本物の沢渡真琴のスレッド

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271名無しさんだよもん:2007/07/04(水) 21:29:19 ID:Srh8J68/0
         / :/ / :.:/ .:.{ :.{:.:  {:.:.:..  ヽ:.:.:ヽ:. \
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         l | l | :.:. |, /-‐ヽ.:\:.:\´:. ̄ ヽ:.:l:.:.j:. |
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         | N八 :.:.l{ イテ下    `'f_:::: }V/イ /|  
         | / {ヘ:.ト、:':{ハi_::::j      r':;;ソ 〃{:. |
       j/  ヾイ゙ヽゝ v:ソ     '   `´ 厶 |:. l
       /   .:.:.:/| :.:ヘ、    ー '   ,イ:.:. |:.:. ハ みくる
.       /  .:.:;:'イ| :.:小> 、      イ |:.:  ド、 い
.     /  ,/  .| :.:.:| \.   ̄´/〈 .!:.:  l  \ヽ
    /  /    | :.:.:|  \ ー ´ / ヽl:.:.  |   l い
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   /  .:l   ヽ  ヽ:.:.:ハ        __{__}:./__ /  l:.:i |
272名無しさんだよもん:2007/07/10(火) 02:50:54 ID:KVnktZn70
漏れは静止画でもいいからジムニー転がす真琴さん誰か描いてくれ。
273名無しさんだよもん:2007/07/18(水) 18:19:16 ID:nowXbFbc0
保守
274名無しさんだよもん:2007/07/23(月) 19:17:43 ID:9Jc0Pbcy0
保守
275名無しさんだよもん:2007/08/04(土) 00:42:11 ID:udXdCcHL0
保守
276名無しさんだよもん:2007/08/07(火) 17:50:06 ID:t0VfhGfH0
まさかアニメ最萌の予選を突破するとは
277名無しさんだよもん:2007/08/13(月) 00:34:44 ID:t2fBHlEO0
                   ≫ アウー!アウー! ≪
.  ◎、             /⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒\
   |  \       __ __
   |   \    l[》'《|l   ヽl|
  ●     \  〈iノ_,リ._)) ))) ガチャガチャ
  ●      \ ,!!('゚'Д''゚' l)!!!!
           `('⊃∞⊂从ヴヴヴヴ
             从くム〉,つZ/l:___
        / ̄ ̄ ̄ ̄(_〈       /\
     /         ヽ,)   /    \
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278名無しさんだよもん:2007/08/18(土) 17:28:24 ID:SJTQA0azO
>>276
mjk
最萌スルーしてたが見に行ってみるか
279名無しさんだよもん:2007/08/18(土) 20:34:27 ID:VC29LH7V0
まじで?
280名無しさんだよもん:2007/08/24(金) 01:46:13 ID:timurMKr0
今日が真琴の日
しかも勝ったら真琴VS真琴になるww

アニメ最萌トーナメント2007
http://animemoe2007.hp.infoseek.co.jp/
281名無しさんだよもん:2007/09/10(月) 08:49:18 ID:dldwXXRa0
保守
282名無しさんだよもん:2007/09/18(火) 05:55:54 ID:aY0z401P0
あげ
283名無しさんだよもん:2007/09/18(火) 23:53:39 ID:9BW3KGmr0
