。ちょっと、修羅場分が足りんと思ってな。"暇"だから。」
―― キラ〜ン!と、環の目が光る。
 「そうですか・・・・単にいたずら好きなだけだと思って、今まで大目に見てましたが・・・・・そんな卑劣な事をするなんて。」
 スッと、まーりゃんに相対する、環。
 「ほう・・・・・タマちゃん、無謀にも、この俺様に、下克上しようって、いうのかい?・・・・面白い。かかってきなさいっ!」
 腕を組んで、ほくそ笑むまーりゃん。

 ―― 一旦、目を閉じ、そして、また見開いた環。
 「あなたたちっ!やっておしまいなさいっ!!」
 
 ―― 何故か、生徒会室の中、まーりゃんの背後に鎮座していた、電信柱。
 そこから、"ズボッ!"と、腕が伸びて来た。
 そして、まーりゃんの両手を背後から掴むと、とてつもない力で、捻じ上げる。
 「なっ、何ぃぃ〜〜っ!」 驚愕するまーりゃん。
 「メイドロボのパワーは、人間の3倍・・・・観念して下さい!」 ―― イルファだった。 
 「腕の自由を奪ってしまえば、必殺技も出せないでしょうっ!逃げ足もふさいでしまうのよっ!シルファッ!!」
 環がそう叫ぶと、今度は、部屋の隅っこに置かれていたダンボールが持ち上がり、中から金髪のおさげが現れた。
 目にもとまらぬ早さでまーりゃんの足を掴むと、グィっと仰向けにしてしまう。
 「くわーっ!謀ったなタマちゃんっ!この俺様に不覚をとらせるとはっ!!」
 パンツ丸出しでもがきながらわめくまーりゃん。
 「ミルファちゃんの悪口を流布しただけじゃなく、珊瑚様まで泣かせるなんて、絶対、許せませんっ!」
 「めいろろぼを辱めたのは、許せないのれすっ!たとえミルミルの悪口れもっ!」

 ひつじさん達とじゃれているミルファに向かって、環が叫ぶ。「ミルファッ!あなたもっ!」
 ハッとなって、我に返るミルファ。
 「ミルファちゃん!剥いちゃいなさいっ!得意技でしょうっ!」と、イルファ。
 「―― 得意技かどうか知らないけど、ダーリンをいじめたしっ!お仕置きっ!!」
 素早くまーりゃんに取り付き、そのセーラー服を次々と剥いで行く。
 「ぎゃあああ〜っっ!ぐわぁあああっっ!やめろぉおおお〜〜!!やめるんだぁ〜〜ショッカァァ〜〜〜ッッッ!!!
さ〜りゃんっ!!黙って見てないで助けてくれぇぇええ〜〜〜っっ!!!」
 まぁまぁまぁ・・・・・と、赤面して両手で目を覆いながらも、しっかり覗いているささら。
 貴明は・・・・やはり、真っ赤になって、この修羅場に背を向けていた。
 
 ――― そして、惨劇の後。

 「しくしくしく・・・・麻亜子、もうお嫁に行けなぁい・・・・・」
 まーりゃんは、幼稚園児の着るスモック姿にされ、両手で顔を覆っていた。
 限りなくウソ泣きの疑い濃厚だったが。
 「先輩、スリム体型ですし、よくお似合いでいらしてよ、ぷぷぷ・・・・」
 必死で笑いを押し込めながら、環が言った。
 「お母様を引っ張り出さなかっただけでも、感謝なさい。・・・・一体全体、何だって、女生徒達をそそのかしてミルファ達に
嫌がらせなんかを?真面目に答えて。」
 ―― 修羅場好きとか略奪愛好きだからとかぬかしたら、ヌッ殺す ―― と、云わんばかりの形相で凄む、環。
 
 「畜生ぉ〜〜〜っ!俺様のたかりゃんを取られたのが悔しかったんだいっ!!いいじゃんかよぉっその程度の意趣返し
はよぉ〜〜っ!!」
 被害妄想も甚だしいが、こういう人なのだ、この先輩は ――― と、呆れる環と貴明。
    
 びっと、一同を指差して、捨て台詞を吐くまーりゃん。
 「タマちゃんっ!これで勝ったと思うなよぉ〜〜〜っっ!!」
 ―― 園児服で言われても、なんの迫力も無い。
 そうして、ひつじさん達を引き連れ、廊下を走り去っていくまーりゃん先輩であった。
 
 「はぁ〜、これで済むとは思わないけどね。早晩、仕返しに来るでしょうから、備えておかないと。」 環が言う。
 「わぁ〜っ!すごいすごいすご〜いっ!!まーりゃん先輩をやっつけちゃうなんて。大殊勲でありますよ隊長!!」
 バンザイをするこのみ。
 「まぁ、仕掛けたのはタマ姉だけど、実際にやってくれたのは、爆弾三勇士なんだよね。」
 そう言って、チラリとイルファ達を見る貴明。
 「あの・・・・貴明さん、"爆弾三勇士"って、何ですか?」 苦笑いするイルファ。
 「むふ〜ん、シルファが、あたしのために人肌脱いでくれるなんて、思わなかったよ。」 ニンマリしながら言うミルファ。
 「べ、別に、ミルミルのためじゃ、ないのれす!お、お母様の、悪口、言ったかられすよ・・・・」 そう言って、ぷいと横を
向くシルファ。

 「でも、まーりゃん先輩、傷ついてないかなぁ・・・・?」 この期に及んでまだまーりゃんを心配している、心底お人好しの
このみ。
 「あの・・・・大丈夫だと、思います。先輩のバイタリティは、ゴキブリ以上ですから。」
 ―― 長年まーりゃんと一緒にいるささらが言うのだから、まず間違いないと思われた。

 「環様、私達はこれで失礼したいと思いますが。」 イルファが言った。
 あっそうそう、彼女達をそろそろ帰さねばと、気付いた環。
 「そうね。雄二を珊瑚ちゃん達のとこに野放しにしとくのは心配だし。一応リナもいるけど。ありがとう、イルファ。」
 「では、失礼します。ミルファちゃん、ちょっとお話もあるから、一緒に来て。」
 「うんわかった。じゃあダーリン、後でね〜☆」
 「今晩のエサはカレーライスれす、ご主人様」
 
 三姉妹が去ってから、貴明が言った。
 「これで、メイドロボへの学園内の悪い噂も、一掃されるかな。」
 「そうでしょうか・・・・?もうちょっと、根っこが深いように、思うんですけど。」 ささらが呟く。
 「えっ?どういう事ですか、先輩?」 ささらに振り向き、訊ねる貴明。
 「あ・・・・こないだの、アンケートね、久寿川さん?」 と、環。
 「はい。実は、つい最近、来栖川エレクトロニクスの東吾さんという方から、学園へのメイドロボ受け入れについての、
アンケート調査の依頼が、生徒会に入ったんです。校長先生も、頼むよ、とおっしゃってたんで、断れなくて。」

 ―― 東吾さんって、確か、リナのセッティングにやって来た人だっけ。長瀬さんの懐刀だとか。
 結構マメに動き回ってるんだな ―― と、感心した貴明。
 でも俺、そんなアンケート見た事ないけど、と貴明が言うと、タカ坊はいっつもそういうの無関心でしょう、と、環。
 「この学校にメイドロボを受け入れるのは、ミルファさんが2人目ですよね。まぁ彼女はそうは告げられずに入学したわけ
ですけど ―― 最初に来たマルチさんの事は、まーりゃん先輩も話してましたよ。"あのドン臭い清掃ロボ"とか ―――
・・・・あ、いえ、先輩が言ったセリフそのままですこれ。」 と、ささら。

 そして彼女が続ける。 「アンケート結果は、概ね8割方は、受け入れ歓迎でした。1割が、どうでもいいという意見。そして
残りの1割が・・・・否定的な意見です。」

 1割・・・・とは言え、やはり、アレルギーを示す人もいるのか・・・・と、改めて知った貴明。
 先にイルファを見知っていた貴明は、彼女があまりにも人間臭いので、そういう拒否反応を感じるシーンがほとんど皆無
だったせいでもあったのだが。
 フランケンシュタイン・コンプレックスでもないだろうが、そういう潜在的な嫌悪感を、抱く人はいるのだ、と。
 
 ――――――

 生徒会室を引き払い、廊下を玄関へ向かって歩を進めていたら、小牧姉妹とばったり出くわした貴明達。

 「小牧さん。」
 「あ、河野くん、さっきはありがとう。」 ぺこりと頭を下げる愛佳。
 郁乃は黙って、貴明をじーっと睨むように見つめていたが、やがて、はーっ、と、息を吸い込むと、口を開く。

 「河野貴明。はっきり、言っとくわ。あたしは、あんたもメイドロボも、大っ嫌い。これ以上、あたしに関わってこないで。
―― 以上。」

 そう吐き捨てるように言うと、愛佳を置いてきぼりにして、さっさと車イスを進めて去っていく郁乃。
 「――― 郁乃っ!?」 飛び上がらんばかりに驚いて、キョロキョロと貴明と郁乃、交互に見回す愛佳。
 「ご、ごめんなさい河野くん!――― 郁乃!なんて事言うの!?あ〜っ、ちょっと待ってよぉ〜〜っっ!?」
 慌てて愛佳は郁乃を追いかけていく。

 ―― 貴明、環、このみ、ささらの4人は、唖然として、その場に、ただ立ち尽くす事しか出来なかった ―― 。

 (つづく)
134133:2008/07/17(木) 20:28:30 ID:L+0aQPp20
以上で今回分終了です。
135名無しさんだよもん:2008/07/17(木) 21:02:42 ID:cbBxlg/+0

暗い話になりそうだね
136名無しさんだよもん:2008/07/17(木) 23:20:56 ID:xvtrmF680
乙〜

オイラは暗い話おk、っていうかむしろ大歓迎なのでガンガンやっちゃってください
137名無しさんだよもん:2008/07/18(金) 00:08:14 ID:8flL+7Fn0
乙。良く書けてる感じの文章、この調子でがんがれ

環の余裕の無さに若干違和感があったかなぁ
あと、まーりゃんが他人をけしかけて悪口を言わせるとは思えな……

……というか、まーりゃんにけしかけられて悪口に乗る人間がいるとは思えない漏れ(爆
138134:2008/07/18(金) 07:09:08 ID:DH3DEDYq0
学校の半分以上を動員した聖まーりゃん帝国の例もありますしw
まーりゃんにはゲッベルス並の煽動家の才があります。
あの怪物の前ではタマ姉ですら余裕がなくなるのは仕方の無い事でw

オリキャラの東吾さんはちと出番が増えるかも
"パトレイバー"に登場したシャフトの黒崎さんみたいなの想像して下さい。
有能ですが結構野心家です。

コミケ準備とかいろいろあるので、次回投下は8月半ば以降とかになりそう。
どうか、他の方々の投下お願いします。
139名無しさんだよもん:2008/07/18(金) 08:43:34 ID:P/YRjOSg0
長いの書けないんで(最長7レス)聞いてみる。
一レスSSって需要ありますか。
140名無しさんだよもん:2008/07/18(金) 10:03:13 ID:PlLoecWjO
それなりに体裁が整っていれば1レスが100レスでもいいんじゃね?
需要のあるなしで言えば「面白いモノならなんでもいる」わけだからして。
141名無しさんだよもん:2008/07/18(金) 19:39:36 ID:JPurWj650
>>138
乙です

てっかコミケ参加するんですか?
だったらサークル名とか差し障りなかったら教えて頂けると…
142138:2008/07/18(金) 19:56:19 ID:WkhFlNR20
>>141
行けるようにお仕事に精出すのですw あくまで一般で。
以前落としたこみパネタのSSは前半ほぼ経験談が元だったりしますがw

>>135
>>136
そんな暗い話にはしない予定です
143名無しさんだよもん:2008/07/19(土) 00:02:24 ID:hNjl3LAe0
>139
思いつきで書いた2行SSを書庫さんに収録していただいた身としては、
http://www.geocities.jp/th2ss/808.html#title)歓迎と言わざるを得ないw
144名無しさんだよもん:2008/07/19(土) 06:18:50 ID:kvSoyF+w0
>>140わかった。>>143ほどの名作が書けるかどうかはわからないけどがんばってみる。

前スレ620の続きです

 ★AD準拠★ (のつもり) です。

「うわぁ、ワニみたいなお魚さん」
「ピラルクーね。世界最大の有鱗淡水魚」
「あれ、さっきのも世界最大の淡水魚って書いてなかったっけ?」
「メコンオオナマズは、ナマズだから鱗がないわ」
「……なんか釈然としないね。それ」
「そんなこといったらキリがないわよ。チョウザメは淡水魚じゃないのか、とか」
「あ、あのさっ! あのお魚さん、なんだか口元が郁乃に似てないかな?」
「似てないっ!」
「あはは。郁乃ちゃんだと、さっきの、シルバーアロワナだっけ? あれの方が」
「それも似てないっ!」

 がやがやがや。
 賑やかに私たち、具体的には私と姉と貴明が、歩いているのは水族館。
 前回の遊園地の翌月、といってそんなに日にちは過ぎてないけど、貴明の指定どおりに三人は此処を訪れていた。

「郁乃ちゃんほら、綺麗だよ」
「クラゲのホログラム? うむ。ふむ。うーむ」
「あっ、郁乃郁乃っ! こっちこっちっ、エイっ! エイのびらびら、びらびら凄いっ!」
「その言い方はなんか下品だからやめて、お姉ちゃん」
「うわ、こんな所にオオサンショウウオだって郁乃ちゃん」
「うあああ! それはタンマタンマ! こら! 勝手に車椅子を押すなぁ!」
「え、えーっと、なんだか口元が郁乃に似て……」
「その話題からも離れろおっ!」

 姉はいつも通りいろいろ私を構ってくるし、貴明もまあ、その曖昧な性格に似合ってなんとなく場を和ませるのが上手い奴だと思う。
 そんなわけで、入館からこっちそこそこ会話は弾んでいて、それはいいんだけど。

「まだ奥があるんだね。郁乃ちゃん、疲れてない?」
「ふたまたに分かれてるよ、どっちを先に回る? 郁乃?」

 二人とも、いちいち私を経由して会話するのはなんとかしてほしい。

「お姉ちゃん、どっちに行く?」
「えっ? み、右かなぁ」
「貴明は?」
「え? そりゃあ、俺も右で」
「あっそ。じゃあ私は左から回るわ」
 カラカラカラ。
 てくてくてく。てくてくてく。
「ついてくんなって言ってるでしょっ!」
「「言ってない言ってない」」
 ……。

 しかし、気持ちは判らないでもない。
 異性が苦手な姉は直接貴明と会話するのは厳しいだろうし、貴明もなまじ顔見知りな同級生より妹の私の方が話のネタにはし易かろう。
 その上、私は身障者。どうしても二人が私を挟んで両側から気を遣う構図になりがちにはなる。
 とはいえ、一階を回り終わって、二階も中盤に入ってる時分。今日は午後集合で昼食もない。そろそろなんとかしないと。

 しゃあない、ちょっと強引に行くか。
 カラカラカラ。
「あ、あれ? どこ行くの?」
「ちょいとお花を摘みにね」
 トイレは一階のエレベーター脇にあった筈。二階の同じ位置に水回りが見あたらないということは、このフロアには無い可能性が高い。
 目を離すのは心配だけど、少し二人きりにしてやろう。
 私は開いたドアからエレベーターに乗り込み、1F行きのボタンを。

 ぽち。
 押したのは貴明の指。姉は反応が遅れてドアの外。

「なんでついてくるのよっ!」
「え、いや、大変かなと思って。手伝いとか」
「いるかっ!」
 私が呆れた間に、エレベーターは二人を乗せて動き出して、しかし、その時。

 どうんっ!

「「うわっ!」」
 地鳴り音と共に、私が生まれてから体験した事がないような、強烈な衝撃が下から襲ってきた。
「じ、地震んぐぃっ!?」
 慌ててブレーキを掛けた私の車椅子が跳ね上がる。
「っつっっとおったっ!!」
 立っていた貴明が、私の視界から下に消える。ひっくり返ったんだ。

 がこん、がこんと、大きく揺れたエレベーターが外壁にぶち当たる。
 その音と振動が、此処が宙吊りされた箱の中である頼りなさを、否応なしに実感させる。
 次の瞬間、天井の灯りが消えた。

「うおっ!?」
「ま、真っ暗? 非常灯は?」
 消えた瞬間は、正直パニックに陥りかけたけど、幸いにも揺れの方は徐々に収まって、状況を気にする余裕ができる。
「点かないね。停電したのかな」
 真っ暗闇で、貴明の声が床方面から頭の上まで移動。立ち上がったみたい。見えないけど。
「だいたい、普通はどっちかの階まで行って止まるものだと思うけど、困ったもんね」
 おおよそ声のした方向に向かって返答する私。
 エレベーターは、そのまま降下途中で止まっているようだった。
 かなり強い地震だったので、ドアの開閉検知器が誤動作でもしたのだろう。
 非常灯も点かないというのは、壊れたか整備不良か。比較的最近の建築にしては、お粗末な事だ。

「まだ揺れてるかな?」
「少しね。だいたい落ち着いたんじゃないかしら」
「凄い地震だったね」
「あたしはちょっと覚えが無いわね、こういうのは」
 会話を交わすうちに、揺れは完全に収まった。

 そして、暗闇。 

「インターホン、動くかしら?」
「どこだろ。この辺かな」
 声だけが斜め前方に移動する。手探りで壁を触る音。カチ、カチとボタンを押す音。
「反応しないな。これかどうかも分かんないけど。うーん、エレベーターって、天井に出られるっけ?」
「やめた方がいいわ。外が無事なら、そのうち救出してくれるでしょ」
「火事とか起きてなければいいけど」
「やめてよ。縁起でもない……」
 間もなく、話のネタも尽きてきて沈黙。
 目が慣れてくる頃になっても何も見えない。ほぼ完全な漆黒の視界。

「……貴明?」
 こう真っ暗だと、そこに奴がいるのかどうかも不安になって、私はつい声を掛けた。
「うん?」
「……なんでもない」
「うん」
 また、真っ暗。本当に外は無事なんだろうか。空気が淀んできたような気さえ……
 さわっ。
「きゃあっ!? な、何すんのよこの痴漢っ!」
 突然肩を触られて飛び上がった私。
「ご、ごめん。真っ暗だからつい、郁乃ちゃんが居るのかどうか不安になってさ」
「な、何よそれ。子供みたいに」
「あはは、ごめん。押し手、掴ませてね」
 私の憎まれ口は自分の感情を棚に上げたもので、むしろ奴の笑い声の方が屈託がない。
 そのまま、数分。

 ……つ、つ、つ。
「え?」
 やがて黙ったまま、私は右手を車椅子の背中から押し手に沿わせて、そこにある貴明の手に重ねた。
 貴明は一時驚いた声をあげたが、そのまま静かに握り返してきた。

 闇の中で繋いだ手の温かさは、私に幾ばくかの安心を与えてくれた。

 がっちゃんっ。
 ジーッ、パパッ。
「うおっ!? 動いた?」
「……眩しい」
 私と貴明が閉じこめられていた時間は、実際には30分足らずだったようだ。
 突如、何事もなかったかのように照明が点くと、エレベーターは2Fに戻って止まった。

 チン。なんだか懐かしい音がして扉が開く。館内ざわざわ。
「結局インターホンに応答もなしって巫山戯てるわね」
「まあ、無事に出られたから良しとしようよ……あ、ごめん」
 貴明が私の手を離して車椅子を押したので、私は照明が点いてからも手を繋いでいた事に気がついた。 
「……」
「どうしたの?」
「なんでもない。トイレ行ってくる」
 照れ隠しが半分と、生理的欲求が半分。ともかく私は車椅子を振り向けて今降りたばかりのエレベーターに再び、

<停止中>
 え゛。
「う、うそっ!?」
「地震のせいかな。点検も必要だろうし」
 そ、そんなものは私が用を済ませてからにしろ〜っ!

「と、とにかく、行って、くるわ」
 私は階段の上まで進んでブレーキを掛けると、手摺りに掴まって立ち上がる。
「だ、大丈夫?」
「平気よ」
 と言ってはみたものの、私の足でこの階段は結構キツい。おまけにその、なんだ、下の方が大分切羽詰まってて力が……
「郁乃ちゃん、失礼」
 貴明が妙な台詞を口にした。

 直後、ふわり、と身体が浮いた。

「へっ?」
 膝が肩まで持ち上がる。連動して上体が仰向けに倒れる。視界が天井で埋められて。右側に貴明の顔。右半身に貴明の胸板の体温。膝の裏と背中に貴明の腕の支え。

 これっていわゆる、お姫様抱っこ?

「う……うああぁあぁあ!」
「あ、暴れないで階段だからっ。重……くはないけど危ないからっ」
 じたばたしかかった私は、ちらと目に入った階段下までの距離を見て動きを止める。
「な、何考えてんのよ」
「だって、辛そうだったから」
 気恥ずかしさで叩いた憎まれ口に、簡単で真摯な答えが返ってくる。
「……」
 私は何も言えなくなった。黙って腕を胸の前で縮めて、赤ん坊のように奴に抱かれる。
「よっ、と」
 大人しくなった私を抱えて、堅実に一歩一歩降りる貴明。
 重くないってのは社交辞令だろう。人を運ぶには非常に力の要る体勢。
 一段降りるごとに、奴の腕と胸の筋肉の動きを、これまでの見た目よりも逞しく感じる。
 私はちらっと下から貴明を盗み見たが、真剣な横顔に引き込まれそうになって視線を逸らした。

 とん。
 最後の一段。緊張で長く遠く感じた階段は、それでも当然に有限だった。
「も、もういいわよ。あとは自分で歩く」
「手摺りも何もないのに無理だよ。トイレまで運ぶって」
「女子トイレよスケベ」
「仕方ないだろ。声かけて入るから」
 冷静に考えて、たぶん貴明の方が正しい。
 だいぶん切羽詰まってきてもいる私は、そのまま奴に運ばれる。
 景色は勝手に流れて、1階のエレベーター脇から手洗所へと向かう通路へと……

「郁乃っ!?」
 そこに姉がいた。

「電車は随分遅れてるみたいだよぉ。バスの方が先にくると思うって、駅員さんが」
「……」
「見た目そうでもないけど、やっぱり混乱してるんだな」
「みんな無事で、何よりだったねっ」
「……」
「そういえば他のお客さんも、怪我したって話は聞かなかったな」
「お魚さんたちも、びっくりしたろうけど、水槽とか大丈夫そうだったし」
「……」

 15分後。
 私たちは、地震により臨時休館となった水族館を出て、駅前で移動手段を待っていた。

「でも、バックヤードでは大変なんだろうな。係員さん達は今から後片付けかあ」
「暫く休館するかもって言ってたよ」
「……」
 貴明と姉の口数は、不自然に多い。反面、私は沈思黙考。 

 あれから−あれ、というのは私が貴明に抱っこされてるのを姉に目撃されてから−、
姉はまず私が怪我をしたのかと大いに心配して、事情を知るとひとしきり安心した後、
私が用を足すのを待って、貴明が2階に戻って担いできた車椅子を、個室まで持ってきてくれた。

 問題はその後で、
「でも、びっくりしたなぁ河野くん。力持ちなんだね」
「いや、お恥ずかしい限りで」
「ううん。やっぱりああいう時は頼りになるよね、男の人って」
 何度目かの蒸し返し。
 貴明を褒めそやす姉の口調は、字面ほど正の感情だけではない。
 私を補助できなかった己への慚愧、自分ができない事をした貴明への羨望、そして、嫉妬。

(……やっぱり、ちゃんとしないとダメだ。)
 貴明と知り合ってから何度か読み取った淀んだ感情を今日も姉に見て、私はひとつの決断を下した。

「……貴明」
「「え?」」
 ずっと黙りこくっていた私がおもむろに貴明に声を掛けて、二人は驚いた様子だった。
「ちょっと、付き合ってくれない?」
「「え、えっ?」」
「バス、まだ来ないでしょ。来てもすぐには乗れなさそうだし」
 駅前の広場は、用事を切り上げ帰宅する人達で混んでいた。もっとも、そんなのは理由の一端に過ぎない。
「用事があるの? おつかいならあたしが」
「お姉ちゃんには、別なお願いがあるわ」
「あ、うん、何かな? 何かな?」
「ついてこないで。絶対」
「へ?」
 笑顔のまま固まった姉を置いて、私はハンドリムを回した。

 貴明は、戸惑った様子ながらも後ろをついてきた。
「どうしたの? 急に」
「話があるの。お姉ちゃんに聞かれたくない」

 私は、姉と貴明を引き合わせている理由を、はっきりと伝えるつもりでいた。
 本来この手の事は、周囲がお節介するものでもないだろうし、私の意図は様子見だったのだけど、これまで見たことのなかった姉の態度と、首尾一貫して曖昧な貴明を見ては黙ってはいられなかった。

「近くに、落ち着いて話ができそうな場所あるかしら」
「うーん、あっ、そうだ」
 私の問いに首を捻った貴明は、何かを思い出したように手を打つ。
「俺も郁乃ちゃんに用事があるんだった。ちょっといい?」
 くるりと背後に回ると、唐突に車椅子を押し始める。
「な、何よ急に」
「いいから。やってないかも知れないけど……」
 主導権を持って行かれて戸惑う私に構わず、貴明はひとつ脇道に入って坂を上る。

 間もなく、なんとなく既視感を覚えた光景の先に、どこか見覚えのある小さなお店が見えた。
154名無しさんだよもん:2008/07/20(日) 23:56:28 ID:pWkxXT7KO
支援

 “おいしいメープルメロンパン −コルノ−”

「……うそ」
「ホント。此処にお店を開いたって、知らなかった?」
 不覚。
 どこかで店舗を設けたらしいとはチャットでも言われたりしたのだが、いつぞやの一件で悔しい思いをした私は、むしろ自分から情報を遮断してしまっていたのだった。

「地震、だいじょうぶだったかな。ちょっとそこで待っててね」
「あ、こら」
 私がぽかんとしている隙に、迷わず店内に向かう貴明。
 店の斜め前は小さな公園になっていて、奴がそこでといったのは其処のベンチの事だろう。
 一緒に入るのも気後れして、私はベンチの脇に車椅子を止める。
 初夏の空は、いつのまにか青から赤に変わろうかという気配。ぼーっと見上げると、落ちていきそうになる。
(……何やってんだろ、私。)
 目的を達してさっさと切り上げればいいのに、どうも貴明と一緒に居ると余計なことばかり起こる。
 マイペースがウリのつもりなのに、あの曖昧な笑顔に巻き込まれるのだ。もう少し気を付けないと、
「郁乃ちゃん! お待たせっ!」
「うわぁ!」
 なんて思ってる暇で気構えればいいのに、思考に嵌っていた私はまたも不意をつかれた。
「ちょうど地震後の試し焼きした分があがった所でさ、待たずに買えたよ」
 両手で抱えた紙袋を、当然のように私に差し出す貴明。まあ、そうなるわよね。
「あ、お金」
「いらないって。この間のお詫び。俺が、郁乃ちゃんに食べて欲しいんだし」
 う。
 だから、そういう素朴な顔で誤解されそうな台詞を吐くんじゃないわよ。
 いらぬ意識に赤面した私は、照れ隠しに受け取った紙袋を覗き込む。
 ふわり、と甘い香りが鼻腔をくすぐる。いつぞやとは比べものにならない芳醇さ。
「話の前に、冷めないうちに食べてよ。せっかくだから」
 これも余計な事かも知れない。
 そう思いつつも焼きたてメロンパンの誘惑には勝てず、私はまだ柔らかい半球を取り出して頬張った。
156名無しさんだよもん:2008/07/20(日) 23:57:49 ID:k4tqjvS/0
支援

 しゃくっ。
 舌の上に溶けるまろやかさな甘さと、焼きたての生地だけが持つ柔軟かつ弾力的な食感。
 一口飲み込んだ後に、喉から広がるメープルシロップとメロンの香り。
 手の中から立ちのぼる優しい匂いが次を誘って、ついまた一口。

「……美味しい」
 状況や過程がどうあれ、これを美味しいと言わなかったら嘘だろう。
「よかった」
 けど、貴明は笑う。その表情が、あまりにも嬉しそうで。
「ずっと気にしてたんだ。この辺に店を出したって知った時から、そのうち来てもらおうと思っててさ」
 さっきは忘れかけてたけどね、と付け加える。その無邪気な口調と笑顔に。

「……ありがと」
 つい、私は素直になりすぎて、簡単すぎる台詞を口にした。失敗。

「……」
 貴明が、黙って私を見た。 
「……」
 何よ、そう言い掛けて、私はいったん口をつぐむ。これも、失敗。
「「……」」
 二人揃って沈黙。
 妙な空気が、場に流れている。
 どうしよう。いや、落ち着きなさい郁乃。こういうときは、溜息ひとつ。
「……それで、用件だけど」
「郁乃ちゃんっ!」
 体勢を立て直して本題を切りだそうとした瞬間、貴明の方からも思い切って出したような声が被る。
「な、なに?」
 勢いの差で、つい譲ってしまう私。それが、最後の失敗。
 そして、貴明は、再び逡巡して、妙に深く息を吸ってから、こう言った。

「俺、その、郁乃ちゃんのこと、好き、だ、と、思う」

 なんだ、これは。

「最初に会った時は、怒られたし、男の子だと思ったりしたけど」
 こいつは、何を言ってるんだ。
「何度も会ってるうちに、その、何故か気になって」
 私は、何を聞いてるんだ。
「俺、女の子の知り合いって多いんだけど、他の誰とも違う感じで、よく分からなかったんだけど」
 私は、何をしてきたんだ。
「一緒に喋ったり、遊びに行ったりして、終わると、また話たいなって思うようになって」
 曖昧だったのは、誰だ。
「会って一ヶ月足らずで、何が分かるって言われそうだけど」
 迂闊だったのは、誰だ。
「でも、今の気持ちは、嘘じゃないと思うから」

「うん、俺、やっぱり、郁乃ちゃんが好きだ」
 何も分かっていなかったのは、なんのことはない、姉でも貴明でもなく、私だったんだ。

 風が通り抜けたのに、音が聞こえない。
 空が茜に染まるのに、光の色を感じない。
 街が夕暮れに向かうなか、私の周囲だけ、時間が止まってしまったよう。

 それでも、私は答えなければいけない。
「わ、私は……」
 私の答えは決まってる。最初から、私の目的は決まっていたのだから。
「私は……」
 アンタなんか嫌い、そう言ってしまえばいい。貴明は、それも覚悟してる筈。私の罪悪感は、私の自業自得。
「……」
 ああもう、なんだ、こんな時に、私は嘘がつけなかった。私の答えは決まってる。だけど、私は嘘がつけなかった。

「私には、好きな人がいるからっ!」
 それで私は、そう叫んで、逃げるように車椅子を走らせた。
159名無しさんだよもん:2008/07/21(月) 00:05:24 ID:niVAjwBx0
関係ないけど、メロンパンにメロンを使うと
あのツンデレさんが怒るかな?

 最初に会った時、理不尽に怒った。
 何度か話をして、悪い奴じゃないと思った。一緒の時間を過ごすと、いつも調子が狂った。
 それでも何故だか、また会って話がしたいと、そう思うようになった。

 私は、あまり男の子の知り合いは多くない。
 その感情がなんなのか、自分でもよく分からなかった。
「……バカ過ぎるわ」
 坂道をノーブレーキで下りながら、自分に呆れる。
 流れていく風景が滲む。舗装の凹凸から伝わる振動がぼんやり身体に吸収されて、反動で頬から何かが流れた。

 もっと早く、気付くべきだった。
 貴明の言動にその可能性を見ていれば、私の取るべき対処は幾らでもあった。
 自分の言動を冷静に観察していれば、途中で引き返す道は幾らでもあった。
 曖昧さと鈍感さの代償を、私は自分自身と、罪のない貴明に負わせる事になってしまった。

「まあ、結論は一緒かぁ」
 私はそう呟いて、無理矢理自分を納得させる。
 そう、私はそもそも、自分と貴明の恋愛関係を否定する為に奴を呼び出したのだ。
 貴明の感情が私に向いていたというのは予定外だったが、その点での結末は変わらない。

“私には、好きな人がいるから。”
 貴明に言った言葉は嘘じゃない。私には、好きな人がいる。
 幼い時から、私を護って、私に遠慮して、私の為に犠牲になってくれた人。
 傷つけもしたし、意地悪もしたけど、それでも優しくあり続けた、私のお姉ちゃん。

 お姉ちゃんには、明るく居て欲しい。お姉ちゃんには、お人好しで居て欲しい。
 勝手な言い草だけど、私はお姉ちゃんには、暗い感情を持って欲しくない。
 私は、お姉ちゃんが好き。

 だから、さよなら。
 さよなら、河野貴明。私が初めて、好きになった男の子。
161名無しさんだよもん:2008/07/21(月) 00:10:17 ID:PYRPpvf/0
以上です。支援ありがとうございました。
次回最終話「Triangle Heart」
162名無しさんだよもん:2008/07/21(月) 00:16:28 ID:mtpcWa/o0
>>161
GJ
三角関係はいいですね
最終話の副題にもうドキドキですよ
163名無しさんだよもん:2008/07/21(月) 00:26:41 ID:ZaBs8tMg0
>>161
乙です。最終回もwktkして待ってます
164名無しさんだよもん:2008/07/23(水) 14:48:16 ID:rcHkaMid0
というか最終話の副題が某魔砲少女の原作エロゲに・・・
165TONEET:2008/07/23(水) 19:56:05 ID:LVeJi9jE0
あちい・・・なぁ、プールでも行かないか。
あーいいかもな。でもプールって言うといい予感がしないんだ。
そうか・・・そうだよな・・・そうだよな・・・そう・・・くそおおおおおぉ何でだよおかしいだろ何がいい予感がしないだ。わけわかんねぇよこの恋愛ブルジョアが!
166138:2008/07/25(金) 20:13:44 ID:gEpS4tZr0
 
 しばらくお休みすると言っときながら、またまた投下します。
 よく考えたら、来月後半の方が、忙しかったりするので。
 なかなか先に進まないので、ちょいと巻き入れたせいか、展開が急すぎたりしますが。
 それでは、宜しくお願いします。
 
 白が基調のやや無味乾燥然としたHM開発室。その一角の卓上に置かれたアンケート用紙の束を、開発室での単純事務
に従事しているメイドロボが、素早くめくって回答内容を目に収めながら、パチパチとPCのキーボードを叩き、入力している。
 彼女はHM-12“フィール”型で、イヤーバイザーの形が、現行主力機リオンに比べやや大きく、角のように上方に大きく突出
しているのが目立ったところだ。
 その傍らの席には、HM開発室主任、東吾邦昭が足を組んで座っており、書類を手にした彼の、丸眼鏡の奥に覗く切れ長
の鋭い視線が、作業中のフィールの挙動を冷ややかに眺めている。
 “単純事務に使うんなら、メイドロボはやや旧いタイプの方が使いやすい。余計な事は一切しないからな。PCのOSも、新しく
なる程、デコレーティブになって扱い難いのと同じだ。”
 そんな事を考えながら、やはりそのフィールがついできた、既に冷えているコーヒーを自分の卓から取って、すする。 

 音もなく開いた扉をくぐり室内に足を踏み入れた、開発室の主、長瀬源五郎は、東吾と、その傍らの専属の事務処理用の
メイドロボが座する席の卓上の、アンケート用紙の束を目に収めると、口を開いた。
 「東吾主任、アンケートかね、あの学校で実施した?」
 そうですよ、と、東吾。
 HM-12の足元には、アンケートを収めて送られて来たダンボール箱が転がっていて、貼られた宅配伝票の依頼主欄には、
“向坂 環”の文字が見える。
 
 「今度市場投入するHMはDIA搭載モデルだからね。今まで以上に、オーナーのプライベートに関わる可能性大だ。逆に、
違和感を感じる向きも多いだろう。極限なまでに人間臭いメイドロボがどのように受け入れられるかは、ミルファの通う学校
での周囲の反応を見るのが一番手っ取り早いじゃないか。はからずもミルファの正体が知れてしまった事で、当初の予定
よりも早く実施出来たわけだがね。で、どんな按配だい、東吾君?」
 HM-12が入力作業中のPCのモニタ画面を覗き込みながら、長瀬が訊ねる。

 東吾は既に入力を終えて積み重ねられていたアンケート用紙を数枚掴み、パンパンと叩いて言った。
 「おおむね上々ですよ、室長、いや上席主任殿。まぁそもそも、ミルファがロボットだと気付かずに過してる生徒も多いわけ
ですから、どの程度までDIA搭載機への印象が反映されてるかは正直わかりませんが。ロボットへの固定観念的な見方も、
回答には多々反映されてると考えられますね。」

 「ふーむ。実のところ、このアンケートもあまり参考にはならんという事か?」
 アンケートの一枚を手にし、考え込む長瀬。
 
 「―― 事前の市場意識調査も大事ですが、まずは、世に出してインパクトを与えてしまう事が肝心なのでは?」と、東吾。
 「ひとたび市場に投入されてしまえば、友人として恋人として愛すべき隣人として、もう彼女達を遠ざける事なんか、まず
出来っこないでしょうよ。とにかく売って、オーナーにならせてみて、既成事実を積み上げる事です。」

 まあ、そうだろうな、と頷く長瀬。そうなれば、ホールディングス本社の頑迷な役員共への意趣返しともなろうものだ―――
 あとは肝心の、市場投入型DIAの試験結果次第だが ―――

 「東吾君、リナの状態はどうだ?姫百合君から何か連絡は?」
 「リナ?―― ああ、『イブ』の事ですな。HM-16タイプEの。」
 ―― それが、市場投入型DIAの、開発コードネームだった。
 「まだ特には。若干のバグが懸念されるんですが。むしろ早く症状が出てくれる方が助かる。なんにせよ、制限方DIAの方
が、例の米軍のアンドロイド用に作った改変型三原則よりは、遥かに楽勝でしたよ。」

 その最後の一言を聞くと、長瀬の眉がピクリと吊り上り、急に険しい表情になる。
 「東吾君、頼むからその話題はやめてくれ。あれは黒歴史だ。全く、篁グループなんぞに対抗して余計な事を手伝わされた
もんだよ。」

 おっと、これは失礼を、と、東吾。
そして、意味深に言う ――
 「そうですね。あれは忘れましょう。不愉快な事、都合の悪い事は、忘れてしまうのが一番ですな。忘れて・・・・・ 」
170名無しさんだよもん:2008/07/25(金) 20:21:51 ID:t495vVA90
支援
 
―――――

 あくる朝、貴明は目覚めると、部屋の中に漂う寒気に思わず身震いした。
 もう冬に差し掛かろうという時期に、迂闊にも貴明はベッドの中で素っ裸。
 隣ではミルファがやはり全裸姿で寝ていたが、ほどなく目を覚ますと、ベッドから抜け出せずブルブル震えている貴明に
気付いた。
 「あれ・・・・ダーリン、寒いの?あっためてあげよっか〜☆」
 と言って、そのむき出しの乳房を貴明の背にムニュっと押し付ける。
 "あの、ミルファさん、朝から、ちょっと刺激強すぎるんですが。確かにあったまりますけど・・・・"とは、貴明の心中の声。

 ドンドン、と、入口の扉を叩く音がする。
 「ご主人様!らめらめらめっ子ご主人様!おぽんちミルミル!朝なのれす!遅刻するれすよ!」
 働き者のシルファが、キリギリスの二人を起こしにやって来た。
 んもう、うっさいなぁ、と愚痴るミルファ。「ダーリン、ほっとこう。勉強してて遅かったんだから。もうちょっと寝てよ☆」
 しびれを切らして扉を開けようとするシルファ。
 ―― しかし、施錠されている。ミルファがかけたものらしかったが。
 ムッとして、ノブを握る手に"フンッ"と力を込める ――― バキンッ!と、鈍い音を発して、ドアノブが外れてしまった。
 "あっ! ―― し、 しまったのれす。れも、こんな姑息な事をするミルミルが悪いのれすよ ―― "
 部屋の中に入り、貴明とミルファの寝るベッドを覗い見ると、また寝入ってしまったのか、布団で隠れて顔は見えないものの、
スースーと寝息が聞こえる。
 「まったく、しょうがないれすね・・・・」
 と、部屋の端まで歩いていくシルファ。
 そして、スーッと息を吸ってから、腰を低く落とし、掛け声を上げて、一気に跳躍した。
 「ちぇすとぉ――っ!!」
 シルファの必殺ニードロップが、貴明達のベッドに向かって宙を切り裂き飛びかかっていく。
 
 それとほぼ同時、ミルファはやおら、貴明の体を抱えてベッドから瞬時に跳ね起き、一方の手で掴んだ布団を、飛び掛って
くるシルファに向かってぶわっと投げ飛ばした。
 
 「ぴぎゃっ!?」
 突如視界を遮った布団に包まれた状態で、、シルファの体は、貴明のベッドにズボッ!!と音を立てて突き刺さった。
 勢い余って一回転し、ドシンと壁にもぶつかる。バラバラと棚からモノが床にこぼれ落ちた。
 その威力を目の当たりにして、"ひぃぃぃぃ・・・っ"と、寒気とは関係なく、貴明は震え上がる。
 「ちっ、逃げられたれすか・・・・」と、むっくりと立ち上がるシルファ。
 「このひっきーっ!!あんた、手加減ってもんを知らないのっ!ダーリン殺す気!?」と、腰に手を当ててシルファを睨みつける
ミルファ。
 「もーまんたいれす。ターゲットはミルミルらけれすから。」 シルファも負けじと睨み返す。
 「らめっ子ご主人様に怠け者ミルミル。最悪の組み合わせれす。手遅れになる前に、印ろう渡すつもりらったのに」
 そして、ゆらりと、ミルファ達に歩み寄ってくる。
 「―― もう許せないっ!ひっきーっ!今日こそ決着つけてやるんだからっ!!」
 ミルファは、いつの間に覚えたか、カポエイラの構えをとった ――― すっぽんぽんの姿で。
 「あ、あの・・・・ミルファちゃん、とりあえず、服着ようよ・・・・恥ずかしいし」 と言って、何とか止めようとする貴明であった
が・・・・
 「問題ないよ。ダーリン以外に、この世に目撃者は残さないつもりだから。」などと、ミルファは物騒な事を言っている。
 ぶるぶると身震いを強いられながら、貴明は、仲裁しようとうまい文句はないものかと頭の中をまさぐった。
 
 とりあえず、時間稼ぎで ―――
 「い、イルファさん、呼んじゃおうかなっ!」
 貴明は携帯電話を手に取った。
 しかし、ミルファとシルファは動じる気配が無い。
 「大丈夫、こっち来る前に決着付けるから。」
 「卑怯者れ色ぼけのイルイルなんて、全然怖くないのれす。」

 「―― そうですか・・・・なら、仕方ありませんね・・・・」
 ギョッとする3人。声に振り返ると、何と、イルファが、貴明のベッドの下から、ズルズルと這い出してきた。
 シルファのニードロップがヒットしたらしく、尻を押さえていたが。
 「ひぃぃっ!お、お姉ちゃんっ!?」
 「ぴぃっ!イ、イルイルッ!?」
 「ミルファちゃん、シルファちゃん、そこに正座しなさい・・・・」
174名無しさんだよもん:2008/07/25(金) 20:27:58 ID:t495vVA90
支援
 

 ―――――

起床時の騒動のせいで、結局、何も腹に収めずに登校していた貴明。
 グルルル・・・と、空腹が鳴る。ぐったりして机に突っ伏す。
 ミルファは、イルファのお仕置き(?)、のせいで、まだ頭がくらくらしている模様。うつろな目で天井を仰いでいた。 

 「河野くん・・・・大丈夫?」
 愛佳が貴明の顔を覗き込む。ああ、平気、平気だからと、貴明。
 クラスの他の生徒は、河野旦那と河野夫人、夜のスポーツに興じすぎて精根尽き果てたか、と、ヒソヒソ噂する。
 「ごめんね、河野くん。郁乃が、酷いこと言って・・・・」
 ハッとして貴明は頭を上げた。見ると、愛佳は、深々と頭を下げている。
 いや、その、そんな、やめてよ、いいんちょ、と、慌てて身をそらした。

 一方、雄二は、ひどくご機嫌な様子で、鼻歌なども出ている。
 ここのところ、雄二は必ず姫百合家に立ち寄ってリナの作った弁当を受け取ってから登校するので、貴明と顔を合わす
のは、学校に来てからになっていた。
 愛佳との気まずい雰囲気から逃れる意味もあって、貴明は雄二に声を掛ける。
 「おい、雄二。随分陽気じゃないか。」
 ―― おおよっ!よくぞ聞いてくれたっ!と、雄二。
 「今度の日曜な、いよいよ、リナちゃんとデートだぜっ!!遂に、遂に俺にも遅い春がっ!」 そう言って、Vサイン。
 実際の季節は既に冬であったが。
 「そうか、よかったじゃないか、雄二。」 友人の喜ぶ様子を見て、貴明もそれなりに満足した。
 
 担任が教室に入って来た。
 起立、礼、着席―― と、条件反射的に動いてから、ようやくイルファの点穴術(?)の解けてきたミルファは、あっいけない、
教科書出さないと・・・・と、鞄をまさぐった。

 えーと、ノート、ノートも ―― と、手に取って、開いたものは・・・・・
 「あれ・・・・何だろ、これ・・・・日記?」
 前の晩の、イルファの忠告に従っての貴明との勉強会の後、放置してあった教科書類を、慌てて鞄に収めた際に、騒動で
床に散乱したモノなども、一緒に収めてしまったらしかった。

 ピラとめくってみる ―――
 ――― あれ・・・・これって、あたしの字?
 こんなの書いた覚えないけど・・・・もしかして・・・・・
 ・・・・日記帳の、表紙を見る。やはり、見慣れた筆跡で――― 「・・・・あ・・・・っ!」
―― すると、ミルファの脳裏を、捉えどころの無い、モヤモヤしたものがよぎって来た。

 「――― おい、河野妻!どうした。54ページだ。早く読め。」
 とっくに、1限目の授業は始まっている。催促する教師の声。
 しかし、何も答えず、ボーっとしているミルファ。視線が宙を泳いで、やがて両手で頭を抱える。
 「・・・・ミルファちゃん?」貴明も、ミルファの異変に気付いて、声を掛けた。
 そして、思い起こす。あ、これって、この間の、屋上での様子と、一緒じゃ・・・・!?
 
 「――― ッ!!」
 何かに気付いたか、突如、ガタンと、立ち上がったミルファ。 
 「先生っ!あたし、気分が悪いんですっ!帰りますっ!!」
 席を離れ、ずんずんと出入口に向かう。
 ガラッと扉を開けると、脱兎のごとく、教室を抜け出し廊下を走り去って行ってしまった。 

 貴明も、ガタンと席を立った。
 「ミルファちゃんっ!?」
 そして、すぐその後を追って教室を抜け出してゆく。

 「おいっ!ミルファちゃん!?貴明っ!?」
 「ミルファさん!?河野くん!?」
 ほぼ同時に、雄二と愛佳が声を掛けたが、貴明は振り向きもせず廊下を走り去って行った。

 急に、ざわざわと喧騒に包まれる教室。
 国語教師がわめく。
 「あーうるさいっ!お前らっ静かにしろっ!―― 全く、何なんだあの"夫婦"はっ!?」
178名無しさんだよもん:2008/07/25(金) 20:33:41 ID:t495vVA90
支援
 
 すきっ腹の状態で、足の速いミルファを追うのは、容易なことではなかった。
 河野家の方に向かったのは間違いなさそうだったので、ヘトヘトになった貴明は、途中から、とぼとぼと徒歩になる。
 
 自宅の玄関を跨ぐと ――― 果たして、ミルファの靴が脱ぎ捨てられている。
 リビングに入ると、当惑した表情の、シルファが出迎えた。
 「・・・・ご主人様、ミルミルと、何か、あったのれすか ―― ? 」
 「えっ?・・・・う、うん、なんか、気分が、悪いとか・・・・」
 「ミルミル・・・・・ここをれて行くと、言ってるれすよ?」
 ――― えっ?

 ミルファは、貴明の部屋にいた。
 見ると、リナが起動された翌日に持ち込んでいた、身廻り品などを、バッグに押し込んでいる。
 何やら仕草が乱暴で、せわしない ―――
その背中に、話しかける貴明。
 「ミ、ミルファちゃん―― 何か、気に障る事でも、あったの―― ?」
 ピクンと、ミルファの背中が動くのが見えた。
 「あの・・・・」
 背を向けたまま、ミルファが言った。「・・・・うっさいわね。あたしに話しかけないで。」
 
 「えっ?その、なんで・・・・訳わかんないよ、俺。なんかしたの?」
 すっかり混乱してしまった貴明。ひたすらおろおろするばかりである。
 荷造りする手を止め、ミルファの背中が、話し出した。
 「あたし、おぽんちだから、なかなか納得出来なかったけど、ようやく、すっかり、理解出来たよ ―― あたしと、"はるみ"は、
一つだって ――― 」
 ぶるぶると、肩が震え出しているのがわかる。
 「ダーリンの、正体も、思い出しちゃった ――― ひどい事したよね、"はるみ"に・・・・ううん、あたしに ―――っ!」
 そして、クルリとミルファが振り向いた。とても、恐い顔で ―――
 やおら、手元に落ちていた帳面を掴むと、それを、貴明に向かってびゅんっ!と、投げつけた。
 あまりの速さに、受け止めることが出来ず、バチンッ!と、貴明の顔にヒットする。
 「痛っ!!」
 それは、ボトリと貴明の足元に落下した。
 頬を押さえながらそれを拾い上げ、表紙を見て、貴明は、絶句してしまう。
 表紙には、『河野 はるみ』の、名前が ―――
 “ ――― こっ、これは・・・・・こ、交換、日記―――っ!!?”
 ・・・・・スーッと、貴明の顔から、血の気が引いていった。

 ―― もしかして、あ、あの顛末を、思い出しちゃったの ――!?
 
 それは、開けてはならない、パンドラの箱。
 どうせなら、思い出させずに、封印して置きたかった、自分の黒歴史 ――― 。
 
 しかも、よりによって、貴明に一番都合の悪い部分だけが、ミルファの記憶に残っていたようだった。
 ――― 雄二の、代筆 。
 これがもし、"はるみ"としての覚醒だとしたら、およそ考えられる、最悪の形、だったりする・・・・。

 「最低だよね。女の子にあんな事する奴がいるなんて、信じらんない。しかも、よりによって、それが ―― ダーリンって、
呼んでた人だったなんて。」
 “あっ、あっ、あ・・・・・” 口をパクパクさせて、何か、弁解を発しようとするが、言葉が出ない・・・・
 「あたし、さんちゃんとこ帰るから。もう二度と、こっち来ない ―― 来るもんかっ!」
 そう吐き捨てて、バッグを持ち、スックと立ち上がる、ミルファ。
 部屋の入口の前で立ちすくむ貴明の前を、ドスドスと足音を言わせて、素通りしていく。
 あ ―― と、貴明は手を差し出して、その背中に向かって話し掛けようとしたが、やはり、言葉が出なかった。

 階段の前で、ピタと、立ち止るミルファ。
 「ご主人様登録も、解約して貰うから ―― もうあんたと、関わり持ちたくないの。バイバイ、ダーリン・・・・ううん、“バカアキ”。」
 そう言ってから、トントンと、階段を降りて行った。
 後姿を追っていく貴明。 
 「――― ミルファッ!・・・・・ちゃん・・・・・」 階段を見下ろすが、もう彼女の姿は、見えない。

 「あっ・・・・!ミルミルッ!? ―― 待つのれす!」
 呼びかけるシルファも無視するように無言で通り過ぎ、玄関のドアを乱暴に開け、バタンッ!と、大きな音を立てて閉めていった。
 ――― その直後、河野家を一瞬、静寂が支配する・・・・・。

 胸に手を組んで立ちすくんでいたシルファだったが、やがて、貴明が階段を降りて、リビングに姿を現したのに気付いた。
 うつろな表情・・・・・目が、死んでいる。
 「・・・・ご、ご主人様・・・・・。」
 ふらふらとした足取りで、ソファまで辿り着くと、ドサッと、腰を下ろした貴明。
 深々と背もたれに身を預け、放心して天井を仰ぎ見ながら、“あ〜〜・・・・・”と、声を上げる。

 ――― ハハハ、どうだ、嬉しいか ―― ?
 お前、望んでたじゃないか、例え僅かに残ってた記憶でも、思い出してくれるのを・・・・。
 思い出してくれたぞ、ご希望通りにな。
 ―― 但し、お前に、都合のいい記憶ではなかったようだけどなぁ。

 ――― お前、バカだろ。キレイな思い出ばかりだと、思ってたのか ―― ?
 よく考えてみろよ。お前、はるみちゃんに、何をして来た ―― ?
 彼女にとっては、辛いことばかりの、連続だったんじゃ、ないのか ―― ?

