437 :
唯一の欠点:
「―――どういう事だ?」
「ですから私は善人の皮を被り人を謀る橘敬介を許さないと言っているのです。私は彼を殺して澪ちゃんを救います」
「…ちょっと待てよ、何かの勘違いなんじゃないのか?」
「勘違いなどではありません。あの男が現れた事が発端で悲劇が起こってしまいました。あの男の所為で罪の無い子供達が二人も命を失ってしまいました」
秋子は理緒と佳乃の死に様は目撃していない。見たのは物言わぬ死体となった彼女達の姿だけだ。
秋子にとっては、敬介こそが全ての元凶に思われた。
何せ彼が現れてから全ての歯車が一気に狂ってしまったのだから。
そして宗一と秋子の口論を聞きつけて、当の本人は登場する。
「―――ちょっと待ってくれ!僕は本当に何もしてないんだ!」
「!?」
宗一の後ろ―――診療所の玄関から秋子の聞き覚えのある声が聞こえた。
それは彼女の駆逐対象、橘敬介その人のものだった。
「貴方はあれだけの惨劇を引き起こしておいて…よくもぬけぬけとそのような事が言えますね」
「違う、あれは僕がやったんじゃない!大体僕がゲームに乗っているのなら、どうしてあの女の子をここに連れてくる必要がある?
そんな事をして僕になんのメリットがあるって言うんだ!?」
「メリットならありますよ?貴方は重度の怪我を負っていた…それなら治療は必要でしょう。
そして女の子を連れて行けば、診療所にいる人を騙して信頼を得る事も容易いでしょう。この方のようにね」
「な……!」
秋子は宗一を顎で指しながら言った。その暴論に敬介は絶句してしまう。
敬介にとって、澪は信頼を得る為の道具―――それが秋子が出した結論だった。
そしてそれは秋子と宗一にとっては道理に適っている考えでもあった。
人を謀るような男なら闇雲に戦おうとするよりも、そういった行動をする方が自然だからだ。
(―――どっちだ?どっちが正しい事を言ってるんだ!?)
438 :
唯一の欠点:2006/12/29(金) 05:21:20 ID:Ym4+tQJC0
秋子と敬介―――宗一にとってはどちらも出会ったばかりの人間に過ぎない。
二人は全く逆の事を言っている…宗一にとって彼らは二人共警戒すべき対象に相違無かった。
なら――――情に流されずに判断するのならば、結論は一つ。
「―――悪いがお前達は両方信用出来ない。俺にはどちらが正しい事を言っているのか分からない。
だから女の子――澪を連れて行くのなら勝手に連れて行ってくれ。そしてすぐに出て行ってくれ。お前達のどちらにも俺は加担出来ない」
「そ、そんな…」
それは敬介にとって事実上の死刑宣告。水瀬秋子は診療所を出た途端、間違いなく自分を撃つだろう。
だが宗一も彼を完全に見捨てるほど薄情ではない。
「そこのあんたは澪を連れて表の入り口から出て行ってくれ―――そして敬介は裏口から出て行ってくれ。
これが俺が呑めるぎりぎりの条件だ。この周りで戦う事は許さない」
これが宗一の敬介救済の為の策だった。
宗一はどちらが嘘をついていようとも、誰も死なずに済む条件を提示したつもりだった。
この条件なら秋子も澪を救えるし、敬介も無事に生き延びられる――――今思いつく限りでは最も良い解決策だと思えた。
秋子は黙って頷くと玄関へと進み、その奥に澪の姿を確認した。
「澪ちゃん!」
秋子は靴も脱がずに澪の所へ駆け寄り、眠る少女の体をしっかりと抱き締めた。
その体温を確かめるように、その命を確かめるように、強く抱きしめた。
すると澪が、ぱちっと目を開いた。
多大な恐怖を抱いたままの状態で気を失っていた澪だったが、目を覚ますとそこには今や唯一の信頼出来る人間―――水瀬秋子の姿があった。
恐怖から解放された澪は涙目で秋子に抱き付いた。
「澪ちゃん、無事だったのね…」
「(こくこく)」
「怖かったでしょう…。でももう大丈夫。後は私が絶対に、澪ちゃんを守ってあげるからね」
「(こくこく)」
439 :
唯一の欠点:2006/12/29(金) 05:24:22 ID:Ym4+tQJC0
秋子が澪を抱きしめながら優しく話しかけ、澪は笑顔で頷き続ける。
彼女達のやり取りをみていた宗一は再び思考を巡らせていた。
(これは―――少なくともこっちの女はゲームには乗ってないな…。しかし、これは直感だが敬介がゲームに乗っているとも思えない。
なら――やはり二人の間で何か勘違いが?…いや、直感なんかに頼ってちゃ駄目だ。今この女からは殺気が消えている…なら)
「……邪魔して悪いが、そろそろ出て行ってくれないか?俺にはやる事がある、いつまでもこうしてはいられないんだ」
穏便に済むうちに終わらせてしまおう。
時間を置けば再び揉める事になるかもしれない。
だから今はすぐに動いてもらうべきだ、と宗一は考えていた。
退去を命じられた秋子は澪に2,3言耳打ちした。
すると澪は自分を指差して…
「え、あなたも?」
「(こくこく)」
「駄目よ、そんなの…。私に任せておいて」
「(ぶんぶん)」
「…時間がもうないわ。お願いだから、言う通りにして頂戴ね」
秋子は小声でぼそぼそと喋っていた。そのやり取りはとても小さい声で行なわれていたので当人達以外には聞き取れない。
宗一は眉間にしわを寄せて彼女達の様子を見ていたが、すぐに秋子が宗一の方へと振り向いた。
「分かりました、では失礼します。ですが―――出来れば澪ちゃんの荷物を返してもらえませんか?
