あそこ人を食ったような拍手レスがいらついて見てないな、そういえば
調子のりすぎてて引くわ正直
別に拍手レスを読まなけりゃいいだけじゃない?
メニューはフレームで表示してるんだし
あれは拍手送る方もそれを期待してる節があるし
拍手のやりとりが一つの名物って感じだよな
正直俺もちょっと引いてるけど
おまえらの拍手レスが好印象なページが知りたいです
いや,なんとなく
あそこの発言はほんとふさげてるな。
だいたい他所のサイトやSSに対する皮肉だとか嫌味だかとかは、
読まなきゃいいっていうものじゃないだろう。
>他所のサイトやSSに対する皮肉だとか嫌味だかとか
こんなのあった?
このへんか?
あと、いわゆる「黒い話」に関してなのですが、自分は「黒い話」そのものが嫌いというわけではないです。
機会があれば自分でも書いてみたいと思いますし。
ただ、安易に「黒い話」にした挙げ句、安易にご都合主義でまとめられるのは腹が立つというか失笑するとい
うか、そういう感じです。
例えば、自分が読んだ中に「愛佳END後、愛佳の浮気によって二人は別れてしまった。現在、貴明は郁乃と付
き合っている」という舞台設定のSSがあったのですが、いざ読んでみるとそれほどドロドロすることもなく、最
終的には愛佳と郁乃が「どっちが貴明にふさわしいかこれから競争なんだからねっ」みたいに張り合うという、
ほのぼのオチでまとめられていて、盛大にお茶を吹き出したことがあります。どうしてか世間的には「黒い話」
として認識されているようですが、これは自分にとってギャグです(笑)
まあ、早い話が、やるんだったらとことんやってくれよ、と。ご都合主義でしかまとめられないなら、最初か
らダーク系に手を出すないほうが賢いとは思いますね。
三角関係ものはテンプレが確立されているので、初見でインパクトを与えるのは容易いですが、しっかりと書
ききるためには相応の力量が必要だと思います。
サッカーで簡単なシュートが決められないのに難しいシュートが決められるはずがないのと同様、普通の面白
い話を書けないのにキャラ同士の感情がぶつかり合うような話は書けないということですね。
これまた奇遇ですね。俺がお前で、お前が俺で。
この「黒い話」に関しては、かつて自分の書いた愛佳SSを読んだ読者さんが「これが某
所で有名な黒愛佳ってやつですね!」というコメントをくださったことがありまして、
「そんなの聞いたことねえけど有名なのか?」と思いぐぐってみたら、黒愛佳なるジャン
ルにカテゴライズされていると思われるSSが出てきたので読んだという経緯があります。
これが黒愛佳か〜なるほど〜って感じでした(笑)
あと、貴明たちの大学生活というネタは練り込んだら面白くなりそうだな、というのが
同時に抱いた感想です。
>サッカーで簡単なシュートが決められないのに難しいシュートが決められるはずがない
それが世の中には、簡単なシュートは外すのに、難しいシュートは決める選手もいるんですよ。
これ皮肉や嫌味じゃなくて真っ向否定じゃねえかよwwwww
とても久しぶりです。桜の群像の続きです
実時間はとても空きましたが、内容は19話の直後からですので、
読んでいただけるなら先に19話のラスト10行くらいを見ていただけると助かります
では。
「い、痛い、です」
思いきり抱きしめられて、玲於奈が悲鳴をあげた。
「ご、ごめんっ!」
慌てて手を放す雄二。
感情に任せた行為を反省しつつ、腕と胸に残る感触が名残惜しい。
「あっ、べ、別に離して欲しいとは言ってませんわ」
玲於奈は玲於奈で、そんな事を言い出した。
「じゃ、じゃあ、さ、やり直し……」
「……はい……」
再度、玲於奈の肩に手を伸ばす雄二、その胸元で頷く玲於奈。
少女の手は、赤子のように自分の胸元に縮こまる。
「こ、こう、か?」
今度は、そっと抱き寄せる。
玲於奈も、さっきよりも力を抜いて、雄二の手には少女の背中の柔らかさ。
抱き合うというより、寄り添うような二人。
「こんな感じか? けど……できれば……」
「ありがとうございます……でも……その……」
「もうちょっと、力入れたいんだが」
「ちょっと、物足りないかも……」
雄二の言いたい事は、玲於奈の感想と一致した。
3回目。
先程と同じくらいにそっと抱き寄せてから、きゅっ、と力を込める。
「あ……」
玲於奈の口から、微かに吐息が漏れる。
体の前で握った手に、力が入る。
「っ」
拳が胸に刺さったらしい。雄二が、少しだけ顔をしかめた。
「あっ、すみません」
玲於奈は手を下に降ろす。
空いたスペースを、より深く抱きしめることで埋める雄二。
ぺたっと、体同士が密着する。
どくん、どくん。
心臓が、壊れそうな音を立てている。
それは二人とも同じ、なのだが。
「どきどき、してますね」
身長差の関係で、雄二が一方的に鼓動を聞かれることになった。
「〜っ!」
無邪気な指摘に羞恥心を掻き立てられ、雄二は体を離す。
「あ……」
寂しそうな声を漏らす玲於奈。
二人の体は、20cmほどの隙間を空けて止まる。
雄二の手は、玲於奈の背中にかかったまま。
「……」
やがて、少女の細い手も、おずおずと雄二の背中に回る。
顔は下に向けたまま、離さないで、の意思表示。
雄二は、再び玲於奈を抱き寄せる。
玲於奈も更に半歩踏み出して、膝と膝が触れ合う。
「そっちだって、真っ赤じゃねえか」
雄二は、えらく間延びした反論と共に、少女のうなじに触れる。
「んっ」
ぴくっと反応して顔を上げる玲於奈。
ようやく、視線が出会った。
「「……」」
見つめ合う二人。その瞳が、互いに吸い寄せられるように近づいて……
不意打ちで、1限終了のチャイムが鳴った。
「!!」
飛び離れる。
「つ、次の授業には出席しないといけませんわよね」
「そ、そっちは職員室に挨拶だろ?」
あはは、と白々しく笑って、
「……」
二人ともちょっと黙る。離れたとて二歩の距離。
なんとなく周囲を見回して、ちらっと窺った視線がまた出会う。
「そ、それではまた後ほど」
首を振って、校舎に戻ろうとする玲於奈。
「あ、玲於奈」
「は、はいっ!?」
「いや、上靴」
「あっ」
そこでようやく、玲於奈は自分が靴下のままであることに気がついた。
屋上の床に転がったままの上履きを、屈んで拾う。
片方ずつ足の埃を払おうとして、ちょっとよろける少女。
「っとっ」
「おっと」
雄二が手を伸ばして支えた。
「あ、ありがとうございます」
玲於奈はまた顔を赤らめつつも、素直に雄二につかまって靴を履く。
「こんなに汚れて、はしたない」
「今更だろ?」
校門飛び越えたりしておいて、とは言わなかったが。
「それは、そうですけど」
玲於奈にも自覚はあるようで。
「……ふふっ」
「ははっ」
意味もないのに、二人で笑った。
「貴明、メシ食わねーの?」
「愛佳待ち」
「ああ、なんかばたばた出てったっけ?」
「雄二は?」
「あ、いや、俺はちょっと……」
昼休み早々。
「こ、向坂くんっ! 大変大変!」
男二人がだべっていると、愛佳が血相を変えてやってきた。
「俺? なんだ?」
「きょ、今日、ウチに転校生が来るって聞いてたんですけどっ」
「そうなの?」
これは貴明。
「そうなのっ。それで、その転校生って、さっきの休み時間に見かけて、びっくりして先生に確認しに行ったんだけどっ、ぷはぅ」
一気に喋って、最後のは息継ぎ。
「その、玲於奈さん。転校してきたんです。だって。A組に」
文法めちゃくちゃ。
「ええっ?」
これも貴明。
「……ってことは、また三人で?」
言葉尻に、微妙に嫌そうな雰囲気が混じるのは、いかんともしがたい。
「ううん。一人だけだって。その辺、不思議なんだけど」
愛佳は貴明に答えた後、力みを入れて雄二に向き直る。
「とにかく、向坂くんっ」
「知ってる」
「へ?」
雄二はあっさり答えて席を立つ。
出口に歩いたその先に、赤毛の少女が待っていた。二人並んで廊下を去る。
「え? え? え〜っ!?」
その光景に、愛佳は振り上げた拳を頭上で彷徨わせた。
私怨
月末の日曜日。お昼過ぎ。
駅。
キーッッッ……。
「す、すみません降りますっ!」
電車が停まると、玲於奈はホームに駆け下りた。
「……により、列車遅れまして大変ご迷惑をおかけしております……」
あまり誠意のないアナウンスが流れる中、疲れた人波をかき分けて出口を目指す。
遅延証明書を配っている駅員を無視して駅構内を覗うと。
きょろきょろ。
改札の向こうで、雄二が少女の姿を探していた。
「雄二さんっ! ごめんなさい遅れてっ……きゃっ!」
少年の姿を見つけるなり走り出した玲於奈は、切符を入れ忘れて自動改札機に引っ掛かる。
「そ、そんな大声出す……ぷっ、ははっ」
距離のある所から声を掛けられて照れかけた雄二は、少女の失態に吹き出す。
「……んもう」
玲於奈は、指摘された事と笑われた事の両方に赤面しながら、トコトコと雄二の下にやって来た。
「遅れて、すみませんでした」
「いやいや、お疲れさん。災難だったな」
ひょこっと頭を下げる。雄二が慌てて手を振る。
「事故があったって聞いたから、心配したぜ」
「踏切で停まってしまって、1時間ほど缶詰に。こういう時、携帯電話があれば良いのですけれど」
「あー、俺も家出てたから無理だわ、それは」
「そうですか? じゃあ随分お待ちになったのでは?」
「あ、いや、えーっと……余裕見て早めに出ただけだ。そっちこそ、事故なかったら早過ぎる電車じゃねえ?」
「そうなんですけど、その、えーっと……余裕を見て早めに出たのです」
「真似すんなっての」
「ふふっ」
気が急いて1時間先に着いた雄二と、1時間先に着く電車に乗って1時間遅刻した玲於奈。
顔を見合わせて笑った、今日が初めてのデート。
「途中の駅から混雑が酷くて……後ろ、おかしくないか見ていただけません?」
服装の乱れを気にする玲於奈。
初夏に二人で行ったライブの時と同じ水色のワンピース−お気に入りらしい−に、
今日は半袖の上着を合わせて袖からすらりと伸びる腕、裾から覗く白いふくらはぎ。
「いや、大丈夫……似合ってるぜ」
上から下まで、少女の姿を眺めた雄二の目は、いやらしいって程でもなかったが。
「あ……あまり見ないでください」
さっきと矛盾した発言で、玲於奈が頬を染めた。
「腹減ったよな。先に昼飯食うか?」
「そうですね、でも、時間が……雄二さんは夕方からコンサートでしょう?」
実は今日も、緒方理奈のライブがある。
雄二は、頼まれて玲於奈の分のチケットも確保していたが、転校前後の色々で処分してしまっていた。
「ああ、それはいいんだ。チケット売っちまったから」
「えっ?」
「俺の早とちりでお前が行けなくなったのに、俺だけってわけにゃいかねーよ」
「そんなこと……」
玲於奈の顔に陰が落ちる。
雄二は発言を後悔したが、仕方ないので話を動かす。
「あ、それで晩飯さ、ツインビルの片割れ、最上階にレストランが入っただろ? 実は予約してっから」
「あそこ、なんだか高そうな、値段がですよ、お店でしたけど……」
「金が入ったから、今回は俺の奢りで」
「ええっと……」
玲於奈の反応は、これもあまり良くなかった。
「気にすんな。今度だけだって」
二度目のフォロー。
「基本的には、俺もピーピーしてるしな」
「私もです」
その言葉に、ようやく笑顔が戻る少女。
「そうですね。今回はご厚意に甘えます。でも、無理なさらないでください」
少し真面目な顔になって、玲於奈はこう付け加えた。
「私の為に、雄二さんに何も犠牲にして欲しくはないのですから」
夕のことは、夕の事として。
「とりあえず、昼だな」
「デパートの中に飲食店街、ありましたよね」
並んで歩く。二人の間は半歩の距離。
「……どうした?」
「雄二さんこそ」
「いや、もっと緊張するかと思ったんだが」
「あ、やっぱり」
意外なくらいに自然な感覚。
思い返せば、二人並んで歩いた回数も少なくない。
「いつもと違わねえと言えば、違わねえか」
「……」
その言葉に、玲於奈は何やら考えて。
すっ。
「!」
そーっと、手を繋いだ。
「……その、少しは緊張してみようかと」
顔を赤くして、斜め下から雄二を見上げる。
「……」
雄二は、空いている手で頬をぽりぽり掻いた。
そのまま10メートル、前進。
「……緊張、してるか?」
「ええっと」
雄二に訪ねられた玲於奈。
「ドキドキは、してるんですけど」
繋いだ手を確かめるように前後に小さく振る。
「どちらかというと、安心します」
そう言って、半歩の距離をもう半分詰めた。
「あ…」
駅前のデパート。ランチの場所を探す途上、玲於奈が小さく声を挙げた。
「なんだ?」
「いえ、なんでも……」
「あれか?」
雄二が指さしたのはフロアの一角を占めるファンシーショップ。
の、一角を占める動物ぬいぐるみ群。
「!」
玲於奈は考えてる事がわかりやすい、と、雄二は思う。
「どれどれ、お前はどんなのが好みなんだ?」
雄二はにやにや笑いつつ。
「雄二さんは笑い方がいやらしいですわ」
玲於奈は口を尖らせつつ、二人してお店に足を踏み入れる。
「いっぱいあるなぁ」
棚にぎっしりと並んだ可愛らしいぬいぐるみ。
姉の性格もあり、滅多にこういう光景は見ない雄二は、物珍しそう。
「うわぁ……」
玲於奈が熱心に見つめているのは、イルカとかペンギンとか、水棲動物類。
「これ、雄二さんに似てません?」
ペンギン。
「似てねーよ」
「ほら、その顔」
玲於奈は、不本意そうに唇を歪めた雄二を指して笑うと、
陳列棚からぬいぐるみを取り出して、仏頂面の横で揺らして見せた。
「……戻せって」
不格好なペンギンを手で押し返す雄二。
玲於奈は素直に手を引っ込めたが、棚には戻さず腕にペンギンを抱いて見下ろす。
それを見て雄二。
「ホントに、わかりやすいなお前」
「どういう意味ですか?」
「いや、あー、なんだ。水族館にでも、行くか?」
「……はい。」
『館内補修のため休館中』
「う、気づかなかった」
「私も、全然知りませんでした」
微妙に世間の動向に疎い二人は、休館中の水族館を前に顔を見合わせた。
「やれやれ。思いつきで行動するもんじゃねえな。悪かった」
頭を掻いて雄二はバツが悪そう。
「いえ、私も同じですから」
ペンギンのぬいぐるみを腕に抱いて首を振る玲於奈。
↑
けっきょく雄二が買ってプレゼントした。
かさばるのでコインロッカーに預ける事を雄二は勧めたが、玲於奈は手放すのを嫌がった。
閑話休題
↓
「人が少ないから、変だとは思ったんだがな」
休日なのに、バス停からこっち閑古鳥。
この辺りは、水族館以外にあまり見所がない。
「そういえば、以前に来た時はたくさん……その、恋人らしき二人連れが」
思い出して赤面。
二人が前に此処を訪れたのは、一学期の話になる。
当時は恋人でもなんでもなかった二人は、溢れかえるカップルの群れに圧倒されたものだが。
ひょい。
玲於奈は雄二の手を取って。
「デートスポット二人占め、ですかね?」
くるりと三百六十度、人工衛星のように雄二の周囲を回る。
「のわっ」
手を引っ張られて、雄二もぐるっと一回転。
流れる背景のなかで、少女の姿だけが鮮やかだった。
「こりゃまた、凄い人だな」
多少風情があっても、休館中の水族館で半日過ごすほど二人は枯れてない。
二人は当初の予定であった遊園地に移動していた、が。
園内、芋洗い。
「きゃ、とっ、ゆ、雄二さん?」
「危ないって」
すれ違った集団に流されそうになった玲於奈を、雄二が引き戻した。
「すみません」
横に並んで雄二の手を握り直す玲於奈。
手を繋いでいても、玲於奈が左腕にぬいぐるみを抱えているので幅を取る。
「もっとこっち寄れよ♪」
「うん♪」
これは、前を行くカップルの会話。べったり腕を組んで寄り添っている。
「……」
目の前で手本を見せつけられた新米カップル。
「……わ、私たちも、やってみましょうか?」
そんな事聞かれても。
雄二が固まっている間にも、玲於奈は繋いでいた右手を離す。
そーっと、おそるおそる。
絡む腕と腕。
その感触に、雄二はシャツが長袖な事を少し後悔した。
いっぽう玲於奈は、腕を巻き付けたせいで離れた右手のやり場に困ってか、
雄二の腕を巻き込んで両手でペンギンを抱く格好。
ふに。
「っ!」
突然、雄二がびくっとして体を離した。
深淵
「どうしたんですの? 急に」
少し憮然とした表情の玲於奈。
「いや、ちょっと、その」
鼻の頭を指で掻く雄二。頬が赤い。
「暑いですか? もしかして、お嫌でした?」
「そ、そんな事はねえよ。ただ、あの……」
「?」
小首を傾げる玲於奈。
雄二は、何か言い掛けて、また逡巡して目を泳がせる。
「んもう、行きますよ」
業を煮やしたか、玲於奈はがばっと雄二の腕を取ってぎゅっと抱いた。
むにっ。
いわゆるひとつの、胸が腕に当たるのだ。今度は、玲於奈も気づいた。
「〜〜〜っ!」
もとから赤かった顔が、さらに茹で上がって。
玲於奈は、さっきの雄二の比ではない勢いでばばっと飛び離れて、
勢い余ってペンギンを落っことしそうになって慌てて拾い上げて、
バランスを崩して人混みに突っ込みかけて再び雄二の手に回収された。
「す、すみません」
小さくなった玲於奈、雄二の隣に戻って。
さて、どうしよう。
「その……別に……嫌というわけでは……誤解なさらないで……ただ、あの……」
ひょい。
雄二は、玲於奈の手を取った。
「じゃ、行くか」
「……はい……」
三歩進む。
止まる。
「ど、どうしました?」
「えーっと、何処から回ろうか?」
がこん。がこん。
「け、けっこう揺れますね、これ」
雄二の向かいで、玲於奈が座り直した。
@観覧車。
来て最初に乗るような物でもない気もするが、
他の乗り物系が大行列な中、比較的空いていた。
「もっと並ぶかと思いました」
「もう少しすると……夕方くらいから、一気に混むみたいだぜ」
貴明情報。
「人と逆に回った方が、色々見られるだろ」
「ここから夕焼けというのは、確かに魅力的かも知れませんけれど」
窓の外に目をやる二人。街が一望。
「お、うちの学校」
雄二が指さす。
「本当、こんな遠くからでも見えるなんて」
玲於奈が感心する。
「山の上だからなあ」
「毎日、あの坂を登っているのですね、私たち」
目を細めた玲於奈が、視線の方向を変える。
「九条院は……あっちの方でしょうか……」
此処からはバスで3時間。いくらなんでも視線は通らない。
「薫子達とは……」
「取ってますよ、連絡。二人とも元気です」
「そうか、そりゃ良かった」
「はい」
「あ、でも九条院はたぶんこっちだぞ」
全然、逆方向だった。
がっこんっ。
「え?」
「停まった?」
二人を乗せたゴンドラが、ほぼ昇りきったあたり。
突然、壁にぶつかったようにひと揺れすると、そのまま停止してしまった。
「一番上に来ると、少し停まるとか?」
「ゴンドラは俺達のだけじゃないんだぜ」
数十秒後。
『只今、電気系統の故障により、運転を一時停止しております……』
ゴンドラ内にアナウンス。
「なんだか、今日はこんなのばかりですね」
「最初に乗ったの、失敗だったかなあ」
「そんなことはありませんわ」
数分後。
「……なげーな」
「さっきよりも、揺れているような気がします」
風が強くなってきたようだ。
玲於奈は窓の外を気にしながら、体の前で指をいじっている。
「なんのトラブルなんだか」
雄二も落ち着かない。携帯電話を持っていない二人には、外の情報を得る手段がない。
十数分後。
ゴンドラは動かない。
『……お客様には、大変ご迷惑をおかけしております……』
「……トイレは、大丈夫か?」
「……大丈夫です」
流石に会話も途切れる。
ひゅーひゅーと、風が抜ける音だけがする。
更に数分。
「……」
押し黙って、指で糸車を回している玲於奈。
「えーっと……」
飽きたのかと話題を探す雄二。だが、玲於奈は別な事を考えていた。
「……あ、あのっ」
ちょっと上擦った声で話しかける。
「あ、ああ?」
「その……そちらへ行っても、いいですか?」
「あ、ああ」
「良かった」
雄二の返事にホッとしたように微笑んで立ち上がる。
ぐらり。
「どわっ、揺らすなっ」
「わ、わざとではありませんっ、ととっ、と」
たたらを踏みながら、雄二と同じ側のベンチに腰掛ける。
「……傾きますね」
「そりゃまあ、重心がこっちに来るからな」
「重心……」
玲於奈は再び、今度は揺らさないようにそうっと立ち上がり、
さっきまで自分が座っていた席に、持っていたぬいぐるみを置いて戻ってくる。
「……変わらないだろ、それは」
「冗談です」
言って玲於奈は、さっきよりも僅かに雄二の近くに座った。
風に揺られるゴンドラ。
「半袖、寒くないか?」
「大丈夫です。……けど……」
そっと手を重ねる二人。
仲間はずれにされたペンギンが、不本意そうに二人を見ていた。
「……お客さん、お客さん」
乗降場の係員が、雄二を揺り起こす。
「あ、あれ? 着いてる?」
「大変、ご迷惑をお掛けしました」
頭を下げる係員の顔に、含み笑い。
原因は。
「……ほれ、起きろ」
「ん……ふにゃ……」
雄二の肩で眠る少女。
というか、二人寄り添った寝顔が微笑ましかったのだろう。
結局、観覧車の復旧には4時間ほどかかった。
怪我人こそなかったものの、夜のニュースででも流れそうな事故である。
雄二と玲於奈は、狭いゴンドラの中で並んで座りながら、
時間に連れて変化する街並み−けっきょく夕焼けも見られた−を眺めたり、
ひと月ほどの、玲於奈が九条院に戻っている間の互いの話などしていたが、
窓の外が夕から夜に変わろうという頃に、待ち疲れて眠ってしまった。
「すみません、すっかり寝入ってしまいまして」
「俺も爆睡してたぜ。今起きたとこ」
そんな会話を交わしながら、玲於奈がペンギンを回収する。
ちなみに故障待ちの間、彼−性別不詳だが−は、あっちとこっちの座席を三往復。
お詫びの一日優待券を貰って観覧車から出ると、周囲はすっかり暗くなっていた。
怒ったり疲れたりしている周囲の客や、粘っていた野次馬に混じって出口に歩く。
「んーっ」
大きく伸びをした玲於奈。
「あ、あのお姉ちゃん、ほっぺにリンゴついてる」
「菜々子、指ささないの」
すれ違った女の子の指摘に、寝跡のついた頬を隠した。
ツインビル北側。最上階。
「申し訳ございませんが、今からですと1時間待ちになります」
雄二が目をつけていたレストラン。予約はキャンセルされていた。
予定に1時間遅れてはやむを得ないが、満席になるあたりは結構な人気のようだ。
「どうする?」
「ええと、ちょっと遅くなりすぎますね」
門限にはかなり融通が利くらしい玲於奈も、さすがに首を振る。
チン。
エレベータがやってきた。
「電車の時間までは、暫くあるんですけれど」
「そっか、ヤックででも暇つぶすか?」
「ええ……、あ、そうだ」
1階のボタンに手を伸ばしかけた玲於奈が、はたと手を打つ。
「この辺に美味しい屋台のラーメン屋さんがあると、お姉様が」
「ニンニクラーメン、チャーシュー抜き」
「肉、嫌いなんですの?」
「いや、なんとなく昔のアニメを思い出してな。お前は? フカヒレチャーシュー大盛りとか?」
「いえ、私もニンニクラーメン……ニンニク抜きで」
「それって、普通のラーメンじゃねえか?」
とりあえず。ラーメンは美味しかった。
「今日は、色々ありましたね」
屋台を出て玲於奈。
「本当にな。なにやっても上手くいかなくて、悪かったなぁ」
ばつの悪そうな雄二。
「雄二さんが責任を感じるような事は、何もありませんわ」
「そう言ってくれると嬉しいけどさ、せっかくの初デートなのに散々だったなって」
その言葉に、玲於奈の表情が曇った。
「散々、でしたか?」
之繞
「え?」
「私は、トラブルはありましたけど、今日は一日、とても楽しかったのですが」
玲於奈は、思い返すように夜空を見上げて、
「……雄二さんは、楽しくなかったですか?」
ちょっと聞きづらそうに尋ねた。
「……」
聞かれた雄二は、きょとん、とした顔になる。
不安そうに様子を窺う玲於奈。
「……楽しかった、な」
失敗したという気持ちが先にたって、玲於奈に謝る事ばかり考えていたが、
思い返せばデートの間中、心は穏やかだった。
「ふふっ、良かった」
その返答と雄二の表情に、玲於奈は今日一番の笑顔を見せる。
「私だけ楽しんでいたのなら、どうしようって、思いましたよ」
「俺は逆に、お前が楽しめなかったんじゃないかって……」
ぴた。
玲於奈が、人差し指を雄二の口元に当てて制止する。
「その心配なら、今後は無用ですわ」
下から覗き込むように見上げる少女。
「雄二さんと一緒なら、私はそれだけで幸せだって、今日、判りましたから」
「……玲於奈」
なんとも言えない表情で少女を見下ろす雄二。
その身体が、ふいに緊張する。
玲於奈が臆せず正面に回り込んだので、二人の間は水平距離で15cm。
「あ……」
その近さに、玲於奈も気づいた。紅潮するほっぺ。でも、逃げない。
周囲に人影、なし。
いいか、とは、雄二は聞かなかった。
玲於奈は、目を閉じなかった。
ただ、二人の瞳が近づいて、やがて、唇が重なった。
キスは、非常にシンプルなもの。
お互い息を止めて、唇を押しつけるだけ。
それでも、若い二人には十分刺激的だったようで。
「ぷはっ」
「はふぅ……」
息が続かなくなって顔を離した後、視線が合わせられない雄二。
少し背伸びした体勢のまま、ぼうっと棒立ちの玲於奈。
その手から、ぬいぐるみがこぼれ落ちる。
「あ」
「とっ」
まだぼんやりしたまま、それを拾い上げようとした玲於奈の手に、慌てて伸ばした雄二の手が触れた。
「きゃっ」
「うわっ、とっ、ほれ」
宙を舞ったペンギン君を、雄二が器用にキャッチして、玲於奈に手渡した。
「あ、ありがとうございます」
玲於奈は受け取ったぬいぐるみを胸に抱きしめて、上目遣いに雄二をちらり、と見て。
「あ、あはははは、よ、良く、わかんなかったです」
また視線を下に向けて、目一杯はにかむ。
そんな玲於奈に、雄二は胸の鼓動が収まらない。
「お、俺も、なんだか真っ白になっちまった」
はは、と笑う、口の中はカラカラ。
「だからその……」
背を屈めて、玲於奈に顔を近寄せる。
「あ……」
身を縮こめる玲於奈。
「できればもっぺん……」
近寄る雄二の唇に。
むぎゅ。
押しつけられたのは、ペンギンのクチバシだった。
駅。
改札口の手前で、玲於奈が雄二を留めた。
「ここで、結構ですわ」
「家まで送るって」
「心配いただくのは、嬉しいんですけど」
本当に嬉しそうな玲於奈。
「そこまで一緒にいたら、家に入りたくなくなりますから」
門の前でいちゃいちゃしてたら、そりゃまずかろう。
「……気をつけてな」
「はい」
答えて改札口を通った玲於奈だが。
「あ、ようやくわかりました」
ふと、そんな事を言って振り返る。
「なんだ? 忘れ物か?」
「ええっと」
邪魔なので改札の脇へ、腰壁を挟んで会話。
「さっきから、何の味がしただろうって、考えていたんですけど」
「何がだよ」
問いには答えず玲於奈。
「ニンニクの味、でしたね」
悪戯っぽく笑って、ちょろっと舌を出す。
何のことかと一瞬考えて、キスの事だと思い当たった雄二。
「……」
5秒絶句。
「そこまで考えなかったな」
悪い、と謝りかけて先程の玲於奈の言葉を思い出し撤回。
「……次は、レモンの飴でも舐めてからにするか」
「……はい」
切り返しに、今度は玲於奈が頬を染めて、それでも小さく、俯くように頷いた。
間もなく電車がやってきて、二人は手を振って別れた。
「……ふう」
7人がけのシートに座って、玲於奈はほっと息を吐く。
発車まで少々お待ち下さいの時間、今日の事を反芻する。
寂しいような、まだ夢の中にいるような。
腕の中の、ペンギンのぬいぐるみを見つめる。
「やっぱり、似てますよね」
ひとり言。
「……」
ちらっと周囲を窺う玲於奈。
誰も、他人の事など気にしていない車内。
そそーっ。
少女は、そっとぬいぐるみを持ち上げて。
つん、とクチバシに口づけた。
「……」
いっときペンギンの顔を見つめて、膝に戻す。
(あはは、ダメ、馬鹿ですね、わたし)
心の中で呟く。
と、視界の端によぎるもの。
「!」
駅舎の窓から、雄二がまだ見送っていた。
ばっちり出会う視線。
玲於奈の顔は、みるみる紅潮したが。
少年も、少女に負けずに赤かった。
以上です。支援ありがとうございました。
ニンニクラーメンはエヴァから。ダメ馬鹿わたしは水夏から借用。
ペンギンは別にペンペンってわけでもないです。良い動物キャラが思いつかなかった。
随分前の話になってしまいますが前回のお詫び。
第19話の玲於奈の告白の部分で、「雄二さん」が「雄二様」になっていました。
効果を狙ったわけじゃなくて、単純ミスです。なんっつーとこで間違えるか漏れは…
ところで、毎回ボキャ貧を嘆きながらネットで言葉調べたりしてるのですが
今回特に困ったのが赤面の表現でした。どんなのがありますかね?
>>414 乙
>今回特に困ったのが赤面の表現でした。どんなのがありますかね?
古典的だが,直接描写せずに風景に仮託するとか・・・いくらでも手はあるよ
クサい表現とか極度に嫌う人もいるが,その辺は好みの範疇と思うので,
思うように書けばよろしいのではないかと・・・
>>414 乙。初々しくていい感じ
赤面っつーと、「顔を赤くする」「耳まで真っ赤に染まる」「頬に朱が差した」「紅潮する」
「顔に血が集まる」「ゆであがる」「のぼせあがる」「熱を宿した顔」ってとこ?
探せばもうちょいありそう。熱と絡めるといいかもしれない
「くらくらする」とか「頭が真っ白になる」とかってのも意味合いは違うけど、似たような感じ?
単純に赤面する表現だけで考えるより、「俯いてもじもじと手を擦り合わせる」とか「ぷい、とそっぽを向いた」とかっていう仕草も使うといいかも
以上、ネットの片隅で小説を書くモノカキの戯言でした
私立桜花高校閉鎖\(^o^)/
見れなくなるかもしれないから保存したいやつは今のうちにやっとけー
あ?俺?ここのSSつまんねーから読んでねーわサーセンwwwwwwwwww
ほっとけほっとけ。
消えるんなら俺らには関係ないだろ。
つーかマジで痛い作家のテンプレみたいな捨て台詞だな
俺こういうのがデフォってイメージあるせいで、サイト持ちSS作家にいい印象ないんだよな
>>414 って乙
読んでたんだけどコメ残してなかった
ADにゃ玲於奈たち出ないっぽいし、すげー貴重なSSだと思う
続きもがんばってくだせー
サイト持つと、どんどん自分のイメージでキャラ構築してったり、傲慢になってくからな
最新作読んでみたけど、ネタのために完全に別キャラになってるからな
最近ここで叩かれてるFSMさんの言葉借りるなら、東鳩2でやる必要ない話だし
つーか、叩かれるのが怖いなら、SSなんて書かない方がいい
いい気持ちに浸りたいってのはわかるけど、評価は必ずしもプラスではないんだし
プロでも叩かれることあるのに、アマの作品が叩かれないはずないじゃん
二次創作なんて、原作好きが読むものなんだから、原作無視してたら当然
読んでないSSさいとの更新チェックしてる事に驚いたぜw
TH2でやる意味なんて、どっかの作家が言ってたけど
TH2が好きだってだけで十分なんじゃねーの?
