最近になって、このスレを発見
読んでみると面白いw
スレの職人さんが充電中のようなので、別のパターンでつなぎネタをいれます。
適当なつなぎを入れるつもりが、かなりの長編に…
職人さんの話はクラナドがメインの展開のようなので、AIRの方にしました。
設定は渚アフターの春原が渚の卒業式に参加したとき〜出産前の正月に遊びに来たときの間の夏です。
基本はクラナドやAIRの設定どおりにしているつもりですが、うろ覚えで書いたので間違っているかもしれません。
このスレの趣旨が春原と観鈴ちんが仲良く遊ぶということの都合から、オリジナル設定を加えています。
あと、関西弁に馴染みのない生活をしていますので、
晴子さんのセリフで手をいれたところの関西弁が間違っていたりしたら、すみません。
あくまでつなぎネタですので、不評だったり、続きを書く暇がなければそのまま終わります。
春原アフター?
第一話 〜出会いの交差〜
…風を切ってゆく。
…幾層もの雲を抜けてゆく。
どこまでも、どこまでも高みへ。
胸の動悸が早い。
体はもう、崩れ落ちそうで…でも全身の力を振り絞って…
その場所を目指していた…
………
……
…
7月17日(月)
僕は地面に降り立つ。
もわっとした熱気とバスの残した排気に包まれる。
立ちくらみを覚え、目を閉じる。
遠ざかってゆくバスのエンジンの音が聞こえなくなると、入れ替わりセミの大群の声が押し寄せてきた。
息を吸うと、潮の匂いが鼻をつく。
陽光は何にも遮られることなく首筋を焼き続けていた。
僕はゆっくりと目を開ける。
広がるのは、見知らぬ土地の夏の光景。
ただ、それは故郷の田舎に負けないほどの…
【春原】 「……すげぇ、ど田舎…」
【春原】 「はぁ……」
ため息をつき、歩き出す気力も失い、木陰に座り込む。
日差しは避けられたが、風は全く吹いていないので、気休め程度にしかならない。
【春原】 「僕、なんでこんなとこにいるんだっけ…」
まだ眠気の残る頭で、振り返りたくもない過去を思い返す。
学生時代は恵まれたとは思えないが、それでも気の置けない親友や楽しい仲間達が居て、それなりに満足な生活だった。
ケチのつき始めは、少しでも将来を真っ当に生きたいと思い、地元に戻り、
けっして大きくはないが、それなりに平凡な会社に就職するなどという、
それまでの自分や親友が見れば、腹を抱えて笑えるような行動を起こしたところからだろう。
そう、自分みたいな人間にまともな会社勤めなど、つとまるはずもなかったのだ…
顔を見るだけでも胃が痛くなるような上司、全くそりの合わない同僚や他社の人間との付き合い、興味のわかない仕事。
なんとかしばらくは耐えていたが、
病弱という悲運が重なって留年が続いていた友人の卒業を祝う、身内だけのささやかな卒業式という、
久しぶりに心から楽しめるイベントから戻った僕を待っていたのは、
無理に休暇をとったことによる (日帰りなのでたった一日だけだったのだが)、
上司や同僚達からのイヤミと嫌がらせだった。
それだけならば、まだ愛想笑いを浮かべて我慢も出来たが、
あの連中の皮肉は僕の心の大事な所、学生時代のたった一人の親友や友人達に対する暴言にまで及んだ。
【春原】 「ぶちきれたの、間違いじゃないよな………岡崎…」
頭に血が上り、目の前に居た連中を殴り倒し、啖呵を切って仕事を辞めたのは、自分にとっては自然の流れだった。
だが、僕が住んでいたのは田舎、あっという間に悪い噂も広まり、両親や妹と顔をあわすのも苦痛になり、逃げ出したのだ。
【春原】 「はぁ……」
再びため息をつく。
バスに乗る前に自販機で買ったペットボトルのお茶を飲む。
【春原】 「ぬりぃ……」
暑さですっかり温くなっていた。
故郷を飛び出して真っ先に向かったのは、もちろん学生時代を過ごした街だった。
懐かしい風景を楽しみながら街を散策していると、学生時代の親友を偶然にも見かけた。
前に友人の卒業式に来たときにはバタバタとしていて、ろくに話もできなかったので、
つもり積もった愚痴を聞いてもらいたくて、勢い込んで話かけようとしたら、もの凄い怒鳴り声が聞えた。
【芳野】 「岡崎っ! ここの仕事、間違えてるぞ! お前、一年以上も何をやってきたんだ!!」
【岡崎】 「すいません!」
久しぶりに見た親友…岡崎は、上司に怒鳴られてあわてて駆けていった。
上司の姿は、芳野さん……
以前、岡崎から芳野さんの勤めている会社に就職して、芳野さんに仕事を教わっているということは聞いていた。
楽しそうだな、というのがその時の感想だったのだが、
こうして直に見てみれば、どれだけ自分が楽観的な想像をしていたかが良くわかった。
なんとなく声をかけづらくなり、そのまま電車に乗って、その街も去ってしまった。
後は、あちらこちらを風の向くままふらふらとしていた。
金だけは、就職してからも寮住まいの上、ろくに使う暇すらなかったので、それなりに溜まっていたから困らなかったのだが、
さすがに長いこと旅をしているとあっという間に減っていった。
【春原】 「はぁ……」
三度目のため息をつく。
【春原】 「バイトでもするかな…」
【春原】 「つっても、こんなへんぴな町にバイト先なんかあるのかな」
金はまだ少しはあるが、となりの町に行く気にもならない。
しばらくぼーっとしていると、この町の小学生らしい子供たちが道を通りすぎていこうとしていた。
【春原】 「ねぇ、君たち」
満面の笑顔で語りかける。
【春原】「この町にさ、頭も体も使わない楽な内容で、それなりに給料も良くて、可愛い女の子がいるようなバイト先ってないかな?」
【子供たち】 「…………」
すこしの間、変な物を見るような目で僕を見た後、
【男の子】 「ラフレシアの成長記録、なんてどうだろう」
【女の子】 「…せめて朝顔にしといたら」
何も見なかったように歩き出した。
【春原】 「まてぇや! ガキども!」
学生時代、数多の不良をも怯えさせた目つきでガキどもを睨みつける。
【男の子】 「さっきから、こいつ一人でなに言ってるんだ?」
【女の子】 「ともや、見ないほうがいいわよっ!」
すたすたすた。
クソガキ (ともや?) が目の前まで近づいてくる。
【ともや】 「えい!」
思いっきり僕の睨みつけている両目を指で突いてきた。
【春原】 「ぐ…ぐわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!!」
痛みで地面を転げまわる。
【ともや】 「さっ、いこうぜ、きょう」
【きょう】 「へんなのにかかわらないの!」
【ともや】 「へいへい」
【ともや】 「へんなあたま、ばいばいぶー」
さらに僕の染めている髪を馬鹿にして、偶然にも?聞きなじんだ名前のガキどもは走り去っていった。
なんなんだ、ああいう名前の奴らは、みんなあんな性格なのか!?
【春原】 「うぅ、ちくしょう。ガキどもめ覚えてろよ」
ようやく視力も戻り、寝転んだまま悪態をつく。
gj!
やはり、葉鍵板の職人は最高だ。そうだよな、SSってこういうもんだよな。
春原、俺と一緒にハロワ行こうぜ。
GJ!
レミオロメンのスーパーアリーナ日記の次に面白いよ。
っていうか長谷部より最高。
いいよいいよ。いい流れだ
343 :
335:2008/05/27(火) 21:03:47 ID:tJvvWYJL0
すまん…
これ観鈴ちんとの出会う日のラストまで書けてたんだが、
>>339のレスを入れたところで、トラブル発生!
なんとかネットにつなげられるようになったものの、
諸事情でテキストデータがふっとびました…
3人だけでも好評価をもらえたみたいだから、
なんとか思い出しながら書き直しますね…
344 :
名無しさんだよもん:2008/05/27(火) 21:06:38 ID:dJ+18HcV0
キタ-
スマソ
起き上がる気力すら湧かず、空を見上げた。
視線のその先には、空が広がっていた。
視界全て、澄んだ青空。
かすかに風が吹き始めた。
………
こうしているだけで、嫌な気分も和らいでくる。
すると、ついさっきバスに揺られて見ていた夢の続きを見ているような気がした。
そう、あれは確かに夢だった。
とても不思議な夢だった気がする…
どこまでも、どこまでも高みへ。
僕はその場所を目指していた。
その先に何が待つのか。
それを確かめるために、起き上がろうと体に力を入れた。
その時、陽光が揺らいだ。
一羽の鳥がひるがえり、空を目指していた。
その先はもう、まぶしくて見えない。
今、目を閉じたなら、連れていってくれるだろうか。
この翼のない肉体を地上に残して。
僕は目を閉じてみた。
………
……
…
【春原】 「はぁ…」
あの後、今晩の宿を探しながら商店街を通り抜け、とうとう海岸の方まで来てしまった。
既に日はどっぷりと暮れていて、虫たちの合唱がはじまっている。
ここに来るまでに宿はいくつかあったのだが、住み込みのバイトが出来ないかと交渉したところ、ことごとく断られてしまった。
一応、金はまだ残っているので、宿に泊まろうと思えば泊まれるのだが…
残り少ない預金残高の通帳と、手持ちの僅かな現金を改めて確認してみる。
…ぶっちゃけ、宿代にまわすくらいなら、少しでも食費の方にまわして残りの金を長持ちさせたい。
となると、野宿という事になるのだが、ここに来るまでに、それに適した場所は見当たらなかった。
【春原】 「はぁ…」
何度目かのため息をつきながら、ふと下を向くと空き缶が投げ捨てられてあった。
【春原】 「どうせなら小銭が落ちてろよ…、ちくしょーーーーっ!」
渾身の力を込めて、空き缶を蹴り飛ばす。
カーン!
こぎみいい音がして、缶は高く高く放物線を描き飛んでいった。
【春原】 「やりいっ! 天才ストライカーは健在だね!」
少しだけ気が晴れる。
スカーン!
「ぐあっ」
【春原】 「へっ?」
缶が飛んでいった堤防の方を見ると、誰もいないと思っていた暗闇の中で人影が動いていた。
どうやら誰かが堤防の上で寝ていて、僕の蹴った缶が当たったようだ。
【春原】 「げっ、やべぇ」
慌てて建物の陰に身を隠す。トラブルは御免だ。
しばらく見ていると、人影はゆっくりと起き上がり、周りを見まわした後、ふらふらと危ない足取りで商店街の方へと歩いていった
。
【春原】 「酔っ払いかな…」
疲れきった体で再び歩き出す。
さすがに限界が近い。早く寝床を探さなくては…
………
……
…
7月18日(火)
………
…目覚めはまぶしい。
そして、ひどく生臭かった。
【声】 「あんた、いきなり倒れとったで、びっくりしたわ…」
覗き込む顔のひとつがそう言った。
………
寝ぼけた頭で昨日のことを思い出す。
疲労と空腹でこれ以上歩けなくなったところで、倉庫が見えてそこに入り込んで…
…そのまま眠ってしまったみたいだ。
……
しかし…魚の臭いがすごい。
【声】 「ここの組合の人間で、かついでここまで運んできたんだが…大変だったで」
組合…
漁協組合か?
辺りは白いスチロールが山のように積まれている。
この魚の臭いといい、たぶん間違いないだろう。
【おばさん】 「気分はどうや」
【春原】 「最悪です」
【おばさん】 「だいじょうぶかい?」
おばさんは心配そうに言う。
【春原】 「とりあえずは…」
空腹と臭い以外は問題ない。
【春原】 「…すんません、なんか飯もらえますか」
【おばさん】 「そうか。食欲あるんやったら安心やな」
人の良さそうなおばさんは、ほっとした様子でそう言った。
それから僕は組合の人たちに囲まれたまま、作りたての朝食を頂いた。
【おばさん】 「お兄さん、もうお出かけかい」
食事を終えて、真夏日の陽光を浴びようと外に出たところで、背中から呼ぶ声がした。
【おばさん】 「お弁当作るから、お昼の分も持っていきなさい」
【春原】 「…マジっすか、いただきます」
【おばさん】 「じゃ、おにぎりだけ包むから」
【春原】 「…できればパンがいいんすけど、サンドイッチとか」
【おばさん】 「すまないけど、すぐにできるのはおにぎりぐらいだねぇ」
【春原】 「じゃあ、それでおねがいします」
【春原】 「あ、それとアイスコーヒー、もらえますか」
朝食後のアイスコーヒー、これだけは譲れない。
【おばさん】 「麦茶くらいしかないねぇ」
………喉の渇きには勝てず、妥協した。
【春原】「じゃあ、助かりました」
【おばさん】「気をつけてな」
【春原】「ちーす」
包みを受け取り、その場を後にした。
【春原】「さて…」
昼までの食料は確保しできたし。
後は、野宿できそうな場所を確保した後、商店街の方にバイトでも探しに行くか…
今日も陽射しは強い。暑くなりそうだ。
三時間後…
僕は堤防の上に座り込み、おむすびの包みを広げていた。
【春原】 「やってらんね…」
疲労と空腹に比例して、やる気がなくなる。
しかもこの暑さ、疲れ方も倍増だ。
堤防の上は、海から吹き込んでくる風が強く、涼しい場所だった。
汗が乾いてゆくのがわかる。
見晴らしも良かったから、昼飯を食べるには絶好の場所だった。
僕はおむすびを包みから取り出す。
重いと思っていたら、ボーリングの玉のように馬鹿でかいおむすびだった。
…おばちゃん、これでかすぎじゃないっすか。
……
もぐもぐ…
海を前にあぐらをかいて、馬鹿でかいおむすびを頬張る。
まるで観光客のようだな…
【声】 「うーん…」
横から声がして振り向くと、すぐ隣に立ち、一身に風を受ける少女がいた。
【春原】 「………」
それはあたかも、空を飛んでいるような。
僕は息を呑んで、見入っていた。
でも、それも一瞬だ。
彼女の足元を見た。
僕の座る堤防のコンクリートの上に、彼女は確かに立っていた。
だから、僕の興味はそのまま彼女の綺麗な両足に移った。
【少女】 「うんっ…」
【少女】 「はっ…」
長い伸びを終えた少女は、僕の方に向き直るとニコッと笑った。
僕は、足を見ていたことに気づかれないように、慌てて彼女の顔を見て笑い返した。
【少女】 「こんにちはっ」
【少女】 「でっかいおむすびですねっ」
【少女】 「飲み物なくて、大丈夫ですかっ」
話しかけられているようだ。
これって…逆ナン?
…ひょっとして、僕、もててますか!?
【少女】 「買ってきますねー」
とっ、と堤防から飛び降りると、目の前を通り過ぎてとてとてと駆けていった。
制服を着ているから、そこの学校の学生なのかな…
昼休みに抜け出してきたのだろうか?
自販機で紙パックのジュースを買った後、再び駆けてくる。
その途中で、思いっきりこけた。
ジュースが、それぞれ別の方向へと転がっていった。
涙目になりながら立ち上がり、ぱたぱた走り回ってジュースを回収すると、ようやく僕のところまで戻ってくる。
【少女】 「はい」
精一杯の笑顔で何事もなかったように、僕にその一本を差し出した。
ジュースを渡してくる彼女の手を見てみると、さっき転んだときに擦りむいたのだろうか、擦り傷ができていた。
こんなになってまで、僕のためにジュースを…
【春原】 「僕、感激っす!」
【少女】 「? …にはは」
【春原】 「手、怪我してるみたいだけど大丈夫?」
【少女】 「だいじょうぶですよ」
そう言って、僕の隣に腰掛けた。
え! これってマジで逆ナン!?
やべぇ…ドキドキしてきた!
動揺しているのをごまかすために、貰ったジュースの容器に、附いていたストローを挿しこみ、慌てて喉に流し込む。
ずずずずっ。
どろっ…
【春原】 「ぶはぁっ!」
20年近く生きてきて、一度たりとも味わったことのない異様な感覚に、僕はジュース?を吹き出した。
【春原】 「なんなんすか、これ!?」
ジュースのラベルを見ると、
『どろり濃厚、ピーチ味』
【春原】 「………」
これはなんなんだ……嫌がらせ…じゃないよな…
試練かなにかか?
これを全て飲みほすと、恋人になれるとか…
彼女の飲んでいるパックを見ると、同じデザインだ。
【少女】 「♪〜」
ご機嫌でジュースを飲んでいる。
嫌がらせではなく、本気で薦めているのだ。
………ふっ…飲んでやらぁ!
決心して、勢いよくジュースを飲みだす。
ドクドクドク…
濃厚な液体が喉を通る音が聞こえてくる。
ごくごくごく…なんていう爽快な音とは、ほど遠い。
その音が聞こえるだけで、胸焼けがしそうだった。
右手におむすび、左手にジュースを持ち、交互に片付けていく。
もぐもぐ…ドクドク……もぐもぐ……ドクドク……
………
【春原】 「ぷはぁ〜、ごちそうさま!」
完食成功!
僕の脳内で、ファンファーレの効果音が派手に鳴り響く。
【少女】 「うわっ! すごい! あんなにおっきなおにぎりが、あっという間に…」
彼女は本気で驚いているようだ。
【春原】 「いゃあ〜、それほどでもないっすよ!」
なんとなく気分がよくなる。
【少女】 「わたし、ゴミ片付けてきますね」
そういって彼女は僕の飲み終わったジュースの空箱を受け取って、自販機の方まで走っていった。
ゴミ箱に捨てた後、こっちに走って戻ってくる。
今度は、こけなかった。
【少女】 「ただいまー」
【春原】 「…おかえりー」
彼女は戻ってきた後、再び堤防の上に立ち、海を見ながら風を受けている。
僕も彼女に倣って、座ったまま風にふかれながら海を眺める。
しばらくそうしていると、彼女は突然、僕の方を向き、
【少女】 「私とお友達になりませんか!」
僕にそう言った。
え…えぇぇーーーーっ!
逆ナン確定!?
かみさま、ありがとー
僕、生きててよかったっす。
【春原】 「よろこんで! 僕の方こそお友達にならせてください! いや、もう恋人になりましょう!
むしろ、恋人でお願いします」
堤防の上で、彼女に向かって土下座する。
【少女】 「…が、がお、…………恋人?」
【春原】 「はい」
戸惑う彼女に、真顔で返事をする。
【少女】 「………………お友達からはじめましょう」
玉砕!?
…いや、最初はお友達から、ということだ。
ドンマイ陽平、まだまだ脈ありだぞ!
【春原】 「ぜんぜんかまわないっすよ!」
【少女】 「にはは、よかった!」
彼女は満面の笑顔でそう言った。
うわぁ、かわいーっす。
【少女】 「わたし、神尾観鈴っていいます」
【春原】 「ぼくは春原陽平。春の原っぱ、陽射しに平和で、春原陽平っす!」
【観鈴】 「にはは。優しそうな名前ですね」
【春原】 「僕、めちゃめちゃ優しいっすよ!」
というか、そんなこと言われたの、生まれて初めてな気がします。
【観鈴】 「わたしのことは『観鈴』って呼んでくださいね」
いきなり呼び捨てオーケー!?
【春原】 「僕のことも陽平とお呼びください!」
【観鈴】 「にはは、…観鈴アーンド陽平さん」
ぐはぁっ。
僕、いま最高に幸せです!
【少女】 「それじゃあ、これからそこの浜辺で遊びませんか?」
【春原】 「はまべ?」
海で泳ぐ観鈴ちゃんが頭に浮かぶ。当然、水着姿に変換済みだ。
うおぉおぉぉーーー! 興奮してきたー!
【春原】 「ぜひ、遊びましょーっ!」
勢いよく立ち上がる。
【春原】 「あっ、でも僕、水着もってないや…」
【春原】 「まあいいか、この暑さだし、すぐに乾くよね」
そう言って、浜辺に向かおうとしたところで、
【観鈴】 「あの、陽平さん。わたしも水着、用意してないよ」
どっしゃぁぁーーー!
堤防の上で前のめりにこける。
【観鈴】 「うわっ、陽平さん、だいじょうぶ?」
【春原】 「う、うん。全然だいじょうぶだけどね…」
起き上がり、観鈴ちゃんに訊ねる。
【春原】 「水着もないのに、浜辺でどうやって遊ぶつもりだったの?」
【観鈴】 「かけっこしたり、水のかけあいしたりしたいなって」
浜辺でかけっこ……水のかけあい………
それって………、恋人じゃないっすか!
【観鈴】 「そして、最後に」
【観鈴】 「また明日、ってお別れするんです」
毎日デート!?
【春原】 「最高の毎日ですね!」
【観鈴】 「うん、毎日楽しい」
僕の人生にやっと春がきましたよ…
おもわず目頭が熱くなる。
【観鈴】 「でも、陽平さんは、海で泳ぎたいの?」
うーん、今すぐ浜辺でかけっこも捨てがたいけど、やっぱり水着も見てみたい…
【春原】 「観鈴ちゃんちは、ここから遠いの?」
【観鈴】 「ううん、そんなことない。あっちの坂を登っていく途中にあるの」
そう言って海とは反対側の山の方を指差す。
【春原】 「それじゃあ、今から水着とってきませんか」
【観鈴】 「うん。別にいいけど、それなら陽平さんも水着とってくれば?」
【春原】 「あぁ、…僕はこの町の人間じゃないからさ」
【観鈴】 「うん? それじゃあ、今はどこかに泊まっているの?」
…宿無しとは言いずらい。
【春原】 「いや、まだ特には決めてないんだよね」
【観鈴】 「ふーん。…それなら、わたしのうちに泊まりませんか?」
………………
僕、耳が悪くなったんすかね…
【春原】 「いま、なんて…」
【観鈴】 「ん? 陽平さんが、観鈴ちんのうちにお泊りするの」
………
……
マジっすか!!!??
…え!? お泊り?
お泊りって、あのお泊りですよね…
なんか、幸せの連続とあまりの急展開に、頭がついていけてないんですけど…
……
いや、まて、陽平。
これは、さんざん喜ばせておいて、オチがある展開かもしれないぞ。
【春原】 「確認したいんすけど、観鈴ちゃんちって旅館かなにか?」
【観鈴】 「ううん、普通の家だよ」
【春原】 「おとうさんが頭にヤのつく仕事とかしてたりしませんよね…」
【観鈴】 「うち、お母さんとわたしの二人暮らし」
いやっほぅーー!
【春原】 「ぜひ、お泊まらさせてください!」
【観鈴】 「にはは、じゃあ、きまりだね」
なんて言うんだっけ、こういうの。
『ウリボウが鍋しょってやって来た』だっけ?
すっげー、ラッキー。
【観鈴】 「じゃあ、これから家にいきますか?」
【春原】 「そうっすね」
【観鈴】 「あ、でも、陽平さんもうちにくるんなら、観鈴ちん、うちで遊びたいものがあるんだけど…」
【春原】 「うーん、いいんじゃない」
観鈴ちゃんちに泊まれるんなら、水着姿を見る機会なんか、これからいくらでもあるしね。
それどころか、いっしょにお風呂に入ったりできるかも!
【観鈴】 「にはは、よかった。じゃあ、行きましょうか」
【春原】 「レッツゴー!」
僕がそう言うと、観鈴ちゃんも笑顔で続けて言った。
【観鈴】 「レッツゴー!」
うわー
やっぱかわいいっすねー、この娘。
一緒に並んで歩き出す。
……手、握ったらまずいかな…
第一話 (7月17日〜18日)
前半部分終了です。
なるべく早く、後半部分も書き直します。
久々に癒された
やっぱりこの二人いいなぁ
超乙
ここ以外じゃ全く見ない組み合わせだけど
もう俺の中じゃゴールデンカップルだ
和んだー
二人とも大好きだ
早く続き見たいけど、焦らず頑張ってください
春原「死ねよ。和也」
和也「黙れ!!殴るぞ!!!」
藤巻「最高っス。やっぱり、レディオヘッドは最高だぜ」
和也「・・・」
此処は春原陽平の通う高校の寮だ。
其処で今日も晩餐会が繰り広げられていた。
春原「亮太、そろそろ帰れよ」
時計を見るともう深夜1時。
藤巻「そうだな。帰ろうか。和也君」
和也「俺はもうすぐ残るよ」
藤巻「そう・・・」
和也「うん」
藤巻亮太は僕の親友だ。
彼は人気だったロックバンド、「レミオロメン」を
脱退し、そんなこんなでここら一体に住みついている。
伸びてると思ったら別の職人様がきてる!続きが気になるぜ・・・
最高だ。色々と癒される。
待ち続けてよかった。ホント癒されるわ
僕のSSを期待して待っててくれる人が居るみたいだけど
僕は書けない。
僕は葉鍵板のコテハン、ミルフィーユだ。
367 :
335:2008/05/30(金) 11:03:01 ID:mzlqTxRL0
以下、後半です。
堤防からいくつか道を曲がり、やがてゆるやかな坂へとさしかかる。
途中までは堤防までの道のりと同じだったから見覚えがあったが、
一度でも逆方向に曲がってしまえば、もうそこがどこだかわからなくなってしまう。
【観鈴】 「よっと」
坂道の途中で観鈴ちゃんが、いきなり駆け足で走り出す。
少し先まで行ったところで、観鈴ちゃんは止まった。
【観鈴】 「こっち、こっちー」
観鈴ちゃんが僕を振り返って、大きく手を振っていた。
僕も観鈴ちゃんのいるところまで走っていく。
【観鈴】 「ここ」
そう言って正面の家を指さした。
僕は表札を見てみる。
『神尾』
観鈴ちゃんの苗字が書かれていた。
【春原】 「へーっ、ここが観鈴ちゃんが住んでる家かー」
門の前から家を眺める。
【観鈴】 「うん。お母さんと、わたしの家」
【春原】 「…今、お母さんは家に居るんすか?」
【観鈴】 「ううん、今はいないよ。仕事に行ってる」
少しだけほっとした。
【観鈴】 「じゃあ、中にはいろう」
【春原】 「はいろう、はいろう」
門をくぐり玄関へと入る。
【観鈴】 「ただいま〜」
【春原】 「おじゃましまーす」
玄関から上がり、廊下を歩くと、すぐに居間に出た。
畳敷きの、風通しのいい部屋だった。
【観鈴】 「陽平さん、なにか飲みたいものあるかなー」
【春原】 「あっ、じゃあ、アイスコーヒー、お願いします」
【観鈴】 「うん、わかった」
【観鈴】 「くつろいでてねー」
観鈴ちゃんは、そう言うと台所へと入っていった。
部屋を見回すと、隅に扇風機が置いてあったのでスイッチを入れる。
ふぃーーーん…
心地よい風が流れ出す。
そのまま畳の上に大の字になって寝転んだ。
【春原】 「おちつくなー」
こうしていると、なんとなく故郷の家を思い出す。
芽衣たちは今頃どうしているだろうか…
【観鈴】 「おまたせー」
観鈴ちゃんがお盆に飲み物と菓子をのせて持ってきた。
【春原】 「まってました!」
僕は勢いよく起き上がり、
【春原】 「いただきまーす」
観鈴ちゃんの淹れてくれたコーヒーを飲む。
【春原】 「ぷはー、生き返った」
缶ではないコーヒーを飲むのも久しぶりだった。
【観鈴】 「にはは。いただきます」
観鈴ちゃんも僕が飲むのを見てから、ジュースを飲み始める。
堤防で飲んだドロリなんとかではなく、普通のオレンジジュースのようだ。
【観鈴】 「一息ついたら、遊ぼうね」
【春原】 「いいけど、なにして遊ぶの?」
【観鈴】 「わたし、トランプして遊びたいな!」
すごく楽しみにしていたように、笑顔で言ってくる。
【春原】 「…トランプ? ずいぶんとシンプルな遊びっすね…… テレビゲームとかはないの?」
【観鈴】 「…うん。お小遣いじゃ買えないし、お母さんにおねだりするのも気がひけるしね…」
【観鈴】 「それに……そういうのあると、もっと一人で遊ぶことに慣れそうで、嫌なの」
観鈴ちゃんは、悲しそうに俯いて言った。
【春原】 「? 暇が潰せていいと思うけど。それに友達を呼んでやればいいんじゃないの?」
【観鈴】 「う、うん。…そうだね」
すごく寂しそうな表情で、今にも泣き出しそうだ。
やばっ、僕、なんか地雷踏んじゃいましたか?
