1 :
名無しさんだよもん:
桜が舞う、暖かな季節。
新しい出会いや恋、そして友情に笑い、悲しみ。
すべてが始まり、終わるかもしれない季節。
季節といっしょに何かがやって来る、そんな気がする―――。
ToHeart2のSS専用スレです。
新人作家もどしどし募集中。
※SS投入は割り込み防止の為、出来るだけメモ帳等に書いてから一括投入。
※名前欄には作家名か作品名、もしくは通し番号、また投入が一旦終わるときは分かるように。
※書き込む前にはリロードを。
※割り込まれても泣かない。
※容量が480kを越えたあたりで次スレ立てを。
※一定のレス数を書き込むと投稿規制がかかるので、レス数の多いSSの投下に気づいた人は支援してあげて下さい。
※コテハン・作家及び作家の運営するサイトの叩きは禁止。見かけてもスルー。
前スレ
ToHeart2 SS専用スレ 23
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1203609690/ 関連サイト等は
>>2
>>1 スレ立て乙
まぁ容量的に追々次スレたてなきゃいけないしねww
乙〜
>1おつ
最近投下が多くて賑やかな限り
AD版壊れイルファさんSS書いてくれ
まず目を閉じるんだ。
そしておもむろにゲームの背景を想像するんだ。
そこに電柱があるだろう?
後はその電柱がきっとあなたに話しかけてくれるはずさ。
もしその会話をあなたがここに書き残してくれたら、
私も何か書き残そうと思うんだ。
前スレでAAが張られてたから、そのSS書いたんだ。
でもクリックしたら512k越えてたんだ。
ちょっと悲しかったから言ってみただけなんだ。
夕刻「今日は何しに来たんですか」問う先に、電信棒。
あわてたところ、想定外の様子で、そっと振り返る。
「私はただの電柱です。ずっとにあなたをここから見守っています。」
「そのネタはいいですから。シルファちゃんはよくやってくれてるよ。」
「はい。そのことについてはもう心配はしていません。」
姿を現し、微笑み「個人的な用件です」と云うイルフア。
「個人的?」「えぇ。最近珊瑚様のマンションにいらっしゃらないので、
きちゃった。」「トレンヂーですね。」「そんな哀れみの目で見ないでください。
ジョークです。あめーるぃかんじょぅく。」
どこがアメリカンなのか、貴明は知らず、されど話を進める。
「とりあえず、人の家の前でそんなに挙動不審さをアピールしてたら、
そのうち警察が来るので止めてください。」「大丈夫です。
来栖川の権力と技術力は警察になんら関与をゆるしません。」
あたかも自身の力を誇示するかのように胸を張る。
反論される内容をいぶかしみ、たずねようとした所。
「というか別に挙動不審さをアピールするつもりなどありません。
ただ貴明さんを思って電柱の影から貴明さんのおうちを見守りながら
はぁはぁしてただけなんです。だから貴明さんの心配するような、
警察沙汰にはそもそもならないのです。」
「そうなんだ。とりあえずこのSSは締めるね。」
でんしんぼうってどこの方言ですか?
シュールと呼ぶべきか、電波乙と言うべきか……
個人的には嫌いじゃない。
今検索してみたろころ、北から南までの地方で使うみたいだから、
方言周圏論にそって広まった言葉みたいなんだぜ。!
つまりどこでも使うみたいなんだぜ。!
私は普段電信柱っていうんだぜ。!
また電波って言われちゃったんだぜ!
今日買ってきたG'sマガジン5月号の付録トランプを見てふと思いついた。
「ねぇ、タマお姉ちゃん、タカくん、ユウくん、このトランプで遊ぼうよ」
「あら、このトランプのハートのAって私なのね。このみも居るわね」
「このみの友達も居るな」
「ウヒョッ、JOKERには春夏さんがっ。という事はこのトランプで
ババ抜きをすればコレがホントの・・・」
この後雄二の姿を見たものは勿論居ない。
このSSを書いた15の後ろに春夏さんがいて、その後どうなったかは、想像に任せるしかないね・・・
17 :
名無しさんだよもん:2008/03/31(月) 19:06:01 ID:ch+To4lqO
書庫さん更新乙。
おつ。だけどやっぱりフォーマットに限界があるね。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ご 注 意 ! !
これから投稿するSSは、AD菜々子ルート後のお話です。
菜々子ルートのネタバレが含まれておりますので、まだクリアしていない方は
11レス読み飛ばしてください。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
あたし、菜々子。ねんれーふしょーの女の子。
あたしには好きな人がいます。名前は河野貴明。あたしのお兄ちゃんです。
あ、でも、ホントのお兄ちゃんじゃないの。血はつながってないの。義理の兄妹なの。将来は結婚
だってできちゃうの。あうぅ〜☆
お兄ちゃんは、背が高くてカッコよくて、それに、とーーーっても優しいの! 菜々子がこけても、
『大丈夫?』って、優しく起こしてくれるの。
それに、お兄ちゃんは、その、えっと……な、菜々子のこと、い、一番特別な女の子だって言って
くれたの! あうぅ〜、幸せだも〜☆
でも、あたしとお兄ちゃんはまだ恋人同士じゃないの。ホントは菜々子、お兄ちゃんと恋人同士
になって、早く結婚したいんだけど、菜々子はまだちっちゃいから、ほーりつ的にダメみたい。
だから、菜々子がおっきくなるまで恋人はガマン。そう決めたの。
でも……
放課後。あたしはいつものように、校門の前でお兄ちゃんと待ち合わせです。
お兄ちゃん、早く来ないかなぁ。今日は何して遊ぼうかなぁ。あ、そうだ。またお夕飯を作って
あげようかなぁ。あ、でも、シルファお姉ちゃんのお仕事を取っちゃダメだよね。でも……、うーん、
えっと、お姉ちゃんを手伝うのは大丈夫かなぁ。菜々子だってあれからいっぱい練習したし……。
――あ! お兄ちゃんが来た!! ……え?
「た、タマ姉、ちょっと……」
「一緒に帰るくらいたまにはいいでしょ。ねぇ、このみ」
「えへ〜、そうであります」
お、お、お兄ちゃんのとなりに女の人が二人もいるぅ!! ど、どうしてぇ!?
……お、落ち着くも。れーせーになるも。びーくーるだも。
あ、思い出した。えっと、あの二人はお兄ちゃんの幼なじみで、おっきい方がタマお姉さんで、
ちっちゃい方がこのみさん、だったよね。
う、うう……、幼なじみなんだから、一緒にいるのだって不思議じゃないよね。お、幼なじみ、
なんだから。ちょ、ちょっと近づきすぎな気もするけど、お、幼なじみ、なんだから。
「あ、菜々子ちゃん」
お兄ちゃんがあたしに気付いてくれました。あたしは両手を振って、
「お兄ちゃー……はう!?」
お、お、お兄ちゃん、お兄ちゃんの両腕に、幼なじみさんたちがくっついたぁ!
「な!? ちょ、タマ姉、このみ!?」
お兄ちゃんも驚いてる。でも二人は平気な顔して、
「ダーメ。今日は私達と晩ご飯食べるんだから」
「えへ〜、そうであります」
「そ、そんな約束してないだろ! や、やめてよ二人とも、菜々子ちゃんがホラぁ!」
「あ、あうぅ〜」
な、泣きそうだも。だって、だってお兄ちゃん、二人にくっつかれて、顔を真っ赤にしてるん
だも! あれはきっと、おっぱいが腕に当たって、嬉しいからに違いないも!
「あらあら、ゴメンね菜々子ちゃん。最近タカ坊、私達のこと全然構ってくれないから、つい、ね。
あ、そうだ菜々子ちゃん。、もしよかったら菜々子ちゃんも一緒に晩ご飯食べない? お姉さんが
腕によりをかけて美味しいもの作ってあげるから。どう?」
「い、いらないも!! う、ううぅー!! お兄ちゃんのバカー!!」
「な、菜々子ちゃーん!! 待ってぇー!!」
「はぁ……」
ここは公園です。あたしは一人で、ブランコに座っています。
……どうして、逃げちゃったんだろ。お兄ちゃんが呼び止めてくれたのに。
おまけに、お兄ちゃんにバカなんて言っちゃって……、お兄ちゃんはちっとも悪くないのに。
お兄ちゃん、怒ってるかなぁ? 菜々子のこと、キライになっちゃったかなぁ?
「あううぅ〜……」
また目がうるうるしてきました。お兄ちゃんにきらわれたら、あたし、あたし……
「待てーぃ!」
「はう!?」
突然の大声にびっくりして顔を上げたら、ジャングルジムのてっぺんに誰かがいます。あれは――
「天然の少女に味方する女、スパイまーりゃ!!」
あれは、かみちゃまです! えっと、お兄ちゃんの学校の元生徒会長さんで、座敷わらしさん
だったり、まー法使いさんだったりする正体不明のお姉ちゃんです!
かみちゃまはジャングルジムのてっぺんで、「コッペパーンとジャム♪」とか歌いながら、何か
ポーズを決めています。お股を思いきり開いているのでパンツが丸見えなのですが、かみちゃまは
全然気にしてません。さすがかみちゃまです。
「とうっ!」
かみちゃまはジャングルジムから飛びおりると、あっと言う間にあたしのところにやってきて、
「どうした、なーりゃん。たかりゃんに性的なイタズラでもされたのかえ?」
「お、お兄ちゃんはエッチなことなんかしないも!」
「だよなー。あのフニャチン野郎、俺がパンツ脱いで迫ってもちっとも襲いかかってきやしねぇ。
あいつホントに男かよ? それとも三次元の女には興味がないってか?」
なんかとんでもないことを聞いてしまった気がしますが、今はそれどころじゃありません。
「ねぇかみちゃま、聞いてくれる?」
「おう、何でも言ってみたまへ」
あたしはかみちゃまに、さっきの出来事を話しました。
「んー、タマちゃんにこのみんか。確かになーりゃんにとっては強敵だにゃー。
幼なじみだし、片方は俺様も羨む巨乳だし、もう片方はなーりゃんと属性かぶってるし」
「あうぅ〜」
「特に幼なじみってのが厄介なんだよねぇ。いいかなーりゃん、幼なじみってのはなぁ、例え相手と
恋人同士じゃなくても、朝起こしに行ったり、ご飯を作ってあげたり、そして普段は当然のように
相手の隣にいても許される、そんなおいしすぎるステイタスなのだよ!
ああっ、いいなー幼なじみ。俺もたかりゃんやさーりゃんと幼なじみだったら、誰に気兼ねする
ことなくあーんなことやこーんなことしちゃったりするのになー」
かみちゃまはそんなの関係なくやりたいことやっちゃってるような気がします。
でも……幼なじみって、いいなぁ。あたしもお兄ちゃんの幼なじみだったらよかったのに。
「あうぅ〜」
「こりゃなーりゃん! メソメソしてる場合じゃないぞ! 泣いてるヒマがあったら考えるのだ!
あの二人からたかりゃんを奪い返す方法をな!」
「う、奪い返す……?」
「文化祭のようにまたバニーで……いや、二度目はインパクトに欠けるなぁ……」
かみちゃまはブツブツ呟きながらその辺をウロウロしています。そのまましばらく見守っていると、
「キ、キターーーーー!!」
「ひゃうっ!?」
かみちゃまが突然大声を上げてバンザイして、あたしはびっくりしてブランコから落ちて、しり
もちをついてしまいました。あうぅ〜、お尻が痛いよぉ〜。
「いよぉし! なーりゃん、この俺様が、なーりゃんを魔法使いにしてやる!」
「ま、魔法使い!?」
菜々子、魔法使いになれるの!? 魔法使いさんをさがしたことはあったけど、まさか菜々子が
魔法使いになれるだなんて!
「じゃ、じゃあ菜々子、ぱらりんりりかるな魔法で大人になれちゃったりとか!?」
「いや〜そっちの魔法使いじゃなくて、攻撃魔法バンバンぶっ放して人々から悪魔とか魔王とか
恐れられる方の魔法使いに近いけどなー。
とにかくなーりゃん。チサマは魔法少女リリカルななことなって、たかりゃんにとりつく悪い虫を
木っ端微塵にうち砕くのだ!」
「え、えええっ!? な、菜々子、そんな魔法使いイヤだよ〜!
やっぱり菜々子、魔法のステッキで大人になって、お兄ちゃんのコイビトに――」
「えーい、贅沢ぬかすなー! これだから最近のゆとり教育ってヤツは!
安心しろ! 大人にはなれないが、杖ならくれてやる! 明日まで待ってろ!」
かみちゃまはそう言い残して走っていきました。ううぅ、なんだか不安だよぉ……
そして次の日の放課後。ここは公園です。そして――
「な、菜々子ちゃん!?」
お兄ちゃんがおどろくのもムリはありません。だって菜々子、こんなカッコで……
「な、何なんですかまーりゃん先輩、菜々子ちゃんのその格好は?」
「うわぁ〜、なんかアニメみたい」
お兄ちゃんのそばにいるタマお姉さんもこのみさんもビックリしています。当然です。だって、
だってぇ〜……
「のぉーっほっほっほっほ! 魔法少女リリカルななこの勇姿に恐れ入ったか、タマちゃん?」
あたしのとなりでかみちゃまは高笑いです。ううぅ〜、こんなの全然恐れ入らないよぉ〜。
「全く、私達に急用があると言われたから仕方なく来てみれば、何なんですかこれは……?
今更こんな質問無意味かも知れませんが、一体何がしたいんですか、まーりゃん先輩は?」
「だーから言ってるだろ、魔法少女だって。
どーよ、どっから見ても魔法少女じゃねぇか。萌え要素フル装備じゃねぇかよ」
「頭には猫耳、服はやたらフリルだのリボンだのを付けた改造スクール水着で、脚はニーソックス、
しかも何ですかそのやたらゴツイ杖は!? コスプレがしたけりゃ先輩自身でやってください!」
あうぅ〜、お兄ちゃん、ぐたい的な説明しないでよぉ〜。よけい恥ずかしくなるも〜。
「なんでぇ、たかりゃんは素直じゃねーなー。ホントは萌え萌えのクセによー」
「萌えません!!」
はう! 確かに恥ずかしいカッコだけど、そう言い切られちゃうと、それはそれで悲しいも……
「……で、その涙目になってる魔法なんとか菜々子ちゃんを見せて、それでどうするんですか?」
「ふっ、よくぞ聞いてくれたな巨乳魔人タマちゃん」
「誰が巨乳魔人ですか……」
頭が痛そうなタマお姉さんに対して、かみちゃまは、
「なーりゃんが好き好き大好きなたかりゃんを横からかっ攫おうとしている泥棒猫二匹に、魔法少女
リリカルななこが天誅を下すのだよ!」
「ちょ、ちょっと、泥棒猫って、私は別にそんなつもりじゃ」
「こ、このみもかっ攫うなんてしないよ〜」
「だまらっしゃい! 二人ともなーりゃんの目の前で、たかりゃんの腕にその豊満な乳と、残念な乳
を押しつけたそうじゃないか! それは明らかなるなーりゃんへの挑発行為! ならばなーりゃん
とて一人の女、黙って見過ごすなと出来るものか! そうであろ、なーりゃん?」
「え? あ、う、うん!」
かみちゃまにそう言われ、あたしは杖をかざします。
「ね、ねぇ菜々子ちゃん。確かにアレはやり過ぎだったわ。ごめんなさい。
だから、その、ね。何をするつもりかは知らないけれど、もう許してもらえないかしら?
もう絶対、菜々子ちゃんの前ではタカ坊にくっついたりしないって、約束するから」
タマお姉さんはそう言って手を合わせます。……でも、
「それって、菜々子の見てないところではお兄ちゃんにくっつくって意味なの?」
「え?」
「菜々子のいないところで、そのおっきなおっぱいとざんねんなおっぱいで、お兄ちゃんをゆーわく
するつもりなんだぁっ!」
「え、違う、そう言う意味じゃなくて、ほ、ホラこのみからも何か――」
「ざ、残念なおっぱいって、菜々子ちゃんには言われたくないもんっ!」
このみさんがキレていますが、今の標的はタマお姉さんです。それに菜々子はこのみさんと違って
これからおっきくなるんだも。
あたしは杖の先をタマお姉さんの方に向け――
「りりかるまじかる……シュート!」
『GYO−NISO!』
わ、杖から声が出た。そして杖の先から、ポンポンと音を立てて何かが飛び出し、タマお姉さんの
身体にポコポコと当たります。
「きゃっ! え、何、これ?」
身体に当たって地面に落っこちたそれを拾い上げて、タマお姉さんは、
「これって……魚肉ソーセージ?」
「ふっふっふ。さあ今だなーりゃん、唱えよ、あの呪文を!」
「う、うん!」
かみちゃまに言われ、あたしは杖を天にかかげて、
「りりかるまじかる……、き、来たれ、不動と怠惰の象徴、巨大なる獣、ゲンジマル!」
『SUMMON GENJIMARU!』
やがて、どこからともなくドドドドって地ひびきと共に――
「ヲフ! ヲフ!」
やって来たのはおっきくて毛むくじゃらの犬さんです。すごい、ホントに来ちゃった。
「ゲ、ゲンジ丸!?」
このみさんがビックリしてます。あ、そう言えばかみちゃまが、ゲンジマルはこのみさんの飼い犬
だって言ってたっけ。
でも、ゲンジマルを見てもっとビックリしてる人がいます。タマお姉さんです。ううん、あれは
ビックリと言うより、怖がってる……?
「に……、に……」
ブルブルと震えながら後ずさるタマお姉さん。でもゲンジマルはそんなことお構いなしにタマ
お姉さんにまっすぐ走ってきます。そして、
「ワフーン!」
「に゛ャァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
飛びかかろうとした犬さんより早く、タマお姉さんはものすごいはやさで逃げ出して、あっという
間に木に登っていきました。
「ヲフ! ヲフ!」
「に゛ゃーッ! に゛ゃーッ! に゛ャァァァァァァァァァァァッ!!」
木の下まで追いかけてきたゲンジマルにおびえてるタマお姉さん。まるで猫さんみたい。
ゲンジマルはしばらくタマお姉さんの真下あたりをウロウロとしていましたが、タマお姉さんが
降りてこないからあきらめたようで、こっちに戻ってきてソーセージをもしゃもしゃ食べ始めました。
「な、なんで、ゲンジ丸がここに……?」
しっぽを振ってソーセージを食べるゲンジマルを不思議そうに見つめるお兄ちゃん。すると、
「ふっふっふ……のぉーっほっほっほ!
その犬ッコロの嗜好、それにタマちゃんの弱点も、とっくの昔にリサーチ済みだ!
この公園に来る前にこのみんの家に行って、犬ッコロをギョニソで釣ってこの近くまで連れて
きていたのだよ!」
「そ、そんな馬鹿な……タマ姉の犬嫌いは俺しか知らないはず――」
「大いなる”まー”の力の前には、どのような隠し事も暴かれてしまうのだっ!!」
すごいです、かみちゃま! ズルイくらいに何でもできちゃうんですね!
「ふふん、最初のギョニソは、言うなればお情けだ。好きなものが二つあれば、犬ッコロの注意は
散漫になるからな。逃げやすくもなろう。
さあタマちゃん! これに懲りたら、二度とたかりゃんをその巨乳で誘惑しないとなーりゃんに
誓うのだ! あと俺におっぱい揉ませろ」
「だ、誰がまーりゃん先輩の思い通りになんか……」
そう言い返すタマお姉さんですが、顔は真っ青でブルブルふるえて、木にしがみついたままです。
……あうぅ、なんか菜々子、とっても悪いことしちゃったかも。――え?
「ほほぅ、さすがはタマちゃん、この期に及んでもまだ抵抗するとはな。
でも、いいのかなぁ? もし従わないのなら、今度はギョニソ抜きで犬ッコロを召喚するぞ〜。
いくらタマちゃんの健脚でも、ギョニソという名のデコイなしで逃げ切れるかなぁ〜?
……ん、どした、なーりゃん?」
「そ、その……」
ソーセージを全部食べたゲンジマルが、なぜかあたしをじーっと見つめているのです。そして、
ゲンジマルはのそのそとあたしに近づいてきます。ううぅ、怖いよぉ〜!
「……あ、もしかしてゲンジ丸、さっきのソーセージがその杖から出たって分かってるのかな?」
ポンと手を叩くこのみさん。
「あー、そりゃ計算外。犬の嗅覚を甘く見てたにゃ〜」
「にゃ、にゃ〜じゃなくて、かみちゃま、なんとかしてぇ!」
「うーむ、ギョニソは全部マジカルスタッフに装填しちゃったしぃ、それ全弾撃ち尽くしちゃった
からなー。ぶっちゃけムリ」
「そ、そんなぁ〜!」
とにかく逃げなくちゃ! そう思ったあたしでしたが――
「はう!」
あう〜、またこけちゃった〜。
「ヲフ!」
「あうううっ!?」
こ、こけたあたしの上にゲンジマルが乗っかってきたぁ〜!! こ、怖いよぉ〜!!
「な、菜々子ちゃん!?」
「こ、こらゲンジ丸、どきなさーい!」
お兄ちゃんとこのみさんがゲンジマルをどけようとしてくれますが、ゲンジマルは全然動いて
くれません!
「ヲフ〜ン」
きゃううううっ! ゲ、ゲンジマルがあたしの顔をべろべろなめるぅ〜!?
「あう〜!? や、やめてぇ〜! つ、杖はこっちだよぉ〜!」
持ってた杖をポイと投げました。きっとこれでゲンジマルは杖のほうに――
「ヲフ、ヲフ、ハァハァ」
べろべろべろべろ。
ど、どうして菜々子をなめるのやめてくれないの〜!?
「つ、杖はあっちだよ〜! 菜々子ソーセージじゃないも〜! おいしくないも〜!」
も、もう自分じゃどうしようもないよぉ!
「た、助けてお兄ちゃん〜!」
「ま、待ってろ菜々子ちゃん! くそっ、こいつなんで菜々子ちゃんから離れないんだよ!?」
ゲンジマルの身体を引っ張るお兄ちゃんですが、ゲンジマルはびくともしません。
「もしかしてゲンジ丸、菜々子ちゃんが気に入ったのかなぁ?」
い、犬さんに好かれるのはイヤじゃないけど、とりあえずどかしてぇ〜!
「た、助けてかみちゃま〜!」
だけど、かみちゃまはなぜかニヤニヤしながら、
「うぉぅ、獣姦される少女の図。こりゃええのぉ〜、眼福眼福」
「か、かみちゃま〜! いやらしい目で見てないで助けてぇ〜!!」
「だ、ダメだ、人としてダメ過ぎる……」
「どれ、記念に一枚撮っておこう。はーいなーりゃん、も少し脚開いてー。ん〜ナイスですね〜」
「あううぅ〜っ!!」
おしまい。
どうもです。元河野家です。
一年以上のご無沙汰であります。
今回は菜々子ちゃんを主人公に単発ものを書いてみました。如何でしたでしょうか?
もしまたネタが思いついたら投稿しますので、そのときはよろしくです。
>30
GJ! ってかおひさ! そしていきなりテンション高っ! w
単発でも連載でも大歓迎っスからがしがし書くも〜!
俺は好きだよ
つか今更だけど
>>15につっこめよw
俺は大好きだぞこういうの
おっと春夏さんに呼ばれたようだ
なんの様だろう
>33
ちゃんと書庫さんにも収録されてるぜ?
というわけで遅くなったが更新乙です<書庫さん
河野家完結が去年の2月かぁ、月日が経つのは速いねぇ
>>30 うぉ!河野家の中の人だ!
あいかわらず読者を引き込ませるような雰囲気が出てました。
次回作も期待してます!
36 :
雄二:2008/04/05(土) 21:09:03 ID:BJMDD1LC0
「茶でも飲む?」
過疎化するスレに颯爽と登場。
ちょっときいてくれよ。
また貴明がさ。
いや、いいや、どうでもいいやそんなこと。
このまえ姉貴がDVDプレーヤーかってきてよ。
いまさらDVDかよって突っ込みたくはなるがまぁ、そこはおいといてだ、
いま俺のうちにはパソコンすらない。
だから雑誌とかについてるDVDを再生できないんだ。
実はVHSすらなかったりするから、
いままでそもそも家で映像を見ることが出来なかったんだ。
貴明のベットの下やらによく俺の映像媒体があるのはまぁ、そういうことだ。
結構むなしいんだぜ?
話を戻すが、やっと家が映像を再生することが出来る環境になったわけだ。
それがそもそもの敗因だった。
もっと安全な手段をとるべきだったんだ。
このみのうちに姉貴が遊びにいくとか言ってたから楽しんでたんだよ!
わるいかよ!なんでこのみつれて帰ってくるんだよ!
「で、いつ帰るんだ。雄二。」
そんな羞恥プレイされたい
38 :
雄二アフター:2008/04/05(土) 22:19:20 ID:ep11g8lb0
「で、いつ帰るんだ。雄二。」
貴明の奴、友達甲斐のない冷たい事を言いやがった。
いくら子供の頃からの親友で言いたいことが言い合える仲だからって、
もう少しあったかい言葉を掛けて慰めてくれるぐらいしても良いんじゃないのか?
「いや…早く帰った方が良いと思うぞ。」
はぁ?あの鬼の形相の姉貴の待ち構えてる家に帰れってのか?
おまえ頭おかしいんじゃないのか?
つかまった瞬間えげつない折檻をフルコースで食らわされるんだ。
その後で俺の貴重なコレクションを目の前で燃やされるんだぞ?
「いやね…そもそもこのみの家に遊びに行ったタマ姉がなんで家に戻ったと思う?」
そんなのいつもの姉貴の気まぐれじゃねぇの?
お前だってそれでいつも酷い目にあってるだろ?
「まあ、気まぐれってのは間違いじゃない。
さっき玄関先で偶然タマ姉とこのみに会ってさ。
どういうわけか二人が俺の家に泊まることに話がまとまったんだ。
それで、タマ姉はお泊りセットを取りに家に帰ったんだ。」
それは、つまり…
「タマ姉はうちに来るって事さ。ああ、それと、」
…なんだ?
「後ろは見ないほうが良いぞ。」
>>36 なんとなく続きが浮かんだのでつづけてみますた
雄二以上のものを既に見られている余裕のタカ坊
あとxratedとADとエクスタシーですね。私にはぜんぜん浮かびません。
42 :
反逆の・・・:2008/04/07(月) 02:49:21 ID:KQ4SIxpE0
ToHeart2の主人公、貴明はメイドロボのイルファから「へタレ力」なる能力を知らされた
特定の異性の心を奪う事に特化した絶対情愛の力
貴明の意思とは関係なく、彼にへタレを演じさせているToHeart2のルール(設定)を破壊する為、
皮肉にも彼は自らの「ヘタレ力」を武器とし、貴明は動き出す
イルファから説明を受けた翌日、貴明は朝から考えに耽っていた。
「ご主人様?」
『能力の性質上、女への接し方は今まで通りでいいだろう。
要所要所の言葉に気を使えば相手の心を奪う事も容易い筈だ。
誰かで試してみるか…、いや、問題がある。相手によっての効果の有無だ。
イルファの説明によると誰にでも聞く訳ではないらしい。下手は打てない…。』
「ご主人様!ご主人様〜!」
「ん?…うわっ!」
考えを巡らせていた貴明が顔を上げたところ、目の前にシルファの顔のどアップがひろがっていた。
「な、何かな?シルファちゃん?」
「………ご飯、冷めちゃうれす」
「あ、あはは、そうだね!じゃあ、いただきまーす!」
「……どうぞれす」
ジト目ながらも律儀に返事をするシルファ。貴明は食事を進めながらも思考を巡らせていた。
『下手は打てないが、能力を試す事は必然、となると誰で試すかだ…。
俺の変化に気付かず、能力の効果が見易い対象……。
とりあえず、現時点で俺と関わりのある女は17名。
その中で直ぐに能力の観測が可能なのは14名。
希望的観測による人数だが、何らかの変化が見られるはずだ。誰にするか……。』
43 :
反逆の・・・:2008/04/07(月) 02:49:59 ID:KQ4SIxpE0
「…………」
「……ん?」
考えに耽っていた貴明は視線を感た。見れば、シルファが先程と打って変わり何やらソワソワしている。
「どうしたの?」
「え!?あの!え、えっと…」
「シルファちゃん?」
「…どう、れすか?」
「え?」
「ご、ご飯のお味れす!」
「あ、ああ、おいしいよ。シルファちゃん料理上手なんだね」
「ぅぁ…メ、メイロロボとして当然なのれす」
ふわりと微笑む貴明の言葉に赤面しながら答えるシルファ。
『…なるほど、満更でもないのか。よし、コイツで―――』
「ありがとう、シルファちゃん」
「ぴ!ななにするれすかぁ…」
貴明は微笑を浮かべたままシルファの頭を優しく撫でた。
驚き、声を上げるシルファ、しかし振り払ったりせず、耳まで真っ赤にして貴明のされるがままになっている。
『ふむ……、注意深く観察すれば分かりやすい反応だ。
それに「自分には能力があるから相手より優位に立てる」
という考えを念頭に置いておくだけで、ここまで冷静で居られるとは……』
「さて、そろそろ行かなくちゃ、ご馳走様、シルファちゃん」
「ぁ…お、お粗末さまれす」
「行ってきます」
「行ってらっしゃいれす、ご主人様」
ご馳走様と同時に撫でていた手を引っ込める貴明、シルファは名残惜しそうにするも気を取り直して自らのご主人様を送り出した。
44 :
反逆の・・・:2008/04/07(月) 02:54:08 ID:KQ4SIxpE0
いつもと変わらない幼馴染4人での登校、このみが環に何やら一生懸命に話をしている。そこに雄二が茶々を入れる。
そして話が一区切りする度に貴明に同意を求める、このみと環。その為、貴明はその度に思考の中断を余儀なくされた。
『シルファで試してみたが、この能力はかなり曖昧な物のようだ。
だが逆に、相手に気付かれる可能性も低い筈だ。この力を使いこなす事が出来れば―――』
「タカくん!タカくん!」
「……ん?うおっ!」
「む〜!失礼だよぉ!」
「あ、ははは、ごめん、ごめん」
朝の二の舞になってしまった貴明。集中し過ぎてこのみの呼び掛けに気付かなかったのだ。貴明は内心舌打ちをした。
「どうしたの?タカ坊、今日は何だか上の空って感じよ?」
「何か悩み事?」
「え、いや!別に、何でもないよ?」
「はぁ…、何でもないって事ないでしょ?」
「そーだよ!タカくんの事だったら何だって分かっちゃうんだから」
腰に手を当て溜息をつく環、胸を張るこのみ、先程から黙っているがニヤケ面で成り行きを楽しんでいる雄二。そして貴明はかなり焦っていた。
『まずいな…、ここで下手に躱すと変に勘繰られる……かと言って安いでっち上げは通じない…。
特にこの二人は俺自身でも気付かない変化に嗅覚的に気付く可能性がある。……不確定な要素があるが―――』
「いやぁ、昨日色々あってさ、その事でちょっと考え事」
「昨日何かあったの?」
「うん、まぁね。そうだ!このみは春夏さんから聞いて知ってるんじゃないか?」
「ふぇ?え〜と、う〜んと…」
突然話を振られ焦って思い出そうとするこのみ。環の視線が貴明からこのみに移る。この間、貴明はさり気なく歩調を速めていた。
貴明が一歩前に出る形で歩いていたので、後の3人も無意識のうちに貴明の歩調に合わせて速くなっていた。
『よし、もう直ぐに坂の中腹だ、雄二も遅れず来ている。条件は揃った後はこのみ次第……』
「あ!もしかして、タカくんの家に来たって言うメイドさんの事?」
あれ?支援必要なのかな?ひとまず中の人ネタ期待。
46 :
反逆の・・・:2008/04/07(月) 04:13:52 ID:KQ4SIxpE0
『やはり、春夏さんに聞いていたか。いいぞこのみ、次は雄二…!』
「メイド?何でタカぼ「メイドさんだとおおおおお!!!!」」
「貴明!!貴様あああ!!!メイドさんが家に来たってどおおおいうことだああああ!!!!ああああん!!??」
先程まで面白がって静観していた雄二が環の言葉をも遮って叫び出し、貴明に掴み掛かりそのままガクガクと揺さ振っていた。
「雄二〜、あんたはちょっと黙ってなさい〜っ!」
「あだだだだだ!割れる割れる割れるうううううっ!!!!」
「フン!」
「かはっ……」
暴走した雄二を環がアイアンクローで止めた。倒れる雄二、そこへ――
「あ〜、貴明やぁ〜。る〜☆」
「さんちゃん!貴明なんかに近寄ったらあかん!」
「おはようございます。貴明さん」
珊瑚、瑠璃、イルファが現れた。普段から坂の中腹から一緒になる面々、イルファは送りに来ているので校門までだ。
『いいぞ、ここまで狙い通りだ。後はイルファにシルファの事を説明させればいい。俺の口から説明するより効率がいいし、
なによりシルファと同じメイドロボであるイルファの方が説得力もある』
「おはよう、珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん、イルファさん。ちょうど良かったよイルファさん、タマ姉達にシルファちゃんの事を説明して欲しいんだ」
「はぁ、構いませんが」
シルファは挨拶と共に自らの妹の説明を頼まれ、面食らいながらも環とこのみにシルファの事を説明をした。
『予想通りだ。普段の言動からもイルファはタマ姉相手には悪巫山戯の類はしないと踏んだが、正解だったな。
丁度いい、イルファでも試しておくか』
続き書いたら、またあげさせて下さい。m(_ _)m
47 :
名無しさんだよもん:2008/04/07(月) 08:23:57 ID:nS2LCwSnO
>>l50
>乙です。もはや貴明ではなくル〇ーシュですね。
>貴明の意思とは関係なく、彼にへタレを演じさせているToHeart2のルール(設定)
ワロタww
そういや中の人一緒か
貴明の中の人と言えばハクオロさんから資格を見出されたり国を継がないかとか言われたアレしか。
貴明の中の人
そういや今クールも主役やメインキャラが多いな。
ついでに微妙にヘタレてたり特殊能力保持してたりするが、無意識にフラグ立ててたりするキャラ多いな。
51 :
名無しさんだよもん:2008/04/08(火) 01:56:12 ID:FeVP3Ys5O
中の人さいこー(´∀`)
52 :
反逆の・・・:2008/04/08(火) 22:00:55 ID:ZWJnAhlj0
説明し終えた頃、既に校門の前に来ていた。環とこのみも一応納得したのかイルファに別れをつげ昇降口に入っていった。
昇降口で昼の約束をして各々教室に向かうが、貴明は、このみ、環、珊瑚、瑠璃が階段を上がるのを見とめ、直ぐに校門へと走った。
「イルファさん!」
「貴明さん?どうなされたんですか?」
今さっき別れたばかりの貴明が走って戻って来たので驚くイルファ。
「はぁはぁ、さっきは、ありがとう、イルファさん」
「え?」
息を切らせながら言う貴明、イルファは何のことか分からず首を傾げた。
「ほら、シルファちゃんの事」
「あ、いえいえ、何だかご迷惑を掛けてしまったみたいで」
「そんな事ないよ、あ、そろそろ行かないと」
「え、もしかして、それを言う為に戻ってきて下さったんですか?」
「うん、助かったよ、ありがとう」
そう言って貴明は照れながら控え目に微笑んだ。
「あん♪貴明さん、反則ですぅ〜、私の為に私のもとへ全力疾走だなんてぇ〜」
頬を染め悶えるイルファ。
『やはりな、普段の俺への発言から十分予測できる範囲の反応だ。しかし、効果の有無が分かりづらい。
――ん?フフ、どうやら今日はとことんツイているらしい』
「おお!イルファさん!!…と貴明、イルファさん!俺を待っていてくれたのかい??」
ワザとらしいオーバーリアクションでイルファに詰め寄る雄二。イルファは驚き固まってしまっている。
「おい、雄二もう行かないと時間ないぞ」
「しっしっ、おまえだけ勝手に行け」
「ったく、じゃあ、イルファさん、ほんとにありがとう」
「―――え?あ!た、貴明さぁあん!」
言い終わると同時に貴明は校舎へと走った。イルファは貴明に手を伸ばしそう叫んだ。
53 :
反逆の・・・:2008/04/08(火) 22:02:56 ID:ZWJnAhlj0
「ダーリンおはよぉ〜☆」
「うわっ!」
教室に着くとはるみの熱い抱擁が貴明を待っていた。入ったと同時に貴明に自らの胸を押し付け離れない。
この時貴明の思考は完全に停止していた。
「は、はるみちゃん!はなれて!」
「やぁ〜ん♪ダーリンいい匂い〜」
ミルファはそう言うと貴明の首筋に顔をつけ匂いを嗅いだ。赤面しうろたえる貴明。
「おい、河野夫妻、席につけ」
「あ、す、すいません…、ほら、はるみちゃん」
「ぶーぶー」
いつの間にか教壇に居た教師に注意され、貴明は耳まで赤くしミルファにも着席を促した。すかさずブーイングを入れるミルファ。
『あ、焦った。幾ら能力があると思い込んで精神的優位に立とうとしても、ああ来られちゃ意味がない。
しかし、いつまでも向こうにペースを握られている訳にも行かない。…とにかく、イルファ、ミルファ、シルファを抑えるにあたって
姫百合珊瑚、姫百合瑠璃の確保は必須だ。他の女を加えるとしても、珊瑚の「みんなで仲良く」というスタンスは良い潤滑油となるだろう。
姫百合家を抑える事で技術力と天才的頭脳が手に入る。人脈と発言力もほしい、これらは小牧愛佳、久寿川ささらを抑えれば解決できる。
しかしそれら全てを持つ女がいる、向坂環。――フフ、やはり彼女がラスボスのようだ……タマ姉を俺のモノにする。必ず…!』
HRが終わりざわつく教室の中、不敵に微笑む貴明だった。
この後、(姫百合家攻略)→(愛佳攻略、その為に郁乃と由真を利用、好感度を上げる)
→(ささら攻略、その為に文化祭の準備で各ヒロインの好感度をささらの前で上げる)
→(文化祭、帝國軍と生徒会同盟軍における戦いで、まーりゃんに捕まらず、雄二と貴明が対峙「コードギ○ス」の名シーン)
という流れで行こうと思ってましたが、ネタでここまで引っ張るのは見苦しいと思うので(既に見苦しいと思いますが)スレ汚しすみませんでした。
わっふるわっふる
乙。
前スレでもあったけど、作品本体とコメントはレスを分けた方がいいんじゃないかな
なーなー
葉鍵ssコンペスレが終わりそうなんだが
東鳩ネタでも怒られないみたいだし統合とかダメなのかな?
なんで統合しなきゃならないんだ?
向こうが終わるなら終わりでいいだろ。
それでも書く人はそれぞれで移動してくだけだろうし。
このスレで請け負う必要なんて無い。
っていうか、スレの趣旨が全然違うのになんで統合なんだ?
今ざっと見てきたけどコンペ続けたけりゃ誰かが進行役引き継いでスレ立て続けりゃ良いだけじゃん
結局だれも進行役を変わる気もないし、ろくに投稿する人もいないんでしょ?
だったらスレが消滅するのも仕方ないんでは?
>>56 お前は何を
言っているんだ
_____
/三三三三ニ\
/ニ三三三三三ニ丶
fミ/⌒\三三/ヽミ|
|ミ〉 〈ミ|
ハf __ __ |ヘ
`|| -=赱丶ィ<赱=-||
ヒ| ||丶 |ノ
丶 /ヽノ丶 |
/ ̄丶 r=ニ=- /丶
|\ ⌒ / |\
丶 `ー―" /
\___/
>>53 いや、むしろここじゃなくてもどこかで最後まで書いて欲しいな
まじめな話、最後まで読んでみたい
>>53 いや、結構面白かったですよ。
あんまり鬼畜になりすぎずに展開してくれるといいかも。ハーレム化は歓迎だけどw
ADのヘタレ力に少々うんざりしてたので、逆に新鮮だった。
本編に不満がある時ほど、それを解消するようなSSに惹かれるものだし。
62 :
無題t:2008/04/09(水) 22:03:55 ID:8kRRm0Wm0
読むと損した気分になって無性に腹が立つ文章。
--
「おはよう」
朝の挨拶は大切だ。
人間の交流を潤滑にするためにこれはとても強力なツールとなる。
ただの道具としてではなく、何らかの意味を含ませる人もいる。
意味を含まないものを礼節のための挨拶と認めない。そういう類の人のことだ。
否定するつもりはないが理解は出来ない。
どうでもいいか。
何秒経っても何分経っても俺の挨拶の返事は返ってこない。
何でこの部屋はこんなに暗いんだろう。
ついでに体が痛い。
正面にはドア。
簡易な鍵が付いているが、ノブを思い切って下ろせばその鍵は破壊され、外にでることができそうだ。
なんだ。今密室にいるのか。
貴明は起床して遠回りな思考をめぐらせた後、やっとそれに気付いた。
あける気にならない。
外にでなくちゃいけないのか。
めんどくさい。無理に外に出てどうするんだ。嫌だ。疲れた。
14日であれから一ヶ月か。もうやめようかな。
63 :
無題t:2008/04/09(水) 22:04:34 ID:8kRRm0Wm0
俺は一人暮らしだ。
なんで挨拶なんかしたんだ。
いや、学校から帰ってきたときは、ただいまといつも言っている。
じゃあ起きた時にも毎日、挨拶していたんじゃないかな。
そうだ。
言っていた。
確かに言っていた。
なんで疲れてるんだ。
なんで体が痛いんだ。
なんで外に出るのが嫌なんだ。
外に出るのが嫌なのは…そうだ。疲れるからだ。
なんで疲れるんだ。
挨拶。挨拶をしないといけないから疲れる。
だからか。そう思い込んでいるからこんなに疲れた気になっている。
そうに違いない。
64 :
無題t:2008/04/09(水) 22:05:24 ID:8kRRm0Wm0
あれ。一ヶ月って何のことだろう。
おかしい。何か引っ掛る。
思えば起きてから考えたことすべてに、何か違和感がある。
整理しろ。
何を間違えてるんだ。
頭がはっきりしてきた貴明は、起きてから一切体を動かしていないことに気が付いた。
少し体を持ち上げると同時に血が巡り、ぼんやりと今までの記憶が先ほどの思考を補正し始める。
誰もいないのに朝挨拶をするなんていうのはばかげている。
テレビからも、友達からも、そんな行動は聞いたことがない。
ただいまというモノとは別の感覚のはずだ。
なら疲れる理由にしていたのはなぜだ。
なぜ疲れている。
いや、そもそもなぜ一人暮らしのはずなのに挨拶をしたんだ。
する習慣があったのか。
疲れているコトと、微かに関連している気がする。
外に出ればわかるんじゃないか。
出てみようか…
貴明はノブに手を掛け、体重を乗せた。
鍵は壊れ、そして扉を開くと同時に、視界が光に包まれ、暗転し、
そしてまた徐々に明るくなるのを感じた。
体は疲れているが痛みは解消された。
なぜか視界が横転している。
65 :
無題t:2008/04/09(水) 22:08:27 ID:8kRRm0Wm0
おめでとー!
おめでと〜
おめでとうございます!
おめでとう。
おめでと。
お、おめでと!
おめでと!
おめでとうれす。
おめでとーさん。
おめでとうございます。
おっ。おっおめでとぅ〜うぅ〜
おめでとさん。
おめでと
おっおめでとっ!
おめでとぉーりゃー!
おめでとッス
おめでとう
--
おしまい。tはトイレのt
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ダーリンダーリンダーリンダーリンダーリン
タカリャンタカリャンタカリャンタカリャンタカリャンタカリャン
タカクンタカクンタカクンタカクンタカクンタカクンタカクンタカクン
どうも勢いが落ちてるな……。
俺も人の事は言えんが。
>>67 なんか寂しいなよな。
よし、普段は読み手だが、なんか書いてみるか。
……誰かネタを下さい。
んー、じゃあ『花粉症』とかどうだ?<ネタ
くしゃみする度に女の子のスカートがちらちらめくれちゃう話でいいな
『ケーキ』
『ドン○ホーテ』
『屋上ダイブ』
ごめん、携帯の変換で出てきた単語を並べただけなんだけども
ネタかあ…この季節ならやっぱ花見とかかなあ
個人的には大掃除の季節だけど
愛佳シナリオを愛佳視点で書いたのを見てみたいな
SSリンクスを探したら確かあったはずだぞ。
うまいかどうかは忘れたが。
「はぁっくしゅっ!」
「一昨日はきれいだったな。桜。」
「あぁ。それにしても散るのはやいな。もう枝が見えてる。」
「そうだな。でも去年、駅のホームにいるとき見たんだけど、
散った花びらが電車に巻き上げられてなんか幻想的だったな。」
「へー。じゃあ今年も見られるんじゃないか。」
「みたいであります!」
「私も見てみたいわ。」
「あー無理っぽいな。って言うか無理だった。」
「昨日駅の外まで見に行ってみたんだけどよ、もう掃除されてなくなってた。」
「あら、残念。」
「へくしっ!」
「って言うかどうしたんださっきから。風邪か?」
「いや、朝、熱測ってみても出てないし、のども体も痛くないから違うと思うんだけど、
なんかずっと目が痒くて、くしゃみがとまらないんだよ。」
「それ、花粉症じゃないの?」
「タカくん花粉症でありますか。」
「今までそんなん無かっただろ?」
「嘘だ…俺が…俺が花粉症だと…?
何かの間違いだ。ありえない。あるはずが無い。
あってはならない。なんだと?この俺が…花粉症になんて犯されるはずは無い。
花粉症に苦しみ続けて生きるなんて真っ平だ。
鼻をたらして満員電車で人にくっつけちゃったりしてまるで俺が悪いかのような視線を受け迫害される。
それだけではない。大切な試験や面接で鼻をかむことに意識をそがれ満足な成績を出すことも許されない。
俺だけがなぜ苦しまなければならない。なぜそんな理不尽を神は俺に与えようとするんだ。
くそっ!もう嫌だ、こんな世界いっそ滅んでしまえ。
俺を苦しめようとした罰だ。無関係な人間には悪いが俺は俺のために生きている。
俺の人生は俺にとって誰の人生よりも優先される。
俺は他人を犠牲にしても二次的な欲求の達成が可能ならばそれで満たされる。
三次的な欲求などどうでもいい。ゆけっ!るーこっぉ!!!」
「るー」
そして誰もいなくなった。
>>74 当時の評価は「短文秋田」「少女漫画みたいでうっとうしい」「書き手の反応うざい」と散々だった希ガス
>>74>>76 情報サンクス
内容はともかくエンディングまで書いてあったなら見てみたい
て事で、リンク漁ってきま
AD完全スルーした俺だがSS書いてもいいだろうか?
書いてもいいけど上みたいにスルーされるようになっても泣かないようにね。
あと、かくかく詐欺はあんまりやらないようにね。
宣言して反応もらってモチベーション得る人がそれを出来ないという環境になるから。
ここ新参だからよくわからんのだが書庫には春夏さんのえろ〜いSSってないの?
新参は免罪符にはならない。
全部目を通してみればいいだろ。
そんなことよりSSかこうぜ。!
>>78 書いてもかまわないけど、もしADヒロインを出す場合は
性格とか違うと反発食らうの必至だからその辺考慮して書いたほうがいいぞ。
ん〜〜、もやもやっとした何かはある。
あるんだがまだ形になってくれんのじゃ〜〜〜><!!
>>82
>75
「でもなんでタカくん花粉症になっちゃったんだろうね?」
「多分…‥いきなり両手に花どころじゃなくなったからじゃないかしら。」
杉の花の精がくるぞ・・・ゴクリ・・・
「わっはっは。呼んだかね。」
「誰だ貴様は。」
「妖精。とでもいっておこうか。」
「何のようだ。俺はファンシーな物語の主人公ではないぞ!」
「力は、ほしくないかね。かつてどんな主人公も持ち得なかった力。」
「なんだと?!」
「無ければ、死ぬぞ?…どうする。」
「力…それは本当に今の状況を打開するものなのか?」
「お前次第だ。」
「あ。もしもし。草壁さん?」
「はい。なんですか?」
「この前のノートのお礼が言いたくて。ごめんね。夜遅くに。」
「いいえ。大切なお友達ですから。」
「ありがとう。わからないとこがあったから助かったよ。」
「どういたしまして。」
「あー。それじゃ。また明日学校でね。」
「はい。おやすみなさい貴明さん。」
「おやすみー」
ガチャ
「はるみちゃん?」
「どうしたのー?こんな夜中に。」
「いや、なんか声が聞きたくなっちゃって。」
「もー。そういう冗談はもうちょっと配慮してやるように。」
「あはは。ごめんごめん。特に用件があったわけじゃないんだ。ごめんね。おやすみー」
「おやすみー学校でねー」
幻では…無かった…?ちょっと待て…こういうのはリスクがつき物ではないのか…?
全く理解できなかったんだけど元ネタとかあるのかな
>>75と
>>87の名前欄、
>>85>>86 説明の無いSSを書いといて説明するのもなんだからこんな感じでご勘弁を。
っていうかなんか、最近このスレに依存しすぎな気がしてきた…
書くペース落として、妄想が出てきても我慢してみる。荒らしって言われるの怖いし。
>>79 >かくかく詐欺
俺のことですね、わかります
過疎ってるな
前スレはなかなかの良作がポンポンでてきてたんだが
>>90 ナカーマハケーン
……だってなかなか形になってくれないんだよぅ、アフターADになったら。
ビフォーADではやたら湧いてきたのがウソのようだ(。>_<。。)
原作に縛られなくていい。
それが二次創作だと今でも思っている私です。
だからどうした。
それが二次創作だと思っていた時期が、今の私にもありました。
ネタは思いついてから出すまでに出し方をちゃんと考えないとだめですね。
なる程、分裂症か
98 :
花粉舞う季節:2008/04/16(水) 00:35:39 ID:0/N/A4nZO
「っくしゅ!……あぅ〜くしゃみが止まらないよぉ〜」
「どうした? 風邪か」
「ううん。花粉症みたい」
「許容量超えるとなるっていうアレか」
「ついにデビューしちゃったでありますよ〜」
何故胸を張る。
「っくしゅん!」
隣を歩く彼女は可愛らしいくしゃみをする。
しかしだ。そのまま鼻水を垂らすのは年頃の娘としてどうなんだ?
俺はポケットに入っていたハンカチでこのみの鼻を拭ってやる。
「そそ、そんな事までやってもらわなくても……自分で出来るよ〜」
「鼻水垂らしてマヌケな顔してたくせに」
「マヌケな顔なんてしてないもん!」
ほっぺたを膨らませてぶーたれるこのみ。
そんな姿すらも愛おしい。
いつからだったかな、このみをこういう目で見はじめたのは。
「いつまでたってもお前はチビ助だな」
「もうっ! 雄くんいじわるだよ!」
そう、あれも桜が舞う季節だったはずだ。
fin
しまった。前置き忘れましたorz
このみネタで特に当たり障りないと思います。
100 :
反逆の・・・:2008/04/16(水) 02:14:38 ID:xkHniLmY0
昼までの授業をそつなくこなし、いつも通り昼食を取る為に屋上へと向かった貴明。
今日は朝の約束した為、環、このみ、雄二に加え珊瑚と瑠璃も一緒だった。
「わぁ〜!瑠璃ちゃんのお弁当美味しそうであります!」
「いっちゃんと瑠璃ちゃんが二人で作ったんやぁ〜」
「美味しそうだね!ね?タカくん」
『フフ、このみ、今日程お前を愛しく思った事はないよ――』
「ああ、瑠璃ちゃんの料理もイルファさんの料理も凄く美味しいんだ」
貴明は胸を張り、得意げにそう言った。
「って、なーんでお前が得意げなんだよ?あれですか、自分の嫁の手料理自慢的なノリですか…ちくしょー!!」
「な、何言ってんだよ!雄二!」
「ぅ〜…………」
貴明の行動を勝手に分析し、その結果に勝手に怒りだす雄二。雄二のその主張に赤面し慌てる貴明。瑠璃は耳まで赤くし俯いて唸っている。
「ったく、瑠璃ちゃんに迷惑だろ」
「「「「「……はぁ〜…」」」」」
貴明の言葉に一斉に溜息が漏れた。環、このみ、雄二、珊瑚、そして赤面し俯いていた瑠璃までもが溜息をついていた。
「え?あれ?みんな?」
と、貴明はキョロキョロと見回した。
「駄目ねタカ坊は」
「タカくん…」
「貴明、お前…」
「鈍感やなぁ〜」
「…………」
肩をすくめる環、責めるように呟くこのみ、驚きすら見せる雄二、こちらも責めるように珊瑚、瑠璃は冷めた目で貴明を睨んでいた。
『雄二の反応は予想通りだった、普段は鬱陶しいだけだが役に立つ事もあるものだ。さて、下準備は出来た。後は――』
101 :
反逆の・・・:2008/04/16(水) 02:15:29 ID:xkHniLmY0
「…あ、そうだ!珊瑚ちゃんにお願いがあるんだ」
「ん?」
「さんちゃん!あかん!貴明えっちぃお願いするつもりや!」
「瑠璃ちゃんはヤキモチ焼き屋さんやなぁ〜☆」
「ちゃ、ちゃうもん!ちゃうもん!!」
力強く主張する瑠璃に、笑顔でそう言う珊瑚、さらにそれを赤面しつつ否定する瑠璃。
「え、えっとさ、家のパソコンの調子が悪くてちょっと見て欲しいんだけど…」
「ええよ♪」
「ありがとう!じゃあ帰りに寄って貰っていいかな?」
「うん!」
「あかん!さんちゃん!貴明にえっちぃことされるで!」
「ええよぉ〜☆瑠璃ちゃんも一緒にしよ〜」
「なっ―――」
珊瑚の提案に固まる瑠璃、見れば環、このみ、そして雄二までもが固まってしまっている。
「珊瑚様!イルファも御一緒したいですぅ!」
「ええよ〜、みんなでラブラブやぁ〜☆なぁ?貴明〜?」
「へ、変な事はしないけど、瑠璃ちゃんやイルファさんも一緒に来てくれるものだと思って言ってたんだけど…」
耳まで赤くしながら答える貴明。環、このみ、雄二は今だ呆けたままだった。
「ああん!3人同時になんて…貴明さん大胆ですぅ!」
「ラブラブやぁ〜♪」
「せ、せえへんもん!」
しなを作るイルファ、両手を挙げて言う珊瑚、全力で否定する瑠璃、
すると今まで固まっていた面々が――
「そうよねぇ、みんなで、ラブラブよねぇ〜」
「タカくん……」
「貴明!てめぇえええ!!!」
102 :
反逆の・・・:2008/04/16(水) 02:16:03 ID:xkHniLmY0
わざとらしく頷きながら言う環、上目遣いで見つめるこのみ、怒る雄二。
『このままだと、タマ姉やこのみまで家に来る事になるだろう。このタイミングはまずい、どうするか……』
「貴明いいいいっ!!」
唸りを上げ貴明に飛び掛る雄二。
「雄二〜?あんたは、黙ってなさい!」
「あだだだだだ!割れる割れる割れっ……」
環のアイアンクローを受け、雄二は絶叫し突然事切れた。
『クッ――雄二の奴、時間稼ぎにもならない…!』
「あ、ああ、えっと…、タマ姉?あのさ?」
「なぁに?タカ坊?」
状況を打破する案が見当たらずパニックに陥る貴明、そんな貴明を見て環は不振そうに目を細めた。
『慎重さに欠けていた、タマ姉やこのみの反応を失念していた。後の為にもタマ姉を蔑ろには出来ない……どうする…!』
貴明はパクパクと口を開き言葉を探すように視線を宙に彷徨わせている。
「タカ坊、ひょっとして…、お姉ちゃんが来ると何か不都合でもあるのかしら…?」
と、無駄に透き通った、しかし迫力ある声色で環が言った。
「め、滅相も無い!あ、あは、あははは」
貴明は冷や汗を垂らし、情けない笑顔でそう言った。
「ふ〜ん、まぁ、いいわ、お昼も終わっちゃいそうだし、さっさと食べちゃいましょ」
他の面々はもう殆ど食べ終えていた。貴明は昼食を取りつつ思考をフル回転させていた。
『まいった…、反省している時間もない。何とか今回はタマ姉とこのみに退いてもらわなければ、とにかく今は時間を稼がなければ……」
昼休みも後十分となり、各々教室に戻ろうと階段を下りる。
「タマ姉、ちょっといいかな?放課後に話があるんだ」
貴明は階段の途中、環の背後に回り耳元でそう囁いた。
「ぁ――、な、なによ…っ」
ビクリと体を震わせる環。
103 :
反逆の・・・:2008/04/16(水) 02:16:37 ID:xkHniLmY0
「うん、放課後にね、今日の事で話があるんだ。いいかな?」
「ええ、わかったわ。タマお姉ちゃんが相談に乗ってあげる」
弱気な笑みを浮かべ、窺うように環の瞳を覗き込む貴明。環は微かに頬を赤く染めながら承諾した。
「ダーリ〜ン☆どこ行ってたのぉ?」
「うわっ!」
教室に戻ると貴明はミルファの熱い抱擁を受けた、押し付けられたミルファの胸のやわらかい感触に思考が真っ白になってしまった貴明。
「わ!ちょ、はなれて!はるみちゃん!」
「だぁめぇ〜♪ダーリンがいなくて寂しかったんだからぁ〜」
そう言い、全身で貴明に絡みつくミルファ。
「あー、オホン!河野夫妻?授業を始めたいのだが?」
「あ、す、すみません!ほら、はるみちゃんも…」
「む〜っ」
貴明との抱擁を邪魔され剥れるミルファ、貴明はまた朝の二の舞になってしまった。
『…まいった。ミルファも手に入れなければならない以上、何か対策をとらなければ…、いっそ今日ミルファもまとめて……、
いや、この段階での希望的観測は危険だ。それに今はタマ姉とこのみの方が先だ。……やはり、下手に嘘は付けない。
「協力する」と言われればそれまでだが、他に道も無い以上賭けるしかない』
六時間目までの授業をこなし放課後になった。 貴明は環のいる教室へと走った。
『珊瑚や瑠璃と会う前に話を付けなければ…』
「タマ姉、ごめん、待たせちゃって」
「大丈夫よ、で?話って?」
貴明が着くと、環が教室の前にいた。
104 :
反逆の・・・:2008/04/16(水) 02:22:52 ID:xkHniLmY0
友人から「半端なまま保管庫行きになる」と言われ、(姫百合家攻略)まで書かせて頂こうと思います。
もう少しなので、今しばらくのスレ汚しご勘弁くださいm(_ _)m
>>104 乙です!自分もwktkしてますw
繋ぎにすらならなかった自分涙目www
むしろ全員攻略までやってくれないか!
自分も楽しみにしている。が、元ネタを知らない人は楽しめるんだろうか
最近は他の投下もないからいいが、長くなるようならどっかのろだに上げ
た方がいいかも
ここでいいじゃん
読みたくないなら自動あぼーんすればいいだけの話だろ
ただでさえ過疎化しているのに、書き手を追い出してどうすんだ
元ネタ知らない俺も楽しめてるし、杞憂する程の事でもない気がする。
というか、最近少ないって言っても適当に出てるんじゃないの?
