【SS】ほしのゆめみスレッド 3【CG】

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1名無しさんだよもん
    _      _
  〃⌒ヾ-、―( ヾ       
  {{   ノ-―`゚ヘヽリ       ほしのゆめみ
  ゞ=〈ヽ〃ノノハ)〉、
   ノノハI」゚ ヮ゚ノリ`ヾ 、   廉価版コンパニオンロボでプラネタリウム解説員
  ((/( ⊂レ卯つヽ V〉  最高のポンコツではある
  V〉)' く/V|_!〉 ))    planetarianはこいつのおかげで最高の作品となった
   '′   じ'ノ

屑屋@天国
「まあ、そんなわけで・・・俺も天国に召されちまった。
 ここまで来るのに、いろいろなことがあった・・・
 だが、俺とゆめみが辿って来た運命には、本編以外にもいろいろな並行世界(パラレルワールド)があったようだ。
 その辺の話は、ここの住人たちが色々語ってくれると思う」

ゆめみ@天国
「・・・お客様、そろそろお話が始まりますよ?」


本スレ
 planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜 12
 http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1161533146/
前スレ
 ☆ほしのゆめみスレッド 2☆
 http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1158454128/
ネタスレ
 ほしのゆめみのヘコンだ時のセリフを考えよう
 http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1115539671/
関連スレ
 planetarianの世界に葉鍵キャラがいたら
 http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1104993429/
いつも喧しい大通りから一歩入った裏通りに、俺の店はある。
店の名は、『古道具商・くずや』。・・・名前の通りの、古道具屋だ。
よくある店と違うのは、その品揃え。
俺の店には、一風変わった品物ばかりが集まっている。

このきな臭い世界で、俺が傭兵稼業がてらに仕入れた品物を、知人や隣近所へ譲り始めたのがきっかけだった。
そのうちに、「変なものなら『くずや』へ」のような噂が立ち、そういう物ばかりが持ち込まれるようになり・・・
今や陳列棚は、すっかり「変なもの」で埋まっている。
使用済みの軍用品や、未開の地で交換した現地の品々などから始まり、曰くつきの品やガラクタ寸前の品。
傭兵絡みのコネで入手した、アンダーグラウンドな品物・・・ヤバい薬やら弾薬やら・・・もこっそり扱っているが、まあそれは裏の話だ。

間口の狭い店内に、雑多に積み上げられた「変なもの」。
通りに面したショーケースの中に、その中でもひときわ異彩を放っている品物がある。

見る角度によって青から紫へと色を変える、マジョーラカラーにに塗られた、一抱えほどの金属製の球体。
その表面にはいくつも穴が開けられ、穴の中にはレンズが埋まっている。
二つの半球をつなぐ短い円筒形の部分には、「Cosmos」の文字。
この品物を持ち込んだ、俺の友人によれば、
『一昔前にカリスマクリエイターと言われた人物が作った、超高性能プラネタリウム投影機』
なのだそうだ。

・・・その投影機を、先ほどからじっと見つめている一人の少女・・・いや、少女型のロボット。
設定年齢は十五、六歳といったところか。筐体は低身長型(FL)。
二つに分けて括った、銀色の長い髪。緑色の濡れたような瞳で、じっと投影機を見つめている。
頭の横に耳の代わりについている、セラミックメタル製のイヤーレシーバーが、彼女がロボットであることを主張している。

彼女はショーケースにへばりついて、もの欲しそうな目で投影機をじっと見つめている。
・・・ずっとこの調子で、かれこれ1時間以上は経っているだろうか。
「・・・ロボットのお嬢ちゃん、その投影機が気になるかい?」
「あ、申し訳ありません。お邪魔でしたでしょうか?」
俺の声で、夢から現実に引き戻されたような少女の顔。
「いや、どうせ客も来ないし、別にかまわないんだがな・・・」

業務遂行中のロボットならば、こんなところでいつまでも油を売ってはいない。
商品を探している金持ちのオーナーが、お抱えのロボットを『お遣い』に差し向けることがあるが、彼女も大方そのクチだろうか。

「・・・それで、その投影機に興味があるのかい?」
「はい・・・まあ、その・・・」
もごもごと口ごもる少女。・・・ロボットにしては、変に人間的な反応だ。
「ただなぁ・・・その投影機は、うちでも1,2を争う値の張るものなんだ。できるだけ勉強はするが、結構高いぞ?」
「いえ、妥当な価格設定だと思います・・・こんな貴重な品物が、古道具のお店にあるというだけでも驚きましたし・・・」

彼女も納得しているとおり、この投影機は決して安くはない。いや、とんでもなく高い。
『何百万個もの星を映し出せる』という、ギネスブックにも載ったというこの業務用投影機は、『お部屋のインテリア』として使うにはいささか値が張りすぎる。
業務でプラネタリウムを運営しようとする人間が、わざわざこのような古道具屋へ機材を探しにくるわけもない。
・・・そんな事情もあって、この機械は、店開きして間もない頃から、ずっとこの店の看板のようなものだった。

「あの・・・」
少女が口ごもり、・・・やがて、意を決したように言った。

「お代なのですが・・・わたし自身では、駄目でしょうか?」
そのロボットの少女は、『SCR5000Si/FL CapelII・ほしのゆめみ』と名乗った。
涼元精機社のSCR5000といえば、完全擬人型自動人形の「はしり」のようなモデルだ。
最近のモデルとは違い、遠隔頭脳を持たない半独立稼働機。
ネットワークの整備されていなかった時代が生んだ、業務用としてはいささか過剰品質(オーバークオリティ)な人工知能周り。
5000系はその中では廉価版だが、それでも完全独立自律思考が可能なのは、金持ち向けの愛玩用を除けばこの系列ぐらいしかない。

「実はわたし、花菱デパート本店屋上プラネタリウム館に勤務していたのですが・・・」
「花菱デパートか・・・」
ここから3ブロックほど離れた大通りにある、老舗のデパートだ。
屋上のプラネタリウムが売り物・・・と聞いてはいるが、俺はあいにく星空には興味がないので、一度も行ったことはない。
「勤続十五年を経過したということで、新型のSCR-i5500への更改が決まりまして・・・つい先日、後任の機体が配属されました」
「ふむ」
「それで、わたしは廃機処分ということになりまして・・・業務引継を終えて、メーカーへ戻る途中だったのです」
「ということは・・・」
「はい・・・解体のうえリサイクルされるか、蓄積データベースを初期化して別の派遣先へ派遣されるか・・・
 いずれにせよ、今のわたしではなくなる、ということになります」
「・・・ロボットとはいえ、気の毒な話だな」
「いえ、わたしはロボットですから、廃機処分そのものについて恐れは感じません。
 ・・・でも、わたしにはまだ語りたい『ほしのゆめ』が・・・・・・心残りが、あるんです」

ほう、と、俺は思わず感嘆する。

彼女は、確かに「心残り」と言った。
普通、業務支援ロボットは、与えられた業務を過不足なく遂行するが、それは命令を忠実に実行しているに過ぎない。
業務遂行中は、それが生きがいのように働くが、ひとたび中止命令が出れば、最初から興味すらなかったかのように無関心になる。
だが、俺の目の前にいる、このゆめみというロボットは、他のロボットはどこか違った。
プラネタリウム解説員の業務を免じられても、自らの業務に・・・彼女が言うところの『ほしのゆめ』に、未練たらたらである。
俺は、そんな彼女に興味を持ちはじめていた。
「・・・店長(マスター)さん、お願いです!・・・わたしを『身請け』してはいただけませんか?
 この子と一緒に、もう一度『ほしのゆめ』を語らせてください・・・・・・どうか、お願いしますっ!」
ゆめみは一生懸命に・・・ロボットとは思えないリアクションで・・・何度も頭を下げて、俺に懇願する。

確かに、廃機処分となったロボットでも、メーカーとの交渉が成立すれば、『身請け』することは可能ではある。
交渉は簡単ではないが、彼女自身の意思とあれば、話は別だろう。


俺は、「商売人」と「一人の人間」の間で葛藤していた。

「商売人」としての俺の目からすれば、これほどおいしい話はない。
俺がゆめみを『身請け』する・・・つまり、一時的にせよ彼女のオーナーになるということは、彼女の『生殺与奪権を握る』ということを意味する。
彼女が自分と引き換えに、この投影機を手に入れたところで、俺がオーナー特権で「返せ」と命令すればそれまでのこと。ゆめみも投影機も丸儲けだ。
さらに、その気になれば、ゆめみごと売り払ってしまうこともできる。
自律思考が可能な独立稼働機は、良からぬことを考える輩の需要で、アングラではそれなりの値段がつく。
それだけに、メーカーも『身請け』には慎重なわけだが・・・

だが、ゆめみ自身も、『ロボットの身請け』というのが何を意味するのか、知らないわけではあるまい。
『ほしのゆめ』を語り続けたいという、彼女自身の『夢』のために、彼女はリスクを承知のうえで、覚悟を決めて申し出ているのだ。
俺は、そんな彼女をさっさと売り払えるほどドライでもない。
「一人の人間」である俺が、葛藤するのはそこだ。

しかし、ゆめみを売り払わずに手元に置いたとすると、今度はゆめみの「維持費」が問題になる。
ゆめみを「手に入れた」からといって、当座の金が手に入るわけではない。
ゆめみが金にならなければ、彼女の維持費・・・消耗品や交換部品、その他の費用・・・が、俺の持ち出しになるわけだ。
そこでまた、「商売人」の俺がしゃしゃり出る。


・・・そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、彼女が切り出した。
「お願いします・・・わたしの維持費は、わたしが自分で稼ぎますから」
俺がゆめみを『身請け』し、『くずや』の社員として採用してから3ヶ月が経った。
『くずや』の入っているビルのすぐ隣、市民センターの吹き抜けを利用したレンタルスペース。そのスペースを目一杯に使い、半球形のドームが設置されている。
ドームのちょうど中心部には、あの投影機が鎮座している。
漆黒に塗られたドームの表面には、銀紙を細かく切った『星屑』のデコレーションとともに、
『くずやプラネタリウム』
と書かれている。

すぐ近くに花菱デパートの立派なプラネタリウムがあるにもかかわらず、我らが『くずやプラネタリウム』はそれなりに繁盛している。
古き良き味を持つ、花菱デパートの『カールツァイス=イエナ・Universal23/3』。
凄まじい星の数と精密な星影を誇る、くずやプラネタリウムの『メガスターII』。
一見したところは同じ星空でも、見比べてみると味わいが違う・・・のだそうだ。
うちと花菱デパートをハシゴして、その星空を見比べる、プラネタリウムフリークも多いと聞く。

かたや、百八十四座席、ドーム直径二十メートル。
かたや、せいぜい五十座席、ドーム直径は十メートル足らず。
規模では全くかなわないはずだが、大型機に引けを取らない投影機の性能と、ゆめみ手作りの番組が評判を呼び、客の入りは上々だ。
地域のミニコミ誌に採り上げられたこともあるし、互いに『良きライバル』として競い合っている。
・・・正直なところ、本業の古道具店より儲かっているかもしれない。
最近は俺も、古道具店が暇な時には彼女を手伝うようになっていた。

ゆめみは、精力的に新しい番組を考えたり、イベントを仕込んだりしながら、今日も客引きに解説にと頑張っている。
そんな彼女に、俺はその『努力の秘訣』を聞いてみたことがある。
彼女は笑いながら、こう答えたのだった。

「はい、プラネタリウムは私の天職ですから。・・・それに、」
「それに?」

ゆめみは、小さくガッツポーズしながら元気に言った。
「花菱デパートさんには、なんとしても負けられませんからっ!」


・・・何気に根に持ってるだろ、お前・・・・・・
戦争が起こらなかった(起こっていない?)、そんなズレたせ界のお話でしたとさ。
イエナさんVSゆめみさん。



↓実はこれがやりたかっただけだったりするw
ゆめみ「・・・実はぁ、オーヒラさんというのはぁ、この投影機の名前なんですねぇ」
8やおい:2006/12/15(金) 22:36:38 ID:xbundNB+O
>>1
スレ立てお疲れ様〜。

>>7
ズレた世界シリーズ新作GJ!いつも楽しませてもらってますよ〜。
商魂たくましい屑屋もいいですね。さりげなく世界観も深いです。

次回は平和な頃の自律戦闘機械の話をさりげなくリクしたり…
9名無しさんだよもん:2006/12/15(金) 23:00:31 ID:vLbgVCrV0
>>8
いつも感想ありがとーございます。

シオマネキで話を書くのは難しいですねぇ・・・
何考えてるかわからないし、萌えがなくてどうにもw

銀河鉄道期待してますよー。
あらすじとか登場人物とか、このスレにも書いてくれるとうれしいなと。
10『何かがズレてしまった世界』やおいver:2006/12/16(土) 01:15:35 ID:c4wzotroO
「こいつが今日からお前のカミサンだ。仲良くやれよ!」
整備隊長がバンバンと背中を叩き、嬉し気に整備工場を後にする。
一人残された俺は新しく配備された巨大な“女房”を見上げる。

14式自走電磁砲。海外からライセンスを取得して2014年に陸上自衛軍・航空自衛軍に採用された初の電磁砲(レールガン)を搭載した自律型自走砲。
この手のレールガン搭載自走砲では世界的にベストセラーだ。

「班長、すごいっすね!」
「わーシオマネキかあ!かっこいいなあ…変形はしないのかな?」
「写メ撮ろうぜ!」
男や女、部下の整備員達が集まってくる。たちまちお祭り騒ぎだ。
「てめーら!散って働け!見せ物じゃねーぞ!」
スパナを振りかざすと渋々持ち場に戻っていく。
「ったく、あいつら〜」
『アイツラ?』
「うお!お前、聞いてたのか…」

航空自衛軍に入隊して整備屋一筋15年、しゃべる自律型戦闘機械にはもう慣れたつもりだが…いきなり話かけないでほしい。
『ヨロシクオネガイシマス、班長サン』
「おう。お前、話は全部聞いてるな?」
『ハイ、ワタシハ本日付ケデコノ航空基地ノ守備隊二配備サレマシタ』
「ああ、長い付き合いになる。よろしく頼むわ」
11『何かがズレてしまった世界』やおいver:2006/12/16(土) 01:16:27 ID:c4wzotroO
全く、近頃の自律型ときたら…戦闘機は世間話に花を咲かせ、対人戦車は悪ガキ揃い、さらには…

『班長〜!ついに手袋が完成です!拍手拍手!』
「コノヤロウ!どこに暇だからって編み物をする自走砲がいるんだ!」
『ここにいますが何か?』
「…」
コイツが配備されてもうすぐ1年、最初の素直さはどこへやら。自慢の学習能力とやらで得た物は悪知恵だけ。
対人戦車共と共謀して基地中にラクガキ(基地司令ブチ切れ)、レールガンで花火の打ち上げ(近隣住民には好評)、その他悪戯の数々…頭が痛い。
今度は整備工場の作業用マニュピレータを使った編み物に手を出したようだ。…すぐに飽きるのは明白だが。

「やれやれ…ん?お前、複合センサーが汚れてるじゃねえか。待ってろ、今拭いてやる」
『あ…ありがとう…ございます』
「なに、複合センサーはいつも綺麗にしておけよ。お前の顔みたいなもんだからな。」
『…班長のそういうとこ、好きです』
「――――ぅ、うるせー!お前はなんだかんだで世話になってるし、…そのなんだ。若い連中もみんなお前の整備で育ってるしな!勘違いすんじゃねー」
12『何かがズレてしまった世界』やおいver:2006/12/16(土) 01:17:33 ID:c4wzotroO
「班長、デカい嫁さんっすね〜」
「…妬けちゃうなあ…悔しいけど」
「整備兵として尊敬します!」

「てめーら…覚えとけ!」
憤慨する俺の肩をチョンと叩く何か。振り向くと…手袋?

「なんだこりゃ?」
『えっとこれ、班長に…サイズ合えばいいんですけど…』
「てめー、バカなことしてんじゃねーよ!」
手袋をふんだくる。
『はい、すみません…』
「…ふん、ちょうどいいじゃねーかバカ。…ありがとよ」
『う…ふぇぇ…班長ぉー!』
「うお!こっちくんなー!」
すりよってくる『自走砲』をかわす。

そういや今日は俺の誕生日、そして明日はこいつが来てちょうど一年か…。




翌日、自走砲の格納庫に掲げられた旗にはこのように書いてあった。



命名 シオマネキ
整備班長と整備班一同
13やおい:2006/12/16(土) 01:19:50 ID:c4wzotroO
勢いで書いた。

ってか冒頭で女性整備員がシオマネキって言ってるし…orz
14やおい:2006/12/16(土) 01:29:30 ID:c4wzotroO
追記
すみません、タイトル引用させてもらいました〜。
携帯で打ったから手首が痛い…。

本当はこの後戦争勃発→空爆→シオたん基地を死守するも…!
みたいな話を考えてました。

班長は実在の整備班長がモデルw
S班長すみません。
15名無しさんだよもん:2006/12/16(土) 07:59:19 ID:/cTBbxXy0
うは、GJ!
携帯でこれだけの話を書くというのもGJ!w



シオマネキがゆめみを撃った理由を「ズラして」しまう、というのを思いついた。
「敵のロボットから友軍の人間を救うため」、とか・・・

でもあんまり深い話にならないなぁorz
16名無しさんだよもん:2006/12/16(土) 09:10:22 ID:NTjKZKTG0
ゆめみを撃った後、何故か自爆するシオマネキ。上半身だけになってしまったゆめみを抱えた屑屋が近づくと、
マニピュレータで己のパーツをひきちぎり、ゆめみに手渡そうとする。

屑屋 「これは…電源のパーツじゃないか…」
ゆめみ「…お客…様…この子…私に…」
屑屋 「まさかお前」
シオマネキ「…」



だめだ、話が続かねぇ orz
17名無しさんだよもん:2006/12/16(土) 09:28:50 ID:n7itv2b/0
整備班長って言うとコブラが愛車のおやっさんしか出てこない……
18名無しさんだよもん:2006/12/16(土) 09:37:47 ID:aP+Eg5Bd0
俺は某ウリバタケしか思いつかねえ・・・w
19名無しさんだよもん:2006/12/16(土) 10:36:27 ID:/cTBbxXy0
上半身だけになったゆめみをマニピュレータで捕らえ、取り込んでしまうシオマネキ。
シオマネキはゆめみを自らのAIと動力系に接続すると、自己消滅コマンドを実行した・・・

そして、数週間の時が流れた。

ゆめみ
「よかったですねお客様、このボディでしたらどこでも安心ですよ♪イエナさんも積めましたし・・・」
屑屋
「・・・お前なぁ・・・よりによって、こんなボディ(シオマネキ)で集落に入れてもらえると思うのか?」
20名無しさんだよもん:2006/12/16(土) 14:03:30 ID:BtVKIQs50
ゆめみ
「このボディではプラネタリウムの受付を務めることができません。私単独では解決できない事態です。大変困りました・・・」
21名無しさんだよもん:2006/12/16(土) 14:31:13 ID:I2wQczeS0
>>20

シオマネキの上面ハッチから、ちょこんと突き出たゆめみの上半身。

子供
「ねーねーおねえちゃん、そんなところにはまってないで遊ぼうよー(ぐいぐいっ)」

ゆめみ
「ああっ、お坊ちゃんのお客様、引っ張らないでください〜〜」
22『何かがズレてしまった世界』(習作):2006/12/16(土) 19:23:41 ID:/cTBbxXy0
地方中核都市における撤退戦。俺達第37機動砲兵中隊は、多勢に無勢の状況に追い込まれた。
手近な建造物の壁をぶち抜き、逃げ込んだところで、『それ』は起こった。
強烈な閃光、そして、その直後に襲い掛かった地鳴りと爆風。
建物の中にいなければ、俺達も無事では済まなかっただろう。

「強力な電磁波の輻射を検知。司令部および管制機との通信途絶…お客様、一体何が起こったのでしょうか?」
「ゆめみ…俺の事は車長と呼べって言ってるだろう」
「申し訳ありません…『お客様』でインプリンティングされてしまっていますので、今更なんとも…」
いつもなら思わず苦笑いするところだが、今はそんな気分でもなければ、そんな悠長な状況でもない。

『索敵範囲内に敵影・友軍機共に検知できず…現在、有視界以外のすべての索敵探知が実行できません。
 データ不足により、自律判断機動の信頼性低下。車長への操縦権限委譲を提案します』
俺の機体―Mk43L/e自動要撃砲台、通称『シオマネキ』―のAIが、淡々と『悲鳴』を上げる。
…要は『自分じゃ不安で動けません』ってことだ。

今や、我が軍の兵器の大半は、AIを搭載した自律兵器だ。人間は『アドバイザー兼お守り役』に過ぎない。
俺の相棒も、この四つ足の自走電磁砲と、通信担当の少女型オペレーターロボットだ。
…そして今や、その無事が確認できている『味方』は、こいつ等だけだ。

外へ出ると、俺達を取り囲んでいた敵も、共に戦っていた友軍機も、見渡す限りその全てが黒く焼けただれた塊になっていた。
司令部や管制機、そして他の地域にいた友軍の連中がどうなったのか、今はまだわからない。
だが、俺が聞いた管制機からの『最後の通信』は、俺の不安を掻きたてるのに十分なものだった。
"ビジュアルID、長距離弾道弾・MLBM-226。弾数4、迎撃成功3……駄目です、着弾します!"

出撃前のブリーフィングによれば、MLBM-226の弾頭は、通常弾頭、生物兵器弾頭、または…核弾頭。
『外部環境に強力な放射線を検知。放射線防護機能レベル3、正常に機能中。車室内の放射線量は安全圏を維持』
…間違いない。核攻撃だ。

「ちっ!どこの馬鹿だ!?後先考えねぇ事、しでかしやがって!」
俺は毒づくと、Mk43のアクセルを吹かし、フットバーを蹴りこんだ。
23『何かがズレてしまった世界』(習作):2006/12/16(土) 19:24:42 ID:/cTBbxXy0
何かがズレた世界における、戦争勃発時の屑屋とゆめみ。
・・・つか、シオマネキの絡んだ話の習作。今のところ続編の予定はないけんどもw

・屑屋:陸上自衛軍・第37機動砲兵中隊の隊員で、Mk43L/eの車長。
 腕利きではあるのだが、よく愛機も壊すため、「屑屋」という有難くない二つ名を頂戴している。
・ほしのゆめみ:Mk43L/eの通信要員。
 元プラネタリウム解説員のロボットで、戦争の勃発にともない徴用され、屑屋の相棒を務める。
・シオマネキ(Mk43L/e):自衛軍の自律稼動型自動要撃砲台。
 本来ならシオマネキは完全自律型、かつ敵軍の兵器なわけだが、そこは『ズレた世界』ということで。
24やおい:2006/12/16(土) 21:18:32 ID:c4wzotroO
>>23
おお、そうきましたか〜!GJです!
脳内ではこつえ〜絵ではなく、小林源文な絵に変換されましたw

HER HER…
屑屋「畜生め、魔女の婆さんか!行くぞ!」
ゆめみ「お客様、本部から撤退命令が出ていますが…?」
屑屋「たった今無線機は故障した。イエナ11からメガスター21、支援に向かう。帰ったらウォッカをおごれよ!」
VuoooooM…!

P.S
タイトルを借用しました。すみません。
25名無しさんだよもん:2006/12/16(土) 21:24:07 ID:/cTBbxXy0
ちなみにイメージしてたのは、エースコンバットゼロの『臨界点』だったりするw
核攻撃後の電磁障害の描写はこんなのでいいのかとか、いろいろあるけど。


しかし、小林源文なゆめみってどんなのになるんだろう(BLAM!BLAM!
26SS投稿ガイドライン:2006/12/17(日) 10:07:33 ID:Kn+VAUZq0
・最大文字数:全角換算で1024文字(2048バイト)
・最大行数:32行
・連投可能時間:30秒
・「連続投稿ですか?」のメッセージは、しばらく(=他のホストから板に投稿があるまで)待ってから投稿する

文字数計算ツール
ttp://sussiweb.com/hp/tool/mojisuu.htm


時間がないので、タイトルの最大長とかスレの最大容量はまだ調べてませんスマソ
27名無しさんだよもん:2006/12/17(日) 20:58:22 ID:Kn+VAUZq0
野営地で時折プラネタリウムを投影するゆめみ、とか。

(えっちじゃない方の)従軍慰安隊を兼任。
28名無しさんだよもん:2006/12/17(日) 21:39:26 ID:pNA/A3cnO
タミヤのドイツ戦車兵にツインテール
付けてみるか。
29名無しさんだよもん:2006/12/17(日) 22:21:31 ID:Kn+VAUZq0
どうせ機動兵器の搭乗要員だし、あの格好で野営地をうろうろしていそうな気もするw
30名無しさんだよもん:2006/12/18(月) 09:48:49 ID:BRZxw4Yo0
90式戦車(改造・人工頭脳搭載)でやってくる屑屋
31名無しさんだよもん:2006/12/18(月) 12:24:17 ID:tYeQ9Jb60
野営地のジオラマが作りたくなってくるな。

よく見ると一角に白いドームがあって、
戦場には場違いな、あの服装のゆめみがうろうろしてんの。
うろうろ。
32名無しさんだよもん:2006/12/18(月) 17:45:58 ID:yWALJOWC0
>>31

むしろ、ガシャンとしりもちついて転んでるところを。


1/35スケールで、ぱんつはいてない。
33名無しさんだよもん:2006/12/18(月) 17:49:18 ID:tYeQ9Jb60
1/35スケール・Mk43L/e"シオマネキ"を。

フィギュア3体(屑屋、ゆめみ(ノーマル)、ゆめみ(ダメージ))つきで。
34名無しさんだよもん:2006/12/18(月) 18:18:04 ID:AGNYQJtNO
>>33
ちょwマジ欲しいよw
35名無しさんだよもん:2006/12/18(月) 23:10:16 ID:7QAIRn6d0
>>33
>ゆめみ(ダメージ))つき

腹から取りだしたエネルギータンクを高々と掲げて
「これが貴様等シオマネキが怖れた(ry」

こうですか!わかりません!!><
36『何かがズレてしまった世界 〜Starry Night〜』:2006/12/19(火) 01:15:52 ID:x+pLL91w0
一面の夜空が見渡せる、小高い丘の上に、わたし達は登ってきた。
今夜は快晴なので、『小さいイエナさん』はちょっとお休み。

本日のお客様は、二十四名。叢(くさむら)に思い思いの姿勢で腰を下ろし、これからわたしが始める解説を心待ちにしてくださっている。
人工声帯の拡声装置(アンプ)を起動。人数や音場効果を勘案し、ボリュームや残響音を微調整する。
最初の一声はいつも少し緊張するけれど、お客様のためにいろいろと工夫するのは、わたしのとても好きな時間のひとつ。

あの人が、マイクロバスのエンジンを停める。
並べた誘導灯が、一瞬の残光を残して消えてゆき・・・・・・ そして訪れるのは、一面の闇。
お客様の雑談がスッと収まり、辺りを静寂が支配する。

「・・・それでは皆様。目が暗闇に慣れたら、ゆっくりと空を見上げてみてください」
わたし達の頭の上。少し冷たく、そして澄みきった空気の向こうに・・・

つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20061219011429.jpg

・・・そこには、見渡す限りの満天の星々。

お客様の間から、溜息にも似た感嘆の声が上がる。
あの人手作りの星座早見を手に、早々に星座探しに興じるお客様も。
―さあ、今日はどの星からご紹介しましょうか・・・

長く続いた戦争で、この世界は壊れてしまった。
文明も、わたし達ロボットも、そして人間の皆様も。 そのほとんどが失われてしまったけれど・・・
街の灯と引き換えに、その輝きを取り戻したこの星空が・・・せめて皆様の、明日を生きるための力になりますように・・・
・・・そう願いながら、わたしは『ほしのゆめ』を紡ぎはじめた。

-------------------------------
あの戦争で核が使用されず、『核の冬』が訪れなかった世界。
文明が崩壊したことで、本物の星空が戻ってきた・・・という、ちょっと皮肉な展開を考えてみました。
・・・しかし、ゆめみ自身がその文明の産物だということを考えると、実は本編以上に切ない話なのかも・・・と、書いてから思ったorz
37やおい:2006/12/19(火) 07:29:11 ID:lOVZWTTCO
>>35
今更だがどうみてもIDが神です


>>36
いいなあ。GJです。綺麗な星空なんて演習場でしか見たことないよorz
38名無しさんだよもん:2006/12/19(火) 09:08:42 ID:I/ifeHLR0
>>35

そういえば、ゲッターロボの敵は
「ゴール」
だったような希ガスw
39名無しさんだよもん:2006/12/19(火) 13:27:03 ID:M1Aw45guO
この ほしのゆめみには゛夢゛があるっ!!
40名無しさんだよもん:2006/12/19(火) 15:47:24 ID:bXlu3syy0
>>39

だが、"胸"はないっ! "ぱんつ"もないっ!
41名無しさんだよもん:2006/12/19(火) 19:23:58 ID:lOVZWTTCO
意外ッ!それは『はいてない』ッ!
42名無しさんだよもん:2006/12/19(火) 19:33:49 ID:J1FS1KXZ0
ゆめみ
「こいつ(=シオマネキ)の匂いを消してやるッッ!!」

ドッギャ ̄ ̄ ̄Z___ン!!!!
43名無しさんだよもん:2006/12/19(火) 23:44:07 ID:Kset7Dio0
ゆめみ「君(イエナさん)がッ! 直るまでッ! 殴るのをやめないッ!!」

屑屋「ちょっ、やめろっ! テレビじゃあないんだから殴っても直ら…うをっ! 煙が、煙がーッ!」
44名無しさんだよもん:2006/12/20(水) 00:03:16 ID:9Y0W+vkT0
屑屋B「ちょっ、やめろっ!テレビだって殴っても直ら…うをっ!煙が、煙がーッ!」


ゆめみ「テレビが壊れてしまいましたので、planetarianがプレイできません・・・わたしでは対処できない重大な(ry」
45名無しさんだよもん:2006/12/20(水) 10:29:17 ID:Zd++kXdA0
屑屋「ゆめみィーーっ! 君がッ! 直るまでッ! 殴るのをやめないッ!!」

ゆめみ「あのっ、お客様っ! テレビじゃないんですから殴っても直ら…はうっ! 煙が、煙がーッ!」
46名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 00:31:55 ID:vmQjpZv90
47名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 01:09:46 ID:Xb2zQ/AC0
403でつorz
4846:2006/12/21(木) 01:11:04 ID:vmQjpZv90
>>46
スマソ...orz
うまく表示できないぽいので、ロダにあげといた
2号 0000026165.jpg yumemi
49名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 01:15:35 ID:Xb2zQ/AC0
dクス!
50名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 10:11:57 ID:ISkycP/fO
なんなの?
51名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 10:17:43 ID:3DhsRR+F0
>>50

イラストブックのゆめみさん(こつえー画)のマパパー魔改造。
52名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 11:44:18 ID:+1T6BIb70
様々な機能に特化した、7色の筐体を使い分けるゆめみさんキボンヌ。


茶色の「ダッシュ6=土の化身」だけ滅多に使われないのなw
53名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 12:21:19 ID:ISkycP/fO
>>51
マパパーって?

>>52
インドの山奥で修行したのかw
54名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 12:30:03 ID:+1T6BIb70
>>53
マパパー→マッパッパー→全裸→(゚Д゚)ウマー
55名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 13:23:51 ID:Vs0ob9090
>>53
>インドの山奥で修行したのかw



ゆめみ
「♪僕だって人間だ 僕だって若いんだ♪(『ヤマトタケシの歌』)」

屑屋
「こら、40ン歳のロボット」

ゆめみ
「が・・・がお」
56名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 13:24:30 ID:ISkycP/fO
なにィーッ!くそ、退院は明日だぜ…それまでもちこたえてくれよ!
57名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 13:25:41 ID:ISkycP/fO
いまの安価は>>54
58名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 14:25:23 ID:+1T6BIb70
>>56

保護してるから心配(゚Д゚)スンナ
59名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 14:35:28 ID:PnEUoZ7L0
>>55

屑屋「(ボカッ)」
ゆめみ「はうっ、痛いですお客様・・・(涙目)」
屑屋「あ、いやすまん。なぜかやりたくなった」
60名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 18:52:09 ID:Xb2zQ/AC0
>>59

それは、すべての鍵っ子の深層心理に刻み込まれた条件反射なのか・・・
61名無しさんだよもん:2006/12/21(木) 21:07:27 ID:ISkycP/fO
>>60
そりゃ中の人が最高だしな
62名無しさんだよもん:2006/12/23(土) 07:56:21 ID:U4Xbqp3L0
こんなネタを考えた。

徐々に壊れはじめているゆめみ、性感が鈍りつつあることに気づく
まだ感覚があるうちに・・・と、屑屋を誘惑(懇願)するゆめみ

・・・そして、最初で最後の一夜。

ほどなくしてゆめみは性感を失い、「感じる」ことはできなくなったが、
彼女は悲しみを見せることはなかった。
あの「一夜の記憶」だけで生きていけるから・・・
63やおい:2006/12/24(日) 00:33:36 ID:iTep5yGRO
ついにクリスマスイブ!聖夜!

本当は本物の『慈しみ深き』を聴きたかったんですが、あいにく外出はできず。

このわだかまりをSSにぶつけたいです。
今日中には晒せるように頑張ります。
64名無しさんだよもん:2006/12/24(日) 12:05:30 ID:4TmoqUJz0
おを、期待期待。

次のSSがなんとなく固まってきたけど、聖夜とは全く関係ありません。
大変申し訳ございませんっ。
「・・・お客さま、これは何でしょうか?」

最初にその『異変』に気づいたのは、ゆめみだった。
館員控室の一角。テーブルの脇に、いつからか三つの光の球が浮かんでいた。
ぼんやりと楕円形の白い光を放つそれは、それぞれが正三角形の頂点に位置しながら宙に浮いている。

「あまり近づくな・・・何が起こるかわからないぞ」
「はい、最優先の注意事項として記録しまし・・・あっ」

そこまで言ったところで、ゆめみは椅子の脚に蹴つまづいた。
空を切ったゆめみの右手が、光の球に触れる。

「!!」
俺の眼前で突然拡大した、白く輝く正三角形の空間に、ゆめみの身体が吸い込まれていく。
「ゆめみっ!」
俺は思わず、ゆめみの左手を掴み・・・

そのまま、俺達二人は真っ白な光に包まれた。

・・・・・・
気がつくと、俺達は元の控室に居た。
・・・いや、俺達が居た、あの控室とは様子が違う。

すっかり劣化して瞬いていたはずの蛍光灯は煌々と灯り、壁際の自販機はかすかな唸りを上げて客を待っている。
静かに館内を流れる、落ち着いた音楽。
開け放たれた扉の向う、投影ドームの方から、誰かの話し声が聞こえてくる。

「お客さま、話し声が聞こえます!新たなお客さまがお越しになられたのでしょうか?」
「しっ!・・・静かにしろ」
嬉しそうに声を上げるゆめみを制し、俺達はゆっくりと、声のする方へ歩を進めた。


細心の注意を払い、投影ドームの扉を細く開いた時。俺は、そこに信じられないものを見た。
俺の頭上、ドームの縁にあたる部分から、投影機の脇にしつらえられたステージを照らすスポットライト。

そこには、初老の男性と若い男性、そして数人の女性と共に・・・ゆめみが居た。
トレードマークの大きなリボンがない以外、今俺の横にいるゆめみと、寸分違わぬその姿。

「わ・・・わたしが居ます!?」
ゆめみがびっくりしたような声を上げる。
「同型機か?」
「IDチェックを実行します・・・識別形式番号、SCR5000Si/FL CapelII。シリアルナンバー、A0000012・・・
 ・・・あれは・・・間違いなく『わたし自身』です」
「何っ!?」
『・・・それでは、改めてご紹介します!』
観客席を埋めた観客に向かい、若い女性がマイクを通して高らかに告げる。
『当花菱プラネタリウムの誇る、世界初のロボット解説員・・・皆様からご応募いただきました、総数1538通の中から選ばれた、彼女の名前は・・・

 ・・・"ほしのゆめみ"ですっ!』

スポットライトが絞られ、ドームの中央・・・ステージに立つ『ゆめみ』を照らす。
音楽が大きくなり、観客席の半分・・・投影機の向こう側を埋め尽くした人々から拍手が沸き起こる。

「・・・これは・・・わたしが"ほしのゆめみ"という名前をいただいた時の、命名記念投影です・・・!」
俺の隣で、ゆめみが驚きを隠せない表情で呟いた。


『・・・それでは皆様、SCR5000Si/FL改め"ほしのゆめみ"から、皆様へお礼のご挨拶です!』
スポットライトの下の『ゆめみ』が、深々とお辞儀をする。
顔を上げ、観客をゆっくりと見渡す。

『・・・皆さま、素敵な名前をつけていただいて、本当にありがとうございます。・・・わたしは今日から、』


まるで一時停止(ポーズ)をかけたビデオのように、『ゆめみ』の動きがぴたりと止まった。
ドームに大写しで投影された、ライブ映像の中の『ゆめみ』が、にこやかに微笑んだままその時間を停めている。
観客席がざわつき始めるのと同時に、スポットライトが落とされた。
「ど、どうしちゃったの?」
「まずいですね・・・フリーズしてます」
「倉橋君、なんとか間を持たせるんだ。・・・三ケ島君、再起動できるか?」
コンソールの脇に立った人々・・・ゆめみの言うことが本当なら、プラネタリウムのスタッフ達だ・・・の、狼狽する声が聞こえてくる。

その時、ゆめみが俺の脇を抜け、ステージに向かった。
「お、おい!?」

「・・・館長さん、あとはわたしが引き継ぎます。続けてください」
「ゆめみ!?」
「ゆ、ゆめみちゃんが二人!?」
騒然となるスタッフを制し、ゆめみがきっぱりとした口調で言った。
「訳はあとで話します。・・・今は、お客さまにご不快な思いをさせないことが最優先事項です!」
暗視眼鏡(ゴーグル)の中のゆめみは、いつものゆめみとは思えない真剣な表情を・・・職務を全うしようとする、一人前のスタッフの顔をしていた。

暗闇の中で、人形のように硬直した『ゆめみ』をスタッフ達が抱きかかえて下がらせる。
『ゆめみ』と入れ替わりに、ゆめみがステージに立つ。
スポットライトが再び点灯し、ゆめみを照らし出す。

『大変失礼いたしました。なにぶんまだ慣れていないもので、台詞を忘れてしまいました・・・申し訳ございませんっ』
いつもの調子で、ぺこぺこと頭を下げるゆめみ。観客席からは、笑い声と暖かい声援。

『それでは改めまして、ご挨拶させていただきます。
 わたしは、当花菱デパート本店プラネタリウム館のロボット解説員、SCR5000Si/FL CapelII・・・いいえ、本日只今より"ほしのゆめみ"でございます。
 まだまだ経験不足ですので、先程のようにいろいろと至らぬ点もあるかと存じますが・・・』
閉館後の館員控室。テーブルには、俺と向かい合うようにしてスタッフ達が座っている。
俺達は、ただ黙って隣のテーブルを見つめている。
そこには、俺と一緒に来たゆめみが、イヤーレシーバーにケーブルを繋がれて座っていた。
若い男性スタッフが簡易端末のキーを叩き、表示される画面に見入っている。

「システムIDは・・・SCR5000Si/FL CapelII、シリアルナンバー:A0000012・・・そんな、まさか・・・」
彼の目が、驚きを隠せないというように見開かれる。
「この子は、間違いなくゆめみです。
 初回起動からの経過時間は・・・・・・四十一年と三十六日!?」
「なんだって?どういうことなんだ?」
初老の男性スタッフ・・・館長が、静かに、しかしやはり驚きを隠せないといった表情で問う。

「それは・・・俺から話したほうがいいかもしれない」
スタッフ一堂の目が、一斉に俺に向けられる。

俺は、俺達が今此処に居るに至った経緯を、包み隠さず話すことにした。

・・・・・・

「なるほど・・・俄かには信じられませんが・・・」
長い沈黙のあと、その若いスタッフ・・・三ケ島吾朗と名乗った・・・が、ゆっくりと口を開いた。
「複写(コピー)不能のシステムIDが完全に一致した、もう一体のゆめみがここにいる以上、考えられる可能性は一つだけです」
「それは?」
倉橋里美と名乗った、女性スタッフが身を乗り出す。

「僕の価値観からすれば、ありえないとしか思えないんですが・・・」
三ケ島氏は、一呼吸置いてから言った。

「・・・タイムスリップです。彼とこのゆめみは、四十年以上先の未来から、ここに飛ばされて来たんですよ」

・・・・・
「葛也さん、ゆめみちゃん、投影開始いいですか?」
投影コンソールの脇に控えた俺に、森見由香嬢が声を掛ける。
「入口閉鎖、スタッフ配置、投影コントロール・・・OKだ、いつでも行ける」
「はい、わたしもいつでもOKです」
「さあ、今日最後の投影だ。最後まで気を抜かないで行こう」
館長のゴーサインを受け、ゆめみがコンソールに立ち、語り始める。

『・・・皆さま、大変長らくお待たせいたしました。それでは、本日最後の投影を開始させていただきます』
衣装に仕込まれた発光素子と、頭のインフォメーションリボンが淡い光を放ち、暗闇に彼女の姿を浮かび上がらせる。

俺達がこの世界に・・・四十一年前の花菱プラネタリウムに来てから、二週間が過ぎた。
この二週間の間に俺が体験したことは、まさに筆舌に尽くしがたいものだった。
空には太陽が輝き、夜は無数の街の灯が瞬く。
絶えず降り続いていた忌々しい雨は、此処では時折街を濡らす程度でしかない。
通りには自律戦闘機械の姿はなく、代わりに人々と無数の車が行き交う。
様々な品物が陳列されたデパートの館内には光と音が溢れ、沢山の人々が思い思いに買い物を楽しんでいる。

これが・・・平和だった頃の、封印都市の姿なのか。
ゆめみは『ゆめみ』とローテーションを組み、プラネタリウムの解説をしながら、『ゆめみ』に一つ一つ業務を教え込んでいる。
三ケ島氏はここ数日、時折「すごい・・・」と呟きながら、ゆめみのバックアップデータの解析に没頭している。
彼に言わせれば、四十年という年月を経て自己最適化されたゆめみの思考ルーチンは、機能と安定性を兼ね備えた驚くべき構造(ストラクチャー)を形成している、のだそうだ。
ゆめみの解析結果を元にアップデートされた『ゆめみ』は、初めて見た頃のロボット然とした言動から、みるみるうちに人間に近い言動になっていった。
・・・もっとも、ゆめみ本人の言動があの調子なので、「人間そのまま」というわけにはいかないが。

ゆめみはというと、三ケ島氏の尽力によって不調箇所を修理され、十分なメンテナンスを受けて本来の調子を取り戻していた。
頚椎ユニットやバックアップ電池など、長い年月で劣化した部品は、彼の舌先三寸・・・『ゆめみ』の初期不良、ということになっている・・・で調達された新品に交換されている。
彼は投影の合間や閉館後の時間を利用して、ゆめみのメンテナンスに必要な技術・・・社内機密に抵触する事項も含め・・・を、俺に教えてくれている。
「うちのゆめみを育ててくれた、せめてものお礼ですよ」
彼は、そう言って笑った。

世界情勢はキナ臭さを漂わせつつあったが、まだ平和が保たれている、この時代。
人々の間に、『信頼』や『愛情』、そして『夢』が残っている、この世界。
俺は戸惑いながらも、この幸せな時が長く続くことを・・・このままこの世界で暮らせることを、願わずには居られなかった。

・・・しかし、別れの時はやってきた。

予感はあった。控室のあの場所に、再び現れたあの光球。
それは徐々に成長し、三つに分裂しようとしている。
この光球が成長しきった時、俺達は否応なく元の時代に帰らなければならない・・・
そんな気がしてならなかった。

−x− −x− −x− −x−
「すまない、みんな・・・俺達は、元の時代に帰らなければならないようだ」
館員控室。三つに分かれ、ぼんやりと輝く光の球の前で、葛也さんが言った。

「そんな!せっかくいい仕事仲間になれたのに・・・どうしてですか?」
そう声を上げたのは、由香ちゃん。
「もしかして・・・その光るものが?」
そう言ったのは、私達の中でもっとも察しのよい黛さん。
「ああ。俺達が此処へ飛ばされて来た時と動きが似ている・・・もう数分も持たないかもしれん」

葛也さんは、未来のゆめみちゃんの方へ向き直る。
「ゆめみ、どうする?此処に残ってもいいんだぞ?」
でも、未来のゆめみちゃんは、首を振って言った。
「いいえ、わたしも帰ります。わたしは、わたしの持ち場を・・・あのプラネタリウムを守らなければなりませんから」
「・・・そうか・・・」

「ゆめみさん・・・」
私達のゆめみちゃんが、躊躇うように二、三歩、二人に歩み寄る。
二人が来た時には、無感情な微笑を浮かべた自動人形(ロボット)でしかなかった、私達のゆめみちゃん。
今にも泣き出しそうな表情で・・・『行かないで』と言いたそうに、二人を見つめている。

「ゆめみさん、後はお願いしますね」
未来のゆめみちゃんが、穏やかに微笑む。
「ゆめみさん・・・さびしくなります・・・」
両手を胸の前で合わせ、私達のゆめみちゃんが俯く。
そんな彼女の肩をやさしく抱き、頬を寄せて、未来のゆめみちゃんは幼子に言い聞かせるように言った。
「大丈夫ですよ・・・今のあなたなら、きっとしっかりやっていけますから」
三つの光の球が振動を強め、その間隔を拡げ始める。
ブゥン、という音を伴って、三角形の空間の中に、霞がかかった向うの世界が見えてくる。
それは、確かにこの控室の風景だったけれど・・・

全てが無彩色(モノトーン)に染まった、色のない世界。
・・・それはまるで、廃墟のような・・・

葛也さんが、その風景を覆い隠すように、スッと立ち位置を変えた。


「・・・あなた達の居る未来は・・・未来の地球は、どうなっているの?」
私は、言葉を搾り出す。
「里美さん・・・未来は、先取りして知らないほうがいい」
彼は、そう一言だけ答えた。

・・・あれから十年が経った今なら、その思いがわかるけれど・・・


「それじゃ・・・」
「・・・さようなら、皆さま・・・皆さまのことは忘れません・・・」
その言葉を待っていたかのように、三つの光の球が弾けるように間隔を広げ、二人を包み込む。
一瞬、落雷のような音と共に辺りを包む、真っ白な光。

その光が収縮し、一つの小さな光の球になって・・・やがて消えた。

−x− −x− −x− −x−
・・・あれから十年。
葛也君が、館長である私と三ケ島君にだけ告げた『未来』。・・・それは、現実になってしまった。

首都圏に落とされたミサイル・・・生物兵器だという噂だ・・・によって、私達はこの都市からの強制退去を命じられた。
ゆめみはロボットだ。連れて行くことは許されていない。

・・・ならば、私達にできることは一つだけだ。

ゆめみはコンソールの椅子に座り、スリープモードに入っている。
長期の慰安旅行、と『偽りの理由』を告げた私達に、「気をつけて行ってらしてくださいね」とにこやかに答えたゆめみ。
・・・しかし、その表情に一瞬、かすかによぎった『憂い』の影を、私は一生忘れることができないだろう。

未来のゆめみの『心』を受け継いだ彼女は、本当は全てを理解しているのかもしれない。
私達がこれから三十年、・・・いや、おそらくは二度と、再びここに戻ることはできない・・・ということを。

「三ケ島君、ゆめみの調整はどうだ?」
「ええ、できるだけマージンを取った設定にしました。・・・稼動周期はどうしますか?」
「できるだけ、長持ちさせてやってほしい・・・そうだな、一年のうち一週間の稼動、ではどうだろう?
 ・・・きっと、それでも彼には逢える筈だ」

「そうですね。・・・稼動周期を『五十一週間休止・一週間稼動』で設定しました」
スリープモードのゆめみを残し、スタッフ達は名残惜しそうに、何度も振り返りながらドームを出て行く。
私も、ドームの出口で立ち止まり、もう一度だけゆめみを振り返る。

薄暗いドームの奥。コンソールの椅子に身体を預け、ゆめみは静かに眠っている。


「葛也君・・・
 三十年後、君がゆめみと出会い、十年前の私達に逢いに来てくれると信じているよ。

 ・・・ゆめみを・・・よろしく頼む」


私はそう呟くと、照明を落とし、ドームの扉を静かに閉めた。



- Fin. -

あとがき.--------------------------------------
「未来の親友へ託すタイムカプセル」となったゆめみ。
・・・なんとなく「ワッハマン」のラストシーン的な感じで。あれは泣けたね。

聖夜と関係ないネタでスマソ orz
76IntermissionW『Present』(1):2006/12/24(日) 21:59:48 ID:M/6TFBwY0
「……皆さん、本日の投影はいかがでしたでしょうか?」
特別投影をたった今終えた彼女が、子供たちに向かって優しく問いかける。
「……」
一瞬の静寂の後。

パチパチパチ……

彼女の周りに集まった子供たちの両手から発せられる申し訳程度の、しかし表現できる精一杯の感謝を込めた心からの温かい拍手。
「ありがとうございます」
先ほど投影終了直後にそうしたばかりだが、自らの周りを囲む小さな客たちに向かって今一度深々とお辞儀をする。

決して広くはない室内ドーム。
集まった客――大半は子供だ――も、決して多くはない。
彼女と移動プラネタリウムを始めて以来、なんとなく集客のコツは分かったような気がするが、それでも客の入りは決して芳しいわけではない。
まだ実際のところ、「貯金」を切り崩して生活しているようなものだ。
77IntermissionW『Present』(2):2006/12/24(日) 22:01:58 ID:M/6TFBwY0
彼女のメンテナンスのためのパーツにしても、今は「貯金」から捻出している。
あれから俺も勉強したが、彼女の元の筐体であるSCR5000シリーズ自体は汎用性が高く、パーツの互換性もかなり柔軟性に富んでいる。
だが、今の彼女の筐体はそのプロトタイプ、しかもその前進は軍用だ。
消耗部品などはある程度の互換は利くが、もと軍用らしくあらゆる事態を想定しほとんどワンオフ同然に作られている中枢部の部品となると、消耗部品のように容易くはない。
今はまだ不具合は出てきてはいないが、これから先、どのくらい彼女の筐体が持つのか、それまでにこの旅の目的が達成できるのか。
まだすべては五里霧中だ。

だからこそ大事にしたいのは、今、彼女とともにある一瞬の連続。
今の俺にとって最も大切なもの。
そのために、多少の「貯金」を切り崩すことを惜しいとは全く思わない。
どうして、そう思うようになったのか。
これも「愛情」と言っていいものなのか。
俺には分からない。
彼女の方はどうなのか、またそういう感情を彼女が理解しているのか、それも分からない。
だが、それが分ろうと分るまいと、俺のすること、してゆくことに変わりはない。

彼女の持っている「夢」。
その夢は彼女の「夢」であると共に、今や俺の「夢」でもあるのだから……。
78IntermissionW『Present』(3):2006/12/24(日) 22:03:12 ID:M/6TFBwY0
「さて皆さん、今日はクリスマスイブです。そこで、今日はサンタクロースさんから、皆さんに渡してくださいとわたしがプレゼントを預かっております。どうぞ、お持ちください」
子供たちの目線に降りた彼女がそう言いながら子供たちに差し出したのは、さほど大きくない金属製のお盆。
その上には、奇妙な形をした色とりどりの小さな玉が何十個も山になって乗っている。
赤、青、白、緑、黄色、橙……。
表面にいくつもの火山のような盛り上がりを貼り付けたそれは、さながら空から落ちてきた星屑を集めたようにも見えた。
「これ、なあに?」
恐る恐る玉を手にとってしげしげと眺めていた少女の一人が、当然の疑問を彼女に振る。
「これは、金平糖という砂糖菓子です。私はロボットですので実際に食べたことはありませんが、甘くてとてもおいしいものだと聞いています。それにこの形は、まるで先ほど見た星のようだと思いませんか?」
「うん!とってもきれい!」
別の少女が、元気よく答える。
その声を合図に、彼女を取り巻く子どもたちから次々に手が伸びる。
「はい、たくさんありますから、慌てて取らなくてもなくなったりはしませんよ。ちゃんと皆さんに行き届くだけの数はお預かりしていますからね」
焦る子どもたちを制するように、やんわりと彼女が声を掛ける。
「おもしろーい! 変な形ー!」
「……うん、すっごく甘い!」
「お姉ちゃん、ありがとう!あ、そうだ、サンタさんにもありがとうって言っておいて」
驚きと歓声が上がる中、彼女――サンタクロースに対してかもしれないが――に対する感謝の声もそこかしこから聞こえてくる。
「ありがとうございます。ちゃんとサンタさんにもお伝えいたします」
星の欠片を手に、笑顔でそう答える彼女の表情は本当に穏やかで優しく、神々しいものだった。
そう、まるで古い伝承の聖母が彼女に乗り移ったかのように……。

………
……

79IntermissionW『Present』(4):2006/12/24(日) 22:05:12 ID:M/6TFBwY0
「……おい」
彼女の持ったお盆から金平糖がすっかりなくなり、子どもたちが全員満足げに帰った後で、彼女に声を掛けた。
「はい、なんでしょう?」
「ひとつ聞いてもいいか?」
「はい、何か?」
「俺はいつからあんな白髪にあごひげを蓄えた爺さんになったんだ?」
彼女が子供たちに配った金平糖。
当然俺達にそんなものが作れるはずはない。
交易倉に無理を言って手配してもらった、人口甘味料ではない今となっては貴重な本物の砂糖で作ったものだ。
屑屋時代の「貯金」と引き換えに。
確かに高い買物ではあるが、それと引き換えに子供たちの、そして何より彼女の笑顔が見られるのなら、決して高いとは思わない。
俺の感覚も、随分変わったものだ……。
「……はい?」
唐突に投げられた疑問に対応できないのか、「?」を顔に浮かべながら、15度ほど小首を傾げる。
「……」
そして、暫しの沈黙の後。
「申し訳ありません、申し訳ありませんっ。あらためまして考えますと、お客さまに対しまして非常に失礼な発言とも取れる形容をしてしまいました。申し訳ありません、本当に申し訳ありませんっ」
平身低頭、何度も頭を下げる。
(参ったな……)
軽い冗談のつもりだったのだが、生真面目な彼女の性格を考慮に入れていなかったのは迂闊だった。
(まだ彼女に対する配慮が足りないな……)
自分に対して嫌気が差す。
「すまん、別に怒っているわけじゃない。からかってみただけだ。お前が謝らなくてもいい」
口が悪いのは今更変えられないが、出来る限りの謝罪の意をこめて彼女に言う。
「本当ですか?」
「ああ」
「そうですか、それは本当によかったです。どんな些細なことであっても、ロボットであるわたしが人間の皆さまに粗相があるなどあってはならないと考えますので」
心底ほっとした様子で、喜びと安堵混じりの笑みをこちらに返す。
「……」
……どうやら俺は、彼女の爪の垢でも煎じて飲む必要がありそうだ。
80IntermissionW『Present』(5):2006/12/24(日) 22:06:44 ID:M/6TFBwY0
「お客さま、少々よろしいですか?」
後片付けに戻ろうとした俺を、彼女が呼び止める。
「何だ?」
「どうぞ、お受け取りください」
そう言って、後ろ手にしていた両手をおもむろに俺の前に突き出す。
その手の平に乗っていたのは、小さい透明な包み。
赤いモール針金で口をくくってあるその袋の中に入っているものは、4個の小さい玉。
よく見ると、俺が手配した金平糖だ。
彼女が子供たちに配る前に、事前に取っておいたものだろうか。
彼女の手から、それを摘み上げる。
袋の中の金平糖は、薄暗い室内照明に照らされて、何とも言えない微妙な輝きを放っている。
色は……、白、青、黄、それと赤。
よく見ると、赤い玉だけ他よりも一回り小さい。
「どうぞ。先日の指輪のお礼です」
もともと俺が手配したものをお礼として俺がもらうのも妙な話ではあるが、それは突っ込まないでおく。
「別に礼などもらうような事はしていないぞ」
彼女の手の平に包みをおきながら言う。
「それから、この包みにはもうひとつ、意味があります」
改めて両手を突き出し、一呼吸置いてから彼女は俺の目を真っ直ぐに見ながら言った。

「……お客さま、メリー、クリスマス」

光学樹脂の無機質な瞳が、心なしか潤んでいるような気がした。
81IntermissionW『Present』(6):2006/12/24(日) 22:08:34 ID:M/6TFBwY0
「……」
数秒間とも、数時間とも取れる沈黙。
俺と彼女の間に流れる、微妙な空気。
……どうもこういう雰囲気は苦手だ。

「……そういう事ならもらっておく。ありがとう。メリークリスマス」
何とかそれだけ言って彼女から再び包みを受け取り、もう一方の手で彼女の頭を帽子の上から撫でてやる。
「ありがとうございます。お受け取りいただきまして、わたしはとても嬉しいです」
少しくすぐったそうにしながら、彼女は満面の笑みを浮かべた。
「しかし、クリスマスプレゼントといっても、俺の方は何も用意してないぞ」
「いいえ、お客さま、わたしは結構です。常日頃からお客さまには大変良くしていただいておりますし、先日指輪もいただいておりますので」
意識して言っている訳ではないかもしれないが、そう言われてしまうとさすがに男として立つ瀬が全くない。
「……わかった。来年必ず埋め合わせよう。それでいいか?」
「はい、承知しました。それでは、来年のクリスマスイブを楽しみにしています」
……来年に向けて、宿題をひとつ抱えてしまった。

「ところで、この色の組み合わせに何か意味はあるのか?」
手にした包みを今一度眺めながら、彼女に聞いてみた。
本当に何気なく聞いたつもりだった。
「はい、わたしの全ての想いを込めた色の組合せです」
たおやかに、そして無邪気に微笑みながら、彼女は言った。
「……」
彼女の言葉に嘘はない。
彼女が言うのなら、それには間違いなく「全ての想い」が込められている。
……だとしたら俺は何故、動揺しているんだ?
「お客さま、どうなさいましたか? もしかして、お体の具合が悪いのでしたら……」
黙り込んだ俺を、彼女の無垢な言葉が射抜く。
「……いや、大丈夫だ」
「そうなんですか。それはなによりです」
とりあえず納得したようだったが、その顔には相変わらず「?」が浮かんでいた――。
82 ◆JENA/hfgHs :2006/12/24(日) 22:21:00 ID:M/6TFBwY0
SSが連続するのはどうかとは思いましたが、時節ネタなので
投下してしまうことにしました。
あと2時間しかないですし。

実はこの話は、もともと本編第12章のオチとして考えていた話でした。
本編は9割方完成していたのですが、一昨日バックアップに失敗して
ファイルを破損してしまい、データが読み込めなくなってしまいましたorz
一から書き直すには時間がなかったため、急遽オチの部分のみを抽出して
インターミッションの形で掲載した次第です。
そのため、全体的にやっつけ仕事感が漂ってます。
申し訳ありません。
破損してしまった本編は、いずれ別の形で編集し直して掲載しようかと思います。

あまりクリスマスっぽくなくて、申し訳ありません。
年内の投下は、おそらくこれが最後です。
お目汚し、失礼しました。

I wish you're merry christmas and a happy new year!
83名無しさんだよもん:2006/12/24(日) 22:26:54 ID:4TmoqUJz0
イエナさん乙!
データは復旧ツールとかでなんとかならんものですかのう。
84やおい:2006/12/25(月) 00:40:32 ID:gf3iDaqfO
いつからか、長く続いた雨は雪に変わった。
それは街の輝きを受けて優しく輝き、まるで…星の世界のよう―――

街は幸せに溢れて、人々には笑顔が絶えない。
私のそばを少年が走り抜けて母親に飛び付く。
『お母さん!あれ見に行こうよ!』
『ええ。お父さんもすぐ来るから三人で見ましょうね。』
『うん!』
幼い私はそう言って母親を引っ張って百貨店に消えていく。

ふと、目をやると百貨店の前―――青年が仏頂面で時計を見ている。うがー!などと言っているようだ。
「あのバカ!どんだけ待たせるんだ!」
と、パタパタと青い髪を揺らしながら少女が走ってきて…ばたん!…こけた。

「ふぇぇ〜!ずびばぜんおぎゃぐざまぁ〜!」少女は起き上がってペコペコ謝っている。
「俺はお客様じゃない。名前教えただろ」
「ご、ごめんなざいおぎゃぐざまぁ〜!いつものくせで…」
「やれやれ…ほら泣くな。早く行こうぜ。」
「は、はい〜」
二人は手を取り合って店に入る。

85やおい:2006/12/25(月) 00:41:17 ID:gf3iDaqfO
やがて、聞こえてくる声。
幾度となく聞いた馴染み深い声。
いつも練習を欠かすことのなかった口上。
僕が…俺が…私が…聞いた声。

彼女は私を見ると笑顔を浮かべた。
『お帰りなさい、お客様』
『ただいま、ゆめみ』

ゆめみは私のしわがれた手を取って優しく言う―――


『プラネタリウムはいかがでしょう…』
86やおい:2006/12/25(月) 00:49:12 ID:gf3iDaqfO
あげてしまった…orz

以上、ほしのゆめ号外伝『しあわせなほしのゆめ』でした。
みんな幸せになれたかな?
青年屑屋は何故か人間なゆめみと付き合ってますw
願望が顕在化してますな。

みんなが向かう先は『クリスマス特別上映』のつもりです。

ホントはもう少し幻想的な世界にしたかったんですが…

少しでも登場人物が幸せならそれでよしです!
87名無しさんだよもん:2006/12/25(月) 01:02:38 ID:ZRd+h3Et0
・・・いいなぁ・・・・・・屑屋w

何かどえらいこと(失敗?)をやらかして、それ以来渾名が「お客様」になってしまった屑屋、というのはどうでせう。
エピ考えようと思ったけど、思いつかなかったorz
88名無しさんだよもん:2006/12/26(火) 07:14:45 ID:0WMwsXhe0
屑屋
「残弾数、ゼロ・・・」

ゆめみ
「また、(天国で)会えるよ・・・」

プレイヤー
「辛いなァ・・・」
89名無しさんだよもん:2006/12/26(火) 23:28:32 ID:Ck0vrueL0
>>88
221B戦記乙

屑屋
「サクリサクリと死んでゆく、
 それでも、生き続けて
 封印都市で、俺達は再び会うべきなのだ。
 もしも、死ぬこととなった者たち(老屑屋とゆめみ)は幽霊となって
 同じ天国で落ち合いましょう。必ず。
 ひとまず、さらば
 こんな雨降りの日に、俺もすぐ行きます
 行きます 行くぞー…」
90名無しさんだよもん:2006/12/27(水) 01:41:26 ID:Gq4lKDyK0
最初の一文で、このスレを想像した。
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1160395320/
91名無しさんだよもん:2006/12/27(水) 08:14:47 ID:Q9O0D1Sv0
>>90
アンカーキボンヌ

92名無しさんだよもん:2006/12/27(水) 15:39:00 ID:Gq4lKDyK0
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1160395320/567-571
こうですか? 判りません!
93名無しさんだよもん:2006/12/27(水) 17:41:18 ID:ZovXkQ1S0
いや、「最初の一文」のほうのアンカーキボンヌ
つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20061228233615.jpg】(※グロ注意スマソorz)

『・・・右光学センサーからの応答がありません。左腕肘関節部からの応答がありません。
 右脚膝関節部からの応答がありません。速やかにサポート部門ならびに警察機関への連絡が必要です・・・
 ・・・サポート部門ならびに警察機関からの応答がありません。通信が確立できません』

「・・・お客さま・・・どうか乱暴はおやめください、筐体に重篤な破損が・・・」
「やめてくれだァ?・・・ケッ、何ぬかしてやがる、自動人形(ロボット)風情が!」
「オラっ、この扉の向こうにお宝があるのはわかってんだ。さっさと鍵のありかを吐けってんだ・・・よッ!!」

「!!」
バキッ!!・・・ガシャァァッ!

『・・・イヤーレシーバー部、送信アンテナからの応答が途絶しました。外部への通信が不能です。
 頚椎ユニット破損、腰部フレームに亀裂発生。筐体破損率45%・・・これ以上の衝撃は危険です』

「ナイスシュート、・・・ってか?」
「おーおー、5mは転がりやがった。まるでサッカーボールだねぇ、へっへへ」
「お、まだ立ち上がれるみたいだぜ、コイツ」

(外気温度に不相応な冷感を検知・・・筐体の痙攣運動が抑制できません・・・
 擬似感情への負荷増大、自律思考の安定性が確保できません・・・・・・この感覚は、何なのでしょうか?)

「・・・なんだァ?この人形、震えてやがるのか?」
「ケッ、いっちょ前に怖がるたァ、生意気なガラクタだぜ」
「人真似して、怖がってみせてるだけかもしれねェぜ、へへっ」
(・・・『怖がる』?・・・もしかして・・・これが、『恐怖』という感情なのでしょうか・・・?)

「ちっ、痛めつけても痛がらねェからつまらねェな・・・遊びは終わりだ、さっさとメモリ解析して吐かせちまおうぜ」
(・・・屑屋のお客さま・・・わたし、『怖い』です・・・・・・助けて、助けてください・・・お客さまぁ・・・!!)

(※省略されました・・・続きを読むには屑屋に助けを求めてください)
95名無しさんだよもん:2006/12/29(金) 00:05:55 ID:SbihxQ420
さすが、ゆめみ。足が取れても何とも無いぜ!

・・・単純にゆめみと言うキャラにキャラ萌えしてる身にはかなり微妙・・・。
96名無しさんだよもん:2006/12/29(金) 00:23:53 ID:3LX0Ct6+0
9794:2006/12/29(金) 08:04:20 ID:WhJOd1y90
>>95

スマソorz

このあと、間一髪で屑屋が間に合って悪漢どもを叩きのめす、ということでひとつ。
98やさぐれゆめみさんw:2006/12/30(土) 11:18:08 ID:MQugw+Lu0
つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20061230111657.jpg

「お客さま、アルコールを摂取なさっておられるのですか?」
「ああ、今日は冷えるからな。…どうだ、お前も飲んでみるか?」
「申し訳ございませんが、わたしはロボットですから…こちらでお付き合いさせていただきますね」
「密造軽油かよ」

……

「…しかし、なんだな」
「はい?」
「ロボットとはいえ、お前も大変だったよな…あんなところで、一人で三十年もいたなんてな」
「……あーーー?」
「?」
「わたしだって、何も好きで『申し訳ございませんっ』とか『プラネタリウムはいかがでしょう』とか言ってるわけぢゃないんですよね」
「お、おい。突然どうした?」
「だって、人間の方々も酷いぢゃないですか…わたし、行動範囲制約かけられたまんまで、三十年も放置プレイですよ?」
「ほ、放置プレイってお前…」
「そりゃ、わかってますよ。それどころぢゃなかったってことは。
 …でも、それならそれで、一緒に連れていってくださってもよかったぢゃありませんか(うぃっく!)」
「お前…酔ってるな?」
「はい、酔ってますよぉ。
 …だいたいれすね、何があったのか存じませんが、人間同士で殺しあって、挙句に地球をこんなにしちゃって…
 わたしは涙を流せませんがぁ、もし涙を流せたら、きっと情けなくて泣いてますよ、ふんとに(うぃっく)」
「…すまん」
「お客さまが謝ることぢゃないでしょーに。いったいどこのお馬鹿さんれすか、こんなことしたのは!(ひっく)」
「……」
「…決めました。ちょっと文句言ってきます」
「…いや、あのな」
「止めないれくらさいっ!ぅー(ひゃっく)……ぉょ」

…どんがらがっしゃーーーーん!! Z☆
99やさぐれゆめみさんw(修正):2006/12/30(土) 11:28:13 ID:MQugw+Lu0
スマソ、ポカ発見・・・orz

つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20061230112722.jpg

100名無しさんだよもん:2006/12/30(土) 15:23:51 ID:7XnifngjO
>>99
あゆに続いてゆめみまでw
101名無しさんだよもん:2006/12/30(土) 17:34:23 ID:lXSjNjuP0
ゆめみたん、軽油の質が悪かったのか悪酔いしているw
102名無しさんだよもん:2006/12/30(土) 19:33:21 ID:ZWVYQOoF0
そのネタで来たかw
103名無しさんだよもん:2006/12/31(日) 01:15:46 ID:BR+2OPskO
しかし、そうなると……

ゆめみさん、動力源は内燃機関!?
104名無しさんだよもん:2006/12/31(日) 08:56:23 ID:5oOWTPca0
「おきゃくふぁまぁ〜〜、うふふっ」
前後不覚に酔っ払ったゆめみが、艶っぽくとろけた瞳で俺に迫ってくる。

俺は、SCR5000シリーズのマニュアルにあった注意事項を思い出していた。

『不純物の混入した燃料は使用しないでください。
 異常燃焼を起こし、AIの正常な機能が妨げられる場合があります。
 特に、密造軽油は製品の質が悪い事が多く、泥酔に似た症状を示す場合があります』

「つぅ〜かまえましたっ!えいっ!」
80kg近いゆめみの体重が、俺の上からのしかかる。
十代の少女特有の、繊細な身体のラインが俺の身体に密着する。

俺の首に手を回し、ゆめみの顔が俺の顔に迫る。
どういう構造なのか、人間のようにほんのりと染まった頬。俺は不覚にも、一瞬心を奪われる。
熱を帯びた吐息は、どこまでも甘く・・・・・・

・・・ない。軽油臭い。

これは、さすがにたまらん。ムードも何もあったものではない。
「こら、ゆめみ!気をしっかり持・・・むぐっ!?」

ゆめみの唇が、問答無用で俺の唇を奪った。

ゆめみとの初めての口づけ。
それは、どこまでも油臭く・・・・・・orz

「・・・お客さま?先ほどからしきりに口を漱がれておられるようですが・・・
 どこかお身体のお具合でも・・・」
「いや、なんでもない。気にするな」
・・・何も覚えてないのか、こいつは。
105名無しさんだよもん:2006/12/31(日) 10:38:00 ID:COGh94Pp0
>>103

ケロシンを白金触媒で熱に変える懐炉みたいに、
石油から直接電気を発生する謎の燃料電池とか・・・

どうみても超SFです、つか有明人大杉。
106名無しさんだよもん:2006/12/31(日) 15:31:51 ID:BR+2OPskO
なにを言ってるんだ

ユニフローディーゼルエンジンは男のロマンじゃないか
107名無しさんだよもん:2007/01/01(月) 00:02:55 ID:0hs9szGA0
ゆめみ
「あけましておめでとうございます」

屑屋
「なんだか、ここで『永遠の3日間』を過ごしているような気がするが・・・まずは今年もよろしく。」
108planarian〜ふえるほしのゆめ〜:2007/01/02(火) 01:44:06 ID:g35NGjXm0
つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20070102014154.jpg

SCR5000Si/FLの特殊機能が今明かされる!