 当然の報いだろう、ええっ!?河野貴明よぉ ――― 。

 「・・・・そうだよな、そうなんだよな・・・・・ハハ、俺、何勘違いしてたんだろう・・・・・ホント、バカだよなぁ・・・・ハハハ・・・・」
  ―― 貴明の頬を、ボロボロと、涙の粒が、零れ落ちた。

 悲しげな表情で、シルファが、スっとソファに腰を降ろし、貴明の傍につく。
 「ご主人様・・・・・気を、しっかり持つのれす・・・・・シルファが、ついてるれすよ・・・・・」
 そう言って、シルファは、貴明の腕を取り、その身を寄せた ―― 。


 (つづく)
183182:2008/07/25(金) 20:44:17 ID:gVUSSEJS0
 
 ヘタレはよりヘタレらしく、ビッチはビッチらしく、って事で(ォ
 これで、ひとまずバカアキにはご退場願って、雄二とリナのラブラブデート編に突入ですねw
 リナの ―― “イブ”の仕様も、おいおいと明らかになっていく予定です。

 ご支援ありがとうございました。
 それでは。

184名無しさんだよもん:2008/07/25(金) 23:42:47 ID:iKKcOjCJ0
シルファ「計画ろおりなのれす」
185名無しさんだよもん:2008/07/26(土) 07:25:41 ID:Gn4kakdY0
傷口に塩を塗られた気分
正直、これはないだろと思った
186名無しさんだよもん:2008/07/26(土) 11:32:29 ID:e5+kb9iH0
なにこれ、最悪
187名無しさんだよもん:2008/07/26(土) 12:08:22 ID:dxKHYvZD0
ゴングが鳴った気がした
また叩き擁護合戦のはじまりか
188名無しさんだよもん:2008/07/26(土) 13:24:50 ID:8cFOqSy90
まあ、肌に合わないと感じてた人はこれで完全に見限ったでしょ。
以降はタイトルをNG指定しとけば良いし。
189名無しさんだよもん:2008/07/26(土) 17:14:39 ID:UUvGBDPy0
まぁ待て
今後うまく纏めるかもしれないじゃないか
終わるまで叩くのは止めようや
190名無しさんだよもん:2008/07/26(土) 17:39:45 ID:8cFOqSy90
>>189
もうそんな段階じゃないよ。

> ヘタレはよりヘタレらしく、ビッチはビッチらしく、って事で(ォ
> これで、ひとまずバカアキにはご退場願って、雄二とリナのラブラブデート編に突入ですねw
> リナの ―― “イブ”の仕様も、おいおいと明らかになっていく予定です。

これって要するに「ヘイトSS」で「オリキャラ×脇キャラ(という名の半オリキャラ)」だって事だろ。
こんな事自分から言い出す奴を擁護しても、百害あって一理無しだぞ。
191名無しさんだよもん:2008/07/26(土) 18:53:31 ID:bwBylY9m0
SSの内容を批判するのは自由。SSの内容を擁護するのも自由

自分が嫌だからって鳩2SSの投下をやめろと言う権利は誰にもないし、
投下されたSSを「イヤなら読むな」なんて言う権利も誰にもない

が、作者を叩くのも作者を擁護するのもお門違い。>>189も、>>190もね
192名無しさんだよもん:2008/07/26(土) 19:32:58 ID:cc9pyv5Q0
”ビッチ”とか、酷すぎる。
そんなこと書かれたら腹だって立つわな。
そこで怒ったら叩きとか言われるのって、おかしいだろ。

だいたいそんなこと書く奴、スレに来て欲しくない。
投稿者でなくったってイヤだよ。
SSがどうとか、投稿者だとかは関係ない。
193名無しさんだよもん:2008/07/26(土) 19:56:45 ID:HPs7Tcyo0
もーやめようよー
この人がちょっとズレてるのなんて、投下始めた頃から明らかだっただろー
そういうの引っくるめて「書き手がいればなんでもいい」と言わんばかりに守ってきたんだからさ
手のひら返すの止めようぜ
野良猫に餌やったら放置プレイじゃなくて最後まで面倒見ろよw
>>145からのSSの続きです

 ★AD準拠★ (のつもり) です。
 
 あの後は、どんな風に帰ったのかよく覚えていない。
 たぶん姉は心配していて、たぶん貴明は無理に笑っていて、たぶん私は上の空だったんだろう。
 家に戻ってからも私は部屋に篭もって、夕飯以外は誰とも顔を合わせなかった。

 そんな週末が終わって、学校。

「どうしたの? 元気ないよ、今日」
「まあね」
 クラスメートの気遣いを曖昧に振って帰路に就く。
 姉や貴明とは、ちょっと顔を合わせたくない。
 と、思っていたら。
「げ。」
 前方の廊下に、人影発見。
「貴明、と、お姉ちゃん?」
 しかも、二人一緒。
(……普通の用事じゃ、ないわよね、たぶん。)
 これだけ前提条件があって、自分の話と無関係に学校の仕事でもするなんて流石に思えない。私は後を尾けた。

「ごめんね、河野くん。時間もらっちゃって」
「いや、大丈夫だけど」
 やがて、二人は廊下から書庫に繋がるドアに入っていった。
 私はいったん図書館に向かい、図書委員の目を盗んでカウンター側のドアから書庫に入り込む。

 こっそり。
 書棚の陰から、書庫の様子を覗く私。
 二人の立ち位置は、大きな机を挟んであっちとこっち。貴明が所在なさげに書棚の本を弄ってみたりすれば、姉は意味もなく椅子を回したり。
「それで、話って?」
「うん……、その……郁乃のことなんだけど」
 姉の声は、かなり上擦った。

「河野くんってさ、郁乃のこと、好きなんだよね?」

 初手から核心。私もビビッたけど、貴明も目を丸くした。
「い、いきなりだなぁ」
 天井を仰いで困った顔をする貴明だが、姉の言葉を否定はしない。

「ごめんね、急にこんなこと」
 申し訳なさそうな姉の声。
「でも、大事なことだから」
「……そうだね。大事なことだね」
 言い訳がましい付け足しに、貴明は真面目な返答。
「うん。俺、郁乃ちゃんの事、好きだよ」

 ぶわっと頬が赤くなるのを自覚する私。
 なんっつー直球な物言いを、しかも当人以外に喋るんだこいつは。
「振られたけど」
 だあああそれも言うか。
「え? そうなの?」
 驚いた姉の声に、ちょっとだけ嬉しそうな響きを私は聞き逃さない。
「実は昨日、ね」
「そ、そうなんだ。そういえば、あれから様子がおかしかった。うん、やっぱり」
 ただ、その響きはすぐに消え、私を心配するいつものお姉ちゃんの台詞。
「ごめん、迷惑かけてるね、俺」
「ううん。でも、ちょっと驚いたかも。振られたって」
「他に好きな人がいるってさ」
「え?」
 プライバシーという概念が無いのかこいつは。洗いざらいな貴明の台詞に、しかし姉は首を傾げた。
「それは、ないと思うな」
 ぽつんと呟いて、今度は貴明の方が怪訝な表情。
 それを見て、姉はちょっと寂しげに笑って、うーん、どうしようかな、と小さく口を動かして。

「郁乃は、たぶん、河野くんの事が好きだよ」
 寂しげな笑い顔のままそう言った。
 どく、どく、どく。さっきから、私の鼓動は波打っている。
 どだい、盗み聞きというのは心臓に悪いもの。話題が恋愛なら尚のこと、自分関連ときては更に尚更。
「そ、そんなことは」
「そうだよ、きっと、だって、他の子とは態度違うもの、郁乃、河野くんには」
「嫌われてるかなとは思ったけど」
「それはないよぉ」
 苦笑いする姉に、私は居心地が悪い。自分が姉を分かっているつもりでいて、姉に自分を悟られたような発言をされるとむずむずする。
「だったら嬉しいけど、でも、現実には振られちゃったから」
「うーん……」
 腕組み。こんな展開でも、姉は相手の事を考えてるんだろうな。
「私に、気を遣ったのかな」
 ぽつりと言った台詞に、また私の心臓が鳴る。
「あたしが、郁乃と河野くんが仲良くするのを快く思ってないと、郁乃がそう思ってるのかも」
「そ、そうなの?」
 姉、暫し、無言。だって、それは思っているではなく事実。

「こ、河野くん」
「は、はい?」
 やがて改まった姉の口調に、背筋を伸ばす貴明。
「あのね、あたしね、あたし、郁乃と河野くんの事、応援してあげたい気持ちはあるんだよ」
「ど、どうも」
「ホントだよ。ホントにホントにホント。でもね、でも、でも……」
 まくしたてて一転、もごもご口篭もるお姉ちゃん。
「でもね、あのね、酷い奴だと思われるかも知れないけど、でもね、あたしね」
 拳を胸元に握りしめ、小さい身体を更に前傾させる姉。貴明は、姉の様子に真剣に耳を傾ける。
 私は姉を応援する。
 頑張れお姉ちゃん。言っちゃえ、自分の気持ちを。貴明に、告白しちゃえ。
「あたし、あたし、河野くんっ」
 よし、いけっ。弱気な姉の、一世一代の勇気を聞け貴明!

「郁乃を河野くんにっ、河野くんに郁乃を獲られるのはイヤなのぉ〜っ!!」
 ……なぬ?
198名無しさんだよもん:2008/07/26(土) 20:20:52 ID:z3ihUcND0
支援

 ごん。(←私が書棚の角に頭をぶつけた音)

「だ、誰だれっ!? ……って、郁乃ぉ〜っ!?」
「い、郁乃ちゃん? 聞いてたの!?」
 仲良く振り向いて、書棚の陰からはみ出した私を見る二人。私は諦めて車椅子を前進させた。

「ど、どどど、どこから聞いてたの?」
「“こ、河野くん、今からちょっとだけ、いいかな?”あたりから」
「きょ、教室っ!?」
 嘘だけど、それで当たりなのか台詞。
「冗談よ。それより、そんなことはどうでもいいの。お姉ちゃんっ!」
「は、はいーっ!?」
 気おつけの姿勢。
「いったい全体なに考えてんのよ。獲るとか獲られるとか、しかも、あたしが」
「だ、だってぇ……」
「ったくもう、てっきりあたしはお姉ちゃんが貴明に告白するもんだと」
「えっ? それはないよぉ」
 顔の前でパタパタ手を振る姉。
「だってお姉ちゃん、貴明とは喋りやすそうだし」
「それは、河野くんは、男の子っぽくないから助かるけどぉ」
 そういう評価か。
 私は、貴明に男を感じる事が結構あったけど……いや、それはいい。

「するってぇとあれね。あたしと貴明が関わると嫌そうだったのも、そういうことなのね」
「だってだって、あんな郁乃、見たことなかったもん、河野くんといると嬉しそうだったんだもん、あたし、寂しかったんだもん」
 語尾が幼児化してるよ、お姉ちゃん。
「郁乃にオトコができたら、あたしなんか見向いてくれないんじゃないかって思ったんだもん」
 それでオトコ言うな。生々しいから。

「……あたし、郁乃にはずっと相手にされてなくて、嫌われてるのかなって悩んでて」
 しかし、次の姉の台詞は、私には意外だった。
「姉妹らしいことも何もしてあげられなくて、姉失格だなって、ずっと思ってた」
 とつとつと振り返るように語る姉。 
「でも、病気がいい方向に向かってきて、郁乃が動けるようになって、最近ちょっとずつ構ってくれるようになったから」
「学校でも、家でも、病院じゃない所で、病気じゃない事で、一緒に過ごせるようになったから」
「ようやく、あたしもお姉ちゃんになれたかなって、そう思ってたから」

 私は、姉と自分の関係に疑問を持ったことはない。
 確かに、私は素直な妹じゃないけれど、私が姉を苛めるのはいつもの事で。
 病状が悪いときは八つ当たりもするし、良い時はサービスしたりするけど、入院してたって退院してたって、大差なく姉に甘えてきた。
 でも、姉にしたら、そうじゃなかったんだ。
 一緒に学校に通って、家の食卓で家族の会話をして。
 私と日常生活を送る事が、姉が「お姉ちゃん」になる条件だったんだ……

「だから郁乃、もう少しだけあたしの側にいて〜っ!」
 だーからって、その理屈はおかしいでしょっ!

「あのねえ、例え私が異性と付き合ったとして、それでお姉ちゃんと疎遠になるわけないでしょうが」
「でもぉ、河野くんと話してると郁乃はあたしそっちのけだしぃ……」
「そんなことない。ちゃんと相手してた」
 単なる姉の被害妄想、よね? これは。
「郁乃と河野くんが付き合いだしたら、お姉ちゃんなんていらない人間に……」
「あああああ鬱陶しいっっ!!!」
 蛆虫と化した姉に、私の感情が爆発した。姉はひっと小さく悲鳴して下を向く。
「あたしは、確かに貴明が好きだけどっ!」
 あ、あれ? 今なんだか致命的な事を口走った気がする、けど、まあ置いておこう。
「だからって、お姉ちゃんはずっとあたしのお姉ちゃんよっ!」
「ず、ずっと?」
「ええ。ずーっとっ! これからもっ! これまでもっ!」
 姉が顔を上げる。

「……あたしは、お姉ちゃんがお姉ちゃんじゃないなんて思ったこと、ないんだから」
 つい目があって、私は視線を下げながらそう付け加えた。

 じわーっ。
 姉の大きな目の輪郭が、透明な液体でぼやける。
「い、郁乃」
 感極まった面持ちに、私は次の姉の行動を正確に予測した。

「郁乃ぉ〜っ! 大好きぃいいいいい〜っ!」
 なので、がばばっと姉が飛びついてきても平気。ちゃんと車椅子もブレーキを……ぐ、ぐるじい。
「く、首をじべる゛な゛、しぐ、しぐ」
「お姉ちゃんは、ずっと郁乃のお姉ちゃんだよおおおおおおおっっ!」
 チョーク! チョークっ! ほ、星が見える……建物の中なのに……。

 でも、まあ、なんだろう。そうね。気持ちは良かった。

「あ、あの、あのさ」
 そこに、恐る恐るで割って入った声。
 姉に羽交い締めにされたまま顔を起こすと、例の曖昧な笑顔が、少し緊張気味かな。
「えーっと、姉妹仲良しで、おめでとう」
 枕詞にしても、変なお祝い。
「そ、それで、あの、郁乃ちゃん」
 用件の予想はついたけど、私は黙っている。
「俺の気持ちは、あの時と変わりないんだけど」
 というか、何を喋れと。
「その、そういう事情で、こういう事情になったんなら」
 かくかくしかじかって、便利な言葉よね。
「あの、もしかして、さ、答えが変わったり、しないかな?」

 私は、一応これまでの自分の感情を整理する。
 ……ついでに、さっき置いておいた致命的な台詞と、背中にくっつく体温も。

「……瘤付きで、いいのなら」
 世に姉妹は数多けれど、姉に抱きつかれながら男の告白を受諾した妹って、いったい何人いるのかしらね。

 良く晴れた日曜日。

「ごめんね、また遊園地なんて」
「いいわよ別に。イヤだと思えば来てないし」
 私の隣を歩く、貴明との会話。
「また奢りなんて、こっちが悪いわねむしろ」
「いや、また知り合いがチケットくれて」
 外部条件により行先が左右されるのは、高校生カップルであれば自然なことだろう。
「丁度あの後改装工事に入ったみたいだし。ジェットコースターがパワーアップしたとか書いてたわ」
「う、あれ、また乗るの?」
 なんでもない会話で、似たような単語を繰り返しながら進む道も悪くない。

 今日は、私と貴明の初デートなのだから。

 なんだけどさ。

「あの、ところで、郁乃ちゃん?」
 少し背を屈めて、貴明が声をひそめる。
「なによ」
「どうしよう? あれ?」
 彼が小さく指さす、後方の電柱の陰に人影。
「頭隠してっていうのかな、あれも」
 電柱の左から頭。右からお尻がはみ出てる。
「無視していいわ。今日は絶対についてくるなって言っといたんだから」
「うん。でも……」
 ぴょこぴょこと電柱の両側から様子を窺う、あ、塀に頭ぶつけた。
「うぅぅ」
 小さく呻いて道ばたにしゃがみこむ……姉。

「お姉〜ちゃんっ!」
「ひ、ひぃっ!?」

「出掛けに、あたしは何って言ったっけ?」
「“絶対ついてこないでね”って」
「その後っ!」

 10秒後。
 呼びつけた姉を車椅子の前に直立不動させて問いつめる私。

「うぅ、“付いてきたら、クチきかないぞの刑3日間……」
「10日間っ!」
「ふえええんごめんなさいいい」
 この10日間というのは、クチきいてあげないぞの刑の中では最長期間で、というのはこれ以上だと本格的に泣かれて鬱陶しいからだが、今日は貴明と二人でいたかった気持ちの表れでもあった。
「郁乃ちゃん、その位にしてあげたら」
「貴明は黙ってて」
 これは、私と姉の問題。きっちりしておかなければ。
「分かった? お姉ちゃん?」
「ごめんなさーい」
「ごめんはいいの。約束通り、明日から喋らないからね、一切」
「10日間〜?」
「10日間っ。わかった?」
「ぐすん。わかっ、た、ぁ、くすん」
 ボロボロでしゅんとなりながら頷く姉。うむ、これで良し。

「よろしい。じゃ、行くわよ」
「え?」
 顔を上げる姉。
「だって、口きかないって……」
「明日からって行ったでしょ。今日は仕方ないから、もう。付いてきなさい」
「あぁぁ……」

「郁乃〜っ! 愛してるぅ〜っ!」
 例によって、姉は飛びついてきた。私が貴明に小さく手を合わせて謝ると、彼も苦笑してくれた。 

 それにしても。
「ねえねえ、どこから回ろうかっ!」
 姉、元気になりすぎ。
 
 明日から絶交のぶん貯金しておこうとでもいうつもりか、私と貴明の初デートだなんて遠慮は微塵もない。
 ……そういうキャラだったっけ? この人?
「郁乃郁乃っ、アイス食べよ、アイスっ!」
 車椅子を奪い取るような勢いで、強引に出店の方に持っていく姉。
 貴明は、姉の元気に押されたのか一歩出遅れて、それから慌ててついてきた。
「買ってくるから、待っててねっ!」
「貴明の分も買ってきてよ」
「う、うん」
 釘を刺さなかったら自分と私の分だけ買ってきそうだったわね、今の。
「ごめん。こんなんになっちゃって」
 改めて貴明を拝む私。だが、彼は首を振る。
「あはは、これも楽しいから」
「そうかしらね」
「だって郁乃ちゃん、楽しいでしょ?」
 あ、そういうことか。
 私が楽しければ、自分も、か。

「お待たせっ郁乃っ! はい、河野くん」
「あ、ありがと」

 姉がまた賑やかに戻ってきて、片手のアイスを貴明に、って、あれ?
「お姉ちゃん、あたしのは?」
「もちろん、ほら、トリプル」
 もう片方の三段重ねを示す。でも、ひとつ?
「お姉ちゃんは?」

「えへへ、一緒に食べよっ、ねっ?」
205名無しさんだよもん:2008/07/26(土) 20:41:04 ID:HxYk4t5WO
さるさん中断
「あ、アホかっ!」
 どこの世界に、恋人とデートに来て姉と一個のアイスを分け合う馬鹿がいるんだっ。
「だってぇ、シングル2個より安かったんだもん」
「だったらダブル2個買ってこいっ!」
「お姉ちゃんの財政事情も厳しいのお〜っ!」
 私は貴明の奢りだけど、姉は自費で入場してきてるから、って勝手についてきただけだけど。
 ねっ、ねっ、と差し出されるストロベリーを、ついひとくち。
「うふふっ」
 やたら嬉しそうに笑って、今度は姉がひとくち。

 ……ここにいました。馬鹿姉妹。

「ははは……はぁ」
 さすがの貴明も、ちょっと呆れ顔。ひたすら申し訳ない私は、ちらちら彼の様子を窺いつつも、
「ほら、ほら、メロンも美味しいよ、やっぱり」
 ついつい姉のペースで、あっという間にコーンまで。
「ごちそうさま」
 食べ終えて、こっそり溜息など付いた貴明。いや、これはいかん……あ。
「貴明、アイス付いてる」
「えっ? どこ?」
「こっち向いて」
 ひょいと手を伸ばして、私は彼の顔をこっちに向けて唇を寄せて。

 ぺろっ。
「!!!???」
「い、いいいいい郁乃が河野くんにちゅーをっ!?」
 ほ、ほっぺよほっぺ! しかも、ちょろっと舐めただけっ!

「あ、あ、あり、が、と」
「そ、そんなに真っ赤になんないでよ。大したことじゃないから」
「うあぁあ、郁乃っ! 大変大変! お、お姉ちゃんのほっぺにもアイスがっ!」
「涎は拭けっ!」

 こほん。
 あらためまして、どこから回ろう。

「お化け屋敷なんか、いいんじゃないかな?」
「動物コーナーの動物さんが増えたみたいだよ?」
 珍しく両名から意見なんぞ出たくらいにして、しかし何だかなこの選択肢。

「お、お化け屋敷はやめようよぉ」
「山羊に涎かけられるのは、勘弁してほしいなあ」
 正反対、というか、互いが嫌がりそうな場所を選んだでしょ、あんた達。
「小牧は少し怖がりを治した方がいいよ?」
「河野くんこそ、だったら一人で行ってきてくださいっ」
 カチンカチンと火花。
 直接コミュニケーションを取ってくれるのは、ある意味ラクだけど。
「「どうする? 郁乃(ちゃん)?」」
 当然のように貴明も姉も、決定権は私に委ねてくる。
 はぁ。

「お化け屋敷だよね?」
「動物コーナーだよね?」
 やけに必死な自己主張×2。
「うーん……」
 が、私は若干の考慮の後。
「あれがいい」
 そのどちらとも、違う一点を指さした。

 “新装開店。ダブルマウンテン・ジェットコースター”

「「う゛え゛っ?」」
 くくく。
 二人の頬に仲良く大粒の汗が浮かんだもんで、私は意地悪く笑ってやった。

 天気は快晴。盛況の遊園地の中を、車椅子は進む。

「あっ、ちょっと待ってよ、郁乃ちゃん」
「お、おいていかないでぇ」
 慌てて、しかしやや腰が引けながら、ジェットコースター乗り場についてくる二人。

「さっさと来なさいよ。それと、どっちが私と乗るのかしら?」
 爆弾一発。
「も、もちろん俺だよね、大丈夫、怖くないから」
「あ、で、でもでも改装したばっかりだし、万一を考えて保護者のあたしが」
 さっそく背中で牽制合戦。

(ホントに、しょうもないわね、貴明も、姉も。)
 私は、恥ずかしい二人から少し離れる。

 真っ青な空を見上げて。

「「さーいしょーはグー」」
 後方で始まったジャンケンの声を聞きながら。

(さて、次はどうしたもんかしら……)

 私は楽しく悩んだ。

 困った彼と、困った姉を、どんなワガママで困らせてやろうかと。
209名無しさんだよもん:2008/07/26(土) 21:16:23 ID:BJzSkbJx0
以上です。支援ありがとうございました。4/12「気おつけ」はないですねお恥ずかしい。

漏れは前々スレの240で、コンセプトは「郁乃を幸せにすること」でしたが、
実はあの時点で頭にあったのはハーレム物の方でして、本SSに関しては、

242 名前:名無しさんだよもん 投稿日:2008/03/03(月) 20:25:23 ID:qzQJejTvO
>>240
単体でおながいします

独占欲の強い愛佳の妹なのだから、郁乃も独占欲が強そう
なので、郁乃に貴明を独占させてあげてくだしい

243 名前:名無しさんだよもん 投稿日:2008/03/03(月) 20:26:21 ID:QxOVMoiI0
いくのんが姉と貴明の二股をですね

この↑2レスが妄想のネタ元になりました。ご両名に感謝です。

また、漏れは去年長々と連載していた「桜の群像」の作者でもありますが、
郁乃storyを読んで、群像では郁乃を強い娘に描き過ぎたように思えたので、
なるべく彼女の弱さ(+間抜けさw)を意識して書いてみたつもりですがどうだったやら。

短い割に時間かかりました。毎度同じ台詞ながら、読んで頂いた方々に厚く御礼申し上げます。
上述のハーレム物は形になるかどうか分かりませんが、
ネタがあれば短長問わず随時投下してますし、今後もしていきますのでよしなに。

以下、遅レス
>159
メロンパンには基本メロン入ってないので、
まあ味やら香りやらは千差万別にしろ余計な単語だったかもですね
>164
その通りです。なのはさん観てませんがとらハ好きです。SS書き的な部分としては、
小鳥ルートで唯子がいづみLOVEになるのが、失恋キャラ救済の解法として印象深いです
210名無しさんだよもん:2008/07/26(土) 21:21:14 ID:e5+kb9iH0
>>209
211名無しさんだよもん:2008/07/26(土) 21:27:15 ID:J0lnMy9j0
>>209
超乙
三角関係ものは決着が付いて欲しい人もそうでない人もいるけど
やっぱりハーレムエンドというか全てをあきらめないエンドはいいですね
212名無しさんだよもん:2008/07/27(日) 12:00:28 ID:a2u7Y/lO0
>183
乙。筆は止まるととことん止まるので、書ける時にはどんどん書いてくれ
内容を見ればミルファが嫌いでビッチ呼ばわりしたわけじゃないだろから後書きは気にしなさんな
ただ前回もそうだが、キャラを悪者にすればひんしゅくを買いがちなのは当然ではある
その点、ストーリー上の要請として納得できるだけのものがあるかどうか、引き続き今後の展開に期待だぜ
>209
連載完結超乙。長編は、やはり完結させてこそ意味があるので素直にエライ
いちおう三角関係だけど、こっちは悪者を作らなかったね。安全策というか。もちろん悪くないので次回作にも期待
213名無しさんだよもん:2008/07/27(日) 16:43:18 ID:Du9rfC3t0
>>209
乙。癒された

>>183
本編の内容はひとまず置いといて。
冗談か本気か知らんが、冷静に考えりゃ、
人を不快にさせると分かりきった後書きなんて書くな
そんな文章見て『ぼくのかんがえたおりきゃら』に期待して貰えると本気で思ってんのか
214名無しさんだよもん:2008/07/27(日) 22:30:23 ID:Af0ybHuv0
そろそろ夏。
豊作が期待できそうですね。
215名無しさんだよもん:2008/07/28(月) 00:20:21 ID:5OWCroh+0
どうもADが出てからいいんちょが不憫だな・・・
216名無しさんだよもん:2008/07/28(月) 06:10:20 ID:2bLwQ77T0
菜々子のSS読んでみたいな
217名無しさんだよもん:2008/07/28(月) 06:56:13 ID:MtUvx3rQ0
>215
確かに、いくのんの引き立て役に回っちゃってる感があるかもな
ここはひとつ、逆襲のいいんちょメインSSを……誰か書いて
>216
前スレに『菜々子Strike!』ってのがあったので続きに期待してる漏れガイル

あ、書庫さん更新されてて乙です
『めーぷる☆しろっぷ』最終話が途中で切れてまっせ
218書庫:2008/07/29(火) 00:05:00 ID:cmfv6BOZ0
>217
指摘どうもです。さっそく修正。。
こともあろうに最終回をぶったぎってしまって、作者さんには申し訳ないです。
219183:2008/07/29(火) 05:20:00 ID:Qlpmd5HX0
 
 まぁいろいろありましたが、ご不愉快に思われる向きは、NG指定推奨です。
 とりあえず、落とします。
 
 「うわ〜、なんかキラキラ光って、キレイな部屋だね〜☆」
 「ミルファちゃん、これはカラオケと言って、好きな曲選んで歌えるんだよ。」
 「あ、なんか、ダーリンにピッタリの歌があるよ、これにしよっかな☆」

 “♪ あの娘をペットに したくって ニッサンするのは パッカード 骨の髄まで シボレーで あとで肘鉄 クラウンさ〜♪”

 「うわ、ミルファちゃん、すげぇ音痴・・・・・」  ―― 禿しくJ@SR△Cとかに抵触してそうだし。
 「ダーリン、なんか言った?」
 「いえ、何でもありません。」
 「来栖川に合併された会社とかブランドばっかりだね」
 「そうだね」
 「いっつも、日参、してくれたよね。」
 「そうだね。でもミルファちゃんは、ペットじゃないし」
 「いいんだよ〜、ダーリンの奴隷でペットで☆」
 「カード破産寸前だったけどね」
 「ダーリン、花屋に並んでるお花、全部持ってきてくれたよね」
 「うん。それでも肘鉄、喰らっちゃったけどね。」
 「ごめんねダーリン。だって、いきなりだから、ビックリしちゃったんだもん」
 
 「でも、またダーリンって呼んでくれて、凄くうれしかったよ。」
 「だって、たった一人の、大切な人だったんだもん」
 「それなのに、また肘鉄喰らっちゃったんだけど」
 「しょーがないよね。ホントは弄びたいだけの本性、わかっちゃったんだもん。ひどいよダーリン」
 「ボクは真剣なつもりだったんだけど」
 「真剣な人が、交換日記を、別な人に代筆させたりなんかしないよね。」
 「それは過ぎた話で・・・・・うんそうだね。すいません。全部私が悪いんです。」
 「バイバイ貴明。もうこれっきりだね。」

 ・・・・・また花屋ごと買い占めたら、戻って来てくれるかな。・・・・ああ、一面のお花畑が見える・・・・

―― ウ〜ン、ウ〜ン、ごめんなさい、ミルファちゃん、全部私が悪いんです。ウ〜ン、ウ〜ン ――

「タカ坊っ!駄目っ!しっかりしなさいっ!!」
 「タカくん、しっかりっ!うわぁ〜ん!タカくんが死んじゃうよぉ〜っ!!」
 「ご主人様!お花畑に行ったららめなのれすっ!もろって来るのれすっ!!」
 
 ―― 夜の帳に包まれる、瀟洒なマンション。その中、姫百合家のテーブルを、珊瑚、瑠璃、イルファの3人が囲んでいた。
 
 「・・・・あのな、うち、思うんやけど・・・・」
 手にしていたスープのスプーンを空になった皿に置いて、珊瑚がやおら、語りだす。
 「記憶失う前と後、やっぱ、みっちゃんの性格ちゅうか気質、微妙に違うと思う。キレやすいし一段とわがままなっとる。前は
もっと思いやりのある子やったのに」

 「う〜ん、基本的には、とっても優しい子なんですけど・・・・でも、衝動的で、粗忽なところが、パワーアップしてるような」 と、
イルファ。

 「甘やかし過ぎたんちゃうか?」と、瑠璃。  
「事故の後、みんな、腫れモンに触るように接してたやろ。欲しがるモンは大概くれてやったりな。あまつさえは、貴明の
接し方や。」
 ―― というと?目顔で瑠璃に尋ねるイルファと珊瑚。
 「攻守逆転やからな。終始、イニシアティブ握ってるのは、ミルファの方。あの子が再起動してから、今に至るまで、貴明、
ミルファに至れり尽くせりやないか。・・・・夜のお努めも含めてな」 ―― “夜の”のくだりでは、瑠璃は赤面していた。

 「人間やって、過保護にされると、我侭でキレやすうなるやないか。そう、過保護や。今にしてみれば、貴明との仲も、ホンマの
恋人同士には思えんわ。寂しい時に甘えられる、愛玩用のオモチャやったんかもな、貴明は・・・・。ご主人様登録とか、言葉で
遊んどったけど、実はミルファの方がご主人様やったんや。恋人同士って、そんなもんやないやろ?お互いの信頼関係があって
なんぼで ―― え〜オホン、ウチも偉そうな事言える経験ないけどな」 そう言って、一段と赤面する瑠璃。
 「おかわいそうな貴明様・・・・」 と、イルファ。
 ミルファの話に仰天して、河野家を訪れてみれば、憔悴し切ってうつろな表情の、貴明の姿。シルファもいろんな慰めを試みて
いるようだが、効果なし。このみや環始め、数人の女友達が心配して河野家を訪ねているが、目下、絶賛人事不省状態。
 
 貴明も心配だが、ミルファの今後も気になるところ。
 「あの子にしてみれば、記憶にポッカリ穴が空いて、不安で、寂しい状態がずっと続いてたから、その穴埋めに関係が持続
出来ていた、って事でしょうか。でも、思ってたような偶像ではなかった事がわかって、あんな風に捨ててしまって・・・・また、
あの子、不安定にならないか、心配です。」
 「既に不安定やないの」と、珊瑚。「難しいもんやなぁ。うちら、この歳で、思春期の娘、持つ羽目になってしもうたんやな。」
 カタンと、椅子から立ちあがるイルファ。「ありがとうございます、瑠璃様、珊瑚様。次に何をするべきか、少し分った気が
します。」
 「あ、待ってや、いっちゃん」 と、珊瑚。
 「ウチらから見たら、いっちゃんもみっちゃんに負けず劣らず過激や。あんまり思い切ったことせんといてな。」
 「はい?」
 「一面から見たら、ええ兆候も見えとるし。人間だんだん成長すると、物事客観視出来るようなる。みっちゃんも、“はるみ”を
自分自身と、認めざるを得のうなったって事やろ?客観的に見れば当然そうなるわ。おぽんちなりに、あの子も、少しは成長
しとる、って認めてやってもええんやないの?だから、なるたけ、穏便に、穏便にな。」

 「はい、大丈夫です。きっとみんな丸く収まりますから。」

 "ガチャリ"と、玄関のドアが開く音がした。
 「ただいま戻りました。」と、入って来たのは、先ほどまで居た雄二が帰るのを見送っていた、リナである。
 奥の部屋では、ミルファが、クッションを抱えて、TVのドキュメンタリー番組をぼんやりと眺めていた。
 やがて、おもむろに俯いて、思いに耽る。
 ―― ひどい、ひどいよ貴明。あんな事する奴だなんて、人畜無害で、全然想像出来なかったよぉ・・・・――

  ♪“―― 人ならざるものを生み出す使命を負った彼らに背負わされた重い十字架と苦悩。命とは?心とは?
    ―― そして、最も実用に近い形で生み出された世界最初の感情を持ったアンドロイド、HMX-12・・・・
    次回の『プロジェクトA’s』は、N開発主任率いるK電工の、ロボット開発チームの苦闘の物語をお届けします。―― ”♪
 
 日曜日の朝。
 姫百合家の玄関前の廊下に立つのは、珊瑚・瑠璃姉妹と、雄二、リナ。
 「それじゃ、リナちゃん借りるぜ、珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん。」
 雄二が、おずおずと、リナの背中に手を掛ける。
 「何言うとんのや、雄二がこの子のご主人様やないか」 と、瑠璃。
 「はい、宜しくお願いします、ご主人様。」 リナは雄二に振り向き、ぺこりとお辞儀をした。

 待ちに待ったメイドロボとの初デート。しかし、雄二の表情はどこか浮かない。
 さすがの雄二と言えども、貴明の憔悴した姿を思い浮かべると、気が塞いだ。そのうえ、先日、ここを訪れた時の、ミルファの
恨みがましい視線。交換日記の件では、貴明に負けず劣らず悪者と断罪されている。リナに今日の段取りだけ話して、怖気を
震ってそそくさと逃げ出してしまったものだった。 ――"はるみちゃんの時は、感謝されたのになぁ・・・・"―― とは、心中の声。
 このドアの向こうには、彼女がいる。
 
 「まぁ、みっちゃん達の事は、うちらでなんとかするよ〜。そないな不景気な顔しとると、りっちゃんにも不機嫌がうつるで〜。」
 そう珊瑚に指摘されると、つとめて陽気を振舞おうとした雄二。改めてリナの姿を眺めると、今日はメイドロボの制服ではなく、
パーカにデニムのミニスカートといういでたち。どことなく、ミルファの私服姿を思わせなくもない ――

―― いやいや、長瀬由真、そのものじゃないか。イヤーバイザーがなかったら、由真とのデートだと錯覚してしまいそうだ。
 これはひょっとしたら、噂になるかも・・・・・などと想像すると、ついククク、とこぼれる笑いを噛み締める。
 「おう、ご機嫌顔になったやん。ほな、ゆっくり楽しんでや〜。」と、瑠璃。
 雄二とリナは振り向きながら姉妹に小さく手を振り、姫百合家を後にした。
  
 バタン、と扉を閉め、どことなく沈んだ空気の漂う部屋の中に戻ってきた姉妹。
 瑠璃は、うぅ寒いわ〜とごちながら洗面所へ、珊瑚の足はミルファ達のいる居間へと向かった。
 いつものように私服姿のミルファはクッションを抱えて床に座っており、その傍らにはイルファが立つ。

 「ミルファちゃん・・・・あなた、自分が何をしたか、わかってるんでしょうね?」
 TVのニュースに見入っているミルファを見やりながら、イルファが話しかけた。
 「ご主人様登録の事も、もう後戻りは効きませんよ。自分の言った事には、責任持ちなさいね。」
 「わかってるよ、そんなこと。撤回するつもりもないし。」 横顔を向けたまま、ミルファが言う。
 「貴明さんのご主人様登録、解約して貰いました。別な方が、貴方の“マスター”になりましたから。」
 「えっ!?」と、驚いて、イルファに振り向くミルファ。
 「―― いっちゃん!?何も、ホンマにせんでも!?」 珊瑚も驚いて、非難を含んだ声を上げる。

 「ちょっと待って!?何、別なマスターって!?あたしは、自由だって、さんちゃんが ―― !?」 不服の声を上げるミルファ。
 イルファが、冷ややかに言う。
 「珊瑚様より、もっと強い権限を持つ方の、“命令”ですから。あなたの新しいマスターは、長瀬源五郎、様です。」
 「―― ッ!?」 驚くミルファ。今まで、パパだと思ってた人が、今度は、ご主人様・・・・いや、マスター。
 珊瑚も唖然としていた。
 
 「いいですか、長瀬のおじさまが、おっしゃった事です。二点だけ、必ず、守りなさい。マスターに対して、その義務があります。
ミルファちゃん、まず、学業は、続けなさい―― あなたは自分を人と同じだと言ってたけど、人として、心が完成していません。
学校は、何より精神を磨く場所だからです。」
 「ん・・・・・。」 不満顔のミルファ。
 「それから、もう一つ ―― たとえどんな風に思っていても、貴明さんには謝りなさい・・・・そして、仲直りなさい。それが、
人間として生きていくつもりなら、最低限のルールだし、礼儀だし、大人の寛容、というものです ―― あなた、貴明さんが、
あなたの為に、どれほどの事をしてくれたか、わかってるわよね?」
 「ふん。あたしを騙して、あたしの体が欲しかっただけでしょ?」

 はぁ・・・・と、溜息を漏らすイルファ。憤怒を抑えつつ、彼女は続けた―― いいですか、ちゃんと聞きなさい、ミルファちゃん。
 「貴明さん・・・・シルファちゃんが作る食事もほとんどとらずに、ずっと塞ぎ込んじゃってるそうです。そして・・・・はらはらと泣き
出しては、うわ言で、『ミルファちゃん、ごめんね、ごめんね・・・・』って。すっかりやつれて、別人みたいになってるって・・・・・
おかわいそうに・・・・」

 そう話しながら、しまいにはイルファの声もうわずり、嗚咽を漏らし始めた。
 「・・・・・えっ!?・・・・・まさか、そんな・・・・・」 ―― ガン!と殴られたような衝撃が。
 「生身の人間は、私達より、ずっとデリケートな生き物なんです。特に、心が。貴明さん、このままでは、心が、壊れてしまい
ます。そんな、人に危害を与えるようなメイドロボは、ポイしてしまうからと、おじさまが言ってました。」

 「え―― !?」 絶句するミルファ。最後のポイは、実のところ、ミルファを追い詰める為のイルファの捏造だったが。
 
 ミルファを動揺させたのは、むしろ、今の貴明の状況だった。
 思い出した交換日記の顛末の悪印象が強過ぎて、すっかり偽りの愛情だったと思い込んでしまっていたからである。
 
 “そんな・・・・そこまで、思い詰めてるなんて・・・・本気だったの?・・・・・どうしよう、どうしよう・・・・・貴明を壊しちゃう・・・・”
 急速に、ミルファの表情は、困惑と心痛の色に染まっていく。目尻が紅潮していた。
 あの、普段でも些か頼りなく見える貴明が、更に小さく縮こまり、落涙までしている様子を思い浮かべると、熱し易く冷め易い
感情家のミルファ、どうしようもなく憐憫の情が湧き起こって来る。

 いまさら強調するまでもなく、ミルファは軽率極まる性格で、先を読んで言葉を発する思慮がない ―― 皆が、“おぽんち”と
決め付ける所以であったが。
 甘やかされて、それが一層、顕著になってしまっている。深い悪意などおよそ皆無とはいえ、中途半端な理解に基づく粗忽な
言動の数々で、皆が振り回されてしまうのはいつものことである。
 後悔するのも、いきなりだった。
 「 ―― あたし、ちょっと、出掛けて来る!」
 抱えていたクッションを放り投げ、ミルファは立ち上がった。
 "あ〜、ちょっと待ってや〜!?"と、呼び止める珊瑚の声も聞かず、さっさとマンションを後にしてしまった。

 「ふう・・・・」 イルファが再び溜息をつく。
 「少しは反省したみたいですね、あの子。―― でも、貴明さんに謝って、仲直りして、で終わりではありません。もう少し成長
して貰いませんと。私もちょっと出かけます、珊瑚様。」
 玄関に向かう途中、洗面所から出てきた瑠璃とすれ違う。
 「お?イルファ、出掛けるん?どこ行くんや?」
 「ちょっと、電信柱になってきます、うふふ。」
  ―― なんや、またか、と瑠璃。
  
 そうして、メイドロボ達は、皆マンションを後にした。残された姫百合姉妹。
 日曜だし、多分いないだろう、と思いつつ、珊瑚は、源五郎に今のミルファとリナの状況を話そうと、来栖川の中央研究所
にネット電話をかけた。 ―― あと、ご主人様登録の件も。
 すると、電話を取ったのは ―― 東吾だった。
 「今日は僕が日勤だよ。室長は、昨日慌しくムンバイに出張に出掛けた。」 PCのモニタの向こうに、丸眼鏡の東吾の姿。
 狡猾なキツネを思わせる面相・・・・・珊瑚は、どうしても、この切れ者の主任が好きになれない―― 冷たい心の持ち主の
ように思えて。いつも斜に構え、他人を冷笑している風がある。
 
 「ふふん・・・・なるほどね。リナは向坂の御曹司と、デートか。いいデータログが採取できるといいな。それに、ミルファは、
少しばかりは悔悛の色が見れると。まぁ、河野少年も今度ばかりはついてないようだが、うまく仲直りさせてやってくれよ。
室長は、ミルファの“新マスター様”は、ずっとそればかり気にしてインドに旅立ったからな。」
 何やら小馬鹿にする色が覗えるようで、珊瑚は面白くない。
 しかし一点、はっきりした事。
 “・・・・いっちゃん、ホンマにみっちゃんのご主人様登録、切り換えてしもうたんやな。相変わらず思い切った事するわ〜。”

 「・・・・・で。ミルファが臍を曲げた原因は、一部残存してた、古い記憶か。結局、それはそのままにして、自然な成り行きに
委せるつもりなのかい?」
 卓の上に手を組んで、身を乗り出しつつ、嫌らしい笑みを浮かべて東吾が訊ねてきた。
 「勿論や ―― 何や、“そのままにして”って?大切なみっちゃんの記憶や。どんな思いで、うちや長瀬のおっちゃんが、事故の
時、サルベージした思ってるんよ〜?」
 憮然として言う珊瑚だった。
 
 ムキになっている珊瑚の姿を見て、やれやれ、と、肩を竦める東吾。
 「内容にもよるだろ。君、本当は、ミルファの中で断片的に残ってる記憶の“色”、全部把握出来てるんじゃないのかい?」
 ―― わかってても、詮索するつもりないわ、と、珊瑚。
 「僕に貸せよ、ミルファを。 ―― いい具合に、スッキリさせてやれると思うぜ?」
 「何やてっ!?」 
 「人間はね・・・・・どうしても納得出来ない事、嫌な事は、忘れちまうんだよ。そうしてなきゃ、不愉快な事だらけで、生きて
いけないよ。気が狂っちまうな。それが処世術で、大人の知恵ってもんさ。ロボットにも、そんな能力が備わってりゃ、便利だと
思わないかい?」
 「うちは、そんな風に割り切った、嫌な大人になりとうない。みっちゃんも、そんな、物分かりの良過ぎる子にしとうないわ。
ほな、さいなら。」
 ブチンと、電話を切る珊瑚。 ―― やっぱ、むかつくわ〜、あのおっちゃん。

  ―― おやおや、露骨に感情的になっちゃって・・・・いくら電子工学の天才ったって、やっぱり、子供だな・・・・。
 ミルファみたいに、いちいち感情的になって角立てられてんじゃ、商売道具にはならんだろ。やはり、売り物にするには、
“大人の知恵”ってのが、備わってる必要があるんだよ・・・・。
 人間は反発して対案を出せる。しかし、三原則に縛られたロボットは、そんな事は出来っこない。
 まぁせいぜい、“彼女“に難問ふっかけてやってくれよ、向坂少年。

 ――― そんな事を思いながら、独り笑みを浮かべた東吾だった。
 
 ――――――

 貴明が目を覚ましたのは、目覚まし時計でも、シルファのニードロップでもなく、限界まで達した空腹が発する音のせいだった。
 ふらふらとした足取りで机側の窓辺に向かい、ほとんど無意識的にカーテンを開ける。―― うおっまぶしっ! ――
 冬の日差しはまだかなり低い位置にあって、その目を直撃した。思わず手をかざす貴明。

 トントン、と、ドアを叩く音がした。そして、すぐに続く声。「お目覚めれすか、ご主人様?」
 ノブをテープで仮留めしてあるドアが開き、シルファが顔を覗かせた。
 機械的に定時に起こしに来るのではなく、主人の状態を慮る事が出来る融通性は、DIA搭載モデルならである。

 「ご主人様・・・・そろそろ、お食事とって欲しいのれす。」
 不安げに部屋の中に目を泳がせるシルファ。そこに数日、暮らしていた筈なのに、乱れた布団と、貴明の体臭以外に、およそ
人が過していた形跡がない。ベッドとトイレの間だけを往復する生活。
 自らカーテンを開けにいっただけでも、かなり状態が上向いた証拠なのだった。

 「うん・・・・すごく、お腹空いてるよ。何か、作ってくれると嬉しいんだけど。」
 シルファの表情がパッと輝く。 「 ―― もう、もう準備れきてるのれすよ、ご主人様!すぐに降りるのれすご主人様!」
満面の笑みを浮かべ、シルファは貴明の手を取って階段へ引き入れた。
 
 ―― カタカタと味噌汁の入った鍋が熱せられて音をたて、その香りがぷんと漂う。
 ソファで寛ぎながら、前日の新聞に目を通す貴明。
 ようやく戻ってきた生活臭に、思わずシルファは鼻歌を漏らす。
  
 ピンポ〜ン。
 唐突に鳴るインターホン。ご主人様はゆっくりしててくらさい、とシルファ。宅配くらいには普通に応対出来るようになっている
彼女である。

 やがて玄関から戻って来たシルファは、客人を伴っていた。
 あっ・・・・と、貴明は小さく声を上げる。
 「タカくん・・・・」 このみだった。

 しばらくリビングの入口に立ち尽くしていたこのみだったが、やがて、見る見る表情がクシャッと歪み、両目から大粒の涙が
ボロボロとこぼれ落ちてくる。
 「タカくんっ!」
 ―― ボフンッ!
 すばしこい小動物のようなこのみが、貴明の胸に飛び込んで来た。
 「タカくん!タカくん!よかったぁ〜〜っ!タカくん、ずっと引きこもったまま、死んじゃうと思ったよぉ〜〜!!えぐっ!ひっくっ!」
 
 あ・・・・と思わず手を上げたシルファであったが、ここは、幼馴染という特別な関係、少しでもご主人様を癒してくれるなら・・・・
と、不思議と嫉妬の波もすぐに引いてしまった。

 しばらく貴明の胸で泣きじゃくっていたこのみだったが、何かに気付いたか、急に目を見開いて、サッと貴明からその身を引いて
しまう。
 「・・・・ん?どうした、このみ?」
 「うっ・・・・くっ、臭いでありますっ、隊長!」
 
 食事の後、シルファとこのみに促され、シャワーで垢を流そうと風呂場に入る貴明。
 俺って、つくづく弱い人間だなぁ・・・・と、パジャマを脱ぎつつ、洗面所の鏡で自分の顔をまじまじと眺めながら思った。
 髪は乱れ放題、だらしなく涙を垂れ流し続けたのか、両まぶたに目ヤニがびっちりこびりつき、頬までそのスジが残っている。
 ―― あれ、そういえば俺、いつの間に制服から寝巻きに着替えたんだっけ・・・・・?
 まさか、シルファちゃん、それともタマ姉とか春夏さんとか・・・・!?
 急に気恥ずかしさにとらわれ、シルファが気を利かせて温めておいてくれたらしい風呂場に入ると、すぐさまシャワーを放水して
頭に降り掛けた。 「うわっちちっ!」

 さっぱりした状態でリビングに戻り、ようやく人心地がついたところで、再びソファに腰掛けてくつろぐ貴明。
 コトリと、シルファがテーブルにコーヒーを置いた。「ゆっくりするのれすよ、ご主人様。」 

 ソファに向かい合って腰掛けるこのみに、貴明は呟くように話し掛けた。
 「なぁこのみ・・・・みっともないよな、俺って。」
 「ううん、そんな事ないよ、タカくん。」
 「なんで?こんな事くらいで引き篭もって、男のくせにボロボロ涙流してさ」
 「前のタカくんなら、いつも、周りのせいにして逃げてたのに、みんな、自分が悪いんだって、うわ言してた。それに、女の子の為
に、こんなに真剣に悩んで苦しんでること、なかったもん。前よりずっとカッコいい。」
 こんな風にフォローしてくれるあたり、幼馴染というのはつくづくありがたいし、嬉しい ――

 つい、そんな事を考えながら、貴明はこのみの顔をしげしげと眺めていたが、やがてこのみは赤面して俯いてしまう。
 あっ、と、貴明も自分の慎みの無さを恥じて頬を朱に染めうつむいた。
 そんな二人を、お盆を持って立ち尽くしながら無言で見つめるシルファ。
 
 そうこうするうち、突然、貴明の脳裏に思い浮かんだのは、向日葵を思わせるミルファの純真な満面の笑顔。
 “ダーリン、大好きっ!―― ”
 一段と背をソファに寄りかからせ、天井を仰ぎながら、「はぁー・・・・」と、深く、深く、溜息をついた。
 貴明の胸中を去来するのはもはや諦観、後悔は涙と共に流れ切ってしまったらしい。

 ・・・・それが人間の感情を持つロボットの外部端末とは知らずクマのぬいぐるみの股を覗いてしまったのは運命のいたずら、
彼女の弁当に恐れをなして逃げ惑い、音楽室から落下したのを助けられて彼女が記憶を失う原因を作ってしまったのは自分の
せい、そして今また、彼女に縁を切られる原因となった交換日記の顛末も自分のせい。

 ―― ま、結局は、一時の夢。そもそも縁がなかった、って事なんだよな・・・・。
 このみは、今のミルファの様子を雄二あたりから聞いてるかも知れないと思って、訊ねてみたい誘惑に一瞬かられたが、そんな
未練がましいことはやめておこう、と思い留まった。
 ―― 別にこの世からいなくなっちゃった訳じゃない。せめて、ちょっとした友達くらいの関係にでも戻れればいいな・・・・。

 貴明の表情に再び暗い陰が差したのを見逃さなかったこのみは、ふいに、貴明に切り出した。
 「ね、タカくん、気晴らしに一緒に出掛けようよっ?」
 えっ!?と、急な話ゆえ戸惑う貴明。
 「そっ、その、俺さっき風呂入ったばかりで湯冷めしちゃうし。それに、どこ行くつもり?」
 「えへへ〜、お母さんが映画館とか遊園地とかテーマパークとか、割引券いっぱいくれたんだよ。ちょっと厚着すれば大丈夫だよ
タカくん。ね、行こうよ〜☆」
 そう言って、このみはテーブルの反対側から両の手で貴明の手を握り、ぐいとソファーから引き離そうとした。
 あっちょっと待って、と、目を傍らに泳がせると、シルファの視線とかち合う。
 シルファは少しの間、貴明とこのみを凝視していたが、やがて、嫉妬も動揺も感じさせない表情で、言った。
 「気晴らしはいいことれす、ご主人様。しっかりお留守番しますから、思い切り羽を伸ばすといいのれす、ご主人様。」
 ―― 塞ぎ込んれいるご主人様を見ているよりも、ずっとマシなのれす。ご主人様を頼むのれす、このこの ――。
 
 枯れ木の立ち並ぶ並木道を、河野邸へ向かって、ミルファはひた走っていた。
 
 ―― 貴明っ!
 ごめんなさい、信じてあげられなくて ――
 ―― あたし、貴明に問うたよね、あたしが好きなの?“はるみ”が好きなの?、って。
 貴明は、今のあたしが、ううん、どんな形のあたしでも、好きだって、言ってくれた――― 命懸けで。
 ・・・・それなのに、それなのに、あたしは ――!

 今の貴明が、とっても誠実で、優しくて、素敵な人なら、それでいいじゃない。
 ―― ううん、どんな形の貴明でも、好きって、思ったんじゃ、なかったの―― っ!?

 あたしってば、最低―― 。
 許して貰えなくたっていい、でも、どうしても伝えたい。
 ―― ごめんなさい・・・・ダーリンッ!!ホントは、とっても、大好きなんだって ――っ!
 
 ――― 河野邸に、辿り着いたミルファ。

 ピンポ〜ン。 ――― シーン・・・・・・。―――
 返事がない。ヒッキーSくらいは居る筈なのに。  
 もう一回、二回、三回。
 ピンポ〜ン ピンポ〜ン ピポピポピポピンポ〜ンッ!
 埒があかないので、ドンドンと、玄関の戸を叩くミルファ。
 「ちょっとっ!開けてよっ!ねぇ!開けなさいよっ!地味妹!いるんでしょっ!?貴明っ!出しなさいよ貴明っ!河野貴明っ!
 ―――― ダーリンッ!!」

 ―― あ〜うるさいのれすっ!近所迷惑なのれすっ!
 ガチャリと戸が開いて、金髪お下げが隙間から顔を覗かせた。 ―― 出たわね、ヒッキー妹S!
 「うるさいれす!自重するれす!ご主人様は留守れす!」
 「とぼけないでよっ!すっとぼけないでよっ!ネタは光っているのよっ!」
 「らいたい、ろの面下げて、現れたのれすっ!ミルミルのせいれ、ご主人様、ショックれ寝込んらのれすよっ!」
 ―― うっ・・・・・それを言われると、思わず怯んでしまう―― 俯きながら、言うミルファ。
 「だ・・・・だから、謝りにきたのよ・・・・貴明に・・・・ううん、ダーリンに!」
 そんな、遊び半分やあたしの体目当てでいた人が、ショックで人事不省になるほど、落ち込んだりする筈、ないものね・・・・
 だから、謝りたいの。今更かも知れないけど。手遅れかも知れないけど。
 嫌ってるって思われたままはイヤ。せめて、伝えたい―――
 ――― ごめんなさい、ダーリン、大好きだよ、って ―――

 「・・・・ぷぷぷ、遅かったのれす。ご主人様は、このこのと、れーとに出掛けたのれす。」
 ―― レート?むーっ!おぽんちだって馬鹿にしてぇ〜っ!交換比率、の事だよね、確か・・・・
 ―― 違うっ!これはシルファ語・・・・デートッ!?このみちゃんと ―― !?
  