【春原】 「あ、あはは。いやー、やっぱり遊ぶならトランプだよね。もう、なんていうか遊びの王様みたいな」
【観鈴】 「うん。トランプ最高」
再び観鈴ちゃんに笑顔がもどる。
ふーっ、あぶねー。
【観鈴】 「じゃあ、部屋からトランプ取って来るね」
そういって観鈴ちゃんは居間を出ていった。
…さっきの僕のセリフ、何がまずかったんだろう…
神尾家ではテレビゲームは禁句なのかな?
……
…
【観鈴】 「わーい、また私の勝ちー」
【春原】 「うおぉぉぉーーっ! また負けたーっ!」
あれから神経衰弱をすること10戦目。勝率は2勝8敗だ…
【春原】 「み、観鈴ちゃん、強いっすね」
【観鈴】 「にはは、そうかなー」
【春原】 「僕も、トランプは学生時代によく親友とやってたけど、ほとんど勝ってたんですけどね…」
実際のところは、岡崎にはいつも負けていた。
そのたびに変なバツゲームをやらされたものだ。
あいつ曰く 『おまえは、すぐ顔にでるからな』
僕、ポーカーフェイス下手なんすかね…
ふと外を見ると、いつの間にか綺麗な夕焼け空になっていた。
【春原】 「ねぇ、観鈴ちゃん…」
観鈴ちゃんに話しかけようと、彼女の方を向くと、
【観鈴】 「あれ……なんで? …わたし…癇癪……起きて………」
独り言を言っている。何か考え事をしているみたいだ。
【春原】 「観鈴ちゃん? …おーい、みすずちゃーん」
観鈴ちゃんに呼びかけるが、全く気づかない。
もう一度呼びかけようとしたところで、夕陽が居間に差し込み、観鈴ちゃんを照らす…
それは、どこかで…いつだったか……遠い日に見た光景で……
………
……
【観鈴】 「…のはらさん……春原さんっ!」
【春原】 「えっ! なに?」
【観鈴】 「だいじょうぶ? ずっと呼んでたんだけど、全然反応がないからびっくりした」
【春原】 「う、うん。だいじょうぶだよ」
いつの間にか、僕の方が呆けていたようだ。
【観鈴】 「わたし、そろそろ夕飯の準備するね」
……………
【春原】 「え? 観鈴ちゃんがつくるの?」
【観鈴】 「うん」
【春原】 「…お母さんは?」
【観鈴】 「お母さん、いつも帰ってくるのが遅いから。わたし、自分でつくって一人で食べてるの」
観鈴ちゃんは寂しそうに言う。
【春原】 「マジっすか…」
【観鈴】 「でも、おかげでお料理は得意。ぶいっ!」
笑顔でVサインをする。
【観鈴】 「だから、なんでも好きなもの言ってね」
…うーん。好きなものは焼き肉やカツなんだけど… ここはやっぱりアレでしょう。
【春原】 「肉じゃがでお願いします」
【観鈴】 「うーん、ちょっとまっててね」
観鈴ちゃんはそう言って台所へ入っていく。
材料を確認しているようだ。
【観鈴】 「うん。ばっちし」
【観鈴】 「じゃあ、つくるねー」
と、台所から聞えてくると、観鈴ちゃんがエプロンをつけながら顔だけ出して、
【観鈴】 「テレビでも見て、くつろいでてね」
と言って再び台所に戻った。
ふむ。
ちゃぶ台の上に、リモコンが乗っているのを見つけて操作する。
ピッ。
ざーーーーーー…
画面は砂嵐だった。
リモコンをいじってみるが、画像は映らない。
このてのやつの扱いには、故郷のテレビで慣れている。
立ち上がってテレビに近づくと、テレビの上に乗っているアンテナをいじってみる。
ぶぅん、と一度唸って、ブラウン管が映像を映し出した。
【春原】 「よし」
映ったのはニュース番組で、地方都市の医療問題をとりあげていた。
地方の医療で、さまざまな弊害がでていて問題になっている。
そんななかで、ある一つの町で大きな総合病院をつくろうとしているらしい。
映像がスタジオから、その町へと移った。
……テレビに映しだされたのは、僕が学生時代に住んでいた町だった。
岡崎達と馬鹿をやっていた商店街などが次々と映し出される。
そして病院をつくるべく工事を行っている現場が映った。
…そこは、僕も知っている場所だった……
……なんとなく、見たくなくなってテレビを消した。
テーブルのところまで戻り、腰を下ろしたところで、
【観鈴】 「わーっ!」
台所から観鈴ちゃんの悲鳴がした!
【観鈴】 「わわわわっ」
悲鳴は続く。
僕は急いで台所へと駆け込む。
【春原】 「どうしたの!?」
【観鈴】 「わっ、そっちいった!」
ミィーーーーーーンッ!
【春原】 「うおおぉおぉぉぉっ!」
僕の顔面にむかって、なにかが高速で突っ込んでくる。
ぱしっ。
………
【観鈴】 「わ、すごい…掴んだ」
間一髪、僕が目の前で掴んだ物体を確認する…
【春原】 「なんだ、セミか…」
僕は手を放す。
ミィーーーーーーーーンッッ!!
【観鈴】 「わわわーっ! 放さないでっ!」
ぱしっ。
【観鈴】 「わ、また掴んだ…」
【春原】 「これ…どうすればいいの?」
【観鈴】 「外っ。はいはいっ」
………
背中を押されるがまま、僕は台所から居間を通り庭へ出る。
【観鈴】 「はい、放してー」
ミィーーーーーン…
セミはどこぞへと飛び去っていった。
【観鈴】 「ふぅ…」
【春原】 「だいじょうぶ?」
【観鈴】 「うん。換気扇から、たまに入ってくるの」
あー、故郷の家でもそういうのあったな…
【観鈴】 「でも、すごく器用。飛んでるセミを掴めるなんて」
観鈴ちゃんはびっくりしている。
【春原】 「まあ、それほどでもないけどね」
悪くない気分だ。
まあ、実際、ほとんど音速のような速さで飛んでくる辞典に比べれば、セミのスピードなんて、たいしたことはない。
【観鈴】 「なんか便利でいいな〜」
【春原】 「またなんか出てきたら、まかせてよ」
反射神経には自信がある。
【観鈴】 「ほんとっ?」
【観鈴】 「にははーっ」
観鈴ちゃんは喜んでいる、ポイントアッブか!?
【観鈴】 「さ、蚊に刺されるよ。中に戻ろ」
再び背中を押され、家の中へ。
居間に腰をおろしたところで、台所から歌が聞えてきた…
【観鈴】 「ごきごき〜っ♪」
…嫌な歌だった。
台所からは、観鈴ちゃんの歌う、ごきごきの歌が聞こえ続けている。
その歌で集まってきたりはしないだろうか。心配だった。
……
…
【観鈴】 「陽平さーん、できたよー」
台所から観鈴ちゃんが呼ぶ声がした。
台所に入っていくと、美味そうな肉じゃががテーブルに載っていた。
【春原】 「うまそー!」
僕は流し台の反対側の椅子に座る。
観鈴ちゃんもエプロンを外して僕の正面に座った。
【春原】 「では…」
【二人】 『いただきまーす』
肉じゃがは見た目以上に美味かった。
【春原】 「うっめー!」
【観鈴】 「にはは、よかった」
観鈴ちゃんは笑う。
かわいいなー
しかし、こんな可愛い子の自宅で、手料理を食べられる日がこようとは…どうか夢なら覚めないでください。
…そういや、岡崎の奴は、渚ちゃんに毎日こんな事してもらってたのか。
あのやろう、なんて幸せ生活していやがるんだ…
………
そんな事を考えている間に、料理はあっという間に食べ終わった。
【春原】 「ごちそーさまー」
【観鈴】 「ごちそうさま」
【春原】 「むちゃくちゃ美味しかったっすよ」
【観鈴】 「うん、いい出来だった」
【観鈴】 「じゃあ、わたしお片付けするから、居間で休んでてねー」
そう言うと、観鈴ちゃんは再びエプロンをつけて流し台で作業を始めた。
お言葉に甘えて居間に戻る。
満腹感に満たされて、畳の上に横になる。
開け放してある窓の外から入ってくる夜風が心地よい。
目をつぶってると、眠くなってきた…
………
【観鈴】 「陽平さん、お茶飲む?」
【観鈴】 「あれ、寝ちゃった?」
【観鈴】 「毛布、毛布」
………
……
…
【男】 「おい、起きろ」
………
どごおっ!
【春原】 「ぐはあっ!?」
寝ているところに、いきなり衝撃が襲ってきた。
【岡崎】 「さっさと起きて学校に行かないと、また智代に蹴り倒されるぞ」
【春原】 「…いや、いまあんた、僕のこと蹴りましたよね!?」
………
【春原】 「あれ? ここ、どこっすか?」
【岡崎】 「……春原……おまえ、…とうとう……」
岡崎が哀れみの目で僕を見てくる。
いや、ここがどこだかはよく分かっている。僕が学生時代を過ごした寮の部屋だ。
周りを見回してみる。
【春原】 「なあ、岡崎。観鈴ちゃんはどこ?」
…岡崎が僕の両肩に手をあててきた。
【岡崎】 「現実から逃避するな、春原。……おまえがそこまで寂しい思いをしていたとはな…」
【岡崎】 「俺も、渚と二人だけの時間を少しは減らして、これからはお前とも遊んでやるようにするからさ」
優しそうな笑顔でそう言った。
【春原】 「あんた、あいもかわらず失礼千万ですね」
【岡崎】 「はぁ… 早朝コントはこれぐらいにして、そろそろ学校にいかないと本当にまずいぞ」
【岡崎】 「俺もお前も、出席日数がもう限界だろ」
【春原】 「あ、あぁ…」
いわれて、学生服に着替える。
まだ頭は混乱しているが、長年繰り返してきた行動なので、呆然としながらも着替えは手早く終わった。
寮から出て、学校への道を岡崎と二人で歩いていく。
【春原】 「なぁ、なんかさ…不思議な夢をみたんだよ」
【岡崎】 「ふーん」
【春原】 「僕に可愛い女の子の友達が出来てさ」
【岡崎】 「へーっ」
【春原】 「彼女の家に招待されて手料理を食べるんだ」
【岡崎】 「ほーう」
【春原】 「ずいぶんと、おざなりな返事っすね…」
【岡崎】 「春原。あらかじめ言っておくが、渚が俺のためにつくってくれた弁当はやらんぞ」
【春原】 「あんた僕の話、聞いてましたか!?」
その時、かすかに低い唸りが聞こえてきた。何かのエンジン音のような…
音は背後から徐々にこちらへ近づいてくる。
振り返ると、藤林杏がスクーターに乗って、満面の笑顔で、こっちへ一直線に突っ込んでくる。
【春原】 「お、おい。あれ、やばくないか」
隣にいる岡崎に話しかける。
………
【春原】 「なぁ、逃げた方がいいよな」
……
再び話しかけるが、またもや返事が無い。
…隣を見ると、既に誰もいなかった。
【春原】 「置き去りですか!?」
そんなことをしている間にも、杏はどんどんこちらへと近づいてくる。
【杏】 「あっはははー、ようへーい、まちなさーい」
杏は悪魔のような笑顔をしている。
【春原】 「ひいぃぃぃっ!」
逃げ出そうとするが、なぜか足が地面に張り付いているかのように、全く動かない。
杏は、そのままスピードを落とさずに僕に突っ込んできて…
どーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!
【春原】 「うわぁぁぁぁーーっ!」
跳ね起きる。
…体はなんともない。周りを見回すと神尾家の居間だった。
動悸がすごく早く、汗を全身にかいている。
観鈴ちゃんが横に座って、心配そうに僕を見ている。
【観鈴】 「陽平さん、だいじょうぶ?」
【春原】 「う、うん」
【観鈴】 「ものすごいうなされてた」
【春原】 「あ、あぁ。スクーターに衝突される夢をみたよ。すごく怖かった」
本当に怖かった。なによりも杏の笑顔が、とにかく怖かった。
【観鈴】 「安心して。バイクが衝突したのは納屋で、衝突させたのはお母さんだから」
………
【春原】 「それって交通事故じゃないんすか!?」
【観鈴】 「またお酒飲んでるなぁ、これは…」
【春原】 「それは飲酒運転ですよねぇ!」
【観鈴】 「ま、よくあることだし」
よくあるんすか…
この娘、以外に大物かもしれない。
【観鈴】 「起こしてごめんね。寝てていいよ」
【観鈴】 「お母さんには、わたしから話しておくから」
観鈴ちゃんは立ち上がって、そう言った。
【春原】 「え…、でもさすがに、まずいんじゃないの」
【観鈴】 「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
ぱたぱたと観鈴ちゃんは部屋を出ていった。
出迎えに行ったのだろう。
僕は毛布にくるまり直す。観鈴ちゃんを信じよう。
がらりと玄関が開く音。
【観鈴】 「おかえりなさい」
観鈴ちゃんの声。
【観鈴】 「あのね、今、友達来てるの」
【観鈴】 「帰る家ないから、泊めてあげて」
どたどた…
【観鈴の母】 「却下」
み、みすずちゃん…
【観鈴】 「わ、待って、お母さんっ」
【観鈴の母】 「問答無用や。こんな若い男、泊められるわけあらへん」
【観鈴】 「が、がお…」
ぽかっ。
【観鈴の母】 「その口癖治しぃって、いくら言うたらわかるんや!」
むちゃくちゃ怖いお母さんですね。
【観鈴】 「だ、だって…」
【観鈴】 「このひと…寝るところないんだよ」
はい、ないっす。
【観鈴】 「それに、いいひとだと思うんだよ」
うん、僕いいひと。
【観鈴】 「セミとか…掴んで外に逃がしてくれたし…」
まかせてください。
【観鈴】 「ごきごき出ても、そうしてくれるって…」
かんべんしてください。
………
母親は僕を睨みつける。
【観鈴の母】 「…あんた。観鈴とはどんな関係や」
ふるふるふる、と観鈴ちゃんが母親の背中で首を振っている。
正直に言うな、ということなのだろうか…
さっさっさ…
手で文字を書いている。
こ…ん…や…く…し…ゃ
【春原】 「婚約者です」
そのまま声に出して読んだ。
【観鈴】 「うわ、ちがう、ちがうよ。クラスメイト。…にはは」
間違えて読んでしまったようだ。
母親は観鈴ちゃんを睨んでから、再び僕の方を向く。
【観鈴の母】 「クラスメイト? にしては、歳食っとるんやないか?」
さっさっさ…
また観鈴ちゃんが手で文字を書いている。
け…っ…こ…ん…?
【春原】 「お嬢さんを僕にください!」
【観鈴の母】 「やるかっ!」
観鈴ちゃんが両手を畳につけて、へこんでいる。
また読み間違えたみたいだ…
【観鈴の母】 「ま、肝は座っとるようやな。そのへんは嫌いやないわ」
そんなこと言われたの初めてです。
【観鈴の母】 「この期に及んで、言い訳したり、取り乱したりする奴なんかよりはな」
めまぐるしい展開に、ついていけてないだけです。
【観鈴】 「そうそう。わたしもそう思う。お母さん、惚れちゃうよね」
どうせなら観鈴ちゃんが惚れてくれれば嬉しいです。
【観鈴の母】 「惚れるかっ!」
【観鈴】 「わ…ツバ飛んだ」
【観鈴の母】 「まったく… あんた、商店街で噂になっとった行き倒れと違うやろな」
噂になってるんすか!?
【観鈴】 「行き倒れ?」
【観鈴の母】 「ああ。なんや朝っぱらに商店街のはずれで行き倒れとんのを発見されて、霧島先生のところへ運び込まれたんやと」
【観鈴の母】 「なんでも、黒い服を着ている、背が高く、目つきの悪い、二十歳ぐらいの男、という話らしいけど…」
【観鈴の母】 「…あんたは違うようやな」
【春原】 「それ、僕じゃありません」
行き倒れには身に覚えがありますが、それは別人です。
【観鈴】 「あ、その人、堤防の上で寝ていた人かも」
【観鈴の母】 「堤防?」
【観鈴】 「うん。昨日、堤防の上に見かけたことのない人が寝ていたの」
【観鈴】 「一緒に遊んでくれないかなと思って、浜辺で子供たちが遊んでいるのを見ながら、ずっと待ってたんだけど」
【観鈴】 「子供たちが帰って、夜になっても起きそうになかったから、わたしもあきらめたの。容姿はそんな感じだったよ」
…それって、僕が蹴った缶が当たった人かも。
【観鈴の母】 「ふーん。まあ、その話はええわ」
【観鈴の母】 「それで、こいつ、名前なんて言うんや」
僕ではなく、観鈴ちゃんに訊いた。
【観鈴】 「ようへいさん。春原陽平さん」
【観鈴の母】 「春原さん」
母親が僕へと向き直る。
【観鈴の母】 「…わかった。泊めたる」
【観鈴】 「やった」
ラッキー
【観鈴の母】 「納屋にな」
………
【観鈴】 「わ、納屋…」
【観鈴の母】 「ついでに戸が壊れてるから、直したってや、春原さん」
僕はとっさに反論しようとしたが、口から自然と出た言葉は、
【春原】 「仰せのままに」
【観鈴】 「うわっ、腰が低い」
【春原】 「いや、なんかこの人、逆らえないオーラが出てるんですけど…」
杏や智代が怒っているときに放っているものと同種のものだ。
【観鈴】 「で、でも…そんな素直になることないよっ」
【観鈴】 「お母さん、酔ってるんだし…」
【観鈴の母】 「酔うてなくても同じこと言うで、うちは」
【観鈴】 「言わないよぅ」
【観鈴の母】 「とりあえず出てゆき。この家の敷居を跨がせる承諾はしてへん」
この話はここまで、という意志が、はっきりと伝わってくる。
【観鈴】 「ご飯は…?」
【観鈴】 「ご飯ぐらい、一緒に食卓でいいよね?」
【観鈴の母】 「…観鈴、あんたが運んだればええやろ」
きっつー…
反論する気すら起きず、立ち上がって毛布を持ち、納屋へと向かう。
【観鈴】 「あ、いっちゃう…」
……
…
こんこん。
【観鈴】 「わたし、観鈴ー」
戸が開いて、月明かりが差し込む。
【観鈴】 「入るよ」
【春原】 「どうぞー」
納屋の中は、ふたり入れば窮屈な狭さだった。
【観鈴】 「寝られる?」
【春原】 「まあ、屋根もあるしね。大丈夫だよ」
【観鈴】 「お母さん、酒癖悪いんだよ」
【観鈴】 「飲まなかったら、いいひとなんだけど… ごめんね」
観鈴ちゃんは悲しそうに言う。
【春原】 「僕だったら気にしてないよ。野宿だって平気だからね」
慌ててフォローを入れた。
【春原】 「それにしても、すごいお母さんだったね」
【観鈴】 「うん…嘘つくのすごく恐かった」
【春原】 「いや、僕がいくら童顔だからって、クラスメイトは無理があるでしょ」
【観鈴】 「そんなことないと思う。お母さん、適当なだけ」
ため息交じりに観鈴ちゃんが言う。
【春原】 「でも、観鈴ちゃんのことは大事に思っているんじゃないかな」
【観鈴】 「そうかなぁ」
【春原】 「お母さんのこと、嫌いなの?」
【観鈴】 「そんなことないよ。しゃべり方とか大好き」
【春原】 「あの口調だけでも怖いっすよね」
【観鈴】 「うん。考え方もしゃべり方と一緒ですごく強引なの」
【観鈴】 「軟弱なひととか、大嫌い」
【春原】 「は、ははは……」
【観鈴】 「でも、陽平さんなら大丈夫…だよね?」
【春原】 「うん、僕むちゃくちゃ硬派だからね」
【観鈴】 「にはは、よかった」
笑ってから観鈴ちゃんは、軽くあくびをする。
【春原】 「もうそろそろ、寝た方がいいんじゃない?」
【観鈴】 「うん。じゃあ、わたし寝るね」
【観鈴】 「おやすみ」
【春原】 「おやすみー」
ぎぃ、と納屋の戸が閉まる。
そして、しんとなった。
ようやく、寝入ることができる。
僕は足を伸ばして姿勢を楽にする。
…しかし、せわしい一日だったな
心身共に疲れきっている。
目を閉じれば、すぐにも眠れそうだった。
………
……
寝る前にバタバタと騒ぎすぎたせいで、喉がすごく乾いている。
…どうしようかな。
……
結局、水を飲みに台所へと向かう。
えーと、こっちだったよな。
暗闇をそろりそろりと忍び足で歩いていく。
台所へと着いたが…電気はつけないほうがいいかな。
そのまま、流し台へと向かう。
ふと、冷蔵庫が視界の片隅に入った。
………
ジュースかなんかないかな…
方向転換し冷蔵庫へと向かう。
ガチャッ
冷蔵庫を開けると、期待通りジュースが入っていた。
口の開いているパック入りのジュースを、そのまま一口飲む。
【春原】 「美味い」
パチッ
その瞬間、電気がついた。
【観鈴の母】 「なにしとんのや」
背後で声がした。
【春原】 「ひいっ」
【観鈴の母】 「電気もつけんとこそこそと、なにをやっとんのや」
【春原】 「い、いや。喉が渇いちゃって…。電気は二人を起こさないようにと思いまして」
【観鈴の母】 「ほーう。それは感心な心がけやなー」
全然そんなことを思っていないというのが伝わってくる。
【観鈴の母】 「まあ、ええわ。それよりも喉を潤すんなら、もっといい物があるで」
そういって観鈴ちゃんのお母さんは、後ろに持っていた一升瓶を僕に見せた。
……
…
台所のテーブルで向かい合わせに、僕と観鈴ちゃんのお母さんは座っている。
彼女は、さきほどからけっこうなペースで酒を飲んでいる。
僕はおあずけをくらって、ただ座らされているだけだ。
観鈴ちゃんの母親なんだから、悪い人ではないとは思うのだが…正直気まずい。
【観鈴の母】 「うちは晴子いうねん」
【晴子】 「年甲斐もないような呼ばれかたされたら嫌やからな。名前で呼びや」
殺気を込めて言ってくる。
【春原】 「はい。晴子さん」
【晴子】 「よし」
満足そうに頷くと、飲み干したコップに酒を注ぎながら、
【晴子】 「で、あんた…家出か」
そう訊ねてきた。
……僕の状況はどうなんだろうか。一応、家出になるんだろうか…
【春原】 「違うと思います」
とりあえず、そう答えておく。
【晴子】 「違うんかいな。せやけど理由もなしに、宿無しにはならんで」
一応、金はまだ残ってるんですけどね。
そんな事を言ったら叩き出されるだろうから、黙っておく。
【春原】 「旅をしてるんすよ、あちこち」
【晴子】 「…やっぱ、あの子のクラスメイトやないんやな」
やべぇっ!