それだけでいいと思うよ。
作家も何言われたってほっときゃいいのにな。適当に俺はTH2が好きなだけですーとか返してさ。
むしろそれができないくらい後ろめたさを感じてるやつがいることに驚く。
別にいいんじゃないの? SS書く理由なんて人それぞれだし。
ただ、あんなに何十本もSS書いて、それを楽しんで読んでいた人だって少なくない
数がいたんでしょうに、勿体無いなぁ、とは思いますが。
これからどうするんだろうね
鬱日記でも書くのか?
『東鳩2でやる意味ない』なんて、なんでそんなこと簡単に言えるんだろうな。
正しい東鳩2像だって人それぞれの筈なのに、なんで自分の像が正しくて、人の像は意味がないみたいなことを
こんなに簡単に言う奴が多いんだろうね。
427 :
414:2007/06/20(水) 21:02:58 ID:eQvrLEQq0
>415-416
どもです。参考にします。どうせなら書く前に聞けば良かったですねw
キャラのイメージですか。違うって言われれば考えるから参考にはなるけど、
けっきょくは原作読み返したら後は自分のイメージで好きなように書くしかないかなと
逆に玲於奈あたりは、原作にキャラを印象づけるような場面が非常に少ないので、
半分オリキャラみたいな気持ちで。AD前のミルシルもそんな感じなんですかね
>>426 >東鳩2でやる意味ない
これは「正しい東鳩2像じゃない」っていうことじゃなしに、
配役いじれば別の作品の二次でもいけるようなもの、ってことだろ。
つまるところ、原作に出てきたキャラをSSで書いた時に
「より多くの人にこれはあのキャラだ」と思われれば良いんじゃないの?
読者もまたTH2が好きで、その好きなキャラが出てくるSSを読みにくるわけだから。
名前がなければ分からないようなキャラでは、そのキャラをSSで書くってことに失敗したってことだろ?
で、そうなったSSに意味があると思うかどうかは個人の感性。
俺は、そんな風にキャラが乖離しても構わないと考えてる人は
最初からTH2である「必要性」はないって思うよ。
それが「TH2で書く意味がない」とは思わないけれど。
430 :
名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 21:26:49 ID:peOQ/14S0
東鳩2はこうでなくてはならない、とかそういったものは無いんだし
ssに個性が反映されてキャラが崩れるのは当たり前だと思うがね。
自分の持つイメージ崩されたくないなら人のssなんて読むべき
じゃないと思う。
>>420 言葉を借りるのは構わんけど、そういう書き方すると価値観押しつけてるように見えるから
止めて欲しいな。
あれはあくまでも「俺はTH2でやる必要がないと思う。だから俺はそういうSSは読まない」
って書いてあるだけだろ。
やけに食ってかかってくるやつが多いんだが、なんで個人的な価値観を書いただけなのに
価値観を押しつけられてるって感じるのか、こっちが逆に聞いてみたいよw
つーかSSを書くってのは単なるファン活動だろう。
作者からすればファン活動に文句を言われる筋合いはないって思うのは当然じゃね?
批判を喰らったときに作者自身が「批判するな」って言うのは痛いと思うけどね。
でもまあ、作者は好きに書けばいいし、読者も好きに読めばいいとしか言えないだろ、こんなのw
なんでごちゃごちゃ騒いでるんだ?
このスレはSS専用のくせに相変わらずSSより議論の方で容量食ってるな
>>414 遅レスだが乙。
今回は読んでるこっちが赤面した。
今までのタメの分、甘さが尋常じゃないな。
SS書きなんてものは
どうしようもなく東鳩2が好きで
常に頭の中ではまだみぬシチュと
まだ知らない萌えるSSを書いているものだろうが!
って郭嘉先生が言ってた。
まったくもってその通りだと思う。
うわ、マジで閉鎖されてる。何があったん?
なんか叩かれてるみたいだけど俺けっこう好きだったんだがなぁ・・・・。
面白ければ原作無視でもかまわない俺にはね。
>>435 >うわ、マジで閉鎖されてる。何があったん?
一部の心ない人からのご丁寧な長文メールによる叩き文章のせいで
続ける意思を完全に折られたんだろ。
そこら辺でふてぶてしく(と言うと語弊があるけど)スルー出来れば良かったんだけどな
まあ、実生活の方も色々ストレス抱え込んでるみたいだし、そっちと合わせて爆弾になったんだろうな
誉め続けないとやる気なくすのが基本ですからね。
SS書きってのは厄介な人種ですよ、本当。
というか、日記とか見ると鬱病持ちの人多いね、SS書きさんw
もうSS書きなんかやめて鬱日記書きになっちゃおうぜ
こんなんじゃSS書きも少なくなるわな。
閉鎖じゃなくて移転ってだけじゃん 過敏に反応しすぎw
てか管理人の口ぶりを見ると前の状態からは遅かれ早かれ脱却するつもりで
叩かれたのをこれ幸いと口実にして大騒ぎしてるだけっぽいけど
SSとは関係ないけどネトゲやってるときにこういうやついたよなーって思ったよw
気に食わないことがあると引退するーって騒ぐのにしばらくすると何食わぬ顔で
復帰するやつ
ホントに引退するやつは何も言わずにいなくなっちまうからタチ悪いんだよなあ
引退しちまうやつに限って良いやつだったりするし
私立桜花高校はどうでもいいけど誰かの倉庫の人復帰してくれないかなあ〜
誰かの〜の人の復帰も待ち遠しいけど、研究所や書庫の人も一時から比べると
更新頻度落ちてるからなぁ。
AD発売までの、貴重なメイドロボ分を提供してくれる人たちなのに。
メイドロボ分っていうのは、メイドロボSSに含まれているのか....?
AD発売しても俺の好きなイルファさんは…
倉庫はホント復帰してほしい
頼むから
「ああっ!貴明さん!」
「くっ!」
二人の体がぐっと弓なりに反る。暫しの間そのまま時が止まり、そして痙攣が去ると共に
俺はばったりとベッドに倒れこんだ。
「くはー、もう駄目」
「はぁ、はぁ…お疲れ様でした。」
そういいながらイルファさんも俺の隣に倒れこんでくる。そして頭を俺の胸に預けて体を
寄せてきた。イルファさんの肌の感触が気持ちいい。だがもう絞りつくした俺のナニは
ぴくりとも反応しそうに無かった。
姫百合家に用意されたキングサイズベッドは4人で寝てもかなりの広さだ。
珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんはすでにギブアップして寝ているが、乱れまくるイルファさんの
おねだりはなかなか止まる所を知らず、今頃までがんばる羽目になってしまっていた。
「もうねだられても無理だよ…今日はもう勘弁…」
「はい、解りました。私も今日はもう満足です。」
そう言いながらくすくす笑うイルファさん。
普段のおしとやかな雰囲気からは想像出来ないほどの乱れを見せるけど、今日は輪を
かけてすごい乱れっぷりだったな。
「ねぇ、イルファさん。」
「はい?」
「今日は特にすごかったけど、何かあったの?」
「え?……ええとですね…」
ちょっと答えにくそうに頬を染めながら苦笑いをするイルファさん。
イルファさんは体を起こすと女の子座りで俺のほうに向き直った。
あの、イルファさん、裸なんでいろいろと見えちゃってるんですけど…
「貴明さんたら…私の体中隅々まで見知っていらっしゃるじゃないですか。いまさら何を
仰るんです?」
「ああ、さいですか」
「…こほん…それでですね、なぜ私が貴明さんに何度もお情けを求めてしまうかと言い
ますと、DIAのおかげといいますでしょうか、せいで、といいますでしょうか…」
「はぁ」
「基本的な性交時の女性の反応についてはプリセットで組み込まれているのですが、」
「ほうほう」
「その後、お情けをいただくごとに、私の中で情報として蓄積されまして…その…人間で
言いますところの…開発されるといいますか」
「……」
「激しく求められますと、その、より求める度合いが高くなったり、反応が激しくなった
り、と、反応の上限が引き上げられるのです。その…好きな殿方との行為であれば
なおさら上昇の度合いも激しいものになりますし。」
イルファさんは顔だけでなく体まで真っ赤になりながらも説明をしてくれた。
「じゃあ、今日激しかったのは…」
「その、先週は珊瑚様も瑠璃様も早々にダウンされてしまいましたし、貴明さんはとても
激しく求めてこられましたので…多分あれでまた一気にパラメータの上限が上がったの
ではないかと…ああっ、私はなんてはしたないメイドロボなんでしょう。」
そういいながら顔を隠していやいやと頭を振るイルファさん。その様がいつもの落ち着い
たお姉さん的な雰囲気と違ってひどくかわいらしく見えた。
俺はそっとイルファさんを抱きしめ、耳元でささやくように言った。
「俺は乱れるイルファさんもかわいくて好きだよ」
「!」
「だから、もう一度しようか。」
「え、でも、貴明さん…あ」
イルファさんが視線を落とし、それに気づいた。
「何だかイルファさんがかわいいから…苛めたくなって来た。」
「ああっ、貴明さん…」
俺はそのままイルファさんを押し倒し、そのまま唇を奪った。
「貴明さん…申し訳ありません。」
「いや……調子に乗ってやりすぎたのは俺も一緒だし。」
次の日の朝、やりすぎた後遺症でぎっくり腰で身動きが取れなくなり、おまけにいろいろ
放出しすぎてかなり貧血気味になって休んでいた。
「責任を持って私が看護いたしますから。」
そう言ってイルファさんは1日付きっ切りで俺の世話をしてくれた。
エッチするのもいいけど、こうやってイルファさんを独占して、かいがいしく世話を
焼いてもらうのもいいな、と思った。今なら雄二の気分がちょっとわかるかも。
体調は最悪だったけど、気分のいい日曜日だった。
なんとなく思いついたネタで書いてみました。
オチが弱い気がする。
>ヒロインが貴明と良い感じになってきたと思ったら、いきなり入院して転校生(優季)と付き合い始めたことに驚愕する話とか。
このネタは一応考えてはいるんですけど、オチをつけられなくて書いてないです。
あえてオチをつけずに書いてみるって手も無くも無いですが。
>449
乙。イルファさん女の子座り可愛いよイルファさん
とりあえずAD公式にはるみとシルファの立ち絵が公開されたので
妄想を膨らませてみようと思う。
>>449 (*゚∀゚)ムハー!
イルファさんかわいいよイルファさん
是非イルファさんのエロSSも書いてください!
ガチエロは無理っすw
チョイエロぐらいなら何とかだけど。
で、例の草壁ルート話書いてみたんで投下してみるお。
今回はちょっと長いっす。
そのときのあたしは、何も見えず、何も聞こえなかった。
河野貴明が、女の子を抱きしめている、その光景以外は。
−
その日はなんでか、いつもより少しだけ早く目が覚めて、少しだけ早く家を出た。
MTBにまたがってペダルを踏み込む。天気はそこそこ良くって、風も心地いい。
その日の体調によってペダルが重かったり軽かったりするものなんだけど、今日はペダル
も軽くってクルクルとよく回る。こんな日はちょっと良いことがありそうな気がする。
たとえば河野貴明とまた何か勝負して…
そこまで考えたところで、あたしははっとなって首を振った。何であいつのことなんか。
あいつはなにかとあたしに突っかかってきて、いつも邪魔をする。そういうやつだ。
だから会わないに越したことは無い。幸いにしてここ数日はあいつの姿を見かけては
居ない。これは喜ぶべきことのはず。うん、そう。
でも…
最近、あいつに会えない日は何だかつまらないと思っている自分が居る。
あいつと一緒に勝負するのが楽しいと思っている自分が居る。
これって、何なのかな…
学校前の坂道を一気に駆け上がって自転車置き場にMTBを放り込むと、そのまま教室に
向かう。あいつには会わなかった。時間が合わなかったのか、病気かなんかで休んでるの
か。まあ、待ち合わせしているような関係じゃないんだから当たり前か。
HRが始まるまでにはまだしばらくあるので、直った眼鏡を掛けて、しばらく自分の席で
自習しようと教科書を開いてみた。でも駄目。何だか落ち着かない。
仕方なく自分の教室を出て、隣の教室を覗きに言ってみた。でもあいつの姿は見当たら
なかった。いつも一緒に居る相棒の馬鹿は自分の席でアイドルの写真集かなんか見てる
けど…
「由真?」
のんびりした声で名前を呼ばれて振り返ると、思ったとおりそこに居たのは愛佳だった。
「うちのクラスに何か用?あ、もしかして私?教科書か何か貸す?」
「ううん。あー、えっと…」
愛佳に聞こうかと思ったけど、そうすればなぜ貴明のことを尋ねるのか説明しなくちゃ
ならないことに気がついた。だけどなんて説明すればいいの?…だけど愛佳にはお見通し
だったみたい。
「……もしかして、河野君?」
「わっ、ちょ、だ、誰があんなやつのことなんか」
「ちがうの?」
愛佳は小首をかしげて大きな瞳でじっと私のことを見て聞いてくる。
認めたくない。認めたくないけど……あたしは愛佳のその視線に負けた。
「……ちがわない。河野貴明はどこにいるの?」
−
「由真も、最近たかあきくんと仲がいいんだね。」
そういいながら愛佳はあたしの顔を見て笑った。多分口を尖らせて不貞腐れているあたし
の顔がおかしかったからだ。
貴明は外の空気を吸ってくるといって出て行ったらしい。きっと中庭だろうと当たりをつ
けて、愛佳と二人で歩きながら話した。
「たかあきくん、交通事故で4日も入院してたんだよ。」
「え、うそ、あいつ車にでも轢かれたの?」
「ううん。轢かれそうになって、咄嗟によけたんだけど転んで道路脇の塀に頭ぶつけて
気絶しちゃったんだって。それで病院に運ばれて、検査のために入院したんだって。」
「何だか間抜けね。いい気味。」
「も〜、そんなこといっちゃ駄目だよ〜。たかあきくんだって咄嗟のことで塀にまで気が
回らなかったんだよ。」
愛佳が困ったように貴明を弁護する。そこで愛佳の言葉に対する違和感に気がついた。
それに気がついたらあたしは聞かずには居られなかった。
「ねえ、愛佳」
「うん?なあに?」
「さっき、「由真も」貴明君と仲がいいんだね、って言ってたよね…愛佳も?」
「!」
愛佳がびっくりした顔で思わず口を押さえた。
「や、や、や、そんなことないですよ!」
「…あんたって解り易いわよね。それに、あたしの前だから無意識に言ってるんだろう
けど、あいつのこと「たかあきくん」って呼んでる。」
「えっと、その、あの、あのね」
「男の子苦手な愛佳があいつのこと名前で呼ぶってことは、結構仲がいいってことよね」
「あー……うん」
愛佳は困ったような、でもほんのりと赤くなって少し恥ずかしそうな顔で答えた。
「いつから、そうやって呼んでるの?」
「つい最近、かな。私は男の子苦手だし、たかあきくんは女の子苦手だったから、書庫で
作業を手伝ってもらってるときだけ、お互いに名前で呼び合うことにしたの。」
「ふぅん、あいつ女の子苦手だったのか……で、つきあってるの?」
「ええええええ!」
あたしが言った言葉に愛佳は瞬間的に真っ赤になった。まるでぼんっ!っていう効果音が
聞こえてきそう。目もぐるぐるになっててわたわたと暴れまくっている。
「や、や、や、つ、付き合うなんて。そ、そんなことまだ早いよぉ〜」
「でも、「まだ」ってことは付き合ってもいいとは思ってるんだ。」
「……そう、かな。…うん、そうだね。たかあきくんとなら、お付き合いしてもいいか
な、と思う。」
愛佳は恥ずかしそうに、でも少し嬉しそうに答えた。あいつと二人でデートしている所
でも想像したのかもしれない。少しの間愛佳はにやけていたけど、ふと我に返るとあたし
に向かっておずおずと聞いてきた。
「でも…由真もたかあきくんのこと、好きなんじゃないの?」
「え?」
どきん、心臓の鼓動が聞こえた気がした。でもその時のあたしはすぐにそれを否定しに
かかった。
「なっ…馬鹿なこと言わないでよ。あたしとあいつはただのライバルよ。いつもいつも
あたしに突っかかってくるから仕方なく相手してるだけよ。あたしが本気出せばあんな
やつなんか何時だってコテンパンにできるんだから。」
「はいはい…由真は素直じゃないんだから。」
「あたしは何時だって正直よ!」
「はいはい…あ、着いたよぉ。ほらぁ、あそこにたかあきくんが…」
と、愛佳が指を向けたまま、動きを止めた。
あたしも愛佳の見つめる方に目を向けた。
支援
そこには貴明がいた。
自動販売機の前で何を買おうか迷っている。
そこに後ろから女の子が静かに近づいた。
髪が長くて、ほっそりとしていて、おしとやかな感じで、あたしとは全然違う。
その娘は貴明の後ろに近づくと、耳元で何かそっと囁いた。
それに導かれるように貴明が紅茶のボタンを押す。そして何気なく缶を拾い上げて一瞬の
後、貴明は振り向いてそしてその娘と何か言葉を交わして、そして二人はあたしの目の前
でしっかりと抱き合った。そう、まるで…離れ離れだった恋人同士が再会する映画のワン
シーンみたいに。
そして、あたしはその光景から目が離せなかった。
周りの景色はあたしの視界から消えて、いつの間にか風の音も何もかも聞こえなくなって
いた。のどがからからに渇く。心臓が痛い。どくどくと鼓動が早くなっているのが解る。
見て居たくなんか無い。心ではそう思っている。なのに目の前の光景から目が離せない。
なによ、あれ。
それが、しばらくして頭に浮かんだ、ううん、あたしが無意識に呟いた言葉だった。
なによあれ、なによ、なに、なんなの、納得できない、理解できない。
もうあたしの頭の中はぐちゃぐちゃで、何かの呪文みたいに無意識にそんな言葉を呟いて
いた。
とても長い時間のような気がしたけど、後で考えればほんの一瞬だったと思う。
その時まで何も耳に入らなかったのに、不意にぱたぱたという音が耳に入ってきた。
それは、
「!愛佳!」
愛佳の足音だった。振り返るときに一瞬見えたその顔は、泣いてたように見えた。
「愛佳!」
あたしも愛佳を追いかけて走った。後で思えば、あたしもその場を離れたかったんだと
思う。だって、その時は気がついてなかったけど、あたしも酷いことになってたから。
階段を駆け上がって重い扉を開け放つと、あたしの気分とは裏腹に晴れ渡った空が広がっ
ていた。
いつもなら屋上まで階段を駆け上がるくらい平気なのに、さっき受けたショックのせい
か、なぜか酷く呼吸が苦しかった。
「愛佳っ!」
愛佳はフェンスにしがみ付いたまま肩を震わせていた。
「愛佳…泣いてるの?」
あたしが声を掛けると、一度手で顔をぬぐって愛佳は振り向いた。
でも、振り返った愛佳の大きな瞳からはもう次の涙があふれ出していて、全然無意味だっ
た。愛佳はその涙を端から手で拭い取っていたけど、でも全然役に立たなくて、顔はもう
ぐちゃぐちゃになっていた。
「わたし……告白する前に…失恋しちゃった…う……ああああん」
そこで、耐え切れなくなった愛佳は、まるで小さい子供みたいに大声を上げて泣き出し
た。
「愛佳…泣かないでよ。」
「…ひっく…由真だって…泣いてるじゃない。」
「え?」
そう言われて初めて、あたしは自分がぼろぼろ涙を流していることに気がついた。
ああ、そうか。
さっき走ったとき苦しかったのは、走ったせいなんかじゃなくて、あたしも走りながら
泣いてたからなんだと、その時やっと気がついた。
顔をさわって見るともうほっぺたはぐちゃぐちゃに濡れていて、きっとさっき呆然として
いたときから泣いていたんだろうと言うのが解った。
でも、何であたしはこんなに泣いているの?
愛佳と違って、あたしはあいつのことなんかなんとも…
いや、もう意地を張っても仕方ないんだ。
いつの間にか、あたしはあいつのことが気になって仕方なくなっていた。それはもう認め
なくちゃいけない。
いつの間にか隣にあいつが居るのが嬉しいと思うようになっていて、貴明の隣は私のモノ
なんだといつの間にか勝手に思っていたんだ。
だけどそうじゃなかった。
貴明の隣はあの娘のモノで、あたしや愛佳のものじゃなかった。
そして自分のものだと思っていた席を取られたあたしは、悔しくてたまらなかったんだ。
それでもあたしの小さな意地がそれを認めるのを拒んだ。
「あ、あたし…あたしは、貴明、あいつのことなんか、なんとも思ってなくて。」
「由真…」
「だから、悲しくなんか…ないんら…からぁ…うううっ」
でも小さな意地はあっと言う間に押し流されて、あたしは愛佳と同じように大声を上げて
ないていた。
授業の始まるチャイムの音が聞こえてきても、あたしと愛佳は子供みたいに泣きじゃくっ
ていて、涙を止められなかった。
−
あたしと愛佳がそれなりにショックから立ち直るには数日必要で、そして、あたしがあた
しらしい答えを出して、それを実行する勇気を搾り出すのにはさらに1日必要だった。
放課後の中庭。
おあつらえ向きにあたしたち以外には誰も居なかった。
そして、ここに居たのはあたしと、そして無理やり呼び出した愛佳、それと河野貴明と、
あの娘…草壁優希の4人だった。
「なあ、この果たし状みたいなの、お前の仕業だったのか。」
貴明があきれた風にあたしを見てる。朝、早めに学校に登校したあたしは河野貴明と草壁
優希の下駄箱の中に呼び出し状を入れておいたのだ。
「その手紙、私の靴箱の中にも入ってたんですけど……ええと、小牧さんと…」
「私は、長瀬由真」
「長瀬?…えっと、前に自分のこと十波由真って名乗ってなかったか?」
貴明がピントのずれた突込みをしてくるけど、そんなのはどうでもいい。
「あたし長瀬の苗字嫌いなの…大体、苗字が本当かどうかなんてあんたには関係ないで
しょ。あたしはあたし、長瀬でも十波でも「由真」なんだから。」
そう、大事なのはあたし自身だ。あたしをどう見てくれるか、そしてあたしがどう考える
か、それが大事だ。自分が納得できないままに事を終わらせたくない!
「それで、長瀬さん…その、私と貴明さんに何の御用でしょう?」
草壁優希がおずおずとあたしに聞いてくる。あたしは最後の確認をした。
「河野貴明と草壁優希…二人は付き合っている。そうよね。」
二人は同時に赤くなると、貴明はそのままもごもごと答えた。
「く、草壁さんとは子供の頃大事な約束をしてて…その、この間再会して…」
「はい、貴明さんとお付き合いしています。」
草壁優希はまっすぐ、柔らかく笑みすら浮かべながら私の目を見て答えた。
そうでなくっちゃ。
強い相手じゃなくっちゃ、倒す甲斐が無いってものよ。
あたしはいつも貴明にそうするように、ぴっと左の人差し指を向けた。
「河野貴明!」
「は、はい!」
「わたしは…長瀬由真は、河野貴明のことが好き。」
「…は?」
貴明があっけに取られた顔であたしを見てる。っていうか、なに言ってるんだこいつ、
って顔してる。あたしが愛を語るのがそんなにおかしいか。失礼なやつ。
「で、愛佳」
「は、はひぃ!」
「あんたはどうなの?」
「え、あ、あ、ああああああああの……」
いきなり振られて愛佳は慌ててたけど、覚悟を決めたのか、一呼吸して気を落ち着かせる
と、貴明を見て言った。
「あの……私もたかあきくんの事……すき……です。」
つ@@@@
「え、えっと…」
続いての愛佳の告白に貴明も本気で困ったみたいだった。そして、草壁優希はというと…
…あ、あっけにとられてる。
でも、手加減なんてしてやらない。全力で挑まないと、この勝負には勝てない。
あたしは貴明に向けていた指先をそのまま草壁優希にすいっと向けた。
「草壁優希!」
「は、はいっ!」
「あたしと愛佳は、河野貴明を賭けて、あんたに勝負を申しこむっ!」
「えっ?」
「「えええええええ!」」
草壁優希も、河野貴明も、そして愛佳も、その場に居た全員が驚嘆の声を上げた。
でも、これがあたしらしい決着のつけ方。
今更あきらめてなにも無かったことにするなんてあたしにはできない。
なら、あたしらしく勝負を挑んで手に入れるまで。覚悟しなさいよ、貴明。
こうしてあたし達女の子3人と男の子1人の奇妙な三角関係が始まった。
敵は手ごわいけどあたしはきっと勝って見せるわ。
乙
続きがあるってことでいいのかな?
楽しみに待ってます
467 :
物書き修行中:2007/06/30(土) 12:45:13 ID:gA7agZdj0
支援サンクス
一応前提としてですが、
・由真と愛佳シナリオを並列でこなして優希クリアまでプレイしたと想定
(実際は途中で由真か愛佳に分かれるので無理だけど)
・PS2版相当(エッチはしてない)
ということで書いています。しかも予告どおり投げっぱなし。
一応続きも考えてますが、書くかどうかは、というか書けるかどうかは解り
ません。
ところで、OVA2巻見ました。
TVの方は評判が良くなかったので見てないですがOVAは良いですな。
特に郁乃に萌えた雄二のはじけっぷりにワロス
あと郁乃の口調が少年ぽいのは公式設定ということでいいのでしょうかね?
あと私立桜花高校は結構楽しみにしてたサイトなんで移転で一時閉鎖はちょっと
残念です。ブログのほうもしめちゃったっぽいし。
468 :
物書き修行中:2007/06/30(土) 12:52:21 ID:gA7agZdj0
ぐは、今気がついたけど「優希」じゃなくて「優季」だよ。orz
撃つ出し脳…
>>467 乙。続き期待してます
ところで、「三角関係」→「四角関係」かな?4人だし
>>467 乙
って、なんか既視感を感じる内容だな
>>467 乙
>>470 TH2SS置き場の『あなたを、はなさない』じゃね?
あっちは夢オチだったけど
472 :
物書き修行中:2007/06/30(土) 21:01:39 ID:gA7agZdj0
>>469 人数的には4人なんで4角といえなくも無いですが、どっちかって言うと
優季と愛佳と由真を頂点に真ん中に貴明が居る関係、もしくは優季と貴明と
挑戦者チーム(由真と愛佳)という関係なので、あえて三角関係としました。
>>470-471 「あなたを、はなさない」は自分も読んだことがあります。
今回書くときはあえて思い出さないで、自分の文で書くようにしましたが、
似ていると言われればそのとおりと答えるしかありません。
でも、このネタ自体は文に起こす人間は少ないですが、実際にプレイした
人間なら誰もが考える話ではある(もちろん結論は人によって異なりますが)
ので、違いは書く人間の味付けの仕方かなと思います。
前半(特に冒頭)はかなり似てると思うけど、後半はかなり違ってるな。
良い意味で各キャラがより個性的になってると思う。
恋愛同盟って……どこのツインズ?
475 :
捏造シルファSS(続き):2007/07/03(火) 18:10:25 ID:8W82mue10
ずっと前に書いた奴の続きです。前の奴は保管庫にあります。
シルファちゃんがキッチンに入ってから10分。
本格的に腹が減ってきたころ、キッチンから良いにおいがしてきた。
冷蔵庫にあるもので適当に作ってくれ、と言ったものの、シルファちゃんって料理の経験あるんだろうか?
まあミルファも最初からある程度料理できたから、心配はないと思うんだけど。
「出来ました」
「……炒飯?」
「冷蔵庫にご飯がありましたので」
残り物の処理まで考えてくれるとは、さすがメイドロボ。
もっとも、メイドロボを買う余裕がある家で、残り物の処理をする必要があるのかは疑問だけど。
「じゃあ、いただきます」
「……」
心無しか、シルファちゃんの表情が少し硬い気がする。もしかして緊張しているのだろうか。
「ところでシルファちゃん」
「?」
「料理したことあるの?」
大丈夫だとは思うが、これだけは聞いておかないと。見た目と臭いには全く問題ない。
でも、食べたら物凄い出来だったという可能性も無きにしも非ずだ。
しかし、俺の言葉を聞いたシルファちゃんは今までにないムッとした顔で
「召し上がりたくないのでしたら、お下げします」
と言った。いや、言うだけでなく実際に片付け始めた。
「食べる!食べるから片付けないで!」
「……」
シルファちゃんは渋々、本当に渋々といった感じで片付けるのを止めた。イルファさんやミルファ
だったら、ムッとしても実際に片付けはしないだろう。あの2人より気難しい子なのかもしれない。
料理に物凄い自信があって、それを馬鹿にされたのが悔しいのかもしれないけど、
研究所から一歩も出たことが無いと言っていたし、その線は薄い気がする。
「ごめん、失礼なこと聞いちゃったね」
「……」
片付けるのを止めてくれたものの、無論シルファちゃんの機嫌は直っていない。
さて、どう謝ったら機嫌を直してくれるだろうか。
「……召し上がらないんですか?」
「あ、食べます。食べますから片付けようとしないでください」
どうやって謝ろうか考えている俺の表情が、食べるのを躊躇しているように判断されたのだろう。
それを考えるのは後にして、炒飯を頂くことにする。
「それじゃあ…・・・改めていただきます」
レンゲですくって口に入れようとすると、物凄く強い視線を感じた。
「あの、そんなに見つめられると食べにくいんですけど」
「お気になさらず」
いや、気になるって。と思っても言えないのが俺の悪いところである。
でも、すごい真剣な目で見ているのを止めてくれとは言えないし。
とにかく、今は食べよう。うん。
「……」
「……」
「……」
「……あの、お口に合わないのでしたら下げますけど」
「ダメ。絶対下げちゃダメ」
何だこれ。こんな美味い炒飯が家で作れるのか。イルファさんやミルファ、
瑠璃ちゃんにも炒飯を作ってもらったことはある。あるけど、それよりもさらに美味しい。
そのせいで、物凄い勢いで平らげてしまった。
「ふぅ、ごちそうさま。凄い美味しかったよ」
なるほど、これだけの腕があるならさっき怒ったのもうなずける。
「……あの」
「うん?」
「瑠璃様の料理と、どちらが美味しかったですか?」
「うーん……炒飯に限って言えば、シルファちゃんのが上手かな」
「本当ですか!?」
「う、うん」
瑠璃ちゃんより上手なのがそんなに嬉しいのかな?……そういや、前にイルファさんが
『もう1人の妹は、ものすごいマザコンなんです』
って言ってたっけ……瑠璃ちゃんとシルファちゃんが対立する日は遠くないだろう。
それから、掃除や洗濯、買い物などをしてもらったが、何一つ問題なくこなしてくれた。
物凄い人見知りだって聞いてたけど、買い物ができるなら問題ないんじゃないか?
