【告知】
現在総括期間になっています。
総括期間は 11 月 12 日の午前 0:00 までとなっていますので、
運営への意見、書き手の挨拶、次々回のテーマ投票などは
それまでにお願いします。
【告知】
現在総括期間になっています。
総括期間は明日 11 月 12 日の午前 0:00 までとなっていますので、
運営への意見、書き手の挨拶、次々回のテーマ投票などは
それまでにお願いします。
【告知】
第六十八回投稿テーマ:『意地悪』
投稿期間: 11 月 12 日の午前 0:00 から 11 月 26 日の午前 0:00 まで。
テーマを見て、思いついたネタがあればどんどん投稿してみましょう。
面白い作品だったら、感想がたくさんついてきて(・∀・)イイ!!
もちろん、その逆もあるだろうけど……(;´Д`)
※投稿される方は
>>4-6 にある投稿ルール、FAQ をよく読んでください。
※特に重要なのが
・テーマに沿った SS を*匿名*で投稿する
・投稿期間中は作品に対して一切感想をつけない
の二点です。他の各種 SS スレとは異なりますのでご注意を。
それでは、投稿開始っ!
あと次回のテーマですが、161氏からの
『SSの中に「ありがとう」の台詞を入れる』
との提案に163氏、164氏の賛同がありましたので、それを採用させて頂こうと思います。
キャラ、状況を問わず、話の中で登場人物が台詞で「ありがとう」と
発言すれば、それだけで応募要綱を満たした事になります。
開催時期は 12 月中旬を予定していますので、「二週間じゃ書けない」
「意地悪でネタが思いつかない」という方は、こちらのテーマで
ネタを考えてみてください。
169 :
名無しさんだよもん:2007/11/15(木) 19:08:16 ID:mYcHd6Mn0
あげ
まだこのスレ続いていたのか…。
4,5年くらい昔に参加してたなあ。何もかも懐かしい。
SS職人たち頑張れ。
【告知】
現在、葉鍵的SSコンペスレでは投稿を募集しています。
今回のテーマは『意地悪』で、締め切りは 11 月 26 日の午前 0:00 です。
テーマを見て思いついたネタがあれば、ぜひ投稿してください。
また、次回のテーマはSSの台詞の中に『ありがとう』と入れる形式で、
開催時期は 12 月中旬になる予定です。
「二週間じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
「こんにちわ。いいお天気ですね」
決まりきったようにおばさん臭い調子で天野が挨拶をした。
「なあ、お前はそんな表現しか出来ないのか?」
「失礼ですね」
わずかに怪訝そうな表情をする天野だが、そんなことには特に気にせずに俺は歩き出し
た。前からの約束でもないが、今日は天野の買い物に付き合うことになっている。
俺が歩き出したのを見て、天野も少し不満げながら後についてくる。まあ、確かに天気
はいいし、どこかに出掛けるのは悪いことじゃない。なのに、不満そうなヤツを連れ歩く
のも、何だか粋じゃないな。
「で、その天気がいい日に出掛けてるってのに、そんな不満そうな顔はないと思うぜ?」
「相沢さんは意地悪ですね」
全部俺が悪いと言わんばかりに天野は表情でも語っている。それはそれで意外と可愛い
ものだが、もう少し笑ってた方がいい。
「一日三回以上、天野に意地悪しないと死んでしまう体質なんだ。あきらめてくれ」
はぐらかすように俺が大げさなアクションをしながら言ったが、天野はそれで笑顔を見
せてはくれなかった。
「三回以上って、まだ二回意地悪するんですか」
「まあな」
「でも、相沢さんとこうして学校以外で会っているのは、一週間ぶりですけど……」
「じゃ、一週間分の二十一回だな」
「それはそれで計算が合ってません」
今の一回分を抜けば、残り二十回だと言いたいのだろうけど、実際問題今のが意地悪だ
と言われても、俺にはその自覚がないので、たぶん数には入らないだろう。そもそも、突っ
込みどころが違う気がするのだが。
「ま、とにかく買い物、行こうぜ」
「相沢さんは本当に意地が悪いですね」
また言われた。天野の計算だと、これも一回に入るんだろうか? などとどうでもいい
ことを気にしながら、俺たちは駅前の商店街へと向かった。
俺が天野の買い物に付き合うことになったのは、大した理由でもない。たまたまヒマに
なって、天野は買い物をするのだと言う話があって、一緒にどうだと誘われただけだ。
商店街で本やら服やら見に行くらしいのだが、考えてみれば、俺はこう言うのが苦手な
のかも知れない。名雪の買い物だと、必ず何かしらトラブルが発生していたし。
少し距離を置いていた俺に気がついたのか、天野は俺に近づきながら声を掛けてくる。
「どうかしたんですか、相沢さん」
「いや、どうも俺は買い物に付き合うとろくなことがない星の下に生まれてるんじゃない
