1 :
名無しさんだよもん:
自分が書きたいので作ってみました。
お気軽にどうぞ。
2 :
541:2007/11/15(木) 06:56:49 ID:F/EANrYb0
んで、さっそく。
タイトルは「うたをつぐもの(仮)」ってとこで。
激しくネタバレ。PS2版エンディングからの続き。
こんな感じの内容です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
クンネカムンの動乱から数年。束の間の平和は短く脆く、世には再び戦火の火種が芽吹き始めていた。
エヴェンクルガ族の若き武士(もののふ)タイガは世を巡り、未熟な己を鍛えていた。いつか仕えるべき主を探しながら。
戦乱の地を渡る内、ある戦いで彼は一人の女と出会う。白き仮面に面(おもて)を隠し、鉄扇を振るう美しき女と。
一瞬でしかなかったが、それはタイガの行く先を大きく変える事となった。
白き獣を引き連れた少女、成長したアルルゥと出会うことで。
二人は奇妙な縁に導かれ、戦乱の世を辿る事となる。白き仮面の女を追って……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
書いては投げてという感じなので、文章的には校正前段階になりますが。
展開的なことには答えられませんが、内容・文章的な疑問・指摘・感想は大歓迎です。完成後にでも修正の参考にさせていただきたいので批判含めてご意見ください。内容のあるものに限りますが。
とりあえず完成が目標。週2ぐらいで投稿していく予定。
生温かい目で見守ってやってください。
3 :
1−1:2007/11/15(木) 06:58:05 ID:F/EANrYb0
へきち のぞ
トゥスクルと呼ばれる国の最僻地。カカエラユラの森を間近に臨
むその場所に、ヤマユラの村はある。
いくつもの動乱に飲みこまれ、それでも平穏を手に入れた村が。
並ぶ小さな墓標の数々を、エルルゥは綺麗に整えていく。
「おはよう、おばあちゃん……おはよう、みんな……」
語りかける声はごく自然に。日課となっている挨拶にはいつもと
同じく、確かな答えが返ってくる。
さえず
揺れる草花の音が、小鳥たちの囀りが、絶える事ない虫の声が。
耳ではなく、心に直接聞こえてくる懐かしい声達に、エルルゥは
自然と口元を緩めていた。
4 :
1−2:2007/11/15(木) 06:58:51 ID:F/EANrYb0
「うん、今日も元気。アルルゥには相変わらず困らされるけど、仲
良くやってるよ」
ほほえみ
浮かぶ表情は、どこか寂しげな微笑。
「だから、心配しないで、ね……」
わず うれ
僅かな憂いを払うように、エルルゥは空を見上げた。
「あはっ……今日は、いい天気になりそう」
澄みきった青い空を。
抜けるような鮮やかさは、目に掛かった霞を爽やかに拭ってくれ
た。
5 :
1−3:2007/11/15(木) 06:59:25 ID:F/EANrYb0
今日もまた、ヤマユラの穏やかな日々が流れていく。
帰りの道すがら、先日足を診た老婆に声をかけられた。
「エルルゥ様、おはようございます」
「おはよう、おばあさん。足の調子はどうですか?」
エルルゥの笑顔に応え、老婆は嬉しそうに破顔する。
「はいぃ、おかげさまで、杖があれば歩けるようになりました。
これでまた、あの鬼嫁と戦えますわい。ふひょふひょふひょ」
「あ、あはは……程々にね」
村の中心にある広場に来れば、小さな子供が駆け寄ってくる。
「エルルゥお姉ちゃん!」
6 :
1−4:2007/11/15(木) 07:00:28 ID:F/EANrYb0
「あら、もう起きても平気なの?」
「へっちゃらだよ! もう、母ちゃんの手伝いだってしてるんだ」
「そう、偉いんだね」
「エヘヘ〜」
自慢げに鼻をこする少年の後ろで、その母親が頭を下げる。
「エルルゥ様、おはようございます」
「あ、おはようございます」
「この度は、エルルゥ様には、この子を救っていただき、なんとお
礼を言っていいやら……」
「いえ、わたしはちょっと手助けしただけで、この子は、この子自
身の力で治ったんです。
だから、そんな気にしないでください」
7 :
1−5:2007/11/15(木) 08:23:36 ID:F/EANrYb0
「本当にありがとうございました。それではまた……」
「じゃあね、お姉ちゃん!」
「うん、それじゃあね」
元気に手を振る少年は、母親に手を引かれて去っていった。
小さく手を振り返しながら、エルルゥは与えられた温もりを噛み
締める。
なにげ なにげ
何気ない日々の、何気ない幸せを。
「おはよっス、エルルゥさん」
「おはようございます、エルルゥ様」
「エルルゥ様、どうですこれ。今朝採れたモロロです」
「みなさん、おはようございます」
8 :
1−6:2007/11/15(木) 08:24:10 ID:F/EANrYb0
けんめい
一度は焼き尽くされたこの村も、皆の懸命な努力により以前のよ
うな生活を取り戻しつつある。決して楽ではない営みの中でも、こ
うして笑っていける生活を。
そう、あの人が望んだのは、こんな日常だった。
「…………」
村の者達と別れて一人、ふと、エルルゥは空へと顔を向けた。
青く、吸いこまれそうな空の先に、手の届かないモノを見る。
それは、共にこの日常を過ごしたかった人の姿。
つぶや
自然と、呟きをこぼしていた。
9 :
1−7:2007/11/15(木) 08:24:45 ID:F/EANrYb0
「ハクオロさん……わたしはここにいます。
アルルゥと一緒に……ここにいます」
祈るように。
誓うように。
決して届かないと知りながら、それでも止められぬ想いのまま。
「ずっと……ずっと……ここにいます……。
ここで……あなたを……」
吹き抜ける、一陣の風。
かんじょう
乱された髪につられ、環状の髪飾りが大きく揺れた。
遥かな時を経て重ねられてきた想いに、肩を叩かれたような錯覚
を覚えた。
同時に、確かな人の気配を。
10 :
1−8:2007/11/15(木) 08:25:19 ID:F/EANrYb0
「…………」
どこか懐かしいその気配に、慌てて振り返っていた。
まなざ
待ち構えていた眼差しと視線が交わる。
まなざ
優しくも、果てしなく冷たい眼差しと。
「あなた、は……」
思わず発していた声は、いかなる思いが発したものだろう。
喜び、悲しみ、戸惑い、不安。
あるいは……。
「…………」
なにを言われたのか、正しくは理解できなかった。
だが、それが自らの望みに叶うことだと、それだけはわかる。
ためら
だから、躊躇うこともなく、
エルルゥは差し出された手をとっていた。
11 :
1−9:2007/11/15(木) 08:25:59 ID:F/EANrYb0
「ハア、ハア、ハア……」
駆けつけたヤマユラの村を、アルルゥ達は走り回った。驚く村人
すみずみ
達の間を抜け、掛けられる声を聞きもせず、村の隅々まで調べ尽く
すように。
かわや
だが、家にも、蔵にも、厠にも、望む者の姿を見つけ出すことは
できず。
ようやく足を止めた広場の一角で、アルルゥ達は荒い息を整えて
いた。
「やっぱり、いない、よね……あは……」
カミュの疲れた笑い声は、アルルゥの予感を揺るがせた。一時強
わず
く感じた懐かしい匂いも、今は僅かにも感じない。
12 :
1−10:2007/11/15(木) 08:57:30 ID:F/EANrYb0
「……おとーさん……」
「そんなわけないよ、アルちゃん。だって、おじ様は、もう……」
ぬく
だが、一時でも思いだした温もりは簡単に諦められるものではな
すが
く、アルルゥはより確かな感覚に縋っていた。
「ムックル」
『ヴヲゥ……』
「ガチャタラ……」
『キュゥゥ……』
小さな母の切なる望みに、しかし両者は応えてはくれなかった。
いつわ ゆえ
獣の心は偽る事を知らず、それ故に正しい現実を見せつける。
13 :
1−11:2007/11/15(木) 08:58:15 ID:F/EANrYb0
「アルちゃん。エルルゥ姉様はどこ? 村の中で、見かけた?」
「……え?」
問われ、アルルゥも思いだす。向かうべきその先にはすでに調べ、
誰もいない事を確認していた。
薬師を営むエルルゥが家にいない事は珍しくない。だが、今の今
では話が別だ。
得体の知れない不安が、胸の内を満たしていく。
「おねーちゃん……?」
左右を見回し呟く声は、今にも泣き出しそうに震えている。首だ
さまよ
け巡らせていた動きは次第に高ぶり、落ち着きなく周囲を彷徨いだ
していた。
14 :
1−12:2007/11/15(木) 08:58:58 ID:F/EANrYb0
「お、落ち着いてアルちゃん。大丈夫だよ。きっと山とか森とかに、
石とか薬草とかを採りに行ってるだけ……アルちゃん!?」
気を鎮めようとするカミュの言葉を聞き入れず、アルルゥはムッ
またが
クルに跨っていた。
そして駆け出す。
「おねーちゃん、おねーちゃん……!」
胸に生まれた不吉な予感を、消し去ろうとでもするように。
ただ、駆ける。
いしくれ
踏み固められた土の道を、石塊転がる山の道を、緑に満ちる木々
の道を。
森への祈りも、その声に耳を傾けることもせず、アルルゥは深緑
の内を駆け回った。
「おねーちゃん、おねーちゃん、おねーちゃん……」
飛ぶように流れていく景色の中、呼吸する事すら忘れ、ただひた
すらに目を凝らす。
15 :
1−13:2007/11/15(木) 08:59:35 ID:F/EANrYb0
こずえ ささや
だが、どれほど葉の間を見通しても、梢の囁きに耳を傾けても、
緑の匂いを嗅ぎ分けても、姉の存在を感じることはできない。
次第に日の光は傾きゆき、青い空はゆっくりと朱に染まっていっ
た。
やがて、全ては紫色の闇の中へと消えていく。
星の光も、月の光も、深い緑の天井を通り抜ける事は出来ず。
カカエラユラの森最奥にまで至ってすら、エルルゥの姿を見つけ
出すことはできなかった。
「おねー、ちゃん……やだぁ……おねー、ちゃ……」
あふ
溢れる涙は止め処なく、数日の間アルルゥの頬を濡らす事となる。
この日より、エルルゥはヤマユラの村から姿を消した。
16 :
1−後書き:2007/11/15(木) 09:00:35 ID:F/EANrYb0
ゲームのエンディングから、ということで。
ルビを含め、読みやすさを意識してみたつもりですが、どうでしょう?
どうでしょう とのたまうからには何を言われても恨むなよ?
スレ立てる時点で覚悟完了かもしれんが
ネ申になりたがる勘違いも少なくないんで念のため
ん、ハッピーエンドっぽかった原作ラストを話の起爆剤としてアレンジ
したところは非常に興味深く、意外な展開が良いと思いました。
とりあえず、気になった点をいくつか。
1.ルビは要らない
ウマ→ウォプタルとかならともかく、普通の感じにルビは不要かと。
一応18禁板ですし、話のテンポを損ないかねないのでどうしても必要
な時以外は不要だと思います。
2.ちょっと説明文が少ないかも
葉鍵版ですのでいまさらキャラクタの服装や顔立ちについてふれなくとも、
と思われるかもしれませんが、絵がない媒体ではキャラの視覚的な描写を
さりげなくはさむ事で描写に深みを出す事が出来ます。
例:エルルゥを探し回ったアルルゥの描写で、『姉譲りの黒く美しい髪は
散々に乱れ、黒曜石を思わせる瞳は満々たる涙の滴を湛えていた』など。
現段階ではこんなところですかね。
えらく古典的な美文調だなあ。読むの疲れない?
ラノベとしてはアリなのかな。
>>17 不安と期待を正しく理解して頂いているようで、
嬉しいやら怖いやらw
内容のある批判がもっとも望むところなので
きびしい意見をお待ちしております。
まぁ、お手柔らかに、とは言わせてくださいw
ルビに関しては書き手としては判断が難しいのですよね。
ウォプタルだのオゥルォだのはあるべきだと確定できるのだけど、
読みの難しい漢字ってのはどのあたりなのやら。
眼差しや某あたりはともかく、迸るだの甚だしいなんてのには
つけた方がいいのかな、なんて。
こういうのを語り合えるスレとかありますかね?
文章的な密度の濃さ、薄さは調整の難しいところではあります。
一読しての率直な感想というのは非常に参考になりますので、
読みにくいとか説明が足りんとかって感想は大歓迎です。
すぐには反映できないと思いますが、方向性として考慮しますので
多くのご意見おまちしております。
二次創作の類はあまり目にしたことがないんだけど
こういう散文的なというか空気っぽい作品が主流なの?
>18-19 の指摘で読みにくい理由はわかったような気がするけど
「ね、読んで読んで!」というアピール(掴み)はどこ?