今澪ちゃんに聞いたのですが、荷物が無くなってるみたいなので…」
嘘だ。澪は言葉を喋れない…秋子に荷物の事など言ってはいない。
これはリスクの無い賭けだ。失敗しても適当に誤魔化せば済む。
そして成功すれば―――
440 :
唯一の欠点:2006/12/29(金) 05:27:43 ID:Ym4+tQJC0
「敬介、この子の荷物はどれか分かるか?」
「すまない…僕が持ってきた支給品は誰のか分からないんだ……」
「そうか、じゃあどうする?あんた達の荷物の一部は俺が勝手に取ってしまっていたんだが……出来れば携帯だけは譲ってくれないか?」
「僕には必要ないものだし構わないよ。このダイナマイトはどうしようかな……」
宗一と敬介は二人で敬介が持ってきた荷物の分配について話し始めた。
今現在宗一の鞄には敬介の鞄から抜き取ったいくつかの品が入っている。彼らは鞄の中を覗き込み、それを誰に渡すかを話し合っていた。
―――秋子達の方を見ずに。
世界No1エージェント・那須宗一は今この島で生き残っている人間達の中でも特に優れた戦闘能力を持っている。
そしてそれは正面からの戦闘に限ったことではない。彼はこの環境の中で生き残る為の能力も、初見の相手に対する警戒心も十分に備えていた。
唯一つ欠点があるとすれば―――那須宗一は、お人好し過ぎた。
抱き合う秋子と澪の様子を見て、この二人が人を騙し討ちするような事はしないだろうと勝手に決め付けてしまっていたのだ。
それは決して意識しての事では無かったが、無意識のうちに宗一は秋子を信頼してしまっていた。
『情に流されたら……自滅するのがオチだ』
彼はその事を徹底出来る程、冷徹にはなれなかった―――それが彼の唯一の過ち。
「―――言ったでしょう、その男は極悪な男だと」
澪と話している時とは全く違う、凍てつくような声で秋子は言った。
何かを感じ取った宗一は覗き込んでいた鞄をかなぐり捨てると、反射的に敬介を抱えて素早く外へと飛び出した。
ほぼ同時に銃声が聞こえ、宗一の左肩に大きな衝撃と跳ねるような痛みが走った。
「ぐぁぁぁ!」
「子供達に害を為すその男を救うというのなら―――貴方も殺します」
肩を抑えて倒れそうになる宗一に対して銃が再び構えられるが、彼とて素人相手に簡単に殺されはしない。
宗一は倒れこみながらも玄関の扉を蹴り飛ばして強引に閉めた。
「くそ!宗一君、こっちだ!」
「ち、ドジったぜ………」
441 :
唯一の欠点:2006/12/29(金) 05:28:53 ID:Ym4+tQJC0
敬介が宗一に肩を貸して走り出す。今の宗一の状態では秋子から逃げ切るのは厳しい―――なら目指すはすぐ前方にある茂みだった。
それは即ち――秋子を迎撃するという事。宗一のまだ無事な右手にはしっかりとFN Five-SeveNが握られている。
秋子は澪の手を引きながら扉を蹴り飛ばし敬介達の背に向けて発砲したが、地面の土を抉り取るだけに終わった。
敬介達が茂みに入るのを確認すると、秋子は澪と共に診療所の側面に回りこみ、診療所の建物の角の壁を盾にしながら茂みの様子を窺った。
秋子は一瞬だけ壁から身を乗り出すと茂みに向かって発砲し、すぐに壁の後ろへと体を戻した。
その1秒後には彼女がいた空間を宗一が放った弾が通過していた。
秋子達は診療所の壁を、宗一達は外からは視界の悪い茂みを盾にしながら両者は対峙していた。
そんな中、澪は先程拾った鞄…宗一が落とした鞄の中身を覗いていた。
その中にはダイナマイトや包丁、様々な道具、そして―――H&K VP70が入っていた。
澪は秋子に『私が戦い始めたら澪ちゃんはしばらく安全な場所で隠れてて頂戴。良いっていうまで絶対出てきたら駄目よ』と言われていた。
しかし澪はもう一人になる事には耐えられなかった。黙って秋子が戦っているのを見守る事など出来ない。
秋子が自分にそうしてくれているように、自分も秋子を守りたい―――そう考えた彼女は銃をその手に取った。
・
・
・
祐一達は診療所を目指して走っていた。
「向坂の奴、本当に大丈夫ですかね…」
「心配いらない、彼女は考えも無しにあんな事をするほど馬鹿じゃない。きっと確かな勝算があったはずさ」
「だと良いんですが…」
残してきた環の心配をしながらも、祐一達は駆ける。
とそこで、診療所の方から銃声が聞こえてきた。
「銃声!?」
「最悪だな…。診療所のあたりで、誰かが戦っているみたいだね…」
「どうします?」
回避
回避
回避
回避
まだ無理?
447 :
唯一の欠点:2006/12/29(金) 05:44:44 ID:Ym4+tQJC0
英二は祐一の背の観鈴の様子を窺った。
彼女の顔色は数時間前より明らかに悪くなっており、状態は芳しいとは言えない。
「観鈴君が危ない…このまま診療所へ向かおう。ただし警戒しながらだ」
「分かりました」
こうしてすぐに方針は決まった。
観鈴の容態も悪化しており、環も戦っている現状であれこれ悩んでいる余裕は無いのだ。
二人はペースを落とし、前方を警戒するような足取りで診療所に向かい続ける。
だが彼らが本当に警戒すべきは後ろだった―――少し離れた位置で、マルチが彼らを尾行しているのだから。
(雄二様のお力無しでは普通にやっても勝てません…。今は機を待つしかありません)
―――マルチは冷静に狂っていた。
雄二の力と彼の方針に対してだけは絶大な信頼を寄せていたが、その他の事に対しての判断までもが狂っている訳ではない。
だからマルチは冷静に祐一達を打倒する好機を待っていた。
・
・
・
葉子は診療所の窓から外の様子を窺っていた。
彼女が覗いている窓から秋子達の方は見えないが、宗一達と交戦しているのは銃声からだけでも十分予測出来る。
(さて、どう動くべきでしょうか……)
448 :
唯一の欠点:2006/12/29(金) 05:46:27 ID:Ym4+tQJC0
葉子は今どう行動すべきか考えていた。
足の怪我は快方に向かってきた…まだ痛みはするが歩く程度なら可能だ。
この戦いは、順当にいけば世界No1エージェント・Nasty Boyが勝つだろう。それを黙って待つのも悪くない。
しかし勝った側の人間に奇襲を仕掛け、この場にある全ての火器を手に入れるのもまた、魅力的な選択だった。
武器は先程病室でメスを見つけた、戦い終えて疲弊している相手にならやり方次第では勝てるかもしれない。
とにかく焦ることは無い、今の自分は一方的に戦況を把握出来る立場にいる。
もう少し状況を見極めてから動けば良いのだ。
しかし、彼女は知らない。茂みに隠れている那須宗一は重傷を負っており、とても万全の状態ではないことを。
そして様々な人間が診療所に近付いてきている事を。
【時間:2日目・午前7時50分】
【場所:I−7】
那須宗一
【所持品:FN Five-SeveN(残弾数19/20)】
【状態:左肩重傷(腕は動かない)、茂みに隠れている、秋子を打倒】
鹿沼葉子
【所持品:メス、支給品一式】
【状態@:肩に軽症(手当て済み)右大腿部銃弾貫通(手当て済み、動けるが痛みを伴う)。一応マーダー】
【状態A:診療所内から外の様子を窺っている、どう動くべきか迷っている】
橘敬介
【所持品:支給品一式、花火セットの入った敬介の支給品は美汐の家に】
【状態@:左肩重傷(腕は上がらない)・腹部刺し傷・幾多の擦り傷(全て応急手当済み)。澪の保護と観鈴の探索、美汐との再会を目指す】
【状態A:茂みに隠れている】
上月澪
【所持品:H&K VP70(残弾数2)、包丁、ダイナマイトの束、携帯電話(GPS付き)、ロープ(少し太め)、ツールセット、救急箱、ほか水・食料以外の支給品一式】
【状態:精神不安定。頭部軽症(手当て済み)・秋子を助けて敵を倒す】