【春原】 「…授業の一環なんですよ」
【晴子】 「んな授業があるか!」
ごもっとも
【晴子】 「なんや、夢でも追いかけとるんか?」
【春原】 「……そうかもしれません」
【晴子】 「若いんやな」
【春原】 「はあ」
【晴子】 「で、なんのために旅しとるんや?」
……今までの事を思い出し、おもいっきり愚痴を吐こうかとも思ったが、ろくに知らない相手に言うことでもないのでやめておく。
【晴子】 「なんや、言いたないんか」
【春原】 「運命の人を探しています」
適当にはぐらかしておく。
【晴子】 「…あんた、ギャグの才能ないわ」
存在自体がギャグだとは言われたことがあるんすけどね。
【晴子】 「徒歩で旅しとるんか」
【春原】 「いえ、バスで来ましたけど」
【晴子】 「ほな、バスがあったら、乗りたなるんやな」
【春原】 「そりゃあ、そうっすよ」
【晴子】 「けど、金がないんやな…」
いや、バス代ぐらいはありますけど。
【晴子】 「で、あんた、職業はなんなんや?」
【春原】 「………えーと……」
【晴子】 「無職か」
【春原】 「はい」
呆れられたようだ…。
【晴子】 「……あんたが納屋に行ってから、あの子に聞いたんやけどな」
【晴子】 「昼間、あの子と遊んでくれたんやってな」
【春原】 「え、ええ」
僕が返事をすると、晴子さんはいきなり真剣な顔つきになった。
【晴子】 「…あの子、癇癪おこさんかったか?」
【春原】 「かんしゃく?」
【晴子】 「そうや。遊んでたら、それまで機嫌良かったんが、突然泣き出したり、暴れて手がつけられんようになったりとか」
【春原】 「いや、そんなこと全然なかったっすよ」
………
晴子さんは、何か考え事をしているようだ。
そして僕を見て、
【晴子】 「ほなとりあえずは、しばらく宿が必要になるんやな」
と、いきなり話題を変えてきた。
【春原】 「そうっすね。必要です」
【晴子】 「…ちゃんと家のルールを守るんやったら、構わへんけど」
【春原】 「マジっすか」
【晴子】 「ああ。ええよ」
【晴子】 「男手がないしな、この家は」
【晴子】 「それに、あんたのことは観鈴も信用しとるみたいや」
【晴子】 「ま、あの子のは単なる物好きやから、あんまあてにはならんけど…」
僕、物好きに好かれる奴ってことですか。
【晴子】 「今は、信用しといたるわ」
【晴子】 「あんた、馬鹿っぽいけど、性根の悪いやつには見えへんからな」
【晴子】 「うち、こう見えても、ひとを見る目はあるつもりや」
それって、僕が馬鹿なことに自信があるってことですよね。
【晴子】 「その代わり、見ての通り仕事が夜型で、あの子の面倒、あんまり見れへんのや」
【晴子】 「もうすぐ夏休みやろ。特に心配な時期や」
【晴子】 「あの子、そそっかしいし、鉄砲玉のようなとこあるからな」
【晴子】 「なんか面白そうなもん見つけたら、ぴゅーって飛んでいくねん」
【晴子】 「あんた、頼まれてくれるか」
【春原】 「なにをですか?」
【晴子】 「あの子のそばにいてくれるだけでええ」
【春原】 「え…、それだけでいいんですか?」
観鈴ちゃんと遊んでいるだけで、三食付の宿を確保できるんなら願ったりだ。
【晴子】 「ああ、後はアホなことしそうになったら、頭ひっぱたくだけでええから」
それは、つっこみをいれればいいと解釈していいのだろうか…
【春原】 「まかせてください」
【晴子】 「そうか。助かるわ」
【晴子】 「後な、あの子が口癖を言うたときも注意してもらえへんかな」
【春原】 「くちぐせ?」
【晴子】 「がお…って言うやろ、たまに」
【春原】 「がお?」
【晴子】 「困ったときとか、泣きそうなときにや」
そう言われると、何度か聞いたことがあるような気もする。
【晴子】 「恐竜の鳴き声の真似なんや」
【晴子】 「あの子、恐竜が好きでな…」
【晴子】 「小さいとき、うちがあの子、夜店に連れてったんやけど…」
【晴子】 「そういうところでよう売っとるやろ、ひよこ」
子供の頃、故郷の祭りに行った時の事を思い出す。
【春原】 「ああ、ありますね。カラーひよこですよね」
【晴子】 「それや。こっちの祭りでは、色は塗られてなかったんやけどな」
【晴子】 「それであの子な、なんでかひよこを恐竜の子供や、思い込んでたねん」
【晴子】 「そんでごっつほしがってなー、買って買って言うんや」
【晴子】 「でも、そんときうち、ごっつ貧乏でな」
【晴子】 「せやから、買われへんかったんや」
晴子さんは、その時の事を悔やんでるように言う。
【晴子】 「それ以来な、何かにつけて、がおーっ、て言う癖がついたんや」
【晴子】 「この歳になっても、治ってへん」
【晴子】 「今でも子供や、あの子は」
………
【春原】 「でも、それでよかったかもしれませんよ」
【晴子】 「うん?」
【春原】 「ああいう祭りで売られているひよこって、買っても、ほとんどのひよこは、すぐに死んじゃいますからね」
【春原】 「そんなことになったら、観鈴ちゃんなんか、別のトラウマを抱えていたかもしれませんよ」
【晴子】 「…そうやな。そうかもしれん」
【春原】 「それに、仮に育ったとしても鶏になっちゃいますしね」
【晴子】 「そしたら、口癖は 『こけこっこー』 になっとったかもな」
晴子さんは楽しそうに笑う。
【晴子】 「なんや、あんたうちを慰めてくれとるんか」
【晴子】 「…見かけによらず、優しいんやな」
見かけによらずは余計です。
【晴子】 「さて…」
話がひと段落つくと、晴子さんが僕の前にコップを置いた。
【晴子】 「飲もか」
タダ酒を断る理由もない。
【春原】 「いただきます」
そして、晴子さんとの騒々しい酒宴がはじまった。
二人とも床についたのは深夜をまわってからだった。
………
……
…
……これは、夢なのだろうか。
僕は霧の中を進んでいる。
これは、朝もやだ…
霧で今が何時なのかすら分からないが、そう確信する。
僕は霧の中を迷うことなく、一歩一歩地面を踏みしめながら歩いていく。
やがて、大きな建物の前に着いた。
それは時代劇に出てきそうな屋敷だった。
屋敷の門を開け、くぐる。
門と玄関の間は庭になっていた。
その庭の真ん中に男が立っている。
僕は、その男の傍へと近づいていった。
男の顔は…岡崎だった。
だが、服装は着物を着ている。…こいつ、着物似合わねーなぁ。
僕と岡崎は何も語らずに、そのまま玄関から建物の中へと入っていく。
………
……
…
視界がいきなり変わった。
そこは、天井も壁も石で出来た部屋だった。
隣にいた岡崎が僕に話しかけてくる。
【岡崎】 「……ほんとうにやるのかよ」
【岡崎】 「これは奇跡でも祝福でもない、呪いなんだぞ」
【岡崎】 「お前が彼女のために、そこまでする理由なんてないだろう!」
岡崎は泣きそうな顔をしている。
なんなんだよ。お前にそんな顔は似合わねーよ。
僕は岡崎に言う。
【春原】 「理由なんて充分すぎるほどあるよ…」
……
…
再び視界がぶれる。
場所はさっきと同じ部屋のようだ…
しかし、周りの音がうまく聞えない。頭の中をノイズがはしっているみたいだ。
おそらく岡崎の声だと思うものが聞える。
これで、お前は彼女のそばに……………かかって………呪い……………………出来る。
………、翼人が…………………………………。ずっと傍に……………、……長くは……………。
そして癇癪の方だが、…………翼人から彼女のもとへ……………記憶、………悪夢………………、
お前がそばに……………………、その翼人の……………、…………………………出来る。…………………………。
………効果…………………、……無いだろう。
だが、その代償として、翼人が…………………終わらせ…………、……………転生を………………………。
そしてその間、………………………望んだとき、………打ち砕かれる…………。
仮に………………………………………、………お前の………零れ落ちていく。
……、……、……、…………………………。
………
……
…
さらに視界が変わる。
今度は、一面の焼け野原だ。遠く山の方まで広がっている空は、鮮やかな夕焼け。
僕から少し離れたところに、一人の女性が僕と同じ先を見て立っている。
彼女が僕の方へ振り向く。
彼女は面影がどこか観鈴ちゃんに似ていて…
だけど、その顔は泣きはらしていて…
【女】 「裏切り者!」
夢はそこで覚めた。
外は既に白んでいる。
頭痛がひどい。
【春原】 「……ひどい目覚めだな…」
第一話 出会いの交差 終
以下、ちょっと長めのあとがきっぽいものです。
素人の長文SSを読んで下さってありがとうございます。
…さて、AIRの舞台で本来の設定を生かしたまま、このスレの目的でもある春原と観鈴ちんの楽しい日々をやろうとすると、
どうしても次の設定がネックになります。
※AIRは、人により様々な解釈がありますが、この点に関しては2chまとめスレを参考にしました。
翼人が星の記憶を次代へと移す際に、強制的に受け継いでしまう過去の翼人が行った (行わさせられた) 罪業による、
心を寄せてくるものを衰弱させてしまう呪い。
高野山の僧たちにより空へと封じられた神奈が見続けている悪夢が、
転生する人間にも影響を与えることにより引き起こされてしまう癇癪。
翼人が人間へと転生するにあたって、翼人と人間の種族間の記憶の容量の差異による、転生側の人間の肉体及び精神の崩壊。
これらをどうにかするために、強引かつ矛盾が出来るのを覚悟で、
春原には対抗手段と、翼人に関する情報を持たせることにしました。
そして、相応のリスクもです。それらが、ラストで伏字になっているあたりのものです。
ちなみに、過去岡崎自身は法術なんか全く使えません。過去春原もです。
法術自体はもちろん関わっていますが、それらは他の方法で行ったものです。
他に理由としては、DREAM編終盤で往人が一度観鈴の元を去り、再び戻ってくる行動や、
AIR編での晴子が観鈴の症状に事情が分からず振り回されるところなどが、
春原が居たとしても同じ行動をとってしまいそうなので、二人との立ち位置を変えるためのものでもあります。
ただ、止むを得なくこういう設定をもうけましたが、こういった濃いオリジナル設定はSSとしては賛否両論あるとおもいます。
と、ここまで書いたところで、春原と観鈴ちんを遊ばせて癒すスレで、そこまで書くべきかどうか悩んでいます。
つーか、場違いのような気もしてきた。
だいたい、後半は観鈴たちにも過酷なストーリーですし…
一応、この話、結末まで一通りは構想済みです。
以下、予定? (いつ書けるかも分からないので未定?) を書きますが、
『このスレでやるべきじゃねーだろ』
『そもそもこんな糞長いものスレでやるな』
『春原はともかく、観鈴ちんの苦しむシーンなんか書くんじゃない』
と思われる方々はレスしてください。
書く余裕があったとしても中止しますので。
1.春原と観鈴出会い編(終了)
2.春原と観鈴はサポート役になり往人が解決する佳乃&美凪編
3.往人合流後の春原&観鈴&往人と町の住人たちのアホアホコント中心編
4.原作のようなシリアス中心のDREAM終盤編
5.時代劇だよ全員集合〜AIR&CLANNAD〜編
※これは、春原の過去の回想シーンにあったものです。なんかシリアス展開してましたが、
どちらかというと、冒頭の 「ともや&きょう」 みたいな感じで、全てのキャラを当時の登場人物に無理矢理あてはめて行う
アホアホコント大演劇の方がメインで、ところどころにシリアスが入る感じです。
ただ、現時点で登場している過去春原、過去岡崎の二人は、現代と同一人物という設定です。
時は戦国自体、メインの舞台は堺とその周辺の地方、第一話ラストの過去シーンの焼け野原も史実で有名な戦場です。
ちなみに春原は商人の見習い丁稚、岡崎は新入り下っ端武士という設定です (二人とも変わるかも)。
神奈の転生体は、観鈴とほとんど同じ性格になります。アッキー大活躍の予定です。
※これ、元々は大江戸編になるはずで、
町娘お杏が咆哮し、謎の義賊智代が暴れ、韋駄天風子&みちるが暴走し、だんご茶屋の渚と有紀寧が和み、
暇々火消し団の佳乃りんがポテト&椋&ことみを引きつれ、呉服問屋の美凪が話をしめて、
町奉行アッキーは町を練り歩き悪党成敗。他のキャラ達も大活躍する、そんな話になる予定でした。
AIR編は春原も観鈴ちんも登場しませんので、当然カットです。
6.二種類に分かれていて、
・春原&観鈴&往人&晴子生き残りのオリジナル大団円編
・春原&晴子生き残り、往人&観鈴転生の原作展開編
どっちになるかは未定
7.舞台はAIRからCLANNADへ春原エピローグ編
8.CLANNAD舞台の後日談編
これで終了です。
………書けるわけねーw
このまま終わりになってしまうかもしれませんので、伏字の内容&過去編のワンシーンだけでもネタバレしときます。
これで、お前は彼女のそばにいることでかかってしまう呪いを軽減することが出来る。
ただし、翼人が積み重ねてきたものが相手だ。ずっと傍に居続けると、そう長くは持たないぞ。
そして癇癪の方だが、空に居る翼人から彼女のもとへと断片的な記憶、つまり悪夢が来たときに、
お前がそばにいることによって、その翼人の激しい感情、想念を和らげることが出来る。ようするに緩衝材だな。
これは効果が薄れることは、まず無いだろう。
だが、その代償として、翼人が人間へと転生を終わらせない限り、お前もまた転生を繰り返すことになる。
そしてその間、お前が何かを心から望んだとき、それは打ち砕かれる事になる。
仮に一時は手に入れることが出来ても、いずれお前の手から零れ落ちていく。
親友、恋人、仕事、他にも様々なものをだ。
夕暮れの血臭漂う戦場で俺は呆然とする。
【岡崎】 「うおぉぉおぉぉぉぉぉーーーーっ!!」
俺はひざまずき、横たわっている春原の亡骸を抱き上げ、泣き叫ぶ。
【岡崎】 「なんで……こんな…ことに………」
………
【岡崎】 「……春原、お前を一人でいかせはしない」
【岡崎】 「俺達は生まれ変わっても親友だ…」
……
【風子】 「風子参上っ!」
【風子】 「……わっ! なんかとんでもないところに出てきてしまいました!」
以上、あとがきっぽいものでしたー。
GOD JOB!!
個人的には続きを読みたい。
ただ、何らかの抗議入ったら中止するって
>>391の冒頭で言ってるけど、
そういう場合は別スレに移って続行してくれるのかな?
その点が気になる。
おおおおおー!
すげー!
乙です!!
自分ももっと読みたいけど、春原も観鈴ちんも大好きだから、
二人が苦しんだり泣いたりするのを見るのは正直悲しい…な
でも二人が一緒にいる二次なんてそうそう見れないし、もっと見たい、複雑な心境。
アホアホコント系は大歓迎!
長くなっても読みたいっす
好きなことを書いていいと思うよ、観鈴ちんと春原が絡んでくれるなら。
続き読みたい!
SS職人が来るまで過疎っててろくにレスもなかったんだから続けていいと思うよ
GJ!! すげーよ職人!!
久しぶりにのぞいてみたらすごい展開ですねぇ 個人的には大江戸編が早く読みたいっす!
全然OK
むしろお願いします
400 :
名無しさんだよもん:2008/06/01(日) 00:11:52 ID:wTR7YLYH0
可能性は無限大やでえ
ほす
401 :
名無しさんだよもん:2008/06/01(日) 02:15:10 ID:WQZYb5SyO
期待age
期待しています。
わくわく〜ごきごき〜♪
404 :
名無しさんだよもん:2008/06/04(水) 19:31:09 ID:wjMeGXXl0
保守
干す
406 :
名無しさんだよもん:2008/06/06(金) 19:49:46 ID:QqscY5Sm0
期待age
407 :
名無しさんだよもん:2008/06/09(月) 00:46:09 ID:NdRHHLsDO
期待age
わがまま言わせてもらうが、原作でアレだったから観鈴ちんを幸せにして終わらせてほしい。
いや、スルーしてくれ。すまんorz
期待age
sageになっとる…
寝るわ。おやすみ
誰だって観鈴ちんの幸せを願っているさ
>408-409 おはよう^^
俺も国崎と同じ無職仲間として、観鈴の幸せを願っているぜ。
国崎をバカにするな!
彼は立派に人形遣いとして日々生計を立てているんだよ!!
・・・あれ?
…ごく潰し…
春原と観鈴ちんは、それぞれの作品で一番好きなキャラだから
この組み合わせは合うなぁ
415 :
名無しさんだよもん:2008/06/11(水) 22:43:01 ID:KtySUpY50
期待age
>>410 おはよう(・ω・)/
日にちと時間は気にするなw
期待age
観鈴ちんはアオテナガフクロオオスノハラモドキを舌を噛まずに言えるだろうか?
アオテ・・ナガ・・フクロオオハルハラモ・・・・・
が、がお…。どうしてそんな事言わせるのかなぁ
観鈴ちんに早口言葉を言わせてからかう春原
直後、晴子の鉄拳が顔面にめり込む
保守
421 :
335:2008/06/19(木) 08:12:01 ID:pYiBgYAH0
久しぶりでーす、
>>335です。
>>394-
>>408 どうもありがとうございます。
>>408 このスレの趣旨がそういうものなので、なんとかそっち方向に持っていくつもりです。
まあ、因果とか運命とか便利な言葉もありますし。
ご都合主義ともいいますがw
久しぶりにスレを覗いたら、予想外に好評価をもらえていたので続きを書いてはいるんですが、
原作の展開とセリフを流用できた第01話とは違い、
こっから先はオリジナル展開になってしまうので、書くのに時間がかかってしまってます。
なんとか余裕のあるときにちまちまとは進めてはいるのですが、ほとんど進んでない…
おまけに話に矛盾が出来ないよう、話の主軸になる戦国編から書いてるので、
出来たとしても、まだまだ当分先になると思います。
とりあえず、全く別の話を適当な感じにつくってみました。
こっちの話は即興でつくったんでもうグダグダです。
暇のある方は読んでやってください。
ではー。
これは、光輝く勇者を探し出す者たちの光り輝くかどうかも判らない物語である。
朝ですよ、目覚めなさい、春原…
………
さっさと目覚めなさい、春原…
……
いい加減に起きろ、春原…
…
「さっさと起きんかい、ぼけぇ!」
ドゴッ
【春原】 「ぐおぉぉっ!?」
【晴子】 「いつまで寝取んのや、ど阿呆が」
【春原】 「み、みぞおちが…」
寝ていたところへ、腹に強烈な衝撃を受けて苦しむ春原。
【晴子】 「うわー、こわーっ、神様の天罰やー」
【春原】 「いや、犯人はあんたでしょーが!」
【晴子】 「つっこみいれる余裕があるんなら、さっさと起きる」
【春原】 「いや、そもそもなんであんたが僕を起こしてるんすか」
【晴子】 「うちがあんたの母親やからやろ」
【春原】 「…はぁ?」
【晴子】 「……」
寝ぼけた頭の中で晴子が言ったセリフを繰り返す。
【春原】 「なんで!?」
【晴子】 「んなもん、うちが聞きたいんじゃぼけぇ!」
【春原】 「ひいっ」
【晴子】 「なんや、キャラの帳尻と展開の都合とかで観鈴だけでなく、お前の親にまでされてしもうたんや」
【春原】 「むちゃくちゃっすね」
【晴子】 「そらこっちのセリフや!」
【春原】 「ひいっ、すいませんっ」
【春原】 「…つーか、他に優しそうな母親役の人が他にもいるでしょうに。僕としてもそっちの方がよかったんですけどね…」
【晴子】 「な・ん・で、お前なんぞにダメだしされなあかんねん!」
【春原】 「ごめんなさい、ごめんなさい」
【晴子】 「はぁ…とにかく、さっさと下に降りとき。話が進まへんやろ」
【春原】 「はい」
言われ、2階の自室から1階へと降りる。
【観鈴】 「陽平さん、おはよう」
【春原】 「観鈴ちゃん、おはよー」
台所のテーブルに座って、朝食を先に食べていた観鈴と挨拶を交わす。
【春原】 「……」
【春原】 「あのさ、ひょっとして僕達、兄妹っていう設定?」
【観鈴】 「にはは。陽平お兄ちゃんて呼び方のほうがいいかなー」
【春原】 「うおぉぉぉ!」
【晴子】 「朝からうるさいわ、ぼけ」
ドゴッ
【春原】 「ぐおっ」
【春原】 「…いや、嬉しさのあまり、つい興奮して…」
【晴子】 「ちなみに、観鈴はうちの姉の子供であずかっとるだけや」
【春原】 「僕は?」
【晴子】 「あんたは、昔うちが酔っ払って、どっかから拾ってきたみたいや」
【春原】 「ちょっとまてぇーっ!」
【晴子】 「なんやねん」
【春原】 「そんなとんでもないこと、軽く言わないでくれますか!」
【晴子】 「そういう設定になっとるんやから、しかたないやろが」
【晴子】 「ていうか、なんでうちがまた子持ちの役なんぞやらなあかんねん!」
【春原】 「そんなこと僕にキレないでください」
【晴子】 「ほら、ぐだぐだしょーもないこと言っとらんと」
【晴子】 「さっさと食うもん食って城でも町でも、どこでもいいからさっさと行き」
【春原】 「もう、本当にぐだぐだですね…」
……
…
朝食も食べ終わり、身支度を整えて家を出る二人。
【晴子】 「がんばるんやでー」
母親のやる気のない声援を背に受けて町の道を歩き出す。
【春原】 「えーと、それで僕らはどうすればいいのかな」
【観鈴】 「んー、私達お城に呼び出されてるらしいんだけど」
【観鈴】 「その前に、陽平さんの親友がもう一人仲間として加わるって話だったよ」
【春原】 「親友? 岡崎は最初から一緒なのか…。あいつなら、なにかとやりやすいな」
【男】 「おーい、待ったか?」
二人の後ろから男が声をかけてきた。
【春原】 「おせーぞ、岡崎…って、あんた誰っすか!?」
声をかけてきたのは筋肉ダルマだった。
【真人】 「誰が筋肉ダルマだ!?」
【春原】 「いや、ナレーションにつっこんでないでさ…」
【春原】 「親友キャラって、岡崎じゃなかったのかよ」
【真人】 「俺だって知るかよ。なんか俺の方がキャラがたってるとか言われて、こういう配役になったんだよ、わりぃかよ」
【春原】 「いや、別にかまわないんすけどね」
【観鈴】 「にはは、二人ともいいコンビ。とっても仲良し」
【春原&真人】 『えーー?』
【春原】 「…まぁ、いいや。さっさと城とやらに行こうか」
【真人】 「そうだな」
物語は始まったばかりなのに、二人揃って疲れた感じだ。
…
【春原】 「ここが、お城か」
【真人】 「無駄にでけぇな」
【観鈴】 「私は立派な建物だと思うな」
【真人】 「まあ、そう言われればそうだけどよ」
それぞれ感想を言いながら城門にいる門番へと話しかける。
【真人】 「おい、王様とかいう奴に会いにきてやったから、さっさと通せよ」
【春原】 「もう少し言い方を考えてください」
【真人】 「え? なんかおかしかったか?」
【観鈴】 「本日、王様に呼ばれた者ですが……」
馬鹿二人はおいといて門番と交渉する観鈴。
すっかりアホな子、返上です。
【春原】 「ちょっと。僕、今変なこと言ってませんよね」
【真人】 「おいまて、そのフォローだと俺だけが馬鹿みたいじゃねーかよ」
【春原】 「いや、あんた馬鹿だろ」
【真人】 「なんだとてめぇ」
【春原】 「ひいぃっ」
【観鈴】 「二人とも、早くいこうよー」
…
謁見の間へと通される三人。
【晴子】 「おそいわ、ぼけぇ! なにを、ちんたらしとんねん!」
【春原】 「ひいっ…っていうか、なんであんたがそんなとこにいるんすか!?」
玉座に座っていたのは、先ほど家で別れた晴子だった。
【観鈴】 「おかあさん、王様だったの?」
【晴子】 「配役たりんから、一人二役三役あたりまえやそうや」
【晴子】 「せやから、うちはあんたらの母親とは別人の晴子やから気にせんといてな」
【春原】 「まじっすか…」
【晴子】 「さて、今日あんたらにきてもらったんは、あんたらに勇者とかいう胡散臭い輩を探し出してほしいんや」
【真人】 「ひでぇ言われようだな、勇者」
【晴子】 「なーにが勇者や、血統と勇気だけで世の中渡っていけるほど甘くはないわ。うちそういうんは大嫌いや」
【春原】 「また見も蓋もないことを…」
【観鈴】 「勇気もってる人って凄いと思うけどな…」
【晴子】 「んなことよりも、さくさく話すすめるで。説明ナレーションよろしくー」
【春原】 「また手抜きを…」
遥かな昔、世界中を闇へ変えようとした魔王がいた。
魔王は強大な魔物の軍勢を率いて、世界中へ恐怖を振りまいた。
【真人】 「ベタベタな展開だな」
だが、闇あるところに光があるように、魔王を倒す勇者がどこからともなく出現した。
【春原】 「どこからともなくって適当な…」
勇者は仲間を引き連れ、魔物の軍勢に戦いを挑んだ。
そして激しい戦いのすえ、魔王との対決にまで持ち込んだ。
【観鈴】 「わっ、すごいね」
だが、勇者は魔王を倒すことは出来なかった。いや、正確には勝負を挑むことすらしなかった。
【真人】 「…は?」
なぜなら、魔王は人間の姿をした美少女で、こともあろうに勇者は魔王に一目ぼれしてしまったのだ。
【春原】 「うおぉい!」
もともとふざけた性格だった勇者は、仲間達をあっさりと裏切り魔王の側についてしまった。
【真人】 「なんじゃそりゃあ」
【春原】 「むちゃくちゃだ」
そして世界は闇に支配され、勇者と魔王はいつまでも仲良く暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
【観鈴】 「わー、よかったね」
【春原&真人】 『めでたくねぇ!』
【観鈴】 「が、がお。でも仲がいいことは良いと思うけど」
【春原】 「そういうふうに言われるとそうなんですけどね」
【真人】 「いや、なんか根本的なところから間違ってるだろ」
【晴子】 「んで、この昔話の勇者と魔王が最近復活したとかジジイが予言吐いたんや」
【真人】 「なんなんだよ、そのジジイは」
【晴子】 「賢者とか呼ばれていい気になっとるジジイや」
【春原】 「いや、それ凄い人なんじゃ…」
【真人】 「で、なんで勇者を探し出すんだよ」
【晴子】 「ジジイがそうしろっつーからや。うちがしるか」
【真人】 「とことん投げやりだな…」
【観鈴】 「でも、その昔話が本当なら、世界は闇に支配されたのに、なんで今は平和なの?」
【晴子】 「知るか。そこらへんのこともあんたらが調べるんや」
【春原】 「はぁ…」
【晴子】 「んじゃ、そういうことやから頼んだでー」
【真人】 「ちょっとまて」
【晴子】 「なんや」
【真人】 「こういう時は、支度金とか装備とか道具とかくれるもんじゃねーのか?」
【春原】 「おお、それだ!」
【晴子】 「なんやおまえら、王様にたかろうっていうんか」
【春原】 「たかるって…」
【晴子】 「まあ、ええ。そこまで言うんなら支度金ぐらいやるわ。ほら受け取り」
ピーン。
晴子はポケットから取り出したコインを指ではじいて三人の方に放る。
チャリーン。
三人の前に転がってきたのは1枚の100Gコインだった。
【春原】 「……」
【真人】 「って、これだけかよ!?」
【春原】 「この世界の1Gっていくらなのかな…」
1Gが日本円で1円です。
【真人】 「たった100円かよ!」
【春原】 「これでどうしろと…」
【晴子】 「んなもんしるか。言われたとおり支度金はくれてやったで。さっさと行かんかい!」
城をたたき出される三人。
【春原たちは100Gを手に入れた】
【春原】 「いや、100円だけっすよね、そんな宝物手に入れたみたいなナレーション入れないでくれませんか」
【真人】 「これで何が買えるっていうんだよ」
【観鈴】 「意外と、強力な武器が叩き売りされてるかもしれないよ」
【春原】 「それ、どんなセールですか」
そんな会話をしながら、大通りに面した武器屋へと入っていく。
【晴子】 「いらっしゃーい」
どぐぁっしゃーーーーっ
盛大にこける春原と真人。
【真人】 「またてめぇかよ!」
【晴子】 「なんや、ずいぶんいきなりなあいさつやな」
【春原】 「えーと、母親役と王様役とは違うんすよね…」
【晴子】 「そや、うちはこの町の武器屋の看板娘、晴子や」
【春原&真人】 『看板娘ぇ!?』
【晴子】 「なんか文句あるんか?」
殺気を放ちながら、売り物の剣を二人に突きつける晴子。
【春原&真人】 『ありません』
【観鈴】 「にはは。看板娘さん、武器をくださいな」
【晴子】 「観鈴は、えー子やなぁ。あんたらも見習いとき」
【春原】 「えーと、看板娘?さん、なんかいい武器ありますか?」
【真人】 「看板娘?のおすすめとかあるのかよ」
【晴子】 「なんや、ひっかかるイントネーションやな…まあ、ええわ」
【晴子】 「あんたら、いくらもっとんねん」
【春原&真人&観鈴】 「………」
春原はテーブルの上にコインを1枚置く。
【晴子】 「……」
笑顔のまま固まる晴子。
【晴子】 「はっはっは」
【春原】 「あ、あはは…」
【晴子】 「そうか、うちをからかって楽しもうというわけか…あんたらがそんなに早死にしたいとはなぁ」
【春原】 「ひいぃっっっ」
【真人】 「冗談抜きにそんだけしかねぇんだよ。つーか、城でてめぇがそんだけしかくれなかったんだろうが」
【晴子】 「うちはそいつとは別人や」
【晴子】 「…まあ、ええ。100Gで買える武器はこれだけや」
ぽんと何かを真人に向かって放り投げる。
【真人】 「うおっと」
慌てて受け取る真人。
手にしたのは…… 〔うなぎパイ (個別包装)〕 だった。
【真人】 「うおぉぉぉぉーーっ、またこれかぁーっ!?」
頭を抱えて泣き叫ぶ真人。
【春原】 「そんなもんで、どうしろっていうのさ…」
【観鈴】 「おいしそうな武器だね」
【春原】 「いや、重要なのは攻撃力だから」
【晴子】 「一応、武器として使えるらしいで」
【春原】 「まじっすか」
【晴子】 「どのみち、100Gじゃそれしか売れんわ」
【観鈴】 「とりあえず装備してみたらどうかな」
【春原】 「真人、装備してみてよ」
【真人】 「あ、ああ」
【真人は 〔うなぎパイ (個別包装)〕 を装備した、攻撃力が0.1上がった】
【春原】 「小数点!?」
【真人】 「つ、つかえねぇー」
【晴子】 「ちなみに、一度装備したもんは返品不可やから」
【春原】 「はめられた!?」
【真人】 「まじかよ」
ちなみにこの世界、クーリングオフ制度はありません。
【晴子】 「買い取り価格は売値の半額やからな」
【春原&真人】 『………』
【晴子】 「まいど、おおきにー」
三人は武器屋を後にした。
…
【春原】 「つ、次はどこに行けばいいんすか」
【観鈴】 「んーと、情報を集めるには酒場に行くといいらしいよ」
【真人】 「俺達、未成年じゃなかったのか?」
この世界の成人は16歳からです。
そもそも未成年は酒を飲んではいけないという法律は、ファンタジーなこの世界には存在しない。
【真人】 「そうなのか」
【春原】 「つっても僕ら1Gも無いから、酒なんて飲めないんですけど」
【真人】 「……」
【観鈴】 「わたし、お酒苦手だから良かった」
【真人】 「…なぁ、俺は今、凄く嫌な予感がするんだが…」
【春原】 「いきなりなにさ」
【真人】 「酒場に行ったら、またあの女がいるんじゃねーだろうな」
【春原】 「あ、ありえるかも」
【観鈴】 「お母さん大忙しだね」
【春原】 「無駄に出番多い人ですね」
そして酒場についた三人。
しかし、酒場は閉まっていた。
【春原】 「? 夜からじゃないと開いてないとか?」
【真人】 「二度手間かよ」
【観鈴】 「ねーねー、こっちに張り紙があるよ」
【春原】 「へ?」
入り口の傍に張り紙がある。
経営に行き詰まり夜逃げします。
探さないでください。
店主
【春原】 「なんじゃそりゃあ」
【真人】 「へっ、もう幸先ぽろぼろだな…」
【観鈴】 「そ、そんなことないよ。これから、これから」
【観鈴】 「二人とも、ファイト!」
【春原&真人】 「オー…」
……
…
【真人】 「さて、これからどうする?」
【春原】 「観鈴ちゃん、マニュアル情報にはなんて?」
【観鈴】 「ザコキャラを倒して経験値を稼ぎましょうだって」
【真人】 「おっ、やっと戦闘か?」
【春原】 「いきなり元気になったね」
【真人】 「暴れれば少しは気分転換になるだろ」
【春原】 「まぁね。でも武器はうなぎパイだよ…」
【真人】 「へっ…ま、まぁ、そこら辺は俺の筋肉でカバーするさ」
【観鈴】 「それじゃあ、町を出よう」
……
…
【春原】 「んで、町を出たわけだけど、ザコキャラってのはどこにいるのさ」
【真人】 「んなもん、そこらへんにわくんじゃねーか」
【春原】 「んな、てきとーな」
【真人】 「っと、さっそくあそこになんかいるぞ」
【春原】 「えっ、マジっ!?」
【おおがらすを発見した】
【春原】 「おおがらすって…あれ、いくらなんでも、でかすぎるだろ!」
【真人】 「俺よりでけぇな…」
そのおおがらすは体長2メートルを超えていた。
と、観鈴がふらふらとした足取りでおおがらすに近づいていく。
【観鈴】 「からす〜」
【春原】 「ちょっ、観鈴ちゃん!?」
【真人】 「おい、あぶねーぞ!」
慌てて観鈴を引き止める春原と真人。
【観鈴】 「カラスに触りたいよー」
【春原】 「いや、あれ普通のカラスじゃないからさ」
【観鈴】 「レアものってことだよね」
【春原】 「レアはレアなんですけどね」
【真人】 「はん、レアに焼いて食ってやるぜ! お前はこいつを抑えとけ」
真人はそう言って観鈴を春原に預けておおがらすに突っ込んでいく。
手には装備した〔うなぎパイ (個別包装)〕 !