かって、そんな気がしてただけだ」
「そんなに迷惑でしたか」
「ああ、そんな意味じゃないんだ。まあ、気にしないで、店見て来いよ」
「相沢さんはやっぱり意地悪ですね。そう言うときは……いえ、やっぱりいいです」
天野は何か言いたそうだったが、途中で言葉を切って、本屋に入っていった。その場に
残された俺としては待ってもいいのだが、何だか間抜けな気がしたので、本屋へと入った。
紙の匂いに包まれた店内に入ると、天野はすぐに見つかったが、真剣なまなざしで頭を
小さく動かしている。あまり声を掛ける雰囲気でもなさそうだ。
本屋なんてあまり行かないなと思いつつ、天野を追うようにして入っていきなりマンガ
や雑誌の方に行くのもかっこ悪いので、俺はひとまず適当にそこいらの平積みをぐるりと
見回すことにした。
不意に目に入った本があった。児童書や絵本のコーナーにあった、その本のタイトルは
『きつねのおきゃくさま』と言う子供向けの絵本だった。
絵本を手にとってパラッと読んでみると、この絵本の狐がアイツと重なり、自然に俺の
口元がゆるんでいた。──と、そこに、声が。
「相沢さん?」
「わっ、天野、どうした?」
「わたしの方は済みましたけど、相沢さんはどうするんですか?」
何だかかっこ悪いところを見られた気がしたので、絵本をあわてて元の場所に戻して、
天野に向かってなるべく普通の様子で声を掛ける。
「ああ、それじゃ行くか」
天野がわずかに怪訝そうな顔をしたが、それに構わず本屋を後にした。
本屋を出た後、天野は何か言いたそうにしてはいたが、俺があえてそれには触れないよ
うにしていたせいか、本屋でのことは口に出さずに、買い物を続けていた。
服屋に付き合うのはわずかに抵抗はあったし、実際天野も「外で待っていただいてもか
まいませんよ」と言ってくれたのだけど、そこで甘えてしまうのも本屋でかっこ悪いとこ
ろを晒した手前、うんとは言えずに俺も意を決して中まで付き合った。まあ、さすがに試
着コーナーの中までなんてのはないけどな。
春物新作コーナーと書かれているディスプレーには明るい色の服が飾られていて、それ
を見ては小さく頷いてみたり迷ってみたりする天野の姿は確かに悪くはない。これが見ら
れるなら俺の決意も無駄ではなかったろう。
とは言え、俺に「どれがいいですか?」とは聞いてこないのがいかにも天野らしい。そ
んなことまでしたら、まんま休日のカップルの姿だな。天野とは別に付き合ってると言う
か、彼氏とか彼女とかそう言う関係でもないのだし。
天野の女の子っぷりを堪能した俺は、荷物持ちへと転職した。と言っても、そんなに大
げさなものを買ったわけではなく、手提げ袋が二つだけ。
「それほど重いものではないですから、別に相沢さんに持っていただかなくても」
並んで歩く天野は少しだけ困ったような表情をしてみせるが、別に重いから軽いからと
言う次元の問題じゃない。
「や、一緒に買い物に付き合った男が荷物持たないでどうするんだよ」
「そうですか、それではお願いします」
そう言うところでも上品な物言いは結構なのだが、何故か天野にはあまり似合ってない
気がする。まあ、俺が年上であることを踏まえるなら、当然なのかも知れないが、これが
アイツなら……最初から荷物持ち確定で連れ回すだろうな。あと、サイフも兼ねてるだろ
うし。アイツの場合、買い物と言っても肉まんとマンガしかないけどな。
「どうかしたんですか?」
「や、何でもない。とりあえず、どこかでメシでも食うか」
「そうですね」
やっぱりいつもと変わらない天野の返事だったが、不思議と心地よく感じた。
あれから駅前の喫茶店のランチでそこそこに腹を膨らせて、その後は商店街でウインドー
ショッピングなんかをしつつ、目についた小物を手に取ってみたり、そんな感じで過ごし
いた。なんか、ますます休日のカップルだな。
そして、何とはなしに、駅ビルの屋上にやってきた。
「ここからはものみの丘が見えますね」
フェンスの向こうにある緑の広がる場所を見つめながら、天野が言った。
「そうだな」
俺も何となく同意。
「あの子たちはまた……、誰かと仲良くなって、やって来ちゃうんでしょうか」
天野の視線の先にはフェンス。その先にはものみの丘。さらに先には何が見えているの
だろう。
「そうかも知れない」
そして、その誰かにつかの間のきらめきを見せた後、苦しませることになるかも知れな
い。そこまで言わずにいたのは、お互いに分かりきったことだから。
「やっぱり狐って意地悪ですね」
「童話や寓話ではそんなのばっかりだな」
「さっきの絵本は違いますけど」
「ああ、知ってるんだ?」
「以前に読んだことがありますから。相沢さんがそれを読んで、笑ってたのも何となく分
かりますし」
「別に話がおかしくて笑ったんじゃないんだけどな」
「食べるつもりで面倒をみていたヒヨコやアヒル、ウサギに慕われて、それがどうしよう