あの荒らしが死なない事には盛り上がる訳もないか。
284名無しさんだよもん:2007/09/19(水) 00:40:32 ID:2cvw19zH0
それはたぶんがおれーで真琴AAが貼られる限り無理だろう
285名無しさんだよもん:2007/10/08(月) 11:17:17 ID:Wn6r0/x00
保守
286名無しさんだよもん:2007/10/12(金) 15:27:45 ID:EbwKWD7DO
大人まこぴーあげ
287『優しい氷』6 1/8 ◆kd.2f.1cKc :2007/10/27(土) 17:17:02 ID:k9rwLWYz0
 ヴィヴィーン……
 軽いエンジン音を立て、ジムニーがガレージに収まっていく。
 エンジンが止まり、真琴さんが運転席から降りてきた。
「シャッター、閉めますよ」
「あ、うん、ありがとう」
 真琴さんはにこにこと微笑みながら、シャッターをくぐって外に出てくる。
 俺は、シャッターの引っ掛け棒をとって上がっているシャッターに引っ掛けると、勢い
良く引っ張り出し、そのまま片手で受け止めてから、下までおろす。
 そして、2人で水瀬家の玄関に向かった。
「ただいま戻りましたー」
 俺が、中にいるであろう秋子さんに向かって言う。
 すると、ドタドタと、秋子さんにしては、ずいぶん乱暴に廊下を走ってくる足音が聞こ
えた。
「あう〜っ!」
 ずびしっ
 いきなり俺に飛び掛ってこようとしたので、問答無用でチョップを入れる。
「痛い! 何するのよぉ〜!!」
 もちろん、秋子さんなはずがない。
 ツインテールにした、真琴さんよりもさらに赤みの強い、長い髪。それでもって着てい
るのは名雪のパジャマ。
「何するのよじゃないだろう、さっきだっていきなり飛び掛ってくるし、警戒するのが普
通だ」
 俺は、多分不愉快丸出しで、そいつを指差しながらそう言った。
「う〜ん、でも、今のはちょっと強烈過ぎじゃないかなぁ」
 後ろで、真琴さんがそんな事を言う。
「えっと、この子……誰?」
「そうだ」
 真琴さんにそう言われて、俺ははっとそう思い出す。
288『優しい氷』6 2/8 ◆kd.2f.1cKc :2007/10/27(土) 17:18:28 ID:k9rwLWYz0
「お前はいったい何者なんだよ。商店街でいきなり襲い掛かってくるわ、一体俺に何の恨
みがあるってんだよ」
「え……あれ?」
 そいつはキョトン、と目を円くして、俺の顔を見る。
「あたし……誰?」
 ビシッ
「あうっ!」
 俺は、即効でそいつにデコピンを入れていた。
「痛い〜」
 そいつは、デコピンされた額を押さえながら、抗議するような目で俺を睨んでくる。
「痛いじゃねぇだろ! ふざけてるのか!」
「でも、思い出せないものは思い出せないの!」
 ビシッ
「俺の事を許さないって言ってただろうが!」
 デコピン2発目。
「あう〜っ! だって、そう思ったんだもん!」
「そんな理由で人を襲うな!」
 がしっ、ぐりぐりぐりぐり。
 デコピンでは飽きたらん。拳を両のこめかみに当てて、うめぼし炸裂。
「ゆ、祐一君、やりすぎだよ」
 真琴さんのレフリーストップが入り、俺は一旦そいつから離される。
「祐一君も落ち着いて」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 息の荒い俺に、真琴さんは宥める様に言ってから、そいつの方を向いた。
「とりあえず、名前だけでも思い出せないかな?」
 優しげな笑顔で、小さい子供を諭すように言う。
「名前…………」
「落ち着いて……思い出してごらん?」
289『優しい氷』6 3/8 ◆kd.2f.1cKc :2007/10/27(土) 17:19:06 ID:k9rwLWYz0
 俺はそんな真琴さんを見入ってしまう。外見は若々しくて、可愛らしさも感じさせるく
らいなのに、そいつに対する態度はまるで、母親が優しく語り掛けるようも見えた。
「名前……そうだ、名前」
「思い出した?」
 真琴さんはにこっ、と笑う。
「どうせろくでもない名前なんだろ?」
「祐一君、変な茶々入れない」
 困ったような表情で、指を立てて、めっ、と、俺に叱り付けるように言った。
「あ、いや……スミマセン」
 思わず、謝ってしまう。
 すると、そいつはいーっ、と、勝ち誇ったような笑みを俺に向けた。
 ムカツク……
「それで、あなたのお名前は?」
 真琴さんは再び笑みをそいつに向け、訊ねた。
「あたしの名前、さわたりまこと!」