 「それに、ぷぷぷ、イルイルに聞いたのれす。ミルミルは、もうご主人様の専属めいろろぼれはないのれすね。本日たらいまより、
ご主人様の許可がない限り、この玄関は通さないのれす。さっさと帰りやがれれす。」
 「ちょっと待って!?ダーリンとこのみちゃんは、どこへっ?」
 「自分れ探せれす。」
 そう言い捨てて、シルファはバタンと、ドアを閉め切ってしまった。
 ――― うなだれてしまう、ミルファ。つくづく、自分の軽挙妄動を後悔するのだった。

 「―― ミルファ。」
 ――― 女声ながら、ドスの聞いた声に振り向くと、背後には、眉間に皺を寄せ、腕を組んで立つ、環の姿が。
 「た、環さん・・・・」 その迫力に、凍りつくミルファ。
 
 「あなたね・・・・今頃なにしに来たのよ?」
 そう訊ねる環の口調には、どことなく凄みが効いていた。
 「そ・・・その・・・・ダ、ダーリンに、謝らなきゃと思って。ちょ、ちょっと、言い過ぎちゃったから・・・・」
 おずおずと、うつむきながら、答えるミルファ。 
 環はしばしミルファを睨みつけていたが、やがて、溜息をついて、その表情を和らげた。
「はぁ・・・・まっ、タカ坊にも確かに原因はあるし、あなたもいろいろ大変だったから、大目に見てあげられる要素はあるんだけど
ね・・・・。
それにしても、もう少し、タカ坊の事、信用してあげられなかったの?昔はどうあれ、今はホントに真剣に、あなたの事想ってたの
に。」
 震えながら、涙声で詫びるミルファ。 「ぐっすん、ご、ごめんなさぁい・・・・」
 「私に謝ったって、しょうがないでしょう?学校でもどこでも、タカ坊に会って、直接言いなさい。」
 
 河野家の玄関を出て、貴明とこのみの行方を追おうと歩みだすミルファ。
 すると・・・・「―― お待ちなさい。」
 どこかから、彼女を呼び止める声
 「どう、ミルファちゃん、少しは堪えた?」
 姿は見えないが、この声の主は、決まってる―――
 「―― お姉ちゃん。」
 果たして、すぐ後ろの電信柱の陰から、イルファがスッと姿を現した。
 「うぅ〜、お姉ちゃん、頭がいいから、こうなる事、みんなお見通しだったんでしょ?」
 腕を組んで、溜息をつくイルファ。
 「別に私でなくたって、たいがい先の予想はつくでしょ。あなたの激情にまかせての、軽はずみな行動は、いつも後悔に繋がる
んだから。」
 イルファはミルファの傍らまで寄ってきて、その手を取った。
 「貴明さんの事ですから、一言謝れば、簡単に許して貰えるとは思いますけどね。でも、しこりは残ったと思うわ、多分。」
 「うん・・・・あたしが悪いんだもん。仕方ないよね。」
 「これから、頑張って、そのしこりを取り除きなさい。もう貴方は、貴明さんを独占出来る立場じゃないのよ?」
 「うん、わかってる。もう一度頑張って、ダーリンに選んで貰うもん・・・・“はるみ”の時みたいに。」
 「それに・・・・うふふ、ミルファちゃん、あれを御覧なさい。」
 「えっ・・・・・なっ!何っ!?」
 イルファは河野邸の方を指差す。そこに見えたものは・・・・・
 
 河野邸の玄関内に導き入れられた環は、シルファから、今の貴明の状況を聞かされていた。
 すると、扉の外から、喧騒が響いてくる。主に、黄色い声。
 「何かしら?騒々しいわね。」
 ピンポーンとインターホンが鳴らされる。
 丁度玄関のすぐ内側にいたシルファは、すぐさま扉に手を延ばすが・・・・
 「はい、ろちら様れ・・・・ぴぎゃっ!?」 玄関外の有様に仰天し、声を上げたシルファ。
 環も思わず後ずさる。 「なっ!?あ、あなたたち・・・・」 
 貴明の見舞いに訪れたのであろう、少女達の一団が、そこにはズラリと。

 「え、ええっと、クラス委員長としては、クラスを代表してお見舞いに・・・・」
 「べ、別に、み、見舞いに来たわけじゃないんだからねっ!あいつの情けない顔笑いに来ただけなんだからっ!」
 「手製のクッキーです。あと少しでも気晴らしになればと思って、ポエムも添えてみました。」
 「お、お、お兄ちゃんに、お、お、お菓子、持ってきたも!」
 「うーの体力が回復するよう、少々、腕を振るってみたぞ。」
 「元気回復には、ピラミッドパワーが最強なんよ。」
 「ほんっとヘッキーなんすから、先輩は。元気付けに来てやったっすよ。」
 「胸を押し付けて股間の元気回復させるつもりか?私はもんじゃの材料一式。」
 「その、これ、イオンの香りがするサンショウウオのぬいぐるみなんですが・・・・。」
 
 その少女達の様子を見やりながら、ミルファに話すイルファ。 
 「うふふ、どう?折角手中にしていた貴明さんを、またあの娘達と争って、勝ち取らないといけないんですよ、ミルファちゃん♪」
 「そ、そんなぁ・・・・・」
 「そして、ほら、ここにも。」
 「えっ?」
 「あなたは、もう貴明さん専属じゃないんですから、私も条件はイーブンですよね?」
 「なっ!?だ、ダメェ〜〜ッ!!お姉ちゃん!!」
 「うふふっ、これで私も堂々と、参戦できます☆ ―― くんずほぐれつ、ずっこんばっこん!!」

 (つづく)
239238:2008/07/29(火) 06:24:41 ID:MIfxlUDj0
 
 ミルファ√のENDは、まだ後で一波乱も二波乱もありそうなのでこんな感じに。
 当初の想定からそれて、無印、X通しての「人間の」メインヒロインとのゴールも視野に入れようかと思い始めてます。
   
 ―― 「ビッチ」とか。
 どうも、本スレとかキャラスレですらも、みんなピンクロボをビッチ呼ばわりしてて、反論する人もいないもんだから、それが2chでは
本流なのかと、つい迎合してみたわけなんですが・・・・
 余計な事書くと尚更こじれそうです。とりあえずは、終わらすまで黙々と落とします。今後、コメントは必要最小限にて。
240名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 06:51:08 ID:VlkCtSuO0
さらには人のせいか、ほんと最悪だな
241名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 07:00:33 ID:wbWhuzKD0
>239
乙。ビッチってほぼ蔑称なので。ミルファ嫌いな人に迎合する必要はないっしょw

ミルファ失踪じゃなかったんだ。謝りにも来ない貴明はヘタレ杉
話がシリアスだってのはあるが、全般的に出るキャラみんな真面目な感じだね
人を嫌う珊瑚、露骨に怒る珊瑚、って描写は珍しいかも

そういや少し前に「珊瑚を怒らせる」ってお題でSSあったっけ……『珊瑚ちゃん、怒る!?』か
242名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 14:22:24 ID:cSoeGxyo0
既に今書いてるコメント自体が余計な内容だな
243名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 19:11:14 ID:j+b9sL5F0
好んで事を構えてる節も見られるから、お望み通りに叩いてやれよ皆
244名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 19:35:06 ID:RSX/TtAO0
叩きじゃないけどさ
>これで、ひとまずバカアキにはご退場願って、雄二とリナのラブラブデート編に突入ですねw
なんか予告と違うくない?
ミルファの件で叩かれてフォロー入れるの優先したんだろうか

主題は「制限型DIA」だよね
ミルファの記憶が戻った件がちゃんと本筋に関わっていればいいんだけど
最新話読んでちょっと不安になった
ADの黒歴史を何の意味もなく出すのは止めて欲しいなと思った
245名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 19:53:11 ID:lw+p/LtS0
作家叩くの禁止ってなってるけど、投稿自体が荒らしの場合はその限りじゃないだろ?
246名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 19:54:07 ID:OxvAom7B0
オリキャラが出しゃばるSSは例外なく糞
247名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 20:30:57 ID:lEtw5Fvq0
>>245
結論出たな
というわけで239は投稿禁止
248名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 20:55:47 ID:8v2fgebB0
>>239
ssの中身は興味が無いんでスルーするけど。あんたは自分の言動すら自分で責任をもてないわけ?
大体、自分が反省を求められている場面で、「自分は〜に従っただけです」などと言ったら、
いくら一緒に自分自身に対する反省の弁を述べようとも、反省しているとは誰も受けとならい。

こんなことは基本中の基本なわけで、何もネットに限ったことではなく社会人として常識なんだけどね。
もし、あなたが実生活でも同じような考えで行動しているなら、おそらくあなたの周りの人間はあなたを
一人前の人間としては見ていない。おミソ扱いして大目に見てもらっていることに感謝するように。

こんな人間が良く貴明の事をヘタレだといえるね。はっきり言ってADの貴明だってあなたよりマシ。
下手な事をする事はままあったけど、自分のやった事に対する尻拭いは自分でしているだろうに。
249名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 21:19:03 ID:V59kSuh00
実にいい流れになってきた
流石に擁護する奴ももう出て来んだろ
250名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 21:45:36 ID:kDrVYkvZ0
もう感想も何もつけず叩かず空気みたいにスルーしときゃいいんじゃねぇの?
物書きにとっちゃなにも反応ないのが一番キツイだろ
251名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 21:45:51 ID:jR7E2kJE0
擁護する気はさらさら無いが、とりあえず続きは書いてくれ。
俺はそれなりに楽しんでいるし、不快な部分は読み飛ばせば良いだけだ。
252名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 21:46:46 ID:ile0kfpp0
叩きもスレの賑わい
253名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 22:03:45 ID:ATVWUScL0
続きを読みたい人間もいるんだから叩くのは全部終わってからにしてくれ

>>250
夏休みだからじゃないの?
今に始まったことじゃないのにスルーできないお子様が多いね
254名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 22:17:51 ID:v+1xCV8m0
こいつのはSS内容より叩きのレス見てる方が楽しいw
255名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 22:23:03 ID:RiXLhf640
>248
SSへの感想じゃないから文句つけるぜw
2ちゃんの書き込みつかまえて社会の常識を語るなww
エロゲーの主人公を評して人間性を語る愚かさに気づけwww
確かにこの作者は厨房の典型だが、それに顔真っ赤にしてマジレスするお前も相当痛いからスレ住人のレベルとしては釣り合ってるぜよwwww
256名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 22:28:19 ID:8v2fgebB0
>>253
>続きを読みたい人間もいるんだから叩くのは全部終わってからにしてくれ

生憎と相手の機嫌を配慮して、言いたい事を我慢する必要は無いと思っているからね。
ご機嫌を取らないとssを投下してくれない人なら無理に投下してもらわなくて結構。
少なくとも俺はね。あなたは発言して貰いたいなら、あなたが一生懸命ご機嫌取れば
いいじゃん。俺はそんなのごめんなんでね。
257名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 22:30:46 ID:CkVhCyQQ0
    _, ._
  ( ・ω・)
  ○={=}〇,
   |:::::::::\, ', ´
、、、、し 、、、(((.@)wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
258名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 22:35:05 ID:bFWnAWuF0
>256
間違いなく鳩2の、特に禁止されている内容でもない、
しかも読みたいと宣言している人間もいるSSを、内容が気に入らないから、
作家の態度が気に入らないからという理由で叩くんならお前が荒らしだ

お前自身がこのスレを荒らすつもりで書いてるなら止めない(荒らしを説得しても仕方ないからね)
そうでないなら、気に入らない書き込みはスルーするのが2chのルールだよ
259名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 22:42:41 ID:JSQb9p5w0
>>256
>生憎と相手の機嫌を配慮して、言いたい事を我慢する必要は無いと思っているからね。
お子様の思考だなぁ
俺は叩くなとは言ってないしご機嫌を取れとも言ってない
嫌なものをスルー出来ない人は2chにこないほうがいいんじゃない?
あんた個人の感情なんてどうでもいいから周りに配慮してくれ
ここが何のスレか考えて欲しかったがあなたの精神年齢じゃ無理か
260名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 23:19:44 ID:sxRIst+M0
        __
       /ヽ /\  キリッ
     / (ー −)\   
     (   (_人_)  )  言いたい事を我慢する必要は無いと思っているからね
     ノ   `-'  ヽ
    (_つ    _つ


        __
       /ノ ヽ\     だっておwwwwwwwwwwwwwwwwwww
     / (● ●)\   ここはお前の日記帳じゃないおwwwwwwwwww
     (  o゚(_人_)゚o )  チラシの裏にでも書いてろwwwwwwwww
     ノ/) )) lr-l  /) )) バン!!
    (_つ ))`-' _ つ ))  バン!!
261名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 23:36:15 ID:8v2fgebB0
>>259
>俺は叩くなとは言ってないしご機嫌を取れとも言ってない
>嫌なものをスルー出来ない人は2chにこないほうがいいんじゃない?

ここで言うスルーしろという事は叩くなというという事だろう?
良くもまぁ、こんな短い文章で前言を翻す事ができるね。

>あんた個人の感情なんてどうでもいいから周りに配慮してくれ
>ここが何のスレか考えて欲しかったがあなたの精神年齢じゃ無理か

あなた自身、周りに配慮せず、俺の発言をスルーせずに文句をつけた上に
俺には「嫌なものをスルーしろ(何も言うな)」というわけだよね。そんなに何もかも
自分の思い通りにしたいわけ?

しかし、不思議なんだけど「スルーしろ」とことさらに叫ぶ人間ほど
自分が嫌なものはスルー出来ないというのはどういう事なんだろうねw
262名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 23:36:55 ID:HUJZToVD0
作者自身云々に関してはこのさい置いとくが
SS自体は続きが気になるんで俺は待ってる。

つかSSの内容だけ気にすればいいじゃない、
作者の人間性とかどうでもいい。
263名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 23:54:19 ID:OTy3DiuL0
むしろこれだけ大勢の人間が、まだこのスレを見ていたことに驚いた俺w
264名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 23:56:11 ID:QUCa/PuB0
>261
SSの内容についての批判感想は自由だが、
他人の感想には文句つけない。内容に関係ない作者叩きはスレ違い

少なくとも俺は此処のルールをそう理解していたんだけど、違うの?
じゃあこれからはどんどん作者を叩いて、叩いた奴も叩いて、感想や批評も片っ端から叩いて、
今みたいに議論だらけのスレにしていいのね? 少なくとも>261はそうしたいのね?
265名無しさんだよもん:2008/07/29(火) 23:56:55 ID:peVSQuIw0
>>ここで言うスルーしろという事は叩くなというという事だろう?
259は叩くなら最後に叩けと言ってるじゃないか
スルーってのはそういう意味だろ

>>あなた自身、周りに配慮せず、俺の発言をスルーせずに文句をつけた上に
>>俺には「嫌なものをスルーしろ(何も言うな)」というわけだよね。そんなに何もかも
>>自分の思い通りにしたいわけ?
マジレスすると嫌いな作者のSSとコメをスルーしろと言ってるんだぞ
あと端から見れば自分の思い通りにしたいのはお前のほうなんだがな
言いたい事を我慢する必要は無いとか言ってるくらいだし
そもそもSS読んでないなら粘着するなよ

>>しかし、不思議なんだけど「スルーしろ」とことさらに叫ぶ人間ほど
>>自分が嫌なものはスルー出来ないというのはどういう事なんだろうねw
お前のせいでSSの続きが読めなくなるかもしれないからだろ
自分がなんで叩かれてるか理解できないなら消えてくれ


つか文章読めない人間はSSスレに来るなよぉ
あとなんで特定のレスにだけ反応するんだコイツは
266名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 00:04:59 ID:a3m52qAW0
       / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
       |  おまえらも |
  ∩_∩  |          |
  (゚w゚)  <  暇な奴ら   |
 (   )  |          |
  | | |   |  だなぁ    |
 (___)__)  \_____/
267名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 00:08:32 ID:+pFBfRf20
自分に都合の悪い部分は無視して、揚げ足取れる部分だけレスするってのは煽りの常套手段だからな
これだけで作者はID:8v2fgebB0の意見を聞く必要が全くないって判断できる

こいつの意見を要約すりゃ「お前らは俺に配慮しろ。俺は誰にも配慮しない」だもん。完全に荒らしの類
268名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 00:09:36 ID:eZF/74vS0
>>264-265
相手すんなボケ
SSに興味ないとか言いつつ後書きだけは読んでる時点で荒らし確定だろ
こういう奴は自分の非は認めないから反論は無駄
269名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 00:14:17 ID:KKvk2uFx0
どうでもいいが、単発IDの擁護が多すぎて気持ち悪い
NGしたいから、わざわざID変えないで欲しいんだが
270名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 00:14:41 ID:CB5CKv8k0
今まで散々文句いうなって空気つくって作者図に乗らせておいて
今度は作者の暴言を吐いても、SSを叩くのは自由。作家叩きはすんなって
何度この流れするつもり?
問題点をすり替えて、言うことを変えて、煽りを叩く擁護は見てて気持ち悪いわ
271名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 00:29:51 ID:m7hoijAP0
ここまで感情が激化すると、多分お互い引っ込みがつかなくなるだけだと思うけどね。

これはただの提案なんだけど、投稿者は続きを投稿掲示板の方で書くってわけにはいかないの?
さっき見てきたらまだ掲示板生きてたみたいだし。
で、読みたい奴は感想もそっちに書いてやればいいんじゃないの?

SS専用スレ投稿用掲示
http://www2.atchs.jp/sstoukou/
272名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 00:51:31 ID:U/uO2kaU0
解決にはなってないけど、
作者が今後も投稿続けるつもりなら確かにそのほうがいいかもね
少なくとも読みたい人間は行けば読めるし目障りに思ってる人間は見なくて済む

とりあえずこの空気なんとかせんと別の作家さんの作品投稿が滞る
273名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 00:53:18 ID:uJ9L5EaV0
お前ら熱くなり過ぎだ
読みたくないなら単にSSのタイトルNG登録すりゃいいだけだろJK
274名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 02:06:16 ID:iGYwNIpd0
そうそう。荒れても何でもカスみたいなデータリソースが消費されるだけだしね。
むしろ荒らそうよ。
「なんだ。活発なんだ。人がいっぱいいるから私も書いて叩かれよ。どうせ叩かれるなら内容のある濃い叩かれ方がいいな。」
という2ちゃんねるの基礎(殺伐とさせて、質の向上、効率化)に従った流れを推奨するようなテンプレを作ればいい。
私も何個か書いてきたけど、乙とかだけで、内容について話されることがないからちょっと張り合いがない。
内容がないからといわれれば、それは私のせいなのだけども。
275名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 02:10:27 ID:3lyAVHA80
最近いいんちょ分とこのみ分が足りていない。
いいんちょエネルギーとこのみエネルギーがほしい・・・
276名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 02:17:16 ID:uJ9L5EaV0
>>274
感想書きたきゃ自然と出るだろ
なんで強制されなきゃならねえんだ
馬鹿か
277名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 02:28:15 ID:b6+AxyeoO
慌てない慌てない
夏休み夏休み

つーか上で長文で文句つけてる馬鹿、本スレでゴタク呼ばわりされてるヤツそっくりだな
278名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 07:03:43 ID:8dAAqVzC0
SS自体が面白ければ自然と感想はつくだろ
逆につまらないSSに頑張って具体的な感想をつける読み手ってのは、
作家を育てたい人や、雰囲気良くして他のSSを呼び込みたい人、あと自分にも感想が欲しい作家とかかw

実際、ここに投下されたSSに具体的な感想がつくことは殆どない
かわりに作家が厨っぽかったり失態するといつも叩き&擁護&議論でスレが進む

結局、このスレに面白いSSは皆無
最近じゃ>238とそのSSが一番スレ住人を楽しませてるってとこだなw
279名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 08:27:40 ID:iGYwNIpd0
なぜ>>276みたいな返答が来るのか理解できない。
見た目過疎スレなら誰も書かない。という話をしただけなのに。
280名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 08:55:35 ID:mxT1XXn90
>>274
感想欲しいならそのことを明記したほうがいいと思うよ
ちょっと厳しい感想書くと辞めちゃう書き手もいるから皆控えてるんでしょう

>>278
性格悪い奴がいるんだからしかたない
褒めれば敵視して叩きだすし叩けば面白がって便乗する
だから誰も感想なんて書かない
荒れて続きが読めないの嫌だからね

>>279
見えない敵と戦ってるんだよ
勝手に強制されてると思い込んでるあたりとかもうね・・・
281名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 09:42:22 ID:b6+AxyeoO
そんなに感想欲しけりゃ自分のブログでやりゃいいんじゃねーの
てめえに反応が少ないからって『みんな叩いて荒らしてよ〜』なんて言うヤツに賛同なんてできんわ
他所でやってくれ
282名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 09:57:21 ID:mhQEHUir0
いいねえ賑わっててw
まだこんだけギャラリーがいたと
鳩2関連スレ全体がとっくに見捨てられてて不思議じゃなかったから
283名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 11:11:33 ID:UJ5WXkbF0
なぜスルー出来ないんだろうな
>>1も読めない、我慢も出来ない、そんな短気な奴ばっかりなのか?
284名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 11:27:45 ID:mxT1XXn90
>>283
作者叩いてる連中はそれがただの自己満足じゃなくてスレのためだと勘違いしてる
285名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 11:50:55 ID:dZBneLMN0
    _
  __'´   ヽ
  、ヽノノ))))〉
  10)!´ヮ`ノ
   f]つ!つ
    く/_|〉
    し'ノ
286名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 11:52:53 ID:iGYwNIpd0
>>284
いや、ただのストレス発散でしょ。
287名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 12:31:00 ID:OZaQQ4T10
日本の夏 ピーの夏
288名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 12:33:06 ID:GV8EhDid0
>>283

    そだ   |-''ヽー---、 ヾヾヾ
    れが   |{{{ }}}))))ヽ、}|| l||i
    が    |{{{||リリ彡ンリノノハ l|||
    い    |ミ、ヾ彡彡彡ノノノ} ||||
    い    /ヾヾヾヾヽ三彡ソ} |||
    !!    /ヾヾ}} }}ハヾヾ三彡;} || に
 \___/ハ{{ }}|l||}}}ト、ヽ}} 彡シil l| や
  {ミミリ  {{{::{{ {{{ {||||| }}ハヾ}リ 彡シ}i{   っ
 l|{ミミリ ノニミミョェ、,, |rェィ彡三ヽ1ミ}ll、ヽ
 l|,{ ミl  イエユミ、i:: iミィエフシ' lミi.} l|
 l|ト、ミl   ,,.-‐';: i !`゙゙ー-  i",イ l|
 |lトiiヽl       ; i !、    /t'/ l||
  rイ{ l     ヾく_ソ    / |ト、 l||
  (|:.:ヽ ゙、   ゙ー_‐--‐ァ'  / /:} }ヽ、
ノ"l;:;:ヾヽ:ヽ.  、二二  /::://:::l;;;;;;;
:::::;;;;;;:.:\\\       /::://:.:.:l;;;;;;;;;
:::::;;;;;;;:.:.:.::.ヽ\ヽ、__,,ノ ノ/:.:.:.:l;;;;;;;;;;
289無題i〜攻殻家政婦-tHa day Made by carbon dioXide-:2008/07/30(水) 13:28:04 ID:iGYwNIpd0
 こんにちは。イルフアです。
こう書くとなんだかシンシアみたいで包容力があるように感じます。
アもァもどちらにしろ2バイト消費するので、計算機の中ではたまに書き換えて、雰囲気の違いを味わっています。
もちろん、珊瑚様にいただいた名前はとっても気に入ってますよ?誤解なきように。某カメラメーカーのキ○ノンみたいなものです。
暇なときに、自我のプログラムソースやデータソースを眺めながら哲学しているのですが、
私の名前を表記することがやはり多く、ちょっとしたアクセントがほしくなるものなのです。
ちなみに、哲学はわけのわからないもの、という印象をお持ちのかたもいらっしゃるかもしれませんが、
なんのことはなく、物事を整理するというただそれだけのことなのです。
ただ抽象的な言葉で人を惑わすためのものではありません。
こと、計算装置によって形作られている私のする哲学だと、
処理過程の効率化やデータの圧縮という具体的な現象が、
人の見ることができる形で起こるので、より明確に哲学=整理がいえると思います。
DIAが搭載されてると逆にデータが肥大化してしまう事がしばしばなので、
記憶装置も膨大なサイズが必要でして、筐体の価格を吊り上げるのに貢献していますね。
保存方式をもう少し見直してみましょうか。データの肥大化は、創造/整理の比に従っておきるので、
整理にもう少し力を入れる必要がありそうです。人間の方の場合、容量を気にする必要はありませんが、
思考がどのような機械的過程を経て行われているのか見ることができないので、哲学するには私のほうが有利なのかもしれません。
といっている間にもまた、思考した分のデータが増えてしまったようです。
290無題i〜攻殻家政婦-tHa day Made by carbon dioXide-:2008/07/30(水) 13:28:38 ID:iGYwNIpd0
−ぴんぽーん
「はい。今出ます。どちらさまですかー。」
どなたかいらっしゃったようです。
「おはよう。」
「あ、おはようございます。貴明さん。」
「うっすイルファさん。」
「はい。おはようございます。雄二さん。」
「えっと、どのようなご用件で…?」
「ああ。夏休み入って暇になったもんで、雄二にイルファさんとあわせろっていわれてね。」
「そうでしたか。立ち話もなんなので、どうぞお入りになってください。」
「おっじゃましまーす。」「おじゃましまーす。」
久しぶりのお客様です。お飲みものをっと…
「あ、イルファさん。お土産もってきたぜ。珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんに食べてもらってよ。」
「わざわざありがとうございます。」
雄二さんにケーキをいただきました。珊瑚様が喜んでくれそうです。とりあえず冷蔵庫に入れて…
「そちらのソファーをお使いください。」
「他のみんなは?」
「シルファちゃんこっちに帰ってきてるから、みんなで出かけたんじゃないかな。」
「はい。シルファちゃんの私服を選びにお買い物にいかれました。
なぜかミルファちゃんが張り切ってついていきましたが、いったいどんな服を買ってくるんでしょうか…」
291無題i〜攻殻家政婦-tHa day Made by carbon dioXide-:2008/07/30(水) 13:29:18 ID:iGYwNIpd0
−がしゃがしゃ
 まずは軽く砕いて…
「いやぁ、クーラーはいいねぇ。」
「地球温暖化の元凶みたいな扱いだけどな。」
−ごきょきょきょきょ
 原液とミックスして・・・
「温暖化なぁ。たしかに暑いよな…天気予報確か38度だぜ…」
「体温かよ。」
−とぽーっ
「実際どれくらい影響あるんだろうな。くーらー。」
「とりあえず熱に変換る分の電気と温度差を作るための電気と、その電気を作るときのCO2排出の温暖化効果か。」
「お飲み物をどうぞ。冷たいのでゆっくり飲んでくださいね。」
「ありがと」「さんきゅ。イルファさん。」
「うひょー。つめてぇ。甘くないけどうめぇ。」
「うん。うまいなこれ。お茶?」
「フローズン抹茶とでもいいましょうか。砂糖は入ってないのでヘルシーですよ。」
「温暖化に関して、実際行われている取り組みの多くは利権がらみだと思いますよ……」
「なぜそんな突然悲しげな顔なんですか…」
「確かに最近たまにテレビでいうよな。」
「えぇ。エコは儲かりますから…実際のところは関連要素が多すぎて、
何が原因かは特定されませんが、水蒸気がいっぱいいっぱいな感じらしいですよ。」
「らしいね。後オゾン層も温暖化に貢献してるとか。」
「ちなみに人による開発で排出されるCO2は3パーセントほどらしいです。」
「よくしってるね。」
「WEBに書いてありました。」
「……」
「もちろん、変化は起こしてみないとわからないことばかりなので、できるだけ環境を変えないようにすることは大切ですね。」
「ちなみに、私も冷却のための熱電素子で覆われてるんですよ。
やけどによる筐体の破壊を防ぐのにも使ったりするのですが、クーラーごっこもできます。効率はクーラーより悪いんですけどね。」
「あなたに、冷やされたい…」
292無題i〜攻殻家政婦-tHa day Made by carbon dioXide-:2008/07/30(水) 13:29:46 ID:iGYwNIpd0
「だけどよ、本当に大切なのか。」
「ん。」
「もしかしたら滅んだほうがいいんじゃないのか。」
「究極的平和主義か。」
「宇宙平和ですね。素敵です。」
「今日は激しいな。雄二。」
「俺もそう思う。」
「とりあえずその問いの答えとしては、”大切”ということにしておいていいのではないでしょうか。生きるために環境を守る。根本を生存本能として、それにあわせて身勝手を形成していく。」
「まとまってるね。」
「つまり基本自分で考えずに自分に委ねるって事か。」
「委ねた後に思考があるかないかが、今の環境論争の当事者双方の違いを生む感じだね。」
「ところでさ」
「なんですか。」
「あなたに、冷やされたい…」
293無題i〜攻殻家政婦-tHa day Made by carbon dioXide-:2008/07/30(水) 13:30:03 ID:iGYwNIpd0
「形を対象とする性欲ってどうなんだろう。」
「本来の目的であるところの生殖からは、ずれてきているようですね。」
「生殖のための性欲じゃねぇよ。たとえ世間一般で評価されない性欲という言葉で定義されようとも、ぎゅってしたときの幸福感は生殖にカテゴライズするには質が違いすぎる。」
「カルシウム不足だといらいらするといいますが、接触時のイオンチャネルの動作によるカルシウムの細胞内への流入と関係があるのかもしれませんね。」
「あとは思考から形成される心理的作用か。」
「そうそう。心だよ。心。」
「同性愛にも適用できるのかもしれません。」
「…あれ、…なんだかコンクリ詰めにして海底に沈めたはずの記憶が…?」
「気にするな貴明。」
----
>>280
>>281
そうだね。スレの活発さだけがあっても肝心のものがなければ無意味だからね。
右翼と左翼の関係みたいなものかもしれませんね。ちょうどいいとこでつりあってこそ効率化される。

荒れ具合に対してssが少ないからかいたんだぜ。!
たたいてって書かないのは微妙な乙女心なんだぜ。!
自分では何もせずに他人(スレ)に責任を押し付けたいんだぜ。!
294名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 14:56:02 ID:Z1jA5Bbg0
>>293

このssの雰囲気が好きです
外部記憶装置なしに頑張っている貴明と雄二が良い感じです

続きがないと思っていたssの続編が読めてハッピーです
295名無しさんだよもん:2008/07/30(水) 17:30:57 ID:iGYwNIpd0
楽しんでくれてありがとうなんだぜ。攻殻もどきだと、
この言い回しでは当人同士が理解するのに時間いるだろうっていうのも、
理解させるための言い回しとかなにも考えずに、
頭にあるものそのまま書けるからものすごい楽だったりする。>外部記憶〜
296名無しさんだよもん:2008/07/31(木) 15:42:37 ID:h3JM7yr00
>>293
攻殻は見たことも読んだことも無いが、こういうシュールなSSは大好きだ。
297名無しさんだよもん:2008/07/31(木) 21:06:38 ID:0XFWMIz90
ありがとうなんだぜ。!
前回やろうと思ってできなかったシュールギャグに一歩近づいたんだぜ。
298名無しさんだよもん:2008/08/02(土) 12:16:12 ID:zr4rguF/0
・最大文字数:全角換算で1024文字(2048バイト)
・最大行数:32行
・連投可能時間:30秒
・「連続投稿ですか?」のメッセージは、しばらく(=他のホストから板に投稿があるまで)待ってから投稿する

文字数計算ツール
ttp://sussiweb.com/hp/tool/mojisuu.htm

「連続投稿ですか?」を数回繰り返すと、「バイバイさるさん。」と言われて数時間投稿できなくなる仕様が追加されている模様。

これテンプレに加えない?
299名無しさんだよもん:2008/08/02(土) 14:16:46 ID:2TMxq4vs0
テンプレにするには突っ込みどころ多すぎな気がw
俺の経験とかから書くと

・最大文字数は1024文字打てない
 リンクの文字計算ツールで試してみればわかるけど、HTML換算で2048バイトのはずなので
 1024文字いっぱいいっぱいに打つとはねられる

・書き込み時の行数とか文字数をチェックする意味で投稿者は専ブラ推奨
 レス容量とか計算してくれるしプレビュー使えば改行具合とか確認できるので良い

・連投規制は一定時間内に5回投稿すると引っかかるが、適度に間を空けて投稿すると引っかからない
 最初の投稿から一定時間以内に5回投稿すると引っかかる
 だから最初の投稿から一定以上開けると5回以上でも連投できる
 規制に引っかかる時間については不明だけど、経験から言えば大体15〜20分
 現在の時間からさかのぼってその時間内の連続の書き込み回数が4回以下なら次が書ける

・一定時間以内に10レス投稿すると11レス目でさるさんを食らう
 さるさんを食らうと最後の投稿?から1時間程度レスできない

・上記はいずれも1レス投稿した後3分(180秒)以上空けると比較的引っかかりにくい

時間とかの数値に関してはあくまで俺の経験なので、他に投稿経験のある人の補足ヨロ
300名無しさんだよもん:2008/08/02(土) 14:19:47 ID:p0QMXaos0
現状さるさんは30分くらいで再投稿可能になってるな(例>204-206)

http://info.2ch.net/wiki/index.php?Good-By_Monkey
でよくわからないのが、引っ掛かってもHMN条件から外れれば再投稿可能なのか、
一度引っ掛かったらHの間投稿規制されるのか。たぶん前者?
301名無しさんだよもん:2008/08/02(土) 17:31:17 ID:e9HGEI4J0
それって運営が条件変更できるんだろ?
テンプレに入れるには不確定要素が多すぎて、かえって誤解の元になると思うが。
302名無しさんだよもん:2008/08/02(土) 20:41:34 ID:VqSK9Nra0
専用ブラウザも使わないような2ch慣れしてない人向けのテンプレなら、
あまり厳密に書かなくてもいいんじゃないかな

・行数32行
・文字数およそ1000文字(HTML換算2048バイト)
・投下中に連投規制されることがあるので、その場合は間隔を空けて再投稿
・専用ブラウザ推奨

くらいで。連投規制と専用ブラウザをどこまで解説するか
303名無しさんだよもん:2008/08/02(土) 22:31:09 ID:2TMxq4vs0
時間的なものは推測なんで書かないほうがいいかもしれないけど
連投なんかの回数に関しては決まってるし、長らく変わってないので書いていいんじゃないかな

・5回を越える連続投稿は連投規制がかかる事があります
・連投規制にかからない場合でも一定時間の間に10回を超える書き込みを行うと規制(バイバイさるさん)がかかる場合があります
・いずれの場合もしばらくすれば解除されるのであわてず騒がずしばらく待ちましょう

ぐらいで
304名無しさんだよもん:2008/08/03(日) 15:04:28 ID:htO9lNxp0
最近投稿がとどこおってるね。夏なのに。
305名無しさんだよもん:2008/08/03(日) 15:50:56 ID:2IqZYuE30
投下数自体は、平均ペースからやや多めくらいあるんじゃない?
シリーズ物が主で単発のSSが少ないのは少し寂しいかも知れない。ので新作募集

願わくばそろそろ草壁さんに出番が
306名無しさんだよもん:2008/08/03(日) 21:57:04 ID:tJcJ4KC30
いいですなぁ草壁さん
307238:2008/08/03(日) 22:53:04 ID:ci7K6ubn0
こんばんは。238です。
>>271 さんの助言に従い、避難板の方に落としました。
今後は、“表”の方には、投下の告知にだけ参ります。
それでは、宜しくお願いします。
http://www2.atchs.jp/sstoukou/
15 以降のレスになります。
308落ちのない猫明:2008/08/03(日) 23:25:40 ID:htO9lNxp0
「草壁さん草壁さん。」
「なんですか?貴明さん。」
「膝枕してほしいな。」
上目使いで首をかしげる貴明。
「いいですよ。どうぞ使ってください。」
草壁さんのももに頭を置く。
「草壁さん草壁さん。」
「なんですか?」
「髪をなでてほしいな。」
「はい。こんな感じですか?」
気持ちよさそうに目を細め首を動かす。
「ところで貴明さん。」
「なに?」
「優季って呼んでくれないんですか?」
撫でながら覗き込む。
「優季。」
近くなる顔と顔。
「はい。」
「抱きしめていい?」
「いいですよ。」
そっとおなかに腕を回す。
「貴明さん。」
優季は目を瞑る。
さっと、触れる程度のキスをして、
貴明は恥ずかしそうに優季に顔をうずめた。
309一レスにまとめるのって難しい:2008/08/04(月) 08:41:35 ID:PBk2iQRR0
「こんばんは。」「こんばんわ。貴明さん。」
いつものように、夜のお茶会が開かれた。夜に校舎に恒常的に忍び込めるのは、
なんだか少し安全保障的に不安になる。しかも私立なのに。補助金削減のあおりだろうか。
「どうしたんですか?」
「いや、今日も暑いなーって。」
「そうですねー。」と、優季は「なので今日は、アイスティーを持ってきました。」とカップを持ち上げてみせる。
「いいね。」少しニヤニヤしながらカップを受け取り、腰を下ろす。
「ここで問題です。夏と言えば何。」
「夏・・・と言えばですか。」
「うん。」
「・・・うーん。そうですねぇ。浴衣でしょうか。」と言う回答に対し「ゆかたかぁ。それは用意してなかったなぁ・・・」と苦笑する。
「何か用意してくださったんですか。」
「ちょっと窓のほう向いててくれる?」
「はい。わかりました。」
貴明はコントローラー(珊瑚謹製)をポケットから取り出し、順序良くすべてのスイッチを通電させる。
・・・・・・
・・・
「あ、目は開けててね。」
「あ。はい。」
−ぴゅー
はっとして目を開ける。
−ぴゅーぴゅー
そこにはかすかな光る筋があった。
−ぴゅーぴゅーぴゅー
美しい炎の花が開き、優季は「はぁああ」と感嘆する。それと同時に貴明は彼女を後ろから抱きしめる。
−どん どんぱこん ぱーんくぱぁどん
「だいすきだよ。優季。」
そっと口づけをする二人。
「はい。私も大好きです。貴明さん。」
・・・
いくら警備が手薄だからってちょっと派手にやりすぎたか・・・後始末どうしよっかなぁ・・・
310名無しさんだよもん:2008/08/04(月) 20:53:28 ID:chtkiWIL0
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 ご 注 意 ! !

 これから投稿するSSは、AD菜々子ルート後のお話です。
 菜々子ルートのネタバレが含まれておりますので、まだクリアしていない方は
 この後の12レスを読み飛ばしてください。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
311菜々子Strike! 3(1/11):2008/08/04(月) 20:54:02 ID:chtkiWIL0
 あたし、菜々子。消しゴムにはこだわる女だも。
 あたしには好きな人がいます。名前は……もうしょーかいしなくても分かるよね。

 放課後。でも今日はお兄ちゃんと一緒じゃありません。
 今日は学校の宿題がいっぱい出ちゃったので、スミレちゃんとひとみちゃんと一緒に、菜々子の
お家で宿題をやることになったんです。
 あ、もちろん、お兄ちゃんのことなら大丈夫です。お兄ちゃんの学校に電話して、菜々子がお迎え
に行けないことをお兄ちゃんに伝えてくださいってお願いしておきました。これで安心だも☆

 その頃、貴明のクラスのHR……
「えー、連絡事項は以上でーす。……あ、もう一つあったっけ。あ、あの、河野くん」
「え、何、小牧さん?」
「えっと、さっき学校に妹さん……から連絡があって、今日は用事があって、その、お迎えに来られ
ない……とのことです」
「は、はぁ」
 ひそひそ……
「河野君って妹さんにお迎えしてもらってるんだ」
「お兄さんが妹の学校に迎えに行くならまだ分かるけど、迎えに来てもらうって……」
「妹ってホラ、あの子だろ。放課後、いつも校門の前にいるあの子」
「ああ、あの子な。――アレ? そういや河野に妹なんていたっけ? どうよ向坂?」
「うんにゃ、貴明は一人っ子だぞ。あの子は……まぁ、その、アレだ」
「……そうか、アレか」
「そう、アレだよアレ」
 じ〜〜〜っ(クラス中の冷たい視線)
「……(な、菜々子ちゃん……勘弁してくれぇ……)」
312菜々子Strike! 3(2/11):2008/08/04(月) 20:54:36 ID:chtkiWIL0

「あーもーやだ!」
 ここはあたしのお部屋です。三人で宿題をやってたのですが、スミレちゃんが突然バタンと倒れ
こんでしまいました。
「もう、ダメだよぉスミレちゃん。ホラ起きて」
「うう〜、もう無理、限界。後でひとみのを写させて」
「ダメですよスミレちゃん。宿題は自分でやらなくちゃ」
 そう言いながらスミレちゃんは自分のをスラスラと解いてます。
「うう〜、ひとみのイジワル! じゃあ菜々子のを写すからいいもん! ねー菜々子☆」
「あ、あうぅ……」
「ナナちゃんのもダメ」
「なんだよー、ひとみはホント意地が悪いなぁ。ハイハイ分かりました、やればいいんでしょ」
 そう言ってスミレちゃんは仕方なさそうに起きあがりました。だけど突然、
「あ、そうだ! だったら、菜々子のお兄さんに手伝ってもらおうよ!」
「え、えええっ!?」
 ど、どうしてそこでお兄ちゃんが出てくるの〜!?
「菜々子はいっつもお兄さんに手伝ってもらってるんだよね。あたしも一度くらい、優しいお兄さん
に宿題手伝ってもらいたいなぁ〜。ウチのバカ兄貴は絶対そんなことしてくれないし」
「い、い、いっつもじゃないも!」
「あ〜、赤くなった赤くなった。菜々子はすぐ顔に出るんだよね〜。そっか〜、やっぱりいっつも
お兄さんに手伝ってもらってるんだ〜」
「あ、あうぅ〜」
 バレちゃったも〜。菜々子、そんなに顔に出るのかなぁ?
「お兄さんのお部屋で、お兄さんのとなりに座って、菜々子が『お兄ちゃん、ここ分からないも〜』
って甘えた声でお願いしたら、お兄さんが優しく――」
313菜々子Strike! 3(3/11):2008/08/04(月) 20:55:11 ID:chtkiWIL0
「スミレちゃん!」
「わっ! な、なに、ひとみ?」
 はう! ひとみちゃんが怒った!?
「お兄さんのとなり、じゃなくて、お兄さんのおひざの上よ」
「あ、そっか」
「はう!?」
 あ、あうぅ、そ、そんないっつもおひざの上じゃないも〜!
「でも、いいかも。それ」
「え?」
「このままじゃスミレちゃんもやる気にならないみたいだし、それに」
 ひとみちゃんはニコッと笑うと、
「わたしも、お兄さんにお勉強教わりたいし」

 結局、スミレちゃんたちに押し切られて、仕方なくあたしはお兄ちゃんに、今からお兄ちゃんの
お家に行ってもいいか、電話で聞いてみました。
 お兄ちゃんは「いいよ」と言ってくれたので、あたしたちはお兄ちゃんのお家に行きました。
 でも、なぜかお兄ちゃんは落ち込んだ感じの声でした。どうしたんだろ?
 ピンポーン。
 呼び鈴を押して少ししたら、ドアを開けてくれたのはシルファお姉ちゃんです。
「……」
「? どうしたの、お姉ちゃん?」
 なぜかふきげんそうなお姉ちゃん。あたしがそう聞くと、
「……妹が増えたれす」
「増えた?」
 お姉ちゃん、何を言ってるんだろ?
314菜々子Strike! 3(4/11):2008/08/04(月) 20:55:45 ID:chtkiWIL0
「ご主人様ー! 妹三丁お待ちれすー!!」
 お姉ちゃんがそう言うと、居間からお兄ちゃんが出てきて、
 ペシッ。
「ぴいっ!?」
 あ、お兄ちゃんがお姉ちゃんの頭にチョップした。
「全く、二人は菜々子ちゃんの友達だって何度も言ってるのに。
 いらっしゃい、菜々子ちゃん、スミレちゃん、ひとみちゃん。さ、入って」
「あ、うん。お兄ちゃん」
「おじゃましまーす」
「お邪魔します」
「ぴぃぴぃ……ぶったぁ……シルファのことぶったぁ……
 めいろろぼ虐待れす! 訴えてやるれす! お茶なんか絶対らさないれすーっ!」

「粗茶れす」
 ここはお兄ちゃんの部屋です。宿題を始めてしばらくしたら、お姉ちゃんが紅茶とお菓子を持って
きてくれました。
「ありがとうシルファちゃん。じゃあみんな、休憩にしようか」
「べ、別にご主人様に誉められることなんてないんらもーん。シルファはめいろろぼらから……」
「わあっ、クッキーおいしそう! ありがとうお姉ちゃん!」
「べ、別にちみっこに誉められても嬉しくなんか……」
「これってもしかしてメイドロボさんの手作りなの? すっごーい!」
「そ、そんなおらてたって……」
「紅茶がとってもいい香り。こんなメイドロボさんがお家にいるなんて、お兄さんは幸せ者ですね」
「ら、らから、そんなのめいろろぼの基本らもん……」
「まぁ、俺様としては紅茶より、泡の出るお飲物と枝豆でも出して欲しいところだがな」
315菜々子Strike! 3(5/11):2008/08/04(月) 20:56:19 ID:chtkiWIL0
「そ、それは気付かなかったれす。じゃあさっそくって、え……?」
 え……?
「うぃーっす」
「えええっ!?」
 い、い、いつの間にか、かみちゃまがいます! なんか当たり前って感じで、あぐらをかいて
くつろいでます!
「な、な、なんらお前は!?」
 お姉ちゃんがビックリしてかみちゃまに怒鳴ります。あ、これはまたいつもの――
「なんだチミはってか? って、これも古いしなぁ……」
 あれ? いつものポーズを決めないで、かみちゃまが何か悩んでいます。
「ねぇねぇかみちゃま」
「ん? なんだねなーりゃん」
「いつもの、スパイまーりゃ! ってやらないの?」
 あたしがそう聞くとかみちゃまは手を振って、
「ああ、ダメダメ。アレはもう旬が過ぎたからな。
 目下新ネタ募集中だ。皆さん、リクエストがありましたら是非こちらまで! はいはいテロップ
テロップ」
 何も見えません。
「ま、まーりゃん先輩、いつの間に……」
「ん? さっきからずっといたぞ。そうだな、たかりゃんがこっそり隣のなーりゃんのおヒップを
ナデナデし出したあたりから」
「そんなことしてません!!」
「ええっ、そんなことしてたの!? すごーい、全然気付かなかった」
「私は気付いていましたよ。お兄さんがハァハァと荒い息をたてて、一方ナナちゃんは恥ずかしさと
気持ちよさの板挟みに身悶えしてビクン、ビクンって」
316菜々子Strike! 3(6/11):2008/08/04(月) 20:56:56 ID:chtkiWIL0
「だからしてないってば!」
「びくんびくんなんてしてないも!」
「ほう、貴様、子供にしてはノリがいいな」
「お褒めにあずかり光栄です」
 あ、かみちゃまがひとみちゃんのことほめてる。
「あなたがナナちゃんのお師匠様ですね。お噂はかねがね」
「そう言う貴様はなーりゃんの、頭のいい方の親友だな。名はひとみだったか」
「はい、その通りです」
「んがっ! それじゃあたしがバカみたいじゃないかーっ!」
「なーりゃんからはそう聞いているぞ。頭のいい方がひとみで、悪い方がスミレだってな」
「な〜な〜こぉ〜!」
 ス、スミレちゃんが怒ってるよぉ!
「そ、そんなこと言ってないよぉ〜! ひとみちゃんは頭がよくて、スミレちゃんはとっても元気
なんだよって言っただけだも〜!」
「まぁ、なーりゃん優しいから、バカな親友をバカとは紹介できないよにゃ〜。
 バカに対する誉め言葉なんて、”元気がいい”が関の山だろ」
「あたしはバカじゃなーい!!」
「ところで、ええと……」
「ああ、俺様のことはまーりゃん、あるいは神と呼ぶがいい」
「まーりゃんさんは、どうしてこちらにいらしてるんですか?」
 はう!? ひとみちゃん、スミレちゃん無視してかみちゃまと話してるも!
「このみんの家で犬ッコロと戯れていたのだが、――あ、このみんというのはたかりゃんの幼なじみ
で、まぁ、ぶっちゃけなーりゃんの恋のライバルだ」
「へぇ、そうなんですか。お兄さんってやっぱりモテるんですね」
317名無しさんだよもん:2008/08/04(月) 20:57:17 ID:NG7Dd7Pb0
支援
318菜々子Strike! 3(7/11):2008/08/04(月) 20:57:31 ID:chtkiWIL0
「あ、いや、このみとはそういう関係じゃ……って、まーりゃん先輩、またゲンジ丸使って何かする
つもりですか……?」
「そしたら、貴様らがたかりゃんの家に入るのを目撃してしまったのでな。新たな展開に胸躍らせ、
こうしてはせ参じたワケだよ」
「新たなてんかい? かみちゃま、どういうこと?」
「いやー、たかりゃんのペド公っぷりには俺様も恐れ入ったよ。なーりゃんだけでは飽きたらず、
その友達にまで手を出してしまうとは」
「な!? 何言ってるんですかあんたは!」
「えええっ!? お、お兄ちゃん、スミレちゃんやひとみちゃんも妹にするつもりなの!?」
 あ、あうぅ、スミレちゃんとひとみちゃんがライバルだなんて!
「ち、違うよ! 妹は菜々子ちゃんだけだよ――」
「ああん? このみんだって妹的ポジションじゃんか。
 要はアレか、目指せ妹12人か? だったら俺も妹にしておくか?」
「先輩は俺より年上でしょうが……」
「そういやシルシルも確か三姉妹の末っ子だったな。ってことは貴様も妹ポジションか」
「な、なんれすって!? まさかなななならけじゃなく、このシルファまれ妹扱いらったとは!
 ……れも、シルファはあくまれご主人様のめいろろぼれす。例えご主人様が腐れ外道(げろう)な
ヘンタイ野郎れも、らまってお仕えするのがめいろろぼ!
 ご主人様、いえ、お兄ちゃんご主人様。これからもシルファは妹めいろろぼとして、らめらめな
お兄ちゃんご主人様のめんろーみてやるから、安心しろれす!」
「い、いや、違うから……」
「へぇ〜、そうなんだ。お兄さんの妹、かぁ……」
「スミレちゃん?」
 スミレちゃんはうーんと考え、
「……いいかも。うん、決めた! あたし、お兄さんの妹になる!」
319菜々子Strike! 3(8/11):2008/08/04(月) 20:58:06 ID:chtkiWIL0
「えええっ!?」
「だって、お兄さん優しいもん。ウチのバカ兄貴とは大違い。それに、妹になったら菜々子みたいに
いっつもケーキとかおごってくれるんでしょ。前からうらやましいなって思ってたんだ」
「そ、そんなのダメだも! ケーキ目当てで妹なんておかしいも!」
「そうですよ。お兄さんが菜々子ちゃんにケーキとかおごってるのは、菜々子ちゃんを自分好みに
育てるためなんですから」
「あ、そうなんだ。そういえば菜々子、ちょっと太ったよね」
「あうーっ!?」
 ふ、ふ、太ってなんか! ……帰ったら体重計乗ってみるも。
「でも、私もなろうかな。お兄さんの妹」
 え、えええっ!? ひとみちゃんまで!
「お兄さんってとっても面白いし、優しいし、年下のわたし達とも対等に接してくれるし。
 それにわたしひとりっ子だから、お兄さんがいたらいいなってずっと憧れてたんです。
 わたしもナナちゃんみたいに、お兄さん好みに育てられてもいいですよ。駅前のケーキ屋さんの
お芋のケーキ、今度こそおごってくださいね」
「お、お兄ちゃん! お芋のケーキってどういうこと!?」
「あ、いや、それは……」
「お兄た〜ん。あたちはそんな贅沢言わないからぁ〜。プレイ1回につきてろるちょこ3個でいい
から、妹にしてぇ〜ん☆」
「だからあんたは年上でしょうが!!」
「あ、そうだ!」
 と、スミレちゃんはお兄ちゃんのそばに……って、えええっ!?
「うおっ! ちょ、ちょっとスミレちゃん!?」
「えへへ、ちょっと恥ずかしいけど、座り心地いいかも」
 ス、ス、スミレちゃんがお兄ちゃんのおひざの上に座ったも!!
320菜々子Strike! 3(9/11):2008/08/04(月) 20:58:46 ID:chtkiWIL0
「ス、ススススミレちゃん、何してるのぉ!?」
「じゃあ、わたしも」
「のわっ!?」
 って、ひとみちゃんまでお兄ちゃんのおひざの上に!?
「ふふっ。確かにナナちゃんから聞いていたとおり、とっても座り心地がいいですね。
 それになんだか心がほわほわします。お兄さんはどうですか?」
「い、いや、さすがに二人一緒に座られると……」
 お、お兄ちゃん、お顔が真っ赤だも!
「もしかして……お兄さん、興奮しちゃってます?」
「い、いや! そんなことは決して!」
「あ〜っ! お兄さんってばエッチなこと考えてるんだ〜! やーらしー」
「わたしは構いませんよ。男の人がそうならないと、人類は子孫を増やせませんから」
「い、いや、だから違うって……」
 とか言ってるけど、お兄ちゃん、ちっとも二人をどかそうとしないも! やっぱりあれは嬉しいに
違いないも!
「こ、こらちみっころも! お兄ちゃんご主人様から離れるれす!」
「まぁまぁ、好きにさせてやりたまへ。お兄ちゃんも満更じゃなさそうだし、それにシルシルは後で
お兄ちゃんに乗っかればいいだろ」
「……べ、別にシルファは乗っかったりしないもーん」
 はう! シルファお姉ちゃん、お顔が真っ赤だも! たぶん後で乗っかるも!
「ねぇお兄さん、ケーキはいいから、今度あたしと一緒に遊んでくれる?
 出来れば菜々子みたいに遊園地に連れてって欲しいな。それか映画とか水族館とか」
「わたしはやっぱり、まずお芋のケーキを」
 ゆさゆさ。
「ちょ! ちょっと二人とも、動かないで……」
321菜々子Strike! 3(10/11):2008/08/04(月) 20:59:20 ID:chtkiWIL0
「おに〜いさん☆」
「お・に・い・さ・ん」
 ゆさゆさ、ゆさゆさ。
「だ、だから、そんなに動かれたら……」
 お、お兄ちゃんが、お兄ちゃんがぁ……

「ダメーーーっ!!」

「菜々子?」
「ナナちゃん?」
「スミレちゃんもひとみちゃんも、お兄ちゃんのおひざの上に座っちゃダメなんだも!
 お兄ちゃんのおひざの上に座っていいのは、な、菜々子だけなんだも!」
「おお、なーりゃんがキレた」
「お、お兄ちゃんの妹は、菜々子だけだも。
 他に妹作っちゃやなんだも……仲良くしちゃ、やなんだも……
 う、うぇ……ふえぇ……」
「あちゃ〜、泣き出しちゃった」
「あらら、やりすぎちゃいましたね」
「スミレちゃん、ひとみちゃん、悪いけど……」
「あ、はい」
 お、お兄ちゃんが二人をどかせて、あたしのところに……
「菜々子ちゃん、はい」
「あ……」
 お兄ちゃん……、菜々子を、おひざの上に座らせてくれた……。
「ごめんね、菜々子ちゃん。俺、また菜々子ちゃんを泣かせちゃったね。お兄ちゃん失格だ」
322菜々子Strike! 3(11/11):2008/08/04(月) 20:59:53 ID:chtkiWIL0
「う、ううん、お兄ちゃんは悪くない……
 え、えと、やっぱり悪い、かなぁ。だってお兄ちゃん、スミレちゃんたちに座られて、嬉しそうに
してたから……」
「そ、そう見えた? はは……」
「うん、見えたも……。だから、だから……」
 なでなで。
 はう! お、お兄ちゃんが、頭なでなでしてくれた……
「じゃあ、どうすれば許してくれるかな? パフェがいい? それともケーキ?」
「そ、そんなのいらないも。そ、その代わり……」
「その代わり?」
「ずっと、なでなでしててほしいも……」

「……なんか、二人だけの世界に突入してしまったにゃ〜」
「……ムカつくれす」
「まぁまぁ妬くな。シルシルはみんなが帰ったあとで、せいぜいたっぷりご主人様に甘えるがよい」
「ら、らからシルファは別にヤキモチとかじゃ……」
「それにしても菜々子もお兄さんも、思いっきり見せつけちゃってくれてるね」
「もうわたし達のことなんか見えてないんでしょうね、きっと」
「あ〜あ、結局、お兄さんの妹は菜々子だけってことかぁ。ざーんねん」
「ええ、今は、ね」
「ん? ひとみ、何か言った?」
「いいえ、何も」
 にっこり。

 おしまい。
323菜々子Strike! 3の作者:2008/08/04(月) 21:00:56 ID:chtkiWIL0
どうもです。と言うかお久しぶりです。
>>317さん、支援ありがとうございます。

およそ三カ月ぶりの菜々子Strike! いかがでしたでしょうか?
またネタが思いついたら書くつもりなので、そのときはよろしくです。

ところで、冒頭の”ご注意!!”はもう要らないかなぁ?
AD発売からもう半年以上経ってるし……
324名無しさんだよもん:2008/08/04(月) 21:33:18 ID:6gk+Ct4K0
>308
>309
二作品とも乙。ってかリクエストに応えてくれてありがとうです俺>305
草壁さんは1レスでも可愛いな。>308のは恋人行動がギュッと詰まって萌えた
>309の方は花火をリモコンで着火したの? あと抱きしめた後の擬音はやはりエ(ry

>323
久々乙〜。ほとんど会話だけなのに情景が目に浮かぶのが上手い
○学生が三人、○学生の妹的存在が三人、○学生の妹的存在が三人で膝の上に……堪らん(変態
325名無しさんだよもん:2008/08/04(月) 21:45:47 ID:lU+ojDkq0
   _、_
 ( ,_ノ` )      n
 ̄     \    ( E) グッジョブ!!
フ     /ヽ ヽ_//
326名無しさんだよもん:2008/08/04(月) 23:13:25 ID:wEE9rpE6O
乙です
の〜てんきでけっこうこのななななシリーズ好きです
各キャラ、いい味だしてますし


草壁さんのSSもグッジョブ
327名無しさんだよもん:2008/08/05(火) 06:29:09 ID:rdTbAWtM0
読んでくれた人、どうもです。

>>324 リモコンで花火着火です。いくつかの花火がくぱぁとか炸裂してる間に告白してるだけですよ。
くぱぁ。やっぱり描写が不完全ですねくぱぁ。
328名無しさんだよもん:2008/08/05(火) 06:38:32 ID:V4Nbd8080
>327
そうか。てっきり花火がくぱぁとかどんぱこんしてる間に草壁さんのくぱぁをどんぱこんしてるのかと妄想したぜ
だいすきだよは事後フォローで、派手にやりすぎたってのはヤリ過ぎた反省かと。後始末という単語も……妄想し杉だな俺w
329名無しさんだよもん:2008/08/06(水) 19:55:55 ID:QLJBA8t/0
ほのぼのささらSSが恋しいこのごろ。
330名無しさんだよもん:2008/08/06(水) 20:57:56 ID:VV4iyMsbO
>>329
狂おしい程に同意。
331名無しさんだよもん:2008/08/06(水) 21:55:22 ID:rV0P0+6/0
はげどう
332名無しさんだよもん:2008/08/06(水) 22:13:18 ID:j5k5/Kwv0
うん、3日ぶりに来たけどやはり毎日顔出そう。
>>327すごく楽しめました
>>323ありがとう、このシリーズひそかに好きでした
333名無しさんだよもん:2008/08/07(木) 18:47:17 ID:yrstPw0h0
タカ坊が入院して、イライラしてタマ姉やこのみやら雄ニに辛く当たって
それで疎遠になったときにいくのんと出会うSSがあった気がするんだが知らない?
334名無しさんだよもん:2008/08/07(木) 20:12:27 ID:K74Y4jVi0
「貴明さん。今回の生徒会誌どうしましょう。」
「うーん。これと言ってネタもないしなぁ。」
「じゃあ保留と言うことで。まーりゃん先輩にばれると面倒なので秘密にしてくださいね。」
「えぇ。でも書かないとだめなんじゃ・・・」
「・・・いいんです。保留です。」
「まぁ、ささらがそういうのなら。」
「貴明さん。」
「ん。」
「二人っきりよ。」
「二人っきりだね。」
・・・・・・
・・・
「なにもしてくれないの?」
「あぁ。そうだね。二人きりだったね。」
「もう・・・」
やさしく抱きしめる。
「ぁ・・・」
なでなで・・・
「いいこいいこ。」
「貴明さん・・・」
なでなで・・・
--
「姉貴。ちびすけ。お前ら先に入れよ。」
「雄二が入りなさいよ。」「うんうん。こういうときは男らしくだよ!」
「いみわかんねぇよ。」
---------------続かない。なんか書き終わってから、昔同じようなSS読んだことあるような気がしてきた。
>>332それはよかった。おかげで私の欝が解消されていきます。
電車の中でなれない大風呂敷SS書いてるんだけど、どんどん広がってだんだんつじつまあわせが面倒になってきた・・・
335名無しさんだよもん:2008/08/08(金) 06:00:58 ID:7qZf286gO
うお、最近ささら成分が不足気味だったから助かったよ。
サンキュー
336名無しさんだよもん:2008/08/08(金) 21:10:36 ID:KV/J0mLZ0
ネタに乗り遅れたおいらが来ましたよ
というわけで投下
337冷たいやきもち 1/6:2008/08/08(金) 21:13:01 ID:KV/J0mLZ0
「いやぁ……やっと買えそうだね。」
「ずいぶん並びましたから。」
 そう言って草壁さんはハンカチで汗を拭った。