多いときってどんな頻度で出てたのかしら。
元ネタがあったのか
そんなの気にせずに楽しみにしている
おもんないわ
元ネタがあるんなら、後書きででも元ネタを明示してくれると嬉しいかも
名前にかいてあるじゃん。>元ネタ
116 :
反逆の・・・:2008/04/18(金) 00:40:21 ID:UJIuSkX60
「うん、今日の事なんだけど、家にシルファちゃんがいるのは知ってるよね?」
「ええ、朝、イルファから聞いたわ」
「実は―――」
貴明は、シルファが珊瑚を怖がっている事、人見知りが激しい事を説明した。
「…なるほどね、タカ坊はそれを何とかしたいわけね」
「うん、だから…今日はちょっと…」
「そうね、私とこのみは遠慮した方が良さそうね」
「え!?」
あっさりと退いた環に驚く貴明。
「何よ?その反応?」
ジト目で見る貴明を見る環。
「いや、そんなにあっさりと…」
「まったく…、シルファちゃんは人見知りなんでしょ?珊瑚ちゃんだけでも大変なのに初対面の私達までいたら収拾つかないでしょう」
「う、うん」
「なぁに?私がそこまで気を回せない人間だと思ったの?」
「そ、そんなことないです!あ、あはは」
環の言葉に慌ててそう言う貴明。
「さ、このみには私から話しておくから行ってらっしゃい」
そう言うと環はふわりと優しく微笑んだ。
「ありがとう!この埋め合わせは今度!」
貴明は校門へと走り出した。問題はクリアしたが貴明は内心苛立っていた。
『何故、あの時冷静に判断できなかった。タマ姉ならそこまで気を回すのは当然だ。――我ながら脆いな…、一度崩れると立て直すのは難しい。
しかし、これで条件はクリアされた。』
校門へと走りながら、一瞬暗い笑みを浮かべた貴明だった。校門には既に珊瑚、瑠璃、イルファが貴明を待っていた。
貴明の自宅へと向かう前に食材の買出しに行く事になった。
117 :
反逆の・・・:2008/04/18(金) 00:40:58 ID:UJIuSkX60
買出しを終え貴明の自宅へと向かう途中、イルファが貴明に耳打ちした。
「貴明さん、珊瑚様から聞いたのですが…、もしかして今日はシルファの事ですか?」
「あはは…、やっぱり分かっちゃうよね」
貴明は頬をポリポリと掻き弱気な笑みを見せる。
「はい、でも大丈夫でしょうか?シルファちゃんの珊瑚様への恐怖は尋常ではないので…」
「うん、でも、仲良くなれると思うんだ。瑠璃ちゃんとイルファさんみたいに」
そう言ってイルファを見つめ優しく微笑む貴明。
「た、貴明さん…」
赤面し呟くイルファ。
「貴明ぃ〜!」
「はよしてやぁ!」
貴明とイルファの先、貴明の自宅の前で大きく手を振る珊瑚。隣で瑠璃も待っている。
「ごめん!今行くよ!」
そう言って貴明はイルファと二人の下へ急いだ。玄関の鍵を開ける貴明。
「どうぞ」
「貴明の家久しぶりやぁ〜♪」
「さんちゃん、靴揃えなあかんって!」
ドアを開ける貴明。珊瑚は勢い良く家の中に入って行った。珊瑚の脱いだ靴を揃えながら嗜める瑠璃。
「しっちゃん!る〜☆…あれぇ?」
「さんちゃん!って、どないしたん?」
「しっちゃんおらんよ?」
リビングのドアを開け、居るであろうシルファに挨拶をする。しかしシルファは居らず珊瑚は首を傾げた。
「あれ?おかしいな、いつもなら出迎えてくれるんだけど…」
そう言いながらイルファと共にリビングに入る貴明。
118 :
反逆の・・・:2008/04/18(金) 00:41:37 ID:UJIuSkX60
「逃げちゃったんでしょうか…」
「え!?逃げたって、そんな〜」
イルファの呟きに苦笑いを浮かべる貴明。その間、珊瑚と瑠璃は貴明が持っていた食材をキッチンに置きに行っていた。
「シルファちゃんの珊瑚様への恐怖は尋常ではないですから…」
「と、とにかくシルファちゃんを探さなくちゃ!」
伏目がちに呟くイルファ。貴明は大袈裟に声を上げそう言った。
「は、はい!」
「なになにぃ?しっちゃんを見付けたら勝ちぃ〜?」
「何の話や?」
貴明の反応に面食らいながらも頷くイルファ。貴明の声が聞こえ、キッチンから飛んで来た珊瑚。
遅れて来た瑠璃は状況が飲み込めない様子だった。
「うん、頼めるかな?」
「了解やぁ〜☆」
「え?何??さんちゃん!?待ってぇ〜!!」
「ああん!瑠璃様〜!置いて行かないで下さい〜」
瑠璃を引っ張り庭に飛び出す珊瑚。追いかけるイルファ。
「はぁ…」
それを見送り密かに嘆息する貴明、その顔には慌てた様子は微塵も無かった。
『……まぁ、家の前であれだけデカイ声をあげれば誰が来たかくらい分かるだろうな…。大方いつもの所に引っ込んでるのだろう』
「シルファちゃん?」
「ぴっ―――!」
静に語り掛ける貴明、しかしそれでもシルファは驚き声を上げた。
「な、なんれすか?シルファをさんさんに引き渡すつもりれすか?シルファはもうお払い箱れすか!?」
貴明を見上げそう捲し立てる。
「そうれすよね!おっぱいも大きくない!買い物もろくに出来ないめいろろぼなんか、めいろろぼ失格れすよね!!」
119 :
反逆の・・・:2008/04/18(金) 00:42:26 ID:UJIuSkX60
見上げていた顔を俯かせ肩を震わせる。
「何とか…言うれす…、ご主人様……」
貴明は突然シルファの前に片膝を立ててしゃがみこみ、シルファと目線を合わる。
「ごめん…シルファちゃん、自分のメイドさんを悲しませるなんてご主人様失格だ…」
「ぇ…………」
「でも、シルファちゃんが頑張ってくれてるの知ってるよ?シルファちゃんが掃除してくれてるからここにも塵一つ落ちてない。
シルファちゃんが洗濯してくれてるからYシャツだっていつもも真っ白だ。シルファちゃんが作ってくれるご飯いつも美味しいよ」
優しく微笑み一つ一つ丁寧に伝える貴明。
「―――――」
見開きっぱなしになっている大きな瞳、シルファの瞳、恐怖や悲しみは無く、ただ貴明のみがいた。
「…シルファちゃん、俺、明日の夕飯はハンバーグがいいな。明後日は鳥の唐揚げ、明々後日は豚カツ、その次は生姜焼き、次はね――」
次は次はと、楽しそうに夕飯のリクエストをする貴明。
「…お肉ばかりじゃ駄目なのれす……、しょーがないれすね、シルファがいないとご主人様はらめらめらめっこなのれす」
シルファは貴明を見据え眩しそうに目を細め、笑顔でそう言った。
「あははは、本当に駄目駄目だ」
照れ笑いしながら頭の後ろをポリポリと掻く貴明。
「さ、ご飯の支度をするれすよ!」
元気良く立ち上がり言うシルファ。
「あ、でも…、3人には今日のところは帰ってもらおうか?」
貴明は気遣うようにシルファを見上げた。
「…大丈夫れすよ!」
「でも…」
元気にそう答えるシルファ。
「シ、シルファには、ご、ご主人様が、ついてるれす!」
シルファは耳まで赤くしそう言い切って行ってしまった。
120 :
反逆の・・・:2008/04/18(金) 00:50:22 ID:UJIuSkX60
↓元ネタです。とても面白いのでお勧めですよ。
ttp://www.geass.jp/ 実は自分のssは雄二と貴明の対峙シーンと全ての話の結末だけは書き上がっていたりします。
もしかしたら、あげさせて頂くかもしれませんのでその時はお許しくださいm(_ _)m
121 :
名無しさんだよもん:2008/04/18(金) 10:25:20 ID:BmRe1ZMXO
乙です。自分も面白いと思います。日曜の夕方が楽しみです。
中の人、絶望先生もやってるんだよなぁ…。
終わったけどルルの人は狼とも乳繰り合ってたわ
>>120 乙〜〜。
少なくとも俺は結構楽しみにしてるから続けてもらえると嬉しいな。
ただ今後も続けるなら一つだけ注文。
他の投稿見てもらうとわかると思うけど、「何レスのうち何番」がわかるようにして貰えるとありがたい。
例えば
>>117であればタイトルを『反逆の… 2/4』にする、という風にさ。
更に出来ればただ『反逆の…』ではなく『反逆の…〜姫百合家第2章〜』みたいになっていればとてもわかりやすいと思う。
そうじゃないと支援するにも悩むし、終わったのかどうか判断に苦しむ時もある。
長編になるなら是非考えてみてくれ。
後に残された貴明は赤面し、ばつが悪そうな表情をしていた。
『ま、まぁ、用意していた台詞は使わなかったが結果オーライだろう。しかし、最初の勢いには正直焦った。イルファを呼んで加勢させようか
と思ったが、一人でやり切って正解だった。…それにしても、予定では最後に俺が気の利いた言葉を置いて行くはずだったのだが……』
耳まで赤くする貴明。しかし、次の瞬間には直ぐに無表情になった。
『情けない、あの程度の事でこの有様とは……。だが、これでシルファと珊瑚の蟠りが解消されれば、
俺と姫百合家との繋がりはさらに強固なものとなるだろう。瑠璃、イルファの関係改善に続き、
珊瑚、シルファの問題解決、恐らく、姫百合家から見た俺の存在はかなりのウェイトを占めている筈だ――』
「ご主人様ぁ〜!」
自らの起こしたアクションがもたらす効果を予測していた貴明の耳にシルファの呼ぶ声が聞こえた。
「今行くよ!」
と答え、不敵な笑みを浮かべる貴明、その瞳は暗い光を湛えていた。
その後、シルファ、瑠璃、イルファが作った夕食を5人で取った。
シルファも初めはぎくしゃくしていたが、食後5人で遊んでいる時にはそれも無くなっていた。
そして帰り際、貴明の家で帰り支度をしている珊瑚と瑠璃を残し、一足先に外へ出ていたイルファと貴明。
「貴明さん、ありがとうございました」
「お礼を言うのはこっちの方だよ、ご飯とっても美味しかった、ありがとう」
「貴明さん…、その笑顔はずるいですぅ…」
ふわりと微笑む貴明、シルファは頬を染めてそう呟いた。
「ど、どーしたの?」
「い、いえ!何でもないです!って、私が申し上げているのはシルファちゃんの事ですよ」
「へ?」
間の抜けた声を出す貴明。
「私達が探している間に、シルファちゃんを勇気付けて下さったのですよね?」
「う…、えっと、……あはは、バレバレかぁ」
「うふふ、はい」
苦笑いを浮かべる貴明、イルファはクスクスと笑った。
「これはシルファちゃん自身が頑張った結果だよ、俺は何もできなかった」
「そんな事無いです!シルファちゃんが頑張れたのは貴明さんのお陰です!」
力強く主張するイルファに呆気に取られる貴明。
「貴明さんは凄い人なんです、私と瑠璃様、シルファちゃんと珊瑚様、貴方は私達の世界を二度も救って下さった方なのですから…」
そう言って、眩しそうに貴明を見上げ微笑むイルファ。
「そ、そんな、大した事――」
貴明は赤面し、イルファの言葉に慌てて答えようとした時――
「る〜☆」
「さんちゃん…!夜やから静にせんとあかんって…!」
珊瑚と瑠璃が支度を終えて出て来た。
「では、帰りましょうか」
「送って行くよ」
「いえ、そんな…」
「途中まででも、ね?」
「わかりました、よろしくお願いします」
シルファに留守番を頼み、3人を送って行く貴明。
「今日は楽しかったなぁ〜、瑠璃ちゃんも面白かったし〜♪」
「うう〜、さんちゃんいじめっこやぁ〜」
「瑠璃様、とっても可愛らしかったです〜☆ですよね?貴明さん?」
「あはは!そうだね」
「貴明はすけべぇー!」
「ええ!なんで!? 」
さっきまでの事の話に花を咲かせる4人。
やがて大通りに差し掛かった。
「貴明さん、ありがとうございました。ここからは道も明るいので大丈夫です」
「え、でも」
「シルファちゃんも待っているでしょうし、早く帰ってあげて下さい」
そう言ってニコリと笑うイルファ。
「わかった、じゃあ、イルファさん、珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい、貴明さん」
「すけべぇな貴明は、はよ帰り!」
「おやすみやぁ、貴明ぃ、それとなぁ今日はありがとう」
「お礼を言うのは俺の方だよ、今日は楽しかったよ」
「ううん、それもやけどなぁ、う〜ん、みんなラブラブなんは貴明のお陰やから、ありがとう。ほな、おやすみなぁ〜貴明ぃ!」
言うが早いか、てってってーと、駆けて行ってしまった珊瑚。
「あ、うん、またね!」
と、慌てて返す貴明だった。その後、家路に着くまで貴明は思考に没頭していた。
『イルファと珊瑚から俺への評価を取る事ができたのは大きい、俺の予想した位置付け以上の物だった。
あの二人は俺に付いたと見て良いだろう。瑠璃については、俺に対する評価も悪くは無い筈だし、イルファ、珊瑚を抑えていれば
芋蔓式に引き込めるだろう。必要以上に絡む事は無い、鬱陶しいと思われても困る、気遣いと優しさを見せて現状維持に努める。
シルファも既に堕ちたと考えて良いだろう。まぁ、デートの一つでもして駄目押ししておくのも悪くない。後はミルファだ、ミルファに
関しては情報が必要だ。シルファ、イルファ、珊瑚から情報を取らなければ…』
思考に没頭していた貴明はいつの間にか家の前についていた。
「ただいまー」
「おかえりれす、ご主人様、お風呂は入れるれすよ」
「ありがとう、シルファちゃん。……今日は楽しかったね」
「……はいれす!」
貴明はシルファに背を向け風呂場に向かう、その時「俺も楽しかったよ」と静にほくそ笑むのだった。
128 :
反逆の・・・:2008/04/20(日) 12:08:47 ID:2sIoDdXR0
すみません、文を削りに削っているので、○/○になるか自分でも分からないもので…
ご迷惑をお掛けします…。もう少しで終わらせるのでよろしくお願いしますm(_ _)m
>128
この板は1レス32行までだから、最初に区切ってから投下するとよろし
次の作品の時からでもいいからさ
黒いんだけどへたれを上手く活かしてて面白いな
反逆の続きはまだかなー・・・
楽しみに待ってます
翌朝、今日は祭日の為、普段より一時間半ほど遅くシルファに起こされた貴明、シルファの用意した朝食をゆっくりと胃に送りながら、
昨晩の考え通りシルファにミルファの事を聞いて見る事にした。
「ミルファちゃんって、シルファちゃんのお姉さんなんだよね?」
「む…!ご主人様はミルミルに興味があるれすか?」
ジト目で貴明を見るシルファ。
「え、き、興味っていうか…」
情けない笑みを浮かべる貴明
「ミルミルは、おぽんちめいろろぼなのれす!例えば………っ!」
ミルファに対する愚痴を聞かされた貴明、しかし、その間にさり気無く質問をし情報を取ろうと努めた。
『ふぅ…、結局大した情報は取れなかった。イルファと珊瑚の情報に期待するとしよう…』
午後になり、貴明は姫百合家へと出向いた。
「貴明ぃ!る〜☆」
「何しに来たんや!貴明ぃ!」
「いらっしゃいませ、貴明様」
そして、二時間程姫百合家でティータイムを楽しみ、買い物に行くと言うイルファと共に姫百合家を後にした。
『…珊瑚からも興味のある話は得られなかった、後はイルファだけだが――』
貴明はイルファからやっと、ミルファが自らの正体を隠している理由など、有益な情報を得る事が出来た。
「あのコが自分で正体を明かすまで……」
「うん、分かってるよ」
イルファと別れ、一人考えに耽る貴明。
『なるほど、事の発端は熊のぬいぐるみの頃か…。厄介だな、姫百合家を抑えた以上、
「はるみ」としてではなく「ミルファ」として手に入れなければならない。今までの俺に対するミルファの行動が本気でやっている
とは思えなかったが、どうやらイルファによるとミルファは俺に相当な好意を持っているようだ。そこに付け入る隙がある筈だ。
シルファを使いうまく挑発し焦らせれば、ミルファの口から正体を言わせるのも難しくはないだろう』
貴明は帰宅早々シルファに明日の昼用に弁当を作ってほしいと頼んだ。
「シルファちゃんの料理本当に美味しいから、お弁当も食べてみたくて、駄目、かな?」
貴明は『少しわざとらしかったか…?』と気に掛けたが、
「しょ、しょうがないれすね」
と、頬を染め、そっぽを向きながら承諾した。
「明日が楽しみだよ」
そう言って貴明は爽やかな笑顔を見せるのだった。
翌日、普段と同じ様に、貴明、環、このみ、雄二の4人での登校、そこに途中から珊瑚と瑠璃、イルファが加わる。
校門でイルファと別れ、昇降口で昼の約束をして各自教室に向かう。
『問題はここからだ…、ミルファに対し俺からアクションを起こさなければならない。他の女ならばこちらが攻勢に出れば大人しくなるが、
ミルファはその限りではない。むしろ更に迫って来る可能性が高い。……俺の能力は即効性は無く、酷く曖昧な物だ、「自分には能力がある」
という自己暗示を使っての精神的優位、安定などに頼るのが主だ。お構いなしに迫って来るミルファは俺にとって天敵と言える…。
――今からでも方針を変えるか…?いや、「ミルファ」を手に入れるにはこれしかない。…クッ!ここまで来て怖気づくな――っ!』
「おい、貴明?」
「え?」
いつの間にか教室の前に着いていた貴明。
「お前大丈夫かよ?スゲー顔してたぞ?」
「あ、ああ、平気だよ…」
『…どうやら顔に出ていたらしい。まったく、脆いな…俺は』
と、貴明は内心失笑した。
「ごめん、やっぱトイレ行って来る」
「ああ、わーたよ」
ヒラヒラと手を振り教室に入って行く雄二。貴明はトイレに行って顔を洗ってから教室に入った。
「…………」
ドアを静に開け黙って教室に入る貴明。HRまで十分くらいの為、ほとんどの生徒が登校しており教室は賑わっていた。
「ダーリン…」
「うわぃ!ミ、ミルファちゃん、おはよう」
貴明の後ろから声を掛けるミルファ、貴明は無意識に身構えていた。
「ダーリン、大丈夫?具合悪いんでしょ?保健室行く?」
「え?ええ?」
いつもなら飛び付いて来るミルファが、突然必至にそんな事を言ってきたので、貴明は面食らった。
「雄二君から聞いたよ…ねぇ、大丈夫?」
「あ、う、うん」
何とかそう返し、雄二を見やる。すると雄二は握り拳に親指を立ててこちらに向けた。
『余計な事をっ!いや、うまくやれば―』
「大丈夫だよ、ちょっと寝不足で疲れが溜まってるだけだから」
そう言いつつ辛そうな顔をする貴明。
『これでミルファのスキンシップを封じる事が出来れば格段にやり易くなる』
「そうなんだ…、ダーリンかわいそう…」
そう言って貴明の手を両手で握り、上目遣いで見上げる。
「っ――――」
一気に赤面する貴明。その時、教師が来て直ぐにHRが始まった。
『クソッ!なんて様だ!』
自らの拳に血が滲む程爪を食い込ませる貴明。
『……っ、平静さを保て…、ただ俺からシルファをちらつかせ、興味を引かせればいいだけだ。難しい事じゃない』
貴明は静に深呼吸した。
昼になり貴明と雄二は屋上に向かう
「あ〜、腹減った。貴明〜早く行こうぜ」
「だな」
「お?今日は弁当持参なのか」
「ああ、シルファちゃんが作ってくれたんだ」
「なにぃいい!シルファちゃんって言うと!お前の家に来たメイドさんの事だな!!そのメイドさんの手作り弁当だとぉおお!!!」
そう叫び貴明に詰め寄る雄二。教室に居た生徒全員が目を丸くして二人を見ている。
『いいぞ、雄二。お前は本当に使える奴だよ』
内心ほくそ笑む貴明。
「ダーリン!どーいうことぉ〜!お弁当って!?メイドさんって!?」
廊下に居たミルファが雄二の言葉を聞いて教室に飛び込んで来たのだ。貴明に詰め寄るミルファ。
「ま、待ってくれ!はるみちゃん!今男同士の話を!!」
「もう!うるさいなっ!!雄二君に用は無いのっ!!!」
と言って、ミルファは置いてあった室内清掃用の箒で雄二をかっ飛ばした。教室の後ろから黒板へと吹っ飛ぶ雄二。
「ねぇ!ダーリン!どーいうことなのぉ!?」
「え、えっと、どーいう事って?」
貴明はミルファを焦らせる為わざと聞き返した。
『―フフ、相手が焦っていると自分は冷静で居られるものだな。しかし、油断はしない。早めに切り上げる!』
「メイドさんって!?」
「ああ、シルファちゃんって言ってね」
「シ、シルファ!?」
「ん?どーしたの?」
驚愕の色に染まるミルファ。貴明は首を傾げた。
「う、ううん!何でもない!」
「そう?あ!早く行かないと昼休みが!じゃあ、後で!」
「ふぇ?…え?あ!ダーリン!?」
貴明の口からシルファの名前が出て来た驚きと、貴明が密かに準備し構えていた事もあり、貴明はその場を離れる事に成功した。
『ふぅ…、ミルファの反応を見る限り成功と見て良いだろう』
屋上へと走りながら肩の力を抜く貴明。
昼が終わり、教室に戻って来た。
「ちくしょう!何でお前ばっか!」
教室に戻って来ても雄二は止まらなかった。
「ダーリン…」
ミルファが深刻そうな表情で、席に着く貴明の前に来た。
「どうしたの?はるみちゃん?」
「あの、えっと…、これ…」
そう言ってミルファが差し出したのは日記帳だった。
「日記?」
首を傾げミルファを見上げる貴明。
『まぁ、大体の察しはつくが…どうしたものか……』
「ぅ、うん…交換日記…、だめ…かな…?」
と、遠慮がちに言う。
『なるほど、シルファの弁当が堪えたらしいな。いいだろう、これも利用させて貰おう』
ニヤリと口元を吊り上げる貴明。
「…わかったよ」
「ほ、ほんと――?」
目を見開き貴明を見上げる。
「うん」
苦笑いを作る貴明。
「じゃ、じゃあ!はい!あたしのは書いてあるから!」
ミルファは満遍の笑みで交換日記を貴明に差し出した。
「わかった、書いてくるよ」
そう言って貴明は控えめに微笑んだ。
交換日記開始から二日後、貴明の自宅のリビング、貴明の前に神妙な面持ちのミルファが座っている。
「あたし!実はメイドロボだったの!!」
『ああ、知ってるよ…。しかし、交換日記やシルファの弁当がこんなに早く効果を出すとはな…』
貴明はミルファとの交換日記に、あえてシルファの事を場かりを書き、ミルファを焦らせていたのだ。
「あたしの本当の名前はミルファ!さんちゃんのクマのぬいぐるみだったクマ吉だよ!!」
「う、うん」
「という訳で、今日からダーリンのメイド・ミルファになりました♪よろしくぅ〜☆」
そう宣言し貴明に抱きつくミルファ。
「らめぇーっ!!!」
と、シルファが貴明からミルファを剥がしにかかる。
「何よっ………っ!」
「れすっ!………!」
暫く二人の言い争いが続き、収集が着かなくなった時ちょうど、シルファがやって来て自体の収束をした。
「まったく!ご主人様に迷惑を掛けるなどもってのほかです!反省しなさい!」
「だってぇ…」
「れす…」
ミルファとシルファは正座させられ、シルファに説教をされている。
「まぁまぁ、二人も反省してるみたいだし…」
「貴明さぁん!…ふぅ、二人とも?頑張って貴明さんにご奉仕するんですよ!」
貴明の言葉に、イルファは責めるように貴明を見詰めたが、溜息を一つ、ミルファとシルファにそう言った。
「は〜い☆はい、はぁ〜い☆」
「ご主人様のお世話はシルファがやるれす!」
と、二人同時に立ち上がった。
その後、イルファは姫百合家へ戻り、河野家の夕食はメイド二人が一品ずつ料理を作った。そして今貴明は自室に居た。
「クックック――」
不気味な笑いを堪える貴明。
『第一目標――クリアだ。俺の筋書き通りとは行かなかったが…、ミルファとシルファが俺の手元に居る以上、イルファはもちろん、珊瑚、瑠璃も
更に深い、親類に近い繋がりとなるだろう。俺は姫百合を手に入れた。さぁ、次は――』
「―誰にしよう」
姫百合落華 完
137 :
反逆の・・・:2008/04/23(水) 02:23:42 ID:wnWU+nbo0
細かい描写を削り、無理から終わらせました。
皆さんの言葉が凄く嬉しくて励みになりました。ありがとうございました!m(_ _)m
前にもあったけど、
イルファとすべきところがシルファってなってる気がする。
つまりこの作者の頭の中にはイルファよりもシルファがいっぱいいっぱいってことですね。
>>139 自分の思い通りにならないからって、人の作品にケチつけるって、どんだけマナー悪いんだよ。
>>140 誤字の指摘ですよ。
別にイルファに登場してほしいとかそんなこといってるわけじゃない。
最後の行は冗談だけども、これで気分を害したのでしたら謝罪します。
ごめんなさい。
考え直してみた。
そもそも指摘がマナー違反なのね。
改めてそれについてごめんなさい。
>>141 自分こそ、はやとちりし、大人気なかったです。
すみませんでした。
>>137 遅れましたが、乙です。
>>143 いやお前は悪くない
でも
>>140も悪くない
どっちも作者への思いやりがすれ違ってしまっただけさ
>>137 乙です。
今までにない感じで面白かったですよ。
とりあえず終わり・・・なのかな?
もしそうだとしても、また手が空いた時にでも小牧姉妹編とか書いてみてくれれば・・と軽くリクしときますw
スクライド風味の奴を是非とも…。
書こうとおもったけど前に変な宣言したから5月になって誰も書いてなかったら書く。
かくかく詐欺はたぶんやらない。電波ユンユンなのは間違いない。
クロスオーバーものは両方の元ネタ知ってないと厳しいからな。
文中にさりげなく設定解説を入れたり、知らなくても楽しめるようにするなら良いんだが……
ToHeart2オルタネイティブとか、元ネタ知らん奴にはなにがなにやらだろうなぁw
だったら同メーカークロスすればいいんじゃねぇの?
最近は葉同士鍵同士でもなにがなにやらになる香具師が多いからなぁ。
クロスと言えば意外とこのスレで元祖東鳩と本格的に絡むSSって無いよな
書庫にはいくつか、前作のキャラが登場してるSSあったと思うが
なんか前作キャラとか出すと叩かれるからなぁ。
まぁ、神経の太い作家はどうかわからんが、俺はちょっと躊躇してまう。
他作品とのクロスオーバーだとどうなるんだろ?<反応
ここは一つクラナ・・・・・炎の孕ませ転校(ry
蔵等と炎の孕ませをクロスオーバーさせてて……だんご大家族にでもするのかよw
少なくとも俺が書いたらメイドロボメインになるからナンボ中出しさせても増殖しないぞww
TH2 × 学園ソドムゥ〜
暗黒KANONネタ禁止
スレ違いだったらすみません。
とあるHPで匿名さんが書いてた、郁乃のSS保存している人いらっしゃいませんか?
もし居たら送って欲しいのですが・・・・・・。
Round Seasonと、君に贈る春の詩の2つをどうしても読みたいのです。
サイトももう消えてて、internet archiveでもダメでした。
どなたかいらっしゃいましたらメールアドレス晒しますので教えてください。
失礼しました。
>>160 OK.黙って消えろ。
作者が消したものを勝手に再配布など出来るか。
なんでそんな喧嘩腰なんだろう
もうちょっと物腰柔らかくいこうよ
どこにも登録してないSSの存在を知ってるのに
読んだことがないみたいな口ぶりなのがおかしいしな
単なる煽りだろ
そうなのか
俺は最後に連載してた奴が完結したからだと思ってた…
まあ、元々書くのやめるといってたんだし、仕方ないんじゃないの?
つか、わざわざ粘着してる奴らは何が楽しいんだか
暇なんだな
へー、書くの止めるって言ってたのか
消えたのはてっきり置き場のパクリ疑惑のせいだと思ってた。
どっちにしても、
>>165の言うような完結したから消したというのはまずないんじゃないかな。
それじゃあ完結した意味というか、連載してた意味もなくなるし。
少なくとも、何かしらの対外的な要因があって消したんだろうと思うよ。
パクリ疑惑は実際のところどうなんだ?
置き場以外読んでないからシラネ
俺も置き場しか読んでねーw
登録もしてないサイトをヲチするって暇な奴もいるんだな〜
置き場の人もパクリに関する話題はうんざりって感じだね
まあ両方読んでたけどさ
同じ元題材で書くんだからある程度似るのは仕方ないんじゃないの?
後は書き手の味付けの問題だろうし
書き上げる腕を比較されるのも含めてさ
むしろ外野がパクリだ何だって騒ぎを大きくして
置き場の人もコメントしたくないって言ってるのにしつこく報告してる奴が問題
結局騒いでる奴が自己満足してるだけなんじゃないの?
パクリかどうかなんて対象になった作品を読んだ人の感じ方次第だと思うけどね。
俺も両方読んだけど、似てるで済ましていいレベルとも思えなかったわ。
レビュースレに登録されてるから消したってのはありえないと思うなあ。
SS自体を見られたくないのならレビュースレよりもっと前にSS-Linksで(自称)無断登録されてた時に消してるでしょ
あの時も掲示板の方で無断登録されてるって誰かが言ってたんだけど本人は登録された分については構わないよって言ってた。
だから見られることについては問題がないはず。まあ公開しておいて見られたくないなんて人もいないだろう。
今回のを書き上げてからすぐ消したってのが、少なからずパクった意識があってバレたので逃げたという風にも見える。
ホントにパクってないのなら堂々としてればいいんだから。
もっともメールかなんかで苦情がきて嫌気が差してさようならしたのかもしれないけどね
前のサイトも確かそんな感じで閉鎖したし。
パクリを突き上げたくなる気持ちはわからんでもないが、よほどの丸パクリでもない限りもう少し暖かく見守ってやれんのか?
自分で書いたコトあるヤツならある程度は理解してもらえると思うんだが、書くのは結局勢いだから、書き上げてみたら何かに似てた、なんてことはよくあるんだよな。
無論プロならそれでもアウトだろうけど、素人の、それも元々似やすい2次創作にそこまで目くじら立てる必要あるんだろうか?
やり過ぎは結局作者たちを萎縮させてしまうだけじゃないのか?
こういうのは玉石混合なんだから、色々な作者のをたくさん読めてナンボだと思うんだがね。
そういうのが嫌なら好きな作家のだけ読んでりゃいいのさ。
俺はどっちも読んだ(片方は結末読む前に消えた)が、なかなか面白かったよ
あくまでも個人的な感想だけど、芸のない再構成SSってこうなるんだなって感じだった
1.ベースを原作の愛佳シナリオと由真シナリオを混ぜた感じ→テキストも原作のコピペ部分多
2.郁乃と仲良くなる部分は前に書いてたオムニバスSSまんま→過程スッ飛ばしで郁乃がいきなりデレる
3.話の後半は某桜のパクリ→似てるっていうか…
1は「これ二次創作か?」ってくらい原作ままの展開が多くて引いたね
そして2は単なる腕の話だろうけど、問題なのは3だな
内容的には、それまで全く話題にものぼらなかったささらがいきなり登場したと思ったら、その次の回で
唐突に署名集めるとかって展開に繋げる感じ
まぁほぼ原作コピペ、理由もなく病院に通い詰めて、過程スッ飛ばしで郁乃と貴明くっつけたはいいけど
後半の展開に困って、登場キャラが同じ別のSSから拝借しましたーみたいなノリだった
>>172 パクられ続けて好きな作家がSS消しちゃったことがあるからなあ…
好きな作家のだけ読んでれば問題ないってわけじゃないのが困る
俺も書く側だが、読んだこと無いなら別だけど、読んだことあるSSの内容からは極力かけ離れるようにするよ
だから書き上げてみたら何かに似てた、なんてこと一度もないんだけど、よくあることなのか?
もういい加減にしなさい。
ここでする話題でもないでしょう。
>>174 スマソ……orz
これでやめるよ。
>>173 俺の場合はあまりオチとか考えず書き始めて脳内キャラに勝手に突っ走って貰うから、自分の思ってなかった話に仕上がるコトは珍しくない。
結果「なんかどこかで見たような……。ま、まあ、これくらい勘弁してもらえる……といいなあ」になったコトもある。
もちろんパクリにならないよう、気を付けてはいるんだぜ?
テンプレに
**外部のSSサイトの話は御法度**
ってつけ加えればいんじゃね?
確か昔はテンプレにSSサイトのURLも載せてたけど、そういう話題で荒れたから消したんじゃなかった?
ぶっちゃけてしまうと、TH2って元がかなり薄っぺらなんだよね。
キャラクターのよさがウリで、キャラクターに人気あって、ここまで盛り上がったわけで
シナリオというか、話の部分は、それほど注目されていなかった。
早い話が、キャラ以外はどーでもいいんだよな。それに加えて、結構なんでもありな自由度がある。
正直、こんなに二次創作やりやすい題材は他にない。
でも逆に、だからこそ二次創作は完全にネタありきになるんだよね。
単に貴明とヒロインがいちゃいちゃしてる話でないなら、かなりネタ偏重になっちゃう。
どういうネタで話を書くか、というのがそのままどういう作品か、というところに結びついてしまうんだな。
つまり、ネタ=最初の発想こそがTH2の二次創作のキモであり、作家の腕の見せ所でもあるわけだ。
だからなんつうか、ネタが被るってのは、他の原作であれば滅多にパクリには繋がらないんだけど
TH2においてはその限りではないっつーか。
話の膨らませ方ってのが、どういうネタかって部分に直結してるから、ネタが被った時点で話の内容も相当
似てきちゃうんじゃないかなーと思うよ。
まあ、TH2もPS2版が発売されてからかなり経つし、初期の頃のSSとネタが被ったりするのは仕方ないとも
思うけどねw
>>176 外部のサイト…っていうか、過去ログ見れば解ると思うけど
たまにここのサイト持ち出したがるやつが涌くんだよ
一番最近だと爆撃直後のスレ立てした時か
ここに投稿されたものだけで話したいのに
すげー迷惑
>>178 書けば書くだけ墓穴掘ってて見てるのが辛い。
もう止めとけ。
>>179がよくわからない。
やっぱSSすれだけに、高度なやり取りがされてるに違いない。
でもわからないからいいや。
>>180 擁護の書き込みは何でも作者乙だと思ってる馬鹿だろw
じゃあ叩いてるのは全部匿名のアンチですね、わかります
そういった妄想力をSSにつぎ込んでほしいところだが。
>>181 いや、一人必死で矛先そらそうとしてたから辛そうだと思っただけなんだが…
179が作者乙に見えるってのも相当病的だぞ。辛くないか?
|: : |_____
|: : |____`ヽ、
|: : |ー─―- `丶\
|: : |ー─‐- 、 \\}
|: : |─―- 、 \ 丶ヽ . -‐─ ─- 、_
|: : |::::;':::::::::::: \ \ V' ,. -‐┴─- 、_ \
|: : |::{ ::::::::ヽ:::::::\ ∨_,. - '  ̄ ー 、\ ヽ__
|: : |:::::::ヽ::::::l:::::::::: ∨ , // , ヽ ヽヽヽヽ `ヽ.
|: : lヾ{\{\| :::::}:}::ト、 //____/j j l l l i l ヽヽ ハ
|: : | 7心 │::::j/:リ│ / // // ハjTTメ、j l l i l ハN }
|: : | 弋ン'厶イ::j:|〜'Ll ミ/ // / jL}_//////j Nリ.リ
|: : | `_ イーr ':}/リ |iイ_ノ} // i.ノメ///.//jノjノ
|: : |ア¨´`j:/}/: || V::リ , {r::リ V ,.ィj
|: : |__ /∧ .// ヽ¨´ r┐ `ー /爪小
|:. :(-、) // ハ / 小ヽ ー' ,. ィ7/ i l i}
|: : (ヽ}〃 } ,r┴ミヽ ` ー<// // // リ
|: : l} j′ {/.:.:.:.:.:.:\__//メ-→/ /-、// ̄ ̄)
|: : | (___i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:} / /∠/ Y/ __/
|: : | マニニニY|.:.:.:.:.:.:.:.:.j7\-ァ'7 ̄ ̄`ヽ}一'⌒)
|: : | Y=ァ┘ヽ. __/┼┼Y彡‐‐ / __/
|: : | }/ || ヽ┼┼_/ } /!|__/
|: : |`ー-イ // 込‐' リ/ヒ|
|: : | │ // \ 〃i l l
レス数伸びてるから投下があったのかと思って来てみたら…
187 :
180:2008/04/29(火) 19:27:55 ID:sA1Y9ZNA0
あぁ。ありがとう。流れが読めた。
そんなことよりSS書こうぜ。!
188 :
名無しさんだよもん:2008/04/29(火) 19:45:37 ID:ck2jIkY10
知らないなら書き込むなよ、氏ね
ある意味釣堀になってるよね、置き場。
まあ葉鍵で語れる分マシだろう
TH2で人集めてからオリジナル小説掲載の流れとかそれこそ見てらんないしw
>>188 某スレの
>貴明がシルファとミルファに楽しく板挟みになるお話
>それ以外に山も谷も何もないが、鳩2のSSであればこんなもんか
こんな感じのレス、これってお前か?
いちゃもんのつけ方がソックリなんだが、特定作家の粘着ってマジでいるんだなwww
つかToHeart2SS全体を見下してるような発言してるがお前もSS作家?
所詮ToHeart2のSSって感じの口ぶりなのにどうしてここにいるのか意味不明すぎるわw
そんなことよりSS書こうぜ。!
書きたいとは思うんだがなあ。
書きたいけど
ADが積みゲーになっててやってないんだよね
AD関係ないもの書けば良いんだろうけどさ
196 :
名無しさんだよもん:2008/04/30(水) 22:33:31 ID:8xFYWXjD0
>>192 某スレがどこかしらないから俺じゃねえな。作者さん乙
>>196 そういうあんたは傍から見てるともう片方の作者に見える
199 :
名無しさんだよもん:2008/04/30(水) 23:23:08 ID:8xFYWXjD0
>>198 そこの誉めてる方が
>>192ってわけかい
そのSSは得意げに、俺は原作と違って脇役を上手に使いましたみたいなコメント出してたやつだな。否定されてやがんのw
いっとくが俺は鳩2は好きだぜ。だから原作を馬鹿にしたような態度にはいらつくんだ
どうでもいいから両方引っ込んでろ。頼むから出てくんな。
いらつくとか言えば周囲が変わるとでも思ってんのかと。
そんなことより・・・
こういうクズってSS読むより揚げ足取ったり作者叩いたりするのが楽しくて仕方ないんだろうな。
某虹を批判してスレから追い出したり、某桜花学園を閉鎖に追い込んだのってこいつじゃねえの。
望み通り東鳩2SS全体が過疎ってるわけだが、次のターゲットは置き場なのね。
誰もいなくなったら一人で高笑いしたりするんだろうか。ここまで歪んでるとキモイ通り越して怖い。
もうそういうお話はいいれすからSSをお願いします
変な奴がパクリSSに粘着始めてから妙な煽りレスが増えちまったな。
何度でも言おう。そしてみんなにも言ったほしいんだ。作品過疎のときは。
そんなことよりSS書こうぜ。!
206 :
名無しさんだよもん:2008/05/01(木) 19:08:35 ID:A9hl30hR0
いいんちょ生誕age
久しぶりに来たら何この荒んだ空気
この空気をふっとばすSS投下を期待
GWだし
GWと言えば姫百合END後、4pしまくってた時期だと思うんだ
「このこがほしかったらここまで上ってらっしゃい。」
かわいらしいひらひらの、お姫様的服装をした子を抱え、
どうやって上ったのか、タマ姉は遊具の上のモニュメント部分に鎮座していた。
「くそー!」
雄二は、同年代と比べれば大きいが、タマ姉にはかなわない体で、
お姫様を助けるために、幾度もタマ姉に挑む。
「どうしたの?相変わらず弱いわね。雄二」
体格、戦術の差によって、まったくといっていいほど歯が立たない。
そうこうしている間に姫はタマ姉に蹂躙されようとしている。
それだけは阻止しなければならない。
「あぶないよーやめようよー」とこのみ。
やめれねぇよ!あの子は・・・俺の・・・
「うりゃあああああああああああ」
気合を入れて、運動エネルギーを得るため、思いっきり足がかりをけった。
雄二の体は高加速度でタマ姉に向か−−バコッ
わずに、雄二に加速度を与えるはずの力は、モニュメントを破壊した。
経年による老朽化と先ほどからのタマ姉との尋常でない攻防防負によって寿命を迎えたのだ。
「きゃっ!」
「うわっ!」
「ひっ」
3人は落下する。
低い位置にいた雄二は体勢を立て直し着地した。が、上の二人は抱き合うようにして倒れていた。
タマ姉が姫をかばうように倒れたため、タマ姉は目を回していたが、
姫は無事なようで、起き上がろうとしている。
そのとき、姫のスカートがずれる。
落ちるときに服が傷ついたらしい。
(動けねぇー・・・)
「ほら。」
雄二は横を向きながら、ハンカチを差し出した。
「これ。やるからスカートに巻けよ。」
姫は顔を背けながら、横目で無言の礼をし、ハンカチを巻き、そして走り出した。
「ふぅ。最後までシャイな子だったな・・・」
「ぬすんでっちゃったね。」
「なにもぬすんじゃいねぇよ。あげたんだ。」
このみは静かに首を振り、
「ううん。確かに盗んでいったよ。雄くんの心を。」
「心・・・うっせー!なにちびすけがかっこつけてんだ。うおぉぉぉお〜〜!」
ぐしゃぐしゃとこのみの髪をかき回す。
「うわああ〜〜ああーーー」
---
さっき思いついて書き始めたんだけど、始まる前に書き終わってよかった。
>211-212
思いつきでもええじゃないかGJ
これはタマ姉が貴明を女装させた場面だけど、なんとなはなしに、
ふと、このみは貴明と雄二のどっちと先に知り合ったんだろうという疑問が生まれた
え?クラリスを知らないヤシなんているのか??
いいんちょ生誕SSを書こうとしたが、メイドいいんちょに萌え死んでいたので完成しなかった・・・orz
気にすんな、何日か遅れたって誰も怒らないさ
さぁ、完成させるんだっ!
ssってさ、書きかけても起承転結が思い浮かびそうにないときは消しちゃうよね。
投げっぱなしのごみであふれかえすのはあれだからっていう理由であげない人結構多いように思うのよ。
でもさ、掲示板なんだから誰かが続けてくれたりするかもしれないんだ。
私は怖いから消しますが。
書きかけをあげるのはさすがに良くないだろw
そういう時はあらすじだけ紹介して誰か書いてっていうと誰か書くかもしれない
そんな事はあるまい??
よほど特殊な設定のものならまだしも、比較的一般的な内容なら、それもあまりにも中途半端、とかでなければいいんじゃね??
「私にはこれが精一杯です!どんなオチをつけたらいいでしょう!誰か続きを!」
なんて事があってもいいんじゃまいか?
……毎度毎度では困るがww
そういうのはリレーSSのスレでやるべきだとは思うがね
ところで、投下がほとんどないのは何でなんだぜ?
もうみんなあきちゃったのなんだぜ?
あきてなどおらん。
妄想しているものはある。
あるんだが今ひとつ形になってくれない。
……ちょっと、晒してもいいのか悩むようなものだしなぁ。
>>222 ADの内容がアレだったので皆テンションが上がらn(ry
充電期間です
充電して戻ってきてくれるなら良いけど
充電したまま別ジャンルに走ってそっちで放電されると過疎るばかりだがな…
まぁ書くほうも読むほうも別に好きなものがTH2だけってわけじゃないだろう。
TH2のSSが過疎ったら過疎ったできっとみんな新しい楽しみを見つけてそっちで逞しくやってくさ。
ADショックはでか過ぎたか……
ADショックというよりは○宅ショックか・・・
三宅氏ね
ささら@このみ「三宅しねでありますぅ」
ラジオのノリがいまいちわからない。フォローするにも全力でやってるわけでもないし…
そもそもラジオを聴いてないから分からんが
あちらを勃てればこちらが勃たず、って事じゃねーの
>ささら@このみ「三宅しねでありますぅ」
これの意味がわからんが
仕事が忙しくて間隔が空きましたが、前スレ654からのSSの続きです
もう ★ネタバレ注意★ しなくてもいいよね?
証言その1。
「男なんて、セックスしたがるだけの生き物よ」
にしても、いきなり凄い発言だわね。
「はぁ、そうですか」
「大体、オスはメスの身体に精子を残したらお役御免なんだから。ミツバチなんて……」
どこぞのテレビのネタっぽい講釈を始めそうになったのは、姉の友人で私の数少ない二年生の知り合い、長瀬先輩。
でも、悪いけど私の目的は『ダー○ィンが来た』と『生き△の地×紀行』の違いを議論することではない。
「べつに、男性一般論を聞いたわけじゃないんですけど」
「ああ、河野貴明だっけ?」
はい。というか、最初からそれしか聞いてないから。
「最悪ね」
また断言するわね。
「Round1から初手バックジャンプするような奴に拳で語る資格はないわ」
しかも、理由がよく分からない。
「歩行者の癖に自転車の邪魔するし」
その理屈はおかしい。車椅子派としては、同意する面もあるけど。
「モップ避けるし。バケツ避けるし」
普通は避ける。
「コーヒー買うし」
普通は……好みによるか。
「とにかくっ、奴は人が水飲んでる時に平気でホームランを打つ男よ!」
よく分からないけど、総合的に推測するに。
「色々負けてるんですね」
「ぐはぅっ!」
私は、思わずカウンターを入れてしまった。
「負けてないっ! あたしはいちおくさんぜんにひゃくよんじゅうごまんろくせんはちじゅうきゅうてんだこんちきしょーっ!」
長瀬先輩は、叫びながら去っていった。
……他を当たろう。
「貴明がどんな奴か、だって?」
証言その2。私が頷くと、相手は急に無表情になって黙りこくった。
なんか変な事聞いたかな。奴の一番の親友らしいって聞いたから、わざわざ捕まえた向坂とかいう先輩なのに。
「ふふふ、そうか、せっかく俺に声を掛けてくれる女の子が現れたと思ったのに、またも貴明か」
いや、それは勘違い、どっちにしても。
「ふざけんなっ!!」
おわっ!?
「どいつもこいつも貴明貴明、いったい何人の女の子が寄ってくれば気が済むんだアイツは!」
え、そうなの?
「このみだけじゃ不満だってんなら姉貴は付けてやる、会長か委員長か双子かロボか超能力者か宇宙人か青か黄色か狐か狸か小学生か変な先輩か、誰か寄越せーっ!」
……メモしきれたかしら。
「というわけで、あんな奴よりお茶でもしながら俺の魅力をゆっくりと……あれ? どこいくの?」
「遠慮しときます」
というわけで。
「えーっと、タカくんは、このみの幼馴染みでありますよ?」
手近な所から証言その3。隣のクラスの、柚原このみ。
「そう、それで、アンタの幼馴染みについてちょっと聞きたいんだけど」
「このみの幼馴染み?」
うん。ところで可愛いわね、その小首の傾げ方。
「うーんと、このみの幼馴染みは、タカくんでありますよ!」
おい。
「このみはタカくんと学校に行ったり、公園に行ったり、お花見にいったり、ゲンジ丸の散歩をしたり」
証言その3の続き。良かった、日本語喋ってる。
「それでタカくんはアイス奢ってくれたり、朝起こしに来てくれたり、おかーさん達が出張の時は泊めてくれたりするのです」
ふうん、仲のよろしいことで……って、泊まりぃ?
「うん。このみはタカくんと一緒のおふとんで寝るのが大好きなんだよ」
唖然とした私に、ニコニコと笑う小学生みたいな女の子。
こ、こんな無邪気な子の無自覚につけこんで、なんって無体な事をしてるんだ奴は!
それから、小一時間ほど経って。
「はあっ」
帰り道を逸れた公園で、あたしは溜息をつく。
なんでって、いや、あれからも色々と証言を集めて回ったのだけども。
……回想が面倒なので以下列記。
「こ、河野さん、ですか、河野さんは、その」
「さーりゃんのおっぱいを揉み逃げしていったのじゃ! 酷いやつめ」
「タカ坊の抱き心地は最高よ。なのに、最近スリスリさせてくれないのよね。はぁ……」
「タカりゃんは酷い人なんよ、あたしを押し倒して(入部届けを)出し逃げしたんよ」
「貴明さんとは、夜しかお逢いできないのが残念です」
「河野センパイは、あれで抱きつくと胸板とか逞しいっスね〜。ヘッキーだけど」
「……センパイは背中もけっこう。ヘタレだけど」
「たかあき? たのしいでー、ちゅーすると赤くなってかわえーし」
「ゆるさへんであのごうかんまーっ!」
「貴明様は、身の回りに女性の存在が多い方ですね」
「あ、アンタもダーリンをっ!? うぅーっ! ダーリンはまたこんな女を作ってえ〜っ!」
「ごしゅじんさまはれろっこなのれす。シルファのはらかをみてはらじぶーなのれす」
(郁乃訳:御主人様はエロっ子なのです。シルファの裸を見て鼻血ブーなのです)
「うーは此処で頻繁に小さなうーを抱きかかえて引っ繰り返して遊んでいる」
……以上。
これらの証言から私の灰色の脳細胞が導き出した結論は漢字二文字。
「変態」
やはりあのいかにも善人面な笑顔は擬装だったか。人畜無害そうな態度で誰彼構わず女の子に親切にして近寄り、利用するだけ利用して放置するなんて、まさに女の的っ、いや、敵っ。
そして、奴の今の標的がお姉ちゃんならば、そうはさせるか。
「お姉ちゃんは、あたしが守るっ!」
「なにを守るの?」
「だわあっ!?」
高く突き上げた拳に返事が返ってきて、私は思わずそのままのけぞった。
少し暮れてきた空が視界の七割を占めて、残り三割に最近見慣れたような気がする笑顔=河野貴明。
「なんでこんな所にいるのよっ!」
「え? まあ、ウチの近くだし、ちょっとね。そっちは今日も元気そうだね。良かった」
「……そりゃどうも」
うーん、こいつと会話すると調子が狂う。
打っても響かないというか、ぶつけた感情が吸収されるというか。
「車椅子で出歩くの、大変じゃない?」
「大変よ」
建物内と違って、屋外というのは起伏がやたらと多い。歩いている人は、気付かないみたいだけど。
「でも、動ける時は、一人で動きたいから」
「ふーん」
どうも雰囲気に乗せられて、日常会話に流れていると。
「あーっ、お兄ちゃんーっ!」
可愛く甲高い声がして、寄ってきたのはちっちゃい女の子。
私が小柄だとか、そういうレベルの話じゃないわよ。小学校の、中学年くらいかしら。
「あ、菜々子ちゃん」
で、手を挙げて応えたのは隣りにいた朴念仁。
そういえば向坂先輩(弟)から聞き取ったメモに“小学生”ってあったわね……。
「もうっ、お兄ちゃん遅いも! 菜々子おうちに帰らないといけないも!」
「ごめんよ、放課後用事があってさ」
あったけどさ。
「うん……菜々子いい子だから我慢する。またこんど遊んでね」
「もちろん、逆上がり、できるようにならないと」
「うんっ!」
なによその、アンタを見つめる女の子のキラキラした瞳と声色は。
「いやー、まいったまいった」
5分ほどむこうの方で、和やかに会話して戻ってきた河野貴明。
「なによあんた、小学生にまで手を出してるわけ?」
思い切り冷たい声で言い放ってやる。
「あはは、そんな、手を出すなんて人聞きの悪い」
ちょっと知り合って、普通に友達付き合いしてるだけだよ、と。
ふーん。向こうはそういう態度には見えなかったけどね。第一、小学生女子と普通に友達付き合いする高校生男子がどこにいるのよ。
「肉まん奢らされちゃったよ。郁乃ちゃんも食べる?」
「いらんっ!」
奴が持ってきた紙袋の中身は、匂いで想像はついていた。
そして奴が、またも食べ物で私を釣ろうとする作戦に出ることもっ!
「断られても、余るだけなんだけど」
「アンタが勝手に買っただけでしょ。さよならっ」
私は車椅子を公園の入口に向ける。
美味しそうな匂いと奴が手にする白くて柔らかそうな物体に後ろ髪を引かれなくもなかったが、今の私は奴の魔の手からお姉ちゃんを守るという使命感に燃えている。その手には乗るものか。
「あっ、ちょ、ちょっと待ったっ!」
乗るものか待つものかっ!
「うるさいっ、そんなものは家に帰ってメイドロボにでも喰わせなさ……おわっとっ!?」
がたこんっと車椅子が右側に傾いて、私は豪快に側溝に嵌ってしまった。
「そ、そこっ、側溝の蓋が外れてるからって、だいじょうぶ?」
「そういう事は、先に言えっ!」
「ご、ごめん」
いや、今のはあたしが悪いか。そんな反省をする間もなく、奴は駆け寄ってきて車椅子に手を掛ける。
無理すんな、結構重い−車椅子と本人のどっちがとか聞くなよ−から、簡単には持ちあがらない、って、
「くっ! よっ! とおっ!」
ちょっとこら、そんな無理矢理、なんか引っ掛かって、こら、強引だってば、おい。
バキッ。
がこん。
えーっと。車椅子は地上に復帰。したけど。
「いま、嫌な音がしなかった?」
たらーと汗を浮かべて河野貴明。
「した」
思わず無表情になってしまった小牧郁乃、って私だ。
「とりあえず、郁乃ちゃんの方に怪我は?」
「それはない、と思う」
別に痛い所もないし。擦りむいてもいないようだし。
だが、しかし。
私はハンドリムに手を添えて、ブレーキが外れている事を確認して前方に……。
「……動かない」
がこがこ。
車輪が回らない。
「うわっ、スポークひん曲がってるよ」
横から車輪を覗き込んだ奴の声。
うわぁん、私の愛車が壊れたぁ。
「ご、ごめん、俺が無理矢理引っ張り出したから。弁償するよ、今、お金ないけど」
「保険がきくから弁償はいらない」
それよりも、問題は。
「どうやって帰ろう」
いざというときの為にタクシー代は貰ってきているのだが、この辺、流してないわよねえ……
あ、そうか。奴に家に戻ってタクシーを呼んで貰えばいいんだ。
「あ、そうか、うん、そうだね」
奴もそれに気付いたらしい。私の前にやってきて、あれ、なに背中むけてしゃがんでんのよ。
「俺が、郁乃ちゃんをおぶって家まで送るよ」
なぬ!?
「な、なななな何考えてんのよこのスケべっ! 変態っ! 誘拐犯っ!」
「いや、別に変な事は考えてないけど……」
じゅーぶん変だっ!
「だって、こうなったのはやっぱり俺のせいだし、放っておけないし」
姿勢は間違ってないかも知れない。けど、方法論がおかしい。
「だったら、家に戻って電話でタクシー呼んでよ。お金は持ってるから」
「あ゜。」
頬に汗を浮かべる河野貴明。ったく、やっと分かったか。
が、その浮かべた汗の粒が、何やらヤタラとデカい。
「いや、その……うちは、ちょっと、いま、立て込んでて……」
「立て込んでって、アンタ一人暮らしじゃないの?」
「あー、一人だけど、独りじゃない、というかなんというか」
う? あぁ、ははぁん。
「同居してるメイドロボね? 喧嘩でもしたの?」
「さっきも思ったけど、良く知ってるなぁ」
頬をポリポリしながら誤魔化し笑いを浮かべる優男。
「いや、別に変な事はしてないよ。ただ、実は、ちょっと、いま、家を締め出されて来たもんで」
「ちょっと、じゃないじゃない。何したのよ」
どだいアンタは、変な事の範疇が狭すぎるんだ。
「ホントに何もしてないって。何もしてないのに、帰ったらドアが開かなくて、チェーン越しに「あのおんらはなりろろれすか……」って半カオが」
「あの女?」
「なんだかね、さっき女の子が尋ねてきて、俺の事を色々聞いたらしいんだ。ウチの生徒だったらしいんだけど、誰だろ?」
あ゛。
「まあ、宅急便屋さんが女性でも拗ねる子だから」
困ったもんだと苦笑いの河野貴明。ちょっと複雑な表情になってしまった私。
……そういう事情だと、あまりワガママもいいづらい。
「じゃあ、タクシーは自分で拾うから、大通りまで連れてって」
「うん」
これも流れというんだろうか、なんだかおかしなことだけど、ともかく、奴が私をおんぶして、車椅子片手に歩き出すことになった。
なったんだけどさ。
「ママー、あのお姉ちゃんお兄ちゃんにおんぶしてるー」
「こらこら、じろじろ見ないの」
通行人の視線が痛すぎる。
「……うぅ」
「どうしたの? どっか痛い?」
私の嘆きに、若干下方から聞こえるとんちんかんな応答。
「違う。いいから黙って歩け」
「はいはい」
やっぱり打っても響かない。まあいいわ、通りに出ればすぐにタクシーを、っとっ、ちょっと待ったっ!
「うわわ、髪を引っ張るなって」
「前! 前!」
私が慌てて指さす先には、淡いピンクの制服が何人か。
「ん? うちの生徒だね。知り合い?」
「そういう問題じゃなくて」
いちいち説明しないと分からないのか。分からないのよね、たぶん、こいつは。
「こんなとこ見られたら、何を噂されるかわかんないでしょ」
「俺、このみをおぶって帰ったこと何度もあるぜ?」
「そんなの知らない」
実際、関係ないんだけど、妙に言葉の温度が下がったのは何故だろう。
「とにかく、他の生徒には見つからないように歩いて」
「うーん」
私の要望に首を捻る河野貴明。なんか文句あるか。
「文句はないんだけどさ」
私が思いを口に出すと、手が空いてたら頭を掻きたそうな雰囲気で回答が来る。
「大通りに出たら、見つからないのは無理じゃない?」
横道から奴が顎で指したメインストリートは、夕暮れ束の間の放課後を謳歌する我が校の生徒達で賑わっていた。
「……疲れた?」
「いや、そんなに」
我ながら珍しく、気を遣った声を出してみる。
応えた河野貴明は、言葉とは裏腹に結構しんどそう。
けっきょく、視線と大通りのうち後者を諦めた私は、奴におぶさったまま、一応はタクシーを探しつつ、事実上は家路に就いていた。
私の家は、足は遅いけど健常な姉も普段はバスを使うくらいの距離だから、近くはない。
その半分以上を既に歩いた河野貴明は、しかも、片手に車椅子を抱えている。
「よっ」
左手から右手に、何度目かの持ち替え。いくら近年の軽量化が著しい器具といっても、大荷物だろう。
「……休んでいいわよ」
「大丈夫だけど」
二度目の気遣いを否定してから、ちょっと首を傾げる。
「なに?」
「いや、どうも普段よりおんぶしづらいような」
「普段?」
「あー、このみ」
「……悪かったわね、あの子より重くて」
「そういう意味じゃないよ、ていうか、体重は軽いよね、郁乃ちゃん」
「どうせ痩せぎすよ」
「そういう意味でもないんだけど、その割に、えーっと、たぶん、力が入ってると持ちづらい」
「う、ごめん」
言うとおり、私の身体は緊張していた。両腕を変につっぱって、密着しないように太股にも力が入っている。
これじゃ担ぐ奴も疲れるだろうし、実は私の方も結構しんどい。
「それじゃ郁乃ちゃんも疲れるでしょ、楽にしてよ」
「……」
異性の背中に身体を預けるのはかなり気恥ずかしいけど、いまさらだし、運んで貰ってる以上は指示には従おう。
私は諦めて、意識して腕で支えていた上体を任せた。脚からも力を抜く。
途端、ふわり、と身体が軽くなった。
「うん、やっぱり軽くなった。サンキュ」
もぞっ。
奴が私を持ち直す。その動きが、やたらとマトモに伝わってくる。
力を抜いたせいで、奴の背中に私の前面が満遍なく押しつけられて、
自分の体重を感じなくなったのも、重さが奴の背中全体に分散したせいだろう、
二人の体温が重なって、そろそろ気温が下がる時間帯なのに、身体に熱を感じる。
「〜〜〜っ」
私は、そんな自分の状態を自覚して、かなり赤面して動揺した。
「どうかした?」
「なんでもないっ!」
無理矢理誤魔化す。
どくん、どくん、やばい、心臓の鳴りが速い。奴に聞こえてしまう。
すぅ、はぁ。私はこっそり呼吸を遅くして、鼓動を落ち着かせようと努力する。
すぅ、はぁ、すぅ、はぁ……すぅ……。
……あったかい。
やがて体のリズムが穏やかになってきて、そんな感想が心に浮かぶ。
子供の頃におんぶされた感覚なんて、もうすっかり忘れたけれど、ふわふわと温かくて上下に揺れて、例えるならコタツに入ったまま宙に浮いているような。気持ちいい。
「次、どっち?」
道を聞く奴の声が、なんか遠くに聞こえる……
「右……次左で、道なりに曲がって3つ目の角を左、まっすぐいってコンビニの次を右……」
「おいおい。一度に言われても覚えきれないって」
「う? うん……ふん……くぅ……」
私は道案内をしながら、いつしか奴の背中で半分寝ぼけていった。
さっき、素直にごめんって言えたかな。そんな些末事を、漠然とした脳裏に浮かべながら。
「あのー、この辺だと思うんだけど、もしもし、郁乃ちゃん?」
……む?
「お? あう? 着いた?」
「いや、分かんないけど」
「あ、着いてる」
どうも閉じていたらしい目を瞬いて見渡すと、確かに此処は、私の家の区画。
ってことは、結構マトモに寝入ってたのか私は。
ぼやけた眼を擦ると、すぐ目の前に他人のうなじ。
私はぎょっとしてから、河野貴明におぶさっていたのだから当たり前と思い直し、それでまた現状を再認識してしまって。
「うわああああああ」
「ちょ、ちょっと、どうしたの? 急に暴れないで」
いや、まあ、少し錯乱しただけよ。こほん。
「そこの角から二軒目よ」
「良かった。全然違う場所だったらどうしようかと思ったよ」
安堵の表情を浮かべる河野貴明。ほっと吐く息が、少し荒い。
そいでもって、ようやくの我が家に近づくと。
「い、いいいいい郁乃ぉっ! どうしたのっっっっっ!」
私の3倍くらい錯乱した声が出迎えた。
窓からちらっと覗いた顔はすぐ引っ込んで、バタバタと外まで聞こえる階段を駈け降りる足音、ばぁんと一気に玄関のドアが開いて、
バタン。
あ、反動で指挟んだ。
「……いたひぃ」
「何やってんのよ」
「うぅ〜、急に閉まるドアが、じゃなくてっ!」
反射的に突っ込んだ私に、日常的に答えかけてから慌てて慌て直す。
「い、いくのどしたのっ!? 大丈夫っ! あれ? あれ? こここ河野くんがどうして此処にいるのっ? そのっ、車椅子っ、どうしたのっ?」
台詞長回しすぎると噛むよ、姉。
かくかくしかじか。
「ふぅん、そうだったんだ」
短回しな私の説明に、姉は事情を理解したようだった。
ホントにかくかくしかじかとか言ったわけじゃないわよ、念のため。
「ありがとうね、河野くん」
「いや、俺が車椅子壊しちゃったから」
「だからアンタのせいじゃないって言ってるでしょ」
「でも、無理に引っ張ったから」
「溝に落ちたのはあたしなんだから」
「あははは……はぁ」
背中とお腹で奴と私が責任の引き取り合いをしているのを見て、姉は笑ったが、
「どっちにしてもありがとう。じゃ、じゃ、郁乃はあたしが持つから」
何故か急いで、奴から私を取り返そうとする。その態度に、私は違和感を、
「え? 家まで運ぶよ?」
「いいからいいから」
覚える暇もなく、間に割り込むようにして姉は私を担ぎあげ……ようとして。
べちゃ。
「あああっ、郁乃ごめんなさいごめんなさいっ!」
だから、非力な癖に無理するなっていつも言ってるのに。
「肩だけ貸してくれれば大丈夫よ」
「ご、ごめんね……くすん」
「車椅子、此処でいいかな?」
よろよろ立ち上がった私と姉を心配そうに見てから、河野貴明がポーチの一角を指した。
「いいわ。後で修理に出すから」
「うん。それじゃ、俺はこれで」
「あ……」
家にあがって休んでいって。そう心に浮かんだ台詞を、私は言い損ねた。
数日後。
車椅子は無事復旧し、私も普通に学校に通っているんだけど。
「うーん」
私には二つほど気がかりが残っていた。
ひとつは河野貴明。
アイツには結局世話を掛けた事になるのに、お茶も出さずに追い返してしまってロクにお礼も言ってない。
いや、毎日同じ建物で学校生活を過ごしているのだから会いに行けばいいんだけどさ。
……別に会いたいわけじゃないわよ。自他共に認める図々しい性格でも、私は不義理は気にするのだ。
それで、なんで訪問しないかというと、気がかりふたつめ。これも半分河野貴明だけど。
残り半分は、姉。
あの時、アイツと私の間に割って入った姉の声に、私は聞き慣れない色を感じていた。
それはまあ、一般的には誰でも持っているだろうけど、姉が出すのはやや想像しづらかった感情。
一言で言えば、あれは嫉妬だったと思う。
「そ、それで、どうして河野くんと一緒だったのかな? 郁乃は」
「たまたまよ、公園で会ったの」
「そ、そう、なんだ……」
あの後、家でも姉は、私とアイツの事をしきりに尋ねたがった。
「公園に行ったの? 一人で?」
「あたしの勝手でしょ」
もちろん私は片っ端から姉の追及を撃退したけど、でも、内心穏やかでもない。
(……やっぱり、お姉ちゃんはアイツの事が気になるんだろうな。)
そう思うと、私がアイツをクラスに訪ねていくというのは、気が引ける。
いかに変態認定したとはいえ、姉が初めて気にしている男の子であれば、私が邪魔をするのも考え物だろうか。
そんな事を悩んでいたら、
「やあ、郁乃ちゃん」
放課後の廊下で、またも悩みの種の方が私を訪ねてきた。
「何の用?」
我ながら突っけんどんだなぁ。謝ろうとかお礼を言おうとか思ってるのに、顔を合わせるといつもこうなってしまう。
なんというか、どーも下心がありそうに見えるのよねコイツの笑顔は。
「車椅子、直ったんだ」
「そりゃ直すわよ。必需品だもの」
「そうだね。この間はごめん」
「だからアンタのせいじゃないって言ってるでしょ」
また口調がきつくなった。いかんいかん。
「逆にありがと。大変だったでしょ。助かったわ」
よし、とりあえずお礼は言ったぞ。
「え? いや、全然」
笑うが、車椅子と人間ひとり担いで徒歩数十分が楽なわけはない。強がりだろう。
「郁乃ちゃんの寝顔可愛かったし」
「〜っ!」
やっぱり礼なんかいらなかったかも。
「それで、だから何か用なの?」
「あ、うん、それで、弁償代わりといっちゃあ何なんだけどさ」
がさごそ。
私の再催促に怪しく周囲を窺った後、河野貴明はポケットから紙切れを取り出した。
なんかのチケットかしら? 枚数は、二枚?
「遊園地の優待券なんだけどさ、偶々もらったから」
え?
「ちょっと子供っぽいかも知れないけど、行けば楽しいと思うんだ」
何それ、私に言ってんの?
「もし良かったら……」
それって、デ……
「わ、わわわわ私も一緒に行くっ!」
凄いタイミングで背後から声がして、私と河野貴明は飛び上がりそうになった。
「お姉ちゃん!?」
「小牧っ!?」
ばばっと振り返った、そこには延々と廊下……の途中に曲がり角、から、
半カオ。
「見えてるってば小牧」
「何隠れてんのよ今更」
「あ、う、えへへへ……」
頬を掻きながら出現したのは、我が姉、小牧愛佳。
「ええっと……あのね、あのね、その、郁乃がデートなんて、じゃなくて、郁乃は身体が弱いから、ほら、保護者がついていった方がいいと思うの、私ね、自費でもぎゅっ、うぅ、舌噛んだぁ」
必死に色々言い繕うが、言葉と声の端々に私が垣間見たのは、例の聞き慣れない嫉妬色。
「分かったわよ。じゃあ三人で行きましょ」
それに押されてか、私は姉の意見に同調してしまう。
「うんっ! そうしよっ、ねっ? 河野くん?」
果たして姉は、一転して明るい口調になった。
「え、ええっと……」
が、今度は河野貴明が頬を掻く。何よ? なにか不満?
