ToHeart2 SS専用スレ 1

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1名無しさんだよもん
新しい出会いや恋、そして友情に笑い、悲しみ。
すべてが始まり、終わるかもしれない季節。
季節といっしょに何かがやって来る、そんな気がする―――。


ToHeart2のSS専用スレです。
新人作家もどしどし募集中。

※SS投入は割り込み防止の為、出来るだけメモ帳等に書いてから一括投入。
※名前欄には作家名か作品名、もしくは通し番号、また投入が一旦終わるときは分かるように。
※書き込む前にはリロードを。
※割り込まれても泣かない。
※容量が480kを越えたあたりで次スレ立てを。
※一定のレス数を書き込むと投稿規制がかかるので、レス数の多いSSの投下に気づいた人は
 支援してあげて下さい。
※コテハン・作家及び作家の運営するサイトの叩きは禁止。見かけてもスルー。

前スレ
ToHeart2 SS専用スレ 18
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1166482884/l50

関連サイト等は>>2
2名無しさんだよもん:2007/04/28(土) 22:44:02 ID:dPPKpMvb0
AQUAPLUS『To Heart2』公式サイト
ttp://www.aquaplus.co.jp/th2/

ToHeart2 スレッド 過去ログ置き場(仮)
ttp://f55.aaa.livedoor.jp/~kuma/toheart2/
本スレや各キャラスレはこちらから。

ToHeart2 SideStory Links
ttp://toheart2.ss-links.net/

各キャラの呼称相関図は
ttp://botan.sakura.ne.jp/~siori/hth/
内のToHeart2呼び方相関図を参照。

ToHeart2 SS の書庫 (スレの全作品保管)
ttp://th2ss.hp.infoseek.co.jp/
3名無しさんだよもん:2007/04/28(土) 22:51:45 ID:KK0pA2DK0
>>1
タイトルワロタw超乙www
4名無しさんだよもん:2007/04/28(土) 23:23:56 ID:t1XFElyK0
1から出直しってかw

>>1
5名無しさんだよもん:2007/04/28(土) 23:34:28 ID:BGvGOGY/0
>1から出直し超乙w
6名無しさんだよもん:2007/04/28(土) 23:45:52 ID:P6a2mvh40
削除依頼してやり直しだな
7名無しさんだよもん:2007/04/28(土) 23:47:14 ID:9GMcMAJt0
    、, _
   /^f!´  `ヽ
    | iミイヌハ从リ
    リハ(!=ヮ=ノi < これはさーりゃんの処女膜も再生するって事だな
8名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 00:06:01 ID:hqO0zrJG0
>>1 とりあえず乙w
よし、「ある日、アイス屋の前にて」あたりから出直しだなw
9桜の群像 第17話「Hello,world(前編)」 1/11:2007/04/29(日) 00:27:06 ID:9JfaN9Vt0

環らが去ってから、1週間ちょっと。
「ふあぁ〜っ」
貴明が欠伸したから、というわけでもないが
「眠そうだねぇ貴明くん」
愛佳の表情こそ眠そうで、2−Bは何事もなかったように平和だった。
「なんだか気が抜けてるな、お前ら」
机に頬杖ついて、つまらなさそうに雄二。

「そういう雄二が一番気が抜けて見えるぞ」
「環先輩がいなくなって、緊張感が緩んだんじゃないですか?」
あっさりと反撃される。
「くくくっ、何を言うか。姉貴さえいなくなりゃ俺様の天下だ、自由を満喫するぜ!」
がばっと身を起こして叫ぶ。クラスの恥。
「と、なる筈なんだがなあ……」
が、すぐに空気が抜けて、顎が机に逆戻り。
「確かに、どーも気合いが入らなくてな。なんでだろ」
ぼやく雄二。
貴明と愛佳が顔を見合わせる。
「そりゃまあ」
「ねえ……」
なにやら頷き会う恋人二人。
「なんだよ」
むすっとした雄二。悪戯っぽく問いかけたのは愛佳の方。
「玲於奈さんには、ちゃんと電話してるんですか?」
「あ?」
きょとんとする雄二。
「別に、なにもねえよ」
文句あるか、と言いたげに吐き捨てた言葉に。
「ええ〜っ! 連絡とってないのっ? あんな楽しそうに話してたのに」
愛佳は、目を丸くした。
10桜の群像 第17話「Hello,world(前編)」 2/11:2007/04/29(日) 00:28:52 ID:9JfaN9Vt0

「連絡、取ってはいないのですか?」
「え、ええ、別に」
薫子が尋ねて、玲於奈が答えた。
キョトン……。
カスミが、意外そうな顔をした。

九条院大学付属女学校。
烏の濡羽色の制服に身を包んだお嬢様達の世界に、三人は舞い戻っている。

「なんですの、その顔は」
不本意そうな玲於奈。
その表情に、少し影がある。
「別に私が、雄二さんに連絡をする理由はないでしょう?」
疑問形だが、半分は自分に言い聞かせているような口調だった。

……。
首を傾げるカスミ。
「そうですね……」
薫子はしばし思案して、
「確か今月、緒方理奈のコンサートがありましたよね」
突然そんなことを言い出した。
「そ、それがどうかしまして?」
言葉と裏腹に、玲於奈は動揺している。
「チケット、雄二様に頼んでいたのではなかったでした? 取れたんですか?」
「!」
薫子の指摘に、ビクっと震える玲於奈。
「何故、それを・・・」
「背中で聞こえていましたよ。楽しそうな会話が」
むしろ呆れた口調で薫子。
「べ、別に、楽しそうな会話なんて……」
11桜の群像 第17話「Hello,world(前編)」 3/11:2007/04/29(日) 00:29:52 ID:9JfaN9Vt0

「してねえよ。楽しそうな話なんて」
「むうぅ〜っ」

場面戻って2−B。
雄二の否定に、納得がいかない様子の愛佳。
「連絡してあげたら、喜ぶと思うんだけどなぁ」
「女子寮に電話なんでできるかよ。大体、理由ねえだろ」
「うーん……、あ、ほらほら、今度緒方理奈のコンサートがあるじゃないですか?」
「ぶっ」
飲んでいた缶コーヒーを吹き出しかける雄二。
「汚ねえなあ」
「悪ぃ。それがどうしたよ」
前半は貴明に、後半は愛佳への言葉。
「確か玲於奈さんもファンだったよね。誘ってみたらいいですよきっと?」
「……」
雄二は押し黙る。

件のチケットは、ネットで売ってしまっていた。
玲於奈が転校してしまった今、もう渡すこともないと思ったから。
実際には、いくらでも手段はあるのだが。
学園にいるうちに切り出せなかった雄二は、そういう気持ちにはなれなかった。

「ほら、デートとかそういうんじゃなくてもね、ファン同士の会話って感じで……」
「うるせぇな!」
事情を知らない愛佳の発言に、つい声を荒げた。
「人の事情に口出すんじゃねえよ」
「あ、う、うん……ごめん……」
厳しい口調に、俯いて謝罪する愛佳。
「でも、電話してあげたら、いいと思うな、あたし」
しつこいと思うけど、と前置きしながら、愛佳は最後まで拘っていた。
12桜の群像 第17話「Hello,world(前編)」 4/11:2007/04/29(日) 00:31:52 ID:9JfaN9Vt0

再び、九条院の続き。

「電話で聞いてみたらどうです? お姉様の御自宅の番号はご存じでしょう?」
チケットは入手していない、という玲於奈に、薫子が勧める。
「……」
黙る。
「どうせ、外出している暇はありませんわ」
やがて、言い訳めいた言葉が口をついた。
「週末でしょう? 外泊許可は取れると思いますけど」
追及。
「そ、そこまでして行きたいわけでは……」
嘘。
「それに、忘れてますわ、おそらく」
机に呟く、言い訳その2。
「向こうにいる間に、なにも話がなかったのですから……」
「色々と忙しかったから、気を遣ったんですよ、おそらく」
薫子、半分正解。
もう半分は、雄二の意気地なさと運のなさ。
「なんにせよ、連絡してみたらいいと思いますよ、私は」
コクコク……。
カスミも頷いた。
「そうでしょうか……」
玲於奈の表情は浮かない。
ただ、同時に、なにかを期待するような色が浮かんでいた。

「頼んだのは玲於奈の方なのだから、貴方から聞かないといけませんよ」
それを見て、薫子のもう一押し。
「……そう、ですわね」
それで、玲於奈も頷いた。
「今日の夕方にでも、電話してみることにします」
13桜の群像 第17話「Hello,world(前編)」 5/11:2007/04/29(日) 00:33:52 ID:9JfaN9Vt0

翌日。
九条院の校庭で、ちょっとした小競り合いが起きていた。

「お姉様、お疲れ様です!」
「タオルをお持ちしました!」
「スポーツドリンクなどいかがでしょうか?」
「なによ、私が最初にお持ちしたのですよ!」
「なんですってぇ!」
生徒達の渦の中心は、九条院に復帰した向坂環。
学内最大派閥―本人に自覚はないようだが―の領袖が復帰したことは、
一部の、しかし少なからぬ生徒達の生活に、多大な影響を及ぼしている。

具体的に言えば、下級生達による環お姉様争奪戦の再開。

環を連れ戻した三人娘は、その功績を感謝はされたが、それとこれとは話が別。
むしろ環に最も近い位置にある者として、厳しいマークを受けている。

そんなわけで。
ムギュ……。
「カスミ、大丈夫ですか?」
薫子が気遣う。
カスミはいち早く環の側を確保したものの、体力的な不利を受けて押し出されたのだ。
ケホケホ……。
「まったく、皆乱暴ですわね。怪我はありませんか?」
コクコク……。
頷いて、再度突入準備を整えるカスミ。
「行きますよ、玲於奈……玲於奈?」
と、薫子が周囲を見回す。
「どうしたんです? ぼんやりして」
玲於奈は、騒ぎから少し離れたところにぽつんと立っていた。
14桜の群像 第17話「Hello,world(前編)」 6/11:2007/04/29(日) 00:35:52 ID:9JfaN9Vt0

場面替わって、校門への坂道。
時間も少し遡って、朝の登校風景。

「どうしたの、ユウくん? ぼんやりして」
このみが、雄二に声を掛けた。
「あ、いや、なんでもねえよ」
「そうか、なんだか浮かない顔してるぞ」
これは貴明。
「……」
雄二は渋面になる。
「おはよう! 貴明くん、向坂くん、このみちゃん」
校門前で小牧家の車に遭遇。

「おはようございます! おはよう、郁乃ちゃん!」
「……おはよ。毎日元気でなによりだわ」
「お前ら段々、朝が遅くなってないか?」
「え? そ、そんなことは……あははは」
貴明と愛佳に加えて、このみと郁乃の縁も浅くない最近、
5人がここで合流するのも、珍しくはない。

「向坂くん、玲於奈さんに電話してみた?」
愛佳が、昨日の話を蒸し返した。
「っ」
あからさまに不機嫌な顔になる雄二。
ぎろっと愛佳を睨む。
「あ、いや、その……おせっかいなのはわかってるんだけど……」
縮こまる委員長。
「ああ、おせっかいだ。やめてくれ」
雄二は突き放すように言って、足を速めた。
脳裏に浮かんだ、昨夕の会話を振り払うかのように。
15桜の群像 第17話「Hello,world(前編)」 7/11:2007/04/29(日) 00:40:15 ID:9JfaN9Vt0

昨夕。
向坂家の電話が鳴った。雄二が受話器を取る。
「はい、向坂です」
「……」
沈黙。ただ、微かに息を飲む音が聞こえた。
「もしもし、どちらさん?」
「……」
また、沈黙。
「悪戯なら切るぞ」
黙って切らなかったのは、相手の雰囲気に少し気掛かりを感じたせいかも知れない。
その言葉に、受話器の向こうが慌てる。
「あ、あのっ、待って、くださいっ」
「っ!」
聞き覚えのある声に、今度は雄二の心臓が脈打った。

「玲於奈、か?」
「はい。雄二さん、です、よ、ね」
「当たり前だ」
「……」
簡単な問答のあと、またまた、沈黙。
「あー、その、なんだ、元気か?」
「……はい……雄二さん、も?」
「ああ、ピンピンしてるぜ」
「そうですか。良かったです」
「……」
またまたまた沈黙。
「あ、そのっ、お電話したのはですね」
「あ、ああ」
「あのっ、随分前の事で恐縮なのですけれどっ」
妙に上擦った声。
「前にお願いしていた、月末のチケット、どうなったかと……」
16名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 00:41:16 ID:eJ48w3Up0
17名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 00:41:38 ID:xw69qICN0
支援
18桜の群像 第17話「Hello,world(前編)」 8/11:2007/04/29(日) 00:42:00 ID:9JfaN9Vt0

「それで、もう処分されていたと?」
再び九条院。
騒ぎが一段落した休み時間。
薫子は、玲於奈から事情を聞き出していた。
「雄二さんは、自分の分を回すと言ってくださいましたけど」
「うーん……」
腕組みの薫子。
「転校前に、きっちり話をしておくべきでしたかね」
半分独り言。
「薫子が気にするような事ではありませんわ」
玲於奈が笑う。ぎこちなく。
「私も、別に気にしてはいませんから」
立ち上がる仕草も、ぎくしゃく。
「さ、行きましょう。次は美術ですよっ……とっ……痛……」
「……」
……。
歩きかけて、椅子に足をぶつけてうずくまった玲於奈を見て、薫子とカスミは顔を見合わせた。

@時間空間とも戻って。

「なんだよ。とっと行こうぜ。遅刻するぞ」
雄二の言。
このみと貴明が顔を見合わせる。

「玲於奈さんって、タマお姉ちゃんのお友達の2年の先輩だよね?」
このみが指摘した。
「一緒に海に行って、この前ユウくんが抱きしめて励ましてた」
「んぐっ」
先に行きかけた雄二がズッコケた。
19桜の群像 第17話「Hello,world(前編)」 9/11:2007/04/29(日) 00:45:05 ID:9JfaN9Vt0
「抱きしめてねえっ!」
「はれ、そうだっけ? なんだっけ、こう、肩をがしーって」
「っわっ、とっ」
このみは目の前にあった郁乃の両肩をつかむ。揺れる車椅子。
「……肩くらいは叩いたかも知れねえが……ってか何のぞき見してんだこのチビ助」
頭をつかんでアイアンクロー雄二版がしがし。
「ふ、ふえ? 目が、目が〜?」
渦巻き。
雄二がぱっと手を放すと、少女はふらふらと四人の周囲を回った。
思わず失笑する貴明、愛佳、郁乃。
だが雄二は、そんなこのみを置いて歩き出す。
どうもテンションが持続しない模様。

「むう〜〜〜〜〜っっ、酷いよユウくん」
このみが追いすがる。
「このみはね、ユウくんが教科書を返してくれるのを待ってたんだよっ!」
「……ああ、そっか」
ぼんやりと納得。
「遅刻ギリギリまで粘ったのに、けっきょく郁乃ちゃんに見せてもらったんだから」
「それは悪かったな。アイス奢ったから許せ」
気のない返事。
「むう、確かに賠償はしてもらったけど、それと反省は別物だよユウくん」
前半は膨れっ面、後半は冗談っぽい笑顔でこのみ。
貴明が郁乃をつついた。
「……お前、このみに変な言い回し吹き込むのやめろ」
「だれが?」
そんなやりとりも、雄二。

「ああ、ごめん」
さらっと流して、校舎の中へ消えていった。
20桜の群像 第17話「Hello,world(前編)」 10/11:2007/04/29(日) 00:48:03 ID:9JfaN9Vt0

気合の入らない状態は、その後も続いた。

@九条院
「玲於奈、なにをボーッとしているのです」
クイックイッ……。
「あ、す、すみません」
「もう、次は体育ですわよ。お姉様のお側を確保しなければならないのに……」

@2−B
「次、体育だぞ? なにやってんだ雄二」
「あ、ああ? 悪い。着替えだよな」
「わわわっ、こ、向坂くん、男子の着替えはA組ですよっ!」

そんなこんなで数日後。九条院。1限開始前。

「薫子っ! カスミッ!」
玲於奈が駆け寄ってきた。
薫子とカスミは、冷静な表情で迎える。
「酷いですわ、私を置いていくだなんて!」

玲於奈が言っているのは、九条院名物、全校生徒朝マラソンでの出来事。

トップでゴールする環を出迎えるため、コース途中で近道して戻ってくるのが三人娘の日課であった
―その後、環に距離が足りない事を指摘され「今から走ってきます!」と元気に不足分を走り直す―
のだが、今日、玲於奈は薫子とカスミに途中で置いて行かれ、迷子になって先程やっとゴールした。

「お姉様に会えずに一日が始まるなんて、考えられませんのに」
既に、周囲に環の姿はない。腐った玲於奈に、しかし。
「本当にそうですか? 玲於奈」
薫子が、真剣な表情で返した。
21桜の群像 第17話「Hello,world(前編)」 11/11:2007/04/29(日) 00:50:00 ID:9JfaN9Vt0
「え?」
薫子の質問に、きょとんとする玲於奈。意味が解らない。
「……つまり、ですね」
少し躊躇して、ちらとカスミと目を合わせてから、薫子は続けた。
「今の貴方が気にかけているのは、お姉様ではないのではないか、と言っているのです」
「な、なにを言うのです!」
気色ばむ玲於奈。
「いくら薫子でも、怒りますよ!」
「今も、お姉様が一番だと?」
「もちろんですわ」
「それなら、それで結構です」
あっさりと引き下がる薫子。
が、次の言葉。
「ですが、私とカスミは、今後貴方と一緒には行動しませんのでそのつもりでいてください」

玲於奈が息を飲む。
先の指摘で紅潮していた頬が、色を失っていく。

「な、なにを、今、なんて……」
「ご存じのとおり、こちらに戻ってからの、お姉様を巡る喧噪は以前の比ではありません」

薫子の声が、静かに流れる。
「足手まといを抱えている余裕は、私たちにはないのです」
その声が、少し地面に落ちていく。
「あ、足手まとい、私が、足手まとい……」
玲於奈の言葉は、虚ろな呟きとでも言うべきもの。
「ええ、そうです」
薫子は、再び顔を正面に引き上げた。

「はっきり申し上げて、邪魔ですわ」
22名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 00:51:18 ID:9JfaN9Vt0
前編は以上です。新スレ一発目から失礼します。
九条院の制服は、設定が見つからなかったのでマリ見ての真似。

今回、話が長いので前中後編の3話に分けました。
が、話自体は1エピソードだし、全体は既に引っ張り杉なので一気に投下します。

>16-17さん支援ありがとうございます。でも長くなるので無理せず寝てくださいw
では、中編
23桜の群像 第18話「Hello,world(中編)」 1/11:2007/04/29(日) 00:55:01 ID:9JfaN9Vt0

さらに数日経過。

「ぜーっ、はーっ、ぜーっ、はーっ……」
「なんだ向坂、やればできるじゃないか」

今日は、秋の学校の風物詩、いわゆるマラソン大会。
昨年は、というかこの手の行事ではいつも手抜きの後方待機策を取る雄二だったが、
今日に限ってはやたらハイペースで飛ばし、そのまま一桁順位でゴールしてしまった。

「ぐはぁっ!」
余力ゼロ。校舎の壁によりかかって座り込む。
ゴールできるといのは、本来その位のポテンシャルがあるということではあるのだが、
いかんせん日頃使わない性能を発揮して、体中が悲鳴を上げている。

ぼーっと見上げる、秋晴れの空。
「なにやってんだ、俺」
無茶な走り方をしたのは、忘れたいことがあったから。
だが、空を見上げていると、また脳裏に浮かんでくるもの。

3日前の夜。
ジリリリリリリリリ、ジリリリリリリリリ。
「はい、向坂です」
「もしもし、雄二様ですか。薫子です」
「ああ? ああ……」
この前は玲於奈で、今度は薫子。
立て続けに連絡がくるほど、自分は彼女らと深く関わっていたのだろうか。
「あまり長電話もできませんので、用件だけお話します」
浮かんだ感情を解消する間もなく、薫子は切り出す。

「玲於奈、九条院を出るそうです」
24桜の群像 第18話「Hello,world(中編)」 2/11:2007/04/29(日) 00:57:13 ID:9JfaN9Vt0
「え?」
「転校する、ということです」
「……」
聞き返し。返答。沈黙。
「……い、いつだよ。どこにだよ。それに、どうして」
俺には関係ない、そう思っても、声は上擦る。
薫子の返答は、端的だった。
「今週一杯で寮を出るとか。どこに行くかは、聞いていません」
「なんでだよ」
語気が強まる。
「理由は、それこそ玲於奈にしか判りませんが、最近、元気がなかったとは思います」
「そうじゃなくて、いや、それもあるけど、なんで行き先も聞いてねえんだ」
「必要、ありませんから」
薫子の口調は努めて冷たい。
「っ! なんだよそれ。お前、アイツの友達じゃねえのかよっ!」
「友達だからって、何もできない事もありますわ!」
思わず怒鳴った雄二に、薫子が強い口調で言い返した。
「寮の電話ですから、もう切ります。それでは、ごきげんよう」
「ちょっと待ておいっ……」
ガチャッ。
ツーッ、ツーッ、ツーッ。
受話器を持ったまま、雄二は呆然。

一方、九条院女子寮。
廊下の公衆電話。
乱暴に置かれた受話器が、少しずれている。
「あら、いけませんわね。はしたない」
薫子が受話器を直した。
「……だから、電話しましたのに」
そんな呟きを、雄二が知る由もなかった。
25桜の群像 第18話「Hello,world(中編)」 3/11:2007/04/29(日) 01:02:10 ID:9JfaN9Vt0

「ユウくん?」
「のわっ」
ひょこっと横からこのみの顔が出現し、雄二はのけぞった。
壁に頭。
「あたたたた……」
「わわっ、大丈夫?」
「大丈夫じゃねえよ。いきなり至近距離で出てくんな」
少女の自分に対する距離の近さ―貴明に対するほどではないが―は、慣れっことはいえ不意打ちだとやはり驚く。

「ごめんね。でも、みんなもう帰るよ?」
校庭を指さすこのみ。
大会はとっくに終了し、生徒達も三々五々。
「そうか。んじゃ俺もっとっタタっ」
立ち上がると、体中が痛い。
「久しぶりにあんな走ったからなぁ……」
「ユウくん。本当はこのみよりずっと早かったんだね」
男子を混ぜて前の方でゴールしたこのみも相当なものだが、少女は幼馴染みを誉めた。
「まあ、本気を出せばこんなもんだ」
自慢。
でも、いまひとつ元気がない。
「おし、帰るか、貴明たちは、どこだ?」
「……あのさ、ユウくん」
「ん?」
周囲を見渡した雄二の視線が、このみに戻る。

「あのね、えーっとね」
このみは、人差し指を頬に当て、首を左右に傾けて唸っている。
「あ、そうだ」
ぽん、と拳で手のひらを叩いてから、こう言った。
「伝えたいことは、ちゃんと伝えた方がいいよ」
26名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 01:03:29 ID:xw69qICN0
支援
27桜の群像 第18話「Hello,world(中編)」 4/11:2007/04/29(日) 01:04:00 ID:9JfaN9Vt0
「……」
このみを凝視する雄二。
「じぃーっ」
このみの視線は、真剣だ。
が。
「どういう意味だ?」
問うと。
「え、え? えーっとね……ちょ、ちょっと待って」
とことこと校舎の陰に消える。
数十秒後、戻ってくる少女。
「あのね、九条院には、タマお姉ちゃんもいるから、相談してみたらだって」
「誰が姉貴なんぞに」
「うーん……、ちょっと待って」
とっとっとっと駆けてゆくこのみ。
校舎の角で。
「タマお姉ちゃんに言うのはイヤなんだって」
「うーん、じゃあ……」

「なにやってんだてめーら」
「うわわっ!?」
背中から声を掛けられて飛び上がる愛佳。
貴明と郁乃も、日陰の作戦会議に加わっている。

「ったく。妙なことにチビ助を使うんじゃねーよ」
「だってさ、俺や愛佳が言ったって聞かないだろお前?」
「あのなあ、お前らにも関係ねーけど、このみはもっと関係ねーだろ?」
うんざりと雄二。
同時に、このみを面倒に巻き込みたくない、という保護者意識も健在である。

しかし、このみが首を振った。
「関係なく、ないよ」
28桜の群像 第18話「Hello,world(中編)」 5/11:2007/04/29(日) 01:06:02 ID:9JfaN9Vt0
「ユウくんが何を悩んでるのか、このみにはわからないよ」
むーと膨れてこのみ。
「わからないけど、ユウくんが元気ないのは、わかるもん」
拳はグーで胸元。視線は雄二。
「お前が気にするようなことじゃ……」
「このみはね、ユウくんには元気でいて欲しいんだよ」
真っ直ぐ。

「あー……」
このみのこういう視線には弱い雄二である。少し考える。
「まあ、大したことじゃねえよ」
ぽん、と少女の頭に手。
「ちょっと気になった女の子がいたんだけど、縁がなかった。それだけだ」
「……気になった女の子って、玲於奈先輩?」
上目。
「まあ、な」
「ちゃんと、好きだって言った?」
直球。
「いや、そこまで考えてたわけじゃ……」
「なんだ。単に意気地がないだけじゃない」

横から、というか斜め下から、口を挟んだのは郁乃。
「なんだよ」
雄二は、郁乃には遠慮する理由はない。
「事情を知らねえ奴は黙ってろ」
「事情を知らなくったって、一般論で言えるわよ。こんなもの」
いつぞやのお返しとばかりに切り返したが、郁乃は退治されなかった。
「縁がないってのはね、出来ること全てをやってから使う言葉よ」
面白くもなさそうな顔で言った後。
「告白もしないで女に縁がなかったなんて言ってたら、あたしなんて人生に縁がないわ」
付け加えたのは冗談のつもりか、くつくつと笑った。
29桜の群像 第18話「Hello,world(中編)」 6/11:2007/04/29(日) 01:08:12 ID:9JfaN9Vt0
「い〜くぅ〜のぉ〜! そういう事は言わないのぉ〜!」
「だあぁ! 暑苦しいから抱きつくな姉っ!」
物騒な発言を飛ばした郁乃が愛佳に泣きつかれて辟易している間にも、
「でも、それはダメだよユウくん」
話は続く。このみは真面目。
「好きな人に好きだって言わなかったら、たぶん、ずっと後悔するよ」
「だからそんな大袈裟な……」
「後悔するよっ!」

「う……」
迫力負け。というよりも、嘘と真実の強度の差。
「ちゃんと伝えたら、後悔しないよ」
にっこりと笑ってこのみ。
「結果が、どっちでも」
「「……」」
その言葉には、貴明と愛佳も神妙な顔をした。
先日、貴明への恋心にひとつ区切りをつけたこのみである。

「……帰るわよ」
郁乃の車椅子が背中を向けて、この場はそれでお開き。
「……考えてみる」
雄二はこのみに、曖昧な返答をした。

したものの。
「薫子がいってた今週一杯って、明日じゃねえか」
九条院から玲於奈が去れば、それこそ雄二との接点はなくなる。
いや、実家の電話番号も、知ってはいる。
行き先も聞いていないという薫子も、彼女と縁を切るつもりではないだろう。
環を通じて連絡を取ることも……
「……できるかよ。そんなこと」
そう思えば、考えている時間も、あまりなかった。
30桜の群像 第18話「Hello,world(中編)」 7/11:2007/04/29(日) 01:10:01 ID:9JfaN9Vt0

翌朝。雄二は、早くに目が覚めた。

曖昧な気持ちのまま、カーテンを開ける。
「なんだか、パッとしない天気だな」
昨日とはうってかわった、自分の心情を表すような曇り空に毒づいて、視線を路上に向ける。
その視界に、引っかかるもの。
「ん? 人?」
門柱の向こう側に、小柄な人影が見える。女性だろうか。
黒っぽい服。
「!」
その黒が、烏の濡羽色の制服の黒と気づいた時。
「玲於奈っ!?」
雄二は、表に飛び出していた。

「……んなわけねーか」
門を開けて道路に出た雄二。周囲を見渡すが、誰もいない。
「見間違いか?」
いや、確かに九条院の生徒だった。いかな雄二とて、姉が通う学校の制服くらい知っている。
だが。
「だからって、なんで玲於奈だよ……」
思い返せば、髪が黒かった気がする。
そもそも、向坂家に現れうる九条院の生徒といったら、第一順位は環だろう。
何故、赤髪の少女を真っ先に連想したのか。
「……」
(後悔するよっ!)
このみの声が脳裏に蘇る。
「……ええいっ! ちきしょうめっ!」
何に対するものか、自分でもわからない悪態をついて。

駆けだした。
31桜の群像 第18話「Hello,world(中編)」 8/11:2007/04/29(日) 01:12:23 ID:9JfaN9Vt0

@九条院

「引っ越しの準備は、終わりまして?」
「まあ、大きい物は……あとは今日の午後で頑張りますわ」
「手伝いますよ」
「ありがとう」
2限目の休み時間。教室で、薫子と玲於奈の会話。

「カスミ、どこにいったのかしら?」
「そう、ですね……お昼には戻ってきますよ、多分」
朝からズル休みで寮を出て行った少女の行き先に、薫子は心当たりがあるようだが、明言はしなかった。
「今日が最後だというのに……」
カスミの席―薫子の隣で、玲於奈の前―を見て、寂しそうな玲於奈。
薫子にも、複雑な視線を向ける。
「どうしました?」
「……最後まで、止めてはくださいませんのね。馬鹿なことをしているのに」
拗ね気味。
「まあ、馬鹿だとは思ってますけれど」
薫子は、家柄で優る玲於奈を立ててはいるが、こういう部分で遠慮はしない。
「止めない理由が、ありますから」

止める理由は、なくもないんですけど。そう前置きして、薫子はそう答えた。
「……まだ、怒ってます?」
また、少し言い淀んでから玲於奈。先週の件だろうか。
「怒ってませんよ」
「そうですか? なんだか機嫌がよろしくなさそうですけど」
朝から、というか今週ずっと、薫子の機嫌はいまひとつ。
「玲於奈のせいでは、ありませんよ」
が、薫子は笑顔を作った。
「私が怒ってるのは、もう一人の馬鹿にです」
32桜の群像 第18話「Hello,world(中編)」 9/11:2007/04/29(日) 01:16:55 ID:9JfaN9Vt0
「もう一人?」
「こちらの話。気にしないでください」
訝る玲於奈にはそう答えつつ、また不機嫌そうな顔になる薫子。
「玲於奈ですら、こんな度胸がありますのに……」
口の中で呟きながら、ふいっと窓の外を見る。
その視界の端。
校庭の向こう、正門の近くに、小さく人影が映った。
「来校者? こんな時間に?」
窓を開けて―薫子の席は窓際にある―、身を乗り出す。
「あっ!」
ほどなく挙がる、驚きの声。
「どうしました、薫……」
玲於奈が声を掛け終わる暇もなく、
「玲於奈っ!」
薫子が、玲於奈の手を引いた。

「な、なんですの? もう授業が……」
「いいから、こっちへ!」
薫子は、有無を言わせずに玲於奈を引っ張る。
「いったいどうしたと……」
戸惑いながらも、友人の剣幕に押されて教室を出る玲於奈。
静かに歩くべき廊下を走る2年生の姿に、他の生徒達が目を丸くする。

「ちょっと、靴を履き替えないとっ」
「構いませんっ!」
二人は手を繋いだまま、校舎から飛び出す。
「はぁ……はぁ……」
息せき切って辿り着いた正門のすぐ近く。

そこには、雄二がいた。
33桜の群像 第18話「Hello,world(中編)」10/11:2007/04/29(日) 01:19:15 ID:9JfaN9Vt0

きょろきょろと構内を窺っている雄二は、駆け寄ってきた二人に直前まで気づかなかった。
「雄二さんっ!?」
掛けられた声に、ぎょっとした様子で振り返る。
「玲於奈? 薫子?」
向き直った雄二の正面に、二人は立ち止まる。

とん。
薫子が、玲於奈の背中を押して、友人を一歩前に出した。

雄二は、少女を見つめる。
九条院の制服に身を包んだ玲於奈は、クラスメートであった時より、少し大人しく見えた。
頼りなさそうな瞳。不安げに揺れる髪。
強気なようでいて、彼女はいつも、そんな表情をしていた。

玲於奈も、少年を見つめる。
雄二と会わなかったのは、ほんの三週間足らずなのに、随分久しぶりのように思う。
端正な顔立ち。真剣な瞳。
いつもふざけているようでいて、彼はこんなに、真面目な顔をする人だった。

「どうして、ここへ……」
玲於奈が切り出す。
「それは、その、だな」
雄二は、うまく言い出せない。
自宅から九条院まで、バスを乗り継いで数時間。
色々と余計な事は考えたけれど、肝心なこと、玲於奈に伝える言葉は、全然頭に浮かばなかった。
「……」
「……」
二人、押し黙って見つめ合う。
薫子も、沈黙を保っている。
34桜の群像 第18話「Hello,world(中編)」11/11:2007/04/29(日) 01:21:23 ID:9JfaN9Vt0

「そこっ! 何をやってるんだ!」
静寂を破ったのは、雄二らを見つけた教師の声だった。
既に授業は始まっている。
他校の制服を来て、九条院の生徒と絡んでいる雄二は、あからさまに不審人物。
声を聞きつけて、さらに数人の教師が駆け寄ってくる。

「っ!」
のんびり話をしている暇はない。
雄二は焦って言葉を探すが、何も見つからない。
「雄二さん、まずいですよ」
薫子が慌てた声を出す。
「も、戻らないと……」
近づく教師達の足音に、玲於奈も後ろを向きかける。
「玲於奈っ!」
その瞬間、雄二は叫んでいた。
また向き直った玲於奈を見つめて、

「好きだっ!」
ただ単純な、いちばん不器用な告白の言葉を。

「ゆ、雄二、さん……」
呆然と、雄二を見つめる玲於奈。
その瞳に、一つの色が宿る。
だが、答えを返す時間は、彼女には与えられなかった。

「君はどこの生徒だっ!」
「君たちも、何をしているのかね!」
ばらばらと近寄ってくる教師。
「やべっ!」
雄二は身を翻したが、正門は既に閉じられている。
やむを得ず、校庭側に逃げ出した。
35名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 01:22:48 ID:9JfaN9Vt0
以上中編終わり。>26さん支援ありがとうございます。
区切る場所が微妙に半端でしたが、続けて後編、行きます。
36桜の群像 第19話「Hello,world(後編)」 1/12:2007/04/29(日) 01:26:00 ID:9JfaN9Vt0

昨日の今日で筋肉痛でも、雄二の足は教師より速い。ある程度引き離して、出口を探す。
外壁は飛び越えられる高さではない。どこかに裏口はあるだろう。校舎の裏手だろうか。
そう思って、迂闊に校舎に近づいたのが雄二の失敗。
「ゆ、雄二っ!?」
鉢合わせたのは、よりによって環だった。

「どうして、此処へ? いえ、何をやっているの?」
この姉を驚かすのはなかなか難しい。
雄二には貴重な経験だったが、今はそれどころではない。
「あー、ちょっとヤボ用。じゃ、な!」
くるりと回れ右して離脱を試みるも。
「待ちなさい」
「グエッ!」
あっさりと首根っこを押さえられる。
同時に。
「いたぞ! そっちだ!」
後方から近づいてくる足音。
絶体絶命。

だが、観念して振り向いた雄二の眼前で。
ドゴバキグシャ。
近づいた教師達が、次々と倒れた。
「ふははははっ! 人の恋路を邪魔する奴は! 馬っ気ラリって地獄におちろっ!」
投げ捨てた木製バットに、いーかげん血糊でも付いているような。
「喰らえっ! 愛と、勇気と、煩悩の! 爆乳まーりゃんふぃんがーたーっち! 乳・即・揉ーっ!」
ペシッ。
「ぴーっ! ぴーっ! タマちゃんがぶったーっ!」
環の胸に伸ばした手をはたき落とされて泣く、略称まーりゃん先輩。なお、彼女自身は爆乳でない。
「……3回目があるとは思わなかったわ」
環がちょっとメタに嘆いている隙に、雄二はとっとと逃げ出した。
37桜の群像 第19話「Hello,world(後編)」 2/12:2007/04/29(日) 01:27:57 ID:9JfaN9Vt0

で、まーりゃん先輩が記念写真を渡すついでに雄二のカメラを返してから久寿川への土産にと環の九条院制服姿をインスタントカメラで撮影し終わった頃。
雄二は、道に迷った。

「なんで学校の敷地がこんなに広いんだよ……」
裏庭だか森だか解らない空間を、手探り同然で歩き回る。
幸か不幸か、人っ子一人見あたらない。
「……さすがに、無計画だったか」
迷子になったことだけを指すわけでもない。
「結果がどうでも後悔しないってなぁ……」
幼馴染みの言葉。
「結果が出ない場合は、どーすんだ?」
八つ当たりに近いぼやき。

そうこうするうちに、ようやく外壁と思われる塀に突き当たる。
「お、こっから外に出られるか?」
壁が継ぎ目で低くなっている部分を見つけて、乗り越えようと足場を探す。
その雄二に。
「そこから出ると、原生林ですよ」
聞き覚えのある声が掛けられた。

「お前……授業はいいのか?」
「まあ、授業よりは先生の追及の方が疲れましたわ」
少し間の抜けた事を聞いた雄二に、苦笑して答えたのは薫子だった。
「う、悪かった」
「いえ。玲於奈を黙らせて、適当に言い抜けておきましたから」
「玲於奈にも、迷惑かけたな……」
「……」
薫子はそれには答えずに。
「バス通りまで、ご案内します」
当てずっぽうだと確実に迷いますから、と申し出た。
38桜の群像 第19話「Hello,world(後編)」 2/12:2007/04/29(日) 01:30:01 ID:9JfaN9Vt0
「しかしすげー所だな、この学校」
草をかき分けながら雄二。
「熊が出ますから、迂闊に出歩くと命懸けになりますね」
しかし、薫子自身は平然と進んでいく。
「慣れてんなあ」
「しょっちゅう迷子を捜していたんです。昔から」
雄二の感心に、悪戯っぽく薫子。
「迷子って、玲於奈か?」
「雄二さんが外に出ようとした辺りは、小学校の頃にあの子がしょっちゅう迷い込んだ場所です」
あの子。
そう呼んだ口調には、親しみの感情がある。
「げ、俺はあいつと同レベルかよ」
「ふふっ、そうかも知れませんね」
「……」
「それと、玲於奈は、なにかと周囲と揉め事の多い子ですから」
上級生に追いかけられて二人で裏庭に隠れることもあったと笑う。
それは、笑うことだろうか。雄二の目に、薫子は妙に浮かれているように見えた。

「なあ、薫子……」
「さ、着きましたよ」
短い会話の内容に、幾つか聞きたい事のできた雄二だが、二人は開けた場所に出た。
「ここを道なりに行けば、バス停ですわ」
「あ、ああ、サンキュ」
「それでは、私は学校に戻ります」
ツツッと3歩バック。森と道路の境界線で。
「雄二様」
「ん?」
「玲於奈を、よろしくお願いします」
薫子はそう言って、深々と頭を下げた。
「え?」
雄二が意味を問う暇もなく、少女は身を翻して森の中に消えた。
39桜の群像 第19話「Hello,world(後編)」 4/12:2007/04/29(日) 01:32:55 ID:9JfaN9Vt0
休み時間を待って、薫子が教室に戻ると、カスミが席に着いていた。

「あら、お帰りなさい、カスミ」
コクコク……。
自分の席に座って、薫子は隣のカスミ話しかける。
「雄二様とは、何か話されました?」
薫子は、カスミが雄二に会いに行った事を予想していたようだ。
フルフル……。
「あら、そうですか」
かぶりを振ったカスミは逆に。
?……。
小首を傾げて薫子に尋ねる。
「ええ、マルでした」
コクコク……。
指で輪を作った薫子に、カスミの頷きは同意でなく納得。二人の話題は、共通している。
「見せたかったですよ。玲於奈の顔」
微笑む薫子。
むゥ……。
「授業が終わったら、荷造りを手伝いに行きましょうね」
コクコク……。

「ふぅ」
薫子が前に向き直って、溜息をついた。
「色々ありましたけど、これで……」
声色の変化に、カスミが視線を寄せる。
「迷子を捜すのは、私の役目ではなくなりましたわね」
頬杖をついて、窓側に顔を向ける。
スッ……。
カスミが、手を伸ばして薫子の頭を撫でた。
「ん?……ん……」
薫子は少し反応したが、黙って目を閉じた。
40桜の群像 第19話「Hello,world(後編)」 5/12:2007/04/29(日) 01:35:22 ID:9JfaN9Vt0
週末、雄二は冴えない顔で過ごした。
聞けなかった返答も、薫子の言葉も気になった。

とはいえ、今更どうしようもない。
「まあ、ほとぼりが冷めてから考えるか」
こんな結論を出したのが、日曜の夜中。

そういうわけで、月曜の朝。
「あー。誰もいねーな、さすがに」
登校は、そういう時間帯。
「はぁ」
校門へ続く坂道を、立ち止まって空ごと仰ぐ。
余裕で遅刻。
辺りに自校の生徒は……
「はぁ」
すぐ近くで溜息。
ちらっと視線をやると、意外と近くに女子の制服。どうやらお仲間がいたらしい。
赤い髪。
「へっ?」
雄二が横を向く。
声が聞こえたのか、少女も彼の方を向く。

「えっ?」
玲於奈だった。

「れ、玲於奈!?」
「ゆ、ゆゆゆゆゆ雄二さんっっ!?」
ぼわっ、と少女の顔が真っ赤に染まる。
「なんで……」
「ち、ちちち、遅刻ですのでっ!」
脱兎。
猛烈な勢いで、玲於奈は坂道を駆け上がっていった。
41桜の群像 第19話「Hello,world(後編)」 6/12:2007/04/29(日) 01:39:01 ID:9JfaN9Vt0
雄二はというと、反射的に玲於奈を追いかけて2、3歩駆け出したが。
「!」
スカートが跳ねて覗いた白い太股に、どきりとして立ち止まる。

「……追いかけたら、ダメだよな」
止まったのは咄嗟の事だが、一呼吸置いたことで、少し冷静になった。
なかなか良いスピードで小さくなっていく後ろ姿。
「いったい、どういう事なんだ?」
どうもこうもない。玲於奈の姿と行動から答えはひとつ。

彼女は、雄二と同じ学園に戻ってきたのだ。
それなら、薫子の台詞も説明がつく。

「……なんで?」
九条院にいられないような事情があったのか。
薫子は、玲於奈が周囲と上手くいっていないような事も言っていた。
そういった事情ならば、転出を取り消して再度こちらに戻ることもできるのかも知れない。

「俺と卒業……まさかな」
ちらっと浮かんだ都合の良い考えは、慌てて振り払う。
「しかし、薫子の奴め」
こちらに戻ってくるのだったら、そう言えばいいものを。
「そうと知っていたら、慌てなかったんだがなぁ」
おかげで、のっけから非常に気まずくなってしまった。
「……」
自分の行動の記憶に赤面。
「ま、まあいい。同じ学校にいるなら、仕切り直せる」
ちょっと間を置いて、それから……
そんな事を考えながら校門に辿り着いたのだが。

校門前で、再び玲於奈に追いついてしまう。
42桜の群像 第19話「Hello,world(後編)」 7/12:2007/04/29(日) 01:41:22 ID:9JfaN9Vt0
「……」
少女は閉じた門の前で途方に暮れていた。
さほどの高さでもないのだが、乗り越えるのに気後れしているのだろう。

はて、どうしたもんか。
雄二が迷っていると、玲於奈の視線がそちらに向いた。
「!」
慌てて目を背けて、見なかったフリ。でも、あからさまにぎょっとした表情。
「あー……」
仕方ないので声を掛けようと、雄二が一歩近づいた瞬間。
「っ!」
玲於奈は門に手を掛けてひょいと飛び上がった。
結構な跳躍力。
一度門に飛び乗って、その足で向こう側に飛び降りる。
だだだだっ。
そのまま、校舎に駆けだしていく赤い制服。
「非力な割に運動神経いいんだよな、あいつ」
ゲーセンでの光景とか、海でのバレーの記憶など思い出しつつ。
雄二は首を振って、またも目の前で翻ったスカートと白っぽかった中身を、頭から追い出した。

昇降口にて。
「ぅあ」
追いつかないように、しばらく間を置いたつもりの雄二なのだが。
「ぁわわっ!」
今度は下駄箱でずいぶんと逡巡していたらしい玲於奈と鉢合わせ。
普通の転校生であれば、来客用の昇降口から入るものだろうが、
彼女の場合は、先日まで在籍していたから自分が使っていた下駄箱がある。
学期途中の転出でもあり、そこは空いたままになっている、のだが。
ぱたぱたぱた。
使っていいものか迷っていたらしく。
上履き右手にぶらさげて足は靴下のまま、玲於奈は逃げていった。
43桜の群像 第19話「Hello,world(後編)」 8/12:2007/04/29(日) 01:43:23 ID:9JfaN9Vt0

「迂闊に歩くと、また鉢合わせそうだな」
授業の途中で入っていく元気もない。玲於奈の行き先は、まあ職員室だろう。
「……天気良かったよな」
さっき見上げた空の色を思い出して、雄二は屋上に向かった。

「な、何故ですのっ?」
「いや、俺が聞きたい」

屋上。
三度あることは四度ある。
踊り場から続くドアを開けた途端。
「きゃっ!」
校舎内に戻ってこようとした玲於奈とぶつかりそうになって、
驚いて全速後退した少女は、フェンスに背中をぶつけて逃げ場を失った。

5メートル離れて対峙する二人。
恐る恐る上目遣いの玲於奈。
雄二は、野良猫を相手にしているような気分になった。

「あー、玲於奈?」
「……」
びくびく。
「話、聞いてくれるか?」
「……はい」
背中をフェンスに貼り付けたままだが、頷く玲於奈。
「サンキュ」
この距離は、微妙に会話には遠いのだが。
「さて、なにから話したもんか……」
近づくと逃げそうな気がして、雄二はそのまま続ける。
44名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 01:45:01 ID:xw69qICN0
さらに支援
……何レスごとぐらいに支援って必要なんだろう
45桜の群像 第19話「Hello,world(後編)」 9/12:2007/04/29(日) 01:46:05 ID:9JfaN9Vt0

「まず、此処で会ったのは、偶然だ。別に追いかけ回したわけじゃない」
こくこく。
カスミよろしく首が上下。納得してくれているようだ。
「それから、この間は悪かった。急に押しかけて、あんなこと言って」
ふるふる。
今度は左右。気にするな、ということか。
「あれは……、いや、その前に」
じっ。
神妙な顔で聞いている玲於奈。
「こっちに戻ってきたんだな。事情は知らねえけど、歓迎するぜ」

はっ、と少女が顔を上げた。
「行ったり来たりで、大変だろうけどな、俺でよかったら、力になりたいしさ」
玲於奈に笑顔を向ける雄二。
「だから、先週の件は、できれば……忘れてくれ」
できるだけ軽い口調で言ったつもり。
成功しているかどうかはわからない。びくっと、玲於奈の肩は震えた。
「あれは……もちろん、本気だし、いい加減な気持ちで言ったわけじゃない」
こうして彼女を目の前にすると、改めてそう思う。
「ただ、あの時はさ、玲於奈がいなくなっちまうと思ったから。その、薫子から転校の話を聞いたんだがな」
あいつ、お前がこっちに戻るなんて一言も言わなかったんだぜ、と苦笑い。

「それで、焦っちまって、気持ちだけでも伝えようとして、あんな」
思い返して赤くなった頬を、ぽりぽりと掻いた。
「だからさ、慌てて答えを出してくれっては思わないし、迷惑だったら忘れて欲しいし」
今も、かなり恥ずかしいことを言っているような気もするのだが。
「前みたいに、普通に話をして……」
やや躊躇してから、
「友達……でいてくれると、嬉しい」
その単語を口にした。
46桜の群像 第19話「Hello,world(後編)」10/12:2007/04/29(日) 01:48:01 ID:9JfaN9Vt0

「友達……そう、でしたよね、私たち」
玲於奈が口を開く。
転校前の事を言っていると思っても、過去形にどきりとする雄二。
「……忘れてくれなんて、そんな……」
首を振る。
雄二は慌てた。
「ひ、酷いよな、あんな派手に迷惑かけといて、でもさ」
「あっ! ち、違います! そういう意味ではありませんのっ!」

フォローしかけた少年を、少女が遮った。
「そうではなくて、その……」
数瞬の逡巡。
「こちらでは、雄二様には本当にお世話になりました」
何かを決意したように、玲於奈は話し始めた。

「九条院に戻ってから、私、どうも落ち着かなくて」
目線は、雄二の胸元あたり。
「一度電話して、お声を聞いて嬉しかったのですけど、その、例の……」
もじもじする。
「チケット、ごめんな。あの後も捜してみたんだけど……」
「いえっ、それはいいのです。私が悪いのです」
「いや、俺が……」
「と、ともかく、ですね」
突然謝り合いが始まりそうになって、玲於奈は話を戻す。

「あの後、なおさら酷くなって、薫子に、怒られたんですけれど」
薫子の名前に、アクセントが入る。
「それで、私、考えました。自分が、何をしたいのか」
顔を上げる玲於奈。
47桜の群像 第19話「Hello,world(後編)」11/12:2007/04/29(日) 01:50:46 ID:9JfaN9Vt0
「私は……」
が、すぐに下がる視線。
「その、私は……お姉様と同じ学校に通うことよりも……」
雄二の足下からも外れて、殆ど真下を向く少女。
顔も真っ赤になりながら、

「……雄二様と、一緒にいたかったのです……」
消え入るような声で、そう呟いた。

雄二は、その言葉を、良く聞き取れなかった。
頭が上手く回らずに、ただ心臓だけが早鐘のように鳴っている。
「それで、こちらに戻る手続きを取って」
少し、玲於奈の声量が戻った。
「どんな顔をして戻ろうとか、最初に何を話そうとか、色々考えましたのに」
口を尖らせる。
「何事もなかったように、また以前のようにお話をして、友達……でいていただいて」
友達という単語も、意識しないと言えない二人。
「それからチャンスを待とうなんて、そんなつもりでいましたのに、あんな……」
「わ、悪い」
謝るのは、何度目だろうか。

「あの場でお返事できなくて、昨日は眠れなくて、―それで今日はこんな時間になったのですけど」
まあ、初日から遅刻というのも随分な転校生ではある。
「あんな態度で嫌われたのでは、とか、心変わりされるのでは、とか、そもそも聞き間違いではないのか、などと……」
普通なら有り得ないような不安。

「だから、忘れてくれなんて、おっしゃらないで」
さっきよりははっきりとした声で、玲於奈は自分の気持ちを口にした。
雄二の心臓が、また跳ねる。
48桜の群像 第19話「Hello,world(後編)」12/12:2007/04/29(日) 01:52:43 ID:9JfaN9Vt0
「そ、それって、つまり……」
「最後まで、言わせてください!」
思わず一歩近づいた雄二に、玲於奈が強い声を出す。

「こちらにいる時は、気づきませんでした」
背中がフェンスから離れる。
「お姉様への気持ちにも、偽りはありません。薫子とカスミも、変わらず良き友人です」
体の前で、右手で左手を握る。
上履きは、いつしか下に落ちていた。
「でも……」
ぐるぐると回り道をした会話が、収束する。
玲於奈は、雄二の側にやってきて、目を合わせようと努力して、やっぱり無理で下を向いて。

「お慕いしております、雄二様。誰よりも」

消え入りそうな声で、しかしはっきりとそう言った。

「れ、れお、な?」
雄二の声が上擦る。
少女の赤髪は、今は目の前にある。
「それって、その……」
玲於奈の明確な意思表示に、雄二は掛ける言葉を探して、見つからない。
頭のなかがぐるぐるしていて、何も考えられない。
手を伸ばせば届く所にある、細い肩。

「……抱いて、いいか」
そんな、馬鹿な事を聞いた。
「はい」
そんな、素直な答えを返した。

そして、雄二は力一杯、玲於奈を抱きしめた。
49名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 01:54:59 ID:9JfaN9Vt0
以上です。>44さん支援ありがとうございました。
ということで、やっとくっつきました。自分で書いたSSながら、永かったぁ……後悔だらけw

で、正直、真面目にストーリー考えてたのはこの辺までなんですが、
せっかくなのでもう少し続けさせて頂きます。あと5話か6話くらいの予定。
ひとまずここまで(一部分でも)読んでくださった方々に感謝。よかったら、もう少しお付き合いください。

余談。ぐぐったら関西には“昇降口”がない小学校が多いとかでびっくり。
あと、判ると思いますが坂の下で二人並んで溜息ってのはCLANNADからのパクリです。
50名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 09:23:51 ID:GUYrXu9Y0
激乙

これ最終回?寂しいな・・・。

あとオレは関西人だが小学校は屋上に出れなかった。
屋上に出るにははしごを上ってかぎを空けなければならなかったみたい。
5149:2007/04/29(日) 14:23:45 ID:Ypg8ZP2n0
>50
すみません、まだ終わりませんw

屋上は、鳩2では飯喰ったりしてますけどウチは高校でも基本的に出入禁止でしたね
扉は確か内側から開くのにも鍵が必要なタイプだったかと。ちなみに校舎内土足でした?
52名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 14:36:01 ID:CM0M4ffZ0
屋上が開放されてる学校は少ないんじゃないかな。
何かあったら学校の責任になるから普段は鍵掛けてるとこがほとんどじゃね?
53名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 20:30:31 ID:bfG0umeL0
>>49
乙です。
ようやくくっついたというかついにくっついたと言うか…
いずれにしても終わりが近いってことでやっぱり寂しいかな。


自分が通ってた高校も施錠されてて階段の前には鎖がかけられて
いた気がする。
54名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 20:33:07 ID:iPbVan2L0
>>51
校内は土足っていうかまだ高校生なんだがw
小中高全部土足だね〜。
高校によっては土足じゃないとこもあるけど
55名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 22:27:40 ID:N5Kfo4W9O
乙です。
ついにくっついたんですね。
玲於奈×雄二だけじゃなくてそれを取り巻く人たちの物語もうまくまとまってて読んでて楽しかったですね〜。
玲於奈かわいく見えて仕方ない今日この頃。続き期待してます。


ちなみに僕は小中高と屋上は鍵かかってました。

56いけないイルファ先生 家庭教師編 1/18:2007/04/29(日) 22:29:21 ID:uhXIEWQd0
「河野貴明」

 名前を呼ばれて、“それ”を受け取りに教卓の前まで進む。
 先週やった、実力テストの答案用紙。出来ることなら一生、返してくれなくったって良

いのに。
 周囲にはもう、今にも死んでしまいそうなくらい落ち込んでる奴もいるけれど。良かっ

た。何とか平均点──よりも多少悪い──で済んだ。

「なあ雄二、お前はどうだった」

 俺よりも一つ後にテストを返された雄二に話を振る。自分でも情けないとは思うけれど

、とりあえず自分より点数の低い相手を見て安心したいと言うのは、人間としてこらえる

ことの出来ない性のようなものだろう。
 この時、間違っても小牧さんの答案を見てはいけない。

「クックックックッ・・・・・・ふはーっはっはっはっは!!」

 突然高笑いし始めた雄二に、クラス全員の注目が集まる。手には今返された答案用紙。
 まさか雄二、お前、あまりの点数の悪さにとうとう頭が
57いけないイルファ先生 家庭教師編 2/18:2007/04/29(日) 22:32:10 ID:uhXIEWQd0
「違うっ!! 貴明、俺を昨日までの俺と思うなよ。見ろ、このサンサンと輝く俺の答案

用紙を!!」

 そう言って、俺の目の前に自分の答案を突きつける。
 そこには、×よりもはるかに多い○が赤く書き加えられていて。

「どうだ、見たか、この俺の真の実力を。まあ、俺がちょっと本気をだせば、これくらい

のテストなんてちょろいちょろい。姉貴にだって、もう大きな顔はさせないぜ」

 確かにこの点数だったら、タマ姉だって文句は付けないだろう。
 しかし、前からやればできる奴だとは思っていたけれど、いきなり普段の3倍以上の点

数を取れるとは思わなかった。

「ちなみに、カンニングは一切してないからな」

 思っていたことが顔に出てしまったのか、雄二がそう言って念を押してくる。

「でもこの点数、カンニングもしないで急に取れるような点数じゃないだろ。雄二、お前

いつの間にそんなに勉強してたんだ?」
58いけないイルファ先生 家庭教師編 3/18:2007/04/29(日) 22:34:04 ID:uhXIEWQd0
「ん〜? まあ教えてやっても良いが、いや、どうするかな〜」

 どうするかな〜、と言う割には言いたそうだな雄二。

「実は今回さー、とっても優秀な家庭教師に勉強教わっちゃってさ〜」

よほど自慢したくて仕様がないらしい。こっちが促す前に勝手に話し始めた。
 雄二のにやけた顔を見ると、よほど美人の家庭教師なんだろう。しかもあの雄二に、こ

れだけの点数をとらせたんだから有能なのも間違いなさそうだ。
 確かに、自慢したくなるのも無理はないくらい、凄い家庭教師なんだろう。タマ姉にで

も教えてもらったのか?

「なんで姉貴になんて教わらなけりゃいけないんだよ」

 まあ、確かにそうか。タマ姉に教えてもらって、素直に勉強するようなやつでもないし



「実はだな」
59いけないイルファ先生 家庭教師編 4/18:2007/04/29(日) 22:36:52 ID:uhXIEWQd0
「ああ、イルファさんだろ、お前が勉強教わってたの」

 なるほど、イルファさんならこいつが浮かれていた理由もわかる。優秀なのは今更確認

することじゃないし。

「なんだ、知ってたのかよ。俺がイルファさんに家庭教師お願いしてたこと」

「いや、知らなかったけど。そういえばイルファさん、ニ三日用事で出かけてるって珊瑚

ちゃんが言ってたけど。お前に勉強教えてたのか」

「ああ、この間試験運用の為に俺の家に来たよしみでな、姉貴が。俺もイルファさんの言

うことなら聞くだろうって連れてきて」

 実際ちゃんと勉強してたんだから、タマ姉の判断は正しかった訳だな。
 でも良かったじゃないか。イルファさんに勉強教えてもらったなんて。しかもタマ姉の

お墨付きで。

「いや、それがな。確かにイルファさんと一つ屋根の下、一緒に勉強することに胸をとき

めかせていたことは否定はしないんだが。貴明、お前も騙されるんじゃねぇぞ。イルファ

さん、あれはやるときは徹底的にやる人だ。途中、何度か姉貴の顔が天使に見えたぜ」
60いけないイルファ先生 家庭教師編 5/18:2007/04/29(日) 22:38:25 ID:uhXIEWQd0
「嘘だろ?」

 あのイルファさんがタマ姉より? あ、いやでも。

「嘘を言ってどうするよ。お陰でほれ、前回のテストでは最下位を争っていたこの俺が学

年でも上から数えた方が早いくらいだ」

 もっとも、もっと優しく、イケナイことまで教えてくれるっていうのなら、いつでも大

歓迎だがな。最後にそう付け加えることを忘れないで、雄二は席に戻っていった。
 まあ、最後の一言は無視するとしても、イルファさんに勉強を教われれば、かなりいい

成績を取れるようになることは間違いないみたいだ。
 雄二の言うことは気になるけど、最近テストの点数も下がり気味だし、うーん。


61名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 22:38:28 ID:o2TcZLU1O
支援砲撃、撃ぇーっ!!
62いけないイルファ先生 家庭教師編 6/18:2007/04/29(日) 22:41:36 ID:uhXIEWQd0
「それで、私に声を掛けてくださったわけですね」

「うん。タマ姉もイルファさんの教え方は褒めていたし。俺もそろそろ、頑張らなきゃい

けないと思ってさ」

 結局、イルファさんには家庭教師をお願いすることにした。
 このままズルズルと成績が落ちていくのを眺めていても仕方がないし、一度気合を入れ

て勉強するのも良い事だろう。
 実を言えば、最近の俺の成績を(主に雄二から)知ったタマ姉に、塾に通うか、それが

嫌ならタマ姉に勉強を教わるかの選択を迫られたせいもあるんだけれど。
 タマ姉の家で一日中缶詰になって勉強するくらいなら、こうやってイルファさんに来て

もらった方がずっといい。
 それに、イルファさんなら大丈夫だろうって、タマ姉も納得してくれたし。

「そんなわけでさ、あんまり出来のいいせいとじゃないけど、よろしくお願いします、イ

ルファ先生」

「先生、ですか?」

「あ、うん。イルファさんには勉強を教わる訳だし」
63いけないイルファ先生 家庭教師編 7/18:2007/04/29(日) 22:45:22 ID:uhXIEWQd0
 イルファさんの今の服装、いかにも女教師って感じだし。
 雄二に話だけは聞いていたけど、イルファさんはまず服装からこだわるタイプみたいだ。

眼鏡まで付けて。
イルファさん、って言うより本当に、イルファ先生と言ったほうがしっくりくるくらいだ

から。

「・・・・・・わかりました。そこまで貴明さんが私のことを頼ってくださるのであれば。この

イルファ、全身全霊をかけて、貴明さんにお勉強を教えて差し上げますっ!」

 俺がなんとなく言った一言が、イルファさんを本気にしてしまった。俺を見る、目がマ

ジだ。怖いくらい。
 まずったかな、イルファさんをここまでやる気にしちゃって。
 いや、俺は勉強を教わるためにイルファさんに来てもらったんだから。本気を出しても

らうなんてむしろ望むところだろ。

「先生・・・・・・私が、貴明さんの・・・先生だなんて。ああっ、どうしましょう!?」

 まずったかなぁ・・・・・・
64いけないイルファ先生 家庭教師編 8/18:2007/04/29(日) 22:48:16 ID:uhXIEWQd0
「それでは、早速。こちらの問題から解いてみましょう。30分以内に解いてくださいね」

 そう言うと、イルファさんから問題集を渡される。
 何のことはない、いたって普通の問題集で。
 イルファさん、またいつかみたいに暴走し出したのかと思ったけど。俺の気のし過ぎだ

な。
 さあ、気分を入れ替えて、集中しないと。
 そして問題集を捲ったとたんに、目の前に飛び込んでくる数字と記号の羅列。普段なら

ここで挫けてしまいそうになるけど、今日の俺は一味違う。なんと言ったって、すぐ隣で

イルファさんが俺のことを見ているんだから。
 ペンを握る手にだって、力が入るってものだ。

「うーん」

 カリカリとペン音を立てて問題を解いていく。実のところイルファさんに来てもらう前

から勉強は始めていたし──全く出来なかったら恥ずかしいじゃないか──これくらいの

問題なら何とか解けないこともない。
65いけないイルファ先生 家庭教師編 9/18:2007/04/29(日) 22:51:04 ID:uhXIEWQd0
 それでもやっぱり、中にはどうしても解けない問題というのがあって。
 あ、これ、昨日やってた時も同じような問題で解けなかったんだよなぁ。

「どうしました? 何かわからないところでもありましたか」

「あ、うん、この問題なんだけどさ。ここの計算がどうしても解けなくてぇぇぇぇぇぇ」

 いきなりの不意打ちに、悲鳴を我慢することさえ出来なかった。
急に俺の背中に襲い掛かる、柔らかな感触。

「あ、ここの問題なら、まず先にこちらの式をエックスイコールの形に直して」

 俺の背中越しに問題集を覗き込むイルファさんは、一つ一つ丁寧に指を差しながら問題

の解き方を説明してくれる。
 ただ、そんな格好でいる都合上、どうしてもイルファさんの体勢には無理がでてしまっ

て。
頑張って腰をかがめるものだから、どうしても俺の顔のすぐ横にイルファさんの横顔が来

てしまう。
 一生懸命俺に説明しようとしてくれればしてくれるほど、体勢は前のめりになって俺と

の密着度が高まっていく。
66いけないイルファ先生 家庭教師編 10/18:2007/04/29(日) 22:52:52 ID:uhXIEWQd0
「そしてこの式をその式に当てはめれば、あとはこの前の問題と解き方は一緒になります

よ」

 と言われたって! え、エックス!?

「あとは貴明さんだけでできますね」

 頭の中が沸騰してしまいそうな衝撃は、襲い掛かってきた時と同じくらい唐突に背中か

ら離れていった。
 額に浮かんだのは冷や汗なのか脂汗なのか、慌ててイルファさんを振り向いてもイルフ

ァさん、さあどうぞ、って涼しい顔。

「いいいいイルファさん!?」

「まだ、解らないところがありますか?」

 何か俺は、大きな間違いをしてしまったんじゃないだろうか。そんな気分になる。
 バッドエンドまで一直線な選択を選んでしまった時のような。
 そんな嫌な予感を覚えながらも、再度目の前の問題集に取り掛かる。でもというかさす

がにというか、さっきみたいにスラスラといくのは無理だったけど。
67いけないイルファ先生 家庭教師編 11/18:2007/04/29(日) 22:55:27 ID:uhXIEWQd0
 それでも手を止めなかったのは、問題を解くことをやめたとたん、またさっきのような

指導が待っているに違いないという予感が働いたためで。
 その予感は正しかったのか、取り合えずイルファさんからの過剰なスキンシップを浴び

ることなく時間が進んでいく。
 けれど、ここで安心してしまったのが間違いだった。きっとさっきのあれも、たまたま

あんな態勢になってしまっただけで。そんな風に思ってしまった。
 問題を解くペンの動きは快調で、ただ目の前の問題をこなすことに集中していく。
 だから、その時イルファさんが何をやっていたか、さっぱり気が付くことができなかっ

た。
 気が付いていたところで、何かが出来たとは思えないんだけれど。

「あと10分です」

 イルファさんの声に息を呑む俺。やばっ、まだ半分しか解けてない。
 残り時間を確認しようとして顔を上げる。ちなみに、時計は机の右上のところ。ちょっ

とだけ首を捻れば見える位置に置いてある──はずだったんだけど。
 まず目に飛び込んできたのは、その肌色も眩しいイルファさんの太もも。
 机の淵に腰掛けたイルファさん。何故かスカートの裾が、太ももの上までたくし上げら

れている。
68いけないイルファ先生 家庭教師編 12/18:2007/04/29(日) 22:57:34 ID:uhXIEWQd0
「どうしました? 残り時間はあと少しですよ」

 続いて視線を上げた先にあったものは、イルファさんの着るブラウスの色。でも、その

ボタンがいくつか外されているのはどうしてだろう。

「・・・・・・イルファさん、今日は俺に、勉強を教えに来てくれたんだよね?」

「はい、もちろん」

 イルファさんは笑顔で答えてくれる。
 じゃあさっきからのこの不可解な行動は一体なんなんだろう。イルファさんは、まるで

それが理由だっていうように胸元に手で風を送って。

「はい、終了です」

 結局、そのあとはろくに問題を解くことができなかった。

「貴明さん、半分しか解けていないじゃないですか。もっと真面目にやってくださいませ

んと」
69いけないイルファ先生 家庭教師編 13/18:2007/04/29(日) 23:01:08 ID:uhXIEWQd0
「ご、ごめん」

 イルファさんに怒られて反射的に謝ってしまうけど。これ、俺が悪いの!?

「単純な計算ミスも多いですし。貴明さん、公式など基本はしっかりできていますが、集

中力がやや足りないようですね」

 そう言われると、まあ確かに集中なんてほとんど出来なかった。特に後半。
 と言うか、あの状況で全く気を散さないで問題に集中できる人間がいたら、その方が問

題だと思う。
 と、俺は思うんだけど。イルファ先生は先生で、また違った意見を持っているみたいだ。

「これから勉強に集中していただくためにも、貴明さんには一度、しっかりと指導して差

し上げる必要がありますね。貴明さん、覚悟はよろしいですか。これからテストが終わる

まで、ビシバシいかせていただきますから」

 でもイルファさんの表情は、その口調の重々しさとはまるで正反対に明るくて。
 ではまずは、先生と生徒と言う立場を明確にするためにも、問題を半分しか解けなかっ

た貴明さんにお仕置きを。なんていい始めると、ああ、やっぱり。
70名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 23:03:12 ID:o2TcZLU1O
もう一丁支援。
71いけないイルファ先生 家庭教師編 14/18:2007/04/29(日) 23:04:43 ID:uhXIEWQd0
「それが・・・・・・目的ですか?」

「な、何のことですか? 私はただ、貴明さんにお勉強をしていただくために」

 慌てる口調。でも、ブラウスのボタンを外す指は止まらない。
 ここまであからさまだと、かえって落ち着いてしまうというか諦めがつけやすいという

か。

「だって、貴明さんが私のことを先生なんて呼びますから・・・」

 顕わになる胸元。眼鏡越しに見えるイルファさんの瞳は、そのまま溶けてしまいそうな

くらい潤んでいる。

「先生と生徒の、禁断の関係。ああっ、燃えるシチュエーションです」

 結局、イルファさんが今回も暴走しているんじゃないかって言う俺の予感は当たってい

たことになる。原因はやっぱり、イルファさんに家庭教師を頼んじゃったせいなんだろう

か。
72いけないイルファ先生 家庭教師編 15/18:2007/04/29(日) 23:07:37 ID:uhXIEWQd0
 せめて、珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんに同席してもらえばよかった。
 それでも、最後に、藁にもすがるつもりで抵抗する。実際の問題として、このせいでテ

ストの点数が悪かったりしたら言い訳のしようがなくなってしまう。

「い、イルファさん。落ち着こう? 今日は勉強のためにイルファさんには来てもらった

わけだしさ。イルファさんへのお礼は、テストが終わったらゆっくりとさせてもらうから



「ご安心ください。勉強の方も、しっかりとお教えいたしますから。大丈夫。人間、頑張

れば一日3時間しか眠らなくても何とかなりますよ」

 こ、殺される!? 今になってようやく、雄二があんなに怯えていた理由がわかった気

がした。

「それではまず、保健体育のお勉強から始めましょう」

 イルファさんが近づいてくる。
 ああ、俺、テストが終わるまで生きていられるの、か──な・・・・・・


73いけないイルファ先生 家庭教師編 16/18:2007/04/29(日) 23:10:11 ID:uhXIEWQd0
「河野貴明」

 名前を呼ばれて、初めて気が付いた。
 目の前には先生がいて、俺の手にはテストの答案。

「どうした、貴明。そんなところで突っ立って。そんなに点数が悪かったのがショックだ

ったか?」

 後ろから雄二に声を掛けられて我に返る。あれ、俺、イルファさんに勉強を教えてもら

って、イケナイ保健体育が・・・・・・

「イルファさん? ああ、お前、イルファさんに勉強教えてもらってたんだっけな。で、

点数は、ちっ、いい点取りやがって」

 言われて初めて確認するんだけど、これ、本当に俺の答案なのか心配になるくらい点数

が良い。小牧さんの答案と間違えてないよな?