 俺と草壁さんが再会してから数ヶ月が過ぎ去り、季節は夏。
 今年の夏は酷暑で、夏休みを前に俺たちは早くもグロッキーだった。
 草壁さんとのデートも自然と避暑を考えたものにならざるを得ない。
 今日は学校帰りに新作のアイスを食べにアイス屋にやってきたのだが、考える事は
皆同じ訳で、案の定すごい行列になっていた。
 やっと順番が回ってきて、俺は期間限定のピーチシャーベットのダブル、草壁さんは
アールグレイとバニラのダブルを手にすると列から離れて木陰に逃げ込んだ。

「は〜、生き返る〜」
「冷たくて美味しいですね。」
 木陰で涼みながら二人でアイスにかぶりついて冷たさを楽しむ。
 草壁さんもどことなく恍惚とした表情だった……ちょっと色っぽいな。
「あ! タカ君も来てたんだ。」
 聞きなれた声に振り向くとそこには見慣れたおさげ髪の女の子……このみが、やはり
アイスを手にして駆け寄ってくるところだった。
「こんにちは、このみちゃん。」
「あ、優季さんこんにちわでありますよ。」
 草壁さんが挨拶するとこのみも満面の笑顔で元気に挨拶を返した。
 人懐っこさにかけては定評のあるこのみはもう草壁さんともすっかり仲良しだった。
「ほほう……そこの人がセンパイの噂の彼女っすか。」
「……美人。」
338冷たいやきもち 2/6:2008/08/08(金) 21:16:01 ID:KV/J0mLZ0
 これはこのみを追いかけてきた寺女の制服の二人組、このみの親友の吉岡さんと山田さんだ。
「もー、だから、そう言う堅苦しい呼び方じゃなくって、よっちとちゃるって呼んで
 欲しいっす。」
「でも……ねぇ。」
「よっちさんとちゃるさん、ですか?」
「ああ、そういえば草壁さんは二人に会うのは初めてだっけ。俺の後輩でこのみの親友の
 吉岡チエさんと山田ミチルさん。」
「吉岡チエっす。よっちって呼んでくださいっす。」
「山田ミチル。あだ名はちゃる。」
 二人が自己紹介すると、草壁さんは居住まいを正して、そしていつものようににこっと
笑って挨拶した。
「よっちさんにちゃるさんですね。草壁優季です。どうぞよろしく。」
 相変わらず腰の低い草壁さんだった。
「センパイ、なかなか美人の彼女じゃないっすか。」
「え? うん……まあね。」
 自分でも草壁さんは美人だとは思ってはいるけど、褒められるとなんだか照れくさい。
「でも……未だに苗字にさん付け。」
 山田さんの冷静な突っ込みにぎくりとする。

 この数ヶ月、草壁さんに何度も「名前で呼んでください」と呼ばれ続けてきたのだ。
 でも、なんとなく気恥ずかしくてなかなか「優季」と呼べない。

「ま、ヘタレのセンパイらしいっちゃらしいっすけど。」
「余計なお世話だ。」
「でもでもでも……まだ他人行儀な関係って事なら、略奪可能って事っすね。」
339冷たいやきもち 3/6:2008/08/08(金) 21:19:01 ID:KV/J0mLZ0
「ははは……またまた冗談。」
「冗談じゃないっすよ……あたしのこのセクシーボディに悩殺されてみないっすか?」
 そう言いながら吉岡さんがちょっとセクシーな……特に、胸の辺りを強調したポーズで
俺にウインクしてみせた。
「……それは無理。」
「は? ちゃる……?」
 吉岡さんが頭に?マークを浮かべている間に、山田さんは素早く草壁さんの背後に回りこみ、
そして草壁さんの胸を鷲掴みにした。
「きゃっ!」
「草壁センパイは……隠れ巨乳。よっちよりでかい。」
「なに〜!」
「そして、」
 そう言うと山田さんは草壁さんのセーラー服の上着の裾をひょいと持ち上げた。
 ……草壁さんの白いお腹と綺麗なお臍が見えた。
「ウエストはこのみより細い。」
「なんですと〜!」
「明らかにスタイルでもよっちの負け。」
「くぁ〜〜〜!」
「あはは……」
 このみがそんな二人のやり取りを見て苦笑いする。
「く……あねさんに続いて2敗目……いつか見返してやるっす。」
「よっちはもう成長が止まっているから無理。」
「うっさい。」
「まあまあ、二人とも……って、おっと、アイスが溶けちゃう。」
 俺は溶けかけたアイスにあわてて舌を這わせた。滴り落ちる寸前だったアイスの味が
口の中でひんやりと広がる。
340冷たいやきもち 4/6:2008/08/08(金) 21:22:00 ID:KV/J0mLZ0
「あ、タカ君のそれ、期間限定のピーチシャーベット? 一口ちょうだい。」
「え? ああ、いいぞ、ほら。」
 俺は持っていたアイスをこのみの前に差し出した。このみがそれにかぶりつく。
「はむ……おいひい〜〜! 次はこれにしよう。 じゃ、お返しにタカ君、はい。」
「あ、ストロベリーか……はむ。」
 俺はこのみの差し出したアイスにかぶりついた。ストロベリーも相変わらず美味い。
「……鈍感」
「は?」
 俺とこのみを見ていた山田さんのつぶやきに俺は戸惑った。
 何の事だかさっぱり、と思っていた俺の疑問には吉岡さんが答えてくれた。
「彼女の目の前で他の女の子とアイスの食べさせあいっことか……それはまずいっすよね。」
「あ。」
 俺は恐る恐る草壁さんの方を見ると……
 草壁さんは思いっきり膨れていた。
「じゃ、修羅場の雰囲気なのでうちらはこの辺で。センパイさよなら〜」
 チェシャ猫のようなニヤニヤ笑いを残して、吉岡さんは山田さんの手を引いて
走り去っていった。
「ゆ、優季さん、ごめんね。ああっ、よっちってば待ってよー!」
 走り去った二人を追いかけて、火種を振りまいたこのみも去っていった。
 そして、この場にはご機嫌斜めの草壁さんと、デリカシーの無い男の俺だけが残された。

「……えっと……草壁さん。」
「何でしょうか、河野さん。」
 まずい。これは激しくまずい。何より俺のことを河野さんと呼んでる辺りが猛烈にまずい。
341冷たいやきもち 5/6:2008/08/08(金) 21:25:04 ID:KV/J0mLZ0
 かなり怒っている証拠だ。
「えっと……食べる?」
 自分のアイスを差し出してみたが、草壁さんはぷいっとそっぽを向いた。
「あっ、あの……俺、アールグレイも食べてみたいなー、とか……」
「これは私の分ですから、河野さんにはあげません。」
 そう言って草壁さんはパクパクとアイスを一気に食べた。
 あ、そんなに一気に食べると……
「あっ……」
 草壁さんがこめかみを押さえて苦しみ始めた。冷たいものを一気に食べるから……
「あははは……大丈夫?」
「……」
 俺が声をかけると草壁さんはぷうっと膨れたままで、俺の顔をじっと見上げた。
「えっと……ごめん。」
「……反省してますか」
「反省してます。」
「もうあんな事、他の女の子としないでください。」
「神に誓って。」
「じゃあ……許してあげますから、『草壁さん』じゃなくって『優季』って、呼んでください。」
 そう言って期待するような眼差しで、草壁さんはじっと俺を見つめた。
「……」
「じ〜」
「……」
「……そんなに、私の名前を呼ぶのが嫌ですか?」
 ああ、またそんな悲しそうな顔する……もう、こうなりゃ自棄だ。
342冷たいやきもち 6/6:2008/08/08(金) 21:28:01 ID:KV/J0mLZ0
「……優季!」
「はいっ!」
 ああ、もう、そんな嬉しそうな……とろけそうな笑顔されたらもう二度と『草壁さん』
なんて呼べないじゃないか。
「じゃあ、もうひとつ。」
「えっ、まだあるの!?」
 草壁、じゃなくて、優季がちょっと恥ずかしそうに爪先立ちになって俺の耳元に
口を寄せるとそっと囁く。
「実は……さっき舌をやけどしちゃいましたから、貴明さんに治して欲しいなぁって。」
「やけど……って、さっき食べたのはアイスだけど。」
「ですから……」
 そう言って優季はぺろっと舌を出して、
「『しもやけ』です。」
 ああ、なるほど……って、それやけどじゃないし。
「で、俺は何をすれば良いの?」
「冷たすぎてしもやけになっちゃいましたから、貴明さんに温めてもらえれば直ると
 思います。」
「え、それって……」
 優季が俺の顔を見上げたまま、目を閉じた。薄く唇を開いてじっと待っている。
 普段あんまりおねだりしたりしない優季の「お願い」を俺は断れそうに無い。
 覚悟を決めて、優季の肩を抱く。
 通りがかりの人からは見えないように身体の位置をずらして、俺は優季の唇をそっと奪った。

 それはさっき食べたアイスでひんやりしていて、紅茶の香りのするキスだった。
343名無しさんだよもん:2008/08/08(金) 21:29:02 ID:KV/J0mLZ0
草壁さんをメインにした話ってまったりラブラブ物が多いので
かわいく拗ねる草壁さんにしてみた

由真シリーズを書いてる身としてはOVAで由真メイン話も出た事だし
次のメイド日和を書くべきなんだろうけど
たまには草壁さんも書かないとねw

344名無しさんだよもん:2008/08/08(金) 21:32:25 ID:aelYI4BO0
>>343
GJ。
俺もとろけちまいそうだ
345名無しさんだよもん:2008/08/08(金) 22:42:08 ID:4XVtH+V7O
ぐああああああ
なんちゅう極甘!

身悶えするよなGJ
草壁さんはヤバ過ぎるぜ
346名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 00:08:07 ID:ddJ8kHdz0
>343
ぐ〜っどじょ〜ぶ!
やっぱり草壁さんは、捻らず割らずにストレート(いちゃいちゃ)とロック(拗ね拗ね)だね!
347名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 00:10:34 ID:8WE8SqtS0
GJ。

しかし、例の奴が来なくなったら、平和が戻ってきたな
348名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 02:39:16 ID:ddJ8kHdz0
>347
せっかくの投下ラッシュなんだから素直に喜べばいいのに……そう他人を貶める思考ばかりすんなよ
349名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 03:38:07 ID:p+w78eag0
>>348
二度と舞い戻って来ないようダメ押しこそが重要
保管庫からも消しちまった方がいい
350名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 08:15:36 ID:Ex58xgn+0
なんだ、社会生活で嫌な事があっただけか。安心しろ、生きる価値がない哀れな人生を歩んでいるのはお前だけじゃない。みんなが幸せそうに見えるからって嫉妬する必要はないよ
351名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 08:20:51 ID:3HmZ+6IH0
掲示板の本来の特性からくる「粗暴に振舞える(冗談でも本気でも)」ことに対する負担の大きさは、
”投稿者”という程度のアイデンティティによっても操作され得るみたいだね。
これは全員が自分のメリットを如何にすれば得られるか考えることが、一つの解決方法になると今思った。
この場合
攻撃者のメリットは、不快感の人間に対する攻撃による不快感の発散または投下人排除だろうから今の状態から動きようがない。
SS読む人のメリットは、SS投稿増加。これは雰囲気良化によるによるものや過疎改善によるものなどがあるので一概に一定の行動は示せない。
投稿者のメリットは、”自分”の書いたもの読ませること。読者でもあれば過疎改善の一手という要素もある。
 ここの自分の範囲がわからない。まぁ、名乗ってないから複数投下におけるアイデンティティは重視してなさそうだね。

というお話。書いてから思ったけど、これだと投稿者の一方的負担になるね。
国語能力が低いので申し訳ない。何が言いたいかわからない場合いちいち説明してると泥沼になりそうなので私は”このレスの人であるだけ”、ということにしておきます。
352名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 09:13:18 ID:4Zhb68yO0
どうでもいいから普通のTH2SSを普通に投下してくれ。
そうすりゃ全員万々歳だ。
353名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 09:39:16 ID:pJVsxIIK0
>>347
で、お前はその平和を乱すような発言をするわけね
そんなに自己主張したいなら他所でやれカス

>>349
スレや保管庫を私物化したいなら自分で作れよ
気に入らない書き手を叩いて追い出すお前のほうこそ消えたほうがいい
354名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 09:57:20 ID:1YlMCqBIO
>>347
一応、続きを楽しみにしてる奴も
居ることを察してくれ。
355名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 10:23:42 ID:yk44Gdvn0
>>351
名乗ってないから複数投下におけるアイデンティティは重視してないっていうのは違うと思うよ〜

違うっていうか、考え方が逆なんだな
ここに投下する以上、『名乗っていない』のではなく『名乗る必要がない』んだと思うんだけど
だってここ、匿名掲示板だもの
しかも連載の場合でも、タイトルを見れば続き物だって分かるわけで、真の意味で『名乗る必要がない』わけ
でも、結構名乗ってるに近い作家さんは多いと思うよw
「前に〜〜を書いてた者ですが」って普通に言ってるし、これは匿名掲示板であれば名乗ってるに等しいことだ
そういうのを見ると、複数投下におけるアイデンティティをめちゃくちゃ重視してるんじゃないのかなー

まぁようするに、見当外れの分析はやめたほうがいいっすよってことで
「投稿者に一方的に負担がかかってる」ってのが主題なら、もっと分かりやすく書いた方がいいぜ
356名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 10:49:59 ID:bQYQ32+i0
>>347-355
おまえら荒らしと大差ないって事にそろそろ気づけ
当の作者氏がこのスレに直接投稿しないように気を使ってんのに台無しじゃねぇか
それに面白いSS投稿してくれてる他の作者にも失礼

この話題はここまで
これ以降はこの話題でレスつけんな



というわけで、どなたかが愛佳分を補給してくれる事をきぼんw
357名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 11:40:16 ID:XFqKVFLZ0
なごみと癒しを俺達に!
いいんちょやこのみや愛佳やタマ姉や小牧愛佳あたりを補給したいっす。
358名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 12:51:01 ID:2deHKr3T0
めいろろぼ分はお腹いっぱいかねw?
359名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 13:06:08 ID:ANAYGfZi0
>>358
足りてませんが何か?
補給お願いします
360名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 13:21:46 ID:1U71TJI20
避難所のぞいたら、例の作家、投稿やめますと。
流石に嫌気がさしたんだろうw
361名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 16:48:54 ID:NkvDDwwR0
愛佳、よっちゃるお願いします!!
362名無しさんだよもん:2008/08/09(土) 16:50:12 ID:8OsGFo0i0
>>358
まったく足りてません
もっともっと!!
363名無しさんだよもん:2008/08/10(日) 11:49:40 ID:xUPjyB5h0
みんなもやってみよう!超簡易ssの書き方。
1.登場人物を決める。
2.ゴールを決める。-抱きしめる。その他。加えてオチを作ってもいい。
3.スタートを決める。-偶然会う。会う約束をしていた。もともと一緒にいる。
4.ゴールへの道のりを決める。-協力して問題解決。対峙。物の取り合い。人助け。すりるしょっくさすぺんす。
 ここが問題。一レスならたぶん一捻りが限界。ストレートに終わってもいい。
5.終わり。
余裕があれば上の要素をいくらでも組み合わせればいい。
上のようにせずに、
キャラに勝手にしゃべらせるとグダグダになるけどそれもまたいいのかもしれない。
私は、何がしたいのかわからないといわれるのが怖くてそれをしたことがない。
人を楽しませる事を考えると面倒になってくるけど、自分がほしいものがある場合、とりあえず書いてみると幸せになれるかもしれない。
私は最近乱発しすぎなのでちょっと自重する。
364名無しさんだよもん:2008/08/10(日) 12:40:16 ID:FvmdSGmD0
リレーSSなんてのも面白いかも?
365未来と過去の二人から 0/16:2008/08/10(日) 18:07:54 ID:iYm6ARH+0

流れに乗り遅れてますが、草壁さんと海水浴SS行きます
当然ですがAD非準拠(っていうのかな?)です
366未来と過去の二人から 1/16:2008/08/10(日) 18:09:30 ID:iYm6ARH+0

「お待たせしました。貴明さん」
「うん、待った」
「えっ、す、すみません……」
「嘘、冗談」
「あっ、もうっ、貴明さんってば」
 俺の意地悪に気がついて、優季の唇が尖った。
「あはは、ごめん。でも、実際けっこう待ったかも。女性脱衣所の側で待ってるのは恥ずかしいし、その辺ウロウロしちゃったよ」
「す、すみません、お、女の子には、その、色々と、準備がありまして……」
「あっ、いいっていいって、気にしない」
  俯き加減になる優季。軽口の効果がありすぎて、フォローの言葉を探す俺。
「俺としては、優季の水着姿を見ただけで待った甲斐があったってもんだよ」
 掛け値なしの本音をぶつけたら、優季は頬を染めてますます俯いた。

 俺、河野貴明と、優季、草壁優季は、つきあい始めて3ヶ月ほどの恋人同士。
 二人になって初めての夏休みに、今日は、どちらからともなく言い出した海水浴デート。

 真っ白なビキニに、負けないくらい白い肌を包んだ優季は、真夏の太陽の下、まるで宝石のように輝いている。

「そ、その、貴明さん。あまり見られると、その、あの」
 思わず見とれた俺の視線に、モジモジと身を縮める優季。両腕を身体の前に持ってきて、しかし腕の位置が決まらない。
「あっ、いえ、み、見られるのがイヤというわけでは、ないんですけど」
 細身の身体に不釣り合いとも思える豊かな胸や女性らしい腰つきを、隠そうか隠すまいか悩むような悩ましい仕草。
「やっぱり恥ずかしいというか……」
「もっと見たいな」
「え?」
「凄く綺麗だから、優季の水着姿、もっとちゃんと見たい」
 直球過ぎるかなと思ったけど、思わず言っちゃった。
「そ、その……分かり、ました」

 その要求を真に受けて、優季は耳まで真っ赤に染まりながら、両腕を体の後ろに組んで背筋を伸ばす。
 見せつけるような姿勢の伸びやかな肢体と、気恥ずかしさに目を逸らす横顔。抱きつきたい衝動を抑えるのが大変だった。
367未来と過去の二人から 2/16:2008/08/10(日) 18:11:27 ID:iYm6ARH+0

「貴明さん、日焼け止め、背中に塗っていただけます?」
 その魅力的な姿で、パラソルを組むなりこんなことを言い出す優季。

 確かに、優季の抜けるような白い肌は、日焼け止めを入念にしなければ火傷してしまいそうだけど。
「い、いいけど、塗り方なんて、よくわかんないよ?」
「大丈夫ですよ。厚めにべたっと伸ばしていただければ」
 優季はごろん、と俯せに寝ころんで俺に背中を任せる。
 俺は日焼け止めクリームを手に出したものの、眼前に広がる風景を見てつい手が止まる。
 きめ細かい肌が、なだらかな曲線を描く優季の背中の、どこから手をつけて良いか分からなくなったんだ。
 つい視線を這わせると、背中を通り越してくびれた腰と、逆に大きく盛り上がったお尻の方に目がいったりして。
「貴明さん?」
 開始されない作業に、不安げな優季の声。
「あ、ご、ごめん」
 思い切って手を優季の身体に降ろそうとして、やっぱりおっかなびっくりになって。
 つつっ。
 いかん、背筋に指を這わせるような塗り方になってしまった。
「あんっ!?」
 きめ細かく滑らかな彼女の皮膚に、さぁっとさざ波が走る。
 あ、鳥肌たってる。そう思うと、俺の背筋も粟立った。
「た、貴明さんっ」
「ご、ごめん、ちゃんとするから」
 謝って、今度はきちんと手のひらを優季の背中につける。
 そっと伸ばす程度のつもりで力を入れたのに、優季の身体は手がめり込みそうになるような柔らかさ。
「んんっ、ぅうん」
 おまけに、クリームを擦り付けるのに合わせるように、優季は悩ましげな吐息を漏らす。
「お、終わったよ、たぶん」
「ありがとうございます。あとは、自分で塗りますから」
 やがて背中を塗りおえたと思ったら、今度は優季自身の手が彼女の身体を撫で回す刺激的な光景。

「お待たせしました、って、貴明さんっ? そんなに急がなくても、あんっ」
 優季の手を引いて波打ち際に走ったのは、正直に言えば俺自身の興奮を隠すためだったりした。
368未来と過去の二人から 3/16:2008/08/10(日) 18:13:02 ID:iYm6ARH+0

 暫く波打ち際で戯れた後、優季がパラソルの方を気にした。

「疲れた? 少し休もうか?」
「いえ、疲れたわけではないんですけれど」
 微妙な反応。どうやら、気になることがあるみたいだ。
「なあに、言ってみて」
 俺が問うと、優季は人差し指を頬にあてて、ちょっとその頬が赤らんで首を傾げる。
「えっと、ですね。実は、ちょっと持ってきたものがあるんです」
「持ってきたもの?」
 午後待ち合わせなので昼食ではないだろう。海で使うものだろうか。でも、この恥ずかしがりようは……
「浮き輪とか?」
「い、いえっ! いや、似たようなものかも知れませんが」
 なんだろう?
「とにかく、せっかく持ってきたんなら出そうよ。ほら、戻ろう?」
「あっ、は、はぃ……」
 パラソルに戻って、優季が自分のスポーツバッグを開ける。

「こ、これ、なんですけど」
 引き出すときも少し迷って恥ずかしそうにしていたそれは、大人サイズのイルカフロートだった。

 ……。
「あっ、いま、笑いました?」
「いやいや全然」
 否定しつつも、かみ殺しきれない笑みが零れる。
 優季って、物静かだけど意外と子供っぽいところがあるよな。メルヘン好きだし。

 そんなことを思っていたら優季の目が段々拗ねてきたのて、俺は砂地にしゃがんでイルカを膨らます作業に入る。
「ふふっ、頑張ってくださいね、貴明さん」
 優季が側に寄ってきて、四つんばいに手をついて俺の口元を覗き込んだ。そんな仕草も子供っぽ……
「!」
 姿勢上の必然、重力に引っ張られて深いWの字を形勢する優季の胸元が目に入って、子供っぽいなんて感想は、空の彼方に吹き飛んだ。
369未来と過去の二人から 4/16:2008/08/10(日) 18:15:12 ID:iYm6ARH+0

「小さい頃、海水浴に来て、イルカに乗っている子がいつも羨ましかったんです」

 5分後。
 俺が膨らませたイルカを両手で抱えて海に向かいながら、優季は照れ隠し半分に説明してくれる。

「海って波から顔を出しても周りが見えませんよね?」
「これに乗ったら、遠くまで見渡せて気持ちいいんじゃないかって」
 ボートに乗ればいいんでしょうけど、と注釈。
「でも、言い出せなくて、そのうちに大きくなったら、もう恥ずかしいですから」
 抱えたイルカの背びれに、顔を埋めるように押しつける優季。
「今日もどうしようかと思ったんですけど、お店で飾ってあるのを見かけたら、我慢できなくて買っちゃいました」
 そのままこっちを向いて、てへっと笑う。
「どんな風景が見られるのか、楽しみです」
 無邪気な笑顔に、子供っぽいって単語が空の彼方から戻ってきた。

 が、現実はそう甘くなかったり。

「っ、うぅん、っ、きゃあっ!?」
 どぼーん。
 イルカは綺麗に引っ繰り返って、優季の綺麗に伸びた両脚が、シンクロナイズドスイミングの如く綺麗に真っ逆さまに水中に沈んでいく。

「だ、大丈夫?」
「うぅ、ま、前が見えません……」
 涙声で起きあがった優季の顔を、長い黒髪がすっかり覆ってしまって、さながら場所と時間を外した番町皿屋敷。
 俺は左手でフロートが流されないように押さえつつ、右手で優季の髪をどけてあげた。
「ありがとうございます」
 海水まみれで顔色は良くわからないが、この首の角度は恥ずかしいですモードだな。
「思ったより沈んでくれなくて。もう一度、えいっ、きゃ!?」

 ぐるん。どぼん。
 イルカに向かって飛び込んだ優季は、勢いをつけた分、日頃おしとやかな彼女はどこへやら、フロートを鉄棒に見立てた前回りから、あられもなく脚を広げて水中に落下した。
370未来と過去の二人から 5/16:2008/08/10(日) 18:16:50 ID:iYm6ARH+0

「あはは、もしかしなくても、優季って運動音痴だよね」
「……酷いです貴明さん。確かに、あまり、身体を動かすのは得意ではありませんけれど」
 大笑いした俺の言葉に、優季は珍しく頬を膨らます。

「そもそも、貴明さんが手伝ってくださらないのが悪いんです。ちゃんとエスコートしてください」
 俺のせいかなあ?
 張り切って飛び乗ろうとしたのは誰だろうね、なんて意地悪はなしにして、俺はイルカフロートの頭を支える。
「わかったよ、ささ、どうぞ、お姫様」
「う、うむ、苦しゅうな、い、なんて、ふふっ」
 時代がかった台詞に乗ってきて、照れ笑いしながら優季は俺の反対側からイルカに……

 ずるん。
 と飛び乗ろうとした手が滑って、勢い余って。
「あ、あっ」
「う、うわわわ!?」
 ごっちんこ。
 額と額がぶつかって、目の前に火花が散る。
 ほぼ同時に、優季が頭から俺の懐に引っ繰り返ってきて、二人でもつれあうように海中に沈没した。

「あたたた。怪我しなかった?」
「うぅぅ〜。すみません。痛かったですよね」
 頭を抑えながら互いを気遣う俺と優季。
「俺は大丈夫」
 流されかけたイルカフロートを呼び戻す俺。
「痛かったけど、その後気持ち良かったし」
 優季の身体の感触が。
 どこがどことか、わかんなかったけどね。

「そ、そういう事は、思っても言わないでください」
 今度は顔色も分かった。頬からうなじまで、綺麗に朱色に染まっていた。
371未来と過去の二人から 6/16:2008/08/10(日) 18:19:02 ID:iYm6ARH+0

 めげずに再挑戦。

「貴明さんは、尻尾の方を押さえていてください」
 先の反省を踏まえ、俺がイルカの左後方から支えて、優季が右側面から乗り込む体勢。
 これなら正面衝突の心配は、
「えいっ!」
 ぶんっ。
「うおっと!?」
 油断してたら頭の上スレスレを優季の脚が通過して、俺は慌てて首を竦める。
「す、すみませ、きゃんっ、とっ、あっ、あ」
 ぐい。
 フロートに重みがかかる。優季の身体が上に乗ったみたい。
 俺は抱えた腕に力を込めて、左右に振れるイルカを押さえながら顔をあげ、
「っ!」
 思わず息を飲んだ。

 イルカにあがった優季は、バランスを崩して落ちないようにしがみつくのが精一杯。
 両腕で必死にイルカの頭に抱きついて、脚でフロートの胴体を挟んでいる。
 それを、尻尾を押さえる俺の視点から見ると、つまり、なんだ。

 優季のすらりと伸びた両脚の、膝から上と、形よく盛り上がった臀部が、三角形というか小山というか、印象はむしろΩ形。
 水深は俺の脇の下くらい。海面ちょい上ある俺の頭からは、少女の構造を下から覗き込むような格好で、しかも距離は至近。
 遠目には細身に見える太股が、今はまるでのしかかってくるような大迫力。
 その太股の、間に挟まる小さな白布は皮膚にぴったり貼り付いて、下に隠れる優季の下腹部からお尻にかけての形状が見て取れる。
 両脚とイルカの背の間、少し空いた隙間からは、優季の臍から上半身へのなだらかな曲線が覗き、そしてビニール地に押しつけられても潰れきらない乳房のボトムで視界が終わる。

 ひとことで言えば、絶景。

「た、貴明さん〜。う、動けません〜」
 困ったような優季の声。
 いやあ、俺としては、一生このまま動かなくてもいいくらいの眺めです。
372未来と過去の二人から 7/16:2008/08/10(日) 18:21:08 ID:iYm6ARH+0

 とはいえ、流石にそういうわけにもいかないので。

「えーっと、しがみついてるから動けないんだよ」
「だって、手を離したら落ちちゃいます」
 言葉に合わせてもじもじと身体を動かす。お尻が揺れてこれもいい目の保養。
 ……こほん。

「じゃあ、腰を落として、逆にぴったり抱きついてごらん」
「こ、こうですか」
 おっかなびっくりと、両脚とイルカの隙間が埋まる。目の前に重量感のある桃のお肉が……いやそれはいい。
「そしたら、手を話してイルカの背中について、ゆっくり起きあがってみなよ。大丈夫、押さえてるから揺れないよ」
「ゆ、揺れてますけど、分かりました」
 優季が俺の指示に従って、俺の視界で彼女の背中がせりあがっていく。
「わ、わ」
 脚は水面下だけど、イルカの上で、体位測定の伏臥上体そらしみたいな感じ。
「うん、そしたら、手の位置を身体に近づけていけば……」
「は、はい。えいっ、わっ、きゃっ」
 優季の上体が起きあがる。俺の方を向いていたお尻の部位が、するんとイルカの背に収まって。

「あっ、や、やったっ。乗れましたよ貴明さんっ!」
 ようやくイルカの背中に跨る姿勢になれた優季は、俺の方を振り向いて笑顔を、
「きゃんっ!?」
 向けようと身体を捻ったもんだから、ぐらりとバランスを崩す。
 俺はイルカを押さえていた手を離して優季の腰に伸ばす。
「きゃあっ?」
「あ、ごめん」
「い、いえ、いいです。そのまま、そのまま離さないでください」
 腰に触れる俺の手に悲鳴をあげた優季だが、俺が離れようとすると慌てて止める。
 ひとしきりゴチャゴチャゴチャ。

 やがて、イルカに跨った優季の腰を俺がそっと支える姿勢で落ち着いた。
373未来と過去の二人から 8/16:2008/08/10(日) 18:23:01 ID:iYm6ARH+0

「あ、あはっ、ふふふっ、いい眺めです」

 苦労の末に目的を達成して、笑みが溢れる優季。
 こわごわ右手をフロートから離して、遠くを見るように額にかざしてみたり。感慨深げに周囲を見渡してみたり。
「思っていたより、ずっと高く感じます」
 それはおそらく、幼い頃の目線で想像していたからじゃないかな、とは思ったけど口に出すのはやめておく。
「あっつぅ」
 珍しく優季が語調を崩した。
 真夏の太陽と、海面からの照り返し。水に入っている俺はそう暑くもないが、ほぼ全身が海上に出ている優季は目を細めている。
 その無防備な表情を見ていると、ムクムクと悪戯心が湧いて。

 バシャッ。
「ひゃあっ!? 冷たっ!?」
「あはは、涼しいでしょ」
 右手は優季の腰の添えたまま、左手で水をすくって彼女のお腹にかけてあげたら、ぴくんとお臍の周りが動く。
「いきなりはずるいですっ」
「じゃ、かけるよ〜」
「えっ、えっと、待って、あんっ」
 それなら予告してばしゃばしゃばしゃ。こっちは水中なので、優季に水はかけ放題。彼女の方は、両手をイルカの背から離すことも難しくては抵抗する術もない。
 くくく、てえいっ。
「た、たかあきさむゃんっ!」
 やべ、調子に乗って、思い切り水を跳ね上げたら、タイミング良くこっちを向いた優季の顔に水が。
「けほ、けほけほっ。貴明さん〜っ!」
 口に水を受けてむせた優季は、身体を捻って右手を海面に降ろそうとする、って、それは無茶!
「ま、待って優季」
「待ちません、お覚悟をっと? あ? あら? ひゃんっ!?」
 不安定なイルカの上から反撃しようなんて優季には無謀。案の定バランスを崩すと、ずるっーとフロートの背を滑り落ちて。
「あ、あっ、あれっ?」
「のわあっ!」

 優季の身体が、俺の頭上に降ってきた。
374未来と過去の二人から 9/16:2008/08/10(日) 18:25:03 ID:iYm6ARH+0

「あうおっと!」

 もとから距離が近かったことが幸いして、頭と頭がごっつんこは回避。
 どさりと落ちてくる優季の重みを俺は、ここが男の見せ場と受け止める。
 じゃぼんと水上の世界から海中に戻ってくると、優季の身体はふわっと軽くなった。

「す、すみませ……あ……」
 謝りかけた優季の声が、途中で止まる。
 俺と優季の、足の位置は何センチも離れていないだろう。
 太股と太股も触れあって、そして上半身はぴったりと俺が優季を抱き留めた姿勢。
「貴明さん、もう大丈夫ですから……」
 俺の肩口あたりに囁く優季。だが俺は、優季を離さない。
「貴明さん?」
「ゆーきっ」
 怪訝な呼びかけに呼びかけで答えて、逆に強く抱きしめる。
「あ……貴明さん」
「優季」
「貴明、さん……」
 何度聴いても心地良い声。ぐっと腕に力を込めると、優季は俺の腕の中で息を吐く。
 俺は頭を下げて、俯く彼女の頭を自分の頭で持ち上げるようにして、頬を赤く染めながらもそれに答えてくれる優季。
 額と額を何度か擦り合ってから、俺達は小さくくちづけを交わした。
「貴明さぁん……」
 唇が離れると、とろんとした表情で、腕の中から俺を見上げる優季の瞳。
 どくん。
 心臓がひとつ跳ねて、同時に俺は、胸板で潰れる優季の豊かな膨らみを意識する。
 こ、こうなったら、もう少し……。

「おーい、イルカ流れてんぞー」
「「は、はいーっ!?」」
 飛び上がった二人。
 放置されて流されたイルカフロートを回収しつつ、俺は指摘してくれたおっさんスイマーを逆恨みした。
375名無しさんだよもん:2008/08/10(日) 18:33:32 ID:fU8UvfnQO
支援
376名無しさんだよもん:2008/08/10(日) 18:43:29 ID:66H0XZsN0
さる?
377名無しさんだよもん:2008/08/10(日) 18:56:19 ID:1srN9Nr90
支援……が必要かどうかよくわからんが
378名無しさんだよもん:2008/08/10(日) 19:00:08 ID:fGApkuE20
文体と作風からして、イルファさんスキーの人かなw
379未来と過去の二人から10/16:2008/08/10(日) 19:01:05 ID:iYm6ARH+0

 楽しい時間は超特急で過ぎていって。
「うわあ、綺麗な夕焼けですね」
 真夏の午後は、瞬く間にお日様傾く夕暮れ時となり、俺と優季は海水浴場を出て、海沿いの温泉街を駅に向かって歩いていた。

「海に沈む夕日も、見てみたいですねえ」
「いいね、そのうち見に行こうか?」
「えっ? あ、は、はい。そ、そうですね」
 何気ない軽口だったけど、ちょっとあたふたしたような反応を見せる優季。
 此処から日本海まで行けば当然泊まりになるし、ちょっと、意識させちゃったかな。
「……」
 しかし、それがなくとも優季は、どうもさっきからそわそわしていて、街の看板などをキョロキョロ眺めている。
「お腹空いた? 何か食べて帰る?」
「え、ええっと、お腹は特に、大丈夫です」
 予想ハズレ。でも、例えお腹が空いてなくとも、食事に誘えば乗ってきそうなんだけどな。
 ちょっと首を傾げつつ、駅前近くにやってきた時、
「た、貴明さん」
 優季が俺の袖を引っ張った。

「なあに? どこか、寄っていく?」
「そ、その、それなんですけれど」
 遊びに付き合わせるのに遠慮する仲ではないのに、また口篭もる優季。
「貴明さんって、その、今日は、その、夜とか、用事あります?」
「え? 夜? 特にないけど、家なんて誰もいないし」
 その返答に、優季はほっと息を吐いて、また深呼吸して口を開く。
「あの、ですね、実はですね、私の家も、両親が出張中なんですよ、今」
 え?
「それで、その、もし、よろしければ、今日は、その」
 優季が手で自分の胸を押さえる。台詞の流れと雰囲気に、俺もなんだか動悸がしてくる。

「今日は、此処の温泉に一泊しませんか」
 勇気を振り絞ったような優季の申し出は、確かに度胸のいる種類のものだった。
380名無しさんだよもん:2008/08/10(日) 19:01:49 ID:66H0XZsN0
支援
381未来と過去の二人から11/16:2008/08/10(日) 19:03:43 ID:iYm6ARH+0
「いらっしゃいませ」
 立ち並ぶ温泉宿の中から優季が選んだのは、けっこう古めの平均的な旅館だった。

「い、いらっしゃいました」
 かなり緊張気味な俺。優季も小さくなって後ろに控えている。
「こちらにお名前をお願いします」
 フロントで渡されたシートに、宿泊者名を記載する。
 うーん、本名でいいんだよな? 年齢は、無理がない程度に高めにして……
「あっ、河野様ですね、ご予約いただいていた」
 えっ?

「河野、貴明様ですよね?」
 受付の人の台詞に、優季を振り返る。
「……」
 優季は知らん顔。でも、あからさまに頬が赤くて、視線が不自然に逸れている。
「それと、河野優季様。2名でご予約頂いております」
 ぶっ。
 再度振り返った。優季の、赤面度と首の角度が増していた。

 ときどき大胆だよね、優季。

 一泊2食、二人でおおよそ2万円。
 通された部屋は、やっぱり古ぼけていたけど、趣味の良い畳部屋だった。
「しかし、やられたなあ」
 荷物を置いて、とりあえず不味い備え付けお菓子でお茶など淹れながら、努めて緊張を隠して一言。
「な、なんのことでしょう?」
 この期に及んで、優季はそらとぼける。
「予約、取ってくれてたんでしょ?」
「え、えーっと、いえ、私ではありませんよ」 
 確認ですらなかったのだが、優季は思いっきり照れくさそうな顔でこう返した。

「きっと、未来の貴明さんと私が予約してくれたんじゃないでしょうか」
382未来と過去の二人から12/16:2008/08/10(日) 19:05:23 ID:iYm6ARH+0

 とりあえず、大浴場で海水を洗い流していい気持ち。
 長髪の優季の長風呂の間に、俺は近くで身の回り品とジュースなんか買ってきて。

「お待たせしました」
 帰ってきたあたりで、ちょうど優季も部屋に戻ってきた。
 彼女の豊かな黒髪から、シャンプーしたての良い匂いが空間に広がる。

 俺も優季も、備え付けの浴衣に着替えていた。
 白地に藍染めの典型的な旅館浴衣も、優季が着ると、
「ど、どこか変ですか、私?」
 変じゃないから見てるんだけど。いや、ちょっと変かも知れない、そのなんだ、日本人離れした胸と腰が、内部から浴衣を突き上げている部分とか。
「あ、あの……」
 何か言いかけて、やっぱりやめて、ペタンと畳に座る優季。
「はい」
「あっ、ありがとうございます」
 ジュースで乾杯。
「「……」」
 いつも二人で座っているだけで心地良いし、今もそうなんだけど、初めての泊まりがけとあって少し間がもたない沈黙。話題を探す俺。
 そういえば、
「優季さ」
「は、はい?」
「今でも、時間を飛び越えることって、あるの?」
 俺は、前から気になっていたことを 聞いてみる。
「うーんと、あれ以来、そういう経験はありません」
 あれ、というのは俺の交通事故を防いでくれた一件のことだろう。
「たぶん、今回のが久しぶりだったんじゃないでしょうか」
 まだ言うか。優季の目を逸らす仕草は、可愛いから何度でも見たいけどね。

「そう。それは良かった」
「え?」
 俺の言葉に、目を逸らしていた優季の視線が舞い戻った。
383名無しさんだよもん:2008/08/10(日) 19:05:34 ID:66H0XZsN0
支援
384未来と過去の二人から13/16:2008/08/10(日) 19:07:27 ID:iYm6ARH+0
「だってさ、優季が他の時間に飛んでいっちゃったら、優季は現在に居ないってことでしょ?」
「そう、なりますね」
 優季が、人差し指を頬に当てて答える。

「それって、俺と優季が、同じ時間に居ないってことじゃない」
「あ……」
「俺は、少なくともこれからは、ずっと優季と同じ時間に、同じ空間に居たいな」
「貴明さん……」
 指が頬から外れる。正座の膝に手を添えて、少し居住まいを正す優季。

「私も、貴明さんと、ずっと、同じ時間に、ずっと、一緒に居たいです」
 急に、息が詰まりそうなくらい真剣な表情になって、優季はそう俺に応えた。

「ま、それはそれとして」
 俺は優季の真剣さに頷いてから、緊張を解くために座り直す。
「今日は楽しもうよ。せっかくの、未来の二人が予約してくれたことだし」
 茶化すと、優季がまた赤くなる。
「そ、その話題は、もう勘弁してください」
 膝に添えていた手が、太股の間に挟まってもじもじ居づらそう。
「どうして、運命的じゃない」
 そんな優季が可愛くて、つい日頃の優季の口癖を使って弄ってみたりして。
「もうっ、今日の貴明さんは意地悪ですっ!」
 ぷいっと横を向く優季。
「はは、ごめんごめん」
 手を伸ばしたが、優季は膝立ちになって逃げていった。ちょっと本気で拗ねたかな。
 追いかけようか声をかけようか迷った時。
「た、たかあきさん」
 優季が手招きする。部屋の角で、四つんばいの姿勢。驚いたような声。
 なんだろう? 俺は優季の隣に並んで、彼女が指さす柱の陰を覗き込む。

 そこには、子供の悪戯と思われる相合傘。柱に傷つけて描かれた相合傘。そして、
 “たかあき|ゆうき”
385未来と過去の二人から14/16:2008/08/10(日) 19:09:19 ID:iYm6ARH+0

 思い出した。昔の話。
 それは、まだ草壁優季が、高城優季だった頃。

 俺達は、こども会の企画で海に来ていた。
「雨ふって来ちゃったね」
「うん」
 あいにくの天気で、手近な旅館を借りての雨宿り。
「アメオニしようか」
「ここで?」
「うん」
 この時、優季は既に転校が決まっていた。
 俺は、残り少ない優季と過ごす時間を座って過ごしたくないと、好き嫌いなんて意識しない幼心にも思っていたのかもしれない。

 ともかく優季も頷いて、ロビーを抜け出して二人のアメオニ。
 幸運にも大人達に怒られもせず、旅館中を駆け回って、やがて、
「もうだめ、ギブアップ」
 実は台詞は覚えていないんだけど、結果はいつものように俺の負けだった、と、思う。
 そこからは、二人で旅館を探検。
 鍵の開いている客室にこっそり忍び込んだのは、優季が先か、俺が先だったか。
「あ、雨、晴れたよ!」
 客室の窓から差した陽射しを覚えてる。いや、思い出した。
「……」
 そして、それに答えずに柱の陰でしゃがみこんでいた小さな優季の姿も。
「なにやってるの?」
 優季が答えてくれないから、俺は彼女の隣に座って覗き込む。
「あ……」
 小さな手がボールペンか何かを持って、ひとつの記号、小学生の俺達でも良く知っていた記号を描いていた。
 気づかれて、恥ずかしそうに俯く優季。

「な、なんでもな……え?」
 焦って引こうとした優季の手に俺は手を添えて、俺達は二人でひとつの、二人の名前が入った図形を描いたんだ。
386未来と過去の二人から15/16:2008/08/10(日) 19:11:21 ID:iYm6ARH+0

「……覚えてた?」
「……覚えてましたけど、宿まではとても」

 言い回しで半分を否定する優季。 
 きょとんとした表情を見れば、予約が意図的でも此処を選んだのは偶然なのは判る。
「海水浴場がこの辺だったのは、記憶にあったんですけどね」
 偶然の一致でもあり、潜在的な記憶が呼んだ出来事でもあり。

 それにしても部屋まで一緒というのは。

「言わないの?」
「何をですか?」
「運命的ですって」
 また怒られるかなと思いつつ、出そうででなかった優季の十八番を誘ってみる。
 でも、今度の優季は神妙な顔をした。
「言いたいですけど、やっぱり宿を取ったのは私なので……」
 正直な告白は今更だけど、つまり運命的でなく、意図的ってことか。
「いいじゃない、それでも」
「え?」
 相合傘に向いていた視線を、こちらに戻す優季。

 俺はその瞳を優しく見て言う。
「だって、運命なんて、半分は自分で切り開くもんだろ」

 残り半分は、いや、八割くらいは、どうしようもない事かも知れないけれど。
 でも、自分で歩かなければ運命だって進まない。
 辛い運命だって、逆らえば変わる事もあるんだ。丁度、優季が俺を救ってくれたように。
「だから、これは運命的。未来の俺達と、過去の俺達からのプレゼント、そう思うよ、俺は」

 心から、本気で俺は、そう思って言った。
 だから、優季も信じてくれて、嬉しそうな笑顔になった。
387未来と過去の二人から16/16:2008/08/10(日) 19:13:55 ID:iYm6ARH+0

 夕日が窓から差し込んで、茜色に染まる畳の上。

 向かい合わせで、見つめ合う二人。

「貴明さん」
「なあに、優季」
「運命的です、貴明さん」
「そうだね、優季」
「でも、半分はわざとです。貴明さん」
「あはは、俺も一枚噛んでるな、相合傘の名前書いたの、俺だもん」

 そこで、優季が首を傾げる。
「運命と、意思が一致したら、どうなっちゃうんでしょう、貴明さん」
「……すごく運命的、かな?」
 我ながら文学的才能のない受け答えだったけど、優季は手を叩く。

「貴明さん」
「なあに、優季」
「すごく運命的です、貴明さん」
「そうだね、優季」
 同じ方向の受け答えを繰り返して、俺は優季の頬に手を伸ばす。
 優季は、今度は避けずに、そっと身を寄せてくる。

「貴明さん」
「なあに、優季」
「私、貴明さんと、ずっと一緒です」
「うん。俺も、優季と、ずっと一緒だよ」

 触れあう息と息。近寄る唇と唇。やがて。

 過去と未来に見守られ、現在(いま)の二人は、ひとつになった。
388名無しさんだよもん:2008/08/10(日) 19:15:22 ID:iYm6ARH+0
以上です。大量の支援ありがとうございました。
途中でさるさん喰らって、携帯規制中で断りも入れられずすみませんでした。

7/16「手を話して」→「手を離して」
シチュを欲張り過ぎたかな……もっと草壁さん描写の引き出しが欲しいです。

>378
いえ。私は「めーぷる☆しろっぷ」の人です。
イルファさんSSの人、最近活動が見られないのが残念かつ心配です。忙しいのでしょうか
389名無しさんだよもん:2008/08/10(日) 19:20:10 ID:v8Tr1B910
>>388
久々に無茶苦茶ワクテカしながら読んだよ
短いけど草壁さんシナリオはとても良かったなってのを思い出したよ
めーぷるも好きだったから次も期待してます
390名無しさんだよもん:2008/08/10(日) 21:32:21 ID:dMsZr+iP0
391名無しさんだよもん:2008/08/10(日) 23:45:25 ID:C8ZKiYY50
>>388
めーぷるの人乙
いつも楽しく読ませて貰ってます

しかし最近は草壁さん祭なのか
いいぞ、もっとやれ
392名無しさんだよもん:2008/08/11(月) 00:05:54 ID:viWUUWls0
コソコソ…
393無題n-みんなの要望をまとめるとこうなった。:2008/08/11(月) 00:09:42 ID:viWUUWls0
よっちゃるとゲーセンで遊んだりとか、愛佳と必死の攻防を繰り広げたりする予定
だったけどめんどくさくなったから結局しない話。
なぜか一レスごとに区切らないと気がすまないのだけれども、今回はちょっと区切りが強すぎたかもしれない。
---
-ゆさゆさ
「う。うぅん。あはっ。」
-ゆさゆさ
「ひゃっは。しゅーひゃー。」
-ゆさゆさ
「ふふふっ。ふぁー。むにゅむにゅ。」
-どこっ!
「…」
「ご主人様。朝れすよ。」
「う。うん。おはよう。シルファちゃん。」
「ご飯できてますので遅刻しないように着替えて降りてきてくらさいね。」
「はい。わかりました。」
……もう少しアナログ的に起こしていただけないものなのだろうか…
あまりにもデジタルで、人体によろしくないような気がする。
やはり生物は超段階的に−つまりアナログの中で−進化してきたものらしく、
もうちょっと途中の過程を大事にするべきなのではないのかと思う。
「さめますよ?」
「はい。すぐに伺います。ごめんなさい。」
394無題n-みんなの要望をまとめるとこうなった。:2008/08/11(月) 00:10:06 ID:viWUUWls0
「お魚さんですね。とってもおいしそうです。」
「お魚さんれす。やっぱり日本人は焼き魚れすよ。」
「うん。じゃあいただきます。」
-はもはも
「うん。うまい。」
「べ、別に、ご主人様にうまいって言ってもらいたくて手間のかかる和食を作ってるんじゃないんれすからね。!」
-はもはも
「ツンでれですね。」
「日常には適度などきどきとゆとりが大切れすから。」
-もぐもぐ
「そうだね。」
時計を見るとまだ7時。朝にゆとりたっぷりなのはすばらしい。シルファちゃんにはいくら感謝してもしきれない。
「つんれれは絶妙なところでそれを与えてくれるものらと思うのれすよ。」
「というと?」
-ふーふー
「やさしく振舞ってくれた。でも、それはたまたまそう見えたらけれ、
もしかして嫌われているのかもしれない、と、不安にさせるのれす。
しかしつんれれであることがそれを完全に否定し、ゆとりを与えるのれす。」
-はもはも
「ツンでれマスターだね。でも物語の主人公はツンでれに気が付くことはないんだよ。」
「つまり不安に苛まれて精神が崩壊するわけれすね。」
-もぐもぐ
「うん。だから俺の精神が崩壊しないように適度によろしくね。」
「わかったれす。」
-ずずずー
「ごちそうさま。」
「おそまつさまれす。」
-ごしごしごし
「なってないれすねご主人様。」
「はひは?(なにが」
「磨き方れす。ちょっと貸してみるれす。」
後ろから体を抱きかかえるようにして、右手にあった歯ブラシを、シルファちゃんが手ごと掴む。
おっぱいがいっぱいです。
「お胸があたっていますよ?」
「あててるのよ。れす。」
「そうでしたか。」
「とりあえず口を半開きにしてくらさい。」
言われた通り、だらしない顔を鏡越しにシルファちゃんに晒す。
「まずこのように持ってれすね…」
持ち方を鉛筆を持つような形に矯正される。
「歯に斜めに当てます。」
「このとき、どのような順番で磨くか決めておくことが大切れす。
同じところばかり磨いて歯を削ってしまったり、磨き忘れを残してしまったりするかられす。」
「ふぇー。(へー」
-ごしごし
「ふぁぁ。」
敏感な部分を小刻みに刺激されて、声が出てしまう。痛気持ちいい。
そして手の動きとあわせて、"いっぱいなもの"がふにょふにょと動く。
「ふぉぉ。」
「こんな風に、歯茎と歯の間をちゃんと磨くようにしないと、ここから虫歯になったり歯周病になったりするれすよ。」
-ごしごし
-ふにょふにょ
「ふぉっふぉ」
「具体的には歯茎の後退、歯槽骨の欠損が起こってきます。」
-ごしごし
-ふにょふにょ
「フォーーー」
「朝からあえぎすぎれすご主人様。」
396無題n-公開するけど後悔もする。:2008/08/11(月) 00:11:14 ID:viWUUWls0
ふぅ。口がいつもよりすっきりしてすーすーする。
ちょっと血が出た。初めてだとそうなるが、慣れるとましになっていくらしい。
まぁそれはとりあえずおいておいて、少しゆっくりしすぎたと思い、急ぎ気味に靴を履く。
「お弁当れす。」
顔を上げてそれを受け取る。
「あ、ありがとう。じゃ、いってきまーす。」
「いってらっしゃいれす。」
-がちゃ
「たーかk」
-ごとっ
「くぅーん…」
「お。このみ。悪い。大丈夫か?」
「うへ…ちょっと大丈夫じゃないであります…」
-なでなで
「ごめんな。」
「ちょっと大丈夫になってきたであります。」
-なでなで
「えへー」
「じゃあいくか。」
「うん。」
外に出ようとすると、突然背中を引っ張られる。
「ん?何シルファちゃん。」
微妙に首をかしげて無表情に突っ立っている。
-なでなで
微妙に首をかしげて照れくさそうに突っ立っている。
「じゃいってくるね。」
397無題n-ついでに反省もする。:2008/08/11(月) 00:11:41 ID:viWUUWls0
いつも通りの朝。いつも通りの四人組。
そして
「うぉりゃー。」「うぉりゃー。」
文字で表すと差異はないが、元気な声と、棒読み台詞。
それと共に、体を圧迫される。
「おはよう。よっち、ちゃる。」
「あれー?反応がうすいっすね。」
「女の体に飽き始めたか。」
「いや、反応すればするほど状況がよくない方向に流れていくから、今必死で絶えてる。」
「学習型だったか。でもそれは根本的な解決になってない。」
「じゃあつまり、もっと刺激すればたどり着くところは同じってことっすね。」
「うん。そうっな・・・ん・・だはっうはっあぁ。」
-ふにょふにょほにょにょ
これはまずい。たったりいったりおちたりしそうだ。
「ん。ん?ここか?ここがええのんか?」
「体は正直。」
らめぇえええええええ。
「もー。二人とも。あんまりタカ君いじめちゃだめ。」
あぁ。女神よ。
「うーむ…じゃあこのみに免じてこの程度で許してやるっす。」
そういいながら、今度はこのみに抱きつく。
「はー。やっぱりこのみはやーっこいっすねぇ。」
-はぐはぐ
「ひゃっ」
「ん。このみ。育ったか。」
-もみもみ
「はぁあっ。ちょっ。ちゃるーよっちーっ。」
-もみもみはぐはぐもみはぐはぐ
「あぁあ。はぁっ。ら、らめぇええええ」
女神よ、すまない。お前の犠牲は無駄にしない。
398無題n-はーみがけよ!宿題やったか?:2008/08/11(月) 00:12:26 ID:viWUUWls0
そして学校そして放課後そして書庫。
「へい彼女。今日もかわいいぜ。お茶しない。」
「なんぱ…?」
……

--
「図書室は涼しくていいねぇ。っと。」
「そうだねー。教室とかだと、授業中しっ…かクーラーつけてくれないし…っね。」
書庫の整理は終わらない。
「そういやさ、結局撤去しなくていいの?」
そこには愛佳のゆとりセット。
「うーん。まぁ、放置されてるからいいんじゃないかなぁ。」
「ある種の実効支配だよね。」
「ふふふふふ……領土問題と同じだよ。実効支配こそが領土の保持者の要件となりえるものなの。」
「でも、実際には私物化を肯定するための主張は学校にできないよね。それをねじ伏せる軍事力もないし。」
「ふふふ…」

「えっ?」
--
「貴明くん。休憩にしよー。」
「そうだね。」
「はい。今日のお供はこれ。」
「これ何?」
「へーふんはいはよ」
「…」
「レーズンパイだよ」
「へーふんはいおいしいね。」
「へい彼女。今日もかわいいぜ。お茶しない?」
「ごめんなさい。」
なんか今日はよくあやまる日だなぁ。
---おしーまい。
399名無しさんだよもん:2008/08/11(月) 00:20:44 ID:4uoALREu0
この人リアルまーりゃん臭がするなw
400名無しさんだよもん:2008/08/11(月) 00:35:22 ID:PGLgo19U0
運動音痴設定と親が再婚している草壁さんは斬新だった
401388:2008/08/11(月) 07:07:37 ID:Bcofc8CM0
>400
的確なご指摘ありがとうございます。今後も気付いた点はビシバシお願いします

運痴の方は、前半(海水浴)を書いた後に、後半(宿)を書く時になってから
アメオニのくだりを読み直した怠慢と、意識不足から生じたものです
仕方ないので、胸がおっきくなって動きが鈍くなったとでも考えますw

10/16「両親」の方は単純ミスです。そら再婚も有り得なくはないでしょうが、
こんなとこで新設定を作る理由はないですし「家族」とでもすればよかった
てかプロットの時点では言い回しに気を付けなきゃと思ってた所だったのにorz