【真人】 「おらーっ!」
うなぎパイを思い切りおおがらすに叩きつける。
ポキッ
こぎみ良い音がしてうなぎパイは折れた。
【真人】 「やっぱりかーーっ!?」
おおがらすの額に怒りマークが浮かぶ。
ダメージは全くないようだ。
【春原】 「そりゃそうだよな…」
【観鈴】 「あぁ、カラスさんをいじめちゃだめだよー」
【真人】 「ちぃっ、こんなもんはいらねー!」
真人は折れたうなぎパイを放り捨てて素手で殴りかかる。
どごぉっ!
おおがらすの横に回りこんで、渾身の一撃を入れた!
「ガァッ」
凶暴な声を立てて、おおがらすは翼を羽ばたかせ、1メートルほど宙に浮き、真人に蹴りを入れる。
ガスッガスッ
【真人】 「うおおぉっ!?」
慌てて蹴りを防御する真人。
【真人】 「やろおっ!」
真人も負けじまいと、おおがらすの足をつかみ、おおがらすを振り回してから地面へと叩きつける!
ドンッ
【春原】 「すげぇな…」
【観鈴】 「が、がお…」
さすがに観鈴も派手な戦闘を目の当たりにして、カラスに近づくのはやめたようだ。
【春原】 「…僕も援護した方がいいよな」
春原は辺りを見回して、放り捨てられたうなぎパイに気がついた。
【春原】 「あれ、使えるかな…」
戦闘に巻き込まれないようにしながら、うなぎパイを回収する。
そして、袋の上からうなぎパイを粉々に砕いた後、袋を破り素早くおおがらすの正面に振りまいた。
「ガッ?」
おおがらすは真人への攻撃を中断して、うなぎパイの破片を食べだした。
【真人】 「チャンス!」
そこへ、すかさず真人が攻撃しようとして…
ドスン!
おおがらすは、派手な音を立てて自ら地面に倒れた。
【真人】 「あん?」
【春原】 「へっ?」
倒れたおおがらすは、泡を吹いている。
【真人】 「おまえ、なにをしたんだ?」
【春原】 「いや、うなぎパイを使って隙をつくろうとしただけなんだけど…」
【観鈴】 「この、うなぎパイ、変な臭いがするよ…」
観鈴は袋に残っていたうなぎパイの香を嗅いでいた。
【春原】 「これ、まさか」
【真人】 「ど○入りか!?」
【〔うなぎパイ (個別包装)〕 は 〔ど○入りうなぎパイ (個別包装)〕だった!】
【真人】 「こえーよ!」
【春原】 「なんつーもん売ってるんだ、あの店は…」
チャラッチャラッチャーチャー!
いきなり派手な音がどこからともなく鳴り響いた。
【真人】 「なんなんだ」
【春原たちはレベルアップした】
【春原】 「はやっ!」
観鈴はレベルが2になった。
知力が1上がった。
素早さが1上がった。
優しさが1上がった。
天然が2上がった。
【観鈴】 「にはは。何もしてなかったのに上がったよ」
【春原】 「今、なんか変なものがまじってなかった?」
春原はレベルが2になった。
攻撃が1上がった。
知力が1上がった。
素早さが2上がった。
天然が2上がった。
姑息が5上がった。
ヘタレが3上がった。
【春原】 「うぉい! ちょっと待てよ! なんなんだよその姑息とかヘタレとかってのは!」
真人はレベルが2になった。
攻撃が5上がった。
知力が2下がった。
素早さが1上がった。
天然が3上がった。
筋肉が10上がった。
【真人】 「ほう、筋肉がかなり上がったな」
【春原】 「いや、あんた知力が下がってますよ」
【真人】 「なにぃ!」
真人ステータス
職業:人並みの筋肉
知力:−2
【春原】 「ほら」
【真人】 「ちょっとまてぇーっ、なんなんだよ−2って! っていうか、この俺が人並みの筋肉だと!?」
【春原】 「そっちの方が重要なんすか…」
【観鈴】 「わーっ、わたしの職業が翼人になってる…」
観鈴ステータス
職業:翼人(ダウンロード:現在0.001%)
【観鈴】 「このパーセントはなに?」
現在、星の記憶がどれくらい移されたかです。
【観鈴】 「ほしのきおく?」
【春原】 「なっ……ちょっとまってくれよ、なんなんだよ、この職業は…」
春原ステータス
職業:ヘタレ
【春原】 「これ職業じゃねーだろ!!!」
えーい、さっきから黙って大人しくナレーションに徹していれば、この馬鹿二人はガタガタ騒ぎやがって。
【春原】 「はぁ!?」
【ナレーションA】 「貴様ら馬鹿どもにはお似合いの職業だと言ったんだ、愚か者どもが」
【ナレーションB】 「わふーっ、来ヶ谷さん、ダメですよ」
【春原】 「だれ!?」
【真人】 「て…てめぇらかー!」
【観鈴】 「知り合い?」
【真人】 「なんでてめぇらが、んなことやってんだ!」
【来ヶ谷】 「はっはっは、話に登場しているキャラ以外の者が、持ち回りでやることになっているのだよ、真人少年」
【クド】 「さっそくネタバレしてしまったです!」
【真人】 「馬鹿とか馬鹿とか馬鹿とか筋肉ダルマとか散々、好き勝手言ってくれやがったな…」
【来ヶ谷】 「さぁ、クドくん。そろそろ話も終わりだし、お姉さんと一緒にお風呂へ汗でも流しに行こうか」
【クド】 「わふーっ、ニューヨークです!」
【来ヶ谷】 「では、そういうことだから」
【クド】 「シーユーでーす」
【春原】 「なんだったんだ…」
あぁ、馬鹿二人を登場させたら観鈴の影が薄くなっちまったw
乙
ヤバい。真人が誰だかわかんねー....
もしかしてリトバス?
ゆとりさーせん。
まぁゆっくり読んでみます。
本編期待してます^^
乙!
まさか春原と真人のはらはらコンビを拝めるとは…
リトバスネタも織り交ぜてくるとは
イイ!
440 :
名無しさんだよもん:2008/06/23(月) 01:35:14 ID:hLecDYxtO
続き楽しみにしてるぜ
441 :
名無しさんだよもん:2008/07/01(火) 21:30:26 ID:rT2sP65W0
保守
( ´,_ゝ`)
hossyu
444 :
名無しさんだよもん:2008/07/17(木) 18:26:52 ID:YNB0jiwx0
保守
445 :
名無しさんだよもん:2008/08/01(金) 07:43:14 ID:5QmzG4im0
ほっしゅ
446 :
名無しさんだよもん:2008/08/07(木) 19:05:09 ID:SPjTDazB0
全力で保守
こんなおもしろいスレがあったのかw
命日・・・
黙祷…
観鈴ちん…
保守
451 :
名無しさんだよもん:2008/08/21(木) 16:35:55 ID:YX+NGhhY0
捕手
452 :
名無しさんだよもん:2008/08/22(金) 06:42:56 ID:lyGgPy3L0
ほ
長らくお待たせしました、とりあえずの再開です。
いろいろな事はあとがきっぽいのに書きますので、まずは本文をどうぞ。
第2回
7月19日(水)
【春原】 「おはよー」
台所へと入り、朝食の支度をしている観鈴ちゃんへと挨拶する。
【観鈴】 「陽平さん、おはよー」
寝起きにあった頭痛は治まったものの、暑さと夢見の悪さで汗をたっぷりとかいたせいか、喉がカラカラに乾いている。
【春原】 「観鈴ちゃん、水もらえるかな」
【観鈴】 「うん」
手早くコップに水を入れて僕に渡してくれる。
ゴクゴクゴク
喉を鳴らしながら一気に飲み干す。
【春原】 「ふぅー…」
ようやく一息つけたところで周りを見回すと、晴子さんの姿が見当たらない。
【春原】 「ん…晴子さんは、まだ起きてないの?」
【観鈴】 「お母さんが起きてくるのはいつも昼前なの。それからすぐに仕事にいくの」
【春原】 「へーっ」
ということは、まだ部屋で寝ているのか…
…これって、起こすふりをして寝姿をのぞくチャンスなんじゃないか?
晴子さんの部屋の方へと足音を立てずに進んでいく。
【観鈴】 「あ、陽平さん、お母さんは起こさないほうがいいよ。すっごく寝起きが悪いから」
【春原】 「マジ?」
【観鈴】 「マジマジ。殴られたり蹴られたりするから止めておいた方がいいよ」
【春原】 「あ、あはは…」
命あってだよな…やめとこう。
【観鈴】 「昨日はちゃんと寝れた? 納屋って狭くて窮屈でしょ。体、痛めなかった?」
【春原】 「うーん」
軽く体を動かしてみる。
【春原】 「特に問題はないよ。まあ、寝返りうつのは一苦労だけどね」
テーブルのイスに腰掛けながら答える。
【春原】 「それよりも、なんか夢見がひどくてさー」
【観鈴】 「夢?」
【春原】 「うん、妙な時代劇みたいなの」
僕が皿に乗ってる漬物をかじりながら話すと、観鈴ちゃんは作ったベーコンエッグをテーブルへと運びながら笑う。
【観鈴】 「にはは。なんか面白そうだね」
【春原】 「女の子に裏切り者呼ばわりされなけゃね」
そう言って、ため息をつく。
【観鈴】 「裏切り者? 陽平さん、その人に酷いことしたの?」
【春原】 「いや。僕、女の子には優しい男だから、夢の中でもそんなことは絶対にありえないね」
【観鈴】 「じゃあ、きっとその人なにか誤解してるんだね」
【春原】 「誤解ねぇ…」
【観鈴】 「さあ、出来たよ。食べよ」
【春原&観鈴】 『いただきまーす』
もぐもぐ…うん、美味い。
【春原】 「観鈴ちゃんは今日も学校なの?」
【観鈴】 「うん。今日は終業式」
【春原】 「それじゃあ、明日から夏休みか」
【観鈴】 「そう。短い夏の、長い夏休み」
観鈴ちゃんはなぜか寂しそうに言う。
夏休みが終わりかけてるならともかく、これから始まるってのになんでだろう。
…まあ、いいや。
【春原】 「んじゃ、明日から遊び放題だね!」
【観鈴】 「うーん、でも私、補習があるから午前中は学校いかなきゃ」
【春原】 「補習? そんなのサボっちゃいなよ」
【観鈴】 「にはは…駄目だよ。私、成績悪いからちゃんと出なきゃね」
【春原】 「そんなもの、卒業さえしちまえば関係ないって」
【観鈴】 「あと、遅刻も多いから…」
【春原】 「マジ!? 僕、学生時代は昼飯前に登校するのが日課だったんだよ」
【春原】 「僕ら、気が合うね!」
【観鈴】 「にはは、観鈴&陽平さんは似た者同士」
観鈴ちゃんは自分と僕を交互に指差して笑う。
あぁ、こんな娘が学生時代にいたらなぁ…
わざわざ蹴り起こしに来やがった智代なんかとはえらい違いだ。
【観鈴】 「陽平さんは、今日はどうするの?」
【春原】 「ああ、とりあえず朝は観鈴ちゃんを学校まで送っていくよ」
【観鈴】 「いいの?」
【春原】 「うん。他にやることもないし、晴子さんにも頼まれたしね」
【観鈴】 「お母さんに?」
【春原】 「観鈴ちゃんの遊び相手になってくれって。あとつっこみ役も」
【観鈴】 「…つっこみ?」
観鈴ちゃんは首をかしげて確認してくる。
【春原】 「うん、そう言ってたよ」
【観鈴】 「お母さん、酔っ払うと変なことばかり言うから本気にしなくていいよ」
あきれた感じで観鈴ちゃんは言った。
【春原】 「ふーん」
☆☆☆
朝食を食べ終え身支度を整えた後、観鈴ちゃんと家を出る。
今日も容赦なく陽射しが降りそそいでいる。
【春原】 「あっちぃー…」
【観鈴】 「うん、暑いね」
横に並んで歩いている観鈴ちゃんは、前を向いたまま笑顔で返事をする。
【春原】 「…観鈴ちゃん暑いのは平気なタイプ?」
観鈴ちゃんは空を見上げる。
【観鈴】 「ううん、暑いのは苦手だよ…でも、夏は大好き」
そして僕の方を見て、
【観鈴】 「それに今年は陽平さんも一緒だしね」
と、満面の笑顔で言ってきた。
…やべぇ、胸にじーんときたよ。
ここは、僕もいいセリフを言って好感度アップしてやるぜ。
【春原】 「僕も──」
【観鈴】 「あ、カラスだ」
【春原】 「へ?」
観鈴ちゃんの視線を追うと、道の先に黒い生物が佇んでいる。
【観鈴】 「かーらすー」
そう言いながら観鈴ちゃんは、その黒いの──カラスに向かってまっしぐらに走っていった。
『カァーー!』
驚いたカラスは一声鳴くと青空へと飛び去っていった。
空高く舞ったカラスを、立ち止まって見上げている観鈴ちゃんへと近寄って話しかける。
【春原】 「カラス、嫌いなんだ」
【観鈴】 「え? ううん、カラスは大好きだよ」
【春原】 「……は? 今の、カラスを追っ払ったんじゃないの?」
【観鈴】 「にはは、ちがうちがう。今のはカラスを撫でようとしただけ」
パタパタと顔の前で手を振りながら否定する。
…しゃがんでカラスの背を撫でている観鈴ちゃんを想像する。
……カラスは駄目だろう、いろんな意味で。
【春原】 「カラスは危ないから近寄らない方がいいんじゃないかな」
【観鈴】 「えー…そんなことないよ」
【春原】 「いや、だってあいつらが人に懐くわけないし、下手に手なんか出したらくちばしで刺してくるって」
【観鈴】 「んー、でもきっといつかわかり合えるよ」
本気でそう思っているようだ。
そんな日は間違いなくこないと思うよ、観鈴ちゃん。
…まあ、無理に否定することもないか…
【春原】 「そういう日がくればいいかもしれないね…」
【観鈴】 「うん、きっと友達になれるよ」
【春原】 「ともだち…」
【観鈴】 「観鈴&陽平さん&カラス」
【春原】 「勘弁してください」
冗談じゃなくマジに止めてほしいっす。
【観鈴】 「にはは」
【春原】 「カラスなんかよりもさ、どうせなら観鈴ちゃんの学校の友達を誘って遊ぼうよ。あ、女の子限定ね」
うん、我ながら魅力的な提案だ。
しかし観鈴ちゃんは俯いて、
【観鈴】 「…わたし、友達少ないから」
と小声で返してくる。
【春原】 「友達じゃなくても、クラスメイトとか誘えばいいじゃん。そうすれば友達になるきっかけになるし」
【観鈴】 「……でも、みんなも夏休みの予定とかあるだろうし…」
【春原】 「夏休み全部に予定くんでる奴なんかいないって」
【観鈴】 「そうかな…」
【春原】 「さっきカラスに突っ込んでったみたいに勢いよく誘えば、相手も断れないよ」
僕がそこまで言うと、観鈴ちゃんは顔を上げて決心した表情で返事をしてきた。
【観鈴】 「う、うん…じゃあ、頑張ってみるね」
ちょうどそこで学校の正門へと着いた。
【春原】 「お昼は、観鈴ちゃんの家で食べれるんだよね?」
【観鈴】 「うん、お昼には家に帰れるから。じゃあ、行くね」
【春原】 「友達、期待してるよ」
特に可愛い女の子を。
【観鈴】 「うん…じゃあ行ってくる」
そう行って正門をくぐり校庭へと駆けていった。
僕も観鈴ちゃんの家へと戻ろうとしたところで、校庭から 『観鈴ちんファイト!』 というかけ声が聞こえてきた。
☆☆☆
神尾家へと戻ってきたものの、特にやることもないんだよな…
衣食住を確保できてしまうと、この炎天下ではバイトを探す気もおきなくなる。
居間で扇風機をつけて寝転がる。
観鈴ちゃんは学校だし、晴子さんは寝てるらしいし。
………
…まて、僕はいったい何をやっているんだ。
こんなチャンスを逃す手はないだろ!
素早く立ち上がり、忍び足で観鈴ちゃんの部屋の前まで移動する。
ドアには恐竜をデザインしたホワイトボードに 『学校へ行ってるよ』 という手書きの文字。
…では、春原探検隊──突入します!
ドアに手をかけて開こうとしたところで、
『なにをやっとんねん』
という声が横からかけられた。
【春原】 「…えーと……」
横を見ることも出来ずに、全身に嫌な汗をかきながら固まっていると、
『観鈴にいいつけたろー』
という楽しそうに弾んだ声が聞えた。
【春原】 「ちょっとまったぁあぁぁーーーーっ!!」
横から立ち去ろうとした女性をひきとめる。
【晴子】 「なんやねんな…」
【春原】 「いや、マジで勘弁してください」
半泣きであやまる。
【晴子】 「うち、心がひろいから言い訳ぐらいは聞いたるでー」
【春原】 「……そうじ…掃除でもしようかなーと思ったりいたしまして」
【晴子】 「ほう、掃除か。それはいい心がけやなー」
【春原】 「え、ええ、そうんなんすよ」
【晴子】 「でも、その部屋はいつも観鈴がきちんと掃除しとるからな。必要あらへんで」
【春原】 「ああ、そうだったんすか。じゃあ、僕はこれで…」
苦しい言い訳を残して、その場から逃げようとすると、
【晴子】 「手伝いをしたいんなら、やること与えたるで」
晴子さんは笑顔でそう言ってきた。
【春原】 「えぇーーっ」
【晴子】 「なんや、その露骨に嫌そうな反応は。ということは掃除というんも嘘やな。それなら観鈴に──」
【春原】 「わぁーっ、なんでも言いつけてください!」
【晴子】 「庭の草むしりと買い物、どっちがええ?」
……負けた…
☆☆☆
【春原】 「くそあちぃーーっ」
あの後、草むしりよりは買い物のほうがマシかと判断し、再び外へと出てきたが…
外は、観鈴ちゃんを送ってきた時よりも、さらに陽射しが強くなり気温が上がっていた。
セミの泣き声が鬱陶しいことこの上ない。
ふらつく足取りで坂道を上り下りしながら商店街の方へと移動する。
【春原】 「なんでこの町はこんなに坂道が多いんだよ…」
不便なことこの上ない。
うだる暑さの中をなんとか商店街のはずれ近くまで来たところで、
家を出るときに渡された買ってくる物を書かれたメモ帳を見てみる。
【春原】 「そういや、何を買ってくりゃいいんだ?」
メモに書かれていたのは……
ビール、日本酒、洋酒、つまみ類がそれぞれ事細かに指示されていた。
【春原】 「ふざけんじゃねえっ!」
バシッ!
メモ帳を地面へと叩き付けた。
【春原】 「はぁーーっ」
深いため息をつき、日陰へと入り地面に座り込み、一休みする。
【春原】 「……ん?」
なにやら商店街の方が騒がしい。
見ると、道の先ある白い建物の前で何かやっているようだ。
………
……そこには一言で言うなら異常なモノが存在していた。
建物の前に、目つきの悪い無愛想な黒ずくめの男…あきらかにチンピラだが。
その男がこの炎天下の中、一人で胡坐をかいて座り込んでいる。
そして、男の前を小さな人形のようなものが、ハリのない動きで歩き回っている。電池式の人形だろうか…
さらにその男の頭の上で、これも電動らしい白い犬みたいなぬいぐるみが一際怪しい動きで器用に踊り回っている。
いやもう、あれは踊り狂っていると言ってもいいかもしれない。
…恐ろしくシュールな光景だ…
当然、その建物の前を通る人たちはソレになるべく近寄りたくないのだろう、
その建物を道で挟んだ反対側を目を合わさないように早足で駆け抜けている。
と、僕が座り込んでいる前を、そっちから来た主婦らしき人達が会話をしながら通り過ぎていく。
【主婦A】 「あれ、なんなのかしらね…」
【主婦B】 「なんでも、霧島さんのところへ嫌がらせをしにきている地上げ屋だそうよ」
【主婦C】 「あら、私は霧島先生のところへ運び込まれた精神病患者って聞いたわよ」
………
いずれにしても関わらないほうがよさそうだ…
そんなことを考えていると、『ワーーッ』 という喚声が聞えてきた。
声の方を見ると子供達が、例の男に向けて一斉に石を投げつけている。
【少年A】 「へんしつしゃをやっつけろーっ!」
【少年B】 「あやしいにんぎょうをつかってくるぞ、きをつけろー!」
なんか、かなり凄いことになっている。
子供達が投げている石は距離が遠すぎるせいか、男の前で地面に落ちるか見当はずれの方向へと飛んでいっている。
石は全く当たらないものの、男もいい加減に我慢の限界が来たようだ。
【男】 「誰が変質者だ!」
立ち上がり子供達に向けて怒鳴った。
一瞬ひるむ子供達。その中のリーダー格と思われる子供が周りへと指示を出した。
【ともや】 「危険人物が暴れだしたぞ! 撤収しろー!」
…なんか見覚えがあると思ったら、昨日僕の目に洒落にならない攻撃をしてきたクソガキじゃないか。
【きょう】 「あんたたち、下がってなさい!」
もう一人の見覚えのあるガキが、思いきり振りかぶって男に向けて石を投げる。
ヒュン!
あきらかに他の子供達とは違う次元の速さで投げられた石は、空を切りさく音すら聞えそうな勢いで男の顔面にヒットした!
ドゴォッッ!
【男】 「ぐはあぁあぁっ!!?」
男は1メートル程吹き飛び、派手にひっくり返った。
…大丈夫だろうか、あいつ。
その隙に子供達は蜘蛛の子を散らしたように一人残らず走り去っていった。
……しばらくすると男はふらつきながらも立ち上がって先ほどの位置へと戻り、
倒れていた人形を起こして、何事もなかったかのように再び人形を動かし始めた。
…そういえば、いつの間にか犬みたいなぬいぐるみが居なくなっている。
子供達が石を投げているときから、見当たらなかった気がするが…
……さて、どうしたもんか。
僕が買い物を済ませるためには商店街の中心へと向かわなければならない。だが、それにはあの建物の前を通過する必要がある。
それ以外のルートを迂回して行くとなると、ひどく遠回りすることになってしまう…それもこの炎天下の中を、だ。
まだ、この町の道を完全に把握しきれてはいないが、この町に着いた日に夜中まで宿を探し回った結果、
それなりには道を覚えることが出来たので、この事に関しては確信を持てる。
【春原】 「…行くしかないか」
他の人達のように、目を合わせずに素早く通り過ぎれば大丈夫だろう。
意を決し、商店街へと歩き出す。
顔をふせたまま、男には近寄らないように早足で通り過ぎる。
…男の方を見ないようにしているので確かめられないが、あきらかに僕を見ている気配がひしひしと伝わってくる。
気にしない、気にしない。
既に男の前は通り過ぎることが出来た。後はこの場を離れるだけ…
【男】 「おい、あんた!」
後ろから、例の男のものと思える声がした。
……僕じゃない、僕じゃない。
【男】 「そこのあんただよ!」
…聞こえてない、聞こえてない。
【男】 「……そこの金髪が似合う、格好いいお兄さん!」
【春原】 「僕のこと!? やっぱり分かる人には、分かるんだよねー! このヘアスタイルの良さがさ!」
思わず笑顔で振り向いてしまった。
その先には例の男が僕のことを見ていて、ばっちりと目が合ってしまう。
【春原】 「…しまったぁあぁぁーーーーー!!!」
男はにんまりと笑い、
【男】 「さあ、楽しい人形劇を見ていってくれ!」
と言った。
【春原】 「…人形劇?」
【男】 「そうだ」
【春原】 「あんたが主演の喜劇とか悲劇じゃなくて?」
この男をさっきから見ていると、そうとしか思えないのだが…
ピクッ
男が分かりやすく反応した。
【男】 「ふっ…なんのことだ?」
とぼけているが口元がひきつり言葉はふるえている。
【春原】 「変質者」
【男】 「違う! …いいか、俺は大道芸人だ」
【春原】 「…そうなの?」
【男】 「ああ、人形劇を披露しながら旅をしているんだ」
【春原】 「そりゃまた、今時珍しいことをしているもんだねぇ」
【男】 「まあ、そういうわけだ。じゃあ、人形劇をするぞ」
【春原】 「僕、急いでるから」
男が人形に手をかけたところで、僕はさっさと立ち去ろうとする。
【男】 「いやいや、せっかくの縁だ。じっくりと見ていってくれ」
男は僕の前に素早く回り込んで引き止める。
【春原】 「だから急いでるんだって」
【男】 「時間はかけさせないからさ」
【春原】 「買い物しなきゃいけないんだよ」
【男】 「買い物なんかより人形劇の方が楽しいぞ!」
【春原】 「買い物に楽しいとか関係ないだろ!」
【男】 「人形劇を見れば買い物のことなんか忘れちまうって!!」
【春原】 「忘れたら困るんだよ!!」
ゼーッ、ゼーッ
ハァーッ、ハァーッ
二人して荒い息をつく。
…どうも人形劇とやらを見ないと行かせないつもりらしい。
【春原】 「…わかったよ、手早く頼むよ」
【男】 「まいど!」
男は素早くさっき居た場所へと戻るとしゃがみこみ、倒れていた人形には触れずに、その少し上に手をかざす。
……?
人形に向けて念でも込めているようだ…男が一瞬、真剣な顔つきになる。
【男】 「…はっ!」
ピョコンッ!
男の気合の入った声とともに人形は勢いよく立ち上がり、男の前を歩き出した。
【男】 「ふぅーっ…」
男は額の汗を服の袖で拭きながら僕に話しかける。
【男】 「どうだ? 楽しいだろう?」
…自信満々のようだ。
人形は依然、男の前を行ったり来たりしている。
【春原】 「…これだけ?」
【男】 「『これだけ』 とは?」
どうもこれで終わりらしい。
【春原】 「…それじゃあ」
僕は踵を返して、その場を立ち去ろうとする。
【男】 「まてまてまて」
男は慌てて僕を呼び止める。
【春原】 「なんだよ」
【男】 「お代だよ!」
【春原】 「お代?」
【男】 「金のことだ! こっちは見世物をしたんだ、払うものは払ってもらおうか!」
どうやら地上げ屋でも精神障害者でも大道芸人でもなく、ぼったくりとか悪徳商法の類だったらしい。
【春原】 「知らないのか? 大道芸ってのは面白くなければ金は払わなくていいんだぜ」
え、まだ読んでないけど本物?
465 :
335:2008/08/23(土) 17:48:30 ID:SgHvp1HH0
>>464 はい、本物ですw
長らくお待たせしました。orz
【男】 「…俺の芸のどこが面白くないっていうんだよ」
どうも本気で分かっていないようだ…
【春原】 「あんた、人を楽しませる才能ないよ」
………
男は相当ショックを受けたのか、目を見開いたまま固まっている。
【男】 「……いや、ちょっとまて……お前の笑いのツボが人よりずれている、ということもありえるんじゃないか?」
【春原】 「てめぇ! 僕の笑いのセンスを疑うってのか!?」
【男】 「俺の芸が楽しめない時点で怪しいもんだな」
男は嘲笑ぎみにそう言いやがった。
【春原】 「ふざけんなよ! 僕は存在自体がギャグとまで言われた男だぞ!!」
【男】 「………」
男が哀れみの目で僕を見てくる。
そして僕の肩に手をあてて、
【男】 「強く生きろよ」
とぬかしやがった。
【春原】 「売れない芸人なんかに言われたくねぇよ!」
【男】 「誰が売れない芸人だ!」
【春原】 「おまえだよ、おまえっ!!」
【男】 「なんだと──」
ガラッ!!
いきなり男の後ろにある建物の窓が開き…
バシャアッ!!!