「さて、そろそろイルファさんが迎えに来るはずだから。用意しておいてね」
「……はい」
目下の問題は、帰る時間が近づくにつれ、シルファちゃんの元気がどんどん無くなっていくことである。
何か帰りたくない理由でもあるのだろうか。
ピンポーン
「はいはい……あ、イルファさん」
「お迎えに参りました。シルファちゃんのご奉仕はどうでした?」
「ご奉仕って……まあ、普通にこなしてくれてたよ。買い物もしてくれたし」
「シルファちゃんが買い物を!?」
「……そんなに驚く、ってことはやっぱり今まで出来なかったんだ」
「え、ええ。ですが、さすがは貴明さんですね。
僅か半日でシルファちゃんの心を溶かしてしまうなんて」
「別に何かしたつもりはないけど……とにかく、呼んでくるよ」
シルファちゃんを呼びにリビングに戻るが、シルファちゃんが居ない。荷物も無い。
「あれ?……もしかしてトイレかな」
トイレに行ってみると、鍵はかかっていない……
いや待て。前にこれで大失敗したばかりじゃないか。気をつけないと。
コンコン
「シルファちゃん?」
……!」
「イルファさん待ってるから。終わったら玄関に来てね」
「……嫌です」
「シルファちゃん?」
「帰りたくないです!」
「ええっ!?」
帰りたくないって……どういうことだ?と、とにかく理由を聞かないと。
「……えっと、とりあえず出て来てもらえるかな?何にしても、イルファさんはもう来ちゃってるから。
帰りたくないなら帰りたくないで話し合って……」
「嫌です!」
「大丈夫。帰れなんて言うつもりは無いから。イルファさんも、理由を話せばきっと分かってくれるよ」
「……」
ゆっくり、本当にゆっくりドアが開いた。これで、とりあえずは何とかなる。
「さ、イルファさんと話し合おう?」
「……はい」
「じゃあ、どうしても帰りたくないのね?」
「……はい」
「うーん、困りましたね……貴明さん、お電話お借りしてもよろしいですか?」
「うん、いいよ」
「ありがとうございます。それでは、ちょっと席を外しますね」
……さて、どうしたものだろうか。あれから20分ほど話し合ったが、
シルファちゃんはイルファさんが何を聞いても
『研究所には戻りたくありません』
の一点張り。理由を聞かれても何も答えない。研究所に何かしらの原因があるとは分かるが、
それは俺がどうにかできる問題じゃないし。
「……あの」
「ん、何?」
「貴明様も、私がずっとここに居たら迷惑ですか?」
貴明様『も』……か。シルファちゃんは研究所に居ることで、そこの人たちに迷惑をかけていると思っているんだろうか。
人見知りするメイドロボなんて必要ない、なんて考えているのかもしれない。
「大丈夫、迷惑じゃないよ。シルファちゃんが居たいだけ居ていいから」
「あっ……」
その不安そうな顔を見て、思わず頭を撫でてしまった。
嫌がられるかと思ったが、表情を見るにそうでもないらしい。どうも小さい娘には癖でやっちゃうな、これ。
「あらあら、それは助かりました」
「……何が助かったのかな、イルファさん」
またしても嫌な予感がする。そして、こういうときの嫌な予感が外れることはほとんど無い。
「シルファちゃんを、とりあえずもう1週間ほど預かって頂こうとお願いしようと思ったんですが……
その様子なら、引き受けてもらえますよね?」
「は、ははは……」
ああ言った手前、断ることが出来るはずも無かった。
こうして、シルファちゃんとの共同生活が始まったのである。
作品あげるのが久しぶりで、一発目でいきなりageてしまいました。すいません。
そして、5個上げたあと連続投稿規制でひっかかってました。妙に時間が空いてますね。
何か続きそうな感じの終わり方ですが、続けるかどうかは考えてません。プロットは一応作ってますが、
前の作品完結させないまま続けても、また尻切れトンボになりそうですので。
シルファはこんなんじゃない!などの感想がありましたら、よろしくお願いします。
乙!
オレは続きを書いてほしい素人です。
よかったよ
GJです!
メイドロボは大好きなんでまた書いてくれると嬉しいです
デレがないぞデレが
デレが出るまで書き続けろや
勘違いしないでよ、次回作楽しみにしてるわけじゃないんだからねっ
最後のはデレじゃないのか
「え〜っと、第…何回目だっけ?…ま、いっか。とにかく定例部会を始めま〜っす♪」
はいはい、ぱちぱちぱちぱちーっと。
ツナサンドをほおばりながら花梨の言葉に適当に拍手で答えておく。
ここは体育館第二用具室、兼ミステリ研究会部室。
普通の生徒だったらまず近寄らないであろう場所なのだが、
紆余曲折を経てミステリ研の正式会員になった俺は
昼休みにはここに来る事がほとんど日課になっていた。
昼休みという本来休憩する時間まで部活動に費やすなんて、我ながら学生の鏡だなー。
…と素直に思えないのは、ミステリ研の活動内容によるものか。
とにかく、今日も昼休みを利用して恒例の定例部会を行っているわけなんだけど、
この定例部会も回数を重ね、会長であり俺の彼女でもある笹森花梨も
今日で第何回目なのか、もう覚えていないようだった。…まぁ別にいいけど。
「で、今日の議題は?」
「実はたかちゃん…私すごいミステリスポットを発見してしまったんよ!」
パイプ机に向かい合って座っていた花梨が、ずずいっ!っと身を乗り出して答えた。
うっ…。
急接近してきた花梨に思わず後ずさってしまう。
「スキありっ!」
「えっ?」
机の上に拡がっていたミックスサンドの中からタマゴサンドを
ひょいっと手に取り、花梨はそのままぱくっと口に含んだ。
はぁ…。またやられた…。
「ふふっ♪たかちゃんったら相変わらずウブなんだね〜。
あの時はあ〜んなにけだものさんだったのに。」
「いや、あの時はその、えーと…」
一ヶ月ほど前、例の山火事があった夜…。この部室での事を思い出してしまい
かぁーっと顔が熱くなってしまう。
「あの時のけだものさんはドコ行っちゃったのかなぁ?」
いつの間にタマゴサンドを食べ終わった花梨は悪戯っぽく笑っている。
「ったく、そんな事言ってると本当に襲っちゃうぞ?」
からかわれっぱなしなのもしゃくに障るので反撃の意味も込めてそう言ってみたんだけど…
「…。」
頬をぽっと桜色に染めてうつむいてしまう花梨。
え、えーと本気にしちゃったのかな?冗談だったんだけどな…。
…。
急に静かになった部室。体育館の方から他の生徒達の楽しそうな声や、ボールの弾む音が聞こえてくる。
ガタっ!
しばらくして、意を決した様な表情で花梨は立ち上がると、
近くにあったマットに、ぽすっ。と音を立てて座り込んだ。
ふわりと舞い上がったスカートから花梨のふとももがちらりと見え、
思わず視線を奪われてしまう。
更に花梨は、ぱたっ。と後ろに仰向けに倒れこむと
「い、いーよ…?たかちゃん…。」
…本気ですか?さ、さすがにそれは…いや、したくないってわけじゃないけど、
こんな昼間っから?それ以前に学校でってのはやっぱり…。いやいや、もちろん
したくないってわけじゃないけど、やっぱりその…って、と、とにかく落ち着け、俺!
「そ、そのさっきのは冗談だからさ!ははは。
あ、そーだ!で、さっき言ってたミステリスポットって言うのは?」
ぎこちない笑顔を作ってつとめて明るく花梨に言った。
…。
むくっと起き上がった花梨は笑いながら向かいのパイプ椅子に腰掛ける。
花梨も冗談だったのかな?…なんか一瞬寂しそうな顔をした気がしたけど。
「あはは〜。」
「はははは。」
乾いた二人の笑いが部室に響く。
それから、ごほんっ。とわざとらしくせきをして、花梨は先ほどの質問に答えた。
「えっとそれでね、そのミステリスポットって言うのは、」
「言うのは…?」
「…秘密♪」
ずこっ。なんじゃそりゃ。
「で、今日の放課後はその秘密のミステリスポットを探索してみようと思いま〜っす!」
「いや、だから場所は…」
「だいじょぶだいじょぶ!ちゃーんと私が案内してあげるから。
久しぶりにアウトドアな活動だよ、たかちゃん!」
さっき一瞬見せた寂しそうな顔が気になっていたが、
どうやらいつもの花梨に戻っているようでほっと胸をなでおろす。
「でも久しぶりって…先週の日曜も噂のおばけトンネルに行ってきたばかりじゃないか。」
「何言ってるの?アレはデートで部活動じゃないんよ?もーっ!公私混同は困るなぁ。」
…あれってデートだったのか。そりゃ、帰りにショッピングや食事もしたけど、
デートで心霊スポットってのは…どうなんだ?
−キーンコーンカーンコーン−
その時、不意に昼休みの終わりを告げるチャイムが校舎の方から聞こえた。
もうそんな時間か。
「それじゃ、そういうわけで放課後迎えに行くからね〜♪」
そういって花梨は部室からさっさと出て行ってしまった。
また今日もひと波乱起こりそうな予感だな…。
ま、花梨と居ればその「波乱」がいつもの事だったりするんだけど。
とにかく俺も残ったサンドイッチを片付けて…ってアレ?
いつの間にハムカツサンドも無くなってる。
素早いやつめ…。
いつもながら満腹にならないお腹をさすりながら、俺も部室を後にするのだった。
そして放課後。
「高明ぃ。一緒に帰ろーぜー。駅前のゲーセンに例の新作が出たんだってよ。」
帰りのHRもすっかり爆睡してしまい、ボーっとしている頭に雄二からの誘いの声が飛び込んだ。
「んぁー、雄二か。わりぃな、今日はちょっと…」
「何だよ、最近付き合い悪いなお前。またいつものナントカ研か?」
「まーな。」
「まぁ俺なんかより愛しの会長様の方が良いわなー。」
ニヤニヤと下品な笑顔を作りつつ、手に持ったかばんを振り上げる雄二。
ぽこっ。ぼこっ!ばすっ!!どすっ!!!ドゴっ!!!!
いてっ。痛い。いつまで叩いてんだ。いてっ。だから痛いって!
「あはははー。羨ましくなんかないぜー。この恋愛ブルジョアジーめ。あはははー。」
「や、やめろって!男の嫉妬はみっともないぞ!」
そろそろ雄二の奴にカウンターでも返してやろうと思ったその時だった。
「た〜かちゃ〜ん!!迎えに来たよぉ♪」
俺と雄二のみならず、クラスに居た全員が声のした廊下の方に顔を向ける。
そこにはニコニコ顔で手をぶんぶん振る花梨の姿。
あんな大声で叫ぶなよ…は、恥ずかしいじゃないか。
「たかちゃん♪お迎えがきまちたよー♪」
ぼすっ!
明らかに悪意のある雄二のからかいに、溝落ちパンチで答えると
クラス中の冷ややかな視線を浴びつつ花梨の元にあわてて駆け寄る。
「裏切り者〜!俺もミステリ研の会員なんだぞ〜!」
背後から雄二の声が聞こえた気もするけど…きっと気のせいだな、うん。
支援
支援
「ちょ、ちょ、ちょっと!恥ずかしいだろ!?」
「そんなこと言っちゃって〜、本当はたかちゃん嬉しいくせに〜。」
「はぁ…。ハイ、嬉しいデス。」
一刻も早くこの場から逃げ出したかったので素直に答えておくことにする。
「うん。よろしい。」
「でもそんな廊下から叫ばなくっても…」
「ほら〜、なんていうか悪い虫がつかないように?みたいな?」
「悪い虫ねぇ。」
何故か雄二を見てしまった。
「いこっか、たかちゃん。」
「あ、あぁ。」
色々な視線から逃げるようにさっさと歩き出した。
「あれ?なんかバッグ大きくない?」
下駄箱で靴を履き替えながら、妙に膨らんだ花梨のバッグを指さす。
「え?そ、そうかなぁ。ほら、今日は体育があったから!そう、それそれ。」
体操服だけでそんなに膨らむか?…とも思ったけど、どうせ花梨の事だ。
またナントカ探知機とかいって怪しげなものを詰め込んでるんだろう。
「で、今日はどこに行くの?」
校門まで歩いてきたところで花梨に尋ねた。今日はこれから何処かに行くんだっけ?
「だからそれは秘密なんよ。それはそれはミステリーなところなんだから!」
「へいへい、じゃ案内お願いします、会長。」
そう言ってから立ち止まり、右手を差し出す。
花梨は一瞬「?」って顔をしていたけど、すぐにその意味を察したのか
「うんっ♪」
ぱぁっと花が咲くように笑って俺の手を握り返した。
う…、今のは可愛かったかも…。
その笑顔に見事に打ち抜かれた俺を尻目に、花梨はぐいぐいと手を引っ張って歩き出した。
「とうちゃ〜っく!」
「へ?」
ここまでの道のりを説明すると…
鬱蒼と茂る背丈ほどの草達を掻き分け、今にも崩れ落ちそうなつり橋を渡り、
転がりくる大岩を逃れ、行く手を阻む大蛇との格闘を経て、そして俺達はついに…
…なんて事はまったくなく、いつも通りの帰宅ルートだったわけで、
今立ち止まっているこの場所も、いつも俺がひいきにしているスーパーの前だった。
「ここが目的地?」
「違うよ〜。たかちゃんせっかちなんだから♪ここで一旦食料の調達をするんよ。」
「なるほど。」
そんなわけで買い物を始める俺達。
俺が押すカートの中に花梨がぽんぽんと商品が投げ込んでいく。
パン、卵、ジャガイモ、にんじん、お肉、…って、なんか凄く家庭的だな…。
「こうやってると、新婚さんに見られるかな?」
制服だからそれは無いか。と思いつつも、ついついそう呟いてしまう。
「えっ?そんな、たかちゃんだめだよぅ…。婚約なんてまだ早すぎるよぅ。
でもたかちゃんが今すぐしたいって言うなら、私も頑張ってお父さんを説得して、それから…」
「ちょっと待て!そこまでは言って無いだろ!」
ぱしっ!と花梨に突っ込む。
「なーんだ。残念。よし!それではレジに向かおう、高明隊員!」
「はいはい、了解。」
いつも通り俺が奢るんだろうなー。と思って財布を出そうとすると
「今日は私が奢るよ。」
「え?いいの?」
いつもとは違う展開に少し躊躇してしまう。
「いいからいいいから。ここは花梨おねぇさんに甘えればい〜のっ!」
「んー、そっか。ありがとな、花梨。」
「うんうん。このご恩は一生をかけて返せば良いと思うよ!」
…恩着せがましい奴。
こうして買い物を終えた俺達は、今度は言葉もなく自然に手を繋ぎ
夕焼け空の下再び歩き出した。
「ねぇタカちゃん…、その…私達やっぱり新婚さん…みたいかな?」
「そう…かもな。」
照れ隠しに笑いながら答えると、花梨も微笑み返してくれた。
でも…表情がどこか寂しそうなのは気のせいだろうか。
俺の手を引く花梨の後姿がいつもよりも小さく見える。
日が傾いた町並みの中で、空いた手に持った買い物袋が妙に重たく感じられた。
「今度こそ、とうちゃ〜っく!」
「え、あ…えーっと、ここって…」
「そうだよ?タカちゃんの家。あれ?自分の家も忘れちゃったの?ま、まさか宇宙人に記憶を!?」
「いやいやいや、それは無いから。ってことは俺の家が秘密のミステリスポットなわけ?」
「うん!」
そんなはっきり返事されても…。
「あの、花梨?俺の家はごく普通の家だし、
花梨の期待してるような不思議なことなんてまったく無いと思うんだけど…」
「そんなことないよぉ。だって私たかちゃんの家に上がったこと無いんだから、
私にとっては人跡未踏の地なわけなんよ!」
相変わらず人跡未踏の使い方を間違えてるような気がする。
「でもほら、前にゲーセンに行った時、家に来ただろ?」
「たかちゃん、忘れちゃったの?あの時は玄関までで、家の中にはあがってないんよ?」
言われてみれば…そうだったかも。
記憶の中を探っても花梨が我が家にいる場景は浮かんで来なかった。
「えーと、それじゃあがってく?大したもてなしは出来ないかもしれないけど…」
「やったぁ♪それでは笹森花梨探検隊、とつげきぃ〜!」
俺が鍵を開けるのと同時に家の中に駆けあがっていく花梨。
やれやれ…。
「お茶でいい?紅茶やコーヒーもあるけど。」
へー。とか、ふーん。とか言ってキョロキョロしてる花梨をリビングのソファーに座らせる。
「えっとね、お茶でい〜よ。」
「了解っと。」
キッチンでお茶を入れながらリビングを見渡す。
このみやタマ姉以外の女の子がこの家に居る事が不思議に思えてきて、妙に緊張してきた。
「はい、どーぞ。…ごめん、丁度良いお茶菓子がなくてさ…。」
「あ、それなら丁度いいのがあるよ!」
そういって買い物袋をがさごそと漁る。
「はいっ!これっ!」
そういって星の形をしたチョコレートを差し出してきた。
星ってところがいかにも花梨らしくてつい顔が綻んでしまう。
意外とお茶とチョコレートの相性は悪くなく、二人でずずーっ。とお茶を飲んでのんびりしていると
「た、たかちゃん!その…ご両親は…?」
急にかしこまった様に花梨が尋ねてきた。
「え?あー。言ってなかったっけ?ウチの親父の海外出張にお袋もついていっちゃってさ、
しばらくは帰ってこないみたいだから、今は一人暮らしみたいなもんなんだよ。」
「なーんだ、そうなんだぁ。せっかくご挨拶しようと思ってたのに〜。」
「ご挨拶って…。でもそういうのって俺から紹介するのが普通じゃないのか?
紹介したい人が居るから…ってな具合に。」
「普通は…そうなんだ。…そっか。」
急にしょんぼりする花梨。え、えーとなんかマズい事言っちゃったかな?
とか考えてると
「それじゃ、こうしてても大丈夫なんよね♪」
花梨が俺の横にちょこんと座り、急に抱きついてきた。
「き、今日はまた大胆だな、花梨。昼休みだって…」
急な接近に顔に血が昇っていくのがわかる。
「タカちゃん…もしかして、けだものさんになっちゃった?」
「ばっ、そ、そんなわけ!」
「そんなわけ…ないの?」
潤んだ瞳で俺の顔を覗き込んでくる。女の子の良い香りがふわっと目の前に広がり、
理性が吹っ飛びそうになる。
…これは反則だ。
「花梨…。」
「タカちゃん…。」
見つめ合う二人…。そして…
ぐぅ〜
…。
妙に間抜けな音が室内に響く。
この音はもしかしなくても俺のお腹の辺りから聞こえてきたわけで…。
「タカちゃん、お腹すいちゃったの?」
しょんぼりした様子で花梨が俺の顔を覗く。
「えーと、そ、そうだ。花梨!今日の昼休み、タマゴサンドだけじゃなくて
ハムカツサンドも取ってっただろ?」
「それはスキを見せるタカちゃんが悪いんよ。」
あのなぁ…。
「とにかくそういうわけで、俺はお腹がすんごい減ってるんだからしょうがないだろ!」
照れ隠しのために変に強がってしまう。今の俺ってもの凄くカッコ悪いかも…
「ふふふっ♪しょーがないなぁ。それじゃ花梨ちゃんが晩ご飯を作ってあげるよ。」
よいしょ…という掛け声とともに立ち上がった花梨は買い物袋を持ってキッチンに向かう。
「お、おい、大丈夫か?手伝おうか?」
慌てて俺も立ち上がる。そもそも花梨に料理なんて出来るのか?
「もしかして『花梨に料理なんて…』とか思ってたりして?」
ぎくっ!バレてた。でも花梨と料理ってのはイマイチ結びつかないと言うか…正直言って…不安。
「いいから、たかちゃんはあっち行った行った!」
「わ、わかったよ。」
下手に刺激するのもアレだし、素直に作らせることにしよう。
そう思ってソファに座りテレビを見る…フリをしてキッチンの様子を伺う。
「〜♪」
いつの間にかエプロンを身に着けた花梨が鼻歌を歌いながら野菜を切っていた。
トントントントン
お?以外に軽快なリズムを奏でる包丁の音。これは安心していいのかもしれない。
これ以上コソコソとキッチンを探るのも無粋な気がして、テレビに集中することにした。
私怨
しばらくして…
「タカちゃ〜ん!出来たよぉ!」
テーブルの上に並べられた料理。こ、これは…
「う、うまそう…」
タマゴサンド(やっぱり)にビーフシチュー、それにサラダ。彩りは申し分ない。
「でしょ〜?じゃ、食べよっか♪」
「お、おぅ。」
それじゃ、まずタマゴサンドから頂くとするか。
ぱくっ…。
もぐもぐ…。
「どうかな…?」
「う…、」
「う?」
「うまーーっい!購買部のより全然美味いよコレ。料理上手いんだな、花梨!」
「当然だよぉ。花梨ちゃんは毎日お母さんのお手伝いをするお利口さんなんだから。
ほら、この特製ミステリシチューも食べてみてよ!」
ずいっとシチューを盛った皿が押し付けられる。
「うん、これもうまいっ!」
名前はともかくとして、シチューの味はとってもまろやかで、
なんていうか優しい味だ。タマゴサンドにも良く合ってる。
サラダもサラダで、かかってるドレッシングがこれまた格別。
久しぶりの家庭の味に、ついついがっついてしまった…。
「ふー。ごちそうさまー。」
「えへへっ。もしかして惚れ直しちゃった?」
「意外にも美味しくてビックリしたよ。」
「意外にも?」
「あははは。でもホントに美味しかった。ありがとう、花梨。」
誤魔化す様にぽんぽんと頭をなでる。
「まったくも〜ぅ。たかあき会員は会長に対してもっと敬意を表するべきだと思うんよ!」
人差し指を立てて力説するものの、頭をなでられているのであんまり様にならない。
むしろ微笑ましいというかなんというか。
「だから、こうやって敬意を表して頭をなでてるんだろ?」
「うん。それならよろしい!」
お互いおかしくなって二人でクスクス笑ってしまった。
「あ、もうこんな時間!」
花梨の声に時計に眼をやると…もう九時か。
食事の片づけをして、くだらない話をしているうちにすっかり遅くなってしまった。
そうだよな、花梨ももう帰らなきゃいけないよな。
「たかちゃん、あの、もう…」
「うん、送ってくよ。」
「…え?これから始まるんよ?」
「始まる…って何が?」
「も〜!そんなんじゃミステリ研の会員として失格だよ。花梨は非常に悲しいよ〜。」
「はい?えーと、もう帰るんだよね?時間も遅いし…」
「だ・か・ら!ミステリ研の活動はまだ終わってないんよ?これからが本番。あー!もうテレビ借りるね!」
そういうとテレビの元へすたたた。と走って行き、ぱちっと電源を入れる。
「ほらほらたかちゃん!丁度始まったよぉ!」
テレビに眼を向けると、「ジャジャーン!」という安っぽい効果音とともに
番組タイトルが映し出される。
『宇宙人は実在するのか!?〜あぁ世界よ神秘なれ〜』
なるほど。そういえば二、三日前に花梨に絶対観るように!って念を押されてたっけ。
それにしてもどっかで聞いたことあるようなサブタイトル…。
「でも時間は大丈夫なのか?あんまり遅くなると親も心配するんじゃ…」
「泊まるって言ってあるからだいじょぶだよ。あ、ホラホラ観て!
これがこの前話した宇宙人のしゃもじだよ!地球上には存在しない物質で出来てて、
どんなご飯でもしゃもじにお米粒をつけることなく綺麗に盛れるんだから!」
えーと、突っ込みどころが多すぎてどこから突っ込めば良いのやら…。
とにかく一番突っ込まなきゃいけないところは…
「泊まるって、この家に!?」
うん、これだ。
「そうだよぉ。だって真夜中に自分の彼女を家に帰すなんて、たかちゃんも心配でしょ?」
「いや、だから送ってくって…」
「あーーーーっ!たかちゃん!!観て観て!!これ宇宙人の使ってた風呂桶だって!」
…絶対この番組ウソだ…。
それにしてもこの様子じゃ帰りそうも無いし、家に泊めるしかないみたいだな…。
一つ屋根の下に年頃の男と女…。ちょっと緊張してくる。
テレビの前できゃっきゃと声を上げたり、うんちくを語る花梨。
その横で俺は一人落ち着かないままテレビの画面を眺めていた。
「あー面白かったね!実に参考になったよ。
今後はオーパーツ探索をミステリ研の活動の中心にしようかな〜♪」
「そ、そうだね…。」
あえて感想は言わないでおく。ふと時計を見ると11時半。
「えっと…俺は風呂に入るけど、花梨はどうする?」
「風呂?お風呂?」
「う、うん…そうだけど…」
「…。」
急に押し黙ってしまい、もじもじし始める花梨。どうしたんだ?
「えーと、どうしたの?」
「たかちゃん…お風呂、いっしょに入る?」
えっと、お風呂に一緒に入るっていうのはいわゆる、えーっとそういう事で…
えええええええええ!?
「たかちゃんの背中流してあげるよ。」
言った花梨もかなり恥ずかしかったらしく、耳まで真っ赤にしている。
当然俺も茹で蛸の様に真っ赤になってるわけで
「え、え、え、えーと!そそそその…」
パニくっているのが自分でもわかる。
「ほ、ほら。俺達、ミステリ研会員として、高校生らしく健全なお付き合いを…、
それに…そーだ、俺体柔らかいから背中だって余裕で洗えるし、
それにそれに、我が家の風呂って狭いからさ、あはははははは!」
自分でも訳わからないくらいにまくし立てる。
「たかちゃん…?」
俺の言い訳(?)に少し落胆した様な花梨を横目に、
「と、とにかく今日のところは遠慮しとくでありますっ!」
誰かの口癖を借りつつ、俺は逃げるように風呂場に向かって走り出した。
花梨の事だから、もしかしたら無理やりにでも風呂に乱入してくるのかも…と、
どこかで期待、もとい不安を抱えて入浴していたんだけど、そんなことは無く
平穏無事に風呂を済ますことが出来た。
「風呂上がったぞー!」
あれ?リビングに花梨の姿はなかった。
「おーい、花梨ー?」
廊下に出て家中に響くように声を上げる。
…すると、
ぱたぱたぱたぱた!
スリッパで階段を駆け下りてくる音。なんだ、二階にいたのか。
「たかちゃんお風呂上がったんだ!ごめんね、一緒に入れなくて。
花梨会長は重大な任務を今まで遂行してたんよ!」
ニヤニヤしながら俺を見てくる。
「な、なんだよ、その任務って…。」
「別にぃ♪それじゃお風呂借りるね〜!」
何してたんだ?花梨のやつ…。
…まいっか。どーせ花梨の事だし、家中探検でもしてたんだろう。
花梨の行動をいちいち気にしてたら負けだ。それよりも今の内に花梨の布団を敷いておかないと。
そこでふと思う。
…敷くってドコに?客間?俺の部屋?
うーん…。でも考えてみれば同じベッドって選択肢も無いわけじゃ…
一応恋人同士なわけだし。
まぁ間を取って俺の部屋に敷いておこう。…何の間だかわかんないけど。
そうこうしてる間にお風呂場の扉の開く音が聞こえてくる。
いつの間にか結構長い時間悩んでいたみたいで、
花梨が風呂から出てきてしまったみたいだ。
あせあせと部屋に布団を敷いているとパタパタと階段を上ってくるスリッパの音。
ガチャ。
「あーごめん。まだ布団敷いて…」
…。
俺の手が止まった。
そこにいた花梨の姿に思わず息を飲む。
半乾きの髪をおろして、オレンジ色のチェックのパジャマを着て…
ただそれだけの事なのに、
いつもの花梨じゃない気がしてすごくドキドキしてしまう。
そうか。パンパンに膨らんでたあのバッグ…。
パジャマとかお泊りセットが入っていたからあんなに膨らんでいたのか。
うんうん、なるほど。
…などと冷静になるためにそんなどうでも良いことを分析してみる。
「えっと…ど、どうしたのかなぁ?たかちゃん…。」
そんな様子に気づいたのか不安そうな面持ちで俺の顔を覗き込む。
「花梨が…そ、その、可愛かったから。」
耳まで真っ赤になっているのが自分でもわかった。
「そっかそっか、うんうん。たかちゃんは風呂上りの花梨ちゃんに弱いんよね♪」
俺の言葉に気を良くしたのか、頬を赤らめながら花梨は笑っていた。
「それでたかちゃんは、けだものさんになっちゃうのかな〜?」
花梨が俺の様子を探るようにそろそろと近寄って来る。
それに伴って、シャンプーの香りと女の子の甘い香りがふわっと辺りを包む。
その香りが鼻を通して、脳天に直接突き刺さるような感覚に襲われた。
俺の理性さんが駆け足でお出かけしようとするのが自分でも判る。
その理性さんをぐっと捕まえて何とか踏みとどまらせた。
「え、いやそんな、俺、けだものなんかじゃないし。」
正直かなりギリギリの状態ではあるんだけど…。
「もう!往生際が悪いよ、たかちゃん!」
そう言って花梨は俺の机に向かってタタタっと走っていく。
そして机の引き出しの二重底になってる底を…って!
「お、おい!ちょっとタンマ!」
「タンマは無しで〜っす!」
慌ててやめさせようとするけど、時すでに遅し。
「ぱんぱかぱーん!」
俺の…その、…な本を高く掲げる花梨。
終わった…。
ガクッと膝を突いて崩れ落ちる。
俺が風呂に入ってる間に遂行していたという任務はこれの事だったんだ。
なんかニヤニヤしてたしな…
深淵
あぁ。タダでさえ主従関係とか言う花梨のことだ。
きっとこれをネタにこき使われる日々が続くだろう。
俺が陽の光の下でタマゴサンドを食べられる日は当分先かな…。
「これが証拠よね。」
「はい…。」
「やっぱりたかちゃんはけだものさんなんよね。」
「そう…みたいです。」
「だったら…なんで…」
「…?」
「だったらなんで…けだものさんにならないのかなぁ…」
「えっ?」
花梨の言った言葉の意味が理解出来ず、俯いていた顔を思わず上げる。
花梨の瞳から涙の雫がぽろっ。と頬を伝って落ちていった。
スローモーションのように見えたその瞬間…頭の中が真っ白になる。
花梨が…泣いてる?
花梨は持っていた本を机の上に静かに置くとそのまま手で顔を覆ってしまった。
ズキっ!
急に胸の辺りに針で刺されたような痛みが走る。
…俺が泣かせた?
「うぅぅ…うっ…ひぐっ…。」
何で泣いているのかはわからなかったけど、
それでも俺は泣いている花梨を、ふわっと静かに抱きしめていた。
頭の中は真っ白なのに、それでも勝手に動いた体に自分自身少し驚く。
「うっ…うぅっ…」
「…。」
そっと頭を撫でた。ふわふわとした花梨の髪。
おろしてある髪は、俺の手の動きを優しく受け入れてくれた。
「大丈夫…。大丈夫だから…。」
それは花梨に言った言葉なのか、自分に向けて言った言葉なのか。
罪悪感でいっぱいの俺の胸に、花梨は顔を押し当て嗚咽を漏らす。
「うぅ…ひくっ…。」
静かな部屋に花梨のか細い泣き声だけが響いていた。
「えっと…落ち着いた?」
「…うん。ごめんね、たかちゃん…。」
「こっちこそ…その、俺のせいで泣いてたんだろ?」
「…。」
沈黙が何よりの答えだった。俺のせいで…。
胸がきゅうきゅう締め付けられる。
「あのね、たかちゃん…私のこと…好き?」
「当たり前だろ?誰よりも好きだよ。」
「…本当?」
「本当。」
いつもと違った弱々しい花梨の声に、俺も真面目に答える。
「でも…けだものさん…」
「え?」
「たかちゃん…けだものさんにならないよ…?」
「けだものさん?」
「だってあの日以来…その…そういう事してなかったから…」
あの日っていうのは、あの山火事のあった日のことだよな…。
確かに花梨とはあの日以来、体を重ねたりはしていなかった。
もちろん、恋人として手を繋いだり、抱きしめあったり、キスしたり、
そういうことはしてたんだけど。
「だからたかちゃん、もう私のことそういう風に見てくれて無いのかなって…。
昼休みだって断わられちゃったし、晩御飯の前はお腹鳴っちゃうし、
お風呂も一緒に入らないって言うし…。私が普通じゃないから…
だから女の子として見てくれなくなっちゃったのかなって!」
次第に語気を強くして、目に涙を浮かべながら訴える。
そうか。そのせいで…、俺のせいで昼から時々寂しそうな顔をしてたんだ。
えっと、お腹が鳴るのは仕方ないとは思うんだけど…。
ちゃんと話さなきゃいけないよな、俺の気持ち。
でも何から話せば…。
まぁいいや。うだうだ考えてたって仕方ない!