「お前、大丈夫か? テストの間も、ボーっとしてやがったし」

「ああ、うん」
74いけないイルファ先生 家庭教師編 17/18:2007/04/29(日) 23:13:03 ID:uhXIEWQd0
 と一応返事はしてみたものの。大丈夫も何も、俺、いつの間にテスト受けてたんだっけ?
 と言うより、ここ何日かの記憶がすっぱりと抜け落ちてしまっている。
 テストを受けたような気もするし、毎朝雄二やこのみたちと一緒に学校に通った覚えも

あるんだけど。
 でも・・・・・・そういえば。

「お、おい貴明!? 顔色真っ青だぞ」

「ん──あ、そ、そうか?」

 そういえば、確かに眼鏡をかけたイルファさんに、家で勉強を教わった。そのことは思

い出せる。
 思い出せるのに、なんでそれ以上のことを思い出すことが出来ないんだろう。

『さあ、貴明さん。寝ている暇はないですよ。まだまだ、お勉強していただきますからね』

 なぜか、寒気が走った。

75いけないイルファ先生 家庭教師編 18/18:2007/04/29(日) 23:17:13 ID:uhXIEWQd0
「しかしお前は良いよなあ。これから、定期的にイルファさんが勉強教えてくれるんだろ

?」

「え、そうなのか?」

「そうなのか、って、違うのかよ。お前、言ってたじゃねえか。しばらくイルファさんに

勉強教えてもらおうって。ちくしょー、なんでお前ばっかりそんな美味しい思いしなきゃ

ならんのだ、不公平だ!!」

「お前だってこの間勉強見てもらったんだろ。俺だって成績危ないんだ。イルファさんに

お願いしてでも、勉強教えてもらわないと」

 なぜか、取り返しの付かないことを言ってしまったような気がするのは何でだろう。イ

ルファさんに、勉強を教わろうって言うだけなのに。
 カレンダーを見る。来月には期末試験も待っているんだ。イルファさんには、もっとビ

シビシ勉強を教えてもらえるようお願いしないと。
 きっとイルファさん、今回以上に張り切って勉強を・・・・・・



   終
76いけないイルファ先生 家庭教師編 あとがき:2007/04/29(日) 23:19:38 ID:uhXIEWQd0
支援をくださった方、ありがとうございました。

家庭教師編とか書いてますが、体育教師編とか新人教師編とかに続きません。
それはそれで見たい気はしますが。


ちなみに、自分の母校の屋上は、応援団とかブラスバンドとか演劇部とか、喧しい
連中の隔離所でした。
77名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 23:28:56 ID:s7mqO5AQ0
>76
乙。
イルファさんの言動もだが、貴明が心理操作されてそうな終盤の独白が怖いな
だが俺が雄二や貴明なら迷わず教え子になる事を選ぶぜw

ところで、文章の途中で改行が入る時に空白行が入って、
文末で改行が入る時は空白行が入らないってのは、意図的?それとも環境のせい?
78名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 23:44:06 ID:N5Kfo4W9O
乙です。
あれ?結局これは夢か現か……
まあ成績も上がっておいしい思いできるなら3時間睡眠でも……いややっぱ無理だなw
79名無しさんだよもん:2007/04/29(日) 23:51:35 ID:gXdicE0LO
テストの範囲ではなく、イルファさんの隅々まで勉強するんですね
わかります><
80名無しさんだよもん:2007/04/30(月) 01:17:26 ID:M0zwguKG0
>>76
いやイルファさんがちょっとエロくて良かったです。
面白かったですよ。
はぁ、羨ましいけど、代わりたくはないかも。

けど自分も気になったのが空白。
何で一行ごとに空白になるのかなと。
環境のせいなら仕方ないですけど、ちょっと読みづらかったです。
それと変なところで改行されてるんで少し読むのに集中できなかったです。
81名無しさんだよもん:2007/04/30(月) 02:13:33 ID:79q114KeO
>>76
いつものイルファさんSSの人?
最近投下してくれる作家さんも減ったしありがたいわ。
河野家も終わっちゃったしあとは桜の群像くらいだしな。
でも思ったけど、貴明って結局やることやっちゃうくせに
まるで自分はそれが嫌でたまらないみたいな描写よくあるよな。本編でもSSでも。
女苦手ってかむしろ卑屈に感じてしまうのは俺だけだろうか?
82名無しさんだよもん:2007/04/30(月) 08:45:27 ID:z9TjgNT40
>81
いつものイルファさんSSの人とは文もキャラも違うと思うけどな
あっちのイルファさんは天然系だし、間に雄二が入り込むとも思えない
>卑屈
結局やることやるくせに寄ってくる子は避けるフリってのはエロゲ主人公の伝統でしょw
83名無しさんだよもん:2007/04/30(月) 23:08:44 ID:FdDwyRzS0
今日の朝から気づいてはいたが書庫の人更新乙。いつも仕事早いですねw
しかし改めて見ると、メインヒロイン達の方に新作が全然ないなー。しゃあないけどさ
84名無しさんだよもん:2007/04/30(月) 23:48:17 ID:qx5SwNRM0
脳内ではこのみの次なる奪還作戦が渦を巻いているのだがラストが決まらなくて何度も妄想をやり直している。
妄想は楽しいんだが文章化は難しいんだよな。

85笑顔の君にハッピーバースデ(1/8):2007/05/01(火) 14:39:44 ID:7RabTr5J0
 買い出しは昨日のうちにしておいた。
プレゼントの準備もオッケー。あとは、今日の主役を連れて行くだけだ。
「で、その肝心の主役は?」
「あ〜、いや、その…」
 郁乃に問われて内心冷や汗をかいている俺。
その主役は今、ここにはいない。連れて行こうとしたが気付いた時には
すでに教室にいなかったのだ。
「彼氏のあんたが捕まえておかなきゃ誰が捕まえとくのよ」
「あのな、こっちも年がら年中愛佳の隣にいられるわけじゃないんだぞ」
 もっとも、授業中と家に帰るために別れた後以外はほとんど一緒なのだが。
昼休みも放課後も休日も俺達はべったり状態である。
「まったく、トリモチでもつけとくべきだったかしら」
「そこまでする必要があるのか?」
「あるわよ。あのね、お姉ちゃんはあれでも人気あるのよ。ぼけっとしてたら
いつどこの馬の骨とも知れないヤツに持ってかれるかわかりゃしないわよ」
 ずいぶんな言い草である。しかし愛佳は校内でもはや知らぬ人はいないと
言われるほどの知名度だ。俺以外に彼女に好意を持つ男子も少なくはなかろう。
「それじゃ、その馬の骨に連れて行かれる前にさっさと探してくる」
「そうしてらっしゃい」
 これ以上郁乃に言われっぱなしにされるのも嫌なので、とっとと愛佳を
探しに行くことにしよう。
「集合場所はあんたの家でいいの?」
「ああ。雄二達にも伝えてある」
「わかった。それじゃエスコートはよろしくね」
「了解」
 なんだかんだ言いながらも、郁乃は結構気を遣ってくれるヤツである。
素直じゃないだけだ。
「何か言った?」
「いや、なんにも」
86笑顔の君にハッピーバースデー(2/8):2007/05/01(火) 14:40:27 ID:7RabTr5J0
 特に用事があるとは聞いていなかったが、愛佳はどこに行ったんだろう。
いつものように書庫に行ったのか、それとも職員室にでも呼ばれたのか。
ああ、ありえるな。また用事を押し付けられてなければいいけど…
(…と思ったけどいないみたいだな)
 職員室辺りにはいないようだ。
ここでないとなれば書庫だろうか。愛佳も呼ばれればあちこちに行くからな…
特定するのはちょっと難しい。
書庫にいなかったら校舎全体を探してみる覚悟でいたほうがいい。
「あ…」
 書庫のカギが開いている…ここに来てるのか?
静かにドアを開けて中に入ると、机の上を片付けている愛佳の姿が目に入った。
「あ、たかあきくん」
「よっ。片付け?」
 昼休みに読んでそのまま積んであった本を片付けてくれていたらしい。
まったく、郁乃のヤツは…あ、俺もか。
「ごめんな、放りっぱなしで」
「ううん。どっちにしても取りに来たものがあったから」
 そう言って小脇に抱えたものを指し示す。
去年、俺が愛佳にプレゼントしたケープ。ちょっと汚れてきたので持ち帰って
洗濯しようと思ったらしい。

 そうか…もう、あれから一年経ったんだよな。

「愛佳」
「うん?」
 片付けの手を止めてこちらを振り向く愛佳。
「あのさ、この後なにか用事ある?」
「え?ううん、特にないよ」
「そっか、よかった」
「何かあるの?」
「その…これから愛佳の誕生パーティーをしようかと思って」
 俺の言葉に愛佳は一瞬きょとんとする。
87笑顔の君にハッピーバースデー(3/8):2007/05/01(火) 14:40:59 ID:7RabTr5J0
「や、や、いいよお。そんなことしてもらわなくてもっ」
 …言うんじゃないかと思った。
だから郁乃や由真にも強制連行してこいとあらかじめ言われている。
「そうは言われてもな。実はもう俺の家でみんな準備してもらってるんだ」
「え、えええっ!?」
 もはや半分パニック状態になっている。
しょうがないといえばしょうがないのかも知れない。郁乃によれば、
大勢に誕生日を祝ってもらうという経験が少なかったんだから。

『――あたしがあんなだったでしょ。父さん達もお姉ちゃんにはあんまり
構ってくれなかったし』

 家族で彼女の誕生日を祝うなんてこともここ数年はほとんどなくて。
かといって、ずっとベッドの上の郁乃は何もしてやれなかった。

『やっと、何かをしてあげられるようになったから』

 言葉にすることはなかったけど。
今まで、思いのままに動けなかった自分を恨んだ時もあったんだろう。
今年は絶対に何かしてあげるんだとあいつは張り切っていた。
「どうしても嫌なら、せめて最初だけでも顔を出してほしいんだ。
みんな今頃色々準備してくれてると思うから」
「あ、その、嫌とかじゃなくって…その」
 戸惑ってるだけ。
…もしかしたら本当は嫌なのかも知れない。押し付けなのかもしれないけど。
郁乃の張り切りようを思い出せばここで退くわけにもいかない。
「いいの、かな?」
「ああ。いいからこそみんな俺の家に集まってくれてるんだよ」
 そっと愛佳の手をとる。
愛佳もこくんとうなずくとまだ戸惑いを残しながらも一歩踏み出した。
88笑顔の君にハッピーバースデー(4/8):2007/05/01(火) 14:42:06 ID:7RabTr5J0
「遅ーいっ!」
 中に入るなり、待ち構えていた由真にびしっと指を突きつけられる。
エプロンに三角巾、右手にはクリームの残った泡だて器。うむ、気合十分だ。
「悪い、もしかしてもう準備終わったか?」
「…あ〜いやその、実はまだ半分ほど」
 遅いと言ったくせにまだ半分とは何事ですか。
「なによその目は」
「終わってないのに『遅い』とはどういうことかと」
「あはは〜…実はちょっと手間取っててね」
「何に?」
 靴を脱いで上がりながら由真に状況説明を求める。
待て、台所の方からガシャーンとか何やら不吉な音が聞こえるのだが。
「郁乃ちゃん、そっち焦げてる!」
「うわったっ!ああ、そっちは鍋が吹き零れてる!」
「わわっ!たいちょ〜、大変であります!」
 ああ、良い感じに修羅場ってるなあ。
あの二人に調理を任せたのがそもそも間違いなのかも知れないが。
「お聞きの通り、危なっかしくて見てられないのよ」
「監督役のお前がこっちに来たらもっと危なそうだが」
「…ごもっとも」
 どれ、と腕まくりして台所を覗く。これは片付けが大変そうだ。
後のことを考えると気が滅入るが今は考えないようにしよう。
「あの、あたしも手伝おうか?」
「いいの。今日の愛佳はお客さんなんだから、のんびり待ってていいわよ」
「ま、なんとかなるさ」
 うん、何とかなることを願おう。由真が愛佳を居間に連れて行っている間に俺は台所に入る。
「これはまた片付けがいがある状況になってるな」
 ばたばたと走り回っている郁乃とこのみ。
周囲には醤油やらソースやら何やらが飛散していて悲惨な状況だった。
「あ、タカく〜ん…」
「そう思うなら手伝いなさいよ」
「へいへい」
89名無しさんだよもん:2007/05/01(火) 14:42:13 ID:ZEr949ly0
支援
90笑顔の君にハッピーバースデー(5/8):2007/05/01(火) 14:43:55 ID:7RabTr5J0
 とは言え、俺のできることはたかが知れている。
料理がそう得意なわけでもないからこの二人にとやかく言える立場でもない。
「由真、まだ作ってないのはあるか?」
 ちょうどそこに戻ってきた由真に訊ねる。
「お菓子関係がまだね。肝心のケーキがまだ手付かずよ」
「…戻って来るのが早すぎたくらいだったな」
「そうでもないわよ。今は人手が一人でもほしいところなんだから」
「それもそうだな」
 それじゃ、ケーキに取り掛かるか。
レシピはあらかじめ決めておいたが、そもそも俺一人でケーキを作ったことなんて
今までなかったので器具の調達にすら手間取る始末。
「………」
 ふと気配を感じて振り返ると、愛佳が心配そうにというか居心地が悪そうに
こちらを覗いていた。
「もう。愛佳、こっちのことは気にしなくていいんだってば」
「そうそう。主役はどーんと構えてなさいって」
 由真と郁乃はそう言うけど…
このパーティーの目的が「みんなで一緒に祝うこと」にあるなら、この状況は
決していいものではない。
「でも…」
 それに、もし誰よりも愛佳がそうすることを望んでいるのなら。
「愛佳」
「え?」
 叶えてやるのが彼氏の務めじゃないだろうか。
「こっち、手伝ってもらえるかな?俺、ケーキ作りは初めてだからよく
わからなくてさ」
「…うん!」
 この慌しい前準備だってパーティーの一部なんだから。
主役の愛佳にだって…いや、愛佳だからこそ参加する権利がある。
91笑顔の君にハッピーバースデー(6/8):2007/05/01(火) 14:58:42 ID:7RabTr5J0
「「完成〜!」」
 一時はどうなることかと思ったが、どうにかこうにかケーキも完成。
苦戦していた郁乃達の方も料理の方は無事に出来上がった。
「みんなお疲れさまでした〜」
「やっぱり愛佳がいないとダメね」
「そもそも、このメンバーで料理しようというのが間違ってたな」
「ケーキしか作ってない人が何言ってるんだか。しかも協力者付きで」
 実際、ほとんどを愛佳がやってくれたので俺はちょこっとサポートをしただけだった。
だけど作っている最中の愛佳はとても楽しそうだったので、やっぱり一緒に作ってよかったと思う。
「それじゃ居間に行きましょうか」
「ああ。しかし片づけが億劫だな」
「それは暗にあたし達を責めてるのかしら?」
「気のせいだ」
 居間に入って、それじゃ始めようかと思ったところで雄二が入ってきた。
準備が終わってから来た辺り、タイミングを計っていたんじゃないか?
「いよお〜!どうやら準備できたみたいだな」
「今さら来たか」
「ジュースの追加買い出しだけでこんなに時間がかかるはずないわよね」
「どっかで時間を潰してきたな」
「違う違う、店が混んでてさ。いやあ〜レジなんて地獄で大変だったぜ」
 あまりにも芝居がかってて怪しさ満点である。タマ姉ならすぐに見抜いてアイアンクローを
かましてくれるんだろうけど…残念ながら卒業して九条院に再び行ってしまったので今年はいない。
「ああ、そうそう。姉貴から花とメッセージカードが届いてたぜ」
「向坂先輩から?」
 雄二から愛佳に花束とカードが手渡される。タマ姉には教えていなかったと思ったけど、
知ってたんだな…愛佳の誕生日。わざわざ今日に合わせて贈ってくれたんだ。
「綺麗…」
「カードの方は何て書いてあるんだ?」
「えっと…『誕生日おめでとう。手間のかかる子だけどよろしくね』だって」
「は、はは…」
「んじゃ始めようぜ。ほれ、ご両人も席についてくれよ」
「一番最後に入ってきた奴が仕切るなって」
92笑顔の君にハッピーバースデー(7/8):2007/05/01(火) 15:05:06 ID:7RabTr5J0
「こほん。では、愛佳の誕生日を祝って…」
「「カンパーイ!」」
 俺の乾杯の音頭で始まった愛佳の誕生パーティー。
郁乃達に囲まれて笑顔で話す愛佳を見ていると、このパーティーを企画してよかったと心から思う。
「さて、それじゃまずあたしからプレゼントね」
 チャリンという音と共に愛佳の手の中に何かが手渡される。横から覗き見ると何かの鍵だった。
「由真、これは?」
「そこに停めてあるわよ」
 指差す方向には銀色の車体。いつのまに運んできたのか、庭には新品の自転車が停められていた。
「ええっ!い、いいの?」
「いいも何も。もらってくれないと持ち主不在のままになっちゃうからね」
 いきなりすごいプレゼントが来たものだ。
いいのかなあ、と苦笑する愛佳に今度はこのみからのプレゼント。
「喜んでもらえるかわからないですけど…」
 ――まさかネックレスで来るとは。このみがこういうものをプレゼントとして選ぶとは
失礼ながら意外だった。もしかすると春夏さんがアドバイスしたのかな。
「えと、お母さんから伝言です。『これでタカくんもメロメロよ』だって」
「「あ…あはは」」
 二人して苦笑する。やっぱりそうだったか…でも、このネックレスは愛佳によく似合いそうだ。
「――郁乃」 
 それまで後ろの方で黙っていた郁乃に呼びかける。
この中の誰よりも姉に渡したがっていた奴が一番後ろにいちゃいけない。
「う、うん」
 俺の前に出ると、大き目の紙の包みを愛佳に差し出す。 
何をプレゼントするのかは聞かなかったが、このサイズだと服の類だろうか。
「去年、お姉ちゃんがあたしにワンピースを買ってくれたじゃない」
 退院していろんなところに行けるようになった時のためにと、愛佳と俺の二人で選んで
プレゼントした白いワンピース。まあ、俺が除外されているのはこの際置いておこう。
「それで、その…お返しってわけじゃないけど」
 姉妹でお揃いのワンピース。何にするか迷った末か、それとも最初からこれに
決めていたのか。いずれにしてもお姉ちゃん子の郁乃らしいな。
93笑顔の君にハッピーバースデー(8/8):2007/05/01(火) 15:06:11 ID:7RabTr5J0
「わっ」
 いきなり郁乃をぎゅっと抱きしめる愛佳。
「ありがとう…郁乃」
「…うん」
 郁乃を抱いたまま涙ぐむ愛佳。
俺もプレゼントは用意してあるんだけど、もしかすると郁乃には敵わないかもな。
「それじゃ最後に、たかあきは何を用意したの?」
「ん、俺?さて何だろうな」
 由真の質問にすっとぼけてみせる。
ここで渡せるような物ではないので、後でこっそり渡そうかなと思ってたんだが。
「なになに、もしかして婚約指輪?うわ、気が早いわよ」
「タカくん…ここでプロポーズなんて大胆だね」
「いやいや。貴明、お前もやる時はやるなあ」
「なによ、このまま一気にゴールインする気?」
 勝手に盛り上がる一同。ぐあ〜、もうやってられん。
「…愛佳、俺の部屋に行こう」
「え?あ、うん」
「おいおい、昼間から早いぞ」
「何がだっ!」
 愛佳の手を引いて居間を飛び出す。――実はみんなが言ってることも意味合い的には
間違ってないので、それを聞いてる俺は恥ずかしくてたまらない。
「ねえ、たかあきくん」
「ん?」
「――ありがとう」
 俺に手を引かれながら、満面の笑顔でそう言ってくれる。
「その言葉はもうちょっと後にとっておいてくれるといいかも」
「…うん。じゃ、そうするね」
 もう一度、今と同じ笑顔でそう言ってくれたなら。俺もこのプレゼントを用意した甲斐がある。

――ハッピーバースデー、愛佳。
94名無しさんだよもん:2007/05/01(火) 15:08:36 ID:7RabTr5J0
愛佳誕生日SSです。
改行規制回避のためにかなり削りましたorz
プレゼントのくだりは読む人によってはかなり違和感あるかもしれません…

>89
支援どうもでした。
95名無しさんだよもん:2007/05/01(火) 21:45:56 ID:ZvyGrvPw0
>94
逆に考えるんだ。空白行を入れて2レスに分ければ改行規制は回避できると

それはともかくGJ。
みんなでお祝いというシチュもいいし、自分の誕生日ケーキ作っちゃう愛佳はツボったw

ただ、プレゼントに違和感と言われれば学生にしちゃ豪華すぎるなーって気はする
そして、さりげなく自分はプレゼントがない雄二(笑)?
それ以上に、肝心の貴明のプレゼントはなんなのかなって思ったが、そこは漏れが読めてないだけかな?
96肩凝り愛佳さん 1/6:2007/05/02(水) 00:53:51 ID:hcPEu2470

「姉、誕生日おめでと」
「へっ!?」
昼休み。唐突にやってきた郁乃が、唐突に愛佳の手に包みを押しつけた。
「開けてもいい?」
「どうぞ」
「わっ、キーホルダーだ。可愛い」
「たいした物買えなくて悪いけど」
「ううん。嬉しい」
「……それはいいけど、一体なんだそりゃ?」
横から突っ込んだのは雄二。
郁乃がプレゼントしたそれにくっついているオブジェは、エビの出来損ないのような奇妙な動物。
「アノマロ○リス」
カンブリア紀の海の支配者と言われるアレか。
「って、なんでそんなけったいなモノを」
「え、好きでしょ、こういうの?」
「はい?」
きょとん、と愛佳が首を傾げる。
「その髪飾りって、ハ○キゲニアじゃないの?」
当然のような口調で、普通の女の子が口にしないような単語をぶっ放す郁乃。
「わ、わかんないけど、違うと思う」
「じゃあ、ア○シュアイア? それとも、ミク○ディク○ィオン?」
「ど、どーっかなぁ……あははは」

そんなけったいな会話も、俺には聞こえていない。
「どうした? 貴明」
「い、いや、その、なんでも、なんでもない」
激しく動揺した声が出る。
やばい。
忘れていた。
今日、愛佳の誕生日だった……
97肩凝り愛佳さん 2/6:2007/05/02(水) 00:54:53 ID:hcPEu2470

「じゃあ、お願いしよっかなっ♪」
まだ微妙に怒ってらっしゃる感がある愛佳の口調。

放課後。
規模を縮小して残った書庫には、応接セットの名残でソファーがひとつ。
CDコーナー設置に伴って色々手が入った図書室だが、
終わってみれば書庫は相変わらずの閑古鳥で、
お茶は飲めなくとも、多忙な愛佳の休憩所であり続けていた。

で、昼休みに恋人の誕生日を忘れるという失態がバレて、
経済的事情により正式なものは後日改めてという前提で差し出した俺のプレゼントは。

つ【肩たたき券】
ちなみにこのみにも白い目で見られた。

愛佳は、怒ったというより忘れられていた事にがっかりしていたようだが、
「じゃあ、図書整理で肩が凝った所で使わせてもらいましょうか?」
丁寧語。
当然、俺は図書委員会の作業も手伝う事になった。

2時間ほどの作業を終えて、委員会は解散。
「う〜っ!」
ソファーに座って上に伸びる愛佳。
別に肩たたき券を最大活用しようと思ったわけではなかろうが、
目録作りにパソコンを使い続けて疲れたのは事実のようだ。
「それでは、叩かせていただきます愛佳姫」
「うむ、苦しゅうない……って何言わせるんですかぁ!」
「ちなみに何回コース?」
「無制限♪」
さいでっか。
98肩凝り愛佳さん 3/6:2007/05/02(水) 00:56:27 ID:hcPEu2470

たん、とん。たん、とん。
「うぁぅ〜、いい感じ〜」
へろーんと肩の力を抜く愛佳。
たん、とん。たん、とん。
「ごくらくごくらく〜」
「その言い方、おばさんっぽい」
「ええっ!?」
しゃきっ。いっとき背筋を伸ばすが。
たん、とん。たん、とん。
「ふぅぁ〜」
またぷしゅーっと猫背になる。
俺に言えた資格はないが、がっかりしてた割には幸せそうだ。

たん、とん。たん、とん。
「くぅ……、すぅ……」
単調なリズムのせいか、目を閉じて、うつらうつら。
頭が前に落ちて、肌色のうなじが襟元から覗く。
「……」
なんか、こう無防備だと。

ぐりっ。
左の、僧坊筋の肩側の付け根あたりを、肘で押してみた。
「ふひゃぁあんっ!?」
予想外におっきい声に、俺が驚く。
「ご、ごめん、痛かった?」
「えっ、う、ううん」
首を振る。
んだらば。右も。
ぐりぐり。
「あっ、あうっ」
ふむ。叩くより揉む方が良さげかな?
99肩凝り愛佳さん 4/6:2007/05/02(水) 00:57:35 ID:hcPEu2470
ぐにぐにぐにぐに。
「ぅあうっ、っぁ……ん……」
愛佳の肩は、驚くほど柔らかいが、それだけに凝ってる場所もすぐ判る。
何往復かして見当をつけた場所を、親指でぐりっと。
「あゃん、そこっ」
「お客さーん、凝ってますねえ」
首の根っこを両手の親指で押す。
「あうー」
ついでに首筋を頸椎に沿ってこりこりと。
「ひうっ、なんか鳴ったぁ」
「頭上げて」
愛佳が前に垂れていた頭を起こすと、左手で額の上を抑えて、右手で盆の窪あたりを指圧。
「ぅう〜っ」
首が反る。
3回ほど繰り返してから、今度は左右から頭を挟んでこめかみを。
「んぁんぅ」
親指でぐりぐりしてから、手のひらで両側からぐーっと圧迫。
力を入れると、自然と俺の顔が愛佳の頭に近づいてシャンプーの良い匂い、作業の後で少し埃っぽいのがまた……
ふっ。
「ひひゃんっっ!」
思わず耳に息かけちゃったりして。

「た、たかあきくん、それは、ダメぇ」
拗ねた顔が可愛い。
「いや、ごめん、距離が近かったのでつい」
「もう、エッチなのはいけませんよ」
冗談めかして言う。
けどさ、耳にふっ、しただけでそういう発言が出るって事は……
いやいやいや。煩悩を振り払う。
今日は愛佳を癒すためのマッサージ。疲れさせてどうする。
100名無しさんだよもん:2007/05/02(水) 00:58:17 ID:xOo2u4E70
支援&100Get
101肩凝り愛佳さん 5/6:2007/05/02(水) 00:58:37 ID:hcPEu2470
仕切り直して再び肩もみ。今度は肩胛骨の間をぐぐぐぐぐ。
「うぁ〜っ、きく〜っ」
今度はオヤジくさい感想で目を細める愛佳。ストレス多いのかなぁ。
ソファーの背が少し邪魔なので、体を押して前倒し。
夏服の下に、ブラジャーの線が透けて……だからダメだって俺。

むに、むにっと、柔らかい背中を肩胛骨の周囲に沿ってなぞる。
無警戒に覗く脇の下の誘惑に耐えながら、背中の端を指で押さえてゆく。
「ん……ん……」
前傾姿勢の愛佳はすっかり力が抜けて、そのまま前に落っこちそう。
「ういしょっ」
「あうっ」
細い両肩をつかんで体を起こす。反動でかくんと揺れる首。
そのまま、肩の外側から掴むように、五本の指で肩関節周りをもみほぐす。
「いぃぅゅ〜」
日本語だかなんだか解らない音を発しながら、ソファーに身を預ける愛佳。
その背中に体を寄せて、両肩の、押すと指が沈む部分をじっくり探った。

「ほいっ、こんなもんでどうだ?」
「あ〜り〜が〜と〜ぉ〜っ〜……ぽへっ」
ぱっと手を放して宣言すると愛佳は、間が延びきった声をあげながらソファーに崩れ落ちた。
「へへ〜、気持ち良かったぁ……」
上半身を横たえたまま、にへらんっ、と笑う。
上から見下ろすと、これまた無防備な事この上ないが、今は我慢。
俺も少し疲れたし。
「ふう……」
ソファーの前に回り込んで、隣に腰を下ろす。
「あ、ありがとう貴明くん、疲れたでしょ?」
身を起こしかける愛佳。
102肩凝り愛佳さん 6/6:2007/05/02(水) 01:00:04 ID:hcPEu2470
「いや、それほどでも……寝ていいよ。下校時刻前に、起こしてあげるから」
そう言うと、
「うん……」
今度は、そのままこちらに倒れてきた。
「うわっと」
慌てて肩を支えると、ぺたーっとしなだれてくる愛佳。
「おいおい」
「えへへ、これも誕生日プレゼント……だめかな?」
「……喜んで」
とはいえ、普段の愛佳はここまで甘えた行動はしない。
ベタベタするなら、こっちはいつでも歓迎なのだが、
控えめな性格の愛佳〜時々、やけに大胆だけど〜にとっては、こういうのは俺に甘える良い機会なのかも知れない。

肩に手を回す。
すぽっと俺の脇に治まる愛佳。
「じゃあ、お言葉に甘えて……すぅ……」
あっという間に、寝息を立て始めた。
静かな図書室の、さらに静かな書庫の陰。差し込む夕日。
「悪かったな」
愛佳が平和そうな程、罪悪感が増してきて、俺は呟いた。
「プレゼント、楽しみにしててくれな」
ちょっと奮発しよう。財布厳しいけど。

そんな言葉が、聞こえたのかどうか。
「……ア○マロカリスより、オパビ○アの方が可愛いと思うな、あたし」
いや、どんな寝言だ、それは。
103名無しさんだよもん:2007/05/02(水) 01:00:50 ID:hcPEu2470
以上です。>100さん支援ありがとうございます&100Getおめでとうございますw
愛佳誕生日おめ……って書いてるうちに誕生日過ぎてしまいましたorz
タイトル通り巷に溢れる肩もみモノです。捻りもなんもない衝動書きでエロなしオチもなし。大変失礼しました
104名無しさんだよもん:2007/05/02(水) 21:01:27 ID:SacySltn0
なんかデジャヴを感じると思ったら、過去スレに一発ネタがあったんだな。>肩たたき券
105名無しさんだよもん:2007/05/02(水) 22:44:00 ID:moexr6oS0
久しぶりに来てみたら作品が大量に投下されてる(゚д゚)ウマー
作者の皆さん超GJです

ところで、いけないイルファ先生で某漫画を思い出した俺ガイル
106名無しさんだよもん:2007/05/02(水) 22:48:48 ID:JPrI6F2A0
>>105
まぁあの某漫画だろw
俺も名前だけ別キャラの同タイトルで、葉SS書いたことある。ガチエロでw
107名無しさんだよもん:2007/05/02(水) 22:53:52 ID:CvAL+7Nf0
いけない○○先生と付いて、エロくない方がおかしいんですよ。
某漫画によればw
108名無しさんだよもん:2007/05/03(木) 02:06:31 ID:42PBPZEUO
桜の群像、メッチャクチャ楽しみでしょうがない。
ここまでハマったのは『ただ心だけが』以来。読んでてぽわ〜っとクるものがある。マジで作家さんGJ!
109名無しさんだよもん:2007/05/03(木) 02:35:07 ID:4BfPScOLO
すごく素っ頓狂な質問だけど

雄二ってちゃるよっちと面識あったっけ?
110名無しさんだよもん:2007/05/03(木) 02:42:01 ID:88nK9yLa0
よっちの声真似するくらいだから話した事はあるんじゃまいか?
111名無しさんだよもん:2007/05/03(木) 03:00:54 ID:2WOIHlQY0
>>109
中学時代は同じ学校だからこのみとつるんでるなら自動的に貴明と雄二とも良く顔を合わせることになるだろ。

112名無しさんだよもん:2007/05/03(木) 12:50:00 ID:otUMfZwpO
>>110
あれってよっちの声マネだったのか?なんかちょっと違うような…
でもまあ面識はあるだろ。朝も普通に挨拶してたし。
113名無しさんだよもん:2007/05/03(木) 22:08:51 ID:4BfPScOLO
そりゃそうか。貴明と違うのはいじられないってことぐらいかな。
さんくーす!
114記念、写真 1/27:2007/05/06(日) 18:52:09 ID:WvA0z4/X0
 珊瑚と瑠璃、二人の後ろから歩いていたイルファが、ふとそのショーウィンドーの前で
立ち止まった。
 何か目が離せない物が飾ってあるのか、ガラスの中をじっと見つめるイルファ。
 イルファが付いて来ていないことに瑠璃が気が付いて声を掛けるまで、ずっとその場で
たったままその中を見つめていた。

「イルファ、なにしてるん」

「あ、はい、申し訳ありませ──」

「貴明もー、あんまりゆっくりしとったら、おいてくでー」

「そんなこと言われても、こんなに荷物持ってたら・・・・・・」

 そのイルファの後ろから、両手両腕一杯に荷物を抱えた貴明が危なげについて来る。

「貴明さん。あの、やはり私もお荷物を持つのお手伝いした方が」

「イルファー、手伝わんでもええよ。女の買い物の荷物持ちするくらい、男の甲斐性のう
ちやで」

115記念、写真 2/27:2007/05/06(日) 18:54:40 ID:WvA0z4/X0
「って、タマ姉ちゃんが言っとったー」

「そ、それにや。貴明ふだんから無駄飯ばっかり食べてるんやから、こんな時くらい働い
て当然や」

 そんな瑠璃に、貴明は荷物の隙間から苦笑を返す。

「俺は大丈夫だからさ。3人の後からゆっくり付いていくから」

「で、ですが」

「それに瑠璃ちゃんの言うとおり、こんな時くらい男らしいところ見せておかないと」

 笑顔でそんなことを言われてしまったのでは、イルファもそれ以上無理に荷物を持つと
は言えなくなってしまう。

「あまり、ご無理はなさらないでくださいね」

 貴明は『わかってる』とでも言うように荷物を持ち上げて見せた。
 ただ、イルファの前ではそんな風に格好を付けてはいたのだけれど。実際のところとし
ては、そろそろ腕の方も限界が近づいてきそうだ。
116記念、写真 3/27:2007/05/06(日) 18:56:33 ID:WvA0z4/X0
 幸い3人とも前を向いておしゃべりをしているし、一息つくつもりでその場で立ち止ま
った。
 それは、さっきイルファが立ち止まって、一生懸命に眺めていたショーウィンドーと同
じ場所で。
 ちょっとした好奇心で、貴明は、イルファが見ていたガラスの中の物を振り向いてみる。

「・・・・・・ああ」

 ガラスの中に飾られている幾つかの中から、イルファが見ていたんだろう物を見つけて
つぶやきの声を漏らす。

「貴明ー、本当に置いていってまうよー」

「あ、待ってよ、今行くから」



117記念、写真 4/27:2007/05/06(日) 18:58:24 ID:WvA0z4/X0
「なあ、最近貴明の様子、おかしいと思わん?」

「瑠璃ちゃんもそう思う? ちかごろちっとも一緒に帰ってくれへんし」

「イルファ、何か知っとる?」

 ここ2ヶ月ほど、貴明さんの様子がどうにもおかしいような気がします。
 今までなら学校が終われば、瑠璃様、珊瑚様と一緒にマンションまで帰っていましたの
に、それが今では校門を出ればすぐにどこかへ行ってしまわれるとのこと。
 せっかく学校がお休みになられても、朝早くからどこかへ出かけてしまいますし。
 
「いえ、私も聞いてみたのですがきちんとは教えてくださらなくて。どこかでアルバイト
をしているとは、おっしゃっていましたが」

「アルバイトぉ?」

 瑠璃様が素っ頓狂な声を上げて驚かれます。少しはしたないとは思うのですが、驚いた
のは私も一緒でしたし。
118名無しさんだよもん:2007/05/06(日) 18:59:15 ID:Cio8pqS60
支援
119記念、写真 5/27:2007/05/06(日) 19:01:11 ID:WvA0z4/X0
 何日か前、帰りが夜遅くになってしまった貴明さんを詰問したところ、ようやくそのこ
とを教えてくださって。それでもなぜそのような事をなさっているのかまでは、はぐらか
されてしまったのですが。

「貴明、うちでタダ飯食っとるくせに、何にそんなお金使うんや」

「あ、いえ、貴明さんからはちゃんと毎月の食費は戴いていますから」

 「知っとる、そんなことくらい」と横を向いてしまう瑠璃様。ですが瑠璃様のおっしゃ
るとおり、貴明さんからは食費その他、一緒に生活する上での必要経費は戴いてはいます
が。急に、お金が必要なことでも出来たのでしょうか。

「なんか欲しい物でもあるんかなー? 言ってくれれば、いくらでも買ったるのに」

「さ、珊瑚様、さすがにそれは・・・」

 珊瑚様、なんで、と首を傾げられましても・・・その、それでは貴明さん、まるでヒモの方
みたいです。流石に口に出しては言えませんが・・・・・・
120記念、写真 6/27:2007/05/06(日) 19:04:14 ID:WvA0z4/X0
 ただでさえ貴明さん、私たちと一緒に生活していることをお悩みになっているというの
に。そこでそんなことを珊瑚様に言われてしまっては、プライドをズタズタにされてしま
って、ショックのあまり家に戻ってしまうかもしれません。
 それは、いけません。
 ですから、貴明さんが何かお金の必要な事情が出来たのでしたら、反対などは──あ、
もちろん条件は付きますよ──いたしませんのに。一言、相談していただきたかったです。

「貴明なんかの為に、さんちゃんがそこまでしたる必要なんかない。欲しい物があれば、
自分で買えばいいんや居候のくせに」

「じゃあ貴明の欲しい物って、何なんやろう。瑠璃ちゃんわかる?」

「う、うちがわかるわけ無いやろ!」

 なんでうちが、貴明の欲しい物なんて知っとらんといけんの。そうおっしゃいます瑠璃
様の口調は、少しだけ悔しそうで。きっと、自分の知らない貴明さんがいるということが
悔しいのだと思います。
 それは、私も、それに珊瑚様も一緒で。

121記念、写真 7/27:2007/05/06(日) 19:07:10 ID:WvA0z4/X0
「あのな、うち、タマ姉ちゃんに聞いてみたんや、貴明のこと。そしたらタマ姉ちゃん、
貴明は絶対うちらのこと悲しませたりせえへんから、今は貴明のこと信じて待っといてあ
げて、って」

「環様は、貴明さんが何のためにアルバイトをしてらっしゃるのか、ご存知なのですか?」

 特に、環様やこのみ様とお話をしているとそう感じてしまいます。
 何ヶ月も貴明さんと一緒に暮らしていても、まだまだ貴明さんについて知らないことが
多くて。けれどあのお二人は、子供の頃からの貴明さんを、ご存知ですから。

「うん、そうやねん。でも貴明、タマ姉ちゃんにはちゃんと教えてるのに、うちらにはち
っとも教えてくれへんで」

 珊瑚様の声は、だんだんと小さくなっていってしまいます。

「まさか貴明、誰か好きな女が出来たとか」

 ポツリと瑠璃様が言ったその一言に、私は慌ててイスから立ち上がってしまいました。
瑠璃様は、なんとなく思い浮かんだことが口にしてしまったのでしょうが、今の私には、
それがまるで本当のことのように聞こえてしまって。

122記念、写真 8/27:2007/05/06(日) 19:09:44 ID:WvA0z4/X0
「た、貴明さんに限ってそんな」

 慌てて否定してみても、胸の中に沸いてしまった物は晴れてはくれず。まるで、カーペ
ットにこぼれたインクみたいに広がっていってしまったような。
きちんと考えれば、貴明さんがアルバイトをしていることと、どなたか好きな女性が出
来たことが一緒になるはずはないのですが。
けれど、貴明さんが私たちに何もおっしゃってくださらないことが、私を不安にさせま
す。

「そ、そうやな。貴明みたいな甲斐性なしをかまってやるような奴が、うちらの他にいる
わけないし。う、うちったら何変なこと言っとんのやろ」

 瑠璃様もそんな雰囲気を感じたのでしょうか。笑って紛らわせようとするのですが、そ
の声もすぐに消えてしまって。
 何かを言おうとはするんです。でも、何を言えばこの不安な気持ちが消えてくれるのか、
それが解らなくて。

「あ、あの」

 そんな時でした、玄関のインターフォンが鳴ったのは。

123記念、写真 9/27:2007/05/06(日) 19:12:07 ID:WvA0z4/X0
「ただいまー。ゴメンゴメン、遅くなっちゃって」

 玄関の扉の開く音。そして聞こえてくる、いつもと変わらない貴明さんの声。

「もうご飯たべちゃった? 連絡しようと思ったんだけど、なかなか手が放せなくて・・・
さ・・・・・・?」

 疲れた様子でリビングに入ってくる貴明さん。
 いままでこんな話をしていたせいでしょうか。朝、学校にお出かけになる前にちゃんと
お顔を見ているというのに、とても長い間お会いしていなかったような気がして。
 けれど貴明さんのお顔を見たとたん、そんな気持ちが嘘のように晴れていって。

「貴明さん」

「え、えっと、なに? 遅くなっちゃったことなら、ごめん、心配させちゃった?」

 私と、それに珊瑚様、瑠璃様の3人から見つめられて狼狽する貴明さん。でも、これく
らいは当然です。私たちのことを不安にさせたのですから。

「貴明、うちらのこと嫌いになったん?」

124名無しさんだよもん:2007/05/06(日) 19:13:51 ID:MKwlrCpX0
支援
125記念、写真 10/27:2007/05/06(日) 19:14:40 ID:WvA0z4/X0
「・・・・・・え?」

 珊瑚様のその質問に、そんな返答をしどろもどろでするのが精一杯の貴明さん。
 当然、珊瑚はそんな答えでは満足せず。ああ、目に涙を浮かべてしまって。

「さ、珊瑚ちゃん、な泣かないでお願いだから、ね? 俺が何かしたのなら謝るからさ」

「貴明いぃぃぃぃ」

 瑠璃様が貴明さんを睨みつけます。
リビングはもう大混乱です。珊瑚様は泣き出しそうですし、瑠璃様は珊瑚様を泣かせた
貴明さんに詰め寄って。
 貴明さん、まるで助けを求めるように私の方を見るのですが。貴明さん、私だってちょ
っと怒っているんですよ。

「貴明さん、こちらに」

 そう言ってイスを指すと、貴明さんまるで取調室の椅子に座るように恐る恐る座って。
 相変わらず瑠璃様からは睨まれ、珊瑚様は、多少落ち着かれたようです。一生懸命、貴
明さんのことを見て。

126記念、写真 11/27:2007/05/06(日) 19:17:52 ID:WvA0z4/X0
「貴明さん、今まで一体どちらに行かれていたのですか? いえ、今日こそはっきりとさ
せていただきましょう。何のために、アルバイトをなさっていらっしゃるのですか?」

 いつもならこうお聞きすると、曖昧にごまかしていらした貴明さん。
ですが、私たちの気持ちが伝わったのでしょうか。
真剣な表情で私たちのことを見つめて。

「ごめん、俺がきちんと説明してないせいで、皆を困らせちゃって。こんなに真剣になっ
てくれるなんて、思ってもいなくて」

 そこまで言うと、貴明さんは少し考え込んで。

「あと1週間、1週間だけでいいんだ。このまま、アルバイト続けさせて欲しい。1週間後
には、絶対に3人共に何をやっていたのか説明するから」

 だから、お願い。そう言って頭を下げる貴明さん。
 貴明さんのそのお願いに、私は何とお答えすれば良いのか混乱してしまって。それは、
横に座る瑠璃様も一緒のようでした。

「なあ、貴明。本当に、あと1週間したら教えてくれるん?」

「ああ、本当に。約束する」

127記念、写真 12/27:2007/05/06(日) 19:21:00 ID:WvA0z4/X0
「じゃあ貴明、うちらのこと嫌いになったんとは違うの?」

「そんな、珊瑚ちゃんたちのこと、嫌いになんてなるはずないじゃないか! 大好きだよ、
珊瑚ちゃんも、瑠璃ちゃんのことも、イルファさんも」

 貴明さん・・・・・
 珊瑚様も、貴明さんおっしゃったことに満足したのでしょうか。いつものような、明る
い笑顔を浮かべて貴明さんに頷きます。

「解った。貴明がそう言うんやったら、あと1週間我慢する。瑠璃ちゃんもそれでええ?」

「ん、あ・・・さんちゃんがええんやったら、うちもそれでええ。貴明、あんたのワガママに
付き合ってくれるさんちゃんに感謝しぃ」

「うん、解ってる。イルファさんも、良いかな?」

 貴明さんが私のことを向きました。どこか困ったような、申し訳なさそうなお顔をして。
 もちろん、お断りする理由は私にはありません。

「はい、わかりました」

 きっと、笑顔でそうお答えできたと思っています。
128記念、写真 13/27:2007/05/06(日) 19:23:17 ID:WvA0z4/X0



 次の日。お夕飯の買い物に商店街まで行った私は、少し足を伸ばして、貴明さんの働い
ているゲームセンターまで行ってみました。
 こちらの場所をお伺いするまでにもひと悶着あったのですが。貴明さん、なぜか教えて
くださることを恥ずかしがってしまって。最後にはアルバイトをしている理由を教えてく
ださらないのなら、せめて、ということでしぶしぶ教えてくださいましたが。
 ゲームセンターの中は学校から帰る途中なのでしょうか、大勢の学生の方で賑わってい
て。そんな学生の方たちの楽しげな話声やゲームの音楽のお陰でしょうか、思っていたよ
りもゲームセンターって、明るくて賑やかな場所のようです。
 そういえば、ゲームセンターに来るのはこれが初めての経験です。データとしては知っ
ていましたが、瑠璃様も珊瑚様もこういった場所にはあまりいらっしゃいませんし。貴明
さんも、私をゲームセンターに連れてきてくださることはありませんでしたから。
 ・・・・・・今度、貴明さんに案内をお願いしてみましょう。その、世間では付き合っている
男性の方と一緒に写真を撮ったり、ヌイグルミを取ってもらったりするそうですから。
 そんなことを考えながらお店の奥の方に入っていくと、いらっしゃいました、貴明さん
が。
129記念、写真 14/27:2007/05/06(日) 19:25:40 ID:WvA0z4/X0
 貴明さんはお店の制服を着て、クレーンゲームの調整を行っているようでした。
 私は邪魔をしないように少し離れたところから、そんな貴明さんの様子をみていたので
すが。そんな気配を感じたのでしょうか。不思議そうに辺りを見回し、私が居ることに気
が付くと大慌てでもう一度、周囲を伺いだして。

「い、イルファさん?」

 私は貴明さんにお会いすることが出来ましたし、すぐに帰ろうとしたのですが。貴明さ
んは身振りで少しだけ待っていて欲しいとおっしゃってきて。
 ご迷惑になってしまうことは解ってはいたのですが、結局、貴明さんのお言葉に甘える
ことにしました。
 貴明さんをお待ちしていたのは、そう長い時間ではありませんでしたが──5分少々と
いったところでしょうか。ですがゲームセンターにメイドロボと言う取り合わせは非常に
珍しいらしく、辺りからずいぶんと注目を浴びてしまって。
 話かけてくるような方こそいらっしゃいませんでしたが落ち着かないことに変わりはな
く、慌てた様子の貴明さんがいらした時には思わず安心の溜息をついてしまったくらいで
す。

130名無しさんだよもん:2007/05/06(日) 19:28:53 ID:9l8V42RT0
支援?
131記念、写真 15/27:2007/05/06(日) 19:31:08 ID:WvA0z4/X0
「ゴメン、お待たせ。でも、どうしたの?」

「い、いえ、何か急なご用があった訳ではないのですが、その、近くまで来ていましたの
で。それで、貴明さんのアルバイトしている場所がどのような所なのか気になってしまっ
て。あ、すぐ戻りますので。申し訳ありませんでした、お時間をいただいてしまって」

「いや、俺の方こそさ、今までどこで何やっているのかイルファさんたちに教えていなか
ったし、気になるのは当たり前だと思うから。俺だって、イルファさんや珊瑚ちゃんが俺
の知らないところで何かやってたりしたら気になるし。だから、俺の方こそゴメン」

 イルファさんたちは家族なのに、秘密でこんなことしてて。貴明さんはそう言うと頭を
下げてしまいます。
 そんな貴明さんに、慌ててしまったのは私の方でした。そう言うつもりで、こちらに足
を運んだ訳ではありませんでしたし。

「本当は、きちんと言おうかとも思ったんだけどさ。皆にこんな格好しているところ、見
られるのが恥ずかしくて」

132記念、写真 16/27:2007/05/06(日) 19:36:51 ID:WvA0z4/X0
 そうおっしゃる貴明さんは、それがこちらのゲームセンターの制服なのでしょうか。白
のワイシャツとネクタイ、それに黒いズボンをサスペンダーで吊って。

「そう、ですか? 良くお似合いだと思いますよ」

 私がそう言うと、貴明さんは照れくさそうに横を向いてしまいました。

「それでは私は戻りますね。ありがとうございました。あまり、ご無理はしないでくださ
いね」

「あ──うん。ごめん、結局、理由を言わなくて」

「いえ、それはもう貴明さんに約束していただきましたから。あと1週間すれば、きちん
と教えてくださると。ですから、貴明さんを信じてお待ちしています。私も、それに瑠璃
様も珊瑚様も」

 ああ、ですが。

133記念、写真 17/27:2007/05/06(日) 19:39:35 ID:WvA0z4/X0
「今までお相手してくださらなかった埋め合わせも、きちんとしていただかなくてはいけ
ませんね。貴明さん、お休みはいっつもこちらに来てしまって、私たちのお付き合いして
くださらないんですから」

「わ、わかった。そっちの方も努力する」

「約束ですよ?」

 頷く貴明さんと別れて、私はゲームセンターを後にしました。
 貴明さんは私が店の外に出るまで見送ってくださっていて。
次に店の中を振り向いた時、貴明さんは忙しそうに、お店の中を働いていらっしゃいま
した。



134記念、写真 18/27:2007/05/06(日) 19:43:46 ID:WvA0z4/X0
 そして、約束の日。
 その日は瑠璃様も珊瑚様も、朝から落ち着かないご様子で。もちろん私も、貴明さんが
何かをおっしゃるのをそわそわとした気持ちでお待ちしていたのですが。
 貴明さんも今日はアルバイトが無いらしく、朝からマンションにいらっしゃって。です
がいくらお待ちしていても、私たちに声を掛けてはくださいません。
 ただ、頻繁に時計を見ては時間を気になさるだけ。
 ようやく声を掛けてくださったのは、そろそろお待ちするのも限界が(特に瑠璃様が)
近づいていた、午前11時過ぎのことでした。

「あの、さ。これから3人とも、何か予定ってある? 無ければ、付き合って欲しいとこ
ろがあるんだけどさ」

 もちろん予定なんてありません。
 私たちは頷くと、貴明さんに付いてそのまま外へ。
 表はとてもいい天気で、お散歩には絶好の日和でした。貴明さんに案内され歩いていく
最中も、それだけで気分が良くなってしまうような。

「貴明さん、これから、どちらへ?」

「うん、もう少しで着くから」

135記念、写真 19/27:2007/05/06(日) 19:46:45 ID:WvA0z4/X0
 そして到着したのは、1軒の写真館でした。

「ごめんくださーい。お願いしていた河野ですが」

 そう言ってお店の自動ドアをくぐる貴明さん。私たちはどうなっているのかさっぱり解
らず顔を見合わせます。
 この写真館に私たちを連れてくることが、貴明さんが私たちに黙っていた"理由"にな
るのでしょうか?
 ただ、このままドアの前で立っていても仕方が無いと思ったのでしょうか。珊瑚様から
順に、お店の中に入って行きました。

「いらっしゃいませ」

 中は思ったよりも広く、壁のあちこちに写真や高級そうなカメラがケースに入れられて
飾られていました。カウンターの奥がスタジオになっているようで、撮影用の大型カメラ
や、ホリゾント用の幕が垂らされていたり。かなり本格的なスタジオのようです。

「こちらが? ですがお客さん、うちも商売だから頼まれれば撮りますけどね。苦労しま
すよ〜、若いうちから2人も3人もこう言うことしちゃ」

136記念、写真 20/27:2007/05/06(日) 19:51:13 ID:WvA0z4/X0
 お店の方に言われ、苦笑を返す貴明さん。どう言ったお話になっているのかは解りませ
んが、貴明さんはずいぶんと前からこちらのお店にお話をしていたようです。

「それじゃあイルファさん、珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんも。俺はこっちの部屋らしいから。
準備ができたら撮影してくれるらしいから」

 そう言って貴明さんは、お店の人に案内されて奥のお部屋の方に行ってしまいます。

「では、女性の方はこちらへ」

 どうやら、こちらで記念撮影をすることは間違いないようです。瑠璃様も珊瑚様も事情
が飲み込めてきたらしく、素直にお店の方に案内されて、貴明さんが入った部屋とは別の
部屋入っていきました。

「なんや、貴明もうちらと写真が撮りたいんやったら、最初から素直にそう言えばええの
に」

 ですがそうおっしゃる瑠璃様のお顔もまんざらではなさそうで。珊瑚様も、そうとわか
って大はしゃぎです。
137記念、写真 21/27:2007/05/06(日) 19:54:30 ID:WvA0z4/X0
 私も、貴明さんがくださったこの贈り物に胸の中が暖かくなって。
 案内されて入ったそのお部屋は、まるでお話に聞く楽屋のようなところでした。
 三面鏡が並び、その後ろには大きなクローゼットと沢山のお洋服が。

「ではこちらに座ってください」

 促されてその鏡の前に座ります。周囲には、これから私たちにメイクをしてくださるの
でしょうか、何人もの店員のかたが準備をしていて。
 横を向いてみれば、瑠璃様もどこか居心地が悪そう。

「ちょっと大変ですけど、頑張ってください・・・あら?」

138記念、写真 22/27:2007/05/06(日) 19:59:20 ID:WvA0z4/X0
 きっと、私の耳飾に気が付いたのでしょう。そのお店の方は一瞬考えるような表情をな
さいましたが、すぐに笑顔に戻って。

「メイドロボと言ったって女性ですからね。こう言うのを着たって誰も文句は言わないで
しょ」

「あの、一体何が?」

「あの男の子がご主人様? 逃がしちゃだめよ〜、ちょっと頼り無さそうだったけど。さ
あ、はじめましょうか」



139名無しさんだよもん:2007/05/06(日) 20:01:54 ID:pZZJ37KV0
支援いるかな?
140記念、写真 23/27:2007/05/06(日) 20:03:53 ID:WvA0z4/X0
 一足先に準備の終わった貴明が、スタジオの隅で落ち着かなさそうに3人が出てくるの
を待っていた。
 そんな貴明の様子を、写真館の店員が苦笑しながら眺めているが、そこに嫌味な物は含
まれていない。
 と、3人の入って言った部屋の扉が開いた。とたん、バネ仕掛けの人形のように立ち上
がる貴明。
 中から聞こえてくるのはキャアキャアと賑やかな3人の声。どうやら、誰から先に出る
かでもめているらしい。貴明といえば、その扉のところを期待3割緊張7割といった面持
ちで眺めていて。

「わ、私からですか?」

「い、いいからイルファ行って。うううちらは後から付いていくから」

「いっちゃん、ファイトや!」

 ようやく話がまとまったらしい。中から、イルファの意を決したような雰囲気が伝わっ
てくる。
 そして聞こえてくる、絹同士の擦れ合う涼やかな音。

141記念、写真 24/27:2007/05/06(日) 20:07:23 ID:WvA0z4/X0
「うわぁ・・・・・・」

 部屋の中から出てきたイルファ、瑠璃、珊瑚の姿に、貴明は思わず声を上げる。
 貴明だけじゃない。その場にいた店の店員全員が、まるで溜息のような声を漏らした。

「あ、あの、貴明さん」

「たたたたた貴明! 一体これ、なんなの!?」

「えっと、何なのって聞かれても・・・その、ウエディングドレスだけど」

 その貴明の言葉に、次の言葉が続かないイルファと瑠璃。
 部屋の中で、店の人に着替えさせられたのがこの真っ白のドレスだった。

「あ、でも厳密にはウェディングドレスじゃなくて、ウエディングドレスっぽいただのド
レスなんだけど。本物は、本番のその時まで取っておいた方がいいかなと思って。えっと、
それに貸衣装だし。流石に買うことまでは出来ないから」

 余計なことまで喋ってしまうのは、貴明も緊張しているからだろうか。
 貴明自信も慣れないタキシードに着替えて、どこか窮屈そうだ。

142記念、写真 25/27:2007/05/06(日) 20:10:55 ID:WvA0z4/X0
「あのさ、前にイルファさん、ここの写真館のショーウィンドーに飾られてるカップルの
写真見てたことがあっただろ。ウェディングドレス着ていたやつ。今まで俺たち、記念写
真なんて撮ったこと無かったし、いい機会だし、それにどうせ撮るならと思って」

 貴明はどんどんしどろもどろになっていく。
 やっぱり、何の相談もしないでこういうことを決めたのは拙かっただろうか。そんなこ
とを思いながら。

「で、でも貸衣装って高いんだね。前に金額聞いてみたら驚いちゃってさ。それで慌てて
アルバイト始めたんだけど、結局足りなくて店長に前借しちゃったし。そんなんだから、
イルファさんたちに何をしているのか言いにくくて、だから秘密にしちゃって」

「貴明」

 珊瑚に名前を呼ばれ、慌ててそちらを振り向く貴明。
 見れば珊瑚の顔は難しそうに口を結んでしまっていて。

「だから、今までうちらに内緒で、アルバイトしてたん?」

「えっと、そうなんだ。ごめん、内緒にしちゃってて」

143記念、写真 26/27:2007/05/06(日) 20:13:13 ID:WvA0z4/X0
「いーや、許してやらへん」

 珊瑚のその一言に、貴明の表情が泣きそうになる。
 ただ次ぎの瞬間、珊瑚は貴明に向かって大きな笑顔を向けると。

「先に教えてくれてたら、もっと可愛いドレス選んどったのに。だからな貴明、本番のと
きは一緒にもっと可愛いウエディングドレス選ぼうな」

 そう言うと、珊瑚は貴明の首に手を回すと、まるで貴明に抱きつくようにキスをする。

「あー! さんちゃんずるいー!!」

 大声を上げる瑠璃。店員の間からは感嘆の声が上がった。
 たっぷり満足するまで貴明を堪能すると、珊瑚はようやく貴明を解放する。

「じゃあ、次は瑠璃ちゃんの番や〜♪」

 珊瑚がそう言うが早いか、今度は貴明の唇を瑠璃が奪い。
 店の中は大喝采。気を良くしたカメラマンが、そんな4人の様子を撮影し始めている。

144記念、写真 27/27:2007/05/06(日) 20:17:11 ID:WvA0z4/X0
「貴明さん」

「あ、うん」

「ありがとう、ございます。私、メイドロボなのに、こんな・・・・・・一生の、思い出にしま
す」

「違うよ、イルファさん。前も言っただろ、俺はイルファさんのこと、メイドロボだなん
て思ったことはないって」

 そして、照れくさそうに顔を赤くしながら。

「それにさ、珊瑚ちゃんも言った通り。イルファさんが本物のウエディングドレス着る時
は、一緒に選ぼうよ。イルファさんに一番良く似合うやつ」

「はい・・・・・・はい!」

 イルファは涙を流せないが、それでもイルファは目の中を涙で一杯にして貴明に抱きつ
いて。

「それではまずは一枚。はい、チーズ───



   終
145記念、写真 あとがき:2007/05/06(日) 20:21:47 ID:WvA0z4/X0
支援くださった方、ありがとうございます。

ウエディングドレス着たイルファさんとか想像すると、それだけで感激のあまり涙が出そうになります。
そんな思いの詰まったSSでした。
146名無しさんだよもん:2007/05/06(日) 20:34:48 ID:9l8V42RT0
おつ〜。
愛情がにじみ出てるssでした。
なかなかビッグサイズだし。
147名無しさんだよもん:2007/05/06(日) 20:48:42 ID:pZZJ37KV0
>145
GJ〜。こんな貴明ならイルファさんも幸せになれそうだね
ここまでイルファさん中心にするなら、いっそ瑠璃と珊瑚は見守る立場でも良かったかも?
148名無しさんだよもん:2007/05/06(日) 21:02:00 ID:a+b4l4ElO
>>145
乙〜
しかしホントこの貴明はかっこいいな。
イルファさんのラストの感涙(?)もよかったけど今回はある意味貴明が一番よかったかも。
149名無しさんだよもん:2007/05/06(日) 21:37:02 ID:MKwlrCpX0
結婚式にはミルシルもいるんだよな
すごいことになりそうだ
150名無しさんだよもん:2007/05/06(日) 23:04:56 ID:mRcRbu88O
>>145
乙!GJ!
長い〜。そしていい話
イルファさんssっていいなぁ。やっぱりキャラ的に使いやすいのかな...
151名無しさんだよもん:2007/05/07(月) 01:27:52 ID:MGljKgDHO
この後は修羅場が待っているわけですね
152名無しさんだよもん:2007/05/07(月) 06:20:55 ID:PTm6rWiD0
双子とロボ姉妹は増えても大丈夫だろ。環とこのみはどういう態度に出るか知らんけど
まあ環は怒るだろうが、このみは混ぜて貰いたがるかもな、なんて妄想したりw
153名無しさんだよもん:2007/05/07(月) 12:54:16 ID:otFpp/wzO
>>145
乙ー。なかなか良かったんじゃないかな。
特に、他のキャラが濃いから、つい埋没しがちな珊瑚ちゃんが、ちゃんと味を発揮出来ていたところなんかは思わずニヤリとさせられたよ。
んー、でも高校生がちょっとバイトしたくらいで結婚式の記念撮影みたいな事出来るかなー?
結構金かかったような気がするけど……
折角タマ姉が影で絡んでる風なんだから、タマ姉がクチを利ける結婚式場でモデルを、なんて方法でも良かったかも。

ま、そんな事をしたら金はかからないは色んなドレスが着れるわでいいんだけど、タマ姉やこのみが乱入してオチはドタバタになっちゃうかなww

>>150
イルファさん書きやすいかな?
漏れはむしろ書きにくいキャラだと思うんだが……
なにが難しいって、瑠璃ちゃんへの好意と、貴明に対する感情をどうバランス取るか、悩むんだよなー。
154名無しさんだよもん:2007/05/07(月) 16:04:15 ID:CW/Wn/SF0
なんでそこまでリアルに考えるかな
155名無しさんだよもん:2007/05/07(月) 19:30:27 ID:de855/Me0
割り切りも必要だけど、やっぱり好きなキャラの心情は真面目に悩むもんだろうよ

個人的には、イルファさんの瑠璃珊瑚と貴明への想いは両立し易いと思うけどね
取捨選択を求められるものでもないし、そもそも原作で思いっきり4Pあるし
156名無しさんだよもん:2007/05/07(月) 21:36:59 ID:otFpp/wzO
>なんでそこまでリアルに

ある程度リアリティーがないと説得力がないから。
ノリとご都合だけじゃつまらんもん。
それに、好きなキャラの隠れた心情を色々深く考えたりするのって楽しいでしょ??
っていうかそれが楽しいからSSを書くワケだ品。
157名無しさんだよもん:2007/05/07(月) 21:42:43 ID:CgsLierB0
>153
“フォトウェディング”でぐぐると、安い所は5万円前後からあるみたい
男一人に女の子三人なんて申し込みの料金計算はどうなるのか知らんけどw
158名無しさんだよもん:2007/05/08(火) 03:33:56 ID:80DlDbXZ0
>>156
で、高校生が時給いくらで何日バイトしたら出来るのかがちゃんとしてたらリアリティが増して面白くなるかね
リアリティは大切だと思うけど、この程度のこと気にして読んで楽しい?