「その、なんだ。俺は最初から小牧と姉妹で行ってきたらって言おうとしたんだけど」
「「えっ?」」
そういう事は、先に言え。
「な、なんだぁ、それならそうと、早く言ってくれれば」
早とちりに赤面しつつも、あからさまにホッとした表情の姉。
だが私は、一服小考する。
姉と二人で遊園地で問題はないわけだが、それだと姉と河野貴明の関係は変化なしよね。
これは見張り付きで姉にコイツの実像を把握させる良い機会かも知れない。あと、私もまだ見極めたい気持ちも……
「……やっぱり、アンタも来なさい」
「「えっ?」」
三人で遊園地に行くことになった。
以上です。
次回、第4話「Triple Heart」
>>248 乙
先が楽しみな展開になってきたね
郁乃にライバル心を持つ愛佳というのは結構新鮮
大抵の小牧姉妹モノは両方で譲り合っちゃう展開だし
>>232 >もう ★ネタバレ注意★ しなくてもいいよね?
設定がAD準拠かどうかは、出来る限り明記して欲しいな。
ADプレイしてない人だけでなく、ADの設定自体を許容できない人も居るようだし。
248です
>250
了解です。AD設定が嫌な人も居れば、AD無視が嫌な人もいるでしょうしね
『めーぷる〜』は愛佳ED後ではありませんが設定は概ねAD準拠のつもりです
愛佳の嫉妬心ってのも郁乃storyで話が出たネタを使わせて貰いましたし、
郁乃や貴明の性格もAD版で書いてるつもりです。成否はともかく
もっとも、何をもってAD準拠かと考えると良く判らない部分もありますね
シルファが河野家にいたり、はるみが教室に居たりするのは明らかにADでしょうけど
郁乃が学校に来ていてもAD版とは限らない……その辺は書き手の意識次第ですか
>>248 乙です。
やっぱ相変わらず面白いっすね。
いくのんへの愛が山のように詰まってるのを感じました。
ただこのみやシルファには違和感がありましたかね、口調とか。
シルファ語はだ行→ら行だけ(例外はちびっこ→ちみっこくらいかな?)ですよ。
注文はそれくらい。
続き、楽しみにしてますのでがんばって下さい。
AD準拠かどうかなんて断りはもういらんと思うがなあ。
むしろ非準拠の時は断りがいる、って感じじゃね?
ひっじょうにどうでもいいんじゃない。断り。
>AD準拠かどうかなんて断りはもういらんと思うがなあ。
>むしろ非準拠の時は断りがいる、って感じじゃね?
そういうのを一方的に決めちゃうと、「非準拠なのに断ってなかった」ときに荒れる原因になる。
なら両方断るようにしといた方が良いんじゃないか?
しっかし、同一シリーズの新作と旧作なのに
設定の準拠とか非準拠とかが問題になるってすげえな
それだけADとそれ以前を別物として見ざるを得ない状況になってるってことだよ
悲しいけど仕方ないね
漏れは別に違和感を覚えないんだけどね
シルミルなんかXRATEDまでは特に描写されてないし、いくのんも基本線は変化ないし、
ちゃるよっちまーりゃんも、特にイメージが変わったってことはないしなぁ
XRATEDから間があったからメイドロボに自由にイメージ膨らませてた人達は辛いかもなって気はする
>XRATEDから間があったからメイドロボに自由にイメージ膨らませてた人達は辛いかもなって気はする
これ系の話になると、絶対こっちに持っていこうとする人いるよねw
ぶっちゃけ、自由にイメージ膨らませたせいでADのSS書けない奴は、初めからTH2のSS書いてなかっただけ
SSに限らずTH2の二次創作が寂れてるのは、単純にADがつまらなかったってだけ
これを一緒にするのは乱暴すぎるな
AD準拠でも非準拠でもいいから、よっちゃるの凸凹丼を誰か書いてくれないかなぁ・・・
>>258 それはいえるね
たとえXRATEDからの作家がイメージの乖離で書くのやめたとしても
単純にADが面白かった(萌えられた)なら別の作家が参加してくるはずだからね
XRATEDとADの内容の差、あるいは剥離が大きかったからな。
地方育ちの素朴な娘が大学進学で上京して、1年後に里帰りしたら
誰にでも股開くようなアバズレになっていた、みたいな。
>>261 鳩2は東京でどんな経験をしてきたんだw
上京先で訪ねて来た実の親よりレイプ(三宅)されて
その結果人生捨て鉢状態になったと推測(w
264 :
名無しさんだよもん:2008/05/09(金) 19:23:57 ID:unoCOu/yO
TH2のSSを書きも読みもしない人専用のスレは此処ですね?
そんなことよりSS書こうぜ。!
そういや5月に書くっていってたスクライドクロスオーバ一身上の都合でまだ書いてなかった。
元ネタ見直してから書こうと思うから誰は誰役がいいとかあったらどうぞ。
まぁ…反応もらえなくても批判されても書くんだけど。電波だし。
そもそもスクライド知らん俺はどうすれば
知らなければ知らないで構わないんじゃね?
コードギアスネタもあったけど、読む方も書く方もその辺は自由でいいでしょ
投下が少ないせいか知らんが、寛容になってきたなぁ〜〜。
じゃあToHeart2オルタネイティブでも……
ここは原点に返って小牧姉妹丼とか
よっちゃるを同時にいただきますとか
メイドロボ三姉妹と4PとかそういうエロエロなSSをだな。
よっちとのラブラブSSが読みたい
よっちゃん
「私をその名で呼ぶなっ!」
俺、(名前にや行は一つもつかないのにいつも酔っぱらってるという理由で)
学生時代のあだ名がよっちゃんだったので、よっちがよっちゃんと呼ばれるのは少しイヤだった……
誰か274とよっちが競演するSSを書いてみる気はないのかね
対立と融和どっちがいい?
えっと、設定とか、キャラの性格とか、まだ不勉強な面が多々あってスレ汚しになると思いますが、
ちょっと投下してみたいと思います。
宜しくお願いします。<(_ _)>
「・・・いやあ、また無理なお願いに参りまして、申し訳ありませんね校長先生。」
「いやいや〜、いつも来栖川さんにはたくさんのご寄付を頂いてますから、ご協力出来る事でしたら何でも。あ、冷める前にどうぞどうぞ。」
ややメタボ気味の校長に促され、来栖川エレクトロニクスのロボット技術研究開発室主任、長瀬源五郎氏は、お茶をズズッと飲み干した。
ようやく吹き始めた秋風が、応接室の窓をカタカタと鳴らせる。
「しかし、え〜、2年ぶりですかね。当校にロボットの生徒を受け入れるのは。」
そう言って、校長は、机上の履歴書・・・ではなく、製品仕様書風の書類を取り上げ、最初の項をめくった。
どう見ても、人間の少女としか思われない桃髪の少女の顔写真があり、その横には、サイズ以外は、素人にはよくわからない諸元がズラズラと書き連ねてある。
「・・・HMX-17b、ミルファ、ですか・・・。」
それが、諸元表に書かれていた型式名だった。
「“HM”という事は、メイドロボですな?当然、最新型なんでしょうなぁ。やはり、運用試験でこちらへ?」
「まぁ、確かに、それもあります・・・が、それは、むしろ後からついてきた目的でして。こちらへの入学は、彼女自身の、強い要望なんです。」
校長が目を丸くする。
「ほう?ロボットが、自分の意志で!?何やら、随分進歩したんですなぁ。おたくさんのロボットも、世の中も。」
ロボットが感情を示すのは、確かにマルチ達の実例を見てはいたが、そこまで能動的に動けるようになっているとは・・・と、素直に驚いた校長であった。
「こちらに通ってる生徒さんに作ってもらったAIの成果ですよ。姫百合さんの。」
あぁ、あぁ、あの双子の。姉の方の子ですか。えぇ、えぇ、確かに彼女は天才ですなぁ。
そう言ってうなずきながら、校長はもっともな疑問を口にした。
「しかし、なぜ当校なんですかね?その、ロボットの彼女が望んだのは?姫百合君がいるからですか?」
その質問を受け、長瀬氏は、急に、困ったような表情を浮かべた。
「いや、実は、ですね・・・こちらに通っている、ある男子生徒さんに、大変な興味、といいますか、好意、を抱いてましてね。その、つまり・・・人間で云うところの、恋愛感情です。」
あんぐりとする校長。
・・・はぁ、ロボットが恋愛ですか・・・いやいや、それも何やら、凄い事ですな・・・ですが、しかし・・・
「・・・当校は、一応、不純異性交遊は禁じとるわけですが。一応。建前上。最近の子たちに、古臭いと言われそうですが。」
えぇ、えぇ、よく判ってます。なるたけ節度は保つよう、言って聞かせますんで・・・
そう言ってから、真剣な顔つきになった長瀬氏。
「彼女に搭載されているAIは、確かに、非常に優れたものです。ほとんど、人間と変らない感情をシュミレート出来ます・・・が、やはり、まだ実験段階なんです。」
そして続ける。
「つまるところ、不安定です。彼女達が安定して起動を続けていく為には、何か、強い感情をインプットしてやる事が必要なんです。人間で云うところの、憎しみであるとか、あるいは、好意。もっと有り体に言えば、恋愛感情などの。」
・・・何やら難しい話になってきた。顎に手をやり、神妙な顔つきになって聞いている校長。
「自分の存在意義を、そこに見い出しているんです。・・・まぁ、実は、メイドロボですから、恋愛方向に大きく振幅するよう、感情のパラメータを組んだという部分は確かにありますが・・・。」
・・・何じゃ、それは。要するに、自分の意志で、ご主人様の夜のお相手も出来るメイドロボの研究開発かい、それは・・・!?
しかし、その実験を、うちの学校でされるのは勘弁して欲しいわい・・・
そんな事を考えて、頭が痛くなってきた校長。
「人とロボットの未来を模索していく上で、これは、非常に大きな意味を持つ機会になると思います。是非とも、ご理解、ご協力、宜しくお願いします校長先生。」
そう言って、深々と頭を下げる長瀬氏。
ふぅっ、と、観念した表情になった校長。
「わかりました。出来る事はなんでもご協力差し上げると最初に申しましたし・・・まぁ、いざという時は、来栖川さんのお力で、何とかお願いしますよ。」
それはご安心を、と長瀬氏。何しろ、“マッチ一本から宇宙開発まで”の、来栖川グループですから。
校長は、やや冷たくなったお茶を口に含んでから、一番聞きたかった質問を切り出した。
「・・・で、その、彼女が好意を抱いてる生徒というのは、ご存知なんですか、長瀬さん?」
ええっと、と、長瀬氏は顎に手をやってから、
「・・・こちらの2年生だったかと。姫百合君達の、友人の一人で、確か、河野貴明君、とか。」
校長もまた顎に手をやり、その生徒の名前を脳裏で反芻する・・・こうの、こうの・たかあき・・・
・・・ハッとする校長。
そして、心の中で、
『・・・また、あいつか!・・・女子が絡む問題だと、かならずあの生徒が中心にいる。今回も、ロボットとはいえ女性型だし・・・何というか、先代の生徒会長だった、某女生徒M並の問題児になりつつあるな、あいつは!』
校長の表情の変化を、怪訝な顔で見つめる長瀬氏。
「・・・?何か、問題でもあるんでしょうか、校長先生?」
いやーっ、はははっ、と、校長は、脂ぎった額を流れる冷や汗をハンカチで拭いながら、
「まぁ、何といいますか、人気者でしてね、その、河野貴明君は、ええ。成る程、あの子ですかぁ・・・。」
・・・授業中の、とある教室。
「ヘックシ!!」
「・・・なんだ、貴明。数式にお脳がショートして風邪引いたか?それとも、季節はずれの花粉症か?また、女の色香が風に乗ってやって来たんじゃねぇだろうな!?」と、雄二。
「そう言うの、いい加減、やめてくれよ!」と、貴明。
・・・なんか、急に、鼻がムズムズして・・・
「大丈夫、河野君?保健室、行こうか・・・?」
愛佳が席を立ち、貴明に寄り添おうとする。
「わわっ、いいんちょ!何でもない!大丈夫だってばっ!」
・・・再び、応接室。
キンコーン、と、午前の授業の終了を告げるチャイムが鳴り響いてきた。
「さて、と。それでは、私は、そろそろこの辺りで、おいとまさせて頂きます。」
そう言って、ソファの椅子から立ち上がった長瀬氏。
そして、また深々と、頭を下げた。
「それでは、どうか、私の“娘”を、宜しくお願いします。」
・・・ ・・・
・・・まったくもう、さっさと学食行かないと、目当てのカレーパンが売り切れちゃうじゃないのさっ!と、ひとりごちながら、担任に頼まれた書類を小脇に抱えつつ、職員室に向かってズカズカと廊下を歩む長瀬由真。
その途中で、教頭に送られながら廊下を歩いてきた中年紳士とすれ違い、それが、見知った顔である事に思い当たってから後ろを振り返った。
・・・もういない。職員の通用口の方に向かったのか。
『・・・えっと、確か、エレクトロニクスに勤めてた源五郎おじさんだっけ?・・・何しに来たんだろ。またロボットの運用試験でもやるんかな?」
えっと、こんな感じで。先は全然考えてません(マテ
乙
>>285 乙。
んー、会話やらの流れは悪くないと思うけど、あまりにオチがないというか、「そこで終わり!?」感がこうひしひしと。
続きがあったらたぶんまた評価変わると思うけど、正直今は論評しにくいかな。
ともあれ今後に期待!
明日にはすっごい古い書きかけの続きを挙げようと思ったり。毎日覗いてるけどあまりに活気がなさ過ぎる。
……よし、自分を追い込んだ。書こう。
285っす。
続けようとは思うんですが、ちょっとまだ考えがまとまってないもので・・・
とりあえず、はるみが貴明の前に現れるまでの、舞台裏的なお話にしようかな、と。
実は、元々、ミル・シル√の後日談的なお話で、ロボット排斥団体が、貴明とか姫百合家
とか三姉妹に色々嫌がらせをするお話を考えてたんですが、途中で嫌になって、テキスト
捨ててしまいました(汁
とりえず、ちょっと時間下さい。
なんだ。やんちゃな娘の学園生活ぶりが気になって仕方がない、
源五郎オトーサンの極秘潜入観察レポートを楽しみにしていたのにw
>>289 シリアス物いいやん。がんばって仕上げようよー!
確かにロボ排斥の話はあちこちにあるけど、逆にネタとして絶対に美味しいんだからさ。
や、俺もがっつりシリアスなの書こうとして書ききれなかった事があるからなんとなく気分はわかるんだけどさ……orz
何て言うの?俺の屍をこえて行け?(´∀`)
293 :
288:2008/05/15(木) 19:18:01 ID:W9W0UJI80
PCのデータ半壊した\(^o^)/
覚えてる限り書いてどうにかしよう
それでは投下します。といっても長く書けなかったので5レス予定
放課後。いつものように郁乃ちゃんを送る……それはいいのだが、郁乃ちゃんの顔がまともに見れない。
いつも抱っこをしていたくせに、初心なままなんて言わないで欲しい。
あれはちゃんと心を落ち着けてからやるから大丈夫だっただけのことで、
心構えが無ければ、女性との接触に冷静でいられるはずが無い……我ながら情けないけど。
そんなふうに、ちょっと挙動不審になりながらの帰り道のこと。
「今週の日曜日?」
「そ。私は別にいいんだけど、どうしても何かしたいって言うから。
予定があるなら別に無理しなくてもいいわよ。私は別に気にしてないんだから」
「行く。是非とも行かせてもらうよ」
郁乃ちゃんへの償いを考えていたものの、何も思いつかなかった俺には渡りに船だ。
何も思いつかなかったことについては、今は気にしないことにする。
「で、何をすればいいのかな?」
「買い物に付き合って。ま、荷物持ちよ、荷物持ち」
買い物ということは、きっと委員長と一緒なんだろう。女の子の買い物、
それも2対1というのは多少辛いが、せっかく郁乃ちゃんから申し出てくれたんだ。断るわけにはいかない。
「分かった。精一杯荷物持ちをさせてもらうよ」
「じゃ、駅前に10時に待ち合わせね」
そして日曜日。俺は9時には駅前に居た。
女性を待たせるのは言語道断!とタマ姉に教育されていたせいもあるが、
委員長の性格からしてかなり早く来ることは容易に想像できる。さらに、相手は郁乃ちゃんだ。
遅れたら何を言われるか分かったもんじゃない。
でも、さすがに早く来すぎたかもしれない。後30分ぐらいは待たないと駄目だろう。
「早いわね」
「うわっ!!?」
「きゃ!?な、何もそんなに驚かなくてもいいじゃない」
そんなこと言われても、急に後ろから話し掛けられたら誰だって驚くと思う。
文句を言おうと思って振り返る。
「……」
「な、何よ。あんまりじろじろ見ないでよ。私の私服がそんなに変?」
女の子の服はよく分からないが、凄く可愛らしい、女の子女の子した服を郁乃ちゃんは着ていた。
「え、あ、いや、そうじゃなくて……すっごく似合ってるから」
「なっ!?」
しまったと思ったが、既に遅い。自分の顔に血が上っていくのが嫌って程分かる。
穴があったら入りたい、と郁乃ちゃんと知り合ってから何度思ったことだろう。
な、何か話題、話題……
「そういえば、小牧さんは?」
「……なんでそこでお姉ちゃんが出てくるのよ」
さっきまで真っ赤だった郁乃ちゃんの顔が、途端に不機嫌なものに変わる。
「いや、買い物って言うからてっきり小牧さんも来るのかな……と」
「姉は来ないわよ。悪かったわね、私一人で」
「え、あ、その」
「予定より早いけど、行きましょ」
そういうと、郁乃ちゃんは一人で駅に向かって歩いて行ってしまう。
な、何で?俺何かまずいこと言った?
「何ぐずぐずしてるのよ。さっさと来る!」
「は、はい!」
「あの、郁乃ちゃん?」
「……フンッ」
電車に乗ってから数十分。郁乃ちゃんの機嫌を取ろうと話しかけてみるのだが、
全くとりつくしまが無い。そもそも、何で不機嫌になったのか分からないから謝りようも無いし。
「はぁ……でもさ、郁乃ちゃん。一緒に行くの俺でいいの?」
「荷物持ちなんだし、誰でも一緒でしょ」
「いや、男と女が一人ずつで出かけてたら、誰が見てもデートにしか……」
自分でそこまで言って気付いたが、誰が見てもこれはデートだ。
「ご、ごめんね。変なこと言って」
「本当よ。デートじゃなくてに・も・つ・も・ち。分かってるの?」
「いや、俺は分かってるけどさ。周りの人がどう思うか」
「周りの人がどう誤解しようと自由でしょ」
それはそうなんだけど、誤解されたら郁乃ちゃんが困ると思うんだ。
なんて考えてはみるものの、これ以上言っても意味が無さそうなのでやめておいた。
ああ神様、どうか今日は知り合いに合いませんように……
目的のショッピングモールに到着して、女物の服が売っている店を中心に歩く。
周りは女の人か、カップルばかり。それを見るだけで気後れしてしまう。
「何でそんなにびくびくしてるのよ」
「でも、誰かに見つかったら困るし。こういうとこに来るの初めてだし」
「あのね、私まで恥かくでしょうが。もっと堂々としなさいよ、男でしょ」
そうだ、今日は郁乃ちゃんへの償いで来てるんだった。郁乃ちゃんに恥をかかせるわけにはいかない。
「分かった。頑張るよ」
「そうそう、その意気。あんた、見た目は結構良いんだから、堂々としてればもっともてるわよ?」
「え?」
「だから、見た目は悪くないって言ってるの」
またしても俺の顔が熱くなっていく。見た目が良いなんて初めて言われたんだから仕方ない。
それも、相手は人を滅多に褒めなさそうな郁乃ちゃん。嬉しくないわけが無い。
「ちょっと、堂々とするんじゃなかったの?これぐらいで真っ赤にならないでよ」
「いや、まさか郁乃ちゃんに褒められるとは思ってなかったから。嬉しくて」
「こ、これぐらいで嬉しがらないでよ。ほら、さっさと次の店行くわよ」
そういわれて郁乃ちゃんと店を出たとき
「あー先輩!こんなところで買い物ッスか?」
「え?」
もっとも会いたくなかった二人組みに会ってしまったんだ。
何年ぶりか分かりませんが7話です。
読んでお分かりの通り例の二人組みを登場させようとして、話が収集付かなくなり前後編にしました。
しかし、スランプが物凄いため内容も物凄く薄くなっております。いつのラブコメだろう……
今度は、変に焦らないできっちり練りこんでから書き上げたいと思います。
うひょーすげー久しぶりに素直になれない女の子との日々キター!
第6話が18スレ目なので6スレぶりか。復活おめ!今後も焦らず自由に書いてくらさい
とかいいつつ、このSSにはやっぱりお姫様だっこなシチュを期待するw
おお、まさかこの作品の続きが来るとは……
設定忘れてるから書庫に行ってくる ノシ
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ご 注 意 ! !
これから投稿するSSは、AD菜々子ルート後のお話です。
菜々子ルートのネタバレが含まれておりますので、まだクリアしていない方は
12レス読み飛ばしてください。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
あたし、菜々子。全国のお兄さんをガッカリさせた罪な女の子。えへっ☆
あたしには好きな人がいます。名前は河野貴明。あたしのお兄ちゃん……って、この間も言った
よね。なので、いかしょーりゃく。
放課後。あたしはいつものように、校門の前でお兄ちゃんと待ち合わせです。
この前色々あった、タマお姉さんとこのみさんとは、あの後仲直りしました。ふたりとももう、
あたしがいてもいなくても、お兄ちゃんにあんな風にくっついたりしないって約束してくれました。
あ、でも、菜々子もお兄ちゃんをひとりじめするのはよくないって思ったから、放課後一緒に
帰りませんかって言ったんだけど、タマお姉さんたちからはそれもえんりょするって断られました。
うう、やっぱ悪いことしちゃったかなぁ……
――あ、お兄ちゃんだ!
「お兄ちゃ〜ん」
あたしが手を振ると、それに気付いたお兄ちゃんはあたしにかけよってきて、
「菜々子ちゃん、待った?」
「う、ううん! 全然待ってないよ!」
あうぅ〜、お兄ちゃん、やっぱり優しいも〜。それに笑顔がとってもステキで――
ドカッ!
「ぐはぁっ!?」
「きゃうっ! お、お兄ちゃん!?」
お兄ちゃんがいきなりあたしの上にのしかかってきました! お、お兄ちゃん、こんなところで
なにするの!? な、菜々子だって心の準備が……
「ふぅーん。噂はホントだったんだ。まさかあんたがロリコンだったとはね、河野貴明」
「い、いきなり何しやがる!」
お兄ちゃんが振り返った先には、自転車にまたがった女の人がいました。メガネをかけていて、
何だか気の強そうなお姉さんです。
「うわ、こんな公衆の面前で女の子押し倒して、あんた警察に捕まるわよ」
「お前が後ろから自転車でぶつかってきたからこうなったんだろうが!」
「あら、ごめんなさい。あたし、性犯罪者は無条件でひき殺すことに決めてるから」
自転車にまたがったままオホホと笑うお姉さん。お兄ちゃんに恨みでもあるのかな?
そんなお姉さんを見て、お兄ちゃんはハァとため息をついて立ち上がると、
「菜々子ちゃん、大丈夫? ケガしなかった?」
と、あたしを起こしてくれました。
「あ、うん、大丈夫」
ホントはちょっとお尻が痛いけど、ガマンだも。
「で」
と、お兄ちゃんはお姉さんに振り返り、
「これで、格ゲーでボロ負けのウサは晴れたのか、由真?」
「な!?」
そう言われたとたん、由真と呼ばれたお姉さんの顔がたちまち赤くなって、
「じょ、冗談じゃないわ! あんなの負けた内に入らないわよ!」
「20戦全敗だったのに?」
「アレはこっち側のレバーがバカになってたからよ! 後で店員に文句言ってやったわ!」
「へぇ〜、機械のせいにするんだ」
「言い訳なんかじゃないわよ! 次の日には目の前でキッチリ修理させたんだから!
これでもう一度勝負よ、河野貴明! あたしの方が上だってハッキリ証明してやるわ!!」
「ふん、望むところだ」
お兄ちゃんはそう言うと何故かあたしに手を合わせて、
「菜々子ちゃん、ゴメン! 今日は一緒に帰れなくなっちゃった。
こいつ、言っても聞かないからこてんぱんに叩きのめさないといけないんだ」
「え? でもお兄ちゃん、ゲームセンターだったら菜々子も一緒に――」
「いや、多分長丁場になると思うから、菜々子ちゃんを付き合わせるわけにはいかないよ。
悪いけど、今日は一人で帰ってくれるかな? 明日はちゃんと一緒に帰るから」
「う、うん……わかった……」
「話はついた、お・に・い・ちゃ・ん?」
「ああ、ついたよ。んじゃ、さっさと行くぞ」
ふたりはそう言って、あたしを置いて行ってしまいました……。
「れ」
ここはお兄ちゃんの家です。置いてけぼりにされたあたしは、途方にくれてここに来ました。
「ろーしたんれすか、なななな? やけに落ち込んれますけど、ご主人様と何かあったんれすか?」
お兄ちゃんの家のメイドロボさん、シルファお姉ちゃんです。ちょっと口は悪いけど、ホントは
優しいお姉ちゃんです。
「う、うん。あのね……」
あたしは、さっきあったことをお姉ちゃんに話しました。
「そーらったんれすか……そんなことが」
お姉ちゃんが何か真剣に考えてます。どうしたんだろ?
「いいれすか、なななな、落ち着いて聞くれすよ。これは由々しき事態れす。
ズバリ! その女は、ご主人様に気があるんれす!」
「え、えええっ!?」
ど、どうしてぇ〜!? お兄ちゃんにイジワルしたり、お兄ちゃんと勝負とか言ってたのに?
「ツンレレってヤツれす」
「積んれれ……?」
「普段(ふらん)はツンツンしてるけど、二人きりになったらレレレレ、これがツンレレれす」
「お姉ちゃん、ツンツンは分かるけど、レレレレってなぁに?」
あたしがそう尋ねると、お姉ちゃんは「ぴ、ぴぃ……」と困った顔になりましたが、
「ち、ちみっこはホントにものを知ららいれすね! もっとべんきょーしろれす!
つまりその女は、うまいことご主人様を挑発してゲーセンで勝負らとか言いながら、心の奥れは
ご主人様をゆーわくしようと密かに企んれるんれすよ!」
「え、えええっ!?」
あ、あうぅ、お兄ちゃんを取ろうとする女の人がまた現れたも!
「さすがにゲーセンなんて公衆の場れは二人きりにはなれないから、今はまだ”ツン”の時期なんれ
しょう。でもそれを何度(なんろ)か繰り返し、さりげなくアプローチを仕掛けて、いずれ何らかの
口実れ二人きりになる機会を作って、そこで一気に”レレ”に入る……そうなったら終わりれす。
ツンレレの魔力にヘタレご主人様はメロメロ、その女のトリコになってしまうんれす!」
「あ、あうぅ〜!」
そ、そんなぁ〜! お兄ちゃんがあの由真って人のトリコになっちゃうの!? お兄ちゃんと由真
さん、恋人同士になっちゃうの!? そ、そんなのやだも〜!!
ど、どうしよう〜? ――か、考えるも。しんきんぐたいむだも。
えっと、えっと……あ、そうだ!
「じゃ、じゃあ、菜々子もツンレレになる! 菜々子もツンレレになれば、きっと負けないも!」
「無理れすね」
あっさりお姉ちゃんに否定されてしまいました。あうぅ〜。
「ななななの話を聞くらけれも、その女が筋金入りのツンレレであることは明白れす。
にわか仕込みのツンレレじゃ、とてもその女には敵わないれす」
「じゃ、じゃあ、どうしたらいいの!?」
「問題はそこなのれす。ツンレレの魔力の前には、このシルファの頭脳をもってしても……」
あたしとお姉ちゃん、二人ともいい考えが浮かばず、困ってしまいました。その時――
「ほっほっほ、のぉーっほっほっほ!!」
い、いつの間にかお庭にかみちゃまがいます! なんか腕を組んで笑ってます!
「誰(られ)らお前は!?」
ベランダの窓を開け、お姉ちゃんがかみちゃまにそう叫ぶと、
「房中術世界チャンピオン、スパイまーりゃ!」
またです。この前と同じポーズを決めてます。
でも、かみちゃまにはこの前ひどい目にあわされたので、もうこりごりです。なのであたしは、
ひとみちゃんから教わった、かみちゃまを追い払うおまじないを大声で唱えました。
「にこちゅうしねっ!」
「ガーン!!」
やりました! 効果はバツグンです! かみちゃまはその場にヘナヘナと崩れ落ち、
「な、なーりゃんからそんな言葉を聞くとは思わなかったぞえ……
この俺がニッコニコ動画にハマっているのを見抜いたとは、なーりゃん、成長したのう」
見抜いたのはひとみちゃんなんだけど、とりあえずそれはおいといて、
「もう、かみちゃまの言うことなんか聞かないも! 帰って!」
「そんなつれないこと言うなよぉ〜。この前だって結局うまくいったじゃんかぁ〜」
「でも、あたしが犬さんにベロベロされたとき、かみちゃまは面白がって写真とってたも!」
「ま、それはそれ。世の中結果が全てだぞ、なーりゃん」
「う、うぅ〜」
かみちゃまはちっとも反省してません。と、
「らから、お前は誰(られ)らと聞いてるんれす!」
かみちゃまをにらんでるお姉ちゃん。
あ、そうか、お姉ちゃんはかみちゃまのこと知らないから、ふしん人物だと思ってるんだ。
「勝手に人の家に入って、けーさつ呼ぶれすよ!」
だけどかみちゃまはへーぜんと、
「ほう、貴様、たかりゃんのメイドロボのクセに俺様を知らないとはな。
ならばその記憶領域にキッチリ書き込んでおくがいい。俺様の名はまーりゃん。いずれこの世界の
絶対的支配者になる存在にして、たかりゃんのカキタレだ」
「ぴ、ぴぃっ!?」
お姉ちゃんはなぜか真っ赤になって、
「ち、ちみっこの前でなんてこと言うれすか、この痴女は!?」
なんか、お姉ちゃんが慌ててます。カキタレって何なのかな?
「ねぇかみちゃま、カキタレってなぁに?」
「おう、それはな、セ」
「言うなー!!」
ドカバキゲスッ!!
わ、お姉ちゃんがかみちゃまをボカスカ殴ってる!
「か、顔はやめて〜! あたしアイドル声優なのよっ!」
「まぁ、確かに前回はチトやり過ぎた感はある」
シルファお姉ちゃんをなんとか止めて、今、かみちゃまは居間でお姉ちゃんが出したお茶を飲んで
ます。ちなみにさっきあれだけお姉ちゃんに殴られたのに、かみちゃまはケガひとつしてません。
不思議です。やっぱりかみちゃまだからでしょうか?
「で、チミたち、そのツンデレ娘への対抗策はあるのかえ?」
「うぅ……」
「むむむ……」
あたしもお姉ちゃんも答えられません。するとかみちゃまはニヤリと笑い、
「ならば、やはりここはこの俺様の出番というわけだな」
「で、でも、この前みたいな恥ずかしいのはもうやだも……」
「安心しろなーりゃん。今回はコスプレの必要はない。シンプルかつ効果的に、そのツンデレ娘を
たかりゃんから引き離す方法をたった今思いついた。さすがは俺!」
自信たっぷりって感じのかみちゃま。うう、ホントに大丈夫かなぁ……
次の日の放課後。あたしはいつものように、校門の前でお兄ちゃんを待っています。
「お待たせ、菜々子ちゃん」
お兄ちゃんが来ました。なんかいつもより早い気がします。もしかして昨日のことで気をつかって
くれたのかな?
「お兄ちゃん、帰ろ」
あたしがそう言ってお兄ちゃんの手を握ろうとしたときです。
ドカッ!
「ぐえっ!?」
「きゃっ!」
昨日と同じです。お兄ちゃんの後ろから由真さんが自転車でぶつかってきて、あたしとお兄ちゃん
はこけてしまいました。
「ゆ、由真! お前また――」
でも、ここから先は昨日とは違うも! かみちゃまの作戦通りに――
「う、うわぁぁぁぁぁん!! う、腕が痛いよぉ〜!!」
「な、菜々子ちゃん!?」
「え? ちょ、ちょっと?」
左腕を押さえて痛いフリをします。ホントは痛くないけど、作戦なのでウソついちゃってます。
「痛いよぉ〜! 痛いよぉ〜! お兄ちゃ〜ん!!」
「菜々子ちゃん、もしかして腕を……! ゆ、由真! お前なんてことを!!」
「あ、あたし、そんなつもりじゃ……」
お兄ちゃんも由真さんもすっかり菜々子のお芝居にだまされてます。う、うぅ、変なカッコもイヤ
だけど、ウソつくのもイヤだなぁ……で、でも、これもお兄ちゃんを取られないためだも!
と、そこへ、
「おぅ、どーしたなーりゃん。大きな声出して」
やってきたのはかみちゃまです。何故か黒いサングラスをかけてます。
かみちゃまはあたしの左腕をとって、
「あー、こりゃ折れてるな。ポッキリと」
「こ、骨折!?」
「う、ウソっ!?」
お兄ちゃんと由真さんがビックリしてます。かみちゃまはサングラスをちょっと下げて由真さんを
ジロリとにらんで、
「で、どうしてくれんのよ、これ」
「ど、どうしてって……」
「うちのなーりゃんをこんな目に遭わせて、どう責任取るのかって聞いてるのだよ!
あーあ、こりゃ酷いや。この折れ方だとなーりゃん、もう鉛筆も持てないかもしれないなぁ」
「せ、先輩。菜々子ちゃんは右利きですけど。
それに”うちのなーりゃん”って、菜々子ちゃんは別に先輩の家族でも何でも……」
あ、お兄ちゃんが疑ってる。けどかみちゃまは全然慌てずに、
「俺様はそっちの女に聞いてるんだよ!
で、どうすんの、姉ちゃん。この不始末、どうしてくれんのよ、ああん?」
「……と、とりあえず病院に」
「分かってない、全然分かってないよ姉ちゃん! 姉ちゃん自身がどうすんのか聞いてんだよっ!
なぁ姉ちゃん。誠意って何かね?」
「せ、誠意?」
「そ、誠意。この幼い少女の将来を奪いかねない大怪我を負わせて、姉ちゃんはそれに対してどう
やって償ってくれるのかって聞いてるのだよ。ホラ、どうするのか答えたたまへ」
「そ、そんなこと言われても……」
かみちゃまに言い寄られ、由真さんはすっかり困り果ててます。
「まぁ、なんだ、俺様も鬼じゃない。
ホントは一生涯この俺様の下僕になってもらうところだが、それは勘弁してやる。その代わりだ」
「そ、その代わり?」
「金輪際、たかりゃんには近づかないとこの場で誓え! 勿論誓約書にも拇印を押してもらうぞ!
あ、拇印で思いついたけど、結構いい乳してるな貴様。ついでにその乳揉ませろ」
「え、えええっ!? その子と全然関係ないじゃない!」
「やかましい! 関係なら大アリだ! そもそも貴様がたかりゃんにぶつかったりしなければ、
なーりゃんだって腕を折ることなんてなかったんだからな!」
「う、うう……」
「で、どうするよ、ああん? まさかイヤとは言わないよなぁ。この程度で許してやると言ってる
んだ。ここは素直に応じるのが賢明ってものだよ、チミィ。さて、まずは誓約書誓約書っと」
そう言ってカバンから一枚の紙を出すかみちゃま。そんなかみちゃまを見ていたお兄ちゃんは、
疑わしそうな目であたしを見て、
「ねぇ菜々子ちゃん。これってもしかして、またまーりゃん先輩の――」
「わしの孫娘を恐喝してるのはお前かぁぁぁぁぁぁ!!」
ドカンッ!!
「ぐげっ!?」
それは、あまりに突然のことでした。
いきなり、おっきな車が校門に突っ込んできて、かみちゃまをはね飛ばしたのです。
かみちゃまはポーンと空を飛び、ずっと先の地面にドサッと落ちました。――な、菜々子、人が
お空を飛ぶところ、初めて見ちゃった。
「大丈夫じゃったか、由真!?」
そのおっきな車から、一人のおじいさんが出てきました。
「う、うん、おじいちゃん」
「ぬう、長瀬の一族たる由真を恐喝しようとはなんという不届き者じゃ!」
「な、長瀬? 由真、お前確か名字が十波じゃ――」
「あ、あああ違う違うって!」
キョトンとするお兄ちゃんと、慌てる由真さん。何がちがうんだろ?
「お、おじいちゃん、もういいから早く帰ろう、ね?」
「い、いやしかし、あの不届き者をこのままには……」
「もう大丈夫だから! あれだけやったらもう脅してこないから! ね、そうだよね!」
由真さんはお兄ちゃんにそう聞いて、お兄ちゃんも、
「あ、ああ、さすがのあの人でも、あれなら大丈夫だろ……」
かみちゃまは地面に寝たまま、ピクリとも動きません。だ、大丈夫かなぁ、別の意味で。
「う、うむ……由真がそこまで言うなら」
由真さんに背中をぐいぐい押され、おじいさんは車に戻りました。そして由真さんも自転車を
車の中に押し込んで、
「じゃ、じゃあ、そういうことだから!」
と言い残して車に乗ると、おっきな車はあっと言う間に走り去っていきました。
「……菜々子ちゃん」
動かないかみちゃまと、それからあたしを見て、お兄ちゃんは、
「当たり屋って、知ってる?」
その後、あたしはお兄ちゃんの家で、お兄ちゃんにこってり叱られました。
「あうぅ〜。ごめんなさ〜い」
「全く……、この間も言ったけど、もうあんな人の言うことなんか聞いちゃ駄目だよ。
ったく、あの人は菜々子ちゃんにロクでもないことばかりさせて……」
「れも、ご主人様らって悪いところはあったんじゃないれすか?」
「俺が?」
シルファお姉ちゃんはお兄ちゃんをジトッとにらんで、
「そもそも、ご主人様がななななを置き去りにして、ツンレレ女とゲーセンに行ったりしなければ、
ななななだってこんなことしなかったれすよ。なのに、これじゃななななが可哀想れす」
「う……、た、確かにそうだな」
すると、お兄ちゃんはあたしの頭にポンと手を置き、
「ゴメンな、菜々子ちゃん。もう菜々子ちゃんを置き去りになんて絶対にしないから。
今度、由真から勝負を挑まれても、もう応じないよ。約束する」
優しい笑顔であたしの頭をなでてくれました。あうぅ〜、嬉しいも〜!
「う、ううん! 菜々子はいいよ、由真さんと勝負しても。
でも、その時は菜々子も一緒に連れてって。菜々子、頑張ってお兄ちゃんを応援するから!」
「うん、そうだね。菜々子ちゃんが応援してくれるなら絶対負けないよ」
「はいはい、兄妹仲直りでめれたしめれたしれすね」
シルファお姉ちゃんが呆れ顔です。でも、これでぜーんぶ解決だも! よかった☆
「よかねーよなーりゃん! 俺様のこと完全に忘れてるじゃねーか!!
ってか、たかりゃんも他の奴らも、俺様が車に轢かれたってのにだーれも助けちゃくれないし!
気がつきゃ夜の校門にひとりきり。ちくしょー! お前らそんなに俺様のことが嫌いかーっ!!
……はぁ、なんか空しいなぁ。てろるちょこ買って帰ろっと」
おしまい。
どうもです。また書いてみました。
さすがに河野家のときみたいに、週一ペースでネタは思い浮かばなくなってます(^^;
また何か思いついたら書いてみますので、そのときはよろしくです。
>>315 菜々子ちゃんの雰囲気がよく出てておもしろかったです!
河野家のときから思ってましたけどすごく文章力があってうらやましいです。
面白い作品ありがとうございました。
それから「当たり屋」の被害にあったことあるんでちょっと親近感わきました…
乙
しっかし、うまいっつーか滅茶苦茶よくADなり菜々子なりを再現してると思うんだが
再現率が高いと逆に微妙な感じがするってのは、ホントにADってダメだったんだな…
あはは、乙&GJ! この勢いの良さは河野家の頃と変わらず健在ですなw 今後とも是非いろいろ書いてください
この人の前の作品読みたいから置いてある場所とタイトル教えて欲しい
だれかよっちかちゃるのSS書いてみる気ない?
どうもです
>>321さん、ご紹介ありがとうございますm(_ _)m
>>319さんへ
実は他にも二作ほど書いてます
苦手なものを克服しよう
焼き肉を食べよう
という単発ものです
書庫さんの、このみのページにありますのでよろしければそちらもどうぞです
>全国のお兄さんをガッカリさせた罪な女の子。
ええ、全くその通りでございます
>>323 シルファ語減点6れす。
らめらめらめっコれすね、ぷぷぷ。
>252の変換法則か。それもキャラ特性の一要素として大事だが、一要素でしかないとも言える
個人的にはむしろ由真はこんなに大人しいだろうかと思ったけど、菜々子ちゃんパワーに流されてるんだなきっと
書庫の更新まだ〜
ADをクリアしたからスレ閲覧自制解除
とりあえず保管庫見てこよう
過疎なのか…以前はお題がどうとかで結構賑わってたようだが
これから投下するのはAD非準拠のSSです
(ADやってないもんで)
XRATEDしかやっていない方でも楽しめるはず
むしろOVA準拠っぽい感じです
全15レスです
「く〜っ、くやしぃぃぃぃぃぃ!」
「はいはい、今回は俺の勝ちね。」
「絶対店の陰謀だわ。この爪の弱さはありえない!」
「いや、だからそれを考慮に入れてとるのがクレーンの攻略法って物じゃないのか?」
今にも暴れそうなショートカットの女の子…十波由真の肩をどうどう、と叩いてなだめながら、
俺…河野貴明はため息をついた。
気がつけばこの変な関係もずいぶん長いこと続いている。
あの日、校門を挟んで明暗を分けたあの時以来、こいつは俺に勝手にライバル意識を燃やして
突っかかってくるようになっていた。
そして気がつけば季節はもうすぐ夏。
衣替えがすんでもこの奇妙な関係は不思議なことに続いていて、そして俺もこの騒がしくも
楽しい関係を今では気に入っていた。
もはや何度目になるのかも忘れたが、今日もまたゲーセンで鉢合わせした俺と由真は
レースゲームで対戦し、俺に勝って気を良くした由真がクレーンゲームでの勝負を挑んで
きたのだった。
結果は由真の惨敗。所持金を使い果たしたところで俺がターゲットのぬいぐるみをゲットして
勝利を収めたのだ。
「ぬぬぬぬ……これで勝ったと思うなよ〜!」
「はいはい…」
「あれぇ……たかあ…じゃなくて、河野君に由真。」
後ろから聞きなれた声を聞いて、俺と由真は振り返った。
そこにはわがクラスのいいんちょこと小牧愛佳がスーパーのビニール袋を手に立っていた。
制服のままなので下校途中でついでに買い物して帰るところだったんだろう。
中身はさほど入ってないように見えたが、小牧さんにとっては結構重そうな感じだった。
「小牧さんは今帰り?」
「う、うん。今日のお夕飯の材料を買って帰るところだったの。河野君と由真はまたゲームで対戦?」
「まあね……また河野貴明の罠にはめられたわ。」
「あ、あははは……」
由真の言いがかりに近い説明を聞いて、小牧さんは苦笑いしていた。
「あ、そのぬいぐるみ、クレーンゲームでとったの?」
「ん? ああ、これ。」
小牧さんの視線がいつの間にか俺の手に握られていたぬいぐるみに向いていた。
「今日の戦利品。」
「へぇ……結構かわいい…かも。」
「そう? ……小牧さん要る?」
「え? いいの?」
小牧さんの顔がぱっと輝いた。
あんまり小牧さんの趣味とかって聞いたことが無いけど…やっぱり女の子らしく部屋には
ぬいぐるみとかいっぱい置いてあるんだろうか。
「じゃ、はい。」
俺が差し出すと、小牧さんはそろそろと手を伸ばしてぬいぐるみを受け取った。
そのとき……俺の手の指先と、小牧さんの手の指先がちょっとだけ触れ合った。
「わひゃ!」
「うおっ。」
小牧さんが小さく悲鳴を上げたので、俺もびっくりして飛びのくと、ぬいぐるみは二人の
手を離れて小さく宙を待った後、地面にぽとりと落ちた。
「あ、ご、ごめんなさいぃぃ」
小牧さんは半べそ状態でぺこぺこと頭を下げている。
「……何やってんのよ。」
由真があきれ顔でぬいぐるみを拾い上げると埃を払って小牧さんに差し出した。
「あ…ありがとう由真ぁ。」
小牧さんは照れくさそうに笑ってぬいぐるみを受け取ると、胸元にぎゅっと抱きしめて
顔を摺り寄せてその毛並みを楽しんでいた。小牧さんらしいなぁ。
「愛佳は男の子苦手だから仕方ないにしても…あんたも女の子苦手なの直ってないのね。」
「まあね…余計なお世話だ。」
俺が拗ねてそう答えると由真はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべていたが、しばらくして
突然難しい顔で考え込みだした。
「どうかしたのか?」
「……手ぇ出して。」
良くわからないながらも俺は右手を差し出すと、由真も右手を出してがっちりと握手を交わした。
なんのこっちゃ。
「なんのまじないだ、これ?」
「……あんた、女の子苦手なのよね。」
「まあ……このみとかタマ姉みたいになれてる相手だと大丈夫だけど。」
「それって、女の子として見てないってこと?」
「まあ、そうだなぁ。タマ姉もこのみも幼馴染で兄弟みたいなものだし。」
「……なんで。」
「は?」
由真はなぜかうつむいたままブルブルと肩を震わせていた…握った手が万力に締め付け
られてるみたいで痛いんだけど。
「なんであたしの時はびっくりしないのよ!」
「はぁ!?」
由真はどうも俺が由真の手を握っても平気な顔をしているのが気に入らないようだった。
「だってなぁ……由真は女の子って言うより…喧嘩友達みたいなものだし。」
「それってあたしは女の子としてみる気もないくらい色気がないって言いたいわけ?」
「いや、そんな事は言ってないだろ。」
由真の怒りは一方的にヒートアップしていた。
「これはあたしに対する侮辱だわっ!」
「そういわれても…」
由真は腕を組んでぶつぶつつぶやきながらなにやら考え込んでいたが、突然顔を上げると
人差し指を俺の鼻先に突きつけて言った。
「決めたわ。あんた明日ヒマよね?」
「まあ、暇だけど…って、何するつもりだ? また勝負か?」
「ち、違うわよ! そ、その…デートよデート! あたしを女の子として認めさせないと、
あたしのプライドが許せないの!」
「で、デート!?」
予想の斜め上を行く展開に俺は思わず叫んだ。
一方、勢いで言ってしまったもののよくよく考えて恥ずかしくなってきたのか、由真は
俺の目の前で人差し指を向けたまま耳まで真っ赤になっていた。
「あっ、明日の朝11時に駅前で待ち合わせだからねっ! 忘れたりしたらMTBで
ギタギタに轢くからっ!」
真っ赤な顔でそういい捨てると由真は走って商店街の人ごみの中へ消えた。
後には俺と、呆気にとられたままの小牧さんだけが残された。
「なんだったんだろうな、突然デートなんて。……小牧さん、わかる?」
そう言って小牧さんのほうを見ると……どこか重病人でも見るような哀れみと、あきれた
ような眼差しで俺を見て深いため息をついた。
「たかあきくんって…鈍感だよねぇ。」
俺なんか悪い事した?
◇
次の日の朝、俺は駅前で由真を待っていた。
一応デートだというからちょっとはお洒落もしてみた。馬鹿にされたくないし…
「…ちょっと。」
それにしても、もうすぐ約束の時間だってのに未だに由真の姿は見当たらない。
まあ、いつもぎりぎりだしな、あいつは。
「……ちょっとってば。」
きっと今頃MTBを全開で飛ばしてる最中だろうな。制服のときもスカート短いのに全力で
ぶっ飛ばしてるし。
「ちょっと! 河野貴明!」
「な……って、由真?」
呼ばれて振り向くと、そこに由真が立っていた。
由真はMTBではなく、汗ばむ陽気の中で長いコート姿だった。それが女の子であると
いうことを除けば、まるっきり露出狂の変質者のいでたちで怪しいことこの上ない。
「おまえ、何でそんな格好してんだ?」
「なんでも良いでしょ……ほら、いくわよっ。」
そう言って由真は手を取ると、俺をぐいぐいと引っ張って歩き出した。
……どこ行くつもりだ?
由真に手を引かれてたどり着いた先は、駅の近くの公園の林の中だった。
結構奥の方で人気も全くない。
「こんなところまで来て何するつもりだ?」
少し開けた広場にきたところで俺は聞いてみた。
だが由真は答えずに、持っていたスポーツバッグからビニールシートを取り出して広げだした。
「そこに座って。」
「へ?」
「……いいから座れ。」
……ドスの利いた声で言われて、俺はすごすごと従った。
俺が行儀良くシートの上に座るのを見届けると、由真はコートを脱ぎ捨てた。
下から現れたのは…なぜかメイド服だった。なるほど、これを隠すためにわざわざ暑苦しい
コートなんか着てきたわけか。
「これを頭につけてっ、と。 ……ふふーん、どう? 驚いた? 男の子ってこういうの
好きなんでしょ?」
由真はヘッドドレスを頭に載せると、俺に向かって挑発的なポーズをとって見せた。
「まあ…雄二とかは好きだと思うけど……」
そう言いつつも、俺は由真の姿に目を奪われていた。
かなり大胆に開いた胸元からは由真の胸の谷間が見えていたし…タマ姉ほどではないけど、
結構でかい…おまけにガーターベルトで吊ったストッキングに包まれた足は艶かしいことこの上ない。
ぎりぎりの短いスカートと相まって絶対領域がまぶしかった。
そして、俺は女の子と接するのが苦手なだけで女の子に興味がないわけじゃない。
健康的な高校生男子だ。
つまり……はっきり言って目の毒だった。
「へ〜っ、あんたは平気なんだ。ふーん。」
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、由真がしたり顔で俺の顔を覗き込んでくる。
そうやって前かがみになると、余計に胸の谷間が…いや、いかん。ここで負けを認める訳には行かない。
「メイドがそんな偉そうな態度で良いのか? ご主人様に奉仕するものなんだろ?」
「ふむ……それもそうね。それじゃ……」
由真はこほん、とひとつ咳払いすると居住まいを正してからにっこりと笑って言った。
「何か御用はございませんか、ご主人さま。」
「……ずいぶん手馴れた感じだな。」
妙に堂に入ったメイドぶりに俺が感心して見せると、またしても由真は得意そうに答えた。
「まあね。慣れてるし。」
「慣れてるって……メイドのバイトでもしてたって言うのか?」
俺が聞くと由真はしまった、という表情を浮かべた後、あたふたと取り繕った。
「えっと……まあ、そんなものよ。ほら、メイド喫茶とか。」
「ふーん。まあ良いけどさ。で、そんな格好までしてきて、今日は何するんだ?」
「ふっふっふっ。」
由真はにやりと笑うと、いつものように人差し指を俺の鼻先に突きつけた。
「今日はあんたをあたしの魅力でメロメロにして萌え殺してあげるわっ!」
「……なんじゃそら。っていうか、萌え殺すって何だよ。」
「というわけで、まずはこれよっ!」
「人の話を聞けよおい。」
俺を無視して由真がスポーツバッグから取り出したのは可愛らしいナプキンに包まれたお弁当箱だった。
「あんた、お腹空いてるでしょ? もうすぐお昼だし。」
「いや、朝起きたのが遅くて朝飯食ったのが遅かったからまだ……って、はいはいお腹
空いてます。」
由真がすごい目つきで睨んできたので、お腹が空いてることにしておいた。
「女の子の手作りのお弁当が食べられるなんて、普通の高校生男子なら泣いて喜ぶところでしょ。
しかもこのあたしの手作りなんだからね。感謝して食べなさい。」
「そう言う事言うところが色々台無しにしてる気がするんだけどな…」
文句を言いながら俺は箸を手にした。
蓋を開けてみると、中身は海苔ご飯にから揚げに黄色い玉子焼きにたこさんウインナー、
それにポテトサラダ。きわめてオーソドックスでおいしそうな弁当だ…見た目は。
「一応聞くけど…砂糖と塩間違えたりとか、嫌がらせで唐辛子入りとかないよな?」
「失礼ね……お母さんと作ったんだからそんな事ないわよ。」
「お前の手作りじゃなかったのか。」
「え? ……あっ!」
しまった、という風に口を押さえたあとで、ふてくされたように口を尖らせながら、
由真は言い訳をはじめた。
「お弁当作りたいから台所貸してっていったら…なんでお弁当作るのか聞かれて、あんたに
作って食べさせるって話したら、なんか勝手に盛り上がっちゃって……無理矢理お母さんが
あたしを手伝ってくれちゃったのよ。」
……多分、自分の娘に春が来たとか勘違いしちゃったんだろうな。俺と由真はそんな関係じゃ
ないんだけど。
「とにかく! 味見だってしたんだから大丈夫よ。四の五の言わずにとっとと食べてぎゃふんと
言いなさい!」
「はいはい。そんじゃいただきまーす、っと…まてよ。」
俺はあることに気がついて、再び箸を止めた。そして意地悪な笑みを口元に浮かべながら、
由真に箸を差し出した。
「今日は俺がご主人様なんだよな。じゃあ、このお弁当、俺に食べさせてくれよ。」
「え? ……えええええええ!!」
大人しく俺が食べることを期待して油断していたのか、由真は耳まで真っ赤になって叫んだ。
「あっ、あんたが自分で食べなさいよ! 何であたしがそ、そんな…こっ、恋人みたいな事……」
「今日は俺のメイドになって萌え殺すんだろ。だったらご主人様の言うことは聞かなきゃな。」
「ううっ……わかったわよ。貸しなさい!」
由真は俺の手から弁当箱と箸をひったくると真っ赤な顔のまま俺を睨んだ。
「ほらっ、何から食べさせれば良いのよ。」
「違うだろ。『何からお召し上がりになりますか、ご主人様。』だろ。」
ニヤニヤ笑いながら俺が言うと、由真は一瞬俺を睨んだ後でひとつ咳払いをすると、
真っ赤な顔のまま上目遣いで聞いてきた。
「…ご主人様、今日は何からお召し上がりになりますか?」
「うーん、そうだな……玉子焼きからいってみようか。」
由真は無言で玉子焼きをつまみあげると、それを俺の口の前にずい、と突き出した。
だが俺は口を開けない。
「……ほら、さっさと食べなさいよ。」
「違うだろ。『ご主人様、あーん。』だろ。」
ニヤニヤ笑いながら俺が言うと、由真の顔の赤さがさらに増した。
「ご、ごっ、ご主人様、あーんしてください。」
「あーん。」
屈辱のためか、羞恥のためか、箸をブルブル震わせながら俺の口に玉子焼きを押し込んだ。
「ふむ……美味いじゃん。」
「うううう……あんた、覚えてなさいよ。」
「まあ、覚えておくよ。で、次はご飯が良いな。」
「ええっ、まだやるの?」
「そりゃ、全部食うまでだろ。」
「ぐぐぐぐ……これで勝ったと思うなよ〜」
いつもの台詞を吐きながら、由真はご飯をつまんで俺の前に差し出した。
◇
「わ……由真ってば、大胆だよぉ…」
「手作りのお弁当を手ずから食べさせるとは、あの子もやるわね。タカ坊も、言ってくれれば
タマお姉ちゃんが食べさせてあげるのに。」
「む〜、このみもタカ君にお弁当食べさせてあげたいでありますよ。」
◇
「あー、食った食った。美味かったよ。」
「……」
由真はオーバーヒートしてぐったりしていた。
「ん〜〜〜良い天気だな。飯も食ったし、眠くなってきたなぁ……」
広がる青空を見上げてひとつ伸びをする。
……なんか、ほんとに由真と二人っきりでピクニックにでも来たみたいな気分だ。
俺がそんなことを思いながら、ふと横の由真の様子を見たら……なにやら悪巧みを思いついた
ようなニヤニヤ笑いを浮かべて俺を見ていた。
「な、何だよ、気味悪いなぁ。」
「べっつに〜」
由真は崩していた足を正してキチンと正座しなおして姿勢を正す。
「ご主人様、眠いのでしたらどうぞ私の膝枕をお使いください♪」
そう言いながら、由真は短いスカートから覗く生の太ももをぺちぺちとたたいて見せた。
「なっ、ななな」
「ふふ〜ん。女の子が苦手でヘタレなあんたには、生の太ももで膝枕なんて無理よね。
まあ、負けを認めるなら勘弁してあげる。どうする? ご・主・人・様。」
女の子の膝枕…しかも生の太ももなんて刺激が強すぎる。だがここで引き下がれば由真にまで
ヘタレのレッテルを貼られる事になる。それはなんとなく悔しい。
「……わかった。そこまで言うなら寝てやる。逃げんなよ。」
「へ? ……うそ、ほんとにあたしの膝で寝るつもり!?」
「だからそう言ってる。 ……それじゃ、お、お邪魔します。」
俺はおっかなびっくりビニールシートの上で寝っ転がると、恐る恐る由真の膝枕の上に
頭を乗せにかかった。
「ちょ、ちょっと……やっ、くすぐったい…変なとこ触ったら殺すわよっ!」
「だから暴れんなってば。」
かなり短いスカートとストッキングの間の絶対領域に頭を乗せる。
見上げると胸のふくらみの向こうにかなり真っ赤になって引きつった由真の顔が見えた。
きっと俺の顔もかなり赤いに違いない。だけど後頭部に感じる太ももの弾力と人肌の温もりは
とても心地よかった。それに…女の子の良いにおいもするし。
「……気持ち良いな、これ。」
「当たり前よ。こんな恥ずかしい思いまでして、文句とか言ったら許さない。」
そう言って俺を睨む由真の視線と、由真の顔を見ていた視線が絡み合う。
なんとなく、由真と見詰め合う。最初怒った顔だった由真の表情が、見詰め合ううちに
どことなく熱を帯びた視線に変わって行った。……だんだん、視線をそらせなくなる。
「……あ、あっ…そ、そうだ。」
妙な雰囲気になりかけたところで、由真が何か思い出したのか先に視線をそらした。
俺も内心ほっとしていると、再び視界に現れた由真の右手には耳掻きが握られていた。
「膝枕、といえば耳掃除よね。というわけで耳見せなさい。」
「別に耳垢は溜まってないと思……って、いててて。」
由真は無理矢理俺の頭をひねって耳を上に向けさせると勝手に覗き込み始めた。
そのままだと首がおかしくなりそうだったので、渋々ながら俺は身体を横向きにする。
「……結構綺麗ね。」
「だろ? 結構自分で掃除してるし。」
「あ、でも……奥の所にでっかいのがある。」
「だったらとってくれよ。」
「うーんと……ここっ!」
ごりっ。
「いででで…もうちょっと優しくやってくれ。」
「がっちりくっついてるんだってば。男だったらちょっとは我慢しなさいよ。」
ごりごりっ。
「痛い痛いって。」
「もうちょっとなんだから我慢しなさいって…ほら、取れた。って、でかっ!」
そう言って、由真は耳掻きの先に乗った耳垢を俺の目の前に差し出した。
「これはでかいかも。」
「これはあたしの耳掃除テクニックが優れていた証ね。」
「なぜにそんなに威張ってるんだよ。耳垢がでかいのは由真の手柄じゃないだろ。それに
滅茶苦茶痛かったぞ。」
「…さぁ、何の話かしら。それより、今度は反対側見せなさい。」
「へいへい。」
俺はそのままごろり、とその場で転がって反対側の耳を差し出した。
「ちょ、何やってんのよこの変態!」
由真があわてた声を出したところで俺は気がついた。
目の前には由真の下半身があって…まるで由真のお腹に顔をうずめようとしているかのような体勢だった。
「わっ、ご、ごめん。」
「だから顔はそっち向けなさいっ! この変態! むっつり助平!」
「だっ、だからっ、押さえ込まれたら離れられないって!」
逆上した由真が俺の頭を自分の太ももに力任せに押さえ込み、俺はそれから逃れようと必死に暴れた。
だがそのとき、すぐ傍の茂みががさがさと揺れた。
「わひゃ〜〜!」
「きゃっ」
「わぁっ!」
「なっ、なんで愛佳がいるのよっ! それに向坂先輩にこのみちゃんまでっ!」
「た、タマ姉にこのみだって!?」
頭を押さえ込まれたままなので俺には良くわからないが、確かにさっきの声はタマ姉に
このみに小牧さんの声だった気がする。
「え、えっとぉ…ちょっと散歩で通りかかってぇ、」
「愛佳はこんな人気のないところ散歩で通るわけ?」
「はううう…」
「まあ、怒らない怒らない。タカ坊が女の子とデートするっていうタレコミがあったから、
ちょっと様子を見にね。」
「愛佳! あんた!」
「あううう…ごめん、由真。」
「その声はやっぱりタマ姉! こら、由真、頭を離せって」
「タカ君メイドさん好きだったんだね。メイドさん好きはユウ君だけだと思ってたよ。」
「のわっ、このみ! それは誤解だ!」
「このみ、早速後でメイドの衣装買いに行きましょ。買ってきたらタカ坊の家でご奉仕よ。」
「わーい、タマお姉ちゃんとメイドさんになるでありますよ。」
「…あら? 小牧さんも興味ありそうな顔ね。一緒に衣装買いに行ってみる?」
「へ? あ、え、えっと……はい……」
「小牧さんまで…」
「……それにしても、お手製のお弁当を食べさせてあげたり、膝枕で耳掃除なんて、ずいぶん
お熱いご様子じゃない? ねえ、由真さん。」
そう言ってタマ姉が由真をからかうと、由真が耳まで真っ赤になった。
「なっ、ななな……」
「タカ坊に命令されていたときも結構まんざらでもない様子だったし。」
「ち、ちがっ、違う…」
そして、最後の一押しがタマ姉によって実行された。
「由真さん、あなた、本当はタカ坊のことがすきなんでしょ?」
「なっ、そ、そんな、そんなことっ!」
由真は逆上して立ち上がると、いじめっ子の笑みを浮かべたタマ姉の鼻先に人差し指を
突きつけて力いっぱい叫んだ。
「こっ、こんなヘタレで卑怯者の河野貴明なんて好きなわけないでしょっ!」
ああ、そうかい。
ところで、皆さんは俺がさっきまでどんな体制だったか覚えていらっしゃるだろうか。
……そう、由真の膝枕に頭を乗せたまま、がっちり押さえ込まれていたわけだ。
由真が突然立ち上がったということは、当然俺の頭も放り出された訳で。
ごちん☆
俺は後頭部から落っこちて……地面にしたたか頭を打ち付けた。
…星が見えたよ。
「え? ちょっと、貴明?」
「タカ坊!?」
「タカ君の目がぐるぐるになってるよ!」
「た、たかあきくんがっ!? はうっ……きゅう。」
そして、周りの騒動をよそに、俺の意識は急速に闇に飲まれていった。
気を失う寸前、あわてた由真の顔がちょっとだけかわいいな、と思った。
◇
その後、意識を失ったまま家まで運ばれた俺は、なぜか4人のメイドさんに入れ替わり
立ち変わりかいがいしく看護される事になった。
ちなみに、その時の事が雄二の耳に入り、涙を流して悔しがった上に俺をつるし上げようとしたが、
ばれて逆にタマ姉に折檻されたのは結構後の話だ。
この間発売された由真のメイドフィギュアを見てるうちになんとなく思いついた話です
久しぶりに由真を弄ってみたかったのさ…
でも久しぶりにTH2SS書いたらすっかり鈍ってて、由真と愛佳の書き方忘れてました
タマ姉とこのみもなんか怪しいし
なんかキャラがそれっぽくねえよ、という指摘は甘んじて受けます...orz
GJ! こういうほのラブバカ話は和むなあ。
このネタで OVA やってほしいくらい。
乙〜
>「今日は俺がご主人様なんだよな。じゃあ、このお弁当、俺に食べさせてくれよ。」
それにしてもこの貴明、ノリノリである。
>>348 乙&GJ
小気味いいおバカ話でとても面白かったよー。
書き方忘れたって言うけど、少なくとも由真と愛佳は十分らしかったと思うけどな。自爆娘由真と詰めの甘いちょい黒娘愛佳って感じで。
まあ、タカ坊はちょっと大胆かな?と思った程度。
これからもじゃんじゃん頼む!