もなく嬉しくなってしまって」
「ああ。最後には自分の何倍も大きくて強い狼に戦いを挑むんだから、狐って馬鹿だよな」
「でも、それがあの狐のしたかったことですから」
「恥ずかしそうに笑って、なんてのが、とにかくもう素直じゃないなって」
「そうですね」
「でも、だからこそ、アイツみたいだなって思ったんだ」
「素直じゃないところが、ですか」
ものみの丘を遠目にしながら、俺はかすかに笑っていた。
「相沢さん」
「なあ、天野。あの丘の狐たちが人の姿になるときって、どんな気持ちだったんだろうな」
「記憶も命も失って得られるわずかなきらめきしかなくても、そうしたかった……だけで
はないでしょうか」
「そうだよな。で、やっぱり最後は恥ずかしそうに笑うのかな」
俺の問いに対して、天野は少し躊躇ってから、うつむき加減に答えた。
「笑ってましたよ」
「そうか。で、話を蒸し返すようで悪いが、何で『やっぱり意地悪』なんだ?」
少々わざとらしいものの、ここでやたらとしんみりしても埒があかない。そう思って俺
はあえて話題を切り替えることにした。
「相沢さんはそう思わないのですか?」
「別に意地悪だ、なんてのはな。ただ不器用で素直じゃなくて、馬鹿だなぁとしか」
「それはほとんど真琴のことですね?」
天野の表情に笑みが戻る。別段笑わすつもりで言ったんじゃないんだが。
「……やっぱり意地悪です。あの子たちも、真琴も、相沢さんも」
「て、その結論に行き着く流れが分からん」
「わたしが望まないことをしてくれたり、わたしがしてあげたいと思ったことをさせてく
れなかったり、色々です」
色々だと言われて、天野の言うところの意地悪について、何も分からないなんてことは
なかった。だが、俺も意地悪だと言われては素直に納得して終りではない。
「あんまり分からねえな。て、そう言うお前もな」
「有り体に言ってしまえば、これも意地悪ですね」
俺の反撃は天野には何も効いてないようだった。
「分かってるなら、素直に言え」
「それでは、みんな意地悪と言うことで収めてはどうでしょうか」
そう言う天野は、何故か嬉しそうに見えた。
なるほど、みんな意地悪か、確かにそうかも知れない。素直じゃないひねくれた意地悪
なヤツら。ああ、悪くはないな。俺もその一人だしな。
「天野には、あと二十一回意地悪しないとな」
「回数増えているのはどうしてですか?」
というわけで、投稿完了。
今回も投稿少なめ?
>>172-176 『イジワル21』 (kanon)
【告知】
締め切りまで残り二日となりました。
そろそろラストスパートをかけていきましょう。
今回のテーマは『意地悪』で、締め切りは 11 月 26 日の午前 0:00 です。
また、次回のテーマはSSの台詞の中に『ありがとう』と入れる形式で、
開催時期は 12 月中旬になる予定です。
「残り二日じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
【告知】
いよいよ締め切りまで残り24時間となりました。
そろそろラストスパートをかけていきましょう。
今回のテーマは『意地悪』で、締め切りは 11 月 26 日の午前 0:00 です。
また、次回のテーマはSSの台詞の中に『ありがとう』と入れる形式で、
開催時期は 12 月中旬になる予定です。
「残り一日じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
【告知】
あと二時間で締め切りです。
最後の追い込み、がんばっていきましょう。
今回のテーマは『意地悪』で、締め切りは 11 月 26 日の午前 0:00 です。
締め切りを越えて投稿をしそうな方は、前もってお知らせください。
よほどの事がない限りは善処させて頂きます。
なんとか間に合った。今からSS投下します。
原作はoneで。ヒロインは長森瑞佳。
タイトル・『あなたの意地悪にも』
打ち捨てられたダンボール箱の中で震えている子猫を見ると、つい抱き上げて家に連れて帰ってしまう。
背中を丸めて泣いている子供をみると放っておけずについ声をかけてしまう。
それは小さい頃からあまり変わらない私の習性だ。
そんな習性も含めて、わたしがわたしのことを記憶として思い出せるのはだいたい幼稚園の頃からになる。
例えば。
私が幼稚園の年少組みの面倒を見ていたとき、保母さんに「面倒見のいいお姉ちゃんだね」と言って貰えたことがあった。
大人に褒められることは子供にとって単純に嬉しいこと。それにお姉さんという響きにも憧れた。
自分が面倒見のいい素敵なお姉さんになれる――と思えることが素直に嬉しかったのだと思う。そういう年頃だった。
もちろんそのことが全てではないけれど、きっかけの一つであったことは確かだ。
実に子供っぽい理由である。子供だったから当然だけど。
特に手のかかる子程熱心に面倒をみてしまう。