これではちょっと立ち読みしてすぐに素通りしちゃいそう
>>21 いや、二次創作だとここまでまともな文章書ける人が少数派かも。
第一まともな長編作品自体が少ないし、うたわれSS。
ただ、やっぱり原作で音楽やグラに頼ってた部分を文章で上手く
味付けしないといけないというのが一番のネックだね。うたわれ
長編のもっとも難しいところはそこ。
原作ですら、興味をもてない人にはとことん地味な空気に見える
らしいし。
あんま2chでの二次創作とか読まない人なのだろうか。
改行は文字数で一律ではなく、文の区切りの方がいい。変なとこで改行する方が読みづらいよ。
ルビもいらんよ。特殊なものを除いては、読めそうにないと思ったら開きなさいな。
どうしてもいるのならば()内に入れればいい。
見て分かるとおり、ルビの存在感が強すぎて鬱陶しい。
自サイトなら、通常の小説のようにも出来るだろうが。
中身はこれだけじゃ何とも。最初のつかみとしては確かに弱い。そもそも情報量少ないし。
実質5レスだもん、これ。
そのわりに文章は修飾に凝ろうとしてるから、ますますね。
美文調、散文的。って、両方いわれていたけどどっちもあってると思う。
んで、エルルゥが「なに言われたんだかよくわかんないけど唐突に現れた誰かにみんなには黙ってついていきますね、あははー」
では、読者置いてきぼり。エルルゥの気持ちが見えてこないから。
例えば推理ものにも、ヒントや証拠や容疑者があるように、
謎には手がかりや材料がないと、ただのわけ分かんない展開なんよ。
後で種明かししてカタルシスを出すってのとは、また別にして。
ミスリードでもいいし、期待を抱かせるなにかでもいいし。
逆に、例えばエルルゥのわっかでも現場に残して、危機感を煽るという手法もあったりするが。
これだと「妹泣かしてなにやってんの、エルルゥ?」って感じですごくすっきりしない。
初回としてはあまりよろしくない。謎じゃなくて、疑問なんだわ。納得いかねーってタイプの。
むしろハクオロが出てきて、それでエルルゥがその胸の中に飛び込んで、でも黙って姿を消したのでした。
って展開なら、エルルゥの身になにかが起こったのだろう、って思えるんだけど。これはこれでベタすぎだが。
まぁこれは今後の話にもよるから、必ずしも使える手法ではないのだけれど。
んでここまでいっといてなんだが、俺の言うことが世界の真実ってわけじゃないんで、適当に話半分で聞いときなさいな。
好きに取捨選択してさ。
しかしこの量の文章によー突っ込むな、俺。
うーん……2chで「評価求めます」をやるとほとんど否定的なレスしか
つかないから、書きたいことあるなら揺れちゃダメだよ。
個人的にはサイト持って書いた方がいいと思う。
そして
>>19は
>>18の例文に対してのレスだったりします、
わかりにくくてすいません。
>>23 エルルゥだけ連れて行ったのは俺も違和感感じたwww
アルルゥあんなにかわいがってたのにそりゃねーだろと。
そして村長兼医師を奪われたヤマユラの明日はどっちだ!
そういやこのスレって他のSS、例えば個人的なお気に入りとか
布教する目的で使ったりしたら駄目なのかな?
俺オスメスはヌワンギが主人公の可哀想なやつとニウェいっぱい書いてる人のとこだな。
個人的にはオススメ紹介もアリだと思う。
うたわれのSS自体がなかなか発見できないんだよな。
ググれば見つかる程度の情報で紹介するのはよいのでは?
んじゃま、一発。
うたわれ総合スレにも名前出したけど、『皇の鞘』ってのが
最近気になってる。内容は、原作とほぼ同じ時系列にFateの
衛宮士郎が混じるクロスオーバー。
クロスとしての魅力はそれほどでもない(オリ主にしたほうが
良かったぐらい)けど、戦記物の雰囲気をよくかもし出してる
特徴的な美文体と、名前の事、種族の事、社会風俗の事など、
作者独自のうたわれ世界に対する考察が大変興味深い作品。
『こういう考え方、捉え方があったか…!』という斬新さや
設定の妙を好む人には楽しい作品だと思う。
ご意見感謝。
とりあえずつかみが弱いのかな。もっとガツンとかました方がよいのかも。うん。
まぁ今はとりあえず先に進みます。調整は最後に。
ルビと文の区切りは参考にさせていただきます。
とりあえず次回分で試してみよう。
個人的にネットの文章は読みやすさが最重要課題だと思っているので、
意見やアイデアがあればいただきたいなと。
それにしても、いかんな。補足したくて思考が脇に逸れそうだw
いや、勘弁してくれ
そのペースでss読まされるほうの身にもなってくれよ…
しかも未完成品でそこには突っ込むなとか
それこそ勘違いってもんだ
ちゃんとした形になってから投下して欲しい
いや、展開に関することが答えられないだけなので、
表現・内容に関するツッコミは遠慮なくどうぞ。
未完成とはいえ文章とか全体のバランス調整だけのつもりなので
内容自体が大きく変わりはしませんので。
ペース遅くてもいいじゃないか。
葉クロスオーバーのヌワンギと柳川の旅なんて何年かかってんだかわからんぞ。
それでも十分面白いし。
このSSは始まったばかりだし自分でスレ立てるほど熱意もある。
最近のうたわれSS界じゃ読むものすらないんだ。つまらんと思うならほっとけばいい。
トゥスクル皇都――。
クロウ「た、大将ーっ!」
ベナウィ「なんですか、騒々しい」
クロウ「國師(ヨモル)がっ……! ぜぇ……ぜぇ……またっ……」
ベナウィ「また、逃亡ですか?」
クロウ「はい。小さい姐さんとハチミツを取りに出掛けたようです」
ベナウィ「…………」
クロウ「追跡を派遣しやすか?」
ベナウィ「仕方ないですね。クロウ。私たちで國師を捕獲に向かいましょう」
クロウ「その書簡の山はいいんですかぃ?」
ベナウィ「たまの息抜きも仕事のうちですよ」
クロウ「へ? あ……、う、うぃす」
ベナウィ「では、参りましょう」
クロウ「大将」
ベナウィ「はい?」
クロウ「変わりましたね」
ベナウィ「ふふ。そうですか?」
皇都近郊の森――。
アルルゥ「おれたっち、みつなめるぅ、もの〜」
???「あのぉ、本当に大丈夫なんですかぁ? ベナウィさん、怒ってるんじゃないですかぁ?」
カミュ「気にしない、気にしない♪ ベナウィ兄さまは優しいしねっ」
アルルゥ「へへいへい〜」
???「お優しい方だとは存じてますが、また騎兵衆(ラクシャライ)が追いかけて来ますよぉ」
カミュ「あのね。國師っていうのは、すっごい大事な仕事なの……。分かる?」
アルルゥ「おうおおうおう〜」
???「はい。私も國師というお仕事を尊敬しています。それで、カミュ様のお世話を志願しました」
カミュ「そーなの。すっごい大事な仕事だから、たまの息抜きも重要な仕事だよ。ね? アルちゃん」
アルルゥ「カミュちーの言う通り」
カミュ「だから、あなたもそんなこと忘れて、今この時を楽しまなきゃダメだよ、フミルィル」
フミルィル「はぁ、そうなのでしょうかぁ……?」
トゥスクル國境近辺――。
カルラ「もっと早く歩いてくださらないかしら? これじゃあ、日が暮れてしまいますわ」
トウカ「うむ。この辺りでの野営は危険だ。凶暴化したキママゥの縄張りに近い」
ヌワンギ「んなこと言うなら、自分たちの荷物くらい持てよっ!」
カルラ「あなた、女性に荷物を持たせる気ですの?」
ヌワンギ「俺より力あんだろうが! クソッ!」
カルラ「ふーん? それが賊と勘違いして人に刃を向けた男の態度かしら?」
トウカ「いや、あれは、カルラ殿が酒屋の店主殿に、ぼったくりだと言掛りをつけて暴れていたからでは……」
カルラ「何を言いますの? あれはただの値段交渉ですわ」
トウカ「店主殿は泡を吹いて気絶していたようだったが……」
ヌワンギ「だいたいなぁ、俺は皇都には行きたくねぇってのに……」
カルラ「んーっ! 久々にトゥスクルのお酒が飲めますわ♪」
クッチャ・ケッチャ騎兵衆野営地の荒野――。
ティオロ「いや待て、このモロロまんじゅうだけはダメだ最後の一個なんだ……」
ユウ「何よ? 負けたらなんでも言う事聞くって言ったのはあんたよ」
ティオロ「楽しみに取っておいたんだ……他ならなんでも聞くから!」
ユウ「じゃあ、今夜はドリグラくんたちと同じテントで一晩明かすとか」
ティオロ「う……それは絶対勘弁してくれ……」
ユウ「あれもダメ、これもダメって……じゃあ、何ならいいのよ?」
ティオロ「腹筋100回とか」
ユウ「あんたそれ自発的に毎日やってるじゃない、なんか変な声出しながら……」
ティオロ「変じゃないぞっ! じゃあ、200回だ! 200回ならいいだろっ?」
ユウ「…………」
ティオロ「ぬぁっ……1! ふんもっ……2! ぶほっ……3! むふっ……4!」
ユウ「はいはい、がんばってー。もぐもぐ」
ティオロ「ふもっ……5、って、あああああ! 俺のモロロまんじゅう!?」
ユウ「ふへへ。ご馳走様でしたぁー」
ティオロ「貴様あぁぁぁっ! 女だからって容赦しないぞっ!」
ユウ「きゃーっ、あはは! ティオロが怒った逃っげろ〜っ」
ティオロ「待てええっ、んがっ」
オボロ「……おっと、すまん。いきなりテントから飛び出すから驚いたじゃないか」
ティオロ「お、伯父貴!? こっちこそ悪かった……」
ユウ「あははっ。ぶつかってやんのー」
ティオロ「あ! おい、待ちやがれ!」
オボロ「また、喧嘩してるのか?」
ティオロ「喧嘩じゃない! あいつが俺のモロロまんじゅうを」
ユウ「射的で負けたらなんでも言う事を聞くって言ってきたのはティオロでしょーがー」
ティオロ「負けてなどない! ちょっと……集中が途切れただけだっ!」
オボロ「射的で負けたのか。ドリィ達に稽古を付けさせてるというのに……上達するのはユウばかりだな」
ユウ「へっへ〜ん♪」
ティオロ「剣は俺の方が上だ!」
ユウ「当たり前でしょ、あたし、剣はお稽古したことないもの」
ティオロ「くっ……」
オボロ「はははっ。やれやれだな」
ハクオロとユズハの子ティオロ(赤皇)は伯父オボロと共に旅をしていた。
より広い世界をティオロに見せようというオボロの考えから、
かつてのオリカカンの忠臣であった騎馬隊と行動を共にしている。
オボロは在りし日の義兄のような落ち着いた物腰を携え、
ティオロにかつての自分の面影を感じつつ、時に優しく、時に厳しく様々なことを教えている。
騎馬隊の中には母が必死で庇い父ラクシャインの魔の手から逃れた娘、ユウが、
幼馴染であるティオロに何かと世話を焼いたり、何かにつけて喧嘩をしたりしていた。
兵士「お取り込み中失礼します」
オボロ「ん?」
兵士「ちょっと、妙なものが見つかりまして……」
オボロ「なんだ? どうした?」
兵士「取り敢えず、御覧になっていただきたいのですが」
オボロ「…………?」
ティオロ「だいたいなあ、お前は女のくせに――」
オボロ「ティオロ。ユウ。お前たちもついて来い」
ティオロ「ついて来いって?」
ユウ「オボロさん、どうかしたの?」
オボロ「まあ、何か珍しいものを見物させてくれるらしいが」
兵士「こちらです」
オボロ「ほう。これは凄いな、先日の大地震の時か?」
ティオロ「おー、下が見えないぞ……」
ユウ「ほんとすごい地割れだねー」
オボロ「確かに危険だが、余震もないし、近寄らなければ大丈夫だろう」
兵士「いえ、お見せしたいのはそちらではなくて……」
オボロ「ん?」
兵士「こちらです。」
ティオロ「何かの骨……か? でかいな」
オボロ「化石化しているな。永い間地中に眠っていたものが、地割れと共に地表に現れたのか……」
ユウ「あたしにも見せてよー」
ティオロ「お?」
ユウ「って、何これぇ?」
ティオロ「見ろ、ここだけ骨無くなってるぞ? 頭の一部か?」
オボロ「……こ、これは!!」
ティオロ「なんだ?」
オボロ「まさか……こんなことが……っ!?」
ティオロ「一体何だってんだ、伯父貴」
ユウ「……ぃ……ぁ……ぁぁ……」
ティオロ「え? ユウ? どうかしたか?」
ユウ「いやあああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!」
オボロ「はっ!?」
ティオロ「おい、ユウ! しっかりしろっ! どうしたんだよっ!?」
紛失した骨の痕跡。その形はオボロの義兄ハクオロの仮面の形と一致していたのだ。
オリカカンが見たラクシャインの仮面はディーの幻術によるものだったはずだが、
その形を見たユウが狂ったように泣き叫んだ。
勝気な幼馴染が始めてみせる姿にオロオロするティオロ。
悪い予感を感じたオボロは、騎馬隊と共にトゥスクルの方角へと進路を変更する。
>ID:0O/v8x290
これは何? どっかからのコピペ? それとも創作における『悪い例』?