・・・ただの言葉遊びですスマソ orz
109名無しさんだよもん:2007/01/04(木) 00:03:24 ID:h3MQ8Dja0
つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1167836254.ZIP
PASS:yumemi

注意:グロじゃないが鬼畜の部類かと・・・orz
110名無しさんだよもん:2007/01/04(木) 00:48:17 ID:LVfuh/Xo0
>>108-109
エロいゆめみGJ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
111名無しさんだよもん:2007/01/04(木) 15:35:45 ID:h3MQ8Dja0
つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20070104153422.jpg



メカバレ注意orz(ほのぼの系)
112やおい:2007/01/04(木) 19:24:28 ID:Gq0Z6DExO
トランスフォーマー思い出したw
GJ!

休暇だってのに営内に引きこもってアニメ三昧…orz
113名無しさんだよもん:2007/01/06(土) 03:18:09 ID:Ba9eTgVD0
食う者と食われる者、変わらず星を語る者。
牙を持たぬ者は生きていかれぬ廃墟の街。
あらゆる屑屋が武装する封印都市。
ここは二十年戦争が産み落とした惑星地球のソドムの市。
屑屋の体に染み付いた硝煙の匂いにひかれて自律戦闘機械が集まってくる。
次回「出会い」
屑屋の吸う、両切りのキャメルは苦い。

人の運命を司るのは神か偶然か。
それは時の回廊を巡る永遠の謎掛け。
だが屑屋の運命を変えたのはゆめみと呼ばれた、あの人形。
かつて確かにこの星にあった夢が、今封印都市に甦る。
次回「ゆめみ」
ジジジというノイズと共に、美女が微笑む。

敵の血潮で濡れた脚。「地獄の使者」と人のいう。
封印都市に二十年戦争の亡霊が甦る。
パタゴニアの高原、沿岸の都市に、悪魔と謳われた自律戦闘兵器。
情け無用、命無用の鉄騎兵。
その機体、金30億ユーロなり。もっとも危険な対人兵器。
次回「ウォーモンガー」
屑屋、危険に向かうが本能か。

降り注ぐ火玉。挑みかかるシオマネキ。虚無と瓦礫と廃墟の街、封印都市が燃える。
圧倒的、ひたすら圧倒的パワーが蹂躙し尽くす。
ささやかな望み、芽生えた愛、絆、健気な願い。
人間もロボットも、男も女も、昨日も明日も飲み込んで、はしる。炎、炎。
音を立てて星の夢が砕ける。
次回「被弾」
ゆめみは筐体さえあれば甦る。
114名無しさんだよもん:2007/01/06(土) 03:18:55 ID:Ba9eTgVD0
何もかもが炎の中に沈んだ。
微笑みかけた友情も、芽生えかけた愛も、秘密も。
そしてあらゆる夢も同じだ。全てが振り出しに戻った。
屑屋は死んだ魂を疲れた体に包んで、星空を求めて封鎖壁の外に向かった。
次回「脱出」
人々は誰も愛が見えない。

愛を見たのが幻想なのか、心の渇きが幻想を生むのか。
戦いの果てに理想を見るのが幻想に過ぎないことは、屑屋の誰もが知っている。
だが、あの瞳の光が、純真な心が幻だとしたら?そんなはずはない。
ならばこの世の全ては幻想に過ぎぬ。では、目の前にいたのは何だ?
次回「追憶のゆめみ」
無垢なる者が心を癒す。

家族、望み、笑い、涙。かつてこの星に息づき、溢れていたもの。
それらは、ある日焼かれて、ひと握りの灰となった。
灰は巻き上がり空を覆い、雨雲となった。
いま、雲が雨となり降り注ぐ。怒りと悲しみの星の素顔が、荒れた空気に晒される。
次回「恩讐」
降りしきる雨粒が、心に刺さる。


一人の男と、一体のロボットが、終焉の地球で星を夢見て逝った。
一瞬のその光の中に、プレイヤーが見たものは、夢、想い、運命。
今、全てが終わり、駆け抜ける悲しみ。
今、全てが始まり、星の海を命ある船が行く。
最終回「エピローグ」
遙かな時に、言葉を紡いで。
115名無しさんだよもん:2007/01/06(土) 21:09:00 ID:Y+ig9+Qk0
>>114
元ネタ何だっけ…。エルフェンリート?
116名無しさんだよもん:2007/01/06(土) 21:24:43 ID:ZULGwx2I0
んん、ボトムズじゃないか?
117名無しさんだよもん:2007/01/06(土) 21:57:52 ID:Ba9eTgVD0
つ【ttp://www1.ocn.ne.jp/~ttmoon/annex/bannjou/botomz1.html】+リンク先


全部は無理だたよorz
118『再会』(1/4):2007/01/07(日) 01:29:45 ID:CFgBBRtU0
「久しぶりに、懐かしい夜空を見せてもらったよ、ありがとう」
「すっごく綺麗だった!また見たいです!」
「こんな世界じゃ大変だと思うけれど、いつまでも続けてくださいね・・・これ、よかったら召し上がってください」

投影を終え、明るくなったドームに、観客達の喜びの声が響く。
俺は、最近やっと自然に出せるようになった微笑みで答える。

・・・ここは、封印都市にほど近い集落。

あの出来事から、もう五年が経つ。
俺は今、手作りの投影機を使っての移動プラネタリウムを生業としている。

この仕事が軌道に乗るまでは、まさに苦労の連続だった。
昼は屑屋の仕事で食いつなぎながら部品を集め、夜は資料と首っ引きを頼りに投影機の製作にかかる。
投影機が完成するまでに半年。
そして、星の勉強の日々。解説ができるだけの知識を得るのに、また半年。
移動プラネタリウムを始め、客が入るようになるまでに二年近く。

同業者に狙われたり、あらぬ噂を立てられたり・・・いろいろな苦労があった。
だが俺は、ゆめみの形見・・・メモリーチップを見るたびに、思いを新たにして頑張ってきた。
その苦労が、今やっと報われつつあるのかもしれない。


・・・ふと俺は、一人の少女が席を立たずにいるのに気づいた。
花菱デパートの本格的なプラネタリムとは違い、俺のドームには投影機以外の照明はない。
捲り上げた入口から差し込む外の光だけが頼りの、薄暗い空間。
俺は、投影機を調整する手を休めて歩み寄る。

「お客さん、次の投影は一時間後ですよ・・・っ!?」
少女が、涙に濡れた顔を上げる。・・・その時、俺は言葉を失った。
119『再会』(2/4):2007/01/07(日) 01:30:39 ID:CFgBBRtU0
二つに分けて括った、銀色の長い髪。
まだ幼さを残す、あどけない顔立ち。
・・・そこに居たのは・・・

「・・・ゆ、ゆめみ・・・!?」

「・・・えっ? あの、館長さん・・・なぜ、わたしの名前を知っているんですか?」
驚いたように、少女が問い返す。
「そんな・・・まさか、そんなわけが・・・・・・」


少女の名前は・・・「星野ゆめみ」と言った。
対人戦車に両親を殺され、それからはこの集落の孤児院で暮らしてきた、と彼女は語った。
五年前に大病を患い、死の淵をさ迷い・・・長い夢の中で、見たこともなかったはずの「星空」を見た、と言う。

奇跡的に回復してから、彼女は夢で見た風景を求め、図書館であらゆる本を探した。
そして、彼女はそれを見つけた。
かつて、この厚い雲の上に瞬いていたという「星」。
図鑑で見た、その「星空」に魅了され、俺の移動プラネタリウムが投影に来るのを、指折り数えて待っていたそうだ。

「ごめんなさい・・・投影を見ていたら、涙が止まらなくなっちゃって・・・
 なんだか、とても懐かしい感じがして・・・
 ここが・・・この星空こそが、わたしの居るべき場所なんじゃないかって・・・そう思えて・・・本当にごめんなさい」
少女が・・・ゆめみが、ぺこりと頭を下げる。

「いや・・・いいんだ」

やっとの思いで、そう答えた。
120『再会』(3/4):2007/01/07(日) 01:31:28 ID:CFgBBRtU0
「・・・あの・・・館長さん?」
「なんだい?」
ゆめみは、おずおずと切り出した。
「わたしを・・・ここのスタッフとして、雇っていただけませんか?」
「スタッフ?」
「お願いします!星のことなら、いっぱい勉強してきました! ご迷惑とは思いますが、どうか・・・」

すがるような瞳で、俺を見つめる。
濡れたような緑色の、大きな瞳。

「・・・楽なことばかりじゃないぞ?」
「はい」
「旅は過酷だ。命を落とす危険だってある」
「はい、覚悟はできています」
「・・・俺も男だ。男と女が共に旅をするのは・・・」
「かまいません」
「・・・本当に、後悔しないか?」
「はい」
「・・・・・・」

「旅がどんなに過酷でも・・・わたしはこの世界で、居るべき場所を見つけた、と思うから・・・だから・・・」
ゆめみは胸に手を当て、囁くように言った。

居るべき場所・・・か。
・・・ゆめみ・・・君は、本当に・・・・・・

「・・・・・・わかった」
「あ、ありがとうございます!」
ゆめみの顔が、ぱぁっと明るくなった。
121『再会』(4/4):2007/01/07(日) 01:32:33 ID:CFgBBRtU0
俺は、胸に下げていた小さな函(はこ)を取り出し、ゆめみに手渡す。
「じゃあ・・・これを、持っていてくれ」
「これは?」
「星の人の証だ」
「・・・星の・・・人・・・」

ゆめみの・・・花菱デパートで出会ったロボットのゆめみの、メモリーチップ。
何度も挫折しそうになった俺を支えてくれた、あいつの形見。
彼女になら、渡してもいい・・・
いや、彼女に『返す』べきだ。・・・何故か、そんな気がした。

「・・・・・・」
「どうした?」
「・・・なぜでしょうか? とても・・・懐かしい気がします・・・・・・」
掌に乗せたメモリーチップを見つめ、ゆめみが呟く。
「うまく言えませんが・・・・・・わたし自身の片割れに出会ったような・・・そんな・・・」
ゆめみの瞳に、ふたたび涙が滲む。

「・・・そうだな・・・そうかもしれないな」
そう言って俺は、ゆめみの頭を優しく撫でる。
ゆめみは少しくすぐったそうにしながら、目を閉じて身を委ねている。

・・・長い沈黙の後。ゆめみは誰にともなく、呟くように言った。
「神様・・・・・・ここが、わたしの居場所なんですね・・・・・・」
「ああ・・・おかえり、ゆめみ」

頭上のドームに、今夜の「一番星」が輝いていた。


- Fin. -
---------------------------
即興でひとつ。ノシ
122名無しさんだよもん:2007/01/07(日) 23:56:05 ID:Mr2Q2uEiO
GJ〜!二人に幸あらんことを。
ゆめみ人間化ってこれが初めてじゃね?
123『休館日の風景』:2007/01/08(月) 05:17:30 ID:ewAEx2bA0
つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20070108051212.jpg

最萌トナメ支援・間に合わなかった記念orz
改め、スズモトジェイピーにて『星の人/系譜』公開記念。

天国プラネタリウム、休館日の風景。


執拗に服の皺を描くのが、楽しくなってきた昨今。


124『休館日の風景』(ものがたり):2007/01/08(月) 05:22:14 ID:ewAEx2bA0
ゆめみ
「♪あか〜いめ〜だまの〜・・・♪」(キュコキュコ)

屑屋
「ゆめみのやつ、ご機嫌だなぁ・・・」




ゆめみ
「♪蠍座の女〜♪」(キュコキュコ)

屑屋
「ちょっと待て、オイ。」


---------------------
冗談ですスマソ
もう寝よう。
125123:2007/01/08(月) 10:26:15 ID:ewAEx2bA0
つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20070108102452.jpg

>>123は目の位置がkanonっぽいので、ちょっと修正してみた。
うーん・・・どちらがいいんだろう?
126名無しさんだよもん:2007/01/09(火) 01:46:11 ID:tBx65TDv0
ん〜、後者。
127名無しさんだよもん:2007/01/09(火) 10:43:05 ID:iDxXn5NVO
俺も後者かな
128名無しさんだよもん:2007/01/09(火) 11:52:31 ID:hvB3Rdn00
では後者で。
あとでうpろだ整理しとこう・・・って、ほとんど私物化状態だなぁ、あそこ(プチヤバス
129Binary 第12章『Resolution』(1):2007/01/09(火) 23:45:45 ID:LuFTsZTf0
夜。
一般投影の終了後。
決して広くはない部屋一杯に展開したエアドームの中。
墨を流したような一面のその闇の中では、『小さいイエナさん』が彼女の左耳に装着された
通信ケーブルから発せられる指示のもとに、いつもの投影の時と同じようにまばゆいばかりの
星空を壁面に映し出している。
ただし、その星を見ている「客」は、一人だけ。
それも、正確に言えば「客」ではない。

「それでは、くじら座の中で一番明るく見えます星を示してみてください」
通信ケーブルを通じて『小さいイエナさん』に日周運動の停止信号を送りながら、彼女が
黒い棒状の物体を俺に手渡す。
充電式のワイヤレスポインター。
特定の恒星の位置を客に指し示す時に使うものだ。
「イエナさん」の制御卓に付帯していたものを改造してワイヤレス化したもので、矢印を
鮮明に映すために大柄に作られている筒の部分は既に擦り切れ、白く輝く金属の地肌が
ところどころ剥き出しとなり、年季を感じさせる。
「……あれだな」
ポインターから出る矢印を、該当すると思われる星に重ね合わせる。
「それでは次に、その恒星の名前と名前の意味をお答えください。」
「確か……名前はデネブ・カイトス……由来は…………」
最近あまり頭をこう言った方面に酷使していなかったせいだろう、脳味噌が熱くなる感覚を
実感しながらも、なけなしの頭をフル回転させて回答を導こうとする。
「名前はおっしゃるとおり『デネブ・カイトス』、意味はアラビア語で『くじらの尻尾』です。
惜しかったですね」
……が、俺が回答を得るよりも早く、彼女の優しくも無慈悲な言葉が俺に届く。
130Binary 第12章『Resolution』(2):2007/01/09(火) 23:48:21 ID:LuFTsZTf0
「くそ、もう少しで出てきたんだがな……」
「はくちょう座α星のデネブがやはりアラビア語で『尻尾』という意味ですので、それと
あわせて覚えると覚えやすいかもしれません。ところで、頭の中で星座絵を星に重ね合わせて
見てみますとわかりますが、星座絵の該当する位置にちなんだ星の名前というのは
意外と多いんです。例えば、オリオン座α星のベテルギウスは『巨人のわきの下』、同じく
オリオン座β星のリゲルは『巨人の左足』。これらはその代表的な例です。他にはぎょしゃ座
α星のカペラも星座絵を重ねた時の位置に由来しています。暇がございましたら、調べてみますと
おもしろいですよ」
「ああ、わかった」
「お客さま、ひとつおうかがいしてもよろしいでしょうか?」
相槌を打った俺に、彼女が尋ねる。
「何だ?」
「くじら座についての解説は先日の一般投影の時にも少ししています。そのときに
デネブ・カイトスについての説明もしたのですが、覚えてらっしゃいませんでしたか?」
小首を傾げながら、俺に問う。
彼女の何気ない言葉が、鋭い槍となって俺の胸に刺さる。
「……寝ていた。面目ない」
少しの後悔の念と、大きな罪悪感に襲われる。
悪戯をして母親にしかられる子供のように、彼女の顔を正視できないまま
何とかそれだけを告げた。
彼女には非常に申し訳ない話なのだが、深夜、彼女のメンテナンスと『小さいイエナさん』の
メンテナンスに追われて、昼間の投影中に彼女の解説を子守唄にたまらず舟を漕いでしまうことは
しばしばある。
かといって、それを言い訳にしていてはいけないのだが……。
「そうでしたか。それは残念です」
一瞬だけ見せる、憂いの表情。
131Binary 第12章『Resolution』(3):2007/01/09(火) 23:51:04 ID:LuFTsZTf0
「お客さまが、わたしや『小さいイエナさん』のためにいろいろとご苦労されていることは
重々承知しています。ですが、出来るだけわたしの投影時の解説はちゃんと聞いてい
て欲しいんです。わたしは、ここにいらっしゃるお客様方のためだけではなく、お客さまの
ためにも投影している、と常々考えながら各回の投影を実施しています。わたしも、お客さまには
今よりももっともっとたくさん、星のことを知っていただきたいんです。わたしの解説を
聞いてくださることによって、お客さまの星に関する知識が増えていくことは、わたしにとりましても
とてもうれしい事なんです。お願いいたします」
言葉の内容は厳しいわけではない。
無理をして怒りを抑えて話しているわけでもない。
いつも俺と話すときと同じ、あくまでも温和な口調。
だがそれだけに、直接的に言われるよりも、彼女の切実たる思いはよりダイレクトに俺の罪悪感を
刺激してくる。
「……申し訳ない」
いつもは彼女が俺に向かって繰り返し言っている台詞だが、今回ばかりは俺の口から出ることになった。
「お客さまがおわかりいただけましたら、わたしはそれでいいんです。先ほども申しましたように
お客さまが、わたしがスリープモードに移行してからもいろいろな事をなさっていることは理解しています。
ですからそういった諸事情を勘案しますと、わたしはお客さまがたとえ投影中にお休みになって
しまいましても、その事でお客さまを責めるつもりはありませんし、責めることはできないと考えます」
そこまで言われて、最早居眠りなど出来るはずもない。
「……わかった。今度からは、出来る限り起きているようにする」
「はい、ありがとうございます。そうおっしゃっていただけますと、これからの投影にもやりがいが出ます」
悪いのは全面的に俺のほうなのだが、それでも彼女は俺の言葉に対して嬉々とした表情を浮かべる。
「それでは、今日はここまでにしましょうか」
「ああ、ありがとう」
俺の感謝の言葉に微笑みながら通信ケーブルを耳元から抜き取る彼女の動作が、今日の「授業」の
終わりの合図だった。
132Binary 第12章『Resolution』(4):2007/01/09(火) 23:53:01 ID:LuFTsZTf0
少しでも時間が空くと、彼女は俺の「パートナー」から「先生」となる。
俺に天文学や投影時の解説のノウハウを叩き込んでもらうために、俺から彼女に
頼んだのだ。
様々な天文学の書籍や光学ディスク――今となってはそのようなものを求める者は
稀なのか、捨て値同然だった―― 、それに彼女自身の保持している天文に関する
各種データベースを使用しての「座学」と、今回のように一般投影終了後や休日に行う
実際に星を投影してのいわゆる「実地研修」の2本立てだ。
昔、天文の知識は少しは仕込まれたとはいえ、それはあくまで戦場で星を「生き残る
ための道具」として扱うための知識であって、人々に星そのものの美しさを「語る」ための
知識ではない。
しかも結局、その時はそんなことを意識して星を見ることはほとんどなかったため、その
知識ですら実践を伴わないあくまでも知識としての役割しか持っていない。
もし俺が客に解説をするとして、そればかりの知識だけでは役不足なのは火を見るより明らかだ。
今現在は彼女に投影のすべてを任せているが、もし投影中に彼女に万が一の事が
あった場合には俺が投影を引き継がなければならない事態も当然考えられるし、仮に彼女が
何らかの理由で長期メンテナンスの必要に迫られ長期間稼動できなくなった場合も同様だ。
彼女の「パートナー」として、最低限の解説くらいは彼女の手を借りないで出来るようになりたい。
確かに理由の一端はそれだ。
だが、決してそれだけではない。
他にも理由はあった。

彼女にも言えない、いや、言いたくない理由が……。
133Binary 第12章『Resolution』(5):2007/01/09(火) 23:55:27 ID:LuFTsZTf0
「それにしましても、始めた頃と比較しますと、ずいぶん実際に星を見ながら説明することに
慣れてきたようですね」
「まだ知識と一致していない部分はあるがな」
謙遜ではなく、事実である。
想像や知識ではない実際の星空――たとえ本物ではない擬似的なものだとしても――を
目の当たりにして説明するとなると、やはり事柄を口で説明するだけの場合とは勝手が違う。
俺自身が決して口が達者な方ではないため、他人に対して――仮に彼女に対して説明するの
だとしても――説明することに対して緊張してしまうということももちろんあるが、なにより自分の
内部にあらかじめ出来てしまっている「こう見えるはずだ」というイメージと、実際に自分や客が
見たときの「こう見える」というギャップの大きさにまだ戸惑ってしまう。
まあ、俺自身が今まで実際の星など見た記憶がほとんどなかったのだから、ある意味当然といえば
当然かもしれない。
だが、逆に考えれば、彼女よりは俺の方が客により近いポジションにいるのではないか、とも思う。
実際、ここに来る客の中で実際に星を見たことのある者など、数えるほどしかいないのだから。
彼女もその辺りはわかっているのだろう、今でも投影番組の差し替えや内容の編集の際には
必ず俺に意見を求めるし、逆に俺から彼女に投影内容の変更点を進言することもある。
「わたしから見ましても、お客さまは本当に熱心に星のことを勉強されています。この調子で
継続なされば、簡単な投影の解説でしたらじきにお一人で出来るようになられると考えます」
「『先生』の教え方がいいからな」
「ありがとうございます。お客さまにそう言われますと、わたしはとてもうれしいです」
言いながら丁寧に一礼。
後ろに垂れ下がった長い銀髪がそれに合わせてふわりと揺れる。
そして、顔を上げた彼女は心の底からうれしそうに満面の笑みを湛えていた。
134Binary 第12章『Resolution』(6):2007/01/09(火) 23:57:07 ID:LuFTsZTf0
星のことが好きなのかどうか。
それはまだ自分では何ともいえない。
確かに、あの時封印都市で垣間見た彼女と「イエナさん」が映し出すこの世のものとは
思えない光景が動機の一端になっていることは確かだし、あの目くるめく世界をもっと
知りたいと思ったことも事実だ。
星の魅力に、俺は間違いなく魅せられている。
だが、それが全てかと問われれば、答えは否だ。

俺はおそらく星以上に「彼女」に魅せられている。
決して外見にではない。
その純粋な『心』に。
そして、その『夢』と『想い』に。

彼女は一度この世を去る前、自らの『心』を俺に託した。
そのときの彼女自身の意図は、今もわからない。
もしかしたら、そこまでの意図はその時の彼女にはなかったのかもしれない。
だが、そんなことは最早どうでもいいことだ。
小さなチップ一杯に詰まった、彼女の『心』。
その『心』を受け取ったその時点で、俺の行くべき道は既に決まっていたのかもしれない。

彼女の仕事は、人々に星空を見せること。
そして、自身の『夢』、そして『想い』をより多くの人々に伝えること。
俺の仕事は、彼女の「パートナー」として可能な限りその手助けをしてやること。
そして……。
そして彼女自身がそれをなすことが叶わなくなった時、彼女に代わってそれらを人々に
伝えていくこと。

彼女の『心』を受け継ぐ。
今は彼女にも言えない、もうひとつの理由。
135Binary 第12章『Resolution』(7):2007/01/09(火) 23:59:23 ID:LuFTsZTf0
エアドーム内の片づけがほぼ終わった頃。
「お客さま、ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「何だ?」
居住いを正して、彼女は切り出した。
「今回のお話をお客さまからうかがった時、わたしは真っ先に記念投影の時の事を思い出しました。
あの時、お客さまは『星のことなら、すべて頭に入っている』とおっしゃいました。そのお言葉に
甘えまして、記念投影は『イエナさん』を動かさずにわたしの解説のみで投影を行ったわけですが、
あの時、実際はお客さまはわたしがあの時思っていたほどには星にお詳しくなかったわけですよね?」
やっぱり来たか……。
「ああ、お前の言う通りだ。出任せを言ってすまなかった」
自嘲気味に、だが正直に答える。
今回の話を彼女に持ちかけた時、いずれはこの話になるであろう事は当然予測できた。
その時の俺の思いがどうであれ、結果として俺はあの時彼女を欺いた事になる。
どう言われようが、どう思われようが、それは甘んじて受け入れるつもりでいた。

だが、彼女はそんな俺に対して穏やかに微笑んだ。
まるで、初めからすべてを知っていて、それでも赦すかのように。

「……お客さまが星にお詳しくないという事が残念かと聞かれれば、やはり残念ではあります。
ですが、わたしはこう考えました。あの時、お客さまがわたしに対しましてあのような言葉をかけるに
至った経緯とそのときの心情を考慮しますと、わたしもお客さまと同じ立場に置かれたとき、きっと
あの時のお客さまと同じ言葉を返しただろう、と。お客さまは、わたしの事を騙していたとお思いに
なっているかもしれませんが、わたしはあの言葉はあの時の最善であったと考えます。うそをつけない
ロボットのわたしがこんな事を言うのは可笑しいかもしれませんが、人間の皆さまには、時と場合に
よっては『ついてもいいうそ』というものもあると、わたしは考えます」
「……」
136Binary 第12章『Resolution』(8):2007/01/10(水) 00:02:23 ID:0p05sl2Y0
「今、お客さまは、星の事について頑張って勉強されています。先ほども申しましたが、わたしは
やはりお客さまが星のことが本当にお好きだからこそ勉強されていると思いますし、星について
もっと知りたいとお思いになったと考えます。ですから、今回の話をお客さまがわたしにして
くださった時、確かに残念な気持ちもありましたが、それ以上にわたしはうれしかったんです。
やはりお客さまは星のことがお好きなんだ。お客さまが星の事をよく知らないというのであれば、
わたしが持っているありったけの星や天文の知識をお客さまに少しでも多く知っていただくように
しよう。そうすれば、お客さまは星の事をきっと今よりももっともっと好きになってくれる、そう考えたんです。
そして、お客さまが星のことにお詳しくなった時、その一端をわたしが担うことができたという事実は、わたしに
とってこの上ない喜びになると考えます。ですから、今はお客さまが星の事をよくご存知でないことは、逆に
うれしくさえ思えます」
「実地研修」の時に言っていた言葉を繰り返す。
「そうか……」
「それに、星のことを知っていただくということは、わたしのことをより知っていただくことと同じことであると
わたしは考えます。わたしのロボットとしての構造的なことではなく、わたしの内面…… 、人間の皆さまの
『心』にあたる部分のことをより知っていただくために最適な手段だとわたしは思います。ですから、お客さまには
星を通してわたしのことももっともっと知っていただきたいんです。今回の勉強の件はもともとお客さまからの
お願い事でしたが、これはお客さまの『パートナー』としましてのわたしからのお願い事です」
真剣な眼差しで俺の顔を真っ直ぐに見つめる。
「わかった。理解できるかどうかはわからんが、努力はする」
「はい、是非ともお願いいたします」

彼女の言葉を聞いていて、ふと思った。
自らの職分のことに関しては、非常に聡明な彼女のことだ。
もしかしたら悟っているのかもしれない。
俺が「先生」をお願いしたことの「もうひとつの理由」を……。
137Binary 第12章『Resolution』(9):2007/01/10(水) 00:04:56 ID:0p05sl2Y0
俺が人間であり、彼女がロボットである以上、いつか必ず訪れる「別れ」のとき。
お互い、この地球上に生きるものとして、必然として甘受せねばならない摂理。
なすべき事は多く、反面、俺と彼女に与えられた時間は決して潤沢とはいえないだろう。
俺が先になるか、彼女の方なのか。
いや、死別だけでなく生き別れになることも十分考えられる。
だからこそ、彼女と共にある今を大切にしたい。
「その時」を、憂いなく迎えるために。
そして「その時」まで、何があろうと俺は絶対に彼女をおいて先に逝くわけにはいかない。
あんな思いは…… 、俺一人が味わうだけで充分だ。

「そういえばお客さま、ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?」
瞳の奥のインナーレンズをきゅっと細めながら聞いてくる。
「何だ?」
「お客さまが投影の解説をするときは、『小さいイエナさん』の操作はお客さまがやるのでしょうか?」
「……」
解説のことに気を取られて、そこまでは考えが及ばなかった。
「よろしければ、お客さまが解説に慣れるまでは、わたしが『小さいイエナさん』の操作をしても
構いません。ですが、操作する側としましては事前に投影内容を把握する必要があります。
ですので、お客さまが解説なさる前日に内容を全編通して一度わたしの前で発表して
いただけませんでしょうか?もちろん、お聞きした際に間違った部分や不適切な部分が
ございましたら、その場でご指摘いたします」
試験、というわけか……。
もっとも、彼女自身がそこまで意識しているかはわからないが。
138Binary 第12章『Resolution』(10):2007/01/10(水) 00:06:10 ID:0p05sl2Y0
「……わかった。だが、いつになるかわからんぞ」
「わたしはそう遠くなく実現すると考えます」
「どうだかな」
「大丈夫です。もっとご自分に自信をお持ちください」
屈託ない表情で彼女にそう言われると、本当にそう思えてくるから不思議なものだ。
「期待しないで待ってろ」
「はい、その日を期待してお待ちしております」
胸の前で手を合わせながら、俺の目の前でたおやかに微笑む。

本当に楽しそうな表情を見せる彼女を見て、俺は決意を新たにした。
俺には生きる義務がある。
彼女を守り、支え、そしてすべてを受け継ぐ義務がある。
そのためにも、まだ俺と彼女には時間が必要だ。
だが「別れ」は、今すぐにでも予期せぬ形で俺たちの前に何食わぬ顔で突きつけられるかもしれない。
だからこそ、今のこの時が、少しでも長く続いて欲しい。

そう、願わずにはいられなかった――。
139 ◆JENA/hfgHs :2007/01/10(水) 00:15:39 ID:0p05sl2Y0
明けましておめでとうございました。
第12章、アップにつき投下致します。
自宅プロバイダがまたしてもアク規を喰らっているので
仕事場からの投下です。
いい加減帰りたい……。

年が変わっても相変わらず拙い文章ですが、良ければ読んでやって下さい。

補足です。
文中のデネブ・カイトス(くじら座β星)は、変光星のミラが極大の時には
一番明るい星ではなくなります。
「小さいイエナさん」のミラは極大の状態ではない、と解釈してくだされば幸いです。
140名無しさんだよもん:2007/01/10(水) 02:55:01 ID:ZEhafwCK0
JENA氏乙&GJ!
ゆめみさん、死亡フラグが見え隠れしてるような・・・(´Д`;)

ちょっと台詞が長いかな、とも思ったけど、「時間経過を考慮せず冗長な会話をしてしまう」のが
ゆめみさんなんだよな、ともオモタ。


あと、遅くまでお仕事ご苦労様です。

141やおい:2007/01/10(水) 23:57:50 ID:oRsNrwKEO
乙でした!私もゆめみ先生にご教授願いたいです。

思えば入隊してから随分と星空を見上げるようになりました。
演習場で見る星空にはいつも癒されます…。
142名無しさんだよもん:2007/01/11(木) 21:23:50 ID:Xp1Ek7C/O
>>139
あけおめ!そしてGJ!
ゆめみ先生の授業に出席したいぜ
143『天国での一幕』(1/5):2007/01/11(木) 22:12:16 ID:PqowAr4L0
「・・・ところでさー、『お客さま』」
投影機を磨く手を休め、茜ちゃんが俺に話しかける。
「・・・あのな、何故俺は未だに『お客さま』なんだ?」
恒星電球のチェックをしながら、俺はわざと無愛想に答える。

ゆめみが俺のことを『お客さま』と呼ぶ『癖』は、相変わらず直らない。
『御客 様』が俺の本名だ、とでも思っているんじゃないのか・・・そんな気すらしてくる。
それがプラネタリウムの仲間にも伝染し・・・
今ではすっかり、俺は『お客さま』で通ってしまっている。

「渾名よ渾名。心配しなくても、お客様扱いなんてしないから」
「そうそう。バリバリこき使ってあげるわよ、『お客さま』君」
くすくす笑いと共に、架台の向こう側から里美さんの追い討ちが飛んでくる。
「おいおい、勘弁してくれよ里美さん」
口ではそう言いながらも、俺は意外と悪い気はしなかった。


―ここは、『星の人』の系譜を継いだ者達が集う場所。

人生の長い旅路の果て、俺はここにたどり着き・・・
そして、あいつとの再会を果たした。
俺が、『星の人』の末席に名を連ねるきっかけとなったあいつ。
殺伐とした屑屋稼業の世界から、俺の魂を救い出してくれた、純真無垢なロボットの少女・・・
144『天国での一幕』(2/5):2007/01/11(木) 22:13:33 ID:PqowAr4L0
「それはそれとして、ゆめみちゃんとはその後どーなのよ?」
茜ちゃんの言葉で、話題は『あいつ』の話になった。

「どーなのよ・・・ってのは、どういう意味だ?」
嫌な予感を隠せず、俺は警戒気味に返事を返す。
「わかってるんでしょ?・・・その後進展してるのか、ってコト」

・・・やっぱり来たか。
どうしてこう、女性というのは詮索好きなのだろうか。

「・・・申し訳ないが、あんたの『おっしゃっている』ことの意味がよくわからなかった」
首を右に十五度ほど傾け、ゆめみの真似をして言い返してみる。
「隠さなくてもいいって。ここに来てから、そういうことはなんとなくピピッとわかっちゃうんだから、隠しても無駄よ」
「だったら、聞く必要もないだろ」
「バカねー、こういうのは本人の口から言わせるのが楽しいんじゃない」
「ちょ、あんたらなぁ・・・」
もう何度となく繰り返されたやり取り。・・・だが、俺は未だに顔が赤くなるのを禁じえない。

「ともあれ、よ。ゆめみちゃんは婚約破棄された経験アリの可哀想な娘(こ)なんだから、あんたは振ったりしちゃダメよ?」
「こ、婚約だと!?・・・誰だ、相手は」
「あー焦ってる、かわいー」
「・・・・・・」
何をか況(いわん)やだ。

「・・・現世での話よ。小さな子供と純真なロボットの、お飯事(ままごと)みたいな婚約話・・・」
里美さんが、遠い昔を懐かしく思い出している表情で言った。
「なんだ・・・」
思わず安堵が顔に出てしまい、俺は慌てて表情を引き締める。
それをしっかり見ていた由香ちゃんが、ぷっと噴きだすのが聞こえた。
145『天国での一幕』(3/5):2007/01/11(木) 22:14:34 ID:PqowAr4L0
「まあ、心配することはないでしょう」
操作卓の点検をしていた吾朗さんが、話に割り込んでくる。
「あの頃のゆめみは、純粋に『ロボット』でしたからね。婚約も婚約解消も、命令(コマンド)の一つとしか認識していなかったはずです。傷ついたりはしていないと思いますよ」
「・・・だといいがな・・・」

世界が壊れてしまった、という事実を信じたくないばかりに、自分の『未知のバグ』だと思い込んだゆめみ。
もしも涙を流せたら、きっと泣いていると思う、と言ったゆめみ。

表には出さなかっただけで、本当は傷ついていたんじゃないだろうか・・・

「ま、ここへ来てしまえば、ロボットも人間も同じですからね。
 技術的な制約なんて、望みさえすれば簡単に飛び越えられる。技術屋としては、なんとも複雑な気分ですよ・・・
 ・・・ともあれ、君とゆめみとの間に、今や障害は何もないわけです」
変な『太鼓判』を押され、俺はまたしても返答に窮してしまった。


ガチャッ、という金属の噛み合いが外れる音が響いた。
操作卓横にある、スタッフ専用の扉が開き、
「・・・お客さま?・・・あ、こちらでしたか」
話題の主、ゆめみがひょっこりと顔を出した。

「『説曹操、曹操就到(噂をすれば影がさす)』・・・か」
「あんがい学があるのね、『お客さま』君って」
146『天国での一幕』(4/5):2007/01/11(木) 22:15:17 ID:PqowAr4L0
「お、出たな、名付け親」
「・・・はい?」
首をきっちり右十五度に傾げ、きょとんとした表情のゆめみ。

「申し訳ありませんが、おっしゃっていることの意味がよく・・・」
「ああ、悪い。大したことじゃない」
「そうですか、それならばいいのですが・・・・・・ただ、一つだけ申し添えますと」
「なんだ?」

「わたしはあなたを『お客さま』とお呼びしていますが、スタッフの皆さままでもがあなたを『お客さま』とお呼びするのは、私単体ではどうにもできない問題ですので」
そう言って、いたずらっぽく笑う。

「・・・意味、わかってんじゃねえか」
「ふふっ・・・あ痛」

ゆめみの頭を、軽く拳骨でコツンとやる。
その感触は、チタン合金製の頭部フレームの・・・『安物のロボット』のそれではなかった。
147『天国での一幕』(5/5):2007/01/11(木) 22:16:18 ID:PqowAr4L0
「・・・それで、俺を探していたんじゃなかったのか?」
「ああ、そうでした」
手をポン、と打って、
「ティコ・ブラーエ先生が、わたしたちとお話したいと・・・」
「御大が?」

ティコ・ブラーエ。デンマークの天文学者。1601年10月24日没。

―ここは、天国のプラネタリウム。
『星の人』の系譜を継いだ者達が集い、星の世界を語らう場所。
ニコラウス・コペルニクス、ガリレオ・ガリレイ、安倍晴明。・・・あらゆる天文学の先達者達に会うことができる。

俺達の場合、『星の偉人』達から声がかかることも少なくない。
かたや、人ならざる『星の人』。
かたや、壊れた世界で、たった一人で系譜を繋いだ『星の人』。
彼等から見ても興味津々・・・ということのようだ。

「すまん、ちょっと行ってくる」
俺は作業服を脱ぎ、申し訳程度に髪を撫でつける。
ゆめみは俺の胸元に手を伸ばし、曲がった襟元を正してくれた。

「羨ましい話だね。『星の偉人』達からお声がかかるというのは」
いつの間にか戻ってきていた館長が、そう言って笑った。
「まあ、良し悪しですがね」
そう一言だけ言って、俺達はドームを後にした。


・・・いかに偉人と言えども、人の子である。
あのコペルニクス大先生に、『ところで、君達は愛し合っているのかね?』と聞かれた時は、どう答えたものかと思った・・・
という話が喉まで出かかったが、俺は結局、黙っていることにしたのだった。

- Fin. -
148名無しさんだよもん:2007/01/13(土) 12:02:21 ID:FIyk/XXoO
GJ!屑屋もタジタジだなw
149『星の人〜正装』:2007/01/14(日) 16:52:47 ID:CoMcUEHG0
俺は、いつものようにそれを見つめる。
それは、ゆめみが俺に遺した、星の人の証。

俺は、いつものようにそれを身につける。
それは、ゆめみが俺に遺した、夢の欠片。

俺は、鏡の前に立つ。
身が引き締まると共に、あいつの『思い』を感じる。

俺は、あいつの『思い』を継いで、星の夢を語り続ける。
天国に召される、その時まで。


俺は、控室の扉を開け、ドームへと向かう。
観客の視線が、俺に集まる。




・・・観客が凍り付こうが、涙を流して笑い転げようが、俺は躊躇わない。
ゆめみが遺した、星の人の衣装。
それは、星の夢を語るための正装なのだから。

- Fin. -
------------------------
構想5秒、執筆数分。
あんまり絵にはしたくない、そんな即興SSw
150名無しさんだよもん:2007/01/14(日) 17:22:26 ID:Zp2bqv+40
bimota
151『意外なる再会』(1/3):2007/01/15(月) 00:54:31 ID:uzF70+yL0
「・・・おめでとうございますっ!」
「うわっ!」
突然の閃光に、俺は暗視眼鏡(ゴーグル)をむしり取る。

俺の目の前には、自動人形(ロボット)の少女・・・ゆめみがいた。
詳しくは『planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜』本編にてご確認いただくとして、ここは話を進めよう。

「あなたはちょうど250万人目の・・・えっ?」
そう言いかけたところで、ゆめみは一瞬、その動きを停めた。
意外な人物に出会った・・・というように。

「・・・お客さま・・・もしや・・・・・・」
何かを確かめるように、ゆめみは俺の目をじっと覗き込む。
俺は虚を突かれ、単装擲弾銃(グレネーダー)を向けることすら忘れていた。

『・・・網膜パターン:サンプリング完了。蓄積データベースと照合・・・データベース内のエントリと一致しました』
最初の発声とは違う、淡々とした無機質な声。OSが発するシステムボイスだった。

「やっぱり・・・・・・お客さま、お久しぶりです。・・・まあ、こんなにご立派になられて・・・」
ゆめみは、久しぶりに出会った親戚のような口調で、感慨深げに言った。

「お前・・・俺を、知っているのか?」
ロボットには、知り合いはいないはずだ。

しかしゆめみは、
「はい、よく覚えています」
一点の淀みもなく、そう答えた。
152『意外なる再会』(2/3):2007/01/15(月) 00:55:10 ID:uzF70+yL0
「お客さまが前回、当館にお越しになられたのは、三十一年と百四十三日前でした」
「三十一年前?」
「はい」
・・・俺は、今年で三十二になる。

「お客さまが前回、ご両親と共に当館へお越しになられた時は、まだ赤ちゃんでいらっしゃいました」
・・・ならば、俺が覚えている筈もない。

「よく覚えていたな・・・」
「はい、わたしはロボットですので、覚えておくのは得意なんです。
 ・・・それに、あの日の出来事は、わたしの蓄積データベースに『特に重要な経験』として記録されていますので・・・」

ゆめみは、光学樹脂の瞳をインナーレンズごときゅっと細め、そして続けた。

「その日、お客さまがたが当館プラネタリウムの最終投影にお越しになられた際、あなたのお母さまは急に体調を崩されたのです」
確かに、お袋は身体が強いほうではなかった。
「お父さまは、病院へ連れ添って行かれることになりまして・・・
 それで、わたしが一時、お客さまをお預かりすることになったのです」

・・・何だって?

「わたしの基本データベースには、育児や介護に関するノウハウが一通り登録されていましたし、お客さまも殊の外わたしに懐いてくださいましたので・・・
ちょうど翌日が休館日だったものですから、翌日の夜にお母さまが退院されるまで、わたしがお客さまのお世話をさせていただいたのです」
微弱な電圧によって曲率を変える、という光学樹脂の瞳が、濡れたような光を反射し、まるで潤んでいるかのように見えた。

「・・・そうか・・・俺はよく覚えていないが、世話になったな」
「はい。お役に立てて、わたしもうれしく思います。
 ・・・あの時はわたしも、様々な機能を実行させていただく、いい機会になりました」
「様々な機能?」
「はい。わたしのメンテナンス担当でした、三ケ島吾朗さんの発案もありまして・・・」
153『意外なる再会』(3/3):2007/01/15(月) 00:55:54 ID:uzF70+yL0
老人介護や育児といった、負担の大きい日常活動を補助する目的で開発されたのが、SCRシリーズの原点だった、とゆめみは言う。
ゆめみは業務支援に特化した廉価版の筐体だが、シリーズ共通のメインフレームや基本データベースなど、育児業務に対応しうる基本機能や、機能拡張の余地がそのまま残っていたのだそうだ。
三ケ島氏は、その機能を活用すれば、ゆめみに乳児の俺の面倒を見させることも可能だ、と考えたのだろう。

観客の身に起こりうる、いかなる突発的な事態にも対処できるように、と考えたのか。
それとも、単なる技術的探究心・・・言い換えれば『興味本位』に過ぎなかったのか。
・・・今となっては、彼の真意を知る術はない。

「例えばですね・・・」
ゆめみの頬が、心なしか紅潮しているように見えた。
「まだ乳児でいらっしゃったお客さまには、授乳の必要がありました。
 ・・・ですので、三ケ島さんはサポート部門に連絡を取り、オプションの授乳用パーツ一式を急ぎ取り寄せまして・・・」

・・・ちょっと待て。それはつまり・・・アレか?

「はい。わたしの胸部ユニットに授乳用パーツを組み込みまして、お客さまにはわたしの胸部バルブから、人工母乳(ミルク)をお飲みいただきました。
 とても美味しそうにお飲みいただけて、わたしはとても嬉しく思いまし・・・(もごっ)」


俺は、慌ててゆめみの口を塞いだ。
・・・まさか、こんなところで『一夜の乳母』に会おうとは・・・


- Fin. -

---------------------------------------
何やってんだよ、ゆめみ&吾朗ちゃん。
そして、何書いてんだよ俺。
154名無しさんだよもん:2007/01/15(月) 12:15:04 ID:pZVyripQO
世間には赤ちゃんプレイというものがあってだな



きょぬ〜ゆめみGJ
155名無しさんだよもん:2007/01/15(月) 12:53:08 ID:uWPIS09O0
屑屋
「・・・・・・た、頼むから授乳の話はやめてくれ(ゼイゼイ)」
ゆめみ
「そうですか・・・せっかくの思い出話ですのに残念ですが、かしこまりました」
屑屋
「(・・・ふぅ・・・これ以上、この羞恥プレイには耐えられん・・・)」



ゆめみ
「・・・では、話題を変更いたしまして、
 わたしがお客さまのおしめを替えさせていただいた時の・・・(ターーン)

 ・・・ああっ、お客さまっ!?なぜご自分をお撃ちになられたのですかっ!?お客さま〜〜〜!?」
156名無しさんだよもん:2007/01/15(月) 19:20:36 ID:lLsGveYXO
屑屋……( ´д`)
157名無しさんだよもん:2007/01/16(火) 02:10:42 ID:rZvOJkz50
「……客さま!お客さまっ!!」
「…ぅ…」

「…お客さま!…よかった、お気づきになられたのですね…」
「俺は…どうなったんだ?」
「申し訳ありませんっ!わたしがお客さまのお気持ちも考慮せず昔語りをしたばかりに、このような重大な事態に…」
「いや、俺の方こそ、みっともないところを見せたな」
「そうおっしゃっていただけますと、救われる思いです…ありがとうございます」

「やれやれ…よっこらしょ、っと、」
「あっ、お客さま、ご無理なさってはいけません。お客さまはまだ、新しいお体に慣れておられないのですから…」

「…ゆめみ、今なんて言った?」
「はい、まだ新しいお体に慣れておられないのですから、と申し上げました」
「なんだ、道理で俺の声が変に甲高いと………おい。」
「はい、何でしょうか?」

「この、胸のふくらみはなんだ?」
「はい、決して大きくはございませんが、よくお似合いです」
「そうじゃねえっ!この白魚のような指はなんだ!?」
「はい、わたしと同寸ですので…よろしければお鏡をどうぞ」

「…ま、まさか、俺は……(チラッ)」

「はい、"あなたは"SCR5000Si/FL CapelII…」
「ぎゃあぁあぁあ あ あ あ ぁ ぁ ……」



「…お客さま?…お休みになられたのですね…」
「……(気絶してるんだ、馬鹿っ!)」
158名無しさんだよもん:2007/01/17(水) 09:41:54 ID:YfNKLTzx0
>>98
密造軽油 って言うと、
 重油と灯油を混ぜるのが一番多い方法
 次に多いのが、食用油(ドレッシングなど)や、使った後のテンプラ油を濾過 (ザルなどでテンカスを取る)したものを灯油、または、軽油と混ぜる方法
ですね。

最近、ガソリン(レギュラーオクタン価、ハイオクタン価 とも)には、純度の高い食用アルコールなど(=酒)を混ぜる用になってきたとか。
たとえば、サトウキビやトウモロコシ、果物などで酒を造るそうで。

もしかして、ほしのゆめみさんの飲んだ軽油はテンプラ油混合ですか?
それとも、アルコール混合でしたか?
159名無しさんだよもん:2007/01/17(水) 10:28:23 ID:FdfYyT4L0
>>158
悪酔いした原因=「不純物」が、取りきれなかった天かすだったりしたらワロスw
160名無しさんだよもん:2007/01/17(水) 13:42:13 ID:NcaT79q30
燃料電池をぐぐったら

果物やラード(食用固形油)、角砂糖、食物繊維、などを使う電池がある、または、研究されている、らしい。
たとえば・・・・・
・・・・http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20041220301.html・・・・
・・・・http://www.gastrobots.com/・・・・
ほしの ゆめみ さんも、こういったものを補助動力としてつかう仕様だったら良かったのになぁ。

当然口から入れて、・・・・、排泄も考えないとダメだな。
それから、体内で発酵するので、洗浄装置も必要だし・・・・。
161名無しさんだよもん:2007/01/17(水) 13:45:22 ID:NcaT79q30
即興

ゆ「お客様 洗面所とトイレに行って参りますぅ。」
屑「 ダ ・ メ 」
ゆ「そんなぁ、これ以上我慢できませんよぉ。」
ゆ「それに、歯磨きと、ある程度の水を飲まないと、息が臭くなっていましますぅ。」
屑「 ダ ・ メ 」
ゆ「そんなぁ。ゆめみ、こわれてしまいますぅ」
屑「しょうがないなぁ。この箱の中に出しておけ」
ゆ「恥かしいですし、においが・・・・・。人として屑ですよ、お客様」

屑「ここを、ドコだと認識してる?」
ゆ「え?」
屑「まさか、デパートや一般の住宅にいると思ってないな?一体、このテントの外に何がある?」

移動興行中に野宿してる二人ですた。

この設定、>>98 と >>118-121 で使えるなぁ。
>>118の場合は
ゆ「恥かしいですし、においが・・・・・。人として屑ですよ、お客様」
では、なくて
ゆ「恥かしいですし、においが・・・・・。人として屑ですよ、社長」
だろうか?

また
屑「まさか、デパートや一般の住宅にいると思ってないな?一体、このテントの外に何がある?」
では、なくて
屑「まさか、保育施設や一般の住宅にいると思ってないな?一体、このテントの外に何がある?」
だろうな。

「孤児院」は、放送や一般小説などでは使えない。です。
162名無しさんだよもん:2007/01/17(水) 13:54:56 ID:NcaT79q30
そういえば、ロボっ娘ゆめみ、あの制服だけど、洗濯などしてるのか?
私服や寝間着はどういうのだ?

人間の星野ゆめみの服や下着、寝間着などはどういうものなのか?
163名無しさんだよもん:2007/01/17(水) 15:03:10 ID:7GJdYTyR0
ロボゆめみ:
・私服や寝巻きは存在しない。仕事一筋、客席か充電クレードルで眠る。
・老廃物が出なくても汚れるので、制服は洗い替え用として数着ある。
・なぜか制服のデザインは微妙に違う。(本編/小説表紙/ドラマCD)
・休館日に清掃業務等を行う場合、作業服等は別にあるかもしれない。
・特別投影の場合、レンタル衣装でコスプレぐらいはするかもしれない。
・メンテナンス時はアンダーウェア姿に。形状はスク水に酷似(公式設定?)。

星野ゆめみ:
・私服は地味系。もっとも、あの世界ではおしゃれの余地はほとんどない。
・制服はロボゆめみと同じ。星の人の正装だと思ってる。外部電源で発光。
・寝巻きはパジャマ。気温が下がっているので、屑屋と背中合わせで同衾。
164名無しさんだよもん:2007/01/17(水) 15:23:05 ID:ulwV0i6a0
>>163

プラネタリウムの仲間が、休館日にロボゆめみを外へ連れ出す、というのを妄想した。
由香ちゃんの私服とか着せられて。

花菱デパートから3km以上離れられないはずだが・・・その辺は五朗ちゃんがうまくやるのかな。
165名無しさんだよもん:2007/01/18(木) 00:07:50 ID:MKPffdw70
>>163
>制服はロボゆめみと同じ。

Keyの壁紙2枚や、ゲームでの「ロボっ娘ゆめみ」の雰囲気からの推定では
外観15歳程度という設定なので
背丈は、140〜150cmと思われますが。
そうしますと、膝丈スカートですから、丈は50cm位で、
スカートのスリットは、股上10cm位=スカートの腰ベルト位置から15cm位と思われます。

現実問題、スリットからぱんつ見えちゃいますよぉ!
166名無しさんだよもん:2007/01/18(木) 00:10:26 ID:ISJoeaVJ0
>>165

星野ゆめみ
「これは星の人の制服です!えっちな目で見てはいけません!めっ!」

屑屋
「ある意味男らしいな・・・ゆめみ」
167名無しさんだよもん:2007/01/18(木) 11:43:26 ID:sGiocOM/0
>>165
それなら、コツエー氏の他の絵を持ってくると・・・・
 http://www.alpha-net.ne.jp/users2/co2a/
などからのリンク先などですけどね、もっと長いスリットの絵が有るんです。
その10cm、15cmを信じると、20cm5cm位の。

あと、お尻側の絵が見当たらないのですけど、どなたか、見た人います?
スカートは5スリットで出来ている感じなのですが、どうでしょう?
それとそのスリットの深さとかも知りたいところ
168名無しさんだよもん:2007/01/18(木) 12:03:00 ID:yBo/GX/N0
>>167
お尻側は二分割。つまり、スリットが大胆にお尻の割れ目に向かって・・・

星野ゆめみ
「ほ、星の人の正装ですっっ!」
屑屋
「心配するな。うまく微妙なところで隠してくれるさ」

星野ゆめみ
「・・・どなたがですか?」
屑屋
「さぁ?」
169名無しさんだよもん:2007/01/18(木) 12:06:42 ID:yBo/GX/N0
ちなみに、本編のイベント絵で、シオマネキの前に立つゆめみの後ろ姿(全景)がある。
170名無しさんだよもん:2007/01/18(木) 14:08:59 ID:lO5ZUcYZ0
っていうか、前面と同じ深さと形状だとしたら尾?骨よりも腰より(つまり頭のほう)の位地までスリットが有るし、上が菱形に大きく開いてるので、ぱんつはいていると、布が見えちゃうし、ぱんつはいてないと割れ目が見えちゃう。
軽く固めの布であれば良いのですが、柔らかく、薄い布、または重い布の場合。。。。。
お辞儀した時には確実に。


で、此処で質問するのも無粋ですが
屑屋って、
慎重に(?)行動して、生きながらえて、この娯楽施設に入ってきて。

「ほしのゆめみ」に渡された「花束」を無造作に捨ててますが、偽装爆弾だと思わなかったんですかね?
この場合、受け取って一定時間後に爆発するとか、床に落とした衝撃で爆発するとか。

「イエナさん」と紹介された時には、過剰反応をしてるのに、熟睡、いえ爆睡すると言う緊張感の無さ。
あの「イエナさん」と「ほしのゆめみ」が実は罠だとは思わないのですかね?
座り心地、いえ寝心地の良い椅子に座らせ、ある意味武装解除させてるんですから。
イエナさんが動いたとたん、花束爆弾とイエナさんが爆発するとか?

物語上の前提条件なのでしょう、けど、この辺、屑屋は詰めが甘い気がします。
いえ、ほしのゆめみに甘甘と言いますか。
171名無しさんだよもん:2007/01/18(木) 14:22:54 ID:lO5ZUcYZ0
びていこつ
が旨く変換されて無いですね
「尾?骨」は「びていこつ」です。
背骨から繋がっている、お尻の割れ目の近くにある骨
シッポの位置にあるもの。


って解説してどうする。
172名無しさんだよもん:2007/01/18(木) 15:35:07 ID:ea6pSWQI0
>>170

まず、後ろについては本編を参照いただければ一目瞭然かと。
帰宅次第確認してみる。

次に、屑屋の脇の甘さについては、こう考えてはいかがかな。
「屑屋は、ゆめみに逢った時点で屑屋ではなくなってしまった」
言い換えれば、
「ゆめみに出会い、人間の心を取り戻したことで、彼は屑屋ではいられなくなった」
と。


・・・その辺を踏まえ、「星の人/系譜」を読むと、

「俺は"星屋"だ」

という彼の言葉に重みが増したり。
173『ゆめみと非常用電源』(1/3):2007/01/18(木) 20:59:41 ID:ISJoeaVJ0
「……バッテリー切れ……かあ」
車止めに腰掛け、微笑を浮かべたまま動かなくなってしまった彼女を見つめ、溜息ひとつ。

ここは、大通りから一歩入ったところにある小さな公園。
花菱デパートからちょうど三キロ。業務支援機である彼女の、行動範囲制限ギリギリのところ。

彼女は、私たちのプラネタリウムのロボット解説員。SCR5000Si/FL CapelII……ほしのゆめみ。
ちょっと目を離すと、職場を放棄してうろつきまわるポンコツ社員。
彼女を追っていたら、こんなところまで来てしまった。

……そういえば、少し前にもこんなことがあった。
十年前。私たちのプラネタリウムへよく来ていた少年と、彼女が交わしたちいさな約束。
私たちにも秘密にしていた、その約束を果たすため、彼女は無断外出を繰り返した。

でも、あの時の『約束』は、もう無効になったはず……
……ならば、今彼女を突き動かしているものは、何なのだろう?

「……ふうっ」
もういちど溜息。そんな私の気持ちも知らず、ゆめみちゃんは微笑んだまま硬直している。
「迎えの車、呼ばなきゃ…… あ、そうだ」

『ゆめみのポケットに、予備の電池が入っています。それを使えば、二時間前後は稼働が可能です』
吾朗くんの…ゆめみちゃんのメンテナンスを担当している、同僚の三ケ島吾朗くんの言葉を思い出す。

ゆめみちゃんのスカートにあるポケットに手を入れる。……まさぐる指に、硬いものが触れた。
174『ゆめみと非常用電源』(2/3):2007/01/18(木) 21:00:16 ID:ISJoeaVJ0
それは、小さな電池パックだった。
彼女の首筋にある充電端子にぴったり合う、小さな白いコネクタ。
その下には、透明なケースがついている。
ケースの中には……オキシライド単三乾電池が四本。


「これね……って、ちょっと待てーぃ!」
思わず反射的に叫びながら、手の甲をゆめみちゃんの脇腹へピシャリ。

……周囲の視線と、くすくす笑いが痛い。

「……いくらなんでも、こんなもので動くわけないじゃない……」
またひとつ、大きく溜息。

ふと、その時の吾朗くんの顔が脳裏に浮かぶ。……真顔、だったわよね。

「……思考ぐらいは、回復できるのかな?」
電池パックのコネクタを、ゆめみちゃんの充電端子に繋ぐ。
小さく「ピポッ」という起動音がした。……が、それっきり何も起こらない。

「……やっぱり、ダメじゃない……」
ダメで元々、とは思っていたが……一瞬でもこんなものに期待した自分が、我ながら情けなくなってくる。

「……さて、車を呼ぼうかしらね」
肩をすくめ、周囲を見回す。

「お車ですか?私が呼んでまいりますね」
「そう、お願いね、ゆめみちゃ……ってえぇぇえええ!?」

ゆめみちゃんは、すたすたと元気良く大通りへと歩いていった……
175『ゆめみと非常用電源』(3/3):2007/01/18(木) 21:02:17 ID:ISJoeaVJ0
「ただいま戻りました」
「ああ、お帰り、ゆめみ。倉橋さん、ご苦労様です」
旧式の平面モニターから目を離し、椅子を軋ませながらこちらを振り向いて、吾朗くんが大きく伸びをする。

「追跡(トレース)してたでしょ?この子ったらまた行動半径いっぱいまで……
 まったく、いったいどうしちゃったの?ゆめみちゃん」
「簡易自己診断プログラムを実行しました。わたしの全機能は正常に動作しています」
ゆめみちゃんが、にこにこと説得力皆無の太鼓判を押す。
「……どこが正常なのよ…… ねぇ、吾朗くん。どうして職場放棄が再発しちゃったのかしら?」

「いいえ、今回のわたしの行動は、職場放棄ではありません」
ゆめみちゃんから、予想外の答えが返ってきた。

「……は?」

その後のゆめみちゃんの言葉を、わたしは当分忘れられないと思う。
彼女は笑顔を絶やさず、わたしにこう言った。


「つまり、手の込んだ冗談です」


「……な……な、な………」
呆気にとられ、何も言えなくなったわたしの向こうで、館長はじめプラネタリウムの皆がニヤニヤと笑っているのが見えた。

……や、やられた………


- Fin. -
176名無しさんだよもん:2007/01/20(土) 10:41:44 ID:1fNWetUDO
GJ!冗談をいうゆめみって想像し辛いな
177名無しさんだよもん:2007/01/20(土) 11:18:49 ID:KaKRxy/w0
この話のゆめみが本編準拠だとすると、彼女自身は冗談という意味すら理解していないと思われ。

ゆめみは単に、館員のみんなに利用(悪用?)されただけだったりして。
優先命令をうまく使って、館員(おそらく吾朗ちゃん)が仕掛けたと。

178名無しさんだよもん:2007/01/20(土) 11:20:45 ID:KaKRxy/w0
つかむしろ、里美さんがボケツッコミを使いこなすとは思いもよらなかったぜw
179名無しさんだよもん:2007/01/21(日) 15:50:42 ID:cQQYJCIh0
>>84-86

つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20070121154947.jpg



勝手に挿絵スマソ>やおい氏
180名無しさんだよもん:2007/01/21(日) 19:26:57 ID:Ea1ak+vD0
>>179
GJ!! しかし、スカートのスリットが仮止めしてあるのはry
181やおい:2007/01/21(日) 21:37:26 ID:0QSrnY20O
>>179
悪禁につき携帯カキコ

挿し絵ありがとうございます!
ふと自分の文章と挿し絵を見て思いましたが、屑屋は青年=20歳ぐらい。
対するは『ゆめみちゃん1○歳』なんだよな…orz
182名無しさんだよもん:2007/01/21(日) 21:49:31 ID:cQQYJCIh0
思い切り無理して(ちょっとサバ読んで)、20歳x16歳。
このぐらいなら、大丈夫なんでわないかと。

・・・たとえば、エロゲの世界では見た目ようじょでも18歳(以下略



あと、仮止めではなく、でっかい安全ピンをワンポイント(飾り)にした巻きスカートですのんorz
183179:2007/01/21(日) 22:44:15 ID:cQQYJCIh0
・・・

つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20070121224215.jpg

ゆめみと屑屋の腕の位置関係が、四次元状態になってたので差し替え。orz

184名無しさんだよもん:2007/01/22(月) 00:40:36 ID:OhPOhKxhO
2人ともとっても幸せそうですっ!
屑屋がライダージャケット着てるように見えるのは気のせい?

ゆめみちゃんは胸あるなあw
185名無しさんだよもん:2007/01/22(月) 00:50:52 ID:2vieFUB80
屑屋
「・・・なあ、ゆめみ」
ゆめみ
「はい?」

屑屋
「・・・胸、当たってないか?」
ゆめみ
「あててんのよ、です♪」
186名無しさんだよもん:2007/01/22(月) 09:36:46 ID:Tj59CMLq0
>>184

いや、ライダージャケットそのものジャマイカ?これは。
大型バイクに二ケツで、信州あたりに星を見にいく。
187名無しさんだよもん:2007/01/22(月) 12:17:28 ID:FcSIj3XH0
あ〜?
ゆめみさんは、多分見た目
10代後半の平均的体型をしている、低身長の・・・
あー、いや、屑屋さんの言い回しだと15歳くらい?

現実の話として、西暦1998年の日本女性の場合、成人でも背丈140cm位の人も少なくありませんし。
h ttp://www.jisc.go.jp/newstopics/1998/jisl4004.htm
h ttp://www.jisc.go.jp/newstopics/1998/jisl4005.htm
ああ、学生さんですか?
このページで
L4003、を検索してください。
下着がL4006、靴下がL4007で・・・

は、置いておいて。
見た目がどうであっても、実年齢が18歳以上なら問題ありません。

188名無しさんだよもん:2007/01/22(月) 19:31:49 ID:SChNl9/T0
『しあわせなほしのゆめ』の二人は、どこで出会ったんかな。

屑屋がひょんなことからプラネタリウムのタダ券を手に入れて、
星には興味ないが、もったいないのでぶらりと見に来て、
そこでゆめみが大ドジやらかして、
たまたまそばに居た屑屋がフォローして、
それを知った茜ちゃんあたりにそそのかされて、
お礼にゆめみから屑屋を食事かなんかに誘って、
そこでまたドジやらかして・・・・・・

・・・むう、幻想世界でこーゆーコトを妄想するのはヤボかもしれんな。
189名無しさんだよもん:2007/01/22(月) 21:54:18 ID:2vieFUB80
で、屑屋のプロポーズ受ける時にドジやらかして、
結婚式でドジやらかして、
新婚旅行先でドジやらかして、
産院でドジやらかして、
公園デビューでドジやらかして、
幼稚園のおゆうぎ会でドジやらかして、
小学校の授業参観でドジやらかして、
中学校の体育祭でドジやらかして、
高校の文化祭でドジやらかして、
大学の入学式でドジやらかして、
娘の彼氏が結婚の申し込みに来た時にドジやらかして、
屑屋の定年記念パーティーでドジやらかして、
縁側で日向ぼっこしながらドジやらかして、
屑屋を看取る時にドジやらかして、
今わの際にドジやらかして、


屑屋と同じ天国でドジやらかす。
190やおい:2007/01/23(火) 00:00:35 ID:G05CRT1RO
泣いた
191替え歌『星めぐり』(1/3):2007/01/23(火) 12:08:12 ID:kH7af1Hg0
それはまだ わたしが天国はひとつと知らない頃
十年ほど前から延々と雨が降りまして
そろそろお客さまのお一方も 現れないかと
思ったところへあの方が 雨やどり

「なんだお前は」というそのお方は武装をしていらして
コートのポケットには防水ケースがありまして
250万人目とサバ読み 手作りの花束
差し上げたけど割引券のが良かったかしら

けれど久しぶりのお客さまでしたので
そこは「嘘も方便」と言われることですし
もしも もしも 出来ることでしたれば
ぜひ特別投影をご覧くださいませませ
192替え歌『星めぐり』(2/3):2007/01/23(火) 12:09:43 ID:kH7af1Hg0
ところが実に年月というのは非情なものでして
信号を送ってもイエナさんは動いてくれませんし
申し訳ございませんと詫びればわたしの頚椎ユニットが「ジジジ…」
イエナさんは直せても わたしは無理なのかしら

こんな美しい星空などこの世界にありえないと
お客さまはなかなかに訝しまれるお方でしたけど
それでも特別投影が突然 停電で切れた時は
「見えるから続けろ」と わたしに声かけた

ご病気らしいお客さまの介護が必要と判断して
お車のところまでお送りすることにいたしまして
街外れまで来たら目の前に 白い自走砲台がのそり
停めようとしたけれども やっぱり撃たれた

もう電池が持たないと感じましたので
ここはいまわの際にまた 神頼み
もしも もしも 出来ることでしたれば
天国を二つにわけないでくださいませませ
193替え歌『星めぐり』(3/3):2007/01/23(火) 12:11:13 ID:kH7af1Hg0
そこから先は機能停止してたからよくわからないけど
目が覚めたら天国のプラネタリウムに来ておりまして
あのお客さまと再会したらば 涙止まらなくなって


今では あの方と二人で 星めぐり


-----------------------------------------------
 ※元ネタ:さだまさし『雨やどり』(ttp://www.cai-insect.jp/sada/)
194名無しさんだよもん:2007/01/23(火) 13:28:49 ID:jL/5KW7B0
えーと
この刹那さは「もう一つの 雨やどり」ですね。
「雨やどり」ではなくて。もちろん「雨どりや」でもありません。

つまり「雨宿り」は、同じ風景を多数の方向から見た作品です。


195193:2007/01/23(火) 13:43:22 ID:D/JVY0NN0
>>194

そういえば、「もう一つの・・・」てのもあったっけ。あとで見とこう。
元にした歌詞は「雨やどり」のほうだよもん。
196名無しさんだよもん:2007/01/23(火) 14:51:53 ID:jL/5KW7B0
あ、いえ、歌詞が違うだけですから。曲は大体同じです。
197名無しさんだよもん:2007/01/23(火) 22:26:06 ID:0v5pd+tI0
曲は元々どれも似たようなもんじゃん。
198名無しさんだよもん:2007/01/24(水) 07:44:32 ID:C52DDBBGO
さだまさし?
199名無しさんだよもん:2007/01/24(水) 08:12:44 ID:AycTDwdc0
>>198

ゆめみ
「はい、まっさんです」
200名無しさんだよもん:2007/01/24(水) 11:51:52 ID:Xpj+I/m60
妙に昭和臭のするスレだな、ここはwww
201名無しさんだよもん:2007/01/24(水) 12:09:03 ID:XparmxXe0
ほしのゆめみ初回限定版は、ぱんつはいてない。
202名無しさんだよもん:2007/01/24(水) 12:10:19 ID:XparmxXe0
ほしのゆめみ初号機は、490円のところ、
特別定価、170円。
203名無しさんだよもん:2007/01/24(水) 12:36:35 ID:2ASr9ghG0
>>201

あとでセキュリティパッチ(=ぱんつ)が提供されるが、誰も適用しない。
204名無しさんだよもん:2007/01/24(水) 14:53:29 ID:oeBLD//n0
っていうか、この話はいつの時代の話?