449 :
唯一の欠点:2006/12/29(金) 05:47:16 ID:Ym4+tQJC0
水瀬秋子
【所持品:ジェリコ941(残弾10/14)、予備カートリッジ(14発入×1)、澪のスケッチブック、支給品一式】
【状態:腹部重症(治療済み)。名雪と澪を何としてでも保護。目標は子供たちを守り最終的には主催を倒すこと。今は敬介と宗一の排除】
緒方英二
【持ち物:ベレッタM92(8/15)・予備弾倉(15発×2個)・支給品一式】
【状態:疲労、慎重に診療所へ向かう】
相沢祐一
【持ち物:レミントン(M700)装弾数(5/5)・予備弾丸(15/15)支給品一式】
【状態:観鈴を背負っている、疲労、慎重に診療所へ向かう】
神尾観鈴
【持ち物:ワルサーP5(8/8)フラッシュメモリ、支給品一式】
【状態:睡眠 脇腹を撃たれ重症(容態少し悪化)、祐一に担がれている】
マルチ
【所持品:支給品一式】
【状態:マーダー、精神(機能)異常 服は普段着に着替えている。英二達を尾行】
(関連540・604)
>>ID:XmwmNwBhO
回避、アドバイスありがとうございました
451 :
修正:2006/12/29(金) 05:57:22 ID:Ym4+tQJC0
>橘敬介
>【所持品:支給品一式、花火セットの入った敬介の支給品は美汐の家に】
>【状態@:左肩重傷(腕は上がらない)・腹部刺し傷・幾多の擦り傷(全て応急手当済み)。澪の保護と観鈴の探索、美汐との再会を目指す】
>【状態A:茂みに隠れている】
を
橘敬介
【所持品:支給品一式、花火セットの入った敬介の支給品は美汐の家に】
【状態@:左肩重傷(腕は上がらない)・腹部刺し傷・幾多の擦り傷(全て応急手当済み)。観鈴の探索、美汐との再会を目指す】
【状態A:茂みに隠れている、まずはこの状況の打開を考える】
に修正お願いします
三人は民家に帰ってからも無言だった…。
ベッドの上の少女…美凪は顔に付いた血を綺麗に拭き取られ、偶然タンスの中にあった新品の割烹着を身に着けられて寝かされていた
北川と真希は傷の手当てもせずに肩を寄せ合い座っていた、ベッドの上の少女を見つめながら…。
その時は部屋の中の時間が止まってるような気がした。
「少しだけ待っててね…美凪」
真希がそう言い残すと、二人は部屋から立ち去った。
美凪が寝かされた部屋の隣の居間で二人の傷の手当てが始まった
当初「自分の傷は自分でする…」と言った北川だったが、二人とも背中を撃たれていた為
「碌な手当てが出来ないでしょ…」と真希が無理矢理に北川の服を脱がせ手当てを始めた
先ずは北川、そして真希の順で手当てが始められた
真希は北川の身体の傷痕を見て絶句した、背中の傷は勿論のこと手当て済みだが昨日腹に受けた二発の弾丸の痕を…
防弾チョッキ越しでもこんなになるとは思わなかったからだ。
真希は何も言わず北川の傷の治療をした…そして真希の番になった
「……アンタ…よく昨日からこんなの撃たれて動きまわれたわね。」
居間の座布団の上に裸でうつ伏せに寝かされた真希がそう話を切り出した…。
真希の小さい背中はチョッキ越しに撃たれていたが夥しいほどの弾痕の痕を残し、皮膚は円状に剥がれ血が滲み出ていた
ホテルから拝借しておいた救急箱の中から消毒液とガーゼを取り出し手当てをする北川
「そうだな…。」
素っ気無い返事をしながら手当てを続ける北川…あまり話はしたくないらしい、しかし真希は気にせず話し続ける…覚悟を決めているからだ
「アンタはあれだったわ、一番しなければならないことをよく解ってた…。」
これまでの事を振り合えるように話す真希、消毒液が染みるのか時折顔を歪ませている。
「今回もそうだった…アンタも美凪も…それに引き換えあたしは何も出来なかったわ。」
淡々とした口調で話す真希…弾痕の治療を終えたのか座るように指示する北川、
真希の胸と腹に綿とサラシを巻く北川、…治療のガーゼが取れないようにの為であり
申し分程度の防弾衝撃対策、斬撃での内臓が飛び出ないようにだったりする、決して二の鉄を踏まない、
そして北川は意を決して口を開ける
「………お前達に…危険なことなんかさせられるかよ!」
嗚咽を交えながら、やっとまともな口を開く北川、真希の身体にサラシを巻くのを一時的に止める
「…じゃあアンタは危ないことは自分で全部やるとでもいうの!」
北川の洩らした言葉が癪に障ったのか、身体を振り返らせ瞳いっぱいに涙を溜めて北川に詰め寄り押し倒しながら怒鳴る真希
昨晩のホテル跡の食堂で北川を庇った時と同じ体勢を取って…。
「…美凪はねぇ、あたしと違ってちゃんと考えて行動してたわ、アンタと出会う前からね!!」
「今回だって美凪は美凪なりの判断でやったのよ、それを後からあんたがつべこべ言って、あの子が聞いたらどう思うのよ!!」
泣きながら北川を叱咤する真希、そのまま北川の胸に顔をうずめる…。
「…ああ…そう……だな……真希…。」
そっと真希を抱きしめ涙を流す北川
傷の手当てを終えたままの北川と真希は身を寄せ合い唯々泣いていた………。
取り残された二人は一通り泣いた後、二人の気持ちは一つになっていた。
二人は荷物の整理をして装備を整える、
北川の荷物にはショットガンと接近戦用のスコップを真希の荷物には美凪の包丁と前回参加者が置いていった拳銃を持って
そして美凪からもらったお揃いの割烹着と頭巾を着込んでいた、
真希は美凪の防弾性割烹着も一緒に二重に着込む…もしあの子に…みちるに出会えたのなら渡すためだ。
一通りの準備が出来次第、北川と真希は意を決してロワちゃんねるのスレッドを見ていた
耕一と呼ばれた男と千鶴と呼ばれた女の情報が欲しかったからだ…
連中がもっぱら口論していたときに途切れ途切れ聞こえてきた
【ロワちゃんねる】【自作自演】【氷川村の宮沢有紀寧】【リモコン爆弾】【首輪の爆破まで48時間】【岡崎朋也】【人質の初音】
【鎌石村】の単語の数々
耕一と呼ばれた男がマーダーの千鶴を説得しようと何度も説明を繰り返していたので断片的に憶えていた…。
そして一つのスレッドを発見する、
【自分の安否を報告するスレッド】…何と無く理解できた…そしてどうでもよかった…美凪が如何なるわけでもないからだ…。
ノートパソコンの電源を落とし、北川と真希は最後に美凪の部屋に行く
回避
回避
綺麗な顔をしてベッドの上で安らかな眠りに付く美凪、今にもひょっこりと起きて来そうだった
エディとこのみを弔ったのと同じく、庭で摘んだ花を美凪の傍らに添える二人。
「オレ達はオレ達にしか出来ないことをするよ……美凪」
「美凪の作ってくれたハンバーグの味はちゃんと覚えているわ……行って来ます」
そう言って半泣きの真希は永遠に眠ったままの美凪の冷たい頬を撫でた後、二人は部屋を出て行く。
「…覚悟はいいか?………いくぞ真希。」
「どこまでもついていくわ………潤」
北川はそう言って民家を出ていく、傍らには自分で荷物を持った真希が北川と肩を並べて走っていたのだった。
二人のポケットにはお米券が…そして真希の首には美凪のロザリオが提げられていた。
北川潤、広瀬真希、遠野美凪の三人は唯の高校生だった、
首輪を解除できる技術も持ち合わせていなかった、だからこそ自分達の出切る事をしようとした
悲しいときに涙を無理に止めるような感情を持ち合わせてはいなかった、だからこそ笑えるときに笑う感情を持ち合わせていた
残された二人の心は曇ったまま、傷ついた心と身体で前へと進む
自分たちにできること…現在生きてるのかどうかも分からないみちるの情報を求めて、残された二人は北へと走り出した。
三人の心は一つだった…。
回避
真希が健気だ・・・
回避
回避……!
回避
いやっほーぅ!凸凹□トリオ最高ー!!