面白くない、説明が足りない、キャラがおかしい、台本書き…と正直
読むのが苦痛のレベルなんだけど。
39 :
2−前書き:2007/11/18(日) 12:44:07 ID:P6cpHtC50
ほっとかれないようにがんばろう。
うー、前回より長いです。おまけに稚拙。特に中盤がひどい。
でも今はこれが精一杯だなぁ。
40 :
2−1:2007/11/18(日) 12:45:02 ID:P6cpHtC50
燃え盛る炎が柱を昇り、天井一面を舐めていく。灼熱の舌は容赦なく、
世界を紅蓮に染めていった。勢いを増していく揺らめきを止める術はもはやない。
丸太造りの古き砦は、今まさにその役目を終えようとしている。
決着は早々に着けなければならない。
タイガは周囲の炎に身を焼きながら、剣の切先を追いつめた男へと向けていた。
まだ少年の面影を残す顔立ちに、十分な威圧の眼差しを備えて。
「ここまでだ。大人しく投降するなら罪を贖う機会を与えられもしよう。剣を捨てろ」
「ックショウ! 来るな、来るんじゃねえ!」
追いつめられた男は鬼の形相を剥きながら吠える気勢を失うこともなく、
手にした剣を振りたくっていた。大気を斬るばかりの剣閃は間違っても
届くようなものではない。タイガは戦いの中であるにも関わらず
呆れの息をついてしいた。
41 :
2−2:2007/11/18(日) 12:45:57 ID:P6cpHtC50
「姑息な盗賊風情が自惚れるな。
貴様ごときが頭領でよく村一つを脅すようなマネができたものだ」
旅の間に寄った村。そこで受けた盗賊の討伐依頼。聞いた話では地の利、
天の理を駆使した兵(つわもの)達である筈だったのだが。
所詮は田舎の狭い見識であったのか。路銀が尽きたからといって、
あまりにつまらぬ相手に当たってしまったものだと今更思う。
十数人からなる徒党の力量は誉れ高きエヴェンクルガの武士(もののふ)が
切り結ぶに相応しいモノではなく、村人有志の力を借りずとも何の苦もなく
根城としていたこの砦を攻め落とすことができてしまっていた。
タイガはより強い意をこめて切先を突きつけた。
「刀を穢したくはない。これが最後だ。剣を捨てろ」
「う、うるせえ! テメエが、テメエがいなけりゃ……それに、あいつ等に、
そそのかされさえしなけりゃあ……!」
その意図にすら気づけぬのか、あるいはすでに錯乱しているのか、
盗賊の首領は変わることなく刃を振るい続けていた。
42 :
2−3:2007/11/18(日) 12:47:55 ID:P6cpHtC50
「あいつ等? 誰のことだ。貴様達を操っていた者がまだいるとでも……」
「死ねえ!」
その内容を問う前に、男は地を蹴っていた。
周囲の炎より熱く、手負いの獣より獰猛に。
本能が放つ生への執着は時として一流の剣士すら凌駕する。
加減を考える余裕をタイガは持ちえなかった。
腰を沈め身を落とす。
直前まで頭のあった場所を、横薙ぎの刃が通り過ぎた。
僅かに遅れた尾髪の一筋が宙に舞う。
同時に、タイガの剣は男の左胴を断ち裂いていた。
それが、鼓動が一つ打たれるまでに起きた全て。
「ガフ! ゥ、ァ……」
次の瞬間、男の発した断末魔は熱い血の飛沫となって、
炎以上の赤で世界を濡らしていた。
43 :
2−4:2007/11/18(日) 12:54:00 ID:P6cpHtC50
致命に至る手応え。確かめるまでもなく、男はもう二度と口を開くことはないだろう。
タイガは返り血に濡れたまま、それより強い苦い味に顔をしかめていた。
己の剣がより高みにあれば、殺さずに口を割らせることもできた筈なのに、と。
だが、後悔している暇はない。
燃え盛る炎は今や極限にまで達し、砦はいつ崩壊するかも知れないからだ。
早く逃れなければ。
焦る思いに踵(きびす)を返そうとしたその瞬間、
.
.
.
炎の先、そこに立つ人影に気がついた。
.
.
.
それは、ただ一人の女。
全てを焼き尽くす業火の中にあって、直立する姿には微塵の揺るぎもない。
白と藍の装束は男の纏うものであったが、長身の割りに華奢な身と流れるような黒髪が、
その性別を女だと示していた。
44 :
2−5:2007/11/18(日) 13:11:33 ID:P6cpHtC50
面立ちからはわからない。その顔は、白い鬼の面に覆われていたから。
戦の枢要たるこの場において、その存在はあまりにも異様。
「な、ん……」
にも関わらず、タイガは誰何の声すら上げられずにいた。佇まいの不気味さや、
纏う鬼気迫る雰囲気から。
それは否応もなく思い知らされる支配者の器であり、本能が発する従属の念でもあった。
かつて感じたことのない悦びにも似た感情が、心の奥底から湧き上がってくる。
まったく別の、もっと単純な想いと共に。
タイガの向ける沈黙の眼差しを正面から受けながら、鬼面の女はものも言わず、
ただその場に佇んでいた。
左手に抱えた黒い石に不規則な脈動を刻ませながら。
揺らめく炎の中にあり、影に飲まれているにも関わらず、
その形だけはなぜかはっきりとわかる。
それは、幼子の頭に違いなかった。
45 :
2−6:2007/11/18(日) 13:13:02 ID:P6cpHtC50
浮かんでいるのは泣き叫ぶような表情。歯も生えていなさそうな小さな口は、
周囲を取り巻く熱と共に、なにか別のものをも喰らい飲みこんでいる。
目には見えぬ、耳には聞こえぬ、ヒトでは感じる事の出来ぬ、なにかを。
業火の中にたゆたう闇。禍々しい毒の華。地獄(ディネボクシリ)を思わせる光景の中にあり、
それでも、いや、だからこそ。
タイガは目に映る彼女の姿を、
「……美しい」
ただ、その一言でしか表すことができなかった。
だが、今この場は戦の中であり、対する相手はは明らかに敵に属する者。
エヴェンクルガに連なる者が、看過してよいわけがない。
自らの呟きを払うように頭を振り、タイガは再び刃を上げた。
46 :
2−7:2007/11/18(日) 13:14:13 ID:P6cpHtC50
「う、動くな女! 貴様、何者だ。この砦に巣食っていた賊の一味か」
震えそうになる声を無理に張り上げての言葉にも、仮面の女はさしたる反応は示さなかった。
焼け落ちる木々の悲鳴が渦巻く火中にあり、透き通るような声を淡々と返すだけ。
「この規模ではもう限界ですか……これ以上の試行は無駄ですね」
「な、に……? 貴様、一体なにを言っている?」
いや、それは返事ではなく自答だった。紡いだ短い呪に従い、幼頭の黒石はその蠢きを潜めていく。
仮面の女はタイガの存在など気にもかけず、ただ自らの行為にのみ関心を向けていた。
それは後の言葉からも明らかだ。
「戦は終わりです。これ以上の干渉は意味をなしません。貴方がたの勝利です。
早くお逃げなさい、若き侍。我らは無駄な殺生を好みません」
抑揚のない声が語る、どこか悲しげにすら聞こえる言葉。
だが、それが意味する内容は、弱者に向ける憐憫に他ならない。
「なん、だと……」
よりにもよって、エヴェンクルガの武士を志す自分に向けて、だ。
47 :
2−8:2007/11/18(日) 13:15:33 ID:P6cpHtC50
己の未熟を十二分に理解しているからこそ、タイガは侮辱屈辱の言葉には
ことさら強く応じてしまう。浅薄とわかってはいても、自らの激情を抑えることができず。
先に感じた全ての念を忘却し、
「貴ッ様ぁ!」
大きく踏み出していた。
手にした刃を一度引き、返す動きで斬りつける。
それは周囲の熱を裂き、発した声すら追い抜く速さ。
僅かな弧を描き白面へと向けられた必殺の剣閃はしかし、
横から突き出された鉄棍により弾き飛ばされていた。
「な、ぁっ!?」
続けて放たれた一撃に、体ごと吹き飛ばされる。
「ガ、フゥ……!」
床に強か叩きつけられながらも辛うじて姿勢を立て直した。
逆流する胃液の味を噛み締めつつ、荒い息を整える。
48 :
2−9:2007/11/18(日) 13:16:50 ID:P6cpHtC50
腹から響く衝撃に、その部位を殴られたのだとようやく思い至った。
目で確認することはおろか攻撃の兆しすら感じることができぬのは、
彼我の実力に遥かな隔たりがあるためか。
辛うじて手から離れずにいた剣を、一撃の主へと向ける。
いつの間に現れたのだろう。鉄棍を備えた巨漢の武士が、
仮面の女の前に立ち塞がっていた。
鍛え上げられた巨躯はまさに巌(いわお)。潜り抜けてきた修羅場の激しさは
その顔を見るだけで明らかだ。
右の半面は瞳もろとも、大きな古傷に斬り潰されていた。
威圧されるタイガの様を気にもとめず、男は背へと言葉を向ける。
「姫、お早く。この砦、もう長くは持ちますまい」
「そうですね。では、参りましょう」
やりとりは簡潔に。足の運びにはなんの気負いもなく。
焼ける大気すらまるで意にも介さずに、仮面の女は燃え盛る砦の奥へと進んでいった。
後を顧みることもなく。
49 :
2−10:2007/11/18(日) 13:35:17 ID:P6cpHtC50
「ま、待て! 逃す……!?」
追おうとしたタイガの動きより先に、巨漢が棍を振るっていた。
円を描き、天地を分かつような一撃を。
それは瞬間の風を生み、軌跡の先に置かれたもののことごとくを爆ぜ砕く。
つまり、燃える砦の床板と天井を。
「ぬ、ぐぁっ」
タイガが気圧された一瞬後、砕かれた部位を切欠に、
ついに砦はその全体を崩落させ始めた。
いや増す炎は壁となり、もはや先へと進むこともできない。
揺れる紅蓮の連なりはすでに他の色が存在する事を許さず。
消えた二人の存在もまた、その痕跡もろとも飲まれていた。
まるで、初めからなにもなかったかのように。
だがそんな筈はない。いまだ残る腹の痛みと脳裏に刻まれた女の姿が、
その考えを否定する。
だからこそ、よりその不可解さが増していた。
50 :
2−11:2007/11/18(日) 13:36:05 ID:P6cpHtC50
「……なん、だったんだ、一体……」
しかし、悠長に考えこんでいる暇はない。
「タ、タイガ殿! ご無事ですか!」
飛び込んできた農兵の切羽詰った呼び声に、タイガはいまさら状況を思い出した。
天井や柱はもはや燃え尽き、落ちる火の粉は光の塊と化している。
「あ、ああ。盗賊の首領は討ち果たした……」
「こちらも、残党の大半は討ち取りました! 我らの勝利です!
さあ、早くここから出ましょう!」
「そう、だな……」
いつの間にか、外からは勝鬨の声が聞こえていた。
どこか遠くから響くその音に導かれ、タイガもまた砦の外へと逃れていった。
一度だけ背後を振り返る。
燃え崩れ行くその場所に、わだかまる想いが残っていた。
何でヘンなところで改行してるの?
読みづらくてかなわん
全部一行ずつ空けてるのも逆効果
場面転換に三行空ける意味がほぼなくなっている
>39で文章の稚拙さを吐露しているようだが
もし誰かに読んでもらいたいなら
それ以前に直すべきところだ
筆者の脳内には既存の設定があるので違和感がないのかもしれんが
読み手には大抵の場合テレパス能力がないので
もっとシチュエーション描写に力を傾けるべきでは
>世界を紅蓮に染めていった。
>今まさにその役目を終えようとしている。
のような臭い文章を書く前に
読者が「えっ?砦って??」「誰こいつ??」
と戸惑う様子を想像して欲しい
名前よりも何よりも先にここはどこでどんな人物がどんな外見、立ち居振る舞いで
何をしようとしているのか
そういう情報が伝わる文章にしてみよう
2-2でなされている説明はただのデータ
炎上する砦の情景がまったく見えてこない
「全てを焼き尽くす業火の中」で随分長いやり取りしてるから
とっくに外に出てたのかと思ったら
まーだ中にいたので驚いたw
そのくらい描写があさっての方向を向いてるということ
この場合は炎上してる最中に目の前に強い敵がいるという
かわいそうな男の視点から状況を説明した方が緊張感がよく伝わるかな
「おしっこ漏れちゃうのにトイレの前にはいじめっこ」
のような絶望的シチュのほうが読者には容易に想像できると思われる
焼け落ちる寸前の木造家屋の中で
火も気にせず悠然と投降を勧める肝の据わりすぎたタイガ氏にとっては
おそらく大した危機でもないようなので読者との乖離が生じそう
2-11
>いまさら状況を思い出した。
思い出したじゃねえだろw
今の今まで考えてもいなかったじゃないか。。。
改行は掲示板の場合、文章単位の方が読みやすいかと思ったので
試してみましたが、逆効果ですかね?
一行空けも同様。個人的に文字の塊がいきなり目に入ると
読む気にもならなくなるもんで。
自分的には一行を固定文字数にするのが常なのですが
Pフォントだときっちりはまらないからなぁ。
投稿形式は模索中です。
読み手の視点については確かに、これだと砦の外での出来事だと
思われるかもしれませんな。
不覚にも全然思い至らなかった……。
書き終わったら五歩ぐらい引いて見直すようにしますわ。
人称に関してはタイガの一人称にしようか迷っていたのですがね。
うーん、今後の事も考えるとその方がよいか。
少しは状況説明も臨場的になるだろうし。
ご意見多謝。
全部が反映できるわけではありませんが、参考にさせていただきます。
読むのが苦にならなければ今後も見てやってくださいませ。
一人称にすると世界観とか設定は確実に描けないと思うなー。
基本的に主人公が振り回される中で徐々に伏線張って大どんでん
とか出来る人じゃないと一人称は死亡フラグ。ちょっと無理して
でも三人称にしたほうが小説としてのクオリティは上がりやすい。
ここで言われてる臨場感とかは人称形式じゃなくて表現力の問題
だから、安易にわかりやすい方向に行っちゃうのはどうかと思う。
それで自分の書きたいことを語りつくせる自信があれば別だけど。
2chの小説投稿スレまとめサイトとかめぐってみてわかりやすいな、
読みやすいな、と思えるような文体研究してみたら?
SSスレで一人の書き手をフルボッコというのも珍しい展開だが、
批評お願いしますとか余計なこと言うからだな。
表現力は一朝一夕では上げられないからなー。
やりたいこと的にも一人称の方が都合がよいので、
やはり基本はそっちでいきます。
まとめサイトは参考になりそうですね。探してみます。
オススメとかあれば教えていただきたい。
ボコられてるのかな?