なんにせよ日頃の研究と愛情が足りてませんね。草壁さんの胸の谷間より深く反省
402名無しさんだよもん:2008/08/11(月) 20:48:58 ID:viWUUWls0
>>399
お褒めに預かり光栄の極みでございます…

>>400>>401
すげぇ。
私が「シリアスで甘いSS」を書けないのは、設定が抜け落ちてキャラクタの印象しか残ってないからなのかもしれない
と思った。
二次創作なのだから基本的には本編に準拠して書くもので、
そうしていればまっすぐに本編に沿った甘いお話になるはず。いやぁ。参考になるなぁ。
403名無しさんだよもん:2008/08/11(月) 20:57:55 ID:viWUUWls0
なぜ預かってしまったんだろう…
よい子はちゃんと変換しようね!私との約束ですよ!
404名無しさんだよもん:2008/08/15(金) 00:19:26 ID:0gcqt4rv0
誰か・・居るかい?
405名無しさんだよもん:2008/08/15(金) 00:24:50 ID:tJyxFxZ/0
スレに誰もいませんよ
406名無しさんだよもん:2008/08/15(金) 00:26:11 ID:0rax+vFr0
盆とコミケだからなぁ
来週まで気長に待とうぜ
407名無しさんだよもん:2008/08/15(金) 00:50:47 ID:xv1hMiQh0
ごきげんるーこまだー?
408名無しさんだよもん:2008/08/15(金) 01:01:37 ID:lvvruLB10
コミケに関係ないおいらが通りますよと

だれも愛佳分補充してくれそうに無いので自分で書いたお
るーこでなくてスマソ
 えっと、こ、こんにちわ。
 私、小牧愛佳っていいます。
 お菓子が好きで、運動と男の子はちょっと苦手で、でも恋愛には興味津々の、どこにでも居る
普通の女の子です。
 あっ、で、でも、食いしん坊じゃないですよ。
 それから、あたしは男の子がちょっと苦手です。
 でも、そんなあたしにも、最近気になる男の子が居ます。
 それは……河野貴明君。
 笑顔が優しくって、あたしの事気にかけていてくれて、いつも助けてくれるんです。
 最近では書庫の整理を手伝ってもらうときに、お互いの苦手克服のためにこ、恋人……
のフリをしています。そのときは河野君のこと……た、たかあきくん、って呼んでます。
は、はずかしぃ……
 でもぉ……最近は本当にたかあきくんと恋人になれたらいいのになって思ってます。
 でも、たかあきくん鈍感だし、あたしもキチンと気持ちを伝えられなくて……なかなか関係は
進展しません……しゅん……

 でも、いつか本当の恋人になれるように、今日もあたしは努力してます。
 今日は書庫のお仕事のお茶の時間のために、腕によりをかけてチョコレートケーキを焼いてきたの。
 ちょっぴりほろ苦くって、でも甘くて美味しいチョコケーキ。
 今回はチョコも奮発してベルギー産の高級チョコを使ったんだから。
 きっとたかあきくんも美味しいって言ってくれるよね。
 そして……「愛佳、このチョコレートケーキ、とっても美味しいよ。」
「えっ、そ、そう? きっと……たかあきくんに美味しいって言ってもらいたいなって
 思いながら作ったからだよぉ。」
「……嬉しいよ、愛佳。俺はそんな愛佳が好きだよ。」「えっ、た、たかあきくん!?」
「愛佳……もう、我慢できない。俺は、愛佳を「食べたい」」
「えっ、そ、そんな、たかあきくんっ、わ、私達まだ高校生だし、そんなの早すぎるよぉ…」
 ……はうっ、な、なんかすごい事想像しちゃった。
 でも……たかあきくん、喜んでくれるといいなぁ。早く来ないかな……
 がちゃ

 あっ、たかあきくん。
「……ごめん、愛佳。今日急用が出来ちゃって、手伝えないんだ。」
 えっ、そ、そうなの? それなら、せめてお茶だけでも……
「実は昼から歯が痛み出しちゃってさ……それで歯医者に行かなくっちゃ行けないんだ。
 だからごめん。」
 え、あ、そ、そうなんだ……うん、わかったよ。お大事にね。
「ありがとう。手伝えなくてごめん。」
 ちゃんと歯磨かないとダメだよ?
「うん。それじゃ。」

 ばたん。

 ……たかあきくんのさるぅ。
 せっかくチョコケーキ用意してきたのにぃ……いいもん。一人で全部食べちゃうから。
 はむ……たかあきくんのばかぁ……さるぅ……もぐもぐ……朴念仁……

 次の日。
 大きなケーキを1ラウンド丸々食べたあたしはお腹を壊しました。
 ううう……あたしもさるぅ……
411名無しさんだよもん:2008/08/15(金) 01:06:48 ID:lvvruLB10
タイトル長すぎw

気が向いたらまた書きます
412名無しさんだよもん:2008/08/15(金) 01:40:43 ID:M5y78jWx0
>>411
久々にリアルタイムで読ませてもらいました。
自分も虫歯なりかけの歯があるのでいいんちょのケーキは食べれそうにないです…

次回作も頑張ってくださいb
413名無しさんだよもん:2008/08/15(金) 22:59:47 ID:KVUW+EUU0
GJ。オチは二人で並んで歯医者かと思ったがほのぼのしてて愛佳可愛いよ愛佳
歯医者云々の貴明の台詞のとこで、もうワンテンポ溜めてから放す感じがあるともっと良かったかも。抽象的でごめん
414名無しさんだよもん:2008/08/15(金) 23:11:10 ID:lvvruLB10
感想どうもです

あっさり流し杉ってのはその通りで、ノリで書いたとはいえ、少しためと引きが必要やね
次はもうちょっと考えます

でもやっぱり自分で書いたものだと読んだ時の萌え度がいまいちやなぁ
どなたか愛佳分を(ry
415名無しさんだよもん:2008/08/16(土) 00:12:51 ID:C3mNgeeT0
>>414
そんなこといってると>>398みたいなのがまた投下されますよ。
416名無しさんだよもん:2008/08/16(土) 11:45:33 ID:zLQb1LcF0
>415
なにか思いついてるなら遠慮せず投下するがよいぞ
417名無しさんだよもん:2008/08/16(土) 12:55:17 ID:bt5AIQIv0
>>415
それって何か問題あるのか?
別にひどい作品でも無かったと思うけど
418無題w〜月と星と火星〜:2008/08/16(土) 16:32:46 ID:C3mNgeeT0
そんなこというと書いちゃうんだぜ。!
花梨ルートでの貴明の知識と食い違いが出るかもしれないけど、
あんまり設定覚えてないもんで勘弁してください。
--
チャイムが鳴る。下校時刻を知らせるものだ。
外からは運動部の今日の活動を終えるかけ声も聞こえてくる。
「かえろっか。」
「うん。そうだねー。」
荷物荷物…

ふとまなかの方を見ると、もう荷物をまとめ終え、まだか、とこちらを見ている。
照る照る坊主姿で。
とりあえず自分の荷物をまとめて、そちらへ向かう。
「おまたせ。」
「うん。じゃあ帰りましょう。」
「本当にそのまま帰るの?」
「えっ?…」
少し腕を持ち上げながら自分の服装を確認するまなか。
「…ジョークですよジョーク。なのよ?」
「見ず知らずの人にはそのジョークは通じないからやめたほうがいいよ?病院いく時とか。」
「ひぇっ、えっ、あ、え、…郁乃から聞いたの…?」
419無題w〜月と星と火星〜:2008/08/16(土) 16:33:03 ID:C3mNgeeT0
「きれいな夕焼けだねー。」
「照る照る坊主のおかげだねー。」
「…」
微妙に怒ってるのかもしれない。
「あ、あっちに月でてるよ。」
ごまかしてみる。
「わー。明るくて綺麗だねー。」
「満月かな。」
「貴明くん。小学校の理科、聞いてなかったでしょう。」
「え?」
「満月は太陽がでてる間には見えないものなんだよ?」
「あー。そうだね。反対側にくるから全体から反射されるんだよね。」
「そうそう。だからちゃんと見ると端っこがかけてるはずなの。」
「肉眼じゃみえないね…」
「サンコンさんは見えるのかな。」
「最近だとボビーとか。」
「いいなぁ。私ももっとしっかり見てみたいなぁ。」
「望遠鏡とかで見たことないの?」
「写真とか、テレビとかでしかないんだよぉ。」
「へー。
 あ、そういや、家に確か望遠鏡があったから、観てみる?ガキのころに親父にみせてもらった記憶がある。」
「えっ、いいの?」
「もちろん。じゃあこれから大丈夫?」
「うん。じゃあ家にかばん置いて、郁乃に話してくるね。」
420無題w〜月と星と火星〜:2008/08/16(土) 16:33:19 ID:C3mNgeeT0
「ただいまー」
というなり、かばんを置いて、押入れに向かう。
「おかえりなさいれす。どうしたんれすか?」
「望遠鏡あるかなーって。」
「望遠鏡れすか。」
-がさごそ
「うん。あのサイズならここにしか入らないだろうし…」
-がさごそ
明かりが突然ともされる。シルファちゃんが懐中電灯を持ってきてくれたらしい。
「ありがとう、シルファちゃん。」
-がさごそ
「あ、これかな…」
ミザ…という文字が見えた。取り出してみる。
「みざーる望遠鏡。れすか。」
「箱ぼろぼろだなぁ。」
「酸化しちゃってますね。」
「まぁ、中身は大丈夫だろう。」
421無題w〜月と星と火星〜:2008/08/16(土) 16:33:53 ID:C3mNgeeT0
早速南が見える庭に出して、三脚を組み立て望遠鏡を乗せる。
えっと、どうするんだっけな…たしか、北極星に極軸をあわせるんだっけ。
「みえねぇ…」
北極星が家に隠れて見えない。
極軸がずれると赤道儀で追跡するときずれちゃうんだけどなぁ…まぁいいか。
「ちょっとそこの壁にしるしつけていいれすか?」
「え?いいけど、何するの?」
「測量するれす。」
そういい、壁に顔をつけ北極星を目視し、なにやら印をいくつかつけ、こちらにもどってくる。
そして、赤道儀近くからその印を見て三脚の位置を動かす。
「これであってると思うれすよ。」
-ぴんぽーん
「こんばんわー」
まなかがきたようだ。
「あー、いらっしゃい。こっちだよー。」
玄関に向けていた顔をこちらに向けるまなか。その隣には郁乃ちゃん。
「こんばんわ。まなか、郁乃ちゃん。」「こんばんわ。」
「河野くんこちらの方は…?」
びみょうに後ろに隠れようとするシルファちゃんを見ながらそういう。
「あぁ、シルファちゃんだよ。メイドロボの実験機。
 シルファちゃん。こっちは同級生のまなかと、こっちがその妹の郁乃ちゃん。」
「はじめまして。よろしくおねがいします。」
「はじめまして。よろしく。」
微妙に距離をとりながら、でも
「よろしくおねがいしますれす。」
と、挨拶はできたようだ。
「よるご飯の準備が途中なのれ台所に戻るれす。」
しかしすぐに戻っていってしまった。
「ははは。ちょっと人見知りが激しくてね。」
「へー。」
「ロボットなのに人見知り…?」
「感情のある実験機なんだよ。」
422無題w〜月と星と火星〜:2008/08/16(土) 16:34:30 ID:C3mNgeeT0
シルファちゃんの設定してくれた望遠鏡を、早速月にあわせてみる。
副鏡を覗いて…
見えた。これでも十分きれいだよなぁ…
本体を覗いてみる。うん。ばっちり。
「いやぁ、久しぶりに見るとやっぱりいいなぁ。はい。どうぞ。」
交代
「うわぁ。すごい。すごいよ貴明くん!郁乃!つきだよ!月が光ってるよっ!」
興奮しておられるようです。
「ムーングラスつけてなくて、あんまり見すぎると目に悪いから気をつけてね。」
「うん。あ、わーうわー。きれー。」
「喜びすぎだろ…」と、郁乃ちゃん。
「郁乃もみてみて!」
そういい、車椅子をおす。
「あー。わかったからそんなにあわてなくても。
 …何も見えないけど…?」
「あぁ、赤道儀は手動で動かさないとだめなんだよ。」
回してあげる。
「…」
「どう?どう?郁乃。」
「…」
「どうしたの?」
「綺麗…」
見とれる郁乃、幸せそうなまなか。そして、
「ごはんれきましたよー。」
423無題w〜月と星と火星〜:2008/08/16(土) 16:34:48 ID:C3mNgeeT0
みんなで部屋に入る。
「お客さんの分も用意しました。」
そこには色とりどりの食事。
「わー。すごーい。おいしそー。でも、いいの?」
「いいれすよ。ご主人様のお金れすから。」
「…だんだん尻にしかれ始めてきた気がする…」
「すごいわね…こんな短時間でこれだけ作るって…」
「明日の分の下ごしらえしたものがあったのでそれを使いました。」
……

「ごちそうさま。」「ごちそうさまです。」「ごちそうさま。」
「おそまつさまれす。
 望遠鏡のちょうしはろうれすか?」
「好調だよ。しっかり追尾できてる。」
「それはよかったれす。」
「シルファちゃんものぞいてみる?」
「ご主人様がそういうのなら。」

「お月様れすね。」
「たまに見るといいけど、すぐ飽きちゃうのがあれだよね。」
「れも、模様とかゆっくり見てみるのもいいものれすよ。
 あ、後ろの光星が食れすね。」
「え?シルファちゃん見えるの?月と一緒だと明るさが違いすぎてイメージセンサ対応できないんじゃ。」
「高速可変露光機構で擬似的にダイナミックレンジを広げてるれすよ。人と同じような機構になってます。」
「へー。」
「めいろろぼはらてじゃないのれす。」
424無題w〜月と星と実は木星〜:2008/08/16(土) 16:35:14 ID:C3mNgeeT0
「あの星なんだろ。とっても明るいけど…」
空を見上げていたまなか。
「ほんとだ。明るい。」
「惑星かな。望遠鏡向けてみるよ。」
向ける。
http://www.velvet.rm.st/sky/2008.8.15.jpg
「あぁ、木星か。」
「みえるの?」
「ご確認くださいませ。」
「うむ。」
と、郁乃ちゃん。
「赤いわね。」
「えー。みせてみせてー。」
「はいどうぞ。」
「…小さい…けどなんか模様見えるよー。」
「気体の成分とか濃度の違いかな。」
「テレビとかで見たことあるけど、なまで見るとなんかすごいねー。」
「動いてるのがまた味があるよね。よく見ると、近くの左側にふたつ、右側にひとつ、右の遠くにもうひとつ衛星が見えると思う。」
「…うー?…ぁ、みえた!みえたみえたっ。3つみつけたよー。郁乃も見てみてー」
幸せそうなまなか。
「だから、そんなにあわてなくていいって。」
すこしうっとおしげに振舞ういながら、楽しそうな郁乃。
「…」
なにかそわそわして、交流を楽しむかのようなシルファ。
そのなかにいられる俺。
誰がいったい、一番幸せなんだろう。
--
おしまい。意見は何でも歓迎なんだぜ。
425名無しさんだよもん:2008/08/16(土) 18:20:44 ID:05WdQwph0
一番星のBGM流しながら読んだ
426名無しさんだよもん:2008/08/17(日) 01:29:55 ID:ZMkC4yZD0
実は僕も一番星かけてみました
427名無しさんだよもん:2008/08/17(日) 16:14:36 ID:BqaZc8DfO
>>424
なんだろう?
星の事は全然知らないんですが、みんな楽しそうな雰囲気が伝わってきて自分まで幸せな気持ちになれました。

次回作も期待させていただきます。
感想ありがと--「滑稽よね。」
「まぁ、そうだよな。」
「何のこと?」
「今の状況。空に思いをはせて自分たちはちっぽけであると再認識すること。そしてそれを滑稽であると改めて思考していること。」
「まだこういう情報を意識に置いて思考したことがないのれ、私にはよくわからないれす。そういうもんれすか。」
「ずっと理解して生きてるはずなんだけどな。」
「何もできないのに生きてるのよね。」
「何もできないことないよぉ。今だって楽しんでるし。」
「だからそれは私たちが今見てるものの中で意味を持たないって言ってるのよ。何をしても変わらない世界。」
「そしてそんなことを考えることがまた滑稽。そう姫はおっしゃっているのです。」
「うーん…」
「人間は滑稽だわ…」あらためて空を見上げる郁乃。
「私はろぼっとれすけろね。」
「この輪に参加してることですでに人間のもつ人間たる要素を手に入れてると思うわよ。
だからあなたを機能させる機構の人間との相違が、あなたをこっけいな人間でないとする理由がないわ。
私たちと同じようにね。まだ理解していないとしても、うちにそうなる。」
「そうかもしれないれすね。私ももう垣根を意識することは今ほとんどないれすよ。
れも社会の装置としての人間とロボットの違いは、現状では埋まらないのかもしれないれす。」
「埋める必要もないけどね。」
「埋めるとしたら、有機部品で構成したり、人間がサイボーグ化したり、だよね。」
「それは決定的要因にはならないと思うわよ、お姉ちゃん。」
「そうれすね。そういった俗に言う理系的なアプローチは不可知の要素が消せる場合には、目的を達成れきるのかもしれません。
れも違いを埋めるには政治信条や理念、倫理観を持つ意見を戦わせること、そして何らかの決断、
つまり文系的な行動が必要になると思うのれすよ。」
「珊瑚ちゃんにはそれはやっぱり期待できないよね。あまりにも無関心すぎて、
人類が培ってきた知識を使ったとしても、それに関与することができない。
でも、そういう面でなら、もしシルファちゃんが関心を持てば自身で達成できるのかもしれない。ただの知識の集積でないのだから。」
「DIAの汎用性は無限れすね。」
「人間は人間の中でさえちっぽけで滑稽・・・はぁ。なんか面白いことおきないかしら。」--おしまい
429名無しさんだよもん:2008/08/19(火) 19:32:42 ID:7UYo1Aaj0
面白いSSを、誰か、書いてください。
430名無しさんだよもん:2008/08/19(火) 22:28:43 ID:x+x/fOHK0
投下を否定する気はないし歓迎だが、俺自身はこの攻殻調SSは読みづらい
気分を変えて普通のSSも書いてみたらどうだ? たまに基本に立ち返るのもいいもんだ
431名無しさんだよもん:2008/08/20(水) 09:26:23 ID:lErr1HtlO
今TtTやってるから書く時間がなくてさ。

最近またちょっと書きたくはなってるんだけど、今一番書きたいのはシルファのパラレルもの(量産型シルファのお話?だから実はTH2のキャラは誰も出なかったりする)なんだよねー。
まあ、出来次第なんだろうけど、そーいうのにも需要はあるかなあ?
432名無しさんだよもん:2008/08/20(水) 19:39:48 ID:Q7PqK9+s0
>>430
>>393でウォーミングアップして、>>418でがんばったら、>>428で反動が出た。
>>428の受けがやっぱり悪そうだから、もう少し比率を変える努力をしてみる。

あぁ、それと、そんなに気を使った書きかたしなくてもいいんだぜ。!
書くか書かないかは、たたかれるかたたかれないかじゃなくて、私が欝か欝でないかで大体決まるから。
欝でないときはもうちょっと生産性のある時間の使い方しないと生活が破綻しそうなんだぜ。!
433無題o〜ふぅ。〜:2008/08/20(水) 20:28:48 ID:Q7PqK9+s0
何の変哲もない、貴明が死にかけたり愛佳が右寄りだったり郁乃がデレなかったり、シルファが淡々としまくってる話。
「みなさん。楽しんでいるところあれれすが、もう9時過ぎれす。
家の人が心配するれすよ。」
「もうそんな時間か。そろそろ帰ったほうがよさそうだね。」
「え、あ、あの…」
「何?」
間。
「天体観測って夜通しやるものなのかなぁと思ったから、
泊まる用意してきちゃってたり…」
さらに間。
「…となると、郁乃ちゃんも一緒…だよね。そっかー。泊まりかぁ…」
「あ、いや、貴明くんが迷惑なら、というかそもそもあたしの勘違いだし」
いい終えないうちに、「いいんじゃないれすか。面白そうれすし。」とおっしゃる。
なぜシルファちゃんが乗り気なのだろう。まぁ、いい傾向が出てきてるのかな。
「あー。あたしはなんでもいい。とりあえず眠い。疲れた。
…何お姉ちゃんその目は。」
愛佳がなにやら含みのある微笑みを郁乃ちゃんに向けていた。
「えっ?私変な目してた?」
なんかよくわからないが、とりあえず、
郁乃ちゃんは郁乃ちゃんで、少ししんどそう。
「じゃあ、泊まっていきなよ。」
434無題o〜空眺めてるとさ。〜:2008/08/20(水) 20:29:24 ID:Q7PqK9+s0
「ご主人様、次入ってくらさいね。シルファは最後に掃除するれすから。」
というわけで早速2人にお風呂に入ってもらっている。
「うん。じゃあ俺それまで暇だから望遠鏡片付けてくる。終わったら片付けるの手伝うよ。」
郁乃ちゃんは一人で入りたがってたけど、
愛佳は許さなかった。やはり頑固である。俺でもそうするけど。
--
「おわったよー。なにしよ。」
「食器乾いたやつから拭いて棚にしまってくらさい。」
温水で洗っているので、すぐに乾いてくれる。
「了解。」
ただ乾かすだけだと水垢が残って、それが重なって食器が汚れてしまう。
濡れたまま拭くと、クロスの成分がこれまた水垢になってしまう。
そしてそれを能率的に回避するために温水で洗っているらしい。
「さすがメイドロボだよなぁ…」
改めて思う。普通なら洗って自然乾燥でおしまいだろうに。
「何がれすか?」
「いや、あんな印だけで望遠鏡設置できるのはすごいなぁって。」
「多分慣れればられれもれきるれすよ。」
私にはできない。
435無題o〜時間忘れるよね。〜:2008/08/20(水) 20:30:57 ID:Q7PqK9+s0
リビングのドアが開かれる。
「あがったよー。あったかかったよぉー。」
「お、じゃあ入ってくるね。シルファちゃん後よろしく。」
「わかったれす。」
「何かしてたのぉ?」
-ふぁあ。。
「食器の片付けてつらってもらってました。」
-ふぃ…
「お水ろうぞ。」
ソファーに向かっていた郁乃にコップを差し出す。
「あ。ありがと。」
-ごきゅごきゅごっごっご
「ぷはあ。」
「ふふっ。
シルファちゃん。あたしも手伝っていい?」
「助かるれす。」
-はぁあ。
「えっと、何しよっか。」
「そこに置いてある食器を、乾いた順番に拭いていってくらさい。」
-ふみゅ・・・
「これを拭くの?」
「全体を満遍なく擦るていろれいいのれ、終わったらそこにしまっていってくらさい。」
「はぁい。」
436無題o〜どうでもいいんだけどね。〜:2008/08/20(水) 20:31:37 ID:Q7PqK9+s0
ふぅ。。。
あぁ。今日は肉体労働したせいか、背筋が一気に弛緩するのがわかって気持ちいい…
「ふぁっ。」
ふぅ。。。
あー。きもちいい。
きもち…そういや、さっきここに愛佳と郁乃がはいってたんだよなぁ。
だからなんなんだって話だけどなぁ…
ふぅ。。。
「ふぅぁっ。」
伸びをする。
気持ちいい…
あったかい…
そういや、男子風呂より女子風呂のほうが浴槽内の細菌が多いらしいなぁ。
女の子はいろいろ大変だなぁ。
「ふぅぁあああっ。ふぅ。」
はぁ。。。
ぶくぶくぶく…
437無題o〜ふぁ。〜:2008/08/20(水) 20:32:36 ID:Q7PqK9+s0
ご主人様遅いれすね。いつもなら10分ぐらいれれて来るのにもう30分。
「ご主人様が気になるのれ、ちょっと見て来るれす。」
今日は食器の量は多かったれすが、てつらってもらったのれもうとっくに片付けは終わったれす。
「え、うん。ってえ?あ。え。あぁ。はい。いってらっしゃいです。」
どうしたんれしょうか。
-お風呂場まで見に行っちゃうんだ…
やっぱりえろいことしてるんれしょうかね。
-そうだよね。メイドさんだもんね。
------------
-コンコン
「ご主人様ーえろいことばっかしてちゃらめれすよー」
-ぶくぶくぶく
はっ。
-ざっぱーん
「げほっ。がほっ。ほっほ。ごほっごほっ。」
いかんいかん…眠ってしまった…死ぬところだった…
というかどれくらい水の中にいたんだろう。
「らいじょうぶれすか!?」
ドアが開け放たれる。
「あぁ、だいじょうぶだいじょうぶ。」
なんか知らないけど生きてる。
-ごほっ。ごほっ。
「ちょっと寝ちゃってただけだから。」
「もう、気をつけてくらさい。死ぬれすよ。ロボットじゃないんれすから。」
「ごめんごめん。ちょっと油断してた。ははは。疲れてるのかな。」
「もうあがってくらさい。あぶないのれ。」
「りょーかい。」
-すーすー
「あ、貴明くん。ながかったねー。」
「うん。まぁ、ちょっと寝ちゃってて。はは。」
湯船の中で。
-くかー
「そっかー。お疲れ様です。」
「いえいえこれしき。」
そこに、ソファーで眠る郁乃ちゃんが目に入った。
「おつかれさん」
-なでなで
「う…みゅう…」
「かわいいなぁ。寝てると。」
「起きててもかわいいよぅ。」
-なでなで
「ふ…ひゅーはー…たかあ・・き・・・」
「お。なんだなんだ。」
「た…かあーき…」
「そんなに大好きか。照れるなぁ。」
「た…かあき…ばーか。」
「…」
「…」
特にすることもないのでテレビを見ている。
「速いなぁ。」
「ねー。」
競泳が行われている。日本の選手がリードしているようだ。
「島国だからかな。」
「日本が速いのが?」
「うん。」
「そーだねー。」
……

「平和だなぁ。」
「何か起きないかなぁ。」
「…えっ?」
-がちゃ
「お風呂片付けてきたれすよー。」
「ご苦労様。」
「そろそろ11時れすよ。夜更かしは体によくないれす。」
人間は6〜10時間の睡眠が大体にとって必要なのだそうで。
「夜更かしに慣れたげんらい人の感覚で生活してたら、国に殺されるれすよ。
裕福れあるという幻想の、政府のせんれんにらまされてはいけないのれす。
ただのインフレで金があるように見えているらけなのれす!
らから、過労をあるがまま受け入れるべきれはないのれす!」
いや、まだ学生だし。というか思考がNEET化してるよシルファちゃん!
「そうだね。そろそろあたしも眠くなってきた…かな。」
まぁ、俺も眠い…風呂で寝てしまうほどに眠い…
「じゃあそろそろねよっか。」
440名無しさんだよもん:2008/08/20(水) 20:36:04 ID:DqIZ8QDq0
支援
441無題o〜名前欄読んでくれてありがとう。〜:2008/08/20(水) 20:37:20 ID:Q7PqK9+s0
「えっと、じゃあ、郁乃ちゃんと愛佳は、俺の部屋のベット使ってよ。俺ソファーで寝るから。」
「だ、だめだよぉ。悪いよぉ。お邪魔してるのにそんなことしたら雷さんに起こられちゃうよ〜。」
なぜに雷さん?
「うーん。俺は別にどこでもいいんだけどなぁ…」
「らめれすご主人様。睡眠時無呼吸症候群とかになるれすよ。姿勢よくれきるような場所で寝るべきれす。」
「そんなこといったらシルファちゃんもだよ。もうちょっとやわらかいところで寝たほうが気分いいでしょ。」
「あー。もう何でもいいから電気消して静かにしてよ。」
「あ、起きてたの?郁乃。」
「そんな近くで騒がれたら誰でも起きるわよ。とりあえずここで寝るから静かにしてよね。」
「だめだって。話してても仕方ないからとりあえず郁乃ちゃん連れて行こう。」
「ってうぁっ。ちょ。なに。持ち上げるなぁ。」
「いいからいいから。」

-いいなぁ…貴明くんのお姫様抱っこ…

そして俺の部屋。
「ねぇ、貴明くん。」
「ん?」
「み、みんなで寝ちゃ…だめかな。」
だめだろう。
「いいんじゃないれすか。」
……

「どんなに考えても逃げ道はないれすよ?」
--
愛佳と向かい合うようにシルファちゃんが横になり、郁乃ちゃんがその間に入る。そして俺は愛佳の側から、
左腕を愛佳とベットの間から入れ、とりあえずベットに収まった。明日になったら、左腕の感覚がなくなってそうだ…
「…」
あれ、なんかさらに加重が…
--おしまい。
書き終わってから思い出した。シルファの私服の(パジャマとか)だそうと書く前は思ったのに、愛佳にお泊りセット持ってこさせてしまった。
どうしても短くしよう短くしようとしてしまう…きゃっきゃうふふは長ければ長いほうがいいのになぁ。
442無題o〜名前欄読んでくれてありがとう。〜:2008/08/20(水) 20:37:58 ID:Q7PqK9+s0
>>440
ひっかかってたわけじゃないけどありがとうなんだぜ。!
443名無しさんだよもん:2008/08/20(水) 21:10:20 ID:uE0uzo+90

正直な話、改行や字下げがないので読み辛いっす
444名無しさんだよもん:2008/08/20(水) 21:46:38 ID:4hAkxPzA0
>442
乙乙。別に気は使ってないよ。俺が読んでないのも事実だけど、
自分が好きでないタイプのSSだろうと投下は多いに越したことはないから歓迎
で、反応がなくて凹んでるかなと思ったので、攻殻ネタから離れてもいいかなと

文体とか、前フリ後書きを本文と同じレスに入れるのはわざとだと思うのでいいけど
…のとことか、場面の区切りを空白行で見やすくするのはオススメだぜ
それにしても、みんなでラブラブお泊まりというのは、やっぱり良いものだぜ
445名無しさんだよもん:2008/08/20(水) 22:28:17 ID:ckcSnemGO

結構こういうの好きかも
446名無しさんだよもん:2008/08/21(木) 21:54:02 ID:SElLXrih0
>>443-445
読んでくれてありがとう。
字下げいつも迷うんだよねぇ。行頭にスペース入れるのに抵抗があるのよ。
tabなら許せそうな気がしてくるのが謎。
空白行も、なぜか数バイトを惜しんでしまう。
読みにくい文章と読みにくい表現の仕方が相まって読む人の無駄な苦労を呼んでる感じですな。
空白も文章の情報だよということにして、入れる努力をしてみる。
447名無しさんだよもん:2008/08/24(日) 22:11:16 ID:sNSOENAA0
草壁さんとのまったりとした老後を誰かえがいてください。
姫百合家の老後も捨てがたいものがあります。
448名無しさんだよもん:2008/08/24(日) 23:24:29 ID:nnTsJTsh0
何故に老後ww
449名無しさんだよもん:2008/08/25(月) 18:03:05 ID:xCAI48Ue0
普段は保管所しか見てないのだが
何故今回更新分で急に草壁さんが流行り出したんだw
450名無しさんだよもん:2008/08/25(月) 18:11:13 ID:/JdN3pue0
そういう要求があったからですよ。
だから老後をかいt
451名無しさんだよもん:2008/08/26(火) 22:56:18 ID:zdqebkH90
じゃあこのみの老後の代わりに春夏さ(ここで映像は途切れている)
452名無しさんだよもん:2008/08/27(水) 07:11:40 ID:PpRTvpgK0
遅乙ながら書庫さん更新お疲れ様です。「菜々子Strike!3」は続きものじゃないカナ?ないカナ?
453名無しさんだよもん:2008/08/27(水) 14:18:31 ID:sZ1EuSvc0
二回言うな、燃やすぞ!
454あの女のハウス:2008/08/28(木) 17:01:21 ID:BoD40AYP0
 
 これが、あの女のハウスね・・・・

 これが、あの女のハウスね・・・・

 ・・・・捨てちゃえ。
 「ぴぎゃーっ!ミルミルッ!!シルファのお家をろうするつもりれすかっ!!」
 「はぁ!?何言ってんのよ?捨てるに決まってんじゃないこんな薄汚いダンボール。今日ゴミ収集日だしぃ。」
 「いじめれす!暴挙れす!めいろろぼ保護条例違反れ提訴するのれすっ!」
 「そうだよはるみちゃん。ヤドカリに貝殻が必需品なように、シルファちゃんにはダンボールが必需品なんだよ。」
 「ご主人様、その例えはなんか癪にさわるのれす。」
 「と、とにかく、それはシルファちゃんの大切な棲家だから。」
 「・・・・だぁーってぇ、お姉ちゃんが、捨てちゃえって言うんだもん・・・・」
 「えぇ!?」
 「そうですよ貴明さん。なまじダンボールなんかがあるから、シルファちゃんは対人恐怖症が治らないんですよ。」
 「―――うわっイルファさん!?びっくりした」
 「シルファちゃん、昨日も、ちゃんとお買物出来なかったんでしょう?」
 「・・・・うぅ・・・・れす・・・・。」
 「シルファちゃんはダンボール依存症なんです。それを克服しないと、ずっと社会復帰できませんよ?」
 「イルファさん、だからって、捨てちゃうなんて、そんな、乱暴な。」
 「アル中患者さんがお酒を絶つのは基本ですよね?ダンボール中毒を治すには、ダンボールを絶つしかないんです。」
 「う、海の向こうの国には、ダンボールを食べる風習があるらしいけど、そんな中毒があるのは初めて知ったよ。」
 「―――とにかく、これは捨てませんと。さ、ミルファちゃん、さっさと畳んで捨ててらっしゃい。ダンボール生活者から、脱却するために。」
 「らめぇ〜っ!!待つのれす!!」
 「・・・・イルファさん、俺さ、イルファさんのストーカー癖や、電信柱依存症も、この際治すべきだと思うんだけど」
 「・・・・えっ!?・・・・あら・・・・まぁまぁまぁ!?・・・・ここはどこ?私は誰?・・・・くんずほぐれつ、ずっこんばっこん!」
 「あ、お姉ちゃんが壊れた(汗)」
 「・・・・イルファさん、また変な妄想に耽るふりして、誤魔化してる」
455名無しさんだよもん:2008/08/28(木) 17:21:49 ID:BoD40AYP0
ネタものでどうもすんません orz
456名無しさんだよもん:2008/08/28(木) 18:35:42 ID:SwHP9WIn0
4行で吹いた。
イルファさんの誤魔化しと、それに至る経緯をもう3分考えてみるとよかったかもしれない。
なんにしても和んだ。ありがとう。
457名無しさんだよもん:2008/08/28(木) 22:08:47 ID:Vllyp5ov0
>ダンボール中毒を治すには、ダンボールを絶つしかないんです

スネークに死ねと申すか
458名無しさんだよもん:2008/08/28(木) 22:46:15 ID:5rbwmHAy0
スネークはタバコとエロがあれば生きていけるだろ
459名無しさんだよもん:2008/08/29(金) 00:33:12 ID:mZUZiZ160
スネークにはドラム缶もあるさ
460名無しさんだよもん:2008/08/29(金) 11:05:53 ID:OHWFOkqp0
「うぅっ…ふぅ…」
「朝か…」
 あれ。もう9時だ。いつもならシルファちゃんが起こしにきてくれるのにな。
 休みだから気を使ってくれたんだろうか。
 そんなことを考えながら階段を下る。
「シルファちゃのはよー。」
 そこには大きなドラム缶。
 う?うー。うーん?まぁいいか。それよりも、シルファちゃんの姿が見えないのが気になる。
 部屋を探してみてもいつものダンボールもないし…あれ。
 テーブルの上にお皿と手紙が。
『朝ごはんです。ご主人様。』
 買い物にでも行ったのかな。とりあえずいただこうかな。と、蓋を取ってみると、そこには何かカロリーメイト的な何かが。
 いや、カロリーメイトだろうか。いやいや、何か経年変化してる気がする。30年くらい。
 またなんか怒らせるようなことしたかな…とりあえず箱あけてみよっと。よいしょ。
「中身は食べられそうだ。箱はただの装飾かな。」
 はもはも食べてると、のどが渇いたので水を汲もうと振り返ると、ドラム缶の位置が変わっている気がする。
 あぁ、シルファちゃんここに隠れてるんだ。昨日ゲームしたからそれに感化されたのかな。
「あけるよー?」
「おはようございますご主人様。」
「うん。おはよう。スネーク。どうして君がここにいるんだい?」
「何、この変装がばれただと?完璧な行動と服装のはずなのに。くそっ、こうなったら消えてもう。」
 -パーン

「うぅっ…ふぅ…」
「朝か…」
 それにしても変な夢を見てしまった。ゲームのしすぎはよくないな。
 そうそう。昨日つけっぱなしで寝ちゃったんだよな。記録記録…あれ。なんか変だな。キャラクターの服が派手なような…
 髪も金髪だし、こんなのいたっけな…まぁいいや。記録して電源きって。と。
 そこに、コンコンとドアが鳴らされる。
「あー。シルファちゃんおはよう。起きてるよー。」
「おはようございますご主人様。」
461名無しさんだよもん:2008/08/30(土) 00:25:28 ID:ZHgvLWFg0
シルファらしさが全くないSSってある意味すごいな
462名無しさんだよもん:2008/08/30(土) 00:26:56 ID:8DXFNGO00
>455>460
ネタ乙
>460のはあれか? 今後はゲームに閉じこめられたシルファの代わりに、
メイド服姿のソリッドスネークが貴明に御奉仕してくれるというオチか?
463名無しさんだよもん:2008/08/30(土) 16:53:39 ID:frhPobraO
>>454
出だしからオチまで全部ツボですた。

こうゆう小品もなかなか味があっていいっすね。
次回作もお願いしまっす!
464名無しさんだよもん:2008/09/01(月) 00:28:26 ID:N1j/2HWkO
皆様乙乙であります!
久しぶりに覗いたら熱が上がってきた!
通勤時間使って郁乃専属メイドロボの続き頑張ってみます。
465名無しさんだよもん:2008/09/02(火) 19:22:47 ID:072nzcP60
お題:君に会うまで本当の愛なんて知らなかったんだよ。
    -フルハウスより
466名無しさんだよもん:2008/09/03(水) 01:10:30 ID:hLwO2/uX0
お題に対する返答じゃないけど投下

一応お約束
本SSは(あまり関係ありませんが)AD非準拠ですんでそこのところよろしく
 朝。
 目覚ましにたたき起こされて目を覚ます。
 布団の上で上半身を起こしてしばらくぼうっとする。
 カーテンの隙間から差し込む朝日がまぶしい。昨日の曇天はすっかり晴れたようで、
今日もまた暑くなりそうだ。

 もう一度倒れこみたくなりそうな誘惑を振り切ってベッドを抜け出す。
 なんだか猛烈に身体が重いし、首が痛い。昨日由真に顔を蹴られたせいかと一瞬思ったが、
首だけじゃなくて体中の節々が痛む事に気がついた。
 まあ、あれか。昨日雨で濡れた身体で帰ってきて、由真に先にお風呂使わせて俺はしばらく待ってたし。
 要は、馬鹿しか引かないという夏のアレだ。
 そうとわかれば、とりあえずさっさと朝飯を食って薬飲んで、由真が来るまで少し寝る事にしよう。

 重い身体を引きずってキッチンに行き、食パン1枚を牛乳で無理矢理流し込んだ。
 そして、リビングにある薬箱の風邪薬を取りに行こうとした所で……意識が飛んで、俺は
そのまま気を失った。

                   ◇

 なんだかすごく気持ちがいい。
 とても柔らかで暖かい何かに頭を乗せて俺は眠っていた。この感触にはなんだか覚えが
あるなぁ……それに石鹸のいい香りがしているし。
 額にはひんやりとした何かが乗っていて、火照った身体に酷く心地よかった。
 時折、別の冷たいものが顔を撫で回す。吹き出た汗がふき取られるとすっきりとして気持ちよかった。
 ぼんやりとした意識の中でそれを味わった後、状況把握のために目を開いた。
 目の前に天井と、そして少し心配げに覗き込む由真の顔が飛び込んできた。
「あ、起きた。」
「由真……一体どうやって家の中に入ったんだ。」
 俺の記憶が正しいなら、昨日はきちんと戸締りして寝たし、まだドアの鍵は開けてなかったはずだから、
由真が入る事は出来ないはずだ。
 だが由真はちょっと小馬鹿にしたように鼻で笑って答えた。
「あんたがどこに鍵隠してるかなんてもう知ってるわよ。いっつも出かけるときに隠してるとこ
 見てるし。」
「ああ……そうか。そういやそうだな。」
「チャイム鳴らしても出ないからベランダのほうに回ったら、中であんたが倒れてるのが
 見えたから鍵で入ったの。すごい熱出してるからびっくりしたわよ。」
 そこまで言われて、そもそも倒れる事になった原因を思い出した。そういや、風邪っぽくて
クスリを飲もうとしてたんだっけ。でも倒れるほど熱が出てるとは思わなかった。
 そしてそこまで考えて、やっと自分が今どんな状態なのかに思い至った。

 自分は今、多分ソファで横になっている。そして由真の位置関係を考えるに、由真は自分の
膝枕に俺の頭を乗せて、濡れタオルで俺を介抱してくれていたらしい。
 道理で感触に覚えがあるはずだ。
 しかし、こういうときは余計に膝枕って心地いいものなんだなとおもった。
 それに、看病してくれる誰かが居るってだけでずいぶん気分が違う。

「由真が看病してくれてたんだな……ありがとう。」
 素直な気持ちで俺がお礼を言ったら、由真の顔がちょっと赤くなった。
「べ、別に……あんたが風邪引いたのは昨日濡れたせいだし、それに関してはあたしにも
 責任あるし。」
「それでもお礼ぐらい言っても罰は当たらないだろ。」
「……なんか、あんたが素直すぎて気持ち悪いわ。」
 由真は憎まれ口をたたいて、そして俺の頭に載っていた濡れタオルを外すとぺちぺちと
額をたたいた。
「それより、起きたんなら自分で歩いて部屋のベッドまで戻ってよね。2階のあんたの部屋までは
 運べないからここで寝かしてたんだから。」
 たしかに、パワフルとはいえ自分よりも大柄な俺を由真が担いで運ぶのは無理だろうな。
 俺は、心地よい感触の由真の膝枕に未練を残しながらも起き上がった。
 立ち上がって見ると、まだ熱が下がって無いせいか身体は重たいし節々が痛い。
 しかも胃の辺りがむかむかする。
「あんた大丈夫? 病院に連れてってあげようか?」
「いや、寝てれば良くなると思うけど……うぷ。」
 ふらつく身体を由真が支えてくれた。身体がふらふらするだけじゃなく、胃のムカつきも
さらに増してきた。朝飯、無理して食うんじゃなかったかも。
「あんた大丈夫? なんか顔が物凄く青いんだけど。」
「いや、ちょっと気持ち悪くて……うぷ。」
 やば、止められん。
「ちょっと、大丈夫?」
 うわ、何でそこで俺の前に、
「うえぇぇぇぇぇぇぇ!」
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁ!」

                   ◇
 由真の服は三度我が家の乾燥機の中で絶賛回転中。
 そして由真はまたしても我が家常備のメイド服姿だ。
「いや……ほんとにごめん。」
「……」
 由真は答えない。拗ねたような顔でそっぽを向いて、ベッドの横に座っている
「風邪治ったら、お詫びにどこか連れて行くから。」
「……」
「……どこがいい?」
「……………………す……水族館。」
「水族館?」
 俺が聞き返すと、そっぽを向いたままの由真の顔がちょっとだけ赤くなった。
「す、水族館……ちゃんとエスコートしなさいよ。1日付き合ってもらうからねっ。
 お昼とかも全部あんたの奢りで。」
「了解。風邪が治ったらつれてくよ。」
 由真の顔がさらに赤くなった。
 俺がクスリ、と笑うと由真は人差し指を突きつけてきっ、と俺を睨みつけた。
「べ、別にデートとかそんなんじゃないんだからねっ! 看病する報酬とか、さっきの
 お詫びとか、そんな感じなんだからね! 変な誤解するんじゃないわよ!」
「はいはい。楽しみに待っててくれ。」
「べ、別に楽しみとかじゃないんだから! もうっ、薬も飲んだんだからさっさと寝なさいよっ。」
 由真は真っ赤な顔のままそう言い捨てて部屋を出て行った。
 ……あれは口とは逆に結構楽しみにしてるんだろうな。
 素直じゃないな由真は。まあ、それが可愛いところだし、一緒に居て面白いところなんだけど。
 ま、なにはともあれ、風邪を治さなきゃ。
 俺は水枕の位置を少し直して、目を閉じた。
 目を閉じると、下から掃除機の音が聞こえてくる。
 さっき吐いちゃった時に床を汚しちゃったから、ついでに由真が気を利かせて掃除して
くれてるのかな……。
 そんな事を考えているうちに、薬のせいか、ほどなくして俺の意識は闇に呑まれていった。

                   ◇

 しばらくして目を覚ました。結構寝ていた気がする。
 首を振って横を見ると、いつも二人で勉強するのに使っているガラステーブルに参考書や
問題集を並べて、その上で寝こけている由真の姿が目に入った。
 由真の奴、寝てたら勉強にならないじゃないか……って、あれ?
「ん……んぁ、たかあき……おきたんだ。」
「由真……お前、メガネなんかかけてたんだな。」
「え? あ、ああっ!」
 俺がめがねのことを指摘したら、寝ぼけ顔が瞬時にしゃっきりした。
 そしてしばらくあたふたした後で、今更隠しても無駄と悟ったのか、ひとつ咳払いしてから
俺を睨みつけて答えた。
「べ、別にいいでしょ。あたしがメガネかけてちゃ悪いのっ!?」
「いや、今までうちに来たときに掛けてた事なんてなかったからさ。まあ、いいんじゃないの?
 結構似合ってるし。それに……」
「それに?」
「まじめで賢そうに見えるし。」
「馬鹿扱いするな!」
 由真はむっとした顔で俺を睨みつけた。別に馬鹿にしたつもりはなかったんだけどなぁ。
「馬鹿にして無いさ。なんとなく優等生っぽく見えるって話だよ。」
 俺がそう弁解すると、由真はまじめな顔で聞いてきた。
「ねえ……ひとつ聞いてもいい?」
「なんだ……変な質問には答えないぞ。」
「たかあきはさ、大人しくて真面目で優等生な女の子の方が好き?たとえば……愛佳みたいな。」
「小牧さん? ……まあ、可愛いとは思うけど。」
 でも俺が今一番気にしてる女の子は小牧さんじゃない。
 だから、俺は答える。ちょっと遠まわしで、でもそれと判るように。
「俺は一緒に笑ったり、一緒に怒ったり……一緒に居て楽しい子がいいな。」
「えと……それって……」
 俺の言わんとしてる事が判ったのか、由真の顔が赤くなる。

 少しの間、俺と由真の間に沈黙の時間が流れた。
 それは数分だったのか、数十分だったのか。耐え切れなくなったのは由真が先だった。

「そ、そういえばっ、あんたお腹空いたでしょ。おかゆ作ったから持って来る。」
 そう言って、由真はばたばたと下に下りて行った。
 しばらくして階段を登ってくる足音がしたかと思うと、小さな土鍋をお盆に載せて戻ってきた。
「ほ、ほらっ。冷めない内に食べちゃってよね。せっかく作ったんだから。」
「感謝してるよ。じゃ、頂きます。」
 由真の差し出したお盆を受け取って上に乗っていた鍋の蓋を開けると、中身は一面黄色の
たまご粥だった。
 れんげで掬ってふうふうと冷まして口に運ぶ。なかなか美味だ。
「うん、美味い。」
「当然よね。あたしが作ったんだし。」
 調子が戻ってきたのか、いつもの由真らしい台詞が飛び出した。
 そして、由真が偉そうに胸を張ったところで、きゅるるる、という音がお腹の辺りから
聞こえてきた。
「あれ、由真、お昼食ったんじゃなかったのか。」
「……忘れてた。」
 由真はさっきとはうってかわってお腹を押さえてしょんぼりしている。
 こういう感情表現の明暗がはっきりしているところも由真を見ていて楽しいところだ。
 すると、いつの間にか由真は物欲しそうに俺のおかゆを見ていた。
「……由真も食うか?」
 そう言って俺はれんげで掬ったおかゆを由真の顔の前に差し出した。
 由真はれんげをまじまじと見た後で、咥えようと口を開きかけたところで、はっとなって
顔を真っ赤にした。
「なっ、なにやらせんのよ! そ、それってか、間接き、きききき」
「冗談だって。由真もなんかお昼作って食えばいいじゃないか。」
「あっ、あっ、あんたは〜〜〜〜〜!」

 ぼかっ、めきっ。

「死ねっ! たかあきなんかいっぺん死ねばいいのよっ!」
 そういい捨てて、由真はどすどすと床を踏み鳴らしながら部屋を出て行った。
 ……なにも、照れ隠しにぐーで殴る事無いじゃないか。

                   ◇
「大分下がったけど、まだ熱っぽいわね。」
「朝よりは大分マシになったよ。まだちょっとふらふらしてるけど。」
 昼メシを食った後で現状把握のために検温。
 電子体温計の表示を二人で覗き込みながら、現状を確認した。
「まあ、この調子なら明日の朝までには治るんじゃないか?」
「酷かったらお医者さんに来てもらって、たかあきが太い注射打たれてひいひい言う所を
 見てやろうと思ってたのに。つまんない。」
 口を尖らせて言いながら、由真は俺に薬と水を差し出した。
「薬飲んで大人しく寝てなさい。帰るまでは面倒見てあげるから。」
「いつもすまないねぇ、かあさんや。」
「誰が母さんだっつーの! さっさと薬飲んで、それから上脱ぎなさいよ。」
「へ? 上?」
「背中雑巾掛けしてあげるから。 ほら、病人はさっさと言う事聞く!」
「へいへい。」
 渡された薬を飲んでから上を脱いだ。
 たしかに寝汗が酷くて気持ち悪いなとは思ってた所だから、素直に嬉しい。
 上を脱いで由真のほうに背中を向けると、由真はいつの間にか持って来ていた濡れタオルで
背中を拭きはじめた。

「……」
「……」
 黙々と背中を拭いていた由真がポツリとつぶやいた。
「……あんたの背中って、」
「?」
「……結構広いんだ。」
「そりゃ、まあ、由真よりはな……一応男だし。」
475名無しさんだよもん:2008/09/03(水) 01:33:32 ID:2OrtzoyX0
支援
 昨日、神社で雨宿りしたときに俺が感じたのと正反対の感想に、半分共感を込めながら答えた。
 だけど、由真の言葉には続きがあった。
「あんたってさ、男の子って言うよりヘタレの方が印象強かったから……なんかもやしっぽい
 感じだと思ってたし。」
「おい……」
 ひどいや……
「はい、背中終わり。こっち向きなさいよ。」
「いや、前はいいって。」
 背中はともかく、流石に前まで拭いてもらうのは恥ずかしいので手ぬぐいを受け取ろうと
手を差し出した。
 だが由真の奴は手ぬぐいを渡そうとはしなかった。
「今更何恥ずかしがってんのよ。あんたの上半身裸なんて昨日たっぷり見たんだから、
 今更恥ずかしくも無いでしょ。」
「いや、それとこれとは別だろ。いいから手ぬぐいくれよ。」
「いいから、あたしが拭いてあげるから大人しくしなさい!」
「いいからよこせって!」
「あたしがやるってば!」
 どういうわけか俺達の会話は罵り合いに発展、ベッドの上で手ぬぐいを巡る攻防戦の様相を
見せ始めた。
「このっ!」
「なんの!」
「いいからよこせって!」
「病人は大人しく言う事聞いてれば良いのよ!」
「身体拭く位自分で出来る!」
「往生際悪いわよって、あ、あわわわわ。」
「ちょ、ちょっとなんでそこで俺をつかむ。」
「「わわわっ!」」
477名無しさんだよもん:2008/09/03(水) 01:44:31 ID:2OrtzoyX0
支援
478中の人:2008/09/03(水) 01:44:59 ID:5j4r3PN9O
さるさん中断です
しばらく間を置いて続き落とします
 ぼふっ!