大量の水が男に向けてぶっかけられた!
【女】 「騒々しいぞ!」
窓の向こうには白衣を着て、バケツを手に抱えた女が怒りの表情で立っている。
…相当な美人だ。
【男】 「なにしやがる」
男は頭からつま先までずぶぬれになっていた。
【女】 「やかましい。営業妨害も大概にしろ」
【男】 「あんただって客寄せになるからと賛成しただろうが」
【女】 「私は大道芸をすることを許可したんだ。客との口論や、まして悪徳商法などを許可した覚えはないぞ」
【男】 「いや、それには事情が──」
【女】 「問答無用だ。今日は大道芸は終わりだ、待合室の掃除をしたまえ」
【男】 「くっ…」
【春原】 「あのー…」
【女】 「うん?」
【春原】 「なんで、僕までまきこまれているんでしょうか…」
僕も男同様に全身ずぶぬれになっていた。
☆☆☆
神尾観鈴視点
全校生徒を集めての終業式も予定通り終わり、今は教室で先生が夏休みを過ごす上での注意などを説明している。
これが終われば、いよいよ夏休みの始まりだ。
…陽平さんとの約束。
友達やクラスメイトを誘って夏休みを一緒に遊ぶ…
…それが出来たら、どんなに楽しいだろう…
……でも、それは…無理。
昨日、陽平さんと出会う前にも、学校で皆に声をかけてみたのだ。
結果は…全て断られた。
この学校の人は、わたしが癇癪を起こすのを知っているから…
…だから、わたしとは遊んでくれない。
……誰だって、こんな変な子とは関わりたくないよね……
だから、誰も誘えなかったとしてもしょうがない……しょうがないよね……
今年は陽平さんが居てくれるから平気だし…
………
…でも、やっぱり皆とも遊びたいよ…
……もう一度、皆を誘ってみようか……
『さっきカラスに突っ込んでったみたいに勢いよく誘えば、相手も断れないよ』
…うん、もう一度だけ頑張ってみよう!
【先生】 「それじゃあ、HRを終わるぞ」
わたしがいろいろ考えている間に先生の話が終わったようだ。
号令係の人の掛け声に続いて別れの挨拶をし終わると、一斉に教室中が騒がしくなる。
皆、仲の良い人同士が集まり、これからどうするかを話し合っているようだ。
…話しかけるなら今だよね……とりあえず、近くにいる人たちから…
【観鈴】 「あ、あの…」
【先生】 「おーい、神尾!」
…え? わたし、呼ばれた?
【先生】 「神尾!」
【観鈴】 「は、はい!」
慌てて、教壇で書類などを纏めている先生のところへ走っていく。
【観鈴】 「あの…」
【先生】 「これから、職員室で夏休み中の補習について説明するから。ついて来てくれ」
【観鈴】 「…え、で…でも…」
【先生】 「? 何か用事でもあるのか?」
【観鈴】 「…いえ」
【先生】 「じゃあ、行くぞ」
そう言うと、先生は早足で教室を出ていく。
わたしも先生についていかないと…
…このクラスで補習を受けるのは、わたし一人だけ。
わたしは、皆の楽しい声で賑やかな教室を後にした…
…陽平さん、やっぱり駄目だったよ……
【観鈴】 「が、がお」
【先生】 「何か言ったか?」
【観鈴】 「……いえ」
職員室へとついたわたしを待っていたのは、普段の成績の悪さと遅刻の多さに対するお説教だった。
既に、かなりの時間お小言を言われ続けている。
【先生】 「…神尾、おまえが根は真面目なやつだというのは分かっているんだ。だから──」
もう、皆は帰ってしまっただろうか…
【先生】 「俺は、成績をすぐに上げろとはいわん、だが、遅刻なら──」
早く終わってくれないかな…
【先生】 「神尾、聞いているのか!?」
【観鈴】 「は、はい!」
【先生】 「…まったく……」
先生はあきれながら、深いため息をつく。
【先生】 「おまえなぁ、もし、夏休みの補習もきちんと出れないようなら、留年の可能性も出てくるかもしれないんだぞ。
本当にわかっているのか?」
【観鈴】 「…はい」
【先生】 「いいか──」
【老人】 「…もう、そのへんにしておいたらどうだ?」
先生が説教を再開しようとしたところに、お爺さんが横から口を挟んできた。
先ほどから、少し離れたところでこちらを見ていた人だ。
見た目からも、とても温厚そうな人柄がわかる。
学校では見かけたことのない人だけど、誰なんだろう?
【先生】 「せ、先生…しかし」
【老人】 「その子は、もうよくわかっとるよ。…くどい説教など、やる気をなくさせるだけじゃぞ…」
【先生】 「…はあ……そうですね。…先生も怒るときは厳しかったですけど、たしかに短かったですよねー」
【老人】 「…ふむ。そうだったかの…」
二人とも過去を懐かしんでいるようだ。
先生の昔のお知り合いだろうか…
【先生】 「…わかった。神尾、もう帰っていいぞ。…ただし、くれぐれも補習には遅刻しないように」
【観鈴】 「は、はい!」
やっと帰れる…
ほっとした瞬間、お爺さんと目が合った。
おお、おかえりなさーい!w
後でじっくり読ませて戴きます。
【観鈴】 「あ、あの…」
【老人】 「…うん?」
【観鈴】 「…えと」
【先生】 「…この方は、幸村さんとおっしゃる方で、俺の恩師──つまり、先生の先生というわけだ」
【幸村】 「……しばらく前に定年で退職したがの…」
【観鈴】 「わ、そうだったんですか。…あ、あの…ありがとうございました」
【幸村】 「…うむ」
【観鈴】 「それじゃあ、失礼します」
【先生】 「ああ、さようなら」
やっとのことで職員室から開放された。
…けれども、廊下は既に静まり返っていた。
とぼとぼと人気のない廊下をカバンを取りに教室へと戻る。
【観鈴】 「…はぁ」
陽平さんには何て言おう…
頭の中でいろいろと言い訳を考えながら話し声の聞えない教室のドアを開ける。
ガラッ
…わたしの予想に反して、まだ一人だけ生徒が残っていた。
彼女は…遠野美凪さんだ。
すごい美人で、成績も学年トップ…わたしとは大違いだ。
…遠野さんは、ドアを開けたまま立ち尽くしている私をじっと見ている。
……誰かを誘う最後のチャンスだよね…
…でも、彼女みたいな優等生が、わたしなんかと遊んでくれるかな…
頭に陽平さんの顔が浮かぶ…
『観鈴ちゃんファイト!』
…うん、観鈴ちんファイト!
勇気を出して声をかけてみる。
【観鈴】 「あの」
【遠野】 「あの」
二人共同じタイミングで声をかけてしまった。
【観鈴】 「え、えと」
【遠野】 「……お先にどうぞ」
【観鈴】 「…は、はい」
すぅーっ、はぁーっ。
深呼吸して気分を落ち着ける。
【観鈴】 「……あの、夏休みなんですけど、もしよろしければ、わたしと一緒に遊びませんか?」
【遠野】 「………」
【観鈴】 「…あ、あの…」
【遠野】 「………」
【観鈴】 「……やっぱり、わたしなんかとは遊びたくありませんよね」
【遠野】 「…いえ」
【観鈴】 「………え?」
【遠野】 「…わたしでよろしければ、構いませんよ」
【観鈴】 「……え、あ…あの」
【遠野】 「…夏休み、一緒に遊びましょう」
【観鈴】 「ほ、本当ですか?」
【遠野】 「…はい」
遠野さんは優しい笑顔でうなずいた。
……わ、わたし…誘えた?
…やった、やったよ…陽平さん!
わたし、誘えたよ!
【観鈴】 「うっ…ひっ…く…」
……あれ?
すごく嬉しいのに、涙がいっぱい出てきて止まらない。
【観鈴】 「あ…す、すいま…せ…」
こんなことだから…変な子に見られるのに…
【遠野】 「……どうぞ」
遠野さんはわたしにハンカチを差し出した。
【観鈴】 「うぅ…ありがとう…ござ…います」
嗚咽をもらしながらお礼を言って貸してもらう。
【遠野】 「…神尾さん」
【観鈴】 「…は、はい」
【遠野】 「…嬉しいときも、泣いていいんですよ」
【観鈴】 「……うぅ、ひっく…ふぇ…」
わたしはしばらく泣き続けた…
………
わたしが泣き止むまで遠野さんはずっと傍に居てくれていた。
【観鈴】 「すみませんでした」
【遠野】 「…ご気分の方はどうですか?」
【観鈴】 「は、はい。もう大丈夫です」
【遠野】 「…それはよかったです」
【観鈴】 「ありがとうございます」
【遠野】 「…いえ、それではそろそろ下校しましょうか…」
【観鈴】 「あ…そ、そうですね」
二人ともカバンを持って廊下へと出て、正面玄関へと向かう。
…そういえば、最初に話しかけたときに遠野さんも何か話しかけようとしていたけど…
【観鈴】 「あ、あの…」
【遠野】 「…はい?」
【観鈴】 「わたしが最初に話しかけようとしたときに、遠野さんもなにか話そうとしましたよね?」
【遠野】 「…ああ、はい。……先ほど、部活のことで職員室へ行ったのですが、その時に神尾さんを見かけまして…」
【観鈴】 「あ……」
【遠野】 「…ですが、元気になられたようで良かったです」
【観鈴】 「にはは…ありがとうございます」
わたしのこと心配してくれてたんだ…
とってもいい人だな…
【観鈴】 「……あの」
【遠野】 「はい」
【観鈴】 「…美凪…さんって呼んでもいいですか?」
【遠野】 「………」
遠野さんは寂しそうにうつむいた。
【観鈴】 「え、と…嫌でしたか?」
ぷるぷるぷる。
美凪さんは首を何度も横に振った。
【遠野】 「……嫌というわけでは……」
そういうと再び黙ってしまう。
【観鈴】 「…が、がお……」
【遠野】 「……?」
【観鈴】 「あ、な、なんでもありません……」
また泣きそうになっちゃった…
遠野さんはわたしのことをじっと見て──
【遠野】 「………そうですね……では、美凪…とお呼びください」
【観鈴】 「あ…いいんですか?」
【美凪】 「…はい」
美凪さんは私の言葉にうなずいた。
その表情は寂しそうだったものから笑顔へともどっていた。
【観鈴】 「あ、じゃ、じゃあ…わたしのことも 『観鈴』 って呼んでください」
【美凪】 「……観鈴さん?」
【観鈴】 「はい」
【美凪】 「…観鈴さん」
【観鈴】 「はい」
【美凪】 「………観鈴ちゃん?」
【観鈴】 「ふぇ? え、えと…それは…」
【美凪】 「………」
【観鈴】 「えーと、…… 『観鈴ちん』 ならオッケーです」
【美凪】 「……観鈴ちん?」
【観鈴】 「はい」
【美凪】 「…観鈴ちん」
【観鈴】 「はい! …にはは」
正面玄関へと着くと、靴を履き替えて校庭へと出る。
…何か騒がしい。
……飼育小屋の方から何かを呼ぶ声が聞こえる。
『ピョンタ〜』
『モコモコ〜』
【観鈴】 「…なんだろうね」
【美凪】 「………あ」
【観鈴】 「え?」
美凪さんが見ているほうへと向くと、校舎の脇にある茂みのそばにウサギが一匹いた。
【観鈴】 「…あのこを探しているのかな…」
【美凪】 「…おそらくは」
【観鈴】 「……わたし、捕まえてきますね」
【美凪】 「…はい。カバンはお持ちします」
わたしはカバンを美凪さんに預けて、ウサギに近づいていく。
ウサギは学校で飼われているだけあって人に慣れているらしく、全く逃げない。
…もうすこし、もうすこし。
後はウサギに手をのばして捕まえるところまで来たところで、ガサガサッと茂みが揺れた。
【観鈴】 「へっ?」
茂みの方を見ると、いきなり何かが飛び出してきた!
【観鈴】 「うわわっ!」
ドスーンッ!
飛び出してきたものを抱きとめて捕まえたものの、バランスを崩して尻餅をつくかたちで倒れてしまった。
…抱いているものを見てみると、さっきのとは別のウサギだった。
【美凪】 「大丈夫ですか?」
美凪さんが慌てて駆けて来た。
【観鈴】 「は、はい。一匹捕まえましたよ」
【美凪】 「…お手柄ですね」
【観鈴】 「にはは」
【女生徒A】 「あーーっ!」
突然した大声の方を見ると、少し離れた場所から女の子がわたし達の方を指差して驚いている。
活発そうな女の子で、片方の手首に目立つバンダナを巻いている。
【女生徒A】 「ピョンタがいた〜! よかったよぉ!」
そしてわたしたちの方へと駆けて来る。
【女生徒A】 「捕まえてくれたんだぁー! ありがとう〜!」
そう言うと、わたしが抱きかかえていたウサギの頭を撫でた。
【観鈴】 「飼育委員の方ですか?」
【女生徒A】 「うん、そうだよぉ」
【観鈴】 「はい、どうぞ」
飼育委員さんへとウサギを差し出す。
【女生徒A】 「ありがとうだよぉ。…ピョンタ〜、逃げちゃ駄目じゃないのー」
わたしからウサギを受け取ると、ウサギを優しく叱りつける。
【女生徒B】 「かのりん、ピョンタ捕まえたって?」
別の飼育委員さんらしき人も走ってきた。
【かのりん】 「うん、この人達が捕まえてくれたんだよぉ」
かのりんと呼ばれた女の子が、走ってきた人にウサギを渡しながら説明する。
【女生徒B】 「どうもありがとう、助かりました!」
【観鈴】 「いえ、そんな…」
【女生徒C】 「かのりん〜、モコモコも捕まえたよー!」
もう一匹いたウサギも別の飼育委員さんが捕まえたようだ。
【かのりん】 「この子たちで全部捕まえた?」
【女生徒B】 「うん、全部だよ」
【女生徒C】 「かのりん、今日は当番じゃなかったのに、ゴメンネー」
【かのりん】 「全然かまわないよぉ」
【女生徒B】 「そちらのお二人も、ご協力ありがとうございました」
【観鈴】 「い、いえ」
【美凪】 「………」
【女生徒B】 「それじゃあね〜!」
飼育委員のうち二人は、ウサギを抱えたまま元気に飼育小屋の方へと走っていった。
【かのりん】 「助かったよぉ、今朝、小屋の鍵をかけ忘れたらしくて、みんな逃げ出しちゃってたんだよ〜」
【美凪】 「…それは大変でしたね」
【かのりん】 「うん、すっごく大変だったよぉ。…でも、遠野さんが捕まえてくれてたなんて、びっくりだよ」
【美凪】 「…いえ、私は見てただけですので…観鈴ちんの大手柄です、ぱちぱちぱち」
美凪さんはわたしに見て、言葉で拍手?をする。
【かのりん】 「あなたが、観鈴ちん? あたしは霧島佳乃だよ、よろしくね」
【観鈴】 「あ、あの、わたしは神尾観鈴です」
【佳乃】 「あたしのことは 『かのりん』 って呼んでね、観鈴ちん」
【観鈴】 「は、はい…にはは」
【佳乃】 「遠野さんのことは、美凪さんって呼んでいいのかなぁ?」
【美凪】 「………はい」
【観鈴】 「あの…二人はお知り合いなんですか?」
【佳乃】 「うん、そうだよぉ。ほとんど話したことはなかったんだけどねぇ」
【美凪】 「……かのりんのお姉さんは霧島診療所のお医者様で、私の母が時々診て頂いて貰っているんです。
それで私も母につきそっていった時に…」
【観鈴】 「そうなんだ……あれ? でも、昔、わたしが見てもらった霧島先生はおじさんだったような…」
【佳乃】 「それ、あたしのお父さんだね……お父さんは、あたしが小さい頃に死んじゃったから…」
【観鈴】 「…あ、ご…ごめんなさい」
【佳乃】 「うぅん、気にしなくていいよぉ」
昔、注射が怖くて泣いていた私に、薬を甘くして飲ませてくれたお医者さん…
わたしの知らないうちに亡くなっていたんだ……
【佳乃】 「それよりもさ、ウサギを捕まえてくれたお礼をしたいんだけど、これからあたしのウチに行こうよ!」
【美凪】 「…かのりんのおうちに?」
【佳乃】 「うん! 昨日、お姉ちゃんがいーーっぱいスイカを買ってきたんだよぉ。
あたしたちだけじゃ食べ切れなかったんだよぉ」
【観鈴】 「そんなにいっぱい?」
【佳乃】 「冷蔵庫に入りきらなくて大混乱だったんだよぉ」
【観鈴】 「にはは…わたしは行きたいけど…美凪さんはどうする?」
【美凪】 「……校門前で友達と待ち合わせをしているのですが、その子も一緒に行ってもかまいませんか?」
【佳乃】 「ぜんっぜん、かまわないよぉ! 戦力は多い方がいいもんね」
【美凪】 「…では、お呼ばれしちゃいます」
【佳乃】 「それじゃあ、でっぱーつ!」
かのりんを先頭に校門へと移動する。
【佳乃】 「そうそう、今うちにねぇ大道芸人さんが宿泊中なんだよぉ」
【観鈴】 「大道芸人さん?」
【佳乃】 「うん! 人形劇が大得意なんだよぉ」
【美凪】 「…それは、楽しそうですね」
【佳乃】 「うん、とっても楽しい、とーっても、すごい芸なんだよぉ」
【観鈴】 「へーっ」
【佳乃】 「往人くんっていうんだけどね。
昨日はお昼から、往人くんが失くしたお人形を探して、お人形捜索隊が大活躍だったんだよぉ」
【観鈴】 「にはは、すごく楽しそうだね」
【佳乃】 「うん、とっても楽しかったよぉ」
わたし達が話しながら校門へと近づいていくと、わたしたちとは逆に校門から入って来た人たちが、
【女生徒A】 「校門前にいる子、かわいいわね」
【女生徒B】 「となりにいた生き物、犬なのかな〜?」
と会話しながら歩いていった。
【美凪】 「………」
【佳乃】 「…犬?」
【観鈴】 「?」
あと少しで校門という所まで来ると、
『ぴこぴこっぴこっ』
『ぴっこぴこっぴっこっ』
という楽しそうな歌みたいな声が聞こえてきた。
そのまま校門をくぐると、可愛らしい女の子がぬいぐるみみたいな生き物と向かい合って地面に座り込み、
ぴこぴこという言葉?で会話らしきものをしていた。
【少女】 「ぴこぴっこり〜」
【生き物】 「ぴこぴこ〜」
【佳乃】 「あぁー! やっぱりポテトー!」
【ポテト】 「ぴこっ!」
かのりんの言葉に反応して、ポテトと呼ばれた犬?はこちらに駆け寄ってくる。
【佳乃】 「ポテト〜、なんでこんなところにいるのぉ? 往人くんのお手伝いしているはずでしょ?」
【ポテト】 「ぴこっ! ぴこぴこぴっこり!」
【佳乃】 「えっ? 命の危険を感じたから逃げてきたって?」
ポテトがこちらに走り寄ってくるのを見た少女も、こちらに来ようとして別のなにかに気づいたらしく視線が変わる。
【少女】 「美凪ぃーっ! おかえりー!」
【美凪】 「…みちる、お待たせ。…退屈だった?」
【みちる】 「ううん! ぴこと遊んでたから平気だったよ」
美凪さんがみちると呼んだ女の子はポテトを指差して言った。
【佳乃】 「ぴこ? この子は 『ポテト』 っていうんだよ」
【みちる】 「んに? …ポテト?」
【ポテト】 「ぴっこり」
【みちる】 「んにゅ、ぴこはポテトって名前だったんだね」
【ポテト】 「ぴこっぴこっ」
【観鈴】 「…え〜と、わたしにも紹介してほしいな…」
わたしが慌しい展開についていけず、二人にたずねる。
【佳乃】 「あっ、ごめんねぇ。…んーと、まず、この子はポテト。あたしの友達だよ」
かのりんはポテトを抱いてわたしに紹介する。
【みちる】 「みちるもポテトの友達だよっ」
【美凪】 「…そしてこの子が、わたしの友達のみちるです」
続いて美凪さんが女の子──みちるちゃんを紹介した。
【みちる】 「んに? 美凪ぃ〜、この人たち、誰?」
【美凪】 「…私の友達の…神尾観鈴さん、呼ぶときは 『観鈴ちん』」
【観鈴】 「にはは…よろしくね、みちるちゃん」
【美凪】 「…そして、こちらが霧島佳乃さん、呼ぶときは 『かのりん』」
【佳乃】 「よろしくだよぉ」
【みちる】 「んにゅ。美凪の友達ならみちるの友達だねっ。あのね、あのね、みちるはみちるっていうんだよ、よろしくねっ」
【佳乃】 「…それでポテト、この人は遠野美凪さん、『美凪さん』 ね」
【ポテト】 「ぴっこり」
【美凪】 「……これで全員、終わったでしょうか?」
【観鈴】 「うん、全員紹介し終わったね」
【佳乃】 「それじゃあ、あらためて…でっぱーつ!」
【みちる】 「でっぱーつ! …んに? 美凪、これからどっか行くの?」
【美凪】 「うん、あのね──」
そして、わたしたちは賑やかにかのりんの家へと向かった。
【観鈴】 「そうだ…泊まってるっていえば、今うちにもね──」
☆☆☆
春原陽平視点
【女】 「重ね重ねすまなかったな」
白衣を来た女性──おそらくは女医だろう──は、何度目かの僕への謝罪の言葉をかけてきた。
あの後、男共々水をぶっかけられた僕は、水をかけた本人に謝られ、
衣服が乾くまで建物の中で休んでもらいたいと招き入れられていた。
建物へと入る時に見た看板には、『霧島診療所』 と書かれていた。
入り口のドアから中へ入ったところは待合室になっていて、クーラーがよく効かされていたためとても快適な空間になっていた。
今はその奥にある診療室で女性とともにお茶を飲みながら休んでいる。
【女】 「そこの男にからまれてしまった人にまで水をかけてしまうとは…」
【春原】 「いえ、気にしてないですから」
【女】 「うむ。そう言っていただけると助かる。…私の名は霧島聖という。見てわかると思うがこの診療所の医者だ」
長い黒髪と白衣が似合う、かなりの美人だ。多少、性格がきつそうだが…
白衣の下に見える 『通天閣』 のロゴが入ったシャツは趣味なんだろうか。
【聖】 「そして、そっちにいる下僕は国崎往人という食い詰め者の自称旅芸人だ」
【国崎】 「おい」
待合室の掃除をしていた国崎と紹介された男は手を止めてこちらへつっこみを入れる。
【聖】 「ふむ。一文無しの居候の方が良かったか?」
【国崎】 「………」
国崎は何も言い返せずに掃除を再開した。
元は黒ずくめの格好をしていたが、今は通天閣シャツへと着替えている。
ちなみに僕の姿も通天閣シャツだ。
【聖】 「彼は昨日の朝方、商店街のはずれで倒れているところを近隣の住民の方々に発見されて、うちに運ばれてきてね。
何事かと思い診察してみれば、なんのことはない、空腹と疲労による栄養失調だったんだ。
とりあえず意識をもどした彼から話を聞いてみれば、行き倒れたらしい。
だが、こちらも商売なんでな。当然診療代は貰わなければならないんだが…
保険証を持っていないどころか、金もなければ行く当てもないという体たらくらしいんで、
こうしてうちで雑用の仕事をやらせて、診療代を稼がせてやっているというわけだ」
…なんかどっかで聞いた話だな。
【春原】 「それが、なんでさっきみたいな事態に…」
【聖】 「ああ、彼が 『自分は大道芸で今まで生きてきたんだ、金なら本職の仕事で稼がせてもらおう』 などと
偉そうなことを自信満々に言うのでな、私も客寄せ程度にはなるだろうと思い許可を出したんだよ」
聖さんはそこまで言ってお茶を飲んだ。
僕もお茶を飲む…香りも味もとても良かった。
【春原】 「うまいっすね、このお茶」
【聖】 「ははは、ありがとう」
【国崎】 「俺も喉が渇いているんだが…」
【聖】 「水を飲みたまえ」
【国崎】 「………」
黙ってモップがけをする背中に哀愁が漂っている…
【聖】 「…話は戻るが、いざ大道芸をやらせてみればあのザマだったということだ。
客寄せにならないだけならまだしも、通りがかる人に怖がられるなど論外だ」
【国崎】 「まて、それに関してはこっちの事情も聞いてくれ」
【聖】 「なんだと言うんだ」
【国崎】 「あそこまで酷い状況になったのは、あんたの妹とあの謎の生物のせいでもあるんだぞ」
【聖】 「ほう」
【国崎】 「最初、俺が普通に人形劇をやっていたら…」
『あたし達も協力するよ!』
『でも、あたしはこれから学校だから、ポテトにあたしの分も頑張ってもらうね!』
『そうだ! ポテトも人形と一緒に踊ったりしたらいいんじゃないかなー!』
『…どうせなら目立つ場所がいいよね!』
【国崎】 「とか言って、あの謎の生物を俺の頭の上で踊るように命じて行きやがったんだぞ!
何度追っ払っても、すぐに俺の頭の上によじ登ろうとしやがるから、いい加減ほっぽっといたらああなったんだ!」
【聖】 「何を言うかと思えば、人目を惹くことに関しては佳乃のアイデアは成功しているだろう。
あとは君の努力が足りないということだ」
…いや、あの頭の上で踊っていた変なのは、あきらかに駄目押しです。
それよりも気になる単語が出てきた……謎の生物?
【春原】 「あんたの頭の上で踊ってたのって、電動のぬいぐるみじゃなかったの?」
【国崎】 「いや、謎の生物だ」
【春原】 「まじかよ」
【国崎】 「ああ、信じられないだろうが、あれは生物なんだ。
伝説上の生物や妖怪の類か…あるいは地球外生命体か、そこまではわからんがな」
国崎は真剣な顔つきで言う。
【春原】 「すげぇな…僕、地球外生命体なんて初めてみたよ…」
【聖】 「こらこら、あまり不穏当な言葉を使うな。…ふむ、春原くんもポテトをみたんだな」
【春原】 「ポテト?」
【聖】 「ああ、あいつはポテトと言ってな、我が霧島家の一員だ」
【春原】 「そうなんすか」
【聖】 「ちなみに現在の霧島家のランクは、トップが私の妹の佳乃、二番目が私で、三番目がポテト。
で、ランク外が国崎くんだ」
最後の国崎くんのところで、掃除をしている国崎を聖さんは指差す。
【国崎】 「…俺は、地球外生命体よりも下なのか…」
【聖】 「当然だ。まずはきっちりと掃除を仕上げることでポイントアップを計りたまえ」
【国崎】 「…やれやれ……だいたい、ポテトなんていうネーミングセンスはどうなんだ?」
【聖】 「なにを言う。佳乃がつけた名前だ、これ以上の名前など存在する分けがなかろう」
【国崎】 「…さいですか」
胸を張り断言する聖さんを見て、うなだれる国崎。
【春原】 「…まあ、ウリボウをペットに飼って、『ボタン』 なんて名づける奴に比べれば可愛いもんじゃない?」
【国崎】 「そんな、とんでもない奴がいるのかよ…」
【聖】 「なかなかに斬新な名前だな。…いや、むしろ惨殺と言うべきか?」
【春原】 「は、ははは…」
こんな会話をしていることが杏に知られたら、僕の命は無いな…
冷房が効いているというのに、背中に嫌な汗をかく。
【聖】 「ん? もうこんな時間か…」
聖さんは時計を見て、時間を確認したあとに突然思いついたように言う。
【聖】 「そうだ! 春原くん、スイカは好きかね?」
ビクッ
聖さんの発言に、呼ばれてもいない国崎が異常な反応を示す。
【春原】 「へ? え、えぇ…そりゃあ、好きですけど…」
何か嫌な感じがしつつも、正直に答える。
【聖】 「うん、そうかそうか、それは結構」
聖さんはすごく満足そうだ。
【聖】 「実はな、先日、スイカを少し買いすぎてしまってな…出来れば食べていって欲しいんだよ。
ちなみに、お持ち帰りもオッケーだ」
なんだ、そんなことなら…いくらでも食えるよ。
【春原】 「ええ、頂けるんなら喜んで食べますよ」
【聖】 「おぉ、それはありがたい。…ふむ、これで昼もスイカにすれば大分減るな…」
【春原】 「へ?」
【国崎】 「ちょっとまてぇえぇぇーーっ!」
突然、国崎が大声で叫んだ。
【聖】 「…なんだ」
【国崎】 「さすがの俺でも三食続けて山盛りスイカはきついんだが…」
【聖】 「食えるだけでも、ありがたいと言っていたではないか」
【国崎】 「そりゃ、最初のうちはまだ余裕があったからだ! さすがにあの量を毎食、食わされたら命の危険を感じるぞ!」
【聖】 「…なに、医者の私が出す食事だ、安心して食したまえ」
【国崎】 「妹が 『スイカをいっぱい食べたい』 と言っただけで、30個も買ってくるような奴の何を安心しろと言うんだ!」
……30個?