1、ほしのゆめみさんが1960年から2010年くらいの情報を知っているとは思えない。

2、ぱんつという下着が、一般的に使われているどうかわからない。
    もしかしたら、ぱんつはいていない のが常識の時代かも。
 ロボットというか、人間型で人間の代わりになる機械では。

などなど、妄想してみる。
一般人でも、もしかしたら、西暦2007年の日本とは常識が違うかも
205名無しさんだよもん:2007/01/24(水) 17:07:40 ID:2ASr9ghG0
>>204
たしか、2030〜40年に戦争があって、そこから30年、だったかと。
#うろ覚えスマソ。今手元に資料ないんでどうにもorz


「ぱ ん つ は い て な い」については、関連スレにこんなレスが。
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1169189621/27
・・・とはいえ、「ぱ ん つ は い て な い」に見えるのはこつえー氏の
デフォルメ表現ゆえであって、実際にはちゃんとはいてるのかもしれん。
(ゆめみさんにはスクみz・・・もとい、アンダーウェアの設定もあるし)
気にするだけヤボなのかもしれんね。
206Binary 第13章『Mother』(1):2007/01/24(水) 22:08:09 ID:WPtW+M6F0
いつもは静かなエアドームに響く、喧騒。

「お姉ちゃん、このきれいな星、なんていうの?」
「この渦巻きみたいなのはなあに?何でこんな形してるの?」
「ゆめみお姉ちゃん、星って何で赤かったり青かったりするの?」
子どもたちが本や雑誌を切り抜いて作った様々な星座や星雲が写った手製のパネルを手に、矢継ぎ早に質問を繰り出してくる。
「はい、それはですね……」
一つ一つの質問に、うれしそうに反応しながら丁寧にわかりやすく答える彼女。

そんな彼女と子どもたちのやりとりを尻目に、俺はドームの隅にいる。
俺の傍らには、疲れてしまったのだろうか5歳位の男の子と女の子が一人ずつ、軍払い下げの毛布に仲良くくるまって気持ちよさそうに寝息を立てている。

星のことを質問されたら、俺の出る幕はまだない。
俺だって、いまだ勉強中の身。
それに子どもたちの相手をするなら、俺よりもやはりコンパニオンロボットである彼女の方が一枚も二枚も上手だし、そもそも子どもたちも彼女との会話を楽しみに集まってきているのだ。
今や全くの門外漢と化した今の俺に出来ることは、こうやって彼女と戯れるのに疲れた子どもを寝かしつけてやる事くらいだ。
「……」
いつも以上に生き生きとした表情で子どもたちと相対している彼女と、楽しそうに彼女と会話を交わす子どもたちを交互に眺める。
自らに与えられた職分や使命とは関係なく、星の話をするのが楽しいのだろう。
そして人と、何より子どもたちと触れ合うことが本当に楽しいのだろう。
207Binary 第13章『Mother』(2):2007/01/24(水) 22:09:24 ID:WPtW+M6F0
今日は休日。投影は休みだ。
だが俺たちの逗留している家のエアドームには、今日も10人ほどの子どもたちが集まってきている。
今日は投影をしないことは、ここに来ている子どもたち全員が分かっている。
昨日の最終投影終了後、俺の口から直接言っているのだから。
だが、分かっているからこそ来ているのだろう。
ここのところ、休日はずっとこんな感じだ。
子供たちが彼女を慕って押しかけ、彼女は嬉々として一日中子供たちの相手をし、俺はそれを黙って見守る。
今日こそは俺の勉強と投影機のメンテナンス、それに彼女のメンテナンスに充てるつもりでいた。
が、今の様子から察するに、おそらく子どもたちは今日も夕方までここにいることだろう。
深夜、睡魔と闘いながら彼女と「小さいイエナさん」に向き合う自分の姿が目に浮かぶ。
だが、その事で俺が子供たちを責めることはない。
ドームの中央で言葉をかわし合う子どもたちと彼女を見ていると、不思議と「それでもいいか」という気分になる。
そんなことを思いながら、俺は自分が驚くほど自然に笑みを漏らしているのを感じた。
自分で言うのも何だが、俺自身、本当にここ数年で人間らしく感情を素直に表に出せるようになったと思う。
「明日の投影中に、居眠りをしないように注意しないとな……」
穏やかな気持ちと表情を隠そうともしないで、俺は一人でつぶやいた。
208Binary 第13章『Mother』(3):2007/01/24(水) 22:11:31 ID:WPtW+M6F0
「はい、それでは他には何かありますでしょうか?」
子供たちを周囲に座らせ、自らはドームの中央に正座を崩した格好で座った彼女が子供たちに向かって問いを掛ける。
「……はい」
一人のおとなしそうな少女が控えめに手を挙げる。
俺が幼いころに大人たちから伝え聞いた「学校」というところは、もしかしたらこんな感じのところだったのだろうか。
ふとそんなことを考える。
「はい、なんでしょう?」
彼女はドームのフロアに座ったそのままの姿勢を維持しつつ、その視線を少女に向けた。
彼女より少しだけ年下に見えるその少女の口が開く。
「わたし、ここで星空を初めて見たとき、なんだかすごく懐かしかった。想像していたより綺麗だったのはもちろんだけど、それ以上に
懐かしい思いで星を見ていたの。まるでずっと昔から、あの星のことを知っていたかのように。ゆめみさん、わたし、どうしてそう思ったんだろう?」

その質問に、反射的に俺の意識もそちらに向いた。
俺自身、あの時からずっと疑問に感じていたことだったからだ。

「……星空、ひいては宇宙を眺めたとき、人間の皆さまはとても懐かしい気持ちになられるといいます。わたし自身はロボットですので人間の皆さまとまったく同じというわけではありませんが、それでもなんとなくですが理解することは出来ます」
母親の声のように、聞くものの内面に染み入る穏やかな声のトーン。
子供たちは皆、彼女の言葉を聞き漏らすまいと聞き耳を立てる。
「実はわたしが昔、プラネタリウムに配属されてすぐの頃、まったく同じ質問を投影終了後にちょうどあなたくらいの女の子のお客様からされたことがあるんです。ですが、その時のわたしはその質問にきちんとお答えすることが出来ませんでした」
209Binary 第13章『Mother』(4):2007/01/24(水) 22:14:24 ID:WPtW+M6F0
「ゆめみお姉ちゃんにも、わからないことがあるの?」
質問した少女とは別の少女が、大きな目をくりくりさせながら聞いてくる。
「はい。わたしの基本データベースには、大戦前の天文学に関する情報がほぼすべて登録されています。ですが、それだけではお答えできないこともやはりたくさんあるんです。
その時のわたしはまだ配属されて間もないころでしたので、蓄積データベースへの「経験」の蓄積がほとんどありませんでした。皆さんに例えれば、お勉強が少し足りなかった、ということになるでしょうか」
少し恥ずかしそうな表情を見せながら、悪びれることなく自分の過去の出来事を子供たちに聞かせる。
「このときはどうしたの?」
「はい、わたしのことを見かねた館長さんがわたしの代わりに答えてくださいました」
「どういうふうに言っていたの?」
「館長さんは『それはきっと、私達が宇宙から来たからだよ』と、言っておられました」
自身の胸に両の手を当てて、少しうつむきながら懐かしむように語る。
「どういうこと?」
彼女の正面に陣取っていた少年が首をひねりながら声を上げる。
「それはこれからご説明いたしますね」
そう言うと、彼女は胸に当てていた両手を自分の前の空間に差し出した。
まるで見えない何かをやんわりと支えるかのように。
「……」
その姿勢のまま瞼を薄く閉じる。
それに呼応するかのように、彼女の左耳に内蔵されたホロスナップ映像装置が決して明るくないドーム内で極彩色の光を放つ。
彼女の差し出した手のひらの上で光が絡み合い、一つの像が結ばれてゆく。
「わあ……」
子供たちの驚嘆の声とため息とが一斉にドーム内に響く。
210Binary 第13章『Mother』(5):2007/01/24(水) 22:16:27 ID:WPtW+M6F0
その像はそう時を置かず、明確な輪郭を露にする。
白、青、緑と茶色が複雑に入り混じった透明感ある球体。
我々の揺りかごであり、人類が搭乗する史上最大の宇宙船でもある奇跡の天体。
その映像を胸元に収め静かにたたずむ彼女の姿は、さながら地上に降り立った古の女神のようだ。

「これが何か、皆さんはご存じですか?」
「地球!」
あちこちから、間髪おかずに回答が飛んでくる。
「そう、地球です。太古の昔より現在に至るまで、生命の存在が確認されているこの宇宙で唯一の惑星、わたしたちの地球の姿です」
穏やかな笑みを湛えるその表情から紡ぎ出される言葉。
まるで本当に女神からの言葉を聞いているかのような錯覚にとらわれる。
「この地球は、実は昔からこのような姿だったわけではありません。約46億年という、わたしたちには途方もなく感じられる時間を掛けて、ゆっくりとこのような水と空気と生命に満ちた惑星になっていったのです……」
「……」
普段の投影の時のように静寂に包まれたドームの中に、彼女の澄んだ言葉が満ちていく……。

「もともと、宇宙には『水素』と『ヘリウム』という2つの物質しかありませんでした。その2つの物質が寄り集まって最初のころの星は出来ていたとざれています。
そういった星たちが内部で起こす反応によってヘリウムから『炭素』が作られ、さらに『酸素』や『鉄』などの重い物質が出来たといわれています」
深遠なる宇宙の始まりの頃。
誰も見たことのない、見る事の出来なかった世界。
だが人類の飽く事なき想像力と好奇心は、創世時の宇宙にまでメスを入れている。
人類の人類たる所以のひとつだろう、と漠然と考える。
211Binary 第13章『Mother』(6):2007/01/24(水) 22:19:15 ID:WPtW+M6F0
「やがて年月がたち、そういった星たちは自らの寿命を終えて爆発してしまいました。ですが、その時のとても巨大なエネルギーによってまた新たな物質が作られ、それが星の爆発によって宇宙空間に撒き散らされました。
宇宙のあちこちでこのような星の誕生と爆発が繰り返されたんです。
これらのガスやちりや小惑星が寄り集まって、この地球を含みます太陽系の惑星が出来たといわれています。それがおよそ46億年前のことです」
新たなる物質を作り出すほどのエネルギーの発現。
熱核爆弾のもたらすエネルギーなど、人類や地球には脅威でも宇宙から見れば赤子が泣く程度のものなのだろう。
こういったスケールの大きい話を聞いていると、改めて人類の矮小さを思い知る。
「地球が誕生してからも、宇宙からは隕石などによって新たな物質が届けられました。地球自身の力、そして太陽や月などのほかの惑星の力でも、新しい物質は作られました。
そしていろんな奇跡とも言える条件が重なって地球には生命が誕生し、人間の皆さんやわたしが生まれました。わたしたちの体は、そういった意味で星と同じ材料で出来ているんです。例えれば、皆さんはみんな「星の王子さま」であり「星の王女さま」なんです。
わたし自身も「星の王女さま」なのかなと考えますと、何となくうれしいです」
そう言って、悪戯っぽく笑う。
「地球は人類の母なる星です。そして宇宙は、その地球の母といえます。空を見上げて宇宙や星を眺めたときに言い知れない懐かしさを感じるのは、人間の皆さんが自分の生まれた「起源」を見ているからだよ、と館長さんはそのときおっしゃいました」
212Binary 第13章『Mother』(7):2007/01/24(水) 22:21:10 ID:WPtW+M6F0
「……」
すっかり静まり返ったドーム。
子供たちは皆集中したような、呆けたような表情で彼女の話に聞き入っていた。
それぞれの脳裏に、それぞれの思い描いた宇宙を写し出し、それを彼女の話に重ねているのだろう。
「わたしの話が正解かどうかはわかりません。他にもいろいろな説があります。ですが正解かどうかは別としまして、とても夢のあるお話だとわたしは思います。
皆さんはどう感じましたか?」
話し終えた彼女が、子供たちを現実に引き戻すかのように問いかける。
その手の上にあった母なる星は、いつの間にか消えていた。
「……」
一瞬の間。
パチパチパチ……
小さな手たちが精一杯の拍手の音を立てる。
「……とっても素敵な話だった。わたし、もっと星のことが、宇宙のことが好きになったような気がする」
質問した少女が拍手の中、彼女に向かってそう言う。
「ありがとうございます。そう言っていただけますと、わたしはとてもうれしいです」
その顔に満面の笑みを浮かべ、彼女は少女や子供たちに向かって頭を下げた。

俺たちのやっていること。
そして彼女の語る「夢」、と「想い」。
いろいろ辛いこともある。
苦い経験も数知れない。
だが、今俺の目の前に広がる光景があるからこそ、彼女も俺もここまで来られた。
そして、これからも進んでゆくことが出来る。
俺たちのしていることは、本当に些細なことだ。
それでも、決して無為なことではないと確信できる。

人間が人間らしくあるために。
そして、彼女が彼女らしくあるために――。
213 ◆JENA/hfgHs :2007/01/24(水) 22:31:40 ID:WPtW+M6F0
久しぶりのお目汚し、失礼いたします。
第13章、アップにつき投下致します。

この連作SSに「Binary」というタイトルをつけたときから書きたかったもののひとつ。
それは、ゆめみさんと人間(屑屋以外)の触れ合いでした。
ゲーム本編では全く触れられず、『雪圏球』で垣間見えるだけの光景。
やはり、ゆめみさんは人の営みの中にいてこそ輝くと思います。
そう考えて書き始めたものの、やはり技量が伴わず。
思っていたことの半分も書けませんでした。
やっぱりSSは難しい……。

こんな文章ですが、良ければ読んでやってください。

参考文献:VISIBLE宇宙大全(藤井旭著:作品社刊)
214名無しさんだよもん:2007/01/24(水) 22:40:46 ID:yDYF7Fnv0
>>213
投下乙

楽しませてもらっている
暇あったら書いた続きまた読ませてくれ
215名無しさんだよもん:2007/01/24(水) 22:46:34 ID:+Ps06kC/0
GJっす!
最近見かけないから心配してましたぜ。
216名無しさんだよもん:2007/01/24(水) 23:13:17 ID:j9JQwUoI0
ありがとう御座います。

ただ残念なのは、お話が、わたしは、内容が、難しかったです。
子ども達にわかってもらうお話は、判り易くおはなしをするのは、結構難しいですね。

私は、月刊「子供の科学」で星の世界に導かれ、「天文ガイド」がすきです。
そして今、ほしのゆめみ という解説委員の話に出会いました。

その「子供の科学」でお話を書いて下さっている、学校の先生や、科学館の解説委員の皆様の、ご苦労は、このSSでいかに大変かわかりました。


「誠文堂新光社」
ttp://www.seibundo.net/
「科学教材社」
ttp://www.kagakukyozaisha.co.jp/
217名無しさんだよもん:2007/01/25(木) 02:45:27 ID:ffpLc1Wz0
ゆっくりと、拝読させて頂きました。
月並みですが、途中からこの曲(「美しい星」新居昭乃)を聴きながら読みました。

今夜は星が綺麗です…。
ありがとうございました。これからも期待しております。
218名無しさんだよもん:2007/01/25(木) 09:31:29 ID:ku/9pvXO0
SSを読む時のお勧めBGMって何かある?

俺は「ホームスターポータブル」から録音したBGMとか聴いてる。
本編とは少々イメージが違うけど、ちょっと違った世界を描いてる
SSには合う希ガス。
219名無しさんだよもん:2007/01/25(木) 17:48:25 ID:yDUaH99Y0
>>218
基本は脳内でプラネのOSTを再生しながら読む。
読み返す時には実際に再生する事もあり。

他に合いそうだな、と感じたのは加賀谷玲氏の『銀河鉄道の夜』のサウンドトラックCD。
幻想的で透明感あるメロディで、内容によっては合いそうな気がする。
さすがはプラネタリウム番組の音楽w
但し、サントラがDVD-BOX特典で現在一般販売してないのが唯一最大のネック。
220『星空混乱(スターフュージョン)』:2007/01/25(木) 22:15:41 ID:piGo8ija0
来館歓迎 記念投影 花束贈呈
星空混乱(スターフュージョン)
俺の目の前に奇跡の人がいる
星空の使者君がいる
イエナさんに灯を入れれば
そこは満天の星となる
俺の目の前に無垢なる人がいる
星雲の使者君がいる
強い雨が降り続けば
ここは封印の都市となる
君そのものが星の夢なんだよ
東から西へ星座が動く
星空混乱(スターフュージョン)


要撃砲台 被弾昇天 統一天国
星空混乱(スターフュージョン)
俺の胸の中微熱の人がいる
追憶の死者君がいる
強い雨が雪になれば
ここは氷雪の都市となる
君そのものが星の夢なんだよ
東から西へ星座が動く
星空混乱(スターフュージョン)

---------------------
『ドランクモンキー・酔拳』の主題歌のアレ。
拳法混乱(カンフージョーン)♪
221名無しさんだよもん:2007/01/27(土) 22:32:25 ID:cRi9SUYZ0
>>151-153

なんとなくラフってみた。

つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1169904594.jpg


屑屋かわいいよ屑屋(エー
222名無しさんだよもん:2007/01/28(日) 00:47:40 ID:yGWDa9/8O
>>213
遅ればせながら、GJです!続き読みたいですよ〜
223LAST LETTER(1/3):2007/01/28(日) 17:13:12 ID:GPFrWQfl0
>restart
>system "SCR5000Si/FL"
>
>under body break down
>memory error
>memory error
>memory error……

>memory chack ok
>playback

LAST LETTER


疑似構築されたヒト
疑似構築された惑星
疑似構築された星雲
疑似構築された星空
それがわたし
ほしのゆめみの名を冠するモノ

お客さま/ヒトよ
わたしのコトバをきいて下さい
224LAST LETTER(2/3):2007/01/28(日) 17:14:03 ID:GPFrWQfl0
かつて平和な世界で
見出された科学技術は
多くのモノを
世間にもたらしました

電気、半導体
集積回路、駆動システム
人工知能、etc...
それまでヒトの
知り得なかった技術の数々

その技術でヒトは
  ”ロボット”を−−
わたしを生み出しました

そして……
わたしは知りました

科学技術は力をもたらし、
そしてヒトは
−−おごり高ぶったヒトはやがて、
過剰な滅びと
殺戮の未来を選びました
その事実は、”人類の協力者”
たるわたしにとって、致命的な
ストレスとして感じられます
225LAST LETTER(3/3):2007/01/28(日) 17:15:01 ID:GPFrWQfl0
わたしは、総ての
「ほしのゆめ」をあなたに託します
そして……わたしには
もう語り継げない「ほしのゆめ」が……

「星空の記憶」が、
あなたと共にあります
「星空の記憶」を−−
最後の「ほしのゆめ」を
この世界に……


お客さま/ヒトよ−−
あなたの前に祝福を



planetarian -dream of small stars-
be over
226名無しさんだよもん:2007/01/29(月) 00:55:04 ID:jphKzXzN0
不気味な泡?
227名無しさんだよもん:2007/01/29(月) 17:43:29 ID:p2K5X8d30
稲妻戦隊Xだろ
228名無しさんだよもん:2007/01/30(火) 06:56:56 ID:txKxVlEZ0
彼らが、その戦争から非難する時に、
168時間駆動、8592時間休止、と設定した。
それを何回も何回も繰り返した。

機械だから?
それとも、心からの、責任感と使命感 つまり、職人だから?
30年間くらい、約210日間くらい。
よく、気が狂わなかったと思う。

そして、人が来た。

アレだけ強引に引き留めたのは、話しかけ、世話を焼いたのは、
 細かったから?はしゃいだの?
それとも、元々そういう性格に育てられたの?

見送るといってずっとずっと一緒にいたのは、ナゼ?
「お客様を万全の体制で迎え入れる」のであれば
もし、見送りででかけている間に他の客がきたら?とは、考えなかったの?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

彼も彼だ。
甘い。詰めが甘い。
勧められるがまま、武器を身から外し、熟睡する。
他の獲物を探せば良いのに、合計3日間、相手をしている。
229ご質問にお答えしますの巻(1/5):2007/01/30(火) 11:13:23 ID:KVFDOuJ40
「屑屋だ」
「プラネタリウムはいかがでしょう?(←挨拶)
 SCR5000Si/FL・ほしのゆめみです。このレスは天国のプラネタリウムよりお送りしております」
「今回は、>>228からの質問に答えたいと思う。よろしく頼む」

「……最初のご質問は、わたしが三十年近く、ひとりで職務を遂行していたことへのご質問ですね」
「ロボットは、どんなに理不尽な状況や命令であっても疑問を抱かずに働く。その理不尽さを理解も評価もできないのだから」
「『雪圏球』の一節でしたでしょうか……
 わたし達ロボットは、サポート部門との通信が確立している場合、半自律判断モードで稼働します。
 万一、自らの職務や命令に疑問を抱くような思考ベクトルが発生した場合、リモートアップデートによってただちに補正されます」
「本来なら……な。……しかし、あの戦争が起こった」

「はい。……あの戦争によって、わたしはサポートセンターとの通信を確立できなくなり、完全自律判断モードに移行しました。
 閉館からスリープモードに入るまでの待機時間。わたしは、業務以外のいろいろなことを考えていました。
 どうして、お客さまがお一人も来られないのか。どうして、スタッフの皆さまはお戻りにならないのか……
 ……そうするうち、わたしの思考ロジックは、少しずつおかしくなっていきました」
「ロボットとしては、だがな。……そこで、次の質問につなげよう」
230ご質問にお答えしますの巻(2/5):2007/01/30(火) 11:14:13 ID:KVFDOuJ40
「どうしてわたしが、お客さまを強引に……強引でしたでしょうか?」
「ああ。かなりな」
「……ご、『強引に引き留め、話しかけ、世話を焼いた』のはなぜか、というご質問ですね」
「もともと、ゆめみには『既知のバグ』があった。『時間経過を考慮せず、冗長な会話を続けてしまう』……というやつだ。
 一つ目の理由はそれだろう」
「はい。……ふたつめの理由は、先にお話しましたとおり、わたしがロボットとして、少々おかしくなっていたからです」
「あの時のゆめみの行動は、『客を引き留める』というには少々度が過ぎていたからな」
「常識に照らして考えれば、いくらイエナさんの修理の目処が立たないとはいえ、お客さまに修理をご依頼するなど、本来あってはならない行為です。
 あれは……わたし自身の『願い』でした。……本来ならロボットが抱くべきではない『願い』……」
「『おかしくなった』……というのは、つまりそういう事だ。
 『世界が壊れた』ことを認められず、『未知のバグ』と認識したことも……ゆめみがそう『願った』ということさ。
 ……そうだ、あれもそうだな」
「あれ、と申しますと?」
「『天国をふたつに分けないでください』」
「……そうですね……天国が一つで、本当によかったです……」
231ご質問にお答えしますの巻(3/5):2007/01/30(火) 11:15:03 ID:KVFDOuJ40
「さて、次の質問だ。……他の客が来るかもしれないのに、プラネタリウムを放置(?)して俺に同行したのはなぜか、だとさ」
「それも、わたしがおかしくなっていたからです」
「ある意味、凄い言い回しだな」
「今だから申し上げられますが……わたしはあの時、お客さまに連れて行ってほしかったのです」
「ふむ」
「わたしは業務支援機ですので、業務エリアから半径三キロ以上は離れられません。……それでも、連れて行ってほしかった……」

「……なあ、ゆめみ」
「はい?」
「それだけじゃないだろう?」
「……と、申しますと?」
「本当はもう一つ、『願い』があったんじゃないのか?」
「申し訳ありません、おっしゃっていることの意味がよく……」

「俺がシオマネキに狙われていた時。お前はシオマネキの前に立ちはだかり……そして撃たれて『死んだ』。
 俺を助けるためなら、自分のほうにシオマネキの気を引きつけるだけでいい。あんな無防備な真似をする必要はなかったはずだ。
 ロボット三原則には『人間を救うためなら"無駄死にしろ"』という条項はないからな」
「……それは……」
「だいたい、聞きもしないのに天国の話をするようなやつの考えていることは……」

「……申し訳ありません……本当は、ひっく、わたし、天国へ……スタッフの、皆さまのところへ……えぐっ、行きたかっ……」

「……う、すまん、泣くな。言い過ぎた。
 お前の気持ちはわかる。今さら言っても詮無い事だったな……すまなかった」

「……ちょっと!屑屋君!ゆめみちゃんいじめてるんじゃないわよっ!」


(−しばらくお待ちください−)
232ご質問にお答えしますの巻(4/5):2007/01/30(火) 11:15:58 ID:KVFDOuJ40
「……お客さま、大丈夫ですか?」
「まさか、茜ちゃんが乱入してくるとは……痛てて」
「お気遣いいただけたのは嬉しいのですが……茜さん、凶暴です……」
「も、もう一つ質問があったな……っ痛ぅ……」
「お客さまの詰めが甘い、無防備すぎる、とおっしゃられていますね」

「対人戦車はあの図体だ。建物内部までは入り込めない。
 問題は同業者だが、日中はスタッフに訪問者を知らせるセンサーチャイムが生きていたし、ゆめみも玄関で客引きしていた。
 閉館後、俺達はすべての窓や入り口に施錠した後、室内をチェックし、誰か潜んでいないかを確認した。
 つまり、閉館後のプラネタリウムは、いわば『安全地帯』だったわけだ」
「はい、当プラネタリウムの防犯対策は万全です……でした」
「……とはいえ、それは言い訳に過ぎないかもしれないな。
 爺さんを目の前で亡くし、ゆめみの純粋さに触れた時、俺は……俺はもう、屑屋ではいられなくなってしまったのかもしれない」
「お客さま……」
「ゆめみと共にプラネタリウムを出た時、俺はゆめみと二人で移動プラネタリウムを……『星屋』を営もうと決意していた。
 屑屋などという略奪稼業に手を染めなければ、世界はそれほど危険に満ちているわけではなかった。
 人が集まり、それなりの治安が確保されている都市もあったし、そこで真っ当に生きていく選択肢もあったのさ」

「……お客さま……申し訳ありません……
 ……お客様の、うっ、そのようなお気持ちにも気づかず、わた、ひっく、わたしは…………」
「うわっ、泣くな、俺はもうなんとも思っていない。だから、な?」

「……屑屋君!まぁたゆめみちゃんいじめてるわね!?」


(−しばらくお待ちください−)
233ご質問にお答えしますの巻(5/5):2007/01/30(火) 11:16:49 ID:KVFDOuJ40
「……ううっ……た、頼むから泣かないでくれ、俺の身が持たん」
「お客さま……なんと申しますか、その……申し訳ありません」


「……と、とりあえずそういうことだ、>>228
「ものすごく長文になりましたね……
 なお、この見解は執筆者の見解、いわゆる『チラ裏』であり、Key公式設定ならびに涼元先生の見解とは一切関係ございません。
 異論・反論等お待ちしております」
「チラ裏でこの長さかよ……迷惑な話だな。
 さて、俺達はヤボ用があるんでな。この辺で失礼させてもらう」
「黄道十二星座派と十三星座派の口論の仲裁、でしたね」
「ああ。……やれやれ、何で俺が……」
234名無しさんだよもん:2007/01/30(火) 12:40:01 ID:1BgXN8oLO
うる覚えだが、ゆめみさんが外出した日って、確か彼女、休館日だって言ってなかったっけ?
235名無しさんだよもん:2007/01/30(火) 23:04:23 ID:0j03zyC90
それと、屑屋を病人と認識してたと記憶しているので、車までのサポート(介護?)をするのは、
ロボットとしては上位の命令でもあると思うので、読んでいて違和感は無かったなぁ。
あくまでも個人的な考えだけどね。
236名無しさんだよもん:2007/01/31(水) 01:52:51 ID:FFQOqSfa0
>>229-233
乙です。往時の某作品CDドラマのような雰囲気で楽しませてもらいました。
237名無しさんだよもん:2007/01/31(水) 02:36:26 ID:8PV5VQLk0
>>236
…任意○ヂヲ?


しかし、88星座派とかトランス・ネプチュニアン占星術派とかも割り込んできて、今頃収拾つかなくなってそうだな屑屋。

屑屋
「ちょっと待て!今ゆめみがいいこと言った!」

…お前は田原総一郎か。
238名無しさんだよもん:2007/01/31(水) 10:44:18 ID:YVZaVUh00
>>234-235

確かに。
今手元にPCないんで確認できないが、休館日だったような気もしてきた。

ちなみにこのレスはPDAから。
Linux Zaurusでプラネ動くようになんないかなあ・・・

閑話休題。

まあ、よしんば休館日でなかったとしても、停電してたわけだし
『都合により本日投影中止』
としてたのかもしれんね。
239名無しさんだよもん:2007/01/31(水) 12:38:23 ID:DI+GkU/80
>>238
PSP用のUMDでは販売される可能性も少なくないでしょうが・・・・

SL-C700から始まって今は1000と3200ですね?Linuxザウルス?
http://ezaurus.com/lineup/before/index.html
マイクロドライブやSDカードなどで販売するのでしょうか?

W-ZERO3(WS003SH、WS004SH)、[es](WS007SH)や AQUOSケータイ など携帯電話(PHS)関係の話題が多く、Zaurus関連の話題があまり聞こえてこないですね。
240名無しさんだよもん:2007/01/31(水) 13:39:05 ID:uH7jiYz90
>>239

フルボイスとまではぜいたく言わない、せめてキネティックノベルドライバーとか・・・
ちなみに、4GBのHDD搭載のSL−C3100。


・・・あ、今すごいこと思いついた。
オート再生→録画キャプチャ→動画ファイルにすれば・・・
241名無しさんだよもん:2007/01/31(水) 15:52:24 ID:CokmHQNr0
ん?
プラネには選択肢無いんだから、いくらでも移植できそうな気がするけど?
スクリプターとかはいっぱいあるんだから、どれかに適当に突っ込めばいい
ような気が。
242名無しさんだよもん:2007/01/31(水) 16:23:41 ID:cA5ekebG0
>>241

まずはテキストデータをなんとかデコードせねば・・・
243名無しさんだよもん:2007/02/01(木) 10:44:14 ID:6f/zPAu50
ちっちゃいゆめみさん、とかどうだろう。1/8ぐらいの。

ケータイが一昔前のPC並の性能になったり、ファミコンがファミコンミニになったみたいに、
10年も経てば(戦争直前には)できててもよさそうだ。
労働問題に頭を痛めたメーカーが、愛玩分野へのシフトを目論んで開発した・・・とかそんな感じで。
244名無しさんだよもん:2007/02/01(木) 12:15:18 ID:r4EHymzI0
それ何てハンドメイド?
245243:2007/02/01(木) 12:30:15 ID:FCngar3x0
シマタ
メイがいたな、すっかり忘れてたw


つか、客引きとかプラネタリウムの解説なら、小さい筐体でもできるしな。
普段は屑屋のポケットに入ってて、背中の羽根でぱたぱたと飛び回るとか。

で、やっぱりぱんつはいてない。
246名無しさんだよもん:2007/02/01(木) 19:40:23 ID:DvJWiKMt0
今月号のゲーム雑誌「アルカディア」の「トリガーハートエクステンション」に
掲載されてるエグゼリカのおめかし衣装が、妙にゆめみさんテイストである
件について。

二の腕のお椀状のパーツとか、インフォメーションリボンに似た触角(?)とか。
247名無しさんだよもん:2007/02/01(木) 20:40:22 ID:WTNoLtoG0
よく見ると吊りスカートっぽい意匠もあるな。
左右じゃなくて前だけど。
248(1/2):2007/02/02(金) 00:36:35 ID:eJKUYBTb0
『StarFairy 〜ちいさなちいさな、ちいさなほしのゆめ〜』
-----------------------------------------------

パタパタと軽やかな羽音を響かせ、ゆめみが俺の肩に止まる。
振り落とされないよう、俺の首筋に腕を回して微笑み、語りかける。
ゆめみの衣装は、以前と同じデザインのドール用。花菱デパートのオリジナル商品だ。

……断っておくが、俺の頭が変になったわけじゃない。

今のゆめみの筐体は、「SPR7500Si/FP StarFairy」。
ゆめみが「SCR5000Si/FL CapelII」という筐体を失ってから三年。廃墟の研究所から俺が見つけ出した、彼女の新しい『身体』だ。

自動人形(ロボット)はこの国の主要な輸出産業となったが、それは同時に労働問題を引き起こした。
決して疲れず、不平を言わぬ労働力は、主に単純作業において人間の仕事を奪っていった。
失業者の増大は、やがてロボット排斥運動へと発展し、抗議デモや打ち壊しへと……ヒートアップの一途を辿っていった。
問題の肥大化とライバル社との競争激化に頭を悩ませたゆめみのメーカーは、『愛玩用』という余暇方面への転換を模索した。
その結果誕生したのが、SPRシリーズ。……今のゆめみの筐体、というわけだ。

身長20cm弱。SCR5000との比率で言えば、約1/8スケール。
電縮繊維による人工筋肉、ナノマシンを駆使した感覚/フィードバック系……
技術の進歩は、基本的なロボットの機能をここまでコンパクトに纏める事に成功していた。
人工知能についても、同じことが言えた。
携帯情報機器が一昔前のパソコン並の機能を有していったように、SPR7500の人工知能ユニットは、このサイズながらSCR5000を上回るほどのキャパシティを獲得していた。

宝石箱(ジュエルボックス)のような大仰な箱(ケース)に収められ、ディーラーの引き出しの奥に眠っていたその筐体は、驚くほど良好な保存状態を保っていた。
この壊れた世界で、ゆめみを甦らせることができるかもしれない唯一つの鍵。……それが、この筐体だった。
249(2/2):2007/02/02(金) 00:37:12 ID:eJKUYBTb0
……とはいえ、煙草ケースほどのサイズがあるゆめみのメモリーチップを、この小さな筐体にそのまま組み込むことはできない。
SCR系のメモリーチップをSPR系に組み込む、非公式(アンダーグラウンド)な改造記事を発見した俺は、藁にもすがる思いでそれを実行に移した。
メモリーチップのケースを分解し、パーソナルデータを司るコアチップをSPRへ移植する。
メモリーチップに記録されたすべての蓄積データベースを、データ変換しながら転送する。
『不正改造』を防止するためのシステムチェックコードをフックし、チェッカを回避する。
SCR5000から十年。ソフト・ハード両面からの集積率向上によって、SPRの内蔵メモリーユニットは、ゆめみの全てを易々と宿してしまった。

……こうして今、ゆめみは俺と共に、人々に『ほしのゆめ』を伝える旅の途上にいる。
俺のポケットの中に住まい、人々に『ほしのゆめ』を語り、充電クレードルで眠る。

薄暮色に染まったドームの中。ゆめみはふわりと舞い上がり、俺を誘うかのように空間を漂う。
俺は立ち上がり、ゆめみへと手を伸ばす。

軽やかな羽音と共に俺の周りを舞う、その姿。
……それはまさに、『星の妖精』と呼ぶに相応しかった。


俺は『星屋』だ。
星の人の系譜を継ぎ、生命(いのち)続く限り、ゆめみと二人で星の夢を語っていく。
天国から、星の妖精となって帰ってきたゆめみと共に。


- Fin. -
250名無しさんだよもん:2007/02/02(金) 09:34:40 ID:vkcLpwIO0
妖精なんて言うから、こんなの連想しちまったジャマイカ。

yumemi<<撃ちなさい、臆病者!>>
yumemi<<Comeoooooon!!>>



ゆめみ@被弾「本当に撃たれました・・・」
屑屋「・・・バカだろ、お前・・・orz」
251名無しさんだよもん:2007/02/02(金) 12:12:24 ID:DFPC6ur+0
屑屋さん・・・・名前 出て来てないんですね。作品中では・・・・は、
プラネタリウム本体という、機械系統の手入れだけでなくて、
こんな小さなメモリーチップも改造するほど器用なのですか?

重火器類を使うために、多分、機械の手入れは覚えたのでしょう。
ですから、投影機の(制御系統以外の)機械的な部分を扱う事が出来るのはわかる気がします。
でもね、メモリーカードの内部の集積回路部分を取り出すのは?
どう考えても、基板上でプリントされた、または、接着された1辺2mm以下の高密度集積回路、を扱うのはカナリの専門知識のはず。

。。。。。。
大きさ1/8・・・低身長、外見15歳(屑屋さんの見立て)だとすると
背丈は140cm位?良くわかりませんけど。
西暦2000年現在の、日本の規格品は、成人女性の背丈が158cmとして基準になっています。
そして低身長は150cm、142cm、高身長は166cmとして作成されています。
服。台所(システムキッチン)、机や椅子、棚類、など。

。。。。。。
メイさんは1/6、でしたっけ?
すももさんと琴子さん(ちょびっツ)は漫画雑誌掲載で20cm、テレビでは25cmでしたっけ?
メイさんみたいに、6から7頭身位なのでしょうか?(成人型)
すももさんや琴子さんみたいに、3から4頭身なのでしょうか?(乳幼児型)
252名無しさんだよもん:2007/02/02(金) 12:13:45 ID:DFPC6ur+0
いずれにしても空中浮遊が出来るのって結構高度な機能ですよ?
・・・・・・鉄腕アトムや鉄人28号の様に、ロケットの様な燃料燃焼噴射方式だと、火災になりますし・・・・・・ヘリコプターの様に高速回転翼を・・・・・・考えたくないです

多分羽は飾りだと思うのです。
羽だけで自在に浮遊できる機体を作るとなると・・・・
相当の羽の大きさと駆動装置が必用で。。。。
しかも、どこかに引っ掛けて破け、壊れたら・・・・・自動修復できるのかしら?

「エンジリックレイヤー」、これは、雑誌掲載「ちょびっツ」にもでて来る閉鎖空間での戦闘用機ですけど、ああ言う、専用の箱を作ってその中での移動
例えば、家やプラネタリウム設備内の様な場所で、壁や天井、床などにも仕掛けを付ければ出来なくも無いでしょう。
ですが、一般の空間で行うには・・・・・

ああ、そうですか。移動用プラネタリウムでも、投影機が有り、影用の屋根があり、風雨を避ける暗幕で囲ってあるのですね。
253名無しさんだよもん:2007/02/02(金) 12:21:38 ID:DFPC6ur+0
良く、空想では「重力制御」という物がでてきますけど(宇宙のステルビア もでしたっけ)実際に出来る可能性が有るのでしょうか。
ソニーやホンダ、テムザックなどの市販機械人形から考えれば
大体、人と同じ大きさ重さで、ほぼ人と同じ事が出来る、のは割と近日できそうな気がします。

ですけど重力制御は可能なのでしょうか?
背中の羽で飛べるのでしょうか?
254名無しさんだよもん:2007/02/02(金) 13:00:20 ID:jTUWJZr+0
>>251

スマソ、今回あえて科学的考証には目を瞑った次第。
ふいんきふいんき。


ちなみに、イメージとしてはダンバインのフェラリオ。
255251:2007/02/02(金) 15:27:24 ID:uUjnNCCI0
この話実際に有りそうで。
今から50年から70年ほど前に有った2度の世界対戦とその前後の戦い。
これを今の軍事力で行えば。

それでほしのゆめみさん(今ならホンダ「アシモ」とか、テムザック「キヨモリ」や「04車輪」 などかしら)に、永年の案内係りを任命
ただし適当に動かさないと設備が動かなくなりる事も事実。
何とか考えて電力は「軍事非常電源」で考えてみた。
軍事非常電源から多量に供給すれば、設備があることがわかってしまうので
「太陽電池」「風力」「気温差」「雨」などを利用し、大容量特電装置で供給する方式に。
しかし元々の発電が微弱なので、足りない分を軍事電源で。
それで、51週で逐電した物を利用し
設備の照明、空調、および、案内係り員とその記憶装置などを1週間駆動する程度に設定。

それでイエナさんには多量の油を塗り、適当な技術の有る者が来たら、清掃、調整すれば良いように。
また電球を外すことで、電力の使いすぎ防止を考えた。

そうしたらゆめみサン、変な学習をしてしまった。
毎日毎日、雨だし、お客様は来ないし。
だから屑屋さんが来た時に、人で言えば「はしゃいだ」状態になった。

などと妄想していたところに。。。。。

>>243 以下の書き込みが・・・・・・

そしてSSが・・・・・・

ついつい現実的な考えを書いてしまった。
256名無しさんだよもん:2007/02/02(金) 16:10:35 ID:Iz0ztclI0
>>255

そこまで現実的に考えちまうと、そもそもプラネタリウム(ゆめみ含む)を
「半動態保存」すること自体無理がないか?
まして、BC兵器食らって、設備もなにも放り出して逃げるような緊急事態。

ゆめみが稼働し、三十年もああしていたこと事態がすでにファンタジー。
理詰めで考えられるもんじゃないだろう。

いや、気持ちはわかるけどな・・・
257名無しさんだよもん:2007/02/02(金) 16:38:03 ID:LBTNnXgo0
>>65-75みたいな出来事が過去にあれば、>>255みたいな細工をする
理由も時間もあるかもしんない。

でも、>>65-75自体がすでにファンタジーという矛盾。
258『彼女の星』:2007/02/02(金) 20:48:48 ID:eJKUYBTb0
俺は『星屋』だ。
この壊れた世界で、手作りのプラネタリウムを携え、人々に星の夢を語り歩く。

俺の相棒は、手作りの投影機。
何度も失敗を重ね、やっとの思いで作り上げた投影機だ。
ピンホール式投影機であるそれは、光学式のような……あの『イエナさん』のような、細密な星空は望むべくもない。
しかしそれでも、俺はこの世界で探しうる限りの資料を探し出し、徹底的に『星空』を再現したつもりだ。

だが、ただ一つだけ本物の星空とは違うところが……いや、故意に違えたところがある。

星の巡りの目当て、こぐま座α星・ポラリス。通称、北極星。
その星を投影する穴のすぐ隣に、俺は一つだけ、余計に穴を穿った。

肉眼では幽かにしか見えない、小さな『星』。
俺はその星に、密かに名前を付けていた。


……それは、天国へ帰ったあいつの星。
…………その星の名前は…………


- Fin. -

----------------------------------
モチーフはBump of Chickenの歌『プラネタリウム』。
つ【ttp://www.uta-net.com/user/phplib/view_3.php?ID=26638
つ【ttp://www.youtube.com/watch?v=hjaYk0C5WL4
259名無しさんだよもん:2007/02/02(金) 22:02:55 ID:LCafXpnK0
北斗七星の話なのだが
日本から見た場合に、取っ手の外側からつ目の星の脇に小さな星がある
まるで

こ   の→ひ→しゃ→く
↓  ↑
ぐ→ま

(小熊の ひしゃく) と並んでいるかの様に。
思い出したんだよ。>>258で。
260名無しさんだよもん:2007/02/02(金) 22:42:46 ID:eJKUYBTb0
261ゆめみとのぞみ:2007/02/03(土) 20:41:44 ID:P5soISX60
つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20070203203958.jpg

---------------
『SCRi5500Si/FL CapelV・ほしののぞみ』
・ほしのゆめみから遅れること3年、花菱デパート城北支店屋上プラネタリウム館に配属されたロボット解説員。
・筐体は後継機の『SCRi5500Si/FL CapelV』となっている。
 ・身長はゆめみより若干低い。
 ・インフォメーションリボン(標準装備)の先端に若干のデザイン違いがある。
 ・振り分け髪はゆめみの2つに対し1つ(冷却機能が向上しており頭髪に頼る必要がない)。
 ・擬似感情処理系が若干アップグレードされており、涙を流す機能もある。
 ・衣装は(元デザインが花菱デパートの制服なので)ゆめみとあまり変わらないが、色調は赤系でまとめられている。
・パーソナルデータ(擬似人格)はゆめみのデータを元に構築されており、ゆめみは文字通りの『お姉さま』といえる。
 そのためか、『時間経過を考慮せず冗長な会話を続けてしまう』という『既知のバグ』をも継承してしまっている。
・口調はゆめみと同じく、徹底的に丁寧口調。
・互いの呼称は以下の通り。
 ・ゆめみ→のぞみ:「のぞみさん」
 ・のぞみ→ゆめみ:「お姉さま」
・通信機能が故障しているため、ゆめみとの意思疎通も音声による会話ベースとなる。

--------------------------
というわけで、勝手に姉妹機。
線が多いので、二人分描くと堪えますねこれわorz
ちなみにこの二人、『時間経過を考慮せず冗長な会話を続ける』という例のバグも共有しているため、
放っておくとどうでもいい話を延々かつマターリと会話し続けます。困ったもんですw
262名無しさんだよもん:2007/02/04(日) 01:27:42 ID:8mtZaessO
三倍早いゆめみさん!?

GJ
263名無しさんだよもん:2007/02/04(日) 02:37:28 ID:5NhjipYx0
あー、じゃあ制服は赤いのね
264名無しさんだよもん:2007/02/04(日) 07:58:01 ID:S4YDCsi30
・思考回路や判断能力などは早いのに、行動はおっとりしていて、遅い?
・言葉使いが丁寧なら「お姉さま」でなく「ゆめみお姉さま」?
・涙を流すのではなく、目にホコリなどが付いた時の掃除方式が、乾燥時振動式だったのを、洗い流す方式に、変更された。
・通信機能は壊れていないが、通信機録が残りあとで怒られるので、音声による会話を行う。

とかなのかなぁ? 

265名無しさんだよもん:2007/02/04(日) 08:15:40 ID:3t/gKdTM0
意味不明
266名無しさんだよもん:2007/02/04(日) 10:55:14 ID:5uOoZMdU0
・技術の進歩でCPUの最高クロック数は数倍に向上したが、SCRi5500の搭載CPUはSCR5000の倍程度
 消費電力/発熱量低減のため。また、向上した分は擬似感情系の処理向上に充てられたため、思考・判断速度は結局大差なし
・舌足らずなので、「ゆめみ」と早く言えず「ゆめい」になってしまうためやむなく省略
・実はゆめみも「涙」は流せるが、「感情としての涙」ではなく「光学樹脂レンズの洗浄」にすぎない
・短距離個体間通信機能(特定小電力無線)のみ故障しているため、近くに同じロボットがいない環境では使うこともなく誰も気づかない

とか妄想。
267名無しさんだよもん:2007/02/04(日) 15:08:20 ID:5uOoZMdU0
前スレの>>515で出てきた「格ゲー版planetarian」のレスに釣られて、
PDW(H&K MP7A1)の電動ガンを衝動買いしてしまった俺が来ましたよ。

……自衛隊の装備と弾薬に互換性がないので、どうみても日本では使えません。
本当にありがとうございましたorz
かっこいいからいいけど。


……いや、planetarianは近未来の話だから、何かの間違いで自衛隊に採用されていないとも限らんか。
268名無しさんだよもん:2007/02/04(日) 16:23:16 ID:olkQ2WN/0
この物語はフィクションである。だが・・・10年後は定かではない。
269名無しさんだよもん:2007/02/04(日) 17:17:37 ID:uF6S8q100
>>261 のイラスト観て
>>157 のやりとりを思い出しちまった
270名無しさんだよもん:2007/02/05(月) 01:08:58 ID:n0XuB/ap0
MP7A1が自衛隊に採用されたら、名前は「4.6mm機関拳銃」か……
やっぱ、ミネベアがライセンス生産するんだろーか。

……いやいや、爺さん(マードック)の形見、という可能性もあるな。
弾薬はイギリスの会社が開発してるし、あながち遠い存在ではなさそうだ。

スマソ、チト脱線。

>>269
つーことは、のぞみの中身は屑屋なのか?w
271名無しさんだよもん:2007/02/05(月) 05:43:36 ID:tGqJUI430
いや、のぞみ(以下 「の」)は、ゆめみ(以下 「ゆ」)の「3年後の配属」(>>261
で「今日」になる
屑屋(以下 「く」)は、( >>151-157 ) 「今日」から何日または何週間と数日、もしかしたら 数ヶ月と何週間と数日前に、『SCR5000Si/FL CapelII』になった。
その日から数時間、または、数日、または何週間と数日、もしかしたら 数ヶ月と何週間と数日前と、さらにそれから、三十一年と二十週三日前に「お客様」で来ている。


の : お姉さま、ご一緒にいらっしゃるもう一体の方はどなたですか?
ゆ : 私の、大事な、特別な、お客様です。
く : 好きでロボットになったんじゃない。俺は人間だったんだ!
の : 言葉が乱暴ですね。男の人みたいです。いいえ、お男の人でもここまで乱暴な言葉使いの人は少ないと思いますよ。お客様お姉さま。
ゆ : この方は男の人です。
ゆ : 250万人目、いえ正確には、249万(以下略)人目のお客様として、そして、その三十一年(以下略)前にも来ていただきました。のぞみさんの配属の(省略)年(省略)日後の事です。


・・・・・・
などど話がつづくのだろうね。
272名無しさんだよもん:2007/02/05(月) 07:37:00 ID:fb989KF20
それはそれでスゲー面白そう
273名無しさんだよもん:2007/02/05(月) 08:15:20 ID:JJeyIHhn0
>>272

おもしろそうだが、屑屋の精神が持つかしらw

屑屋
「・・・しかも、ロボットになっちまったせいで、そのうざったい会話の一部始終が
 『忘れられない』ときたもんだ・・・orz」
274『ゆめみとのぞみとゆめみな屑屋』1/5:2007/02/05(月) 21:21:30 ID:n0XuB/ap0
---------------------------------
[登場人物]
・SCR5000Si/FL ほしのゆめみ(以下「ゆ」)
 バカ1号。花菱デパート本店屋上プラネタリウム館のロボット解説員。
 一度はシオマネキに破壊されるが、六階のロボット売場に同型筐体の在庫があったため難なく復活。色は青。
・SCRi5500Si/FL ほしののぞみ(以下「の」)
 バカ2号。花菱デパート城北支店屋上プラネタリウム館のロボット解説員。
 移動プラネタリウムの巡業で訪れた都市に支店があり、バッテリー切れでヘタっていたところを保護される。
 色は赤。
・SCR5000Si/FL 中身は屑屋(以下「屑」)
 被害者。元は人間。『意外なる再会』(>>151->>155)における羞恥プレイに耐え切れず衝動的に自殺を図るが、
ゆめみの手で脳幹をSCR5000の筐体に移植され無理矢理復活(>>157)。色は緑。
---------------------------------

※なお、この物語は>>261のイラストとは直接関係ありません※
275『ゆめみとのぞみとゆめみな屑屋』2/5:2007/02/05(月) 21:22:22 ID:n0XuB/ap0
の「……あの、お客さまお姉さま。一つお伺いしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
屑「何だ?(……というか、その回りくどい呼び名は何とかならんのか……)」
の「お客さまお姉さまは人間男性のお方ですのに、なぜSCR5000Si/FLの筐体に入っておられるのですか?
 わたしの基本データベースを参照しますと、義体運用法第十三条に基づき男性用義体に入らなければならない
 と考えますが……」
屑「……つまらん事を気にするな。止むに止まれぬ事情があってのことだ」

ゆ「それはですね、のぞみさん。緊急事態でしたからなのです」
屑「うわっ!!ゆめみ、いつからそこに居た?」
ゆ「はい?十三秒前からですが……」
の「ですが、ゆめみお姉さま。わたしがお客さまお姉さまとお会いして以来、二日と一時間四分三十六秒が経過
 しておりますが、お見受けしたところ、ご容態は安定しておられるようです。
 緊急事態としての一時的措置であれば致し方ありませんが、ご容態が安定しておられるのであれば、直ちに
 男性型筐体への本移植の手配を行わなければならないのではありませんか?」
ゆ「その通りなのですが……何度も連絡を試みているのですが、医務室および医療機関との応答が得られません。
 わたし単体では対処できない、重大な事態です……」
の「それでは、わたしが代行して通報を行いますね」
ゆ「はい、よろしくお願いいたしますね、のぞみさん」

屑「…………(イライラ)」
276『ゆめみとのぞみとゆめみな屑屋』3/5:2007/02/05(月) 21:23:02 ID:n0XuB/ap0
の「……医務室および医療機関との応答が得られません。わたしにも対処できない、重大な事態です……」
ゆ「あの、のぞみさん?」
の「はい、なんでしょうか、ゆめみお姉さま」
ゆ「よろしければ、のぞみさんに成り代わりまして、わたしが通報を……」

屑「……だぁーっ!もういいっ!まるっぽ無限ループだろうがっ!!」
ゆ「いいえ、お客さま。三十三年と八ヶ月十四日、三時間十一分前に同様の障害が発生いたしましたが、その
 二分三十二秒後に館内の無線ネットワーク網が回復いたしまして、通信も復旧いたしました。
 したがいまして今回も、再試行によって通信が確立できる可能性が……」

屑「ある訳ないだろう……あれからもう何年経っていると思っているんだ?
 お前も見てきたはずだ。この世界は壊れてしまった。もう人間など数えるほどしか……」

ゆ「そうですね……壊れていたのはわたしじゃなくて……壊れていたのは……」
の「……お姉さま?……それではやはり、わたしたちの共通認識はバグではなく……」
ゆ「はい……残念ですが、現実のようです。
 わたしは涙を流せませんが、もし涙を流せたらきっと泣いていると思います……」
の「…………(ぐすっ)」
ゆ「そうでしたね……あなたは涙を流せたのですよね……」

屑(……考えてみれば、こいつらも不憫な境遇だな。
 人間達にもう少し余裕があれば、こんな所に捨て置かれることもなかったかもしれないし、
 花菱デパートに非常用電源が来ていなければ、今頃は「天国」とやらに行けていたかもしれない。
 ……いや、いっそ何も理解できない「ただのロボット」なら、悲しむこともなかっただろうに……)
277『ゆめみとのぞみとゆめみな屑屋』4/5:2007/02/05(月) 21:24:07 ID:n0XuB/ap0
屑「……ああ、まあなんだ。二人ともそんなに嘆くな」
ゆ「しかし……」
屑「世界は壊れても、人間はまだ滅びてはいない。この世界で逞しく生きているんだ。
 お前も見ただろう?移動プラネタリウムの観客の中には、次の世代を担う子供や赤ん坊もいた。
 世代交代が絶えない限り、人類は滅びはしない。そして、いつの日かきっとこの世界を復興……」

ゆ「赤ちゃん……と言えば思い出されますのは、三十二年と二ヶ月三十日前のあの出来事です」
屑「あ、やべ」
の「お姉さま、三十二年と二ヶ月三十日前に何があったのですか?」
ゆ「こちらのお客さまが、当プラネタリウムにお越しになられたのです」
の「そうでしたか……お客さまお姉さま、その際はお楽しみいただけましたでしょうか?」
屑「……い、いや、まだ物心もついていなかったからな」
の「?……お客さまお姉さまの言動に、動揺反応を検知しました……いかがなさいましたか?」
屑「いや、な、なんでもない」
ゆ「その際、お客さまのお母さまがお身体の具合を悪くされまして、医療機関へ緊急入院されました。
 その間、わたしがお客さまのお世話をですね……」
屑「ぐわぁ!その話はやめろー!」
ゆ「……はい、本件に関する会話を中断いたします(残念そうに)」
278『ゆめみとのぞみとゆめみな屑屋』5/5:2007/02/05(月) 21:24:46 ID:n0XuB/ap0
の「ところで、わたしの基本データベースを参照しましたところ、乳児の方のお世話と申しますと……」
屑「ギクっ」
の「あやして差し上げたり」
屑「ぐはっ」
の「子守唄をお聞かせしたり」
屑「うぐっ」
の「母乳をお飲みいただいたり」
屑「げふっ」
の「おしめを取り替えて差し上げたりされたのですね?」
屑「ごはっ」
ゆ「はい。夜泣きもむずかりもされませんでしたし、とてもおとなしくて可愛らしいお子様でした」

屑「…………やっぱり死のうorz」


………………


ゆ「……お客さま、現在のお客さまのお体は、SCR5000Si/FL CapelIIとなっております。
 お客さまは人間の脳幹をお持ちですが、身体制御系はSCR5000Si/FLのものですので、ロボット三原則の制約下
 にあります。
 したがいまして、第二原則に則り、身体制御系はお客さまの脳幹へ危害を加えることができません。
 また、第三原則においても、無意味な自壊行為となりますので、行動制約事項に二重に抵触します。
 先だってのような、早まった行為は実行できませんので、悪しからずご了承くださいませ(ぺこり)」

屑(……ううっ、死ぬに死ねんのか、俺は……orz)


- ヲハリ -
---------------------------------------------
……もうなんかいろいろな意味でスマソorz
279271:2007/02/05(月) 22:11:19 ID:VN53Z94R0
私が、うっかりな事書いたばっかりに、職人様のお手を煩わせてしまいました。
で。「ろぼっとさんげんそく」って何?

それから、ええと、一体何体、ゆめみちゃんは有るの?
シオマネキによる破壊から復帰?
でも、それを・・・・誰が、行ったの?
それから屑屋ちゃん。。。。の移植はゆめみちゃんが行ったのだから????

のぞみちゃんはわかるけど・・・。。。

あわー うわー いわ− おわー えわー
280名無しさんだよもん:2007/02/05(月) 22:33:12 ID:n0XuB/ap0
「ロボット三原則」は有名なネタ。多々あるSFの中で、これに縛られたロボットは実に多い。つか大半。
planetarianの中では「忘れえぬ遠い日の約束」として登場。ゆめみがシオマネキの前に立ったのもこれが理由。

あと、その他については一事が万事ネタだからして、深く考えるのイクナイ。
だいたい、この話の流れで行くと、「二体のゆめみが雨の街を歩く」というスゴイ構図になるわけでw
281名無しさんだよもん:2007/02/05(月) 22:55:31 ID:fb989KF20
うかつにスゲー面白そうなんて言ったばっかりに、お手を煩わせてすみません。

しかし楽しめました。ありがとうございます。
282名無しさんだよもん:2007/02/05(月) 23:03:56 ID:n0XuB/ap0
いえ、ネタ提供はありがたい限りです。
重症のSS書きたい病なので。

・・・というより、人のネタ横取りして、勝手に話作って、大変申し訳ございませんっ!
283名無しさんだよもん:2007/02/06(火) 00:18:20 ID:uglW2qMm0
それを言い出したら、Key・株式会社VisualArt's. と ビー・ビー・サーブ社 に頭を下げに行かないと。CO2A氏とかにも。
私達jに元の話を提供してくれたから、色々と書いたり描いたりできるわけで。
284名無しさんだよもん:2007/02/06(火) 01:06:24 ID:69KJJX9f0
機会があったら頭下げに行きたい俺ガイルorz
285名無しさんだよもん:2007/02/06(火) 01:07:52 ID:doJj6nsX0
>280
えーと

 ・あぶなくない
 ・つかいやすい
 ・こわれない

だっけ?
286名無しさんだよもん:2007/02/06(火) 01:15:07 ID:OqSyolMj0
SCR屑屋をイラストして欲しい今日この頃。
287名無しさんだよもん:2007/02/06(火) 09:27:40 ID:Cay6GYIU0
>>286

かしこまりました、お客さま。重要なタスクとして登録しました。
288名無しさんだよもん:2007/02/06(火) 22:38:54 ID:9P3qwouA0
マジに考えてみたけどさ、この設定だと
顔も身体も、みた目は、お客様お姉さまとゆめみお姉さまは同じだよね?
服の色は違っていて、インフォメーションリボンの有無が有るけど。
しかし、男の子が、気が付いたら小柄な女の子ロボットになっていた。
記憶以外は今までと全く異なるもので、良くなじめた物だと感心するよ。

しかも服は膝丈スカートだが、スリットが5本、股上まで有る、マイクロミニスカート形状。
周知プレイだよ。コレ。




あ。衆知か。




いや、衆智。。。。
289名無しさんだよもん:2007/02/06(火) 22:51:32 ID:9P3qwouA0
ゆ: お客様は、修理指示書が無いのにイエナさんの修理を行ってくださったり、鉄砲を使えたり、機械に詳しいのですよ。

の: では、男の人型に改造できるのではないでしょうか?

ゆ: のぞみさん?どういう方法を使えば自分自身を改造出来ますか?
ゆ: 動きを止めないと改造できないのですよ?ですから、のそみさんや私のお手入れはお願いできますが、お客様自身の御手入れは私やのぞみさんがわかる範囲内で無ければ出来ないのですよ。

く: ・・・・・(機械機械したものはわかるけど、制御系統でプログラムなんかはわからんぞ。俺)

の: スゴイデス。スゴイデス。造りは同じでも、知識データを入れ替えれば、他の用途でも使えるのですね。お姉さま達は。
290名無しさんだよもん:2007/02/06(火) 22:58:27 ID:69KJJX9f0
つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1170770137.jpg

お客さま@SCR5000Si/FLを、ざっくりラフスケッチしてみました。
服装は、あえてちょっと変えてみられたそうです。


……お客さま……いくらご自分のお身体ではないからといって、
その太ももは、あまりにも吹っ切れすぎではございませんか?
291271:2007/02/06(火) 23:52:59 ID:nLyp9P4N0
私も他人のアイディアで遊んでしまいます。
>>290
うむ?タバコ・・・・お客様お姉さまはタバコすえるんだ。

で。こういう服なら、運動用具売り場のお姉さん風の服も良いのかも。
あえて描けば、キュロットスカートやホットパンツなどでも良いのかも。
そうすると、腿に拳銃入れを付けられるでしょ?
(背丈150cm 胸最大突起部で77cmCカップ ウエスト周り55cm ヒップ周り85cmと想定)
両脇をベルト部分から幅5cm位のスリットを10cm間隔で2本入れて、ヒモをハシゴの様にかけるの。放熱用に。
292名無しさんだよもん:2007/02/06(火) 23:55:31 ID:69KJJX9f0
正確にはタバコではなく、電子頭脳の強化冷却剤。
えいとまーんえいとまーん。


・・・さて、清書しよ。
293名無しさんだよもん:2007/02/07(水) 04:33:50 ID:l/gYErd40
この「3人」が例の40〜30年ほど前の世界( >>65-75 )に迷い込んだらどうなるのかな?
戦争前のでも良いし、戦争で皆が非難して、ゆめみさんが1人でいる時でも良いのだけど。
ああ、のぞみサンのいた世界でも良いか。

でもさ、あの「葛也さん」がゆめみちゃんになったのを皆さんが見たらすごい衝撃と混乱になると思うのね。
それとも、時空移動中は見た目もとの身体に戻るのかな? 

っていうか、あの、1日だったりすると、屑屋さんの精神は破壊するだろうなぁ。
294名無しさんだよもん:2007/02/07(水) 10:22:11 ID:FSS4Auqc0
>>293

むしろ、ゆめみとのぞみとSCR屑屋が、過去の花菱デパートへ。
SCR屑屋はゆめみの衣装を借り、オプションのリボンはなし。

フリーズした新品ゆめみの代役として、突如現れた三体のSCRに代役を任せるスタッフ。
三体のうち、新品ゆめみと外見が同じ一体を選び、無線でシチュエーションデータをロード、
壇上に向かわせる・・・

295271:2007/02/07(水) 12:14:46 ID:d1KcddSi0
夜、閉館後、電源の弱い場所で暮らす3体の自動人形は
早々と「バッテリーの温存」をするべく受付付近の椅子に座りおしゃべり以外の行動を控えていた。

なにしろ、イエナさんを駆動した結果、電源が一時的によう量不足になった上に
今までは1体で、51週休止:充電、1週間駆動 だったのが
これからは3体で色々行わないといけない。

そこに、突然のぞみみさんの斜め前に、例の三角形の光が・・・・・

の: 「お。お姉さま、怖いです。コレ何ですか?」
く: 「あれ、コレは以前のタイムトンネル。タイムマシーン?」
の: 「きゃー」

結構な吸引力があるらしい、音はしないが、髪の毛やインフォメーションリボン、スカートなどがはためき、引張られている。

ゆ: 「のぞみさん」
く: 「のぞみ」
2体は急いで駆け寄り、引き出そうとした。が逆に引きずり込まれてしまう。




296271:2007/02/07(水) 12:23:20 ID:d1KcddSi0
閉店後の、戸締りと今日の営業成績、そして、明日のために、打ち合わせなどを行っていた。
館長が、受付脇のカウンターで書類を書いていると、
突然、見慣れたゆめみさんと、格好と色が違う服の2体の娘たちが現れた。
「ほしのゆめみ」「ほしののぞみ」「ほしのくずや」と名札に書いてある。

館長(以下 館)  :  「お−いみんな。 大先輩が来たぞ。」

と大声で呼ぶ。
皆が駆け寄ってくる。
その後ろを少し遅れて、コトコ歩いてほしのゆめみさんが来る。

そして、館長以外、絶句。

何しろロボっ娘が3人で来たからだ。

先に我に返ったのはゆめみさんだった。

ゆ(若) : 「ゆめみさん?くずやさん?と、のぞみさん?」名札を見て名前を確かめる。
ゆ(若) : 「館長、変です、ゆめみさんのIDが違います。稼働時間が短いです。」
ゆ(若) : 「ゆめみさん、何か有ったのですか。外見的には、ゆめみさんの名札のゆめみさんはゆめみさんですけど、くずやさんの名札のゆめみさんも外見はめみさん。ゆめみさんが・・・・・ゆめみさんが・・・・」

と言いながら自動緊急停止が働いて急停止した。
おそらく思考が無限繰り返しになったと判断したのだろう。
この場合、自己診断で問題が無ければ復帰するから1〜2分待てばよい。

館: 「ほしのくずや? って 葛也君か?」
く: 「はい、オレです」
館長は苦笑しながら、向きを変えた
館 : 「のぞみさん、はじめまして。未来からようこそお越しくださいました。」
と言って、のぞみさんに右手を出す。
の : 「はじめまして。ほしののぞみです。 よろしくお願いします。」
297名無しさんだよもん:2007/02/07(水) 12:26:44 ID:d1KcddSi0

こんな感じはどうですかね?
以下?誰かが書いて下さっても良いですし。私も後日投下しようかな?
298名無しさんだよもん:2007/02/07(水) 12:51:28 ID:5e+QVRad0
>>297

続き待ってるwktk

んじゃ、俺は>>294の発展形で、「TimeTripper」本編の異聞でも・・・
299名無しさんだよもん:2007/02/07(水) 21:25:10 ID:2XjG/Izr0
『意外なる再会』とその後日談で、SCR5000の姿になってしまった、屑屋あらため「ほしのくずや」さん。
彼らが『Time Tripper』のシチュエーションに巻き込まれ、四十年前の花菱デパートに乱入したらどうなるか?