とまあそんなこといいつつも
・貴明だけに荷物を持たせることに納得してるイルファ
・ある程度の量の荷物になる買い物をして宅配を利用しない珊瑚
・カップルで映ってる写真をみて、ウェディングドレスって発想にまで行く貴明
俺は最初にこれが気になって仕方なかったが
159名無しさんだよもん:2007/05/08(火) 10:25:30 ID:mG7NLg3l0
>リアリティは大切だと思うけど、この程度のこと気にして読んで楽しい?
元の>>153は書くときの話をしてると思う。

で、何をどこまでリアルに考えるかなんて書き手の裁量だろ
160名無しさんだよもん:2007/05/08(火) 21:12:14 ID:80DlDbXZ0
>>159
書くときの話はその1行前。「それで面白くなるのか」って聞いてるっしょ?
そんで、読むときにまでそこまで気にしてにして楽しいのかなと思っただけだが
161名無しさんだよもん:2007/05/08(火) 21:24:52 ID:uz7U2AS20
>>160
つまりリアリティというものの解釈というか、方向性について論じたいのかい?
SS内に具体的な数字(この場合は時給か)を盛り込む必要はなくとも、物語に説得力を持たせるためには
キャラクターの思考・行動に不自然さがなくなるようにしなければならない、と。

まぁ言いたいことは分かる(ホントに上で書いたような内容ならだけど)が、ちょっと書き方が遠回しすぎて
分かりにくいし、煽るようなというか、相手を見下したような物言いは避けた方がいいと思うよ。
相手がどんな風に返答をしても自分はダメージ喰らわない賢い文章を書いたつもりなのかもしれないが
まだ甘い。
162名無しさんだよもん:2007/05/08(火) 21:25:54 ID:yzgvTJUe0
まだ甘い、とかいう言い方も見下してるような気がするが
163名無しさんだよもん:2007/05/08(火) 21:32:10 ID:8JjrTYQP0
>160
漏れ(>157)は>153じゃないけど

「これはリアルじゃない! ダメだ!」みたいな思考法ならつまらなくなるだろうけど、
>153の前段みたいに疑問から色々妄想を膨らますのは面白いと思う
>157みたいにちょちょっと調べてみるのもまた楽しいもんだし

そもそも気になるならないなんてのは自分の意志でどうなるもんでもないんだから、
要は「それはそれとして」ができれば楽しむのには問題ないかと
164名無しさんだよもん:2007/05/08(火) 23:43:36 ID:80DlDbXZ0
>>161
ダメージってなにさw
別にこっちはどんな返答があっても痛くもかゆくもない

自分もそうだけど、
ずいぶん細かく見てるけど、そこまで気にして楽しめるのかどうか。
という疑問に対しての返答は望んでるけど,どこまでリアリティを追求するかの議論は興味ないよ
純粋に楽しむには向いてないよなと自分でも思うし

貴明には仕送りだってあるし預金だってあるだろうから
法外な金額ならともかく10万20万なら2ヶ月で捻出できない額ではないよね
無理があるようには感じない。だから細かいところを気にしてるなって思っただけ。

見下してるように見えたのは反省しとくよ


誤解のないように言っておくけど、そういう考えで読むな書くなとは言ってないからね
165153:2007/05/09(水) 00:27:07 ID:6L4ctxScO
なんか物議を醸してしまったようで、ちょっと申し訳ないような。
今携帯からだから長く書くの面倒なんで、答えになるかはわからんけど、少しだけ補足させて。

まず、細かいトコに目を付けて読んで楽しいかーと問われれば「楽しいです」だね。
でも勘違いしないで欲しいのは、それは作品が面白かったからなんだわさ。
不味い弁当の隅はつつかない、美味しいから、より楽しみたいから重箱の隅をつつくんだ、って事をちょっと理解して欲しかったかな。

あと、リアリティに関する考え方は好みとしか言いようがないかなぁ。
自分は「過程が大切で、可能性があればいいというものではない」と信じてるし、だから「高校生が十万を大きく越えるようなお金をひと月くらいで作る」のは不可能ではないかもしれないけど、不自然かな?と感じてしまったわけですよ。

でもね?つまんなかったらそこで終るし、はっきり言ってわざわざ感想に書いたりしないわな、重箱の隅だし。
自分はオチとしての「みんなで仮想ウエディング記念写真」はすごく気に入ったんですよ。
だからもう少し納得のいくような自分なりの「過程」を妄想してみた、ようは三次創作をしてみたわけですな。

ま、結局「同人好きには妄想がやめられないんだ」って言いたいのかな、俺は。
166名無しさんだよもん:2007/05/11(金) 08:00:46 ID:izogfImZ0
ここは周期的にこんな流れになるんだな
167名無しさんだよもん:2007/05/11(金) 11:07:44 ID:xykb5jrn0
>>165
自分はテンポ良く読めればそれほどリアリティは気にならないかな。
あとは原作やキャラの雰囲気が上手く出せてればOKって感じ。

原作からしてご都合主義満載なわけだし、リアリティとか言っても
仕方がないというか、それはあくまで個々人にとってのリアリティな
わけだし。

不自然とか言い出したら、高校生がメイドロボの研究者やってるのも、
主人公が異様にたくさんの女の子に囲まれてるのにドロドロの惨劇に
ならないのも、この世界の何もかもがおかしいはず。

なので、あくまで程度問題だと思うし、人によって違うであろう
その程度云々を言い合っても仕方ないかと。
168名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 03:31:09 ID:Pop6I3iV0
100%あり得ないってのでなければリアリティ云々気にする必要ないと思うけどな
何かしら説明出来るならそれでいいじゃん
金稼いだのだって、親からの仕送りの残額を貯金してたとか、うまい具合に高額のバイトだったとか
多少こじつけっぽくても、そういうの気にしないで素直に楽しんだ方が得っしょ

SSなんだから、原作ファンが楽しめるものであればなんでもおk
169名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 04:11:33 ID:aKEZrJLC0
つーかフォトウエディングなんて衣装着付けヘア・メイク込みで平日特価5,500円なんてのもあるんだから
3倍しても十分バイトでまかなえるだろ。

170名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 07:33:36 ID:CQGr23FAO
明らかに「乱暴な批評」とか質の悪い発言に苦言が出たりするのはわからんでもないけど、なぜ他人の書いた評価を作家でもないのに気にするのだ?
評価の内容でモメるこの流れがわからん。
あと、リアリティに妙なアレルギーが出るのもわからん。
171名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 14:40:37 ID:lnPt3xjpO
みんな神経質なんだな
A型か
172名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 15:53:02 ID:lIb0/vae0
A型だ
173名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 16:33:11 ID:LE3UyeHtO
別にそこまで悪意の込もった言い方してなければリアリティを気にしようがいいんじゃないか
作者でもないのに他人の評価にそこまで目くじらたてる理由がわかんねーよ
また流れが悪くなるじゃないか、せっかく流れが戻ってきたのに
174名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 16:48:57 ID:egiaiDsoO
むしろssをください(つД`)
とりあえず読みたい(つД`)
175名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 19:49:03 ID:2p0KW2jU0
たとえばどんなSSが読みたい?
176名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 20:07:20 ID:qfZqHz+60
イルファさんと草壁さんが同時に貴明を言葉責めでいじめちゃうSS
177名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 21:54:06 ID:egiaiDsoO
むちゃくちゃなまーりゃん先輩だが、それを笑って許しちゃう貴明にだんだんと引かれてくSS

そして手が付けられないほどの問題を起こすまーりゃん先輩。しかしそこで果敢にも事態を解決に導く貴明

すまん、譫言(つД`)
178名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 21:58:12 ID:irbo3Axe0
るーの力で貴明とるーこ以外みんなが小学生に戻る(精神的にも)SS
179名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 23:08:29 ID:lnPt3xjpO
イルファさんとドライブするSS
180名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 23:48:32 ID:CQGr23FAO
姫百合家のラブバランスが崩壊して泥沼になる話。
そうだなー、結局ミルファは自殺、珊瑚とシルファはアメリカへ、イルファは感情抑制をプログラムにかけられただのメイドロボになってしまう。
そしてみんなの幸せを踏み躙って二人になった貴明と瑠璃は、塞ぐ事の出来ない胸の穴を抱えながら、互いの傷を舐めあって生きていくのでした……みたいの。

我ながら暗い話だな。
181名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 23:52:32 ID:LE3UyeHtO
>>180
確かに姫百合ファミリーで一人選ばなきゃいけないとしたら貴明は瑠璃を選ぶ気がする
ただの主観だけどね。
182名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 23:54:18 ID:qnSCbBoD0
珊瑚ちゃんを選べば皆付いてくる
183名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 23:55:53 ID:CQGr23FAO
このみエンド後のタマ姉の苦悩や嫉妬、ちゅうのも面白そうかな。
PS2準拠だとこのみと貴明はなかなかそんな仲になりそうにないでなぁ。
で、タマ姉色々苦悩した挙げ句、ちょっとした切っ掛けでタカ坊と出来てしまい……そのうちこのみに不信を持たれ……みたいな感じが面白そうかな。

ビバ泥沼!
184名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 00:06:15 ID:OiDcWuXO0
姫百合家で、一生いちゃいちゃしながら過ごすことこそ至上です。


>>179
ドライブだな、わかった、4日待て。
185名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 00:35:02 ID:pmnHPaMJ0
>>181
まだアナザーが出てないから何とも言えんが、テックジャイアンに書いてあった設定
だったらシルファか瑠璃な気がするな。
186名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 00:53:15 ID:ZEBBl15PO
瑠璃を選んだらイルファさんもくっつきそう
187名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 01:19:26 ID:YXxA+l270
ささらと愛佳のWヒロインものが良いな。
貴明含めた3人で生徒会やって、2人の間で揺れ動く貴明。
188名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 03:48:48 ID:hWVZKYGzO
このタマVS姫百合姉妹の貴明を巡る戦争が見たい
もちろん黒く!
189名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 10:39:58 ID:MlNlK5lW0
みんな泥沼好きだなあw
俺もヒロイン達が主人公を取り合う展開は嫌いではないけど。

>>177
俺もそういうの見たいw
書いてみようかと思ったけどまーりゃんはどうも書きにくいのさ…
190名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 21:21:28 ID:qzHwfSftO
まーりゃんはいまだに詳しく描かれていないですからな
191名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 21:47:47 ID:F9HQwzCqO
そして結局「ADマダー?」な流れになるワケですな。
192名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 22:11:37 ID:qzHwfSftO
そこであえて

俺の妄想で描ききってみせる!

みたいな事をいってくれる勇者はいないかなぁ
193名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 22:21:52 ID:ps4xqQZy0
>>192 おきなさい
きょうは おしろにいくひでしょう
194名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 23:48:35 ID:Jik6uBOq0
娘を女とも思わない母さんですねw
195学食に行こう第一話 1/6:2007/05/16(水) 00:16:29 ID:Wg29MRtN0
「はぁー」
生徒会室中央に設置された折り畳み式の机。その上にうずたかく
積み上げられた紙の山を一瞥し、タマ姉が盛大な溜息を吐く。
タマ姉を悩ますこの紙の山の正体は、何を隠そう、その全てが目安箱に寄せられた
投書だったりする。……信じられないことに。
さらに信じられないのは、記入されている意見、要望まで同じというのだから尋常ではない。
で、肝心のその内容はというと……
……ふと、席に座っている久寿川先輩に目を向ける。
先輩は眼前の光景に対し、申し訳なさそうな表情で縮こまっていた。

「タマお姉ちゃん、チェック終わったよ」
先程から、本日回収分の投書用紙に目を通していたこのみが、タマ姉に作業の完了を告げる。
「ご苦労様。……で、どうだった?」
「あ、あはは……」
「はぁー、このペースだと、この部屋が用紙で埋め尽くされるのも時間の問題かしら」
このみの苦笑いで、その内容を察したタマ姉は、またもや溜息を吐く。
事実、先程までこのみの作業していた場所が、机の端の猫の額ほどしかないスペースに
追いやられていたことを考えると、わりと洒落になっていない事態である。
俺は、このみのチェックした投書用紙を2、3枚、無造作に手にとってみる。そこには

『癒しの空間。スク水メイド学食復活希望』
『会長……スク水メイド姿が見たいです』

……そう、これらは全て、以前まーりゃん先輩が企てた新コンセプト店。
もはや伝説と化した、幻のスク水メイド学食。その復活を要望する投書なのである。
196学食に行こう第一話 2/6:2007/05/16(水) 00:17:32 ID:Wg29MRtN0
先程の用紙は一まとめにされた後、今までと同じく机の上に積み上げられ
投書という名のリビドーの山は、さらにその標高を上げていく。
「これは由々しき問題ね。目安箱設置の際に懸念はしていたけど、
まさか冷やかしの意見がここまでくるなんてね」
「……ごめんなさい、こんなことになってしまって」
今回の事態を引き起こす発端となった、スク水メイド学食の主犯はまーりゃん先輩
だったとはいえ、その片棒を担いでしまった責任を感じているのだろう。
タマ姉の呟きに、消え入るような声で謝る先輩。
「済んだことをとやかく言っても仕方がないわ。とにかく今はこの状況を何とかするのが先よ」
「……ええ、そうね。冷やかしの意見ばかりで、目安箱がパンクして
必要な意見を受け取れないなんて事態は、一刻も早く解決しないと」

事件の直後から、メイド学食復活希望の投書はちらほらと見受けられたのだが、
それも直ぐに沈静化すると甘く見ていたのが間違いの元だった。
事態は沈静化するどころか、今では1日で目安箱に収まりきれない程の投書が投函されている有様である。
よって先輩の言ったように、一刻も早く正常な状態に戻す必要があるのだが……
197学食に行こう第一話 3/6:2007/05/16(水) 00:18:18 ID:Wg29MRtN0
「あのー、あながち冷やかしとは言い切れないと思います」
「河野さん? どうしてそう思うのかしら」
今まで沈黙を守ってきた俺からの横槍に、先輩が驚いたような表情を見せる。
「このみ、さっき見た投書にプリンタやコピー機で印刷したものあったか?」
「えっ、ううん。全部手書きだったと思うけど」
「そう、俺も投書に目を通すことがありますけど、今このみの言ったように、
全て手書きで、しかもそれぞれ文章や筆跡が違うんです。ですからかなりの
人数が手間暇かけて用紙記入していることになります」
「……というと、つまり?」
「冷やかしではなく、かなりマジなんじゃないかと」
俺の発言に困惑と悲哀が入り混じったような表情をする先輩。どうやらそういった可能性は
全く考えに無かったらしい。
「冷やかしじゃないなら、なおさらタチが悪いわよ。とにかく、学食は
変な喫茶店じゃないんだから、常識的にそんな要望を聞き入れる必要は無いわ。
……それとも、タカ坊は久寿川さんに、もう一度あの格好をさせるつもり?」
「い、いや。そういうつもりで言ったんじゃなくって」
俺としても、先輩を衆人に晒すような真似はしたくない。それどころか
投書用紙には先輩だけでなく、タマ姉やこのみにまで同じ要望が寄せられている。
彼女たちを家族同然に思っている俺にとって、心中穏やかなことではない。
……穏やかなことではないのだが、一応その光景を想像してみる。
198学食に行こう第一話 4/6:2007/05/16(水) 00:19:47 ID:Wg29MRtN0

……
………
「ご主人様。お味はいかがでしょうか?」
「うん、美味しいよ」
俺の返事に対し優雅に微笑む先輩。スク水を着用しているだけあって、
ボディラインが丸分かりなのだが……さすが先輩。見事なプロポーションである。
零れ落ちそうなほど豊満なバストに反し、抱きしめたら折れてしまうのではないか
という位、細く引き締まったウエスト。そして白桃のようなヒップ。
この体を見て何の反応を見せない男は、性的になにかしら異常があるに違いない。
そんな俺の視線に気付いたのか、先輩は恥ずかしそうに俯いてしまう。
が、その赤く染まった表情が、逆に男の嗜虐心をそそる。
「タカく……じゃなくて、ご主人様。い、いかがでありますか?」
このみの声に対し、俺が視線を向ける。すると、このみは恥ずかしそうな表情を
浮かべながらも、ファッションショーのように一回転ターンしてみせる。
先輩とは対照的に、幼さの色濃く残るラインである。だがそれゆえに、膨らみかけた胸など
背徳感を否が応にも刺激する。俺がその手の趣味だったら一発で即死だろう。
「あ、ああ。可愛いよ。似合ってる」
「やた〜。嬉しいであります。ご主人様」
喜色満面の表情でこのみが腕にしがみついてくる。って、む、胸が腕に当たってるぅぅぅ。
「こら、このみ。ご主人様が困ってるでしょ」
「タ、タマ姉?」
俺が目を向けた先には、タマ姉のすらっとした長身にスタイル抜群のボディがそこにあった。
特に胸のボリュームは先輩をも凌駕する。この胸に埋もれて死ねるのであれば、
男として本懐であろう。
「もう、タマ姉じゃないでしょ。あなたは私のご主人様なんだから。
はい、あーんしてくださいね。ご主人様」
「あー、タマお姉ちゃんずるい。私も。ご主人様、あーん」
「わ、私も、あーんしてください。ご主人様」
ちょっ、三方からスプーンを口元に持ってこられても。ここは順番に……
199学食に行こう第一話 5/6:2007/05/16(水) 00:20:56 ID:Wg29MRtN0
「……カ坊、タカ坊! どうしたの? ぼーっとしちゃって」
「はっ!? い、いや、なんでもない、なんでもないデスヨ。タマ姉」
あ、危ない。つ、ついトリップして戻れなくなるところだった。
そんな俺を見て、タマ姉が呆れたように、本日三回目となる溜息を吐く。
「はあー、とにかく、生徒会の見解として、今回の要望は却下。
こちらとしても断固とした態度で臨まないと」
「そうですね。今日中にでも学校新聞と掲示板にこちらの見解を……」

「ちょーっとまったぁー!」
突然の声と同時に、中央の机に積み上げられていた投書の山が
舞い上がり、生徒会室が白一色に染まる。
その紙吹雪と共に登場し、腰に手を当て机の上に仁王立ちするのは
まーりゃん先輩こと、朝霧麻亜子氏(仮名)。自称14歳。
「ま、まーりゃん先輩!? なんで投書の山なんかに隠れてたんです?」
「えー、だってあたしともあろうものが、普通にドアから登場するわけにはいかないじゃん?
いやーしかし、登場するタイミングを見計らってたら、途中で空気穴が塞がれちゃって、
酸欠で意識が朦朧としだしたときには、ちと焦ったけどな」
みなが呆れる中、律儀に質問する先輩に対し、クレイジーな返答をするまーりゃん先輩。
その情熱とプロ根性をもっとマシな事に使えんのか、この先輩は。
「普通に入ってきてください、普通に! 全く、後で掃除するのは
俺たちなんですから、そういう演出は心底やめてください!」
言っても無駄とは知りつつも、投書用紙で床が敷き詰められた
この部屋の有様を見やると、徒労でも言わずにはいられない。
200学食に行こう第一話 6/6:2007/05/16(水) 00:21:55 ID:Wg29MRtN0
「そんな硬いこと言うなよ、たかりゃん。またHさせてあげるからさ」
「こ、河野さん……やっぱり、まーりゃん先輩とそういう関係なの?」
「タカ坊! こんな幼女に手を出すなんて何考えてるの!?」
今にも泣きだしそうな表情の先輩と、まがりなりにも1個上の先輩に対し、
ナチュラルに非道いことを言うタマ姉。このみに至っては、脳内処理が
追いついていないのか、呆けた表情で固まっている。
つうか皆、なぜ嘘八百が服着たような、この先輩の言うことを真に受ける?
「だから俺はロリコンじゃないったら! 先輩も二度も騙されないで下さい!」
「ちぇー、このみん。たかりゃんはメロンだのスイカだのしか興味無いんだって。
このみみてーな青いミニトマトなんざアウトオブ眼中。頼まれたって相手してやらねえよ
……だってさ」
「……ぐすっ、タカくん……やっぱり、胸が大きいのが好きなんだ……」
俺の非ロリコン発言に対し、自分を棚に上げてこのみに話を振る先輩。
話を振られたこのみはというと、俯いた表情で自分の胸を制服越しに、ふにふにしていた。
「タカ坊! このみを泣かせるなんてどういうつもり!?」
……タマ姉、俺に一体どうしろと?
201名無しさんだよもん:2007/05/16(水) 00:23:06 ID:Wg29MRtN0
以上、前々スレ辺りに一回投下しただけのぺーぺーですが、生暖かい目で見てもらえれば幸いです。
なお舞台は、一応ささらルートをメインに通りながらも、他のキャラとも知り合いという、
ご都合主義的雄二エンド後を想定しています。
202名無しさんだよもん:2007/05/16(水) 01:38:28 ID:WB/3u8NR0
あれ? 続かないの?
203名無しさんだよもん:2007/05/16(水) 01:42:23 ID:AW4uf0QsO
グッジョ....。?
なんか話のノリがいいのに途中できられてる感じ。てゆうか普通に続く流れですぞ

まさか打ち切り!?
204名無しさんだよもん:2007/05/16(水) 01:48:22 ID:70GXlttP0
続く……んだよな?
205名無しさんだよもん:2007/05/16(水) 11:03:39 ID:dV79qrie0
いや、第一話てかいてあるし
206名無しさんだよもん:2007/05/16(水) 14:28:31 ID:9iX5tUi+O
なにはともあれ、生徒会どたばたモノは悪くないな、うん。
更にただのスク水ではなくエンジェルモ○トの制服を組み合わせれば至高の癒しに!

って、なんの話だっけ?
207名無しさんだよもん:2007/05/16(水) 16:29:17 ID:m8HWCS1c0
ひぐらしはキモイって話
208名無しさんだよもん:2007/05/16(水) 16:38:07 ID:MU00Av4j0
2話目以降もタカ坊の妄想でスク水姿の愛佳、由真らが登場してオチは雄二かな
209お嬢さんを僕に 1/6:2007/05/16(水) 22:56:06 ID:3/aTUArx0
 ゆさゆさと体をゆすられる。
 イスの下からは、細かな振動。
 俺は柔らかな感触に体を預けていて。シャンプーの良い香りがする。
 耳元で、誰かに俺の名前を呼ばれて、ゆっくりと目を開ける。

──次は、市立病院前、市立病院前でございます。お降りの方は合図、してください。こ
のバスは、私立病院前経由、来栖川研究所行きでございます──

「貴明さん、もう少しで到着しますよ」

 耳のすぐ横で、イルファさんの声がする。
 まだ頭がぼうっとする。むりやり目をあけたもんだから、目の奥のあたりが痛い。
 いつの間にか、居眠りをしちゃってたみたいだ。

「あー・・・・・・」

 周りでは、停留所に停まったバスから、乗客がぞろぞろと降りていくところだった。

「ごめん、重たくなかった? すぐに起こしてくれればよかったのに」

210お嬢さんを僕に 2/6:2007/05/16(水) 22:59:13 ID:3/aTUArx0
「ですが、貴明さん。あまりにも気持ちよさそうにお休みでしたので。とっても可愛らし
い寝顔でしたよ」

 俺は苦笑を返す。居眠りをしたうえ、イルファさんのほうに凭れ掛かってしまって。

「あと、どれくらい?」

「そうですね。あと10分ほどでしょうか。今日は道も混んでいないようですし」

「もう?」

 とすると、駅前でバスに乗ってから、かなりの時間居眠りをしちゃっていたらしい。そ
の間中、ずっとイルファさんの肩に顔を乗せて。
 そういえば、乗ったときはけっこう込み合っていたバスの中も、もう俺とイルファさん
以外乗客はいない。皆、今のバス停で降りてしまったらしい。
 まあ、日曜日の昼間に、メイドロボの研究所にバスに乗って行く用事のあるやつと言う
方が珍しいんだろう。
 お陰で、イルファさんと一緒に貸切状態のバスにこうやって乗っていられるんだから、
文句なんてないけれど。

211お嬢さんを僕に 3/6:2007/05/16(水) 23:03:06 ID:3/aTUArx0
「でも、貴明さん」

 ぼんやりと外の風景、イルファさんの横顔の向こうを流れていく窓の外の様子を眺めて
いると、イルファさんに声をかけられた。どこか拗ねたような言い方で。
ん?

「貴明さん、もう少し緊張してくださっているかと思っていましたのに」

「そう、かな?」

 緊張していない訳じゃないんだけれど。なんといったって、イルファさんの生まれた、
来栖川エレクトロニクスの研究所に始めて行くんだし。
 でも、今回俺を招待してくれた長瀬さんという人も、会ったことはないけど珊瑚ちゃん
やイルファさんの話を聞くとかなりくだけた人らしいし。
 緊張と言うよりも、楽しみかもしれない。イルファさんが生まれた場所に行けるなんて
さ。
 さすがに、イルファさんに寄りかかって眠るのが心地よかったから、とは言わなかった
けれど。どうしてバスとか電車って、こうも乗っていて眠たくなるんだろう。

212お嬢さんを僕に 4/6:2007/05/16(水) 23:07:27 ID:3/aTUArx0
「そうなんですか? でも、少しだけ残念です。私を作ってくださった、言わば育ての親
とも言える皆さんにお会いしていただきますのに。貴明さん、ちっともそんな気持ちでい
てくださらないんですもの」

 貴明さんの私への気持ち、その程度のものだったんでしょうか。なんて溜息までついて。

──まいどご乗車ありがとうございました。次は、終点、来栖川研究所前、来栖川研究所
前でございます。お忘れ物のないようご注意ください──

 最後の乗客を降ろして、バスが再び動き出す。
 俺は思わず聞き返してしまう。

「・・・・・・えっ?」

「今日は研究所の皆さんに、貴明さんのことご紹介しますんですから」

 な、何それ!?
 いつのまにそんな重要イベントに!?
 だ、だって今回のって、開発主任の長瀬さんが俺に会ってみたいからって言ったから。
イルファさんたちと一緒に暮らしている俺にはすごく興味があかるって・・・・・・
213お嬢さんを僕に 5/6:2007/05/16(水) 23:10:56 ID:3/aTUArx0
 ・・・・・・そのまんまじゃないか。なんで今まで気が付かなかったんだろうってくらい。

「長瀬のおじ様ったら、ぜひ貴明さんと食事をしてみたいとおっしゃって。あ、ご安心く
ださい。場所は研究所ですが、私や瑠璃様でお食事はご用意いたしますし。それに、リオ
ンお義姉様も貴明さんにはじめてお会いすると張り切っていらっしゃいましたから」

 聞けば聞くほど、家族全員そろった鉄壁の布陣で。
 今更緊張で冷や汗が流れてきた。俺、どこもおかしな格好してないよな。
 イルファさんは本当に嬉しそうで。しかも心の準備をしようにも、もうバス停がすぐそ
こまで見えてしまっている。

「さあ、貴明さん」

 バスが止まって、イルファさんに促され席を立つ。
バス停の所には、先に研究所に行っていた珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんが待ってくれていて。
それに二人の後ろに立つ、どこか飄々とした雰囲気の、白衣を着た男の人が。
 あの人が、長瀬さんだろうか。
214名無しさんだよもん:2007/05/16(水) 23:12:38 ID:z+gV/9Gb0
フィール支援
215お嬢さんを僕に 6/6:2007/05/16(水) 23:15:13 ID:3/aTUArx0
「貴明ーはようー」

 急かす珊瑚ちゃんの声と、すぐ隣のイルファさんの笑顔が一層俺を慌てさせる。しかも
イルファさん、俺の手を握ってきて。
 バスのタラップはもう目の前だ。
 このままバスを降りて、俺はなんていえば良いんだろう。
 こんにちは? はじめまして? 
それとも・・・・・・お嬢さんを僕に──



 終
216お嬢さんを僕に あとがき:2007/05/16(水) 23:18:23 ID:3/aTUArx0
支援ありがとうございました。

結局ドライブな話は思いつかなかったので、せめてバスに乗ってみた。
217名無しさんだよもん:2007/05/16(水) 23:18:36 ID:Toe5A5Dx0
で、ミルファとシルファの登場はまだか?
218201:2007/05/16(水) 23:56:01 ID:Wg29MRtN0
紛らわしくてすいません。一応続く……予定です。
この後、シーンが飛ぶのですが、ここで切ってしまうと、
会話途中でぶつ切れてるように見えますね。
もうちょっと分かりやすい締め方しろよ俺orz

>>216
宣言どおりの4日以内に投下GJです。書くの早くて羨ましい。
しかし、それ以上にイルファさんに凭れ掛かる貴明、テラウラヤマシス。
219名無しさんだよもん:2007/05/17(木) 07:27:06 ID:H3OAoaDmO
なかなかよかったんじゃあるまいか、とは思うが起承転結の真ん中でぶっぎられてるよねぇ(・・;)
ん、ともあれ後半に期待。
私立病院前の停留所でいくのんに遭いそうな悪寒がしたのはないしょだ。
220名無しさんだよもん:2007/05/18(金) 00:58:47 ID:peuQuATq0
>>219
>>201>>216がごっちゃになってないか?
続きがあるって言ったのは>>201の方だぞ。
221名無しさんだよもん:2007/05/18(金) 02:23:06 ID:p3dwQslB0
>>220
作りとして中途半端だから続き(があることを)を期待してるってことじゃないの?
222名無しさんだよもん:2007/05/18(金) 03:04:35 ID:4v9enni00
でも「終」って書いてあるのに、後半に期待というのはおかしなもんだ。
それならば、続きが見たいと書く方がまだ妥当だろう。
223名無しさんだよもん:2007/05/18(金) 03:41:57 ID:qeMwhlijO
おいおい。
>>218に「続きはたぶんあります」っつ書いてるやないか。
だから漏れはまだ半端であることを前提に感想を書いたんだがなぁ。
224名無しさんだよもん:2007/05/18(金) 10:27:42 ID:n+uZ1xlM0
>>223
>>220
>>218の数字コテやレス内容ちゃんと見ているか?
225名無しさんだよもん:2007/05/20(日) 16:52:33 ID:cOn3It10O
それにしても剛田情報が出たらますますSS書きにくくなったな。
特にシルファのイメージがしっちゃかになって、なんか妄想しようとしても思考が停止するぞwww
226名無しさんだよもん:2007/05/20(日) 18:00:47 ID:gp9gaDIYO
>>225
ならばよっちやいくのんあたりで頼む
彼女達ならそんなイメージがガラリと変わることもないだろうし
というか最近ロボSSばかりでたまには他キャラも読みたい
227名無しさんだよもん:2007/05/20(日) 22:47:58 ID:wukYKrE10
>>177
書こうとしたが何か違うものになった。
とりあえず投下する。
228ストップザ青春 1:2007/05/20(日) 22:49:56 ID:wukYKrE10
 ストップザ青春!
 なぜか唐突に妙なフレーズが浮かんだ。なぜこんなイヤなフレーズが、俺の記憶に鮮明に残っているのだ? 誰だっけな、こんな果てしなく無粋で歪んだ情念に満ちた言葉を吐いたのは。
「あたしだー!!」
 目の前で縞々パンツ丸見えの人が、ふんぞり返ってそう断言した。なんでパンツ丸見えかというと、制服の短いスカートの癖して手すりの上にわざわざ立っているからだ。
 そのバランス感覚だけは素直に尊敬する。
 でもパンツ丸見えなところはまったく尊敬しない。
「お、今パンツを3回もちらちら見たな少年A!」
「まったく見てません」
「ほらなー。まったくいやになるよな、ここ数日の国会審議はもーだらだらし過ぎて」
「まーりゃん先輩、ちょっと話が飛びすぎです」
「まーあれだ、あれはあれでなかなか声優の勉強になるんよ?」
「だからって無理やり戻さないでください」
「どうしろというのだー!」
「喋らないでください」
 たぶんそれがたった一つの冴えた方法だ。
229ストップザ青春 2:2007/05/20(日) 22:50:58 ID:wukYKrE10
 昼休みを過ごす高校生としては、かなり一般的な部類に入ると思う、
今の俺たちの状況は。
 まーりゃん先輩が手すりの上で無駄に騒ぐ、そして俺が突っ込む。
他愛ない戯れだ。ただし話の内容はあまりにアレだが。どのぐらいアレ
かというと、この会話を3時間も続ければ5次元人になると確信できる
ぐらい。
 話を戻そう。
 屋上の手すりの上で騒ぐなど危険にも程があると思う奴は多いだろう
が、まーりゃん先輩は命綱を装着済みでそのへんは抜かりない。ただし
多分にバンジー的な要素が含まれている。

 いや、戻っていない。もう少しまともな展開にするとしよう。
230ストップザ青春 3:2007/05/20(日) 22:52:02 ID:wukYKrE10
 それにしてもいつからだろう。このちっこい先輩と、こうして昼休み
を二人きりで過ごすようになったのは。
「先週からだ。ちなみにさーりゃんの家庭環境その他は頼りないこいつ
に代わりあたしが何とかしてあげたので三人のだらだらどうでもいい関
係が延々と続いているという設定だ。詳細は省く、交互期待!」
 まーりゃん先輩は突如として安直かつ危険度マキシマムの爆弾宣言を
した。
「む、なんだその目は。なんか文句あるか?」
「とりあえず、ナレーションと会話するのはやめてください」
 開始2レスにして宇宙の法則が乱れかねない飛びっぷりである。
 このへんでブレーキをかけておかないと、知らぬ間にアボビスチェン
星人との惑星間戦争がシリアス調で展開され、戦闘機で敵母艦中枢部に
突っ込む羽目になりかねない。もちろんパイロットは俺で、地球に残っ
て最後になんかあくはほろびた的に締めくくるのはまーりゃん先輩だろう。
231ストップザ青春 4:2007/05/20(日) 22:53:34 ID:wukYKrE10
「うむ、そろそろでぃすぷれーの前のみんなも×ボタンに手が伸びる頃
だな」
 まーりゃん先輩の言葉の八割がたは異次元の概念が混じり過ぎてまった
く理解できない。
 が、俺の存在をあさっての方向から消し飛ばすほど逸脱したものだとい
うことだけは確信できた。
 つまり、これ以上余計なことは喋らないでください。
「じゃ、前置きはここまでだ。そろそろ本日の議題いくぞー」
「助かります」
「ところえさっきのは戻るボタンの方が適切だったかな? 専ブラは考慮
できないにゃー」
「あえて突っ込みません」
「のりわるーい。そんなんじゃ13億とんで数百万パワーの超科学スモッグ
に勝てないぞ?」
「俺はオリンピック選手じゃありませんから」
「OKそれ! その突っ込みのノリを忘れないまま、本日の議題、発表ーーー!」
232ストップザ青春 5:2007/05/20(日) 22:54:53 ID:wukYKrE10
 まーりゃん先輩が叫ぶと同時に、くす球が俺たちの頭上に下りてきた。
 ここは屋上だった気がするが、もうそのへんのことは考えないことにする。
 ま、さっきの一連の爆弾発言郡に比べればいくらか解釈というかタネを
仕込む余地はあるだろう。なので、くす球を吊るロープの有無に関しては、
あえて感知しないことにする。した。
 もちろんくす球を用意している理由など、テナガザルの平均就寝時刻より
どうでもいいことである。そうだよな、俺。
「とう!」
 俺がその辺の葛藤を繰り返していると、まーりゃん先輩は俺の肩に飛び
乗ってきた。
 お、重い。思わず前後に揺れるが、まーりゃん先輩は特に臆した様子も
ない。なんて無駄にすさまじいバランス感覚だ。
233ストップザ青春 6:2007/05/20(日) 22:56:16 ID:wukYKrE10
「ちょっと肩借りるぞ。うわこれ萌える発言だな! どうよ!?」
「土足じゃなくて手で借りれば萌えるかもしれません」
「その辺はあたし流アレンジって奴よ。そんじゃ、本日の議題、いくぞー!」
 宣言すると、まーりゃん先輩は跳んだ。
 そしてひっくり返る。いや、違った。くす球にオーバーヘッドキックをかま
したのだ。
「まーりゃんバイシクルきーーーーーーーっく!」
 まーりゃん先輩の必殺技により、くす球はぱかーんという間の抜けた効果音
を残し、無残にも木っ端微塵に砕け散った。
 なぜオーバーヘッド、などとはもうどうでもいいので突っ込まない。なお
当然のことながら先輩はパンツ丸見えだが、こちらはもっとどうでもいい。
「じゃん! これだー!」
 そして、木っ端微塵に砕けたくす球から、垂れ幕が落ちてくる。
 垂れ幕はそのまま屋上の床にへばりついた。
234ストップザ青春 7:2007/05/20(日) 22:57:32 ID:wukYKrE10
「読めません」
「やりすぎちった。たかりゃん、広げて」
「くす球の意味、まったくありませんね」
「そんなこたー最初からわかってただろチミ?」
 そのとおりですとも。

「第一話! 『たかりゃんに彼女を作ろう』の巻!」
 ズドーン
 まーりゃん先輩が宣言すると同時に、ブロックが砕け散る効果音がした。
 この人はいつも自分用アイペド(注:携帯プレーヤーの先輩風の呼び方)
に、使える効果音やBGMを満載しているのだ。そういうことになっている。
 ってそれより、なんですかその議題。
235ストップザ青春 8:2007/05/20(日) 22:59:31 ID:wukYKrE10
「余計なお世話ですよっ」
「あっまあああああああい!」
 まーりゃん先輩は俺を指差し、字面とは裏腹に煮詰めたバニラエッセンス
風口調で俺を非難した。
「なに考えてんだたかりゃんはまったく。せっかくさーりゃんのオナペッツ的
有望株になれるかなー? と思ったら途中撤退しちゃってEXPだけ貯めて!」
「途中のイヤな単語は聞き逃しますが、いいじゃないですか。ささら先輩は元気
になったんですし」
「よくない! チミはさーりゃん恋心を抱いていた。間違いない!」
「……」
 そういわれると、自分でもよくわからない。
 そりゃ、ささら先輩は可愛かった。そしてとても綺麗で、優しい人だった。
 でも、だから恋人にしようかというと、どうだろう? それすら俺にはわか
らない。なにしろそれを考える前に、ささら先輩は、俺の前からいなくなって
しまったのだから……。
236名無しさんだよもん:2007/05/20(日) 23:00:41 ID:qyPR53WX0
支援
237ストップザ青春 9:2007/05/20(日) 23:00:54 ID:wukYKrE10
「そこ、てんてん禁止! あたしの目の色が黒いうちは、そんな甘えは認めん
よー!」
「できれば超次元の言葉も禁止してください」
「なんのことだかにゃー。まあいい」
 まーりゃん先輩はこほんと咳払いをすると、話を戻した。
 ありがたいがありがたくない。微妙な心の揺れ動きだ。
「さーりゃんを失ったたかりゃんは、性欲をもてあまして暴走するだろ」
「しません」
「する。そうなった時、悲しむのは誰だ? 親御さんか? 完璧超人とへっぽこ
妹か? いや違う! 一番悲しむのはあたしだ!」
「それ絶対違う」
 むしろ先輩は嬉々として俺の裁判を傍聴するだろう。
 むしろ検察側証言台に進んで立つだろう。
 その後どっからか保釈金を出して、俺に生き恥を晒すことを強制するだろう。
「だからあたしは考えた」
「人の話まったく聞いてませんね」
238ストップザ青春 10:2007/05/20(日) 23:01:52 ID:wukYKrE10
「たかりゃんはこのままじゃいかんのだ。誰か、肉欲を発散させる相手を作ら
ねばならん!」
 まーりゃん先輩は高らかに身もふたもないことを宣言した。
「だからいいか、たかりゃん! 彼女を作れ、それも一ヶ月以内にだ!
 それが成るまではこのまーりゃん、肉親といえど容赦せん!」
 この人が肉親とか言うと卑猥な響きに聞こえるから不思議だ。
「具体的にどう容赦しないんですか」
「パンツ大増量」
「頼みますからやめてください」
 意味はわからないがいやらしいことに違いない。
「無差別」
「自分の体を人質に取るのはやめてください!」
「じゃ、やるんだな?」
「う」
 だって、どうしろというのだ?
 タマ姉にも一ヶ月だか二ヶ月前だかに言われた。本気を出せ、と。
239ストップザ青春 11:2007/05/20(日) 23:04:29 ID:wukYKrE10
 それから俺もそれなりにがんばったとは思う。女の子に声をかけ、できる
だけ優しくしたと思う。でもこのざまだ。屋上でちっこい先輩とだべる日々。
俺に彼女なんかできるわけがないと、今では確信すらしている。
 いや、そもそも俺は彼女が欲しいんだろうか?
「はいはいモノローグはもういいの。これ隠しルートだから正ルートみたいに
感情の揺れ動きとかないの」
「異次元突っ込MIKINSI!」
「おまえもな。いいから行くぞ、最初のターゲットはあいつだあのミス研の黄色」
「異次元キーワードも禁止!」
「却下。あたしの見立てでは結構望みがあるっぽいぞ? では行くぞー」
 そしてまーりゃん先輩は俺の腕を引っ張り、屋上のドアノブに手をかけた。
 はあ。俺はいったいどこに向かっているんだろう? 教えてくださいささら先輩。
「――」
 なんか先輩の声が聞こえてきた。
 曰く、どこにも行けないと。俺もそう思った。
 俺の青春はいつのまにか静止していたのだ。
「なんてことはあたしがやらせんよ! やらせはせんよ! 次回を乞うご期待!」
「いきなり超越的にまとめないでください!」
「次回予告!」
「却下です!」

(終)
240ストップザ青春/あとがき:2007/05/20(日) 23:08:30 ID:wukYKrE10
以上。明らかに違うものになった。
支援ありがとうございます。
241名無しさんだよもん:2007/05/20(日) 23:53:56 ID:wLyg9wpUO
ども、177です
ありがとうっす!GJ〜
なんか最後の締め方と途中のナレーションがちょいわからんかったけど
できればま〜りゃんのデレが見たかった...
242ストップザ青春 137:2007/05/21(月) 00:56:02 ID:lbXMAenB0
>>241
要望に沿うかどうかはわかりませんが、
とりあえず書いてみました。
243ストップザ青春 137:2007/05/21(月) 00:56:48 ID:lbXMAenB0
「俺のことが、好き、ですって?」

■様子を見るため、うつむいた顔をのぞきこむ(罠)
□「なーんて、冗談ですははは」

 思わず口に出してしまった言葉に、黙りこむまーりゃん先輩の顔を覗き
込んだ。デリケートな部分に触れてしまったのだろうか。
「ふ」
 しまった。
 何で覗き込んでしまったのだ、俺は。危険だとわかっていたはずなのに。
 こんなことでヘコむ人ではないとわかっていたはずなのに。
 俺は既に確信していた。これは、END直行の選択肢だと。
 BADだかGOODだかは、俺の認識次第であると。

 まーりゃん先輩の目は怪しく光っていた。口はくふふと笑っていた。
 とてつもなく、不安になる表情だった。地雷を踏んだ。それも核地雷だ。
「ふふふ。ふふふふふ!」
 ぶきみなわらいがまーりゃん先輩の顔に浮かんでいた。
244ストップザ青春 138:2007/05/21(月) 00:57:47 ID:lbXMAenB0
 1ターン失神してしまいそうなほど不気味だ。少なくとも俺にとっては。
「思ったか? 『……あ……』とか意味深と見せかけて実はあなたを愛して
るーんしか脳に無いようなベタな展開に、この恋愛大魔王様が持ち込むと思
ったか!? 後輩がチラと見せる頼もしさに惹かれながらも想いを胸に秘め
ていると思ったか!?」
「まったく思いません!」
 まーりゃん先輩は、ばっと振り返ると、両手を広げて自信満々に言った。
「そうだたかりゃん! あたしは行くときは直球で行くぞ! ときめき度も
好感度もぶっとばし、漢字テストもバッドエンドも巻き戻し、全部のフラグ
を全力で折り、全ての伏線を無視して、あたしは高らかに言うぞ!」
 こころなしか、まーりゃん先輩の頬は紅潮していた。
 それが照れによるものか、興奮によるものか、夕日のせいか、それとも
まったく別の感情によるものなのか、もう、俺にとってはどれでもよかった。
「たかりゃん!」
 まーりゃん先輩は、くるりと回ると、人差し指を俺に突き付けて言った。
 その頬は、疑いようも無く真っ赤に染まっていた。
245ストップザ青春 139:2007/05/21(月) 00:58:30 ID:lbXMAenB0
「あたしにはお前が必要だ! あたしの恋人になれ!」
 結局、そういうひとなのだ。まーりゃん先輩は。
「先輩」
「きゃっかだ!」
 なんで!?
「まだ何も言ってません!」
「言わなくてもわかる! 言うな!」
「嫌です、言います!」
「言うと死ぬぞ! ええいあたしは混乱している、いやしのつえで攻撃しろ!」
 じたばたと手をばたつかせるまーりゃん先輩。なぜか頭の上でブーメラン
をくるくる回している。この期に及んでこの人はまったく。
 しかし、さて。決心の程を示す攻撃といえば。やはりこれしかないのだろう。
 正直とても恥ずかしい。意味がわからない。まーりゃん先輩と同じぐらい、
俺は混乱している。
 ただ、これだけは真実だ。
「む――――!」
 この人と、ずっと一緒にいたいと思う。それだけは、間違いなく真実の感情
だった。
246ストップザ青春 140:2007/05/21(月) 00:59:10 ID:lbXMAenB0
 俺はまーりゃん先輩にキスをした。
 まーりゃん先輩の唇は、ミントの味がする。とてもベタだった。
「ぷはっ」
「もう一回」
「むぐ!?」
 今度は、いやらしい感じがした。とても気持ちよかった。

「ぷはあっ! はあ、はあ、はあ!」
 たっぷり数十秒の後、まーりゃん先輩と俺は、糸を引きながら唇を離した。
「好きかどうとかはわかりません。でも、一緒にいたいと思います。まー
りゃん先輩」
 勇気をどこかにおいて、俺は言った。
 間違いなく俺は暴走している。けど、きっとそのぐらいでちょうどいいのだ。
 まーりゃん先輩が教えてくれたように。
「く、ぐ、や、やるな、スキとか嫌いとか最初に言い出すのがたかりゃん
とわっ!」
「声が震えてます」
247ストップザ青春 141:2007/05/21(月) 00:59:45 ID:lbXMAenB0
 まーりゃん先輩が動揺しているところを見るのは、多分これが最初で最後
だろう。そんな中でもらしさを失わないのはさすがの一言だ。尊敬はしないが。
 だから、目いっぱいからかってやることにした。
「ぐ、え、け、そ、だ」
「直球で行くんじゃなかったのですか」
「ぐぐっっ! そうだった! ええーいよし、直球で行くぞ!」
「はい!」
「たかりゃん! あたしとセックスしろー!」
 直球過ぎだあ!
「ぐはあっ!」
 無理でした。からかうなんて無謀そのものでした。動揺していようが
なんだろうが、この人俺より数倍上手です。つーか紅潮した顔でそんな
こと言われたらぜってぇ勝てない。
「こ、ここでは無理です!」
「なぜだ!」
「人が来ます!」
「お月様だけだ! 逃げるなあたしのえくすかりばぁ!」
 言うと、先輩はいきなり俺を押し倒した。先輩の股間が膝に当たる。
248ストップザ青春 142:2007/05/21(月) 01:00:29 ID:lbXMAenB0
「なんでまーりゃん先輩が言うとなんでも卑猥になるんですかぁ!」
「ええーい四の五の言わず、黙って……!?」
 先輩が禁断のてんてんを繰り出した。
 ということは何かとんでもない事態が起きているに違いない。
 というわけで、まーりゃん先輩の視線の先を辿る。

 脈絡なくささら先輩がいた。
 たぶん理由があったと思うが、この状況に比べればとてつもなくささいなことだ。
「あ」
「あ」
「ああ」
「あああ」
「直球勝負!」
249ストップザ青春 143:2007/05/21(月) 01:01:32 ID:lbXMAenB0
 まーりゃん先輩はとてつもない速度で立ち直る。
 叫ぶと同時に神速で床を蹴り、声を上げそうなささら先輩を生徒会室に
引っ張ってきて、ついでに後ろ手で鍵をかけた。
「あああああー!?」
 遅れて声をあげるささら先輩。だがもう遅い。
「口封じに3Pだー! いくぞたかりゃん、さーりゃん!」
 そして高らかに宣言した。暴走に次ぐ暴走。もう誰にも止められない。
 だから、確認事項はたった一つだけだ。
「いいなさーりゃん!」
 耳まで真っ赤に染めて、まーりゃん先輩が言った。もう行くとこまで
行ってしまっているらしい。
「え、ええっ!?」
「えーと」
 いきなりささら先輩の胸をはだけそうなまーりゃん先輩になんとか
ストップをかけ、ささら先輩に問いかける。
「とにかく、そういうことになりました」
「え」
「俺たちと、付き合ってください。即断を願います」
「は」
 ささら先輩はごくりとつばを飲み込むと、まーりゃん先輩と俺を交互に
見つめて、それから、迷い無く言った。
「はい」
 さすが、年季の違う人は決断も早かった。
「ではGO!」
 今度こそ行くのだ。
 これが青春かというと、間違いな気がするが、まーもうどうでもいいや。
 少なくとも、今俺達は充実しているし。そうだよな先輩。  (END 19)
250名無しさんだよもん:2007/05/21(月) 01:44:16 ID:QjiTMl+S0
>>225
大人しくシャッフルのSS書いててくださいよwww
251名無しさんだよもん:2007/05/23(水) 00:06:22 ID:F7Z4Z6Tc0
GJ!!
252名無しさんだよもん:2007/05/23(水) 09:14:06 ID:yVIhk7mK0
GJ!
翌日起きたらまーりゃん先輩いなくなっててさーりゃん必中できちゃった結婚、数年後田舎町に
出張したリーマン貴明が公園でさーりゃん激似の幼女と遊ぶまーりゃんを見つけたりと妄想
253学食に行こう第二話 1/7:2007/05/24(木) 00:32:31 ID:WeVrBeOj0
「いやー、たかりゃんご苦労様♪」
「誰のせいですか、誰の! それはそうと、そもそも今日は一体何しに来たんですか?
ただ遊びに来たっていうんでしたら、即刻お引き取りください!」
このみをそのまま放置する訳にもいかず、宥め賺してようやく機嫌を戻してもらったところに
まーりゃん先輩からこの発言。俺がタマ姉だったら、半泣きになるまでアイアンクローの刑
にしているところである。
「あっ、そうそう。たかりゃんのせいで脇道に逸れちゃったけど……」
……俺のせいですか。それに対しての異議申し立てが、半ダースほど思い浮かんだが、
さらに脇道に逸れるだけなので、ここは大人の対応でぐっと我慢する。
「さーりゃん! これだけ生徒から要望が来ているのに、それを黙殺する
だなんてどういうつもりなの? これじゃ目安箱設置の意味が無いじゃない!」
「え? で、ですけど、まーりゃん先輩」
突然、まーりゃん先輩から槍玉に挙げられ、しどろもどろになる久寿川先輩。
しかしそこにタマ姉が、すかさず助け舟を出す。
「まーりゃん先輩。いくら要望が多くても、出来ることと出来ないことがあります」
「えー、そんなこと言っても、実際に1回やっちゃってるじゃん」
「主犯の先輩が、さも他人事のように言わないで下さい! ほら、タカ坊も何か言いなさい」
「……いや、まーりゃん先輩が言ったように、実際に1回やってしまったことが
この騒ぎに繋がってることは確かだと思う」
「なっ!? タカ坊!」
思惑とは逆に、まーりゃん先輩を擁護するかのような俺の発言に、タマ姉が顔を険しくする。
ちょっと後が怖い気がするけど、見解としては間違っていないと思う。
「えっと、どういうこと? タカくん」
「ほら、普通だったら、絶対にこんな要望通らないと思うから、投書を出そうともしないだろ。
けど、なまじ1度実績があるから、もしかしてって期待感がある訳さ」
俺の発言の意図がよく伝わらなかったらしいこのみに補足説明をする。
254学食に行こう第二話 2/7:2007/05/24(木) 00:33:21 ID:WeVrBeOj0
無論、理由はそれだけではなく、やはり前回の主犯であるまーりゃん先輩が、未だ健在であるのが
それを後押ししているのは間違いない。……実際思いっきり食いついているし。
まあ、まーりゃん先輩が院政を敷いたそもそもの原因は、ひとえに自らの不甲斐なさによるものなので、
それについてとやかく言うつもりは無いけど。……いなければいないで寂しい気もするし。

「そうは言うけど、1度実績があるからって、そんな要望を承認したら、要求が際限なく
エスカレートしていくだけのような気がするけど?」
「それに、もし仮に生徒会が承認したところで、学校側の許可は到底得られないんじゃないかしら?」
すぐさまタマ姉と久寿川先輩から、至極ごもっともな反論が返ってくる。
というより、先程の発言で俺がメイド学食推進派と勘違いしたのか、久寿川先輩が
信じてたのにといわんばかりの深い悲しみの表情を浮かべており、それが冤罪であるにも
拘らず罪悪感で胸が締め付けられる思いになる。
タマ姉に至っては、さっきから人が殺せるんじゃないかと疑いたくなるような
視線を俺に向けており、こちらは別の意味で胸が締め付けられる思いDEATHよ。
さっさと身の潔白を証明しないと、心臓発作か何かで息の根を止められそうだ。
「そう、だから棄却されるのを承知で、あえて学校側に許可を申請すればいいと思うんです。
この事態も学校側から正式にNGが出てしまえば、さすがに収束に向かうでしょうし、
一応申請しておくことで、生徒会は目安箱からの意見や要望に耳を傾けていると
アピール出来て一石二鳥だと思うんです」
俺の意見に対し、ようやく表情を和らげ、しばし考え込む二人と、それを見て慌てた様に
うんうん唸りだすこのみ。……このみ、無理に考える振りなんてしなくていいぞ。
「……なるほど、確かにそれなら生徒会側で要求を跳ね除けるよりは、反発は少なくて
すみそうだけど、その代わり怒りの矛先を先生方に向けるようでちょっと心苦しいわね」
255学食に行こう第二話 3/7:2007/05/24(木) 00:34:25 ID:WeVrBeOj0
「私はタカ坊の意見に賛成。確かに生徒間での問題は、出来る限り生徒会で解決すべきだと思うけど
今回の件に関しては、これだけの騒ぎになってしまった以上、仕方ないんじゃないかしら。
……しかし、最初こそ裏切ったのかと思って、七代先まで祟ってやろうかと思ったけど
その実、冷静さを欠いていた私達と違い、きちんと対応策を考えてたのね。見直したわ、タカ坊」
「い、いや、タマ姉や先輩たちは当事者だから、感情的になっちゃうのは仕方ないよ」
いい子いい子とばかりに俺の頭を撫でるタマ姉。いつものことながらちょっと気恥ずかしい。
そこに、途中から蚊帳の外扱いだったまーりゃん先輩が口を挟んでくる。
「なあなあ、たかりゃん。さっきから話を聞いてると、今回の要求が学校側に棄却されるのが、
さも決定事項のように聞こえるぞ」
「いや、どこの世界に、スク水メイドが接客する学食にして♪ なんて要望を許可する
学校がありますか。第一、仮に実施する場合、誰がそんな格好するんです?」
「誰って? ここのメンバー皆に決まってるじゃん。ね、さーりゃん」
さも、それが当然のことであるかのように、久寿川先輩に話を振るまーりゃん先輩。
「まーりゃん先輩、それは……」
「ほら、久寿川さん。嫌なものは嫌ってはっきり言う」
戸惑いの表情を浮かべる久寿川先輩を、タマ姉が後押しするかのように背中を軽くたたく。
「?……さーりゃん?」
「まーりゃん先輩、ごめんなさい。あの格好は……もう嫌なの」
「そんな!? さーりゃんの溢れんばかりの芸人魂は一体何処へ行ったの?」
先輩にそんなものがあってたまるか。しかしながら久寿川先輩からの拒絶は予想だにしていなかったようで、
暫し硬直していたまーりゃん先輩ではあったが、その決意は固いと踏んだのか、諦めたかの様に溜息をつく。
「ちぇ、しょうがないな。じゃあ、今回はたまちゃんで……」
「当然ながらお断りします」
「な!? じゃ、じゃあ、このみん」
「上官殿のご命令でも、従うことは出来ないであります」
「……というわけで、やるなら先輩一人でやって下さい」
非情な様だが、この先輩には少々やりすぎな位、釘を刺しておかないと、際限なく暴走するというのは、
短い付き合いながら身をもって体験しているので、ここは心を鬼にして引導を渡すことにする。
256学食に行こう第二話 4/7:2007/05/24(木) 00:35:29 ID:WeVrBeOj0
「……そっか。なんだ、あたしの一人相撲だったんだ。さーりゃん、皆、気付かないでごめんね。
気にしないで。今回の件は責任を持って、あたしが慰み者になるから」
そう言い残し、肩を落として、とぼとぼと生徒会室を出て行こうとするまーりゃん先輩。
先輩は生徒会室のドアを開け……一度こちらを振り向き、捨てられた子犬のような目で室内を見渡す。
そしてそのまま教室を出ようかという時……
「ま、待ってください。まーりゃん先輩」
非情になりきれず、哀愁漂う背中に声をかけたのは……案の定、久寿川先輩だった。

「さーりゃん! やってくれるの?」
釣れたとばかりに、先程までと表情を180度変え、久寿川先輩の手を握るまーりゃん先輩。
やっぱりというか予想通りというか、さっきまでのは演技だったらしい。
「ごめんなさい。それはできませんけど……」
「ええっ!? さーりゃんは奈落に転落しようとした相手の手を一度掴んでおきながら、
やっぱりやめたって離しちゃう人だったの? そんな薄情者だったのか? さーりゃんは」
「そ、それは……」
まーりゃん先輩の押しの強さもさることながら、内容に問題こそあれ、これだけの要望が
来ているのに、それをあっさりと切り捨ててしまうことに負い目を感じているのかもしれない。
久寿川先輩の表情に戸惑いの色が見受けられる。
「まーりゃん先輩、いいかげんに……久寿川さん?」
久寿川先輩の旗色が悪いと感じたタマ姉が口を挟もうとした所を、その先輩が手で制す。まさか……
「先輩、一人で説得するつもりなんですか!? 無茶です。相手はゴッデス・オブ・卑怯の異名を持つ
まーりゃん先輩なんですよ」
無謀な挑戦を諌めようとする俺に対し、久寿川先輩は、
「河野君、向坂さん、柚原さん。ここは私に任せてください」
そう宣言し、まーりゃん先輩に向き直る。その表情には先程までの戸惑いの色は既に無く、いつにない
決意の眼差しをまーりゃん先輩に向けている。そんな表情を見せられたら、こちらは押し黙るしかない。
257学食に行こう第二話 5/7:2007/05/24(木) 00:36:35 ID:WeVrBeOj0
「……確かに、要望の内容についての是非はともかく、これだけの投書が集まったということは、
生徒の味気ない学食をより豊かなものにしたい、癒しの空間にしたいという気持ちの表れだと思いますし、
それを棄却するというのは、私としても心苦しく思います」
「うみゅ。さーりゃん、分かってくれたか。なら早速……」
「ですが、学食という、学び舎の内において、私達が要望通りに公序良俗に反する衣装を身に付けることが
学食の改善に繋がるかといえば、必ずしもそうではないと思いますし、かえって違う方向からの反発を招く
結果になりかねません。ですから、学食の真の改善を考えるならば、今回の要望の実現に固執するのではなく、
他の方向からのアプローチを考えるべきだし、むしろその方が近道に繋がるはずです」
流石は久寿川先輩というべきか。淀みなく語られる正論は、普通の相手なら瞬く間に説き伏せるであろう説得力を
持ち合わせている。事実、今年の予算に不満を持ち、直談判しに来たものの、ぐうの音も出ずにすごすごと
引き返していくクラブや同好会が一つや二つじゃないことからも、その実力は折り紙付である。

「まーりゃん先輩、ですから……」
「そんなこというけどさ、ジャ○プの友情・努力・勝利じゃないけど、この歳の野郎どもを構成する
キーワードはエロス・肉欲・煩悩の3つなんだから、お色気がないのはむしろ不自然じゃん」
……いや、それ全部同じ意味ですって。先輩に手出し無用と言われた以上、心の中でツッコミを入れることくらいしか
やることがないのだが、そんな観戦モードの俺に、まーりゃん先輩は、心底意地の悪そうな笑みを向ける。
……なんだろう、この背中を伝う気持ち悪い汗は。
「それに、そこにいるたかりゃんだって、さも女の子に興味ありませんなんて態度取ってるけど、
本当はムッツリエロエロ星人なんだから。嘘だと思ったら、たかりゃんの部屋の机の引き出しを開けてみれ。
二重底のトラップを抜けた先には、たかりゃん秘蔵の品が眠ってるから」
「ぶっっっ。な、なんでまーりゃん先輩がそんなこと知ってるんですか!?」
……あ、思わずツッコミをいれてしまったけど、それではまーりゃん先輩の発言が真実であると言ってしまったようなものである。
258名無しさんだよもん:2007/05/24(木) 00:39:46 ID:qw6TJRTP0
支援
259学食に行こう第二話 6/7:2007/05/24(木) 00:41:40 ID:WeVrBeOj0
「えっ、こ、河野さん?」
「ほら、たかりゃんだって、エロスに興味有り有りーなんだから、ここは文字通り一肌脱ぐべきなんじゃない?」
「で、ですけど……」
形勢は逆転し、まーりゃん先輩に押されるがままの久寿川先輩。それでも何とかぎりぎりで踏みとどまっているのは、
現生徒会長の意地というやつなのかもしれない。ちなみに、今の俺の心の中が、久寿川先輩に対しての、
数え切れない(色んな意味での)懺悔の言葉で埋め尽くされているのは言うまでもない。

「ええい、さーりゃんも強情なやつだな。こうなったら対さーりゃん用の奥の手を使わせてもらうぞ」
そんな久寿川先輩に対し、まーりゃん先輩が、いや、それはあんたでしょうがとツッコミをいれたくなる
台詞を吐くと、やおら教室から廊下に飛び出し、
「みなさーん。さーりゃんがやらせてくれないんですー」
「ま、まーりゃん先輩!?」 
放課後ではあるものの、まだかなりの生徒が残っている中、廊下に響き渡るまーりゃん先輩の声。
台詞中『学食を』という、目的語を省いているのは故意なんだろうなやっぱり。案の定、
「えー、やっぱり会長とまーりゃん先輩ってそういう関係だったんだ」
「そこに河野君が現れて、会長を巡って泥々の三角関係に発展? きゃー」
等と、廊下を歩いていた生徒達から、たちまちひそひそとささやく声が聞こえてくる。
久寿川先輩がそっち方面の話しに弱いことを突いたピンポイント口撃。というより衆人からそういう目で
見られて平然としていられるのは、まーりゃん先輩位しかいないわけで……ていうか、なんで俺まで話題に。

「やりたいやりたいー、さーりゃんやらせろー」
「ああ、もう、まーりゃん先輩、恥ずかしいからやめてください」
終いには、会話の流れを聞いていないと十中八九誤解されそうな台詞を口にしながら、駄々っ子の様に
床に寝転がって手足をばたつかせるまーりゃん先輩と、それを見て育児に慣れていない母親の様に
おろおろとする久寿川先輩。……そういえば、卒業式の日にも俺に同じことをしてたな、この先輩。
どうでもいいけど、うちの制服でそんなダイナミックなアクションをとると、スカートの中が丸見えな訳で……
ホント、毎度のことながら、非常に目のやり場に困る。
260学食に行こう第二話 7/7:2007/05/24(木) 00:43:13 ID:WeVrBeOj0
「まーりゃん先輩、分かりました。分かりましたからもうやめて下さい」
「ホントか? さーりゃん」
「……ええ、学校側から服装コードを提示して頂いて、その範囲で実施するという方向で進めてみます」
こうして、新・旧生徒会長対決は、下馬評通りまーりゃん先輩に軍配が上がった。というより、後半の
一方的な展開は、対決を通り越して、もはやイジメかっこ悪い、の世界。改めてまーりゃん先輩の恐ろしさを
思い知った気がする。
「……ごめんなさい。任せておけなんて言っておきながら、こんな結果になってしまって」
先程の羞恥プレイで、もはや半泣き状態の久寿川先輩が、こちらを見渡し深々と頭を下げる。
「久寿川さんは悪くないわ。……悪いのは全部タカ坊だから」
「ちょっ、タマ姉!? いひゃひゃひゃひゃひゃ」
「……タカくんのH」
タマ姉の俺の頬を引っ張る強さが、いつもの5割り増し程に感じるのは気のせいなんかじゃないだろう。
……このみもそんな目で俺を見ないでくれ。
「……ま、いいわ。その条件であれば、いくらなんでも無茶な格好にはさせられないだろうし」
「自分も了解であります」
俺に八つ当たり? して多少は気が晴れたのか、久寿川先輩に優しく微笑み、その妥協案に賛同するタマ姉と
それに追従するこのみ。二人が文句ないのであれば、男の自分がとやかく言うことは無い。
「うーん、あたしとしてはちと物足りないけど……ま、さーりゃんに免じて許してやるとするか」
そんなまーりゃん先輩を見たタマ姉が、もう何度目か分からない溜息をつく。
「全くまーりゃん先輩は、こんな歳になってまで駄々っ子みたいな真似するだなんて、何考えているんだか」
こっちに戻ってきてから、初めて俺の家に来た、というより不法侵入したタマ姉が、俺のベッドの上で
全く同じことをしてみせたような気がするけど、この状況で『タマ姉が言えた義理ではないと思うよ』等と
突っ込んで、デッドエンドを選択する程、人生に絶望している訳ではないので、それは自粛する。

何はともあれ、こうして発動してしまった新たなメイド学食計画。乗船拒否できないどころか、
まーりゃん先輩が舵取りをしているこの計画に、順風満帆とは程遠い道のりが待ち受けているのは
間違いなさそうだ。
261名無しさんだよもん:2007/05/24(木) 00:50:21 ID:WeVrBeOj0
以上、第二話投下させていただきました。支援ありがとうございます。
とは言うものの、行き当たりばったりで書いているせいか、全然話が進んでません。

>>242
まーりゃん先輩SS GJです。ADもこんな感じで全編ギャグで通してほしいなぁ。
262名無しさんだよもん:2007/05/24(木) 18:40:30 ID:Z7ugwq990
まーりゃん先輩がイヤな奴になってるな
263名無しさんだよもん:2007/05/25(金) 00:03:15 ID:JpmXsNS10
>>262
割と原作に忠実な気がするが。
これがまーりゃん先輩だと思うぞ。
264名無しさんだよもん:2007/05/25(金) 01:03:09 ID:HZ12l/YB0
俺もそう思うw
まーりゃんは嫌いじゃないっつーかむしろ好きなんだけど
まーりゃんいなければ、ささらシナリオがあそこまでこじれたりはしなかっただろうなw
265名無しさんだよもん:2007/05/25(金) 15:47:30 ID:i0yA7l6YO
しかしまーりゃんがいなければ、きっと二人は結ばれなかった。と、信じる
266名無しさんだよもん:2007/05/25(金) 19:41:55 ID:IjNwAYsJ0
>>264
まあ前半のぐだぐだは消えるような気もするな。
後半のぐだぐだは家族問題だからどうにもならないけど。
267名無しさんだよもん:2007/05/25(金) 19:47:38 ID:bICbPDTt0
まーりゃん先輩がいなかったらささらは学校辞めてたんじゃね?
友達のいない暗いやつとしていじめにあうかなんかして。
少なくとも生徒会には入っていないから貴明との接点はなくなるっつーかシナリオ前面変更しかないな。
268名無しさんだよもん:2007/05/25(金) 20:00:37 ID:XpiNBh280
しらんしここで語ることでもない
269名無しさんだよもん:2007/05/25(金) 22:58:53 ID:/LTSlr7J0
まーりゃんが過去に戻って貴明の過去を改竄しようとするのを優季が阻止するSSが読みたい。
270名無しさんだよもん:2007/05/25(金) 23:20:32 ID:F7k+BTQ6O
そういうのはSF関連の創作スレで頼みなさい。
そもそも鳩2じゃなくなるし。
「このみ、急げ!」
「私の後ろから言われても説得力ないよ〜」
姫百合姉妹がいるであろう塀の裏に回り込もうと懸命に走る2人。だが、身体能力の差に比例するようにその距離を物理的に離していく
「お前がはやすぎるんだよ!」
貴明の批難もなんのその、このみは塀のサイドに付く
「瑠璃ちゃん、珊瑚ちゃん捕獲であります!」
塀の向こう側に向かって銃を構えるこのみ。さながら警官が犯人を捕らえるような状況か。しかし
「...アレ?」
銃を構えながら首を傾げる
「タカく〜ん、いないよ」
壁の向こうからひょこっとこのみが顔を出す
「...いない?」
現状を理解できない貴明。姫百合姉妹が壁の向こうにいないことなど、微塵も考えなかった。完全に思考が停止し、一瞬のフリーズ。だが
「このみ、隠れろぉ!」
「えっ?あ、うん!」
パンッ!
――バララッ!
このみが壁の手前に引っ込むと同時に、弾丸の雨。貴明の直感とも言える叫びの警告により、間一髪襲撃からは逃げのびた
「あー、ビックリしたー」
「なんでいないんだ...?」
貴明もこのみの隣にしゃがみこむ。さっきまでこの壁の向こう側から攻撃してきたはずなのに、実際にきてももぬけの殻。これではまるでミステリーである
「どこいっちゃったんだろ?」
回りを見渡すと、一カ所だけ身を隠すにはちょうどよい壁がもうひとつあった。その壁は、さきほどの場所と今いる場所の直線上に位置していたため、こちら側に来るまで死角となっていた
「あっちか...」
姫百合姉妹がいるであろう壁とは、さっきの距離よりも近くにある。まだチャンスは死んではいない
「このみ、多分あの壁の裏にいる」
見渡しても他に隠れられるようなところはない。貴明は、この推測に自信があった
「じゃあまた突撃するの?」
「ああ。あ、いや」
突撃以外の作戦を考えているときにその変化は起きた
パンッ!
―――...。
発砲音はしたものの、壁に跳ね返る音が聞こえない。疑問に思った貴明がふと空を見上げる
「〜っ!!このみ、やっぱ突撃だ!いますぐ!」
「え!り、了解でありま」
言うが早いが、貴明はこのみの手を引いて姫百合姉妹がいるであろう壁に走った
「ど、どうしたの?」
いきなりの事態に対応できないこのみ。ふと、自分がさっきいた方を振り返る
そこには、さっきまでいた場所に空から-文字通りの-弾丸の雨が降っていた。
「うわ...」
「こんな攻撃されたらいつかやられる。早く決着をつけないと」
そう言いながら走っている貴明の前に、いつの間にかこのみがいる。しかも手を引っ張られる形で
「じゃあ急ごうよ!」
幼なじみの相変わらずの駿足に肩を竦め、貴明は銃を握り直す。
そして、その壁のサイドまできた2人は、壁の裏にいる双子に銃を向ける
「観念するであります!」
「瑠璃ちゃん、珊瑚ちゃん。けっこう手強かったよ」
2人の目の前に見えた姫百合姉妹は、壁際にしゃがみ込み、マガジンに弾を詰めている最中だった
「あ、貴明や〜☆」
奇襲されていることなど気にもとめず、貴明に抱き着こうとする珊瑚。しかし
「さんちゃんにすけべぇな事すなぁ!」
ガスッ!
「いってぇ!」
寸分の差で瑠璃のジャンプキック。これが格闘戦なら、一発アウトである
「だ、大丈夫?タカくん」
このみはわたわたしながら貴明に近付く
「っつー...。相変わらずだね、瑠璃ちゃん」
「フンッ」
「けど、よくウチらの攻撃にやられんかったな〜」
「どうにかね。あ、そうだよ。珊瑚ちゃん、さっきから弾が沢山飛んでくるあれ。あの攻撃は一体何なの?」
弾丸の雨の謎を解くベく、疑問をぶつける
「えとな〜。この銃に弾を詰めて撃つだけや。そうすれば」
パンッ!
―――バララッ!
言いながら引き金をひく珊瑚。その手に持っている銃口から、多くの弾が一度に出て来た
「な?簡単やろ」
「簡単...って、どうしたのその銃!いつの間にそんなのもってきたの?」
「ウチはどこからも銃なんて持ってきてへんよ〜」
「これはさんちゃんが最初に借りたモンや」
借りたモンと言い、自分達の持っている銃を指差す瑠璃
「ってことは...改造?しかも勝手に...」
「こんなんふつーな銃やったらつまらんもん。うちのすぺしゃるばーじょんや〜☆」
「いや、けどこれ...借り物だよ?」
「花梨が好きに使ってって言っとったもん」
口をとがらせる瑠璃。ちょっぴりいじけモードである。しかし先輩を呼び捨てにするのはいかがなものか
「ん〜....」
頭を抱えながら無線を手に取る貴明
「えっと、笹森さん?」
『ん?どうしたのタカちゃん』
「あのさ、そんなに良くない話しがあるんだよね...」
『?やられちゃったの〜?も〜、だらしないなぁ』
「いや、違うって。あのね、珊瑚ちゃん達に銃渡したでしょ?」
『うん、好きに使っちゃって〜って』
「そう。それなんだけど...」
貴明が頭をかかえる
「さっき言ってたショットガンのやつ。あれ、笹森さんが珊瑚ちゃんに貸した銃を改造したやつらしいんだ」
事の事情を説明する
「それで、2つとも改造してるみたいでさ。2人に悪気はないんだけど...」
『....』
「直してから返すようには言うけど、もしかしたらってこともあるし」
『.....』
「それで...って聞いてる?」
花梨に反応がないので、話を中断してみる
『...それ、普通に使えるの?』
無線の先から静かな返答が聞こえる。その声からは怒っているのかもわからない
「え?...うん、さっきまで攻撃されてたし」
『..弾が沢山でてくるんだね?』
「そうだよ。さっき説明したじゃ」
『欲しい!!』
「...は?」
いきなりの叫びに、唖然となる
『タカちゃん、それ面白そうだよ!すっごい欲しい!』
「面白そう...って、それでいいの?下手したら壊れちゃうかもしれないよ?」
『だって普通のより面白そうじゃない?だから、たかチャン。それ、回収してきてね〜』
まさに嬉々とした声。そこまでうれしいものだろうか
「まぁ、笹森さんがいいって言うなら問題ないし。わかったよ」
『じゃ、よろしくねっ』
「...とゆー事で」
無線を下ろし、二人に顔を向ける
「珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん」
「ん?」
「なんや」
貴明の呼びかけに二人ともそっちを向く
「一応言っとくね。..はい、アウト」
貴明の視線の先――二人の後ろに、銃を構えたこのみがいた。と言っても突入された時点で勝負は決まっていたのだが
「しゃ〜ないな〜。はい、これ」
珊瑚が手に持っていた銃を貴明に渡す
「弾を込めるのにめっちゃ時間が掛かるから、気ぃつけてな。あ、今はもうマンタンに入っとるよ」
「分かったよ。...あ」
「どうしたん?」
「今ポケットに銃が入ってて、これを入れとく所がないんだよ」
貴明のズボンのポケットには最初から持っていた銃と、愛佳から回収した銃が入っていた。
「しゃ〜ないな〜。そんな時は〜」
そう言いながら自分のふとももに着いているなにかを外そうとする珊瑚。ほぼスカートに手を突っ込んでいるだけのその行動はなかなかにセクシーである
「じゃじゃ〜ん☆ホルスターや!」
取り出した革張りのものを自信満々に目の前に掲げる
「これ、つかってええよ〜」
言うが早いか、ホルスターを貴明の腰に巻き始める
「え、いいの?」
「あとでかえしてくれたらえ〜よ。...これでオッケーや」
これで、貴明は通算4つの銃を持っていることになった
「...けど、なんでこんなのもってるの?」
「なんか、かっこえぇやん」
満面の笑みを浮かべる珊瑚。
「....それだけ?」
「それだけ〜☆」
両手を上げてその場でくるくると回る珊瑚。なんともほほえましい光景だ
「しゃ〜ないな、ほれ」
それを見ていた瑠璃も、このみに改造銃を渡す
「けど、貴明つよいな〜。ウチら、もう二人しか残っとらんもん」
これで雄二チームは残り二人、雄二とるーこだけである。その反面、貴明チームは誰ひとりとしてやられてはいない
「たまたまだよ。それに、まだタマ姉もいるから油断はできないし」
「そーいえば、どこにいるんだろ。タマお姉ちゃん」
単独の環は、いまだにその姿を見せない。花梨達が姿を見たといっていたが、それだけである
「タマ姉の事だから、どっかで高見の見物でもしてるんじゃないかな。それで、油断した敵に攻撃...とか」
「タマお姉ちゃんの事だから、きっと正々堂々だよ」
「...そうかなぁ」
「貴明なんか、すぐやられてまえばええねん」
「あかんよ〜、瑠璃ちゃん。貴明とおんなじチームに入れへんからって、ヤキモチやいたら〜」
「そ、そんなんちゃうもん!」
珊瑚の言葉に頬を赤く染めて反論する瑠璃。そっぽを向いてるその姿には、言葉とは裏腹な感じを受ける
「ほな、うちらはもう行くな〜。」
瑠璃の否定をさらっと流し、待機場所のベンチに向かう珊瑚
「ああっ!まって〜な、さんちゃん。...貴明のあほ〜!」
とことこと進んで行く珊瑚を追い掛けながら、振り返り際に叫ぶ瑠璃
「俺、嫌われるような事したかなぁ...」
「...タカくんは二人と仲良しなんだね」
「仲良しっていうか...。友達だよ。けど、瑠璃ちゃんとは仲が良いって言えるかなぁ」
「...じゅうぶん仲良しだよ」
頭を掻きながら、苦笑いを浮かべる貴明。このみは、ボソッと呟いた。
「ん?何か言ったか?」
「なんでもないであります!」
顔を上げて、意気揚々と答える。その足は、すでに花梨達と合流しようとしている
「早くいくでありますよ!」
「わかったよ...なんか、このホルスター重いんだよな。ちょっとでかいし」
「タカくん早く〜!」
そう叫ぶこのみは、すでに遠くに行っていた
「相変わらず足は早いんだから...待てってば!いまいくよ!」
貴明も、このみに合わせて走り出す。

.....。

「るーこちゃん、珊瑚ちゃんたちもやられたみたいだぜ」
「古来より犠牲無くして戦いは勝てないぞ。うーるり達はよくやった。細工も完璧だ」
「人数的には不利だが、こいつがありゃあ逆転できるかもな」
「油断は禁物だぞ、うーじ。うーたまがどう動くかによって全ては変わる」
「俺、うーじなんだ...」
「るーは部族だ。ただ黙って負ける程お人よしではない。容赦はしないぞ」
「俺だって貴明には負けたくないな。なにより姉貴に負けたくねぇ!」
「うーたまは手強いぞ。キングは後回しだ。まずはポーンを狩るぞ」
「ん〜、チビスケあたりか?」
「うーこのが一人になったらだ。うーと一緒にいると厄介だ」
「...なぁ、るーこちゃん。とりあえず場所変えないか?すげー狭い」
「るーの住家だぞ、ここは快適だ」
「公園のトンネルだぜ、ここ...」
278鈍色に映る空 の人:2007/05/27(日) 01:05:34 ID:q83fBQ5yO
お久しぶりです。
今回は、時間がかかっちゃいました。やっぱりいきあたりばったりはダメですね。伏線とかも難しいですわ

申し訳ないですが姫百合シスターズには早々と...。私の能力不足で活躍せず(┰_┰)
次はいつになるかな〜。未定です....