シルファ vs 由真 ツンデレメイド対決見てみたいyo
>>348 乙〜
ノリノリでちょっと大胆な貴明とツンデレの由真のコンビっていいね。
おもしろかったからまた頼みます。
>>352 その提案に一票ww
>>352 だったらそれに瑠璃も加えてくれ。
あとツンデレ系はいないよな。
感想どうもです
由真が十分それっぽいということで良かったです
どうも間が開くと客観的に「〜っぽさ」が見れなくなるみたいで、書いてて加減がわからないんですよね
あまり間隔あけないで書くようにしないとダメですね
由真は書いてて楽しいキャラですね
ツンのときは虚勢張って突っ張って空回りして、というのが楽しく、
デレの時はべたべたし過ぎない気分の良いでれっぷりが楽しいという2度美味しいキャラだと思ってるので
基本的に素直でひねくれていないのも良いし
瑠璃はツンは基本拒絶一辺倒なので楽しくない
デレになると素直にデレ切れないあたりが楽しいのですが
シルファはなにせADやってないので良くわからんですね
そろそろ手をつけるべきかな…
というわけで、河野家ツンデレメイド対戦(仮)は辞退します
どなたか有志求むw
じゃあ電波が来たので書きます。季節は春ですが一応AD準拠?
ゴールデンウィーク最終日。朝を通り越すこと約2時間。
目を覚ますと、階下から美味しそうな匂いが漂ってきた。
(ん? シルファ? 戻ってたのか?)
寝ぼけ眼を擦りながらダイニングに向かうと、台所に立つメイド服の背中。
シルファ……じゃない?
「お? あっ、おはよう寝ぼすけ貴明っ」
「由真!?」
俺の気配に気がついて、振り向いたのは活発そうに前髪の跳ねた少女、長瀬由真、俺のまあ、いわゆるその、ガールフレンド。
「なに焦ってんのよ、魚は焦げてないわよ?」
由真は俺と付き合い初めてまだひと月ほどなのだが、いつのまにやら渡したつもりのない我が家の鍵まで持っている。
だから、勝手に俺に家にあがりこんで、朝食を作ってくれていたとしてもそう驚くことではないし、
「それとも、メイド服に穴でも開いてる? だったら貴明のせいよ」
メイド服を着ているのも実を言うと初めてではなくて、
「あのお節介なメイドロボがオーバーホールだからって彼女にメイドをさせるなんて」
ハイ。もっと実を言うと連休中毎日この姿で通ってくれてましたコイツ。
けど、今日はマズい。
「だから、シルファ、今日戻ってくるんだってば」
「あれ? 明日って言ってなかった?」
「言ってない」
「いいや言った」
コイツの嘘が分かりやすいのは、この際なんの慰めにもならない。
「どうせ来栖川の工場から出荷されてくるんなら、早くて夕方でしょ?」
言った本人も信じて無さそうな、由真の台詞が終わるより早く、
ガチャリ。
「ご主人様ぁ〜、お待ちかねのシルファがたらいまもろりましたれすよ〜!」
河野家に、本物のメイドロボが舞い戻った。
「ご主人様ぁ、まら寝てるのれすか〜? 寝ぼすけご主人様はシルファが足蹴にするれすよ〜……ぴひゃうっ!?」
メイドロボとも思えず鼻歌混じりに上機嫌でダイニングにやってきた金髪おさげの美少女は、台所の風景を目にして飛び上がった。
キッチンに立つメイド服姿の由真と、パジャマ姿の俺、目が吊り上がっていくシルファ。トレードマークのおさげまで跳ね上がって見えるのは、目の錯覚だと信じたい。
と、とりあえず挨拶など……
「あ、あはは、お帰り、シルファ、調子はど」
「ご主人様はらまってくらさい!」
ハイ。ゴメンナサイ。
「られに断って、ここれ何をしてるのれすか!」
ビシっと俺を黙られせて、もっとビシっとメイド服姿の由真に指を突きつけるシルファ。
「貴明に断って、故障中の駄メイドロボの代わりに朝ご飯を作ってあげてたのよ」
ふふん、と鼻を鳴らして得意げに答える由真。いや、俺に断ってはいないだろお前。
「シルファ、らめめいろろぼじゃないもん!」
「あら? そうだっけ?」
瞬く間に泣きそうになったシルファに、からっと答える由真。
コイツ、挑発は上手いんだよな。
「ご主人様のめいろろぼは、シルファらけらもん! UMAUMAはたらのじゃじゃ馬おんならもん!」
「ウマウマ言うなっ!」
挑発されるのもウマいけど。
ともかく、シルファは由真が俺の恋人だって認めてるけど、それだけに俺のメイドロボという地位にはプライドを持っている。
由真はそれを知ってて、意図的に今日もメイド服姿で登場したわけだ。
「とにかく、朝ご飯はあたしが作るから。あ、何ならアンタも食べる?」
「ぴきゅっ!」
攻撃は最大の防御とばかり、食事をしないシルファにあてつける由真。
対するシルファ、俯いてワナワナと震えていたが、
「きっ!」
やおら俺を振り返った。え? 俺?
「わかったのれす。朝ごはんはUMAUMAが作るら良いのれす」
一転淡々とした口調で言い放つと、シルファは俺の手を引いてソファに座る。
「そのあいら、ご主人様はシルファにひざまくられす」
「え? いや、それはちょっと、のわっ!?」
ぐうぅぃっ! とロボ力で引っ張られ、俺はソファの上に引き倒された。
ふに。
横倒しで頭を押さえ付けられた頬に、柔らかいシルファの太股の感触。
顔の上半分には上質の来栖川製メイドロボ制服の生地が、下半分は短めのスカートから覗く生足の素肌が。
「ご主人様、いいこいいこなのれす」
ぐりぐりと俺の頭を撫で回すシルファの手は乱暴だけど、その度に顔がすべすべした脚に押しつけられて。
……気持ちよくないって言ったら、嘘になる。
カチン。
妙に響いたその金属的な音は、ガスレンジのスイッチが切れた音。もしくは由真が。
「……。」
振り向くと無表情に、歩いてこちらに向かってくる、やけにゆっくりと、目を逸らせない、近づいて、違う気持ちよくなんか、間近にやってきて、うわ許して、ほんの出来心で、手が伸びて、もう駄目です、皆さんさよーならーっ!
「ていっ!」
ごきょっ! ごろごろっ!
首が折れそうな衝撃の後、ソファーから転げ落ちる俺。勢いよく床に脚が腰がぶつかって痛くて、直後に頭が。
ふにょ。
あれ? やけに柔らかいものに落下した?
「ふふん」
得意げな声が上から、見上げると由真の顔。
じゃあ俺の頭の下はというと、いつの間にか正座した由真の両膝で。
「やっぱり私の方がしっくりくるでしょ? ひ・ざ・ま・く・ら」
ソファの上で呆然とするシルファを見上げて、由真は仰向けの俺の顔を撫でた。
「ぴ、ぴいいっ! 負けないのれす!」
ソファを蹴り飛ばして−リミッターが外れたシルファはちょっと怖い−立ち上がり、腰に手を当てる金髪おさげのメイドロボ少女。
「えい! なのれす!」
ソファがどけた空間にしゃがみこんで、由真に膝枕する俺の頭に手を伸ばす。
が、
「ガードっ!」
由真は気合い十分の声を飛ばして、俺の頭に覆い被さるように上体を折り曲げた。
「どう? これで手が出せないでしょ?」
「むむ! ずるいれす! ふーっ!」
伸ばした手を引っ込めて唸るシルファ。それはいいんだけど、
「あ、あのさ、由真」
「何よ、いいところなんだから邪魔しないで」
「いや、その、顔に、その」
俺は一般的な横型膝枕ではなくて、正面から仰向けに由真の両膝が作る溝に収まっていた。
そこに由真が思いきり被ってきたってことは。
「当たってる、いいところが」
いや、それはもうしっかりと柔らかいおっぱいの膨らみが。玩具のメイド服の生地が薄くて、下のブラジャーの質感まで。
「えあっ? きゃっ!?」
それに気付いて反射的に身を起こす由真。
またまた実を言えば、膝枕とか胸が当たるとか以上の事もしてるけど、やっぱそこはそういうんでもないみたい。
などど考える間もない次の瞬間、
「隙ありれすっ!」
声と手とどっちが早いか、シルファの両手が、開いた由真の身体から俺の頭をもぎ取った。
「ああっ、この泥棒!」
「どっちがれすかっ!」
俺の頭が外れた膝を立てて姿勢を起こし、再び俺の方に手を伸ばす由真。
「させないもん!」
シルファの叫びと共に、由真の姿が俺の視界から消える。否、俺の視界が全面ブラックアウトして、
「うぷっ!」
顔面全体に、さっきの由真と同種の膨らみが、さらに強烈に押しつけられた。
「あ、あああああっっ!」
由真の叫び声。たぶん指さしてるんだろうな。
「ふんっ、シルファのおっぱいらご主人様のものらもん」
大胆な言葉とは裏腹に、ちょっと恥ずかしそうなシルファの口調、しかし行動は変わらない。
「くぉらっ! このエロメイドロボっ!」
「離さないもん! ぎゅうぎゅうらもん!」
ぎゅうぎゅう。
ヤバい。スポンジの柔らかさとゴム毬の弾力を兼ね備えた物体に鼻も口も塞がれて、マジ窒息しそう。
「だったら引きずり出してくれるわ!」
がしっと俺の腰の辺りに手が掛かる感覚の次の瞬間にがしっと抱きつかれる感覚。
そして、ぐいーっっっ!
「むにゃっ!?」
ぷるんっ、だか、ずるっ、だか擬態語が定かでないけれど。
俺は由真の手によって、いやむしろ身体ごとの牽引作業によって、シルファの肉座布団の間から引きずり出された。
「っとおぅっ!?」
勢い余ってごろんと転がる俺。由真とシルファと、両者の手から身体が離れる。
「ぶはあっ」
とにかく呼吸、呼吸。
「ご主人様っ!」
「貴明っ!」
両耳からステレオで呼びかけられても、答えようがないんだけど。
「ふみっ!」
位置的には、俺の頭はシルファの方に近かったようで、先に白い手が伸びてくる。
「させるかっ!」
対する由真の声は少し遠目に聞こえたのだけど、ふわっと空気が動いた途端。
ばはっと何かが被さるような音がして、また俺の視界は闇に包まれた。
「あ? あれ?」
さっきと違って、顔面に圧迫感は来ない。
その代わりに、ふわりと軽く鼻先に被さっているのは布の感触。
頭の下は変わらず硬い床の手応えに、耳の両側にそそっと触れるのは、人肌?
で、脳天のあたりに微妙に弾力のある柔軟感があったりして。
「ぴ、ぴひゅーっ!」
シルファが沸騰した音が、少しくぐもって聞こえる。
「ふ、ふしららなのれす! UMAUMAはへんたいれす!」
な、何が起こってるの?
「ら、らんせいの顔にすわるなんて、しゅくじょのやることれはないのれす!」
「か、顔に座ってはいないわよっ!」
ぐいっと顔が両サイドから圧迫される、これは、由真の内股?
ってことは、俺の頭は、
「べ、別にスカートの中なんて頭突っ込まれたことあるんだから!」
由真のメイド服の裾の内側で、頭にあたってるのは由真の……
「お股で顔を挟むのも、へんたいのやることなのれす!」
うあ、やっぱりそういうシチュですか。
「ご主人様をへんたいのお股から救い出すのれす!」
がしっと抱えられる、今度は膝の辺りかな? う、膝小僧に思い切りぐにぐにしてるのは、
「あ、アンタこそ男の膝を乳に押しつけて喜ぶなんて変態じゃない!」
ひょっとしなくてもシルファのおっぱい。
「聞く耳もたないのれす!」
ずるずるずると凄い力で、由真のスカートから抜けていく俺の頭。
やがてぱあっと視界が開け、眩しい午前中の太陽に目が焼かれ、なお足方向に景色が流れ、
「どこまで持って行く気だっ!」
だがしかし、がきっと掴まれた両脇の衝撃と共に身体が止まる。掴んだのはもちろん由真。
そして、綱引きが始まった。
「ご主人様は、シルファのご主人様なのれす!」
ぐいいいいいいいっ!
「貴明は、あたしの優先先取物件なのっ!」
ぎいいいいいいっ!
シルファは俺の両膝を、由真は俺の両腕を、それぞれ抱き抱えて引っ張り合う。
必然的に、俺の膝と俺の肘には、力加減なくそれぞれの胸が押しつけられて。
「あだだだだだだだだっっ!」
いるんだけどそんな状況じゃない。
「ちぎれる! ちぎれるぅっ!」
単純に力からいったらロボであるシルファが上だろうけど、人相手の時はそれでも本気は出せないようで、どうやらちぎれる事はなさそうなんだけど、それってつまり、ちぎれる寸前で釣り合うってことみたいで。
「痛い痛い、二人とも引っ張らないでっ!」
俺の悲鳴が本気の懇願に変わるのに、10秒とかからなかった。
「う、ご、ごめん」
「ご主人様、ごめんなさいなのれす」
幸運な事に、二人はすぐに我に還ってくれた。
「やっぱり、引っ張るのは良くないわよね」
「そうれすね。引っ張ったらいけないれすね」
ホッ。分かってくれれば。
「引いて駄目なら」
え?
「押してみろれす」
へ?
なんですか、その二人の相撲かラグビーでも始めるような低い姿勢は。
「UMAUMA! 勝負れす!」
「望むところよ駄メイドロボっ!」
そして二人は激突した。正々堂々と、真正面から力の限り。
……間に俺を挟んで。
あれから5分間のことは、よく覚えていない。
幸いな事に二人とも膝立ち状態からの衝突だったので、ぶつかった衝撃自体はさほどでもなかったんだけど。
「そこのドアまで押し込んだら、あたしの勝ちね!」
「まろからほうりらしてシルファが勝つのれす!」
むぎゅ、ぎゅう、ぎゅうううっ!
おしくらまんじゅう対決。ただし正面同士。
間でショックアブソーバーと化した俺は、転がった勢いで二人よりさらに低い姿勢で屈んでいたもので、ちょうど顔の高さに二人の胸が。
「ぐはっ!」
両側から圧迫されて目が回り、逃げようにも両手は二人の腰に挟まれて、押しのけようとしても手応えが柔らかすぎて力が入らない。
い、息が、息が。
「ぷはっ、はふっ、むぐ!?」
空気を求めて口を開いたのが過ち。どちらのものか分からない肉塊が呼吸を塞いで、逆から頭にぶつかってくる衝撃に、俺の意識は急速に薄らいでいったのだった。
それで、数分後。
「ご、ごめん貴明」
「ご主人様、らいじょうぶれすか?」
気がつくと、床に転がった俺を、二人が心配そうに覗き込んでいて。
(あ、ここは天国かな)
だって、こんな可愛い女の子が二人も目の前に。
「痛っ!」
夢見心地な俺を頭痛が襲って、現実に引き戻す。
「良かった、目が覚めたんだ」
「心配したのれす」
だけど、現実に戻っても、やっぱり由真とシルファは可愛くて。
「大丈夫、ちょっと休んだら良くなるよ」
その幸せを噛みしめながら、俺は二人に微笑んで……
「あ、じゃあ、あたしが膝枕で休ませたげる!」
「それれは、シルファの膝枕で休むが良いのれす!」
NEVER END
以上です。
はい。勢いだけです。製作時間3時間半。推敲もなんもしてません。
シルファ語減点も2,3箇所ありますね。というか、由真はともかく、
シルファは本当はもっと奥ゆかしいと思うけど、まあなんつーか、流れで?
いいじゃん!いいじゃん!!テンションMAX!!!
>>365 これはいい展開!リクエストに答えてくれた
>>365にも感謝だが、
>>352もGJ!
自分的にはどちらの口調もけっこう自然だったなぁ〜
貴明を奪い合う、由真とシルファっていう展開もGJ!
いいものを読ませてもらったよww
・・・すんません、280です。
「近未来のイブ」がもうなかなか先の展開思いつかないんで、ちと間繋ぎでネタものを。
あんまりくだらないんで、キャラスレの方に一度落っことしたものなんですが(汗
とりあえず。
・・・教室の、ある日の昼下がり。
「よぉ、貴明。朝から冴えネェ顔してんな。やっぱ、アレか?ミルファちゃんがいねぇと寂しいってか。」
「確かに、彼女がいないと、なんか賑やかさに欠けるよね。ところで、貴明君、雄二君、今日はどうしちゃったの彼女?」
「あ、いいんちょ、まだ言ってなかったけ。ロボサッカーの試合の、予選なんだって。絶対優勝するって、すごい気合入ってたけどね。」
「へぇー、そうなんだぁ。そういえば、以前、全国準優勝した事があるって聞いてたけど・・・応援行ってあげなくて、いいの?」
「流石に予選から全部は無理だから、準決勝くらいから見に行こうかな、と・・・」
ガラッ!
「大変やーっ!!ごーかんまーっ!たかあきーっ!!」
「ど、どうしたの瑠璃ちゃん、血相変えて?」
「・・・み、みっちゃんが、みっちゃんが、またやらかしてしもうたんやーッ!!」
「・・・ヘッ?もしかして、また、レッドカード退場!?」
「アホッ!それだけやないわ、また自分も大怪我やーッ!!」
「・・・ええーっ!?」
「詳しい話は、たかあきん家でさんちゃんに聞いたらええ!」
・・・って、なんで、俺の家?
・・・河野邸。
「・・・あ、ご主人様、もう来てるれすよ・・・って、ぴゃっ!!」
「ハァッ、ハァッ・・・珊瑚ちゃん!またミルファちゃんが大怪我したって聞いたけど、本当っ!?」
「あ、たかあきー。実はなぁー・・・」
「ダーリンッ!」
「えっ・・・!?」
「ダーリンッ!ダーリンってばぁッ!!」
「えっ?えっと、ミルファちゃん、どこ・・・?・・・って、えぇっ?パソコンの中!?・・・よそから、チャットとか繋いでるの?」
「ううん。今、パソコンの、中の人。」
「中の人って・・・」
「えへへぇ。今回、クマ吉ボディも修理に出してて間に合わなかったから、さんちゃんに端末だけ準備してもらったんだ。」
「そ、そうなんだ・・・」
「・・・と、いうわけでぇ、今日から、ダーリンのボーカロイド、『初音ミルファ』になりましたぁっ!よろしくぅー♪♪」
「・・・いや、そこで、ネギとか回さなくてもいいから。」
「あ、たかあきー。いつでもみっちゃんとお話出来るように、貴明のパソコン、借りたからなー。 心配せんでええよー、ちょっと改造して、データリンクシステム、組み込んだだけやからー。」
「そ、そうなの・・・って、俺のかよぉっ!?」
「ちなみにぃ〜、ダーリンのぉ〜、パソコンのフォルダの中、見たい放題ぃ〜〜♪♪」
「ちょっwwwwwwww」
「むふ〜ん、このフォルダ、何が入ってるのかなぁ。怪しいなぁ〜♪」
「わーっ!!待ってっ!ちょっと待ってぇ〜〜〜ッ!!!」
・・・1週間後。
「ジャーンッ!・・・えへへー、リアルミルファちゃん、復活だよーっ!これで、また毎日、お風呂でダーリンの大事なとこ、おっぱいでマッサージしてあげられるね〜♪」
「いっ、いやっ、その、そんな・・・」
「ミルファちゃんッ!」
「ひゃっ!?」
「ホントにもう、あなたはいつも、本当にハラハラばっかりさせて・・・みんな、心配したんだから。私も、珊瑚様も、瑠璃様も、長瀬のおじさまも、シルファちゃんも・・・そして、一番、貴明様も・・・元気なのはいいけど、もっと自分を大切になさい」
「・・・ごめんなさい・・・お姉ちゃん・・・みんな・・・ダーリン・・・」
「い、いや、“おかえり”、っていうのも、変だけど・・・」
「まぁー、みっちゃんからやんちゃを取ったら、世の中おもろなくなるなぁー。うちも研究のし甲斐が減るわー」
「でも、ダーリンのパソコンのフォルダの中で、いっぱい、面白い写真見れたよ。なんか、取られた覚えのない写真まで・・・あれって、“はるみ”・・・?」
「・・・!(ギクゥッ・・・)」
「大丈夫だよダーリン、気にしてないから・・・それどころか、やっぱり、あたしとダーリンは、繋がる運命だったんだって、確認出来ただけ♪」
「・・・ミルファちゃん・・・」
「さんちゃん、うち腹減った。そろそろ食事にせえへん?」
「そやなー。ここで喰ってくかー。」
「あ、それなら!ジャジャーンッ!研究所からの帰りに、いっぱい買い物してきたしぃっ!あたしが作ったげるから!ダーリンも、ヒッキーの精進料理ばっかりで、うんざりしてたでしょ!?」
「・・・ご主人様を、長ネギ漬けにするつもりれすか?ミルミルは。」
「・・・え?っ・・・あ・・・あははーっ!?つい、スーパーで、長ネギばっかりに、手が伸びちゃって!帰ってくる時も、ついついネギ回しちゃったりしてたし・・・何でだろ・・・?」
「す、すごく香ばしい食生活が、堪能出来そうだな、当分・・・・・・すっかりボーカロイドです。本当にありがとうございました」
ごめんなさい、次からは、真面目にやります・・・_| ̄|○
先の皆様のSSも堪能させてもらっています。良い作品ありがとうございました。
18181141140202
(イヤイヤイイヨイイヨオツオツ)
PC収納キャラってのもバイナリィポットのミリィとか東京九龍のチンク(古い)とか結構いるが、
ミルファだと勢い余って変形して動き出すか中から出てきそうだぜ
乙掛ける1000
ちょいと遅れたけど書庫さん更新乙。更新後に投下が続いて間が悪かったw
SSスレに欲しいもの、作家と書庫と感想屋。投下でスレが止まる現状はちと寂しいな
まぁ、ド辛口の感想屋だらけでもアレだけど(^^ゞ
素人作家にゃ厳しすぎる批評はプレッシャーにしかならんでなあ。
もちろん無反応が一番凹むんだけどさー。
辛口なのはいいのよ
改善点の指摘とかしてくれてるわけだし
問題は感想のふりして実質荒らしなやつらが居ることだが
荒らしは避けようがないしな
むしろ住人がスルー出来ない奴多すぎ
感想が作家の為のものだって観点が強すぎるんじゃないかな
スレにとっては感想自体が大事な要素なんだから、作者同様に感想者も尊重しないと
他人の感想が自分と違ったら、感想者に文句つけるんじゃなく、
自分の感想をつけてあげればいい。その方が作者も嬉しいはず
感想に対する反論や弁解は、作者自身が必要だと思ったらすればいいんだ
厳しい感想に対して作者自身が読者を装って反論することもあるからねw
スルーされた感想者が自作自演することもある。そこは気にしても仕方ないさw
382 :
名無しさんだよもん:2008/05/25(日) 11:49:46 ID:kOKoBeL20
ぶっちゃけ長文の感想屋はいらね。テメェの長々とした御託なんざ読みたくもねえんだよ!
というオレは一読者。
383 :
名無しさんだよもん:2008/05/25(日) 11:56:51 ID:nflsJvRW0
>>382は感想とSSの区別もつかずに読んでしまってから怒るほど目と頭が悪いのか
この手の話題が出ると活発になるんだがなぁ┗(´ω`)┛
>>382 感想書くやつだって別にお前に書いてるわけじゃないだろ
まあお前が自分のSSに長々と御託並べられたらそうやって文句言ってやるといい
感想についてここまで燃え上がるなら感想書いてやれよw
こんばんは、280です。
あんまり酷いの書き込んじゃったんで、ちょっと反省して、真面目に考えてみましたが・・・。
逆に堅くなり過ぎたきらいはありますが、宜しくお願いします。
“Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic.”
- Arthur C. Clarke -
機械仕掛けの人形達に心を持たせ、恋をさせるために、人間達は、いかなる魔法を用いたのか?
今はあえて、多くを言及しない。
例えそれは、機械工学、生体工学が論理的に行き着いた必然的結果であったとしても、やはり、一時代前の人間から見たら、魔法としか思われなかったろう。
しかし、東洋の一島国での技術革新が、パラダイムシフトを巻き起こしてしまった。
自我を持った人形達が、商品として売られ、日常生活にも経済活動にも当たり前のように浸透し、神話やファンタジーの世界の魔道具であったゴーレムは、今や、精巧で便利な工業製品という、無味乾燥とした現実の領域の位置に、引き下ろされて来たのだった。
それにしても、、恋心を覚える能力を持った機械人形が、誰かに恋をしてしまう蓋然性と、一体、何故この人に恋をしてしまったのか、という偶然性の間には、非常に大きな隔たりがある。
それは、論理的、確率的な帰結の話と、俗に、運命とも霊感とも表現される、極めて非論理的な衝動に突き動かされた結果、という話の違いだ。
冷徹な知性により高度に論理的な方法で生み出された機械人形達ではあったが、“恋”という感情パターンを持たされた時、再び彼女達は、理論で制御し得ない、魔法の世界へ旅立って行ってしまったのだ・・・。
・・・ ・・・
・・・ ・・・
西の地平線に落ちつつある陽が雲間に見事な夕焼けを映している、初秋の夕暮れ時。
高級住宅街に建つ瀟洒なマンションの一角を占める、ここ、姫百合家の広い居室の奥には、今、スタンドミラーの前に立ち、セーラー服の胸元のリボンを少しでも形良く結ぼうと、格闘している少女の後姿があった。
頭を傾げるたびに、桜色のセーラーカラーの肩の上で、外側に跳ね気味の、明るく艶やかなセミロングの桃色の髪が遊ぶ。
・・・ようやく、納得がいったのか、彼女は一人頷きつつ、右手で桜色の短いプリーツスカートの端をつまんでちょっと持ち上げる
、またもう一方の手では魅力的な桃髪をあおりながら、スカートからスラリと伸びている、黒いニーソックスに包まれた、形の良い魅力的な脚の片方を軸にして、クルリと振り返った。
「むふ〜ん♪・・・どう、お姉ちゃん?似合う?」
現れた、端正ながらまだ幼い線を残した面差しの中心では、愛らしい蒼い瞳が、クリクリと無邪気に輝いている。
ネコにも似た感じで結ばれた口元が、快活で邪気のない、彼女の性格を物語っていた。
「ええ、似合ってるわ、すごく。」
食材の入った袋を持って、リビングから調理間へ向かって歩を進めていた、その、姉と呼びかけられた少女は立ち止まり、妹のそんな様子を見やってから、やや微苦笑を交えつつ、右頬に手を添えながら答えた。
姉の方は、妹とは対照的に、青い髪をショートにまとめており、また瞳の色も、妹の蒼とは違い、深い紫色である。
とは云え、二人の顔の線は、やはり姉妹らしく、非常に似通っていた・・・・というよりも、ほとんど、瓜二つと云ってよかった。
肩位置までの垂髪の鬢は二人の共通する髪型のポイントで、髪の色と後ろ髪の長さを揃えてしまえば、おそらく、二人の見分けをつけるのは難しい。
姉の方の顔の両側、耳の位置には、ヘッドフォンにも似た、白銀に輝く円蓋状の物体が装着されているのが奇異というか非常に目立つところとなっており、その下端からは、フィン状の突起が数本延びている。
その同じものが、よく見れば、妹の方の顔の両側にも、桃髪に半分包まれながらも覗いているのだった。
その装置は、来栖川エレクトロニクス社が製造する、『ホームメイド』シリーズのロボット達の特徴ともなっているもので、センサーと、データリンクシステムによる相互通信を行う為のアンテナが内蔵されている。
そして、姉の方は、黒いニーソックスこそ妹と同じだったが、メイド衣装を今様に活動的にしたような、シックな衣服に身を包んでいる・・・
・・・それは、来栖川社製のメイドロボ達の、制服だった。
彼女達が交す会話と仕草はあまりにも人として自然で、傍目から見ればどうしても人間の女性としか思われないのたが、実のところ彼女らは、来栖川エレクトロニクス社製の、最新鋭のメイドロボなのである。
・・・ ・・・
トントンと、器用にまな板の上でジャガイモを包丁で刻みながら、姉が言った。
「・・・で、ミルファちゃん。一緒にお料理作ってとは言わないから、そろそろ、せめて、食器並べるのくらいは手伝ってくれないかしら?」
桃髪の妹は、依然として、姿見に映った自分の通学服姿を吟味中であった・・・スカートをつまみ上げて丈を変えてみたり、ゆったりしたセーラー服でも隠しようがない、その、豊かな胸を掴んで持ち上げて更に強調を試みたりしながら。
「・・・は〜い・・・。」 不承不承、姉に返事を返す。
姉の方は、来栖川エレクトロニクス社・製造型番HMX−17a、ニックネーム“イルファ”。
“ミルファ”と呼ばれた妹の方は、型番HMXー17bである。
『ホームメイド』の略であるHMの後の“X”は、彼女達が、特別にカスタマイズされた実験体であることを示す記号だ。
かように人の姿に近付いたロボット達であったが、まだまだ、ロボット工学は、概ね人と同じ姿と動きを模せる段階に達したというだけで、漸くスタートラインに立ったに過ぎない。
少々気の利いた家電といった位置付けで、差し障りのない機能と最小限に抑えられた自己主張のみを持たされた、一般販売用のHMシリーズにはまず搭載されない、野心的な新機軸が、評価試験機HMXには必ず盛り込まれた。
・・・来栖川の技術陣が目指すのは、つまるところ、“人間そのもの”、そして、“人間以上”の、何者かを生み出すところにある。
フランケンシュタイン・コンプレックスなど糞喰らえ!なのだった。
とりわけ、心血を注がれたのが、“心”の探求と、そのシュミレートである。
思考パターンを著しく束縛し、“心”の正しい成長を阻害するという理由で、彼女達、実験機HMX型には、ロボット三原則すら組み込まれていない・・・それは、非常な冒険と言えた。
研究成果と成り得るのなら、何も、メイドロボの姿を得て生み出されたと云っても、メイドロボ的な生き方をしていく必要もない・・・
あくまで、現時点で、アンドロイドとしては一番高機能で信頼性も高い、最新の量産機“HM-16 リオン”の、基本的なスペックを、流用しているに過ぎないのだから。
「みっちゃんは、“だいこん・いんげん・あきてんじゃー”搭載やからなぁ〜。無理にメイドさんを目指さんでもええんよ〜♪ いっちゃんも、そんな目くじら立てんでなー。」
リビングの真ん中付近に陣取ったテーブルの前にちょこんと座って、卓上に置かれたノートパソコンに向かい、キーボードをパチパチ叩きながら、お団子頭が特徴的な、小柄で、整った顔立ちに絶え間ない微笑をたたえた少女が、イルファとミルファに言葉を投げかけた。
そのボヤンとした様子とはおよそ裏腹に、向かいあっているノートパソコンの画面には、常人には理解不可能な、超絶的に高度なプログラミング言語が、次々と羅列されていく・・・・
・・・この少女は、メイドロボHMX-17姉妹の実質的な生みの親とも言える天才プログラマーにしてエンジニア、姫百合珊瑚。
まだ高校生ゆえ、来栖川のロボット研究所の客員待遇ではあったが、実質、現在のメイドロボ開発のキャスティングボードはこの少女が握っていた。
研究所の主任開発員であった長瀬源五郎次長も、開発の実権を珊瑚に譲って、今はマネジメントと後進のサポート業務に専心している。
この、十代の少女にはいささか広過ぎるマンションルームも、来栖川の資金で提供されているものであった。
「わぁ〜いっ!さんちゃん、話せるぅ〜っ!♪♪」
大袈裟に両腕を左右に広げて、ミルファがスタンドミラーから離れて珊瑚に駆け寄り、膝立ちで珊瑚の背後についた。
そして、プログラミング作業中であるのもお構いなしに珊瑚に背中から抱きつき、その大きな乳房を珊瑚の背に押し付ける。
「あははぁ〜っ!みっちゃんはいつも元気でかわえぇなぁ〜♪」
そう言いながら後ろに左手を廻し、ミルファの頭を撫でた。右手はまだパチパチとキーボードを叩いている。
「また、珊瑚様はミルファちゃんを甘やかして・・・おぽんちが、直らなくても、いいんですか!?」
口先を尖らせて、刻んだ玉葱をまな板から煮立った鍋の中に包丁で注ぎながら、イルファが不満を漏らした。
どうやら、姉の目から見て、ミルファはあまり出来のよくない妹らしい。
・・・しかし、珊瑚と、長瀬開発主任の思惑は違った。
メイドロボとして、比較的コンベンショナルな初期設定をインプットして起動されたイルファに比べ、ミルファはより自由な選択枝を得られるよう、もっと、曖昧な初期設定がなされている・・・
更に、後天的な感情の醸成に、左右されるという事だ。
起動間もない期間は、姉に比べ知識はやや劣る結果になるかも知れないが、彼女には、人間と同じようなプロセスとペースで、学習による経験値を積み重ねて欲しい・・・
人間により近い、という事は、生育環境に合わせた成長と自意識の形成が見られる、という事に他ならない。
珊瑚の開発した新AI、“ダイナミック・インテリジェンス・アーキテクチャー”は、そんな、人間にごく近い心の成長をシュミレート出来る、画期的なプログラムである。
・・・かつて来栖川が独自に開発し、実験機HMX-12マルチに組み込んだものより、格段に柔軟で細やかな感情表現を、可能ならしめた革命的機軸だった。
「いっちゃんも、だいこんいんげんあきてんじゃーなんやもん、そんな無理せんでええのんに。瑠璃ちゃんの為に、我慢してるんちゃう?みっちゃんと同じように、もっと好きに振舞ってもええんのに〜」
「そ、そんな、わたくしは・・・」 珊瑚の投げかけた言葉に、イルファの頬が朱に染まる。
「うちはイルファにそんなこと求めた覚えない〜っ!」
イルファの隣で、冷蔵庫の中の食材をまさぐっておだんご頭を低く下げていた少女が叫ぶ。
そして、貝柱やらイカの入った袋を冷蔵庫から取り出して、立ち上げるとその袋をイルファの前の調理台にドスンと置いた。
「イルファがうちのためにメイド修行に精出すんは、イルファの勝手やっ!」
そう叫んだ、珊瑚と瓜二つの少女の頬も、朱に染まっていた。
・・・この少女は、珊瑚の双子の妹、瑠璃。
イルファが、その起動時のいきさつで、ただならぬ思いを寄せている少女である。
「お姉ちゃんは、瑠璃ちゃんすきすきすきーっ!だもんね〜っ♪」
珊瑚の背後から抱きつきながら、ミルファが冷やかすように言う。また悪戯っぽく口元を猫口にしながら。
「ミルファッ!余計な事言わんでええ〜っ!!」
両手を腰の下に伸ばして強く握り締めながら、瑠璃が叫ぶ。その表情は真っ赤に染まっている。
「そ、っそんな・・・」
イルファの顔もまた朱に染まった。
その直後、不機嫌な表情になったミルファが、ボツリとこぼす。
「・・・おまけに、お姉ちゃん、ダーリンにまで横恋慕して。・・・絶対、渡さないんだから。」
「・・・ミルファちゃんっ!」思わず、ミルファと珊瑚へと振り向いたイルファ。
・・・ ・・・
ピンポ〜ン。
唐突に鳴る、呼び鈴。
(つづく)
・・・と、まぁ、こんな感じで。
どうも、ロボットや人造人間テーマだと、硬く構えちゃいますね。
アシモフやらハインラインの小説読んで育って、ブレードランナーにショック覚えたような世代なもんで。
アシモフが書いた“バイセンテニアル・マン”みたいなお話が作れないかな、と思ってるんですが。
例えば、貴明が死んじゃった後、ミルファやシルファが、人間の体を得たいとか希求するお話とかw
また次はしばらく間あけます。どうせ誰も待ってないでしょうけどw
おっ、乙かれーらいす
俺は待ってるよ
乙。まだ展開が分からないけど、台詞と地の文のギャップがなんだかいい感じ
かつてマルチに泣いた漏れとしては、
前回今回と彼女を旧型旧型言われるのは悲しいがまあ事実だし自由に書いてw
>>395 よう同世代のおっさんw
一つだけ、三点リーダが多すぎるのが気になる。全部削っても問題ないと思うけど。
とりあえず改行を適度にしてくれると読みやすくて嬉しい
実は同年代のおっさんだらけ?
ともあれ乙!俺は固い話好きだから、ガンガン行ってくれ。期待してる。
にしてもミルファかわゆすなあ(´ω`)
401 :
395:2008/05/26(月) 16:15:49 ID:1dLwXnTE0
レスどうもです。
自分で云うのもなんですが、本当に読みにくい_| ̄|○
>>397 >台詞と地の文のギャップ
セリフばかりだと軽くなりそうだったんで、意識して描写の方を増やしたんですが、逆にどうにも堅過ぎて。
マルチ好きだったんでつい引き合いに出してしまったり。メイドロボの頭は撫でてやるのがデフォでしょう
>>398 >三点リーダが多すぎる
そう思いまする。癖なんですかね。
読み返して削ってみましたが、二つで充分ですよ
>>399 そう思ったんですが、画面解像度変わったとき、どう見えるのか気になったんで。携帯とか。
文章自体短く簡潔にするべきなんでしょう。
>>400 見え見えですが、ミルファ贔屓ですので私
402 :
395:2008/05/26(月) 16:17:35 ID:1dLwXnTE0
失敗してる箇所がありますね。
修正箇所:
その七
ようやく、納得がいったのか、彼女は一人頷きつつ、右手で桜色の短いプリーツスカートの端をつまんでちょっと持ち上げる。
またもう一方の手では魅力的な桃髪をあおりながら、スカートからスラリと伸びている、黒いニーソックスに包まれた、形の良い魅力的な脚の片方を軸にして、クルリと振り返った。
その十二
そして、貝柱やらイカの入った袋を冷蔵庫から取り出して、立ち上がるとその袋をイルファの前の調理台にドスンと置いた。
次は一週間後か、一ヶ月後か orz
あんバタがバター高騰で消えたか・・・
珊瑚が泣くぞ・・・
だが小倉マーガリンは健在だ!
あんバタ食べたことある人いる?
多分あれかなーってのは食ったコトある。
大学の生協で売ってた。
つぶあんとバターのはさまった三角サンドイッチに砂糖がまぶしてあった、と思う。
えらく甘くて口飽きするんだよなぁ、あれ。
>>406 話しを聞いた感じだとものすごく甘そうだなぁ…
つぶあんだけでも甘いのにさらに砂糖とは…
単独で食べるには向かないが、とびっきり濃い烏龍茶にぴったりくる。
バターがあるので日本茶にあわないし、あんこが入ってるのでコーヒーともあわない。
好みにあわせてシナモンパウダーをふって食べるといっそうおいしくいただける。
小倉マーガリンなら牛乳で食べると最高なんだがな。
つかあんこと牛乳って合うと思わん?
うん、結構いいかも
思うね
ドラ焼きは茶ではなく、牛乳とセッツで食べるモノだと思ってる
チョコレートも牛乳と合うよね
牛乳最高っ!
牛乳とカステラも旨いぜ
タマ姉とよっちの牛乳(うしちち)
確かに牛乳とあんぱんとかって合うよね。
なんか食べたくなってきた
>>413 俺ならタマ姉だな
ささらも忘れないであげて下さい(´;ω;`)ウッ…
牛乳 : タマ姉、よっち、草壁さん、春夏さん、ささら
ボールケーキ : ミルファ、由真、黄色
あんぱん : 愛佳、シルファ
ドラ焼き : ちゃる、双子、イルファ
カステラ : るーこ、郁乃、まーりゃん
板チョコ : このみ、菜々子
>>416 言わせてもらう
珊瑚ちゃん瑠璃ちゃんをまとめるな
ミルファちゃん88
イルファさん85
シルファちゃん82
瑠璃ちゃん80
珊瑚ちゃん76
ついでにるーこ77ささら87草壁さん84だ
アンダーの差を考えると草壁さんそこでいいのかもしれないけど
作り直してみる
牛乳 : ミルファちゃん、草壁さん、タマ姉、ささら
ボールケーキ : イルファさん、春夏さん、由真、よっち
あんぱん : シルファちゃん、愛佳、花梨
ドラ焼き : 瑠璃ちゃん
カステラ : 珊瑚ちゃん、ちゃる、郁乃
板チョコ : るーこ、まーりゃん、このみ、菜々子
身長差分考えると結構変わると思う
違う
るーこB79だ
板チョコ→カステラだ
何この乳議談ww
>417
数字は見ないで、CGを視て書いたら>416のようになった
確かにシルファの胸は小ぶりという描写もあるんだが、
どう視てもシルファよりイルファさんの方が小ぶりに見えるんだがなぁ・・・
>>421 錯 覚 だ
数字は絶対
更に言うなら本当はミルファは牛乳の一つ上
身長差があれだから余計に大きい
一応ウエストと身長から出したバストサイズ理想差分ってのがありますよ
www.geocities.jp/nii_1208/anime_bust5.htm
まあアニメ版に出てたキャラしか入っていませんが。るーことこのみが酷い
ミルファが巨乳を自慢しそれに噛みつくシルファ
ミルファの自慢を横に、さりげなく巨乳をアピールしようとするタマ姉とささら
おっぱいはさわり心地が大事ですと解説し瑠璃ちゃんの胸を触ろうとするイルファさん、それに参戦する珊瑚ちゃん
私、意外に隠れ巨乳なんですよと草壁さん
アピールしたら隠れじゃないわよと突っ込みを入れつつも、小声で私も意外に巨乳なんだからと貴明をちら見する由真
貴明くん。お、お、おっぱいが好きなの?と恥ずかしながらもストレートに聞く愛佳
タカくん大きいのが好きなんだ。”タカくん”が揉んでくれたら大きくなるってよっちに聞いたよとこのみ
以下るー
そんなSSを俺は書かない
乳SSでなくて、ごめんなさい。
とりあえず、落としてみますね。
午前五時、まだ外は真っ暗で、吐いた真っ白な息が結晶になって凍り付いてしまいそうなほど空気は冷たい。
貴明は思わずマフラーを顎の上まで引き上げる。
暗闇の少し先に見える白い人影は、フィールドコートを着込んだ貴明よりは、ずっと軽装に見えた。
パーカっぽい上着に、デニムのミニスカート、黒のニーソックス。
「むふー♪、おっはー、ダーリン☆」
「おっ、おはよう、ミルファちゃん・・・」
貴明の腕を取り、むにゅっ、と、その大きな両の胸に包み込む。
「ダーリン、地味妹は?」
「う、うん、まだ寝てると思う。」
「まーったくぅ。気が利かないんだから。どうせ、またダーリンがヘソ曲げさせちゃったんじゃない?」
「い、いや、起こさないように、こっそり出てきたから。」
貴明は、昨晩のやりとりを思い起こした。
・・・
「明日はすごく朝早く、出掛けるから、朝食とかはいいよ。留守番、お願いね。」
「へっ?ろこに、おれかけれすか?」
「う、うん、雄二に誘われてね。都内に。ちょっと、イベントがあるんだ。」
ジトーっと、貴明の顔を見やるシルファ。
「・・・れーと、れすか?」
−ちょっと、内心、ギクリとする。
ま、まぁ、実は女の子同伴だったりするけど。ロボットの。
「うーん、どっちかと言うと、野郎の、大きなお友達の方が多い催しだったりするかな。」
嘘ではない。
「シルファも、ついて行ったら、らめれすか?」
それはたぶん、無理。
最近はかなり慣れてきたと言っても、あんなに人の多い、しかも、野獣っぽい連中の群れの中に連れていったら、目も当てられない。
「う〜ん、悪いけど、やっぱり、お留守番、お願いするよ。」
「ふーんらっ!ろーせ、シルファは飯炊き女にすらなれない、がーろまんろぼれすよーらっ!犬と一緒れすよーらっ!ふーんらっ!ふーんらっ!ふーんらっ!」
あちゃあ、まさに予想通りの反応。
「朝も、夜もエサ抜きれすっ!」
そう言って、またダンボールの中に篭ってしまったのだった。
「あたしが作ってきてあげれば良かったかなー。しょーがないから、コンビニで何か買おっか?」
「いや、それがね・・・」そう言って、左肩に抱えたリュックを見やる。
真っ暗なリビングをこっそり抜けながら、食卓の上を懐中電灯で照らすと、バスケットが置いてあって、サンドイッチが入っていたのだ。
書き置きが添えてあった。−“ポチのエサ”−。
「ほんっとに、素直じゃないんだから、あのヒッキー。もしかして、実は起きてるんじゃない?」
はっとして、背後の玄関を見やる貴明。なにやら、視線のようなものを感じたので。
・・・やっぱり閉まってる。気のせいか。
「そ、それじゃあ、行こうか。」
暗闇の中に二人の影が溶けていってから、カチャリと、河野家の玄関のドアが小さく開いた。
その内側に光る、二つの目。
「・・・ミルミル〜ッ!あの、エロエロセクサロイロ〜ッ!嘘つきご主人様〜っ!れすっ!」
ガタン、ガタン。
この時間の電車はまだガラガラで、暖房の効きも充分ではなく、足元からキリキリと冷えてくる。
「ダーリン、寒い?暖めてあげよっか?」
そう言って、一段と密着してくるミルファ。
「いや、ちょっと、他の客、いない訳じゃないし。」
思わず座席の上で横にのけぞる貴明。
新橋駅の改札を抜けると、ゆりかもめの駅に向かって、ゾロゾロと大勢の人々が歩んでいく。
ほとんどが、リュックやら、何やらアニメやゲームのキャラクターの描かれた紙袋を小脇に抱えた、野郎の“大きなお友達”である。
ゆりかもめのホーム上には、夥しい、人の群れ、群れ、群れ。
「うわぁ〜、すごい人の数だねぇ〜」
豊洲方向からゆりかもめが到着し、ドアが開くと、ドッと、その群れ達が狭い車内になだれ込んだ。
丁度貴明達の目の前で、満車になったように見えた・・・が、
「ちょっと、空けなさいよ!」
ミルファが、その怪力で、乗客達を、無理矢理押し込み、二人分位のスペースを作り出した。
「ムギュッ!」「ギャッ!」 蛙がつぶされたような呻き声を上げる乗客達。
そして、空いたスペースに入り込むと、貴明の手を取って車内に引っ張り込み、その背に胸を押し当て、手を前に廻しびっとりと密着した。
「こんな超満員なんだしぃ〜、しょーがないよね〜♪」
厚手の服を着込んでいるため、それほど感触が直接的でないのがまだしも救いの貴明であった。
国際展示場正門前。
改札を抜けて、他の降車客に混じって駅のアーケードを歩んで行くと、その先には、朝日を受けて輝く、巨大な逆三角形の、ヲタク達の聖地の象徴が、聳え立っていた。
その光景を目に納めると、貴明は頭が痛くなってきて、思わず額に手をやる。
いくら雄二の頼みとは言え、普段から、“社会のクズだからみんな死んじゃえ”と、小馬鹿にしていたヲタク達の群れの中に、今、自分もいるのだから。
「ダーリン、一般参加者は、こっちだって、書いてあるけど・・・」
「いいの、俺達は、こっち。」
階段下の、一般参加者の待機場ではなく、東展示棟の方に向かってサークル参加者に混じって歩んでいく。
右手を見やると、会議棟前の広場には、野営場よろしく大勢の一般参加者達が、シートやらを広げて陣取っている。
貴明が左側を指差したので、ミルファはその先の、大階段の下の、臨海線の駅方向に連なる大通路を眺めた。貴明の数倍の視力で。
・・・見渡す限りの人、人、人。
「うわぁ〜っ!すごいすごい!ダーリン、革命か戦争でも始まるの!?」
「まぁ、大体そんな感じかな。」
東展示棟の、サークル入口横の壁の前に着いた貴明達。
「よおっ、貴明、それにミルファちゃん♪ お疲れ。」
黒いコート姿の、サングラス。それを外した下には、見知った顔。
待ち受けていた雄二が、小さく手を振る。
「それじゃあ、頼むぜ♪」
雄二が、ポケットの中から、夥しい数の、サークル入場チケットを取り出し、貴明とミルファに手渡した。
・・・よく見ると、手元の束には、サークルチケどころか、こみパ準備会スタッフの入場チケまで混じっている。
「どうやって、そんなの調達したんだよ?向坂にそんなコネあったか?まさか、珊瑚ちゃんに、ハッキングでもさせたんじゃねぇだろうな?」
やりかねない。ミルファちゃんに頼まれて、無理矢理彼女を学校にねじ込んだぐらいだから。
「ヴァ〜カ、とある強力な筋から流れてきたんだよ。俺達の、頼りになるスポンサー様だ」
詳しく知ったら、不幸になりそうだったんで、深く追求するのはやめておいた。
「・・・で、どこを廻るんだ?」
雄二は、またごそごそとポケットをまさぐって、カタログのサークル配置図のコピーを取り出した。
「とりあえず、お前とミルファちゃんは、壁際大手では“Cat or Fish”と、そのトレスを廻ってくれ。どっちか、ループして貰えると助かるな・・・限数目一杯に買ってくれな。
それが終わった後に廻る島中サークルは、その配置図で確認してくれ。ほれ、これが軍資金だ。」
数万くらいある札束を取り出す。
「うわっ、ゆーじくん、お金持ちぃ〜♪」 感嘆するミルファ。
タマ姉から、ろくに小遣い廻して貰えない雄二が、これだけ準備出来る訳がない。これも、その怪しげなスポンサーからか・・・
「トレス廻ったあと“Cat or Fish”にその紙袋下げていくと、サークルスタッフにはじき出される可能性があるぞ。気をつけろよ。ま、廻る順番はまかせるぜ。」
・・・そーいうネタは危険だからやめてください、雄二さん。
「おっ、7時半か。そろそろ、入場した方がいいかもな。イルファさんは、もう先に入ってるぜ。西サークルの方な。」
「はぁっ!?お前、イルファさんまで駆り出したのかよっ!!?」
ミルファちゃんは知ってたのだろう、コクコクとうなずいている。
「俺達は、目的の為なら、手段は選ばん。壁大手で大漁狙おうと思ったら、人海戦術しかないからな。八方、手を尽くしたさ。そうそう、久寿川先輩も来てるぞ。」
思わず頭に手をやってしまう貴明。
「西の方はどうしても手薄なんでな、少数精鋭って事で、イルファさん投入って訳だ。イルファさんには、“藤壺魔人”と、“あいすとしょこら”を廻って貰う。
そのあと余裕があったら企業廻ってもらう予定だ。」
そう言ってから、ミルファを見やる雄二。
「で、頼んだブツは、持って来てくれたかな?」
コクリとうなずくと、ミルファは、ポケットから、円盤状の、白っぽい物体を2つ、取り出した。
メイドロボが本来つけている筈の、イヤーバイザーだった。
それをカチリと、両耳にはめる。
「こんな、いかにも“あたしはメイドロボですぅ”みたいなの、つけるの嫌なんだけど。それもこんな大勢人がいる場所で。」
口先を尖らせて不満を口にするミルファ。
「中に入っちまうと携帯電話もろくに役立たないからな。イヤーバイザー内臓のデータリンクシステム用の強力な通信ならばって、イルファさんの助言だ。
それに、ほら見なよ、準備会スタッフも、同じようなのつけてるだろ。多分、それでまず目立たないと思うぜ間違いなく。」
・・・確かに。逆にスタッフと間違われそうだ。
「じゃあ、健闘を祈る、お二人さん!15時に、東西連絡通路の、休憩所でなっ!」
東棟内に入場した貴明とミルファ。
自動販売機横のベンチに座って、サークル配置図を広げ、巡回サークルのチェックをする。
彼らが廻るサークルは、ほぼ東1〜3のフロアに集中している。雄二が気を利かせてくれたのだろう。
最初に廻る壁大手の二つはどうせ外に長い列が出来てすぐ分るだろうから問題ないとして、その他の細かい島中サークルを、頭に収めないと・・・
「どう、ミルファちゃん、覚えられる?」
眉間に皺を寄せた後、ふにゃっ、と泣きそうな顔になり、ミルファが答える。
「だめぇ、あたし、こんな細かいの、覚えられないよォ・・・」
・・・“おぽんち”、と、小さな声で、ひとりごちた貴明だった・・・が・・・
「ハァッ?ダーリン、なんか言った!?」
バイザーをつけて聴力が一段と強力になってるミルファは、聞き逃さない。
「あいだっ!いだっ!いだだだっ〜!!ごめんごめん〜っ!!」
貴明の腿をプロレスラーの3倍はあろう握力でつねるミルファ。
クマ吉は、割と凶暴なのであった。
貴明とミルファは、東1.2.3ホールの場内に入場した。
机を並べているサークルがセッティングをしている中で、場所の定まらない連中が、場内の通路をうろうろしている。
それも、えらい人数が。
突然、脳裏に響く信号を受け取り、ミルファが、手を左右のバイザーに当てた。
『・・・聞こえる、ミルファちゃん?』
「お姉ちゃん!?」
西棟に陣取る、イルファさんからの通信であった。
『そっちはどう、ミルファちゃん。』
「うん、なんかね、大勢の人が中の通路をグルグル廻ってて、鳴門海峡の渦みたい。」
『そう。それはね、サークル入場したフライング買いの人達が、列が出来るのを待ってる動きなの。そのうち、幾つかの列が形成されるから、それを見逃さないで、すかさず列に加わりなさいね。』
「うん、分った。」
傍らでメイドロボ姉妹のやり取りに聞き入っている貴明。
『でね、ミルファちゃん、こっちでよさげな情報仕入れたから、教えてあげる。』
「へぇ、どんなの?」
『その列は、大手サークルの待機列を外に引き出すために最初に開くシャッターを目当てに形成されるんだけど、こっちで仕入れた情報だと、東2が最初に開くみたいね。』
「えっ、、どうしてそんな事わかったの?まさかお姉ちゃん、こみパ準備会にもコネがあるの!?」
一瞬、姉の底知れぬ情報網に、恐怖を感じたミルファであったが・・・
『ううん、話しかけてきた準備会のスタッフが、たまたま教えてくれたの。このイヤーバイザー見て、私をスタッフと間違えたみたいね』
「あは、はははは。」
笑うしかない。雄二の言った事が、既に立証された訳だ。
『でも、スタッフのその手の情報提供は、陽動の可能性もあるから、全面的に信じない方がいいって雄二さんも言ってたけど。ま、参考程度にね。』
「ありがとう、お姉ちゃん。」
『じゃ、頑張ってね、貴明さんにも宜しく伝えて。』
プチッ。
「・・・だって、ダーリン。」
「いや、ミルファちゃんが言ってた事しか、聞こえてないし。」
イルファさんの情報を検討した結果、それに乗る事にした。結局は、賭けなのだから。
「・・・あっ!東2の前に、列がっ!」思わず、叫んでしまう。
物凄い勢いで、人が吸引されていくのが見えた。
「行くよっ、ダーリンッ!!」
「わっ!ミルファちゃんっ!走っちゃ駄目ッ!!」
ミルファは貴明の手を取り、ロボサッカー全国準優勝の脚力でもって、その列へ引っぱって行く。
結構前の位置につけられたと、思う。
しかし、ここから開始までが結構、長いのだが。
とりあえず、最初の布陣を、決めよう。
「じゃあ、ね。ミルファちゃんは、“Cat or Fish”に並んで、それをループして。俺はトレスの方に並んで、後は島中をやっつけてくから。」
「うん、分った。任せてダーリン♪」
・・・待つこと、約2時間。
最初に開いたシャッターは・・・東2だっ!ありがとうイルファさん!
列が屋外に引き出され、それぞれ大手サークルの方に分岐させられていく。
ミルファちゃんは東1方向に、俺は東3の方だ。
「じゃ!頼んだよ!」
「うんっ!」
そして、場内アナウンスが。
“これより、こみっくパーティーを、開始いたします。”
湧き上がる、場内一杯の大きな拍手。
“♪探し物はなんですか〜
みつけにくいものですか〜♪”
『ミルファちゃんっ!』
突如、イルファさんの通信。
「はいっ!」
『レディ・ゴーッ!!』
さるさん? それとも今回はここまで?
433です。
あんまり連続投稿もしたくないんで、一旦、切ります。
一応最後まで考えてあるんですけどね。
久寿川さんが絡んでるあたりで、誰が黒幕か、バラしちゃってるようなもんですがw
>435
乙。>1の※印ふたつめにあるけど、投入を一旦やめるときは一言欲しい
あるいは、投下するレス数を(例えば1/8みたいにして)入れてくれるといいな
アクセス規制とかパソコン壊れたとかは携帯ないとどーにもならんけどw
>野獣っぽい連中の群れ
むしろ活動的なゾンビ……腐臭が、いや、嘘ですけど(嘘
イルファさんはミルファに対してももう少し丁寧語口調な気がしないでもない
437 :
435:2008/05/31(土) 14:05:22 ID:9L9p2Txq0
>>436 すんません、アクセス規制入ったせいです。
続きはもう一晩くらいたってから落とします。
438 :
435:2008/06/01(日) 19:18:40 ID:hyPvFBFr0
また続き、投下します。
今回も一旦切って、次の投下で締めにします。
開始から、約20分程経過。
“Bashing Rim”での購入を終えた向坂雄二は、今度は島中サークルの巡回のため、屋外から東棟場内へと戻って来た。
そこで、とある中堅サークルの前に差しかかる。
「新刊ですのー。手にとって欲しいですのー。」
見ると、はっとするような美人の売り子(作者?)のお姉さんが、周囲に呼びかけていた。
雄二は、そのサークルの同人誌に、手を延ばす。
そして、代金を払ってから、、すかさず売り子のお姉さんの手を握って、口説き始めた。
「お、おねいさん!こみパが終わったら、僕と一緒に、アキバのメイドロボ喫茶で、ご一緒しませんか・・・!?」
「あ、あの、ですのー・・・」 困惑しているお姉さん。
ダタタタタタタッ
背後から、誰かが駆け寄ってくる。
「ドアホッ!この、ごーかんまーっ!!」
バキッ!!
「ぐはぁっ!!」
ハリセンが一閃・・・したようだが、紙のハリセンの威力ではない。
鈍い打撃音と共に、雄二は床に倒れ付す。
「すばるになにさらすんやーッ!このヴォケがーっ!!」
「ぱぎゅう!由宇さん、やり過ぎですのー!この人、流血してるですのー!」
ピクピク、痙攣している雄二。
「がっ・・・かはっ・・・もしかして、瑠璃ちゃん、珊瑚ちゃんの、お姉さん・・・?」
「“CAT OR FISH!?”の今回の販売品は、新刊と紙袋のセット800円、カレンダー1500円で、2部限定で〜す。お釣りのないようご協力お願いしまぁ〜す!」
こみパ開始から10分経過して、ようやく最大手サークル、“CAT OR FISH!?”の販売が開始された。
通常、ここは非常に掃けが早いのだが、今回、いきなりトラブル発生である。
「くわーっ!あんた何、そのトレスの紙袋は!ちょおむかつくーっ!!出てってーっ!!」
ミルファの前の客が、夏こみで購入したらしい、問題のトレスサークルの紙袋を下げていたのを見て、自ら売り子となっていたサークルの代表が、激怒したのだ。
『うわぁ〜、ゆーじ君の言ってた通りになってるしぃ・・・』
流石にびっくりして、唖然としてその有様を見つめるミルファ。
「ちょっと・・・詠美さん、あんまり無茶やると、ネットで騒ぎになって、目も当てられないですよ。後先考えずに、おぽんちさんなんですから」
隣の売り子さんに、たしなめられている模様。
「えーと、えーと・・・ふみゅ〜ん!(´;ω;`)」
『うわぁ、あたしと、同じこと言われてる・・・』 思わず、苦笑してしまうミルファ。
「くわーっ!うっさいわねっ!あたしは絵が描けるんだから!小利口に生きるより、一芸に秀でてさえいりゃいいの!それで世間様に貢献出来てるんだから!
小賢しくより、スケールでっかく!面倒な損得勘定なんか、下僕(したぼく)たちに、やらせてりゃいいのっ!!」
とうとう、一人逆ギレし出した代表だった。
・・・しかし、その台詞に、いたく感動してしまったのはミルファである。
「そ、そうですよね、お姉さん!計算高く生きるより、自分の理想を信じて一直線!夢も胸も、おっきい方がイイしィ!」
ひそかに胸のサイズに優越感を抱いていた代表は、その言葉が心の琴線に触れたようである。
そして、ガッシと、ミルファの手を取ると、
「よぉーっし、この子、ちょお気に入った!特別に、3セット売っちゃうんだから!」
「うわ〜いっ!ありがとうお姉さん!」 思わぬ収穫に、タコ踊りするように喜ぶミルファ。
隣の売り子さんが、代表に冷たく言い放った。
「あのぉ〜、もう邪魔なんで、引っ込んでて貰えませんか、詠美さん?」
購入したセットを、貴明から預かった布バッグに収め、再度、“CAT OR FISH!?”の列最後尾につくミルファ。
既に、一般入場者もどんどん列につき出して、場外に、延々とトグロを巻いている。
「うっひゃあ、これ、あと何十分かかるかなぁ。」
いくらなんでも、これには、うんざりせざるを得ない。
「列の皆さぁ〜ん!通行の妨げになってますので、もう少し、前後に詰めて下さぁ〜い!」
赤毛に横ポニーテールのこみパ準備会の女性スタッフが、メガフォンで列に呼びかけている。
その呼びかけに応じたのか、後方に並んでいる参加者達が、ググっと、前に詰めてきた。
ドンっ、と、後方から押されるミルファ。
「おっと。」
ムニュ。
前の列の若い男性の背に、その、育ちすぎた胸が、押し付けられる。
そして、ミルファの背後の男性も、後ろから押されて、彼女の背に覆い被さるような体勢になってしまった。
美少女の柔らかい感触を感じて、思わず、呆けた表情になっている彼らである。
「へっ?・・・い・・・い、い、いっ・・・いやぁあああああああ〜〜〜〜っ!!!」
突如、その一角は、阿鼻叫喚の巷と化した。
人が、数人、宙を舞っている。
「あたしの胸に触っていいのは、ダーリンだけなんだからぁああああ〜〜〜っ!!!」
くだんの女性スタッフも叫ぶ。
「ちょっと!そこの参加者さん!他の参加者を放り投げちゃいけません!!」
“CAT OR FISH!?”の列の辺りで発生している惨事は、貴明の並んでいた場所からも、目撃することができた。
何やら、人間らしい何かが、いくつか空を舞っているのが見える。
「はっ、ははは・・・ミルファちゃん・・・だよな?多分・・・」
何が起こったのか、即座に理解した貴明は、その列での購入を終えると、冷や汗を流しながら、そそくさと場内へと向かった。
最重点とされた幾つかの島中サークルを巡り終えた貴明。
あとは、もう少しペースを落としても、多分買えるはず。
やっと、その他の出展サークルを眺めやる余裕ができた。
・・・が。
ドンッ
「おっ!」
「にゃっ!」
背後に、誰かがぶつかって来る。
その女の子が、転がって倒れると、持っていたDVDのトールケースが、バラバラと床に散乱した。
「にゃ〜、ご、ごめんなさ〜い!」
「い、いや、それより君、大丈夫?」
少女に手を差し伸べ、助け起こそうとする貴明。
そして、その少女の手を握ってから、カァ〜っと顔面を朱に染めた。
「あ、ありがとうございますぅ。」
「いえ、それより、怪我してませんか?」
貴明と一緒に、散乱したDVDを拾い集める少女。
「うちの印刷機が壊れちゃって、友達の新刊出せなかったんで、お詫びに、委託の同人ソフト売るの、お手伝いしてるんですぅ。お一つ、いかがですかぁ?」
そう言って、手にしたDVDの一本を、貴明に差し出す。
・・・そのパッケージを見るなり、目が点になり、凍りつく貴明。
“萌えキュンエンジェル 『朝霧麻亜子』 の、ひみちゅDVD!