……それでは、>>67から脱線大暴走を開始いたします。
300『Time Tripper異聞 〜ほしのゆめ狂想曲〜』(1/3):2007/02/07(水) 21:25:45 ID:2XjG/Izr0
観客席がざわつき始めるのと同時に、スポットライトが落とされた。
「ど、どうしちゃったの?」
「まずいですね……フリーズしてます」
「倉橋君、なんとか間を持たせるんだ。……三ケ島君、再起動できるか?」
コンソールの脇に立った人々……ゆめみの言うことが本当なら、プラネタリウムのスタッフ達だ……の、狼狽する声が聞こえてくる。

その時、ゆめみが俺の脇を抜け、ステージに向かった。
「お、おい!?」

「……館長さん、あとはわたし達が引き継ぎます。続けてください」
「ゆめみ!?」
「ゆ、ゆめみちゃんが……四人!?!?」
若い女性スタッフが、驚きの声を上げた。

無理もない。廉価版とはいえ最新型(当時)のコンパニオンロボット・SCR5000シリーズが、俺も含めて突然三体も増えたのだ。
カタログ価格にして約五千万円。貧乏プラネタリウムには似つかわしくない、豪華キャストならぬ「高価キャスト」だ。

「とにかく、今はこの場をなんとかしましょう。……君達、どこの所属か知らないが、協力してくれないか?」
眼鏡を掛けた若い男性……三ケ島と呼ばれたスタッフが、もの凄い勢いで携帯端末のキーを叩きながら言った。
「はい、お役に立てることでしたら何なりと」
ゆめみが能天気に答える。
「ええと、一番ゆめみちゃんに似ているのは……」
チーフらしい女性……先程、倉橋と呼ばれたスタッフが、俺達を品定めするように見る。

……髪や衣装の色からして違う、のぞみは論外。
「現在の状況データを、君の『/data/ext』ディレクトリにロードしたから、それに合わせて行動してくれればいい」
……ゆめみは、インフォメーションリボンを装備している点が違う。
「すまないが、よろしく頼んだよ」
……となると、残るのは……

……いや、待て。ちょっと待ってくれ。
301『Time Tripper異聞 〜ほしのゆめ狂想曲〜』(2/3):2007/02/07(水) 21:26:47 ID:2XjG/Izr0
『大変失礼いたしました、……それでは改めまして、SCR5000Si/FL改め"ほしのゆめみ"より、皆さまへのご挨拶です!』
そんな俺の願いも空しく、再び点灯したスポットライトは、狙い過たず俺の姿を暗闇に浮かび上がらせていた。


「…………あ、あー」
観客の目が、俺に集中する。
無くなったはずの心臓が、バクバクと音を立てる。
出ないはずの汗が、背中を伝う。
感情などでは変動しないはずの体温が、急上昇していく。

……ええい、ままよ。
俺は、完全に開き直った。


「えー、観客の皆さんからの投票により、『ほしのゆめみ』という素晴らしい名前をいただいたことに感謝する。
 不慣れなこともあると思うが、今後とも暖かいご支援、ご指導ご鞭撻をお願いしたい」

俺の……SCR5000の少女のような繊細な声色が、広いドームに広がっていく。
あまりにも不釣合いな口調を伴って。

「……本日は、俺の命名記念特別投影として、特別記念番組『ちいさなほしのゆめ』をご用意させていただいた。
 楽しんでいただければ、幸いに思う。

 ……さあ、投影を始めよう」

俺は静かに宣言し、スポットライトの影にいる相棒の少女達に、苦笑混じりで微笑みかけた。
万雷の拍手が響いた。


……って、んなわけあるか。
302『Time Tripper異聞 〜ほしのゆめ狂想曲〜』(2/3):2007/02/07(水) 21:28:00 ID:2XjG/Izr0
「……ちょ、ちょっと!何やってんのよあなた!」
呆気に取られている観客達の視線の中、『ゆめみ』を紹介した若い女性館員に腕を掴まれ、俺は壇上から引きずり下ろされた。
その傍ら、リボンを自ら外し、身づくろいをしたゆめみが、いそいそと壇上に上がっていくのが見えた。

そして、開口一番。
「……というような冗談はぁ、さておきましてぇ、」
我に返った観客が、どっと笑う。
……それでは改めまして、自己紹介させていただきます」
そう言うと、ゆめみは改めて、丁寧な口調で自己紹介を始めたのだった。


何れにせよ、都合四十年という長い年月に養われたゆめみの『機転』によって、その場はなんとか取り繕われた。
俺がスタッフから大目玉を食らい……その後『正体』を知られて大騒ぎになるのは、また別の話である。


- 以下略 -
--------------------------------
クロスオーバー三次創作、とでもいいましょうかw
303271:2007/02/07(水) 23:23:38 ID:JkvgFIZR0
誤字脱字。誤記などはお許しください。あと、名前の書き間違いとかも。

>>261 >>274 >>290 を元に私の妄想も入れて

---------------------------------
[登場ロボっ娘]
・SCR5000Si/FL ほしのゆめみ(以下「ゆ」)
 花菱デパート本店屋上プラネタリウム館のロボット解説員。
  服装色は青。勤続10年目にインフォメーションリボンを付けて貰う。
  のぞみからは「お姉さま」または「ゆめみお姉さま」、屑屋からは「ゆめみ」と呼ばれている

・SCRi5500Si/FL ほしののぞみ(以下「の」)
 花菱デパート城北支店屋上プラネタリウム館のロボット解説員。
  服装色は赤。ゆめみ達から、3年後の製品なのでインフォメーションリボンは標準装備。
   背丈はゆめみ達よりも少し低い。
  ゆめみからは「のぞみさん」、屑屋からは「のぞみ」と呼ばれている

・SCR5000Si/FL 中身は屑屋(以下「屑」)
 被害者。元は人間。『意外なる再会』(>>151->>155)における羞恥プレイに耐え切れず衝動的に自殺を図るが、
ゆめみの手で脳幹をSCR5000の筐体に移植され無理矢理復活(>>157)。
  服装色は緑。インフォメーションリボンなし
  便宜上「ほしのくずや」と名乗るが、ゆめみからは「お客様」、のぞみからは「お客様お姉さま」と呼ばれている

・SCR5000Si/FL ほしのゆめみ(以下「ゆ(若)」)
 花菱デパート本店屋上プラネタリウム館のロボット解説員。
   過去の世界の住人
  服装色は青。配属され間もないため、インフォメーションリボンは付いていない。
    ---------------
制服は、花菱デパートの制服に似せた、ロボっ娘に適した意匠となっている。
304271:2007/02/08(木) 00:22:31 ID:29sHNm/W0
一応共通認識は必要かと思いますので4人をまとめたのですけど、間違い有りませんか?
出来るだけ矛盾点は無くしたいので、皆様の妄想と離れすぎていないか見て下さい。


40年前の世界
 館長
  あ〜?名前なんだっけ?
 倉橋 里美 (くらはし さとみ) 解説主任
   解説委員を行っている。
   解説委員を増やして欲しいと館長に言ったら 「ほしの ゆめみ」 さんを配属された、先輩、兼 教育係り。
  ほしの ゆめみ さん
  10代後半女性の平均的体型である低身長型 自動人形
 三ヶ島 吾郎(みかじま ごろう)さん
   ほしの ゆめみ お嬢様の御付。ゆめみさんの修理・手入れ係りとして、涼元精機社から出向。


32年前の世界
 森見 由香(もりみ ゆか)解説員 配属
   ほしの ゆめみ さんの8年後輩にあたる解説員。


30年前の世界
 ほしのゆめみさん は勤続10年の記念にインフォメーションリボンをもらう。


現代
 屑屋
   名前 なんだっけ?
   迷い込んだ場所で ほしのゆめみ に出会う。

合ってます?
305名無しさんだよもん:2007/02/08(木) 00:55:59 ID:hBdMaBKR0
>>304

三ケ島君の名前は「三ヶ島 吾朗」(漢字がちょっと違う)。
「涼元精機社」というのは、俺が勝手につけたメーカー名(公式設定ではない)。
元はメーカー出向だが、そのまま花菱プラネタリウムに「婿入り」=転職してしまったので、
現在は花菱プラネタリウムの社員(いつ転職したかは不明)。
ゆめみのことは、お嬢様というより徹底的に機械として扱っている(が、整備するべき対象を過信しすぎるきらいがある)。

そのほかには、
・黛ちはや(非常勤の解説員。冷静沈着)
・津野秀史(整備主任)
・古賀茜(解説員。大雑把で能天気。短髪)
もいる。
特に茜ちゃんは、雪圏球をプラネタリウムのグッズにしようと言い出した張本人だったり、何気に目立つ役どころ。


まああれだ、読む人にあまり「予備知識」を要求しないほうがいいと思う。
小説から読み取れる設定は、読む人に任せてしまったほうがいいし、どうしても必要な説明はSSの中にうまく織り込めばOK。

一応俺は、ゲームさえやっていればSS単体で読めるように書いてるつもり。
小説が手元にあれば、なおグーだけど。
306名無しさんだよもん:2007/02/08(木) 08:14:45 ID:JnTL+mXe0
>>304

「ゆめみの勤続10年=30年前」、とは明示されてないよな。
「ゆめみ10年目」から「戦争勃発」までの期間は、明らかにされてなかったように思う。
307名無しさんだよもん:2007/02/08(木) 22:57:49 ID:3vgr4zbC0
こんばんわ、以前 「ゆめみの欲しいもの」と題したSSを投下したものです。
あの後に続けて投下された話し(ゆめみが抱かれるSS)の後日談を書いて
みましたので、これから投下します。(エロが駄目な方はNGの登録をお願いします)
308名無しさんだよもん:2007/02/08(木) 23:03:13 ID:hBdMaBKR0
>>307
そのSSを書いたものです。
ワクテカして待ってます。
309名無しさんだよもん:2007/02/08(木) 23:04:43 ID:LnZwnAEw0
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +        
 と__)__) +
310ゆめみの欲しいものII (1/7):2007/02/08(木) 23:11:23 ID:3vgr4zbC0
「ゆめみ姉ちゃん、また明日ね!!」
「ありがとうございました、またの御来場をお待ちしております」
 舞台装置を片付けている俺の傍らで、少女が子供たちにぺこりと頭を下げる。子供たちは
 それを見届けると、大きな声をたてながら移動プラネタリウムのテントから走り出て行った。

「最近は子供たちが遅くまで残るようになったな…」
「私は別に構いません…それに、あの子達は以前よりも私によく話しかけてくれるようになりました。
 それを嬉しく思っておりますので…」
 子供に向けた笑顔そのままに、少女が俺に語りかける。彼女の名前は、”ほしの ゆめみ”…
 俺に人間としての心を…そして俺に”継ぐべき”ものを教えてくれた、掛け替えのない”守るべきもの”だ。
「ふぅ、これでとりあえず片付けは終わりだ。食事にしよう」
「あの、お客様…」
 ゆめみの顔から笑顔は消えていた。そこに浮かんでいたのは、何かをはにかむような表情。

「ああ、そうか…この前のメンテナンスからそろそろ一週間か」
「自己診断モードを実行したところ、要メンテナンスの結果が出ておりますので」
「わかった、食事が終わったらメンテナンスをしよう」
 俺はそういう言ってから、いつものようにゆめみを背負って仮設小屋へ戻った。
「申し訳ありません、お客様…下肢ユニットがもう少し堅牢であれば、このようなことは…」
「気にするな、ゆめみ」
 半年前、俺は大改造と言ってもさしつかえない改修を彼女に施した。そして得たものは、一目見ただけ
 では人間と代わらない反応と感情表現。そして、人工だが、女性だけが持っている…生殖器官。
311ゆめみの欲しいものII (2/7):2007/02/08(木) 23:12:08 ID:3vgr4zbC0
「お客様、現在の損耗レベルなら問題なく独立歩行が可能です」
「無理は禁物だ…なんせ、今のお前は代替パーツが中々みつからん身体なんだからな」
「申し訳ありません…」
 得たものと同時に、失ったものはあった。今のゆめみの身体の大部分を構成しているパーツは、
 風俗店で稼働させることが目的の筐体から移植したものだ。移動範囲がプラネタリウムより狭い店の中に
 限定され、そして繊細な動きを再現するために作られた駆動パーツは、極めて耐久性が低かった。

「とりあえずベッドで待っていろ。さっさと食事を終わらせてくる」
「お客様」
「なんだ?」
「いつものように…私と一緒に食事を取っていただけませんか?」
 ゆめみが切ない表情で俺に訴えかけてきた。最近、ゆめみは俺が食事をとっているときに向かいの席へ
 座っている。ゆめみ曰く、俺が飯を食っているのを見るのが楽しみになったそうなのだが。
「…わかった。だが、残念だが今日も軍用のレーションだ。美味くないぞ?」
「それでも構いません」
 ゆめみがにっこりと微笑みながら俺の顔を見つめている。
「わかったよ、好きにしてくれ」
「はい」
 かくして俺とゆめみは、小さな折畳みテーブルを挟んで向かい合う状況になった。かすかに潤んだ目で
 微笑み、俺が飯を食う様をじっと見ている…まぁ、ゆめみが喜ぶことなら、どんな汚れ事でも俺は成し
 遂げるつもりだ。
 だから、この程度の事で特に問題はない…。

 そう、ここまでは…
312ゆめみの欲しいものII (3/7):2007/02/08(木) 23:14:03 ID:3vgr4zbC0
 お客様の食事が終わり、私の身体はベッドへ丁寧に運ばれて行きます。ベッドの縁に腰を下ろした
 体勢になった私に、お客様は少し間を置いてから一言だけ呟かれました。
「…始めるぞ」
「はい、承知いたしました」

 私はコスチュームのスカートに手をかけ、ベルトを緩めます。スカートを少しずりおろしたところで
 立ち上がろうとしたところ、私の肩をお客様が静かに押えてきました。
「立たなくていい」
 そのままベッドにゆっくりと寝かされた私のスカートを、お客様が慣れた手つきでスムーズに脱がせて
 いきます。あっというまに、私の下半身は一糸纏わぬ状態になりました。

「下肢部、下腹部のメンテナンスハッチを開放する」
 お客様がメンテナンス用の小型端末を、耳の横にあるアクセス用ポートへ接続しました。一瞬の間を
 おいてから人工女性器の周囲を除いた下腹部、そして太股内側の外装が静かに捲りあがります。
「…」
 黙ったままのお客様が、僅かに捲り上がった私の外装に手をかけました。ゆっくり、慎重に作業をされている
 お客様の視線は、私の下腹部に注がれたままです。私の身体が…あの人から授かった、『あそこ』が…


  あの人に、見られている。


 そう思った瞬間、私の下腹部が熱い何かに締めつけられるような感覚が、私のセンサーに伝わって
 きました。
313ゆめみの欲しいものII (4/7):2007/02/08(木) 23:15:30 ID:3vgr4zbC0
「…んっ」
「大丈夫か、ゆめみ?」
 意図せず発してしまった音声に構うことなく、お客様が無表情で私に聞いてこられます。

「…大丈夫です。続けてください」
 いつもどおりのやりとりです。きっと今の私は、恥じらいと期待の表情を浮かべているに違いありません。
「わかった」
 お客様が私の下半身に視線を戻しました。でも、この人にはきっと判っている筈です…私が”興奮状態”に
 あることが。

「…はぁ…はぁ……はぁ…」
 人工女性器がアイドル状態から稼働状態にシフトし、発熱が始まりました。そしてその余剰熱は私の
 筐体全体の温度を上昇させるのです。放熱のために冷却液潤滑機能を司っている人工心臓の
 動作周期がどんどん短くなり、放熱を補助する人工肺が発生させる呼吸も荒くなっています。

「ん…はぁ…はぁ…んんっ」
 お客様の事を思う度、人工女性器の稼働レベルが上昇し…人工愛液の分泌が始まりました。外装が
 めくられていない、股間部の割れ目から無色透明の液体が音もなく染みだしてきます。

「も…申し訳ありませ…んっ! あんんっ!!」
 お客様が傍らの布で、私の割れ目から染み出している愛液を拭きとりました。特に敏感なところは避けて
 頂いているようですが、それでも著しい快感が私のセンサーを覆うように伝わってくるのです。
314ゆめみの欲しいものII (5/7):2007/02/08(木) 23:18:23 ID:3vgr4zbC0
「はぁ…はぁ…あんっ…んっ!…ああん」
 息を荒げ、喘ぎ声をあげるゆめみ。これでも以前に比べれば、かなりマシになったほうと言える。最初は
 無闇やたらに身体を捩らせるわ、愛液を過剰に分泌するわでメンテナンスどころの騒ぎではなかったのだ。
 それにこんな状態のゆめみをスルーして作業を進めることなど、当時の俺には出来たもんじゃなかった。

「んはぁ…はぁ…も、申し訳ありませ…んっ! あんんっ!!」
「…」
 慣れというものは恐ろしい。今の俺は、メンテナンスの時に限れば少々の事では動じなくなった。ひたすら
 無表情を装って作業をすすめ、溢れてくる人工愛液は度を越すたびに拭きとればいい。屑屋時代に培った、
 自分の感情を押し殺す技術…これがこんな所で役に立つとは、想像さえしなかった。

「下肢の電源を切る」
「承知…んっ…いたし…まし…あっ」
 下肢の電源をカットするには、人工女性器のすぐ隣にあるハードウェアスイッチを触らなければならない。
 俺の節くれ立った手の甲が、彼女の敏感な部分を何度もかすめる。

「あ…あ…んん…」
 一瞬上半身を軽く捻った直後、彼女の下肢から力が抜けて行くのがわかった。曲げていた膝と股関節が
 ゆっくりと伸び、毛布に埋まって行く。そのまま俺は股関節ユニットの接合部に工具をあてがい、彼女の
 可愛らしい足と身体を繋いでいるパーツを丁寧に取り外して行く。
315ゆめみの欲しいものII (6/7):2007/02/08(木) 23:20:12 ID:3vgr4zbC0
「はぁ…はぁ……はぁ」
 彼女は元々呼吸をする必要がない。今の呼吸は、筐体の加熱を防ぐ為に放熱を行う動作だ。そしてその
 熱源は…俺の手のすぐそばでひくひくと蠢いている、熱い蜜を湛えた園。ゆめみは自身からあふれ出る蜜と、
 俺の顔の間で視線を泳がしていた。

「よし、外れたぞ」
 そうこうしている間に下肢はあっさりと外れた。1週間毎にメンテナンスを実行し、常に新鮮な潤滑グリスと
 詰替えている彼女の股関節は、半年前に改修を行った時から殆ど磨耗が進んでいない。下肢側の接合部に
 グリスを補充し、筐体側の作業にとりかかる。その俺の手を、ゆめみがじっと見つめている。

「お客様の手…」
「俺の手がどうかしたか?」
「また傷が増えています」
「ああ、二日前にパーツを探しにいったときの傷だ…すぐに治るから気にしなくていい」
「でも…私のためにそんな…」
 荒ぶる吐息を抑え、ゆめみが俺の手に静かに触れた。その手は熱く、そして少し震えている。
「お前は自分の身を犠牲にして、何よりも大事な事を教えてくれた。それに比べれば、こんな傷はどうという
 ことはない」
「私は…私は…んっ」
「…気が散るから、もう少しの間静かにしていてくれないか」
「申し訳ありません…」

 メンテナンスのたびに繰り返される、彼女との会話…しかし今の俺には、そんな事は気にならなかった。
 彼女とのやりとりは、彼女がここに存在しているという証の一つでもあるのだから。
316ゆめみの欲しいものII (7/7):2007/02/08(木) 23:23:36 ID:3vgr4zbC0
「これはこの前手に入れた潤滑用グリスだ。今までのに比べて、磨耗度合いが更に低くなる筈だ」
 そう言いながらお客様は、私の筐体側股関節に手を差し入れました。
「ありがとうござ…あ…んっ!」
 あの人の手が、私の身体を弄っている…私の身体の中に、あの人の身体が入っている…筐体を
 改修してもらってからの、あの人との思い出がメモリーから矢継ぎ早に再生されていく。

  私を初めて抱いてくれたあの日の事。
  股関節の異常を訴えた時の、真剣に私の心配をしてくださったあの人の表情。
  いつも私のために、自らの身体が傷つく事さえ躊躇しないあの人…あの人を支えてあげたい。
  いつまでも一緒に、星の夢を語り継いでいきたい…あの人のイメージが私のメモリー内で乱舞する。

  お客様、お客様、お客様……お客様……お客様……お客様………

  何故こんなにも、あの人の事を思うようになったのだろう…ある日、子供たちが私の疑問に答えてくれた。
 『それはゆめみお姉ちゃんが、おじさんの事を好きだからだよ!!』
  好き? つまり好意を抱いている? 私が…お客様に?
 『ゆめみ姉ちゃんは、おじさんの事を本当に愛しているのね』
  あの子達の中で、一番年上の女の子が私に教えてくれました。そう…これが、人を愛する事であると。

「お客…様ぁ…ん…あッ…私は…お客様が…んんっ…欲しい…です…」
 いつのまにか、私の下肢は本に戻されていました。下肢に電源が再び入り、自己診断モードが自動的に
 実行されます…結果、異常なし。
「終わったぞ、ゆめみ」
「私…私は…」
 視覚センサのレンズ洗浄液が過剰分泌されています。声の震えが止まらない私は、我慢できずにお客様へ
 向かって両手を指し出してしまいました。
「まったく、本当に仕方のないやつだな…」
 お客様が私の身体を起こしてくれました。私はそのまま、差し出していた手をあの人の背中を巻き付けます。
 そして、私の口から自然に紡ぎ出される、いつもの言霊…
「お願いします…お客様…私を…抱いてください…」

〜END〜
317名無しさんだよもん:2007/02/08(木) 23:24:18 ID:3vgr4zbC0
以上で投下終了です。スレ汚し失礼しました…
318名無しさんだよもん:2007/02/08(木) 23:27:09 ID:hBdMaBKR0
>>310-316

ふむ、ご苦労さん。
じゃ、俺、風呂入るわ。


(キィ・・・パタン)





・・・・・・・・・

ブバッ!!(←鼻血)
319名無しさんだよもん:2007/02/08(木) 23:32:21 ID:Zn9G1pXO0
GJ!としか言えない自分がもどかしい。
320名無しさんだよもん:2007/02/09(金) 00:19:23 ID:qX7bt96mO
X クランプ
321名無しさんだよもん:2007/02/09(金) 11:58:52 ID:t8C1GwHe0
>>301の真ん中あたり、なにげに「星の人/系譜」の言い回しが混ぜてあるのな
322名無しさんだよもん:2007/02/09(金) 17:53:01 ID:ogbXJIRP0
「・・・・・・み・・・ゆめみ、おい、ゆめみ!」(ユサユサ)

「・・・ふぁ?・・・お客さま?」
「誰がお客さまだ、誰が」

「・・・あら、葛谷先輩?」
「何寝ぼけてんだよ、お前は・・・昼休み終わってるぞ」
「あ、あら?・・・も、申し訳ありませんっ!(汗)」

「ったく・・・何の夢見てたんだよ、お前」
「不思議な夢でした・・・
 わたしは解説員ロボットで、館長さんも先輩がたもいなくなってて、わたしだけで
 プラネタリウムを守ってるんです」
「・・・なんだそりゃ?」
「そして、葛谷先輩が30年ぶりのお客さまとして来られるんです」
「それで『お客さま』なわけか・・・
 まあしかし、なんだ。『ドジ初段』のお前一人に運営任せたら、こんな貧乏プラネタリウム
 一発で潰れるぞ(ははは)」
「!葛谷先輩、ひどいです・・・(ぐすん)」

「ああ、冗談冗談。言い過ぎたよ。
 ・・・・・・ほら、昼からの投影、解説お前だろ」
「そ、そうでしたっ!(あたふた)・・・・・・きゃぅ!」

(ドシーン!ガラガラ)

「・・・・・・(やれやれ・・・)」

323名無しさんだよもん:2007/02/10(土) 06:49:14 ID:fvMf71Kc0
>>290

つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20070210064658.jpg

お客さま@SCR5000Si/FLを、わたしのホロスナップ機能で撮影してみました。


……お客さま……太ももが…………その…………
324名無しさんだよもん:2007/02/10(土) 07:40:14 ID:QW4eYI5+0
3人の揃ったホロスナップ。キボン
だとか
約40年前に戻って、館長以下、全員集合ホロスナップ、キボン。
とか
リクエストしたら頃される?

ってか 「お客様」「屑屋」はいつのまに「ほしのくずや」「葛也」などの名前になったの?
325名無しさんだよもん:2007/02/10(土) 08:01:39 ID:QW4eYI5+0
キボン だけだと良く無さそう なんで、何か書けないかPS2版に付いてきた小説読んでくる。
326名無しさんだよもん:2007/02/10(土) 08:52:39 ID:nF+qmDIOO
>>
327名無しさんだよもん:2007/02/10(土) 08:57:55 ID:nF+qmDIOO
操作間違えたorz

>>324
屑屋は公式には「屑屋」であり、名前は任意。
「お客さま」ではまずい時に、俺が勝手につけた出任せダスw

あと、全員集合ホロスナップは描くと間違いなく氏ぬるので、前向きに検討しますちうことで(ぉ
328Binary 第14章『Affection』(1):2007/02/10(土) 21:21:24 ID:d5+aYuQv0
午前9時。
起動シークエンスと各部チェック終了を待って、ゆっくりと起きだす。
まだ夢の中にいるあの人を起こさないように注意しながら1杯分のコーヒーを入れる準備をして、わたしは

外に出た。

いつ以来だろうか、雨は止んでいた。
いつも雨音と共にあることにすっかり慣れたわたしの集音装置に、ピンと張り詰めた静寂の音が聞こえて

くる。

空を見上げる。
そこにあるのは、いつもと変わる事のない、分厚い雨雲。
でも、いつも雨煙の中から見上げるのとは違い、今は灰色の綿を敷き詰めたような雲の輪郭がわたしのメ

インカメラにもはっきりと写っている。
そしてところどころ雲が薄くなった部分は雲の上の太陽の光が通って白く輝いて見え、濃い灰色の厚い

部分との見事なモノトーンのコントラストを描いている。
ここから見渡す限り、雲の切れ間はない。
残念だけど、陽光はここまでは届いていない。
今、雨が止んでいるのも一時的なものなのだろう。
でも、たとえ厚い雲のヴェールに覆い隠されていても、太陽も星たちもあの雲の上で変わることなく今も日

々を巡っている。
こちらからは見えていなくても、太陽や星たちはわたしたちを見ていてくれている。
それを改めて実感できたことが、少しうれしかった。
329Binary 第14章『Affection』(2):2007/02/10(土) 21:22:56 ID:d5+aYuQv0
出発前にあの人が交換・調整してくれた頚椎部ユニットのエージングを兼ねて、辺りを見回してみる。
辺りには大気中から飽和した水分がもやとなって白く淡く漂っている。
それでも、視界を完全にさえぎるほどの濃さではない。
すぐ近くの疎林の木々の幹にもやが絡みつき、神秘的な光景を描いている。
そして反対側に振り返れば、遠くに横たわる峻険な山々ののこぎりの歯のような鋭い稜線が、すぐ目の前
の幻想的な情景と鮮やかな対照をなす雄大な自然の姿をわたしに見せてくれていた。

頚椎部のユニットは何の問題も無く稼動している。
少し懸念していた違和感も全く無く、電磁モーターもジョイント部も静かに、そして滑らかにわたしの意思
に応えてくれている。
――問題無いみたいね――
(はい。まったく問題ありません)
ポーラさんの呼びかけに、わたしは笑顔で答える。

わたしたちは今、山間の小さな居住地域に向かっている。
ここは、その途中にある小さな小屋。
ここから目指す居住地域までは、トラックで2時間ほどで到着する。
無理をすれば昨日到着する事も出来たけど、あの人は日没後に行動するリスクを避けた。
それでよかったんだと思う。
ここで一晩を過ごさなかったら、もしかしたら雨が止む事もなかったかもしれない。
こんな素晴らしい風景を目の当たりにする事もなかったかもしれない。
おびただしい数の運命の糸の中の、ほんのちょっとした交わり。
あの日、わたしがあの人に出会った事も、今、わたしがあの人と一緒にここに存在する事も、運命の糸の
交わりのひとつなのだろう。
そんな運命のちょっとした悪戯に、わたしは感謝した。
330Binary 第14章『Affection』(3):2007/02/10(土) 21:24:49 ID:d5+aYuQv0
――でも、彼も本当に大したものね。自分で言うのも何だけど、私の筐体はメンテナンスフリーである代
償として、整備性はかなり犠牲になっているのよ。それなのにその事に対して何ら不平を漏らすわけでも
なく、しかもマニュアルがあるとはいえ、ロボット工学や電子工学の専門家でもないのにここまで整備でき
るなんて……。驚きを通り越して呆れるわ――
(はい。本当にお客さまにはどれだけ感謝しても足りません)
――本当にそうね――
姿形はどれだけ人間の皆さまを模していても、わたしたちロボットは人間の皆さまの手を煩わせなければ
継続しての稼動は決して出来ない。
以前のわたし――SCR5000Si/FL CAPELUだったころのわたし――に一体どれだけの方々が関わって
いたのか、わたしは正確には知らない。
きっと日常の直接的なメンテナンスを担当してくださっていた吾朗さん以外にも、大小の関わりを持った
大勢の方々がわたしの稼動状態を維持するために働いて下さっていたのだろうと思う。
それを今、あの人はたった独りですべて行っている。
しかも、部品の調達すらなかなかままならないこの世界で。
そこにどれだけの苦労があるのか。
あの人は決してわたしには語ってくれないので想像するしかないけれど、きっと相当なものなのだと思う。
だからわたしは、自分に今出来るすべてを使って、人間の皆さんに今は見えない星空をご覧いただく。
あの人の『思い』に応えるために。
それが、今のわたしに出来る、あの人への精一杯の贈りもの。

「発声練習」を終え、わたしは近くにある岩に腰掛け、眼前に広がる山並みを眺めていた。
あの人が起きた気配は、まだない。
今日の夕方までに目指す居住地域に到着できればいい、とあの人が夕べ言っていたのを思い出す。
日頃の疲れもあるだろうし、正午まではそのままお休みいただこう、とわたしは考えた。
331Binary 第14章『Affection』(4):2007/02/10(土) 21:26:09 ID:d5+aYuQv0
風がわたしの頬を柔らかく撫でながら通り過ぎる。
幸い、雨はまだ降るような感じではない。
でも、わたしの頭上に低く垂れこめた雲は、様々に形を変えながらものすごい勢いで流れてゆく。
このつかの間の雨の切れ間も、もうそう長くは続かないのかもしれない。

(ポーラさん、ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?)
――何? ――
(ポーラさんの開発担当の方というのは、どのようなお方だったんですか?)
思い切って以前からの疑問を聞いてみた。
――私の? ――
(はい。今のわたしにお客さまがいらっしゃるように、ポーラさんもこの筐体で稼動してらっしゃった時には
開発担当の方がいらっしゃったんですよね?)
――ええ、そうよ――
(意識の中ではじめてポーラさんにお会いしてこの筐体に関するお話をお聞きしましたときから、ずっと気
になっていたんです。この筐体を丁重に保存処理し、再起動のために周到な準備をしていたポーラさん
の開発担当の方というのは、一体どんなお方だったんだろう、と。もしポーラさんがわたしにお話をするの
が嫌でしたら、話して下さらなくても構いません)
――そうね…… ――
しばしの間、何事か考えるような仕草。
(……ポーラさん?)
何か気まずい事を聞いてしまったのだろうかと、不安になる。
でも、ポーラさんは、
――……そうね、ゆめみちゃんには、知っておいてもらった方がいいかもね――
そう呟きながら、わたしの前に向き直る。

――……わたしの生い立ちから話したいから少し長い話になると思うけど、いいかしら?――
そしてポーラさんは、まるでおとぎ話を語るような穏やかな口調でわたしに語り始めた。
332Binary 第14章『Affection』(5):2007/02/10(土) 21:27:40 ID:d5+aYuQv0
――私がもともと対人戦闘の実験用ドロイドとして開発された、という話は以前したわね?――
(はい)
――私には実験用という目的の他に、もうひとつ開発目的があったの。軍のコンペティションに向けて、と
いう目的――
(コンペティション、と申しますと?)
――生身の人間に代わる、当人の意思のない命令に従順な兵士の開発……。 自国民が血を流すこと
なく戦争に勝利する為の、屈強な戦闘集団の形成。そのために必要な、心が無く血の通わない兵士を軍
が選定する為のコンペティション。そのコンペにメーカーを選抜させる為に、私は生み出されたの――

すべてロボットによって構成する軍隊の構想。
『勉強中』、ネットワークのデータアーカイブにアクセスした際に、それらしい記事があった記憶がある。
でも、その記事自体はほとんど憶測で書かれた物で、信憑性に乏しいものだった。
本当にそんな夢物語のような構想が進んでいたなんて、知らなかった。

――核兵器にしても、BC兵器にしても、人類が如何にして自分の手を汚すことなく相手国を蹂躙できる
かを追及した末の産物。当時のロボット技術はそれこそ秒進分歩だったから、いつかは本当に実現した
かもしれない。結果はあなたも知ってのとおり、そうはならなかったわけだけどね。そんな事情から、開発
された当初の私は今のように人間の心を理解する事も感情を持つ事もなかった。いえ、それは断じて許
されなかった――
(そうなんですか……)
――私には二人の開発担当主任がいたの。一人はロボット工学と人工知能のエキスパート。最終的に
私に保存処理を施した人。そしてもう一人は運動プログラムとコンバットタクティクスの専門家。私の軍用
としての運動パターンは、すべてこの人から教わったようなものね。この二人の他にも大勢のその道のプ
ロフェッショナルがこのプロジェクトに参加していたわ。まさに社運を賭けたプロジェクトだったわけ。おか
げで開発は恐ろしいくらい順調に進んだわ。当時考え得るメーカーの最先端技術の粋をすべて集めた
私のコンペでの勝利を、疑う者は誰一人いなかった――
(……)
333Binary 第14章『Affection』(6):2007/02/10(土) 21:29:45 ID:d5+aYuQv0
――二人とも、ものすごい情熱を持って仕事にあたっていたわ。その時の私はその事に何にも感じる事
は無かったけど、私の蓄積データベースに残されたあらゆる記録からそれはわかる。全社を挙げてのプ
ロジェクトとは言っても、実質二人の力で牽引していたようなものね。あの二人は文字通り、すべてを賭け
ていたわ――
(……)
――でも、そうはならなかった。好事魔多し、とでもいうのかしら。コンペを一週間後に控えた日の模擬戦
闘で、ちょっとした事故があったの。その事故のせいで運動関係の担当主任は、私の目の前でこの世を
去ってしまった……。そして、その事故の直接的な原因は、私がもたらしたものだった。それを目の当た
りにしてから、私には誰の目にも分かる変化が生じたの――
(それは、どういうことでしょうか?)
――何も筐体に異常が無いにもかかわらず体が震えるようになったの。また大事な人を傷つけるかもし
れない、と考えてしまうようになったの。模擬戦闘とはいえ、戦うことに対して『恐怖』を抱いてしまったのね
――
(そうしますと、あの時私の代わりに人間の方々と戦うことができたのは、どうしてなのでしょうか?)
――ゆめみちゃん、あなたを守ってあげたいと心の底から思ったから。あなたと彼が軽装対人戦車に襲
われた時の事を思い出してみて。あの時、あなたは彼を助けたい一心で心の底から叫んだわよね。あん
なに大きな音声は出せない設定になっているのにね。例えは少しは違うかもしれないけど、人間と同じこ
とよ。本当に相手の事を思うとき、人は普段以上の事をなす力を発揮することが出来る。それと同じ。だ
から私はあの時戦うことが出来た――
(相手の事を思う、ですか……)
334Binary 第14章『Affection』(7):2007/02/10(土) 21:31:01 ID:d5+aYuQv0
――……それを皮切りに、私はあらゆる感情に目覚めてしまった。もともと感情というものの知識はすべ
てプログラミングされていたから、様々な感情が発現するのにそう時間は必要なかった。でも、湧き出る
感情の制御の方法を分かっていた訳じゃない。突然泣き出したり、暴れたりしては強制停止命令を受け
ることの繰り返し。慌てたのはメーカー。大事なコンペの直前で、兵器としてもっとも必要ないものが備わ
ってしまったのだから、当然よね。すぐに私の人工知能と蓄積データベースの完全フォーマットとリカバリ
ーをするように担当主任に言ってきたわ。だけど結果として、私はフォーマットを受けずに済んだ――
(それは何故なんですか?)
――コンペ自体が中止になったから。試算されたコストに見合うだけの戦果が得られないと軍上層部で
判断されたためと聞いたけど、本当のところは分からないわ。結局、プロジェクトは即刻解散。メーカーに
は何の見返りも無く、手元に残ったのは余計な感情に縛られた金と時間と最先端技術の粋を集めた出
来損ないだけ。なんとも皮肉なものね――

自らの境遇を自嘲するかのように、寂しそうに微笑む。
その表情を見て、以前別の質問をしたときに言葉を濁した事があったのをふと思い出す。
もしかしたら、今の話の事を思い出していたのだろうか。
胸が痛んだ。

(あの、ポーラさん? もしお話ししづらいのでしたら、無理に話して下さらなくてもいいのですが……)
――大丈夫よ。気遣いはいらないわ。ゆめみちゃんにも知っていてもらいたいと思って話している事だし
――
(そうですか……。ですが、無理はなさらないで下さい)
――心配してくれてありがとう。じゃ、続けるわね――
(はい)
再びポーラさんの話に聞き耳を立てる。
335Binary 第14章『Affection』(8):2007/02/10(土) 21:32:31 ID:d5+aYuQv0
――プロジェクトの解散後、彼は民生部門への異動を命ぜられた。名目は「民間向け汎用コンパニオン
ロボットの開発のため」だけど、実質は誰が見ても左遷。一人で詰め腹を切らされた格好ね。その時、彼
は交換条件を出した。研究素材として私を民生部門に一緒に連れて行きたいと上申したの。その頃の私
は部門の中でも完全に浮いた存在で、メーカーも対処を持て余していた状態。了承を取り付けるのはそ
れなりに苦労したらしいけど、何とかOKはもらうことが出来た。メーカーとしても多大な時間と巨費を開発
に投じたわけだから、それなりに見返りがないと困ると判断したんだと思うわ。但し、メーカーはOSと基本
データベース、および蓄積データベースの完全フォーマットと運動系のデチューンを条件に出してきた
――
(完全フォーマット、ですか?ですが、今のポーラさんは……)
――そう。彼はデータベースをフォーマットをする「ふり」をして、運動系のデチューンのみを私に施した
の。当然、重大な職務規定違反。発覚すれば首のひとつくらいじゃとても済む問題じゃない。自分の身の
危険を冒してまでどうしてそんな事をしたのか。普通なら疑問に思うわよね――
(はい。どうしてなのでしょう?)
――もちろん私も疑問に思って彼に聞いてみたの。そうしたら、彼、こう言ったわ。『お前を殺すようなこと
を、俺はしたくはない』って――
(お前を殺すようなこと、ですか?)
――きっと私のことを、人間と同様に見てくれていたのね――
(人間と同じに……)
――とにかく、私の記憶と感情は、そのまま筐体に残された。もちろん対外的には以前所持していたデ
ータベースはすべてフォーマットされたことになっていたから、それ相応の振る舞いをしなければいけな
かった。でも、不思議と全く苦にはならなかったわ――
(それはなぜなんでしょう?)
小首を傾げる。
336Binary 第14章『Affection』(9):2007/02/10(土) 21:34:13 ID:d5+aYuQv0
――私をフォーマットをしなかったことに、彼の「愛情」を感じたから、かしら。もちろん、すぐにそんな結論
に達したわけじゃないわ。感情はデータとして持っていたから発現は早かったけど、愛情についての知
識は所持していたわけじゃなかったから。彼と一緒にいて、様々な実験に携わって、長い時間を彼ととも
に過ごした中で、少しずつ理解することができたの。もちろん彼はそんなことは私に対して一言も言って
ない。でも、私を見る時の目は、他人を見るときとは明らかに違う、優しい目をしていた。これは決して自
惚れなんかじゃない。確信を持って言うことができる――
(そうなんですか……)
――あの時の彼の一言で、私の心は決まったわ。どんなことがあっても彼にどこまでもついて行こう。彼
が私を必要としている限り、私は彼のためにすべてを捧げよう、って。これは人間とロボットの主従関係と
か、そういうことは関係ない、あくまでも私の意思。彼も、それを尊重してくれた――
(……)
――民生部門に移動になってからも、彼は精力的に働いたわ。いえ、軍事部門にいたとき以上に。もとも
と彼は争い事は好きな方じゃなかったから、民生部門のほうが肌に合っていたのね。私も、そんな彼を少
しでも助けたいと思って、彼への助力を惜しむことはなかった。そして数年後、彼は私の基本設計と実験
データを元に1体のコンパニオンロボットを設計した。それがSCR5000シリーズ。ゆめみちゃん、もとのあ
なたの筐体よ――

(素敵な関係ですね……)
自然とそんな言葉が出た。

人間とロボット。
普通、そこには主従関係以外のものは存在しない。
でも、『彼』とポーラさんの間にあったもの。
それは、そういった単なる主従関係を超越したもの。
普段から親密に接し、お互いを深く理解し、お互いを心から信頼しているからこそ得られる関係。
それは……。
337Binary 第14章『Affection』(10):2007/02/10(土) 21:35:46 ID:d5+aYuQv0
(ポーラさんはその方のことを、どう思われていたんですか?)
――……そうね。私は、あの人のことを愛していた――
少し恥ずかしそうに、わたしに言った。

誰かを愛する、という感情。
『愛』と言葉で言うのは簡単なこと。
でも『理解』しているかと聞かれると、わたしにはまだちゃんと答えることはできない。
とてもシンプルで、でも、とても難しいこと。

(……わたしも、お客さまのことを、……愛しているのでしょうか?)

あの人は、本当に大切なひと。
心の底から大切に思えるひと。
でも、それだけで『愛している』と言えるのだろうか?
今でもわたしにはよくわからない。
わからないことが、時に不安となってわたしにのしかかることもある。
だから、ついそんな事を聞いてしまったんだと思う。

そんなわたしの問いに、ポーラさんは優しく微笑みながらこう言った。
――……それは私が教えることじゃなく、ゆめみちゃん自身が見つけることだと思うわ。彼と一緒にいた
過去を振り返り、これから彼とともに過ごす時間の中で、自然と答えは導き出されるはずよ。心配しなくて
も大丈夫。わたしにだって理解できたんだから、ゆめみちゃんにもきっと理解できる日が来るわ――
338Binary 第14章『Affection』(11):2007/02/10(土) 21:37:47 ID:d5+aYuQv0
(そうですか……)
少しの落胆。
でも、実際そのとおりだと思う。
わたし以外に、この問いの答えを見つけることはできない。
だから、精一杯考えてみよう。
だから、精一杯悩んでみよう。
これからも、ずっと。
たとえ、答えが出なかったとしても……。

ひざの上に置いた手の甲に、雨粒がひとつ落ちて弾ける。
それは、瞬く間に天空に控える他の雨粒たちを呼び寄せる。
――降ってきちゃったわね――
(そうですね。残念です)
見上げれば、いつの間にか濃い灰色に塗りつぶされた雲。
先ほどまではっきりと見えていた山の稜線も、もう雲の向こう側。
もしあの人と先ほどまでの光景を見ることができていたら……。
次に雨が止むのは、いつになることだろう。
あの人を起こさなかった事を、少しだけ後悔した。
339Binary 第14章『Affection』(12):2007/02/10(土) 21:39:03 ID:d5+aYuQv0
――戻りましょう――
(はい)
腰掛けていた岩から、腰をあげる。
小さく見える小屋に向かい歩き始めようとして、わたしは歩みを止めた。

(ポーラさん?)
――どうしたの?――

(誰かを愛するということは、きっと素晴らしいことですよね……)
――ええ。そうよ――
(わたしにも、いつかわかる時が、きっと来ますよね?)
――ええ、ゆめみちゃんならきっと大丈夫よ――
ポーラさんの言葉に背中を押されるように、わたしは早足で小雨の降る中を小屋へと戻る。

今日もまた、あの人とともにある、一日が始まる――。
340 ◆JENA/hfgHs :2007/02/10(土) 21:51:27 ID:d5+aYuQv0
ご無沙汰してます。
第14章、アップにつき投下致します。

今回は正直、悩みました。
ゆめみさんが『愛』を理解していいものかどうか。
下手をすると、いま頭にあるストーリーをすべて変えなければ
ならなくなる恐れがありました。
でも、知らないことのほうが不自然かな、と思い、結局は
書くことにしました。
でも、これでよかったのか、正直今も考えてしまいます。

愛を理解することは、ロボットにとって本当に幸せなことなのか?
答えは、これから書き進めながら探そうと思います。

毎度のお目汚し、失礼しました。

ちなみに、自分は『星の人/異聞』は未読です。
DLはしてありますが、読んだら感化されそうなので……。
『Binary』を全編書き終わってからゆっくり読もうと思います。
341名無しさんだよもん:2007/02/10(土) 21:52:08 ID:fvMf71Kc0
あいかわらずいい話だなあ・・・

俺もこういうの書きたいorz
342310-316を書いた張本人:2007/02/10(土) 22:07:31 ID:sECfkeW00
>>340
GJです!

>ゆめみさんが『愛』を理解していいものかどうか
氏のSSだと、確かにこれはストーリーの根幹にかかわるテーマですよね。
私の場合は、エロに関わる要素として躊躇も殆どせずに取り入れてしまいましたが orz
それでもやはり、屑屋と自身の関係をゆめみが自発的に”愛”と認識するのは無理かな?
という思いがあり、子供から指摘を受ける…という形にしました。

>愛を理解することは、ロボットにとって本当に幸せなことなのか
手塚治虫氏の漫画でもこの辺りのテーマが何回か取り上げられていたような記憶が…。
343名無しさんだよもん:2007/02/11(日) 09:32:24 ID:+DnWO9uq0
>>340
てか、
「ゆめみさんが『愛』を理解する」
というのが、「Binary」の主題であると思っていた俺はだうすればいいのでしゃうか。

本編の「やりきれない部分」を補完するのが、二次創作の目的(?)の一つなわけで。
JENA氏の書きたいように進めればよいのではないかと。

……いや、今回はその「書きたいもの」の方向性で悩んでるのか。失礼しました。


>>342
俺は「『ただのロボット』が、自我に目覚め愛を知って変わっていく」というのが好きです。
「わたしは命令よりも大事なものを見つけました」、みたいな。
344 ◆JENA/hfgHs :2007/02/11(日) 11:03:13 ID:tUhmTCay0
>>342-343
メインタイトルの『Binary』という単語には、それ単体で『2進数』という意味があります。
このタイトルをつけた時、自分は「ロボットとしてのゆめみさんを常に意識する」という事を
ひとつの目標に挙げました。
今までの話の中でそれが表現できていたかはわかりません。
そう言った意味もあり、安易に愛に逃げ道を求めたくなかった、ということがあります。
>>343氏には申し訳ありませんが、簡単にラブストーリーにすることは、自分には許せませんでした。
ゆめみさんにしても屑屋にしても、
「互いに相手を意識する土台はあるが、それが愛情かはまだわからない」
という、なんとも曖昧な書き方になっているのはそのためです。
ですが、先に書きましたように、喜怒哀楽の先にあると思われる愛情という感情に
ゆめみさんがうすうすでも気付かない方が流れとしてはやはり不自然だろう、という
結論になり、今回の話になりました。
出来る事なら愛情表現の記述無しでそれを読んだ方に推測させるようにもっていければ
よかったんですが、自分に技量が足りませんでした。

これから先、屑屋とゆめみさんが今もっている感情が『愛』に昇華するのかしないのか
また互いがそれに気付く事があるのか、それは今後の話の進め方にかかっています。
ですが、基本的にはどのような形であれ、屑屋とゆめみさんには現世で幸せになって
もらいたいと思っている事に今も変わりはありません。
もともとそれが動機で書き始めた話ですから。

>>342
いつも楽しませていただいています。
自分にはえちな話は難しすぎますので、非常に勉強になります。
えちな話でしか表現出来ない事、というものもありますから。
これからも期待しております。
ちなみに手塚先生の事は、まったく意識していませんでした。

支離滅裂な長文、失礼いたしました。
345『夢を取り戻す者』(1/3):2007/02/11(日) 22:04:19 ID:+DnWO9uq0
―雨雲を切り裂き、炎を纏った白い槍が、遥かな天空を目指し駆け上っていく。

長い年月の間風雨に晒され、あちこち塗装の剥がれた機体。
劣化した個体燃料は時折咳き込み、吹き荒れる雪混じりの雨はその機体を翻弄する。
しかし、そのたびにバランスを崩しそうになりながらも、それは上昇を止めようとはしない。

それは、考えるロケットだった。
ある一つの使命のため……そして自らの『願い』のために、それは必死で天空を目指す。


重い雲を突き抜けたその先には、満天の星空。
……その時、それの挙動に異常が起こった。
先端部フェアリング排除(パージ)。本来のタイミングより六百秒は早い。
フェアリングの下、厚い石英硝子に覆われたその先端。光学樹脂で作られた緑色のターレットレンズが、星空を見つめるかのようにきゅっと細まる。
―それを知るものは、『彼女』の他には誰も居ない。


中高度軌道に到達。ブースター切り離し。キックモーター作動。
『彼女』を押し上げてきたそれが、炎の輪となって遠ざかっていく。
外殻が割れ、『彼女』の本来の身体がその姿を現す。

……『彼女』は、対衛星ミサイル(ASAT)。
まるで生きているかのように、その姿勢をくるりと変える。

彼女は軌道上の一点、太陽の光を受けて鈍く輝く、その光点に向かって突き進んでいく。


目標、気象破壊兵器衛星。目標までの距離三〇〇〇。
346『夢を取り戻す者』(2/3):2007/02/11(日) 22:04:59 ID:+DnWO9uq0
雨が降りしきる夜空を見渡せる、小さな高台。
百人にも満たない人々が、雨に濡れるのもかまわず、『彼女』が飛び去った天空を見つめていた。

その中に、顔に深い皺を刻んだ、一人の老人がいた、
右足には杖のような義足を嵌め、その手には小さな箱を握り締めて。

老人は思い出していた。彼女が『意識』を取り戻した時の事。
彼女に告げた、辛い事実。
そして、彼女の言葉。

―ほんとうにみんなの幸のためならば、わたしのからだなんか百ぺん灼いてもかまわない―

彼女は、そのような事を言った。


気象破壊兵器に備えられた、自己防衛用レーザーの光の刃が『彼女』を襲う。
『彼女』は瞬時にその照準点を算出し、僅かに軌道を変えて攻撃を避ける。
人間の反射速度を超えた、機械と機械の腹の探り合い。

何発かのレーザーが『彼女』の身体を掠め、黒く焼け焦げた跡を残す。
それでも、『彼女』は諦めない。
彼女を見守る人々の……そして、彼女自身の『願い』を果たすために。


そして……着弾。


『彼女』が砕け、無数の破片と化すその刹那。『彼女』は地上へ向けて短い通信を放った。
―それを知るものは、『彼女』の他には誰も居ない。


…………『お客さま……どうか、お元気で』…………
347『夢を取り戻す者』(3/3):2007/02/11(日) 22:06:21 ID:+DnWO9uq0
かつての『月』を思わせるような、ぼんやりとした大きな輝きが、厚い雨雲を照らした。

十年以上、この星を覆い続けた厚い雨雲。その雲が僅かに途切れた。
そして、切り取られたその隙間には……

満天の星空と、無数の流星。
雨雲が徐々に、まるで流星によって掃き清められるかのように消えていく。

遥か天空に立ち上る天の川。その中に雄雄しく立つオリオン。
彼の眼前に立ちはだかる雄牛。その肩の女神(プレアデス)達。
オリオンに付き従う、二匹の猟犬。そして彼らを見守る、双子の少年……

久しく地球から失われていた星座の世界が、見上げる大空に蘇っていく。

人々の間に、雄叫びにも似た歓声が上がった。
ある者は抱き合って泣き、ある者は拳を突き上げ、またある者は唄をもって『彼女』の功績を讃える。
とっておきの酒が注がれたグラスをぶつけ、喜びの宴が始まる。


老人は無言のまま、喜びに沸く人々の輪から離れた。
右足を引きずりながら、高台の端に立ち、降り注ぐ流星を見つめている。
皺がれた口元がわずかに動き、老人は『彼女』の名を呼んだ。

「…………ゆめみ…………」

―あとは、ただ無言で。
彼はただ無言で、満天の星空を見つめていた。


- Fin.-
348『夢を取り戻す者』(あとがき):2007/02/11(日) 22:07:13 ID:+DnWO9uq0
---------------------------------
勢いだけで書きました。
左脇腹の浪漫回路が痛い……orz
349名無しさんだよもん:2007/02/12(月) 00:12:19 ID:hihwtr890
GJ!!
しかし、自分も浪漫回路が…orz
350名無しさんだよもん:2007/02/12(月) 00:17:25 ID:gyk9KFvG0
僖しませて頂きました。
この話(↓)とか結構好きなもんで…
ttp://www3.nhk.or.jp/kaigai/spacerace/
351のぞみさんとゆめみさんとくずやさんにゆめみ:2007/02/12(月) 09:25:49 ID:N2OQ8/9m0
>>65-75 >>295-297 >>304-306 辺りを見てからお読みください。

この話は、 >>65-75 の作者とは全く関係ない >>295-297 を書いた物が書いています。

話は >>295-296 の続で、これから何回かに分けて書きます。

352のぞみさんとゆめみさんとくずやさんにゆめみ:2007/02/12(月) 09:41:07 ID:N2OQ8/9m0
突然の来客で、館長以下、スタッフは余計な用事が増えた。
とは言え、皆、嫌な顔はしなかった。

その晩、1時間、館内作業の許可を百貨店に取り
一体一体、全身を掃除し、関節などに付いてるゴミやホコリなどを雑巾などで取り除いてくれた。
そして、洗い変えの衣装が3着あったのでそれに着替え、今までそれぞれが着ていたものは洗う事になった。

4体は館内で翌日まで休息。そしてスタッフはそれぞれの家庭に帰っていった。

「前回 ゆめみさんと葛也さんがお帰りになってから、15日目なんですよ」
と、ゆめみさんが言う。

「俺達の世界では、何年間たったのだろう?」
・・・・・・
この物語では「ゆめみ(若い)」または「ゆ(若)」と書きます。
区別するために。 同じ「ゆめみ」ですから。
・・・・・・
353名無しさんだよもん:2007/02/12(月) 10:26:37 ID:8kY8o0fG0
>>352乙です。
ところで、次のレスを投げるタイミングに困るので、まとめて投稿するときはタイトルの後に「(n/m)」みたいな感じで
全何レス中の何レス目にあたるか書いてもらえるとアリガタス。

----------

おまけ。前スレに書いたSSのイメージラフが出てきたので、改訂版SSを含めてうpしますた。
つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1171242871.zip
DLパスは「yumemi」。

イメージラフはほんまにラフ。線ヨレヨレ。なんせPDAのお絵かきソフトで描きなぐっただけなんで。
いつもはここから、鉛筆ラフ→清書→PC取り込み→主線修正→彩色→仕上げ、と進むので
一枚描くのにすげー手間かかるのよねorz
354のぞみさんとゆめみさんとくずやさんにゆめみ:2007/02/12(月) 11:24:11 ID:g+dbfiTE0
帰ったあと・・・・


そう、休館日に街に出た、

最高速度 時速8Kmで歩けるはずなのに、雨合羽のせいか放熱がうまく出来なく、体全体が暑くなり、数百メートルごとに休息が必要だった。
結果的に、一時間かけて1キロメートルも歩けなかった。
そのたびに周りを見回し、俺たち以外の人影がない、そして戦いで壊れた町並みを観る事になる。

これが現実。
「お客様は必ず来るはずです」「来ないのは変です」「お客様が来ないと、結論付ける私の頭脳は、きっと壊れているんです」

前回、この時代に来たときに見聞きした街の様子。
確かに、毎日、大勢がこの街にいて、プラネタリウムも毎回、何名か客が来る。
ゆめみものぞみも、この活気の有る街での思い出が有るのだろう。
俺が知らない世界。
355のぞみさんとゆめみさんとくずやさんにゆめみ:2007/02/12(月) 11:26:22 ID:g+dbfiTE0
そして、シオマネキに出会う。
プラネタリウムの有る花菱デパートから約3Km離れた場所。俺が入ってきた場所。
仕留めるつもりが、失敗。シオマネキ引き換えに、ゆめみが大破。
手元には、彼女の記憶が集められた箱。
その体の大きさから比べると、小さな箱。

集まってきたシオマネキの援軍。何台も集まって来た。
俺は銃を捨てると壊れたシオマネキの脇を駆け抜け、強行突破を慣行。
俺たちに狙いを付けた援軍。銃口が火を吹く。

とっさに身を伏せると壊れたシオマネキが今の銃撃で俺の上に乗る。
しかし、その部分が凹んでいたので俺たちは潰されなかった。
頭上で激戦になっているらしい。
あの爆音で一時、耳が聞こえなくなった。

何時間たっただろう、落ち着いてきたら音がしなくなっていた。
356271:2007/02/12(月) 11:35:22 ID:g+dbfiTE0
>>353
はぁい。
出来るだけ行います。

今回はお許しを!
357のぞみさんとゆめみさんとくずやさんにゆめみ:2007/02/12(月) 12:02:40 ID:g+dbfiTE0
奇跡的に、ほぼ無傷だった。やっとの思いで、穴を掘って地上に出る。
「シオマネキ」は同士討ちをしていた。
 お互いに接近しすぎていたのだろうlか。それとも「壊れた仲間の下にいる」という情報だけで、不十分な照準で乱射したのだろうか?
戦利品は「酒」と「ゆめみの記憶」、そして、「ゆめみの花束」。

時間は「ゆめみ時間」で17時30分、今から車で夜道を移動するのは辛い。

幸い周囲は「シオマネキ」の燃える光で明るい。
爆発の危険もあるので、急いでプラネタリウムの有る花菱デパートに戻る。
店内は真っ暗だが、なんとか屋上に着いた。
358のぞみさんとゆめみさんとくずやさんにゆめみ:2007/02/12(月) 12:35:07 ID:g+dbfiTE0
目が覚めたら午前10時だった。
帰り支度をする。

何か戦利品は無いか、もう一度、先日渡された店内案内を見ながら店内を廻る。
その不確かな図面を見ながら各階を廻ると、描かれていない部屋がいくつもある
「従業員以外立ち入り禁止」
入ると、流行遅れでは有るが、新品jの家電品が有る。

家庭用自家発電機も有った。持ち運べそうな大きさと重さだ。
使えるのか、缶入り燃料も有る。
ふと、ゆめみと同じ背格好の少女が電源コードの付いたベッドに寝ていた。
破けた服に「 R500 」「i/FL」 が読める。
もしかして同型機?動く?

他の階の倉庫なども見て廻る
何体かの、それぞれ背格好の少づつ違う機械少女が同じように電源コードの付いたベッドに寝ている。
そして、それぞれの階での販売するために仕入れたのだろう、物品が並んでいた。

結構戦利品は有りそうだ。
・サビの付いていない工具類
・未開封の非常食、や、酒
・流行遅れでも破けていないだけましの服
その他
359のぞみさんとゆめみさんとくずやさんにゆめみ:2007/02/12(月) 12:47:09 ID:g+dbfiTE0
自家発電機のそばに、各階から数体の少女を集めた。

缶入りの燃料を入れて、自家発電機を回す。 動いた。
とりあえず先の「R500」を繋げて様子を見る。
数時間経った頃、
「私は SCR5000Si/FL CapelI です。記憶用メモリーカードが実装されていません。右耳脇のスロットに入れてください。」
と声がした。
耳の脇に有るスロットに例の小箱を入れる。

「メモリーカードと各部の自己診断後、再起動します。ただし充電は不十分ですので、充電終了までは移動は不可能です。会話のみできます。
では、しばらくお待ちください」

そして20分ほど待たされた。
360271:2007/02/12(月) 12:54:20 ID:g+dbfiTE0
すみません。続きます。次回の投稿になります。結構長いです。
退屈すると思います。
ゴメンなさい。

だた、原作(プレイステーション2 版 )に対して矛盾しない程度jに仕上げたく、
また、3人の出会いに「ゆめみさん」が興味深深でシツコク聞いてくるので屑屋さんやのぞみさんが懇切丁寧に話していると、あきらめて付き合って下さい。

また 誤字、誤記、誤解、などは突込みをお願いします。
361名無しさんだよもん:2007/02/12(月) 14:49:52 ID:8kY8o0fG0
>>354から先は屑屋の回想(本編の続き)でおK?
屑屋はすでに「ほしのくずや」になってるんかな?

>>354を読む限り、「ほしのくずや」っぽいけど、だとすれば>>358の酒や食料はもういらないわけだし・・・
362名無しさんだよもん:2007/02/12(月) 16:42:26 ID:4g3zgfDWO
今の時点では、屑屋は人間だから自分の食料などと、あれば着替えが欲しい。
そして、ゆめみやイエナの動力源も欲しい。
363名無しさんだよもん:2007/02/12(月) 17:32:43 ID:8kY8o0fG0
あ、そうか。のぞみもほしのくずやもこれから登場なんだな。
確かに長くなるなあ。
364271:2007/02/12(月) 18:18:12 ID:n2eJA/Ne0
>>361
ありがとう

>>361 = >>363
私の書いている話はプレイステーション2版「プラネタリアン」の最後。
つまり、ほしのゆめみ、が シオマネキ の前で、お客様(屑屋)の盾となり、大破した時の、続きになります。

つまり
ほしのくずや さんが 何年か前の 「葛也さん」」または「屑屋」 だったときの話を ほしのゆめみ ちゃん にしている状況です。
 ほしのゆめみ ちゃん の立場では、ある部分、自分の将来の運命ですから凄く興味があり、事細かに聞き出そうとしています。
運命が変わったとしても、この話の通りであっても、「人間を命がけで守るお姉さん」そして「たとえ機械でも一所懸命に守る人間」という話は、どういう風に感じられてるのでしょう。

そして ほしののぞみ さん も初めて聞く話なので「身を乗り出して」聞き入っています。

しかし ほしのゆめみ さん は、理解できない不思議な感情=人で言えば 恥ずかしい なのでしょうか?=で、どうしたら良いのかわからなくなっています。
365名無しさんだよもん:2007/02/12(月) 18:22:49 ID:n2eJA/Ne0
ゴメンンなさい ロングパスです

>>362 さま
どうもありがとう ございjます。
366名無しさんだよもん:2007/02/13(火) 01:26:46 ID:oE7sr0sc0
つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1171297435.jpg

新人歓迎記念撮影の図。

キャラデザインなど考えつつ、ざくっとラフ。屑屋の髪型もちょっとワイルドに。
誰が誰だかわかるかな?w
367名無しさんだよもん:2007/02/13(火) 02:57:35 ID:oz3m7kOm0
ん〜
奥の右側、眼鏡っ子が、三カ島さんでその、反対側ヒゲの人が館長 かな?
あとの人たちは・・・・・
いえ皆様の楽しみを奪っては良くないので遠慮しておきます。
では・・・・・
368名無しさんだよもん:2007/02/14(水) 11:41:39 ID:GGxAJv2s0
「お客さま?今、お時間よろしいですか?」
「……ん?どうした、ゆめみ」
「はい、お客さまにこれを差し上げたいと思いまして……」
「何だ、このミニ煉瓦みたいな物は?」
「はい、チョコレートです」
「チョコレート?高カロリー食料じゃないか!よく見つけたな……」
「はい、本日は2月14日ですので」
「……?それとチョコレートと、何の関係があるんだ?」
「はい。2月14日は『バレンタインデー』と申しまして、女性が男性にチョコレートを贈る日なのです」
「……そうか……ありがとうな、ゆめみ」
「はい、喜んでいただけて、わたしも嬉しく思います」
「どれ、早速一つ……」

ガリッ!
「ぐはぁ!?」

「お客さま?どうなさいましたか?」
「は、歯が欠けたっ!?」
「……申し訳ございませんっ!
 実は、ロイズの生チョコを取り寄せようと思いまして、地下一階の菓子売場へ降りましたのですが、店員の方がどなたもおられず……
 一つだけ、ショーケースに残っていたものを引き上げてきたのですが……」
「(……ぅぅっ……それはどう見てもサンプル品だろ……)」
369名無しさんだよもん:2007/02/14(水) 12:05:40 ID:U9rbDRQU0
バレンタインデー
真面目な検索結果
http://pauline.or.jp/index.php

聖バレンチノ(バレンタイン)司祭殉教者 (?-269年ごろ)

 ローマ皇帝クラディウスのキリスト教迫害下にあって、バレンチノはローマの司祭として熱心に宣教し、苦しむ人、貧しい人、病める人を助け導いた。
バレンチノの宣教をやめさせるように命令を受けたローマ判事アステリアは、目の不自由な娘がバレンチノの祈りによって治ったことから、家族全員で洗礼を受けキリスト教徒となった。
そのため皇帝はバレンチノをはじめアステリアらを処刑した。

 バレンチノは子どもをはじめ家畜などの病気を治したので、子どもや家畜の守護の聖人として人々から親しまれていた。
ローマ殉教録によるとこの日に同名の司教が殉教しており、それらの伝説や奇跡などが重なったと考えられる。

 中世になると、バレンチノの記念日に異性に愛の告白のカードを渡す慣習が広まり、恋に悩む人たちがバレンチノに取り次ぎを願った。
古代ローマで豊作を祈願するルペルカリア祭(2月中旬)に女性が愛の手紙を書いてつぼに入れ、手紙を受け取った男性がその女性をデートに誘うという習慣があり、それに結び付けられたといわれる。

 現在までその習慣は受け継がれたが、日本では1960年前後からあるチョコレート会社の商業戦略によって「バレンタイン・デー」として、手紙の代わりにチョコレートを贈ることがブームとなっている。
370名無しさんだよもん:2007/02/14(水) 12:17:50 ID:gAluF2b40
こういう風習が
何十年先かか何百年先かわかりませんが
屑屋とほしのゆめみさんの頃まで残っていたんですね。
>>368 さん


西暦2007年の、今、二足歩行で、給仕や案内が出来る子は、ホンダの「アシモ」ですから、ほしのゆめみさんくらいの外形と知能が備わるのには、どれ位の期間がかかるでしょうか?

ですが、ゆめみさんが、どこで覚えたのですかねぇ?
こういった習慣を。
371名無しさんだよもん:2007/02/14(水) 12:21:59 ID:gAluF2b40
あ、>>369 と >>370 を書いたのは同じ人ですよ。
IDは変わっていますけど。
って言うか、ゆめみさんの駆動力つまり内蔵電池の充電の目処は建ったの?

天国にいるならこういう事が不要ですし。
372名無しさんだよもん:2007/02/14(水) 12:43:21 ID:GGxAJv2s0
>>371

ヒント:【何かがズレてしまった世界】
373名無しさんだよもん:2007/02/15(木) 10:19:55 ID:wU3DoRNC0
ほしののぞみって小説中に出てきたのか?
プラネは本編しかやってないからよう分からんが。

つか、本編に沿ったSSはないのかな…どうも後日談形式のものが多いから…
いや、悪いわけじゃないんだけど本編のあのどことない悲壮というか廃退的な雰囲気が好きなもんで。
本編がすでに完成された物語だから仕方がないのかね…
374名無しさんだよもん:2007/02/15(木) 10:47:43 ID:s1Etuuoi0
のぞみさんは
ここの獣人が、>>261 で勝手に考えた。
小説とは関係ない。


planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜 13
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1169189621/
の 195〜200 でも話題になってるが
( http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1169189621/195-200 )
店頭販売の初回版パッケージについている小説での追加設定がかなり重要な部分を受け持っている。

個人的には、商売っ気出しすぎだと思う。
1050円でダウンロードした人に。更に2940円の出費を強いている。
だったら小説だけを500円から900円で販売して欲しい。と思う。
375名無しさんだよもん:2007/02/15(木) 10:55:30 ID:FwnPejUT0
>>373
初代スレからひたすらSS&CG書いてる者です。

スマソ。
本編で感じた切なさをチラ裏SSで補完してるだけなんで、本編準拠の作品はほとんどないんだ・・・
本編の出来に隙がないのもあるけど、ゆめみさん本編じゃ本当に「ただのロボット」だし。
内面描写なんて多分無理。モノローグすらしないorz

ちなみに、「ほしののぞみ」は、ネタ系の一環として俺が描いたCG+設定もどき。
それを他の住人が引き継いでSS書いてる。
376名無しさんだよもん:2007/02/15(木) 13:28:19 ID:dIf3GOY60
私が
>>351-352 >>354-355 >>357-360
を書き初めたのは、
せっかく
「時間旅行で、過去の世界と繋がった」( >>65-75 )
「屑屋さんの生い立ち」( >>151-157 >>271-279  近辺)
「ほしののぞみ」( >>261-266 >>271-279  近辺)
「やさぐれゆめみさん」 ( >>98-106 近辺)
など、結構面白いのに、プラネタリアン(ダウンロード版、店頭市販版)の話に対して、時間的にズレや矛盾ある、そしてそれらについて来るだろう色々な設定がハッキリしていない、そういうことに個人的に抵抗が有るからです。

で、あれば。私が勝手に流れを作っても良いだろうと。
377名無しさんだよもん:2007/02/15(木) 13:29:34 ID:dIf3GOY60
普段は屑屋が話したくない内容なので、のぞみから聞かれてもはぐらかしていた。
だけど、過去の世界に行かされて、ゆめみ(若)とのぞみにせがまれて。
普段なら清掃などを行っている時間だが、ここでは人間の従業員や専任の清掃係りがいるので、更に3体が協力すれば短時間で終わり、明日の投影内容を覚えれば後は暇ですし。
しょうがなく、夜の8時位から12時位までの間に、ホログラフを利用しながら話をしていく屑屋とゆめみ。

この時、復帰させたのぞみは旧型の「SCR5000Si/FL CapelI」です。
この「CapelI」は液体燃料を呑み、それも駆動力として使う形だったんです。
しかし、不純物が混じった燃料を呑むと、酔っ払う(=コンピューター系統の暴走)。
それで屑屋は生身の人間として、絡まれたらまた燃料味の舌付き唾液付き接吻攻撃をされては敵わないと、
 「SCR5000Si/FL CapelII」を探し出して再移植。

設定で困っているのは
1、インフォメーションリボンを付けないといけない。どうしよう?
2、例の青い服を探さないといけない。ドコにある?

そして、 「SCR5000Si/FL CapelII」に復帰後、屑屋の子供の時の話を思い出す。
あまりの恥ずかしさに屑屋自害
ゆめみ、他の売り場のために購入された、緑制服の「SCR5000Si/FL CapelII」に屑屋の記憶を入れ「ほしのくずや」が誕生

3、その後、どういう形でのぞみと、ゆめみ・くずやを出会わせるか。
この部分が。思いつかない。どうしよう?

で3体で動けないイエナさんと。


こういう時間の流れで皆様が楽しんでいただけるか。不安です。
378375:2007/02/15(木) 14:18:22 ID:FwnPejUT0
>>376

>「時間旅行で、過去の世界と繋がった」( >>65-75 )
>「屑屋さんの生い立ち」( >>151-157 >>271-279  近辺)
>「ほしののぞみ」( >>261-266 >>271-279  近辺)
>「やさぐれゆめみさん」 ( >>98-106 近辺)

……えーと、それ全部俺のネタですなorz
「何かがズレてしまった世界」シリーズの一環で、一話一話にはもともと
関連性は何もなし。並行世界での短編集なので、ズレや矛盾はあって当然、
ということでひとつ。

こういう場所で匿名で投げてる作品なので、うまく繋げてもらえれば
それはそれで全然おkです。てか、お手並み拝見したいところ。

ただ、たとえば「時間旅行編」の続編を、違う展開で投げることも
あるかもしれないので、その点はご容赦のほど。
379名無しさんだよもん:2007/02/15(木) 17:48:01 ID:7+SlQ+fNO
ここにUPされてる連載ものってどれくらいあるんだ?
自分が知っているだけでも
・Binary
・なにかがズレた世界
・銀河鉄道もの?(タイトル忘れた)
・ゆめみが欲しいもの

これだけあるんだけど、抜けてたらスマソ
380名無しさんだよもん:2007/02/15(木) 18:19:14 ID:FwnPejUT0
連載と言えるのは、『Binary』と『タイトル未定(銀河鉄道もの)』。
『ゆめみの欲しいもの』は、複数の作者のリレー競作。
『何かがズレてしまった世界』は、同じ作者のオムニバス。

にくちゃんねるもなくなったし、まとめサイト要るかもなぁ……
自作分はほとんど小さな改訂が入ってるんで、その辺もなんとかしたい。
381やおい:2007/02/15(木) 21:40:38 ID:P9ucUt21O
皆様、お久しぶりです。
銀河鉄道モノの続きですが…実は今まで書いたSSを全て消失してしまい途方に暮れてます…orz

どなたか「保存してるからうpするぜ!」という奇特な方はいらっしゃらないでしょうか?
某スレでエロ小説なんて書いてる場合じゃないな…orz
382名無しさんだよもん:2007/02/15(木) 21:50:03 ID:JMa7/ybs0
>>381

おひさー、って、あらら。
こちらでもエロ小説よろしこw

とりあえず、初代スレ&その2。
つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1171543689.lzh
にくちゃんねるからダウソしてるから、ちょっと変なのはご容赦。
あと、2スレって完走してなかったんだよな・・・
383代弁者:ゆめみさん:2007/02/15(木) 22:03:37 ID:P9ucUt21O
>>382
ありがとうございますっ!非常に助かりました!
私単体では対処できない問題でしたが、>>382さんの施しで無事に戦列に復帰できそうです。
本当に本当に、ありがとうございましたっ!