るーこって難しいけど楽しいね。
279名無しさんだよもん:2007/05/27(日) 22:07:40 ID:ylcHiYKn0
>>278
乙〜
姫百合姉妹の攻撃力の秘密は、影でイルファさん辺りが暗躍してるのかと思ってましたw
負担にならない範囲で連載頑張って下さい。
280名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 01:08:39 ID:f2QYfrFb0
なあ、ADの情報が公開され始めたというのに、なんでこのスレはこんなに過疎ってるんだ?
281名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 02:25:26 ID:FqYAGFTT0
>>280
むしろADの情報があるからこそ、今まで使われてきた半オリキャラが使えなくなってるんじゃないか?
282名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 06:03:15 ID:GQ10RMWY0
週2,3本ペースで投下があるなんて、一時期に比べたら結構な盛況じゃないか?
283名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 19:43:22 ID:bdi7FGMVO
雄二と付き合わせるなら誰がいい?雄二メインで書きたい
284名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 19:44:43 ID:f2UtB6B40
貴明
285名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 19:56:11 ID:XIeA6PJZ0
>>281
そのせいで郁乃かけなくなった俺がいる。はるみもシルファも難しくなったからなー
286名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 20:14:17 ID:YtNsNVVj0
>>283
雄二の性格を持った貴明で書いてみて
287名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 21:28:23 ID:bdi7FGMVO
>>286
考えてみる
288名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 21:36:25 ID:bdi7FGMVO
やっぱり無理みたい。
ツンデレ雄二でいく
289名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 22:24:39 ID:NS68K/4H0
>>287-288
ちょwwwwwをまwwwwww9分2秒でwwwwwwwwwww
290名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 22:29:13 ID:xkeITE4O0
てか、前から疑問だったんだが。
ADの影響でサブキャラ書きにくくなったって人は、これまでどういうつもりで書いてたんだ?
あわよくば自分の作ったキャラが半オフィシャルみたいに扱われればいいなーとか思ってたの?
別にAD発売されるまではこれまでと同じように書いて、AD発売されたら何事もなかったかのように
AD準拠の話を新しく書けばいいじゃん。難しく考えることないんじゃねーの。

と、サブキャラSSを未だに書き続けてる人間が言ってみる。
291名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 22:32:48 ID:Aie1p01S0
>>288

雄二×緒方理奈で
292名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 22:33:29 ID:VeWRxWT80
>>290
へたれの俺としては、SSではサブキャラは可能な限りスルーさせてたし、サブキャラでSS
書きたいと思った場合は、一言もそのキャラに喋らせないとかアクロバットな方法で書いて
たりしてた。
可能な限り、後日オフィシャルが出ても影響が出ない話を書いていたぜ。

まさか河野はるみで来られるとは想像してなかったがなwww
293名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 22:33:59 ID:Aie1p01S0
>>290
小出しにされる情報と食い違ってるから書きづらいって言ってんだろ。
294名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 22:38:13 ID:xkeITE4O0
>>293
どこにそんなこと書いてる?w
295名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 22:39:42 ID:D1sT8jZn0
>>293
食い違うって小出しに出てきてる情報と自分の考えた設定がってこと?
296名無しさんだよもん:2007/06/01(金) 23:30:30 ID:KN9m1q/X0
まぁ、あれだ。一度自分で書いてみようと思えばいいわけだよ
俺としてはオフィシャルな設定があるならなるべくそれに準じて
書きたいから、情報小出しな今は書きづらいかな
297名無しさんだよもん:2007/06/02(土) 00:30:09 ID:Sg241Hck0
ネタ切れた作家がID変えて言い訳するスレはここですか?
298処女作。:2007/06/02(土) 01:03:55 ID:p35AvSkoO
始業式終了。鬱だ。タマ姉がうちの学園に来るなんて。
「貴明!」
――雄二か。こいつとは今までのような接しかたでいいのか?
こいつのご機嫌をとらねばタマ姉何をチクられるかわからない。
「やあ雄二くん。何か飲むかね?」
――自分でも気持ち悪いセリフだ。すると雄二は
「タカくんの買ってくれるものならなんでもいいよ!」
・・・一瞬心臓が高鳴った。雄二ってかわいいじゃないか。
「じゃあ一緒に帰ろう。どこかで買ってやるから。」
「うん!」
俺達は校門に向かった。見覚えのある髪型。タマ姉とこのみか。
「あ、タカ坊!待ってたのよ。一緒に帰りましょ。」
タマ姉は俺の腕を強引に掴んだ。隣で雄二が睨み据えていた。
「姉貴と仲良くしたいなら勝手にしやがれ!」
と言って先に行ってしまった。違うんだ雄二、俺は・・・
「ユウくんおかしいね?顔真っ赤だったよ。」
「タマ姉、ゴメン!俺は雄二を追い掛けなくちゃいけない!」
俺は雄二を追った。全力で家まで行ったが留守だった。
299名無しさんだよもん:2007/06/02(土) 01:29:40 ID:p35AvSkoO
雄二はどこに行ったんだ。公園、駅にはいなかった。
俺は商店街まで駆けて行った。夕暮れ時で人も多い。
ちくしょう!これじゃ雄二を見付けられないじゃないか!
「雄二ぃ―――!!」
俺は叫んでしまっていた。周囲のやつらは何事かと目をみはった。
「貴明・・・」
雄二は現れた。だが一人ではなく、ある人間と腕を組んでいた。
「あんたは、真委員長・・・!」
「河野くんじゃないか。なにをしているんだい?」
「それはこっちのセリフだ!お前は雄二と何を!」
「違うんだ貴明・・・。俺が誘ったんだ」
「なんだと!?」
「だって貴明は姉貴やこのみに触れられると嬉しそうにするじゃないか!」
「それは違うんだ雄二!聞いてく・・・」
そのとき重い衝撃が腹にきた。殴られている。真委員長に。
「おいおいおいおい。てめえ雄二を泣かせるようなことすんじゃねえよ」
もう一発。今度は顔面だ。やるじゃないか。だが俺には効かない。
「真委員長さん。なんだそのパンチは。てめえの
雄二を思う気持ちはそれっぽっちか?男をみせろ!」
「やめて!俺のために争わないで!」
雄二が俺達をとめた。
「コラァ!何をやっているかぁ!」
ちっ、マッポの巡回が来やがった。
「河野。この先に公園があるのを知ってんな。そこにこい」
そう言うと野郎は雄二を連れて行った。俺もここから
逃げないと。俺は別方向に走っていった。巡回はこっちの
ほうに来やがる。さすがに速い。追い付かれる。あと1m・・・
「るー!」
――なんだ?視界が暗く・・・。体が浮く感じだ・・・
気が付けば木の上。なぜこんなところで寝ているんだ?
だがここは見覚えがあるところだ・・・
300名無しさんだよもん:2007/06/02(土) 01:55:35 ID:p35AvSkoO
あの公園だ。しかしどうやって・・・
「るー」
白い服の少女。こいつはなんなんだ?
「うーは野蛮だな。こんなに小さい争いをしようとしている。」
「何を言っている?」
「うーはバカだ。ものをはっきり言わないからこうなる。
自分の思いを電子化しないと伝えられないとは事実か?」
「誰だてめえは?」
「うーのようなやつには言ってもわかるまい。だがな、るーは
うーにチャンスをやる。なぜだかそうしたいんだ。
うーの敵はもうすぐここにくる。存分にやれ。じゃあな」
――俺は全く彼女のことを理解できないまま別れてしまった。そして、
「ほんとに来やがった・・・」
「貴明!」
「速いじゃねえか河野。あっちも早漏なんじゃねえか?」
「黙れタコ。てめえを病院に戻してやる」
俺は右脇腹を狙って回し蹴りを試みた。
「とったぁ!」
野郎は俺の蹴りより速く踏み込み顔に左エルボーを決めてきた。
「てめえ、このタコ野郎。殺すことにした」
俺は鼻を思いきり叩き、怯んだすきに腕をロック。このまま折ることができる。が、
「甘いんだよ河野」
俺は野郎に投げられてしまい、そのまま間接をとられた。
その後野郎は首をきめてくる。真横に曲げられ折れそうになった。
「はずさねえぞ河野。てめえはここで殺す。雄二くんは俺が・・・」
「俺が?俺がどうするって?言ってみろタコやろ・・・」
それは無理だった。野郎は頭から血を流して倒れていた。
「雄二・・・」
雄二がやったのだ。手には巨大な石を持っていた。
301名無しさんだよもん:2007/06/02(土) 02:03:25 ID:iy9l0S4U0
時間かかってるな
一回テキストに全部書き出してからコピペしようぜ

>>296
ADに関係ない本作キャラで書けば良いだけじゃ?
それにこれまでに公式に準じたメイドロボなり郁乃なりのSS書いてたのなら
自分設定大きく出してない限りそのまま書けるんじゃないかね
302名無しさんだよもん:2007/06/02(土) 02:10:09 ID:p35AvSkoO
「俺を殴ればよかったんじゃないのか?」
「貴明、・・・け、喧嘩弱いじゃん。む、無理してやるな」
「俺はお前に話したいことがあったから。」
「な、なんだよ!まさか愛の告白とか言うなよ?絶対言うなよ?」
「雄二に前言われたよな。俺は女が苦手だって。あれ正解だ。」
「・・・」
「俺は女がずっと怖かったんだ。いつか女が俺の大事な
人をとってしまいそうだから。つまり・・・その、俺は・・・」
「貴明・・・」
「俺は雄二が好きだ!お前以外に誰もいらない。このみを殺してもいい!」
「貴明のバカ。結局告白じゃん・・・」
「雄二・・・」
俺は雄二と唇を重ねた。もう誰にも渡さない。渡すもんか。

――「るー。貴重なサンプル感謝するぞ」


END
303名無しさんだよもん:2007/06/02(土) 02:13:17 ID:p35AvSkoO
('A`)
激しく後悔してる。下手な文章だしホモ展開にしてしまった
落ちも適当にやってしまった。
絶対叩かれる叩かれる叩かれる叩かれる叩かれる
304名無しさんだよもん:2007/06/02(土) 10:46:56 ID:9tvU+Rvt0
>>296
逆に考えるんだ。
「なあに? 股間を踏みつけられて感じちゃってるの? あなたって本当に最低の屑ね」
そんなドSシルファがネタでも許されるのは今だけと考えるんだ(AA略)。

>>303
レスしておいてなんだけど、正直、叩かれるよりスルーされるほうがキツイぞw
305名無しさんだよもん:2007/06/02(土) 12:56:36 ID:p35AvSkoO
処女作だからしょうがないや
もう立ち直った
306名無しさんだよもん:2007/06/02(土) 13:26:54 ID:oUeVag110
>>304
アンジェリカ乙
307名無しさんだよもん:2007/06/03(日) 00:42:38 ID:7leXmexPO
処女作乙。正直GJだぜ。雄二メチャクチゃ好きなんで雄二のSSもっとよみたい。女相手のノーマルなやつも。
308名無しさんだよもん:2007/06/03(日) 08:36:36 ID:5Nbbm1ZpO
ありがと
ホントにありがと
頑張ってみる
309名無しさんだよもん:2007/06/03(日) 14:27:50 ID:ejeU80pH0
とりあえずsageろ。
あといちいちレス返すな。見ててウザい。
310名無しさんだよもん:2007/06/03(日) 17:58:37 ID:004nblUy0
>309
もう少し言葉に気をつけた方が良い。
あなたの言い方は反感を買うだけです。
311名無しさんだよもん:2007/06/03(日) 19:08:10 ID:EXPU24v10
俺はホモじゃないけど雄二×貴明のSSをぜひ読みたい
312名無しさんだよもん:2007/06/03(日) 19:29:55 ID:b0qi7e5kO
>>311
ホモじゃないが腐女子、なんてオチが付くんじゃあるまいなww
313名無しさんだよもん:2007/06/03(日) 19:49:39 ID:eKhdhAFP0
腐男子に決まってるだろ
俺も雄二x女装貴明のギャグで話考えてぽしゃった覚えがある
314名無しさんだよもん:2007/06/03(日) 20:11:24 ID:LE40m5nF0
あれはフラグが立ってそうだしな
……実際に立ってたっけ?
315学食に行こう第三話 1/5:2007/06/03(日) 21:23:27 ID:/2vbpL5e0
「先程の件は、私達が一定期間、学食で接客業務のお手伝いを行い、それにより学食の売上増
等の効果が見受けられた場合、正規にウェイトレスやメイドロボの導入を検討していただく
方向で話を進めたいと思います。……そういうことで問題ありませんよね? まーりゃん先輩」
「うむ、よきにはからえ」
足を机の上に放り出して、えらそうに腕を組むまーりゃん先輩。あいかわらず目のやり場に困る
格好ではあるものの、もはやそれに対しツッコミを入れる気力も無い。
「はあ、仕方ないわね。まあ期間限定ということですし我慢しましょう」
「けどタマお姉ちゃん。学食って確かセルフサービスでしょ? お仕事ってあるのかな?」
「ふっ、このみん甘いな。仕事なんて飾りです。メイドさんが、ただそこに居てくれるだけで
学食という味気ない空間が癒しの園に変貌するんです……ってスーパーバイザーだったら力説するぞ」
まあ、あいつだったらそう言うだろうな。ちなみに雄二の奴は掃除当番の為か、まだ顔を出していない。
……しかし今回の件、ヤツが裏で糸を引いてたりしないだろうな。

「じゃあ、概要も決まったことだし、早速許可の申請しに職員室へれっつらごー」
「えっ、まーりゃん先輩、もうですか!?」
久寿川先輩の驚きの声もそこそこに、生徒会室を飛び出すまーりゃん先輩。……何かおかしい。
普段から確かに無茶はするけど、ここまで他人の意見をないがしろにしてまで強引に話を進める人だったか?
前回にしたって、嫌がる久寿川先輩に無理やり着せたというわけじゃなかったみたいだし……
316学食に行こう第三話 2/5:2007/06/03(日) 21:24:36 ID:/2vbpL5e0
思案に暮れているうちに、ズンズン先行していたまーりゃん先輩に早足で追いつき、小声で話しかける。
「……まーりゃん先輩、一体何を考えているんです?」
「うむ、ちょうどたかりゃんのナニが早漏か遅漏、どっちなのかを考えていた。で、たかりゃんどっちだ?」
「俺のナニがどうかなんて、この際関係ありません!」
くっ、まともに答えを返す気は無いってことですか。答えをはぐらかされ、憮然とする俺に対し、
まーりゃん先輩が逆に問いかけてきた。
「たかりゃん、さーりゃん達のことが心配?」
「そりゃあ……心配に決まってるじゃないですか」
俺の返事に対し、まーりゃん先輩は笑みを浮かべ、こう言った。
「大丈夫、さーりゃん達を悪いようにはしないからさ」
……その言葉、信じていいんですよね。まーりゃん先輩。

「そんなもん許可できるわけ無いだろう」
所変わって職員室。今回の件において、生徒会で唯一の推進派であるまーりゃん先輩が交渉役と
なったのだが、度重なる過去の前科で心証最悪の先輩にそれが勤まるはずもなかった。
……まあ、まーりゃん先輩は何を血迷ったか、前回のスク水メイド学食そのままを申請したので、
だれが交渉役でも結果は変わらなかっただろうけど。
「えー、何で? 学食のおかずじゃ味気ないけど、さーりゃんやタマちゃんがいれば、それだけで
ご飯三杯はいけるって意見が沢山来てるんだから、食器を赤くすることなく学食の売上が3倍増し
間違いなしなのに、なんで駄目なのさ」
「あのなあ、学食の売上云々以前に、生徒に卑猥な衣装を着せて接客させるだなんて、
学校側として認められるわけないだろうが!」
317学食に行こう第三話 3/5:2007/06/03(日) 21:25:43 ID:/2vbpL5e0
当然といえば当然の帰結である。そもそもご飯三杯はいけるっていうのはただの比喩であって
実際に売上が3倍になったら、外食産業の勢力図は大きく変わっているだろうに。
「ちっ、前回の時、さーりゃんのあられもない姿を見て、鼻の下伸ばしてたくせに。
じゃあ、どうしたら認めてくれるのさ? ま、まさか賄賂か? だったらあたしの生パンでどうだこの野郎!」
「そんなもんいるか! 全く、貴様は卒業させてやった恩を忘れおってからに」

「……あの、では学校側として許可していただける条件を挙げていただけますか?」
このまま二人に話を続けさせても埒が明かないと判断したのか、久寿川先輩が口を挟んで質問する。
「うん?……そうだな。まず、第一に女子が如何わしい格好をしないことだな」
「ちなみに、具体的にはどういった格好ならOKなんでしょうか? この辺りは
私達にとって死活問題なので、出来る限り明確にしておきたいのですが」
「死活問題とは大袈裟だな。……まあ、制服にエプロン辺りが無難なところじゃないか?」
タマ姉の質問に対し先生が苦笑するが、この裁定でGOサインが出た服装を、嫌が応にも着用
しなくてはならないタマ姉達にとって、死活問題という言葉は大袈裟でもなんでもない。
その辺りをこの先生は分かっているのか甚だ疑問だが、幸いにも無難な方向にまとまりそう
なので結果オーライといったところか。
「じゃあ、学校指定のスク水もOK?」
「却下だ却下! TPOを考えろ。どこの世界にスクール水着で学食を利用する奴がいるか!」
「えー、でも制服なんかじゃインパクト弱すぎるじゃん。ちぇっ、タマちゃんが口を挟まなかったら、
スク水でもこちらの基準では如何わしくないって判断しました、えへ♪ で通すつもりだったのに」
……こ、この先輩は。ここまでくると、ある意味流石というべきか何というべきか。
318学食に行こう第三話 4/5:2007/06/03(日) 21:27:01 ID:/2vbpL5e0
「はあ、全くまーりゃん先輩は油断も隙も無いんだから」
「おい、念の為言っておくが、さっき言った条件はお前にも適用されるからな。
もし前回みたいな騒動を起こしたら、また親御さんを呼ぶから覚悟しておけ」
「マ、ママンを!? ママンはいやあああああぁ」
先生の警告に、前回の生徒指導室での出来事を思い出したのか、ガクガク震えだす先輩。
「まーりゃん先輩がここまで怯えるだなんて、先輩のお母さんってうちのお母さんより怖いのかな?」
「……いや、春夏さんも相当なものだぞ。試しに今日帰ったら、春夏さんの顔をまじまじと眺めた後、
『また皺が増えたね、ヴァヴァア♪』とでも言ってみたらどうだ?……大丈夫、骨は拾ってやるから」
「う、うん。タカくんがそう言ってたって前置きを入れてからチャレンジしてみる」
「……いや、その伝説の勇者クラスの勇気には脱帽だが、俺を巻き込むのは勘弁してくれ」
「こら二人とも。そろそろ私語はやめなさい」
交渉の席から一歩離れた位置で、このみと小声で話していたところを、呆れ顔のタマ姉に注意される。
慌てて交渉の方に注意を向けると、ちょうど久寿川先輩が最後の質問をしていたところだった。
「他に、何か条件はありますか?」
「後は……そうだな。今回の活動は、あくまで学食でのボランティア活動という名目で行うように。
前回のぼったくりバーみたいな事はするんじゃないぞ。後は……うーん、まあ、そんなところか?」
「分かりました。では……」
「ちょっとまった。おい貴様。念の為、さっきまでに挙げられた条件を書き連ねてみろ。貴様のこと
だから、記憶に食い違いがありました、なんて後から言いかねんからな」
念を押すように、まーりゃん先輩に紙とペンを渡す先生。自業自得とはいえ、ここまで教師に
信用がない生徒というのも凄いな。
「ちぇっ、分かったよ。えーと、『女子生徒が如何わしい格好をしない(あたし含む)』詳しくは
『女子生徒は制服にエプロン着用』それと『ボランティア活動として行う』……これでいいんでしょ?」
319学食に行こう第三話 5/5:2007/06/03(日) 21:28:38 ID:/2vbpL5e0
先生はまーりゃん先輩が書いた用紙を一語一句確認した後、それをコピー機にかけ、出力された用紙を先輩に渡す。
「ほれ、この条件が守れるのなら今回の件は認めてやる。だが違反した場合は問答無用で中止にするからな」
「くっ、こんなの横暴だ〜。生徒の自由意志をがんじがらめに縛り付けるなんて。そんなに緊縛プレイが好きか!」
「ふっ、何とでも言え。この条件が飲めないなら中止させるまでだ」
普段先輩にやり込められっぱなしだっのがよほど腹に据えかねていたんだろう。逆の立場になった今の
愉悦に満ちた表情がそれを物語っている。
「うわーん、これで勝ったと思うなよ〜」
そう捨て台詞を残し、職員室を飛び出すまーりゃん先輩。しかし裁定が不服だったとはいえ、八つ当たりに
他人のキメ台詞をパクるだなんて、流石外道。
「……えーと、そういうわけで、失礼します」
「久寿川。あんなのと四六時中顔を見合わせているだなんて、心底同情するよ」
そう言い残し、先生は心底疲れたように職員室奥の給湯室に消えていった。

「失礼しました」
職員室前の廊下。目の前には今回の事件の発端となった目安箱が設置されている。
今日、このみが回収したにもかかわらず、既にかなりの量の投書が投函されている有様である。
視線を目安箱からまーりゃん先輩に移すと、こちらからは背中を向けたままで肩を震わせていた。
……ひょっとして泣いているんだろうか?
「あ、あの、まーりゃん先輩?」
「……久寿川さん、そっとしておいてあげるのも思いやりよ」
気の毒に思ったのか、久寿川先輩が声をかけるようとするが、タマ姉がそれを制する。
「……ふ、ふ、ふふふ、ふははは、はーっはっはっはっはっ」
突如、俯いた状態から笑いの三段活用を始めるまーりゃん先輩。さっきのショックで
外れかかっていたネジが完全に吹き飛んだのか?

つづく
320名無しさんだよもん:2007/06/03(日) 21:30:11 ID:/2vbpL5e0
以上、第三話投下させていただきました。読んでくださっている方、相変わらずの
グダグダ展開ですいません。次回はもうチョイ先に進められるかも。
ところで、公式のキャラ紹介でまーりゃん先輩がトップで紹介されているのは何の冗談ですかw
321名無しさんだよもん:2007/06/07(木) 18:55:32 ID:tKC9W2Lo0
なんという無反応…
322名無しさんだよもん:2007/06/07(木) 22:35:06 ID:0QoXzqdc0
反応が無い
ただの過疎スレのようだ
323名無しさんだよもん:2007/06/07(木) 23:17:06 ID:12YRolNCO
明日新作うpしますわ
324名無しさんだよもん:2007/06/07(木) 23:29:15 ID:521hUYWr0
楽しみにお待ちしとります。
325名無しさんだよもん:2007/06/08(金) 22:58:41 ID:rubjx5/H0
「えっと、今日の掃除当番は・・・私と向坂君ですね。」
「委員長。俺掃除する気分じゃねえんで帰るわ。」
「え?ちょ、ちょっと待ってよ〜向坂く〜ん!」
俺は最近何をやっても面白くない。あいつがいないせいか?
「オス!ゆうりゃん!たかりゃんから連絡あった?」
「全然ないっすよ〜。先輩にもないんすか?」
「ないぞ。たかりゃん達今頃ヤりまくってるんだな。」
なんて先輩だよ。姉貴が聞いたらどんなことになるか。
貴明と久寿川先輩は大人たちから逃亡中。まったく羨ましいやつだ。
「ねえ、ゆうりゃん」
「なんすか?」
「あんた、さーりゃんに振られたんだよね?」
「・・・」
最低だ。人の気持ちがわからないのか。いいかげん専門帰れ。
「あたし宝探しんときに聞いちゃってさ〜、思わず赤面しちゃったよ。」
「もうすぎたことじゃねえすか。先輩はもう貴明の女なんだ。」
「・・・」
しまった。まーりゃん先輩も久寿川先輩のことが・・・
「あっはははははは!すいません!俺まずいこと言っちゃいました?」
「むー。たかりゃんはさーりゃんのものか〜」
「え?まーりゃん先輩も貴明のことが好きとか?」
「ないないないない!」
「あやしいっすね」
「地球が爆発しようがそれだけはないぞ!」
326名無しさんだよもん:2007/06/08(金) 22:59:25 ID:rubjx5/H0
「わかりましたよ。あ、俺今日は体調がよくないんで・・・」
「バーロー。今日は生徒会ないぞ。聞いてなかったのか」
「そういやそうでしたね。じゃ帰ります」
「待つのだ。今日はあたしに付き合いたまへ」
「遠慮しときま・・・痛っ!」
俺は先輩に引きずられていった。思えばまーりゃん先輩と二人だけで出かけるのは初めてだ。
「到着であります!」
俺は映画館の前に連れて行かれた。
「何見るんすか?」
「ゆうりゃんのおごりだから勝手にきめていいぞ」
「ハァ!?ちょっと待って・・・」
「あたしはこれがいいけど」
先輩は意外にもラブストーリーを観たがった。
「意外っすね。アクション映画観るかと思った。」
「むー。悪いか?じゃ、あたしがお金出す。だから観よ。」
「マジすか?なら俺はチケット買ってきます」
俺は先輩の気が変わらないうちに金を受け取った。
行列ができている。俺達は最後尾に並んだ。後ろにもどんどん人が来る。
「ゆうりゃん、ちょっと詰めるね」
「え?」
まーりゃん先輩は俺の腕にしがみついた。
「恋人どうしに・・・」
「ってゆうか兄弟ですね」
「空気嫁!」
327名無しさんだよもん:2007/06/08(金) 23:00:28 ID:rubjx5/H0
俺達はそれから一時間半映画を観た。騒ぐかと思っていた先輩は静かだった。
途中、スクリーンの光で先輩の顔が見えたが、正直かわいいと思った。
「どうだった?」
「ストーリーはまあまあかな。でもあの緒方っていう女優好きなんで楽しめました」
「・・・そうか、いい事を聞いた。ゆうりゃんはああいうのが好みか。」
「芸能界で一番好きですね」
「あたしみたいのはイヤ?」
「え?」
「ゆうりゃん、さーりゃんばっかり気にしてたけど、あたしはどう?」
「・・・先輩の破天荒なとこ、嫌いじゃないです」
「・・・」
「それに、映画観てるとき、先輩のことかわいいって思いました。」
「おうおうおうおう!嬉しいね!ゆうりゃんの気持ちは十分に分かった。
じゃ、付き合っちゃおうよあたし達!」
「・・・冗談ですよね」
「え・・・?」
「また驚かそうとして」
「・・・・・あははははは!そうだよ!まったくゆうりゃんはうそを
見抜くのがうまいなあ!誉めてやろう!」
「俺も長い間言い訳野郎の貴明と付き合ってきたんで。」
「なるほどなー。あ、あたし家こっちだからここでさよなら」
「じゃ、また生徒会で」
「おう、バーイ」
俺達はそれぞれの帰り道へ。最近先輩は俺の元気がないからか、いつも優しくしてくれる。
今日は楽しかった。でも一つ気になるのが、
「ゆうりゃんのバカーッ!!!」
と背中に向かって叫ばれたことだった。


終わり
328名無しさんだよもん:2007/06/09(土) 00:08:12 ID:4dDPaRHH0
フラグクラッシャーぶりにわr…泣いた
がんばれ雄二
329名無しさんだよもん:2007/06/10(日) 21:31:45 ID:KVzR+Htn0
これは、いい雄二。

330したいわけ:2007/06/10(日) 22:20:10 ID:uD8CkUCk0
あの桜の舞った日からはや数ヶ月。
俺と愛佳は周りから超ばかっぷるの認定を受けるほどに激甘な日々を送っていた。

雄二には「畜生、裏切りものぉぉぉぉぉぉーーーー」と叫ばれることも珍しくなく、
休日ともなると朝から二人でデートして晩まで、さらにかなりの確立で愛佳が河野家
で「お泊り」をするまでの仲になっていた。

カップルが「お泊り」ともなると当然次に「エッチ」の事に思い至るわけだけど、
むしろそっちが目的なんじゃないかと思うぐらい、愛佳は積極的にベッドで求めて
くる。

そりゃ俺だって健全な高校生男子だから、女の子の扱いが苦手でも人並みに性欲は
持て余してるし、愛佳みたいなかわいい彼女が求めてくれるんならもう精力の続く
限りがんばっちゃうのだが、それにしてもちょっとエロエロ過ぎないか?

そんな疑問が頭から離れなくなってなんとなく愛佳に聞いてみることにした。

初めて書庫でエッチした時からそうだったが、愛佳は感度が良すぎるらしく、今は
俺の腕を枕に気を失って眠っている。栗色の髪から漂ってくるリンスの匂いが少し
汗ばんだ愛佳の匂いと混ざりあって心地よい。

「んにゅ〜」
おかしな寝言と共に愛佳が目を覚ました。少しの間ぼおっとしていたが、俺の顔が
間近にあるのに気がついて瞬間的に真っ赤になった。
331したいわけ 2/4:2007/06/10(日) 22:21:10 ID:uD8CkUCk0
「え…えっとぉ…寝顔見られてた?」
「うん、かわいかったよ」
「!」
ぼひゅ!という擬音が聞こえてきそうな感じでさらに赤みを増した愛佳はバタバタと
暴れだす。
「お、女の子の寝顔をまじまじと見ないでぇ〜〜〜〜」
「まあまあ、落ち着いて……それより、ひとつ質問があるんだけど」
「え?な、なに?」
「いや、最近いつもさ、その…デートの最後にいつもエッチしようって愛佳の方から
 言ってくるじゃない? 何でかなとおもってさ。」
「…エッチな女の子は嫌い?」
愛佳が半べそ状態で俺に聞いてくる。マズイと思って必死にフォロー。
「い、いや、その、俺は嬉しいんだけどさ。その…いつも遠慮がちな愛佳が積極的に
 おねだりしてくるのも珍しいし、ましてや恥ずかしがりの愛佳がエッチのおねだり
 してくるのがすごく不思議って言うか疑問って言うか…」
「なーんだ、その事。」
 そう言いながら愛佳は寝そべったままの俺の胸の上に顎を乗せるようにしてぽふっ
と抱きついてきた。う、おなかのところにふにょん、と心地よい感触が…
「たかあきくん、もてるから心配になるの。」
「は、俺が?」
「…たかあきくんて、やっぱり鈍感。」
「ぐは」
タマ姉にもよく言われるけど、やっぱりそうなのかな…
332したいわけ 3/4:2007/06/10(日) 22:21:59 ID:uD8CkUCk0
「たとえばぁ、この間転校して来た草壁さん。私よりスタイル良くて美人だよ。」
「草壁さんは昔なじみって言うか…」
「由真とも仲良いよね、たまに一緒にゲーセンに行ったりして。」
「いや、由真とは性別を超えたライバルって言うか強敵と書いてともと呼ぶっていうか」
「最近は育乃とも息ぴったりみたいだし。」
「いやいや、喧嘩ばっかりしてるじゃん。反応するポイントが似てるのは認めるけど。」
「それに、このみちゃんとは相変わらずアイスの食べあいっこしたりとか。」
「う、それは…このみは妹みたいなものだし…その、ごめん」
「向坂君のお姉さんとべたべたしてるし…やっぱり胸大きいほうがいいのかな…」
「いや、あれはタマ姉が一方的に抱きついてくるだけだから…それに喜んでない…
 デスョ」
「他にもいろいろ女の子のうわさが…たかあきくんって、女の子苦手だったんだよね
 うふふふふふふふふふ」
な、なんか俺の胸に顔を伏せてるので表情が見えないんだけど、愛佳の顔見るのが
怖い〜
「なあんて、解ってるの、みんなたかあきくんには大事な人で、無碍にはできないって
 こと」
そういって顔を上げるとぺロッと舌を出して笑ってみせる。
「あ、でもでも、浮気は駄目だよ〜」
「しないってば…それで、エッチと何の関係が?」
「うーん、普段はね、たかあきくんは私だけじゃなくて、たかあきくんの大事な人たち
 にも目を向けていて、私もたかあきくん以外にも目を向けているじゃない?」
「うん」
「でもそれは普段生活するうえで必要なことだから、私だけを見てなんて我侭は言え
 ないよね。」
それはそうだ。俺だって愛佳が他の男子を話をしているのを見ても理由も無く止めさせ
たりはできない。それは仕方の無い話だ。
333したいわけ 4/4:2007/06/10(日) 22:23:40 ID:uD8CkUCk0
「でもぉ、エッチしてる間はね…たかあきくんは私のことだけ考えてくれるし、私は
 感じやすいから、たかあきくんとしてるときは頭の中も体もたかあきくんでいっぱい
 になっちゃうの。だからとっても幸せな気分になっちゃうの。」
そういって照れくさそうにえへへと笑う。
「それにね、育乃がねぇ」
「育乃が?」
「「恋愛なんて所詮性欲なんだから、他の女を見ても変な気を起こさないように残らず
 搾り取っておけばいいのよ」だって…」
「……」
育乃の奴、そんなはしたない事を…おにいちゃんは悲しいぞ。
(うるさいわね!それにまだお兄ちゃんじゃないでしょ!:育乃談)
「え〜と、だからぁ…」
見上げる愛佳の瞳がいつの間にか熱を帯びて潤んでいた。あわせて柔らかい体を摺り
寄せてくる。う、あんだけ散々やっておきながらまたナニに力が…
そして、愛佳は甘ったるい声でささやいた。
「まだまだ、もっと、いっぱい愛してくださぁい…」
その言葉が、俺の男としての何か大事なスイッチをONにした。
「う、おおおお……愛佳ぁ!」
「ああん、たかあきくう〜ん」

その後馬鹿みたいにエッチしまくって次の日うっかり寝過ごし、愛佳と二人で黄色い
太陽を見ながら大遅刻で登校したとき、雄二に「うわぁぁん!タカ君もいいんちょも
フケツよぉぉぉぉぉーーー」と泣いて走り去られたのは内緒だ。
334したいわけ の中の人:2007/06/10(日) 22:24:48 ID:uD8CkUCk0
なんとなく思いついてかいてみますた

初SSなんで突っ込みは甘んじて受けます
335名無しさんだよもん:2007/06/10(日) 23:00:16 ID:N7RMj2AZO
さんちゃんと瑠璃ちゃんはー
336名無しさんだよもん:2007/06/10(日) 23:18:53 ID:K1/fWzLY0
今ってageるのが流行りなん?
337名無しさんだよもん:2007/06/11(月) 00:03:11 ID:PWmnlxcJ0
お約束な展開とオチだが甘甘な感じが上手く出て美味しゅう御座いました。
オチでお約束展開を打ち破る何か?があればもっと面白くて良いかもね。
338したいわけ の中の人:2007/06/11(月) 01:12:32 ID:jYd8DhLK0
>>335-336
sage忘れてましたわ。
姫百合姉妹でつか…なんか思いついたらということで。

>>337
オチ何も考えて無かったですわ。
広げた風呂敷畳むのでいっぱいいっぱいでw
339名無しさんだよもん:2007/06/11(月) 01:44:18 ID:vBuL4yv60
いやだからsageようよ。あと郁乃な。
340名無しさんだよもん:2007/06/11(月) 08:00:08 ID:lG25yj38O
はーろ、恋心〜
341したいわけ の中の人:2007/06/12(火) 01:57:04 ID:RCfbDHey0
さんちゃんは無理ぽ(ぉい
とりあえず瑠璃ちゃん主体で書いてみますた
342したいわけ 瑠璃編 1/5:2007/06/12(火) 01:58:14 ID:RCfbDHey0
「た、貴明ぃ〜どないしょ」
ああ、人肌って気持ちいいな…
仰向けの俺の体に乗るように抱きついている瑠璃ちゃんの体の暖かさを感じながら、
そんなことを考えていた。

暫しそんな感慨にふけってから視線を落とすと、いつも一緒に寝るときとは違って
お団子頭のままの瑠璃ちゃんが半べそ状態でこちらを睨んでいた。

さて、ここらで現実逃避は止めにしたほうがよさそうだ。
話しは夕食後に戻るわけだが…




週末は姫百合家で過ごす。それが珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん、イルファさんと決めた
ぎりぎりのラインであった。

珊瑚ちゃんは一緒に暮らそうとかなり食い下がったのだが、さすがに瑠璃ちゃんが
反対したのと、高校生の時分からそれをやっちゃいろいろ駄目だろうという俺からの
必死の説得で週末だけ一緒にすごすということに決まったのだった。
ちなみにイルファさんも、最初は珊瑚ちゃんと一緒に同居を主張していたのだが、瑠璃
ちゃんの「そない言うならイルファはうちとのちゅーは一切禁止や」の一言で、あっさり
瑠璃ちゃんの軍門に下った。

343したいわけ 瑠璃編 2/5:2007/06/12(火) 01:59:06 ID:RCfbDHey0
まあ、そんなこんなで週末は姫百合家で過ごすようになって一月ほどがたっていた。

今日は夕食を食べ終わった頃に研究所からの突然の呼び出しがあり、珊瑚ちゃんと
イルファさんは出かけていった。外はまだ夕焼け空だけど、二人が帰ってくる頃には
真っ暗になっているはずだ。

で、今は瑠璃ちゃんと二人っきりなんだけど…
瑠璃ちゃんは俺から少し間を空けてソファに腰掛けたまま押し黙っている。
今日は…というかここ1週間ぐらい瑠璃ちゃんの様子がおかしい。

そういえば珊瑚ちゃんが出て行くときも、「すぐ帰ってくるから、瑠璃ちゃんと仲
良うして待っとってな〜」と言って出て行ったのに何の反論もしなかったなぁ。
いつもだったら「貴明と二人きりになんてなったら強姦されてまう〜!」ぐらい言われ
るのに……あ、なんかちょっと悲しくなってきた。

あんまりにも沈黙が続いたので、耐え切れなくなって声をかけた。
「あのさ、瑠璃ちゃん…どうかしたの?」
瑠璃ちゃんの肩がぴくっと震えた。そしてうつむいていた顔をあげると、何だか親に
怒られるのを恐れる子供のような表情をしていた。
「俺が相談に乗れることなら聞くけど…」
「……」
またしばらく沈黙が続いたが辛抱強く待った。
「あんな…先週うちが蹴っ飛ばした…その、アレだいじょうぶやったん?」
そういわれて先週の騒ぎを思い出した。

344したいわけ 瑠璃編 3/5:2007/06/12(火) 01:59:50 ID:RCfbDHey0
それはいつもの様に珊瑚ちゃんが俺に抱きつき、それを見た瑠璃ちゃんがやきもちを
焼いて俺を蹴っ飛ばし、イルファさんがそれを宥めるという一連の流れだった。

だが先週はそれがちょっとした弾みで大騒ぎとなってしまった。
瑠璃ちゃんの全体重の乗った勢いのいいとび蹴りが俺の股間にジャストミートして
しまったのである。

かくして、とび蹴りを食らった俺は前のめりに白目をむいて倒れ、事態の深刻さに気が
動転した3人は何とか俺を介抱しようとしたもののどうにもならず、かくして前のめり
の体勢のまま俺は救急車に乗せられることとなった。

幸いにも男としての機能は失うような事態ではなかったようで、1日入院して退院と
相成ったが…そういえば、瑠璃ちゃんの様子がおかしくなったのはアレ以来か。

「うん、今は全然大丈夫だよ。もう痛みもないし…」
今日の朝起きたときも元気にテント設営していたし、機能的にも問題ないだろう。
「ほんとに大丈夫なん?うちに気ぃ使うとらへん?」
「ほんとだって。だから瑠璃ちゃんが気に病むこと無いよ」
「ほんとなん?貴明、うちが気にしてる思って嘘言うとるんちゃう?」
「いや、ほんとに大丈夫だって。機能的にも元通りだし。」
「いや信用出来ひん。……本当かどうか、うちが確かめたる!」
「た、確かめるって?」
「……」
なんか不毛な言い合いの様相を呈してきたとき、突然、瑠璃ちゃんが押し黙ったかと
思うと、とんでもないことを言い出した。
345したいわけ 瑠璃編 4/5:2007/06/12(火) 02:01:03 ID:RCfbDHey0
「う、うちとえちいことしよ」
「へ?」
今考えると相当間抜けな顔をしていたんじゃないかと思うが、瑠璃ちゃんは大真面目
だった。
「ご、誤解せぇへんどいてや。貴明のアレが駄目になっとったらさんちゃんが悲しむ
 さかい………その…うちも困るしゴニョゴニュ」
「え?なんか言った?」
「な、なんでもあらへん! …さっさとベッドに行くで」
何だかよくわからないままにベッドルームに引っ張り込まれると、瑠璃ちゃんはむしゃ
ぶりつく様に俺にべろちゅーをしてきた。
それで火がついた俺は瑠璃ちゃんを脱がしながらベッドに押し倒し…



「現在に至る、と」
「天井に向かってなにゆうとんねん」
あのあと、合計2週間ぶりのえっちにお互い燃え上がりすぎたのか、瑠璃ちゃんが上に
なった状態でお互い達したところで、ナニが抜けない状態になっているのに気づき、
先週とはまるで反対の状態で身動きが取れなくなっていた。
「まさかこんなオチになるとは」
「これどないかならへんのん?うちのあそこが締まったまんまで元にもどらへん〜」
「あー、多分病院に運んでもらって麻酔打ってもらうまでこのままだと思う」
「え゛…もしかしてこの格好のまんま運ばれるん?」
あ、瑠璃ちゃんが固まってる。そりゃ嫌だろうなぁ。
346したいわけ 瑠璃編 5/5:2007/06/12(火) 02:23:38 ID:RCfbDHey0
「そ、そんなんいやや。恥ずかしくてさんちゃんと顔あわせられへん。うち恥ずかしくて
 死んでまう〜」
なんとか抜こうと瑠璃ちゃんが俺のお腹に手を突いて必死で腰を動かすんだが、あ、う、
ちょっと、止めて、あ、気持ちいぃ……う!
「貴明のあほ〜!うちが必死になっとんのに何出しとるん!」
「いや、腰動かされると瑠璃ちゃんの中が気持ちよくて…って、あれ?玄関の開く音
 しなかった?」
「ひ!…さんちゃんたちが帰ってきたんや!」
ああ、珊瑚ちゃんとイルファさんの話し声がする…あ、声がこっちに向かってきた。
そして、ドアノブがゆっくり回って…


気が動転したイルファさんが呼んだ救急車に今度は瑠璃ちゃんと二人で乗ることに
なった。
救急車に乗る前に俺たちの様を見た珊瑚ちゃんはというと、
「瑠璃ちゃん貴明とらぶらぶや〜 でもうちも一緒にえちいことしたかったな〜
 瑠璃ちゃん待ちきれんかったん?」
なんて、いつもどおりの珊瑚ちゃんだった。こっちはタンカに載せられて運ばれるときは
瑠璃ちゃんともども恥ずかしくて死にそうだったのに。

病院に運ばれて、次の日には二人とも無罪放免となった。でもその後また瑠璃ちゃんとは
気まずい1週間を送ることになった…
347したいわけ の中の人:2007/06/12(火) 02:25:55 ID:RCfbDHey0
これでいっぱいいっぱいです。

珊瑚とイルファさんが絡んでの話は今のスキルじゃ無理の無理無理
348名無しさんだよもん:2007/06/12(火) 19:36:28 ID:zaJtjUA9O
>>341-347 GJ!
病院で合体を解除してもらうのか。ちょっとしたニュースになるなw
349名無しさんだよもん:2007/06/12(火) 21:38:28 ID:rWvw0BV20
>>347
GJ!
たしか実際にそんな事件があったよな?
350名無しさんだよもん:2007/06/12(火) 23:13:20 ID:2omm1IT80
俗に言う膣痙攣だな
351名無しさんだよもん:2007/06/12(火) 23:16:56 ID:gfOANLU90
膣痙攣は都市伝説だぞ、おもしろかったからいいけど。
352したいわけ の中の人:2007/06/13(水) 00:17:11 ID:Ab/Y8Tpv0
>>348-351
トンクス

膣痙攣に関してはまったくの都市伝説って話から実際見たって話まで
いろいろあるらしいですが、まあネタとして面白いので使ってみました。

実際、抜けないほど締め付けられてたらたぶん男は痛くてたまらんはず
なので貴明みたいに気持ちよくてしゃせ(ry とはならん筈なのでw

一応郁乃編(←最初の愛佳編で「育乃」って書いてたのに気がついたorz)も
現在製作中です。まとめるのに困ってますが。
353名無しさんだよもん:2007/06/13(水) 20:13:56 ID:RhCauHvMO
エロとか見るの辛いや。キスまでなら全然おk
354名無しさんだよもん:2007/06/13(水) 23:18:18 ID:XZx1ALSE0
漏れはエロでも歓迎。せっかくの18禁板なんだし
355名無しさんだよもん:2007/06/14(木) 12:49:10 ID:DmkZN5meO
やっぱ男はエロいな
356名無しさんだよもん:2007/06/16(土) 10:54:05 ID:22z5NfA30
>>353
18禁板で何言ってんだ
こっちに行きな
http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gal/1139271782/
357したいわけ 郁乃編 1/4:2007/06/16(土) 13:51:12 ID:eXcV2kiQ0
緑が濃くなり始めた頃に車椅子で学園へと通い始めた郁乃も、秋の足音が聞こえてくる
頃には松葉杖も必要無いほどになっていた。

付き合い始めた頃には心配性の愛佳と3人のことが多かったが、今では二人で休日を
過ごすことも多くなり、その度に郁乃が家に泊まっていくことも珍しくなくなっていた。

郁乃は泊まって帰るたびに家で待っていた愛佳に生暖かい視線を送られるのにうんざり
している風だったが、それは仕方が無いんじゃないかと思う。
普通付き合っている男と女がお泊りということはやっぱりエッチしてるだろうというの
は普通に想像するところだし、実際郁乃とはもう何度も体を重ねていたからだ。

しかし、体力の無い郁乃にとってエッチは重労働といって良いので俺のほうからはほと
んど要求したことは無いのだけど、ある時期を境に郁乃のほうからねだって来るように
なった。なぜだろう?

今日も河野家へやって来た郁乃は最近すっかり堂に入ってきた包丁さばきで夕食を披露
してくれた。その後交代で風呂に入り、今は濡れた郁乃の髪をドライヤーで乾かしながら
櫛でといていた。

「はいよ、乾いたぞ。」
「……んー。」
いつものことだが、夜寝る前に髪を乾かしてやっていると、終わる頃にはいつも郁乃の
目は一本線になっている。
「眠いならもう寝るか。」
「ん?……んー」
糸目のままふらりと立ち上がると俺のパジャマのすそをつかむ。それを確認したらリビ
ングの電気を消して部屋へと向かう。
ゆっくり歩いて部屋へ向かうと、ぽてぽてと郁乃も糸目のまま歩いてついてくる。
すっかり慣れたもので階段も危なげなく上り、無事に俺の部屋までたどり着いた。
寝るときはいつも一緒のベッドで寝る。エッチしないときでも一緒に寝たいという郁乃の
希望だからだ。
358したいわけ 郁乃編 2/4:2007/06/16(土) 13:52:20 ID:eXcV2kiQ0
「さてと…先に布団入っちゃえよ電気消すから。」
「んー」
今日はかなり寝ぼけ具合がひどい。もう半分以上寝てるんじゃないか?
今日はエッチは無しだな…と思って電気のスイッチに手をかけながら郁乃が布団に入った
か確認しようと振り向いたら…
「…って、オイ。」
「んー…なによ。」
郁乃はパジャマを脱ぎ捨てて下着に手をかけようとしていた。目は覚めたようだがまだ
半目状態だ。
「なにやってんだ?」
「なにって…えっちの準備よ。山で遭難してるんじゃないんだから、裸になっといて
 暖めあって寝るだけ、なんて訳無いでしょ。」
「いや、そうじゃなくって…眠いんなら無理にエッチしなくても良いだろ?」
「…したいくせに…このむっつり。」
「ぐ…そりゃ俺だって男だから、したいかしたくないかと言われりゃそりゃしたいさ。
 でもお前体力無いだろ。今日みたいに眠そうな顔見て無理強いできるかっての。
 これでもお前の彼氏なんだからな。」
「な…なに恥ずかしいこと言ってんのよ、ばか!」
「大体最近なんでそんなにエッチづいてるんだ?いつもぐったりするまでねだるから
 心配になるんだぞ。」
「う…」
郁乃は言葉に詰まってそのまま俯いて黙り込んでしまった。
「わかったわよ…今日は寝る。」

電気の消えた部屋、ベッドの中で郁乃を柔らかく抱いていた。まだ2人とも眠っては
いない。
しばらくの間は俺の胸に顔をうずめていたが、やがてポツポツと話し始めた。
359したいわけ 郁乃編 3/4:2007/06/16(土) 13:53:14 ID:eXcV2kiQ0
「この間、姉のファッション誌を見てたのよ。」
「うん。」
「そしたらね、特集が「セックスできれいになる」ってやつで。」
「うん…って、おい。」
それは高校生の読んでいいファッション誌なのか?
「好きな人とエッチするとホルモンの分泌が刺激されて肌がきれいになるとか、プロ
 ポーションが良くなるとかそういう話が載ってて。」
「まんまと乗せられたって訳か。」
「そ、それに…胸はもまれるとおおきくなるってよく言うし。」
「いや、それはどうだろう。」
「…なによ、あたしは大きくならないっての?姉は結構あるんだから、妹のあたしにも
 素質はあるはずよ。」
言われて、夏にみんなで海に行ったときの愛佳を思い出した。
白いワンピースの水着を着た愛佳は予想に反して出る所は出ていて、引っ込むべきところ
は引っ込んでいた。結構ぽっちゃりしている印象だったんだけどな…ってあれ、愛佳が
何かすごいいい笑顔で笑ってる…けど目が笑ってないよ…その広辞苑は何ですか愛佳サン
「たかあきっ!」
がつん!
「ぐは!…なんかリアルで痛い。」
「いま姉の裸かなんか思い浮かべてたでしょ。あたしの居る傍でいい度胸じゃない。」
「いや…そんなことは無い。危うく撲殺されるところでしたヨ」
「はぁ?…強く殴りすぎたかしら。まあいいわ。とにかくあたしはいい女になりたかっ
 たのよ。スタイルも良くてきれいな。」
「なんで?」
「……その、貴明にはいつも綺麗なあたしを見ててほしいから…」
なかなかうれしい事いってくれるじゃないか。顔は俺の胸に付けたままなので解らないが
耳が赤くなっているのは暗がりの中でもなんとなく解った。
「それにしたって、だからってエッチしまくったってイキナリ綺麗になれるわけ無い
 だろ。」
そう言って、郁乃の体を抱き寄せると耳元でささやいた。
360したいわけ 郁乃編 4/4:2007/06/16(土) 13:54:29 ID:eXcV2kiQ0
「俺は今の郁乃だって十分かわいくていい女だと思ってるけど。」
そう言ったとたん、ぼわっ、という感じにさらに真っ赤になった。
「っ…だからっ、こっぱずかしい台詞を真顔で言わないでよ…ほんと、天然の女たらし
 よね。」
「それに、未だ成長期なんだから焦る必要なんて無いだろ。」
「うん…」
「でもまあ、もう一つの目的のほうは何とかするとしようか。」
「え?…あ、やん」
布団の中で郁乃の体をくるりと回して後ろから抱きかかえる体勢になるとおもむろに胸を
もみしだきにかかった。パジャマの下にブラはしていないので、郁乃のほのかな胸の
ふくらみがすっぽりと俺の手に収まった。感触がとても気持ちよい。
「このままもんでやるよ」
「や、やだ…あ、やん…ふぅ…」
郁乃の体が跳ねるのを楽しみながら俺は胸をやわやわと揉み続けた…

次の日。
郁乃の胸は1センチほど大きくなった。大きくなったんだけど…

二人で学校への道のりを歩く。でも郁乃は胸を抱えたままそっぽを向いてこちらを見よう
としない。かなり怒ってるなぁ。
「おはよう〜郁乃〜」
丁度バスのタイミングが合ったのか、愛佳が後ろからとことこと走ってくると郁乃の肩を
ぽんと叩いた。と同時に郁乃が飛び上がった。
「ひ!」
「な、ななななな何?!」
「いや、そのね…」
仕方なく俺から訳を話した。調子に乗って一晩中揉んだら郁乃の胸にはくっきり俺の手形
がついてしまい、思いっきり腫れ上がってしまったのだ。
愛佳が強く肩を叩いたので多分腫れた胸に響いて飛び上がったんだろう、と。

その後、昼休みに愛佳に呼び出しを食らった俺は、休み時間いっぱいを使って、女の子の
体が如何にデリケートなのかを懇々と説教された。調子に乗ってごめんなさいorz
361したいわけ の中の人:2007/06/16(土) 14:07:37 ID:eXcV2kiQ0
やっと書けたよママンorz
でもADのリリースを前に郁乃モノ書くのはチョト怖い。
(雑誌類は見てないので内容の情報知らんし)

ちなみに、個人的にToHeart2はエロ有りは普通だろ、と思ってます。
18禁板ということではなくて元々ToHeartがエロゲ発祥なんだから
ToHeart2で18禁PC版が出るのは当然の流れだと思ってたし。

だからXRATED出た事にショック受けるファンが続出したことのほうが
漏れには驚きでした。
まあ、追加のエロシーンに関しては個人的に首をかしげる部分は
いろいろあったけど。
個人的には愛佳ルートの「もっとセッ(ry」の台詞はドン引き。
362名無しさんだよもん:2007/06/16(土) 16:04:39 ID:A7wfs+vn0
>>361

俺は「もっとセックスする!」で笑わずに引くやつがいることに驚いたw

つか、毎回1レス目に状況説明が入るけど、アレ要らないんじゃね?
シチュ書くだけなら作家がどういう脳内設定持ちなのか知る必要もないし
むしろ邪魔になってるとオモ
363名無しさんだよもん:2007/06/16(土) 16:11:35 ID:c7Q6VjWQ0
>>361

キャスト的にエロゲで出せるように揃えたって面子だったしな
「もっとセックスする!」は引きはしなかったけど笑ってエロシーンどころじゃなかった

>>362
> つか、毎回1レス目に〜
そこら辺は人それぞれだと思う
多少状況を説明してくれないと、今回みたく郁乃がデレになってる場合、「郁乃はこんなキャラじゃない」って文句出ることあるだろうし(ていうかあった
俺は別にあってもいい派
364名無しさんだよもん:2007/06/16(土) 16:19:08 ID:HUANfMcj0
>>363
>「郁乃はこんなキャラじゃない」って文句出ることあるだろうし
説明を入れたところでキャラが違うということに変わりはないがな

俺はありともなしとも言わないけど
365したいわけ の中の人:2007/06/16(土) 16:38:24 ID:eXcV2kiQ0
前説については、本当は話の流れで自然に読ませる文章のほうが上手いのは
解ってるんだけど、元々理屈っぽい文章書く性質なもんで未だ無理ってことで
これからの課題でつね…orz

それに改めて読み返したら前説と胸関係の部分を抜いたら由真で読み替え
できる気がしてきた。鬱だ…o rz
366名無しさんだよもん:2007/06/16(土) 16:57:16 ID:A7wfs+vn0
ばっか気にすんなよ
元々理屈っぽい文章書くもなにも、この前のが初SSだったんだろ?
書き始めてから一週間でコレだったら上出来じゃない?
367名無しさんだよもん:2007/06/16(土) 19:00:21 ID:hFin3G1Q0
>365
楽しく読んだ。
これからも どんどん書いてください。
368したいわけ の中の人:2007/06/16(土) 23:26:26 ID:eXcV2kiQ0
>>366-367
アリガトン
とりあえず今のところ次のネタが思いつかないですが
これからも投下させてもらいます。

それと、割と文章は読む方なので、自分で読んでみて読みやすいかどうかは
気にして書いてますけど、何か書き方のセオリーとかに反している部分とか
あれば突っ込んでもらえるとうれしいっす。
369名無しさんだよもん:2007/06/17(日) 11:35:34 ID:gCUkuc0B0
空白行やセリフの入れ方なんかの基本的な技術はきっちり出来てると思うよ。
読み易さだけなら(俺の知る限りでは)SS書きの中でも上位だと思う。
370名無しさんだよもん:2007/06/17(日) 12:42:02 ID:QV3q8pUl0
読みやすさとかはしっかりしてる
敢えて挙げるとすれば、改行後の一段下げとか台詞の終わりの句点くらい?
どっちもSS書くだけなら気にしないでいい範囲だろうけど
特に後者は、最近は省略されることが多い、ってレベルでしかないし

……つーか、マジで一週間やそこらなのか?
それでこのレベルならかなりすごいと思うんだが
371名無しさんだよもん:2007/06/17(日) 14:28:59 ID:esjMnNfZ0
SSは初めてでも他の文章は書いたことあるんじゃないか?
それもかなりの量を
一週間でコレだったら、筆折たくなるわw
372名無しさんだよもん:2007/06/17(日) 18:08:12 ID:bq90CiWh0
SS読んでて「あ〜この人文章うまいな〜」ってのはあんまりないからな
つーかほぼないw
うまさ=読みやすさなら、この人はかなりすごいなあ
373したいわけ の中の人:2007/06/17(日) 22:22:03 ID:Un65ds6Z0
なんかいいお言葉がいただけてちょっとうれしいw

ちなみに普段書いてるのはプログラムなので、せいぜい仕様書かメール
ぐらいしか文書は書きません。

でも文章のテクニックについては本人に向上心があれば身につくものだと
思ってるんで、それよりお話を構成するコツを会得したいです。
これは向上心だけではいかんともしがたいものがあると思うんで。

本はそれなりに読んでるつもりだし、映画とかもどういう点が面白いのかとか
気をつけて見たりとか心がけてるので一応自分なりには勉強してるつもり
ですがなかなか難しい。
もちろんここを含めて他の方のSSも読ませていただいてます。

あまりしつこくレス付けるのもなんなので、ここらへんで。
次は未定ですが何か刺激を受けるネタが出れば書くかもです。
ノシ
374名無しさんだよもん:2007/06/17(日) 22:38:37 ID:sBahVbpCO
じゃあ、貴明がダニエルっちゃう話しとか〜

貴明が、るーこのそばにいるにゃーになって、一緒に生活とか〜

...すまん戯れ事
375名無しさんだよもん:2007/06/18(月) 00:59:24 ID:ZHmmtA2fO
本スレ見てこのみかタマ姉のゲンジマル獣姦モノ読みたくなった


ごめん戯れ言……
376名無しさんだよもん:2007/06/18(月) 10:42:18 ID:MSFGJo+i0
ヒロインが貴明と良い感じになってきたと思ったら、いきなり入院して転校生(優季)と付き合い始めたことに驚愕する話とか。
377名無しさんだよもん:2007/06/18(月) 18:39:43 ID:2N7yfN170
草壁さんに助けてもらっての入院先でいくのんとくっついちゃって、退院した草壁さん驚愕の話とか
378名無しさんだよもん:2007/06/18(月) 21:11:45 ID:FVw9sPjD0
>>376
それ読んだことある気がする

あとゲンジマルの獣姦モノって過去スレで埋め代わりに書いてる人いなかった?
記憶違いだとしたら俺のこの記憶はどこからやってきたんだろう
379名無しさんだよもん:2007/06/18(月) 22:08:48 ID:L9KuPaUQ0
>それ読んだことある気がする

「ToHeart2 SS置き場」の「あなたを、はなさない」でね?
 由真の夢オチだけど。
380名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 01:57:05 ID:ABJf2lXh0
あそこ人を食ったような拍手レスがいらついて見てないな、そういえば
調子のりすぎてて引くわ正直
381名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 03:22:43 ID:VJfKuOdy0
別に拍手レスを読まなけりゃいいだけじゃない?
メニューはフレームで表示してるんだし

あれは拍手送る方もそれを期待してる節があるし
382名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 04:03:14 ID:zr1pKTwL0
拍手のやりとりが一つの名物って感じだよな
正直俺もちょっと引いてるけど
383名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 18:14:17 ID:+Cvicfje0
おまえらの拍手レスが好印象なページが知りたいです
いや,なんとなく
384名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 18:55:02 ID:OhP+LQjt0
あそこの発言はほんとふさげてるな。
だいたい他所のサイトやSSに対する皮肉だとか嫌味だかとかは、
読まなきゃいいっていうものじゃないだろう。
385名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 19:47:15 ID:JByQcBAB0
>他所のサイトやSSに対する皮肉だとか嫌味だかとか
こんなのあった?
386名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 19:56:53 ID:+Cvicfje0
このへんか?