「…!」
不意に花梨の唇を奪う。
「えっと…たかちゃん?」
狐につままれたような表情で俺の顔を見上げている。
俺も意を決して口を開いた…。
「俺、花梨の事ちゃんと女の子としてみてる。
もちろんそういうこともしたいって思ってる。今だって。」
「じゃあなんで…!」
その言葉を制するように続ける。
「でも、そう思う以上に、…花梨のことが大切なんだ。」
「大切…?」
「うん。その…俺達って付き合う前にそういう事しちゃっただろ?
俺、そのこと未だに少し後悔してる部分があってさ…。
だから、その分、今は凄く大切にしようって心に決めてて…だから…」
「たかちゃん…。」
「でもそのせいで花梨の事傷つけちゃって…本当にごめん。大切にするって決めたのに…。」
自分が情けなくて肩を落としてしまう。
いくら相手の為って考えても、
いくら大切に想っても、
…それで相手を傷つけたら何の意味も無い。
結局俺の行動は独りよがりなものだったんだ。
勝手に一人で「大切にしてる」って満足して、
相手の気持ちも考えてあげられない…本当に俺は馬鹿だ。
私怨
「たかちゃん…やっぱり優しいんだね。」
「え?」
「私…そんなに大切にされてたのに…たかちゃんのこと疑って馬鹿みたい…。」
「そ、そんなことないよ!悪いのは俺の方で…」
「たかちゃんの気持ちに気づかなかった私が悪いんよ。」
「…。」
「…。」
何となく無言…。お互いに非を認めてしまった為に、言葉がなくなってしまう。
「…。俺も…自分のこと馬鹿だなって思ってた。」
「そうなの?」
「うん。」
「ふふふっ♪それならおんなじだね。」
そういって花梨は優しく微笑んだ。
今まで締め付けられていた胸が、じわーっと暖かい気持ちに包まれていくのを感じる。
自己嫌悪や罪悪感、さっきまで感じていた負の感情もどんどん消えていった。
「ありがとう。」
素直に口から出てきた言葉。
何に対してだか、よくわかんないけど…とにかく花梨にお礼を言いたかった。
「たかちゃんもありがとっ。これからも私の事大切にしてね!」
「もちろん。すっごく大切にする。」
「…え〜っと、こうしてたかちゃんは心優しい花梨ちゃんに
メロメロになってしまいましたとさ。めでたしめでたし?」
「あのなぁ…」
そう言いかけた俺の口を花梨の唇が塞ぐ。
「…!」
「さっきのお返しだよ〜♪」
ドキっ!と胸が高鳴ったのと同時に、再び俺の中の理性さんがお出かけの準備を始める。
くらくらする頭の中で必死に自分を保とうと踏ん張る俺。
そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、
悪戯っぽく笑った花梨は唇を耳に近づけ、ふぅっと息を吹き込かけてくる。
思いがけない行動に背筋がゾクゾク反応するのと同時に、
花梨の甘い囁きが頭の中を駆け巡った。
「でもね、花梨は…けだものさんになったたかちゃんも大好きなんよ?」
その言葉で頭の中で何かが崩壊したような気がした。
さようなら、理性さん。こんばんわ、けだものさん。
…笹森会長いわく、それからの俺は「すごく大胆だった。」…らしい。
おわり。
516 :
↑の作者:2007/07/05(木) 00:23:49 ID:9jJ8NvdS0
支援ありがとですー。
それにしても長い。まさかこんなに長くなるとは。…ぐだぐだなのはきっと気のせい。
SS書くのはほとんど初心物みたいなもんなんで、読みにくかったりしたらごめんです
GJGJGJGJ!!!!!!
花梨いいよいいよー
ADでも春夏さんが攻略対象ぽくなくて愕然とした…
どんなにいいSSでも黄色がヒロインだとまったく萌えないから不思議。
でもSS自体はとてもいいと思うし次はもっといい材料で書いてくれるのを楽しみにしてます!
520 :
名無しさんだよもん:2007/07/07(土) 00:02:20 ID:QOB9EpB3O
>516
>516
GJ。初心者として上出来。むしろ問題無し?花梨SSは久しいな。ごちそうさま。
あと高明→貴明 ねw
あと↑ゴメンナサイ(つД`)
522 :
初カキ:2007/07/07(土) 10:43:55 ID:qqFokg950
ここで、僭越ながら、妄想的短編を。
523 :
花嫁は……?:2007/07/07(土) 10:46:36 ID:qqFokg950
「うーん、どうしたものか」
俺、河野貴明は自室で悩んでいた。
先程――下校途中で見かけた、ピンク髪のちょっとヘンな少女を助けたところ、「うーは、るーの恩人だ。何か望みはないか? 何でもひとつかなえてやる」とマッチ棒のようなものを渡されたのだ。
その際、いくつかの奇跡的な出来事を見せてもらったので、これが単なる電波少女の戯言ではないことは、一応納得している。
しかし――とくに望みというのが思いつかないのだ。別に自分が無欲だとは思わないが、今の日常には十分満足している。
それに叶うのはひとつだけなのだ。せめてこれが3つとかなら、くだらない願いを1、2個かなえてもらって様子を見るということもできるが、ひとつとなると、下手な願い事をして逆に自分の首を締めるハメになってはたまらない。
「年ごろの牡なら、何か願いがあるだろう。良き連れ合いが欲しいとか」
不意に少女の言葉を思い出す。
(連れ合いって、この場合、お嫁さんってことだよなぁ)
確かに、それはちょっと欲しい。
(この貴明は、いわゆるヘタレのレッテルを貼られている。女の子と話すだけで心臓がバクバク、手なんて触れようもんなら動揺しまくることしょっちゅうよ)
と、どこかで聞いたような台詞が浮かんでくる。
(だが、そんな俺だって、決して女の子に興味がないわけじゃあない……)
と言うか、正直に言えば大いに興味はある。
しかし……自分の好みのタイプ、それもお嫁さんにしたいような女性と言うのはいったいどういう人なのだろう。
524 :
花嫁は……?:2007/07/07(土) 10:47:27 ID:qqFokg950
試しに知り合いの女性の中からタイプを絞り込んでみることにする。
(まず、優しい。これは絶対だよな)
幸いと言うか、これは大半のメンバーが当てはまった。
黄色い子とかピンク髪の先輩の顔が消えたような気がするけど、キニシナイ!
(えーと、欲を言えば美人で女らしい……)
幼なじみのこのみは姫百合姉妹のような娘たちは、可愛らしいとは思うが、恋愛対象とはちょっと違うかもしれない。
「え〜、ヒドいよタカくん」とか「る〜」とか言う声が聞こえたのは気のせいだろう。
(料理とか掃除とかの家事が得意で……)
なぜか草壁さんといいんちょがガッツポーズし、逆に由真が悔しがる映像が浮かぶ。
(欲を言うならプロポーションが良くて……)
あ、いいんちょが点滅気味。草壁さんはセーフ。タマ姉は得意げ。
(お淑やかで、かつ男を立ててくれるタイプで……)
「ちょ、ちょっとタカ坊?」とか言う慌てたような声は聞かない方向で。
(それでいて……え、エッチなことに寛容だと最高)
「え、えっちなのはいけないと思います」「河野さんのエッチ」
ご、ごめん、草壁さん、久寿川先輩……って、なんで謝ってるんだろ、俺。
525 :
花嫁は……?:2007/07/07(土) 10:48:13 ID:qqFokg950
「…………あれ?」
こうやって絞り込んでいくと、該当者がひとりしかいないことに気づく。
いや、もちろん世界中を捜せば条件に当てはまる女性は一杯いるだろうし、そもそも検索したのが知り合いの、自分から見た勝手なイメージでしかないのだ。
それでも……ポツリと呟いてしまう。
「うーん、イルファさんみたいな奥さんがいてくれたらなぁ」
瞬間、手の中のマッチ棒モドキが発光する。
「うわっ、な、何だ!?」
光はそのまま大きくなり、部屋中に広がったかと思うと。
ちゅどーーーーーーーーーん!!!
お約束のごとく爆発した。
526 :
花嫁は……?:2007/07/07(土) 10:50:03 ID:qqFokg950
同時に、ベッドに腰かけていた俺の上から、”何か”が降って来て、俺を押し潰す。
「きゃっ!」 「へげめっ!!」
幸いそれほど重たいモノじゃなかったんだが、不意打ちなので、さすがにベッドの上であおむけに倒れてしまう。
そこにいたのは、勿論、お約束に違うことなく――イルファさんだった。
しかも、いつもの機能的なメイド服じゃなく、純白のウエディングドレスを着て、頭にはベールまで被っている。
あ、左手の薬指に白い手袋の上から銀色の指輪まではめているのが、芸が細かい。
「こ、ここはいったい……」
「ごめん、イルファさん。悪いけどどいてもらえないかな」
俺の腹の上でキョロキョロしているイルファさんに声をかける。
「えっ……貴明さん? す、すみません!」
慌ててイルファさん俺の身体から離れる。
(あ、いい匂い……)
その女性らしい香りとやわらかな身体の暖かさが遠くなるのを、惜しいと感じてしまうあたり、俺もやっぱり”男の子”なんだろう。
でも、その時の俺は気づいていなかったんだ。
イルファさんの両耳にいつものセンサーがついていないことに。
いつの間にか、俺の左手薬指にもイルファさんのとそっくりな結婚指輪がはまっていることに。
そして、河野貴明とイルファ―河野・H・イルファのラブラブ&トラブルな新婚生活が
この時すでに始まっていたのだと言うことに……。
−つづく?−
527 :
花嫁は……?あとがき:2007/07/07(土) 10:50:58 ID:qqFokg950
以上。電波に命令されて書きました。
ヒロイン全員とそれなりに面識を持って五月を迎えたという設定。
各ヒロイン像は、私の勝手なイメージですので、扱いがおざなりな子もいますが、「そんな娘じゃないヨ!」と言う非難はご勘弁を。
一応、2話・うれしはずかし新婚初夜編、3話・問題!?高校性夫婦編は想定してますが、私の筆力が追いつくか……。
乙
七夕にいい夢を見させてもらった
GJ
新鮮でよかった
続きも期待してます
いいんちょはプロポーション悪いか?
・・・何を基準とするかだが
お菓子ばっか食ってるから
悪いイメージがあるが実はそうでもない気がする今日この頃。
ささらはエッチに寛容だろ……とか思ってしまう。
あの乱れっぷりとか見るとさ。
>>527 GJ!
俺もイルファさんのような嫁がほしいぜ…
>>532 ささらのおっぱい食べて〜だしな
逆幼児プレイみたいな感じだったし
「タ〜カく〜ん!」
ガラガラっ!と勢い良く教室の戸が開かれる。
その声の主は俺の姿を確認すると、すたたたっ!っと
驚くほど機敏な動きで駆け寄って来た。
「一緒に帰ろっ♪」
校門で待ち合わせて一緒に帰る…というのは昔の話。
恋人と言う間柄になってからは、
放課後このみがこうやって俺のクラスまで迎えに来るのが日課になっていた。
そのおかげでクラスの奴らからは、すっかりバカップル扱いされてるわけなんだけど…。
「あのなぁこのみ…」
「なに?タカくん?」
「周りを良く見てみろ…。」
このみがキョロキョロと教室内を見渡す。
放課後とは思えない生徒の数。
揃いも揃ってみんな自分の席。
そして教壇にはクラス委員長である小牧の姿…。
…クスクスクスクス。
教室のあちこちから笑いが起こる。
「あわわわわ!も、もしかしてタカくんのクラス、まだ終わってないの!?」。
そう、普段ならとっくにクラスは解散している時間なのだが、
今日に限って饒舌に自分の青春時代を語り始めた担任に加え、その後の
「今日は連絡事項があるので時間をくださーいっ!」
という小牧の言葉によって、俺達のクラスは未だに帰りのHRを終れずにいたのだ。
「ったく…普通気づくだろ。そりゃ私語も多くてうるさかったけどさ…。」
「あぅ〜…。」
周りの視線に小さな体を更に小さくするこのみ。
俺だって穴があれば入りたいよ…。
「はーい、それでは続けますよー。あ、そうだ。柚原さん、良かったらそこの席どうぞ♪」
小牧がニコニコしながら俺の隣の席をちょいちょいと指差す。
そういえば横の席の奴、今日休んでたっけ。…って、なに促してるんですか!?
「おーっ!転入生だぁああ!」
「っていうか、むしろ飛び級?」
「よろしくねっ、このみちゃん♪」
「妹系だー!よっしゃあああ!」
「それでは、柚原さん、一言どーぞっ!」
クラスの奴らが一斉に騒ぎ始める。
相変わらずみんなノリ良いな…。
それに律儀にぺこぺことお辞儀で答えるこのみ。そして、
「え…えっと、柚原このみです!タカくんがいつもお世話になっています!」
…。
一瞬の沈黙の後、クラス中から爆笑の声が上がった。
うー…。
このみの奴余計なこと言いやがって。
あまりの恥ずかしさに目の前が一瞬真っ白になる。
当のこのみは何をそんなに笑われているのかわかないようで、きょとんとしていた。
「うひひっ!!いつもお世話って!!お世話って!!
親かっつーの!!嫁かっつーの!!ぶわーっはっはっは!!!」
「お前は笑いすぎなんだよ、雄二!」
とりあえず、直ぐ後ろの席でクラス一、大爆笑している雄二を思いっきり殴っておいた。
「ひひっ!!ひっく…で、でも良かったなチビ助。
ずっと貴明と同じクラスになりたかったんだろ?」
「うん♪」
笑いを堪えながら言う雄二にこのみが嬉しそうに答える。
はぁ…。死ぬほど恥ずかしいけど、このみが喜んでくれたのなら、まぁいいか…。
そう思いつつも、もう一度雄二を殴っておくことにした。
「静かにー、静かにー!も〜ぅ、上級生らしく静かにしてよ〜!」
いつものように少し涙目になりながらクラス中に訴える小牧。
…元はと言えばこの騒ぎ、小牧の一言が原因なんだけどね。
「そうだぞー。小牧の言うとおり、お前ら上級生らしくしろー。」
ぱんぱんと手を叩きながら続けて担任も言うと、いくらか教室の騒ぎは収まった。
というか先生…あなたも乗っかるんですね…。
「はい。それでは改めてっと、実は、図書委員会の新作図書を受け入れる仕事があるんですけど、
その今日の当番がウチのクラスみたいなの。でもウチの図書委員、今日は二人とも休んじゃってて…」
そういえば今このみが座ってる俺の隣の席…、ここに座ってた女子も図書委員だっけ。
クラスを見渡すと、もう一人の図書委員の席も空席になっていた。
もしかして二人してサボり…?
「それで、今日一日代理の人を立てて仕事をやってもらいたいんですけど…。」
えええええええっ!
教室中から不満の声が上がった。
そりゃそうだ。そんなめんどくさそうな仕事、引き受ける物好きなんて居るわけが無い。
どうせ誰も立候補しなくてクジにでもなるんだろうな。
頬杖をついてどこか他人事のように考えていると…
じーっ。
…横からものすごーく視線を感じる。
「えへ〜♪」
「なんだよ、このみ。」
「ここの席の人は幸せだな〜って思って。」
「ん?なんで?」
「だってタカくんの横顔を毎日こうやって眺めていられるんだよ?いいなぁ…。」
「そんなもんこのみくらいしか見ないってば。」
「え〜、そんなことないよ。」
「そんなことあるの。」
「そうかなぁ…。ねぇタカくんタカくん、この席の人って…女の人?」
「あぁ、そうだけど?」
「むぅー!」
ぷくーっと頬を膨らませるこのみ。
「えーっと…もしかして妬いちゃったとか?」
「そりゃ妬くよぉ!このままじゃこの席の人がタカくんの事好きになっちゃう!」
「…なんだそりゃ。」
「そうだっ!こうしてっ、こうしてっと…。」
このみは両手をぐいと広げて、机の両端を持つと
そのまま俺とは反対の方へずずずっと机を引きずっていく。
…そんな事したって明日には直されると思うんだけど…。
「いや、このみ?たしかその子、他の学校の男と付き合ってたような気がするけど…。」
「だめだよ!お互いに浮気ってことも…、んしょっと。」
浮気って…、もう少し俺の事を信用しろよ。
それにしてもこのみのやつ、このままじゃ廊下にまで机を持って行きそうな勢いだな。
仕方が無い。
「ほらほら、このみおいでおいで〜。」
動物を呼ぶような手つきで手招きする。
「え?タカくん?」
「そんなことしたらこのみまで離れて行っちゃうだろ?ほら、おいでおいで〜。」
「えへへ〜♪」
机を引きずったまま、今度はこちらに向かってずずずーっと寄ってくる。
単純な奴め。
「到着であります!」
当初の位置よりもだいぶ近くなってるような気もするけど、まぁいいか。
「よしよし。」
このみの頭の上にぽんっと手を置いたところでふと異変に気がつく。
…。
なんか妙に静かじゃないか?
ギギギギ…っとロボットの様に首を回してみると、
教室に居る全員が俺達のやり取りに好奇の眼差しを向けていた。
「お、お前ら…甘すぎるぞおおおおお!」
雄二の叫びをきっかけに、教室中から
わー!とか、きゃー!とか歓声が上がる。
慌てて手を離すと、俺もこのみも顔を真っ赤にして俯いてしまった。
顔から火が出るってのは、こういう状態を言うんだろうな…。
そんな歓声の中、雄二はニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべると、
得意の七色の声を使って見せ付けるように一人芝居を繰り広げ始めた。
「この席の人がタカくんのこと好きになっちゃうぅ♪」
「そんなわけ無いだろ…俺にはこのみしか見えないんだから…ほら、おいで。」
「タカくん…あ、ああああこんなところで、だめええぇ♪」
「このみぃいいいいい…俺の子供を、ごふっ!」
雄二の胸に向かって遠慮なく右ストレートを放つ。
「んなこと言って無いだろっ!TPOをわきまえろよな。そんなんだからお前はモテないんだよ。」
「TPOって、さっきまで教室でいちゃついてた奴に言われたくねーよなぁ。」
うっ…痛いところを突いてきやがる…。
「お、そうだ!良い事思いついた。おーい!いいんちょー!!」
「え、は、はい!向坂くん!?」
俺とこのみのやりとりに顔を真っ赤にしていた小牧は急な呼びかけに驚き、声を裏返した。
「さっきの仕事っての、河野くんと柚原さんが適任だと思いまーす!」
雄二のその言葉に…
「賛成!」
「ナイス向坂!」
「放課後に二人きり…いや〜ん♪」
「二人の始めての共同作業、皆さんどうか暖かい拍手を!」
「パチパチパチパチ!!」
「結婚おめでとーっ。」
「かんぱーいっ!」
クラス全員が答える。
お前ら…その団結力をもうちょっと違うところで発揮しようとは思わないのか…。
「えーっと、河野くん、柚原さん…お願いしても良い…かな?」
他の奴らとは違って遠慮がちに聞いてくるあたり、さすが小牧といったところか。
やれやれ…。こうなったからには仕方ないよな。
「わかったよ小牧さん。謹んでお受けします。」
「うん!タカくん、がんばろうね!」
このみもやる気まんまんみたいだ。
「はい、そういうわけで今日は解散ー。」
クラスの様子をニヤニヤ眺めていた担任が大きな声をあげて、ようやく帰りのHRは終った。
「それじゃ頑張れよ。貴明、チビ助。でも頑張りすぎて学校で…ごぶぁっ!」
余計なことを言いそうな予感がしたので先に殴っておく。
「さっさと帰れ。」
「へいへい。お邪魔虫はさっさと退散させていただきますよー。」
「じゃあね、ユウくん。タマお姉ちゃんにもよろしくね!」
「あいよ〜。」
二人で雄二を見送っていると、申し訳なさそうに小牧がやってきた。
「ごめんね河野くん、本当はあたしがやるべき仕事なんだけど、
今日はクラス委員の仕事が遅くまでかかりそうで…。」
「いいっていいって。俺も暇だったし、このみだってそうだろ?」
「うん!大丈夫だよ。任せてください!」
「このみちゃんもごめんね。違うクラスなのにウチのクラスの仕事押し付けちゃって…」
「いえ、ワタクシ柚原このみは、今日一日このクラスの生徒になったでありますよ!」
ぽんっと胸を叩いて答えるこのみを見て、小牧は嬉しそうに笑った。
私怨
sien
「ふふふ♪このみちゃん可愛い!こんな可愛い彼女が居て河野くんは幸せ者だよ〜。」
「そ、そうかな?」
「それに二人って、すごく自然…って言うか、しっくりくるって言うか…とにかくお似合いだよ。」
「えへへ〜♪お似合いだってさ、タカくん。」
ちゃんと聞こえてるから繰り返さんでいい!恥ずかしいだろ。
「コホン!それでコレが仕事の内容ね。そんなに難しい仕事じゃないから心配しなくて大丈夫だよ〜。
あぅ!もうこんな時間、それじゃあたしもう行くから、二人ともお願いしますねっ。」
プリントを一枚差出し、ぺこりと丁寧にお辞儀をしてから、てとてと…と小牧は走っていってしまった。
「タカくんタカくん、それで、仕事の内容って?」
小牧のお辞儀に、これまた丁寧にお辞儀を返していたこのみが頭を上げてプリントを覗き込む。
え〜っとなになに…
しえん
…。
「あぁ疲れた〜。」
「意外と時間かかっちゃったね。」
「まったく、このみがバーコードを何度も曲げて張るからだろ?」
「うぅ、だって難しかったんだもん…。」
今まで作業していた図書室を後にし、荷物を取りに教室に向かって歩く。
俺達がやっていた仕事の内容というのは、
まず校門に仕入れられた新書を図書室まで運び、
本のカバーをはがした後、すでに用意されたバーコードを後ろの表紙に、
そしてシールを背表紙に張り、最後にそれを本棚に収める。
…という、小牧の言うとおり誰にでも出来るような単純な作業だったんだけど…
予想以上の本の数と、
予想以上のこのみの不器用さのために、
予想以上に時間がかかってしまっていた。
予想以上に。
「…。」
このみも自分で自覚しているのか、すっかり肩を落としていた。
「そんな落ち込むなって。ジュース奢ってやるからさ。」
「ほんと!?やたー♪」
両手を挙げ、喜びを露にする。
こういう時は何か餌を与えるのが一番だってことは長年の付き合いから熟知していた。
ほんの少し遠回りして、自販機でジュースという名の餌を買い与えると、
このみは尻尾を振ってよろこんでいた…様に見えた。
ガラガラガラ。
「ただいまー。」
教室の扉を開けると自分の家に帰ってきたような感覚に陥って、
ついそんな言葉を口にしてしまう。
時間が時間だけに教室には誰も居なかったが、
窓から差し込むオレンジ色の夕焼けによって昼間とはがらりと表情を変えた教室。
そこは誰も居ないという状況がとても良く似合っていた。
ドラマのワンシーンみたいだな。
…そんな風に考えながら自分の席に腰掛けると、いそいそと帰りの支度を始める。
「タカくん…。」
「あ、ちょっと待ってな。すぐ終るから。」
乱暴に教科書をかばんに詰め込む手が、何かの抵抗により不意に止まる。
俺の制服の袖をぎゅっと握るこのみの手。
「ん?どうかした?」
「あのね…私、もうすこしこの教室に居たい…。」
「へ?」
「だって…、明日になったら、また別々のクラスだから…。」
なるほど、そういうことか。
「それじゃ、少しだけだぞ?下校時間過ぎると色々めんどくさいからな。」
「やたー!」
そのまま隣の席に座ると、足をぶんぶん振って喜びを全身で表現する。
ほんとにわかりやすいよな、このみって。
「そんなに同じクラスが良いのか?」
「当たり前だよー!同じクラスになったら授業中ずっとタカくんを眺めるんだぁ♪」
「少しは黒板も見なさいっ。」
「わかってるよぉ。」
すねたような仕草。その頭にぽんと手を載せる。
「えへへ〜♪」
すぐに機嫌を直してしまうこのみが可愛らしくて、つい顔が綻んでしまった。
クラスメイト…。このみが同じクラスだったら…か。
そうだ!
さっとこのみの頭から手を離してから澄ました表情を作り、きちんと椅子に座りなおす。
「?」
怪訝な顔をしてるこのみは無視してっと。
「あーっ!しまったぁああ!宿題やってくるのすっかり忘れたー!
ごめん柚原さん。見せてくれないかなぁ?」
パチッと手を合わせてこのみ…もとい柚原さんにお願いのポーズ。
「??」
「ほら、このみも。」
「えっと…どしたの、タカくん?」
「だーかーらー、クラスメイトごっこ。同じクラスになりたいんだろ?ほら、柚原さんも!」
「あ、うん。えーとタカく…じゃなくて、河野くんまた忘れたの?しょうがないなぁ。」
棒読みな台詞を吐きつつ、柚原さんはカバンからの適当なノートを取り出す。
「ありがとっ!恩に着るよ!」
「河野くんったらすぐ私に頼るんだから!少しは自分でやんなきゃだめだよ?
写してばっかりじゃ自分のためにならないんだからね。」
むむむ。そういう世話焼きキャラで来るか。
俺も負けじとノートとシャープペンを取りだし、答えを書き写す…フリをした。
「あ、柚原さん、ココ間違ってるよ?」
「え?あ、そう?ごめん。」
「あとココも。」
「うぅ…」
「あとココとココと、それにココ。あとココもだ!それにそれに…」
「もーっ、タカくーん!なんでそんなに私お馬鹿な設定になってるのぉ!?」
「タカくんじゃなくて河野くんだろ?まったく。これ位のアドリブ対応してもらわないと。」
「むーっ、それじゃ河野くんにはもう見せてあげないっ!」
ひょいっと俺の机から自分のノートを取り上げる。
「へへーん、残念でした。もう全部写し終わっていましたー。」
「むむむむむーっ!タカくんいじわるだよぅ!!」
頬を大きく膨らませて完全にむくれてしまっている。
やりすぎたかな?
「ごめんごめん、そんなに怒るなって。」
「うーっ。いいんだいいんだ。タカくんがそうやって毎日女の子に
宿題見せてもらってる…っていうのは良くわかったんだから。」
「それは誤解だって!むしろ俺は見せてやってるくらいだよ。雄二とか雄二とか、あと雄二とかに。」
「ホントにー?」
「ほんとに。」
「ホントにホントにー?」
「ほんとにほんとにほんと!それよりほら、クラスメイトの気分は味わえた?」
「んーと、えーっと、…微妙かも。」
「…だよな。」
…。
ぷっ。
「「あははははっ」」
二人の笑い声が静かな教室に響いた。
〜♪〜♪〜♪
その直後、今度は下校時間を意味する音楽が校舎に響き渡る。
「あっ…、もう下校の時間だね…。」
それまで楽しそうに笑っていたこのみの顔に陰りがさす。
「あぁ。そうだな。」
「帰らなきゃ…。」
静かに立ち上がるこのみ。俺も同じように静かに立ち上がると、このみの腕を握る。
「タカくん?…わわっ!」
その手をぐっと引くと、バランスを崩したこのみがこちらに倒れこんでくる。
それをぽすっと胸で受け止めると、そのまま少しきつい位に抱きしめた。
「このみ…。もうちょっとだけ、クラスメイトでいよっか…。」
「…うん。」
クラスメイトで居られるのは今日一日だけ。
また明日からいつも通り別々の学年、別々のクラスで過ごすことになる俺とこのみ。
でも、そんなことちっとも問題じゃ無い…素直にそう思えた。
だって…二人の気持ちはこんなにも強く繋がっているのだから。
「タカくん…。違うクラスでも…私達いつも一緒だよね?」
その問いに、言葉ではなく唇を重ねる事で答える事にした。
そんな教室を密かに覗き見る影が廊下に二つ…。
「わわわっ!郁乃、ち、ち、ち、ちゅ〜ってしたよ!?」
「わかってるわよ、お姉ちゃん。恋人同士なんだからキスくらいして当然でしょ?」
「はわわわ、はわわわわわわ!またちゅ〜って!」
「はぁ…、何でこんな覗きみたいなことしなきゃなんないのよ。」
「しょ〜がないでしょ?あたしの荷物教室の中にあるんだから。
それに、このみちゃんは郁乃と同じクラスでしょ?」
「そりゃこのみとは仲良いけどさ…。
姉妹そろってコソコソ覗きなんて…なんか悲しくなってきた。」
「それは同感…。」
ひゅ〜。
熱々な空気をかもし出す教室の中とは対照的に、
小牧姉妹が身を潜める廊下はとても寒々としていた。
おわり。
>>527 GJ!
でも草壁さんとささらはエッチに寛容だと思うぞ。特にささらなんかイルファ以上じゃね?
553 :
↑の作者:2007/07/08(日) 16:48:11 ID:fVP+AYth0
>>519みたいに言われるような気がしていたので、
同時進行してた(…というより没にしようとしてた)このみSSも修正して投下。
とりあえず「けだものさん」での反省を活かして、ボリューム↓。
二つ目の作品で早くもボキャ貧が露呈し始めたけど、そんなこと気にしない。
あと、支援ありでしたー
>>521 指摘ありがとうございます。またやらかすところでしたw
>553
GJ。このみが2−Bに乱入ってシチュ、凄くいいな(*´∀`)
>553
やばい、このみがかわいいすぎる。そして最後の小牧姉妹も哀愁がただよってナイス!