「ふ・ざ・け・る・な・!」
 ズビシッ
「あう〜っ!」
 反射的にデコピンを入れていた。
「祐一君!」
 真琴さんは困ったような表情で言うが……
「沢渡真琴って言ったらこの人の名前だ!」
「ほへ、そうなの?」
 そいつはキョトン、として、真琴さんを見る。真琴さんはにこっと微笑んで見せた。
「……でも、あたしも沢渡真琴!」
「まだ言うかこいつは!」
 俺はそいつの頬を摘みかけて……
「祐一君!」
290『優しい氷』6 4/8 ◆kd.2f.1cKc :2007/10/27(土) 17:19:37 ID:k9rwLWYz0
 真琴さんが、俺とそいつの間に割って入ってきた。無理やり離される。
「世の中、同姓同名がいたっておかしくないでしょ」
「そーよそーよ」
 真琴さんが俺を叱る様に言うと、そいつまで調子に乗ったように俺に言ってくる。
 ムカツク……
「それで、他に思い出せそうな事はない?」
 真琴さんは、小さい真琴の方を向いて、やはり優しく訊ねる。
「うーん…………」
 小さい真琴は、こめかみに指を当てて、目を閉じて考え込む。
「記憶喪失……か」
「ここはやっぱり、警察に届けた方が良いんじゃないですか?」
 俺がそう言うと、真琴さんは、あごに手をあてた。
「私もそう思うけど……」
「警察……?」
 小さい真琴は、急に、怯えたような表情になる。
「怯えてる子を、無理に連れて行くってのも可愛そうな気がするな」
291『優しい氷』6 5/8 ◆kd.2f.1cKc :2007/10/27(土) 17:20:08 ID:k9rwLWYz0

「了承」
「秋子さん!」
 俺は抗議の声を上げるが、家主の決定に逆らえるはずはなく。
「落ち着けば、いろいろ思い出せるかも知れませんし、少しの間でしたら、構わないでし
ょう?」
 優しげに微笑みながら、秋子さんは言う。
「警察の方にも連絡は入れておくから。身元がはっきりするまでは、置いておいてあげよ
うよ」
「秋子さんや真琴さんがそういうんだったら……」
 しょうがないんだろうけど……
「うーっ」
 俺が横目で見ると、そいつはなぜか恨みがましそうな目で俺を見ている。
 なんか、激しく身の危険を感じるなぁ……
「とりあえずもう少ししたら名雪も帰ってきますし、ご飯の仕度、しちゃいますね。皆さ
んはゆっくりしててください」
 あくまで笑顔のまま、秋子さんはそう言って、キッチンの方へと入っていこうとする。
「って、秋子さん!」
 ふと思い出し、俺はあわてて声をかけた。
「はい?」
 秋子さんは、落ち着いたというか、のんびりした様子で振り返る。
「その……今日の晩飯は、いったいなんでしょう?」
 俺は、呻くような声で訊ねる。
「おでんにしようと思ってましたけど、祐一さん、お好きじゃありませんでした?」
 秋子さんは、不思議そうに首をかしげながら、俺に聞き返してくる。
「あ、おでん……でしたか、いや、それなら、それで」
 あの材料でまともなおでんができるのだろうか…………
292『優しい氷』6 6/8 ◆kd.2f.1cKc :2007/10/27(土) 17:21:06 ID:3koYktb70

「いただきまーす」
 …………どうしてできるのかなぁ。
 四角い、赤いおでん鍋の中で、ぐつぐつと普通に、ありふれたおでんが煮えている。
「あつつっ、はふはふはふ……」
 いや、ありふれたというのは、秋子さんに失礼か。
 味の方は超一品。これぞ日本に伝わるおふくろの味。
「がっがっがっ、んぐんぐんぐんぐ……」
 ……見た目は、ティーンでも、通そうと思えば通るんだけどなぁ、秋子さん。こういう
ところはやっぱり、母親というか、なんと言うか。
「ひら天もう1枚ー」
「って、おい!」
 俺の左側で、ガツガツと飯をむさぼっているちびすけの真琴に、俺は突っ込みを入れる。
「あぅ?」
 箸を鍋に伸ばしたまま、そいつは俺の方を向いてキョトンとする。
「お前、ちょっとは遠慮しようって気にはならないのか!」
「良いじゃない、別に。あんたに関係ないでしょ!」
「関係ないわけあるか!」
 ギリギリギリギリ、お互いに歯を剥きあう。
「いいのよ、どんどん食べて。まだ材料に余裕はあるから」
 秋子さんが、笑顔で言う。
「はーい! ほーら」
 ちび真琴は意地悪そうな笑みで俺を見てから、箸を動かすのを再開する。
「祐一君、足りなかったら、私が後で何か作ってあげるよ」
 真琴さんまで、俺の方を見て、苦笑しながら言う。
 何ですか、名雪まで俺の方を哀れむような苦笑で見てるし。悪者は俺っスか?