 あと、いわゆる「黒い話」に関してなのですが、自分は「黒い話」そのものが嫌いというわけではないです。
機会があれば自分でも書いてみたいと思いますし。
 ただ、安易に「黒い話」にした挙げ句、安易にご都合主義でまとめられるのは腹が立つというか失笑するとい
うか、そういう感じです。
 例えば、自分が読んだ中に「愛佳END後、愛佳の浮気によって二人は別れてしまった。現在、貴明は郁乃と付
き合っている」という舞台設定のSSがあったのですが、いざ読んでみるとそれほどドロドロすることもなく、最
終的には愛佳と郁乃が「どっちが貴明にふさわしいかこれから競争なんだからねっ」みたいに張り合うという、
ほのぼのオチでまとめられていて、盛大にお茶を吹き出したことがあります。どうしてか世間的には「黒い話」
として認識されているようですが、これは自分にとってギャグです(笑)
 まあ、早い話が、やるんだったらとことんやってくれよ、と。ご都合主義でしかまとめられないなら、最初か
らダーク系に手を出すないほうが賢いとは思いますね。
 三角関係ものはテンプレが確立されているので、初見でインパクトを与えるのは容易いですが、しっかりと書
ききるためには相応の力量が必要だと思います。
 サッカーで簡単なシュートが決められないのに難しいシュートが決められるはずがないのと同様、普通の面白
い話を書けないのにキャラ同士の感情がぶつかり合うような話は書けないということですね。
387名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 19:59:53 ID:+Cvicfje0
 これまた奇遇ですね。俺がお前で、お前が俺で。
 この「黒い話」に関しては、かつて自分の書いた愛佳SSを読んだ読者さんが「これが某
所で有名な黒愛佳ってやつですね!」というコメントをくださったことがありまして、
「そんなの聞いたことねえけど有名なのか?」と思いぐぐってみたら、黒愛佳なるジャン
ルにカテゴライズされていると思われるSSが出てきたので読んだという経緯があります。
これが黒愛佳か〜なるほど〜って感じでした(笑)
 あと、貴明たちの大学生活というネタは練り込んだら面白くなりそうだな、というのが
同時に抱いた感想です。
388名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 20:07:07 ID:g8eSpUp10
>サッカーで簡単なシュートが決められないのに難しいシュートが決められるはずがない

それが世の中には、簡単なシュートは外すのに、難しいシュートは決める選手もいるんですよ。
389名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 20:24:26 ID:JByQcBAB0
これ皮肉や嫌味じゃなくて真っ向否定じゃねえかよwwwww
とても久しぶりです。桜の群像の続きです
実時間はとても空きましたが、内容は19話の直後からですので、
読んでいただけるなら先に19話のラスト10行くらいを見ていただけると助かります
では。

「い、痛い、です」
思いきり抱きしめられて、玲於奈が悲鳴をあげた。

「ご、ごめんっ!」
慌てて手を放す雄二。
感情に任せた行為を反省しつつ、腕と胸に残る感触が名残惜しい。
「あっ、べ、別に離して欲しいとは言ってませんわ」
玲於奈は玲於奈で、そんな事を言い出した。
「じゃ、じゃあ、さ、やり直し……」
「……はい……」

再度、玲於奈の肩に手を伸ばす雄二、その胸元で頷く玲於奈。
少女の手は、赤子のように自分の胸元に縮こまる。
「こ、こう、か?」
今度は、そっと抱き寄せる。
玲於奈も、さっきよりも力を抜いて、雄二の手には少女の背中の柔らかさ。
抱き合うというより、寄り添うような二人。
「こんな感じか? けど……できれば……」
「ありがとうございます……でも……その……」
「もうちょっと、力入れたいんだが」
「ちょっと、物足りないかも……」
雄二の言いたい事は、玲於奈の感想と一致した。

3回目。
先程と同じくらいにそっと抱き寄せてから、きゅっ、と力を込める。
「あ……」
玲於奈の口から、微かに吐息が漏れる。
体の前で握った手に、力が入る。
「っ」
拳が胸に刺さったらしい。雄二が、少しだけ顔をしかめた。

「あっ、すみません」
玲於奈は手を下に降ろす。
空いたスペースを、より深く抱きしめることで埋める雄二。
ぺたっと、体同士が密着する。

どくん、どくん。
心臓が、壊れそうな音を立てている。
それは二人とも同じ、なのだが。
「どきどき、してますね」
身長差の関係で、雄二が一方的に鼓動を聞かれることになった。
「〜っ!」
無邪気な指摘に羞恥心を掻き立てられ、雄二は体を離す。
「あ……」
寂しそうな声を漏らす玲於奈。
二人の体は、20cmほどの隙間を空けて止まる。
雄二の手は、玲於奈の背中にかかったまま。
「……」
やがて、少女の細い手も、おずおずと雄二の背中に回る。
顔は下に向けたまま、離さないで、の意思表示。
雄二は、再び玲於奈を抱き寄せる。
玲於奈も更に半歩踏み出して、膝と膝が触れ合う。
「そっちだって、真っ赤じゃねえか」
雄二は、えらく間延びした反論と共に、少女のうなじに触れる。
「んっ」
ぴくっと反応して顔を上げる玲於奈。
ようやく、視線が出会った。
「「……」」
見つめ合う二人。その瞳が、互いに吸い寄せられるように近づいて……

不意打ちで、1限終了のチャイムが鳴った。

「!!」
飛び離れる。
「つ、次の授業には出席しないといけませんわよね」
「そ、そっちは職員室に挨拶だろ?」
あはは、と白々しく笑って、
「……」
二人ともちょっと黙る。離れたとて二歩の距離。
なんとなく周囲を見回して、ちらっと窺った視線がまた出会う。
「そ、それではまた後ほど」
首を振って、校舎に戻ろうとする玲於奈。
「あ、玲於奈」
「は、はいっ!?」
「いや、上靴」
「あっ」
そこでようやく、玲於奈は自分が靴下のままであることに気がついた。
屋上の床に転がったままの上履きを、屈んで拾う。
片方ずつ足の埃を払おうとして、ちょっとよろける少女。
「っとっ」
「おっと」
雄二が手を伸ばして支えた。
「あ、ありがとうございます」
玲於奈はまた顔を赤らめつつも、素直に雄二につかまって靴を履く。
「こんなに汚れて、はしたない」
「今更だろ?」
校門飛び越えたりしておいて、とは言わなかったが。
「それは、そうですけど」
玲於奈にも自覚はあるようで。
「……ふふっ」
「ははっ」
意味もないのに、二人で笑った。

「貴明、メシ食わねーの?」
「愛佳待ち」
「ああ、なんかばたばた出てったっけ?」
「雄二は?」
「あ、いや、俺はちょっと……」
昼休み早々。
「こ、向坂くんっ! 大変大変!」
男二人がだべっていると、愛佳が血相を変えてやってきた。

「俺? なんだ?」
「きょ、今日、ウチに転校生が来るって聞いてたんですけどっ」
「そうなの?」
これは貴明。
「そうなのっ。それで、その転校生って、さっきの休み時間に見かけて、びっくりして先生に確認しに行ったんだけどっ、ぷはぅ」
一気に喋って、最後のは息継ぎ。
「その、玲於奈さん。転校してきたんです。だって。A組に」
文法めちゃくちゃ。
「ええっ?」
これも貴明。
「……ってことは、また三人で?」
言葉尻に、微妙に嫌そうな雰囲気が混じるのは、いかんともしがたい。
「ううん。一人だけだって。その辺、不思議なんだけど」
愛佳は貴明に答えた後、力みを入れて雄二に向き直る。
「とにかく、向坂くんっ」
「知ってる」
「へ?」
雄二はあっさり答えて席を立つ。
出口に歩いたその先に、赤毛の少女が待っていた。二人並んで廊下を去る。
「え? え? え〜っ!?」
その光景に、愛佳は振り上げた拳を頭上で彷徨わせた。
395名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 21:57:21 ID:luJiF2Ft0
私怨

月末の日曜日。お昼過ぎ。
駅。
キーッッッ……。
「す、すみません降りますっ!」
電車が停まると、玲於奈はホームに駆け下りた。
「……により、列車遅れまして大変ご迷惑をおかけしております……」
あまり誠意のないアナウンスが流れる中、疲れた人波をかき分けて出口を目指す。
遅延証明書を配っている駅員を無視して駅構内を覗うと。
きょろきょろ。
改札の向こうで、雄二が少女の姿を探していた。
「雄二さんっ! ごめんなさい遅れてっ……きゃっ!」
少年の姿を見つけるなり走り出した玲於奈は、切符を入れ忘れて自動改札機に引っ掛かる。
「そ、そんな大声出す……ぷっ、ははっ」
距離のある所から声を掛けられて照れかけた雄二は、少女の失態に吹き出す。
「……んもう」
玲於奈は、指摘された事と笑われた事の両方に赤面しながら、トコトコと雄二の下にやって来た。

「遅れて、すみませんでした」
「いやいや、お疲れさん。災難だったな」
ひょこっと頭を下げる。雄二が慌てて手を振る。
「事故があったって聞いたから、心配したぜ」
「踏切で停まってしまって、1時間ほど缶詰に。こういう時、携帯電話があれば良いのですけれど」
「あー、俺も家出てたから無理だわ、それは」
「そうですか? じゃあ随分お待ちになったのでは?」
「あ、いや、えーっと……余裕見て早めに出ただけだ。そっちこそ、事故なかったら早過ぎる電車じゃねえ?」
「そうなんですけど、その、えーっと……余裕を見て早めに出たのです」
「真似すんなっての」
「ふふっ」
気が急いて1時間先に着いた雄二と、1時間先に着く電車に乗って1時間遅刻した玲於奈。
顔を見合わせて笑った、今日が初めてのデート。
「途中の駅から混雑が酷くて……後ろ、おかしくないか見ていただけません?」
服装の乱れを気にする玲於奈。
初夏に二人で行ったライブの時と同じ水色のワンピース−お気に入りらしい−に、
今日は半袖の上着を合わせて袖からすらりと伸びる腕、裾から覗く白いふくらはぎ。
「いや、大丈夫……似合ってるぜ」
上から下まで、少女の姿を眺めた雄二の目は、いやらしいって程でもなかったが。
「あ……あまり見ないでください」
さっきと矛盾した発言で、玲於奈が頬を染めた。

「腹減ったよな。先に昼飯食うか?」
「そうですね、でも、時間が……雄二さんは夕方からコンサートでしょう?」
実は今日も、緒方理奈のライブがある。
雄二は、頼まれて玲於奈の分のチケットも確保していたが、転校前後の色々で処分してしまっていた。
「ああ、それはいいんだ。チケット売っちまったから」
「えっ?」
「俺の早とちりでお前が行けなくなったのに、俺だけってわけにゃいかねーよ」
「そんなこと……」
玲於奈の顔に陰が落ちる。
雄二は発言を後悔したが、仕方ないので話を動かす。
「あ、それで晩飯さ、ツインビルの片割れ、最上階にレストランが入っただろ? 実は予約してっから」
「あそこ、なんだか高そうな、値段がですよ、お店でしたけど……」
「金が入ったから、今回は俺の奢りで」
「ええっと……」
玲於奈の反応は、これもあまり良くなかった。
「気にすんな。今度だけだって」
二度目のフォロー。
「基本的には、俺もピーピーしてるしな」
「私もです」
その言葉に、ようやく笑顔が戻る少女。
「そうですね。今回はご厚意に甘えます。でも、無理なさらないでください」
少し真面目な顔になって、玲於奈はこう付け加えた。
「私の為に、雄二さんに何も犠牲にして欲しくはないのですから」

夕のことは、夕の事として。
「とりあえず、昼だな」
「デパートの中に飲食店街、ありましたよね」
並んで歩く。二人の間は半歩の距離。
「……どうした?」
「雄二さんこそ」
「いや、もっと緊張するかと思ったんだが」
「あ、やっぱり」
意外なくらいに自然な感覚。
思い返せば、二人並んで歩いた回数も少なくない。
「いつもと違わねえと言えば、違わねえか」
「……」
その言葉に、玲於奈は何やら考えて。
すっ。
「!」
そーっと、手を繋いだ。

「……その、少しは緊張してみようかと」
顔を赤くして、斜め下から雄二を見上げる。
「……」
雄二は、空いている手で頬をぽりぽり掻いた。
そのまま10メートル、前進。
「……緊張、してるか?」
「ええっと」
雄二に訪ねられた玲於奈。
「ドキドキは、してるんですけど」
繋いだ手を確かめるように前後に小さく振る。

「どちらかというと、安心します」
そう言って、半歩の距離をもう半分詰めた。
「あ…」
駅前のデパート。ランチの場所を探す途上、玲於奈が小さく声を挙げた。
「なんだ?」
「いえ、なんでも……」
「あれか?」
雄二が指さしたのはフロアの一角を占めるファンシーショップ。
の、一角を占める動物ぬいぐるみ群。
「!」
玲於奈は考えてる事がわかりやすい、と、雄二は思う。
「どれどれ、お前はどんなのが好みなんだ?」
雄二はにやにや笑いつつ。
「雄二さんは笑い方がいやらしいですわ」
玲於奈は口を尖らせつつ、二人してお店に足を踏み入れる。
「いっぱいあるなぁ」
棚にぎっしりと並んだ可愛らしいぬいぐるみ。
姉の性格もあり、滅多にこういう光景は見ない雄二は、物珍しそう。
「うわぁ……」
玲於奈が熱心に見つめているのは、イルカとかペンギンとか、水棲動物類。
「これ、雄二さんに似てません?」
ペンギン。
「似てねーよ」
「ほら、その顔」
玲於奈は、不本意そうに唇を歪めた雄二を指して笑うと、
陳列棚からぬいぐるみを取り出して、仏頂面の横で揺らして見せた。
「……戻せって」
不格好なペンギンを手で押し返す雄二。
玲於奈は素直に手を引っ込めたが、棚には戻さず腕にペンギンを抱いて見下ろす。
それを見て雄二。
「ホントに、わかりやすいなお前」
「どういう意味ですか?」
「いや、あー、なんだ。水族館にでも、行くか?」
「……はい。」

『館内補修のため休館中』

「う、気づかなかった」
「私も、全然知りませんでした」
微妙に世間の動向に疎い二人は、休館中の水族館を前に顔を見合わせた。
「やれやれ。思いつきで行動するもんじゃねえな。悪かった」
頭を掻いて雄二はバツが悪そう。
「いえ、私も同じですから」
ペンギンのぬいぐるみを腕に抱いて首を振る玲於奈。
  ↑
けっきょく雄二が買ってプレゼントした。
かさばるのでコインロッカーに預ける事を雄二は勧めたが、玲於奈は手放すのを嫌がった。
閑話休題
  ↓
「人が少ないから、変だとは思ったんだがな」
休日なのに、バス停からこっち閑古鳥。
この辺りは、水族館以外にあまり見所がない。

「そういえば、以前に来た時はたくさん……その、恋人らしき二人連れが」
思い出して赤面。
二人が前に此処を訪れたのは、一学期の話になる。
当時は恋人でもなんでもなかった二人は、溢れかえるカップルの群れに圧倒されたものだが。

ひょい。
玲於奈は雄二の手を取って。
「デートスポット二人占め、ですかね?」
くるりと三百六十度、人工衛星のように雄二の周囲を回る。
「のわっ」
手を引っ張られて、雄二もぐるっと一回転。
流れる背景のなかで、少女の姿だけが鮮やかだった。

「こりゃまた、凄い人だな」
多少風情があっても、休館中の水族館で半日過ごすほど二人は枯れてない。
二人は当初の予定であった遊園地に移動していた、が。

園内、芋洗い。
「きゃ、とっ、ゆ、雄二さん?」
「危ないって」
すれ違った集団に流されそうになった玲於奈を、雄二が引き戻した。
「すみません」
横に並んで雄二の手を握り直す玲於奈。
手を繋いでいても、玲於奈が左腕にぬいぐるみを抱えているので幅を取る。

「もっとこっち寄れよ♪」
「うん♪」
これは、前を行くカップルの会話。べったり腕を組んで寄り添っている。

「……」
目の前で手本を見せつけられた新米カップル。
「……わ、私たちも、やってみましょうか?」
そんな事聞かれても。
雄二が固まっている間にも、玲於奈は繋いでいた右手を離す。
そーっと、おそるおそる。
絡む腕と腕。
その感触に、雄二はシャツが長袖な事を少し後悔した。
いっぽう玲於奈は、腕を巻き付けたせいで離れた右手のやり場に困ってか、
雄二の腕を巻き込んで両手でペンギンを抱く格好。

ふに。
「っ!」
突然、雄二がびくっとして体を離した。
402名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 22:11:32 ID:2YigC8oq0
深淵
「どうしたんですの? 急に」
少し憮然とした表情の玲於奈。
「いや、ちょっと、その」
鼻の頭を指で掻く雄二。頬が赤い。
「暑いですか? もしかして、お嫌でした?」
「そ、そんな事はねえよ。ただ、あの……」
「?」
小首を傾げる玲於奈。
雄二は、何か言い掛けて、また逡巡して目を泳がせる。
「んもう、行きますよ」
業を煮やしたか、玲於奈はがばっと雄二の腕を取ってぎゅっと抱いた。

むにっ。
いわゆるひとつの、胸が腕に当たるのだ。今度は、玲於奈も気づいた。
「〜〜〜っ!」
もとから赤かった顔が、さらに茹で上がって。
玲於奈は、さっきの雄二の比ではない勢いでばばっと飛び離れて、
勢い余ってペンギンを落っことしそうになって慌てて拾い上げて、
バランスを崩して人混みに突っ込みかけて再び雄二の手に回収された。
「す、すみません」
小さくなった玲於奈、雄二の隣に戻って。
さて、どうしよう。
「その……別に……嫌というわけでは……誤解なさらないで……ただ、あの……」
ひょい。
雄二は、玲於奈の手を取った。
「じゃ、行くか」
「……はい……」

三歩進む。
止まる。
「ど、どうしました?」
「えーっと、何処から回ろうか?」

がこん。がこん。
「け、けっこう揺れますね、これ」
雄二の向かいで、玲於奈が座り直した。

@観覧車。

来て最初に乗るような物でもない気もするが、
他の乗り物系が大行列な中、比較的空いていた。
「もっと並ぶかと思いました」
「もう少しすると……夕方くらいから、一気に混むみたいだぜ」
貴明情報。
「人と逆に回った方が、色々見られるだろ」
「ここから夕焼けというのは、確かに魅力的かも知れませんけれど」
窓の外に目をやる二人。街が一望。

「お、うちの学校」
雄二が指さす。
「本当、こんな遠くからでも見えるなんて」
玲於奈が感心する。
「山の上だからなあ」
「毎日、あの坂を登っているのですね、私たち」
目を細めた玲於奈が、視線の方向を変える。
「九条院は……あっちの方でしょうか……」
此処からはバスで3時間。いくらなんでも視線は通らない。
「薫子達とは……」
「取ってますよ、連絡。二人とも元気です」
「そうか、そりゃ良かった」
「はい」

「あ、でも九条院はたぶんこっちだぞ」
全然、逆方向だった。

がっこんっ。
「え?」
「停まった?」
二人を乗せたゴンドラが、ほぼ昇りきったあたり。
突然、壁にぶつかったようにひと揺れすると、そのまま停止してしまった。
「一番上に来ると、少し停まるとか?」
「ゴンドラは俺達のだけじゃないんだぜ」

数十秒後。
『只今、電気系統の故障により、運転を一時停止しております……』
ゴンドラ内にアナウンス。
「なんだか、今日はこんなのばかりですね」
「最初に乗ったの、失敗だったかなあ」
「そんなことはありませんわ」

数分後。
「……なげーな」
「さっきよりも、揺れているような気がします」
風が強くなってきたようだ。
玲於奈は窓の外を気にしながら、体の前で指をいじっている。
「なんのトラブルなんだか」
雄二も落ち着かない。携帯電話を持っていない二人には、外の情報を得る手段がない。

十数分後。
ゴンドラは動かない。
『……お客様には、大変ご迷惑をおかけしております……』
「……トイレは、大丈夫か?」
「……大丈夫です」
流石に会話も途切れる。
ひゅーひゅーと、風が抜ける音だけがする。
更に数分。
「……」
押し黙って、指で糸車を回している玲於奈。
「えーっと……」
飽きたのかと話題を探す雄二。だが、玲於奈は別な事を考えていた。
「……あ、あのっ」
ちょっと上擦った声で話しかける。
「あ、ああ?」
「その……そちらへ行っても、いいですか?」

「あ、ああ」
「良かった」
雄二の返事にホッとしたように微笑んで立ち上がる。
ぐらり。
「どわっ、揺らすなっ」
「わ、わざとではありませんっ、ととっ、と」
たたらを踏みながら、雄二と同じ側のベンチに腰掛ける。
「……傾きますね」
「そりゃまあ、重心がこっちに来るからな」
「重心……」
玲於奈は再び、今度は揺らさないようにそうっと立ち上がり、
さっきまで自分が座っていた席に、持っていたぬいぐるみを置いて戻ってくる。
「……変わらないだろ、それは」
「冗談です」
言って玲於奈は、さっきよりも僅かに雄二の近くに座った。

風に揺られるゴンドラ。
「半袖、寒くないか?」
「大丈夫です。……けど……」
そっと手を重ねる二人。
仲間はずれにされたペンギンが、不本意そうに二人を見ていた。
「……お客さん、お客さん」
乗降場の係員が、雄二を揺り起こす。
「あ、あれ? 着いてる?」
「大変、ご迷惑をお掛けしました」
頭を下げる係員の顔に、含み笑い。
原因は。
「……ほれ、起きろ」
「ん……ふにゃ……」
雄二の肩で眠る少女。
というか、二人寄り添った寝顔が微笑ましかったのだろう。

結局、観覧車の復旧には4時間ほどかかった。
怪我人こそなかったものの、夜のニュースででも流れそうな事故である。
雄二と玲於奈は、狭いゴンドラの中で並んで座りながら、
時間に連れて変化する街並み−けっきょく夕焼けも見られた−を眺めたり、
ひと月ほどの、玲於奈が九条院に戻っている間の互いの話などしていたが、
窓の外が夕から夜に変わろうという頃に、待ち疲れて眠ってしまった。

「すみません、すっかり寝入ってしまいまして」
「俺も爆睡してたぜ。今起きたとこ」
そんな会話を交わしながら、玲於奈がペンギンを回収する。
ちなみに故障待ちの間、彼−性別不詳だが−は、あっちとこっちの座席を三往復。

お詫びの一日優待券を貰って観覧車から出ると、周囲はすっかり暗くなっていた。
怒ったり疲れたりしている周囲の客や、粘っていた野次馬に混じって出口に歩く。

「んーっ」
大きく伸びをした玲於奈。
「あ、あのお姉ちゃん、ほっぺにリンゴついてる」
「菜々子、指ささないの」
すれ違った女の子の指摘に、寝跡のついた頬を隠した。

ツインビル北側。最上階。
「申し訳ございませんが、今からですと1時間待ちになります」
雄二が目をつけていたレストラン。予約はキャンセルされていた。
予定に1時間遅れてはやむを得ないが、満席になるあたりは結構な人気のようだ。
「どうする?」
「ええと、ちょっと遅くなりすぎますね」
門限にはかなり融通が利くらしい玲於奈も、さすがに首を振る。
チン。
エレベータがやってきた。
「電車の時間までは、暫くあるんですけれど」
「そっか、ヤックででも暇つぶすか?」
「ええ……、あ、そうだ」
1階のボタンに手を伸ばしかけた玲於奈が、はたと手を打つ。
「この辺に美味しい屋台のラーメン屋さんがあると、お姉様が」

「ニンニクラーメン、チャーシュー抜き」
「肉、嫌いなんですの?」
「いや、なんとなく昔のアニメを思い出してな。お前は? フカヒレチャーシュー大盛りとか?」
「いえ、私もニンニクラーメン……ニンニク抜きで」
「それって、普通のラーメンじゃねえか?」

とりあえず。ラーメンは美味しかった。
「今日は、色々ありましたね」
屋台を出て玲於奈。
「本当にな。なにやっても上手くいかなくて、悪かったなぁ」
ばつの悪そうな雄二。
「雄二さんが責任を感じるような事は、何もありませんわ」
「そう言ってくれると嬉しいけどさ、せっかくの初デートなのに散々だったなって」
その言葉に、玲於奈の表情が曇った。
「散々、でしたか?」
409名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 22:26:48 ID:2YigC8oq0
之繞
「え?」
「私は、トラブルはありましたけど、今日は一日、とても楽しかったのですが」
玲於奈は、思い返すように夜空を見上げて、
「……雄二さんは、楽しくなかったですか?」
ちょっと聞きづらそうに尋ねた。
「……」
聞かれた雄二は、きょとん、とした顔になる。
不安そうに様子を窺う玲於奈。
「……楽しかった、な」
失敗したという気持ちが先にたって、玲於奈に謝る事ばかり考えていたが、
思い返せばデートの間中、心は穏やかだった。
「ふふっ、良かった」
その返答と雄二の表情に、玲於奈は今日一番の笑顔を見せる。
「私だけ楽しんでいたのなら、どうしようって、思いましたよ」
「俺は逆に、お前が楽しめなかったんじゃないかって……」
ぴた。
玲於奈が、人差し指を雄二の口元に当てて制止する。
「その心配なら、今後は無用ですわ」
下から覗き込むように見上げる少女。
「雄二さんと一緒なら、私はそれだけで幸せだって、今日、判りましたから」

「……玲於奈」
なんとも言えない表情で少女を見下ろす雄二。
その身体が、ふいに緊張する。
玲於奈が臆せず正面に回り込んだので、二人の間は水平距離で15cm。
「あ……」
その近さに、玲於奈も気づいた。紅潮するほっぺ。でも、逃げない。
周囲に人影、なし。

いいか、とは、雄二は聞かなかった。
玲於奈は、目を閉じなかった。
ただ、二人の瞳が近づいて、やがて、唇が重なった。
キスは、非常にシンプルなもの。
お互い息を止めて、唇を押しつけるだけ。
それでも、若い二人には十分刺激的だったようで。
「ぷはっ」
「はふぅ……」
息が続かなくなって顔を離した後、視線が合わせられない雄二。
少し背伸びした体勢のまま、ぼうっと棒立ちの玲於奈。
その手から、ぬいぐるみがこぼれ落ちる。
「あ」
「とっ」
まだぼんやりしたまま、それを拾い上げようとした玲於奈の手に、慌てて伸ばした雄二の手が触れた。
「きゃっ」
「うわっ、とっ、ほれ」
宙を舞ったペンギン君を、雄二が器用にキャッチして、玲於奈に手渡した。
「あ、ありがとうございます」
玲於奈は受け取ったぬいぐるみを胸に抱きしめて、上目遣いに雄二をちらり、と見て。
「あ、あはははは、よ、良く、わかんなかったです」
また視線を下に向けて、目一杯はにかむ。

そんな玲於奈に、雄二は胸の鼓動が収まらない。
「お、俺も、なんだか真っ白になっちまった」
はは、と笑う、口の中はカラカラ。
「だからその……」
背を屈めて、玲於奈に顔を近寄せる。
「あ……」
身を縮こめる玲於奈。
「できればもっぺん……」
近寄る雄二の唇に。

むぎゅ。

押しつけられたのは、ペンギンのクチバシだった。

駅。
改札口の手前で、玲於奈が雄二を留めた。
「ここで、結構ですわ」
「家まで送るって」
「心配いただくのは、嬉しいんですけど」
本当に嬉しそうな玲於奈。
「そこまで一緒にいたら、家に入りたくなくなりますから」
門の前でいちゃいちゃしてたら、そりゃまずかろう。

「……気をつけてな」
「はい」
答えて改札口を通った玲於奈だが。
「あ、ようやくわかりました」
ふと、そんな事を言って振り返る。
「なんだ? 忘れ物か?」
「ええっと」
邪魔なので改札の脇へ、腰壁を挟んで会話。
「さっきから、何の味がしただろうって、考えていたんですけど」
「何がだよ」
問いには答えず玲於奈。
「ニンニクの味、でしたね」
悪戯っぽく笑って、ちょろっと舌を出す。
何のことかと一瞬考えて、キスの事だと思い当たった雄二。
「……」
5秒絶句。
「そこまで考えなかったな」
悪い、と謝りかけて先程の玲於奈の言葉を思い出し撤回。
「……次は、レモンの飴でも舐めてからにするか」
「……はい」
切り返しに、今度は玲於奈が頬を染めて、それでも小さく、俯くように頷いた。

間もなく電車がやってきて、二人は手を振って別れた。

「……ふう」
7人がけのシートに座って、玲於奈はほっと息を吐く。
発車まで少々お待ち下さいの時間、今日の事を反芻する。

寂しいような、まだ夢の中にいるような。
腕の中の、ペンギンのぬいぐるみを見つめる。
「やっぱり、似てますよね」
ひとり言。
「……」
ちらっと周囲を窺う玲於奈。
誰も、他人の事など気にしていない車内。

そそーっ。
少女は、そっとぬいぐるみを持ち上げて。

つん、とクチバシに口づけた。

「……」
いっときペンギンの顔を見つめて、膝に戻す。
(あはは、ダメ、馬鹿ですね、わたし)
心の中で呟く。
と、視界の端によぎるもの。
「!」
駅舎の窓から、雄二がまだ見送っていた。
ばっちり出会う視線。

玲於奈の顔は、みるみる紅潮したが。
少年も、少女に負けずに赤かった。
414名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 22:39:23 ID:VF8b5gtv0
以上です。支援ありがとうございました。

ニンニクラーメンはエヴァから。ダメ馬鹿わたしは水夏から借用。
ペンギンは別にペンペンってわけでもないです。良い動物キャラが思いつかなかった。

随分前の話になってしまいますが前回のお詫び。
第19話の玲於奈の告白の部分で、「雄二さん」が「雄二様」になっていました。
効果を狙ったわけじゃなくて、単純ミスです。なんっつーとこで間違えるか漏れは…

ところで、毎回ボキャ貧を嘆きながらネットで言葉調べたりしてるのですが
今回特に困ったのが赤面の表現でした。どんなのがありますかね?
415名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 22:49:50 ID:+Cvicfje0
>>414


>今回特に困ったのが赤面の表現でした。どんなのがありますかね?

古典的だが,直接描写せずに風景に仮託するとか・・・いくらでも手はあるよ
クサい表現とか極度に嫌う人もいるが,その辺は好みの範疇と思うので,
思うように書けばよろしいのではないかと・・・
416名無しさんだよもん:2007/06/19(火) 22:55:03 ID:VJfKuOdy0
>>414
乙。初々しくていい感じ


赤面っつーと、「顔を赤くする」「耳まで真っ赤に染まる」「頬に朱が差した」「紅潮する」
「顔に血が集まる」「ゆであがる」「のぼせあがる」「熱を宿した顔」ってとこ?
探せばもうちょいありそう。熱と絡めるといいかもしれない
「くらくらする」とか「頭が真っ白になる」とかってのも意味合いは違うけど、似たような感じ?
単純に赤面する表現だけで考えるより、「俯いてもじもじと手を擦り合わせる」とか「ぷい、とそっぽを向いた」とかっていう仕草も使うといいかも

以上、ネットの片隅で小説を書くモノカキの戯言でした
417名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 01:25:02 ID:FMpcVp4W0
私立桜花高校閉鎖\(^o^)/
見れなくなるかもしれないから保存したいやつは今のうちにやっとけー

あ?俺?ここのSSつまんねーから読んでねーわサーセンwwwwwwwwww
418名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 01:28:29 ID:PDZnsFfF0
ほっとけほっとけ。
消えるんなら俺らには関係ないだろ。
419名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 01:42:55 ID:FMpcVp4W0
つーかマジで痛い作家のテンプレみたいな捨て台詞だな
俺こういうのがデフォってイメージあるせいで、サイト持ちSS作家にいい印象ないんだよな

>>414
って乙
読んでたんだけどコメ残してなかった
ADにゃ玲於奈たち出ないっぽいし、すげー貴重なSSだと思う
続きもがんばってくだせー
420名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 10:26:24 ID:W0mgYtCh0
サイト持つと、どんどん自分のイメージでキャラ構築してったり、傲慢になってくからな
最新作読んでみたけど、ネタのために完全に別キャラになってるからな
最近ここで叩かれてるFSMさんの言葉借りるなら、東鳩2でやる必要ない話だし

つーか、叩かれるのが怖いなら、SSなんて書かない方がいい
いい気持ちに浸りたいってのはわかるけど、評価は必ずしもプラスではないんだし
プロでも叩かれることあるのに、アマの作品が叩かれないはずないじゃん
二次創作なんて、原作好きが読むものなんだから、原作無視してたら当然
421名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 12:43:21 ID:lHFETseu0
読んでないSSさいとの更新チェックしてる事に驚いたぜw
422名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 14:21:20 ID:5aHUv37V0
TH2でやる意味なんて、どっかの作家が言ってたけど
TH2が好きだってだけで十分なんじゃねーの?
423名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 15:09:39 ID:nhLmU5w20
それだけでいいと思うよ。
作家も何言われたってほっときゃいいのにな。適当に俺はTH2が好きなだけですーとか返してさ。
むしろそれができないくらい後ろめたさを感じてるやつがいることに驚く。
424名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 16:07:36 ID:I7dAjCnj0
別にいいんじゃないの? SS書く理由なんて人それぞれだし。
ただ、あんなに何十本もSS書いて、それを楽しんで読んでいた人だって少なくない
数がいたんでしょうに、勿体無いなぁ、とは思いますが。
425名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 18:20:53 ID:nDNea25a0
これからどうするんだろうね
鬱日記でも書くのか?
426名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 20:40:42 ID:XGkkRk2b0
『東鳩2でやる意味ない』なんて、なんでそんなこと簡単に言えるんだろうな。
正しい東鳩2像だって人それぞれの筈なのに、なんで自分の像が正しくて、人の像は意味がないみたいなことを
こんなに簡単に言う奴が多いんだろうね。
427414:2007/06/20(水) 21:02:58 ID:eQvrLEQq0
>415-416
どもです。参考にします。どうせなら書く前に聞けば良かったですねw

キャラのイメージですか。違うって言われれば考えるから参考にはなるけど、
けっきょくは原作読み返したら後は自分のイメージで好きなように書くしかないかなと

逆に玲於奈あたりは、原作にキャラを印象づけるような場面が非常に少ないので、
半分オリキャラみたいな気持ちで。AD前のミルシルもそんな感じなんですかね
428名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 21:11:18 ID:33+kmNYZ0
>>426
>東鳩2でやる意味ない
これは「正しい東鳩2像じゃない」っていうことじゃなしに、
配役いじれば別の作品の二次でもいけるようなもの、ってことだろ。
429名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 21:20:40 ID:5aHUv37V0
つまるところ、原作に出てきたキャラをSSで書いた時に
「より多くの人にこれはあのキャラだ」と思われれば良いんじゃないの?
読者もまたTH2が好きで、その好きなキャラが出てくるSSを読みにくるわけだから。
名前がなければ分からないようなキャラでは、そのキャラをSSで書くってことに失敗したってことだろ?
で、そうなったSSに意味があると思うかどうかは個人の感性。

俺は、そんな風にキャラが乖離しても構わないと考えてる人は
最初からTH2である「必要性」はないって思うよ。

それが「TH2で書く意味がない」とは思わないけれど。
430名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 21:26:49 ID:peOQ/14S0
東鳩2はこうでなくてはならない、とかそういったものは無いんだし
ssに個性が反映されてキャラが崩れるのは当たり前だと思うがね。
自分の持つイメージ崩されたくないなら人のssなんて読むべき
じゃないと思う。
431名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 22:07:28 ID:pIlkq5af0
>>420
言葉を借りるのは構わんけど、そういう書き方すると価値観押しつけてるように見えるから
止めて欲しいな。
あれはあくまでも「俺はTH2でやる必要がないと思う。だから俺はそういうSSは読まない」
って書いてあるだけだろ。
やけに食ってかかってくるやつが多いんだが、なんで個人的な価値観を書いただけなのに
価値観を押しつけられてるって感じるのか、こっちが逆に聞いてみたいよw

つーかSSを書くってのは単なるファン活動だろう。
作者からすればファン活動に文句を言われる筋合いはないって思うのは当然じゃね?
批判を喰らったときに作者自身が「批判するな」って言うのは痛いと思うけどね。
でもまあ、作者は好きに書けばいいし、読者も好きに読めばいいとしか言えないだろ、こんなのw
なんでごちゃごちゃ騒いでるんだ?
432名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 22:29:16 ID:cuy1CjjM0
このスレはSS専用のくせに相変わらずSSより議論の方で容量食ってるな
433名無しさんだよもん:2007/06/20(水) 23:53:38 ID:5tUJPegQ0
>>414
遅レスだが乙。
今回は読んでるこっちが赤面した。
今までのタメの分、甘さが尋常じゃないな。
434名無しさんだよもん:2007/06/21(木) 00:58:33 ID:BGlyw0js0
SS書きなんてものは
どうしようもなく東鳩2が好きで
常に頭の中ではまだみぬシチュと
まだ知らない萌えるSSを書いているものだろうが!

って郭嘉先生が言ってた。
まったくもってその通りだと思う。
435名無しさんだよもん:2007/06/21(木) 11:36:41 ID:1kfKw1EU0
うわ、マジで閉鎖されてる。何があったん?

なんか叩かれてるみたいだけど俺けっこう好きだったんだがなぁ・・・・。
面白ければ原作無視でもかまわない俺にはね。
436名無しさんだよもん:2007/06/21(木) 13:13:02 ID:icJ+M3LS0
>>435
>うわ、マジで閉鎖されてる。何があったん?
一部の心ない人からのご丁寧な長文メールによる叩き文章のせいで
続ける意思を完全に折られたんだろ。
437名無しさんだよもん:2007/06/21(木) 13:20:38 ID:vzo7SqTm0
そこら辺でふてぶてしく(と言うと語弊があるけど)スルー出来れば良かったんだけどな
まあ、実生活の方も色々ストレス抱え込んでるみたいだし、そっちと合わせて爆弾になったんだろうな
438名無しさんだよもん:2007/06/21(木) 16:21:42 ID:L0tdI7R50
誉め続けないとやる気なくすのが基本ですからね。
SS書きってのは厄介な人種ですよ、本当。
というか、日記とか見ると鬱病持ちの人多いね、SS書きさんw
439名無しさんだよもん:2007/06/21(木) 18:13:42 ID:bgj7gvgj0
もうSS書きなんかやめて鬱日記書きになっちゃおうぜ
440名無しさんだよもん:2007/06/21(木) 19:35:43 ID:ELjS4I4XO
こんなんじゃSS書きも少なくなるわな。
441名無しさんだよもん:2007/06/22(金) 18:42:51 ID:ObqwB6W50
閉鎖じゃなくて移転ってだけじゃん 過敏に反応しすぎw
てか管理人の口ぶりを見ると前の状態からは遅かれ早かれ脱却するつもりで
叩かれたのをこれ幸いと口実にして大騒ぎしてるだけっぽいけど

SSとは関係ないけどネトゲやってるときにこういうやついたよなーって思ったよw
気に食わないことがあると引退するーって騒ぐのにしばらくすると何食わぬ顔で
復帰するやつ
ホントに引退するやつは何も言わずにいなくなっちまうからタチ悪いんだよなあ
引退しちまうやつに限って良いやつだったりするし
私立桜花高校はどうでもいいけど誰かの倉庫の人復帰してくれないかなあ〜
442名無しさんだよもん:2007/06/22(金) 21:45:55 ID:hHv5SC6U0
誰かの〜の人の復帰も待ち遠しいけど、研究所や書庫の人も一時から比べると
更新頻度落ちてるからなぁ。
AD発売までの、貴重なメイドロボ分を提供してくれる人たちなのに。
443名無しさんだよもん:2007/06/22(金) 23:14:48 ID:pKZsV13aO
メイドロボ分っていうのは、メイドロボSSに含まれているのか....?
444名無しさんだよもん:2007/06/23(土) 01:30:31 ID:r8dJEwBGO
AD発売しても俺の好きなイルファさんは…
445名無しさんだよもん:2007/06/24(日) 23:40:40 ID:jmL+eWdG0
倉庫はホント復帰してほしい
頼むから
446したいわけ イルファ編 1/3:2007/06/25(月) 02:20:38 ID:yOYrR00J0
「ああっ!貴明さん!」
「くっ!」
二人の体がぐっと弓なりに反る。暫しの間そのまま時が止まり、そして痙攣が去ると共に
俺はばったりとベッドに倒れこんだ。
「くはー、もう駄目」
「はぁ、はぁ…お疲れ様でした。」
そういいながらイルファさんも俺の隣に倒れこんでくる。そして頭を俺の胸に預けて体を
寄せてきた。イルファさんの肌の感触が気持ちいい。だがもう絞りつくした俺のナニは
ぴくりとも反応しそうに無かった。

姫百合家に用意されたキングサイズベッドは4人で寝てもかなりの広さだ。
珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんはすでにギブアップして寝ているが、乱れまくるイルファさんの
おねだりはなかなか止まる所を知らず、今頃までがんばる羽目になってしまっていた。

「もうねだられても無理だよ…今日はもう勘弁…」
「はい、解りました。私も今日はもう満足です。」
そう言いながらくすくす笑うイルファさん。
普段のおしとやかな雰囲気からは想像出来ないほどの乱れを見せるけど、今日は輪を
かけてすごい乱れっぷりだったな。
「ねぇ、イルファさん。」
「はい?」
「今日は特にすごかったけど、何かあったの?」
「え?……ええとですね…」
ちょっと答えにくそうに頬を染めながら苦笑いをするイルファさん。
イルファさんは体を起こすと女の子座りで俺のほうに向き直った。
447したいわけ イルファ編 2/3:2007/06/25(月) 02:21:19 ID:yOYrR00J0
あの、イルファさん、裸なんでいろいろと見えちゃってるんですけど…
「貴明さんたら…私の体中隅々まで見知っていらっしゃるじゃないですか。いまさら何を
 仰るんです?」
「ああ、さいですか」
「…こほん…それでですね、なぜ私が貴明さんに何度もお情けを求めてしまうかと言い
 ますと、DIAのおかげといいますでしょうか、せいで、といいますでしょうか…」
「はぁ」
「基本的な性交時の女性の反応についてはプリセットで組み込まれているのですが、」
「ほうほう」
「その後、お情けをいただくごとに、私の中で情報として蓄積されまして…その…人間で
 言いますところの…開発されるといいますか」
「……」
「激しく求められますと、その、より求める度合いが高くなったり、反応が激しくなった
 り、と、反応の上限が引き上げられるのです。その…好きな殿方との行為であれば
 なおさら上昇の度合いも激しいものになりますし。」
イルファさんは顔だけでなく体まで真っ赤になりながらも説明をしてくれた。
「じゃあ、今日激しかったのは…」
「その、先週は珊瑚様も瑠璃様も早々にダウンされてしまいましたし、貴明さんはとても
 激しく求めてこられましたので…多分あれでまた一気にパラメータの上限が上がったの
 ではないかと…ああっ、私はなんてはしたないメイドロボなんでしょう。」
そういいながら顔を隠していやいやと頭を振るイルファさん。その様がいつもの落ち着い
たお姉さん的な雰囲気と違ってひどくかわいらしく見えた。
俺はそっとイルファさんを抱きしめ、耳元でささやくように言った。
「俺は乱れるイルファさんもかわいくて好きだよ」
「!」
448したいわけ イルファ編 3/3:2007/06/25(月) 02:22:03 ID:yOYrR00J0
「だから、もう一度しようか。」
「え、でも、貴明さん…あ」
イルファさんが視線を落とし、それに気づいた。
「何だかイルファさんがかわいいから…苛めたくなって来た。」
「ああっ、貴明さん…」
俺はそのままイルファさんを押し倒し、そのまま唇を奪った。

「貴明さん…申し訳ありません。」
「いや……調子に乗ってやりすぎたのは俺も一緒だし。」
次の日の朝、やりすぎた後遺症でぎっくり腰で身動きが取れなくなり、おまけにいろいろ
放出しすぎてかなり貧血気味になって休んでいた。
「責任を持って私が看護いたしますから。」
そう言ってイルファさんは1日付きっ切りで俺の世話をしてくれた。
エッチするのもいいけど、こうやってイルファさんを独占して、かいがいしく世話を
焼いてもらうのもいいな、と思った。今なら雄二の気分がちょっとわかるかも。

体調は最悪だったけど、気分のいい日曜日だった。
449したいわけ の中の人:2007/06/25(月) 02:26:37 ID:yOYrR00J0
なんとなく思いついたネタで書いてみました。
オチが弱い気がする。

>ヒロインが貴明と良い感じになってきたと思ったら、いきなり入院して転校生(優季)と付き合い始めたことに驚愕する話とか。
このネタは一応考えてはいるんですけど、オチをつけられなくて書いてないです。
あえてオチをつけずに書いてみるって手も無くも無いですが。
450名無しさんだよもん:2007/06/25(月) 06:10:52 ID:9Jb6xJgJ0
>449
乙。イルファさん女の子座り可愛いよイルファさん
451名無しさんだよもん:2007/06/26(火) 00:24:49 ID:+uurUa9Y0
とりあえずAD公式にはるみとシルファの立ち絵が公開されたので
妄想を膨らませてみようと思う。
452名無しさんだよもん:2007/06/29(金) 10:04:08 ID:/MQKVf5bO
>>449
(*゚∀゚)ムハー!
イルファさんかわいいよイルファさん

是非イルファさんのエロSSも書いてください!
453したいわけ の中の人 改め 物書き修行中:2007/06/30(土) 11:54:19 ID:gA7agZdj0
ガチエロは無理っすw
チョイエロぐらいなら何とかだけど。

で、例の草壁ルート話書いてみたんで投下してみるお。
今回はちょっと長いっす。
454恋愛同盟−宣戦布告:2007/06/30(土) 11:59:46 ID:gA7agZdj0
そのときのあたしは、何も見えず、何も聞こえなかった。
河野貴明が、女の子を抱きしめている、その光景以外は。

                   −

その日はなんでか、いつもより少しだけ早く目が覚めて、少しだけ早く家を出た。

MTBにまたがってペダルを踏み込む。天気はそこそこ良くって、風も心地いい。
その日の体調によってペダルが重かったり軽かったりするものなんだけど、今日はペダル
も軽くってクルクルとよく回る。こんな日はちょっと良いことがありそうな気がする。
たとえば河野貴明とまた何か勝負して…
そこまで考えたところで、あたしははっとなって首を振った。何であいつのことなんか。

あいつはなにかとあたしに突っかかってきて、いつも邪魔をする。そういうやつだ。
だから会わないに越したことは無い。幸いにしてここ数日はあいつの姿を見かけては
居ない。これは喜ぶべきことのはず。うん、そう。

でも…

最近、あいつに会えない日は何だかつまらないと思っている自分が居る。
あいつと一緒に勝負するのが楽しいと思っている自分が居る。
これって、何なのかな…
455恋愛同盟−宣戦布告 2/10:2007/06/30(土) 12:00:40 ID:gA7agZdj0
学校前の坂道を一気に駆け上がって自転車置き場にMTBを放り込むと、そのまま教室に
向かう。あいつには会わなかった。時間が合わなかったのか、病気かなんかで休んでるの
か。まあ、待ち合わせしているような関係じゃないんだから当たり前か。
HRが始まるまでにはまだしばらくあるので、直った眼鏡を掛けて、しばらく自分の席で
自習しようと教科書を開いてみた。でも駄目。何だか落ち着かない。
仕方なく自分の教室を出て、隣の教室を覗きに言ってみた。でもあいつの姿は見当たら
なかった。いつも一緒に居る相棒の馬鹿は自分の席でアイドルの写真集かなんか見てる
けど…

「由真?」
のんびりした声で名前を呼ばれて振り返ると、思ったとおりそこに居たのは愛佳だった。
「うちのクラスに何か用?あ、もしかして私?教科書か何か貸す?」
「ううん。あー、えっと…」
愛佳に聞こうかと思ったけど、そうすればなぜ貴明のことを尋ねるのか説明しなくちゃ
ならないことに気がついた。だけどなんて説明すればいいの?…だけど愛佳にはお見通し
だったみたい。
「……もしかして、河野君?」
「わっ、ちょ、だ、誰があんなやつのことなんか」
「ちがうの?」
愛佳は小首をかしげて大きな瞳でじっと私のことを見て聞いてくる。
認めたくない。認めたくないけど……あたしは愛佳のその視線に負けた。
「……ちがわない。河野貴明はどこにいるの?」

                   −
456恋愛同盟−宣戦布告 3/10:2007/06/30(土) 12:01:20 ID:gA7agZdj0
「由真も、最近たかあきくんと仲がいいんだね。」
そういいながら愛佳はあたしの顔を見て笑った。多分口を尖らせて不貞腐れているあたし
の顔がおかしかったからだ。
貴明は外の空気を吸ってくるといって出て行ったらしい。きっと中庭だろうと当たりをつ
けて、愛佳と二人で歩きながら話した。
「たかあきくん、交通事故で4日も入院してたんだよ。」
「え、うそ、あいつ車にでも轢かれたの?」
「ううん。轢かれそうになって、咄嗟によけたんだけど転んで道路脇の塀に頭ぶつけて
 気絶しちゃったんだって。それで病院に運ばれて、検査のために入院したんだって。」
「何だか間抜けね。いい気味。」
「も〜、そんなこといっちゃ駄目だよ〜。たかあきくんだって咄嗟のことで塀にまで気が
 回らなかったんだよ。」
愛佳が困ったように貴明を弁護する。そこで愛佳の言葉に対する違和感に気がついた。
それに気がついたらあたしは聞かずには居られなかった。
「ねえ、愛佳」
「うん?なあに?」
「さっき、「由真も」貴明君と仲がいいんだね、って言ってたよね…愛佳も?」
「!」
愛佳がびっくりした顔で思わず口を押さえた。
「や、や、や、そんなことないですよ!」
「…あんたって解り易いわよね。それに、あたしの前だから無意識に言ってるんだろう
 けど、あいつのこと「たかあきくん」って呼んでる。」
「えっと、その、あの、あのね」
「男の子苦手な愛佳があいつのこと名前で呼ぶってことは、結構仲がいいってことよね」
「あー……うん」
愛佳は困ったような、でもほんのりと赤くなって少し恥ずかしそうな顔で答えた。
「いつから、そうやって呼んでるの?」
「つい最近、かな。私は男の子苦手だし、たかあきくんは女の子苦手だったから、書庫で
 作業を手伝ってもらってるときだけ、お互いに名前で呼び合うことにしたの。」
457恋愛同盟−宣戦布告 4/10:2007/06/30(土) 12:03:55 ID:gA7agZdj0
「ふぅん、あいつ女の子苦手だったのか……で、つきあってるの?」
「ええええええ!」
あたしが言った言葉に愛佳は瞬間的に真っ赤になった。まるでぼんっ!っていう効果音が
聞こえてきそう。目もぐるぐるになっててわたわたと暴れまくっている。
「や、や、や、つ、付き合うなんて。そ、そんなことまだ早いよぉ〜」
「でも、「まだ」ってことは付き合ってもいいとは思ってるんだ。」
「……そう、かな。…うん、そうだね。たかあきくんとなら、お付き合いしてもいいか 
 な、と思う。」
愛佳は恥ずかしそうに、でも少し嬉しそうに答えた。あいつと二人でデートしている所
でも想像したのかもしれない。少しの間愛佳はにやけていたけど、ふと我に返るとあたし
に向かっておずおずと聞いてきた。
「でも…由真もたかあきくんのこと、好きなんじゃないの?」
「え?」
どきん、心臓の鼓動が聞こえた気がした。でもその時のあたしはすぐにそれを否定しに
かかった。
「なっ…馬鹿なこと言わないでよ。あたしとあいつはただのライバルよ。いつもいつも
 あたしに突っかかってくるから仕方なく相手してるだけよ。あたしが本気出せばあんな
 やつなんか何時だってコテンパンにできるんだから。」
「はいはい…由真は素直じゃないんだから。」
「あたしは何時だって正直よ!」
「はいはい…あ、着いたよぉ。ほらぁ、あそこにたかあきくんが…」
と、愛佳が指を向けたまま、動きを止めた。
あたしも愛佳の見つめる方に目を向けた。
458名無しさんだよもん:2007/06/30(土) 12:04:56 ID:TC0Q9DQY0
支援
459恋愛同盟−宣戦布告 5/10:2007/06/30(土) 12:12:09 ID:gA7agZdj0
そこには貴明がいた。
自動販売機の前で何を買おうか迷っている。

そこに後ろから女の子が静かに近づいた。
髪が長くて、ほっそりとしていて、おしとやかな感じで、あたしとは全然違う。

その娘は貴明の後ろに近づくと、耳元で何かそっと囁いた。
それに導かれるように貴明が紅茶のボタンを押す。そして何気なく缶を拾い上げて一瞬の
後、貴明は振り向いてそしてその娘と何か言葉を交わして、そして二人はあたしの目の前
でしっかりと抱き合った。そう、まるで…離れ離れだった恋人同士が再会する映画のワン
シーンみたいに。

そして、あたしはその光景から目が離せなかった。
周りの景色はあたしの視界から消えて、いつの間にか風の音も何もかも聞こえなくなって
いた。のどがからからに渇く。心臓が痛い。どくどくと鼓動が早くなっているのが解る。
見て居たくなんか無い。心ではそう思っている。なのに目の前の光景から目が離せない。

なによ、あれ。

それが、しばらくして頭に浮かんだ、ううん、あたしが無意識に呟いた言葉だった。

なによあれ、なによ、なに、なんなの、納得できない、理解できない。

もうあたしの頭の中はぐちゃぐちゃで、何かの呪文みたいに無意識にそんな言葉を呟いて
いた。
460恋愛同盟−宣戦布告 6/10:2007/06/30(土) 12:12:54 ID:gA7agZdj0
とても長い時間のような気がしたけど、後で考えればほんの一瞬だったと思う。
その時まで何も耳に入らなかったのに、不意にぱたぱたという音が耳に入ってきた。
それは、
「!愛佳!」
愛佳の足音だった。振り返るときに一瞬見えたその顔は、泣いてたように見えた。
「愛佳!」
あたしも愛佳を追いかけて走った。後で思えば、あたしもその場を離れたかったんだと
思う。だって、その時は気がついてなかったけど、あたしも酷いことになってたから。


階段を駆け上がって重い扉を開け放つと、あたしの気分とは裏腹に晴れ渡った空が広がっ
ていた。
いつもなら屋上まで階段を駆け上がるくらい平気なのに、さっき受けたショックのせい
か、なぜか酷く呼吸が苦しかった。
「愛佳っ!」
愛佳はフェンスにしがみ付いたまま肩を震わせていた。
「愛佳…泣いてるの?」
あたしが声を掛けると、一度手で顔をぬぐって愛佳は振り向いた。
でも、振り返った愛佳の大きな瞳からはもう次の涙があふれ出していて、全然無意味だっ
た。愛佳はその涙を端から手で拭い取っていたけど、でも全然役に立たなくて、顔はもう
ぐちゃぐちゃになっていた。
「わたし……告白する前に…失恋しちゃった…う……ああああん」
そこで、耐え切れなくなった愛佳は、まるで小さい子供みたいに大声を上げて泣き出し
た。
「愛佳…泣かないでよ。」
「…ひっく…由真だって…泣いてるじゃない。」
「え?」
そう言われて初めて、あたしは自分がぼろぼろ涙を流していることに気がついた。
461恋愛同盟−宣戦布告 7/10:2007/06/30(土) 12:17:20 ID:gA7agZdj0
ああ、そうか。
さっき走ったとき苦しかったのは、走ったせいなんかじゃなくて、あたしも走りながら
泣いてたからなんだと、その時やっと気がついた。
顔をさわって見るともうほっぺたはぐちゃぐちゃに濡れていて、きっとさっき呆然として
いたときから泣いていたんだろうと言うのが解った。
でも、何であたしはこんなに泣いているの?
愛佳と違って、あたしはあいつのことなんかなんとも…

いや、もう意地を張っても仕方ないんだ。
いつの間にか、あたしはあいつのことが気になって仕方なくなっていた。それはもう認め
なくちゃいけない。
いつの間にか隣にあいつが居るのが嬉しいと思うようになっていて、貴明の隣は私のモノ
なんだといつの間にか勝手に思っていたんだ。

だけどそうじゃなかった。

貴明の隣はあの娘のモノで、あたしや愛佳のものじゃなかった。
そして自分のものだと思っていた席を取られたあたしは、悔しくてたまらなかったんだ。
それでもあたしの小さな意地がそれを認めるのを拒んだ。
「あ、あたし…あたしは、貴明、あいつのことなんか、なんとも思ってなくて。」
「由真…」
「だから、悲しくなんか…ないんら…からぁ…うううっ」
でも小さな意地はあっと言う間に押し流されて、あたしは愛佳と同じように大声を上げて
ないていた。
授業の始まるチャイムの音が聞こえてきても、あたしと愛佳は子供みたいに泣きじゃくっ
ていて、涙を止められなかった。

                   −
462恋愛同盟−宣戦布告 8/10:2007/06/30(土) 12:18:06 ID:gA7agZdj0
あたしと愛佳がそれなりにショックから立ち直るには数日必要で、そして、あたしがあた
しらしい答えを出して、それを実行する勇気を搾り出すのにはさらに1日必要だった。

放課後の中庭。
おあつらえ向きにあたしたち以外には誰も居なかった。
そして、ここに居たのはあたしと、そして無理やり呼び出した愛佳、それと河野貴明と、
あの娘…草壁優希の4人だった。

「なあ、この果たし状みたいなの、お前の仕業だったのか。」
貴明があきれた風にあたしを見てる。朝、早めに学校に登校したあたしは河野貴明と草壁
優希の下駄箱の中に呼び出し状を入れておいたのだ。
「その手紙、私の靴箱の中にも入ってたんですけど……ええと、小牧さんと…」
「私は、長瀬由真」
「長瀬?…えっと、前に自分のこと十波由真って名乗ってなかったか?」
貴明がピントのずれた突込みをしてくるけど、そんなのはどうでもいい。
「あたし長瀬の苗字嫌いなの…大体、苗字が本当かどうかなんてあんたには関係ないで
 しょ。あたしはあたし、長瀬でも十波でも「由真」なんだから。」
そう、大事なのはあたし自身だ。あたしをどう見てくれるか、そしてあたしがどう考える
か、それが大事だ。自分が納得できないままに事を終わらせたくない!
「それで、長瀬さん…その、私と貴明さんに何の御用でしょう?」
草壁優希がおずおずとあたしに聞いてくる。あたしは最後の確認をした。
463恋愛同盟−宣戦布告 9/10:2007/06/30(土) 12:18:47 ID:gA7agZdj0
「河野貴明と草壁優希…二人は付き合っている。そうよね。」
二人は同時に赤くなると、貴明はそのままもごもごと答えた。
「く、草壁さんとは子供の頃大事な約束をしてて…その、この間再会して…」
「はい、貴明さんとお付き合いしています。」
草壁優希はまっすぐ、柔らかく笑みすら浮かべながら私の目を見て答えた。

そうでなくっちゃ。
強い相手じゃなくっちゃ、倒す甲斐が無いってものよ。

あたしはいつも貴明にそうするように、ぴっと左の人差し指を向けた。
「河野貴明!」
「は、はい!」
「わたしは…長瀬由真は、河野貴明のことが好き。」
「…は?」
貴明があっけに取られた顔であたしを見てる。っていうか、なに言ってるんだこいつ、
って顔してる。あたしが愛を語るのがそんなにおかしいか。失礼なやつ。
「で、愛佳」
「は、はひぃ!」
「あんたはどうなの?」
「え、あ、あ、ああああああああの……」
いきなり振られて愛佳は慌ててたけど、覚悟を決めたのか、一呼吸して気を落ち着かせる
と、貴明を見て言った。
「あの……私もたかあきくんの事……すき……です。」
464名無しさんだよもん:2007/06/30(土) 12:31:22 ID:Agf8dlCJ0
つ@@@@
465恋愛同盟−宣戦布告 10/10:2007/06/30(土) 12:33:23 ID:gA7agZdj0
「え、えっと…」
続いての愛佳の告白に貴明も本気で困ったみたいだった。そして、草壁優希はというと…
…あ、あっけにとられてる。
でも、手加減なんてしてやらない。全力で挑まないと、この勝負には勝てない。
あたしは貴明に向けていた指先をそのまま草壁優希にすいっと向けた。
「草壁優希!」
「は、はいっ!」
「あたしと愛佳は、河野貴明を賭けて、あんたに勝負を申しこむっ!」
「えっ?」
「「えええええええ!」」
草壁優希も、河野貴明も、そして愛佳も、その場に居た全員が驚嘆の声を上げた。
でも、これがあたしらしい決着のつけ方。
今更あきらめてなにも無かったことにするなんてあたしにはできない。
なら、あたしらしく勝負を挑んで手に入れるまで。覚悟しなさいよ、貴明。

こうしてあたし達女の子3人と男の子1人の奇妙な三角関係が始まった。
敵は手ごわいけどあたしはきっと勝って見せるわ。
466名無しさんだよもん:2007/06/30(土) 12:35:57 ID:TC0Q9DQY0

続きがあるってことでいいのかな?
楽しみに待ってます
467物書き修行中:2007/06/30(土) 12:45:13 ID:gA7agZdj0
支援サンクス
一応前提としてですが、
 ・由真と愛佳シナリオを並列でこなして優希クリアまでプレイしたと想定
  (実際は途中で由真か愛佳に分かれるので無理だけど)
 ・PS2版相当(エッチはしてない)
ということで書いています。しかも予告どおり投げっぱなし。
一応続きも考えてますが、書くかどうかは、というか書けるかどうかは解り
ません。

ところで、OVA2巻見ました。
TVの方は評判が良くなかったので見てないですがOVAは良いですな。
特に郁乃に萌えた雄二のはじけっぷりにワロス
あと郁乃の口調が少年ぽいのは公式設定ということでいいのでしょうかね?

あと私立桜花高校は結構楽しみにしてたサイトなんで移転で一時閉鎖はちょっと
残念です。ブログのほうもしめちゃったっぽいし。
468物書き修行中:2007/06/30(土) 12:52:21 ID:gA7agZdj0
ぐは、今気がついたけど「優希」じゃなくて「優季」だよ。orz
撃つ出し脳…
469名無しさんだよもん:2007/06/30(土) 13:00:18 ID:C6H4IzOy0
>>467
乙。続き期待してます
ところで、「三角関係」→「四角関係」かな?4人だし
470名無しさんだよもん:2007/06/30(土) 15:00:14 ID:Nl/eouY50
>>467

って、なんか既視感を感じる内容だな
471名無しさんだよもん:2007/06/30(土) 19:34:12 ID:1TmLbMqg0
>>467


>>470
TH2SS置き場の『あなたを、はなさない』じゃね?
あっちは夢オチだったけど
472物書き修行中:2007/06/30(土) 21:01:39 ID:gA7agZdj0
>>469
人数的には4人なんで4角といえなくも無いですが、どっちかって言うと
優季と愛佳と由真を頂点に真ん中に貴明が居る関係、もしくは優季と貴明と
挑戦者チーム(由真と愛佳)という関係なので、あえて三角関係としました。

>>470-471
「あなたを、はなさない」は自分も読んだことがあります。
今回書くときはあえて思い出さないで、自分の文で書くようにしましたが、
似ていると言われればそのとおりと答えるしかありません。
でも、このネタ自体は文に起こす人間は少ないですが、実際にプレイした
人間なら誰もが考える話ではある(もちろん結論は人によって異なりますが)
ので、違いは書く人間の味付けの仕方かなと思います。
473名無しさんだよもん:2007/06/30(土) 22:05:45 ID:DA7UVAdj0
前半(特に冒頭)はかなり似てると思うけど、後半はかなり違ってるな。
良い意味で各キャラがより個性的になってると思う。
474名無しさんだよもん:2007/07/02(月) 22:57:16 ID:TuPdOIKt0
恋愛同盟って……どこのツインズ?
475捏造シルファSS(続き):2007/07/03(火) 18:10:25 ID:8W82mue10
ずっと前に書いた奴の続きです。前の奴は保管庫にあります。

シルファちゃんがキッチンに入ってから10分。
本格的に腹が減ってきたころ、キッチンから良いにおいがしてきた。
冷蔵庫にあるもので適当に作ってくれ、と言ったものの、シルファちゃんって料理の経験あるんだろうか?
まあミルファも最初からある程度料理できたから、心配はないと思うんだけど。
「出来ました」
「……炒飯?」
「冷蔵庫にご飯がありましたので」
残り物の処理まで考えてくれるとは、さすがメイドロボ。
もっとも、メイドロボを買う余裕がある家で、残り物の処理をする必要があるのかは疑問だけど。
「じゃあ、いただきます」
「……」
心無しか、シルファちゃんの表情が少し硬い気がする。もしかして緊張しているのだろうか。
「ところでシルファちゃん」
「?」
「料理したことあるの?」
大丈夫だとは思うが、これだけは聞いておかないと。見た目と臭いには全く問題ない。
でも、食べたら物凄い出来だったという可能性も無きにしも非ずだ。
476捏造シルファSS 2:2007/07/03(火) 18:11:13 ID:8W82mue10
しかし、俺の言葉を聞いたシルファちゃんは今までにないムッとした顔で
「召し上がりたくないのでしたら、お下げします」
と言った。いや、言うだけでなく実際に片付け始めた。
「食べる!食べるから片付けないで!」
「……」
シルファちゃんは渋々、本当に渋々といった感じで片付けるのを止めた。イルファさんやミルファ
だったら、ムッとしても実際に片付けはしないだろう。あの2人より気難しい子なのかもしれない。
料理に物凄い自信があって、それを馬鹿にされたのが悔しいのかもしれないけど、
研究所から一歩も出たことが無いと言っていたし、その線は薄い気がする。
「ごめん、失礼なこと聞いちゃったね」
「……」
片付けるのを止めてくれたものの、無論シルファちゃんの機嫌は直っていない。
さて、どう謝ったら機嫌を直してくれるだろうか。
「……召し上がらないんですか?」
「あ、食べます。食べますから片付けようとしないでください」
どうやって謝ろうか考えている俺の表情が、食べるのを躊躇しているように判断されたのだろう。
それを考えるのは後にして、炒飯を頂くことにする。
「それじゃあ…・・・改めていただきます」
477捏造シルファSS 3:2007/07/03(火) 18:11:56 ID:8W82mue10
レンゲですくって口に入れようとすると、物凄く強い視線を感じた。
「あの、そんなに見つめられると食べにくいんですけど」
「お気になさらず」
いや、気になるって。と思っても言えないのが俺の悪いところである。
でも、すごい真剣な目で見ているのを止めてくれとは言えないし。
とにかく、今は食べよう。うん。
「……」
「……」
「……」
「……あの、お口に合わないのでしたら下げますけど」
「ダメ。絶対下げちゃダメ」
何だこれ。こんな美味い炒飯が家で作れるのか。イルファさんやミルファ、
瑠璃ちゃんにも炒飯を作ってもらったことはある。あるけど、それよりもさらに美味しい。
そのせいで、物凄い勢いで平らげてしまった。
「ふぅ、ごちそうさま。凄い美味しかったよ」
なるほど、これだけの腕があるならさっき怒ったのもうなずける。
「……あの」
「うん?」
「瑠璃様の料理と、どちらが美味しかったですか?」
「うーん……炒飯に限って言えば、シルファちゃんのが上手かな」
「本当ですか!?」
「う、うん」
瑠璃ちゃんより上手なのがそんなに嬉しいのかな?……そういや、前にイルファさんが
『もう1人の妹は、ものすごいマザコンなんです』
って言ってたっけ……瑠璃ちゃんとシルファちゃんが対立する日は遠くないだろう。
478捏造シルファSS 4:2007/07/03(火) 18:13:02 ID:8W82mue10
それから、掃除や洗濯、買い物などをしてもらったが、何一つ問題なくこなしてくれた。
物凄い人見知りだって聞いてたけど、買い物ができるなら問題ないんじゃないか?
「さて、そろそろイルファさんが迎えに来るはずだから。用意しておいてね」
「……はい」
目下の問題は、帰る時間が近づくにつれ、シルファちゃんの元気がどんどん無くなっていくことである。
何か帰りたくない理由でもあるのだろうか。
ピンポーン
「はいはい……あ、イルファさん」
「お迎えに参りました。シルファちゃんのご奉仕はどうでした?」
「ご奉仕って……まあ、普通にこなしてくれてたよ。買い物もしてくれたし」
「シルファちゃんが買い物を!?」
「……そんなに驚く、ってことはやっぱり今まで出来なかったんだ」
「え、ええ。ですが、さすがは貴明さんですね。
僅か半日でシルファちゃんの心を溶かしてしまうなんて」
「別に何かしたつもりはないけど……とにかく、呼んでくるよ」
シルファちゃんを呼びにリビングに戻るが、シルファちゃんが居ない。荷物も無い。
「あれ?……もしかしてトイレかな」
トイレに行ってみると、鍵はかかっていない……
いや待て。前にこれで大失敗したばかりじゃないか。気をつけないと。
コンコン
「シルファちゃん?」
479捏造シルファSS 5:2007/07/03(火) 18:13:37 ID:8W82mue10
……!」
「イルファさん待ってるから。終わったら玄関に来てね」
「……嫌です」
「シルファちゃん?」
「帰りたくないです!」
「ええっ!?」
帰りたくないって……どういうことだ?と、とにかく理由を聞かないと。
「……えっと、とりあえず出て来てもらえるかな?何にしても、イルファさんはもう来ちゃってるから。
帰りたくないなら帰りたくないで話し合って……」
「嫌です!」
「大丈夫。帰れなんて言うつもりは無いから。イルファさんも、理由を話せばきっと分かってくれるよ」
「……」
ゆっくり、本当にゆっくりドアが開いた。これで、とりあえずは何とかなる。
「さ、イルファさんと話し合おう?」
「……はい」

「じゃあ、どうしても帰りたくないのね?」
「……はい」
「うーん、困りましたね……貴明さん、お電話お借りしてもよろしいですか?」
「うん、いいよ」
「ありがとうございます。それでは、ちょっと席を外しますね」
480捏造シルファSS 6:2007/07/03(火) 18:24:34 ID:8W82mue10
……さて、どうしたものだろうか。あれから20分ほど話し合ったが、
シルファちゃんはイルファさんが何を聞いても
『研究所には戻りたくありません』
の一点張り。理由を聞かれても何も答えない。研究所に何かしらの原因があるとは分かるが、
それは俺がどうにかできる問題じゃないし。
「……あの」
「ん、何?」
「貴明様も、私がずっとここに居たら迷惑ですか?」
貴明様『も』……か。シルファちゃんは研究所に居ることで、そこの人たちに迷惑をかけていると思っているんだろうか。
人見知りするメイドロボなんて必要ない、なんて考えているのかもしれない。
「大丈夫、迷惑じゃないよ。シルファちゃんが居たいだけ居ていいから」
「あっ……」
その不安そうな顔を見て、思わず頭を撫でてしまった。
嫌がられるかと思ったが、表情を見るにそうでもないらしい。どうも小さい娘には癖でやっちゃうな、これ。
「あらあら、それは助かりました」
「……何が助かったのかな、イルファさん」
またしても嫌な予感がする。そして、こういうときの嫌な予感が外れることはほとんど無い。
「シルファちゃんを、とりあえずもう1週間ほど預かって頂こうとお願いしようと思ったんですが……
その様子なら、引き受けてもらえますよね?」
「は、ははは……」
ああ言った手前、断ることが出来るはずも無かった。

こうして、シルファちゃんとの共同生活が始まったのである。
481捏造シルファSS 作者:2007/07/03(火) 18:27:26 ID:8W82mue10
作品あげるのが久しぶりで、一発目でいきなりageてしまいました。すいません。
そして、5個上げたあと連続投稿規制でひっかかってました。妙に時間が空いてますね。
何か続きそうな感じの終わり方ですが、続けるかどうかは考えてません。プロットは一応作ってますが、
前の作品完結させないまま続けても、また尻切れトンボになりそうですので。
シルファはこんなんじゃない!などの感想がありましたら、よろしくお願いします。
482名無しさんだよもん:2007/07/03(火) 18:28:44 ID:IMVIGxHi0
乙!
オレは続きを書いてほしい素人です。
よかったよ
483名無しさんだよもん:2007/07/03(火) 23:39:02 ID:Gr0sNqJrO
GJです!
メイドロボは大好きなんでまた書いてくれると嬉しいです
484名無しさんだよもん:2007/07/04(水) 00:19:10 ID:9n0kJbjQ0
デレがないぞデレが
デレが出るまで書き続けろや
勘違いしないでよ、次回作楽しみにしてるわけじゃないんだからねっ
485名無しさんだよもん:2007/07/04(水) 20:45:37 ID:Jy+44l+0O
最後のはデレじゃないのか
486「けだものさん」 1/25:2007/07/04(水) 23:21:13 ID:bDxl6SWf0

「え〜っと、第…何回目だっけ?…ま、いっか。とにかく定例部会を始めま〜っす♪」
はいはい、ぱちぱちぱちぱちーっと。
ツナサンドをほおばりながら花梨の言葉に適当に拍手で答えておく。


ここは体育館第二用具室、兼ミステリ研究会部室。
普通の生徒だったらまず近寄らないであろう場所なのだが、
紆余曲折を経てミステリ研の正式会員になった俺は
昼休みにはここに来る事がほとんど日課になっていた。
昼休みという本来休憩する時間まで部活動に費やすなんて、我ながら学生の鏡だなー。
…と素直に思えないのは、ミステリ研の活動内容によるものか。
とにかく、今日も昼休みを利用して恒例の定例部会を行っているわけなんだけど、
この定例部会も回数を重ね、会長であり俺の彼女でもある笹森花梨も
今日で第何回目なのか、もう覚えていないようだった。…まぁ別にいいけど。


「で、今日の議題は?」
「実はたかちゃん…私すごいミステリスポットを発見してしまったんよ!」
パイプ机に向かい合って座っていた花梨が、ずずいっ!っと身を乗り出して答えた。
うっ…。
急接近してきた花梨に思わず後ずさってしまう。
「スキありっ!」
「えっ?」
机の上に拡がっていたミックスサンドの中からタマゴサンドを
ひょいっと手に取り、花梨はそのままぱくっと口に含んだ。

はぁ…。またやられた…。
487「けだものさん」 2/25:2007/07/04(水) 23:24:07 ID:bDxl6SWf0

「ふふっ♪たかちゃんったら相変わらずウブなんだね〜。
あの時はあ〜んなにけだものさんだったのに。」
「いや、あの時はその、えーと…」
一ヶ月ほど前、例の山火事があった夜…。この部室での事を思い出してしまい
かぁーっと顔が熱くなってしまう。

「あの時のけだものさんはドコ行っちゃったのかなぁ?」
いつの間にタマゴサンドを食べ終わった花梨は悪戯っぽく笑っている。
「ったく、そんな事言ってると本当に襲っちゃうぞ?」
からかわれっぱなしなのもしゃくに障るので反撃の意味も込めてそう言ってみたんだけど…
「…。」
頬をぽっと桜色に染めてうつむいてしまう花梨。
え、えーと本気にしちゃったのかな?冗談だったんだけどな…。

…。
急に静かになった部室。体育館の方から他の生徒達の楽しそうな声や、ボールの弾む音が聞こえてくる。

ガタっ!
しばらくして、意を決した様な表情で花梨は立ち上がると、
近くにあったマットに、ぽすっ。と音を立てて座り込んだ。
ふわりと舞い上がったスカートから花梨のふとももがちらりと見え、
思わず視線を奪われてしまう。
更に花梨は、ぱたっ。と後ろに仰向けに倒れこむと
「い、いーよ…?たかちゃん…。」
488「けだものさん」 3/25:2007/07/04(水) 23:26:31 ID:bDxl6SWf0

…本気ですか?さ、さすがにそれは…いや、したくないってわけじゃないけど、
こんな昼間っから?それ以前に学校でってのはやっぱり…。いやいや、もちろん
したくないってわけじゃないけど、やっぱりその…って、と、とにかく落ち着け、俺!