いまでも8匹の猫を家で飼ってる。
みんな捨て猫だった。寂しそうに鳴いているその声を聞くと、どうしても放っておけなくて家に連れて帰ってしまうのだ。
そして小学生の頃に出会った、とても意地悪な男の子。彼の面倒をみるのが一番大変だ。
大変、だった――
小石を投げる。二階の窓のガラスめがけて。
でも小学生のわたしの手では、二階までなかなか届かない。
「えいっ」
めげずにがんばる。
何度か投げてるうちにやっといくらか窓に当てられるようになった。
でも何度窓ガラスに小石をぶつかっても、窓からあの男の子が顔を出す様子はなかった。
「出てこないなあ」
さっきから周りの人の視線が気になる。
買い物籠を腕にさげたとおりすがりのおばさんにちらりと睨まれて、わたしは慌ててぺこっと頭を下げた。
怪しいひとに見られたかなあ。
「もう帰りたい……」
溜息。
だいたいどうしてわたしがこんなに苦労しないといけないのだろうか。
別にその子の為にわたしが苦労する義務なんて無かったはずなのだ。
そう思うとだんだん腹が立ってきた。
さっきまで窓ガラスを傷つけてないように小さな石を選んで投げていたけど……わたしは足元に転がっていたでっかい石を手に取った。
「えいっ!」
せいいっぱいの力と、そしてちょっとばかりの怒りを込めて。わたしは手にしたその石を投げつける。
窓を狙ったわけじゃない。どうせ当たるはずないと思ったし、ほんとに当たっても困るし。
でもこんなときに限ってわたしの投げた石は正確に窓ガラスのある方向に向かって飛んでいく。
なんで?
しかもこんなときに限って見計らったかのように窓が開き、やっと顔をだしてくれた男の子の顔面にあたる。
がつん、という鈍い音と、ぎゃあとかわあとかいう男の子の悲鳴が開いた窓の隙間から漏れる。
わ。すごい音。
「だ、だいじょうぶ?!」
わたしは焦って大声で呼びかけた。
でも自分でやっておいてなんだけど、今の音ではもう絶対に死んでると思った。
「なにするんだ!」
でも、男の子はすぐに飛び起きてわたしに怒鳴り返した。
ああよかった。結構元気そうだ。
「すごく痛かったぞ!」
「ご、ごめん!」
「なんでこんな嫌がらせをするんだ!!」
「い、嫌がらせじゃないもん!! 一緒に遊びたかっただけだもん!!」
「こんなでかい石をぶつけてどうして仲良く遊べるんだよ!」
「だ、だってなかなか出てきてくれなかったから……」
「頭に来た!!」
男の子は叫んだ。
それはほんとうに、ものすごく怒ってるみたいで。さすがにちょっと怖かった。
でも昨日出会った時みたいにうつむいて泣いているよりは、このほうがずっといいとわたしは思った。
けれども男の子は叫ぶ。
「これからずっとおまえのことイジメてやるからな!!」
「えええええ〜〜〜〜!!」
ひどい。わざわざ心配して励ましに来た女の子に、そんな言い方はないと思う。
そんなわたしの不満をよそに、怒りの男の子は二階の窓から飛び降りる。
その手にはなぜかかマンガみたいにでっかいトンカチが握られていた。
「うわあ」
むちゃくちゃに大きいトンカチだった。どう考えてもしゃれにならない大きさだった。
あんなおおきなトンカチで殴られてたら、きっとすごく痛い。痛いじゃすまない。
しかもご丁寧に棘釘まで刺してあるし。その発想がもうものすごく怖い。
とても怖いので、わたしは逃げる。男の子は追いかけてきた。
「待て〜〜〜〜!」
「ま、待ったら許してくれる?」
「いーや、許さない。一発殴るまでは絶対許さない」
「わあああん」
それじゃあ待てるわけないだろう、と思う。
わたしは走って逃げる。男の子は走って追いかけてくる。
「待てーーー長森」
「やめてよーー浩平」
あははは、と笑えてくる。
なんだかわたしは少しおかしくなってきた。
ああ、彼はなんであんなにおおきなトンカチを振り回しているんだろう。
それに二階から飛び降りるなんて子供には無理なのに。
ああ、おかしい。絶対おかしい。
こんなことおかしいのだ。ありえるはずがない。
そして気付いていく。これは夢だ。
軟弱なわたしが作り出す幻想。
幼稚で安易で。そしてもうすぐ覚めてしまうわたしの夢……
目が覚めて、現実を認識したのはほんの数秒。
その数秒で楽しかった、そして懐かしかった夢への想いもわたしの胸の中から消えていく。
「やだな……」
溜息。
ふと見ると、カーテンから僅かに差し込む光から夜明けが近いことを自然と感じた。
あの頃はいつもこれぐらいの時間に起きていた。
浩平を起こすためには必要な時間だったから。でも今はその必要もない。
さっきの夢の残滓が胸に差し込んできて、久しぶりに瞳から涙が溢れそうになった。
わたしは唇を噛んでその涙を堪える。
泣くもんか。
泣かない、絶対に。
たとえ誰も見ていなくても、もう泣かないってわたしは決めたから。
浩平が消えてしまってから、もうすぐ一年が経とうとしている。