北川潤
【時間:2日目11:00頃】
【場所:G−2民家】
【持ち物@:SPASショットガン8/8発+予備8発+スラッグ弾8発+3インチマグナム弾4発、支給品】
【持ち物A:スコップ、防弾性割烹着&頭巾(衝撃対策有)、ノートパソコン お米券 おにぎり1食分】
【状況:美凪を看取る、チョッキ越しに背中に弾痕(治療済み)】
【目的:自分たちにしか出切ないことをする(みちるの情報)】
広瀬真希
【時間:2日目11:00頃】
【場所:G−2民家】
【持ち物@:ワルサーP38アンクルモデル8/8+予備マガジン×2、防弾性割烹着&頭巾(衝撃対策有)×2、支給品、携帯電話】
【持ち物A:ハリセン、美凪のロザリオ、包丁、コミパのメモとハッキング用CD、救急箱、ドリンク剤×4 お米券】
【状況:美凪を看取る、チョッキ越しに背中に弾痕(治療済み)】
【目的:同上】
遠野美凪
【持ち物:民家にあった割烹着&頭巾、お米券数十枚】
【状況:永眠 G-2民家のベッドで北川と真希に弔われる】
【備考】
今現在リモコン爆弾の解除方法の情報は北川と真希しか知らない
ドリンク剤×2及びおにぎり×2を消費
その他の物はG-2民家の中
ホテルにあった様々なもの(剃刀、タオル、食器、調味料 その他諸々) ワイン&キャビア、
同人誌の数々、スコップ はG-2民家の中
ルートB−13
→595
>>sUJYepR00
気合の入った回避ありがとうごさいます
やはり制限されている電波では効果が薄かったのか、
椋はあの後すぐに目を覚ました――――
椋が体を起こすと、目の前には祐介がいた。
「貴方はさっき追って来てた人……?」
「うん。怯えさせてしまってごめんね」
祐介は申し訳無さそうに頭を下げたが、椋はまだ訝しむような顔をしていた。
「……私をどうなさるおつもりですか」
「まだ僕を疑っているんだね……」
「当然です」
椋は雅史から少し距離を取りながら言った。
一度眠らされた事で落ち着きは取り戻していたが、だからといって目の前で雅史が殺された記憶が消える訳ではない。
簡単に人を信用する事など出来なかった。
「疑う気持ちは分かるけど……僕が君を殺すつもりだったらもう君は死んでるんじゃないかな?」
「それは……確かに」
そう。祐介が本気でゲームに乗っていたのなら、椋を眠らせた後殺している筈だった。
椋は厳しい表情で少し考え込んだ後、答えた。
「分かりました……今は信用する事にします」
『今は』。祐介が今この場で自分に危害を加える気が無いことは分かった……。
だけどそれは自分を何かに利用しようとしているからなのかも知れない。
このゲームでは仲間がいれば何かと便利である。戦闘でも人数が多い方が有利だし、二人いれば交互に睡眠を取る事も出来る。
椋には出会ったばかりの人間を全面的に信用するような事など出来なかった。
だが、それでも一時的には椋の警戒は解かれた。
それからは比較的穏便に話を進める事が出来た。
まず二人が話した事はお互いの名前と、電波についての事だった。
「その”電波”っていう力で祐介さんは私を眠らせたんですか?」
「うん、ごめんね?」
「いいえ、私の方こそすいませんでした。あんなに取り乱しちゃって……」
「ううん、仕方ないよ。もう大丈夫なのかい?」
「ええ、もう落ち着きました」
「それじゃちょっと試してみても良いかな?」
「……え?」
途端にちりちりとした感覚を椋は感じた……先程祐介に金縛りにされた時と同じ感覚だ。
しかし今度は、体に異変が起きるというような事は無かった。
その事を確認すると祐介は表情を幾分か緩めていた。
「確かにもう大丈夫みたいだね」
「え?」
「ゲームの開始時にウサギが言ってたでしょ?『能力はある程度制限されてる』ってね。
制限されている今の僕の電波じゃまともな精神状態の相手には通用しない……。つまり」
「つまり?」
「今の椋さんの心は元気だって事だよ」
そう言って祐介はにっこりと椋に微笑みかけた。
今は亡き雅史と同じ―――真っ直ぐな曇りの無い笑顔で。
それは頑なに閉ざされた椋の心に確かに届く。
「ありがとう……ございます」
今度ばかりは椋の口から心の底からの礼の言葉が飛び出していた。
「うん。それじゃ僕は仲間を待たせてあるから戻るけど、椋さんはどうする?一緒に来る?」
祐介の提案に、椋は考え込んだ。
長瀬祐介は確かに人の良さそうな少年だ……だが人を完全に信用する事はもう自分には出来そうも無い。
今の自分はもう佐藤雅史や岡崎朋也に対してすら少なからず疑いの念を持ってしまうだろう。
絶対の信頼が持てるのは唯一、姉に対してだけである。
だが……この島でたった一人の人間と出会う事がどれ程難しい事かくらい、椋にも分かっていた。
強力な武器も持たず、優れた体力も無い自分では姉に出会う前に殺されてしまうのが関の山だろう。
なら―――この少年に賭けてみよう。
結局は確率の問題なのだ。この少年に裏切られる可能性が自分一人で生き残れる可能性より高いとはとても思えなかった。
「そうですね……出来ればご一緒させてください」
「うん、分かったよ。僕の仲間はゲームに乗る気なんか全く無い良い子達だから安心して」
それはまるで人を疑う事など知らぬかのような、信頼しきった口調。
歩き出した祐介の後ろについていきながら椋は思う。
(祐介さん……貴方はお人好し過ぎます……)
このゲームは裏切りが殺人の為の常套手段となっている最悪のゲームなのだ。
祐介のように簡単に人を信用していては、いつか寝首をかかれるだろう。
だがそう思うと同時に、椋は心がちくりと痛むのを感じた。
きっと羨ましいのだ―――今だに人を信頼する心を持ち続けていられる祐介が。
それはこの島で生き延びる為には間違った姿勢だが、人としては正しい姿勢だ。
椋にはもう、何が正しいのか何が間違いなのか分からなかった。
程なくして祐介達は初音達の待つ民家が見える位置まで辿り着いていた。
「長い間待たせちゃったな……」
祐介は困ったように呟きながら歩き続ける。
と、後ろから誰かの足音がした。
祐介と椋が振り向くと、そこには自分達と同じくらいの歳の少女が立っていた。
「ねえ、あんた達はここの家にいる人達の仲間?」
少女―――天沢郁末は特に警戒した様子を見せる事無く平然と祐介達に話し掛けた。
「そうだけど……ここの家がどうかしたの?」
「さっきここの近くを歩いてたら、ガラスが割れる音が聞こえてきたのよ。
それで何事かと思って近くまで来たんだけどやっぱり危ないから、ここで様子を見てたのよ」
「え!?」
それを聞いた祐介は慌てて駆け出しそうになったが、そこで自分の持つ力の事を思い出した。
(そうだ……こういう時こそ電波を感じるんだ……)
「祐介さん……?」
椋に話し掛けられるが今は答えられない。
目を閉じ全神経を集中させる。
家の中から感じられる電波は二つ……何となく分かる、これは有紀寧と初音のものだ。
ここからではその感情までは読み取れないが、とにかく二人は無事という事だろう。
「……何があったか知らないけど、どうやら大丈夫みたいだ」
「どうしてそんな事が分かるの?」
電波の存在すら知らない郁末には祐介の言葉の根拠が全く分からない。
「それを話すと少し長くなるから、家の中で話さない?」
「……分かったわ。貴方達の名前は?」
「僕は長瀬祐介だよ」
「私は藤林椋です」
「そ。私は天沢郁末よ、よろしくね」
簡潔に自己紹介を終えた3人は、すぐ近くの初音達の待つ家へと進んだ。
だが、この自己紹介が郁末にとっては大きな意味を持っていた。
(これで、ノートの効果を試そうと思えば試せるわね……)
―――これまで天沢郁末は一言も嘘は言っていない。
ガラスが割れる音を聞きつけてここに来たのも事実であるし、ここに来てはみたものの、やはり危険だと思って様子を見ていたのも本当だ。