あえてエロエロにしないでキスでしめるのがいいね〜
エロエロはタマねえでいいけど、ラブラブはこのみかいいんちょだよね。
本当にご馳走様でした。
>>530 草壁さんが84・54・80に対し委員長は83・58・84
どっちかっていうとスレンダー気味な草壁さんに対して委員長は下2つが4cmずつ太いからな。
ていうかこのみより細い草壁さんが異常
557 :
名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 22:44:26 ID:9V8Ip7AWO
なんとなくage
558 :
名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 23:14:17 ID:orGzkjr00
「じゃあ、これは生徒会に出しておくから」
「いつも悪いわね」
「ううん。ついでだもん」
女子生徒から預かったプリントを片手に微笑むお人好し。
小牧愛佳。人呼んでいいんちょ。2−Aにも知り合いと用事は少なくない。
「さて、戻るとしますか……あ」
腰を上げた愛佳の横を通り過ぎる赤っぽい髪。
「玲於奈さ……ん……」
挨拶しかけた愛佳を無視して窓際の席に座る少女に、近寄る者はいなかった。
「あー、転校生ねー」
愛佳に礼を言っていた女子生徒が、眉をひそめる。
「なんか感じ悪いんだよね。愛想ないし」
「あの子一学期もいてさ、確か三人でつるんでてさ。お高くとまってたよねえ」
後ろの席から割り込む別な声。
「この前一度いなくなったのに、戻ってきたんでしょ? しかも一人で」
「そうそう、それなんだけど、聞いてる、小牧さん?」
「え? な、なんでしょう……?」
突然話を振られ、曖昧な返答で会話を流す愛佳。
「あの子さーあ、男追っかけて戻ってきたんだってよ」
「追っかけて? っていうか、こっちで付き合ってた男に未練があって?」
「うわ、友達より彼氏作り」
「くっついてんでしょ? だからクラスの事なんてどうでもいいって態度」
「それ関係ないじゃん」
「出戻りなんだからちったぁ頭下げてりゃいいのに。そう思わない? 小牧さん?」
流した会話は、だいぶ加速がついて戻ってきた。
「あ、あは……はは……」
彼女らのいう「男」の親友の彼女としては同調も否定もできず、愛想笑いで誤魔化すが、なお食い付いてくるA組女子軍団。
「あの子の彼氏って愛佳のクラス……」
とんとん。
「愛佳、ちょっと」
肩を叩いて愛佳を会話の渦巻きから救い出したのは、眼鏡の少女、長瀬。
「あ、由真、今いく。ごめんね、それじゃ、また」
これ幸いと離脱。教室後方に退避。
「なあに?」
まだ、愛想笑いが顔に残ったまま、長瀬に問いかける。
「……」
が、長瀬は妙な顔をして。
「……忘れた」
「はい?」
ニコ顔のまま首を傾げる愛佳。
「忘れたったら、忘れたの」
むすっと不機嫌顔。
どうやら、用事は愛佳を救い出す事そのものだったようだ。
「あは……ありがとう」
それに気づいて愛佳、"わかってるよぉ♪”なニコニコ顔。
「……」
「ひひゃひひゅははへへ(痛い由真止めて)」
長瀬は口を尖らせたまま、愛佳の頬を引っ張った。
それにしても。
「まずいなぁ、これは」
窓際の席で教室内に背を向ける玲於奈の姿を見て、愛佳は独りごちた。
一方その夜。小牧家。食後。
「お姉ちゃん、ちょっと、お願いがあるんだけど」
部屋に戻ろうとした愛佳に、郁乃が頼み事を持ちかけた。
「なになに、なあに? なにかな? なにかなっ?」
珍しく「お姉ちゃん」なんて呼ばれて「お願い」なんてされて、瞳をキラキラさせて勢い込む愛佳。
「……はぁ」
こうなるから滅多に頼まないのだけど。
図々しく溜息なんぞつきながら、郁乃は愛佳に依頼の内容を話した。
祝日明けの木曜日。晴れ。
「たかあきくん、今日、お昼、屋上で食べよ?」
相変わらず休み時間は飛び回っている愛佳が、戻ってきて貴明を誘った。
「ああ、うん、どこでも」
頷く貴明。
「仲のよろしいこって」
「ひとの事言えないだろ。最近は」
冷やかす雄二に貴明が反撃。
「そう、それでさ、向坂くん」
愛佳が続けた。
「向坂くんと玲於奈さんも、一緒にどうですか? お弁当」
屋上。
この時期、通り過ぎる風には冬の気配も含まれつつ、
お日様さえ出ていれば、まだまだ快適に過ごせる空間である。
「何故、私が河野さんなどと御一緒しなければならないのです?」
「そう言うなって、俺のダチだよ」
「分かってますけど……」
「ごめんなさい。無理に付き合わせて」
あまり筋合いはなさそうな玲於奈の不平にも、手を合わせて謝る愛佳。
「郁乃がですね、張り切ってお弁当作り過ぎちゃってですね」
「え、郁乃なの?」
「このみちゃんにお昼ご馳走するって約束したんだって。昨日二人で、丸一日かかったよぉ」
嬉しそうに貴明に説明する愛佳。
妹に頼まれて一緒に料理を作るなんて、無愛想な妹を持つ過保護な姉には至福の時だろう。
「張り切りすぎたのは、郁乃だけか?」
貴明が苦笑した。
「あ、タカくん、ユウくん、小牧先輩〜!」
四人が床にシートを広げていると、出入口から元気な声がした。
「遠くから声を掛けるな、恥ずかしい」
屋上には、ちらほらと他の生徒達の姿も見受けられる。
「今、行くよ〜♪」
が、雄二の注意も逆効果で、周囲の目など気にもせず手を振るこのみ。
普段なら、はしゃいで走ってきそうなシチュエーションだが、少女はまだ動かない。
理由は。
「……耳元で大声出さないで」
顔をしかめて左肩に掴まる級友の存在。
屋上に上がるエレベータはないため、郁乃も車椅子を踊り場において階段を昇ってきたのだ。
左腕には、ロフストランドクラッチ。右腕用を、このみから受け取って歩き出す。
転校から二ヶ月、だいぶ足と腕の力が付いてきて、かなりの距離を自足歩行可能になっていた。
「玲於奈先輩も、こんにちはです」
近づいてひょこんと頭を下げた、このみは玲於奈と面識がある。
「……誰?」
いっぽう、郁乃が玲於奈と会うのは初めて。にしても。
「し、失礼な子ですわね」
((いや、まったくだ))
初対面で無礼な態度に憤慨した玲於奈に、思わず心の中で頷く貴明と雄二。
「ご、ごめんなさい」
慌てて頭を下げる愛佳。郁乃はしれっとしている。
「玲於奈さんはね、ユウくんのカノジョだよ」
このみの、ストレートな、紹介。
「か、かかか、かのっ、じょっ!?」
一瞬で耳まで染まる玲於奈。
「あれ、ちがったっけ、ユウく……」
「違いませんっ!」
大声を出した玲於奈の顔は、集まった視線を受けて更に炎上した。
「とっとっと」
「わ、だいじょ……」
「ぶだからいい」
手を差し伸べようとした姉を押しとどめた郁乃。
「はい、郁乃ちゃん」
このみが、持参したクッションをシートの上に置く。
「ありがと」
郁乃は、クッションにお尻を落とし、貯水槽の基礎に背中を預けて足を左斜め前方に伸ばす。
ちょこん、とその隣に女の子座りするこのみ。
小柄な一年生二人で、こじんまりとした空間を形成している。
「しかし、すげー量だな」
雄二が呆れる重箱2つとタッパー2つ。ご飯は別容器。
「あははは……はい、たかあきくん」
「サンキュ」
愛佳が紙皿と割り箸を回す。
きっちり6膳、雄二達の分まで箸は用意されていた。
(……予定の行動?)
(さあて、どうでしょう?)
小声で聞いた貴明に、愛佳がとぼける。
「開けていい?開けていい?」
そんな会話は露知らず、このみがせっつく。
「どうぞ」
答える郁乃は、ちょっと視線を逸らして緊張気味。
「てりゃっ!たあっ!えいっ!」
やたら気合いを入れてご開帳。
「うわぁ……」
このみの目が輝いた。
ハンバーグ。ミートボール。サイコロステーキ。
いわゆるお子様メニュー。卵焼きもタコさんウインナーも完備。
「こ、これが全部、このみのもの……」
感動のあまり、握りしめた拳が震えている。
「食べたいって、言ってたでしょ」
「だからって片っ端から作るか、普通?」
郁乃の言葉に、貴明が呆れかえる。春夏だって、そんな事はしない。
「肉ばっかだと、身体に悪いぜ」
「あ、こっちはバランス考えたから、私が主担当で」
愛佳がもうひとつの重箱を開けると、春巻とか、しそ巻きとか、煮物とか、なかなか地味に色彩豊か。
「野菜もあるわよ」
郁乃が開けたタッパー2つはサラダと野菜炒め。なんだか豪快。
「で、できればピーマンだけは……」
このみが怯む。
「入ってない」
だが、郁乃が淡々と杞憂を払う。
「やたーっ、ありがとう郁乃ちゃん」
抱きつかんばかりに喜ぶこのみ。郁乃がのけぞる。
「う、まあ、喜ぶのは、味見てからにして」
「そうそう、食べて食べて」
姉妹の勧めを合図に、皆が箸を割る。
「いただきまーす」
真っ先にハンバーグに手を伸ばすのは、やっぱりこのみ。
ぱく。
「……」
「ど、どう?」
「おいしい……すっごくおいしいよ郁乃ちゃん!」
「……そう」
満面の笑顔になったこのみに、郁乃は照れてそっぽを向いた。
「タカくん、夜ご飯ちゃんと食べてる?」
「まあ、適当に」
「むー、またカップラーメン? だめだよ、ちゃんと栄養取らないと」
「そっちこそ、ちゃんと宿題やってんのか」
「えっ、えーっと、や、やってるよ、うん」
「学校で、アタシとね」
「い、郁乃ちゃん、それはいわない約束」
「……ウチのこのみがお世話になっているようで」
「あははは、ウチの郁乃もお世話になってますから」
並びは雄二から反時計回りに郁乃、このみ、貴明、愛佳、玲於奈。
重箱をつっつきながらの会話。
貴明は郁乃とも親しい−当人同士の意見はともかく−し、このみとは言わずもがな。
「ユウくんは、タマお姉ちゃんがいなくなってタルんでない?」
「なんだその言い草は。貴明ん時と違いすぎるぞ」
雄二も、幼馴染みの少女と接すると口が軽くなる。もとから軽いけど。
問題は。
「……」
「行ったり来たりで大変だったと思いますけど、落ち着きました?」
「え、ええ。まあ」
愛佳が気を遣っても、明らかに一人浮いている玲於奈。
「ごちそうさま」
ほとんど喋らないまま、早々に箸を置く。
「あ、あれ、お口に合いませんでした?」
「別に、そんな事はありませんわ」
「あのっ、お茶持ってきてますからっ」
「結構です」
愛佳の勧めを断って、玲於奈は席を立とうとする。
「……もう少し、いろよ」
だが、その玲於奈に、雄二が声を掛けた。
支援
「……はい」
いっとき逡巡したものの、再びぺたんと座り直す玲於奈。
愛佳がレジャーポットから注いだ緑茶を受け取って、両手で口元に運ぶ。
「「「……」」」
このみと郁乃、話題がない。貴明、話しかける勇気がない。
「えっと、か、薫子さんと、カスミさんは、元気ですか?」
挑戦者は、またも愛佳。
「どうして貴方に報告しなければならないのです?」
が、玲於奈は愛佳を睨みつける。
「そっ、それは……そうなんですけど……」
愛佳は玲於奈の視線に怯みつつ、なお接触を試みる。
「あ、ほら、前にこっちに居たときに、凄く仲良さそうでしたから」
「仲は今でも良いですわ」
それも、ぴしゃりと跳ねつける玲於奈。
過去形の物言いが気に障ったらしく、口調は更に冷たい。
「ですから、別に貴方などに気を遣っていただかなくても結構です」
追撃。
「家柄のない友人を作りに、この学校に戻ったわけではないのですから」
「……ごめんなさい……」
玲於奈の言い分も理不尽だが、おせっかいの自覚がある愛佳はしゅんとなる。
それを見て、玲於奈の顔にもチラッと後悔の色が浮かんだが、そのままそっぽを向いた。
「愛佳」
貴明が小さく声を掛けて、俯く少女の背中に触れる。
「ん……」
愛佳は、少年に視線を渡して微かに表情を和ませるが、ややあって再び顔を上げる。
「で、でもねっ、玲於奈さんっ」
まだ頑張る愛佳、だが。
「気を遣うなって言ってるんだから、放っておけばいいのよ」
矢は、横から飛んできた。
声の主を見るに、郁乃が仏頂面で玲於奈に冷ややかな視線。
「何か?」
「別に。アンタじゃ作ろうと思ったって友達なんて出来ないだろうって思っただけ」
「っ!」
玲於奈の顔が、カッと灼ける。
「前の学校の友達だって、いつまで友達でいてくれるかしらね?」
なお畳みかける郁乃。
姉の好意を袖にした玲於奈の行為に、相当怒っているようだ。
「あ、貴方に私の何が判るというの!」
「友達捨てて追っかけてきたんでしょ? 家柄のいい男をさ」
嫌な目で雄二を見る郁乃。
玲於奈の顔が、赤から白になる。口が開いて、言葉を探す。
が、その前に雄二の腕が伸びた
「うくっ」
右手で郁乃の胸ぐらを掴んで引き寄せる。身体が浮いて、郁乃が小さく呻いた。
「……周囲がみんな、貴明や小牧みたいなお人好しだと思うなよ」
低い声で凄むが、郁乃は唇を歪める。
「あら、気に障った? 向坂家のお坊ちゃま?」
「てめぇっ!」
雄二の左拳が振り上げられる。郁乃も、凄い形相で睨み返す。
その二人の間に、横から手のひらが割り込んだ。
「やめろよ。雄二」
貴明だった。
ぎろり、と雄二は鋭い視線のまま貴明をねめつける。
郁乃は、ちらっと横に視線を流しただけ。
続く睨み合い。
「……雄二さんが怒る必要は、ありませんわ」
打ち切ったのは、玲於奈の言葉。
「私が雄二さんに会うために此処に戻ったのは、事実ですから」
「「……」」
玲於奈の台詞に、睨み合っていた二人が毒気を抜かれた顔になる。
すっ、と雄二が手を離す。
「郁乃ちゃん、足、大丈夫?」
「ん、へーき」
無理な姿勢を心配した級友に、何事もなかった顔で答える郁乃。
貴明がほっと息を吐く。
「……にしても」
全員の視線が、玲於奈に集まる。
「な、なんですの、私、なにかおかしい事を言いました?」
「……いや、別に」
否定しつつ、雄二が右手で顔を覆う。
「良かった」
ニコっと玲於奈。さっきまでの邪気はどこへやら。
「「「うわ……」」」
貴明、郁乃、このみ、溜息のち沈黙。
「ゆ、ゆゆゆ、雄二くんっ!」
愛佳が突然、皆がぎょっとするような大声。
「な、なんだ?」
「玲於奈さんのこと、大切しなきゃだめだよっ!」
拳を握ってがんばれポーズ。何かのスイッチが入ったようだ。
「……ああ」
右手を顔に残したまま−赤い頬を隠すためだろう−、雄二は頷いた。
「あ」
雄二の態度で、自分の発言のストレートさに気づいたのか、
今頃になって、玲於奈も頬を染めた。
shien
「まったく。馬鹿には敵わないわね。ごちそうさま」
「郁乃ちゃん、もう食べないの?」
郁乃の皮肉と、このみの誤解。
「まだ食べるけど、これは食べていいわよ」
誤解は訂正。
そしてこのみの視線の先にあるミートボールの山は明け渡す。
「えっ? 全部、全部このみが食べていいの?」
このみ、目を輝かせて周囲に確認。
「「……どうぞ」」
苦笑しながら頷く貴明と、ニコニコしながら愛佳。
「やたー!」
バンザイしたこのみの手から、箸がすっぽ抜けた。
「あ゛」
からん、と転がる割り箸2本。シートの外。コンクリートの上。かなり砂まみれ。
「あ゜、あうぅぅっ」
このみが、形容しがたい声で唸る。
「愛佳、箸ある?」
「ご、ごめんなさい、家にちょうど6膳しかなくって……」
無情な会話。
「ぅうぅうぅうぅうぅぅ」
「おいおい、拾う気かよチビッコ」
雄二が呆れて声を掛ける間にも、このみの手はじりじりと箸に近づいていく。
「さ、最初だけ、最初だけ我慢すればきっと……」
その様子を見て。
「……よければ……」
私のを、と言い掛けた玲於奈だったが、
「このみ、こっち向いて」
その前に、郁乃が級友を呼んだ。
「い、郁乃ちゃん、止めてもムダだよ。このみはまだ……」
「口、開けなさい」
「へ?」
ぽかん、と開いたこのみの口に、郁乃が自分の箸でミートボールを放り込んだ。
むぐむぐむぐ。
「……えへへ」
泣きそうだった顔が、くしゃっと崩れて笑顔のこのみ。
「……」
しばし、少女の顔を見つめた郁乃。
やがて、無言で次のおかずに箸を伸ばす。
微妙に頬が緩んでいる。
ぽいっ。
むぐむぐむぐ。
ぽいっ。
むぐむぐむぐ。
ひょい。
「あ、トマト……」
「……これは、アタシの」
自分で食べて、次、卵焼き。
「うわぁ…」
郁乃が目標を目の前に突き出すと、このみはパクリと食い付いた。
「ひへへー」
もうこれ以上ないってくらい幸せ顔。
「……」
郁乃はポーカーフェースを装ってはいるが、どうみても頬が紅潮している。
「美味しい?」
「うんっ!」
そんな会話に、なんだか手つきも怪しくなって、郁乃はこのみの餌付けを続けた。
で。
「うあぁぁあぁ……」
一年生コンビの言動に、今度は愛佳が壊れる。
「カップルふた組を差し置いて、なんですかこの雰囲気は?」
「いや、俺に聞かれても」
「かくなる上は、たかあきくんっ!」
「はい?」
嫌な予感に身をすくめた貴明に向かって、愛佳。
「あ、あ、あ〜ぁんっ」
アスパラ巻きを差し出す。語尾も箸先も、ぷるぷる震えている。
「い、いや、愛佳、俺は自分の箸があるからさ……」
ぺし。
「い゛っ゛」
「無くなったねっ♪」
恋人の手から割り箸を叩き落とした愛佳は、再び貴明に迫る。
「あ〜〜〜んっっっぅ!」
「……ぱく。」
気迫に押されて、貴明は目を瞑って愛佳の箸をくわえた。
「あ、いいなあ、タカくんにあーん、このみも……」
「このみは、こっち」
「……はぐはぐ」
目移りしかけたこのみを、郁乃が引き戻して給餌続行。
「……」
寄り添う二組を前にして、玲於奈が雄二にちらっと視線。
「やらなくて、いいからな」
念のため、雄二は釘を刺す。
「……わかってますわ」
ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間。
「今度、私の手作り弁当でさせて頂きますから」
「え゛」
深淵
「あ、そうだ」
周囲の生徒達がそそくさと逃げ出すような、ピンク色の昼食が終わって。
「これ、貰ったんだけど」
郁乃が、貴明に一枚の紙切れを投げてよこした。
「無料入館券?」
「水族館。今週から新装オープンだって」
「どうしたの? これ」
「星乃さんに貰った。けど、アタシは行く気ない」
通院先の看護婦の名前を出す郁乃。
生意気な郁乃は病院でも賛否両論だが、賛の方にはけっこう可愛がられている。
「1枚5名様までって、家族向けだよな、どうみても」
「制限はないでしょ」
「うーん」
「どうせデートで行くつもりだったでしょ? 使いなさいよ」
「二人で使っちゃうのもなぁ……」
元がタダでも、使用可能数を余すのはやっぱり勿体ない。
「向坂くん、よかったら一緒に行かない? もちろん、玲於奈さんも」
貴明が悩んでいると、愛佳が雄二を誘った。
玲於奈に直接声掛けしないあたりは学習しているようだが、
さっきの会話の内容を考えれば、十分チャレンジャーな申し出である。
「そうだな……」
しかし、相棒の様子を窺う雄二。
玲於奈は、気乗りはしないようだったが、雄二に任せると視線で示す。
少し考えて、
「じゃ、お言葉に甘えるか? この前行き損ねたしな、水族館」
「雄二さんが良いのなら、それで」
意外とあっさり、そういうことになった。
「じゃ、じゃあ、今週の日曜日。10時に現地集合で」
自分で誘っておきながら、雄二達の参戦に多少動揺しつつ愛佳が仕切る
「土曜の午後でも、いいんじゃないか?」
貴明の指摘。水族館なら、学校から行った方が近い。
「えっとね、日曜日だとキングペンギンのお散歩があるらしいの」
入館券の裏を見ながら、愛佳が解説。
ペンギン。
という単語に、玲於奈も反応しかかったがその矢先。
「ええっ! ペンギンのお散歩っ?」
裏返った声は、参加予定がないこのみ。
「あ、えっと、なんでもないよ。うん、なんでもないよ」
すぐに口に手を当てて否定するが、感情は明らかだ。
貴明と愛佳は、顔を見合わせて悩む、けど、これはちょっと誘いにくい。
が。
「このみ、行きたいの?」
「えっ、で、でも……」
「見たいんでしょ? ペンギン」
「うん……」
郁乃が少女の真意を聞き出して。
「たかあき、自費ね」
貴明の手からチケットを取り返した。
さっき行く気ないって言っただろ、とか、なんで俺なんだ雄二だって男だぞ、とか。
無駄な事は、貴明は口にしなかった。
以上です。支援ありがとうございました。
なんかOVAでは郁乃の愛佳への呼びかけは「姉貴」らしいですが、
見てないし今更変えられないのでこのSSでは「お姉ちゃん」でいきます。
箸を落っことす場面はねがぽじから、星乃さんの名前は君望から拝借。
毎度ながらGJ。郁乃が相変わらずやってくれるw
たしかXRATEDじゃ「お姉ちゃん」って呼んでなかったっけ?うろ覚えだけど。
CDドラマでも「お姉ちゃん」だから、結論としては「どちらでもよい」
場面によって使い分けるのもアリ
>578
読み返したら5月12日に「お姉ちゃん」呼びしてましたね。安心と、またも確認漏れを恥
GJ。
外だと「おふくろ」だけど
家だと「かあちゃん」みたいなもんか。
俺なんて学校で先生を「おかあさん」って呼ぶぜ
この話はこのみと郁乃のらぶらぶ話でしょうか(笑
愛佳もいい味出してるし。
ほんとといい話でした。
「それじゃ、3人でパジャマパーティをしましょう。」
「は?」
「へ?」
草壁さんの提案に、わたしと由真は思わずそんな答えを返していました。
だって、たかあきくんを賭けた勝負に対する条件で、そんなこと要求されるなんて思って
も居なかったから…
−
あの日。
たかあきくんと草壁さんが再会を果たして、そしてそれを目撃したあたしと由真が、屋上
で二人で大泣きした日に、わたしはたかあきくんのことを諦めようと決めた。
昔からいろいろなことを諦めてきたから、諦めるのは慣れていると思ってた。
だけど、一度たかあきくんを好きになった気持ちを諦めるのは簡単じゃなくて、クラスで
たかあきくんと草壁さんが仲良くしているのを見ると、また涙が出て来そうになるのを堪
えるのがとてもつらかった。
そんな風に悶々としてた時に、由真に呼び出された。
放課後に中庭に行ってみたらそこにはたかあきくんと草壁さんも居て、そこで由真はたかあきくんに向かって好きだってはっきりと告白した。
そしてわたしにも、どうするのか?って聞いてきた。
わたしはいきなりで驚いたけど、でもはっきりこの場で告白して断られたほうが諦められ
ると思って、たかあきくんに「好きだ」って告白したの。
そうしたら、由真ったら、
「あたしと愛佳は、河野貴明を賭けて、あんたに勝負を申しこむっ!」
だなんて、わたしはもうびっくり。
諦めるために告白したのに、草壁さんに挑戦だなんて…
由真ったらどうするのよ〜
「えっと…お二人は貴明さんとはどういうご関係なんでしょう?」
当たり前の話だけど、草壁さんはわたし達にそういう質問を投げかけてきた。
「あたしは…ライバル、かな?…いろいろあって…その、ぱ、パンツ見られたりとか、
か、体さわられたこともあったけど…でも、今では二人で居ると楽しいって、思えるよ
うになったの。」
そう言いながら由真は胸を押さえて赤くなってる。
「いや、パンツ見えたのとかは不可抗力だろ…」
「…貴明さん、少し黙っていてください。」
草壁さんが笑顔のままそういって、たかあきくんを黙らせた。…な、なんか、草壁さんの
笑顔が怖いよぉ…っと、わたしも言わなくっちゃ。
「わ、わたしは、放課後に書庫の整理を手伝ってもらって…たまにそこで一緒にお茶した
り、お互いの異性の苦手を克服するための訓練したり…とか。でもいつの間にか二人で
書庫ですごす時間が楽しみになっていて、たかあきくん、って名前を呼ぶようになった
頃には、たかあきくんと恋人同士になれたらいいのになぁって、思うようになってまし
た。」
「……はぁ、そうですか。」
草壁さんちょっとあきれてるみたい。
「再会してわかったんですけど、貴明さん女の子には無条件に優しくしてしまうところが
あるみたいで…貴明さんはお二人のことどう思っているんですか?」
たかあきくんは少し困ったような表情で、でもはっきりと草壁さんに答えた。
「確かに…由真と一緒に居るときは、鬱陶しいと思うこともあったけど、楽しかったし、
小牧さんと…愛佳と一緒に作業していて、そういう関係になりたいと思った事もある。
でも俺は草壁さんを…優季を選んだ。優季のことが一番大事だと思ったから。」
その言葉をきいて、わたしの胸がちくり、と痛んだ。わたしたちと草壁さんとの差はほん
の少しで、もう少しだけたかあきくんの方へ踏み込んでいれば、選ばれていたのはわたし
の方だったのかもしれない。
いつだって私は一歩引いてしまっていて、その度に、手に入れられていたはずの何かを逃
してしまっていたと思う。そして、今回もそれは同じだった。
「ということは、貴明さんも二人に対する好意は少なからず持っているということです
ね。」
うーん、という感じで草壁さんは少しの間考え込んでいたけど、しばらくして、
「わかりました。お二人の挑戦をお受けします。」
「ええっ、ちょ、ちょっと、草壁さん!」
「貴明さん。」
草壁さんはたかあきくんのほうに振り向くとにこっと笑って言いました。
「私は負けるつもりなんかありませんよ。ただ、お二人が真剣だから、勝負をお受けして
私が貴明さんのパートナーとしてふさわしいと認めてもらうだけです。もちろん、挑戦を
受ける側の権利として、幾つか条件を出させてもらいますけど。」
「条件?」
「ええ、まずは…」
−
そして夜の現在(いま)。
わたしと由真は草壁さんの部屋で、パジャマ姿で草壁さんと向かい合っていました。
草壁さんから提示された条件は、女の子同士のパジャマパーティに参加する事。
そしてその時にはたかあきくんとの馴れ初めとなった思い出に関わる品物を持参する事。
今日は丁度土曜日で授業も午前中だけだったから、一度家に帰って準備して再度集まるこ
とになりました。
ちなみに、たかあきくんは今日の話し合いの結果を明日報告するということで、この場は
帰ってもらうことになりました。
わたしは一度家へ帰ってお泊りセットを用意すると、お母さんに友達のうちに泊まると伝
えてもう一度学校へと向かいました。
途中、駅前でちょっと買い物をして学校に急ぐと夕方の校門前には草壁さんが待ってい
て、それから暫くして由真があわててMTBで走ってきました。
そして、わたしたち3人は草壁さんのお家へと向かいました。
「でも、なんでパジャマパーティなんですか?」
道すがら、わたしは疑問に思っていたことを草壁さんに聞いてみた。
「お二人がどんな人か、それにどんな風に貴明さんを好きになったのか、知りたかったか
らです。挑戦者がどんな性格の人かとか、どんなことが得意かとか、挑戦された側とし
て知りたいのは当然ですよね。」
「それは……そうかもね。」
根っからの勝負好き…というか負けず嫌いな由真は感心したように答えてた。
でも由真は勝負事にはすぐ熱くなっちゃうから、草壁さんみたいな「敵を知る」っていう
やり方はしないものね…
「それに…本当はこっちのほうが目的なんですけど、私、数年ぶりにこの町に戻って来ま
したから、親しいお友達が居ないんです。あなた方お二人となら、親しくなれそうだな
と思って。」
「へ?何で?」
確かに、由真の言うとおり、勝負を申し込んだライバルと友達になるなんて、あまり聞い
たことが無いけど…でも草壁さんはにっこり笑うとこう答えた。
「私たちには貴明さんという共通項がありますから。」
たしかに、わたし達はたかあきくんによって結び付けられた関係だ。
でも恋のライバル同士にもかかわらず、喧嘩じゃなくてこうして3人パジャマ姿で夜のお
茶会を開こうとしている。
「寝る前ですから、ストレートじゃなくて、ミルクティーにしますね。」
そう言って、草壁さんはポットからそれぞれのカップにミルクとお茶を注いだ。
わたしも紅茶が趣味だからわかるけど、草壁さんの入れ方はとても上手だった。
「むむむ、なかなかやるじゃない。」
由真が紅茶を一口飲んでそう言った。由真はお爺さんにお茶の入れ方を仕込まれたとかで
紅茶にはうるさいんだけど、その由真のおめがねにもかなったみたい。
「ねえ、草壁さん。」
「はい、何ですか、小牧さん…っと、私のことは優季で良いですよ。」
「あ、じゃあ、わたしも愛佳で…ってそうじゃなくって…わたし達って、ライバル同士に
なるんですよね。」
「そうですね…恋のライバルですね。何だかちょっと素敵な響きかもしれませんね。」
「あのぉ…そうじゃなくって、その…たかあきくんを奪い合って争う仲のはずなのに、こ
んなにまったりしちゃってていいのかなぁ、って思って…」
う〜ん、優季さんってちょっと変わってる…
「そうよ、勝負ってのはもっと殺伐としてるものよね。」
「でも、由真さんは貴明さんと勝負しているうちに好きになっちゃったんですよね。」
「うっ、言われてみれば…」
「ライバル同士だからって、いがみ合う必要は無いと思いますよ。それにさっきも言いま
したけど、同じ人を好きになったわたし達には普通の友達同士よりも共感できる部分が
あると思いますけど。」
そう言って優季さんはにっこりと笑う。
優季さんには、人を和ませる雰囲気みたいなものがあると思う。それが、わたしと由真を
うまく包み込んでしまっていた。
「じゃあ、まず、自己紹介から行きましょうか。」
優季さんは、たかあきくんとは小学校の時の同級生で、ご両親の離婚のためにこの街を離
れていて、先日戻ってきて再会したみたい。別れるときにとても大事な約束をしていて、
優季さんはそれを心の支えにしていたんだって…そのことについては後で話すって言って
たけど…
由真は長瀬という、大財閥来栖川にお使えする執事の家系なんだって言ってた。わたしも
由真のお爺さんがなにか秘書みたいな仕事をしているのは聞いていたけど、来栖川のお屋
敷で働いていて、由緒正しい家系の跡継ぎだって言うのは初めて聞いた。確かに、由真の
お家は結構立派だったけど…
わたしも自分の自己紹介をした。自分の両親のこととか、入院している妹の郁乃の事とか
自分の趣味のこととか…途中で由真が私のことを食いしん坊だって優季さんに話すから、
すごく恥ずかしかった…そりゃ、確かに食べるのは好きだけどぉ…
そして、たかあきくんとの出会いに話は移った。
「お茶もあるし、丁度良いよね。」
わたしがバックから取り出したのは、駅前のデパートで買ってきた小さなスコーンの入っ
た紙袋。それを広げてみんなに勧めた。
「ほら、愛佳ってばいつも何か食べ物持ってるのよね。」
「だから食いしん坊じゃないってばぁ…これはね、たかあきくんがわたしを手伝って、初
めて書庫に来てくれたときに出したお茶請けなの。」
そう、あの日から、わたしのたかあきくんへの思いは始まった。
他人を頼ろうとしなかったわたしに、たかあきくんは手を差し伸べてくれた。それはちょ
っとだけ強引で、遠慮の塊だったわたしの心の扉をちょっとだけ押し開けて…
そこから少しずつ、たかあきくんの優しさがわたしの心に流れ込んできて、いつの間にか
わたしの心をいっぱいにしていた。
そしてわたしは、たかあきくんが欲しいと、いつの間にか願うようになっていたの。
「ま、愛佳ってば…晩熟(おくて)な割りに、大胆ね」
「へ?」
由真がほんのり顔を赤くしてあたしに言った。優季さんも顔を赤くしながら口を押さえて
わたしを見てる。わたしは、今しゃべっていたことを思い返してみた。
…たかあきくんが欲しいと…たかあきくんが…欲しい…って、ええええ!