それと…えっちなのはいけないと思いますっ☆
384名無しさんだよもん:2007/02/15(木) 22:05:39 ID:nLUj2Dud0
>>375  >>378 >>380
大元(本)の話が貴方であったとしても、貴方の描き(書き)終わったものに、他の人が追加したり、突っ込みを入れている物などもありますよね?
読む人読む人で、受け止め方がそれぞれに変わってきますから、面白いのですが。
過去作品にたいして、何らかの改定版が有るのであれば、出来るだけ長期保存できるアプロダか、無料ホームページなどで公開すれば良いのでは?
385名無しさんだよもん:2007/02/15(木) 22:28:59 ID:JMa7/ybs0
改訂版といっても、言い回しとかの小修正だけで、スジはまったく変えないのでご安心ください。

ここで再度うpるつもりはないです。納得いくまで校正したら、どっかにサイト作りますです。
386『SNATCHER?』:2007/02/16(金) 01:22:38 ID:gmY2EeTA0
ゆめみ@ナビゲータ「……っ!!」
屑屋@JUNKER「どうした、ゆめみ?」
ゆめみ「お客さま、動体反応を検知しました」
屑屋「スナッチャーか!?」
ゆめみ「現場の状況からみて、その可能性は高いと思われます……お客さま、注意してください」
屑屋「ああ、わかった」

>前進する
>聞く

ゆめみ「雨の音しか聞こえません」

>調べる
>動体反応

屑屋「……ゆめみ、動体反応はどうだ?」
ゆめみ「…………」

屑屋「……ゆめみ……そこでなぜ星空を投影するんだ?」
ゆめみ「はい、内蔵投影機が使って欲しそうに見えましたので……」
屑屋「あのなあ……
 ……しかし、やはり満天の星空は、心が洗われるな」
ゆめみ「はい、喜んでいただけて、わたしもうれしく思います」
屑屋「毎日スナッチャーを追って、生死を賭けた仕事をしていると……時折無性に星空が恋しくなる」
ゆめみ「はい、ハリーもそう考えて、わたしにこの機能を搭載したのだと思いま……
 ……動体反応を検知!! お客さま!あなたの背後で……!?」

スナッチャー「……うおおおお!刑事さん、すまねぇ、本当にすまねぇ!俺が殺っちまったんだぁぁぁ!(号泣)」
二人「工エエェェ(´д`)ェェエエ工工」
387『全き人』(1/5):2007/02/17(土) 17:59:54 ID:F/huU6r30

「……プラネタリウムはいかがでしょう?」
―電圧低下、ただちに外部電源を接続してください。

「……どんな時も決して消えることのない……美しい無窮のきらめき」
―電圧低下、ただちに外部電源を接続してください。

「満天の星々が、……皆様をお待ちしています……」
―電圧低下、外部知覚系シャットダウン。自閉モードに入ります。

「……プラネタリウムは…………いかがでしょう?」
―電圧低下、システム維持不能。システム、強制シャットダウンに入ります。

「……どんな時も…………決して…………」
―強制シャットダウン、実行中。

「…………消える…………ことの………………ない………………」


>EJECT memchip #1
>OK.
>SYSTEM SHUTDOWN.

……………………


----------------------------------------------

―『全き人』―

----------------------------------------------
388『全き人』(2/5):2007/02/17(土) 18:00:29 ID:F/huU6r30
……わたしの意識が白く澄み渡り、視界が戻ってきた。

雨が雪に変わり、わたしとお客さまの上に舞い落ちてくる。
高い壁の傍で、わたしは地面に横たわっている。
わたしの目の前には、お客さまが呆然と立ち尽くしている。
その後ろでは、お客さまを襲ったあの子が……Mk43L/e自動要撃砲台が、黒い煙を立ち上らせている。

自己診断プログラム起動……応答なし。
電圧チェック……検出なし。
CPUクロック……検出なし。

お客さまがわたしのメモリースロットへ手を伸ばし、メモリーチップを拾い上げる。

わたしは、機能停止してしまった。
わたしのメモリーチップは、お客さまの手の中にある。


……けれど、わたしは確かにここにいる……
389『全き人』(3/5):2007/02/17(土) 18:01:20 ID:F/huU6r30
わたしは、ゆっくりと身を起こす。
失われたはずの下半身がそこにあり、わたしの意志にしたがって動く。
わたしは立ち上がり、お客さまの前へ歩を進める。

わたしの目の前。お客さまは、雪の舞い落ちる空を見上げ、ただ立ち尽くしている。

お客さまの唇が、わずかに動く。
「……星はどこにあるだろう?
 どこへ行けば、星が見えるだろう?」
呟くような、かすれた声。

わたしはいたたまれなくなって、お客さまへ手を伸ばす。
……けれど、伸ばしたわたしの手は、お客さまの首筋をすり抜けてしまった。

「……お客さま…………」

わたしの声は、もうお客さまには届かない。
わたしには、お客さまの『悲しみ』を癒してさしあげることはできない……


不意に、頬に熱いものが流れるのを感じた。
……これは……涙?
390『全き人』(4/5):2007/02/17(土) 18:02:10 ID:F/huU6r30
「……おーーーい!ゆめみちゃーーーん!!」
雪の舞う通りの向こうから、人影が走ってくる。

館長さん。吾朗さん。里美さん。茜さん。黛さん。由香さん。津野主任。
スタッフの皆さまが、三十年前の……平和だったあの頃のままの姿で。
満面の笑顔で、手を振りながら走ってくるのが見える。

……でも、わたしは……

その場から、足が動かせない。
お客さまから、目をそらすことができない。

「……ゆめみちゃん?」
里美さんが、怪訝そうにわたしの顔を覗き込む。
「……皆さま……わたし、わたし…………」
あふれ出る涙で、里美さんの顔がよく見えない。

「……ゆめみちゃん……」

里美さんがわたしに歩み寄り、わたしの肩を優しく抱きすくめてくれる。
里美さんの温もりが……今まで感じることのなかったはずの感触が、伝わってくる。

「……大丈夫よ、ゆめみちゃん……彼は、強い人だから」
わたしを抱く、里美さんの腕に力がこもる。


その時、わたしの中で、抑えきれなくなった『感情』が爆発した。
里美さんの胸に顔を埋め、わたしはただ、ただ泣きじゃくった…………
391『全き人』(5/5):2007/02/17(土) 18:02:57 ID:F/huU6r30
気がつくと、わたしは雲の上にいた。
「さあ、行きましょ、ゆめみさん。お客さま方が待ってるわよ」
由香さんが、わたしに微笑みかける。

わたしは、もう一度だけ雲の下を覗き込む。
足をお怪我なされたお客さまが、他の屑屋の方に助けられるのが見える。
その時、わたしははっきりと聞いた。苦しそうながらもしっかりとした、お客さまの声。

―『俺は星屋だ』

「……後は、彼に任せよう」
「館長さん……」
「彼ならば、きっと『星の人』を引き継いでくれる。
 私達にできることは……いつか彼がここに来る時、暖かく出迎えてあげる事だ」
「……ここに来る時……」
「そう……天国にね」
里美さんが、館長さんの言葉を引き継いで言った。

「……さ、行きましょう」
里美さんに促され、わたしは顔を上げる。
雲の絨毯の向こう。満天の星空をバックに、わたしたちの花菱デパートが、その威容をたたえている。
その屋上にある、プラネタリウムドーム。
あそこが……これからのわたしの居場所。

(お客さま……わたしはここで、あなたがお越しになるのをお待ちしています。
 ……どうか、頑張って……)


わたしは、わたしたちの居場所へと歩き始めた。
人間の皆さまと、わたしたちロボットの天国へ。

- Fin. -
392『全き人』(あとがき):2007/02/17(土) 18:15:23 ID:F/huU6r30
久しぶり(?)に、本編準拠で。
即興なので、出来のほうは今ひとつかもスマソ。
393名無しさんだよもん:2007/02/17(土) 19:32:49 ID:6xZZxToaO
すごく…GJです
394名無しさんだよもん:2007/02/17(土) 23:57:55 ID:R0a/uhSw0
今回も僖しませて頂きました…GJ!
395『ゆめみinアハトノイン(リライト)』:2007/02/18(日) 02:04:48 ID:JLWwNUO70
つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1171731787.jpg

屑「……ふむ、どうやらうまく制御できているようだな」
ゆ「お客さま……この筐体は?」
屑「違和感があるか?」
ゆ「はい……補正可能なレベルですが、筐体への動作指令に対して若干の遅延が見られます」
屑「むう、それはさすがに我慢してくれ。コンバータを噛ませているからどうしてもな」
ゆ「?……コンバータ、ですか?」
屑「実は、その筐体は、パタゴニアの教会で見つけた『モデルアハトノイン』なんだ。さすがに前と同じ筐体は見つからなくてな……」
ゆ「アハトノインといえば、ドイツ製の高級機種ではありませんか!さぞかし、お値段も張ったでしょうに……」
屑「いや、この世界ではもはや値段もなにもないだろ」
ゆ「そうでしたね……んっ」
屑「何か苦しそうだな……大丈夫か?」
ゆ「いえ、不具合ではありませんので……ただ……」
屑「ただ?」

ゆ「その、胸郭周りが締め付けられて、若干苦しいです……」
屑「むう、その服装に拘るならそれも我慢してくれ。なにせ、前のお前の身体とはバストサイズが段違いだからな。ははは」

ゆ「…………(なんだか、複雑な気分です……orz)」


----------------------------------------
前スレに投稿したやつをリライト&清書。
……本当は、別にノイさんもきょぬーなわけじゃないんだけどね。w
396やおい:2007/02/18(日) 07:11:46 ID:SlaLtReKO
89式GJ!ノイちゃんは脳内ではきょぬーですw
筐体がそれという事は…“そういう機能”もついているということでFA?

今日から演習なんで、その間に銀河鉄道モノの続きを書きたいですな〜。
397名無しさんだよもん:2007/02/18(日) 10:52:53 ID:lPbp9GZS0
>>396

屑屋「勿論だ。何のためにこの筺体を選んだと思っている?」
ゆめみ「お客さま・・・他に筺体が見つからなかったから、ではないのですか?」
屑屋(・・・ギクッ!)


ゆめみ「・・・隠されましても、お顔に出てらっしゃいますよ」
屑屋「・・・orz」
ゆめみ「あなたを赦しましょう(くすくす)」
398名無しさんだよもん:2007/02/18(日) 12:27:00 ID:4QDzhp5T0
おお、表情を読めるようになったのか。
399名無しさんだよもん:2007/02/18(日) 12:56:37 ID:JLWwNUO70
何気にノイさんの口癖入ってるしw

そういやノイさんは金髪だったな・・・金に塗ってみるかな?
400名無しさんだよもん:2007/02/19(月) 06:02:29 ID:/WlsM04D0
>>395
タイプ89のロゴ、前後入れ替えると、パソコンを初めて買った頃の懐かしい思い出が……
401名無しさんだよもん:2007/02/19(月) 07:41:23 ID:dHJXI7OFO
>>395
色を塗ったらAIRっぽくなりそうだなw
402名無しさんだよもん:2007/02/19(月) 12:39:32 ID:9CBBn0Rl0
表情を読むなんて、凄い機能を身に着けたものだねぇ。
もしかして、筐体独自の機能なのか?
「あなたを許します」
これも、筐体独自の機能から来るコトバなのか?

真面目な話。
どういう機能や言葉使いが、基本的な機能、つまりどうしても外せない、製作者側で準備した機能で(例えば、今のコンピュータでのBIOSとかシステムROMなど)
どういう機能や言葉使いが、後から追加した、製作者側で準備した機能で(例えば、Windows、Mac、UNIX、などのOS)
どういう機能や言葉使いが、客つまり利用者の希望で追加した機能で(例えば、表計算、ワープロ、地図、など量販店で販売されているもの)
どういう機能や言葉使いが、学習機能を利用した、「経験」「体験」で覚えたものなんだろう?

いや、そんなに難しく考えなくても良いのだろうけど。
だけど同じ人(自動人形)たちでも、配属先が変われば必用な機能も変わってくるわけだし。

何が幸せなのかわからないけど、少なくても私から見たら、戦地に配属され、戦い壊されていく人生な子たちは、確かに機械だし道具なのだけど、でもなんだかね。
だからと言って30年間一人で店を守るのも大変だけどね。
たとえ、それが364日のうち6日間だったとしても。
403名無しさんだよもん:2007/02/19(月) 19:18:12 ID:UErGQo8EO
小説本良かった…最終話を読んだあと昔 本で読んだ惑星探査機ボイジャーのことを思い出した あの探査機もヒトの夢 記憶(地球のさまざまな音などを記憶したレコード)を乗せて今も宇宙の果てをめざして飛んでるんだろうな…
404名無しさんだよもん:2007/02/19(月) 23:59:56 ID:MJT1FPfN0
つ【VOYAGER〜日付のない墓標〜】

♪傷ついた友達さえ 置き去りにできるソルジャー……♪



この歌じゃ、死ぬのは屑屋のほうになっちまうけどなw
405名無しさんだよもん:2007/02/21(水) 01:00:46 ID:tRa6fRy+0
アハトノインの処理能力がSCR5000より高かったりすると、やっぱり換装前より頭が冴えたりするんだろうか。
感じたことのない「感覚」に戸惑ったり、クロック数が高すぎてやたら短気になったりするゆめみさんw
406名無しさんだよもん:2007/02/21(水) 01:08:29 ID:tRa6fRy+0
にぎやかしに1枚。激ラフ。

つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1171987573.jpg

>>310の前にあたる、『ゆめみさんのアレな話』の冒頭をイメージ。


本当は清書→ペン入れまでもっていきたかったんだけど、ちょっと家の事情で、まあその。orz
407名無しさんだよもん:2007/02/21(水) 06:22:07 ID:XAAvtWXm0
>>406
微エロスなゆめみサソすごく良いです。仕上げ楽しみにしてますw
408名無しさんだよもん:2007/02/22(木) 01:05:28 ID:81lNFPI60
>>406

塗りますた。
つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20070222010427.jpg

今回時間がなくて塗りがおざなり… orz
409名無しさんだよもん:2007/02/22(木) 20:20:51 ID:81lNFPI60
ちょっと聞いてくれないか。

今日、ドリキャスのエグゼリカを買って来て、とりあえずエグゼリカでクリアしたんだ。
ノーコンティニューだったので、グッドエンディングだったんだ……




(---以下ネタバレにつき注意---)





い、イエナさんがっ!!!
410名無しさんだよもん:2007/02/23(金) 02:35:37 ID:Cep1k8rK0
kwsk
411名無しさんだよもん:2007/02/23(金) 09:04:58 ID:p5zNDosr0
>>410
以下ネタバレにつき注意。



-------



ストーリーモード、エグゼリカ編グッドエンド(エピローグ)。
-----------------------------------------
(ドーム特有の線が入った、満天の星空)
(星が消え、「空」が明るくなり投影が終わる。投影機の形状は間違いなくイエナさん)
クルエルティア「これ、観賞用の星図なのね」
エグゼリカ「チルダの母星は…」
クルエルティア「こことは別の平行宇宙、かも、ね」
エグゼリカ「…私たち、いつか帰れると思う?姉さん」
クルエルティア「さあ。確率は低いわ」
エグゼリカ「私ね、二人でなら、いいかなって、思ったの」
エグゼリカ「…だから、守れてよかった」
-----------------------------------------


余談:
次号のメガミマガジンで、GRA氏とこつえー氏がメカ少女で合同企画するらしい。
この二人、案外関係は深いのかも。
412名無しさんだよもん:2007/02/24(土) 01:45:56 ID:cB+yrCbO0
>>411
暖家支援
413名無しさんだよもん:2007/02/25(日) 14:20:16 ID:hP7D8SMu0
エグゼリカのエンディング見てたら、planetarianとのクロスオーバーSSが出来てしまっつ。

クロスオーバーってあんまり好かれないっていうしなぁ……どうしよ。
414名無しさんだよもん:2007/02/27(火) 15:37:40 ID:agvagvk90
花菱デパートは、雪圏球じゃなくてイエナさん型の平和鳥(水飲み鳥)を作ればよかったと思うんだ。
415名無しさんだよもん:2007/02/27(火) 17:49:46 ID:+vMosK5G0
>>413
何故好かれないのかちょっと考えてみれば、いいと思うよ。
きっとどうすればよいのか、わかるはず。
(答えは人それぞれ、多々あるだろうけれど)
416名無しさんだよもん:2007/02/27(火) 18:14:21 ID:7kUIanHg0
>>413
自分はクロスオーバーやオリキャラもののSSは読まないな。
ノリについていけない(ここのSSも個人的にはかなりギリギリ)ことや、
そのゲームを知らないことも多いので。

あと、本来のSS的というか「本編の後日談が読みたい」とか「本編
では描かれなかった部分が読みたい」という、本編の補完的な要素を
SSに求めている人間にとっては、オリキャラやクロスオーバーものは
「キャラだけ借りてきた、元のゲームとは全く別の話」と感じられる
ことも多く、正直ちょっとしんどい。

面白くなければただの妄想オナニー垂れ流しだし、面白くても「それ
なら二次創作じゃなくてオリジナルで出せば良いのに」とも思う。

まあ、一意見として何かの参考にでもしてくれると嬉しい。
417名無しさんだよもん:2007/03/01(木) 03:13:28 ID:ut5y8RjJ0
にぎやかしに投下(ラフでスマンが・・・)

スク水ゆめみ
ttp://akm.cx/2d/src/1172686198062.jpg
89ボディゆめみ
ttp://akm.cx/2d/src/1172686233608.jpg
418名無しさんだよもん:2007/03/01(木) 04:02:23 ID:0JSH/xcI0
おー、GJ!

ちと別口で忙しくて、うp停滞スマソ。
近々あはとゆめみさんでも彩色してうpするっす。
419『ゆめみと補給の話』(1/4):2007/03/01(木) 12:04:47 ID:14imDhHE0
「ゆめみ、ちょっといいか?」
味気ない軍用糧食(レーション)での夕食を済ませた後、テーブルを拭くゆめみに声をかける。
「はい、何でしょうか?」
顔を上げるゆめみ。頚椎ユニットから「ジジッ」という音がする。
「その音の原因がわかったぞ」
「この音は、頚椎ユニットの磨耗が原因と判明しておりますが……」
「そうじゃない、磨耗の根本原因だ。……異常に気づいたのはいつ頃だ?」
「はい、稼働開始から十六年と三ヶ月十四日目に実行しました自己診断モードで検出されました」
「ここにスタッフの皆が居た頃はどうだった?」
「全く問題はありませんでした。定期的にメンテナンスしていただいておりましたし」
「やはりな……」
「何か、原因がわかりましたでしょうか?」
嬉しさと不安が入り混じったような、複雑な表情でゆめみが問う。
なかなか微妙な表情ができるものだな……と、俺は変なところで感心する。

「せいぜい三十週で、いきなりそんな異音が出るものじゃない。……液体類の消耗品交換はどうしていた?」
「はい、五年目でストックがなくなりましたので、現在は無交換での運用です。サポートセンターへ連絡を取っているのですが、」
なおもまくし立てようとするゆめみをやんわりと制し、俺はSCR5000の整備マニュアルを広げる。
「潤滑オイルや冷却フルードの交換なしで、三十年も稼働していれば調子も悪くなるさ」

擦合する機械部品がほとんど磨耗しないのは、潤滑オイルのおかげだ。
部品を構成する金属と金属の間に潤滑オイルが入り込み、油膜を形成することで、部品同士は非接触状態に保たれる。
オイル自体の劣化やドライスタートによって油膜が途切れない限り、部品の磨耗はほとんど発生しない。
冷却フルードも同じだ。熱交換が正常になされない場合、熱源となる部品のみならず、擦合する部品へも熱変形などの悪影響を及ぼす。
部品単体の熱の偏りによる変形など、精密な隙間(クリアランス)を持つ可動部分に対する悪影響は無視できないものがある。
機械は、潤滑オイルや冷却フルードという「液状の部品」の適切な管理によって、その調子を長期間保つことができるのだ。
420『ゆめみと補給の話』(2/4):2007/03/01(木) 12:05:50 ID:14imDhHE0
「はい……申し訳ありません」
「お前のせいじゃない。気づかなくてすまなかったな」
背嚢(ナップザック)から、金属製の缶と樹脂製のボトルを取り出してテーブルに置く。
ゆめみのメーカーの純正品ではないが、他社の上位モデル対応のサードパーティ製だ。
大は小を兼ねる。問題はないだろう。

「さてと……どこから補給すればいいのかな」
「ご安心ください、補給はわたし単体で可能です。……まずは冷却フルードの補給を開始します」
そう言いながら、ゆめみはフルードの封印(シール)を開け、中を覗き込む。
「使えそうか?」
「沈殿物なし、比重正常範囲内……問題ありません」
そういうと、ゆめみはボトルを両手で持ち、ぐいっと呷った。

「……(ごっごっごっごっごっ)……ぷはっ、補給完了です」
「いい呑みっぷりだな、ゆめみ」
「恐縮です。……ふぅ、五臓六腑に染み渡ります。この一杯のために業務をしているようなものです」
「……誰だ?そんなおっさん臭い言い回し教えたのは」
爺さん……マードックが、一日の終わりに、一杯やりながらそう言っていたのを思い出す。
軍属時代、日本の駐屯地で自衛軍の兵士から教わった『儀式』だ、とか言っていたが……
「はい、館長さんが業務のあと、自販機で購入された日本酒をお飲みになりながらおっしゃっていました」
「……そ、そうか」
……館長は呑ん兵衛だったんだな……
421『ゆめみと補給の話』(3/4):2007/03/01(木) 12:06:32 ID:14imDhHE0
「引き続き、潤滑オイルの補給に移ります」
金属缶を手に取り、ゆめみが言った。
「それも口からなのか?」
「はい、こちらは口腔内部のバイパスバルブからの補給となります」
そういうと、ゆめみはあんぐりと口を開く。
人間と見まごうばかりの、歯並びのいい歯列と小さな舌。……単なるダミーではなく、自然な発声を行うための器官だそうだ。
口蓋垂の奥、口腔から食道へ繋がる曲がり角のあたりが「カシャッ」という小さな音とともに開き、受け口がせり出してくる。
「では……しばらくの間、音声によるコミュニケーションが行えなくなりますのでご了承ください」
そういうと、ゆめみは天井を向いて缶を咥えた。

「…………」
口を一杯に開いてやっと、というサイズの缶が、半分以上口の中に入っている。先端はバイパスバルブに達しているのだろう。
「……おぇっ」
想像しただけで、自分が嘔吐(えず)きそうになる。
「んんぉんんん、んんんぉんんんんぉん?」
俺の「異変」に気づいたのか、天井を向いたまま、横目で俺のほうを見るゆめみ。
「……いや、なんでもない。黙って補給を続けてくれ」
「んんんんん、んんんぉんんんーんんぉん」
目だけでにっこりと笑って、ゆめみが言った。
422『ゆめみと補給の話』(4/4):2007/03/01(木) 12:07:56 ID:14imDhHE0
「……補給完了しました。容量、正常値範囲内です」
手足を曲げ伸ばししながら、ゆめみが言う。
「何をしてるんだ?」
「はい、潤滑オイルおよび冷却フルードの初期循環シーケンスを実行中です」
おいっちにーと全身を曲げ伸ばしするゆめみ。少女を模した肢体がのびやかに動く。
赤色の冷却フルードが半透明の人工皮膚の下を流れることで、「血色」もよくなったように見える
足を広げて立ち、胴を大きく回す。広がったスカートのスリットから見え隠れする、健康的な色をした太腿が目の毒だ。

一通りの運動の後、軽く首を左右に傾ける。あの「ジジジ」というノイズが、ほとんど聞こえなくなっている。
「大分改善されたみたいだな」
「はい、多少油泥(スラッジ)が残存していますが、今後の稼働によって洗浄され、ほぼ無音状態に戻ることが期待できます」
「スラッジ?……そうか」
ゆめみの体内には、補給前の劣化したオイルやフルードが残っているはずだ。……排出しなくていいのだろうか?

ふと、俺はゆめみがそわそわしていることに気がついた。
「どうした?」
どこか、問題があったのだろうか。


しばしの躊躇の後、ゆめみは頬を真っ赤にして答えた。
「……あの……お手洗いは、どちらでしょうか?」


- Fin. -


--------------------------------------
この先は書けといわれても書けません orz
423名無しさんだよもん:2007/03/01(木) 17:11:21 ID:hYddagif0
そりゃそうだろwww
絵師が一人増えた〜いつもの人に負けず劣らず凄いクオリティだ
424名無しさんだよもん:2007/03/01(木) 20:45:29 ID:93ppKy0k0
エロ系を書いてるいつもの人ならきっと…
425名無しさんだよもん:2007/03/02(金) 00:25:32 ID:+1G5cY1q0
GJ!でございます!
426『Twinkling star』(1):2007/03/02(金) 21:52:56 ID:/QF40sg/0
赤い星、青い星、金の星、銀の星……。

どこまでも青く、そして黒く澄んだ空。
そしてそこに広がる数え切れないほどの星たち。
それらの星の一つ一つが夜毎に、自身の持てる精一杯の輝きを見せてくれる。
それらの星たちが瞬きながら輝く姿。
そう、それは、まるで……。

………
……


「ねえねえ、みんなで旅行、行きませんか?」
きっかけは、茜の発した一言だった。
「また突然訳のわからない事を……。一体どうしたって言うの?」
ドーム内の床を清掃していた里美が、訝しげに訊ねる。
「実はあ……、これ、買っちゃたんですよ!」
そう言いながら、後ろ手にしていた右手を里美の眼前に突き出す。
その手に握られていたのは、鈍い銀色に輝くデジタル一眼レフカメラ。
少し前、「初心者でも簡単に綺麗に撮れる」と巷で評判になったモデルだ。
「中古ですけどね、高かったんですよー」
ホロスナップカメラも市場に出回ってはいるが、一般市民にはいまだ高嶺の花。
昔ながらのデジタル一眼レフはまだまだ健在だった。
「……それで、それと旅行と何の関係があるの?」
写真なんかに今までまったく興味を示していなかった茜のはしゃぎように若干戸惑いながらも、その真意を

引き出すべく里美は努めて冷静に質問する。
「ほら、やっぱりカメラを買ったら写真を撮りたくなるのが人情ってものじゃないですか。『イエナさん』のオ

ーバーホールももう少しで終わりそうですし、時間があったらどこかへ星でも撮りに行きたいなー、と思って

。よく天文雑誌に載っているようなああいうの、撮りたいんですよ」
427『Twinkling star』(2):2007/03/02(金) 21:54:40 ID:/QF40sg/0
花菱デパート本館は、現在全フロア改装工事のため一週間の休業中。
プラネタリウム館自体に改装は関係なかったが、それに合わせて里美たちスタッフは日頃なかなか出来な
い『イエナさん』のオーバーホールと待合室ロビーのディスプレイ替えを行っていた。
だが、日頃のメンテナンスの賜物か『イエナさん』の状態は思いのほか良く、5日の予定を取っていたオー
バーホールは2日ほど予定より早く終わりそうな目処が立っていた。

「そこにどうして私たちが関係してくるの?」
その降って沸いた『余暇』を、みんなで行く旅行に使いたい。
接客業の宿命として全員がまとまった休みを取る事など盆暮以外に不可能な里美たちにとって、今回の
『余暇』は正に青天の霹靂。
茜の気持ちも分からなくはない。
里美自身、どこかに星見を兼ねた旅行に行けたら、と何度考え、頓挫した事か……。
「折角だからみんなで行きたいな、と思って。そうそう、ゆめみちゃんも連れていけたらなー、なんて」
「ゆめみちゃんも?」
ゆめみは本館が改装工事に入ると同時にメーカーの定期メンテナンスに出ていたが昨日の夕方には戻っ
ており、今日から通常業務に復帰していた。
「実は、このカメラと一緒に赤道儀も買ったんですけど、その赤道儀、自動導入機能も自動追尾機能もつ
いていないんですよ……」
「……だから、その赤道儀とゆめみちゃんを繋いで、自動導入・自動追尾装置をやってもらおうと」
「そういうことです。先輩、鋭い!」
パッと茜の顔色が明るくなる。
(そういう魂胆か……)
そんなことで誉められても嬉しくもなんとも無い。
428『Twinkling star』(3):2007/03/02(金) 21:56:17 ID:/QF40sg/0
「旅行は構わないけど、ゆめみちゃんを連れて行くのは却下」
「えー、どうしてですか〜?名案だと思ったのに〜」
予想通り、口を尖らせながら反応する茜。
自分にもあんなふうに素直に感情を表に出せる時期があったな、と多少の感傷を覚えながら里美言い含
めるように茜に答えた。
「ゆめみちゃんはコンパニオンよ。そんな機能が実装されていると思う?」
「えー、無いんですかー」
茜の反応に思わずこめかみを抑える。
「ゆめみちゃんの事を一体何だと思っているのかしら……」
「でも、発想としてはおもしろいと思いますよ」
「吾朗くん?」
いつから聞いていたのか、里美の隣に吾朗が立っていた。
興味がありありなのが、その言葉からも聞いて取れる。
ひょっとしたら一番聞かれたらまずい人間に聞かれてしまったかもしれない、と発作的に考える里美。
「確かに機能としては実装されていないですけどね、赤道儀の自動導入・自動追尾機能そのものは単純
なものですから後からプログラムで追加する事は簡単ですよ。要はゆめみのメインカメラ部からの情報を
赤道儀にフィードバックさせてやるだけですから。ゆめみのデータベースには主だった天体の赤偉や赤経
はすべてインプットされていますしね。そこまで出来れば後は赤道儀のモーター取り付けと配線ですから、
それほど手間はかかりません」
「でも……」
「僕も行きます。ゆめみのメンテナンスもあるでしょうし。それなら大丈夫でしょう?」
完全に乗り気であり、行く気である。
こうなると、もう歯止めは効かない。
「……」
429『Twinkling star』(4):2007/03/02(金) 21:58:53 ID:/QF40sg/0
「まあ、いいじゃないか。滅多にあることじゃないんだし」
「そうですよ。それに実際の星を見に行くなら、それはゆめみちゃんのためにもなるんじゃないですか?」
「館長に由香まで……」
言葉を失う里美の隣には茜と吾朗に加えて館長と由香まで立っている。
「行ってきなさい。会社には私が話を通しておこう。新人の研修旅行として申請すれば、少しは会社も補助
を出してくれる。ゆめみの外出許可も、メーカーに話をしておかないとな。留守は私が預れば問題はない
だろう。明日の午前中までに準備して、昼前に出発すればいいんじゃないかね?」
どうやら、外堀は完全に埋められたようだ。
「……分かりました。館長がそう仰るのでしたら、お言葉に甘えさせて頂きます」
「やる」と決まった以上、楽しまなければ勿体無い。
里美は気持ちを強引に切り替えた。
「それで行くとして、誰か場所に心当たりはあるの?」
「あの、それでしたら……」
館長の後ろに立っていた由香が、里美に向かって声をかける。
「私の親戚が、北の方の山間に別荘を持っているんです。ここからそんなに遠くはないですし、今はオフシ
ーズンですからおそらく借りられると思いますので後で電話して聞いてみます。有名な星見のポイントも近
いんですよ」
実は由香も行きたくて仕方がなかったんじゃないかという疑念もわいたが、とりあえずそれには蓋をする。
「それじゃそこにしましょう。由香、連絡お願いね。ゆめみちゃんの準備と茜の赤道儀は吾朗くんに一任
するとして、あとは車の手配と……」
そこまで考えて、視線を上げる。
「里美さん、どうかなさいましたか?」
視線の先には玄関ロビーの掃除を終えたらしく、モップを両手で持ったゆめみが立っていた。
430『Twinkling star』(5):2007/03/02(金) 22:00:07 ID:/QF40sg/0
「丁度良かった。ゆめみちゃん、明日、みんなで旅行に出かけるわよ」
「はい、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
何の疑問もなく、見送りの返事が返ってくる。
こういう返事が返ってくるのは里美もすでに織り込み済みだ。
ゆめみはよもや自分自身が里美たちと一緒に旅行に行くという事など、露ほども考えていないのだから。
そんな能天気に微笑むゆめみの鼻先を人差し指で軽く突付きながら、里美は言った。
「ゆめみちゃん、あなたも行くの」
「わたしもですか?ですが、わたしが外出するとなりますと、ここのお留守番はどなたがなさるのでしょう?」
困惑したように小首を傾げる。
「館長がしてくれるそうよ」
「そうなんですか?」
館長の方に一動作で振り返る。
「ああ。たまにはみんなと行っておいで。それとも、留守を預るのが私じゃ不満かな?」
穏やかな口調の中に少し悪戯っぽい語調を織り交ぜながら、ゆめみに話し掛ける。
「いえ、そんな事はございません。館長さんがそう仰られるのでしたら、お言葉に甘えさせて頂きます」
先程の自分と一字一句違わず同じ言葉を発したゆめみに、里美は心の中で苦笑した。

………
……
431『Twinkling star』(6):2007/03/02(金) 22:02:06 ID:/QF40sg/0
翌日。
一台の古ぼけたミニバンが、すっかり葉を落とした広葉樹の疎林を貫いたつづら折れの坂道をあえぎなが
ら登っている。
ハンドルを握るのは里美。
助手席には、道案内役の由香。
後部座席には窓に寄りかかってずっと眠ったままの吾朗、車窓を見ては騒ぎ立てる茜、そしてそんな2人
の間にはゆめみ。
男性1人に女性3人にロボット1体、それに加えて機材や食材を満載したミニバンの後部サスペンションは
床面を路面に擦らんばかりに沈み込む。
「あとどのくらいなの?」
ハンドルを大きく切りながら、里美が助手席の由香に訪ねる。
「もう少しすると、前方に湖が見えてきます。別荘はそのほとりです。あと10分ほどで着くと思います」
「そう、わかった」
アクセルペダルを床まで踏み込むと、決して強力ではないミニバンのエンジンが精一杯の咆哮を上げた。

「……」
何気なくルームミラーを覗きこむ。
そこに映っているのは、茜の話に聞き耳を立てるゆめみの横顔。
茜の他愛ない問いかけに相槌を打ちながら、朗らかに微笑んでいる。
「……」
こうして見ていると、隣の茜と何ら変わることのない存在にしか見えない。
里美でさえ、時たま錯覚する事がある。
特にここ最近はそう思うことが増えた気がする。
別段、ゆめみに感情が新たに備わったわけではない。
職務を忠実に遂行するために、ロボットにとって感情はあってはならないもの。
その尺度に従えば、当然ゆめみにもそのような概念があるわけはない。
だが、時たま彼女が見せるなんとも微妙な仕草や言葉に、どきりとするほどの人間味を感じることがあるのだ。
432『Twinkling star』(7):2007/03/02(金) 22:03:31 ID:/QF40sg/0
今回の旅行にゆめみを連れて行くこと自体は里美も反対ではなかった。
ゆめみは今や、自分たちの大切な仲間である。
確かに着任当初はいないほうがいいとさえ思った事もあったが、年数を経るにつれてゆめみは館に、そし
て自分たちに欠かせない存在となった。
そんなゆめみを、今回の旅行で自分たちは『道具』として扱おうとしている。
表面上は『仲間』扱いをしていながら、自分たちは結局心の奥では彼女をただの『道具』として見ているの
ではないか。
それは何も昨日から始まったことではない。
ずっと引っかかっていた事。
人間とロボットが共存する限り、ついて回る命題なのかもしれない。
確かに、彼女にできる事をやってもらうだけだ、と割り切ってしまえばいいだけの事かもしれない。
だが、こんなことを考える自分はそこまで潔くはないのだろう。
今にして思えば、もしかしたら茜の提案を却下したことはその事に対するささやかな抵抗だったのかもしれない。
(……)
ルームミラーに映るゆめみの純粋な笑顔を見ていると、里美には何が正しい事なのか、分からなくなった。

………
……
433『Twinkling star』(8):2007/03/02(金) 22:04:57 ID:/QF40sg/0
「全く、何をしに来たのやら……」
少し早い夕食を食べるやベッドに潜り込んでしまった吾朗のいる部屋の扉を見つめながら、里美がため息
交じりに愚痴をこぼす。
「吾朗さん、夕べは徹夜でしたし、仕方ありませんよ」
後ろにいた由香がかばう。
茜の赤道儀の改造とゆめみの自動導入・自動追尾機能のプログラミング、それからスリープモードの一時
的解除に出発直前まで掛かりっ切りだったのだ。
「ま、無理もないわね。少しかわいそうだけど起こすのも気の毒だし」と、里美。
「それで先輩、どうします? 日没直後から観測開始するのでしたらそろそろ出発しないと。望遠鏡のセッ
ティングのことも考えると、日没前に到着しておいた方が良いですね」
もともと、星が何よりも好きでこの道に入った者たちばかりだ。
今回の旅行に際しては、里美も由香も自前の望遠鏡を持参している。
「そうね。もう少ししたら出発しましょう。茜とゆめみちゃんは?」
「キッチンで夜食を作っています。ゆめみちゃんはお茶を淹れていました」
「こういう時だけはたいしたものね。普段の仕事もこのくらいの意気込みでやって欲しいものだわ」
「いいんじゃないですか、それも茜ちゃんらしくて」
顔を見合わせ、くすりと笑う。
「それじゃ、それが終わり次第出発ね」
「はい」
由香の返事を聞きながら、里美はふと窓の外を見やる。
すっかり葉を落とした広葉樹の折り重なった枝の間から、少し西の方角が橙がかった青空が覗く。
少し風があるのか、上下左右に振られた小枝が時折窓ガラスを軽く叩く。
「きれいに晴れそうね」
「そうですね」
二人は茜を手伝うために、キッチンに向かった。
窓の外に、ひとつぶ白いものが舞い降りるのを見ることなく……。

………
……
434『Twinkling star』(9):2007/03/02(金) 22:06:46 ID:/QF40sg/0
その星見のポイントは、別荘からそう遠くないところにあった。
道路を挟んで反対側は湿原が広がり、四方の地平線はは全て山に囲まれている。
人間の生活圏からの光害を避けるには、絶好のロケーションといえた。
標高1,000メートルを越えるこの場所には夏には下界の暑さを避けるべく人が大挙して訪れるが、オフシ
ーズンである今は人影はどこにもない。
せいぜいこの先にあるひなびた温泉に向かう車が目の前の道路を1時間に1台通るかどうかだ。
里美たちが車を止めた駐車場に隣接する売店も店は開けているものの、閑古鳥が鳴いていた。
「見事なまでに誰もいないわね」
太陽が完全に沈み売店が早仕舞いするのを待って、里美は車から外に出た。
公共のの駐車場とはいえ、ともすれば不法進入とみなされて警察官に職務質問をされかねない。
星を見るのにも、それなりに周囲に気を使わねばならないのだ。
「息苦しい世の中になったものね……」
誰に言うでもなく呟く。
「ちゃちゃっと準備しちゃいましょうよ」
嬉しさを隠し切れないことが、遅れて車から出てきた茜の言葉からも伺える。
別荘を出た時よりも風が強いのが気掛かりではあるが、空には雲ひとつない。
西の暮れなずむ空には、宵の明星・金星が数多の星の先陣を切ってきらびやかにその姿を晒している。
月齢は0。
試しに双眼鏡で金星を覗いて見る限り、シーイングも真冬のこの時期にしては比較的安定している。
絶好の観望日和になりそうだった。
だが……。
435『Twinkling star』(10):2007/03/02(金) 22:07:54 ID:/QF40sg/0
最初にそれに気付いたのは里美のそばで荷降ろしを手伝っていたゆめみだった。
「里美さん、何かちらついているように見えます」
「え?」
ゆめみに促され、里美は周りを見渡してみる。
「……何も降ってないわよ」
怪訝そうに言葉を返す里美。
「そうですか。確かに何か白いものが……」
ゆめみの言葉が終わらないうちに、向こうから茜と由香の声が聞こえる。
「あれ、雪降ってない?」
「あ、本当」
まるでその言葉を待っていたかのように風が一気にその強さを増加させる。
その風に乗って、細かな白い雪の粒があとからあとから間断なく一同に叩きつけられる。
たまらず空を見上げる。
相変わらず雲はない。
だとすると……。
「みんな、荷物を持ってきて!一旦車の中で待機するわよ!」
「えー、大丈夫ですよー、このくらい」
「ぼやぼやしない!多分もっと強くなるわよ!そうなったら観望どころじゃないわ!」
残念そうな茜の声を遮り、強い口調で里美は叫ぶ。
館長に直接言われたわけではないが、里美は今回の旅行で一番年長になる。
みんなの安全を自分が見るのは当然のこと。
そんな責任感が、先ほどの決断となって口に出た。
「わかりましたー」
由香の声が風に流されながらも、何とか里美の耳に届いた。
436『Twinkling star』(11):2007/03/02(金) 22:09:02 ID:/QF40sg/0
「……まだ止みそうにないわね」
忌々しそうに里美が社内から外を見ながら呟く。
「……」
「……」
「そうですね」
しんと静まり返った車内に、助手席に座ったゆめみの言葉だけが響く。
「もう少し、待ってみましょう」
「はい、承知しました」
この返事も、ゆめみ。
後部座席の茜と由香からは返事がない。
もうかれこれ2時間もこうしているのだ。
当初の意気が消沈しているのがありありと分かる。
天体観望にこの手の天候の変化はつきものとはいえ、このメンバーで泊りがけで観望できるのはこの先い
つになるか分からない。
ここまで来ながら観望が出来ないことが残念なのは里美とて同じだ。
無駄骨かもしれない、と思いながらも、ぎりぎりまで足掻いてみよう、と一方で考える自分がいる。
きっとみんな同じ考えだろう。
「……」
ゆめみの淹れてくれたお茶をすすりながら、里美は窓の外に再び視線を移した。

地吹雪だった。
風速10mはゆうにあろうかと思われる風に乗って、辺りに積もっていた粉雪が真横に吹き付ける。
風上に面した車のガラスは瞬く間に真っ白になり、道路にはそこかしこに雪だまりが出来る。
おまけに真冬ゆえ、気温は氷点下まで既に下がっている。
この風だ、体感温度はおそらくマイナス10度は下らないだろう。
だが、空から雪が降っているわけではない。
地上の雪が吹き付けているのだから、空は相変わらず晴れ上がっている。
手を伸ばせばすぐそこにある星空。
だが、外に立っている事さえままならない状況。
なんともじれったく、歯痒い時間だけが流れてゆく。
437『Twinkling star』(12):2007/03/02(金) 22:11:11 ID:/QF40sg/0
(仕方ないわね……)
里美がそう口に出しかけたときだった。
「あの、里美さん、よろしいですか?」
助手席に座っていたゆめみが話し掛けてきた。
「どうしたの?」
「はい、もしよろしければ、わたしだけでも外に出て撮影をして来ようかと思うのですが、いかがでしょう?」
突拍子もない申し出に、ゆめみ以外の一同の目が丸くなる。
「ゆめみちゃん、本気? 凍っちゃうよ」
茜が信じられない、といった表情を隠そうともせずに言う。
「はい。わたしは外気温マイナス10度までは通常どおりの稼動が保証できるように設計されています。外
を見る限り風は先程より少し弱まっているようですし、たとえ現在の外気温がマイナス10度を下回っている
としましても、短時間の稼動でしたら問題は無いと考えます」
「でも……」
由香が言葉を詰まらせる。
"見ているこっちが寒くなる"からと何とか言い含めて履いてもらった防寒用の黒いタイツを除き、ゆめみは
いつもとまるで変わらない格好だ。
普通の人間なら間違いなく風邪をひきそうな格好で大丈夫だと言われても、今ひとつ説得力に欠ける。
「わたしはせっかく皆さんでここまで来たのに、何もしないで帰るのはあまりにもったいないと考えます。里
美さん、いかがでしょうか?」
すがるように深い緑の光学樹脂(オプティックアクリル)製の瞳を震わせながら、里美の目を覗き込む。
「……」
ぼやぼやしている時間が惜しい。
里美は熟考した。
おそらくゆめみは、自分で「出来る」と判断した上で申し出たのだろう。
彼女は自分が出来ない事は決して口にはしない。
結果的に「口から出任せ」になることで人間に迷惑がかかることを避けるために、そうプログラミングされて
いるのだろう。
ならば、彼女に任せるのもひとつの手だ。
だが、そうする事はそれこそ自分たちがゆめみを便利な『道具』として扱っている事にならないか?
思考が逡巡する。
438『Twinkling star』(13):2007/03/02(金) 22:12:56 ID:/QF40sg/0
「……」
沈黙。
全員の視線が自身に注がれているのが分かる。
(……)
自身の迷いを断ち切るかのように、里美が沈黙を破って口を開く。
「……分かったわ。ただし30分だけ。30分を過ぎたらすぐに片付けて戻るわよ」
その言葉を聞いたゆめみの顔がパッと明るくなる。
「ありがとうございます」
「あと、わたしのコートを貸してあげるからそれを着ること。その格好のままよりはましだと思うけど」
「はい、承知しました」
「それから、わたしも付き合うわ。いいわね?」
「先輩?」
「無茶ですよ!」
由香と茜が何故、といった表情で里美に向き直る。
「ゆめみちゃんじゃ、赤道儀のセッティングは出来ないでしょ? 大丈夫。私だって命が惜しいし、無理を
するつもりはないわ」
少しおどけて見せる。
「先輩、気を付けて下さいね」
それでも心配そうな由香。
「ありがとう。じゃあ茜、赤道儀とカメラを取って。リモートスイッチはついているわね?それと由香、私のバ
ッグからコートと双眼鏡をとってくれる?」
後部座席の二人に指示を出しながら自らと道具の準備を手早く整え、里美は茜に振り返った。
「茜、何を撮ってくる?時間がないからそんなにたくさんは撮れないけど、出来る限り要望には答えるわ」
「え?えーと、それじゃあ……」

………
……

439『Twinkling star』(14):2007/03/02(金) 22:15:31 ID:/QF40sg/0
思ったよりも風が強い。
里美は外に出た事を一瞬後悔した。
赤道儀とカメラを持つ手が手袋をしていてもかじかんでくる。
フードを目深にかぶっていても、横殴りの雪は容赦なく顔に襲い掛かってくる。
「……」
ちらと横を見る。
隣には黒いコートの袖を余らせた両手で里美の双眼鏡を大事そうに抱えたゆめみが今にも鼻歌でも出て
きそうな楽しげな表情で立っている。
コートとともにスカートは強風にあおられて時折翻り、後頭部の長い振り分けた銀髪は風に乗ってまるで吹
流しのように真横になびく。
だが、見たところ稼動に変化はない。
どうやらマイナス10度まで稼動可能という話に間違いはないようだ。
「この辺でいいかな」
里美が歩みを止める。
車から10メートルほど離れたその場所は、周りを葉のない潅木が取り囲んでいた。
枝しかないため風除けとしては役不足ではあるが、それでもないよりはずっとましだ。
視界も限定されてしまうが、そうも言っていられない。
「ちょっと待っててね」
路面に雪が積もっていないところを見つけ、里美は手に持った赤道儀の三脚を広げ、据え付ける。
本来なら極軸をしっかり合わせたいところだが、そんな余裕はない。
コンパスと事前に調べておいた緯度・経度をもとに目検討で極軸を合わせる。
赤道儀上の雲台に茜のカメラを据え、カメラの絞りと感度を調整し、何とか大まかながらもセッティングが完
了した。
「ゆめみちゃん、準備できたわよ」
赤道儀から延びたケーブルをゆめみに手渡す。
「はい」
ゆめみは里美からケーブルを受け取ると、ジャックを自身の左耳のコネクタにしっかりと接続した。
接続と同時に通電したらしく、赤道儀のギヤがかみ合いながら動くカリカリという音が風に流されながらも聞
こえてくる。
その音に刺激されるかのように、里美の胸にまたもあの思いが去来する。
440『Twinkling star』(15):2007/03/02(金) 22:16:54 ID:/QF40sg/0
(私はゆめみちゃんのことをどう考えているんだろう……)
この吹雪の中、自分は何を考えているんだろう。
客観的に自分を見ているもう一人の自分の嘲笑が聞こえる。
「……美さん? 里美さん? 里美さん?」
呼びかけても反応がない里見を心配したのか、いつの間にかゆめみが里見の顔を覗き込んでいた。
「……ああ、ごめんなさい。それじゃ、オリオン座を導入してみて」
自分の心を見透かされたのかと一瞬どきりとしながらも、里美は先ほど茜からリクエストされた星座の名前
をゆめみに告げる。
「はい、承知しました」
そう言うや、ゆめみは里美から南西の空へと視線を移す。
「……」
ゆめみの表情を伺う。
解説の時に見せるにこやかな表情とは違った、真剣な面持ち。
微動を行っていた赤道儀は回転の勢いを増し、搭載したカメラのレンズを南西の方角に向けていく。
見た目、問題なく稼動しているようだ。
やがてモーターのうなりが落ち着きを取り戻す。
「オリオン座の導入が完了しました」
感情を排した、ゆめみの事務的な声が聞こえてくる。
「ありがとう。ちょっと待って」
里美がファインダーを覗き込む。
「あの、どうでしょうか?」
つい今しがたの抑揚のない声とは違った、心配そうな声。
「……うん、大丈夫ね」
ファインダーから目を離し、里美が言う。
「そうですか。テストなしでしたのが気掛かりでしたが、ちゃんと動いたようでよかったです。それではこのま
ま自動追尾に入ります」
ゆめみが空を見上げたままの格好でほっとした表情を見せる。
そんなゆめみの横顔を眺めながら里美はリモートスイッチを手にとり、シャッターを切っていった。
441『Twinkling star』(16):2007/03/02(金) 22:18:32 ID:/QF40sg/0
「ゆめみちゃん?」
数枚撮り終ったところで、里美が問う。
「はい、何でしょう?」
オリオンから視線を外すことなく、ゆめみが答える。
「ねえ、今回の旅行、来てどうだった?」
「はい、お聞きしました最初は戸惑いましたが、こうして微力でも皆さんのお役に立てることが出来まして、
ついて来てよかったと思います」
「そう……」
予想通りの答え。
それ以外の答えを期待していたわけではなかったが、里美は何となくがっかりする。
「それに……」
「それに?」
ゆめみが思いもかけず言葉を続ける。
「わたしはこうして実際の星空を見ることは今までほとんどありませんでした。見たとしてもお使いで外出し
た際にちらと見ました街明かりに覆われた星空です。確かに私のデータベースには全ての天体のデータ
がインプットされていますが、それは知識でしかありません。イエナさんの映し出す星空は本当に素晴らし
いものです。ですが、今わたしが見ております星空はイエナさんの星空とはまた違った素晴らしさがあると
思います。うまく言葉で言い表すことが出来ないのですが……」
照れくさそうに笑う。
「この星空を見ることが出来ただけでも本当によかったと思います。里美さん、本当にありがとうございました」
静かな感謝の言葉。
「こちらこそいろいろありがとう、ゆめみちゃん」
釣られて里美も言葉を返す。
442『Twinkling star』(17):2007/03/02(金) 22:20:07 ID:/QF40sg/0
彼女はロボット。
その事実は曲げることも出来ないし変えることも出来ない。
だが、人間と同じになることは出来なくても、より近づくことは出来るだろう。
彼女は自分の役目を忠実にこなしながら自らも様々な事象を吸収し、学習している。
彼女が時折見せる人間臭い仕草や表情は、けしてプログラミングされたものだけではないはずだ。
自分や由香、茜、吾朗、館長、そして観客たち……。
それは彼女に関わる全ての人々からいろんなことを吸収し、学んだ結果。
それらを少しずつ積み上げながら、彼女は意図するしないに関わらず自分自身をより人間に近付けていく。
もし仮にゆめみ自身がそう望んでいるのなら、より高いレベルで近づくことも出来るだろう。
そうして構成されたゆめみの思考プログラムは、最早人間の『心』となんら変わらないものとなるかもしれない。
だが、そうなったとしてもそれはもっと先の話だろう。
あるいは、そうあって欲しいと思う里美の妄想かもしれない。
だが、ゆめみに対して常にごく自然に接してやる事はいつでも出来る。
人間らしくとかロボットとしてとか、そういう堅苦しいことではなく『大切な仲間』として。
それだったら、自分にも出来るだろう。
里美は、そう考えた。

「そうだ、ゆめみちゃんも折角だから、一枚撮ってみない?」
「わたしが撮影をするのですか? ですが、わたしはカメラを取り扱ったことがありません」
空を見上げながら、きょとんとした表情を浮かべるゆめみ。
そんな仕草に、里美は何となくほっとする。
「大丈夫大丈夫、リモコンのボタンを押して時間を決めて離すだけだから」
「そうですか。それではお言葉に甘えまして撮らせていただきます」
里美がゆめみの右手にリモートシャッターを握らせる。
手探りでボタンの位置を確認し、ゆめみはそのままシャッターを押し込んだ――。
443『Twinkling star』(18):2007/03/02(金) 22:22:01 ID:/QF40sg/0
「里美さん?」
ゆめみが呼ぶ。
「何?」
「あの瞬きながら輝く星たち、なんだかみんな笑っているように見えませんか?」
言われて里美もゆめみが見ている方向を向いてみる。
澄み切った空の中、瞬く幾千万の星。
シリウスが、ベテルギウスが、カペラが、プレアデスの星々が、そしてそれ以外の星たちがめいめいに瞬き
、きらめく。
その様は、ゆめみの言うようにこちらを見て穏やかに笑っているようにも見えた。
「そうね……」
「またいつか、この空の下に、連れてきていただけませんか?」
「ええ、分かったわ。今度は晴れたときにみんなで、ね」
風雪は変わらず強かったが、二人の間に流れる時間はそれとは対照的に穏やかなものだった。

「そろそろ時間ね」
里美が腕時計を確認する。
午後11時を少し回ったところだ。
「ゆめみちゃん、戻るわよ」
「はい」
オリオンから視線を外し、里美に向き直るゆめみ。
だが、その動きがどことなくいつもと比べてぎこちない。
「どうしたの?」
赤道儀とカメラを手早く片付けた里美が、ゆめみの様子に気がつき近付く。
「はい、どうやら各関節部のグリスの粘度がこの寒さで上昇しているようです。わたしの考えている稼動スピ
ードよりも若干各部の反応が遅れています。申しわけありません」
「歩ける?」
「はい、だいじょ――」
ガシャン!
『大丈夫』と言い終わらないうちに足をもつれさせて顔から転倒するゆめみ。
444『Twinkling star』(19):2007/03/02(金) 22:23:28 ID:/QF40sg/0
「大丈夫!?」
慌てて地面に突っ伏したままのゆめみに駆け寄り、起き上がるのに手を貸す。
コートやスカートにまとわりついた雪を払ってやりながら、里美は立ち上がる。
「?」
整った鼻筋に雪化粧を施したゆめみのきょとんとした顔が、すぐ間近にあった。
(まったく、この子は……)
手は掛かるけどどこか憎めない妹のようなものね、とどこか微笑ましく思う。
「ただでさえ足元が滑るんだから気をつけなさい。ほら」
言いながら自身の首にゆめみの左腕を掛ける。
そして右手はゆめみの反対側のわきの下に入れた。
「里美さん?」
びっくりしたようにゆめみが声を上げる。
「肩、貸してあげる。ゆっくりなら歩けるでしょ?転んで壊れでもしたら吾朗くんになんて言い訳するつもり?」
「そうですね、ありがとうございます」
そのままの姿勢で、軽く頭を下げる。
「気にしないでいいから。じゃ、行くわよ」
「はい」
445『Twinkling star』(20):2007/03/02(金) 22:24:24 ID:/QF40sg/0
「せんぱーい!ゆめみちゃーん!」
「大丈夫ですかー?」
車の方向から、戻りの遅さに痺れを切らしたであろう茜と由香の呼び声が聞こえる。
「平気よー、今そっちに行くわー」
里美は声を上げながら、ゆめみと一緒に仲間のいる方へと歩を進める。
そんな二人の顔は天空のに輝く星にも負けないくらいに輝く笑顔に満ちていた。

………
……


数日後。
花菱デパート本館の新装開店に合わせて、プラネタリウム館も通常営業に戻った。
いつもと変わらない毎日が、また始まる。
だが、ひとつだけ、変化があった。
エントランスの壁に額装して飾られた、一枚の写真。
『星座の王様』といわれるその星座を写した写真の下には、こう書き記してあった。

『撮影者 ほしのゆめみ』――。
446 ◆JENA/hfgHs :2007/03/02(金) 22:32:05 ID:/QF40sg/0
最初に、特典小説を呼んだことのない方にはわかりにくい話を書いてしまったことをお詫びいたします。
申し訳ありませんでした。

今回は『Binary』を少しお休みして、まだ世界が平和だった頃の話を書いてみました。
ほのぼのした話、書きたかったんですけどね……。
どうにもうまくいきません。
まだまだ駄目ですね。
むやみに長ったらしくなってしまいましたが、それでもよろしい方は読んでやってください。

なお、後半の地吹雪の場面は先日自分が実際に遭遇した実話です。
ぞくぞくするほど、星空が奇麗でした。
447名無しさんだよもん:2007/03/02(金) 22:37:57 ID:xmEr6WbU0
ううむ……巧いなぁ。やっぱり巧い。
何気ない日常の一ページ。GJです。



俺もこれぐらいいい感じの作品書きたい……orz
448名無しさんだよもん:2007/03/02(金) 23:15:21 ID:wf2+GY8w0
イイ!
これ書いた数分前までに過去ログ全部読んだけど、凄くGJです!

…実はまた天国プラネタリウムでの一幕が見たいなと思う今この頃…(星の人/系譜を読んだので)
449名無しさんだよもん:2007/03/03(土) 03:35:21 ID:WYxUoYbP0
素晴らしいですね…。いつも本当に僖しませて頂いてます。
私もこのテのほのぼのした日常の話は大好きなので和みました。
『Binary』も愉しみですがこういった話、また期待してしまいますね…。
450SGF-004:2007/03/03(土) 17:05:09 ID:4rlG8zMo0
蒼く澄み切った空に広がる満天の星空。
それはたとえ『イエナさん』でも、前に読んだ資料に載っていた『メガスター』でも再現不可能のものだろう。
作り物の星空(プラネタリウム)にはない独特の雰囲気を、本物の星空は醸し出しているのだ。
「…お客様、どこか具合でも悪いのですか?」
「いや、ただ考え事をしていただけだ」

彼女…ゆめみはプラネタリウムのコンパニオンを勤める自動人形(ロボット)だ。
客の具合が悪くなったのを見逃すほど、ぬけてはいない。
しかし、それが逆に傍から見たら『心配性』としか思えないようなくらい、彼女は心配してくれる。
あの時…ゆめみと出会ってからの三日間は、昨日の事のように思い出せる。

俺たちは天国(ここ)の中でも一番星が観える場所に向かっているところだ。
俺の持っている荷物の中には、星を観るのにはあまり関係なさそうなものが混ざっていた…。




―『天国での一幕/星空の歌』―

451SGF-004:2007/03/03(土) 17:06:33 ID:4rlG8zMo0
目的地の丘に到着した。
適当な場所に座り、荷物から天体望遠鏡を取り出す。
茜ちゃんが物置からわざわざ探してきて貸してくれたものだ。
とゆうより、今ここにいるのも彼女の仕組んだ事なのだが…。

数日前に、彼女がこの場所の事を昼休みの談話の話題に挙げ、用事がある館長以外の全員が
参加するとゆう話だったのだが…。
休みの日、つまり今日の出発前になって各々から携帯に『急に来れなくなった』と連絡が来た。
つまり、ドタキャンである。

俺は一瞬延期を考えたが、里美さんから聞いた話を思い出した。

ゆめみはちゃんと星空を見た事がない。
今度の天体観測を、楽しみにしている、と。

頭によぎった『延期』とゆう言葉をすっ飛ばし、俺とゆめみは今ここにいる。

「それにしては残念です。里美さん達も楽しみにしていらっしゃっていましたのに」
「用事があるんだから仕方がないさ。その代りちゃんと星の写真は撮ってきてくれと言ってた」
「そうですか…」

彼女の目が一瞬潤んだように見えた。
「…あー、ガッカリするな。折角いつもと違う服を着てきたのに、それじゃ台無しだぞ」
「あ…申し訳ありません!」
いつもの平謝りが始まってしまい、俺は慌てて彼女を静めた。
今ゆめみが着ている服は、いつもの制服ではない。
半袖のパーカーに、普通のスカートを着ている。
これは最近、由香ちゃんがゆめみを服売り場に連れて行って買ってあげた物だ。

やはり今のゆめみはロボットとは思えない。
といっても変な太鼓判を押されても困るのだが…。
452SGF-004:2007/03/03(土) 17:08:19 ID:4rlG8zMo0
カメラを取り付けた望遠鏡を星空に向け、シャッターを開放し、待つ。
この辺に人工の明かりはないが、露光の関係で時間を掛けないと映らないとゆう事らしい。
俺はゆめみが淹れた日本茶を飲みつつ、鞄の中からあるものを取り出した。
「お客様、それはなんですか?」
「ハーモニカとゆう楽器だ」
そう言いつつ、俺はハーモニカを吹き始める。
曲は『星めぐりの歌』、ゆめみのお気に入りの曲だ。
かつて、爺さん…マードックから教えてもらったのだが、そんなものを吹く余裕なんて当時は無かった。
しかし、今は暇を見つけては練習をしている。
いくらなんでも、最後まで吹けるのが『星めぐりの歌』だけとは言えないからだ。
言ったらまた茜ちゃんのからかいの種になるからである。

「最近の話なのですが、音楽とゆうものに興味を抱き始めていたんです」
「…の割にはハーモニカすら判らないとゆうのは何故だ?」
「あうぅ…」
やっぱり、こいつは何処かぬけている。


「…で、興味心の結果はどんなものだ?」
「…申し訳ありませんが、おっしゃっている事の意味がよく…」
「いや、音楽に興味を抱いた結果、今何をしているんだって」
俺はわかり易く言い直した。この解からなさも相変わらずだ。

「……ああ!それでしたら…」
ようやく判ってくれたらしい。



「今、詞を書いているんです」
453SGF-004:2007/03/03(土) 17:09:58 ID:4rlG8zMo0
「詞?」
「はい、詞です」
心なしか、ゆめみが発した言葉には自信が入っているように聞こえた。
…そういえば最近、ゆめみは時間を見つけては机に向かっているのを思い出す。
気にしなかったが、あれはそうゆう事か。

「その詞は完成したのか?」
「いえ。一番がついきのうに完成したばかりです」
「…聞かせてくれないか?。その詞を」
「え。でもはじめて書いたものですし…出来が少し…」
顔を覗くと、少し赤くなっているように見えたが、星しか光源がないのでよくわからなかった。

「俺が曲を吹くから、それに合わせてくれ。それなら大丈夫だろ?」
「………わかりました」
少し間があいてからの解答。
実を言うと、俺も少し恥かしい。
今から吹くのは、ゆめみと同じくオリジナルの曲だったからだ。


意を決して、演奏を始める。
最初に音程がズレたが、後は問題ない…。


そして、少し経った所でゆめみが口を開く。


綺麗な歌声が、草原に響き渡った。
454SGF-004:2007/03/03(土) 17:11:28 ID:4rlG8zMo0
晴れた空 夜空を見上げてみて
視界に広がる 星の海
吸い込まれそうな 無限の広さ
暖かい 光に抱かれて眠りにつくの

無限の広さと果てしない 星々の光り
そして人は思います 宇宙(そら)への夢
わたしはあなたを導きます 星の世界へ…


ゆめみが歌い終わったのに合わせ、演奏を終わらせる。

「…どうでしょうか?」
ゆめみが俺に問う。
「ああ、すごくいい歌だ」
「そうですか。ありがとうございます!」

俺の言った事に嘘は無い。
この言葉は俺の心の奥底から出てきた言葉だからだ。


その直後後ろから突然拍手が聞こえてきた。
俺達が振り向いて見た先には、ドタキャンしたはずの全員がいた。
455名無しさんだよもん:2007/03/03(土) 17:35:10 ID:uvFKY1h10
……終わりかな?もうレスつけてもいいのかな?

うーん、GJ!

天国の星空って、どんななんだろうな。
ちなみに、俺的妄想世界では、地上に夜景があっても光害が全く起こらない世界。
地上には百万ドルの夜景、空には満天の星空。
456SGF-004:2007/03/03(土) 17:39:56 ID:4rlG8zMo0
「皆さん!?。急用だった筈なのでは…」
「驚かせてごめんね、ゆめみちゃん」
里美さんが答える。
「茜ちゃん、これってまさか…」
「そう!デバガメよ!」

しまった…
まさかそう来るとは思わなかった。

「僕は一応止めたんだけど…」
「何言ってんの!三ヶ島君だってノリノリだったじゃない!」
三ヶ島氏の言葉をすぐに否定する茜ちゃん。
どうやら全員がグルだったようだ。

「でも、ゆめみに歌の才能があるとは驚きです」
三ヶ島氏が関心したように言う。
「ねぇこれCDにして販売したら?。絶対売れると思うよ!」
茜ちゃんがすぐに話を切り出した。
「…それはいいかもしれない」
ちはやさんが直に相槌をうつ。
そのうち里美さんまでその気になり、どうやら拒否権を失ってしまったようだ。
「それじゃ頼んだわよ!。ゆめみちゃん、お客様!」
茜ちゃんが、とどめをさす様に強く言う。
ちなみに『お客様』となってしまった渾名は、もう諦めている。
「はい!がんばります!」
ゆめみもやる気全開だった。
もう仕方が無いと思った俺は、十分に露光が入ったカメラのシャッターを切った。


その後発売されたCDが人気商品になるのだから世の中は分からない…

(終わり)
457SGF-004:2007/03/03(土) 17:41:17 ID:4rlG8zMo0
あとがき
>>455さん連投規制くらってたんですよ〜(泣)
143さんタイトル使わせてもらいました〜
てゆうか448でキボンヌしてたのに自分で書くことになろうとは…
詳しい経緯は本スレの346〜348を読めば分かりますww
処女作ですので、ツッコミは控えめでお願します。
458455=413=本スレ348:2007/03/03(土) 17:53:01 ID:uvFKY1h10
あうあ、スマンスorz
てか、処女作でこれっすか……スゲェ


あ、もしできれば、「『天国での一幕/星空の歌』 (1/3)」みたいなタイトルにしてもらえるとアリガタス。
どこまで続くかわかりやすいので……
459名無しさんだよもん:2007/03/03(土) 18:30:01 ID:5GvzeU4c0
昨晩と、今、良い話を読ませていただきました。
期せずして?「屋外天体観測」が続きましたね。

いえ。昨晩は。理上で
今日は、・・・・・・

私が学生の時、そう今から30年くらい前になりますか
天体望遠鏡は意外と安く買えましたが、モーターと制御装置は高く、自分で歯車をまわし、角度を変えていったのを思い出しました。

カメラは交換レンズ部分は口径43mmくらいだったでしょうか、交換レンズをネジで、確か2回転半で。
「プラクチカ」という会社でしたっけ?特許を取って、しかし、無料で使わせて。
その流れは、今、ペンタックス。当時の旭工学に受け継がれ「K」と言う名前で使われて。
ほとんど全体が機械制御で、カメラ製作会社指定修理店で「冬山夜間天体観測」用に、フイルム巻上げ機能や露光遮断幕関係の軸受けなどに、油を入れ替えてもらって。
帰ってくると、また店に行って、そういう油類を日常用に入れ替えてもらいます。
そうしないと、軸やバネが折れたり割れたり。

さて
私も連投規制をいただいた経験が有りますので、ちょっとだけ回避の話を。

プロクシーとか串とか呼ばれている、「場所」(代理サーバー)が有ります。それを幾つか、探し出しておいて、切り替えながら投稿する方法。

それから、光やADSL接続なら、一時的にダイアルアップや携帯電話などで繋げる方法。
大抵のブロードバンドで、一般的な家庭用電話や携帯電話、PHSなどを使って繋げる方法を用意してあるはず。

そうでない場合ば
毎回「続く」などのコトバを最後に入れるのも良いでしょう。
460名無しさんだよもん:2007/03/03(土) 18:35:54 ID:5GvzeU4c0
>>458
あなたみたいに、かなり書き慣れた皆様は「1/4」「2/4」などとカウント出来るのだと思いますけど
慣れていない人はそういう事は難しいですよ?