このノートが本当に死神のノートだったとしても、問答無用に銃で撃たれてはどうしようもない。
だからこそどうすべきか決めかねている時に祐介達がやってきたのだ。
郁末は嘘を言っていない、ただ隠し事をしているだけだ。
家の中に祐介達の仲間がいるというのならそれもまた好都合、全員の名前を聞き出してからノートで殺害し武器を奪う。
ノートの効果が偽物だったならまた新たに作戦を立てて、祐介達を内部から切り崩すだけだ。
出会ったばかりの自分を簡単に拠点に招くなどお人好しにも程がある、いくらでも寝首を掻く方法は見つかるだろう。
天沢郁末は笑い出したい衝動を必死に堪えていた。
【時間:2日目・9:30頃】
【場所:I−6、初音達がいる民家のすぐ傍】
天沢郁未
【所持品:死神のノート、包丁、他支給品一式】
【状態:隠れマーダー。右腕・頭部軽傷(治療済み)。最終的な目的は不明(少年を探す?)】
長瀬祐介
【所持品1:ベネリM3(0/7)、100円ライター、折りたたみ傘、支給品一式】
【所持品2:フライパン、懐中電灯、ロウソク×4、イボつき軍手、支給品一式】
【状態:健康】
藤林椋
【持ち物:包丁、参加者の写真つきデータファイル(内容は名前と顔写真のみ)、ノートパソコン、支給品一式(食料と水二日分)】
【状態:祐介に同行しているが、完全に信用してはいない】
(関連569・577)
糞女殺したい衝動が湧いてくるいい作品だ
ただのほとんど意味の感じられない分岐駄作にしか見えないが
なんだ糞女の信者か
巣から出てくるなよ
474 :
名無しさんだよもん:2006/12/30(土) 11:19:50 ID:mXEQFU/n0
開戦間近♪
悪いけど平瀬村アナザーの方が楽しみで仕方ない
476 :
脱出の糸口:2006/12/30(土) 18:15:15 ID:pynVuzhv0
北川達は平瀬村の中を動き回っていた。
彼らの第1目標はみちるの捜索、第2目標が自分達の持つ情報を活かせる人間の捜索だ。
今の彼らにとってゲームの脱出方法の模索は二の次だ、まずはみちるを見つけ出して守ってあげたかった。
そして謝りたかった―――美凪を守れなかった事を。
しかし、基本的にはこれまでとやるべき事は変わらない。
結局の所人を探すには、村を捜索するのが一番効率が良いのだ。
「そろそろ村の中央部だし、歩いていこうか」
「そうね―――さっきの二人組もまだ何処かにいるかもしれないしね」
二人の銃を握る手に力が篭る。
美凪は言った――――『二人共、絶対に死なないでください』と。
復讐に走れば彼女の気持ちを台無しにする事になる。
自分達はみちるを見つけ出し、その後何とかして生きてこの島から脱出するのだ。
復讐の末に辿り着くのは凄惨な死―――だから復讐を目的として行動する気は微塵も無かった。
しかし―――
「ねえ潤……もしまたアイツ達にあったらどうするの?」
「…………」
北川は沈黙を返答とした。その顔はかつてない程険しくなっており、おおよそ彼らしくない。
それで真希も北川の考えている事を察して、黙りこくってしまった。
美凪を殺した連中は許せない―――許せる筈が無い。
無論自分達から仇を探し回るような事はしない。
それは絶対に出来ない。
けれど、もし偶然出会ったのなら――――答えは決まりきっている。
その時は……
そこまで考えて北川はぶんぶんと首を振った。
「じゅ、潤、どうしたの?」
「あーヤメヤメ!こんな暗い事考えてちゃ美凪が悲しんじまうよ!」
北川はそう叫ぶと銃を地面に置いて両手を思いっきり広げ、自分の頬を叩いた。
477 :
脱出の糸口:2006/12/30(土) 18:17:23 ID:pynVuzhv0
パチーン!
豪快な音がした。
北川の頬は叩いた跡が残り少し赤くなっている。
「よーし、これでもう大丈夫だ。やっぱ俺達は明るくいかないとな」
美凪が死んだ事への悲しみはまだ消えてない―――きっと一生残るだろう。
だけど、美凪は自分達が悲しみに暮れる姿など望んではいないだろうから。
だから北川は、真希に微笑みかけた。
真希は一瞬呆気に取られていたが、すぐにいつもの勝気な笑顔をして見せた。
「そうね……そうよね。それじゃあたしも……」
真希は銃をポケットに入れて両手を思いっきり広げ、北川と同じように叩いた。
パチーン!
豪快な音がした。
叩いた跡が残り赤くなっている。
…………北川の頬が。
「あ、あの〜真希さん?気合を入れるなら自分の頬を叩いてくれませんか?」
「嫌よ、痛いし」
「…………」
北川がジト目で非難するが1秒で却下される。
真希は腰に手を当て、偉そうに胸を張っている。
北川は少しの間不満そうにしていた。
だが突然、彼は堪えきれなくなったように笑い出した。
「くっ…はは……ははははっ」
「な……何よ突然笑い出して……頬を叩かれたショックで頭のネジが飛んじゃった?」
「いや、これでこそ真希だと思ってな」
「え……?」
「やっぱり、元気じゃないと真希じゃねえや。お前は元気なのが一番似合ってるよ」
478 :
脱出の糸口:2006/12/30(土) 18:18:15 ID:pynVuzhv0
―――それは真希にとって、完全に不意打ちの一言。
真希の頬がみるみるうちに赤く染まってゆく。
恥ずかしさに耐えられなくなった真希はハリセンを手に取った。
スパ――ン!
スパ――ン!
スパ――ン!
北川の頭に連続して衝撃が走る。
「ちょ、いや、俺今なんか悪い事言ったか?」
「うるさいっ」
スパ――ン!
スパ――ン!
北川が制止しようとしたが、真希の照れ隠しは止まらない。
ハリセンの耐久力が尽きるのが先か、真希の体力が尽きるのが先かと思われたが―――
北川はぱしっと、真希の手を受け止めた。しかし顔は別の方向を向いている。
「―――潤、どうしたの?」
「あっちに……人がいる」
言われて真希は北川と同じ方向を見やった。
すると視界の先に二人の女の子の姿を捉えた。
少女達は窓から顔を出して外の様子を窺っているようで。
その視線は―――こちらに向けられていた。
距離はまだかなりある、逃げようと思えば問題無く逃げ切れるだろう。
しかし折角人を見つけたのだから、出来れば情報を得たい所でもある。
真希は北川の判断を仰ぐ事にした。
「潤、どうする?」
「向こうの方が先にこっちを見つけてたのに何もして来なかった―――攻撃してくる気は無さそうだ」
「じゃあ?」
「ああ、話をしにいこう」
そう言うと北川は銃を鞄に仕舞い、こちらを注視している少女達の方へと歩き出した。
敢えて武器を鞄に戻した理由は単純。相手を無闇に驚かせたり無用な警戒心を与えたりしないようにだ。
真希もそれに習って武器を仕舞い(ハリセン以外)、後に続く。
479 :
脱出の糸口:2006/12/30(土) 18:19:37 ID:pynVuzhv0
・
・
・
「あ、あの人ら一体何やの……?」
「珊瑚ちゃん、危険そうなの?」
「大丈夫やと思う、大丈夫やと思うけど……」
珊瑚は目の見えないみさきの為にそれだけ答えると、口を開いて呆然としていた。
窓の向こうから男と女が堂々と近付いてくる。
割烹着を着て。何故かハリセンだけ持って。
頭には頭巾までしており、その様は異様と言う他無い。
北川達の行動は珊瑚を別の意味で驚かせていた。
だから――――
「芸人さん?」
「「―――は?」」
北川達が声の届く位置に来た時、珊瑚が最初に掛けた言葉はそれだった。
・
・
・
数分後、北川達は珊瑚達が隠れている家の中へと招かれていた。
480 :
脱出の糸口:2006/12/30(土) 18:20:55 ID:pynVuzhv0
「残念だが俺達は芸人じゃない……俺は北川潤、育ち盛りの元気な高校生だ。
それでこっちが広瀬真希……俺の漫才の相方だ。得意技はHGの物真似だ」
「セイセイセイセイ〜〜♪………………………って誰がんな事やるかっ!」
スパ――ン!