僕、聞き間違えてないよね…
【聖】 「佳乃がいっぱい食べたいと言ったんだ。食べさせたいと思うのが親心というものだろう」
【国崎】 「量を加減しろと言っとるんだ、馬鹿親が!」
【聖】 「待て…親馬鹿は良しとしよう、だが、馬鹿親は納得出来んぞ」
【国崎】 「溺愛も度が過ぎれば──」
【春原】 「だぁーっ! ちょっと、二人とも落ち着いて!」
言い合いがどんどん激しくなっていくので、無理やりにでも止めさせる。
【聖】 「ああ、すまんな春原くん」
【国崎】 「すまん、さすがに興奮しすぎた…」
【春原】 「外で大道芸をやってた時から気になったんだけど、焦っているっていうか…なんかいらついているのか?」
【国崎】 「…どうも、この町に来てからというものな……
着いたそうそう、ガキどもに大事な商売道具を蹴られて見失うは、夜通し探しても見つからずに行き倒れるは、
見つけ出して商売してみれば、ガキどもに石を投げられるは、妙な噂を立てられるは、
あげくの果てに、三食おやつに夜食まで山盛りスイカを出されてみろ。
……俺か? 俺が奇怪しいのか? それとも可笑しいのか? ふ、ふふ…ふふふふふふ」
…ヤバい、国崎がこわれはじめている。
【春原】 「く、国崎、落ち着けよ。これから良いことがあるさ」
【国崎】 「…ああ。そうだな…」
【聖】 「さて、話はまとまったようなのでスイカを切ってくるとするか…」
聖さんは片手にメスを持ち、待合室から診療室とは別のドアへと入っていった。
☆☆☆
ここまでで今回は終わりです。
以下、あとがきっぽいものです。
前回を読んでくださった方々、2か月もお待たせして申し訳ありません…
とりあえず話の中心になる戦国編から書いていたのですが…
最初のうちは順調だったのですが、いつの間にやらというか、気がついたときには、
あきらかにKey作品のSSの方向から外れてしまい、結果、使えるところ以外を残してボツにしました。orz
ここら辺のことは、本編が進んで改めて戦国編を書けるところまでいけば、そのときに説明 (言い訳) したいと思います。
ボツにする際に仕様を変えて、現代編と戦国編を交互に進めていく話にしましたので、そんなに先のことではないと思います。
まずは
>>437さん、すいません。
リトバスをまだプレイしていない方がいることの可能性を完全に忘れてました。orz
原作ストーリーのネタバレをしなくて良かったです…
ちなみに 『春原アフター?』 の方なんですが、
AIRとクラナドは全員総登場で、話の展開上、完全に原作ストーリーがネタバレします。
まあ、このスレを読んでいる方はこの二つはオッケーだと思うんですが、
問題は、KANONなんですが、現段階で戦国編で三人登場が確定の上に、原作ストーリーもネタバレしてしまうと思います。
ただ、登場するといっても本人が転生とかではなくて、あくまで当時の人物の役を演じてもらうだけですが…
ですが、原作の設定はそのまま使うことになるので、ネタバレという形になってしまうと思います。
ここら辺の詳しい理由も、この三人が登場するところまで書ければその時に説明しますが、
この三人に関してはとても重要な役割を演じてもらう上に、他に代わりがいませんので、話の都合上避けられません…
後はリトバスですが、現代編で五人ほど登場予定ですが、こちらは原作ストーリーのネタバレはありません。
キャラ自体は登場しますが、原作をプレイしていない方でも読めるような書き方をするつもりです。
先に書いたヘンテコRPGの様なグダグダな登場のさせかたはさせませんので、
原作をプレイしていない方にもそのまま読んで頂けたらありがたいです。
リトバスエクスタシーに関しては、書いている本人がまだプレイしていないのでネタバレも何もありませんw
とりあえず次回からは話の前に適当なテンプレを入れようかと思います。
さて、今回は観鈴がシリアス担当になってしまったので、春原と国崎には完全なギャグ担当になってもらいましたw
さらに、このSSで春原の絡んだ新しい設定を抱えて観鈴が生き残る大団円ENDを目指す以上、
春原達にはいろいろとやらなければいけないことがあります。
長々とそれぞれの出会いのシーンをやっている暇などないので、キャラ達には一気に登場してもらいました。
そこら辺が、神尾観鈴視点のところなんですが…
3人プラス1人と1匹の出会いのシーンはあんな感じで良かったんでしょうか…
一気に登場させるとはいえ、観鈴にとってはとても重要なシーンなので、必要最低限の会話はさせたつもりなんですが…
とりあえず、7月29日の隣町の花火大会という大きなイベントの数日前までには、
なんとか佳乃と美凪の問題を解決してギャグパートに入りたいものです。
予定としては、最初の2〜3日で佳乃を解決&美凪の伏線&他の設定の伏線
次の2〜3日で美凪の解決&他の設定の伏線
その後、直後か1日〜2日経ってから戦国編第一部へと入り、
ある程度進んで現代編と戻って花火大会といった感じですか…
次はもう少し早く書けたらいいなーと思います。
それではー。
キター
488 :
名無しさんだよもん:2008/08/24(日) 10:41:41 ID:RSt8mIlx0
おお!
続き楽しみだ〜!
読んだよ〜
いや待ちわびたのもあって面白いなぁ
続き期待してます
楽しみ保守
おお来てたか!乙です!
観鈴ちんいいペースでお友達つくってるな
ヒロイン3人(+ポテトとみちる)の絡みは原作であまりなかったから嬉しいぜ
そして国崎www
もうこれは例のせりふを言うしかないようだな
↓誰か例のAA頼む
ほすほす
494 :
名無しさんだよもん:2008/09/04(木) 16:09:42 ID:Zr6qn7M70
期待してますよ〜
495 :
名無しさんだよもん:2008/09/17(水) 22:31:28 ID:Ku4gvKR00
保守
保守
497 :
名無しさんだよもん:2008/09/23(火) 01:11:55 ID:rDgM0qJN0
保守
期待ほす
499 :
名無しさんだよもん:2008/09/25(木) 20:44:19 ID:QanP4u1U0
kitai
500 :
名無しさんだよもん:2008/10/04(土) 11:31:31 ID:SucuvdGD0
ほしゅ
捕手春原
ほしゅ
毎回長々とお待たせしてすみません。
>>335です。
まず、前回のミスの訂正です。
春原が名乗っていないのに、聖と国崎が春原の名前を普通に呼んでしまっています。
観鈴視点を挟んで場面が切り替わる間か、聖さんが名乗った後に名乗り返したことにしておいて下さい。orz
佳乃が、父親は自分が小さい頃に亡くなったみたいなことを言っていましたが、小さい頃に亡くなったのは母親の方でした。
父親は、聖自身が 「父親の亡き後すぐに診療所を継いだ」 と言っているので、そんなに前の話ではないと思います。
また、前回は第2話第1回という区切りです。
それでは、本編の続きです。
前々回、前回に比べて短めですがどうぞ。
不定期連載 春原アフター? (仮称)
※このSSは 【AIR】 及び 【CLANNAD】 の完全なネタバレを前提として書いています。
また、当分先の話になりますが 【KANON】 の一部のネタバレが出る予定です。
【リトルバスターズ】 に関しては、一部の人物は登場しますが、原作のストーリーに関してはネタバレはありません。
なお、今後の展開しだいでは、KEY各作品のネタバレ要素が増える可能性があります。
KEYのゲームで未プレイの作品がある方は、ご注意ください。
第2話 法術使いと記憶の羽 第2回
今、僕は町の診療所の待合室にいる。
診療所を訪れる人は、僕がここに来てからは一人もおらず、冷房が効いている待合室はシーンと静まり返り、アナログな掛け時
計の針がうつ、規則正しい音だけが響いている。
この部屋の本来の主は、さっきから診療所と繋がっている自宅の奥へと姿を消したままだ。したがって、待合室にいるのは椅子
に座って暇を持て余している僕と、その僕の目の前で黙々とモップがけにいそしむ、白地に通天閣という文字が胸元にプリントさ
れている、僕が着ているものと同じシャツが全くと言っていいほど似合わない──デザインやシャツということよりも、白という
色そのものが合わないのだろう──、目つきの悪い男の二人だけである。
外見からすると、どう見てもおおざっぱな性格にしか見えない男だが、手を抜くことなく部屋の隅々までしっかりと掃除してい
るところを見ると、この家の主に心底頭が上がらないことは容易に想像がつく。
【春原】 「なあ…」
【国崎】 「…なんだ?」
男──国崎といったか──は、モップがけの手を止めずに、僕に背を向けたままそっけなく返事をした。国崎はそのまま作業を
続けているが、僕と会話する意志はあるようだ。僕は国崎へと問いかける。
【春原】 「今の、自分の生き方に……疑問は持たないのかよ」
【国崎】 「…俺は──」
国崎は掃除の手を止め、僕の方へと向き直ろうとすると、いきなりふらついて倒れこむようにテーブルに手をついて体を支え
た。
【国崎】 「──!?」
【春原】 「……? どうしたんだ、大丈夫か?」
【国崎】 「…? …あ、ああ。いきなり立ちくらみがしてな──」
【春原】 「………」
国崎はまだ眩暈がしているのか、テーブルに手をついたまま目を閉じている。
【国崎】 「──もう、大丈夫だ」
【春原】 「そうか」
聖さんを呼んでこようかとも思ったが、平気なようだ。
【国崎】 「いきなり、昔のことがいろいろと頭に浮かんでな。少し驚いただけだ」
【春原】 「ふーん…」
【国崎】 「それで、さっきの話の続きだが──俺は今の生き方しか知らないからな…。
俺がガキだった頃、唯一の肉親だった母親に与えられたものは、この術 (わざ) だけだったんだ…。
僅かな間しか、親らしいことをしてくれなかったが…大道芸人としては、最高に優れていた人だったな」
子供の頃を思い浮かべているのだろうか、国崎は遠くを見るように語り出す。
【国崎】 「あの人がひとたび人形を動かせば、見ている人たちは皆、必ず笑顔になった。
疲れた顔をした大人も、寂しそうな子供も…」
大道芸人の女性が人形を自在に操り、人々を楽しませている情景が思い浮かぶ。その光景を、国崎はすぐ間近で見続けていた
のだろうか。
【国崎】 「そんな人が自分の親であることが、とても誇らしかったよ。
だから、俺もいつかはそんなふうになりたいと思って──」
突然、国崎は話すのをやめて考え込むと、何かに気づいたように一人つぶやく。
【国崎】 「──そうか。いつの間にか目的の本質を見失っていたんだな…」
【春原】 「……?」
【国崎】 「あぁ、すまない。…まあ、そういうことさ。この生き方は俺が求めたものなんだよ。もっとも、俺程度の力は母親が
やっていた域には程遠いがな」
【春原】 「………」
【国崎】 「…だから、まあ…納得してやってるよ。それに、成し遂げたい目的も…一つ、思い出したからな」
そう言いながら僕を見て、浅く笑う。
…というか──
【春原】 「いや、僕が言いたかったのは、一文無しで行き倒れた挙句に、女に養われるヒモという現状に疑問は持たないのか、
という事だったんだけど」
【国崎】 「…ほっといてくれ」
モップを杖がわりにして立ったまま疲れきった声で返事をする国崎に、待合室の奥にある扉の向こうから底抜けに明るい声が
かけられた。
【聖】 「はっはっはっ。春原くんにヒモ1号、おまちかねのスイカを持ってきたぞー」
陽気なセリフと共に扉を開けて出てきた聖さんは、お盆の上に丸々二つ分はあるだろう量のスイカを皿に切り分けて持ってき
た。
【国崎】 「そんな呼び方はやめてくれ。それと、俺はスイカを待ってなどいない」
国崎は心底嫌そうに拒絶する。そんな国崎を楽しそうに眺めながら聖さんはお盆を机の上に置くと、僕が座っている隣へと腰
を下ろした。
【聖】 「駄目か? 呼びやすくて便利なのだがな。それに文字として書いてみると、なかなかに可愛らしい感じの愛称じゃな
いか。佳乃は喜びそうだぞ」
聖さんはヒモという呼び方が、えらく気にいっているようだ。
…いや、なんというか、国崎が嫌がる呼び方だからこそ楽しんでいる感じがする。
【国崎】 「自分よりも年下の女、それも学生なんかに言われたら、俺はマジで泣くぞ」
それはキツそうだな──試しに想像してみるか。
神尾家の台所に立つ観鈴ちゃんが、笑いながら僕に話しかけてくる。
【観鈴】 『はい、ヒモ1号さん。朝食だよ』
【観鈴】 『ヒモ1号さん、ジュース飲む?』
【観鈴】 『にはは…ヒモ1号さんと観鈴ちんは、お友達だからね』
…くっ、これはかなりキツいものがあるなぁ…。
──ふと、故郷の妹の顔が脳裏に浮かぶ。その表情は呆れと諦めを含んだ、今にも泣き出しそうな顔だ。
【芽衣】 『……お、おにいちゃん……ヒモって…どういうこと……』
【春原】 「ぬぅおおぉおおぉおぉぉぉーーーーーっ!!!」
【国崎】 「うおっ!?」
【聖】 「気でもふれたのかね、春原くん」
いきなり僕の上げた奇声じみた絶叫に驚いた二人が、そろって僕を見る。
【春原】 「い、いや。なんでもないっす…。それよりも、ヒモなんていう呼び方は、精神衛生上よろしくないのでやめたほうが
いいんじゃないかと」
【聖】 「そうかね? …だが、もともと呼び始めたのは君なのだが」
聖さんは、僕の突然の反対意見にいぶかしげに聞いてくる。
【春原】 「そうでしたっけ…? じゃあナシっていうことで」
【聖】 「まあ、私はどちらでもかまわんが」
【国崎】 「いや、ぜひとも止めてくれ」
国崎は強い口調で言い切るが──、
【聖】 「まあ、そんなことよりもスイカを食べたまえ」
【国崎】 「そんなこと…」
聖さんは国崎の要望をそんなことの一言でさらりとかわすと、待合室のテーブルの上、スイカが載せられた皿を盆の上から僕
達の前へと差し出す。
【春原】 「おー、スイカを食べるのなんて去年以来だなー」
【国崎】 「──くっ! 視界に入ることすら不愉快極まりない物体がっ!」
国崎はスイカを見ながら、苦々しく吐き捨てるように言う。
【春原】 「えらいいいようっすね」
【国崎】 「昨日からこの赤い悪魔に、どれだけ俺が苦しめられたと思っているんだ!」
国崎から、血の涙すら流さんばかりの切実さが、ひしひしと伝わってくる。
【国崎】 「皿の上の物を食い終わっても、次から次に出てきやがる」
【春原】 「まるで、わんこ蕎麦だな」
【国崎】 「ギブアップすれば終わるだけ、わんこ蕎麦の方がマシだ! コレは泣いて許しを請いても終わらないんだぞ!!」
【春原】 「そ、それはキツそうだね」
【国崎】 「見ろ、この禍々しい呪われた紅き血のごとき色を! まぎれもなく、これこそが悪夢の具現──」
【聖】 「いいかげんにせんかっ!」
スイカに対する思いを語っているうちにヒートアップしてきた国崎の弁舌を、聖さんは素早く立ち上がりスイカをのせてきた盆
でバシッと頭をはたいて止めさせる。
【聖】 「スイカに対して禍々しいだの悪夢だのと、スイカを作った方々に失礼だとは思わないのか」
【国崎】 「俺が見た昨夜の悪夢を、こと細かく聞かせてやりたいもんだな」
国崎は悪夢とやらを思い出しているらしく、怒りに体が震えている。…しかし、スイカの悪夢って…
【春原】 「あんた、どんだけ面白い夢を見たんだよ」
【国崎】 「面白くなんかねぇ! 真夜中のような暗闇の中、視界の届かないはるか先の方まで埋め尽くされたスイカぐらいの大
きさの赤い毛玉が、四方八方からピコぴこピコぴこ音を出しながら、跳ね回って追いまわしてくるんだぞ!」
予想以上にホラーな夢だな、そりゃ…。
【聖】 「それは、なかなかに楽しげな──君の逃げ惑う様が」
【国崎】 「ははは。ずいぶんと他人事な発言だなー、おい」
満面の笑顔だが、声が裏返っているあたり、忍耐もそろそろ限界に近づいていそうだ。
【国崎】 「だいたい、失礼云々なんてのは、佳乃が 『パイ投げみたいに投げ合ったら面白そうだよね』 と言ったとたん、乗り
気で実行しようとした奴のセリフとは思えないんだがな」
【聖】 「はっはっは。それはここいら一帯の風習なのだよ」
【国崎】 「そんなもんがあってたまるかっ!」
【春原】 「それ、どんな由来で出来たんすか…」
僕の呆れ半分の問いに、聖さんは椅子へ座りなおし腕を組むと、目を閉じて厳かに語りだす。
【聖】 「──江戸時代。ちょうど今のような夏頃に、この地で戦 (いくさ) が起きたらしい。そして、その戦には、この土地に
住んでいた者達も数多く参戦した。大量に死人が出る程の、それは凄惨な熾烈を極めた戦いだったそうだよ。
やがて戦が長引くと、村人達が加わっていた陣営は敵勢力におされてきた。だが味方の刀槍はことごとく折れ、矢弾も尽きて
しまった。敵の攻撃が止むことなく襲ってくる中、もはやこれまでかと村人達が諦めかけた時、ふと、村人の一人が、自分達が
丹精をこめて耕してきた畑を見ると、それは見事な西瓜が出来ていた。
『よし、これだ!』
村人達は力を合わせて大量の西瓜を手に取り、敵へと投げつけ、叩きつけ、勝利を収めた。それ以降、この地では夏になると
戦勝の祝祭として、西瓜を投げ合うという風習が出来たんだそうだ」
【国崎】 「まてまてまて」
【春原】 「それ、手の込んだ作り話っすよねぇ!?」
スイカを武器にして勝っちまう戦争ってなんなんだよ。
【聖】 「さあ、そんな霊験あらたかな、この町名産のスイカはいかがかな」
聖さんが語り終わると同時に、僕と国崎はつっこみを入れるが、聖さんは全く気にせずに僕達にスイカを進めてくる。
【春原】 「すっげぇ、うさんくさいんすけど!」
【国崎】 「あんた、このスイカを買ってきたときに、産地はどっか別の県だとか言ってなかったか?
だいたい、スイカぶつけてただけで、霊験とか全然関係ないだろうが」
【聖】 「まあ、それはそれ。…しかし、国崎くんは何故そこまでスイカを嫌うのだね?」
【国崎】 「だーかーらーっ! さっきから言っているだろうがっ! 食い飽きたと!!」
バシバシとテーブルを叩きながら国崎は叫ぶ。
【春原】 「…なあ、スイカの中身や皮を使った料理とか、本やインターネットで調べればいろいろあるんじゃないか?」
【聖】 「ふむ、妙案だな。…だが、致命的ともいえる欠点を言わせてもらえれば、私が面倒だから論外、ということなんだが」
【国崎】 「こういう女なんだ」
僕に向かって、嘆息まじりに言う国崎。既に予想はついていたらしく、落胆を通り越して呆れ果てているようだ。
【春原】 「…えーと、妹さんに作ってもらうとか」
【聖】 「死にたいのかね」
【春原】 「──はい?」
【聖】 「死にたいのか、と言ったのだ」
人の生き死にに関わっている時の医者は、こういう表情をするのだろうか。冗談など微塵も感じられないほどの真顔で、聖さん
は再度、僕に問う──いや、マジで怖いんすけど。
【春原】 「…あ、あはは。妹さんのお手を煩わせるなんて駄目っすよね」
【聖】 「いや、そういう意味ではないのだが。…まあ、いいか」
【春原】 「はあ」
【国崎】 「それにしても、春原に残りのスイカの半分を片付けてもらうとしてもだ、…先は長いな」
【聖】 「うむ。春原くんの頑張りに期待するとしても、まだまだ先は長いな」
【春原】 「いや、僕、そんなこと一言たりとも言ってないんですけど!」
いつの間にか、僕に押し付けようとしていやがるよ、この二人。
【春原】 「つーか、そもそもスイカってあとどれくらい残ってんのさ」
【聖】 「私と佳乃で、昨日丸々一個、美味しく頂いて……国崎くんが昨日と今朝で、合わせて十四個ほど平らげたから──
今、ここに持ってきた二つを入れて、残り十五個だな」
【春原】 「……あんた、よく生き延びれましたね」
どんだけ丈夫な体してるんだよ、こいつ…。しかし、僕の畏怖まじりの感想を国崎は鼻で笑う。
【国崎】 「ふっ。山の中を移動する時は、常にサバイバルだからな。富士の樹海でさまよった時には、白骨化した奴の持ち物
を漁って、賞味期限切れの保存食をゲットして生き延びたこの俺を甘く見るなよ」
【春原】 「……あんた、よく生きてこられましたね」
【聖】 「馬鹿は体が丈夫だという説を、実際に目の当たりに出来るとはな」
【国崎】 「なんだよ、その反応は」
僕達の反応が予想外だったのか、国崎は憤る。
【春原】 「んなこと言われても」
【聖】 「そもそも君は大道芸人なんだろう。なぜ山や樹海に行くんだ、観光にでも行ったのか?」
【国崎】 「いや、山は次の目的地に移動するときに国道沿いに行くよりも山の中を行った方が近い場合もあるし、なによりも
食い物をタダで調達できるからな」
【春原】 「…樹海は?」
【国崎】 「ある夏の日に、デパートの家電製品コーナーに置いてある全身マッサージ器に座って涼みつつ、地下の食品街で集
めてきた試食品という名の戦利品で優雅な昼食をとりながら、少し離れたところに並んでいる大画面テレビにたまたま流れてい
たワイドショーを見ていたんだが、樹海は観光地としても有名で賑わっているというのを特集で紹介していてな」
【聖】 「君は公共の場で、なにをやっているんだね」
【国崎】 「ちょうど御当地フェアをやっていてな、堪能させてもらったぜ」
国崎はまったく悪びれず、むしろ自慢げに聖さんに答える。
【春原】 「店員や警備員に止められなかったのかよ」
【国崎】 「店員が休憩で少なくなる時間帯を狙えば、デパートしだいでは20分ぐらいまでならなんとかなるぞ」
…機会があれば、僕も今度やってみよう。
【国崎】 「──んで、それを見たわけなんだが。観光地は客の財布の紐もゆるむし、中でもキャンプ場の親子づれは絶好のカモ
…もとい客になると思ってな。その時に居た所から夏が過ぎる前にたどりつけそうなんで、現地に向かったんだ。
結果は上々。気分よく、観光がてら遊歩道を散策していたんだが──ふと、樹海へ向かう自殺者は客にならないか、という考え
が頭に浮かんでよ。
さっきのワイドショーで、樹海で自殺目的で遭難する奴の中には、気が変わったときの為かどうかは分からんが、普通に金を持
って行ってる奴もいるという話をやってたのを思い出してな。どうせそのまま森で朽ちていくだけになる札や硬貨なら、俺の人形
劇を人生の最期に見せてやれば、感激のあまり、あっさりと財布ごとくれるんじゃないかと思ったんだ。
まあ、道からそれほど離れなければ大丈夫だろうって軽く考えたんだが…」
続ききてたー支援
【春原】 「そのまま遊歩道を外れて入り込んで、迷ったと」
【国崎】 「ああ、さすがにあん時は死を覚悟したぜ」
国崎は晴れやかなそうな笑顔で当時を振り返っている。
…爽やかに語るような思い出じゃないと思うんだが。
【聖】 「しかし、そんないわくつきの場所でそういう人達に、君のタネがない人形芸を見せたところで、オカルト的に怖がられ
るだけだと思うんだが」
【国崎】 「まあ、今、冷静に考えてみるとそうかもしれないな」
──ん?
【春原】 「タネがないって、なんのこと?」
【聖】 「ああ、それは──」
『たっだいまぁーーっ!!』
聖さんが僕になにか説明しかけたところで、診療所の玄関から、勢いよくドアが開く音と、女の子のものと思える元気な声が
聞こえた。
あとがきっぽいもの
※注意
【AIR】 に関する重要な内容をネタバレしています。【AIR】 をクリアしていない方は、読まないことを勧めます。
ここでの原作の内容とは
>>335の現段階での解釈によるものです。
当然、公式設定なんかではありませんし、そもそも原作の内容を見落とすなどしていて、解釈が間違っているかもしれません。
国崎の人形劇の欠点。原作ではDREAM編の観鈴ルートでラストまでひっぱりましたが、このSSではいきなり自己解決ですw
まあ、国崎の過去の記憶にも関わってくる問題なので、原作では話の展開上しかたありませんでしたが、このSSでは春原がら
みのオリジナル設定を利用して部分的に思い出してもらいました。わざわざSSでひっぱるようなネタでもありませんので。
この過去の記憶、原作ではSUMMER編で 「見聞きしたはずのことを忘れさせる」 と呼ばれていた術をDREAM編の回想シーンで
母親が使っていたという設定ですが、これは記憶を完全に消し去る 「消去」 ではなく、記憶の奥底へと押し込む 「忘却」、
あるいは、術者が指定したキーワードなどで記憶が戻るようにしたりもできる 「封印」という扱いですね。
言葉遊びみたいなものですがw
原作で封印だったとした場合は、観鈴ルート26日に途中まで思い出した第一段階解除のキーワードは 「転生体が見る夢の内
容が空を飛ぶ夢から、神奈の記憶の夢へと移った時」「夢の内容を転生体から直接聞いている」 で、観鈴ルート31日の完全解
除のキーワードは 「転生体のもとから離れようと行動した時」 「国崎自身が、出会った転生体を救いたいと願う意思」 と
いったところでしょう。ただ、これだけでは他の状況で対応できない場合も出てきますので、「国崎が転生体のそばを限界寸前
まで離れないが、救いたいと願う意思がある」など別のキーワードを設定していたり、これらにある程度、内容の幅を持たせて
いると思います。
そして、このSSの設定では母親が国崎に使ったものは 「封印」 です。さらに、これとは別に記憶を操る術として 「消去」
「忘却」も存在しています。
ちなみに、母親がかけた記憶の封印は解けていません。
現時点で、国崎が覚えている母親との再開以降の記憶の内容はというと──、
原作で、母親が国崎のもとから消えることとなった日よりも前に、母親が語って聞かせていた転生体に関する情報。
記憶を忘れさせた上に母親が突然姿を消してしまった際の影響による記憶の混乱や、幼かったためなどの理由で、漠然としか
覚えていなかったであろう母親との旅路。
母親の消失後、子供が一人で放浪しながら暮らしていくという過酷な状況の中で、母親の笑顔や、まだ見ぬ、空の少女の笑顔
を見たいという本来の目的すらも忘れてしまっていった旅路。
そして今回、国崎が思い出すことが出来たのは、母親との再開から共に旅をしている間のことと、母親を探す旅から空の少女
を探す旅までのこと、空の少女を笑わせたいという目的を明確に思い出しただけで、母親が封じた記憶は、まだ思い出せていま
せん。
それにしても、ボケとツッコミを満遍なくこなせるオールラウンダーキャラが3人もそろうと話がなかなか進みませんねw
次回で、ようやく春原と観鈴が合流できます。
それでは第2話第2回目終わりでーす。
乙
お疲れ様〜
518 :
名無しさんだよもん:2008/10/13(月) 04:31:05 ID:ehnH6OAp0
お疲れ
続き楽しみに待ってるよ
乙彼ー
520 :
名無しさんだよもん:2008/10/21(火) 20:07:36 ID:jmPtz9T00
ほしゅ
おおー凄い…
最近AIR知ってプレイした新参ですが楽しませてもらいやした
ぜひぜひ続き頑張ってください
乙です
国崎どうゆう生活してたんだwww
今回も面白かった。続き待ってます
久しぶりに覗いたけど、復活してたんだな!