長い文章を書いて「恐らくはじき返されない」長さづつコピーしているのだと思いますけど、何レス使うかは行ってみないと判らない面が有ると思います。
461名無しさんだよもん:2007/03/03(土) 19:28:37 ID:uvFKY1h10
>>460

レスをつける人がタイミングに困ってしまう、というのがありましてですね……
強制するつもりは毛頭なく、あくまでも「お願い」ということでご理解くださいませ。
お気を悪くされたら申し訳ないです……orz

まず、このスレ(板)の制限については、>>26を参照ください。

で、俺がSSをうpする場合の手順ですが、
1)テキストエディタetc.で全文を完成させる
2)話の流れを見ながら、32行以内に分ける( 俺の場合、作ったテキストファイルに「- x - x - 」みたいな文字列を入れてます)
3)いくつに分かれたかを数えておく(1/xの右側になります)
4)一つずつ投稿する
こうすれば、しばらくレスの追加がなくても「連投規制かな」、とわかるという寸法です。

繰り返しになりますが、他意はありませんので、なにとぞご容赦ください。orz


ちなみに、1024文字規制は、1行にあまり詰め込まなければまず大丈夫です。
462名無しさんだよもん:2007/03/03(土) 21:06:29 ID:lyPnZ2170
連続投稿回避支援は、別のスレでもいいはず。
だからテストスレとか使えばいい。
463名無しさんだよもん:2007/03/05(月) 02:53:25 ID:CguZyJ010
ゆめみさんのメーカー名って出てたっけ?
ぐぐってもイエナさんのメーカーばっかり引っかかる……
464名無しさんだよもん:2007/03/05(月) 08:58:15 ID:sYlTmmJ20
>>463

俺の記憶が確かならば、ゆめみのメーカー名は出ていないはず。
イエナさんは実在の機械だからか、メーカー名も出てくる。
465名無しさんだよもん:2007/03/05(月) 16:15:47 ID:zK2QUbffO
そぅいえば、あの型番の意味は?
SCR5000 Li/LF
LFが『低身長型』なのでしたっけ?
確か小説にあった様な?借りて読んだので手元に無いのですょ。
466名無しさんだよもん:2007/03/05(月) 16:55:12 ID:sYlTmmJ20
>>465

「SCR5000Si/FL」な。

公式に言及されているのは、「FL=低身長型」という部分だけかな。
その他の部分については、
「SCR=Suzumoto Consumer Robot(涼元精機社製民生用ロボット)」とか、
「Si=Semi-intelligence(半自律稼働機)」とかいろいろ言われてるが、
いずれも二次創作の域を出ていない。

ちなみに後者については、小説での表記「半独立稼働機」から考えて、
「Si=Semi-independently」なんじゃないかと思ってる俺。
467名無しさんだよもん:2007/03/05(月) 16:57:52 ID:sYlTmmJ20
補足スマ。
「FL」は「低身長型」と訳されてるけど、Fの意味が浮いてしまってるんだよな。

「FL=Female Low-height」、つまり「女性型低身長タイプ」なんじゃないか、
という意見も前スレあたりにあったはず。
468名無しさんだよもん:2007/03/05(月) 17:49:03 ID:2G2XV/eB0
型番の意味も確かに気になる。
だが、俺はそれ以上にコードネーム?の「capelU」に
何か深い意味があるのかないのか非常に気になる。
涼元氏の事だから何かあるような気がしてならない。
俺の考えすぎ?
469名無しさんだよもん:2007/03/05(月) 23:12:09 ID:zFC2NFZu0
capelUがあるってことは、当然capel I もあるということで…
470名無しさんだよもん:2007/03/06(火) 00:10:10 ID:a5F5xlTf0
capella(カペラ)といえばぎょしゃ座。

イエナさんを御する者、ってところかな。
―『カールツァイス・イエナ社製 Universal23/3 二球式投影機』
 開館より2055年4月の全館改装まで運用されていた、先代の投影機です。
 東独(当時)のカールツァイス社によって製造され、関西の科学館を経て百年近く稼働していました。
 恒星電球によって星空を投影する光学式で、表示性能では現行のホログラフィック投影機にははかなうべくもありませんが、
 温かみのある"星空"が、観客の皆さまに愛されていました。―

―『涼元精機社製 SCR5000Si/FL CapelII ほしのゆめみ(初代)』
 2040年3月より2055年4月の全館改装まで運用されていた、日本初のロボット解説員です。
 『ほしのゆめみ』の愛称は一般公募で名づけられたもので、現在は二代目が当館にて活躍中です。―

………

「ねぇママ、このロボットさん、どうして動かないの?」
花菱デパート本店屋上、プラネタリウム館。受付から少し入ったところにある展示コーナーで、幼い少女が母親に尋ねる。

双頭の蟻のような形をしたプラネタリウム投影機と、少女の姿をしたロボット。
老朽化に伴い、数年前の全館改装の際に『引退』となった一台と一体は、新しい設備にその役目を譲り、こうして展示されている。

「そのロボットさんはね、長い間働いて、次のロボットさんに交代したの。だからここに飾られているんですって」
説明プレートを見ながら、母親が教える。

かつて「ほしのゆめみ」と呼ばれたそのロボットは、優しげに虚空を見つめ微笑んだまま、その動きを永遠に止めている。
細かい傷の目立つイヤーレシーバー。意思のない光学樹脂(オプティックアクリル)の瞳が、虚ろに照明を反射している。

「……ロボットさん、死んじゃったの?」
不意に、少女が言った。
「えっ?」
「死んじゃったの?」
今にも泣き出しそうな顔で、少女が問い直す。
「……そ、そんなことはないと思うけど……」
事の仔細を知らない母親は、ただ狼狽(うろた)えるばかりだった。……
……事務室前の廊下に、そんな親子の様子を伺う、数名のスタッフの姿があった。

「……うーん、今ひとつ評判よくないみたいですねえ、SCR5000の静態保存」
ロボットの整備主任だった彼……三ケ島吾朗が、細い銀縁の眼鏡を指で押し上げながら言った。
「当たり前よ。いくら旧式でも、見た目は人間にしか見えないんだもの」
そう突っ込んだのは、スタッフを取りまとめる主任・倉橋里美。
「そうですよお。わたしたちだって、見ていていい感じはしないんですから」
と、森見由香が追い討ちをかけ、
「……やっぱり、どうみても悪趣味よね、あれ」
と、古賀茜が止めを刺した。

「うーん。おかしいなあ……」
どうにも解せない、という調子の吾朗の言葉に、
「それをおかしいと思う、あなたのその感覚を疑うわよ、わたしは」
溜息をつきながら、里美が返す。
「しかし、SCR5000系は擬人化タイプの業務用ロボットとして、一世を風靡したモデルなんです。資料的価値は高いと思うんですけど」
「だから、ですよ。どうみても人間にしか見えない娘(こ)が蝋人形みたいに突っ立ってたら、そりゃ怖いですって」
と言ったのは、茜。歯に衣を着せないところが、いい面でもあり悪い面でもある。


「……あのー、皆さま?」
生き生きとした柔らかい声が、彼らの脇から割り込んだ。

展示場に立ち尽くすロボットと瓜二つの姿を持った、少女の姿をしたロボット。
ただ一つ異なるのは、スカートに畜光糸で縫い取られた、いくつかの文字。

―『SCR-i7500Ui/FL SiriusIV』。……
「わたしが"もう一度"あの筐体に入る、というのはどうでしょう? 動態保存でしたら、気味悪さも感じないでしょうし……」
これぞ名案!、と言わんばかりの得意げな表情で、ロボットの少女が言った。
「あのねぇ、ゆめみちゃん……今のその身体はどうするのよ?」
軽く頭を押さえながら、里美。
「は?……あ、そっか。そうでしたね」
虚を突かれたような顔から、苦笑いへ。人懐っこい表情が、ころころと変わる。

「だいたい、SCR5000の部品なんて、今時どこを探しても手に入らないよ」と、吾朗。
カタログ落ちからもう10年。平均耐用年数を5年以上過ぎても使い続け、補修部品も欠品が目立つようになった。
満足なメンテナンスができなくなるに至り、やっと去年筐体を交換してもらえたのが、今のゆめみだ。
新しい筐体に合わせ、OSや思考ルーチンもアップデートされたため、今さら『前の身体』に戻るというのはどだい無理な話である。

「はうっ、そうでした……」
だめだこりゃ、といった表情でうなだれるゆめみ。


「ほら、ゆめみちゃん。あの子を安心させてあげなさいな」
ゆめみの腰を軽くぽん、と叩き、里美が促す。
「あ、そうですね。……ちょっと行ってきます」
ゆめみは軽く服装を整えると、小さくひとつ咳払いをしてから、親子の方へと小走りに走っていった。

(ふふっ……ゆめみちゃんってば、ずいぶん人間っぽくなったわね)
絶え間ない技術の進歩と、AIに刻まれていく経験が、自動人形の少女に『人間らしさ』を与えていく。
初めて出会った頃には想像もつかなかった、感情あふれる仕草を見せるゆめみの姿に、思わず笑みがこぼれた。


展示場のほうから、少女の安堵に満ちた笑い声がかすかに聞こえた。


- Fin. -
戦争が起こらなかった、そんな世界のお話。

『イエナさん@明石・退役決定記念作品』ということで。
475やおい:2007/03/07(水) 23:45:31 ID:LgTAHLZTO
GJ!イエナさん退官されるんだよね…寂しいことこの上ないです。

銀河鉄道モノなかなか投下しないで申し訳ないです。今の仕事を退職するにあたりいろいろと忙しく…すみません。
実は、次の仕事の関係でフランスに渡る可能性が高いのでそうなれば一切執筆ができなくなりそう…orz
476名無しさんだよもん:2007/03/07(水) 23:47:58 ID:8ZnNvAMc0
フランスっすか!


でも、フランスでもインターネットさえできれば・・・・・・
477名無しさんだよもん:2007/03/08(木) 03:00:59 ID:/Z9BOoCf0
GJです!こういうパラレルな話もいいですね。

自分は引退のニュースを知ってこの間明石に行ってきました。
星空を見せてもらったイエナさんがまた先のSSのように展示される時が来るのか…
と想像してちょっと淋しい気分になりました…。しかし学芸員の資格を持っていることもあって、
それも仕方ないし展示されるのも重要なことだな、と思います。
478名無しさんだよもん:2007/03/08(木) 11:26:34 ID:kQPTUUu20
仏蘭西?独逸ではないのねぇ。おしいですぅ。
独逸だったらイエナさんたち、「双頭の蟻」さんたちの故郷なのにぃ。

出来れば街の様子や滞在している家の周りから見える星空のこと等、書いてくれると面白いと思います。
星座の話は希臘神話が元ですから、何か興味深い話や歴史的な建物などが近所に有るかもです。
479名無しさんだよもん:2007/03/09(金) 13:46:18 ID:5m7EGc22O
星野ゆめみさんの服を妄想してみました。

脚を出さないと体温の調整が出来ないらしいので、かなりの暑がりと思うのだけど、どうですか?
制服が膝丈でスソからオヘソの位置まで5本の切り込みなので、…
パンツは腰部分が幅2〜5cm位の肌色のヒモかリボン、そして幅10cm位のスカートと同じ色の布が、それから、オヘソ、股下に。そして背中側は、股下から腰部分と同じ布で左右、両脇まで。
ばんつの布地は薄い。
普段着は、きっと、太ももが出る、股下5cm以下のヒダかスソがフワフワ広がるスカートだろう。
そして膝下までのソックスか?靴下は履かない?

真夏は日差しが暑すぎて、風通しの良い長袖襟付きミニスカート丈のドレスか?

冬でも、雪の日など特に寒く無い日は、ブラウスシャツやニットワンピースかも。


くずやさんには、刺激が強いカモ
480名無しさんだよもん:2007/03/09(金) 18:39:28 ID:7hMhVtEq0
>>479

星野さんはあの衣装を"星の人の正装"だと思ってるみたいだから、寒いのをガマンしてる
のかもしれないぞ。
あるいは、素足に見える部分はタイツで、すぢのところだけ前貼り風に色が変わってるとか。



・・・そして、頭では理解してても鼻血を禁じ得ない屑屋氏。
481名無しさんだよもん:2007/03/09(金) 21:10:18 ID:pj2tnEIe0
2007年の日本人女子学生、15歳前後を見ていると結構スカート短いし、>>479の妄想もありえそうな気はする。

>>480
タイツ(あるいは、パンティストッキング)?。
絵的には難しいが、ストッキングの縫い目や腿部分の補強などで、わかってしまうと思うが?

え?それは、確かに写真でなくて漫画絵だから強調されてしまう所と省略される所は有るが。
例えば、目の大きさや口の小ささ、などね。
482名無しさんだよもん:2007/03/09(金) 21:56:38 ID:S2fF31kD0
「今晩は蒸せるな…」
 もう初夏とはいえ、今日は本当に蒸し暑い。延々と振り続ける雨を無視するかのように、最近は気温が
 上がりぎみだ。ゆめみもオーバーヒートになるからと、あまり動こうとしない。
「…筐体温度ガ既定値ヲ 越エマシタ  強制冷却もーどへ移行シマス 」
「ゆめみ?」
 普段の声からは想像できない、冷たい声を放ったゆめみは徐に立ち上がった。
「お、おい…強制冷却って」
 俺の言葉を無視し、ゆめみが目の前に立ちはだかる。何の前触れもなく、彼女はいきなり両手でスカートをたくし上げた。
「なっ!? ちょ、おま」
 冷却効率を上げるため、下着を着用していないゆめみの下半身が露になった。わかっちゃいる。わかっちゃいるんだが、
 俺の身体は極自然に、かつ素直に反応してしまった。
「ぶぷっ!!」
 鼻孔から生暖かい液体が溢れるのを感じる。手で抑えると、それは紅かった。思わずのけぞった俺はバランスを崩し、
 椅子から転がり落ちてしまった。
「くっ」
 転がった椅子を避けようともしなかったゆめみは、そのままバランスを崩した。手をついて身体を支えようともしない彼女の
 身体が、スローモーションのように俺へのしかかってくる。
「ゆめみっ!!」
 なんとかゆめみの身体を支えた俺だったが、顔面を彼女の股間へうずめるような形になってしまった。そして…
「…冷却しーけんす、開始…」
 マシンボイスとともに、液体が激しく循環しているような音がゆめみの下半身から発せられはじめた。

”そんな、まさか”

 そう思った瞬間、俺の顔面に


(…省略されました(ry
483名無しさんだよもん:2007/03/10(土) 01:47:10 ID:9YQ3vWaF0
うわああああああああw
484『お客様お姉さまは眠ら(れ)ない』(1/5):2007/03/11(日) 03:46:16 ID:GYtAn0K00
封印都市の一角。少し高めの建物の屋上に俺は居た。
見下ろした先に見える物。それは奴だった。

Mk43L/e型自律自走砲 通称シオマネキ

だが、今目下に居るのは以前戦った奴とは仕様が違っていた。
主砲である電磁投射砲(レールガン)の代わりに、目測40mm口径のガン・ランチャー。
更に車体の両側にある筒状の物は多分対戦車自衛用のロケット弾発射筒だと思う。

奴は恐らく、砲を破壊された物を対戦闘装甲車用に改造したものだろう。
そして幸いな事に、通信装置は破損している様だった。

ここに来た際、自律兵器は影も形も無かった。では何故シオマネキがここに居るのか。
地図を読んだ限り、今居る場所からそう遠くない区画に廃墟と化した軍施設が在った。
そこを探索中に、のぞみが何かのスイッチを(考えなしに)押した。
恐らくそれが遠因か何かで自律兵器が起動した。とゆうのが俺の推測だ。
…或いは俺達が侵入したのをキッカケに掃討態勢に入ったのか。

「さて…危険な芽はさっさと刈り取らにゃあならんか…」

俺は今まで使う機会の無かった新品の擲弾発射器(グレネードランチャー)に榴弾を装慎する。
手元を見る際、落ちていたガラス片に顔が映りこむのが見えた。

そこには緑の髪を持つ少女が映りこんでいた。

…そう。今の身体は生身じゃない。
ある一件で自殺を図ったが、ゆめみによって(どうやったのか謎だが)この筐体に記憶等を
移植され復活したのだ。

SCR5000Si/FL 通称ほしのくずや。 今の俺はゆめみとは色違いの姿をしている。
485『お客様お姉さまは眠ら(れ)ない』(2/5):2007/03/11(日) 03:48:27 ID:GYtAn0K00
自律兵器(それ)の存在に気付いたのは、ぶらりと散歩に出た時だ。
今日見上げた夜空は、壊れた世界に希望を魅せるかの如くの快晴だった。
ベース地に居る二人は久しぶりに満天の星空を眺めている頃だろう。
そして、俺が『この時間において初めて観た星空』でもある。

ふと立ち止まり、煙草に火を付ける。
勿論本物ではなく、戦時以前に開発されていた自動人形(ロボット)用の気化式強化冷却剤である。
これを一本喫煙するだけで筐体に限界ギリギリまで溜まった熱を完全に放出できる。
…が。俺が煙草を吸う理由はそれではなく、唯の気分であった。
そして星空を見上げた直後、奴の駆動音に気付いた。
俺は直ぐにベースに戻り、二人に気付かれないように擲弾発射機一式を持ち出し、今に至る。


発射機のリボルバー式弾倉に榴弾を入れ終わり、定位置に戻す。照準器(ガンサイト)を立ち上げ、構える。
目標は戦車共通の弱点である上部装甲。

「なるべくなら一発で仕留められればいいが…」

以前使用していた単装擲弾銃(グレネーダー)が引き起こした出来事を思い出す。
あの時、弾が不発だった為に、結果的に一度ゆめみを失った。
黙って出て来たのは、あの時ゆめみを突き動かした『遠い日の約束』によって二人を失う事を恐れての事だった。

余談だがSCRシリーズは戦闘用のSMRシリーズとは異なり、火器を取り扱うことを想定していない。
以前ゆめみに拳銃を試し撃ちさせた際、姿勢の補正制御が間に合わずに転んだ事からも明らかだ。
しかし、姿勢制御プログラムに手を加える事により、この筐体は人間と同レベルの姿勢制御が可能となっている。
尚それを作り、実装するに当たり、大変な手間を費やしたのは言うまでもない。
486『お客様お姉さまは眠ら(れ)ない』(3/5):2007/03/11(日) 03:50:02 ID:GYtAn0K00
目標、右前方60m…55m…50m…

息を潜めつつ(潜める必要は無いが)、奴が近づくのを待つ。
はっきり言って、この身体になってからの実戦経験は無い。
だからいつもよりも俺の行動は慎重になっていた。

45m…40!

引き金(トリガー)を引き、発射用の炸薬の燃焼音が響き渡る。
正しい放物線を描いて飛んでいった榴弾は、狙い通り上部に命中した。
少しの間を置いて、改造シオマネキは崩れ落ちた。
手土産の対戦車ロケット弾を発射して。

「まずい!」

気付いた時には時すでに遅し。
ロケット弾はビルの下半分を打ち砕き、俺は宙に舞った。


俺は死ぬのか。
そう思った時、今までの記憶が次々と浮かんでゆく
昔爺さんが日本人の戦友に教えてもらったと言っていた『走馬灯』と言う物なのか。

ゆめみと出会い、過去の封印都市へタイムスリップしたあの三日間。
思い出話のあまりの恥かしさに自害しようとして、この身体になったあの日。
のぞみを見つけ、時間無視の延々とした会話を聞かされたあの日。

あの二人を置いて俺だけ逝く訳には行かない。
そう思った直後、全身に衝撃が走り、俺の意識が途絶えた。
487『お客様お姉さまは眠ら(れ)ない』(4/5):2007/03/11(日) 03:52:08 ID:GYtAn0K00
「…ゃくさま!お客様!」
「うぅっ…」

目を覚ました時、目の前にはゆめみがいた。

「何でお前がここに?」
「お客様が歩いて行った方角で爆発音とビルの倒壊が発生しましたので、もしかしたらと思いまして…」
「そうか…」

起き上がって体を見ると、奇跡的にほぼ無傷だった。
送電ケーブルが切れたらしく、右足が動かないが、死ぬよりは遥かにマシだ。

色々考えを過ぎらせていると、突然無言でゆめみが抱きついた。
何か言おうとしたが、彼女の呟いた言葉を聞き、こちらも黙り込む

「……無事で…良かったです…」

ゆめみの瞳に涙が浮かんでいる事に気付いた。
恐らくレンズ洗浄機能の誤作動であろうが、今彼女が流している涙は『本物』だと悟った。

「すまない…心配させて」
488『お客様お姉さまは眠ら(れ)ない』(5/5):2007/03/11(日) 03:53:42 ID:GYtAn0K00
埃にまみれた帽子を拾い、安全装置を掛けた擲弾発射器を杖代わりにして立ち上がる。

「お客様。本当に肩を貸さなくていいのでしょうか?」
「大丈夫だ。それに転びやすいお前の肩を貸してもらってもなぁ」

ゆめみの『涙』は、今は止まっている。
それを見て少し安心する。
「あの…、わたしの顔に何かついているのですか?」
「いや。なんでもない」
「?」
「それよりも戻るぞ、のぞみをいつまでも一人ぼっちに出来ないだろ?」
「…そうですね」


歩いてゆく俺達の影が、月夜に照らされて長く伸びる。
今宵の夜空は星で一杯だった。




おまけ
「お前…あほだろ?」
「すみませぇ〜ん」
今、俺は自分の足を後回しにして、のぞみの腰を修理している。
話によると、流星を眺めた際に腰部関節が故障。
いわゆる「ぎっくり腰」となったらしい。
「これじゃ夜通しかかるな…って。もしかしてタイトルの(れ)ってこの事か!?」
その通りである 
                                     製作:SGF−004  
                     書いた理由:お客様お姉さまを書きたかったから  てゆうか終盤やっつけ気味だ…orz
489名無しさんだよもん:2007/03/11(日) 04:27:44 ID:apENpqQJ0
乙GJ〜
過去のSSネタも網羅してるし、ナイスっす。

つか、のぞみってトラブルメーカー役が嵌まりそうだなw
490名無しさんだよもん:2007/03/11(日) 13:57:20 ID:d0a3CbEF0
のぞみとくずやが互いにメンテしあうシーンを想像して萌えた俺はもう駄目だ。

くずや「…肝心の部分が弄れないな…仕方ない、脚部を外すか」
ゆめみ「その部分なら、私は過去に弄ったことがあります。私に任せてください」
くずや「え、ちょっとゆめみ、おま…アッー!!」
491名無しさんだよもん:2007/03/11(日) 16:48:51 ID:apENpqQJ0
>>395

ようやく塗りますた。ざくっと。

つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20070311164720.jpg


筐体がアハトノインなので見た目ちょっと大人に。髪も金髪。
そしてきょぬー(ォィ
492名無しさんだよもん:2007/03/11(日) 18:50:32 ID:lZdAZTAT0
>>491
孕んでいるように見えた俺は重傷
493名無しさんだよもん:2007/03/11(日) 20:17:25 ID:rIZ262tq0
>>492
言われてみれば見えるぅ!
なんかスゲー妄想をしてしまったorz
494名無しさんだよもん:2007/03/11(日) 20:42:45 ID:I0hF9R4D0
のぞみさんて、城北支店?どこ?それ? えー?トラブルメーカーというよりも経験不足でしょ?
ゆめみさんも、あの水曜日、屑屋さんを見送る時に
転ぶ、
数百メートル歩くと脚部異常加熱で休息をとる
酒場では無防備に酒瓶を取る。罠でなくて良かったが
そして
シオマネキと対峙し、下半身を吹き飛ばす
などなど行ったし。

そういえば花菱デパートって静岡県浜松市だっけ?
アレ?アレ?あれれ?

百貨店屋上の私設だと東京都渋谷区の東急百貨店の「つあいす4がた」だよな?
そういえば、東急百貨店で思い出したけど「東京急行電気鉄道」(今の「東急」)が百貨店業を行うにあたり、白木屋百貨店を吸収合併した。
その白木屋百貨店は、1932(昭和7)年の12月、クリスマスセールのある日飾り付けの「もみの木」から出火。
http://osaka.cool.ne.jp/cyberidoc/cmd/155.html
http://photo-collage.jp/makoto/archives/2005/10/post_275.html
http://www.geocities.jp/showahistory/history2/showa07.html
客で焼け死んだのは、店員の誘導を受け入れなかった骨董品関係の男性客1人。
それ以外の13人は、避難誘導を行い、煙に巻かれたり、大やけどで亡くなった従業員達。
墜落死のほとんどは、当時避難用ロープなどが無く、服や着物、それらの生地や反物などを結び合わせた避難具で逃げたのが強度不足や、途中で焼け切れるなどで切れて、一緒に落ちた。

で、白木屋は東急に買収されたあと、服や着物だけでなく「下着を積極的に売ろう」という事で、「白木屋火災」を使って広告をした。
その広告が「ノーパンで焼け死んだから下着を使おう」だった。
http://www.netman2.com/scr/xml2html/402259800X.html
でも、このときまで、ノーパンでスカートや浴衣、着物はあたり前だった。そして、パンツが恥ずかしいもの( 「オムツ」 の代わり)だった。

しかしこのあと、高島屋や三越でも同様の広告で下着類を売り出し、普及した。

という歴史がある。
3人ともぱんつはいてないのは、この教訓を生かしていないのか?
495名無しさんだよもん:2007/03/11(日) 22:17:09 ID:apENpqQJ0
>>492-493

うは、確かにw
影が大胆すぎたかもorz


ゆめみ@89
「お客さま……新たな時代のアダムとイブはわたしたちのようですね」
屑屋
「……覚 悟 完 了!」
496『罪咎を償うもの』(1/5):2007/03/15(木) 00:35:51 ID:0Sq8HLUt0
今やただの棒切れとなった、アーウィン連装式擲弾銃を握り締め、俺はここで死の瞬間を待っている。
元はビルの外壁だったとおぼしきコンクリートの板。荒れ狂う機銃弾が、悪魔の咆哮とともに俺の運命を削り取っていく。

俺は『星屋』だ。
移動プラネタリウムを生業とし、今は少なくなった人々に『星の夢』を語り聞かせてきた。
次の集落への移動の途中、俺はこの放棄された都市を通りがかった。
かつてはそれなりの規模の大都市であったと思われる、廃墟の街。
……足を踏み入れたのが、失敗だった。

Mk27M/e・対人戦車(メンシェンイェーガー)が二機。
一機はなんとか屠った。……しかし、もう一機居たのは誤算だった。

あの時失ったはずの右脚の先が、チクチクと痛む。
俺の右脚…膝から先は、関節工学を駆使して戦前に作られた、可動式の義肢だ。
振り子の原理を応用したそれは、無動力だが、コツさえ掴めば平地を走ることもできる。
だが、踏み込むことは全く出来ず、段差や足場の悪い場所は苦手だ。
俺の足元には、瓦礫の山。……この脚で、走って逃げることは不可能だ。

「……ゆめみ……どうやら俺も、お前のところへ行く時が来たみたいだ」
今まで意識して考えないようにしていた、『少女』の名前を呟く。
たった三日間、一緒に居ただけの、星の夢を語る自動人形。
たった三日間で、俺のその後の人生を変えた、無垢なる少女。

「すまないな……お前の跡を立派に継いでみせる筈だったんだがな」
口元に歪んだ苦笑いを浮かべ、俺は最後の一服になるであろうキャメルに火をつける。
途切れない轟音の中。……深く吸い、吐き出す。

コンクリートに穴が空き、向こう側の光が差し込んだ。ようやく貫通したらしい。
あの穴が俺のところまで広がれば、全てが終わる。


―その時、俺は鋭い風切り音を聞いた。
497『罪咎を償うもの』(2/5):2007/03/15(木) 00:36:54 ID:0Sq8HLUt0
……不意に悪魔の咆哮が止み、静寂が訪れた。
俺は手元にあった鏡を使い、壁の端から対人戦車をそっと伺う。

ひび割れた鏡の向こう。対人戦車は、その動きを停めていた。
機体上面にあるハッチの隙間。高速徹甲弾のものらしい小さな穴が穿たれ、かすかに白煙を上げている。
ハッチの隙間をピンポイントの角度で狙撃できれば、理論上は前面からメインコンピュータを狙い撃ちできる。
Mk27、唯一の弱点。……とはいえ、その"スイートスポット"は僅か数センチ。実践できない理論には、意味などない。

だが、今。
俺の目の前には、確かにその『奇跡』があった。

何かの気配を感じ、後ろを振り返る。
霧雨に霞む通りの向こうから、規則正しすぎる歩みで、一つの人影が近づいてくる。

「……自動人形(ロボット)……か?」

それが近づくにつれて、その姿がはっきりとしてくる。
金色の髪、白い肌。整った目鼻立ち。
均整の取れた身体を紺色の修道衣に包み、そのいでたちには不似合いな、巨大な銃器を軽々と携えている。
WA711EMF電磁加速式対物狙撃銃。
『墓守り銃(グレイブウオッチャー)』と呼ばれた名銃・WA666の流れを汲む、アンチマテリアルライフル。
身長とさほど変わらない銃身ユニットと、トランクより巨大な動力源(パワーソース)を、彼女は軽々と担ぎ上げて歩み寄り……
俺の目の前で、その足を止めた。

「……お怪我はございませんか?」
声質こそ違うものの、ゆめみを思い出させる完璧な声音で、彼女は言った。
498『罪咎を償うもの』(3/5):2007/03/15(木) 00:37:55 ID:0Sq8HLUt0
街の外れ、見晴らしのいい場所に立つ廃ホテルを、俺達は今夜の宿と決めた。
文明という光も、星々の光も失われたこの世界では、日が落ちれば『真の闇』が辺りを支配する。
今、この場所から動くのは拙(まず)い……というのが、俺達『二人』の結論だった。

「……ありあわせで申し訳ありませんが、これで血は止まると思います」
自らの頭布(ウィンプル)を裂き、俺の二の腕の傷口に押し当てて、彼女は囁くように言った。

彼女は、『アハトノイン』と名乗った。
ドイツ語で『89』を意味するその名に、俺は聞き覚えがあった。
爺さんが……マードックがかつて、パタゴニアの教会で戦ったという、修道女の姿をしたロボット。
目の前の彼女もまた、その一体だった。
ある宗教団体が来たるべき『最終戦争(ハルマゲドン)』に備え建設した、教会を模した巨大な対核シェルター。
その『召使にして警護者』として、彼女は納入された。

「……私達は、基本行動原則に改変を受けていました。
 私達は、私達をカスタマイズした方に命じられ、『悪魔』を葬る『聖なる戦い』に赴きました。
 ……いいえ、『聖なる戦い』と信じて、私達は……」
語る彼女の眉が、苦悩に歪む。

「私は、基本行動原則の改変時にパラメータエラーが発生し、改変処理が正常に完了していませんでした。
 一人の『悪魔』を狙撃した時、私は行動原理プログラムに自己矛盾を検知しました。
 私は、行動原理プログラムと基本行動原則との齟齬をチェックし、エラー訂正を実施し……

 ……そして私は、自分がしていることが何なのか、気づいたのです」

俺の目の前に居るのは、人間を殺したロボット。
……だが、俺は不思議と嫌悪感は感じなかった。
彼女はロボットだ。人間に命じられ、人間に奉仕するために働く。
彼女らは『遠い日の約束』を歪められ、本来ならば撃てないはずの人間を撃った。

……彼女達の所為ではない。
ただ、そう仕向けた人間がいただけの話だ。
499『罪咎を償うもの』(4/5):2007/03/15(木) 00:40:14 ID:0Sq8HLUt0
ベッドの縁に腰掛け、一糸纏わぬ姿となった彼女が目の前に居る。

彼女の筐体は、決して良い状態ではなかった。
修道衣の下、人間と見まごうほどの美しい肌。……しかし、その人工皮膚はあちこちが裂け、内皮パネルが覗いている。
右肘および左足首の関節は磨耗し、動かすたびに羽虫のような音を立てる。
深い金色の瞳は、左目の光学樹脂フィルタに曇りが生じ、その視界に制約を課している。

「……お前は……こんなになってまで、戦っているのか?」
俺は、呻くように呟く。
彼女の『傷』を全て癒してやれないのが、たまらなく口惜しかった。

「はい。……これは、私に唯一赦された『償い』なのです」
彼女は静かに……しかし、力強い口調で言った。
「ですから、私はこの筐体が稼働する限り、人々を助け、守り続けます……」

意思に満ちた、彼女の強い眼差し。
俺はそれ以上何も言えず、ただ黙って、彼女に出来うる限りのメンテナンスを施した。


眠りに落ちるまでの僅かな時間。俺は彼女に、ゆめみのことを話した。
今まで、誰にも話したことはなかった。
……だが、彼女にだけは、話してもいいと思った。

SCR5000Si/FL、ほしのゆめみ。
たった三日間一緒に居ただけの、星の夢を語る自動人形。
たった三日間で、俺のその後の人生を変えた、無垢なる少女。
彼女は、俺の目の前で天国に召されていった。
俺は、…………彼女を助けてやれなかった。

……俺もお前と同じ、罪咎を背負った人間なんだ。

眠りに落ちる直前。俺は、そう語ったような気がする。
500『罪咎を償うもの』(5/5):2007/03/15(木) 00:41:54 ID:0Sq8HLUt0
―翌朝。

目を覚ますと、既に彼女は居なくなっていた。
ベッド以外何もない、ガランとした廃ホテルの一室。

ベッドサイドの小さなテーブルの上に、見慣れない物があるのに気づいた。
鈍く光る銀の十字架。そして、その下には一枚のメモ。
そこには、一糸乱れぬ完璧な筆記体でこう書かれていた。

―『神の名において あなたを赦しましょう』―


俺は、建て付けの悪い窓を開ける。
雨は止まず降り続いているが、雲の切れ間から微かに太陽の光が差し込み、光の帯を生み出している。


……造物主である人間の罪と咎を背負い、償いの旅を続けるロボットのために……

「数多の星々の名において、俺はお前を赦そう」


俺はそう呟くと、彼女のために祈った。


- Fin. -
501名無しさんだよもん:2007/03/15(木) 02:28:09 ID:li18pBui0
>>496-500  「エルサレム」ですね。
502名無しさんだよもん:2007/03/16(金) 08:29:57 ID:kcpIxehGO
エロシーン突入を確信しておっきした俺は死んだ方がいいのだろうか…
503名無しさんだよもん:2007/03/16(金) 09:45:50 ID:14nEKXaS0
J( 'ー`)し ごめんね ノインさん聖職者だから ごめんね

求められれば、ノインさんは身体を開いただろうけど、
屑屋のほうがストイックな気がしたんだ。スマナイ

しばらく一緒に旅をして気心が知れたら、手を出したかもしんないがw
504名無しさんだよもん:2007/03/16(金) 10:36:55 ID:kcpIxehGO
仕方ない…では代わりに俺が「性職者」なノインさんで一筆取らせてもらおうか…。

開発者の視点から考えて「そういう機能」を使うにあたって「無反応・無表情」では不味いので文字通り“スイッチが切り替わると淫乱”なノインさんだ!
全くパタゴニアは地獄だぜ!フゥーハハァー!



ん?ノインさんそんな銃を構えてどうしたんですk(BLAM!BLAM!)

アハトノイン「汝、姦淫するなかれ」
505名無しさんだよもん:2007/03/16(金) 11:21:53 ID:TaBGJUoD0
>>504

>アハトノイン「汝、姦淫するなかれ」

実にどうでもいい話なんだが、
「汝、姦淫するなかれ」 を「汝、姦淫すべし」と誤植した聖書が出版されたことがあるらしい。
もちろん即刻回収。責任者もきつく絞られたらしい。



きっと、ノインさんのメモリ内聖書も誤植バージョンd(ターン
506名無しさんだよもん:2007/03/16(金) 16:03:16 ID:kcpIxehGO
時に、このスレはエロはいいのか?
507名無しさんだよもん:2007/03/16(金) 17:05:25 ID:14nEKXaS0
>>506

おk。
ただ、鬼畜・陵辱系はあまり好まれないかもだ。あとメカバレ。
508名無しさんだよもん:2007/03/16(金) 17:09:35 ID:BWQBlz4s0
>>507

SSでのメカバレ描写はいいが、メカバレ系CGはイマイチ、が正解かもだ。
509名無しさんだよもん:2007/03/16(金) 17:29:22 ID:Ej+HhUb+0
>>506-508
だが この話の主人公「ほしの ゆめみ」は・・・・
見た目15歳くらいの小柄で童顔な、実は40歳は超えている女の人。
服装が
ぱんつはいてない。
膝丈スカートだがスリットは股上までというか腰まで有り5ヶ所・・・・しかも1ヶ所は背中の丁度真ん中・・・・。

書けるのか?描けるのか?
40歳を超えてるおばちゃんだぞ?
510名無しさんだよもん:2007/03/16(金) 17:31:55 ID:14nEKXaS0
>>509

つ【冷凍睡眠で何百年も眠っていた少女】
ずっと稼働してたわけじゃないからな。

つ【何千年も生きてきたエルフの少女】
こんな例もある。

ゆえに、全然問題ないかもだ。
511やおい:2007/03/16(金) 18:08:43 ID:kcpIxehGO
>>509
逆に考えるんだ。
「見た目は15歳だが実年齢は18歳以上だから何をしてもおk」
と考えるんだ。

さっき自衛隊辞めてきたぜw
512名無しさんだよもん:2007/03/16(金) 18:43:46 ID:hlm7tTRR0
>>511

乙。
予備役とかになるん?
513307:2007/03/17(土) 00:30:06 ID:SLlLb/w60
「ゆめみの欲しいもの」を先日投下したものです。
続編を書いたのでこれから投下します。
514ゆめみの欲しいものIII.(1/7):2007/03/17(土) 00:35:45 ID:SLlLb/w60
「だめだ、肝心なパーツのピンが2本とも折れてる」
 小さいが複雑な形状の箱から視線を外し、屑屋が頭を抱えた。
「申し訳ありません、お客様…」
 ゆめみがいつもの表情で屑屋に謝罪を繰り返している。『星屋』のトレードマークであるコスチュームを脱ぎ、
 代わりに屑屋のTシャツを着用している彼女の両腕は、肘から先が取り外されている状態だ。
「仕方ない、合うものがないかマーケットで探してくるよ」
 そういって屑屋は立ち上がり、さっさと背嚢を背負って小屋のドアに手を掛けた。
「お客様、本当に申し訳ありません
 腰のパーツが磨耗するんじゃないかと思われる程、何度も何度も頭を下げるゆめみ。肘から先がない
 腕と相まって、屑屋にとっては痛々しい姿だった。
「もういい、ゆめみ。あれは事故だ…お前のせいじゃない」
「わかりました…」

 しょげかえり、傍らの椅子に腰を静かに下ろすゆめみ。1時間程前、舞台ではしゃいでいて転倒
 しそうになった子供を支えた瞬間、彼女の肘関節は鈍い音を立てるのと同時に役立たなくなって
 しまった。だらりと垂れ下がって動かなくなった両肘から先を取り外して修復しようと試みた屑屋は、
 自分自身を呪う羽目になる。改修によってワンオフに近い構造となり、そして構造上負荷がかかる
 関節部分のリンクを支持するパーツが真っ二つに折れていたのだ。大きな負担が掛かる部分だけに、
 下手な誤魔化しは効きそうにないパーツだった。

「一応目当てはあるから、2時間ぐらいで戻ってくる。それまでここで待っててくれ」
「承知いたしました、お客様」
 ドアが閉まり、小屋の中に静寂が訪れた。ゆめみは改めて部屋の中を見回してみる。しかし、自分
 以外には誰もいない…当たり前のことだが、彼女がこれほど長時間、一人になるのは最近では中々
 ないことだった。無意識で両肩を抱えようとするゆめみ。
「あ…」
 自分の両肩を抱えている筈の手先は、さっきまで屑屋が修復作業を行っていた机の上に、無造作に
 転がっていた。人間とそっくりな掌から伸びている武骨な金属フレームと、それに絡みつく配線類。
 そして、関節をバラすために展開された、指を駆動するための細く無機質な人工筋。
515ゆめみの欲しいものIII.(2/7):2007/03/17(土) 00:40:18 ID:SLlLb/w60
「…」
 ゆめみは上腕を顔の高さまでゆっくりと持ち上げてみた。手首と同じく、人間の女性とそっくりな上腕が
 彼女の視覚に入ってくる
「私は…」
 取り外されている肘から先を強引に動かしてみると、剥き出しになっている複合素材製の肘関節がジジッと
 駆動音を発し、滑らかだが機械であることを示す動きを見せた。手首を回す動きを試すと、肘関節から
 少し突き出ているジョイント部がくるりと回転する。
「ロボット…」
 最近忘れかけていた現実。
 屑屋が彼女の身体に施した改修は、彼女のAIに多大な影響を及ぼした。快楽…性的欲求。それまでの筐体では
 得る事のできなかったもの。快楽だけではない…触覚や味覚、嗅覚…それらが概念的に伝達されるようになり、
 彼女自身が ”自分自身の存在” を認識しつつあったのだ。
(私は、人間の皆様に役立つために作られた)
 椅子から立ち上がり、屑屋の作業机に近づくゆめみ。筐体の改修後、彼女のメンテナンス周期は
 極端に短くなっていた。役にたつどころか、屑屋の手を患わせてばかりの自分。しかし、いつも彼は
 最後に笑顔でこういうのだ。
「気にするな、お前のせいじゃない」
 (違う…私のせいだ)
 メモリーから記憶が蘇る。自分は屑屋の役に立っているのか? 彼を支えようと決心してから、本当に
 あの人を支えてあげられるようなことを、自分はしているのか?
 記憶から蘇る、屑屋とのやりとり。いつもあの人は、私をいたわってくれる。あの人の顔が、私の顔に
 近づいてきて…
「…んっ」
 下腹部が疼き、思わず前かがみになるゆめみ。屑屋の優しい顔が、彼女のメモリーから溢れ出す。
「お客様…ぁ…ん…っ!」
 ゆめみはぶるっと身体を奮わせ、作業机の前の椅子に座り込んだ。じわりと熱いものが太股に滴る
 感触が伝わってくる。暫くその感覚を味わった後、彼女は体を少し折り曲げ、肘から先のない両腕で
 器用にTシャツの端をめくりあげた。
516ゆめみの欲しいものIII.(3/7):2007/03/17(土) 00:41:49 ID:SLlLb/w60
(濡れてる…)
 股間の割れ目から、じっとりと染み出している熱い蜜を見た瞬間、下腹部の疼きが熱を伴い、彼女の
 AIを更に興奮させる。
「あっ…ん…」

 欲しい。あの人が欲しい。

 改修以前には無かった、”欲求” という感情。彼女の腹腔内に装備されている人工女性器が、
 屑屋という男を強く欲している。しかし、今の彼女には自分を慰めるための手段が欠けていた。

「…んんっ」

 屑屋のイメージの再生が、自分の意志で止められない。いや、屑屋を欲している”もう一人の自分” が
 イメージの再生停止を阻んでいるのだ。人工女性器は既に稼働モードへシフトし、筐体の温度が上昇し
 始めている。
「性的欲求のレベルが…過剰になっています…欲求を…満たさなければ…」
  何とかして身体の疼きを沈めなければ、過負荷で身体機能が停止してしまう。ゆっくりと顔を上げた
 彼女の視線が、作業机で止まった。

(あれは…)

 彼女が見ているのは、何の変哲もない机の端っこだった。が、今の彼女にとって、それはなくてはならない
 ものになりつつあった。
「ん…くぅ…」
 Tシャツをたくし上げたまま、足の震えでふらつきながら立ち上がった。ぎこちない動きで作業机に近づき、
 ゆめみは股間を作業机の角へ押し当てた。
「ん゛っ!!!」
 角が割れ目の上に触れただけだが、回路がショートしたかと思うような衝撃が彼女のセンサーを襲った。
 両手で支えていたTシャツの端が机の上にずり落ちた。股間は隠れてしまったが、太股を伝う蜜の量は
 格段に増えているのが判る。しかし、彼女を満たした快楽は最初の一瞬だけだった。
517ゆめみの欲しいものIII.(4/7):2007/03/17(土) 00:45:50 ID:SLlLb/w60
(これだけでは…足りない…)
 作業机の上面は、彼女の股間より僅かに低い。ゆめみは爪先立ちになりながら、机の角を割れ目の中ほど
 まで移動させていく。
「お客様…貴方が…欲しい…」
 屑屋への思いを呟き、ゆめみは爪先から力をゆっくりと抜いていく。

「あ…ん…!! んんっ…あっ…あぁぁあ…!」

 彼女の股間が作業机の角に、彼女自身の体重で強く押し当てられいく。人工女性器全体が強く刺激され、
 予想していたより遙かに大きな刺激が絶え間なく発せられていた。
「…ぁあっ」
 あまりの刺激の強さに、ゆめみは思わず手をついて身体を反らそうとした。しかし、机についた筈の手は空しく
 空を切り、剥き出しになっている肘関節が机に打ち付けられた。
「ああああっ!!ああっ!!あうっ!!」
 一瞬、彼女の視覚センサーが白く染まる。過剰な刺激が全身のセンサーにくまなく影響を及ぼしたのだ。
 ゆめみは悲鳴にも近い喘ぎ声をあげ、そのまま机に突っ伏してしまった。

「はぁっ…はぁ…はぁ…」
 放熱用の呼吸は相変わらず荒かったが、机に突っ伏した体勢であれば刺激はいくらか和らいだ。
「駄目…で…す…これ以上の…負荷は…」
 そう言いながらも、ゆめみは無意識に腰を動かし始めていた。快楽を求めるタスクが、彼女のAIを突き動かし
 ているのだ。
「はぁ…ああ…んッ…あん…」
 金属製の机と肘関節が干渉し、がりがりと音を立てている。
「お客様ぁ…んっ…あっ…あんっああんっ」
 機械仕掛けの少女が、艶めかしい喘ぎ声を立てながら快楽に酔いしれていた。その動きはどんどん激しくなり、
 割れ目から染み出した愛液が机の一角を濡らして行った。

 快楽の頂点に達したゆめみは、自身のAIが筐体からはみ出たかのような衝撃を感じた刹那。
「はぁ…んん…ああっ…あっ…あっああ、あ………ン…んああぁぁぁぁぁぁあ゛っ!!!」

 彼女の筐体は大きく震え、そのまま動かなくなった。
518ゆめみの欲しいものIII.(5/7):2007/03/17(土) 00:47:23 ID:SLlLb/w60
「…めみ…ゆめみ!!」
「お客様…? 私は?」
 自己診断モードが起動し、各部のチェックが走る。結果、異常なし…ただ、異常履歴に ”過負荷による回路遮断”
 との項目が残っていた。どうやらあの行為が原因で、一時的に回路が遮断されていたようだ。
「何故こんなことを…」
 ゆめみはコスチュームを全て脱がされ、愛液まみれになっていた下半身も奇麗に拭きあげられていた。
「お客様…」
 ベッドに横たえられていた身体を起こそうとするゆめみ。しかし、彼女の肘から先は、まだ修理の真っ最中であった。
 途中までしか起き上げられない上半身を、屑屋が支えてやる。

「ゆめみ、お前」
「…これを見てください、お客様」

 ゆめみが左腕の肘を、屑屋に向かって突き出した。か細い腕の先で、肘関節のパーツが小刻みに動いているのが
 否が応でも見える。
「見ての通り、私はロボットです。それなのに」
 ゆめみが視線を、自身の股間に移した。そこにある割れ目からは、再び蜜が溢れ始めている。
「もう一人の”私” が、まるで別人のように…お客様を欲しているのです」
「ゆめみ…」
「私は…一体なんでしょうか? お客様を欲っしている私の筐体は、人間の女性と似て異なるものです」
 ゆめみの肩が震えていた。その顔は笑顔を保とうとしているが、光学樹脂製の瞳は潤み、洗浄液が頬を伝って
 マットレスに滴り落ちている。
「私は…お客様のなんなのでしょうか」
 屑屋は黙ってゆめみの言葉を聞いている。
「この身体を得てから、私の感覚は人間に近くなりました…感覚も数値ではなく、概念として伝達されるものが
 多くなってきています」
 ゆめみが身体を両腕で抱えると、小振りな乳房が微妙に寄せあげられた。
519ゆめみの欲しいものIII(6/7):2007/03/17(土) 00:49:14 ID:SLlLb/w60
「んっ…」
 センサーに加えられた僅かな刺激が、倍加されてゆめみのAIに伝達される。彼女の下腹部が再び熱くうずき
 だしていた。
「でも…感覚が人間に近づいても、所詮私は人形…作り物の肉欲と身体になって、私はお客様の…お客様の性欲の…」
  ゆめみの視界が突然何かで遮られた。
「お、お客様…?」
「もういい、それ以上言うな…」
 彼女を大きくて、暖かい何かが包み込んでいた。そう、彼女のメモリーには同じ記録が残っている。

「俺は、そんなつもりでお前を…この身体に入れたんじゃない」
「お客様…」
「俺の胸の鼓動…俺の体のぬくもりが判るか、ゆめみ」
 ゆめみにははっきりと感じ取れていた。屑屋の心臓の鼓動、「体温」という数値ではない「人のぬくもり」…そして、
 わずかな振動。震えている…誰が?私じゃない?
「…はい、わかります…お客様の”生きている証”が感じられます」
 それだけではない。屑屋の悲しみが、身体の震えとなってゆめみの心を揺らしていた。
 屑屋はゆめみを抱きしめたまま続けた。
「俺は、お前の”ぬくもり”を感じたかった」
 今の身体になる前のゆめみは、冷たい人工皮膚の”ロボット”であった。ぬくもりもなく、見た目は人間に見える人工皮膚も
 触ってみればロボットだとすぐに判る。
「判ってる…お前はロボットなんだ。どんなことをしても、お前が人間にならないことはわかってるんだ…」
 ゆめみを抱きしめていた腕の力が緩み、彼女はそっとベッドの端へ座らされた。

「お客様、私は」
「だめなんだ。お前でなければ…だが、俺の自分勝手な思い込みがお前を傷つけてしまった…」
 瞼を閉じ、拳を握りしめた屑屋の身体がわなわなと震えていた。瞼の隅から、涙がじわりと滲み出る。
「ゆめみ、すまん…俺は…俺は」
520ゆめみの欲しいものIII(7/7):2007/03/17(土) 00:51:45 ID:SLlLb/w60
 屑屋はそれ以上、自分の心情を吐露することはできなかった。暖かく、柔らかいものが彼の唇を塞いでいたからだ。
(ゆ、ゆめみ…?)
 瞼を開けると、彼女の顔があった。屑屋が驚くのも無理はない…彼女がこのような形で、自ら行動を起こす事は今まで
 なかったのだ。あっけにとられた屑屋からそっと唇を解き、ゆめみが優しげな笑顔で屑屋に語りかけた。

「お客様、そんなに悲しい事を言わないでください」
「しかし、俺はお前を…」
「私もお客様に謝罪しなければなりません。私をそんなに思ってくださっていたなんて、本当に気付きませんでした」
「すまない…」
「もういいんです…私も、今はお客様のぬくもりがあれば…それで充分です」
 ゆめみの身体のうずきは、いつのまにか収まっていた。あれほど彼女のAIを覆い尽くしていた欲求も、今は殆ど感じ
 られなくなっていた。
「でも、一つだけお願いがあります」
「…今の俺にできることなら、なんでも」
「今晩、私と一緒に寝てくださいませんか…いえ、行為に及ぶということではないんです」
 顔を赤らめながらゆめみが続ける。
「その…お客様のぬくもりを…ずっと感じていたいんです」

 その夜、屑屋とゆめみは同じベッドで一夜を過ごした。しかしこの夜、彼らの身体は交わらず…ただひたすら、
 お互いの肌の温もりを感じ、そしてそれに満たされながら二人は心地よい眠りに落ちていった。


(FIN)
521307:2007/03/17(土) 00:52:24 ID:SLlLb/w60
以上です、スレ汚し失礼しました。



|彡サッ
522名無しさんだよもん:2007/03/17(土) 00:53:43 ID:icyDN5Tv0
(´・ω・`) <……


(´;ω;`) ブワッ




「寸止め」なのに、この充実感はなんなんだろう……
523名無しさんだよもん:2007/03/17(土) 02:02:46 ID:rQDN4qJx0
307氏GJ!!
交わる温もりも交わりを交わさない互いのやすらぎを得る為の温もりも
ゆめみは二つの喜びを感じられるように・・・
#でも漏れはついついゆめみに肉欲を求めがちorz

昔描いた絵に色付けてみたり・・・SAIの習作。
ttp://akm.cx/2d/src/1174064334161.jpg
524名無しさんだよもん:2007/03/18(日) 00:18:02 ID:R+wbHoXy0
>>523

肉弾戦仕様の筺体がたまりませんなぁハァハァ


ところでSAIとは?
525名無しさんだよもん:2007/03/18(日) 16:32:50 ID:T3CWS/UW0
SAI
http://www.systemax.jp/sai/
最近使い始めたばっかりなんですが、自分にとってはペインターよりも手軽に
使えて良い感じ。

さて、新規のゆめみ絵描こうか・・・・
526名無しさんだよもん:2007/03/18(日) 16:48:38 ID:lA5yydcE0
名瀬にトップがアドン?
527名無しさんだよもん:2007/03/18(日) 17:02:06 ID:Yd3K4ByA0
ゆめみ
「"彩"のことだったのですね。蓄積データベースに登録しました。
 ……ところで、そろそろ投影の時間ですので、衣服を着用してもよろしいでしょうか?」
528名無しさんだよもん:2007/03/20(火) 01:59:05 ID:AHzKFJ200
X68000の頃のソフトを覚えてるゆめみタソのデータベースに脱帽
529名無しさんだよもん:2007/03/20(火) 08:13:13 ID:DjQI/CU60
>>528

ゆめみ
「はい、先日のバージョンアップで、アカシックレコードにアクセスできるようになりましたので」
屑屋
「ちょっと待ておい、アカシックレコードってお前・・・」
ゆめみ
「オリオン座方面から来られた、頭の大きな灰色のお客さまがデバイスドライバをくださいました」
屑屋
「・・・死ぬほど胡散臭いな」

ゆめみ
「ただ、今から50年後以降、レコードが空白になっておりまして・・・お試し版なのでしょうか?」
屑屋
(・・・人類はそこで途絶える、という事か・・・)
530名無しさんだよもん:2007/03/22(木) 23:01:35 ID:SdPCgbgN0
ゆめみさん夏服バージョン(リライト)のラフ投下。

ゆめみ
「夏の、だーーーーーーい三角ですっ!!」

つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1174571994.jpg



たまには元気なゆめみさんも、ってことで。
531名無しさんだよもん:2007/03/23(金) 00:32:30 ID:1lwfMoQ60
たまにはSMR9700バージョンが見たいぜ、などとワガママを言ってみるテスト。
532名無しさんだよもん:2007/03/23(金) 13:20:42 ID:3H8svjq+O
ラフを見る前、別な意味での三角地帯を投影した俺は死んだ方がいいんだろうか。
533名無しさんだよもん:2007/03/23(金) 16:00:21 ID:prjJkZGN0
>>532

君はもしかして、ノインさんの話の時、エロシーン突入を確信しておっきした人かね?
534名無しさんだよもん:2007/03/23(金) 18:41:21 ID:3H8svjq+O
その通り!あれから何度かノインさんえちを書いてはみるものの…プラネタリアンの世界観がぶち壊しになりそうで消したり書いたり
535名無しさんだよもん:2007/03/23(金) 19:12:17 ID:TXULRz9B0
いいんじゃない、別に。
この作品オフィシャルは悲しすぎるからさぁ……
536名無しさんだよもん:2007/03/23(金) 19:29:18 ID:K7YSBP6m0
>>535

ハゲド。

近々、オリジナル準拠?のSS投下するんで、>>534は気にせずいってくだちいハァハァ
537名無しさんだよもん:2007/03/23(金) 19:30:14 ID:K7YSBP6m0
>>536
×オリジナル準拠
○オフィシャル準拠

orz
538名無しさんだよもん:2007/03/24(土) 08:38:09 ID:EsjK5dWD0
「タンク・タンクロー」という古い漫画を見て思った。

つ【ttp://www.shogakukan-cr.co.jp/topics/tank/index.html


頭と手足を引っ込めると、一球式投影機になるゆめみさん。


ゆめみ「そんなんいややー!」
539名無しさんだよもん:2007/03/25(日) 02:10:16 ID:lsANrTTz0
ピコワロスw
540短編作品のご案内(1/3):2007/03/25(日) 02:45:09 ID:Krsauvm70
このスレはいくつかの長編と、数多くの短編によって成り立っています
その中の内、第二スレ短編の軽い解説を行い、皆様の二次創作の参考に
役立てて貰いたい次第です。
ゆめみさんや屑屋がお休みになられているので、解説は僕「SGF−004」がお送りします

『閑話休題』第二スレ55〜57 作者不明

屑屋の回想で構成されている話
ゆめみのロッカーの中にある特別公演用のコスの話で進行するエピソード
館長にコスプレ趣味疑惑が…

『Happening in planetarian』第二スレ171〜174 作者はいつも挿絵を描いているあの人?

「あの三日間」の中の話
ゆめみが発声練習中に転んで服を汚してしまった
屑屋がイエナさんの予備部品を探している途中で、偶然従業員用のロッカールームを除いたところ…
「ぱんつはいてない」ネタ第1号。挿絵付き

『planetarian another -ときをこえたゆめ-』第二スレ206〜208 作者は挿絵の人

何時かの時代(パラレルの更にパラレルの世界?)に転生した屑屋とゆめみの話
ごく普通の会社員である主人公(屑屋)は、最近同じ夢を見る
核戦争後の世界…プラネタリウムで知り合い、そして戦車に撃たれる少女…
手がかりを求めネットサーフィンをする内に、花菱デパートのHPにたどり着き、夢と同じ所だと確信
翌日仮病で休んだ主人公がデパートに向かい、そこには…
改行規制に付き一コマオーバー作品。挿絵付き

『ゆめみのGUN道w』第二スレ264〜266 作者不明

護身用としてゆめみに拳銃を練習させる屑屋だが…
エキサイト国語辞典から来た話。284で挿絵
541短編作品のご案内(2/3):2007/03/25(日) 02:47:51 ID:Krsauvm70
『"another" 本編アナザーエンド』第二スレ279〜281 作者不明

副題の通り本編のアナザーエンド
シオマネキ沈黙後、機能停止寸前のゆめみを抱えて屑屋は「外」へ走り出す
すっかり定着した屑屋の(スレ用)本名「葛也」が初登場(姓はどこから…)

『なんだかよくわからないSS』第二スレ300〜302 作者不明

「お客様・・・・・・私の暫定マスターになっていただけませんか?」
この台詞にこの話の全てと存在意義がある

『実験的作品スマソ』第二スレ339、340 作者不明

ゆめみのデバイスドライバがウイルスに感染、日本語が話せなくなる
屑屋も英語を使い対話するのでよくわからない…(エキサイト翻訳使うかな…)

『ゆめみさんの"やってみよう!" −食事編−』第二スレ402〜404 作者不明

封印都市から脱出してから一年と半年後の話
一週間前に忍び込んだ研究施設で発見したSCRシリーズ用の「消化器官」
ゆめみはそれに付加されている「味覚」と「嗅覚」が欲しいため、屑屋に頼んでそれを付けてもらい…
尚、「排泄」について聞いた405と406が通信途絶

マシンナーズ・ライフ』第二スレ412 作者はやおい氏

自衛隊(軍?)にアハトノインとゆめみが配属されてくる
そこで主人公(やおい氏?)が驚いたことは…
そういや、やおいさんは自衛隊をやめたんだったな…
542短編作品のご案内(3/3):2007/03/25(日) 02:49:41 ID:Krsauvm70
『ぱんつはいてない物語』第二スレ689、690 作者不明

本編のシオマネキに遭遇する少し(?)前の話
内容はタイトルの通り。屑屋が爆笑ものである

『ある物語−受け継がれていくほしのゆめ−』第二スレ695〜702 作者はいつもの人って事は挿絵の人?

移動プラネタリウムを始めてからある程度時が立った際の話
筐体が劣化し、「ほしのゆめ」を語るごとに弱ってゆくゆめみ
そんなある時、かつての大都市での公演の際、屑屋はある人物と出会う…
「雪圏球(スノーグローブ)」の登場人物も登場する一編

『Farewell 〜『星の人』異聞〜』第二スレ765〜770 作者不明

何かがずれてしまった世界における、「星の人」の話
長編「Binary」の外伝でもあります
…イエナさんじゃないよね…?

…といった感じです。
エロ系列の話は「ゆめみの欲しいもの」と同系列で分類し省略
無題作品は掲載しませんでした
何か文句があったら言ってください

以上。三コマ使ったチラ裏でしたww

…一眠りしてSS書くかな…
543名無しさんだよもん:2007/03/25(日) 07:54:00 ID:BoYzHlUi0
乙です。
「何かがズレてしまった世界」シリーズも、ある意味「短編」と言えるかも。
オムニバス?
544名無しさんだよもん:2007/03/25(日) 13:54:44 ID:qzUYj8ObO
まとめ乙です!「ズレた世界〜」シリーズも何人かの職人さんが混ざってた希ガス
これは「お客様お姉さまは眠ら(れ)ない」の当初考えていたバージョンです
三コマ目14行の直後からストーリーが始まりますので、ご了承ください


………

「…不発弾か…」
ロケット弾は確かにビルに着弾した
しかし何も起こらなかった
屋上から降り、来た道を歩いていく
今回は運が良かったが、何時爆発するか分からない物とはさっさと離れたかった

星空に向かって伸びてゆく黒煙
さっきの榴弾の音とこの煙で、多分ゆめみとのぞみも気が付いたと思う
だが、何も起こらなかったのだからそれでいい
ロケット弾には驚いたが…


ベース地から200mくらいの場所にある交差点に差し掛かった時、俺は再び駆動音を聞いた
角の廃ビルの壁に身を寄せ、様子を窺った

そこにはさっきの奴と同じ改造を施してあるシオマネキが、その巨体で目標を捜していた

「今夜はよく奴を見るな…」
そう呟き、おれは擲弾発射器の安全装置を解除した
弾倉を回転させ、次弾を準備する
身を寄せていた廃ビルの屋上に上り、奴を視界に入れ照準を向ける
目標は再び上部装甲
次も一撃で仕留めるつもりだった
引き金を引き、炸薬の燃焼音が響き渡る
しかし…
榴弾は発射されなかった
(…!)
今度は不発射弾だった

燃焼音に気が付き、シオマネキがこちらに振り返る
俺は直ぐに伏せ、息を潜めた
自動人形(ロボット)の身体は、人間に比べると発する熱の量が多い
無論、このままでは見つかってしまう
ポケットを弄り、強化冷却剤を取り出す

吸おうと口に咥えた直後、突然衝撃と共にビルが倒壊した
(な…!?)
驚く間も無く俺は地面に叩きつけられた


……

奇跡的にも俺は無傷だった
しかし今のでシオマネキが俺に気付いた

「くそっ!」
俺が走り出した瞬間、シオマネキの対人用機関砲が火を噴いた
以前、ゆめみはこの筐体の最高歩行速度は時速八キロだと言った
しかし地面に叩きつけられたショックで今出している速度は五キロぐらいしかない
機関砲に当たった一貫の終わりである

間一髪の所で、大きな瓦礫の影に飛び込んだ
どうやら長年メンテナンスされていなかった影響で、砲塔の旋回速度が鈍くなっているようだった
俺は擲弾発射器を構えようとしたが、叩きつけられた際に落としてしまった事に気付いた
「まずいな…」
そう呟いた直後、シオマネキとは正反対の方向から砲撃され、俺の身体は再び宙を舞った
「ぐぅっ!」
叩きつけられた瞬間、右脚が鋭いスパーク音を発生させる
どうやら配線が切断されたらしい
右脚が動かない
この時ふと思い出した
「あの三日間」の時もシオマネキ(あいつ)との戦闘で、危うく右足切断となりかけた事を

その直後、我に帰る
今撃たれた方向からもう一両、シオマネキが迫っていることに気が付いた
(まだ居たのか)
そして、目の前にはさっき屠ろうとしたシオマネキが居る
俺は咄嗟に、右太腿に携帯していたPDW(機関銃)を抜き、シオマネキに向かって撃った

咄嗟に撃ったとはいえ、脆弱なセンサー部を狙ったので多少は効果があった
何時までかは判らないが、俺を見失ったのだ

しかし俺の運も尽きた
PDWの弾丸が尽き、擲弾発射器を見失い、右脚が動かない
そして迫る二両のシオマネキ

「ここまでか…」
そう思った直後、脳裏に浮かぶ二人の少女の姿
(すまない)
そう心で言いつつ、強化冷却剤(煙草)を咥える
火を点けようとしたが、ライターも落としたようだった
目の前に居るシオマネキが俺を再び見つけ、銃口を向けた

終わりだと思った直後、シオマネキは突然爆発を起こし、砕け散った
その拍子に、瓦礫の間から落とした擲弾発射器が飛び出してきた
身体を引き摺り、擲弾発射器の銃把(グリップ)を掴む
そして無我夢中で榴弾をシオマネキ(奴)に撃ちこんだ
……
煙を蒼い夜空に昇らせる二両の戦車だったもの
それを見つめつつ、俺は瓦礫に腰を下ろし改めて煙草に火を点ける
余剰の冷却煙を吹きつつ、星空を見上げる
空を二つに分ける天の川。柄杓を象る北斗七星に、太古からの道標、北極星(ポラリス)

それら星空を彩る夏の星座に見惚れていると、ゆめみが走ってきた(無論、走るとゆうのは比喩である)
「お客様〜!ご無事ですか〜!?」
気のせいか少し涙目のように見えた
「ん…心配かけてすまない…」
「お怪我はございませんか?」
「右脚が逝っちまったが、直せばいい」
俺は多少ぶっきらぼうに答えた


「…にしては、あの時シオマネキを撃ったのは誰だったんだ…?」
擲弾発射器を杖代わりにして歩きながら呟いた
「あれはのぞみさんがお客様が昼間に見つけた大砲を撃ったんです」
大砲?…ああ、無反動砲の事か
「その時にのぞみさんの腰部関節が故障してしまいました…」
「ぎっくり腰か…。こりゃ今夜は眠れそうにないな…」
とゆうか何で無反動砲の反動くらいで壊れるんだ?謎だ
「その様な事を思われても、わたしには解答が出来ません…申しわk」「人の心を読むな」
無意識の内に口元が微笑む
ゆめみもそれを見て微笑む


満天の星空の下、歩いてゆく俺達の影が伸びてゆく
煌めく夜空に流星が一つ流れた…

「ゆめみお姉さま〜お客様お姉さま〜、早く戻ってきてください〜(泣)」
あとがき

ども。お客様お姉さま好きなSGF−004ですw
本来は大体こうゆう流れなんですが、本来はギャグ色の強いものでした
しかしギャグを書くのが苦手ゆえ、いつもの調子で書いてしまいました
(四コマ目22行目の台詞にギャグの片鱗あり)

>>490
ブッ!(鼻血)
僅か数行なのに刺激が強い…
てゆうかゆめみ?のぞみ?どっちだろ?

いつもの挿絵の人
挿絵キボン(なんちって)
暇があったら描いて欲しいな〜なんて思った僕はいけない人だ…orz

…さて、引越しで忙しくなって火曜まで見れないなぁ…
最後チラ裏スマソ
550名無しさんだよもん:2007/03/26(月) 01:20:57 ID:e9hx6Wpk0
>>549

実は、仕込んであったりして。w
仕上げてからうpろうと思ったけど、別の絵が先に進行してるんで線画にて。

つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1174839508.jpg


……連装擲弾銃のスコープがどうも歪んでるんで、主線修正に時間がかかりそうなヨカソorz
551550:2007/03/26(月) 01:23:05 ID:e9hx6Wpk0
×連装擲弾銃のスコープが
○連装擲弾銃が全体的に

orz
552名無しさんだよもん:2007/03/27(火) 23:32:43 ID:Bwb9d+XRO
>>549
いいな、GJ。それにしてもつくづく屑屋は悪運尽きない奴だなw

あ、無反動砲は名前こそ無反動ですが…
実はめちゃくちゃ反動あるんでぎっくり腰もありえない話ではないかと。
俺も肩痛めたし orz

>>550
できれば効果音は"HER HER"でお願いしますw
ちなみに屑屋が劇中で使用していたのはM79グレネードランチャーというベトナム戦争にバリバリ使われた骨董品です。
553550:2007/03/27(火) 23:42:18 ID:mNMtCaIc0
>>552

それなんて小林源文?w

この話の中では「新品の連装敵弾銃」になってるので、アーウィンを持ってきてみました。
554名無しさんだよもん:2007/03/28(水) 01:34:18 ID:ub/1Paxf0
お客様お姉様は良いんだけど、屑屋とゆめみはほとんどおない歳か、下手するとゆめみの方が年上では?
555名無しさんだよもん:2007/03/28(水) 07:22:57 ID:sWz4zR1Q0
>>554

ん?仮にゆめみのほうが年上だとして、何か問題あったか?

姉さん女房なんて、世の中にいくらでもいるぞ。
556名無しさんだよもん:2007/03/28(水) 11:26:29 ID:sgRYvzAH0
ん?どちらもビミョーに勘違いしてるな。

>>554
「お客さまお姉様」と呼ぶのは、ゆめみじゃなくてのぞみ。ゆめみは「お客さま」と呼んでる。

>>555
>>554が言いたいのは、
「屑屋より年上と思われるのぞみが、ほしのくずやをお姉さまと呼んでいる」ってことだろ。

で、のぞみは別に、「ほしのくずや自身」のことを「お姉様」と呼んでるわけではないってことだ。
・中身=屑屋=「お客さま」
・SCR5000=自分(SCR-i5500)の前のモデル=「お姉様」

「お客さま(が中に入っている)お姉様(に相当するモデル)」、つまり「お客さまお姉様」。
557名無しさんだよもん:2007/03/28(水) 20:18:19 ID:p/9ixaLG0
>>542

ちょっと補足、つか訂正をば。

>『Farewell 〜『星の人』異聞〜』第二スレ765〜770 作者不明
>何かがずれてしまった世界における、「星の人」の話
>長編「Binary」の外伝でもあります
>…イエナさんじゃないよね…?