あなたのハートにピッキング!!(はぁと)”
「・・・ごめんなさい、結構です。」
うなだれながら、断ってしまう貴明。
君達、変な組織に、騙されてるぞ!早く気付くんだ!聖まー○ゃん帝国軍とか何とかの陰謀に!
東1〜3と4〜6ホールを分けるガレリアの1階の隅、“参加者立入禁止!”の、貼り紙がなされた一角。
そこに、場違いな、大きなダンボールが、デンと鎮座している。
しかし、付近を通りかかる入場者達は、ちらと一瞥するだけで、さして気に留める事もなく通り過ぎていく。
「・・・ぷぷぷ。こちらスネーク。会場に潜入したのれす。」
もう正午も廻って、かなりの来場者が、戦利品を確認するなどで、そこかしこにたむろしている。
ダンボールの“中の人”が、ひとりごちた。
「シルファはロボットらから、マシーンらから、入場チケットなろ、かんけーないのれす。
こんな、愚民の、蛮族ろもに、シルファを捕捉するなろ、絶対不可能なのれす。」
スネークの正体・・・ダンボール生活者の、ロボ3姉妹の末の妹。
TVで、貴明達が出掛けたイベントが『こみパ』である事を知り、追ってきたのだった。
どうやって辿り着いたかは、この際置いておいて。
立入禁止とあっても、時折、休憩場所を求める入場者が、そのゾーンに入り込んでくる事もしばしば。
今また傍らに、疲れ果てた様子の来場者が、ドッカと腰を下ろした。
「ぴゃっ!・・・こ、この、装甲に守られている限り、何も怖れる事はないのれす。」
ホールの奥からの喧騒が、ダンボールの中にも響いてきている。
「壁の向こうに、ご主人様と、ミルミルの気配を感じるのれす・・・
この通路にいれば、必ず、通りかかる筈れす。ひっつかまえて、小一時間、問い詰めてやるのれす!」
「そこの方!そこでは立ち止まったり座ったり禁止ですよ!」
準備会のスタッフが通りかかった。
ダンボールの横で座して休んでいた来場客が、注意されて渋々立ち去って行く。
休んでいた来場客が去った後、その場の大きなダンボールが、いかにも不自然である事に気付くスタッフ。
「ん?何だ、このダンボール?こんなとこに、何のために置いてあるんだ?」
スタッフが、ダンボールを確認しようと、歩み寄って来た。
身の危険を察知したシルファ。
「・・・ぴっ!」
ザザザっと、スタッフの眼前で、横2メートルは移動した。
「なにぃっ!・・・こいつ、動くぞ!」
こうなると、怪しいなんてもんじゃない。
テロとかで、何か、危険なブツが収まっているかもしれない。
“勇敢な”そのスタッフは、ダンボールの中身を何としても確認しようと、掴んで持ち上げようと手を伸ばしてきた。
「!ぴぃいいいいいっっっー!!!」
恐怖に駆られて、シルファは逃走を開始した。
「あっ!待てっ!何だ、この高機動型ダンボールはっ!?」
あたかもゴキブリを思わせる俊敏さで、通路の隙間を縫い、床を滑るように動き回るダンボール。
「ハァッ、ハァッ、くそっ!なんて素早いんだ!」
移動していく先には、準備会の東棟の搬入本部が。
ちょうど、搬入本部の扉がカチャリと開いて、眼鏡の女性スタッフが、中から顔を覗かせたところであった。
「あっ!南さ〜〜んっっ!!そのダンボール!捕まえてっっっ!!!」
「!」
目の前を移動していこうとするそのダンボールの進路を素早く遮り、ガッシと受け止めた女性スタッフ。
「おっ!やった!さすが牧村さん!」 追ってきたスタッフが感嘆した。
だが、ダンボールの勢いは物凄く、ザザザッっと、押さえる女性スタッフを突き動かす。
「きゃっ!」
しかし、摩擦で、動きが鈍る。その一瞬の隙を縫って、彼女は、ダンボールを両脇から掴み、上へ持ち上げた。
「ぴぎゃっっ!!!」
「・・・へっ!?」
呆気に取られる、女性スタッフ。
中にいたのは、お下げ髪の少女。
「ぴっ、ぴぃぃぃっ!!」
見るからに怯えきった様子なのを見て取ったその女性スタッフは、少女になるたけ優しげに語りかけた。
「あのね、危ないから、そんなモノの中に入って、会場を動き回ったりしたら、駄目ですよ?
あ、コスプレの着替えは、ダンボールの中なんかじゃなくて、ちゃんとコスプレ更衣室でして下さいね。」
「ぴぎゃぁああっっ!!」
直後、フッと、スタッフ達の視界から、突然、消えていなくなった少女。
「・・・えっ?」
スタッフの一人が叫ぶ。「南さん!後ろ!上!」
言われて、背後の、上方を向いた女性スタッフ。
目にしたのは、体を丸めて、クルクルと空中で回転しているその少女。
何という、跳躍力。
ストっと床に降り立つと、これまた、人間離れした脚力で、あっという間にホールのいずこかに走り去っていく。
「ちょっと、あなた!まさか、本物の、メイドロボ!?」
「ぴぃぃぃぃぃっっっ!!!怖いっっ!れすっぅ!助けてご主人様ぁぁぁっっっ!!!」
支援
所定のサークル巡回をほぼ終えて、貴明は、ホールを抜け出し、ガレリアの2階に上がってきた。
売店でペットボトルのお茶を買い、傍らのベンチに腰掛けて、お茶をぐいっとあおる。
翌日が大晦日という真冬日ではあるが、これだけの人出、館内は熱気に満ち、しかも厚着で動き回れば汗もかこうというものだった。
時間は、ようやく午後2時にならんとしている。
「ふう。」
ため息をついて、視線を床の方に落としたら、黒いタイツ、いやニーソックスの二本の足が歩み寄ってきて、目の前で立ち止まったのが見えた。
頭を上げ、視線を上方に移すと、そこに立っていたのは・・・
青いショートの髪、顔の左右にはイヤーバイザー、にこやかに微笑みをたたえた、見慣れた顔の美少女。
「イルファさん。」
「お疲れ様です、貴明さん。」
支援
横に座っていた参加者が気を遣ってくれたのか、そそくさと立ち去っていった。
「イルファさん、座らない?」
「はい。」 貴明の右隣に、ストンと腰掛けるイルファ。
見ると、彼女の両の腕には、物凄く重そうな鞄やら、紙袋やらがぶら下がっている。
とても、同じ体格の人間の少女が持って、西棟から東棟まで歩いて来れる量ではない。
「凄いね、それ。そんなに沢山廻ったんだ。」
多分、彼女の“制空権”とやらで、眼前の障害物を排しながら、目にも留まらぬ早さで会場内を移動し、着々と割り当てをこなしていったのだろう。
強力過ぎる助っ人ではなかろうか。
「貴明さんも、かなり頑張られたみたいですね。そんなにたくさん。」
島中サークル中心に数を廻ったので、どうしても、冊数は多くなる。
「どうして、ミルファちゃんを、壁大手のループ要員にしちゃったんですか?」
ミルファは、現在まだ“CAT OR FISH!?”の列にいる。先程の騒ぎのペナで、最後尾に並び直させられてしまったのだ。
「多分、雄二さんも、あの子の機動力を当てにしてたんだと思いますけど。私と同じで。」
「・・・いえ、無理矢理、島中廻ってもらっても、間違ったところ買ってくる危険が大だったんで。」
「ホントにもう、おぽんちさん。」
引きつった笑いを浮かべるイルファ。
「人様を投げ飛ばす為に腕力使って、どうするのかしら。ご存知でした?私達3姉妹で、あの子が一番、力持ちなんです。」
へぇ、そうなんだ。同型機だから、みんな同じような能力だと思ってた。
支援
“うぇ〜ん、お姉ちゃん、一番最後に廻されちゃったよぉ〜〜(´;ω;`) 。売り切れちゃうよぉ!”
“しょうがないでしょう。怪我人出ちゃってたら、どうするの!退場させられないだけマシでしょ。もうちょっと、力の使い方、考えなさい。”
“だぁ〜ってぇ、あいつら、スケベなんだもん。あたしの体触って、にやにやしてて。”
“はぁ?何云ってるんですか?いっつも、貴明さんにくっついたり、果ては裸でベッドに潜り込んだりしてるのに”
“ダーリンだからなの!あたしの体はダーリンだけが自由にしていいのっ!あたしの腕力はダーリンを守るため!ダーリン以外の魔の手から操を守るためなんだからっ!!”
「・・・だそうですよ。うふふ。」
う〜ん、まぁ、誰彼構わずスキンシップ求めてる訳じゃないとは思ってたけど、喜んでいいのやら何とやら・・・
「それはそうと、朝最初にくれた情報で、それからの展開がすごく楽になったよ。ありがとう。」
ほぼ先頭集団につけたお陰で、20分くらいは時間に余裕が出来た筈だった。
「準備会スタッフが、イルファさんを仲間と間違えて、情報くれるなんて。それだけでも、来てくれて助かったなぁ、とか」
うふふ、と、意味深な笑みを浮かべるイルファ。
「まさか。ミルファちゃんにはああ言ったけど、スタッフさんに間違われる筈はないですよ。バイザーの形も違うし、スタッフは制服着てますし。」
「え?」
「コスプレだとは思われてたみたいですけどね。」
それじゃぁ・・・?
「スタッフ間の通信を、傍受させてもらいました。イヤーバイザーのオプション機能で。私達だけの。」
ゲッ!
「私達試作機HMX-17型には、隠し機能として、強力な通信情報収集機能が備えられてます。それこそ、軍事用スパイロボとしても利用可能なくらいの」
すごいな、それ。でもまさか、軍事転用なんて考えてないよな、来栖川も、長瀬さんも・・・
「全て、ご主人様が望む情報を先回りして集めて、痒いところに手が届くご奉仕が出来るようにする為の機能ですよ。」
「う〜ん、ご主人様にも、知られたくない秘密情報が、いろいろあるだろうと思うんだけどな・・・」
またイルファが、クスっと笑う。
「その力を使うかどうかは、良識に委ねられますわ。あと、ご主人様との、信頼関係ですかしら。うふふっ♪」
そんな、笑わないで下さいイルファさん。
「これはホントに隠し機能で、ミルファちゃんやシルファちゃんは、気付いてないでしょうね。私も、メイドロボのツボをいろいろ調べて、見つけたんです。」
何というか、この人、やっぱり、底が知れない怖さがあるよな・・・
「ミルファちゃんにイヤーバイザー付けさせたのは、広い会場内で情報交換し易くして、滅多なことしでかさないようにする、首輪代わりです。現に、やらかしちゃってますしね。」
それが、彼女が装着嫌がる理由の一つではないかとも思えるんだけど。
「そろそろ、あの子、呼び出しましょうか?“・・・ミルファちゃん?私。今、ガレリアの2階、カフェテリアの近くのベンチに貴明さんと居ます。そろそろ、来れるかしら?”」
立ち上がるイルファ。
「それでは、私、ちょっと用件がありますので、そろそろ会場からお先に失礼いたします。」
「えっ、あ、はい。お疲れ様ですイルファさん。」
「荷物は置いていきますので、雄二さん達に渡していただけますか?あ、お釣もお願いしますね。もうすぐミルファちゃんが来るんで、荷物持って貰って下さい。」
そして、ペコリと頭を下げて、立ち去ってゆく。
・・・が、すぐ、クルリと振り返った。
「貴明さん。」
「はい?」
「シルファちゃんは、今日、ずっと、お留守番なんですよね?」
「う、うん、そうだと思うけど。スーパーの買出しくらいなら、出掛ける可能性はあるけどね。その程度の人ごみなら、最近慣れてきたし。」
「そうですか・・・それでは、失礼します。」
今度こそ、西棟との連絡通路の方に、歩き去っていった。
「あ、お待たせ〜、ダーリン☆」
イルファの姿が見えなくなった後すぐ、ミルファが辿り着いた。
「キャットフィッシュ、最後の1セット、買えたよ!ちゃん様が1セット余分に売ってくれたし、まぁ結果オーライだよね。ゆーじ君も喜ぶかな。」
ペナルティなかったら、もう2セットは買えたろうと思われたが、あえて言わないでおいた貴明である。
「ところで、お姉ちゃんは?」
「うん、先に帰ったけど、戦利品だけ置いて。瑠璃ちゃんや珊瑚ちゃんの夕食の準備でもするんじゃないかな。」
「ふーん。じゃぁ、もうイヤーバイザー、必要ないよね。外しちゃえ。」
カチリとバイザーを外す。
「じゃあ、そろそろ集合場所、行こっか。」
そう言って、ミルファはイルファの置いていった戦利品と、貴明の荷物も、ひっくるめて両手に持った。
「あ、俺の荷物はいいよ!」
「いいのいいの。あたしには軽いもんだしぃ。ダーリン、ずっと重たいの持ってて疲れたでしょ。」
「いや、女の子に荷物持ちなんて、させられないよ。」
「むふ〜ん、ダーリン、やっさしぃ〜☆」
そして二人は、イルファが立ち去ったと同じ方向、東西棟連絡通路の途中にある休憩所に、雄二達と合流するため歩き出した。
454 :
435:2008/06/01(日) 19:49:05 ID:hyPvFBFr0
435です。
本日は、ここで一旦、投稿おしまいです。
ご支援いただきありがとうございました。<(_ _)>
>>454 乙。前にも誰かいってたが、名前欄に「1/20」とか入れてくれると支援しやすい
>454
乙。こみパの賑やかな雰囲気が良く出てるね。最後まで頑張れ
書庫さん乙です
捕手
459 :
435:2008/06/05(木) 23:56:13 ID:tmsHAqDu0
こんばんは。435です。
まだラストまでしばらくかかりそうなんで、ここらでまた途中まで落とします。
東西コンコースの中間、エントランスホールの休憩所は、戦利品の確認を行う参加者達でごった返していた。
見たところ、雄二達はまだ到着していないようである。
確認と受渡を終えたらしい買出しグループが、今ちょうど引き払うところだった。
「あ、ダーリン、あそこ空いたよ。」
そう言うが早く、手前のテーブルのグループの頭を飛び越えて跳躍し、ストンと、空いた卓の前につくミルファ。
おおっ、と、周囲から驚きの声が上がった。
そして、手にしていた戦利品を、周囲の椅子の上に置いて場所の占有を図ってから、貴明を手招きする。
相変わらず、豪快というか強引というか派手というか無茶というか・・・苦笑いする貴明。
5分程待ち受けていたら、雄二達のグループが到着した。7〜8人は引き連れている。
「よう貴明、早いな。」
15時の10分前だった。
見ると、各自がとんでもない量の戦利品を抱えている。どう見ても、一人で回れる量ではない。
おそらく、実際に動いていた兵隊はもっと大勢いて、それを集約したものだろう。チケの枚数は10枚以上あったし。
ここに集ったのは、グループリーダー格か。
最後尾に、女の子が二人、続いている。
花梨と・・・久寿川先輩だった。
「やあ、たかちゃん☆」
「こんにちは、河野さん、はるみさん。」
苦笑しつつ、小さく手を振る貴明とミルファ。
全員は座れないので、貴明と雄二が気を利かせて、女性二人をまず座席に引き入れた。
どうやって、ささら先輩まで仲間に引き入れたのか・・・概ね、予想のついた貴明ではあった。
「おい雄二、お前、その頭、どうしたんだよ?大丈夫か?」
雄二の額の絆創膏に気付いた貴明が尋ねた。
「ん、まぁ・・・色々とな。」と、雄二。
「また女の子じゃない?」
ミルファがそう言うと、気まずい顔で沈黙する雄二。図星らしい。
場の空気を変える意図もあるのか、雄二が威勢良く切り出した。
「よぉ〜っし、さて、諸君!早速、戦果の確認といこうか!」
・・・ ・・・
「くっくっくっ、圧倒的じゃないかわが軍は!」
笑いが止まらない雄二であった。
貴明には詳しい事はよくわからなかったが、壁際大手サークルのブツがこれだけ集まるのは、普通、有り得ない話らしい。
“CAT OR FISH!?”だけでも、ざっと見て20冊以上はある。
「私も、キャットフィッシュに並んでたんですよ。」
と、ささら先輩。「列の先で、人が何人も空中遊泳し出したんで、びっくりしてしまいましたけど。」
「あちゃ−」、と、真っ赤になって、頭をかくミルファ。
・・・それにしても、ささら先輩は、もうアメリカ留学は諦めてしまったんだろうか?
「ふっふっふ。これなら、我らが総帥も、お喜びになろう。では諸君、秋葉原に凱旋するぞ!!」
・・・総帥?アキバ?
怪訝な表情になって顔を見合わせる貴明とミルファ。
変な汁出しまくりです、この人。
そもそも、これらの大量のブツを、どうするつもりなのだろう?
「おい、雄二」
「何だ、貴明?」
「・・・総帥って、あの人?今まで黙って手伝ってやったけど、あんまりいかがわしい展開になるようなら、この辺で失礼するぞ。」
「もうわかってんんじゃねぇか。ま、折角ここまで協力してくれたんだ。悪いようにはしねぇよ。」
あの方に関わっていること自体、既に災難である可能性大なわけですが。
・・・ ・・・
『・・・も、もう、追っ手は、こないれすか!?』
そこが、施設内のどこなのかもわからない。
逃げ惑った挙句、シルファが転がり込んだのは、物置代わりに使われているらしい一角だった。
大小の、大量のダンボールやコンテナが並んでいる。
『こ、この箱が、手頃なのれす。』
いつも“愛用”しているダンボールに近いサイズの箱を目ざとく見つけたシルファ。
上蓋を持ち上げ、中が空である事を確認すると、スルリと潜り込んで、上蓋を降ろす。
そして、中で足を組んでうずくまった。
10数分程その状態でいると、やがて、異変が彼女を襲ってきた。
「・・・な、なんか、眠くなってきたのれす・・・ご主人様・・・」
急速に、意識が遠のいていく。
既にバッテリー残量が少なくなっていたシルファは、強制スリープモードに陥っていったのだった。
「これにて、“こみっくパーティー”を、終了いたします。ご来場の皆様、ありがとうございました。」
終了を告げるアナウンスに、参加者達が応えて場内に万来の拍手が響き渡った。
一般参加者や、撤収を終えたサークル参加者が、出口に向けてゾロゾロと動き出す。
その流れに逆らうように、コンコースを東棟に向かって進んで行く少女がいた。
ショートカットの、青い髪。
左右を見回しながら、彼女が頭に装着しているイヤーバイザーから伸びたフィン状のアンテナが、上下にうごめいている。
試験放送が館内に響き渡っていた。
“♪ 探し物はなんですか?見つけにくいものですか?まだまだ探す気ですか? ♪”
・・・・・・
こみっくパーティー準備会の、総本部内の一角。
こみパ準備会の中堅スタッフ、牧村南は、目の前に立つ、青髪の少女をしげしげと眺めながら、言った。
「驚いたわ。本当に、あなた、アンドロイドなのね。どう見ても、人間のコスプレにしか見えないんですもの。」
彼女が知るメイドロボのステレオタイプとは、眼前の少女の見せる細かな表情の一つ一つが、次元の違うものであった。
「はい。それで、昼間ご覧になった、その、とても身軽な女の子がこもっていたダンボールは、これなんですね。」
イルファが視線を向けた右下の床に置いてある、来栖川エレクトロニクス製冷蔵庫のダンボール。
表示されている型式は、以前、研究所でシルファを箱詰めにし、貴明の家に送りつけた際の、まさにそれであった。
「ええ、そうよ。」
「やっぱり・・・。間違いなく、その娘は、私の妹、シルファです。」
ガレリアの2階で貴明と会う少し前、走り回るダンボールの噂を耳にしたイルファは、貴明達と別れた後、その足取りを追っていたのだった。
「私達でも、可能な限り、探してみるわ。」
「申し訳ありません。それでは、宜しくお願いします、牧村さん。」
その時、イルファの脳裏に語りかけてくる信号があった。
「すみません、ちょっと失礼します。」
目を閉じて、交信を始めるイルファ。
「珊瑚様・・・・・ はい、やっぱり、シルファちゃんでした・・・・・そうですか、貴明さんの家に・・・・・はい、もう少し、こちらで探します。」
「どうも〜!ペンギン運輸で〜す!」
こみパ指定業者の宅配大手、ペンギン運輸の集配ドライバー達が、西棟ブースを管轄する準備会スタッフに導かれて、梱包資材の仮置き場にやって来た。
ブースの担当者が、これと、これを、搬出してくれと指示を出す。
一部のものは廃棄するため、そのまま残された。
そして、ひときわ大きく頑丈そうな箱の前にやって来る。
「こいつは、再利用するんで、一緒に送り返します。」と、ブース担当者。
よいしょっと・・・結構、重いな・・・と、ドライバー2人が抱えて、カゴ台車の上に載せた。
ドシ〜ンと、台車の金属音が響き渡る。
「サイズオーバーじゃないですか?」
「いえ、こいつはロールボックスパレットごと貸切なんで、問題ないですよ。」と、ドライバーの一人。
頑丈そうな箱だったので、その上に、またいくつかの資機材の入った箱が重ねられた。
そして、カゴ台車の前蓋が閉められ、留め金を掛けて封印が通される。
伝票が台車に貼られた・・・行き先は、福岡だった。
テールゲートのついたペンギン運輸の4トントラックがやって来て、搬出場でそのカゴ台車を積み込む。
やがて、カーゴルームがカゴ台車で満載になると、テールゲートが閉められ、トラックはスロープを下って、ビッグサイトの外に走り去っていった・・・。
支援
大晦日前日とは言え、秋葉原の街は、相も変わらず大きなお友達の群れでごった返す。
しかも、こみパ帰りの客が大量に流入し、普段以上の賑わいを見せていた。
「ただいま、戦線より帰還いたしました、総帥(ボス)!」
貴明、ミルファも最後尾についていたその集団を引き連れ、先頭の雄二が、電気街口の広場で待ち受けていた人物に呼びかけた。
「・・・うむ。よくぞ無事に戻ったな。わが忠勇なる“BM団”の、十傑集たちよ。」
マントを翻して立つ、年齢不詳の小柄な少女。ピンク色の髪に、玉の髪飾り。貴明達の学校のセーラー服を着込んでいる。
・・・この人、とっくに卒業しちゃってる筈なのに、なんでまだ、うちらの制服着てますか?おまけに冬休み中なんですが。
と、貴明の、心中の声。
貴明とミルファ以外の面子が、その少女の前で横一列に整列し、右手をサッと斜め上に伸ばして、一斉に斉唱した。
「我らの、ビッグ・まーりゃんの為に!!」
列の後ろで、貴明とミルファは顔を見合わせ、冷や汗を流しつつ引きつった笑みを見せた。
アキバじゃ違和感ないのかも知れませんが、はっきり言って、恥ずかしいです。お仲間に見られたくありません。
これで、黒いスーツでも着込んで赤いカラーコーンでも被ってたら、そのスジのアブナイ人達にしか見えませんから。
彼らの様子を、通行人達が好奇の目で眺めている。
「今回の作戦は、俺様のマイ・ビジネスパートナー、策士・ひつじさんが立案した。遂行、ご苦労であった!」
「メェ〜。」
先輩が抱きかかえている、策士“ひつじさん”が鳴いた。どう見ても、子ヤギなんですが。
「“暮れなずむゆーりゃん”、統括、ご苦労だった。“サニー・ザ・さーりゃん”も、よく頑張ったぞ。」
配下の労を次々とねぎらうまーりゃん先輩。
「“衝撃のたかりゃん”も、よい働きであった」
お願いですから、俺まで妙なあだ名で呼ばないで下さい、先輩。
「ちょっとぉ、何であたしやお姉ちゃんが十傑集に入ってないわけぇ!?」
あのぉ、そんな仲間の内に、入れられたいの、ミルファちゃん?
「はーりゃんといーりゃんは、たかりゃんの“3つの護衛団”だから、別枠だ♪」
「わ〜い!あたしはダーリンの、護衛団〜♪☆」
・・・そこで喜ばないでってば、ミルファちゃん。
ゾロゾロと中央通りを歩いて、一行が辿り着いたのは、“蛇の穴”と看板のかかった、グッズ販売店。
いわゆる、中古同人誌ショップというやつらしい。
「諸君らの労に報いる時が来たようだ。ちと、外で待っておるがよい。」
ガラガラとキャスターを押して、エレベーターに入っていくまーりゃん先輩。
“台車禁止!”と、貼り紙がしてあるようなんですけど。
しかも、18禁アイテム売るのに、身元保障はいいのかよ・・・って、この人は、“自称”永遠の14歳なだけで、18歳以上なのか。
・・・
待つこと、十数分。
身軽になったまーりゃん先輩が、エレベーターの中から現れた。
「苦しゅうない。各自、近う寄れ。ホレ、これがバイト料だ。巡回サークルの数と難易度に応じて、インセンティブ付だぞ☆」
まずバサッと、雄二の手に収まった封筒。口を空けると、かなりの枚数の、紙幣が。
「おほーっ!」
「それで、ゆーりゃん大好物の、メイドロボ喫茶でも、巡ってくるがよい♪」
次々とメンバーが呼ばれ、報酬の収まった封筒が渡されていく。
ささらに手渡す時、まーりゃん先輩はささらの手を握り、ニヤリと笑みを浮かべた。
「さーりゃんには、報酬+αで、あとでたんと可愛がってやるからな♪」
「先輩・・・」 ポッと、ささら先輩の頬が赤く染まる。
何だかなぁ、この人達は。
「ホレ、たかりゃんと、はーりゃんも。」
「俺達は要りませんよ。あくまで雄二に頼まれて手伝っただけなんだし。」
冗談じゃない。結局これは、大掛かりな転売ヤーじゃないですか。そんな片棒担がされて、これ以上朱に染まってたまるか。
「えーっ?ダーリン、何でぇ〜!?」
ミルファちゃんがぷーっと頬を膨らませるが、もはや気持ちは変らない。
「では、ゆーりゃんに渡しておくぞ。気が向いたら、受け取ればよかろう。」
まだかなりの冊数の同人誌が、まーりゃん先輩の手元に残っていた。多分、オークションにでも出展するつもりなのだろう。
一通り、報酬の受渡が終了した。
「今回のオペレーションで、俺様の野望実現に、また一歩、近づいた。それでは、諸君!次は、“サンダーフェスティバル作戦”で会おう!さらばだっ!!」
そう叫んでから、ママチャリの前カゴにひつじさんを乗せ、リヤのカゴには残った同人誌を積み込んで、まーりゃん先輩は中央通りを御徒町の方に向かって、ギコギコと漕ぎ去っていった。
・・・いえ、お次は決して関わりませんから、先輩。
他の面子達は次々と秋葉原の界隈の中に紛れて消えて行き、後には、貴明と雄二とミルファだけが残っていた。
「よぉ〜っし、貴明!これからメイドロボ喫茶に、繰り出すぞっ!!」
札束の入った封筒を握り締め、雄二の目が爛々と輝いている。
「その為に、まーりゃん先輩の、アホな道楽だかビジネスに付き合ってやったんだ。やっとこれで、俺のささやかな野望が!」
どこまで本気でまーりゃん先輩に付き合ってたのかと思っていたが、やっぱり打算だったのが判明して、多少は安心した貴明だった。
「ゆーじ君、あたし、メイドロボ喫茶なんか行きたくないんだけど。」
口先を尖らすミルファ。「どーせいっつも、あたしやお姉ちゃんや地味妹と会ってるくせにぃ。それで不満なのぉ?何か面白くないなぁ〜」
「いや、まぁ、ミルファちゃんやイルファさんやシルファちゃんは、ロボットとは思えなくてさ。所謂、普通の“職業的メイドロボ”さんのおもてなしにも、それなりの味ってもんが・・・」
そう言って札束を握っている雄二の背後から手が伸びて、ガバッとその手から、札束を抜き去っていった。
「没収。」
えっ!?
雄二の背後に、鬼の形相で立っていたのは・・・
・・・タマ姉!?
「悪銭身につかず、ね。」
一体、いつの間に!?
「これは預かっておくわ。生徒会費の足しにでもさせてもらおうかしら。あの、“ま”の人が、空っぽにしちゃった金庫のね。」
「ちょっと待て!いくら姉貴でもそれは許さん!耐えがたきを耐え、忍び難きを忍んだ俺の血と汗と涙と萌えの結晶がっ!!」
そう雄二が叫んだ直後、ガッと、その顔面にタマ姉のアイアンクローが炸裂した。
「ぐわぁああああ〜っっっ!!!割れる割れる割れるぅううう〜〜〜っっっ!!!」
「雄二っ!あんたって奴はっ!!どこまで性根が腐ってるの!?あんないかがわしい先輩の転売ヤー行為の手助けなんかしてっ!!しかも買ってたの、18禁同人誌じゃないのっ!!」
そう言って、くるりと、今度は貴明達の方に顔を向けて睨むタマ姉。
「タカ坊、ミルファ、貴方達もよ!こんな馬鹿に付き合って、健全な高校生にあるまじき行為に手を染めちゃうなんてね。」
そのタマ姉の視線の迫力に気押され、思わず、頭を垂れてしまう貴明とミルファ。
「ご、ごめんなさいタマ姉・・・」 「ぐっすん、ごめんなさぁい・・・」
しばらく宙ぶらりんの状態で両手両足を泳がせてもがいていた雄二だったが、環にようやく解放され、ドタッと、地面に落下した。
「でもタマ姉、どうしてここに?」
貴明が尋ねる。
「こんな愚弟の行動パターンなんて、とうにお見通しよ。帰りましょう、タカ坊、ミルファ。」
「う、うん・・・」
くるりと踵を返して、駅の方に向かって歩く、ベージュのコートを着込んだ環の後ろ姿につき従っていく貴明達。
歩んでいく途中で、ふいに環が後ろの貴明に横顔を向け、ニヤリと笑みを浮かべて言った。
「・・・でも、面白い経験出来たんじゃないの、貴方達?楽しんでこれた?」
「はぁっ?」
ついさっきまで、あんなに、怒ってたのに?
「ふふ、本当のところはね、私も行って見たいとは思ってるんだけどね、日本一マニアックなお祭り。雄二が私に黙って自分だけ楽しんできたのにムカついただけ」
・・・タマ姉、ヒドス。
路上に捨て置かれた雄二は、白目を見せ、口泡を吹いて、手足を痙攣させつつ呻いている。
「ぐご・・・ごごご・・・」
すっかり陽が落ちてしまった頃、河野家に戻ってきた貴明とミルファ。
部屋の中に入ると、リビングに数人、客が来ているのが見えた。
「あ、タカくん。お疲れ様であります隊長!」
「おかえりなさい、タカくん。」
「貴明ぃ〜、るー☆」
「お邪魔させてもろてるよ。」
驚くミルファ。 「さんちゃん、瑠璃ちゃん!?なんでここに?」
このみと春夏さんはいいとして、珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんは・・・
シルファちゃんが怖がるから、こっちに来るのは避けてたんじゃ、と、訝しんだ貴明だったが、すぐに疑問は解けた。
どこにも、シルファの姿が、ない。
「タカくんね、シルファちゃん、出掛けちゃってるみたいだから、私の方で家のカギ開けさせてもらったわ。」と春夏さん。
近所のスーパーとかに買い出しに行ってるくらいで、珊瑚達が居座る筈はない。すると・・・
珊瑚は、テーブルの上にノートパソコンを広げて、いつになく真剣な表情で画面を凝視している。
瑠璃が言った。「イルファから連絡あってな。シルファ、迷子らしいねん。」
「えぇっ!?」
「馬鹿、何やってんのよ、あのひっきー。」
会場で、イルファが途中で別れた理由をようやく理解した貴明。
でも、そこで知らせてくれてもよかったのに、とも考える。
彼女なりに貴明に気を使ったものとは思われたが。
リビングには、春夏の作る料理の匂いが、プンと立ちこもっている。
パソコン画面を眺めながら、珊瑚が貴明に言った。
「しっちゃんな、貴明追って、有明に向かったらしいんよ。ほんで迷子になってしもたらしいんや。」
「えぇっ!?」
こみパの尋常でない人混みの中で迷子になってしまったとしたら、それは非常に気掛かりであった。ただでさえ、人見知りするのに。
「すると、イルファさん、まだ有明なの?」
貴明の問いに瑠璃が答える。
「そうや。で、シルファの使ってるダンボールをな、イルファが会場で見つけたんよ」
「・・・えっ?さんちゃん、瑠璃ちゃん、それ、ヤバイんじゃない!?」
最初は呆れ顔でいたミルファであったが、途端に懸念が表情に浮かんでくる。
何だかんだ言っても、そこは姉妹であった。
「それでも、ひょっこり戻ってくるかもしれへんから、一応、ここにやってきたってわけなんや」
ダンボール無しではそれは難しいだろうと、貴明は思った。
「タカくん、心配だねシルファちゃん・・・」
貴明の傍らで指をくわえながら、このみがボソリと言った。
珊瑚のPC画面で、新たなウインドウが開く。
「お、いっちゃんや。」
途端に、パソコン画面に見入る貴明、瑠璃、ミルファ、このみ。
「珊瑚様、瑠璃様。準備会の方達にも、いろいろご協力いただいたんですが、まだ見つからないんです。」
データリンクシステムを通じて、珊瑚と通信しているイルファ。
珊瑚のPCに映っているのは、イルファのイメージ映像と、彼女の視点の状景であった。
傍らには、こみパ準備会の牧村南が立っている。
「スタッフ全員に、出来る限りいろんな場所当ってもらったけど、見つけられないみたい。ごめんなさいね。」
申し訳なさそうに話す南に、イルファが応えて言った。
「いえ、そんな、すいません・・・もしかしたら、それでかえって逃げ惑ってるのかも。あの子、すごく人見知りするんで。」
そう云いながらも、その可能性は低いと考えるイルファであった。
リンクシステムのネットワーク内に、シルファのIDが、見当たらないからである。
スリープモードか、シャットダウン状態・・・つまり、稼動していない。
(つづく)
474 :
435:2008/06/06(金) 00:41:59 ID:vkvjRYbk0
本日は、これでおしまいにします。
次回で、投入終了にしたいなぁ・・・とか思ってはいるのですが。
>>474 お疲れです〜〜。
それにしてもシルファの電気落ちるの早っww
細かい感想は終了を待つとして……
次回もがんばってくださいね。のんびり待ってますから。
>474
ゴミに出されると聞いて動物のお医者さんのミケを思い出した漏れが乙!
477 :
474:2008/06/08(日) 00:27:00 ID:rWRxL4KL0
こんばんは、474です。
今回で終りにしたいと思います。
ご支援頂ければ幸いです。
貴明が、珊瑚と、PC画面のイルファに呼びかけて言った。
「あの、さ。その、データリンクシステムとかで、居場所、突き止められないの?」
「ダーリン、それ、無理だから。」横でミルファが言う。
珊瑚がそれを引き受けて説明した。
「無線LANみたいなもんなんや。データリンクシステムのネットワーク内で、アクセス許可されたメイドロボ同士が、データを共有しとるちうだけやから。
ネットワーク内に、そのメイドロボのIDがあれば、稼動してる事だけは確認出来るんやけどね。
地理的な位置確認しようと思ったら、そいつから、位置特定信号出して貰うしかないんやね。」
或いは、稼動さえしてれば、シルファに強制的にアクセスしてリモートコントロール下にも置けるだろうが、極力、それはしたくない、と珊瑚。
「しっちゃんの人権、もといロボ権侵害や。」
それをやってしまったら、ただでさえ珊瑚を恐れているシルファ、“親子”の溝は決定的になってしまうだろう。
もっとも、今はそれ以前の状態で、動力が入っていないのでは手の打ちようがない。
「貴明、シルファに、まめに食事させてやってたか?」
「うっ・・・」瑠璃の指摘に、うつむいてしまった貴明。
つい、気恥ずかしさから、避けがちになっていたのは事実だった。
「ダーリン・・・仕方ないよ、それ。大半は、自己責任だから、ひっきーの。自分責めちゃダメだかんね。」
そう言って貴明を慰めたミルファだったが、やがて、自分もうつむいてしまった。
・・・自分が、シルファの立場だったら、やっぱり、ご主人様に充電してもらいたかったろうと、思い当ったからだった。
こみパ準備会の、総本部内。
ふと考えてから、イルファが南に尋ねた。
「会場内の荷物は、どうなってます?どこかに集めて、運び出されてるんですよね?」
ダンボールに隠れたがる習性から、ひょっとして、搬出される荷物の中に入り込んでしまったのでは、と考えたのだった。
「東西の搬出口にまとめられて、ペンギン運輸の車が持っていくわね。」
顎に手を当てながら、南が答えた。
「私達のイベントの指定業者なの。西棟の、法人系の荷物は、ペンギンの物流システム支店のトラックが来て、まとめて搬出していくわ。」
多分、それが怪しい。今から調べられますか、とイルファ。
ちょっと待ってね、と、搬出の担当者に連絡を取った南であった。
・・・が、受けた連絡は・・・
「どうも、あらかた搬出し終わっちゃったみたい。ちょっと遅かったかしらね。」
重苦しい空気に支配されている、河野家内。
春夏の作った夕食が、食卓上に並べられていたが、貴明も、このみも、全く箸を通さないでいた。
卓上に肘をついて、ずっと考え込んだままの貴明。
瑠璃も珊瑚も、パソコンにかじり付いたままである。
イルファからの交信は、一旦、途絶えてしまっていた。
「瑠璃ちゃん、さんちゃん、ダーリン!あたし、ひっきー探しに行く!!」
珊瑚達の隣で床に尻をついて座っていたミルファが立ち上がり、玄関に向かう。
貴明も食卓の椅子から立ち上がった。「あ、俺も行く!」
これ以上、じっと待つだけに耐え切れなくなった二人である。
「待つんや。」と、珊瑚。
「無闇に探し回っても、効率悪過ぎやないの。どうやって探すつもりなんや?いざとなりよったら、来栖川セキュリティーにでも頼んで、ロボ探知機使って、探してもらおるさかいに。
結構、お金かかるとは思うんやが。」
「でもぉ・・・」口をへの字にして、不満を漏らすミルファ。
「・・・それに、もし荷物と一緒に送り出されてしもたのなら、そのうち、送り先で発見されるんやないかな。」
絶句する貴明。
イベント系の荷物だったら、数ヶ月、下手したら半年1年、送り返された先で、放置されてるかも知れない。
「そんな・・・それまで待ってられないよ!それじゃ、シルファちゃんが可哀想過ぎるじゃないか!」
「ちょっ、ちょっと!さんちゃん、それひどすぎる!」
「そないな事はわかってるわっ!うちらやって、そないな事は考えたくないんやから!」
瑠璃が叫んだ。
「・・・とりあえずは、いっちゃんの連絡を待つことやね。」と、珊瑚。
すると、PC画面に、再び、イルファからの交信窓が立ち上がった。
「あっ!いっちゃん!今どこにおるんや!?」
タクシーを降りたイルファの視線の先には、暗闇の中、ライトアップされたレンボーブリッジの畔に立つ、巨大な貨物ターミナルのシルエットがあった。
建物の壁に描かれたペンギンマークがひときわ目立つ。入口の門には、“ペンギン運輸 東京ターミナル店”とあった。
「今私、ペンギン運輸のターミナルに来ています。こみパ会場から運び出された荷物は、一旦全てここを通る筈だって、準備会の牧村さんが教えてくれたんです。」
あれだけビッグサイト内を探して見つからないのであれば、やはり、運び出されている可能性が高い、と考えて、ここにやって来たイルファであった。
珊瑚の眺めていたPC画面に、異変があった。
「あっ!しっちゃんが!起きたんか!?」
珊瑚の叫びに、わっとPCの周辺に駆け寄る一同。
データリンクシステムのネットワーク内に、シルファのIDが、復活したのだった。
「・・・ここは・・・シルファ、寝てしまったんれすか・・・?」
真っ暗なダンボールの中。外部からは、かすかに、作業現場のような、“ゴー”という騒音が、漏れ聞こえてくる。
体内時計が、午後9時近い事を告げていた。
「も、もう、帰らないと・・・ご主人様、心配してるのれす、きっと。」
立ち上がって、ダンボールの上蓋を、持ち上げようとするシルファ。
・・・しかし、ビクともしない。
「お、重いのれす、動かないのれす・・・ち、力が、入らないのれす・・・」
シルファの入っている箱の上には、幾つか重量のある荷物が置いてあり、省電力モードになっている彼女では、それはビクとも動かないのだった。
「ら、らめぇ・・・れ、れられないのれす・・・帰れないのれす。」
恐怖が、シルファの心を支配し始めた。
「た・・・助けて!られか、らして!怖い・・・怖いのれす!ご主人様ぁ!・・・ミルミル・・・イルイル!・・・お姉ちゃま・・・!」
「しっちゃん!」
シルファのホストに向かって、強いコマンドを飛ばした珊瑚。
「・・・ぴっ・・・!」
ここは、非常時である。無理矢理でも、彼女のポートを一瞬こじ開けて、意識に届く“声”を、送り込むしかなかった。
「〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」
届いた“声”に、固まるシルファ。
「しっちゃん、黙って言われた通りにするんや!SOSやっ!!」
恐れていた“母親”の声に、一瞬パニックを起しかけたシルファであったが、ここは、助けを求める気持ちが勝った。
『助けて!!』の声が、位置を探知するための電波信号となって飛んでいく。
「よし!来たっ!!」
珊瑚はウインドウを素早く切り替え、江東区・有明地区の表示された地図画面を凝視した。
指し示された地点は・・・
ペンギン運輸、東京ターミナル!!
「いっちゃんっ!ドンピシャやぁっ!!しっちゃん、すぐ近くにおるぅ!!」
来栖川エレクトロニクスから送られて来た身分情報により、電子認証を経て入館したイルファは、夥しい数のカゴ台車の並ぶ、広大なペンギン運輸のターミナルの構内を歩んで行く。
前を歩む、付き添いの、グループ長という名札を下げた作業員に尋ねた。
「貴方も、ロボットなんですね?」
HM-15によく似た、イヤーバイザーが、気になっていたのだ。
「はい。私はBWX-09a オズマです。来栖川エレクトロニクスで作られ、ここで試験運用中です。」
「ここには、どのくらいの数の人型ロボットが?」
「私と、兄弟機のシズマ、カズマの3体だけです。」
雇用問題の絡みがあり、また必ずしも人間型である事を求められない法人市場では、依然それほど多くはないものの、労働集約型の職場を中心に、徐々にアンドロイドの普及は進んで来ているようだ。
イルファから送られてくるライブ映像を眺めて、珊瑚が言った。
「わぁ、いっちゃん達のお仲間やぁ。長瀬のおっちゃんが関わってんのはHMシリーズだけやから、法人向けの男型はよう知らんけどな」
「結構、男前やね。」
「ダーリンみたいなヘタレじゃないよね♪」
「うちのお父さんに、ちょっと似てるであります。」
「そうね。うちに一体買って、主人と交換出来ればいいんだけど」
「ちょ、ちょっと、春夏さん!?」
「いっちゃん、しっちゃんからの位置信号が途絶えてしもうた。場所、わかるか?」
『はい、おおよそは。九州行きの荷物の中かと』
“九州行き運行車B1124、切り離し時刻ですが、一時、出車を見合わせて下さい。”
構内に流れるアナウンス。
構内の一番奥に位置する、九州方面の荷物集積所にやって来たイルファ達。
傍らの接車バースには、後部観音扉を開けたままの状態で、幹線輸送の大型車が縦付けられていた。
そのカーゴルームには、既にカゴ台車が最後尾までびっちりと収まって、ラッシングベルトで締め付けられている。
仕分シューターの周辺にも大量のカゴ台車が並んでいたが、それらをざっと調べて、そこには人が収まるような大きなダンボールはなく、宅配貨物ばかりである事を確認した。
やはり、トラックに積載した後らしい。
「すみませんが、降ろして調べさせて貰ってもいいでしょうか?」
ベルトを外し、カーゴルームから台車を引き出す、作業ロボ・オズマとイルファ。
荷台と接車バースとは若干の段差があるのだが、それをものともせずに、フォークリフトも使わず台車を次々とホームに下ろすロボ2人の怪力ぶりに、アルバイトの作業員達が目を丸くしていた。
とりわけ重い台車が、オズマの手で下ろされてホームにドシンッ!と着地したその時。
「ぴゃっ!?」 と、小さな悲鳴のような声が漏れ聞こえてきた。
横で降ろした台車を並べていたイルファだったが、その声に「あっ!?」と振り向き、駆け寄ってくる。
「シルファちゃん!?」
これは、ロールボックスの貸切路線便です、と、作業ロボ・オズマが説明する。
福岡の住所が記載された伝票が、ボックスカバーに貼られていた。
『いっちゃん、目の前で信号が出とる。見つけたんや!』 珊瑚の声が響く。
カバーが外されて、カゴの内側に、幾つか箱が積載されているのが露わになった。
サイズの大きい箱も数点ある。
呼びかけるイルファ。
「シルファちゃん?いるの!?」
「・・・ぴっ!・・・お・・・お姉ちゃま・・・っ!!」
台車の前蓋を外そうとするイルファ。
しかし、カゴ自体が歪んで、かつ留具もネジ曲がっているらしく、容易には外れそうもない。
仕方ないか。
「えいっ!」
掛け声を上げて、思いっきり、フタを斜め上に引っぱり上げたイルファ。
すると、"バキンッ!!"と音を立て、金属の留め具ごと引き裂いて、フタを外に引っ張り出してしまった。
「あっ!?ごめんなさい、やっちゃいました。私としたことが、つい。」
傍らで眺めていたオズマも、華奢で小柄なHM型がこんなパワーを与えられている事に驚き、目を丸くする。
イルファは頬を赤らめ、苦笑しながら言った。
「私、元々サッカーロボなんで、ちょっと体力には自信がありまして・・・」
すると、それにニッコリしながら言葉を返すオズマ。
「そうですか。私は元々野球ロボでした。」
「わぁ、いっちゃん、豪快やあ♪」
PCの前で喝采している珊瑚。
唖然としてその画面の中の様子に見入っている、その他の面子。
「みっちゃんも、貴明とS○Xとかしたら、こんな風に、途中夢中なって貴明の骨の1本や2本折ってまうかもしれんなぁ♪」
「え・・・っ?ちょっ、ちょっと、何言ってんのさんちゃん!そんなこと、しないよう・・・」 頬を赤らめ左右の人差し指を合わせてつつくミルファ。
真っ赤になりながら、冷汗を流す貴明。
「すいません、ジョークになってません、それ。」
・・・ ・・・
再び、ペンギン運輸東京ターミナル内。
カゴ台車内の荷物が次々降ろされて、最下段のダンボールが現れてくる。
「シルファちゃん、今開けるからね。」
「ぴっ・・・」
えいっ!
ダンボールに手が掛かり、フタが両側に引き上げられる。
・・・しかし・・・
「あの・・・」
ダンボールの中を覗き込みながら、つぶやいたイルファ。
「中に誰もいませんよ」
・・・ ・・・
すると、イルファが開けたダンボールの、隣の箱から声が。
「ぴぃぃ〜っ!イルイルがいじめるぅ〜っ!る〜る〜る〜っ!!」
「まぁ、そっちだったの?今出してあげるから待ってなさいね。」
・・・ ・・・
「〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」
思いが言葉にならない。
「・・・ひっ・・・ぴっ・・・こっ・・・怖かったれすぅ〜〜〜っ!!・・・・うわぁ〜〜〜んっっっ!!!」
イルファに抱えられ、その胸に顔をうずめて、意識が薄くなりつつも、涙を流さずに泣きじゃくるシルファ。
「大丈夫、もう大丈夫だから、シルファちゃん。ほら、帰りましょう。」
シルファの背中と頭を優しく撫でながら、イルファが言った。
彼女らの背後で、オズマがイヤーバイザーに手を当て、通信をしている。
そして、それが終わると、呼びかけて来た。
「今、来栖川からのお迎えのヘリが、屋上に到着しました。ご案内しましょう。」
・・・ ・・・
「しっちゃん、よかったなぁ〜。」
しみじみ言いながら、珊瑚は目尻を指でこすった。
「イルファ、お手柄やったな。ホンマ、ようやったよ。」と、瑠璃。
「あ、あたしだって、もっと早く教えてくれれば、探しに行ったのにぃ〜」
その隣で、そう言って唇を尖らすミルファ。
すると、意外だという顔で、瑠璃が言った。
「あれ?ミルファ、シルファと仲が悪かったんとちゃう?」
「た、確かに、普段あんまりよくないけど・・・でも、あたしら、姉妹なんだから。やっぱり」
「ふふん、素直じゃないのは一緒やね。3人とも頑固やぁ。確かによう似とるわ。」と、瑠璃。
「よかったね、タカくん。・・・でもやっぱりすごいね、イルファさんって。」
しみじみとこのみが言った。
うん、そう。やっぱり、この人には敵わないや、いつだって。・・・つくづく思う貴明であった。
ありがとう、イルファさん。
「ほら、みんな。食事冷えちゃったじゃない。お腹空いてるでしょ。早く食べなさい」
春夏が、おかずを電子レンジに収めながら呼びかけた。
「ほら、ダーリン、早く食べないと。あたしがア〜ンしたげるから」
しかし、貴明は、そのままPC画面を眺めたまま、固まっている。
両目に涙を浮かべながら。
シルファちゃん、早く帰っておいで・・・
その様子を見て、ポリポリと頭をかきながら苦笑し呟くミルファ。
「・・・ま、いっかぁ。」
翌日。
「た、貴明ぃ〜〜〜っっっ!!!」
玄関の外に出たとたん、いきなり雄二が現れて、詰め寄ってきた。
「てっ、てめぇはっ!屍となってアキバの路上に横たわる俺を見捨てて、とっとと帰っちまうとはぁ〜〜っっ!!」
そういえば、そんな感じでしたっけ。すっかり忘れてました。
「あ、あははは〜。ご、ごめん雄二。」
「それでも親友かよっ!死ね!死ね!死んでしまえっ!!」
そう言って、貴明の首を掴み、締めにかかる。
「ぐごっぐごごご・・・・・」
本当に窒息しかかっていた貴明であったが・・・
雄二の、背後から伸びる手。
ガシッ!
雄二の頭を掴んで持ち上げる。タマ姉だった。
「ぐごわぁ〜っ!!割れる割れる割れるぅっ〜〜〜!!!」
手足をバタバタさせる雄二。
「ほんとにあんたってヤツは!みんな自業自得でしょう!いっそこのまま、路傍の石か電信柱のでんちゃんにしてあげてもよくってよ!?」
・・・でんちゃんさんは、誰かさんが意匠権取得済みだと思うんですが。
環がやっと手を離すと、ドサリと落下してそのまま動かなくなる雄二。
「タカ坊、昨日、あの後大変だったんだって?このみから聞いたわ。」
両手を腰にやって、環が言った。
「う、うん。」
「でも、よかったわね、見つかって。シルファちゃん、今どうしてる?」
ちょっと心配な表情を浮かべ、環が聞いてくる。
「うん、まだ寝てる。さすがに、泣き疲れちゃったのかな。」
昨晩、シルファは帰ってくるなり貴明に抱きつきながら延々と泣きじゃくり、そのまま寝入ってしまったのだった。
・・・それにしても、ジェットコースターのような1日だったなぁ、昨日は。・・・
つくづくと思い返す貴明。
早朝の、暗がりの中での出発、桁外れのこみパの喧騒。相変わらずのまーりゃん先輩のバイタリティ。そして、帰宅してからの、急転直下の展開・・・
本当に、疲れた。
このみが柚原家の玄関から現れた。
「えへー、タカくん、おはようであります。あっ、タマお姉ちゃん、おはよう!」
「おはよう、このみ。」ニッコリ微笑んで、環が応えた。
支援
「ところでタカ坊、今晩、もう予定入ってる?」
環がそわそわしながら、貴明に尋ねる。
「う、うん・・・小牧さんと、草壁さんから、初詣、誘われてるんだけど。多分、由真も来ると思う」
「あちゃ〜、遅かったか・・・」手を頭に当てて、苦笑する環。
「でも、タカ坊、私達も一緒に行っても、無問題よね?ねぇ、このみ」隣のこのみを見やる環。
「うん、そうだね、タカくん、みんなで行こうよ〜♪」ニコニコと頷くこのみ。
まぁ、別段問題ないか。一応、面子が増えるって、小牧さん達には連絡しておこう。
もうそうなる事は、おおむね想定済みだった貴明だが。
確かに、賑やかな方が楽しいだろうと思われた。
「先輩ぃ〜!おはようっす!」
「先輩・・・おはようだ。」
また賑やかな面子が加わって来た。よっちと、ちゃる。
「このみが行くんなら、当然、後見人のあたしたちもついてくってのはデフォっすよね、先輩〜!♪」
当然、そうなる訳で。
河野家の門前で、少女達がわいわいやっていると、また、近寄ってくる人影が4名程。
「おっは〜っ♪ダーリン☆」
「る〜☆」
「た、貴明、おはよう、や」
「おはようございます、貴明さん。昨日はお疲れ様でした。」
手を振って挨拶を返す貴明
「お、おはよう。珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん、イルファさん、ミルファちゃん。」
貴明とイルファが見つめ合った。
「イルファさん、昨日はありがとう。本当に。」
「そんな。当然の事をしたまでです。私の大切な妹なんですから・・・」
じっと、視線を合わせる二人。
それを見て、後頭に手を組んだミルファがジト目で言う。
「う〜っ、なんか、ダーリンとお姉ちゃん、いい感じ〜。ずるいずるい」
ぱっと目を逸らす二人。「ミ、ミルファちゃん!何言ってるんですか」
頬を朱に染めているイルファと貴明。
その横で、珊瑚が切り出す。
「うちら今晩、初詣行こう思ってな。貴明もどうや〜?♪」
やはり、こうなる訳で。姫百合家も合流。
背後に、視線を感じた貴明。ハッとなって、後を振り向いた。
ドアが半開きになっていて、その隙間から、ジーっと睨み付けるような視線が。
「あ、おはよう、シルファちゃん。ゆっくり寝れた?」
ドアを開けて、トコトコと、貴明達のところに歩み寄って来たシルファ。
ペコリと貴明に頭を下げる。
「おはようございます、ご主人様。ご主人様より後に起きて、シルファはめいろろぼ失格なのれす。」
貴明が苦笑しながら言った。「いや、昨日はあんな事があったしさ、仕方がないよ。」
「しっちゃん、るー☆」
珊瑚が両手を上げて、シルファに笑みを投げかけた。
「ぴっ!」
一瞬、引きかけたが、昨晩の珊瑚のあの「声」を思い出した、シルファ。
珊瑚の呼びかけがなかったら、自分はあのまま、どうなっていたかわからない。
今は、“母親”の、愛情を素直に感じ取る事が出来るのだった。
珊瑚にペコリと頭を下げたシルファ。「おはようございます、母上様。」
そして、貴明の後ろに並ぶ面子達を、じろりと眺めて言った。
「また、みんなれ、おれかけれすか、ご主人様?」
「う、うん。今晩だけどね・・・。」
「また、賑やかなところれすか?」
一瞬躊躇して、答える貴明。
「ま、まぁ、そうかな・・・」
初詣の神社くらい、賑やかな場所はそうそうあるまいと思われた。
「それれは、シルファはまた、お留守番れすね。わかりました。」
そう言ってから、また河野家の中に引っ込んでしまった。
しかし、まだ玄関にいるのか、ドアの奥から、愚痴が漏れ聞こえてくる。
「ふ〜んら!ろーせろーせ、シルファはお留守番ろぼれすよ〜ら!飯炊き女れすよ〜ら!ふ〜んら!ふ〜んら!」
困惑して、頭をポリポリとかく貴明。
顔を見合わせて、苦笑いしているイルファとミルファ。
環が、貴明に、「連れてきちゃいなさいよ☆」と、目配せする。
昨日の事を考えると、かえって、残して出る方が、不安が大きい。
貴明は、ドアに歩み寄ると、その向こう側のシルファに向かって、語りかけた。
「あ、あのさ、シルファちゃん?俺が、一緒について行けば、人混みでも、大丈夫だよね・・・?」
「ひゃっ!」
貴明の誘いに反応したシルファ。カチャリと、再びドアが開く。
「ご、ご、ご主人様は、ヘタレのらめらめらめっこれすから、シルファが、くっついて行ってやっても、いいのれすよ・・・」
環がポンと手を合わせて、言った。
「決まりね。シルファちゃん、これだけ“お友達”に沢山囲まれてれば、大丈夫でしょ?」
よっちが叫ぶ。
「あーっ!へっきーの教育係兼付き添いは、このあたしと、決まってるんすから!!」
そして、ミルファ。
「卑怯よひっきー妹S!護って貰わないと外も歩けないかよわいメイドロボを装って、ダーリンを独り占めなんてさせないんだから!」
背後に、貴明の上着の裾をツンツンと引っぱる、小動物のようなものがいる。
後ろに振り向くと・・・
「お、お兄ちゃん!菜々子も、菜々子も、行くもっ!」
あっ!この子もいたんだ・・・!
環が、菜々子の肩に手を置きながら、言った。
「お姉さん達と一緒なら、大丈夫だよね、ねぇタカ坊。ちゃんとご両親に、連絡していらっしゃい。」
「うん!」
やっぱり、こうなる訳ですか。
この一団の後ろで、ピクッピクッと痙攣しながら、道に前のめりに横たわっている雄二がつぶやいた。
「畜生!・・・俺は、結局、路傍の石のまま、終りかよ・・・!」
こうして、去り行く年の最後を賑やかに過ごし、新たな年を迎える貴明達であった・・・・・・。
(おしまい)
499 :
474:2008/06/08(日) 01:03:26 ID:rWRxL4KL0
こんばんは、474です。
これで一応、おしまいです。
冒頭、貴明とミルファでスタートして、実はイルファさんがメインヒロインでしたw
弄りやすいキャラですよね、電信柱のでんちゃん。特殊部隊員ですし。
こみパよりは後半の捜索の方がメインです。
詠美とミルファのおぽんち同士の掛け合いはもっと入れたかったんですが。詠美ちゃん様大好きなんで。
こみパよりは現実のコミケの状況をなぞっております。“カッタ最後尾”、怖い響きですねw
データリンクシステムの解釈についてはご容赦下さい。話のご都合に合わせてありますので。
他にもいくつか間違いがあります。例えばシルファが詰められて河野家に送られてきたダンボールは、“ミツヨシ”製の冷蔵庫のものでした。
来栖川製は、シルファ√のラストのものでしたね。
元野球ロボのオズマさんは、是非出してみたかったんですw HM以外のロボット達のいる状景というのも見せたかったので。
日めくりCD聞いたら、ロボ三姉妹も、よっちゃるも夏は有明に行っていた模様ですがw
とりあえず、次は、“近未来のイブ”をちまちまと進めていく予定です。
それでは。
GJ
おもしろかった
るーこだけハブ(´д`)
>499
乙〜!
省電力モードシルファ弱杉ワロタ。てか通信機構は別電源にしてください来栖川さんw
あと野球ロボという単語を聞いた瞬間にオズマの顔がマグナムエースになって吹いた
そして次は初詣で荷物に混ぜられてどんと焼きされそうになるシルファを……や、2週間放置はないかw
>>499 乙&なかなか面白かったお
しかしなんだ。
HMX-17は充電式じゃないのと違うか??
そりゃバッテリーがあるんだから充電出来ない事はないだろうけど、燃料電池が主な電源ではなかったかね。
ちょっとそこだけ気になったかな。んでも大筋は良かったと思うっす。
メイドロボ姉妹の口調とかもすごく自然だったし、今後も期待してますよ。
野球ロボ オズマでググれ
ググらんでもオズマくらい知ってるだろ、jk
>>503 燃料電池で排出された水を電気分解して、もう一度使えるようにしてるんじゃないか?
初代のマルチとか普通に充電やってたし。
>>506 それは無いな
そんな事をしたら音入れでおまたを見られるというイルファさんのフラグが(ry
トイレイベントでSEがついてたのか確かめようとしちゃったじゃないか
調子に乗ってまた書きましたw
例によってあんま関係ないですがAD非準拠です
読みたくない方は12レス飛ばしてください
冷蔵庫から牛乳パックを取り出して注ぎ口を開き、コップへと乳白色の液体を注いだ。
今は夏休みの真っ最中。
トーストと目玉焼きとコーヒーだけの簡単な……しかし俺にしては豪華な朝飯を食った後、
食器を片付けて一服しようと牛乳を注いでいたところだ。
夏休みの日々は概ね平和……になるはずだった。イレギュラーが無ければ。
イレギュラーというのは、春休みのようなタマ姉の襲撃でもなく、このみのお泊りアタック
でもない。それは……と、おっとっと。
考え事をしている間に牛乳を注ぎすぎて溢れさせてこぼしてしまった。キッチンの床の上に
割と大きな水溜りが出来ていた。やれやれ。
俺は牛乳パックと牛乳がなみなみと注がれたコップをテーブルの上に置くと、雑巾を取りに
行こうとした。
ぴんぽ〜ん
……今日もトラブルの種が来たようだ。
「はいはいっと。」
俺は雑巾を取りに行くのを諦めて、玄関へと足を向けた。
ぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽ〜ん!
8連射かよ……
ウチのチャイムを破壊する気かあいつは。
ぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽぴぽ〜ん
がちゃ。
「やかましい!チャイムが壊れるだろ!」
「あ、出てきた。」
そいつは更なる連射に備えてチャイムに指を添えたまま、きょとんとした顔で俺を見た。
「あ、出てきた、じゃないだろ。」
「あんたが居留守使おうとするから悪い。」
そう言ってそいつはふんぞり返って偉そうに言った。
「居留守なんか使ってない。お前の気が短すぎるんだ。」
そう言って、俺は人差し指をそいつの……十波由真の鼻ッ先に突きつけた。
◇
由真が毎日のようにうちに来るようになったのは夏休みになってすぐの事だった。
この間の騒動で気を失った俺をタマ姉たちと共にこの家まで運んで介抱した時に、うちの
ゲーム機を目ざとくチェックした由真が勝手に逆切れしたのが発端だ。
ウチのゲームライブラリには由真と対戦してことごとく勝利を収めたタイトルがずらりと
そろっていたからだ。
やれずるいだの、卑怯だの、自分だけ練習すんなだのとひとくさり悪態をついた挙句に、
あたしにも練習させろと言って日曜日に押しかけてくるようになったのだった。
そして夏休みになるとその頻度は大幅にアップし、ほとんど毎日うちに押しかけてくる
ようになっていた。
「毎日出歩いててよく親に何も言われないな。」
「べつに……友達の家で勉強してくるって言ってるし。」
そう言いながら由真はスニーカーを脱ぎ捨てるとかがんで靴をそろえる。妙にこういう所は
行儀が良いんだよなこいつは。
ただ、今日の服装はTシャツの上に半袖シャツを羽織ってミニスカートという由真好みの
動きやすい服装なんだが、前かがみになる事で胸元とかスカートの裾とかが微妙なことに
なってるのに気がついて無い辺り、ガードが甘くて困る。
俺はそんな色々から目をそらしつつ、そんな気分を誤魔化すのに話題を続けた。
「それで毎日うちに来て勉強なのか……意外とまじめだな。」
「言ったからにはちゃんと勉強しないと気がすまないの。……おじいちゃんがうるさいから
あんまり家に居たくないし。」
そうなのだ。
毎日のように遊びに来るくせにいまいち追い返しづらい理由の1つはこれだった。
朝から遊びに来るくせに午前中はしっかり勉強するのだ。二人で宿題を毎日決まった分だけ
消化するのが無言の決まりになっているので、ついつい投げ出しがちになって、休みの残り
数日であわててやっつけるのが常となっている俺としてはありがたい存在なのだった。
勝手知ったるなんとやらで、由真は俺の部屋まで上がりこむと背負っていたバックパックから
問題集を取り出してテーブルに並べた。
「ん〜、喉渇いた。なんか無い?」
外が暑かったのか、Tシャツの胸元をパフパフとしながら言った。
だから、何でお前はそんなにガード甘いんだ……いや、俺が男と思われて無いって事か。
なんか凹むな。
そんな気持ちを隠しつつ、俺は冷蔵庫の中身を思い出しながら答えた。
紫煙
「まったく、ずうずうしい奴だな。今は冷蔵庫に麦茶ぐらいしか無いぞ。」
「麦茶の一杯や二杯けちけちするんじゃないわよ。代わりにいつもお昼作ってあげてるでしょ。」
そう言って由真は持参したレジ袋…ネギが顔を覗かせている…をあげて見せた。
追い返しづらい理由その2はこれだった。遊びに来ると殆ど毎回お昼を作ってくれる。
一人暮らしの男にとってはこれほどありがたい事は無い。
ちなみに、このことを雄二の奴に話したら、「ツンデレ美少女が毎日のように家に来て
仲良くお勉強した後で手料理を食わせてもらった挙句一緒に遊ぶだとぉう。それはどこの
バカップルだ!? それともアレか、もてない俺に対する嫌味か? ああん!?