スパ――ン!
スパ――ン!
連続してハリセンが振るわれる。
そのやり取りはまさに芸人そのものだったが、とにかく北川達が学生であるらしい事は分かった。
「よ……よく分からないけど、悪い人達じゃないみたいだね……」
「そ……そうやね……」
みさき達は苦笑いをしながらも北川達と同じように自己紹介をした。
その後みさきはまず自分達の置かれている現状の説明を行なった。
近くで戦闘が行なわれているという事実は、いち早く報せるべきだと思ったからだ。
「そうか―――それで川名達はその柳川さんって人達が戻ってくるのを待っているんだな?」
「うん……。みんな大丈夫かな……」
みさきの問いに北川は答えられない。襲撃者は多分、先程北川達を襲った連中だろう。
あの二人組の中でも特に女の方は全く容赦無く襲い掛かってきた。それにマシンガンも持っていた。
なら―――みさき達の仲間が全員無事に帰る保障など、何処にも無かった。
だから北川は、話題を変える事にした。
「姫百合。お前、パソコンが得意なんだってな」
それはみさきの現状説明の時に聞いた情報だった。
みさきは目が見えない―――そして、珊瑚は首輪の解除をしうるだけの技術を有し、
パソコンの扱いにも長けているから安全な場所で待たされている、と。
「うん。うちはそれ以外に取り柄あらへんし……」
「なら―――今がまさにお前の出番だ」
「え―――?」
北川と真希は鞄を探り、ある物を取り出した。
「受け取ってくれ。これは俺達じゃ有効に使えない」
それは―――前回参加者達が遺したメモ、CD、それにノートパソコンだった。
北川はそれらを珊瑚に渡した。
481 :
脱出の糸口:2006/12/30(土) 18:22:58 ID:pynVuzhv0
「俺達はもう少しここに残ってお前達の仲間が帰ってくるのを待つよ。
だけどその人達が帰ってきて情報交換も終わったら、ここを発つ。俺達にはやらないといけない事があるんだ。
だから―――俺達の代わりにお前がこれを活かしてくれ」
前回参加者達の遺産は、然るべき人物へと托された。
【時間:2日目11:30頃】
【場所:F−2民家】
川名みさき
【所持品:なし】
【状態:健康】
姫百合珊瑚
【持ち物@:デイパック、水(半分)食料(3分の1)、コルト・ディテクティブスペシャル(2/6)、ノートパソコン】
【持ち物A:コミパのメモとハッキング用CD】
【状態:健康】
北川潤
【持ち物@:SPASショットガン8/8発+予備8発+スラッグ弾8発+3インチマグナム弾4発、支給品】
【持ち物A:スコップ、防弾性割烹着&頭巾(衝撃対策有) お米券 おにぎり1食分】
【状況:チョッキ越しに背中に弾痕(治療済み)】
【目的:柳川達が戻るまで待って情報交換を行なう。それが終わったらみちるの捜索へ】
広瀬真希
【持ち物@:ワルサーP38アンクルモデル8/8+予備マガジン×2、防弾性割烹着&頭巾(衝撃対策有)×2、支給品、携帯電話】
【持ち物A:ハリセン、美凪のロザリオ、包丁、救急箱、ドリンク剤×4 お米券】
【状況:チョッキ越しに背中に弾痕(治療済み)】
【目的:同上】
(関連598・614 ルートB13)
トリ入れ忘れた・・・
――――――何もなかった…。
神塚山山頂には何も無かった…。
坂上智代と里村茜は首輪に電波を送る為の基地局を探して神塚山山頂へと上った
しかし何も無かった……そして平瀬村への帰路についている最中である。
「くそっ!結局全ては徒労に終わったのか……何も出来ていないじゃないか……」
拳を握り締めながら深く悔しがる智代、前にもこんな感じのセリフを言ったのは言うまでもない。
「仕方がありません…無いモノは無いのですから…。」
明後日の方向を見て、どこかで聞いたようなセリフを吐くのは里村茜、
それに仮に首輪に電波を送る為の基地局があったとしても参加者の目の届く範囲にあってたまることは無い
理由としては支給品の武器にあった
・藍原瑞穂の持っていた手榴弾と姫百合瑠璃の持っていた携帯型レーザー誘導装置
主催者が支給品にこんな物をいれるのだから、仮に目の届く範囲に基地局があれば破壊されるのも想像につく主催者は浅はかでは無い…。
「爆弾が支給品にあるくらいです、主催者も馬鹿ではないでしょう」
昨日の夕方の事を思い出したのか、ボソリと口に出す茜、
「…ハッ!!………なんでその事を言ってくれなかったんだ!!」
茜が口に出さなかったら本気で思い出さなかっただろうな智代、慌てて抗議の態度に出る
「それも含めて成功確率が2割程度だと思って賛成したんです…もしかして忘れていましたか?」
能面のような顔で智代にボソリと喋りかける茜、別に怒ってはいない…呆れているのだ。
「いや…その……。」
しどろもどろに成りながら手の平をぶんぶん振る智代、
「それならいいです…。」
『やっぱり』と言いたげな茜、しかし智代にトドメを刺すつもりは無い。
なんだかんだ言ってもマーダーに成らなかったのは正解であり今も無事に生きている
そういう意味では智代に感謝しなければならない………しかし!!