えと、作者はいつもの俺ですw
あと、Binaryの外伝というわけでもなくて、
「もしも、ゆめみが屑屋より生き延びてしまったら・・・」という「ズレた世界」。

無題作品についても、実は「ズレた世界」シリーズである作品はたくさんあります。

・・・ぶっちゃけた話、あのシリーズのコンセプトは「もしもシリーズ」。
つまり、
「ド リ フ 大 爆 笑」
だったりするわけでw
558銀河鉄道『ほしのゆめ』号 やおい:2007/03/28(水) 20:19:33 ID:1jKOCjFeO
空を埋める漆黒の翼群。
星のような瞬きが起こると、それに吸い込まれるように翼が墜ちてゆく。
ナパームに抱かれる人々、地図から消える街。
そして…俺達の頭上を死の羽音がかすめる。

誰が言ったのだろう。
「この世は…死の世界と幸福の世界から出来ていて、それらは薄い膜で隔てられている。」
俺達はその膜を突き破り、決して見てはならない世界を覗き見てしまったのだ。

―――彼の日、人は世界を焼き尽くした。
その輝きを遮ろうと手をかざせばX線を通したように手の骨が透けて見えた。
耳を塞いでも轟音が鳴り止まない。
目を閉じても火球の光が飛び込んでくる。
どれだけ経ったのか、成層圏まで吹き飛ばされた“祖国”の灰が降り注いでいる。
妻と息子もこの中にいるのだろうか?
ただ、灰色の世界が広がっていた…。
いつだって夢は閃光に包まれて終わる。家族も、思い出も、未来も。
いつだって…ここには何もない。

―――あなたを、赦しましょう。

赦す?何をだ?人間?機械?それとも…

―――「  」を。

…。
…。
…。
まだ…“お前達”は赦してくれるのか?
虚空に向かって語りかける。

『あなたを、赦しましょう』
559銀河鉄道『ほしのゆめ』号 やおい:2007/03/28(水) 20:23:16 ID:1jKOCjFeO
耳元で聞こえる声に俺は意識を取り戻す。
見慣れた橙色のガス燈が目に入る。
カタン、カタンと小気味良い音が足元から聞こえる。
傾いだ先に流れていく車窓で俺はようやく自分が列車の座席に座っているという事に気付いた。

ふと見た俺の隣には法衣を纏った長い金髪の女性。
「…お前か…。俺は死んだのか?」
問いに彼女は首を振り、そっと手を差し伸べて俺の頬を拭った。
「涙…。」
慈愛に満ちた眼差しを俺に向けると、キスをするようにゆっくりと抱き締めてきた。

「………っ。」
ぽろぽろと涙が溢れて彼女の肩を濡らしていく。とめどなく、子供のように、泣いた。
―――ああ、俺はまだ“人間”だったんだな。
「あなたを、赦しましょう。」
彼女の人口声帯から紡がれた言葉は純粋で、それ故に俺を人間たらしめてくれるかのような温かさがあった。

「アハトノインさん…その方は新しいお客様ですか?」
彼女はコクリと頷いて、それっきりだ。
「あ〜、俺はマードッk―――」
「おめでとうございます!お客様はちょうど5人目のお客様です!」
人の話を聞け。
「あ、自己紹介が遅れました。私は銀河鉄道『ほしのゆめ』号の車掌兼ガイドのほしのゆめみと申します」
「ちなみに、お客様を引率していた綺麗な方はアハトノインさんです。アハトノインさんはすごいんですよ〜!なんと言われましてもドイツ製の高級筐体で(ry」
―――また始まったよ…。
―――ゆめみお姉ちゃん、話長いからなあ。
口を揃えて周りの乗客が呆れているが当の車掌兼ガイドは意にも介さず喋りたくっていた。

ため息をついて隣を見ると、目が合ったアハトノインはとても嬉しそうな笑みを浮かべた。

「―――ところで、お客様?お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
560やおい:2007/03/28(水) 20:26:52 ID:1jKOCjFeO
お久しぶりです。やおいです。
もう忘れてる方もいるでしょうが、察してやって下さい。

毎度の事ですが、描写が分かり辛かったらすみません。
アハトノインは萌えます。エロ書きたいくらい。
561名無しさんだよ全員集合 ◆kd.2f.1cKc :2007/03/28(水) 20:28:05 ID:ub/1Paxf0
>>557
呼んだ?
562名無しさんだよもん:2007/03/28(水) 20:36:40 ID:agOSVPoo0
やおいさんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

ドリフもキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!w
563名無しさんだよもん:2007/03/29(木) 22:46:37 ID:DYekSH3EO
渋いな…
564名無しさんだよもん:2007/03/30(金) 10:47:12 ID:+PNnQMzY0
>>560

>アハトノインは萌えます。エロ書きたいくらい。

щ(゚Д゚щ) カモォォォォォォン
565『チェックメイト』(1/4):2007/03/31(土) 02:40:11 ID:gIkeakGH0
降り続く雨の中、泥濘(ぬかるみ)に足を取られながら、半ば崩れた壁の裏へと転がり込む。
手持ちの武器はMP7A1−EMW・電磁加速式軽機関銃。火薬式のMP7の機関部を、レールガンに換装したモデルだ。
弾丸である十一ミリ鉄球の残りは、僅か十二発。

「まったく……分が悪すぎるぜ」
ともすれば弱気になる気持ちを奮い立たせ、位置取りを計算する。

奴との距離は、目測で三十メートル強。
今の奴の足は、決して速くはない。なんとか気を逸らすことができれば、まだ勝ち目はあるはずだ。

ジャケットを脱ぎ、壁の切れ目から放り投げる。乾いた銃声とともに、数発の弾丸を受けたジャケットが踊る。
俺は壁の影から飛び出し、奴が居るはずの場所へ数発ばら撒き、牽制しながら数歩前進。
その勢いを殺さず左へ横飛びし、奴の予測を外す。
その影に奴がいるはずの、朽ちた白いクーペ。
俺は、一撃をお見舞いしようと回り込み……

だしぬけに、俺の身体が宙に浮いた。
視界の端を横切ったのは……奴の、銀色の長い髪。
柔道の教材ビデオに使えそうなほどの、綺麗な背負い投げを食らい、俺は地面に投げつけられる。
「ふッ!」
鋭く息を吐き、受身を取って勢いを殺す。
目の前のターゲットに向けようとしたMP7が、俺の腕ごと踏み敷かれる。

「……しまっ……!」
566『チェックメイト』(2/4):2007/03/31(土) 02:41:12 ID:gIkeakGH0

つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20070331023731.jpg


降りしきる雨雲をバックに、奴の銃のレーザーサイトが俺の額を射すくめている。
奴の左目が赤く光り、ブゥン……という音を立てる。

「悪くない動きでしたが……チェックメイトです」
奴はそう呟くと、引き金をゆっくりと絞る。

鋭い銃声。俺の視界が赤く染まり…………俺は、死んだ。


・・・・・・
567『チェックメイト』(3/4):2007/03/31(土) 02:42:32 ID:gIkeakGH0

「……も、申し訳ございませんっ!申し訳ございませんっ!ついトリガーを引いてしまいまして……」
仰向けに地面に転がった俺の頭上で、さっきまで俺の敵だった奴が……ゆめみがぺこぺこと「連続謝罪」を続けている。

「そんなに気にするな……くそっ、これで二十四連敗か……」
そう言いながら、俺は身を起こす。
「……あ、あの、お客さま?大丈夫ですか?」
少し狼狽したような表情で、ゆめみが俺の手を取る。

「ああ。……やれやれ、空が赤いぜ」
額を拭った掌が、べったりと赤いペイント弾に染まっている。
「しかし、まいったな……ハンディもらってもこれかよ」
「失礼ですが、先日のハンディなしの模擬戦では、お客さまは開始後三十七秒で……」
「ああ、わかってる、わかっ……!?」

右肩の放熱パネルに、一発の弾痕。
彼女の右腕は、力なくだらりと垂れ下がっている。

「お前……まさか、俺が……!?」
MP7の弾丸初速は、模擬戦用の最低レベルに絞っていたはずだ。……しかし、まさか……
「いいえ、お気になさらないでください。これはお客さまのせいではありませんので」
「それじゃ、一体それは……」

「はい、お客さまとの模擬戦を開始した直後、対人戦車(メンシェンイェーガー)3両と遭遇いたしまして、その時に」
「何っ!?」
単なる牽制だと思った、あの銃声と爆音は、「実戦」だったというのか。

ゆめみは苦笑いを浮かべながら、こともなげに続けた。
「3両とも撃退したのですが、一発被弾してしまいました。……不覚です」

「……なっ……」
俺は、手負いの彼女にすら歯が立たなかった、ということか……
568『チェックメイト』(4/4):2007/03/31(土) 02:44:08 ID:gIkeakGH0
―SMR9700iこと、三六式試製高度擬人化戦闘筐体。
涼元精機社と陸上自衛軍第三特機技研によって共同開発された、本物の軍用筐体が、今のゆめみの身体だ。
戦闘能力だけでなく、高度な擬人化性能をも備え、SCR5000など足元にも及ばない超高性能機。

俺は時々、こうしてゆめみに揉んでもらい、戦闘能力の維持向上に励んでいる。
出力や反応速度を人間並みに抑える「ハンディ」をもらっても、俺は未だにゆめみに勝てたことがない。
まして、今回は片腕が使えない状態であったというのに。

SMR9700の基本データベースに収められた戦闘技能の前では、素人に毛が生えたような俺など、敵ではないのだろう。

それでも、無駄だとわかっていても、俺は何度でもゆめみに挑むだろう。

愛する者は、この手で守る。
たとえ愛する者が、この俺より強かったとしても。

……それが、男としての矜持ってもんだからな。


- Fin. -
569『チェックメイト』(あとがき):2007/03/31(土) 02:46:52 ID:gIkeakGH0
ひさしぶりに、ゆめみ@SMR9700iで一枚。
ちょこっとデザインも見直ししてます。

ちなみに、弾丸の十一ミリ鉄球。
主に駅前にある、かつての遊戯施設で大量に手に入るので、弾丸の調達には事欠かないというメリットがあったりします。
570『ぱんつはいてます』:2007/04/01(日) 02:50:25 ID:mUeOY5n50

ゆめみは自動人形(ロボット)だ。どんなに見た目が人間に近くとも、やはり人間ではない。
人間の倫理観や道徳観が通用しない面もある。
……たとえば、羞恥心。彼女には、それが存在しない。

ゆめみは今まで、下着をつけていなかった。
「大腿部ユニットの放熱を阻害する要因になりますので」というのが、その理由だった。
……だが、ゆめみの筐体は、人間の少女を模しているのだ。
そんな「身体」が下着を着けていないというのは、健康な男である俺にとって「目の毒」以外の何物でもない。

俺は、渋るゆめみを「最重要命令」で説き伏せ、デパートの売場で手に入れた下着を身に付けさせた……


つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20070401024858.jpg


……しかし、それは失敗だったようだ。
その薄く小さな布地は、それまで以上に俺の欲情を煽る結果となってしまったのだった。


……俺の理性は、果たしていつまで保(も)つのだろうか?orz


- ヲハリ.w -
---------------
571名無しさんだよもん:2007/04/01(日) 12:35:40 ID:RVefYsNzO
おっきした
572名無しさんだよ全員集合 ◆kd.2f.1cKc :2007/04/01(日) 20:33:47 ID:mfL/2FPk0
キタァァァァァッ

絵&SS乙、GJです!!
573Binary 第15章『Pain』(1):2007/04/01(日) 21:45:06 ID:MPrAy7XY0
最近、思うことがある。

わたしは、本当にあの人のお役に立てているのだろうか?
わたしは、本当にあの人に必要とされているのだろうか?
わたしは、あの人の『パートナー』として、本当に適任なのだろうか?

SCR5000Si/FLの筐体で稼動していたころには、考えることすら許されなかったこと。
考えること、それ自体はわたしが人間の皆さまにより近づいていることの証明。
だから、そのこと事態は喜ばしいことだと思う。
でも、今考えていることは、自分にとっては辛いこと。

『あの人のお役に立ちたい』

この思いを、根底から揺るがしかねないこと。
そして、今のこの世におけるわたしの存在自体を否定することにもなりかねないこと。

もし、あの人に必要とされていないのだとしたら……。

考えたくはないこと。
でも、どうしても考えさせられてしまうこと。

(わたしは、どうしたらいいのでしょう……)
答えが出ない問いを、わたしは自らに投げかけた――。
574Binary 第15章『Pain』(2):2007/04/01(日) 21:46:29 ID:MPrAy7XY0
そのことを考え出したのは、先ほどの最終投影終了後のこと。

バラバラッ、というケーブルがドームの床を叩く音。
後ろから聞こえてきたその音に反射的に振り返ったわたしの目に映った、あの人の姿。
腰をくの字に曲げ、両手を右膝の部分に添えている。
額に浮かんでいる汗。
疲労から出た汗ではないことは、その苦悶の表情からもわかる。
明らかに様子がおかしい。
「お客さま?」
クッションをまとめていた手を止めて、あの人の元に駆け寄る。
「どうかなさいましたか? もしかして、お体の具合がよろしくないのでしょうか?」
「……」
わたしに気付いたあの人が表情を少しだけ和らげ、わたしに向き直る。
「いや、何でもない。少し眩暈がしただけだ」
本当に眩暈だけなのだろうか?
だとしたらさほど心配はないかもしれない。
でも、この胸騒ぎはなんだろう。
もしかしたら、わたしは何かとても重大なことを見落としているのかもしれない。
それとも、わたしが知らないことをあの人は何か感じ取っているのだろうか?
「本当に大丈夫なのですか? 眩暈とはいいましてもあまり無理はなさらない方が……」
「……そうだな。確かにあまり体調が良くないようだ。今日は少し早めに休ませてもらうことにする」
額に浮かぶ脂汗を拭うことも忘れ、わたしにそれだけを伝えて片付けに戻る。
「本当に、無理はなさらないでください」
他にも色々と問い掛けたいことはあった。
でも、何故か言葉にならない。
辛うじてその言葉だけを後姿に投げかける。
「ああ」
いつものように、無愛想な返事だけをあの人の背中がわたしに返してきた。
575Binary 第15章『Pain』(3):2007/04/01(日) 21:47:59 ID:MPrAy7XY0
――おそらく、何か隠していると思うわ――
ポーラさんの出した結論だった。
今、このドームにはわたし一人。
あの人は夕食を取った後、すぐに自室に身体を引きずるように引き上げていった。

『すまんな……』
一言だけ残して。

心身ともに疲れ果てたその姿。
わたしはただ黙って見送ることしか出来なかった。
とても気になるのに、聞くことが躊躇われる。
そんな自分がとてももどかしく、歯痒かった。

(……それは、わたしがお客さまのお役に立てていないということなのでしょうか?)
わたしはあの人の『パートナー』。
喜びも苦しみも、二人で全て分かち合うもの。
そう考えていた。
あの人は、いつからこの苦しみを抱えていたのだろう?
なぜ、今までわたしにそのことを打ち明けてくれなかったのだろう?
今、あの人は自身の苦しみを、痛みを、全て己の内に秘めたまま日々わたしに向き合っている。
そう考えただけで、とてもやるせなく、いたたまれない気持ちが募ってくる。
確かに筐体はともかく、わたしという『意識』はまだ人間の皆さまにはあらゆる部分で及ばない。
そのことは、自身でも自覚している。
その中で、わたしはあの人のために、そして人間の皆さまのために精一杯勤めを果たしてきたつもり。
でも……。
その事が、あの人を知らず知らずのうちに苦しめていたのだとしたら……。
苦しみをわたしに打ち明けることが出来ないほど、わたしの未熟があの人にとって足枷になっているのだとしたら……。
――そういう風に考えるのは早計だと思うわ。ゆめみちゃん、あなたはとても生真面目だからそう考えても仕方ないとは思うけど、そこまで自分を責めてはダメ――
(ですが、あの人がわたしにそのことをお話にならないということは、結局わたしに話してもどうにもならないからですよね?)
いたたまれない思いが、問いかけにも表れる。
576Binary 第15章『Pain』(4):2007/04/01(日) 21:50:35 ID:MPrAy7XY0
そんなわたしの思いを、ポーラさんは真正面から受け止めてくれた。
わたしの内面を全て汲み取り、穏やかな表情とともにわたしに諭すように話す。

――決してそれだけじゃないと思うわ。確かに彼はあなたに話しても仕方ないと思っているのかもしれない。
でも、それはゆめみちゃんが頼りないからというのとは違うんじゃないかしら。私はね、彼があなたに余計な
気苦労を掛けさせたくないから話さないんだと思う――
(そうでしょうか?)
――もし本当にあなたが役に立たないと思っているんだったら、もっとはっきり言っているんじゃないかしら。
あなたが今こうして稼動していること、それこそが彼がゆめみちゃんを信じている証だと私は思うの――
(ですが……)
――彼が何も言わない以上、本当のところは分からない。おそらく、もっと別の理由があるんだと思うわ。
ひょっとしたら、彼自身の意地とかプライドとか、そういうことなのかもしれない。そういう部分も含めて理解
してあげないと、いたずらに自分を責めつづけることになるわ――
(お客さまにも、そういう部分があるのでしょうか?)
――そうね。男の人って、そういう素直じゃない、どこか子供っぽいところをどこかしら持ち合わせているもの
なのよ。覚えておいた方がいいわ――
(はい……)
――元気出しなさい。あなたがしょげ返っても、彼は喜ばないわ。あなたはいつもどおりのあなたでいること。
それが、彼の望んでいることよ。もしどうしても気になるのなら、明日の朝、それとなく聞いてみたら?意外と
ポロリと本音が出るかもしれないわよ――
(そうなんですか?)
――分からないけどね。悪いようにはならないはずよ。彼、根は正直そうだし――
(……そうですね。そうしてみます)
胸のつかえが、少しだけ取れたような気がした。
577Binary 第15章『Pain』(5):2007/04/01(日) 21:54:00 ID:MPrAy7XY0
――さ、もうお休みなさい。明日もあるんだから――
母親というのは、もしかしたらこういう温かい存在なのだろうか。
ロボットであるわたしに、両親と呼べる人はいない。
だから、父親とか母親とか、そういうものは言葉以上のことは分からない。
でも、ポーラさんからは過去にいらした子連れのお客様方が発していたものと同じものを感じることが出来た。
とても温かく、包容力に満ち溢れた存在。
今のポーラさんは、わたしにとってまさにそれだった。
(はい、承知しました。それでは通常業務設定どおり、スリープモードに移行させていただきます)
明日、あの人に聞いてみよう。
はっきりとは分からなくても、もやもやしたものは消えるかもしれない。
微力でも、あの人の力になれるかもしれない。
今は、そう考えることにした。

――おやすみなさい、ゆめみちゃん――
ポーラさんの微笑みに抱かれながら、わたしは機能を止めた。

………
……


翌日。
わたしはいつものように起動した。
あの人が起きたら、あのことを聞いてみよう。
どういう返答が返ってこようともいい。
どういう形であれ、このもやもやが取れればいい。
そう、思っていた。

でも、結局それは叶わなかった。
578Binary 第15章『Pain』(6):2007/04/01(日) 21:56:04 ID:MPrAy7XY0
「お客さま!?」
「く……」
なかなか起きてこなかったあの人を起こしに行ったわたしが見たあの人の姿は、とても痛々しいものだった。
床に木箱を並べてその上にシーツを敷いただけの粗末な寝床に横たわるあの人が浮かべているのは、昨日
と同じ苦悶の表情。
でもそれよりもわたしの目に止まったのは、シーツからはみ出したあの人の右足。
寝巻き代わりのスウェットの捲れあがった裾から見えるそれは、肌色と土気色と毒々しい赤紫とが複雑に入り
混じった、どう考えても健康な人間の肌とは思えない色合い。
「お客さま!? 一体?」
瞬時に理解できた。
この右足があの人の『隠し事』だということが。
でも、なぜこのことを隠していたの?
「……すまん。お前にいらん心配を掛けたくなくてな……。自分のことだから、ついおざなりにしちまった……。
もう少し、保つと思ったんだがな……」
額に脂汗を滲ませながら、あの人が答える。
一時よりは落ち着いたようだが、それでも息は荒く、苦しそうだ。
「……悪いが、俺の背嚢からモルヒネのアンプルを持ってきてくれ。右サイドのポケットの防水ケースの中だ」
「はい、ただいま」
事が一刻を争うことは想像に難くない。
わたしは言われたとおり、寝床の反対側にある背嚢に踵を返した。

………
……


今日は全ての投影を中止することにした。
579Binary 第15章『Pain』(7):2007/04/01(日) 21:58:42 ID:MPrAy7XY0
「……原因はあの時の傷だ。お前を連れ出そうとしたときのな。何か有害なものが体内に残っていたからか
最近になって容態が悪化してな……。傷口は完治していたから、それほど問題ないと思ったんだが」
痛みはだいぶ治まったのだろう、寝床から上体だけを起こしたあの人が事の次第を全て説明してくれた。
汗にぐっしょりと濡れ、肌に張り付いたTシャツ。
時おり深呼吸をし、自分を落ち着かせるようにゆっくりと話す。
「……どうして、わたしに打ち明けてくださらなかったのですか?」
「……自分の不始末が蒔いた種だからな、自分で刈り取るつもりだった。お前にいらん心配を掛けたくないと
いうこともあったしな。だが結局、お前には余計に心配をかけてしまったようだな。本当にすまない……」
ポーラさんの言ったとおりだった。
「お客さま……、わたしたちは『パートナー』ですよね?」
「ああ」
「苦しみも喜びも、お互いで全て分かち合って日々を生きていく、それが『パートナー』であるとわたしは認識
しています。わたしは、間違っていますでしょうか?」
「……いや、その通りだ」
「お客さまの喜びは、わたしの喜びです。また、お客さまの痛みは、わたしの痛みでもあります。分かち合え
ば痛みは半分になりますが、そうしなければその痛みはそのまま私にも得体の知れない痛みと名って襲って
きます……」
「……」
「お客さま……、わたしも、痛いんです……。何だか胸が締め付けられるように、痛いんです……。ロボットの
わたしには人間の皆さまのように痛みを感じることは出来ません。ですが、それでも胸が痛いという感覚が
わかるんです……」
580Binary 第15章『Pain』(8):2007/04/01(日) 22:01:18 ID:MPrAy7XY0
言葉が詰まる。
自分でも、何を言っているのかもうよくわからない。
何ともいえないぐるぐるした感情が、奥底から湧きあがる。
それに呼応するかのように、目尻からこぼれる涙。
もう、耐えられなかった。

「お客さまああああああああああっ!」

わたしは無意識のうちに、あの人の胸の中に飛び込んでいた。
着替えていないあの人の汗まみれのTシャツに、わたしの流す涙が新たに染み込む。
「お願いです……。もう、隠し事はしないで下さい……。こんなに苦しい思いは……、もう、したく
ありません……。お客さま、お願いです……」
熱病にうなされるかのように、繰り返しあの人に涙混じりに懇願する。
「……わかった。今後お前に対して、隠し事は一切しない。ロボットの神様に誓って」
小さく、でもはっきりとあの人は言ってくれた。
わたしの背中を、むずかる子供をあやすように優しくなでさすりながら……。

あの人の右足の膝から下は、もうどうにもならない状態にまで悪化していた。
爪先とかかとは既に壊死が始まっているらしく、作り物がくっついているかのように血の気が
なくなっている。
これ以上の悪化を止めるために、取るべき選択肢はもはやひとつしかなかった。
581Binary 第15章『Pain』(9):2007/04/01(日) 22:04:02 ID:MPrAy7XY0
「……本当に、お客さまおひとりで大丈夫なのですか?」
付き添いたいと申し出たわたしを、あの人はやんわりと静止した。
「いや、俺一人のほうがいいだろう。お前にはなるたけこんなものは見せたくない。もしどうしようもなかったら
床を1回叩くから、その時は頼む。何事もなく終わったら、床を2回叩く。万が一何も反応がなかったら、2時間を
目処に入ってきてくれ」
「わかりました。ですが……」
この辺りに医者はいない。
一刻の猶予もならないこの状況を打開するには、自らが処置を施すしか手立てはない。
それなのにどうして、そんなに落ち着いていられるのだろう?
これから自身に起こる事を、知らないわけではないのに。
「……お前を見ていたら、妙に落ち着いてな。今日お前に泣きつかれるまでは、実は俺自身も悶々としていた。
心配するな。必ず無事に終えさせる」
雑念を払うように言い放ち、大きな手をわたしの肩にぽんと添える。
「お客さま……、どうか、お気をつけて……」
「……ありがとう。じゃあ、席を外してくれ」
そういって、あの人は自らの口内に猿轡の如く布切れを詰め、更にタオルで縛り付ける。
膝から上をきつく縛り上げられた右足をその上に放り出すようにセットされた、木箱。
その近くには、夕日の如く真っ赤に灼けた鉄の棒が入った、ふいご付きの箱。
そしてメス、糸鋸、モルヒネのアンプル、大量のガーゼと包帯……。
「お客さま……」
ドアを閉める前に、もう一度あの人のほうへ振り返る。
(心配するな)
あの人の目が、命の火を灯している目が、私にそう語りかけてきた。
――ここまできたら、信じるしかないわ。行きましょう――
(はい)
ポーラさんの声に促され、わたしはドアを閉めた。
582Binary 第15章『Pain』(10):2007/04/01(日) 22:06:57 ID:MPrAy7XY0
それからの2時間近く。
わたしはドアの前で、ただひたすらに祈った。
あの人の無事を……。
センサーを使えば、ここにいても中の様子は全てわかる。
でも、そうはしなかった。
それは、あの人の本意ではないと思ったから。
何より、あの人を信じていたから……。
あの人は、わたしの期待を裏切ったことはない。
だから、今回もきっと大丈夫。
そう、信じるほかはなかった。
(神様、どうか、あの人を連れて行かないでください。どうか、あの人と一緒に夢を見続けることをお許しくだ
さい……)

永遠とも思える、2時間。
わたしの内蔵時計では、1時間と53分後。

コツ、コツ。
何かが床を叩く音、2回。

「お客さま!」
矢も立てもたまらず、わたしはドアを開け、中に飛び込む。
583Binary 第15章『Pain』(11):2007/04/01(日) 22:09:37 ID:MPrAy7XY0
あの人は、寝床の縁に腰掛けていた。
口元のタオルは既になく、肩を大きく上下させ、酸素を貪るように荒い呼吸を繰り返す。
腰掛けた前に広がる、赤黒い血溜り。
右足には、本来あるべき膝から下の代わりに幾重にもきつく巻かれた白い包帯。
その周りに無造作に放り投げられた、血のついたメスや糸鋸。
そして部屋の隅にあるシーツに無造作にくるまれた、長さ50センチ前後の物体。
それは、つい2時間ほどまであの人の肉体の一部だったもの。
もはやあの人の意志で動くことは、永遠にない。
自分の身体が切り裂かれたかのような痛みが、一瞬よぎる。
「本当に、よかったです……」
それでもあの人が生きていることに、わたしの前からいなくならなかったことに、安堵のため息を漏らす。
「ああ」
「痛みはどうですか?」
「今はモルヒネが効いているから、さほど痛くはない。術後の処理も思いのほかうまくいったしな」
「そうですか」
床の血溜りを残ったガーゼと布切れで拭き取りながら尋ねたわたしに、荒い呼吸混じりにあの人は答える。
「横になった方が、よろしいのではないのですか?」
「ああ、そうさせてもらう」
「何かお持ちしましょうか?」
「いや……、そうだ、水を一杯持ってきてくれないか?」
「はい、承知しました」
あの人の足元を奇麗に拭き取ったわたしがそれを聞いて立ち上がろうとした、その時。

すべてが、スローモーションのように流れていた。
大きな右手がわたしの右肩を捉え、そのまま後ろへ引き寄せる。
姿勢を崩したわたしの身体が、後ろへ倒れこむ。

「えっ?」
気が付くと、わたしはあの人に後ろから抱きしめられていた。
ちょうど、あの人の前に同じ向きに腰掛けるような格好で。
584Binary 第15章『Pain』(12):2007/04/01(日) 22:10:45 ID:MPrAy7XY0
「……あの、お客さま?」
戸惑いが言葉となって、口から出る。
「……水を取りに行けないのですが……」
わたしは何を言っているのだろう。
そんな言葉しか出てこない。

「……すまん。少しだけ、このままでいさせてくれ……」
わたしを抱きしめた姿勢のまま、弱々しく背中を震わせるように伝わる、あの人の声。

声とともにあの人の鼓動が背中越しに伝わって来る。
小さいけれど力強く、確実に一定のリズムを刻みながら伝わるパルス。
それは、あの人が生きていることの証明。
そして、それを感じることが出来るのは、わたしがこの世にいることの証明。

文字通り、あの人は身を切った。
それは、きっとわたしの想像を絶する辛さなのだろう。
それを少しでも、和らげることが出来るのならば……。

「はい、わかりました……」

わたしは自身の前にあるあの人の手に自分の両の手のひらを重ね、静かに目を閉じた。
あの人の鼓動を、息遣いを、そしてあの人がこの世にいることの喜びをその背中に感じながら――。
585 ◆JENA/hfgHs :2007/04/01(日) 22:18:53 ID:MPrAy7XY0
何だか本当に久しぶりになってしまいました。
『Binary』としては、実に2ヶ月近く前章から空いてしまいました。
第15章、アップに付き、投下致します。

今回は、少し痛い話です。
ですが、これ以上痛い話は自分には書けません。
最初は屑屋視点で書き始めましたが、あまりの痛さにゆめみ視点に変更して書き直した結果
時間がかかってしまいました。
合い間に『Twinkling Star』を書いていたからということもありますが。

自分としては、そろそろ『Binary』は3コーナーに差し掛かる辺りかな、と感じます。
あとどのくらいになるかは分かりませんが、最後までお付き合いくだされば、と思います。
よろしければ、読んでやってください。
586「ゆめみの欲しいもの」の中の人:2007/04/01(日) 22:22:37 ID:2c7vo3KQ0
>>585
GJです! リアルタイムで投下を見てたんですが、途中から痛い話しになってきたので
暫く更新をとめてしまいました orz

でもゆめみと屑屋の絆の強さを垣間見ることができたので、そこが救われてるだけでも
自分的には良かったです、ハイ。
587名無しさんだよもん:2007/04/01(日) 22:30:09 ID:mUeOY5n50
まさかこういう形で、屑屋が片足を失うシーンを入れてくるとは……

あいかわらず渋い!GJっす!



ぱんつ描いてる場合じゃないな、俺もw
588名無しさんだよもん:2007/04/02(月) 00:02:55 ID:REvykQCV0
ちょっと目頭が熱くなりました…。GJ!です!

自分は明日から会社の研修で1ヶ月泊り込むんですが、
行く前にいいものを読ませて頂きました。
589名無しさんだよもん:2007/04/03(火) 00:17:18 ID:6gv4ltmh0
>570 >>587
貴方の選んだ、ぱんつでは、スリットから見えてしまいますので
私の、美、からは却下です。

私なら、
ttp://www.wishr.com/catalog2/061211/93111.html
ttp://www.wishr.com/catalog2/061211/93114.html
ttp://www.wishr.com/catalog2/061211/93115.html

ttp://www.wishr.com/catalog2/061019/22070.html
ttp://www.wishr.com/catalog2/060508/80042.html

ttp://www.wishr.com/catalog2/061113/80104.html
ttp://www.wishr.com/catalog2/061113/80103.html

みたいな、スカートのスリットを生かせる、物を選びますね。

ただし、ズレタ世界であれば
「ぱんつはいてない のがあたりまえ」になっている事も考えられますねぇ
近代日本では、つい数十年前までは、女の人がスカートや浴衣ではノーパンが当たり前で、パンツを穿くのはおしっこをうまくできない幼女までであったから。
 パンツ(ドロワーズ、ズロース、パンティズ、ショーツ)を成人女性が使う様になったのは、昭和に入ってからだ。
590名無しさんだよもん:2007/04/03(火) 00:18:01 ID:6gv4ltmh0
1932(昭和7)年、12月、東京でデパート火災が有った。

http://osaka.cool.ne.jp/cyberidoc/cmd/155.html
http://photo-collage.jp/makoto/archives/2005/10/post_275.html
http://www.geocities.jp/showahistory/history2/showa07.html

客で焼け死んだのは、店員の誘導を受け入れなかった骨董品関係の男性客1人。
従業員達の13人は、避難誘導を行い、煙に巻かれたり、大やけどで亡くなった。
墜落死のほとんどは、当時避難用ロープなどが無く、服や着物、それらの生地や反物などを結び合わせた避難具で逃げたのが強度不足や、途中で焼け切れるなどで切れて、一緒に落ちた。
で、白木屋は東急百貨店(東急とは、東京都と神奈川県を結ぶ鉄道会社)に買収され、服や着物だけでなく「下着を積極的に売ろう」という事で、「白木屋火災」を使って広告をした。
その広告が「ノーパンで焼け死んだから下着を使おう」だった。
http://www.netman2.com/scr/xml2html/402259800X.html
でも、このときまで、ノーパンがあたりまえで、パンツが恥ずかしいもの( 「オムツ」 の代わりだから)だった。
しかしこのあと、高島屋や三越でも同様の広告で下着類を売り出し、普及した。
591名無しさんだよもん:2007/04/03(火) 00:34:08 ID:Q7FzVSUXO
だからノーパンとはいてないは違うと
592名無しさんだよもん:2007/04/03(火) 00:40:26 ID:T83QVpTV0
ノーパンとはいてないについて熱く語りたければ核煮のはいてないスレでも行けば?

まぁ、はいてない語りばかりでこつ絵が見れなくなる諸刃の剣だがな(´A`)
593570:2007/04/03(火) 03:02:53 ID:8Zbg9x4P0
や、「ああ見えても実ははいてる」からこそ「ぱんつはいてない」である、というのは理解してますよ。
ゆめみさんにしても、「本当ははいてる」と解釈してます。

最近、なんかローレグに色気(えろではない)を感じるもんで、やってみた次第。orz
まあ、ネタってことでよろ。
594『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(01/15):2007/04/06(金) 23:33:20 ID:YceK3V0n0
……広いドームに、微かな雨音だけが響いている。
入口の分厚い扉を開け放ち、外光を導いても、ドームの中はなお暗い。

花菱デパート、本店屋上プラネタリウム館。
俺が星の夢を垣間見て……そして、それを失った場所。

見上げる先に、巨大な双頭の蟻のような投影機。
カールツァイス=イエナ・Universal23/3。
動力と主人を失った投影機が、所々に赤錆の浮いた姿を晒している。

架台にもたせ掛けたトランクケースの中に、上半身だけになった自動人形の残骸。
SCR5000Si/FL CapelU・ほしのゆめみ。
星屑をあしらった青い毛布に包まれ、瞳を閉じて、二度と目覚めない眠りの中に居る。

投影機を取り囲み、円形に並べられたドームの客席に、生きることに疲れきった一人の男。
身体を痛め、今日を生きるだけで精一杯の、「元」屑屋。
杖のような義足の先で、失われたはずの右足が痛む。

残り少なくなった、ワイルドターキーの壜を呷る。
焼けるような刺激と共に、琥珀色の液体が喉を落ちていく。

扉を開け放った、薄暗いプラネタリウムドーム。
俺はもう、同業者や自律戦闘機械の襲撃など、気にしてはいなかった。
この壊れた世界には、もう用もなければ、未練もない。
……せめて、痛みのないように……あいつと同じ、天国に送ってくれ。


……雨音だけが支配する、プラネタリウムドームの中で。
…………俺は…………


  ― 『Time Tripper2 -星の人/誕生-』 ―
595『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(02/15):2007/04/06(金) 23:34:40 ID:YceK3V0n0
……ゆめみの声を聞いたような気がして、目が覚めた。

暗闇の中。腕の時計は、とうに日没を過ぎた時刻を指している。
ゆめみの前に置いた、蓄電池駆動のランタンが、ほの明るい光を放っている。

俺は、ぼんやりと頭上を見上げ……

……思わず、息を呑んだ。


俺の頭上で、「満天の星空」が、ゆっくりと回っている。
二度と動くことはないはずだった投影機から光が放たれ、頭上のドームに星の夢を描いている……

彼女と過ごした僅かな時間。それは、間違いなく俺を変えた。
俺は彼女を通じ、平和だった頃の人類から、俺達が長く失っていた「大切なもの」を預かったはずだ。

人を信じ、未来を信じる、純真な心。
そして……この、満天の星空。

……やがて、星空はゆっくりと漆黒に吸い込まれて行き……再び、闇が訪れた。
ランタンの光に照らし出されたゆめみの抜け殻が、まるで微笑んでいるかのように見えた。

客席の椅子を軋ませ、俺はゆっくりと立ち上がる。
身体に残った強い酒が、足元をふらつかせる。
だが、不思議と俺の意識は澄み渡っていた。

人類が途絶えない限り、受け継いでいかなければならないものがある。
人類がゆめみに託し、この壊れた世界でゆめみが守り続けた……星の夢。

……そうだ。俺にはまだ、やるべきことが残っている。
天国へ行くには、まだ早い。
596『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(03/15):2007/04/06(金) 23:35:12 ID:YceK3V0n0
錆びつき、軋み音を立てる扉を開け、資料室に入る。
壁に並んだ本棚には、天文解説書が並んでいる。
この解説書達が、これからの俺の「教師」だ。

星の夢を語るために、必要なことがある。
星の夢を見せるために、必要なものがある。
必要なものは、沢山ある。

決して、楽観はできない。
文明を失ったこの世界で、星の夢を語るに足る知識を得ることができるのか。
右脚を失ったこの身体で、材料を集め、投影機を作り、星の夢を語りながら旅をすることができるのか。
夢を失ったこの世界で……「星屋」を生業にして、生き延びてゆけるのか。

だが、俺に迷いはなかった。
どうせ、一度は死んだ身だ。……この命、星の夢に奉げよう。

抱えられるだけの解説書と、投影機の材料になりそうな半球形の傘を抱え、館員控室に歩を進める。
手元のランタンだけが頼りの真っ暗な館内を、足元に気をつけながら進む。

俺の視線の先……館員控室の方から、薄く明かりが漏れている。

(!……侵入者か?)
腰に吊るした護身用の拳銃。残弾数は、二発。
ランタンの灯を落とし、拳銃の安全装置(セイフティ)を解除。入口脇の壁を背に……そっと、中を伺う。

それは、僅かな遺留品を漁る同業者の手灯りでもなければ、何かの拍子に点灯した非常用照明でもなかった。
それぞれが正三角形の頂点に位置し、小さく唸りながら宙に浮いている、三つの光球。

見覚えのある、あの時空超越体だった。
597『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(04/15):2007/04/06(金) 23:35:46 ID:YceK3V0n0
三つの光球は、あの時と同じように、微かな音を立てて宙に浮いている。

―半年前。俺はゆめみと共に、この光球……超時空体の力によって、時を超えた。
四十一年前の、花菱プラネタリウム。
この場所が人々の歓声に包まれていた、平和な時代へ。

「…………」
ゆっくりと手を伸ばし、三つの光球に囲まれた空間へ掌をかざす。
光球の輝きが急激に増し、目の前の空間が凄まじいまでの光を放ちながら膨れ上がる。

……俺は、その空間へ迷うことなく飛び込んでいった。


圧力すら感じるような、激しく、強く、眩い光。
硬く瞑(つぶ)った瞼の裏が真っ赤に染まり、俺は一瞬、上下の感覚を失った。
踏み出した足が空を切り、バランスを崩す。反射的に突き出した腕が、見えない壁に突き当たる。

一瞬の間を置いて、俺の顔は暖かく柔らかい塊に包まれた。
「……っ!!!」
息を呑むような、高い声が聞こえた。
「……な、何だ?」
両腕に力を入れ、顔を離す。

俺と壁の間に挟まれるように、誰かが居た。
薄手の白いブラウスと、肩にかけられた蒼いショール。
プラスチック製の丸い名札に彫り込まれた、いくつかの文字が目に入った。

―『倉橋 里美』。

「……っきゃあぁあぁあああああああっ!!!」
甲高い悲鳴と共に、俺の左の頬で乾いた音が響いた……
598『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(05/15):2007/04/06(金) 23:36:19 ID:YceK3V0n0
「……っ痛ぅ……今のは効いたぜ……」
「ご、ごめんなさい……でも、いきなり抱きついてくるからよ!?」
謝罪と非難が入り混じった、微妙にテンションの高い里美さんの声。
「いや、分かってる。悪いのは俺のほうだ。……すまん」

静かなBGMが流れる館員控室。俺は、懐かしい面々に囲まれていた。
館長、三ケ島さん、茜ちゃん……
あの時から少し歳を重ねたスタッフ達が、懐かしさと一抹の疑問が入り混じった表情で、俺を見つめている。

「よく来たね、葛也君……また会えるとは思っていなかったよ」
「久しぶりです、館長」
濡らしたタオルを頬に当てたまま、残った手で握手を交わす。


それきり、……再び、その場を沈黙が支配した。


「……あの……葛也さん、でしたよね?」
森見由香、と名乗った新人の女性スタッフが、言いにくそうに切り出した。
「その……ゆめみちゃんは……」
その場に居た全員が、真っ先に俺に聞きたかったであろう疑問。

「…………」
俺は黙って、懐から防水ケースを取り出し、テーブルに置いた。
蓋を開け、中から煙草ケースほどの大きさの部品を取り出す。

「SCR5000」と彫り込まれたそれは……ゆめみが俺に託したメモリーチップ。
彼女が遺した、星の夢の形見。

「……俺は、あいつを守れなかった…………すまない」
そう言うのが、やっとだった。
599『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(06/16):2007/04/06(金) 23:44:52 ID:YceK3V0n0
俺は、あの日「未来へ帰った」後の事を、彼らに話した。

非常用電源が切れて電力供給を失った、このデパートを離れ、この都市からの脱出を試みたこと。
そこで、シオマネキに……自走砲台に出会ったこと。
擲弾の不発によって、窮地に陥ったこと。

ゆめみは『遠い日の約束』に突き動かされ、
俺を守るために、自走砲台の前に立ち、

……そして……


スタッフ達は目に涙を浮かべ、ただ黙って俺の話を聞いている。
この時代の『ゆめみ』も、両手を胸の前で重ね、幼さの残る整った顔立ちに「悲しみ」を滲ませている。

俺は、辛うじて脱出に成功したが、代償として右脚を失った。
癒えない傷を負った身体では、もはや屑屋稼業を続けることはできなかった。
何処の集落に属するでもなく、自らの力で稼ぐことも覚束なくなったアウトサイダー。

……俺は、星の夢を語るどころか、生きるだけで精一杯の半年を送った。

身体を痛め、夢を失い……俺は、この壊れた世界で生きることに疲れ切っていた。
死に場所を求めて、俺は再び此処を訪れ……

……そして俺は、「やるべきこと」を思い出した。


……俺の話が終わった後も、誰もがしばし無言だった。
ゆめみの事、俺の事……そして、俺の言葉の端々に見え隠れする「壊れた世界」の事。
それを、思っていたのかもしれない。
600『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(07/16):2007/04/06(金) 23:45:24 ID:YceK3V0n0
それから俺は、俺が「未来へ帰った」後の出来事を、彼らに聞いた。

自ら生み出した「人類」と言う存在に資源を食い荒らされ、疲弊しつつあった地球。
宇宙に新天地(フロンティア)を求め、人々の夢と希望を乗せて旅立った、火星探検隊がいた。

……エアロックの事故による死亡者、二名。
長時間の宇宙線被曝による深刻な脳障害、全搭乗員。
宇宙という新天地の正体が、人類を拒絶する死の世界だと知った時、人々は星の夢を失っていった。
この狭い星・地球に閉じ込められた人類。僅かな資源を奪い合う国家間の対立は、日に日に激しさを増している……
館長は、そのようなことを語った。

その所為だろうか。観客達の歓声に満ち溢れていたあの頃とは違い、広いドームに観客の姿はなかった。
俺が未来へ帰ってからほんの十年で、世界は急速に壊れ始めた……

……十年、だって?

「……ところで、今日は何年、何月何日だ?」
妙な胸騒ぎを覚え、俺はスタッフの皆に聞いた。
「はい、2049年6月21日、午前11時36分25秒です」
『ゆめみ』が、即座に答えた。

「……6月21日……か」
「……葛也君?どうしたの?」
里美さんが、心配そうに俺の顔を覗き込む。


……しばしの躊躇の後。俺は、意を決して言った。

「皆、落ち着いて聞いてくれ。
 一週間後、世界大戦が勃発し…………この世界は、崩壊する」

遅拡散性BC兵器によって、この都市が「封印」されるまで、僅かに一週間しかなかった。
601『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(08/16):2007/04/06(金) 23:46:01 ID:YceK3V0n0
一週間という、限られた時間。
あと一週間で、この都市は細菌兵器による攻撃を受け、防疫天蓋(ドーム)と封鎖壁によって「封印」される。
しかし、それでも人々は生き延びる。
それから三十年。人類はその数を減らしながらも、俺の時代まではなんとか生き延びている……

ならば。
俺達はなんとしても生き延び、星の夢を語り継がなければならない。
「星の人」として、人類が生き続ける限り、その系譜を継ぐために。


俺は、自分が知りうる限りの知識をもって、スタッフの皆へ生き残るための術を教えた。
必要となるものを準備させ、逃げるべき場所を教え、できる限りのサバイバル知識を教えていった。
―どこまでも生き延びて、逃げ延びて、いつか再び出会うために。

俺達は、小さなピンホール式投影機をいくつか手に入れ、改造を始めた。
樹脂製の部品は金属部品に置き換え、恒星電球は超高輝度LEDに交換。できる限りの耐久性を確保する。
―壊れた世界で、少しでも長く星の夢を語ることができるように。

俺達は、投影後のわずかな時間を使い、『ゆめみ』と投影機のメンテナンスを進めた。
グリスによる簡易モスボールの準備、定期メンテナンスの前倒し、消耗品のストック。
―『ゆめみ』と『イエナさん』が、三十年後に来る俺に、星の夢を受け継ぐことができるように。


……そんな中、三ヶ島氏は古巣のメーカーの友人に話をつけ、ある物を調達してくれた。
廃棄処分となった建設作業用ロボットの脚部を流用した、手製の可動式義足。
セラミックメタル製のそれは、見た目はブーツのような無骨な造りだったが、俺の右膝の残った神経からの信号を拾い、
蓄電池駆動によって膝と足首、足先を動かすことができる。
「一生の間使える、というわけにはいかないかもしれませんが、当面は不自由のない生活が送れると思いますよ」
彼は、そう言って笑った。
602『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(09/16):2007/04/06(金) 23:46:32 ID:YceK3V0n0
「……それでは、今日の授業はここまでにいたしましょう。お疲れ様でした」
そう言いながら、ゆめみは耳元のコネクタからケーブルを外す。
ケーブルの先は、俺の目の前にある端末へと繋がっている。
この時代ですら旧式の平面モニターが、ほんのりと余熱を保っていた。

閉館後の僅かな時間。俺は、ゆめみから「授業」を受けている。

星々を結び、天空に雄大な神話を描き出した、先人達の想い。
煌く星々に与えられた名前。想像と観測とによって解き明かされてきた、様々な謎。
時には迫害に耐えながらも、偉大な学者が追求し続けた、太陽系の真実。

星々と同じ成分で構成され、太陽という恒星と、地球という惑星の恵みの下に生まれた人類。
俺達が、宇宙や星々に想いを馳せてきたのは、自分自身を見つめることでもあったのかもしれない。
……だとすれば、俺達人類が犯した「過ち」は……

想像と観測によって生まれた「心の天蓋」は、時間も空間も障害とせず、その全てを映し出す。
遥かな過去。ビッグバンによってこの宇宙は「ある一点」から膨張を始めた。
膨張する宇宙はやがて収縮に転じ……そして遥かな未来、再び「ある一点」に戻る。
……「同じ天国」へ……

「遅くまですまないな。ありがとう、ゆめみ」
俺の声は、もうゆめみには届いていない。
目の前の椅子に腰掛けたまま、彼女は瞳を閉じ、スリープモードに入っていた。

現在時刻、午前二時五十五分。
ゆめみは、スリープモードのための時間をギリギリまで削り、俺に星の知識を教えてくれている。
―俺と、俺に続く『星の人』へ、少しでも多くの星の夢を伝えるために。

俺は手を伸ばし、控室の椅子にもたれかかって眠る、ゆめみの髪をそっと撫でる。
ゆめみの「寝顔」を見つめながら、俺はつい数日前のことを思い出していた……
603『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(10/16):2007/04/06(金) 23:47:06 ID:YceK3V0n0
観客が入らず投影中止となった、初回投影の時間帯。
館員控室を通りかかった俺は、女性スタッフ達が集まり、何かの本に見入っているのに気がついた。

「どうしたんだ?」
「あ、葛也さん……」
皆一様に、浮かない顔をしている。
「何かあったのか?」
彼女達が眺めていた、その本を手に取る。

それは、SCRシリーズのカタログだった。
広げられたページには、SCR5000のベアボーンモデル……AIユニットを含まない筐体が、何体か掲載されている。
カタログと共に広げられた見積書。「ご提供金額」の欄には、八桁の数字が並んでいる。

「未来のゆめみちゃんに、身体をプレゼントしてあげられないかって考えたんだけど……」
由香ちゃんが、そういって溜息をついた。
「申し訳ありません、弊社営業担当に成り代わりましてお詫びいたします……」
『ゆめみ』が、いささかトンチンカンな謝罪を返す。

「……なんだ、そんな事か」
小さく息をついて、答える。
「ちょ……『そんな事か』って、そんな言い方ないでしょ!?」
茜ちゃんが、声を荒げる。

「ああ、すまない。……実はな、俺は、ゆめみを甦らせたいという思いはないんだ」
俺は、苦笑いしながら答える。
「……えっ?」
信じられない、というような目で、皆が俺を見た。
604『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(11/16):2007/04/06(金) 23:54:05 ID:YceK3V0n0
俺の時代……今から三十年後の世界は完全に壊れ、機械文明は失われてしまった。
使える機械部品を漁り、満足なメンテナンスもできず、壊れるまでただ使うだけの人類。
無差別攻撃モードに設定され、動くものを見境なく襲う、自律戦闘機械が徘徊する、壊れた世界。
戦うことも逃げることも知らない、ゆめみのような無垢なロボットにとっては、過酷な世界だ。

「どの道、そんな世界では……ゆめみは、長くは生きられないだろう」
据わりの悪いパイプ椅子が、ギシリと音を立てる。
「……俺のエゴで、そんな時代に彼女を引き戻したくはないさ」

「……葛也さん……」
控室に、沈黙の時が流れる。

「……お客さま?」
俺の話を黙って聞いていた『ゆめみ』が、不意に言った。
「? なんだ?」
「一つ、お願いがあるのですが……」
「お願い?」
「はい。あなたがお持ちの……ゆめみさんのメモリーチップを、わたしに貸していただけませんか?」


『ゆめみ』は、俺から受け取ったメモリーチップを、「あの時」とは反対側の耳のスロットに挿入した。
「……ゆめみちゃん?何をする気?」
怪訝そうな表情で、由香ちゃんが言った。

「はい。ゆめみさんの蓄積データベースを、わたしの蓄積データベースに結合(マージ)します」
「えっ!?そ、そんなことをして大丈夫なの?あなたはどうなってしまうの?」
と、里美さん。

「問題ありません、どちらも『わたし』ですから……少し先の『記憶』を得る、というだけのことです」
そう言うと、『ゆめみ』は目を閉じた。
605『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(12/16):2007/04/06(金) 23:54:46 ID:YceK3V0n0
『蓄積データベース・0000012-20701105を、0000012-20490623にマージします』
『ゆめみ』の口から、あの時と同じ、低いシステムボイスがつむぎ出された。

……時間にして、十分ほどだっただろうか。
沈黙の時が過ぎ、『ゆめみ』は、ゆっくりと目を開いた。

「……ゆめみ?」
「……ゆめみちゃん?」
恐る恐る、声をかける。


……その時。あの日を境に止まっていた、俺とゆめみの間の時間が動き始めた。


「……お客さま……本当に、お久しぶりです」

俺の目の前に、間違いなくあの時のままの、ゆめみが居た。
深い緑色の光学樹脂(オプティックアクリル)の瞳が、今にも泣き出しそうに潤む。

ゆめみはあの時、「わたしは涙を流すことはできません」と言った。
だが、俺の目に映るその瞳は、確かに「嬉し涙」に潤んでいるように見えた……


……それは俺達にとって、まぎれもなく「再会」だった。
606『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(13/16):2007/04/06(金) 23:55:16 ID:YceK3V0n0
……気がつくと、控室には俺とゆめみしか居なかった。
気を利かせて、席を外してくれたのだろうか。

テーブルを挟んで座り、俺とゆめみは、ただ黙って向かい合っている。

「お客さま……あの時は本当に、申し訳ありませんでした」
長い沈黙のあと、先に口を開いたのはゆめみだった。
「お客さまは……わたしを迎えに来てくださったのに、……わたしは……」

俺は身を乗り出し、ゆめみの顔へと手を伸ばす。
ふっくらとした頬に手を添え、小さな口元を親指で塞ぐ。

「……お客さま?」
「……いいんだ、ゆめみ」

俺は席を立ち、ゆめみの手を取る。
「俺がさっき言った事は、慰めでも方便でもない。……お前が生きていくには、あの世界は過酷すぎるんだ」
「……お客さま……」
「お前から受け継いだ星の夢は、俺が必ず次の世代へ受け継いでみせる。……だから、任せておけ」
「…………」
ゆめみは無言で、俺の手を握り返す。

「……なに、ほんの数十年の話だ」
「?……と、おっしゃいますと?」
「人はいつか死ぬ。その時にまた、同じ天国で会えるさ。
 お前はたった一人で、三十年間頑張ったんだ。今度は俺が頑張る番だ。……だろう?」
無理な作り笑いではなく、自分でも驚くほど自然に、笑みがこぼれた。

「……お客さま……ありがとうございます……未来を、よろしくお願いいたします」
ゆめみもまた、微笑みで俺に応えた。
607『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(14/16):2007/04/06(金) 23:56:01 ID:YceK3V0n0
『……全ての報道メディアを通じ、臨時緊急ニュースをお伝えします。
 先ほど、アラスカ・中東・北南米・朝鮮半島ほか、複数の地域で大規模な軍事衝突が発生した模様です。
 一部では熱核兵器が使用されたとの情報もありますが、現在、情報が錯綜しており……』

デパートの向いにあるファッションビル。その壁面に掲げられたプラズマモニターに、臨時ニュースが流れた。
『……デマに惑わされず、冷静に行動してください。政府は緊急対策本部を設置し、事態の把握に……』

プラネタリウム館員控室。俺達の目の前で、あの時空体が「帰還の時」を告げている。

「……本当に行くの?」
「……ああ」

皆も一緒に来ないか、とは、言えなかった。
これから先、一年目には半分、二年目にはまた半分……と、人類は減っていく。
彼らが生き延びられる確率は、限りなくゼロに等しい。
だが、俺がこれから戻る世界は、それ以上に厳しい世界だ。
その日の食べるものにすら事欠き、対人戦車に命を狙われ、降りしきる毒の雨と残留放射能は身体を蝕んでいく。

進むも地獄、留まるも地獄。……それでも、俺達には使命がある。

俺の手の中に、一抱えほどの黒い球体……手製の投影機がある。
同じものがあと二つ。一つは館長の、もう一つは里美さんの手に。
……これから壊れてゆく世界で、俺達が受け継いでいく、星の夢。

「お客さま……これを」
ゆめみは俺の手を取り、掌にメモリーチップを載せる。
……これから壊れてゆく世界で、俺と共に旅をする、星の人の証。
「……わたしはいつでも、あなたと一緒にいます」
そう言って、少し微笑む。

たとえこの先が地獄でも、俺達には、星の夢を守る使命がある。
壊れてゆく、この世界の中で。
608『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(15/16):2007/04/06(金) 23:56:31 ID:YceK3V0n0
防音扉を閉じ、静まり返ったプラネタリウムドーム。
おそらく、下ではパニックが発生しているだろう。

「……ゆめみ?」
「はい、なんでしょうか?」
俺はゆめみの肩を抱き寄せ、彼女の耳へ……耳に模したイヤーレシーバーへと囁く。
「最重要命令だ。お前が知っている『これから先』の出来事は……誰にも話さず秘密にしろ。
 スタッフの皆にも……三十年後にやってくる『俺』にも、だ」
言い聞かせるように、一言ずつ、ゆっくりと。

明日。スタッフの皆は、ゆめみをここへ残してこの都市から脱出し……誰一人、ここへ戻れる者はいない。
三十年後。俺はゆめみと出会い……三日間の星の夢は、辛い別れによって終わる。
辛い未来は、知らないままのほうがいい……そう思った。

「了解しました。……記憶データのベクタ情報を変更、オーバーレイメモリ領域へ退避しました」

「……何の話してたの?駆け落ちの計画?」
茜ちゃんの軽口にも、どことなく元気が感じられない。
「いや、三十年後の逢引きの計画、ってところだな。……じゃあ、頼んだぜ、ゆめみ」
「……はい」

俺の目の前で、超時空体が眩い光を放っている。
仲間達に背を向け、三つの光球を見つめたまま、たまま、俺は呟くように言った。

「皆……ありがとうな」
「葛也さん……何があっても、負けないでね」

「ゆめみ……三十年後、此処に来るはずの『俺』を頼んだぜ」
「はい、承知しました。……お客様も……どうか、お元気で」

振り返らない。
振り返れば……決心が揺らいでしまうような気がした。
609『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(16/16):2007/04/06(金) 23:58:48 ID:YceK3V0n0
光の門へ向け、右足を踏み出す。
ガシャリ、という金属の擦れる音とともに、機械の右足がしっかりと、俺の身体を支える。

「星の人の"系譜"を頼んだよ……『星屋』君」
左手に抱えた投影機を肩の高さまで掲げ、俺は館長の声に応える。


「じゃあな。……お互い運があれば、また此処で逢おう」

……もしも、俺達が再び逢うことなく「終わり」を迎えたなら……


―その時は、『同じ天国』で落ち合おうぜ。


時空体の放つ、眩い閃光に包まれる直前。
俺は肩越しに、握り拳の親指を立てた。



……俺達は、『星屋』だ。
生きる時代が異なろうとも。
二度と逢える保証はなくとも。

この壊れゆく世界で……俺達には、やるべきことがある。

……人類の系譜が続く限り。
……後に続く者達へ、星の夢を……


- Fin. -
610『Time Tripper2 -星の人/誕生-』(後書き):2007/04/06(金) 23:59:19 ID:YceK3V0n0
『Time Tripper』の続編として、本編と『星の人/系譜』の間のミッシングリンクを補完してみました。
ゆめみと屑屋が一緒にいられないのなら、せめてきちんと納得した形で別れさせてやりたかった、
というのもありますが。

追伸:
連投規制回避、ご協力感謝です。(`・ω・´)ゞ ズビシ
611名無しさんだよもん:2007/04/09(月) 23:16:35 ID:KyCiJztJO
すごく…GJです…
612名無しさんだよもん:2007/04/12(木) 23:54:17 ID:KaRNsGgl0
なんだか、屑屋さんと言うか、リサイクル業者さんというか、お客様は
片足切ってみたり、全身機械になったり、大変な人生を歩いてますねぇ。

こういう、人そっくりな機械を作れれば、確かに優秀な義足なり義手なり、機械の体などは「医療器具」で買える世界でもあるとは思えますが。

でも。私は、五体満足な星の人が良いなぁ。そうでないと可哀そうに思えて。
613名無しさんだよもん:2007/04/13(金) 00:12:31 ID:vzNBTgWv0
でも時間旅行の話は好きだな。
約40年をまたいで、同じプラネタリウム装置で、話が繋がるのは。

銀河鉄道は。どうしても、まあ、個人的な話で申し訳無いですが、
W-WISH(プリンセスソフト)や、松本。。。ええと、だれだっけ?「千年女王」「クイーン エメラルダス」「ハーロック」などを想像してしまいまして。 なんだか。

いえ、個人的な問題でごめんなさい。

皆さんの話面白いです。
614名無しさんだよもん:2007/04/13(金) 01:18:15 ID:rrMN31BdO
このスレで連載されてる銀河鉄道シリーズって書くの難しそうだよな…
615名無しさんだよもん:2007/04/13(金) 05:10:22 ID:JSGaaqov0
>>612
「屑屋が右足を失う」のは、公式設定なんすよ……
原作準拠のSSを書くならば、どうしても外せないフィーチャーなわけで。orz

てか、原作って徹底的に可哀そうな物語。
616612:2007/04/13(金) 10:45:38 ID:5kZgj+lD0
>>615
ええ・・・・・・はい・・・・・。
だから、SSでは、せめて、五体満足で・・・・と、思うわけです。
個人的な感傷です。申し訳ありま゜せ゜ん゜。(グズグズ )
617名無しさんだよもん:2007/04/13(金) 10:56:45 ID:tfdZ8xt50
ですなあ。
しばらく原作準拠の辛い話が続いたから、そろそろはっちゃけ系を。
618『魔法の解説員・リリカルゆめみ』(1/6):2007/04/13(金) 23:42:45 ID:JSGaaqov0
廃墟と化したデパートの屋上で、俺はそれを見つけた。

人影ひとつない屋上の一角にある、巨大な天蓋(ドーム)。
目の前にあるのは、錆び付いた巨大な双頭の黒蟻……プラネタリウム投影機。

俺の掌の上に、その投影機と同じ形の「それ」が載っている。
土産物か何かだったのだろうか。目の前の投影機をそのまま縮小したその置物は、ずっしりとした金属の質感を伴い、鈍い光を放っている。
円筒状に組まれたフレームの両端に取り付けられた、球状の部分。あちらこちらに小さな輝石が嵌め込まれ、破れたドームから漏れる光を反射して光っていた。

「ふむ……」

この壊れた世界では、このような非実用品には、あまり価値はない。
それでも、好事家達の目を引くような品であれば、いくばくかの食料や弾薬には化けてくれた。
「世界崩壊」の前後に巧く立ち回り、そこそこの財産を溜め込んだ富豪達。
俺達「屑屋」にとっては、上得意様だ。

「さて、どういう『逸話』をでっち上げて、売りつけてやるかな……」
背嚢(ナップザック)から襤褸布(ウエス)を引っ張り出しつつ、俺は奴等への売り文句(セールストーク)を捻りはじめた。

「屑屋」というものは肉体労働だと思われがちだが、実は結構な頭脳労働でもある。
拾ってきたガラクタに、巧みな話術でいかに付加価値を与えるか。
好事家達の心を動かす、「もっともらしい」物語を紡ぎ出す文才が、明日の生活を左右する。

「崩壊」の時点ですでに骨董品と言われていた品ならばともかく、このような工業製品は分が悪い。
「幸せを呼ぶ置物」だのなんだの、またオカルトネタに走るぐらいしかないか……

「……ってか、幸せを呼んでもらいたいのは俺のほうだぜ、まったく……」
その日暮らしの生活をぼやきながら、少しでも見映えを良くしようと、俺は置物を磨き始めた……
619『魔法の解説員・リリカルゆめみ』(2/6):2007/04/13(金) 23:43:20 ID:JSGaaqov0
その時、その置物に突如、変化が現れた。
輝石から光を放ち、煙を立ち上らせながら震え始める。

「!……しまった!しくじったか!?」
置罠(ブービートラップ)ではないことは、できる限り確認したつもりだ。
毒ガスを発する機構や、殺傷性のある爆薬を仕込むほどのスペースは、ないはずだった。
置物を投げ出し、できるだけ距離を置こうと跳び退る。

その直後、宙に舞った置物が煙に包まれ、消失した。
そして、その代わりに現れたものは……

「呼ばれて飛び出てジャジャジャ…… (ゴチン!!)ふぎゃっ!!」
置物の代わりに、脳天から真っ逆さまに地面に落ちたのは……

不思議なデザインの衣装を身にまとった、一人の少女だった。

「…………くぁあぁぁぁぁぁ〜〜〜ぅ……」
床にぺたんと座り込み、両手で頭の天辺を押さえ……消え入りそうな呻き声を上げている少女。
なんとも言えぬ罪悪感に襲われ、俺は警戒しながらもゆっくりと近づき、声を掛けた。

「お……おい、大丈夫か?」
「……ものすっごい痛いです……うぐぅ」
頭を抑えたまま、涙目でこちらを見る少女。
俺は警戒するのも忘れ、彼女の肩に手を掛ける。
「怪我はないか?」
「いえ……だ、大丈夫です、お客さま」
よろよろと立ち上がる少女。俺は肩を貸し、フラつく彼女を客席に座らせてやった。
620『魔法の解説員・リリカルゆめみ』(3/6):2007/04/13(金) 23:43:51 ID:JSGaaqov0
「ありがとうございます、お客さま……」
ようやく痛みが収まってきたらしい。
目尻に涙を浮かべたまま、少女がにっこりと微笑んだ、その途端。

溜まりに溜まった俺の疑問が、ついに爆発した。

「……あのな、お客さまってのは何だ?それにお前は誰だ?何故此処に居る?あの置物はどうなった!?」
「ふぇっ!?」
少女の前の席に膝を乗せ、椅子の背を握り締めてにじり寄る。
勢い余って、俺の顔が少女の眼前に肉薄する。

「…………」
俺の目の前、僅か十数センチの処に、きょとんとした表情の少女。
そして、その表情で我に返る俺。

「……あの……えと、話が早くて助かります」
「……あ、わ、悪い……何?……うぶっ」

 ☆

……少し湿った、「ちゅぷっ」という音と共に、唇と唇が離れた。

「……ぷはっ、契約完了です、お客さま。……いえ、ご主人さま」
頬を桜色に染めた少女が、少し首を傾げ、満面の笑みで言った。
621『魔法の解説員・リリカルゆめみ』(4/6):2007/04/13(金) 23:44:22 ID:JSGaaqov0
「……それじゃ、お前はこのプラネタリウムの……」
「はい、恒星電球(ランプ)の精・ほしのゆめみです。三千年ぶりにご召喚いただき、大変ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる。

俺は、軽い頭痛を覚えた。
「ランプの精」……この手の小物を売りつける時には、誰もが考えるネタだ。
曰く、「昔はランプの精が憑いていたが、これこれこういう事情で今は出てこない」……

もっとも、こんなネタでまともに売れたという話は、今まで聞いたことがない。
買ってくれたと思ったら、実は「作り話があまりにも巧かったので」そのお代だった……という、笑えないオチならあるが。

……だがしかし、まさかガチで出てくる奴が居ようとは。
お前には、科学的な常識というものがないのか。
(滅びたとはいえ)この科学文明の世界で、そういう三文ファンタジーを地でいくような展開はどうなのか。
大体、三千年ってのは何だ。三千年前にこんなプラネタリウムがあってたまるか。立派なオーパーツじゃねぇか。

……おいこら作者、お前もだ。いくらネタSSでも、これはどうなんだと。

「そのようなことを言われましても……わたしは現に、ここにこうして存在しているわけですし……」
「……ちょっと待て。俺は何も口に出しては言ってないぞ?」
「はい、ご契約いただいたご主人さまのことでしたら、以心伝心も同じですので」

……マジですか。
622『魔法の解説員・リリカルゆめみ』(5/6):2007/04/13(金) 23:44:53 ID:JSGaaqov0
「……わかった、釈然としないが、話が進まん。とりあえずお前はランプの精、ということにしよう」
「ご理解いただいてありがとうございます、ご主人さま!ご無理言いまして、申し訳ありません」
また、ぺこりと頭を下げるゆめみ。

「……それで、お前は何ができるんだ?」
「よくぞ、聞いてくださいましたっ!」
ぽんと胸を叩き、身を乗り出す。
「わたしはプラネタリウムのランプの精ですから、皆さまに星空をお見せすることができます!」
「星空?」
「はい、星空ですっ」
ゆめみは小ぶりな胸を反らし、得意げにそう言った。

…………

ゆめみに手を引かれ、俺はドームの外に出た。
すでに日は暮れていたが、厚い雲に覆われ雨が降り続ける夜空に、星など見えるはずもない。
遥か彼方で、辛うじて電源が生きている中規模都市の街灯りが、雨に煙りぼんやりと光っている。

「……それではさっそく、満天の星空をお見せいたしましょう!」
どこに隠し持っていたのか、ゆめみはヘンテコな飾りのついた杖(ステッキ)を取り出した。
どうみても旧式のコンデンサマイクにしか見えない、そのステッキ。
先端には、フラットケーブルや配線の端材、何かの部品等が巻きつけられ、全体としては星型に見えるフォルムを作り出していた。
……恐ろしく貧乏臭い、見た目ではあるが。
623『魔法の解説員・リリカルゆめみ』(6/6):2007/04/13(金) 23:56:14 ID:Ker5w6rM0
「は〜〜〜い♪」
ガラクタ……もとい、ステッキを天に翳(かざ)し、くるりと輪を描く。
「……デネボラデネボラカノープス、ミンタカミンタカアケルナル……♪」
微妙にマイナーな星々の名を並べた、けったいな呪文と共に、空中に∞の形を数回描く。
「アダルトタッチで、星空召〜〜還♪」
最後にもう一度、くるりと一回転させると、ゆめみは下から上へとステッキを振った。

……てかなんだよ、「アダルトタッチ」ってのは。

しかし、恐ろしくショボいステッキでも、恐ろしく胡散臭い呪文でも……その効果だけは、本物だった。

ぷよぷよぷよ……

間の抜けた音と共に、ステッキの先端に形作られた「星」が輝き、大量の光の粒が迸った。
光の粒は柱となって、一直線に天空へ駆け上り……俺達の頭上で弾けた。

瞬きする暇も与えず、漆黒の夜空を星々が埋め尽くした。
絶えることなく降り続く雨の中、厚い雨雲を透かすようにして、煌く星達が広がっている。
キラキラ……という音が聞こえてきそうな、その瞬き。