ふざけんなゴルァ!! って、いて、いてててて! 割れる割れる割れる!」とか食って
掛かられた挙句、タマ姉に生暖かい視線を向けられた。勘弁して欲しい。大体、俺と由真は
そんな関係じゃない。
そりゃ、この間の一件で、最近ちょっとは意識するようにもなったけどさ……
「それじゃ、麦茶貰うからね。」
「はいよ。」
そう言って由真は俺の部屋から出て階下のキッチンへと降りていった。
……そういや、なんか忘れてるような。
「あぅわああぁあ!?」
どしん!
物凄い声を上げながら由真が転んだらしい物音が響いてきた。
あ、いけね……牛乳片付けるの忘れてた。
俺があわてて下に下りるとフローリングで滑って転んだ由真が、テーブルの上においてあった
パックとコップの牛乳を頭からモロにかぶって半泣きになっていた。
……なんかデジャヴュだなぁ。
「ぐすっ……ぐすっ、うぅ……」
「あー、大丈夫か?」
「こっち見るなぁ……」
とりあえず風呂場からタオルを持ってきて由真に渡してやる。
「……気持ち悪い。」
どうやらしりもちをついたときに下着まで染みてしまったのか、お尻の辺りを気にしていた。
だから……俺が居るのにスカートめくって確認しようとすんなよ……
「あー、とりあえず風呂入ってこいよ。服も洗濯するしか無いだろ。乾燥機にかけとけば
帰るまでには乾くよ。」
「…うん。」
俺の提案に由真は素直に頷いた。……まったく、素直だと妙にかわいいんだよな、こいつは。
「お風呂覗いたら殺すから。」
「覗かないって。」
「……それってあたしは覗く価値も無いって事?」
「だーっ! お前は覗いて欲しいのか欲しくないのかどっちなんだよ!」
脱衣室の戸口での不毛な会話に俺は叫んだ。
「と、とにかくっ! 覗いたらギタギタにするからねっ!」
そう言って脱衣室に飛び込んだ。まったく…
「そこにある洗濯機使って服洗っちゃえよ。」
「わかった。……あ、ちょっと、たかあき。」
不意にドアが半分開いて由真が顔だけ出した。
「なんか着る物貸して。服が乾くまであんたの目の前で裸で居たら襲われるし。」
「人をケダモノみたく言うな。わかったよ。なんか探してくる。」
由真が再び引っ込むと俺は自分の部屋へと向かった。
でも由真が着られるような服か……TシャツにGパンぐらいかな。でも由真は女の子にしては
そこそこ背丈はあるほうだけど、俺に比べればやっぱり小柄だから結構だぶだぶだよなぁ。
そう思いながらドアを開けて自分の部屋に入った俺の目に飛び込んできたのは……由真が
この前の騒動のときになぜか俺の部屋に置いて行ったメイド服一式だった。
◇
「……で、ここんとこよくわかんないんだけど……って、なによ。」
「いや、なかなかシュールだな、と思って。」
テーブルを挟んで向こう側には、問題集を抱え込んでうんうん唸るメイドさんが居た。
まあ、言うまでも無く由真なんだけど。
着てきた服は今乾燥機の中で絶賛回転中なんで、由真はうちに置きっぱなしだったメイド服に
着替えたわけだが、はっきり言って非日常感バリバリである。
流石にヘッドドレスは載せていなかったし、暑いのでストッキングも履かず生足だったけど、
エプロンドレスだけでも思いっきりメイドさんだ。
ぼうっとそんな由真の姿を眺めていたら、由真の奴、いきなり胸元を腕で隠して俺を
睨みつけた。
「……な、なんだよ。」
「なんかあんたの視線がやらしい。」
いや、確かにそのメイド服はかなり胸元が大胆だし、ついつい目が行っちゃうんだけどさ……
それは無いんじゃないか?
「むっつりスケベって言うのはあんたみたいなのを言うのよね、ゼッタイ。」
「……勝手にしてくれ。」
俺は自己弁護を諦めて目の前の問題集に目を落とした。目の前の数式を解く事に集中する事にした。
しばらくお互い黙々と問題を解くことに集中していたが、由真がポツリと言った。
「そういえばさ。」
「なんだ?」
「この服この前からここに置きっぱなしにしてたけど、」
「……」
「この服使って、ヘンタイみたいな事とかしてないよね?」
ぎく。
「へ、変態みたいな事って……なんだよ。」
顔を伏せたままでちらっと上目で由真のほうを見ると、案の定疑い深い目で俺を見ていた。
……言えない。実は何度か由真の残り香を嗅いで、良いにおいなするな〜、とか思ったなんて。
絶対変態認定される。
「例えば……」
「例えば?」
由真が俺の変態行為を腕を組んで想像するのを、俺は固唾を呑んで見守った。
そして、しばらくして由真が口にしたのは……
「例えば……女装とか?」
「するかっ!」
◇
お昼。
今日も由真の作った昼飯で腹を膨らました。今日は焼きそばだった。
今由真は後片付けの真っ最中で皿を洗っている。鼻歌交じりに腕を動かすたびにメイド服の
腰のリボンがぴょこぴょこ揺れる。
俺はそんな由真の後姿を、麦茶をすすりながらぼうっと見ていた。
何て言うか……悪く無いなぁ、と思う。
そんな考えが頭に浮かんだ時、俺は俺自身がこんな日常が続く事を望んでいる事に気がついた。
でも今の俺たちは恋人ではなくて、だけど喧嘩友達とも微妙に違ってきている。
ふとしたことで壊れてしまいそうな、微妙なバランスで成り立っている関係だ。
前は由真のことを変なやつ、とかいちいち突っかかってきて鬱陶しい、とか思っていたけど、
今の俺は由真を憎からず思っている。いや、それどころか……もっと一緒に居たいとも思う。
でもそれは俺の一方的な気持ちだ。由真は俺のことをどう思っているんだろう?
もし、勇気を出して告白して、もし付き合うことが出来たら……この関係は続けられるの
だろうか。
だとしたら、それは俺にとってはとても魅力的に思えた。
そこで、ちょっとだけカマをかけてみることにした。
「なあ、由真。」
「ん〜、何?」
「こうやって毎日一緒に宿題やったり、由真が作ってくれたお昼食べたり、一緒に勝負したり
してるとさ……」
「うん。」
「なんか……俺たち付き合ってるみたいじゃないか?」
支援
がしゃーん
由真の手から皿が滑り落ちて床の上で砕け散った。
ばっ、と振り返った由真は耳の先まで真っ赤になっていた。
「な、な、なっ、なに言ってんのよあんたはっ!」
「いや、この間雄二にも言われたしさ。お前ら付き合ってんじゃないのか、って。
傍から見るとそう見えるのかなって。」
「ありえない! ありえるわけないでしょっ! あたしとあんたは敵同士、ライバル、
ハブとマングースとか、そんな感じなんだからっ!」
「……まあ、そうだよな。」
偉い剣幕で由真に否定された。こりゃダメそうだな。
まあ、今の関係でも楽しいし、まあ良いか。
だけどそのとき、俺は由真の小さな呟きを聞き逃していたんだ。
「近場で済ます気なんて、無いんだから……」
「とにかく、割れた皿片付けよう。」
俺は真っ赤になったままの由真の足元に散らばった皿の破片を拾おうとかがみこんだ。
ばっ。
なぜか由真がスカートを押さえた。
「……別にスカートの中覗いたりしないぞ。」
「べ、別に良いでしょ。あたしはスカートを押さえたいから押さえただけなんだから。」
「……変な奴。」
由真のことは放っておくことにして俺は皿のかけらを拾い集め始めた。
……突っ立ったままの由真が結構邪魔だった。
「そこに立たれたままだと邪魔なんだけどな。」
「……わかったわよ。」
由真はなぜかすり足で後ずさりした。
「お前なんか変だぞ。なんかあったんじゃないのか? 破片で怪我とかしたとかじゃないのか?」
「な、なんでもないって言ってるでしょ!」
「いや、なんか変だぞ。」
俺が一歩近づくたびに由真は一歩後ずさりする。もしかしてさっき聞いた事気にしてるんじゃ……
「さっき言った事気にしてるのか?」
「ち、違うってば! あうぁっ!」
由真が一歩後ずさったとき、何かにつまづいた。
俺は倒れる由真を助けようと手を伸ばして由真の腕をつかんだ。だけど俺も体制が悪くて
踏ん張りきれずに倒れてしまう。
「うわっ!」
「きゃっ!」
どさっ!
せめて由真に体重がかからないように、倒れこむ瞬間身体をひねって由真の身体を避けた。
肩から落ちて痛みに息が詰まる。
「イタ……たかあき!? ちょっと!大丈夫!?」
「だ、大丈夫だ。ちょっと肩打っただけだ。」
本当は受身が取れなくてかなり痛かったが、大丈夫な振りをして俺は身体を起こした。
すると、俺は丁度由真を押し倒すような姿勢になっていて、息のかかるような間近に由真の
顔があった。……由真の顔が赤い。
「わっ! ご、ごめん!」
俺はあわてて身体を離した。そして、由真の全身が目に入ったとき……「それ」が目に入った。
倒れた由真の服装が乱れて、スカートがめくれていた。だけど……そこで見えるべきものが
見えなかったんだ。
「……な、お、おま、おまえっ! ぱ、ぱんつ……」
由真の下半身は……有体に言って「すっぽんぽん」だった。しかも全開で。
俺は生まれて初めて、しかも顔見知りの女の子のナマの「女体の神秘」を目の当たりにしていた。
……それでさっき必死にスカートを押さえてたのか。
俺の台詞で由真も自分の下半身が丸出しなのに気がついたのか、瞬時に真っ赤になると
驚くべき速さで身体を起こし、スカートを直す。
「み、見た……?」
「み、見た……というか、見えちゃった。」
俺は嘘をついて誤魔化す事も忘れて正直に答えてしまった。
由真はぺたんと座り込んだまま上目遣いで俺を睨んでいる。
「だ、大体、なんでノーパンなんだよ。」
「さっきのあれでパンツまでしみちゃったんだからしょうがないでしょ! 一緒に洗濯したの!」
「い、いや、しかしな……なんでそんな危ない格好してんだ。」
「だ、だって、下から覗かれなきゃ大丈夫だと思ったし……」
「何でお前はそんなガードが甘いんだよ! ……って、あ、」
俺の鼻から一筋、鼻血がたらり、と滴り落ちた。
……だって、しょうがないじゃないか。さっきの由真のあられもない姿が脳裏に焼きついて
ちらついてるんだから。気になる女の子のあんな姿を見たら、興奮しないほうが男として
どうかしてる。
だけど、それを見ていた由真の顔が……くしゃり、とゆがんだ。
続けて目から涙がボロボロあふれ出した。
「ゆ、由真……?」
「見られたぁ……」
「お、落ち着け! 見えちゃったのは不可抗力だろ。」
「見られた…見られちゃった……痴漢…変態……バカたかあきのむっつりスケベぇ……」
ぐすぐすと鼻をすすってわんわん泣きながら由真が罵詈雑言を投げつけてくるが俺には
それを止められない。
「な、謝る、謝るから、泣き止んでくれよ……」
「ばかぁ……責任取れぇ……」
由真はその後たっぷり30分ほど泣き続け、俺はとにかく機嫌を取り続けた。
◇
結局、俺はその後しばらく由真には頭が上がらなかった。
「あたしのあそこ見た責任は取ってもらうからねっ! あんたは一生あたしの奴隷なんだからっ!」
「わかった、わかったから……往来で大声でそんな台詞言うな。」
「あっ……こ、これもあんたのせいなんだからっ!」
「わかったよ……でも不可抗力なのにな……」
俺はがっくりと肩を落とした。しばらくは由真の言いなりか……とんでもないこと言われ
ないと良いけどな。
だけどそのときの俺はまた、由真の小さな呟きを聞き逃していたんだ。
「責任とって……お嫁さんにしてもらう……って、何考えてるのよ、あたしはっ!
近場で済ます気なんて……ないんだから……」
大事な台詞は聞き逃す
それが貴明の朴念仁クオリティ…
女の子苦手なくせにむっつりスケベなのも貴明クオリティ…
そして、女の子の涙に弱いのも貴明クオリティ…
今回はおおむねそんな感じです
続きも一応考えてはいるのですが形になってないので本当に書くかどうかは未定です
GJ!!
由真かわいいよ由真
続き期待してます
GJ
やはり由真のドジは標準装備だなw
それも何故かお色気ドジ。
ともあれ乙。面白い&今後にも期待してる。
>525
GJ!
付き合ってるみたいじゃないか、には、付き合ってなかったのかよ!と傍目から突っ込んでしまったぜw
毎日押し掛けといて付き合ってないとか、ハブとマングースとか、ノーパンで見られたら責任とか、
随所に由真のオトボケ純情っぷりが出てて良かった
>>525 やべぇ、おもしろかったす
このシリーズちょっと好きだなw
うん、面白かったよ
ヘタレっぽさが少し無くなってるのが好きだ
533 :
474:2008/06/14(土) 03:50:18 ID:K3RY8Knp0
どうも。
他のSS落としたりして、結構間を空けちゃいましたが、“イブ”の続きです。
――――――――――――
夕食時を迎えていた姫百合珊瑚・瑠璃姉妹の住まうマンションの、広い部屋の中。
今、来客を告げるチャイムが鳴り響いた。
「ミルファ〜!うちもイルファも手がはなせんから出たってや〜!」
まな板上で玉葱を刻みながら瑠璃が叫んだ。
「はいは〜い!」姿見から離れて小走りでインターホンに向かったミルファ。
「はい、どちら様ですか?」
「おお、ミルファか。私だ。源五郎だよ。」
「おじさん!?わ〜い☆今開けるね!」
ドアを開けると、廊下には、眼鏡の奥の知的な眼差しが印象的な、背広姿の中背の中年男性が佇んでいた。
「こんばんは、ミルファ。」
「長瀬おじさん!ほら入って入って!どうだった?どうだった?」
源五郎の手を取り、脱いだ靴を揃える間も与えずに部屋の中へ引っ張り込もうとするミルファ。
「おいおい、ちょっと、待ちなさい!」
ミルファに引っ張られて居間に現れた源五郎の姿を見るなり、バンザイのポーズをした珊瑚。
「わ〜、おっちゃんや〜。るー☆」
「こんばんは、長瀬のおじさま。」イルファが台所でペコリとおじぎをする。
「おっちゃん、こんばんは」鍋を前にしゃもじを持ちながら、瑠璃。
「こんばんは、珊瑚君、瑠璃君、イルファ。今日の報告をしたいと思ってね。」
珊瑚がノートPCを広げている丸テーブルの、丁度珊瑚の対面側の床に座布団を敷き、源五郎を座らせるミルファ。
「で、どうだったの、おじさん、学校は?」
源五郎の傍らで、両手を床について身を乗り出しながらミルファが源五郎に訊ねた。
「うん、手続きはとってきた。いつでも都合がいい時に登校しなさい。」
「わ〜いっ!ありがと〜っ!おじさん!」
大喜びで、源五郎の背に抱きついたミルファ。
姉イルファと比べても大きなその胸のふくらみが、源五郎の背に押し付けられてムニュッと広がる。
「ミルファ、おいおい、こら、ちょっと!」
ロボサッカー試合時の事故の修理の際に、彼女のバストサイズ3センチ増量を引き受けたのは源五郎だったから、頭では分かっていたつもりだったが・・・・・・
これは、流石に、色気が過ぎるのではないか、と思わずにはいられなかった。
これから、彼女のフィジカルコミュニケーション攻撃を受けることになると思われる少年・・・・河野貴明・・・・にとっては、たまったものではないだろう。
その感触を確かめながら、同時に、設計者としての分析が働く。
・・・・うむ、我ながら、よく出来ている。人間と寸分違わぬ感触・・・・・これは、なかなか・・・・・
・・・・いやまて、私は一体、何を考えているんだ!?
「みっちゃん、おっちゃんの顔、真っ赤や〜。もう解放してやったらんと〜☆」 その様子を眺めて珊瑚がニコニコしながら言う。
「あっ!?え、えっと!・・・・えへへ〜・・・・」 ミルファも赤くなって、さっと身を離した。
「おじさま、丁度、カレーが出来たところなんです。召し上がって行かれませんか?」
鍋を両手で持ちながらイルファが言った。
ロボ姉妹2人の様子を今暫く観察したくもあったので、その誘いに乗ることにした源五郎であった。
――――――――――――
「ごちそうさま。おいしかったよ。」 カチャリと、スプーンを置いた源五郎。
「おっちゃん、おかわりせえへん?」 瑠璃が勧めてきたが、いやあまり長居をする訳にもいかないから、と断った。
「イルファ、君が保護者という事になってるから、初日は君が付き添っていってやってくれ。」
瑠璃の脇で佇んでいるイルファに言う。
「はい、わかりました。」 チラリと、源五郎の傍らの椅子に座っているミルファを見やってから返事をするイルファ。
「しかしね・・・・よくわからないのが、なんだって、向坂の家から、私のところに、珊瑚君のところのメイドロボを学校に入れてくれ、なんていう打診が来るのかな、ミルファ?」
源五郎の問いかけに、一瞬、ギョッとしてから、「あ、あは、あはは・・・・・」 と、引きつりながら、笑って誤魔化そうとするミルファ。
「そうや、ミルファ。なんで、うちらや長瀬のおっちゃんにはじめに相談せんと、よりによって、雄二の“アホーッ!!”、なんかに、相談したんや!?」
続けて瑠璃も問い詰める。
「う〜っ、だってぇ・・・・」唇を尖らせ、両手の人差し指をツンツンとつき合せながら、ボソリボソリと話すミルファ。
「ゆーじくんにダーリンの事、聞きにいったら、何でも相談に乗ってくれるって、言ったんだも〜ん。それに・・・」
今度は、イルファの方をチラと見やってから、
「いっつも、あたしの事、おぽんちとか言ってバカにするから、学校行きたいなんて言ったら、どうせまともに聞いてくれないと思ったしぃ・・・・・」
ふぅっ・・・・と、嘆息したイルファ。
「だから、おぽんちさんだって、言うんですよ、ミルファちゃん。勉強嫌いのあなたが学校行こうと言うんだったら、大賛成に決まってるじゃないですか。」
「そうやな〜。むしろ、なんか調子おかしゅうなったんかと思うくらいや」 意地悪な笑みを浮かべて瑠璃が言う。
「ぶーっ!またおぽんち言ってるしぃっ!!」 ふくれっ面になるミルファ。
そんなやりとりを聞きながら、源五郎は、この2番目のHMX-17型の気質なり思考に見られる特徴を考察していた。
確かに、姉に比べれば、あまり整然とした論理的思考に長けているとは、現状では言い難い。
が、回路設計的に、劣る要素がある訳ではない。あくまで、DIAのパラメータが、感情優先に組まれた結果だ。
一方で、直観力というか、勘というか、無作為に与えられたデータから、途中の思考を飛ばして重要な事実を割り出す能力に長けていそうな節がある。
これは、美点と言ってよい。まったく的外れな場合も決して少なくはないのだが。
むしろこれこそが、DIAに期待されている能力ではなのか。
さほど学習しない割には、言語能力には見るべきものがあり、知的可能性は決して低くはない事を示している。
人間に例えるなら、非常に気分屋で好き嫌いが激しく、興味を抱いた分野には情熱的に取り組むが、興味のない事柄については、とことん冷淡。
B型気質と、俗に言われるものに近いか。
驚嘆に値する運動能力。これが、彼女の目下の興味の対象だからだが、これとて、学習なくては為しえない成果だ。
・・・・・・
特定の人間の男性に対する、偏執的とも言える興味・・・・もとい好意。
これは、珊瑚のDIAの、人間味を持たせるための働きの一つによるもので、論理的認識力とは直接的には関係ないが、そこに与える要因はもちろん少なくない。
感情をシュミレートするに当たって、情緒的安定をもたらす為に、ある程度はやむを得ない仕掛けだった。
三原則が組み込まれていない彼女達の、安全装置としての役割も果たしている。
いいではないか・・・・彼女達は、ロボットではない。女なんだ。そのつもりで、私も珊瑚君も彼女達をつくったのだから。
そんな、とりとめのない結論が出たところで、急に横からミルファが切り出した。
「おじさん、“あの件”は、大丈夫だよね?」
唐突に思索をさえぎられてびっくりした源五郎だったが、ミルファの言う、“あの件”の事を、思い出そうとした。
・・・・ああ、そうか、あれか。
「うん。先生方には、校長先生から緘口令が敷かれる筈だよ。お前は、人間の女の子として、入校するんだ。」
斜向かいの席でカレーに手をつけていた瑠璃が、ふぅっ、と溜息をつきながら言った。
「ミルファも、おっちゃんも無茶するわ。そないなことして、どないな意味あるん?」
イルファも続く。
「私も、そう思います。そのうち、バレてしまうでしょうし、むしろその時の反動の方が・・・・」
源五郎の正面の珊瑚が、ニコニコしながら言った。
「ええやん。なかなかおもろいわぁ〜。」
ネガティヴな意見が続いたところに味方を得て、ミルファは勢いづく。
「だよね、だよね〜!さんちゃん、話せる〜!☆」
源五郎も、にやりとしてから、言った。
「いいんじゃないか?私も、ミルファが、どれだけ人間として受け入れられるか、大いに興味があるね。」
―――その名前のままじゃ、駄目よね。人間らしいの名乗っていかないと。
―――ふふ〜ん、もう考えてあるも〜ん。“はるみ”とかって、どうかな〜?
―――はぁ・・・。もう、なんておぽんちなネーミングなの。
―――ぶぅーっ!おぽんち言うの、禁止っ!!
ロボ姉妹のやり取りを遮るように、源五郎が切り出した。
「さて、そろそろ、おいとましようかな。ありがとう。お邪魔したね。」
「あ、はい、おやすみなさいませ、長瀬のおじさま。またいらして下さいね。」ペコリとして、イルファ。
「おっちゃん、またな。ほなおやすみ。」
「おやすみ〜」
「バイバイ、おじさん☆」
玄関に向かう途中で、見送ってきた珊瑚に源五郎が言った。
「あ、そうだ。珊瑚君、ちょっと、いいかな?少しだけ、話があるんだが。」
――――――――――――
―――意味は、あるもん・・・・
源五郎が去った後、再び、姿見の前に佇み、ミルファがひとりごちた。
―――ダーリンには、先入観なく、今のあたしを好きになって欲しいから―――
姿見に映った自分の姿を眺めながら、両の耳に装着されている、イヤーバイザーに手を当てがった。
―――もう、こんなもの、必要ないよね。あたしは、人間になるんだから。―――
カチリと、バイザーを掴んで外すと、その下から、人間と変わらない耳が現れてきた・・・・。
――――――――――――
マンションの廊下に立つ、源五郎と珊瑚。
「実は、今日、学校に寄った後、来栖川ホールディングス本社に呼ばれて行ったんだが・・・」
そう言って、鞄の中をがさごそとまさぐってから、一つの書類を取り出した。
珊瑚の手に渡されたその書類の表題には、
――HM-18 開発企画書――
とある。
「あっ!?おっちゃん、とうとう、次世代機の開発、着手するんやな?」
「その企画書は、HM開発室から出したものではないよ」
不満な様子も露わに、源五郎が言った。
「エレクトロニクス出身の、ホールディングス本社の営業担当取締役から、私に渡されたものだ。」
へー、と言いながら、珊瑚が書類の最初の項をめくりにかかる。
「HMシリーズは、今、最も売れているヒューマノイドロボットだ。来栖川では、更に増産を計画している。」
「ほな、いっちゃん達の成果も、生かされるんやろうな。“だいこんいんげんあきてんじゃー”と、ロボ三原則の折り合い、どう付けるん?」
源五郎は、首を振った。
「我々は、ずっと一貫して、自律型ロボットの可能性を探って来た。HMXの開発を通じてね。」
企画書の数行を読み進んでいって、やがて、珊瑚の表情が険しいものに変わる。
そして、源五郎を見上げて、叫んだ。
「――!おっちゃん?なんやねん、これっ!?」
「HM-16リオンでは、データリンクシステムの応用機能を強化してみた。それが、幹部どもに、余計なヒントを与えてしまったようだ。」
苦々しげに源五郎が語る。
「“共同意識体”などと呼んでいるが、愚劣の極みだ。奴らは、HMの頭脳と手足を切り離して、エレクトロニクス社内に設置された超大型CPUに制御される、手足を持った、ただの端末にしてしまおうと計画してるんだ。」
「そな、あほな・・・」 珊瑚も、流石に空いた口がふさがらない。
「厳密には、全く頭脳を持たない訳じゃない。起動したり、緊急時の最低限の自律的動作を行わせるための頭脳は残される。
しかし、大半の動作機能と、仕えるマスターの元で得られたパーソナルデータ、学習経験などは本社のホストの各HM−18ごとのフォルダに納められ、都度、データリンクシステムを通じて動作指示が発せられるんだ。」
そうやって、HM本体の大幅な簡素化と低価格化を実現し、一気に大量生産による普及を図る目論見であった。
「彼女達をせいぜい高度な家電と捉えた、その営業販売戦略と見れば、お見事という他ない・・・・・しかし、あえて愚劣と言おう。」
怒りを込めながら、源五郎が続ける。
「長年月に渡って追求し続けてきた、人間のパートナー、友人としてのロボットの可能性を、180度、後退させようとしているんだ。」
そう言って、こぶしをギュッと握り締める。
「しかも、困った事に、試作機HMXも、今後は、この方向性に沿って開発をしていくよう、求められている。」
「なんやて!?」目を一層見開いて、珊瑚が言った。
「私は、勿論反対した。しかし、ホールディングスの執行役員会議の議案にまで上っては、もう、抗しきれないかも知れない。」
肩を落とす珊瑚。「そんなぁ・・・ほんなら、“だいこん・いんげん・あきてんじゃー”は、どうなってしまうんや?」
「部分的には共同意識体型HMにも応用可能だろうが・・・・しかし、完全自律型ロボットに組み込まなければ、何の意味もないのは言うまでもない。」
放心してしまう珊瑚。
「うちは・・・・友達が欲しいだけやったのに・・・・」
見るからに憔悴してしまった珊瑚に、源五郎が言った。
「だからこそ、HMX−17達に、賭けたいんだ。」
えっ?と、珊瑚が顔を上げる。
「せめて、試作機HMXだけでも、自律型ロボットを製作していく許可とその予算枠だけでも残させたい。数字や利益で測れない価値を見出させてやってね。」
そう、それは・・・・
「“感動”だよ。拝金主義に支配されてしまった幹部どもに、今一度、純粋な気持ちから沸き起こってくる感動というものを呼び覚まさせてやりたいんだよ。」
源五郎をじっと見つめる珊瑚。
「だからこそ、ミルファが学校に行くのも認めた。彼女の、人間の男性に対する恋も、後押ししてやる気にもなった。人間とロボットが愛し合う姿を見せてやれば、これは、感動を生み出せるんじゃないかね?」
うんうんと、首を縦に振る珊瑚
―――そうや。みっちゃん、頑張れ。―――
「それから、もう一つあるんだが・・・・・」
話題を変える源五郎。
「シルファのことだ。」
シルファ。3番目のHMX-17。ミルファとは1日違いの姉妹機だ。
起動後の状況が思わしくなく、いまだに研究所に預けられたままである。
「聞いてると思うが、最近、ますます状態が芳しくない。もう、研究所員達も、どう接したらいいのか、途方に暮れ出している。」
シルファには、イルファとミルファの中間的なDIAの感情パラメータが与えられている。バランスを考えてのことだったのだが・・・・
それが、中途半端だったのだろうか?
イルファはロボットとしての自分によく言えば達観的、やや冷めたところがあり、ミルファは過剰なまでに自己の意識、“心”に、自信を抱いている。
しかし、シルファは、自意識は強いのだが、ささいな事からコンプレックスを抱くようになり、それが、対人恐怖へと繋がって行ってしまったのだった。
「打ち解けようと話しかけても、それから逃げ出して部屋奥のダンボールに引き篭もってしまったり、まる1日研究所内を逃げ回って、やっと探し出した事もあった。」
以前から多少なりともそうした行動は見受けられたが、最近は極端である。
「どうもね、人間で云うところの、魂の病に罹りかかってるんじゃないかと、見受けられる。」
「おっちゃん、もっと端的に言って。精神病やと言うんやな、しっちゃんは?」
力なく、頭を縦に振る源五郎。
「はっきりと言い切れる状態ではないがね。しかし言えるのは、このままでは、間違いなく、彼女は、本当に狂ってしまう。」
自分を制御出来なくなった実験体が、どうなるかは、珊瑚にも想像はついた。
過去、いくつもの、失敗作として打ち捨てられざるを得なかったHMX達の話・・・・・
「最後の手段を講じるかどうか、その決断を迫られる時が近いかも知れない。珊瑚君、ある程度、覚悟はした方がいいかも知れん。」
蒼白になっていく珊瑚。
「つまり、“殺して”、しまうんやね、しっちゃんを・・・・・・」
人間に遥かに勝る身体機能を持ったHM型を、狂ったままで放置しておく訳にはいかないのは、勿論、珊瑚もわかっている。
でも、でも・・・・・・
「厳密には死ぬわけじゃない。また新たなプログラムをインストールすればいいだけだよ。」
「フォーマットして、あの子の“人格”を跡形も無くしてしもうたら、殺してしまうんもおんなじやっ!!」
そう叫んでから、両手で顔を覆い、さめざめと涙を流し始めた珊瑚。
「そんな・・・・・なんの為に、生まれてきたんや、あの子・・・・・・」
源五郎も、同じく、うなだれていた。
彼とて、そうしたくないのは山々である。
ほれ見たことかと、産業用ヒューマノイドロボットを手掛けるライバル部署の開発主任が嘲笑しているのを、伝え聞いている。
産業用機にも、マルチやセリオ達によって蓄積された技術が応用されているというのに。
・・・・・いや、何よりも、かつて、失敗作と断じられたHMX達の、廃棄処分を下さざるを得なかった、苦い思い出が、脳裏をよぎる。
彼にとって、HM達は“娘”である。もう、そんな苦痛を味わいたくない。
ポンと、珊瑚の両肩に手を置いて、言った。
「まだまだ、やれる事はあると思う。いろいろ考えて、手を尽くしてみようじゃないか。」
そう言いながら、源五郎が考えていたのは・・・・
―――彼女の情緒を安定させてくれる、マスターの存在があれば、或いは・・・・―――
思えば、イルファも、起動直後は不安定だった。瑠璃というマスターがいるからこそ現在がある。
ミルファも、やや情緒不安定な傾向があったが、一人の少年への想いが、彼女の“心”の存在に対する自信を、確かなものにしたのだ。
しかし、そのマスターは、シルファ自らが求めなければならない。
「イルファ達が見舞いに行ってやるのもいいかも知れない。とにかく、まだ諦めずに頑張ってみよう。」
「・・・・・・うん。」 顔を上げて、珊瑚がゆっくり、うなずいた。
(つづく)
544 :
543:2008/06/14(土) 05:03:20 ID:NlE1Krl30
どうも。今回は、これでおしまいです。
“メイドin有明”で、結構ドタバタでやりたい事はやってしまったので、こちらはシリアス風味で。
投稿当初は、正直、方向性決めてなかったのですが、ようやく見えてきました。
先に言っちゃいますが、はるみ√が念頭にあります。
でも、別にゲームの補完とかをしたいわけじゃないです。
ロボットと人の在り方を模索し続けて、理想と現実の間で葛藤する長瀬のおっちゃんと珊瑚のお話・・・・に出来ればいいなと思ってますw
では。
乙
モチベーションをごっそり削ってしまうかもしれないんだが…
ミルファが編入することを『無駄に大ごと』にしすぎてないかなあ?
確かに、シリアスさを演出するためには、こういう切羽詰まった状況にしちゃうのが手っ取り早いんだけどさ
うーん、なんかピンとこない設定が多くてあんま面白くないな
スマンね
546 :
543:2008/06/14(土) 14:22:20 ID:NlE1Krl30
>>545 正直言って、私も面白くないんで、別なのに先に手をつけてしまった次第です(マテ
でも最初に落としたのがこれだったんで、何とか終わらせようと無理した部分はあります。
お子さん達が面白おかしく暮らしてる背後で、おっさん達は色々難しい仕事してるんだという雰囲気を
お見せ出来ればくらいの気持ちで、ちまちま落とします(^^;。
多分、数千台のHMを制御するホスト設置する方が、お金はかかるだろうと思いますけどw
スピリッツで連載してる漫画の、分裂生殖するオメガ見てつい影響されてしまったという(^^;
547 :
543:2008/06/14(土) 14:39:59 ID:NlE1Krl30
しまった上げてしまった失礼しました
>544
乙〜
シリアスならシリアスでいいと思うよ。この手のは反発くいやすいのは確かだろうけど、
だからって自分で自分の作品を卑下する必要はない。思い切りやりなされ
作者自身が卑下してる作品を、無理に持ち上げる必要もないと思うけどなあ
>549
作者自身に卑下されたら、書かれた作品やキャラが可哀想だと思うから
例え自分で出来が悪いと思っても、書きたいものを書いたんだから、
胸を張って「精一杯書いた。つまんなかったらゴメソ」って言ってあげなよと
ギャグ飛ばす時も自分で引いてたら話にならんでしょ。捨て身でいけ捨て身で(無責任w
551 :
543:2008/06/14(土) 19:45:27 ID:NlE1Krl30
諸兄ご意見方有難うございます
連載終了が決まった漫画並にあっさり流そうと目論んでいたものが
こってり描こうかとか思ってしまったではありませんかw
・・・しませんけど(ォ
壁紙制作の方が本業なんで遅々として進みませんが、合間見てまた
そのうち落としますね
挿絵つきで作品投下ということですねわかります。
挿絵つきとは・・・期待だな
554 :
543:2008/06/16(月) 00:42:55 ID:InifN49Y0
こんばんは。
残念ながら挿絵はございませんが、また落とします。
修羅場スキーです。ご不快に思われる向きは、どうか途中で読むのお止めになるのを推奨します。
それでは。
エレクトロニクス本社から源五郎が戻った時、研究所は大騒ぎになっていた。
慌てまくっている部下の研究員に促され、所員の休憩所に入ってみると・・・・・
部屋の一方の隅では、高校のセーラー服を着たミルファが、イルファと、もう一体のHMに押さえられていた。
その表情は、恐ろしい怒気をはらんでいる・・・・・これほど怒り狂ったミルファを、およそ見た事がない源五郎であった。
通常のHMよりも強い力を与えられているミルファだったから、押さえつけるのがやっとである。
一方の隅を見ると、周りをやはり数体のHM達に囲まれて、うずくまっているおさげ髪が見えた・・・・シルファだった。
部屋の中は什器や調度品が倒れたり割れたりして、酷い有り様である。
入口の脇では、珊瑚と瑠璃が抱き合って、呆然としながらこの修羅場を見つめていた。
「この卑怯者っ!ひっきーっ!逃げ回ってないで、勝負しなさいよっ!!畜生!ぶっ飛ばしてやるっ!!」
「やめて、ミルファちゃんっ!お願いだから、やめてっ!」
イルファが、ミルファの体の一部をつつくと、ビクンと痙攣して、急に膝から崩れ落ちてしまった。緊急停止用の消電スイッチを、押したものらしい。
「くっ、はぁ・・・・な、何すんのよぉ・・・・」 床にへたれ込んでしまったミルファだった。
そして、今度はシルファのいる隅に向かっていくイルファ。
「シルファちゃん!あなたも!何てことを言うの!」
「ぷぷぷ、いい気味れす。お脳の足りないミルミルを、からかってやったのれす。」
その言葉に、一瞬、怒気を孕んだ表情を見せてから、ミルファにしたように、シルファの緊急停止スイッチをつつくイルファ。
「ぴっ!ぷっ、ひゃあぁ・・・・」 シルファもまた、崩れ落ちて四つんばいになってしまった。
・・・・彼女にスイッチの位置を教えた覚えはないのだが。どうやって覚えたものか。
「珊瑚君、瑠璃君、イルファ!一体、何があったんだ?」
事の顛末を、イルファから聞かされる源五郎。
珊瑚達は、数日前の、源五郎の助言に従って、イルファとミルファを連れ、研究所へシルファの見舞いに訪れた。
イルファは気が進まかったのだが、源五郎の勧めという事で、珊瑚は素直に従ってしまったらしい。
人間との接触を恐れているのなら、せめて、同じメイドロボの姉妹達ならば・・・・・という程度の安易な考えだったが、ここ最近の、ミルファとシルファの関係を考慮すれば、そんな発想は浮かばない筈だった。
深い後悔にかられる源五郎。
ミルファは学校帰りの直後だったが、彼女が高校の制服を着ていた事が、余計、シルファの神経を逆撫でしてしまったものらしかった。
「本当は、作り物の自分に自信がないから、人間ごっこをしてるんだって・・・・・。それで、ミルファちゃん、酷く傷ついちゃったらしいんです。」
あぁ・・・・それが、彼女達の、一番のウィークポイントなのだろう。
それを克服したくて、ミルファは殊更に外に向かって自分の人間性を強調し、かつ人間の愛情を得てそれを確かめたがるのだろうし、内向性の強いシルファはそれが出来ずに、袋小路に入り込んでしまっている。
その言葉は、ミルファだけではなく、シルファ自身をも傷つけているに違いなかった。
シルファの“心”の苦しさのはけ口は、しばしば、自分にはない外向性を持ったミルファにぶつけられるのだ。
「姉妹なのに・・・・なんで、こんな事に・・・・」
両頬を押さえてうつむいてしまうイルファ。人間だったら、彼女の頬をはらはらと涙が伝っているのは間違いないだろう。
珊瑚も、瑠璃も、放心したまま、じっと抱き合っている。
「珊瑚、瑠璃、イルファ。さぁ、出よう。お前達!ミルファとシルファを、連れ出してやってくれ。」
『イエス・マスター。』と答えて、HM達が身動きの取れなくなっているミルファとシルファを抱え、引きずり出していた。
「畜生・・・・あいつ、許さない・・・・絶対に、許さないんだからぁ・・・・」
「ぷぷぷ・・・惨めれす、滑稽れす・・・・。所詮、めいろろぼが、人間になんて、なれるわけが、ないのれす・・・・・。」
余計に、火に油を注いでしまった格好だ。
さて、どうすればいい・・・・・?
源五郎は、いよいよ頭を抱えてしまった。
学校での、ミルファの弾けっぷりを伝え聞いて、頭痛を感じていた源五郎だったが、そんなものは結局、笑い話に過ぎない。
これは、遥かに深刻な事態である。
自分の“身内”をも、拒絶してしまったシルファ。一体どうすれば、彼女の凍てついた心を溶かせるのか?
“最後の手段”の可能性を珊瑚に示唆した源五郎だったが、実のところ、彼自身が、その手段の行使を最も強く拒否していた。
既に珊瑚と瑠璃は先に帰して、今、源五郎の執務室には、イルファだけが残っている。
「・・・・おじさま、私に、考えがあります。どうか、私にお任せ下さいませんか?」
はっとして、イルファの顔を見やる源五郎。
何やら、確信めいたものを感じさせる表情だった。
自分はロボット工学者ではあるが、ロボット心理学者ではない。
そもそも、DIAを搭載したロボット達の心理など、今の段階では、深く推し測りようもないのだ。
プログラムを組んだ珊瑚とて、それは同様である。どう廻っていくのかを検証するために、そもそも三姉妹は生み出されたのだから。
シルファの気持ちを最も良く理解し得るのは・・・・・他でもない、同じDIAを組み込まれた、イルファではないのか?
ここは、彼女の知恵にすがるしか、方法は無いのかも知れない・・・・・
そう考え、決断した源五郎だった。
「分かった、イルファ。ここは、お前に任せるよ。それで何があっても責任は私が持つ。」
住宅街の中の小路を、非常なスピードで駆け抜けていく、桜色のセーラー服を着た少女。
ピンクの髪が、その風圧になびく。
そして、急に立ち止まり、今度は周囲をキョロキョロと見回した。
「あれぇ?・・・・・ダーリン、また見失っちゃった。もう、なんで、逃げられるんだろ・・・・」
その少女、“河野はるみ”は、メイドロボ・ミルファとして住んでいる姫百合家に向かって、しょげながら、とぼとぼと歩み出した。
姫百合姉妹の住んでいるマンションが彼女の視界に入って来る。すると、その前に、一台の白いライトバンが走ってきて、停車するのが見えた。
ライトバンの助手席から降りてきて、後部のハッチバックを上げ、大きなダンボールを引きずり出している少女がいる。
ミルファと同程度に小柄ながら、そのダンボールを、ひょいと苦もなく、肩に抱え上げているのは・・・・・
青い髪、イヤーバイザー、そして、HMシリーズロボットの制服。
「・・・・イルファお姉ちゃん。何だろ、あの荷物?」
冷蔵庫の箱に見える。しかし、既に大型のが設置してあるし、小食の珊瑚と、瑠璃二人の食欲を満たすのに、これ以上冷蔵庫が必要には思われなかった。
ライトバンの運転手に礼を述べた後、ダンボールを抱えたまま、トントンと踊り場の階段を登っていくイルファだった。
「ただいま〜。」
「あら、おかえり、ミルファちゃん。」
ミルファが部屋に入った時、イルファは、立ち尽くして、なにやら考え事に耽っていたようだった。
部屋の中に、先程イルファが持ち込んできた荷物がないか見回したミルファ。
・・・・・あった。リビングの隅の方に、それは鎮座している。やはり冷蔵庫で、“ミツヨシ”製のものだった。
「どうしたの、ミルファちゃん?」
「あ、いやさぁ、お姉ちゃん、さっき、荷物抱えてこなかった?」
一瞬、ハッとしたような表情を見せたイルファであったが・・・・すぐに、平然とした表情になり、冷蔵庫の箱の方に顔を向けた。
「あら、見てたの。・・・・それね、珊瑚様に頼まれて、持ってきたの。お友達の家に送るまで、ちょっと仮置きしておくのよ。」
ふーん、と、訝しげな表情で、気のない返事をするミルファ。
・・・・な〜んか、様子がおかしいんだよなぁ、お姉ちゃん。
ミルファに組み込まれたDIAが編む“女の勘”が、ピクピクと働いていた。
「・・・・ミルファちゃん、シルファちゃんの事、許してあげられない・・・・?」
「・・・!?」
唐突に、その、一番聞きたくもない名前を切り出され、考えを妨げられたミルファ。
「あの子、本当はかまって欲しいのに、ああやって、いっつも裏腹なことばかり言ってるのよ・・・・自分を傷つけるようにね。」
「・・・・あたしは、あ〜んな根暗じゃないから、いつまでも根にもったりしませんよ〜だ!」
「そう・・・・・なら、いいんだけど・・・・・」
―――今は、ダーリンの事だけでいっぱいいっぱい。あんな奴の事思い出したら、ダーリンに不愉快な顔見せちゃうもん。―――
「実はね・・・・シルファちゃん、お仕えするご主人様が決まって、近々、研究所を出る事になったの。」
「・・・えっ!?」
それは、どうにも、俄かには信じがたい話である。
果たして、あんな状態のシルファの、引き受け手など、いるのだろうか?
そもそも、対人恐怖症のあいつが、素直に従える筈がない。
・・・・ひょっとして、これは、実質的に、捨てられたという事ではなかろうか。
「へぇ〜、あいつがね〜。そうなんだ〜、ふ〜ん。どんな酔狂なご主人様だろうね〜。」
明らかに、信じてないなという感情をミルファの表情から感じ取りながら、ポーカーフェイスを装おうとしているイルファ。
「私、ちょっと、お夕食の買物に行って来るわね。あ、持ってきた荷物、とても大切なものだから、絶対、開けちゃったら駄目よ。」
ハ〜イ、と返事しながら、登校カバンを、自分の居間に置きに行こうと歩んでいくミルファ。
そして、イルファが出て行って、廊下を歩き去っていく音を確認してから、ニヤリとほくそ笑んだ。
「・・・・な〜んか、絶対、怪しいんだよなぁ、お姉ちゃん。・・・・よ〜し、開けちゃえ。」
マンションの外に出てから、顎に手をやり、また、考えに耽るイルファ。
―――何で、躊躇して、一旦ここに運びこんじゃったんだろう、私ったら。直接、送り出しちゃえば良かったのに―――
―――よりによって、ミルファちゃんが追い回してる、あの方のところだし・・・・その内必ず、知れてしまうだろう―――
―――えぇい!他に、頼れる方が、いるというの!?ここは、思い切って、やってみなきゃ!
―――鬼の居ぬ間に、とばかり、ダンボールに手を掛けたミルファ。
ダンボールを見ると、それは、開け口を紐で縛っているだけの状態で、きれいに廻せば、開けた痕跡は残らない筈。
クルクルと紐をほどいて、両側の蓋を上げた。
そして、内蓋も開けて、中を覗き込むと・・・・・
「・・・・・きゃっ!!」
びっくりして、思わずのけぞったミルファ。
・・・・・人間の、手!?
・・・・・いや、この、袖口。白と紺の、制服は・・・・メイドロボ!?
さらに覗き込むと、目に入ったのは・・・・・金髪の、お下げ髪。
「・・・・これは・・・・ひっきー妹S!?」
紛れもなく、あのいまいましい妹、シルファであった。
燃料電池を抜いてあるか、強制スリープモードに、されているのであろう。ピクリともしない。
「お姉ちゃん・・・一体、何で・・・?」
―――先程の、イルファの話を思い起こしたミルファ。
“お仕えするご主人様が決まって、研究所を出る事になったの”
―――な〜るほどぉ〜。そのご主人様のところに、ポイされちゃう訳ね。だぁ〜からぁ〜、こっそり、送り出すんだぁ〜。―――
「ぷぷぷ・・・・いい気味だわ。いい気味ついでに、赤っ恥、かかせてやろうっと。」
シルファの着ている服に、手を掛けるミルファ。
・・・・・くっくっく・・・・剥いちゃえ!♪
(つづく)
562 :
561:2008/06/16(月) 01:03:26 ID:ogOh0KXW0
・・・なんか、とても黒いですね。
もうこの調子で、一気に行こうかと。
それでは今回はこの辺で。
>>562 まぁ予想していなかった展開じゃないけど、なかなか黒い展開だがおもしろくなってきたよww
まだまだおもしろくなっていきそうですね
黒い。これは黒い
黒いか?俺はこんくらいが好きだ。
DIAはどう考えても病むだろ。機械の身体に人間の精神は危険だって。
イルファさんだってどっか危ないじゃん??
でもそんなところが好き。
というわけで
>>562乙&GJ。
今後にも期待。
566 :
562:2008/06/17(火) 23:44:35 ID:I0XTsKQo0
こんばんは、562です。
ゲームで内で語られてた、シルファがミルファに言った“ひどい一言”とか、素っ裸で河野邸に送られてきた顛末とか、
もうおおむね描きたいものは出しちゃったので、一気に連載終了にかかります(^^;
ご期待に添えず申し訳ございません、と、最初に謝っちゃいます。
それでは。
――――――――――――
来栖川エレクトロニクスロボット研究所次長、HM開発室主任・長瀬源五郎は、執務室に一人、机に向かいながら、ホールディングスのS専務から渡された“HM−18 開発企画書”の表紙を眺めて考えに耽っていた。
これから以後は、彼の視点から、話を追っていこう。
・・・・・私としたことが。科学者らしくもない、ここは、もう少し、冷静になってみようか。
このたびのHM仕様変更の打診は、今までの、私の社内でのスタンスを客観的に捉え直す、或いはいい機会なのかも知れない。
私自身は振り切ってきたつもりだが、やはり、グループ内での長瀬一族の影響力が助けとなって、私の、ともすれば恣意的とも取れる理想追求型のロボット開発も、多目に見られてきた面が多々ある筈だった。
営利企業の商品開発担当である以上、より利益を生む商品の開発を第一義とすべきで、どう考えても、ユーザーどころか人そのものを拒絶するようなメイドロボの研究開発が、経営職や株主の理解を得られる筈がない。
エレクトロニクス及び重工の営業収入が鈍化傾向にある中、ロボット販売事業だけが気を吐いている状況である。。
売れ筋商品のテコ入れを図りたいのは経営者なら当然で、そこに雇われる技術者は、その期待に応える義務がある。
従って、純粋に収益の観点から、改めて、今回のS専務の提案を検討してみる事にしよう。
遠隔操作型・自律機能限定型HMの場合、その制御の負荷に耐え得る強力なホストの設置に要する、多大な初期投資に見合うだけのセールス面での成功が当然前提となる。
現行のHM-16型がこなしているだけの各種状況判断を、肩代わりするためのホストの、その製造コストをざっと試算してみる。
あくまで、同時並列処理可能な機体数の限界値を現実的な数字で捉えた上で。
そして、機能簡素化によるHM単体の製造コスト下落幅を試算する。
ホールディングスの電機事業部のマーケティング担当が想定する販売台数で、その収支を計算すると、まぁ確かにかなりの増収効果はある。
しかし、メイドロボは生活必需品ではない。確かに、昔からこの手の商品の根強いニーズがあるのはわかるが、そこまで普及するかと言えば、経験上疑問符が付く。
廉価化されると言ってもせいぜいがミドルクラスの上級車から大衆車になる程度で、購買層のハードルを下げたところで、必需品でないものを中・低所得層がわざわざ買うか?
逆に、こういうモノを欲しがる人間の心理から言って、この機能制限は、許容し難いスペックダウンと捉えられる可能性がある。
“自分だけの”メイドロボを欲しがる傾向があるのだ。例え、HMXのような“心”は持っていなくても、遠隔操作とは訳が違う。
そういう要素も考え合わせて行くと、本社の販売想定台数は、いささか過大に思われる。私の考える現実的な数字で収支計算してみると・・・・
現行とトントンか、下手をすれば赤字となる。しかも、ホストは汎用性がほとんどないのだ。
あくまで、現行機の延長的な仕様で、可能な限りの資材大量発注による製造コスト引き下げとそれを反映した新価格設定で、若干の増収を見込んでいくという、手堅い商売という選択肢もあるのだという事を、対案としてぶつけてみるか。
少なくとも、それで赤字はない。
自律機能特化・感情付加型HMXの開発の見直しについては、何も、遠隔型HMの開発との連携から出てきただけの話ではない。
私の恣意的な開発姿勢への、やっかみの部分もかなり含まれると思われるのだ。
ここは少し大人しくして、特殊なオーナーの嗜好にも最低限応えるという範疇での、量産機にほぼ転用可能なレベルでのDIA評価機製造へと、切替えていく事で矛先をかわすか。
珊瑚君は不満だろうが、死んだふりをしてでも、開発枠を温存する事がまずは肝心だ。
人とロボの恋物語で感動云々は・・・・・もう考えるのは、よそう。
イルファや珊瑚君の報告から伝え聞くミルファの振る舞いを想像すると、思わず冷や汗が出てくる。これには参った。
思わず、“おぽんち”という言葉が脳裏をよぎる・・・・・すまんね、河野貴明君。
感動させられたとしても、せいぜいが喜劇としてだ。
――――――――――――
ミルファが下肢をかなり損傷した状態で、イルファに連れ込まれて来た。
イルファが引っ張ってこなければ、当分そのままでいるつもりだったらしい。
自分からは決して話そうとしないのだが、高所からのダイブ等による圧損である事は明らかだ。
最近の彼女の行動パターンから察するに、これも、河野貴明君絡みだとすると・・・・ぞっとする。
ロボット3原則を組み込んでいない彼女らが惹起する人身事故に関しては、一切合切我々が過失傷害致死の責を負うのだ。
HM事業停止どころでは済まなくなる。
イルファにはこれまで以上の監視を頼まないと。他に追いかけられる者がいるとは思えないし。
それにしても、想像される状況で瞬時に痛覚を切る事は難しいだろうから、直後の苦痛はかなりのものだった筈だ。
我儘気ままな印象とは裏腹に、ミルファは相当に我慢強い。これは、留意しておく必要がありそうだ。
スポーツロボの耐性なのかも知れないが。
他にも不調箇所を黙って抱えている可能性があり、メンテナンスは入念に行った方が良いだろう。
ただでさえ、イルファ、シルファに比べてボディを酷使する傾向がある。
今後DIA評価試験機製造が限定的になりそうなのを考え合せると、彼女は大事な実験体なのだ。
・・・・いや、単に、私が“親バカ”なのかも知れんが。馬鹿な子ほど可愛いと言うあの類のやつだろうか?
――――――――――――
研究所からシルファが忽然と消え失せた事による、研究所内の反応は、或いは困惑、或いはほっとしたという声、寂しがる者、様々。
私からは、もっと実地的な評価実験のため、とあるオーナーの元へと送った、としか所員には話していない。
そんな事が出来る状態ではなかった筈、と、一応皆が思っているようではあるが・・・・
私も、送り込まれた先が、くだんの河野貴明君の家、とイルファから聞かされた時は、流石に、我が耳を疑った。
何とも、突拍子もないというか乱暴な方法を・・・・・
来栖医大リラクゼーション研究所での、貴明君の“ヘタレ力”認定の結果だとか、怪しげな理由も一応、話していたが・・・・
つまるところ、貴明君は、彼女が考える“理想のご主人様”で、シルファにも同様な効果を及ぼし得る筈だという、“女の勘”、らしい。
改めて珊瑚君から伝え聞けば、イルファも、貴明君に対して、ミルファに負けず劣らず、ただならぬ“危険な感情”を、抱いているのだという。
・・・・・イルファも、私が考えていた以上に、大胆なところがある。それが表面化する事は普段あまりないのだが。
やはり、DIA搭載の3人、程度の差はあれ直情径行的な部分が共通して見えてくる。
してみると、ミルファ、シルファはそのパラメーターが少々強過ぎたのかも知れない。
シルファの“矯正”については、彼女のパーソナリティの根幹的な部分は極力残して、対人恐怖に至っていくまでの過程の記憶だけ消去する事も検討していた。
しかし、彼女の場合、起動からごく早い段階に生じてしまった口調の問題に、起因する部分が大だったので、そこまで遡って消すと、ほとんど赤子の状態に戻ってしまう事を意味していたのだ。
ここは、イルファのとった手段が、奏功する事を願うか。
――――――――――――
この研究所、純粋に新機体の研究開発に専念出来る環境ならば有難いが、なかなかそうも行かない。
研究開発だけではなく、サービスセンターでは手に負えない修理・メンテナンスや金に糸目をつけないオーナーのカスタマイズの要望に応じるための、メンテナンス工場としても研究所は機能している。
そのための人員は、決して充分とは云い難い。
かつ私個人の立場では、問題のHMの仕様変更であるとか、HM開発部以外のロボット開発部所との予算枠の綱引きなどの、社内のあくどい駆け引きに忙殺されるシーンが非常に多いのだ。
来栖川相談役の家のお嬢様、綾香嬢が、セリオを連れて、研究所にやって来た。かなり久しぶりだったと思う。
勿論VIP待遇のオーナーだから、普段はサービスセンターで一番腕のあるメカニックが定期メンテナンスを担当している。
が、今回は少々大掛かりなオーバーホールのため、研究所に“戻って”来た、という云うわけだ。
既存のHMXの、現在の蓄積データを生かしたままDIAを組み込む事が可能かどうか、珊瑚君に検証してもらおうとした事があるが、とりあえずは綾香嬢は、現在のセリオに満足している、との事。
相談役が、“セバスチャン”に気を使ってか、私にホールディングス本社の椅子を用意しようと動いてくれているのだと、綾香嬢から聞いた。
正直なところ、それはあまり有難くない話で、その手の話が舞い込む度に、私は断り続けていた。
ロボット開発の現場から引き離された自分の姿など、今はおよそ想像出来ない。
来栖川家の番頭、お庭番としてのしがらみをあえて断ち切って、私はこの道に入ったのだ。
・・・・たまに開かれる長瀬家の親族親睦会でも、私は、“父”とは、ほとんど口を聞かない。
――――――――――――
ミルファが、学校の体育会系の部活に入ろうと、体験入部などして物色を始めたという。
スポーツロボとしても卓越した運動性能を見せた彼女のことだ、それはさぞ目立った事だろう、尋常ではなく。
彼女は、人間の“河野はるみ”として在籍しているのだ。全国大会等で露出する羽目にでもなったら、これは目も当てられない。
珊瑚とイルファに言って、早速断念するように伝えた。
いくらなんでも、許容出来る限度というものがある。
非常に驚いた事に、シルファが、メイドロボとして、まともに貴明君のために働いているらしい!
・・・・一体全体、河野貴明君というのは、どういう特性を持った人間なのか、今ひとつよくわからない。
イルファ達と一緒にいた彼を見た限りでは、普通、というか、むしろ冴えない、頼りなさげな少年だ。
“とてもお優しい方”とか、“優しいダーリン”とか、そんな単純な理由で済ませられるものだろうか。
恐らくは癒し系のキャラなのだろうが、そんな特技があるなら、将来的にうちの研究所にスカウトでもしたいものだ。
神経質なメイドロボの調教係にはもってこいだ。
――――――――――――
HMの、中古販売についての論議が、エレクトロニクス、系列販社、中古販売業者との間で、巻き起こっている。
転勤、経済的な理由、新型機への買い替え、等々、“ご主人様登録”を解約されたメイドロボは、全て、エレクトロニクスで引取る。
専業の中古販売会社が直接オーナーから買い取るシステムはない。
エレクトロニクス直営の販売店か、系列の販社のみが新たな“ご主人様”への販売契約窓口になる。
個人情報保護法の絡み、軍事転用可能な高度な技術情報海外流出の防止、等々が主な理由だが、プライバシーマークを持った業者が、それは独禁法違反だろうと言い立てている。
またこれに、エレクトロニクス及びホールディングスの電機事業部が、中古販売を絞って新型機の普及を図るものだから、安価な中古HMを望む市場ニーズに応えきれない、と、販社から悲鳴の声が上がっている、という次第だ。
個人的には、新型機普及の為に、スクラップにされるのか、クリーンインストールされて、“前世”の記憶を全て失ってから、新たなご主人様に仕えさせるのと、どちらがマシなのか、という問題を、珊瑚君あたりがどう見るかというのにいささか関心がある。
HMX-17型のような“心”を有したロボットの記憶を一切消去してしまうのは、確かに“死”に近い感覚がある。しかし、一般販売用HMには、心とまで呼べるものはないのだ。
日常的に行われているそういった行為にまで、残念ながら思いをいたす程の余裕は私にはない。
しかし、研究所に付属しているHMの再生工場の現場を見たら、珊瑚君はさぞかしショックを受けるのではないだろうか。
――――――――――――
まことに遺憾というか、残念な出来事が起きてしまった。
かねて懸念されていた通り、ダメージの蓄積していたミルファに電気系トラブルが発生し、動作障害を起した挙句、電子脳にも深刻なダメージが及んで、メモリのかなりの部分が飛んでしまったのだ。
高度にカスタマイズされた機体なだけに、メカニカルな部分の復旧にも手間はかかったが、残存したメモリーをサルベージする作業が、非常に困難を極めた。
珊瑚君も私も、手を尽くしてはみたが、どうしてもリカバリーし得ない障害が残った・・・・・約半年分の記憶が、彼女から消えていた。
彼女には、バックアップ記憶などはない。定期的なデータ採集も、極めて抽象化されたものでイメージで再生出来るものはなかった。
彼女達自身がそれを望んでいたからだが、今更悔やんでも覆水盆に帰らず、である。
彼女の“人格”を構成する根幹的な部分を残す事には、辛うじて成功したようだが・・・・・。
失われた記憶の中で出会っている人間は、もはや知らない人だし、その人間から見た彼女は、また“別の人”に見えるだろう。
例えば、彼女があれほど追い掛け回していた河野貴明君は、その“見知らぬ人”になってしまっていた。
これで、今後のHMXとDIAに生かせたであろう多くのデータが失われたかと思うと、まことに遺憾なことである。
・・・・・などと、彼女を単なる実験体として突き放した、無味乾燥な感想など、とても言えるものではない。
一人の“親”として、とても辛いし、ひたすら悲しい。
珊瑚君は言うに及ばず、イルファなどは、仕草に支障が現れるくらいにショックを受けている。あれほどいがみ合っていたシルファも、伝え聞いて相当に動揺しているらしい・・・・。
兎にも角にも、今は、“生きていて良かった”と、そこにせめてもの慰めを見出すのみである。
まず心配されたのは、記憶にポッカリ穴が空いている事で、パニックを起さないかという事だったが、気丈な子で、多少の情緒不安定に留まっている。
猪突猛進型ではあるが、前向きで楽天的な性格に大いに助けられている感がある。
あと今後の懸念材料は、半年間の記憶は、クリーンに消去された訳ではなく、まだ断片化された、いくつかも記憶の塊が残存している事だ。
その隙間を、今後外部から得られる情報などから補完していく事を期待して、消すに忍びなくあえて残したものだったが、逆に、これからまた新たに経験を積み重ねていくにあたり、心の中の棘となって、彼女を苦しめる事にもなりかねない。
安定してくるまでは、不用意にそれらを呼び起こそうとして、棘が突き刺さるような事は避けなければならないだろう。
あとは、ダメージの残ったボディを再度入念に調べて、トラブルの芽をつぶし込んでいく事だ。
――――――――――――
暗く沈み込んでいた状況に、かなり明るい光明が差してきた。
ミルファと貴明君の“ご主人様登録”は、書類上まだ生きていた(ミルファが勝手に登録したもの)・・・・
・・・・・が、貴明君はそれに拘らず、彼女に恋人候補として名乗りを上げる事で、彼女の失われてしまった“人格”の、思いを引き継ごうと決意したのだった。
このような事になる直前に、“はるみ=ミルファ”は、貴明君の心を掴む事に成功していたのだ。
それが出来れば、彼女の心の傷も癒える事だろう思われた。
イルファと珊瑚は勿論、それで全てうまくいく間違いなし、と太鼓判を押していたし、私も、シルファが立ち直る様子を見て、ここは一つ、彼に委ねてみようという気になった。
頼りなげな第一印象も何のその、当初はミルファに邪険に遠ざけられた貴明君だが、粘り強く彼女のもとに通いつめ、驚く、数週間あまりで、再びミルファと親密な関係を構築してしまったようである。
望外の展開で、私も素直にこれは嬉しい。
・・・・・恥ずかしながら、“感動”を、覚えさせられた。
――――――――――――
長瀬家の親族間の会合が、定期的に開かれている。
私は、父、セバスチャンこと源四郎に逆らうように技術者の道を歩んだ経緯があり、正直、ここに来るのは気が進まない・・・・
が、来栖川の要人の多くと関わっている親族達からの情報は、社内のパワーゲームに通じて、HM開発室の立場をより有利なものにする為に必要なので、最近は可能な限り顔を出すようにしている。
有難い事に、父は、相談役の海外視察のお付という事で、この日は欠席だった。
ホールディングスの会長の執事を務めている、一族の中でも枢要な位置にいる人物・・・・皆が“ダニエル”と、呼んでいる老人がいる。
先日、無くした記憶と現在の感情の齟齬からパニックを起しかけたミルファを貴明君が追った際、このダニエル老の孫娘のマウンテンバイクを借り受け、挙句お釈迦にしてしまうという、ちょっとした事件があった。
結果的に、貴明君とミルファは、これで再び深く結ばれて、まずはめでたしめでたし・・・・・だったのだが、バス会社への補償も含め、後始末が結構面倒な事になってしまった。
とりあえず、マウンテンバイクの代品用立てやバス会社からの請求に対しては対応したし、私も後見人として詫び状をしたためたのだが、まだ直接には謝罪していない。
ここはまず、それを優先すべきだと思い、ダニエル老に近付いた。
「由真お嬢様のマウンテンバイクの件、まことに申し訳ございません。私共の監督不行き届けで、大変ご迷惑をお掛けしました。」
「いやいや、はっはっは!あれは傑作じゃな!なかなかあんな傑作な話にはお目にかかれんよ!惨事にならんでよかったの。
あの娘っ子が、メイドロボじゃと?坊主と一緒に、ワシのところに謝りに来たんだが・・・・いや、相談役のところのお嬢様お付の、あのロボットにも驚かされたもんじゃが・・・
お主のところの技術は、一段と進化しとるようじゃな。」
「はぁ・・・恐れ入ります。」
「来栖川の会長も、お主のところの製品には、一目置いとるようなんじゃよ・・・小耳に挟んだんじゃが、ロボット共を本社のコンピュータの、操り人形にする計画が、あるそうじゃな?」
「・・・ええ、はい。その通りです。近々、執行役員会議に諮られる筈ですが。」
「そんな馬鹿な話はやめろ、と、一喝されておったよ。世界に冠たる来栖川のロボット技術を、そんな家電まがいの仕様に堕とすな、とな。恐らく、その話はおシャカになるだろうて。」
「・・・そうですか。ありがとうございます。」
「しかしな・・・この老骨の意見も、聞いて貰えるかの?」
「はい。」
「あのロボットの娘っ子はいかん・・・いかんよ。・・・確か、ミルファと言ったかの?・・・・・何がいかんって、別嬪過ぎるじゃないか!