 由真がバランスを崩して後ろに倒れかかったところで俺にしがみついてきたので、俺も
一緒にベッドの上に倒れこんでしまった。
「う……」
 倒れこんだのがベッドの上でよかった。これなら下の由真も怪我はしてないだろうな、
と思いながら身体を起こすと、
「「あっ」」
 俺と由真の声が重なる。
 今の俺は由真の身体に覆い被さっていて、二人の顔すごく近い。
 昨日、社で由真をかばったときと同じ体勢だったけれど、今の俺は半分裸で、由真は胸元が
大きく開いたミニスカメイド姿な訳で。
 それに、俺を見上げる由真の顔が紅潮して、すごく色っぽく見えた。
「……由真。」
「な、なによ。」
「……キスしたい。」
 無意識に口走ってから、俺ははっとなった。
 瞬間的に物凄く充血したのがわかる位、滅茶苦茶顔が熱い。
 おまけに視界がソフトフォーカスになって、頭がくらくらする……これは絶対、風邪の
せいだけじゃない。
 由真の顔も、今まで見たことの無いぐらい赤くなっていた。突然の告白に動揺した由真が
どもりながら言い返す。
「な、ななな、なにいってんのよ。そ、そうよ、ど、どうせただの性欲なんでしょ。
 あたしじゃなくたって女の子なら誰でも良いんでしょ。」
 多分そのときの由真は動転して言ったんだろうけど、その台詞を聴いた瞬間無性に腹が立った。
 思いもよらず出た言葉とはいえ、さっきのは俺の本心なのに。

 俺は、俺の身体を押し返そうとしていた由真の腕を取って組み伏せる。
 さらに由真の腰の上に馬乗りになり、身動きが取れないように押さえ込んだ。
 それで身動きが取れなくなって、暴れていた由真は観念したのか大人しくなった。
「俺は、由真とキスしたいし、抱きたい。由真のことが好きだから。」
「……ほ、本気?」
「由真はどうなんだ?」
 俺が問うと由真が黙り込んだ。その目には、不安と戸惑いの色が浮かんでいた。
「ど、どうしてあたしなの……たかあきはあたしがどんな家に住んでて、普段どんな生活してて、
 本当はどんな人間なのかなんて知らないじゃないの。」
 由真の問いに、俺は答える。答えは心から素直に湧き出てきた。
「由真がどんな女の子か、全部じゃないけど知ってる。おてんばで、負けず嫌いで、ドジで
 素直じゃなくて、でも本当はお人よしで、女の子らしいかわいいところもあって……
 おれはそんな由真が好きになったんだ。」
「……た、たかあき。」
 ここまで言っても由真は答える事を躊躇していた。

 業を煮やした俺はかまわず顔を寄せた。戸惑う由真の顔が迫る。
 俺はかまわずに唇を重ねる。由真の唇はすごく柔らかくて、俺が熱っぽいせいか、少し
ひんやりしていた。
 しばらく感触を味わった後で、唇を離した。
 ……由真の瞳がとろんとしてすごく艶っぽい。
 それに刺激されて、俺はさらに深いキスをしたくなった。
 もう一度唇を重ねて、今度は薄く開いた由真の唇に舌先を滑り込ませる。
 一瞬、由真の身体がぴくりと震えた。
「ん……」
 中に入るの拒むように由真の舌が俺の舌を押し返してくる。でもそれがぬめぬめとした
感触をもたらし、かえって俺は興奮する。
 俺の身体に触れる柔らかい由真の身体の感触がたまらない。熱っぽい身体が、興奮して
さらに熱を帯びる。
 唇を由真の首筋に這わせる。由真の身体が俺の唇の感触で跳ねた。
「あ、や、やだっ……」
 由真を組み伏せたまま、俺の唇は鎖骨を経て由真の胸元まで滑り降りる。
 丸く盛り上がった由真の胸の谷間の上辺辺りにキスをする。
 同時に俺は右手でスカートから覗く由真の足をニーソックスの上からなで上げて、
スカートの中へと伸ばそうとした。
「だ、だめっ……明日……。お願い……今は……」
 懇願するような由真のかすれた声に、俺ははっとなって由真の顔を見上げた。
 俺を見下ろす潤んだ瞳を見た瞬間、俺は正気に戻った。熱で浮かされた頭が急速に冷えていく。

「ご、ごめん……」
 しばらくして、俺はやっとのことで謝罪の言葉を搾り出して、組み伏せていた両手を離して
由真を解放した。
 由真はベッドの上で起き上がると、うつむいたままで、乱れて下着が覗いてしまっていた
スカートの裾を直した。
 そして、しばらくしてうつむいていた顔を上げて俺を見た。
 その瞳には、怒りも恐れもなくて……ほっとした様な、そして何か小さな決意のような
ものが見えた。
「明日……きちんと話すから。あたしの事も、たかあきのことも。」
「……うん。」
「だから、少しだけ待って。」
「無理矢理キスして……ごめん。」
「……謝るな。」
 由真は拗ねたようにそう言って俺の鼻先に人差し指を突きつけた。
「あたしも……べつに嫌じゃなかったし。」
「えっと……それって。」
 由真の人差し指が俺の唇に降りてきて言葉をさえぎった。
「だから、明日。とにかく、今日は帰るまではきちんと看病してあげるから、明日までに
 風邪治しなさいよね。」
 それはとても綺麗な……今までで一番の笑顔だった。

                   ◇

 俺が次に目を覚ましたときにはとっくに日は暮れていて、すっかり夜になっていた。
 時計を見ると夜の8時を回っている。

 空腹を抱えて階下に降りても家の中は真っ暗で、誰も居なかった。
 まあ、当たり前か。いくらなんでも由真がこんな時間まで待っててくれるはずも無いし。
 とりあえず、何か適当に食べようかと思って冷蔵庫を開けみると、小さな土鍋がひとつ
入っていた。
 鍋を取り出して蓋についていたメモを見る。
『一緒に入れてある出汁を入れて火にかけて、うどんが少し膨らんだら食べごろ!』

 蓋を開けると、1人前の鍋焼きうどんの具材がセットされていた。
 あいつ……
 俺は一人でクスリと笑って、鍋に出汁を注いで火にかけた。

 出来上がったうどんは、最近すっかり食べなれた由真の味だった。


 でも、次の日、由真は姿を見せなかった。
 そしてその次の日も……うちのチャイムが鳴らされる事はなかったんだ。
484名無しさんだよもん:2008/09/03(水) 07:23:09 ID:hLwO2/uX0
というわけで、エピソード4でした
前回エピソード3の次の日の話です
そして次回ラストエピソードへと続く予定

いちおう今回は〆へ向けての話でちょっとシリアス路線なんで
いまいちツマラン話(萌えとか足りない)になってしまったような

そして由真の誕生日には間に合わなかったね……無念
485名無しさんだよもん:2008/09/03(水) 08:40:20 ID:LmrE+T360
一番槍GJ!
てっきり風邪移されたオチでてっきり盛大にコケルのかと思いきやシリアス寄りとはwktk。
486名無しさんだよもん:2008/09/03(水) 20:54:28 ID:Dz0yHLMd0
>484
いやいや萌えるぜGJ!
6/14とかもう、この期に及んでお前は何を言ってるんだと恋路痴漢、いや小一時間

連作シリーズで続くと思ってたら〆ちゃうのかあ
寂しいというか勿体ないというか、でもまずは頑張って〆てくらさい。wktkしてまっせ
487名無しさんだよもん:2008/09/05(金) 23:26:52 ID:On8jB2+c0
力作が 投下されても レスふたつ

                 〜過疎〜
488名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 04:22:41 ID:N0Kr0dekO
シリアス路線かぁ…
危険な賭けに出るね。

http://www2.atchs.jp/sstoukou/
続き、こっちに落としたほうが良くない?
489名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 10:36:10 ID:N0Kr0dekO
シリアス路線いいじゃまいか。
どんどん投下していただきたいものだ。
490名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 11:23:05 ID:68/iba7v0
シリアスというのは真剣という意味であって、不幸とか虐待という意味ではないし、
まして俺設定やオリキャラ披露をメインとする路線を指す言葉ではまったくない

嫌われるのはシリアス一般じゃなくて、キャラ虐待と原作乖離だろ
もっとも、俺自身は別段その手のSSも否定しないが
491名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 13:28:38 ID:1HDggWz10
シリアスとか不幸とかはとりあえず置いておいて
>>488
そこは本来連投規制の避難所だろ。そういう使い方を勧めるのはいかがなものか
492名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 13:45:35 ID:R5IRVJm70
そもそも488と489が同IDなあたり自演臭いんだが
反応しないで放置のほうがいいと思われ
493488:2008/09/06(土) 13:54:10 ID:N0Kr0dekO
すまないが、489の時間帯は寝てたもんで489の書き込みは違う。

こんな事初めてだからちょっとびっくりだ。
494名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 13:57:26 ID:0zWIJABW0
僕もびっくりだぜ
495名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 13:58:47 ID:U5EkO1Kg0
どっちにしろ、余計なお世話だろう
496489:2008/09/06(土) 18:20:43 ID:N0Kr0dekO
うわホントに同じIDだw
こういうコトもあるんだねえ。
497名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 18:34:44 ID:90Ga+U+n0
コソコソ
498名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 18:54:45 ID:5AniLiHc0
んで、同じルータにぶら下がってた隣室の実は「妹」とかね。ホント大丈夫?
499名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 19:59:30 ID:7bHN3kES0
ミルファ「あたしが先にダウンロードしてたんだから、ひっきー妹は邪魔しないでよ」
シルファ「ミルミルのなんてロクなデータじゃないのれす。シルファのはご主人様のためなのれす」
イルファ「二人とも、回線の奪い合いで喧嘩なんてしないの」
貴明「べ、別回線くらい用意してあげたらいいんじゃない? っていうかナローバンド?」
珊瑚「経費節減やあ☆」

あ、SSじゃないので収録しないでね>書庫様
500名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 20:18:08 ID:90Ga+U+n0
つまりそろそろイルファかシルファからの書き込みがあるわけですね。
501名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 21:48:00 ID:90Ga+U+n0
「あーおわったおわった。テストも終わった成績も終わった。」
「そんなに悪かったのか。」
「お前はどうだったんだよ。」
「まぁ、そこそこだな。」
「あぁ?中間テストは俺と大差なかったろ。」
「努力だよ努力。」
 シルファちゃんがあまりに暇だから、いつも勉強手伝ってもらってるうちに成績が上がった。
ということはとりあえず黙っておこう。
「お前もそろそろやる気出さないと進学とかやばいんじゃないのか。」
「あぁ、明日からがんばる。この精神を貫くことを俺は今決意した。」
「つまり明日になっても明日からがんばるわけか。」
  と、そこへ青色の髪の白パンツが。
「ふっふっふ。相変わらず低レベルな会話ね。これを見なさいっ!」
  突き出される胸と成績表を覗き込む雄二。
「うっは。くっそー。つんでれに負けた…」
  そして頭を抱え込む。
「っふ。あんたは声もでないようね。河野貴明。」
  その成績は、順位でいうと中の中程度のものだった。
 こいつはなんと言うかいつも道理タイミングが悪い。
残念ながらこちらは上位20位に届かない程度だ。
雄二が騒いでる時に来て、こっちの成績を把握していたらこんなことにはならなかったのに。
「そいつ、中の上だぞ…」
「えっ。うそ。」
  奪う。
「…」
  見る。
「…。」
  絶句する。
「こ、これで勝ったと思うなよー。」
  泣き叫び、そして走り出す。
502名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 21:49:00 ID:90Ga+U+n0
「そんなことよりさ。海行こうぜ海。」
「いきなり現実逃避か。」
「逃避っていうのはな、ダメージの回避なんだ。大切なんだぞ。
 それにこの暑さ。あからさまに海が呼んでる感じがするじゃねぇか。」
「あぁ。確かに暑いな。」
「だろ?じゃあ決まりだ。タオル忘れんなよ。」
「って、今からか?」
「午後丸々あいてるだろ。なんか用事あるのか。」
「ないけど…じゃあこのみとタマ姉も連れて行くか。」
「おう。ちび助は多分俺んちに姉貴と遊びに来てるから、駅で待っててくれ。連れてく。」
  学年が違うから、長期休み前のスケジュールも少し違うらしく、2人とも今日は学校に来ていない。
「わかった。」

  数十分後の駅。
「タカくん遅いねー。」
「どうしたんだろうな。」
  雄二が携帯を取り出し、確認してみると、受信を知らせるLEDが点灯している。
「あ。メール着てた。」
『悪い。別経路で後で合流するから先行っててくれ。』
「だってさ。」
「どうしたのかしら。」
「別経路ってなんだろね。」
「まぁ、ここにいても仕方なさそうだから、タカ坊の言うとおり、先に行ってましょうか。」
「だな。」
「うーん。」
「あれ、あの子は…」
503名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 21:50:00 ID:90Ga+U+n0
-----------------------
  少し前の、貴明周辺。
「もう。今日はみんなで海に行くって言ってたじゃないですか。」
「ごめんごめん。学校終わってちょっとボーっとしてたからさ。」
「お詫びのちゅーを要求します。」
「えぇっ。」
  お少し弱りながらも、貴明は周囲を確認して、
「それで許してもらえるのなら…」
  と、イルファの頬にキスをする。そこへ声が介入してきた。
「ちょっと!なにやってるの姉さん!」
「ちゅーです。ほっぺたですけど。ちなみにやってるのは貴明さんです。」
「姉さんがやらせてるんでしょ。も〜ぅ。
 家でダーリンを待ってる予定だったでしょ。
 学校にみんなで迎えに行くと、周りに迷惑だって提案したのは姉さんでしょ。」
「うーん。データソースの誤積載でしょうか。記憶にございません。」
「あからさまな嘘つかない。」
「知らない間に…立派になって…よく見破りました。そのとおり。嘘です。嘘でした。」
「…」
  なんか…最近イルファさんが変になってきている。そう貴明は思った。
「でも、貴明さん忘れてたんですよ。私がいなかったらどうなっていたかわかりませんよ。」
「えぇ〜!ダーリン忘れてたの?ひ〜ど〜ぃ〜」
「……ごめんなさい。」
「あれ、でもダーリンの家にシルファいるよね。」
「何をいまさら言ってるんですかミルファちゃん。」
「「……」」
  ミルファと貴明は声を失った。こいつは某廃墟のプラネタリウムの中の人以上に壊れているのではないか。と。
504電車の中でちょこちょこ書いてたんだけどさ:2008/09/06(土) 21:51:00 ID:90Ga+U+n0
「おかえりなさいれす。」
「ただいま。」
「こんにちはシルファちゃん。」
「迎えに来たよ〜」
  シルファはすでに荷物をまとめ終え、玄関でスニーキングの訓練をしていた。
「何でイルイルとミルミルがいるんれすか。そんなに荷物ないれすよ。」
「あぁ。ちょっとそこで偶然会ってね。」
  面倒なので嘘のない主観をとりあえず伝えて、
 その質問をごまかすように、用意された荷物を確認し始める貴明。
「水着にタオルに…あれ?シルファちゃんの水着は?」
「もう着てるれすよ。」
  ほら。と、スカートをめくる。
「わかったから目くり上げないで精神衛生上よくないから。」
「わくどきですね。シルファちゃん。」
「べ、別に早く泳ぎたいとかじゃなくてこっちのほうがスムーズに事が運ぶからららもん。」
「スムーズに事を運んで早く泳ぎたいんですよね?つんでれにでてますよ。ついでにらが多いですよ。」
「うぅ…」
「あーシルファ。下着とかもって行くの忘れないようにね。」
「おぽんちミルミルに言われなくてもわかってるれす。」
「うん。入ってたよシルファちゃんのパンツ。」
 -にぎにぎ
  パンツは、河野家の玄関で、そこの主により高く、高く掲げられた。
 -にぎにぎ
  高く、高く…
505時間取れなくなったんでとりあえず前半だけ。:2008/09/06(土) 21:52:00 ID:90Ga+U+n0
  時間は進んで、駅。
「あの子たち、たしかタカ坊のクラスの…」
「あー。いいんちょと、隣のクラスのゆまだな。」
「高坂くん。」「げ。みつかった。」
「二人もどっかいくのか。」
「えぇ。海水浴に。」
「へー偶然だな。」
「あれ、河野貴明はどうしたのよ。」
「別ルートで来るんだとさ。って言うかなんで貴明が来るのしってんだ?」
「えっ。…えっと…だだって、いつもそのグループじゃない。そ、そうよ。気づかないほうが変よ。」
「で、なんだ。また勝負のかしでもあるのか。」
  そこでなぜか、愛佳が微笑む。
「な、なによその目はぁ!大体、愛佳が誘ったんじゃない。」
「ふふふふ…」
  墓穴掘ってますよ的な愛佳の笑い。
「あぁ?」
「んー?」
  理解が進まない雄二とこのみ。
「…。」
  少し困ったようなタマ姉。
「だからその目をやめろー」

「…うむむ。生徒会メンバーが集まっているようだがたかりゃんがまだ来ていないようだ。
 にもかかわらずもう電車に乗り込もうとしている。これをどう思うさーりゃん。」
「河野さんだけ用事ができたのかしら。」
「希望を捨てるでないさーりゃん。とにかくつけるぞ。」
「いいのかしら…」
  言いながら、無駄に目立つあからさまな忍び足で生徒会役員の後をつける生徒会長コンビであった。
506次のレスで最後。後書きなし。:2008/09/06(土) 21:53:00 ID:90Ga+U+n0
  貴明周辺。
「あ、雄二に連絡しとかないとな。そういや、どうやって行くの?海。」
「車をお借りして珊瑚様のマンションに用意しております。
 研究所の物なのですが、これは搭乗者と歩行者の安全を考慮して、
 車体の強度・剛性、バンパーの変形マージンの確保に重点を置いた特別仕様車で、
 重量は大きくなってしまっていますが、高出力エンジンによってパワーウエイトレシオ5.0を下回っている、とっても環境に悪い車なんですよ。」
「通販の宣伝みたいだね…って言うかレースじゃないんだからパワーそんなにいらないんじゃ。」
  そんなイルファの車自慢に相槌を打ちながら雄二への連絡を、
 『悪い。別経路で後で合流するから先行っててくれ。』と入れ、ほどなくしてマンションへ到着。
「あーたかあきやー。る〜☆」
「やっときたか。もう1時過ぎてるで。」
  ということで、早速、大きな”特別仕様”に乗り込む姫百合連合。
「あれ。シルファちゃんが運転するの?」
  シルファが運転席に乗り込んでいく。
「えぇ。私は大切な任務がありますので。」
「なんか瑠璃ちゃんが突然震えだしたけど…」
「きっと気体に胸が膨らんで仕方がないんだと思います。」「そんなやつおるかー!」
「ささ、車内では私が事故からお守りいたしますので。」
  そのときの瑠璃の目は、売られていくヤギが酪農夫を見つめるように、貴明を見つめていた。
 そう。これから何が起こるか、悟っているヤギの…。
「じゃあミルファちゃんは珊瑚ちゃんを守ってあげてよ。俺は助手席に座るからさ。」
「えー。ダーリンもうしろのろうよー」
「いや、後ろに乗ると瑠璃ちゃんとイルファさんから飛んでくるいろんなもので大変になりそうだからさ。」
  そういいながら二人を後ろへ乗せてドアを閉め、助手席に乗り込む。
「つけられてるれす…」
「え?」
「あの車、ご主人様の家にシルファたちがいたときも止まってたれす。」
「そうなの?」
「はい。きっと悪の秘密結社的な何からと思うのれす。」
  軽は坂に止まっていて、光が全反射する位置に、軽の窓ガラスと太陽があるので、運転席の様子は見えない。
「いやいやいや、だって見た目お金がない感じのごく普通の軽自動車だよ?」
  よく見てみると、中で手を掲げているように見えなくもない。
「そうやって油断を誘ってるんれすよ。シルファは騙されないれすよ…
 ご主人様が学校に行っている間暇で暇で仕方がなかった時にニュルで鍛えたこの腕をなめるなれす…」
「え、いや、ちょ。」
  イルファの宣伝文句は伊達ではなかった。
 恐ろしいほどの加速度が、特別仕様と、その搭乗者に降りかかる。
「イルファさん!止めてあげて!」
  聞いていない。珊瑚ちゃんは状況を楽しんでいるし、
 ミルファちゃんに頼むと逆に危なそうだし、瑠璃ちゃんはいろんな意味ですでに危ないことになっている。
「左曲がるれすよ!」
  貴明は、あの時なぜヤギを助けなかったのか、そんな無意味な後悔をしてみるが、やはり無意味であった。
「えぇっわ、うおぉおっおおおおお」
  貴明の喘ぎ声と、瑠璃の悲鳴を引いて、特別仕様は疾走する。
508名無しさんだよもん:2008/09/06(土) 22:05:00 ID:/+yh6lcJ0
 
509名無しさんだよもん:2008/09/07(日) 01:11:33 ID:2dkE5wN70
>>507
もう少しシルファ語(ダ行・漢字内の含む)に注意した方がいいよ
あと高坂とかの誤字も
つか、こんなにキャラ出してまとまるの?
510名無しさんだよもん:2008/09/07(日) 01:22:51 ID:booyM4450
いつもの無題の人みたいだから纏める気はないんだろう
でもこの表題の書き方だと書庫さんが悩みそうだなw
511名無しさんだよもん:2008/09/07(日) 01:26:00 ID:inKoO9ln0
非常に続きが楽しみではあるので頑張ってほしい
512名無しさんだよもん:2008/09/07(日) 06:19:16 ID:BuG+EMRq0
俺も楽しみ
513名無しさんだよもん:2008/09/07(日) 10:30:36 ID:nAMeAapW0
待ってるときって楽しいよね。

名前欄にコメントを書いたからばれたのかな。次からはもっとコソコソしてみよう。
こういうのは先入観がないほうがかまってもらえるしね。

シルファ語難しい。
誤字とは別に、バグのないプログラムを書くような難しさがある。
とくに「で」とかは書いてしまう。自分がしゃべるときそこにアクセントがあるからかな…
あと、漢字の中のやつは、意味がわかりにくくなるのとテンポがなんか気持ち悪いから特に注意を向けてなかったり。
まぁ、ぼちぼちいきます。
514責任とってね:2008/09/07(日) 17:46:48 ID:m31F9NIA0
 「えっ・・・・記憶が・・・・ない・・・・!?」
 「そうなんです。ここ半年ばかりの記憶が・・・・貴明さんと最初に会った頃とかも・・・・すみません。」
 クッションカバーを抱えたまま、敵意と蔑みを込めた眼差しを貴明に向けるミルファ。
 「そうなんだ・・・・でも、こうなっちゃのも、俺が悪いんだ。俺、頑張って、彼女にもう一度振り向いて貰えるようにするよ。」
 「お願いします、貴明さん。」

 そして、1週間程、経過。
 「う〜ん、取り付く島もありませんね・・・・もうすっかり、貴明さんは、女の子にもてなくてメイドロボに手を出した、社会
不適合者と認識されてしまってるようです。」
 「ダメかぁ・・・・ヘタレな俺の力じゃ、こんなもんか・・・・しくしくしく。」
 傍らでじっと考え込んでいた瑠璃だったが、やがて、ポンと手を打った。
 「そや、うちにいい考えがある。さんちゃん、イルファ、何か口実つけて、ミルファの知覚、クマ吉に繋げといてや。」
 「ん〜?どうするん、瑠璃ちゃん?」

 そして、数日後・・・・。
 「すごいね瑠璃ちゃん。ミルファちゃん、もうすっかり、俺にベタベタなんだけど・・・・。」
 「ふふん、やっぱりや。思った通りやったわ。」
 「えぇ?どういう事ですか、瑠璃様?」
 「人が何かに入れ込むんは、せいぜいが思い込みか勘違いが契機なんやって、ものの本に載ってたんよ。あの子の
だいこんいんげんあきてんじゃーの場合、クマ吉の状態で無理矢理、お股覗かれる事がキーになってやったんやな。」
 「それでクマ吉に戻して、また俺に股開かせたのか・・・・」
 「わぁ〜瑠璃ちゃん、意外と科学的やぁ〜♪」
 「こないだ見たTVアニメの再放送見て閃いたんやけどな。宇宙人の鬼の女の子の角掴んだら、プロポーズと勘違い
されて、押しかけ女房になってきて追っかけ廻される話。」
 「何ですかそれは!?」
 「ダ〜リ〜ンッ!さぁ一緒に学校行くっちゃ!うちのお股覗いたんだから、責任取るっちゃっ!」
 「あのさ、ミルファちゃんって、関西弁だったっけ?おまけに変な語尾まで・・・・」
 「さぁ?瑠璃様珊瑚様の関西弁が、伝染ったんじゃないでしょうか?」
 「ダーリンッ!ウチの弁当食べられないんなら、電撃だっちゃっ!!」
515名無しさんだよもん:2008/09/07(日) 17:47:32 ID:m31F9NIA0
ベタですんません orz
516名無しさんだよもん:2008/09/07(日) 21:35:27 ID:BuG+EMRq0
これまた懐かしいw
517名無しさんだよもん:2008/09/07(日) 21:41:39 ID:JMOUOLl+0
落とすほうとそのレスでスレの年齢層が判る作品やねw
518名無しさんだよもん:2008/09/07(日) 23:00:00 ID:UmHJYO7E0
懐かしいネタだなw
いいと思うよ俺は
519名無しさんだよもん:2008/09/08(月) 09:00:24 ID:4kdxMskg0
まだ読んでいないが目に入った最後の一行だけで元ネタはわかったw
520名無しさんだよもん:2008/09/08(月) 13:04:43 ID:qSSHOzaK0
シルファ語って、テキストエディタか何かで置き換えればなんとかなるもの・・・だったら苦労しませんか。
521名無しさんだよもん:2008/09/08(月) 14:41:21 ID:bVYOr2fsO
キーボードからDを取ってしまえばミスは少なくなるぜ
522514:2008/09/08(月) 17:34:03 ID:BQQLIMcL0
レスありがとうございます。
読み直したら、間違いがいっぱい orz
4行目  ×こうなっちゃのも→○こうなっちゃったのも
18行目 ×キーになってやったんやな→○キーになってたんやな
読みにくくてすんません orz
523名無しさんだよもん:2008/09/08(月) 20:33:19 ID:fY8pBJAd0
dのないSS。誰か挑戦しませんか。
524名無しさんだよもん:2008/09/14(日) 13:37:30 ID:ffwMmk1C0
過疎だからあげてみる。
525内閣総理大臣 向坂環:2008/09/14(日) 21:29:02 ID:JWKDDOjk0
 午後1時のニュースです。
 午前中召集された臨時国会におきまして、先に民進党総裁に選ばれていた、向坂 環氏の首班指名が行われ、向坂内閣が
発足いたしました。
 向坂首相は、先の民進党総裁選において掲げていた政策の幾つかに、直ちに着手する事を表明し、その一つ、ロボット法の
改正に向けまして、ロボット研究の世界的権威、姫百合珊瑚博士を科学技術省長官としてこの度の内閣に迎え入れています。

 次は経済面のニュースです。
 ロボットと家電販売の大手、来栖川エレクトロニクスの藤田浩之代表CEOが、この度発足した向坂内閣のロボット法改正の動き
に合わせ、これまで同社が販売してきたロボットに搭載されているプログラム、『ダイナミック・インテリジェンス・アーキテクチャー』
を、改正ロボット法に対応したプログラムにするための追加パッチを、ロボット法改正後に配布すると、発表いたしました。
 『ダイナミック・インテリジェンス・アーキテクチャー』は、今回科学技術省長官に就任した姫百合珊瑚博士が開発した、ロボットの
思考に関するプログラムで、今日稼動しているロボットの頭脳回路の大半がこのプログラムに準拠しており・・・

 「―――という夢をみたでありますよ、隊長!」
 「・・・うわっ、内閣総理大臣、『向坂 環』、か。それはマジで将来実現しそうで怖いな・・・。」
 「―――ちょっと、このみ、もう時事ネタに影響されちゃったわけ?・・・・それに、タカ坊、怖いって、何よ・・・・?」
 「い、いやっ、その・・・でも、タマ姉なら、なれるよ、総理大臣にだって・・・」
 「タカ坊ねぇ・・・・」
 「ねぇねぇ、改正ロボット法って、ロボットと人が、正式に結婚出来る法律だよね!?でもそんなのなくても、あたしとダーリンは、
もう既に夫婦だしぃ〜♪」
 「ちょっちょっと!はるみちゃん!ぐぼぉっ!」
 「ミルミルッ!勝手に夫婦になるなれすっ!・・・れも、ロボットの法律って、あったのれすか・・・?」
 「・・・向坂環内閣、か。そうかぁ、チビすけの夢って、結構当たるからな。世界を恐怖に陥れる、女帝のファッショ政権が、将来
誕生するわけか・・・南無・・・」
 「・・・雄二ぃ、何か、言った・・・!?」
 「―――ぐわぁ〜〜〜っ!!姉貴っ!割れる割れる割れるぅ〜〜っっ!!」
526名無しさんだよもん:2008/09/14(日) 21:37:17 ID:B/DCaSaUO
>>525さん乙です
ひさびさに楽しませてもらいました
527525:2008/09/14(日) 22:04:12 ID:JWKDDOjk0
時事ネタからの思いつきを。
ちょっと夢のあるお話をと思いまして。
528名無しさんだよもん:2008/09/14(日) 22:34:23 ID:xdErBOc60
環「あなたとは違うんです」
529名無しさんだよもん:2008/09/14(日) 23:45:16 ID:oeFjNfIz0
私は自分自身は客観的に見ることができるんです。

「メイドロボフェチの皆さん!キャラが立ち過ぎて党にはあまりウケが良くない、向坂環ですっ!

―――って、雄二っ!何よっ!この演説の草案はっ!!」
530名無しさんだよもん:2008/09/15(月) 11:12:42 ID:307fed8t0
雄二が議員になった方が面白い事になりそうだ
531名無しさんだよもん:2008/09/15(月) 13:01:36 ID:WO/Vc6hU0
能力はあっても失言を叩かれて失脚しそうだな<雄二
532名無しさんだよもん:2008/09/15(月) 13:10:35 ID:KhCZGy1H0
”向坂議員 メイドロボ人権法案を提出!”
”メイドロボ人権法案 今秋臨時国会にて法案通過見通し”
 そんな文字の躍る新聞に目を通しながら国会議員向坂雄二はニヤニヤと笑った。
「ふっふっふっ、これでメイドロボをヨメにするという俺の野望がかなうってもんだ。」
 事務所内で秘書として働いているイルファ、ミルファ、シルファのメイドロボ3姉妹を見ながら夢を膨らませる。
「あら、雄二様。私達をお嫁さんに貰ってくださるのは嬉しいのですが……」
 そう言いながら、イルファはふぅ、とひとつため息をついた。
「日本の法律では一夫一妻ですので……私達の誰かと、という事になってしまうのですが。」
「え〜、ダーリンはあたしと結婚するんだよね!」
「ご主人様はシルファと結婚するのれす!」
「あっはっはっ、こらこら、3人ともそんな喧嘩するなって、あっ、キスされるとくすぐったいって。」


「ユウ君、気絶したまま笑ってるよ。」
 環のアイアンクローを食らって気絶している雄二の頬をこのみがつんつんしてみたが、
へらへらしたいやらしい笑いが返ってきただけだった。
「ちょっと強く握りすぎたのかしら。」
「いや、きっと気絶して雄二の中の幸せ回路が全力運転してるだけだと思う。」
「ん〜、そうね。じゃ、邪魔者も消えたことだし、3人でデートしましょ。ほらほら。」
 そう言いながら、環は貴明の手を引っ張って走り出す。
「ああっ、タカ君! タマお姉ちゃんまってよ〜!」
 このみもまた二人を追って走り出した。

 そして、後には幸せ回路全開で地面に横たわる雄二だけが残された。
 ちなみに……訪れかけていた秋風は冷たかった。

「ぶえっくし! ……暖めてくれるって? そんな、あん♪」
533名無しさんだよもん:2008/09/15(月) 13:11:10 ID:KhCZGy1H0
構想30秒 執筆5分
お粗末さまでした
534名無しさんだよもん:2008/09/15(月) 13:46:45 ID:L0VAOooD0
乙乙
535名無しさんだよもん:2008/09/15(月) 21:38:40 ID:azFBbNL60
>>533
こういったお手軽SSもいいね
536名無しさんだよもん:2008/09/15(月) 23:55:45 ID:DiAz+OzA0
この流れはそろそろ中編物とか、長編の続き物が投下される流れ・・・!!
537名無しさんだよもん:2008/09/16(火) 00:01:12 ID:RqDImEo90
書いてるけどまだ無理ポ

>>532は現実逃避に書いたのよw
538四畳半のシルファ:2008/09/16(火) 18:46:48 ID:QazVCEWO0
本作品は、厳密にはTH2のSSとは言えないかもしれません。
なにせTH2のキャラクターが一人も出てきません。
オリジナルのメイドロボとそのマスターを主人公にしたSSです。
似ているキャラはいるかもしれませんが、同名の別人?です。

まぁ、そんなでもよろしい方は読んでみてください。
そういうのを受け付けない方はスルーしてください。

では、投下します。
539『四畳半のシルファ』1/9:2008/09/16(火) 18:49:31 ID:QazVCEWO0
 国道を右折して4ブロック。県道沿いのコンビニのある十字路を直進する。
 踏み切りの手前で左に曲がり、線路に沿って100mほど進むとコンクリート造りのガレージばかり
がやたら立派な古いアパートがある。そこが、十数年来の俺の部屋だ。
 貨物列車を含めて一時間に4〜5回しか列車が走らないローカル線沿いでも線路脇は線路脇である。
 ガレージがあるのにそこそこ安い家賃なのでどうにも出る気が起きない。
 間取りも悪くない。六畳の居間に四畳半の寝室、狭いが一応台所と風呂もある。作りがボロいのは洒
落のようなものだ。むしろいい加減愛着がわいていると言っても良い。
 無造作にガレージへ車を停め、部屋へと上がる。もう何年も繰り返してきた行動だ。
 いい加減暑かった夏も終わり、外付けの鉄階段を登りながら眺める景色はいつのまにか夕闇に包まれ
るようになってきた。頬を撫でる風もこの時間になると随分冷たさを含んでいる気がする。
 こうなるとこの地方の冬が来るのはあっという間だ。遠からず雪も降り始めるだろう。
 憂鬱な季節の訪れを予感してつい溜め息を漏らしながら、俺は部屋の扉を開ける。
「おかえりなさいなのれす、ご主人様」
 今日も、上がり框のすぐ脇の台所に彼女はいた。
 夕飯の用意でもしていたのだろうか、おたまを持ったまま仁王立ちになっている。
「ただいま、シルファ」
「……今日も汗臭いのれす。早くお風呂に入りやがれ、なのれす」
 金髪の三つ編みを揺らしながら、我が家のメイドロボさんはぷいっとそっぽを向いた。


          『四畳半のシルファ〜メイドロボの居る生活〜』


「作業着はすぐに脱いれくらさいね、ご主人様。お茶の間がおっさん臭くなったら居心地悪くてたまら
 ないれすから。それになんらか油臭いれすよ?」
 我が家のもう一人の住人、メイドロボのシルファがむんずと俺の作業着の裾を捕まえてきた。
 ……ぞんざいに服にかけている手の力強さとは裏腹に、どことなく頬が赤い。
「そりゃまぁ、今日は合材敷いたからねぇ」
 まったく、舗装の技術屋に油臭くなるなというのも無茶な話である。
 舗装屋にとって「炎熱」と「汗」と「油の臭い」は実にお馴染みのものなのだから。
540『四畳半のシルファ』2/9:2008/09/16(火) 18:51:41 ID:QazVCEWO0
 まぁ、言わずとも彼女も本当はわかっているのだろうが。
 三つ編み金髪の彼女、シルファの正式名称は『HM−18d』。
 来栖川エレクトロニクス製のメイドロボ、『HM−18』に非フレーム型OS『TA−3』を搭載し
た量産型DIAだ。もちろん、件の非売品?である。
 何故一般ユーザーには販売されていないはずの彼女がただの土建屋の俺のところに居るかは……まぁ、
長い話なので置いておくとしよう。
 特に来栖川関係に知り合いもいないし、本当にちょっとしたきっかけがあっただけなのだが……。
 ちなみに、このメイドロボらしからぬ変な言葉遣いはもちろん関係があったりする。
「なら尚更早く脱ぐれす。そしてさっさとお風呂に入ってくらさい」
「わかったわかった。今脱ぐから」
「ぴ、ぴひゃっ!? な、なんれここれいきなり脱ぐれすか!! きっといやがらせれす!! めいろ
 ろぼ虐待れす!! せくはられす!!」
 にやにやしながらベルトのバックルを外そうとすると、シルファは真っ赤になってジタバタしている。
 相変わらずシルファは可愛い。
 ロクに買い物もいけないくせに、俺にはこうやって強がって見せる。
 初めて出会った頃の彼女からは想像も出来ない姿だ。
「わがままだなぁ、シルファは」
「ご、ご主人様にれリカシーがないらけれすっ! そ、そんならから34にもなって奥さんはおろか、
 彼女の一人もいないんれすよっ!」
「……ああ、確かにそうだな」
 まぁ、確かに俺がガサツ過ぎたんだろうなぁ……。
 ほんの数年前、『彼女』とのコトを思い返すとやはりそう思える。
 洗面所の鏡に映る俺は、あの頃よりも少しくたびれた顔で、少し自嘲気味に笑っていた。

          ◇  ◇  ◇  ◇

 少しブルーな気分で浴室に入った俺だったが、根が単純なせいか、それとももう時薬も十分に効いて
いるためか、風呂につかっている内にすっかり気分が良くなってきた。
 ……もしかしたら気持ちぬるめのお湯にサッパリ系の入浴剤が入っていたからかもしれないが。
 何の事はない、シルファは今日が舗装のある日だと知っていたんだろう。可愛いヤツだ。
541『四畳半のシルファ』3/9:2008/09/16(火) 18:54:23 ID:QazVCEWO0
『ろ、ろうれすか、お湯加減は』
「ああ、いい塩梅だよ。一日の疲れが取れるようだ」
 いつもと違う加減にしたのが気になったのか、それとも褒めて欲しいのか、どうやら脱衣所まで様子
を見に来たらしい。
 しみじみと正直な感想を述べたつもりだったのだが、
『な、なんらかその言い方、おっさんくさいれすよ?』
 何故かシルファにはあきれられてしまった。
 しかしまあ、本当の事なので何を言うでもなくゆっくりとお湯を楽しんでいたのだが、シルファは一
向に居間に戻ろうとしない。しばらく様子を伺っていると、
『明日は土(ろ)曜日れすけろ……お仕事、あるんれすか?』
 おそるおそるといった風にようやく口を開いてくれた。
 なるほど。なにかもじもじしていると思ったらそれが聞きたかったのか。
「一応、現場に行ってやらなきゃならない事はある」
『そうれすか……』
 あああ、なんだか目に見えて肩を落としちゃったよ。
「うん。月曜日の朝一で区画線の立会いがあるから、簡単なマーキングしておかなきゃならないんだ」
 そう。作業員を呼ぶのが勿体無い様な、本当にちょっとした仕事。
「でも手元をやる作業員呼ぶの忘れたから、シルファが手伝ってくれると助かるんだけどなぁ。半日く
 らいで終わるんだけど」
 すると、スリガラスの向こうの影は急にぴょんと背筋が伸びる。
 なんというか、現金なものだ。
 ……それでもやはり彼女には彼女なりの矜持があるのか、
『シ、シルファも忙しいんれすが、ご主人様のご命令とあらば、仕方がありませんね。段取り(らんろ
 り)の悪いろじっこご主人様のお仕事をフォローするのもめいろろぼの務めれす』
 出てくるのは憎まれ口だった。

          ◇  ◇  ◇  ◇

 風呂から上がると、シルファは俺から視線を逸らしながら台所をうろうろしていた。
 控えめに言っても挙動不審だが、しかしまぁ、仕事帰りで風呂上りの大切な儀式が済んでいない。
542『四畳半のシルファ』4/9:2008/09/16(火) 18:57:55 ID:QazVCEWO0
「上がったよ〜〜……っと、ビールビール」
 もはや儀式というより神聖な義務を果たすべく、いそいそと冷蔵庫に取り付いた俺だったが、
 ばたん!
 そこにいきなり金色のおさげが割り込んできて、折角開けた冷蔵庫の扉を閉めてしまった。
「なんだよう〜〜、仕事明けのおっさんの唯一の楽しみをとるなよう〜〜」
 口を尖らせてそう主張してみたが、彼女は聞く耳を持たない。
 ……どうやらシルファは俺の背をぐいぐい押して、居間に連れて行こうとしているようだ。
「なに? ゴキブリでも出た?」
「そ、その名を口にしたら呪われるれすっ! それにそんなコトじゃないれすよ。とにかく、居間に急
 ぐれす。麦ジュースなら後れ飲ませてあげますから」
 どうも要領を得ないが、僅か数歩で辿り着く居間に行く程度の回り道はどうせ大した事ではない。
 きっとなにか新しいメニューでも作ったんだろうが……
 とか思いつつ暖簾をくぐると。
 ……おいおい。飯も食わないうちから何の新技ですか?
 俺はつい心の中で突っ込みを入れていた。だがそれはそうだろう? 居間にはいきなりマットが敷い
てあったのだから。
「な、なにか勘違いしてないれすか? 微妙にえろい顔になってるれすよ?」
 俺の内心を察したのか? それとも俺の思考は顔に出やすいのか?
 どうも俺が考えた事は『勘違い』らしい。ではなんなのだろう?
「いやー、風呂上りに布団が敷いてあったら普通そういうことを考えるんじゃないか?」
 しかし大人しく引き下がるのもつまらない。
 俺はにやにやしながらそう追及してみた。案の定シルファは真っ赤になって反論してくる。
「うきゅぅ〜〜! すけべ! ヘンタイ! えろえろおやじ! シルファがそんなコト言いらすわけな
 いじゃないれすか!」
「いや別にしたいならしたいと言って貰えれば……」
「違うのれすシルファからなんて誘えないのれすらいいちまら明るい内からするとかヘンタイとしか思
 えないというか少なくともシルファからお願いするとか絶対にありえないのれすっ!」
 きっともう何を言っているか自分でもわかっていないんだろうなぁ。
 というか俺にももはやシルファが何を言いたいのかさっぱりわからない(苦笑)
543『四畳半のシルファ』5/9:2008/09/16(火) 19:01:22 ID:QazVCEWO0
 だがまぁ、この風景と過去の会話の内容からシルファがやりたい事は推測出来ないでもない。
「えっ? だからマッサージしてくれるんじゃないの?」
 ぴきーん……
 その瞬間。もしかしたらフリーズした?と疑いたくなるくらい見事にシルファは固まった。
 さて、この後彼女はどう出るかな?
 逆切れするか、何事もなかったようにスルーするか……
「そ、そうれすよ? もちろんじゃないれすか。 日頃肩がこった腰が痛いと愚痴を言うご主人様を見
 るに付け、そのくらいはしてあげようと思うこのすばらしいめいろろぼ精神を褒め称え……」
 おお、華麗?にスルーしたよ(笑)
 なんというか、なかなか成長したものだ。
 この家に来てすぐの頃は、ちょっと嫌な事や上手くいかない事があると逃げるかキレるかしか出来な
かったのに。もちろん逃げるところはないから、よく押入れに篭っていたのが懐かしい。
 なかなか上手なシルファのマッサージを堪能しながら、俺はそんなコトをぼんやりと考えていた。

          ◇  ◇  ◇  ◇

「コーヒーれす、ご主人様。灰皿も取り替えておくれすね」
「ん、さんきゅ」
「まら、かかりそうなんれすか? 手伝える(てつらえる)事があるならシルファがやるれすよ?」
「写真のタイトル整理が終わったら頼むと思うけど、今はまだない。今日はもう寝てなよ」
「……そうれすか。わかりました。じゃあ、シルファはお風呂に入って寝るれす」
 こころなしか、シルファの声が力をなくしたように感じる。
 ……いや、実際そうなのだろう。今の俺にそれを気遣う余裕がないだけだ。
 どうやら……もうそろそろ11時の声が聞こえるようだ。
 公共工事の仕事は、現場もそれなりに大変だが、とどのつまりは書類との戦いである。
 毎日毎日、現場が終わってからアホのように様々なデータを整理して決められた書式にまとめ、アホ
のように大量の写真を分類して決められた書式にまとめ、アホのように種々の提出書類を決められた書
式に従って作成し……もちろんその他に現場を運行するための計画をたて、測量の数字を計算し、支払
い処理をし、といった中間管理職の仕事もある。
544『四畳半のシルファ』6/9:2008/09/16(火) 19:05:36 ID:QazVCEWO0
 そのため死ぬほど残業(それも概ねサービス残業)が常態なのだが……まぁ、最近の俺は、というか
シルファを買ってからは仕事を持ち帰って家でやる事が多くなった。
 技術屋の部下を置くほど大きな現場はまだ回ってこない、かといって誰かの部下に付くほど若くはな
い、一人で現場を回している今だからこそ出来る事なのだが、どうせほとんどがサービス残業なのだか
らこれくらいは構わないだろう。
 店屋物を食い、一人悶々とタバコをふかしながら残業するよりは、可愛いメイドロボの手作り料理を
食べ、たまにちょっと手伝ってもらいながら仕事した方が万倍いいに決まっている。
 最近はメイドロボの本領発揮なのか、かなりの有能事務員っぷりを見せてくれるのでかなりの戦力に
なるのだ。なにしろとにかく物覚えが良くてコンピューターを使うのが上手い。ルーチンワークに微妙
に弱い、というか面倒くさがるのはさすがDIAと言うべきなのか?
 元々はシルファが寂しがる(無論彼女がそう言ったわけではないが、毎晩寂しいオーラが見え見えだ
ったのだ)から仕事を持ち帰っても早く帰宅するようになったのだが……今では俺がそうしたいからこ
うしてしまっている気がする。
 仕方がないだろう? 灯りの点いている部屋というのはとても暖かいものなのだ。
 シルファは口は悪いが、家事はもちろん上手だし、他の事も何くれとなく気を使ってくれているのが
よくわかる。今まで見た事のある、『比較的気配りの出来る人間の若い女性』の3倍は気配りが行き届
いている気がする。私見ではあるが、多分『有能な母親レベル』でなかろうか。
 メイドロボがいればいれば一生独身でいいという人が増えている(特に男性に)らしいが、最近その
気持ちがよくわかるようになった。DIAが事実上発売出来なくなったのもむべなるかなである。
 ……何故なら、正直俺はシルファがいればもう恋なんてしなくていいし、結婚もしなくていい。

 まぁ、シルファ本人にそんなコトを言えば調子に乗るに決まっているから絶対に言わないが。

 きっと身に覚えのある人が多いと思うが、ぼんやりと考え事をしながらキーボードを叩いていると何
故かタバコの減りが早くなる。そのせいだろうか、気が付くと手元のラッキーストライクの箱は空にな
っていた。
545『四畳半のシルファ』7/9:2008/09/16(火) 19:08:24 ID:QazVCEWO0
 ……何という事だろう、積んでいた予備もないではないか。
 ここで切り上げてもう寝てしまうか、それともひとっ走りコンビニまで行くか……明日寝起きの一服
が出来ないのはしんどいからちょっと買ってくるか……思い切って立ち上がろうとした時、
「……はいれす」
 シルファが新しいカートンを渡してくれた。
 ……どうでもいいが、ただのラッキーストライクではなく、ライトである。
「ありがと、シルファ。買い物に行けたんだね、えらいえらい。でも一応言っておくけど、俺が吸って
 るのは普通のラッキー……」
「わかってるれす!」
 シルファの頭を撫でながら普通とライトの違いを説明しようとしたのだが、それを遮るように急にシ
ルファが声を上げた。いつもの逆切れ?とも少し違うようだ。
「わかってるれすよ……ご主人様の好きな銘柄れすから……。れも、れも、タバコは身体に(かららに)
 良くないれすから、せめて、ライトに……」
 ……返事の代わりに、シルファの頭を更にわしわしと撫でてやった。
 胸が一杯でどう答えていいかわからなかったと言うのもある。
 きっと俺の頬は緩みっぱなしでいるだろう。
「怒って、ないのれすか? 勝手にライトを買ってきちゃって……」
 返事代わりに黙って俺は一本を咥え、愛用のジッポを探す。
 俺が見つけるより先にシルファが手に取り、火をつけてくれた。
 とっくりと肺に吸い込み、紫煙を燻らしてみる。
 うん。実に……
「味薄いな……」
「ご、ごめんなさいれす……」
 俺の率直な感想を聞いてしゅんとする彼女に、俺は軽く首を振って見せた。
「俺の身体の事を考えてくれたんだろう? その為に頑張って慣れない買い物にも行ってくれた」
 もう一度、思い切り煙を吸い込んでみる。
546『四畳半のシルファ』8/9:2008/09/16(火) 19:11:13 ID:QazVCEWO0
 まぁ、味は悪くない。
 これまではいつ肺ガンで死んでも構わないと思っていたが……。
「シルファを残して肺ガンになるわけにもいかないものな。これからもライトを買ってきてくれよ」
 そういうと、シルファは照れくさそうに、顔を伏せた。
「あ、当たり前れす。ご主人様がガンになったりしたら……シルファは……」
 ああ、そうだな。
「シルファは……ろうしたらいいか、きっとわからないれす」
 認めよう。俺はもう、一人ではない。

 一服しながらひとしきりシルファをなでくり回していたのだが……
「うきゅうぅぅ〜〜、折角お風呂上りなのに……」
 いや、三つ編みを解いたシルファの髪がついつい心地よかったもんでなあ。
 気が付くとシルファの金髪はすっかりわしゃわしゃになってしまっていた。
「つかさ、寝てもいいって言っただろ。俺もひと段落付いたら寝るから、好きにしていいんだぞ?」
 しかしシルファはすぐに動こうとはしない。
 なにか言いたそうな瞳で、俺のシャツの裾をつまんで離さないでいる。
「ん? どうした?」
 夜食がいるほどの修羅場でもなし、コーヒーもタバコもあるし……なんだろう?
 こういう時いつもなら邪魔しないように居間に布団を敷いて大人しく……ああ、そうか。
「今日は……ろっちに……」
 今日は一応週末だから、か。
 顔を真っ赤にして震えているシルファはやっぱりとても可愛くて。
「……そろそろ終わるから、四畳半の方に敷いたらいい。一緒に寝よう」
 俺は今日の仕事はもう仕舞いにしようと決めた。
 シルファはとたんに仏頂面になって、
「しょ、しょうがないれすね〜。今週末もデートの予定のひとつも入らない寂しい寂しいご主人様を、
 シルファが仕方なく慰めてあげるれすよ」
 顔や言葉とは裏腹に、元気良く四畳半に布団を敷きはじめた。
 ……仕事部屋兼寝室は2枚の布団を敷くといっぱいいっぱいになる。
 布団を敷くとシルファはさっさと自分の布団にもぐりこんでしまった。相変わらずの照れ屋さんだ。
「シルファ、こっちにおいで」
547『四畳半のシルファ』9/9:2008/09/16(火) 19:14:15 ID:QazVCEWO0
「……もう、お仕事終わったんれすか?」
「ああ、可愛いシルファを見てたら仕事なんかしている場合じゃないだろ」
 くすぐったそうに首をすくめるシルファを、俺は優しく抱き寄せた。

          ◇  ◇  ◇  ◇

 国道を右折して4ブロック。県道沿いのコンビニのある十字路を直進する。
 踏み切りの手前で左に曲がり、線路に沿って100mほど進むとコンクリート造りのガレージばかり
がやたら立派な古いアパートがある。そこが、俺たちの部屋だ。
 いつも美味しい食事が待っていてくれる六畳の居間に、週末は暖かい褥になる四畳半の寝室、狭いが
一応台所と風呂もある。壁が薄いのは仕様のようなものだ。
 無造作にガレージへ車を停め、部屋へと上がる。もう何年も繰り返してきた行動だ。
 もう季節は秋、鍋の美味しい季節だ。
 彼女がもう少し外出に慣れたら温泉などもいいだろう。
 ……ああ。やはり扉の向こうに人の気配を感じる。車の音を聞いてそこで待ち構えているのだろう。
 薄く笑いながら、俺は部屋の扉を開ける。
「おかえりなさいなのれす、ご主人様」
 今日も、上がり框のすぐ脇の台所にエプロン姿の彼女はいた。
 いつものように、おたまを持ったままの仁王立ちで。
「ただいま、シルファ」

 そんな、シルファのいる生活。


               〜〜終〜〜
548名無しさんだよもん:2008/09/16(火) 19:22:13 ID:jJoIvm2x0
読ませてくれてありがとう。読みやすい文章だった。
ロボットと人の生活って見ると悲しくなるよね。
自分が登場人物なら、自分が死んだ後はどうでもいいという自己中心的な理論で幸せになれるんだけどね。
549『四畳半のシルファ』9/9:2008/09/16(火) 19:29:31 ID:QazVCEWO0
シルファ語減点1がありますな……気を付けたつもりだったんですが……orz

まぁ、そのうちまた続きを書かせてください。
続きというか、出会い編とかを書きたくなるかも。
550名無しさんだよもん:2008/09/16(火) 19:37:24 ID:Ngw0Jy8a0
すっごくキレイなお話ですね〜^^
思わずうるうるっとしちゃぃましたよぅp><q
続きがあるなら楽しみにしちゃいま〜す^^
551名無しさんだよもん:2008/09/16(火) 21:39:25 ID:QwxNCXyO0

本当にTH2のキャラだと思ってないならスレ違いだから二度と投下するな


と言いたい所だが実際にはそうじゃないでしょ? シルファと思って書いたでしょ?
だったら堂々と、「これが俺のシルファです」って言えよ
叩かれる叩かれないは関係なく、自分が書いたキャラには責任を持って欲しい

内容は、個人的には悪くないと思うよ。これが貴明のなれの果てなのか、
新たな御主人様か分からないけど、メイドロボに執着すればこういう人生もあるだろし
シルファは可愛いしちゃんとシルファに思えるよ
だからちゃんとTH2のSSとして、シルファのSSとして頑張ってみたらどうだい?
552名無しさんだよもん:2008/09/16(火) 22:05:00 ID:gZj7/kQn0
や、もしかしてシルファそのものじゃなくて、データ移植機体とかなんじゃないの?
それでも当然にTH2SSだろうし、むしろシルファSSと紹介しても問題ないと思うけどね

もしそうだとしたら漏れなら、
「厳密にシルファSSと言えるか微妙だけどTH2SSのつもり。但し、オリジナル要素が強いので嫌いな人はスルー推奨」
くらいに紹介するかな
553中の人:2008/09/16(火) 22:28:37 ID:QazVCEWO0
解説や言い訳をするつもりはなかったけどちょっとだけ。

自分ではもちろんTH2のSSでシルファのSSだと思ってます。
ですが、本当に彼女は「HMX−17cシルファ」ではありません。
話の中でもちょっと触れてるけど量産機、HM−18のDIAです。
ちなみに『俺』も貴明ではないです。一応名前もあります(笑)

だから本当にゲームのTH2やTH2ADのキャラは出ていません。
なので「そりゃ違うだろ」と言われれば言い返せないんですよね。
世界観を使っている、と言えば聞こえはいいですが、所詮自分のチラシの裏設定ですし。

まぁ、そういう事です。
厳密には違うかもしれないけど、TH2のSSっぽいものとして受け入れていただけたら嬉しいです。
554名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 00:36:17 ID:T9foCwPD0
量産型ってあるけど、バグだったっぽい言語系の不備をそのまま製品化したのはおかしくないかな…
555名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 05:51:56 ID:w6uAbVgE0
バグだったっけ? まあモニター様(貴明)に好評だったのでそのまま仕様化とか、
直さなかった理由は幾らでも考えられるんじゃない?
556名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 06:17:13 ID:pic27N3L0
シルファを汚された気分
557名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 07:04:36 ID:r/kHJUe70
勝手に想像してみる

・起動時にいくつか思考パターンを選べる。ここで選ばれたのはHMX-17cに使われたもの
・同じような症状が出た。当初の用途には使えず、矯正の為来栖川の研究所に送られる
・以前同じような症状のメイドロボを見ていた研究員は、名前すらなかったHM-18を、“シルファ”と呼んだ
・この症状を治すにはオーナーの愛情が必要、と考えて、オーナーを探していたら、現在のオーナーの下に落ち着く結果に。
・その後間もなく、DIAモデルの販売が停止される。
558名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 14:12:38 ID:+e4/15tMO
これは酷い
559名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 18:13:34 ID:frpoRGbqO
オリジナル要素多いと相変わらず賛否両論出るね。
作者の意図はなんとなくわかるかな。
昔セリオSSでこういう私小説風の作品あったけど、ああいう事がしたいんだろうねー。
俺はこんな感じの雰囲気で読ませる作品はけっこう好き。

ところでこの作者さん、前に三姉妹、特にミルファのSSを量産してた人だよな?
そういえば元々オリジナルっ気混ぜるの好きそうだと思ってたw
560名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 19:12:14 ID:heiKnxom0
バグっていうか、コミュニケーション不全のせいで言語システムが未成熟なんじゃなかったっけ。
どちらにせよ、そのまま残すとは思えないけどな。
まぁ本編のシルファでありつつ違う存在であるってのを主張するための苦肉の策ってのは分かるけどw

てか、オリジナル主人公でも別に良いと思うんだが、設定にもう一捻りがないと微妙だな。
これだけだと既存キャラと日記でかけ合いしてる痛い子と変わらないなーと思ったのは俺だけか。
561名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 21:04:01 ID:QtG4ZKK70
>>559
>前に三姉妹、特にミルファのSSを量産してた人
誰の事云ってるのかわからんけど、避難所に書きかけ残してあぼ〜んしちゃった痛い人の事
云ってるんだとしたら、全然違うと思うな。
こっちの人の方が文章遥かに上手いし。コメントに厨臭さもないw
562名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 21:10:05 ID:WfmVkzrs0
>>559
>>561
お前らが荒らしでないのならそういうこと言うのヤメレ
場が荒れるだけで何の益もない
563或る夏の一昼夜 0/24:2008/09/17(水) 21:31:29 ID:5qg8Re050
えー、このみ春夏さんよっちゃる小牧姉妹草壁さん登場の、
なんといいますか、非常にとりとめのないシチュの羅列なSSです

テーマもないんですけど、ルート確定前の各キャラの紹介イベント、
みたいな位置づけで読んでいただけると嬉しいかもです

AD準拠というか、設定的にはAD本編前の夏休みあたり?
たぶん途中でさるさん中断入ります。では
564或る夏の一昼夜 1/24:2008/09/17(水) 21:33:53 ID:5qg8Re050

「タカくん、はやくはやく〜っ!」
 砂浜が視界に入るなり、このみは全力で駆けだした。
「前を見て走らないと危ないわよ」
 春夏さんが注意するけど、耳に入っているとは思えな……あ、転んだ。

「う゛う゛う゛」
 砂浜に顔から突っ込んだこのみ。
 ダメージは軽いみたいだけど、ぶんぶん首を振って、砂を払い落とそうとしている。
「ったく、しょうがないなぁ」
 俺は慌てて幼馴染みの元に走る。
 このみは女の子座りして、猫みたいに顔を擦りだしていたもんで、
「ほら、砂付いた手で擦るなよ、顔」
「ふぎゅう」
 手荷物の中にあった濡れタオルで拭いてやると、心地良さそうに目を細めた。
「いつもありがとうね、タカくん」
 追いついてきた春夏さんが、笑ってお礼を言ってくれる。

 俺とこのみは、春夏さんの誘いで夏休みの海水浴、それも一泊旅行と洒落込んでいた。
 海沿いのホテルにチェックインを済ませて、着替えを済ませていざ海へ。

「でも、いいんですか? おじさんもいないのに、俺なんか誘ってもらっちゃって」
「いいのよ」
 俺の疑問に、春夏さんは即答する。
「だってあの人、今年は夏休みが取れないっていうんだもの、楽しみにしてたのに」
 あ、そういう事情ですか。
「だから、タカくんと、うーんと楽しまないとね」
 春夏さんは俺の腕を取った。ボタンを留めずに羽織った白いシャツの、開いた胸元から覗くオレンジ色のビキニに心臓が跳ねる俺。
「ああーっ、おかーさんずるいーっ!」
 反対側の腕に、このみがぶらさがってくる。ピンクのワンピースに胸らしきものは殆どないが、身体全体で抱きつかれると柔らかい。

 母娘に腕を取られて歩く、って、いいのかなぁ、これ……
565或る夏の一昼夜 2/24:2008/09/17(水) 21:36:00 ID:5qg8Re050
 ◇ ◇ ◇

「うわああっ、このみっ!? せ、センパイっ!?」
「……犯罪者だ」
 やっぱり、あまり良くなかった。

 電車で3時間ほど揺られた海水浴場で、まさか知り合いに会うなんて思わなかったのに。
「ふぇぇ、ちゃる、よっち、どうしたの?」
 いきなり遭遇。しかも、この二人。

「と、とーうぜん、このみとセンパイの後を尾けてきたに決まってるっしょ」
「え? ほ、ホント? ちゃる?」
「嘘。偶然」
「ああーっ、いきなり裏切りやがったあ!」
 大仰に腕を広げて天を仰ぐのは吉岡チエちゃん。中学校時代からのこのみの親友。
 このみと同い年なんだけど、発育状況はだいぶ異なるみたいで、吉岡さんは、その、胸が、おまけにかなり布地少なめのビキニで、おっきくて、ピンクの、困る、ぷるんと、目のやり場に。

「それより、通報しないと、浮気現場」
 ぼそっと怖いことを呟くもう一人は、山田ミチルちゃん。
 こちらは至って平均的な、いやそんなに詳しくないけど、すらりとした体型を、茶色に水玉で地味目の、でもこちらもビキニに包んでいる。
「しかも母娘丼」
 顔立ちも控えめで、特徴とえいばメガネの奥のクールな目線。その目と指が、ビシッと俺に、って待って待って待って。

「ち、違うってば、これは、俺は単なる荷物もちで」
「本当っスかぁ?」
「このみ、お父さんは?」
「来てないよ。夏休み取れなかったんだって」
「……やっぱり犯罪だ」
「違うってば、春夏さん、なんとか言ってあげてくださいよ」
「あら、せっかくお友達に会ったんだから若い人同士で遊んでらっしゃい。荷物、見ててあげるわね」

 春夏さん……逃げましたね。
566或る夏の一昼夜 3/24:2008/09/17(水) 21:37:42 ID:5qg8Re050
 ◇ ◇ ◇

「はいっ」
「てえいっ!」
「わととと、とりゃあっ!」
「……えい」
 ぽーん、ぽーん。ぽーん、ぽーん。
 かけ声と共に、宙に弾むビーチボール。
 水着の少女三人、まあ一応このみも含めて、と元気にビーチバレー。

 なんだけど。
「センパーイ、もっと真面目に打ってください!」
 吉岡さんに怒られる。
 輪になってパスを繋ぐんじゃなく、2対2で試合してるから、御意見ごもっとも。
「うーん、でも……」
「なんッスか? あたしら相手じゃ本気出せないんっスか? 負けてる癖に」
「いや、そういうわけじゃないんだけど」
 腰に手を当てて俺を睨む吉岡さんを、困った顔で見やる俺。
 いや、だってさあ。
「よっちが悪い」
 言い方を悩んでいたら、山田さんが代わりに指摘してくれる。
「なにがよ」
「水着の割に、無駄に胸が大きい」

「っ! む、無駄言うなっ!」
 山田さんの視線に、吉岡さんの頬がカッと染まって、腕組みで胸を隠す。
「その格好で砂地に飛び込んだら、馬鹿に大きいおっぱいがポロリ」
「う、いや馬鹿も言うな」
「ギャラリー大喜び。人垣の視線が一斉によっちの先っぽに突き刺さる」
「そ、そういう言い方はちょっと、っっていうかすぐ直すし!」
「審判の許可を得ずに水着を直す行為は禁止」
「なんでやねんっ!」
567或る夏の一昼夜 4/24:2008/09/17(水) 21:40:26 ID:5qg8Re050
「ま、まあでも、センパイがあたしの水着のせいでスケベな妄想をして試合に身が入らないのはわかったっス」
 そういう理解はどうかと思うけど、そういうこと。

「ちょっと待っててください。上になんか着てきますから」
 吉岡さんは自分たちの荷物へ戻ろうとする。
「あ、よっち」
「あによ」
「いいものがある。一緒に行こう」
 二人の背中が並んで遠ざかる。なんのかんのいって、仲良しなんだな。

 ◇ ◇ ◇

「お待たせっス!」
 待つってほど待つ間もなく、二人が戻って……ぶっ!
「な、なにその格好!」

「何って、体操着っスよ」
「持ってきてた。こんなこともあろうかと」
 平然と答える二人。
 確かに、吉岡さんが水着の上に着てきたのは寺女の体操着。

 ただし、上だけ。

「これなら水着が外れても平気っしょ」
 両手を腰に当てて胸を張る吉岡さん。
 ぷるん、と揺れたおっぱいが、ツンと上向きに収まって、白い体操着を突き上げる。
「キツネのだから、ちょっとキツいんスけど」
 しかも体操着は山田さんのものらしく、二人のサイズ差に伴ってそのあたりはピチピチ。
 吉岡さんの動きにつれて、腰回りでは裾がひらひらと。チラリとおヘソが覗いたり。
 挙げ句に下半身は水着のまんまなので、体操着の上にピンク色のビキニ下というのは、油断するとあの、下着姿にも見えちゃって。
「やったねよっち。センパイが、エロい目でよっちを見てる」
 呟く山田さんに、俺は慌てて咳払いした。吉岡さんは、ちょっと赤面した。
568或る夏の一昼夜 5/24:2008/09/17(水) 21:42:54 ID:5qg8Re050
「見てない見てない。っていうか、まだ吉岡さんのは分かるけど、山田さんのは何?」
「体操着」
 それは分かるけど。
「よっちが上を着たから、下だけ穿いてみた」
 その理屈はおかしいでしょ! どう考えても!