「なんか、こっちに来てから俺、調子狂いまくりだよな」
 ボソボソと呟くように言う。
293『優しい氷』6 7/8 ◆kd.2f.1cKc :2007/10/27(土) 17:21:37 ID:3koYktb70
 そんな俺をよそに、ちび真琴はおでんをがっついていた。
「まぁまぁ祐一君、そんなに機嫌悪くしないで」
 真琴さんにそう言われては、これ以上文句を言うわけにもいかず。俺はすっきりしない
まま、箸を動かすのを再開した。
294『優しい氷』6 8/8 ◆kd.2f.1cKc :2007/10/27(土) 17:22:10 ID:3koYktb70

「まぁなんか、ここへ来てからめまぐるしくいろんなことがあったな……」
 食後。
 部屋で、ベッドの上でごろごろしながら、そんな事を考える。
 いきなり最初に真琴さんと再会するサプライズ。まぁ名雪の奴が待ち合わせブッチして
凍死しかけたってのもあったけど。あゆとも再会、それから、新しいクラスメイトの留美。
それと、美坂香里……こいつは悪い意味で覚えてしまった。うまくやっていけそうにない。
外見は似ていないけど性格はどっちもボケボケした感じの倉田姉妹。そして……
「そうか……今日もそろそろだな」
 俺は起き上がり、ダウンのジャケットを羽織った。
295『優しい氷』6 9/8 ◆kd.2f.1cKc :2007/10/27(土) 17:23:43 ID:3koYktb70
>>287-294
今回は以上です。

ええ約半年振りです。まだ見ておられる方おられますでしょうか?
前と感じが変わってしまっていたらごめんなさい。
296名無しさんだよもん:2007/10/27(土) 18:54:11 ID:K68lKqSi0
うわあ。随分とお久しぶりですな。
また読ませていただきますとも。
297名無しさんだよもん:2007/10/29(月) 03:19:26 ID:udwzJYzEO
待ってましたー!
相変わらず良いですね〜、続き期待してます
298名無しさんだよもん:2007/11/02(金) 01:40:49 ID:GUmgLDCu0
久しぶりに(ry
乙(ry
299『優しい氷』7 1/7 ◆kd.2f.1cKc :2007/11/05(月) 17:08:26 ID:avk83KDg0
 俺は階下へと降りてきた。
 リビングに入り、見渡す。真琴さんの姿は無い。
「もう行っちゃったかな……?」
 そう思い、入り口のところにかけてあるキーフックを見た。
 真琴さんのキーホルダーは……まだあるな。
 …………
 何で真琴さんが、こう、かわいい女の子のと言うか、巷で言うところの“萌えキャラ”
のキーホルダーを付けてるのかな。
 このキャラって確か名前は長森、瑞……
「あ、祐一君」
 俺がそんな事を考えながら見ていると、丁度入り口に来た真琴さんは、俺の名前を呼び
ながら、リビングに入ってくる。
「今日も準備万端だね」
 俺がダウンジャケットを着ているのを見て、真琴さんは妙に楽しそうに言った。
 そういう真琴さんも白いダウンジャケット。今更だが、本当に白の似合う人だ。
「それじゃ、行こうか?」
 真琴さんはキーフックから、ジムニーのキーのついた、自分のキーホルダーを取る。
「はい」
300『優しい氷』7 2/7 ◆kd.2f.1cKc :2007/11/05(月) 17:08:57 ID:avk83KDg0

 ガラガラガラガラ……
 シャッターを閉めて、ジムニーの助手席に収まる。
 ジムニーは住宅街をすり抜けて、やがていつものように、市電の走る大通りへと出た。
「今日は、夜にもまたひと降り着そうね」
「雪、ですか?」
 俺は少しげんなりして答えた。
「うん。祐一君、雪は嫌い?」
 頷いてから、真琴さんは優しげに微笑んで、一瞬こちらを見た。
「雪って言うか、寒いのはずっと苦手です」
「そっか」
 真琴さんはフロントガラスの前を見ながら、俺の答えに苦笑した。
「それに、雪って……────」
 俺はなんとなく言いかけたが、突然、言葉が詰まった。
 …………!?