いまでも時々はこんな朝を迎えることもあるけれど、最初の数ヶ月に比べたらわたしはずいぶんと落ち着くことが出来ていると思う。
「きっと、浩平のおかげでこんなふてぶてしい女の子になっちゃったんだよ」
ベッドの傍らに置いたウサギのぬいぐるみにわたしはそう語りかけた。
語りながら、浩平に振り回されてきた日々を静かに思う。
小学生の頃は特に苦労したものだ。
わたしもまだ子供だったから、男の子の他愛の無いいたずらでもときどき泣きたくなってしまうことがあった。
でもわたしは泣かなかった。泣かないって決めた。
子供なりの意地もあったろうし、しっかりしたお姉さんでいたかったというのもあるだろうし。
でも、一番の理由はわたしが泣いて逃げ出したら、その男の子は以前のうつむいていた男の子に戻ってしまう気がしたから。
浩平にはわたしがついていないといけない。
いつしかそう思うようになっていた。
だから今もわたしは彼の帰りを待っている。
彼の残した言葉の通りに。
「浩平のばかっ」
一言怒鳴りつけて、私はそのぬいぐるみをそっとベットサイドに置き直した。
もう気持ちは落ち着いた。
こんなことぐらいで泣いたりしない。
あれから、いろんなことがあったよね。
もう、浩平の意地悪にもちょとやそっとじゃくじけないんだから。
わたしと浩平のくされ縁は、こんなことぐらいじゃ消えないよね。
「よしっ」
むんっとからだに気合を入れる。
さあ、もう学校へ行こう。
なにがあっても以前と変わらない、いつもどおりのわたしになって。
投稿中に時間すぎてしまいました。
運営の方、申し訳ありません。
『あなたの意地悪にも』(one)
>>183-189
【告知】
ただ今をもって、投稿期間を終了させていただきます。
参加された書き手の皆様、どうもご苦労さまでした。
それでは、これから感想期間に入ります。
投稿された SS について感想、討論などをご自由に行ってください。
期限は 12 月 3 日の午前 0:00 までとさせていただきます。
以下が、今回投稿された作品の一覧です。
>>172-176『イジワル21』(kanon)
>>183-189『あなたの意地悪にも』(one・長森)
【告知】
現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は
>>191となっています。
感想期間は 12 月 3 日の午前 0:00 までとなっていますので、
まだの方は是非お願いいたします。
【告知】
現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は
>>191となっています。
感想期間は 12 月 3 日の午前 0:00 までとなっていますので、
時間がありましたら是非ともお願いします。
感想行きます。
>イジワル21
意地悪しといて笑わない事に不満を覚える祐一と、祐一が付き合えないのを知りつつ服を選ぶ美汐に違和感。
でも後者のは意地悪された祐一に対する意趣返しと脳内変換。そう考えるとみっしーも可愛いじゃないですか。
物語の中に「絵本」との伏線を忍ばせておき、ラストでそれを消化しつつ綺麗に締める。
SSとしてはなかなか理想的な形なのですが、もう一波乱あればとも思います。
>あなたの意地悪にも
棘釘トンカチに笑いましたw
長森ですね。まごう事なき長森ですね。
なんでこんなに苦労しなくちゃ…と思いつつも呼びかけ続ける世話焼き、苦労人属性。
原作での疑問のひとつ、なぜ長森が浩平宅を訪問したのか。その解の一つになり得るSSだと思います。
【告知】
現在、葉鍵的 SS コンペスレは投稿期間を終え、感想期間に入っています。
今回投稿された作品の一覧は
>>191となっています。
感想期間は 12 月 3 日の午前 0:00 までとなっており、もう一日も
ありませんが、明日のSS職人のために是非とも宜しくお願いします。
【告知】
ただ今をもちまして、感想期間を終了させていただきます。
投稿された書き手の皆さん、感想をつけてくださった読み手の皆さん、
そして生温かく見守ってくれていた ROM の皆さん、どうもご苦労様でした。
引き続きこのスレでは、今回の運営への意見、書き手の挨拶、
次々回のテーマの決定などを行いたいと思います。
上記のもの以外にも感想期間に間に合わなかった感想や意見が
ありましたら、書きこんでください。
※次回のテーマはSSの台詞の中に『ありがとう』と入れる形式で
決定しており、開催は 12 月 10 日からを予定しております。
※今回決めるのは次々回のテーマです。お間違いのないように。
おつかれー
っていうか、来るの久しぶり過ぎて出遅れた。
次回のテーマは新年の一発目だから、それらしいテーマがいいかな。
…って毎年そんな感じかもしれないけど。
自分は毎年田舎に帰るから「帰郷」とか…難しいか。
他には「遭難」とか「電話」とかは以前あったかな?