きちんとした意見なので本当にありがたいですよ。
58 :
3:2007/11/20(火) 23:50:29 ID:8DSRBdkk0
クンネカムンの動乱から早七年。戦による疲弊によりもたらされた平和は長く続くことはなく、不穏の火種は着実に芽を現していた。
貧困に喘ぐ集落は生き残るために他の村を襲い、支配する者は隷属する者達への搾取を強め、力を蓄えた国々はさらなる富と国土を求めて他国へと侵攻する。
今や世は、戦国の時代を迎えていた。
強き者だけが生き残り、力なき者は死に潰える時代を。
だがそれは、自らの名を上げようとする者達にとっては絶好の機会でもある。
戦乱の世を渡りながら、タイガは自らの剣を鍛えていた。エヴェンクルガの武士(もののふ)として相応しい力を備えるために。
うたらじオープニング風味。ついムラっとなって書いた。今は後悔している。力ちゃん、柚姉ヴォイスに脳内変換してお楽しみください。
「ハクオロさん。ハクオロさーん」
「ん? なんだい、エルルゥ」
「今日も一日お疲れ様でした。はい、どうぞ」
「ああ、ありがとう。ほう、蜂蜜酒か」
「はい。体を温めて、ゆっくり休んでください」
「そうだな……。アルルゥはもう寝たのかい?」
「ええ。今日も一日たくさん遊んで、すっかり疲れたみたいで」
「そうか……では、はじめようか」
「え? こ、今夜も、ですか……?」
「イヤかい?」
「そういうわけじゃ、ないですけど……その、心の準備が……」
「なら、自分からはじめさせてもらおうかな」
「あ、そんな。ず、ずるいですっ」
「ふふふ。ずるくはないだろう?」
「もう、いっつもそんなこと言って。……だったら、こうですっ」
「なっ。エ、エルルゥ、いつの間に、こんな……」
「わ、わたしだって、やられっぱなしじゃないんですから。ここを、こうして……」
「む、う、これは……腕を上げたな、エルルゥ。しかし」
「え? あっ!」
「まだまだ甘いな」
「あ、そ、そんなところ……」
「ふふ、どうだい。いいだろう?」
「あ、ダ、ダメです、そんな……」
「ほらほら。一気にいってしまうぞ?」
「あん、まって、まってくださいっ。そんなの、ダメですっ」
「そうはいかないな。これで……」
「やあ、ダメ、ダメです、ハクオロさん……!」
「終わりだっ」
「あああ〜〜〜……」
「……はぁ。まっしろになっちゃいました……」
「ふふ。まだまだだな、エルルゥは」
「もう。少しは手加減してくださいよぅ」
「そうはいかない。さあ、もう一勝負……」
「おとーさん、おねーちゃん?」
「ア、アルルゥ?」
「ど、どうしたの?」
「んむぅ。なにしてるの?」
「な、なにって、その、これは……」
「んー? あー、オセロー」
「あ、あのね、寝る前に、ハクオロさんと、一回だけ、ね?」
「アルルゥもやるー」
「アルルゥは昼間たくさん遊んだでしょ。夜はわたしの番なの」
「やー、アルルゥもー」
「やれやれ」
終われ
読みにくい。
何がしたいのかわからん。
ギャグがギャグになってない。
全体的に中途半端。
総じて、つまらん。
短編ギャグはテンポが命。
たらたらとつまらん描写してないで、シンプルに起承転結
しなさいな。あと、個人スレじゃないんだから言い訳不要。
見せたいと思わないなら投下するな。
会話型としてはうまくまとめたつもりだったんだけどなぁ。
精進しますわ。
ソーイチとサシキの痴話喧嘩で3年勉強しろ
↑
元ネタがわからんのだが。
66 :
4−1:2007/11/24(土) 16:19:22 ID:yNIr55Fm0
「ふぅ」
息をつき、額に浮いた汗を拭う。頭の後ろでまとめている尾髪すらうっとおしい。かといって切るわけにもいかないが。
ときおり吹き抜ける涼風も心を涼める梢の音も、初夏の日差しに対してはあまり効果がなかった。山の中、木陰の続く道中でこの様だ。街ではさらに暑くなるのだろう。
少しばかり気が滅入る。だが、某も武士の端くれ。暑いの寒いのと文句など言ってはいられない。心の中で小さく気合を入れ、起伏緩やかな道を踏みなおした。
ヒットコの村で請負った山賊退治をつつがなく終えて早五日。今日もまた、ウペキエの国へと続く道をひたすらに歩いている。
溜まる疲れは体よりも心にこそ重い。こんなことならば見栄など張らず、ありがたくウマ(ウォプタル)を貰っておくのだった。
いや、それはできないか。あの程度の仕事でウマ(ウォプタル)一頭という報酬を受け取ってはエヴェンクルガの名折れとなる。
ましてや、敵に残党を残していては。
結局、炎の中に消えた二人を見つけることはできなかった。包囲していた村の民にしても、燃え落ちる砦から出てきた者は某達の他にはいないと言うし、
痕跡を調べようにも全ては灰と帰した後。村人達は目前の脅威が去ったことにただ喜び、瑣末な事と取り上げようともしなかった。
もっとも、その判断は正しいだろう。あの二人が何者だとて、今もまだ村の近辺に潜んでいるということはあるまい。ほとんど確信に近い想いが胸の内にわだかまっている。
もっと大きな、より壊滅的な謀(はかりごと)を企てているであろう確信が……。
「……いかんいかん。なにを妄想しているんだ、某は」
足を止め、首を振る。今まで、直感に頼ってどれほど悲惨な目にあってきたことか。己に天運がないことは嫌というほど思い知っている。
日々の地道な鍛錬と精進だけが確実な結果に結びつくのだ。
今はただ、前に伸びる道を歩くだけ。
気がつけば随分進んでいたらしい。聞こえてくる森の音には、いつの間にか冷たい水の響きが含まれていた。
誘われるがままその源へ。山道を僅かに逸れた行く手には、清らかな水の流れが伸びていた。
67 :
4−2:2007/11/24(土) 16:21:34 ID:yNIr55Fm0
ようやく気づいた喉の渇きに、迷うことなく流れに手を浸していた。痺れるような冷たさを掬い上げ、口へと運んで胃に落とす。
鮮烈な刺激に驚いたのだろう。腹の虫が盛大に存在を主張した。飛び跳ねた魚が川面から現れ、そしてまた消えるのと同時に。
「……ちょうどいい。昼餉にするか」
空を見上げれば日も中天にかかろうとしている。空腹を満たすには頃合だ。
足元の石塊を脇によけ、背負っていた荷を静かに置く。ひっかけていた鍋が石に触れ、軽い空ろな音を立てた。
荷の前で膝を折り、胸元で軽く両手を組む。
「大いなる山の神(ニノトゥ・カミ)、我に僅かばかりの糧を授けたもう」
短く祈りを捧げてから、再び元の道へと戻る。武士たるもの日々の食事をおろそかにするわけにはいかない。
旅の途中だからといって保存食で済ませるような横着はもっての他だ。規則正しく、三度の食事をきちんと摂ってこそ、心身の健やかさは保たれるのだから。
……そのために日々の歩みが遅れても、だ。
涼しげになる梢の奥、並び立つ木々の中へと踏み入り、まずは薪を集めていく。細く乾いたものを選びながら、木漏れ日に茂る葉の元へと足を向けた。
固く大きな葉に太く短い茎を確かめ、土をほぐして引っこ抜けば、根と共に小さな芋が現れる。固く形は歪だがこれも立派なモロロだ。
ただ、普通は煮ても焼いても固いままで食用には向かないが。
他にもいくつかの山菜を集めてから河原へと戻る。さっそく調理にとりかかるとしよう。
取り出した笊(ざる)にモロロを入れ、流れに浸して土を落とし、それを一枚の葉で包む。蔓で縛って土に埋め、拾い集めた小枝をその上に円形に組んだ。
火付けに時間は掛からない。乾燥した細い枝は、すぐに種火を炎と変えた。
中央に水を張った鍋を置き、これで準備は完了だ。次は主菜にとりかかろう。
68 :
4−3:2007/11/24(土) 16:25:57 ID:yNIr55Fm0
一つ長い枝をとり、その先に取り出した糸を結ぶ。もう一方の先端には針を。餌は川辺の小石に張りついていた小さな虫で十分だ。
魚籠(びく)を取り出し一つ大きな岩の上へ飛び乗る。僅かな手首の動きだけで、針は狙いに違わず水面の中心へと飛びこんでいった。
兄上のように剣で獲れれば楽なのだろうが、戦い以外で技を振るうのは武士としていかがなものかとも思う。
それに、たかが魚を釣り上げるのにそれほどの苦労はない。
火に掛けた鍋が煮立つまでの間で、魚籠には十に近い魚が収まっていた。
火の元へ戻り、串に刺した魚をその周囲へと並べる。味付けは塩だけで。脂が尾から落ちてくる頃に、砕いた香草を一振り火に投げ入れる。
鍋には洗った山菜を。煮上がるまでの僅かな間で、取り出した盆に器を並べ、コロホの漬物を三切れほど切り分ける。
焼き魚を主菜に、副菜は水で締めた山菜のお浸し。汁物は今は諦めよう。出汁から取るには時間が掛かりすぎる。
配膳を整えてから、最後の品を取り出すために水を打った。火は一瞬で掻き消えて、薪からは白い蒸気が上がる。
いつもならここで風向きが変わったりするところだが、今日はすぐに持ち運べる盆で対策は完璧だ。
幸いというかやはりというか、風が気分を損ねることはなかったけれど。
69 :
4−4:2007/11/24(土) 16:29:12 ID:yNIr55Fm0
幸運を山の神(ニノトゥ・カミ)に感謝しながら、燃え残った炭を薪でのける。黒ずんだ土の下から掘り起こした葉の包みは、ほんのりと甘い匂いを漂わせていた。
蔓を解いた中からは、さらに強い香りが広がる。木の根のような硬さだった山モロロは、小さく歪なままではあったが、
木匙(きさじ)で押すだけで崩れるほどに柔らかくなっていた。ニモホの香草は大抵の山の幸に効果のある優れた調味料だ。
焼きあがった山モロロを、少しほぐして椀に盛る。少々見栄えは寂しいが、急ぐ旅の最中では止むを得ないだろう。
最後に手前に箸を置き、再び胸元で両手を組んだ。
「大いなる山の神(ニノトゥ・カミ)よ、今日の糧に感謝の意を……?」
そして祈りを終えようとしたとき、ふと、異質な気配に耳が震えた。人里離れたこの山中にあって、それは懐かしくすらある賑やかな気配。
いや、立てた羽耳が感じるのはそんな和やかなものではなかった。今の世では珍しくもない、慣れ親しんだ戦いの気配だ。
横に置いていた剣をとり、その重みを認めた次の瞬間、立ち上がり走りだしていた。
いやいやいやいや、これで一話ってどうなのよ。
お料理教室してなんか起こって終わり、ってさ。
ネタにつまった週刊誌の連載じゃないんだからさ、もっと
一話一話を大切にしようよ。何かが始まって、待て次号!
ってのはもっと引き込まれるような、続きが気になる種を
蒔いてからでしょう。
そもそも長編が許されるのは実力が認められてからだよな
短編をまとめる力もないのに無謀なことを
いいじゃねーかロハス料理教室のまっきっ♪で
うたわれは村の生活描写をするともれなくダッシュ村になるので困る
率直な感想をどうも。
概ね期待していた効果があったようです。
まとめてだと長すぎだと思ったので分けたのですが、
むしろ一気にのせた方がよかったかな。
ネタ的に長編にならざるを得ないので気長にお付き合いいただければと。
ちなみにダッシュ村大好きです。
DVDでまとめて販売してほしいものです。
そういうのやるなら個人占有スレ立ててそこでやってくれないかな
こんな一般的な名前だと間違えて閲覧しちまうよ
君が思う以上に迷惑だ
迷惑って何が?