乙!ポニテがなんたら
続きを楽しみにしてるぜ。
保守
ほす
職人よ、こい!
〜自動販売機前にて〜
観鈴「が、がお…。10円足りない…。」
男「ねぇ、そこの君。どうしたの?」
観鈴「えっと…ジュースを買いたいんですけど、お金が足りなくて…」
男「はははっ。それなら、僕が奢ってあげるよ。」
観鈴「えっ?いいんですか?」
男「それぐらいお安い御用さ。どれが飲みたいの?」
観鈴「え―っと…わたし、これ飲みたい。」
男「『どろり濃厚ピーチ味』…。変わった名前だな…。」
(ピッ)
(ガコン)
男「ほら。」
観鈴「わわっ、あ、ありがとうごさいます。」
男「礼には及ばないよ。ところで君、名前は?」
観鈴「わたし、神尾観鈴。」
陽平「僕は春原陽平。よろしくね観鈴ちゃん。」
観鈴「にはは。こちらこそ、よろしく。」
観鈴「お待たせ―。」
瑞佳「遅いよ観鈴。」
観鈴「にはは、ごめんごめん。」
名雪「わっ、またそれ買ったの?」
観鈴「うん。良かったら一緒に飲む?」
名雪「う〜ん…遠慮しとくよ。」
瑞佳「私も。」
名雪「万が一それ飲んで喉詰まらせたら危ないもん。」
瑞佳「でも、今までジュースで喉詰まらせたって話聞いた事無いけどね。」
名雪「じゃあ瑞佳、今度飲みやすくする為に牛乳と一緒に飲んでみたら?」
瑞佳「名雪、飲み物を飲み物で流し込むなんてシャレにならないよ。」
名雪「だよねぇ…。」
観鈴「ねぇ、二人。もしかして酷い事言ってない?」
瑞佳「そんな事ないもん。」
名雪「そんな事ないよ。」
観鈴「が、がお…。」
職人乙!
観鈴「あっ、陽平さん」
春原「観鈴ちゃん。偶然だね」
観鈴「えと、この前はありがと」
春原「へへっ、大した事じゃないよ」
岡崎「おい、春原」
春原「ん、どうしたの岡崎?」
(バキッ)←岡崎が春原を殴りつける音
(ドカドカッ)←岡崎が春原を蹴り上げる音)
(ドサッ)←春原が廊下に倒れこむ音)
春原「いきなりなにするんですかあなたは!」
岡崎「うるさいこの偽物め。さっさと正体を表せ。」
春原「僕は正真正銘、本物の春原陽平だよっ!」
岡崎「何言ってんだ。本物の春原が女子に声をかけられる訳ないだろ」
春原「僕ってそんなに信用ないんですかねぇ!?」
岡崎「とりあえず今から高速二十倍で阿波踊りをやってみろ。お前が本物ならそれが出来るはずだ」
春原「そんなの一度もやった事ないですよねぇ!?」
観鈴「にはは、陽平さん達って面白い」
岡崎「おい、春原。お前のせいであの子に笑われたじゃねぇか」
春原「それって僕が悪いんですかねぇ!?」
お、新しい人が
友達ができているみすずちんもいいな
瑞佳ってONEの子だっけ?
春原「岡崎、メシ食いに行こうぜっ!」岡崎「食いに行くったって、どうせいつもの購買だろ?」
春原「へっへっへっ、今日の僕は一味違うぜ?これを見よ!」
ピラッ
岡崎「…一体どうしたんだ?そんな一万円なんて大金」
春原「実は今朝、実家から生活費が送られてきてね。どっちにしろあまり使い道なんてないから、親友の為に少し使おうと思って」
」
岡崎「なるほどな。なんでも頼んでいいのか?」
春原「別に構わないけど、なるべく安くしてもらうと助かるよ」
岡崎「それじゃあ、お前おしんこ、俺Bランチな」
春原「あんた鬼ですねぇ!?」
岡崎「冗談だ」
春原「信じられないっす…」
岡崎「つか、野郎だけじゃ寂しいから渚達も誘っていいか?」
春原「大歓迎さっ!」
岡崎「お―い。渚、杏。一緒にメシ食いに行かないか?」
渚「いいんですか朋也くん?」
岡崎「あぁ、ちなみ代金はコイツ持ちだ」
杏「へぇ〜、陽平にしては気前がいいじゃない」
渚「春原さん、優しいです」
春原「へっ、僕はいつでもゲームボーイさっ!」
岡崎「春原、それを言うならプレイボーイな」
wktk
岡崎「そんなこんなで、俺達は現在学食にいる」
渚「何かいいましたか朋也くん?」
岡崎「いや、何でもない。忘れてくれ」杏「ちょっとそこ、早く食べる物決めちゃいなさい。早くしないと時間が無くなっちゃうわよ?」
渚「す、すみません」
岡崎「じゃあ俺、このカツカレーでいいや」
渚「わたしはAランチをお願いします」
杏「私は牛丼ね」
岡崎「よし、これで全員頼んだな」
春原「ちょっと待ったぁ!!!!」
岡崎「えっ、誰お前?」
春原「その反応酷すぎやしませんかねぇ!?」
岡崎「気にするな、冗談だ」
春原「気にするよっ!てゆ―かどうして僕だけ除け者にされなきゃいけないんですかねぇ!?大体今日の昼食は僕の奢りだろう!?」
岡崎「なに言ってんだ。春原のものは俺の物、俺のものは俺のものだ」
春原「いったい何言ってるのか僕にはさっぱり分かりませー」
(バチャーン)
春原「ぅぅぅわっちゃあぁぁあぁぁぁ!?」
岡崎「どうした春原、某カンフー映画俳優のマネか?」
春原「ちげえよ!なんか僕の背中にものすごく熱いのがかかったんだよっ!」
渚「だ、大丈夫ですか?春原さん」
春原「くぅぅ、渚ちゃんは優しいねぇ。それにしても誰がいったいこんな事をしたんだ?」
杏「ねぇ。それって多分あそこにいる子じゃないの?」
?『ごめんなさい、なの』(オドオド)
優しいねぇ。それにしてもいったい誰がこんな事をしたんだ?」
杏「ねぇ。それって多分あそこにいる子じゃない?」
?『ごめんなさい、なの』(オドオド)
光臨乙!
渚「あっ、澪ちゃん」
岡崎「なんだ、渚の知り合いか?」
渚「はい、上月澪ちゃんって言って、わたしの演劇部の後輩です」
春原「渚ちゃんの後輩か。うん、それなら僕にやった事はチャラにしてあげるよ」
澪『でも、一応お詫びするの』
春原「別にいいけど、具体的になにをするのさ?」
澪『今度お弁当作ってくるの』
春原「マジで!?」澪『大マジなの』
岡崎「やったな春原。おそらくお前の人生における最初で最後の手作り弁当だ。有り難く頂けよ」
杏「そうね。今後異性から貰う機会なんて二度とないんだから、この機会を逃さない手はないわね」
春原『あんたら揃いも揃って酷すぎですっ!』
澪『ところでお弁当何時がいい?』
春原「へへっ、何時でも大歓迎さっ!」
澪『それじゃあ明日作るの』
春原『マジで!?』
澪『大マジなの』
岡崎「お前ら案外いいコンビだな」
観鈴(そう言えば、あの時のお礼まだ陽平さんにしてないなぁ)
名雪「うう〜。お願い、瑞佳。ノート写させて〜」
瑞佳「…名雪。何度も言ってるけど、少しは自分の力で努力しようよ…」
観鈴(あっ!お弁当を作るって来るっいうのはどうかな?男の人はみんな喜ぶってお母さん言ってたし)
名雪「うう〜。これでも一応寝ないように努力はしてるつもりだよ〜」
瑞佳「…そのセリフ、相沢君が聞いたらきっと怒ると思うよ?」
観鈴(今日はさすがに無理だから明日でいいかな。よし、観鈴ちんファイト!)
名雪「そう言えば、祐一達帰って来るの遅いね」
瑞佳 「う〜ん、多分学食の方で何かあったんじゃない?」
保守あげー
ほ
541 :
名無しさんだよもん:2008/12/21(日) 18:33:37 ID:jt65D49r0
保守
良いね良いね
543 :
名無しさんだよもん:2008/12/26(金) 09:05:21 ID:iXuzWLLJ0
保守
544 :
名無しさんだよもん:2009/01/05(月) 07:21:21 ID:I3Ds9VTW0
保守
浩平「そんなこんなで放課後だよもん」
瑞佳「……浩平、一体何の真似?」
浩平「なぁに、ちょっと瑞佳を真似ただけだ。流せ」
瑞佳「流せないよ!それにそれ絶対わたしの真似なんかじゃないよ!」
美凪「……そっくりでしたで賞。ぱちぱちぱち」
浩平「おっ、サンキュー美凪。どうだ相沢、羨ましいだろう?」
祐一「別に羨ましくともなんともないぞ」
茜「…では、私から残念賞として練乳ワッフル無料券を」
祐一「丁重に断らさせて頂く」
茜「…そうですか…では、これは美坂さんに」
香織「あ、有り難く頂いておくわ(後で栞にでもあげましょう)」
澪『どうしたの?』
栞「いえ、少し寒気が…風邪でも引いたんでしょうか…」
佳乃「風邪は万病だよぉ?なんならお姉ちゃんに看てもらう?」
栞「ありがとうございます佳乃さん。でも、もう大丈夫ですから」
佳乃「良かったよぉ〜」
澪『心配したの』
栞「すいません」
美汐「風邪を引いた時には首にネギを巻くとよいでしょう」
澪『初耳なの』
佳乃「うわぁ〜、美汐ちゃん物知りだよぉ」
美汐「誉めたって何も出ませんよ霧島さん」
佳乃「うぬぬぬぬ〜これはかのりんも負けられないよ〜」
美汐「いいでしょう霧島さん。せの挑戦、私なんかでよろしければ、いつでも受けさせて頂きましょう」
栞「美汐さん、その言い方、なんだかおばさん臭いですよ」
美汐「……そんな酷な事はないでしょう」
546 :
名無しさんだよもん:2009/01/12(月) 21:43:44 ID:q1AuP0Ji0
hosu
すいません、別の人間ですが
>>280の続きから
??「よしよし、友達思いの良い子だな」
観鈴「なでられた……にははっ」
春原「………む。」
??「そんな良い子には、もっと面白いものを見せてやろうっ!」
観鈴「わぁっ。何だろう?」
??「見て驚くなよっ」
春原「……さっきから、すっごいうさんくさいよねぇ。どうせまた似たような奴でしょ」
??「あ、お前には見せてやんないから」
春原「客に向かって酷い言い方っスね!?」
??「さあ、いくぞ」
ぴょこぴょこ(歩いた)、
たったったった(走った)、
くるんっ(飛んで宙返り)
??「どうだっ!すごいだろっ」
観鈴「わ〜。すごいすごいっ、何も無い所で飛んだっ(ぱちぱち)」
春原「…………………………………………で?」
??「さあ、今日の出し物はこれでお仕舞いだ!」
春原「もう終わりとか、パネェっス!!」
??「お代を置いてから帰ってくれよな!」
春原「誰が払うんだよ今の内容でっ!」
観鈴「どうしよう、私お金ジュース代しか持ってない……」
春原「観鈴ちゃん、こんなの真に受けなくていいのっ」
観鈴「で、でもっがおっ……」
春原「(ぺちっ)」
観鈴「い、痛い」
??「変な2人組だな……」
春原「あんたに言われたく無いっスねっ」
「さ、観鈴ちゃん。そろそろ行こう」
観鈴「う、うん」
??「ちょっと待てっ!お代はっ?」
春原「もうちょっと面白かったら考えたけど、今のはちょっとねぇ」
??「なんだと。俺の渾身の人形劇が面白くなかったとでも?」
春原「今のが渾身なの?今までどうやって生き……って、ぐっ……ぐるじ……」
観鈴「わっ。面白かったっ!すごい面白かったです!」
春原「はぁ……死ぬかと思った……」
観鈴「陽平さん平気?」
春原「このままここに居たら窒息死させられそうだよ」
??「……やはり、最近の若い奴にはもう人形劇は受けないのか……」
観鈴「そんなことないよ。人形がぴょこぴょこ動いて、可愛かった」
春原「ま、この子は別としてさ。そのままじゃお金稼ぐの難しいんじゃないの?」
??「うーむ……そうか」
春原「さ、今度こそ行くよ。観鈴ちゃん」
観鈴「う、うん」
春原「それにしても、何か変な奴だったね」
「気付いたら、あの変な生き物も居なくなってたし……」
観鈴「………………」
春原「観鈴ちゃん?どうしたの?」
観鈴「……私、やっぱりちょっと行ってくる」
春原「えっ?」
観鈴「陽平さんは、そこでちょっと待っててっ!すぐ戻ってくるからっ」
??「ん?お前はさっきの」
観鈴「あ、あのっ。これ、ちょっとしか無いんですけど、さっきの劇の」
??「お代か。ありがたい、貰っておく」
観鈴「……私、神尾観鈴っていいます」
??「あ?」
観鈴「さっき、一緒に居たのは、春原陽平さん」
「えっと……。お名前……聞いても、良いですか?」
??「ああ、国崎往人だ」
観鈴「国崎……往人さん……」
「また、観に来ますねっ」
「陽平さんと一緒に」
国崎「ああ。こんなので良ければ、いつでも見せてやるぞ」
観鈴「はいっ」
続けたまえ
では続きではないのですが、短いものを職人降臨祈願に…
観鈴「ううーん…………」
春原「暑いなー」
観鈴「えっと…………」
春原「ん?」
観鈴「どうして、陽平さんが私の教室に居るのかな」
春原「いいじゃん、別に。誰も居ないんだし。今日の補修、観鈴ちゃんだけなんでしょ?」
観鈴「そうだけど、何だか恥ずかしいな……陽平さんは、補修平気?」
春原「僕?今日は無いよ。岡崎も最近相手にしてくんないし、すっげぇ暇なんだよね」
観鈴「そうなんだ……にははっ」
春原「……あと、ちょっとだけ心配でさ」
観鈴「え?」
春原「何でも無いよ、僕ってお人好しだなぁと思って」
観鈴「うん。陽平さん、すっごく良い人。私、色々助けてもらってる」
春原「……観鈴ちゃんだけだよ、そうやって真っ正直に返してくる子」
観鈴「うーん……」
春原「どうしたの?」
観鈴「ここだけわからない所があるの」
春原「どれどれ…………うっ」
観鈴「陽平さん、わかる?」
春原「ごめん、僕……数式見てると過呼吸出そうになるんだよね……」
観鈴「そ、そうだったんだ…どうしよう、ビニール袋持ってない……」
春原「昔のトラウマが原因でさ……年々症状が悪化してきてて、今じゃ数字を見ただけで吐き気がするんだ……」
観鈴「カバンの中に何か……あ、巾着とかじゃ、やっぱり駄目かな……が、がおっ」
ぺちっ
観鈴「い、痛い……」
春原「観鈴ちゃんはそろそろ突っ込みを覚えた方がいいかもね」
観鈴「でもこれ、本当にわからない……」
春原「僕には何かの暗号に見えるね」
観鈴「これが最後なのになぁ……」
春原「じゃあ、それが終わったら遊べるんじゃん」
観鈴「!」
春原「ん?何か急に表情が真面目になったけど」
観鈴「陽平さんっ、今からちょっと黙っててね」
春原「ど、どうしたのいきなり」
観鈴「集中して頑張るっ。早く終わらせる」
春原「ふうん……そっか。じゃあ、僕邪魔みたいだからもう帰るよ」
観鈴「!」
春原「………………あの、服の裾掴まれてると帰れないんだけど」
観鈴「にははっ……私やっぱり頑張らない」
春原「……わかったわかった。ここに居るから、そんな泣きそうな顔でこっち見ないでよ」
観鈴「観鈴ちん、ぴんち……」
春原「…………じゃあさ、それ終わらせたらジュース奢ってあげるから頑張りなよ」
観鈴「わわっ。本当?」
春原「今日だけだからね」
観鈴「ありがとう、陽平さんっ」
春原「二度目は無いからね」
観鈴「うんっ」
春原「何か可哀想だから奢ってあげるだけだからねっ」
観鈴「うんうんっ」
春原「……………………………」
観鈴「私、頑張るっ………………カリカリ(机に向かって集中)」
春原「…………今度は、観鈴ちゃんが僕に十万円頂戴ね」
観鈴「うん」
春原「あと次世代ゲームが欲しいなぁ」
観鈴「うん」
春原「お嫁に来てね」
観鈴「うん」
春原「良いんかいっ」
「……まあ、いっか。僕は昼寝でもしてようかね」
観鈴ちんと春原が教室に居るコラが秀逸すぎてつい
では、スレ汚し失礼しました
557 :
名無しさんだよもん:2009/01/14(水) 18:00:38 ID:hnuozMWG0
もう少しいてもいいのに・・・
もっといてほしいな
ほす
age
561 :
名無しさんだよもん:2009/01/21(水) 03:03:43 ID:O3RQMZrV0
age
上げ
563 :
名無しさんだよもん:2009/01/25(日) 01:50:28 ID:Tb33bHwN0
age
カーププレイで横浜を戦力外通告になった石井琢を獲得
真っ赤に染まらせてあげます
すいません誤爆しました
捕手
ほしゅ
保守
569 :
335:2009/01/31(土) 09:02:57 ID:0KxC88q30
お久しぶりです。何ヶ月ぶりかの投稿です。
とんでもない遅筆ですが、一応少しずつは書き続けています。
まずは、>>516-
>>523さん、感想ありがとうございます。
>>522さん、なんとか書くペースをもっと早くして本編への伏線を張った国崎の今までの生活の番外編も書きたいな、と思っています。
それでは、地味にひっそりと続けていけたらいいなーと再開します。
不定期連載 春原アフター? (仮称)
※このSSは 【AIR】 及び 【CLANNAD】 の完全なネタバレを前提として書いています。
また、当分先の話になりますが 【KANON】 の一部のネタバレが出る予定です。
【リトルバスターズ】 に関しては、一部の人物は登場しますが、原作のストーリーに関してはネタバレはありません。
なお、今後の展開しだいでは、KEY各作品のネタバレ要素が増える可能性があります。
KEYのゲームで未プレイの作品がある方は、ご注意ください。
第2話 法術使いと記憶の羽 第3回
玄関の方を見ると、観鈴ちゃんと同じ制服を着た女の子が派手に靴を脱ぎ散らかしていた。
【女の子】 「お姉ちゃん、あのね、あのねっ!」
女の子は慌てて靴を脱ぐ間も下を見ながらこちらに話しかけている。そして靴を脱ぎ終わると同時にバタバタと僕達の方へ
息をきらせながら走りよってきて聖さんの前に立つと、大きく息を一つ吐いてから両腕を広げながら振り上げた。
【女の子】 「あのねっ、お客さんがどっさりいっぱいてんこもりで大混乱なんだよぉ!」
【聖】 「佳乃、帰ったらまずは挨拶だろ」
大混乱なことを自覚しつつも全く落ち着かずに早口でまくし立てる女の子に、聖さんはゆっくりと優しい声で諭す。
【佳乃】 「あっ。…え〜と、ただいまっ!」
【聖】 「ああ。おかえり」
と、彼女は少しだけ落ち着いたようで周りを見渡す余裕も出来たのか、国崎に気づくと笑顔で挨拶をする。
【佳乃】 「往人くんも、ただいまぁ」
【国崎】 「ああ」
彼女の言葉に国崎はぶっきらぼうに答えた。…こいつも、もうすこし愛想よくできないもんかね。
しかし、彼女はそんな国崎の態度にも満足げにうなずくと、ふと僕の方を見て──
【佳乃】 「…だれ?」
首をかしげながら言った。
【聖】 「彼は春原陽平くんと言って、国崎くんの人形劇の被害者第1号さんだ」
【国崎】 「ちょっとまて」
【佳乃】 「うわぁ〜っ、それはそれはゴシュウショウさまだよぉ」
【国崎】 「おいっ!」
【春原】 「表現として、間違っていないんじゃないか」
【国崎】 「お前に水をぶっかけたのは、そこの女だろうがっ!」
国崎が聖さんに向かって指をさして怒鳴るが、聖さんは鼻で笑いながら、
【聖】 「私のは、診療所の前で他人様に迷惑をかけている不届き者に、水をかけて目を覚まさせようとした際の不可抗力だ。
君の意図的なグレーゾーン真っ只中、犯罪一歩手前の行為と一緒にしないでくれたまえ」
【国崎】 「くっ…!」
国崎はとっさに反論しようとするが言葉が見つからないようだ。…このままだと、また罵り合いが始まっちまうな。
僕としては、国崎に対するフォローなんかよりも女の子の紹介の方が大切なんだよね。
【春原】 「まあまあ。それより、その娘は?」
【佳乃】 「あたしは、霧島佳乃。聖お姉ちゃんの妹だよ」
僕が聞くと、女の子は僕の方を向いてにこやかに名乗った。
聖さんの長い髪とは対照的に髪は短くしているが、顔立ちはたしかに聖さんに似ている。
元気さが体から溢れているような娘で、行動や言動はどことなく年齢よりも幼く感じさせているが、そのことに違和感はなく、
むしろ彼女の魅力の一つとして見ることができる。右の手首に巻いている黄色いバンダナがとても印象的だ。
【佳乃】 「陽平くん、だよね。よろしくだよぉ〜」
彼女はバンダナをまいている方の手を差し出して握手を求めてきた。僕はその手を握り挨拶を返す。
【春原】 「うん。よろしくね」
性格の良さそうな娘だなー。
観鈴ちゃんも可愛いけど、この娘もアリだよなぁ。聖さんも性格はキツいけど美人だし。
こんな美人姉妹と同じ屋根の下に住めるんなら、国崎のような奴隷待遇でもいいんじゃないかと思えてくるよ。
──僕がそんなことを考えていると、国崎は思い出したように佳乃ちゃんに話しかけた。
【国崎】 「それで、お前はなにを慌てていたんだ」
【佳乃】 「………はっ。そうだ! お客さんがいっぱい来てるんだよ! みんなみんなあたしのお友達なんだよぉ!」
【春原】 「ひょとして、外に待たしてるの?」
このくそ暑い中を。
【佳乃】 「うん。診療所に患者さんが来てたら家の方に呼んだほうがいいかなと思って、お姉ちゃんに聞きに来たんだよぉ」
佳乃ちゃんがそう言うと聖さんは真剣な表情をした。
【聖】 「それはいかん、佳乃のお友達なら歓迎しなくては。すぐに診療所に連れてくるんだ」
その言葉に国崎も深刻な表情をして続ける。
【国崎】 「見ての通り今日も客はゼロだからな──」
その言葉が終わらないうちに、聖さんがいつの間にか右手に持っていたメス──いつ、どこから取り出したのかも全く分からなかった──を、
国崎の喉元へと凄い速さで突きつけると、国崎は顔をひきつらせて黙り込んだ。
【春原】 「『今日も』 って…」
【佳乃】 「わかったよぉ〜」
佳乃ちゃんは国崎たちの行動を気にも留めず、入って来たときと同じように慌てて外へ出て行こうとする。
【聖】 「ああ、佳乃」
【佳乃】 「うん? なぁにー?」
聖さんの言葉に佳乃ちゃんは振り返る。
【聖】 「お友達は何人いるんだ?」
【佳乃】 「うーんと…3人だよ。…あっ、ポテトも入れると4人ね」
【聖】 「わかった。行きなさい」
【佳乃】 「はぁーい」
佳乃ちゃんは元気な声で返事をすると外へと出て行った。それを見送った聖さんは椅子から立ち上がると、
【聖】 「さて、佳乃のお友達をもてなす準備をしなくては」
【国崎】 「掃除の方は完璧だが」
国崎の言葉に聖さんはうなずくと、手早く指示を出す。
【聖】 「よし。それでは国崎くんは飲み物と私が切り分ける追加のスイカを運びたまえ」
【国崎】 「在庫一斉処分だな!」
【聖】 「そのとおりだ」
こいつら……。
絶妙なまでに息の合った手際のよさに僕が呆れていると、
【聖】 「春原くんはどうする? 少々騒がしくなるかもしれんが、スイカを食べていくかね」
【春原】 「え、ええ」
【聖】 「では、我々は準備をするから、佳乃たちとここで待っていてくれたまえ」
【春原】 「あぁ、いや、僕も手伝いますよ」
【聖】 「そうか。そうしてくれると、ありがたい」
このままここにいてもスイカを無くなるまで食わされそうだし、水をかけられた服も夏の強烈な陽射しで少しは乾いただろうから、
このタイミングで帰ってもいいんだけど、佳乃ちゃんの連れてきた友達が女の子たちならスイカパーティーに参加しないという選択肢はないよな。
……むさくるしい男ばかりならすぐに退散しよっと。
【聖】 「それならば、飲み物とスイカは春原くんに手伝ってもらおう。国崎くんは診療所の店じまい──玄関の札を 『臨時休業』 にかけかえて、
表をかるく掃き掃除と水をまいてきてくれ。お客さまには粗相のないようにな」
既に玄関に向かっている国崎は、聖さんの言葉にこちらを振り返らずに、左手を肩の高さまで上げると親指を立てて気の引き締まった声で返した。
【国崎】 「了解した」
そのまま国崎は玄関から外へと出ていく。
【春原】 「むちゃくちゃ、やる気があふれてますね」
【聖】 「スイカを食わなくとも減らせるのがよほど嬉しいのだろう。今頃、外で 『ひゃっほう!』 とでも言って小躍りしているのではないかな」
聖さんの言葉が終わるやいなや、外から 『ひゃっほう!』 という声が聞こえてきた。
【聖】 「……それでは、台所に行くとするか」
【春原】 「…そっすね」
待合室の玄関や診療室とは別につけられているドアから、霧島家の本宅へと移動する。ドアをくぐると真っ直ぐな廊下が続いていた。
先を歩く聖さんの後ろに僕もついていく。
【春原】 「それにしても──店じまいって…いいんすか?」
【聖】 「かまわん、どうせ客などこないだろう。今は町の中心部、商店街周辺と住宅街は人が出払っているし、町の外周部の農家や漁師の家は、
車でこちらに来るよりも私の往診の方を好んでいるからな」
途中、ふすまが開け放たれている客間や、ドアが閉められているトイレや浴室を通り過ぎ、2階へと続く階段のある突き当たりを左へと曲がりながら、
聖さんの話を聞く。
【春原】 「はぁ…」
【聖】 「こっちだ」
台所の入り口は曲がった先を少し行った右側にあった。中へ入るとそこは台所と居間として使われている十五畳程の部屋になっていて、
部屋の中央には大きめの木製のテーブルと椅子が、壁際には新しい造りの食器棚や年代物の茶箪笥等が並んでいた。
入ってきた所と反対側の離れた所には、勝手口と思われる扉がついている。
【聖】 「さて、と。私はスイカを切るから、君は戸棚からグラスを出してジュースと氷を入れてくれ」
【春原】 「ういっす」
戸棚を開け、適当なグラスを人数分出して並べてから、冷蔵庫からジュース、冷凍庫から氷を出す。
【春原】 「そういや、さっき聖さんが言っていた町の人が出払ってるって、なんなんすか?」
【聖】 「うん? あぁ、……なんとかいう、財団…だったかなんだか、まぁ、金のある連中が金をばらまいたからだ」
【春原】 「…あの、全然わからないんですけど」
【聖】 「ふむ。…春原君はこの町は歩いてみたかね?」
【春原】 「え、えぇ、ついた時に宿を探して一通りは」
【聖】 「それならば、旅館や民宿などをまわったのか。どんな感じだった?」
【春原】 「金がなくて住み込みで働けないかって話してみたんですけど、どこも断られましたよ。
それも悩むそぶりすらない身も蓋もない断られ方でしたよ。いくらとび込みのバイト応募っつったって……。
綺麗で広い砂浜があるし、宿も他の町よりも多くあるみたいだから、夏場はかきいれどきじゃないんですか?