「そ、そのさっきのは冗談だからさ!ははは。
あ、そーだ!で、さっき言ってたミステリスポットって言うのは?」
ぎこちない笑顔を作ってつとめて明るく花梨に言った。

…。
むくっと起き上がった花梨は笑いながら向かいのパイプ椅子に腰掛ける。
花梨も冗談だったのかな?…なんか一瞬寂しそうな顔をした気がしたけど。

「あはは〜。」
「はははは。」
乾いた二人の笑いが部室に響く。
それから、ごほんっ。とわざとらしくせきをして、花梨は先ほどの質問に答えた。
「えっとそれでね、そのミステリスポットって言うのは、」
「言うのは…?」
「…秘密♪」

ずこっ。なんじゃそりゃ。

「で、今日の放課後はその秘密のミステリスポットを探索してみようと思いま〜っす!」
「いや、だから場所は…」
「だいじょぶだいじょぶ!ちゃーんと私が案内してあげるから。
  久しぶりにアウトドアな活動だよ、たかちゃん!」

さっき一瞬見せた寂しそうな顔が気になっていたが、
どうやらいつもの花梨に戻っているようでほっと胸をなでおろす。
489「けだものさん」 4/25:2007/07/04(水) 23:29:15 ID:bDxl6SWf0

「でも久しぶりって…先週の日曜も噂のおばけトンネルに行ってきたばかりじゃないか。」
「何言ってるの?アレはデートで部活動じゃないんよ?もーっ!公私混同は困るなぁ。」
…あれってデートだったのか。そりゃ、帰りにショッピングや食事もしたけど、
デートで心霊スポットってのは…どうなんだ?

−キーンコーンカーンコーン−

その時、不意に昼休みの終わりを告げるチャイムが校舎の方から聞こえた。
もうそんな時間か。
「それじゃ、そういうわけで放課後迎えに行くからね〜♪」
そういって花梨は部室からさっさと出て行ってしまった。

また今日もひと波乱起こりそうな予感だな…。
ま、花梨と居ればその「波乱」がいつもの事だったりするんだけど。
とにかく俺も残ったサンドイッチを片付けて…ってアレ?
いつの間にハムカツサンドも無くなってる。
素早いやつめ…。

いつもながら満腹にならないお腹をさすりながら、俺も部室を後にするのだった。
490「けだものさん」 5/25:2007/07/04(水) 23:31:13 ID:bDxl6SWf0

そして放課後。

「高明ぃ。一緒に帰ろーぜー。駅前のゲーセンに例の新作が出たんだってよ。」
帰りのHRもすっかり爆睡してしまい、ボーっとしている頭に雄二からの誘いの声が飛び込んだ。
「んぁー、雄二か。わりぃな、今日はちょっと…」
「何だよ、最近付き合い悪いなお前。またいつものナントカ研か?」
「まーな。」
「まぁ俺なんかより愛しの会長様の方が良いわなー。」
ニヤニヤと下品な笑顔を作りつつ、手に持ったかばんを振り上げる雄二。

ぽこっ。ぼこっ!ばすっ!!どすっ!!!ドゴっ!!!!
いてっ。痛い。いつまで叩いてんだ。いてっ。だから痛いって!
「あはははー。羨ましくなんかないぜー。この恋愛ブルジョアジーめ。あはははー。」
「や、やめろって!男の嫉妬はみっともないぞ!」
そろそろ雄二の奴にカウンターでも返してやろうと思ったその時だった。

「た〜かちゃ〜ん!!迎えに来たよぉ♪」
俺と雄二のみならず、クラスに居た全員が声のした廊下の方に顔を向ける。
そこにはニコニコ顔で手をぶんぶん振る花梨の姿。
あんな大声で叫ぶなよ…は、恥ずかしいじゃないか。

「たかちゃん♪お迎えがきまちたよー♪」
ぼすっ!
明らかに悪意のある雄二のからかいに、溝落ちパンチで答えると
クラス中の冷ややかな視線を浴びつつ花梨の元にあわてて駆け寄る。
「裏切り者〜!俺もミステリ研の会員なんだぞ〜!」
背後から雄二の声が聞こえた気もするけど…きっと気のせいだな、うん。
491名無しさんだよもん:2007/07/04(水) 23:33:07 ID:aZrrQYPTO
支援
492名無しさんだよもん:2007/07/04(水) 23:33:28 ID:odmALPjU0
支援
493「けだものさん」 6/25:2007/07/04(水) 23:34:23 ID:bDxl6SWf0

「ちょ、ちょ、ちょっと!恥ずかしいだろ!?」
「そんなこと言っちゃって〜、本当はたかちゃん嬉しいくせに〜。」
「はぁ…。ハイ、嬉しいデス。」
一刻も早くこの場から逃げ出したかったので素直に答えておくことにする。
「うん。よろしい。」
「でもそんな廊下から叫ばなくっても…」
「ほら〜、なんていうか悪い虫がつかないように?みたいな?」
「悪い虫ねぇ。」
何故か雄二を見てしまった。
「いこっか、たかちゃん。」
「あ、あぁ。」
色々な視線から逃げるようにさっさと歩き出した。

「あれ?なんかバッグ大きくない?」
下駄箱で靴を履き替えながら、妙に膨らんだ花梨のバッグを指さす。
「え?そ、そうかなぁ。ほら、今日は体育があったから!そう、それそれ。」
体操服だけでそんなに膨らむか?…とも思ったけど、どうせ花梨の事だ。
またナントカ探知機とかいって怪しげなものを詰め込んでるんだろう。

「で、今日はどこに行くの?」
校門まで歩いてきたところで花梨に尋ねた。今日はこれから何処かに行くんだっけ?
「だからそれは秘密なんよ。それはそれはミステリーなところなんだから!」
「へいへい、じゃ案内お願いします、会長。」
そう言ってから立ち止まり、右手を差し出す。
花梨は一瞬「?」って顔をしていたけど、すぐにその意味を察したのか
「うんっ♪」
ぱぁっと花が咲くように笑って俺の手を握り返した。

う…、今のは可愛かったかも…。
その笑顔に見事に打ち抜かれた俺を尻目に、花梨はぐいぐいと手を引っ張って歩き出した。
494「けだものさん」 7/25:2007/07/04(水) 23:36:51 ID:bDxl6SWf0

「とうちゃ〜っく!」
「へ?」
ここまでの道のりを説明すると…

鬱蒼と茂る背丈ほどの草達を掻き分け、今にも崩れ落ちそうなつり橋を渡り、
転がりくる大岩を逃れ、行く手を阻む大蛇との格闘を経て、そして俺達はついに…

…なんて事はまったくなく、いつも通りの帰宅ルートだったわけで、
今立ち止まっているこの場所も、いつも俺がひいきにしているスーパーの前だった。
「ここが目的地?」
「違うよ〜。たかちゃんせっかちなんだから♪ここで一旦食料の調達をするんよ。」
「なるほど。」

そんなわけで買い物を始める俺達。
俺が押すカートの中に花梨がぽんぽんと商品が投げ込んでいく。
パン、卵、ジャガイモ、にんじん、お肉、…って、なんか凄く家庭的だな…。
「こうやってると、新婚さんに見られるかな?」
制服だからそれは無いか。と思いつつも、ついついそう呟いてしまう。
「えっ?そんな、たかちゃんだめだよぅ…。婚約なんてまだ早すぎるよぅ。
  でもたかちゃんが今すぐしたいって言うなら、私も頑張ってお父さんを説得して、それから…」
「ちょっと待て!そこまでは言って無いだろ!」
ぱしっ!と花梨に突っ込む。
「なーんだ。残念。よし!それではレジに向かおう、高明隊員!」
「はいはい、了解。」
495「けだものさん」 8/25:2007/07/04(水) 23:38:24 ID:bDxl6SWf0

いつも通り俺が奢るんだろうなー。と思って財布を出そうとすると
「今日は私が奢るよ。」
「え?いいの?」
いつもとは違う展開に少し躊躇してしまう。
「いいからいいいから。ここは花梨おねぇさんに甘えればい〜のっ!」
「んー、そっか。ありがとな、花梨。」
「うんうん。このご恩は一生をかけて返せば良いと思うよ!」
…恩着せがましい奴。


こうして買い物を終えた俺達は、今度は言葉もなく自然に手を繋ぎ
夕焼け空の下再び歩き出した。
「ねぇタカちゃん…、その…私達やっぱり新婚さん…みたいかな?」
「そう…かもな。」
照れ隠しに笑いながら答えると、花梨も微笑み返してくれた。
でも…表情がどこか寂しそうなのは気のせいだろうか。

俺の手を引く花梨の後姿がいつもよりも小さく見える。
日が傾いた町並みの中で、空いた手に持った買い物袋が妙に重たく感じられた。
496「けだものさん」 9/25:2007/07/04(水) 23:40:33 ID:bDxl6SWf0

「今度こそ、とうちゃ〜っく!」
「え、あ…えーっと、ここって…」
「そうだよ?タカちゃんの家。あれ?自分の家も忘れちゃったの?ま、まさか宇宙人に記憶を!?」
「いやいやいや、それは無いから。ってことは俺の家が秘密のミステリスポットなわけ?」
「うん!」
そんなはっきり返事されても…。

「あの、花梨?俺の家はごく普通の家だし、
 花梨の期待してるような不思議なことなんてまったく無いと思うんだけど…」
「そんなことないよぉ。だって私たかちゃんの家に上がったこと無いんだから、
 私にとっては人跡未踏の地なわけなんよ!」
相変わらず人跡未踏の使い方を間違えてるような気がする。
「でもほら、前にゲーセンに行った時、家に来ただろ?」
「たかちゃん、忘れちゃったの?あの時は玄関までで、家の中にはあがってないんよ?」
言われてみれば…そうだったかも。
記憶の中を探っても花梨が我が家にいる場景は浮かんで来なかった。
「えーと、それじゃあがってく?大したもてなしは出来ないかもしれないけど…」
「やったぁ♪それでは笹森花梨探検隊、とつげきぃ〜!」
俺が鍵を開けるのと同時に家の中に駆けあがっていく花梨。

やれやれ…。
497「けだものさん」 10/25:2007/07/04(水) 23:41:59 ID:bDxl6SWf0

「お茶でいい?紅茶やコーヒーもあるけど。」
へー。とか、ふーん。とか言ってキョロキョロしてる花梨をリビングのソファーに座らせる。
「えっとね、お茶でい〜よ。」
「了解っと。」
キッチンでお茶を入れながらリビングを見渡す。
このみやタマ姉以外の女の子がこの家に居る事が不思議に思えてきて、妙に緊張してきた。
「はい、どーぞ。…ごめん、丁度良いお茶菓子がなくてさ…。」
「あ、それなら丁度いいのがあるよ!」
そういって買い物袋をがさごそと漁る。
「はいっ!これっ!」
そういって星の形をしたチョコレートを差し出してきた。
星ってところがいかにも花梨らしくてつい顔が綻んでしまう。

意外とお茶とチョコレートの相性は悪くなく、二人でずずーっ。とお茶を飲んでのんびりしていると
「た、たかちゃん!その…ご両親は…?」
急にかしこまった様に花梨が尋ねてきた。
「え?あー。言ってなかったっけ?ウチの親父の海外出張にお袋もついていっちゃってさ、
しばらくは帰ってこないみたいだから、今は一人暮らしみたいなもんなんだよ。」
「なーんだ、そうなんだぁ。せっかくご挨拶しようと思ってたのに〜。」
「ご挨拶って…。でもそういうのって俺から紹介するのが普通じゃないのか?
  紹介したい人が居るから…ってな具合に。」
「普通は…そうなんだ。…そっか。」
498「けだものさん」 11/25:2007/07/04(水) 23:45:25 ID:bDxl6SWf0

急にしょんぼりする花梨。え、えーとなんかマズい事言っちゃったかな?
とか考えてると
「それじゃ、こうしてても大丈夫なんよね♪」
花梨が俺の横にちょこんと座り、急に抱きついてきた。
「き、今日はまた大胆だな、花梨。昼休みだって…」
急な接近に顔に血が昇っていくのがわかる。
「タカちゃん…もしかして、けだものさんになっちゃった?」
「ばっ、そ、そんなわけ!」
「そんなわけ…ないの?」
潤んだ瞳で俺の顔を覗き込んでくる。女の子の良い香りがふわっと目の前に広がり、
理性が吹っ飛びそうになる。
…これは反則だ。
「花梨…。」
「タカちゃん…。」
見つめ合う二人…。そして…

ぐぅ〜

…。
妙に間抜けな音が室内に響く。
この音はもしかしなくても俺のお腹の辺りから聞こえてきたわけで…。
499「けだものさん」 12/25:2007/07/04(水) 23:48:36 ID:bDxl6SWf0

「タカちゃん、お腹すいちゃったの?」
しょんぼりした様子で花梨が俺の顔を覗く。
「えーと、そ、そうだ。花梨!今日の昼休み、タマゴサンドだけじゃなくて
 ハムカツサンドも取ってっただろ?」
「それはスキを見せるタカちゃんが悪いんよ。」
あのなぁ…。
「とにかくそういうわけで、俺はお腹がすんごい減ってるんだからしょうがないだろ!」
照れ隠しのために変に強がってしまう。今の俺ってもの凄くカッコ悪いかも…

「ふふふっ♪しょーがないなぁ。それじゃ花梨ちゃんが晩ご飯を作ってあげるよ。」
よいしょ…という掛け声とともに立ち上がった花梨は買い物袋を持ってキッチンに向かう。
「お、おい、大丈夫か?手伝おうか?」
慌てて俺も立ち上がる。そもそも花梨に料理なんて出来るのか?
「もしかして『花梨に料理なんて…』とか思ってたりして?」
ぎくっ!バレてた。でも花梨と料理ってのはイマイチ結びつかないと言うか…正直言って…不安。
「いいから、たかちゃんはあっち行った行った!」
「わ、わかったよ。」

下手に刺激するのもアレだし、素直に作らせることにしよう。
そう思ってソファに座りテレビを見る…フリをしてキッチンの様子を伺う。
「〜♪」
いつの間にかエプロンを身に着けた花梨が鼻歌を歌いながら野菜を切っていた。

トントントントン

お?以外に軽快なリズムを奏でる包丁の音。これは安心していいのかもしれない。
これ以上コソコソとキッチンを探るのも無粋な気がして、テレビに集中することにした。
500名無しさんだよもん:2007/07/04(水) 23:48:46 ID:odmALPjU0
私怨
501「けだものさん」 13/25:2007/07/04(水) 23:50:51 ID:bDxl6SWf0

しばらくして…

「タカちゃ〜ん!出来たよぉ!」
テーブルの上に並べられた料理。こ、これは…
「う、うまそう…」
タマゴサンド(やっぱり)にビーフシチュー、それにサラダ。彩りは申し分ない。
「でしょ〜?じゃ、食べよっか♪」
「お、おぅ。」
それじゃ、まずタマゴサンドから頂くとするか。
ぱくっ…。
もぐもぐ…。

「どうかな…?」
「う…、」
「う?」
「うまーーっい!購買部のより全然美味いよコレ。料理上手いんだな、花梨!」
「当然だよぉ。花梨ちゃんは毎日お母さんのお手伝いをするお利口さんなんだから。
 ほら、この特製ミステリシチューも食べてみてよ!」
ずいっとシチューを盛った皿が押し付けられる。
「うん、これもうまいっ!」
名前はともかくとして、シチューの味はとってもまろやかで、
なんていうか優しい味だ。タマゴサンドにも良く合ってる。
サラダもサラダで、かかってるドレッシングがこれまた格別。

久しぶりの家庭の味に、ついついがっついてしまった…。

「ふー。ごちそうさまー。」
502「けだものさん」 14/25:2007/07/04(水) 23:52:31 ID:bDxl6SWf0

「えへへっ。もしかして惚れ直しちゃった?」
「意外にも美味しくてビックリしたよ。」
「意外にも?」
「あははは。でもホントに美味しかった。ありがとう、花梨。」
誤魔化す様にぽんぽんと頭をなでる。
「まったくも〜ぅ。たかあき会員は会長に対してもっと敬意を表するべきだと思うんよ!」
人差し指を立てて力説するものの、頭をなでられているのであんまり様にならない。
むしろ微笑ましいというかなんというか。
「だから、こうやって敬意を表して頭をなでてるんだろ?」
「うん。それならよろしい!」
お互いおかしくなって二人でクスクス笑ってしまった。


「あ、もうこんな時間!」
花梨の声に時計に眼をやると…もう九時か。
食事の片づけをして、くだらない話をしているうちにすっかり遅くなってしまった。
そうだよな、花梨ももう帰らなきゃいけないよな。

「たかちゃん、あの、もう…」
「うん、送ってくよ。」
「…え?これから始まるんよ?」
「始まる…って何が?」
「も〜!そんなんじゃミステリ研の会員として失格だよ。花梨は非常に悲しいよ〜。」
「はい?えーと、もう帰るんだよね?時間も遅いし…」
「だ・か・ら!ミステリ研の活動はまだ終わってないんよ?これからが本番。あー!もうテレビ借りるね!」
そういうとテレビの元へすたたた。と走って行き、ぱちっと電源を入れる。

「ほらほらたかちゃん!丁度始まったよぉ!」
503「けだものさん」 15/25:2007/07/04(水) 23:54:46 ID:bDxl6SWf0

テレビに眼を向けると、「ジャジャーン!」という安っぽい効果音とともに
番組タイトルが映し出される。

『宇宙人は実在するのか!?〜あぁ世界よ神秘なれ〜』

なるほど。そういえば二、三日前に花梨に絶対観るように!って念を押されてたっけ。
それにしてもどっかで聞いたことあるようなサブタイトル…。
「でも時間は大丈夫なのか?あんまり遅くなると親も心配するんじゃ…」
「泊まるって言ってあるからだいじょぶだよ。あ、ホラホラ観て!
 これがこの前話した宇宙人のしゃもじだよ!地球上には存在しない物質で出来てて、
 どんなご飯でもしゃもじにお米粒をつけることなく綺麗に盛れるんだから!」

えーと、突っ込みどころが多すぎてどこから突っ込めば良いのやら…。
とにかく一番突っ込まなきゃいけないところは…
「泊まるって、この家に!?」
うん、これだ。
「そうだよぉ。だって真夜中に自分の彼女を家に帰すなんて、たかちゃんも心配でしょ?」
「いや、だから送ってくって…」
「あーーーーっ!たかちゃん!!観て観て!!これ宇宙人の使ってた風呂桶だって!」

…絶対この番組ウソだ…。

それにしてもこの様子じゃ帰りそうも無いし、家に泊めるしかないみたいだな…。
一つ屋根の下に年頃の男と女…。ちょっと緊張してくる。
テレビの前できゃっきゃと声を上げたり、うんちくを語る花梨。
その横で俺は一人落ち着かないままテレビの画面を眺めていた。
504「けだものさん」 16/25:2007/07/04(水) 23:57:08 ID:bDxl6SWf0

「あー面白かったね!実に参考になったよ。
 今後はオーパーツ探索をミステリ研の活動の中心にしようかな〜♪」
「そ、そうだね…。」
あえて感想は言わないでおく。ふと時計を見ると11時半。
「えっと…俺は風呂に入るけど、花梨はどうする?」
「風呂?お風呂?」
「う、うん…そうだけど…」
「…。」
急に押し黙ってしまい、もじもじし始める花梨。どうしたんだ?
「えーと、どうしたの?」
「たかちゃん…お風呂、いっしょに入る?」
えっと、お風呂に一緒に入るっていうのはいわゆる、えーっとそういう事で…
えええええええええ!?

「たかちゃんの背中流してあげるよ。」
言った花梨もかなり恥ずかしかったらしく、耳まで真っ赤にしている。
当然俺も茹で蛸の様に真っ赤になってるわけで
「え、え、え、えーと!そそそその…」
パニくっているのが自分でもわかる。

「ほ、ほら。俺達、ミステリ研会員として、高校生らしく健全なお付き合いを…、
 それに…そーだ、俺体柔らかいから背中だって余裕で洗えるし、
 それにそれに、我が家の風呂って狭いからさ、あはははははは!」
自分でも訳わからないくらいにまくし立てる。
「たかちゃん…?」
俺の言い訳(?)に少し落胆した様な花梨を横目に、
「と、とにかく今日のところは遠慮しとくでありますっ!」
誰かの口癖を借りつつ、俺は逃げるように風呂場に向かって走り出した。
505「けだものさん」 17/25:2007/07/04(水) 23:59:25 ID:bDxl6SWf0

花梨の事だから、もしかしたら無理やりにでも風呂に乱入してくるのかも…と、
どこかで期待、もとい不安を抱えて入浴していたんだけど、そんなことは無く
平穏無事に風呂を済ますことが出来た。

「風呂上がったぞー!」
あれ?リビングに花梨の姿はなかった。
「おーい、花梨ー?」
廊下に出て家中に響くように声を上げる。

…すると、
ぱたぱたぱたぱた!

スリッパで階段を駆け下りてくる音。なんだ、二階にいたのか。
「たかちゃんお風呂上がったんだ!ごめんね、一緒に入れなくて。
 花梨会長は重大な任務を今まで遂行してたんよ!」
ニヤニヤしながら俺を見てくる。
「な、なんだよ、その任務って…。」
「別にぃ♪それじゃお風呂借りるね〜!」
何してたんだ?花梨のやつ…。
…まいっか。どーせ花梨の事だし、家中探検でもしてたんだろう。
花梨の行動をいちいち気にしてたら負けだ。それよりも今の内に花梨の布団を敷いておかないと。

そこでふと思う。
…敷くってドコに?客間?俺の部屋?
うーん…。でも考えてみれば同じベッドって選択肢も無いわけじゃ…
一応恋人同士なわけだし。

まぁ間を取って俺の部屋に敷いておこう。…何の間だかわかんないけど。
506「けだものさん」 18/25:2007/07/05(木) 00:02:01 ID:9jJ8NvdS0

そうこうしてる間にお風呂場の扉の開く音が聞こえてくる。
いつの間にか結構長い時間悩んでいたみたいで、
花梨が風呂から出てきてしまったみたいだ。

あせあせと部屋に布団を敷いているとパタパタと階段を上ってくるスリッパの音。

ガチャ。

「あーごめん。まだ布団敷いて…」

…。
俺の手が止まった。

そこにいた花梨の姿に思わず息を飲む。
半乾きの髪をおろして、オレンジ色のチェックのパジャマを着て…
ただそれだけの事なのに、
いつもの花梨じゃない気がしてすごくドキドキしてしまう。

そうか。パンパンに膨らんでたあのバッグ…。
パジャマとかお泊りセットが入っていたからあんなに膨らんでいたのか。
うんうん、なるほど。
…などと冷静になるためにそんなどうでも良いことを分析してみる。

「えっと…ど、どうしたのかなぁ?たかちゃん…。」
そんな様子に気づいたのか不安そうな面持ちで俺の顔を覗き込む。

「花梨が…そ、その、可愛かったから。」
耳まで真っ赤になっているのが自分でもわかった。
507「けだものさん」 19/25:2007/07/05(木) 00:07:42 ID:9jJ8NvdS0

「そっかそっか、うんうん。たかちゃんは風呂上りの花梨ちゃんに弱いんよね♪」
俺の言葉に気を良くしたのか、頬を赤らめながら花梨は笑っていた。
「それでたかちゃんは、けだものさんになっちゃうのかな〜?」
花梨が俺の様子を探るようにそろそろと近寄って来る。
それに伴って、シャンプーの香りと女の子の甘い香りがふわっと辺りを包む。
その香りが鼻を通して、脳天に直接突き刺さるような感覚に襲われた。
俺の理性さんが駆け足でお出かけしようとするのが自分でも判る。
その理性さんをぐっと捕まえて何とか踏みとどまらせた。

「え、いやそんな、俺、けだものなんかじゃないし。」
正直かなりギリギリの状態ではあるんだけど…。
「もう!往生際が悪いよ、たかちゃん!」
そう言って花梨は俺の机に向かってタタタっと走っていく。
そして机の引き出しの二重底になってる底を…って!
「お、おい!ちょっとタンマ!」
「タンマは無しで〜っす!」
慌ててやめさせようとするけど、時すでに遅し。

「ぱんぱかぱーん!」

俺の…その、…な本を高く掲げる花梨。

終わった…。
ガクッと膝を突いて崩れ落ちる。
俺が風呂に入ってる間に遂行していたという任務はこれの事だったんだ。
なんかニヤニヤしてたしな…
508名無しさんだよもん:2007/07/05(木) 00:10:09 ID:jeM4xsCd0
深淵
509「けだものさん」 20/25:2007/07/05(木) 00:10:21 ID:9jJ8NvdS0

あぁ。タダでさえ主従関係とか言う花梨のことだ。
きっとこれをネタにこき使われる日々が続くだろう。
俺が陽の光の下でタマゴサンドを食べられる日は当分先かな…。

「これが証拠よね。」
「はい…。」
「やっぱりたかちゃんはけだものさんなんよね。」
「そう…みたいです。」
「だったら…なんで…」
「…?」
「だったらなんで…けだものさんにならないのかなぁ…」
「えっ?」

花梨の言った言葉の意味が理解出来ず、俯いていた顔を思わず上げる。


花梨の瞳から涙の雫がぽろっ。と頬を伝って落ちていった。
スローモーションのように見えたその瞬間…頭の中が真っ白になる。

花梨が…泣いてる?

花梨は持っていた本を机の上に静かに置くとそのまま手で顔を覆ってしまった。
ズキっ!
急に胸の辺りに針で刺されたような痛みが走る。

…俺が泣かせた?
510「けだものさん」 21/25:2007/07/05(木) 00:12:31 ID:9jJ8NvdS0
「うぅぅ…うっ…ひぐっ…。」
何で泣いているのかはわからなかったけど、
それでも俺は泣いている花梨を、ふわっと静かに抱きしめていた。
頭の中は真っ白なのに、それでも勝手に動いた体に自分自身少し驚く。
「うっ…うぅっ…」
「…。」
そっと頭を撫でた。ふわふわとした花梨の髪。
おろしてある髪は、俺の手の動きを優しく受け入れてくれた。
「大丈夫…。大丈夫だから…。」
それは花梨に言った言葉なのか、自分に向けて言った言葉なのか。
罪悪感でいっぱいの俺の胸に、花梨は顔を押し当て嗚咽を漏らす。
「うぅ…ひくっ…。」

静かな部屋に花梨のか細い泣き声だけが響いていた。

「えっと…落ち着いた?」
「…うん。ごめんね、たかちゃん…。」
「こっちこそ…その、俺のせいで泣いてたんだろ?」
「…。」
沈黙が何よりの答えだった。俺のせいで…。
胸がきゅうきゅう締め付けられる。
511「けだものさん」 22/25:2007/07/05(木) 00:14:54 ID:9jJ8NvdS0

「あのね、たかちゃん…私のこと…好き?」
「当たり前だろ?誰よりも好きだよ。」
「…本当?」
「本当。」
いつもと違った弱々しい花梨の声に、俺も真面目に答える。
「でも…けだものさん…」
「え?」
「たかちゃん…けだものさんにならないよ…?」
「けだものさん?」
「だってあの日以来…その…そういう事してなかったから…」

あの日っていうのは、あの山火事のあった日のことだよな…。
確かに花梨とはあの日以来、体を重ねたりはしていなかった。
もちろん、恋人として手を繋いだり、抱きしめあったり、キスしたり、
そういうことはしてたんだけど。

「だからたかちゃん、もう私のことそういう風に見てくれて無いのかなって…。
 昼休みだって断わられちゃったし、晩御飯の前はお腹鳴っちゃうし、
 お風呂も一緒に入らないって言うし…。私が普通じゃないから…
 だから女の子として見てくれなくなっちゃったのかなって!」
次第に語気を強くして、目に涙を浮かべながら訴える。

そうか。そのせいで…、俺のせいで昼から時々寂しそうな顔をしてたんだ。
えっと、お腹が鳴るのは仕方ないとは思うんだけど…。
ちゃんと話さなきゃいけないよな、俺の気持ち。
でも何から話せば…。

まぁいいや。うだうだ考えてたって仕方ない!
512「けだものさん」 23/25:2007/07/05(木) 00:16:22 ID:9jJ8NvdS0

「…!」

不意に花梨の唇を奪う。

「えっと…たかちゃん?」
狐につままれたような表情で俺の顔を見上げている。
俺も意を決して口を開いた…。
「俺、花梨の事ちゃんと女の子としてみてる。
 もちろんそういうこともしたいって思ってる。今だって。」
「じゃあなんで…!」
その言葉を制するように続ける。
「でも、そう思う以上に、…花梨のことが大切なんだ。」
「大切…?」
「うん。その…俺達って付き合う前にそういう事しちゃっただろ?
 俺、そのこと未だに少し後悔してる部分があってさ…。
 だから、その分、今は凄く大切にしようって心に決めてて…だから…」
「たかちゃん…。」
「でもそのせいで花梨の事傷つけちゃって…本当にごめん。大切にするって決めたのに…。」

自分が情けなくて肩を落としてしまう。
いくら相手の為って考えても、
いくら大切に想っても、
…それで相手を傷つけたら何の意味も無い。
結局俺の行動は独りよがりなものだったんだ。
勝手に一人で「大切にしてる」って満足して、
相手の気持ちも考えてあげられない…本当に俺は馬鹿だ。
513名無しさんだよもん:2007/07/05(木) 00:18:28 ID:K3G7WOjQ0
私怨
514「けだものさん」 24/25:2007/07/05(木) 00:18:43 ID:9jJ8NvdS0

「たかちゃん…やっぱり優しいんだね。」
「え?」
「私…そんなに大切にされてたのに…たかちゃんのこと疑って馬鹿みたい…。」
「そ、そんなことないよ!悪いのは俺の方で…」
「たかちゃんの気持ちに気づかなかった私が悪いんよ。」
「…。」
「…。」
何となく無言…。お互いに非を認めてしまった為に、言葉がなくなってしまう。

「…。俺も…自分のこと馬鹿だなって思ってた。」
「そうなの?」
「うん。」
「ふふふっ♪それならおんなじだね。」

そういって花梨は優しく微笑んだ。

今まで締め付けられていた胸が、じわーっと暖かい気持ちに包まれていくのを感じる。
自己嫌悪や罪悪感、さっきまで感じていた負の感情もどんどん消えていった。

「ありがとう。」
素直に口から出てきた言葉。
何に対してだか、よくわかんないけど…とにかく花梨にお礼を言いたかった。
「たかちゃんもありがとっ。これからも私の事大切にしてね!」
「もちろん。すっごく大切にする。」
「…え〜っと、こうしてたかちゃんは心優しい花梨ちゃんに
 メロメロになってしまいましたとさ。めでたしめでたし?」
「あのなぁ…」
515「けだものさん」 25/25:2007/07/05(木) 00:20:24 ID:9jJ8NvdS0

そう言いかけた俺の口を花梨の唇が塞ぐ。

「…!」
「さっきのお返しだよ〜♪」

ドキっ!と胸が高鳴ったのと同時に、再び俺の中の理性さんがお出かけの準備を始める。
くらくらする頭の中で必死に自分を保とうと踏ん張る俺。

そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、
悪戯っぽく笑った花梨は唇を耳に近づけ、ふぅっと息を吹き込かけてくる。
思いがけない行動に背筋がゾクゾク反応するのと同時に、
花梨の甘い囁きが頭の中を駆け巡った。

「でもね、花梨は…けだものさんになったたかちゃんも大好きなんよ?」

その言葉で頭の中で何かが崩壊したような気がした。
さようなら、理性さん。こんばんわ、けだものさん。

…笹森会長いわく、それからの俺は「すごく大胆だった。」…らしい。


おわり。
516↑の作者:2007/07/05(木) 00:23:49 ID:9jJ8NvdS0
支援ありがとですー。
それにしても長い。まさかこんなに長くなるとは。…ぐだぐだなのはきっと気のせい。
SS書くのはほとんど初心物みたいなもんなんで、読みにくかったりしたらごめんです
517名無しさんだよもん:2007/07/05(木) 00:32:18 ID:6IzzozvK0
GJGJGJGJ!!!!!!
花梨いいよいいよー
518名無しさんだよもん:2007/07/05(木) 13:18:41 ID:q+P1O/ptO
ADでも春夏さんが攻略対象ぽくなくて愕然とした…
519名無しさんだよもん:2007/07/05(木) 14:22:54 ID:To5v8/kxO
どんなにいいSSでも黄色がヒロインだとまったく萌えないから不思議。
でもSS自体はとてもいいと思うし次はもっといい材料で書いてくれるのを楽しみにしてます!
520名無しさんだよもん:2007/07/07(土) 00:02:20 ID:QOB9EpB3O
>516
521名無しさんだよもん:2007/07/07(土) 00:05:36 ID:QOB9EpB3O
>516
GJ。初心者として上出来。むしろ問題無し?花梨SSは久しいな。ごちそうさま。
あと高明→貴明 ねw

あと↑ゴメンナサイ(つД`)
522初カキ:2007/07/07(土) 10:43:55 ID:qqFokg950
ここで、僭越ながら、妄想的短編を。
523花嫁は……?:2007/07/07(土) 10:46:36 ID:qqFokg950
「うーん、どうしたものか」

 俺、河野貴明は自室で悩んでいた。

 先程――下校途中で見かけた、ピンク髪のちょっとヘンな少女を助けたところ、「うーは、るーの恩人だ。何か望みはないか? 何でもひとつかなえてやる」とマッチ棒のようなものを渡されたのだ。

 その際、いくつかの奇跡的な出来事を見せてもらったので、これが単なる電波少女の戯言ではないことは、一応納得している。

 しかし――とくに望みというのが思いつかないのだ。別に自分が無欲だとは思わないが、今の日常には十分満足している。
 それに叶うのはひとつだけなのだ。せめてこれが3つとかなら、くだらない願いを1、2個かなえてもらって様子を見るということもできるが、ひとつとなると、下手な願い事をして逆に自分の首を締めるハメになってはたまらない。

「年ごろの牡なら、何か願いがあるだろう。良き連れ合いが欲しいとか」

 不意に少女の言葉を思い出す。

(連れ合いって、この場合、お嫁さんってことだよなぁ)

 確かに、それはちょっと欲しい。

(この貴明は、いわゆるヘタレのレッテルを貼られている。女の子と話すだけで心臓がバクバク、手なんて触れようもんなら動揺しまくることしょっちゅうよ)
 と、どこかで聞いたような台詞が浮かんでくる。

(だが、そんな俺だって、決して女の子に興味がないわけじゃあない……)
 と言うか、正直に言えば大いに興味はある。

 しかし……自分の好みのタイプ、それもお嫁さんにしたいような女性と言うのはいったいどういう人なのだろう。
524花嫁は……?:2007/07/07(土) 10:47:27 ID:qqFokg950
 試しに知り合いの女性の中からタイプを絞り込んでみることにする。

 (まず、優しい。これは絶対だよな)

 幸いと言うか、これは大半のメンバーが当てはまった。
 黄色い子とかピンク髪の先輩の顔が消えたような気がするけど、キニシナイ!

 (えーと、欲を言えば美人で女らしい……)

 幼なじみのこのみは姫百合姉妹のような娘たちは、可愛らしいとは思うが、恋愛対象とはちょっと違うかもしれない。
 「え〜、ヒドいよタカくん」とか「る〜」とか言う声が聞こえたのは気のせいだろう。

 (料理とか掃除とかの家事が得意で……)

 なぜか草壁さんといいんちょがガッツポーズし、逆に由真が悔しがる映像が浮かぶ。

 (欲を言うならプロポーションが良くて……)

 あ、いいんちょが点滅気味。草壁さんはセーフ。タマ姉は得意げ。
 
 (お淑やかで、かつ男を立ててくれるタイプで……)

 「ちょ、ちょっとタカ坊?」とか言う慌てたような声は聞かない方向で。

 (それでいて……え、エッチなことに寛容だと最高)

 「え、えっちなのはいけないと思います」「河野さんのエッチ」
  ご、ごめん、草壁さん、久寿川先輩……って、なんで謝ってるんだろ、俺。
525花嫁は……?:2007/07/07(土) 10:48:13 ID:qqFokg950
 「…………あれ?」

 こうやって絞り込んでいくと、該当者がひとりしかいないことに気づく。
 いや、もちろん世界中を捜せば条件に当てはまる女性は一杯いるだろうし、そもそも検索したのが知り合いの、自分から見た勝手なイメージでしかないのだ。

 それでも……ポツリと呟いてしまう。

 「うーん、イルファさんみたいな奥さんがいてくれたらなぁ」

 瞬間、手の中のマッチ棒モドキが発光する。

 「うわっ、な、何だ!?」

 光はそのまま大きくなり、部屋中に広がったかと思うと。

 ちゅどーーーーーーーーーん!!!

 お約束のごとく爆発した。
526花嫁は……?:2007/07/07(土) 10:50:03 ID:qqFokg950
 同時に、ベッドに腰かけていた俺の上から、”何か”が降って来て、俺を押し潰す。

 「きゃっ!」 「へげめっ!!」

 幸いそれほど重たいモノじゃなかったんだが、不意打ちなので、さすがにベッドの上であおむけに倒れてしまう。

 そこにいたのは、勿論、お約束に違うことなく――イルファさんだった。
 しかも、いつもの機能的なメイド服じゃなく、純白のウエディングドレスを着て、頭にはベールまで被っている。
 あ、左手の薬指に白い手袋の上から銀色の指輪まではめているのが、芸が細かい。

 「こ、ここはいったい……」

 「ごめん、イルファさん。悪いけどどいてもらえないかな」

 俺の腹の上でキョロキョロしているイルファさんに声をかける。

 「えっ……貴明さん? す、すみません!」

 慌ててイルファさん俺の身体から離れる。

 (あ、いい匂い……)

 その女性らしい香りとやわらかな身体の暖かさが遠くなるのを、惜しいと感じてしまうあたり、俺もやっぱり”男の子”なんだろう。

 でも、その時の俺は気づいていなかったんだ。
 イルファさんの両耳にいつものセンサーがついていないことに。
 いつの間にか、俺の左手薬指にもイルファさんのとそっくりな結婚指輪がはまっていることに。
 そして、河野貴明とイルファ―河野・H・イルファのラブラブ&トラブルな新婚生活が
この時すでに始まっていたのだと言うことに……。

−つづく?−
527花嫁は……?あとがき:2007/07/07(土) 10:50:58 ID:qqFokg950
以上。電波に命令されて書きました。
ヒロイン全員とそれなりに面識を持って五月を迎えたという設定。
各ヒロイン像は、私の勝手なイメージですので、扱いがおざなりな子もいますが、「そんな娘じゃないヨ!」と言う非難はご勘弁を。
一応、2話・うれしはずかし新婚初夜編、3話・問題!?高校性夫婦編は想定してますが、私の筆力が追いつくか……。
528名無しさんだよもん:2007/07/07(土) 11:50:19 ID:/JHD2NUA0

七夕にいい夢を見させてもらった
529名無しさんだよもん:2007/07/07(土) 20:18:48 ID:auZA+CczO
GJ
新鮮でよかった
続きも期待してます
530名無しさんだよもん:2007/07/07(土) 21:21:59 ID:beZsK8zV0
いいんちょはプロポーション悪いか?
・・・何を基準とするかだが
531名無しさんだよもん:2007/07/07(土) 22:09:44 ID:l4Xi25hV0
お菓子ばっか食ってるから
悪いイメージがあるが実はそうでもない気がする今日この頃。
532名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 02:30:27 ID:7nt5lvT50
ささらはエッチに寛容だろ……とか思ってしまう。
あの乱れっぷりとか見るとさ。
533名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 03:26:23 ID:Mf0TuoHHO
>>527
GJ!
俺もイルファさんのような嫁がほしいぜ…
534名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 03:41:26 ID:iWSaPqgmO
>>532
ささらのおっぱい食べて〜だしな
逆幼児プレイみたいな感じだったし
535クラスメイトごっこ 1/14:2007/07/08(日) 16:09:38 ID:fVP+AYth0

「タ〜カく〜ん!」
ガラガラっ!と勢い良く教室の戸が開かれる。
その声の主は俺の姿を確認すると、すたたたっ!っと
驚くほど機敏な動きで駆け寄って来た。
「一緒に帰ろっ♪」

校門で待ち合わせて一緒に帰る…というのは昔の話。
恋人と言う間柄になってからは、
放課後このみがこうやって俺のクラスまで迎えに来るのが日課になっていた。
そのおかげでクラスの奴らからは、すっかりバカップル扱いされてるわけなんだけど…。

「あのなぁこのみ…」
「なに?タカくん?」
「周りを良く見てみろ…。」
このみがキョロキョロと教室内を見渡す。

放課後とは思えない生徒の数。
揃いも揃ってみんな自分の席。
そして教壇にはクラス委員長である小牧の姿…。

…クスクスクスクス。
教室のあちこちから笑いが起こる。

「あわわわわ!も、もしかしてタカくんのクラス、まだ終わってないの!?」。

そう、普段ならとっくにクラスは解散している時間なのだが、
今日に限って饒舌に自分の青春時代を語り始めた担任に加え、その後の
「今日は連絡事項があるので時間をくださーいっ!」
という小牧の言葉によって、俺達のクラスは未だに帰りのHRを終れずにいたのだ。
536クラスメイトごっこ 2/14:2007/07/08(日) 16:11:35 ID:fVP+AYth0

「ったく…普通気づくだろ。そりゃ私語も多くてうるさかったけどさ…。」
「あぅ〜…。」
周りの視線に小さな体を更に小さくするこのみ。
俺だって穴があれば入りたいよ…。

「はーい、それでは続けますよー。あ、そうだ。柚原さん、良かったらそこの席どうぞ♪」
小牧がニコニコしながら俺の隣の席をちょいちょいと指差す。
そういえば横の席の奴、今日休んでたっけ。…って、なに促してるんですか!?

「おーっ!転入生だぁああ!」
「っていうか、むしろ飛び級?」
「よろしくねっ、このみちゃん♪」
「妹系だー!よっしゃあああ!」
「それでは、柚原さん、一言どーぞっ!」

クラスの奴らが一斉に騒ぎ始める。
相変わらずみんなノリ良いな…。
それに律儀にぺこぺことお辞儀で答えるこのみ。そして、

「え…えっと、柚原このみです!タカくんがいつもお世話になっています!」

…。

一瞬の沈黙の後、クラス中から爆笑の声が上がった。


うー…。
このみの奴余計なこと言いやがって。
あまりの恥ずかしさに目の前が一瞬真っ白になる。
当のこのみは何をそんなに笑われているのかわかないようで、きょとんとしていた。
537クラスメイトごっこ 3/14:2007/07/08(日) 16:14:16 ID:fVP+AYth0

「うひひっ!!いつもお世話って!!お世話って!!
 親かっつーの!!嫁かっつーの!!ぶわーっはっはっは!!!」
「お前は笑いすぎなんだよ、雄二!」
とりあえず、直ぐ後ろの席でクラス一、大爆笑している雄二を思いっきり殴っておいた。
「ひひっ!!ひっく…で、でも良かったなチビ助。
 ずっと貴明と同じクラスになりたかったんだろ?」
「うん♪」
笑いを堪えながら言う雄二にこのみが嬉しそうに答える。
はぁ…。死ぬほど恥ずかしいけど、このみが喜んでくれたのなら、まぁいいか…。
そう思いつつも、もう一度雄二を殴っておくことにした。


「静かにー、静かにー!も〜ぅ、上級生らしく静かにしてよ〜!」
いつものように少し涙目になりながらクラス中に訴える小牧。
…元はと言えばこの騒ぎ、小牧の一言が原因なんだけどね。
「そうだぞー。小牧の言うとおり、お前ら上級生らしくしろー。」
ぱんぱんと手を叩きながら続けて担任も言うと、いくらか教室の騒ぎは収まった。
というか先生…あなたも乗っかるんですね…。

「はい。それでは改めてっと、実は、図書委員会の新作図書を受け入れる仕事があるんですけど、
 その今日の当番がウチのクラスみたいなの。でもウチの図書委員、今日は二人とも休んじゃってて…」
そういえば今このみが座ってる俺の隣の席…、ここに座ってた女子も図書委員だっけ。
クラスを見渡すと、もう一人の図書委員の席も空席になっていた。

もしかして二人してサボり…?

「それで、今日一日代理の人を立てて仕事をやってもらいたいんですけど…。」
538クラスメイトごっこ 4/14:2007/07/08(日) 16:15:50 ID:fVP+AYth0

えええええええっ!
教室中から不満の声が上がった。
そりゃそうだ。そんなめんどくさそうな仕事、引き受ける物好きなんて居るわけが無い。
どうせ誰も立候補しなくてクジにでもなるんだろうな。
頬杖をついてどこか他人事のように考えていると…

じーっ。
…横からものすごーく視線を感じる。

「えへ〜♪」
「なんだよ、このみ。」
「ここの席の人は幸せだな〜って思って。」
「ん?なんで?」
「だってタカくんの横顔を毎日こうやって眺めていられるんだよ?いいなぁ…。」
「そんなもんこのみくらいしか見ないってば。」
「え〜、そんなことないよ。」
「そんなことあるの。」
「そうかなぁ…。ねぇタカくんタカくん、この席の人って…女の人?」
「あぁ、そうだけど?」
「むぅー!」

ぷくーっと頬を膨らませるこのみ。
「えーっと…もしかして妬いちゃったとか?」
「そりゃ妬くよぉ!このままじゃこの席の人がタカくんの事好きになっちゃう!」
「…なんだそりゃ。」
「そうだっ!こうしてっ、こうしてっと…。」
このみは両手をぐいと広げて、机の両端を持つと
そのまま俺とは反対の方へずずずっと机を引きずっていく。
…そんな事したって明日には直されると思うんだけど…。
539クラスメイトごっこ 5/14:2007/07/08(日) 16:17:38 ID:fVP+AYth0

「いや、このみ?たしかその子、他の学校の男と付き合ってたような気がするけど…。」
「だめだよ!お互いに浮気ってことも…、んしょっと。」
浮気って…、もう少し俺の事を信用しろよ。

それにしてもこのみのやつ、このままじゃ廊下にまで机を持って行きそうな勢いだな。
仕方が無い。
「ほらほら、このみおいでおいで〜。」
動物を呼ぶような手つきで手招きする。
「え?タカくん?」
「そんなことしたらこのみまで離れて行っちゃうだろ?ほら、おいでおいで〜。」
「えへへ〜♪」
机を引きずったまま、今度はこちらに向かってずずずーっと寄ってくる。
単純な奴め。
「到着であります!」
当初の位置よりもだいぶ近くなってるような気もするけど、まぁいいか。
「よしよし。」
このみの頭の上にぽんっと手を置いたところでふと異変に気がつく。

…。
なんか妙に静かじゃないか?

ギギギギ…っとロボットの様に首を回してみると、
教室に居る全員が俺達のやり取りに好奇の眼差しを向けていた。

「お、お前ら…甘すぎるぞおおおおお!」
雄二の叫びをきっかけに、教室中から
わー!とか、きゃー!とか歓声が上がる。
慌てて手を離すと、俺もこのみも顔を真っ赤にして俯いてしまった。
顔から火が出るってのは、こういう状態を言うんだろうな…。
540クラスメイトごっこ 6/14:2007/07/08(日) 16:19:39 ID:fVP+AYth0

そんな歓声の中、雄二はニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべると、
得意の七色の声を使って見せ付けるように一人芝居を繰り広げ始めた。
「この席の人がタカくんのこと好きになっちゃうぅ♪」
「そんなわけ無いだろ…俺にはこのみしか見えないんだから…ほら、おいで。」
「タカくん…あ、ああああこんなところで、だめええぇ♪」
「このみぃいいいいい…俺の子供を、ごふっ!」

雄二の胸に向かって遠慮なく右ストレートを放つ。
「んなこと言って無いだろっ!TPOをわきまえろよな。そんなんだからお前はモテないんだよ。」
「TPOって、さっきまで教室でいちゃついてた奴に言われたくねーよなぁ。」
うっ…痛いところを突いてきやがる…。
「お、そうだ!良い事思いついた。おーい!いいんちょー!!」
「え、は、はい!向坂くん!?」
俺とこのみのやりとりに顔を真っ赤にしていた小牧は急な呼びかけに驚き、声を裏返した。
「さっきの仕事っての、河野くんと柚原さんが適任だと思いまーす!」

雄二のその言葉に…
「賛成!」
「ナイス向坂!」
「放課後に二人きり…いや〜ん♪」
「二人の始めての共同作業、皆さんどうか暖かい拍手を!」
「パチパチパチパチ!!」
「結婚おめでとーっ。」
「かんぱーいっ!」
クラス全員が答える。

お前ら…その団結力をもうちょっと違うところで発揮しようとは思わないのか…。
541クラスメイトごっこ 7/14:2007/07/08(日) 16:22:14 ID:fVP+AYth0

「えーっと、河野くん、柚原さん…お願いしても良い…かな?」
他の奴らとは違って遠慮がちに聞いてくるあたり、さすが小牧といったところか。
やれやれ…。こうなったからには仕方ないよな。
「わかったよ小牧さん。謹んでお受けします。」
「うん!タカくん、がんばろうね!」
このみもやる気まんまんみたいだ。

「はい、そういうわけで今日は解散ー。」
クラスの様子をニヤニヤ眺めていた担任が大きな声をあげて、ようやく帰りのHRは終った。


「それじゃ頑張れよ。貴明、チビ助。でも頑張りすぎて学校で…ごぶぁっ!」
余計なことを言いそうな予感がしたので先に殴っておく。
「さっさと帰れ。」
「へいへい。お邪魔虫はさっさと退散させていただきますよー。」
「じゃあね、ユウくん。タマお姉ちゃんにもよろしくね!」
「あいよ〜。」


二人で雄二を見送っていると、申し訳なさそうに小牧がやってきた。
「ごめんね河野くん、本当はあたしがやるべき仕事なんだけど、
 今日はクラス委員の仕事が遅くまでかかりそうで…。」
「いいっていいって。俺も暇だったし、このみだってそうだろ?」
「うん!大丈夫だよ。任せてください!」
「このみちゃんもごめんね。違うクラスなのにウチのクラスの仕事押し付けちゃって…」
「いえ、ワタクシ柚原このみは、今日一日このクラスの生徒になったでありますよ!」
ぽんっと胸を叩いて答えるこのみを見て、小牧は嬉しそうに笑った。
542名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 16:27:00 ID:f7NZmErn0
私怨
543名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 16:28:46 ID:jiXBtWPA0
sien
544クラスメイトごっこ 8/14:2007/07/08(日) 16:29:03 ID:fVP+AYth0

「ふふふ♪このみちゃん可愛い!こんな可愛い彼女が居て河野くんは幸せ者だよ〜。」
「そ、そうかな?」
「それに二人って、すごく自然…って言うか、しっくりくるって言うか…とにかくお似合いだよ。」
「えへへ〜♪お似合いだってさ、タカくん。」
ちゃんと聞こえてるから繰り返さんでいい!恥ずかしいだろ。

「コホン!それでコレが仕事の内容ね。そんなに難しい仕事じゃないから心配しなくて大丈夫だよ〜。
 あぅ!もうこんな時間、それじゃあたしもう行くから、二人ともお願いしますねっ。」
プリントを一枚差出し、ぺこりと丁寧にお辞儀をしてから、てとてと…と小牧は走っていってしまった。
「タカくんタカくん、それで、仕事の内容って?」
小牧のお辞儀に、これまた丁寧にお辞儀を返していたこのみが頭を上げてプリントを覗き込む。

え〜っとなになに…
545名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 16:29:29 ID:RBDKz6FT0
しえん
546クラスメイトごっこ 9/14:2007/07/08(日) 16:31:13 ID:fVP+AYth0

…。

「あぁ疲れた〜。」
「意外と時間かかっちゃったね。」
「まったく、このみがバーコードを何度も曲げて張るからだろ?」
「うぅ、だって難しかったんだもん…。」
今まで作業していた図書室を後にし、荷物を取りに教室に向かって歩く。


俺達がやっていた仕事の内容というのは、
まず校門に仕入れられた新書を図書室まで運び、
本のカバーをはがした後、すでに用意されたバーコードを後ろの表紙に、
そしてシールを背表紙に張り、最後にそれを本棚に収める。
…という、小牧の言うとおり誰にでも出来るような単純な作業だったんだけど…

予想以上の本の数と、
予想以上のこのみの不器用さのために、
予想以上に時間がかかってしまっていた。
予想以上に。

「…。」
このみも自分で自覚しているのか、すっかり肩を落としていた。
「そんな落ち込むなって。ジュース奢ってやるからさ。」
「ほんと!?やたー♪」
両手を挙げ、喜びを露にする。
こういう時は何か餌を与えるのが一番だってことは長年の付き合いから熟知していた。

ほんの少し遠回りして、自販機でジュースという名の餌を買い与えると、
このみは尻尾を振ってよろこんでいた…様に見えた。
547クラスメイトごっこ 10/14:2007/07/08(日) 16:33:11 ID:fVP+AYth0

ガラガラガラ。
「ただいまー。」
教室の扉を開けると自分の家に帰ってきたような感覚に陥って、
ついそんな言葉を口にしてしまう。

時間が時間だけに教室には誰も居なかったが、
窓から差し込むオレンジ色の夕焼けによって昼間とはがらりと表情を変えた教室。
そこは誰も居ないという状況がとても良く似合っていた。

ドラマのワンシーンみたいだな。
…そんな風に考えながら自分の席に腰掛けると、いそいそと帰りの支度を始める。
「タカくん…。」
「あ、ちょっと待ってな。すぐ終るから。」
乱暴に教科書をかばんに詰め込む手が、何かの抵抗により不意に止まる。
俺の制服の袖をぎゅっと握るこのみの手。
「ん?どうかした?」
「あのね…私、もうすこしこの教室に居たい…。」
「へ?」
「だって…、明日になったら、また別々のクラスだから…。」

なるほど、そういうことか。

「それじゃ、少しだけだぞ?下校時間過ぎると色々めんどくさいからな。」
「やたー!」
そのまま隣の席に座ると、足をぶんぶん振って喜びを全身で表現する。
ほんとにわかりやすいよな、このみって。
548クラスメイトごっこ 11/14:2007/07/08(日) 16:35:30 ID:fVP+AYth0

「そんなに同じクラスが良いのか?」
「当たり前だよー!同じクラスになったら授業中ずっとタカくんを眺めるんだぁ♪」
「少しは黒板も見なさいっ。」
「わかってるよぉ。」
すねたような仕草。その頭にぽんと手を載せる。
「えへへ〜♪」
すぐに機嫌を直してしまうこのみが可愛らしくて、つい顔が綻んでしまった。

クラスメイト…。このみが同じクラスだったら…か。

そうだ!

さっとこのみの頭から手を離してから澄ました表情を作り、きちんと椅子に座りなおす。
「?」
怪訝な顔をしてるこのみは無視してっと。

「あーっ!しまったぁああ!宿題やってくるのすっかり忘れたー!
 ごめん柚原さん。見せてくれないかなぁ?」
パチッと手を合わせてこのみ…もとい柚原さんにお願いのポーズ。
「??」
「ほら、このみも。」
「えっと…どしたの、タカくん?」
「だーかーらー、クラスメイトごっこ。同じクラスになりたいんだろ?ほら、柚原さんも!」
「あ、うん。えーとタカく…じゃなくて、河野くんまた忘れたの?しょうがないなぁ。」
棒読みな台詞を吐きつつ、柚原さんはカバンからの適当なノートを取り出す。
「ありがとっ!恩に着るよ!」
「河野くんったらすぐ私に頼るんだから!少しは自分でやんなきゃだめだよ?
写してばっかりじゃ自分のためにならないんだからね。」
549クラスメイトごっこ 12/14:2007/07/08(日) 16:37:31 ID:fVP+AYth0

むむむ。そういう世話焼きキャラで来るか。
俺も負けじとノートとシャープペンを取りだし、答えを書き写す…フリをした。
「あ、柚原さん、ココ間違ってるよ?」
「え?あ、そう?ごめん。」
「あとココも。」
「うぅ…」
「あとココとココと、それにココ。あとココもだ!それにそれに…」

「もーっ、タカくーん!なんでそんなに私お馬鹿な設定になってるのぉ!?」
「タカくんじゃなくて河野くんだろ?まったく。これ位のアドリブ対応してもらわないと。」
「むーっ、それじゃ河野くんにはもう見せてあげないっ!」
ひょいっと俺の机から自分のノートを取り上げる。
「へへーん、残念でした。もう全部写し終わっていましたー。」
「むむむむむーっ!タカくんいじわるだよぅ!!」

頬を大きく膨らませて完全にむくれてしまっている。
やりすぎたかな?
「ごめんごめん、そんなに怒るなって。」
「うーっ。いいんだいいんだ。タカくんがそうやって毎日女の子に
 宿題見せてもらってる…っていうのは良くわかったんだから。」
「それは誤解だって!むしろ俺は見せてやってるくらいだよ。雄二とか雄二とか、あと雄二とかに。」
「ホントにー?」
「ほんとに。」
「ホントにホントにー?」
「ほんとにほんとにほんと!それよりほら、クラスメイトの気分は味わえた?」
「んーと、えーっと、…微妙かも。」
「…だよな。」
550クラスメイトごっこ 13/14:2007/07/08(日) 16:39:23 ID:fVP+AYth0

…。
ぷっ。

「「あははははっ」」
二人の笑い声が静かな教室に響いた。

〜♪〜♪〜♪
その直後、今度は下校時間を意味する音楽が校舎に響き渡る。

「あっ…、もう下校の時間だね…。」
それまで楽しそうに笑っていたこのみの顔に陰りがさす。
「あぁ。そうだな。」
「帰らなきゃ…。」
静かに立ち上がるこのみ。俺も同じように静かに立ち上がると、このみの腕を握る。
「タカくん?…わわっ!」
その手をぐっと引くと、バランスを崩したこのみがこちらに倒れこんでくる。
それをぽすっと胸で受け止めると、そのまま少しきつい位に抱きしめた。
「このみ…。もうちょっとだけ、クラスメイトでいよっか…。」
「…うん。」


クラスメイトで居られるのは今日一日だけ。
また明日からいつも通り別々の学年、別々のクラスで過ごすことになる俺とこのみ。
でも、そんなことちっとも問題じゃ無い…素直にそう思えた。

だって…二人の気持ちはこんなにも強く繋がっているのだから。

「タカくん…。違うクラスでも…私達いつも一緒だよね?」

その問いに、言葉ではなく唇を重ねる事で答える事にした。
551クラスメイトごっこ 14/14:2007/07/08(日) 16:41:03 ID:fVP+AYth0

そんな教室を密かに覗き見る影が廊下に二つ…。

「わわわっ!郁乃、ち、ち、ち、ちゅ〜ってしたよ!?」
「わかってるわよ、お姉ちゃん。恋人同士なんだからキスくらいして当然でしょ?」
「はわわわ、はわわわわわわ!またちゅ〜って!」
「はぁ…、何でこんな覗きみたいなことしなきゃなんないのよ。」
「しょ〜がないでしょ?あたしの荷物教室の中にあるんだから。
 それに、このみちゃんは郁乃と同じクラスでしょ?」
「そりゃこのみとは仲良いけどさ…。
 姉妹そろってコソコソ覗きなんて…なんか悲しくなってきた。」
「それは同感…。」

ひゅ〜。

熱々な空気をかもし出す教室の中とは対照的に、
小牧姉妹が身を潜める廊下はとても寒々としていた。



おわり。
552名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 16:46:37 ID:D2p2P4ErO
>>527
GJ!
でも草壁さんとささらはエッチに寛容だと思うぞ。特にささらなんかイルファ以上じゃね?
553↑の作者:2007/07/08(日) 16:48:11 ID:fVP+AYth0
>>519みたいに言われるような気がしていたので、
同時進行してた(…というより没にしようとしてた)このみSSも修正して投下。
とりあえず「けだものさん」での反省を活かして、ボリューム↓。
二つ目の作品で早くもボキャ貧が露呈し始めたけど、そんなこと気にしない。
あと、支援ありでしたー

>>521
指摘ありがとうございます。またやらかすところでしたw
554名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 17:33:19 ID:pwnLlRR80
>553
GJ。このみが2−Bに乱入ってシチュ、凄くいいな(*´∀`)
555名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 17:57:41 ID:w7Pf7nLd0
>553
やばい、このみがかわいいすぎる。そして最後の小牧姉妹も哀愁がただよってナイス!
あえてエロエロにしないでキスでしめるのがいいね〜

エロエロはタマねえでいいけど、ラブラブはこのみかいいんちょだよね。

本当にご馳走様でした。
556名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 21:43:08 ID:P+3Y2RKr0
>>530
草壁さんが84・54・80に対し委員長は83・58・84
どっちかっていうとスレンダー気味な草壁さんに対して委員長は下2つが4cmずつ太いからな。
ていうかこのみより細い草壁さんが異常
557名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 22:44:26 ID:9V8Ip7AWO
なんとなくage
558名無しさんだよもん:2007/07/08(日) 23:14:17 ID:orGzkjr00
【総連】「安倍一味には負けない」総連弾圧に対して措置取る…朝鮮外務省代弁人声明
ttp://news21.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1183572310/l50
「じゃあ、これは生徒会に出しておくから」
「いつも悪いわね」
「ううん。ついでだもん」
女子生徒から預かったプリントを片手に微笑むお人好し。
小牧愛佳。人呼んでいいんちょ。2−Aにも知り合いと用事は少なくない。
「さて、戻るとしますか……あ」
腰を上げた愛佳の横を通り過ぎる赤っぽい髪。
「玲於奈さ……ん……」
挨拶しかけた愛佳を無視して窓際の席に座る少女に、近寄る者はいなかった。

「あー、転校生ねー」
愛佳に礼を言っていた女子生徒が、眉をひそめる。
「なんか感じ悪いんだよね。愛想ないし」
「あの子一学期もいてさ、確か三人でつるんでてさ。お高くとまってたよねえ」
後ろの席から割り込む別な声。
「この前一度いなくなったのに、戻ってきたんでしょ? しかも一人で」
「そうそう、それなんだけど、聞いてる、小牧さん?」
「え? な、なんでしょう……?」
突然話を振られ、曖昧な返答で会話を流す愛佳。

「あの子さーあ、男追っかけて戻ってきたんだってよ」
「追っかけて? っていうか、こっちで付き合ってた男に未練があって?」
「うわ、友達より彼氏作り」
「くっついてんでしょ? だからクラスの事なんてどうでもいいって態度」
「それ関係ないじゃん」
「出戻りなんだからちったぁ頭下げてりゃいいのに。そう思わない? 小牧さん?」
流した会話は、だいぶ加速がついて戻ってきた。
「あ、あは……はは……」
彼女らのいう「男」の親友の彼女としては同調も否定もできず、愛想笑いで誤魔化すが、なお食い付いてくるA組女子軍団。
「あの子の彼氏って愛佳のクラス……」

とんとん。
「愛佳、ちょっと」
肩を叩いて愛佳を会話の渦巻きから救い出したのは、眼鏡の少女、長瀬。
「あ、由真、今いく。ごめんね、それじゃ、また」
これ幸いと離脱。教室後方に退避。
「なあに?」
まだ、愛想笑いが顔に残ったまま、長瀬に問いかける。
「……」
が、長瀬は妙な顔をして。
「……忘れた」
「はい?」
ニコ顔のまま首を傾げる愛佳。
「忘れたったら、忘れたの」
むすっと不機嫌顔。
どうやら、用事は愛佳を救い出す事そのものだったようだ。
「あは……ありがとう」
それに気づいて愛佳、"わかってるよぉ♪”なニコニコ顔。
「……」
「ひひゃひひゅははへへ(痛い由真止めて)」
長瀬は口を尖らせたまま、愛佳の頬を引っ張った。
それにしても。
「まずいなぁ、これは」
窓際の席で教室内に背を向ける玲於奈の姿を見て、愛佳は独りごちた。

一方その夜。小牧家。食後。
「お姉ちゃん、ちょっと、お願いがあるんだけど」
部屋に戻ろうとした愛佳に、郁乃が頼み事を持ちかけた。
「なになに、なあに? なにかな? なにかなっ?」
珍しく「お姉ちゃん」なんて呼ばれて「お願い」なんてされて、瞳をキラキラさせて勢い込む愛佳。
「……はぁ」
こうなるから滅多に頼まないのだけど。
図々しく溜息なんぞつきながら、郁乃は愛佳に依頼の内容を話した。

祝日明けの木曜日。晴れ。

「たかあきくん、今日、お昼、屋上で食べよ?」
相変わらず休み時間は飛び回っている愛佳が、戻ってきて貴明を誘った。
「ああ、うん、どこでも」
頷く貴明。
「仲のよろしいこって」
「ひとの事言えないだろ。最近は」
冷やかす雄二に貴明が反撃。
「そう、それでさ、向坂くん」
愛佳が続けた。
「向坂くんと玲於奈さんも、一緒にどうですか? お弁当」

屋上。
この時期、通り過ぎる風には冬の気配も含まれつつ、
お日様さえ出ていれば、まだまだ快適に過ごせる空間である。

「何故、私が河野さんなどと御一緒しなければならないのです?」
「そう言うなって、俺のダチだよ」
「分かってますけど……」
「ごめんなさい。無理に付き合わせて」
あまり筋合いはなさそうな玲於奈の不平にも、手を合わせて謝る愛佳。

「郁乃がですね、張り切ってお弁当作り過ぎちゃってですね」
「え、郁乃なの?」
「このみちゃんにお昼ご馳走するって約束したんだって。昨日二人で、丸一日かかったよぉ」
嬉しそうに貴明に説明する愛佳。
妹に頼まれて一緒に料理を作るなんて、無愛想な妹を持つ過保護な姉には至福の時だろう。
「張り切りすぎたのは、郁乃だけか?」
貴明が苦笑した。
「あ、タカくん、ユウくん、小牧先輩〜!」
四人が床にシートを広げていると、出入口から元気な声がした。

「遠くから声を掛けるな、恥ずかしい」
屋上には、ちらほらと他の生徒達の姿も見受けられる。
「今、行くよ〜♪」
が、雄二の注意も逆効果で、周囲の目など気にもせず手を振るこのみ。
普段なら、はしゃいで走ってきそうなシチュエーションだが、少女はまだ動かない。
理由は。
「……耳元で大声出さないで」
顔をしかめて左肩に掴まる級友の存在。
屋上に上がるエレベータはないため、郁乃も車椅子を踊り場において階段を昇ってきたのだ。
左腕には、ロフストランドクラッチ。右腕用を、このみから受け取って歩き出す。
転校から二ヶ月、だいぶ足と腕の力が付いてきて、かなりの距離を自足歩行可能になっていた。

「玲於奈先輩も、こんにちはです」
近づいてひょこんと頭を下げた、このみは玲於奈と面識がある。
「……誰?」
いっぽう、郁乃が玲於奈と会うのは初めて。にしても。
「し、失礼な子ですわね」
((いや、まったくだ))
初対面で無礼な態度に憤慨した玲於奈に、思わず心の中で頷く貴明と雄二。
「ご、ごめんなさい」
慌てて頭を下げる愛佳。郁乃はしれっとしている。

「玲於奈さんはね、ユウくんのカノジョだよ」
このみの、ストレートな、紹介。
「か、かかか、かのっ、じょっ!?」
一瞬で耳まで染まる玲於奈。
「あれ、ちがったっけ、ユウく……」
「違いませんっ!」
大声を出した玲於奈の顔は、集まった視線を受けて更に炎上した。

「とっとっと」
「わ、だいじょ……」
「ぶだからいい」
手を差し伸べようとした姉を押しとどめた郁乃。
「はい、郁乃ちゃん」
このみが、持参したクッションをシートの上に置く。
「ありがと」
郁乃は、クッションにお尻を落とし、貯水槽の基礎に背中を預けて足を左斜め前方に伸ばす。
ちょこん、とその隣に女の子座りするこのみ。
小柄な一年生二人で、こじんまりとした空間を形成している。