「変、かな?」
 首を傾げて、自分の身体を見下ろす山田さんは、吉岡さんとは逆にビキニの上に赤ブルマ。
 こちらは一見すると普通のビキニ姿に……見えるわけなくて、まるで着替え中の女子みたいな……覗いた事はないからね念のため。
「確かに、ちょっと蒸れるかも」
 ひょいと腰のゴムをつまんで伸ばし、中の水着を覗き込むような仕草。こらこら、女の子がそんなポーズしちゃいけませんっ。
「脱いだ方がいい?」
 ブルマをずり下げて俺に聞くのもやめてくださいお願いします。

「う〜、よっちとちゃるばっかりずるいよ! おかーさーん! このみも〜っ!」」
 と、暫くのあいだ会話の外に置かれていたこのみがキレた。だだだっと日傘の下で休む春夏さんの下に駆ける。
「このみも何か着てくるんっスかね?」
「うーん」
 ま、何を着てもこのみであればそんなに破壊力のある事には……
「タカくん、よっち、ちゃる! お待たせっ!」
 こちらは全く待つ暇もなく駆け戻ってくるこのみは、水着の上に白いパーカーを羽織ってきた。

 ネコミミ付きの。

「変じゃない?」
 いや、変だ。
 変だけど、このみには似合って可愛いんじゃないか。でも、
「くぁあ〜っ! 可愛い〜っ!」
「……いい」
 この衣装は俺よりも他の二人に強烈だったようで。
「ほ、ほえっ!? よっち、ちゃる? ふぎゅぅ〜っ!?」
 前後からの吉岡さんと山田さんの板挟み、通称X攻撃。二人の間に埋もれて、小さなこのみのお尻がパーカーから見え隠れしていた。
569名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 21:43:48 ID:t5Eq9wgK0
支援
570或る夏の一昼夜 6/24:2008/09/17(水) 21:45:23 ID:5qg8Re050
 ◇ ◇ ◇

 ぷはぁ。
「あぁ、いいお湯だった」

 昼間、吉岡さんと山田さんと海で散々遊んで、宿に戻ってきて夕方。

 俺とこのみは、戻ってすぐ大浴場へ。
 春夏さんは部屋で一休み。疲れたんですか、なんて絶対聞けない。

 広いお風呂を満喫しての湯上がり。
 このみは、お湯に浸かっている時間はごく短いけれど、そこは女の子なので俺よりは時間がかかる。
「先に戻ると、また拗ねるだろうからな」
 小上がりでジュースを買って待つことにする。
 扇風機の前は……残念、先客ありか。

「ぷひゅ〜」
 特等席を占領しているのは、俺と同い年くらいの若い女の子。
 浴衣の首にタオルを掛けて、洗いたての髪を扇風機の風になびかせて。
「ごくらくごくらくぅ〜♪」
 膝元にコーヒー牛乳。ぱたぱたと右手で顔を仰ぎ、左手でちょっと襟を緩めたりする無防備な姿が微笑ましい。

 失礼と思いつつ、公共の場で油断しすぎな女の子についつい視線が……あれ、この娘、どこかで見たことある?
「えっと、いいんちょ……小牧!?」
「ぱへ〜っ、へっ!? えっ!? こ、こ河野くんっ!? ったわわたたっ!?」
 油断しきった表情から声を掛けられて飛び上がった女の子。

 ぽけっとこちらを見た後で、俺を認識して慌てて後ずさり。
 勢いあまって尻餅をついたのは、間違いなく我らがクラスの委員長、小牧愛佳その人だった。

 ◇ ◇ ◇
571或る夏の一昼夜 7/24:2008/09/17(水) 21:46:45 ID:5qg8Re050

 しかし、今日は変な所で知り合いに会う日だなあ。

「い、郁乃の調子が良いから、家族で温泉でもってことになってね」
 あたふたわたふたとかくかくしかじかしてくれる小牧。
「郁乃がお母さんとアイスを買いに行ったんで、付いていこうとしたら怒られたんだけど、仕方なくちょっと一休みしてたらその、ちょっと気が緩んで、あははは……」
 両手でぱたぱたと顔を仰ぐ。
 頬が赤いのは、お風呂で火照っただけではなさそう。

「なに騒いでんの、お姉ちゃん」
 噂をすれば影。
 車椅子を回して畳の縁にやってきたのは、小牧姉妹の妹、小牧郁乃。
 最近になってウチに転入してきた一年生で、身体が弱く最近まで入退院を繰り返していたという。
「あ、あはは、いや思わぬ所で河野くんに」
「河野? あ、このみの」
 このみの何なのかは口に出さずに仏頂面のままこちらを見る。
「どうも」
 ぺこりと一応つきの会釈。
「や、やあ」
 俺もぎこちなく挨拶。にしても、愛佳と違って愛想のない子だと思う。

「あれ? お母さんは?」
「アイス持って先に戻った」
「あっ、そうなんだ」
 どうやら小牧の母親とまで顔を合わせる必要はなさそうで、少しほっと、したのも束の間。

「あれれ? そういえば河野くんはどうして? ご両親、出張から戻って来てるの?」
 ぎくり。

「い、いや、まあ、そんなもん……」
「タカくん! 待っててくれたんだ!」
 いまいちよろしくないタイミングで、このみが風呂場から駆けてきた。
572或る夏の一昼夜 8/24:2008/09/17(水) 21:48:35 ID:5qg8Re050
「「……」」
 姉妹が揃ってジト目。
「い、いやこれにはワケがあって」
「ケダモノ。」
「いっ!?」
 言い訳を許さずにガツンと突き刺さる小牧(妹)の言。
「このみ、おいで」
 車椅子を器用に動かして、畳に上がろうとしたこのみを引っ張る。
「あ、うん……え? 郁乃ちゃん? なんでここにいるの?」
 そういや、このみは小牧(妹)とクラスメートだったけ。
「野暮用よ。それより、何で釣られたの、食べ物? 遊園地?」
「えっ? ち、ちがうよお」
 随分と仲は良いみたい。会話の内容はともかく。
 彼女にこのみを確保された俺。妹の説得を諦めて小牧(姉)に目をやると、
「ミテナイミテナイワタシハナンニモミテイナイ……」
 念仏が聞こえてくる。
「はあ。えーっと、小牧、話、聞いてくれる?」
「ナニモミエナイナニモキコエナイナニモタサナイナニモヒカナイナイクイタスプッチトテポ……」
 こっちに事情を説明するのも難しそうだったけど、ここは頑張ってかくかくしかじか。

「……あ、なんだ、そうなんだ。このみちゃんのお母さんと、三人で……って、えええええ!?」
「獣。」
 ああああ説明する事情自体が一般的にはヤバいんだった。
「じゃ、そういうことで。行くよ、このみ」
 三十六計逃げるにしかず。このみを連れて即退散。
「あ、タカくん待って〜。えと、郁乃ちゃん、あとでまた遊ぼうね!」
「りょーかい」
「あっ、こ、河野くんちょっと待った!」
 な、なんでしょう。

「さっき、あたしのこといいんちょって呼びませんでした?」
「たぶん気のせい」 
573名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 21:50:09 ID:t5Eq9wgK0
支援
574或る夏の一昼夜 9/24:2008/09/17(水) 21:51:55 ID:5qg8Re050
 ◇ ◇ ◇

 なかなか美味しかった食事の後で、このみがそわそわし始める。
「お、お母さん、あのね」
「なあにこのみ、もうおねむ?」
「ち、違うよ。それは、ちょっとだけ、欠伸しそうになったけど」
 ちなみにまだ7時前。
「それはお腹が一杯になっちゃったからで、って、そうじゃなくって!」
「ふふ。分かってるわ、郁乃ちゃんの所に遊びに行きたいんでしょ」
「うん」
 小牧達と会った事は話をしてある。
 どうも小牧(妹)はこのみの家に来たこともあるらしく、春夏さんも彼女を知っていた。

「いいわよ。でも、その前に一度部屋に戻りなさい。タカくんも」
「え、俺も?」
 俺自身は、このみに付いていこうか迷っていたんだけど、
二人にとってはそれは既定事項みたいで、春夏さんの用事はそこから先みたい。
 俺はこのみと春夏さんにくっついて二人の部屋へ、
「あ、悪いけどタカくんはちょっと此処で待ってて。このみ、いらっしゃい」
「はあい? タカくん、ちゃんと待っててね」
「あ? ああ」
 入る直前でストップ。いったいなんだろう?
 と、
「うひゃあ!?」
 このみの悲鳴、続けて、どすん、ばたん。
「な、何事?」
 ひとしきり賑やかな音と声が聞こえた後。
「いいわよ、タカくん。入って」
 春夏さんの声がして、訝しみながら入室した俺。
「失礼しまーす。あれ?」

 このみがいない?
575名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 21:55:27 ID:3NSYkCLR0
支援
576名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 21:56:30 ID:Zy447PdIO
予定どおり10レスさるさん。暫し中断
577或る夏の一昼夜10/24:2008/09/17(水) 22:45:10 ID:5qg8Re050
「春夏さん、このみは?」
 俺の問いかけに、笑いながら次の間の方を指さす春夏さん。
 襖は半分閉じていて、
「……」
 そこから覗く馬の尻尾、ならぬこのみの髪の房。
「このみ? 隠れんぼか?」
「う、ううん」
 問いかけには横に髪を振り、手招きすると、頷きながらも出てこない。
「……どうした? 早く出てきなって」
「あ、あのね……笑わない?」
「何を?」
「んと……とにかく笑わない?」
「だから何を」
「どうしてでもいいから」
 なんだろう、どこかでこんなやりとりをこのみとしたような気がする。
「なんだか分からないけど、分かったよ。笑わない」
 あれは確か、今年の始業式あたり。
「う、うん……それじゃあ、ホントに笑わないでね」
 おずおずと襖の陰から出てくるこのみ。
 そう、あの時は扉の陰から、やっぱりこんな感じで……

 あの時と同じように、呆然とこのみを見つめた。
 ピンクを基調に、桜の花びらを散りばめた浴衣姿。
 うなじを染めて斜めに俯く幼馴染みは、彼女らしい子供じみた可愛さと共に、ほんの少しだけ大人っぽい香りを見せて。

「や、やっぱ……どっかヘンかな?」
「……」
「……タカくん?」
「え?」
「やっぱ、どこかヘン?」
「い、いや、いいんじゃないかな」
 いつか聞いた問いかけに俺は、いつかした答えを返すのが精一杯だった。
578名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 22:46:04 ID:ZLeo+eiK0
支援
579或る夏の一昼夜11/24:2008/09/17(水) 22:48:55 ID:5qg8Re050
 ◇ ◇ ◇

「さ、次はタカくんの番よ、こっちへいらっしゃい」
「え、俺のも持ってきたんですか? つうか、自分で着られますって」
「いいからいいから。このみ、タカくん持ってきて」
「う、うん」
「や、やめろ、俺はモノじゃないし、浴衣くらい一人で、っていや春夏さん脱がさないで、って変なとこ触っちゃ、きゃああああ!」
 F.OUT
 まあ俺の着替えを詳細に語っても仕方ないので省略するけど、そんな阿鼻叫喚の8分後。
「あっ、郁乃ちゃーんっ」
 ロビーに佇む車椅子を素早く見つけて、このみが駆け寄るのだった。

「こんばんは」
 後から追っかけた俺も挨拶。
「なんでアンタまで来てんのよ」
 いきなりきっついなあ。あれ? そういえば小牧(姉)がいない?
「姉を探してるの? 言っとくけど、遊びで姉に手を出したら」
「なんでだよっ!」
「あれえ? 小牧先輩、こないの?」
「来てる。ちょっと用を足しているから待ってて」
 小首を傾げたこのみに、一転して優しい口調で語りかける。うーん、難しい娘だね小牧(妹)は。
「浴衣持ってきたの? 可愛いわね」
「えっ? あっ、う、うん、ありがとう。あの、郁乃ちゃんも着替えたんだ?」
 言われてみれば小牧(妹)も白地にピンク柄という、このみとネガポジ反転したような女の子浴衣。
「あたしのは売店で買ったやつ。というか、お姉ちゃんに無理矢理着せられた」
「ふうん。でも可愛いねえ」
「あ、ありがと」
 互いの誉め言葉に頬を赤らめ合うこのみと小牧(妹)。

「……言っとくが、遊びでこのみに手を出したら」
「なんでよっ!」
 意外とノリはいい気もするな小牧(妹)。
580或る夏の一昼夜12/24:2008/09/17(水) 22:51:16 ID:5qg8Re050

「それで、今日これからだけど」
「あっ、そうだっ!」

 小牧(妹)が言い掛けた言葉を聞いて、このみがぽんと声を挙げる。
「な、なに?」
「タカくん、あれ出してあれっ」
「別にここで出さなくても……」
「もう、いいからっ」
 このみは俺が手に持った紙袋をひったくって、内容物−このみの言う「あれ」−を引っ張り出す。

「じゃーん」
 このみが胸の前に見せたのは、色とりどりの花火セット。
 まあ、お子様向けだけどね。

「えへへ、お外に出て、花火しよっ!」
「あ、う」
 にっこり笑って誘うこのみに、小牧(妹)は歯切れの悪い表情をする。

「あれ? もしかして、外に出られない?」
「いや、そんなことはないんだけど」
「花火の量なら心配ないぞ。春夏さんが張り切ってお小遣いくれたから」
「うん、ほら、見て見て」
 紙袋からビニール袋にまとまった花火セットを取り出すこのみ。
 その量、ちょっと買いすぎだろってくらい。
「あ、いや、そうじゃないんだけど」
 小牧(妹)が言い淀む。
「郁乃、お待たせっ!」
 そこに走ってバタバタと、小牧(姉)がやってきた。

「花火買ってきたよ〜、ちゃんと四人分!」
 あー。
581或る夏の一昼夜13/24:2008/09/17(水) 22:52:42 ID:5qg8Re050

 大量の花火を囲んで、顔を見合わせる四人。
「ほへー。凄い量だねえ」
「ちょっと、多すぎるな」
 しかも、同じ物がほぼ二つづつ。
「まあ、売店の花火なんてそう種類はないわよね」
「ごめんなさーい」
 妹は責めた口調ではないが、姉の方は縮こまる。
「しかし、どうするよこれ」
 色とりどりに包装された、まるでお菓子のような花火達。
「か、かくなる上は……」
 小牧(姉)が、その綺麗なラッピングを見つめながら喉をごくり。

「……食べるの?」
「なんでやねん」
 小牧ん家って、関西だっけか。

 ◇ ◇ ◇

「車椅子じゃないんだ?」
「砂地じゃ埋もれるわ。そういうの専用のもあるけど値段が高い」
 歩けないわけでもないから。
 そう付け加えた小牧(妹)は、両脇に松葉杖を突いて歩いていた。

「気を付けてね、郁乃ちゃん」
 彼女の周囲を心配そうにくるくると回るこのみ。
 街灯にピンクの浴衣が映えて、形容詞はひらひらとの方が良かったかも知れないけど、とにかく却って相手に絡みそう。
「このみの方が危ないって。転ぶなよ」
「別に平気」
 注意したら、小牧(妹)の方から強めに回答が来た。
 このみはちょっときょとんとしてから、にこーと笑って松葉杖の少女に並ぶ。
 そんな二人を見て、小牧(姉)が微笑む。
582或る夏の一昼夜14/24:2008/09/17(水) 22:55:42 ID:5qg8Re050

「このみちゃん、浴衣姿、可愛いね」
「えっ? あ、ありがとう、ございます。小牧センパイも似合って、ますです」
 妹とは親しくても、姉とは殆ど面識はないこのみ。少しどぎまぎした様子で返答。

「うふふ、このみちゃんには負けるよぉ、ね、河野くん」
 このみを誉めてこちらに意味深な笑顔を向ける小牧(姉)。
 彼女の浴衣は、藍色地に水色のあじさいが咲いている。
「いや、小牧も綺麗だよ」
 反撃。
「ふえっ!? そ、そそそ、そっかなぁ!?」
 ぷっ、顔も声も真っ赤っ赤。

 思わずにやけた瞬間に、足の甲に激痛。見れば松葉杖の石突き。
「……邪魔だからさっさと歩いて」
 しかし、だから、なんで俺にだけ態度が違うんだ小牧(妹)ぉ。

 ◇ ◇ ◇

 しゅばばばばば。
「うわー」
 このみがぽけーっとした声だす。
 その顔を照らすのは、色とりどりの光の噴水。

「綺麗だねえ」
「贅沢だな」
 吹き上げ花火4基同時着火に成功した俺と、その成果を眺める小牧(姉)の会話。

「郁乃ちゃん、はい」
「……ありがと」
 足の悪い小牧(妹)は、防砂林の松の木に寄りかかって手持ち花火を揺らす。
 女の子三人。三様の浴衣が、原色の光の渦に映えていた。
583或る夏の一昼夜15/24:2008/09/17(水) 22:58:11 ID:5qg8Re050
 花火セットは見る見るうちに消費され、水を張ったバケツには反比例して燃え殻が増えていく。

「わ、もうこれしかない」
「心配する必要、なかったね」
 通常の3倍量といえども、花火って嵩の割に遊べる時間が短い。
 このみは明らかに、小牧(姉)はほっとしたなかにも若干寂しそうな口調。

「このみ、それ取って」
 そこに定位置から小牧(妹)が声を掛けて、このみが袋のひとつを持っていく。
「ありがと。よいしょ」
 それを受け取って、彼女は杖を器用に滑らせて砂地に座り込む。浴衣の裾が若干微妙に……う、睨まれた。
「こほん、何するの?」
「火」
 問いかけには答えず、要求だけをする小牧(妹)。ったく。
 そろそろこいつの態度にも慣れてきた俺は、ライターを投げ渡す。
 シュッ。
 礼も言わずに石を擦る音。
「なんだ?」
 暗がりで良く見えなかった手元に照らし出されたのは、え? ロケット花火!?
「ちょ、ちょっと待てこっちに向っ?」
 シュボッ!
 シュルルルルル。シュルルルルル。
 妙な所で手際よく並べたもので、俺の足元めがけて次々と小火球が飛んでくる。
「うわわっ! うわわわっ!」
「タ、タカくん大丈夫? わ、すごいすごい、あははっ」
 器用に飛び上がって避ける俺を見て、心配のち感心のち大笑いのこのみ。

 で、避けたロケットは、そのまま松林の闇に消えてゆき、
「こらあ! ゴミは拾ってこなきゃダメだよっ!」
 小牧(姉)が手を振り上げて注意。
 ……拾いに行くのは、俺?
584或る夏の一昼夜16/24:2008/09/17(水) 23:00:39 ID:5qg8Re050
 ◇ ◇ ◇

「いや、見つかるわけないってば」
 勢いに釣られて松林の中に入ってみたものの、考えてみれば、ロケット花火の燃え殻なんて小さいものを懐中電灯で探すのは無理がある。
 ついでに言えば、林の中は暗くてあまり心地の良いものじゃないし。
「小牧には悪いけど、適当に探したふりして戻ろう」
 そう思いつつ、いちおうしゃがみこんで木々の間を照らしてみたりしていたら。

 キコ、キコ。
 車輪を回す音。
「え? 小牧、妹?」
 顔を上げた俺の視界には、宿で見た車椅子。
 あれ? でも、車椅子は……
「このみがいないの」
「えっ?」
 俺の疑念は、少女の言葉で遮られた。
「貴方の後を追いかけて林に入って、途中でトイレに行くって言ってそれっきり」
「どっちに行ったの」
 彼女が指さしたのは、宿の方向なのだろうか。
「分かった、郁乃ちゃんは先に戻ってて」
 こくん、と素直に頷く姿に、違和感を覚えつつ事態はそれどころではなく、俺はこのみを探しに脇道に入る。

 街灯もない防砂林の内部は、宿のすぐ側なのにやけに暗くて周囲が見づらい。
「このみ〜、いるかあ〜」
 呼びかける声が、暗闇に吸い込まれる。やけに反響しているような、それでいて遠くまでは届いていないような。
 等間隔に並ぶ松の木の間をすりぬけながら、俺は徐々に焦燥感に駆られてゆく。
「このみっ、いないのかっ!」
 いつしか小走りになる。波の音が、やけに近くから聞こえる。方向感覚が麻痺してくる。此処は、一体、何処なんだろう……

「どこに行くんですか」
 突然、耳元で涼やかな声がして、俺は飛び上がった。
585或る夏の一昼夜17/24:2008/09/17(水) 23:03:17 ID:5qg8Re050

 ふと気がつけば、松林が目の前で切れている。
「そっちは、崖ですよ」
 眼前にしてみれば言われるまでもない。俺の正面の地面は10メートルほど先で消え、向こうには漆黒の夜の海。
「この辺は地形が複雑ですから、慌てて走ると危険です」
 そこまで言葉が続いて、ようやく俺は声の主を認識した。

 暗がりでも目立つ白い上着、懐中電灯を向けると眩しそうに目を細める顔も白く映える。
 顔の上と下半身が闇に溶け込んでいてどきりとしたけど、よく見たら黒いロングヘアとスカートだった。

「あ、ありがとうございます」
 あのまま走っていたら崖下に一直線だったかも知れない。冷や汗をかきながらお礼を言うと、
「どういたしまして」
 涼しい微笑みのまま返された。
 思ったよりも若い子だ。俺と同い年か、少し上かな? それにしても、なんでこんな所にいたんだろ?
「あの……」
「はい?」
 お散歩ですか? そう聞こうと思ったけれど、小首を傾げる仕草に口をついたのは別な質問。
「どこかで、お会いしたことありますっけ?」
「ふふっ、どうでしょうね」
 これも少し楽しげな微笑みで返される。

「それより、戻らないと皆さんが心配します」
 走ってきた方向を指さす。それで、俺は今度は自分の目的を思い出す。
「あっ、そうだ、このみっ!」
 意味もなく周囲を見渡してしまう俺。
 だが、女の子は余裕を持って、
「大丈夫です。もう先に戻っていますよ、きっと」
 その言葉は、まるで見てきたように自信たっぷりで、俺は狐につままれたような顔のまま来た道を戻った。
 女の子は、まだ散歩を続けるつもりか俺を見送る。

 ……やっぱり、見覚えがあるような気がするんだけどな。
586或る夏の一昼夜18/24:2008/09/17(水) 23:05:45 ID:5qg8Re050
 ◇ ◇ ◇

「あっ、戻ってきたっ!」

 俺が花火の場所に帰ると、探していた筈のこのみが飛び跳ねて迎えに寄ってきた。
「もう、タカくんどこに行ってたのっ!」
 声に含まれている色は、怒りよりも心配の要素の方が多い。
「いつまで経っても戻ってこないから、みんな心配してたんだよぉ」
 小牧(姉)も同調。
「あたしは先に帰りたかったけど、このみが待ってるっていうから」
 これは妹の言。
 お前なあ、誰のせいだと思って……あれ?

「郁乃ちゃん? さっき車椅子で来なかった?」
「呼び方が馴れ馴れしい。それにさっきもいったでしょ、砂地じゃ使えないって」
 やっぱりそうか。
 って、それじゃあ、さっき俺が見たのはなに?
「それよりなによ、このみが道に迷ったなんて言って、全然違う方向だったじゃない」
 え?
「なんだよ、それ?」
「む、しらばっくれるの? それとも、あたしとお姉ちゃんを騙したわけ?」
「だ、騙すって?」
 予想外の展開に狼狽えると、姉の方が間に入る。
「あ、あのね? さっき河野くんがね? このみちゃんが戻ってこないからあっちを探してくれって」
 指さす方向は俺の来た方の逆。
「お、俺は郁乃ちゃんが、このみが迷子じゃないかって」
「み、みんな酷いよ〜」
 三人の会話に、このみも参戦。

「このみは、おトイレに行こうと思って、それはちょっと道に迷ったけど……」
「迷ったんだ?」
「うー、途中で会った旅館の人が、こっちが近いって言うからっ!」
587或る夏の一昼夜19/24:2008/09/17(水) 23:09:14 ID:5qg8Re050

「でも、親切な女の人が道を教えてくれて、戻ってきたら誰もいないんだもん」
 膨れるほっぺ。

「このみも? いや、俺も女の人、っつーか同い年くらいの子に助けられたんだけどさ」
「え?」
 俺の言葉に、小牧姉妹まで首を傾げる。
「あ、あたしたちも女の子に会ったの、その、教えてくれて、砂が陥没してて危ないですよって」
「あの人がいなきゃ二重遭難してたかもね」
 き、奇遇っていうのかな。こういうのも。
 でも。
「その女の子って、すらっとして、髪が長くて」
「白い上着と、黒いスカートだったよ」
「なんだか楽しそうに笑ってて、質問してもあんまり答えてくれなかったです」
「……胸は結構あった」
 見事なまでに、全員一致。

「「「「……」」」」
 顔を見合わせる一同。
 なんとなく視線を回すと、このみ、小牧(姉)、小牧(妹)、そしてもう一人。
「そうそう、ちょうどこんな感じの……」
 つい指さした先も四人仲良く、その先に佇む少女は。
「私がどうかしましたか?」
「わわっ、ご、ごめんなさいっ、悪気はないんです」
「そうそう、今ちょうど、みんなが貴方みたいな人に会ったって話を……」
 って。
「「「「こ、この人っ!」」」」

「はい、私です」
 驚愕の声を挙げた四人の真ん中で、白い服の子は涼しげに笑った。

 ◇ ◇ ◇
588或る夏の一昼夜20/24:2008/09/17(水) 23:11:47 ID:5qg8Re050

「草壁、優季といいます」
 苗字と名前の間を一拍区切って名乗った少女は、俺達と同じ二年生だと言った。

「えーっと、とりあえず、さっきはどうも」
「……あ、うん、そうだ。さっきは有り難うございました。助かりました」
「同上」
「ありがとー、ございました」
 俺を含めて、口々に礼を述べる面々。このみはぺこりとお辞儀。
 ……ってことは、やっぱりみんなこの人に助けられたのか。

「幽霊じゃありませんよ?」
 失礼のないようにと思っても、皆の疑問はしっかり伝わったらしく、にっこり笑う少女−草壁さん。
 その足元に光が当たる。
「足は、あるわね」
「こ、こらっ、郁乃っ!」
 不躾な懐中電灯を向けたのはやっぱり小牧(妹)で、慌ててたしなめる姉。
「ふふっ、大丈夫です」
 それに気を悪くした様子もなく、草壁さんはおどけてスカートをつまみあげた。
 黄色い光に照らされて、形のよいふくらはぎから膝上までの脚はやっぱり白い。
「ほら、このとおり……あっ」
 おどけた笑みを浮かべていた草壁さんは、俺の視線に気付いて手を離す。
 ちらっとよそ見した頬は、もしかしたら赤くなっていたのかも知れない。

「……なんだか釈然としないんだけど」
「郁乃ってばっ」
「だって、方向が全然違うし、みんなが離れた理由も解決してないし」
 命の恩人を疑う気は全くないけど、小牧(妹)の言うことももっともだ。

「そうですねえ。私は幽霊ではありませんけど」
 草壁さんが、それに応える。
「出るみたいですよ、このあたり」
589或る夏の一昼夜21/24:2008/09/17(水) 23:14:48 ID:5qg8Re050
「で、出るって、な、ななな何がですか?」
 小牧(姉)が妹の横に寄っていく。気付けばこのみも俺の後ろ。

「だいぶ昔のお話ですが、この近くには漁村があったんです」
 まるで歌でも歌うように話し出す草壁さん。
「そこに、街から商人の一家が引っ越してきました」
「平凡な商人でも、貧しい漁村では目立ってしまったのでしょう。そこの子供は周囲に馴染めず、いつもいじめられて」
「じ、自殺しちゃったとか?」
 口を挟んだ俺に、草壁さんはかぶりを振った。
「事故だったそうです。一人で海岸で遊んでいて、礒から転落したとか」
 ひしっ。
 背中に服を掴まれる感触。そういやこのみは、怪談話が大の苦手だっけ。
「それからです。この近くで、子供達が一緒に遊んでいると」
 ぎしっ。こちらは小牧(姉)が妹にしがみついた音。
「いつのまにか皆がバラバラになって、一人、また一人と崖に誘われるように……」
「す、すすすストップ、ストップぅ! そこまでぇ〜!」
 臨界点突破したのか、小牧(姉)が両腕を振り回して続きを阻止した。

「ふふっ、まあ、只のお話です」
 悪戯っぽく笑う草壁さん、それにしても、楽しそうに笑う女の子だなあ。
「そ、そうだよねっ、ゆーれいなんて、出ないよねタカくんっ!」
 俺の背中から顔を出すこのみ。
「でも、今日は出てきたい気分かも知れませんね。幽霊さんも」
「ふえっ!?」
 草壁さんはまた脅かして、小牧(姉)の背筋がひんっと伸びる。

「だって、こんなに綺麗な満月ですから」
 指さす夜空に、丸い月。
 釣られて見上げた俺達が視線を戻すと、草壁さんはもう居なかった。

(……また、お会いしましょう、貴明さん。)
 耳元で涼やかな声が聞こえた気がしたのは、俺だけだったみたい。
590名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 23:15:00 ID:3NSYkCLR0
支援
591或る夏の一昼夜22/24:2008/09/17(水) 23:17:46 ID:5qg8Re050
 ◇ ◇ ◇

「た、タカくん、手を離さないでねっ、絶対だよっ」
「わかったからくっつくなよ、歩きにくい」
 しがみつくこのみを、半ば引きずるようにして宿に戻る俺。
「あ、あはははは」
「笑いながらしがみつかないでよお姉ちゃん。気持ち悪い」
 あっちも似たような様子。
 宿に戻って車椅子に乗り換えても、姉は妹から離れようとはしなかった。

「じゃ、じゃあね、郁乃ちゃん、小牧先輩」
「おやすみ、このみ」
「おやすみなさい、河野くん、このみちゃん」
「おやすみ」
 このみは俺に、小牧(姉)は妹にしがみついたまま、それぞれの部屋に分かれる。
「い、郁乃ぉ、今日は一緒に寝ようねぇ」
「なんでよ」
「だってぇ……」
 別れ際、そんな会話が遠ざかっていく。

「た、タカくん、あのね、あのね」
「一緒に寝ないぞ」

 それを聞いたこのみの態度は、非常に分かりやすいので先手を打つ。
「えええ〜っ、タカくんの意地悪〜!」
「意地悪じゃないっ、当然だっ」
「どうしてタカくんとこのみが一緒に寝たらいけないのっ?」
「どうしてって……」
 ちょっと前まで無理矢理俺のベッドに潜り込んできたこのみだけど、今日は春夏さんもいるんだし。 
「そうだ。春夏さんに聞いてみろよ」
 部屋に戻ってかくかくしかじか。
592名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 23:19:21 ID:ZLeo+eiK0
支援
593或る夏の一昼夜23/24:2008/09/17(水) 23:22:35 ID:5qg8Re050

「そうねえ、確かに年頃の男女二人が同衾っていうのは、少し問題かもねえ」
 ほらみろ。
「じゃあ、三人で寝ましょっか?」
 へ?

 ◇ ◇ ◇

 カチ、コチ、カチ、コチ。
 備え付けの時計の音が、やけに大きく聞こえる。

 すーっ、すーっ。すやすや。
 両隣からは、健やかそうな二つの寝息。

「な、なんでこうなるんだ」
 宿の天井を見上げながら、未だに自問を繰り返す俺。
 右腕にはしっかりとこのみが抱きついて、左腕は春夏さんに持って行かれて。
「お、おかしいだろこれは!?」
「むにゃ……タカくんうるさーい」
 思わず声に出てしまったらしい。寝ぼけたこのみの抗議に慌てて黙りなおす。
 このみはもう一度俺の腕をしっかり抱き抱えなおした。
 幸か不幸か、彼女の身体はまだまだ凹凸が少ないので、右腕の感触もそれほどは、
と思いつつもやはり柔らかく、おまけにこのみときたら俺の手を両脚でしっかり挟んでいたりして。
「なんでこんなに無防備なんだろうなこいつは」
 ぼやいて直ぐに、左隣にその原因がいることに気付く。

 俺の左腕を枕にして、春夏さんは安眠中。
「うーん、旦那さんが出張がちだから、欲求不満なのかなあ……う、いかんいかん」
 自分で思った単語に反応しそうになって、俺は妄想をかき消すべく今日一日を回想した。

「センパイ、お待たせっス!」
 吉岡さんの水着姿は、思い出しちゃだめーっ!
594或る夏の一昼夜24/24:2008/09/17(水) 23:26:03 ID:5qg8Re050

 そんなわけで、このみの両親の夫婦仲を心配しつつ、人肌が温すぎる布団で俺がうつらうつらし始めたのは、もう朝方に近かった。

 がさごそ、がさごそ。
 ん? このみ?……は腕にかじりついてるな。もう痺れて感覚ないけどさ。
 あれだ。左腕に収まっていた春夏さんがいない。
 まだ、チェックアウトするような時間じゃないと思うんだけど……
「あら、起こしちゃった、ごめんなさい」
「春夏さん、あれ? その格好?」

 このみを起こさないように上半身だけ起こすと、春夏さんは既に身支度を調えつつある。
「ごめんなさいね、実はさっき、あの人からメールが来て、休みが取れてこっちに戻ってくるっていうの」
 あ、おじさん、仕事切り上げたんだ。
「だから、朝イチの電車で迎えに行くわ。このみは、起きないだろうから、悪いけどタカくんお願いね」
「あ、はい」
 いそいそと出立の準備をする春夏さん。
 おもむろに化粧を直したり、意味もなく時計を見たり、なんだか落ち着かない。
「じゃあ、少し早いけど、精算を済ませて行くわね。このみ、あとよろしく」
「ん……ふぁあい」
 寝ぼけて意味が分からなくても素直なこのみに返答させて、春夏さんは部屋を出て行く。
 その足取りは、心なしという程度ではなく軽かった。

「やっぱり、おじさんが戻ってくるのを心待ちにしてたんだな」
 旅行中の俺への態度は、おじさんへの慕情の裏返しだったんだろう。
 俺は一安心すると共に、ちょっとだけおじさんを羨ましく思う。

「さて、このみは起きそうにないし、俺ももう一眠りするか」
 まだ腕を離してくれていないので、仕方なく隣に潜り込むと、このみは樹木にはりつくカブトムシみたいにすり寄ってくる。まあ、いいか。
 財布は春夏さんが持ってっちゃったんだよな。買い物もできないから、起きたら俺達も帰ろう……う?
「あれ? 春夏さん、電車代置いていってくれた?」

 ……このみと二人で小牧の両親に帰りの電車賃を借りるのは、かなり恥ずかしかった。
595名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 23:27:16 ID:5qg8Re050
以上です。支援ありがとうございました
最初は草壁さんSSのつもりで書き始めたんですが、
なんだかキャラ的にも展開的にもまったく脈絡のない話になってしまいましたね

ちなみに草壁さんのは>365のSSに変化しました
つまり8月からかき始めて、書いてるうちに海水浴シーズンが終わってしまったと(汗
596名無しさんだよもん:2008/09/18(木) 00:59:57 ID:Ci7SfBOs0
うほっ、いいSS

>つまり8月からかき始めて、書いてるうちに海水浴シーズンが終わってしまったと(汗
逆に考えるんだ
人ごみが嫌だから、シーズンを避けて9月半ばに海に来たシチュエーションなのだと
つーか草壁さんって本来?の時間軸には存在しないんだっけ
草壁さんルートに入らん限り
てか草壁さんがどういう存在なのかイマイチ覚えてないけど
597名無しさんだよもん:2008/09/18(木) 18:27:12 ID:KYuKFhi20
>>596
草壁さんルートでないときは貴明は学校に流星群とか見にいかないから
死ぬこともないわけでということは草壁さんもタイムスリップ
しないわけだから普通に生きているだろ
598名無しさんだよもん:2008/09/18(木) 22:18:40 ID:xfv8eajF0
どっちが卵で鶏かアレだが、事故の記事を見て時をかける少女になったんだったか
交通事故じゃなくても、貴明が危機に陥れば超能力が開花する可能性はあるかもね
落石の直撃を喰らうと目からビームが出るとか。凍死すると歌で春を呼ぶとか
599名無しさんだよもん:2008/09/18(木) 22:38:56 ID:0aLdZ3uQ0
というか確か論理的に破綻してたよね。バックトゥーザフューチャー以上に。
当時考えてみたけどその結論だけ頭に残ってる。

違ったっけ。
600名無しさんだよもん:2008/09/18(木) 23:12:53 ID:xfv8eajF0
>599
時間遡航自体が論理的には有り得ないってのは置いといても
どこが破綻したと思ったのか覚えていないのでは正しいも違うもないけどさ

ちょっと見返してみて、
草壁さんが事故の記事を見る→時を遡る→貴明が草壁さんを追いかけて事故に遭う
って流れ自体は、
最初の事故が草壁さんに起因するものでないとすれば特に破綻はないかと
流星群の夜なんだから、何かのきっかけで外出したって不思議はないだろうしね
601名無しさんだよもん:2008/09/19(金) 07:33:04 ID:U/5WuFHt0
へー。ありがとう。
602名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 10:22:23 ID:1lP4DVTz0
ちょっと投下します。
AD準拠です。
では。
603河野家の七日間戦争 「開戦前夜」(1/7):2008/09/20(土) 10:24:17 ID:1lP4DVTz0
 
 「ねぇ、あのさ、よっちゃんの学校、寺女ってさ、メイドロボが家にいるって子も、結構いるのかな?」

 ここは、貴明達の行きつけの、もんじゃ屋の座敷の一角。
 もんじゃの香ばしい匂いが辺りに漂う。
 鉄板の上のもんじゃ焼きをザクザクとヘラで区切りながら、吉岡チエに尋ねる貴明。
 「う〜ん、そうっすねぇ・・・もぐもぐ」
 もんじゃを頬張りながら、考えるチエである。
 「結構多いと思うっすよ。うちのクラスにも、何人かいるみたいっすし」
 「そうなんだ。そうだよね、寺女って、お金持ちの子ばっかりだもんね。」
 ふんふんと頷きつつ、貴明が言った。

 「でさ、何体も持ってるって子も、いる?」
 続けて尋ねる貴明。
 「さぁ?普通、いないっしょ。」
 チエが答えた。
 「せいぜいが便利な家電か、よく出来たオモチャくらいの感覚っすもん。だいたい、ホントにお金持ちの子って、本物のメイド
さんを、何人も雇ってるもんすよ。」
 それを聞いて、貴明は思った。そうだろう。メイドロボを何体も欲しがるのは、多分、男のマニアだ。例えば、雄二のような。
604河野家の七日間戦争 「開戦前夜」(2/7):2008/09/20(土) 10:29:40 ID:1lP4DVTz0
 
 「あたしの先輩に、来栖川のお嬢様がいるっすよ。その人がいっつもメイドロボ連れてたの見て、オーナーになるのが流行
になったみたいっす。」
 ――― それは、多分、“セリオ”の事だろう。藤田先輩や珊瑚ちゃんの話してたメイドロボの試作機だ。
 「でも、なんで急に、そんな事聞いてくるんすか、センパイ?」
 貴明をジト目で眺めながら、尋ねて来るチエ。
 「もしかして、メイドロボフェチっすか?雄二センパイみたいな」
 ドキリとする貴明。
 「いっ、いやっ、その、最近、よく街でも見掛けるじゃない。よっちゃんも、興味ないのかな〜、とか、思ったんだけど。」
 「あたしは別段どうでもいいっすよ。自分の事は自分で間に合ってるっすから。」
 さらっと答えるチエ。
 「間に合ってなかったのは、ボーイフレンドだけっす。でも、それも、もう解決したっすから。」
 そう言って、急に、頬を赤らめてにっこりとしながら、ネットリとした視線を向けてきたチエ。
 貴明も頬を赤らめ、ドギマギしながらバツが悪そうに衿をつまむ。
 周囲の席から、ヒューヒューと冷やかす店の常連さん達の声が聞こえる。
 ボリボリと頭をかきながら、言う貴明。
 「そ、そうなんだ・・・・良かったね、間に合って・・・・その・・・・俺なんかで良かったら・・・・」 

 冷やかしの声に一段と頬を赤らめながら、ふと、また考えに耽る貴明。
 思い起こしたのは、自宅の、メイドロボ達の事だった。
605名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 10:30:33 ID:27jKrPOv0
支援
606河野家の七日間戦争 「開戦前夜」(3/7):2008/09/20(土) 10:32:47 ID:1lP4DVTz0
  
 別段金持ちでもないし、マニアでもなかったが、偶然のきっかけで、2体のメイドロボのオーナーになってしまった貴明。
 彼の家に常駐しているという事であるなら、3体いる。
 1体、いや1人は、彼の与り知らないところで、勝手にご主人様登録されていた。
 あろうことか、貴明のクラスメートにまでなって、追い掛け回してくる。
 もう1人は、いきなり、箱詰めにされて押し付けられてきた。
 仮のご主人様登録という事で、貴明の身の回りの世話をしながら、メイドロボ修行中(?)、である。
 そして、その箱詰めメイドロボを送りつけてきた彼女達の姉は、指導教官と称して、ほとんど毎日のように、河野家に
入り浸っている。
 実質的に、貴明の家のメイドロボと変わりがない。

 困ったのは、3姉妹とも、最新のAIにより人間と変わりがない感情を有するタイプで、貴明に、ただならぬ感情を抱いて
しまっていること。
 驚異の来栖川テクノロジーにより、それこそセックスだって、人間同様、お気に召すまま。
 彼女達との同居生活を傍から見れば、爛れた生活を送る、ダメ人間にしか見えないのではなかろうかと、貴明は思う。
 まだこの歳で・・・・

 「――― どうしたっすか、センパイ?」
 貴明の顔に自分の顔を近付けて覗き込みながら、尋ねてくるチエ。
 「いっいやっ、何でもないよっ!」
 両手をかざして冷汗を流しながら、後ずさる貴明。
現在の“河野家の事情”をよっちに知られたら、目も当てられないだろうなぁ・・・・などと想像すると、冷汗も出ようという
ものだった。
607河野家の七日間戦争 「開戦前夜」(4/7):2008/09/20(土) 10:35:37 ID:1lP4DVTz0
 
 「・・・・ごめん、待たせた。センパイ、よっち。」
 化粧室に行くと言って席を外していた、ちゃること山田ミチルが戻って来た。
 「おそーい、ちゃる。もう結構食べちゃったよ。」
 「ごめん。」
 あまり表情を変えず、ボソリと言うミチル。

 座敷に上がろうとした時、チエと貴明の顔が、少し紅潮しているのに、ミチルは気付く。
 「・・・・ん?ちゃる、早く上がりなよ?」
 ミチルがそのまま立ち尽くしているのを見て、怪訝な顔でミチルの座っていた座布団を指し示す貴明。
 眼鏡の奥から視線だけを動かしてチエと貴明を交互に眺め回したミチルであったが、やがて、ふいに言った。
 「ごめん。私、急に用事、思い出した。先に帰る。」
 「えええ〜〜っ!?」
 「えぇっ!?」
 ほぼ同時に素っ頓狂な驚きの声を上げるチエと貴明。
 「二人はゆっくりしていって。じゃ。」
 そう言い残すと、ミチルは踵を返して、スゥッと出口の方に向かってしまった。

 コップを載せたお盆を持って座敷に向かっていたハナとすれ違いざまに、ミチルはつぶやくように言う。
 「ハナ、二人の分と合わせて、お代は後で払っておくから。」
 「あいよ。」
 バチンと片目を閉じてウインクしながら、ハナが応じる。

 「あ〜あ、行っちゃったね・・・・。」
 去っていくミチルの姿を目で追いながら、言う貴明。
608河野家の七日間戦争 「開戦前夜」(5/7):2008/09/20(土) 10:38:34 ID:1lP4DVTz0
 
 「センパイ、その、あの・・・・」
 「ん?」
 頬を朱に染めて、もじもじしながら、尋ねて来るチエ。
 「その、これから、センパイの家にお邪魔しても、いいっすか・・・・?」
 「ええっ!?」
 思わず叫んでしまった貴明。
 「――― ?どうしたっすか、センパイ。何か都合悪かったっすか?」
 貴明のその反応に、思わずキョトンとなるチエ。
 「いや、そっ、そんな事ないけどさ、何と言うか、その、心の準備がさ・・・・」
 そう言いながら、ヘラで鉄板上のもんじゃをカチカチとつつく貴明。
 「・・・・センパイ、もんじゃ、千切りになってるっす。」
 貴明の落ち着かない様子を見取って、怪訝な表情になるチエ。

 ――― いつかは招き寄せないといけないと思っていたけど、早くも、今日、その機会が来ようとは。
 心中焦る貴明。
 寺女の子女のメイドロボ所有事情を訊いたのも、今の河野家の事情をチエがどう思うかを、念頭に置いてのことだった。
 「だって、いっつも、あたしの家か、果ては青姦じゃないっすか。そろそろ、センパイの家でと、思ったんすよ・・・・」
 そう言って紅潮して俯きながら、唇を尖らすチエ。
 「そ、そうだったね、そういえば・・・・いいよ。ウチにおいでよ。」
 「―――ッ!ホントっすかっ!?うれしいっ!」
 その貴明の言葉を聞いて、パァっと表情を輝かせるチエであった。

 いよいよ観念した貴明。
 ・・・・ハァ・・・・。先にシルファちゃんに電話しといた方が、いいかなぁ・・・・。
609河野家の七日間戦争 「開戦前夜」(6/7):2008/09/20(土) 10:41:48 ID:1lP4DVTz0
 
 ところは変わって、河野家の居間。

 今、2人の少女を前に向かい合いながら、両腕を腰に当てて、青いショートカットの髪の少女が、立ち尽くしている。
 3人とも、衿のデザインこそ若干違え、ほぼお揃いの、紺が基調のシックなメイド衣装を身に着けていた。
 脚を包む黒いニーソックス。ややミニ気味の紫色のスカートが、活動的で愛らしい。
 「――― いいですか、二人とも。そろそろ、貴明さんが、帰って来る頃です。」
 3人の耳には、お揃いのイヤーバイザー。
 メイドロボの、証だった。
 「それでは、メイドロボ唱歌、歌います。いい、二人とも?」
 「え〜?またあの変な歌、歌うのぉ〜?ぶーっ!」
 「恥ずかしいのれす。」
 「つべこべ言わないの。それじゃ、1、2、3、はいっ!」

 ご奉仕〜 ご奉仕〜 ♪
 ありったけの まごころの〜
 ご奉仕〜 ご奉仕〜
 選び抜かれた セクシャリスト
 来栖川 メイド隊〜 ♪

 「・・・・ミルファちゃん、相変わらずの音痴ねぇ。もっと練習なさい。」
 「もう、お姉ちゃん、恥ずかしいよ〜。まるで、エロエロセクサロイドじゃない。」
 ピンク髪の少女が唇を尖らして不満を漏らす。
610河野家の七日間戦争 「開戦前夜」(7/7):2008/09/20(土) 10:44:03 ID:1lP4DVTz0
 
 「違うと言うの?」
 ピシャリと言う、姉と呼ばれた青髪の少女。
 「うっ・・・・。」
 ピンク髪の少女は、頬を赤らめつつ沈黙してしまう。
 「・・・・ イルイルは、恥ずかしくないのれすか?」
 金髪のお下げ髪の少女が、赤い顔で俯きながら、上目つかいで訊いて来る。
 「もーまんたいです。夜においても、ご主人様にありったけの愛のご奉仕で悦びをご提供する。それが、メイドロボの務め。」
 平然と言ってのける。
 
 再び、腰に手を当て、二人に向き直る青髪の少女。
 「コホン、えー、それでは、メイドロボ標語です。私に続いて、復唱なさい ――― はいっ!」

 「くんずほぐれつ ずっこんばっこん!」

 『くんずほぐれつ ずっこんばっこん!』


チエと並んで家路を歩みながら、貴明は突如、肩を抱えてブルブルッと震え上がった。
 「――― ん?センパイ、どうしたんっすか?」
 その様子を見たチエが、心配顔で貴明の表情を覗き込む。
 蒼白になりながら答える貴明。
 「いっ、いやっ、急に、寒気が・・・・」

 (続く)
611名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 10:45:27 ID:27jKrPOv0
全裸待機でいい?
612名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 10:53:13 ID:1lP4DVTz0
というわけで、今回はこれで投下終了です。

気長な話になりそうですが、何とか頑張ります。

ご支援ありがとうございます。
では。
613名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 11:49:32 ID:bS/BHhhtO
話の方向性としては嫌いじゃないけど、イルファさんが痴女扱いなのはちといただけないなあ。
614落とした人:2008/09/20(土) 12:46:18 ID:1lP4DVTz0
よっち√END後の、爛れた生活を描いてみようかというのがまず念頭にありまして。
ちょっとエッチで面白おかしく描写できればと思ってます。
面白くとは意図しましたけど、それでただの痴女に見えてしまうんでは、考えものですね。
その辺はよく考えながら進めていきます。>>613さん、ご意見、参考にさせていただきます。 
615名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 13:04:03 ID:e9M4IMek0
いや、イルファって元から痴女じゃん。
自分で自分のことダッチワイフって言ってるし。
616名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 14:11:52 ID:prDakDfQ0
>>613
ヒント:AD準拠
617名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 15:03:19 ID:E0xPhSnm0
XRATEDの頃からイルファはド淫乱な痴女キャラだと思う。
618名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 15:34:07 ID:q9Vf7tN30
無理にイルファさんを貶めるのヤメレ(´・ω・`)
AD準拠だからとサラッと通り過ぎればいいだけの話だろ
619名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 15:44:22 ID:E0xPhSnm0
貶めるもなにも事実じゃん。
痴女キャラとして書いてるだろ。三宅本人が。
620名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 18:55:23 ID:vxbgZ8CS0
まぁ確かに、双子ルートの最後の台詞だけをピックアップすれば、Xのときから痴女キャラやね
ただ、双子ルートは他の部分との兼ね合いでバランス取れてて、『お茶目』になってたからなあ

多分ADでもそれは変わらないと思うよ
要は書き方の問題というか、614さんは今のところちゃんと『お茶目』なバランスになってるんじゃね?
今後どうなっていくかは分からないけどねw

さすがにコレで痴女だの淫乱だのっていうのは神経質すぎだろう
621名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 19:48:41 ID:q9Vf7tN30
痴女云々はさておき、よっち√の後日談というのは、確かに惹かれる
三姉妹がその後どうなったかを、唯一垣間見せてくれるENDだからなw
濃厚で爛れた展開を期待するw
よっちとミルファの乳対決頼む(*´Д`)
622名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 20:20:30 ID:XiE40i0r0
よっちEDで「メイドロボを三人も所有してる」→「イルファさんはただの指導教官だよ」
ってな会話があるんだから、こういうのもアリだろね
イルファさんは、ADでは特にお下劣な台詞も多かったしな
個人的には、ここまであからさまだとちょっと引くけど、エロいの自体は大歓迎だぜ
623名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 21:13:10 ID:krarPmqe0
>>614
俺としてはこのまま突っ走ってもらいたい
624名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 23:29:04 ID:oqqKoVkc0
むしろ痴女キャラじゃないとイルファじゃないって感じ。
イルファさんは淫乱なのがいいんだよ。
625名無しさんだよもん:2008/09/20(土) 23:40:25 ID:tU5RjMLz0
イルファさんは、いざHになると清純だが日常ではエロトーク全快なのがいい。
>>614
乙。
いい感じなので気長に待ってます。
626名無しさんだよもん:2008/09/21(日) 14:22:35 ID:tEudnkEb0
よっちED後のよっちがいらないくらいの勢いで
627名無しさんだよもん:2008/09/21(日) 21:06:52 ID:kAvD45ep0
よっちとミルファでダブルパイズリ展開ですね、分かります
628名無しさんだよもん:2008/09/21(日) 22:25:06 ID:sCb1D9N80
そんなにイルファさんはすごいのか?
オレはADができない、低スペック組なのでわからないけど。