(どう考えても空回りですね…島一番の役立たずな気がします…。)
口に出さず核心を突く茜、智代はゲーム開始24時間経っても本当に何もしていないのだ…。
二人は知らないことなのだが、他の参加者達は大いに行動していた。
対主催者を目指す者達は仲間を集め、マーダーとも戦う
銃を持たないものでも知恵を振り絞り立ち向かう
首輪解除を目指すものたちは情報を集める
マーダーとてマーダー同士で戦うこともある
亡くなった者とて24時間死者が出ない場合のリセット役に貢献していたりする。
ある者は愛するものを奪われ、ある者は友情を深めた仲間を奪われた…。
裏切りや誤解、様々な不の感情が渦巻くこの島…。
――――――坂上智代の取った行動…。
最初からゲームの破壊を目標とし行動を開始する。
マーダー化しかけていた茜の説得に成功
その後は協力者を探し行動したが無駄に終わる。
倉庫でやさぐれ
茜とドツキ漫才…。
鬱な春原を発見して蹴り飛ばし説教した。(茜がフォローした)
首輪に電波を送る為の基地局を探したが何も出なかった。
現在は平瀬村への帰路に着く最中である。
(………彼女はいったい何をやっているのでしょうか…。)
下手なキャラより役に立たないとふとそう思う茜だった…。
【時間:2日目11:00頃】
【場所:f-3】
里村茜
【所持品:フォーク、他支給品一式】
【状態:全身打撲(マシになった)、智代の行動に呆れている、平瀬村に帰宅する最中】
坂上智代
【所持品:手斧、他支給品一式】
【状態:全身打撲(マシになった)、平瀬村に帰宅する最中】
→547 ルートB−13
487 :
陽光:2006/12/31(日) 12:09:11 ID:8ICLZxUz0
村の中央に、力無く項垂れる3つの影があった。
乾いた風が、彼らの意を介す事無く吹き抜ける。
そこに、蒼い空から陽の光が降りそそいでいた。
柳川は立ち上がると住井の元に歩み寄り、様子を伺った。
複数の無残な銃痕は彼が事切れていることを能弁に語っている。
そして、志保の方を見る―――何時の間に移動したのだろうか、浩之がもう動かない志保の上半身を支え起こしていた。
浩之の表情は、こちら側からでは影になっており読み取る事は叶わない。
「藤田……」
「……悪いが少しだけ、一人にしといてくれないか?大丈夫……少しの間だけだ」
浩之は顔をこちらに向ける事無くそう言った。その声は震えている。
柳川は下唇を噛み締めると、先刻まで抱き締めていた少女へと目を向けた。
「舞、舞……」
佐祐理は舞の手を取り、譫言のように親友の名を呼び続けていた。
けれど、彼女がそれに答える事は二度と無い。
川澄舞の生命は、永遠に失われてしまったのだ。
佐祐理の目にもう涙は溢れていないが、その瞳は虚ろだった。
「倉田……」
その背に声を掛ける。反応は、無い。
佐祐理は舞の体を抱き起こし、がくがくと揺すり始めた。
「止めろ倉田……」
聞こえていない筈は無い……しかし心にまでは届いていない。
舞の体は更に激しく揺さぶられ、その頭が不規則に揺れている。
柳川は佐祐理の肩を掴み、こちらを振り向かせ―――
「……いい加減にしろ!」
佐祐理の頬を張っていた。
その頬は柔らかく、張った手が痛むという事は無い。
ただ―――心がどうしようもなく痛んだ。
その痛みで佐祐理はようやく現実に引き戻された。
488 :
陽光:2006/12/31(日) 12:11:47 ID:8ICLZxUz0
「や、柳川さん……?」
「もう止めろ……川澄はもう、此処にはいないんだ……」
「…………」
「死んだ人間の生命は決して戻らない……」
柳川は敢えて告げる―――現実を。
受け入れられない事実を突き付けられ、佐祐理の瞳に再び涙が満ちてゆく。
佐祐理は耳を塞ぎ、全てを拒むように首をぶんぶんと振った。
「聞きたくありませんっ!どうして……そんな事を言うんですかっ……!」
「川澄は死んだ―――だが」
「もう止めてぇぇぇ!」
柳川が優しく佐祐理の体を抱き締めた。
佐祐理の動きがピタリと停止した。
そしてゆっくりと、柳川は言葉を紡ぐ。
「川澄の代わりに、俺がずっとお前を守る。俺は絶対に死なないし、お前も絶対に死なせはしない」
「……どうして?どうしてそこまでしてくれるんですか?」
「川澄との約束もある……だがそれだけではない。俺にはどうやらお前が必要のようだからだ。
お前といると、何故かとても心が安らぐ……。もうとうの昔に失った感情だと思っていたのだがな……」
「え……?」
「だからずっと傍にいてやる。この島の中だけでは無い、ずっとだ。お前が迷惑で無ければな。
だから……もう、川澄を休ませてやれ。泣くなら俺の胸で泣け……そして川澄にはいつもの笑顔を見せて、安心させてやれ……」
その真摯な言葉一つ一つが、佐祐理の心へ届く。
佐祐理の瞳から涙が再び零れ落ちそうになる。
だが、泣かなかった。
佐祐理は顔を上げて、微笑んだ。
目にまだ涙は溜まっているが、決して無理に作られた笑顔ではない。
「分かりました……でももう、泣いてられません。涙は―――この島から出られた時に纏めて流す事にします。
これからも、ずっと……よろしくお願いしますね」
もう佐祐理は虚ろな瞳をしていなかった。彼女の目には確かな光が宿っている。
489 :
陽光:2006/12/31(日) 12:13:47 ID:8ICLZxUz0
強い少女だと思った。親友の事で鬼に呑まれてしまっていた自分とは比べ物にならないくらい、強い。
主催者さえ殺せば、もう自分は死んでも良いと思っていた。
鬼を抑え込んでいる制限と呼ばれている力が無ければ、自分はもう自我を保てないから。
再度、愚かな傀儡と化してしまうだけだから。
だけど―――今ならきっと、そうはならない気がした。それだけの強さを佐祐理が与えてくれた。
(貴之……俺は生を望んでも良いのか?)
心の中で親友に問い掛ける…………答えは無い。
だけど、決意はもう固まっていた。
自分の命はもう、自分の為だけにあるのでは無い―――生を諦める事など許されない。
「……ああ、こちらこそな」
微笑みながら、簡素な言葉を返す。
それ以上の言葉は必要無い……お互いの想いはもう十分に伝わっているから。
ふと浩之達の方へ視線をやると、浩之は春原に肩を貸していた。
「久しぶりだな、春原」
「ああ……無事だったんだね」
浩之も彼なりの葛藤があり、そしてそれに打ち勝ったのだろう。
もう彼の声は震えていなかった。
浩之は柳川の視線に気付くと、しっかりと頷いた。もう、大丈夫だと。
柳川は再び空を見上げた―――ほんの僅かの間に、陽の光は随分と輝きを増しているように見えた。
「―――!」
そんな時、何かが近付いてくる気配を感じ取り、柳川は気配のした方向へと目を向けた。
そちらからは、見知らぬ少女が一人と、少し遅れて別の少女が三人、駆けてきていた。
【時間:2日目11:30頃】
【場所:F-2】
490 :
陽光:2006/12/31(日) 12:14:54 ID:8ICLZxUz0
春原陽平
【所持品1:スタンガン・FN Five-SeveNの予備マガジン(20発入り)×2・他支給品一式】
【所持品2:鋏・アヒル隊長(1時間20分後爆発)・鉄パイプ・他支給品一式】
【状態:全身打撲・数ヶ所に軽い切り傷(どちらも大体は治療済み)、頭と脇腹に打撲跡】
柳川祐也
【所持品@:S&W M1076 残弾数(7/7)予備マガジン(7発入り×3)】
【所持品A:支給品一式×2】
【状態:左肩と脇腹の治療は完了したが治りきってはいない、肩から胸にかけて浅い切り傷、疲労】
倉田佐祐理
【所持品:支給品一式、救急箱、二連式デリンジャー(残弾0発)、吹き矢セット(青×5:麻酔薬、赤×3:効能不明、黄×3:効能不明)】
【状態:普通】
藤田浩之
【所持品:ライター】
【状態:人を殺す気は無い】
七瀬留美
【所持品1:デザートイーグル(.44マグナム版・残弾6/8)、デザートイーグルの予備マガジン(.44マグナム弾8発入り)×1】