…あの砂浜、遊泳禁止とかのオチつきじゃないですよね」
【聖】 「ああ、普段ならな」
【春原】 「ふだん?」
【聖】 「君の言うとおり、本来、夏場はこの町の貴重な収入源なんだ。まぁ、近年は採算などの問題でこの町に駅のあった鉄道が廃止されたり、
バスで山を抜けて行ける隣町に、新しいリゾートビーチやホテルなどが次々と出来て、人の流れがそっちにもっていかれてはいるが……。
まぁ、それでもそれなりに夏場は人が来ていたんだ」
【春原】 「そりゃあ大変っすね」
【聖】 「あぁ、しかもそれだけではないぞ。とくに腹立たしいのが隣町に新しく出来た、総合病院の成金院長だ。
あそこのおかげで、うちの客が相当数そっちに流れてしまった。
しかも奴め、うちの客をとっただけじゃ飽き足らず、ぶくぶくと太ったビール腹ふらわして笑いながら、私にむかってこんなことを言いやがった」
『どうかね。君もこんな小汚らしい診療所なんかさっさとたたんで、うちで働かないかね』
『こんなひなびた町なんかに居たら、男日照りも長いだろう。わしの息子を紹介してやってもいいんだぞ。なんなら、わしが相手をしてやろうか』
『医者なんぞ辞めて、女らしく家庭に入ってのんびりすごしたまえよ。愛人というのもアリだぞ。フハハハハッ』
【聖】 「ええい! 思い出すだけでもいまいましいっ!」
聖さんは怒鳴りながらドンッ!と、包丁を勢いよく振り下ろしてスイカをたたっきる。下のまな板ごとぶった切りかねない感じだ。
【聖】 「わたしの体をじろじろと舐めまわすように見ながら言ったんだぞ! あのセクハラタヌキッ!」
ドンッ! ドンッ! と、怒りを力にかえて何度もスイカを両断する。
【春原】 「ひ、聖さんっ! スイカがみじん切りになっちまうよ!」
【聖】 「はぁ、はぁっ。…そうだな。わたしとしたことが取り乱してしまった。こんなことでは私も国崎くんのことをどうこう言えないな」
そう言うと聖さんは額にかいた汗を白衣の袖でぬぐってから、バラバラに切られたスイカを皿へと移す。
【聖】 「話をもとに戻すとだ、いつもの夏は海水浴場としてなりたっているんだが、今年は事情が違ってな…」
【春原】 「なんか、あったんすか?」
【聖】 「名称は忘れたが、どこぞの金をたらふく持っている輩が、この町の砂浜一帯を一定期間借りきったんだよ。なにか調査をしたいとか言ってな」
【春原】 「はぁ!? 借りきるって……この町って、砂浜のレンタルなんかしてるんすか?」
【聖】 「そんなことするわけないだろう」
【春原】 「じゃあ、どうやって…」
【聖】 「なに、役人の上の連中や土地の権力者と話をつけることが出来れば大抵の無理も通るということが、
また一つ証明されたというだけのことだろう」
【春原】 「いや、それにしたって…行政とかが正当な理由があってやるんならまだしも、
そんな無茶苦茶なことをしようとしたら住民運動とか起こるんもんなんじゃないんすか?」
【聖】 「ああ、そこで金をばらまいたんだよ。
先に言った類の連中はむろん、この町に住んでいる旅館などの経営者から商店街の面々をはじめ、
町と他をつなぐ交通機関でもあるバス会社やタクシー会社など町に関わってくるような組織団体、そしてこの町の住民の全てに補償という名目でだ。
商売をしている店に渡された金額だけでも、この町の過去の夏の売り上げのピーク時の数倍もの金が配られたわけだ。
それも手際よく、常に先手をうつ形でな。そりゃあもう、すがすがしいくらいだったぞ。
バラマキとはこういうものなのかというお手本のようなものだったな。おかげで住民運動もなにも全くなかったほどだよ」
【春原】 「そ、そりゃあ、すごいっすね。……それにしても、ずいぶんとまた極端なパターンですね」
普通この手の話は補償なんて名前だけのお飾り、あっても一番後回しで住民訴訟が定番なんだけど。
【聖】 「ああ。さらに、夏場は浜辺一帯で海水浴場などとして使わなければ、漁師などは通常通り作業をしてもかまわない。
借り受ける砂浜一帯には工事などはいっさい行わない。これらの約束を違えた時はさらに莫大な違約金も支払うとまで言われた。
そうなれば、夏場は遊んでいるだけでも金が手に入るのだからな。一部の旅館などの、商いに偏屈なプロ意識を持っている者でもないかぎり
騒ぎなんて起こさないし、そういった連中も町の大半が受け入れている状態では、何も言わなくなる」
【春原】 「……あのー」
【聖】 「うん?」
【春原】 「昨日、この町の女の子に砂浜で遊ぼうって誘われたんですけど…」
【聖】 「砂浜に一時いる程度なら問題は無いそうだから、それくらいなら大丈夫なはずだ」
【春原】 「でも、僕がそれなら泳ごうよって言ったときに特に何も言われなかったっすよ。まあ、結局泳ぎませんでしたけど」
【聖】 「それはおかしいな…。住民を集めての説明会や、回覧板に記載してまわす以外にも、学校のほうでも指導をしているだろうから、
この町の住民がそこらへんのことを知らないということはないはずなんだがな。
…まあ、連中の関係者が調べものをしている時以外は、住民の砂浜への立ち入りなんかは特に規制しないらしいから、
町の住民やその知り合い一人が少しの間、砂浜で遊ぶぐらいは何も言われないさ」
【春原】 「そうなんすか」
観鈴ちゃん、そこらへんのこと忘れてたのかな。昨日、泳いだりしないでよかったな。
【聖】 「そもそも、この町に来る途中に必ず通過する道路に看板を設置、宿に来た人への注意、海岸周辺への大まかな場所への立て札等の設置なども
したようだが、それらに気づかずに辿りついてしまう観光客がいる可能性もゼロではないからな。
ただ、先にも言ったように連中もべつに完全封鎖なんてしたいわけではないようだから、大っぴらに集団が海水浴でもしなければ問題はないだろう」
【春原】 「へーっ…。そういや、僕も民宿とかに入ったときになんか言われた気がするような…」
昨日は暑さと空腹と疲労でもうろうとしてたからな。そんな説明聞く前にバイトを断られた時点でふらつきながら外に出ちまってたんだよな。
──それにしても、聖さんの話を聞き終わったが、聞けば聞くほど馬鹿げた話としか思えないんだけど…。
【春原】 「そんなことしてまで、その連中はなにがしたいんすかね?」
【聖】 「さあな。たしか…学術的な調査とか、のたまってた気がしたが……」
【春原】 「学術的って…あの砂浜って、なんか妙な歴史でもあるんですか?」
【聖】 「この町で生まれ育ったが、特に思い当たらんな……年寄りの作り話から子供の噂話にすら変わったものなどなにもない。
いたって普通、平凡的なありきたりといえる日本の砂浜だ。」
【春原】 「うーん…」
【聖】 「……ああ、噂話で思い出したが、幽霊話なら最近よく聞くようになったな」
【春原】 「いや、さすがにそれは違うんじゃないんすかね」
【聖】 「──だろうな。なんにしろ、そういう事情で、この夏限定の異常事態に我が町は突入したというわけだ。
ただ、旅館などは隣町に遊びに来ている観光客でホテルなどが満室でとれなかったり、騒がしいところに泊まるのを避ける客などが僅かに泊まりに
来ているから、一応は開いているところもあるが…大半はこの機会に旅館の連中が逆に他の場所へ旅行に行こうとしていたりするようだし、
そういうところでなくとも余剰になることが分かっているバイトをわざわざ雇うところもないだろうしな。
君が門前払いされたのも、そこら辺が理由だろう」
【春原】 「納得がいきましたよ」
【聖】 「さらに他の住人達も、ふってわいた臨時収入を使って旅行などへ出かける家庭も少なくないようだからな。
この町の人口も、今年の夏はめっきりと減ることだろうさ」
そういや、昨日、町を歩いているときも人がやけに少なく感じた気がしたな…。
この暑さのせいでおもてに出ている人がいなかっただけかと思ってたんだけど。
やけに浮かれているガキどもを見かけたのも、夏休みというだけでなく、旅行なんかの計画がいきなり立てられたからってのもあるのかもな──
『るぐるぉおぉるおおぉぉおぉぉーーーーーー!!!』
【春原】 「……………」
【聖】 「……………」
診療所の方から、得体のしれない叫び声が家の外まで響き渡るほどの大きさで聞こえてきた。
【聖】 「なんだ、今の悲しみとせつなさが混ざったような雄たけびは…」
【春原】 「いや、国崎の悲鳴だと思うんすけど…」
つーか、なにやってるんだあの馬鹿は…。
【聖】 「とりあえず、これで四人分の追加のスイカは全て皿に移し終わったぞ」
【春原】 「こっちもジュースの準備はOKです」
【聖】 「では、行くとするか」
【春原】 「ういっす」
無残にもバラバラにたたっ切られたスイカ山盛りの皿を載せた盆を二つ、給仕のように両手に持って台所を先に出て行く聖さんの後に続いて
廊下に出ようとしたところで、ふと、部屋の隅の棚の上に飾られている写真が目に入る。
そこには白衣を着た恰幅のいい男と子供をいとおしく見つめる女性、そして二人の幼い女の子が写っていた。
【春原】 「……………」
【聖】 「おーい、春原くん?」
廊下の先から聖さんの呼ぶ声がした。
【春原】 「あっ、はーい。今、行きます!」
………
……
待合室へと戻った僕達が最初に目にしたのは股間を押さえてふるえながら床にうつぶせにうずくまっている国崎だった。
【春原】 「なにしてんだ、こいつは……」
国崎は僕に気づくと苦しげな表情で、
【国崎】 「き、気をつけろ…春原」
【春原】 「はい?」
国崎の忠告らしき言葉に戸惑っていると──
【観鈴】 「陽平さん!?」
聞き覚えのある声が聞こえた。慌ててその声のした方を振り向く。
【春原】 「へっ……あれ? 観鈴ちゃん!? なんでこんなとこにいんの?」
そこには、部屋の端の方でびっくりしている観鈴ちゃんと佳乃ちゃんがいた。
『んにっ! もっと怪しい奴をはっけん!』
【観鈴】 「あっ!」
【春原】 「え?」
どっかから妙な内容の言葉を放つ可愛らしい声が聞こえたかと思うと、観鈴ちゃんが驚いてあげた声と同時に、
なにか小さい影が僕の足元に高速で滑り込んでくるが、ジュースを載せた盆を体の正面に両手で抱えていたため、
それがなんなのか判別するのに遅れて──
『みちるキィーーーック!!』
【聖】 「ストップだ」
【?】 「にょわっ!?」
謎の必殺技?の掛け声と同時に、隣にいた聖さんが両手に盆を持ったまま僕の前へと片足を突き出した。
直後、その足になにかが引っ掛かったかと思うと、小さな子供が僕の横を後方へ勢いよく転がっていき壁にドスンッと派手な音を立ててぶつかる。
【子供】 「う〜にゅ〜〜……」
子供はそのまま呻き声を上げながら動かなくなった。壁を背にひっくり返った状態のまま目を回しているようだ。
【春原】 「な、なんだったんだ…」
【聖】 「さて…」
と、僕達が呆然と子供を見ていると見知らぬ女の子が僕の横を通り過ぎて女の子のもとへパタパタと駆け寄っていく。
【女の子】 「みちる、大丈夫?」
【子供】 「う、うにゅっ…にゅ〜」
女の子が子供を介抱しているのを横目に聖さんはスイカをテーブルに置いてから、すぐに子供を診始める。
僕も続けてテーブルへジュースを置いたところで、部屋の端に避難していた観鈴ちゃん達が近づいて話しかけてきた。
【観鈴】 「陽平さん、大丈夫だった?」
【春原】 「あー、うん。僕は大丈夫だけど…」
なぜか診療所にいる観鈴ちゃんに答える。
【春原】 「観鈴ちゃんは、なんでここにいるの?」
【観鈴】 「わたし? わたしは、かのりんのお家に遊びに来たんだよ」
【佳乃】 「そういうことだよぉ〜」
二人は友達だったのか。意外なつながりな気もするが、まあ、同じ学校なんだろうしな…。
僕らがそんなことを話していると、一人床に倒れたままの国崎がつぶやいた。
【国崎】 「だ、誰か…俺もかまってくれ……」
その言葉に反応したのか、どこかに隠れていたらしい例の白いヌイグルミみたいな犬らしい生物がピコピコと怪しげな音を出しながら
国崎に近づいていくと、倒れているあいつの頭にピコ、ピコと前足で軽く叩いて──
【謎の生物】 「ピッコリ」
と、ため息でも吐いているかのように一言。
【国崎】 「……………」
国崎はそのまま沈黙した。
あとがきっぽいもの
前回にようやく合流しますとか書いといて、最後で少し会話して終わりという伏線編の一つという形になってしまいました。
説明だらけの内容でコントシーンも少ないので、もう少し先まで書いてから投稿したかったのですが、
こんな何ヶ月も間をあけている状況はもっと嫌なので適当にキリの良いところで。
それではまたそのうちにー。
執筆有難うございます。
保守
保守
583 :
名無しさんだよもん:2009/02/03(火) 01:31:22 ID:GKpI54Gr0
保守
保守
>>569 >観鈴ちゃんも可愛いけど、この娘もアリだよなぁ。聖さんも性格はキツいけど美人だし。
こら!気が多すぎw
また続き投下してくだしあ
ほしゅ
ほしゅ
ほっほっほっ
春原みたぃなぅんkと観鈴を一緒にするなょ( `_ゝ´)ムッ
ほしゅ
がお
にはは
ほしゅ
ひぃぃっ!
595 :
名無しさんだよもん:2009/02/15(日) 02:46:23 ID:RKO9ENwN0
保守
保守
ほしゅ
保守
599 :
名無しさんだよもん:2009/02/24(火) 11:27:59 ID:ouuhTXYY0
保守
保守
601 :
名無しさんだよもん:2009/02/27(金) 18:34:09 ID:pmCCrmVM0
保守
602 :
名無しさんだよもん:2009/03/07(土) 00:33:24 ID:iZ2ap87A0
保守
保守
604 :
名無しさんだよもん:2009/03/12(木) 23:27:46 ID:qGOQGeal0
観鈴 あ〜おなかすいたな〜
春原 俺も腹減ったよ
春原 あ、僕はあんぱんにするけどどうする?
春原 カレーパンはちょっと置いてないなぁ〜
春原 そういえば昨日夢に君が出てきちゃって〜ははは
春原 えっ君も?偶然、超偶然!これって運命かも!
春原 そうだ今度遊びに行こうよ!僕の知り合いが海の家やっててさ〜!
春原 よしじゃぁ決まり!明日の同じ時間、ここで集合ね!
岡崎 おまえなにやってんの、一人で
春原 ・・・
春原はバーナード・ワイズマンに似てないか?
606 :
名無しさんだよもん:2009/03/13(金) 15:04:39 ID:cHEyIXQW0
>>605 というか、春原ってビジュアル的には良くいるキャラじゃね?
>>606 絵的には、AIRラストの晴子さんの顔が春原にしか見えない俺。
北川が(ry
保守
嘘だと言ってよ!春原ッーー!
風子「離して下さい観鈴さん!春原さんは風子と一緒にヒトデ彫りをするんです!」
観鈴「だめっ!陽平さんはわたしと一緒にトランプするの!」
佳乃「だめだよぉ!陽平くんはかのりんと一緒にお散歩するの!」
春原「ひいっ!!お、岡崎助け…」
朋也「えっ、誰お前?」
春原「それはあまりにも酷すぎやしませんかねぇ!?」
美凪「……進呈」
春原「えっ、これ僕にくれるの?」
朋也「やったな春原。もしかしたらラブレターかもしれないぞ」
春原「マジっ!?それじゃあさっそく中身を…」
観鈴(じーっ)
春原「ん、どうしたの観鈴ちゃん?」
観鈴「別になんでもないですよ―(ぷいっ)」
春原「ねぇ岡崎。なんか観鈴の機嫌が悪いみたいなんだけど」
朋也「お前恐ろしいほど鈍感だな」
春原「ねぇ観鈴ちゃん。それ僕にも一口頂戴」
観鈴「にはは。いいよ、はいっ」
春原「(ドクドク)おっ、なかなかイケるじゃん」
朋也「うぇ、まじかよ。俺それ飲んだ時一瞬死にかけたぞ」
渚「そうなんですか?」
朋也「あぁ。あれは早苗さんのレインボーパンを食べた時の感覚に似てたな」
秋生「おい小僧。お前早苗が一生懸命作ったパンを馬鹿にするのか?」
朋也「オッサンだって人の事言えねぇだろ」
秋生「馬鹿言え!確かに早苗が作ったパンはむちゃくちゃマズい。しかしだな…」
観鈴「あの、少し後ろを振り向いた方が…」
秋生「ああん?後ろがどうしたん言うんだ…」
早苗「(プルプル)」
秋生「ち、違うんだ早苗!これには海よりも深―い訳があってだな…」
早苗「私のパンは…不人気だったんですね―っ!!!」
秋生「うおおお―っ!!!それでも俺はお前のパンが大好きだぁぁぁ!!!」
観鈴ちんが幸せそうでいいな〜
人こない…
616 :
名無しさんだよもん:2009/04/06(月) 17:30:57 ID:Zu6DcbCP0
ほしゅ
保守
618 :
名無しさんだよもん:2009/04/19(日) 20:22:09 ID:ib4T6nMt0
保守
観鈴は死んだが春原は死んでないよ
みちる「あぁ―!!今朝の変態誘拐魔〜」
朋也「よし、春原。自首してこい」
杏「今度は今よりましな人間になって戻って来てよね」
春原「あんたら鬼ですねぇ!?」
観鈴の葬儀は?
にはひいぃっ
書きたいのはやまやまだが人いないしネタないし
俺、まだいるよ。
無理でした
はぁ?
作品こいこい
一日遅れたけど観鈴ちん誕生日おめでとう保守
629 :
名無しさんだよもん:2009/08/10(月) 23:02:17 ID:rhwfuPKD0
保守
まだ人がいた事に感激
631 :
名無しさんだよもん:2009/08/13(木) 03:27:26 ID:CWZbGNI20
新しいネタがなくなって半年以上か
まだいるほうが珍しいよなぁ
ですよね
この間Airを初めてやった
最後泣きそうだったけど
がんばって幸せな場所にたどり着いたんだから
泣いたらだめだって感覚になって泣けなくなったな
634 :
名無しさんだよもん:2009/08/15(土) 04:23:26 ID:5+T0yqOGO
むしろお前の発言で思い出したせいで、こっちの涙腺がやばいっつう話だな
……ヤバい、ちょっとトイレいって泣いてくる。
635 :
名無しさんだよもん:2009/08/15(土) 17:00:58 ID:78VbiAl90
>>633 何故そんなキミがこのスレを開いたのか甚だ疑問である
638 :
名無しさんだよもん:2009/10/14(水) 21:07:55 ID:iahRACeB0
神スレage
ほしゅっ
保守っ
641 :
名無しさんだよもん:2009/11/30(月) 22:21:45 ID:Xzbl/CO90
ほしゅっ
642 :
名無しさんだよもん:2009/12/21(月) 11:27:49 ID:d9KM6IrH0
保守
643 :
名無しさんだよもん:2010/01/04(月) 04:37:46 ID:BFGs+H0b0
保守っておく
644 :
名無しさんだよもん:2010/03/05(金) 12:36:50 ID:1TbLY8eX0
ほしゅ
645 :
名無しさんだよもん:2010/04/09(金) 02:26:23 ID:RhGTv41l0
おい一年経ったぞwwwwwwwwwww
なんでまだあるんだ
646 :
名無しさんだよもん:2010/05/10(月) 10:12:23 ID:gcLk7twLO
残す
似てるか?
アニメで春原がどろり愛好家だったから立ったネタスレにマジレスするなよw
649 :
名無しさんだよもん:2010/06/14(月) 13:11:32 ID:PfrctpE0O
残す
650 :
名無しさんだよもん:2010/06/30(水) 22:45:56 ID:v/0R8C7LO
☆
651 :
名無しさんだよもん:2010/07/15(木) 17:48:17 ID:M0xIh9OQ0
保守
>>280の続き
※本家様とは別人です。勝手に作ってゴメンなさい。あと実力とか全然劣ってます。
ひぃぃ!股の下くぐるから許してください。
観鈴「す…凄い。」
??「法術って言ってな、俺の家系に代々伝わる、まぁ魔法みたいなもんだ」
観鈴「わっ魔法使いだ」
春原「へぇ…うさんくさっ!観鈴ちゃんこの不審者は放っといて…ってひぃぃ!本当に死んじゃいますから!命って大切だよ!」
??「命なんて安いモノさ。特に俺のは。」
春原「それ、どっかで聞いたセリフなんですけど…まぁいいや。ボクは春原陽平!馬子にも衣装な超美男子さっ」
「それでそっちのちっこいのが観鈴っていうまぁ変な奴だな」
??「俺は国崎往人、わけあって各地を旅してる全然不審者じゃないはぐれ人形遣い純情派だ。」
春原「めちゃくちゃ怪しいんスけど…ひぃぃ!怪しくないです!健全立派なはぐれメタルだと思いますっ!」
観鈴「わっ陽平さんが首絞められてる上に、少し間違った。にはは」
春原「そんな笑ってないで助けてよー観鈴ちゃん!」
最高「…そんなことよりお前ら!俺は今、猛烈に腹が減っている!俺の人形劇を見たよな?見たんだから払うモノがあるだろ?」
観鈴「えっと…あっ拍手しなきゃ!」
最高「違う!貨幣経済と言うものを知らないのか。お代を払えと言っているんだ。」
春原「フフフ。面白い冗談だねキミ。まさかケンカ百戦百勝のこのボクからお金を取ろうとするなんてさっ」
最高「…何か行ったか?」
春原「いえ、楽しい人形劇だったのでたんまりとお支払いしたいなぁと思っただけです。」
観鈴「わっ陽平さんが1円も入ってないポケットから必死にお金をさがしてる…ここはわたしがなんとかしないとっ」
「えっと国崎さん。要はお腹が空いてるんですよね?」
最高「そうだ。それに喉も渇いている。」
観鈴「えっと、じゃあジュース買ってきますね。それでいいですか?」
最高「ああ、頼む。」
653 :
名無しさんだよもん:2010/07/18(日) 23:40:23 ID:88rZxFlK0
ぱたぱたぱた
春原「…それでアンタ、何で旅してんの?…その目つきの悪さだと、ヤバい仕事に手をだしてヤーさんに追われてるとか?」
最高「違う。どうだっていいだろ」
春原「その否定のし方、ははーんさては女だね!周囲の目をごまかせてもこのすのぴー様の目はごまかせないさ!」
最高「…」
春原「ひぃぃぃっ嘘ですスンマセン。クツ舐めますから許して下さい!」
最高「半分、当たりかもな。」
春原「え?嘘…マジに女なの?」
最高「あぁだがただの女じゃない。翼を持った少女を探している。」
春原「…お兄さん、黄色い救急車から逃げ出して来たんですか?」
最高「違う。母親から聞かされた伝承だ。」
…この空の向こうには、翼を持った少女がいる。
…それは、ずっと昔から。
…そして、今、このときも。
…同じ大気の中で、翼を広げて風を受け続けてる。
最高「そんな少女が本当に居るのかは分からないが、それが俺の旅路の目的なんだ」
春原「翼を持った少女か…案外近くに居るかもね。」
最高「なにっ?」
春原「1人知ってるんだ。そんな奴。いっつも変なモノ見つけて突っ走って、それでいっつも墓穴掘ってるけど
いっつもニコニコ笑ってる。でも時々、ふっと空を見上げて遥か高みの何かを見てる
…それで大空に必死で自分の翼を靡かせて、いつか風といっしょに遠くへ登って行ってしまうようなそんな奴。
いっつもボクの周りくっついてきて、わけわかんないことばっかやってるけど、そいつと居ると不思議と飽きなくってさ。
きっと、アンタが探しているのもそんな少女なんじゃないかな?」
最高「…」
ぱたぱたぱた
観鈴「陽平さーん。往人さーん。ジュース買ってきたよー。」
??「ぴこっ」
654 :
名無しさんだよもん:2010/07/22(木) 14:32:58 ID:mRne+NdE0
>>653 物語自体はそこそこ面白いけど、改行が多くて見づらいwww
もう夏ですねぇ
まだあるのかお
もう夏じゃないからこのスレはいらないのかな
このスレ2007年の暮れからあるのか
いつまで続くんだろうな
にはは
659 :
名無しさんだよもん:2010/10/22(金) 19:58:34 ID:dzc31ZAW0
定期的に保守する俺はなんなんだ
660 :
名無しさんだよもん:2010/11/01(月) 01:38:08 ID:PngbA6dPO
何度読んでも癒される
661 :
名無しさんだよもん:2010/11/03(水) 02:11:24 ID:sU/k6JeA0
何度も読みに来る奴がほかにもいるとは驚きだ
662 :
名無しさんだよもん:2010/11/16(火) 10:21:50 ID:BbvNjrnQ0
なんだかんだでやっぱいいよな、これは
うむ、良いものだ
664 :
名無しさんだよもん:2011/01/07(金) 13:12:25 ID:zjj5PKfL0
うむ
665 :
名無しさんだよもん:2011/02/11(金) 20:49:19 ID:Ui6PAeph0
ふむ
まだ残っていたか
666 :
名無しさんだよもん:2011/03/06(日) 01:35:19.17 ID:6f3cMrFlO
残ってたか
667 :
名無しさんだよもん:2011/03/25(金) 10:39:04.82 ID:WVRgLbnQ0
我慢できないので保守
668 :
名無しさんだよもん:2011/04/10(日) 23:16:59.80 ID:aIEXar6Y0
久々に
669 :
名無しさんだよもん:2011/05/08(日) 07:23:42.69 ID:w8H1oH4Y0
ほ
670 :
名無しさんだよもん:2011/06/03(金) 14:43:14.52 ID:LQ7m2hX6O
ほす
まだあったのかよ
672 :
名無しさんだよもん:2011/06/03(金) 21:46:06.14 ID:M+C+pZN90
1年ぶりにきますた。もう続きはみれないのかなぁ・・
がんばって繋いでくれてる人たち乙です
673 :
名無しさんだよもん:2011/06/04(土) 20:31:34.83 ID:ZMAvtYAjO
最近このスレの存在を知った
一番最初に書いてた人戻ってこないかな…続きが読みたい
てか観鈴ちんと春原のゲーム出してくれたらマジで買うわ
674 :
名無しさんだよもん:2011/06/14(火) 01:04:44.48 ID:fw4UP9w4O
同じく最近このスレを知った。
なにこいつら禿萌えるwww
ずっといちゃついてればいいとおもうよ!
くすん…
676 :
名無しさんだよもん:2011/06/14(火) 22:36:42.30 ID:J1QLEbL8O
萌えるよね!
まだクラナド見終えるまで落ちないでくれ…!
678 :
名無しさんだよもん:2011/08/22(月) 03:43:59.14 ID:U5/aHGwT0
3年くらい保守している俺は古参ドヤッ
679 :
アイク:2011/09/10(土) 22:45:29.11 ID:GcIPdkUB0
スレが立ったときから見てました。
680 :
名無しさんだよもん:2011/10/05(水) 00:31:13.20 ID:YLHvqbV60
ほ…しゅ!
似てないだろw
☆
683 :
名無しさんだよもん:2012/02/04(土) 15:44:21.20 ID:aY7ofac7O
保守
684 :
名無しさんだよもん:2012/07/12(木) 12:37:51.95 ID:VjYRQ2NjO
保守
復帰カキコ
686 :
672:2012/07/23(月) 19:12:19.74 ID:bwDFtANh0
1年ぶりぐらいに来たらまだあったw
保守(`・ω・´)
遅れたけど観鈴誕生日おめでとう
保守
いつか知らないけど春原誕生日おめでとう
懐かしいな
保守
阿呆二人は見ててすごい和むよね
保守
がお
(´つω・。`)
まだあるか
で、保守する意味あんの?
もう3年くらい、保守レスしかない糞スレと化してるけど
岡崎「まだ、このスレ残ってたのか」
春原「へぇ、まだあったんだ。こんな糞スレさっさと落ちればいいのにね。」
観鈴「が、がおっ…私と陽平さんの思い出が消えちゃう…」
春原「………(書き込みっと)」
岡崎「ん?何してるんだ春原?」
春原「い、いやぁ、何か保守したい気分になっちゃってさぁ。あは、あははははははは…」
夏も終わったな。保守
そろそろクリスマス
保守
ほし
なんだかなぁ
夏が来たな