「や、や、や、そ、そんなエッチな意味じゃなくって、ただ、たかあきくんと恋人同士に
なれたらって意味で」
「わ、わかったから、落ち着きなさいよ……ふう、じゃあ次はあたしね」
こほん、と一つ咳払いをすると、由真は話し始めた。
「あたしがたかあきを初めて知ったのは、遅刻しそうな朝にMTBで走ってたときだった
から本当はMTBが馴れ初めのアイテムなんだろうけど、でもあれは他にも色々思い出
があるし…ということで、これかな。」
そう言って由真が取り出したのは眼鏡ケースに入れられた黒ぶちの眼鏡。
「そういえば、由真、最近その眼鏡かけてなかったよね。」
「うん、たかあきのせいで壊れてたの。昨日修理から戻ってきたばっかり。」
そう言って由真は眼鏡をかける。黒ぶちの眼鏡を掛けるとわたしの知ってる由真だ。
「まあ、貴明さんが壊したって…踏んじゃったりとかしたんですか?」
「ううん。あたしがたかあきに自転車で突っ込んじゃって、そのとき自転車から落っこち
て生垣に突っ込んじゃって、ポケットに入れてたこれが壊れたの。」
「それって、貴明さんは大丈夫だったんですか?」
「あいつだって男の子なんだしそのくらいじゃ死なないわよ。」
「や、そういう問題じゃないと思うけど…」
「とにかく…眼鏡をかけたあたしはおとなしくて真面目な「長瀬由真」だったけど、あい
つの前では眼鏡を掛けてない、元気で真っ直ぐな「十波由真」だったの。…そう、貴明
が昔のあたしを思い出させてくれたの。昔のあたしは、もっと色々な夢を持ってたはず
なのに、いつの間にかただ惰性でおじいちゃんの跡を継ぐっていう道を…『なれる自
分』を安易に選んで、それに自分を当てはめようとしてたの。本当に『なりたい自分』
は何なのかを考えないで。」
そう言って由真は眼鏡をはずした。それがたかあきくんの知っている由真。学校では見せ
ない、元気で明るくて負けず嫌いの由真。
「眼鏡が壊れて、たかあきと一緒に居るようになって、あたしはいつの間にか、忘れてた
昔のあたしに戻れてたの。…それに、いつの間にかあいつの隣が居心地が良くなって
て、自分から勝負することであいつと一緒に居る理由を作ってたんだと思う。優季が現
われなければ、これからもずっとそうだったんじゃないかなと思う。それで、いつか
は…」
そう言って微笑む由真の顔は、わたしが見たことの無かった恋する女の子の顔だった。
何だかほほえましくなって、ついついあたしはからかいの言葉を挟んでしまう。
「ずっと一緒に、かぁ。そういえば昔の由真の夢にもかわいいお嫁さんって言うのがあっ
たよねぇ。」
「わっ、愛佳っ!そんなこっぱずかしい話、優季にバラさないでよ。」
「良いじゃないですか。女の子なら1度くらいは夢見る物だと思いますけど?白いタキ
シードの貴明さんにエスコートされてヴァージンロードを歩く自分の姿を想像すると、
胸がどきどきしてきませんか?」
そう言って優季さんは目を閉じて自分のウエディングドレス姿を想像してるみたい。
由真もぼぉっとして宙を見つめて自分の姿を思い浮かべてるみたいだったから、わたしも
自分のウエディングドレス姿を思い浮かべてみた。
真っ赤な絨毯に散らされたバラの花びらの上を、白いタキシード姿のたかあきくんに手を
引かれて進むわたしは、緊張と歩きづらいドレスのせいでおっかなびっくり歩いてて、で
も少し前を行くたかあきくんと、このヴァージンロードを歩けるのが嬉しくて。
神父さんの前に並んだ席にはお父さんお母さんと一緒に元気になった郁乃の姿も見えて、
とても幸せな気分で神父さんの前に2人で立って。
そして、神父さんに誓いの言葉を言って指輪を交換した後、永遠の誓いのためにキスする
の。
「愛佳」
そう言って、たかあきくんはわたしの被っているヴェールを上げて、
「愛佳」
わたしの名前を読んで、顔を寄せてきて、そしてついに永遠を誓うキスが、
「愛佳ってば!」
sien
「うひゃあ!」
がくんと肩を揺さぶられてわたしは現実に引き戻された。
「もー、愛佳ってばあっちに行ったまま戻ってこないし。」
「あ、あはははは…ごめんなさい。」
「じゃあ、次はわたしの番ですね」
そう言って優季さんは勉強机の上にあった写真立ての一つを取り上げると、わたしと由真
に差し出した。
そこに写っていたのは髪を長く伸ばした笑顔がかわいらしい女の子と、どこか頼りなげだ
けど、でもやさしそうな男の子。女の子と男の子は手をつないでいて、男の子は恥ずかし
そうに横目で女の子を見ていた。女の子はレースのテーブルクロスらしきものを被ってい
て、まるでウエディングドレスのヴェールみたいだった。
「うわ…ミニたかあき…よね。これ。」
「その写真は、私が転校する前の日に撮った、貴明さんとの最後の写真です。」
確かに、女の子のほうは優季さんだ。でもご両親の離婚で大変な時期だったはずなのに、
なぜこんなに笑顔なんだろう。
「それは、貴明さんがくれた物のおかげです。」
「何をもらったの?」
「名前です……貴明さんは河野の名前をくれると言ったんです。」
「へ、も、ももも、もしかしてプロポーズぅ〜?」
思わず私は裏返った声で叫んじゃってました。
優季さんはちょっと困ったように、
「両親の離婚で高木の苗字では無くなった上に転校する事になって、私が自分という存在
が無くなってしまうような不安に押しつぶされそうになっていた時に、貴明さんは自分
の苗字をあげるから、何時だって河野を名乗れるよと言ってくれたんです。でも当時の
貴明さんは小学生でしたから、女性が男性の苗字を名乗るというのがそういう意味だと
は考えてなかったと思います。でも女の子は早熟ですから、当時の私は貴明さんとの結
婚の約束だと思って。」
そう言って写真立てを胸に抱くと、優季さんはかみ締めるように続けた。
「この写真は、もう一度貴明さんと再会した時の夢に胸を膨らませていた当時の私が、貴
明さんにねだっていっしょに撮ってもらったものなんです。両親の離婚で当時は大変で
したけど、この写真を見ると頑張れたんです。」
「じゃあ、貴明もその写真持ってて、それで再会したときあんたのこと一目でわかった
の?」
それは多分あの中庭でのことだろうと思った。名乗るぐらいはしただろうけど、ほとんど
すぐにたかあきくんは優季さんのことがわかったみたいだったから…。
でも、優季さんはまた困ったような表情をした。
「いいえ…実は、貴明さんは私のことは忘れてしまって居ましたから…」
そして、少し考え込んで、
「…信じられるかどうか解りませんが、お二人には本当のことをお話します。」
そういうと、優季さんは小さな手帳…くずかごノートって言ってたけど…から1枚の切抜
きを取り出して、わたしと由真に差し出した。
「この間の流星雨の記事?」
「その隅のところを見てください。」
「えっと…流星群観測、少年はねられ死亡…被害者は河野…え?…たかあきくん?」
そんなばかな。こんな記事はありえない。だって、たかあきくんは事故にあいそうにはな
ったけど今も生きている。
「貴明生きてるし…えっと…記事捏造?」
「…由真…それ違うと思う。」
「それは、私があの流星雨の次の日に見た新聞の切り抜きなんです。」
それから、優季さんは私たちの想像を超えた話を話し始めた。
時を越えて深夜の学校での再会、真夜中のお茶会、そして流星雨の夜の出来事と…事故で
自分が身代わりとなろうとしたこと。
「自分が死ぬのは怖くなかったの?」
由真がそう聞いた。同時に、私ならどうしただろうかと考えた。
「たとえあの時私が死んでしまっても、貴明さんに生きていて欲しかったですから。きっ
とあの時はその選択が正しかったのだと思いますし。…本来存在し得ないはずの私があ
の場に居ることはありえなかったはずですから。」
私は果たして優季さんのように自分の命を差し出してもたかあきくんを守ろうとしただろ
うか?ただ慌てふためいて、そして何もできなかったかもしれない。
「…それに、もし私のことも、約束のことも本当に思い出してもらえないのなら、私は、
あの1週間の思い出だけで十分だと…それで死んでしまってもいいと、あの時思ってい
たんです。…でも、貴明さんは思い出してくれた。」
優季さんの目からぽろぽろと涙が零れ落ちた。
優季さんが何年も暖め続けていた思い。それは単なる恋愛感情なんかで割り切れるものな
んかじゃなくて、そしてその思いが報われたのがわたしにはとても羨ましかった。
「…あたしは、自分を犠牲にして貴明を助けるなんて、考えられない。何が何でも二人で
助かって…たとえ思い出してくれなくても、貴明に好きだって言わせるまでは諦められ
ないな。」
由真の答えはとても由真らしい物だった。簡単に諦めてしまうわたしとは違う。
そんなあたしの顔を見た由真は、笑顔を見せてあたしに言った。
「愛佳だって、きっとその時になれば、優季とは違う答えを出そうとするんじゃない?」
わたしの表情で、わたしが何を考えているか読み取った由真が、フォローしてくれた。
由真と友達で居て良かった。すぐマイナス思考になってしまうわたしをいつも由真は救っ
てくれるから。そのことがとてもうれしかった。そして、ほんの少しだけど、勇気が湧い
てきた。
「今お話したことを信じるかどうかは、お二人にお任せします。でも貴明さんに対する私
の思いは嘘偽りの無いことです。名前をもらったあの日から私は貴明さんを支えに生き
てきたんです。」
「優季さん…わたしは信じます。あなたのたかあきくんに対する思い、しっかり受け取り
ました。…でも」
「でも?」
私は、由真にもらった勇気を奮い立たせて、そして宣言する。
「でも、たかあきくんは譲れません。…今まで、望んだ物をいくつも諦めてきたけど、た
かあきくんだけは譲れないんです。」
由真の表情が、その意気よ、とわたしに語っていた。そして由真もまた宣言した。
「そうよ、あたしも簡単には譲れない。優季の思いを知っても、あたしの気持ちは変わら
ないわ。優季と比べれば、愛佳も私も、思いを重ねてきた期間は比べようも無いけど、
思いの強さは変わらないつもりだから。」
優季さんはさっきまでこぼれていた涙をぬぐうと再びにこっと笑った。
「それでこそ、貴明さんを掛けて競う「恋のライバル」です。」
−
その後、真夜中を越えるまで、私たちは話しあいました。
自分達が知っているたかあきくんのことを情報交換したり、自分達の趣味の話や子供の頃
のことを話したり、女の子同士の他愛の無い会話で盛り上がって3人並んで一緒に眠りま
した。
そうそう、私たちは、勝負するに当たってルールも決めました。
1つ、私たちは期限までの間河野貴明を愛することを止めない事。
1つ、この勝負には河野貴明本人を含む全員の認めるものだけが参加することができる。
1つ、河野貴明に対して自分からキス以上の肉体的接触をしてはならない。ただし河野貴
明からの望みの場合はこの限りではない。
1つ、最後に誰が選ばれたとしても、残りの者はこれを祝福すること。
1つ、誰が選ばれても、私たちは親友であり続けること。
1つ、当面の期限は夏休み末までとする。ただし全員の同意によってこの期限は変更可能
とする。
私たち3人の淑女協定ですねって、優季さんは言ってたけど、わたしは恋愛同盟かなって
思う。
明日の日曜日は3人でたかあきくんとデートってことになってるけど、このルールの事知
ったら、たかあきくんはなんて言うかなぁ…ちょっとだけ楽しみ…かも。
597 :
物書き修行中:2007/07/09(月) 23:30:05 ID:pJAwpFOu0
>>592 支援thx
えらい難産でした。しかも後半グダグダだし。orz
やっぱ続き物はまだおいらには無理っぽい。続きのアイデアは幾つか浮かんでるけど…
せめてプロット起こして書けばいいんだろうけど、行き当たりばったりだし。
修行します。
にしても、いきなりスレがにぎやかになってきましたね。
河野家が終わったあと一時期はえらい過疎ってましたが。
乙
でも、高木って誰だよw
599 :
物書き修行中:2007/07/09(月) 23:54:44 ID:pJAwpFOu0
ぬは、何やってんだ俺。打ち首ものだyo o...rz
ついつい高城(たかしろ)を高城(たかぎ)って読んじゃう癖があるんで
高木の誤変換はそのためだと思われ…
しかも1行改行入れ忘れてるとこある…
乙
もっと4Pする!!
601 :
物書き修行中:2007/07/10(火) 01:06:27 ID:44Da2UNQ0
反省の意を込めて、即興で書いたものをお供えしてから寝ます。
もう過ぎてるけど一応タマ姉お誕生日SSということで。
7月7日。
世間的には七夕という行事の日だが、向坂環にとっては自分の誕生日でもあり、星に願い
を託す大事な日でもあった。
『タカ坊に思いが届きますように』
それが九条院に転校した年からの環の切なる願いであった。
毎年その決まった一言を書いて、誰にも見られないように一番高いところに下げて、天の
川の織姫と彦星に願った。
強く、強く……
そして、今年も7月7日がやってきた。
今年はもう、短冊は必要ない。だって願いは叶ったのだから。
「ということで、いつもの短冊は書かないわ。」
「ふ〜ん。じゃ、今年の願い事は無し?」
環と貴明は向坂家の縁側で、日が傾いて涼しくなってきた風に当たりながらそんな話をし
ていた。
庭先に立てられた笹の葉にこのみと雄二が色々と飾り付けをしている。
このみの短冊は「ととみ屋のカステラがいっぱい食べられますように」とか「お料理が上
手になってタカ君に誉めてもらえますように」とか、このみらしいもので、雄二のはやっ
ぱり「女の子に激モテするように何とか頼んます」とか「メイドロボは世界一ぃぃぃ」と
か雄二らしいとほほな代物であったりといつもどおりの光景である。
「今年の願い事なら、もうあそこにぶら下げてあるわ」
親戚筋から送ってきたとか言う甘夏を頬張っていたタマ姉が笹飾りの天辺を指差す。
ぶら下がっていたのは短冊というには変な紙が1枚。
白地に緑の印刷をした紙を4つに折りたたんで短冊状にしたもののようだ。
「なに?あれ。」
貴明が傍によって目を凝らすと、何か字が書いてある。
「えっと…婚姻…届!! ちょ、ちょっと、タマ姉!」
貴明が振り返ると環は2つ目の甘夏を攻略しにかかっていた。
「なあに?…タカ坊は、あたしと結婚するのはイヤ?」
「い、いやそうじゃないけど…まだ高校生なんだから早いんじゃないかと。俺まだ結婚で
きる歳じゃないし。」
婚姻届にはお互いの名前と捺印までしてあるのが見えた。もって行けばその場で受け付け
てもらえる状態だ。
「だからそこにつるしてあるの。タカ坊が結婚できる歳ならお役所に出してるわ。」
ということは、来年は知らないうちに提出されているかもしれないと貴明は戦慄を覚えていた。環は、というといつの間にか3つ目の甘夏の解体に入っていた。
「…タマ姉、いくらなんでも食べすぎじゃないの?」
「そう?…何だかこの酸味がすごくおいしく感じて止まらないのよね。」
「…おい、貴明、それって…」
「なんだよ雄二?」
「いや、あのな、ゴニョゴニョ…」
雄二に耳打ちされた貴明は、顔色を変えて環の方に振り返った。
環は、果汁で濡れた指をぺろぺろと舐めながら、にやりと笑った。
604 :
物書き修行中:2007/07/10(火) 01:09:43 ID:44Da2UNQ0
また改行ミスってるヨ orz
反省になって無いじゃん。欝だ。
乙
もっと孕ませる!
職人さん乙
みんなGJだぜ
乙ー。この盛り上がりは嬉しい限りだw
雄二の一人称視点で書こうと思ったけど貴明視点との違いがはっきり出せなくて困る。
>597>604
乙。妄想愛佳ワロス。タマ姉は本当なのか策略なのか判らんのが良いねw
恋愛同盟はやっぱ続きが欲しいな。プロット起こすのは今からでも遅くないw
淑女協定で「そんな淑女協定があるかっ」みたいな台詞を連想したが、
作品が思い出せない(プリンセスブライドだったかなぁ…)
一段落の文章が結構長いので、段落の頭は一文字下げた方が読みやすいかも
または「したいわけ」シリーズの時みたいに空白行を入れてもらっても良いかと
―朝―
「雄二!おきなさい!」
「…あと…五分。」
「もう、仕方ないわねぇ。と、特別だからね…。」
布団の中にもぞもぞと何かが進入してくるのを感じる。えーと、姉貴?
「んぁ?姉貴?なにやってんだ?」
「雄二のために、その…優しく起こしてあげようかなって…」
直ぐ近くに姉の顔。なんか妙に頬が赤みがかっている気がするけど…。
「なんだよ急に。」
「べ、べつに?」
「きもちわりーからさっさと…ごふっ!」
「もぅ、雄二の馬鹿っ!」
俺の言葉に不機嫌そうにボディーブローをかますと、さっさと姉貴は部屋から出て行ってしまった。
なんなんだ?一体。
―登校中―
「うぃーっす。お?チビ助、今日は髪おろしてるのか。」
いつものリボンを外して髪をおろしているチビ助(このみ)。
「う、うん。もしかしてユウ君こういうの好き?女の子っぽい?」
「んー、別に。相変わらずガキっぽいな。」
ケラケラ笑いながら言うと、このみは少しむくれたまま下を向いてしまった。
「なんだ?腹でも痛くなったか?…ごぶぁ!」
思いがけない方向からこぶしが飛んでくる。
「んだよ姉貴!この男女!」
「ふんっ!さぁいきましょうか、このみ。」
「うん。いこっ!タマお姉ちゃん。」
姉貴とチビ助はすたすた歩き出してしまった。
やれやれ。今日は二人とも不機嫌みたいだな。触らぬ神にたたり無し。
…あ!
そこで重大な過失に気がつく。
「やべぇ…修学旅行のアレ、親の同意書忘れた…。」
「マズいだろ!アレ忘れたら修学旅行いけないって昨日担任も行ってじゃないか!」
「くそっ!取りに戻る!」
「頑張れよ〜。」
苦笑いを浮かべる貴明を背に、来た道を戻り始めた。
―再び登校中―
「くそっ!時間やばいな…。でも、まだギリギリ間に合うはずっ!」
久しぶりの本気ダッシュに、心臓がおかしな音を立てている。
「はぁ、はぁ。」
足もふらつく。ここまで休憩無しで駆け抜けてきたんだから当然か。
「うわっと!」
急に足がほころび、その場に転倒…
…
…しそうになったが、何とか持ちこたえる。
俺様の運動神経を持ってすればコレくらい余裕余裕!
塀の上に誰かいたような気もしたけど、気のせいだよな。
塀の上って猫じゃあるまいし。
―校門―
「なんとか…、間に合ったようだな…。」
膝に手を付き、肩で息をする。本当に久しぶりに本気で走った。
もう動きたくないぜ…。息を整えながらその場で少し休憩していると、
「うわぁ〜!どいたどいたぁ!」
「ん?」
後方から猛烈な勢いでMTBがこちらに突進してくる。
「うわっと!あぶねっ!」
ギリギリのところでそれをひらりとかわす。俺様の運動神経を持ってすれば…以下略。
それにしても危なかった。当たったらあの女の子も吹っ飛んでただろうなー。
―休み時間の廊下―
ふらふら〜っと廊下を歩いていると…。
どん!という衝撃と共にしりもちをついた女の子…散らばるプリント。
どうやらこの女の子とぶつかってしまったようだ。
「うおっ!わ、わりぃ!」
すぐに散らばったプリントを拾い集める。
「アンケート…。」
「へ?」
弱々しい女の子の様子に、罪悪感で胸が締め付けられる。
「アンケートに協力してくれませんか?…名前書くだけでいいんで…。」
「あ、あぁ。それくらいなら構わないけど…。」
差し出されたシャーペンを持ち、プリントに名前を…ってこれ、もしかして…
小さく書かれた文章に目を通す。…なるほど。
「悪いけど俺、部活やる気は無いんだわ。」
「うぅ…。」
かき集めたプリントを女の子に手渡す。
…危ない危ない。引っかかるところだったぜ。
貴明だったらこういうの、だまされてんだろうな。女に甘いし。
「それじゃ。」
女の子に適当に挨拶し、教室に向かった。
―次の休み時間―
生徒会長の悪口をいっぱい貴明に言ってやった。
―放課後―
貴明に一緒に帰宅することを断わられたので、一人とぼとぼ校門に向かって歩く。
その時…
「ふぅ、ふぅ。」
「ん?」
校門脇の死角になった辺りに荷物が積み上げられていて、
その辺りから悩ましい声が聞こえてくる。
「うぅ。うぅ。う〜ん。」
「…。」
…こんなところで大胆だな。まぁ邪魔しちゃ悪いし、そのまま帰るか。
卑猥な妄想をしながら学校を後にした。
―下校中―
ぽけーっと桜並木を歩いていると、
ぶわっ!っと強い風が吹き荒れ、舞い散る桜に目を奪われる。
その時、足元にやわらかい感触…。
ん?
足元を見てみると…
「お、おんなのこぉ!?」
俺が踏んで殺めてしまったのか、最初からココに倒れていたのか、
可愛らしい服を着た女の子がそこに倒れていた。
「えーっと、そうだ!とりあえず警察!」
すぐに近くの公衆電話から警察に電話する。
その後すぐに警官が駆けつけ、俺に少し事情を聞いた後、その女の子を保護していった。
うんうん。どうやら俺が踏み潰したわけでもなさそうだし、良かった良かった。
―その夜―
風呂にも入り、ベッドに入ったところで思い出す。
「やべっ!レポートの課題あるんだった!」
しかし、そのレポートは学校に置き忘れたまま…。
どうする…今から学校に行こうか。
「まぁいいや。」
明日先生に叱られて補講を受ければいっか。そう思いながら目を閉じる
睡眠に落ちていくまどろみの中
…なぜ俺はモテないんだろう…。
そんなことを考えていた。
おわり。
614 :
↑の作者:2007/07/10(火) 12:35:37 ID:fTqvWVzv0
雄二視点の練習もかねてさささっと書いてみた。
…これは酷い雄二。
フラグ全滅wwwwwwwww
>>614 久しぶりにTH2のSSスレを覗いたら、ふと目に止まって
盛大に吹いたwww
まあ、こっちが普通だよな。
お前は間違っていないぞ、雄二w
>>614 やべぇ、これ最高にいいわw
そうだよな普通こうだよな。雄二どんまいw
なにも間違ったことしてないのにな。ささらの悪口言ったくらいか?
>>617 このみのことを褒めてやらなかったのがいけないな
激しくワロタ >325-327のパワーアップ版か?
>617
実姉にフラグ立てたらそれはそれでどうよって感じだしなw
>生徒会長の悪口をいっぱい貴明に言ってやった。
強いて言えばこれでまーりゃんキックを喰らうフラグが立った。
無論喰らうフラグだけで進展はないが。
>>614 こうやってフラグが徐々に貴明に移っていくんだろうなw
やさしく起こすのはタマ姉がキャラ違うなw
623 :
物書き修行中:2007/07/12(木) 22:57:51 ID:NiGvVBHA0
でむぱを受信したので投下してみます。
今回はキャラが違うとかの苦情は受け付けないんでヨロ
「そろそろたかあきくんが来る頃だしお茶の用意でもしておこうかな…
…っと、今日のお茶菓子は舟和の芋羊羹〜。日本茶にも合うけど、紅茶にも合うんだよ
ねぇ…でもおいしそう。…一つぐらいなら食べてもいいよね。うん、私が買ってきたも
のだしぃ…じゃ、1個だけ…あーん」
がちゃ
「ごめんごめん愛佳、遅くなって…」
「んぐぐっ」
「な、愛佳!どうしたんだ!」
がん!…ごきっ、ごい〜ん!
「きゅう…」
「ま…愛佳…愛佳ぁぁぁぁぁぁぁんぁんぁんぁんぁんぁん……(エコー)」
〜地上最強のいいんちょ〜 ばいおにっく・MANAKA
「…それで、先生、愛佳の容態はどうなんですか?」
「えー、喉に詰まっていた異物は胃に到達して普通に消化されるので問題ありません。
そのほかの外傷は思いっきり何かに打ち付けたらしい両足小指の骨折と倒れたときに突
きそこなった右手首の重度の捻挫と、倒れて頭打ちつけたときにできたコブぐらいです
ね。意識が戻らない理由は不明です。」
「そうですか…先生、ありがとうございました。」
俺は診察室を後にして、愛佳の病室へと向かった。そこで愛佳は黙々とねむっていた。
あの日、俺が突然書庫に入ってきて、つまみ食いを見られた愛佳がびっくりして芋羊羹
を喉に詰まらせ、あわてた愛佳は棚の角に足の小指を力いっぱいぶつけ(しかも両足)勢
いあまって倒れそうになって右手をつこうとして全力でひねった挙句、顔から落ちておで
こに馬鹿でかいたんこぶを作って気を失ってしまうという、傍から見たらドリフのコント
かと言わんばかりの事件を起こし、それから3日、ずっと愛佳は眠り続けていた。
「せっかく愛佳と恋人同士になれたって言うのに…これから二人で(ぴ〜)とか(ぷ〜)
とか色々やってみたかったのに…」
後悔先に立たず。だって後からするから後悔なんだし。
そんな俺の葛藤なんか知らずに愛佳は「バタピーがバタフライ〜」とか言いながら眠っ
ている。
「る〜」
「え?…珊瑚ちゃん…なんでここに?」
いつものぽやや〜んとした声に振り向くと、来栖川の誇る天才美少女、珊瑚ちゃんがい
つものように「る〜」のポーズをして立っていた。その後ろには車椅子に乗って瑠璃ちゃ
んに付き添われた郁乃の姿もある。
「あたしが頼んだのよ…つまみ食いで意識不明なんて恥ずかしい姉を何とかするのに珊瑚
が力貸してくれるって。」
「たかあき、元気出しぃ…おっちゃんに頼めば、来栖川のロボット工学とバイオ技術で、
愛佳ねーちゃん何とかなるかもしれへんよ。」
「ほ、ほんとか!本当に何とかなるの?珊瑚ちゃん。」
「ホントや〜。まず愛佳ねーちゃん研究所につれていかな。いっちゃ〜ん、いっちゃ〜
ん。」
そう言いながら珊瑚ちゃんはパンパンと拍手をたたいた。
しゅた!
「うお」
貴明の目の前に突如としてイルファが現われた。その瞳は冷たい光をたたえた鋭いもの
で、その身はいつものメイド服に包まれながらも長い赤マフラーが風も無いのに翻ってい
た。
「お呼びでしょうか珊瑚様」
「あ〜、愛佳ねーちゃん研究所に運んだって〜」
「かしこまりました」
しゅた!
イルファさんは愛佳を抱えあげると一瞬で再び消え去った。
「…イルファさんどしたの?」
「あ〜、たかあき」
今まで沈黙を保っていた瑠璃ちゃんが重い口を開いた。
「イルファはな…この間さんちゃんにちょっと口答えしたときにいじられて、丁度さんち
ゃんがはまっとった時代劇のお庭番のプログラム入れられてしまってん。」
「どや〜、いっちゃん格好良いやろ〜」
「いや、それはどうだろう。」
瑠璃はますます重そうな口調で続けた。
「たかあき、よく言うやろ。天才とナントカは紙一重とか…研究所はそういう人間の巣窟
やから、愛佳ねーちゃんも何されるか解らんで。」
結果として、数日後、愛佳は元気になって帰ってきた。
いや、いささか元気すぎる状態になって。
「みんなぁ〜静かにしてぇ〜」
帰ってきた直後こそ愛佳に気を使っていたクラスメイト達も、3日も経つと元の状態へ
と戻っていた。
いつものような私語の喧騒の中、HRを始めようと愛佳が奮闘している。
「静まれぇ〜静まれぇ〜」
左手で教卓をぽむぽむと叩くがそれで静まるようなやわな人間はこのクラスには居な
い。
「むき〜!静まってってば〜!」
そう言ってトサカに来た愛佳が両手を振り上げて教卓に振り下ろした。次の瞬間、
どがぁぁぁぁぁぁん!
教卓が粉々に粉砕された。一瞬何が起こったのかわからなかったクラスの全員の動きが
止まった。そして、一番最初に復帰したのは愛佳だった。
「や、や、や、わ、わざとじゃないですよ。つい力が入ったせいで」
「…さ、サー」
「へ?」
「も、問題ありません、サー!」
あまりの破壊力の前に血迷ったクラスメイトの一人がそんなことを口走った。
「そ、そうだ…野郎ども!いいんちょのお話をしっかり傾聴しろ!」
「いいんちょをお呼びするときは最初と最後に”サー”をつけるんだ!わかったな野郎ど
も。」
「え?え?え?」
「自分らは全員いいんちょの指揮に従い、いかなる困難な任務もやり遂げる所存。どうぞ
存分に命令をお命じください!」
「「「「「「サー!イェス・サー!」」」」」」
「ええええええ?!」
今日新たないいんちょマジックの伝説が生まれた。
バイオニックパワー・その1
右腕は1トンの重量物を持ち上げられる。振り下ろした場合は1トンの打撃力が発生す
る。
そこ、愛佳のほうが吹っ飛ぶジャンとか言わない。来栖川の技術はそれを可能とするの
である。そういうことにしておいて。
同様の理由で1トン持ち上げたときも愛佳の背骨が折れたりはしない。
「というわけで、姉がなぜかサイボーグになって帰ってきたって訳。」
こめかみを押さえながら沈鬱の表情で郁乃が説明する。
「はぇ〜、なんかかっこいいねぇ」
それに答えるこのみはというと、本気で感心した様に言う。
「かっこよくない。それにこれって姉みたいなどんくさい人間にものすごい性能のスポー
ツカー運転させるようなもんだから。あぶないったらありゃしない…瑠璃の言うとおり
天才とナントカは紙一重ね。ちょっと怪我した程度でサイボーグなんて…げほげほっ」
「あれ?郁乃ちゃん具合悪いの?」
「ちょっと熱っぽいけどたいしたこと無いわいつもの事だし…」
ぼわっ!
いきなり教室内に突風が吹き荒れた。
「わわわ〜!」
「きゃっ!な、何?」
突風でこのみの小さな体がポーンと飛ばされ、教室の後ろあたりの机を幾つか巻き込ん
で派手な音と共に墜落した。
育乃は車椅子にしがみついてかろうじて踏ん張ってしのぎきった。
「い、いくのぉ〜、何で熱あるって言ってくれなかったのよぉ〜」
「はっ…お、お姉ちゃん…なんでここに?」
「だ、だって、今熱あるって。」
「今お姉ちゃんここに居なかったわよね…一応聞くけど、どこで聞いたのそれ?」
「え?…教室でホームルームしてたら郁乃の声が聞こえてきて…」
「お姉ちゃんの教室って1階下よね…」
バイオニックパワー・その2
愛佳の右耳は1km先の物音も聞き取ることができる、特に色恋沙汰の話と郁乃の声の
場合は恐ろしいまでの性能を発揮する。
「しかも瞬間的に現われたけど…」
「い、郁乃が具合悪いって聞いたら居てもたってもいられなくってぇ…全速力で走ってき
たのぉ…」
バイオニックパワー・その3
愛佳の両足は時速95kmで走行することができる。ただし咄嗟の後ずさり等には瞬間
的に音速に迫る速度を出すことも可能。その場合はソニックブームが発生するため周囲
に甚大な被害をもたらす。
「あー」
郁乃が首をひねって視線をめぐらすと、無残に破壊された教室の引き戸が視界に入り再び
こめかみを押さえた。
一方、貴明の居る教室では…
ソニックブームで無残にも死屍累々となった教室の中で、貴明は一人呆然と立ちすくん
でいた。心なしか頬がこけていた。
「る〜」
「あ、珊瑚ちゃん…」
「愛佳ねーちゃん絶好調やな。あとでおっちゃんに報告しとかな。」
いつものように両手を挙げてる〜のポーズの珊瑚にふらふらと向き直った。珊瑚の後ろ
には教室の惨状を見て頭を抱える瑠璃の姿も見えた。
貴明もちょっと涙目になりながら、無駄とは思いつつも一応聞いてみた。
「ねえ、珊瑚ちゃん…愛佳の体元に戻せない?…つか、バイオニック義肢の移植って必要
だったの?」
「え〜、だって愛佳ねーちゃん両足と右手怪我しとったやろ。」
「や、それはただの骨折と捻挫で1月もすりゃ直ってただろうし…それに耳はなんとも無
かったはずだけど。」
「耳はサービスやて。」
「いや、サービスって…意識不明の治療のためじゃないの?」
「え〜、愛佳ねーちゃん寝とっただけやん。目覚ましがなったらあわてて飛び起きとった
で〜」
「……」
「たかあき?…どうしたん?」
ぱた。
貴明はその場で倒れた。
「たかあき?たかあきぃ〜?」
つんつん。反応が無い。たたのしかばねのようだ。
「さんちゃん…寝かしといたり。……だから言ったんや、ろくなことにならへんて。」
たぶんつづかない。
631 :
物書き修行中:2007/07/12(木) 23:07:18 ID:NiGvVBHA0
書庫の更新マダ?