【所持品2:H&K SMG‖(6/30)、予備マガジン(30発入り)×4、スタングレネード×1、何かの充電機、ノートパソコン、支給品一式(3人分)】
【状態:まだ状況を把握していない、目的は冬弥を止めること。ゲームに乗る気、人を殺す気は皆無。千鶴と出会えたら可能ならば説得する】
柚木詩子
【持ち物:ニューナンブM60(5発装填)、予備弾丸2セット(10発)、鉈、包丁、他支給品一式】
【状態:まだ状況を把握していない、千鶴と出会えたら可能ならば説得する】
ルーシー・マリア・ミソラ
【所持品:鉈・包丁・スペツナズナイフ・他支給品一式(2人分)】
【状態:まだ状況を把握していない、左耳一部喪失・額裂傷・背中に軽い火傷(全て治療済み)】
吉岡チエ
【所持品1:救急箱・支給品一式】
【所持品2:ノートパソコン(バッテリー残量・まだまだ余裕)】
【状態:まだ状況を把握していない】
【備考:現場に舞、耕一、志保、護の支給品一式、新聞紙、日本刀×2、投げナイフ(残り4本)が置いてあります】
→608 ルートB−13
491 :
謹賀新年:2007/01/01(月) 00:06:33 ID:7N/JNup70
―――時は12月31日、23時50分。
北川、美凪、真希ら凸凹□トリオは一緒にコタツに入りながら日付が変わるのを待っていた。
「しかし今年も寒いな……。このままじゃ年が明けても寝正月になっちまいそうだ」
北川が蜜柑を食べながらぼやく。
彼はだらしなく上半身をコタツの上に預けており、やる気の無い事が容易に見て取れる。
だが真希はそんな彼に容赦無く言い放つ。
「駄目よ、明日は初詣に行くんだから」
「誰が?」
「あたし達がよ」
「何処に?」
「神社よ」
「何日に?」
「明日よ」
「誰が?」
「…………」
真希はこのやり取りの無意味さを悟り、北川の耳を掴んで引っ張った。
そのまま指に力を加え、捻るような動きを混ぜる。
「あだだだだっ!」
「そういう事だから私と美凪のエスコートをよろしく頼むわね、北川君?」
「いててっ!分かった、分かったって!」
「よろしい」
真希はパッと手を離した。
すると、とんとんと肩を美凪に突かれた。
「どうしたの?」
「……見てください」
美凪が指で示してる方向を見ると、テレビの時計は丁度0:00を示していた。
北川もすぐそれに気付く。
「新年になったな、真希、美凪」
「そうね、潤」
「じゃ、始めるか」
三人はコタツから出ると横一列に並んで整列するように立った。
492 :
謹賀新年:2007/01/01(月) 00:07:30 ID:7N/JNup70
北川がすう、と深呼吸をする。
だが、彼が何かを話す前に美凪がお米券を手に喋りだした。
「……新年おめでたいで賞、しんて……」
「わー、待て美凪!それは三人一緒にだ!」
「……残念」
授賞式を妨げられた美凪は一瞬シュンとしたが、すぐにいつもの微笑みを湛えた顔に戻った。
改めて北川は二人を促し、三人は揃って深呼吸をした。
「それじゃいくぞ…………明けまして」
「「「おめでと〜ございますっ!」」」
彼らは三人一緒に大きな声でそう言って深々とお辞儀をした。
そのままの態勢で10秒程固まっていたが、やがて北川が姿勢を戻して動き出した。
「ふ〜、終わった終わった。さて、またコタツに戻って冬の風物詩・蜜柑を堪能するとしますか」
北川はそう言ってコタツに戻ろうとするが、その肩をがしっと真希に掴まれる。
「ちょっと待ちなさいよ。まだコメント発表が残ってるでしょ?」
「ああ、そう言えばそうだったな……」
「そうです。それじゃまずは私がT槻(匿名希望)さんからのコメントをお伝えしますね」
美凪は紙を取り出して、そこに書かれてある内容を読み出した。
「『参ったぁっ!俺は参ったぁぁっっ!なぜなら人気No1の座を得たからだぁぁぁっ!ハハハハ、我が世の春が来たァ!
フハハハハハ、お前らもっと俺を褒め称え……』……あら?」
「ん、どうしたんだ美凪?」
「字はここで途切れてます……そしてこれまでとは違う女の子らしい字で裏に何か書かれていますね」
「どういう事かしら……読んでみてよ」
「『騒がせて悪かったわね。調子に乗ってる高槻には私、郁乃がちゃんとお仕置きしておいたわ。
……ふ、ふんだっ!今年も私達をよろしくお願いだなんて、思ってないんだからねっ!』……以上です」
読み終えると美凪は紙をポケットの中へと戻した。
北川と真希は苦笑いを浮かべている。
「さ、最初から随分と変わった奴らだな……」
「そ、そうね……。ま、気を取り直して次行きましょ。今度はあたしの番ね。えーと……、柳川祐也さんって人からのコメントみたいね」
真希は紙を取り出し、そこに書かれてある内容を読み出した。
493 :
謹賀新年:2007/01/01(月) 00:08:34 ID:7N/JNup70
「『ちっ、新年の挨拶などと下らん。作者もこんな物を書いてる暇があれば本編の一つでも書けば良かろうにな。
こんな茶番に付き合う気は無い、俺のコメントは以上だ。……と思ったんだが、後ろで倉田がうるさいから代わりに書かせるか……』」
「……変わった奴ばっかだな」
北川がぼそっと呟いたが、真希は構うことなく紙に書かれている内容を読み続ける。
「『あはは〜、倉田佐祐理です。どうもすいません……普段は無愛想ですけど、本当は柳川さんは良い人なんですっ!
ですから出来れば今年も応援してあげてくださいね』……以上よ。ったく、レディに迷惑掛けてる奴が多いみたいね……」
真希は溜息を吐きながら紙をポケットに戻した。
「そうだな。このジャパニーズジェントルマン・北川潤様を見習えってんだ」
「もうつまらないボケは良いからさっさと最後のコメント読んじゃって……。変なコメントばっかで、ツッコミを入れる元気も無くなったわ」
「あ、ああ、そうだな……。えーと……、橘敬介って人のコメントだな」
北川は紙を取り出し、そこに書かれてある内容を読み出した。
「『やあみんな、新年おめでとう。去年の僕は厄災続きだったんだけど……今年は少しはマシになったら良いな、ハハハ……。
今年も至らないなりに頑張るから、どうかよろしくね』……以上だな。この人は割と普通そうだ」
「……橘敬介さんには不幸で賞として、お米券100枚を進呈します。ぱちぱちぱち……」
どこにこれだけの量を仕舞っていたのだろうか、美凪は数え切れない程大量のお米券を取り出していた。
北川にとってそれはもう慣れっこの光景だったので特に気にせず、彼は終幕へと取り掛かる。
「よし、それじゃ最後に三人一緒に締めようぜ」
「そうね」
「そうですね」
「「「せーの………」」」
三人はまた横一列に整列し、大きく息を吸った。
「「「今年も葉鍵ロワイアル3をよろしくお願いします!」」」
494 :
謹賀新年:2007/01/01(月) 00:09:05 ID:7N/JNup70
北川潤
【持ち物:みかん10個、Mr死亡フラグのコメント付き用紙】
【状況:コタツでみかんを食べたい】
広瀬真希
【持ち物:柳川と佐祐理のコメント付き用紙】
【状況:疲労、呆れ】
遠野美凪
【持ち物:お米券数百枚、T槻と郁乃のコメント付き用紙】
【状況:また出番が来て嬉しい】
【備考:つい調子に乗ってやった、今は反省している】
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葉鍵ロワイアル3作品投稿スレ9
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1167394239
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乙!(| | ( | | | l | あははーっ♪
| ! !、'' lフ/||__ < 埋め立てですーっ♪
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