 雪が……なんだ?
 俺は一体、何を言おうとしたんだ?
「? どうしたの?」
 真琴さんは、少し心配そうになった表情で、視線を一瞬こちらに向けて、聞いてくる。
「……いや、なんか度忘れって言うか、思い過ごしだったみたいです」
 俺はそう言って、ジムニーのシートの上で姿勢を直した。
 やがてジムニーは、左折のウィンカーを出して、昨日、一昨日と同じコンビニの駐車場
に入った。
 俺と真琴さんは、ジムニーを降り、店内に入る。
「いらっしゃいませー」
 淡々とした口調、ヤブニラミするような表情。また今日も『あまの』かよ。
301『優しい氷』7 3/7 ◆kd.2f.1cKc :2007/11/05(月) 17:09:28 ID:avk83KDg0
 っていうか、こんな時間にアルバイトしていて良い身分なのだろうか? 親は何も言わ
ないのだろうか? 俺もここに来る前はバイトしていたが、男子と女子では扱いも違うだ
ろう。
 まぁ、どうでもいい……か。
 俺はホット缶のコーナーに向かう。
 スクリューキャップの、大き目の缶コーヒーを取る。微糖。
 レジに持っていく……今日も『あまの』は、不機嫌そうというか、無愛想な表情で応対
する。
「138円になります」
 俺はやれやれと思いつつ、小銭で150円を取り出す。
「ああ、シールで良いです」
「はい、かしこまりました」
 袋を取り出そうとした『あまの』に、少し慌ててそう言うと、『あまの』はシールを缶
のバーコードの上に貼り付けて、両手で俺の方に差し出した。
 …………表情や口調は不愉快だが、ひとつひとつの動作はむしろバカがつくほど丁寧な
んだな、こいつ。
「…………今日、放課後、商店街に居ましたよね?」
「えっ?」
 いきなり、『あまの』が、俺に質問してきた。俺は、突然の事に、一瞬、うろたえてし
まう。
「ツインテールの、赤毛の髪の女の子……」
「な゛っ」
 一瞬、裏返った声を出してしまう。
「何のことかな? 俺は……」
「あーっ!」
 ビクッ!
 突然出された大声に、俺は反射的に身をすくめた。
302『優しい氷』7 4/7 ◆kd.2f.1cKc :2007/11/05(月) 17:10:04 ID:avk83KDg0
「祐一君、今日も1人で先に買っちゃってるー」
 かごを手に下げた真琴さんが、背後で不満げに言う。
「あ、いやその……ですね」
 俺は気まずそうにしながら、後ろの真琴さんにレジの正面を譲るように、右にずれる。
「もう、気にしないでって言ってるのに」
 少しむくれつつ、真琴さんはそう言いながら、カウンターにかごを乗せる。
「いらっしゃいませ」
 『あまの』の、淡々とした声。
 こいつ、何を言いかけて……まぁ、あの騒ぎじゃ、見てれば誰でもツッコミたくなるか。
 俺はそう思いながら、買った缶コーヒーを持って、入り口の方に離れた。
「あっ、それとね」
「ピザまん2つ、ですね」
 …………読まれてんなー……
303『優しい氷』7 5/7 ◆kd.2f.1cKc :2007/11/05(月) 17:10:35 ID:avk83KDg0

 コンビニを出たジムニーが、一路、学校へ向かう。
 商業ビルの密集しているあたりを抜けると、視界が開け、小高い丘がそこから見えた。
 この光景、見た覚えが……うん? でも、少し違うような気がする……なんだろう?