しかもそれで、人間と同じに、恋もするじゃと・・・!?あんまり人間に近付け過ぎるのも、ワシは感心せんの。特に、女にはな。」
「そうでしょうか?ロボットをより人間に近付けていくのは、人類の長年の夢だった筈ですが」
「お主は、相変わらず、固いな・・・。いや、別に、小難しい倫理だの哲学の話をしとるんじゃないぞ。あんなものを作り続けておったら、世の女どもが、黙っちゃおるまいて。」
「?」
「女の嫉妬は、恐ろしい・・・・ワシも、これで若い頃は、かなり浮き名を流したもんじゃが・・・・それで、色々、怖い思いもした。女にはかなわん、とな。」
「はぁ。」
「人間同士でも、色恋沙汰の修羅場が絶えんのに、自分の亭主や恋人を、ロボットに寝取られたなんて話がどんどん出てきたら、それこそ、大変な事になるな。
現代版のラッダイト運動が巻き起こるかも知れんの。世の女房どもが、メイドロボをブチ壊しまくるぞ。」
「ロボット3原則で、主人の不利益になるような行為は、出来ないようになっておりますよ。」
「じゃが、あの娘っ子は、そうじゃないんじゃろう・・・・せいぜい、実験用途だけに留めておくがいい、自由恋愛が出来るロボットはな。」
「ご意見、大いに参考にさせていただきます。」
「いや、由真の奴めも、あの坊主にちょいと気があったようじゃからの・・・・ワシには分かるよ。もし執念深い女じゃったら、由真のようにあっさり諦めたりはせんじゃろうな。」
「・・・・・。」
「あのロボットの娘っ子の、特にあの胸!素晴らしいの!ワシも若かったら、是非あやかりたいもんじゃが。はっはっは!!いやいや冗談じゃよ。」
ダニエル・・・・源蔵従叔父の話から推測すると、共同意識体型HMの話は却下になりそうなこと、それから、自律型HMXの開発実験も、継続させて貰えそうだ、という事だった。
まずまずの結果と言えるだろうか。珊瑚君もほっとする事だろう。
ミルファの事故後の経過も、まずは順調と言えた。
当初は失われた記憶、その間に存在していた“はるみ”の記憶に触れる事を頑なに拒んでいた彼女だったが・・・・結局は、好奇心の方が勝ったのだろう。
勿論、消去されてしまった記憶は戻らない。が、彼女には、想像力がある・・・・単なる推理ではない・・・・DIA装備型にだけ、許された能力だ。
最近では、いくつかの残存記憶と、残っていた思い出の品とを照らし合わせて、ぴたぴたと、パズルの組みあがる感触を、楽しんでいるようにも見える。
フラッシュバックのように現れる記憶の欠片に苦しんでいた様子も当初は見受けられたが、やがてそれも癒えることだろう。
何にせよ、彼女の精神はまだ若くて、柔軟なのだ。まだまだ先は長い。そして見通しは決して暗くない。
シルファもすっかり立ち直ってくれた。半年前には想像も出来なかった事なのだが。
あの少年、河野貴明君以外に、同じ事が出来ただろうか・・・・?
信頼出来るマスターに巡り会えれば、それはYESなのだろうが・・・・多分、ずっと時間はかかったに違いない。
今更ながらに、イルファの判断力には恐れ入る・・・・いや、“女の勘”、と呼ぶべきか?
・・・・・困ったのは、貴明君を巡って、ミルファとシルファのいさかいがいまだに絶えない事だ。
まぁこれは、痛し痒しという他ないのだろうが。
それでも最近は、以前のような、性格の相違からくる深刻なものではなくて、むしろ姉妹同士のじゃれ合いに近い。
お互い、際どいところで、“譲る”事を学んだからだと思われるが、それは、何がしかの“自信”に、裏打ちされている筈だ。
彼女らの心を安定させる、太い筋が通ったという事だろう。
人間の心の成長の過程とて、それは同じだ。
――――――――――――
ある日、珊瑚君が、少々ショッキングな話を聞かせてくれた。
想いが募るあまりに暴走し、記憶をなくしてしまった可哀想なメイドロボと、その想いを引き受けて、再び彼女と結ばれた男子生徒の話は、当初、おおむね美談として学校内では語られていたようだ。
しかし、どういう訳か、河野貴明君は、女生徒に非常に人気がある・・・・彼を狙っていた女生徒も、彼自身が認識している以上に大勢いるらしかった。
珊瑚君に文句を言いに来た少女がいる。彼女も、その一人だった。
彼女が、珊瑚君に言ったらしいのは・・・・・
“あの、河野さんと付き合ってる、人間の女の子そっくりな機械作ったの、あなたなんですって?”
“・・・・うん、そうやけど?(・・・機械言うな!)”
“・・・・・・河野さんを、返して!あんな、恋愛機械なんかじゃなく、ちゃんと、人間の女の子と恋が出来る河野さんを!!”
“・・・・何を、言うとんの?・・・・それに、みっちゃんを、機械呼ばわりすんの、やめてえや!”
“うるさいっ!・・・・ちゃんと、人間の彼女が出来たんなら、私だって納得出来るわよ・・・・・でもあいつは、ロボットじゃない!子供も生めない機械のくせに!!”
“・・・・!?”
“あんな、化け物ロボット作って!!人間の恋人奪っちゃうお化けみたいな機械を!!みんな、泣いてるよっ!返してよ、貴明さんをっ!!”
―――“さんちゃんに、何するんやーっ!!”―――
一応支援
「・・・・みっちゃんの事、お化けやて・・・・」
そう言って両手で顔を覆い、珊瑚君は泣き崩れていた。
「うち、なんか、いけない事してるんやろか・・・・?」
被害妄想も甚だしい、と、珊瑚君を慰めようと思ったのだが、ふと思い起こしたのは、ダニエル老の、語った言葉だった。
"あんまり人間に近付け過ぎるのも、ワシは感心せんの。自由恋愛が出来るロボットは・・・・。"
人生経験豊富で、様々な人間の機微に通じていると思われるダニエル老の忠告は、やはり、それなりに、多くの含蓄があったと捉えるべきなのだろうか。
どれだけ世の中が進んでも、やはり、異質なものに対するアレルギーは存在する。それに寛大な人間ばかりじゃないという事。
私も若くはないが、それでも、これまで技術畑一筋で、今一つ、人間の感覚に対する理解が足りないのかも知れない。
人の心を造りだす研究をしてきたと言うのに。
ともあれ、我々は、今更、引き返すわけにはいかないところまで来ているのだ。
生み出してしまった者たちに対しても、私らは責任を負っている。
珊瑚君を慰めつつ、決して、間違ってはいない筈だと、自分に対しても言い聞かせるしかなかった・・・・。
――――――――――――
人間がロボットを許せない要素は、いくつかある。
とりわけ、大きな溝となるのは・・・・
彼ら、彼女らは、同世代に生きていた人間達が死んだ後も、そのつもりになれば、ずっと、稼動し続ける事が出来るのだ。
特に、女性にとって、ほぼ半永久的に若さを保ちえる“彼女”らは、心の奥底では、許しがたい存在なのだった。
さて、この老骨も、そろそろ、退場する時が来たらしい。後を、次の世代に譲って・・・・・
――――――――――――
「部下達を連れて来たんだ。何か、出してやってくれないか、春美。」
「は〜い、ダーリン♪」
・・・・・・・
「いらっしゃいませ。つまらないものですが、どうぞ。」
・・・・・・・
「へぇ〜。娘さんですか。可愛いですね、河野部長。」
「・・・・いや、妻だよ。」
586 :
585:2008/06/18(水) 00:36:55 ID:f1ZKwUKf0
正直、苦痛になってきたんで、かなり駈け足でやっつけてしまいました。
消化不良気味というか前半とあまり繋がってない仕様で申し訳ございません。
というわけで、やっと終了です。ありがとうございました。
最後は、本当にオマケのネタでして・・・
果たしてこの終わりはグッドなのかバッドなのか……
とにかく乙でした
588 :
586:2008/06/18(水) 06:54:30 ID:J6+1fiMw0
力作乙でした
ミルファシナリオの黒い裏側、ということでまあこういう発想もあるんだなと思ったけど
けっきょく源五郎ちゃんが何を言いたくて何をしたのか俺には良く分かんなかったかな
でも、必ずしも仲良しと言い切れない姉妹関係とか、キャラの書き方では結構共感する部分があった
AD本編からもそういう要素は感じられると思うから、それをあからさまにしたらこの辺まではアリかも
ときに、珊瑚に文句を言ったのは特に誰ってわけではないのかな?
あそこは「タカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくん……」が出るかと思ったぜw
590 :
586:2008/06/18(水) 07:29:13 ID:J6+1fiMw0
>珊瑚に文句を言ったのは特に誰ってわけではないのかな
裏でそそのかしている人がいる仕様です。
“俺が最も好きな言葉は、略奪愛だ”とかなんとか
そろそろ次すれの季節・・?
今回のスレ登場が多いのはメイドロボ軍団かしら。
よっちゃる分が足りない
よっちSS書こうとしたら、結局ラストのロボ軍団侵略ネタになってしまう悪寒
>>586 ご苦労様です
>最後は、本当にオマケのネタでして・・・
髪の色つながりですねわかります。
>591
いま381kbだからまだ大丈夫かと
確かに
まだ100kb以上あるじゃん
次スレ立てる算段の前にこのスレを埋めてくれる書き手を募らんと
書き手さんも一時期に比べると居るような。連載抱えてる人達がんばれw
あとイルファさんSSの人あたりそろそろ一本書いてくんないかなーと期待してみたりするtest
あと5万文字か…
名古屋に、登山にやって来たいつものメンバー
郁乃:「だから、あたし、糖尿だって」
はるみ:「あ、ダーリン、ごめん、あたし、食べられないしぃ〜・・・あはははは・・・・」
環:「これは・・・愛情、てんこ盛りね・・・マスターの。負けたわ」
貴明:「こ、小牧さん、甘いもの、大好きだったよね・・・?愛知県民だし」
いいんちょ:「だから、名前は小牧だけど、愛知県民じゃないから、あたしたち!」
シルファ:「ぷぷぷ、これは、まさに、野蛮人にふさわしいエサなのれす」
よっち:「へっきーはここで漢を証明するっす!」
ちゃる:「先輩・・・覚悟を、決めた方がいい」
このみ:「全部、食べられたら、大殊勲間違いなしでありますよ隊長!」
一同:“だから、全部一人で食べてよね!河野貴明さん!”
こういうSSを、俺は書かない
何食ってるのかわかんねえぞ、と思ってもう一度読み返して気がついたw
名古屋 登山でググってやっとわかったw
これは是非書いてくれw
喫茶マウンテンか
俺、遭難したことあるよ
思い出しちまったじゃねーか orz
シルファSS書いてたら、SSデータ消えちゃったぜ☆…
605 :
名無しさんだよもん:2008/06/19(木) 21:36:04 ID:WNTTw4T70
もっとパイズリする!
あ・・・書き込めた。
規制解除されたんだ。
だったらもっとまともなことを書けばよかったよ・・・
ワロタww
いや、おまえはそれでいいと思うぜ!
むしろお前はその道の第一人者を目指すんだ!
そのリビドーをSS作成にぶつけるんだ!
この世のありとあらゆる物――それこそ、人までも――完璧に複製・再現する、「神の手」の持ち主である贋作者、ゼロ。
彼が創り出すものは、まさしく、「本物」に、他ならない―――
「ゼロのおっちゃん!お願いや!みっちゃんの記憶を、元に戻して欲しいんや!」
「――報酬を、いただこうか。」
「来栖川から入って来るHMシリーズ開発の功労金や、今後入ってくる筈のうちが作った発明のパテント料、みんな、おっちゃんの
スイス銀行の口座に振り込んだる。
うちはお金なんかいらん!みっちゃんの記憶が戻るんなら!」
「――承知した。」
彼はクマのぬいぐるみを購入し、その立場に我が身を置き換えてみる事で、クマ吉の心情を理解しようとした。
そして、学校の音楽室。彼は、決死のダイブを敢行した。
「タァッ――ッ!」
高所からの落下よる、全身打撲。重傷を負ってしまった、ゼロ。
その後遺症により、彼は、半年間の記憶を失った。
こうして、彼は、事態の全てを、完全再現して見せたのだった。
「――なんの解決にも、なっとらん――っ!」
こういうSSを書こうと思ったが、途中で嫌になったのでやめた
俺はやめて正解だと思ったw
そもそもなんでゼロの旦那はメイドロボの贋作?を作るところから始めないのかと小一時間t(ry
その場合、完全な記憶を持った「本物」が残されて、記憶の欠けた「偽者」は捨てられるわけですねわかります
↑あっと失礼611です
マジで書いちゃいましょうか?
>>615 書くのはいいが、はたしてそれがToHeart2のSSと言えるものになるのか
どうか、それが問題だ
個人的には読んでみたい気はする
細かい事は気にしなさんな。思い浮かんだら書くべし書くべし
618 :
611:2008/06/20(金) 21:42:32 ID:Mc9XW/KG0
単発のネタならいいが、SSにしちゃったらギャグで済まなそうなので
やめときますわ(^^;
OK
ならばパイズリだ
パイズリでなくてすみません。>232の続きです
本SSは ★AD準拠★ (のつもり) です
「ぃくのぉ? ぉきたぁ?」
「……。」
寝たふり。寝たふり。私は寝起きが悪いのだ。
「うぅう」
部屋の隅っこでいじいじしてる気配。無視無視。
「朝〜、朝だよ〜、朝ご飯食べて学校行くよ〜」
今日は休日だよお姉ちゃん。
「外は晴れてて〜気持ちいいよ〜」
微妙に遠くも近くもない距離から、小声で続く音波攻撃。
「早く〜起きないと〜いっちゃう〜よ〜」
妙な節までついてる。なんか食べ物の販売であったわねこんなの。
「朝ご〜〜〜はん」
わ○びもち。
「早く〜来ないと〜食べちゃうよ〜」
……むく。
「あっ、おはよう郁乃、起きた起きた?」
やたらめったら嬉しそうに覗き込んでくる我が姉。
「……うるさい。今、何時だと思ってんの。あたしはまだ寝る」
「ご、ごめんね、あ、でもほら、早起きは三文の得って昔から」
「待ち合わせは10時。休日に朝6時前に起きるなって大阪のお爺ちゃんの遺言。あたしは寝る」
「大阪のおじいちゃん生きてるよぉ〜!」
「とにかく寝る。朝ご飯食べたら、殺すからね」
ばた。
喚いてる姉をほっぽって、私は布団を被りなおした。
「うぅ、だって、落ち着かないんだもん。郁乃ぉ〜」
もっとも、姉の気持ちも判らないでもない。
今日は、姉と私と、河野貴明で遊園地に遊びに行く日だから。
んなもんで、待ち合わせ場所に向かう途中も、姉は落ち着きがなかった。
「お、おかしくないかな?」
さっきから何度も服装を直し、何度も私に尋ねる。
「別に。何度も同じこと聞かないで」
男子と遊びに出るのなんて初めてだろうから無理もないけど、いい加減しつっこい。
「ごめん……」
しゅんとなって、また裾をいじくる姉。
ああ、だめだこりゃ。少し自信を持たせてあげないと今日一日蛆っ子になりそうだ。
「……こほん」
ちょっと咳払いに、ビクビクとこっちを伺う姉。私はひとつ間を置いてから、言ってあげる。
「似合ってるわよ。可愛いんじゃない?」
台詞に芸がないとか言うな。面と向かって誉め言葉って言いづらいんだからね。
実際、今日のお姉ちゃんは珍しく水色ミニのワンピースなんか着たくらいにして、たぶん街ですれ違った男どもの半分くらいは振り向きたくなる出来映えだろう。
「えっ? ホント?」
その出来映えをいささか削いでいたイジケ顔も、私の言葉ひとつでぱあっと明るくなる。
「ホント? ホントにそう思う?」
「はいはいホントホント」
「あはは、そう、かなぁ」
にやける姉は、けっこう現金な性格をしていると思う。
「ありがとう、郁乃も可愛いよっ!」
「あたしは普段どおりでしょうが」
翻って私はいつもの制服姿。今日は姉と奴の様子見なんだから、私がお洒落したって仕方ない。
……ブルマは履いてるから、念のため。
「うん、普段どおりに可愛いねえ」
ぶはっ。
何言い出すのよこの過保護姉っ。ほら、周囲が変な目で見てるでしょっ!
そんなこんなでジタバタしながら、
「やあ、小牧、郁乃ちゃん、おはよう」
私と姉が9時37分に指定の場所に到着すると、河野貴明も既にやってきていた。
「お、おおおはよう河野くん」
可愛く上擦った姉の声。
「おはよ」
私の声が可愛くないのは、生まれつきだから仕方ない。
「あはは、なんだかいいねぇ二人とも」
「あたしはいつもと変わらないわよ」
「それじゃあ、普段どおりに可愛いってことで」
ぐ。姉と同じ戦法を。
「……何がそれじゃあよ」
悔しい。ちょっと詰まった。
「じゃ、じゃあさっそくっ、何から回ろうかっ!」
すかさず姉の声が挟まって、私は少し考える。
やっぱり私と貴明の会話には神経過敏気味かしらね。気を付けましょ。
「そうね……」
で、今度は遊園地巡りのルート選択。
ここで再度確認するが、私の目的は引き続き河野貴明の分析と、今日は加えて姉との相性の推察。
河野貴明の性能を把握する意味では奴に選択させてみようかとも思ったが、視線を向けても曖昧に笑って手番を渡してくる腑抜け野郎。
そうなると、私としてはできるだけ二人を接触させて反応を見たいところだけど、姉はあの性格だから自分からは近寄らないだろうな。
幸い、遊園地には男女の距離を近づけるようなアトラクションが沢山ある。私の視線はジェットコースターや観覧車を彷徨う。だがしかし、最初からあまり過激なのは無理だろうから……
「あれなんかどう?」
「コーヒーカップ?」
手近で並んでないし、手頃に狭い空間に集まるし動くし、手慣らしには良さそうよね。
「さ、三人で一緒に乗るの?」
「当たり前でしょ。この年で一人で乗ってたらかえって恥ずかしいじゃない」
車椅子を進めて辿り着くと、内部は一人掛けと二人掛けの三人乗り。
よし、
「え? 郁乃そっち?」
私が敢えて一人用の席に座ってやろう。これで必然的に、姉と奴は同じシートに、
「え、えーっと、えいっ!」
こら姉、無理矢理あたしの隣に尻を入れるなっ!
「ふええ、目が回る〜」
いつもより多く回して、いたのかどうかは知らないけど、このコーヒーカップはけっこう激しく回転したもんで、降りる頃には全員フラフラだった。
「っととと」
脚の弱い私は、三半規管の狂いを意識しながらカップを降りる。
「大丈夫? いやあ、見かけよりハードだったね」
河野貴明は、先に降りて車椅子を用意してくれた。
「言う割に平気そうね、アンタ」
「いや、実は途中から朝飯が逆流しそうになっててさ」
「こっちによりかかんな!」
「あふぅ」
最後に降りた姉が、妙な声色と妙な足取りでへろへろ絡まってくる。けっきょく、姉は私と相席だった。うーん。
「つ、次はもうちょっと優しくしてえ」
「あたしが回したわけじゃないわよ」
自転ハンドルは、河野貴明が最初にちょっと回しただけだし。
「じゃあさ、次は小牧が選んだらいいよ」
その河野貴明は、相変わらず主導権を取るつもりはない模様。
「え、い、いいですよあたしは、郁乃に任せるから」
姉の反応は予想通り。
「ははっ。じゃあ、郁乃ちゃんどうぞ」
また私のターン? でも、その前に。
「あのさ、その小牧と郁乃ちゃんって呼び方、なんとかなんない?」
「え、だって小牧と小牧じゃ区別つかないし」
「なんであたしだけ下なのよ。姉の事も名前で呼びなさいよ」
「あー、うん……小牧?」
「わ? わたしは構わないですよっ? うん」
よしよし、うんうん。
「了解。じゃあさ、郁乃ちゃんも、俺の事は名前で呼んでよ」
う?
ふたつ目のアトラクションは、お化け屋敷。
「なに後ろに隠れてんのよ、お姉ちゃん」
「うぅ、ホントに入るのぉ?」
車椅子に両手を掛けて腰が引けている姉は、まあ見た目通りの怖がりだ。
遊園地のお化け屋敷なんてたかが知れてるけど、この姉ならそこそこリアクションしてくれるだろう。
さすれば奴、改め、河野貴明、改め、
「なに離れてんのよ、こっち来なさいよ、……貴明」
「あ、う、うん。なんかちょっと、ね」
半端なにやけっぷりでウロウロしている、貴明、の対応もチェックできるというもの。
……名前で呼べっていうから呼んだだけよ。いつまでもフルネームは面倒くさいし、ね。
「二人が仲良さそうなもんだからさ、気後れしちゃった」
「え? そう? そう見えた?」
「なにバカいってんのよ」
ぱぱっと明るくなる姉の声と、つっけんどんな私の声。
そんなやりとりをしながら、そう大きくもない建物に三人で入る。
「暗いよぉ〜」
姉が寄ってくる。
「当たり前でしょ。お化け屋敷なんだから」
突き放す。わざと貴明を回り込むようにして前に出る。これで私と姉の間に貴明が、
「おっとっと」
ちょっと、無理矢理前に出ないでよ。
「いや、でも段差とかあるしさ」
「アンタが気にする事じゃないわよ」
「そういうわけにはいかないだろ」
ごちゃごちゃごちゃ。
「ああん、二人とも、置いていかないでぇ〜」
あ、ごめん。
何かに怯える度に抱きついてくる姉と、勝手にそこらをうろつく貴明の位置調整に手間取って、私の理想どおりに私−貴明−姉のラインが出来たのは、お化け屋敷ももう終わりに近づいた頃だった。
「見た目より本格的だったね」
怖いというよりは興味深い様子で、奴なりに楽しかったらしい貴明。
それには同意できるけど、せっかく並べたんだから私じゃなくて、
「も、もうすぐ出口、もうすぐ出口」
ぶつぶつと口の中で呟きながら下向いて後ろをついてくるお姉ちゃんの方を気にして欲しいんだけど。
"←EXIT 無事脱出おめでとう!”
あ、着いちゃった。
「出口? よ、よかったぁ……」
ガタタンッ!
「グワァアアアアッッッ!!!」
先頭の私が出口っぽいゲートをくぐった瞬間、最後尾の姉の後ろから派手な音響と共に、ジョーズのできそこないみたいな化け物ギミックが飛び出してきた。
センサー仕掛けで最後尾を狙うとは凝ってるわね。ホントに子供くらい飲み込みそうな大きさで、再収納するのも大変だろうに。
「ふきゃう〜んっ!」
私が感心したくらいの迫力だから、姉はひとたまりもない。飛び上がって間にいた貴明に抱きつく、
「おっとっと」
かと期待したけど、貴明を飛ばして私に飛びついてきた。ブレーキを掛けてない車椅子が後ろから押されて一気に出口へ。
「うわわわわっ! 危ないでしょバカ姉っ!」
「ご、ごめんなさい〜っ!」
三人もつれて建物の外に飛び出す。姉はまだ私の背中にしがみついていて、貴明の方はと見ると。
「あたたた」
どうやら姉と私に突き飛ばされて転んだらしく、私の正面に尻餅をついて腰をさすっている。
「だいじょうぶ?」
「うん、まあ、なんとか……あ」
「う?」
貴明が不自然に目を逸らすのに、私は不審の念を抱く。何を見たのかしら? お? 見た? 尻餅で? 車椅子に座った私の正面で? 私は今日は制服で? すなわちスカートで?
「ぶ、ブルマ履いてるんだよねげっ?」
めりっ。
無駄な言い訳の途中で、私の靴裏は貴明の顔面にめりこんだ。
支援
「もうお昼だね、休憩しようか?」
「あっ、私、サンドイッチ作ってきましたっ」
私と姉と貴明は、ちょっと小高くなった芝生スペースの、木柵の脇に陣取った。
姉が持参したビニールシートに三人で腰掛けて、これまた姉が持参した昼食を広げる脇で、私は自分の荷物を取り出してがさごそ。
「何それ?」
「注射器」
血糖値を測り終えたあたりで口を挟んできた貴明の質問に短く答えると、私はスカートを捲った。
「! っ」
「別にいいわよ。ブルマ履いてるから」
慌てて目を逸らした貴明を鼻で笑って、右手で注射器を振りつつ左手で太股の皮を摘む。
「さっきは蹴ったくせに」
「スカートのなか覗き込まれんのは違うわよ」
だからって見せたいわけでもないけど、注射部位は腕、腹、脚とローテーションを組んでいるので崩したくない。
「大変そうだね」
貴明の声は、自然な同情を含んでいた。それが太股に残る注射痕を見てのことか、医療行為自体についてかは知らない。けど。
「……前言撤回、やっぱり見るな」
考えてみれば、後ろを向かせることに何の問題もなかったのだ。私は別に、貴明の同情を引きたいわけではないのだから。
「なんだよそれ」
「なんでも。それより、顔に足跡ついてるわよ」
「うげっ? 今頃言うなって」
ごしごしと顔を擦る貴明。取れてない。
私はハンカチを取り出したが、そのままそれを姉に放った。
「お姉ちゃん、拭いてあげなよ。あたしは動けないから」
「え? あ、う、うん、う、動かないでね」
「あ、ああ、サンキュ」
姉は私のハンカチで貴明の顔の靴痕を拭き取ると、そのまま自分のポケットにしまった。うーむ。解釈の難しい行動だわ。
「さて、いただきます」
姉お手製のサンドイッチをパクつく私。美味しいのは分かっている。姉もニコニコ。食べるのも食べさせるのも好きだから。そして貴明も、
「いただきま……うひゃ!?」
食べようとして口元に持っていったサンドイッチが、しかし、突如として貴明の手から消え失せる。
「う、うわっ、なんだ?」
「こ、河野くん、後ろ、後ろーっ!」
「へ? おわっ ヤギっ!?」
どうやら此処は、動物ふれあいコーナーとの境界だったらしい。
さっきは遠くにいて見えなかった山羊の群れが、匂いに釣られてかいつのまにか寄っていた。
うち一頭が、一番近くに座っていた貴明の手から食料をかっさらったというわけ。
「あはは、食いしん坊なヤギさんだねえ」
「誰かさんに似てるわ」
「うぅ、誰のことぉ?」
「二人とも酷いや、他人事みたいに」
私と姉は、シートの反対側に座っていたので被害はない。
「他人事だもの」
「あ、ほら、まだまだサンドイッチは沢山ありますから」
「そっちに寄っていい?」
「30センチ以内」
貴明がこちら側に移動する。あたしは心持ち後ろにさがって場所を空けた。姉は、
「きゃ」
退がりすぎてシートから落っこちた。そんなに意識しなくてもいいのに。
「じゃあ改めて、いただきます」
ぱくりとサンドイッチを頬張って、ありきたりな誉め言葉を発して、姉は過剰に謙遜して。
うん、なんかいい感じかな。こういうのも。
メェ〜ッ。
山羊が柵の向こうで鳴く。
「もう取られないよ。ほら」
よせばいいのに、彼等の目の前にわざわざ食物を見せびらかす貴明。
ぶるるるっっ!
「うわっ!? 鼻水飛んできたっ!?」
あはははは、バカ。指さして笑ってやったら、姉も一緒になって笑った。
昼食の後も、三人でいくつかのアトラクションを回った。
この頃になると、姉も貴明も慣れてきたのか会話も増えて、その辺は収穫なんだけれども。
「郁乃、どうしたの? 疲れた?」
「大丈夫? 郁乃ちゃん」
二人とも、私を挟んで会話するのよね、何故か。
貴明の姉への反応を見たい私としては、何度か姉に貴明を構うようにしむけたけど、やっぱり位置的に車椅子の私は二人の間に入りがちになる。
「平気。だけど、そろそろ締めかもね」
そして持病持ちの私は、残念ながら一日中遊び回る体力を持ち合わせていない。
「うん、その方がいいねえ、混んできたし」
「何にする?」
選択肢はずっと私。後がないここは、もう強制的に二人にできるアトラクションを狙おう。
「ジェットコースターかな、やっぱり」
「はい、じゃあ次の、あ、さっきの方ですね。車椅子はこちらへどうぞ」
しばらく並んで出番。足が悪い私が乗れるかどうかは、並ぶ前に貴明が確認してくれた。こういうとこ、良く気の付く男だと思う。
「結構凶悪そうなんだよね、ここの」
山あり谷あり渦巻きあり、はジェットコースターだから当たり前だけど、各パーツの規模には、なかなか期待できそうなものがある。
「うぇぇ、乗るのぉ〜?」
よしんば多少期待外れだとて、姉を大騒ぎさせるには十分だろうし。
「今更がたがた言わないの。じゃあ、前に乗ってね」
「え? 郁乃?」
有無を言わせずに−なんかぶつぶつ言ってるけど−二列空いた後ろの乗り場側を占領する私。
釈然としない表情ながら、後ろも支えては大人しく二人で私の前列に座る姉と貴明。
がたん、ごとん、がたん、ごとん。ゆっくりと登っていく玩具の車両。そして一気に、だんんっっ!!
「うひゃ!? お、おおおおうっっ!?」
私も思わず声が大きくなったスピード感と落下感。そして一気に上昇! 回転! スパイラル!
「ひきゃああああああああああっっっっ!!!」
姉の悲鳴が、あまり上品とも言い難いながら可愛く響く。ここまでは狙い通り。そして貴明の反応は!?
「うえええ〜」
……あんたまで頭を抱えててどうすんのよ。このヘッキーめが。
631 :
620:2008/06/22(日) 22:58:58 ID:RsXJK6D+O
さるさんされたので小一時間ほど中断します。あと鯖重いかも
「楽しかったね」
帰りのバスで月並みな台詞を吐くのは貴明。
うんうんと、むやみに一生懸命頷いたのが姉。
私はどうかというと、うーん、当初の目的の達成度を考えるに。
「70点」
「「な、なんの点数!?」」
こういう時だけ妙に息が合う二人を眺めて、ため息。
「でも、まあ、良かったわよ」
「そうだよねっ? そうだよねっ?」
オーバーリアクションの姉は、そのまま私の方に顔を寄せた。
「あ、あのね、郁乃?」
「何よ」
「……また、一緒に遊びに行きたいなぁ」
急に声を小さくして呟くように言ってから、ちらりと貴明の方を気にする。
「あまり二人で出かけないの?」
「ふえっ?」
気にされた方は、ばっちり聞こえてたみたい。慌てて手をバタバタさせる姉。
「う、うん。郁乃が、付いて来るなって、いっつも、ぐすん」
「のべつまくなし付いて来ようとするからでしょうが」
軽くあしらいながら、姉の視線の意味を考えてしまう私。
私と遊びたいというのは常に山々なんだろうけど、ここで話をしたってことは貴明を意識してるんだろうな。
今日のデート(?)はその点で不完全燃焼気味でもあったし、もう一度誘って見るのもいいかもしれない。
しかし女が男を二度目の遊びに誘うというのは、特殊な意味に取られるおそれもあるかしら、一般論的に……
車掌のアナウンスが、小牧家の最寄りの停留所を告げる。時間切れ。
「あっ、もう着いたんだ。それじゃ、河野くん、今日はありがとう、付き合わせてごめんね」
「こちらこそ、こんな事なら喜んで」
ふうん、そう。
そう思った次の瞬間、言葉がつい口をついて出た。
「だったら、また三人でどっか行く?」
きょとんとする二人。停止するバス。私は車椅子を回す。
「ふ、二人がいいなら、喜んで」
「わ、私は、いいよ、うん。ぜひぜひ」
反応は、貴明の方が屈託がなかった。姉の方は、少し何かを含んで聞こえる。
「じゃあ、場所考えといて」
「俺?」
当たり前でしょ。これはいわば、アンタの追試なんだから。
こくっと背中で頷いて、降車口に車椅子を進める私。ふらふら後を追ってくる姉。
「来月頭に、水族館で!」
背中に返事が還ってきて、少し驚いた。今決めろと言ったつもりは、なかったのだが。
ってか、車内に他の乗客がいるのに。
「大声出すなぁ! みっともない」
「い、郁乃こそ恥ずかしいってばっ。じゃぁね、河野くん」
つい言い返した私をなだめながら、姉が小さく手を振って、私達はバスを降りる。
バスの窓から、貴明も軽く手を振っていた。例の曖昧な笑いを浮かべていた。
「か、帰ろっか、郁乃」
無理に平静を装った姉は、私が貴明を誘った理由を聞きたそうだった。
それらを無視して家路についた私は、この時、姉と貴明の関係ばかり気にしている。
だから、気付かなかった。
今日のこの場を、もう一度再現したいと思ったのが、ほかならぬ自分自身の願いであったことを。
だから、気付いていなかった。
姉と私の、そして貴明と私の関係が、大きく変化する可能性を孕んでいることを。
その可能性が実現するのは、ほんの数週間後のことだったというのに。
以上です。書き込みが多い時間帯のせいか、意外と短時間でさるさん消えましたね
長くもない癖にノロノロ運転ですが、あと2話の予定ですのでよしなに。
次回第5話「スイーツ(涙)」
こんばんは。
また性懲りもなく落とします。
イブとかこみパ落とした人ですが。
またロボで済みません(^^;
ちょっとだけ、パイズリネタも取り入れてみましたがw
それでは、宜しくです。
この学園に、ちょっと普通じゃないカップルがいます。
先生方やクラスメート達は、女の子の方を“奥様”と呼び、男の子の方を“旦那様”と呼んでいます。
奥様の名前はミルファ。そして、旦那様の名前はダーリン。
ちょっと普通じゃない二人は、ちょっと普通じゃない恋をし、ちょっと普通じゃない結ばれ方をしました。
――― そして、いちばん普通と違っていたのは、奥様はロボだったのです。
はじめは、悲運のカップルとも呼ばれました。それから一転、人とロボの垣根を越えた、奇跡のカップルと呼ばれるようになりました。
・・・・そして今は、学園中の誰もが認める、究極のバカップルと呼ばれています。
―――ちょっとぉっ!何よこのSSの作者っ!バカッて言った方がバカなんだからぁ〜〜っ!!―――
――――――――――――
「・・・・しっかし、すげえな河野の旦那。気分悪いって授業抜け出して、実は屋上ではるみちゃん・・・じゃない、ミルファちゃんにパイズリされて果ててたらしいぜ」
「そしてその数時間後には、体育用具室から出てくる二人が目撃されている。旦那の方は見るからにやつれ果てた様子だったそうな」
「恐るべし来栖川の最新ウェポン。ご主人様をとことん満足させる超仕様と云えよう。自分が満足してるだけにも見えるが」
「いやいや、それに付き合える河野の旦那も大したもんだ。女苦手と云いながら、よっぽど、今まで溜まってたんだろうぜ。」
「チックショーッ!羨まし過ぎるぜ河野貴明っ!あの時、姫百合姉妹の家に俺が押しかけてれば今頃はっ!!」
「いや、お前、それ無理。河野貴明は、ほれ、“特異体質”ってやつだから。ヘタレ力とか何とか。」
「そういう“選ばれた奴”じゃないと見向きもしないらしいしな、あのタイプのメイドロボちゃんは。」
「いやそれ以前に俺たちじゃ、姫百合姉妹とか、周りの女の子達に接点ねぇだろうが。基本から違うんだよ奴は」
「許すまじ河野貴明!いざっ天誅を加えんっ!!」
「やめとけって。奥様になぎ払われるだけだから。ロボット3原則も組み込まれてないらしいからな、どうなっても知らんぞ。」
一同 「ハァ〜〜・・・・。」
「ハァ〜ッ・・・・」
放課後の教室。
机に突っ伏し、憔悴しきった顔でため息をつく、河野貴明。
周囲の哀れみとも蔑みとも妬みとも取れる視線があまりにも痛い。痛すぎる。
そして何より・・・・もうすっかり、精力吸い取られてます。こう毎日、この調子では、死んじゃいます。
本気で命の危険を感じている貴明であった。
あぁ・・・・でも・・・・本当に凄いんです、ミルファちゃんのパイズリは。
一旦その快楽に身を委ねてしまえば、もうこのまま、逝ってしまってもいいと思えてしまいます。
でも僕は、学業が本分の、普通の高校生なんです。まだ逝く訳には参りません。
―――お父さん、お母さん、いけない世界に足を踏み込んでしまった、この僕を許して下さい・・・・。―――
「よぉ貴明。どうした?すっかり人生に疲れ果てたような顔してよぉ」
雄二がそんな貴明の顔をニヤニヤしながら覗き込んで言った。
「うん・・・・もう、何十年も、生きてきた感じだよ・・・・」
遠い目をしながら、ゲッソリした様子で貴明がそんな事をつぶやいたので、ムッとした様子で背をかがめて、貴明に視線を合わせた雄二。
「何だお前は。そんな何十年分にも当たるような極楽体験を、ミルファちゃんにさせて貰ってるのか?それで何だ?不満があるってか!?」
「いえ。感謝してます雄二さん」
それは偽らざる心境である。どんな思惑があったにせよ、彼女が“はるみ”としてこの学校に現れるまでの手引きをしてくれたのは雄二である。
「でもなぁ・・・・」
物事には、限度ってものがありまして。
確かに、あの事故の後、自ら彼女を求めていったのは、事実です。
しかし、ここまで凄いとは・・・・何がって、HMX-17型の情欲が。
一旦、好き好きスイッチが入ってしまうと、その対象を骨の髄までしゃぶり尽くす仕様にでもなってるのか?
もちろん、はるみ時代にもその一端は窺い知れたけど、もう少し、初々しい感じだったような。
思えば、イルファさんの言動とか行動にも、時々、ゾクッとさせられる瞬間がある。やっぱり、DIA、って、そういうもんなのか?
・・・・うちの住み込み箱入り末っ娘は最近冷たいけどね。
思うに、なまじ、こっちから求めていっちゃったもんだから、彼女の情念に火をつけちゃったのかなぁ・・・・
「“でも”、だとぉっ!何だ、“でも”ってぇのはっ!!」
雄二は突然いきり立ち、ガッと貴明の襟首を掴んで、無理矢理椅子から引っ張り上げた。
「何が気にくわねぇっ!テメェから突っ込んでったんだろうっ!あの時覚悟したんじゃなかったのかっ!みんな、お前に協力したんだぞ!
・・・・・俺は知ってんだよっ!姉貴もチビ助も陰で泣いてんのをっ!今更不満なんか言えた筋合いじゃねぇだろうがお前はよっ!」
雄二がそう叫んで、拳を振り上げた時・・・・・
「ダーリンに何すんのよぉっ!!」
突如あらわれたミルファに、今度は雄二が襟首を掴まれ、ブンッ、と、黒板に向かって叩きつけられる。
――― ドゴンッ!! ―――
教室に、轟音が響き渡る。
「ぶごわっ!!」
もうもうとチョークの粉が舞う奥で、黒板に背をめり込ませて白目を剥いている雄二。
それを、真っ青になって呆然と見つめているクラスメート達。
「ダーリンをいじめる奴は許さないんだからぁっ!!いくらゆーじ君でもっ!!」
ミルファは小テストの点数が0点だったため、職員室で担任からこってりしぼられた後、教室に戻ってきたのだった。
ずっと彼女が貴明の傍にいたら、雄二はこんな無残な目に遭わずに済んだかも知れなかった。
「さ、ダーリン、帰ろう♪」
ぐっと、ミルファは貴明と腕を組んで、ずんずんと教室の扉に向かって彼を引っ張りながら歩んで行く。
おぼろげに視界から遠ざかっていく二人の影を目で追いながら、朦朧とした意識の中、雄二はつぶやいた。
「ちっ、畜生・・・・俺だってなぁ、いくつも、いくつもチャンスがあったのを、お前の為に踏みとどまってたんだぞ・・・・それを、それを・・・・不満があるってんなら、許さねぇ・・・・」
――――――――――――
「さぁ、ダーリン、帰って続き☆続きしよ☆はやくはやくはやくぅ〜♪」
るんるん顔で貴明の腕を取り、それを自分の豊かな胸に包み込みながら枯葉の舞う街路を歩むミルファと、引っ張られつつ歩を合わせている貴明。
足は貴明の家へと向かって進んでいる。
「え、えっと、その、さすがに、そろそろ控えないと、シルファちゃんの機嫌が・・・・」
最近のシルファの様子を思い浮かべる貴明。
明らかに、冷たい。
とても。
「えろえろな野蛮人のエサを作ってるほろ、シルファは暇じゃないのれす」
とか言って、ずっとTVのドラマを見てたり。
ここのところ、ろくに食事が出てこない。勿論、弁当なんて作って貰ってないし。
ミルファとの情事の後、ぐったりして遅刻ギリギリの時間まで寝ていても、そのまま放置されていたり。
ニードロップで叩き起されていた頃の方が、まだしも親切だったと言える。
「もぉー、なに地味妹なんかに気を遣ってんのよぉ。・・・・あ、いじめられちゃうんだぁ。ひっきー、ネクラだもんね。じゃあ、あたしんち行こうあたしんち〜☆」
そう言ってくるりと向きを変え、今度は姫百合家の方へ向かって貴明を引っ張り始めた。
「どうせ、地味妹にタワシコロッケとか出されてるんでしょ〜? えへへ〜、あたしとお姉ちゃんと瑠璃ちゃんでおいしい夕食作ったげるからね。そしてぇ〜、その後はぁ〜・・・♪」
その後が問題なのだった。もうさすがに休ませて欲しいと、切実に、体が、下半身が訴えかけてくる。
しかし、盛りのついてしまったミルファちゃんにおあずけを喰らわせると、ある意味、シルファちゃんの嫉妬よりも、恐いものがある・・・・・
さぁ、どうしよう。ここは、何とかしないと・・・・・
「あっ!そうだっ!ミルファちゃん、デートしようよデート!久しぶりだし、いいよね!?」
思いつきで言ってみた貴明。
肉体の関係まで持っててデートもないだろうとは思いつつ。
結局は、その場しのぎにしかならないだろうが、とりあえず、彼女を怒らせない方向で。
「もぉ〜、何でぇ〜、今更ぁ〜?・・・・・ま、いいっかぁ☆」
――――――――――――
ゲームセンターのクレーンゲームにひとしきり興じた後、商店街のアーケードをねり歩く貴明とミルファ。
「ダーリン、なんか甘い物でも食べる?あたしはいいけどね☆」
「う〜ん、いや、いいよ。それよりも、何か、買い物でもしようか。」 と、貴明。あんまりお金ないけど。
さて、ロボットの女の子の感性に合いそうなものって、何だろう・・・・?
ま、そんな事気にする必要、ないかな。そうだ、サッカーグッズのショップでも行くか。Jリーグの優勝争いの話題も盛り上ってる事だし。
などと思って歩を進めようとすると・・・・・
どこかで見た事のある女の人の後姿が見えた。丁度、模型店らしき店から出てきたところだった。
黒い、シックだけどどこか色っぽい雰囲気のコート姿のその女性は・・・・
「春夏さん!」
貴明に呼び止められて、振り向いた春夏。
「あら、タカくん。それにミルファちゃんも。奇遇ね、こんなとこで会うなんて。」
そうニコニコしながら言う春夏の左腕には、姫路城の模型の箱の入った袋がぶら下がっていた。
「どうしたの、二人とも。なんか楽しそうだけど」
「えへへぇ〜、ダーリンとデート☆」
ミルファがそう言ってまた貴明の腕を取り、彼女の胸に包み込んだ。
「あら、そうだったの。うふふ。それじゃぁ、あんまり邪魔しちゃ悪いかもね。私はそろそろ失礼するわね。」
そう言って小さく手を振り、二人から離れようとした春夏。
すると・・・・
「あっ」
と、小さく叫んでから、歩みを止めて二人に振り向いた。
「そうだ、タカくん、私、商店街の特別企画の抽選券持ってるんだけど、使ってみる?」
そう言って、また貴明の方へ戻って来てから、がさごそとバッグの中をまさぐり、その抽選券を数枚差し出した。
「え、春夏さんはいいんですか?」
と貴明に尋ねられると、
「いいのいいの、私はあんまりクジ運良くないし、ここは彼女運とかいいタカくんが有効に使ってちょうだい。」と、春夏。
“彼女運がいい”とか聞いて、むふ〜ん、と、にんまりしているミルファ。
「この先のパチンコ屋の横の特設会場でやってるわ。それじゃあ、頑張って一等賞当ててねタカくん☆」
抽選会場にやって来た二人。
春夏から貰った抽選引換券を抽選場のスタッフに渡すと、クジの入った箱が差し出された。
「3回分ありますので。3回引いて下さい。」
引いた。1回目は・・・・ハズレ。 そして、2回目も・・・・ハズレ。
まぁそうそう当たるもんじゃない、と、軽い気持ちで3回目にトライしようとする貴明。
隣を見ると・・・・
「神様、ダーリンが当たりますように・・・・・」
と、ミルファが手を組んで目を閉じ、神頼みをしている。
・・・・メイドロボの神様って、何だろう?
アシモフとかクラークとかフィリップ・K・ディックとか、そういう人達でしょうか?
そんな事を思いながら、3回目にトライし、クジを引き出して、抽選員に渡した。
すると・・・・・
「おおっ!お兄さん、二等賞だよ!おめでとう!」
お〜、パチパチパチ、と、周囲の客達から拍手と歓声があがる。
「わーいっ!すごいすごいすご〜いダーリンっ!!」
そう言って、貴明の首に手を回して、抱きついてくるミルファ。
驚きと当惑を隠せない貴明。
何で、物事、こう異常にツイてるんだろう、俺って・・・・・・
「さ〜て、二等賞の賞品は・・・・」
そう言って、抽選員が席の傍らから、パンフレットを引っ張り出してきて、貴明に渡した。
「お兄さん、やったね!今大評判になってる、来栖川の最新式メイドロボ!“HM-16”の、半年間無料体験だよっ!!」
えっ・・・・
一瞬、目が点になって、同じように唖然としているミルファと、目を見合わせる、貴明。
――― えええぇぇぇ〜〜〜〜っっっ!!!―――
二人で声を上げる。ちょっ、ちょっと、メイドロボって・・・っ!?
あの〜、僕、2体、というか、既に、二人のメイドロボの、ご主人様だったりするんですが・・・・
ミルファは、別な意味で驚いているようだった
「・・・・HM-16、って、・・・・リオンお姉ちゃん!?」
つづく
645 :
644:2008/06/23(月) 21:00:48 ID:7A7tiIZ90
というわけで、今回はこれで終了です。
これは、雄二メインのお話にしようと目論んでますw
それでは。
メイドロボとメイドいいんちょとメイドこのみとメイドタマ姉
誰が一番破壊力があるか・・・
乙〜
メイドロボが当たる商店街の抽選って凄いな。しかも試作機出品するか来栖川w
雄二メインって、リオンと? なかなか難しそうな組み合わせだけど頑張れ
個人的に気になったのは、丁寧語通常語チャンポンの法則がよく判らなかったとこ
3/7の貴明の独白と地の文が交互に出るところとか、4/7の一行目だけ丁寧語とか、最後もかな、
何か効果を狙ったのかもしれないけど、ちょっと混乱した気がする
648 :
644:2008/06/23(月) 22:24:28 ID:7A7tiIZ90
>>647 リオンはこの時点で既に発売済み、という設定で。
あくまで、お試しキャンペーンで半年間の貸与なのですw
で、貴明が引き当てたこの娘は、実は、ちょっと秘密が・・・という感じで。
> 丁寧語
すっかり毒気抜かれた貴明の、気弱になってる雰囲気出そうと思ったんですが、やっぱり変ですかね。
次は止めておきましょう。
一行が長くなる時は改行挟んで欲しいな
読みづらくてかなわん…
>>649 確かに。
『改行多過ぎ』とか何度かはねつけられたんで意図的に減らしてました。
レス数増えてももうちょっと余裕入れます・・・orz
読みやすいと思う横の桁数を決めておいて
それを超えたら改行する様にしておくといいと思うよ
>648
貴明の独白の一部で丁寧語を混ぜるの自体はいいと思うので完全に捨てるのは勿体ない
あまりやりすぎないのと、独白(一人称視点)と地の文(三人称視点)の混ぜ方、分け方を意識したら良いかと
具体的にどうやるのって聞かれると困るので結局は自由に書いてもらっていいんだがw
653 :
644:2008/06/24(火) 10:52:48 ID:grFPJAxc0
ご指摘どれもごもっともで、後で読み返してみて、、「これはなぁ・・・」
と思うような事が全て指摘されてる感じですねぇ、実のところ。
思いついたままのテキストそのまま落としてるだけで、子供の作文程にも練って
ませんね。
何を焦ってるんだか orz
もうちょいペース落として納得いくもの落としますわ。
>>653 読んでほしいのならやっつけはヤメとけと言っておく
とりあえず俺はもうおまえのは読まんよ
>653
思うままに書くのがSSの基本だから別に悪くはないよ
勢いに任せて書き殴った方が色々悩んだものより出来がいいなんてザラだしなw
もちろん丁寧に書くことにチャレンジするならそれはそれで良し、
書いた端から投下するのもそれはそれで良し。とりあえず俺は読むぜ
軽く寝かせて見直せばそれだけで良いんじゃないかな。
構成とか考えてなんて俺にはできんw
って事だから俺も落とされた物は美味しく頂きます。
専業の物書きじゃないにせよ人に読ませる文章だったらそれなりに見直すのは当たり前だろ
そんなもん義務教育でも習った筈の基本だろうが
ましてやネットなんて不特定多数が閲覧する場所にあんなの落としてて恥ずかしくないのか
>>653 は
まずは日本語から勉強しろ。一体どこのDQNだよw
まあ今時TH2のSSなんか書いてる時点で既にかなりイタイわけなんだけどな
専
そ
ま
ま
ま
>まあ今時TH2のSSなんか書いてる時点で既にかなりイタイわけなんだけどな
このフレーズを好んで使うやつがいるが、なんで痛いんだろう?
根本的な問題として、どうしてそのTH2SSが投下される場所を見ているのだろう?
叩かれて書くの辞めた元作者さんですか?
最後のは余計過ぎるが、その他はおおむね657に同意
もう来なくていいよ653は。
★★★以下しばらく、鳩2のSSとは関係のないスレになります★★★
誰かが叩き始めたらいきなり人増えるんだな。いつものことだが
どっちにせよ653が落とすと荒れるから擁護はしない方がいいな
悪いが自重してくれ
荒れるじゃなく荒らすの間違いだろう
そしてそのうちdat落ちですね、分かります。
馬鹿はどんなところにもいる
そんなやつらのことなぞ気にせず、SSを楽しめばよい
ID:Qg1GVEwf0がそれなりに見直して書いた日本語が>657らしい
専
そ
ま
ま
ま
確かに名文だなw
こうして作家がまた一人消えた(´・ω・`)
いい加減にしてくれ
作者叩きはよそでやれっつーの
専用スレがあるんだから(
>>188参照)
流れは流れとしてよっパイズリSSが書き上がったのでいきまーす
AD準拠。途中で容量オーバーしたら次スレはよろしくお願いします(無責任)
ふにふに。むに。むにむに。ふに。
「ん、あん……っ、センパイ……」
もぎゅっ。
「ああんっ」
可愛い呻き声と共に、俺の手の中で形を変える自在な膨らみ。
ああ、いいなあ、チエのおっぱい。
「あん、もうセンパイってば、来て早々スケベなんスから」
日曜の朝から俺の家に遊びに来て、リビングのソファに腰掛けて、否、ソファに腰掛けた俺の膝の間に座って、俺に抱っこされて文句を言うのはチエことよっちゃんことよっちこと吉岡チエ。俺の彼女。ちょっとラブラブ。
「だって、気持ちいいからさ、チエのおっぱい」
「ああもう、……ん」
むにゅんっ。
「うぅ、センパイが揉みまくるから、最近またブラが合わなくなってきたんスよ?」
「ごめんね」
ぐいぐい、ふにゃふにゃ。
「くふぅん、反省してないッスよ、あんっ、全然んぅんっ」
「そうかも」
なでなで。
だって、こんなに良い物体が目の前にあるのに、手を出さないわけにはいかないじゃないか。
「ん、そ、それはいいとして、そろそろ、今日どうするか考えないと」
「うーん、そうだねえ」
さわさわ、つんつん。
「ショッピングもいいし、あん、一緒にお散歩もしたいっス、んっ、あっ」
みもょみもょ。
「あふぅ、でも、センパイがしたいなら、その、まだ午前中っスけど、あう、うぅ……」
もみょもみょ。
「せ、センパイ、その……」
くりくり、もにもに……
「センパイっ! いい加減にするっスっ!!!」
うわわたっ!!?
「チ、チエ?」
突然俺の膝から飛び出したチエを、驚いて見つめる俺。
「最近のセンパイは、いつもそうっスよ!」
そ、そうって?
「あたしに会う度に、おっぱいばっかりいじって」
「い、いや、そんな事は……」
……あるかも知れない。
「それはそれで良いんスけど、いや良いって変な意味じゃなくて、いやその変な意味でも良いんスけど」
自分で自分の言葉にワタワタしているチエもまた顔映ゆし。
「とにかくっ!」
なんて言ってる場合じゃ、今はないみたいで、彼女は腰に手を当てて俺を睨む。ぷるんとその動きで胸が揺れる。
「センパイはあたしとあたしのおっぱいの、一体どお〜っちが好きなんっスか!」
いやでも、そんなこと聞かれましても。
「もちろんチエが好きだよ……けど、チエのおっぱいも好き」
としか答えようが。
「センパイのどスケベ! ヘンタイ! ヘッキーじゃなくなったと思ったらヘンタイになったぁ! うわああああん!」
「い、いや、泣かないでよ、よっちゃん」
弱気になると、つい恋人同士になる前の呼び方に戻っちゃったりして。俺も立ち上がって少女の頭を撫でる。
「ぐすっ。センパイはヘンタイでも、ヘッキーでもいいっスけど、すんっ」
それで少し落ち着いたのか、すうっと深呼吸、
「おっぱいしか見てくれないんじゃあたしも困るっス」
「いや、そんな事は」
ないんだけど、といいつつ呼吸の度にゆっくり上下する胸についつい目が。
「また、おっぱい見てますね?」
バレた。
「ホントにもう、しょうがない男っス、センパイは。少し根性をたたき直さないといけないっス」
な、何をするの?
「センパイ、今日一日、おっぱい禁止!」
10分後、二人でおでかけ。
「なあチエ、」
「センパイはこっち向いちゃダメです」
隣を歩くチエを振り向いた途端、ビシッと指を突きつけられた。
「なんでだよ」
「こっちを向くと、おっぱいばっかり見るんだから」
「ばっかりは見てないってば」
苦笑して再度チエの方を向く、まあそりゃ、体積が大きいから目には入るんだけど。
「ほらっ! やっぱりい〜」
つんと口を尖らせ両腕で胸を隠すと、チエは飛び跳ねるように俺の前に出た。
そのまま首だけを振り向けて、拗ねた目でこっちをひと睨み。
「スケベ」
「違うってば、ほら、こっち来なよ」
両手を広げて害意のないことを示すと、チエは身体を回して俺の隣に戻ってくるが、両腕は身体の前で組んだまま。
「腕組もうか?」
「前見て歩いてください!」
とほほ。
いつもなら必ずといっていいほど腕を組む、というかほとんど抱きついて身体を押しつけてくるのに、今日は意地でも胸を触らせないつもりらしい。
仕方なく、チエに極力顔を向けないようにしながら並んで歩く。
とこ、とこ、とこ。
うーん、なんとなく落ち着かないし、やっぱり左手が寂しいなあ。
なんて思っていたら、
「センパイ、こっち向かないで、手だけ出して」
斜め下からチエが声を掛けてきて、差し出した左手を、そっと握られる感触。
「たまには、胸じゃなくて手と手ってどうスか?」
そういえば、付き合って結構になるのに、あまり手を繋いで歩いた記憶がないな。いっつも腕にぶらさがってくるから。
「あはっ、なんだか腕組むより恥ずかしいっス」
チエも同じような感覚なのか、俺がそうっと絡めた指を曲げると、照れくさそうな声と共にぎゅっと握り返してきた。
けっきょく、この日は街を二人で歩き回って夕方。
「はい、オレンジジュース」
「ありがとうございますっス。あ〜、疲れた〜」
公園のベンチに並んで腰掛けて、一休みを決め込む俺達。
プシュッ。プシュッ。二人揃って缶ジュースを開ける。
「いやー、楽しかったっスね」
「うん」
気分良さそうな声色に、つい視線を向けると。
「こっち見ちゃダメっス」
腕組みして睨まれた。
「まだ禁止なのかよ〜」
意識して胸の話題と接触を避けた今日のデートは、意外と新鮮で魅力的だったのだけど、そろそろ解禁してくれても。
「センパイのヘンタイ目線が治るまで我慢してもらうっスよ」
「チエだって人のこと言えないじゃないか。妖しい下着屋さんとか覗いてさ」
今日の午後、街で見かけた下着屋に入ろうと言い出したのはチエの方。
おっぱい禁止の俺としては、店の壁にずらり並んだ蠱惑的なブラジャーの群れを眺めるのも辛かったのに。
「それとこれとは別っスから」
チエがべっと舌を出して閑話休題。
「センパイ、コーヒーブラックっスか?」
「ん。飲む?」
「少し」
飲み差しの缶を差し出すと、ヒョイと取り上げて口元に運ぶチエ。
「うえ、苦っ」
一口舐めて顔をしかめる彼女は、コーヒーが飲みたかったわけではないんだろう。
「俺にも、そっち頂戴」
チエが飲んでいたオレンジジュースを示す俺も、別にジュースが飲みたくなったわけじゃなくて。
「いいっスけど……あふっ?」
「こっちから飲みたいな」
缶ごとチエの右手を掴まえて押し返すと、俺はチエをベンチの背もたれに押しつけるようにして唇を塞いだ。
「あむ、ん、センパイ、こっち向いちゃ、あんっ」
「おっぱい見なければいいんでしょ。見えないよ、全然」
顔と顔をくっつけてるからね。当然。
「んもう、エッチなんスから、んむっ、んっ」
「チエもだろ、っ」
舌を割り込ませようと唇を割ると、間からチエの舌が飛び出してきて逆に俺の唇を舐める。
それをついばむように吸ってから、俺も口を開いて舌と舌を絡め合う。
「あふっ、くぅっ、んっ」
やがてチエがもどかしそうに身をくねらせたのを合図にして、今度は唇同士を深く押しつけて、
「んっ、むぅっ、くちゅ、あゅっ」
吸ったり吸われたりしながら、お互いの口腔内を思うまま舐め尽くして。
……頃合いかな。
チエの表情がとろんと蕩けたのを見て、俺は右手を少女の身体に伸ばす。
行き先は、いつもなら迷わずおっぱいなんだけど、
「あうっ、せ、センパイ、いきなりそっちっ?」
太股の内側をなぞり始めた俺の指先を感じて慌てた声を出すチエ。
「あ、あのっ、こんな所で下は、ひぅんっ!」
口で何を言っても、両脚は侵入に全く無抵抗で俺の指を誘い、薄布一枚に覆われた少女の女の部分を、俺は簡単に占領した。
「だっておっぱい禁止だろ? だからチエの、おっぱい以外をいっぱい触ってあげる」
つつっと指を縦に這わす。
「や、やだぁああんっ気持ちいぃっ」
「どっちなんだよ」
下着越しに割れ目をなぞりながら、少し意地悪な俺。おっぱい禁止令のせいだな、うん、チエが悪い。
「気持ちはいいっスけど、うんっ、こ、ここじゃあ、せめて、そっちに……」
視線で藪を指す。
「いいのか。止まんないぞ、そこにいったら」
「あたしも、ふぅんっ、ここまで来て、んっ、止まる気は、あんっ、ないッスよんんっ」
よし、意思表示OK。
俺はチエの身体を、胸を触らないように支えてベンチから立たせ、手近な灌木の茂みの中に……
隠れようとしたら、そこに人がいた。
支援
「「のうわっ!?」」
二人揃って飛び退る。いっぽう相手の方は、至って平然と茂みからがさごそと。
「うーが泣いているのが聞こえた。うーが泣かせていたのか」
全身が現れると意外と小柄で、白い肌にピンクの長髪の、みるからに不思議な女の子。言葉も変だ。外国人?
なんて、観察してる場合じゃないか。
「あ、あの、ですね、泣かせてたわけではなくて」
「泣いている」
ピッとチエを指さすピンクの女の子。チエは両手のひらを女の子に向けてあたふた。
「いや、それは、その、なんというか」
「えーっと、あたしが涙が出てるのは、その、かんというか」
せ、説明しづらいっ!
「とにかく、あたしは心配いりませんからっ」
「そっちのうーではない。泣いているのは、こっちのうーだ」
「へ?」
チエを指さしたままの女の子の言葉を理解できず、俺達は固まった。
「こっちって?」
思わず背後を振り返ったりするチエ。もちろん他に人影はない。
「こっちじゃなくて?」
女の子に向き直り、自分の鼻先に人差し指を向けて尋ねる。
「違う。こっちだ」
それでも女の子の指は依然としてチエちゃんの胸元。
「「???」」
二人して首を傾げると、女の子はムッとした表情を浮かべた。
「なぜわからぬ。こっちのうーではなくて」
「うひゃ?」
べたっとチエの顔を手で掴む女の子。チエが驚いて顔をしかめるが、女の子はすぐに手を離す。
「こっちのうーだ」
そして女の子は、今度は両手でむにゅっと、チエの、その、おっぱいを。わしづかみにしたのだった。
ぐにん。女の子の指の間から溢れそうなチエのおっぱい。
「ふにゃっ!?」
奇声をあげてバックジャンプで逃げるチエ。
「こ、これはあたしっ! あたしの身体っ、あたしのパーツっ!」
女の子にもぎ取られるのを防ぐかのように両腕で胸をガードする。
「るーにはないぞ。そんなけったいなものは」
「けったい言うなっ!」
「怒るな。翻訳機の故障かも知れぬ」
うーん、確かに女の子の白い服の、その辺に膨らみらしい膨らみは見受けられないけど。
「ま、まあその辺は個人差があるけどさ」
間に入って俺。
「なんで、その、“こっちのうー”が泣いてると思ったの?」
「泣いてると思ったわけではない。泣いているのだ」
断言する女の子。
「だからなんでよっ」
チエが俺の疑問を引き継いで文句を言う。
「我は此処でそなた達の会話を聞いていただけだ。詳しい事情は分からぬ」
どっから聞いてたんだろ……。
「だが、うーはうーとうーに無視されて寂しいと泣いている」
え?