「しかし、すげー量だな」
雄二が呆れる重箱2つとタッパー2つ。ご飯は別容器。
「あははは……はい、たかあきくん」
「サンキュ」
愛佳が紙皿と割り箸を回す。
きっちり6膳、雄二達の分まで箸は用意されていた。
(……予定の行動?)
(さあて、どうでしょう?)
小声で聞いた貴明に、愛佳がとぼける。

「開けていい?開けていい?」
そんな会話は露知らず、このみがせっつく。
「どうぞ」
答える郁乃は、ちょっと視線を逸らして緊張気味。
「てりゃっ!たあっ!えいっ!」
やたら気合いを入れてご開帳。

「うわぁ……」
このみの目が輝いた。
ハンバーグ。ミートボール。サイコロステーキ。
いわゆるお子様メニュー。卵焼きもタコさんウインナーも完備。
「こ、これが全部、このみのもの……」
感動のあまり、握りしめた拳が震えている。

「食べたいって、言ってたでしょ」
「だからって片っ端から作るか、普通?」
郁乃の言葉に、貴明が呆れかえる。春夏だって、そんな事はしない。
「肉ばっかだと、身体に悪いぜ」
「あ、こっちはバランス考えたから、私が主担当で」
愛佳がもうひとつの重箱を開けると、春巻とか、しそ巻きとか、煮物とか、なかなか地味に色彩豊か。
「野菜もあるわよ」
郁乃が開けたタッパー2つはサラダと野菜炒め。なんだか豪快。
「で、できればピーマンだけは……」
このみが怯む。
「入ってない」
だが、郁乃が淡々と杞憂を払う。
「やたーっ、ありがとう郁乃ちゃん」
抱きつかんばかりに喜ぶこのみ。郁乃がのけぞる。
「う、まあ、喜ぶのは、味見てからにして」
「そうそう、食べて食べて」
姉妹の勧めを合図に、皆が箸を割る。
「いただきまーす」
真っ先にハンバーグに手を伸ばすのは、やっぱりこのみ。

ぱく。

「……」
「ど、どう?」
「おいしい……すっごくおいしいよ郁乃ちゃん!」
「……そう」
満面の笑顔になったこのみに、郁乃は照れてそっぽを向いた。

「タカくん、夜ご飯ちゃんと食べてる?」
「まあ、適当に」
「むー、またカップラーメン? だめだよ、ちゃんと栄養取らないと」
「そっちこそ、ちゃんと宿題やってんのか」
「えっ、えーっと、や、やってるよ、うん」
「学校で、アタシとね」
「い、郁乃ちゃん、それはいわない約束」
「……ウチのこのみがお世話になっているようで」
「あははは、ウチの郁乃もお世話になってますから」
並びは雄二から反時計回りに郁乃、このみ、貴明、愛佳、玲於奈。
重箱をつっつきながらの会話。
貴明は郁乃とも親しい−当人同士の意見はともかく−し、このみとは言わずもがな。
「ユウくんは、タマお姉ちゃんがいなくなってタルんでない?」
「なんだその言い草は。貴明ん時と違いすぎるぞ」
雄二も、幼馴染みの少女と接すると口が軽くなる。もとから軽いけど。

問題は。
「……」
「行ったり来たりで大変だったと思いますけど、落ち着きました?」
「え、ええ。まあ」
愛佳が気を遣っても、明らかに一人浮いている玲於奈。
「ごちそうさま」
ほとんど喋らないまま、早々に箸を置く。
「あ、あれ、お口に合いませんでした?」
「別に、そんな事はありませんわ」
「あのっ、お茶持ってきてますからっ」
「結構です」
愛佳の勧めを断って、玲於奈は席を立とうとする。

「……もう少し、いろよ」
だが、その玲於奈に、雄二が声を掛けた。
566名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 20:33:41 ID:1l3lqsanO
支援
「……はい」
いっとき逡巡したものの、再びぺたんと座り直す玲於奈。
愛佳がレジャーポットから注いだ緑茶を受け取って、両手で口元に運ぶ。
「「「……」」」
このみと郁乃、話題がない。貴明、話しかける勇気がない。
「えっと、か、薫子さんと、カスミさんは、元気ですか?」
挑戦者は、またも愛佳。

「どうして貴方に報告しなければならないのです?」
が、玲於奈は愛佳を睨みつける。
「そっ、それは……そうなんですけど……」
愛佳は玲於奈の視線に怯みつつ、なお接触を試みる。
「あ、ほら、前にこっちに居たときに、凄く仲良さそうでしたから」
「仲は今でも良いですわ」
それも、ぴしゃりと跳ねつける玲於奈。
過去形の物言いが気に障ったらしく、口調は更に冷たい。
「ですから、別に貴方などに気を遣っていただかなくても結構です」
追撃。
「家柄のない友人を作りに、この学校に戻ったわけではないのですから」
「……ごめんなさい……」
玲於奈の言い分も理不尽だが、おせっかいの自覚がある愛佳はしゅんとなる。
それを見て、玲於奈の顔にもチラッと後悔の色が浮かんだが、そのままそっぽを向いた。
「愛佳」
貴明が小さく声を掛けて、俯く少女の背中に触れる。
「ん……」
愛佳は、少年に視線を渡して微かに表情を和ませるが、ややあって再び顔を上げる。

「で、でもねっ、玲於奈さんっ」
まだ頑張る愛佳、だが。
「気を遣うなって言ってるんだから、放っておけばいいのよ」
矢は、横から飛んできた。

声の主を見るに、郁乃が仏頂面で玲於奈に冷ややかな視線。
「何か?」
「別に。アンタじゃ作ろうと思ったって友達なんて出来ないだろうって思っただけ」
「っ!」
玲於奈の顔が、カッと灼ける。
「前の学校の友達だって、いつまで友達でいてくれるかしらね?」
なお畳みかける郁乃。
姉の好意を袖にした玲於奈の行為に、相当怒っているようだ。
「あ、貴方に私の何が判るというの!」
「友達捨てて追っかけてきたんでしょ? 家柄のいい男をさ」
嫌な目で雄二を見る郁乃。
玲於奈の顔が、赤から白になる。口が開いて、言葉を探す。

が、その前に雄二の腕が伸びた
「うくっ」
右手で郁乃の胸ぐらを掴んで引き寄せる。身体が浮いて、郁乃が小さく呻いた。
「……周囲がみんな、貴明や小牧みたいなお人好しだと思うなよ」
低い声で凄むが、郁乃は唇を歪める。
「あら、気に障った? 向坂家のお坊ちゃま?」
「てめぇっ!」
雄二の左拳が振り上げられる。郁乃も、凄い形相で睨み返す。
その二人の間に、横から手のひらが割り込んだ。
「やめろよ。雄二」
貴明だった。
ぎろり、と雄二は鋭い視線のまま貴明をねめつける。
郁乃は、ちらっと横に視線を流しただけ。
続く睨み合い。

「……雄二さんが怒る必要は、ありませんわ」
打ち切ったのは、玲於奈の言葉。
「私が雄二さんに会うために此処に戻ったのは、事実ですから」

「「……」」
玲於奈の台詞に、睨み合っていた二人が毒気を抜かれた顔になる。
すっ、と雄二が手を離す。
「郁乃ちゃん、足、大丈夫?」
「ん、へーき」
無理な姿勢を心配した級友に、何事もなかった顔で答える郁乃。
貴明がほっと息を吐く。

「……にしても」
全員の視線が、玲於奈に集まる。
「な、なんですの、私、なにかおかしい事を言いました?」
「……いや、別に」
否定しつつ、雄二が右手で顔を覆う。
「良かった」
ニコっと玲於奈。さっきまでの邪気はどこへやら。

「「「うわ……」」」
貴明、郁乃、このみ、溜息のち沈黙。
「ゆ、ゆゆゆ、雄二くんっ!」
愛佳が突然、皆がぎょっとするような大声。
「な、なんだ?」
「玲於奈さんのこと、大切しなきゃだめだよっ!」
拳を握ってがんばれポーズ。何かのスイッチが入ったようだ。

「……ああ」
右手を顔に残したまま−赤い頬を隠すためだろう−、雄二は頷いた。
「あ」
雄二の態度で、自分の発言のストレートさに気づいたのか、
今頃になって、玲於奈も頬を染めた。
570名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 20:39:41 ID:vsXg6BRJ0
shien

「まったく。馬鹿には敵わないわね。ごちそうさま」
「郁乃ちゃん、もう食べないの?」
郁乃の皮肉と、このみの誤解。
「まだ食べるけど、これは食べていいわよ」
誤解は訂正。
そしてこのみの視線の先にあるミートボールの山は明け渡す。
「えっ? 全部、全部このみが食べていいの?」
このみ、目を輝かせて周囲に確認。
「「……どうぞ」」
苦笑しながら頷く貴明と、ニコニコしながら愛佳。
「やたー!」
バンザイしたこのみの手から、箸がすっぽ抜けた。

「あ゛」
からん、と転がる割り箸2本。シートの外。コンクリートの上。かなり砂まみれ。
「あ゜、あうぅぅっ」
このみが、形容しがたい声で唸る。
「愛佳、箸ある?」
「ご、ごめんなさい、家にちょうど6膳しかなくって……」
無情な会話。
「ぅうぅうぅうぅうぅぅ」
「おいおい、拾う気かよチビッコ」
雄二が呆れて声を掛ける間にも、このみの手はじりじりと箸に近づいていく。
「さ、最初だけ、最初だけ我慢すればきっと……」
その様子を見て。
「……よければ……」
私のを、と言い掛けた玲於奈だったが、

「このみ、こっち向いて」
その前に、郁乃が級友を呼んだ。

「い、郁乃ちゃん、止めてもムダだよ。このみはまだ……」
「口、開けなさい」
「へ?」
ぽかん、と開いたこのみの口に、郁乃が自分の箸でミートボールを放り込んだ。

むぐむぐむぐ。
「……えへへ」
泣きそうだった顔が、くしゃっと崩れて笑顔のこのみ。
「……」
しばし、少女の顔を見つめた郁乃。
やがて、無言で次のおかずに箸を伸ばす。
微妙に頬が緩んでいる。

ぽいっ。
むぐむぐむぐ。
ぽいっ。
むぐむぐむぐ。
ひょい。
「あ、トマト……」
「……これは、アタシの」
自分で食べて、次、卵焼き。
「うわぁ…」
郁乃が目標を目の前に突き出すと、このみはパクリと食い付いた。
「ひへへー」
もうこれ以上ないってくらい幸せ顔。
「……」
郁乃はポーカーフェースを装ってはいるが、どうみても頬が紅潮している。
「美味しい?」
「うんっ!」
そんな会話に、なんだか手つきも怪しくなって、郁乃はこのみの餌付けを続けた。
で。
「うあぁぁあぁ……」
一年生コンビの言動に、今度は愛佳が壊れる。
「カップルふた組を差し置いて、なんですかこの雰囲気は?」
「いや、俺に聞かれても」
「かくなる上は、たかあきくんっ!」
「はい?」
嫌な予感に身をすくめた貴明に向かって、愛佳。
「あ、あ、あ〜ぁんっ」
アスパラ巻きを差し出す。語尾も箸先も、ぷるぷる震えている。
「い、いや、愛佳、俺は自分の箸があるからさ……」
ぺし。
「い゛っ゛」
「無くなったねっ♪」
恋人の手から割り箸を叩き落とした愛佳は、再び貴明に迫る。
「あ〜〜〜んっっっぅ!」
「……ぱく。」
気迫に押されて、貴明は目を瞑って愛佳の箸をくわえた。
「あ、いいなあ、タカくんにあーん、このみも……」
「このみは、こっち」
「……はぐはぐ」
目移りしかけたこのみを、郁乃が引き戻して給餌続行。
「……」
寄り添う二組を前にして、玲於奈が雄二にちらっと視線。
「やらなくて、いいからな」
念のため、雄二は釘を刺す。
「……わかってますわ」
ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間。

「今度、私の手作り弁当でさせて頂きますから」
「え゛」
574名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 20:47:34 ID:EhWZ5Kmz0
深淵

「あ、そうだ」
周囲の生徒達がそそくさと逃げ出すような、ピンク色の昼食が終わって。
「これ、貰ったんだけど」
郁乃が、貴明に一枚の紙切れを投げてよこした。

「無料入館券?」
「水族館。今週から新装オープンだって」
「どうしたの? これ」
「星乃さんに貰った。けど、アタシは行く気ない」
通院先の看護婦の名前を出す郁乃。
生意気な郁乃は病院でも賛否両論だが、賛の方にはけっこう可愛がられている。
「1枚5名様までって、家族向けだよな、どうみても」
「制限はないでしょ」
「うーん」
「どうせデートで行くつもりだったでしょ? 使いなさいよ」
「二人で使っちゃうのもなぁ……」
元がタダでも、使用可能数を余すのはやっぱり勿体ない。

「向坂くん、よかったら一緒に行かない? もちろん、玲於奈さんも」
貴明が悩んでいると、愛佳が雄二を誘った。

玲於奈に直接声掛けしないあたりは学習しているようだが、
さっきの会話の内容を考えれば、十分チャレンジャーな申し出である。
「そうだな……」
しかし、相棒の様子を窺う雄二。
玲於奈は、気乗りはしないようだったが、雄二に任せると視線で示す。
少し考えて、
「じゃ、お言葉に甘えるか? この前行き損ねたしな、水族館」
「雄二さんが良いのなら、それで」
意外とあっさり、そういうことになった。

「じゃ、じゃあ、今週の日曜日。10時に現地集合で」
自分で誘っておきながら、雄二達の参戦に多少動揺しつつ愛佳が仕切る

「土曜の午後でも、いいんじゃないか?」
貴明の指摘。水族館なら、学校から行った方が近い。
「えっとね、日曜日だとキングペンギンのお散歩があるらしいの」
入館券の裏を見ながら、愛佳が解説。
ペンギン。
という単語に、玲於奈も反応しかかったがその矢先。

「ええっ! ペンギンのお散歩っ?」
裏返った声は、参加予定がないこのみ。
「あ、えっと、なんでもないよ。うん、なんでもないよ」
すぐに口に手を当てて否定するが、感情は明らかだ。
貴明と愛佳は、顔を見合わせて悩む、けど、これはちょっと誘いにくい。
が。
「このみ、行きたいの?」
「えっ、で、でも……」
「見たいんでしょ? ペンギン」
「うん……」
郁乃が少女の真意を聞き出して。

「たかあき、自費ね」
貴明の手からチケットを取り返した。

さっき行く気ないって言っただろ、とか、なんで俺なんだ雄二だって男だぞ、とか。
無駄な事は、貴明は口にしなかった。
577名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 20:54:37 ID:238ncZPa0
以上です。支援ありがとうございました。

なんかOVAでは郁乃の愛佳への呼びかけは「姉貴」らしいですが、
見てないし今更変えられないのでこのSSでは「お姉ちゃん」でいきます。
箸を落っことす場面はねがぽじから、星乃さんの名前は君望から拝借。
578名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 21:13:12 ID:piqWUjIr0
毎度ながらGJ。郁乃が相変わらずやってくれるw
たしかXRATEDじゃ「お姉ちゃん」って呼んでなかったっけ?うろ覚えだけど。
579名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 21:32:11 ID:vsXg6BRJ0
CDドラマでも「お姉ちゃん」だから、結論としては「どちらでもよい」
場面によって使い分けるのもアリ
580名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 21:38:04 ID:238ncZPa0
>578
読み返したら5月12日に「お姉ちゃん」呼びしてましたね。安心と、またも確認漏れを恥
581名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 21:46:13 ID:quVMkSnH0
GJ。
外だと「おふくろ」だけど
家だと「かあちゃん」みたいなもんか。
582名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 22:12:49 ID:1PHEbxIM0
俺なんて学校で先生を「おかあさん」って呼ぶぜ
583名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 22:59:24 ID:PZKCljCP0
この話はこのみと郁乃のらぶらぶ話でしょうか(笑
愛佳もいい味出してるし。
ほんとといい話でした。
584恋愛同盟2-真夜中のお茶会:2007/07/09(月) 23:13:42 ID:pJAwpFOu0
「それじゃ、3人でパジャマパーティをしましょう。」
「は?」
「へ?」
草壁さんの提案に、わたしと由真は思わずそんな答えを返していました。
だって、たかあきくんを賭けた勝負に対する条件で、そんなこと要求されるなんて思って
も居なかったから…

                    −

あの日。
たかあきくんと草壁さんが再会を果たして、そしてそれを目撃したあたしと由真が、屋上
で二人で大泣きした日に、わたしはたかあきくんのことを諦めようと決めた。
昔からいろいろなことを諦めてきたから、諦めるのは慣れていると思ってた。
だけど、一度たかあきくんを好きになった気持ちを諦めるのは簡単じゃなくて、クラスで
たかあきくんと草壁さんが仲良くしているのを見ると、また涙が出て来そうになるのを堪
えるのがとてもつらかった。

そんな風に悶々としてた時に、由真に呼び出された。
放課後に中庭に行ってみたらそこにはたかあきくんと草壁さんも居て、そこで由真はたかあきくんに向かって好きだってはっきりと告白した。
そしてわたしにも、どうするのか?って聞いてきた。
わたしはいきなりで驚いたけど、でもはっきりこの場で告白して断られたほうが諦められ
ると思って、たかあきくんに「好きだ」って告白したの。
そうしたら、由真ったら、

「あたしと愛佳は、河野貴明を賭けて、あんたに勝負を申しこむっ!」

だなんて、わたしはもうびっくり。
諦めるために告白したのに、草壁さんに挑戦だなんて…
由真ったらどうするのよ〜
585恋愛同盟2-真夜中のお茶会 2/12:2007/07/09(月) 23:15:18 ID:pJAwpFOu0
「えっと…お二人は貴明さんとはどういうご関係なんでしょう?」
当たり前の話だけど、草壁さんはわたし達にそういう質問を投げかけてきた。
「あたしは…ライバル、かな?…いろいろあって…その、ぱ、パンツ見られたりとか、
 か、体さわられたこともあったけど…でも、今では二人で居ると楽しいって、思えるよ
 うになったの。」
そう言いながら由真は胸を押さえて赤くなってる。
「いや、パンツ見えたのとかは不可抗力だろ…」
「…貴明さん、少し黙っていてください。」
草壁さんが笑顔のままそういって、たかあきくんを黙らせた。…な、なんか、草壁さんの
笑顔が怖いよぉ…っと、わたしも言わなくっちゃ。
「わ、わたしは、放課後に書庫の整理を手伝ってもらって…たまにそこで一緒にお茶した
 り、お互いの異性の苦手を克服するための訓練したり…とか。でもいつの間にか二人で
 書庫ですごす時間が楽しみになっていて、たかあきくん、って名前を呼ぶようになった
 頃には、たかあきくんと恋人同士になれたらいいのになぁって、思うようになってまし
 た。」
「……はぁ、そうですか。」
草壁さんちょっとあきれてるみたい。
「再会してわかったんですけど、貴明さん女の子には無条件に優しくしてしまうところが
 あるみたいで…貴明さんはお二人のことどう思っているんですか?」
たかあきくんは少し困ったような表情で、でもはっきりと草壁さんに答えた。
「確かに…由真と一緒に居るときは、鬱陶しいと思うこともあったけど、楽しかったし、
 小牧さんと…愛佳と一緒に作業していて、そういう関係になりたいと思った事もある。
 でも俺は草壁さんを…優季を選んだ。優季のことが一番大事だと思ったから。」
その言葉をきいて、わたしの胸がちくり、と痛んだ。わたしたちと草壁さんとの差はほん
の少しで、もう少しだけたかあきくんの方へ踏み込んでいれば、選ばれていたのはわたし
の方だったのかもしれない。
いつだって私は一歩引いてしまっていて、その度に、手に入れられていたはずの何かを逃
してしまっていたと思う。そして、今回もそれは同じだった。
586恋愛同盟2-真夜中のお茶会 3/12:2007/07/09(月) 23:16:42 ID:pJAwpFOu0
「ということは、貴明さんも二人に対する好意は少なからず持っているということです
 ね。」
うーん、という感じで草壁さんは少しの間考え込んでいたけど、しばらくして、
「わかりました。お二人の挑戦をお受けします。」
「ええっ、ちょ、ちょっと、草壁さん!」
「貴明さん。」
草壁さんはたかあきくんのほうに振り向くとにこっと笑って言いました。
「私は負けるつもりなんかありませんよ。ただ、お二人が真剣だから、勝負をお受けして
私が貴明さんのパートナーとしてふさわしいと認めてもらうだけです。もちろん、挑戦を
受ける側の権利として、幾つか条件を出させてもらいますけど。」
「条件?」
「ええ、まずは…」

                    −

そして夜の現在(いま)。
わたしと由真は草壁さんの部屋で、パジャマ姿で草壁さんと向かい合っていました。

草壁さんから提示された条件は、女の子同士のパジャマパーティに参加する事。
そしてその時にはたかあきくんとの馴れ初めとなった思い出に関わる品物を持参する事。
今日は丁度土曜日で授業も午前中だけだったから、一度家に帰って準備して再度集まるこ
とになりました。
ちなみに、たかあきくんは今日の話し合いの結果を明日報告するということで、この場は
帰ってもらうことになりました。
587恋愛同盟2-真夜中のお茶会 4/12:2007/07/09(月) 23:18:18 ID:pJAwpFOu0
わたしは一度家へ帰ってお泊りセットを用意すると、お母さんに友達のうちに泊まると伝
えてもう一度学校へと向かいました。
途中、駅前でちょっと買い物をして学校に急ぐと夕方の校門前には草壁さんが待ってい
て、それから暫くして由真があわててMTBで走ってきました。
そして、わたしたち3人は草壁さんのお家へと向かいました。
「でも、なんでパジャマパーティなんですか?」
道すがら、わたしは疑問に思っていたことを草壁さんに聞いてみた。
「お二人がどんな人か、それにどんな風に貴明さんを好きになったのか、知りたかったか
 らです。挑戦者がどんな性格の人かとか、どんなことが得意かとか、挑戦された側とし
 て知りたいのは当然ですよね。」
「それは……そうかもね。」
根っからの勝負好き…というか負けず嫌いな由真は感心したように答えてた。
でも由真は勝負事にはすぐ熱くなっちゃうから、草壁さんみたいな「敵を知る」っていう
やり方はしないものね…
「それに…本当はこっちのほうが目的なんですけど、私、数年ぶりにこの町に戻って来ま
 したから、親しいお友達が居ないんです。あなた方お二人となら、親しくなれそうだな
 と思って。」
「へ?何で?」
確かに、由真の言うとおり、勝負を申し込んだライバルと友達になるなんて、あまり聞い
たことが無いけど…でも草壁さんはにっこり笑うとこう答えた。
「私たちには貴明さんという共通項がありますから。」

たしかに、わたし達はたかあきくんによって結び付けられた関係だ。
でも恋のライバル同士にもかかわらず、喧嘩じゃなくてこうして3人パジャマ姿で夜のお
茶会を開こうとしている。
588恋愛同盟2-真夜中のお茶会 5/12:2007/07/09(月) 23:19:13 ID:pJAwpFOu0
「寝る前ですから、ストレートじゃなくて、ミルクティーにしますね。」
そう言って、草壁さんはポットからそれぞれのカップにミルクとお茶を注いだ。
わたしも紅茶が趣味だからわかるけど、草壁さんの入れ方はとても上手だった。
「むむむ、なかなかやるじゃない。」
由真が紅茶を一口飲んでそう言った。由真はお爺さんにお茶の入れ方を仕込まれたとかで
紅茶にはうるさいんだけど、その由真のおめがねにもかなったみたい。
「ねえ、草壁さん。」
「はい、何ですか、小牧さん…っと、私のことは優季で良いですよ。」
「あ、じゃあ、わたしも愛佳で…ってそうじゃなくって…わたし達って、ライバル同士に
 なるんですよね。」
「そうですね…恋のライバルですね。何だかちょっと素敵な響きかもしれませんね。」
「あのぉ…そうじゃなくって、その…たかあきくんを奪い合って争う仲のはずなのに、こ
 んなにまったりしちゃってていいのかなぁ、って思って…」
う〜ん、優季さんってちょっと変わってる…
「そうよ、勝負ってのはもっと殺伐としてるものよね。」
「でも、由真さんは貴明さんと勝負しているうちに好きになっちゃったんですよね。」
「うっ、言われてみれば…」
「ライバル同士だからって、いがみ合う必要は無いと思いますよ。それにさっきも言いま
 したけど、同じ人を好きになったわたし達には普通の友達同士よりも共感できる部分が
 あると思いますけど。」
そう言って優季さんはにっこりと笑う。
優季さんには、人を和ませる雰囲気みたいなものがあると思う。それが、わたしと由真を
うまく包み込んでしまっていた。
「じゃあ、まず、自己紹介から行きましょうか。」
589恋愛同盟2-真夜中のお茶会 6/12:2007/07/09(月) 23:20:23 ID:pJAwpFOu0
優季さんは、たかあきくんとは小学校の時の同級生で、ご両親の離婚のためにこの街を離
れていて、先日戻ってきて再会したみたい。別れるときにとても大事な約束をしていて、
優季さんはそれを心の支えにしていたんだって…そのことについては後で話すって言って
たけど…
由真は長瀬という、大財閥来栖川にお使えする執事の家系なんだって言ってた。わたしも
由真のお爺さんがなにか秘書みたいな仕事をしているのは聞いていたけど、来栖川のお屋
敷で働いていて、由緒正しい家系の跡継ぎだって言うのは初めて聞いた。確かに、由真の
お家は結構立派だったけど…
わたしも自分の自己紹介をした。自分の両親のこととか、入院している妹の郁乃の事とか
自分の趣味のこととか…途中で由真が私のことを食いしん坊だって優季さんに話すから、
すごく恥ずかしかった…そりゃ、確かに食べるのは好きだけどぉ…

そして、たかあきくんとの出会いに話は移った。
「お茶もあるし、丁度良いよね。」
わたしがバックから取り出したのは、駅前のデパートで買ってきた小さなスコーンの入っ
た紙袋。それを広げてみんなに勧めた。
「ほら、愛佳ってばいつも何か食べ物持ってるのよね。」
「だから食いしん坊じゃないってばぁ…これはね、たかあきくんがわたしを手伝って、初
 めて書庫に来てくれたときに出したお茶請けなの。」
そう、あの日から、わたしのたかあきくんへの思いは始まった。
他人を頼ろうとしなかったわたしに、たかあきくんは手を差し伸べてくれた。それはちょ
っとだけ強引で、遠慮の塊だったわたしの心の扉をちょっとだけ押し開けて…
そこから少しずつ、たかあきくんの優しさがわたしの心に流れ込んできて、いつの間にか
わたしの心をいっぱいにしていた。
そしてわたしは、たかあきくんが欲しいと、いつの間にか願うようになっていたの。
「ま、愛佳ってば…晩熟(おくて)な割りに、大胆ね」
「へ?」
590恋愛同盟2-真夜中のお茶会 7/12:2007/07/09(月) 23:21:40 ID:pJAwpFOu0
由真がほんのり顔を赤くしてあたしに言った。優季さんも顔を赤くしながら口を押さえて
わたしを見てる。わたしは、今しゃべっていたことを思い返してみた。
…たかあきくんが欲しいと…たかあきくんが…欲しい…って、ええええ!
「や、や、や、そ、そんなエッチな意味じゃなくって、ただ、たかあきくんと恋人同士に
 なれたらって意味で」
「わ、わかったから、落ち着きなさいよ……ふう、じゃあ次はあたしね」
こほん、と一つ咳払いをすると、由真は話し始めた。
「あたしがたかあきを初めて知ったのは、遅刻しそうな朝にMTBで走ってたときだった
 から本当はMTBが馴れ初めのアイテムなんだろうけど、でもあれは他にも色々思い出
 があるし…ということで、これかな。」
そう言って由真が取り出したのは眼鏡ケースに入れられた黒ぶちの眼鏡。
「そういえば、由真、最近その眼鏡かけてなかったよね。」
「うん、たかあきのせいで壊れてたの。昨日修理から戻ってきたばっかり。」
そう言って由真は眼鏡をかける。黒ぶちの眼鏡を掛けるとわたしの知ってる由真だ。
「まあ、貴明さんが壊したって…踏んじゃったりとかしたんですか?」
「ううん。あたしがたかあきに自転車で突っ込んじゃって、そのとき自転車から落っこち
 て生垣に突っ込んじゃって、ポケットに入れてたこれが壊れたの。」
「それって、貴明さんは大丈夫だったんですか?」
「あいつだって男の子なんだしそのくらいじゃ死なないわよ。」
「や、そういう問題じゃないと思うけど…」
「とにかく…眼鏡をかけたあたしはおとなしくて真面目な「長瀬由真」だったけど、あい
 つの前では眼鏡を掛けてない、元気で真っ直ぐな「十波由真」だったの。…そう、貴明
 が昔のあたしを思い出させてくれたの。昔のあたしは、もっと色々な夢を持ってたはず
 なのに、いつの間にかただ惰性でおじいちゃんの跡を継ぐっていう道を…『なれる自
 分』を安易に選んで、それに自分を当てはめようとしてたの。本当に『なりたい自分』
 は何なのかを考えないで。」
591恋愛同盟2-真夜中のお茶会 8/12:2007/07/09(月) 23:23:03 ID:pJAwpFOu0
そう言って由真は眼鏡をはずした。それがたかあきくんの知っている由真。学校では見せ
ない、元気で明るくて負けず嫌いの由真。
「眼鏡が壊れて、たかあきと一緒に居るようになって、あたしはいつの間にか、忘れてた
 昔のあたしに戻れてたの。…それに、いつの間にかあいつの隣が居心地が良くなって
 て、自分から勝負することであいつと一緒に居る理由を作ってたんだと思う。優季が現
 われなければ、これからもずっとそうだったんじゃないかなと思う。それで、いつか
 は…」
そう言って微笑む由真の顔は、わたしが見たことの無かった恋する女の子の顔だった。
何だかほほえましくなって、ついついあたしはからかいの言葉を挟んでしまう。
「ずっと一緒に、かぁ。そういえば昔の由真の夢にもかわいいお嫁さんって言うのがあっ
 たよねぇ。」
「わっ、愛佳っ!そんなこっぱずかしい話、優季にバラさないでよ。」
「良いじゃないですか。女の子なら1度くらいは夢見る物だと思いますけど?白いタキ
 シードの貴明さんにエスコートされてヴァージンロードを歩く自分の姿を想像すると、
 胸がどきどきしてきませんか?」
そう言って優季さんは目を閉じて自分のウエディングドレス姿を想像してるみたい。
由真もぼぉっとして宙を見つめて自分の姿を思い浮かべてるみたいだったから、わたしも
自分のウエディングドレス姿を思い浮かべてみた。

真っ赤な絨毯に散らされたバラの花びらの上を、白いタキシード姿のたかあきくんに手を
引かれて進むわたしは、緊張と歩きづらいドレスのせいでおっかなびっくり歩いてて、で
も少し前を行くたかあきくんと、このヴァージンロードを歩けるのが嬉しくて。
神父さんの前に並んだ席にはお父さんお母さんと一緒に元気になった郁乃の姿も見えて、
とても幸せな気分で神父さんの前に2人で立って。
そして、神父さんに誓いの言葉を言って指輪を交換した後、永遠の誓いのためにキスする
の。
「愛佳」
そう言って、たかあきくんはわたしの被っているヴェールを上げて、
「愛佳」
わたしの名前を読んで、顔を寄せてきて、そしてついに永遠を誓うキスが、
「愛佳ってば!」
592名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 23:23:34 ID:1PHEbxIM0
sien
593恋愛同盟2-真夜中のお茶会 9/12:2007/07/09(月) 23:25:16 ID:pJAwpFOu0
「うひゃあ!」
がくんと肩を揺さぶられてわたしは現実に引き戻された。
「もー、愛佳ってばあっちに行ったまま戻ってこないし。」
「あ、あはははは…ごめんなさい。」
「じゃあ、次はわたしの番ですね」
そう言って優季さんは勉強机の上にあった写真立ての一つを取り上げると、わたしと由真
に差し出した。
そこに写っていたのは髪を長く伸ばした笑顔がかわいらしい女の子と、どこか頼りなげだ
けど、でもやさしそうな男の子。女の子と男の子は手をつないでいて、男の子は恥ずかし
そうに横目で女の子を見ていた。女の子はレースのテーブルクロスらしきものを被ってい
て、まるでウエディングドレスのヴェールみたいだった。
「うわ…ミニたかあき…よね。これ。」
「その写真は、私が転校する前の日に撮った、貴明さんとの最後の写真です。」
確かに、女の子のほうは優季さんだ。でもご両親の離婚で大変な時期だったはずなのに、
なぜこんなに笑顔なんだろう。
「それは、貴明さんがくれた物のおかげです。」
「何をもらったの?」
「名前です……貴明さんは河野の名前をくれると言ったんです。」
「へ、も、ももも、もしかしてプロポーズぅ〜?」
思わず私は裏返った声で叫んじゃってました。
優季さんはちょっと困ったように、
「両親の離婚で高木の苗字では無くなった上に転校する事になって、私が自分という存在
 が無くなってしまうような不安に押しつぶされそうになっていた時に、貴明さんは自分
 の苗字をあげるから、何時だって河野を名乗れるよと言ってくれたんです。でも当時の
 貴明さんは小学生でしたから、女性が男性の苗字を名乗るというのがそういう意味だと
 は考えてなかったと思います。でも女の子は早熟ですから、当時の私は貴明さんとの結
 婚の約束だと思って。」
594恋愛同盟2-真夜中のお茶会 10/12:2007/07/09(月) 23:26:19 ID:pJAwpFOu0
そう言って写真立てを胸に抱くと、優季さんはかみ締めるように続けた。
「この写真は、もう一度貴明さんと再会した時の夢に胸を膨らませていた当時の私が、貴
 明さんにねだっていっしょに撮ってもらったものなんです。両親の離婚で当時は大変で
 したけど、この写真を見ると頑張れたんです。」
「じゃあ、貴明もその写真持ってて、それで再会したときあんたのこと一目でわかった
 の?」
それは多分あの中庭でのことだろうと思った。名乗るぐらいはしただろうけど、ほとんど
すぐにたかあきくんは優季さんのことがわかったみたいだったから…。
でも、優季さんはまた困ったような表情をした。
「いいえ…実は、貴明さんは私のことは忘れてしまって居ましたから…」
そして、少し考え込んで、
「…信じられるかどうか解りませんが、お二人には本当のことをお話します。」
そういうと、優季さんは小さな手帳…くずかごノートって言ってたけど…から1枚の切抜
きを取り出して、わたしと由真に差し出した。
「この間の流星雨の記事?」
「その隅のところを見てください。」
「えっと…流星群観測、少年はねられ死亡…被害者は河野…え?…たかあきくん?」
そんなばかな。こんな記事はありえない。だって、たかあきくんは事故にあいそうにはな
ったけど今も生きている。
「貴明生きてるし…えっと…記事捏造?」
「…由真…それ違うと思う。」
「それは、私があの流星雨の次の日に見た新聞の切り抜きなんです。」
それから、優季さんは私たちの想像を超えた話を話し始めた。
時を越えて深夜の学校での再会、真夜中のお茶会、そして流星雨の夜の出来事と…事故で
自分が身代わりとなろうとしたこと。
「自分が死ぬのは怖くなかったの?」
由真がそう聞いた。同時に、私ならどうしただろうかと考えた。
「たとえあの時私が死んでしまっても、貴明さんに生きていて欲しかったですから。きっ
 とあの時はその選択が正しかったのだと思いますし。…本来存在し得ないはずの私があ
 の場に居ることはありえなかったはずですから。」
私は果たして優季さんのように自分の命を差し出してもたかあきくんを守ろうとしただろ
うか?ただ慌てふためいて、そして何もできなかったかもしれない。
595恋愛同盟2-真夜中のお茶会 11/12:2007/07/09(月) 23:27:47 ID:pJAwpFOu0
「…それに、もし私のことも、約束のことも本当に思い出してもらえないのなら、私は、
 あの1週間の思い出だけで十分だと…それで死んでしまってもいいと、あの時思ってい
 たんです。…でも、貴明さんは思い出してくれた。」
優季さんの目からぽろぽろと涙が零れ落ちた。
優季さんが何年も暖め続けていた思い。それは単なる恋愛感情なんかで割り切れるものな
んかじゃなくて、そしてその思いが報われたのがわたしにはとても羨ましかった。
「…あたしは、自分を犠牲にして貴明を助けるなんて、考えられない。何が何でも二人で
 助かって…たとえ思い出してくれなくても、貴明に好きだって言わせるまでは諦められ
 ないな。」
由真の答えはとても由真らしい物だった。簡単に諦めてしまうわたしとは違う。
そんなあたしの顔を見た由真は、笑顔を見せてあたしに言った。
「愛佳だって、きっとその時になれば、優季とは違う答えを出そうとするんじゃない?」
わたしの表情で、わたしが何を考えているか読み取った由真が、フォローしてくれた。
由真と友達で居て良かった。すぐマイナス思考になってしまうわたしをいつも由真は救っ
てくれるから。そのことがとてもうれしかった。そして、ほんの少しだけど、勇気が湧い
てきた。
「今お話したことを信じるかどうかは、お二人にお任せします。でも貴明さんに対する私
 の思いは嘘偽りの無いことです。名前をもらったあの日から私は貴明さんを支えに生き
 てきたんです。」
「優季さん…わたしは信じます。あなたのたかあきくんに対する思い、しっかり受け取り
 ました。…でも」
「でも?」
私は、由真にもらった勇気を奮い立たせて、そして宣言する。
「でも、たかあきくんは譲れません。…今まで、望んだ物をいくつも諦めてきたけど、た
 かあきくんだけは譲れないんです。」
由真の表情が、その意気よ、とわたしに語っていた。そして由真もまた宣言した。
「そうよ、あたしも簡単には譲れない。優季の思いを知っても、あたしの気持ちは変わら
 ないわ。優季と比べれば、愛佳も私も、思いを重ねてきた期間は比べようも無いけど、
 思いの強さは変わらないつもりだから。」
596恋愛同盟2-真夜中のお茶会 12/12:2007/07/09(月) 23:28:43 ID:pJAwpFOu0
優季さんはさっきまでこぼれていた涙をぬぐうと再びにこっと笑った。
「それでこそ、貴明さんを掛けて競う「恋のライバル」です。」

                    −

その後、真夜中を越えるまで、私たちは話しあいました。
自分達が知っているたかあきくんのことを情報交換したり、自分達の趣味の話や子供の頃
のことを話したり、女の子同士の他愛の無い会話で盛り上がって3人並んで一緒に眠りま
した。
そうそう、私たちは、勝負するに当たってルールも決めました。

1つ、私たちは期限までの間河野貴明を愛することを止めない事。
1つ、この勝負には河野貴明本人を含む全員の認めるものだけが参加することができる。
1つ、河野貴明に対して自分からキス以上の肉体的接触をしてはならない。ただし河野貴
明からの望みの場合はこの限りではない。
1つ、最後に誰が選ばれたとしても、残りの者はこれを祝福すること。
1つ、誰が選ばれても、私たちは親友であり続けること。
1つ、当面の期限は夏休み末までとする。ただし全員の同意によってこの期限は変更可能
とする。

私たち3人の淑女協定ですねって、優季さんは言ってたけど、わたしは恋愛同盟かなって
思う。

明日の日曜日は3人でたかあきくんとデートってことになってるけど、このルールの事知
ったら、たかあきくんはなんて言うかなぁ…ちょっとだけ楽しみ…かも。
597物書き修行中:2007/07/09(月) 23:30:05 ID:pJAwpFOu0
>>592 支援thx
えらい難産でした。しかも後半グダグダだし。orz
やっぱ続き物はまだおいらには無理っぽい。続きのアイデアは幾つか浮かんでるけど…
せめてプロット起こして書けばいいんだろうけど、行き当たりばったりだし。
修行します。

にしても、いきなりスレがにぎやかになってきましたね。
河野家が終わったあと一時期はえらい過疎ってましたが。
598名無しさんだよもん:2007/07/09(月) 23:36:16 ID:1PHEbxIM0

でも、高木って誰だよw
599物書き修行中:2007/07/09(月) 23:54:44 ID:pJAwpFOu0
ぬは、何やってんだ俺。打ち首ものだyo o...rz

ついつい高城(たかしろ)を高城(たかぎ)って読んじゃう癖があるんで
高木の誤変換はそのためだと思われ…

しかも1行改行入れ忘れてるとこある…
600名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 00:27:44 ID:X67VBsVl0


もっと4Pする!!
601物書き修行中:2007/07/10(火) 01:06:27 ID:44Da2UNQ0
反省の意を込めて、即興で書いたものをお供えしてから寝ます。
もう過ぎてるけど一応タマ姉お誕生日SSということで。
602タマ姉の七夕 1/2:2007/07/10(火) 01:07:18 ID:44Da2UNQ0
7月7日。
世間的には七夕という行事の日だが、向坂環にとっては自分の誕生日でもあり、星に願い
を託す大事な日でもあった。

『タカ坊に思いが届きますように』

それが九条院に転校した年からの環の切なる願いであった。
毎年その決まった一言を書いて、誰にも見られないように一番高いところに下げて、天の
川の織姫と彦星に願った。
強く、強く……

そして、今年も7月7日がやってきた。
今年はもう、短冊は必要ない。だって願いは叶ったのだから。

「ということで、いつもの短冊は書かないわ。」
「ふ〜ん。じゃ、今年の願い事は無し?」
環と貴明は向坂家の縁側で、日が傾いて涼しくなってきた風に当たりながらそんな話をし
ていた。
庭先に立てられた笹の葉にこのみと雄二が色々と飾り付けをしている。
このみの短冊は「ととみ屋のカステラがいっぱい食べられますように」とか「お料理が上
手になってタカ君に誉めてもらえますように」とか、このみらしいもので、雄二のはやっ
ぱり「女の子に激モテするように何とか頼んます」とか「メイドロボは世界一ぃぃぃ」と
か雄二らしいとほほな代物であったりといつもどおりの光景である。
「今年の願い事なら、もうあそこにぶら下げてあるわ」
親戚筋から送ってきたとか言う甘夏を頬張っていたタマ姉が笹飾りの天辺を指差す。
603タマ姉の七夕 2/2:2007/07/10(火) 01:07:55 ID:44Da2UNQ0
ぶら下がっていたのは短冊というには変な紙が1枚。
白地に緑の印刷をした紙を4つに折りたたんで短冊状にしたもののようだ。
「なに?あれ。」
貴明が傍によって目を凝らすと、何か字が書いてある。
「えっと…婚姻…届!! ちょ、ちょっと、タマ姉!」
貴明が振り返ると環は2つ目の甘夏を攻略しにかかっていた。
「なあに?…タカ坊は、あたしと結婚するのはイヤ?」
「い、いやそうじゃないけど…まだ高校生なんだから早いんじゃないかと。俺まだ結婚で
 きる歳じゃないし。」
婚姻届にはお互いの名前と捺印までしてあるのが見えた。もって行けばその場で受け付け
てもらえる状態だ。
「だからそこにつるしてあるの。タカ坊が結婚できる歳ならお役所に出してるわ。」
ということは、来年は知らないうちに提出されているかもしれないと貴明は戦慄を覚えていた。環は、というといつの間にか3つ目の甘夏の解体に入っていた。
「…タマ姉、いくらなんでも食べすぎじゃないの?」
「そう?…何だかこの酸味がすごくおいしく感じて止まらないのよね。」
「…おい、貴明、それって…」
「なんだよ雄二?」
「いや、あのな、ゴニョゴニョ…」
雄二に耳打ちされた貴明は、顔色を変えて環の方に振り返った。

環は、果汁で濡れた指をぺろぺろと舐めながら、にやりと笑った。
604物書き修行中:2007/07/10(火) 01:09:43 ID:44Da2UNQ0
また改行ミスってるヨ orz
反省になって無いじゃん。欝だ。
605名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 01:16:46 ID:X67VBsVl0


もっと孕ませる!
606名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 01:20:41 ID:pIbB7YPi0
職人さん乙
みんなGJだぜ
607名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 01:45:47 ID:fTqvWVzv0
乙ー。この盛り上がりは嬉しい限りだw
雄二の一人称視点で書こうと思ったけど貴明視点との違いがはっきり出せなくて困る。
608名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 06:51:49 ID:wAUakpYG0
>597>604
乙。妄想愛佳ワロス。タマ姉は本当なのか策略なのか判らんのが良いねw
恋愛同盟はやっぱ続きが欲しいな。プロット起こすのは今からでも遅くないw
淑女協定で「そんな淑女協定があるかっ」みたいな台詞を連想したが、
作品が思い出せない(プリンセスブライドだったかなぁ…)

一段落の文章が結構長いので、段落の頭は一文字下げた方が読みやすいかも
または「したいわけ」シリーズの時みたいに空白行を入れてもらっても良いかと
609向坂雄二の一日 1/5:2007/07/10(火) 12:13:42 ID:fTqvWVzv0

―朝―

「雄二!おきなさい!」
「…あと…五分。」
「もう、仕方ないわねぇ。と、特別だからね…。」
布団の中にもぞもぞと何かが進入してくるのを感じる。えーと、姉貴?
「んぁ?姉貴?なにやってんだ?」
「雄二のために、その…優しく起こしてあげようかなって…」
直ぐ近くに姉の顔。なんか妙に頬が赤みがかっている気がするけど…。
「なんだよ急に。」
「べ、べつに?」
「きもちわりーからさっさと…ごふっ!」
「もぅ、雄二の馬鹿っ!」
俺の言葉に不機嫌そうにボディーブローをかますと、さっさと姉貴は部屋から出て行ってしまった。
なんなんだ?一体。


―登校中―

「うぃーっす。お?チビ助、今日は髪おろしてるのか。」
いつものリボンを外して髪をおろしているチビ助(このみ)。
「う、うん。もしかしてユウ君こういうの好き?女の子っぽい?」
「んー、別に。相変わらずガキっぽいな。」
ケラケラ笑いながら言うと、このみは少しむくれたまま下を向いてしまった。
「なんだ?腹でも痛くなったか?…ごぶぁ!」
思いがけない方向からこぶしが飛んでくる。
「んだよ姉貴!この男女!」
「ふんっ!さぁいきましょうか、このみ。」
「うん。いこっ!タマお姉ちゃん。」
姉貴とチビ助はすたすた歩き出してしまった。
やれやれ。今日は二人とも不機嫌みたいだな。触らぬ神にたたり無し。
610向坂雄二の一日 2/5:2007/07/10(火) 12:14:42 ID:fTqvWVzv0

…あ!
そこで重大な過失に気がつく。
「やべぇ…修学旅行のアレ、親の同意書忘れた…。」
「マズいだろ!アレ忘れたら修学旅行いけないって昨日担任も行ってじゃないか!」
「くそっ!取りに戻る!」
「頑張れよ〜。」
苦笑いを浮かべる貴明を背に、来た道を戻り始めた。


―再び登校中―

「くそっ!時間やばいな…。でも、まだギリギリ間に合うはずっ!」
久しぶりの本気ダッシュに、心臓がおかしな音を立てている。
「はぁ、はぁ。」
足もふらつく。ここまで休憩無しで駆け抜けてきたんだから当然か。
「うわっと!」
急に足がほころび、その場に転倒…

…しそうになったが、何とか持ちこたえる。
俺様の運動神経を持ってすればコレくらい余裕余裕!
塀の上に誰かいたような気もしたけど、気のせいだよな。
塀の上って猫じゃあるまいし。
611向坂雄二の一日 3/5:2007/07/10(火) 12:19:05 ID:fTqvWVzv0

―校門―

「なんとか…、間に合ったようだな…。」
膝に手を付き、肩で息をする。本当に久しぶりに本気で走った。
もう動きたくないぜ…。息を整えながらその場で少し休憩していると、
「うわぁ〜!どいたどいたぁ!」
「ん?」
後方から猛烈な勢いでMTBがこちらに突進してくる。
「うわっと!あぶねっ!」
ギリギリのところでそれをひらりとかわす。俺様の運動神経を持ってすれば…以下略。
それにしても危なかった。当たったらあの女の子も吹っ飛んでただろうなー。


―休み時間の廊下―

ふらふら〜っと廊下を歩いていると…。
どん!という衝撃と共にしりもちをついた女の子…散らばるプリント。
どうやらこの女の子とぶつかってしまったようだ。
「うおっ!わ、わりぃ!」
すぐに散らばったプリントを拾い集める。
「アンケート…。」
「へ?」
弱々しい女の子の様子に、罪悪感で胸が締め付けられる。
「アンケートに協力してくれませんか?…名前書くだけでいいんで…。」
「あ、あぁ。それくらいなら構わないけど…。」
差し出されたシャーペンを持ち、プリントに名前を…ってこれ、もしかして…
小さく書かれた文章に目を通す。…なるほど。
「悪いけど俺、部活やる気は無いんだわ。」
「うぅ…。」
かき集めたプリントを女の子に手渡す。
612向坂雄二の一日 4/5:2007/07/10(火) 12:20:25 ID:fTqvWVzv0

…危ない危ない。引っかかるところだったぜ。
貴明だったらこういうの、だまされてんだろうな。女に甘いし。
「それじゃ。」
女の子に適当に挨拶し、教室に向かった。


―次の休み時間―

生徒会長の悪口をいっぱい貴明に言ってやった。


―放課後―

貴明に一緒に帰宅することを断わられたので、一人とぼとぼ校門に向かって歩く。
その時…
「ふぅ、ふぅ。」
「ん?」
校門脇の死角になった辺りに荷物が積み上げられていて、
その辺りから悩ましい声が聞こえてくる。
「うぅ。うぅ。う〜ん。」
「…。」
…こんなところで大胆だな。まぁ邪魔しちゃ悪いし、そのまま帰るか。
卑猥な妄想をしながら学校を後にした。
613向坂雄二の一日 5/5:2007/07/10(火) 12:21:55 ID:fTqvWVzv0

―下校中―

ぽけーっと桜並木を歩いていると、
ぶわっ!っと強い風が吹き荒れ、舞い散る桜に目を奪われる。
その時、足元にやわらかい感触…。
ん?
足元を見てみると…
「お、おんなのこぉ!?」
俺が踏んで殺めてしまったのか、最初からココに倒れていたのか、
可愛らしい服を着た女の子がそこに倒れていた。
「えーっと、そうだ!とりあえず警察!」
すぐに近くの公衆電話から警察に電話する。
その後すぐに警官が駆けつけ、俺に少し事情を聞いた後、その女の子を保護していった。
うんうん。どうやら俺が踏み潰したわけでもなさそうだし、良かった良かった。


―その夜―

風呂にも入り、ベッドに入ったところで思い出す。
「やべっ!レポートの課題あるんだった!」
しかし、そのレポートは学校に置き忘れたまま…。
どうする…今から学校に行こうか。
「まぁいいや。」
明日先生に叱られて補講を受ければいっか。そう思いながら目を閉じる

睡眠に落ちていくまどろみの中
…なぜ俺はモテないんだろう…。
そんなことを考えていた。


おわり。
614↑の作者:2007/07/10(火) 12:35:37 ID:fTqvWVzv0
雄二視点の練習もかねてさささっと書いてみた。
…これは酷い雄二。
615名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 16:41:37 ID:9jkdAWiKO
フラグ全滅wwwwwwwww
616名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 17:04:37 ID:CiDxeulP0
>>614
久しぶりにTH2のSSスレを覗いたら、ふと目に止まって
盛大に吹いたwww
まあ、こっちが普通だよな。
お前は間違っていないぞ、雄二w
617名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 20:09:20 ID:JL90nAH9O
>>614
やべぇ、これ最高にいいわw
そうだよな普通こうだよな。雄二どんまいw
なにも間違ったことしてないのにな。ささらの悪口言ったくらいか?


618名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 20:56:29 ID:Causv2V5O
>>617
このみのことを褒めてやらなかったのがいけないな
619名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 21:14:15 ID:w9VguyLv0
激しくワロタ >325-327のパワーアップ版か?
>617
実姉にフラグ立てたらそれはそれでどうよって感じだしなw
620名無しさんだよもん:2007/07/11(水) 00:41:44 ID:OnBAxmpR0
>生徒会長の悪口をいっぱい貴明に言ってやった。

強いて言えばこれでまーりゃんキックを喰らうフラグが立った。
無論喰らうフラグだけで進展はないが。
621名無しさんだよもん:2007/07/11(水) 08:21:03 ID:Zl7LQsEYO
>>614
こうやってフラグが徐々に貴明に移っていくんだろうなw
622名無しさんだよもん:2007/07/11(水) 19:18:31 ID:Rre4Murb0
やさしく起こすのはタマ姉がキャラ違うなw
623物書き修行中:2007/07/12(木) 22:57:51 ID:NiGvVBHA0
でむぱを受信したので投下してみます。

今回はキャラが違うとかの苦情は受け付けないんでヨロ
624バイオニック・MANAKA 1/7:2007/07/12(木) 22:58:46 ID:NiGvVBHA0
「そろそろたかあきくんが来る頃だしお茶の用意でもしておこうかな…
 …っと、今日のお茶菓子は舟和の芋羊羹〜。日本茶にも合うけど、紅茶にも合うんだよ
 ねぇ…でもおいしそう。…一つぐらいなら食べてもいいよね。うん、私が買ってきたも
 のだしぃ…じゃ、1個だけ…あーん」
 がちゃ
「ごめんごめん愛佳、遅くなって…」
「んぐぐっ」
「な、愛佳!どうしたんだ!」
 がん!…ごきっ、ごい〜ん!
「きゅう…」
「ま…愛佳…愛佳ぁぁぁぁぁぁぁんぁんぁんぁんぁんぁん……(エコー)」


 〜地上最強のいいんちょ〜 ばいおにっく・MANAKA


「…それで、先生、愛佳の容態はどうなんですか?」
「えー、喉に詰まっていた異物は胃に到達して普通に消化されるので問題ありません。
 そのほかの外傷は思いっきり何かに打ち付けたらしい両足小指の骨折と倒れたときに突
 きそこなった右手首の重度の捻挫と、倒れて頭打ちつけたときにできたコブぐらいです
 ね。意識が戻らない理由は不明です。」
「そうですか…先生、ありがとうございました。」
 俺は診察室を後にして、愛佳の病室へと向かった。そこで愛佳は黙々とねむっていた。
625バイオニック・MANAKA 2/7:2007/07/12(木) 22:59:23 ID:NiGvVBHA0
 あの日、俺が突然書庫に入ってきて、つまみ食いを見られた愛佳がびっくりして芋羊羹
を喉に詰まらせ、あわてた愛佳は棚の角に足の小指を力いっぱいぶつけ(しかも両足)勢
いあまって倒れそうになって右手をつこうとして全力でひねった挙句、顔から落ちておで
こに馬鹿でかいたんこぶを作って気を失ってしまうという、傍から見たらドリフのコント
かと言わんばかりの事件を起こし、それから3日、ずっと愛佳は眠り続けていた。

「せっかく愛佳と恋人同士になれたって言うのに…これから二人で(ぴ〜)とか(ぷ〜)
 とか色々やってみたかったのに…」
 後悔先に立たず。だって後からするから後悔なんだし。
 そんな俺の葛藤なんか知らずに愛佳は「バタピーがバタフライ〜」とか言いながら眠っ
ている。

「る〜」
「え?…珊瑚ちゃん…なんでここに?」
 いつものぽやや〜んとした声に振り向くと、来栖川の誇る天才美少女、珊瑚ちゃんがい
つものように「る〜」のポーズをして立っていた。その後ろには車椅子に乗って瑠璃ちゃ
んに付き添われた郁乃の姿もある。
「あたしが頼んだのよ…つまみ食いで意識不明なんて恥ずかしい姉を何とかするのに珊瑚
 が力貸してくれるって。」
「たかあき、元気出しぃ…おっちゃんに頼めば、来栖川のロボット工学とバイオ技術で、
 愛佳ねーちゃん何とかなるかもしれへんよ。」
「ほ、ほんとか!本当に何とかなるの?珊瑚ちゃん。」
「ホントや〜。まず愛佳ねーちゃん研究所につれていかな。いっちゃ〜ん、いっちゃ〜 
 ん。」
 そう言いながら珊瑚ちゃんはパンパンと拍手をたたいた。
626バイオニック・MANAKA 3/7:2007/07/12(木) 23:00:02 ID:NiGvVBHA0
 しゅた!
「うお」
 貴明の目の前に突如としてイルファが現われた。その瞳は冷たい光をたたえた鋭いもの
で、その身はいつものメイド服に包まれながらも長い赤マフラーが風も無いのに翻ってい
た。
「お呼びでしょうか珊瑚様」
「あ〜、愛佳ねーちゃん研究所に運んだって〜」
「かしこまりました」
 しゅた!
 イルファさんは愛佳を抱えあげると一瞬で再び消え去った。
「…イルファさんどしたの?」
「あ〜、たかあき」
 今まで沈黙を保っていた瑠璃ちゃんが重い口を開いた。
「イルファはな…この間さんちゃんにちょっと口答えしたときにいじられて、丁度さんち
 ゃんがはまっとった時代劇のお庭番のプログラム入れられてしまってん。」
「どや〜、いっちゃん格好良いやろ〜」
「いや、それはどうだろう。」
 瑠璃はますます重そうな口調で続けた。
「たかあき、よく言うやろ。天才とナントカは紙一重とか…研究所はそういう人間の巣窟
 やから、愛佳ねーちゃんも何されるか解らんで。」

 結果として、数日後、愛佳は元気になって帰ってきた。
 いや、いささか元気すぎる状態になって。
627バイオニック・MANAKA 4/7:2007/07/12(木) 23:00:50 ID:NiGvVBHA0
「みんなぁ〜静かにしてぇ〜」
 帰ってきた直後こそ愛佳に気を使っていたクラスメイト達も、3日も経つと元の状態へ
と戻っていた。
 いつものような私語の喧騒の中、HRを始めようと愛佳が奮闘している。
「静まれぇ〜静まれぇ〜」
 左手で教卓をぽむぽむと叩くがそれで静まるようなやわな人間はこのクラスには居な
い。
「むき〜!静まってってば〜!」
 そう言ってトサカに来た愛佳が両手を振り上げて教卓に振り下ろした。次の瞬間、

 どがぁぁぁぁぁぁん!

 教卓が粉々に粉砕された。一瞬何が起こったのかわからなかったクラスの全員の動きが
止まった。そして、一番最初に復帰したのは愛佳だった。
「や、や、や、わ、わざとじゃないですよ。つい力が入ったせいで」
「…さ、サー」
「へ?」
「も、問題ありません、サー!」
 あまりの破壊力の前に血迷ったクラスメイトの一人がそんなことを口走った。
「そ、そうだ…野郎ども!いいんちょのお話をしっかり傾聴しろ!」
「いいんちょをお呼びするときは最初と最後に”サー”をつけるんだ!わかったな野郎ど
 も。」
「え?え?え?」
「自分らは全員いいんちょの指揮に従い、いかなる困難な任務もやり遂げる所存。どうぞ
 存分に命令をお命じください!」
「「「「「「サー!イェス・サー!」」」」」」
「ええええええ?!」
628バイオニック・MANAKA 5/7:2007/07/12(木) 23:01:26 ID:NiGvVBHA0
今日新たないいんちょマジックの伝説が生まれた。

バイオニックパワー・その1
 右腕は1トンの重量物を持ち上げられる。振り下ろした場合は1トンの打撃力が発生す
 る。
 そこ、愛佳のほうが吹っ飛ぶジャンとか言わない。来栖川の技術はそれを可能とするの
 である。そういうことにしておいて。
 同様の理由で1トン持ち上げたときも愛佳の背骨が折れたりはしない。

「というわけで、姉がなぜかサイボーグになって帰ってきたって訳。」
 こめかみを押さえながら沈鬱の表情で郁乃が説明する。
「はぇ〜、なんかかっこいいねぇ」
 それに答えるこのみはというと、本気で感心した様に言う。
「かっこよくない。それにこれって姉みたいなどんくさい人間にものすごい性能のスポー
 ツカー運転させるようなもんだから。あぶないったらありゃしない…瑠璃の言うとおり
 天才とナントカは紙一重ね。ちょっと怪我した程度でサイボーグなんて…げほげほっ」
「あれ?郁乃ちゃん具合悪いの?」
「ちょっと熱っぽいけどたいしたこと無いわいつもの事だし…」
 ぼわっ!
 いきなり教室内に突風が吹き荒れた。
「わわわ〜!」
「きゃっ!な、何?」
 突風でこのみの小さな体がポーンと飛ばされ、教室の後ろあたりの机を幾つか巻き込ん
で派手な音と共に墜落した。
629バイオニック・MANAKA 6/7:2007/07/12(木) 23:02:05 ID:NiGvVBHA0
 育乃は車椅子にしがみついてかろうじて踏ん張ってしのぎきった。
「い、いくのぉ〜、何で熱あるって言ってくれなかったのよぉ〜」
「はっ…お、お姉ちゃん…なんでここに?」
「だ、だって、今熱あるって。」
「今お姉ちゃんここに居なかったわよね…一応聞くけど、どこで聞いたのそれ?」
「え?…教室でホームルームしてたら郁乃の声が聞こえてきて…」
「お姉ちゃんの教室って1階下よね…」

バイオニックパワー・その2
 愛佳の右耳は1km先の物音も聞き取ることができる、特に色恋沙汰の話と郁乃の声の
 場合は恐ろしいまでの性能を発揮する。

「しかも瞬間的に現われたけど…」
「い、郁乃が具合悪いって聞いたら居てもたってもいられなくってぇ…全速力で走ってき
 たのぉ…」

バイオニックパワー・その3
 愛佳の両足は時速95kmで走行することができる。ただし咄嗟の後ずさり等には瞬間
 的に音速に迫る速度を出すことも可能。その場合はソニックブームが発生するため周囲
 に甚大な被害をもたらす。

「あー」
郁乃が首をひねって視線をめぐらすと、無残に破壊された教室の引き戸が視界に入り再び
こめかみを押さえた。
630バイオニック・MANAKA 7/7:2007/07/12(木) 23:05:21 ID:NiGvVBHA0
 一方、貴明の居る教室では…
 ソニックブームで無残にも死屍累々となった教室の中で、貴明は一人呆然と立ちすくん
でいた。心なしか頬がこけていた。
「る〜」
「あ、珊瑚ちゃん…」
「愛佳ねーちゃん絶好調やな。あとでおっちゃんに報告しとかな。」
 いつものように両手を挙げてる〜のポーズの珊瑚にふらふらと向き直った。珊瑚の後ろ
には教室の惨状を見て頭を抱える瑠璃の姿も見えた。
 貴明もちょっと涙目になりながら、無駄とは思いつつも一応聞いてみた。
「ねえ、珊瑚ちゃん…愛佳の体元に戻せない?…つか、バイオニック義肢の移植って必要
 だったの?」
「え〜、だって愛佳ねーちゃん両足と右手怪我しとったやろ。」
「や、それはただの骨折と捻挫で1月もすりゃ直ってただろうし…それに耳はなんとも無
 かったはずだけど。」
「耳はサービスやて。」
「いや、サービスって…意識不明の治療のためじゃないの?」
「え〜、愛佳ねーちゃん寝とっただけやん。目覚ましがなったらあわてて飛び起きとった
 で〜」
「……」
「たかあき?…どうしたん?」
 ぱた。
 貴明はその場で倒れた。
「たかあき?たかあきぃ〜?」
 つんつん。反応が無い。たたのしかばねのようだ。
「さんちゃん…寝かしといたり。……だから言ったんや、ろくなことにならへんて。」

 たぶんつづかない。
631物書き修行中:2007/07/12(木) 23:07:18 ID:NiGvVBHA0
このネタがわかる人はたぶん30以上w

↓今日この記事見て工工工エエエエエエェェェェェェ(゚Д゚)ェェェェェェエエエエエエ工工工
 (本当はν速板のだけどスレが落ちてるんで)
http://rate.livedoor.biz/archives/50396387.html

   ↓

バイオニック・ジェミーにあやまれーヽ(`Д´)ノウワァァァン

   ↓

なんかでむぱ受信

で、勢いで書いてみた。後悔はしないけど今は反省してる。orz
632名無しさんだよもん:2007/07/13(金) 01:19:19 ID:tGFX51lgO
書庫の更新マダ?
633名無しさんだよもん:2007/07/13(金) 11:22:14 ID:B+QcWzx80
>>631
チョwwwwwさらし者wwヒドスwwwwwww
車椅子とマネキンの足&毛布で良かったんじゃ??
634名無しさんだよもん:2007/07/13(金) 23:44:29 ID:JT6V6tDb0
>631
GJ!
地上最強の美女は知らなんだので、未来放浪ガルディーンのベリアルを想定したw
635名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 10:11:12 ID:P62Jz+1a0
>>634
ガルディーンも結構古いと思われw
火浦功今なにしてんのかね?
636名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 12:36:34 ID:pGE48+JF0
>>634
何か、今すごく懐かしい名前を見たww
637名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 20:25:42 ID:0q24s0Z80
>632
スイマセン、前回作業後に更新分をUpするの忘れてました・・・
638名無しさんだよもん:2007/07/14(土) 20:54:35 ID:bNkCTHCT0
>>637
どんまい。
いつも更新ご苦労様です。
639物書き修行中:2007/07/15(日) 21:08:20 ID:eZ6QcvTd0
投下した後でもう取り返しがつかんですが…orz

「タマ姉の七夕」で婚姻届の紙、緑の印刷って書いてますが
婚姻届って印刷茶色か赤みたいですね。(´・ω・`)ショボーン
届け=緑ってイメージがあって反射的に書いてた。
やっぱ突貫で書くのはいかんね。
640名無しさんだよもん:2007/07/15(日) 23:38:01 ID:3SDnFQab0
書庫の管理人さんに訂正を依頼すればいいと思います
641物書き修行中:2007/07/15(日) 23:51:06 ID:eZ6QcvTd0
結局漏れが本物見たこと無いのが悪いんだけどね。
なぜなら草壁さんが漏れのヨメだから。(`・ω・´)シャキーン
愛佳も捨てがたいがな!

修正してもらえるんであれば、2/2の2行目

白地に緑の印刷をした紙を4つに折りたたんで短冊状にしたもののようだ。
        ↓
何か印刷をした紙を4つに折りたたんで短冊状にしたもののようだ。

つう事でおながいします。修正してもらえなくても恨んだりはしないですw
642名無しさんだよもん:2007/07/16(月) 14:27:22 ID:7xh8QwmJ0
>641
修正しておきましたyo
643名無しさんだよもん:2007/07/16(月) 15:59:14 ID:7/DtjUra0
>642
毎度更新乙です! 幾つかNGワードで消えてたSSがあったのでこれで読めるw 
「恋愛同盟−宣戦布告」のラストが後書き扱いになってるyo
644向坂 環 ◆u8YacDeZBU :2007/07/17(火) 14:10:29 ID:5v+kP2WB0
          /^ \  ,ヘヘ、
          l/, 二=‐宀ー〜-、
         l /          ` ヽ、
         l i /  /  / i  i    ヽ
        l i/ i /  /  iハ i i    ヽ
.        l i  i/  _厶L/_i iハi i  i  i
        | レi i ///∠/ノ i ナナトi i  i|
.       l  |i  i レ欠}f^   テマト||  i  ハi
        l  ハ  ト`辷ソ    .じ:ソソ  iノ / i   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       l  l  i ヽ     、 ゙^' /ノ ///  <  ん〜、我が性春、順風満帆
.      l  i  i  i|\  ー'  , イ「//     \
        l ii, ---  ∩-r 'i´ハ i |          ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        /      | |       |
        |  |.    ||    |  |       
        |  | 。 __||___  。|  |            
        |  |、 /  |  |  ,|  |
        |  |  |    |、 |  |
        |  |  |_______/ l____|_  |        
         |.  |  /     |    /
         |.  |  |      |  /       
         | |  |     //|        
         | |   |__/|
645>526:2007/07/18(水) 03:25:26 ID:DP3/cdXO0
「花嫁は……」の続きです。かなり荒唐無稽な上、エロもいい加減です。
気に入らない方はスルーしてください。
646花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:27:33 ID:DP3/cdXO0
 ウェディングドレス姿のイルファを、よりによって自室のベッドに召喚――まさにそう呼ぶのがふさわしい状況だった――してしまった貴明。成り行きでベッドの上に正座した状態のまま、平謝りしつつ、ここに至る過程を彼女に説明した。
 当のイルファはと言えば、最初は本当に驚いていたものの、貴明の説明を聞くにつれて、ポッと顔を赤らめたり、イヤンイヤンと頬に両手を当てて身体をクネクネさせたりと謎な行動をとって、彼を戸惑わせた。

(やっぱり、メイドロボにとっては、そんな非科学的なことは計算外で、認められなくてオーバーフローしてるのかなぁ)

 そう言えば、何世代か前の来栖川製メイドロボは、頭がパンクすると湯気を出して止まってしまった……というような話を、雄二のヤツから聞かされたような記憶がある。

(イルファさん、大丈夫かなぁ……)

 そう心配したものの、珊瑚の開発したDIAは、意外にファジィで融通の利くものだったらしい。

 「なるほど、大体の事情はわかりました」

 まだ少し頬が赤かったものの、イルファは落ち着きを取り戻し、おおよその状況は飲み込んだようだった。

 「あ、ああ、うん。本当に信じられないような話なんだけど……」

 「いいえ、貴明さんがこんな嘘をつくような方でないのは、よく存じあげております。それに、実際このお部屋に出現した際の状況は、超常的な手段でないと説明がしづらいものでしたから」

 いまだ半信半疑な貴明よりも、むしろイルファの方が事態を受け入れているようだ。
647花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:28:57 ID:DP3/cdXO0
 「そうか、イルファさんが信じてくれてよかったよ」

 ホッとした気分で貴明が微笑みかけると、なぜかイルファの様子が微妙におかしくなる。

 (……そんな…あんな笑顔…反則ですわ……)

 「?」 

 よく聞こえないが何かブツブツ言っているようだ。

 「ああ、そうだ。そう言えばイルファさん、ここに来る直前はどこにいたの? 珊瑚ちゃんたちの家?」

 「いえ、今日は研究所でメンテナンスを受けていたのですが……」

 「それじゃあ、突然いなくなって、研究所の人が心配してるかもしれないね。そうだ! 電話を……」

 慌ててベッドから立ち上がろうとした貴明の手を、そっとイルファが掴んだ。

 「? どうしたの、イルファさん?」

 「その……研究所に連絡する前にひとつお伺いしたいことがあります。貴明さんは……その……」

 両手の人差し指をツンツンと突きあわせながら、真っ赤になったイルファが一瞬言いよどむ。が、すぐに意を決したかのようにキッと顔を上げて、貴明の顔を、目を真っ直ぐに覗き込んだ。

 「先程のお話ですと、私のことを”理想の花嫁”として思い浮かべていただいたとのこと。それは……私に異性としての魅力を感じて頂いていると、理解してもよろしいのでしょうか?」
648花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:30:01 ID:DP3/cdXO0
 「いいっ!? そ、それは……」

 「私は……貴明さんのことが好きです。私にとって、珊瑚様は”母”としての感謝と愛情の対象、瑠璃様は生きるための希望、”人生の道標”としての憧憬と敬愛を抱いております。
ですが、貴明さんに対する私の気持ちは、そのどちらでもない……けれどとても強い。たぶん……いえ、きっとこれが”恋”というものなのでしょう」

 真っ正面からど真ん中ストレートな告白を受けて、一瞬頭が真っ白になる貴明。

 「もし…貴明さんが、少しでも私に”女”としての魅力を感じてくださっているのなら……どうか、今晩一夜だけでも構いません、私を貴方の”お嫁さん”にしていただけませんか?」

 とても真剣で一途な想いをぶつけられ、混乱しながらも貴明は自分の心の奥底を探る。
 すると、驚くほど簡単に答えは出た。

 「……やっぱ、ヘタレだよな、俺。女の子の方から告白させちまうなんて」

 「? たかあき、さん?」

 そっと、イルファの肩に手をかけて、そのまま……強く抱き締める!