低スペックでもADができる裏技ってないのかな・・・?
629名無しさんだよもん:2008/09/21(日) 22:31:25 ID:7yQ756zI0
そんなにでて来ませんよ。
すごいっていっても、そのすごいところは合計で10行程度だと思う。
630名無しさんだよもん:2008/09/21(日) 22:38:21 ID:ljrKlXNX0
>>628
常識ある淫乱メイドだね。
つか引きこもりなだけでメイドロボ三姉妹の中ではシルファが一番まともな気がしてしまう。
631名無しさんだよもん:2008/09/22(月) 00:12:13 ID:7yM8F/Nx0
>629
なにげにやたら長回しの台詞が多いんだけどね
妙に下品だったり、シルミルへの配慮が空回り気味だったり、
全然活躍したぜ感はないのにイメージダウンはするような役回りで可哀想に思った
632名無しさんだよもん:2008/09/22(月) 00:14:36 ID:fp8jBGsc0
ミルファんときなんか貴明寝取るみたいな発言あったしな。
633名無しさんだよもん:2008/09/22(月) 00:54:05 ID:ws/lBSh40
そう言うの聞くとADはファン連中がファンディスク作れとうるさいのを
黙らせるために作ったんじゃないかと勘ぐりたくなるなぁ

まあ実際のところはTtTに注力してたんでスタッフ不足だったとかって所だとは思うけど。
634名無しさんだよもん:2008/09/22(月) 01:31:13 ID:vFGHs7c+0
シルファのマザコン関係もマザコンを強引に曲解して入れた感じのせっていだしな
635名無しさんだよもん:2008/09/22(月) 07:00:01 ID:7yM8F/Nx0
>634
シルファのマザコン設定ってどんなだっけ?
636名無しさんだよもん:2008/09/22(月) 07:06:29 ID:u9VodYre0
無印とXRATEDでは、シルファは引っ込み思案でマザコンとしか言われてなかったが、
三宅があれをどう捻じ曲げてシルファを作ろうと思ったのかが気になる
普通にマザコンで引っ込み思案でもシナリオは面白くできたと思うが…
637名無しさんだよもん:2008/09/22(月) 13:53:20 ID:ZBPq03ePO
ファンが考えていたマザコン → 珊瑚ママすきすきすきーという意味でのマザコン
ADシルファのマザコン → 創造主への恐怖という意味でのマザコン
638名無しさんだよもん:2008/09/22(月) 19:19:33 ID:OLZCUVku0
ADのシナリオや三宅叩きは本スレでやってくれ
639名無しさんだよもん:2008/09/22(月) 22:28:28 ID:Xy1RCa0tO
シルファは前情報から本編での引っ繰り返しが上手かったと思うけどな
可愛いし特徴付けも成功してて、SS的にも書きやすい娘になったかと
640名無しさんだよもん:2008/09/23(火) 11:39:04 ID:j2c/QfDC0
シルファは特徴的な口調で誰が話してるか一目瞭然だから字数も節約出来るが、シルファ語間違えないよう
気は使う必要があるのが面倒かもw
641名無しさんだよもん:2008/09/23(火) 11:56:47 ID:k9DfG2+g0
ADヒロインで書いてて楽しいのシルファくらいだからなあ
他は元がサブキャラだからなのか、性格設定が一つの方向に偏りすぎてて面白味がない

そう考えるとXまでのヒロインは、しっかり作り込んであるよね
特にこのみはすごい
もっとブレイクしてもおかしくなかったと思うんだが、何が足りなかったんだろう
642名無しさんだよもん:2008/09/23(火) 12:34:49 ID:zRlCvtSn0
まぁ書いてて面白いかどうかは書き手のキャラの好き好きだからなぁ
シルファも結構性格の偏りはあるように思うし、活動範囲が狭くなりがちなのも
難しい要素ではある。
XまでとADとでは、性格付けの変ってるキャラがあるのが困るな。
〜準拠とは謳っておいた方が無難だろうね。
643名無しさんだよもん:2008/09/23(火) 13:16:35 ID:NXKP5prI0
そもそもキャラの性格なんて人によってだいぶ感覚違うがね
俺がADでイメージ変わったのはイルファさんのお下劣と、貴明の鬼畜っぷりかな

他のキャラは特に変わらない(郁乃このタマちゃるよっち春夏さん)か、
元からあまり性格のイメージがなかった(菜々子まーりゃんシルファミルファ)
644名無しさんだよもん:2008/09/23(火) 18:34:43 ID:vCbgWiPn0
私の気になるシルファの揺らぎ
「おかえりなさいれす。」
「おかえりなさいませ。」
「おかえりれす。」
「おかえりなさいませれす。」
「おかえりなのれす。」
本編でどれがあったとかは覚えてないけど下にいくほど不自然さを感じる。
645名無しさんだよもん:2008/09/23(火) 19:29:41 ID:NXKP5prI0
本編終盤に「お、お帰りなさいませれすっっ」って台詞はある
その後走ってお出迎えして「は、は、お帰りマサイ「、ご主人様」と続く
646名無しさんだよもん:2008/09/23(火) 19:36:02 ID:NXKP5prI0
妙な「が入っちまった。「は、は、お帰りマサイ、ご主人様」だ
シルファは、普段は意外と普通にメイド口調っぽい、って印象がある
647名無しさんだよもん:2008/09/23(火) 23:16:12 ID:vCbgWiPn0
なるほど。
これからはマサイがスタンダードですね。
648名無しさんだよもん:2008/09/27(土) 07:05:46 ID:yXsALbj80
hosyu
649名無しさんだよもん:2008/09/29(月) 22:12:26 ID:EEhqGMKp0
てst
650名無しさんだよもん:2008/09/30(火) 22:44:14 ID:1lBmxGAh0
しょこうしのつ。

さぁ。そろそろ新しいSSを誰か。
651名無しさんだよもん:2008/09/30(火) 22:50:49 ID:X1fAKDo80
過疎った所で、AD発売後でこのスレのSSでの登場キャラとメインキャラを眺めてみた
漏れは多々あるだろうが、把握できた59本(連載はまとて1本と数えた)で大まかに
AD前と比較しないと何も言えないんだがお遊びね。メインは内数

シルファ・・・登場27本、メイン7本

シルファ強し。普通のメイドロボの人と、攻殻ネタ無題な人の投下数が大きいが
他のSSにもよく出てくるので、確かに書きやすいんでしょうな

このみ・・・登場24本、メイン3本
タマ姉・・・登場18本、メイン2本

このみはAD出てもやっぱりメインヒロイン。環も流石の存在感。
ただ、このみはメインを張らなくても結構中心人物になりがちなのに対し、
環はちょい役が多い気がする。主役は総理大臣ネタSSくらいかも

ミルファ・・・登場17本、メイン6本
イルファ・・・登場17本、メイン4本

ミルファは登場数こそこのタマに負けるがメイン数を考えればシルファに次ぐ活躍
イルファさんはシルミルのサポート役かと思いきや主役も結構ある

愛佳・・・登場14本、メイン2本
郁乃・・・登場12本、メイン5本
双子・・・登場12本、メイン1本

郁乃はシルミルに次いでメインが多くて、登場数の割に印象は強い
愛佳は郁乃の、双子はメイドロボのおヒキが多いのは自然というものか

続く
652名無しさんだよもん:2008/09/30(火) 22:51:29 ID:X1fAKDo80
続き

よっち・・・登場9本、メイン2本
優季・・・登場7本、メイン4本
ちゃる・・・登場7本、メイン0本

よっちは意外とメインが少ない気もする。草壁さんは出れば主役な感じ
ちゃる……誰か書いてあげようよ

由真・・・登場5本、メイン2本
ささら・・・登場4本、メイン1本
まーりゃん・・・登場4本、メイン0本

由真は「メイド日和」シリーズがあるが、脇は名前だけだったりして若干印象薄い
まーりゃんささらの生徒会コンビも意外に出番少ないねえ

花梨・・・登場3本、メイン1本
菜々子・・・登場2本、メイン1本
るーこ・・・登場2本、メイン0本
春夏・・・登場2本、メイン0本

花梨はともかくとして、るーこは少ないと思うなあ・・・
菜々子は「菜々子Strike!」でメインを張るも脇では滅多に出てこない感じ
春夏さんもこのみ絡みで出そうなもんだけど、このみ自身が脇役が多いからな

あとメイン多数なのが14本と多かった。ハーレム風味が強いせいだろうか。
とかいいつつ、作者の数が少ないから単に無題な人の短編のせいでもある罠w

あ、一人忘れてた。
雄二・・・登場18本、メイン7本

AD発売前後を問わずネタでもシリアスでも大活躍。たいがい不幸ダガナー。おわり
653名無しさんだよもん:2008/10/01(水) 00:06:49 ID:/b0asHQ90
分析&総括 乙

雄二はハッピーエンドにしてあげたいんだけどね〜
カップリングがむずい
ほぼ全てのキャラは貴明に気持ちが向いてるので(ギャルゲの主人公なんだから当たり前だけど)
それを捻じ曲げちゃう形になっちゃうからな
かといってオリジナルキャラは持ち出したくないし

後は愛佳が少し不憫かな
最近脇役多いし、雄二と同じで便利キャラ化してる気がする
愛佳で書いてあげたいけどネタがない…
654名無しさんだよもん:2008/10/01(水) 06:25:18 ID:e8tsEWgL0
雄二とToHeart2キャラを引っ付けようものならフルボッコされるだろうな
655名無しさんだよもん:2008/10/01(水) 07:10:20 ID:YsNmNzMx0
突然ちゃると雄二が婚約させられ、ちゃるが雄二の学園に転入。
互いに断るが両親の命令で、二学期の間は週一デートさせられる羽目になる
よっちは二人の婚約を破棄させようと画策するが、謎の生徒会長も暗躍して……

Leaf最新作「さくら色に染まる坂」乞うご期待
656名無しさんだよもん:2008/10/01(水) 08:07:26 ID:0lkRMePh0
59本もあるんだ。知らなかった。
数字を出されると、結構あるような感じがしますな。
無題といいつつ題名付けてるのは、微妙に続き物だからカウントに入れないという手も。
657名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 00:07:33 ID:w9XjNTlI0
無題シリーズって続き物だったのかw

>654
雄二は、貴明にフラれた傷心をなぐさめて、か、貴明好感度低め設定にすれば、
例えば前者でこのみ、後者で郁乃あたりならくっつけても違和感ないんじゃない?
658名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 00:19:37 ID:RlivATQP0
その二人は雄二の好みからは大きく外れていそうで、その時点で違和感が。
659名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 00:28:47 ID:Eq5RXJR10
雄二が公言してる好みの点からいうとタマ姉なんだが
流石に姉弟は恋愛対象にならないので次点でささらだろうな
好みだけで言うなら

でも雄二はかわいい女の子ならオールオッケーとかいいそうな気がするんだw
660名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 00:38:51 ID:RlivATQP0
そして、雄二の好みを優先した結果、緒方理奈とのクロスが書かれ、
かつてない怒号がこのスレを満たした。
661名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 09:12:04 ID:MY7FLH130
この話は○○END後なので××や△△は貴明とはただの顔見知りですと書いておけばOK
662名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 13:36:20 ID:d7/lRhtm0
それで本当にOKと思える人がどれだけいるかだな
663名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 15:34:25 ID:0OvNc5XHO
>>659
俺としては、雄二×環は全然OK
寧ろ、それでお願いしたいくらいだm(_ _)m
664名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 16:49:31 ID:dUf5XlGs0
俺としては、雄二×環は絶対NG
665名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 18:28:09 ID:LH2ckS+u0
OKそうな組合せ

雄二×はるみ
雄二×ちゃる
雄二×まー
雄二×黄色
雄二×貴明
雄二×ロク
雄二×ゲンジマル
666名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 18:34:54 ID:MY7FLH130
雄二×貴明のSS(ギャグとか友情とか?)って何故かほとんど無いよな?
(KANONやONEでは男同士のSSとか山ほどあるじゃん?)
667名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 21:55:40 ID:4zdTV4iZ0
とりあえず雄二×はるみは不可な。
ミルファは貴明の嫁でよし。
むしろ雄二×いくのんとかどうよ?
668名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 22:11:49 ID:lyDwUlEZ0
雄二×よっちで書いてみようかなぁと思ったりもする
好きだった某プロ野球選手が引退しそうなんで・・・

シルファの件がいなかったら、この二人でお見合いデートの可能性はあったよなぁ
669名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 22:24:12 ID:21h4grwx0
オナカイタイの人か・・・
670名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 22:24:45 ID:Lz8gIWdSO
書くのはいいけど投下時には注意書きよろしく
個人的にはどれもあまり見たくないんで
671名無しさんだよもん:2008/10/02(木) 23:09:07 ID:rHBawIx90
>666
雄二の初恋ネタSSはちょくちょくあるじゃん?
逆に言うとそのせいで普通の友情ものは書きにくいのかもしらん
>667
雄二×郁乃は、書庫に「ただ心だけが」って長編が。外のSSでもなんかあったかも
672名無しさんだよもん:2008/10/03(金) 01:56:18 ID:nMO9ezT/0
貴明がアクション起さなければ、はるみとよっちゃるは雄二にフラグ立つ可能性充分あったんじゃね?
>>665 雄二×ゲンジ丸って何よ?w ゲンジ丸って雄?雌?
673名無しさんだよもん:2008/10/03(金) 03:13:51 ID:LOkXpscP0
対タマ姉決戦兵器として考えて雄二×ゲンジ丸はありだろ、雄二的にはw
674名無しさんだよもん:2008/10/03(金) 06:11:41 ID:+Epugi/y0
雄二×よっちなんて絶対に許さないよ
675名無しさんだよもん:2008/10/03(金) 06:21:58 ID:fXYcRJlC0
ssスレが…賑わってる……だと…?
676名無しさんだよもん:2008/10/03(金) 06:46:09 ID:AeAQWu+F0
俺的には雄二ならちゃるの方がフラグも属性の接点もあるのでくっつけ易そうだが
雄二×よっちにも期待したいので>668を励ましておこう。是非書いてみ

あとはささらかなあ。父親と貴明の次に付き合いが深い男だろし
雄二は比較的積極的で行動派なので受けタイプが合いそう……やっぱ雄×貴かw
677名無しさんだよもん:2008/10/03(金) 09:04:51 ID:0Ezzdh8kO
さすがにガチやおいは書けんがやww
678名無しさんだよもん:2008/10/03(金) 13:30:59 ID:sG+i2DTPO
雄二×貴子以外は認めないのれす
679名無しさんだよもん:2008/10/03(金) 17:34:13 ID:54izX+W30
貴子と聞くと貴明の女バージョンではなくツンデレラの方を思い出してしまう
名前変えてくれww
680名無しさんだよもん:2008/10/03(金) 17:48:49 ID:54izX+W30
>>659
雄二の好みは緒方理奈やらナイスバディのお姉さまだろうが
正反対のさんちゃんるりちゃんも狙ったからな空気扱いされたが・・・
てか雄二は積極的に行動はするがMのイメージが何故か有る
まあ雄二は軽率に扱われるから仕方ないんだろうが

はるみはAD設定だと別に雄二じゃなくても、
最初に優しくしてくれた人とフラグたちそうだから闇歴史
681名無しさんだよもん:2008/10/03(金) 17:51:51 ID:+Epugi/y0
雄二は可愛い子ならだれでもいいんだろう
682名無しさんだよもん:2008/10/03(金) 22:01:19 ID:EsW2fr3b0
>>679
姫百合ファミリーにモテモテの貴明をやっかんだ雄二が昔会った女の子(女装貴明)との再会を切望する
それを聞いた珊瑚がHMX-17の予備パーツででっち上げたボディを
リモートコントロール(貴明をベッドに縛り付けた状態でヘッドギア装着して脳波でバーチャルコントロール)
することで、雄二の夢を叶える事を思いつくのだが…

というネタを思いついた
展開は知らん
683名無しさんだよもん:2008/10/03(金) 22:14:52 ID:fXYcRJlC0
>>682
わかった。私が書こう。

試験に合格したらね。
684名無しさんだよもん:2008/10/03(金) 22:54:47 ID:EsW2fr3b0
>>683に期待

オレも書きかけの続き書かないとな
685名無しさんだよもん:2008/10/04(土) 08:03:59 ID:cJ9iSf7oO
書きかけ……?

続き……?

……なんだろう、頭が痛いw
686名無しさんだよもん:2008/10/04(土) 17:22:40 ID:bZvScij60
雄二×菜々子にゃんのSSを執筆中。
山本正之の「愛のロリータ」を聴きながら…

…あっ、駄目だ、つまってしまう…
687名無しさんだよもん:2008/10/04(土) 18:13:16 ID:PdE7tQKL0
雄二とメインキャラは駄目だっていってんだろ
荒れるから
688名無しさんだよもん:2008/10/04(土) 18:29:00 ID:4JHXdfjU0
貴明×まーりゃんはないのか?
シリアスどろどろで。修羅場でもいいんだ。
689名無しさんだよもん:2008/10/04(土) 18:32:40 ID:Mg+KmAkk0
必ずしも雄二との恋愛モノとは限らないから別にいいんじゃね?
別に絡む相手とのラブラブでなくてもいいからもっとメインの機会を増やしてやろうという流れと理解する。
690名無しさんだよもん:2008/10/04(土) 19:48:35 ID:p8o4boe40
まぁ、あんまり主張が激しいと荒れるだろうな
程々にな
691名無しさんだよもん:2008/10/05(日) 09:49:50 ID:uCZsxQ9j0
姫百合姉妹END後に雄二が貴明に
珊瑚ちゃんに俺(雄二)専用メイドロボを作ってもらうように頼んでくれないか?
と頼んできたのだが・・・

(中略)

ラストはタマ姉のアイアンクロー


ここまで雄二SSのネタの原案考えた!(注 自分は文章力がないため執筆できません)
692名無しさんだよもん:2008/10/05(日) 10:11:49 ID:AiAQdSNz0
文章力なんて必要ないんだぜ。
必要なのは最初のちょっとの恥ずかしさを捨てることなんだぜ。
693名無しさんだよもん:2008/10/06(月) 01:23:00 ID:eHIKvWNn0
 
よっち×メイドロボ3姉妹ネタの第二話です。
投下します。
 
 こんにちは、小牧愛佳です。

 今、クラスメートの河野貴明くんの家の前に来ています。
 ここ数日間に、河野君の家で起きていた出来事は、関係者達の間で『炎の七日間』と語り草になっているんですが、
当の河野君の口からは、黙して語られる事はありません。
 本人、とってもやつれて、見る影もないんですけど、何やら幸せそうです・・・・

 ここで、河野さんと親しい人達から、お話を伺ってみましょう。
 
 「あ・・・ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

 『おれは貴明がよっちとはるみちゃんと部屋に入ったと思ってたら
 いつのまにかシルファちゃんとイルファさんと部屋から出てきた』

 な・・・ 何を言ってるのか わからねーと思うが
 おれも何が起きたのかわからなかった・・・
 頭がどうにかなりそうだった・・・

 おっぱいフェチだとかラブモンスターだとか
 そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・」

 「よっちとメイドロボさんズとは、仲良しでありますよ?

 別に喧嘩とかしてないのであります。いつもみんな夜遅くまで楽しそうでありますよ。
 お母さんも、タカくんの泉は無尽蔵なんじゃないかって、感心してるのであります。
 ・・・何が無尽蔵なのか、私にはよくわかんないけど。」

 「さすが、よっち、胸の谷間で歴史を作る女・・・
 こうして、歴史は夜作られる・・・。」


 ・・・・それでは、この辺で。小牧愛佳がお送りしました。
 
 ――― そして、再び、数日前に戻って。

 「大丈夫っすか、先輩?」
 そう言って吉岡チエは青ざめた河野貴明の顔を傍らから覗き込む。
 「だ、大丈夫だよ。多分、店の中が暑かったから、外に出て冷えちゃっただけだと思う。」
 そう言いながら、貴明の歯は寒気を感じてカチカチと鳴っていた。
 何だろう、この悪寒は・・・・
 
 河野家の玄関前に辿り着いた二人。
 「それじゃあ、どうぞ、よっちゃん・・・・いや、チエ。」
 「うっ・・・・なんか、ドキドキするっすね・・・・それじゃ、おじゃましまーす。」
 ドアノブを握りながら、もう一方の手を差し出してチエを促す貴明。 
 
 「あ、おかえりなさいま・・・・ぴぎゃっ!?」

 「ただいま〜。・・・・シルファちゃん・・・・あれっ、シルファちゃん、いないの?」
 玄関内にチエを招き寄せてから、部屋の中を眺めたが、いつもの金髪お下げのメイドロボ少女の姿が見えない。
 一瞬、それらしい声と姿が見えたような気もしたが、貴明はチエの方を向いていたので部屋の中をよく見ていなかった。
698名無しさんだよもん:2008/10/06(月) 01:31:53 ID:WUyMpgJt0
支援 待ってました!
 
 「・・・・センパイ、シルファちゃんって、誰っすか?」
 チエが貴明に怪訝な顔で尋ねる。
 「うん、このみの知り合いの姉妹から預かってる、メイドロボの子なんだけど・・・・前に話さなかった?」
 努めて涼しい顔で話す貴明だが、バツの悪さが僅かに表情に覗く。
 「う〜ん、そういえば、そんな話、聞いたような・・・・このみが話してたんだっけ?」
 手を顎に当てて思い出そうとするチエ。
 「ひょっとして、その子の事があるから、やたらとメイドロボの話に拘ってたんすね。やっぱりメイドロボフェチなんすか?」
 「はは、ははは・・・・」
 苦笑しながら頭を掻く貴明。
 猜疑を含んだ目で貴明の様子を眺め回すチエ。
 「・・・・まさか、その子と、夜のレッスンなんかしてないっすよね?最近のロボッ娘って良く出来てるみたいすから」
 「そ、そんなことはしてないよ」
 焦ってのけぞりながらかぶりを振る貴明である。

 居間に入る二人。
 「玄関の鍵開いてたし、俺の部屋にでもいるのかな。チエ、ちょっとトイレ行ってくるから、ソファで待ってて」
 「うぃっす。」
 ストンとソファに腰掛けるチエ。
   
 貴明はトイレの前にやって来て、ドアのノブの、施錠の表示を見た。
 もしかして、シルファが入っていて、“きれいなお水”を排泄しているのかも知れないと思ったのだったが、誰もいないようだ。
 そこで、躊躇なくドアを開ける。

 「あ・・・・お、おかえりなさいませ、貴明さん。」
 ―― 誰か、居た。
 そこには、白いショーツを下ろして便座に腰掛けながら、呆気に取られた表情で貴明を低い位置から仰ぎ見る青髪の少女。
 無言でバタンとドアを閉じる貴明。だんだんと表情が紅潮していく。
 ―― って、イルファさん!?

 「あっ!貴明さん勝手に使ってすみません!すぐ出ますから。」
 用を足しているところを見られて真っ赤になりながら、イルファが言った。
 「いやっいいよ!ちょっと、イルファさん、しばらく入ってて!」
 貴明は努めて押し殺した声で言いながらドアを押さえる。
 
 「ぎゃあああぁぁぁ〜〜〜っっっ!!!」
 突如、居間の方から大きな悲鳴。

 「チエッ!どうしたのっ!?」
 早足で居間に向かった貴明。
701名無しさんだよもん:2008/10/06(月) 01:35:25 ID:Y4uSjxyv0
支援
 
 「ダンボールがっ!ダンボールがうごめいてるっすっ!!」
 チエの傍らに立ち、彼女の指差す方向を眺めると、壁際で、大きなダンボールがもぞもぞと横移動している。
 苦笑しながら溜息をつく貴明。
 「あぁ、シルファちゃんか・・・・大丈夫、怪しい人じゃないから。出ておいで。」
 
 その声がかかると、ダンボールはぴたりと動きを止め、スッと上に持ち上がった。
 その下から、メイドロボの衣装を着た、金髪のお下げ髪の少女が現れる。
 「・・・・シルファれす。」
 ダンボールを頭の上に掲げながら、俯き加減に名乗るロボット少女。
 「・・・・ああ、この子が、メイドロボの子っすね。びっくりしたっす。」
 安堵と感心を織り交ぜて苦笑しながら、チエが手を頭に当てる。
 「シルファちゃん、ええと、吉岡さん。俺の・・・・」
 「彼女っす。」
 えっへん、と手を腰に当てて、自慢の胸を突き出すチエ。

 チエの胸元をじぃーっと凝視していたシルファだが、やがて、呟くように言った。
 「・・・・おっぱいおばけ。」
 「・・・・へっ?」
 その言葉を聞いて、目が点になり、硬直するチエ。
 彼女の傍らで青くなる貴明。
  
 「おっぱいおばけが現れたから、思わずらんぼーるに籠ったのれす。おっぱいおばけは、おぽんちか痴女に決まってる
のれす。」
 “―― シルファちゃん、その発言は危険だぞ!タマ姉にでも聞かれたら ―― はるみちゃんは慣れてるだろうけど――”
 まさか環が居はしないかと、キョロキョロと周囲を見廻す貴明。
 「な・・・・何なのよっ、この子は!?」
 わなわなしだすチエ。
 「シ、シルファちゃんっ、とりあえず、チエにコーヒーでも出してあげてくれないかな!?」
 焦って、何とかその場を取り繕おうとする貴明であった。

 それから、貴明は急いでトイレの方へ向かう。
 「イルファさん、もういいよ、出てきて。」
 ドアが開いて、イルファが現れた。俯いてやや赤面している。 

 「・・・・イルファさん、イルファさんが来てるって事は、はるみちゃんも・・・・」
 イルファに囁く貴明。
 「はい、来てますよ。」
 「どこ?」
 「貴明さんのお部屋で待ってると思います。」
 ミルファがどんな様子で自分の部屋で過ごしているのか、思案する貴明。
 「と、とりあえず、イルファさん、ちょっとの間、バスルームにでも隠れててくれない?」
 「え、えぇ、貴明さんのお家ですから、従いますけど・・・・」
 
 ソファに掛けて、シルファが振舞ってきたコーヒーを口にしたチエ。
 「うげぇっ、苦いっす・・・・」
 あまりの苦さに顔を歪める。
 「エスプレッソれす。苦いものと相場が決まってるのれす。」
 「ド○ールのなんちゃってエスプレッソみたいっすね・・・・」
 カップを置いてから、シルファの方を見ると、その恨むような視線から、微かに敵意のようなものを感じ取ったチエ。
 ・・・・なんか、あまり歓迎されてないみたいっすけど・・・・

 ―― 階段を急ぎ足で駆け上がり、自分の部屋の扉の前にやって来た貴明。
 ドアノブに手をかけ、そーっと開きながら、部屋の中の様子を覗った。

 「あ、おかえりなさい、ダーリーン!」
 ・・・・“裸のマハ”よろしく、ベッドに全裸で横たわるのは桃髪の少女。
 貴明は無言のまま、ドアを閉じる。 

 「ちょっ、ちょっとお!何であたしの姿見るなり、すぐ扉閉めちゃうわけぇっ!?」
 ドアの向こうからミルファの声。
 「な、何で、全裸で俺のベッドに侍ってるわけかな?かなっ!?」
 「むふ〜ん、肌寒くなってきたってダーリン言ってたから、あたしの直肌でベッド暖めてたんだよ?もち、このまま夜のお勤め
でもいいけどぉ〜♪」
 「いや、いいからっ!お願いだから服着てっ!」
705名無しさんだよもん:2008/10/06(月) 01:48:41 ID:WUyMpgJt0
支援
706名無しさんだよもん:2008/10/06(月) 02:00:11 ID:RTcI38Nv0

  
 ―― 階段の方から、登ってくる人の気配。
 「こっちれす、ご主人様のお部屋は。」
 ―― シルファちゃん!何でこの状況でチエを俺の部屋に案内するかなっ?カナっ!?
 “・・・・ぷぷぷ、修羅場れす♪”
 手を口に当ててほくそ笑むシルファ。
 
 「あっセンパイっ!お部屋、お邪魔しちゃってもいいっすか?♪」
 貴明の姿を見つけ、にこやかに部屋に駆け寄ってくるチエ。
 「チッチエっ!ちょっと、ちょっとだけ待ってっ!」
 「ダーリン、どうしたの?」

 ガチャリとドアを開き、チエが目にしたものは ―――

 全裸でベッドに侍る少女の姿を見て、無表情で硬直したまま立ちすくむチエ。
 やがて、わなわなと震え出し、全裸少女を指差して叫ぶ。
 「・・・・あ、あなたはっ!自称センパイの彼女でペットのクラスメート、はるみさん・・・・っ!?」
 「あ、え〜と、吉岡チエさん、だったっけ?」
 あっけらからんと言うミルファ。
  
 「・・・・センパイっ!このコ、何で、全裸でセンパイの部屋にいるんすかっ!?センパイ、まさか・・・・」
 貴明を睨み付けながら訊ねるチエ。
 「・・・・チっ、チエっ!こ、これには訳が・・・・」
 口元を引きつらせながら、ダラダラと冷汗をたらして釈明をしようとする貴明。
 「むふ〜ん、これからダーリンとぉ、いいト・コ・ロ・・・♪」
 ミルファが火に油をそそぐ。
 「――― センパイ、酷いっすっ!酷過ぎるっすっ!!もう来ねぇヨォォッ!!ウワアァァァ〜〜〜ンッッッ!!!」
 駆け出すチエであった。 

 「待って下さい!」
 階段下から、チエに呼びかける女性の声。
 ピタと立ち止まるチエ。
 やがて、トントンとその声の主が階段を上がって来る。
 
 チエの前に立ったのは、シルファとお揃いの制服を着た少女。
 ペコリと頭を下げる。
 「私の妹達がご迷惑をお掛けして申し訳ありません。私は、メイドロボのHMX-17a、イルファです。」
 
 最初、呆気に取られていたチエだが、やがて貴明に向いて言った。
 「セッ、センパイッ!あたしに隠れて愛人囲ってた上に、メイドロボ2体とも暮らしてたんっすかっ!」
 「そ、そうじゃなくて・・・・」
 言葉に詰まる貴明の後に、イルファが続ける。
 「私は、貴明さんとマスター登録を結んでいる、妹二人の監督でこちらにお邪魔しています。貴明さんのお部屋にいる娘も、
私の妹のメイドロボ、ミルファです。」
 
 へッ?と、またしても呆気に取られるチエ。
 「・・・・てへっ♪、バレちゃった。」
 シーツで裸体を隠しながら、舌を出しながらミルファが部屋の中から現れた。
 「・・・・うっそぉ?あなたも、メイドロボだったんすか!?」
 チエは驚きを隠せない。
 
 「イルファさん・・・・」
 貴明の言わんとするところを察して、話すイルファ。
 「申し訳ありません貴明さん。でもこうしないと、もっとご迷惑がかかると思ったので・・・・。」
 そうして、貴明にペコリと頭を下げたイルファ。
 「おかえりなさいませ貴明さん。バタバタしちゃて、お帰りのお出迎えできなくてすみませんでした。」
710名無しさんだよもん:2008/10/06(月) 02:08:50 ID:WUyMpgJt0
支援 寝る
 
 貴明がふと傍らに向くと、チエが、上目づかいに貴明を睨んでいた。
 「あ、あははは、チエ、お、驚いた・・・・?」
 手を頭に当ててその場を誤魔化すように空笑いをする貴明。
 しかし、チエの視線は一層鋭くなる。
 「・・・・センパイ、おかしいっすよ。もう異常っす。ヘッキーが行き着くところまで行き着いて、メイドロボに囲われてないと
暮らせない体になっているんすね?」
 「へっ?」
 「どこの世界に、メイドロボを3人も所有してる高校生がいるっすかっ!どんなお大尽っすか、それはっ!!」
 「いっいやそれはその、俺の知らないところでご主人様登録されてた訳で、それに、イルファさんは2人の指導で来てる
だけだし・・・・」
 釈明しようとする貴明だが、もうチエは聞く耳を持たない。
 彼女は貴明の手をがっしと掴んだ。

 「出るっす、センパイッ!」
 「へっ?」
 キョトンとなる貴明。
 「こんな爛れた環境に暮らしていたら、センパイはどんどんダメ人間になっていくっすっ!あたしの家に来るっす!あたし
色に染めてやるっすよっ!」
 そう言って、貴明の手を引っ張った。
 「わわっ!ちょっと、チエッ!」
 「まぁ、そうおっしゃらずに、もう少しこちらにいらっしゃいませんか?」
 イルファがにこやかに、チエを呼び止める。
 
 「へっ?」
 一瞬、キョトンとなるチエ。
 「貴明さんの心を射止めた方でいらっしゃいますよね?貴明さんの大切なお客様ですから、歓迎いたしますので、どうか、
寛いでいらしては。」
 「ゆっくりしていってね!」
 「・・・・ご主人様が選んだ人なのらから、しょうがないのれす。か、歓待、するのれすよ・・・・」
 メイドロボ3姉妹の誘いに対し、チエは激しくかぶりを振る。
 「あーっいいのっ!あたしとセンパイは、これから二人だけの甘い世界に旅立つんっすからっ!!」
 それを聞いて、ミルファが言った。
 「・・・・むふ〜ん、これから、ダーリンと、いいことするんだぁ・・・・ねぇねぇ、あたしたちも、交ぜてくれない?」
 「えっ?」
 「えぇっ!?」
 チエと貴明、同時に驚いた声を上げる。
 「そうですよ吉岡さん。私達はせいぜい便利な小道具くらいに思って下されば。きっと楽しい夜になると思いますよ。ね、
シルファちゃん。」
 「ぴっ?シ、シルファもれすか!?」
 赤面するシルファ。
 「さ、それじゃ楽しくやろっ!さぁさぁダーリンもよっちゃんも入って入って♪」
 貴明とチエの手をとり、二人を貴明の部屋に引っ張り込むミルファ。
 「わわっ!ちょっとちょっと待って!」
 「な、何するんすかっ!ちょっと待つっすっ!!」
 
 河野家の長い夜が始まる・・・・。


 (つづく)
713名無しさんだよもん:2008/10/06(月) 02:16:57 ID:eHIKvWNn0
今回の投下はこれでおしまいです。
途中で投稿規制かかってしまいましたが。
ご支援ありがとうございました。
714名無しさんだよもん:2008/10/06(月) 02:36:31 ID:RTcI38Nv0
>>713
GJ!
5Pっすか…ゴクリ
715名無しさんだよもん:2008/10/06(月) 10:11:35 ID:nZBD0H2DO
5Pは死ねるがやww
とにかくハァハァしながら次回を期待。
716名無しさんだよもん:2008/10/07(火) 06:20:58 ID:LLqE8aow0
>713
乙乙。ここは素直にエロエロに期待
717名無しさんだよもん:2008/10/07(火) 07:55:54 ID:jURSPAEY0
最近作家が一人しかいなくなっちゃったね。
応援してますよ。
718名無しさんだよもん:2008/10/08(水) 18:05:19 ID:tIVzpYTR0
一人ってこたぁないだろうそりゃ失礼な話だよ
そろそろネタ的に厳しくなってきて投下間隔が開きやすくなってるのかも
719名無しさんだよもん:2008/10/08(水) 18:33:14 ID:ozhImc+90
次スレどうする?
えらく中途半端なんだけど。<今477KB
720名無しさんだよもん:2008/10/08(水) 19:10:22 ID:8rGVCzEy0
512kだっけ。
721名無しさんだよもん:2008/10/08(水) 21:24:29 ID:SIihorIL0
スレ立て目安までまだ23k以上あんじゃん
10レス〜15レスぐらいのSSならまだ書き込めるから、もう少し後で良いんじゃね?
722名無しさんだよもん:2008/10/08(水) 22:03:51 ID:SIihorIL0
あ、500kと勘違いしてた
480kか スマソ
723恋する女中器 (1/9):2008/10/10(金) 19:26:00 ID:KPL9kGZ50
 
 河野家のメイドロボ、HMX−17cシルファは、商店街の八百屋の店頭で、晩の食事に使う食材を物色しているところで
あった。
 人見知りのする彼女がこうした繁華街で買い物をするのは、ちょっとした冒険だった。いつもと違う店の袋に入った食材を
見て、マスターである貴明は、どんな風に褒めてくれるだろう・・・・そんな思いが、彼女にちょっとだけ勇気を与えていた。

 並べられた品をぐるりと見回し、迷ってから、彼女は野菜の一つに手を伸ばした・・・・すると、彼女の背後から、声が。
 「やぁ、シルファちゃん。」
 「―― ぴっ!」 思わずすくみ上がって、後ろを向くと、立っていたのは、彼女のマスター、河野貴明。
 「シルファちゃん、偉いね。今日はこんなところまで来て、買い物してるんだ。」
 「・・・・か、からかわないれ欲しいのれす。シルファは優秀なめいろろぼれすから、もうろんな所れも、平気なのれす。」
 「そうなんだ。わかった。じゃあ、俺はうちでゆっくり帰りを待ってるよ。」 そう言って、貴明はシルファを置いて、店を後に
しようとする。
 「―― !ま、待つのれす!」 焦って貴明を呼び止めるシルファ。貴明はそんなシルファの様子に微苦笑を漏らす。

 ―― ツンツン。
 貴明の右袖を、掴んで引っ張る指がある。シルファのものと思って、貴明が振り向くと、そこに居たのは ――
 ―― シルファではなかった。女性。シルファとややデザインは違うが、似たような制服を身に着けている。
 彼女の耳の位置には、イヤーバイザーが。―― つまり、メイドロボだ。
 但し、シルファ達三姉妹や、最近見掛けるようになった、HM−16型のものとは、若干デザインが違う。ちょっと古い型式
の、メイドロボらしかった。
 「―― やっと、お会い、出来ました。」 鈴を転がすような声で、そのメイドロボの少女が言った。
 「・・・・?」 怪訝な顔になる貴明。
724恋する女中器 (2/9):2008/10/10(金) 19:26:55 ID:KPL9kGZ50
 
 「ずっと、是非もう一度お会いして、お礼が言いたかったんです。あの時は、ほんとうにありがとうございました。」
 そう言って、彼女はペコリとおじぎをする。
 以前会っているようだったが、貴明はすぐには思い出せない。それを察して、そのメイドロボは、八百屋の隣の、コロッケ
屋を指差した。
 「―― あっ!君は、いつぞや、そのコロッケ屋の前で、喋れなくなって困っていた―― !?」 貴明は、ポンと手を打った。
 「はい。思い出していただけましたか?」 にこりとする、そのメイドロボ。

 「私、論理の矛盾に行き当たって、突然声が出なくなり、途方に暮れてしまってたんです。親身になって助けていただいて、
本当に感謝しています。」 そう言って、二度、三度、頭を下げる。
 「いや、俺、困ってるコがいると、どうしても放っておけない性質でさ・・・・そんな、気を遣ってくれなくていいよ。」
 手を掲げながら貴明は焦って後退りする。
 「またお会いする事が出来たら、今度は、何かお礼のものをお渡し出来たらと思います。それでは、本当にありがとうござい
ました。」
 そうして、彼女は最後に深々とまたお辞儀をする。顔を上げた時、彼女の頬はやや朱に染まっていた・・・・ように、貴明には
見えた。
 買い物袋を抱えて、彼女は立ち去っていった。

 「―― ご主人様、今のコは、何れすか・・・・?」 あっ、と、傍らに立っていたシルファの方を向く貴明。すっかり彼女の存在
を忘れていた。
 「う、うん、春先にさ、ここで、喋れなくなって困ってたあのコの買い物の手助けを、した事があったんだよ。」
 「・・・・ふーん。」 上目づかいに、怪訝な様子で貴明をジロジロ見るシルファ。
 そうしてから、シルファはふいに貴明に背を向け、先程までの迷っていた様子とは打って変わって、無造作に野菜を掴んで
買い物カゴに次々と放り込む。
 さっさとレジに向かって会計を済ませてしまうと、貴明に目もくれずに、商店街の出口に向かって歩き出した。
 「―― あっとと、ちょっと、待ってよシルファちゃん。」 彼女の豹変に、あたふたする貴明。 「とっとと帰るれす―― !」
725恋する女中器 (3/9):2008/10/10(金) 19:27:49 ID:KPL9kGZ50
 
 ――――

 夕食を終え、貴明は、自分の部屋の椅子の背もたれに、ぐっと背をあずけていた。
 例によって、“またダーリンにこんな地味ぃ〜な食事作ってぇ〜っ!”と、ミルファがシルファに喰ってかかっていた様子を
思い起こす。
 今日は、ミルファの肩を持つわけではないが、実際、かなり投げやりな夕食ではあった。こういう食事を作るときは、大抵
シルファは臍を曲げている。
 ―― 何か、怒らせる事、したかな・・・・?思い出そうとする貴明。
 あるいは、ひょっとして、商店街で会った、あのメイドロボのコが原因?彼女に、嫉妬してるとか ―― ?
 ―― いやまさかな、と、独りかぶりを振る貴明。あのコは量産機らしい。恋愛感情なんか持ち得ない、彼女達に、シルファ
が嫉妬するなんて、あるんだろうか ―― ?
 ふむ・・・・。
 
 ――――

 そして、あくる日の放課後。
 「ヒッキーに苛められて、ダーリンかわいそう。今日は、あたしが腕によりをかけておいしいもん作ってあげるね!」
 学校の校門からミルファに強引に手をとられ、冷汗をかいて苦笑しつつそのまま商店街まで引っ張ってこられた貴明。
 辿り着いたのは、またいつぞやの八百屋。
 店頭まで来てようやく解放される。 「ほらっ、ダーリン選ぶの手伝って!何がいい?」 買い物カゴを掴むと、ミルファは
貴明を促しつつ、店内にズンズンと進んでいく。
 買い物客の背中を貴明が眺めていると、その1人が、くるりと振り返り、貴明と視線が合うと、ペコリと頭を下げた――
 ―― あっ、また、あのコだ―― 今度はすぐに気付いた。先日の、メイドロボの娘。
 彼女は貴明の目の前までとことこと歩み寄って来た。 「またお会い出来ました。」
726恋する女中器 (4/9):2008/10/10(金) 19:36:24 ID:KPL9kGZ50
 
 軽く会釈をして、貴明を見つめた彼女の瞳は、何か、熱に浮かされているように見える。何だろう、この感じは―― 。
 貴明は既視感のあるその視線が、何だったかを思い起こそうとする ―― そうだ、ミルファや、時にシルファやイルファが
見せるのと、似たような熱を帯びた感じ。
 「きっとまた会えると思って、お礼の品を、携えてました。あの・・・・これ、どうぞ。」
 彼女は、ごそごそと買い物鞄に手を突っ込んでまさぐると、中から、包みを取り出して、貴明に手渡した。何やら、高そうな
お菓子のものだった。
 「ええっ?そんな、お礼なんて・・・・」 慌てて、思わずかぶりを振る貴明。
 「受け取っていただけませんと、私は傷つきます。私は、三原則で、第一条と二条に抵触しない範囲で、自分を護るように
プログラムされています。どうか、お願いします。」
 そう言われると、受け取らざるを得ない。 「あ、ありがとう・・・・こんな事までしてもらえて。」 おずおずと礼を言う貴明。
 「いいえ、私の方こそ、受け取っていただけて、とても嬉しく思います。」
 そう述べてから、彼女の顔は、はっきりと判るくらいに、笑みを湛えつつ紅潮した。
 「きっと、また会えると信じてます。ありがとうございました!」 そうして、最後にまた大きくペコリとお辞儀をして、彼女は
貴明の前から立ち去っていった。貰った菓子の包みを持ったまま、呆然と立ち尽くす貴明。

 「・・・・ダーリン。」
 ハッとして、背後を向く。この間と同じように、今度はミルファの存在を、すっかり失念してしまっていた貴明。
 これまたシルファと同じように、ジト目で不快感をあからさまにしながら、貴明を見つめるミルファ。
 「もう、ダーリンのメイドロボフェチ!」 貴明を罵るミルファ。そして、やや間を置いてから ――  「・・・・あの子、ダーリンに、
恋してるよ。」 くだんのメイドロボ少女が去っていった方向を見つめながら、呟くように言った。
727恋する女中器 (5/9):2008/10/10(金) 19:37:27 ID:KPL9kGZ50
 「えっ!?」 それを聞いて、目を丸くし、キョトンとなる貴明。 「そんな、まさか・・・・そうだ、ご主人様に、お礼をしなさいと、
言われていたんだよ。うん、きっとそうだ。」 そう勝手に理由を決めつけ、うんうんと独りうなずく貴明。
 「あたし、わかるんだ。あたしとおんなじ感じがするもん。―― もう、どこまで恋愛フラグ立てれば気が済むのよっ!」
 そう一声叫んでから、ミルファは貴明の腿の肉を思いっきり摘む。 「うわぁ〜っ!痛い痛い痛いよミルファちゃんッ!」
 「―― んもうっ!ダーリンのへたりんぼへたりんぼへたりんぼ〜〜っ!!」
 
 ――――

 量産型のメイドロボでも、恋をするんだろうか ―― ?
 自室の机に向かい、パソコンのモニターを見つめながら、考え込む貴明。

 人間の反応に合わせて、計算された動作を返すというのはあるだろう。喜んだり、好意の表情を見せたりにしても、その
範囲を、大きく超える筈はない ―― と、聞いている。
 ―― それにしても、よく出来てるよな。コロッケ屋の前で、最初に問題の彼女を見掛けた時も、人間と区別がつかなかった
もんなぁ ―― 。
 DIA搭載のHMX−17ほどではないにせよ、多少は感情らしきものが備わってるんじゃなかろうかと思う。全てが計算ずく、
とは思えなかった。
 
 メイドロボの疑問は、珊瑚に聞いてしまうのが一番手っ取り早いのだろうが、またそこで、新たな恋愛フラグが立っただとか、
揶揄されるような材料を提供するのは嫌だったので、何とか自前で解決しようと図る貴明。
 思案した挙句、彼は、来栖川エレクトロニクスのサポートページに質問メールを飛ばすことにした。
 来栖川エレクトロニクスのWEBサイトに飛び、HMシリーズのサポートページまで行き着くと、その質問メールの入力フォーム
を立ち上げた。
728恋する女中器 (6/9):2008/10/10(金) 19:39:26 ID:KPL9kGZ50
 幾つかアンケート入力項目があり、その一つに、『現在所有しているメイドロボの形式は?』という質問がある。
 HM−12から16くらいまでの選択肢が並んでいたが、貴明は、“その他”の項目にチェックを付け、( )内に、“HMX−17”
と、手打ちする。

 何とも幼稚というか初歩的というか、気恥ずかしさの漂う質問ではあったが、貴明としては、大いに真剣である。
 往来で行き交うメイドロボ全てと、恋愛フラグが立つ可能性があるとしたら、これは難儀なことだ。
 ただでさえ、“特殊体質”と、云われている身ゆえ ――。
  
 ――――

 翌日、メーラーを立ち上げると、来栖川からの返信メールが届いていた。

 メールを開いてみる。
 『いつも弊社製品をご愛用いただきありがとうございます。お客様のご質問は、しかるべき関連部署にてご回答差し上げます
よう、転送しておりますので、いましばらくお待ち下さい。』

  ―― しかるべき関連部署って?そんな、専門的な質問だったかなぁ ――。腕を組んで、独り頭を傾げる貴明。

 その2日後、メーラーを立ち上げると、来栖川からの2通目のメールが着信していた。
 思わぬ差出人からだった ――。
  
 ――――

 前略 河野 貴明様
 
 いつもありがとうございます。
 現在販売されているHMシリーズに搭載されている人工知能は、基本的には、私が設計したものです。
 そこで、ご質問には、私がお答えいたします。
729恋する女中器 (7/9):2008/10/10(金) 19:43:10 ID:KPL9kGZ50
 
 結論から最初に言ってしまいますと、それは、“有り得”ます。
 人間とのコミュニケーションを円滑なものにし、主人とのよりよい関係を築くために、感情豊かな喜怒哀楽は、極めて重要な
ものです。ステレオタイプな反応しか示さないのでは、深く人間の家庭に溶け込んで行く為には、限界があります。
 “より人間らしく”。私達、HM開発課では、それをずっと、至上命題としてきました。
 勿論、親身に接してくれる人には、好意を覚えますし、邪険に扱われれば、悲しいと感じます。
 ただ、販売機は、三原則の縛りがあるので、不快感をあからさまにする事はありませんが。
 人間の男性に対し、女性のパーソナリティを持つメイドロボットが“強い好感”を抱く事があれば、それは、恋愛にごく近い
ものと云って差し支えはないものと考えます。能動的なものであれば、尚更のことです。
 しかも、現在のところ、販売機であっても、三原則という安全装置が組み込まれているとは言え、未だメイドロボは、実験
段階の域を出てはいないのです。まだあらゆるケースを検証した訳ではないので、それこそ、人間の女性から感じられる様
な、“本気の愛情”を、メイドロボから寄せられる可能性は、大いにあると私は考えています。

 また彼女達にとって、人間の好意を勝ち得るという事は、極めて重要です。それが、自分の存在理由を確かめる事になる
からです。
 ですから、困っていたり、何かを期待するような仕草を見せているメイドロボを見掛けた時は、どうか、親身に接してあげて
下さい。彼女達の世界は、それだけで、とても幸福なものになるでしょう。
 
 ところで。
 人間とほぼ変わりない感情を再現する技術については、外部からの開発協力を得て、ようやく目処が立ってきました。
 しかし、あまり人間臭すぎるのも、それはそれで、コミュニケーション上、様々な問題があることもわかってきました。
 あくまで販売機とした際の話ですが。
 それは、17型試験体の3人といつも接している貴方には、重々ご承知の事と思います。
730恋する女中器 (8/9):2008/10/10(金) 19:44:12 ID:KPL9kGZ50
 
 いつもミルファとシルファの我侭の面倒を見ていただき、ありがとうございます。
 これからも、彼女達を宜しくお願いします。                  草々  

 ☆☆☆☆☆☆☆☆

 来栖川電工中央研究所
 第7研究開発室 HM開発課
 主任  長瀬 源五郎

 ―― 何てこったい。これは、“長瀬のおっちゃん”じゃないか。貴明は目をむいた。
 まぁ考えて見れば、HMX−17のオーナーと答えたり、本名記載してしまったりしたのでは、“あの”河野貴明と知れて
しまうのは、むしろ当然だろう、と思う貴明。多分、長瀬氏は、珊瑚達から聞いていて、こちらの事はかなり知っているの
だろうと。
 それにつけても ――
 メールの意味するところを咀嚼する貴明。要するに、DIA搭載モデルでなくても、街中で出会う一般販売型のメイドロボ
とも、恋愛フラグが立つ可能性はゼロではない事について、開発者からもお墨付きがあったという事だ。
 自分の“特技”も考え合わせ、貴明は、背もたれに大きく寄りかかって天井を仰ぎ、思わず大きな溜息を漏らした。
 
 ――――

 そして、とある日の午後。
 商店街に向かって歩んでいる貴明。両脇をミルファとシルファが押さえていて、貴明の腕に、がっしとしがみ付いている。
 「ミ、ミルファちゃん、シルファちゃん、そろそろ、俺を、離してくれないかな・・・・?」 苦笑しながら懇願する貴明。
 「だーめっ!ダーリンに、悪い虫が寄ってこないように、護ってなくちゃ。」
 「ご主人様を野放しにするのは、危険極まりないのれす!」
731恋する女中器 (9/9):2008/10/10(金) 19:45:23 ID:KPL9kGZ50
 
 商店街に入ったところで、小柄な女性が貴明の方に振り向くと、ぱぁっと表情が遠目からも判るくらいに輝き、彼らの方に
小走りにやって来るのが目に映った。 ―― あ・・・・あのコだ・・・・。
 額を冷汗が垂れる。左右のシルミルを見ると、憮然とした表情で、警戒を強めてるのがわかる。まさか、避けて逃げる訳
にもいかないし・・・・長瀬氏のメールの一句が頭に浮かんだ。 “何かを期待するような仕草を見せているメイドロボを見掛けた
時は、どうか、親身に接してあげて下さい”―― 。

 「や、やぁ、また会ったね。」 顔の筋肉のひきつりを何とか押さえ、努めてにこやかに、貴明は彼女を迎えた。
 「はい。お会いできて嬉しいです、河野貴明様。」
 ギョッとなる貴明。「き、君、どうして俺の名前を?」 ―― そういえば、名乗った覚えがない。
 「―― 申し訳ありません。どうしても、貴明様の情報を知りたくて、サテライトシステムを使って調べさせていただきました。」
 ―― そんな事が出来るとは!そういえば、このコ、喋れなくなってた時も、データリンクシステムを使って、手話の情報とか、
ダウンロードしてたっけ―― メイドロボの機能も、便利過ぎるのは考えものだ、と思う貴明。
 「私達、他のご主人様に仕えているコ同士で、時折情報交換してるんです。そうしたら、貴明様は、とってもお優しくて素敵な
方だって、評判になっていたんです。是非、そのコ達も、貴明様にお会いしたいと言ってるんですが、紹介してもいいですか?」
 どんな情報源だよ、それは ―― まさか、イルファさんとかじゃないだろうな?
 貴明の脇で、互いに顔を見合わせる、ミルファとシルファ。 やがて、“ダメだこりゃ”と呆れ顔になり、ほぼ同時に溜息をついた。
 「―― もぉ、ダーリン、勝手にすれば?メイドロボ王国のハーレムでも何でも作ってればいいよ。」
 「―― 運命れす。責任とるのれす。」
 ―――あああっ!?そんな!?見捨てないでっ!!助けてぇ〜〜〜ッ!!

 (おしまい)
732名無しさんだよもん:2008/10/10(金) 19:50:17 ID:KPL9kGZ50
スレ埋めになればと思って投下してみました。
タイトルの“女中器”は、ハインラインの『文化女中器』から、いただいたものです。

メイドロボ+よっちの5PSSの続きは、次スレあたりでと思ってます。
それでは。
733名無しさんだよもん:2008/10/10(金) 19:59:26 ID:fq+pujQa0

フラグマスター
734名無しさんだよもん:2008/10/10(金) 22:15:34 ID:2DuBVOE40
『夏への扉』れすね?わかります。

それはさておき、すげー面白かった!
メイドロボハーレムも期待してる(マテww
735名無しさんだよもん:2008/10/10(金) 22:28:43 ID:lwWKdWmU0
ヘタレ力すげぇw
736名無しさんだよもん:2008/10/10(金) 23:05:25 ID:TIVdHR620

貴明にはメイドロボを惹きつけるフェロモンがあるのかもしんまい

480kも超えたし、スレ立てでもしてみるかい
737名無しさんだよもん:2008/10/10(金) 23:15:29 ID:TIVdHR620
くそう…誤爆した

ToHeart2 SS専用スレ 26
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1223647844/

こちらのスレ梅ヨロ
738名無しさんだよもん:2008/10/11(土) 02:02:15 ID:yt6m9eA3O
やっぱり読点の打ち方が好きになれないなぁ、と思った
読まなきゃいいだけなんだけどな
739名無しさんだよもん:2008/10/11(土) 06:30:00 ID:dtFJs1HZ0
そう…?と思ってじっくり読んでみたら確かにへんな位置にあるきがしないでもない。
文章読むときはじっくり文字を見ないで意味だけ掬い取るから気づかなかった。
普段小説とか読まないから文章を楽しめないんだろうなぁ…
740名無しさんだよもん:2008/10/11(土) 09:18:49 ID:i6eu9tTN0
へんな位置というか、読点が多すぎるんだろうな
切らなくて良いところでも読点入れてるから違和感がある
SSの内容が悪いって言ってるわけじゃないので、そこのところお間違いなく
SS自体についてはおもしろかった
741名無しさんだよもん:2008/10/11(土) 09:27:23 ID:zw+DLof10
読点のことが気になったときは、西村京太郎お勧め。
ほとんどの本屋にあるから、ちょこっと立ち読みするだけでいい。
742名無しさんだよもん:2008/10/11(土) 09:33:23 ID:qPTFMKjz0
そろそろメイドロボズもマンネリ気味かなと思ってたけど、意外なキャラを引っ張り出してきたね
コロッケ屋にいたメイドロボが登場するSSって他にもある?

>>737
新スレ立て乙
743名無しさんだよもん
>741
あの読点の多さは電車で向かいの人が読んでるのを覗いただけで気になったw
読点は多い方が意味は理解しやすくなるけど、頭の中で音読するリズムとの兼ね合いが難しいやね