「おそらくうー達は一緒にいながらそのうーの事を避けていたのであろう」
「いやまあ、避けてたといえば避けていたけど」
なんせおっぱい禁止だったからな。
「それはその、別に仲間外れにしたわけじゃなくって、逆にちょっとアクセントを……ていうかっ!」
しどろもどろに言い訳を始めた途中で、チエは話の根本に気がついたらしい。
「あたしのおっぱいなんだから、あたしの勝手でしょっ!」
いや、そんな大きな声でおっぱいとか叫ばないで、お願いだから。
「ふむ。それは独立したうーではないのか?」
首を傾げる女の子。
「違うっ! さっきからそう言ってるでしょ!」
「うんうん。これは、チエのだよ。半分は俺のだけど」
「センパイはおっぱい禁止っ!」
伸ばした手を弾かれた。ちぇ、援護しようと思ったのに。
「そうか。そのうーには、けったいな部位が存在するのだな」
「だからけったいじゃないっ! アンタが貧乳なだけっ!」
外国人というより宇宙人みたいなこの子に、貧乳なんて単語わかるんだろうか。でも、なんだか目つきが険しくなった。
「いずれにしても、仲間割れはよくないことだ」
そういうと、両手を大きく空に掲げてバンザイポーズを取る。
「るーが特別に、うーとうーが“こみゅにけーしょん”を取れるようにしてやろう」
それで、外見上は何も変わらなかった。
チエの胸が勝手に動き出すとか、そいういうエキセントリックな絵はなくて。
「ふえっ!?」
ただ、チエが突如として目を丸くした。
「どうした、大丈夫?」
「い、いや、たぶん気のせい、へっ!?」
会話の途中で、またしゃっくりでもしたみたいな顔。
「いや、そんなことは、あたしはただ、センパイがその、そっちばっかだから、その」
急に独り言?
「だからその、やっ、そんなのダメだってば、その」
「誰と喋ってるの、本当に大丈夫?」
「い、いや、その、センパイ、今はちょっと来ないで、あの、うわわ、また明日ーっ!」
「チ、よっちゃん!?」
俺の制止も聞かず、チエは全速力で公園から走り去った。
「な、なにをしたんだよっ!」
詰め寄ってもピンク髪の女の子は答えず、ただ、にやーと笑った。
それで、翌日。
「大丈夫かな、チエの奴」
昨日あれから、彼女の家に電話を入れてみたのだが、チエの話は要領を得なくて。
「だ、大丈夫っス、ちょっと体調が悪くなっただけ……こらっ、余計な事を言うなっ、……いや、こっちの話っス気にしないでください」
余計に気になる。
キーンコーンカーン……。
「お疲れっ!」
俺は6限終了のチャイムと同時に教室を飛び出した。
とにかく、寺女まで迎えに行こう。そう思ったのだけれど、校門で。
「あ、あれ? チエ?」
チエの方が俺を待っていて、
「来てたんだ。今からそっち行こうと思ってたんだけど……」
「センパイっ!」
ひし。
いきなり人目もはばからずに俺に抱きついてきた。
「ちょ、ちょっとチエ?」
人前で色々というのは過去にも色々あって、周囲の目は「またか」という雰囲気だったけど、だからといって恥ずかしくないわけでもない。
「ご、ごめんなさいセンパイ、あたしもうダメ」
紅潮した頬に涙目で謝るチエ。いったい何があったんだろう?
……その前に退避だな。
「とりあえずこっちへ」
抱きついたチエを引きずるようにして物陰に。こういう時、ウチの学校は植栽が多くて助かる、ってのは変か。
「それで、昨日から様子がおかしいけど、何があったの?」
「……頭おかしいって、言わないでください」
俺が尋ねると、チエはそう前置きして、俺が頷くのを確認してからこういった。
「おっぱいが、おっぱいがあたしに話し掛けてくるっスぅ〜!」
sienn
10レスさるさん。しばし中断
なにが話し掛けてくるって? と聞きかけたけど、そこは疑わない事にした。
昨日の女の子もそんな事を言っていたし、俺は多少の超常現象には耐性があったりもする。
「何を? 何か困ったこと?」
「センパイ、センパイに、触ってもらえって」
ぶっ。
「昨夜からずっと頭の中で繰り返してて、今朝になっても、昼間も収まらなくて、それで、あたし、もう」
ぎゅうっと身体を擦りつけてくる。
そっか、紅潮してるのは、恥ずかしさだけじゃなくて。しかし、まさか、そんな事が。
「センパぃ、助けて……」
なんて、考えても仕方ないか。
「えーっと、事情はよく分からないけど」
こほん。
「とにかく、触って欲しいなら触るよ、いくらでも」
「お、お願いですっス」
こくんと頷いたチエの身体を腕の中で引っ繰り返し、背中から抱きしめて腕を回す。
ぎゅっ。
「んっ」
ボリュームのある柔らかい膨らみを強めに握ると、チエは羞恥と、たぶん快感で目を瞑った。
ぐいっ、ぐにゅっ。
「あ、あふぅ」
昨日一日おあずけだったせいか、なんだか懐かしい気がする感触。
……や、冷静に考えれば昨日の朝に散々いじくったばかりなんだけど。
肩の上から回した手で、下から持ち上げるように揉み込むと、ずしっとくるこの重量感。
手を広げて撫で回すと、ブラウスとベストの上からでも肌がくっついてくるようなこの柔軟性。
そして手のひらに感じるコリっとした突起物。
ん?
「あれ、チエ、今日ノーブラ?」
でも、下乳の方にはブラの手応えがあったような。
「ち、違うっス、違うんスけど……」
もじもじと、耳まで真っ赤なチエのうなじ。
「も、もうっ、おっぱいが変な事言うから」
「どうしたの?」
俯くチエ。いいや、答えを視ちゃえ。
「あっ」
俺の手がベストの裾にかかったのを見て、チエ声を挙げるが抵抗はない。
薄手の生地を捲り上げ、その内側のブラウスのボタンを外す。
白い布地を突き上げる大きな膨らみが中から溢れて、その先端に小さく膨らんだ乳首が露わになって。
やっぱりノーブラ? いや、でも下から支えてるし肩紐もある。ええと、なんかで見たことある、
「トップレスブラ、だっけ?」
「わ、わかんないッス。昨日あれから下着屋に戻らされて」
「戻ったんじゃなくて?」
「頭の中にガンガン響いてくるんスよ〜、「いつもは息苦しい」ってえ」
「ふうん」
このおっぱいがねえ。まあそれくらいの自己主張はしてもおかしくない代物ではあるな。
「あ、あんっ、センパイ、ここじゃ、これ以上は……」
ついつい没頭してしまった俺に、切ない声で訴えるチエ。
おっぱいだけじゃなく、本体も出来上がってしまったみたい。
「ウチに、来る?」
勢いがつくと公園でしちゃったりする俺達だけど、いくらなんでもここじゃヤバすぎる。
「はい……」
こくんと首が素直に頷いたのを見て、俺は開いた胸を閉じようとする。
ぐい。
手首を掴まれた。
「え?」
「あ、う、いや、あたしじゃないっス。離しなさい、こら」
傍目には怪しい独り言を言いながら、自分に言い聞かせるチエだが、
「センパイと離れるのがヤダって言ってるっスぅ〜」
わがままなおっぱいだな。誰に似たんだか。
「は、恥ずかしいッスね」
チエの声は、耳元で聞こえる。髪の毛が頬にかかりそうな距離。
「何をいまさら」
言って俺は、両手に乗った彼女の膝裏を抱え直す。背中の重みが、んっと小さく吐息。
俺は、チエをおんぶして家路に就いていた。
……仕方ないだろ、離れないんだから、チエのおっぱいが。
「あふぅ」
でもって、そのおっぱいは、開いた胸元もそのままに俺の背中に押しつけられている。
ブラの下支えもあって学生服の上からでもずしりとくる重量感と、二箇所に感じるコリっとした固形物。
それがまたグリグリと。
「うくっん」
見えないから通報はされないと思うけど、なんというか、この、心臓に悪いです。
「あ」
「なあに?」
「センパイの心臓がドキドキしてるって言ってる」
言わなくていいから、そういうことは!
長いような短いような、ひっついたままの通学経路を抜けて。
「た、ただいま〜」
俺は自宅に到着。誰もいないんだけど、この間までちょっとメイドロボが居候してた関係で挨拶してしまったり。
「お、お邪魔しますっス」
俺の背中から降りるチエ。相変わらず紅い頬で熱そうな仕草を見せる。
「汗かいたよね、シャワー浴びる?」
「うぅ、余裕ないっス、今」
ぐいっと俺の正面から抱きついてくる。
しゃあない、このままやっちゃえ。
そう思って手を少女の下半身に伸ばしたが、チエは腰を引いた。
「え?」
「ち、違うっス、あたしじゃないっスこれは」
ったく。
「こっちか」
ぐにっと右手を上方に戻して、はだけたままの胸を強く掴む。はぁっとチエが強く息を吐く。
そのまま左腕でチエを抱き抱え、なんとか居間のソファまで運ぶ。
「センパイぃ……」
「っと?」
ふと、チエの足がもつれて、絡み合うようにソファに倒れ込む俺達。
どさ、ふぎゅ。
顔面に慣れ親しんだ柔らかい肉感。斜めに崩れ落ちた体勢も直さず、俺はその豊かな乳房に吸い付いた。
「はぁんっ!」
後頭部に両手、ぐっと強く俺の頭を、自分の胸に掻き抱くチエ。
きめ細かいチエの全身の肌のなかでも、一番滑らかでソフトな感触を唇と頬に感じて、いつものように俺は夢中になる。
「んくっ、ああっ、センパイっ、くふぅ!」
耳に入る切なげな声。
そろそろいいかな。俺は大きな膨らみを掴んでいた右手を離して、チエの太股に手を、
くいっ。
「う?」
「あ、あんっ、意地悪っ!」
俺じゃないって、避けたのはそっち。
「きょ、今日は、自分が満足するまでさせないって言ってるっスぅ」
む。生意気なおっぱいめ。こうしてくれる。
ぐぐっと両手を右の乳房に添えて絞るように強く揉み込む。
「ふあぅっ! 強すぎっ! んっ」
チエのものかチエのおっぱいからか分からない抗議を無視して、俺はさらに浮き出てきた乳首を吸う。
「あう、ふうっ、くうんっっ!! セン、先輩っ!」
身を震わせるチエ、どうだ、思い知ったか……
がばっ。
「うわっ?」
突如チエがぐるっと身体を回してきて、巻き込むように俺と上下が入れ替わった。
「うぷうっ?」
上から攻めていても重量感のある胸に、今度はのし掛かられて、俺は息をする場を失う。
両手で必死におっぱいをなんとかしようとするが、
「う、くっ、むぅ〜っ!」
掻き分けても掻き分けてもチエの胸。た、たすけて、本気でしぐ(死ぬ)。
俺がじたばたし始めた時、やっと少し隙間が空いた。
「ぶはっ!」
ぜーぜーはーはー。酸素を補給する俺の耳元に、甘い息がかかる。
「ふふっ、先輩っ♪」
さっきと違って、荒い呼吸の中にも若干の余裕を含む声。
「どうっすかー、チエのおっぱい様はー」
な、なんだ?
「どうしたチエ、なんかおかしむぐわっ?」
言い終わる前に、再び柔肌で塞がれる唇。
「チエじゃないっしょー。チエのおっぱい様っしょー?」
口調まで変わってる、の、乗っ取られた?
う、うぷ、そんな事考えてる場合じゃない。
滑らかな肌質と豊かな脂肪分が仇となって、俺の唇を塞ぐおっぱいの密着度は再び俺を酸欠に追い込むに十分だ。
「気持ちいいっしょー」
気持ちはいい。凄くいいけど、そのまま天国まで連れて行かれるのは勘弁して欲しい……。
ぷはっ!
「せ、センパイ、大丈夫っスか?」
あ、戻った。
「うふふふふ、いいっしょー」
ぐぷぅっ!
「ご、ごめんなさいっス」
「何をマグロになってるんすかー」
「ああっ、今のはあたしじゃなくてっ」
「ほらほら、チエのおっぱい様ですよー」
めまぐるしく調子を変える口調と形を変える胸に翻弄されながら、俺は窒息死を免れる術を考える。
「あ、あの、よっちゃん?」
へんじがない。ただの、おっぱいのようだ。
「えーっと、チエのおっぱいさん?」
むぎゅー。し、しぐぅ。
「おっぱい様とお呼びー」
マジですか。
「あ、こ、こらっ、なんて事いうのよ、あはは、センパイ、気にしないでわわぅ」
「……おっぱい様?」
相変わらず主導権争いが続いているらしい。なら、下手に出るにしくはない。
「なんですかー?」
「どうすれば満足してくれるのかな、君は」
「センパイ、こんな奴の言うこと聞く必要ぅがあっ」
一瞬起こしかけた上体が再びボディプレス。しかし、そうでなくとも。
「同じチエなんだから、仲間割れは良くないよ」
「わかってるねー先輩♪」
「な、生意気だぁ」
同口異音とかいうのか、なんだかシュールな光景。
「それで、どうしたい?」
優しく声を掛ける−いくらワガママだとて、チエの身体に冷たくはできない、……いつもお世話になっている部分でもあり−と、チエは何故だか頬を赤くして身をよじらせた。
「ど、どうしたの?」
ようやく身を起こせた俺の腰に抱きついて、もじもじと身体を動かすチエ。
「っ? あ、あたしにそれを言えって?」
発言してるのは恐らくチエ本体。
「どうしたの?」
「い、いや、その……不肖あたしのおっぱいめが、変な事を」
「いいから言ってよ。できることなら、してあげるから」
促すと、ああもぅ、分かったよぅ、等とぼやいてから、チエは恥ずかしそうに言った。
「そ、その……おっぱい、胸で、おっぱいだけでイキたいって……」
支援
あー、まあ、その、なんだ。
「いっつもおっぱいから入るクセに、最後は放置されて寂しいんだって言うんっス」
確かに、チエとえっちする時は、始まりは胸でもフィニッシュは彼女の中か外。
何故かといえば、チエのおっぱいは最高だが、チエの他の部分もまた最高だし、
「うーん、要望には応えてあげたいけど……」
いくら感度が良くても胸だけでは(チエが絶頂まで達するのは)難しい。
悩んでもしょうがないか。やってみよ。
「よっ」
「あっ、センパ……あんっ!?」
俺の膝の上で大人しくなっていたチエの身体を、下に手を差し入れて仰向けに返す。
不意をつかれて驚く少女を組み敷いて、ぶるんと大きく揺れた胸にむしゃぶりついた。
「あぅっ、んんんっ、あんっ、強いぃいいーっ」
いつもより強めに吸っております。
豊満な乳房を揉みしだく両手にも、精一杯力を込める。
「あんっ、ふあっ、あ、ぅあっ、ああぅっ」
チエの方も俺の意図を察してか、神経を責められている箇所に集中している。
よし、この調子で……
「あぅっ、痛っ!」
「ご、ごめん」
甘噛みが強すぎた。やはり調整が難しいか?
「せ、センパイっ」
ぐぐっと俺の下で、チエの身体が動き出す。
吸い付いていた口から乳房が外れると、チエの腕は俺の腰に絡みつく。
「こっちで、して欲しいって、おっぱい、様、が」
チエが胸を擦りつけてきたのは、位置的に必然的に俺の足の間、というか、股間、というか、アレ。
腰に回していた両手を腰の前に持ってきて、ズボンのベルトを外し始める。
やがて引きずり出された、当然ながら既にフルパワーの俺の男性器に、チエは乳房をぶつけるように押しつけた。
男の持ち物を女性の乳房に擦りつける行為。いわゆるパイズリ。
立派な胸の持ち主であるチエに、俺は意外とそれをしたことが少ない。
もちろん、柔らかいチエの乳房は無茶苦茶気持ちいいんだけど、
いかんせんこの体勢は攻め手がないので、彼女を気持ちよくしてあげられていないような気がしてイヤだったのだ。
しかし、チエのおっぱい、様、が望むというのら否応もない。
俺は彼女の肩を掴んでベッドに押しつけると、ピンと尖った乳首の片方を目途に硬化した肉棒を突きつける。
ぐにゅっ。
「うおっ?」
擦るつもりが、乳房に埋もれていく亀頭部分。
慌てた次の瞬間、俺の一物は柔らかな肌を滑って胸から弾き出される。
「ああんっ」
その感触はチエにも伝わったのか、身震いと共に喘ぐ少女。
片方のおっぱいでこれなら、谷間になんか埋めたら……
うおっ、見えねえ。
たぶん平均値よりは上のサイズである筈の俺のものが、両側から覆い被さった物体で完全に覆い尽くされている。
そのまま腰をグラインドさせると、チエの下の口のような締め付けこそないものの、
豊かな脂肪分と温かな人肌が、まるで海のように俺を包み込む。
「んうっ、か、掻き回されてるっスぅ」
不思議なことに、チエもまるで女の部分を責められているかのような感想を漏らす。
久しぶりの体位が新鮮なのか、おっぱい様の存在のせいなのかは分からないが、これならいけるかも。
にゅるぅっ。
……お、俺の我慢が利けば、だな。き、気持ちよすぎ。
「くっ」
単純に腰だけ動かしてたら100%保たない。俺は両胸を押さえるだけだった手の位置を変え、
「あ、あんっ、握っちゃっ!」
ぐにぐにと、乳房の形を変えてゆく、やがて絞り出される突起物。そこをめがけて。
ずりゅ。
「ひゃうんっ!」
ずりゅ、ずりゅっと、尿道に沿って乳首を男根で擦る。
土台が柔らかすぎて、右に左に逃げ回る桜色の突起物を指でサポート、ついでに刺激を与えるのも忘れない。
「あっ、はうっ、ううんっ」
これならこちらの快感は最小限で済むし。といっても強烈に気持ちはいいんだが、なんとか。
「んっ、先輩〜っ!」
と、ぶるんと大きく身体を震わせると、チエの両手が抗うように俺の腰元に迫る。
「チ、チエ?」
「が、我慢できないっ!」
がしっと両手で掴まえたのは、彼女の乳房を蹂躙していた俺の肉棒。
そのまま胸に掻き抱くように押しつけて、左右に激しく身体を揺する。
「うおっ」
縦の動きから横の動きへの変化。
右の乳房から左の乳房へ、山谷山を往き巡る。
「や、やばいっ」
自分の腰の動きと無関係な不意打ちもさることながら、移動距離も伸びれば擦過面積も数倍。
猛烈な快感が押し寄せて、接触している筈の剛直から感覚が失われていく。
「ご、ごめん、もう保たないかもっ」
だが、
「あたし、あたしもっ、あうっ、あんっ、ああっ」
下方からでも主導権を握っている筈のチエの声も、相当に切ない成分を含む。
「ち、チエッ」
だけじゃダメか。
「と、チエの、おっぱい様っ!」
「あんっ、センパイ、先輩、センパイ、来る、あんっ」
喘ぐのがチエなのか、チエのおっぱい様なのか、それももう分からない。
俺は両手で二つの山を押さえ付けながらひたすら腰を打ち付け、少女は激しく乳房と乳首を震わせながら、彼女自身の手でその膨らみを揉み砕く。
「う、うあっ、チエっ! おっぱい様っ!」
「せ、先輩、センパイ〜っ!」
どくっ、どくどくっ、ぶるっ、ぶるるっ。
普通にセックスしている時でも滅多にないくらいの一体感を持って、俺とチエと、チエのおっぱい様は同時に果てた。
コトが終わると嘘のように、チエのおっぱい様は自己主張をしなくなった。
いや、結局のところ俺にはよく分からないんだけど、チエによると話し掛けてくることもないそうだ。
「あの女の子の超能力だったんスかね? 満足したから消えた?」
「わかんないけど、そう思うしかないんじゃない?」
公園の前を散歩しながらの会話。
あれからあの女の子とも会う機会はないけれど、今となっては特に尋ねる事もない。
だって。
「へへっ、センパイ」
ぶらんっと左腕にぶらさがってくるチエは、相変わらず可愛くて。
ぎゅっ。押しつけられる柔らかい膨らみ。
可愛くてそして、
「エッチだなぁ、チエは」
「チエじゃないっスよ、おっぱい様が寂しいって言ってるんスよ」
都合のいい時だけおっぱい様を復活させる少女は、もうおっぱい禁止なんて言わないから。
「そんなんだと、襲うぞ、此処でも」
「あっ、そういう感じっスか? センパイ、いま」
なんという両性の合意。もはやこれは植え込みに一直線するしか。
「あんっ、まだ何も言ってないっスよ、センパイ」
「家に戻ってからにする?」
「あっ、それはおっぱい様が許さないっスね、たぶん」
「おっぱい様だけ相手にしてもいいよ」
「センパイのいじわるぅ〜」
“仲良きことは、美しきかな、だぞ、うー。”
チエを灌木の間に引きずり込む時、そんな声が聞こえたような気がしたけど、空耳にしておいた。
もう一支援
以上です。支援どもでした。総レス数まちがいた(恥
タマ姉もミルファも魅力的巨乳の持ち主ですが、
俺的にはやはりよっち(と草壁さん)の乳に轢かれますね。いや、惹かれますね
696 :
653:2008/06/24(火) 21:25:50 ID:AXcJ2/B10
>>695 不足が指摘されていたよっち分補充、乙でした。
お見事です。
やっぱり、おっぱいは正義、おっぱいは宇宙、おっぱいは人生ですよ。
とても興奮しましたw
さて、当方ですが、これ以上この場を荒らすわけには参りませんので、今後投稿はとりやめる事にします。
これまで、駄文で板を汚してしまい、大変失礼いたしました。
中途半端に終わった投稿物が少々心残りではありますが。
一応、ラストのネタまで考えてあったので。
ご支援も頂きまして、まことにありがとうございました。<(_ _)>
それでは、去っていく奴は無視していただいて、695さんへのご感想をどうぞ。
>>695 乙でした。会話のテンポというか話の間というか、うまいなぁと思いました
>>696 そんなこと言わず、自分の満足できるものが書けたらまた投下してください。待ってます
>695
乙。その後書きは次に草壁さんのパイズリSSを書くという伏線だな。頼んだぜ
>696
荒らしに叩かれて嫌気が差すのは分かるけど、
マトモな住人がそれなりに気を遣ったのに簡単にとりやめ宣言とかするんだな
これでもう消えても復帰してもスレには禍根を残すことになっちまった
やめるも続けるも、いつでも宣言できたんだからせめて2,3日黙ってりゃ良かったのに
掲示板では「書かない勇気」を持つこと(SSのことじゃないぞ)が大事なのは超一般論。せめて他スレでの今後の行動の参考にしてくれ
>>695 _、_
( ,_ノ` ) n
 ̄ \ ( E) グッジョブ!!
フ /ヽ ヽ_//
>>696 荒らしてるのは貴方じゃないでしょ
このスレは書き手がいないと成り立たないんだから荒らしは無視して続き書いて欲しい
貴方の落ち度は感想レスに反応しすぎたこと
黙ってるか他人のふりしてたほうがいいよ
>>695 なかなかいい感じでした ごっちゃんですw
ここまでエロ描写の入った物も思えば久しぶりな気がする
>>698 あんたも自分の書き込み見直したほうがいいと思うが…
自分ではアドバイスのつもりなんだろうけど嫌味にしか見えんぞ
>>700 その通り、2ちゃんでは荒らしはスルーが基本
こんな事で書き手が減ってしまうのはさみしい
そして何度でもいおう
そんなことよりSS書こうなんだぜ。!
>>695 「おっぱいが、おっぱいがあたしに話し掛けてくるっスぅ〜!」
おかしすぎるww
>>696 書き手さんが居なけりゃこのスレが存続しないんだから気にしない方が良いぜ。
批判厨乙、とでも言ってやれ。
まあ最終手段として、コテハンとトリップ付けて
「私の作品に不快感を持ってる人は注意してくださいね」
みたいなことを最初のレスで書いとくのもアリだね。
>708
そんなことしたら「オレに粘着してください!」って言ってるようなもんだ
名乗らなければ誰だかわかんない事もあるんだし、黙って書き続けるのが吉
そんなことよりSS書こうなんだぜ。!
696だが、あんだけ明言しといていまさら撤回する恥知らずもおるまい
黒歴史だったと思って忘れ去るが吉
それはそうと、未完成決定のSSも保管庫には保存するのか?
↑微妙な書き方になっちまったが、俺は696じゃないぜ
>>695 GJ!
>>696 なんでSS投下直後に水を差すような書き込みをする?
それに、698も言ってる通り、粘着すれば作家追い出せる前例つくって、荒らしに勢い与えちまったんだお前は
もう二度と来るな
ほれー、みれー。
嫌味ったらしく叩かれると書く気失せるんだってばよ。
書き手になんか言う前に、批判と嫌味を書き分けるくらいの文章力を持とうぜ。
>>695 よっぱい乙でした。
今度は貧乳の友人たちの逆襲?とかも見たいな。
ふと思ったんだけど、よっぱいエンド後にシルファは帰るだろーか?
なんとなくだがタカ棒奪還の為に居座りそう&イルイルが居座らせそうという気もするねw
>>696 出来れば立ち直って帰ってきてくれると嬉しいな。
気分はわかるけど、俺みたく待ってる奴もいる事を忘れんでくれ!
なに。もうじき次スレだし、すぐほとぼりも冷めるってw
>713
>698だが、別に前例云々は言ってない
っつーか、追い出しは過去にも普通にあるので今更一人増えたってどうってことない
ジャンクション、白詰、物書き修行中、etc.・・・荒らしが同一人物か知らんけど、
コテハンや常連化しかかった作家さんは相当な確率で、揚げ足取りから追い出しのコンボが一度は入ってくる稀ガス
で、叩かれたら、しょうがないので黙ってるしかないんだよね
周囲はどうせわぎゃわぎゃ議論する(しなければ荒らしが自演で騒ぐから確実)ので、
他人事だと思って眺めていればいいんではないかと
叩きレスが見かけ上何個あってもそれは気にしなくていい(大概一人か二人だから)、
擁護してくれる人間が誰も居ない時に、初めて自分の行動を見直して見ればいい
どっちにしろ、スレが落ち着くまでは沈黙が金
もっとよっちのSS読みたい
>>715 その他
一旦モチベーション削がれた後で、何ヶ月も経ってから書く気なんて起きないって。
書き手の心理としてな。
もう待ってるとか言うのやめとけ。
俺は素直になれない女の子との日々の続きもやゆよトリオの続きも郁乃専属メイドの続きも待ってますが何か?
720 :
名無しさんだよもん:2008/06/25(水) 18:58:25 ID:6sG5Ah1oO
ちゃるSS少なすぎないか…?
とことん雰囲気悪いんだな、ここ
俺も一本落とそうかと思ったけど、あんまし自信ないしやめた
袋叩きに遭いたくないし
じゃあね
722 :
名無しさんだよもん:2008/06/25(水) 19:10:19 ID:z6OMqAk4O
>720
よっちと比べると性格が難しいのでネタにしづらい気はするね
脇役でちょこっと出す分には、良い味出すと思うんだけど
まあ、よっちも少ないけどね。長編は「言葉はいらない」くらいかな?
>>720 巨乳だとか特徴的な口調とか、分かりやすいキーワードにいまいち欠けるんで
描くのが難しいと思われてるんじゃないかな。
でも感情描写巧みな書き手さんなら、情緒的ないいSSになりそうな気はする
実家がヤの付く人ってネタもあったけど、あれはパロディネタに近いしな……
ADやってないんだが、そっちには何か新しいネタあったか?
ちゃるの実家は間違いなくヤの付く人です
最近の奴は打たれ弱いな・・・
いいじゃないか、好き放題書いたって。
叩かれながら面白いものを作ればいいし、
みんなで作り上げていこうと言う気概があってもいいじゃない!
ちなみにいいんちょネタならいつでもウェルカムっすよ♪
あ・・・このみもいいかも。
>>728 では君が書いてみるのだ
みんなで手取り足取りアドバイスしよう
にしても、後38KBか
この調子だと投下も滞りそうだし、次スレはしばらく先だな
>>728 >みんなで作り上げて
ないない、ありえない
しょせん書いてんのは一人だけ、叩かれんのも一人だけ
こないだまでイイ感触だと思ったら次の日には投下即荒らし扱い
んな状況で書くなんて正気の沙汰じゃない
逆に言えば、まともな神経してる奴だったら書かないってこと、OK?
>>731 おまえ面白いこと言うなあw
どこをどう読んだらそうなるのか、わかりやすく説明してくれw
な
し
こ
ん
逆
お
ど
とりあえず荒らしはスルーしようぜ
おまえらさあ、なにがなんでも
どうして書き手が居着かないか、ってことを考えたくないんだな
そんなんだからせっかくの書き手に愛想つかされて過疎るんだよ
>>736 それは、お前が書き手なのに叩かれたって事が言いたいんだろ?
例えお前がどれだけ良い文章を書ける書き手であっても
お前のような奴は迷惑なんだよ。
ss投下したら何してもいいなんて思うな。
>>737 投下してるやつと待ってるやつに差なんかねーよ
対等の関係に決まってんだろが。んなこともわかんねーのかw
会話について行けないのは
俺の理解力が劣っているせいなのか?
>>738 どっちかちゅうと投下するヤツの方がエライと思うのは俺だけか?
>>740 読む奴がいなかったら書かないだろうから、やっぱり対等じゃねえの?
どっちが欠けてもだめだろうし
>>741 いや、どう考えても書き手のほうが大事だろ
書き手は簡単に読み手になれるけどその逆はない
ただでさえTH2のSS書く人減ってるんだから大事にしようぜ
>>742 意外と読むのだって難しいんだぜ?
でも最後の行は同感だ。sslinksもたまに滞るしなー
ID真っ赤にして必死だねぇw
>意外と読むのだって難しいんだぜ?
この発想はなかったわw
どんな高等技術を用いて読んでるんだよ
それとも俺が低レベルなだけでここではこれがデフォなのか?
書く方も読む方も、ヘンに片肘張りすぎだろ。
SSがなくても死ぬワケじゃない。SS投下して酷評されても死ぬワケじゃない。
もっと気楽にいかないか?w
よっちSS読んだけど、まさかおっぱいが意思を持つネタとは意表を突かれたぜ。
何故か様付けとか、そういう細かいところが面白くて吹いたw
どーでもいい話なんだが、最後は貴明のチンコが喋るようなオチだと個人的には最高だったよ。
なにはともあれ他キャラの話も期待してます。
そんなことよりSS書こうなんだぜ。!
自分のちんこと会話するのはよつばとのエロパロで見かけたな
しかし貴明のちんこでは「もっとセックスする!」くらいしか言いそうにないw
3姉妹スレに出没してる者だけど
どう見てもミルファびいきの696の投下ブツ、密かにアテにしてたんよ…orz
まあイルミルシルものは今後も多く出そうだからそれに期待するしか
>745
読むのは簡単かどうか知らないが、少なくとも読んで感想をつけるのは簡単ではないのだろう
と、ここのSS投下数とSSへのレス数をみて思う
たぶん最もきれいな形というのがあるんだよ。
現状:ss投下→「面白くない」→「文句言うな」→「ごめんなさいでしたーもうかくのやめます。」→雑談
きれいな形:ss投下→「面白くない」→「ごめんなさい」→ss投下→以下ループ
そんなことよりssかこうなんだぜ。!
書き手にも士気というものがあるだろ。
甘やかす必要はないけど、気ぃ〜くらい使ったってもバチはあたらないんじゃね?
少なくともやる気を削ぐようなキッツい嫌味はやめた方がいいと思うなあ。
>>750 感想を書くのは大変だと思うが、文句言うだけのやつより書き手の方が遥かに大事だろう。
止めろだとかただ面白くないとだけ言うやつ、作品の感想は一切無く作者批判だけするやつは
SSとかTH2自体が大嫌いで攻撃してるのかね。
それならこの板にこなきゃいいのに。
つーかさー、そうやって無理矢理に作家をもてはやした結果がこれなんだろw
個人的には、気を遣うのも無理にもてはやすのも好きにすればいいと思うが、そうやって優しくしておいて
作家が調子に乗り始めると手のひら返すんだよなw
696も、ちょっと前の物書き修行中も、全く同じパターンで姿消したぞ。
すぐ調子に乗っちゃう作家と、一度与えた優しさを取り上げる読者、どっちが悪いんだよw
善悪をとってもしかたがない。
不特定多数の出入りする場所で正義を振りかざしてもその正義を遂行するには体制を作らなくてはいけない。
そうすると閉鎖的になる可能性がある。
コンスタントに
>>751 3行目が一番てっとり早いと思いますよ。
そんなことよりSS書こうなんだぜ。!
>751>755
まずおまえがTH2SS書こうなんだぜ!
作者を叩いてる奴は、単に自分がリアルでもネットでも相手にされないが故に
自分以外の人間が相手にされてるのが悲しくて仕方ないだけだから叩きは止めようがない
それよりも書き手にしろ読み手にしろ、
多少なりともSSスレを盛り上げようと思ってる人間がどういう行動を取るか、だがね
確かに書き手はもうちょっと煽り耐性を身につけるべきだろうし、
読み手はつまらなくても簡単な感想はつけてあげた方がいいとも思うけど・・・
正直、あまり悩んでも楽しくならんよ。書きたいように書いて、読みたいように読めばいいさ
容量半端だのう。このまま雑談で梅か
SS作家さんへの三箇条(私見)
・自分で自分のSSを卑下しない
→自分でダメだと思ってるなら何故投下したんですか?
投下した以上は胸を張ってSSと心中すべし。
・批判には凹まない
→批判する方も素人の浅知恵です。ものが分かって言ってる奴なんか一人もいません
軽い気持ちで指摘してるだけなので有り難く受け流すべし。
・叩かれたと思ったらしばらく退避
→叩き屋さんは寂しがりなので謝っても開き直っても粘着してきます。
黙っててもスレは荒れますが、作家さんに全く責任はありませんので他人事を決め込むべし。
>>754 「調子に乗る」の基準がいまいちよくわからないんだが…
今回去っちゃった人なんかも、少なくとも意見聞く耳は持ってたし改善しようという意志は見えた
図に乗っていたようには見えないけどね。
やる気が出てきて多作になってくのまで、調子こいてる=図に乗る、で括られちゃうと、板を盛り上げたい
という皆さんの希望とは矛盾してるんとちゃうんかな
>>758 さすがに論点ずれすぎ。
>>754のは住人の問題点の指摘だから、書き手に問題があったかはまた別の話。
しかも多作になることを調子(図)に乗るなんて言ってないだろ。
それと、「調子に乗ってたかどうか」は感じ方一つで変わるから決めようがない。
書き手に、煽りに屈しない耐性があったとしても、餌与えないように気を遣って控えるという事はあるだろう。
そうなると、どっちにせよスレへのSS投下は減る。
荒らしがのさばらんようにするしかないんだろうが、昔から決定打というのはないんだろうかね
一定期間置いたところで、粘着はその書き手の次の投下でもまた暴れるだろうし
だから粘着という
まあ粘着もそうだけど、結局住人がスルー出来ないのが問題なんだろうけど
今回もそうだけど、ネガティブな感想(これは荒らしとかではなく純粋に感想なんだろう)を書くと
それを足がかりに荒らしが煽って住人がそれに乗って騒いじゃうという悪循環なんだよね
読み手も書き手も、住人全員が軽く流せればそれで済む話
762 :
無題:2008/06/27(金) 14:57:33 ID:Jnrw9XXV0
「うめ〜うめや〜」
「うめですね。そろそろ収穫の季節も終わりのようです。」
ーずどん
「もってきたよー。研究所のうめー」
「わけがわからないれす。何れ研究所にうめがあるんれすか。」
「社内緑化もとい観賞用だそうですよ。白くてかわいい花が咲くそうです。
ただ見るだけだともったいないので、実がなるものを選んだみたいです。長瀬おじ様が。」
「でもどうすんのー?うめこんなにあっても食べられへんでー」
「梅干しにしてもこんなにあったらさんちゃんと食べても何年ももつなー。
まぁ、とりあえずこのまま置いといてもしかたないから漬けよか。」
「はい。お手伝いします瑠璃さま。」
763 :
無題:2008/06/27(金) 14:58:45 ID:Jnrw9XXV0
「うーん。あ。貴明におすそわけやー。」
「さんちゃんそれいい!きっとダーリンも喜ぶよ。」
多分喜ばない。
「ご主人様のうちらけに大量に持っていってもしかたがないので、
たまたまやこのこのにも持っていってやるのはろうれすか。」
「そうやなー」
764 :
無題:2008/06/27(金) 15:01:04 ID:Jnrw9XXV0
「あ、そうそうさんちゃん。おじさまが杏飴食べてたんだけどねー
おいしそうだからもらってきたよー」
「わー。ありがとー。でもなんで杏飴?」
「それはこの文章がうめだからです。珊瑚様。」
「杏と梅と何の関係があんの。」
「瑠璃さま。杏は学問的な分類では梅にちかいものなのです。
ちなみに、両方サクラ属で、春の季節のハートフルなSSにぴったりです。」
「で?」
---
起承終でお送り致しました。
書けと言われたから書いた。反省はしない。そろそろスレが終わるからうめようの燃料(上で否定されている行動)投下。
こんなくそえすえすをかいてごめんなちゃい。いままでも、そしれこれからもくそをたれながしつづけます。
そんなことよりSS書こうなんだぜ。!
>>764 うめSS、乙です。こういう短篇ってまとめるのが難しいんだよね
一方そのころ、向坂家では
貴「ど、どうしたの梅干しばっかりこんなに一杯?」
環「親戚の家で作りすぎたらくして、本家にって送ってよこしたんだけど、
今ここには私と雄二だけでしょう? とても食べ切れないから協力して頂戴ね」
こ「こ、このみは、すっぱいのはちょっと苦手で……」
環「砂糖漬けもあるから、分担しましょ?」
こ「甘いのならいくらでも平気だよっ!」
雄「好き嫌いしてっと大きくならねえぞ、このみもこれを喰え」
こ「ええ〜、ユウ君の意地悪〜」
貴「そっちの箱もなの? こんな量、四人でも無理じゃないの?」
環「そうねえ、そうだ、タカ坊の知り合いの双子の女の子、姫百合さんだっけ、あそこ大所帯じゃなかったかしら?」
こ「おすそわけでありま〜す」
貴「いや、あそこは八割方ロボだし」
雄「学校にでも持ってくか、いいんちょあたりに渡せば捌いてくれそうだ」
貴「……困るだろうな、愛佳」
環「でも、少なくともあと2,3人は応援が欲しいところねえ」
ピンポーン。
「「「お邪魔します、お姉様!」」」
環「あら、貴方達、いい所に来たわね、これ、片付けるの手伝って頂戴」
薫「梅干しですか、しかし、凄い量ですね、さすがお姉様」
カ コクコク……。
玲「わ、私は梅干しは苦手で……こちらのアーモンド入りのチョコ菓子を担当させていただければ」
雄「それは梅と関係ねえだろ」
カ フルフル……。
薫「アーモンドは梅と近縁の植物です」
雄「そ、そんなの知らねえよ」
玲「常識ですわ! まったく、お姉様の弟とも思えませんわね」
貴「でも、そのチョコボールってピーナッツだよ?」
---
上のをパクって適当に書きました。反省はしない。推敲もしない。続けない。うめ。
>>770 スレ建て乙。
新しいスレは荒れないといいねえ。
しばらく書けてないからオイラもトライしてみようかなぁ。
もやっとしたイメージはあるんだけど、ココんトコ形にする努力をしてへんかった。
無理しない程度にがんばってくれ
期待してるよ
埋めSSをリレーするのは古来から我が国に伝わる風習でありこの伝統を引き継いでつまり春夏さん陵辱キボンヌと私はうわなにをするやめrgthyじゅきぉp
リレーじゃないけど梅
(梅ねたじゃないけどね)
おう、俺向坂雄二。
赤毛がチャームポイントのナイスガイだ
今日は日曜日。天気もいいし、あいつの女嫌い克服もかねて貴明とナンパにでも
繰り出そうかと思ったんだが朝からあいつ家にいやがらねぇ。
まったく、休日の朝っぱらからどこに行ってんだか。仕方ないんで一人で街に繰り出した。
貴明の奴は俺のメインターゲットである年上のお姉さんに受けがいいからデコイにはもってこいなんだけど、
まあ今日は俺のこの甘いマスクだけで勝負するとするさ。
駅前で暇そうなおねぇさんに声をかける。……くそう、ガードが固いぜ。
だがしかーし、そんなガードを突き崩しての成功こそナンパの醍醐味ってもんだ。
って、おや?
あっちから歩いてくるのはいいんちょじゃねぇか。
おーい、いいんちょ〜
「向坂君?」
声をかけると小動物みたいなきょとん、とした顔で俺を見てからいいんちょはこっちに歩いてきた。
……っと、人の流れに巻き込まれて流されてってる……あ、今度は逆方向。
「はぁ……はぁ……はふぅ……」
大丈夫か? いいんちょ。
「ら、らいじょうぶ、らいじょうぶれすぅ〜ど、どうしたんですか向坂君?」
いや、ちょっといいんちょが歩いてるのが目に止まったから呼んで見たんだけど。
お、そうだ。いいんちょ、暇なら俺とお茶しねぇか?
「え?……いいいいいいえぇ…け、けっこうですぅ!」
……そんな全速力で後ずさりしなくてもいいじゃん。
別にとって食やぁしないって。俺は紳士なんだぜ?
「あっ、あのあのあの、あたし家に帰ってマフィン焼かなくっちゃ、なのですっ!」
そう言っていいんちょは手に持っていたレジ袋を俺の目の前に突き出して見せた。
なるほど、卵に小麦粉にバターが入ってる。
まあ、用事があるんなら仕方ないな。じゃ、また今度機会があったら頼むぜ。
「えっと、ご、ごめんなさい。それじゃ〜」
普段からは想像もつかない早足でいいんちょは去っていった。
そんな、逃げなくても良いのになぁ。
昼までがんばってみたものの電話番号を聞きだすことに成功したおねぇさんは0。
なかなかつらいぜ…
とりあえず腹が減ったので一人寂しくヤックで飯でも食うか。
商店街へ移動してヤックに入ろうとしたところで見知った顔が店から出てきた。
おう、十波じゃねぇか。
「ああ、あんた。」
十波は手に大きなヤックの袋を持っていた。
十波もメシ? なら一緒に食わねぇ? シェークぐらいおごるぜ。
スマイルをふんだんにサービスして、俺は仏頂面の十波にフレンドリーに話しかけてみた。
「何であんたと一緒に食べなくちゃならないのよ。……もしかしてナンパ?」
おう。今流行のツンデレ美少女と一緒にメシなんてのもオツじゃないか。
「あたし、ナンパな男って踏み潰したいぐらい嫌いなの。タダでさえ罰ゲームでパシリに
されてるって言うのに……ぶつぶつ」
十波はぶつぶつ言いながら俺の目の前を通り過ぎて人波の波間に消えていった。
……おれバカみてぇ。
ヤックの前でアホ面晒してしまったので恥ずかしくて入る気をなくし、代わりにカフェで飯を食うことにした。
カフェまで来ると、一人目立つ髪色のメイドさんがいた。お、ありゃるーこちゃんじゃねえか。
よ、きょうもかわいいねぇ。
「お世辞を言ってもサービスはおなじだぞ、うーじ。」
そんなんじゃねぇよ。今のはフェミニストである俺の流儀って言うか。
俺って奴はかわいい女の子には賛辞を送らずには居られないのさ。
「そうか。注文はなんだ?」
そうだなぁ……ホットサンドに紅茶ひとつ。
「わかった。少し待っていろ。」
そう言ってるーこちゃんはお店の奥に引っ込んで、10分ほどで戻ってきた。
「るーの特製ホットサンドだ。ほっぺが落ちるぞ。」
そう言ってるーこちゃんは俺のテーブルにホットサンドの載った皿を置いた。
そして、ティーポットを高々と差し上げると、もう片方の手に持ったカップに向かって見事な手さばきで注ぎ始めた。
へぇ……貴明に聞いちゃ居たけどこれは見事だな。
「る……お茶も入ったぞ。さっさと食え。」
相変わらずのクールさだなるーこちゃんは。じゃ、いただくとするかね。
「るーちゃん!」
俺がホットサンドにかぶりついたところで、聞き覚えのある声が聞こえた。
……ありゃ、ミステリ研の笹森じゃねぇか。
「るー!」
「るー」
笹森は俺の目の前でるーこちゃんと二人して両手を高々と差し上げて挨拶してる。
恥ずかしくないんだろうか……恥ずかしくないんだろうなぁ。
「ねぇねぇ、るーちゃんは今日の夜の天体観測に来るんだよね?」
「るー、勿論だ。るーの故郷を見せてやろう。」
「たのしみなんよ〜」
天体観測ねぇ…さすがミステリ研だな。ま、その調子でUFOでもUMAでも見つけてくれや。
ちなみに、るーこちゃんの作ってくれたホットサンドは美味かった。
お礼にお茶でもご馳走したいところだったが、るーこちゃんはバイト中なので諦めた。残念。
腹も満ちた事なので俺はナンパを再開する事にした。
今度はショバをかえて、若い女の子たちに人気のアイスクリーム屋の前で張ってみる事にした。
…っと、おや、あそこでアイスを頬張ってるのはちびすけたち1年生軍団か。
「あれ、ユウくん。どうしたの?」
「あ、向坂先輩、おつかれっす。」
「おつかれ…」
これはいつもの3人組、ちびすけにチエちゃんにミチルちゃんだ。
「る〜」
「あ〜!スケベの片割れや!」
「どーも。」
加えて、これはお団子頭の双子姉妹に車椅子に乗ったいいんちょの妹の郁乃ちゃんだ。
俺の好みからはちょいと外れちゃ居るが、どの子もみんなかわいい。ま、ちびすけは少々ガキっぽいがな。
「む〜、ひどいよユウ君」
そのアイス一口食わせてくれたら考え直してやっても良いぜ。
「ユウ君自分のお小遣いで買いなよ。」
貴明の奴とは食べさせっこしてるのに……こうも態度がちがうもんかね。
「それが本命とただの友達との差。」
「うわ…ちゃるきっついな〜」
「よっちの顔ほどじゃない。」
「なんですと〜」
ああ、みんなつめてぇな…貴明の奴のどこが良いんだよ。
「じゃぁ、向坂先輩の売りって何ですか?」
良くぞ聞いてくれた郁乃ちゃん。
俺の売りはこの甘いマスクと常に忘れない女性への気配り、そしてちょっとのスケベ心…もとい男の色気だよ。
「とりあえずスケベ心はどっかに捨ててきてください。」
うわひでぇ。
「やっぱりこいつもすけべぇや……」
「雄二にーちゃんスケベなん?」
「さんちゃん近寄らんとき! スケベがうつってまう!」
俺ばい菌扱いかよ。
なんか容赦ないなこの後輩たち……
後輩の女の子たちに予想外の袋叩きにされてグロッキーになったおれは、ぐったりしながら商店街を歩いていた。
そして紅茶専門店の前を通りかかったとき、見覚えのある後ろ姿が目に止まった。
長い黒髪が特徴的なあの後姿は……優季ちゃんじゃねぇの?
「あ、向坂君。」
優季ちゃんは振り返るとにこっと笑った。うーん……いいねぇ、美少女のスマイルは心が和む。
優季ちゃん今日は紅茶の買出し?
「ええ。今夜のお茶会用に。」
今夜のお茶会?
「ええ、皆さんで星を見ながらお茶会をするんです。」
美少女と夜空のお茶会かぁ……いいねぇ。どう? 俺とお茶しない?
「残念ですが辞退します。私はたかあきさん一筋ですから。それに今日は急いでいるので。」
やっぱり貴明か……くそう。なぜ奴ばかりがもてるのか。
「それでは、失礼しますね。向坂君。」
そう言ってぺこりとひとつお辞儀をすると優季ちゃんは足早に人ごみの中に消えていった。
いいなぁ……正統派美少女。
あんないい子に気を持たせたままなんて、貴明めふてぇ野郎だ。
商店街を歩いていくとまたしても見覚えのある人がいた。
ありゃぁ久寿川先輩じゃねぇか。
久寿川先輩は人待ち顔できょろきょろしながら立っていた。
いいよなぁ……美人だし、スタイルいいし、ちょっと変わってるけど姉貴と違って性格も悪くないし。
それにしても、誰を待ってるんだか。
……まさか、貴明じゃねぇよな。
とりあえず声かけてみるか……久寿川せんぱ〜い!
「あ、向坂さん。どうしたんですかこんなところで?」
いや、適当にぶらぶらしてただけっすよ。
先輩こそこんなところで、誰かと待ち合わせっすか?
「ええ。約束があって……でも遅れてるみたい。」
……もしかして、貴明の奴ですか?
「いいえ。河野さんじゃないの。」
またまーりゃん先輩に放置プレイさせられてるとか。
「ちがいます。」
あ、怒りました?
すんません。お詫びにお茶でも奢りますから、ちょっとそこの喫茶店でも入りませんか?
「でも……」
約束ですか?時間に遅れてくるような奴に気を使う必要なんかないっすよ。
ま、なんか会っても俺が話しつけますから。
「あの……向坂さん。」
え?なんすか?
「いえ、向坂さんじゃなくて……」
何でそんな困った顔してるんですか?
先輩は困った顔してるより、笑ってるほうがかわいいんですから。
「ありがとう、そう言ってくれるのは嬉しいわ。でも、」
一体何が先輩の笑顔を曇らせてるんですか?
先輩が笑顔を見せてくれるなら俺は何だってしてみますよ。
例えうちの凶暴姉貴にボロボロにぶちのめされたって立ち上がって見せます!
「へぇ……そう。じゃあ、試してみようかしら?」
……いますげぇ聞き覚えのある声が背後から聞こえたんすけど。
久寿川先輩が俺の後ろのほうに視線を向けておろおろしてる。ってことは、いるんだろうなぁ……赤いオニが。
「うふふふ……赤い鬼なんて、洒落が言えるほど雄二は余裕なのねっ!」
がしっ! ぎりぎりぎり……
うわっ! やっぱり姉貴!
割れる割れる割れる!
ごっ、ごめんなさいお姉さまっ! 許してくれ〜
「ナンパに精出すような軟弱な弟の性根をたたきなおさなくちゃ……ねっ!」
ごきっ。
あ、割れた。
それっきり、俺の意識は闇に飲まれた。
◇
俺が商店街の冷たいタイルの上で目を覚ましたときにはもう夕方になっていた。
ずきずき痛むこめかみをさすりながら俺は家に帰った。
途中愚痴でもこぼそうかと思って貴明の家に寄ったんだが未だ帰ってきてなかった。
あの野郎どこに行ってやがるんだ。
家にも誰も居なかった。
あのあと久寿川先輩と二人でどこかに出かけたんだろう。
ああ、今日は散々だったなぁ。
俺は自分の部屋にこもって不貞寝を決め込んだ。
くそう……腹減ったなぁ……ぐぅ……
満天の星空。
山の中腹に立つ学校の屋上からは綺麗な夜空が良く見えた。
「タカ君タカ君、すごいねぇ。お星様がいっぱいだよ。」
そうだなぁ。俺も草壁さんに教えられるまでここがこんなに夜空が綺麗だ何て知らなかったよ。
でも草壁さんはどうしてここの夜空が綺麗って知ってたの?
「うふふ……それは秘密です。」
そう言って草壁さんは俺にウインクして見せた……ちょっとドキッとした。
今日は朝から準備して、生徒会役員の特権を利用して学校の屋上で天体観測兼夜のお茶会を開いていた。
貸切の屋上には数台望遠鏡が並んでいて笹森さんとるーこが一緒になにやら話し込んでいた。
ちなみに望遠鏡は笹森さんの私物。さすがミステリ研会長。
このみたち−なぜか他校生徒2名も入った−1年生組も夜空を見上げてなにやら話し込んでいる。
屋上の真ん中には生徒会室から持ってきた折りたたみテーブルと椅子で作られた即席の食卓があって、
そこには小牧さん手作りのお茶菓子とタマ姉が用意してきた軽い夜食がいくつか並んでいた。
その横ではキャンプ用のストーブで沸かしたお湯で、小牧さんと草壁さん、それに由真が慣れた手つきで
お茶の用意をしていた。へぇ…意外だな。
「ふふーん……あたしはこういうことも得意なの。」
由真は普段が普段だから粗暴な印象しか無いけどね。
「くっ……河野貴明、覚えてなさいよ。」
タマ姉と久寿川先輩は小牧さんの焼いてきたスコーンを温めなおしに調理室に行っている。
そして、こういう催し物にはなにかと顔を出したがるまーりゃん先輩だけど……タマ姉が何か策を弄して
絶対来られない状況にしたみたいだ。……タマ姉、一体どんな手を使ったんだろう。
「あら、知りたい?」
……お願いだから気配を消して近寄った上に耳元で囁くのはやめてください。
「スコーン、あったまったわよ。そろそろお茶にしましょう?」
そう言ってタマ姉と久寿川先輩がテーブルにスコーンを並べ始めた。
それにあわせて草壁さんたちも並べてあったカップに紅茶を注ぎ始めた。
「このみ、お茶の時間だってさ。るーこと笹森さんも。」
俺が声をかけるとみんなが集まってきてテーブルに着いた。
夜空のお茶会の始まりだ。
それにしても……雄二の奴どこに行ったんだろうな。
誘おうと思ったら家にも居なかったし。タマ姉知ってる?
「さあ? 今頃頭痛で寝込んでるんじゃないかしら。」
◇
へぷしっ。
う〜、路上で寝てたせいで風邪引いちまったかな……
昨日の夜電波を受信して埋めネタとして突貫で書いてたんだけど
途中で一休みと思って寝転がったらそのまま朝だったよw
GJ
GJ!!
それにしても雄二は哀れですね(笑
せめて、接点のあるいいんちょとこのみからは、
もう少し雄二にやさしくしてもいいと思うんだけどな・・・
世の中不公平ですよね・・・
面白かったっす!
しかしゆーじは不憫だな(;_;)
いかにもありそうなのがまたなんとも言えず……
それにしてもすごく気になる事がひとつ。
まーりゃん先輩が絶対来れない手配ってなんだろう??
まー母利用あたりが思い付くけど、確実にとなるとそれも難しいような……。
>>787 それについてはタマ姉に答えてもらおう
「そうねぇ……企業秘密、とでも言っておきましょうか。
女の子には秘密がいっぱいあるのよ、うふふ。」
「あ……それ、私の台詞です……」
ま、単にまーりゃん先輩出すと話が面倒になるのでそうしただけなんで細かいところはスルーで
それにしても、愛佳ルート以外だと愛佳と雄二のコンビで貴明に絡むイベントが多いから結構相性よさそうだよな。
ということで次スレで誰かが書いてくれる事をひそかに期待埋めw
>>786 愛佳は男性恐怖症だから、この反応で合ってるんじゃないか?
ゲーム開始時点では貴明からも思いっきり逃げてたし。
雄二の扱いがひどいのは今に知ったことじゃないけど、同じ男としてすごく…うん…
「おめでとうございますゆうじさん」
「おめでと」
「おめでとうございますです。」
「おめでとさん。」「おめでとうや〜」
「おめでとうございます」「おめれとうれす」「おめでとー!ゆーじくん」
夢か・・・
へぷしっ。
う〜、路上で寝てたせいで風邪引いちまったかな……
乙です。
こうなったら、メイドロボに走るしかないなw
ひとつ気になったのは、悠二は由真のことを『長瀬』で認識してるのでは?
あ、しまった。ユウジ違いだw
向こうに戻ります。
あと8Kがなかなか埋まらんね 梅
795 :
名無しさんだよもん:2008/06/29(日) 17:34:06 ID:QvVuNp390
ちなみに次スレってもう立てたの?
まだなら、ここにテンプレ張っておけば?
容量ってどこでみるの?IEの、ファイルのプロパティ?
Jane Doe Styleだと枠の下のとこかな。専用ブラウザ使いなよ。
残り容量できれいに収まるSSを
計算して作ったらすごいよな・・・
>>798 ありがとう。
>>800 適度に密度の低い話を書いて、破綻しない程度に削るのはそんなに難しくなさそう。
書いてみたいけどそもそものねたがないし気力もないのであきらめる。
もしも、このみがこのスレのSSをみていたら・・・
もしも、いいんちょがこのスレのSSをみていたら・・・
もしも、タマ姉さが・・・以下略
っていうのを思いついたことが合ったけど、
思っただけで膨らませることができなかったorz
>>801 何気に801ゲットおめ
普通にテキストで書いて容量あわせても
実際書き込んで見るとちょっと膨らんだりするから
丁度埋まる容量って意外とむずいよ 埋め
あなたがいた頃は 笑いさざめき
誰もが幸福に見えていたけど
人は人と別れて あとで何を想う
鳥は鳥と別れて 雲になる 雪になる
私の心が空ならば 必ず真白な鳥が舞う
鳥よ 鳥よ 鳥たちよ
鳥よ 鳥よ 鳥の詩
あなたを想うのは 日ぐれ時から
あたりが夕闇に沈む時まで
人は人と別れて 夜にひとり迷う
鳥は鳥と別れて 月になる 風になる
私の心が水ならば 必ず北から鳥が来る
鳥よ 鳥よ 鳥たちよ
鳥よ 鳥よ 鳥の詩
あなたはいつの日か 巣立つ私を
静かな微笑みで見つめてくれる
人は人と別れて 愛の重さ覚え
鳥は鳥と別れて 春になる 秋になる
私の心が湖ならば 必ずやさしい鳥が棲む
鳥よ 鳥よ 鳥たちよ
鳥よ 鳥よ 鳥の詩
すまん、誤爆した
どんな誤爆じゃww
元祖鳥の詩はガチ名曲。むろんLiaのも好きだがね
>>808 そりゃまたずいぶんと歴史のありそうな歌だなw
ぴったり埋めに挑戦してみる
「はい、たかあきさん。今日のお弁当です。」
「あ、ありがとう草壁さん。」
「もうっ。ゆ・う・き、ですっ。」
「え、えっと……優季。」
「はい。」
「……ええい、毎日俺の目の前でいちゃいちゃしやがって……それは俺に対する嫌がらせか。」
目の前のカップルのゲロ甘ぶりに辟易した様子で、赤毛の少年……向坂雄二は嫌味を口にした。
「いやぁ……そんなつもりは無いんだけどさ。」
ははは、と苦笑いで幼馴染の少年……河野貴明は返した。
「今まで離れ離れでしたから……ついついたかあきさんに甘えてしまって……すいません。」
そう言って黒髪の美少女……草壁優季も恥ずかしそうに詫びた。
「雄二、男のひがみはみっともないわよ。」
「そうだね。ユウ君かっこ悪いよ。」
お弁当に舌鼓を打ちつつ姉妹以上に姉妹のような阿吽の呼吸で向坂環と柚原このみが雄二に突っ込みを入れた。
「うるせぇ。大体な、昔の女の子の知り合いなら俺にだって居るんだ。
ほら、前に貴明に話した事あっただろ。白いワンピースの女の子。」
その瞬間、貴明の顔がわずかに引きつった。
そして、環の顔が必死に何かを堪えるようにわずかにゆがんだ。
天然ボケのこのみと事情を知らない優季は雄二の話に感心したような表情をしていた。
「いつかまた会えるといいですね。」
「おう。ありがとう。でもあの頃もかわいいなと思った位だから、今頃は結構美人になってるかもな。」
そう言って昔を懐かしむそぶりを見せる雄二を見ていた環は、何事か思いついたようににやり、と笑った。
「ねぇ雄二、そんなにその子に会いたいの?」
「あん? 姉貴、あの子と知り合いだったのか?」
食いついてきた雄二に手ごたえを感じている環の目の前で、貴明はいやいやするように首を振っていた。
「まあね……そういえば、明日は雄二の誕生日だったわね。誕生日のプレゼントにあわせてあげるわ。」
「なにっ! あ、姉貴…いや、環おねぇさまっ!」
「よしよし、タマおねぇちゃんに任せなさい。」
雄二が去った後で、のこりの面子で作戦会議が開かれた。
「た、タマ姉、どうするのさ。あれは昔女装させられた俺のことを雄二が女の子だって勘違いしてるんだって。」
「だから、またタカ坊が女装すればいいじゃない。大丈夫、メイクもすればばれないわ。」
「いや、そう言う問題じゃ。」
「そうですか、向坂君は女装した貴明さんに恋していたんですね……ちょっとジェラシーです。」
「ジェラシーとかそう言う問題じゃないから。」
「というわけで、雄二の初恋の思い出のために協力しなさい、タカ坊。」
「協力してあげてください貴明さん。」
「い〜や〜だ〜」
「もうっ、しょうがありませんね。向坂先輩、貴明さんを抑えて置いてください。」
「はい了解。よっと……それで、どうするの?」
「これですっ。」
優季は自分の髪を1本引き抜いて、小銭入れから取り出した5円玉を結わえると貴明の目の前にぶら下げた。
「そっ、それはっ!」
「うふふ、笹森さんに教えてもらっちゃいました。は〜い、あなたはだんだん眠くな〜る……」
◇
夕焼けの公園に、その女の子は立っていた。
あの時と同じ、白い帽子と白いワンピースの女の子が。
「あ、あのっ。」
雄二が声をかけると、うつむいていた女の子は顔を上げた。
目が若干空ろだったが、それは違わずあの時の美少女だった。
「おっ、俺っ……昔、君とこの公園で会ってからずっと君の事す…」
そのとき、一陣の風が吹いて少女のワンピースの裾が翻った。
そして、その下の純白のパンティと、その真ん中の、いわゆる「もっこり」が雄二の網膜に焼きついた。
そして…
夕方の公園に声にならない絶叫が響き渡った。
うわ
ちょっと足んなかったか
おちゅ。
ちょっと説明がくどすぎる感じがするね。
読むときに詰まってテンポが悪くなっちゃう。私だけかもしれないけど。
乙。埋まりきったかな?
やりました!今度こそ私が
>>1000鶴です!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
A_A
'´ M ヽ.
! ノ从 リ)〉
/\/\|lゝ ´ヮノ!
/ /\ \介 l ヽ ヽ
())ノ___ へミ⊂ |ノ ヽ ヽ
/ /||(二二)- \_ ノ―几~ ~
Y ⌒ /|V||彡Vミニニ〈〈二二ノl0リ
>>999 l| (◎).|l |((||((゚ )|| (⌒ )|三・) || (´⌒(´ ∩;:;;:;.
__ ゝ__ノ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ゝ__ノ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡ .⊂⌒~⊃, ITI 、>⊃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄(´⌒(´⌒;;  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'''' ' ;:∨ ̄∨::' '' ̄
私は美女! 私は会長! 私は最萌!
I am a beauty! I am the chairwoman! I am the maximum 萌!
>>2女へ どうやら人気と胸の大きさは関係ないようね。
>>3女へ あなたは私の味方よね?
>>4女へ リゾット作ったんだけど食べる?
>>51さんへ あなたを殺します。
>>144さんへ 梓を貰って下さいますね?
響
>>5さんへ 家にいると言った覚えはありませんよ。
>>87川さんへ よくも耕一さんを・・・絶対許しません、悪いのはみんな貴方です。
由
>>35さんへ 鬼の事を調べてるんですか? 何が起きても知りませんよ?