他に2ch内うたわれSS職人がいる訳でなし。
まあ、俺も作品の方向性を見る限りではブログ借りるかサイト作るかした方が良いと思うけどな。
たぶん、うたわれSSを語るスレだと思って開いた人なんでしょ。
別にこのスレでもしていいことになってるけど、話題に乗る人
いないから結局>>1の専用スレになってるんだよね。
ああ・・・そうか。
紹介したいSSはあれど2ch内だと自演と疑われる可能性8割だから
嫌なんだよなあ。
なるほど。SSスレに対する配慮が足りなかったかな。
少しでも盛り上がればと思ったのですが。
しかしまぁ作ってしまった以上最後まで面倒みたいので、
sage進行でまったりとやらせていただきたい。
楽しんでいただけるようがんばりますんで。
もちろん通常のSSスレとしても使ってくださいませ。
79 :
5−1:2007/11/27(火) 22:05:12 ID:6z6BVCwC0
石塊を踏み越え、道へと至り、その先から感じる騒ぎの元へと駆ける。
「きゃー」
目よりも先に耳が捉える、絹を裂くような少女の悲鳴。
やや間延びしたその響きに駆ける足を一際速め、瞬く間も要することなく凶行の現場に辿りついた。
森へと続く大樹を背に立ち尽くす少女と、それを取り囲む四人の男達の前に。
状況は問うまでもなかった。少女に向けられた四振りの刃と、下卑た男達の表情を見さえすれば。
「なんだテメエ、邪魔すんじゃ……?」
誰何(すいか)の声など聞く必要があろうか。
某は駆ける速度を落とさぬまま、振り返った男の横を通り抜けた。
銀光の一閃を彼の腕に残して。
80 :
5−1:2007/11/27(火) 22:05:47 ID:6z6BVCwC0
「なに、しやが、ああ!?」
一拍遅れた悲鳴の後、落ちる腕と鮮血の飛沫に、男達は途端に慌て始めた。
人を襲う度胸はあっても襲われる覚悟はないとみえる。典型的な小悪党か。
「うおう?」
突然の出来事に驚いているのだろう。背に庇った小柄な少女は、ただ小さな奇声を一言発しただけだった。
「怪我はないか? もう大丈夫だ。すぐに終わるからもう少しだけ……」
「テ、テメエ!」
某が少女の身を案じる僅かな間も待てなかったらしい。男の一人が刃と共に、目と歯を剥いた形相を向けてきた。
仲間の腕が落ちたのは偶然だとでも思っているのか、あるいは某の気迫が足りなかったのか、まるで退く気はなさそうだ。
こちらの僅かな落胆を知る由もなく、男達の罵声は続く。
「この、クソムシがあ!」
「侍くずれか。楽にくたばれると思うなよ」
「ふざけたマネしやがって。テメエの腕を両方とも、いや、足まで千切ってダルマにしてやる」
月並みな文句を聞いているとますます気分が沈んでくる。名誉を上げる相手にはほど遠い輩共だ。
81 :
5−1:2007/11/27(火) 22:06:21 ID:6z6BVCwC0
溜息と共に本音をこぼしていた
「もう、いいからかかってこい」
「な、なに?」
「名乗りも口上も無駄だろう。これ以上お前らのような馬鹿に付き合うのは面倒だ」
「ん、だとお?」
「それに、せっかくの昼餉が冷めてしまう」
「ふ、フザけんな、このガキが!」
某の本意は正しく伝わったらしい。即座に、二人の男が真正面からつっこんできた。
愚直な突撃は予想の通りだが、二刃の剣閃を同時に躱すのは難しい。
敢えて数歩を前にでて、捌きに要する間を空けた。
合わせて落ちてくる二つの切先の、一つを避け一つを受ける。
鍔根にかかる力に逆らわず、右に僅かに力をかけて。
右方を流れていく刃と男。力が無に帰した一瞬に、貯めた力を奔らせた。
82 :
5−4:2007/11/27(火) 22:07:49 ID:6z6BVCwC0
首を刈る、確かな手応えが腕に残る。
結果を目で見る事もせず、返す刀を二人目の背へと振り落とす。
背骨を斜に断つ感触は、首よりももっと重かった。
「ふう……」
「そこまでだ、このクソムシが!」
しまった。瞬殺のつもりであったが、思った以上に距離を開けてしまったらしい。
声に振り返ったその先では、残る一人が少女の首に剣を突きつけていた。
「調子に、調子にのりやがって……」
恐怖で動けないのだろうか。少女は身動(みじろ)ぎ一つせず、成りゆきに流されるままでいる。
いや、恐怖に捉われているにしては、その目はあまりに冷静だった。
幼げな面立ちに似合わぬ勝気な瞳が、背を気にする眼差しを時折こちらに向けてくる。
なにもするなとでも言うように。
83 :
5−5:2007/11/27(火) 22:09:35 ID:6z6BVCwC0
「っ!?」
その真意を察しようとした矢先、思わず身構えさせられていた。
周囲を警戒していた意識すらも集中し、前へと向けて緊張を高ぶらせる。
「動くな! 動くんじゃねえぞ、へへ。少しでも動いたらこの娘の首がどうなるか、わかってんだろうな」
なにを勘違いしたのか、少女を捉えている男が妄言を吐いている。
なにを言っているのかは解する気もない。余計なことに費やす意識など、今は微塵もないのだから。
「ようし、いいか。まず剣を捨てろ。そのまま後ろを向いてはいつくばってだな……?」
某が緊張を向けている先が己でないことにようやく気がついたのだろう。
男はこちらを警戒しながらも、ゆっくりと背後を窺(うかが)い。
そして気づいた。森へと続く巨木の更に後ろ、蟠(わだかま)る闇の表層にいる影に。
それは白い、巨大な獣の影だった。
84 :
5−6:2007/11/27(火) 22:20:07 ID:6z6BVCwC0
「ひい?」
『ヴォオオオオオオオ!』
咆哮と共に、その姿が明らかになった。白い獣毛に覆われた巨大な虎は、丈が男の倍以上もある。
輝く瞳は紫がかった青光を放っていた。いかなる闇をも見通しそうな光を。
太い四肢に振るわれる爪、真っ赤な顎の内に並ぶ白い牙の列は、見ただけでその無慈悲な威力を知らしめる。
「う、うわあああ! バ、バケモ……!」
思い描いた光景は、即座に現実となっていた。
男が悲鳴と共に少女から離れた瞬間、その上半分が喰いちぎられるという惨劇として。
鮮血は飛沫かない。代わり、獣の口元から滴り落ちる流れが、地に血の海を生んでいた。
肉を食む音がやけに大きく響く。骨を砕く音と共に。
断末魔をも飲み込んで、獣は前へと歩みでてきた。
横に並んだ少女を一瞥した後、某へと牙を剥いて。
85 :
5−7:2007/11/27(火) 22:20:49 ID:6z6BVCwC0
「グ……」
恐怖に震える本能を、エヴェンクルガの誇りで抑えつける。
か弱き少女を後に残して、武士がおめおめと逃げだせるものか。
握る力をこめ直し、構える剣を上段に備えていた。
いかに大きく見せようとも、まるで意味はないと知りながらも。
応じるように、白虎はゆっくりと近づいてきた。
距離が一つ縮まるごとに、恐怖と緊張が膨らんでいく。
勝負は一瞬でつくだろう。
必殺の軌道を定めるべく、迷いを一つずつ潰していく。
絶対の死を前にして、それでも心を折らぬように。
こちらの気など歯牙にもかけず、白虎はいよいよ間を詰めてきた。
威風堂々たるその姿はまるで森の皇だ。
恐怖に支配された心の内に、僅かばかりの安堵が生まれた。
最期に、斯様(かよう)な敵に出会えた幸運に。
86 :
5−8:2007/11/27(火) 22:21:19 ID:6z6BVCwC0
覚悟は決まった。
一つ大きく息を吐く。
吸いこむ気は大きく深く。
練り上げた力の全てを腹に溜め、刃の軌跡を確かに定め、
そして。
「ムックル。めっ」
『キュフウ〜』
少女の声に反応した獣の情けない鳴き声に、某は顔から地面につっぷしていた。
「きゃー」←間抜けすぎ。
『少女は恐怖のせいか、声も出ないようだ』とかの方が緊迫感は出る。
っていうか後半のアルルゥ(だよね?)と前半の襲われた少女が同一人物に
見えないんですけど。ムックルいるなら悲鳴上げないし、上げるとしても
「ムックル!」だろうよ?
あとさ、前話で『人里離れた山中』って描写してるじゃん? そういう所に
山賊らしきものが複数で屯してるってどうなのよ。
せめてさ、山賊が出ると聞いていた、とかトゥスクルの首都に出るには、
どうしてもこの山を通る必要がある(だから山賊達が略奪で食っていける)
とかの『山賊が出てもおかしくない理由』を描写しとかないと。
唐突にこんな陳腐なシーン出されても『はいはいニコポニコポ』で終了
なんだよね。どうみてもトウカのエピソードのコピーだしさー。
あと、君『待て次号!』的展開使いすぎ。飽きる。キリのいいとこで話
切るか、キリが良いとこまで書く。物語のテンポと構成をもっと真面目
に考えようよ。
おっと、続きあったのか。
最後の段落は忘れておくれ、早とちりして申し訳ない。
おお、「きゃー」の間抜けさに気づくとは、鋭い。
情報の出し方についてはもう少し上手くやるように気をつけますわ。
テンポとの兼ね合いがなかなかに難しいなぁ。
うたわれるものの世界に葉鍵キャラがいたらのスレって落ちたのか
うたわれ世界を基本にするとは大胆な発想だなぁ。
ギャグ? シリアス?
92 :
6−1:2007/12/01(土) 05:21:17 ID:m/Ptr0SI0
大樹の前で胡坐をかいた某の前で、少女は骸を漁っていた。
首なし、血みどろ、臓物まみれの遺体にさしたる嫌悪を示すこともなく、
ただ汚れることだけには気をつけて。
懐や荷を探っては、「おー」だの「きゃっほう」だのと妙な歓声を上げている。
知らず、溜息をこぼしていた。
「山賊に襲われているのかと思ったら、まさか助けた方が追剥だとは
……エヴェンクルガの名折れだ」
「むー、アルルゥ」
「……は?」
「追剥じゃない。アルルゥ。こっちはムックル」
呟きを聞いていたらしい。
少女は自分と白虎を指差しながら小さく頬を膨らませていた。
言葉遣いや顔立ちこそ幼いが、歳は某とさほど変わらなさそうだ。
見た目こそ可愛らしいがなぜか油断できない気がするのは、
先の行動を目の当たりにしているせいだろう。
どこか静けさを感じさせる円らな瞳は、
懐から飛びだしてきたリスのようなものを追っていた。
93 :
6−2:2007/12/01(土) 05:21:58 ID:m/Ptr0SI0
「この子はガチャタラ。アルルゥはふたりのおかーさん」
「おかーさん? いや、名を聞いたわけでは……」
言いたいことを言い終えたのか、アルルゥはそれ以上の言葉を発しようとはしない。
代わりに眼差しで語っていた。自分は名乗ったのだからお前も名乗れ、と。
確かに道理ではあるのだが、極端な語り口がどうにも心に抵抗を生む。
それでも、武士として名乗らぬわけにはいかないか。
「……某はタイガ。エヴェンクルガの武士だ」
「……たいがー?」
「タイガ、だっ」
「むー。ヘンな名前」
「余計なお世話だ。追剥にとやかく言われる筋合はない」
荒くなる語気もそのままに、思わず本音で怒鳴っていた。
冷静な態度と連携の巧みさから、行為の常連であることは間違いない。
いかに見た目は子供といえど、見逃せるものではない。
94 :
6−3:2007/12/01(土) 05:22:29 ID:m/Ptr0SI0
某の的を射た言い分のなにが気に入らなかったのか、
アルルゥはただでさえ丸い頬をさらに膨らませて睨みつけてきた。
「アルルゥ、悪いヒトにしかしない。それに、脅すだけだったのにジャマした」
「なに?」
「ヘタっぴのクセにジャマした」
伸ばした指で某の、腰の刀を指し示して。
「な、なんだと、この……」
立ち上がろうとした時には、アルルゥはムックルの後ろに隠れていた。
唸りをあげるその様は、今でもこの身に恐怖の震えを思いださせる。
頭上ではご丁寧にもガチャタラまでもが尾を逆立てて威嚇していた。
一つ、深く息をつく。
落ち着け。このように些細なことで心を乱されるから某は未熟なままなのだ。
一呼吸で感情を鎮めてから、ゆっくりと立ち上がった。
95 :
6−4:2007/12/01(土) 05:23:00 ID:m/Ptr0SI0
「……そうか、それは悪かったな。今度からは某のようなお人よしのいないところでやってくれ」
そして踵を返す。捨てゼリフめいた皮肉を残すことに、少しだけ自己嫌悪を覚えながら。
「うー……」
まだ苛立ちの残る心をなだめつつ、来た道を戻っていった。
某は間違っていない。危機に襲われた弱者を助けるのは武士として当然の行為だ。
その結果に騙されたとしても、なんら後悔する必要などない。
あのような輩がいるということを知れたのもよい経験だ。
世の中がいかに広かろうと、斯様に非常識な存在にそうそう出会う事もないだろう。
……と安心したいのに。
なぜ背後からその気配が消えないのだろうか?