 「俺も、イルファさんのことが大好きだよ」

 「! 貴明さんっ!!」

 目を潤ませながらも幸せそうな満面の笑みを浮かべるイルファに、そっと唇を重ねる。
649花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:30:37 ID:DP3/cdXO0
 触れるだけの拙い口づけは、すぐに情熱的な熱いキスへと変わっていく。
 純白のドレス姿のイルファを強く抱き締める。

 「うれしい…です。貴明さん……夢みたい……」

 息継ぎの合間に途切れ途切れに呟くイルファの口を、貴明は再び貪る。

 数十秒か、あるいは数分か……ふたりは情熱的な抱擁とキスを続けるが、高まる興奮は、やがてそれだけで物足りなさを感じさせるようになる。

 いったん、唇を離し……けれど顔は近づけたまま、貴明は囁く。

 「――順番が逆になっちゃったけど……イルファさん、俺のお嫁さんになってください」

 「はい、喜んで……私を貴方の妻(もの)にしてください」

 イルファその言葉とともに、貴明は彼女をベッドの上に優しく押し倒した。

 すでに貴明の脳裏にはイルファをメイドロボとして見る意識はなく、このうえなく愛しい女性としてこのままずっと抱き締めていたいと言う気持ちで一杯だった。

 肩の露出したストラップレスのドレスを脱がしつつ、ゆっくりとイルファの肌を愛撫していく。
 まず肩から。そしてゆっくりと下りていき、やがて形良く膨らんだイルファの乳房に貴明の掌は辿り着いていく。

 「んんッ! あぁ……本当に、貴明さんに……触れていただけるなんて……」

 人工物だなんて微塵も感じさせない柔らかな感触に、貴明は思わず溺れてしまう。
650花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:42:25 ID:DP3/cdXO0
 「あっ……貴明さん、もう少しだけ優しく……」

 「! ご、ごめん。あんまりイルファさんのオッパイが気持ちよくて……」

 慌てて謝る貴明を、イルファは限りない愛しさを込めた眼差しで見つめる。

 「いいえ、私の乳房をそんなにも気に入っていただけたのなら、嬉しいです。もっと続けていただけますか?」

 返事の代わりに、貴明は膨らみの先端、色づいた赤い突起に口付ける。

 「……キャッ! も、もう、貴明さんったら!」

 悪戯っぽくたしなめながらも、イルファの目には隠しきれない欲情の炎が見えた。
 彼女が嫌がっていないことを確かめると、貴明も続きとばかりに右の乳房に舌を這わせる。もう一方の左の乳房は掌でもみしだく。眼を閉じて、イルファはその行為をじっと受け止め続けた。

 「……んッ……」

 女性経験どころか、キスさえも初めてだった貴明の舌使いは、それほど技巧が凝ったものではない。むしろ拙いと言った方が正確なのだろう。
 しかし、イルファにとっては彼の愛撫はいかなるジゴロのテクニックよりも身体を、心を燃え立たせる効果があった。

 (ああ……これが……愛しいという気持ち………)

 貴明の舌が肌の上を走り、乳房にぐっと押し付けられるたびにイルファは甘い吐息を漏らし、同時にそれが貴明にかつてない興奮を与える――という、無限のループが形成されていた。

 「やッ……あッ……はぅんッ」

 そうして、彼女の吐息が荒く、不規則になってきた頃合いを見はからって、貴明はゆっくりと舌を乳房から下へと侵攻させていった。
651花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:43:51 ID:DP3/cdXO0
「あぁ……はぁん……たか、あき、さぁん……」

 切れ切れに彼の名前を呼ぶイルファ。

 頭を下腹部の方まで進めた貴明は、イルファの両脚に手をかけて、いったん顔を上げる。

 「――ちょっと恥ずかしいかもしれないけど、いい?」

 「……いい、ですよ。貴明さんの思う通りに……シて…ください……」

 その答えを聞いた貴明は、ゆっくりとイルファの下肢を開いていく。ほどなく、彼の目の前に両腿のあいだの薄い繁みとその奥のピンク色をした柔襞が姿を現わした。

 「うわぁ……綺麗だよ、イルファさんのココ」

 「ひッ……やぁん、そんなに……見つめない、で……うぁッ!?」

 おずおずと伸ばした貴明の指先に触れられて、ビクンッと、今までより一層大きくイルファの身体が跳ねた。

 「わ、悪い。強過ぎた?」

 「……ち、違います……大丈夫、ですから……」

 荒い息をつきつつ、イルファは首を振る。
652花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:44:33 ID:DP3/cdXO0
 「続けても大丈夫?」

 「は、はい。すごく気持ちよかった……って、は、恥ずかしいっ」

 すでに桜色を通り越して、真っ赤になって身悶えるイルファ。

 その反応に勇気づけられて、貴明は指を動かし始めた。

 「くうんッ!」

 と、またイルファがびくんと全身を震わせる。

 「……ちょ、ちょっと、待ってください」

 はぁはぁと、ひどく荒く息をつきながら、イルファは呼吸を整えようと努力する。

 「……も、もう、我慢できそうにありません。貴明さん、来てください」

 「ああ……」

 実のところ、貴明の方も一杯一杯だった。イルファの脚を抱えあげるような体勢のまま、彼女のソコに痛いほどに勃起した自分のモノ押しつける。
 そのまま正面から、覆いかぶさるようにゆっくりと身体を重ねる。
 くちゅり、と軽くソコを突ついたあと……ずぬゅっと水音を立てながら、貴明自身がイルファの秘肉に包まれていく――

 「あぁ……」
653花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:45:12 ID:DP3/cdXO0
 彼女の中は少し潜っただけでも、激しく収縮し、奥へと誘ってくるようだ。
 その上肉襞は包み込むように動き、まだ入り口から少し入っただけだというのに貴明のモノを締めつけてくる。
 極上の感覚だった。初めての女性体験だが、これが名器と言うものなのかもれない。

 「……うッ」

 一瞬、放出してしまいそうになったが、懸命にこらえる。

 「じゃ、じゃあ……続けるよ……」

 「はあはあ……はい…お願い……しますッ」

 余裕がないのはイルファの方も同じようだ。

 それでも続けているうちに何とかコツを掴み、ふたりの動きが徐々にスムーズになっていく。そして……。

 こつん。

 と、何か引っかかるものに貴明自身の先がぶつかった。

 (ま、まさか、こんなものまであるなんて……)

 「イルファさん、ちょっと痛いかもしれないけど……我慢してね 」

 「えっ!? は、はい」

 耳年増な雄二によれば、女の子にとって、いたずらにその瞬間を長引かせるほうがむしろ辛いらしいとのこと。濡れ具合や性感の高まり自体は十分そうなので、貴明は一気に奥へと押し入った!

654花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:46:14 ID:DP3/cdXO0
 ぷちっ!

 何かを突き破る感触。
 そして、障害を抜けた貴明自身が、一気にイルファの奥へと突き込まれた。
 背中に回されてた彼女の腕が、力の限りに俺の身体を抱きしめる。それだけでは納まらず、形のよい爪が背中に食い込む痛みを感じる。

 しかし、そんな程度の痛みなど、貴明にとっていかほどのこともない。腕の仲の愛しい女性は、もっと激しい痛みに耐えているのだろうから。

 顔には苦痛の表情と、両目から零れる涙が二筋。

 「……くぅ……や、やっぱり、ちょっと、いたいです、ね」

 「ごめん。大丈夫?」

 「い、いえ、平気です。それより……私、本当に貴明さんのモノになれたんですね」

 目の端に涙をにじませながら、ニコリと笑ってみせる目の前の女性が限りなく愛しい。

 貴明は、ぎゅっとイルファを抱き締めると、万感の想いを込めて口づけた。
 その姿勢のまま、ゆっくりと前後に動き始める。
 溢れ出る液体が潤滑油となって、やがて徐々にその動きが滑らかに、リズミカルに
なっていく。

 「あ、あ、あ、あ……」

 痛感よりも快感のほうが勝り始めたのか、彼女の喘ぎに艶めいたものが混じり
出した。
655花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:46:56 ID:DP3/cdXO0
 「……はぁ、んっ、くぅ、ふぅ…はぁん。貴明さん、す、凄く、いいです……あ、私、もう…ダメ……」

 淫靡なじゅぷじゅぷという水音が接合面から響いてゆく。

 「ぁん…そこ、ダメぇ…」

 すっかり上気した艶やかな顔が、心にもない拒否の声をあげる。

 貴明は、懸命に腰を動かしながら、両手でイルファの乳房をもみしだき、唇を貪り、舌を絡めあった。

 「ひぃああああああああッ」

 ついにイルファが、のぼり詰める。

 「あぁっ! いいっ! わ、私の中に出してっ! 一緒にイってくださいっ!! あああぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

 彼女の膣がさらにぎゅぅっと痙攣するように貴明を締めつける。

 「う、うわぁあああああああああああっ!」

 叫び声を上げつつ、自身を膣内で痙攣させるように蠢かせながら、貴明はイルファの胎内に、びゅくびゅくびゅくと大量の精液をぶちまけた。

 「ひぃぃぃぅぅぅぅん、んぁ、あぁ…」

 貴明の熱いほとばしりを受けて、イルファは恍惚の表情を浮かべながら絶頂に達した。
 あまりの快楽の刺激に、完全に意識を飛ばしている。

 貴明の方も未知の快感と心地よい疲労に飲まれ、しばし意識を失った。
656花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:49:04 ID:DP3/cdXO0
 「ご、ごめんね、初めてなのに、無理させたみたいで……」

 意識を取り戻すとともに、自分のしたことが恥ずかしくなって、謝罪する貴明。

 とはいえ、ふたり並んでベッドに横たわったままなので、ある意味滑稽だ。
 実際、想いを通じ、一線を越えてしまったふたりあいだには、隠しきれない――というより、隠す気もない――ラブラブで甘甘な空気が漂っている。

 「い、いえ……貴明さんに、その……いっぱい愛していただいて、とてもうれしかったです……」

 恥ずかしそうに毛布にくるまり、チョロッと目から上だけのぞかせているイルファ。
 いつもはお姉さんっぽい雰囲気なのに、そういう仕草をするととてつもなく愛らしい。

 (う……これが萌えってやつなのか!?)

 普段、雄二が力説している数々の萌え理論にはいっこうに肝銘を受けなかった貴明だが、百聞は一見に如かず。いまの自分なら「イルファさんと萌え」という講演会を開いて演説することさえできそうだ。

 「え、えーと……そうだ! イルファさん、けっこう汗だくになっちゃったし、シャワーでも浴びない?」

 ちょっとアブない方向にいきそうになった思考を軌道修正し、何とか言葉をヒネり出す。

 「そ、そうですね……あら?」

 照れ臭そうに応えるイルファの声色が微妙に変化する。

 「? どうしたの、イルファさん」

 「おかしいですね。私どもメイドロボの皮膚には汗腺機能はついてないはずなのですが、貴明さんから出た汗だけにしては、何だか多過ぎる気が……」

 ――その後、シーツについた紅いシミや、彼女の目から流れるはずのない涙が出ていたことなど諸々の証拠から、イルファが”メイドロボ”と言うより”人間の女の子”と言ったほうがよい身体になっていることが発覚するのだが……、ま、それは別のお話。

「当然だ。うーの嫁ならば、うーの子が産めないとな(ニヤリ)」
657>花嫁はメイドロボ?:2007/07/18(水) 03:51:50 ID:DP3/cdXO0
以上、第2話です。10以上占領して申し訳ない。
前回予告したとおり、もう1話分ネタはあるんで、続きが書ければいいんですが……
658名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 04:02:50 ID:YTs15NsY0
gj。イイヨイイヨー、エロくてイイヨーw
しかしまさかの妊娠フラグ?続き期待してます。

それはそれとして…一応sageといた方が良いと思うな
659名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 05:55:36 ID:v03rqU+a0
>657
エロいの乙。メール欄にsage、と入れるのと、
できれば題名に1/11とか入れて全体のレス数がわかるようにして貰えると嬉しい
660名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 09:29:21 ID:dmc2liD/0
SS自体が3時50分とかの投稿で、4時や5時にマンセーと返すわざとらしい単発IDが2匹か
完全にジサクジエンのケースだな

ま、何はともあれお疲れさん。いつかそういうお返事が本当に別の人間から返ってくるようになるといいねぇwwwww

661名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 10:37:19 ID:/V5EKpgBO
>>657
乙です
イルファさん好きなんでハァハァさせていただきましたw
続き期待してます!
662名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 11:13:38 ID:YTs15NsY0
>>660
疑いすぎwwwせっかくSS投下も増えてきたんだし、またーりいこうぜ
663名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 11:31:26 ID:IhOKeOzH0
また自演&自演否定?
葉鍵ヲタってきもいね
664名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 11:51:49 ID:tR6yTagw0
自演の太鼓もちっていうのはSS主体のスレッドでは欠かせない存在ですよ
特にここまで過疎が深刻だったり、おのれの作品に自身がなかったりした場合はね
665名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 12:33:36 ID:VR8wmZXB0
乙さだよ
個人的にはロボのままが好きだけど、続きでどう料理するか楽しみ

あとsageは入れないと見ての通りだから、次回はお願いします
666名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 12:55:34 ID:J3xHKWpU0
なんか、ご覧のとおりってまるで実は俺の仕業ですって言ってるみたいだけどw
667名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 13:09:36 ID:VR8wmZXB0
と、このように何でもかんでも悪意として判断をする人もいるから
批判のレスも真面目な内容以外は気にしなくていいと思うよ

ま、どこのSSスレでも起きるお約束の現象だな
668花嫁はメイドロボ?痛い過去告白編:2007/07/18(水) 15:12:02 ID:V/1hRS0n0
痛い過去

厨房時代
好きなキャラの絡み(当然♂同士)を下手な絵で描いておき机の中に入れ、
何とテスト中に机の中を覗き、その紙を見て妄想しニヤニヤしていた

当然カンニングを疑われ「何見てるんだ、出しなさい」
自分の下手さも、男同士の裸絡みの絵がヤバイのも充分に自覚してたので
本気で青ざめた。見せたくない。見られたら死ぬ。でも見せなくてもカンニング疑われて死ぬ。

最終的に腐女子の汚点とカンニングの汚点を比べ、後者の方が重いと判断して紙を見せました
そのときの先生の顔なんて忘れた、知らない興味ない

普通に考えりゃカンニング疑われることくらい分かるだろうに
当時の自分に時と場合を考えろと説教したいよ
669名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 15:43:59 ID:FfGghfS70
つまり、どこのSSスレでもそのようなジサクジエンをやってるのですね
670花嫁は……作者:2007/07/18(水) 16:19:06 ID:BloCXyav0
*IDが違うのは別回線&PCから入ってるせいです
真面目な感想くれた方、サンクス。
誹謗系カキコに関しては……うーむ、私が2ちゃんに書いたSSはどうも槍玉にあげられる機会が多いです。厨くさい設定&文章がダメなのかしら。
ほかのHPに書いた場合はそれほどでも……あるか。某型月最低板でも非難轟々だったし。
一応、つづきは書く所存ですが、むしろエピローグ的なものなので、期待しない方が吉かと。
671名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 17:19:36 ID:FfGghfS70
そうだね。自分でも心当たりがあるなら直すべきだろうね
がんばれw
672名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 18:06:00 ID:A9vCo3oO0
>>670の文章がもうね\(^o^)/なにもわかってない

誤解のないよう初めに言っておくと、SS自体が叩かれることなんて滅多にないと思うよ。
悪意を持って原作のイメージをぶっ壊してたりする場合は叩かれるのかもしれないけどさ。
今回も内容に関して突っ込まれてるわけではないってのは、日本語読めれば分かるだろ。
具体的に言うと、自分に対する非難めいたレスを「誹謗系」なんて表現してみたりとか
わざわざ「続きは書くけど期待しないで」なんて書いて反応待ちっぽい感じだったりとか
そういう行為が鼻につくから槍玉にあげられるんじゃねーの?
敢えて言うなら、厨くさい設定&文章じゃなくて、厨くさい言動がダメなんだろうね。
673名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 20:03:27 ID:S3amTf260
>670
少なくとも漏れの>659が自演でないのは判る(当たり前w)から特に慰めはしない
SS投下は乙だが、>668みたいなのは意味が判らないし、
SSでないのにタイトルつけるのはSSと紛らわしくなるからやめてほしい。

あと個人的にはsageて欲しい。でも、また書いてね。煽りは気にすんな
674名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 20:40:50 ID:bVgoi4qK0
ここの姐さんに比べれば、まだまだだぜ!な過去がフィードバック

厨房の頃、質より量でホモ小説を集めてた
自室の本棚奥に隠してたけど

ベ ッ ド の 下 に エ ロ 本 を 隠 す

という設定に憧れ、ベッド下の右棚に表紙上にしてホモ小説を並べて収納
引き出せばズラ〜っとカオスな世界が楽しめる棚に大変身☆

しかし私は忘れていた…隣の左棚はベッドシーツ収納専用だということに…
母上が頻繁に開け閉めする棚だということに…

後はもう…言わなくても分かるよな…?
675670:2007/07/18(水) 21:22:22 ID:t2YM16Qb0
>672
>具体的に言うと、自分に対する非難めいたレスを「誹謗系」なんて表現してみたりとか
>わざわざ「続きは書くけど期待しないで」なんて書いて反応待ちっぽい感じだったりとか

あ〜、言われてみれば確かにそうかも。反応自体(つづけてヨシ/やめとけオラ)は期待していたので、あながち間違いではないのか。
”誹謗”と書いたのは、折角誉めてくれた人を自作自演扱いされたから、ちょっと頭に血が上ったかも。単純に「つまんねーよ」と言う評価ならスルーしたんだけどね。

ちなみに668は私が書いたのじゃないのであしからず。
676名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 21:42:09 ID:PLQnPc+D0
なんでお前はそんな全力で釣られたがるんだ
677名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 21:58:59 ID:5yx+/z8T0
そういう手口で荒らしにかかってるだけだろ
678名無しさんだよもん:2007/07/19(木) 00:46:59 ID:UZgRU8+z0
本当に何でも悪意として捉えるんだなw
679名無しさんだよもん:2007/07/19(木) 01:15:31 ID:i/9MGbL10
本当じゃんw
680名無しさんだよもん:2007/07/19(木) 05:25:51 ID:6vuw8vHX0
批判や煽りはともかく、せめてGJとだけは言っておこうぜ
っわけで>657GJ
681名無しさんだよもん:2007/07/19(木) 21:17:23 ID:mWaz2Uv50
そうやって具体的な感想を出さず、「とりあえずGJと言っておけば良い」
みたいな反応が一番書き手のやる気を削るのに。
682名無しさんだよもん:2007/07/19(木) 21:28:22 ID:G68jJHWr0
うーん、GJのみもノーリアクションも経験したが後者の方がだいぶ辛かった
どっちにしろ、次がんばろうと思うしかないのは一緒だけどさ

ひとつでも具体的な感想があがってきた時の嬉しいこと嬉しいこと。批判はもっと嬉しい
683名無しさんだよもん:2007/07/19(木) 21:58:39 ID:4ncqkhpQ0
>>681
それは被害妄想だ
つまらない作品にはGJもつけずにノーリアクションだから安心するんだ
684名無しさんだよもん:2007/07/20(金) 03:56:31 ID:jHh2DTuj0
ほんとここの住人は作家ばっかだな
685名無しさんだよもん:2007/07/20(金) 10:57:30 ID:d24MELB9O
読者より作家のほうが多かったりしてな
686名無しさんだよもん:2007/07/20(金) 20:29:59 ID:erRGFhql0
作者は普通一人だから、読者が作家より少ないってのは誰も読んでないって事だw
作家だって他の人の作品を読めば読者だし、読者だって書けば作家だし

まあ自分のサイト持ってSideStoryLinksに登録した方が読者は多いだろうが
687いくのんバスケ【仮】前書き:2007/07/21(土) 00:43:02 ID:S/KjN+1S0
ちょっと前に出だしだけ書いたSSがメール送信箱にあったので折角だからうp。
最初に見た友人に「ToHeart2である意味は無いし描写が意味不明」と言われorzってたけど、
今後のために意見、提案を下さい。面白い/続きが気になると思う人がいたら続き書きます。
こいつはこんなキャラじゃない、ここの部分の設定はありえない、○○は俺の嫁、なんでも
結構ですので。

これでOKかな。
688いくのんバスケ【仮】1:2007/07/21(土) 00:45:44 ID:S/KjN+1S0

「ハァ、ハァ、ハァ……」
「ハァ、ハァ、うくっ、ハァ、ハァッ……」

――広い部屋の中。あたしと貴明<アイツ>のリズミカルな吐息が響く。

「ハァ、ハァ、ハァ……」
「ハァ、ハァ、ハァ……」

――カラダが熱くてたまらない。さっき洗濯したばかりだというのにもう下着までグショグショ
だ。熱いあついアツイ……もう咽喉がカラカラだった。

「ハァ、ハァ、ハァ……」
「ハァ、ハァ、んっ、ハァ、ハァッ……」

――お互い限界が近いのはわかっている。ちなみに今のは咽喉に粘つく唾を飲み下した音だ。
誰もいない病院の一角、あたしと貴明がこんな事をしているなんて姉には想像もつかないだろう。
姉にはとても見せられない。

「ハァ、ハァ、ハァ……くっ!」
「――!!」

――あたしが一瞬気を許した隙を貴明が機敏に突く。この男は、苦手だ。細かい反応から
あたしの弱点を即座に見つけそこを重点的に攻めてくる。先ほどから同じところを往復していた
貴明の手はより大胆さを増してあたしを追い詰める。もう後がない。お願い、もう行かせて……!
689いくのんバスケ【仮】1:2007/07/21(土) 00:46:54 ID:S/KjN+1S0
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァッ……」

――こんな形<なり>してあたしもオンナ、貴明<オトコ>の前には手も足も出ない。それが
悔しい、口惜しい。だから吐息を押し殺す。この男に聞かれるのは癪だ。でも後がないのは事実。
だから、あたしは最後の抵抗<わるあがき>を始めた。

――手を行き来する褐色の●に
――左手は添えるように優しく
――右手は和えるように激しく
――口が開いた。はしたなく涎が迸る……かまうものか
――蕩けてぶれる視界で対象を直視しながら
――放った。

……ボールは吸い込まれるようにネットを揺らした。自分でも驚く完璧なスリー・ポイント・シュート


――貴明は目の前の状況が飲み込めないらしく目を白黒させていた。 5−4。勝った……!
690いくのんバスケ【仮】3(ミスった):2007/07/21(土) 00:51:39 ID:S/KjN+1S0
 西暦2004年。年号で言えば平成十六年、皇紀では2664年……だったような気がする。
 映画ではタイムトラベルが可能になったりゴジラとモスラと三式機龍(改)が戦ってたり
幻魔の群れが巴里を襲撃してたり……あら?オーク巨樹だったかしら?まあ良いわ。

 とにかくちょっと昔の人たちが夢見た世界は所詮夢物語でしかなく、毎朝東日に顔をしかめ
通勤するお父さん達に嫌々学校に行く子供達、そして少数の暇な人たちを主成分に今日も世界は
回りつづけている。夢見がちな作家の皆さんはこんな“未来”は予想もつかなかったのか。
いや、まてよ。

『神は天にしろしめし、世はなべて事もなし』

 なんだ、19世紀からわかってたんだ。ようするに人生なんて暇。退屈。なんてツマラナイ、
オモシロクナイ、コノセカイ。そんなことをあたしが思うのもまああたしがそんな人々の「日常」から除け者に
されてるからなんだけどね。

 自分でも長い前振りだと思うけどとにかくこの年の五月十五日はあたしには忘れられない日となった。
。あたしが「日常」に組み込まれる日。この白亜の非日常から色褪せた日常に足を踏み入れられる日。
今日はあたしの眼の手術日なのだ。

 あたしの名前は小牧郁乃。今年から高校(おっと、大人の都合で“学園”と言わなきゃいけないのよね
)に通う事になったごく普通の女の子だ。強いて違うところを上げるとすれば、今までの十年間をほぼ病院
で過ごした位かな――
今のところは以上です。

この後、幼少期いくのんが小児バセドウ氏病及び糖尿病に罹患しそれにより
大元の病気が「自己免疫疾患」である事がわかります。

所変わって2004年の町田市。手術の成功後もなぜか歩く事のできない郁乃は車椅子付ながらも
外の生活を謳歌していました。ある日、郁乃は貴明と雄二がバスケットボールに興じているのを
みます。足元に来たボールを持ち上げ、なんとなく放ったボールは見事ゴールへ。このとき感じた
「このボールは入る」という感覚が忘れられず車椅子バスケを始める事に……

って感じで話を進めようと思います。リハビリもきちんとこなしており体力的には万全。下半身が動かないのは精神的
なものだ……って設定は苦しいですかそうですか。
692名無しさんだよもん:2007/07/21(土) 01:27:35 ID:XTu5sBhvO
いくのんは目の手術してなかったっけ?
この地点でアウトじゃ……
693名無しさんだよもん:2007/07/21(土) 01:41:15 ID:oO/LsvKQ0
690の前半の薀蓄部分丸ごといらんだろ。
694名無しさんだよもん:2007/07/21(土) 01:56:28 ID:bnoSHyA/0
うむ、長期療養により体力が異常に落ちていたから車椅子生活なわけで、
よく食ってリハビリすればそのうち歩いたり走ったりさえもできる。
695物書き修行中:2007/07/21(土) 10:08:03 ID:8n2KPfVN0
恋愛同盟の続きが書けたんで投下します。
スレが荒れ気味だったんで少し投下を控えてる間におまけも書いたので
そっちも一緒に投下します。
全部で16レスあります。
696恋愛同盟3 向坂環の憂鬱 1/12:2007/07/21(土) 10:09:19 ID:8n2KPfVN0
「タカ坊…私はタカ坊の事が好きよ。あの頃から、ずっと。」
 私の口から、その言葉が自然とこぼれていた。
 そして、じっとそれを聞いていたタカ坊は、少し間をおいて、ゆっくりと答えた。
「俺は…」


   恋愛同盟 第3話  向坂環の憂鬱


 最近、タカ坊の周りが騒がしい。
 いつものように通学路の途中でタカ坊とこのみと待ち合わせて学校へと行くんだけど、
最近その先に、
「おはようございます」
「たかあきくんおはよう」
「おはよっ」
 3人の女の子が合流するようになっていた。

 一人は長い黒髪が良く似合う日本的美人の娘−草壁優季
 もう一人は春の日向みたいに穏やかな娘−小牧愛佳
 最後の一人はMTBに乗る元気の塊みたいな娘−長瀬由真
 どういうわけだかこの3人が最近タカ坊と親しくしている。
 このみはというと、初日にあっさり手なずけられてしまっていた。素直なのはこのみの
良い所なんだけど…。
697恋愛同盟3 向坂環の憂鬱 2/12:2007/07/21(土) 10:10:25 ID:8n2KPfVN0
 最初、雄二からタカ坊が転校生と付き合うことになったらしい、その転校生は小学校の
頃の同級生で、言ってしまえば私と同じような境遇でこちらに戻ってきてタカ坊と再会し
たのだと聞いて、私はタカ坊を諦める気になった。

 だがその後なぜか2人の女の子…しかもそれぞれに魅力的で可愛らしい女の子が増え
た。何時からタカ坊はそんな女ったらしになったのかしら。彼女が出来たとたんに苦手意
識克服…どころか逆に女好き…ってことは、さすがにありえないわね。

 雄二を締め上げて聞き出した所では小牧さんはタカ坊と同じように男の子が苦手だった
そうだし、長瀬さんは元々タカ坊に何かと突っかかってくるライバルのような間柄だった
らしい。でも私にはわかる。あの子たちはタカ坊に好意をもっている。

 なんだか腹が立つ。九条院に行ってからというもの、タカ坊に選ばれても恥ずかしくな
い様に学業もスポーツも家事もほとんどトップで頑張って来たし、何より女だって磨いて
きた。その辺の女の子に、女としては負けているとは思っていない。なのに私はあの輪の
外に居るのだ。

 そりゃ、私は素直じゃない。何度もタカ坊に私のことを「好き」と言わせようとしたこ
とがあっても、一度も自分からタカ坊に「好き」と言った事が無い。
 結局、自分は行動する勇気が持てなかったから、輪の外に居るのだ。
 なら、手遅れかもしれないけど、せめて行動しよう。

                   −
698恋愛同盟3 向坂環の憂鬱 3/12:2007/07/21(土) 10:11:12 ID:8n2KPfVN0
「それじゃ、また明日。」
「はい、また明日。」
「それじゃあね、たかあきくん。」
「また明日ね。」
「そんじゃ貴明、久々にゲーセンで対決と行こうぜ。」
 私たちは貴明さんと校門で挨拶を交わして別れました。私たちは3人で用事があるの
 で、今日はここで貴明さんとお別れです。貴明さんは久々で男同士の友情を深めるとか
 で向坂君に引っ張られていきました。
「タカ坊は行ったみたいね。」
 いつの間にか、私たちの後ろに向坂先輩とこのみちゃんが立っていました。
「それじゃ、行きましょうか。雄二には軍資金を与えてタカ坊を引き止めるように言って
 あるから、暫くは帰ってこないわ。」

 私たちは向坂先輩のお家へと案内されました。
 とても広くて立派なお家で、武家屋敷というんでしょうか…大きなお庭には錦鯉まで泳
いでいて、向坂家というのが名家だというのがわかりました。
 私たちはそのお庭を見渡せる広い茶の間に通されました。愛佳さんはどうも落ち着かな
いみたい。由真さんはというと「結構立派な家ねぇ」とか値踏みしてるみたいです。
「小牧さん。別に取って食べたりしないから落ち着いて。」
 お盆にお茶の道具を乗せて現われた向坂先輩はそう言って愛佳さんを落ち着かせるとお
茶を煎れて私たちに勧めてきました。

 暫くお茶をすする音だけが静かな部屋の中に聞こえていましたけど、このみちゃんが最
初に口火を切りました。
「ねえタマお姉ちゃん、先輩たちまで呼んで今日は何の話なの?」
「最近のタカ坊について、かな。タカ坊に直接聞いても良いんだけど、あなた達から聞き
 たいと思って。…あなた達はタカ坊のことが好きなのよね?」
「「「はい。」」」
「で、誰がタカ坊の彼女なの?」
699恋愛同盟3 向坂環の憂鬱 4/12:2007/07/21(土) 10:12:23 ID:8n2KPfVN0
 愛佳さんと由真さんは答えに困って私の顔を見たので、私が答えることにしました。
「一応、今のところは私が貴明さんの一番ということですが…」
 それから、私たち3人の間で取り決められた勝負とそのルールについてお話しました。
 お話の間向坂先輩は少しあきれた顔をしていましたけど真剣にお話を聞いてくださいま
した。

「…つまり、今あなた達はタカ坊の彼女に立候補してプレゼン中というわけね…」
「まあ、そういうことになります。」
「3つ又というわけではないのね…ところで、そのルールなら途中参加もOKって事よ
 ね。」
 向坂先輩の目が獲物を狙う目になってにやっ、と笑いました。あ、愛佳さんが怯えてま
す…やっぱり小動物系な愛佳さんは猫っぽい向坂先輩には弱いのかな。

「あなた達が認めれば私とこのみも参加可能って事よね。」
「た、タマお姉ちゃん!こ、このみもでありますか!」
「あら、このみだってタカ坊の事好きでしょ?」
「あ、あのぉ…向坂先輩と柚原さんはきっと駄目だと思います…」
 ぎろっ
「ひ!」
 愛佳さんが口を挟んだら向坂先輩がものすごい目でひとにらみしたので、愛佳さんはそ
のまま固まってしまいました。
「ちょっと、向坂先輩…愛佳に喧嘩売ってるんですか…代わりにあたしが買いますけ
 ど。」
「その子が私とこのみを否定するからよ。そりゃ、こちらは幼馴染でタカ坊との仲はあな
 た達よりもはるかに強固だから、脅威に感じるのもわかるけど。」
700恋愛同盟3 向坂環の憂鬱 5/12:2007/07/21(土) 10:19:52 ID:8n2KPfVN0
「た、タマお姉ちゃん…長瀬先輩もやめてよ〜」
 竜虎相打つ、といいましょうか、剣呑な雰囲気のお二人をこのみちゃんが止めようとし
ていますけど、お二人の視線は互いの目をにらんだままです。ここはきちんと説明をしな
いといけませんね。
「向坂先輩…愛佳さんが駄目だといったのは、そういうことではありません。」
「…じゃぁ、何なの?」
「多分、貴明さんが認めないということです。この間、貴明さんと私たちがデートした時
 のことです…」
 私は、私たちと貴明さんがデートした、この前の日曜のことを話し始めました。

                   −
「え、タマ姉とこのみの事?」
 私たちはその日、駅前にあるオープンカフェのテーブルの一つに陣取って、前夜に話し
合った取り決めについて貴明さんに報告していました。

 一通り夜のお茶会の様子と、3人の間で取り決めたルールについてお話した後で、由真
さんが一つ質問をしました。
「あの二人って、たかあきとどういう関係なの?」
「…タマ姉とこのみは幼馴染だよ。タマ姉は雄二のお姉さんでこのみはお隣さん。このみ
 とはずっと一緒に育ってきて妹みたいなものだし、タマ姉は今年の春に戻ってきたばか
 りだけどその前から俺と雄二にとっては頭のあがらない存在だよ。このみには激甘だけ
 どね。」
「…本当にそれだけですか?」
701恋愛同盟3 向坂環の憂鬱 6/12:2007/07/21(土) 10:21:27 ID:8n2KPfVN0
 私はじっと貴明さんの目を見て答えを待ちました。私から見ても、あの二人は貴明さん
に好意を持っているように見えましたから。でも鈍感さんの貴明さんは気づいていない可
能性も大いにあるんですけど。

 やがて、貴明さんは降参というように肩をすくめて見せた。
「実はね…昨日愛佳と由真に告白されて、帰ってから夜一人で考えてみたんだ。」
「…何をですか?」
「自分に向けられてる好意について。昨日告白されるまで、俺は愛佳と由真の気持ちにつ
 いて…自分に向けられている好意なんて考えもしていなかった。それが一体どんな好意
 なのかを。」
「……」
「だから、俺が気づかずに見逃している好意がないか、考え直してみたんだ。そして一番
 身近な好意…このみとタマ姉のことを最初に考えた。」
 貴明さんは冷めたコーヒーを一度口に運んで一息つきました。

「…むかしタマ姉が九条院に行く前の日に、俺はタマ姉に呼び出されて、そこでタマ姉に
 告白されたんだ。でも当時の俺は子供で、その告白が本気だとは思わなくて…タマ姉を
 傷つけた。…その時から、俺は女の子を傷つけるのが怖くなった…そして、昨日考える
 まで、その事を忘れていた…いや、目を背けていたんだ。」
「だから、たかあきは女の子にはやさしくしてしまうって訳ね。」
「うん…でも、きっとタマ姉も同じで、あのときのショックから抜け出せていないんじゃ
 ないかと思う。久しぶりに再会したタマ姉は、すっかり大人っぽい女性になってたけ
 ど、芯の部分はあの頃から変わってなかった。あの時はなんでタマ姉が突然戻ってきた
 のか解らなかったけど、もしかしたらあのときの答えが俺から聞きたくて戻ってきたん
 じゃないかと思ったんだ。再会したときも「タマお姉ちゃんすきすき大作戦」とか茶化
 してたけど、本当は俺から好きだって言う一言が引き出せないと、怖くて自分の気持ち
 が言い出せなくなってるんじゃないかって思ったんだ。」
 後悔しているような表情で貴明さんはそういうと、はぁ、とため息をついた。
702恋愛同盟3 向坂環の憂鬱 7/12:2007/07/21(土) 10:23:18 ID:8n2KPfVN0
「じゃあ、このみちゃんの事はどう思ったんですか?」
「このみは昔から妹のような存在だったけど、俺のうぬぼれじゃ無ければ最近は半分恋人
 のようなものだったと思う。…実際俺とこのみは第3者から見れば恋人のような行動を
 していたし、もし何も無ければそのまま恋人になっていたんじゃないかって思うくら
 い、お互いに横に居ても疑問に思わない存在だったと思う。でも、俺はそれから目を背
 けて、兄妹のような立場で居ようとした。それはこのみを傷つけていたのかもしれな
 い。」
 そう言って貴明さんは口をつぐんだ。これらはあくまで貴明さんの推察ではあったけれ
ど、でも私にはそれほど的外れとは思えなかった。

「…もしお二人が、わたしたちと同じようにたかあきくんの恋人の立場を望んだらどうす
 るの?」
 少しして、愛佳さんが貴明さんに結論を促すように言った。
 貴明さんはその問いにはっきりと答えた。
「きちんと答えを出そうと思う。俺の中で二人の存在がどんなものか…もう答えはあるん
 だ。」

                   −
703恋愛同盟3 向坂環の憂鬱 8/12:2007/07/21(土) 10:25:33 ID:8n2KPfVN0
 その通りだ。私は小さな女の子だったあの日から少しも変わってはいない。

 …いや、違う。

 私は小さな女の子だったあの時から、怖くて一歩も前へ進めなくなっているのだ。
 だから、今こそ勇気を出して一歩踏み出さないと。

 学校の裏山の祠の周りには、タカ坊と私以外にはこのみとあの子達3人しかいない。
 時折風が揺らす木々の葉音だけがざわざわと聞こえるだけだった。

 覚悟を決めて、目を開けると、目の前にはタカ坊がいる。
 あの頃と同じでちょっぴり頼りないけど、でもあの頃とは違って立派な男の子になった
タカ坊は、私の言葉を静かに待っていた。

 そして私はずっと言えなかった一言を告げた。

「タカ坊…私はタカ坊の事が好きよ。あの頃から、ずっと。」
 私の口から、その言葉が自然とこぼれていた。

 そして、じっとそれを聞いていたタカ坊は、少し間をおいて、ゆっくりと答えた。
「俺は…あの頃の俺は、タマ姉の事が大好きだった。だからタマ姉がふざけて言っている
 んだと思って、あの時拒絶してしまった。でも、タマ姉は真剣だった。…あの時は、ご
 めん。」
 タカ坊はそう言って頭を下げた。そして、続きの言葉を告げた。
「今度は、きちんと答えるよ。…タマ姉の気持ちは嬉しいけど、今の俺はその気持ちにこ
 たえられない。」
704恋愛同盟3 向坂環の憂鬱 9/12:2007/07/21(土) 10:27:42 ID:8n2KPfVN0
 胸が苦しかった。タカ坊の胸に縋って、タカ坊を責める言葉を浴びせながら泣き出して
しまいたかった。でも、それは出来ない。タカ坊が次に何を言うか、知ってしまっていた
から。

「俺にとって、タマ姉とこのみは「家族」なんだ。恋愛感情じゃなくて、それ以上の強い
 絆を感じる姉妹(きょうだい)なんだ。だからこれからもずっと雄二と4人で一緒だけ
 ど、二人に対して恋人としての思いには答えられない。」
 
 じっと私の横で口をつぐんでいたこのみが、タカ坊の前に進み出ると目に涙を溜めなが
ら、タカ坊の目を見上げて自分の真摯な心を言葉にした。
「このみはね…このみは、一人の女の子として、たかくんの一番なりたいと思ってた。で
 も、たかくんは私の事家族だって言ってくれたから、ずっと傍にいても良いって言って
 くれたから、それだけでも嬉しいよ。ずっとたかくんの妹でいても良いんだよね。」
「うん…」
「明日は笑っておはようって、いうから、今だけ、泣いても、いいよね…」
「うん…」
 タカ坊がこのみの小さな肩を抱き寄せると、このみはタカ坊の胸で静かに泣きはじめ
た。私も、タカ坊の胸に縋って泣きたかったけど、でも姉としての立場が邪魔をして、素
直に泣けない。

 タカ坊はそんな私を見て、すっと手を差し出してきた。私は無意識にその手をとってい
た。
「タマ姉も、泣いてもいいんだよ。」
 その一言が、私の中で素直な心を邪魔していたプライドを溶かしてしまった。
 我慢していた涙がぼろぼろこぼれてきて止まらなかった。
705恋愛同盟3 向坂環の憂鬱 10/12:2007/07/21(土) 10:29:51 ID:8n2KPfVN0
 私はタカ坊の胸に縋って泣いた。タカ坊は私とこのみの頭を撫でてくれた。それが心地
よくて、また涙があふれてきて、でも嬉しかった。

                   −

「おはようございます貴明さん」
「たかあきくんおはよう」
「おはよっ」
「3人ともおはよう」
 いつものように3人の子達と合流して、今日も7人で登校する。

「けっ、なぁんで貴明ばっかりもてるんだよ。まったく…って、ちょ、ギブ、ギブ、割れ
 る割れる割れる」
「あんたのそういうところが駄目なの。たまにはタカ坊を見習って下心なしで無償の奉仕
 をしてみたら?」
「見返りも無いのに奉仕なんてそんなの空しいっての…って、あの、お姉さまごめんなさ
 い…」
「あははは…タマお姉ちゃん、そのぐらいにしないとユウくん死んじゃうよ。」
「あ、あの、向坂先輩も…おはようございます…」
 小牧さんがちょっとおどおどしながら挨拶してくる。昨日は脅かしちゃったから仕方な
 いわよね…
「小牧さん…私の事は環でいいわ。私も愛佳ってよぶから。」
「え?…あ、あの…はい、環さん。」
 愛佳はきょとんとして私の顔を穴が開くほど見つめてたけど、少しして正気に戻ったみ
 たいであわあわとあわてていた。ほんと、ハムスターみたいな子ね。
「あなた達も環でいいわ、優季に由真。」
「はい!環さん。」
「解りました!環先輩。」
706恋愛同盟3 向坂環の憂鬱 11/12:2007/07/21(土) 10:33:03 ID:8n2KPfVN0
「あなた達の勝負、私も見届けさせてもらうわ。…言っておくけど、たとえ勝負に勝って
 もタカ坊にふさわしく無いと思ったら、遠慮なくタカ坊を取り上げるわよ。」
 そう言って、ちょっと脅しを掛けておく。
「え、環先輩それずるい!環先輩はリタイヤしたんじゃ。」
「私は一度も降参するとは言ってないわよ。勝負には参加しないけど、タカ坊を誘惑する
 のは止めないわよ。…あなた達が争っている間にタマお姉ちゃんの魅力でタカ坊をめろ
 めろにして奪っちゃうってのもいいかもね。」
 そういいながらいつものようにタカ坊をぎゅっと抱きしめた。
「だ、駄目だよ、タマお姉ちゃん!」
「タマ姉!」
「盗られたくなかったら、せいぜい女を磨きなさい。そして私がうらやましいと思うくら
 いのカップルになりなさい。」
「環さん…」
「…私はタカ坊の恋人にはなれなかったけど、あなた達にはその資格がある。…タカ坊、
 しっかり考えて答えを出さないと許さないわよ。ほら!」

 私は抱きしめていたタカ坊の背中をバシッと叩いて優季たちの方へと放り出した。タカ
坊は勢いあまってよろよろと3人の方へとよろけて、そして倒れそうになって思わず目の
前のモノにしがみついたんだけど…

 ふにょん。

「あんっ。」
「へ?」
707恋愛同盟3 向坂環の憂鬱 12/12:2007/07/21(土) 10:40:50 ID:8n2KPfVN0
 タカ坊は由真にしっかりと抱きついて、その豊かな胸に顔をうずめていた。由真はって
いうと、タカ坊に顔をうずめられて色っぽいあえぎ声を上げていた。
「わわわっ、ご、ごめん!」
「……」
 由真は両手で胸を隠してプルプル震えている。やれやれ、ちょっとタカ坊にお仕置きが
必要かしら。
 右手の調子を確かめてタカ坊の頭へ向かって伸ばそうとしたんだけど、
「でーと」
「え?…由真?」
「二人だけでデートしたら許したげる。お昼と映画、全部おごりで。」
「わ、わかった…」
 なんだ、しっかりしてるじゃない。余計な心配だった見たいね。
「じゃ、今度の土曜にでも…」
「たかあきくん。」
「へ?」
「私も、たかあきくんとデートしたいなぁ…勿論二人っきりで。」
「ぐ…わかった。」
「ということは、当然私ともデートしてもらえるんですよね?貴明さん。」
「ううううう…」
「諦めなさい、タカ坊。優季たちには誠心誠意尽くすのよ。女の子を泣かすのは男として
 最低なんだからね。」
 この美人のタマお姉ちゃんとかわいいこのみを振ったんだから、このぐらいの苦労はし
てもらわないとね。
708恋愛同盟2.5 閑話:向坂雄二の悲劇 1/4:2007/07/21(土) 10:44:17 ID:8n2KPfVN0
 俺はその場から逃げ出した。
 走りながら空気中に光るものが飛び散っていたけど、涙なんかじゃない。
 これは心の汗なんだ…。


    恋愛同盟 第2.5話  閑話:向坂雄二の悲劇


 俺の日曜の朝は早い。
 理由の半分は姉貴にたたき起こされるためだ。休日だからとウッカリ寝過ごした日には
何されるのかわかったもんじゃねぇ。
 貴明のやつが空気読んで姉貴の気持ちに気づいてくれりゃ、今頃貴明と無事にくっつい
た姉貴は大人しくなってくれてたかもしれないが、優季ちゃんとくっついちまった今とな
っちゃそれも無理だろうし。
 …にしても、小学校の頃も結構可愛い子ではあったけど、大きくなってあんなに美人に
なって帰ってくるとわかってりゃコナかけておいたのになぁ。

 とにかくまだまだ布団と離れがたい気分を振り払って起きると服を着替えて身だしなみ
を軽く整える。Tシャツとストーンウオッシュのジーンズで高校生らしくサワヤカ系で決
めて、洗面所で顔を洗って髭をそって髪形を整える。鼻毛がちょいと伸びてたので少し切
って完了。うっし、今日もいけてるぜ。

 その後、小言を受けながら姉貴の用意した朝飯を食う。やれ箸の使い方が悪いのなんの
と言われながら飯を掻き込むと、余計な用事を言いつけられる前に洗面所で歯を念入りに
磨いて自分の部屋に戻ってパーカーを羽織り、まっすぐ玄関に向かい家を出た。

 門をくぐるときに後ろで姉貴が何か言ってたみてぇだけど、つかまると厄介なので聞こ
えないふりをして小走りで家から離れた。
709恋愛同盟2.5 閑話:向坂雄二の悲劇 2/4:2007/07/21(土) 10:47:01 ID:8n2KPfVN0
 とりあえず貴明の家に向かう。俺の好みの年上のおねぇさんは貴明みたいなちょっと頼
りない系が母性本能を刺激して良いらしい(姉貴談)から、何のかんのと理由をつけてナ
ンパの時は貴明を連れて行くことにしている。まあ、アレだ、おとりを使って鮎を釣るが
ごとく、年上で美人のオネェさまを釣るわけだ。貴明のやつがヘタレなせいで、いいとこ
に行く前にいつも逃げられるわけだけど。

 とか言ってる間に河野家に到着。呼び鈴を押したけど返事が無い。こんな朝っぱらから
出かけてるのかよ…しかたねぇ、今日は一人で行くか。
 俺は駅前に向かって歩き出した。貴明なんていなくても俺の甘いマスクがあれば十分よ
…いまだにナンパがうまく行ったためしないけどな…。

                   −

 太陽はもうとっくに真上を過ぎて午後に入っていた。
 俺はというと朝から声掛けしているにもかかわらず一人もつかまっていなかった。
 声の掛けすぎで喉はからからだし、昼を食っていなかったんで俺はナンパを一時中断し
て駅前のオープンカフェに向かった。どうにも旗色が良くない。飯食ったらショバを変え
て再挑戦だな。
 そんなことを思いながらオープンカフェまできたら、その隅のテーブルに見慣れた顔を
見つけた。貴明のやつ、こんなところに居やがったのか。しかも一緒にいるのは優季ちゃ
んといいんちょと隣の組の長瀬じゃんか。デート中にでも偶然会ったとかかねぇ。
 たかあきのやつ女が苦手とか言いながら何であんなに女の子に人気あるんだか…世の中
は理不尽だぜ、くそ。

 ま、コブ付きとはいえ、女の子と食うほうが飯は旨いからな。声でも掛けてみるか。
710恋愛同盟2.5 閑話:向坂雄二の悲劇 3/4:2007/07/21(土) 10:49:17 ID:8n2KPfVN0
「よう、貴明。」
「あ、雄二…もしかして、またナンパか?」
「おう。おまえこそ、優季ちゃんというものがありながら、いいんちょと長瀬を口説いて
 るんじゃねぇの?」
「あー…」
「…?」
 いつもならココで必死に貴明が否定すると思ってたんだけど、今日の貴明は妙に歯切れ
が悪い。
 仕方ないんでいいんちょに話を振ってみた。
「いいんちょもこんなバカップルと一緒にいないで俺と遊びに行かない?」
「あー、えっとぉ…ごめんなさい。」
 ま、いいんちょは男苦手みたいだし。予想の範囲内だな。そんじゃ、と長瀬のほうに声
をかけてみる事にした。
「じゃ、長瀬はどうだ?お茶ぐらいご馳走するぜ。」
「なんであんたと遊びに行かなきゃならないのよ」
 うわ、つめてぇ。でもこれぐらいで引き下がる雄二様じゃないぜ。
「貴明には優季ちゃんがいるからな。ここは俺も加えてダブルデートって事で」
「あたしあんたみたいな軟派な男って嫌いなのよね。」
 取り付く島も無ぇ。
「大体デートの相手ならあたしも愛佳も足りてるっての。」
「?相手なんていないだろ?」
 ここにいる男は俺と貴明だけだし…
「ま、まさか、おまえ…いいんちょとレ」
「違うわよこの馬鹿!」
「…じゃ、どこに相手なんかいるんだよ。」
 そういうと、長瀬は顔を真っ赤にしながら貴明の腕を取った。
「え?貴明は優季ちゃんと付き合ってるんだろ?」
「そうですよ。」
 そう言って優季ちゃんも反対側の貴明の腕を取った。
711恋愛同盟2.5 閑話:向坂雄二の悲劇 4/4:2007/07/21(土) 10:51:04 ID:8n2KPfVN0
「ま…まさかとは思うが、いいんちょまで」
「…うん…ごめんねぇ。」
 いいんちょは顔を赤く染めながら小首をかしげて俺に言った。うわ、恋する乙女の顔だ
よ。
 納得できない俺は貴明に向き直った。
「貴明!説明しろ!…説明によっちゃ、タダじゃおかねぇぞ。」
 3つ又なんて姉貴が知ったらどんなことになるか…なにより優季ちゃんと付き合うって
事で諦めた姉貴とちびすけの気持ちを踏みにじる気なら一発なぐらねえと気がすまねぇ。
「あー雄二、これには深いわけがあって…」
 貴明によると、長瀬といいんちょが優季ちゃんにライバル宣言して、優季ちゃんもそれ
を認めたとか言う。
「あ、ありえねぇ…」
「まあ…俺もそう思うよ。」
「ありえねぇ…女嫌いの貴明が激モテで、この雄二様は一人身だと〜」
「は?」
「こ、この恋愛帝国主義者めぇ〜!!!」
 この世の不条理さに打ち震えながら、俺は人差し指をびしっと貴明に突きつけると、
「これで勝ったと思うなよぉ〜!いつか俺様のハーレムを作り上げて見返してやるぅ〜」
捨て台詞を残してそのラブラブ時空から逃げ出した。目からあふれ出るのは悔し涙なんか
じゃないぞ。これは心の汗なんだぁぁぁぁぁ…。
「あ〜、雄二…」
「あ…あたしの台詞盗られた…」
「向坂くん、ああいう所がなければいい人なのにぃ…」
712物書き修行中:2007/07/21(土) 10:57:44 ID:8n2KPfVN0
というわけでタマ姉話&雄二哀れの2つでした。
途中ですが今回からちょっと体裁を変えました。

前回までの流れだと語り部が由真→愛佳と来たので優季になるべきなんですが、
ふつーにデート話書いてもつまんねぇというのと、女の子3人にモテモテ状態の
タカ坊を見てタマ姉が黙ってるはず無いということでタマ姉の話を書いてみました。
だもんで、語り部はタマ姉&時々優季となってます。
雄二話はそのすっ飛ばした分のプチ補完になってます。

ちなみに一緒に告白したはずのこのみの台詞がほとんど無いのは仕様です。
このみの描写を入れると文がくどくなるんであえてあまり書いてません。
713名無しさんだよもん:2007/07/21(土) 11:40:22 ID:kuOTGw1q0
タマ姉。・゚・(つД`)・゚・。
714いくのんバスケ【仮】の人:2007/07/21(土) 12:26:14 ID:S/KjN+1S0
>>692、694の人
 リスクの少ない(でもゼロではない)目の手術をして体力が回復すれば学校に行ける、でしたよね。
確か。

 愛佳曰く郁乃の病気は「自分自身の抗体が自分を攻撃する」という事で「自己免疫疾患」と言う
事にしました。アジア人において視力障害から始まり、手足が痺れる原因、治療方法不明の病気
という事で「多発性硬化症」、愛佳が食いしん坊な事から自己免疫疾患の一種「バセドウ病」にも
罹患していると。
 目の手術さえすれば学校には行けますが患者の14%は慢性的に(普通の生活には支障のない程度に)
進行します。だから下半身に運動麻痺や感覚障害が出るなら上半身は達者でも車椅子生活かなと。

 でも設定に無理がありましたね。ちょっと車椅子バスケについて調べてきます。

>>693の人
 薀蓄というよりネタを詰めてみました。よく考えたら世間から隔絶されたいくのんがサクラ大戦やら
鬼武者やらあまつさえゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOSにタイムコップなんて知ってる訳ががありませんね。

 では丸ごとカットしてきます。
715名無しさんだよもん:2007/07/21(土) 20:39:44 ID:Q9WfrKD60
>714
ネットで自己免疫系の疾患眺めていくのんスレで何人かと妄想垂れ流してたら
「実在の病気にあてはめようとするのキモい」って怒られた事あるな漏れw

色々考えるのは楽しいけど、作中で病名や症状が明言されてない以上
どこまでいっても「そんな感じの病気」って事に留まるしそれでいいんだろうね
もとから膠原病系の個別の病名は症状の名前みたいなもんだし
716名無しさんだよもん:2007/07/21(土) 20:52:22 ID:XTu5sBhvO
まあ実際、甲状腺の疾患だったら、眼の手術は考えにくいしね
症状を見ればアリかと思うが、治療は甲状腺一部切除か投薬だろうし
中学高校とバスケやってたんで、車椅子バスケには期待
717いくのんバスケ【仮】の人:2007/07/21(土) 21:54:40 ID:S/KjN+1S0
>>715の人
そうですか……母の病状がいくのんの劇中の描写にそっくりな事もあり自己免疫疾患という
設定を思いつきましたが(←やや親不孝)、実在の病気にせず架空の病名(自己免疫疾患の一種)って事
にしましょうか。 治療にはミキュームの肝か仙命樹が必要と(ゲーム違)。

>>716の人
 母は手術をしたと思います。それが自己免疫疾患の治療の一環か別の病気かはわかりませんが。
幸い母はけろっと(日常生活に不満が無いほどには)なおりました。

ともあれ、はじめて続きを読みたいという人発見。やっぱり続き、書こうかな……?
718名無しさんだよもん:2007/07/21(土) 22:57:00 ID:7xF7H3I80
正直に言って、今の時点で続きが面白そうだとは思えない。

今回公開した部分って、出オチと薀蓄だけなんだよね。
だから本筋がどんな話なのかサッパリわからない。
前半部みたいなギャグ中心で行くなら正直寒いし、後半部の知識垂れ流し状態で進めるならオナニー乙で終わりだし。
これらがアクセントや状況説明にしか使われないなら、また違った印象になると思う。
719名無しさんだよもん:2007/07/21(土) 23:29:46 ID:Mw7pW8K40
批判の感想っていうのはあんまり作者のためにはならないと思うけど、
本人が望んでるならたまには書いてみようか。

車椅子バスケみたいなテーマを書くには、
文章内容含めたすべての態度が不謹慎すぎて不快だと思った。
その組み合わせはちょっとなあ……
でも、ほかに読みたい人がいるっていうならやればいいと思うけど?
あと俺の感想にレスする必要はないです。
720いくのんバスケ【仮】の人:2007/07/22(日) 00:02:38 ID:2+3URBkh0
 設定に難がある、そもそも出だしの部分で面白そうと感じない、テーマに対する僕の態度が不謹慎
という事で、この作品は封印します。

 少しでも興味を示してくれた716の人には申し訳ありませんでした。

 次何か書いたらまたUPします。その時も批評等お願いします。マイナスの批評が文章力の糧となると
思うので。

 最後に、今後の参考までに少しでも“良かった”“面白くは無かったけどここの試みは悪くは無かったかも”
と思うところがあれば教えて下さい。とにかく、自分の文章力を磨きたいのです。
721名無しさんだよもん:2007/07/22(日) 00:47:09 ID:Tmmm7bxk0
こういうスレで学べるのは、
文章力というよりは物語全体における雰囲気のような物だと思う。
文章力をつけたいと思うならもっと本を読むとか、
そういう事からしていくしか無いんじゃないかな。
一石二鳥で身につく物でもないし。
まぁ、次の作品を出すなら、
その作品に期待させてもらうし、応援させてもらうよ。
722名無しさんだよもん:2007/07/22(日) 00:50:58 ID:7OrKsSMt0
おーい。一朝一夕だろ。
723名無しさんだよもん:2007/07/22(日) 02:05:56 ID:KEFBVVuF0
とりあえず、最後まで書け
途中で投げるな、できないなら書くな
文章力云々なんて、最後まで書ける奴に初めて言う事だ
724名無しさんだよもん:2007/07/22(日) 05:58:47 ID:MXXG70eH0
>>712

個人的にはデートの部分こそ是非見たかったんだが
725物書き修行中:2007/07/22(日) 12:33:17 ID:N71wt5VJ0
あとがきした時に忘れてたんでまず、書庫の管理人様、修正サンクスです。

>>724
こういう話の性質上デート話は書かざるを得ないので、そのうち書きます。
人数構成自体が普通じゃないんで、普通に書いても中のいい友達同士の遊びっぽい
話になっちゃうんで、ちょっと変則的な話で書きたいと思ってます。
726名無しさんだよもん:2007/07/22(日) 13:23:26 ID:jk8ow6wdO
とりあえずオレは桜の群像が待ちどおしい。
てか最近ここのSSってイルファものがやたら多い気がするけどイルファってそんなに書きやすいのか?
あといくのんも。
727名無しさんだよもん:2007/07/22(日) 13:29:44 ID:N71wt5VJ0
シルファやミルファほど詳細不明って訳でもなく、本編にも出てきて
取っ掛かりが合ってなおかつ想像の余地が大きいって事でしょう。

要するにキャラがある程度わかって妄想を膨らませやすい。
728名無しさんだよもん:2007/07/22(日) 17:27:20 ID:FN5DaFQE0
いくのんもイルファさんと似たような位置ですな。骨格はあるけど肉付けは自由
その分ADで「俺の妄想と違うーっ!」が続出でしょうな。漏れには自分事ですけど
>726
桜の群像の作者です。待ってくれて有り難う御座います。来週末くらいにはなんとか
729名無しさんだよもん:2007/07/23(月) 00:31:26 ID:oMdSECSt0
いくのん書きやすいかなーと思って見事に詰まった人もここに。
なんというか、どうデレさせるというか、どう氷解させるかが難しい気がしますよ。
730名無しさんだよもん:2007/07/24(火) 02:04:44 ID:FUFQ13dU0
UMA・愛香好きの俺にSSを推薦してくれないかい
アナザーデイズがまちきれないぜ
731名無しさんだよもん:2007/07/24(火) 17:51:49 ID:iIaV9ogG0
>>730
推薦ってどういう意味?

732名無しさんだよもん:2007/07/24(火) 17:54:37 ID:dnoVEt/K0
>>730
名前を間違えるやつが愛佳好きとは片腹痛い。
733名無しさんだよもん:2007/07/24(火) 21:23:12 ID:M503G94S0
「片腹痛い」って、たしか「みっともない」って意味だったよね、タカちゃん。(何の話だ)

愛佳SSなら我楽多工房の「優しい嘘を」てのが好き。でもここできくのはちょっとスレ違いかもと思う。

とりあえず、ToHeart2 SideStory Links に行く事を推薦する。
734名無しさんだよもん:2007/07/24(火) 23:04:21 ID:3aRzEYbR0
とりあえず公式のシルファ立ち絵だけで飯が食えます
735名無しさんだよもん:2007/07/24(火) 23:08:53 ID:9idi2iIv0
>>732
なんか書く前に調べれ
736名無しさんだよもん:2007/07/24(火) 23:09:31 ID:9idi2iIv0
>>735
>>732じゃねえ、>>733
737名無しさんだよもん:2007/07/25(水) 01:57:07 ID:n1+qhZQv0
>>735-736
>>733は別に質問として書いてるんじゃないだろ。
ちなみに、片腹ってのは当て字で、
周りから見て痛々しい、「傍ら痛い」ってのが正しいはず。
738名無しさんだよもん:2007/07/25(水) 02:13:40 ID:cn42h0KcO
うーあげあしをとるのはみっともないぞ
739名無しさんだよもん:2007/07/25(水) 02:29:08 ID:09sdWJ370
大辞林 第二版 (三省堂)

かたはらいたい 【片腹痛い】<

(形)[文]ク かたはらいた・し

〔中世以降、文語形容詞「傍(かたはら)いたし」の「かたはら」を「片腹」と誤ってできた語〕
 身のほどを知らない相手の態度がおかしくてたまらない。
 ちゃんちゃらおかしい。笑止千万だ。
「あの声で歌手とは―・い」
740名無しさんだよもん:2007/07/25(水) 19:32:06 ID:U1tiklUO0
『傍らいたし』――そばで見聞きしていて心が痛む、いたたまれなくなる様子だ、つまりは
『みっともない』という意味だぞ、うー。

本来はるーのようにそばにいるものがいづらくなるほど立派なこと、優れていることを示す
言葉だったのだが……うーたちの言葉は移り変わりが激しすぎる。やはりうーたちは革命されるべきだな。

みたいな意味だった。でも激しくスレ違いなのでせめてるーこ口調で。
741名無しさんだよもん:2007/07/25(水) 20:03:16 ID:vNsqtrx60
「『だらしない』は間違った表現で、正しくは『しだらない』と言うべき」
こういう語源厨と同レベル
742名無しさんだよもん:2007/07/25(水) 20:27:56 ID:09sdWJ370
そうだね
よく語源の意味にこだわって突っ込みたがるヤシがいるけど
言葉の意味は時代と共に変わっていくので、現行の意味合いで
運用するのが普通と思うが。

だからこの場合は>732は別段用例として問題ないし、>733の1行目が
余計な突っ込みだって話だ。
743名無しさんだよもん:2007/07/25(水) 20:31:05 ID:09sdWJ370
いや、>733のは突込みじゃなくてボケかw
744名無しさんだよもん:2007/07/25(水) 21:00:32 ID:dZkWNCdM0
はいはい役不足役不足
745名無しさんだよもん:2007/07/25(水) 21:37:18 ID:iv6T2lV50
そういや、少し前に注送と注迭の違いを力説してた香具師がいたなw

書き手が色々気にするのは理解できなくもないが、
読み手は単語よりも文章の意味と雰囲気を読むもんだろうと思うんだがね
746名無しさんだよもん:2007/07/25(水) 21:37:25 ID:U1tiklUO0
>>743
はい。自分としてはボケのつもりだったというか……浅はかでした。

別に語源とか意味とかはどうでもよく、花梨が話の流れを読まない子感を出したかっただけです。言葉は生き物であり常に変化するという事は知っていますし語源厨がウザイのは僕も一緒です。

とりあえず
ToHeart2 SS好き同志にオススメSSを紹介したい→でもここではスレ違いっぽい→冗談っぽく言えばスルーしてくれるだろう
というだけの話。

んで740で質問じゃなく答えを知っててあえて書いたんだよ的な事を書こうとしたら途中でうp……orz
IDでわかるだろと思ったらID変わってるし。結果としてジエンぽくなってしまいましたが733、740は自分です。お騒がせして申し訳ありません。
ちなみに733後半は730への返答ね。

自分で言うのもなんですがスレ違い気味じゃないですか?今。
747名無しさんだよもん:2007/07/25(水) 21:39:56 ID:vNsqtrx60
それでは、『桜の群像』の続編でお楽しみください
748732:2007/07/25(水) 22:55:14 ID:iZiXskXd0
>>732を書いた後、一日経ってこのスレを覗きにきたら
話が発展していて驚いた…。
さすがにSS作家の人は言葉遣いに敏感ですね。
あまり言葉を選ばずに書き込んでしまって
スレ違いの話題を産んでしまってすみませんでした。
749名無しさんだよもん:2007/07/26(木) 15:25:50 ID:lbWjBW+x0
>>748
気にする必要ないと思うぞ。大体の意味が取れるなら問題ないし。
SSスレだからとかじゃなく、こういう話題でも無いとレスが付かないぐらい末期なだけだから。
750名無しさんだよもん:2007/07/26(木) 19:23:10 ID:JT7GFI37O
まあ、すぐ末期だの過疎だの言いたがるのも含めて日常だな
751名無しさんだよもん:2007/07/27(金) 01:24:49 ID:HdUbb+ZK0
>>1
※容量が480kを越えたあたりで次スレ立てを。
752名無しさんだよもん:2007/07/28(土) 04:23:21 ID:gQtdg2e80
んじゃ立ててみる。
753名無しさんだよもん:2007/07/28(土) 04:27:09 ID:gQtdg2e80
立てました。

ToHeart2 SS専用スレ 20
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1185564280/
754名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 01:39:49 ID:M8Qfnj1p0
乙。

埋めは恒例の春夏陵辱か?
755名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 20:01:41 ID:3+ch54sQO
>>754
そんなのあんの?w
春夏さん好きだからいいけどw
756名無しさんだよもん:2007/07/30(月) 15:01:13 ID:vh7EDPKgO
新参乙。



夏なんだなぁ………
757名無しさんだよもん:2007/08/01(水) 08:20:42 ID:HNPXgUkg0
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめういくのんはおれのよめうめうめうめうめうめ
うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
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うめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめうめ
758名無しさんだよもん:2007/08/01(水) 08:22:11 ID:HNPXgUkg0
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759名無しさんだよもん:2007/08/01(水) 08:47:48 ID:HNPXgUkg0
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760名無しさんだよもん:2007/08/01(水) 08:48:37 ID:HNPXgUkg0
>>759
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761名無しさんだよもん:2007/08/01(水) 08:49:32 ID:HNPXgUkg0
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762名無しさんだよもん:2007/08/01(水) 08:51:03 ID:HNPXgUkg0
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763名無しさんだよもん
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         (^o^)ノ オワタ   三┌(^o^)┘オワタ          /|
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   (^o^)ノ オワタ        三 ┌(^o^)┘オワタ    ┘>/   |   ミ \( ^o^)/ オワタ
   ノ( ヘヘ    (^o^)ノ オワタ  三  ┘> ┌(^o^)┘オワタ    /    ミ  |_/
          ノ( ヘヘ           三  ┘>  /   / |       ノ ノ
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                                    |  /    |  ヽ(^o^ )ノ オワター      ミ \( ^o^)/ オワタ
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  ||//        .||   ||//       ||     │        |            ノ ノ
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