「まぁ、いいか」
「?」
 やがてジムニーは、夜の帳の中、街灯の明かりが妙に幻想的に見える学校へとたどり着
いた。
 曇った空に遮られた星明りの代わりに、積もった雪に反射した街灯の光が、淡く差し込
んでくる。
 今日も、舞は、そこに居た。
 1人で、階段の踊り場に座っている。
「こんばんは、舞ちゃん」
「こんばんは」
 真琴さんの声に、舞はくるりと首を回すと、真琴さんの顔を向けて、挨拶を返してきた。
「よう、こんばんはだな」
「祐一も、こんばんは」
 俺が声をかけると、舞は俺の方に視線を向けて、そう言った。
「ご飯、持って来たよ」
「ありがとう」
 舞の隣に座り込んだ真琴さんが、包みを広げ始める。舞は淡々とながらもお礼を言う。
「そう言えば、舞」
 俺は真琴さんの反対側から、壁に寄り添った状態で、身をかがめて舞に聞く。
「お前、生徒会長だったんだって?」
 俺が訊ねると、舞は箸をくわえつつ、こくん、と頷いた。
「うん、そう」
「へぇーっ」
304『優しい氷』7 6/7 ◆kd.2f.1cKc :2007/11/05(月) 17:12:02 ID:saDPjVI80
 真琴さんが、驚いたような声を上げた。
「私もそれは初耳、そうだったんだ」
 そう言って、真琴さんは興味深そうに、舞の顔を覗き込む。
「佐祐理が私を推薦したから……」
「へぇ」
 口の物を嚥下した合間に、舞が言う。それに対して、声を出したのは真琴さん。
「本当は、佐祐理がって話だったんだけど……」
「え゛?」
「は?」
 舞の言葉に、俺と真琴さんはそろって呻くような声を出す。
 佐祐理さーん!? 自分が面倒くさいからって、舞に押し付けましたかー?
「その頃、佐祐理、栞のことで手がいっぱいだったから……」
「あ、そうか……一昨年の秋ごろなら、丁度栞ちゃん、一番調子悪い頃だよね」
 舞が言うと、真琴さんは思い出したように、舞の言葉を肯定した。
「そうだったのか。それじゃあ、しょうがないな」
 俺はため息混じりに苦笑しつつ、そう言った。
「偉いな、舞は。そんな事が気遣えるなんて」
 俺はそう言って、半ば自然に舞の頭を、そっと撫でていた。
「…………」
 舞は食べ物の咀嚼を続けているが、真琴さんはぎょっ、としたように、俺を見上げた。
「…………祐一君、上級生」
 真琴さんは、舞を指差して、唖然としたような表情で言う。
「って、おうわっ!?」
 俺自身も慌てて手を離し、2・3歩後ろへと退いてしまった。
 舞は、箸をくわえると、無表情のまま、俺が撫でていたあたりを自分の右手で撫でる。
「大丈夫……嫌いじゃないから……」
 舞が言う。
305『優しい氷』7 7/7 ◆kd.2f.1cKc :2007/11/05(月) 17:13:36 ID:saDPjVI80
「お、おう……そうか……スマン」
「やれやれ、祐一君はだいぶ舞ちゃんのことが気になってるみたいだね」
 真琴さんは、苦笑気味に微笑みながら、自分で抱えていたコンビニ袋を広げ始めた。
「そ、そういうんじゃないですってば! ただ、こう、なんとなく、自然にって言うか」
「はいはい」
 説明する俺の言葉を聴きつつ、真琴さんは満面の笑顔で、それを取り出した。
「んー、やっぱり寒い夜にはピザまんに限るよね」
 ああ、はい、毎日言ってるんですね、その言葉。
306『喧しい水』7 8/7 ◆kd.2f.1cKc :2007/11/05(月) 17:15:03 ID:+LIc3TTi0
>>299-305
今回は以上です。
307名無しさんだよもん:2007/11/05(月) 18:44:15 ID:yopxUmYx0
いやあ、これはこれは。乙です。
308名無しさんだよもん:2007/11/05(月) 22:05:55 ID:cZqW+80T0
おお、いつのまにか復活してましたか
まってましたよー

乙です
309名無しさんだよもん:2007/11/16(金) 19:12:41 ID:x97hzHQC0
     ∧_∧真琴は昔拾った狐なんだ。 
    (`・ω・´)      ∧_∧
   /     \    ( ´Д`) (オイ、なんか変なのがいるぞ)
.__| |    .| |_ / 秋子 ヽ
||\  ̄ ̄ ̄ ̄   / .|   | |
||\..∧_∧    (⌒\|__./ ./
||. (     )目合わせるなって   ∧_∧
  /   ヽ           \|   (    ) うわー、なんか言ってるよ
  | うぐぅ ヽ           \/ 名雪 ヽ.