振り返り確認するまでもなく、ムックルが某の後ろについてきていた。
恐らくは、背のアルルゥに言われるがままに。
いや、道が同じだけということもありうる。
だが、気づかないふりをしたまま道を外れ川原へと向かっても、
威圧的な獣の気配は後ろに張りついたままだった。
96 :
6−5:2007/12/01(土) 05:24:33 ID:m/Ptr0SI0
あえて気にせず、支度した昼餉の前へと戻る。
盆の上に整えた品々は熱さを失ってはいたが、まだ十分によい匂いを漂わせていた。
「おー」
感心する声は前から聞こえてきた。
ムックルの上から盆の上に、熱い視線を注いでいるアルルゥから。
「……なにか用か」
「べつに」
不機嫌を隠さぬ声で問いかけても、そう言うばかりで目を合わせようともしない。
構うことなく、祈りを終えて箸をとった。
ほぐした山モロロは柔らかく、仄かな苦味と豊かな甘味が口の中に広がる。
魚は絶妙の火加減と塩加減。ほどよく脂の落ちた身には、いつまでも後を引く旨味があった。
山菜の煮付けは清々しく、漬物は後味さっぱりと。
あまり誇りたくはないが、我ながらなかなかの出来だ。
出来、なのだが……。
残念ながら、あまり堪能はできずにいる。
当然だろう。巨大な虎に周囲を巡回されながら箸を進められる度胸など某は持ち合わせていない。
兄上ならば周囲の状況など何一つ気にすることはないのだろうが……。
97 :
6−6:2007/12/01(土) 08:12:08 ID:m/Ptr0SI0
心休まる昼餉のため、某は心の膝を屈した。
荷から盆と食器をもう一組とりだし、同じ膳を配していく。
揃えられていく食事を前に、ムックルはうろつくのをやめていた。母と称する少女を前に置いて。
「手を洗ってこい」
「ん」
食前の作法に関してだけは妙に素直だった。
アルルゥは小走りに河へと向かうと、そそくさと手を洗ってまた急いで戻ってきた。
奇妙なもので、そんな些細な事が妙にほほえましく、心の澱が晴らされたような気がする。
整えた膳を無言で差し出してやると、受け取ったアルルゥは静かに目を閉じ祈りの言葉を口にした。
「森の神(ヤーナゥン・カミ)さま、いつも恵みをありがとうございます。
大神(オンカミ)ウィツァルネミテアに感謝を」
……某への感謝はなかったが。
アルルゥはおもむろに、木匙(きさじ)で掬った山モロロを口へと運ぶ。
「……おおー」
発した言葉はそれ一つだけ。後は飢えた獣のように、ひたすらに食を進めていった。
椀が空になればずいと差し出し、皿があけば催促して。
もう文句を言う気力もない。某は無言で促されるまま、モロロを盛り魚を供じてやる。
多めに作ったつもりの食事は、あっという間にきれいさっぱり消えていた。
98 :
6−7:2007/12/01(土) 08:13:01 ID:m/Ptr0SI0
「んふー。ごちそうさま」
「はいはい、おそまつさま」
思わず憮然とした声を返していたが、満足げなアルルゥの声は決して不快なものではなかった。
「ごはん、じょうず」
「そりゃどうも」
「剣よりじょうず」
「うるさいっ」
無論、語る内容にもよるが。
食後の腹ごなしに二人分の食器を洗う。
剣の腕は一向に上がらないのに、こんな手際だけはよくなっていた。
小さな溜息がもれるが、汚れが落ちてきれいになっていく様は見ていて心地よい。
水気を落とし荷をまとめる。一人と二匹の視線を浴びながら。
目的は果たしただろうに、アルルゥはまだその場でくつろいでいた。
某が気にかけることではないか。
99 :
6−8:2007/12/01(土) 08:13:52 ID:m/Ptr0SI0
「それじゃあな。あまり人に迷惑をかけるなよ」
別れを告げ川原から道へと戻る。
思わず余計な時間を使ってしまった。少し急がなければならない。
のだが。
「……まだなにか用か」
後ろにはまだムックルがついてきていた。頭にアルルゥを貼りつけて。
あまり期待はしていなかったのだが、問いかけにはちゃんと返事が返ってきた。
「アルルゥ、女の子の一人旅。きっと危ない」
「……どこが」
あからさまな嘘に目が平む。
視線の先ではムックルが「こっちを見るな」とでも言いたげに唸っていた。
しばしの睨みあいを不毛に思ったのか。頭上からアルルゥが言葉を足してきた。
「街まで遠い。おいしいゴハン、たべたい」
きっとそれが本音なのだろう。尚更(なおさら)に腹立たしい。
「某はエヴェンクルガの武士だぞ。それを、給仕の代わりに使おうというつもりか」
「エヴェンクルガの人、優しい。弱い人の味方」
思わず剥いていた怒りを前に、しかしアルルゥは動じなかった。
100 :
6−9:2007/12/01(土) 08:14:51 ID:m/Ptr0SI0
「あ……?」
「武の才に恵まれ、孤高な精神をもち、例え自らの命を失おうとも決して義に反することはしない」
「そ、その通りだ。わかってるじゃないか」
「エヴェンクルガの武士だったら、女の子を一人で行かせたりしない」
「む、う……」
アルルゥは立て続けに痛いところをついてくる。
抑揚の少ない棒読みの言葉ではあったが、その内容に某の心は小さく揺らされていた。
だから、だろう。
「……アルルゥといっしょ。や?」
一瞬、上目遣いでそう呟いたアルルゥを、かわいいなどと思ってしまい。
頭の中は真っ白のまま、知らず言葉を返していた。
「つ、次の街までだぞ」
「きゃっほう」
嬉しそうに笑う。初めて見るアルルゥの笑顔は、名の花に相応しいものだった。
もっとも、喜びの声は束の間だけのことだったが。
「それじゃ、いく」
それまでのやり取りなど全て忘れたような潔さで、
アルルゥはムックルに歩を進ませ始めていた。
こちらを顧みることもなく、己の道を迷いなく。
101 :
6−10:2007/12/01(土) 08:15:42 ID:m/Ptr0SI0
「お、おい」
「たいがー、はやくくる」
「某はタイガだっ」
掛けてくる声がやたらとぞんざいに聞こえた。恐らく気のせいではあるまい。
「言っとくが、食事番はやらないぞ」
「ん」
「追剥めいた悪事も認めないからな。某まで加担しているなどと思われたら迷惑だ」
「わかった」
「ちゃんと聞け。いいか、エヴェンクルガと共に歩く者として、
もっと名誉と品格というものを自覚してもらう……」
「むー、うるさい」
「う、うるさいとはなんだ。おい、こら。人の話を……!」
「ムックル」
『ヴォ』
「ぐあ!? き、貴様っ、武士を足蹴にするとは……」
「ガチャタラ」
『キュ』
「し、しびびびびびび!?」
ムックルに踏まれながら、ガチャタラの奇声に脳をかき回され、引きずられて道を行く。
これがアルルゥという少女との最初の出会いであった。
へー、ふーん、ほー、愛娘が能動的に強盗を行い、死人の屍を汚し、
その上弔いもしない鬼畜に育ったと知れば、きっとハクオロは泣くで
しょうなあ、死ねば良いのに。
兄や姉同然の、同郷の人達を悲しい勘違いで失った人は「悪い人にしか
しない」なんつう超絶主観で人を断罪する糞ったれに成り下がるんですね、
激死ねば良いのに。
たどたどしい言葉遣いは変化しないのに、都合よく人見知りなとこだけは
変わったんですね、初対面の人に甘える程に。超死ねば良いのに。
全体的に話の都合の為によく考えもしないでキャラを汚してるようにしか
思えないなあ、糞死ねば良いのに。
言われてみれば死者の扱いはあんまりだな。考慮しますわ。
話の都合で、と言われるのはやむをえないかな。
今後の展開で馴染んでもらえるよう努力します。
フォローになってないかもしれんが、うたわれ原作でもアルルゥはムックルに
敵とはいえ人間の死体を食わせるのに抵抗ないんだよな。
ムックル、ごはん!だもんで、あれはちょっと引いたわ。
絵がないから生々しくないけど、実際は頭ガキっと噛みわって脳味噌出てたり
内臓ズルズルひっぱってクチャクチャ食べたりしてんだろ。
一応ムックルは雑食でモロロ食ってても満足するみたいだが、
人の味を覚えたペットであの大きさ。ヤバすぎる。
アルルゥにはエルルゥとは違って外敵に対する残虐性というか
容赦のなさみたいなものは感じたんだけど、
ごはん代わりに食わすようなシーンがあったっけ?
106 :
7−1:2007/12/05(水) 06:12:49 ID:3fUIJdm90
「これはユナギナ。葉っぱは熱冷まし、茎はおひたしになる」
「へえ」
「こっちはコネリ。実の中身は体にいい。ちょっと苦い」
「ほう」
山を行き、日も暮れ始めた時刻になり、
某達は夕餉の食材探しに森へと足を踏み入れていた。
目の前でアルルゥが手際よく次々と山菜や野草を集めていく。
わざわざ解説つきなのは、つまり調理しろということなのだろう。
「サンカトマの実は乾燥させてから粉にする。ぴりっと辛いのが刺激的」
「なるほど」
正直見直した。森へ入る前の祈りも某のように一般的な簡略されたものではなく、
古い言葉による格式の高いものだった。まるで巫(カムナギ)か医師のようだ。
某も旅の心得として野草薬草に関する知識は多少もっているが、
アルルゥのそれは比べ物にならない深さだった。
107 :
7−2:2007/12/05(水) 06:13:28 ID:3fUIJdm90
「くわしいな。どこで覚えたんだ?」
「おねーちゃんが教えてくれた」
「おねーちゃん……姉上がいるのか」
「ん。おねーちゃん、薬師。おばーちゃんと同じぐらいえらい」
振り返ったアルルゥは少しだけ嬉しそうだった。
「おねーちゃん、ゴハン作るの好き。
お洗濯も、お掃除も好き。怒ると怖いけど、いつもは優しい」
語る声も楽しげに、表情も和らげて。
気持ちはよくわかる。良いところも悪いところも含め、
兄弟姉妹という存在は特別なものだ。
「姉上のことを慕っているのだな」
「ん……だいすき。おとーさんと同じぐらい、すき」
なぜかその答えには、計り知れない重さを感じさせられた。
決して穢すことのできぬ、神聖な誓いにも似た想いを。
未熟な某では想像も出来ぬような悲しみを、この少女は越えてきたのだろう……。
108 :
7−3:2007/12/05(水) 06:14:12 ID:3fUIJdm90
少し沈んだ雰囲気を引きずることもなく、
アルルゥは自慢を続けるように楽しげな声を取り戻していた。
「あと、森も教えてくれた」
「森?」
「ん。ヤマユラのカカエラユラの森、ムックルの森」
「ムックルの……そうか、森の主(ムティカパ)か」
古き森には神の使いたる獣が棲み、その地を護っているという。
森の主(ムティカパ)と呼ばれる巨大な獣が。
対峙したときに感じた威圧、力、存在感。
この目で見るのは初めてだが、言われてみれば納得だ。
思わず、後ろのムックルを振り返る。
不機嫌そうな青い目が「こっちを見るな」と語っているように見えた。
109 :
7−4:2007/12/05(水) 06:14:55 ID:3fUIJdm90
「それじゃアルルゥは、森の母(ヤーナマゥナ)なのか……」
「んー? アルルゥはムックルとガチャタラのおかーさん」
森の母(ヤーナマゥナ)とは森の主(ムティカパ)の意思を代弁する者だ。
森の声を聞く、ということもあるのだろう。
首を傾げるその仕草からは、とても自覚があるようには見えなかったが。
「そうか。ふむ、人は見かけによらないというが、まさか森の母(ヤーナマゥナ)とは……」
「お。たいがー、足元」
「あのな、何度言ったらわかる。某の名はタイ、ガ!?」
考えながら歩いていた足元が、突然なくなった。
「サンカトマは森の水辺に生える。たいてい底なし沼」
「そういうことは、先に言え! うおわわわ。く、の」
110 :
7−5:2007/12/05(水) 06:15:44 ID:3fUIJdm90
沈みかける体を支えるため、手に触れた蔓へと手を伸ばした。
落ちかけた体が辛うじて止まる。
「あ」
「な、なんだ」
「それ、テクノレクノ。根っこが食べられる」
「今は、それどころじゃ……」
「でも、蔓はすごく臭い」
「ふぐぉ!」
力をこめて握り締めた途端、腐肉にも似た悪臭に襲われた。
頭を鉄槌で殴られたような衝撃に耐えながら、かろうじて姿勢を保つ。
「おー」
「み、見てないで、助けろお」
「えー、くさい」
「おいい!」
……けっきょく、落ちた。
匂いを流し落とすまでアルルゥが近づこうともしなかったことだけは、
しっかりと覚えておくことにしよう。
111 :
8−1:2007/12/09(日) 07:00:24 ID:UkIKWn040
「むふー。ごちそうさま」
「……おそまつさま」
夕食を終え満足そうなアルルゥの声に、某は低い声で答えていた。
上機嫌でいる方がおかしいだろう。沼にはまったせいだけではない。
汚れを落とした河では足をとられ、洗おうとした服は流され、
食材を探す最中には見つけた猪に襲われ、あげくそれをムックルに仕留められたのでは。
「むー。まだ気にしてる」
「別に、気になどしていない。この程度の不運はいつものことだ」
「んむう?」
そう、いつものことだ。釣った魚を鳥にさらわれるのも、置いていた荷が流されるのも、
キノコを取り間違えて腹を下すのも、崖から滑り落ちるのも。
ちなみに、後片付けの当番決めも負けた。
112 :
8−2:2007/12/09(日) 07:01:19 ID:UkIKWn040
「おー。……トゥラミュラ?」
「エヴェンクルガの武士を禍日神(ヌグィソムカミ)呼ばわりするな」
それじゃ不幸の神じゃないか。それも、人に空回りな努力をさせるという。
……適切すぎて泣けてくる。
「気にしない。トラ、料理じょうず」
「誰がトラだ、誰が」
慰めにもなっていない。アルルゥは背をムックルの腹に預けたまま、
手元でガチャタラを撫であげていた。よほど慣れているのだろう。
母であるというだけあって、そこには団欒にも似たゆったりとした雰囲気が満ちている。
それでもなぜか、アルルゥの表情は少しだけ寂しげに見えた。
「おねーちゃんと同じぐらい、じょうず」
「姉上、か。里で待っているのだろう?