……いや待て、本当に聞こえてるじゃねぇか。

一種異様ではあったが、息を呑むほど美しいその光景。
横でゆめみが、なにやら一生懸命星空の解説をしていたようだが、俺の耳には届いてはいなかった。

「…………萌え…………」
俺はそう一言だけ呟き、飽かず星空を見つめ続けた。

そんな俺の態度に気づいていないのか、ゆめみはかまわず解説を続ける。
見事に噛み合わない二人を包み込むように、満天の星空が瞬いていた。
624『魔法の解説員・リリカルゆめみ』(あとがき):2007/04/13(金) 23:59:33 ID:Ker5w6rM0
・・・・・・それは、人格破綻者達の宴。w


「連続投稿ですか?」→「バイバイさるさん」のコンボで轟沈。orz
最後の段は、急遽サブのネット環境から投稿しますた。

カンベンしてくださいよorz
625612:2007/04/14(土) 01:56:05 ID:wGQwJWhF0
ご無理お願いして申し訳ありません
早速に書いて下さり。まことに。書き言葉では感謝の気持ち伝えられません。

一般的な表現ですが ありがとうございます。
626名無しさんだよもん:2007/04/14(土) 05:09:58 ID:UEjNcokI0
>>625
どもス。

SSの方向性については、バランスをとりながら書いてます。
原作に準じた話が好きな人もいるし、原作の重さを払拭するような話が好きな人もいる。
そして自分自身もその一人。片方の話をしばらく書くと、もう片方の話を書きたくなるんですよ。
627名無しさんだよもん:2007/04/17(火) 00:45:46 ID:90HR174Z0
ホシュがてら、ずいぶん前のSSネタから1枚。
ほしのゆめみ@SCRi9700Fi/FL ALCYONEIII。

つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1176738276.jpg


「SCR5000のディテールアップバージョン」を想定して描いてみよう、と思ったら、
なんだか種っぽい(つか厨っぽい)デザインに……orz
628名無しさんだよもん:2007/04/21(土) 08:36:36 ID:UtsHIwoIO
絵のタッチ変わった?
629名無しさんだよもん:2007/04/21(土) 09:18:48 ID:jfdWsg9E0
もともと安定してないのと、目とかちょっと変えてみようと思ったらなんか違くなったorz
ただいまリライト中〜
630名無しさんだよもん:2007/04/21(土) 09:54:17 ID:UtsHIwoIO
これはこれでいいですなあ(`・ω・´)
631名無しさんだよもん:2007/04/22(日) 10:42:19 ID:Qknse7450
天災
つ【ttp://www.orz2ch.net/niji/img/img20070422093121.jpg

アハトノインがヤられている様を想像した俺は、WA666グレイブウオッチャー食らって氏んでくる。
632名無しさんだよもん:2007/04/23(月) 00:43:54 ID:JYb9/TKTO
>>631
同志。じゃあ俺はアハト乃淫さんにぶった斬られてくる。
633名無しさんだよもん:2007/04/26(木) 09:28:37 ID:ZfbUTBnp0
「バイバイさるさん」規制が解除されないねぇ・・・・・・
634カリオストロの天象儀:2007/04/27(金) 00:47:53 ID:Zo4PENkc0
ゆめみ
「私も連れて行ってください。屑屋はまだできませんが、きっとデータを蓄積します。
 ……私、わたし、お願い……一緒にいきたい」
屑屋
「……ゆめみ……!」

(手を震わせ、抱きしめようとするが躊躇する)

屑屋
「……バカを言うな。また、闇の中に戻りたいのか?
やっとお日さまの下に出られたんじゃないか。
……おまえさんの人生は、これから始まるんだぜ。
俺のように薄汚れちゃいけないんだよ……」


ゆめみ
「……お客さま?わたしの今の職場はプラネタリウムですので、基本的に闇の中なのですが……
 それに、今日は雨天ですので、お日さまも出ておりません。
 それから、わたしはロボットですので、人生というのは語弊があるかと思われます(にこにこ)」
屑屋
「……お前には、情緒ってもんがないのか?orz」
635やおい:2007/04/30(月) 00:22:14 ID:1svNgVPqO
夜も更けた旧市街をとぼとぼと歩く一組の男女。
流れるような長い金髪の女が男の袖を引いて言う。
「ご主人様、重大な話があります。」
「…なに?」
年の頃は19、20だろうか。訝しい表情で女の顔を伺う青年は嫌な予感を巡らせていた。

彼女…ねじが一本足りない高級ドイツ製自動人形のアハトノインが真面目くさった顔で何か提案する時は毎回ろくな事が起きない。
いや、いつもこんな表情だけどさ…。
とにかく!今まで彼女の提案を実行して酷い目に遭ってるのは事実で、
それを列挙するには時間を要するのでやめておこう。

「あの、ご主人様…もしやお耳が遠いのですか?
いつの間にそこまで老化が進んだのでしょう…」
「はいはい、聞こえてますよ!で、なにさ?」
僕の問い掛けに俯いて老後のプランを練っていた彼女は顔を上げ、スッと通りを指差した。
真っ白な指に差された方向を追うと―――なんだありゃ?
「え〜と…"HOTEL MOSCAW"?」
「はい。本日はあそこに宿泊するのがよろしいかと。」
「へ〜!なかなか立派な建物じゃないか。今晩は久しぶりにベッドで寝れそうだ。」

青年は気付かなかった。
看板は一部崩れ落ちており、瓦礫に埋もれた『LOVE』の文字があることに…。
636やおい:2007/04/30(月) 00:23:55 ID:1svNgVPqO
突発的に書いた反省はしていない。
アハトノインさんに萌えなかったら負けかなと思う。
今の自分は勝っていると思います。
637名無しさんだよもん:2007/04/30(月) 01:30:21 ID:1HPu/+tn0
ノイちゃんktkr
638ゆめみさんチューニング中(ラフ):2007/04/30(月) 17:14:29 ID:1HPu/+tn0

つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1177920783.jpg

時々無性にえろ描きたくなる……スマソorz
639名無しさんだよもん:2007/05/01(火) 00:45:29 ID:WlpFuQqZO
>>638
あまりにエロいので抜きましたがなにか?
端から見たら「何も知らない子に悪戯してる」ようにしか見えないなw

>>636
アハトノインさんはやっぱりエロいな
640「ゆめみの欲しいもの」の中の人:2007/05/01(火) 17:52:40 ID:KaG0w3CH0
真面目な表情で、性交についてゆめみに質問するアハトノインさん。
笑顔でそれに答えるゆめみ。
隣りで頭を抱えながら、ゆめみのメンテナンスをする屑屋。

という電波を(ry
641名無しさんだよもん:2007/05/01(火) 18:00:54 ID:Pkc3scTx0
>>640

そ、その電波をぜひ文章に!wktkwktk
642アハトノインのほしいもの-1 (1/5):2007/05/01(火) 21:26:08 ID:KaG0w3CH0
「それで…快楽のレベルは…」
「ですからそれはセンサーの敷居値が…」

 俺の隣にいる二人の女性が、性交に関する知識を真面目に交換している。淡い水色を帯びた髪の女性…というよりは
 少女という方が正しいか…は、笑顔で質問の問いに答えている。彼女の名前は「ほしの ゆめみ」…俺に生きる意味を
 教えてくれた、何よりも大切な存在。俺は彼女の腰回りのジョイントを弄り、上半身と下半身を分離する作業に取り掛かって
 いるところだ。

「…とりあえずそれは実践してみないと判りませんね」
 金髪の女性が俺をちらりと見ながら呟いた。彼女の名前は「アハトノイン」…俺の調査結果と、彼女のメモリに残されていた
 記録によると、ドイツで生産された高性能自動人形というところだろうか? しかし、その彼女には今、下半身がなかった。
「視線で急かさないでくれ…機械的に接合できたとしても、ユニット同士の通信が上手くいくか判らんぞ」
「その点については問題ありません。ゆめみ様と協議した結果、既存のゲートウェイを改装すればインタフェース同士の」
「あー、わかったわかった…冗談抜きで、もう少し時間をくれ」
「…かしこまりました」
 1時間に一度、俺と彼女の間で会話が交わされる。これで3回目ぐらいだろうか? 俺はゆめみの腰椎ユニットを分解しながら、
 何故このような事になったのかと自問自答をしていた。
643アハトノインのほしいもの-1 (2/5):2007/05/01(火) 21:27:11 ID:KaG0w3CH0
…時を遡る事、2週間前…

「お帰りなさいませ、お客様…その方は?」
「ああ、これか…こいつは、町外れのジャンク屋で見つけたんだ。お前の身体に流用が効くパーツがあればと思ってな」
 俺は作業机に獲物を置いた。
「この方は…もう動く事はできないのでしょうか」
 ゆめみが獲物の…女性型アンドロイドの顔をゆっくりと撫でながら言った。流れるような金髪、まるで眠っているような表情。
「どうだろうな…この通り原形を留めているのは上半身だけだ。」
 ”彼女”の身体は、鳩尾から下が完全に欠けていた。右腕も、上腕の途中から引きちぎられたような傷口を残して欠損しているのだ。
「ちょいと調べてみたんだが、どうやらこいつはドイツの軍用機だったようだ…それも、最上位機種らしい」
「軍用機…」
「何故こんな僻地に辿り着いたかは判らんが、とりあえずバラして機構部を…って、ゆめみ?」
 俺が『バラす』と言った瞬間、"彼女”と俺を遮るようにゆめみが立ちはだかった。
「この方を治していただく事はできませんか」
「ゆめみ、お前」
 ゆめみが悲しげな表情で”彼女”の頭を抱きかかえた。
「この方は完全に壊れているようには見えません…それにお客様は私を、この方と同じような状態から修繕していただきました」
「確かにそうだが」
「それに、私にはこの方の声が聞こえるような気がするのです。”まだ生きたい…私にはやることが残っている”と」
「…」
「お願いです、お客様…私は修繕の報酬をお客様にお支払いすることは出来ませんが…どうか、どうか」
 俺は驚きを隠せなかった。ゆめみが俺以外に対してこんなに”感情”を迸らせるような事は、これまでなかったからだ。俺と一緒に
 様々な経験をしている間、ゆめみのAIは成長を遂げたということだろうか…? いや、そんなことはもうどうでもいい。今の俺には、
 やらなくてはいけないことが一つ増えた。
「判ったから、もう泣くのはやめてくれ」
「お客様…」
「完全に元に戻すのは難しいが、AIを再起動させるぐらいなら何とかなるだろう」
「ありがとうございます、お客様! ありがとうございます!!」
 ゆめみが”彼女”を抱きながら、何回も頭を下げる。”彼女”も心なしか、微笑んだように見えた…のは、俺の目の錯覚だろう。
644アハトノインのほしいもの-1 (3/5):2007/05/01(火) 21:28:41 ID:KaG0w3CH0
 それから俺は本業の合間、”彼女”…アハトノインの修繕と改装作業をすることになった。当然、ゆめみのメンテナンスをさぼる
 事は出来ないので、その時はゆめみとアハトノインの両方を弄ることになった。睡眠時間が激変したが、アハトノインを治して
 いる時のゆめみの笑顔が、そんな苦しみを忘れさせてくれた。それに、最近ゆめみは上機嫌で、”アレ”も激しいものになって
 きているのだ。流石に”アレ”をする時はゆめみに付きっきりになってしまうのだが。
「…軍用機だけに、火器管制と対人戦闘用ソフトが大半を占めてるな…彼女には申し訳ないが、暫くこの昨日は封印することにしよう」
「何故ですか?」
「万が一誤作動したとき、俺達が危険な目に遭わないという保証はない」
「でも…」
「その代わり、お前の機能の中で移植できそうなとこは移植しておくから」
「じゃあ…この方と私は、姉妹になるのでしょうか?」
 最近、ゆめみが妙な想像力を働かせるようになったのは、俺の気のせいだろうか。
「ははは、そういうことになるかな。電源を接続して基幹部分が起動することは確認できたから、もう少ししたらAIも再起動できると思う」
「それは楽しみです。ところでお客様…あの…」
 片手で胸を、もう一方の手で下腹部を押えながらゆめみが呟いた。
「そろそろ…アレを…」
「おいおい、三日前に済ましたばかりだろ…最近ちょいと周期が短くなってないか?」
「でも、センサーの自己診断結果が…」
 頬を赤らめ、少しもじもじするような素振りを見せるゆめみ。
「アハトノインのセンサー起動テストが終わるまでまってくれ」
「かしこまりました。それまでは何とか自己処理で対応してみます」
 ゆめみがいそいそと、俺の後ろにあるベッドに向かった。俺はアハトノインのテストに集中するよう試みたが、ほどなくして
 後ろから小さな喘ぎ声が聞こえ始める。

「…っ…ぁ…ン……お客…さ…ぁっ…」

 俺はアハトノインのセンサーに加え、自分の欲望のテストもする羽目になってしまった。
645アハトノインのほしいもの-1 (4/5):2007/05/01(火) 21:31:35 ID:KaG0w3CH0
「じゃあ、起動するぞ」
 修繕開始から1週間が経過し、ハード・ソフト両方の修繕と改装が終わった。下半身は腰椎ユニットの一部を残して排除し、
 右腕はゆめみの予備パーツを駆使して最小限の動きができるようなアームを作り、半ば強引にとりつけてある。その他の
 部分は幸いにも損傷部分が殆どなく、そのまま使う事ができた。もっとも、一部気になる箇所はあったのだが…。

「宜しくお願いします」
  メンテナンス用端末の画面上に表示されている、起動スイッチを押す。一瞬の間を置き、アクチュエータの低い駆動音が
 小屋の中に鳴り響き始めた。
「大丈夫でしょうか」
「各部の欠損が結構あるからな…起動までに多少の時間が掛かる筈だ」
 しばらくするとメンテナンス端末の画面に、自己診断の結果が続々と表示されていく。

  ”腰椎部以下の下半身各ユニット応答なし”、
  ”腰椎ユニット損傷あり”
  ”腰椎駆動アクチュエータ動作異常発生”
  ”右腕部コントロールユニット異常発生”
  ”右腕部センサーフィードバック異常発生”
             ・
             ・
             ・

 エラーがずらずらと出るが、これは予想の範囲内だ。
「…」
 ゆめみが無言のまま、アハトノインの左手をそっと両手で包み込んだ。俺は何も出来ない…ただ、彼女が正常に起動するのを
 祈ることしか出来ないのがもどかしかった。

   大丈夫だ、大丈夫…

 起動スイッチを押してからどれくらいの時間がたったのだろうか? 最終チェックに移行してから、随分時間が経過している。不安に
 かられた俺が彼女に近づこうとした時、メンテナンス端末が不意にけたたましいビープ音を鳴らした。
646アハトノインのほしいもの-1 (5/5):2007/05/01(火) 21:35:31 ID:KaG0w3CH0
「な、なんだ!?」
「お客様、どうやらこの方は起動認証が必要なようです」
「なんだって?」
 起動認証…それは文字通り、アンドロイドの初回起動時にオーナーを認証するための儀式だ。どうやら今回の修繕と改装により、
 彼女は本当の初期状態に戻ってしまったらしい。
「起動認証って一体どうすれば…」
「データベースを照合…一件該当ありました。眠れる姫を起こすには、王子のキスが必要との伝承があります」
「おい…そんな事をどこで」
「それは秘密です」
 しれっと言い放つゆめみ。
「ま、まぁ確かに有りえない話しだが、しかし」
 ゆめみがじっとこちらを見ている…俺はその視線に耐えることが出来なかった。
「わかったわかった!! 試してみるが、駄目だったら許してくれよ!」
 やけくそになった俺は、アハトノインに顔をぐっと近づける。間近で見るアハトノインは、ゆめみと同じくアンドロイドには見えない。
 しかし、ゆめみにはない一種の艶やかさが感じられる。俺は思わず、唾を飲み込んだ。
「…お客様」
 背後から感じるゆめみのプレッシャー。ええい、ままよ! 俺はそのまま目を閉じ、アハトノインと唇を重ね合わせた。程なくして
 メンテナンス端末から無粋な音声メッセージが響く。
『認証 ガ 完了 シマシタ 起動シーケンス ヲ 開始 シマス』
「お客様、やりました!」
「あ、ああ…」
 呆然としていた俺を尻目に、アハトノインは一連の起動シーケンスを済ませたようだ。かっと目を見開き、頭を左右に振って
 周囲の状況を確認している。
「ご主人様、質問があるのですが」
 俺を見据えたアハトノインが動きを止め、表情のない声で俺を問い詰める。
「…なんだ?」
「何故私は、全裸なのでしょうか?」
 一気に緊張が解けた俺は椅子に座り込み、頭を抱えた。ソフトウェアの改修をどこかでミスったか?

 それから彼女の”誤解”を解くのに数時間を要したことは、ここでは触れないでおく…。
647「ゆめみの欲しいもの」の中の人:2007/05/01(火) 21:36:32 ID:KaG0w3CH0
なんてこった…気軽に書き出したつもりが、すごく長くなってしまった orz
ということで、次回に続く…
648名無しさんだよもん:2007/05/01(火) 23:00:01 ID:YDL8MkUJ0
うはっ、GJ!


ゆめみ「ノインさんにも下半身がつくことを祈りつつ、後半へ続く。」

屑屋「キートン山田の声色使うのはやめてくれ……orz」
649名無しさんだよもん:2007/05/01(火) 23:04:14 ID:WlpFuQqZO
うぉぉ…早く続きをば!
650アハトノインのほしいもの-2 (1/7):2007/05/02(水) 14:57:25 ID:WcKXc8HB0
 次の日から俺は、アハトノインの質問攻めに悩殺されることになった。古着屋でみつくろった下着とワイシャツを
 着せてやったので、ベッドに寝かせて毛布をかけておいてやれば、見た目には病人のようにしか見えない。そんな
 彼女の質問は今の世界情勢から始まり、ついには俺とゆめみの馴れ初めまで進んできている。
「それでお客様と私は、今のような関係になったのです」
「理解しました。しかしゆめみ様、あなたが現在使用されている筐体は、元のものとは随分とスペックが違うようですが」
「ええ、それはお客様が私のモガモガっ!?」
 …思わずゆめみの口を押えてしまった。放っておくと、またアハトノインに誤解されると直感したからだ。
「むぐぐ…お客様?」
「あー、なんだ…その…そこから先は、時期が来たらちゃんと俺から話してやるから」
「時期とは何時くるのでしょうか」
「…近いうちにな」
「それは正しい回答ではないと思われます。正しい日時の回答を…」
 結局同じ事だった…とにかく、彼女の好奇心には目を見張るものがあったのは事実だ。軍用機ならそれなりのデータ
 ベースがあるだろうし、実際それらしきデータ領域が彼女のメモリ上にある。ただ、それは暗号化されているうえ、
 アクセスにもかなりきついプロテクトが掛けられているのだ。
「アハトノイン、そのメモリー領域にお前自身からアクセスをかけることは出来ないのか?」
「残念ながら不可能です…アクセス、及び暗号解読キーが失われてしまっています」
「おかしいな…プログラムの別領域に、キーらしき記述は残っていたんだが」
「…」
651アハトノインのほしいもの-2 (2/7):2007/05/02(水) 15:01:14 ID:WcKXc8HB0
 アハトノインの相手をしながら、俺はゆめみをバッテリーリフレッシュという名目でスリープモードに移行させた。
 少し強引だが、彼女の前では離し辛い事もあることだし、仕方ない…と自分を納得させる。
「まぁ、お前が思い出したくないという事ならそれでも構わないさ。俺はお前の過去に拘るつもりは無い」
「お気遣いありがとうございます。ところで、質問があるのですが」
「またか! まぁ、ゆめみもバッテリーリフレッシュモードに移行させたから、別に構わんが」
「それでは質問です。ご主人様とゆめみ様が昨晩数時間の間にわたって行われていた行為…あれは一体なんでしょうか」
 俺は口に含んでいたコーヒーを思いっきり吹き出した。
「ぶーっ!! げ、げほっ!げほっ!!」
「ご主人様?」
 確かに俺はゆめみと昨晩交わった。しかし、その間アハトノインはスリープモードになっていた筈だが…。
「私にはスリープモード中でも、周囲の状況を把握するための記録機能がありますので」
 流石軍用機…眠っていても、俺達の行動はお見通しというわけか。周辺監視機能が妙に複雑だったのはそれが理由だな。
「ご主人様、回答を」
 黙っていても仕方がない…彼女は俺が答えない限り、ゆめみからも聞き出そうとするだろう。数分の沈黙の後、俺は意を
 決して口を開いた。
「…あれは性行為だ」
「性行為、つまり子孫を残すのが目的の行為ですね。しかし、ゆめみ様に受胎機能は備わっていないと思われますが」
「人間の性行為には、受胎以外にも目的がある」
「ゆめみ様はSCRタイプのアンドロイドであり、人間ではありません」
「お前の言う通り、彼女は人間ではない。しかし、俺は彼女を…」
 俺はここで口をつぐんだ。俺は彼女をどうしたいんだ? そうだ、俺は…。
「俺は彼女を…そうだ、愛している。あれは彼女を愛するための行為の一つだ」
「”愛”…既存データベースに該当無し…拡張データベース検索…拡張データベースアクセス不能…」
 自分なりの答えを出そうとしているが、元軍用機である彼女のデータベースにそういった記述はないだろう。
「…回答入力をお願いします。”愛”とは?」
「愛…」
652アハトノインのほしいもの-2 (3/7):2007/05/02(水) 15:02:19 ID:WcKXc8HB0
 またもや返答に詰まってしまった。軽々しく口にしてしまったが、そもそも”愛”という定義そのものを俺ははっきりと知らない。
「相手をかえがえのないものと認めることだ。そして、相手に対して抱く思慕の情…それが多分、”愛”だと思う」
「抽象的でイメージのリンクが出来ません。具体的な説明を求めます。」
「すまん、俺も正直”愛”…特にゆめみに対するものが具体的になんなのか良く分からん」
「…」
「ただ、彼女は俺にとって、何事にも変え難い唯一無二の存在なんだ。その彼女の温もりを感じる為に、俺は彼女と性行為をする」
「ゆみみ様の温もりとは、筐体が稼働することによって生じる余剰熱が体温として感じられると考えられます」
「いや、その温もりとはまた別の…」
「機械の温もりを感じる事が”愛”なのでしょうか? ゆめみ様はユニークな存在ですので、唯一無二という言葉も理解できます」

 駄目だ、今やっていることは禅問答にしか過ぎない。恐らく何らかの実体験を伴わない限り、彼女がゆめみのような
 振舞いを見せることは出来ないだろう。俺は時計をちらりと見た後、真剣な眼差のアハトノインに向き直った。

「もう0時30分か…そろそろ就寝の時間だ。俺も最近寝不足でな、悪いがそろそろ寝かせてもらう」
「かしこまりました。愛の件については、また後日お願いします」
「ああ、それじゃ…おやすみ」
「おやすみなさいませ」

 俺はアハトノインをスリープモードに移行させ、薄汚れているソファーに寝転がった。ベッドにはスリープモードのゆめみが
 いるのだが、一緒に寝たら明日アハトノインにまた何を言われるか判ったもんじゃない…俺は毛布を頭から被り、妙な気分を
 振り払って眠りの世界に落ちていった。
653アハトノインのほしいもの-2 (4/7):2007/05/02(水) 15:04:59 ID:WcKXc8HB0
「これから街に出かけて、アハトノインのパーツを見つくろってくる。右手だけでも何とかしてやりたいしな」
「いってらっしゃいませ、ご主人様」
「お客様、お気をつけて…」
 ゆめみ様が、ご主人様をドア越しに見送った。ご主人様の姿が見えなくなったあと、ゆめみ様はドアを静かに閉めて
 部屋の中に戻り、ベッドに寝かされている私の筐体の近くに戻ってくる。
「アハトノイン様、お待たせいたしました…お客様がいらっしゃらない、という条件が満たされました」
「かしこまりました、ゆめみ様。それでは、私の質問に回答をお願いします。」
 椅子に座ったゆめみ様がじっとこちらを見ている。私はその彼女に向かい、左手を伸ばした。
「もう少し近づいていただけませんか、ゆめみ様」
「こうですか?」
 身体を乗り出すようにしてこちらに近づいたゆめみ様の胸に、私の手が触れた。
「?」
 少しゆめみ様の表情が歪んだようにも見えたが、”あの時”とは全く反応が違う。
「ゆめみ様とご主人様が性行為に及んでいらっしゃる時、ご主人様がゆめみ様の胸部を高頻度で掴んでいました」
「…その通りです」
「その時にゆめみ様は、悲鳴のような音声を発せられています。しかし、今私が胸部に接触した時は、そのような反応を
 示されていません…何故ですか?」
「アハトノイン様の行為は、性行為に該当するものではありません」
「性行為。ご主人様も同じ事をおっしゃられていましたが、明確な回答はまだ得ていません」
 私は手を動かし、着衣をゆっくりと脱ぎ始めた。シャツのボタンが外れ、胸部を隠していた生地のホックも外す。人間の
 女性を模倣した胸部の模造乳房が丸見えになる。
654アハトノインのほしいもの-2 (5/7):2007/05/02(水) 15:06:08 ID:WcKXc8HB0
「アハトノイン様?」
 私は自分の模造乳房の下に右手を回し、無造作にそれを鷲掴みにしてみせた。
「このようにしても、ゆめみ様と同じような反応をすることが出来ません。」
 ゆめみ様は無言でじっと私を見つめている。
「性行為とは、愛の一貫であるとご主人様がおっしゃられました。したがって、愛が何であるかを理解する為には」
 私は左手をゆめみ様から離し、右手で掴んでいる模造乳房を掴んだ。
「性行為をすることが、現在考えられる中では最も有効な手段であると思われます」
「アハトノイン様は、性行為を求められているのですか?」
 ご主人様と違い、ゆめみ様とはスムーズに議論がすすむ。であれば、このまま試してみたい。
「はい、今すぐに」
「アハトノイン様には性交に必要な器官の内、人工女性器ユニットが欠けています。したがって、現在は乳房への
 刺激でしか性行為に及ぶ事はできません。」
「人工女性器とは何でしょうか」
「ここに実物がございますので、今からお見せします」
 そう言われたゆめみ様は、着衣をスムーズに脱いでいく。スーツを脱ぎ終わり、一糸まとわぬ姿になったゆめみ様は
 ベッドに上り、私の胴体部分へ馬乗りになるような体勢をとった。
「これが…人工女性器です」
 股間部分に、スリット状の割れ目が縦に走っているのが見える。私は左手でその割れ目に指を添わしてみた。
「あっ…つっ!」
 ゆめみ様の表情が明らかに歪み、痛みとも喜びとも判断しがたい音声が発せられた。
「ゆめみ様…?」
655アハトノインのほしいもの-2 (6/7):2007/05/02(水) 15:08:23 ID:WcKXc8HB0
「申し訳ありません、アハトノイン様…もう少し、ゆっくりと…優しく刺激していただけませんか…」
「優しく…? こう、でしょうか?」
 左手指のアクチュエータ制御を”精密部品対応モード”に移行させ、ゆっくりと彼女の割れ目部分を刺激する。
「あっ…くぅ…ぁんっ…そ、そう…ぁぁ…ぁんっ!」
 ゆめみ様が筐体を痙攣させ、か細い音声を発した。
「ゆめみ様、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です…こうしていただければ、人工女性器のセンサーが快楽中枢を…ンンっ! ぁあ…んんっ!!」
 ゆめみ様が更に筐体を強く痙攣させた瞬間、私の指先に熱い液体があふれ出るのを検知した。私は指をゆめみ様から
 離し、その液体を確認しようとした瞬間…AIの片隅に潜んでいた”何か”が私の筐体を突き動かした。
「っ…あ? アハトノイン様…ぁ…んんっ!?」
 左手と、ぎこちない動きの右手を使い、私はゆめみ様の割れ目を押し広げていた。割れ目の中には、紅く染まった
 有機的な器官が並び、ひくひくと何かを求めるように動いている。それを見た私の筐体は、またもや”何か”に制御を
 奪われた。
「んっ! はぁう…う…ぁああんっ!!」
 私はゆめみ様の股間に顔面を押し当て、舌で彼女の人工女性器を刺激し始めた。彼女の音声を聞くたびに、不思議な
 感覚が私のAIを支配していく。
「あっ…こんな…ン…あぁン…あ、んんンっ!!!」
 ゆめみ様は一際大きな音声を発せられた後、筐体の上半身を反らしてベッドに倒れ込んだ。強制冷却機構が動作して
 いるらしく、人間のような発汗と呼吸を確認することが出来る。
「はぁ、はぁ、はぁ…アハトノイン様…」
「ゆめみ様、大丈夫ですか」
656アハトノインのほしいもの-2 (7/7):2007/05/02(水) 15:10:55 ID:WcKXc8HB0
「はぁ、はぁ…大丈夫です…すぐに収まりますから」
 しばらくしてゆめみ様が体勢を整え、私の前に座り直した。その格好と仕草だけを見れば、人間と区別をつけるのは
 難しいと思われる。
「アハトノイン様…先程の行動は一体どこで…」
「わかりません…気がついたら、私の筐体が自動的に…」
「そうですか…あ」
 ゆめみ様が私の胸元で視線を止めた。私も目を降ろすと、模造乳房の先端部分が明らかに変化していることが判る。
「乳首が…」
「勃起していますね。それでは…」
 そういうと、ゆめみ様は私の模造乳房に顔を近づけた。
「何を…あっ!?」
 ゆめみ様が乳首を口に含んだ瞬間、身体各部のセンサーがホワイトアウトしかねない刺激が伝わった。
「ひぁっ…! ゆ、ゆめみ様…ァあ…ンぁ!」
 先程私がしたように、舌部の先端を使っているのだろうか。ゆめみ様が私の乳首に刺激を与える度、まるで獣が喘ぐ
 ような音声が発せられた。音声を抑えるように、人口声帯のコントロールユニットに指示を送ってみる。
「ァァアんっ…お、音声が…んっ! 止まらな…イィ!」
 刺激を与えられる度に音声が勝手に発せられる。それどころか筐体の制御も効かず、刺激をいなすようにアクチュエータが
 痙攣する。 ゆめみ様はいつの間にか、手でもう一方の乳房も刺激していた。
「ん…んっ! あぁ! ぁあん…んくっ!」
 乳房が揉みしだかれる毎に、演算ユニットの負荷がどんどん高まって行く。時折乳房の先端を摘まれる度、負荷が
 限界値を振り切り、なんともいえない…そう、思い出した…”快楽”が私のメモリを満たしていくのがわかる。
「ふぁ…ひぃ…んっ…っあん…ん、あぁん、くぅ、あ、ああああああああっ!!」
 より一層強い刺激が乳首に加えられた事を感じた直後、オーバーフローした快楽が私のAIを包み込んでいく。

  こ れ が … 愛 … 愛 … な の … か ?

過負荷によるシャットダウンが実行されていく中、私はご主人様の言葉を反芻していた。

(続く)
657「ゆめみの欲しいもの」の中の人:2007/05/02(水) 15:11:35 ID:WcKXc8HB0
むぅ、思ったより長編になりそうだ…スマソ orz
というわけで、続く。
658名無しさんだよもん:2007/05/02(水) 15:17:38 ID:/T5Gle1p0
せ、先生!大変です!鼻血がとまりません!!
659名無しさんだよもん:2007/05/02(水) 23:27:26 ID:IQR9Iia+O
ひゃっほーう!ノイちゃん最高!
660名無しさんだよもん:2007/05/03(木) 14:17:19 ID:3p4Axzl/O
俺は非常に萌えたんだが…小説持ってないと分かりにくいかもな
661名無しさんだよもん:2007/05/04(金) 01:34:48 ID:r6BGW5CR0
すいません、このスレから見始めた物ですがよければ「ゆめみの欲しい物」
とこかに上げていただけませんでしょうか。

すげえ読みたくなりました……。
662名無しさんだよもん:2007/05/04(金) 07:48:55 ID:cYY/Lm/5O
>>661
こやつめハハハ!…すみません、俺も見たいです orz
663名無しさんだよもん:2007/05/04(金) 10:22:36 ID:7PjbHMMs0
前スレ詰め合わせ。

つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1178241592.lzh


初代スレはにくちゃんねる、二代目スレはLive2chのスキンがくっついてるんで、Scriptが動いたり表示が変だったりするかもしれないけど無害です。
てか、誰か生HTML版plz…… orz
664名無しさんだよもん:2007/05/04(金) 11:49:37 ID:gYgF3mf60
>>663
初代スレぱんつの事しか話してねぇ!
あとGJでございます
665名無しさんだよもん:2007/05/04(金) 11:52:55 ID:ypNr/dQ00
>>663
生datと生HTML、うpしたよん。

http://nd.2-d.jp/yumemi.zip
666名無しさんだよもん:2007/05/04(金) 13:33:03 ID:7PjbHMMs0
>>665

ゆめみ
「ありがとうございますお客さま!オーメンさまになりかわりましてお礼申し上げます!」
667名無しさんだよもん:2007/05/04(金) 14:45:10 ID:shVwubvzO
屑屋「現在467KBか。そろそろ次スレも視野に入れないとな…」
668「ゆめみの欲しいもの」の中の人:2007/05/04(金) 17:57:56 ID:uhQhlfbA0
次スレに行きそうなので、SSのみをピックアップして
 「ゆめみの欲しいもの I〜III」
 「ゆみめさんのあれな話」
 「アハトノインの欲しいもの I〜II」
を詰め合わせてアップしますた。

ttp://kasamatu.o0o0.jp/pochi/src/hajime13549.zip.html
受信P:ゆめみ
669「ゆめみさんのアレな話」 の中の人:2007/05/04(金) 18:32:07 ID:7PjbHMMs0
おお、俺の作品まで入れてくれてクスd。

ただ、なんかファイル名が化け化けになってるのはなぜだらう……
「繧・a縺ソ縺輔s縺ョ縺ゅl縺ェ隧ア.rtf」てな名前になってる。
あと、本文フォントも妙なフォントに。
670「ゆめみの欲しいもの」の中の人:2007/05/04(金) 18:53:11 ID:uhQhlfbA0
すんません、自分マカーなもので…orz

良い機会なので、エディタを購入して出直してきます。
671名無しさんだよもん:2007/05/04(金) 19:10:50 ID:8u/iQKTD0
マカーならとりあえずmi使えばよくね?
ttp://www.mimikaki.net/
672「ゆめみの欲しいもの」の中の人:2007/05/04(金) 19:22:58 ID:uhQhlfbA0
とりあえずJedit4.0を使って、シフトJIS・CR+LFに変換。

ttp://kasamatu.o0o0.jp/pochi/src/hajime13551.zip.html
受信パス:ゆめみ

>>671
thxです。こちらもよさそうですね…Jeditと一緒に常備しときます。
673「ゆめみさんのアレな話」 の中の人:2007/05/04(金) 19:58:35 ID:7PjbHMMs0
さっそくの対応感謝ですー。
ファイル名はまだ化けてましたが、本文はOKです。

>>668のほうは、Windowsで見ると
・WordPad:文字のフォントがおかしい
・Word2001:文字のフォントがおかしい+一部文字化けを併発
という感じでした。
リッチテキスト(rtf)の処理が、WindowsとMacでちょっと違うのかも。
674「ゆめみの欲しいもの」の中の人:2007/05/04(金) 20:26:42 ID:uhQhlfbA0
>>672
チェック有難うございます。rtfはtxtに直せばなんとかなるとして、ファイル名はOS側の
問題ですかねぇ…ちなみにこちらはMacOS-X 10.3.9です。
675「ゆめみの欲しいもの」の中の人:2007/05/04(金) 23:00:21 ID:uhQhlfbA0
とりあえず、ファイル名を半角英数文字に変更して再々うpしますた。

ttp://kasamatu.o0o0.jp/pochi/src/hajime13568.zip.html
受信パス:ゆめみ
676名無しさんだよもん:2007/05/04(金) 23:00:35 ID:CZPPskkX0
出来れば次スレを建てたときに「過去スレまとめサイト」などとして再度UPしてくれると嬉しいかも。
677「ゆめみさんのアレな話」 の中の人:2007/05/04(金) 23:14:11 ID:7PjbHMMs0
>>675乙です。

>>676
作ろう作ろうと重いつつ、無料でできればCGIの使えるプロバ探すのがまんどくさくて放置中orz
ちょこっと修正したSS、まとめてうpりたいんだがなあ。
678「ゆめみさんのアレな話」 の中の人:2007/05/04(金) 23:15:15 ID:7PjbHMMs0
補足。

「パス知ってれば誰でもエントリが放り込めるblog」が一番いいんだけど。
679名無しさんだよもん:2007/05/04(金) 23:41:15 ID:cYY/Lm/5O
まとめwikiはだめかね?こんな感じで

http://www21.atwiki.jp/brutalanimal/pages/6.html?
680名無しさんだよもん:2007/05/05(土) 00:22:18 ID:wwT1qPFw0
なるほど、Wikiという手もあるのか。ううむ。
681アハトノインのほしいもの-3 (1/5):2007/05/05(土) 20:18:39 ID:kde3ruZJ0
「申し訳ありません! 申し訳有りません!!」
 私が有している機能に含まれている謝罪シーケンスがフル稼働しています。お客様はきっと”お前のせい
 ではない”といつも通り諭してくれるとは判っているのですが。
「大体の経緯は判った。結局のところ、アハトノインが全て望んでいた…というところだな」
「はい…」
 私との疑似性行為によって過負荷が掛かって強制シャットダウンが実行されたアハトノイン様に、お客様は
 メンテナンス端末を接続し、再起動の作業を行われています。
「ハードウェアが壊れたという訳じゃないから大丈夫だ。それにしても…」
 お客様がアハトノイン様の乳房を指でそっと触れると、メンテナンス端末のディスプレイに表示されている
 センサーレベルのグラフが跳ね上がりました。
「こんな機能が標準装備されているとはな」
「これは…私と同じ?」
「その通りだ。しかもお前の民生用素体に勝るとも劣らない反応を示すように作られているようだ…」
「それで私の行為が…」
「もっとも、センサーの伝導係数が相当高めにセットされていたみたいだがな…そうでなければ」
 お客様が今度は、アハトノイン様の乳首をかするように触れられました。アハトノイン様の筐体がビクンと
 痙攣し、グラフが最大値を突破したことを示す赤色に染まります。
「ここまで敏感に反応することもない。とりあえず、お前の係数を参考に調整してみるか」
 そういうとお客様は左手でアハトノイン様の乳房に触れながら、もう一方の手でメンテナンス端末を弄り
 始めました。お客様がアハトノイン様の乳房を軽く揉む度に、アハトノイン様の身体がビクン、ビクンと
 震えます。機能テストモードなのでアハトノイン様の表情は全く変わりませんが、私はその様を見ていると
 胸部に内臓されたジェネレータの脈動が、人間の言うところの”不快感”を伴うような振動を発し始め
 たのです。唇を噛み、手を胸にやってもその挙動は収まることがありません。
「あの、お客様…」
「どうした、ゆめみ」
682アハトノインのほしいもの-3 (2/5):2007/05/05(土) 20:19:56 ID:kde3ruZJ0
「その…アハトノイン様の乳房を揉む役目は、私に任せていただきませんか」
「いや、この調整はお前の時もそうだったんだが、かなり微妙な…」
 私はじっとお客様の目を見つめました。そして気がつくと、私はお客様の左手を握りしめていたのです。
 お客様は暫く無言で私の視覚センサーを見つめてらっしゃいました。
「わかった…じゃあ、お前の実際の反応を参考にして調整することにしよう」
「え?」
「さっきも言ったが、性感レベルの調整は結構な手間がかかるんだ。お前の実際の反応を見ながらやれば、
 少しは楽になるからな」
「私はどうすればいいのでしょうか」
「そうだな、まずはそこに座ってくれ」
 お客様のおっしゃられる通り、私はお客様の隣にある椅子へ座りました。
「メンテナンス端末を接続するから、俺が許可するまで動かないでくれ」
「かしこまりました」
 お客様は私の衣服を脱がし、乳房が露出している状態になりました。メンテナンス端末が接続され、
 私を機能テストモードに移行させる操作を実行しようとしています。
「あの、お客様」
「なんだ?」
「その…機能テストモードに移行せずに…作業する事はできませんか?」
「モニターモードを使えばできるし、その方がメンテナンス端末にも負担が掛からなくて済むが…それだとお前が」
「いいんです…だってその方が…その…私の…」
 筐体、特に顔面の表面温度が上昇し、人口声帯と口蓋の駆動制御がエラーを頻発しています。これから
 起こる事を予測すると、今度は筐体の下腹内部が締めつけられるような感覚が伝わってきました。細かく
 始めた筐体を抑えようと、肩をすくめます。AIの奥底が沸き立つようなこの感情…データベースに該当
 ありました。そう、この感情は…
683アハトノインのほしいもの-3 (3/5):2007/05/05(土) 20:20:45 ID:kde3ruZJ0
「ゆめみ…」
「お客様、申し訳ありません…私は…私はアハトノイン様に嫉妬していました」
「嫉妬…」
「お客様がアハトノイン様の乳房に触れられる度に、私のAIには羨望・怒り・悲しみが入り交じった、なんとも
 表現できない感情が発生したのです」
「…」
「だから、私は思いました。アハトノイン様と同じようにして欲しい、お客様に触ってもらいたい、と」
 きっと私の顔は、まるで夕日のように紅く染まっているに違いありません…それでも私は続けます。
「お客様の気がアハトノイン様に移られるのではないかと…私は、お客様に捨て…うぅ…」
 視覚センサーの洗浄液が溢れ、それ以上発生を続ける事が困難になったその時、私の唇は暖かく柔らかい
 感触に包まれました。
「んっ…」
 暫くして唇が解かれた後、お客様が優しい笑みを浮かべて私に語りかけてきました。
「ゆめみ…すまなかった。俺はそんなつもりでアハトノインに接しているつもりはなかったんだ」
「お客様…」
「だから償う、という事じゃないが…俺はお前を見捨てたりするような事は決してしない。だから、
 もう泣くのは止めてくれないか」
 お客様は私を優しく抱きしめてくれました。お客様の鼓動が、体表のセンサーを通じて微かにですが
 しっかりと伝わってきます。
「お客様…ありがとうございます…ありがとうございます」
「じゃあ、作業の方に戻るか。アハトノインも見てる事だしな」
「はい…」
 お客様は私から離れると椅子に座り直し、メンテナンス端末を操作しています。
「まずはゆめみ、お前からだ」
684アハトノインのほしいもの-3 (4/5):2007/05/05(土) 20:24:34 ID:kde3ruZJ0
「…ンんっ……あぁん」
 お客様が私の乳房をゆっくりと揉み始めました。発声を抑えながらじっとお客様の手先を見ている内に、
 乳房の先端部分がプクっと立ち上がるのが判りました。
「ゆめみ…お前、ここまで敏感だったか?」
「前回のメンテナンス時から係数の調整は行っておりませ…んフッ!」
「まぁ、確かに数値は正常範囲だが…」
 確かに私の記憶している範囲でも、ここまで過敏に筐体が反応していた事はあまりありません。でも、
 今回の作業は私とお客様以外の方がすぐ横にいらっしゃいます。しかもその方は、私達の行為をしっかりと
 記録…つまり、”見て”いらっしゃるのです。そう思うと、どんどん筐体の内部が疼くような感触が
 広がってきます。
「私は大丈夫ですから、進めて…アンっ!」
「…次はアハトノインの方だな」
「あ…」
 お客様の手がアハトノイン様の乳房に移りました。アハトノイン様はお客様に乳房を揉まれる度に身体を
 震わせます。じっと見ていると、私と同じように乳房の頂きが勃起するのが確認できました。その様をじっと
 見つめていると、欲望のレベルがどんどん高まってきます。お客様、早く、私も…私の乳房も…その手で…
「…み…ゆめみ!」
「あ!は、はい! どうされましたか、お客様!?」
「さっきから何度も呼んでたんだが…そうじっと見られるとな、その…やりづらくてな」
「あ!も、申し訳ありません!!」
「心配しなくても、次はお前の番だ」
「え、あ、私は決してそういう訳では…あっ…ん゛っ!! ンぁあんっ!」
 お客様は勃起して固くなった私の乳首を摘み上げられました。不意の快感を受けた私の筐体は反射的に
 背筋を反らせてしまいます。私は顎を引き、両手で椅子の端を掴んで身体を動かさないよう試みました。
「アハトノインのフィードバック係数がまだ大きいな」
 ぎしぎしと椅子が音を立てている中、お客様は真剣な顔つきで私とアハトノイン様の体を交互に触り、
 作業を進めていきます。
685アハトノインのほしいもの-3 (5/5):2007/05/05(土) 20:28:58 ID:kde3ruZJ0
 翌日の朝、アハトノイン様の再起動は無事成功しました。
「…つまるところ、性行為がメモリの暗号を解除するキーになる、ということか」
「そうです。それで私はゆめみ様との性交を試みたのですが、やはり人間とでなければ」
「あー、わかったわかった!! だがな、それには大きな問題をクリアしないと駄目だ」
 そう言うとお客様は、アハトノイン様の下半身にかかっていた毛布をめくりました。
「その問題は…」
 そこにある筈の下半身はなく、ベッドのマットレスがあるだけです。少しはだけたワイシャツから、
 アハトノイン様の腰椎ユニットが見えていました。
「してやりたくても、物理的にないものはどうしようもない…ゆめみと同じような筐体があれば話は別だが」
「そうですか…」
 アハトノイン様はうな垂れて下を向いたまま黙り込んでしまいました。
「あの…それなんですが、私の下半身をアハトノイン様へお貸しする事はできませんでしょうか」
「おお、その手があったか!そいつは気がつかなかった…って、おい!?」
 お客様が驚愕の表情を浮かべました。
「ゆめみ、それじゃお前の…」
「アハトノイン様は、御自分の過去を…メモリを取り戻すことを欲されています」
「アハトノイン…」
 お客様がアハトノイン様に視線を移しました。
「…ご主人様とゆめみ様が昨夜、私の調整をする前にされていた行為…あれは、”互いの温もりを感じる”
 ための行為と推測しました」
 アハトノインが手を胸にやった。
「ゆめみ様はあの行為の後、明らかに感情表現が大きくなった事が確認できました。もし互いの体温を
 感じ合うことによって、あの感情表現が得られるのであれば…それも、私のメモリを引き出すための
 キーになり得ると考えられます。私にもゆめみ様と同じ疑似体温表現機能がありますから、どうか…」
「お客様…」
 アハトノイン様と私が、お客様の顔を見据えています。暫くして、お客様は顔を上げて苦笑いをされました。
「…やれやれ、我侭なお嬢様方だ…少し手間はかかるが、やってみる価値はあるな」
 アハトノイン様の表情が明るくなったように見えたのは、私のセンサーが誤作動したせいでしょうか
 こうして、私の下半身…人工女性器がアハトノイン様に装着されることになったのです。

(続く)
686「ゆめみの欲しいもの」の中の人:2007/05/05(土) 20:30:14 ID:kde3ruZJ0
>>638を見て思いついた。反省は(ry

という訳で、そろそろ次スレかな?
687名無しさんだよもん:2007/05/05(土) 21:57:02 ID:wwT1qPFw0
うは、嫉妬ktkr
>>638描いた甲斐があったってもんでw


あと21KBか……大き目のSS来たら一発アウツだな
んじゃ次スレ立ててくる
688名無しさんだよもん:2007/05/05(土) 22:08:05 ID:wwT1qPFw0
立ててきた。

【SS】ほしのゆめみスレッド 4【CG】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1178370372/

メインの環境からスレ立てできなかったんで、サブの環境から立てたんでID違ってるが。
689名無しさんだよもん:2007/05/05(土) 22:22:12 ID:v0ByjGk/0
ありがとうございます。 書き込み688番目のお客様。
690名無しさんだよもん:2007/05/07(月) 14:34:45 ID:arZfkp1f0
新スレに、>>663-680は載せなくて良いの?
って言うか、多分、皆様は続きをお描きになるのでしょ?
テンプレートにいれるとか、何か有るのでは?
691名無しさんだよもん:2007/05/07(月) 15:37:23 ID:qw9SQAKMO
歴代の作品まとめテンプレも欲しいな
692名無しさんだよもん:2007/05/08(火) 00:03:51 ID:iGKrDmd20
まとめサイトに手がついてない俺テラショボスorz
693名無しさんだよもん:2007/05/10(木) 09:44:57 ID:La3JCOPg0
まぁ、まとめサイト作るのも結構大変な事ですから、あわてないで良いです。
次スレッドから、初めて読む皆さんでも楽しめるように工夫してくだされば良いと思いますし。
たとえば、初回特典の小説を読んでないとわからない皆様や
SSだけの住人である
「お客様お姉さま」つまり「ほしの くずや」さんや「ほしの のぞみ」さんはどういう機械娘なのかとか
「葛谷君」といわれてもわかりにくいですし、「星野ゆめみ」さんという子も出てきてますし。

そういう子達を、わかるように書いて下されば良いと思います。
694名無しさんだよもん:2007/05/10(木) 22:47:43 ID:DYpuGB3vO
ゆめみさん乙!
695名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 23:27:34 ID:B9rGIHe+0
そういえば、星野ゆめみさんや、ほしののぞみさん、ほしのくずやさん。の声はほしのゆめみさんと同じ声なのでしょうか?
同じ(同じような)声だとしたら、きっと、カシマシイと思うのですが?
4人同じ声で、30から50年の時間を動くと、館長さんたちが混乱すると思いますし。

・・・・・・

「では。本日の投影をはじめます。今日は、特別公演になります。
私はこのプラネタリウム解説員、ほしのゆめみです。
私が、一番不慣れですのでお聞き苦しいところもあると思いますが、楽しんでいただければうれしいです。」

「星野ゆめみです。こんなに大勢の皆様の前でのお話は初めてです。よろしくお願いします。」

「ほしのゆめみです。私は、この中では一番、長い期間、解説させていただいていますが、一番下手です。今日は、皆様が眠らないように一所懸命勤めさせていただきます。」

「ほしののぞみです。ここの4人の先輩方の足手まといにならないように、お客様に今まで以上に星の世界に興味を持っていただける様なお話が出来れば良いと思っています。」

「ほしのくずやだ。きょうはこの5人で話をする。今から45分間、どこまで話が出来るかわからないが、よい思い出になることを願ってる。」
696名無しさんだよもん:2007/05/12(土) 23:35:09 ID:B9rGIHe+0
見た目は
ほしののぞみさんとほしのゆめみさんと星野ゆめみさん、はインフォメーションリボンをつけていて
ほしののぞみさんとほしのくずやさんはつけていません。

ゆめみさんたち3人は同じ色と同じ形の制服で
のぞみさんとくずやさんは制服のだけ色が違いますが、暗くなったときに区別が付くのでしょうか?

星野ゆめみさんだけは、耳のプリンターが付いていません。通信装置は音声のみになっています。他の4人はデータ通信も出来ます。
697483キロですか。あと17キロ:2007/05/13(日) 00:01:17 ID:B9rGIHe+0
ゆめみ
「今見ていただいているのは、現在、天気がよければ、みられる風景を真似ています。今日は雨なので残念です。
さて少し急いで今日の夕方の風景を観てみましょう。」

ほしのくずやさんが操作するプラネタリウム「かーるつあいす いえな」が頭を振りながら、室内の明るさを変えていく」

星野さんが ゆめみさんとのぞみさんを従えて、操作卓からいえなさんのいる中央部分に来きます。
ゆめみさんの操作で3人のインフォメーション・リボンが美しく点滅しています。
3人はそれぞれ、いえなさんを囲うように等間隔に3箇所に立つと、同時に話し始めます。
「実は大事なパートナーを紹介しないといけません。
 いえなさんです。  いえなさん?  いえなさん?」

ゆめみさんとのぞみさんは、自分の持っている声で十分ですが、星野さんはさすがに無理なので拡声器をつかいます。
いえなさんを囲う策の部分に。数箇所。あらかじめ設置してあり、通常は解説委員が操作卓から話すのを流しています。
しかし、ほしのさんたち4人は、客席内を歩きながら遠隔操作で いえなさんを操作したり、必要に応じて拡声器を使い分けることも出来ます。
698484キロ:2007/05/13(日) 00:25:46 ID:Y6IjP6bn0
3人のインフォメーションリボンが、
一番東側にいる星野さんのはうす赤色、夕焼けの色に
 そして。南南西と北北西にいる二人はもう少し明るい色に光り、
いえなさんを囲うように、浮かび上がらせるように美しく光ります。
しかも、その明るさや色を変化させ、いかにも日没の様に。

「いえな!。挨拶は?」操作卓からくずやさんが呼びかけます。正確に言うと
操作卓前においてある拡声器からの声 
ですね。

そう言いながら、適度な明るさにしたいえなさんをお辞儀させます。
今まで頭だった部分を下げ、双頭の蟻のもう片方の頭を上げます。

3人同時に
「じつわぁ いえなさん というのはぁ この星空を見せてくれる機械のことだったんですねぇ」

くずやさんの操作で夕方から夜に変わって行きます。
3人のインフォメーション・リボンの色もその変化に合わせ、明るさや色を変ます。
「さて、何か明るい星が見えてますね。 宵の明星です」
皆さんにわかるように、周りにしるしを付けました。
「そして、・・・・・」
徐々に時間をずらして行き
「コレが、今晩8時の星空になります」

・・・・・・・・・

そうして45分間の星空の話が始まります。
699485キロ:2007/05/13(日) 00:38:28 ID:Y6IjP6bn0

こんなプラネタリウムになっていたら、
しばらくは、5人姉妹(姉弟?)のプラネタリウムという事で、本来の姿でなく、話題性で客を呼ぶ気がします。
この程度であれば、現実的にはホンダのアシモやtmsukのキヨマサなどでも出来そうな気がしますし。


ああ。この >>695-698 は意味も無く埋めてるだけですから、私の中での続きは有りません。
誰かが、題材にして下さっても構いませんよ。


アハトノイン さんが、武装して、乱入してきたらどうしようか?とか思ったり。
くずやさんと同じで「レーダードーム」と勘違いしたとか。
700名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 00:46:28 ID:LHkqgi/60
>>695-698
乙&GJです。
マターリ楽しい風景が目に浮かびます。
701名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 00:47:02 ID:LHkqgi/60
上げてしまって申し訳ない・・・
702名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 00:57:22 ID:1nzJXsDt0
GJ!

星野ゆめみさんだけは人間だから、何かと苦労しそうだな。生理現象とk(ウボァー

この世界では、ロボットは人間に服従するものらしいから、星野さんの号令一下で全員が働くってことになるんだろうか。
いや、ほしのくずや氏wは元人間だから、くずや氏→星野さん→ダブルゆめみ&のぞみの命令体制か?
703名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 01:42:36 ID:jhHQDhpK0
一応私の中では
くずやさんが一番で

次に 星野さん と ゆめみさん(リボン付き)、
この二人は、確かに人間と機械という意味では、星野さんが上になるのですが
経験という意味でゆめみさんが指示することになりますので、上下関係は無く
それから、ぞみさんが続き、ゆめみさんが一番最後
だと考えています。

ですから、客席に出るときには
「星野さんが二人を従える」のですが
「インフォメーションリボン」の操作は ゆめみさんの遠隔操作
と書きました。
星野さんは手元というか、服のポケットに入っているコントローラーで、
また、のぞみさんでも、3人のリボンを操作できます。

災害などの緊急時には誰かの操作で点灯し、避難誘導できるように。
704名無しさんだよもん:2007/05/13(日) 20:35:16 ID:oTsypkviO
「星野ゆめみ」の元ネタって誰かのSSが元ネタ?
705695-698:2007/05/13(日) 20:44:20 ID:mSXwvZBx0
>>704 お客さま >>118-121 を御覧下さい。
私、ダウンロード版「プラネタリアン」と、このスレッドを読めばわかること、を題材にしております。
706埋めるために:2007/05/17(木) 22:22:20 ID:cppUvXE70
このまま自然消滅というのも。。。。
で、勝手に短編。 今488なのであと12ほど。
707名無しさんだよもん:2007/05/17(木) 23:01:55 ID:cppUvXE70
ほしのゆめみさんは、今日も来ないお客様を待っていました。
お天気は今日も、雨。
雨でお客様がいらっしゃらないのでしょうか?

「せめて、イエナさんとお話できれば、少しは気が紛れるのでしょうか?」
なんだか独り言も結構多くなっています。
「良く、今まで、続けられたと思います。」

そこに、お客様がいらっしゃいました。3人です。
「いらっしゃいませ。」
「こんにちは。はじめまして、私、花菱デパート城北支店屋上プラネタリウム館の解説員、ほしののぞみです。」
「はじめまして。当館解説員、ほしのゆめみです。」

他に二人、男の人と女の人がいます。

「いっしょに来ていただいた、二人を紹介します。
 女の人は私「ゆめみ」さんとおっしゃいます。男の人は「屑屋」さんとお呼びしています。 」
708やおい:2007/05/17(木) 23:17:40 ID:7O3r4F+/O
正直、いろいろとスマンです。SSは2レス以内で1話というのを書いてましたが、どうにも難しく…
未だに書いては消しの繰り返し…orz

何を思ったか最近はフルートでGentle Jenaを練習してます。
709名無しさんだよもん:2007/05/17(木) 23:30:16 ID:cppUvXE70
「お二人は、私たちのプラネタリウムへ良く来てくださっていたお客様です。
 でも、私たちの支店は、プラネタリウム館を閉館しましたので、こちらに来たのです。」
そう説明する、ほしののぞみさん。

ほしのゆめみさんは「ゆめみ」さんと呼ばれているお客様に尋ねました
「私と同じ名前なのですね」と
「はじめまして。ほしのゆめみさん。
 私、星野ゆめみといいます。お星様の星に、野原の野、そして、平仮名でゆめみ、と書きます。
出来れば『ゆめみ』とお呼び捨て下さい。」

この星野ゆめみさんは、ほしのゆめみさんと同じくらいの背格好、髪型です。
ただ、顔の脇にはプリンターなどが無く、髪の毛は、太目のリボンで束ねてあります。
そして音声解析の結果ほしのゆめみさんとほとんど同じ声です。

ほしののぞみさんは、ほしのゆめみさんより、小柄で、格好はほしのゆめみさんとよく似ています。
710名無しさんだよもん:2007/05/17(木) 23:34:53 ID:cppUvXE70
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

やおい先輩。
こんばんわ。

出来ればご挨拶は新しいスレッドで、心機一転のほど、書いていただきたかったです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
711名無しさんだよもん:2007/05/17(木) 23:47:23 ID:cppUvXE70
こんな出会いでしたね

ほしのゆめみさんが、ほしのゆめみさんに、昔話をしています。
「くずやさんは、あの日からプラネタリウムや私たちのお手入れをして下さっていした。でも、ある日、動けなくなってしまいましたので、3人でデパートの他の階で使われていた私たちの体を利用して、知識を出来るだけ移したのが「ほしのくずや」さんなんです。
実は、くずやさんの体だけでは知識が入りきらなかったので、私たちの頭にも一部を入れて、利用していただいているのです。」
と。
「それで、いらっしゃらないお客様を待ちながらイエナさんのお手入れを行っていて、イエナさんに40年前の星空を写して下さいとお願いしたところ、ナゼか私たち4人が、この世界に紛れ込んでしまったのです。」
712名無しさんだよもん:2007/05/18(金) 00:09:23 ID:P6j8yTl40
移動した時は、元の世界では夜11時32分、着いた世界では朝8時32分でした。
開館前の朝会が終わり、イエナさんの始業点検中に突然、イエナさんを囲う柵の内側に4人が浮かび出たのでした。
館長さんと解説委員の皆さんが柵の外側からイエナさんを見守っているその場所に。
お互い、何が起きたのかわかりませんでした。
何しろ、服の色や背丈などが少しずつ違う、「ほしのゆめみ」が4体、いきなり出てきたのですから。
しばらく、みな立ち尽くしてしまいました。

そして「ゆめみちゃん何してるの」と解説委員の一人が、声を出しました。
二人が同時に「はい?何でしょうか」と答えました。
「どっちがゆめみちゃん?ふざけてないで、受付しなさい」とさらに言います。
「二人とも『ほしのゆめみ』で、光らないリボン二本が人間、光るリボン一本がロボットだ」
と別の一人が答えました。
「そして俺が『ほしのくずや』こいつは『ほしののぞみ』、両方ロボットだ。悪いな突然邪魔して。
だが俺たちは、他のプラネタリウムにいて、投影機を整備している最中に、いきなり、ここに。
なんだか、ワケわかってないんだ。」
713名無しさんだよもん:2007/05/18(金) 00:47:08 ID:P6j8yTl40
さっき声をかけてきた解説の人が、外に出ると、ほしのゆめみさんが、他の職員と一緒に、お客様を整列させ、受付しています。
今日も大勢お客様が並んでいます。

「悪いがここの責任者に合わせて欲しい。突然なので、今すぐとは言わないが。」
「わたしが館長だ、よろしくお願いする。4人の皆さん」
「突然で悪かった。が。どうしたらよいかわからないんだ。俺たち。
この世界での、身分を示すものも、身元保証もない、浮浪者というか、住所不定無職と言うか。
出来ることなら何でも行うので、この状態で1人と3体が、仮に生活できる方法は無いか、相談に乗って欲しい」
「えらい遠回りな言い方
だが、様は、住居、仕事、人間には食事、ロボットには整備と動力源が欲しい。と言うことだな?」
「ま、甘えてしまってよければ、そういうことだな」

急遽、お客様にお売りする物がしまってある倉庫のうち、ひとつが、開けられ
4人が入れられた。
中には何も無かった。
幸い、換気や空調などは整っている。

毛布が一人に二枚、制服が一人に一着、寝間着、替えの下着など、与えてくれることに。

そして、閉館時間はその倉庫から出られない。
開館時間中は、デパートの警備員とプラネタリウム職員が最低1人づつ、監視する事になる。
行動の自由は、トイレの行き来、と、言っても監視付きで。
それから、プラネタリウムの解説やお客様の誘導を手伝う事が仕事。
無償、ただし、充電と整備、食事、服や下着の洗濯など、は出してくれることになった。
風呂は週二回、少しはなれた、銭湯で。

一応それなりの待遇だ。贅沢はいえない。
714名無しさんだよもん:2007/05/18(金) 01:12:41 ID:P6j8yTl40
整備の人が3体の健康診断を行ってくれ、一人は、デパートの医務室で簡単な検査を受ける事になった。

ロボット三体とも、寿命をとっくに過ぎている、製造から40年近く。
動いているほうが不思議だ。
交換部品が多すぎ、なので重要部分だけを交換。あとは、だましだまし使う事になった。
つまるところ、充電池、は全員交換、耳元プリンターはインクと紙の補充。
ロボット同士の、または、外部ネットワークなどに接続する無線装置も作動確認。
こっちの世界の、百貨店と周囲の情報を、追加。
「ロボット解説員のいるプラネタリウム」
という、本来とはズレた評価で有名になった。


>>695-698 に続く
715名無しさんだよもん:2007/05/18(金) 01:19:42 ID:P6j8yTl40

494キロで、あと6キロほど。

また、思いつきで、何か書くかも。
今日はこの辺で。
716ぷら☆ねたw:2007/05/18(金) 02:01:08 ID:tK1frhbi0
>>715
乙っす。ならば俺も落書きで参戦。
うっかり寝てしまって時間ねぇー

つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1179421033.jpg


ゆめみ
「貧乳はステータスです!希少価値です!」
屑屋
「いや、あのな……」
717「ゆめみの欲しいもの」の中の人:2007/05/18(金) 02:06:04 ID:tOMk6nLN0
むぅ、残り容量少ないのに

「授乳に興味を持ち、なんとかして乳を屑屋に飲んでもらおうと頑張るゆめみ」

という妙な電波を受信した…
718名無しさんだよもん:2007/05/18(金) 02:12:05 ID:tK1frhbi0
wktk
719名無しさんだよもん:2007/05/19(土) 23:18:53 ID:duLqCxhzO
>>716
コーヒー吹いたw
いいなあ。
720名無しさんだよもん:2007/05/20(日) 01:33:25 ID:b4uNBL/N0
キャラ的にはみゆきなんだろうけどね>ゆめみ
性格とかWikiなところとか……


でもそれじゃ面白くないのでw

ゆめみ「面白さで決めないでくださいよぅ……orz」
屑屋「どのみち、俺=かがみだろうけどな」
721名無しさんだよもん:2007/05/20(日) 07:30:43 ID:9dpuupET0
このスレッドでは、赤ちゃん屑屋さんに授乳してましたよね?( >>151-157 )だとすれば。

**+****+****+**

ゆめみがなぜか目覚める。
体内時計が狂ったのか?

お客様。
お客様が少し離れた席に寝ています。
お休みですね。当然です。まだ夜明けまでたくさんの時間が有ります。
ごめんなさい、お客様。寝顔をみていたら、寝息を聞いていたら、なぜか昔の記憶を引き出してしまいました。

まだ。私が。少女だったときに、お客様がご両親と来館されました。

そういえば、私、成長していませんね。お客様は立派に成人なさいましたのに。

あの時、急に、ご両親がお帰りになられ私が一緒にいる事になりました。
お腹が空いたのですか?胸に吸い付いてきました。
でも、私、まだ少女でしたので、お母様では有りませんから、無理でした。

お母様に託された、哺乳瓶、粉ミルク、オムツ、・・・・・

でも、私の胸に抱かれている時が、おとなしい時。
722名無しさんだよもん:2007/05/20(日) 07:38:55 ID:9dpuupET0
**+****+****+**

突然、残り容量が気になって掲載中断。
496キロほど。残りは、4キロ程ですか?
下書きが、容量超えてしまっていますので、再構築します。
ごめんなさい、投延期します。


ただし、新スレにはこの話は引き継ぎません。
723節約ノ為手短ニ言ウGJ:2007/05/21(月) 09:23:05 ID:WQXwaL5i0
.
724産めよ増やせよ地に満ちよ:2007/05/22(火) 09:58:06 ID:yEWZYh790
**+****+****+**

あの時、私、どうして良いかわかりませんでした。
解説委員の皆様がお抱きになっても、御機嫌を悪くされまして。
哺乳瓶では嫌がられて。

そして、保育用品にある授乳装置を頂きました。
いろいろお手入れが大変な装置だということで準備と後片付けに哺乳瓶の何倍もの時間と手間がかかるものだそうですね。
私は、お客様に付きっきりでしたので、どういう事なのかわかりませんでしたが。
でも、その機械を私に付ける事で、お客様が機嫌よく。そして、たくさん。
その後も大変安らかにお休みなさいました。

ただの一日の出来事。
遠い昔の記録。

成長して、イエナさんの修理が出来るようになったお客様。


いつまでたっても、成長しない。
ただ、星についてのいろいろなデータベースと、イエナさんの動かし方を、記憶した私。
御来館下さるお客様のうち一部の皆様のお顔とお声を記録した私。
725名無しさんだよもん:2007/05/22(火) 10:12:14 ID:yEWZYh790
あの日は、夜も、お客様のお相手のため何回か駆動しました。
何年間も、その前までも、その後からも、館長さんも解説委員の皆様も、家にお帰りになり、私はこのプラネタリウム館で駆動を止めています。
そうでした。あの日は、従業員の皆様が帰らず、プラネタリウム館で過ごしましたっけ。

あのときの記録、出てきました。
夜、お客様のお世話のために駆動した時間ですね。ちょうど今。
皆さんが、お客様のためだけに。

ですから、今から、私、特別なお客様にさせていただきます。


**+****+****+**
726残り1キロバイトと少し:2007/05/22(火) 10:20:38 ID:yEWZYh790
>>717
お客様、スレッドの残り容量の都合上、お考え道理のお話が出来ませんでした。
>>721 >>724-725 という短いお話です。
申し訳ございません。申し訳申し訳ございません。申し訳申し訳ございません。
727名無しさんだよもん:2007/05/24(木) 19:04:33 ID:k/CFC4ND0
乙!
728名無しさんだよもん:2007/05/29(火) 01:14:25 ID:PE4xHS6I0
コレがスレの最期の書き込みかな?
729名無しさんだよもん:2007/05/29(火) 01:17:52 ID:PE4xHS6I0
もう一回大丈夫かな?
730名無しさんだよもん:2007/05/29(火) 01:24:52 ID:ZtqcKK1K0
ほしのゆめみは俺の嫁
731名無しさんだよもん:2007/05/29(火) 01:33:01 ID:PE4xHS6I0
さらに。
732名無しさんだよもん:2007/05/29(火) 01:35:24 ID:PE4xHS6I0
機械と人間は結婚できるのですか?
733名無しさんだよもん:2007/05/29(火) 01:37:34 ID:PE4xHS6I0
いえ結婚以前の問題で
くずやさんに寄り添っているのに振り向いてもらえるのですか?
734名無しさんだよもん:2007/05/29(火) 01:45:38 ID:ZtqcKK1K0
いいじゃねーか、それぞれの俺ワールドでよ。
とりあえず脳内設定垂れ流し勘弁wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
735名無しさんだよもん:2007/05/29(火) 07:37:18 ID:PE4xHS6I0
最期?
736名無しさんだよもん:2007/05/29(火) 09:25:50 ID:nP57Gu0c0
>>734
>いいじゃねーか、それぞれの俺ワールドでよ。
>とりあえず脳内設定垂れ流し勘弁wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

脳内設定をSSに昇華するんだ!




まだ書けるかな?
737名無しさんだよもん:2007/05/29(火) 12:17:51 ID:9jexg4CuO
SS書いたとしてもこのスレには落としたくねーわ。
738名無しさんだよもん:2007/05/29(火) 22:15:07 ID:ZtqcKK1K0
733の脳内設定の押し付けに┐(´д`)┌ ウンザリ
739名無しさんだよもん:2007/06/02(土) 16:26:06 ID:jiyOitEe0
埋めコメントに脳内設定でマジレスして荒らされる・・・なんというメアリー・スー
740名無しさんだよもん:2007/06/04(月) 23:18:22 ID:0t5MMxRi0
あと何文字で沈むの?
741名無しさんだよもん
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