  |    |ヽ、二⌒)        / .|   | |
  .|    ヽ \∧_∧    (⌒\|__./ /
310『優しい氷』8 1/5 ◆PzUpV8gLts :2007/11/17(土) 12:27:23 ID:F8vlvLFS0
「あ、降って来たね」
 舞と別れ、校舎から出てくると、綿毛のようなものが、あまり風もない夜空から舞い降
りてきていた。
 ジムニーの助手席のドアを開けて、座席に乗り込む。
 窓越しに、校舎を振り返った。
「…………」
 真琴さんがキーを捻る。軽いセルの音がする。2ストロークの回転を安定させるのに、
軽く空吹かしする。
「どうしたの?」
 ギアを入れようとして腕を動かした真琴さんが、俺に声をかけてきた。
「いや、舞のやつ、大丈夫かなと思って」
 真琴さんの方を向いてそう言うと、真琴さんはくす、と苦笑気味に笑った。
「やっぱり祐一君、気になるんだ」
「別に、そう言うんじゃないですってば」
 俺が慌ててそう言うと、真琴さんはにこっ、と満面の笑顔になって、言う。
「あれ、同じ学校の先輩を心配するのが、そんなに困った事なのかな?」
「ぐ……」
 俺が言葉に詰まると、真琴さんは楽しそうな笑顔のまま、正面を向く。クラッチを踏ん
で、ギアを繋ぐ。
 ジムニーのほとんどまっ平らなフロントガラスで、降ってきた雪が、ヒーターの熱で溶
けて水になる。それをワイパーがかきとって行く。
「舞、傘とか持ってきてるのかなと思ったんです」
「それは大丈夫だと思うけど」
 大通りをジムニーを走らせながら、真琴さんは答える。
311『優しい氷』8 2/5 ◆PzUpV8gLts :2007/11/17(土) 12:28:00 ID:F8vlvLFS0
「それにしても、名雪と言い舞と言い、良くあんな薄い制服でこの寒さの中平気だなって
思いますよ」
「あはは」
 真琴さんは苦笑してから、言う。
「慣れの問題もあるし、2人とも体育会系だからねぇ」
「いや、それは違うと思う」
 俺はエンジン音に紛れて、真琴さんに聞こえないように小さくつぶやいた。
「舞も体育会系……ですか?」
 部活の話は聞いていなかったが……と、俺は思い出して、真琴さんに訊ねた。
「うーん……どっちかって言うと、体育会系って言うか、武闘派、かな?」
 真琴さんが苦笑気味に言う。
「って、武闘派、ですか……? あいつ……」
「うん、特定の格闘技とかやってるわけじゃないけどね」
 正面を向いたまま、ニコニコと笑いながら真琴さんは言う。
「は、はぁ……」
 武闘派ね……まぁぱっと見確かに鋭そうなところがあるけど、でもそれにしては、なん
となく抜けてるというか、そんなところもあるような気がするがな。
 ジムニーは住宅街に入り、水瀬家に着く。
312『優しい氷』8 3/5 ◆PzUpV8gLts :2007/11/17(土) 12:28:33 ID:F8vlvLFS0

「ぷはー」
 コップに注いだ牛乳を煽る。
「この1杯のために生きてるよなぁ、なんてな」
 風呂上りの俺はそんなことを呟きながら、コップを流しでざっと荒い、水切りに入れて
台所を後にする。
 階段を上がって、自分の部屋に戻る。
「なんだかいろんなことがあったよなぁ……」
 ベッドに座って一息つき、1人で呟いた。
 ベッドの上で大の字に転がると、一気に疲れが吹き出してきた。
「一気にいろいろありすぎだろ、今日は……」
 呟いてから、一度身を起こす。点けていたストーブと、電気を消して、布団の中に潜り
込む。
 そのまままどろみ始め、眠りに落ちていった…………
 ……………………
 …………
 ……
「ん……」
 目が覚める。
 枕もとの目覚まし時計を見ると、午前2時少し前を指していた。
「トイレ……」
 生理的欲求に従い、俺は起き上がり、ベッドから抜け出す。
「くっ、さぶっ……」
 少し出るにも、パジャマだけでは辛い。
313『優しい氷』8 4/5 ◆PzUpV8gLts :2007/11/17(土) 12:29:05 ID:F8vlvLFS0
 半纏を着込み、部屋を出た。
 階下に降り、トイレに入った。
 水道の凍結防止の為か、パネルヒーターが点けっぱなしになっていて、トイレの中は少
しだけ暖かい。
 用を足して、水を流す。
「ん……?」
 トイレを出てくると、LDKに灯りが着いている事に気になった。
「なんだ……秋子さん、起きてるのか?