追剥めいたことなどやめて郷里に戻ったらどうだ」
「……おねーちゃん、いなくなった」
束の間、森の音がぴたりと止む。
アルルゥは囲む火を虚ろな眼差しで眺めていた。
113 :
8−3:2007/12/09(日) 07:02:20 ID:UkIKWn040
「そ、そう、なのか」
「おとーさんと同じ。アルルゥをおいて、いなくなった……」
抑揚のない声が静かな木々の合間に染みこんでいく。
響きに含まれた冷たさが、想いの深さを物語っていた。
今にも泣きだしそうな幼子を思わせながら、しかしアルルゥは表情を崩さない。
ただ虚ろな瞳のまま、静かに炎を見つめているばかり。
「アルルゥ……あの、な……」
「……おねーちゃん探す。見つかるまで、アルルゥ帰らない」
だが、短い沈黙の間に、その目は力をとりもどしていた。
黒い瞳には力強く、深い決意が宿っている。
某が余計な事を言う必要などなにもないようだ。
114 :
8−4:2007/12/09(日) 07:03:28 ID:UkIKWn040
「そうか」
「ん」
一瞬だけ微笑んでから、アルルゥは大きくあくびをこぼしてした。
小さな手で眠たげな目をこすりながら、ムックルの腹に沈んでいく。
「きっと見つける。おねーちゃんと一緒に、ヤマユラに帰る……。
いっぱい、おいしーもの食べる……」
いつの間にか、森は音を取り戻していた。小さく響く虫の声に、
アルルゥの呟きが溶けていく。
寝言と変わったその声は次第に小さくなり、やがて消えた。
あどけない寝顔を見る。
小さな寝息をたてながら、その顔は幸せそうだった。
「……早く見つかるといいな」
おやすみの代わりにそう呟いてから、
音を立てぬように汚れた食器をまとめていった。
115 :
9−1:2007/12/12(水) 00:20:53 ID:M1i4FRZ10
エヴェンクルガの朝は早い。
昇り始めた日の光を朝靄の向こうに感じながら、某は目を閉じた。
全ての意識を集中させる。振り上げ止めた刃へと。
河の縁に立ちながら、水の音も次第に離れていく。
目も、耳も、五感すら、今この時だけは必要ない。
意識はただ剣にだけ。自らを一振りの刃と化すように。
無明の中に軌跡を描く。緩やかな弧を描く、力と速さを備えた道を。
それこそが、己が掴むべき剣の道だと信じて。
幾度となく軌跡を刻み、その軌道を確かなものとする。
長く閉ざしていた目を開いても、それは心に刻まれたままでいた。
鮮明に映る現世(うつしよ)に思念の軌跡を重ねたまま、
それをなぞるように剣を進めていく。
蟻が進むほどの速さで、ただひたすらにゆっくりと。
116 :
9−2:2007/12/12(水) 00:21:28 ID:M1i4FRZ10
伸びる筋、縮む肉。力は踏みしめる地から生まれ、動きと共に上りくる。
それは足裏から踝、脚膝腿へと通り、腰で回され背、肩、腕へ。
動きと共に力は練り上げられ、ただ一太刀にへと収束していく。
切先は思い描いた軌跡から一寸の狂いもなく宙を進み、
狙い違わず、軌跡の終端で静止した。
しばしの、残心。
「ふう……」
吐き出した息と共に、額に浮かんだ汗が流れる。
ただの一太刀ではあるが、全身の筋肉が内から熱を発していた。
117 :
9−3:2007/12/12(水) 00:22:17 ID:M1i4FRZ10
足と剣を引く時も緊張は同様に。
姿勢を元に戻した後、刃の軌跡をもう一度見定め、
同じだけの時をかけて二度目の剣を振る。
もう一度。
もう一度。
心身を刃に重ねたまま一心不乱に、ただ静かに、正確に。
幾度剣を振っただろう。
「……ふうう」
大きく息を吐き、力を弛緩させたとき、朝靄はすっかり晴れていた。
118 :
9−4:2007/12/12(水) 00:23:03 ID:M1i4FRZ10
「あちち」
爽やかな朝日を浴びながら、汗にまみれた身を川の流れにさらす。
水の冷たさが心地よい。だが、心までは晴れなかった。
日々の鍛錬は苦ではない。問題は己にこそある。
いつまでも成長しない非力さに。
「はぁ……ん?」
体を清め身の支度を整えたとき、遠くから足音が聞こえてきた。
近づいてくるその音は、石を蹴るように慌しい。
「なん、だ?」
「おー、トラ」
それはアルルゥだった。自分の頭ほどもある大きさの壷を抱えながら、
それを感じさせない軽やかさで駆け寄ってくる。
119 :
9−5:2007/12/12(水) 00:24:04 ID:M1i4FRZ10
「あのな、トラはやめろって……」
「がんばれー」
かと思えば、そのまま走り去っていった。
振り返らず勢いもそのままに、姿はすぐに見えなくなる。
「がんばれって、なにを……?」
考える前に体が動いていた。
小さくも確かな殺気に、体が勝手に後ろに反り返る。
同時にその点を打つ右の掌。
それは僅かな手応えを残し、河原の端に転がり落ちた。
「なんだこれ。蜂、か……? まさか……!?」
聞こえてくる羽の音、近づいてくる群れの気配に、
気がつくなという方が無理だ。
アルルゥの駆けてきた方向からは、
蜂の大群が黒煙のような勢いで向かってきていた。
120 :
9−6:2007/12/12(水) 00:39:56 ID:M1i4FRZ10
「く、の……」
思わず剣を抜く。かつて姉上に付き合わされた訓練が脳裏をよぎった。
エヴェンクルガの伝説的な武士ゲンジマルは百の敵兵を相手にたった一人で立ち向かい、
その全てを斬り伏せたという。その逸話を参考に、百匹の蛇塚に叩き落された記憶が。
あの時は動転するばかりで咬まれるがままだった。
だが、今は違う。
燃える覚悟を滾(たぎ)らせて剣を振った。
121 :
9−7:2007/12/12(水) 00:41:05 ID:M1i4FRZ10
縦に、横に、円を描き、止まらずに。
軌跡に触れた蜂達が力を失い落ちていく。
呼吸を三つつく間に、数え切れぬほどの命が散っていた。
無論、それで黒煙めいた群れが潰えるわけもなかったが。
蟲の意思は無慈悲に、無遠慮に、正確に、針を敵へと向けてくる。
それは、未熟な某に捌ききれるものでは到底なく。
「う、あ、うわあああ……!」
上げた情けない悲鳴の声は、その羽音に掻き消されていた。
あんさ、
>>1よ。
もう誰も相手してないみたいだしさ、ここでの投稿は諦めたらどうだい?
お前さんがやりたいっていうなら止めないけど、正直反応ないとこに投下
してもつまらないでそ。
たたかれて伸びたい、手直しや軌道修正しつつ自分を磨きたいって人は、
2ちゃんよりも、某理想郷とかの投稿掲示板のほうが向いてる気がするん
だよね。
まぁスレ立てた意地と責任もあると思うので
まったりやらせていただきます。
ペースは年明けたらまた考えますが。
投稿とかはどうも活発なところが見つからんというか。
情報あれば教えていただきたいぐらいで。
とりあえずぐぐってみますわ。
124 :
10−1:2007/12/16(日) 07:25:58 ID:pMbzESOG0
今日用意した昼食は昨日のものにも増して完璧だった。
採れたモロロは質がよく、蒸し上げただけでほっくりとやわらかい。
多めに釣れた魚は燻製にした。保存も効き数日は楽ができるが、
出来立てはまた別の味わいが楽しめる。
野生のキュウルは冷水で冷やして塩だけで。漬物も悪くはないが、
新鮮な野菜のみずみずしさもよいものだ。
汁物も作った。炙った小魚で出汁をとり、根菜を煮て味噌で味付けて。
久しぶりに香る熟成された温かい匂いは食の場を和みの空間に変える。
それも、時と場合によるが。
表情の険しさを自覚しながら、某は黙々と箸を進めていた。
無数の蜂に刺された痛みを無視して。
「んむー……」
膳を挟んで前に座るアルルゥも、昨日に比べて箸の進みが鈍い。
表情からは判りにくいが、少しは気にしているのだろう。
「トラー」
「トラ言うな」
「怒ってる?」
「別に」
「むー、怒ってる」
「怒ってない。あの程度、捌けない某が未熟なだけだ」
返した言葉に偽りはないが、心中の苛立ちは隠しきれなかったようだ。
125 :
10−2:2007/12/16(日) 07:27:10 ID:pMbzESOG0
「うー」
アルルゥは不満げに小さく唸りながら昼食の残りを進めていた。
そんな母に、ムックルとガチャタラは心配げな眼差しを向けていた。
時折、こちらを殺意交じりの視線で威嚇しながら。
なんだと言うのだ。某はまったく悪くないというのに。むしろ完全な被害者だ。
引け目を感じる必要など微塵もなく、アルルゥが反省するのはむしろ当然のことだろう。
だろう、が。
食事を用意した者として、そんな沈んだ顔で食べられるのは不本意でもあった。
「さっきの壷」
「んむ?」
「蜂の巣だろ。貸してみろ」
「……うー」
唸りのまま上目遣いを見せながらも、アルルゥはしぶしぶと傍らの壷をよこしてきた。
蓋をとり中を見る。子供の頭ほどもあるその中には、美しく輝く黄金色の蜜に、
割れた蜂の巣が漬かっていた。想像していたよりもずいぶんと大きい。
腫れた跡が小さく痛んだが、気にしないことにする。
126 :
10−3:2007/12/16(日) 07:28:00 ID:pMbzESOG0
自分の荷の奥から袋を取り出し、別の器に掻きだした。
小さく山となる薄灰色の粉に、アルルゥの表情が不思議と好奇の相へと変わる。
「それ、なに?」
「モロロを乾燥させて粉にしたものだ。これに、水と蜂蜜を混ぜてよくこねる」
汲んでおいた水を一掬いと、蜂蜜を同じぐらい注ぐ。
最初は素早く、次第に力をこめて混ぜていくと、
それは徐々に弾力をもつ生地へと変化していった。
餅のように柔らかでありながら、手に張りつくこともない。
まとまった生地をそのまましばし置いておく間に、平鍋に菜種の油を厚めに張る。
強めの火にかけたそれは、やがてぱちぱちと音を立て始めた。頃合だろう。
「で、生地を団子状にして、多目の油で揚げる」
待つこと、しばし。
アルルゥの期待を込めた眼差しに見守られる中、
それは大きく膨らみながら、きれいな狐色に変わっていった。
127 :
10−4:2007/12/16(日) 07:28:56 ID:pMbzESOG0
「少し冷ませば完成だ。モロロの練り団子揚げ、とでも言えばいいか」
「おおー、トラ焼き」
「妙な名前をつけるな。ほら。蜂蜜つけても美味いぞ」
「ん!」
揚げ団子を差し出してやると、アルルゥは嬉しそうに手にとっていた。
割って立ち上る湯気と匂いに顔を綻ばせ、頬張りますます上機嫌になる。
「はふはふ……ほいひい」
頬をいっぱいに膨らませたその表情は幼い子供そのもので、
某も自然と笑みをつくっていた。
「蜂の巣が欲しいんだったらちゃんと言え。
心の準備ができていればあの程度の蜂の群れはだな……」
「んふー。ムックルにもあげる。ガチャタラも」
機嫌をよくしたアルルゥは某の言葉などまるで聞いてはいなかった。
幸せをわけるように、二人の子らに割った団子を分け与えている。
少しはその気遣いをこちらにも向けてほしいものだが……。
まあ、いいか。
128 :
10−5:2007/12/16(日) 07:30:05 ID:pMbzESOG0
苦笑と共に溜息をついた後、目を開けたその前に、アルルゥが手を差し出していた。
蜜にまみれた白い塊を持って。
「ん」
「え?」
「アルルゥも、トラにあげる」
「いや、だからトラは……まあいい、が……」
注意する言葉も一瞬忘れさせられていた。
差し出されたもの、蜂の巣の欠片を前にして。
よく見れば金色の蜜の中、白い何かが蠢いている。
蜂の子である幼虫が、うぞむぞと、のたうつように。
「食える、のか? これ……」
食欲を促すものではない。いや、正直に言えば気色が悪かった。
食事の席でこれが出てきたなら、即座に膳をひっくり返していたかもしれない。
だが。
きらきらと輝くアルルゥの目を見ると拒否するのは気がひける。
悪ふざけや冗談ではなく、本当の誠意だと知れたから。
129 :
10−6:2007/12/16(日) 08:16:51 ID:pMbzESOG0
蜂の巣とアルルゥ。アルルゥと蜂の巣。
蜂の巣、アルルゥ、蜂の巣、アルルゥ……。
しばし視線を彷徨わせた後、覚悟を決めた。
「む、ぐっ……」
受け取った巣を躊躇いなく、開いた口へと放りこみ。
そのまま勢いよく咀嚼した。
もきゅ、もきゅ、もきゅ、もきゅ……。
口の中に甘さが満ち、ぷちっとした歯ごたえと共に
別の甘味と仄かな苦味が混ざる。それはまったくの異質ながら、
奇妙な統一感を持った風味と味わいを口の中に広げていた。
柔らかな巣の歯ごたえと共に、噛めば噛むほど深まるその味は。
「……うまい、な。うん。これは、いける」
正直な感想に、アルルゥは一際嬉しそうに微笑んでいた。
130 :
10−7:2007/12/16(日) 08:17:22 ID:pMbzESOG0
「んふー。もういっこ、あげる」
「ああ、ありがとう」
今までにない和やかな雰囲気を感じながら、差し出された蜂の巣に手を伸ばした。
途端、
『ヴォ』
「ぎゅむ!?」
唸るムックルに踏み潰された。青い目に、嫉妬のような揺らぎが見える。
「こ、この、なにすんだ!」
「こら、ムックル。めっ」
『ヴォヴォウ』
「ぐああ!? や、やめ、乗るな、このバカ!」
某の言うことはもちろん、アルルゥの言葉すら聞きいれず。
ムックルはしばしの間、そのまま足踏みを続けていた。
131 :
11−1:2007/12/19(水) 00:55:44 ID:fqSrZgXr0
洗い終えた食器を一つずつ乾布で拭い、重ねまとめて荷をこしらえる。
里にいたときよりも、こういった雑務にばかり長けてしまった。
悩みとするにはあまりに意味のないことだが。
「よし、っと。さて、行くか……?」
荷を担ぎ上げたところで、アルルゥたちがいないことに気がついた。
右にも左にも上にも下にも、どこを見渡しても尾も見えない。
「あいつは、また勝手に……」
溜息一つついてから、気配を探して歩き出す。
とりあえずは川下の方から行ってみるか。
ここまでの道中でも、こういったことはたびたびあった。