電話を発展させて、「あの人からの電話」みたいに限定しちゃうのもアリかも。
投稿数より感想数が少ないってのも珍しいな。
まあ総括期間中で時間が取れれば感想書いてみるつもりではあるが・・・
【告知】
現在総括期間になっています。
総括期間は 12 月 10 日の午前 0:00 までとなっていますので、
運営への意見、書き手の挨拶、追加の感想、次々回のテーマ投票などは
それまでにお願いします。
『あなたの意地悪にも』を投稿した者です。
このSSは当初浩平が過去の長森にした意地悪を中心に展開させていくつもりでしたが、
執筆時間が足りないのと、内容がダラダラになりそうだったのでこういう話に変更しました。
その分中途半端な内容になったかもしれませんが……
長森を書いたのは初めてだったので、キャラ造詣が上手くいっていたかどうかは気になりますね。
以下、感想レスです。
>>194 トンカチはもうこれは夢だろ、というツッコミ待ちを意図して書いたものでした。
笑えたのならいいんですかね。
長森らしいと思っていただけたのなら何よりも嬉しいことです。
読んでくださってありがとうございます。
余談ですが、実は自分も美汐で考えてたんですけど。
先に投稿があったので急遽変更して長森にしてみました。
美汐に意地悪をしたいという思考は比較的連想しやすいいネタなんですかね。
それではまた。
198じゃないけど感想書いときますか。
>>172-176『イジワル21』(kanon)
祐一が美汐に意地悪したくなる気持ちはよくわかる。
だが愛の感じられない意地悪は単なる苛めになってしまう。
要はもうちょいニヤニヤできる意地悪をお願いしたいという願望でつ。
オチの意地悪カウント増加と美汐のツッコミはなかなかだとオモタ。
余談だけど「意地悪」だと可愛らしい感じがするけど「イタズラ」だと犯罪的な感じがするよね。
美汐にイタズラしてぇ〜
>>183-189『あなたの意地悪にも』(one・長森)
長森がなぜその性格を形成するに至ったかが丁寧に描かれているのが好感触。
その上で浩平との出会いを描いてるので、唐突な回想にも違和感を覚える事なくスムーズに読むことができた。
ただまあそれ以降の展開はちょっとグダグダかも。
話を盛り上げるために浩平にトンカチ持たせて追いかけ回させるんだけど、それが非現実的ってか
SSの中でかなり浮いてるように感じた。
全体の雰囲気に合ってないっていうか。うまく言葉にできないんだけど。
〆はまあ、お約束ながらもなかなか良い感じに仕上がっていたと思う。
次回のお題は「バレンタイン」とかベタなものをあげてみる。
【告知】
現在総括期間になっています。
総括期間は 12 月 10 日の午前 0:00 までとなっていますので、
運営への意見、書き手の挨拶、追加の感想、次々回のテーマ投票などは
それまでにお願いします。
『イジワル21』を投稿した者です。
遅ればせながら、感想感謝レスを。
ふと浮かんだアイディアを元に、「4発言程度に起承転結を収められないか」と言う目論見を
もって臨んだのですが、結局5発言になった上に、あまり上手く行かなかったようです。
タイトルも最後までいいのが浮かばず、「どうすべ?」と悩んでいた挙げ句に、
無理矢理ラストの2行に合わせてしまったのですが……。
ともあれ、拙い作品ではありましたが、お読みいただきありがとうございました。
>>194 冒頭が前置きなしに始まってるのも一因(それまでの経緯がない)かと思いますが、
違和感がありましたか。書き切れてない部分が多々あるだろうとは思ってましたが、
キャラについてもっと煮詰める必要があるようですね。
>>201 自分としてはそんなイジメを意識したわけではないのですが、見直してみるとニヤニヤ成分が
確かに足りないようですね。
お二方の指摘を受け、今後の創作は美汐成分を五割増することを念頭に、精進したいと思います。
【告知】
第六十九回投稿テーマ:台詞で『ありがとう』
※今回のテーマはSSの中に「ありがとう」という台詞が含まれて
いればテーマ消化となります。
投稿期間: 12 月 10 日の午前 0:00 から 12 月 24 日の午前 0:00 まで。
テーマを見て、思いついたネタがあればどんどん投稿してみましょう。
面白い作品だったら、感想がたくさんついてきて(・∀・)イイ!!
