『今すぐおねーさんの部屋に来い』
そんなメールを送りつけられた正月の午後。
無視すると後が怖いので、いぶかしみながら来ヶ谷さんの部屋に入るとそこには阿鼻叫喚の光景が待っていた。
「うぇ〜、きもちわるい〜」
「すぅ……すぅ……」
酒臭い。甘酒だけでこんなに酔うのだろうかと思ったが、
床に転がされている空瓶を見るとどうやら飲んでいたのは甘酒だけではないようだ。
真っ赤な顔をしてぐったりしている小毬さん。すっかり酔いつぶれて寝入ってしまっているクド。
葉留佳さんはいつも以上にテンションが高く、鈴も起きてはいるものの焦点の合わない目をして座り込んでいる。
来ヶ谷さんと西園さんは……普段と変わらない様子だけど。
「うわぁ……ちょっと、これってまずいんじゃないの?」
「硬い事を言うな、少年。それより理樹君を呼んだのは聞かせてあげたい話があったのでな。鈴君、先ほどの話を頼む」
「ふにゃ?さきほどのはなし?」
「おとといの夜の話ですヨ。ね、鈴ちゃん?」
「あーあの話か。おとといはあたしが先にお風呂に入るって言ったら理樹も一緒に入ってきてくちゃくちゃ恥ずかしかったぞ」
「ちょ、ちょっと、鈴!」
なんて事を言うんだ、鈴は。酔っ払ってるせいで完全に自分が何を言っているのかが分かっていない様子だ。
慌てて鈴の口を塞ごうとしたものの、逆に来ヶ谷さんたちに捕まりロープで手足を縛られた上に猿轡まではめられてしまう。
「さて鈴君、じゃまをする不埒な少年も黙らせたから、ゆっくりと続きを話してくれないか」
「それで、理樹があたしをだっこするみたいに一緒にお風呂に入って、おっぱいを揉んできた……」
「ひゃあ、エロいですネ」
「どきどき……」
「それであたしも気持ちよくなってきたから、そのまま後ろから……」
(やめて!鈴、お願いだからそれ以上話さないで!)
……これは何て酷い拷問なんだろう。神様、僕が何か悪いことをしたのでしょうか。
その日はそのまま鈴が酔いつぶれて眠ってしまうまで赤裸々に性体験のことを白状させられ、
僕はひたすら皆のニヤニヤとした視線に耐えながら羞恥にもだえ続けていたのだった。
お約束どおり、翌日になると鈴は何も覚えていなかったらしい。
「なあ理樹、なんだかくるがやとはるかがあたしをにやにやしながら見てくるんだが、昨日は何かあったのか?」
……鈴、それは知らない方が幸せだと思うよ。