何度注意しても聞き入れやしない。戻ってくるとその手には、
果物やら卵やら奇怪な石やらの有象無象が握られていた。
得意満面な笑顔をみせられると怒る気も失せてしまう。
まったく、なりは某とさほど変わらぬというのに、中身はまるっきり子供か獣だ。
姉上殿とやらもさぞかし苦労したに違いない。
132 :
11−2:2007/12/19(水) 00:56:18 ID:fqSrZgXr0
そんな事を考えているうちに、求める気配がようやく見つかった。
曲がりゆく川の先、大きな岩の向こうから、楽しげな声が聞こえてくる。
『キュイー』
「ん、ガチャタラいいこ。ムックルもちゃんと体洗う」
『ヴオウン』
中身は子供そのもののクセに、二匹の獣に対してはしっかり者の母親のように振る舞う。
知らず苦笑しながら、声を遮る岩を登っていた。
「おい、アルルゥ。勝手にいなくなるなとあれほど……」
「お?」
そして声を掛けようとして、頭の中が真っ白になった。
そこに、振り向いたアルルゥの姿が焼き付けられる。
流れる水と戯(たわむ)れるその姿は、一糸まとわぬ生まれたままのものだった。
133 :
11−3:2007/12/19(水) 00:57:50 ID:fqSrZgXr0
クセのある黒髪は水に濡れ、首筋や肌に張りついている。
大きな耳を下げた表情、軽い驚きを浮かべた頬を、髪からの水が伝い落ちていった。
伸びる腕はしなやかで、張りのある足はみずみずしい。
華奢な体は起伏に恵まれてはいなかったが、歳相応の女らしさを宿しはじめていた。
などと、冷静に観察している場合ではない。
「うー。トラ、すけべー」
腕で体を隠すアルルゥの非難の声に、ようやく我に返った。
「だ、ち、違っ!?」
瞬間、岩から転がり落ちる。飛び散る荷物も打ち付けた痛みも、なにも感じはしなかった。
「み、水浴びしてるとは知らなくてだな、事故、そう、事故なんだ、これはっ」
「のぞき。へんたいー」
「のっ、覗き? 馬鹿な、エヴェンクルガの武士である某が、そんな破廉恥なマネをするか!」
「アルルゥのはだか、のぞいた。ちかんー」
「だ、誰が好きこのんでお前の裸なんか見るか」
134 :
11−4:2007/12/19(水) 00:59:19 ID:fqSrZgXr0
低く不機嫌に聞こえるアルルゥの声に反発するがまま、
考えもなしに言葉が飛び出していく。
その意味すら考えず、もたらす結果も鑑(かんが)みず。
「……むー?」
「そんな洗濯板みたいな胸やら寸胴な腰なんて見たがる奴がいるか。
そういう心配はもう少し育ってからすればいいことで……」
「……ムックル」
言葉を途中で遮った、低く短い呟きの後。
『ヴオオン』
「ぐがっ!?」
某は上から降ってきたムックルに潰されていた。
「ガチャタラ」
『キュイー』
「ど、ばっばばっばばっばばばばっ?」
続けて脳を揺さぶる音に。
「むー、もっとやる」
『ヴオウ』
『キュ』
「どぅあーーーーーー!!?」
攪拌(かくはん)された意識が蘇ったとき、日はすでに落ちた後で。
その日、アルルゥに生まれた静かな怒りは、
三品増やした夕食を終えるまで消えなかった。
135 :
12−1:2007/12/23(日) 07:30:12 ID:4VPKJldd0
数日を要した慌しい道程もようやく終わりを迎え、某達はようやくムルオイの町に辿りついた。
新興の町に相応しく、居並ぶ家々も真新しい。某達のような旅人も多いのだろう。
行き交う人々の表情もまた、どこか生気に満ちて見える。
ウペキエの国最初の町は、乱世の時代には似合わぬ和やかな賑わいに溢れていた。
それを驚きで乱すのはなんとも心苦しい。いや、決して某に非があるわけではないのだが。
「……なあアルルゥ。今までもその調子で町を行き来していたのか?」
「んむう?」
問いかけに返された不思議そうな表情は、そうだと答えたようなもの。
アルルゥは某の隣で悠々と歩みを進めている。
ムックルの背に乗ったまま。
「アルルゥ、いつもムックルといっしょ。ヘンなの近づいてこないし、みんな親切になる」
それはまあ、そうだろう。人を一口で飲みこみそうな巨獣を前に、萎縮しない方がどうかしている。
そういえば某も、町に現れる白い虎と不思議な少女の噂を耳にしたことがあった。
まさかと思い本気にしたことはなかったのだが、実物を前には納得せざるをえない。
しかし、集まるこの好奇の視線は、武士としては耐え難いシロモノだった。
だからといって、文句を聞き入れるようなアルルゥでないことはここ数日で嫌というほど思い知らされている。
町中で踏み潰されるような不名誉よりはマシと、通りを進む足を早めた。
136 :
12−2:2007/12/23(日) 07:30:57 ID:4VPKJldd0
途中、通り過ぎる店先で動かなくなるアルルゥ(が乗ったムックル)を何度も何度も説得し、
ようやく目的に叶う場所へと辿りついた。
他に比べても大きな、造りのしっかりした宿に。ここならば一人旅をする女性を預けても安心だろう。
まったく無駄な心配だとは自覚しているが。
「ここなら食事も上等なものがでてくるだろう。路銀は十分にあるな」
「ん。もらったの、ある」
言いながら、アルルゥは懐から袋を取り出した。
出会った日に動かなくなった賊どもの懐から回収した、血に黒ずんだ重たげな袋を。
なにか言おうと思ったが、やめた。これ以上関わらない方が我が身のためだと本能が警告している。
それでも。
「んむ?」
なぜかほんの少しだけ、この騒ぎの元凶との別れが惜しいと思ってしまった。
気の、迷いだろう。
137 :
12−3:2007/12/23(日) 07:31:38 ID:4VPKJldd0
「それじゃあ、な。あまり非常識なことは……」
するんじゃないぞ、と言葉を締めようとして、宿の騒がしさに意識を奪われた。
ムックルが原因ではない、最初からの喧騒に。
何事かと訝しみながら戸を開ける。
途端、期待の眼差しに迎えられた。
「お客様!」
「な、なんだ?」
「その腰の剣、お客様は、お侍様ではありませぬか?」
「そう、だが……」
「「おお」」
某の答えに、周囲の客達が声を上げた。着ているものから察するに近隣の村人か。
内の一人が涙を潤ませた顔を近づけてきた。
妙齢の女性ならともかく、頭の禿げ上がった男に迫られても心臓に悪い。
138 :
12−4:2007/12/23(日) 07:32:24 ID:4VPKJldd0
「お侍様、お願いします。我らが村の危機を、どうかお救いください」
「お、落ち着け。一体どういうことだ。まずは話を聞かせろ。そして縋りつくな」
押し寄せようとする一行をなんとかなだめ、ようやく話を聞きだすことができた。
そう珍しい話ではない。山から溢れたキママゥが、農村の田畑を荒らしているというものだった。
最近では知恵をつけ、町へと運ぶ最中の荷を狙ってくるらしい。
戦乱の中でようやく実った作物をと訴える声は切実かつ悲壮なもので、
なるほど、涙を浮かべるのも無理はない。
「……かわいそう」
なにか思うところがあるのか、後ろから聞こえてきたアルルゥの呟きには
胸が痛くなるほどの実感がこもっていた。
村人達と交わす視線には、某には理解の出来ぬ連帯感のようなものがある。
だが。
139 :
12−5:2007/12/23(日) 07:33:08 ID:4VPKJldd0
「相手がキママゥ風情ではな……」
正直食指が動かない。獣の相手は狩人の役目であって、
武士が務めるべきはもっと誉れの高きものだからだ。
「それは、わかっております。しかし、近年のキママゥは凶暴さを増しておりまして、
村の狩人ではとても手に負えず、他のお侍様がたもまるで話を聞いてくださらず……」
「当然だろう。獣など斬っては刀が穢れる。武士の刀は自らの歴史を重ねていく己の一部。
不浄な血で汚したがる者などいるわけがない」
それは某とて同じこと。放つ言葉の言外には、自然とその響きが混ざる。
村人の間に同様と落胆が広がるが、こればかりはしかたがない。
名のある主に仕え、誉れを受け授かることこそ、武士の本懐であるのだから。
村の民達は気落ちしながらも、諦めの表情で応じていた。
ただ一人、いつの間にか某と向かいあう位置に立っていたアルルゥを除いて。
140 :
12−6:2007/12/23(日) 08:32:06 ID:4VPKJldd0
「トラ、助けてあげないの?」
「聞いていただろう。武士のやる仕事じゃない」
「そんなの、しらない」
頬を膨らまし睨みあげる表情は、それまでに見せたことのない強い怒りのものだった。
「みんなでがんばって作ったたべもの。
それを横取りするキママゥ、わるい。わるいの、放っておくの、ダメ」
語る言葉には強い想いが込められていた。そういえばアルルゥも村里の出、
彼らの立場を自らに重ねているのか。
それにしても勢いが普通ではない。同じような経験があるのかもしれない。
だが、つまりはそれだけ当たり前の出来事であり、逐一同情してもいられない。
「悪いのはわかるけどな、しょせんは獣だ。斬っても名誉にもならないし、むしろ名に傷がつく」
「……おとーさんなら、そんなこと言わない」
「あのな。お前の父上がどのような人物だったか知らないが、某は武士だ。
相応しい戦いでなければ刀を抜くことはできない」
141 :
12−7:2007/12/23(日) 08:33:27 ID:4VPKJldd0
戦の最中に限らず、自らを律してことの侍だ。
力を振るう者として、だからこそ守らねばならぬ誇りがある。
それが、アルルゥには理解できないのだろう。
「んむぅ、やぁ……トラのばかぁ」
「バ、バカとはなんだ。お、おい、アルルゥ……」
子供のわがままめいた言い分は、遂に涙となって流れていた。
突然の事に思わず動揺してしまう。
「おやおや。なにをもめてるんだい?」
そこに、横から声が割りこんできた。艶のある声の主は、やはり艶のある女性だった。
乱れ髪に派手な簪を刺し、華やかな着物を肩も露に着崩している。
豊かな胸を強調するようないでたちだが、どういうわけか不快さを感じないのは、
その笑顔が奇妙なほどに爽やかであるからだろう。
それでも、見られて楽しい光景ではない。
142 :
12−8:2007/12/23(日) 08:34:41 ID:4VPKJldd0
「な、なんでもない。放っておいてくれ」
「あらら。お侍様が女の子を泣かしちゃダメじゃないか」
「某に非があるわけではない。これは、アルルゥのわがままであってだな」
「んむーう」
呼ばれた名に反応してか、アルルゥが不機嫌そうな声をあげた。
いつの間にか涙は止まっている。眼差しが、先までとは異なる非難の色を見せていた。
べ、別に某にはやましい気持ちなど微塵もない。
ただ、目の前で揺れるものを勝手に追ってしまうだけだ。
それを自覚しているだろうに、女は笑みを変えぬまま、背に負っていた布袋を前に持ち直した。
僅かに湾曲した長い棒状のそれは弓だろう。
傾き者、という奴か。
「キママゥ退治だそうだけど、アンタらもやるのかい?」
「いや、某は……」
「トラはやんない。ヘタっぴだから」
否定で返そうとした言葉を遮り、アルルゥがそんなことを言っていた。
こちらと目を合わせもせず、ぶっきらぼうに投げ捨てるように。
143 :
12−9:2007/12/23(日) 08:35:28 ID:4VPKJldd0
「な、なんだと?」
「キママゥこわいから、やんないって」
「ア、アルルゥ、お前、なにを言い出す……」
「おや、そうなのかい」
「そう」
「違う! だ、誰が怖がってる、誰が」
「ん」
アルルゥの半眼と伸ばした指は、まっすぐ某に向けられていた。
「お、お前な……」
「そんな風には見えないけど。キママゥぐらい、どうってことないよねえ」
「当たり前だ! あんな下衆な獣ごとき、エヴェンクルガの敵ではない!」
「へえ、エヴェンクルガか……。だったら楽勝だね」
「もちろんだ。サルが何匹群れようが某の敵になるものか」
「えー」
「……なんだ、アルルゥ。その顔は」
「ムリしないほうがいい。怖いこと怖いっていうの、はずかしくない」
「こん、の。……やる、やってやる! 案内しろ。サルはどこだ、サルはあ!」
「お、お引き受けいただけますか。ありがとうございます。
今、囮の荷を用意しておるところですので……。
あ、お、お待ちください、お侍様。そちらではありません……!」
熱くなった頭の中は茹(ゆだ)ったように赤く染まっていた。
なにを考えることもなく、ただ侮辱を晴らすことだけを思い、足の向くままに進むだけ。
熱が自然と冷めるまで、延々と町を歩いていた。
144 :
12−10:2007/12/23(日) 08:39:19 ID:4VPKJldd0
「むふー」
タイガの反応がよほどお気に召したのだろう。彼の立ち去った後の宿で、
アルルゥは満足げな笑みを浮かべていた。
不意に、その肩が叩かれる。
「ん?」
「なかなかやるね、お嬢ちゃん」
見れば、事の経緯に貢献してくれた女性。その爽やかな笑顔には、
どこか共犯者の親しみが込められていた。
それが心からの笑みだと知れて。
アルルゥも自然と言葉を返していた。
「アルルゥ」
「ん?」
「お嬢ちゃんじゃないよ。アルルゥ。こっちはムックルで、この子はガチャタラ」
唐突な自己と家族の紹介にも、一瞬の驚きを示しただけで素直に受け入れてくれた。
親指を立てるその仕草も、笑顔に相応しく潔い。
「アタシはティティカだ。よろしく、アルルゥ」
「……ん」
アルルゥもまた、力強く親指を立て返していた。
Arcadiaって二重投稿おkだっけ?
それと読者を意識してるならちゃんと引越し先は書きましょう。
してないなら駄文うpしてないでチラシの裏にでも(ry
ここでサイト名だしてもいいもんかちょいと迷ったのですが、
一応報告はしとくべきでしたかね。すみません。
Arcadiaさんに投稿させていただいております。
まとまっているので多少は読みやすいと思いますので、
よければ見てやってください。
こちらの方はキリのいいところまでで終わらせることにします。