>>631 チョwwwwwさらし者wwヒドスwwwwwww
車椅子とマネキンの足&毛布で良かったんじゃ??
>631
GJ!
地上最強の美女は知らなんだので、未来放浪ガルディーンのベリアルを想定したw
>>634 ガルディーンも結構古いと思われw
火浦功今なにしてんのかね?
>632
スイマセン、前回作業後に更新分をUpするの忘れてました・・・
639 :
物書き修行中:2007/07/15(日) 21:08:20 ID:eZ6QcvTd0
投下した後でもう取り返しがつかんですが…orz
「タマ姉の七夕」で婚姻届の紙、緑の印刷って書いてますが
婚姻届って印刷茶色か赤みたいですね。(´・ω・`)ショボーン
届け=緑ってイメージがあって反射的に書いてた。
やっぱ突貫で書くのはいかんね。
書庫の管理人さんに訂正を依頼すればいいと思います
641 :
物書き修行中:2007/07/15(日) 23:51:06 ID:eZ6QcvTd0
結局漏れが本物見たこと無いのが悪いんだけどね。
なぜなら草壁さんが漏れのヨメだから。(`・ω・´)シャキーン
愛佳も捨てがたいがな!
修正してもらえるんであれば、2/2の2行目
白地に緑の印刷をした紙を4つに折りたたんで短冊状にしたもののようだ。
↓
何か印刷をした紙を4つに折りたたんで短冊状にしたもののようだ。
つう事でおながいします。修正してもらえなくても恨んだりはしないですw
>641
修正しておきましたyo
>642
毎度更新乙です! 幾つかNGワードで消えてたSSがあったのでこれで読めるw
「恋愛同盟−宣戦布告」のラストが後書き扱いになってるyo
/^ \ ,ヘヘ、
l/, 二=‐宀ー〜-、
l / ` ヽ、
l i / / / i i ヽ
l i/ i / / iハ i i ヽ
. l i i/ _厶L/_i iハi i i i
| レi i ///∠/ノ i ナナトi i i|
. l |i i レ欠}f^ テマト|| i ハi
l ハ ト`辷ソ .じ:ソソ iノ / i / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
l l i ヽ 、 ゙^' /ノ /// < ん〜、我が性春、順風満帆
. l i i i|\ ー' , イ「// \
l ii, --- ∩-r 'i´ハ i |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/ | | |
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| |、 / | | ,| |
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| | |__/|
645 :
>526:2007/07/18(水) 03:25:26 ID:DP3/cdXO0
「花嫁は……」の続きです。かなり荒唐無稽な上、エロもいい加減です。
気に入らない方はスルーしてください。
646 :
花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:27:33 ID:DP3/cdXO0
ウェディングドレス姿のイルファを、よりによって自室のベッドに召喚――まさにそう呼ぶのがふさわしい状況だった――してしまった貴明。成り行きでベッドの上に正座した状態のまま、平謝りしつつ、ここに至る過程を彼女に説明した。
当のイルファはと言えば、最初は本当に驚いていたものの、貴明の説明を聞くにつれて、ポッと顔を赤らめたり、イヤンイヤンと頬に両手を当てて身体をクネクネさせたりと謎な行動をとって、彼を戸惑わせた。
(やっぱり、メイドロボにとっては、そんな非科学的なことは計算外で、認められなくてオーバーフローしてるのかなぁ)
そう言えば、何世代か前の来栖川製メイドロボは、頭がパンクすると湯気を出して止まってしまった……というような話を、雄二のヤツから聞かされたような記憶がある。
(イルファさん、大丈夫かなぁ……)
そう心配したものの、珊瑚の開発したDIAは、意外にファジィで融通の利くものだったらしい。
「なるほど、大体の事情はわかりました」
まだ少し頬が赤かったものの、イルファは落ち着きを取り戻し、おおよその状況は飲み込んだようだった。
「あ、ああ、うん。本当に信じられないような話なんだけど……」
「いいえ、貴明さんがこんな嘘をつくような方でないのは、よく存じあげております。それに、実際このお部屋に出現した際の状況は、超常的な手段でないと説明がしづらいものでしたから」
いまだ半信半疑な貴明よりも、むしろイルファの方が事態を受け入れているようだ。
647 :
花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:28:57 ID:DP3/cdXO0
「そうか、イルファさんが信じてくれてよかったよ」
ホッとした気分で貴明が微笑みかけると、なぜかイルファの様子が微妙におかしくなる。
(……そんな…あんな笑顔…反則ですわ……)
「?」
よく聞こえないが何かブツブツ言っているようだ。
「ああ、そうだ。そう言えばイルファさん、ここに来る直前はどこにいたの? 珊瑚ちゃんたちの家?」
「いえ、今日は研究所でメンテナンスを受けていたのですが……」
「それじゃあ、突然いなくなって、研究所の人が心配してるかもしれないね。そうだ! 電話を……」
慌ててベッドから立ち上がろうとした貴明の手を、そっとイルファが掴んだ。
「? どうしたの、イルファさん?」
「その……研究所に連絡する前にひとつお伺いしたいことがあります。貴明さんは……その……」
両手の人差し指をツンツンと突きあわせながら、真っ赤になったイルファが一瞬言いよどむ。が、すぐに意を決したかのようにキッと顔を上げて、貴明の顔を、目を真っ直ぐに覗き込んだ。
「先程のお話ですと、私のことを”理想の花嫁”として思い浮かべていただいたとのこと。それは……私に異性としての魅力を感じて頂いていると、理解してもよろしいのでしょうか?」
648 :
花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:30:01 ID:DP3/cdXO0
「いいっ!? そ、それは……」
「私は……貴明さんのことが好きです。私にとって、珊瑚様は”母”としての感謝と愛情の対象、瑠璃様は生きるための希望、”人生の道標”としての憧憬と敬愛を抱いております。
ですが、貴明さんに対する私の気持ちは、そのどちらでもない……けれどとても強い。たぶん……いえ、きっとこれが”恋”というものなのでしょう」
真っ正面からど真ん中ストレートな告白を受けて、一瞬頭が真っ白になる貴明。
「もし…貴明さんが、少しでも私に”女”としての魅力を感じてくださっているのなら……どうか、今晩一夜だけでも構いません、私を貴方の”お嫁さん”にしていただけませんか?」
とても真剣で一途な想いをぶつけられ、混乱しながらも貴明は自分の心の奥底を探る。
すると、驚くほど簡単に答えは出た。
「……やっぱ、ヘタレだよな、俺。女の子の方から告白させちまうなんて」
「? たかあき、さん?」
そっと、イルファの肩に手をかけて、そのまま……強く抱き締める!
「俺も、イルファさんのことが大好きだよ」
「! 貴明さんっ!!」
目を潤ませながらも幸せそうな満面の笑みを浮かべるイルファに、そっと唇を重ねる。
649 :
花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:30:37 ID:DP3/cdXO0
触れるだけの拙い口づけは、すぐに情熱的な熱いキスへと変わっていく。
純白のドレス姿のイルファを強く抱き締める。
「うれしい…です。貴明さん……夢みたい……」
息継ぎの合間に途切れ途切れに呟くイルファの口を、貴明は再び貪る。
数十秒か、あるいは数分か……ふたりは情熱的な抱擁とキスを続けるが、高まる興奮は、やがてそれだけで物足りなさを感じさせるようになる。
いったん、唇を離し……けれど顔は近づけたまま、貴明は囁く。
「――順番が逆になっちゃったけど……イルファさん、俺のお嫁さんになってください」
「はい、喜んで……私を貴方の妻(もの)にしてください」
イルファその言葉とともに、貴明は彼女をベッドの上に優しく押し倒した。
すでに貴明の脳裏にはイルファをメイドロボとして見る意識はなく、このうえなく愛しい女性としてこのままずっと抱き締めていたいと言う気持ちで一杯だった。
肩の露出したストラップレスのドレスを脱がしつつ、ゆっくりとイルファの肌を愛撫していく。
まず肩から。そしてゆっくりと下りていき、やがて形良く膨らんだイルファの乳房に貴明の掌は辿り着いていく。
「んんッ! あぁ……本当に、貴明さんに……触れていただけるなんて……」
人工物だなんて微塵も感じさせない柔らかな感触に、貴明は思わず溺れてしまう。
650 :
花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:42:25 ID:DP3/cdXO0
「あっ……貴明さん、もう少しだけ優しく……」
「! ご、ごめん。あんまりイルファさんのオッパイが気持ちよくて……」
慌てて謝る貴明を、イルファは限りない愛しさを込めた眼差しで見つめる。
「いいえ、私の乳房をそんなにも気に入っていただけたのなら、嬉しいです。もっと続けていただけますか?」
返事の代わりに、貴明は膨らみの先端、色づいた赤い突起に口付ける。
「……キャッ! も、もう、貴明さんったら!」
悪戯っぽくたしなめながらも、イルファの目には隠しきれない欲情の炎が見えた。
彼女が嫌がっていないことを確かめると、貴明も続きとばかりに右の乳房に舌を這わせる。もう一方の左の乳房は掌でもみしだく。眼を閉じて、イルファはその行為をじっと受け止め続けた。
「……んッ……」
女性経験どころか、キスさえも初めてだった貴明の舌使いは、それほど技巧が凝ったものではない。むしろ拙いと言った方が正確なのだろう。
しかし、イルファにとっては彼の愛撫はいかなるジゴロのテクニックよりも身体を、心を燃え立たせる効果があった。
(ああ……これが……愛しいという気持ち………)
貴明の舌が肌の上を走り、乳房にぐっと押し付けられるたびにイルファは甘い吐息を漏らし、同時にそれが貴明にかつてない興奮を与える――という、無限のループが形成されていた。
「やッ……あッ……はぅんッ」
そうして、彼女の吐息が荒く、不規則になってきた頃合いを見はからって、貴明はゆっくりと舌を乳房から下へと侵攻させていった。
651 :
花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:43:51 ID:DP3/cdXO0
「あぁ……はぁん……たか、あき、さぁん……」
切れ切れに彼の名前を呼ぶイルファ。
頭を下腹部の方まで進めた貴明は、イルファの両脚に手をかけて、いったん顔を上げる。
「――ちょっと恥ずかしいかもしれないけど、いい?」
「……いい、ですよ。貴明さんの思う通りに……シて…ください……」
その答えを聞いた貴明は、ゆっくりとイルファの下肢を開いていく。ほどなく、彼の目の前に両腿のあいだの薄い繁みとその奥のピンク色をした柔襞が姿を現わした。
「うわぁ……綺麗だよ、イルファさんのココ」
「ひッ……やぁん、そんなに……見つめない、で……うぁッ!?」
おずおずと伸ばした貴明の指先に触れられて、ビクンッと、今までより一層大きくイルファの身体が跳ねた。
「わ、悪い。強過ぎた?」
「……ち、違います……大丈夫、ですから……」
荒い息をつきつつ、イルファは首を振る。
652 :
花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:44:33 ID:DP3/cdXO0
「続けても大丈夫?」
「は、はい。すごく気持ちよかった……って、は、恥ずかしいっ」
すでに桜色を通り越して、真っ赤になって身悶えるイルファ。
その反応に勇気づけられて、貴明は指を動かし始めた。
「くうんッ!」
と、またイルファがびくんと全身を震わせる。
「……ちょ、ちょっと、待ってください」
はぁはぁと、ひどく荒く息をつきながら、イルファは呼吸を整えようと努力する。
「……も、もう、我慢できそうにありません。貴明さん、来てください」
「ああ……」
実のところ、貴明の方も一杯一杯だった。イルファの脚を抱えあげるような体勢のまま、彼女のソコに痛いほどに勃起した自分のモノ押しつける。
そのまま正面から、覆いかぶさるようにゆっくりと身体を重ねる。
くちゅり、と軽くソコを突ついたあと……ずぬゅっと水音を立てながら、貴明自身がイルファの秘肉に包まれていく――
「あぁ……」
653 :
花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:45:12 ID:DP3/cdXO0
彼女の中は少し潜っただけでも、激しく収縮し、奥へと誘ってくるようだ。
その上肉襞は包み込むように動き、まだ入り口から少し入っただけだというのに貴明のモノを締めつけてくる。
極上の感覚だった。初めての女性体験だが、これが名器と言うものなのかもれない。
「……うッ」
一瞬、放出してしまいそうになったが、懸命にこらえる。
「じゃ、じゃあ……続けるよ……」
「はあはあ……はい…お願い……しますッ」
余裕がないのはイルファの方も同じようだ。
それでも続けているうちに何とかコツを掴み、ふたりの動きが徐々にスムーズになっていく。そして……。
こつん。
と、何か引っかかるものに貴明自身の先がぶつかった。
(ま、まさか、こんなものまであるなんて……)
「イルファさん、ちょっと痛いかもしれないけど……我慢してね 」
「えっ!? は、はい」
耳年増な雄二によれば、女の子にとって、いたずらにその瞬間を長引かせるほうがむしろ辛いらしいとのこと。濡れ具合や性感の高まり自体は十分そうなので、貴明は一気に奥へと押し入った!
654 :
花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:46:14 ID:DP3/cdXO0
ぷちっ!
何かを突き破る感触。
そして、障害を抜けた貴明自身が、一気にイルファの奥へと突き込まれた。
背中に回されてた彼女の腕が、力の限りに俺の身体を抱きしめる。それだけでは納まらず、形のよい爪が背中に食い込む痛みを感じる。
しかし、そんな程度の痛みなど、貴明にとっていかほどのこともない。腕の仲の愛しい女性は、もっと激しい痛みに耐えているのだろうから。
顔には苦痛の表情と、両目から零れる涙が二筋。
「……くぅ……や、やっぱり、ちょっと、いたいです、ね」
「ごめん。大丈夫?」
「い、いえ、平気です。それより……私、本当に貴明さんのモノになれたんですね」
目の端に涙をにじませながら、ニコリと笑ってみせる目の前の女性が限りなく愛しい。
貴明は、ぎゅっとイルファを抱き締めると、万感の想いを込めて口づけた。
その姿勢のまま、ゆっくりと前後に動き始める。
溢れ出る液体が潤滑油となって、やがて徐々にその動きが滑らかに、リズミカルに
なっていく。
「あ、あ、あ、あ……」
痛感よりも快感のほうが勝り始めたのか、彼女の喘ぎに艶めいたものが混じり
出した。
655 :
花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:46:56 ID:DP3/cdXO0
「……はぁ、んっ、くぅ、ふぅ…はぁん。貴明さん、す、凄く、いいです……あ、私、もう…ダメ……」
淫靡なじゅぷじゅぷという水音が接合面から響いてゆく。
「ぁん…そこ、ダメぇ…」
すっかり上気した艶やかな顔が、心にもない拒否の声をあげる。
貴明は、懸命に腰を動かしながら、両手でイルファの乳房をもみしだき、唇を貪り、舌を絡めあった。
「ひぃああああああああッ」
ついにイルファが、のぼり詰める。
「あぁっ! いいっ! わ、私の中に出してっ! 一緒にイってくださいっ!! あああぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
彼女の膣がさらにぎゅぅっと痙攣するように貴明を締めつける。
「う、うわぁあああああああああああっ!」
叫び声を上げつつ、自身を膣内で痙攣させるように蠢かせながら、貴明はイルファの胎内に、びゅくびゅくびゅくと大量の精液をぶちまけた。
「ひぃぃぃぅぅぅぅん、んぁ、あぁ…」
貴明の熱いほとばしりを受けて、イルファは恍惚の表情を浮かべながら絶頂に達した。
あまりの快楽の刺激に、完全に意識を飛ばしている。
貴明の方も未知の快感と心地よい疲労に飲まれ、しばし意識を失った。
656 :
花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:49:04 ID:DP3/cdXO0
「ご、ごめんね、初めてなのに、無理させたみたいで……」
意識を取り戻すとともに、自分のしたことが恥ずかしくなって、謝罪する貴明。
とはいえ、ふたり並んでベッドに横たわったままなので、ある意味滑稽だ。
実際、想いを通じ、一線を越えてしまったふたりあいだには、隠しきれない――というより、隠す気もない――ラブラブで甘甘な空気が漂っている。
「い、いえ……貴明さんに、その……いっぱい愛していただいて、とてもうれしかったです……」
恥ずかしそうに毛布にくるまり、チョロッと目から上だけのぞかせているイルファ。
いつもはお姉さんっぽい雰囲気なのに、そういう仕草をするととてつもなく愛らしい。
(う……これが萌えってやつなのか!?)
普段、雄二が力説している数々の萌え理論にはいっこうに肝銘を受けなかった貴明だが、百聞は一見に如かず。いまの自分なら「イルファさんと萌え」という講演会を開いて演説することさえできそうだ。
「え、えーと……そうだ! イルファさん、けっこう汗だくになっちゃったし、シャワーでも浴びない?」
ちょっとアブない方向にいきそうになった思考を軌道修正し、何とか言葉をヒネり出す。
「そ、そうですね……あら?」
照れ臭そうに応えるイルファの声色が微妙に変化する。
「? どうしたの、イルファさん」
「おかしいですね。私どもメイドロボの皮膚には汗腺機能はついてないはずなのですが、貴明さんから出た汗だけにしては、何だか多過ぎる気が……」
――その後、シーツについた紅いシミや、彼女の目から流れるはずのない涙が出ていたことなど諸々の証拠から、イルファが”メイドロボ”と言うより”人間の女の子”と言ったほうがよい身体になっていることが発覚するのだが……、ま、それは別のお話。
「当然だ。うーの嫁ならば、うーの子が産めないとな(ニヤリ)」
657 :
>花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:51:50 ID:DP3/cdXO0
以上、第2話です。10以上占領して申し訳ない。
前回予告したとおり、もう1話分ネタはあるんで、続きが書ければいいんですが……
gj。イイヨイイヨー、エロくてイイヨーw
しかしまさかの妊娠フラグ?続き期待してます。
それはそれとして…一応sageといた方が良いと思うな
>657
エロいの乙。メール欄にsage、と入れるのと、
できれば題名に1/11とか入れて全体のレス数がわかるようにして貰えると嬉しい
660 :
名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 09:29:21 ID:dmc2liD/0
SS自体が3時50分とかの投稿で、4時や5時にマンセーと返すわざとらしい単発IDが2匹か
完全にジサクジエンのケースだな
ま、何はともあれお疲れさん。いつかそういうお返事が本当に別の人間から返ってくるようになるといいねぇwwwww
>>657 乙です
イルファさん好きなんでハァハァさせていただきましたw
続き期待してます!
>>660 疑いすぎwwwせっかくSS投下も増えてきたんだし、またーりいこうぜ
また自演&自演否定?
葉鍵ヲタってきもいね
自演の太鼓もちっていうのはSS主体のスレッドでは欠かせない存在ですよ
特にここまで過疎が深刻だったり、おのれの作品に自身がなかったりした場合はね
乙さだよ
個人的にはロボのままが好きだけど、続きでどう料理するか楽しみ
あとsageは入れないと見ての通りだから、次回はお願いします
なんか、ご覧のとおりってまるで実は俺の仕業ですって言ってるみたいだけどw
と、このように何でもかんでも悪意として判断をする人もいるから
批判のレスも真面目な内容以外は気にしなくていいと思うよ
ま、どこのSSスレでも起きるお約束の現象だな
668 :
花嫁はメイドロボ?痛い過去告白編:2007/07/18(水) 15:12:02 ID:V/1hRS0n0
痛い過去
厨房時代
好きなキャラの絡み(当然♂同士)を下手な絵で描いておき机の中に入れ、
何とテスト中に机の中を覗き、その紙を見て妄想しニヤニヤしていた
当然カンニングを疑われ「何見てるんだ、出しなさい」
自分の下手さも、男同士の裸絡みの絵がヤバイのも充分に自覚してたので
本気で青ざめた。見せたくない。見られたら死ぬ。でも見せなくてもカンニング疑われて死ぬ。
最終的に腐女子の汚点とカンニングの汚点を比べ、後者の方が重いと判断して紙を見せました
そのときの先生の顔なんて忘れた、知らない興味ない
普通に考えりゃカンニング疑われることくらい分かるだろうに
当時の自分に時と場合を考えろと説教したいよ
つまり、どこのSSスレでもそのようなジサクジエンをやってるのですね
*IDが違うのは別回線&PCから入ってるせいです
真面目な感想くれた方、サンクス。
誹謗系カキコに関しては……うーむ、私が2ちゃんに書いたSSはどうも槍玉にあげられる機会が多いです。厨くさい設定&文章がダメなのかしら。
ほかのHPに書いた場合はそれほどでも……あるか。某型月最低板でも非難轟々だったし。
一応、つづきは書く所存ですが、むしろエピローグ的なものなので、期待しない方が吉かと。
そうだね。自分でも心当たりがあるなら直すべきだろうね
がんばれw
>>670の文章がもうね\(^o^)/なにもわかってない
誤解のないよう初めに言っておくと、SS自体が叩かれることなんて滅多にないと思うよ。
悪意を持って原作のイメージをぶっ壊してたりする場合は叩かれるのかもしれないけどさ。
今回も内容に関して突っ込まれてるわけではないってのは、日本語読めれば分かるだろ。
具体的に言うと、自分に対する非難めいたレスを「誹謗系」なんて表現してみたりとか
わざわざ「続きは書くけど期待しないで」なんて書いて反応待ちっぽい感じだったりとか
そういう行為が鼻につくから槍玉にあげられるんじゃねーの?
敢えて言うなら、厨くさい設定&文章じゃなくて、厨くさい言動がダメなんだろうね。
>670
少なくとも漏れの>659が自演でないのは判る(当たり前w)から特に慰めはしない
SS投下は乙だが、>668みたいなのは意味が判らないし、
SSでないのにタイトルつけるのはSSと紛らわしくなるからやめてほしい。
あと個人的にはsageて欲しい。でも、また書いてね。煽りは気にすんな
ここの姐さんに比べれば、まだまだだぜ!な過去がフィードバック
厨房の頃、質より量でホモ小説を集めてた
自室の本棚奥に隠してたけど
ベ ッ ド の 下 に エ ロ 本 を 隠 す
という設定に憧れ、ベッド下の右棚に表紙上にしてホモ小説を並べて収納
引き出せばズラ〜っとカオスな世界が楽しめる棚に大変身☆
しかし私は忘れていた…隣の左棚はベッドシーツ収納専用だということに…
母上が頻繁に開け閉めする棚だということに…
後はもう…言わなくても分かるよな…?
675 :
670:2007/07/18(水) 21:22:22 ID:t2YM16Qb0
>672
>具体的に言うと、自分に対する非難めいたレスを「誹謗系」なんて表現してみたりとか
>わざわざ「続きは書くけど期待しないで」なんて書いて反応待ちっぽい感じだったりとか
あ〜、言われてみれば確かにそうかも。反応自体(つづけてヨシ/やめとけオラ)は期待していたので、あながち間違いではないのか。
”誹謗”と書いたのは、折角誉めてくれた人を自作自演扱いされたから、ちょっと頭に血が上ったかも。単純に「つまんねーよ」と言う評価ならスルーしたんだけどね。
ちなみに668は私が書いたのじゃないのであしからず。
なんでお前はそんな全力で釣られたがるんだ
そういう手口で荒らしにかかってるだけだろ
本当に何でも悪意として捉えるんだなw
本当じゃんw
批判や煽りはともかく、せめてGJとだけは言っておこうぜ
っわけで>657GJ
そうやって具体的な感想を出さず、「とりあえずGJと言っておけば良い」
みたいな反応が一番書き手のやる気を削るのに。
うーん、GJのみもノーリアクションも経験したが後者の方がだいぶ辛かった
どっちにしろ、次がんばろうと思うしかないのは一緒だけどさ
ひとつでも具体的な感想があがってきた時の嬉しいこと嬉しいこと。批判はもっと嬉しい
>>681 それは被害妄想だ
つまらない作品にはGJもつけずにノーリアクションだから安心するんだ
ほんとここの住人は作家ばっかだな
読者より作家のほうが多かったりしてな
作者は普通一人だから、読者が作家より少ないってのは誰も読んでないって事だw
作家だって他の人の作品を読めば読者だし、読者だって書けば作家だし
まあ自分のサイト持ってSideStoryLinksに登録した方が読者は多いだろうが
ちょっと前に出だしだけ書いたSSがメール送信箱にあったので折角だからうp。
最初に見た友人に「ToHeart2である意味は無いし描写が意味不明」と言われorzってたけど、
今後のために意見、提案を下さい。面白い/続きが気になると思う人がいたら続き書きます。
こいつはこんなキャラじゃない、ここの部分の設定はありえない、○○は俺の嫁、なんでも
結構ですので。
これでOKかな。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「ハァ、ハァ、うくっ、ハァ、ハァッ……」
――広い部屋の中。あたしと貴明<アイツ>のリズミカルな吐息が響く。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「ハァ、ハァ、ハァ……」
――カラダが熱くてたまらない。さっき洗濯したばかりだというのにもう下着までグショグショ
だ。熱いあついアツイ……もう咽喉がカラカラだった。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「ハァ、ハァ、んっ、ハァ、ハァッ……」
――お互い限界が近いのはわかっている。ちなみに今のは咽喉に粘つく唾を飲み下した音だ。
誰もいない病院の一角、あたしと貴明がこんな事をしているなんて姉には想像もつかないだろう。
姉にはとても見せられない。
「ハァ、ハァ、ハァ……くっ!」
「――!!」
――あたしが一瞬気を許した隙を貴明が機敏に突く。この男は、苦手だ。細かい反応から
あたしの弱点を即座に見つけそこを重点的に攻めてくる。先ほどから同じところを往復していた
貴明の手はより大胆さを増してあたしを追い詰める。もう後がない。お願い、もう行かせて……!
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァッ……」
――こんな形<なり>してあたしもオンナ、貴明<オトコ>の前には手も足も出ない。それが
悔しい、口惜しい。だから吐息を押し殺す。この男に聞かれるのは癪だ。でも後がないのは事実。
だから、あたしは最後の抵抗<わるあがき>を始めた。
――手を行き来する褐色の●に
――左手は添えるように優しく
――右手は和えるように激しく
――口が開いた。はしたなく涎が迸る……かまうものか
――蕩けてぶれる視界で対象を直視しながら
――放った。
……ボールは吸い込まれるようにネットを揺らした。自分でも驚く完璧なスリー・ポイント・シュート
。
――貴明は目の前の状況が飲み込めないらしく目を白黒させていた。 5−4。勝った……!
西暦2004年。年号で言えば平成十六年、皇紀では2664年……だったような気がする。
映画ではタイムトラベルが可能になったりゴジラとモスラと三式機龍(改)が戦ってたり
幻魔の群れが巴里を襲撃してたり……あら?オーク巨樹だったかしら?まあ良いわ。
とにかくちょっと昔の人たちが夢見た世界は所詮夢物語でしかなく、毎朝東日に顔をしかめ
通勤するお父さん達に嫌々学校に行く子供達、そして少数の暇な人たちを主成分に今日も世界は
回りつづけている。夢見がちな作家の皆さんはこんな“未来”は予想もつかなかったのか。
いや、まてよ。
『神は天にしろしめし、世はなべて事もなし』
なんだ、19世紀からわかってたんだ。ようするに人生なんて暇。退屈。なんてツマラナイ、
オモシロクナイ、コノセカイ。そんなことをあたしが思うのもまああたしがそんな人々の「日常」から除け者に
されてるからなんだけどね。
自分でも長い前振りだと思うけどとにかくこの年の五月十五日はあたしには忘れられない日となった。
。あたしが「日常」に組み込まれる日。この白亜の非日常から色褪せた日常に足を踏み入れられる日。
今日はあたしの眼の手術日なのだ。
あたしの名前は小牧郁乃。今年から高校(おっと、大人の都合で“学園”と言わなきゃいけないのよね
)に通う事になったごく普通の女の子だ。強いて違うところを上げるとすれば、今までの十年間をほぼ病院
で過ごした位かな――
今のところは以上です。
この後、幼少期いくのんが小児バセドウ氏病及び糖尿病に罹患しそれにより
大元の病気が「自己免疫疾患」である事がわかります。
所変わって2004年の町田市。手術の成功後もなぜか歩く事のできない郁乃は車椅子付ながらも
外の生活を謳歌していました。ある日、郁乃は貴明と雄二がバスケットボールに興じているのを
みます。足元に来たボールを持ち上げ、なんとなく放ったボールは見事ゴールへ。このとき感じた
「このボールは入る」という感覚が忘れられず車椅子バスケを始める事に……
って感じで話を進めようと思います。リハビリもきちんとこなしており体力的には万全。下半身が動かないのは精神的
なものだ……って設定は苦しいですかそうですか。
いくのんは目の手術してなかったっけ?