もちろん、その逆もあるだろうけど……(;´Д`)
※投稿される方は
>>4-6 にある投稿ルール、FAQ をよく読んでください。
※特に重要なのが
・テーマに沿った SS を*匿名*で投稿する
・投稿期間中は作品に対して一切感想をつけない
の二点です。他の各種 SS スレとは異なりますのでご注意を。
それでは、投稿開始っ!
また、次回のテーマはいくつか頂きました候補の中から
『電話』を選ばせて頂きたいと思います。
募集は1月中旬からになると思いますので、今回のテーマが難しい、
期間が短いと感じられる方はこちらで考えてみて下さい。
【告知】
現在、葉鍵的SSコンペスレでは投稿を募集しています。
今回は台詞の中に「ありがとう」と入れているSSを募集しており、
締め切りは 12 月 24 日の午前 0:00 です。
テーマを見て思いついたネタがあれば、ぜひ投稿してください。
また、次回のテーマは『電話』開催時期は 1 月中旬になる予定です。
「二週間じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
【告知】
現在、葉鍵的SSコンペスレでは投稿を募集しています。
今回は台詞の中に「ありがとう」と入れているSSを募集しており、
締め切りは 12 月 24 日の午前 0:00 です。
テーマを見て思いついたネタがあれば、ぜひ投稿してください。
また、次回のテーマは『電話』開催時期は 1 月中旬になる予定です。
「あと数日じゃ短すぎて書けない」「テーマが難しい」という方はこちらの
執筆に力を注いでもらっても構いません。
投稿なしは寂しいから急ぎで書いたよ。
toheart(1)琴音、後日談系。
「はじまりの三月」
209 :
208 ◆2KwusBRnYI :2007/12/22(土) 16:57:09 ID:CkM8GpfU0
「今はやっぱり、どこも高いもんなんだな」
昼下がり、腕を組んで、うーんと首をひねる。
学生用国内旅行のパンフレットをファミレスのテーブル一杯に広げながら、琴音と浩之、
二人でそれを食い入るようにじっと見つめている。
外はまだ寒さの残る三月、しかし浩之は国立大学の後期試験になんとか滑り込みで合格し、
やっと長い長い受験を終えたばかりだった。
「こんなに長く居て、お店の人に迷惑じゃないですかね?」
琴音は、何杯めだか分からないくらいの、ドリンクバーのオレンジジュースにストローを指しながら言う。
「そんなことないぞ。受験勉強にここ使ってたやつなんて、コーヒー一杯で
数時間くらい平気で居座ってたし」
浩之は大量のパンフレットをテーブルでとんとん、と角を調えて、かばんにしまう。
今日、春休みに二人きりで旅行するための計画を立てる、はずだったが、
今日二人で持ち寄ったパンフレットではどうも金銭的に良い折り合いの物が見つからなかった。
それで結局、後日また探してみようということで落ち着いたのだった。
「それって藤田先輩のことですよね」
「何が?」
「ここで勉強してた人って」
「やっぱり分かるか」
「分かりますよ」
浩之は数週間前までここを何度も勉強場所として使っていたし、それを琴音もずっと知っていたが、
琴音はあえて自分からは会いに行かなかった。
夏休み以降、急激に受験に本腰を入れた浩之を見て、どうしても自分のせいで
時間を割かせてしまう気にはならなかったのだ。
「藤田先輩、本当に頑張りましたよね」
「うーん、まだあんまり実感ないけど」
氷の入ったグラスを口に運びながら言う。ドリンクバーを頼まなかったので水だけだ。
「でも、すごいです」
「まあな」
琴音がくすっと笑う。
「それにしてもびっくりしてたな、琴音ちゃん」
「え?」
「いやさ、俺がA大目指してるって言った時」
「あ…」
琴音はくりっとした目でまっすぐ浩之を見つめ、やや悪戯っぽく言う。
「やっぱりばれてました?」
「狐につままれたような顔してたろ」
「だってあんまりびっくりしたから…」
それはそうだった。赤点を避けるかどうかというそのときのレベルの浩之の学力で考えれば、A大学は偏差値で2、3ランク上で、
それでも合格できたのは、その後の浩之の集中力の賜物だった。それを踏まえても奇跡的と言えるだろう。