 カチャカチャ、と、ダイニングの方で音がする。
 覗きこむと、2人の人影があった。
「ダブル真琴……」
 思わず呟いた。
「あ、祐一君」
 俺の姿に気付いた真琴さんが、声をかけてくる。
「あ、真琴さん」
 俺はダイニングの2人の方に近付いていく。
「あひよぉ……ほへははへなひははへ」
 皿に盛られた焼きそばを口に運ぶ箸をくわえて、真琴(小)が俺を睨む。
「口に物を入れたまましゃべるな」
「ごめん、起こしちゃった?」
 真琴さんの声に、俺はそちらを向く。
「いえ、別にそういうわけじゃないです。……夜食、ですか?」
「うん、なんかお腹空いてたみたい」
 ソースの匂いが鼻につく。
314『優しい氷』8 5/5 ◆PzUpV8gLts :2007/11/17(土) 12:29:36 ID:F8vlvLFS0
「お前なぁ……真琴さんだって仕事あるんだから、いちいち手間かけさせるなよ」
 俺は呆れて、真琴(小)に言う。
「らっへおははふいらんらもん」
 真琴(小)は口に運ぶ手を止め。俺を睨んでくる。
「だから、口に物を入れたまましゃべるな」
「あはは、祐一君も作ろうか?」
 真琴さんは苦笑して言う。
「いえ、俺はいいです……すみません」
 立ち上がりかける真琴さんを制して、俺も苦笑した。
 俺は冷蔵庫から牛乳を取り出し、コップに1杯注いで、口に運んだ。
「祐一君、別に付き合わなくてもいいよ? 早く寝た方が」
「あ……はい、すみません」
 実は、最初からあまり付き合うつもりはなかったのだが……
 真琴さんと一緒には居たい気がするが、どうも真琴(小)とは噛み合わない。疲れる。
「真琴さんもあまり無理しないでください」
「うん、大丈夫」
 牛乳のパックを片付けながら言うと、真琴さんはにこっと笑って、そう言った。
「じゃあ、すみません、先に寝ますね」
「はい、おやすみなさい」
「はっはふぉいひははひひょぉ」
 お前には言ってない、と、口には出さずに真琴(小)に悪態をつき返してから、階上に上
がる。
 自分の部屋に……ベッドの中に戻り、俺は再び眠りに落ちた。
315『喧しい水』8 6/5 ◆kd.2f.1cKc :2007/11/17(土) 12:30:54 ID:IXQrGoji0
>>310-314
少し短いですが、今回は以上です。
316名無しさんだよもん:2007/11/17(土) 12:45:08 ID:sSDDjQrh0
乙だ。
土曜日の午後にまったりと読まして頂いた。
次回もまたヨロ
317名無しさんだよもん:2007/11/17(土) 20:21:38 ID:TRYDYDnr0
乙でした。
和むねえ。。。今年もKanonの冬が来る。
318名無しさんだよもん:2007/11/22(木) 23:01:47 ID:+AmoLOg80
頑張り次第では素人が捕まる。俺は実際に2、3人と会えた。
http://hohoi.ichiya-boshi.net/
319名無しさんだよもん:2007/12/03(月) 18:48:18 ID:Y5TrlC0+0
今年もKanonの冬がやってきたねえ。保守。
320名無しさんだよもん
ほっ