この地点でアウトじゃ……
690の前半の薀蓄部分丸ごといらんだろ。
うむ、長期療養により体力が異常に落ちていたから車椅子生活なわけで、
よく食ってリハビリすればそのうち歩いたり走ったりさえもできる。
695 :
物書き修行中:2007/07/21(土) 10:08:03 ID:8n2KPfVN0
恋愛同盟の続きが書けたんで投下します。
スレが荒れ気味だったんで少し投下を控えてる間におまけも書いたので
そっちも一緒に投下します。
全部で16レスあります。
「タカ坊…私はタカ坊の事が好きよ。あの頃から、ずっと。」
私の口から、その言葉が自然とこぼれていた。
そして、じっとそれを聞いていたタカ坊は、少し間をおいて、ゆっくりと答えた。
「俺は…」
恋愛同盟 第3話 向坂環の憂鬱
最近、タカ坊の周りが騒がしい。
いつものように通学路の途中でタカ坊とこのみと待ち合わせて学校へと行くんだけど、
最近その先に、
「おはようございます」
「たかあきくんおはよう」
「おはよっ」
3人の女の子が合流するようになっていた。
一人は長い黒髪が良く似合う日本的美人の娘−草壁優季
もう一人は春の日向みたいに穏やかな娘−小牧愛佳
最後の一人はMTBに乗る元気の塊みたいな娘−長瀬由真
どういうわけだかこの3人が最近タカ坊と親しくしている。
このみはというと、初日にあっさり手なずけられてしまっていた。素直なのはこのみの
良い所なんだけど…。
最初、雄二からタカ坊が転校生と付き合うことになったらしい、その転校生は小学校の
頃の同級生で、言ってしまえば私と同じような境遇でこちらに戻ってきてタカ坊と再会し
たのだと聞いて、私はタカ坊を諦める気になった。
だがその後なぜか2人の女の子…しかもそれぞれに魅力的で可愛らしい女の子が増え
た。何時からタカ坊はそんな女ったらしになったのかしら。彼女が出来たとたんに苦手意
識克服…どころか逆に女好き…ってことは、さすがにありえないわね。
雄二を締め上げて聞き出した所では小牧さんはタカ坊と同じように男の子が苦手だった
そうだし、長瀬さんは元々タカ坊に何かと突っかかってくるライバルのような間柄だった
らしい。でも私にはわかる。あの子たちはタカ坊に好意をもっている。
なんだか腹が立つ。九条院に行ってからというもの、タカ坊に選ばれても恥ずかしくな
い様に学業もスポーツも家事もほとんどトップで頑張って来たし、何より女だって磨いて
きた。その辺の女の子に、女としては負けているとは思っていない。なのに私はあの輪の
外に居るのだ。
そりゃ、私は素直じゃない。何度もタカ坊に私のことを「好き」と言わせようとしたこ
とがあっても、一度も自分からタカ坊に「好き」と言った事が無い。
結局、自分は行動する勇気が持てなかったから、輪の外に居るのだ。
なら、手遅れかもしれないけど、せめて行動しよう。
−
「それじゃ、また明日。」
「はい、また明日。」
「それじゃあね、たかあきくん。」
「また明日ね。」
「そんじゃ貴明、久々にゲーセンで対決と行こうぜ。」
私たちは貴明さんと校門で挨拶を交わして別れました。私たちは3人で用事があるの
で、今日はここで貴明さんとお別れです。貴明さんは久々で男同士の友情を深めるとか
で向坂君に引っ張られていきました。
「タカ坊は行ったみたいね。」
いつの間にか、私たちの後ろに向坂先輩とこのみちゃんが立っていました。
「それじゃ、行きましょうか。雄二には軍資金を与えてタカ坊を引き止めるように言って
あるから、暫くは帰ってこないわ。」
私たちは向坂先輩のお家へと案内されました。
とても広くて立派なお家で、武家屋敷というんでしょうか…大きなお庭には錦鯉まで泳
いでいて、向坂家というのが名家だというのがわかりました。
私たちはそのお庭を見渡せる広い茶の間に通されました。愛佳さんはどうも落ち着かな
いみたい。由真さんはというと「結構立派な家ねぇ」とか値踏みしてるみたいです。
「小牧さん。別に取って食べたりしないから落ち着いて。」
お盆にお茶の道具を乗せて現われた向坂先輩はそう言って愛佳さんを落ち着かせるとお
茶を煎れて私たちに勧めてきました。
暫くお茶をすする音だけが静かな部屋の中に聞こえていましたけど、このみちゃんが最
初に口火を切りました。
「ねえタマお姉ちゃん、先輩たちまで呼んで今日は何の話なの?」
「最近のタカ坊について、かな。タカ坊に直接聞いても良いんだけど、あなた達から聞き
たいと思って。…あなた達はタカ坊のことが好きなのよね?」
「「「はい。」」」
「で、誰がタカ坊の彼女なの?」
愛佳さんと由真さんは答えに困って私の顔を見たので、私が答えることにしました。
「一応、今のところは私が貴明さんの一番ということですが…」
それから、私たち3人の間で取り決められた勝負とそのルールについてお話しました。
お話の間向坂先輩は少しあきれた顔をしていましたけど真剣にお話を聞いてくださいま
した。
「…つまり、今あなた達はタカ坊の彼女に立候補してプレゼン中というわけね…」
「まあ、そういうことになります。」
「3つ又というわけではないのね…ところで、そのルールなら途中参加もOKって事よ
ね。」
向坂先輩の目が獲物を狙う目になってにやっ、と笑いました。あ、愛佳さんが怯えてま
す…やっぱり小動物系な愛佳さんは猫っぽい向坂先輩には弱いのかな。
「あなた達が認めれば私とこのみも参加可能って事よね。」
「た、タマお姉ちゃん!こ、このみもでありますか!」
「あら、このみだってタカ坊の事好きでしょ?」
「あ、あのぉ…向坂先輩と柚原さんはきっと駄目だと思います…」
ぎろっ
「ひ!」
愛佳さんが口を挟んだら向坂先輩がものすごい目でひとにらみしたので、愛佳さんはそ
のまま固まってしまいました。
「ちょっと、向坂先輩…愛佳に喧嘩売ってるんですか…代わりにあたしが買いますけ
ど。」
「その子が私とこのみを否定するからよ。そりゃ、こちらは幼馴染でタカ坊との仲はあな
た達よりもはるかに強固だから、脅威に感じるのもわかるけど。」
「た、タマお姉ちゃん…長瀬先輩もやめてよ〜」
竜虎相打つ、といいましょうか、剣呑な雰囲気のお二人をこのみちゃんが止めようとし
ていますけど、お二人の視線は互いの目をにらんだままです。ここはきちんと説明をしな
いといけませんね。
「向坂先輩…愛佳さんが駄目だといったのは、そういうことではありません。」
「…じゃぁ、何なの?」
「多分、貴明さんが認めないということです。この間、貴明さんと私たちがデートした時
のことです…」
私は、私たちと貴明さんがデートした、この前の日曜のことを話し始めました。
−
「え、タマ姉とこのみの事?」
私たちはその日、駅前にあるオープンカフェのテーブルの一つに陣取って、前夜に話し
合った取り決めについて貴明さんに報告していました。
一通り夜のお茶会の様子と、3人の間で取り決めたルールについてお話した後で、由真
さんが一つ質問をしました。
「あの二人って、たかあきとどういう関係なの?」
「…タマ姉とこのみは幼馴染だよ。タマ姉は雄二のお姉さんでこのみはお隣さん。このみ
とはずっと一緒に育ってきて妹みたいなものだし、タマ姉は今年の春に戻ってきたばか
りだけどその前から俺と雄二にとっては頭のあがらない存在だよ。このみには激甘だけ
どね。」
「…本当にそれだけですか?」
私はじっと貴明さんの目を見て答えを待ちました。私から見ても、あの二人は貴明さん
に好意を持っているように見えましたから。でも鈍感さんの貴明さんは気づいていない可
能性も大いにあるんですけど。
やがて、貴明さんは降参というように肩をすくめて見せた。
「実はね…昨日愛佳と由真に告白されて、帰ってから夜一人で考えてみたんだ。」
「…何をですか?」
「自分に向けられてる好意について。昨日告白されるまで、俺は愛佳と由真の気持ちにつ
いて…自分に向けられている好意なんて考えもしていなかった。それが一体どんな好意
なのかを。」
「……」
「だから、俺が気づかずに見逃している好意がないか、考え直してみたんだ。そして一番
身近な好意…このみとタマ姉のことを最初に考えた。」
貴明さんは冷めたコーヒーを一度口に運んで一息つきました。
「…むかしタマ姉が九条院に行く前の日に、俺はタマ姉に呼び出されて、そこでタマ姉に
告白されたんだ。でも当時の俺は子供で、その告白が本気だとは思わなくて…タマ姉を
傷つけた。…その時から、俺は女の子を傷つけるのが怖くなった…そして、昨日考える
まで、その事を忘れていた…いや、目を背けていたんだ。」
「だから、たかあきは女の子にはやさしくしてしまうって訳ね。」
「うん…でも、きっとタマ姉も同じで、あのときのショックから抜け出せていないんじゃ
ないかと思う。久しぶりに再会したタマ姉は、すっかり大人っぽい女性になってたけ
ど、芯の部分はあの頃から変わってなかった。あの時はなんでタマ姉が突然戻ってきた
のか解らなかったけど、もしかしたらあのときの答えが俺から聞きたくて戻ってきたん
じゃないかと思ったんだ。再会したときも「タマお姉ちゃんすきすき大作戦」とか茶化
してたけど、本当は俺から好きだって言う一言が引き出せないと、怖くて自分の気持ち
が言い出せなくなってるんじゃないかって思ったんだ。」
後悔しているような表情で貴明さんはそういうと、はぁ、とため息をついた。
「じゃあ、このみちゃんの事はどう思ったんですか?」
「このみは昔から妹のような存在だったけど、俺のうぬぼれじゃ無ければ最近は半分恋人
のようなものだったと思う。…実際俺とこのみは第3者から見れば恋人のような行動を
していたし、もし何も無ければそのまま恋人になっていたんじゃないかって思うくら
い、お互いに横に居ても疑問に思わない存在だったと思う。でも、俺はそれから目を背
けて、兄妹のような立場で居ようとした。それはこのみを傷つけていたのかもしれな
い。」
そう言って貴明さんは口をつぐんだ。これらはあくまで貴明さんの推察ではあったけれ
ど、でも私にはそれほど的外れとは思えなかった。
「…もしお二人が、わたしたちと同じようにたかあきくんの恋人の立場を望んだらどうす
るの?」
少しして、愛佳さんが貴明さんに結論を促すように言った。
貴明さんはその問いにはっきりと答えた。
「きちんと答えを出そうと思う。俺の中で二人の存在がどんなものか…もう答えはあるん
だ。」
−
その通りだ。私は小さな女の子だったあの日から少しも変わってはいない。
…いや、違う。
私は小さな女の子だったあの時から、怖くて一歩も前へ進めなくなっているのだ。
だから、今こそ勇気を出して一歩踏み出さないと。
学校の裏山の祠の周りには、タカ坊と私以外にはこのみとあの子達3人しかいない。
時折風が揺らす木々の葉音だけがざわざわと聞こえるだけだった。
覚悟を決めて、目を開けると、目の前にはタカ坊がいる。
あの頃と同じでちょっぴり頼りないけど、でもあの頃とは違って立派な男の子になった
タカ坊は、私の言葉を静かに待っていた。
そして私はずっと言えなかった一言を告げた。
「タカ坊…私はタカ坊の事が好きよ。あの頃から、ずっと。」
私の口から、その言葉が自然とこぼれていた。
そして、じっとそれを聞いていたタカ坊は、少し間をおいて、ゆっくりと答えた。
「俺は…あの頃の俺は、タマ姉の事が大好きだった。だからタマ姉がふざけて言っている
んだと思って、あの時拒絶してしまった。でも、タマ姉は真剣だった。…あの時は、ご
めん。」
タカ坊はそう言って頭を下げた。そして、続きの言葉を告げた。
「今度は、きちんと答えるよ。…タマ姉の気持ちは嬉しいけど、今の俺はその気持ちにこ
たえられない。」
胸が苦しかった。タカ坊の胸に縋って、タカ坊を責める言葉を浴びせながら泣き出して
しまいたかった。でも、それは出来ない。タカ坊が次に何を言うか、知ってしまっていた
から。
「俺にとって、タマ姉とこのみは「家族」なんだ。恋愛感情じゃなくて、それ以上の強い
絆を感じる姉妹(きょうだい)なんだ。だからこれからもずっと雄二と4人で一緒だけ
ど、二人に対して恋人としての思いには答えられない。」
じっと私の横で口をつぐんでいたこのみが、タカ坊の前に進み出ると目に涙を溜めなが
ら、タカ坊の目を見上げて自分の真摯な心を言葉にした。
「このみはね…このみは、一人の女の子として、たかくんの一番なりたいと思ってた。で
も、たかくんは私の事家族だって言ってくれたから、ずっと傍にいても良いって言って
くれたから、それだけでも嬉しいよ。ずっとたかくんの妹でいても良いんだよね。」
「うん…」
「明日は笑っておはようって、いうから、今だけ、泣いても、いいよね…」
「うん…」
タカ坊がこのみの小さな肩を抱き寄せると、このみはタカ坊の胸で静かに泣きはじめ
た。私も、タカ坊の胸に縋って泣きたかったけど、でも姉としての立場が邪魔をして、素
直に泣けない。
タカ坊はそんな私を見て、すっと手を差し出してきた。私は無意識にその手をとってい
た。
「タマ姉も、泣いてもいいんだよ。」
その一言が、私の中で素直な心を邪魔していたプライドを溶かしてしまった。
我慢していた涙がぼろぼろこぼれてきて止まらなかった。
私はタカ坊の胸に縋って泣いた。タカ坊は私とこのみの頭を撫でてくれた。それが心地
よくて、また涙があふれてきて、でも嬉しかった。
−
「おはようございます貴明さん」
「たかあきくんおはよう」
「おはよっ」
「3人ともおはよう」
いつものように3人の子達と合流して、今日も7人で登校する。
「けっ、なぁんで貴明ばっかりもてるんだよ。まったく…って、ちょ、ギブ、ギブ、割れ
る割れる割れる」
「あんたのそういうところが駄目なの。たまにはタカ坊を見習って下心なしで無償の奉仕
をしてみたら?」
「見返りも無いのに奉仕なんてそんなの空しいっての…って、あの、お姉さまごめんなさ
い…」
「あははは…タマお姉ちゃん、そのぐらいにしないとユウくん死んじゃうよ。」
「あ、あの、向坂先輩も…おはようございます…」
小牧さんがちょっとおどおどしながら挨拶してくる。昨日は脅かしちゃったから仕方な
いわよね…
「小牧さん…私の事は環でいいわ。私も愛佳ってよぶから。」
「え?…あ、あの…はい、環さん。」
愛佳はきょとんとして私の顔を穴が開くほど見つめてたけど、少しして正気に戻ったみ
たいであわあわとあわてていた。ほんと、ハムスターみたいな子ね。
「あなた達も環でいいわ、優季に由真。」
「はい!環さん。」
「解りました!環先輩。」
「あなた達の勝負、私も見届けさせてもらうわ。…言っておくけど、たとえ勝負に勝って
もタカ坊にふさわしく無いと思ったら、遠慮なくタカ坊を取り上げるわよ。」
そう言って、ちょっと脅しを掛けておく。
「え、環先輩それずるい!環先輩はリタイヤしたんじゃ。」
「私は一度も降参するとは言ってないわよ。勝負には参加しないけど、タカ坊を誘惑する
のは止めないわよ。…あなた達が争っている間にタマお姉ちゃんの魅力でタカ坊をめろ
めろにして奪っちゃうってのもいいかもね。」
そういいながらいつものようにタカ坊をぎゅっと抱きしめた。
「だ、駄目だよ、タマお姉ちゃん!」
「タマ姉!」
「盗られたくなかったら、せいぜい女を磨きなさい。そして私がうらやましいと思うくら
いのカップルになりなさい。」
「環さん…」
「…私はタカ坊の恋人にはなれなかったけど、あなた達にはその資格がある。…タカ坊、
しっかり考えて答えを出さないと許さないわよ。ほら!」
私は抱きしめていたタカ坊の背中をバシッと叩いて優季たちの方へと放り出した。タカ
坊は勢いあまってよろよろと3人の方へとよろけて、そして倒れそうになって思わず目の
前のモノにしがみついたんだけど…
ふにょん。
「あんっ。」
「へ?」
タカ坊は由真にしっかりと抱きついて、その豊かな胸に顔をうずめていた。由真はって
いうと、タカ坊に顔をうずめられて色っぽいあえぎ声を上げていた。
「わわわっ、ご、ごめん!」
「……」
由真は両手で胸を隠してプルプル震えている。やれやれ、ちょっとタカ坊にお仕置きが
必要かしら。
右手の調子を確かめてタカ坊の頭へ向かって伸ばそうとしたんだけど、
「でーと」
「え?…由真?」
「二人だけでデートしたら許したげる。お昼と映画、全部おごりで。」
「わ、わかった…」
なんだ、しっかりしてるじゃない。余計な心配だった見たいね。
「じゃ、今度の土曜にでも…」
「たかあきくん。」
「へ?」
「私も、たかあきくんとデートしたいなぁ…勿論二人っきりで。」
「ぐ…わかった。」
「ということは、当然私ともデートしてもらえるんですよね?貴明さん。」
「ううううう…」
「諦めなさい、タカ坊。優季たちには誠心誠意尽くすのよ。女の子を泣かすのは男として
最低なんだからね。」
この美人のタマお姉ちゃんとかわいいこのみを振ったんだから、このぐらいの苦労はし
てもらわないとね。
俺はその場から逃げ出した。
走りながら空気中に光るものが飛び散っていたけど、涙なんかじゃない。
これは心の汗なんだ…。
恋愛同盟 第2.5話 閑話:向坂雄二の悲劇
俺の日曜の朝は早い。
理由の半分は姉貴にたたき起こされるためだ。休日だからとウッカリ寝過ごした日には
何されるのかわかったもんじゃねぇ。
貴明のやつが空気読んで姉貴の気持ちに気づいてくれりゃ、今頃貴明と無事にくっつい
た姉貴は大人しくなってくれてたかもしれないが、優季ちゃんとくっついちまった今とな
っちゃそれも無理だろうし。
…にしても、小学校の頃も結構可愛い子ではあったけど、大きくなってあんなに美人に
なって帰ってくるとわかってりゃコナかけておいたのになぁ。
とにかくまだまだ布団と離れがたい気分を振り払って起きると服を着替えて身だしなみ
を軽く整える。Tシャツとストーンウオッシュのジーンズで高校生らしくサワヤカ系で決
めて、洗面所で顔を洗って髭をそって髪形を整える。鼻毛がちょいと伸びてたので少し切
って完了。うっし、今日もいけてるぜ。
その後、小言を受けながら姉貴の用意した朝飯を食う。やれ箸の使い方が悪いのなんの
と言われながら飯を掻き込むと、余計な用事を言いつけられる前に洗面所で歯を念入りに
磨いて自分の部屋に戻ってパーカーを羽織り、まっすぐ玄関に向かい家を出た。
門をくぐるときに後ろで姉貴が何か言ってたみてぇだけど、つかまると厄介なので聞こ
えないふりをして小走りで家から離れた。
とりあえず貴明の家に向かう。俺の好みの年上のおねぇさんは貴明みたいなちょっと頼
りない系が母性本能を刺激して良いらしい(姉貴談)から、何のかんのと理由をつけてナ
ンパの時は貴明を連れて行くことにしている。まあ、アレだ、おとりを使って鮎を釣るが
ごとく、年上で美人のオネェさまを釣るわけだ。貴明のやつがヘタレなせいで、いいとこ
に行く前にいつも逃げられるわけだけど。
とか言ってる間に河野家に到着。呼び鈴を押したけど返事が無い。こんな朝っぱらから
出かけてるのかよ…しかたねぇ、今日は一人で行くか。
俺は駅前に向かって歩き出した。貴明なんていなくても俺の甘いマスクがあれば十分よ
…いまだにナンパがうまく行ったためしないけどな…。
−
太陽はもうとっくに真上を過ぎて午後に入っていた。
俺はというと朝から声掛けしているにもかかわらず一人もつかまっていなかった。
声の掛けすぎで喉はからからだし、昼を食っていなかったんで俺はナンパを一時中断し
て駅前のオープンカフェに向かった。どうにも旗色が良くない。飯食ったらショバを変え
て再挑戦だな。
そんなことを思いながらオープンカフェまできたら、その隅のテーブルに見慣れた顔を
見つけた。貴明のやつ、こんなところに居やがったのか。しかも一緒にいるのは優季ちゃ
んといいんちょと隣の組の長瀬じゃんか。デート中にでも偶然会ったとかかねぇ。
たかあきのやつ女が苦手とか言いながら何であんなに女の子に人気あるんだか…世の中
は理不尽だぜ、くそ。
ま、コブ付きとはいえ、女の子と食うほうが飯は旨いからな。声でも掛けてみるか。
「よう、貴明。」
「あ、雄二…もしかして、またナンパか?」
「おう。おまえこそ、優季ちゃんというものがありながら、いいんちょと長瀬を口説いて
るんじゃねぇの?」
「あー…」
「…?」
いつもならココで必死に貴明が否定すると思ってたんだけど、今日の貴明は妙に歯切れ
が悪い。
仕方ないんでいいんちょに話を振ってみた。
「いいんちょもこんなバカップルと一緒にいないで俺と遊びに行かない?」
「あー、えっとぉ…ごめんなさい。」
ま、いいんちょは男苦手みたいだし。予想の範囲内だな。そんじゃ、と長瀬のほうに声
をかけてみる事にした。
「じゃ、長瀬はどうだ?お茶ぐらいご馳走するぜ。」
「なんであんたと遊びに行かなきゃならないのよ」
うわ、つめてぇ。でもこれぐらいで引き下がる雄二様じゃないぜ。
「貴明には優季ちゃんがいるからな。ここは俺も加えてダブルデートって事で」
「あたしあんたみたいな軟派な男って嫌いなのよね。」
取り付く島も無ぇ。
「大体デートの相手ならあたしも愛佳も足りてるっての。」
「?相手なんていないだろ?」
ここにいる男は俺と貴明だけだし…
「ま、まさか、おまえ…いいんちょとレ」
「違うわよこの馬鹿!」
「…じゃ、どこに相手なんかいるんだよ。」
そういうと、長瀬は顔を真っ赤にしながら貴明の腕を取った。
「え?貴明は優季ちゃんと付き合ってるんだろ?」
「そうですよ。」
そう言って優季ちゃんも反対側の貴明の腕を取った。
「ま…まさかとは思うが、いいんちょまで」
「…うん…ごめんねぇ。」
いいんちょは顔を赤く染めながら小首をかしげて俺に言った。うわ、恋する乙女の顔だ
よ。
納得できない俺は貴明に向き直った。
「貴明!説明しろ!…説明によっちゃ、タダじゃおかねぇぞ。」
3つ又なんて姉貴が知ったらどんなことになるか…なにより優季ちゃんと付き合うって
事で諦めた姉貴とちびすけの気持ちを踏みにじる気なら一発なぐらねえと気がすまねぇ。
「あー雄二、これには深いわけがあって…」
貴明によると、長瀬といいんちょが優季ちゃんにライバル宣言して、優季ちゃんもそれ
を認めたとか言う。
「あ、ありえねぇ…」
「まあ…俺もそう思うよ。」
「ありえねぇ…女嫌いの貴明が激モテで、この雄二様は一人身だと〜」
「は?」
「こ、この恋愛帝国主義者めぇ〜!!!」
この世の不条理さに打ち震えながら、俺は人差し指をびしっと貴明に突きつけると、
「これで勝ったと思うなよぉ〜!いつか俺様のハーレムを作り上げて見返してやるぅ〜」
捨て台詞を残してそのラブラブ時空から逃げ出した。目からあふれ出るのは悔し涙なんか
じゃないぞ。これは心の汗なんだぁぁぁぁぁ…。
「あ〜、雄二…」
「あ…あたしの台詞盗られた…」
「向坂くん、ああいう所がなければいい人なのにぃ…」
712 :
物書き修行中:2007/07/21(土) 10:57:44 ID:8n2KPfVN0
というわけでタマ姉話&雄二哀れの2つでした。
途中ですが今回からちょっと体裁を変えました。
前回までの流れだと語り部が由真→愛佳と来たので優季になるべきなんですが、
ふつーにデート話書いてもつまんねぇというのと、女の子3人にモテモテ状態の
タカ坊を見てタマ姉が黙ってるはず無いということでタマ姉の話を書いてみました。
だもんで、語り部はタマ姉&時々優季となってます。
雄二話はそのすっ飛ばした分のプチ補完になってます。
ちなみに一緒に告白したはずのこのみの台詞がほとんど無いのは仕様です。
このみの描写を入れると文がくどくなるんであえてあまり書いてません。
タマ姉。・゚・(つД`)・゚・。
>>692、694の人
リスクの少ない(でもゼロではない)目の手術をして体力が回復すれば学校に行ける、でしたよね。
確か。
愛佳曰く郁乃の病気は「自分自身の抗体が自分を攻撃する」という事で「自己免疫疾患」と言う
事にしました。アジア人において視力障害から始まり、手足が痺れる原因、治療方法不明の病気
という事で「多発性硬化症」、愛佳が食いしん坊な事から自己免疫疾患の一種「バセドウ病」にも
罹患していると。
目の手術さえすれば学校には行けますが患者の14%は慢性的に(普通の生活には支障のない程度に)
進行します。だから下半身に運動麻痺や感覚障害が出るなら上半身は達者でも車椅子生活かなと。
でも設定に無理がありましたね。ちょっと車椅子バスケについて調べてきます。
>>693の人
薀蓄というよりネタを詰めてみました。よく考えたら世間から隔絶されたいくのんがサクラ大戦やら
鬼武者やらあまつさえゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOSにタイムコップなんて知ってる訳ががありませんね。
では丸ごとカットしてきます。
>714
ネットで自己免疫系の疾患眺めていくのんスレで何人かと妄想垂れ流してたら
「実在の病気にあてはめようとするのキモい」って怒られた事あるな漏れw
色々考えるのは楽しいけど、作中で病名や症状が明言されてない以上
どこまでいっても「そんな感じの病気」って事に留まるしそれでいいんだろうね
もとから膠原病系の個別の病名は症状の名前みたいなもんだし
まあ実際、甲状腺の疾患だったら、眼の手術は考えにくいしね
症状を見ればアリかと思うが、治療は甲状腺一部切除か投薬だろうし
中学高校とバスケやってたんで、車椅子バスケには期待
>>715の人
そうですか……母の病状がいくのんの劇中の描写にそっくりな事もあり自己免疫疾患という
設定を思いつきましたが(←やや親不孝)、実在の病気にせず架空の病名(自己免疫疾患の一種)って事
にしましょうか。 治療にはミキュームの肝か仙命樹が必要と(ゲーム違)。
>>716の人
母は手術をしたと思います。それが自己免疫疾患の治療の一環か別の病気かはわかりませんが。
幸い母はけろっと(日常生活に不満が無いほどには)なおりました。
ともあれ、はじめて続きを読みたいという人発見。やっぱり続き、書こうかな……?
正直に言って、今の時点で続きが面白そうだとは思えない。
今回公開した部分って、出オチと薀蓄だけなんだよね。
だから本筋がどんな話なのかサッパリわからない。
前半部みたいなギャグ中心で行くなら正直寒いし、後半部の知識垂れ流し状態で進めるならオナニー乙で終わりだし。
これらがアクセントや状況説明にしか使われないなら、また違った印象になると思う。
批判の感想っていうのはあんまり作者のためにはならないと思うけど、
本人が望んでるならたまには書いてみようか。
車椅子バスケみたいなテーマを書くには、
文章内容含めたすべての態度が不謹慎すぎて不快だと思った。
その組み合わせはちょっとなあ……
でも、ほかに読みたい人がいるっていうならやればいいと思うけど?
あと俺の感想にレスする必要はないです。
設定に難がある、そもそも出だしの部分で面白そうと感じない、テーマに対する僕の態度が不謹慎
という事で、この作品は封印します。
少しでも興味を示してくれた716の人には申し訳ありませんでした。
次何か書いたらまたUPします。その時も批評等お願いします。マイナスの批評が文章力の糧となると
思うので。
最後に、今後の参考までに少しでも“良かった”“面白くは無かったけどここの試みは悪くは無かったかも”
と思うところがあれば教えて下さい。とにかく、自分の文章力を磨きたいのです。
こういうスレで学べるのは、
文章力というよりは物語全体における雰囲気のような物だと思う。
文章力をつけたいと思うならもっと本を読むとか、
そういう事からしていくしか無いんじゃないかな。
一石二鳥で身につく物でもないし。
まぁ、次の作品を出すなら、
その作品に期待させてもらうし、応援させてもらうよ。
おーい。一朝一夕だろ。
とりあえず、最後まで書け
途中で投げるな、できないなら書くな
文章力云々なんて、最後まで書ける奴に初めて言う事だ
>>712 乙
個人的にはデートの部分こそ是非見たかったんだが
725 :
物書き修行中:2007/07/22(日) 12:33:17 ID:N71wt5VJ0
あとがきした時に忘れてたんでまず、書庫の管理人様、修正サンクスです。
>>724 こういう話の性質上デート話は書かざるを得ないので、そのうち書きます。
人数構成自体が普通じゃないんで、普通に書いても中のいい友達同士の遊びっぽい
話になっちゃうんで、ちょっと変則的な話で書きたいと思ってます。
とりあえずオレは桜の群像が待ちどおしい。
てか最近ここのSSってイルファものがやたら多い気がするけどイルファってそんなに書きやすいのか?
あといくのんも。
シルファやミルファほど詳細不明って訳でもなく、本編にも出てきて
取っ掛かりが合ってなおかつ想像の余地が大きいって事でしょう。
要するにキャラがある程度わかって妄想を膨らませやすい。
いくのんもイルファさんと似たような位置ですな。骨格はあるけど肉付けは自由
その分ADで「俺の妄想と違うーっ!」が続出でしょうな。漏れには自分事ですけど
>726
桜の群像の作者です。待ってくれて有り難う御座います。来週末くらいにはなんとか
いくのん書きやすいかなーと思って見事に詰まった人もここに。
なんというか、どうデレさせるというか、どう氷解させるかが難しい気がしますよ。
UMA・愛香好きの俺にSSを推薦してくれないかい
アナザーデイズがまちきれないぜ
>>730 名前を間違えるやつが愛佳好きとは片腹痛い。
「片腹痛い」って、たしか「みっともない」って意味だったよね、タカちゃん。(何の話だ)
愛佳SSなら我楽多工房の「優しい嘘を」てのが好き。でもここできくのはちょっとスレ違いかもと思う。
とりあえず、ToHeart2 SideStory Links に行く事を推薦する。
とりあえず公式のシルファ立ち絵だけで飯が食えます
>>735-736 >>733は別に質問として書いてるんじゃないだろ。
ちなみに、片腹ってのは当て字で、
周りから見て痛々しい、「傍ら痛い」ってのが正しいはず。
うーあげあしをとるのはみっともないぞ
大辞林 第二版 (三省堂)
かたはらいたい 【片腹痛い】<
(形)[文]ク かたはらいた・し
〔中世以降、文語形容詞「傍(かたはら)いたし」の「かたはら」を「片腹」と誤ってできた語〕
身のほどを知らない相手の態度がおかしくてたまらない。
ちゃんちゃらおかしい。笑止千万だ。
「あの声で歌手とは―・い」
『傍らいたし』――そばで見聞きしていて心が痛む、いたたまれなくなる様子だ、つまりは
『みっともない』という意味だぞ、うー。
本来はるーのようにそばにいるものがいづらくなるほど立派なこと、優れていることを示す
言葉だったのだが……うーたちの言葉は移り変わりが激しすぎる。やはりうーたちは革命されるべきだな。
みたいな意味だった。でも激しくスレ違いなのでせめてるーこ口調で。
「『だらしない』は間違った表現で、正しくは『しだらない』と言うべき」
こういう語源厨と同レベル
そうだね
よく語源の意味にこだわって突っ込みたがるヤシがいるけど
言葉の意味は時代と共に変わっていくので、現行の意味合いで
運用するのが普通と思うが。
だからこの場合は>732は別段用例として問題ないし、>733の1行目が
余計な突っ込みだって話だ。
いや、>733のは突込みじゃなくてボケかw
はいはい役不足役不足
そういや、少し前に注送と注迭の違いを力説してた香具師がいたなw
書き手が色々気にするのは理解できなくもないが、
読み手は単語よりも文章の意味と雰囲気を読むもんだろうと思うんだがね
>>743 はい。自分としてはボケのつもりだったというか……浅はかでした。
別に語源とか意味とかはどうでもよく、花梨が話の流れを読まない子感を出したかっただけです。言葉は生き物であり常に変化するという事は知っていますし語源厨がウザイのは僕も一緒です。
とりあえず
ToHeart2 SS好き同志にオススメSSを紹介したい→でもここではスレ違いっぽい→冗談っぽく言えばスルーしてくれるだろう
というだけの話。
んで740で質問じゃなく答えを知っててあえて書いたんだよ的な事を書こうとしたら途中でうp……orz
IDでわかるだろと思ったらID変わってるし。結果としてジエンぽくなってしまいましたが733、740は自分です。お騒がせして申し訳ありません。
ちなみに733後半は730への返答ね。
自分で言うのもなんですがスレ違い気味じゃないですか?今。
それでは、『桜の群像』の続編でお楽しみください
748 :
732:2007/07/25(水) 22:55:14 ID:iZiXskXd0
>>732を書いた後、一日経ってこのスレを覗きにきたら
話が発展していて驚いた…。
さすがにSS作家の人は言葉遣いに敏感ですね。
あまり言葉を選ばずに書き込んでしまって
スレ違いの話題を産んでしまってすみませんでした。
>>748 気にする必要ないと思うぞ。大体の意味が取れるなら問題ないし。
SSスレだからとかじゃなく、こういう話題でも無いとレスが付かないぐらい末期なだけだから。
まあ、すぐ末期だの過疎だの言いたがるのも含めて日常だな
>>1 ※容量が480kを越えたあたりで次スレ立てを。
んじゃ立ててみる。
乙。
埋めは恒例の春夏陵辱か?
>>754 そんなのあんの?w
春夏さん好きだからいいけどw
新参乙。
夏なんだなぁ………
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
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>>759 > うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
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> > うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
> > うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
> > うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
> > うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
> > うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
> > うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
> > うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
> > うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
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(^o^)ノ オワタ 三┌(^o^)┘オワタ /|
ノ( ヘヘ 三 ┘> 三 ┌(^o^)┘オワタ | ミ
(^o^)ノ オワタ 三 ┌(^o^)┘オワタ ┘>/ | ミ \( ^o^)/ オワタ
ノ( ヘヘ (^o^)ノ オワタ 三 ┘> ┌(^o^)┘オワタ / ミ |_/
ノ( ヘヘ 三 ┘> / / | ノ ノ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| / | ミ
| / | ヽ(^o^ )ノ オワター ミ \( ^o^)/ オワタ
_____________________|/ | \(\ノ ミ | /
| | ミ ノ ノ
| | ミ \( ^o^)/ オワタ
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|| || ||| (^o^) | || │ | ミ\(^o^)/ オワタ
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