「まさか、琴音ちゃんにまで見捨てられるとは思ってなかったのにな」
琴音は窓の外に視線を向けながら、冗談っぽく微笑む。
「ごめんなさい」
そのとき、学生が集まるファミレス独特の喧騒の中、パリンとどこかで何かが割れたような音がした。
誰かがグラスか食器を床に落としたのだろう。その音で一瞬、周囲がしんとしたが、またすぐ元に戻る。
池に小石を投げ込んだ時に広がった小さな波の輪が、すこしずつ薄れ、やがて消えてしまうのに似ていた。
「誰かがグラス…落としちゃったみたいですね」
「ああ」
浩之はちらっと音のした方にちらっと目を配ったが、ふと思い出したようなそぶりをして言う。
「それにしても、琴音ちゃんも短い間に上手くなったね」
「え?」
「力のこと」
「あ、でも…先輩のおかげですけどね」
「いやさ、昔はああいう音がするとおっかなびっくりだっただろ」
琴音は視線を窓の外から、自分の手元のグラスに戻す。
そして、もう残り少ないオレンジジュースと氷をストローでかき混ぜながら、ゆっくりとした口調で呟く。
「不安だったんですよ。自分がやったこととそうじゃないことの区別がよく分からない時もあったし…」
「そっか」
「コントロールがつくようになってからも、しばらく、力のことを知らない人の前だと怖かったです。また暴走しちゃうんじゃないかって…」
話を聞きながら浩之は、ふと自分のグラスが空だと気づく。
「あ、琴音ちゃん、ちょっとタンマ」
ひょいと琴音からオレンジジュースを取り上げて、浩之はストローでずずっと音を立てて飲みほしてしまう。
思いがけず、少し炭酸が入っているようだった。
「あ…」
からん。多めに入れた氷がグラスにあたる音が、まわりの声と、今人気のアイドルグループの曲のBGM
―もっとも、興味のない浩之には誰だか分からなかったが―でほとんど掻き消されたが、辛うじて琴音と浩之だけに聞こえた。
「間接キスだな」
心なしか、琴音の頬が少しだけぽっと赤くなる。
「そういうの…ほんと先輩、好きですよね」
「大好きだ」
「飲み干さなくてもいいのに…」
「美味かったからな。オレンジジュースとなんか混ぜたろ」
「分かりました?スプライト入れるとおいしいんですよ」
「まだまだ子供だな」
琴音は、ふふっと笑い、ドリンクバー用の模様の入ったグラスを持って立ち上がる。
「あー、俺がやるよ、俺が飲んだんだし」
「藤田先輩に任せると絶対、変なもの混ぜるじゃないですか」
琴音が怪訝な顔をする。
「ばれた?」
「ばれます」
「うーむ、俺も修行が足りんか」
浩之がわざとらしく腕を組んで言うと、琴音はにこっと笑って、まだまだですよと言い残して、おかわりを注ぎに行った。
212 :
名無しさんだよもん:2007/12/22(土) 17:06:12 ID:CkM8GpfU0
一人残されて、浩之はふと、琴音が何度か眺めていた窓の外に目をやる。
駐車場の脇に一本、ぽつりと人工的に植えられた木があった。
おそらく琴音はこれをずっと見ていたのだろう、控えめな数本の枝から、薄茶色の新芽が幾つか生えてきている。
寡黙で孤独で、それでも空に向かって寂しげに伸びる姿が、浩之には琴音とどこか重なって見えた。
あと何日もすればこの街を離れる。感傷なんていうものにはすこぶる疎い浩之でも、その木を見ていると、
どうしてか少し寂しい気がした。
「そういえば色んなことがあったな…」
空がほんの少しずつ暮れ始めて、薄いオレンジ色をおびた太陽がまぶしい。
琴音が戻ってきたら、今までありがとう、これからもよろしく、なんて言ってみようかなとなんとなく思いつつ、
でもそんな柄じゃないしなあ、と呟いて、浩之は空のグラスを口元へ運んだ。
終わりです。
(212も俺です。sage忘れが酷いしハンドル付け落とすしなんかすみませんw)
【告知】
15時間前をもって、投稿期間を終了させていただきます。
参加された書き手の皆様、どうもご苦労さまでした。
それでは、これから感想期間に入ります。
投稿された SS について感想、討論などをご自由に行ってください。
期限は 12 月 31 日の午前 0:00 までとさせていただきます。
以下が、今回投稿された作品の一覧です。
>>209-212『はじまりの三月』(toheart/琴音)